幻想回転録 (駿駕)
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ようこそ、幻想郷へ
俺の名はジャイロ・ツェペリ


ニョホ!ニョホホホ~!

 

俺の名はジャイロ・ツェペリ。本名をユリウス・カエサル・ツェペリっていう。

今日は調子がいい、絶好調だ。まるで俺の愛馬、ヴァルキリーに翼が生えて、ゴールまで飛んでいっちまいそうだ!

「どうした?ジャイロ」

馬に乗って横に現れたのはジョニィ・ジョースター。

下半身不随で足が不自由だが強い男だ。少しマイナスなところがあったりするが、頼れる仲間だ。

「今日は絶好調でよ!一位取れそうだぜ!」

「そうか、お互い頑張ろう!」

「おう!」

 

レースが始まる。周りにたくさんの騎手が集まってきた。

「始まるな、頑張ろう、スローダンサー」

ジョニィの愛馬、スローダンサーはジョニィの言葉に返事をするかのように鳴いた。

まぁ優勝は俺だけどなー。ニョホホ♪

 

レースが始まっても、俺の絶好調は続いていた後続とはどんどん差が離れ、レースは俺の独壇場だった。

ジョニィだけは何とかついてきていた。

「ジャイロ、少し飛ばしすぎじゃないか?馬も限界が来るんじゃ・・・」

「ニョホ!今日は調子いい!俺もヴァルキリーもな!先に行ってるぜ!」

「おい!ジャイロ!待ってくれ、ジャイロ!」

ジョニィの声も遠くなり、気がつくと他の馬の足音は完全に消えてしまった。

 

ニョホホホ~♪

この前作ったチーズの歌を口ずさみながら、森の奥に入ると、完全に音が消えたため、少し休憩をすることにした。ジョニィも気になるしな。

辺りを見回すと、前の方が明るいことがわかった。

さっきまでの荒野の熱気もなく、まるで別世界にいるかのようだった。

「何だ、これは・・・」

森を出た先には、広大な草原が広がっていた。その下にはどこか古い町があるのも見えるではないか。

俺はヴァルキリーを連れてくると、草原の真ん中で休ませた。

「空気が気持ちいいな。ジョニィもついてくればこんな気持ちいい場所で優雅に休憩できたのによぉ」

俺が少し目を閉じて、心地いい風を浴びていると、女の子の無邪気な声が聞こえてきた。

「何だ?」

俺は起き上がり、ヴァルキリーにまたがると、辺りを見回した。

「何だ、ありゃ!」

北の方角から、二人の女の子が飛んできた。

「おい!そこのお嬢ちゃん!」

呼び掛けると、一人の女の子が降りてきた。

その女の子は水色の髪をし、頭には青いリボンをつけ、その色に似たような青いワンピースを着ていた。

「何だ?お前?どこから来た?」

「俺の名はジャイロ。ジャイロ・ツェペリだ」

「ツェペリ?すごい名前」

少女は鼻で笑うと、腰に手を当てる。

「あたいの名はチルノ!幻想郷最強のチルノよ!」

「チルノか。で、そのゲンソーキョーとは何だ?」

「この世界の名前だよ」

「名前ね・・・はぁ?」

俺は地図を開く。地図にはそんな名前は載っていない。

「何それ?」

「地図だよ、ここ周辺の。ちょっと探してくれないか、そのゲンソーキョーっやつを」

二人で地図を探すが、どこにもそんなものは見つからない。それにチルノは「こんなの見たこと無い」とか「初めてこんな名前聞いた」とか、変なことばかり言いやがる。

「あまりふざけたこと言ってるとよぉ?」

ついに俺はチルノの胸ぐら掴んで持ち上げた。

「やめて!」

するとそんな声が天から聞こえ、飛んでいたもう一人の少女が俺に飛び蹴りを食らわす。

「痛ぇな、てめぇ!何しやがる!」

俺は鉄球を出す。さすがに少し痛い目会わせなきゃいけないようだ。あまり少女を泣かせるとかいう趣味はないんだが・・・

「それ以上、チルノちゃんをいじめるのはやめて!」

「そんなこと知らねーな!食らえ!」

俺は二人に向かって回転エネルギーを凝縮させた鉄球を投げる。

次の瞬間、

 

ガキン!

 

何か鉄のようなものに当たる音がその草原に響き渡った。俺の目の前には投げたはずの鉄球が埋まっていた。

「何してるの、こんなところで」

そこには紅白色の服を着た女が立っていた。昔見た日本の巫女っていうのに姿が似ていた。

「おうおう、誰だ?お前?」

俺は鉄球を拾うと、その巫女を見る。

払い棒ってやつか?そんな棒を握る手とは違う方の手のひらを棒で叩くと、巫女の目の前に俺の鉄球を撃ち落としたと思われる紅白の陰陽玉(?)が現れた。

「私は博麗 霊夢。あなたは?」

「俺はジャイロだ、ところでその博麗さんが何のようだ?」

「そっちこそ。どうやってこの幻想郷に入ったのかしら」

女のわりには怖い目をしやがる。

ジョニィが言ってた「飢える」とはこういうことなのか・・・そんな目だった。

「女のわりには根性あるじゃねぇか」

「そっちこそ、ただの人間のわりには良い目してるじゃない」

「とりあえず、鉄球を食らって、家にでも帰りな!」

俺はいつも通り、体を貫通するくらいの威力の鉄球を投げる。

一瞬の出来事だった。俺の鉄球は霊夢から、大量に放たれた光の槍のような、小さな針のようなものによって形を消し、その無数の弾は俺の体に刺さった。

「何だ・・・こいつ・・・」

俺はそこから先のことを覚えていない。どうやら気絶してしまったらしい。

 

 

・・・どこだ、ここは。

日本の畳ってもの、それに見たこと無い和風建築。

「気がついたようね」

俺の横には俺を気絶させた犯人、霊夢が座っていた。

「大変だったわ。馬は暴れるし、あなたは重いし」

俺はそれを聞き、すぐに布団を飛び出して、屋外に出る。

「よかった・・・」

ヴァルキリーは草を食っていた。

見た感じ、外傷はない。

「あと、あのとき投げた鉄球は修復不可能ね。もう、諦めなさい」

「まだまだたくさんある。一個くらい大丈夫だ」

俺は鉄球を三つ取りだし、ジャグリングをして見せた。

まだあの攻撃を受けた感覚は身に残り、ジャグリングをする手はしびれていた。

「でも、あんな技は初めて見たぜ。どうやったんだ?」

「この世界の人や妖怪は普通出せるわ」

「あの飛んでた少女らもか?」

「えぇ。私たちはこれを弾幕と呼んでいるわ」

「弾幕・・・かっこいいじゃねぇか」

「そんなこと初めて聞いたわ。私たちのこの能力が普通常識程度に思っていたからかしらね」

「この世界の常識か・・・」

俺は鉄球を二つしまうと、一個を地面に向けて投げる。

すると横回転をかけた鉄球は小さな竜巻を作りあげた。

そしてそれのせいか、霊夢のスカートは風によってめくり上げられた。

「きゃっ!何するの!」

「悪い、悪い。ちょっと考え事しててよ」

鉄球を拾い上げると、目の前には怒った霊夢の顔が表れた。そして一発、頬にビンタをくらった。

 

「で、俺はどこにいけばいいんだ?どうすればここから出られるんだ?」

「何で来たのか理由がわからない状態じゃ、帰すことは無理だし、どこに帰せばいいのかもわからないわ・・・」

「この世界に俺のことを知ってるやつはいないのか?」

「・・・」

霊夢は黙り込んでしまう。

考え事をしているのか、あてを探しているのか知らないが、俺は答えを待つことにした。

「・・・いないかな。この世界に入るということはあなたがただ単に迷い混んできたか、誰かに呼ばれてきたかってことだけど・・・どっちだと思う?」

「そりゃ呼ばれて入れたならいいけどよ、人気者というか何というか・・・」

確か俺は普通に森に入っていった。そこでこの場所を見つけた。

霊夢の言う、迷い混んだという説が普通だろう。

「まぁ色々と歩っていれば出れるかもしれないわ。私も仕事があるし、あまりあなたに構ってられないわ」

「お、おい!俺はどうすればいいんだよ!」

「そうね・・・とりあえず西に行ったところにある紅魔館にでも行ってみれば?馬があればすぐよ」

「そうか。わかったぜ」

俺はヴァルキリーに乗ると、霊夢に手を振って別れを告げた。

 

 



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ジャイロvs.魔理沙

第二話です。

この作品に出てほしいキャラ募集中。
できれば感想にこの作品に出てほしいキャラを書いて送ってください。



あれから何時間、馬を走らせているのか、俺にもわからない。ただ時間は刻々と過ぎていた。

「おい、遠くねぇか。紅魔館って場所はよぉ!」

思わず、叫んでしまう、大人気ない俺。

「最短ルートは地図ねぇからわからねぇし!道行く人に声かけて、どこか聞いても有るのか無いのか定まらねぇしよ!あの巫女、ウソつきやがったな!」

俺はヴァルキリーを休憩させるために、降りて近くのベンチ(?)に座った。

少し空を見ていると、上を白黒の服を着た金髪の魔女が箒にまたがって飛んでいるのがわかった。あいつなら空から見渡せるだろうし、その場所を知ってるだろう・・・

「おーい、そこの魔女ーっ!」

「何だ?あの馬乗りは?」

魔女は俺の声が聞こえたのか、フワフワと下降して、俺の目線で止まった。

「どーした?道にでも迷ったか?」

「そうだ、紅魔館とはどこにある?霊夢って巫女に言われて、神社を出たはいいけどよ」

「霊夢か。あいつから聞かなかったのか?」

「西にあるとしか」

「私も行こうとしてたところだ、一緒に行くか?」

「マジすか?!それは賛成だ!」

俺はその言葉に目を丸くすると、両手人差し指を魔女に向けた。

「私の名前は霧雨 魔理沙だぜ。よろしく!」

「俺の名はジャイロ・ツェペリ。よろしくな!」

俺たちは何を思ったのか握手を交わした。女の手というのにこいつの手のひらは固く、握力も相当あるみたいだ。

 

「ところで、お前は魔女なんだよな。何か魔法使えるのか?」

「使えるぜ。色々とな」

「なるほど。じゃあ、食べ物出せるか?さっきから腹が減ってよぉ!」

「食べ物か。やったことないな・・・」

※ちなみにこの世界の魔理沙は、光や熱だけでなく、あらゆる魔法が使えるが、食べ物や生き物を召喚するような魔法はできない。よって今のジャイロの願いは叶わないのだ!

魔理沙は俺の頼みに後頭部を掻く。

どうやらその魔法はできないようだ。

「すまないな、難しいこと言ってよ」

少し歩くと、リンゴの成る木を俺たちは見つけた。

「じゃあよ、お前がどれだけすごい魔法使いなのか知りたいから、あのリンゴを傷一つつけず取れるか?もちろんこの場から、魔法のみで」

「そんなの朝飯前だぜ!」

果物ってのは繊細だ。少しでも傷がついてはそこからどんどん腐っていってしまう。そのため、農家は優しく手で一個ずつ摘み取る。もしも、この魔女が使う魔法がおおざっぱな物だったら、リンゴは傷ついて真下に落ちるだろう。

そんなこと考えていたら、魔理沙はもうすでにリンゴを取っていた。

「ほら、どうだ。傷一つついてないだろ?」

そして、そんなこと言いながら、俺に投げ渡した。

リンゴはまるで、コーティングでもされたかのように傷一つ、焦げたようなあとも無かった。

「どうやって・・・こいつを」

「見てなかったのか?」

次の瞬間、魔理沙は手のひらに光を帯びた何かを作るとそれをブーメランのように木に向かって投げる。

すると、それはうまくリンゴの木の枝部分を切断し、真下に落ちる。

そこまでは予想に近いが、問題はそこからだった。俺は目を精一杯開いてそれをじっくりと見た。

リンゴは下に落ちた瞬間、消えて魔理沙の手に落ちたのだ。そこまでの道が見当たらないトンネルのような、そんな感じだった。

「どうだ?これでも、魔法を信じないか?」

魔理沙はもう一つ、リンゴを投げ渡す。

「・・・すまない、魔法のすごさは十分わかった」

「そうかい?じゃあ、私の分はジャイロが取ってくれ!もちろん、条件は私と同じだ!」

俺はそれを聞き、リンゴをかじりながら木のリンゴを見た。

「マジか・・・(このリンゴ、うまいな。ジョニィに食わせたいくらいだ)」

「アンタがどんな力を使うのか知らないが、見してもらいたいぜ」

俺はリンゴを飲み込むと、もう一方のリンゴを上に投げる。

「じゃあ、少しルール変更だ。軽くはしねぇぜ。」

そしてリンゴを投げると、魔理沙にそのリンゴを向けた。

「このリンゴを使って、あの木になるリンゴを三個以上、取ってやる。ただし、それだけの条件をつけるんだ、傷ついても文句言うなよ。食えるくらいには残してやる」

「お、おい!それじゃあ・・・」

「もし、失敗したら何でもしてやるぜ。これから行くお屋敷に喧嘩売りにいってもよ!それほどの覚悟がある!」

「おもしろいこと言うね。何を根拠に言ってるのかわからないけどな」

魔理沙はフワフワと浮く箒に、まるでベンチにでも座るかのように座ると、少しだけ、ほんの少しだけ、上に浮いた。

俺は躊躇なく、持っていたリンゴを投げた。

※銃口から放たれた銃弾のように、ジャイロの手から投げられたリンゴは地面と水平に垂直の回転を作りながら、リンゴの成る木の太い枝を狙って飛んでいく。銃弾は回転がかかることによって、人間や物をえぐり、貫き、それに致命傷を負わせることができる。ジャイロはそれを狙ったのだ!

「いけ!俺の回転エネルギー!」

リンゴは太い枝に当たると、その枝の繊維を砕き、そこから折り曲げた。

「なんだってぇー!」

もちろん、投げたリンゴはもう食うことはできねぇが、その分、大量のリンゴは手に入った。数十個はあるだろう。

「お前、今何したんだぜ!」

「・・・お前の考える"魔法"とは一味も二味も違うものだぜ」

回転エネルギーは木の幹まで達していたのか、その枝からヒビが入り込んでいき、幹にもヒビが入ったのが、肉眼でわかった。

魔理沙はそれを見て、ジャイロをただ者ではないと思った。それとともに、どこか好意を抱いた。

「気に入ったぜ。お前、いや、ジャイロについてくぜ。どこでも言ってみな」

「いや、まだ場所がわからねぇっての」

俺はリンゴを一つ拾うと、指先で回してみせた。

 

少し歩くと、大きな湖の見えるところへ出た。そしてその先に大きな館があるのも、持っていたオペラグラスによって見ることができた。

「あれがコーマカンか?」

「紅魔館だぜ」

「でかいな。ちょっと待っててくれ、こいつをどこかに縛ってくる」

俺はヴァルキリーに「ここで待ってろ」と言うと、木に手綱を縛った。

「よし、できた。それで・・・あそこまでだが。道はあるか?」

「飛んでいった方が早いぜ」

「でも、俺とお前を乗せるなんて無理だろ?」

「ギリ行けることもない」

「おぉ!じゃあ」

「ただ、重量オーバーで落ちても保証できないからな」

俺たちは魔理沙の箒にまたがるとミシミシと音をたてながら宙に浮いた。

「おぉ!?行けるんじゃねぇか?」

だが、俺の興奮をかき消すかのように魔理沙はいきなり叫んだ。

「やばいぜ!このままだと・・・」

「このままだと?」

「折れて湖に墜落する・・・」

「嘘だろ?」

「もうスピードを出して・・・あ」

時すでに遅し。箒は折れ、俺たちは湖に落ちてしまった。

 

「むこうで何か音がしたわね。何があったか、咲夜見てきて」

「わかりました」

一人のメイド、十六夜 咲夜が静かに階段をおりるとき、階段下では何か物音が聞こえた。

「誰?」

咲夜は一階へおりると、ナイフを取り出した。

「君は私に恐怖するか?」

そこには金髪の男が立っていた。彼もまた手にナイフを持っていた。

 

「俺の名はディオだ」

 



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紅魔館の吸血鬼

前回から一ヶ月半近く経ってしまい申し訳ありません。
もう一度、SBRを読んだり、Eohでジャイロを使ったりとしてジャイロを深く学んでいました。まだ、SBRの彼の感じにはなりきれていなく、読んでいて鉄球の回転ではこんなことできるはずがないと思うこともあると思いますが、そこはあまり触れないでください。



湖に落ちた俺と魔理沙は泳いで岸へと上陸する。

岸に近いところで落ちたのが幸いしたのか、溺れ死ぬなんてことはないようだ。

「おい、大丈夫か?」

横で倒れる魔理沙に声をかける。どうやら生きてるようだ。ここで死なれては困る。仲間として・・・

「ゲホッ!ゲホッ!死にそうだったぜ・・・」

 

紅魔館の前。門のところには見たこと無いきわどい服を着た女門番がいるが、どうやら眠っているらしい。

しかも一人のため、起こすこともない。

「ラッキー。門番、寝てるじゃねぇか。無駄に女に暴力ふらなくて良かったぜ」

「あー、そいつはだいたい寝てるから。ラッキーでも何でもないぜ」

「あ、そうなの・・・」

門番の事実を知り、少しガッカリ。

だが、それと同時に中から異様な感覚を感じる。

「下がってろ。嫌な感じがするぜ、さっきから」

「どうせ、咲夜だぜ。ここのメイドの」

「メイドなんて可愛いもんじゃないぜ。今さっきからするのは違う何かをだ」

次の瞬間、ドアを突き破り、一人の女性が飛んできた。メイド姿をしている・・・これが魔理沙のいう咲夜ってやつか?

腹部や足にナイフが刺さっている。早く止血しないと大量出血で。

「メイドごときが、俺と同じ能力を使うんじゃねない!」

扉を蹴破って現れたのは金髪の男。そして男の後ろには何か人間のようなものが見えている。

「大丈夫か!咲夜!」

「そうとう強いわ。どこから入ってきたのかわからないけど・・・美鈴にまたお仕置きしないと・・・ね」

そういい咲夜は意識を失う。

「魔理沙は止血を頼む。俺はあいつを倒す」

「無茶言うな。時を操ることのできる咲夜がやられたんだ、やつは霊夢くらいに強いに決まってる」

あの鉄球を壊したやつくらいか。

「やつがどんなに強くても、戦うまでだ」

「こい!人間がどこまで俺に着いてこれるか!WRYYYY!」

次の瞬間、さっきまで体を後ろに反って叫んでいた男は俺の目の前に現れ、俺を蹴った。

「この蹴り・・・馬に蹴られたとき以上だ。こいつ・・・人間じゃねぇ」

俺は蹴りを耐え、鉄球をやつの方向へ投げる。

「俺は吸血鬼。猿が敵うと思うか!そんな鉄の球、効かんわ!」

吸血鬼は俺に次の攻撃をする。

ギリギリ殴られる前に、最初に俺の投げた鉄球がこの吸血鬼の拳に当たる。

「何だ!?この鉄球は気持ち悪い回転をしやがる!」

「この回転でお前の拳は粉々に吹っ飛ぶ!」

鉄球は吸血鬼の手の肉や骨を粉々にして、後ろの壁に向かって飛んでいく。

「俺の手が粉々に!だが、肉や骨があればこのくらいの傷は」

「今の回転でその部分の神経も損傷しただろうな。今その部分に痛みを感じないだろう?」

「おのれ・・・」

「だが、球を広いに行かなければならないな。メイドさんよ、ちょっと入らせてもらうぜ」

メイドは完全に気を失っているため、返事をしない。

まぁ少しくらい踏み荒らしても、大丈夫だろ。

そんな簡単なことを考えながら俺は館のなかへ入っていった。あの吸血鬼を挑発したあとに。

「逃がすか!」

「いつの間に!」

吸血鬼はいつの間にか、階段を上った場所に立っていた。そういえば、魔理沙があのメイドを時を操ることのできる能力を使うと言い、この吸血鬼が同じ能力を使うんじゃねぇと言った。

ここからやつは時を操る能力を持っているということがわかった。

「さっきから瞬間移動をしてるのは、時を止めて、先回りしているだけだろう?」

「わかったからどうした!それを対処できるとでもいいたいのか!」

さすがに時を止めるやつに勝てる策なんて・・・。ちょっとやってみるか。

俺は次に見えてきた部屋に入った。

中は倉庫のような感じで箱にはおもちゃや家具が入っていた。おもちゃのなかには俺の鉄球と同じくらいの大きさのものや、それよりも小さいものがあった。

すぐにやつは入ってきたが、俺はすぐに隠れたため、あまり探索はせずに、やつは部屋を出ていった。

「とりあえず撒けたか。だが、あれをするには、少し無理があるような。それにその物自体に触らないとあれは発動しないしな・・・」

俺は静かに鉄球を投げる。回転をかけて飛んだ鉄球は床の上で向きを変えると、扉に穴を開ける。

「そこか!」

当然、やつはその音を聞き付け、扉を蹴破って入ってくるだろう。

そこを仕留める!

「隠れたって無駄だ。俺の『世界』の前ではお前の鉄球など」

「鉄球が何だって?」

俺は最後にやつを挑発させるために、一言放つ。

「お前の時を止めることなんざ!俺の回転の前では破れたも同然だ!さぁ、鉄球よ!」

 

ジャイロはまるで四方八方から攻め混むような感覚で、DIOの動きをよみ、鉄球を準備していた。

鉄球はジャイロの投げた鉄球の回転と振動し、一瞬でDIOの近くまで飛んできていた。

 

「数打ちゃ当たるもんだ!炸裂しろォッ!」

「まさか、この俺が人間にここまで!」

DIOの身体に埋め込まれるように入った鉄球はDIOの肉体に穴を開けると、DIOの肉片を飛び散らしながら壁や窓へ飛んでいき、壁や窓に穴を開けた。

もちろん俺が最後に投げた鉄球は俺のところへ戻ってくる。

俺は完全に決まったと思ってやつを見た。

だが、やつに開いたはずの穴は少しずつ小さくなり、やがて塞がってしまった。

「なかなかやるな。承太郎以来だ、ここまでやられたのは、時間を止めても回転する鉄球とは・・・」

どうやら当たる前にやつは少しの間、時間を止めていたようだ。

「だが、ここまでか。万策尽きたようだな」

「いや、ここがどの方角にある部屋かわかるか?」

俺は次のことまで考えていた。

この時間、この館は屋上近くになると、ちょっとした穴からでも日光が入ってくる。つまり、窓や壁に開いた穴からも余裕で入ってくるということだ。

「な、何!これは!」

「アンタは最初に吸血鬼といったな。吸血鬼の弱点は太陽だ。この階なら十分に日は取り込める。さぁ死んでもらおうか!」

「WRYYYYYY!バカな!俺が負けるとはァッ!」

やつは日光によってどんどん溶かされ、灰になってしまった。

「ここの館は南側にこんな倉庫があるのか。まぁおもちゃとか、家具とかしかないから関係ないか」

 

俺は戦いが終わり、服についたほこりを払いながら、廊下を歩き、出口へ向かっていた。すると前方、廊下の先で背中に黒い羽の生えた少女がいるのがわかった。

「感謝するわ。咲夜を倒すほどの侵入者を倒してくれて」

「えっと、アンタは見た感じ、悪魔とか吸血鬼とか、そんなやつみたいだが」

「えぇ。私はレミリア・スカーレット。この館の主をしているわ」

「こんな少女が主ね~。すごい話だな~」

「信じてないようね。・・・まぁいいわ。報酬とか欲しいかしら?」

報酬と言われて欲しいものか・・・金を貰っても元の世界では使えないだろうし。

「なら、情報でどうだ?」

「どこぞの文屋みたいな詳しい情報はあまりないけど、どうぞ?」

「俺はこの世界とは違うところから来た。しかもレース中だ。だからいち早く帰りたい。それが報酬でいいか?」

「面白いこと言うわね。それなら空間を操る程度の能力をもつ、八雲 紫という女性を探すといいわ。それか天狗を探すのもいいかしらね」

「なるほど、すまない」

「礼はいらないわ。むしろ、私の方が感謝してるもの。あ、一つ言い忘れてた」

「新しい情報か?」

「まぁ確率は低いと思うけど、この館の図書館に行きなさい。そこに紫色の服を着た魔法使いがいるわ。パチュリーっていうの。彼女なら空間を繋ぐことができるかもしれないわ」

「その図書館へは?」

「あそこを進めばあるわ」

 

結局、レミリアの話を聞いて図書館に行ったが、魔理沙と会ったくらいで、その魔法使いとは会えなかった。

魔理沙の話を聞いた感じ、あのメイドはすぐに起きたようだ。

俺はすぐに館を出て、湖を越え、愛馬に乗って次の場所へ向かった。

まだこの世界はわからないことだらけだ。

あの吸血鬼もこの世界の人間ではない、俺と同じ違う世界から送られてきたもののようだ。

とりあえず、今は八雲 紫という女性を探すとしよう。

「まぁ新しい鉄球も手に入ったし、探すとするか」

俺はあのとき部屋にあった鉄球の一個を持っていた。前のやつと同じ大きさ、同じ重さで使った感じ、回転もかかりやすかった。まぁ前のと違うところは青色に白星というところかな。

俺は手の平でその鉄球を回すと、森の中を馬で走っていった。

あてのない道を真っ直ぐに。

 



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永遠亭へ

第三話の続きです。
前回はジャイロがDIOを倒し、紅魔館を守りました。
今回は永遠亭への道、迷いの森からのスタートです。


あの館から出て、数時間が経った。

少しすると、周りの風景が変わり、木の雰囲気も変わってきた。

「森にしては、やけに木が細いな。緑色だし・・・これが東洋で聞く竹ってものか?」

俺はとりあえず、鉄球を竹に向かって投げる。

なるほど、中は空洞になっているのか。そしてこの区切りのような部分で一区切りになっていると・・・

面白い植物だな。

「おい、そこのお前」

愛馬の歩みを止める。

目の前には白髪のロングヘアーに赤い大きなリボンをつけた少女が立っていた。服装は見たことのない服を着ていて、この世界のものだというのがすぐにわかる服だった。

「お前、違う世界の人間だな。名前は何だ」

「ジャイロ・ツェペリ。お前は?」

「藤原 妹紅だ。どこに行こうとしている」

さっきから手をポケットに突っ込んでいるのが気になる。感じ的にごろつきのようなやつか?

「どこだかはわからない。この先には何があるんだ?」

「永遠亭という屋敷がある。病院で病気やケガがあるならそこにいくといい。道案内はしよう」

「そこに八雲 紫という人物はいるか?」

「・・・本当にこの世界について知らないようだな。まぁ見た感じ、愛馬の方はケガしているみたいだから行ってみたらどうだ?」

「案内料とかは渡せないがいいか?」

「色々と外の世界のことを知りたい。それさえ、話してくれればいいだろう」

「わかった。道案内を頼む」

 

会ってからもう何分も話している。さすがにたくさんの持ちネタがあってもこの世界では通じない。

チーズの歌を歌ったものの「チーズとはなんだ?ピザとはなんだ?」と聞き返され、オペラグラスを見せても全くわからないと言う。

最終的にはここにどうしてきたかとか話した以外、こいつから一方的に話してくる。

「さっきから何か着いてきてないか?」

俺はこの妹紅の話を聞きながら、何かが着いてきていることに気づいていた。あっちは足音なく動いていると思っているのだろうが、俺にはよく聞こえる。

「ちょっとしートゥれい」

「またそっちの世界のネタか?」

俺はおふざけの流れからすぐに真剣になる。そして、鉄球を取り出すと、後ろの竹目掛けて投げた。

鉄球は竹を砕くと、後ろにいた。少女に当たった。

羽の生えた妖精のような・・・。次の瞬間、妖精はPと書かれた赤い正方形の物体をばらまいて消えてしまった。

「妖精じゃないか。まぁここにいるってことは悪さをするやつに決まっている。よくわかったな」

「騎手として、視覚や聴覚は武器になるからな」

鉄球は奥の竹で軌道を変えると、ブーメランのように俺の手元に帰ってきた。

「その球体すごいね。何かの付喪神の一種か?」

「どちらかというと魔法だな、ニョホ」

「・・・その笑い方。いいね!」

久しぶりにこの世界にきて、この世界の人物の笑顔を見れた瞬間だった。

 

「そろそろ着くよ。・・・もう夜遅いし。あとは永遠亭にでも泊まればいい。それじゃあくれぐれもここにいるウサギや人間に喧嘩を売らないように」

「ありがとうな。ここまでよ!」

 

妹紅は手のひらに火を灯すと、竹藪の中を歩いていった。 どこか彼女の背中は悲しそうだった。

 

「さてと、ここに泊まりますか」

そこには大きな建物があった。

和の文化が盛り込まれた屋敷。屋敷の周りにはウサギがいて、どこか堅苦しいなかにファンシーなものを感じた。

門をくぐると、そこに紫色の髪、学校の制服のような服を着たウサ耳の女が立っている。

彼女は俺に気づくと、こちらを凝視する。

次の瞬間、辺りは真っ暗になり、後ろからジョニィが走ってくるではないか。

「ジャイロ、どこにいってたんだ!?心配したぞ!」

「ジョニィ・・・」

さっきまであった屋敷といい、このジョニィといい、急すぎる展開だ。そして何よりもあの女がいない。

「おい、ジョニィ。そこに女がいなかったか?紫色の」

次の瞬間、ジョニィは俺に向かって爪弾を撃ち込んできた。見たものは爪弾だが、肩の部分に入り込んだそれは

形がなく、妹紅の話であったこの世界特有の能力、弾幕というものだった。

「ジョニィ・・・お前は何・・・ものだ」

ジョニィは俺の言葉ににっこりと笑うと、次にディエゴへと変わる。

「俺は幻覚でも見てんのか?クソッ!」

俺は鉄球を取り出すと、ディエゴに向かって投げる。

鉄球はディエゴを貫通し、暗闇の中に消えていく。そして奥の方で壁に当たったような音がした。

「やはり、この暗闇の先はあの屋敷のようだな。確か名は永遠亭だったっけな?」

俺は壁に反射し、返ってきた鉄球を屋敷の屋根の方向へ投げる。するとまた何かが割れたような音がした。これは・・・瓦か?

「これ以上は、師匠に怒られちゃう」

「そんな女々しいこと言うのか?ディエゴさんよぉ?」

俺はディエゴが後ろを見て、俺の方へ振り向いた次の瞬間、鉄球をディエゴの顔面目掛けて投げる。

「もいっぱああああつッ!!」

そして紅魔館から盗んできた青い鉄球をまた顔面目掛けて投げた。

二つの鉄球がディエゴの顔面で回転し、暗闇の奥へふっ飛ばされた。

そして暗闇は晴れ、その先には大きな屋敷と、空に大きな満月が見えた。

そして前にはウサ耳を着けた女が目を回して倒れていた。

「やりすぎたか?」

俺はそいつを抱きかかえると、愛馬を先に屋敷の中へ入れ、次に俺が入っていった。

「あら、今日の診察はもう」

屋敷の奥から一人の女がそう言いながら歩ってきた。

青と赤の服。とても奇抜で、この屋敷に合わない格好をしていた。診察といったが、こいつは医者なのか?

「って、どうしたの優曇華!?」

「いやー、俺がここに入ろうとしたら、こいつが攻撃してきてな。気絶してるだけだと思うが」

「あら、そうなの。ごめんなさいね、私は八意 永琳。よろしくね」

「俺はジャイロ。違う世界から来た。今日泊まるところがないんだ。できたら泊めてくれないか?」

「この子の件もありますし、いいですよ」

案外、簡単に入れてくれた。だが、その作った笑顔のどこかに俺を避けるような嫌がる表情があった。やはり違う世界から来たなんて言うものではないのか・・・

 

俺は夕飯をごちそうになった。その間、永琳に俺のこととを言い、どうすればあの世界に戻れるのか聞いた。

やはり紫のところを訪ねるのが一番という。

魚を箸でつついたとき、屋敷の扉を開ける音が聞こえた。

「てゐ、遅かったじゃないか。もう食べ始めてるぞ」

てゐと呼ばれた少女は、最初に見た優曇華という女と同じようにうさ耳が生えていた。

汗をかいている・・・何かに追いかけられたのか、息があがっていた。

「どうしたの?そんな汗かいて」

「フフフ・・・」

少女の後ろから奇妙な笑い声が聞こえる。

少女を追いかけ、この屋敷の敷地内へ入ってきたのはスーツ姿の男だった。

「私の勘は当たっていたようだな。このウサギを追いかけて正解だったようだ」

スーツ姿の男は彼女の頭を掴む。

「どうやらこの屋敷は病院のようだな。私はすぐに怪我を回復し、東方仗助を倒さなければならない」

「どんな怪我だか知らないが、てゐを離せば治療してやろう」

「いいや、彼女は人質だ」

とか、言いながらも少女を離した。

「彼女は私のキラークイーンによって爆弾になった。私の合図とともに彼女は爆発する」

少女はそれを聞き、静かに泣き始める。

キラークイーンってのが他のやつにはどんなものだかわからないらしいが、俺には少し見えていた。前にも聞いたスタンドってやつか?

「治療してもらうなら、まず名前を言え!」

俺はやつの名を知るために、そんなことを言う。

「吉良 吉影。そう名のっておこうかな」

「それがお前の名前か!」

俺は鉄球を手のひらで回す。

「闘争は嫌いだ。私の平穏な生活を送るという目標に反する」

「そうか・・・ならこの鉄球で平穏じゃない顔に変えてやるよ!」

「君が戦うというのなら戦おうじゃあないか!」

吉良は静かにかまえる。

 

俺は第一球を投げた。



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ジャイロvs.吉良吉影

前回あらすじで「迷いの竹林」を「迷いの森」と書いてしまい申し訳ありません。
あ、気づいてなかったですか?
今回はちゃんと竹林にした・・・はずです。


俺の投げた鉄球は吉良の軽い身のこなしによって避けられたが、狙いは後ろの柱に当てることだ。

柱に当たった鉄球は吉良に向かっていくはずだ。

「最も戦ったとしても、私は誰にも負けんがね」

柱はいきなり爆発し、そこから一気に発火する。

柱に跳ね返って、こいつに当たるはずの鉄球はその爆風によって火の海に飛んでいく。

「何があってここまでする!」

「君が戦うといったからだ」

植物のような心を持っているのか、こいつは火の海の中でもまるで何も起きていないかのように振る舞い、吉良の後ろに立つスタンド、キラークイーンに指示を出した。

「キラークイーン!第三の爆弾!」

そう言い、吉良は屋敷の敷地内から姿を消した。

「アイツ。最後に何か言ってたような・・・それよりも今はこの火を何とかしないと」

俺は火の海から鉄球を辛うじて拾うと、屋敷から出て、永琳らのところへむかう。

「あのスーツ姿の男はどうしました?」

「逃げられた。たぶん今は屋敷の外だ。それよりも、あの少女は」

「今のところ爆発する気配はないけど、もし彼の言うことが本当なら・・・」

永琳はそう言い、気を落とした。

「・・・そう言えば、どうして、てゐはあんなやつに追いかけられてたの?」

「帰る途中に話しかけられて、そのときアイツから色々と聞いたんだ。アイツの名前から色々と・・・。まるで」

次の瞬間、思ってもいないことが起きた。彼女は俺たちの目の前で内側から爆発した。

それを見て、俺はすぐに爆風に逆らい、彼女のところへ向かおうとしたが、煙の消えたときにはそれまで見ていた景色もろとも変わっていた。

屋敷の前だ。門が見え、月が見え、そしてその先に優曇華がいる。

何だこれは・・・時間でも遡ったのか?

俺は納得を優先した。どうしてこんなことが起きたのか。あの爆発は吉良のもの。だが、あの爆発に時間を遡る能力があるのか?

俺はそのまま屋敷へ向かわず、体を後ろへと方向を変え、長い階段を降りた。

「やつはこっちから来た。ならこの道を戻れば、やつに会うことができる。そして屋敷が火事にならずに済む」

俺は遡った時間が妹紅と別れた後だということを覚えていたため、まず妹紅に会い、この竹林から村までの生き方を教えてもらうことにした。

階段を降りてすぐの分かれ道を左へ進み、数分経つと金髪の男を見つけた。前にはウサミミの少女。間違いなく、吉良だ。

「フフフ、ここで会うとはな。運命に逆らうというのか・・・命を運んでくると書いて運命!よく言ったものだ」

俺は鉄球を取り出す。・・・そう言えばこの鉄球は火によって煤がついているはずだ。それに手の火傷した部分も回復している。・・・やはり吉良の言った『第三の爆弾』とは時間が遡る爆弾だ。

でも何が起爆剤に・・・。時限爆弾か?

「フフフ、悩んでいる顔だな。どうして元に戻っているのかってことか?バイツァ・ダストについて気になるのか?だが、君もまた死ぬ運命なんだ」

吉良は俺に手のひらが見えるように片手を前に出すと、片目を閉じる。

これは目標との距離を計るやり方!でも、なぜに今。そんなに俺とアイツの距離が知りたいのか?

「この世界に来たとき、キラークイーンの中に猫草がいるのを見た。なら空気弾が使える」

俺は鉄球の回転によって出た振動によって、何かがこちらに向かって飛んでくるのがすぐにわかった。これが空気弾か?

「点火!」

吉良がそう言った瞬間、俺の目の前でその空気弾は爆発した。

あの動作で俺との距離を計り、空気弾という爆弾をその距離まで飛ばす・・・なら、距離を計られなければいい。

俺は鉄球を両手に持つと、さらに振動で吉良の放った空気弾を察知させるために回転させた。

やつの放った爆弾は今爆発したのを合わせて、三つ!

「私の武器はこの空気弾だけではない!・・・いけ!シア・ハート・アタック!」

後ろに立つスタンドの左手の甲から飛んだ骸骨のついた戦車はこちらに向かって放たれる。

俺は馬に乗ると、前進し、吉良の横にいる少女の腕を掴み、そのまま馬に乗せる。

少女を乗せ、俺はそこから離れようとしたが、その戦車は俺の後を追いかけてきた。

「クソ!追尾弾か!」

戦車は強引にも俺を追いかける。竹を砕き、岩を砕き、俺の投げた鉄球をはじいた。

「あの威力、当たったら死ぬな」

「ちょっと、助けたのはありがたいけどいつまで、小脇に抱えているウサ!」

乗せたと言ったが、乗せたのではなく、こいつの言った通り、小脇に抱えている状態だ。

「俺の鞍の上には女神様が乗っている!他の女を乗せたら女神様が嫉妬する!」

「そんなの知らないウサ!早く乗せろウサ!」

少女の叫びは俺の心に通らない。

今は勝利の女神様の方が大事だ。

俺は屋敷の方へ戻り、門の先にいる優曇華を飛び越え、少女を屋敷へと下ろす。

「ちょっと、どちら様ですか!?勝手に入られたら」

「ここが火事になってもいいのか!?お前は!」

「は、はい!?」

どうやら彼女らに、遡る前に俺と会ったという記憶はないようだ。

俺はまた門から出ると、戦車を飛び越えて、また竹林へ入る。

「コッチヲ見ロー!」

「クソ!あいつまだ追ってくるのか!」

俺は吉良を横切る。吉良は不気味な笑いをしている。

「シア・ハート・アタックに弱点はない。標的は必ず仕留める・・・フフフ」

俺はとにかく来た道を戻っていた。・・・彼女に会えることを願って。

こっちの住人ならこれを止めることなんて。

俺はとにかく、先へ先へと進むと・・・願いは叶った。

「どうしたんだ?そんな早く馬を翔ばして」

勝利の女神様はまだ離れてなかったようだ。

「助けてくれ、妹紅!お前ならやつを倒すことができるはずだ!」

「やつって、あの飛んでくる不気味な虫か?」

次の瞬間、戦車は妹紅の前で燃えてしまった。

火を操るとか言ってたが、ここまでなのか・・・。

「コッチヲ・・・」

「まだ生きてるのか?タフな虫だな?一寸の虫にも五分の魂・・・か?」

 

燃えていく戦車を見ていると、片手に火のついた吉良が走ってきた。

「私のシア・ハート・アタックが燃えているのか!?」

次の瞬間、燃える戦車を妹紅は踏みつけた。

「ぐぁぁあぁあぁぁ!」

吉良の左手に足跡ようなものが浮き出る。恐らく、これも吉良のスタンドの一部で、痛みがもろにきているのだろう。

そして今ならやつは何もできない!

「俺の鉄球をくらえ!」

「キラークイーン!!」

吉良の後ろから現れたキラークイーンは鉄球を手のひらで止めようとするが、その回転によって、やつの手のひらにヒビが入った。

「ぐっ!回転が止まらない・・・だと」

「くらいな!鉄球の回転を!」

血だらけになった手のひらをみると、吉良はスタンドをしまい、竹林の中へ逃げ込んだ。

「この吉良吉影が切り抜けられなかった物事なんて一つもないんだ!どんなピンチも切り抜けてきた。必ず逃げ切って見せるぞ!」

「待てッ!」

「いや、追いかけなくていい。アイツは必ず、足を止める」

妹紅はそう言い、俺の足を止める。

「やつらは追いかけてこないようだ!」

次の瞬間、吉良はその先にあった落とし穴にはまり、抜け出せなくなってしまう。

「ぐぁぁぁぁあぁ!この吉良 吉影が!こんなところで!」

「ここらへんは兎によって掘られた落とし穴がたくさんある。気を付けて、進まないと足をすくわれるぞ」

「き、キラークイーン!こいつらを爆発させろ!」

「どうやら、終わりのようだな!」

次の瞬間、穴の奥から火柱が建つ。妹紅によるものだった。

「こんなところで負けるわけには!東方!東方 仗助を、この手で!」

「もうやめろ、吉良吉影。お前はもう負けたんだ」

最後の最後まで、あいつは俺たちと戦っていなかった。どこかの世界の東方 仗助と戦っていたのだろう。

「さて、帰るか・・・お前はどうするんだ?」

「永遠亭まで連れてってくれないか?ちょっと休みたいんだ」

 

 

吉良吉影の姿はそこになく、夜の竹林から空に向かって、金色の光が昇っていった。

紅魔館に現れたDIOしかり、この吉良吉影しかり、どうやら違う世界のものがこの幻想郷で戦闘不能になると、金の光になって消えてしまうようだ。

もしかしたら帰っているのかもしれない。

面白い情報が撮れたわ。

「さて、新聞の記事にでもしようかな。見出しは『異世界の人間、ジャイロ。異変を二個も解決!』かな」

私はペンとメモ帳を胸ポケットにしまうと、竹林から飛び立った。

 

「ほう。この世界には空を飛ぶ人間がいるのか」

 

私はそのときはまだ知らなかった。新たな異変が近づいていることに・・・。



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柱の男の襲来

前回までの幻想回転録。
幻想郷にやってきたジャイロは一日でDIOと吉良吉影を倒し、疲労困憊で永遠亭に着くなり、すぐに倒れてしまった。



永遠亭で一休みした俺は一度、人里へ戻ることにした。

ただ休んでるように聞こえるが、これでも一日は寝ていただろう。疲労はたまり、起きたくても身体が動かないということがあったからな。身体さえ動けば、鉄球で筋肉を動かすことができたが・・・。

そしてその後、永遠亭で一日働かされて・・・。

あの医者、温厚な顔してるがやることは不気味でもう少しで帰れずに、実験台になるところだったぜ。

帰り道、もう二度とこんなところ来るかと思ったくらいだ。

そして俺の持つ鉄球の数は二個。最初は何個も作っておいたが、紅魔館での戦いやこの前の戦いで鉄球を紛失、そして破損。使いやすかった紅魔館でもらった青い鉄球もあいつの爆発で壊れてしまった。

 

それにしても妙だ。この世界と違う世界から迷い混む人が俺以外にもたくさんいるということが。確か最初にあった霊夢とかいう巫女は、ここ最近、異世界からの来た人間は少ないと言っていた・・・気がする。

「ちょっと取材いいですか?」

迷いの竹林を出て少しすると、一人の少女に話しかけられた。少女の背中からは黒い羽が生えている。永遠亭で聞いた天狗ってやつか?

「いいぜ。その代わり情報をくれないか?」

確か永遠亭の医者によると、天狗がたくさんの情報を握っているらしい。そいつなら紫の居場所も知っていると言っていたような・・・。

「まずは取材を」

 

この天狗の名前は射命丸 文といい、新聞記者をやっているみたいだ。そしてこの世界でその新聞は有名らしい。今は俺のような異世界からの人間の記事を作るために取材をしているようだ。

とりあえず、俺はあの世界に、あのレースに帰るため、新聞に載せてもらうことにした。情報を拡散することで、少しでも解決点が出てくるんじゃないかと考えた。

「あやや、ジャイロさんは乗馬のレースをしていて、この幻想郷に迷い混んだんですか」

「あぁ。大事なレースだ。今すぐ帰らないといけない。それに相棒をおいてきてしまったからな」

「なるほど・・・。なら、次は白玉楼なんてどうですか?」

「何だそこは?」

「そこならよく紫さんが来ますよ。そこの主の西園寺 幽々子さんが紫さんと仲が良いので」

人里を東西の二つに分ける大きな川の橋の上で取材を受けていると、東の方角から叫び声が聞こえた。

「何事だ!?」

「ジャイロさん!行ってみましょう!」

そう言い、射命丸は俺を残して、その叫びの方向へ飛んでいってしまった。

「おい!俺は飛べねぇぞ!・・・行くぞ!」

俺は馬に乗ると、その方向へ走り出した。

里の人々はその叫びの方向へ集まっている。

俺が通ると、人々はざわつく。もうすでに俺の情報は出回っているのか?

「見て!あの人って今日の新聞に載ってたジャイロって人じゃない?」

やはりそうだ。

「おい。新聞といったな。その新聞ってあそこを飛んでる天狗のやつか?」

「えぇ。・・・ほら」

ちょうど話しかけた茶屋の看板娘らしき少女は店の奥から新聞を持ってきた。そこにはあの迷いの竹林の中、馬を走らせる俺の姿が、その新聞の見出し一面に描かれていた。

「作っていると言ってたが、正確にはもう作られていたのか・・・」

俺はその新聞を空を飛ぶ射命丸に向かって見せると、射命丸はにっこりと笑い、声の方向へ飛んでいって見えなくなってしまった。

「ありがとな。今度は客としてここに来てやるから」

少女に新聞を渡すと、俺は馬を走らせた。

ヤバイな。何だかわからないが、そこに近づく度に、変な殺気が感じられる。しかもドンドン強くなってやがる。

だが、ここで逃げたら救世主じゃねぇよな。

あの新聞に影響を受けたのか、何か俺自身、『救世主』という文字に誇りを受けたようだ。

次の角を曲がった瞬間、さらに殺気は大きくなる。そしてその先にはこの里には全く似合わない姿の男が立っていた。

「・・・増えたか。どんなに人間が来ようと我に勝とうなど不可能だ」

アルファベットのYのようなかまえをとると、こちらに向かって両手をかまえる。

「お前は何者だ!」

「我が名はワムウ!約束の男と戦うまでの数週間の時間を潰すためにここにきた」

「暇潰しで人を殺すと」

「そうだ。それにこの世界の日光はあの世界のものとは反対に気持ちいいくらいだ。これが人間の言う、日光浴というものなのだな」

「どうやら、お前も吸血鬼みたいだな。しかも日光が効かないとか、気持ち悪いぜ」

「人間の寿命は短い。死に急ぐことはないだろう」

俺はやつの何かが震えたのを感じた。闘志のような、戦士が戦う前に士気を鼓舞するようなそんな感じの何かを・・・。

「いくぞッ!」

家を飛び越えるくらい高く飛び上がったワムウは太陽を背にして、太陽の光で俺の目を閉ざそうとする。

だが、その方向はわかった。どんな超人でも、背中に羽でも生えてない限りは、空中で移動するなど不可能だ。

「くらえッ!」

俺はその方向へ鉄球を投げる。

「この鉄球・・・ただの鉄球ではない。恐らく兵隊の使っていた銃の弾のような回転がかかっているだろう。だが、それでも立ち向かう。それこそが戦士としての誇り!」

俺は眩しくてあまり見えなかったが、ワムウは鉄球を両腕を盾にして、防いだのだろう。鉄球は勢いよく左へと

逸れたようだ。

「やはりあの鉄球は異常な回転がかかっていた。腕の皮膚が焦げている。手のひらで受け止めていたら、穴が空いていたかもなぁ。そして微弱だが波紋のような物を感じた」

「おい!まだ、こいつは空中にいるのか!?もう二分は経つぞ!」

やはりこいつの身体能力は人間離れしているようだ。

俺は鉄球の飛んでいった方向を見る。・・・またなくなるのか。さすがにこの鉄球一つだけでは、戦いの幅も狭くなるだろう。

「ジャイロさん!」

諦めかけようとしたとき、横にいたはずの射命丸は凄い勢いでそこまで飛び、その鉄球をこちらに蹴り返した。

そして俺の手のひらに返ってきた。

「その鉄球がないと戦えませんよね!こっち側に来たら私がそっちに返します!」

「マジすか!・・・だが、さすがに回転のかかった鉄球を足で蹴り返すなんて・・・なるほど、そういうことか」

昔、こんなことを聞いたことがある。東洋にいる天狗という生き物は風をおこすことができるらしい。もしかしたらこの射命丸も風をおこすことができるのかもしれない。この鉄球を跳ね返すくらいの。

「あまり触れるなよッ!」

俺は射命丸を信じて、鉄球を投げる。

「このワムウに同じことは二度と通じない!その回転、とてもすばらしいものと感じた」

「俺が同じ回転で投げたと思うか?」

「何だと?」

鉄球は地面に落ちると、ワムウの顔に向かって跳ねる。

ワムウの顔に当たった鉄球は上に跳ぶと、射命丸の蹴りによって俺の方へ飛んできた。

「何だ!今の球は!」

「次行くぜッ!そらっ!」

「意外だ。この人間がここまでやってくるとは・・・。生かしておくわけにはいかないな」

ワムウは俺を見ると、また両手をかまえる。たが、今度は違う。

「闘技!神砂嵐ッ!」

その両手は言葉にできないがとにかくエグい感じになっていた。

次の瞬間、俺はその場から後ろへ吹っ飛んでいた。やつの腕の間からでたタイフーンのような風が俺を吹き飛ばしたのだ。もちろん、鉄球は粉々になってしまった。

「まさか、この私が波紋使い以外にここまで追いつめられるとは・・・。私たちが寝ている間に、こんな戦士が現れたということか・・・カーズ様に報告しなければ」

「待・・・て・・・」

瓦礫の中から出れた俺は出血多量の手を前に伸ばす。

やつを人里で暴れさせるのはヤバイ。

だんだんは目の前は暗くなり、ワムウを目で追うことすらできなくなっていた。

「大丈夫ですか!起きてください!」

横で射命丸が声をかけてるのはわかったが、それに答えることはできなかった。

 



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ジョニィ、迷い混む。

前回までのあらすじ。
幻想郷に迷い混んでしまったジャイロはそこであらゆる敵と戦い、異変を解決していた。
しかし、ジャイロは二部から来たワムウの神砂嵐でついに敗北してしまう。
そして、また新たな男が幻想郷に迷い混んでしまう。


-ここはどこだ?

さっきまで馬に乗っていたはずだが・・・

僕は辺りを見る。暗闇にたくさんの目が壁に貼り付いている。全てがこちらを見ていて、とても気色悪い空間に僕は座っていた。

「ようこそ、幻想郷へ」

目の前に現れた金髪の女。僕をここに閉じ込めた人間だろう。俺はすぐに爪弾を放てるように指を向けた。

「幻想郷?どこなんだ?僕はさっきまで、消えたジャイロを探していたはずなんだが?」

「あなたの探すジャイロさんなら知ってますよ」

僕はその言葉に指をしまう。

「本当か?それなら話は速い。僕は早くジャイロと会わなければならない。そしてレースに戻って」

「今、あなたたちのいた世界の時間は止まっていますよ。いや、正確に言えば私が止めました」

「・・・どういうことだ?」

「あなたたちには異変を解決してもらいます。とても大きな」

「異変とは?」

「こちらに来れば後にわかりますよ。とにかく、私から言えることは先にジャイロさんに行ってもらって、異変を解決してもらっています」

「やはり、お前がジャイロを捕まえたのか!」

僕は爪弾を躊躇なく放つ。爪弾は彼女の前に突然現れた、空間の裂け目に吸い込まれた。

「僕の爪弾が消えた!というよりは、吸い込まれた!」

「私に攻撃している暇があるなら、ジャイロさんを連れてこの世界から脱出することを考えてください」

彼女の前に出た裂け目のようなものは、僕の下に現れ、気がつくと森の中に瞬間移動していた。

「おい!・・・どこにいったんだ!」

完全に見失ったのか。とりあえず、辺りを見回す。

周りはとにかく木ばかりで、動物がいる気配は全くなかった。

「スロー・ダンサー!」

愛馬の名前を呼ぶと、木の幹に空間の裂け目のようなものが現れ、そこから走って現れた。

僕は馬に乗ると、少し前方へ進む。

少し走れば、川か草原か、きっとたどり着く。そう考えていた。

「ジャイロ!どこにいる!」

確かジャイロが消えていった森もこんな感じだった。

どこかで昼寝でもしているのか?

「ジャイロ!返事をしてくれ!ジャイロ!」

僕がそう言ったそのとき、目の前に白黒の服に金髪の女の子が現れた。赤い瞳と赤いリボンがとても特徴的で、背丈的に十歳くらいじゃないかという感じだった。

「ちょっといいか?ここらへんに帽子を被った騎手を見なかったか?」

少女は両手を左右に広げると横に首を振った。

「そうか」

「そーなのかー!」

僕が後退りしようとした次の瞬間、辺りは一気に暗くなった。まるで、一瞬で日が落ちたかのように。

「お前、うまそうだなー!馬もオマケでついてるのかー!」

「何だ!一気に周りが暗くッ!」

視覚を奪われたかのように、暗くなった空間から僕は馬を走らせて逃げ出そうとした。

だが、馬は何かにぶつかったのか、急にヒヒーンと鳴きながら止まった。そしてその勢いで僕は落馬する。

「どうした!そこに木があるのか!」

暗闇の中で少女の赤い瞳が光る。すると、僕の足を噛み千切られるような激痛がはしった。

「クソッ!暗いせいで爪弾もろくに当てることができない」

ACT1を発動し、爪弾を連発させるようにしても、標的が闇の中を自由に動くことができるため、当たるはずがない。

なら、逃げればいいんだ。

 

「あれ?あの人間は逃げたのかー?」

暗闇は少しずつ小さくなり、ルーミアの中に消えていく。このとき、ルーミアはあの暗闇の中で何が起こっているのかわからなかった。

ジョニィがその爪の回転で地面を掘り、今ルーミアの真下で爪弾を放つタイミングを計っていることを。

「馬を残して逃げるなんて・・・。まさか木でも登ったのか?」

ルーミアが上を見たそのときをジョニィは待っていた。

「食らえッ!」

「チュミミーンッ!」

爪弾は真っ直ぐ穴の中から放たれると、ルーミアの横を紙一重で飛んでいき、上の木の枝に直撃する。

「外したッ!」

「危ない・・・もう少しでやられていた」

ルーミアはそう言い、また闇で覆うことにするが、

「そこまでにしておきなさい。」

何者かの声によって止められた。

 

頭上から彼女とは違う声が聞こえる。

紅白色の服を着た女。東洋人の巫女服というものなのか?

「霊夢・・・」

「異世界から来た人間ね・・・これで今月は二人目かしら」

この巫女は僕を見ると呆れた顔をする。確か今、霊夢とか言ったな。

「私は博麗 霊夢。この近くにある博麗神社の巫女よ。あなたは?」

「僕はジョニィ・ジョースター。ここには消えた仲間を探しに来た。」

「さっきから見てた感じ、あなた下半身不随なの?」

「昔の事故で。だが、馬があるから大丈夫だ」

僕はジャイロから教わった馬の乗り方で馬に乗る。

「・・・変わった乗り方をするのね」

「言われると思ったよ」

 

僕はこの紅白の巫女、霊夢と僕を食べようとした少女にジャイロを見かけなかったか、聞いてみることにした。

少女は知らないと言って、森の中に帰っていったが、霊夢は彼のことを知り、なおかつ、話していて、さらに戦ったと言っていた。

あまり結果を聞きたくなかったが、圧勝だったらしい。

「で、その子、かわいいわね。何て名前なの?」

霊夢は僕の手の上で未だに浮いている牙を指差す。

「こいつは牙。こんな小さくてかわいくても強いんだ」

「そうなの・・・で、ジャイロはどうするの?」

「今いる場所を知っていれば一番いいのだが」

「あれから、新聞とかで情報が幻想郷中に出回ったけど、未だに彼をこの世界から帰す方法が見つかっていないわ。それに他にも異世界から迷い混む人が多いらしいの」

「僕みたいなのが・・・」

僕達か話していると、森の奥、出口らしいところから誰かが歩いてきた。

ピンク色の髪の毛に、体に巻き付くような管と一つの目玉が特徴の少女だった。

服はボロボロ、髪はグシャグシャで襲われたような感じだった。

「霊夢・・・さん」

「さとり!どうしたの?こんなところで」

「助けてください・・・私の館が、地霊殿がもう」

霊夢はさとりという少女を抱き上げると、すぐに東の方向へ飛んでいく。

「追うぞ!スロー・ダンサーッ!」

馬に鞭をいれると、速度を出し、森を突っ切り草原を走る。

「どこにいくんだ!まだ話が終わっていない!」

「今はそれどころじゃないわ!」

馬を走らせて数分後。

霊夢についていくと、その先には大きな穴があった。まるで地獄にでも繋がっているのではないかと思うくらいのとても深そうな穴がぽっかりと空いていた。

「まさか、この下にあるのか!?」

「覚悟がないなら、来ないことね。私一人で十分だ」

「僕もいこう!ここまで来てしまった以上、無関係な人間じゃない!」

「・・・なら、馬から降りて、その穴目掛けて飛び込みなさい」

そう言い、霊夢は穴の中へ入っていった。

僕は深呼吸をすると、霊夢を追いかけるように穴へ飛び込んでいった。

 

 

その頃、地霊殿では・・・

「カーズ様」

「どうした?ワムウよ。どこか急いでいるようだな?こんな良い屋敷と、かわいらしいペットを手にいれた」

そう言うとカーズという男は猫耳の女の尻尾を握る。

「エシディシはどうした?随分、遅いな」

「今、この屋敷の近くの村を侵略しています。どうやら、一人の女ごときに手こずっているみたいです」

「なるほど・・・。ワムウよ、その戦いに加勢し、エシディシを連れ戻してこい」

「それは無理な話ね」

カーズの目の前の扉は粉々になり、目の前にはボロ雑巾のような体になったエシディシとそれの首部分を持つ、鬼のような女が立っていた。

金髪ロングに赤い角。肩と胸のはだけた着物を着ている。そして目は今にも襲いかかりそうな獣のような目をしていた。

「どうした!?どうしたというのだ!?エシディシがこんな女に負けただと!?」

カーズは動揺により、足が震える。

「おい、お前らがこの男のリーダーか?」

「このカーズが、この者に恐怖しているだと・・・」

「さぁ、里の風景を壊し、地底の仲間を痛みつけた分、返してもらおうか」

女の一歩一歩にカーズとワムウは少しずつ下がっていく。

女は深く息を吸うと、咆哮とともに息を、怒りを吐き出した。

咆哮は周りの壁やガラスはもろとも、エシディシやワムウまでも塵のように化してしまった。

カーズは一人の大広間に残るとペタンと座り込んでしまった。

「何て力だ・・・。この世界には私たちが眠っている間に、こんな兵器のような者を作り出してしまったのか」

カーズはそんなことを言うと、女の拳の前に歯が立たず、光になって消えてしまった。

 

「やっぱり、アンタか・・・星熊 勇儀」

霊夢達が来た頃にはもう彼らはいなくなり、勇儀はどこからか杯を出すと、酒を飲んでいた。

「ごめんね。奴等もろとも、館も壊しちゃった」



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幻想郷の二つの場所で

前回までのあらすじ。
柱の男、全滅。

ジョニィを幻想入りさせたものの、ジョニィの使い方(?)がわからない。
とりあえず、ジャイロに会わせようか。
しかし、ジャイロの方も・・・


その日の夜。

僕は彼女らと酒を交わした。勇儀は酒を強くすすめ、僕は倒れてしまった。

「もうおしまいかい?異世界の人間は弱いねぇ」

「アンタが強いのよ。こんな強い酒を人間に飲ませたら普通は死ぬわ」

「そうかい?私が特注で作らせた『神殺し』は人間には、ちとキツかったか」

机にドスンと置かれた一本の酒瓶は僕の目には何本にも見えた。

それほどに酔っている。少しずつ瞼が重くなり、僕は静かに眠ってしまった。

 

 

「寝たみたいだね、こいつ。」

「えぇ。今日のアンタ、怖かったよ。あんなムキムキの男三人を咆哮で殺しちゃうとか、本当に鬼だわ」

「鬼だからしかたないわ。アッハッハッハッ!」

勇儀は机をバンバン叩きながら、高らかに笑う。

「・・・その横で寝ている男。彼のことを頼めるかしら?」

一気に静かになる霊夢。勇儀もそれを察して笑いをやめる。

「ん?どうしたんだい?」

「名前はジョニィ・ジョースター。聞いた感じ、今この幻想郷で異変と戦っているジャイロを探しているらしい」

「へぇ、そうなの。でもこいつを私に任せるのとは関係ないんじゃないか?」

勇儀は杯を畳の上に置くと、あぐらから膝を立てた座り方に変え、外の景色を見た。

「そのジャイロは今、永遠亭にいる。けど、意識不明の重傷で今ジョニィが会えたとしても、帰れない」

「そのジャイロのためにも彼は近くにいた方が」

「確かにそれもあるわ。でも・・・」

「・・・まぁ色々とあるのか。いいよ、こいつには地霊殿を直すのに、ってこいつじゃ無理か。下半身不随だっけ?」

「まぁ、護衛くらいならできるんじゃない?」

二人は朝まで酒を飲んでいた。

次の日からジョニィは地霊殿の主である古明地 さとりの

護衛を任されることになるのだった。

 

 

その頃、ジャイロの方は・・・

「妖夢っ!あなたサイコキラーだったの!? 」

「ごめん、優曇華。・・・というより、マジシャンでてゐの役職盗ったら、サイコキラーだったの」

「むぅ、てゐ!」

「何か持ってそうな仕草してた妖夢を食べようとする優曇華が悪いうさ。やっぱり初心者うさね」

「もう!姫様は昼で死んじゃうし」

「ごめん、私はあまりこういうの・・・」

ジャイロの眠る横で人狼をやっていた。

しかも外に聞こえるくらいの大きな声を出して。

「それにしても師匠遅いうさね。もう帰ってきても」

「ただいま。」

噂をしていると永琳が帰ってきた。

「師匠!おかえりなさい!」

「あなたたち。まさか彼の近くで遊んでたとか言わないよね?外に聞こえてたけど」

全員が全員、あさっての方向を向き、口笛を吹く。

妖夢もこの行動に遅れて参加する。

「あれほどケガ人の近くで遊ばないと言ったよね?」

永琳は優曇華の耳を持つと、ドアの方向へ投げ飛ばす。

てゐはそれを見て優曇華の方へ向かうが、てゐもまた耳を掴まれる。

「ご、ごめん・・・うさ」

「今日、ここまでの道に落とし穴を掘ったのは・・・てゐよね?それに引っ掛かったって誰だと思う?」

「・・・(゜ロ゜)!」

てゐはそのまま、ボールでも投げられるかのように、永琳から見て東の壁に向かって投げられた。

「ウサギたちが今度こんなことをしたら、妖夢さんが注意してくださる?」

「は、はい」

小刻みに震える妖夢は心のなかで、優曇華から怖いという話を聞いて、私も幽々子さまも怖いと言ったが、想像していた以上だったと思い、今にも失禁しそうだった。

優曇華が注いでくれたお茶を飲んでいたら完全に漏れていた。

「永琳・・・この人は生きてるのか?」

「正直、死んでいるようなものよ。人里の人によると、彼は台風のような強い風をくらったらしい。しかも直撃」

「そうなの・・・。残念ね、外の世界から迎えが来たのにね」

「!・・・いつそんな話を聞いたの?」

「今日、夕方くらいに紫が来てね。ここに下半身不随の男が彼を目的に来るかもしれないって」

永琳はジャイロの胸元部分に手をあてる。心臓は・・・もう動いていなかった。

「なら、その人が来るまでに彼を治しましょう。あの守矢にでも頼めば、奇跡の力でなんとか」

「そうね。明日にでも優曇華に頼んで、早苗のところに行ってきてもらいましょう。ここ最近、あの二人仲いいみたいだし」

 

 

次の日、ジョニィは地霊殿に向かっていた。

 

僕は酔いつぶれてしまったのか、昨日の記憶が全くない。どうして、こんなところにいるのかもわからないくらいに・・・。

わかっていることは、ジャイロを見つけ出し、この世界から脱け出すことだ。

とりあえず、僕は勇儀に地霊殿に行くように言われたため、行くことにした。

 

「その地霊殿の主ってどんな方なんですか?」

「まぁ、難しいやつだが、とてもおもしろいやつだ。たぶんな」

「たぶんって!・・・まぁ行ってみます」

 

少し馬を走らせると、地霊殿に着いた。

大きな豪邸なのだろうが、少し壊れていた。何者かに襲われたかのようだった。

(もちろん、ジョニィは柱の男がいたことすら覚えていない)

「あなたはジョニィさんですね?」

「え?あなたは・・・」

豪邸の大きな扉を開けて現れたのは一人の少女だった。

・・・こんな少女がこの屋敷の主人なわけないな。

「・・・なるほど、でも私がこの地霊殿の主人、古明地 さとりです」

「どういうことだ!?まさか、心が読まれたのか?」

「はい。私は心を読むことのできるスタンドを持っています」

「スタンド!・・・この世界にもスタンド使いがいるのか!」

「・・・冗談ですよ。この世界にスタンドはいません。ですが、その能力はあります」

少女は地霊殿の中へ姿を消す。すると、中から誰も座っていない車イスを持ってきた。

「あなたは下半身附随で動けないんですよね?馬をこの中に入れさせるわけにはいかないので、車イスで移動してください」

 

屋敷の中はとても綺麗で、窓にはステンドグラスが張られていた。

廊下は広く、そして長い。車イスの僕からすれば、とても疲れる道だった。

「ジョニィさんのことは、勇儀から聞いています。ジャイロさんを探しているのですよね?」

「あぁ。ジャイロの居場所を知っているのか?」

「そこまでは知りません。ですが、ここには来ていないことは確かです」

僕はさとりに連れられて、部屋に入る。

壁に本棚があり、そこは大量の本でうまっている。

たぶん、彼女の書斎だろう。

「一つ、取引をしませんか?」

「取引とは?」

「三日間、私のペットになってください」

「・・・どういうことだ?」

ペット?ペットというのは、いったい・・・

「ペットというよりは、ボディーガードって感じですかね?これから三日間、私を守ってください。報酬は彼の居場所を教えます」

「本当か?」

「ただし、ちゃんと仕事をこなせたらの話です。もしも、この書斎を探ったり、私を守れなかったら、あなたを帰すつもりはありません」

「わかった。その代わり、ちゃんと情報はもらうぞ」

「・・・ちゃんと仕事がこなせたら・・・ね」

さとりは窓の方を向く。

一瞬、見えた表情はどこか笑っているようだった。

「さとり様!」

書斎のドアが勢いよく開けられる。

ドアから猫耳の少女が息を切らせ、勢いよく入ってきた。

「お燐!用があるときはノックをしなさいといったでしょう!」

「大変です!屋敷の前に馬がいます!しかも、屋敷前の芝を食べてます!」

「僕のスローダンサーだ!」

「あの初老の馬ね・・・。お燐!それくらいならいいわ。芝くらい食べさせなさい」

さとりは椅子に座ると、ずっしりとした机の上に置かれた本を開く。

「あの・・・僕は」

「そうね・・・その爪でチーズでも削ってもらおうかしら?」

「わかった。それじゃあ」

「・・・冗談よ。あなたを試したかっただけ。とりあえず、今日は仕事をしなくていいわ。明日から頼むわね」

この人、いったい何者なんだ?いくら心を読むことができるからといって、僕の能力を知ってるとは限らない。まさか、この人は僕についてたくさんの情報を持っているのか?

 

そんなことを考えながら、僕は書斎から出た。

 

 



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古明地さとり

前回までのあらすじ。
ジョニィは地霊殿のボディーガードをすることになった。
そして、ジョニィは最初に情報を集めることにした。


地霊殿の外。

とりあえず、僕は古明地 さとりについての情報を集めることにした。どう考えても彼女は怪しすぎる。

心を読むことができるようだが、ちょっとしたボケでジャイロに言ったことを知っているなんて。どう考えてもおかしい。記憶を見ることまでは無理だろう。

僕は入り口付近に車イスを置くと、スローダンサーを呼び、馬に乗った。

「とりあえず人里にでも行ってみるか。そこなら情報の一つや二つはあるはずだ」

僕は馬を走らせた。・・・屋敷の窓からその姿を彼女が見ていることも知らずに。

 

「さとり様ですか?そうね・・・ペットに優しいとか聞いたわ。名前はお燐とお空だとか」

人里に入ってすぐのところにある茶屋の前にいる女性に彼女について聞いてみた。

お燐は書斎に入ってきた猫耳の少女だろう。

「お空、というのは」

「確か鳥の名前だったかしら。お燐はよく町に来てるのを見るけど、お空は噂でしか聞いたことないわね」

「情報、ありがとう。この世界のお金があれば、何か頼んでいたが」

「その言い方・・・。もしかして、あなたも外の世界から来た人ね?」

「あなたもということは僕以外にも外の世界からきた人間がいるのか?名前を知っていたら教えてもらいたい」

「確か・・・ジャイロさんだったっけな」

「!」

僕は詳しく彼女に聞く。

ジャイロはどこにいる、今ジャイロはどんな状況なのか・・・僕はさとりがどんなやつなのか思いながらも、とにかくジャイロが心配だった。

「ジャイロさんは確か・・・地上で異変と戦ってると思うわ。この前の新聞に出ていたし」

「その新聞を見せてくれないか?」

彼女は店の奥に行くと、何枚か新聞を持ってきた。

新聞の見出しにはジャイロが写っていた。

「生きているのか、ジャイロは」

「その新聞、よかったらあげましょうか?」

「ありがとう。あとでこの世界のお金が入ったら必ずお礼しにくるよ」

そう言うと、僕はその店から消えた。

 

「・・・とりあえず、あの偽の新聞は渡しましたよ。さとり様」

「ご苦労様。さすがこの里一の茶屋ね、その店員もまた優秀。ジョニィさんの考え的にここに来ることはわかっていたわ」

茶屋の奥から現れたのは、今さっきまで地霊殿にいたはずのさとりだった。

最初から彼女とこの茶屋は繋がっていたらしい。

「やっぱり人間の心を読むのは楽しいわ。特に彼のような純粋に生きる人間の心は・・・ね」

「本当に策士ですね。ここでジャイロさんの情報を知らせることで、彼に希望を見せて、ボディーガードとしての仕事をさせる・・・ということですか?」

「えぇ。また、柱の男が来るかもしれないしね」

「柱の・・・何ですか?」

「いや、あなたには関係ないわね」

さとりは団子とお茶の分の金を机の上に置くと、茶屋から出た。

「それとあなた、私の妹を見なかった?」

「見てませんが。」

「そう・・・今日はありがとうね。また来るわ」

さとりは店員に背中を見せると、ジョニィの行った方向へ歩いていった。

店員はそれを見送ると、皿と湯のみを片付ける。

「ねぇ、ここにお姉ちゃん来たよね?」

「!・・・あなたは」

 

人里を少し離れた場所にある静かな森のなか。

ジョニィは考えていた。

さとりのこれといった情報はなく、今わかっているのは、二匹のペットがいること、妹がいること、読書家だということ、それくらいだ。

そしてあのあと、ジャイロの話を全く聞かない。

ジャイロのことを知っていたのはどうやら、あの看板娘くらいなのだろうか。

ジョニィが馬に乗っていると、見たことのない男が話しかけてきた。

 

「そこの旅のもの」

杖をつき、目を閉じている。そして、服装が他の人間と違うものだった。

赤と黒のボーダー柄のベストに白のタンクトップ。その上に暑そうなマントを羽織り、頭には白いねじり巻いたバンダナをしている。

どうみても怪しい。

「俺の名はンドゥール。地霊殿にようがあるのだが、場所を知っているか?」

「・・・」

普通なら教えるが、今はボディーガードを頼まれている。さすがにこんなにも怪しければ、理由を聞くのが普通だろう。

「どうしてそこに?」

「?・・・そこの主人に用があってな」

「一つ引っ掛かる部分があるんだ。旅のものという部分。もしも、旅のものなら地霊殿の場所を知らないという確率がある。むしろ、そっちの方が高い。なら、どうして旅のものにそれを聞く?」

ンドゥールは唇を噛むと、僕から少し離れる。

「なるほど。面白いことを言うな・・・そういえば、理由を聞きたがっていたな。それはそこの主人を倒すためだ!」

ンドゥールは杖を地面に向かって突く。すると、杖の地面に当たった部分から、水でできた手のようなものが、僕に向かって飛んできた。

「タスクッ!」

爪弾は僕の指先から、水の手を相殺するように飛んでいく。だが、水の手はそれを弾くと、僕の腕の横を飛んでいった。

「うぐっ!」

右腕に切り裂かれたような痕が残る。

どうやら、あの手にはそれほどの威力があるらしい。

「お前の動きは手に取るようにわかる!目が不自由だが、耳で相手の場所から、その心情までわかるぞ!今の攻撃で身体を傾けたな?」

僕は体勢を維持できずに落馬する。

地面に草が生えていたから反発材になって助かった。

あの手がスタンドか。まさか、ジャイロもこんなやつと戦っているのか?

「今、落馬して茂みに落ちたようだな!だが、その程度じゃ身を守ることはできない!」

ゲブ神の水の手はその鋭い爪で草むらを切り裂いて、僕の目の前へ現れた。

この手を倒すことは不可能に近い。今は本体を狙わないと!

「今、こちらにその『タスク』とやらを向けたな?音の感じ、銃弾のようなものを飛ばすスタンドみたいだな」

水の手は僕の前でUターンすると、ンドゥールの前で盾を作った。

ンドゥールは座り、耳に杖を当てている。

「そんな盾、突き破ってやる!タスク!」

「チュミミミーンッ!」

タスクは進化し、ACT.2になり、爪弾は強化される!

「その鳴き声がタスクか」

水の手は盾を作りながらも、僕の方へ飛んできた。

爪弾は水の手をつ貫くと、盾をも貫いてンドゥールの耳を貫いた。

「ぐぉっ!」

さっきまで杖を耳に当てることで、僕の足音や、タスクの振動音を聞いていた。

こいつの武器はスタンドと『耳』だ!

「今ので耳が!」

「タスク!」

次の爪弾はンドゥールの杖を弾き飛ばす。

「やったぞ!」

杖のなくなったンドゥールは弾き飛ばされた勢いで、後ろに倒れ、あわてて杖を探し始めた。

「もう終わりだ、ンドゥール!」

「あぁ、終わりみたいだな」

次の瞬間、水の手はンドゥールの頭を貫いた。

「何をしているんだ!なぜ、自身を殺す!」

「死ぬのは怖くない。しかしあの人に見捨てられ、殺されるのは嫌だ。」

「何を言ってるんだ・・・」

「悪には、悪の救世主が、必要、なんだ・・・フフフ」

 

ンドゥールは金色の光になって消えてしまった。

あのときみたいに・・・。

「おい、アンタ。こんなところで何してんだ?」

そこに調度通りかかったのは勇儀だった。

勇儀はどこかへ行ってきたのか、少し大きな紙袋を抱えていた。

「おい!右腕のそんな大きい傷!早く、帰って消毒しないと」

「勇儀。この里で一番偉いのは誰だ?」

「んー。たぶんさとりじゃないか?」

そのとき、確信した。

 

さとりが全てを握っていると・・・

 



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鍵を探せ

前の投稿から少し空きました。
理由はただ一つ。新作をどうするか迷っているだけです。
ただ『覚悟』ができないだけです。
勇気が足りないだけです。



「あら、おかえりなさい。どこに行ってたのかしら?」

帰ってくると、すぐに古明地 さとりが目に入った。

料理をほったらかして来たのか、エプロン姿をしている。もちろん、こちらを見る目のアクセサリー(?)は取ろうとしない。

「ちょっと外に」

どうせ、情報を集めに外に行っていたことは、能力でお見通しだろうが、口には出さないことにした。

「今日は私も料理したから、客人には振る舞わないとねぇ」

「さとり様!オムライスが焦げそうです!」

キッチンらしきところから、お燐が走ってくる。

どうやら、二人で作っていたらしい。

「え!わかった!それじゃ、ディナーまで待っててね」

 

車イスに乗ると、一階をゆっくりと走る。

長い廊下は腕に来そうだ。

少し歩いたところで横にポツンと存在する重たそうな扉を見つけた。

「ん?何だ、この部屋・・・」

Library。図書館か。ここなら、この地霊殿の情報もあるかもしれない。

僕は開けようとするが、鍵がかかっているせいか、車イスが後ろに下がってしまう。

「さすがに無理か」

僕はそこから離れ、さらに奥へと進んでいく。

「そこにいるのは誰?」

後ろから声が聞こえる。下にいた二人とは違う声。

もしかして、あの看板娘が言っていた妹か?

僕は後ろを見る。そこには大きな羽の生えた女がこちらに多角形の筒のようなものを向けている。

羽・・・あれがお空か。

「昨日、ここにやってきて、さとりに・・・いや、さとり様に助けてもらった。それで、この中を歩っていたら道に迷ってしまった」

「・・・なるほど。あ、さとり様が言ってたな~」

お空は筒のようなものを、下に向けると車イスの手押しハンドルを持つ。

「そろそろ、夕食みたいだから食堂まで連れていくよ。よろしくね、えっと名前は・・・」

「ジョニィ・ジョースター。ジョニィでいいよ」

「わかった。私は霊烏路 空。みんなお空って呼ぶからお空でいいよ♪」

お空は手押しハンドルを持って、僕を押してくれた。

帰る途中に図書館であろう扉を指差し、お空に聞いた。

「この扉。開かないのか?」

「どうして?」

「いや、図書館なら僕の好きな本あるんじゃないかなって。僕は超が付くほどの読書家で」

なんて、嘘をつけば通してくれるのではないか?さとり以外、心を読む能力は持っていないであろう。

「なるほど。たぶん開いてないんじゃないかな。私やお燐に遊び場に使われるのが嫌だから。もしもっていうなら、私が頼むよ?」

「いや、そこまでしなくてもいいよ。それに僕でも頼むことはできるし」

僕はそう言い、そこを後にする。

そこにある書類や書籍がとても大事なものだということに気づかずに・・・。

「私が押すから、一人で行かないで」

無意識に車イスを進めると、お空がそう言って、追いかけてくる。

「車イスくらいなら、全然押せるよ。片手こんなんだけど、というより外せるし」

お空は手につけた多角形の筒を外すと、階段を上がっていった。

彼女らの部屋は二階にあるようで、最初にさとりの書斎に行った帰りにそれを見てきたため、それを知っていた。

「お待たせー!」

元気な姿を見せると、お空はすぐに僕の車イスを押し始める。

「地霊殿の案内とかしたいけど、さとり様じゃないと入れない場所とかあるし・・・だがら、ごめんね?」

「あぁ、別にいいよ。僕もそこまで知りたいわけではないしさ」

僕とお空が話していると、奥のキッチンの扉を強く開け、さとりが現れた。そしてお空のところに来て、

「お空!あなた、ジョニィさんに迷惑かけてない?迷惑かけないようにね」

と一言、注意する。

お空も筒の外れた右手で敬礼をすると、すぐに僕の車イスのハンドルに手を乗せる。

「さ、食堂に行こう!」

「一つ聞きたいんだが、」

ここで僕は思いきって聞くことにした。

「さとりの妹ってどこにいるかわかるか?」

お空は少し間を開けると「知らない」と言う。

その前に、知っていればさとりに話すだろう。

 

夕飯を食べたあと、僕はさとりから一番風呂を勧められた。

風呂場はやはり、大きな館らしい広さで、全てのものが不備なく揃っていた。

湯の温度もちょうどいい。

今日町中を聞き回った結果、ジャイロの情報は全くない。さとりの情報もこれといい、気になったものはない。ただ色々と話に出ていた彼女の妹の話。どうやら、この館に最近は帰っていないらしい。

どこにいったか、さとりもわからず、ただ帰ってきて欲しいと願っているようだ。

「明日は彼女の妹を探すことに専念してみるか。あと、この館の情報収集だな」

僕は風呂から出ると、この世界の服であろう服に着替える。

とても地味で、僕の着ていたものとは全く違うが、どこかしっくりくるものがある・・・そんな服だった。

脱衣所から出て少しすると、お空が走ってきた。

僕の車イスを押す担当は彼女なのだろう。

「大丈夫だ。少しくらいなら」

「やっぱり辛いよね。足が不自由だと」

「・・・まぁ、足がちゃんと動いたときよりはな」

「・・・この三日間、私が手伝うよ!」

お空はそう言い、僕に飛び付く。

「少しでも力になれることがあったら、私が手伝う!何でも言って!」

「お空?」

お空の声を聞いたのか、さとりがこっちに走ってきた。

さとりのその声は少し震えていた。

「さとり様!ちょっとの間、この人のお手伝いをしてもいいですか?」

「お空。彼がどうして、そんな身体になったか理由は聞いた?不慮の事故とかそんなんじゃない。彼のせいで彼はそんな身体になったの。他人の努力を踏みにじったせいで、その他人に銃で撃たれてそうなったの。そんな悪党のような人間なの」

それを聞き、僕はお空の前に出る。

「確かに・・・確かに僕は」

「あなたに何も言う権利はない!」

さとりはそう言い、僕を車イスごと突き飛ばすとお空の手を掴み、館の奥へ連れていってしまう。

「ま、待てッ!」

車イスから投げ捨てられた僕はすぐに車イスに乗るが、タイヤが壊れたのか進みそうにない。

ジャイロ、こんなときジャイロならどうするんだ・・・

 

 

「優曇華、私に用って?」

永遠亭に連れこられた緑髪の巫女は優曇華と共に部屋にはいる。そこにはジャイロがいた。もう何日間も寝たままで、起きそうにない。

「早苗さん!この人をその奇跡の力で治して」

「この人って!ここ最近、人里で話題になってる!確か・・・ジャイロさんだよね?・・・本当に幻想入りしてたんだ。」

早苗はジャイロの胸の辺りを触る。・・・心音はない。

「なるほど、だから私に・・・」

「お願い!師匠や、私達ではダメなの!早苗さんの力なら!」

「・・・わかったわ。でも、その前に・・・外にいる鳥を何とかしないとかもね」

優曇華はそれを聞いて、すぐに外に出る。

そこには赤いスカーフを巻いたハヤブサのような鳥が飛んでいた。

鳥の名はペット・ショップ。この鳥もまた、スタンド使いだ。

「優曇華!少し時間稼ぎを頼む!その間に私の能力で」

「わかった!」

優曇華は鳥に幻覚を見せようとするが、鳥はさらに上昇する。優曇華の能力の範囲外のため、幻覚は通じない。

優曇華が、ジャイロの方が気になり、少し後ろを見た次の瞬間、ペット・ショップはつららのような氷の塊を永遠亭に向かって放つ。

つららは障子や壁を貫き、床で氷始める。

優曇華の弾幕は全くもって歯がたたない。そしてつららは彼女を直撃する。

鳥はそれを見ると、勝利を確信し、大きな鳴き声をあげると最後のとどめを差すように、大きなつららを優曇華に向かって放つ。

(こんな鳥に・・・負けるなんて・・・)

優曇華が諦めた次の瞬間、

 

「黄金の回転ッ!」

 

部屋の中から見覚えのある鉄球が放たれ、つららを壊した後に鳥のくちばしに当たった。

「ギャース!」

鳥は大きな声で鳴くと、竹林の方へ落ちていった。

「あの大男の必殺技をくらったときはどうなるかと思ったが、こんなところで死んでるわけにはいかないみたいだな」

部屋から現れたのは、この物語の主人公、ジャイロだった。

 

ジャイロは早苗の力で甦ったのだ!



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天国と地獄

今回は早めに書き終わった。
それだけです。
何か休日もあってか、とても早く終わりました。

ジャイロは早苗の奇跡の力により復活する。
その前、ジャイロは地獄にいた。
そこで、これまで罪から判決を受けることになる。



俺は闇のなかをずっと歩いていた。

先は暗く、地面には赤い花が光り輝いている。これは・・・昔に習った中に出てきた彼岸花というやつか?

俺はただ、その空間を歩くことしかできなかった。

 

少し歩くと、川のせせらぎが聞こえてくきた。

そこに人影が見える・・・誰だ?

「お?次運ぶのはお前さんかい?」

赤い髪の女。服はこの世界の着物に近い。手には大きな鎌を握り、こちらを見るとすぐに声をかけてきた。

彼女の後ろには数人が乗るので一杯になりそうな小さな船が川岸に引っ掛かっていた。

「ここはどこなんだ?それにお前は」

「私は小野塚 小町。そしてここは地獄だ」

俺はなぜか納得してしまった。

俺が地獄に来てしまった理由を・・・。あれだけの人間をこの『罪を償わせる鉄球』で殺してきたのだ。

この長旅で、たくさんの人間の人生を狂わせた。それは敵だけではない。ジョニィもだ。もしあのとき、ジョニィが鉄球を触らなければ・・・。

「連れてってくれ、地獄に。今度は俺が罪を償わなければならない」

「待ってくれ。お前さん一人乗せてもなぁ?ちょっと話そうじゃあないか」

 

小町はどうやら、暇潰しに地獄に来た死者の霊と話すのが好きで、またその死者の話を聞くことで、閻魔様である四季というものに死者の情報を伝えるという仕事をしているらしい。

「なるほど、つまりその鉄球が人を殺してきたと」

「あぁ。この鉄球は元々、罪人を殺すためのものだ。この回転で罪人を楽にさせるというのが仕事だった」

「つまり、私たちの先に罪を下すものなんだ」

小町は船に乗ると、川岸の杭から紐をほどく。

「どうやら、お前さん以外の霊が来たようだ」

俺はそれを聞き、後ろを振り返る。そこには白装束の男女数名が歩いてきていた。

「普通、地獄ってのはこういう格好でくるもんだ。そんな服装で来たのはとてもおかしいことなんだよね。まぁ乗りな、そんなこと言っててもね」

俺は船に乗る。そして先頭に近いところに座った。

船に乗っている間、俺はとても静かだったという。

 

閻魔のところに行くのは、とても簡単なもので判決もすぐに出るという。

四季という閻魔の能力は白黒をはっきりするもので、裁判官の能力とすれば、とてもすぱらしいものだった。

もしも、マルコがこんな人間に裁判をされていれば、死刑なんて刑罰は出なかっただろう。

「私がお前の判決をするものの四季映姫だ。すぐにでも決めたいものだが、とても面倒くさいことになってな。普通なら黒と言いたいが、幻想郷のとある偉い人から彼の魂を返してほしいなんて言われたからな」

「・・・まさか」

真っ先に出てきたのは紫だった。

「お前にはまだやることがたくさんあるらしいからな。まぁ精々、ここにまた来ないことだな」

四季の横にいた小町は四季の指示で、俺を地獄から出すように働いた。

また三途の川を戻り、彼岸花咲く暗い道を通ると、そこには大きな門がズシンと構えていた。

「よかったな、お前さん。奇跡ってものもあるんだねぇ。ま、地上で頑張りな」

「おう、少しの間だがありがとな」

俺は重たい門の扉を開けると、その先の光へ向かって歩き始めた。

そして・・・

気がつくと、永遠亭のベッドの上でそこの緑髪の巫女の顔が見えたということだ。

 

「あの大男はどうした?」

「確か、もう退治されたみたいですよ。確か、地底にいる鬼人に」

緑髪の巫女はそう言い、ベッド近くの机に置かれた俺の帽子を手渡す。

「もう出るのですか?」

「あぁ。どうやら、ジョニィがこの世界に来たらしいからな」

「へぇー。ジョニィさんも」

「?・・・知ったような口を聞くな?何か知っているのか?」

「その前に、私は東風谷 早苗。早苗でいいですよ」

「俺は・・・言わなくてもわかるか。で、ジョニィの居場所を知ってるのか?」

「詳しくは知りませんが。恐らく、地底のどこかにでも、迷い混んだかと思います」

「そこまで連れていってくれないか?」

「んー。無理ですかね」

緑髪は外へ出ると、持っていた棒のようなもので北西の方角を差す。

何かあるのかと、俺はその方向を見るが、その先に見えるのは竹ばかりで、他は全く見えない。

「あっちの方向で何か起こりそうですね。確か、その方向にあるのは・・・白玉楼かな?」

「妖夢に何か起こってるの!?」

傷だらけの優曇華は立ち上がると、早苗にこえをあらげ、問いかける。その姿からその妖夢というのはとても大事な人だというのがわかった。

「落ち着いてください。ただ、起こりそうと言っただけです」

「行きましょう、ジャイロさん!白玉楼に!そこまでの道は私が教えます!」

ジャイロは支度を済ませると、馬に乗り、すぐに永遠亭を出た。

「やっぱり本物を生で見るのはすごいな。紫さんを初めて見たときと同じ感じだ」

 

 

その頃、白玉楼では・・・

「あの・・・どちらさまで?」

「君は、天国に行きたいと思わないかね?」

「はぁ・・・」

妖夢のところに、一人の男が現れた。

白髪の坊主頭に十字架のような形の描かれた服。

「えっと、変な宗教の勧誘ならいりません。帰ってください」

「待ってくれ。ここは一番、天国に近い場所だと聞いた」

妖夢が門を閉めようとした次の瞬間、男はその門に指を挟む。

「だ、大丈夫ですか!?」

「気にすることはない。このくらいの痛み、DIOに比べてみれば、何てことはない」

「ごめんなさい!すぐに手当てしますので、中に入ってください」

「ありがとう。白い髪の少女」

男は不適な笑みを浮かべる。そして、この男もまた異世界から紛れ込んだ悪だった。

「私の名はエンリコ・プッチ。君は?」

「私は魂魄 妖夢です。あ、すぐに手当てしますから、ちょっとここで待っててください」

そう言い、妖夢はプッチを縁側に座らせると、屋敷の中に入っていった。

妖夢がプッチから離れると同時くらいに、屋敷の奥から幽々子がやってきて、プッチの横に座った。

「どこから来たかわかりませんが、あなたからは嫌な感じがするわ。あなたはここに来てはいけない人物ね」

「ふふふ。面白いことをいいますね」

プッチはそこから立ち上がる。

どうやら幽々子はプッチの持つスタンドのオーラを見抜いていたらしい。

「人と動物の違いとは、何か・・・?わかりますか?」

プッチは手を大きく広げると、

「それは天国へ行きたいと願うことだ!」

そう言い、スタンドを出した。スタンド、ホワイトスネイクの拳は油断した幽々子を直撃する。

そして幽々子の頭から溢れた記憶のDISCをプッチは拾う。

「これが、君の記憶か。貰っておこう」

「幽々子様!」

それを見ていた妖夢は幽々子に近づく。気絶しているのか、幽々子は妖夢の声で起きなかった。

「プッチさん、それを返してください!」

妖夢は鞘から刀を抜く。

「今、幽々子様の頭から出たのはわかりました。それは大事なものだというのもわかりました。今すぐ返してください」

プッチは刀を握る妖夢に少しずつ近づいていく。

プッチから放たれるどす黒い悪のオーラは妖夢を圧倒し、どんどん押し出される。

負けじとオーラを切ろうとするが、切れそうにない。

「このスタンドは進化している。ホワイトスネイクの能力に加え、CーMOONの能力も所得している。とてもすぱらしいものだ」

プッチのスタンドは左拳で妖夢を殴ろうとするが、妖夢はそれを刀で弾こうとする。

次の瞬間、刀は裏返されてしまう。刀を裏返すというのもおかしいが、現にそうなっているのだ。

それは言葉に表せない、異形なものになっていた。

「パンチは一発だけだ!」

妖夢が呆気にとられて刀を見ていると、プッチは妖夢の目の前から消え、妖夢を後ろから右拳で殴る。

「ホワイトスネイク、CーMOONの能力だけでなく、メイドイン・ヘブンの能力も持っているのか。格好はホワイトスネイクその物だが、この能力の多さ。まさしく、『完全体』だッ!」

「誰か・・・助けて・・・」

妖夢は力尽きてしまった。

そして屋敷の庭園に響くのは、妖夢の持っていた刀の折れた音だった。

 

 



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二人の行く先に

本当に不定期すぎる・・・なんとかしないと。とか思っても、パッと内容が出てこないから・・・。

まず、完全体白蛇をどうやって攻略するのか。そこからだな。


―私は悩んでいた。

 

紫さんからの依頼は、ジョニィの心を強くすること。そんなんなら命蓮寺にでも頼んで座禅でもさせればいいじゃないか。

私には無理だ。確かに人の心を読むことで、トラウマを再生し、精神的なダメージを与えることが可能だ。

しかし、そんなんでいいのだろうか。

ジョニィはこのあと、どんどん成長し、最後の方には最初にあったあの悪役感は完全に消える。

彼の出てくるSBRを読んでいる私からすると、幻想郷に来なくても、ジョニィは成長できるのだ。

むしろ、私はジョニィに「ジャイロが使っている鉄球は楕円球になってしまうため、大頭領と戦うときはまず、それを報告しよう」と言えば、万事解決・・・のはずだ。

私は読書家である。特にジョジョは最初から見ていて、何度も今出ている巻まで読破している。

本はこの書斎にないが、図書館に全て置かれている。

図書館の扉は硬く封鎖されていて、私の声でしか開かない、そんな仕組みになっている。

ちなみに、合い言葉は・・・こんなところで言っても意味ないか。

 

私が考えていると、ジョニィから書斎に現れた。

「お前は、何を知っているんだ?」

すぐさまジョニィの心を読む。・・・考えていることはそのままか。

「あなたのことは紫さんから聞いているわ」

「それにしてはやけに知りすぎじゃあないか?」

また心を読む。

『お前はその心を読む能力で、俺の心を探って俺の情報を収集しているのだろう?』

なんてことを言っている。まぁ半分正解ってところね。

「あなたが、心のなかで考えていることで半分正解ね」

ジョニィはその発言に表情を変えた。怒っているのか、顔が少し強ばっている。

怒る場面なんてあったかな?

「あなたは、あの世界に戻ってある人間と死闘する、そしてそこで大切なものを失うわ」

「何を言っているんだ・・・」

ジョニィは震えている。心のなかで色々な感情が交差するのがすぐに読めた。

『彼女の言う、大切なものとは何だ?まさか・・・』

「もう就寝時間だわ。明日から仕事をしてもらうことになるから、もう寝てください」

ジョニィが真実にあと一歩で届きそうになったとき、私は彼を部屋から出す。

これ以上、彼が真実を知ってほしくないから。

ただ忠告はした。私ができる『精一杯』なのだから。

 

 

重たい扉がしまる。

さとりの最後に言ったこと。あれは僕の肝っ玉を冷やした。怖い話をいいところで止められたくらいに、オチが見れないホラー小説のような気分だ。どこか怖いことを想像してしまう。

彼女に未来を見る能力でもあるのだろうか。やけに、自信ありげだった。

まるで、『僕』という人生の先を知っている、それくらいの態度だった。

心を読む能力が未来をも読むことができるなんてことはない・・・だろう。

ただ、その彼女のいう大切なものが、『ジャイロ』でないことを願う。ただ、願うだけだ。

「どうしたの?ジョニィさん?こんなところに」

右耳に声が入ってくる。右にはお空が立っていた。お空は左手に本を持っている。

「そうだ!あのね、この本を読んでほしいんだ」

「本?」

渡された本は子供の読むような絵本だった。

カラフルな絵の中にいる一人の女の子が特徴的な表紙だった。

名前は・・・何だ?

新聞を見たときも少し苦戦したが、どうやらこの世界の人間の描いたものは異世界からきた人間には読めないらしい。

そのせいか、字がぼやけて見える。簡単な平仮名さえも読めない。

「どうやら、この世界の人間にしか読めないみたいだ。あのなんだっけ・・・お燐に読んでもらえば」

お空は僕の言葉に首を横に振る。

「お燐は友達と飲みにいった」

さとりからすると、夜くらいは休みをあげようという心なのだろう。

お空はお辞儀をすると、暗い館の奥へ消えていった。

その後ろ姿はどこか悲しく見えた。

「お空はここ最近まで仕事詰めで私たちくらいしか会話する相手がいなかったの」

さとりが部屋から出てきて、一言囁く。

「この館は元々灼熱地獄だった場所に建ってるの。そしてお空にはこの館の下にある、炎の火力調整をしてもらってるの。時には全くそこから出れないときもあるわ。だから、外に出たときはあーやって、本を読んでとか、遊ぼうとか言ってくるの」

僕はそれを聞き、車イスでお空のところへ行こうとするが、さとりがハンドルを握りしめ、車イスを止めた。

「あなたが言っても、何も生まれない。むしろ、お空を怒らせるだけね」

「確かに本を読むことはできないし、まともに遊ぶことも不可能だが、話を聞いてあげるくらいなら僕でもできるはずだ!」

さとりはそれを聞くと、静かにハンドルから手を離した。

「・・・どうなっても、知らないわ」

そしてさとりは部屋に戻っていった。

 

「お空?入っていいか?」

僕はお空の部屋の扉をノックする。小さな声で「いいよ」と聞こえた。

部屋には人形や絵本が床に置かれていて、壁はこの館に使われているような静かなものではなく、ポップなかわいい模様が一面に描かれていた。

そして、お空はその部屋の端の方に置かれたベッドの上に寝ていた。

「その・・・何か僕にできることはないかな?気を使わなくていい。何でも言ってくれ!」

お空は起き上がると、車イスから僕を無理矢理降ろした。

そして僕を抱き締めた。彼女の体温は普通の人間のものとは格段に違うもので、まるで熱湯でもかけられてるような、今にも火傷しそうなくらいだった。

「少しの間、こうしてていい?」

僕にはわかった。彼女の涙が。

 

 

馬はさらに加速する。・・・というより、周りの世界が加速しているように感じた。

周りの景色は何周も四季を繰り返し、葉は紅葉したあと、枯れて、また新たな花を咲かせる。そしてまた・・・と何度も繰り返している。

「これは・・・新たな異変ッ!」

「おいおい、ヤバイんじゃないか?」

俺は枯れて倒れてきた木を、鉄球で砕き、道を作る。

鉄球にかかる回転もまた、加速しているのか、いつもと威力が桁違いに跳ね上がっている。

「おい!何だあれは!」

枯れた木の枝の先から見えた不穏な雰囲気を漂わせる一つの屋敷。

さらにその周りは時がさらに速くなっている。

四季の変わりも普通の十倍以上の速さで変わっていく。

「ッ!?」

馬は足を止める。どうやら、疲れてしまったようだ。

階段前で息を切らし、倒れてしまう。

「馬はこれ以上走らすことはできない・・・。ありがとうな、ここまで連れてきてくれて」

馬の首元を撫でると、階段を一段また一段と登る。

「優曇華。この先にその妖夢ってのがいるのか?」

「えぇ。でも・・・」

優曇華は拳を握る。

この目の前に広がる暗い空を見ると、その妖夢は死んでいるかもしれない。そう考えてしまっても仕方ない。

「助けにいくぞ」

俺は両手に鉄球を握る。今ある鉄球はこの二つのみ・・・正直、勝てる気がしないが、戦うしかない。

優曇華の親友のためにも、俺があの世界に帰るためにも・・・。

階段を登り終え、重たい扉を蹴り開ける。

広い庭園の先、白髪の少女が刀をかまえている。頭や腕からは血を流し、刀は先の方が変な形になっていた。

正直、戦うことができるというだけですごいことだ。

「妖夢ッ!」

優曇華は妖夢の姿を見て、妖夢の名を呼ぶ。

妖夢は「こっちに来るな」という視線を向け、首を横にふる。

それは優曇華だけでなく、俺にも言っているようだ。

「どこを見ている?」

妖夢の前に立つ、人型のスタンドを出す男は妖夢を後ろの屋敷まで蹴り飛ばす。

そして脅威の速さで近づくと、左拳を振りかざす。

妖夢は畳をゴロゴロと転がって、その拳を避ける。

畳は裏表反対になり、妖夢を上に突き飛ばし、天井に叩きつける。

「彼女もまた、天国に行ける存在だ。ありがたく思ってくれ」

男のスタンドが右手を彼女の頭の上に置いた瞬間、俺は危ないと思い、鉄球をスタンドの右手目掛けて投げる。

鉄球はスタンドの手の甲を砕き、俺の手のひらに戻ってくる。そして男は手の甲から血を流す。

「これが彼を倒した鉄球か・・・」

プッチはそう言い、俺の方を睨んだ。

それは狙いが変わった瞬間にだった・・・

 



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プッチの願い

久しぶりの投稿。
急ぎの投稿だったため、あまり確認していません。
誤りがあれば、すぐに言ってください。

やっとプッチを倒す方法が思い付いたが、納得はしていない。果たして、ジョジョの話の中で一二を争う最強のスタンド使いがこれでいいのか・・・

そんなことを思っても、あまりプッチのことは叩かないでください。


一週間前に戻る。

 

私は森のなかをさまよっていた。

確か私はあの、エンポリオ・アルニーニョとかいう少年に殺された。

しかも、私の殺したウェザーのスタンドによって。彼が死に際に私のスタンド『ホワイトスネイク』の能力で取ったDISCをあの少年は使ったようだ。

私は敗北した。

もしかして・・・ここが天国なのだろうか?

「お前、見ない顔だな」

白黒金髪の魔女の服装をした少女。

彼女が天使だとは思えない。

「ここはどこなんだ?」

「ここは幻想郷だぜ。・・・お前もジャイロと同じ外の世界から来た人間か?」

ジャイロ?そいつは知らないが、私にはそれを知る必要があった。

とりあえず、ここが幻想郷だということはわかった。

「そのジャイロというのは誰なんだ?」

「お前よりもずっと前に、この世界に来た人間だぜ。彼の鉄球はとにかく回るんだぜ」

「他には?」

「あとは・・・私の知る限りだと、ある吸血鬼を倒したぜ。確か名前は・・・DIOだっけな?」

今の言葉に、私は彼女の胸ぐらを掴んだ。無意識に、反射的に行動してしまったようだ。

「そのジャイロというやつが、DIOを倒しただと?」

「そうだぜ」

女は表情一つ変えない。肝が座っているのか?

私は今の衝撃で腕に乗った十字架のペンダントを見て、心を落ち着かせると、彼女の胸ぐらから手を離す。

「すまなかった。DIOは私の親友で、彼を倒したと言ったから、」

次の瞬間、目の前の魔女は私との間合いを開ける。

今の行動からして、彼女は私を敵と認識したのだろう。

・・・彼女にはすまないが、私のスタンドで気絶でもしてもらおう。

私はそう思い、スタンド『メイドイン・ヘブン』を出したつもりだった。

だが、そこにいたのはあの戦闘以来、全くもって見たことのない『ホワイトスネイク』だった。

しかし、前に見たホワイトスネイクとは少し違う、左腕は緑色に変色し、『C-MOON』の顔を思わせるような不気味な顔が左手の甲に描かれていた。

私はそれを見て、試しに左拳で横に生える大木をおもいっきり殴った。すると、樹皮は裏返ったではないか。

「なるほど、この世界に来て私はさらに天国に近づいたということか」

「その木に何をしたッ!」

彼女はどこからか取り出した、八角形くらいの小さな箱をこちらに見せる。見せるというよりも、向けると言った方が正しいか。

「くらえッ!マスター」

次の瞬間、私のホワイトスネイクは私の命令なしに、彼女の頭部を殴っていた。

そして、彼女の頭からDISCを抜き取ったのだ。

『DISCヲカイシュウシマシタ。』

DISC。これはまさしく、ホワイトスネイクの能力だ。

予想はしていたが、これで確信した。

こいつは二つの力を持っている、と。

 

 

「君は天国に行きたいと思うかね?」

やつは、いきなりそんなことを聞いてきた。

男の名はプッチ。こんなオッサンがプッチなのだ。きっと、名字がプッチなんだろうが・・・

そんなことはどうでもいい。今はあのスタンドが問題だ。

畳一枚を衝撃で裏返した。そんな威力のスタンドを俺は見たことがない。

ここまで、色々なものを見てきたが、あそこまでの衝撃はおかしい。

そして何よりも、俺の回転している鉄球をあのスタンドは触ったんだ。

触れるだけで、指が千切れるくらいの回転が残った鉄球を拾って投げ捨てた。その前に鉄球を手の甲で止めたとは・・・。

こいつはこれまでのやつらとは違う・・・。俺はそう思い、すぐに鉄球を手のひらに置いた。

回転はやつの能力で、加速している。手のひらがヒリヒリするくらいに。

だが、それ以上に彼のスタンドの力がある。

「君はこれから負けるというのに、何を考えているんだ?」

「負ける?戦ってねぇんだ。まだ」

「いや、今の私に敵はない」

自信ありげにそんなことを断言すると、やつは屋敷の中から、外へと歩いてくる。

スタンドは妖夢への攻撃を完全に止め、こちらを見た。

左手の甲はまだ治っていないのか、装備が砕けたままだが・・・。

「もう一度訊く。君は天国に行きたいか?」

「あぁ、そうだ。だが、まだ行くには早ぇよ」

俺は手のひらで回る鉄球を止めると、それを上に投げる。

「まずはお前を倒してからだ」

鉄球は空中で何回転かすると、俺の手のひらに戻ってくる。すごい回転量だ。

「いくぞッ!」

男はそれを見ると、スタンドを俺の方へ差し向けた。

スタンドの攻撃に俺は避けることしかできない。

近接型。とても厄介なスタンドだ。あの力で殴られたら、骨の一本や二本では済まないだろう。

「話は聞いている。君はDIOを倒したらしいな」

「!?」

俺は思わず、その場に止まってしまう。

スタンドもその場に止まり、攻撃をやめた。

「DIO。彼は私の親友だ」

プッチはスタンドの前に出ると、俺の目をじっくりと見る。

「お前は、なぜこの世界に来たんだ?」

「わからない。だが、一つわかるのは『私は死んだ』ということだ。そして、ここが私の目的とする、『天国』に近いということだ。天国の通過点にすぎない」

プッチは俺の真ん前に立つと、持っていた鉄球を手渡した。

なぜ、敵である俺に鉄球を手渡すのか、俺には理解できなかった。どんな理由であろうと、敵に武器を渡すのはまずありえないだろう。

「私の目的を思い出した。私は天国に行かなければならない。こんなところで遊んでいる場合ではない」

そう言うと、プッチはスタンドをしまい、屋敷の方へ歩っていく。そしてポケットからDISCを取り出すと、表に倒れている桜色の髪をした着物の女にそのDISCを差し込んだ。

「ホワイトスネイクの能力で、君の記憶を読んでいた。君の能力は『死を操る程度の能力』だ。今の私の望む能力だろう」

桜色の髪をした女は目を覚ました。そして、すぐにその男の顔を見る。

「・・・今の話、聞いてたわ。でも、そう簡単に死にたいとか言うのは」

「かまわない・・・。私は彼を追うためにここに来たのだろう。ここは"通過点"にすぎないのだからな」

「そう・・・。なら、仕方ない・・・。あなたにはここで、妖夢と働いて貰うかな?そうね・・・。その力で私の護衛とか頼めるかしら?」

「!・・・それはいったい」

女は立ち上がると、プッチを抱き締めた。

「あなたはこれまで、たくさんの悪事をしてきたと聞いています。ここは幻想郷。何でも受け入れる、そんな世界」

「・・・」

プッチは彼女の腕の中で、一人涙を流していた。

彼には彼女が聖母マリアにでも見えていたのだろう。彼はさっきまでの強ばった顔とは逆に、穏やかで優しい顔をしていた。

「あなた様の言う通りです、わかりました・・・。DIO。私は、新たな天国にたどり着いたみたいだ」

 

 

数時間後、

「・・・りさ・・・まりさ・・・魔理沙ってば!」

アリスの家で、魔理沙はアリスの声によって目を覚ました。

アリスに運ばれた魔理沙は数日間、ずっと寝ていたらしい。記憶のDISCは霊夢によって戻されたみたいだ。

「ここは・・・どこだぜ?」

「私の家よ。森の中で倒れてたから、あわてて上海連れてきて助けたのよ」

(この世界のアリスは、MMDやゆっくり実況などでまれに見る変態ではないため、魔理沙が一人、倒れていたからといって、あんなことやこんなことをしたりはしません)

「そうか、ありがとう。アリス」

「別にいいわ。ただ、お礼はここ最近有名なあのジャイロとかいう異世界人に言って。彼が倒したみたいだし」

「そうか。でも、もしもここにアリスが運んでくれなかったら、今ごろ・・・」

「・・・で、今日パチェに呼ばれてるから一緒に行かない?パチェもあなたのこと心配してたし」

「そうか。じゃあ行こうぜ!」

魔理沙は壁にかけられた箒を持つ。

「待って、箒で行くなら私も乗せてよ!」

二人はすぐに用意をすると、紅魔館へ向かった。

ベッドの側のテーブルの上には『ジャイロ、復活!』と書かれた新聞が置かれていた。



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古明地 こいし

ジョニィって原作だと一人称は「オレ」なのですが、これだと「僕」と言っています。
自分の中でジョニィは「僕」って感じだよなというのもあるのですが、ジャイロが頻繁に「オレ」を使うので、区別しやすくするために、ジョニィには「僕」と言わせています。
別に間違えたとか、そういうわけではないですよ。

あと、お空の一人称って「アタイ」じゃね?

訂正 ジョニィは初期以外は「僕」が一人称でした。
まことに申し訳ありません。


地霊殿-

 

次の日の朝、僕はお空の部屋で起床した。

お空はまだ寝ている。どうやら、今日も仕事は休みのようだ。

「チュミミミーン」

聞いたことのある鳴き声。僕のスタンド、『タスク』が独りでに行動し、窓から外を見ていたらしい。

何かを伝えようとしているのか、窓をツンツン叩いている。

僕は足を引きずり、窓まで行くと窓の外を見た。

外には、霊夢が玄関先で腕を組み、何かを待っていた。

少しすると、そこに玄関からさとりがやってきて、一冊の本を渡した。あの大きさからして・・・漫画か?

「タスクッ!」

窓からタスクを外へ出して、そこへ向かわせようとするが、結界のようなものに跳ね返される。

「やっぱり、あなたなら来ると思ったわ。でも、これはあなたたちには見せられないの、ごめんね」

「あなた・・・たち?」

さとりは霊夢をすぐに地霊殿の敷地内から逃がす。

霊夢はこっちを見ると、すぐに敷地内から姿を消した。

「・・・そろそろ、朝御飯よ。」

さとりはそう言うと、地霊殿の中へ入っていった。

「うにゅ?・・・もう朝?」

「おはよう。起こしてしまったか?」

「ううん、大丈夫。おはよ、ジョニィさん」

お空は身体を上に伸ばすと、ベッドから降りて僕のところへ来た。

「もうすぐ朝御飯みたいだ。食堂に行かなきゃな」

「待って、」

お空は着ていたパジャマを僕の前で脱ぎ始めた。

「ば、何をしてんだ!?着替えるならそう言ってくれ!」

「大丈夫だよ。私は全然」

「大丈夫って・・・僕がなんか、こう・・・嫌なんだよ」

 

お空が着替えている間、僕はお空の部屋の前で待っていた。

まぁ自分独りで動けるは動けるが、車イスをお空の部屋に置いてきてしまった以上、あまり移動することはできない。

目の先には、長い廊下が続き、曲がり角が見える。

あの曲がり角から先は何があるのだろうか。昨日はお空がいたことで行けなかったが・・・

「ねぇ、お兄ちゃん。こんなところで座って何やってんの?」

これまでに聞いたことのない声が後ろから聞こえる。

僕はもしものときは爪弾を放つために指を向ける。そこにはさとりと同じくらいの少女が立っていた。

頭には帽子をかぶり、さとりと同じように心臓の前に目が付いている。

だが、彼女の目は閉じていた。

「お空を待ってるんだ。僕一人じゃどこにも行けないからさ」

「へー。玄関前にいた馬ってお兄ちゃんの?」

スローダンサーのことか?

「あぁ。僕の馬だ」

「そうなんだ。じゃあね!」

少女はそう言い、大きく手を振って曲がり角の先に消えていった。・・・何だったんだ。

この屋敷の住人なのはわかるが、昨日食堂にいただろうか。そもそも・・・

「お待たせ~」

お空は車イスと共に、部屋から出てきた。勢いよく開いた扉は僕の背中に当たって止まる。

「あ、ごめん!大丈夫?」

「あ、あぁ。大丈夫だ・・・」

背中に激痛がはしる。

僕はすぐに、お空の持ってきた車イスに乗り込んだ。

 

食事をしている間、さとりは僕に今日の予定を話していた。

地底から出ることはないが、色々なところに行くのはわかった。

「なぁ、さとり。今朝、君くらいの背丈をした少女をお空の部屋の前で見たのだが」

カシャン・・・

さとりはフォークを落とした。

「・・・?」

「こいしを・・・見たの?」

さとりの手が震えている。

こいし。それがここ最近、帰ってきていない妹なのだろうか。

確かに『妹』と考えると、似た場所がたくさんあるな。

「・・・お燐。今日はもういいわ、ごちそうさま」

「さとり様!」

さとりは席を立つと、部屋から素早く出ていった。

その足取りは何かから逃げているような感じだった。

「・・・ジョニィ様。今、言ったことは本当のことですか?」

言ってはいけなかったか・・・。

僕はお燐の問いかけに頷く。すると、お燐はすぐにさとりを追いかけた。

「さとり様があんな顔をするのは久し振りだな~。あの髪型が可笑しい人以来かな?」

「髪型が可笑しい人?」

「うん。前にね、こーんな頭の前に突き出た人が来てね」

お空は手を額の前に置くと、ぐーんと前に出す。

「その人もジョニィみたいにここに来てね、こいし様がいたってさとり様に言ってね。でも、それ以来こいし様を見てないし、さとり様もあんな顔をしてないかな~」

お空は目玉焼きを頬張る。そして幸せそうな顔をした。

 

少しすると、お燐が食堂に戻ってきた。

「今日も休みみたいです。今、行き先の全員の家や舘に電話で断りの電話を入れて・・・。ジョニィ様、さとり様の前ではできるだけ、妹様の話は」

「すまない、悪気はないんだ。さとりにあやまって」

「それもやめた方が。さとり様は今日一日、部屋から出そうにないですし・・・今、声をかけたりなんてことしたら」

「そう・・・ですか・・・」

気が重くなる。今日、考えていた『さとりの妹、こいしを探す』という作戦もやめようかと思い、食堂から外に出て、部屋に戻ろうとした。すると、

「今日休みなんだよね?」

お空が僕の車イスのハンドルを握って、車イスの進みを止めた。

「じゃあ、どこか行かない?地底内なら色々と案内するよ」

部屋に戻っても暇だろうから、少しくらい外に出るのもいいだろう。それにスローダンサーも走りたいだろうから、僕はお空の案に賛成した。

「どうせ、部屋にいても本を読むくらいしかすることないだろうから・・・いいよ」

「よし!じゃあ、早速行こー!」

お空は車イスを勢いよく押す。お燐を横目に食堂から出ると、玄関の扉をぶち壊すかのように無理矢理押し開けた。

「お、おい!そんな、む、無理矢理!」

「ひさしぶりに遊べると思うと、私は嬉しいんだ!」

その威力で僕は車イスから落ちて、地面を転がった。

「お空!?何やってだい!ジョニィさん、大丈夫ですか!?」

「落馬した気分だ・・・。大丈夫だ、かすり傷くらい」

「お空!あまり、ジョニィさんに迷惑かけない!」

「はーい。・・・ごめんね、ジョニィさん」

僕は起き上がり、馬を呼ぶ。そして、馬に乗った。

「里に行くなら、こいつで行こう。歩いていくのは嫌だろ?」

「うん!」

僕はお空を後ろに乗せると、馬を走らせた。

後方でお燐が「夕方までには帰ってきて」と言ったが、もちろん二人には聞こえていなかった。

 

「・・・えっと、この人は」

お空の指示通りにやってきた場所は里のとある一軒家だった。

周りの家よりかは少し綺麗で、どこか違うオーラを放っている。

「紹介するね、この人は水橋 パルスィさん。ちょっと前に仲良くなったんだ」

「こんな朝っぱらから・・・本当、妬ましい」

パルスィは何もかも呪ってやるというような目をこちらに向けている。

きっと、大声で起こされたので、機嫌が悪いのだろう。

「よ、よろしく。」

ただでさえ、さとりのことで気が重いのにさらに重くなった。

「お空、こんな馬乗り、どっから連れてきたの?何か砂っぽいし、それに人の前で馬に乗りっぱなしって・・・礼儀のない人ね」

「ごめんごめん。でもジョニィさんは足が不自由なんだ。だから、馬に乗ってないとさらに砂っぽくなっちゃうの」

「そうなの・・・それはごめんなさい。それじゃあ、」

パルスィは目を擦りながら、玄関のドアを閉めた。

「何か・・・すごい人だな」

「さとり様とお燐の次に私の話を聞いてくれる人なんだ。あれでも優しいんだよ」

お空はその大きな羽根で飛び、スローダンサーに乗った。

「次は、こっから」

「一つ訊きたいのだが。どれくらい、こういったところをまわるんだ?」

「あと二つだよ。勇儀さんの家と、あとはこの里で私がよく遊ぶ場所。この二つかな」

「じゃあ、それが終わったら一つ手伝ってほしいんだ」

「何?」

 

「さとりの妹の、こいしを探すということを」



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魔女のお茶会

寝る前にこれを書く。一番、書けますね。
流れるように内容入ってくる。そして、いつのまにか3000字を越えているという。
(別に一晩で全文書いているわけではない)
そして、他のにも流れるように・・・。


-紅魔館の大図書館-

 

そこでは魔法使いの集まりがあった。

集まり、といっても単なるお茶会である。

そこに魔法使いとは全く違う、異世界の人間がいた。

 

「ジャイロはあれから、どうしたんだ?この前の新聞に復活って出てたが、そのあとどこにいったんだ?」

「白玉楼に行って、変な男を倒した」

魔理沙の問いかけに俺は簡単に返した。

正直、ここにいるのは不自然だ。たまたま、森を歩いていたところ、魔理沙に会って、ここでお茶会があるときいて、断りながらも旨いもの食えるかなくらいの楽しみでついつい来てしまった。

だが、ここに来てもケーキの一つ出ず、ジャスミンティーが出るくらいだ。

ジョニィだったら好き好んで飲んだだろうが、俺は期待を壊され、少し不機嫌なんだ。

俺は机の上で鉄球を回すことしかやることはなかった。

「新聞でしか見てなかったけど、案外かっこいいのね」

紫色の魔法使いからのそんな褒め言葉も今の俺には逆効果だった。

「そういえば、パチェ。あの噂聞いた?」

アリスという青い服の魔法使いが話始める。

「私が寝ている間に何かあったのぜ?」

「噂?何のこと?」

「あの、魔法の森近くで坊主頭の男とパイナップルみたいな頭の怪しい二人組が何かを探してるってやつ。噂程度にしか聞いてないけど、それって本当なのかな?」

「私とパチェくらいしか友達がいないのに噂って聞くんだな。パチェも知らないし、私も寝てたってことはそういうことに・・・」

「私だって、人里に行って話を小耳に挟むくらいのことはあるわよ!もう、魔理沙は・・・」

「ごめんごめん。でも、怪しいぜ。まさかこれまでの異変と関係あるかもしれないのぜ」

「異変か」

異変という言葉に引っ掛かる。

ここに来て、これまでに倒してきたスタンドを持つ、または能力を持つ男。

吸血鬼のDIO。

爆発を使う吉良。

そして時を加速するなどを行うプッチ。

どいつもこいつも、強いやつらだった。そして幾度もこの鉄球に助けられた。

今となってはこの二つのみだが、俺は確実にこいつらに助けられている。

そしてこれからもだ。

「今となってはジャイロも異変を解決する仲間の一人だもんな?」

魔理沙は俺の肩を抱く。

すると鉄球の回転がぶれ、テーブルの上を転がり、アリスの前に置いてあったカップを壊した。

「あ、」

「お前・・・」

「な、今のはこいつがやったんだッ!」

俺はすぐに魔理沙を指差す。

まぁ、わかっていたが俺の味方をするやつはここにいない。

 

「それくらい直せるっすよ」

 

図書館の奥の方から、男の声が聞こえる。

前が開いた学生服のような服を着て、踏みつけてやりたくなるような頭をした男が姿を表した。

「パチュリーさん。また物を壊したんすか?」

「・・・パチェ。こいつは誰だぜ?」

「東方 仗助。そこの男と同じように異世界から来た人っすよ。よろしくっす」

「で、直せるってどういうこと?割れたカップを直すって難しいことよ」

東方という男はアリスをそのカップの前から退かすと、ポケットから右手を出す。

すると、やつの後ろに人影が出てきたのがわかった。

(こいつもスタンド使いか?)

そのスタンドはカップを右拳で殴る。そして少しすると、カップは元通りの形に戻った。

「おぉ!」

俺はついつい驚いてしまう。

「グレート。どうすか?これが俺のスタンド、クレイジー・ダイヤモンドの能力っす」

「パチェ。どっからこんなやつ連れてきたんだぜ?」

「連れてきたというよりは、やってきたって感じよ。小悪魔に本を探させてたら、本棚の脇に彼が倒れてたの」

アリスはカップの取っ手を持つ。

すると、カップはまた割れてしまった。

「・・・これはどういうことだよ」

「こっちに来てから能力が安定しないんすよ」

この東方のスタンドは弱くなっているのか?

プッチのスタンド、ホワイトスネイクはやつによると、進化していると言っていたが、逆にこいつのスタンドは退化しているのか?

「本の破れたページを直す作業とかしてもらってるけど、だいたいがまた破れたり、グシャグシャになったりするの。今日はどう?」

「今のところ、完全に修復できたのは15冊中、たったの2冊っす。13冊は・・・残念ながら」

「・・・小悪魔と同じ担当に移ってもらおうかしら」

「さすがにお茶を汲んだりとか無理っす。」

「おいおい、こいつ自分からそれくらい直せるとか言ってよ」

俺はそいつの態度を見て、おもわず口を挟む。

「本当はそんなできねぇんじゃねぇか」

「・・・言い返せないっす」

東方は俺の言葉に静かに返事するしかなかった。

しかし、反抗しているのか図書館の奥の方をじっと見ていた。

俺の話を聞きたくねぇような、そんな表情をして。

「何かそっちにいんのか?」

その方向に、赤く光る何かが見える。しかも、それが数えきれないほどたくさんに。

「この感じ・・・まさか」

「知ってんのか?」

「昔、戦ったんすよ。あの感じ・・・億泰の兄の形兆か?」

図書館の奥から人影がこちらに歩いてくる。

「東方 仗助。テメェとまた会えるとはなぁ」

金色の縦に長い髪型。襟には『BAD』の文字が書かれている。

そして彼の足元には軍隊のような人形がたくさん列を成して前進してきていた。中には、戦車や戦闘機も存在する。

「まさかアンタとこんなところで会うとはな。虹村 形兆。何でテメェが生きてるのか知らねぇが。また戦うことになるとは思わなかったぜ」

「キャーッ!」

後ろから女の悲鳴が聞こえた。

そこにいるのと同じ軍隊の人形がアリスの首元を銃で狙っている。

魔理沙、パチュリーの横にも戦闘機が今にも発砲しそうだった。

「仗助!こいつらの命が人質だ!少しでもそこから動いたら、こいつらは脳天にミサイルをくらって死ぬ!それが嫌だったら、今すぐ床に手をつけ!お前もだ!」

「何をそんな必死になってるんだ?目的を言え」

「目的?教えるとでも思ったか!とにかく、そこの帽子被ったお前も手をつけろ!」

俺は両手のひらに鉄球を持ったまま、床に手をつける。

「よし、それでいい。」

「前にもやったことだと思うが、またやるか」

手のひらから流れ出した回転エネルギーは鉄球から床を這い、本棚の本に流れ始める。

本はそのエネルギーによって、本棚から勢いよく飛び出す。

「な、何だ!グハッ!」

その本は形兆の顎に当たり、向かいの本棚にぶつかる。

すると、その本棚からは雪崩のように形兆に向かって落ちてきた。

「スタンド使いは本体が弱点だってのは、この連戦で覚えたぜ」

軍隊の人形は銃を落とし、戦闘機は床に墜落した。

「やったのか?」

「ジャイロさん。アンタすごいやつだったんすか?」

「さすが、吉良 吉影にあっさりと勝利した人」

パチュリーがボソッと何かを呟く。

それを東方は聞いていたのか、すぐにパチュリーの方へ走ってきた。

「アンタ、今なんて言った!?この男が、吉良 吉影をあっさりと倒したって?」

パチュリーを噛むかのように食いついた東方はパチュリーの魔法によって椅子に座らされる。

「えぇ。彼、ジャイロ・ツェペリは吉良 吉影を仲間と共にあっさりと倒したわ。あなたのように、ケガだらけ、何回か逃げられたりとかせずにね」

「おい、何でアンタがそれを知ってるんだ?俺は話してないぞ」

東方の言葉にパチュリーは黙りこんでしまう。

まるで、自らの罠にはまったような、そんな感じだろう。

「友達から聞いたのよ。あなたのことを良く知る友達からね」

「それって誰だ?」

「・・・古明地 こいし。地霊殿という場所の主の妹よ」

その名前を聞いて、誰よりも先に驚いたのはアリスだった。

 

「こいしならちょっと前まで、私の家にいたわ。」

 



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無意識

この前、階段に勢いよくぶつけた部分の親指の爪が足に刺さりました。
医者に行ったところ、その部分の爪を切らなければならないと言われ、爪を切ることになり、痛み止めの麻酔を注射をすることに・・・
思ってたよりも痛く、思わず叫んでしまいました。
三年前の骨折以来の痛み・・・。ひさしぶりに痛い思いをしました。


地霊殿の夜中・・・

 

「やっほー。こいしだよ」

 

「うぉ?何だ何だ?」

暗闇に一人、僕の前に現れたこいしを名乗る少女は床に座り込む僕の周りをグルグルと走り始める。

「今日は一日、私を探してたんだよね。眠そうなお空から聞いたよ。でも、探しが甘かったね」

「甘い?」

「うん、お空が作る卵焼きくらいに」

お空が作る卵焼き、というのもとても想像し難いものだが、なんとなくはわかった。

「今日はね、アリスの家にいってたんだ。でも、いなかったから、ずっと人里で遊んでた」

「・・・アリスの家なんてあったか?ここに」

「アリスの家は地底にはないよ」

僕たちが話していると、部屋の扉が開いた。

そこには息がきれたさとりが立っていた。

「こいしッ!」

「・・・じゃ、明日は地底のどこかにいると思うから~」

こいしはそう言うと、部屋から消えてしまう。

瞬間移動か?

「ジョニィ・・・さん。あなたの前にこいしは現れるのでしょう?」

今にも泣きそうなのか声が震えている。

何があってこんなことになってしまったのか、聞きたかったが、さとりはこれ以上、口を開きそうにない。

「明日もあなたに時間をあげるわ。だから、お空とこいしを探して見つけてきて。こいしに・・・こいしに謝りたいの」

「あぁ、言われなくてもそうするつもりさ。これ以上、悲しい顔を見るのは、嫌だ」

「そう・・・頼むわ・・・おやすみなさい」

さとりは部屋から出ていく。

さとりはそのときに何かを落とした。・・・二人が写った写真だった。

二人とも眩しいほどに笑っていた。

 

次の日、

「また今日も、さとり様は・・・」

「あぁ、わかってる。今日は頼まれ事があってね。お空、行こう。」

「うにゅ?今日も遊びに行くの?」

お空はまだ食事をしていた。

今日の朝、お空が作ったと思われる卵焼きが出たが、確かに甘い。

「いや、こいしを探しに行く」

「!?・・・わかった。さとり様のためだもんね」

僕はすぐに館から出ると、スローダンサーに乗り、館の前でお空を待つ。

お空はご飯を丸め、おにぎりにするとそれを片手に館から出た。

「私は上から探す。だから、」

「わかった。家のなかとかなら、任せろ!」

俺はスローダンサーを走らせ、お空は上から人里の空を飛んでこいしを探した。

こいしの姿はわかっている。だが、彼女がその姿をしているとは限らない。

だが、希望は捨ててはいけない。

迷いはもうない。

「ジョニィッ!今曲がり角で!」

お空の声が空から降る。それを聞くと、すぐに曲がり角を曲がった。

その先には見覚えのある顔があった。

「ウルムド・アブドゥル・・・。なんで、アンタが」

レースにラクダで参加し、一日目でリタイアした男。

だが、あのときとどこかが違う。

「ウルムド?そいつは誰だ?私はモハメド・アブドゥルだ」

「・・・人違いか?すまない、」

「かまわんよ。ただ、こんな平和な村で何を急いでいたんだ?」

さっきまで飛んでいたはずのお空は僕の近くには降りると、その人の顔をジロジロ見る。

「あ、この人は占い師のおっさんだよ。最近、この人里に来て占い師の仕事をしてるんだ」

「よく知ってるな。知り合い?」

「いや、さとり様から聞いただけ」

アブドゥルは服のポケットから、カードを取り出す。

どうやら、今から占いでもするみたいだが・・・

「今は急いでいるんだ。占いは後でしてくれ」

「急いでましたか」

「ねぇ!アブドゥルさん!今日はあの炎の手品やらないの?」

「本当に話を聞いたってだけなのかな?・・・まぁ、やってあげましょう」

アブドゥルはカードを箱の中にしまう。そして、

「マジシャンズ・レッド!」

と声を放った。

さっきまで、静かで優しい顔をしていた占い師が大きな声を放つ。

すると、目の前に赤い鳥が現れた。鳥というよりは鳥人か?

「私のスタンドは炎のスタンド。このスタンドで炎を操ることができる」

「スタンド!アンタもスタンドが使えるのか?」

「も、ということは君もか」

俺はそれを聞き、タスク(act1)を出す。

「おお、これはまた可愛らしいスタンドだな」

アブドゥルは俺のタスクを撫でる。

すると、なぜか彼の手のひらに切り傷のような跡ができた。

「綺麗な花にもトゲがある。そういうことか?」

「すまない、こっちに来てから力が制御できなくて」

「で、思い出したのだが、君たちは誰かを探していたのではないのか?」

「そうだよ!ジョニィ!こんなところで話してる暇なんてないよ!」

手のひら返し。最初に足を止めさせたのはお空だろう・・・。

「ハハハ。人探しなら任せてくれ。このスタンドの炎は生命をも感じとり、人を探すことも可能だろう」

アブドゥルのスタンド、マジシャンズ・レッドは口から炎を吐く。その炎は六方向を差すような形になり、目の前で浮遊している。

「君たちが探しているのは・・・予想だが、あの館の主人の妹だろう?」

マジシャンズ・レッドの炎はこいしの姿を作り出すと、その浮遊した六方向を差す炎に合体する。

炎は北の方角と東の方角を差す。つまりは・・・北東の方向を差しているのだろう。

「この方向にいるのか?」

「たぶんな・・・。絶対とは言い難いだろう」

「いるよ!絶対!アブドゥルさんが言うんだもん!」

「ハハ・・・照れますな。でも、信じることは大事ですよ」

アブドゥルは炎をお空に渡す。

「君も炎を操ると聞いた。君ならこれを使えるはずだ。私は次の里へ行かないとな・・・」

僕たちとは反対を向くと、橋を渡っていなくなってしまった。

そのあと、お空が彼と会うことはなかったという・・・。

 

 

夕方になり、私はジョニィとお空の帰りを玄関で待つ。

見ていた小説は最終章に入り、終わろうとしていた。

「さとり様。ここにいると、風邪をひきますよ」

心配してお燐がやってきた。

(さとり様、ジョニィさんに試練を与えるとか言っても、やっぱり心配なんだろうな)

お燐の考えていることはいつも筒抜けだ。お空よりも考えていることがわかりやすい。

「・・・わかったわ。そろそろ、夕飯の準備でも」

 

さとり様ーッ!

 

お空の声。

振り返ると、ジョニィとお空、そして・・・

ジョニィの後ろにはこいしが座っていた。こいしは笑顔で手を振っている。

「こいし!」

私はこいしを見ると、無意識に足が動いていた。

そして、馬から降りたこいしを抱き締めた。

「ごめんね、お姉ちゃん」

「私こそごめんなさい。あんなこと言っちゃって」

私はいつのまにか泣いていた。

これまでこいしが出ていって数日が経ったというのはよくあったが、なぜか今回だけは泣いてしまった。

 

 

僕は泣いているさとりを見た。

「ジョニィさん、本当にありがとうございます。さとり様があんなに涙を流すなんて」

お燐は俺に礼をする。

「いや、礼はお空と里にいた占い師に言ってくれ」

「占い師?」

「あのアブドゥルっていう・・・?」

お燐は全くもって知らないようだ。

お空はさとりから話を聞いたと言ったが、お燐は聞かされてないのだろうか。

 

「アブドゥルさんはもうこの世にはいない人だわ」

 

僕の話を聞いていたのか、さとりがこいしと手を繋いでやってきた。

「どういうことだ?・・・つまりは僕たちは幽霊と話していたのか?」

「そういうことになるわね・・・」

「あんなくっきりと形が見えるのか?」

「この世界ならあり得なくもないわね」

つまり、あの人は死んでいて、それでもなお、スタンドを使って僕たちを助けたのか・・・

そういえば・・・

「・・・ンドゥールってやつを知ってるか?」

「知ってるけど・・・何でかしら?」

前々から引っ掛かりがあった。

まるで、僕の行くべき道を塞ぐように、敵が現れ、僕を試してくる。

そう思っても仕方がない。

 

「古明地 さとり。君は僕を試しているのか?」

 



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森の中で・・・

今回はジャイロの話。
ジャイロは紅魔館の図書館で、魔理沙、アリス、パチュリーとお茶会をしていた。
そこに虹村 形兆が現れ、図書館をスタンドで埋め尽くす。そしてジャイロと、パチュリーの下で働いていた東方 仗助を脅すが、ジャイロの鉄球により、形兆は再起不能となった。
そして今回はその後の話・・・


魔女三人がお茶会を終え、俺は東方と話を終えた。

これといって、行くところがないため魔理沙考案のアリス宅でのお茶会に行くことになった。

理由はパチュリーに情報を渡した古明地姉妹について、聞きたいこともある。

どうやら、その二人は俺たちのことをまるで監視でもしてたかのように知っているらしい。

そして、パチュリーもその情報を聞いているのか、俺たちのことをよく知っていた。

東方もアリスの家に行きたいと言ったが、パチュリーが許可しないため、我慢していた。やはり、あの身体でも心は高校生そのものなんだろう・・・。好奇心というか何というか・・・

魔理沙、アリスは箒に乗ると「先に行ってるぜ」と言い、北の方向へ飛んでいってしまう。

「おい、おい!俺は道を知らないぞ!」

「北の方向へ進めば小さな家が一つあるのぜ!」

俺は愛馬を撫でると、北の方向へ向かう。

もう夜中ということもあってか、森の中は不気味で何というか・・・何かでそうな

「驚けーッ!」

「うぉッ!?」

俺はいきなり現れた水色の何かにおもわず驚いて馬から落ちてしまう・・・が、すぐに馬の足を使い、スルッと下に下りた。

「やっと、驚いてもらえたぁ」

上から下までほぼ全てが水色の少女は、傘と踊っている。

「危ねぇじゃねぇか!走ってる馬の前に出たら危ないって教わらなかったか?」

「ご、ごめんなさい!」

少女は深く腰を曲げると、すぐに傘を持って、森の奥へ走っていった。

「・・・何だったんだ?少し遅れていたら、おもいっきり落馬していたかもな」

俺は砂を払うと馬に乗り、アリスの家を目指した。

それで続きだが、アリスの家に行けば、おそらく夕飯も貰えるだろう。

それが目的である。

この状況下、食事をするのが先決だろう。

 

「いらっしゃい、ジャイロさん」

「遅かったじゃん。何やってたんだぜ?」

ようやく、アリスの家に着く。

扉を開けたとき、アリスや魔理沙よりも先に目に入ってきたのは、なぜか椅子に座って足をぶらつかせている水色の少女だった。

「な、何でお前がここにいんだよ!」

「!」

「もしかして、友達?」

俺は椅子に座ると、一気に後ろへふんぞり返る。

「んなわけねぇよ!俺はこいつに殺されかけてんだ。こいつに驚かされてよ!もう少しで落馬するところだったんだぜ!」

「良かったじゃないか、小傘!やっと驚かせることができたじゃないか!」

魔理沙はなぜかそこの少女を撫でる。

俺はその理解しがたい行為に説明を求める。

「彼女は多々良 小傘っていう化け傘の妖怪で、人を驚かせないとお腹が空いちゃうのよ」

「何だそりゃ・・・。てことは今さっきので腹一杯と?」

小傘は首を振る。

落馬するほどでも、そんな貯まらないもんなのか。

「小傘は毎日、人里に行くがいつも驚かせることができないんだ。最初は驚いていた人たちも最近はな」

「そんな格好だから驚かすこともできないんだろ?もっと狂気染みた格好の方がいいとおもうが」

「・・・やっぱりそうだよな」

魔理沙は俺の案に頷く。

「そうね。やっぱり可愛すぎるのがいけないのよ」

アリスはキッチンから俺の分のティーカップを持ってくると、小傘の頭を撫でる。

「この前なんて不審者に誘拐されかけたもんね」

「そ、それは・・・」

「夜、頭の長い銀髪の上半身ほぼ裸の男に話しかけられてね。連れてかれそうになったのよ。妖怪なのに、人に負けるなんて」

それはブーメランじゃないのか?とか思ったが、言うのはやめた。

昼間の侵入者の件、まだ忘れたわけではない。

「それは私たちも同じだぜ。昼間、人間に負けかけたじゃないか」

「・・・」

俺が言わなくても、魔理沙が言った。

小傘はそんな中、注がれた紅茶を飲むしかなかった。

 

「じゃ、そろそろ俺は帰るわ」

「帰る場所も無いのにか?」

魔理沙は正直者だ。それゆえに人を傷つける。

確かに帰る場所はないが、こうしている間にもジョニィは俺を探すために、危険な場所に足を踏み入れているのではないか・・・。そんなことを思うと、こんなところで呑気に紅茶をすすっている時間などない。

俺はアリスの家から出て馬に乗る。

「あの、ジャイロさん」

後ろから小傘の声がする。

彼女もまた、アリスの家から出たようだ。

二人から「まだいてもいい」とか言われながらも、外に出た。

俺に何か用がある。そう考えたが・・・

「俺のケツに話しかけてもよ~。ケツは話を聞かないぜ~。俺自身に声をかけないとよ」

「ぐぬぬ・・・」

俺は馬を止め、振り向いた。

「アンタは人間に甘く見られてるんだ。もっと、妖怪なら妖怪として誇りを持て。恐怖だけが、驚かすということではないんじゃあないか?」

俺はジョニィという弟子のような人間がいたから、こんな立場で話せるのだろう。

彼を一人の友と思いながらも、一人の弟子として考えている。黄金の回転を教えている弟子として。

「じゃあ、どうしたら・・・私にはそんなことできない」

「できない、か。できるわけがないと4回言ったなら、教えてあげなくもないな」

俺は小傘にそう言い、静かにその場を去った。

今の彼女に必要なのは、自分自身の力で正解を導き出すことだ。それに・・・

ここに驚いた人間がいるんだ。必ずできる・・・はずだ。

「ジョニィとは違う・・・よな?」

 

俺は森の中で野宿をすることにした。

ここ最近、ふかふかの布団に寝たりすることが多かったため、この感じが懐かしかった。

俺は集めた木の枝や木葉に火をつけると、ずっとその火を見ていた。

「ジョニィ・・・」

あいつとはぐれてからもう数週間は経っている。レースも終わっているんじゃないか。

きっと、レースの方ではここにある遺体を・・・あれ?

遺体がない・・・。

「まさか・・・遺体を無くしたのか」

俺は辺りを探す。だが、見つからない。

確かアリスの家から出たときはあった。ここに来るまでに落としたか?

辺りは暗く、この火のみが頼りだ。

俺は鉄球を木の表面に当て、回転によって木の皮を巻き取る。

ちょっとした松明のような物を作ると、それを握って遠くまで歩くことにした。

ここに来るまでの道なら、馬の足跡によって確認できる。雨が降らない限りは・・・

さっきからどこかで雷の轟く音が聞こえる。

一雨来そうだ。

「一度、アリスの家に戻った方がいいかもしれない」

この世界に来て初めての雨が降る。

そう考え、俺は馬を呼ぶ。

返事をするかのように、颯爽とやってきたヴァルキリーは俺の前で止まる。

「さすが、俺の愛馬だ」

馬に乗ってすぐに雨が降りだす。

火は消え、一気に暗黒の世界へと変化した。

ここまで来る途中、一ヶ所危ない場所があったのは覚えている。

どうやってそれを見つければいいのか。

だが、ここで怯えていても進まない。

俺は来た道を戻るように走り始めた。雷鳴は少しずつ近くなり、今にもここに落ちてきそうだった。

走り始めてから数分後、馬は何かに足をとられた。

「しまった!」

俺は馬から投げ出され、木に腰を強打する。

馬もまた、その一瞬で転んでしまう。

「大丈夫か!?」

俺は馬を起こす。運良く、馬の転がった部分に草むらがあったため、馬にケガはなかったが、俺は腰に違和感を持った。

「木にぶつかったときに、どこか骨をやっちまったか?」

俺は鉄球をその部分に当てる。ちょっとした痛み止め程度にしかならないが、あるとないとでは違うだろう。

俺は木に寄りかかると、空を仰ぎ見る。

「誰か・・・助けてくれ」

俺は視点を変える。ほとんど聞こえないが、一瞬足音が聞こえた。

俺はその方向をジッと見る。

「大丈夫ですかー?」

あの一つ目の傘・・・小傘か。

「お前に助けられるとはな・・・」

「どうしたんですか!?血が流れてますよ!」

俺は小傘の肩を借りて立ち上がる。

腰に力が入らない・・・やはり鉄球を当ててもダメか。

「アリスさんなら、何とか魔法で治療できるかもしれません!いきましょう!」

小傘が前を向き、歩き始めた次の瞬間、目の前に二人の人影が現れた。

「ちょっと待ちな。兄貴!こいつは確か、お尋ね者のジャイロじゃないですか!?」

「よくやったぞ、ペッシ。どうやら、俺たちが殺るまでもないらしいな」

男たちは雷によって照らされることでしか、顔を見ることはできないが、言葉からして、これまでに戦ってきた奴等と同じ部類のようだ。

 

「さぁ、兄貴!ブッ殺しちゃいましょうぜッ!」

 



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兄貴とマンモーニと・・・

前回に続いて、今回もジャイロの話。

暗殺チームの中で誰か好きですか?と聞かれたとき、誰を選ぶのか・・・
難しい選択ですね・・・。

答えはこの話に出てきて、ジャイロ達と戦います!


落雷と共に足を踏み出したペッシと呼ばれた男はどこからか取り出した釣りざおを振りかざす。

「待てッ!ペッシ!」

兄貴とペッシから呼ばれるもう一人の男はペッシの右腕を掴み、釣りざおを止める。

「前にも言ったよなぁ~、ペッシ~~~。『ブッ殺す』という言葉は弱者が使う言葉だ。俺たちは使っちゃあいけないんだぜ。俺たちの世界にそんな言葉はない」

男は銃を取り出すと、俺たちに銃口を向ける。

 

「『ブッ殺す』と心の中で思ったならッ!そのとき既に行動は終わってるんだッ!」

 

男は銃を俺に向かって撃ち込む。

「危ない!」

次の瞬間、小傘は俺を押していた。

そして俺と小傘の間を貫いた銃弾は木に刺さる。

「ッ!・・・外したか。だが、そっちの男が動けないんじゃあ、次は当たるな。スタンドを使わなくても勝てるとは・・・とんだ期待外れだ!」

銃の音が聞こえたと思うと、暗闇を割いてすぐにこちらまでやってくる。

明るければ、鉄球で弾くこともできなくはない。それに鉄球の回転が使えれば、皮膚を硬化させ、弾くことも可能だ。だが、手も今さっきの打撃でやっているみたいだ。

「兄貴ッ!何かこっちに来てませんか?」

「何?」

今度はペッシが兄貴を止める。

確かに光輝く何かを持った二つの人影がこちらに向かっているのがわかった。

きっと、魔理沙とアリスだろう。

「ここに来てから、俺たちの度肝を抜くような女に会った・・・まさかアイツじゃないよな?」

このさっきから強い言葉を使う男がここまで言うのだから、会ったやつは相当強いやつだったんだろう。

「あの紅白の女・・・またアイツっすか!?逃げましょうよ、兄貴ッ!プロシュート兄貴ってば!」

プロシュートというのか?・・・あの男は。

男たちも暗闇の先にいるのが、女というのしかわからないのだろう。

恐らく、あの二人だと思うが、男たちはあの紅白の巫女と予想している。

「て、撤退だ。逃げるぞ!ペッシ!」

「待ってくださいよッ!兄貴~ッ!」

 

こちらに来た二人の女。それは俺の予想通り、魔理沙とアリスだった。だが、二人の目的は俺たちじゃない。向こうに落ちた落雷のようだ。

「二人とも大丈夫?」

「私は大丈夫ですけど、ジャイロさんが・・・」

「力が入らねぇんだ。腰と右手首をやってる・・・。あの筋肉質の風使い以来だ、こんな痛み食らったのは・・・」

アリスは俺の言葉を聞くと、魔理沙と共に俺を持ち上げる。

「早く帰って、魔法の準備をしましょう!重傷みたい」

「わかった。ジャイロには助けてもらったから、今度は私たちが助けないとな」

「すまない・・・」

二人で俺を運んでいると、そこに紅白の巫女もやってきた。名前は・・・

「おう、霊夢。どうしたんだぜ?」

「どうしたもこうしたもないわ。ここらへんに怪しい二人組が現れたらしいじゃない」

「その二人ならあっちに行きました」

小傘がそう伝える。確か、この巫女は妖怪退治のプロと聞いたが・・・。

「霊夢。そいつは俺を助けてくれたんだ・・・退治しないでくれ」

「・・・しないわよ。彼女は悪い妖怪じゃないもの。まぁ悪い妖怪になったら、容赦なく退治するけどね」

「そうだぜ、ジャイロ。小傘は悪い妖怪じゃないのぜ」

霊夢はニッコリと笑い、男二人組の逃げた方へ飛んでいった。

俺は安心し、心を休めようとした次の瞬間、

刃物が刺さるような音が耳元で聞こえる。

「なん・・・だぜ」

魔理沙の腕から飛び出したカミソリの刃のようなものはもう片方の腕に突き刺さった。

傷からは血が吹き出し、その痛みで俺から手を離す。

「うおッ!?」

俺はそのまま背中を強打する。

「魔理沙、どうしたの!?」

「いきなり・・・腕から・・・」

魔理沙は手で傷を押さえる。

「アイツらは所詮、弱者だった」

そいつはいきなり闇のなかから現れた。

白黒反転した眼は人に恐怖を与え、目の前で血を流す魔理沙を見下す。

「俺の名はリゾット。彼らと同じ暗殺チームの隊長だ。お前を殺すという依頼は、俺のもとにもやってきた。今は人数の少ないチームだが、俺一人でもお前を殺すことは可能だ」

「魔理沙ッ!」

アリスが近寄ろうとするが、魔理沙は「来るな」と言い、アリスを止めた。

「良い判断だ、魔理沙」

リゾットは魔理沙から出てきたカミソリの刃を持つと、俺らに見せた。

そこには小さなスタンドがくっついていた。

「今、彼女の体内にはこいつがたくさん入り込んでいる。能力は教えんが、それだけは教えておこう。もしも、近づいたなら・・・わかるよな?」

以前、周囲の鉄分を操るやつと戦った。こいつもそれと同じか、それに似た能力を使うのだろう。

そしてカミソリにベッタリと付いた血液。あのカミソリは魔理沙の血管から出てきたようだ。そこから推測するに、彼の能力は鉄分をある形に変化する能力・・・なのか?

もしも、それなら魔理沙が危ない。

「おい、お前らの狙いは俺だろう?俺を殺すことが目的のはずだ。なぜ、魔理沙を攻撃する?」

「単なる人質だ。お前が死ぬか、こいつが死ぬか・・・その選択を突き付けるためのな!」

リゾットは魔理沙の首もとにどこからか出したメスの刃を向けた。

「お前・・・鉄分を操る能力だろ?」

魔理沙もリゾットの能力がわかったようだ。

「・・・当たりだ、魔理沙。だが、我がメタリカの正体を知ったところでもう遅いんだぞ。すでにお前は出来上がってるんだからな。今もお前の口の中ではハサミが生成されている」

それを聞くと、魔理沙は唾を吐くかのように口の中のものを出す。そこには小さなハサミがあった。

「さぁ、ジャイロ!お前はこの女の命と、自分の命、どっちをかける!」

厄介なやつだ・・・。

あれ?そう言えば、小傘はどこにいったんだ?

 

「驚けーッ!」

 

そう思った次の瞬間、小傘はやつの顔の真ん前まで近づいていた。

どうやら、木に登り、上の木の枝から落ちてきたらしい。

そして、小傘のくり出した蹴りはリゾットの顔面に直撃する。

「ぐ、ぐわぁあああッ!」

リゾットはそのまま、後ろの木に叩きつけられた。

「やったな、小傘。また驚かすことができたじゃないか!」

「これがジャイロさんの言っていたこと・・・ですか?」

「ん~、ちょっと違うな」

「おいッ!」

さっきまで捕まっていた魔理沙はリゾットの飛んでいった方を見て、指を差す。

そこにグッタリしていたリゾットの姿は無かった。

「さっきまであそこにいたよなッ!どこいったんだぜ!」

「そこの水色の女ッ!」

突然、暗闇から現れたリゾットは小傘の腕を掴む。

アイツは自身を透明にすることもできるのか!

・・・感心している場合じゃない。小傘が危ない!

「ジャイロなんか、もうどうでもいい!お前の中にメタリカを詰め込んで、体内から殺してやるッ!」

俺は鉄球を手首のみで投げた。

もちろん、回転はかけているが、いつもより回転は少ない。

だが、

「ぐぁッ!これは・・・」

「鉄球は回転をかけなくても武器になる・・・ぜ」

鉄球は見事手に当たり、小傘の腕を離した。

そして、

「えいッ!」

小傘は思いっきり、傘を振った。

化け傘はリゾットの顔を直撃し、リゾットは静かに倒れた。

「ま、まさか・・・こんな女にやられるとは・・・まだ、俺は・・・戦える・・・」

「もう・・・やめてください。あなたは病気を患っていますよね?」

「どうして・・・それを・・・」

「あなたから力が見えないんです。もしも、あなたの力が本当なら、魔理沙さんだけでなく、私やジャイロさんにもメタリカを浸入させることができましたよね?」

リゾットはメタリカを魔理沙から引き出すと、自らの体に入れようとするが、メタリカはそこに来るまでに立ち止まって消滅してしまう。

「彼女は・・・弱っていた。ここに来る前に、何か悪いもんでも・・・食べたのだろうな。微少の毒を持ったキノコとか・・・な。見事な・・・推理だ。」

リゾットは小傘の顔を見ると、

「最後に・・・顔を見せてくれ・・・逆光で良く見えない」

 

空は雷雲が消え、まぶしいほどにきれいな月が四人を照らしていた。

そして少しすると、二つの悲鳴が森の中で響いた。

 

 

『さすが霊夢!不審者二人組を再起不能!』

次の日の朝の新聞の見出しはこう書かれていたが、その端に小傘のことも少し書かれていたそうだ。



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優曇華と狩りにいこう

この前やっていた、第四部の狩りにいこうの回を見て、
「あれ?絵、変わった?」
と思ったのは私だけですかね?
何か仗助や承太郎の顔の堀が深すぎな気が・・・

今回はジョニィが地底から帰ってくる回です。
安心してください、地底メンバーはまだ出ますよ。好きなキャラばかりですから。


「・・・きろ、起きろ・・・起きろッ!」

「はっ!」

ここはいったい・・・

僕は全く持って見たことのない森の中で起こされた。

これは・・・竹か?

「やっと目が覚めたのかい?アンタが地上に行きたいって言ったから連れてきてやったのによぉ!」

勇儀・・・だよな?

思い出した。僕はさとりから、地上に出ても良いという許可を貰ったんだ。そして、ここに出たんだった。

「全く、地上に出てすぐに寝ちまうとはな・・・」

勇儀はため息をつく。

確か地上に行くとき、馬はいなかった・・・まさか!

僕は辺りを見回す。

「・・・馬なら連れてきたぜ。意外に重くなかったな。あ、馬ならそこに繋いであるぜ」

確かに馬は竹に繋いであった。さすが、鬼といったものだ。馬を軽々と持ち上げてくるとは・・・

「で、あてはあんのか?」

「・・・」

「おいおい、ただここに来たってんのか?目的はどうしたっての!」

目的はジャイロを探すこと・・・だが、今は夜、竹林は暗く、ここはどこだかわからない。

「ここはどこなんだ?」

「おそらく、永遠亭の近くだな。あの紫のやつ、空間で変なところに移動させやがった。とりあえず、あそこの主の永琳とは話したことがある。・・・行ってみるか?」

僕はうなづいた。

永遠亭というのがどんな場所だか知らないが、名前の感じ的に地霊殿とは違う和の館なのだろう。

 

「いいですか?ジョニィさん。地上に行ったら、まずは白玉楼に行ってください」

 

確かさとりは僕が出ていくとき、そんなことを言っていた。

白玉楼・・・ここもまた、僕の知らない場所だ。

「ジョニィ、少し待て!」

俺は馬の足を止める。

階段の先に人影が見える。あれは・・・バニーガールていうやつか?カジノで見たが、そんなやつがここには普通にその姿で生活しているのか?

「あれは誰だ?優曇華か?」

「ウドン・・・何?」

あのウサミミの女はウドンという名前らしい。

彼女は手を銃のような形にして、銃弾のようなものを放っていた。

その先にいたのは・・・ネズミか?だが、ネズミにしてはどこかおかしい。オーラのようなものが見えるような・・・

俺は隠れて爪弾の準備をする。

「よぉ!久しぶりだな、優曇華!」

ここまでの隠密な行動を無視するかのように、茂みから歩っていく勇儀はウドンに向かって手を振る。

「な、勇義さん!離れてください!」

「おいおい、ネズミに苦戦してんのか?」

ウドンはその言葉に頷く。

「このネズミは普通とは違います。一回、永遠亭の中に入って話しましょう。・・・そこの馬乗りの方も隠れてないで入ってください」

気付かれていたようだ。

良く見たら、馬の頭が隠れていなかった。

「名前はいいですから、今は避難してください!」

 

ウドンの話によるとここ最近、この永遠亭の近くの竹林では謎の能力を持ったネズミが大量発生しているようだ。

ネズミはときに大砲のようなものを見せ、その砲口から毒のついた弾を飛ばすという。そしてそれに触れると、そこから肉が溶け、何発か撃ち込まれると完全に溶けきってしまうようだ。

ここの主、八意 永琳はこのネズミの毒のワクチンを作ったが、このネズミは一匹一匹が違う成分の毒を持っているため、そこまで効果的ではないらしい。

毒が廻るまでの時間を延ばすのが限界のようだ。

そこでウドンはこのネズミの討伐を頼まれたのだが、数が多すぎるせいで苦戦していると言っていた。

 

「何とかできないですか?」

「・・・私の力じゃ殺せたとしても・・・ね」

勇儀が筋肉質の大男三人を再起不能にさせたのは聞いている。

そしてこの人が強いのは地霊殿で何度も聞いた。きっと、細かい作業は苦手なんじゃないか?

「そっちの方は誰ですか?」

「僕はジョニィ・ジョースター。ジャイロを探しにこの世界に来た」

というよりは、迷い込んだという方が近いか。

「そうだ!こいつなら、ネズミの討伐くらい余裕だと思うぜ。こいつの爪、銃弾になるんだよ!狩りとかお似合いじゃんか!」

「私のものと似てますね。とりあえず、あの階段から登ってくるネズミを殺すことが第一です。ジョニィさん、お願いできますか?」

「・・・できるだけやってみよう」

僕は馬から降り、指をかまえる。

「タスクッ!」

そしてタスク(act.1)を階段の下で待機させた。タスクにネズミの来る方向を教えてもらい、自分はその方向に爪弾を撃ち込む。

「チュミミッ!」

タスクは感じ取ったのか、すぐにその方向を指差すが、

 

パシュンッ!

 

ウドンの言っていたネズミの攻撃によって、タスクは真下に落ちる。

「タスクッ!!・・・ぐぁッ!」

スタンドへのダメージは自分にも来る。

タスクの左腕に当たったため、俺の左腕が溶け始めた。

「これが・・・こいつらの能力か」

「大丈夫ですか!」

すぐにウドンが僕の手当てをしようと、その左腕に触れようとした次の瞬間、ウドンと俺の間を元凶の銃弾が通り、ウドンの髪を少し削り取った。

「あ、危なかった・・・。もしも、あと数センチ近づいてたら」

「おい、見ろッ!階段を登ってきてるぞ!」

僕たちが少し目をそらした瞬間、ネズミはスタンドを背負い階段をかけ上がってきた。

もしも、僕たちから逃げ切っても、扉が閉まっているため侵入されることはない・・・と思っていた。

さっき、僕たちの間を通りすぎた銃弾は扉を溶かしているではないか。扉にはネズミ一匹が余裕で通れるくらいの穴が出来上がっている。

「act.2!」

僕は右手の人差し指の爪を扉に向かって放った。

「何やってるですか!?ネズミはまだそこまで到達してないですよ!?」

「いや、これでいいんだ」

爪弾によってできた穴はネズミの作り出した穴の横まで移動する。そして、そこから出た爪弾によってネズミの動きを止めることに成功した。

「す、すごい・・・」

「ただこれを使うと、数分は爪が伸びないからな。この屋敷にカモミールとかないか?」

「たぶんあったと思います!昔、師匠が集めてたんで」

俺は残り4発で、ネズミ4匹を狙い撃つと、一度敷地内に戻った。

act.2の効果が発動している間は、確実に仕留められる・・・はずだ。当たらなくても、穴から狙うことができる。

「・・・今、カモミール持ってきます」

「できれば、カモミールティーで・・・」

 

爪は回復した。ただ、出し方がカップではなく、湯呑みだったのが少し妙だった。

まぁ、この屋敷自体が日本の『和』の文化を出しているため、仕方ないだろう。

そして僕の左腕の一部は溶けたままだ。

「・・・で、ネズミの方は大丈夫か?」

俺は階段の上から下を見る。ネズミの死体すらもそこからは無くなり、ネズミの気配は完全に無かった。

「あ!ジョニィさん!大変です!」

俺はウドンの声を聞き、その方向を見た。

屋根の上にネズミが登って、スタンドを出していたのだ。

砲口はこちらに向いている。今にも銃弾を放ちそうだった。

「タスクッ!」

僕がスタンドを出したと同時に相手は銃弾を放った。

僕は銃弾を避けるために、一度体勢を低くする。

「ジョニィさん!銃弾が跳ね返ります!」

僕は回転の力で、空中へ飛び上がる。

一発目は完全に避けきったが、ネズミは二発目を用意していたが・・・

ウドンの放った銃弾が、ネズミの急所を貫いた。

「ナイス!ウドンッ!」

「う、ウドン!?私は優曇華ですよッ!」

「そ、そうか。すまない、優曇華」

「本名は鈴仙・優曇華院・イナバです!」

 

ネズミは金色の光と共に、消えてしまった。

ンドゥールのときと同じだ。

この光は天空へと続いている。もしかしたら、この光をたどることができれば・・・

「天国にいけるかもしれない・・・と?」

「うわッ!・・・誰だお前は!?」

俺はいきなり耳元で聞こえた男の声に爪弾をかまえる。俺の後ろには十字架と白髪のボウズが光る男が立っていた。その後ろには、傘をさした桜髪の女が立っている。どうやらボディーガードの男のようだ。

「ここが永遠亭ですか。あなたの気になっていた場所ですね?」

ボディーガードの男は僕や優曇華の方を一度も見ずに、傘をさした女を永遠亭に入らせると、扉の前で後ろで腕を組み、やっと僕たちを見た。

 

「君は・・・天国に行きたいのかね?」

 

男は僕を見て、そう呟いた。



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妖夢と酒

活動報告でも話した通り、最近Twitterを始めました。

もちろん、家族や友達にはこの小説を投稿しているのさえも秘密にしているため、Twitterを始めたことを話してませんがね。
そのせいか、全く話す相手がいない。そして使い方がわからない。

そのせいか「このボタンは何?」という状況が続いてます。

俺のアカウントを教えたくても、何を教えれば見つけることができるのか。
とりあえず駿我という名前のジャイロの口がアイコンのアカウントをフォローでもしてください。

今回もあらすじはなかった・・・。


この前の事件の結果、人里の警備の人間から報酬としてこっちの金を少し貰うことができた。

この金は小傘に渡してくれ、と言ったが小傘が

「ジャイロさんの助言もあってのことでしたし」

と言ったため、俺も貰うことになった。病気以外なら何でも貰う・・・なんてこと言ったがこれはどうだが・・・。

「・・・あそこのうなぎ?ってのでも食うか」

いい感じに、店があったため、そこで金を使うことにした。昼間と夜遅くにやっているらしい。

ここに来てから、何度もあの店を見ているが、何かしらの事件に巻き込まれるため食べる機会がなかった。

 

「幽々子様は私よりもあの天国、天国言ってるやつの方がいいんだよ、どうせ、力だよねー。ち、か、ら!」

「妖夢さんも良い剣術の腕を持ってるじゃないですか!それに炊事や洗濯なら勝てませんって」

「それがアイツ、そう言った家事も余裕でこなすの!何て言うか、彼の幽霊が手伝ってるって感じ?二人で仕事をこなす的な?」

店内から女二人の声が聞こえる。

俺は理解した。この声はあの幽霊がたくさんいる屋敷にいた庭師の妖夢か。

そしてアイツというのはプッチのことだろう。

「お、いらっしゃい」

俺は思いきって暖簾をくぐった。そしてカウンター席の妖夢の横、一つとばして座る。

「・・・妖夢さん、ちょっと静かにして貰ってもいいですか?他の客に迷惑だから」

「いいよ~全然」

妖夢の前には酒の入っていた瓶が何本か置いてある。相当飲んでいるのが見てわかった。

そして妖夢は俺に気づくと、すぐに席をつめた。

「聞いてくださいよ、ジャイロさんッ!あのボウズ頭がね~!」

「・・・店主、うなぎをくれ。あの暖簾に書いてあった」

俺はピンク色の髪をした女店主にうなぎを頼む。

「了解。・・・そういや、この人と知り合いですか?」

「知り合いだよ~。前に助けてもらったのね、アイツに襲われてるところを」

襲われたと聞き、店主はすぐに振り返った。

「襲われたって?大丈夫ですか!?」

「あー、大丈夫大丈夫。ちょっと、後頭部ぶつけたくらい」

それにしても、本当に酒臭い。こんなに飲んで大丈夫なのだろうか?これでも、あの家に仕えているものなのだろう。

「アイツに剣かまえたらさ~、変な幽霊出してきてさ。それで畳ごと天井にぶつけられてさ~、ヒック。もう痛いったらありゃしない・・・ちょっと、ジャイロさん!さっきから黙って、何とか言ってくださいよ!」

本当に酒癖の悪いやつだ。

今度は俺の頭を帽子の上から撫でてきやがった。もしも、頭のことを何か言われるとキレる図書館のアイツにこんなことしたら、こいつ殺されるな。

「はい、うな重一つ!ついでにビールも付けましたよ!」

気前の良い店主は俺の前にうな重とビールを置く。ビールはサービスとして、うなぎというのはこんなものなのか?

「あれ?ジャイロさん、もしかして・・・うなぎ食べたことないんですか?うまいですよ、幽々子様なんて、すぐに食べちゃうんですから」

「本当に困りましたよ。ものの数分で仕入れた分、全てたいらげちゃったんですから。まぁ、それなりの代金は払って貰ったので良かったのですが」

俺は恐る恐る一口運んだ。

「う、うまいじゃねぇか!これッ!ここ最近の食事の中で一番うまい!」

旅の間はあまりウマイものが食えないことがあった。街に行ったときはジョニィとウマイものを食うこともあったが、これはそれぐらいに匹敵するものだった。

俺はその美味しさのあまり、思わず立ち上がってしまった。

「そんな美味しかったですか!?あ、ありがとうございます!」

店主も思わず、お礼を言ってしまうくらいだった。

俺は箸を止めることがなく、ペロリとたいらげてしまった。

「店主!おかわりだ!もう一杯くれッ!これはウマイッ!」

「はいよッ!それとあまり店主って言わないでくださいよ、私の名前はミスティア・ローレライっていいます」

「そうだよ、みすちーって呼んであげて!」

「みすちーか。みすちー、おかわり」

「・・・はいよ!」

 

あれから数分後、二杯目を食べ終えた俺は寝てしまった妖夢を起こそうとしていた。

「・・・もう閉店時間だよな」

「はい。またいつでもやってますので・・・。あの、できたら、妖夢さんを連れてってくれませんか?今日の分の妖夢さんが飲んだ分は後で払ってもらえばいいので」

俺は少し考えたあと、勘定の皿に報酬でもらった分、全てを出した。

「これでこいつのも払えないか?」

「・・・ギリギリ足りてますね。いいんですか?」

「こいつが起きたら、貰うからいいさ。つりはいらないぜ。」

俺は出入り口の戸を開けると、みすちーの顔を見て、

「ごちそうさまでした。また金が入ったら来るぜ!」

と言い、外に出た。

「あ、ありがとうございました!」

みすちーの綺麗な声が外にまで伝わっていた。

・・・さて、こいつをどうするか。スースーと寝息をたてながら寝ているこいつを起こすのもどうかと思うし、ここから白玉楼まで送るのは容易いことだ。(あの急な階段以外はな)

俺は馬に妖夢を乗せると、馬を歩かせた。もちろん、俺は乗っていない。

「・・・あれ?ここは?」

「やっと起きたか」

「ジャイロさん?これは・・・」

「とりあえずお前はそこに乗ってろ」

あまり俺は女を馬に乗せたくないんだがな。

なぜなら、勝利の女神が逃げちまうからだ。そして女神が嫉妬しちまう。

・・・まぁこんなときくらいは許してくれ。

ここから白玉楼までは近く、案外遠くはなかった。

馬を走らせて・・・だいたい5分か?今の速度だと、20分はかかりそうだけどな。

「ごめんなさい」

「?」

一人言か?何かあやまっている・・・。

「幽々子様・・・ごめんなさい・・・

 

 

妖夢が見ていた夢の話。

これは妖夢が幽々子に仕え始める数年前の話。

まだ若く、妖夢の師匠であり、爺である妖忌から剣術を教わっていた頃の話だ。

妖夢は家事の一つとして、幽々子の茶碗を洗っていたとき、目の前を通った幽霊に驚き、茶碗を割ってしまったことがある。

妖夢は幽々子に言わず、隠そうとした。

だが、そこを妖忌に見つかり、妖夢は何十分も怒られたあげく、何週間も連続で修行をすることになったのだ。

「妖夢、形あるものいつかは壊れる。だが、その真実を隠してはならない。壊れたことで幽々子様は悲しむだろう」

「・・・」

妖夢の目からは今にも涙がこぼれそうだった。

妖忌はそれを見ると、懐から取り出した財布からお金を渡した。

「今日の修行はこれで幽々子様のお茶碗を買ってきなさい。もちろん、一人でな。そして頭を下げてあやまりなさい」

妖夢は涙を拭くと、すぐに白玉楼から出た。

「・・・本当にそれでいいのかしら?」

幽々子は最初から、これを見ていた。

「何が言いたいのですか?」

「その修行は甘えになるのではないのかしら?失敗したら、誰かが助けてくれる・・・という」

「・・・孫を持ってみるとわかりますよ。この気持ちが」

「・・・難しいことを言うわね」

妖忌は割れた茶碗を持つと、全ての破片の裏側を見せた。

そこには『ごめんなさい』と書かれていた。

幽々子はそれを見ると、その破片を箱の中に入れて、部屋まで持っていった。

 

 

「着いたぞ」

俺は馬の背中の上で寝たままの妖夢を持ち上げると、白玉楼の扉を開ける。

今日、白玉楼には誰もいないらしく、そのため、一人残された妖夢は酒を飲みに、あのみすちーの店に行ったのだろう。

俺は妖夢を真正面に見える部屋の畳の上に置いた。

「ふぇ・・・あ、ありがとうございます」

妖夢は起きたのか、縁側に座って靴を履いていた俺に礼を言う。

「それよりも、何か空気がおかしくないか?」

俺はそんなことよりも、この空気の重さにどこか違和感を得た。この宙を舞う幽霊なんかのことではない。

それ以上の何かがこちらに向かってきている。

俺がその違和感に対抗するように鉄球を握った次の瞬間だった。

 

ガオンッ!

 

その何かは俺の横を過ぎ、聞いたことのない音を出して壁に大穴を開けた。




次もジャイロの回じゃないかな。

まぁ次の敵は・・・あの可愛い名前とは真逆の性格をした男ですよ。


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立ち向かう二人

前回のあらすじ。
ジャイロは酔いつぶれた妖夢を白玉楼に送る。すると、そこにはあらたなる敵が待っていた。

そしてジョニィは永遠亭でプッチと会っていた。

白玉楼って打ち込むとき、「はくぎょく」よりも「しらたま」と打ち込んだ方が早かった。


俺の横を過ぎたそれは壁を貫くと、轟音と共に、畳をえぐり外へと出ていった。

俺は鉄球を握ると、静かにそれの動きを集中し見ていた。

やがてそれは庭の一点に止まると、本当の姿を現した。

紫色の頭に黄色の目。白い牙を剥き出したそれの口からはそいつの足らしきものが出され、さらにそこから人間までもが姿を現した。

「お前が、DIO様を殺したやつだな?」

「またあの吸血鬼関連か・・・お前は何者だ!」

男は首をコキッと鳴らすと、

「我が名はヴァニラ・アイス」

と名乗り、アイツのスタンドの口の中に入った。

「次こそはお前を暗黒空間にバラまいてやる」

男はアイツのスタンドと共に目の前から消えると、俺の方に突っ込んできた。

俺は鉄球をしまうと、この石畳のそこらじゅうに落ちている小石を拾ってヴァニラに向かって投げた。

 

ガオン!

 

その小石は一瞬で消えた。いや、消された。

もしも鉄球を投げていたら、あの小石同様に、二度と帰ってこなかっただろう。

「妖夢!起きろ!妖夢!」

俺は寝ている妖夢を無理矢理でも起こさなければならない。もしもこいつも一緒に消えてしまったならば、誰がこの男とスタンドのことを話すのか。

そしてこいつが消えてしまったなら、この屋敷の主、幽々子に見せる顔がない。

アイツの動いたところは砂ぼこりが舞うため、そのスタンドの形が見えるが、アイツがあの空間内にいる限り、俺たちはダメージを与えることはできない。

アイツが出てきたところを狙うしかないのか。そもそも、あの空間内にいることで無敵な状態が保たれるのなら、出る意味はないんじゃないのか?

もしも俺らの動きがわからなくても、むやみやたらに攻撃すればいつかは俺らを殺すことも容易いはずだ。

 

ガオン!ガオン!ガオン!

 

・・・そしてさっきからうるさい。俺の心の声をを読まれたか?

「う・・・朝ですか?」

爆睡していた妖夢が起きるくらいの轟音だ。姿を隠しきれていないと言うべきだ。

「ようやく起きたか。侵入者だ」

「侵入者ッ!?・・・どこですか!?」

妖夢は俺の背中から跳び降りると、自身の背中の鞘から刀を抜こうとするが、妖夢の装備していた刀はここにはない。

「あ、あれ?刀は?」

「・・・それが、あの部屋のテーブルの上に置いたままなんだよな」

「え?」

それに気づいたときにはもう遅く、その刀はヴァニラの攻撃範囲内へと入っていた。そして、

 

ガオン!

 

その刀の刃の部分は粉微塵になって消えてしまった。

「あ、あぁ。わ、私の、刀が・・・」

「・・・すまない」

妖夢は膝から崩れ落ちて泣き始めてしまった。

刀がとても大事はものだというのはわかっていた。

プッチによって気持ち悪い形へ変えられても、それをずっと見て、これ治るのかなと考えていたのはすぐにわかった。

「今は刀より命だ。アイツから逃げることを」

「逃げる?何を言ってるんですか!私にはあともう一本あります!今消えたのは楼観剣!私にはまだ白楼剣が残ってます!」

妖夢は畳の上を走ると、間一髪で助かった白楼剣を手に取り、次のヴァニラの攻撃を避けた。

「アイツ、女のクセにジョニィより度胸あるんじゃねぇか?」

さすがに言い過ぎな気もするが、ジョニィもジョニィだ。会ったときよりは大分マシになったがな。

そしてヴァニラが周りを確認するために姿を現した次の瞬間、

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉッ!」

「な、何だと!?」

妖夢は目の前に現れたヴァニラをその刀で切った。

「ディ、DIO様ぁぁぁぁッ!」

真っ二つに切れたヴァニラは大声で叫びながら、金色の光になって消えてしまった。

「斬れるものなど、あんまりない・・・」

妖夢は刀を鞘にしまうと、その光が天へ向かうのをじっと見ていた。

そのときの妖夢の後ろ姿はまるで、物語に出てくる伝説の勇者のような立ち姿だった。

 

白玉楼の壁や床や天井にはポッカリと穴が開き、それのせいで妖夢が幽々子に怒られるのはまた別の話で。

 

 

その男からはこれまでの敵とは違うオーラが滲み出ていた。

余裕げな表情は僕と優曇華を震えさせた。

「あなたは何者ですか?妖夢はいないのですか?」

妖夢?優曇華の友達なのだろうか。

「彼女なら今日はいません。私はボディーガードとして、幽々子様についてきました」

「僕からも一つ聞きたい」

僕は足を引きずりながら、ボディーガードの男に近寄る。僕は一つ聞きたいことがあったのだ。

「アンタから溢れる、その殺気はなんだ?」

「殺気?・・・君は何を言っているのかね?」

男は僕の質問を軽くあしらうとまるで、瞬間移動でもするかのように、ピンク色の髪をした彼女の後を追った。

「それでは失礼するよ」

 

数分後、

「・・・どういうことですか?」

僕はあの男のことが気になっていた。いくら、ボディーガードと言えど、彼から滲み出続ける『殺気』は怪しい。

そのため、僕は優曇華と共に男の後を追った。あの瞬間移動のことも気になる。

「あの男から溢れる殺気・・・まさしく、何かこの後起こるはずだ」

「確かあの人は本当のボディーガードですよ。妖夢も言ってましたし」

「・・・そう言えばその妖夢って誰なんだ?」

「妖夢は私の友達で、あの桜髪の女の人が住んでいる白玉楼の庭師です。それで前に薬を売りに行ったとき、あの男の人のことを聞いたんです」

「へぇー」

僕は優曇華と話ながら次の角を曲がる。すると、すぐそこにやつが立っていた。

「うぉッ!?」

「また会いましたね。」

男は軽く会釈をすると、優曇華の方を見た。

「トイレに行きたいのですが。ここのトイレはどこにありますか?」

「え、あ、えっと、すぐそこを左に曲がったところにあります」

「ありがとう」

男が横を通り過ぎただけでも鳥肌が立つ。

僕は気づくと、男に指を向けていた。

「直感を頼りに・・・」

「待ってくださいッ!」

「タスクッ!」

爪弾は僕の指から放たれると、男へ一直線に飛んでいく。

だが次の瞬間、男の影から現れたスタンドによって弾かれてしまった。

「君がさっきから私を警戒しているのは、会ってすぐにわかったよ。」

次の瞬間、男は僕の前に現れて、自らの足で僕を庭の方へ蹴り飛ばした。

「ジョニィさん!」

「ジョニィ・・・か。私の名はエンリコ・プッチ。よろしく」

男のスタンドは僕の胸ぐらを掴み持ち上げると、近くにあった池に投げ捨てた。

「私は幽々子様にあって、罪を償った。人を殺すことを二度としないと決めた。・・・喧嘩を売られない限りはね」

男はスタンドをしまうとトイレへと歩っていった。 僕はそれをただ見るしかなかった。

「大丈夫ですか!ジョニィさん!」

「うぅ・・・クソッ!」

僕は水面を思いっきり叩いた。

不意打ちをしたのにもかかわらず、相手に気づかれ、そして攻撃をされた。・・・完敗だ。

何よりも、爪弾をあんな軽々と弾かれたことに敗北感を与えられた。

「うおぉぉぉぉッ!!」

僕は彼に向かって爪弾を十発撃ち込んだ。

「・・・まだやるのか」

「落ち着いてください!ジョニィさん!」

僕は優曇華によって止められた。

爪弾はまた、男のスタンドによって弾かれ、屋敷の壁や障子や庭の岩を破壊した。

「・・・ふっ。」

男はこっちをチラっと見て鼻で笑うと、トイレへと入っていった。

「ッ!」

「これ以上、やめてください!彼は悪者じゃないです!」

「・・・すまない。・・・冷静じゃなかった」

僕は優曇華によって、池から引っ張り出され、ビショビショの身体を太陽に見せながら、永遠亭の中へと入っていった。

 

「・・・あの爪弾とかいう弾。なかなかの威力だった」

プッチはトイレの中で、自らの手の甲を見た。

手の甲には擦り傷や切り傷があり、そこからは血が出ていた。

プッチはトイレでその傷を洗い、ハンカチで拭く。そのときに、スタンドのメイド・イン・ヘブンの能力が発動し、傷は回復していた。

「この能力、傷を回復することも可能だ。・・・しかし、彼は復活するDIO様の敵になりそうだ。始末しなければならないか」

 

プッチはトイレに用など無かった。

入り口であった男、ジョニィの反応を見るためだけに幽々子から離れたのだ。

その理由は彼もまた、ジョニィのことが気になっていたからである。

 

「君もまた、オーラを消すのは苦手なようだ。黒いオーラをね」



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特異点

今回はプッチ率が高いです。

前回のあらすじ
永遠亭に来たジョニィは、そこでエンリコ・プッチに会う。
ジョニィは彼の『悪』に気づき、爪弾を撃ち込むが、逆にプッチのスタンドによって返り討ちにあってしまう。

そしてプッチは新たなる計画を練り始めていた。


「あら、どこに行ってたのですか?」

私が部屋に戻ると、幽々子様が相手の方と話していた。

その話を止めるように入ったのは悪かったな。

「トイレに」

「そう。部屋の前から気配が無くなったから、少し心配したわ。主を置いて帰っちゃったのかなって」

「そんなことしませんよ」

「わかってるわ。・・・で、プッチ。この方があなたの身体を診てくれる医者の永琳先生。どんな病でも治してくれるわ」

「そんなに言わないでよ。でもだいたいの病気なら、治してあげれるわ」

彼女の口調から、幽々子様よりも年上だろう。この人も何年生きているのかわからない。そして。この前に座る長い銀髪に、赤と青のツートンカラーの服を着た女性もだ。

「で、どこが悪いんだ?」

「・・・」

私は幽々子様にはすぐに言えたのだが、この女性には言えない。

言ってはならないと言った方が正解か。

私は死ぬ前に身体中の細胞を破壊されている。そのせいか、今も細胞が悲鳴をあげるのがわかるのだ。特に一番障害の残った部分、肺は深呼吸をすると、身体中に激痛が走るほどだ。

ここがどんなにすばらしい技術を持っていたとしても、細胞全てを治す薬など有るわけがない。

「・・・なるほどね」

何かわかったかのような返事をすると、部屋の奥に続く診察室から錠剤の入った瓶を持ってきた。

「これを一日三回、食後に飲んで、十分な睡眠を取りなさい。そして、幽々子はこの子をあまり働かせないように。そうね・・・もしも帰りに不審者とか現れても、彼ではなく、あなた自身が戦いなさい。わかった?」

「わ、わかったわ。」

幽々子様は大きく頷いた。

 

 

「アイツので来ていたのか・・・」

僕と優曇華は隣の部屋から、話を盗み聞きしていた。

僕はあの幽々子という女の方で来ているのだと思っていたが、プッチの方で来ていたというのを知ると、罪悪感が生まれてきた。

「それでもあのスタンド、僕の爪弾を軽々と弾いたぞ。そんなことができるのか?」

「・・・ジョニィさん。やっぱり彼は良い人なんじゃないですか?」

「いや、彼はどこか悪いことを考えている。絶対に・・・頭のどこかで」

優曇華は暖かいお茶を湯飲みに注ぐ。

今着ている服を着るとき、彼女が手伝ってくれた。何しろ、僕はこのような東洋文化な服を着たことがなく、それに下半身が不自由のため、誰かに手伝ってもらわないと無理だ。

地霊殿にいたときは、なぜかさとりが僕の着ているような服を二着持っていた。そして怖いことに、なぜかジャイロの服もあった。

「そう言えば、左腕は大丈夫ですか?薬の副作用というか、逆に腫れてたりしませんか?」

「あぁ。そのことならもう大丈夫だ」

そのとき、横の部屋で障子の開いた音と足音が聞こえてきた。どうやら、二人は帰ったらしい。

「!・・・スローダンサーは!?」

「あの馬ですか?あの馬ならたぶん敷地内にいると思います。私と同じ、師匠の弟子のうさぎに頼みましたので」

「・・・ならいいんだが」

僕は安心して、お茶を一口飲んだ。

そこには茶柱が一本立っていた。

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

「大丈夫ですか?・・・あの人の前で我慢しなくてもいいのですよ?医者なんですから、正直に答えないと医者にも迷惑です」

「・・・すまない」

少し歩いただけでこれだ。肺は急にスタンドを出したことで悪化している。

「早く帰って、ご飯を食べましょう。それで薬を飲んで」

「・・・すまない」

幽々子様の言葉に対して、謝ることしかできなかった。

今の私を見たら、DIOは笑うだろう。

『どうした、プッチ。お前はその程度の男なのか?』

そんなことを言いそうだ。

「それにしても、その人大変そうだね」

案内人のウサギが心配する。

・・・ウサギにすら心配されるとは思わなかった。

「まぁ、師匠の薬は万病に効く薬ウサ。心配しなくても、ちゃんと飲んでいればちゃんと治るウサ」

「えぇ。ちゃんと飲んでいればね。・・・わかりましたか?プッチ」

「・・・はい」

 

私は死んだ直後、空間に送られた。

そこにはDIOやDIOの仲間が色々と話していた。他にも違うチームの人間が集まっていた。

そこに、上からある女性に命令された。

『これから幻想郷というこの世界とは違う世界で、異変というなの革命を起こそうと思っている。そこで私に力を貸してくれないか?』

プライドのあるDIOはそれに、

「何をいっているのか私にはわからない」

と、拒否した。

「なら、もしもこの案に乗ると言うのなら、生き返らせてやろう。そして、この依頼を達成し、見事、革命が成功したなら、君たちの願いを一つ叶えてやろうじゃないか。倒された者への復讐でも、不老不死でも、金銀財宝でも何でもいい」

「・・・よかろう。」

DIOはそう言い、立ち上がる。他の人間も立ち上がり、上のものに従うものはそれに着いていくように立ち上がった。

「どうしたんだい?プッチ」

「君も願いがあるだろう?天国に行きたいという願いが」

「・・・あぁ、そうだな」

私はそこで立ち上がってしまった。

 

しかし、状況は変わった。

最初は私自身が天国に行くというのを願い事にした。だが、今はDIOの復活に変わったんだ。

DIOが死んだというのを新聞で見たときは、哀れみと共に悲しみが生まれた。

そこで私は考えた。もしも、DIOなら復活しても、新たな力に目覚め、私たちを助けてくれるかもしれない、と。

「DIO・・・」

「ん?どうかしたウサ?」

思わず声が出てしまったようだ。

「また調子悪いなら、戻るけど」

「すまない、大丈夫だ」

「まぁ、もう出口だし、あとは帰るだけウサ」

ウサギは手を振ると、竹林の中に消えていってしまった。

 

 

「ジョニィさん」

「ん?どうした?」

僕が馬に乗ろうとすると、優曇華に止められた。

「今日は泊まっていってください。服もまだ乾いてないですし、ここらへんは泊まる宿もないですから」

「・・・わかった、泊まることにするよ。それと何だが、新聞とかないか?ちょっと前の新聞とか」

「あ、それなら昨日、姫様が燃やしちゃいまして・・・今日のならありますけど」

姫様?この家の主人はあの医者じゃないのか?

「今日ので大丈夫だ」

「じゃあ、新聞取ってきますね」

優曇華は立ち上がり、部屋から出ていく。

そして、それと入れ替わりで誰かが部屋の障子を開けた。

黒髪を足まで伸ばした女。東洋の十二単のような着物を纏ったその女はまさしく、姫と言っても・・・

「あれ?優曇華見なかった?」

違った。姫としての美しさは全くない。寝癖だらけの髪に、知らぬ人の前で腹をかくその姿は姫と言うにはほど遠い存在だった。

「優曇華なら、新聞を取りに・・・で、あなたはいったい」

「あ、病人?私は蓬莱山 輝夜。この屋敷の主よ」

「・・・はぁ!?」

思っていた姫とは違う。

戯言はいくらでも着くことができる。そんなわけがない。

姫ってのはこう、綺麗な美しさのあり、その・・・

「姫様!人前にそんなだらしない格好で!」

新聞を取って、部屋に帰ってきた優曇華に怒られた。今確かにこの女を「姫様」と呼んだよな・・・

「・・・幻滅したかしらね。そうよ、私が優曇華の言う姫よ。ほらほら、現実と違って幻滅しなさいよ!」

この憎たらしい女はあの男との戦いを忘れるくらい、僕をイラつかせた。

もしも、敵としてレースでいたなら、爪弾を何発も撃っていただろう。

しかし、優曇華の話だと味方。撃ち込んでケガなどさせたら、この屋敷全体と敵対関係を結ぶということになる。ジャイロにも迷惑をかけるに違いない。

「ッ!・・・すまない、失礼だったな」

 

 

「ただいま~。妖夢~」

「ゆ、幽々子様ぁ~!」

屋敷の奥から飛んでいくように幽々子達の方へ行った妖夢は幽々子に抱きつくと、赤子のように泣き出してしまった。

「もう、妖夢ったら。それじゃあ強くなれませんよ」

「うぅ、ごべんばざいぃ。白玉楼がぁ~白玉楼がぁ~」

幽々子はそれを聞き、妖夢から白玉楼へ目線を変える。

幽々子の見た画には、穴だらけの白玉楼があった。

俺はその光景を見ていたからどうしてこうなったのかわかるが、普通の人間ならまず理解できない。

「・・・妖夢。どうしてこんなことになってるの?」

「じ、侵入者にやられまじたぁ~。ごべんばざいぃ。うぅ・・・。」

妖夢はその日、日が昇るまで幽々子に怒られた。そして次の日から白玉楼は数日間、工事のために入れなくなってしまったという・・・。

 

 



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爆弾魔を倒せ!

今回の話。
金の尽きたジャイロは射命丸 文からある情報を受けとる。そこには『報酬』の二文字が書かれていた。

正直、今回は四部のネタバレとなっているので、四部を見たことない方は戻った方がいいですよ。
まぁ、七部主人公の幻想入り小説を見ている方に、四部を見たことないって方はまずいないでしょうけど・・・ね。



俺はまた金が無くなり、途方にくれていた。

 

報酬でもらった金は全て使いきり、一文無しの状況だった。どこかの記者は俺から情報を買うだけ買って、金を置いてかないしな。

「あやや。また会いましたね」

噂をしていれば、あの天狗か。

「なんだ?もう情報は無ぇよ」

「違いますよ。今日はむしろ情報を届けに来ました。お金のないジャイロさんにはとっておきの情報ですよ」

天狗は俺に一枚の紙を渡す。

「紅魔館に現れる爆弾魔を終え・・・?これのどこが、俺にとっておきの情報だってェ?」

「ここ読んでくださいよ」

天狗はその紙の下から三行目を指差してなぞる。

「何々?爆弾魔を捕まえた方には報酬として、それなりの金額を払いましょう。・・・だと!」

「はい。あの館のことですから、報酬はたんまりと貰えますよ!例えるなら、一週間三食うなぎでもおつりが来ますよ」

「それは飽きるが・・・しかし、これはやらなきゃな。サンキュ、文。取材料はチャラにしてやるよ」

「あやや。それは嬉しいですね(はなから払う気はありませんがね)」

「よし、それじゃあ行くぞ!」

俺は馬に飛び乗ると、すぐに紅魔館の方へ向かった。

図書館に行くことがあるため、道は聞かなくとも覚えている。

「あ、待ってくださいよ~」

 

数十分後、俺と文は紅魔館にたどり着いた。

門の前に愛馬を止め、重たい扉を開けて中に入る。

門番はいつも通り、門の横で壁に寄りかかって寝ているため、一回一回何か許可を取らなくて済むのだ。

そして、文は俺が扉を開けている間、上から門を越えて入り、俺が入るのを待っていた。

「そういえば、ここの主人の書斎や部屋に入ったことはないな。図書館や倉庫には入ったことがあるが」

「逆に倉庫の方があり得ないです。まずはこの依頼についての話を聞きましょう」

この館内はとにかく迷路のような空間が延々と続いていると言っても過言ではないくらい広い。

ここに勤めているメイドはこの空間を知りつくし、迷うことはないらしいが、普通の人間はまず入るとすぐに迷ってしまうだろう。

そして文の情報によると、この館内のく空間の何ヵ所かはおかしいことになっているようだ。同じところを何度も歩いていたり、ある扉に入ると、その向かいの扉から出るという現象が起きているというのも聞いている。

「とりあえず、咲夜さんを呼びましょう。・・・あ!ここに吸血鬼姉妹の秘蔵写真集が」

「買ったッ!」

それは一瞬の出来事だった。さっきまで誰もいなかったはずの目の前の空間にいきなり、メイドが現れたのだ。俺はこの女を知っていた。DIOにこの館を襲われたとき、ケガを負っていた女で、青に白い星が書かれた鉄球を貰ったのを覚えている。

女は『騙された』というような顔をすると、ため息をついた。

「なんだ、カラス天狗と・・・確か、ジャイロさんでしたよね?」

「あぁ、この紙を見てここに来た。」

俺は文が丸めて握っていた依頼の紙を元に戻し、咲夜に見せた。

「・・・確かにこれはお嬢様の字だわ。でも、ここ最近、人里や妖怪達にこんな紙を配るように言われたかしら」

「あやや。爆弾魔の前に、差出人不明の手紙ですか」

「手紙?お前の家の届いたのか?その紙は」

「詳しく言うと、受け取ったって感じですね。いつも通り、配達人が来て、何も言わずに渡して帰ったんですよ」

「・・・その配達人も怪しいな」

「とりあえず、お嬢様に聞いてみるわ。少し待ってて」

 

数分後、咲夜が帰ってきた。

彼女の能力は時を操る能力のため、移動は全て時の止まった時間で行う。そのため、瞬間移動のように俺たちには見えるのだ。

「おまたせ。この手紙、お嬢様は出していないみたいよ。でもここ最近、紅魔館に爆弾魔が現れるのは本当のことだわ。この前も館の一部を爆発させられたしね。まぁ、パチュリー様とその使用人が直してくれたから良かったけど」

使用人というのは、この前の東洋人、東方 仗助のことだ。そしてその能力は違う世界にいた頃のものに近づきつつあるという。

「ニョホ。面白くなってきたじゃねぇか~」

「・・・よく笑ってられる余裕があるわね。まぁ、報酬は出すって言ってたわ。美鈴と一緒に、門番でもしてれば出てくるでしょう」

咲夜は見下したような顔をすると、また姿を消してしまった。あの顔、ムカッ腹が立つぜェ~。

何て言うか、マウンティムを初めて見たときのような感情だ。

「それにしても、咲夜さん。何か急いでましたよね。何て言うか、私たちを相手にしていないみたいな」

「そうか~?俺には俺たちを嘲笑ってるようにしか見えなかったね。見下してるというかな~」

「まぁ、報酬は報酬ですよ!ジャイロさん、報酬は私の方が少し多めでいいですよね?ほら、情報料として」

「お前、それなら貰ってない分の取材料を要求するぜ!」

俺たちはそんなことを話ながら外へ出た。

「へぇ~。爆弾魔か・・・私のおもちゃになってくれるかな?その人なら」

そのときは、まだ誰かに見られているとしか思ってなかったが、そいつのせいで、地獄を見るハメになるとは思ってもいなかった。まさか、そいつがあの男と組むとは・・・。

 

門から外へ出ると、そこで門番をしている(寝ている)女が起きていた。

「話は聞いてますよ。爆弾魔をこらしめるってことですよね?もちろん協力します!」

女の名前は・・・確か咲夜が美鈴とか言ってたな。

それよりも、

「お前、額にナイフ刺さってんぞ」

「あ、抜くの忘れてました。これは咲夜さん流の私の起こし方なんですよ。肩を叩いても起きないからって」

「そうなのか。まぁ、よろしくな、美鈴」

「よろしくお願いします、ジャイロさん」

俺は握手を交わす・・・が、その握力の強さに思わず、「痛タタタッ!」

と声をあげてしまった。

「あ、ごめんなさい、大丈夫ですか?」

この服装からして、中国拳法を習得しているのか?

「手加減が苦手でして・・・」

「あやや。大丈夫ですか」

「指が折れるかと思ったぜ~」

 

門の前は一本の道が湖の方まで続いており、その道の脇には木が生い茂っている。

だいたいここにやってくる者はここを通らなければならない。

「お、今日はジャイロも門番やってんのか?」

例外として空を飛んでくるやつもいるが。

「あ、魔理沙さん!」

「今日も図書館に用だぜ~」

だいたいはこの門をくぐる。

爆発が起こっているのは館の敷地内のため、ここをくぐらないとならない。

人間の跳躍力じゃ、この壁を飛び越すことはできない。

「ん?おい、美鈴。爆弾魔ってのが妖怪という可能性はあるのか?または、妖精や魔女」

「それはあるんじゃないですか?さすがに人間って決まったわけでもないですし」

「じゃあ、なぜ俺たちは人間と断定して考えていたんだ?文、もう一度あの紙を見せてくれ!」

俺は文から紙を貰うと、その文をじっくりと読んだ。

そのなかには俺たちの判断を鈍らせる文が書かれていた。

 

『その人間は昼夜問わず、屋敷を爆発させる』

 

「・・・これが、答えか?」

「これをどっちと取るかが分かれ目ですね~。人間と書くことで他の種族がやっているということを隠すと考えるか」

「確実に人間がやっていると教えているのか、だな」

「?・・・もうわかりませんね、私には」

美鈴は俺たちの話に着いてこれそうにない。

もしも、この館の主人、レミリアが書いたとすれば、この文がどちらとしてとればいいのかがわかる。

「そもそも、人間に爆弾を作る技術なんてあるんですか?」

「俺は知っている。それに戦ったこともある。だが、そいつはもう死んだはずだ。俺はやつが死ぬ瞬間をこの目で見たからな」

俺はそう言い、自分の右目を指差す。

そして次の瞬間、

 

ドグォォォンッ!

 

爆発音が敷地内で轟いた。

「な、何だと!」

俺たちはその爆音を聞いてすぐに中へ入った。

玄関からは黒い煙が上り、火を吹くように、熱気が俺たちを包み込んだ。

「今までのと・・・威力が違う」

その煙の中から、人影が一瞬見えた。それはまさしく、

「吉良・・・吉影」

吉良そのものだった。

「ちょっと!ジャイロさんッ!」

俺は美鈴に止められたが、立ち止まってはいられなかった。

俺は煙を鉄球で起こした風で払うと、玄関から見える階段の先を見上げた。

そこには、あのとき見たスタンドと、あのとき見た男が立っていた。

「ククク・・・。やはり来たか、正義感の強い、そして、悪運の強い男だなぁ。ジャイロ」

「ニョホ。お前はまた、俺に殺されにきたのかァ?吉良 吉影」

余裕の笑いを見せると、鉄球を両手に握った。

「今度こそ、君を始末させてもらう!」

「返り討ちにしてやるぜ!」

 

「待ちなッ!」

 

聞いたことのある男の声が、燃えさかる玄関に響いた。

「君もまた、私の邪魔をするのか?・・・東方 仗助!」

クシで頭を整えながら、現れた仗助はスタンドで火のついた壁を近い場所から殴っていく。

その能力は今もなお成長し、火のついた壁までも、完全に修復できるようになっていた。

「俺がいる限りは、お前の好き勝手にはさせねぇ!」

仗助は階段の下に置かれた石像を踏み台にすると、吉良吉影に飛びかかった。



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爆弾と破壊

あらゆる二次創作で消えた、レミリアのカリスマ性を取り戻したい。
そう思ったジャイロは鉄球の回転をレミリアに教えることになる。

「レミリア!LESSEN5、確か、そうLESSEN5だ!」

果たして、黄金の回転を習得したレミリアは、遺体の揃った大統領を倒すことができるのか!?

※このあらすじは99%嘘でできています。
ちなみに1%はジャイロとレミリアが出てくるくらいです。


火の消された玄関先では・・・

 

「あっという間に玄関を包み込んでいた炎が消えましたよ!これはスクープですね!マジックや超スピードなんてチャチなもんじゃないですよ!」

文がその様子をメモに書き留める中、美鈴は入るか考えていた。

(この先で拳が交わる音が聞こえる)

美鈴はその音に興奮していた。今にも入ろうとしていた。

「美鈴さん。今は見守りましょうよ。きっと、犯人はジャイロさんが倒してくれますよ」

「ですが・・・」

「アハハ、美鈴はそんな天狗の言葉に立ち止まるの?」

かわいい声と共に玄関を突き破って、何かが入った。

二人は声でそれが誰かわかっていたが、それを止めるのは無理な話だ。もしも、止めるというのなら、命を差し出す覚悟で行かなければならない。

「・・・ヤバイですね。これ、ジャイロさん、死んだんじゃ」

「あやや、本当にマズイことになりましたね」

 

 

それは突然の出来事だった。

仗助と吉良の間に入ったそれは、二人を突き飛ばした。

「ッ!何だこいつは!?」

「う・・・こいつァ、グレートにヤバイですよ」

金髪の少女。赤い服に虹色の宝石のついた羽。

それは二人に勝る強い力を持っていた。

「あなたが、爆弾魔?」

少女は吉良に近寄ると、手のひらを吉良の顔の前に向けた。

「ッ!キラークイ・・・」

「ねぇ、返事してよ」

少女は吉良の首を掴むと、吉良を浮かせた。

「そ、そうだ!私が犯人だッ!や、やめてくれ!」

少女は吉良を離した。吉良はそのまま、地面に落ちる。

「ゲホッ!ゲホッ!何だ・・・こいつは」

「ごめんね。じゃあさ、私の友達になってよ」

「はぁ?何を言って」

「なって?」

「・・・はい」

吉良はその圧に耐えきれなかった。

その少女の狂ったような破壊のオーラに。

「アハハハハハハハハッ!私のおもちゃが増えたァ!楽しませてくれるよね?みんなァ?」

その笑いは俺達の心を凍らせた。

吉良は返事をした後、全くもって声を出すことなく、少女の下に倒れた。そして、少しすると目の色を変え、こちらに何かを飛ばした。

「ジャイロさん!グレートにマズイですよ!こいつァ!あれは追尾機能付きの爆弾です!」

「コッチヲ見ローッ!」

爆弾は永遠亭で見た。あのときは妹紅によって燃やされたが、今アイツはここにいない。そして俺の鉄球じゃ無力だ。

「ここは俺に任せてください!」

仗助はマッチ箱からマッチを取り出すと、それを指で弾いた。

「ヤツは熱を探知する!今、ヤツの狙いはそのマッチだ!マッチを追いかけ、上に飛んだ瞬間、ヤツの腹に拳をぶちこむ!」

仗助の考え通り、追尾弾はマッチに向かって飛んだ。そして腹が剥き出しになる。が、

「アハハ、あのマッチ。爆発させないとね」

少女によって、マッチは粉々に破壊されてしまう。

もちろん、熱は消え、追尾弾の狙いはこちらに移る。

「他のマッチを!」

「ドカーン!」

仗助の持っていたマッチも少女の声と共に爆発してしまった。

「うぉッ!?あの女、こんなこともできんのかよ!」

「私の名前はフラン。フランドール・スカーレット」

フランと名乗った少女はまた、大きな声で笑い始める。

「さぁ、次はその変な頭を爆発させてあげる!」

「・・・テメェッ!今俺の頭のことなんつった!」

フランの言葉に、仗助はキレて我を失う。

「来るッ!・・・空気弾!」

仗助のスタンドは、吉良の放った空気弾を片手で払うと吉良を飛び越え、フランを殴った。

「へぇ~。あなたも私のおもちゃになってくれるの?」

だが、フランの顔面には届かず、フランの手のひらによって拳は受け止められた。

「俺の頭を貶すヤツは、例え少女でも許さねぇ!」

スタンドのラッシュがフランを襲うが、フランはそれを両手で全て防ぎ、仗助の後ろに回り込むと、地面に叩き落とした。

床を壊して下の部屋に落ちた仗助は、その穴から入ってくるフランを、自身の能力で床を修復して止めたが、フランは周りを壊して、仗助に攻撃する。

「仗助!」

「君の相手はこの私だ!キラークイーンッ!」

スタンドから放たれた空気弾が、俺の前で爆発する。

その威力に押し返されるが、鉄球は爆発を貫いて、スタンドの腹部を完全に仕留めた。

「そこに空気弾を放つ二人目のスタンドがいるのはわかってるぜェ。鉄球はそいつをまず倒すために撃ち込んだんだ」

「キシャァアァアアアアッ!」

「ッ!猫草がッ!」

鉄球はキラークイーンの腹に入っている植物をえぐり出す。

やはり、もう一匹スタンドがいたようだ。

「私はまだ戦える!キラークイーンッ!第三の爆弾!」

「させねぇよッ!オラァッ!」

猫草を倒した鉄球は戻ってこない。もう一つの鉄球で、ヤツの爆弾のスイッチを狙わなければならない。

第三の爆弾を発動するとき、吉良は自ら爆弾のスイッチを押す。そのため、その手を破壊すれば、押すことはできない。

「ッ!右手が!」

「当たった!」

鉄球はヤツの親指を破壊する。

「クソッ!まだ私は戦える!私は」

 

「もういいよ」

 

その声は奥の部屋から聞こえる。

俺たちがその方向へ視線を変えた瞬間、まるでボロ雑巾にでもなったような仗助が扉を破壊して、床を転がった。

「嘘・・・だろ?」

「仗助ッ!」

俺はすぐに仗助に近寄り、肩をさすった。

「ジャイロ・・・さん・・・アイツは・・・グレート・・・にヤバイですぜ・・・俺はもう」

「仗助ッ!やめろ!死ぬんじゃない!」

「フフフ、フハハハハハハハハッ!やったぞ!東方 仗助を倒した!やった!やったぞ!」

「うるさい」

高らかに笑う吉良はフランによって、仗助と同じくボロ雑巾のようになる。

「うるさいおもちゃだなぁ。・・・さぁ、次はあなた」

 

「やめなさい!フラン!」

 

女の声が、玄関に響く。

そしてその声はフランの攻撃を止めた。

「お姉さま・・・。」

部屋の壊れた扉から現れたその女はコウモリのような羽を生え、フランのような服を着ている。

フランの言葉の通り、それはレミリアだった。

「フフフ、こんなに壊して・・・また、地下に閉じ込めるべきかしら?」

フランとは違うオーラ。それはこの館の主人に相応しい、カリスマ性が溢れ出すようなオーラを放っている。

言葉にし難いそれは俺を違う意味で動けなくさせた。

「綺麗な手だなぁ」

吉良はまだ再起不能になってなかった。

吉良はレミリアの後ろに立つと、どこかから持ってきた剣でレミリアの腕を切り落とした。

「・・・やったぞ。こんなにも綺麗な手を・・・私は」

「フッ・・・それくらい全くもって痛くないわ」

レミリアの腕は次の見たときには完全に回復していた。

「はぁ?新しい、綺麗な腕ぇ」

「本当に気持ち悪い」

レミリアのその新しい腕は、吉良の鼻をへし折り、顔面のあらゆる部分を破壊した。

「この・・・このクソカスどもがぁぁぁぁぁッ!」

吉良の最後の叫びはその静寂に響くことなく、黄金の光と共に消えてしまった。

「・・・ジャイロさん。爆弾魔をここまで追い込んでくれてありがとう。でも報酬は思ってた金額よりも、減らさせてもらうわ。トドメは私でしたから」

「それよりも、仗助を治してくれないか?アンタのその治癒力なら、仗助も」

「・・・私たちは何かを破壊して生きているといってもいい生物ね。彼の能力は、この世でどんなことよりも優しいものだった。だが、生命が終わったものは・・・もう戻らない」

「ッ!・・・すまない。悪いことを言った」

「だが、この世界は何でも許すことができる。その覆らぬ定義を壊す定義も・・・ね?」

レミリアは切り落とされた手を彼の頭に乗せる。

すると、その手から流れる血は彼の体内に入っていき、逆に曲がった腕の間接や、砕かれた手の骨がだんたんと治っていくのが見てわかった。

「ちょっと、吸血鬼のような身体になっちゃうけど、仕方ないよね。それよりも、フラン!」

「うぅ、お姉さま」

「この人が起きたら、あやまりなさい。そして、後で図書館に向かいなさい。いい?」

「・・・うん!」

これで解決か。

「そうだ、ジャイロさん。報酬を渡すわ。ついて来なさい」

 

俺はレミリアについていくと、彼女の書斎についた。

客室も兼ねてなのか、大きなソファが二つ向い合わせで置かれていた。

「咲夜、彼に紅茶を」

「はい、お嬢様」

「・・・まぁ、ジャイロさんはそこに座って」

俺はレミリアの言う通り、ソファに座る。

「お嬢様、紅茶です。それでは・・・」

「ありがとう、咲夜」

レミリアは一口、咲夜によって注がれた紅茶を飲むと、こちらを見た。

「で、報酬のことなんだけど、あなたにだけ、特別の報酬があるわ」

レミリアは立ち上がり、書斎机の引き出しを開け、拳二つくらいの箱を持ってきた。

 

中には、これまで使ってきた物と同じ鉄球が二つ入っていた。

 



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敗北

―設定が崩壊しました―
早くも、物語はグチャグチャになる。
前に書いたやつを見返さない。そのときに出たことをそのままパパッと書くと後々、繋がりが見当たらないことに気づく。
今その状態である。

あ、そうだ。この世界は原作とは違う世界線にすればいいじゃん!

今ごろそんなことを考えても、もう遅いのだ。

それでは幻想回転録25話『敗北』始まります。


ー永遠亭ー

 

「へぇ・・・コスプレイヤーとかじゃなくて、本当にジョニィ・ジョースターなのねぇ」

「・・・コス、何て?」

輝夜は頬杖をつきながら、僕の話を聞いていた。

さっきまでとは違うだらしない格好をした輝夜はさらに憎たらしさを増した。

彼女は僕のことを知っている。今日、初めてここに来たばかりで、新聞に僕の写る記事が載っていたというわけでもない。なのに、彼女は僕のことを知っているのだ。

「僕のことはどこで聞いたんだ?」

「僕?彼女のために、先頭に並んでいた人を無理矢理どかしてた悪い人が僕ですって・・・」

「姫様、あまりそう言うことは!」

「で、どこで聞いたかって?・・・まぁ、私を何かで負かしてみれば教えてあげなくもないわ」

「・・・なら、レースですぐに教えてもらうぞ!もちろん、馬でだ!」

「面白いわね・・・優曇華!馬を用意して!」

「え?あ、はい!」

輝夜はまだ余裕な表情をしている。だが、それもここまでだ。すぐにその表情を変えてやる!

 

馬はすぐに見つかった。

優曇華が人里から借りてきたという。

「馬術なら得意だけど、レースは苦手なのよね。ゲーム感覚でやれば何とかなるかしら?」

レースをする場所は永遠亭から少し離れた場所の広い草原で、普段は人里の人間が馬術などを競っているというコースが作られていた。

ルールは一周800m程度のコースを先に4周半走り、ゴールしたものの勝ちというものだ。

「レースの開始は優曇華、頼むわ。ゴールの判定はてゐに」

「はい!」 「わかったウサ!」

二人は輝夜に言われた位置につく。

「ジョニィ、降りてもいいのよ。どうせ、私が勝つんだし」

「降りる気なんて、サラサラないよ。君こそ、僕に負けて泣くなよ」

「・・・じゃあ、3、2、1、スタート!で良いですね。それじゃあ、始めますよ!」

僕は手綱をグッと握った。輝夜は・・・あくびしてやがる!

「3・・・2・・・1・・・」

ここで輝夜は手綱を握った!行くぞ!

「スタートッ!」

レースが始まった。コースはこれまでの荒れた砂漠とか、少し深めの川とか、そんなものはない普通の草原の草だ。

輝夜は・・・よし、三馬身は離れてるぞ!

「このまま、勝ちに」

「じゃあ、ここらへんで魅せますか。私の能力を」

次の瞬間、輝夜は僕の横に並んでいた。

「な、何だ!?」

「あれれ?混乱してる?・・・なら、もっと速く!」

輝夜は少しずつ、僕との差を広げていく。

「ッ!・・・スローダンサーッ!」

僕も負けじとスピードを上げるが、全く追い付きそうにない。

・・・それにしても、奇妙だ。まるで、時を飛ばしたかのように、馬の足が移動しているのだ。次の足、次の足と、一瞬で地面につく足が違うのだ。

まさか、能力というのは時を操る能力なのか?

「どう?自分の得意とするもので敗北した感じってのは」

「ッ!・・・クソッ!クソォッ!」

最後まで、ヤツに追い付くことはできなかった。

敗北を味わった。挙げ句の果てにはスローダンサーにあたってしまった。

「すまない、スローダンサー」

「フフフ、最終的には自分の愛馬にあたるなんてね」

輝夜は馬を返すと、優曇華と共に竹林の中に入っていった。

 

「二回戦の申し込み?」

僕は諦めることができなかった。

何か勝つことができるものがあるはずだ。

「そうね・・・一回戦はあなたが方法を決めたわよね?なら次は私が決めていいかしら?」

「あ、あぁ!いいとも!」

「なら、私が一番得意とする、ゲームで勝負よ」

そういい、輝夜は四角い箱を取り出した。

「・・・といっても、これじゃあ、あなたの負けに決まってるわね。だから助っ人をつれてきていいわ。誰でもいい。この人里から探してきなさい。逃げたら、そこで勝負は終了ね・・・まぁ、あなたのことだから逃げるなんてことはないと思うけどね」

「助っ人・・・わかった!」

僕はすぐに部屋を出ようとしたが、優曇華がすぐに僕を止めた。

「そろそろ、暗くなるから、明日探しにいきましょう!」

「・・・だな」

「姫様は夕御飯の手伝いをしてください」

「え~。嫌だ~」

「・・・師匠呼びますよ」

「む、わかったよ。・・・ったく面倒くさい」

輝夜と優曇華は夕飯を作りに行き、部屋には僕一人残された。

手伝おうと思ったが、この足のことを考えるとな・・・

「あれ?二人はどこいったウサ?」

そこにてゐがやってきて、ちゃぶ台をはさんで、僕の前に座る。

そして、ちゃぶ台の上に置かれた物を片付け始めた。

「二人なら、夕飯を作りに行ったよ」

「姫様が行くなんて、今夜は大雨でも降るかな」

「・・・」

僕はあることを聞きたかった。だが、これを聞くと、敗北感に襲われてしまう。

それでも、僕は聞かなければならなかった。ここに来てから、僕の周りで起こる異様な事柄の理由を・・・。

 

 

「これは何だ?」

「鉄球よ。あなたのものと同じね」

確かにこれは俺のものと同じ形をしている。全くと言ってもいいほどに違いがない。

違うところと言えば、使い込まれているかというくらいだ。

「これは・・・いったい」

「この鉄球のことを話す前に、私の能力について話そうかしら」

レミリアは鉄球の入った箱を閉じた。

「私の能力は運命を操る程度の能力。あなたが回転を操るように、私は運命を操ることができる」

「運命・・・」

「そう。そして、私は他人の運命を変えることもできるの・・・」

 

あなたがファニー・ヴァレンタインに負けるという運命をね

 

俺は口に持っていったティーカップを落としてしまった。

こいつは俺が敗北するという運命を変えると言っているのだ。そもそも、俺は負けるのか?黄金の回転があっても、俺は勝てないのか?

「・・・咲夜には嘘をついたけど、あの手紙を出したのは私。そして、天狗がそれをあなたのところへ持っていくという運命に変えたのも私。あの爆弾魔がここに来るというのも・・・ね。これを渡す機会という名の運命を作り出すためのね」

「・・・アンタにはすまねぇが。正直、アンタの言っていることが信用できねぇ。俺を騙すにはもう少し頭を回転させた方がよかったようだぜ」

「なら、ここにある手紙・・・見覚えあるわよね?」

レミリアは書斎机の上から一枚の紙を俺に渡した。それは文に見してもらった手紙とほとんど同じものだった。

「この紙は下書き。読んでみると、一部違うところがあるわ。だけど、書いてあることはほとんど同じ」

俺は最初からそれを黙読してみるが、確かに俺たちの見ていたものと同じ文が書かれている。

「まだ証拠はあるわ。それでもまだ、騙していると言う?」

「・・・もういい。それで簡単に言うと、アンタは何がしたいんだ?」

「そうね・・・助けてあげるとでも言えばいいかしら?絶望の運命からね。24歳で死ぬことや、少年を助けられないことに絶望を見るのなら、運命を変えて、数十年でも長く生かしてあげようかしら・・・なんて」

「・・・ここの館の主と言うくらいだから、もっと頭のキレるスゲーやつとか思ってたけどよォ。幻滅したぜェ、アンタのやり方に・・・」

 

物語の終わりを聞くほど、つまらねぇものは無ぇよ。

そんな運命、俺は変えてやる。そして、アンタの力を使わずに、俺の運命だけでなく、マルコの運命をも変えてやるぜ。

 

「悪いが俺はアンタのやり方に納得できねぇ。報酬はいい、帰るぜ」

ジャイロは書斎から出た。

振り向くことなく、書斎から出たあとは真っ直ぐに紅魔館から姿を消した。

美鈴の「ありがとうございました。」という言葉には返事をしたが、馬に乗るまではほとんど無言だった。

 

「お嬢様・・・」

「人間に負けたのは久しぶりね・・・咲夜、今日の夕御飯はオムライスがいいわ。トロトロ卵のね」

「・・・わかりました」

レミリアの書斎机の引き出しの奥深くに入れられた、鉄球二つが入った箱は、そのままレミリアの記憶から消え、思い出したのはそれから数か月後のことだという。その頃にはきっと、ジャイロは運命というものに納得し終えているだろう。

 

もちろん、ジャイロに後悔はない・・・はずだ。

 




もう本当にグチャグチャですね。
まるで、大統領戦一歩前に幻想郷に行ったみたいになってますねw

まぁ、本当に頭のなかに出たことをそのまま書いてるからこうなるんですよねw

以後、気を付けたいです。


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仲間

あらすじ
ジョニィは輝夜の知っている情報を吐かせるために、レースでの勝負を申し込むが、輝夜の能力の前で為す統べなく負けてしまう。
そして二回戦目。輝夜が持ち込んだ対決はジョニィの全く知らない世界『テレビゲーム』だった。
しかし、これではジョニィに勝機がないと考えた輝夜は助っ人の参加を許可する。


僕は人里をただ途方にくれながら、馬に乗っていた。

馬が行き先を決め、僕はただ乗っているだけだった。

 

勝負に勝つためには、あの四角い箱のことに詳しい人間を探さなければならない。だが、ここらにそれを得意とした人間がいるのだろうか・・・

とりあえず、他とは違う格好をした人間を探さなければならない。例えば、ネックレスや指輪といった高価なものを付けていたり、派手な洋服を着ていたり。とにかく、他とは違う人間だ。

そして数分後、ようやく他とは変わった人間を見つけた。

「あの、すまない」

「・・・あ、僕かい?僕に何かようかね?」

渋い緑色の服を着て、髪をピンク色に染めている。そして、耳にはさくらんぼのようなピアスをつけていた。

こんな昼間から、川沿いの椅子に腰掛け、本を読んでいるんだ。他の人間とは違う何かを持っているに違いない。

「君は、これくらいの白い箱のことをしっているかい?」

「?・・・何だい、それは」

「えっと、確か・・・思い出した、ゲームとか言ってたな」

「ゲーム・・・白い箱・・・そしてその形。もしかして、Wilのことを言っているのか!?」

「うぃ、ウィー?何?」

「あぁ。僕が気になっていたゲームだ!ここに来て、噂になっていて、どんなものかと思って、ある女に見してもらったんだ!君も見してもらったのかい?」

「あ、あぁ。それで、今度遊ぶことになって、助っ人を探しているんだ」

男はさっきまで読んでいた本を椅子に置くと、僕の手をガッシリ掴んだ。

「頼む!その役、僕にくれ!いや、ください!」

「・・・わかった!」

彼は飢えていた。とても気高く・・・。彼なら勝てるかもしれない!

「えっと、名前は」

「僕は花京院 典明。君は?」

「僕はジョニィ・ジョースター」

「!・・・ジョースターだと!?それじゃあ、君はジョセフ・ジョースターを知っているのか!?」

「すまない、全然聞いたことのないな名前だ」

「そうか・・・まぁ、Wilができるんだろ?それなら、着いていくよ」

 

彼の話によると、彼もまた俺たちと同じ、迷い込んだ者の一人のようだ。

彼はここに来る前、DIOという男と戦っている最中に、いつの間にかここに来ていたと言っていた。

「君もこの世界に迷い込んだのか?」

「あぁ。僕はジャイロを探しにここに来たんだ」

「ジャイロ?球種か何かか?」

「いや、ただの仲間だ」

花京院の表情は暗くなり、

「仲間か・・・。僕にも仲間がいた。同じ目標を持った仲間がね」

と言う。もしかして、仲間が死んでしまったとか、そういったことか?

聞いちゃいけないことを聞いてしまったか?

「そうか・・・で、話は変わるが、ゲームは得意なのか?」

「Wilはやったことないが、ゲームは得意な方だ。分野問わずね」

確かに、この人は本当のことを言ってそうだ。

だが、一つ、さっきから気になっている点がある。

何かに後をつけられているような気がする。

全てを監視され、こっそりとついてきている気がするのだ。

「どうしたのかね?さっきから、後ろばかり気にして。まさか何かが見えるのか?」

「い、いや。たぶん気のせいだ」

僕はタスクを馬の足の影に忍ばせると、後ろを見てもらった。

一瞬だが、緑色の何かが地面を這うようにこちらに近づいているのがわかった。緑色に光る何か・・・それは宝石のエメラルドにも似たようなものだった。

「何だ・・・何が・・・」

「もしかして・・・君は僕のスタンドが見えるのか?」

「!・・・今なんて」

その緑色の何かは後ろの屋台の影からスッと現れると、彼の方へ飛んでいき、彼の横に並ぶように立った。

「僕のスタンド、ハイエロファント・グリーンが見えているのか!?ということは、君もスタンド使いか!」

僕はタスクを呼び、左手の平に乗せた。

「これが僕のスタンド、タスクだ」

「ふっ・・・僕たちは何か、ひかれ合う何かがあるみたいだ。どうやら、敵と思っていたが違うみたいだ」

彼は僕に敵意を抱いていたのか。

そのスタンドがどういった能力を持っているのか。とても興味があったが、それを聞くのはやめた。

さらに敵意を抱かせるかもしれないからだ。

 

永遠亭の階段下で・・・

「ここが、あの人の自宅か・・・ずいぶん豪華な屋敷に住んでいるのですね」

「言っておくが、その女は憎たらしい気持ち悪い能力を持ったヤツだぞ。あまり、好意を持つのはどうかと思うくらいだ」

「ゲーム好きに悪い者はいない。もっとも、ルールを守ってやる者に限るがね」

だが、そんなことを言いながらも、花京院は少し奇妙に思ったのか、影からスタンドを出し、屋敷の敷地内に潜入させた。

「久しぶりだな。この感じ・・・」

その後、聞き取れなかったが、何かボソッと言ったのが僕にはわかった。

「何か言ったか?」

「いや、何でもない。それよりも、早くWilがやりたいな」

敷地内に入ると、すぐに庭園の真ん中にテーブルと椅子。そして、その上にゲームがあるのがわかった。四角い箱と平べったい板。

「おぉ!この感じ!これはまさしく、新型のものだ!」

「ジョニィ!彼が私の相手かしら?」

いつもの服とは違う、胴着のような服を着た輝夜が屋敷の奥から姿を現す。頭には赤いハチマキを巻いていた。

「・・・その格好は・・・ストバトのリュウだね?」

「あら、それなりにわかる人が来たのね。そうじゃないと楽しくないけどね!」

「?・・・何だ、そのストバトってのは」

花京院はため息をつく。

「ストバトってのは、言わば、対戦型格闘ゲームだ。この箱の中で、僕らが選んだキャラが戦うんだ。僕はこれが出てから毎日、ゲームセンターに入り浸って、知らない人と戦ってたね!」

一気にあの静かだった花京院は闘志を現した。

輝夜もそれに同調し、ハチマキを締める。

「さぁ!花京院 典明!戦おうじゃないか!」

「お互い、楽しいバトルをしよう!」

二人は拳を合わせる。そして、その平べったい板を持った。それには先端に球体がついた棒と、凸が何個かあり、二人の両手の指はそれに密着すると動かし始めた。

「僕は得意としていたガイルを使うとしよう。そういえば、僕の仲間にもこんなやつがいたな・・・」

「へぇ~。友達にガイルがいるなんて、面白いこと言うわね」

「まぁ、ガイルとは違い、剣術を得意とする男だったがね」

二人は笑うが、全く何を言っているのか僕には理解できなかった。

「私は今の服装通り、リュウを使うわ。愛用キャラでもあるしね。・・・それで、対戦相手を彼に呼んでもらったのは、ただただ強い相手が欲しかったの。私と対等に戦えるくらいの強い相手がね」

「・・・残念ながら、その願いは叶わないらしい」

「どうして?」

「なぜなら、このコントローラーは僕の手にフィットしている。そして・・・僕の方が強いからだ」

「面白いこと言ってくれるじゃない、そうでなくちゃ、相手にならないわ!」

キャラが決まり、二人の選んだキャラが一つの画面に映る。

一人は輝夜と同じ服装をした男。そしてもう一人は金髪に緑色の服を着た男。

「さぁ、本気でかかってきなさい!」

「君こそ・・・本気でかかってこい!」

僕はこの二人を前に完全に居場所が無くなった。

だが、僕にもやることはある。それは、彼を、花京院を応援することだ。

「花京院!勝てーッ!アンタなら勝てる!」

「外野は僕の方についているようだ」

「うるさいわね。こっちにだって外野がいるわ!ねぇ、優曇華!てゐ!」

「・・・えっと、悪いと思うのですが」

「いつもボコボコにやられてるから、これだけは敵ウサ!」

「アンタたち・・・まぁ、いいわ。外野は外野よ」

画面に『Fight!』という文字が大きく映り、それと共に、このステージの周りに置かれていた花火が発射された。

 

このとき、僕は思ってもいなかった。

本当にこの人たちは最強なのだということを・・・

 




花京院 典明
生粋のゲームヲタク。
あらゆるゲームを攻略し、熟知している。
特に格ゲーとレースゲームを得意とし、中学時代、毎日のようにゲーセンに入り浸っては、高校生や大人相手に勝負を挑み、何度も勝っていた。

さぁ、花京院は輝夜を倒すことができるのか・・・


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法皇の緑

ジョニィのいた時代、まだテレビゲームが無かったと考え、ジョニィはそういった機械を知らない状態で書きました。
自分もあまりゲームの知識はないため、ほとんどわからない状態です。



そこにあったのは、勝利する姿と敗北する姿だった。

僕では見せることのできなかった接戦が繰り広げられ、勝者は汗ばんだ手を握り締め、そしてその拳は天を仰いだ。敗者はその拳をテーブルを揺らした。

 

 

文字が消えると共に動き出した二人の手と、画面のキャラ二人は僕にはわからない動きをしていた。

画面に映ったキャラの上に並んだ棒が少しずつだが減っていっているというのはすぐにわかった。

拳が当たる音や二人から放たれた攻撃の音がこの光景を見ていた僕の心臓を昂らせた。

「何が起きているのか、僕にはさっぱりわからない!だが、これがとても熱いというのはわかる!さっきから、僕の身体を熱くさせている!」

「なかなかやるね。この実力なら、並大抵のバトラーなら圧勝できる力だ。でも、これならどうかな!」

最初に花京院が動いた。花京院の選んだキャラが少しずつだが、輝夜の選んだキャラを画面端へ押していっているじゃないか!

「これは!ぐッ・・・まだまだこれからッ!」

そして、今度は輝夜のキャラが押す!

熱い攻防戦が続き、二人のキャラの上に並んだ棒の間にある数字が0になる。

『Time up!』

時間切れということか・・・。

「ふっ・・・すばらしい戦いだったがラウンド1は僕がもらったよ」

どうやら、画面に映るキャラの感じ、花京院が勝ったようだ。だが、僅差。あと少し輝夜が押していたなら、輝夜が勝っていたかもしれない。

「でも、ひさしぶりだ、こんな激戦は。いや、ゲームをすること自体がひさしぶりなのか」

「そんな干渉に浸っている暇はないわ。次よ!」

画面では次のカウントダウンが始まっている。

二人が用意するとすぐに戦いが始まった。

今度は比較的、あとがない輝夜が押している。花京院のゲージの半分を削ったが、花京院も負けてはいない。すぐに同じ状況に輝夜を立たせる。

「やっぱり強いわ。君のような対戦相手を望んでたの」

「そういってもらうとありがたい。だが、これで終わりだ」

花京院のキャラが放った、相手を上に蹴り飛ばす攻撃は完全に顎に入り、輝夜のキャラは宙に浮いた。

そして画面には『K.O』の二文字が大きく表れた。

 

「ありがとう。今日はこれだけのために来てくれて」

「いえいえ。ひさしぶりにゲームができて、僕は幸せだよ」

次の瞬間、花京院は黄金の光に包まれる。

「これは!?」

「・・・そろそろ、僕も行かなきゃかな」

「おい!行かなきゃって・・・まさか」

これまでのピースがガッチリとはまった。僕にも仲間がいた。その言葉は自分が死んでしまったことを意味していたのか!?

「楽しかった。本当に楽しかった。・・・この世にもう未練はない」

花京院は消えた。

これまでの光と同じ光に包まれて・・・成仏した。

「・・・私は彼が死んでいることを知ってた。まさか、あなたが彼をつれてくるとは思わなかった。最初、人里で会ったときは驚いたわ。この世界には色々な幽霊が存在する。でも、彼がいるのはとてもおかしいことだと思った」

「輝夜・・・」

「・・・それで、約束だよね?私の知っている情報、というより、次にあなたが行く場所を教えるわ」

「どこに行けばいいんだ!教えてくれ!」

「・・・命蓮寺よ。そこにいる聖 白蓮という僧侶に聞きなさい」

「命蓮寺か・・・。どこなんだ?」

「一度、竹林から出た方がいいわ。人里に行けば、きっと誰かが教えてくれるはずよ」

輝夜はそう言い、ゲームを箱の中に入れ、永遠亭の中に入っていった。

それから少しすると、いつもの格好に着替え、右手に液体の入った瓶を持って出てきた。

「これを持っていきなさい。万病に聞く薬よ。永琳が作った薬だから、まず死ぬことはないわ・・・たぶん」

「ちょっと待て!今小さくたぶんってつけたなかったか?」

「大丈夫よ。毒性はまず無いだろうし・・・。だけど、無理だけはしないで」

「・・・あぁ。」

俺は馬に乗ると、永遠亭を背に竹林の中へ走っていった。

最後に見せた輝夜の表情を忘れる前に・・・。

 

「姫様。」

輝夜がジョニィを送り出し、門から戻ってきたとき、屋敷の縁側には永琳が立っていた。

「ここらへんに薬見ませんでした?」

「え?あのジョニィに渡すって言ってた薬でしょ!?もう渡しちゃったわよ!」

永琳は困った顔をして、頭を抱えた。

「あの薬はただの風邪薬です。午後来ますと言ってた患者に渡すための物です」

「・・・まぁ、いいか」

輝夜はそう言い、縁側から屋敷の中へ上がると堕落した生活へと戻っていった。

 

 

一方そのころ、ジャイロは・・・

「おいおい。何だこれは・・・」

森の中で、射命丸 文と一つの箱と筒を前に話していた。

「何だって・・・この前の報酬ですよ」

報酬はいらないと言って出てきた俺に、全くもっていらない報酬をレミリアが送ってきた。

「何だよ、この長い筒は」

長い筒の中にあったのは、可愛らしいピンク色の傘だった。

「それって、レミリアさんが持ってる傘ですよ。外に出るときに咲夜さんにさしてもらってる」

「・・・俺は吸血鬼じゃねぇんだよ!」

俺は文に投げ渡した。

「あややや、勿体ないですね。こんなに可愛らしいのに」

「男がこんなん広げてたらよ、気持ち悪がられるぜ・・・ジョニィがこれを広げてたら俺はすぐに奪い取って捨てるぜ」

「ひどいですねぇ。でも、人里の質屋にでも売ったら良い値段になるんじゃないですか?」

「・・・お前の方がひでぇよ。で、こっちは?」

今度は小さめの箱を開けた。

そこには、前に貰った(盗んだ)のと同じ青に白星のボールが入っていた。

「これは咲夜さんからですね」

「これは使おう。使いやすかったしな」

「でも、鉄球二つありますし・・・どこに入れるんですか?」

「確かにな・・・。持ってるのも面倒だし」

「あ!ジャイロさん! それをずっと地面とかに回転させといて、後についてくる的な」

「・・・さすがにそれは無理だ」

「あ、じゃあちょっと魔法の練習でも受けます?咲夜さんはそんな感じの球体を浮かせてましたし」

「魔法か。一般人が魔法なんて使えるようになるのか?」

「もう、その回転は魔法の域ですよ」

そんなことを話していると、どこかから足音が聞こえるのがわかった。

音は森の中で響くため、ほとんどどちらから来るのか聞き分けることはできない。そして文によると、ここら一帯に結界が張られているらしい。

「どこから来る・・・」

俺は箱に入っていた青い鉄球を握る。

すると、木の間から190cmちょいはありそうな男が現れた。

男は安心した顔をすると、俺たちに話しかけてくる。

「すまない、道を聞きたいのだが。命蓮寺はどっちの方向だ?」

「・・・どうやら、敵じゃないらしいな。その命蓮寺っていう寺を俺は知らないが、こいつならわかると思うぜ」

「そうか、助かる。で、どの方向なんだ?」

文は安心すると、男に方角を教えた。

すると、男は素直にその方向へと歩いていった。それにしても、身長だけでなく、オーラまでもが大きかった。

「あの人もジャイロさんと同じみたいですね。この世界に迷い込んだ人の一人ですよ」

「アイツについていった方がいいかもな。だが、俺はちょっと気になることがあってな。守矢神社に行きたいんだ。今は他人の後をつけるほど暇じゃねぇ」

人里である話を聞いた。

守矢神社にいる東風谷 早苗という巫女が、俺たちのことを詳しく知っていると言っていた。

そしてこの前、レミリアが言っていた

 

あなたがファニー・ヴァレンタインに負ける運命

 

この言葉が気になっている。それが本当なのか。それを聞くために行くと言っても過言ではない。

「次の目的地が決まりましたか?・・・じゃあそろそろ私は仕事に戻りますので」

文は手を振ると、山の方へ飛んでいった。

「・・・傘持っていってくれよ」

俺は傘の入った筒を持つと、守矢神社に向かった。



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命蓮寺へ

今回はジョニィの話です。

あらすじ
ジョニィは輝夜との対決の末、次に行くべき場所を知る。
次の場所は命蓮寺。ジョニィはそこへ向かっている途中、ある事件に遭遇するのだった。


ジョニィは命蓮寺を目指して、人里を進んでいた。

 

「おい!テメェら!」

すると、むこうでそんな声が聞こえた。

事件か?と思いながら、その声の方へ馬を走らせた。

「テメェら!離れろ!この女の命が惜しくないのか!」

「た、助けてッ」

その女はこの人里でも有名な人間で、確か名前は本居

小鈴とか言ってたな。

人里のある貸本屋で働き、良く店の前をホウキで掃除していたり、暑い日は打ち水をしていることがある。

僕もここにきてまだ、一週間経っていないが、姿を見たことはあった。

あの強盗の狙いは、その貸本屋内にある高価な本だろう。他に奪うものもないだろうしな。

「近寄ったら、こいつにこの包丁をブッ刺すからな!いいか!近寄るなよ!」

僕はここから爪弾で狙い撃つこともできるんじゃないか思い、指を向ける。すると

「・・・何をやっているのですか?」

一人の女が僕の横に立ち、今の状況を聞いてきた。

「ご、強盗みたいだ。今、あの店の店員を人質して・・・え?」

白黒のドレスのような服を着て、ほとんど顔の見えない笠を被っているその女は持っていた錫杖を地面に刺すと、どこからか巻物を取り出した。

「助けないといけませんね・・・」

それはまるでオーロラのようなキレイな帯でできており、女はそれに書かれた文字をなぞり始めた。

女はその笠が脱げるような、速さでその犯人の正面に移動すると、犯人の包丁を取り上げた。

「ダメですよ。こんなことをしては・・・欲しいものがあるなら、ちゃんと働いて、そのお金で買ってください」

「ッ!何だテメェは!」

金髪に紫色のグラデーションがかかったような髪をしたその女は、小鈴を助けると、犯人の手首を掴んだ。

「こいつ!女のクセに何て握力してやがる!」

「罪を償ってください・・・南無三ッ!」

次の瞬間、犯人の男は女によって、取り押さえられてしまった。その力のせいか、地面にヒビが入る。

「ケガはないですか?辛かったでしょう?」

「は、はい」

女は小鈴を撫でると、落ちた笠を拾って被り、錫杖を取りにこっちへ来た。

「おい!確かあれって命蓮寺の聖 白蓮さんじゃないか?」

「キャーッ!聖さーん!」

歓声が包み込む。

だが、それよりも、あの女が目的地である命蓮寺の人間だということがわかった。

今、声をかけないと・・・

「あなたが命蓮寺の聖 白蓮さんですか?」

「えぇ、そうですが。・・・何か用ですか?」

「ちょっと、命蓮寺に用があるのですが。行ってもいいですか?」

「いつでも構わないですよ。私も今、修行から帰ってきたところですし」

 

十何分歩くと、そこに大きな門が見えた。

「あれが、命蓮寺・・・」

「あ、聖さん!おかえりなさい!ちょうど良かった」

犬のような耳を生やした少女が門の前からこちらに走ってくる。

「どうしました?」

「聖さんにお客様みたいです。今、一輪さんがちょっと話を」

 

ドゴォンッ!

 

寺の方から爆発音のような音が聞こえた。

「何ですか!この音は!」

門のすぐ横では、戦闘が繰り広げられていた。

制服のような服を着た男と青い服を着て、片手に大きな輪を持った女が、スタンドのようなものを出して戦っているじゃないか!

「スタープラチナッ!」

「来て!雲山!」

拳が当たるごとに轟音を放つそれは、まさしく死闘と言ってもおかしくはなかった。

「やめなさい!」

すかさず、聖が止める。一輪とそのスタンドはその声に戦闘から身を退いた。

「何をしているのですか!一輪!」

「姐さん!これは、こいつが悪いんだ!話してたら、いきなりキレてなぁ」

「・・・テメェは真剣な話をしているときに、笑われたらどう思う?俺は怒りがわいたぜ」

「・・・一輪!」

「何でだよ!姐さん!」

男はスタンドをしまうと、聖の方へ歩いていき、胸元のポケットから紙切れを一枚、聖に見せた。

「最近、この男を見なかったか?」

そこには金髪の男が写っていた。そいつはどことなく、ディエゴに似ていた。

「名前をDIOという。俺は今、こいつを倒すためにここらを探し回っていた」

「ごめんなさい。私はさっきまで、遠くで修行をしていたものですから」

「そうか・・・すまない」

男は写真をポケットにしまうと、門から出ていった。

「一輪・・・わかってますよね?」

「え?あ、ちょっと、あー、えっと・・・」

「・・・あなたから酒の臭いがするのは私の気のせいですか?」

「ち、違いますよ!そそそ、そんなわけないですよ!そんな姐さんのいない間に飲むわけないですよ」

「じゃあ、その調子で一ヶ月、酒を飲まないでください。いいですか?」

「は、はいぃ~・・・」

聖の威圧に一輪は逆らえず、返事をしてしまい、膝からペタンと地面に座った。

「それじゃあ、こちらに来てください」

 

入った部屋は家具は一つもなく、四方が襖と障子によって囲まれ、床は一面畳になっていた。

「ちょっと待っていてください。お茶を持ってきますので」

そう言い、聖は静かに部屋から出た。

聖は僕の脚が不自由なことを知ると、馬を庭まで入れていいと言ったのだ。まず、庭先に馬を入れることは間違っている気がするのだが、快く返事をしたのだ。

「アンタ、何者だい?」

僕は後ろからの声に、タスクを呼び出し、指をかまえた。

襖をほんの少し、指一本くらいの間から見えるその目は聖の物じゃなかった。

「久しぶりに違う世界の人間が来たかと思いきや、一輪を殴り飛ばすし・・・。今日は散々なのよね」

愚痴を吐くと、襖を開け、一人の女が入ってきた。

この和の空間に似合わない格好をした女は、僕の前に座ると、笑い始めた。

「前に来た客の帽子といい、アンタのその頭につけたソレといい、面白いもん付けるのね、異世界の人間って」

女は僕の頭につけた蹄鉄を指差す。

「こ、これはオシャレとかそんなやつじゃない!魔除けや幸運をもたらす、言わばお守りだ!」

「魔除け・・・ねぇ」

女は僕に近寄ると、蹄鉄を指でなぞった。

「魔除けを付けてても、私のような妖怪に会うんだよね~。その程度なのよ。お守りと言えど、フフフ」

女は僕の頭に手を置いて立ち上がると、入ってきた襖まで歩いていく。

「あ、忘れてた。私の名前は村紗 水蜜。よろしくね」

そして、襖から出ていった。

何だったんだアイツ・・・。だが、妖怪とか言っていたな。彼女は地縛霊のようなものなのか?

「村紗が失礼なこととかしました?」

少しすると、聖が帰ってきた。

聖は部屋にテーブルが無いことに気づくと、さっき外に出ていった村紗を呼び、隣の部屋から持ってきてもらうことにした。

そして、丸い木のテーブルを持ってきてもらうと、すぐにお茶を注いだ。

「それで、ジョニィさんはどんなご用件でここに?」

「あの、まずは僕のことを知ってますか?」

「えっと・・・ごめんなさい。今日、初めて名前を聞いたばかりで、あまり細かい情報とかは何も知りません」

「そうか・・・」

あの女・・・嘘を言ったな。今すぐ永遠亭に行って、爪弾をブッ放したい気分だ。

「ただ、あなたの中に黒い何かが存在するのはわかります。全てを破壊してでも、意志を貫き通すようなそんな黒い意志が芽生えているのが・・・」

「!」

「そして今、あなたは何かを探していますね?何かとても大切な物を。いや、人ですか?」

何だ?この人は、前者はともかく、後者は正解だ。今、僕は僕とジャイロの情報を探すと共に、ジャイロ本人を探している。・・・当たっているぞ!

「で、ご用件はそれだけですか?もしも、それだけなら、帰った方がいいかと思います」

「どうしてですか?」

「・・・悪い何かが近づいていている気がするので」

聖はそう言い、僕をその部屋から出した。

「まだ、聞きたいことがある!アンタはジャイロについて何か知っているか!今、どこにいるとか!何でもいい!知っていることを教えてくれ!」

聖は魔法のような力で、僕を馬に乗せると、この命蓮寺の敷地内から追い出した。

聖の言っていた『悪い何か』が僕には全くわからなかった。

 

「ここが命蓮寺か・・・」

 

それがもうそこまで来ていることを知らずに、僕は一度、人里へ帰った。

帰り道、今にも雨が降りそうな『天気』だったというのを人里に帰った今でも覚えている。




次の相手はまさかのアイツ。

自分でも彼を敵キャラとして扱うのはどうかと思うが、とにかくアイツだ!

天気といえば・・・あの人ですよ!

※次はジャイロの話です。ジョニィの話はその後になります。


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回転と波紋

Twitterで報告しましたが、夏休みが終わり、学生はまた学園生活が始まります。
私もまた、その中の一人で、さらに進学にも関わってきますので、夏休みのときのような投稿ができなくなると思います。

まず、これで連載終了や失踪といったことはしないので、これからも応援よろしくお願いします。



ジャイロは何段も続く、階段の下に立っていた。

これまでそんな階段を何段も見てきたが、この前は紅魔館で階段と言えど、こんな石段ではなかったために、少し油断していたのだ。

 

「久しぶりに足に来るんじゃないのか~。これはよォ~」

「あれ?あなたは確か、ジャイロさんですよね?」

どこかで聞いた声が聞こえる。

ちょっと前に永遠亭であった緑色の髪の巫女、東風谷 早苗だった。

「久しぶりだな。永遠亭以来か?」

「ですね。また会えて、私は嬉しいです!」

「そこまで言うかい?」

俺は一つ思い出したことがあった。

確かあのとき、こいつは俺たちのことを知っているような口ぶりで話していた。

まさかだが、こいつは俺たちのことを本当に知っているのかもしれない。噂程度でここにきたが、これはいい収穫がありそうだ。

「それでよ。おたくは永遠亭であったとき、ジョニィという名前に反応してたよな?それで思ったんだが、まさか俺たちのことを知っていたりしないか?」

「えぇ。知ってますよ」

あっさりと認めた。

だが、その返事には裏がありそうだった。

「でもな~」

「・・・頼む。なんでもいいから教えてくれ!」

「ん?今何でもって・・・あ、通じないかそういうの」

こいつ、前にあったときは、こんな性格だったか?それにどこか奇妙だ。何というか、あれだ。東風谷 早苗に変装している、みたいな感じだ。・・・いや、これが本当の性格なのかもしれない。あのときもこんな感じだったような、あれ?

「で、情報ですか?んー、まぁ、いっぱいありますからとりあえず、行きましょう」

 

階段を登りきり、その先にあった神社の階段で一休みすることにした俺は、早苗に情報を聞き出そうとしたが、すぐに早苗は神社の奥へと姿を消してしまった。

「・・・ん?何だ?」

俺は早苗とは違う気配を感じだ。

前から、階段を登ってくるそれは、一度会ったこともあるようなオーラだった。

「お、お前は!」

「ん?お前は確か、名をジャイロといったな」

ワムウだった。

相も変わらずムキムキのそいつは、今にもあのトルネードを放ってきそうだった。

「お前と戦えることを楽しみにしていたぞ。前は、急いでいたために止めをさすことはできなかったが、今なら逃げる場所もタイムリミットも存在しない」

「ニョホ。これはヤバイぜ・・・」

俺はいつワムウが攻撃してきてもいいように、鉄球を構える。

ワムウがその足を一歩でも、動かしたらこれをヤツのあ頭に生えた角目掛けて投げてやるぜ!

 

「待ちなッ!」

 

その声は天空から、俺たちの間に入ってきた。

そして声と共に、目の前に現れた男を見て、ワムウは目の色を変えた。

金髪に緑のシャツと白いジーンズ。そして、頭にはバンダナを巻いている。

「確か、名をシーザーと言ったな」

「あぁ。シーザー・A・ツェペリ!お前を倒すために、ここまで生き返ってきた!」

「ツェペリ!?今お前、ツェペリって言ったよな!?」

俺は『ツェペリ』という姓に驚いた。まさか、ツェペリが他にも存在するとは・・・。

「アンタもツェペリと言うのか!?」

「俺の名はジャイロ・ツェペリだ!よろしくな!」

「こちらこそ」

俺とシーザーは握手をかわす。

「敵を前に、油断をするな!それでも戦士としての誇りはあるのか!」

「ニョホ、不意打ちをしないとは、おたくは戦士としての誇りが溢れ出しているようだなァ~」

「ジャイロ。アンタも波紋を使うのか?」

「波紋?俺は代々受け継いだ、回転の技術を使う。波紋じゃないぜ~」

「代々?ツェペリ家は代々、波紋を伝承しッ」

「どうやら、俺とお前はただ姓が同じという繋がりしかないらしい。まぁ、同じ姓の人間として、敵を倒そうぜ」

俺は咲夜からもらった青い鉄球を取りだす。

「何だ?その青に白星のボールは。そんなんで戦うのか?」

「それはこれを見てから言ってもらいたいねぇ!そぉらッ!」

俺の気合いを入れた声と共に投げられた鉄球は、ワムウの出した腕に当たると、腕の肉を削り、そのまま、顔目掛けて上っていく。

「!・・・何だ、あの回転は!ジャイロ!お前の技術ってこれのことか!」

「ニョホ!その反応が見たかったぜぇ」

そして、顔面に到達し、俺の手元へと戻ってきた。

「・・・今度は俺の番だな!」

ワムウの再生能力により、皮膚の傷はどんどん治っていくが、シーザーの追撃は、その傷の回復を妨げた。

「シャボンカッターッ!」

シーザーは合わせた手のひらを離す。すると、その間に膜ができあがった。

そして、その中から切れ味のある横に細いシャボン玉が勢いよく飛んでいった。

普通はフワーッと上へ飛んでいくシャボン玉が横に流れるように飛んでいく!それはワムウの回復途中の皮膚を切り離した。

「これが、波紋・・・」

「まだ、俺の攻撃は終わってないぞ!ワムウ!」

シーザーの放ったシャボンカッターの何個かは空中で止まり、それに反射するように光の線がワムウへと飛んでいく。

そして、ワムウの体の一転に集中し、穴を開けた。

「真っ黒に感光しろーッ!」

「この攻撃はお前たちの誇りだ。なら、こちらも本気で戦おう!」

次の瞬間、ワムウは自らの目を親指で潰した。

「な、何をしてやがるッ!アイツ、自らの目を自分で潰したぞ!」

「ジャイロ、これはヤバイぞ!」

「この傷は油断した自分を戒ためるためであり、教訓だ。回復などしない!」

ワムウは次の瞬間、透明になり、俺たちの前へ現れる。

俺はすぐに鉄球を回転させ、ワムウの腹の傷目掛けて、投げる。だが、その豪腕によって、弾き返された。

「波紋のない柔な攻撃など、このワムウの前には無力!」

そして、その腕は俺を襲った。

「なぜだ、目が見えないはずだ!」

「この角で、明かりなくして、『風』だけを感じて物を見よう。そして、この受けた『傷』も我が肉体!この『ダメージ』も!」

ワムウは風のみで俺たちの場所を察知し、俺の鉄球や、シーザーのシャボン玉を避けているのか!?

「確かにアンタこそ、戦士だ。だが、お前はもうチェスでいうチェックメイトの状態だ!」

俺の放った鉄球と、シーザーのシャボン玉はワムウを囲むように、設置されている。

少しでも動いたら、それらがヤツに襲いかかる。

「ほう、これだけの罠のみで、チェックメイトと言うか!回転の戦士よッ!」

ワムウはあのとき、人里で俺を吹き飛ばしたときに見せた風の技で俺たちの罠を取り除いてみせた。

「その程度なのか?」

「・・・いや、まだ回転は残ってるぜ」

「!・・・どこに!どこにあるんだ!」

「俺は今、鉄球を『三つ』持ってんだ。今ので二個は帰ってきたがな」

「このシュルシュルという音!」

「ワムウ、お前のその角は近くにあると、感じとることができないようだな」

ワムウの角の周りに風が集まっていることから、ワムウは風の動きをあの角で感じ取り、俺たちの場所を探っているというのがわかった。

なら、鉄球をその角の根元にほとんど当たるくらいで回転させれば、感覚を麻痺することができる。

回転は感覚すらもおかしくさせる!

「な!いつの間に!」

「知ったときにはもう遅いぜ!鉄球を喰らっていきなァァァーッ!」

「うぉぉぉぉぉぉぉぉーーッ!」

次の瞬間、鉄球はワムウの角を砕いた。

ワムウはそれと共に黄金の光に包まれた。

「視界を失ったときから、お前の敗北は決まっていた。ニョホホ。シーザー、俺の勝ちのようだなァ~」

「ふっ、負けたよ、君の回転にね」

俺たちはワムウが黄金の光になり、天へと昇っていくなか、拳を交わした。

「あの二人が会うとは思いませんでしたが、とても激しい戦いを見せてもらいました!」

そこに陽気な早苗が入ってきた。

「おう、オタクが神社の中にいっている間、こっちはこの神社を守るのに必死だったんだぜ~。報酬が欲しいくらいだ。だよな~シーザー」

「あ、あぁ。その意見には同意だ」

「んー。でも、見てください」

早苗は振り返って、神社の屋根を指差す。

そこには、ワムウの攻撃によって、えぐられた屋根があった。

下には瓦が落ちて、木が剥き出しになっていた。

「・・・これで守りきったと言えますかねぇ。ジャイロさん、シーザーさん。まぁ、夕御飯くらいは食べていってください」

 

今回の報酬は豪華な夕御飯ということになり、これといった情報を得ることもできず、一日が終わってしまったのだった。

 



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豪雨の中で君と戦いたい

あらすじ
命蓮寺を追い出されたジョニィは、一度人里へ戻り、小鈴の家で雨宿りをすることに決める。

その頃、命蓮寺はある二人のスタンド使いに襲われていた。




ジョニィが命蓮寺から帰ってから、一週間が経った。

 

人里には一週間近く、雨が降り続き、異常気象から異変なのではないかと考えた霊夢が人里にやってくる、ということもあった。

霊夢によると、命蓮寺からこの雨雲は発生しているという。

僕はただ、聖の言ったことを思い出すと、とにかく心配した。さすがに、この爪弾で天候を変えるなんてことできるわけがない・・・

結局、僕は雨宿りをすることしかできないのだ。

 

 

僕は小鈴の店で雨宿りをしていた。

彼女はとにかく優しかった。

雨宿りと言いながらも、もう数日間はここに泊まっている。部屋だけでなく、一日三回食事までついてくる。

そして何よりも優しいと思ったことは、僕の愛馬を屋根のある倉庫のような場所に入れてくれたということだ。

「人だって、馬だって、雨に濡れたら風邪ひいちゃうでしょ。倉庫ならほとんど使ってませんし」

と言って、スローダンサーのために倉庫を貸してくれた。

確かに人里のアイドルと言われていても仕方ない。

 

「今日もずっと雨みたいですね。この一週間、ほとんどお客さんが来ないので、ちょっと退屈です」

「客が来た方がいいのか?ここは、ほとんど本の貸し借りとかが仕事だから、ほとんどお金は入ってこないんじゃないか?」

「ジョニィさん。お金が全てではありませんよ。私はお客さんとの交流が楽しいんですよ。本のことについて話したり、世間話をすることや、その人の武勇伝を聞いているだけでも、私からしたら楽しいんですよ。お金はその次です」

思わず、この人間の鏡のような言葉と彼女の人柄に、おもわず涙が出そうだった。

そして、その後に見せた笑顔にグッと心を掴まれた。

「あ、それと私は本の解読も仕事としているので、その報酬としてお金も入ってきますよ。あとは、占いもやってますし」

「仕事の幅が広いのか」

「まぁ、人並み以上には・・・」

少し話していると、ガラガラと戸を開ける音が聞こえた。客が来たようだ。

「ジョニィさん、ちょっと待っててくださいね」

そう言い、小鈴は部屋から出ていく。

「いらっしゃいませー!」

その声はこの部屋にも聞こえてきた。

だが、その声よりも、次に聞こえた声に僕は震えた。

「すいませェん。足に筒のついた鳩を見かけませんてましたか?」

その声と、言葉。僕はそれを聞いたことがある。

出てきそうだが、覚えていない。

「申し訳ありません。今日は、あまり外に出ていませんので」

「そうでしたかぁ・・・それでは、命蓮寺はどっちの方向ですか?」

僕はその言葉に思わず、部屋から出た。そして恐る恐る、店内へ繋がる戸をほんの少しだけ開け、その先に映る人を見た。

黒のレインコートに、頭につけたお面。そして、片手に持っていたハデな傘。あれは確か・・・

「ブラックモアッ!」

思わず、僕は戸を開け、ブラックモアに指を向けた。いつでも、爪弾が出せるように、タスクを手の甲に乗せた。

「・・・あなたですか。すいませェん、今日は戦う気ないのでこのへんで」

「ま、待て!」

ブラックモアは大雨のなか、雨粒を踏んで、どんどん遠くへ消えてしまった。

僕はすぐに出入り口へ跳んでいき、それに爪弾を撃ち込むが、当たらず全て避けられてしまう。

「ジョニィさん?」

「・・・アイツは死んだはずだ。僕はそれを目の前で見たからな」

「・・・そんなところにいると、風邪をひきますよ。それと今度から人里で弾幕を撃たないでくださいね」

「弾幕?あぁ、これのことか」

「チュミ?チュミミミ~ン」」

僕は手の甲に乗ったタスクact.1を撫でた。

最初はこいつを奇妙に思っていたが、今となっては可愛いものだ。

「はぁ・・・霊夢さんが来なくてよかった」

「?・・・どういうことだ?」

「え?あ!何でもないですよ。さ、その濡れた服ください。乾かしますから!」

僕は服を脱ぐが、ブラックモアのことが少し気になっていた。

アイツ、どこに行ったんだ?

確か、あの方向は・・・まさか!

「小鈴!すまない!ちょっと、用事ができた!」

僕は服をまた着直すと、スローダンサーを呼ぶ。

裏の倉庫の扉を壊して現れたスローダンサーは、僕の前で止まる。

「用事って!今日はずっと雨ですよ!」

「今日じゃなければならないんだッ!」

その後、小鈴は何か言っていたと思うが、僕は小鈴の声を無視して雨の中、ずぶ濡れになった人里を走った。

「行くぞッ!」

 

 

体が・・・動かない。

どういうこと?

「目が覚めたか・・・」

男が私の顔を覗く。

私はすぐにそこから足のみ離れる。そして、巻物を取り出そうとするが手首を縄で締められているため、動かすことができない。

「ここが次のステージに選ばれた・・・運命は変えられない・・・」

「えっと、あなたは」

「ウェザー・・・」

私はすぐにわかった。この人は操られている。この人の本質は悪じゃない。正義なんだ。

「・・・ステージ?どういうことなの?」

「見ていればわかる・・・」

私は今ごろになって気づいた。暗いため、あまり周りを見ることができなかったが、目がなれてきたのか、周りが見えるようになると、他にも私と同じ状況の者がいた。

村沙や星だけじゃない。この寺の近くにある小さな家に住むお爺さんも捕まっているではないか。

「すいませェん。遅くなりました」

そこに黒い服の男が現れた。

男はお面をはずすと、部屋の壁に背中をつけ、ずるずると擦りながら、下に座った。

「・・・空気が変わった。ブラックモア、ちょっと 彼の相手をしてくる」

「・・・」

ブラックモアと呼ばれた男は寝ていた。どうやら、疲れているようだ。

そしてウェザーはそれを知ると、部屋から出た。

「ん・・・あれ?」

一輪が起きた。

「一輪!起きたのですか!?」

「え、姐さん!これはいったい!」

そうだ。雲山ならこの縄を切るための道具を持ってきてくれる!

「一輪!雲山でこの縄を切ってください!」

「え?あ、はい!雲山!」

いつもなら、一輪の声に反応し、すぐに来るのだが、全くもって来る気配がない。

「あ、あれ?雲山?」

「あの雲ならウェザーが持っていまァす。ウェザーの使うスタンドは天気を操る能力です・・・。そして、その能力で今、幻想郷のほとんどの場所で大雨が降っております。まず、この雨の中、家を出て、この寺まで走ってくる者はいない」

「・・・そうでもないみたいですけどね」

「?・・・どういうことだ?」

「さっき、ウェザーさんは空気が変わったと言ってましたよね?」

私は彼の動きやすい心を驚かした。

というよりも、不安にさせた。

彼はその言葉に、おもわず部屋から出ていってしまう。きっと、ウェザーの行った方へ向かったのだろう。

「あとは助けが来るのを願いましょう」

 

 

「・・・この大雨のなか、馬に乗った王子さまは現れたか」

「お前は・・・」

雨の中、一人の男が立っていた。

そしてその男もまた、僕を狙っているというのに気づいた。

「君がジョニィだというのはわかっている。俺の名はウェザー。君を倒しに来た・・・正直、もう逃げ場はない」

僕は雨を切るように爪を回転させる。

「逃げるなんてことはしない!」

ウェザーという名前から、この大雨の原因だというのがすぐにわかった。

天気を操るに違いない。・・・だが、天気を操るというのが、そもそも何なのだろうか。こいつの後ろにブラックモアがいるのはわかっているが、こいつ一人なら力はないんじゃないか?

「・・・それじゃあ始めるぞ」

無口なウェザーが口を開けたと思った次の瞬間、ウェザーとウェザーのスタンドは俺の後ろ、馬の上に立っていた。

「い、いつの間に!」

「蹴り殺してやる・・・」

僕はその言葉によって、馬から転げ落ちる。受け身をとると、すぐに門から中へ入った。

「・・・逃がさない」

 

僕はあのスタンドから逃げるために中へ。ウェザーは僕を追いかけて命蓮寺の中へ入っていった。



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二人の主人公

あらすじ
ジョニィvs.ウェザー。

ジョニィは命蓮寺の方へ跳んでいったブラックモアを追う。そこで待っていたのは天気を操るスタンドを使う無口な男、ウェザーだった。

※正直、ウェザーのことを忘れていて、急遽入れることを考えたため、ウェザーらしさがないですが、それでもかまわない方は読んでいってください。


僕は逃げ腰だった。

ウェザーのスタンドに恐怖したからだ。

 

考えてみれば、人里一帯に豪雨を降らせているということは、それなりにスタンドパワーが強いということだ。

そして、一瞬だが、アイツの闇が見えた気がする。最初、会ったときはどこか正義感のありそうな感じだったが、現実は違った。

「・・・どこにいった」

ウェザーは僕を探している。

ちょうどこの縁側の下からなら、アイツの足に爪弾を撃ち込むことができる!

「タスク!」

僕はタスクを出すと、縁側から飛び出し、爪弾をアイツのスタンド目掛けて撃ち込んだ。

「・・・」

ウェザーは動かなかった。

大抵の人間なら、銃弾が飛んできたら普通は避けるために努力するが、ウェザーは全く動かなかった。なぜなら、

「・・・燃やせ」

ウェザーのスタンドは爪弾を燃やすことができるからだ。

僕はその瞬間を見ていた。

彼の周りにできた雲から放たれた雷によって、爪弾が灰と化したところを。

「ウェザー・リポートは進化した。ここに来て・・・格段に進化したんだ。範囲だけでなく、その威力も」

ウェザーの纏っていた雲は少しずつ、僕の方へ近づいてくる。

今だと思って爪弾を撃つが、雲に飲み込まれ、雷で燃やされてしまう。

「この濃密雲は全てを飲み込み・・・燃やし尽くす。その弾をもキレイに・・・」

「ッ!・・・スローダンサーッ!」

僕の声にスローダンサーは反応し、こっちに来るが、ウェザーのスタンドによって、濃霧を出され、行き先わからず、足取りを止めた。

「・・・もう遅い」

その言葉に前を見た。雲はそこまで近づいていた。雷の貯まった雲は、今にも雷を落としそうだった。

「・・・万策尽きたか。ジョニィ」

ウェザーがそう言った次の瞬間、

 

「スタープラチナッ!」

 

その声と共に僕の前へ現れ、雲をはらったのはこの前、ここで一輪と戦っていた男だった。

「オラッ!」

その男のスタンドの拳は、ウェザーの雲を完全に散乱させると、ウェザーに向かって走っていく。

「DIOを狙ってもう一度ここに来たが、この異常気象の犯人を見つけられた!」

「ウェザー・リポート。」

今度は、台風のときのような強風を男に向かって放ち、男の行く手を阻む。

「ッ!何だ、この風は!」

「・・・この強風なら、その拳は届かない」

「だが・・・今なら、爪弾が届くッ!」

爪弾の勢いとその形なら、風を裂き、この風の壁を貫くことができる!

僕は諦めかけていたタスクを手に乗せると、爪弾をその風のバリアに向けて、何発も撃ち込んだ。

「ぐああッ!」

ウェザーは爪弾をくらうと、その風を止める。

そして、前に突撃していった男のスタンド、スタープラチナの拳がウェザーを寺までぶっ飛ばした。

「やったのか!?」

「いや、まだだ。何か嫌な予感がするぜ」

寺までぶっ飛ばされたウェザーは、瓦礫の中から、その姿を現す。

「ヘビー・・・ウェザー・・・。お前が来たか」

ウェザーはどこか違った。さっきまでの冷静な姿は風のバリアのように消え、そこには、黒いオーラを纏った『悪』が立っていた。

ウェザーが纏った雲には虹がかけられている。

それも進化の一つなのか?

「こいつはマズイ・・・」

次の瞬間、ウェザーのスタンドの拳は前にいた男の顔面を捕らえていた。

それをまともにくらった男は仰け反り、カウンターを入れるように、スタープラチナの拳をそのスタンドに刺した。

だが、それは雲のようになり、脇腹をえぐるだけで、ダメージを与えているようには見えなかった。

「その単調な動きじゃ、俺のスタンド、ヘビーウェザーを倒すことはできないッ!」

あの無口な性格から一変、声色すら変わったウェザーは、スタープラチナもろとも、男を風と雷で圧倒する。

近づくこともできない落雷地帯と、台風のような風。

爪弾すら、今の状態じゃあ撃ち込んでも意味がない。

「えっと、すまない。こんなときに聞くのもなんだが、アンタはなんて名前だ?」

「空条 承太郎・・・。お前は?」

「僕の名はジョニィ。ジョニィ・ジョースターだ」

「!・・・気になることがあるが、今はいい。今はあの天気男を殴ることだけを考えろ」

「だな・・・」

ウェザーはこちらをジッと見ている。いつでも攻撃できるのだろうが、こちらの動きを伺っているのか、動こうともしない。

今ぶつかっていっても、その風と雷を前に、ダメージを受けて再起不能になるだけだ。

「・・・お前のそのスタンド。爪を飛ばす以外に何ができる?」

「他に、穴から爪弾で狙撃することや、自身を穴に巻き込んで、相手に近づくことも・・・できなくもない」

「?・・・できなくもない、というのは、確実ではないということか?」

「あぁ。それをするには、黄金の回転を」

「まぁ、どうでもいい。俺は・・・お前を信じて、ただアイツを殴るということを考えて突っ走るだけだ!」

「お、おい!」

承太郎はそんなことを言うと、何も聞かず、あの台風の中に突っ込んでいった。

「来るか!だが、この台風でアンタを始末する!」

石畳をも軽く浮かせて飲み込んでいく、巨大な台風と化したスタンド能力は、その中にいるウェザーを完全に守る盾となった。

「アンタの拳が届くわけがない!」

そう叫んでしまうくらいの威力だった。

「ぐ、ぐあ・・・」

鎌鼬のような風の刃を繰り出す台風は承太郎の制服に、切り傷を負わせる。そして今、雷によって、帽子が飛んでいった。

「やめろ!できるわけがない!」

「道だ・・・俺には道が見えている」

「道か・・・俺のスタンドの前でよく言えるな!逃げる道も、助かる道も、輝ける道もない!この嵐の前に力尽きるのだからな」

「・・・やれやれだぜ」

「!?」

「逃げる必要はないな・・・なぜなら、俺のスタンド、スタープラチナによってぶちのめすからだ。そして、今さっきお前は道がないと言ったな?道は自分で切り開くものだ。だよなぁ、ジョニィ!」

僕はその雷が帽子をぶっ飛ばした瞬間を逃さなかった。

「タスクッ!」

act.2となったタスクは、その爪弾の威力で、ウェザーの風のバリアに穴を開け、その穴を引き裂くように、承太郎のスタープラチナが拳をねじ込んだ!

「ぶちかますぜ!」

スタープラチナの拳連打(ラッシュ)がウェザーに決まる。

あのオラオラという連打。

もしも、こいつが人型のようなスタンドだったら、僕もあんな感じにしたい。act.4・・・そう願った。

「オラッ!」

ウェザーは台風の中から、押し出されると灯籠に勢いよくぶつかり、地面に頭を擦らせた。

たぶん意識はないだろう。

「やれやれだぜ・・・」

承太郎は帽子を拾うと、ギュッと深くかぶり、門の方へ歩っていった。

「どこへ行くんだ?」

「・・・ここにDIOはいなかった。そして、この異常気象の原因を倒した・・・。もう、ここに用はないぜ」

雨雲は去り、雨は完全に止んでいた。

承太郎はポケットに手を入れると、その場を去った。

「そうか・・・。僕はこの寺の人達を助けにいかないとな」

「ジョニィ!これはどういうことですか!?」

男の声が、寺から聞こえる。

ブラックモアだった。

「ウェザーは死んだ。残るはアンタだけだ」

「・・・いや、もう限界でェす」

ブラックモアは僕に降参と言いながら、両手をあげた。確かに彼は雨を操る。雨のないこの晴天は彼にとって敗北といってもいいだろう。

「離れの倉庫に彼女らはいます」

ブラックモアはそう言うと、すぐにそこから逃げていった。

 

「ジョニィさん!助けに来てくれたのですか!」

倉庫の戸を開けると、そこには手首と足首を縄で縛られた聖達、寺の者が座っていた。

「大丈夫か!」

僕はすぐに近くにあった短刀で縄を切る。

聖の弟子と思われる人達は頭をさげる。そして、聖も頭をさげた。

「あのときはごめんなさい」

縄を切り、ほどいた後の最初の言葉がそれだった。

「?・・・どういうことだ?」

「ほら、あのとき、私が無理矢理、寺から出したことです。私はこの力によって、彼らがここに来るということがわかっていました」

「全然大丈夫だ。それよりもケガはないか?」

「それなら、みんな平気だと思います」

「いや、・・・ナズが!」

部屋の奥で、一人の女が、ネズミのような耳をした女を抱きかかえて、涙を流している。

息が荒い。・・・まさか、あの二人が何かこの女にしたのか!?

「だ、だい、じょう、ぶ・・・ですよ。この、くらい・・・ッ!」

ナズと呼ばれた女を床に下ろすと、抱きかかえていた女がナズの服の腹部を捲った。

「う、何これ・・・」

ナズの腹には大きなデキモノができていた。

この状態・・・あの二人の能力ではこんなことにはならない。まさか・・・

 

この寺への侵入者は、ウェザー、ブラックモア以外にもいたのか!?

 



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雨上がりの女皇帝

あらすじ
進路のことで忙しくなった駿我は、小説を書く合間もなく、時間が加速していった。
そして、「一週間に一話は必ず投稿する」という目標もメイドインヘブンの時加速の前では無理な話であった。

これからは(たぶん)その目標を達成するよう、努力します!

「ちょっと待って!今小さくたぶんてつけたさなかった?・・・たぶんッ!?」


あれから数時間が経った。

 

ナズーリンは星によって、彼女の部屋に運ばれた。

彼女の主人と思われる星は、彼女のそばに座り、ずっと名前を呼んでいた。

僕はただ、雨の止んだ空を見ているしかなかった。

空にはウェザーが残したと思われるキレイな虹が架かっていた。

「キレイですね」

「あ、聖・・・さん」

縁側で座る僕のところに聖がやってきた。

「・・・やっぱり、あの子は」

「私が悪いのです」

聖はそう言う。・・・フォローはできない。確かに事の初めを言えば、あれだけの力を持っていたのにも関わらず、彼らの侵入をその優しさ故に許可し、さらには部下にケガを負わせてしまった。

「少し前に永遠亭の方を呼びました。豪雨の後ですし、地面もぬかるんでいますので、あまり早くここまではこれないと思いますが。・・・きっと助かりますよね?」

僕はその言葉に返事をすることはできなかった。

その返事一つで彼女の心情を暗くしてしまうかもしれない。そう考えたからだ。

本当はただ、返事をすることが怖いだけだが・・・

 

ナズのそのデキモノは大きくなっていた。

そして、

「あれ?何か顔っぽくない?」

人の顔のようにも見える凹凸ができていた。

最初に気づいたのは村沙だった。

「ここが目で、ここが口で・・・ここが鼻か?」

「な、何か不気味じゃないですか」

「そして、腕が生えて」

「やめてください!」

星はナズにこれ以上、心配をかけさせないために村沙の口を塞ぐ。

「・・・それにしても本当に不気味ですね、それ」

一輪はそれを見てそれしか言わなかった。というのも、さっきから口を塞がれっぱなしで、ほとんど呼吸をしていない村沙のようになりたくないからだろう。

「ぶぇ・・・ひぬ」

「あ、ごめん」

ようやく呼吸することを許可された村沙はすぐに深呼吸し、息を落ち着かせる。

そして少し時間が経ち、聖が部屋に入ってきた。

どうやら、人里の方から客が来ていたらしい。

「ごめんなさい、客が来てね・・・。焼けた肌の女性で、用があったみたいだけど、日を改めさせてもらったわ。それで・・・ナズの方は?」

「今だ変わらず・・・むしろ悪化しています」

「そうですか・・・早く永遠亭の方が来てくれるといいのですが」

 

「皆さんはもう修行を始めていいですよ」

 

ナズの方から聞いたことのない声で、聖達、命蓮寺の仲間にそう言った。

「い、今のって、ナズが?」

「ま、まさかそんなわけ・・・」

星はナズの腹にできたデキモノを見るために、ナズの服を捲った。

すると、その捲る手の指を何かが噛んだ。

「ッ!何ッ!」

星はすぐに手を離す。

「チッ!噛みきることはできなかったか」

そのデキモノはパクパクと口を開閉する。それは言葉を発しているようにも見えた。

いや、見えたではない、しているのだ。

「アタイの名はエンプレス。女皇帝の暗示」

「う、うぅ・・・」

ナズの顔色がいっそう悪くなる。それもそうだ。自分の腹にできた物がしゃべっている。そんなこと気持ち悪くなるに決まっている。

「ナズ!」

「アタイはこのナズとかいう少女の肉だ!アタイを殺すことはつまり、この子を殺すことにもなる!チュミミー!」

「ッ!卑怯な」

「卑怯?これがアタイの戦い方さ。さぁ、どうする?この子を殺してまでもアタイを倒すか、アタイをこのままこの子に寄生させるか」

「タスク!」

僕は躊躇なく、それに爪弾を撃ち込んだ。ナズの体ギリギリを撃ち抜くことが狙いだった。少しでも爪弾が当たれば、そこに傷ができてしまう。

「ジョニィさんッ!」

「チュミ!そこまで言ってもなお、アタイを殺すなんて・・・」

デキモノの言った言葉は嘘のようだ。

それを倒しても、何も起こらない。むしろ、ナズの腹の上で散らばった肉片は消えていく一方だ。

「ジョニィさん!何てことをしてるんですか!?もしも、ヤツの言葉が本当なら・・・ナズは」

「すまない。だが、僕もそんな状況下でなぜ爪弾を撃ったのかわからないんだ。まるで衝動的にというか、何と言うか・・・」

「・・・」

静寂が包み込む。

僕はタスクを左手にしまう。

「あ、ありがとうございます」

それを壊したのは寝ていたナズだった。ナズの顔色はすっかり元通りになり、ひょいッと布団から立ち上がった。

「ナズ!・・・もう大丈夫ですか?」

「お陰さまでもう平気ですよ。・・・少し手荒いとは思いますけど、終わりよければ全て良しですよ」

星は立ち上がったナズに抱きつく。

星が我慢していた涙は一気に溢れだした。

「ちょ、強いですよ、少し弱めてくださいって」

こうして、命蓮寺での事件は幕を閉じた。

しかし、ジョニィへの刺客は、まだ終わりそうになかった。

 

 

ワムウ戦の後、俺はそのまま守矢神社で行われた宴会に参加した。

霊夢や魔理沙もそこに来て、早苗達と盃を交わすなか、俺とシーザーは境内から少し離れた場所で、自らの能力を披露していた。

自慢と言った方が早いか?

「おたくはよぉ、鉄球でワインのビンのコルクをぶっ飛ばすことはできるかぁ?」

「なら、お前は、コップをひっくり返して、中の液体を溢さないことはできるか?」

俺は手のひらの上で鉄球を回転させる。

シーザーは自らの周りにシャボン玉を浮かせる。

「男って、何でこうも子供なのかな~」

「諏訪子~。言っていいことと悪いことがあるんだ~。こんなときは、こう言うんだ。ねぇ、あんちゃん。私と腕相撲しない?」

こちらを挑発する二人の女。

一人は紫色の髪に赤い服、そして背中にはしめ縄という、東洋の寺や神社に存在する縄を円にして背負っている。

もう一人は酒を飲むには、見た感じ年の足りない少女で、頭にカエルのような帽子をかぶっている。

「それじゃあこうするかぁ。この女に何秒で勝つことができるかーッていうので競おうぜぇ」

「望むところだ」

「へぇ、面白いこと言うじゃねぇか。それじゃあ、ちょっと来な」

 

宴会場の真ん中にセットされた椅子と机。

ドシッとかまえ、椅子に座った女は右腕をを机の上に置く。

「私は八坂 神奈子。この神社に住む神だ。自分で言うのもなんだが、そこらの妖怪とは桁外れの能力を持っている・・・それでも戦うのか?」

「ニョホ♪。そんなこと言っても、俺はひるまねぇぜぇ。だよな?シーザー」

「あぁ、所詮は女だ。少し力を出せば勝てるに決まっている」

シーザーはそのまま一直線に、椅子へ向かうと、神奈子のようにドシッとかまえ、椅子に座った。

両者、右手を握ると、ギュッと力を入れる。

「審判は早苗頼むよ。スタートの合図だけ言ってくれ」

早苗は観客として楽しもうとしていたのだが、神奈子の声にセットへ上がる。

「あやや、これは面白いネタが貰えますかねぇ」

射命丸も来ていた。もちろん、この宴会のためではなく、新聞のネタのためだ。

「さぁ、始めますよ」

二人の目の色が変わる。

その威圧感から空気がドスンと重くなる。

「それでは・・・始め!」

早苗の掛け声と共に手を離した途端、シーザーが倒された。

一瞬だった。

シーザーの手の甲はテーブルに勢いよく突っ込むと、それがテーブルに触れると共に、シーザーは空中へ飛んだ。

「さすが、神奈子様!・・・やっぱり人間ではかなわないのか」

「ッ!・・・波紋じゃどうにもならないのか。彼女は危険だ。あの力は並みの人間では」

「ほぉ・・・並みね・・・」

そのときのシーザーは諦めの表情だった。

どうせ、こいつも負けてしまうんだ・・・と顔が言っていた。

「俺は並みの人間じゃないぜ。おたくのような波紋とは違うってことを教えてやる」

俺は回転させた鉄球を腕の裏に隠させた。その鉄球は俺の筋肉を刺激し、通常の数十倍の力を出せるようにする、言わば『ドーピング』のようなものだった。

「その球体がどんな力を発しているのかわからないけど、始めようじゃないか」

ドシンとかまえた神奈子の手を握る。その瞬間、彼女の溢れる闘志と力を感じた。

だが、怯むことなく、早苗に

「早く頼むぜ」

と、言った。

早苗は俺らの合わさった手の上に手を置くと、シーザーのときと同じく、合図をして、その手を離した。

 

そのときの結果は、

明白に俺の脳に刻み付けられた。



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反発するもの

『だいたいは学校のせい』
また遅れてしまった。

高校生である自分は三年という立場のせいか、進路のことについて、時間が無くなっていく。

だが、やっと進路の話は解決した。

これからは遅れないようにします。


守矢神社・・・

 

宴会は今日の朝まで行われ、霊夢達が帰ったのは太陽が昇り始めるくらいの時刻だった。

宴会後、片付けをする早苗にあることを聞きにいった。俺にはレミリアに言われたときからずっと、引っ掛かることがあった。

「なぁ、早苗」

「何ですか?」

まさか本当にあるとは思わないが、この世界に来たときにも一瞬だけ感じる『何か』があった。

最初は何とも思っていなかったが、もしもこれが本当ならと考えると・・・とにかく、ゾッとする。

 

「この世界にも聖なる遺体があるのか?」

 

早苗が俺たちのことを知っているということを前提に聞いてみた。

早苗はスッと目線を反らす。動揺しているようだ。

「せ、聖なる・・・何ですか?そ、それは」

「知らないのなら良いが、その反応、アンタ知ってるのか?」

早苗は口をモゴモゴさせた後、口を開けた。

「聖なる遺体はこちらの世界にも散らばっていますよ。あなた達の世界にあるものとは能力が違いますがね」

「!・・・どこにあるか、知ってるのか?」

「それは知りませんよ。私は選ばれた人間じゃないですしね・・・まぁ、幻想郷内を歩いてれば情報が入るんじゃないですか?・・・それにあなたには、心強い情報屋がいるみたいですし」

「情報屋?・・・まさか」

次の瞬間、横のガラスが割れ、一人の女が入ってきた。黒い羽と頭につけた何かは、まさに彼女の象徴でもあるそれだった。

「あやや、呼びました?」

「残念ながら呼んでねぇな」

射命丸だった。

射命丸は胸ポケットから、ペンを取り出すと、先端を俺に向けた。

「それはそうと、情報です!昨日から人里で雨が降っているというのは知ってますか?」

「あぁ、それくらいはな」

「それが"異変"なんですよ。雨雲が人里のみに集まっていることやその豪雨から、どうやら異変として、霊夢さんも二日酔いながらも異変を解決しに出掛けたらしいです」

「なるほど・・・それで結果はどうなったんだ?やっぱりあの女だからな~」

「それが『あの雨に当たった瞬間、飛べなくなって下に落ちた』とか言ってました。私は最初からカメラやネタのつまったメモ帳を濡らしたくない理由で入りませんでしたけどね」

文は大事そうにいつもカメラを持っている。

マスコミの武器であるカメラを壊したくない気持ちは俺もわかる。俺もこの鉄球を壊したくない。

「・・・能力無効化の雨ですか」

「えぇ。でも、おかしくないですか?そんな強力すぎる雨を何日も降らせるなんて」

「・・・」

俺は『雨』と聞いて、一人の男を思い出した。雨を操るスタンドを使う不気味な男を・・・

「俺の知っているヤツの中にいた・・・」

「!・・・でも、私たちの能力に対応できるとは」

「これが試練と言うなら、その能力が強化されたのかもしれない。白玉楼にいるプッチみたいにな」

「・・・あの天国さんですか。たまに人里で布教活動を行ってますよ。天国を目指すとか何とか言って」

プッチは最初に会ったときは、とても狂った野郎だったが、白玉楼の警備兼執事(?)として所属したら頭のように丸くなった。

だが、そんなことをしていると考えると、何か裏がありそうだ。ヤツの言う、『DIOのため』という言葉に脳内で何かが引っ掛かる。

「悪い、俺も帰っていいか?」

そんなことを言えば、この場から離れ、その異変へと向かうことができると思ったがそうでもなかった。

無言で早苗は俺の腕を掴んできた。

「ダメですよ、まだここでやることがありますし。それに遺体のこと聞き出すんじゃなかったんですか?」

確かにそれもそうだ。

あの巫女のことなら、すぐにそんな異変など解決してしまうだろう。

「なら、まずはこの天狗から情報を貰わないとな」

「・・・何ですか?」

 

数分間、俺は聖なる遺体について話していた。

遺体について、二人はほとんど情報は無く、あることと言えば、同じ目的の人間をこの前見たという程度だった。

本当に予想に過ぎないが、その探している人間というのは、今人里で起こっている異変の発端である、ブラックモアだろう。そして、文に一度話している。

話終わった俺は早苗の顔を見た。・・・何か不機嫌な顔をしている。

「何か間違っているところでもあったか?」

「えっと、この世界の物とは逆ですね。この世界に散らばった遺体には正義というよりも悪に近い能力が付いています。つまり、"聖なる"と言うよりは"邪悪なる"と言った方が正しいですよ」

「・・・これは困ったな」

「何がです?」

「それを集めても意味がない。むしろ、そんなの厄が貯まる一方だ。正直、集めるだけ無駄じゃあないか」

「・・・わかってませんね。これを集めようとしている人間が何を狙っているのか」

「?」

 

「悪が悪を栄えるため・・・ですよ」

 

 

「ちょっと良いですか?」

命蓮寺での事件が終わった次の日、僕は聖に呼ばれ、離れの倉庫にやって来た。

移動は馬を許可され、遠回りだが庭を通って倉庫へとやってきた。

「少し頼み事をしたいのですが、これを白玉楼に持っていってくれませんか?今日から数日間は修行の方で忙しいので」

聖は棚から二尺以上ある大きさの筒を取り出し、僕に渡した。

「これはなんだ?」

「中身は教えることはできません。ただ、ジョニィさんが見てはいけない物だというのはわかります」

「おい、まさか・・・呪われた『何か』とかじゃないよな?抜いたら死んでしまう刀とか、見たら病にかかる巻物とか」

「・・・それは言えません。ただ、絶対に見てはいけませんよ」

僕はそれを渡されると、すぐに倉庫から出て、目的地まで馬を走らせた。

そのとき、その筒以外にも違う筒が置かれていることに聖は気づいていなかった・・・

 

小鈴のところで読んだ本の中にも、同じような話があった気がする。

見てはいけないと言われていたのにも関わらず、それを見てしまい、幸せが逃げてしまうというものを・・・。

もしかして、こいつもそんな感じなのでは?

「ぜ、絶対見ない・・・絶対見ないぞッ!」

「あれ?ジョニィさん?」

誰かに声をかけられる。

白いウサミミ・・・優曇華だった。

「どうした?こんなところで」

「仕事中ですよ。薬を買ってもらうために、人里に来てるんですよ。ジョニィさんこそ、こんなところで何を?」

「これをこの場所に持っていくように言われてな」

僕は筒と白玉楼の場所が書かれた地図を見せる。

「なるほど、馬借みたいな仕事もされてるんですね?」

「・・・ただの頼まれ事だよ」

「何かごめんなさい。・・・あ、白玉楼なら私知ってますよ。用もありますし、道を教えましょうか?」

「それは助かる!頼む、道を教えてくれ!」

正直、聖から渡された地図だけではよくわからなかった。人里ですら、まだ道を覚えられていないのに、さらに森や竹林を通ると考えるとさらにわからなくなってしまいそうだ。

僕は優曇華を後ろに乗せると、スローダンサーを白玉楼まで走らせた。

 

聖なる遺体、いや、邪悪なる遺体は引き付け会う。

今、何も遺体を持っていないため、反応することは絶対ない。

俺は退屈しのぎに、鉄球を独楽の要領で回して遊んでいた。台には頑丈な臼を使って・・・。

遺体の話をしてから、数日が経った。人里の異変は解決し、それのせいか少し前まで霊夢が守矢に来ていた。だが今回の異変に関係していない、と霊夢は言う。

まぁ、天気のことだ。自然消滅ということだろう。異変解決のプロを呼ぶほどの物でもなかったということだ。

「あ・・・」

臼の中から飛び出た鉄球は、石畳の上を転がり、段差で止まった。その段差というのは、石と石の段差とかではなく、早苗の足だ。

「ジャイロさんも遊んでないで、神社の掃除とかお願いしますよ。シーザーさんだってやってる・・・あれ?」

シーザーは波紋の修行なのか、石像を磨くために石鹸から出した泡を操り、新たな技を作っていた。

「んー・・・こうすればいいのか?名前は・・・」

「シーザーさん!」

ここはとても平和だ。一度はワムウによって、平和という名の城を壊されかけたが、今はとても平和な世界だ。

 

 

だが、それを壊す『帝王』がそこに向かっていることに誰も気づくことは無かった。

 



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ジャイロの決意

前回のあらすじ
ジョニィは聖の頼みで、白玉楼へ向かうことにした。

そしてジャイロは平和ボケしていた。



この世界に来て、ジョニィなどの使う『スタンド』や、ジャイロの使う『回転の技術』は強化されている。

パワーとか、スピードとかそう言ったことだけではなく、その能力もだ。

例えば、この前にあったウェザーによる異常気象。一週間近くに及ぶ豪雨は、現実世界のウェザーでは難しいだろう。

他にもプッチのスタンド『ホワイトスネイク』や吉良のスタンド『キラークイーン』といった進化した、または使用者が同じスタンド能力を取り込み、合体し、一つの個体になっているということもある。

 

つまりは、この幻想郷ではスタンドの力や技術は、さらに人間を越えた物となるのだ。

 

だが、例外もある。生前のダメージがその部分に負荷としてかかり、傷や病として出ることもある。

例としてプッチやリゾットなどがあげられる。

 

幻想郷がどちらを選ぶかは生きている間に、その人が起こしたことによって決まるのか、決まらないのか、全てが謎に包まれている。

 

 

俺は回転の進化を実感していた。何となくだが、前よりも進化している。

本来、こういった野蛮なことには使われないものだが、このレースによって、その特性は変わってしまった。

本来の使い方を忘れているのではないか?

「ジャイロさん!またサボって・・・」

「オタクは・・・どうして俺を足止めするんだ?」

「え?」

「俺はレースに優勝し、マルクを助ける。その目標を掲げ、レースへと参加した。それだけは変わらねぇよ」

早苗は俺の言葉にそれまでの活気溢れた声を沈めてしまう。そして静かに深呼吸をすると・・・

 

バシッ!

 

俺の右頬をビンタした。

「誰も足止めなんかしてません!あなたが、こんなところでのほほんとしているだけです!」

震えた声でそう言った。

「こんなところでこんなことをやってる暇なんて俺にはないんだ!・・・それくらい言ってくださいよ」

そして涙を流し、泣き始めてしまった。

「私はジャイロさんのことを知ってます!あなたがやってきたこと全て。そしてジャイロさんが好きでした。でもそんな弱々しく、女の子の声に心を揺らされてしまうジャイロさんは嫌いです!もう一度、言ってください! 俺の馬(ヴァルキリー)に女は乗せねぇと決めているって!」

早苗はそう言うと、境内へ走っていった。

「早苗・・・クソッ!だから、女ってのは禍を運んでくるんだ」

臼の中で回っていた鉄球は回転を止め、臼の中心で静かに休んでいた。

 

勢いのまま、守矢神社から出てきてしまった俺は山の中で迷っていた。

どこぞのウサギもいない、魔女もいない、巫女もいない・・・守矢神社の方角はわかるが。

いや、早苗の声もあって俺は遺体を探すために出てきたんだ。シーザーにはすまないが、俺は守矢神社に帰るわけにはいかない!

「ミツケタゾ」

「!」

意気込んだとき、辺りから何者かの声が聞こえてきた。一方向じゃない、全方向からだ。

「囲まれてるみたいだな・・・」

どこから来るのか、鉄球をかまえると、急に足が痒くなってきた。

まるでたくさんの蚊にも刺されたかのような、そんな痒さが足を走った。

「何だこれは!」

恐る恐る足を見ると、拳くらいの大きさをした金色の何かが足に角を刺していた。

「な、何だ!こいつら!」

一匹、二匹とかそんな数じゃない!軽く数えただけでも十匹は確実にいる!

俺は鉄球を回転させ、足についたそいつらを落とそうとするが、視界がぼんやりとしてきたため、そのままその場に倒れてしまう。

酒に酔ったような感覚・・・こいつら、何かを注入していると思ったら、酒を俺の足に注入していたのか。

「シシシ、気づいたところで、アンタの負けは決まってるんだど」

木陰からドリアン頭の丸い男が現れた。

そいつの近くには、俺の足にいた生き物と同じ生き物が集まっていた。

「こいつ・・・」

「シシシ。苦しんでるど・・・ん?その手に持った球は何だど?」

彼のスタンドであるそいつらを俺の手へと向かわせると、俺の手の中から鉄球を持ち出そうとする。

「今だ・・・」

ヤツのスタンドが触れた瞬間に、回転を加え、ヤツのスタンドを粉々にした。

だが、ヤツに効果はない。

「なぜ、本体にダメージが入らない」

「おらのハーヴェストは一匹程度、死んでも痛くないんだど。おらのハーヴェストは強いんだど!」

「何・・・だと・・・」

俺は立っていることすら厳しい体を無理矢理起こすと、鉄球を地面に置いた。もちろん、回転させて。

「何をしてるんだど?」

「ヴァルキリー!」

「?・・・な、何を言ってるど!」

「まぁ、そう焦んなって」

回転によってできた波は愛馬のところまで届き、こちらを見ると、俺の声を聞いた愛馬はすぐにこちらへ走ってきた。

「ななななな!こっちに来たど!は、は、」

愛馬はそいつを後ろ足で蹴り、俺の手前まで転がした。

「よぉ、太いの。オタクよォ、こんな近くまで来てよォ~~。そんな酒を飲みたいのかァ~~?」

あのとき、体の水分を出したみたいに、体からアルコール分が入った水を出すと、その太いのに飲ませた。

「ほ~ら。たらふく飲みな~」

「や、や、や、やめるんだどー!」

 

俺は守矢神社に帰ってきてしまった。

「あ、おかえり。大丈夫で・・・うわ、酒臭ッ!」

やはり、体の中にはまだ酒が残っているみたいだ。あの量のスタンドに注入されたんだ、仕方ない。

あの男は酔っぱらって、千鳥足になりながらも、どこかへ帰っていったため、俺も帰ることにしたのを思い出した。

「途中で敵と遭遇してよ」

まずそんなことを言っても、早苗にはどこかの酒場で酒を飲んで帰ってきたとしか思わないだろう。

「どこに行っていたんだ!ジャイロ!」

シーザーが箒を握り、境内の奥から現れた。

「お前がいなくなったことで、俺がお前の分の仕事をやっていたんだ!」

「あれ?でも、『新しい技が完成した!』とか言ってた波紋使いは誰でしたっけ?無駄に石鹸を使って、泡立てては外にシャボン玉飛ばしてた・・・」

「わかった!それ以上言わないでくれ!」

「まぁ、とりあえず夕飯の準備しますから、ジャイロさんはその酒臭い体を何とかしてきてください!」

と言い、早苗は俺にタオルを渡し、風呂場の方へ案内した。

「それにしても本当に臭いですよ。そんなになるまで飲んでいたんですか?あれから数時間経ってますし」

「・・・もう、怒ってないのか?」

「どうしてそんなことを?」

「・・・いや、何でもない」

「もう怒ってませんよ。決めるのはジャイロさん、あなた自身ですから、今すぐここから出ていっても、私は止めませんし、薦めることもしません。自身の道を歩んでください」

「・・・わかったよ。だが、一つだけ頼みがある」

「?・・・何ですか?」

 

邪悪なる遺体のある場所を知っていたら、何でもいいから教えてくれないか?

 

 

俺は次の日の朝、守矢神社から出ていった。

昨夜、早苗から貰った地図を手にすると、階段を下り、山の中へ入っていった。

そして、今は人里で休憩していた。

雨が止み、水位の上がった川はいつもよりも激しく流れていた。

「ちょっと隣いいですか?」

そこに赤い髪をした女の子がやってきて、俺の横に座った。

マントのようなものを羽織ったその子は、静かにこんなことを言っていた。

「ここ最近、この辺は色々と物騒でね。この前もピンク色に黒の斑点模様をした髪の男が近くの店を襲撃してね。確か名前は・・・何だったっけな」

「・・・すごい髪色をしたやつだな」

「そいつは確か守矢神社の方へ逃げていって、行き先もわかってるのに、この里の警備の人間だけでなく、異変解決のプロの霊夢さんでさえも、ヤツを捕まえるのに手こずってるらしいんだよね」

「あの霊夢がか?」

「うん。・・・まぁ、あなたがこれを聞いてどう思うかは知らないけど」

女は言うだけ言って、その場から立ち去った。

俺は詳しいことを聞きたくて彼女を追ったが、彼女が曲がった先の道で、完全に姿を見失ってしまった。

あんなにも、人里に隠れることは不可能な格好をしているんだ、すぐに見つかると思っていたが、どこを探しても、彼女は見つからない。

「確か、その犯人の男は守矢神社に行くとか言ってたな・・・」

守矢神社という名を聞いたとき、俺のなかに早苗の顔が浮かんできた。

 

「大変だ!早苗が危ない!」

 

俺はすぐに馬に乗ると、守矢神社へ走り始めた。




次の投稿は二週間後になるかもしれません。
理由は、この前消した『E-vil』の分を、次の作品で取り戻さなければならないことや、中間テストが始まるということですね。
できるだけ、空いた時間を使い、早めに投稿できるようにします。
今後も幻想回転録や、他の作品をよろしくお願いします。


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帝王降臨

遅くなりました。
一週間といいましたが、もう少しかかってしまいました。
学校の課題というのが一番の原因でもあります。
あとは趣味のことが多いですね。

次回はもっと早く投稿できるようにします。


ツェペリという姓を持つ男が一人、守矢神社の前で戦っていた。

相手はピンク色に黒の斑点模様という、とても奇抜な髪をした男。

男は自らの名を『ディアボロ』と名乗った。

 

「こ、こいつの攻撃はいったい何なんだ!?」

シーザーのシャボン玉はいつの間にか消滅し、後には攻撃をくらったという『結果』しか残らなかった。

「我がスタンド『キング・クリムゾン』は、この世に結果しか残さない!お前のそのシャボン玉は割れ、この世から消えたという結果だけが残った!」

キング・クリムゾンはシーザーを蹴り飛ばす。

「シャボンカッター!」

「無力だ」

キング・クリムゾンの能力はシーザーが攻撃する隙をも与えなかった。

波紋を練る前に、キング・クリムゾンの攻撃が、シーザーのシャボン玉を割りながら、本体へと攻撃する。

「お前が蹴り飛ばされたという結果だけが、この世に残ったのだ」

神社の屋根まで吹っ飛ばされたシーザーは、その勢いで屋根の一部を破壊した。

「シーザーさん!」

早苗はシーザーが吹っ飛ばされた方向へ向かうが、ディアボロはキング・クリムゾンの能力で、早苗の目の前に現れた。

早苗はその瞬間、ある一人の人間に助けを願った。

(ジャイロさん・・・助けて)

そしてそのとき、奇跡は起きた。

「次はお前だ!緑髪の娘よ!・・・キング・クリムゾンンンッ!?」

ディアボロはいきなり、早苗の目の前で倒れた。

ディアボロの足元で何かが回転している。

「これって・・・」

「何だ、この鉄球は!?」

 

「やはり、ここが俺には一番の場だな」

 

声の方向に回転した鉄球は跳んでいく。

そこにはジャイロが立っていた。

 

「帰ってきたぞ」

「ジャイロさん!」

俺は早苗の前で倒れた男の近くまでいくと、その長い髪を掴み、そいつの顔を見た。

「・・・まさか、こんなヤツに我がスタンドの攻撃が負けるとはな。だが、本気ではない」

次の瞬間、俺の手にはヤツの髪の毛が二、三本残り、ヤツ自身は空中へ跳んでいた。

「ジャイロさん!」

早苗が俺を呼ぶ。

「彼の名前はディアボロ。スタンドは時を消し飛ばす能力と未来を」

「こいつッ!キング・クリムゾン!」

 

一瞬だった。男が自身のスタンドらしき名前を呼んだ瞬間、早苗はそのスタンドによって、神社の賽銭箱に叩きつけられた。

「早苗ぇぇぇぇぇぇっ!」

「ジャイロ・・・さん・・・」

俺はすぐに早苗に近づき、早苗の腹部を見た。

スタンドの拳は早苗の腹を貫きまではしなかったが、内出血し、痛々しくなっていた。

賽銭箱に叩きつけられた威力でどこか骨も折れているだろう。

「早苗!しっかりしろ!」

「彼の・・・スタンドの・・・もう一つの能力は」

「!」

「み、未来を・・・見る・・・こと・・・」

「さ、早苗!おい!死ぬな!お前が死んだら、お前を守れなかった俺やシーザー、そして今いないあの二人はどんな顔して生きれば」

「ジャイロ・・・さん・・・」

早苗は最後の力をふり絞り、俺の手を握った。とても弱い力で、赤子が親の指を握るような・・・

「奇跡は・・・必ず・・・起きますよ。信じてください。だって、ジャイロさんの馬には・・・

 

女神が・・・乗ってるじゃないですか・・・

 

信じてます・・・彼を倒して・・・この神社を守ってくれ・・・ること、を」

俺は早苗を賽銭箱から抱きかかえ、縁側に寝かせると、ディアボロを睨んだ。

「何だ?その眼は。その女は殺される運命だったのだ!この帝王、ディアボロによってな!」

俺は鉄球を手のひらの上で回転させる。

「この回転は、俺の怒りだ。この怒りをテメェにぶつける!それが、今、早苗のためにできることだ!」

俺は鉄球を投げた。

これまでにないような回転、あれは・・・黄金の回転なのか!?

自分でも驚くような回転だった。まさか、馬が無くても、あの回転が発現するとは・・・

「キング・クリムゾン!その鉄球は、俺に当たらず、飛んでいく!無意味な行為だったな!」

ディアボロはスタンドを自分の前に出すと、鉄球を受け止めるようと手をのばした。

今、俺に必要なことは『信じること』だ。自らの力を信じることが大事だ。

「な、何ィーーッ!」

鉄球はディアボロのスタンドを貫き、本体はその鉄球をまともにくらった。

「何が起きたんだ!?俺の時の中でも!この鉄球は止まらなかった・・・だと!?」

腹から溢れ出る血をディアボロは必死におさえる。

だが、その血は止まらない。

「これが早苗の受けた痛みだ!」

鉄球の当たった部分から、回転がディアボロの身体をその場の空間ごと巻き込む。

「ぐ、ぐあぁぁぁッ!つ、潰れる!誰かーッ!」

 

このとき、ディアボロは思った。

この痛みは死んだことと同じ痛みだ。死んだとみなされれば、ジョルノのスタンド、ゴールド・エクスペリエンス・レクイエムによって、新たな世界へと移動することができる、と。

敵のスタンドの攻撃の発動を願うなんてことは、帝王のプライドを考えると願いたくはないが、今はそれが一番の願いだ。

 

「た、助けてくれーッ!」

次の瞬間、これまでのものとは違う光が、ディアボロを包んだ。

その光は、これまでの天から差し込む黄金の光ではなく、このディアボロ自身から放たれた光だった。

「や、やったぞッ!この死の苦しみから逃れることができる!」

「させるかーーッ!」

俺はその光のなかに鉄球を投げるが、一発目に投げた鉄球の回転はもうほとんど無く、その光のヴェールに跳ね返されてしまった。

「お、俺は新たなる世界へと移動するッ!お前が俺に止めをさすことはないッ!」

光はディアボロを消し去り、その場には未だに回転する鉄球しか残らなかった。

俺はそれを拾うと、早苗のところへ向かった。

「この傷・・・この世界にホットパンツはいない。何か回復できるヤツは・・・」

「どうしたんだ、早苗!」

声の方向には神奈子と諏訪子が立っていた。どうやら、今帰ってきたらしい。

神奈子はすぐに早苗のところへむかうと、早苗を抱きかかえ、どこかへ飛んでいこうとした。

「どこへ行くの?」

「永遠亭だ!永琳なら、このくらいは絶対治してくれる!そうじゃないと、早苗は助からない!」

「いや、それ以上に回復力を持つ人間が紅魔館にいるぜ」

「!・・・そいつはいったい」

神奈子はそれを聞き、足を止めて振り返った。

「東方 仗助という男だ。アイツならやってくれるはずだ・・・絶対な」

 

 

「ここが、白玉楼なのか?」

階段先には、永遠亭や地霊殿くらいの豪邸がそこにあった。永遠亭のような和風の屋敷で綺麗な庭園が広がっていた。

奥にある屋敷の中にここの主がいるのだろう。

「妖夢~、妖夢~」

屋敷の縁側を水色の着物を着た女性が通る。

「どうしましたか、幽々子様。もうお昼なら食べたじゃないですか」

「いや、部屋にゴキブリがいて~」

「もう、それくらいプッチさんに頼めばいいじゃないですかー」

妖夢と呼ばれる女が部屋の奥から現れた。エプロンをつけているところから、今は食後の食器洗いでもしていたのだろう。

「今、あの人はお使いに出てるの。お願い、妖夢~」

「仕方ないですね」

僕はさすがに馬がいるので、そこにいくまでにある橋を渡れないため、そこで見ているだけだったが、優曇華はそのまま屋敷の方へ入っていった。

「あ、鈴仙さん、こんにちは。今日はどうしたんですか?」

鈴仙。そういえば、アイツの名前ってそんなんだったな。周りが優曇華と呼ぶためそれが定着していたが、本当はそんな名前なんだよな。

「薬のこともあるけど・・・まぁ、彼の付き添いってのもあるかな」

と言って、優曇華は俺を指差した。

妖夢と呼ばれた女はこちらを見て、急いで橋を渡る。

そして、

「初めまして、魂魄妖夢といいます」

といい、頭を下げた。

「そこまでかしこまらなくても・・・僕はジョニィ。よろしく」

「ジョニィさんですね?よろしくお願いします。それで・・・あの・・・刀の話ですよね?」

「あぁ、これのことだよな?」

僕は筒を妖夢に渡した。

妖夢は目をキラキラ光らせながら、その筒のふたを取る。そこからは刀が出てきた。

「これが聖さんの言ってた刀ですか。すごい妖刀ですね。見ただけで力が感じられます」

と、言いながら、鞘から刀を抜いた。

「う、うわぁぁぁぁぁッ!」

「!・・・どうした!?」

妖夢は刀を握っていない片手で頭を押さえて叫び始めた。

「な、何かが!何かが!私の中に!」

そして、頭から片手を話すとその刀を僕に向かって振り下ろした。

「な、何をするんだ!」

僕はその恐怖のあまり、爪弾を妖夢にむかって放った。爪弾は妖夢の肉体に刺さり、その穴から血が出始めた。

「ちょっと!妖夢に何してるの!」

「すみません、幽々子さん。今、この人は、

 

魂魄 妖夢じゃありません・・・。

 

少し傷つけますが、いいですか?」

「・・・」

幽々子は少し黙り込むと、コクッと頷いた。

 

その後、僕はタスクact.2を出した。

 



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迷いの回転

あらすじ
ジョニィは白玉楼へ行き、聖から頼まれた妖夢へのプレゼントを渡すことに成功したが、そのプレゼントは呪われた刀だった。

ジャイロはディアボロを倒したが、傷ついた早苗を治すために、東方 仗助のいる紅魔館内の図書館へと向かっていた。



妖夢の目はまさに『悪』だった。

 

「ククク・・・この女はできあがってるな。日頃から刀を握っている身体だ」

「お前は何者だ!」

「俺はアヌビス神。この刀に憑いた幽霊さ。川底で錆びかけていた俺をあのお方が拾ってくれたのだ」

アヌビス神。ついに神までもが敵になったのか?

それにしてもまずいことになったぞ。僕のスタンドでは彼女を殺しかねない。それに本体はあの妖夢自身ではなく、あの細い刀と考えると爪弾を当てるのは不可能だ。

できるわけがない。

「どうした?撃ってこないのかァ?・・・なら、こちらから行くぞ!」

アヌビス神の気迫は目の前まで前進し、刀は僕の右腕を切り落とそうとする。

幽々子にはあんなことを言ったが、僕にはそんなことができるわけがない。

僕は避けるために、回転を使って左へと跳んだ。

ここらへんは全体的に石が敷き詰められていて、砂漠地帯のようなクッションにはならないだろう。

「お前は避けることはできない!」

それよりも大変なことになったぞ!

妖夢は僕が跳び上がったことをチャンスと考え、自身も追いかけるように跳んだ。

「タスク!」

僕はすぐにact.3に変えると、僕自身に人差し指の爪弾を撃ち込む。

「何ィ!?」

角度的に地面に弾痕は移動する。

つまり、着地など全く考えずに、地面に着地できるのだ。

「宙に跳んだのはお前だけだ!アヌビス神!」

「だが、これならどうかな?」

アヌビス神は自らを守るために、妖夢の身体の前に刀を構えた。

「少しでもミスったら、この女を傷付けることになるぞ!さぁ、どうする?」

「アヌビス神・・・僕にもう・・・迷いはない!」

タスクをact.2に変えると、妖夢の肩や腕を狙って二発の爪弾を撃ち込んだ。もちろん、左右に一発ずつ。

「回転は、穴になっても死なないぞ!」

穴は妖夢の肩から胸の前まで通り、刀であるアヌビス神目掛けて爪弾を撃ち込んだ。

「ここなら、確実に当てることができる!」

刀は左右から挟まれた爪弾によって、砕かれてしまった。

「な、なんだとーーーーォ!」

アヌビス神がその事態に気づいたときにはもう遅く、刀は近くの池に落ちてしまった。

「ま、また俺は、水のなかで誰かに拾われるのを待たなきゃいけないのかーーーーッ!?」

妖夢からアヌビス神の魂は抜け、その場に膝をついて倒れ込む。それもそうだ。爪弾を何発か身に受け、肩かは胸にかけて、爪弾の穴を進ませた。

それなりに体力を奪われるだろう。

「妖夢!」

倒れ込んだ妖夢を優曇華は起こす。

「ん・・・あれ?・・・鈴仙さん?」

「妖夢ぅ!うぅぅ・・・」

僕はタスクをしまうと、妖夢に近づく。

「ジョニィさん・・・本当にごめんなさい!私の信念が弱いばかりに・・・」

「いいよ。それよりも、僕の方が悪いことをした。僕がこの元凶を持ってきたから・・・」

「ジョニィさん・・・」

 

「どうしましたか?何事ですか?」

 

声。この声はアイツだ。

いっきに身体の芯から逆撫でされるような感覚が、身体の隅々まで行き渡る。

「あら、プッチさん。もう帰ったんですか?」

「あぁ、お使いに出たものの全然売ってなくてね・・・おや?そこにいるのは・・・」

プッチはこちらに気がつくと、こちらに向かって歩いてきた。一歩一歩がどす黒く、黒い何かに襲われそうになる。

「確か、ジョニィ・・・とか言ったね。新聞で君の活躍は知っているよ。色々と、異変を解決しているようだね」

「・・・」

「そんな固くならないでくれ。私は君を誉めているのだ。君の正義に、神をも褒め称えるようなその正義にね」

「・・・」

僕はただその言葉の攻撃に耐えるのみだった。

爪弾でこいつの心臓を撃ち貫くことは可能だ。だが、彼の近くには三人の関係者がいる。

ここで攻撃した場合、僕は完全に犯罪者として、この世界で生きることになるだろう。

「君のその正義。天国に行くべき称号だ」

「・・・」

もう耐えられない・・・

「・・・何だ?その目は・・・その目の黒い炎は」

もう耐えられない・・・。こいつは・・・

 

僕が殺す!

 

 

「クレイジーダイヤモンドッ!」

仗助のスタンド、クレイジーダイヤモンドは早苗の頬に拳を擦らせる。

すると、早苗の身体の傷は少しずつ回復し、少し経つと、ほとんど傷は回復していた。

「今の俺にはこれが限界っす。しかし、残ってる傷はあまり深くありません」

「やっぱり、お前のそのスタンドすごいな。だいたいのもんは治せんだろォ?」

「自分の身体が治せないくらいっすね」

仗助はスタンドをしまうと、近くの椅子に腰掛け、パチュリーの元で働いている小悪魔にいれてもらったコーヒーを飲んだ。

「前よりは元の状態に戻ってますよ。もうカップを壊しても完全に修復できるくらいに」

「まぁ、魔導書みたいな複雑な物は無理だけどね」

パチュリーが口を挟んだことに、仗助は少し口を固めてしまう。

そんななか、俺は一つ気になるものを見た。

誰かが二階からこちらを見ている・・・。帽子をかぶった誰か・・・

「そこにいるのは誰だ!」

俺は立ち上がり、鉄球を掌の上で回転させた。

帽子をかぶったそれは、手摺の近くからスッと姿を消す。

「パチュリー!ちょっと、二階に行ってもいいか?」

「いいけど・・・また侵入者かしら」

俺は行儀悪いが、本棚をはしごのように上り、それを追いかけた。

本棚の間を縫うように走るそれは、その身長と服装から小学生くらいの女の子というのがわかった。

「ちょっと野蛮だが・・・そぉらッ!」

俺は隠れた本棚の裏にいるそれを捕まえるために、鉄球を投げる。

「もいっぱぁぁぁぁつッ!」

その本棚の裏で挟み撃ちをするように投げた鉄球は、その先で相撃つ音が聞こえた。

どうやら、その裏にそれはいないらしい。

「どこにいったんだ!?」

「ちょっと待ってくださいよ!ジャイロさん!」

そこに仗助が走ってきた。階段を大急ぎで上がってきたのか、息が荒れていた。

「そんな若いくせによォ、体力ないなァ・・・。まぁ、戦力が増えるにこしたことはないがな」

鉄球は本棚の本をぶっ飛ばして、俺の元に帰ってきた。

そして、散乱した本は仗助のスタンドで元通りの場所に戻す。

「それじゃあ・・・仗助は左からこの先の本棚の間を探せ!俺は右から探す!」

「はいッ!右は任せましたっすよ!」

俺らはその通りに走り始めた。

ここから先、本棚は十数個と続く。

鉄球を察知し、避けた人間だ。ただものではない。

「仗助!侵入者はいないか?」

「こっちには来てないっす。ジャイロさんの方は?」

「こっちにも来ていない」

俺と仗助が再会したとき、上から何かが降ってきた。

「これは・・・帽子か?」

仗助が帽子を拾おうとしたとき、上から女の子が仗助の頭目掛けて飛び下りてきた。

「!?」

女の子は驚いた仗助の手から帽子を取ると、仗助の頭を踏み、壁脇の装飾品である細い手摺を渡って、向こう側へと行く。

「待ちやがれッ!」

仗助は頭を踏まれたことに腹を立て、その場から跳んで向こう側に行こうとした。だが、向こう側にある手摺を掴んだ瞬間、手摺が壊れてしまった。

「落ちるぞ!」

「しかし!クレイジーダイヤモンドッ!」

手摺は元通りになり、その手摺を掴んでいた仗助は宙に浮いた後、向こう側に着地した。

「ジャイロさん!ぽけーッとしてないで、来てくださいっすよ!逃げられますよ!」」

「お、おう!」

俺は助走をつけ、ギリギリ向こう側に着地する。そして、仗助を追った。

「もう、逃げられないぜ!侵入者よォ・・・」

女の子は帽子の下からでもわかるような笑顔を見せると、壁の中へ消えてしまう。

「待ちやがれ!ドラララララララララッ!ドラッ!」

仗助は壁をぶち壊し、道を作った。

その壁は崩れたかと思いきや、どこかの空間へと続く、歪みのようなものを作り出した。

「な、何だ!この力は!吸い込まれていく!」

「じょ、仗助!走れ!」

「んなこと言われても無理っすよ!これは!」

仗助はギリギリ持ちこたえていたが、吸い込まれていく本に躓き、空間へと引きずり込まれてしまう。

そして・・・

「な、本棚が!」

掴んでいた本棚すら壊れ、俺は空間の歪みへ入ってしまった。

 




次から新章突入。

ジャイロ&仗助
邪悪なる遺体を探す旅

ジョニィ&?
罪滅ぼしのために異変を解決する旅

続く


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新たな仲間と新たな目的
新しい仲間


あらすじ
図書館にいたジャイロと仗助は、壁にできた裂け目に吸い込まれ、ある場所へととばされてしまう。
そこは幻想郷のある場所だった。


ここは・・・いったい・・・

 

目が覚めると、空は真っ黒になっていた。

だが、熱というものがある。なぜか、ほっこりとした太陽光のような熱が・・・。

「そんなことはどうでもいい!ここはどこだ!」

周りは泥や土といった盛られた地面が広がり、あのときに巻き込まれた本や、本棚の破片がそこらへんに散らばっていた。

そのなかに仗助を見つけ、俺は頬を叩いた。

「おい、起きろ。」

「こ、康一・・・由佳子とは縁を切った方がいいんじゃあないか?」

・・・寝言だ。誰だ、その二人は。

「おい!起きろ!」

「な、何すか!ジャイロさん!ここは!」

「気づいたか・・・変な場所に送り込まれてよォ~。ここはいったいどこなんだ?辺りは土やら、泥やら・・・」

「ここ・・・畑じゃないっすか?ほら、あそこに白菜っぽいのがあるっすよ」

「白菜?・・・何だそりゃ。俺は食ったことねぇな」

そんなことを話ながらもここが畑と知り、静かにそこを出た。

あの本棚は置いていくしかないがな。とりあえず、仗助に治させるか?

「おい!そこの人間!」

女の声が聞こえる。

だが、その方向には桶が一つ置かれているだけで、誰もいない。

「ここ、ここだ!」

その桶はクルッとひっくり返ると、そこから少女が現れた。

白い服に上の方で緑の髪を二つ縛りした少女は、桶から体半分を飛び出し、こちらを指差した。

「その畑!私のなんだけど!その本とかどうしてくれるの!」

「こ、これには事情が」

「洞窟の外の畑に来てみたら・・・何でこんなこと!」

「う、どうすれば・・・」

「仗助、こいつには何を言っても無駄だ」

俺はわかっている。こちらの妖怪が人を食らうことを。

仗助はあの大図書館に現れ、外の世界をあまり見なかったせいか、この世界の妖怪の力を知らないはずだ。

「怒った妖怪には、これがてっとり早いぜェ」

俺は鉄球を出す。

仗助もそれを見て、拳を握った。

「な、何よ・・・何よ!殴るの!?」

「いやー、話が聞けないならよォ。これが一番てっとり早いからなァ」

「うぐぐ、なめられたものね・・・なら、こっちも妖怪として戦おうかしら・・・私の名前はキスメ!井戸の妖怪よ!」

「井戸の妖怪!こ、怖いっすね・・・」

仗助はそれを聞いて少しだけ後ろに下がる。

「こんな可愛らしい妖怪なら、まだマシだぜェ。仗助よォ、山とかにはそれはそれはグロ妖怪とか、怖い妖怪とかいたぜ。こんな野菜を食う妖怪なんか弱いに決まってるぜェ」

「言ってくれるじゃないか!なら、見せてやるよ!私の能力をね!」

桶と共に飛び上がったキスメは、桶のそこから青い炎を俺らに向かって放った。

「これが私の能力、鬼火よ!焼き肉になるがいいわ!」

「火!仗助ッ!これを殴れーーッ!」

俺は密かに拾っていた本棚の破片一つを、仗助に投げ渡す。これを殴れば・・・

「なるほど!クレイジーダイヤモンド!」

その破片は畑に散らばっている破片を引き付け、本棚という名の盾になった。

そして、こちらに飛んできた火の玉は本棚に当たり、爆発した。

「この本棚は普通のものとは違う。普通なら本と本は背中合わせで置かれる」

「だが、この本棚はその間に頑丈な木の板で境がある!考えたっすね、ジャイロさん!」

「それはよォ~、俺がアホとでも言ってんのかァ?」

とか何とか言いながらも、俺たちはハイタッチする。

ジョニィほどではないが、仗助とは息が合う。

「ぐぬぬ・・・、私の火を・・・なら!その本棚ごと燃やしてくれるわ!」

「それは無理な話だな!なぜなら、俺の鉄球はお前の桶に到達している」

この本棚は良くできている。なぜなら、俺の鉄球が通るくらいの穴があるからだ。なぜだかわからないが、本棚には器用なほどくっきりと穴が作られていた。

そこからは、奥に見えるキスメや、その先の空までも見えていた。

そしてその穴は砲台でいう砲口として使えた。

「な、なんだってーー!」

キスメの入っている桶は鉄球の当たった部分から、すこしずつだが壊れていった。

そして、中にいたキスメはそのバラバラになった破片と共に地面に落ちた。

「あとは仗助頼むぜェ~。殴るなり、蹴るなり好きにしろ」

「そーっすね。じゃあ・・・」

「ひぃぃッ!」

仗助はスタンドを出すと、桶の破片を殴る。すると桶の破片は治り、元の状態に戻った。

「これでいいのかァ?お前は」

「まぁ、一つだけやることがありますけどね」

仗助は前に出ると、腰を抜かして怖がるキスメの白装束を掴み、仗助の目線まで持ち上げた。

「ここがどこだかわかるか?具体的じゃなくていい、本当にだいたいの範囲でな。もしも、教えなかったら、この桶はまたバラバラになるかもな~」

「こ、ここは・・・ここは!」

 

「地底よ」

 

キスメとは違う声が俺たちの後ろに現れる。

その声はとにかく冷静で、冷酷だった。

「ここは今まであなたたちがいた世界の下に存在する世界」

「誰だ、お前は」

キスメくらいの身長をした、いやそれより少しだけ大きい少女。ピンク髪に左胸の辺りにある目が特徴的な女だった。

「私は古明地 さとり。ジャイロ・ツェペリさんと東方 仗助さんですね?お待ちしてました。」

「こいつ!何で俺たちの名前を!」

「慌てるな、仗助。今はその拳をぶつけるより、彼女から情報を得ることが先だ」

俺は仗助の前に腕を出して止める。

古明地・・・どこかで聞いたことがあるが、どこで聞いたか思い出せない。

「さとりって言ったな。どうして、俺たちの名前を知っているんだ?それとここはいったいどこなんだ?地底と言ったが」

「私はあなたたちの名前だけでなく、他のことも知っています。例えば・・・仗助さんのスタンドはクレイジーダイヤモンドという、破壊した物やエネルギーを修復させる力を持ち、ジャイロさんのスタンドは鉄球の回転ですよね?」

「・・・確かにあってる。だが、それだけではなァ?これまでの敵から情報を集めているなら」

「仗助さん、あなたのその頭、ダサいですねぇ。まるでハンバーグみたいですよ」

さとりはクスッと笑いながら、そんなことを言う。

ま、まさか・・・

「テメェ・・・今、俺の頭のこと何て言ったァ!」

やっぱりだ!こいつは、俺たちのことを知っている。仗助が頭を貶されるとキレることも!

「仗助!攻撃するな!」

キレた仗助は言うことを聞かない。

仗助の拳は我慢できずにさとりにむかって放たれた。

クレイジーダイヤモンドも重なって放たれた拳は早さと力、どちらを見ても通常以上の物が出ていた。

だが、さとりはそれを紙一重で避けた!

「二人には、この地底であるものを探してもらいます。ジャイロさんには、縁があるものですかね」

「縁?・・・まさか!」

「そう、遺体です。邪悪なる遺体を探してもらいます!」

 

 

そして時は遡って、場所は白玉楼近くに移る。

 

「ッ!・・・やってしまった。」

ジョニィは頭を抱える。それもそのはずだ。

彼は殺人を犯してしまったからだ。

これまでレースの中で何人もの大統領の刺客達を倒してきたが、今回はそれと違う。

この屋敷、白玉楼の主人である西行寺 幽々子の執事であるプッチを殺してしまった。周りの人間であり、幽霊でもある幽々子や妖夢、永遠亭から薬の販売に来ていた優曇華も見ていた。

彼女達から情報が発信された場合、すぐに幻想郷内に回りそうだ。

ジョニィは草の茂みの中に自分の身と、愛馬のスロー・ダンサーを隠した。

「まただ。またあのときの、僕の内に潜む『黒い何か』が発現した・・・でも、まさかこんなところで使ってしまうとは・・・」

ジョニィの背後から、ガサッガサッと足音がやってくる。

ジョニィはそれに気づいたのか、背後に爪を向けた。

「な、何者だッ!撃つぞッ!」

「待て、僕は悪者じゃあないです」

胸の辺りがガバッと開いた服を身にまとい、額上部に筒が三つ並んだような髪型をした金髪の男が立っていた。

「お、お前は誰だ!」

「そんなに慌てないでくださいよ。僕はあなたの仲間です・・・

 

僕の名はジョルノ・ジョバーナ。あなたと同じ目的を持つ者です。



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目的

あらすじ
ジョニィはジョルノと。
ジャイロは仗助と組み、目的を達成させるために、新たな敵と戦うことになった。

そしてポケモンのせいで、投稿できなかった。



白玉楼前・・・

 

「目的?何を言っているんだ?」

「あなたは、この異変の始まりを知ろうとしている。それはあの屋敷にいる、プッチじゃあない」

「!・・・何だと!?」

ジョルノは静かに僕の前に立つと、ポケットから見覚えのある鉄球を出した。

「それは!・・・なぜ、お前がジャイロの鉄球を持っている!」

「僕もあなたも、彼を・・・ジャイロさんを探している。理由は違えど、目的は同じだ」

僕はジョルノの言っていたことが一回では理解できなかった。心のなかで何度も復唱したことで、彼の言っていることがやっと理解できた。

「・・・わかった。それじゃあ、」

「いや、今は動かない方がいいみたいです」

ジョルノは草むらを掻き分け、屋敷前の階段を見た。

そこには、妖夢と優曇華が誰かと話していた。

あれは・・・

「確かあの人は射命丸さんです。新聞記者をやっている方です。・・・もう君の事を耳にしたみたいですね。ここから離れるべきです。急ぎましょう」

ジョルノの言う通り、僕はこの草むらから離れた。

三人はこちらに気づいてなさそうだった。

 

あれから数分歩いたところで、僕はジョルノの持っている鉄球のことをきくことにした。

「それって、どこで手に入れたんだ?それにジャイロの名前もどこで」

「彼の名前なら、もうこの世界では有名なものですよ。新聞で何度も取り上げられてますから。そして、この鉄球は拾いました」

「拾ったのか!?」

「?・・・何をそんなに驚いているのですか?」

「いや、なんでもない」

「で、話に戻りますが、この鉄球は」

ジョルノが話し始めたとき、何かがこちらに飛んでくるのがわかった。

それは銃弾のような形をしており、僕はすぐに馬を着弾点から遠ざけた。

「これは・・・」

「チッ!・・・外したか」

木陰から現れたそいつは、ガンマンのような格好をし、いかにも僕と同じ、騎手のような男だった。

「俺の名はホルホース。テメェらの持つ食料や金、全部渡しな。さもないと、このエンペラーで、脳天貫いてやるぜェ」

ホルホースは銃を手のひらの上でクルクルと回すと、こちらに銃口を向けた。

「銃撃戦なら、僕が」

「いや、僕に任せてください」

僕が爪を向けた瞬間、ジョルノが僕の前に出た。

そして、彼はスタンドを僕たちに見せた。

「俺のスタンドはハジキだ。そんなスタンドじゃあ、勝てねぇぜ~~。それに俺にはJ・ガイルの旦那がいるしなァ」

「それはどうですかね・・・僕のスタンドは強いですよ」

「(何かこいつよォ、DIOの野郎と同じような奇妙さがあるぜ。だが、俺には・・・)カモォ~~~~ン!」

こいつには、ジョルノには自信がある。そして、僕にはない、『覚悟』がある。僕は銃撃戦なら、なんて言ったが、正直、自信がない。彼のあのスタンドに負けるかもしれない。そんな恐怖と迷いがあった。

だが、ジョルノのあの目、あれは覚悟がある人間の目だ。僕とは違う・・・全く違う目の色をしている。

「そう、煽らないでくださいよ。僕のスタンドはすでに行動を始めている」

「何だとォ?」

ジョルノの足元で何かが動いている。あれは・・・カエルだ。それに蛇もいる。

だが、どちらもジョルノに従う忠実な僕のように、捕食しようとしない。

「ほぉ、それは毒ガエルと毒蛇か?・・・なら、この『エンペラー』で撃つだけだぜ~ッ!」

ホルホースはそれらに向かって銃弾を撃ち込む。

その銃弾は確実にそのカエルと蛇を貫いた。

だが、そのダメージは・・・

「ブッギャアァーーーッ!」

ホルホースのもとに返されたのか、自身に電撃を浴びたかのように走った。

「ゴールドエクスペリエンス・・・。これが僕のスタンドだ。」

ジョルノは血を撒いて倒れたホルホースに近づくと、銃を持つ右手をその足で踏みつけた。

「あなたは、『覚悟して来ている人』ですよね?」

「や、やめろ!これ以上はやめてくれ!」

ジョルノに慈悲などなかった。

「無駄ですよ。」

「ひぃぃぃぃぃッ!」

ホルホースは地を這って逃げるが、その先にいたカエルを手のひらで潰したことでまた、新たな痛みが彼を襲った。

「だから、無駄ですよ。これ以上の行動は」

ホルホースはその恐怖と痛みにより、黄金の光に包まれて消えてしまった。

「・・・やはりホルホースは弱かった。」

静かにだが、彼に近づく何かがいる。

あの水溜まりにいるあれは・・・!

「ジョルノ!後ろだ!」

次の瞬間、彼のアキレス腱から血が噴き出した。

「何!?」

「敵が水溜まりにいるぞ!」

僕は爪弾を水溜まりに向けて放つが、そいつにダメージがあるようには思えない。

「こいつ!ジョルノ、逃げるぞ!」

僕はジョルノにそんなことを言ったが、彼は

 

「いえ、僕には彼を倒す覚悟があります」

 

と言い、僕の言葉を無視した。

彼のその覚悟は彼のスタンドに黄金の光を纏わせた。そして、そのなかで彼はスタンドに、いや、自分自身に黄金の矢を突き刺した。

「ゴールド・エクスペリエンス・レクイエム!」

その光から現れたそのスタンドは水溜まりの中から、攻撃していたそれを引っ張り出した。

「な、何だとーーーーッ!」

「無駄ッ!」

ジョルノのスタンドの攻撃はそれの胴体を貫くと、木陰に隠れていたスタンド使いを表に出させた。

「ひ、ひぃぃぃぃッ!や、やめてくれ!」

「シンジツニ、トウタツスルコトハ、デキナイ」

気がつくと、そこにいた男、J・ガイルは消えていた。

そして、ジョルノのスタンドは元の姿に戻っていた。

「ジョルノ・・・今のは・・・」

「行きましょう。彼は生と死の境目を歩いていると思います」

「お、おう・・・」

僕はジョルノと共にとりあえず、人里へと行くことにした。

彼と彼のスタンドを包み込んでいた光は、これまで見てきた黄金の光と同じものに見えた。

あれは死に繋がっているのかもしれない・・・そんなことを考えながらも、僕は馬の足を前に進めた。

 

 

「はぁ!?俺がアンタのボディーガードだとぉッ!?」

目の前の少女、古明地 さとりはそんなことを言い出した。

俺は冗談をと思ったが、どうやらこの少女はただの少女ではない。この屋敷の主であり、少女の横に立っている猫耳の女はこの少女の召し使いをのようだ。

それなりの権力があると見た俺は、目の前に存在する椅子にドッスリと座った。威圧でもするかのように。

「落ち着け、仗助。・・・さとりと言ったなァ。おたくのいう、『邪悪なる遺体を探す』というのは、俺らへの頼みか?それとも、俺の目的を知っての話か?」

「中間です。私の頼みとあなたの目的が偶然に一致しただけですよ。」

この威圧的な態度に何も示さず、怯みそうにもない。この少女、姿のくせして、どこぞの吸血鬼みたく、歳をくってるかもな・・・

「・・・どうしましたか?私の顔にでも何か付いてますか?」

「・・・いや、何でもない。その頼みは受けるが、それがある場所は言ってくれよ?どこにあるとかな。こっちの世界のこと全然知らねぇから」

「できるだけのことはするわ。できるだけのことはね」

そう言い、さとりは一枚の紙を渡した。

 

さとりの屋敷、地霊殿から出た俺と仗助はさとりから渡された紙を見ながら、人里の茶屋の和風のベンチに座っていた。

そして、仗助はその紙から目を離し、店員の持ってきたお茶を飲んだ。

「その紙に何か書いてあるんすか?俺には見えませんが。」

仗助の言う通り、この紙には何も書かれていない。そして、この紙の性質上、炙り出しなんてしたら燃えてしまいそうだ。

「何かあるんだろうな・・・もしかしたら、彼女は新手のスタンド使いなのかもしれないな」

「まさか~。あの少女がスタンド使いなわけ・・・ありますね」

「確率はゼロとは言えないぜェ~」

俺はその紙を何回か折り畳むと、ポケットの中にしまい、仗助の頼んだ団子を一つ摘まんだ。

「あーッ!それ、俺が頼んだやつっすよ!」

「ニョホ~、考えた頭には糖分ってなァ~」

俺が団子を食べようとしたそのとき、ドスンと俺の横に男が座った。

俺の茶を引っくり返して。

「何しやがる!テメェッ!」

俺はすぐにそいつの肩を引っ張った。だが、そいつは何回か折られた紙になり、消えてしまった。

「!」

俺はその驚きのあまり、そこから立ち上がる。

「仗助。今の見たか?・・・これは瞬間移動か?それとも超スピードか?」

「いや、違いますね。俺はこいつ戦ったことが・・・ッ!」

 

そのとき、俺たちの目の前で茶屋の女が紙にされた。

 

 



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奪われたものを取り戻せ

あらすじ
ジャイロはエニグマに鉄球を奪われた。

ジョニィはジョルノと共にある場所へと向かっていた。


俺は何が起こっているのかわからなかった。

 

隣にいる仗助は、俺の耳で囁く。

 

「彼に恐怖のサインを見せてはいけない」・・・と。

 

彼といっても、その彼。つまり、敵が目の前から消えたとなると、俺も対処の方法がない。それに『恐怖のサイン』とはなんだ?

「ジャイロさん、これはグレートにヤバイっすよ・・・。恐怖をすることは死を意味するといっても過言じゃあないっすからね」

俺は息を荒くしていた。いつの間にか・・・。

これが仗助のいう、俺の『恐怖のサイン』なのか?

 

「ジャイロとか言ったな~。仗助の言ってることは正解だぜ~」

「だ、誰だッ!」

俺はすぐに後ろを振り向いたが、そこには誰もいない。

そこにいるのは、木の看板だけだった。

だが、俺の恐怖を誘うことはすぐに起こり始めた。

「・・・クソッ!」

俺は怒りで看板に八つ当たりをする。

すると、看板の裏から何かがヒラヒラと落ちてきた。これは紙か?何回か折られた紙だ・・・。

「ジャイロさん!その紙を開かないでくださいッ!」

仗助の声が響くなか、俺は無心で、いつの間にかその紙を開いていた。

そして、それと共に紙の間から、銃口が俺の眉間を狙っていた。

「な!何だこれはッ!」

「ジャイロさーーーーんッ!」

仗助の叫びは届かず、銃弾は俺を貫いた。

 

「だ、大丈夫すか!」

俺は店の奥で目が覚めた。どうやら、あの銃弾によってできた穴は、仗助のスタンドによって回復してもらったらしい。

だが、あの紙はいったい・・・

「やつの能力は紙の中に人や物を入れるという能力。昔、俺もやられましたから」

「・・・本体を探せってことか?」

俺は鉄球を取ろうとする。・・・!

「どうしたんすか?」

「な、無いッ!俺の鉄球がッ!まさか!」

 

そのまさかだ!ジャイロ・ツェペリ!

 

店の中を聞いたことの無い声が響く。

「!・・・どこにいやがるッ!」

柱の後ろからスッと現れたそいつは、俺の方を睨むと、胸ポケットから何回か折られた紙を俺に見せてきた。

その紙には『鉄球』という文字が書かれていた。

「おい、ジャイロ!この紙のこの文字、読めるよなぁ?このなかにはお前の武器、鉄球が入っている!」

「な、何だと!俺の鉄球を返しやがれ!」

俺は壁の材料で球体を作ると、それをヤツの持っている紙を目掛けて投げようとするが・・・

「僕のスタンドに、君を殴り殺したりするような力は持っていない。ただ、僕のスタンドが作った紙に攻撃したら、中身がどうなるかねぇ・・・」

男のその言葉に思わず、着弾点を地面に方向転換した。

「クソーッ!攻撃できない!」

「おい、テメェ。前もそのハッタリをやってたよなぁ?」

「(ギクッ!)な、何のことかな・・・。」

「ジャイロさん、今なら投げれますよ・・・ジャイロさん?」

俺はそれでも迷いがあった。あの反応、確かにアイツの持ってる紙には無いかもしれない。だが・・・

「仗助、お前にはわからないだろうな・・・。それが鉄球かもしれないという可能性が少しでもあるなら、俺はこの球を捨てるぜッ!」

俺は壁の材料から取り出した球体を、粉々に手のひらで潰す。

「それになぁ、お前がここに出てきた瞬間、お前の敗北は決まったんだ・・・

 

やれッ!仗助!

 

「全く、かっこいいぜ。ジャイロさんよぉ・・・」

俺の回転はさらに進化している!

父から教わった以上の回転だ!

「な、なぜ仗助が俺の足元にいるんだッ!」

俺の回転は壁から床へと伝わり、仗助の乗った床の一部分を崩した。

そして、仗助を床から登場させた。

「ひ、ひぃぃぃ!ジャイロ!お前はこの紙を破ってもいいのか!?」

「よくよく考えたらよ。俺を狙うよりも先に、仗助を狙った方が良かったようだな・・・

 

俺が物を壊し、仗助が物を治す。本当に良いチームだと思うがな。

 

「や、やめろ!それ以上、近づいたら!」

「昔はよ、確か・・・本だっけな?今度はそうだな・・・後ろの柱と同じになるか?」

「う、うわぁぁぁぁぁッ!」

 

地底人里名物、しゃべる柱がある茶屋。

人里入り口から徒歩二分。

茶屋に入ると、挨拶をしてくれる。

 

あの戦闘を終えてから数分後。

その紙のタネにようやく理解した。

「仗助。俺がこの紙を破る。そしたら、それをすぐに治せ」

俺は紙の上に鉄球を乗せる。

紙の上で回転させると、紙は小さく散らばった。

すると、紙は光り始め、仗助の能力で治した瞬間、その光を天に向けて放った。

「こ、これは・・・」

「ここは幻想郷。何でもありとは本当のようだな。あの紙には魔法陣が書かれていた。破壊することで、発動する魔法陣がな」

「魔法陣とは、またファンタジーっすね」

その光は空のキャンパスに矢印を描いた。

「あれは・・・何だ?」

 

その矢印の方向には、赤い一本角が生えた鬼が酒樽を担いで立っていた。

 

 

「ジョニィさん。これからどこにいくかわかっていますか?」

「この方向は来たことないな。・・・どこなんだ?」

ジョルノの話ではこの先に紅魔館という屋敷があるらしい。前々からその名は聞いていたが、場所は全く知らなかった。

情報では、そこに吸血鬼の姉妹がいて、何度もその館にジャイロが来ているらしい。

優曇華に昔の新聞を見たが、ジャイロは何回かそこで起こった事件を解決しているようだ。

「!・・・これはッ!」

「ジョルノッ!どうした!?」

ジョルノの目線の先、そこには馬の足跡が点々と先の湖へと進んでいた。

しかも、新しいものだ。

「まさか、本当にジャイロが・・・」

「どうやら、ジャイロさんが向かったのは本当みたいですね。行きましょう、ジョニィさん」

「・・・何か堅っ苦しいな」

「?・・・何がですか?」

「僕のことはジョニィでいい。前々から気になっていたが、ジョニィさんって呼び方、やめてくれないか」

ジョルノはそのことに対して、首を横に振った。

「僕はあなたに敬意を払っているんだ。あなたのことはある人から聞いていますから」

「ある・・・人?」

「そう、誰だかは言わないですがね」

ジョルノは振り返ると、進行方向を指差す。木々の隙間の奥に湖が見える。

どうやら、あの湖の先に紅魔館があるらしい。

「ジョニィさん、あなたにはわかりますよね」

「何がだ?」

「背後にいる何かが。僕たちを追っている何かが」

「!」

僕はそれを聞き、後ろを見た。

木や岩の裏にいるのか?それとも・・・

「上だッ!」

次の瞬間、僕は馬から飛び降りた。そのとき見えたのは空中にばらまかれた"足跡"だった。

「こ、これはッ!?」

「ジョニィさんッ!馬から降りちゃあダメだーーッ!」

この足跡には何かある。まるで吸盤のような・・・

「養分を、養分をクレェ・・・」

足跡は僕の愛馬の体に吸い付く。そして、エネルギーを吸出した。

「スローダンサーッ!」

馬はまるで干からびた果物のように、しぼんで、鳴くことすらできない体になっていた。

「ジョニィさん!」

「僕の・・・スローダンサーが・・・」

(ジョニィさんの愛馬が死んだということはつまり、彼の移動手段が無くなったということだ!だが、ここでジョニィさんを捨てることなんてできない!)

ジョルノは僕の上を飛ぶと、空中に浮遊する足跡をスタンドで殴る。

「ジョニィさん!こいつは僕が食い止めます!こいつの本体を倒してください!」

「ジョルノ、無理だ!できるわけがない、」

「僕には、ジョニィさんを守る覚悟がある!この程度でくたばるほど弱くない!」

「・・・わかった!頼むぞ!」

僕は回転を頼りに地面を這いつくばって進んだ。

ヤツの本体・・・。あの足跡が言っていた「養分をくれ」という言葉。あれが鍵だ。養分が必要な状態の人間と考えると、栄養が身体に行き渡っていない病人か、重傷の怪我人か・・・。

どちらとしても、ある一定の場所から動くということはできない。

なら、そこさえ突き止めれば・・・

「待ってろ!ジョルノ!今、ヤツを倒してやる!」

 

ジョニィは無いといっても過言ではない足を引きずり、敵本体を探した。

ジョルノは時間を稼ぐために、とにかく殴った。

 



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襲われる恐怖

あらすじ
ジャイロ達は宮本 輝之輔を倒した。

ジョニィは何者かに襲われた。

そして、駿我は四部アニメが終わったことで精神的ダメージに襲われながら、五部が来るんじゃないかという期待にwkwkしていた。


「どこだ!どこにいる!」

 

あのスタンド、いったいどこから現れたんだ。

ここまで追ってきたのなら、僕たちを余裕で不意打ちできたはずだ。

そして何よりもあのスタンドの能力。

養分を吸いとるとか、かなり厄介なスタンドだ。

「クソッ!どこにい・・・これは!」

地面にベッタリと血が付いている!しかも、そこだけではない。ずっと先まで続いている。

確か、ここ最近で最後に雨が降ったのは一昨日。もしも、一昨日なら血は消えているはずだ。なら、これはここ最近にできたもの。

「!・・・繋がったぞ!」

養分を欲していたのは、敵が大ケガをしていたからだ。それをいち速く治すために、あのスタンドは僕の馬を殺した。

ヤツの狙いは別に、僕たちじゃあない!無差別だ!

養分さえ手に入れば、敵はそれでいいんだ!

「血の先に、ヤツがいる・・・。今ごろ、スローダンサーの養分によって、元気になっている・・・はずだ。」

僕は回転の力で、血の先へ飛び込む。

爪弾を装填した銃口はその木の裏を向いていた。

「お前が犯人だな!」

そこにいた男はとても無惨な姿をしていた。

三人分の養分を貰っても、彼は生き返りそうにない。それほどにだ。

脇腹は何者かに抉られ、足は切断され、頭からは血を流し・・・。むしろ、生きているのが精一杯だった。

「ッ!・・・ここで終わりか。俺は女に殺された。しかも、小さな子にだ・・・。殺してくれ、もう生きていても無駄だ。ただ、痛みに苦しむだけだからな」

男は目の前で吐血した。もう助かることはない。

「女!?それは、いったい!」

「いいからよぉッ!俺が悪かった!だから、今は奥に見える屋敷まで逃げろ!スタンドは、今戻したからよッ!」

「ッ!・・・どこの誰かわからないが、すまない」

僕は彼に向かって、爪弾を撃った。

ここまで僕を狙うものはほとんどが、殺人を職とする人間の心がない人間ばかりだった。

だが、今回は違う。

確かにスローダンサーを殺したのは頭に来る。だが、何かが違うんだ。

「ジョニィさん!大丈夫ですか!?」

「僕は大丈夫だ。・・・それよりも、ここから逃げることを優先するべきだ!」

彼の言う少女は大きな闇のヴェールに包まれている。

そして、すぐ近くまで来ているのがわかった。

「スローダンサーなら、僕の能力で、走れるくらいには治しました。早く、この森を出るべきです!」

確かにジョルノの後ろに、スローダンサーの姿はあった。だが、やはり栄養分を抜かれたあとのせいか、少し弱々しく見えた。

「わかった!ジョルノ!早く乗れ!」

僕たちはすぐにスローダンサーに乗る。だが、その弱々しい身体では僕かジョルノ、どちらかが乗るので精一杯のようだ。

「ジョニィさん、先に行ってください。僕はこの背後からやってくるこれを倒す!」

ジョルノは僕の背中を押すと、馬から降りてその闇の中へ入っていった。

あの暗闇は僕も体験したことがある。そのときは何とか他人の手によって何事もなく終わった。だが、今回は違う。

「気を付けろ!その女は闇の中から、君を襲ってくるッ!彼女には闇の中の君が見えている!」

「わかっています。ジョニィさんは先に、あの湖の先に見える屋敷に行ってください!」

僕は・・・僕はジョルノを・・・。

 

ジョルノの姿が見えなくなってから、僕は気付いた。

どうして、止めることができなかったのか。または、共に戦うということはできなかったのか・・・

 

「ッ!・・・すまない、ジョルノ」

 

僕は馬を走らせた。

何度もジョルノに謝りながら、その場から離れていった。

 

 

「どうぞ・・・」

ジャイロと仗助が屋敷から出ていったあと、私は書斎で本を読んでいた。

この、今あなたが読んでいる文がとても、ちっぽけは物に思えるような難しい小説を・・・ね。

「今度はあなたですか。」

その男の名は、テレンス・T・ダービー。私と同じ能力を持つもの。だけど、私の下位互換。YesかNoでしか、相手の考えがわからない。

「私の名はテレンス・T・ダービー。あの二人を倒すためにやってきました。以後、よろしくお願いします」

「この館には、あなたが得意とするゲームはないわ。悪いけど、ここから消えてくださる?」

「・・・私の趣味をお知りで。別にゲームなら、こちらで揃えますので。私なら必ず、彼らの魂を奪うことが可能です」

エニグマが死んだ後、確かに彼らを追うものは誰もいない。一瞬だけど、彼なら倒せるんじゃないかと思ったが・・・。

「・・・やっぱりお引き取りください」

「わかりました。なら・・・私の力を教えるために、この里の人間を無差別に殺してみせましょう」

「!・・・人里の住民は関係ない!」

彼の狙いは、ジャイロと仗助じゃない。この地底全てだ。だから、私のところに来た。目的を達成するための一つと考えている。

「それくらいのことができるという警告ですよ」

違う!・・・こいつはやる気だ。

確かにゲームの文化がないこの地底で、ゲーム勝負をしたら、勝つのは当たり前だ。

「それでは。」

「ま、待って!」

私はすぐに書斎を出た。

テレンスはスゥーッと屋敷の廊下を進行していた。

「まずい・・・。確かに二人を倒すのが命令だが、アイツはマジでヤバイやつだ。お燐に言って、二人を今すぐ連れ戻さないと・・・」

 

 

時は戻ってす数時間前。

ジャイロと仗助が宮本 輝之輔を倒した後に戻る・・・。

 

「これは・・・魔法ってやつか。魔理沙やアリスのものを見たが、それ以上だぜ」

俺はその空に映し出された赤い魔法陣と矢印にどこか興奮していた。

そして、その矢印の先にいる赤い一本角が特徴の女を見て、恐怖を感じた。

「あれは・・・」

「ジャイロさん。こいつは・・・ただ者じゃあないっすね」

「仗助。この女は危険だ、見ただけでわかる。この身体から溢れる、鬼のオーラ・・・ヤバイぜ」

女は樽を体の横にズシンッという鈍い音を出しながら置くと、肩についたほこりを手で払った。

「クーッ!久しぶりにいい酒を貰ったな~!・・・ん?アンタ達、初めて見る顔だねぇ。」

「あ、あぁ。ここ最近、ここに来たんだ。よ、よろしく」

「へ~。人間がよくここに住むことを決めたもんだ。まぁ、住みやすい良い町だ。・・・その髪が前に出たアンタ。またすごい髪型してるねぇ。大砲みてぇだな」

この女、ヤバイぜ。今、仗助の逆鱗に触れたぞ・・・。

まさか・・・

「おい、アンタ・・・。今、俺の頭のことを何つった!」

俺の後ろから現れた仗助はプッツンしていた。もう身体の芯からその怒りが言葉に出ていた。

「ドラァッ!」

仗助のスタンド、クレイジー・ダイヤモンドの拳は女の一本角目掛けて放たれる。これをくらったら、あの角は完全に折れる!

だが、女は・・・

「ん?何か飛んでくるねぇ」

その拳を避け、近づいてきた仗助の腹に右ストレートを入れた。

バキバキバキッと骨の折れた音が鳴り、仗助は近くを流れる川に頭から落ちた。

「仗助!」

「その、アンタの友達に伝えといて。この鬼の四天王が一人、星熊 勇儀に喧嘩を売るんなら、もっと強くなってから来な・・・ってね」

女はそう言うと、酒樽をまた肩に担いで、俺の横を通り過ぎて行った。

あの女にはスタンドが見えていなかった。なのに、スタンドの攻撃を感覚だけで避けた。

普通なら出来ない技だ・・・。ここには、そんなやつがゴロゴロいるのか。

・・・いや、今はそんなことを考えるより、仗助のことを考えるべきだ!

「仗助ッ!」

俺は飛び込み禁止の柵を飛び越えると、川に落ちた仗助を助けに向かった。

 

「東方 仗助・・・。彼、それなりに強いんじゃないかな。あの眼だけで獲物を殺すような眼光。私には見えなかったが、空を切る見えない拳が飛んできていた。私が鍛えてなかったら、今ごろ角を折られてるだろうね」

勇儀は胸を撫で下ろす。

「すみません。」

そして、声を掛けられたため前を向いた。

「私、地霊殿を探しているのですがどこにありますか?」

「その道を曲がったら、真っ直ぐ行けば見えてくるだろう。洋風な館が地霊殿だ」

「ありがとうございます。それではごきげんよう」

 

勇儀はそいつを見て思った。

 

さとりに最初に会ったときみたく、心を見られているような、そんな不安感を感じ、アイツはここに災いをもたらす・・・と。

 



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原点と遺体

あらすじ
テレンスが無差別殺人を計画した。

そして仗助が勇儀に殴られた。



「仗助!大丈夫か!」

 

俺は仗助を川から引っ張ってくると、息をしているか確かめた。とりあえず、心臓は動いているし、息をしているから大丈夫だろう。

それにしても、あの女は強かった。

通り過ぎたときですら、恐怖を感じたからな。

「おい、仗助。しっかりしろ!」

「ん・・・はっ!ジャイロさん!・・・痛ッ!」

「お前、骨は大丈夫なのか?まぁ、骨が折れていても、刺さっていても、お前の能力で治せるだろ」

「それが無理っス。俺のスタンドじゃあ自分のケガは治せないッスから」

仗助は脇腹を押さえながら、岸へと上がり、近くの長椅子に寝転がった。

腹から血が流れている。どうやら、あの攻撃によって骨が折れているようだ。

「大丈夫か!」

「心配ご無用ッスよ。これくらい慣れてますから。以前、あれくらいのパンチをくらって、ブっ飛ばされたり、爆発をくらったりしましたから」

仗助は少し横になると、すぐに復活したかのように立ち上がった。

俺は仗助の隙を見て、仗助の背中に鉄球を当てた。

「な、なんスか!」

「回転技術をナメるなよォ。麻酔としても扱われるこの回転。痛みを和らげるくらい簡単だ」

「た、確かに・・・痛みが退いた気がするような、しないような」

最初に言った通り、この回転は麻酔と同じだ。痛みを和らげるというよりは、痛覚を麻痺させるというものだ。

今、仗助は少しずつダメージを受け始めている。骨が折れているのはわかっている。

あとはこの傷を広げないために、無茶をさせないことが重要だ。

「ジャイロさん!あれを見てください!」

仗助はそこから空に現れた矢印の方向へ走っていく。いきなり走り出したため、俺は鉄球を下に落としてしまう。

「おい!あまり無茶をするな!」

確かに仗助の走っていく方向に、赤い光が柱のようになっているのが見えたが・・・本当にその場所に邪悪なる遺体があるのか、俺は少し疑っていた。

 

その光の下には小さな地蔵があった。

そして供えを置くための場所に箱が置かれていた。

大きさ的には人の腕が一本入るくらい。

まさかな・・・と、思いながら俺はその箱を開けた。

「これが・・・遺体ですか?」

そこには、気持ち悪いオーラを放つ右腕が入っていた。手の近くに何か紙が入っている。

「触るな、仗助。この遺体はさとりのところへ持っていく。今、俺たちには関係ない」

「どういうことッスか?」

「危険だということだ。俺は遺体を得るために何度も戦った。時には身体を恐竜にし、時には樹木に変化させられそうにとなった。・・・こいつに関わったら必ず、厄がくる」

「つまり簡単に触れるな・・・ということッスね」

そう言うと、仗助は近くの木を支えにして、崩れ落ちた。

「仗助!・・・やっぱり、骨が刺さってんじゃねぇか!今すぐ回転で!」

俺が鉄球を取り出したとき、横にあった箱が音を発てて壊れた。

「中の遺体が、俺の鉄球の回転と共鳴している!」

遺体はズルズルと地面を這いながら俺に近づき、次の瞬間には、俺の手首を掴んでいた。そしてジョニィの時みたく、俺の腕のなかに入っていった。

「な、何だ!この力は!ぐ、ぐぁぁッ!や、やめろ!俺のなかに入ってくるな!」

『キュィィ!?キュィィィィン!』

ジョニィのスタンドのような、形をしたそれが、俺の鉄球の中へ入り込む。色は黒ベースのため、少し不気味だ。

「まさか!俺にスタンドが発現しただとォ!?」

そして鉄球は俺の手を引っ張るように、仗助の脇腹部分へと近づけさせた。

「こ、この感じ・・・まるで、治療でもされている感じだ。刺さるような痛みが消えていく・・・。ジャイロさん、これはいったい?」

「わからない。だが、わかることが一つある」

 

俺にもスタンドが発現したということだ・・・。

 

あの聖なる遺体の眼球を埋め込んだときみたいに、スタンドが発現した。この遺体にも、聖なる遺体のようにスタンドを発現させる力があるようだ。

「・・・何か治療と考えると、俺のクレイジー・ダイヤモンドに似てませんか?」

「確かにな。・・・他に能力があるのかもしれない。今、俺はほとんど回転のエネルギーを注がなかった。つまり、このスタンドには進化する可能性がある、そう願いたいぜ!」

『キュィ♪』

「治療・・・こいつは俺の原点なのかもしれないな」

「原点ッスか?」

「あぁ。この俺が最初に習った回転の技術は破壊のためのものじゃあない。治療のための技術だ。だから、こいつは俺の原点ってことよ」

俺はスタンドの頭を撫でると、そいつを右手の平に乗せ、景色を見せた。

この地蔵は地底の人里全てを見守るためにここにあるようだ。そのせいか地蔵の見る先は、ぽっかりと木々が無く、見晴らしがいい。

「よろしくな、オリジン。それがこいつの名前だ」

「オリジン・・・いいッスね。正直、自分の仕事が無くなりそうですがね」

「いや、俺のケガはこの力で治さない。それに力比べで鉄球は勝てない。拳と拳のぶつかりあいに、俺の回転は関与できないぜ」

『キュィィン!』

俺はスタンドをしまうと、人里へと下りる準備をした。

遺体の無くなった空箱を抱えて。

 

「あ!よかった!どこいってたんですか~!」

人里に帰ってきた瞬間、お燐が走ってきた。どうやら俺たちを探していたらしい。

お燐は汗だくになって、息をきらしている。

「どうした?館が火事にでもなったか?」

「今、さとり様のところに客が来まして、その人がこの地底の人間を無差別に殺すって」

「何!?そいつはどんな格好をしていた!?」

「確か男で・・・顔に車が通ったあとみたいな跡がありました!」

「車?・・・この世界にも車ってのはあるのか?」

「私とか、さとり様は外の世界から来た本をよく読むので。この世界には無いですね」

「とりあえず、その男を探せばいいんっスね。いきましょう、ジャイロさん!」

「お、おう。」

このとき、ジャイロは思った。

その男は地底の人間を無差別に殺すと言っていたみたいだが、俺の経験上、そういったヤツはもうとっくに始めているはずだ。なのに、この人里からは悲鳴や銃声一つ聞こえない。つまり、そいつは殺人のプロか、もしくはスタンド使いだ、・・・と。

「どうしたんスか?」

「仗助、検討はあるのか?」

「そ、それは・・・。でも、ここで動かないと、この里の人間が!」

「仗助、あまりキレるな。・・・冷静に進め。俺はここまでたくさんのスタンド使いと戦ってきた。だからわかる。この感じ、ヤツはまだ動いていない。ヤツはこっちがどう動いてくるのか、今も柱の後ろとか、家の中から観察している」

「何が言いたいんスか!そんは詮索より、今は」

「静かにしろ。・・・もしも、そいつの狙いが無差別殺人じゃあなく、俺たちの殺すことだったらどうする?」

俺はすでに回転を使って、ここらいったいの人の動きを確認していた。

仗助が静かになったことで、回転の波は乱れずに、さらに広い範囲まで確認することができる。

こちらに歩くことなく地面の上を進んでくる男がいる。

そして・・・

「仗助!今、そこの角の家に入った!すぐにヤツのところへ行くぞ!」

「え?わかったんスか?」

「あぁ。奇妙な移動方法をとる男を見つけた。確実ではないが、そいつが犯人だ!」

仗助はそれを聞き、すぐに走り出した。

そして角の家に着くと、玄関の扉を蹴り飛ばした。

「アンタが、無差別殺人を企んでいる男ッスか?」

仗助が中を見たとき、男は椅子に座って窓の外を見ていた。

「Exactly」

男は回転椅子を使い、クルッと回ってこちらを見ると、テーブルの上に置かれた小さな箱を持ち、こちらへやってきた。

「テメェの狙いはなんだ?」

「言う必要はありません」

男は小さな箱を仗助に渡すと、椅子に座る。

「私の名はテレンス・T・ダービー。私はテレビゲームを得意とします。もしも、勝負に勝ったらお教えしましょう」

「いいぜ、その勝負やってやる!」

「それでは戦うゲームを選んでください」

たくさんの箱がしまってある籠の中から仗助は一つ箱を選んだ。

 

 

 



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ジョルノ、暗闇の攻防戦

あらすじ
ジョニィは何とか噴上を探して倒したのはいいものの、そこに新たなる影が忍び寄る。
何とかジョルノによって馬を回復させることはできたが、そのジョルノはその影に攻撃されてしまう。
はたして、ジョルノはその影を倒すことはできるのか。

なんてあらすじを書いてみたが、正直作者も前のことを覚えていないため、曖昧である。


ここが紅魔館か・・・

 

僕はやっとの思いで、紅魔館に辿り着いた。

レンガの壁の屋敷。確かにここだ。

門の前に誰かが立っている。あれはここの門番か?

「・・・寝ているのか?門番が寝ているとはいったいどういうことなんだ」

「んぐぐ・・・さ、咲夜さん痛いですよ」

「!・・・寝言か。今そんなこと関係ない。早くしないとジョルノが!」

「あ、あれ?お客様ですか?」

ヤバイ、門番が起きた。

「違う。僕はただ仲間を助けてもらいたくてここに来たんだ!侵入者じゃあない!」

「怪しいですね。今、お嬢様は忙しいので、また後で」

「今じゃなきゃダメなんだ!今、僕の仲間が悪魔に襲われているんだ!」

「それは大変です!でも、門番の仕事的に」

「今、寝てたじゃあないか!門番が寝てていいのか?」

「また寝てたの?美鈴・・・」

門の上から声が聞こえる。

顔をあげると、門の上にメイド服を着た女がナイフを片手に立っていた。

女はそこから降りると、門番の首筋にナイフの先端を当てた。

「ご、ごめんなさいぃぃぃぃッ!」

門番は少し後ろに下がって、ぺこぺこ腰を折り、頭を下げた。

「今日はどんな言い訳をするの・・・って、客がいたのね。・・・ごめんなさい、恥ずかしいところをお見せしてしまい」

「全然大丈夫だが、その、ここには訳があって来たんだ。お願いだ、僕の仲間が今、悪魔に襲われているんだ、助けてくれ」

「そんな頼み方で私達が返事すると思う?・・・まぁいいけど。美鈴!行ってきて」

「え!でも、誰が門番を」

「いいから行ってきて!あなたがここにいても、門番としての仕事を果たさないでしょ?」

咲夜はナイフをどこからか取り出し、美鈴の首にナイフを突き付けた。

「は、はいぃぃぃぃ!いきましょう!えっと・・・」

「僕はジョニィ・ジョースターだ」

「あ、はい!ジョニィさんですね。いきましょう」

俺は愛馬の後ろに美鈴を乗せると、森へと馬を走らせた。紅魔館前からでも見える黒いそれは、森の一部を包み込むくらいに大きくなっていた。

 

「夜じゃなくても、ここまで大きく闇をはれるようになったんだ。今は霊夢も違う異変を解決しに行ったし、この男の子を食べちゃっていいよね?」

「暗闇、僕はまだ諦めてない。覚悟とは暗闇の荒野に!進むべき道を!切り開くことだ!」

ジョルノはスタンドを出し、声の方向に拳を繰り出すが、空を切るだけで犯人に攻撃はできない。

ジョルノにはただの暗闇にしか見えないが、犯人にはジョルノの姿がハッキリと見えている。

たまにその赤い瞳が通るのがわかるが、ハッキリとした場所はわからない。

「生まれろ!生命よ!」

ジョルノは地面に落ちた葉を殴って、そこから蛍を作る。何匹もの蛍は辺りをポツポツと照らすが、犯人はその光から逃げて、照らすことはできない。

「だが、道は見えた!」

ジョルノの目的は犯人の姿を見せるということだけじゃなかった。

この暗闇から脱出するための道を照らすためだった。

「無闇にある方向を一気に走るのも策だ。だが、それはあまりにも無駄な行為だ。なら、この光が道を切り開く!」

「この男、私の闇を攻略しようとしている。前に、外の世界からやってきた男もこの闇を攻略しようとした。あのときは霊夢がいたから助けられたけど、今回はいない!このまま、男の後ろを追えば!」

ジョルノはどんどん、蛍を作り出し道を照らした。そして、湖を見つけた。

「湖の中なら、ヤツは攻撃できない。・・・だが、安心はいけない、まだヤツの暗闇は追ってきている」

湖の中も闇に包まれていた。

ジョルノは犯人が上にいるのを理解した。

そしてポケットから出した使えないライターを梟にして闇の中を進ませる。

「彼なら・・・闇の中を進ませることができる。そして攻撃すれば」

犯人はその梟を見て、一瞬攻撃しようとしたが、攻撃を止めた。

「危ない。この男の作り出した生き物を攻撃しちゃいけないんだった」

「僕のスタンドを知っている!僕のスタンドのこの能力はまだ見せていないはずだ!」

思わず、ジョルノは声を出してしまう。水上に肩から上を出した状態だったため、すぐに見つかってしまった。

「水中に隠れちゃったから、一瞬逃がしたと思ったよ。でも、逃げてなかったんだね」

ジョルノはいつのまにか、見えない狂気に脅えていた。このまま先の見えない湖を泳いで逃げ切れるのか、もしも逃げ切れたとして、紅魔館にたどり着けるのだろうか。そんなことを考えながら、ジョルノは小さく水をかいた。

「どこにいくの?逃げないで」

ジョルノが諦めかけたそのとき、

 

チュミミーンッ!

 

ジョルノと犯人の間を爪弾が通った。

「やっと来ましたか・・・ジョニィさん」

ジョルノの目線の先、暗闇で見えてはいないが、ジョルノにははっきりとジョニィの姿が見えていた。

 

「ひゃー、また大きな闇ですね・・・ルーミアさんだと思うのですが、あそこまででかいのは」

「知ってるのか?」

「はい、たまに門番をやってると遊びに来るんです。妖精の友達何人かを連れて。この前も確か、門の前でサッカーをやりましたし」

「・・・今は、そのルーミア?の中から助けないとな」

美鈴は少し空きを作ったあと「はい!」と元気な返事をした。

彼女の格好からして、中国のかんふー?という格闘技をやるのか?

「えっと・・・私は何を」

「僕はこの爪を弾丸にして放つことができるが、アンタは何ができるんだ?」

「んー、まぁ格闘系ですね。咲夜さんみたいに時を止めたり、お嬢様みたいに・・・。言いますと、そんなにすごいことはできません」

「おいおいおい、あのメイド、そんなことできたのか?敵にしたくないな、そんな能力」

「ボソッ(お楽しみはここからだ)・・・なんてね」

「何か言ったか?・・・というより、あの暗闇、湖に出たぞ」

森を削るように現れたそれは、きっとジョルノを追っているのだろう。今さっき、あの中に人影が二つほど見えた。

「なるほど、やっぱりあの中にそのジョルノさんが、いるのですね」

湖に入った以上、僕と僕の馬は完全にお荷物になる。だから美鈴を行かせる・・・なんてことはできない。

「・・・決めた。ここからあの闇の中のルーミアを狙う。僕にはそれができる」

僕は見えない闇の中目掛け、爪弾を一発放った。

だいたい球体ならその中心にいるだろう。そんな予想を立てた上での決断だった。

少しすると、闇の中に突入した爪弾がその闇から出てきたのがわかった。

「ジョルノさん!そこにいるんですね!」

「ッ!敵か・・・この爪弾、まさか」

暗闇は爪弾から僕の気配を察知したのか、ジョルノから離れて、僕の方に向かってきた。

「タスクッ!」

「チュミミッ!」

僕は爪弾をその闇に何発も撃ち込むが、一向にスピードは落とさない。

だが、その闇の正体を見ることができた。

「もう、迷いはない!」

次に撃った爪弾は闇の中から確実にルーミアを貫いた。闇が晴れ、そこから現れたルーミアのわき腹からは、血が流れていた。

下に流れ落ちた血は湖を赤くする。

「ど、どうして・・・」

「数撃てば当たる・・・と言って欲しくはないが、そう言わざるをえないということだ」

 

「ここが紅魔館ですか、思った以上に大きいですね」

ジョルノは何事も無かったかのように、紅魔館まで歩いてきた。

ルーミアの傷を治してから向かう、と言っていたが、案外早く終わったみたいだ。

「治す意味があるのか?こいつは僕たちを攻撃してきたんだ」

「彼女も生きてますから。これまでに会ってきた僕たちを殺すためだけに生きる悪ではありませんので。あくまでも、彼女も生きるために僕たちを攻撃したんですから」

「・・・さすがにお前のその心の広さには何も言えないな」

ジョルノは僕の顔を見ると、紅魔館へと入っていった。

そのときのジョルノの頭には緑色の葉っぱが一つ付いていた。



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ゲームはほどほどに

あらすじ
何とかしてジョルノはルーミアの闇から逃げ出すことができた。

そしてジャイロと仗助は無差別計画を始めようとするテレンスと戦うことに決めた。



「ようこそ、紅魔館へ」

 

入ってすぐに、時を止めることができるというメイド、咲夜が僕たちを待っていた。

「あなたがジョルノ・ジョバァーナさんですね?お待ちしておりました。お嬢様がお待ちです」

咲夜はジョルノのみを奥へと遠し、館の前で僕を止めた。

「ジョニィ様はその馬をどうするのですか?まさか、館の中に入れる気ですか?」

「だが、僕は・・・そうだ。車イスとかないのか?」

「あるにはあるのですが、どこにあるのか生憎検討つきません。とりあえず、繋ぎ場とは言いがたいのですが、そこに停める場所があるのでご案内します」

そう言い、咲夜は僕を案内した。

冷静沈着に動く咲夜は美鈴のときとは違い、メイドとしての仕事を完全に、忠実にこなしていた。

「ここがその繋ぎ場です。先にお客様がいらしているので、他の馬がいるのですが、大丈夫ですよね?」

「あぁ。それくらいなら・・・!」

僕はこの瞬間に、あらためてジャイロがここにいるということに気づかされた。

「この馬・・・ジャイロの馬だッ!今、ジャイロはここにいるのか!」

僕の言葉に咲夜は首を横に振ると、それに続くように、

「今はここにいません」

と、断言した。

僕は馬から降りることなく咲夜に近づいた。

だが、咲夜は僕が近づく度に、瞬間移動をして後ろに下がる。

「ジャイロ様は今、ある事件によって、全く違う場所に行ってしまいました。おそらくですが、死んではいないと思います」

「そうか・・・。」

咲夜は時を止め、その間に車イスをもってきたのか、彼女の前には車イスがポツンと置かれていた。

「馬を降りしだい、すぐに乗ってください。乗れますよね?」

「あぁ。それはできるが」

僕は車イスに座ると、咲夜の後ろを進み紅魔館へと向かった。この先何があるのか、何が起こるのかはそのときの僕には全くもってわからなかった。

 

 

愉快な音楽と共にゲームが始まる。

ジャイロさんはこのコントローラを握ったことも、ゲームというのをやったこともない。

つまり、俺がやらなきゃならない。このゲームなら、俺もやっとことがある。

「さぁ、始めましょう。・・・そういえばいい忘れてましたね」

テレンスはコントローラを置いて立ち上がると、ゲームの近くに置かれた重々しい箱の扉を開けた。

「ォォォ・・・」

おぞましい声が耳のなかで響く。その中にはたくさんの人形が声をあげ、こちらを見ていた。

「私の趣味はこれでして、ゲームで倒した相手の魂を人形としてコレクションしています。ほら、あなたたちのもありますよ」

テレンスはそう言い、俺とジャイロさんに似た人形を取り出し、机の上に置いた。

「ぜってぇーにならねぇ。お前の操り人形になんかな! ここでお前を倒して、里の人を助けてやる!」

「それでは、私はこの人形達の魂をかけましょう」

「いや、てめぇのかけるのはお前自身の魂だ。俺も魂をかける!」

「Exactly!面白くなってきました!さぁ、どのチームを選びますか?」

「選ばねぇぜ。俺はランダムで選ぶ!」

俺はチーム欄の下に存在する『ランダム』というボタンを押す。ランダムによって決められたチームはジャガーズだった。

「あのときと同じみたいですね。以前承太郎と戦ったときもそのチームでしたね。なら、あのときと同じく私はドラゴンズを選びましょう」

「さぁ、始めようぜ。ジャイロさんはこいつがイカサマをしねぇか見ていてください」

「了解。任せとけ」

画面上に俺たちのスタンドの顔をした選手が並ぶ。このゲームでは使う選手の顔を作ることができる。きっと、こいつが俺のスタンドの顔を書いたのだろう。

「どちらの魂が奪われるのか・・・。さぁ、始めましょう」

 

試合が始まり一回の表ですぐに、俺はヤツのスタンドが能力を発動していることに気付いた。

「二点目・・・この程度ですか」

この一瞬で場外に二度も飛ばされた。

あまり、イカサマをしているとか、卑怯な手を使っているとか言いたくないが、こいつはそんなやつだ。

「おい、大丈夫なのか?仗助・・・」

「二点くらい平気ッスよ」

ジャイロさんにはそんなことを言うが、内心焦っていた。だが、前に承太郎さんとゲームをやっているとき、こんなことを言われた。

 

「仗助。俺がDIOの野郎を倒しにエジプトへ行ったとき、心を読むヤツと戦ったことがあった。ヤツは俺の仲間の魂を人形にした」

「へぇ~。そんな気持ち悪いスタンド能力持ったヤツどうやって勝ったんスか?」

「イカサマだ」

「イカサマ・・・承太郎さんが?」

「ジジイの力を使ってな。そして、ヤツを倒すにあたって、俺はあらためて実感したことがあった・・・。負けることを考えてはならない・・・だぜ」

 

承太郎さん・・・。わかりました。

「俺は負けねぇぜ。絶対にな」

 

その頃、ジャイロは・・・

イカサマしないか見てろって言ったけどよ、わからねぇよ。始めてみたぞこんなもの。これはなんだ?なんで、この四角の中で野球をやっているんだ?

まぁ、何となく仗助とテレンスの顔を見た感じ、仗助が負けているのはわかるが・・・。

そうだ。今、この四角の中に鉄球を詰めれば倒せるんじゃないか?この四角をじっと見ている時に・・・

あー、ダメだ!確かにこの策は面白いが、仗助に言われたもんな、イカサマしないか見てろって。審判がイカサマをしてどうするってんだ。

まぁ、ちょっとでも、仗助が負けそうだったら、この手を使うか。

といったように、心の中でイカサマを考えていた。

 

ジャイロさん、いったい何を考えているんだ?あれ以来、ずっと黙り込んで・・・。

まさか今の状況がわかっているのか?

今、俺はヤツに圧倒的に負けている。一回の表だけで五点もとられた。

「どうしましたか?次の球種を選んでください、直球ですか?カーブですか?」

落ち着け、落ち着くんだ。もしも、ここで俺が負けたら、ジャイロさんじゃあ勝てるわけがない。ジャイロさんの時代的にゲームなんて存在しないはずだ。

「何を焦っているんですか?もしかして、負けるとか考えてるんじゃあないですか?」

「いや、んなことはねぇぜ!」

「いつでも、魂をもらう準備はできてますから・・・」

そう言い、テレンスは人形をテーブルの上に出した。人形の目はこちらを見ている。まるで、俺の魂をねだっているかのように。

「遊んでいるところをすみません」

俺たちの会話に、今までずっと黙っていたジャイロさんが入ってきた。

「おや?イカサマでも見つけましたか?」

 

「いや、俺がイカサマをした」

 

「な、なんだと!?審判であるあなたが」

「いつから、俺が審判だと決めたんだ?仗助か?仗助はイカサマをしないか見ていろ、と言っただけだァ。俺がイカサマをしてはいけない、とは言ってないぜ」

「ッ!・・・だが、イカサマをしたってことはお前の敗北だな、ジャイロ」

「お前がゲームをできれば、だがな」

「何を言って・・・こ、これは!」

テレンスの指にはコントローラの配線が巻き付き、ボタンを押せない状態になっていた。

「この短時間で一つ面白いことがわかった。その凹凸を押すことで、この中にいる選手は動く。・・・つまり、そのボタンを押させなければ、この選手は動かない」

「き、キサマ・・・」

「焦ってんのか?そんなに負けるのが怖いのかァ~?よし、あとは頼むぜ。この試合を終わらせて帰ろうぜ」

「いや、もう終了だ。後ろの人形箱から魂が溢れてますし。・・・それにしても、やっぱりその回転すごいッスね」

「まぁ、鉄球はもう一つしかないけどな。今ので失っちまった」

 

テレンス・T・ダービー。コントローラと指が二度と離れなくなり再起不能?

後に人里の住民に、見つかって助けてもらったが、コントローラやゲームを盗られてしまう。

 

 



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救世主

あらすじ
ジャイロと仗助はテレンスに、イカサマで勝利した。
そしてつかの間の休息を得た。


テレンス戦を終え、地霊殿へ帰った二人は少し休むことに決めた。

ジャイロは新しい鉄球を作るために、仗助は目を休めるために・・・。

 

地霊殿のある部屋にて・・・

 

「・・・それ、どうやって作ってるんスか?」

「それは内緒だぜ。この鉄球の回転の技術は他の人間には秘密だ」

「それと、あのコントローラの配線は」

「それは教えてやる。あれは鉄球を一本の鉄線にして、あの機械の中に忍び込ませただけだ」

「・・・まるで意味がわからない」

「理解するのは難しいだろーなァ。ジョニィですら、これを理解するのに何日もかかったからな」

俺は鉄球を完成させると、椅子に寄りかかった。

そして完成した鉄球を光らせて、出来映えをじっくりと見ていた。

ここ最近鉄球を見ていると、ふとジョニィの顔が思い浮かぶ。しかも、必死な顔をしたジョニィの顔だ。

思い出し笑いをして、仗助に気味悪がれるが・・・

 

「ここに奇妙な帽子をかぶった馬乗りはいるか!」

それは突然だった。

下で大きな声が聞こえたかと思うと、階段を上がる足音が聞こえ、この部屋の扉を開けた。

「お前か!お前が、あの山の上に存在するお地蔵さまの祠にまつられた箱の中身を奪ったのか!」

その言葉と同時に入ってきた男達は俺を取り囲む。

「な、なんスか!」

「今さっき、山から降りてきた老人から言われた。奇妙な帽子をかぶった馬乗りの若者が、お地蔵さまの祠にまつられた箱の中身を奪ったと」

俺は一度、右腕を見ると首を横に振った。

「とぼけても無駄だ。すぐに来てもらうぞ」

男達は俺の両腕を身体の後ろにまわすと、そのまま床に叩きつけた。

「ぐ・・・クソが、」

鉄球がコロコロと後ろへ転がっていくのが見える。

そしてその先で仗助は男達に銃口を向けられていた。

 

数分後、俺たちは腕に手錠をかけられ、この人里でも大きい建物の一つである、その時代の裁判所のような場所に連れていかれた。

「シュトロハイム様、連れてきました」

「ご苦労だった、下がれ」

この人里には似合わない名前の男は俺たちの前に現れると、俺たちを抵抗できないようにする銃をかまえていた男を、この建物の入り口まで下がらせた。

「我が名はシュトロハイム。外の世界からやってきた者だ、お前達もそうだろう?」

「あぁ、それとこれとは何が関係あるんだァ?」

「うむ、そうだな。脱線してすまない。・・・それでは本題といこう。お前はどうしてあの祠から物を盗んだ?」

「俺たちは盗んでないぜ。老人の見間違いじゃあねぇか?」

「戯言はいい。本当のことだけを聞きたい。まぁ、犯人が本当のことを言うとは思わないがなァ~~。足掻くだけ足掻け」

シュトロハイムは気持ち悪い笑い方をすると、俺たちの前に胡座をかいて座る。

「おい、こっちのリーゼントはもう逃がしていい。この帽子の男と話したい」

「な、ジャイロさん!」

シュトロハイムの命令通り、仗助は男達に両腕を掴まれると、そのまま部屋を出ていった。

「ジャイロさん!ジャイロさん!」

仗助は何度も俺の名前を呼び男達に抵抗したが、そのまま部屋から出されてしまう。

そして、部屋の中にいた人間は俺とシュトロハイムを残して外へ出た。

「・・・ジャイロ、と言ったな。お前の目的を俺は知っている。この世界に来た理由をな」

「!?・・・どこで聞いた?」

「あの屋敷の女主人にな。先にそれを話に来たのはあっちだ」

俺は心のなかで、アイツは何がやりたいんだ?と考える。俺はアイツの手のなかで遊ばれているのか?

「邪悪なる遺体を集めること・・・だろう?あの祠の遺体は罠だ。盗むところを見た老人なんてはなからいない。全てはお前を捕まえるための罠だ」

シュトロハイムは俺の手錠を外すと、椅子に座り、サイドテーブルに置かれたコーヒーカップを持った。

「この世界、日本のような和の部分がありながらも、コーヒーが飲めて、実に住みやすい世界だ。まぁ、空がないのは残念だがな。そこに座りたまえ」

俺は今がチャンスと思い、鉄球を取ろうとするが、鉄球を地霊殿に置いてきたのを思い出した。

「お前は何がしたいんだ?俺一人だけここに残して」

「お前に協力しようとしているだけだ。我らが見つけた邪悪なる遺体は一つしかない。その右腕に潜り込んだ『右腕』しかな。このことは仗助には関係ない、お前のみに関係があることだ」

「協力してくれるのはありがたい。だが、協力する理由はなんだ?」

「それか・・・」

シュトロハイムはコーヒーカップをテーブルに置くと、俺の方へと歩いてきて、右腕を掴んだ。

「それは後々、我々がその遺体を揃えて保管するためだ。ジャイロ、お前にはその目標への架け橋にでもなってもらいたい。まぁ、悪く言えば、踏み台か」

「それなら、俺は関係ないんじゃあないか?遺体は他の遺体と引き付けあう。アンタの身体で遺体を集めれば」

「それができたらやっている。遺体は人を選ぶ、このシュトロハイムや仲間に遺体は反応しなかった。そこで、お前ならと思ったのだ」

「シュトロハイムさんよォ。俺は人に言われて、遺体を集める気はねぇぜ。ましては、アンタみてぇな人を見下して話す人間にはな」

俺はそういい、シュトロハイムの鼻をピンと指ではじくと、その部屋から出た。

確かに遺体は仗助ではなく、俺を選んだ・・・。

 

これは何か関係あるのか・・・?

 

「大丈夫スか?ジャイロさん!」

建物から出ると、そこに仗助は立っていた。

「あぁ、別に拷問とかを受けていたわけじゃあないからな」

シュトロハイムはこれ以上、俺を追っては来なかったが、扉が完全に閉まるまで、こっちをずっと見ていた。

「シュトロハイム、とりあえず覚えておくか」

 

 

「やっと入れた・・・」

「遅かったですね。大丈夫でしたか?」

僕が紅魔館に入って早々、ジョルノがすぐに僕のところへやってきた。奥で紅茶を飲んでいたのか、ジョルノからいい臭いがする。

「それでは、ジョニィさんも中に・・・」

屋敷のなかはかなり広く、咲夜がいなかったら迷ってしまいそうだ。・・・というわけでもなく、玄関からすぐに応接間まで来てしまった。

そこで、ジョルノは紅茶を飲んでいたのだろう。

テーブルの上に、紅茶の入ったティーポットと空のカップが二つ置かれ、この世界に来て始めてみたマカロンなどの綺麗な洋菓子が並んでいた。

「どうぞ、お嬢様が来るまでここで休憩して」

「言われなくとも」

「・・・それでは」

咲夜はドアを閉めてその部屋から消えてしまった。

お嬢様が来るまでと言っていたが・・・。

 

それから数分すると、咲夜だけが部屋に入ってきた。

「今、お嬢様と会うことはできません」

「・・・何かあったのですか?」

「いえ、あなた方には関係のない話ですので・・・」

咲夜は心のない声でそう言い、僕たちを部屋の外へ出した。どうやら、本当にこの屋敷の主は忙しいのか、咲夜以外のメイドは忙しく動いているのが見えた。

「せめて図書館だけでも行けませんか?」

「今、図書館も入ることはできま」

 

「いかせてやれよ」

 

出入り口の扉を開けて、一人の女の声がやってきた。

そこにいたのは魔女のような格好をした

「魔理沙・・・たまには正門から入ってくるのね」

「おう、たまにだがな。今日はパチュリーのところにようがあってきたんだ。それと、そいつならこの事件、解いてくれるだろうな・・・そこの車イスの人間ならな」

魔理沙と呼ばれた魔女は僕の方へと歩いてくると、車イスのハンドル部分を掴んだ。

「確か、ジョニィとかいったな。アンタがやったことはもうとっくに人里中に出回っているぜ。どうするんだぜ?」

「ぼ、・・・僕は決心をしたから、あそこで行動できた。ここまできたら『途中で逃げ出す、ただのクズ』に戻るのはまっぴらごめんだ」

「あなたが犯罪者だとは・・・。ここまで情報が来るのは遅いからわからなかったわ」

咲夜は深呼吸をすると、僕に懐中時計を見せた。

 

『時よ、止まれ。』

 

次の瞬間、僕は大量のナイフに襲われ、車イスから落ちた。

 

 



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近づく恐怖

あらすじ
紅魔館に入ることができたジョニィとジョルノ。
だが待っていたのは『十六夜 咲夜』という地獄だった。

そしてジャイロは新たなる襲撃者に頭を悩まされることになる。


今の一瞬で何が起こったんだ・・・

 

確か、懐中時計を見せられて・・・咲夜が何か言って・・・あれ?

 

僕の身体は車イスから落ちた。ナイフが刺さっているのがわかるが、これで抜いたら一気に・・・

「あら、今ので死んでませんでしたか」

「咲夜!やめるんだぜ!」

魔理沙は咲夜の行動にただ震えることしかできない。

「魔理沙、あなたは犯罪者の肩を持つんですか?」

「そいつは確かに犯罪者だが悪いヤツじゃない」

「悪はどんなに静かにしていても悪。五十歩百歩って言葉知らない?」

咲夜は次のナイフをかまえる。

「まぁ、あなたは百歩の方だけどね」

咲夜はあらぬ方向にナイフを投げた。その先にはジョルノが立っていた。

 

カシャン!

 

咲夜の投げたナイフはジョルノの持ったいたカップを撃ち落とす。

「まさかジョルノさんに化けるなんてね。本物の彼は今さっき、ここにきたばかりですので」

「ほぉ~。まさか儂の姿がバレるとは・・・。」

ジョルノの体を煙が包み込む。そして、現れたのは一人の女だった。

動物のような耳に狸のような太い尻尾。・・・日本人が言っていた化け狸ということか。

「ジョニィさん、大丈夫ですか!?」

扉を開けてジョルノが入ってきた。額から流れる汗と息の上がりようから、ここまで走ってきたことがわかった。

「ジョニィとか言ったな。お前さん、なかなか面白いことをやったみたいじゃな」

化け狸は僕のところにやってくると、何かをぼくの前に置いた。

「お前さんならこれが何かわかるじゃろう?化け狸からのプレゼントなんて信用できんと思っておるじゃろうが、受け取ってほしい」

それはジャイロが使っていたと思われる、使い古されヒビの入った鉄球だった。

「これをどこで!?」

「人里で事件が起こったとき、外の人間が置いてった物じゃ。お前さんならこいつの価値がわかるじゃろう?」

化け狸はそこから立ち去り、紅魔館から出ていこうとするが、咲夜のナイフによって止められた。

「・・・なんじゃ、ナイフはこうやって使うモノじゃないぞ」

「あなたはなぜ、ジョニィ・ジョースターに近づいた?そのゴミを渡す以外に何か理由が」

「そんなもん無い。ただそれを渡すためだけじゃ。・・・それと紅茶うまかったよ」

化け狸は最後まで名前を言わず、紅魔館から出ていった。

咲夜も咲夜だが、あの化け狸もそれなりに力があるのだろうか、咲夜は最後まで何も言えなかった。

「図書館はここを下りた先です・・・」

そしてそれだけを言い、僕たちの前から消えた。

 

「ここがジャイロを最後に見た場所・・・」

大図書館の奥。そこは本が散らばり、本棚が倒れ、照明が割れていた。

その空間から考えて、僕は本棚が足りないことに気づいた。

「ジャイロはここで、仗助と共に消えたわ」

ここの図書館の主(?)の女、パチュリーは僕のところにやってくると、周りに散らばった本を拾う。

「ここらへんには、他の世界から来た本がたくさん置いてあったわ。しかも、かなり珍しいものがね」

「・・・」

言葉なんて出ない・・・。ただ鉄球を見るだけ・・・。

僕はまるで耳元でささやくくらい小さな声でジャイロを呼んだ。

「ジョニィさん!次の場所です!」

静かな空間を壊すように現れたジョルノはそう言い、僕の乗った車イスのハンドルを手に取った。

ジョルノは今さっきまで、図書館の階段にスタンドで作り出した植物の葉を使って凹凸を無くし、滑らせるようにして進むと、図書館から飛び出すように出た。

「今、メイドさんからある情報を聞きました。あなたが殺したはずのエンリコ・プッチが蘇ったみたいです!」

「な、なん・・・だと」

ジョルノの言葉に、プッチの死ぬ瞬間の顔を思い出す。

その痛みに苦しみながら死んでいくおぞましい顔を・・・

「あのとき!僕は・・・プッチを・・・」

 

「朝から騒がしいわね・・・」

 

ジョルノはその声に足を止める。僕は慣性によって、車イスから跳んでいく。

階段の上にはこの紅魔館の主と思われる吸血鬼がたっていた。

「私の名は、レミリア・スカーレット。咲夜から話は聞いているわ。あなた達は犯罪者。・・・どうしてここにはあなた達のような人間が集まるのかしらね・・・」

階段を一段一段降りてくるその姿に僕たちは脅えていた。心の奥から侵されるようなその溢れるカリスマは僕たちの判断を鈍らせる。

「ジョルノ・ジョバーナ。あなたは自分の父親の情報を探しにここに来たのよね?」

「は、はい。」

「教えてあげる。・・・あなたの父親は今、ここに近づいてきているわ、脅威としてね。そして、ジョニィ・ジョースター。あなたの探しているジャイロは何度もここに来ているわ。今はどこにいるかわからないけどね」

レミリアはそう言うと、部屋に戻るのか階段を上がっていった。これ以上のことは知らないのか、僕たちの声で振り返ることはなかった。

 

 

場所は変わって地底では・・・

「ジャイロさん。ちょっと、ジャイロさん!」

 

俺はさとりの声で目を覚ました。どうして、こうなっているのかはわからないが、俺はさとりの部屋のソファーの上で目を覚ました。

床にはさっきまで俺の額に乗っていたと思われる冷えたタオルが、テーブルの上には傷だらけになった鉄球が置かれていた。

「ッ!・・・何があったんだ?」

「起きて早々、忘れたんですか?何があったかを・・・」

頭が痛い・・・。何が起きたのか、何があったのか、俺は全く覚えていなかった。

「襲撃ですよ、襲撃。まさか、あの男がまたここに来るなんて」

「あの男?ダメだ、全く思い出せない」

「・・・」

さとりは片目を閉じたあと、ため息をついた。

「確かに頭に衝撃はありましたけど、そんなすぐに記憶って失うものなのかしら・・・。まぁ、ジャイロさんにあの男と言ってもわからないですよね。前に襲撃されたときは勇儀さんがいたから何とかなりましたが、今回は勇儀さんがちょっと人里を離れていたのもありまして」

「だから、あの男って誰なんだ!」

俺はさとりの言うことに腹立たしくなり、頭が痛いのを無視して大きな声になってしまう。

「柱の男ですよ。今回はカーズだけですが」

「柱の男?・・・カーズ?」

「やっぱりわかりませんか・・・

 

あなたはそのカーズに完全敗北しました。そして太刀打ちできず、鉄球をまるでビー玉を弾くみたいに簡単に跳ね返され、彼の能力の刃で傷だらけにされました。

仗助さんのスタンドでさえ、遊ばれていました。最後には彼の大事にしていた髪型を崩されて・・・。

 

そのスタンドは飾りですか?その能力で、鉄球を治せば・・・いや、何でもないです」

さとりは何を見たのかわからないが、途中で話を終えて口を閉じてしまう。

確かに今、俺はさとりの言うことに苛立ちを隠せなくなっていた。

「そういえば、仗助は!」

「仗助さんなら、向かい側の部屋で寝ています」

俺の質問にドアの近くでこちらを見ていたお燐が返事をした。

「重傷ではありませんが、頭を打ったのかこぶができてました」

俺はそれを聞き安心したが、それよりも次に何をすればいいのか、一つの大きな迷いが生まれた。

もしもまた、遺体を探しているときにカーズがここに襲撃に来たらと考えると、こいつらをここに残しておくわけにはいかない。

とりあえず、俺は新しい鉄球を作り、次の襲撃に備えることを考えながら、次の課題を見つけることに決めた。

 

「柱の男・・・この世界でまたしてもアイツ等の顔を見ることになるとは」

「知ってるのか?シュトロハイムとか言ったなァ~」

地霊殿とシュトロハイムが住んでいると思われる建物からほぼ同じ距離にある洋風の茶屋で俺たちは偶然会った。

「あぁ。ここに来る前の世界では、ヤツ等に何度も殺されかけた。いや、殺されたな」

シュトロハイムはティーカップ片手に頭を抱える。

「だが・・・次は勝つ!このシュトロハイム、二度目の敗北など想像できぬ!」

「シュトロハイム・・・。よし・・・

 

共闘だ!

 

 

 



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襲撃、再び

あらすじ
以前に最初の襲撃でワムウ、次の襲撃でカーズに完全敗北したジャイロ。
今度はジャイロだけでなく、そこにシュトロハイムが入る。さらに、あの鬼も・・・
今度は勝利することはできるのか。

今回は少しだけ長いです。


夜の人里。

普段なら人や妖怪は明日のために休むものや、杯を交わすものがいる。

だが、地霊殿の妖怪と俺たちは違う。仗助は未だ戦うには無理がある状態だ。

「ジャイロさん。襲撃予定日は今夜です」

「もうこの人里に入ってきているみたいだ」

「ジャイロさん、何度も言いますが、吸血鬼は太陽の光に弱いです」

「それくらいはな、あと流水とニンニクか?」

今回の襲撃と言うが、この前の襲撃の記憶が無いためどこが違うとか、変わった場所はわからないが、ヤツはここに一人で乗り込んでくるようだ。

「来たぞ、ジャイロ!爆弾の用意はできたぜ!」

「待てよォ~、シュトロハイム!俺はよォ~、こんな真夜中に爆弾ブッ放すアンタの神経がわからねぇよ!」

「ハァ!?何を言っている!ここでヤツを倒さないとな!この人里の平和に!」

「平和とか言ってるヤツがこんな樽爆弾持ってくるかよ!」

シュトロハイムが仲間と共に持ってきたのは大きな樽爆弾。里の民家を何個吹き飛ばせば気が済む、というくらいの大きさだ。ただでさえ、この人里は何本かの川があり、建物が碁盤の目のように区切られている。

ここで通路より高さ2メートル越える大きさのものを爆発させたら・・・。

「ダメだ!却下だ。確かにここで迎え撃つよりかは、里の中で戦う方がいい。特に相手の武器からしてな」

さとりの情報によると、カーズの使う武器はチェーンソーのような回転する刃で、腕や脚などの体のあらゆる場所から生やし、相手を切り裂くというものだ。

そして、何よりもカーズ自身の身体能力が常人とは比にならないものだと言う。

正直、この鉄球でやりあうのはどうかと思う・・・。そして愛馬がいないため、さらに進化した回転技術を使うことは不可能だ。

「隊長!」

「どうした!」

「ヤツがもうそこまで来ています!今のところ、人里に被害はありません!」

「何ィィィ~~!ジャ、ジャイロ!悪いことは言わない!この我が研究機関が大急ぎで作り上げた爆弾で!ヤツを粉々にするべきだ!」

シュトロハイムが、人里へと続く下り坂に樽爆弾を持っていったとき、その樽爆弾は軽々と持ち上げられ、地面に置かれた。

 

「さとり!遅くなってすまない、ちょっと上に用があってな」

 

その特徴ある角と金髪、そして赤い盃。そこにいたのは仗助を即K.Oさせた鬼、星熊 勇儀だった。

「勇儀。」

「ここが襲撃されたと聞いてすっ飛んで来てみりゃ、なんだあの樽は。酒か?」

「あなたはいつもそう言いますね」

「そして、今もここにその犯人が来てると・・・。わかった。アタシも参戦しよう。ちょうど遊び足りないしね」

勇儀は拳を自分の手のひらに当てると目の色を変え、人里に飛び出した。

鬼の跳躍力はそこから、地霊殿のある少し高い場所から坂を降りてすぐ下にある建物の屋根に飛び移る。そして、その建物から降り、カーズのところまで走っていった。

「お、おい!シュトロハイム、追うぞ!」

「何ィ!?ここで迎え撃つのは、」

「やめだ!あの勇儀の行動を見て、何も思わねぇのか!」

「・・・クソッ!行くぞ!我が部隊も、彼らに続けェェェ!」

夜になると昼間とは違う活気が溢れるここ地底。太陽のないここで昼間という概念はどうかと思うが、今もなお、仕事をする者がいる。

そのため、辺りはぼんやりとだが、提灯の灯りで明るくなっている。

「やはり、太陽が無いのはいい。最終的にはそれを克服するのが目的だが・・・。キサマにわかるかァ~?女よ」

「アンタにはわからないか。たまには太陽の光を浴びたくなる気持ちが」

「その角からして同種かと思ったが・・・よく考えたら、そんなわけはないな。名を何と言う?」

「アタシは星熊 勇儀。アンタの名前は知っている。カーズって言うだろ?前に聞いたからな」

「覚えていたか。覚えていたぞ、前はよくも、エシディシとワムウをやったな」

カーズは腕から刃を生やす。刃が回る音が二人を興奮させる。二人とも、いつでも戦う準備はできている。

カーズがコインを天に向かって弾く。

「このコインが落ちたとき、戦闘は始まる」

「来いよ!アンタの野望、また打ち砕いてやるよ!」

「鬼よ。あのときの屈辱、晴らしてくれよう!」

コインが宙に上がってから数秒間、沈黙が続く。俺たちはそのコインが見えるところまで来ていた。

そして・・・コインは落ちた。

 

「今、何が起きたんだ・・・俺には全く見えなかったぞ」

シュトロハイムの言うとおり、俺にもわからなかった。

その一瞬でカーズの刃は折れ、近くの店の柱に刺さる。

勇儀の拳からは血が流れ、カーズはその場で高笑いを始めた。

「やはり鬼よ。我が刃は折れたが、その拳では二度の襲撃は守れんみたいだな。酒でも飲み過ぎたかァ?」

「アンタ、鈍いねぇ。アタシにはもう一本腕がある。それにこの程度かすり傷だよ」

勇儀の傷は明らかにかすり傷という度合いではなかった。

傷はパックリと開き、骨が見えている。それに比べ、カーズは刃を失ったことに何も痛みを感じていない。

「アイツは元はといえば吸血鬼と同じッ!ヤツの刃は折られてもその治癒力で回復するッ!」

「吸血鬼?我が種族はそれ以上の存在だ!」

俺は攻撃に出た。勇儀があの状態じゃあ次の攻撃でもう片方の腕も使えなくなる!

「ほぅ、人間よ。無謀にも向かってくるか!」

「ジャイロッ!危険だ!ヤツに負けたことを覚えてないのか!」

「今は関係ねぇッ!それよりもこの回転をこいつに!」

「その回転は前の戦闘で覚えている!無謀だ!」

カーズは俺が投げたモノを刃で切り裂く。

「な、これは!?」

「俺が毎回毎回、鉄球を投げると思うか?」

俺が投げたものは地霊殿に置いてあった、防犯用の蛍光カラーボール。なぜ置いてあるのかわからないが、さとりの部屋から取ってきた物だ。

「グガガガ!な、何だ!この強烈な臭いは!」

「やはり聞いていた通り、テメェは他よりも身体能力が優れているみたいだなァ。その臭い、どんな感じだァ?話ではチーズの腐りきった臭いと聞いたが」

「・・・」

臭いのあまり話せなくなる。そしてカーズはその場から一歩も動かず、その体勢を変えることはなかった。

「今だ、やれ!ジャイロ!」

「うおぉぉりゃぁッ!」

俺は鉄球を投げる。だが、その体勢は一気に解き放たれた。視覚と嗅覚をやられたはずのカーズはそこから一気に俺の方へ走ってきた。

 

「だから言っただろう。無謀だと・・・」

 

俺はその攻撃に対処できなかった。その一瞬で俺の左腕はその場に落ちた。

俺はその痛みに叫号した。俺の血が地面を濡らす。

「そうだ!もっと叫べ!どうだ?まだ戦うのかァ?」

「ジャイロ・・・。おい!誰か!ひ、東方 仗助を呼んでこい!叩き起こしてでもいいッ!早くだ!」

「ま、待て・・・」

俺は痛みに耐え、何とか立ち上がる。

「すまない、仗助。約束を破って・・・」

「何を言っている!ジャイロ、このままでは!」

「俺にだって・・・スタンドは・・・いるんだぜ。頼むぞ、オリジン。俺を治・・・すんじゃねぇ。勇儀を治せ!」

右手に握った鉄球を回す。

「おい!ジャイロ!どうして、お前自身を治そうとしない!その力は仗助と同じ、治癒ではないのかッ!?」

「俺は・・・今、あいつとまともに戦えるヤツは勇儀しかいないと思った・・・だけだ」

『キュイ!』

オリジンは勇儀のところにいくと、痛々しい傷痕から体の中へ入っていく。しだいに傷痕は完全に消え、俺の方にオリジンは戻ってきた。

「頼む、勇儀。・・・地霊殿の平和は」

 

「何言ってんスか!ジャイロさん!」

 

その声は気絶しかけた俺の耳のなかで何度も響く。俺のところに近づいてきたそれは俺の左肩を殴る。すると、黄金の光に包まれた左腕が俺のところに飛んできて、俺の肩にはまった。

「アンタこそ、この地底を守るべきだ!」

さっきまで地霊殿の部屋のベッドに寝ていたはずの男がそこに立っていた。

「仗・・・助・・・。お前、もう頭は・・・」

「ジャイロさんのオリジンっスよ。オリジンが治してくれた、だから俺は今、ここにいる!」

そのとき、俺は思い出した。傷だらけのなか、俺は体力限界、気絶する間近のところで仗助にオリジンを使い、スタンドを使うことになれていないために倒れてしまったことを。

「ジャイロさん!まだ戦える!アンタなら、カーズを倒せる!」

「・・・おうよ!お前も戦うぞ!」

俺の左腕だけでなく、俺の投げた鉄球を完全に治した仗助はそのスタンドをしまうことなく、カーズに攻撃する。

「この流法にそれで立ち向かうか!」

だが、カーズの刃は仗助のスタンドの腕の間接部分から切り落とす。

「ぐあぁぁぁぁぁッ!」

「仗助ッ!」

俺はオリジンで仗助の腕を治す。

「ほぅ。俺達のように傷を治し復活する・・・面白い」

こうでもしないとヤツを倒すことはできない。

シュトロハイムは役立たずだし、勇儀は傷を治したはずなのに、俺らの行動を見てからはずっとその場で止まっている。

「さぁ、その能力が使えなくなるまで、お前たちに地獄を見せてやろう。このカーズに戦いを挑んだことを後悔するがいい!」

カーズは異様なポーズを取った後、まばたきの間にその場から消える。

気づいたときには、俺らの上にヤツはいた。

「これが、輝彩滑刀の流法!」

俺らがその攻撃に対処できずに、ただ驚くことしかできないなか、一人だけは違う行動をとった。

 

「カーズよ、その攻撃は俺が覚えている!」

 

俺らの上にいたのはシュトロハイムだった。

シュトロハイムはなぜか、その刃を指先でつまんでいた。

「何ィッ!キサマ、まさか・・・」

「そのまさかだ!」

シュトロハイムは腕を後ろにまわす。着ていたジャケットの腹部を貫通して何かが顔を出した。

「このシュトロハイムが!ドイツ軍人のすばらしさを忘れるとは!カーズよ!見ろ!」

それは機関砲だった。

「これがナチスの科学力よ!ブァカ者がァアアアアア!」

シュトロハイムはカーズが俺たちから距離を取った瞬間に、機関砲をブッ放した。

大量の砲弾が飛び、砲声が地底に響き渡る。

カーズは刃で何発かを切ったが、そのスピードと力に敵わないのか、何十発もの砲弾を喰らって近くの川に落ちた。

「今の俺の体は!我がゲルマン民族の最高知能の結晶でありィ!誇りであるゥゥゥ!」

「や、やるじゃねぇの、シュトロハイム!」

「お前たちがそんな傷ついてるなか、このシュトロハイムが後ろで指をしゃぶって見ているなんてことはないィ!」

心のなかでシュトロハイムのことを役立たずと言ったのはあやまる。だが、その機関砲は気持ち悪いな。まさか、シュトロハイムは機械なのか?

「はぁ・・・はぁ・・・この、人間、いや、機械がッ!」

「お前は、少し人間のことをバカにしてたみたいだな。・・・どうした、あのときは飛んでくる虫を叩き落とすくらいに楽に機関砲の弾を切り裂いてくれたよなァ」

「油断をしていた・・・。それにお前が機械だということを忘れていた」

「人間以上の身体能力を持つお前ら柱の男が、忘れていたと。実に滑稽だな」

この野郎、どこまで煽れば気が済むんだ。だが、確かに今のでダメージはあるはずだ。あんな銃弾の雨をくらって生きてるのはさすがに化け物だが、化け物でもダメージは・・・

「なら、覚えているか?お前はあのとき・・・」

 

身体をこの刃で切られている。

 

「な、まさか・・・今ので」

カーズにダメージはなかった!あの動き、むしろ今ので本気になりやがった。

「シュトロハイムッ!」

シュトロハイムは上下で真っ二つになると、そのまま崩れ落ちた。

「さぁ・・・今度こそ壊してくれる!」

「カーズ・・・覚えているか?」

「!?・・・まさか!」

「紫外線照射装置作動!」

カーズはすぐに身を引くが、そのときにはもう手遅れだった。シュトロハイムの右眼から放たれた光線は、カーズの右手のひらに穴を開けた。

「ぐ、まさか、それが、まだ使えるとは・・・」

紫外線・・・まさか!

 

「この世界の日光はあの世界のものとは反対に気持ちいいくらいだ」

 

「何度も言いますが、吸血鬼は太陽の光に弱いです」

 

「やはり、太陽が無いのはいい。」

 

これまでの会話で俺はあることを理解した。

俺にできるがわからないが、やってみる価値はあるな。

「どうしたんスか?ジャイロさん」

 

「ちょっと・・・太陽でも作ってくるわ。」

 

ジャイロさんの言ったことはとても奇妙だった。そう言ったあとのジャイロさんはさっきまでの辛い表情とは違い、余裕の表情を見せていた。

そしてジャイロさんは鉄球を握りしめると、シュトロハイムやカーズのいる方向とは違う方向へと走っていった。

 

 



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地底に太陽をつくれ!

あらすじ
カーズの襲撃を受けたジャイロはさらに成長した。
そして次の襲撃である作戦を思い浮かぶ。

そしてジョニィの前にある男が現れた。


たまにジャイロさんは奇妙なことをする。

ジョークとか、ギャグとかそういうことじゃなく。

今回もそうだ。

まさか俺や勇儀やシュトロハイム、シュトロハイムの仲間を捨てたのか?

「おい、ジャイロ!どこに行くんだ!」

シュトロハイムの声を聞かず、そのまま道を戻るように走っていく。

「な、何だよ、ジャイロ!逃げるのか!」

次に勇儀の声が聞こえた。それでも、俺は振り返らない。もしも、俺の記憶が正しければ・・・

 

「一人・・・怖くなったのか、あの男は。あの男の判断は正しい。だが、俺の前で・・・お前のその行動はむしろ間違いだ」

 

 

カーズはそういうと、仗助達の上を飛び越え、俺を追いかけてくる。

このまま走っても、まず追い付かれて殺されてしまうのはわかっている。なら、

「足止めするまでだな」

俺はそのまま真っ直ぐ走るのではなく、この人里の狭い路地を走ることにした。そこには、樽や木箱など邪魔になるものがたくさんある。そこに鉄球でワイヤーでも作れば、ヤツの足止めを罠くらいにはなるだろう。

「甘いな人間よ。俺がそんな人間の安易な考えに引っ掛かると思うか」

まるで俺の考えがただ漏れだったかのように、カーズは俺の鉄球ワイヤーをその刃で切断しながら進む。急いでバックルから新たな鉄球を作り、ワイヤーにする。

「逃げきれるとでも思っているのか?」

「誰が、逃げきれるといったァ~?俺はお前を罠にはめるつもりでこうやってるんだが?」

「ほぅ、次の策か。所詮、人間の安易な考えだ。どうせ大した物じゃないに決まっている」

カーズはついに俺の上を飛び越え、俺の前に立ち塞がった。

「輝彩滑刀の流法ッ!」

俺はその何度も見た攻撃を、今までヤツが切ってきたワイヤーを一繋ぎにしてカーズに向かって投げる。

「オリジンの能力!壊れたものを治す!」

ワイヤーの先には鉄球の形になったワイヤーの塊が付き、カーズの心臓目掛けて飛んでいく。

「そんなことが俺に通じると思っていたのかーッ!」

カーズは関節を一気に折り曲げ、鉄球を両手で挟むように防御した。

だが、俺はそれをチャンスに変えた。ワイヤーは鉄球の回転によって熱を持ち、カーズの腕に溶けて張り付く。

「お前、鉄球に好かれてるなァ。くっついて離れないみたいだぜェ」

「人間よ、そんなに寿命を縮めたいのか?」

カーズは肌に付いた鉄をその刃で焦げ付いた肌と共に削ぎ落とした。すぐにその部分は回復する。

その最中にまた俺は道を変え、目的地へと向かう。

「待て!人間よ!」

カーズはその場から一気に跳んで屋根に乗る。俺を見つけようとしている。

どうせ隠れてもバレるなら、少しでもそこを目指すまでだ。

「いたぞ!カーズゥゥゥッ!」

そこにシュトロハイムが現れ、砲弾を放つ。どうやら、仗助によって直してもらったようだ。

小さな砲弾がまたカーズに向かって飛んでいくが、今回は全てを切り落とした。

「あ、あの人間はどこにいった」

「時間稼ぎにはなったみたいだな、ジャイロ。お前がそんな簡単に逃げるような男でないことを俺は知っている」

シュトロハイムはやはり今回も上半身と下半身を真っ二つにされた。

 

俺はようやく、目的地にたどり着いた。

そこは地霊殿の倉庫。

そこに面白いものがあるのを知っていた。

「ジャイロさん、ここで何をやっているのですか?」

倉庫の扉を開けて、お燐がこっちを見ている。

「このバイク?とかいうの、借りるぜ」

「ちょっと!それ!さとり様の!」

俺はバイクのことについてこっちに来て学んだ。さとりの書斎にあったバイクを運転するための説明書を読んで学習していた。

それに仗助からも教えてもらった。

「ちょっと!ジャイロさん!」

「少し借りるだけだ!」

俺は借りた(盗んだ)バイクで地霊殿を出る。だが、そこにはカーズがすでに立っていた。

「そのバイクとやら、鉄の塊にでもなりたいのか?」

カーズの刃はその一瞬でバイクの前輪と後輪を切り裂いた。だが、俺のオリジンはそれを治す。

「ニョホホ、こりゃあいい。これなら、太陽を作ることも可能かもなァ」

バイクからさらに鉄球を作り出し、これで三つの鉄球が完成した。もちろん、オリジンが持つ鉄球のことを考えて、一つ多く作ったのだが・・・

「問題はどこに行くかだよな・・・そこは考えてなかったな。より多くの光が反射する場所・・・」

カーズの攻撃が止むことはない。

さっきから、このバイクが傷だらけになってはオリジンによって治してを繰り返している。

「人間!何をしたい?そのバイクとやらを俺にぶつけるのか?」

俺はある一つの場所を思い出した。この地底でキレイな場所を。

俺はそのまま直進し、川を飛び越えて里の中を直進していく。カーズはそれを追う、このバイクの最高速度と同じ速度で走る。

「人間、時間を稼いでも無駄だ」

そして俺はようやく、目的地にたどり着き、バイクごとその中へ入った。そして扉部分を照らすようにバイクのライトを扉へ向けた。

「ここは・・・教会か」

「ここがお前の最後の場所だ」

俺は鉄球を構えるとバイクのライトをつけ、カーズを照らす。

「鉄球の回転は無限大だ」

俺は鉄球を投げると同時にその場に伏せた。

鉄球はその光に照らされると、神々しく光始めた。

「な、なんだ!この光は!」

「光は波長だ。回転でその波長をいじったわけよ!今の鉄球から放たれる光は、太陽の光と同じものだぜ!」

俺が説明をしたとき、カーズはその鉄球を目視することはできなかった。その光はカーズを焼き払ってしまい、鉄球がたどり着いたときには身体のほとんどが灰になっていた。

「まさか!波紋戦士以外の人間に敗北するとはァーーー!」

カーズは灰になった。そして、 教会の中に入ってきた風が、灰を運び、地底の地面に消えてしまった。

 

 

僕たちは紅魔館から出なかった。

次の場所へ行くと言い出したジョルノが突然、それを否定した。ここに残るべきだと・・・

ジョルノの目的はここで父親に会うことだった。

「それにしても、門の前で待つのはどうなんだ?しかも、こんな夜に」

「相手は吸血鬼です。狙うなら、日光のない夜の内だと思いますが」

「吸血鬼なのか?お前の父親は」

「・・・はい、それも元人間の吸血鬼みたいです」

 

僕の父親はある仮面を着けたことで吸血鬼になりました。あるとき、波紋という技術を使う紳士によって一度は敗北しましたが、次に会ったとき私の父親はその紳士の身体の奪い、自らの肉体として生き、世界の侵略を企みました。

 

「紳士・・・。」

僕はその話の中に出てきた紳士というワードに、嫌な記憶を思い出した。

 

「ほぅ、ここは人間が門番をしているのか」

 

どす黒い何かが、そう言って僕たちの間を通る。

金髪につり上がった目とこの館の主と同じカリスマが溢れ、近くにいるだけで、気持ち悪くなる。

「あなたが僕の父親・・・ですね」

「父親か。そう呼ばれるときが来るとは思ってもいなかったな」

次の瞬間、僕は何かに突き飛ばされ、館を守る壁に打ち付けられた。僕が乗っていた馬だけがその場に残る。

「この感覚・・・あのメイドと同じ・・・」

時を止められた。そう感じた。

「時を止めた世界のなかで・・・ジョルノ、お前は何事もなく動いていた。この馬乗りは全く動かなかったのにな」

「あなたの遺品があなたのスタンドの能力から守り抜いたみたいですね」

「遺品か、私が何かを残したというか」

ジョルノはポケットから矢尻を取り出す。

ジョルノの父親はそれを見ると、ニヤリと笑った。

「やはりあなたが僕の父親、ディオ・ブランドーですね?」

「DIOでいい」

僕は少しずつ、足を引きずりながら馬へと戻る。馬は驚きからなのか、言うことを聞かず、僕は落馬する。

「あの男・・・何をしているんだ?」

DIOと名乗った男は、壁に打ち付けられた僕に一歩ずつ近づく。僕はその気持ち悪いオーラに思わず、スタンドを出し、爪弾をかまえた。

「その回転する爪・・・。それがお前の武器か」

僕はDIOがプッチのときみたく、恐怖に思えた。

そして爪弾を放つ。

「お前は私に攻撃することはできない・・・」

次の瞬間、DIOのスタンドは俺の隣で拳をかまえていた。

「君とは『友達』になれそうだ・・・。その眼と、その決意、そしてそのスタンド。正義が罪を重ねて、悪になった。そんな顔をしている」

「いや、ぼ、僕は・・・」

「遠慮しなくていい・・・さぁ、」

 

友達になろう・・・ジョニィ・ジョースター。

 

僕は心を包み込むような安心感に敗北した。

 

 

 



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続く襲撃

あらすじ
ジャイロはカーズを倒すことに成功したが、それまでの疲労もあってかそこに倒れ込んでしまう。

そしてジョニィはDIOに会った。



ジャイロさんはとにかく疲れていた。

 

ジャイロさんを運んできた勇儀によると、カーズの消えたと思われる教会で、ジャイロさんが車庫から盗んできたバイクの横に倒れていたらしい。

ちなみにバイクのバッテリーは上がり、河童のところに出さなければならなくなった。

今、ジャイロさんは私の書斎のソファーで寝ている。

とりあえず、汗をかいていたので上だけは濡れたタオルで拭いておいた。お燐に何度も、

「私が拭きます!」

と言われたが、

「それくらいならできる」

と言って断った。

 

「うぃーっす、ジャイロさんいるッスか?」

部屋に仗助さんが入ってくる。もう私に敵意はないみたい。地霊殿に運ばれてきたのは知っていたみたいだが、ジャイロさんがここにいるのは知らなかったみたいだ。

「そこに寝てるわ」

「ジャイロさん、新しい遺体が見つかったみたいッスよ」

仗助さんが声をかけたが、ジャイロさんは目を覚まさない。本当に爆睡しているようだ。

仗助さんは思わず、ジャイロさんにクレイジー・ダイヤモンドを使うが、何を治すんだか・・・。

「死んでないッスよね?」

「寝てるだけですよ。ここ最近、色々とあって疲れたんだと思います。仗助さんだって昨日は爆睡していたじゃあないですか」

「確かに・・・。昨日は半日以上寝てたな。ジャイロさんが起きたら俺が呼んでたの言ってください」

そう言うと、仗助さんはポケットに手を突っ込んで、部屋から出ていった。

みんな心配しているんだ。ジャイロさんのことを・・・。いくら妖怪と言っても、ここの妖怪の根は優しい。ケガした人間や迷い込んだ人間には助けるし、杯を交わしあったり、一緒に歌って、踊って、笑って・・・地底はとても明るい場所だ。

私の能力は人や妖怪に気味悪がらたり、軽蔑されてしまうこともある。でも、ジャイロさんや仗助さんは会って時間があまり経っていないのにもう私に敵意はない。

「このまま平和が続けば・・・」

 

「大変です!さ、さとり様ッ!」

 

お燐が部屋に飛び込んできた。ここまで走ってきたのか息を荒げ、額に汗をかいている。

「どうしたの!?そんなに急いで・・・」

「し、侵入者です!この地底に!」

「侵入者って!?」

私はそのときお燐の言ったことにバカらしいと思ってしまった。だってまさか、

「サメです!」

なんて言われるとは思わなかったから。

 

「最初は何かと思ったんです、庭にある噴水の中を泳いでましたので。それで私が噴水を覗いたら、そこに姿はなくて・・・」

お燐から話は聞いた。

水から水へと瞬間移動をするサメ。噴水の後は水道から出た水。そしてトイレ、浴槽、洗濯機と移動しているみたいだ。

もう私はそのサメの正体がわかっていた。

「クラッシュね」

「クラ・・・何ですか?」

「なんでもないわ。とりあえず仗助さんを読んできて!」

「は、はい!」

私は考えていた。どうして、彼らはこの地霊殿を狙うのか、殺人じたいが狙いなら、里の妖怪を狙うだろう。だが、地霊殿を狙う。テレンスは別だったが、最初はここ狙いだった。心のなかでそう考えていた。

まさか、この地霊殿の秘密を知ってるの?

私は腕を組みながら、階段を降りる。

 

カチャン・・・

 

横で何かが聞こえた。私の横にある花瓶からだ。

まさか、

「この中に入っている水に!」

私の予想は悪い方に的中した。その花瓶を割って現れたそのサメは私に襲いかかる。

「危ねぇッ!」

次の瞬間、私の後ろから何かが飛んできた。

あれは・・・ボール?しかも、ただのゴムボールだ。確か、お空のものだったはず。でも、あの回転は・・・

「ッたくよ、少しは俺を休ませてくれよな」

「ジャイロさん・・・」

やっぱりジャイロさんだった。

いつもとは違うラフな服装で、腰回りのバックルやゴーグルの付いた帽子は被っていなかった。

「ニョホ、やっぱり力が出ねぇな。柔けぇボールだとな」

「・・・その回転でいつもの鉄球みたいに硬くできないんですか?」

「お、ナイスアイディア!やっぱり頭が回るなぁ、さとりは」

次に投げたボールはその接地面を尖らせてクラッシュに直撃する。だが、クラッシュはそのボールと共に、割れて出た花瓶の水のなかに入って消えた。

「あのサメは水から水へと瞬間移動するスタンドだわ。水のある場所は気をつけて!」

「気をつけてって言ってもよォ~、この屋敷の廊下のあらゆるところに花瓶やら植木鉢やらがあるだろ?あれらの下には水が溜まってるもんだぜ。なら、逃げながらスタンド使いの方を探すべきだ」

ジャイロさんにはまだボールのストックがあった。いくら急いでいたとはいえ、なぜ鉄球ではなく、そのボールなんだろう。

「・・・なるほどね」

どうやら、ここにくる途中、お空の部屋の前にボールが散らばっていたらしい。

「よし、逃げるぞ。狙いはどうせ俺だ。だから、さとりは仗助を連れてきてくれ!」

「それはできないわ。ヤツの狙いは私かもしれない。前にここに来たテレンスも、最初は私とここの所有権を狙ってた」

「なら、分かれてみるのはどうだ?もしも、俺を追ってきたら俺狙い。逆にさとりを追ってきたらさとり狙いということで」

「いいわ。その代わりもしも私だったらすぐに助けてください」

「俺だったら、仗助を呼んでこい。・・・それじゃあ、行くぜ!」

ジャイロさんは東側の廊下へ、私は西側の廊下へと別々の方向へ進んだ。

クラッシュは東側の廊下の花瓶を壊して、ジャイロさんを追い始めた。狙いはジャイロさんだったのか。

「最初に襲ったのは誰でも良かったってこと・・・」

 

 

と、言ったはいいが、このボールでは回転の技術を完全に発揮することができない。さとりの言った通り、鉄のように硬くすることは可能だが、あくまでもゴムボールだ。

「鉄の塊でもあればいいんだが・・・」

そう言いながら、俺は近くにあった燭台をチラッと見る。

「いけるか?」

一息でろうそくの火を消した後、ろうそくを抜き取る。

「うん、無理だな」

一瞬で俺は諦めた。そして、窓の外を見る。確かに外に噴水があるのが確認できる。

何度も見ているが、あの中にあのサメがいるの考えると・・・。それよりも今はあのサメを倒すことを考えなくてはな。

今、サメの姿は見えない。今さっきまで、花瓶を割りながら移動していたせいで、床に水が溜まっている。

「サメさんよォ~、水がないせいで、ここまで来れないのかァ~?ここまで来てみろよォ~」

俺はサメを煽る。・・・出てこないな。

「来ないのか?来ないのかァ~~?」

俺は片手に握った燭台を水溜まりに投げる。ただただ水に燭台が跳ねるだけで、いたってサメが出てくるようすはない。

あのサメの性質上、液体なら何でもありなはずだ。それが紅茶でも、酒でも、スープでも液体なら何でもありで飛び出してくる。

もしも、こんなヤツが村にでも放たれたら・・・

「ここで倒すしかないみてぇだな」

俺はゴムボールを水溜まりに投げてみた。やはり出てこない。

「まさか、狙いは俺じゃない。ヤツは瞬間移動ができる。俺がさとりに離れたところでさとりを襲う気なのか?・・・もしもそうだったら、さとりが危ない!」

俺は来た道を逆走する。躊躇なく、水溜まりの上を通ったがサメは顔を出さない。やっぱりさとり狙いだったのか。

俺はさとりを追いかけ、階段にたどり着く。

「な、なんだよ。どっから入ってきやがった!」

そこに待っていたのはスタンドを使う、五体のネズミだった。

スタンドは砲台のような形をして、俺に向かって砲弾を放ってきた。トゲのようなものがついた砲弾を鉄球で弾こうとするが、一発目に続いて他のネズミも撃ち始めたため、一発のみを弾き飛ばして、あさっての方向に飛んでいく。

「ぐあっッ!」

砲弾は二発、俺の右肘と左膝あたりを直撃する。

その砲弾の効果なのか、肉がドロドロに溶け始めた。

「と、溶ける・・・」

俺はネズミから目を離す。

 

ネズミはそのときを待っていたかのように、次の砲弾を撃ち始めた。



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私の名は・・・

あらすじ
地霊殿に現れた謎のサメ。サメは水を移動し、さとりやジャイロを無差別に襲う。

ジャイロはサメの狙いはさとりと判断し、さとりのところに向かうが、ネズミによって足止めをされていた。



突然のことに、俺は何が起こったのかわからなかった。

 

次の砲弾が放たれたとき、ネズミ達の頭上にシャンデリアが落ちてきた。

そのシャンデリアはネズミ達を倒すだけだなく、砲弾の軌道をも変えてしまった。

「大丈夫っスか?」

階段の手すりを飛び越えて着地した仗助は、俺の溶けた部分を回復させる。

どうやら、仗助がこのシャンデリアを落としたみたいだ。

「あのネズミ・・・どこにでもわくっスね。昔、承太郎さんと狩りに行ったのを思い出しました。」

仗助はシャンデリアを殴って、元の形に戻した。シャンデリアは宙に浮く。

「あの・・・ジャイロさん?」

「ん、なんだ?」

「これで終わりじゃないみたいっスよ・・・」

俺が抱いていた安心感は、周りを見て一瞬で消え去った。

俺たちを中心に少しずつだが水が集まってきている。

どんな原理でこうなっているのかわからないが、水が確実に俺たちのところに近づいてきていた。

「おいおい、どうすんだよこれ・・・」

「まさか、トイレや水道があのサメによって壊されているのか?ジャイロさん、今は二階に行くべきだと」

「いや、ここでヤツが顔を出すのを待つ。」

俺はこの危険な状況で、逃げることよりも戦うことを選んだ。これまで一人だったため四方八方から飛び出してくるサメに対処できなかった。

だが、今は仗助がいる。

「仗助ェッ!背中は任せたぜェ~~ッ」

「ウッス!」

サメは俺たちの周り、水でできた円上の道をぐるぐると回り、攻撃する機会をうかがっている。

そして・・・

「来たぞッ!」

サメは飛び出してきた。その大きさは水が張られた面積で変わるのか、俺たちの身長と同じくらいの大きさになっていた。

サメは俺を狙う。

「俺の鉄球を、ナメるなァーーーーッ!」

鉄球はサメを貫通した。

俺の回転は日々進化している。このオリジンの力があってか、スタンドに攻撃することもできるようになった。

「ぐあぁぁーーーッ!」

屋敷の外で叫び声が聞こえた。

俺はスタンド使いの顔を見るために外へ出た。

外には胸に穴の開いた男が倒れていた。

 

スクアーロ 再起不能。

黄金の光に導かれて遺体は消滅・・・

 

 

目を覚ました私はすぐに辺りを確認する。

今度こそ、私の願う"平穏"に辿り着いたのか・・・ということを。

「ここは・・・いったい」

人里の真ん中を通る川に下半身を浸かるように私は倒れていた。

「大変だ!人が溺れているぞ!」

橋の上から人を呼ぶ男の声が聞こえる。

「あー、呼ばないでくれ。一人で上がる」

私は川から出て、崖を上ってやっと地面に立つ。

「いやー、川を流れてきてそこで止まったから、助けを呼んだんだかね。アンタ、何者だ?」

 

「私の名は吉良 吉影。違う世界の人間だ」

 

「違う世界の、ぇっ・・・」

次の言葉を放ったときにはもう遅く、男は消し飛んでしまった。

「キラークイーンはすでに君の服に触れている・・・。」

 

早く、早くさとりさまに伝えないと!

あのサメが消えてから数日後、あたいたちは平和に暮らしていた。だけど、あんな怖い人間が来たとなれば、平和な時間は、

「おっと君、どうしたんだい?」

「!」

見つかってしまった。

あたいは恐怖でヤツの顔を振り向いてみることができない。

「まさか、今のを見ていたのかね?」

ヤツの足跡が近づいてくるのがわかる。あたいはおもいきってヤツの顔を見た。

「きれいな手と髪をしているね・・・。君を殺すのはちょっと惜しいな」

「ひぃぃぃッ!」

あたいは恐怖心に足が動かなくなる。男はあたいの手を握ると、前髪を指で捻りながら不適な笑みを見せた。

「とても良い。滑らかな間接ときれいな指、だが・・・少しだけ臭う・・・。普段、死体を扱ってますね?」

男は手を離すと高笑いし、少しだけ後ろに下がった。

あたいの仕事を知らないのか、その臭いを疑問に持っているようだ。さとりさまほどではないが、人並みには今、何を考えているのかわかる。・・・妖怪並みか?

「よ、用がないなら、あの、か、帰ってください。」

「おっと待ってくれ。まだ本題が終わっていない」

やっぱり帰してくれないよね・・・。ここで死ぬのかな。

こんな殺人鬼みたいなヤツにあたいは殺されちゃうのかな。

「私の名は吉良 吉影。ここがどこか教えてくれないかなぁ?私はここにたどり着いたばかりで場所がわからないんだ。

「え?え、えっと・・・ここは地底です。」

「わかったよ。ありがとう」

男はそれを聞くと、あたいの横を通って、路地への入っていった。

あたいはその瞬間、一気に安心感に包み込まれた。

だが、

 

「そしてさようなら・・・」

 

私は爆発音と共に気を失ってしまった。

「だ、れか・・・助け・・・て」

 

 

俺は遺体探しから帰ってきて、ずくに玄関の石段に座り込んだ。

馬を紅魔館に置いてきてしまったため、移動手段の全てが自分の足になる。

この地底の町中を探したが、本当にここにあるのだろうか。

「ジャイロさん、帰ってたんですか。」

玄関の扉が開き、さとりが現れた。さとりは俺の横に立つと、俺を見下ろす。

「仗助はちょっと用があるってよ。俺はもう疲れたぜぇ」

「あの、お燐見ませんでした?昼頃からずっと帰ってきてないんですが」

「途中にちょっと見掛けたが・・・アイツだってちょっとは休憩したいんだよ」

「いや、休憩するときはいつも私に一言話してからするんですが、今日は何も言わなかったから」

「・・・それは心配だなァ。」

俺は鉄球で地面に子供の落書きのような絵を描く。それほどにさとりの話はどうでもいいと思っている。

猫や犬など動物は遠くからでも自分の家に帰るという帰巣本能を持っている。だから、心配しなくても帰れるだろう。

「まぁ、確かにそうですね。」

さとりはそう呟くと、館の中に入ってしまう。

「・・・少し探すか」

 

俺は町を歩く。地底だというのに昼夜がちゃんと分けられているのはどういうことなのだろうかと、未だに疑問に思う。

それに夜じゃないと見えないものもあるだろう。

さとりには誰かしらわかるように、ちょっとお燐を探してくると地面に書いておいた。

「夜の町は不気味だなァ。何か化け物でも出そうだぜ」

いつもは煩いくらいなのだが、今日はやけに静かだ。何か起こりそうな予感がする。

「おいアンタ・・・こんなときに何外に出てんだい?」

隣の店から声をかけられる。女は震えた声を放った。

「ここらで何か起こったのか?」

俺は話を聞くために店に入った。

女の歳は50くらいで、少し年期の入った着物を着ている。顔には小じわも見えた。

「殺人だよ。昼間に橋の上で人が殺されたんさ。何よりその死に方が奇妙でねぇ、内側から爆発でもしたかのように、四方八方に肉片が・・・話しただけでも気持ち悪い」

「まさか・・・。もう少し情報をくれ!」

「アタシが話せるのもこれくらいさ。ほら、今日は店はやってないんだよ!帰った、帰った!」

俺は女に押され、店の外に出される。

「ったくよ・・・オタクが俺を入れたんじゃねぇか。それにしても、その話気になるな・・・」

俺の脳裏に一人の男が過った。だが、アイツは俺の目の前で吸血鬼によって殺された。生きてるはずがない。

「いや、まさかな・・・痛ッ」

俺は考えながら歩いていると、何かに躓いた。

俺は後ろを見て思わず、腰が抜けてしまった。

「な、おおお、お前は!」

そこにあったのは血だらけの状態で気を失っているお燐の姿だった。俺はその腕に躓いたらしい。

「おい!しっかりしろ!おい!おい!」

お燐は頭から血を流している。前髪を上げ額を見ると、皮膚がグチャグチャになっていた。

「う、これは・・・」

「男。金髪の・・・スーツを着た男。自分の名前を、

 

吉良 吉影、って言ってました・・・。

 

俺はその名前を聞いて背筋が凍った。

 



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狙われた地霊殿

あらすじ
二度敗北した吉良 吉影が復活。

そしてお燐は吉良 吉影に襲われてしまう。



お燐の部屋。

 

俺のスタンドで治したが、脳にまで傷が達しているため、そこまで治すことはできなかった。

仗助のように元通りに治せるわけではない。それにあんな傷跡に回転した鉄球を当てるのは激痛が走るに決まっている。

「すみません。ご迷惑をかけてしまい」

「んなことないぜ。・・・あのとき言ったことは本当か?」

「はい、確かに男は吉良 吉影と言いました」

店主の言っていた『内側から爆発でもしたかのように』という部分と、お燐の言った犯人の姿からして、確かに吉良 吉影だ。

だが、なぜヤツが生きているんだ?しかも、この地底に。

今はそんなことを考えている暇はない。それよりもヤツを探すことが目的だ。(遺体のことも忘れてちゃいけない)

「ジャイロさん、さとりさまには犯人のことを話さないでください。さとりさまに心配かけたくないので」

それは正直不可能と言っても過言ではない。

さとりの能力はこの十何日間見ていてなんとなくわかった。ヤツの能力は『心を読む』というものだ。

昨日のさとりとの会話で確信を得た。

「わかった。それじゃ、お大事にな」

俺はそう言って部屋を出た。

お燐は最後まで俺が部屋から出ていく姿を見ていた。

 

「ジャイロさん、お燐は大丈夫スか?」

階段を下りると仗助が待っていた。

「まだ頭が痛いってよ。俺の能力がお前みたいに、高度で繊細ならな」

「確かに回転している鉄球をその部分に当てることが発動条件となると、なかなか躊躇するッスね」

さらに長時間当てないと、その傷が深い場合は完治することができない。お燐の傷みたいに奥までとなると、鉄球を傷口に長時間当てなければならない。そのため、昨日はとりあえず表面だけを治し、仗助にあとは治してもらうことにした。

「それにしても遅いッスね」

「何がだ?」

「朝の話聞いてなかったんスか?次の遺体の場所が見つかったって話ッスよ」

「あー、それか。ニョホホ、次の遺体は何だろうなァ」

「遅いから聞きに行くッスか?」

「そうすっか~。」

俺はまた二階に行き、さとりの書斎へと向かう。

仗助は書斎のドアをノックした。前に何もせずに入ったら怒られたらしい。少女に怒られる不良と考える面白い図だが。

「入っていいッスか?・・・返事がないッスね」

仗助は書斎のドアを開けた。

「入って来ないで・・・」

「す、すまん!」

仗助はその声を聞き、ドアを閉める。仗助はさとりが服を着替えている途中だと思い、閉めたのだろうが何かおかしい。

あの声からしてさとりは、

「さとり!大丈夫か!」

何者かに脅迫されている。

「ジャイロさん・・・」

そこには白に黒い斑点模様の服を着た黒髪の男がさとりの首にナイフを突き付けていた。ヤツの右肩に何か見たことのない生き物がいるのに俺は気づいた。

「そこから動くなよ、動いたらこの女の首を切る!武器があったら今すぐ捨てろ!」

「ッ!・・・ったくよ、捨てるぜ」

俺は鉄球に回転を加えて下に捨てた。

男はその回転する鉄球を見る。それが後にアンタの顔に向かって跳んでくるとも知らずに。

「その鉄球、なんで回転してんだ!」

「さとり!頭を少し引っ込めろ!」

男がナイフをこっちに向けた瞬間、鉄球は勢いよく男に向かって跳んでいく。

「な、何だ!」

男は顔面と右肩に鉄球をくらって後ろに倒れた。右肩にいた生き物は男の肩から逃げたため、鉄球は肩に直撃した。

さとりはすぐにそいつから離れる。

「鉄球が、跳ねた・・・どうなってんだよ。・・・ロッズ!あの帽子野郎に撃て!」

見たことのない生き物は、男の後ろから姿を現すと何かをこちらに向けて何発か発射した。

「クレイジー・ダイヤモンドッ!」

俺とさとりの前に現れた仗助のスタンドはその放ったものを拳で撃ち落とす。だが、その中の一つがスタンドの右肩に刺さった

「ぐあっ、・・・な、なんだ」

仗助は上に着ている学ランを脱ぎ、右肩をみた。皮膚が青くなり始めている。

「彼の肩にいたあの未確認生物が放つ物体は、体温を奪うことができる。確かそうだったはず」

「なぜそれを知っている!」

「私にあなたの考えは筒抜けですよ。ここに来た理由は私の命じゃなくて金ですよね?」

男はさとりに心を読まれ、少しだけ後退した。

だが、ヤツの肩に乗る生き物はまだこちらを見ていた。

「ジャイロさん、今です!彼は動揺しています!」

「ニョホ、わかったぜ!」

俺は跳ね返ってきた鉄球を拾うと、拾ったままの姿勢でヤツに目掛けて投げた。

「俺は・・・俺は、アポロ11号なんだァーーーッ!」

男は急に声を荒立てると右肩から右手首までその生き物を移動させ、鉄球を投げ終えた俺に向かって弾を撃ち込もうとする。

鉄球はヤツの頭部を砕くように直撃し、ヤツの放った弾は俺の右腕に刺さる。そしてヤツはその勢いで地霊殿の二階から落ちてしまった。

「これで一件落着かァ?」

俺は鉄球の回転を右手から右肩にかけて残していたためか、奥深く刺さらなかった弾が右腕からポロっと落ちる。

「頼む。俺を休ませてくれェ・・・」

俺の右腕を仗助のスタンドが触る。右腕に開いた傷痕は少しずつ治っていった。

 

次の日、俺は男と共に窓から出ていった鉄球を拾いに地霊殿の庭を探索していた。

お燐が庭の手入れをしているのもあってか、清潔感あるとても綺麗な庭園が広がっていた。

そんなことも気にせず、俺は庭をくまなく探す。茂みのなかから噴水の中まで。

それでも鉄球は見つからない。

「二階から落ちたくらいじゃ、まだ生きているのかァ?でも、身体に影響はあるはずだが・・・」

庭園を探すこと数十分、俺は庭園の隅にあるものを見つけた。

「これは!」

そこには頭部のみが爆発し、胴体だけが残ったこの前の男の死体が置いてあった。他にも、あらゆる死体が置いてある。

 

「見てしまったのかい?」

 

後ろから声をかけられる。

そこにいたのは荷車を押すお燐が立っていた。

「こ、これは・・・何?」

「何って、これは死体さ。あたいの本職は死体運び、いわゆる火車なのさ」

お燐は荷車を置くと、男の死体に近づいて腕を掴んで持ち上げた。

「この男の名前はリキエル。頭部は損傷が激しかったから仕方ないね。まぁ、アンタがこれまで見てきたみたいにこの男も後々、光に包まれた消えていくさ」

たまにお燐からする鉄が錆びたような臭いはこれだったのか。

「まぁ、仕事してるから邪魔しないでくれ。・・・あ、そうだ!鉄球なら、お空が拾ってくれたってさ」

「・・・わかった。」

お燐はリキエルの死体とその近くにあった男の死体を荷車に積むと、鼻唄と共に俺から離れていった。

そこには俺と死体の臭いが残っていた。

 

「これだよね?」

前々から飯時にお空と会うときがあった。

お空はここ最近、仕事のために地霊殿の地下に潜って、ほとんど会う機会がなかった。

「それにしても、その鉄球。なんか懐かしい感じがしたな~」

「懐かしい?」

「私ね、ちょっと前に他の世界から来たって人と遊んだことがあったんだよね。確か、ジョニィって名前だったかな?」

「ジョニィ!?」

俺は不意に出てきたその名前に、おもわずお空の両肩を両手で掴み、前後に擦った。

「ここにジョニィが来たのか!?」

「あー、やめてー!苦しい、苦しいって!」

俺はお空から手を離す。

「で、ジョニィはここに来たことがあるのか?」

「来たことあるよ。あの下半身が不自由な人だよね?あのときは確かー・・・あなた達みたいにさとり様のボディガードでだっけな?」

「どうやってジョニィはここから上に帰れたんだ?」

「えっと、さとり様が勇儀さんに頼んだんだっけな?」

「なるほど・・・あの鬼が鍵だったのか。ありがとうな、お礼にチーズの歌を教えてやるぜ」

「なにそれ?聞かせて、聞かせて!」

 

 

俺とお空が地下で歌っている間の人里。

「君が星熊 勇儀・・・だね?」

 

私の名前は吉良 吉影。君の杯をいただこうじゃあないか。

 

次の日、血だらけの勇儀が人里の隅で見つかった。

 

 

 



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新たな爆弾

あらすじ
吉良はその力で勇儀を倒した。

そしてジャイロと仗助は吉良を探すことに決めた。


地霊殿の一部屋にて・・・

 

「まさか鬼が人間に負けるとは・・・」

「仕方ねぇスよ。逆にアイツの爆弾を食らって身体があることじたいがおかしいっスよ」

勇儀の寝る部屋の前で仗助がテーブルに頬杖をつきながら、椅子に座っていた。

その近くで冷静なさとりが静かに目をつぶる。

さとりは吉良を知っているのか、仗助に吉良の能力について詮索はしない。

「ヤバいな・・・」

俺は吉良に勝てる気がしなかった。

二度の戦闘、吉良には他人頼りで勝ったようなもんだ。

あの手数の多さと爆弾の威力。鉄球は通じないと思われる。さらに鉄球を爆弾にでもされたら・・・。

「吉良が直接、私のところに来ないのがあなたならわかりますよね?」

さとりは俺たちに問う。

俺にはなんとなくだが、理解できていた。

「ヤツは・・・戦闘を嫌う。だから、障害になるものしか倒さない」

「そして、お燐と勇儀はヤツにとって障害となった・・・ってことッスか?」

「なら、わかりますよね?これから何を心掛けるか」

俺の心にはある言葉が生まれた。きっと仗助の心にもその言葉が生まれたのだろう。

 

「ヤツの障害にならないように行動する・・・」

 

 

ジャイロ達が吉良について話しているなか、本人はある家を襲い、その家で寛いでいた。

その家の家主はとっくに爆弾へと変えられて粉々になってしまった。

「これでいいだろう。・・・私の障害は消えた」

家のなかには、壺や掛け軸など金目の物がたくさんあったが、吉良はそんなものに目はつけていなかった。

「よろしく・・・」

吉良の手のひらの上には、さっきまでその先、本体が付いていた女の手が置かれていた。

「ん?君、キレイな指輪を付けているね」

吉良はその指にはまっている指輪を抜く。

指輪の装飾の小さな宝石は、照明の光を反射して壁に穴を開けるかの如く、一戦の光を放った。

「これはッ!」

吉良は思わず、彼女を床に落としてしまう。

その彼女は灰になって消滅した。

「この宝石!その先に何があるんだ!」

部屋のドアを開け、その光が指すの方向の部屋に入った。

そこには一辺1メートルくらいの大きさの立方体の金庫が置かれていた。

吉良はその金庫の扉をキラークイーンの爆弾で破壊した。

「なぜ、これがこんなところに!」

吉良の目に入ってきたのは、見たことのある形状の矢だった。

その矢はキラークイーンに引き付けられたのか、吉良に向かって飛んできた。矢は吉良の腹に刺さる。

「ぐおぉぉぉぉッ!な、なぜ!」

その矢は吉良に刺さると吉良の中に入っていく。

そして完全に吉良と合体した。

 

私はすぐに立ち上がった。その痛みはしだいに消え、身体の底から力が溢れてきた。

「この力は・・・キラークイーン!」

キラークイーンは矢と合わさり、その身体に矢のような模様と鎧のような装備を纏っていた。

「新しい爆弾が・・・。ここに仗助がいるのは知っているぞ、ククク・・・」

 

新しい爆弾・・・第四の爆弾の誕生だッ!

 

その屋敷から高笑いする声が地底に響き渡った。

 

 

ジャイロさんは自分勝手だ。

俺を無視して館から出ていった・・・。

 

「障害にならないだと?そういうのは俺の勝ち方じゃねぇ。相手が逃げるとか、相手が標的を見失うとか、相手がミスするとか、そういうのは俺の勝ち方じゃねぇぜ!俺はヤツを探す!」

 

そんなことを言って出ていったが、さとりに聞いた話だと、ジャイロさんが力を出すためには『馬』が必要とか言っていた。

馬が必要・・・ということは、ジャイロさんはこれまで本気の力を出せていなかったのか?

俺は考え事をしていて前をよく見ていなかった。

そのせいで、前から歩ってきた人にぶつかってしまった。

「おい、前を向いて歩・・・け、ってお前!」

そこにいたのは顔見知りの男だった。

「お前は、岸部 露伴!?」

「・・・で、ここはどこなんだ。山奥に来たら、穴に突き落とされて。・・・おい、その格好でこの町を歩っていたのか?」

地霊殿近くの茶屋で、俺たちは話していた。

「もう一週間以上はいるッスね。どうかしたんスか?」

「いや、なんでもない」

露伴は周りの空気にソワソワしている。

それが、どんな感情でソワソワしているのかは知らない。さとりならわかるだろうな・・・。

「・・・ところで、康一君はいないのか?」

「いないっスよ。・・・吉良はいるけどな」

「何?仗助、それは本当か?」

「まぁ、アンタが爆発しても俺には関係ないっスけどね」

「仗助!本当かと聞いているんだ!」

「・・・本当スよ。」

露伴はそれを聞き、ため息をついた。

俺たちは吉良 吉影を倒し、平和な生活を送っていた。そんななか、露伴は鈴木 麗美が成仏したことに少しの間だが、ダメージを受けていた。

なんとか連載は康一の声援によって再開したが、康一や間田の話によるとどこか絵に前のような読者を引き込むような感じがないらしい。

「・・・仗助。吉良を倒す気にはならないのか?前みたいに自分の足で仲間と探して、情報収集して」

「無い・・・と言ったら嘘になるッスね。今、俺の仲間が吉良を探してるんスよ」

「そうか。・・・僕は探す。ヤツは生きてちゃあならない存在だからな」

露伴はスケッチブックとペンをバッグにしまうと、茶屋から姿を消した。

「露伴先生。・・・俺も探します」

露伴はバッグの紐を掴むと肩から提げ、俺の方をチラッと見てそのまま、行く先の見えない場所の方へ進んでいった。

 

そんなすぐに見つかるわけがない。吉良がそう簡単に姿を見せるわけがないと俺は思いながら歩っていた。

露伴は気になる場所を見かける度に、数分でスケッチブックに描いていく。

こんなどこから何が襲いかかってくるかわからない場所で・・・危機感がないと言うべきか、仕事熱心というべきか・・・

「あの、露伴先生?」

「何だ?今、集中してるんだ」

「吉良は、こっちの吉良は俺たちの手に終えるような相手じゃあない。これ以上の詮索は」

「何を言っているんだ?仗助。」

露伴は俺の肩にさっきまでペンを握っていた手を置く。

「主人公ってのはな、最終的に勝つんだ。例え、相手がどんなに強い敵でもな」

「何か露伴先生らしくないッスね」

「・・・まぁ、僕だったらこんな不良に主人公を務めさせないがね」

露伴がそう言い、前を向く。

 

そして足が止まった。

 

俺たちは・・・前から歩いてくる吉良を見た。

「おやおや、岸部 露伴に東方 仗助じゃあないか。奇遇だね~」

「吉良・・・」

「吉影・・・。てめぇこそこんなところで何してんだ!」

「あぁ、私かい?私は今、散歩中さ。新しい彼女とね」

吉良は内ポケットから何かを出した。

 

人外の『手』だった。

 

五本指だが、完全に人間のものではない。肌は紙のように真っ白で、指はスラッと細長かった。

「きれいな指と間接と肌の色。美しい・・・フフッ」

「お前の握ってるその手が誰の物だか知らねぇがよォ。俺がお前を倒す!」

「主人公気取りかい?別に、主人公なんて物はどうでもいい。私は私の障害になるものを、このキラークイーンで消し飛ばすだけだ」

吉良の後ろから現れたキラークイーンは今までとは違う、甲冑のような鎧をつけていた。甲冑のあらゆるところにドクロマークがあり、こちらをさらにつり上がった猫のような目で見ていた。

「これが私のスタンド、キラークイーンのさらなる進化形態さ」

キラークイーンはその鎧を纏いながらも、素早い動きで露伴に一発、蹴りを入れた。

「露伴ーーーッ!」

露伴の持っていたペンやら何やらはその衝撃でそこらにばらまかれ、本体は近くの建物の壁を突き破って中に入った。

「さて、ここからさ。本当の力は・・・」

キラークイーンは倒れた露伴の頭を掴む。

すると、露伴は気を失い、白目でこちらを見る。

「仗・・・す・・・け」

「フハハハッ!私のスタンドは進化した!仗助、君を始末するためにな!」

露伴は自我を完全に失っている。自身のスタンド、ヘブンズ・ドアで、俺の足を動けなくさせる。

「君の足は動かない。ここで爆発するんだ・・・」

そして、露伴は俺の体に覆い被さるように倒れる。

露伴のなかからカチカチと時計のような音が聞こえる。

「な、爆弾だ!露伴自体が爆弾になっている!」

俺は露伴の着ていた服のポケットに、さっきの壊した壁から出た破片が入っているのがわかった。

俺はすぐにその破片をクレイジー・ダイヤモンド殴るが、時すでに遅し。

「今だッ!」

吉良の親指はスイッチを押していた。

爆発音と共に露伴の体は肉片と化して爆発する。俺は何とか露伴から離れることができたが、体の下半身をその爆炎で焦がした。

 

そして仗助は川に落ちた。

流れの強い川は足を動かせず溺れ沈んでいく仗助を黄泉へと運んだ。

 

仗助、露伴 再起不能・・・

 

 



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吉良への手がかり

あらすじ
吉良吉影は新たな爆弾を発現させる。
その爆弾によって仗助と露伴は敗北してしまう。




それは突然だった。

 

橋の近くで男の死体が見つかったらしい。

その男の下半身は粉砕骨折し、着ていた服は燃えるような後ができている。

そして頭には砲台のようなリーゼントが半分燃えていた。

「仗助・・・」

それは変わりに変わった仗助の姿だった。

「吉良に・・・やられた。そんな・・・」

さとりはさっきまでの冷静な姿とは真逆にその場に膝から崩れ落ちる。

お燐も、お空も、勇儀も・・・ここ最近、仗助と会話した奴らは全員悲しい表情をしている。

「お燐は・・・仗助の死体を回収しなさい。処理はしないで地上の良い場所に・・・景色の良い場所に埋めてやりなさい」

「わかりました・・・」

俺はなぜかそれを聞いて、お燐よりも先に仗助のもとへと走って向かった。無意識だった。仗助の周りの観衆を払いのけてでも、仗助のところへ!

 

「やめなさい!」

 

さとりが大きな声を出す。

こんなにも大きな声を出したのは会って初めてだろう。

観衆もその声に手を止める。

「ジャイロさん!あなたにはやることがあるでしょう?こんなところで死んだ人間を見ている暇なんてない!・・・

 

あなたは、仗助の分、吉良と戦うだけなの!もう、吉良の障害にならないとか、吉良に近づかないとか、そんなの関係ない!あなたの勝ち方で勝ちなさい!

 

さとりは死体の近くからどんどん離れていく。地霊殿へと帰るのだろう。

お燐は荷車に仗助を入れて、持ってきた白い布を被せた。

「ジャイロさん・・・失礼しました」

俺はお燐のその些細な言葉にすら返事ができなかった。

「仗助・・・お前の死を無駄にすることはできない」

 

それから毎日のように、俺は気が狂いそうになりながらも吉良を探していた。

危険?そんなことをどうでもいい。

ただ俺はアイツを見つけて、アイツを倒す!

それだけを考えて・・・

そんななか、あることがわかった。

この町にはここ最近、夜中にゾンビが徘徊するらしい。そしてそれを仕切るのは人間だという。

嘘にも聞こえるが、可能性がある限り、俺はそこに行くべきだと考えた。

 

そして夜。俺は建物の屋根に立ち、町の様子を見ていた。

「確かにゾンビじゃあねぇか!驚いたぜェ。」

そこにいたのはゾンビだった。活気のある暗い町にさらに暗さが増す。確かにこれは旧地獄と言っても過言ではない。

「吉良はどこにいる?」

「さぁ、どこだろうね」

なぜか俺の後を追うように歩ってきたお燐が、この屍の多さに少し背筋をゾクゾクさせている。

「まぁ、あたいはこの死体を集めにきただけですから、おもいっきり倒しちゃってください」

お燐は猫のように屋根を跳び移る。

俺はそれを追うように屋根の上を助走を付けて跳ぶ。

ギリギリ屋根に着地すると、すぐに屋根に伏せた。

「ん?どうしました?」

「聞こえないか?この奇妙な音」

「確かに・・・妙な音がしますね」

「この音!・・・お燐!来るぞ!」

「え?」

俺達の前にその音の正体が現れた。

水色の装甲に小さなキャタピラ、そして骸骨のような顔。

その骸骨は確かにこっちを見ていた。

「コッチヲミロ・・・」

「シアハートアタックだ!・・・ヤツはもう、俺達に気づいている!」

俺は骸骨めがけて鉄球を投げる。だが、鉄球はそれの勢いに負けて弾かれてしまう。

「ジャイロさんの鉄球が押し負けたッ!」

「コッチヲミローーーッ!」

俺は鉄球を足にあて、皮膚を鋼のように固くさせると、勝てるはずがないが、宙に浮いたシアハートアタックを蹴る。シアハートアタックは蹴りをくらって突進は止まったが、その場で内部から爆発する。

「うぉ!?」

俺はその爆発で屋根から落ちそうになる。なんとか雨樋にを掴んだが、勢いと俺の体重によって鈍い音が響く。

シアハートアタックは爆発してもなお、こちらに近づいてくる。見えないが屋根の瓦の上をキャタピラが進む音が聞こえる。

俺が諦めかけたその時、

「にゃああああああ!えぃッ!」

お燐が瓦の上を走るシアハートアタックを上からおもいっきり踏み潰した。シアハートアタックは少しだけ車輪を屋根にめり込ませると、俺たちを屋根から突き落とすような爆発を放った。

お燐はすぐに側の家の屋根に飛び移ったが、俺はそのまま下に落ちた。

「だ、大丈夫か・・・」

「ジャイロさんこそ」

「ほう、上がうるさいと思ったらネズミじゃなかったか」

俺達の前に現れたのは、この世界にとても似つかわしくないスーツを着た、吉良 吉影だった。

「ジャイロ、君とは紅魔館いらいか?」

「吉良 吉影・・・。今回こそ、決着をつけるぜ!」

俺は鉄球を吉良の目にでもえぐり混ませるくらいに見せつける。だが、吉良はそれを見ようともしない。

「私はただ平穏な人生を過ごしたいだけなんだ。この町こそ、私の目標を達成することができると考えていたよ。だが、東方 仗助や岸部 露伴に邪魔をされ、あげくのはてにこの世界の妖怪までも・・・どこまで私の目標を邪魔したいんだ?」

「お前のその性格が変わらない間は、俺はおたくを倒すために戦うぜ」

「・・・まぁ、いい。君を始末してから考えるとしよう。キラークイーン!」

「そぉらッ!」

俺ははなから向かってくるキラークイーンを狙ってなんかいない。この世界ならスタンドにダメージを与えることができるのがわかっているが、間接的に倒すんじゃあダメだ。

「俺の狙いはただ一人、吉良!テメェだけだぜ!」

吉良は鼻で笑う。

「君は何か、勘違いをしているみたいだな」

吉良の前に何かが現れた。まるで壁にでもなるかのように。

「私のスタンドがあの頃からずっと変わっていないと思ったか?」

そこには死んだはずの仗助がスタンドを出して立っていた。

「仗・・・助・・・?」

「私のスタンドは進化している!これは第四の爆弾と言っていいだろう!時だけでなく、生命までも自由自在に操る!それが、私のスタンド、キラークイーン・レクイエムだ!」

生命・・・つまり、あの仗助はゾンビとか死体とかではなく、生きているのか?

「グレート・・・ジャイロさん、どうして助けに来てくれなかったんスか?」

「!・・・それは」

「怖かったんスか?俺だけ探させて、ジャイロさんは地霊殿にいたんスよね?」

「ジャイロ、君に東方 仗助を止めるだけの力はあるか?ないよなぁ、その鉄球を仗助の顔面にめり込ませる勇気があるか?」

吉良は高笑いをした後、仗助に俺への攻撃命令をする。

仗助はクレイジーダイヤモンドを出すと、その拳を俺に叩き込もうとした。

「ぐはァッ!? 」

「何ィィィーーー!?」

俺の鉄球はすでに仗助の眉間に当たっていた。

「吉良よォ・・・これはもう仗助じゃねぇぜ。早く、こんな屍!爆発させろ!」

「チッ、ジャイロ。君も私みたいに人間としての心を捨てたね」

キラークイーンは親指でスイッチを押す。仗助は内部から爆発した。

「吉良 吉影。俺をあの頃から変わっていないと思っているな?俺も進化したんだぜェ。・・・この鉄球で!俺はスタンドを発動できるようになったんだぜェッ!」

俺の手のひらで鉄球は回転する。オリジンはその回転から姿を現し、仗助の肉片を片っ端からくっつけていく。

「仗助の死体があってよかったぜェ。ここまで持ってきてくれてありがとうな」

「き、キサマァァァーーーッ!」

「おいおい、そう怒るなよ」

仗助は不備一つなく、いつもどおり崩れた髪をクシで直す。そしてだいたいの形を整えると、スタンドを出した。

「東方 仗助!ジャイロ・ツェペリ!キサマらを完全に始末する!」

「来いよ!吉良 吉影ッ!テメェの顔を平穏じゃねぇ顔に変えてやるぜッ!」

仗助は吉良に向かっていく。二人の声は夜の町、さらに遠くへと響き渡っていく。

「援護するぜ、仗助。」

「いや、ここは俺一人にやらせてください。ここで本当に決着をつけて終わらせる、そんな意志でやってるので」

「そうか、ならお前に任せたぜェ。後ろで見てるから、いつでも助けを呼べよな」

「了解!」

俺は後ろに下がるとき、仗助とハイタッチをした。これが選手交代という意味だけではないものだというのはすぐに理解した。

 



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最後のクレイジー・ダイヤモンド

あらすじ
吉良 吉影の進化したスタンド、キラークイーン・レクイエムは爆発するゾンビとして、死者を甦らせる能力を持っていた。

仗助の死体は一度はゾンビになったが、ジャイロのスタンド、オリジンによって元通りの姿になる。



すでに三十分は経っているだろう。

 

吉良はその能力で爆弾つきのゾンビを何体も動かし、仗助を狙う。そして、仗助はそのゾンビを片っ端から攻撃する。たまにゾンビを踏み台にして、屋根の上やゾンビの波の奥にいる吉良を狙う。

「ドラァッ!」

「仗助。少し腕が鈍ったんじゃないのか?いや、体力に限界がきているのかね?」

余裕げな表情をする吉良の前に立つ、息切れを起こし、汗だくになった仗助。

「まだ・・・終わらねぇぞ!」

クレイジーダイヤモンドの拳は、キラークイーンの手のひらで受け止められてしまう。

「今の君のスタンドの攻撃、ピッチャーフライとるみたいに簡単に受け止められた。悪いが、もう朝も近い。睡眠をとれていない。時間の無駄だ」

「はぁ、はぁ、はぁ・・・グハッ!」

「おいおい、ボロボロじゃあないか。そのスタンドで治せばいいんじゃあないか?・・・そうだった、君のスタンドは自分に使用できないんだったな」

傷を完全に治せてなかったのか、ダメージを受けていないはずなのに、仗助のあらゆる部分から血が流れ始めた。頭、腕、脚・・・着ていた服がジワジワと赤くなっていく。

「・・・この町のほとんどの人間はすでにゾンビのようになっている。もちろん、キラークイーンの能力で爆弾を背負ったゾンビとしてこの町を徘徊しているだろう。ジャイロ、君はこの死に損ないの手当てよりも先に、ゾンビではない人間を助けることを優先した方が身のためじゃあないか?あの屋敷の女の子が死ぬ前に・・・ククク」

「き、吉良ァァァーーーッ!・・・ッ!」

今の叫びで、仗助はさらに傷を広げてしまう。

「おいおい、大丈夫かねぇ?」

「仗助!」

「ジャイロさん!・・・みんなのところに行って下さい。」

「仗助・・・お前・・・」

「最後ぐらい、俺に、頼ってくださいよ。これまで、ジャイロさんに頼ってばかりだった。今回だって、ジャイロさんがいなかったら、俺はゾンビのままだった。だから、今回は・・・ッ!」

「・・・わかった。ただし、生きて帰ってこい!」

「はい!」

 

仗助の返事にジャイロは地霊殿に向かう。

「強がるんじゃあない!東方 仗助、キサマは敗北寸前だ!自分から希望を捨てたのと同じだ」

「吉良 吉影・・・俺がなにも考えずに、こんなことをしたと思うか?」

「・・・そうだな。じゃあ私も本気で戦わなくてはならないね。キラークイーン、東方 仗助を木っ端微塵に消し飛ばしてやれ!」

キラークイーンの攻撃が、膝をついて意識を失う寸前の仗助に当たるとき、仗助の体はなぜか横に動いた。

それは仗助への一筋の希望だった。

「殺人鬼、確か吉良とか言ったねぇ。アタシの愛する町をこんな状態にしたことを後悔するがいいわ!」

そこには本物の鬼が立っていた。腕や脚に包帯をしているが、手のひらには赤い杯が乗っていた。

「君は確かに・・・勇儀だっけな?綺麗な手をしていたが、反抗的だったからケガをさせるしかなかったと言えばいいか」

「アンタのせいで酒が二日も飲めなかったんだ。どうしてくれるんだい?」

「なら、あの世で酒でも飲むがいい!キラークイーン!」

キラークイーンの右拳は勇儀の腕に弾き飛ばされ、みぞおちががら空きになる。

「何ィ!?」

「アンタ、その鎧のせいで弱くなったんじゃないか?」

勇儀はキラークイーンの空いたボディに一撃を食らわす。キラークイーンはその一撃で吉良と共に、民家の壁に穴を開けた。

「勇儀・・・さん・・・ッ!」

「どうしたんだ!えっと・・・仗助だよな?」

「俺は、ジャイロさんと約束したんだ。今回は俺がヤツを倒すと・・・」

「・・・悪いが、その体でこの町は守れないな」

「ククク、誰が相手だろうが、私の平穏を邪魔するものは始末してくれる!」

「そいつの能力は理解した!アタシに攻撃が当たることはないよ!」

「キラークイーンは常に進化する。この生命の爆弾は止められない!・・・いけ!ゾンビ共!」

爆弾となったゾンビの波は勇儀に襲いかかる。

だが、勇儀の拳一つで波は真っ二つに割れた。

「だが、まだ残っている!」

「それはどうかな?キスメ!ヤマメ!あとは任せた!」

ゾンビの二つの波はヤマメの蜘蛛の糸で縛られ、キスメによって燃やされる。

炎によって爆発するなかで、少しずつ歩いてくる勇儀は吉良にとってまさに鬼のような存在だった。

「この町のために!アタシは・・・アンタを倒す!まずはその顔面を平穏じゃなくしてやるッ!」

勇儀の攻撃はキラークイーンの顔面と鎧にヒビをいれた。吹っ飛ぶと共に、鎧は砕けていく。

「キラークイーンはすでに、仲間を呼んでいる。少しすれば、君は屍の波に呑まれるだろう」

「気をつけてください!勇儀さん!ヤツ能力は爆弾を仕込んだゾンビで攻撃する能力だ!」

「何!?ゾンビ!?」

「うがぁぁぁぁぁッ!」

地面から生えるように現れたゾンビは、勇儀の足を掴み引っ張る。

「な、離せッ!離せってのッ!」

勇儀はゾンビの頭を蹴る。

「頭に攻撃するな!爆発する!」

「え・・・」

次の瞬間、勇儀の足を掴むゾンビの体から光が放たれ、爆炎がその一帯を包んだ。

「ククク・・・や、やったぞ!爆発した!やはり私の能力は最強だ!」

「まだだッ!」

爆炎のなか現れた勇儀は無傷だった。

「ッ!仗助のやつ、かっこよすぎるぜ・・・」

「ま、まさか・・・だが、私にとってどうでもいい。仗助が死んだということはつまり、私にとっての敵が消えたということだ」

あの爆炎のなか、仗助が最後の力を振り絞って出したクレイジーダイヤモンドは爆発した勇儀の体を元通りにしていた。

「あとは・・・頼みましたよ・・・勇儀さん」

力尽きるなかで仗助は目の前に立つ勇儀にだけでなく、地霊殿へと向かうジャイロにも全てを託した。

黄金の光が仗助を包み込む。

 

 

「な、あれは・・・!」

俺は地霊殿へと向かっていく途中で、黄金の光が天へと登っていくのを見た。そのなかに人の形をした煙が見え、その形はしだいに仗助へと変わっていった。

「じょ、仗助・・・」

家の壁を突き破って、ゾンビが現れるが、俺はそれをまるで邪魔な障害物を手で退かすように、鉄球で破壊した。肉片と血が飛び散り、俺の目から流れる涙までも赤く濡らした。

仗助といたこの数週間の記憶が、一気に脳内を駆け巡る。

「アイツは・・・良いやつだった。だから、最後はアイツと共に、戦いの終わって平和になった地底を見たかった・・・。ったく、俺がこんな辛気臭くなってどうするんだ。俺はジャイロ・ツェペリだ。こんなことで、泣く、男じゃねぇよ・・・」

涙を拭いながら、地霊殿へと向かうと、玄関前でさとりが待っているのが見えた。

「ジャイロさん、仗助さんは?・・・そんな・・・」

さとりは俺の心を読み、その現実を知った。

「今さっきの光って・・・まさか」

「・・・うおおおおおおおおッ!」

 

夜の焼き焦げた臭いのする町に響く、一人の男の叫び。それは天に昇る男への叫びだった。

ジャイロは叫んだ。さとりは膝から崩れ落ちた。

 

東方 仗助・・・死亡。

 

「吉良・・・」

勇儀の攻撃を何度食らっても起き上がる吉良を見て、勇儀だけでなく、近くでそれを見ていたキスメやヤマメまでも、恐怖で鳥肌が立っていた。

「ククク、私は・・・平穏のためなら・・・非人道的なことでもする・・・私は生きなければならない・・・」

すでに吉良はボロ雑巾のような姿になっており、片目は潰れ、腕や足の骨は折れていた。そのはずなのに、吉良は立ち上がる。

それこそまるでゾンビのようだ。

「さ、さぁ、早く爆発しないか?こっちも、もう半分見えないんだ。腕も折れてるし、足も折れてる・・・だが、すでに私は勝ち負けなどどうでもよくてね・・・」

足を引きずりながら歩いてきた吉良は、勇儀の前で倒れた。

「もう、ダメみたいだ・・・最後に、満天の花火がみたいな・・・」

「ッ!・・・ヤマメッ!」

「は、はい!」

吉良の手はヤマメの蜘蛛の糸で固められ、二度とスイッチが押せないようになる。

「無駄だ・・・。ゾンビは私が死ぬと同時に爆発するようになっている・・・。そんなことをしても無意味だ。最後まで・・・ダメ・・・だった・・・よ」

吉良は目を閉じた。閉じた目からは涙が流れる。

 

次の瞬間、地霊殿の周りは一気に爆発し始めた。

 

 

 



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ジャイロ、ジョニィを救い出せ
新しい場所で


あらすじ
第四の爆弾を得た吉良 吉影は爆発するゾンビで地底を襲う。
だが、仗助の犠牲と勇儀の力によって吉良は倒れる。
そしてゾンビは一斉に爆発し始めた。


「な、なんだ!?」

 

地霊殿の周りで不可解な爆発が起き始めた。

まさか、地霊殿の近くにいたゾンビが一気に爆発しているのか!?

爆発の影響で、大地震のような揺れが地霊殿を揺らす。

「きゃあッ!」

さとりはその揺れで転んでしまう。

「危ない!」

揺れによって落ちてきた蝋燭が、さとりに襲いかかる。

さとりの肌に垂れた蝋燭の蝋は、俺のオリジンで治すことができた。

「あ、ありがとう・・・ございます。」

「・・・嫌な予感がするぜ」

俺はこの揺れに興じて、何かがこっちに向かってきているような気がした。

「・・・そこだッ!」

俺は何かの気配を察知して、鉄球を投げた。

空中で鉄球は何かに跳ね返る。

そこにはここに来るときに見た空間の裂け目があった。

「ぐ、さとり!逃げろ!」

「でも、ジャイロさんは・・・」

「俺は大丈夫だ。・・・今度は平和になった地霊殿に遊びに来るぜ、俺の愛馬と共にな」

「ジャイロさん・・・」

俺はそのまま空間の裂け目に飲み込まれてしまう。そのときわかったのは、裂け目にリボンのようなものが付いていたこと。そしてその中に、誰か人がいたということだ。

「ぐ、うわぁぁぁぁぁッ!」

 

 

ここは・・・いったい・・・

目の前に映った景色は、赤みのかかった紫色のような壁に無数の目が開き、こちらを見ているという、なんとも肝を冷やすような空間だった。

「今回の異変も解決おめでとう・・・ジャイロ・ツェペリさん・・・」

「誰だ、テメェはよぉ。そしてここはどこだ!」

俺は鉄球を手のひらで回す。

女はその手に傘を握り、こちらを見て少し微笑んでいる。余裕じみた表情をしている部分、相当の実力者のようだ。

「私は八雲 紫。あなたの相棒、ジョニィをこちらの世界に送った妖怪と考えていいわ」

「ジョニィを知ってるのか?・・・まぁ、今はそんな情報どうでもいいがな」

「まぁ、今は霊夢のところで地上がどうなっているのかを見てもらった方が早いかもね」

「うぉッ!?危ねぇ!」

俺は足元にできた空間の裂け目から逃げる。

だが、二段構えの罠によって、俺は逃げることができずに、そのまま空間に入ってしまった。

「畜生ォォォォッ!」

「ふふっ、楽しみにしてるわ。ジャイロ・ツェペリ。」

 

 

「ッ!痛ててて・・・ここは!」

落ちた場所はとある屋敷の庭園の池で、俺の横を錦鯉が泳いでいった。

オレンジ色の瓦葺きが特徴的な建物は、中国の霊廟のような雰囲気が出ていた。

「太子様!侵入者ですぞ!」

俺に気づいてきたのか、二人の女が池の前に立っていた。

一人はこちらを見て、両手に皿を構え、もう一人は動じることなく、目を閉じて立っていた。

「落ち着いてください、布都。まだ、彼が私たちに危害を与える人間と確定したわけではありません」

太子様と呼ばれたクリーム色の髪の毛が斜め上に逆立った女の方は、もう一人の女を布都と呼び、肩を掴む。

「太子様がそういうのなら・・・」

布都は構えるのをやめ、こちらに歩いてきた。

「お主、名前をなんと言うのじゃ?」

「俺はジャイロ・ツェペリだ。異変を解決しにここに来た。」

とでも言っておけばなんとかなるだろう。

「で、お前の名前はなんだ?」

「我か?我は物部 布都じゃ。そして・・・」

布都はその場から跳んで太子と呼ばれる女の横に立つと、どこからか持ってきた桜吹雪を太子の周りに撒き散らした。

「この方が、この神霊廟の創設者の豊聡耳 神子、太子様じゃ!」

「布都、やめなさい。先程、あなたは異変を解決しに来た、と言いましたね?あれは何かの冗談ですか?」

「・・・なぜ?」

「なぜ、というのは私や布都といった、私の決めた方しかこの世界には入れないですから。あなたは確か、紫さんの結界で入ってきたんですよね?」

「あぁ、そうだが」

「あなたが初めてなんですよ。幻想郷の住人以外で、この世界に入ってきたのは」

「だから、異変が起きないと・・・」

俺はこれまでたくさんの侵入者を見てきた。全員、神出鬼没、どこから出てくるのかわからない。

もしかしたら、すぐ近くに潜んでいるという可能性もないわけではない。

「とりあえず、体を乾かしてみてはどうでしょうか?風邪を引いてしまいますよ」

「さすが太子、心が寛大で」

「沸かせるのはあなたですけどね、布都」

「そ、そんな~~~」

 

風呂に入っている間、身体中の傷をオリジンで治していた。たまに傷に染みるため激痛がはしる。

「ったくよ、地下にいる間はずっと戦いだったからな」

傷を治している間、ずっと仗助の顔が思い浮かぶ。

「クソッ!」

俺は壁をおもいっきり拳で叩く。

「ど、どうかなされたか!」

外で布都が驚くのがわかった。・・・というより、なんで布都がいるんだよォ・・・。

「おい、俺はァ別に文句は言わねぇけどよォ・・・なんで外にいるんだ」

「それは太子様にお主を見てろと言われたからじゃ。今は風呂に浸からせておるが、危険だと思った以上、いつでも殺す準備はできておるのじゃぞ」

「わかった、わかった。俺は悪モンじゃあねぇぜ、むしろ、異変を何個も解決したヒーローだぜ」

「異変と?・・・じゃがお主の格好的に、どうも怪しいんじゃ」

「まぁ、警戒するのは仕方ねぇよ。俺はこっちにきて色んなヤツに会ったことで、警戒ってのは無くなったからなァ。」

「なるほど・・・慣れというもんじゃな」

「慣れか・・・」

あの世界にいる間、俺は色んなヤツに攻撃され、命を失いかけるときもあったが、今はこうやって生きている。女神に好かれてるのか、死神から逃げてるのか。

「おい、布都。太子様が呼んでるぞ」

「何!わかった、すぐに行こう!それじゃ、屠自古頼むぞ」

「頼むぞって・・・」

見張り番が布都から屠自古という女に変わる。

屠自古はため息をつくと脱衣室から出ていく。まぁ、いつ出るかわからないのに、脱衣室で見張っているというのとおかしいことだろう。

 

俺は用意されたこっちの世界の服に着替えると、脱衣室から出た。そこには緑色の服を着た女が待っていた。

「アンタが侵入者か」

「侵入者呼ばわりか・・・まぁ、良いけどよォ。俺はジャイロ・ツェペリだ。」

「アタシは蘇我 屠自古。よろしく」

屠自古は俺の手を握ると、何か電気を流す。俺はその電気で少しだけ目を覚ました。

「なんだ、電気か?」

「アタシの能力だ。それなりに鍛えているのか?」

「これでも何千キロもの道なき道を馬で駆け抜けるレースに参加しているからな」

「すごいやつなんだな。とりあえず、腹が空いただろう。飯が用意できている、食べていくといい」

屠自古は歩き・・・出し・・・え?

「お、おい!お前、足が」

屠自古の足はなく、根野菜のような足が伸びていた。

「あ、言ってなかったな。アタシは亡霊だ。だから足はない・・・そんなに珍しいのか?」

「何でもアリだったんだよな、ここは・・・」

 

広間に出た俺は用意された席に座る。

まだ料理はなく、大きなテーブルにその上を拭く布巾と箸だけが置かれていた。

「少しだけ待っていてください。すぐに運ばせるので」

「俺も手伝うぜ、早く喰いたいからよォ」

「いえ、あなたはあくまでも客人です。客人に運ばせるなんてことできませんので」

「そうか、なら待ってるか」

少し経つと、布都と屠自古が一皿ずつ料理を持ってきた。

魚を焼いたものにご飯とおひたし、そして味噌汁か。

「すまんな、ご馳走じゃなくて」

布都が笑いながら、料理を運んできた。

「いや、むしろ食えるだけありがてぇよ」

「夕飯はもっと良いものにするからな。こんなもんじゃないぞ、太子様いいですよね?」

「布都が食べたいだけでしょう?別に構わないですが」

「布都は人一倍食うからな、だから最近体重が増えて」

「屠自古言うなーーーッ!」

「布都に構わず、さぁ食べてください」

「おう、それじゃ、いただきます」

俺が箸を持って手を合わせたとき、広間にもう二人部屋に入ってきた。

「ごめんなさい、少し時間がかかっちゃいまして」

「遅かったですね。もう準備はできてますよ」

一人は水色のワンピースに青い髪と上から下まで寒色で統一された女。そしてもう一人は両腕両足をピンと伸ばし、ピョンピョン跳ねながら広間に入ってきた。

「おや、そこの殿方は?」

「言ってなかったですね。異世界のジャイロさんです」

「あら、異世界からですか。私は霍 青娥といいます。で、こちらはキョンシーの」

「芳香だぞー!」

「よ、よろしく。」

思ってたよりもハイテンションなキョンシーに驚く。

キョンシーという物の存在は昔読んだ中国の小説に書いてあったが、まさか本当にいるとは思わなかった。確か仙術で操る死体のことだっけな、うろ覚えのためあまり覚えてないが・・・。

「キョンシーってことはやっぱり関節とか曲がらないのか?」

俺は興味本位で芳香の肘を触ろうとする。

「さーわーるーなー!」

と言って拒否された。

「食事前に死体に触ろうとするとは・・・ジャイロさん、死にますよ」

「すまない、少し考えが甘かった。ごめんな、芳香」

「ぷいっ。」

完全に嫌われてしまった・・・。向かい側で布都が笑いを堪えているのが見てわかる。

「・・・みんな揃いましたし、さぁさぁ、冷めないうちにいただきましょう」

 

「「いただきます!」」

 

「ここは?」

僕はいつの間にかベッドの上に寝ていた。ここ数日間くらいの記憶がない。

近くにスローダンサーの姿はなく、身体中に激痛が走っていた。

「な、これはッ!」

「目が覚めたみたいですね。ジョニィさん」

「アンタはいったい!」

 

「私は霍 青娥。あなたは今日から私のコレクションの一つ。よろしくね」

 



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ハーブティー

あらすじ
地霊殿の次は神霊廟にやってきたジャイロ。

そこにはジョニィもやってきていた。



「はぁー、食ったぜェ。久しぶりにこんな食った気がするなァ。」

 

飯が食べ終わり、俺は横になる。

「布都様より食べるとは、やっぱり殿方はすごいですね」

「お主、やるな・・・ゲフ・・・」

「おい、布都。お前は寝てないで片付けろ」

「屠自古、蹴るでない・・・戻ってくる」

食べ過ぎで倒れた布都は屠自古に蹴られ、立ち上がろうとする。

負けず嫌いなのか、俺がおかわりする度に、布都もおかわりをしていた。そのせいか、今はこんな状態になっている。

「ジャイロやるなー」

「芳香ちゃん、ジャイロさんでしょ?」

「ジャイロ、サン?・・・ジャイロサン!」

「ニョホホ・・・で、青娥だっけか、ちょっと聞きたいことがあるんだがァ」

「いいですよ。何が聞きたいのですか?」

「ここにジョニィ・ジョースターっていう、足の悪い青年は来なかったか?」

「ジョニィ・・・聞いたことがないですね。ジャイロ様の御友人ですか?」

「あぁ、ジョニィもこの世界にいるみたいだが、まだ会ったこともなくてな」

「それで会いたいと・・・。聞いているとは思いますが、ここに来た異世界人もジャイロ様が初めてでして、他には誰も来たことがないんです。力になれなくてすみません」

「そうか・・・こっちこそ、いきなり悪かったな」

「力になれることがあれば、いつでも話しかけてください。それでは失礼します。」

青娥はそう言うと、台所に自分と芳香と食器を運ぶ。

「ジャイロサン!ジャイロサン!」

「どうした?」

芳香は俺の袖の袂に入った鉄球を指差す。

「それ、なんだー?」

「これか?」

俺は鉄球を出すと、手のひらで回して見せた。

「おおー!」

「まぁ言えば、俺の武器だな」

「武器かー、カッコイイなー!何かやってー!」

「何かか・・・」

子供のような頼みに少し戸惑う。俺は鉄球を手のひらでずっと回しながら、目を光らせる芳香を見た。すると、芳香の曲がらない関節が目に入ってくる。

「お前、その関節曲げられるようになりたいか?」

「なりたい!」

「よし、じゃあそれだな」

関節を曲げられるようにするなんて初めてやることだ。こういう場合は筋肉か?それとも骨か?

とりあえず、芳香の右肘に二つの鉄球を挟み込むように当てる。

「行くぞ・・・それ!」

「お?お、おー!?」

芳香の右肘は少しずつ曲がっていき、気がつくと直角に曲がるようになっていた。

「これでどうだ?」

だが、離すと同時に腕はまたピンと伸びてしまう。

「ダメか・・・すまない、こんなことは初めてでな」

「ジャイロ!すごい!どーやった?どーやった?」

芳香は曲がらない腕で俺を叩く。もう一回やってほしいのだろうか・・・。

「これが俺の能力だ。・・・まぁ、普段はこんなことしないがな」

「ジャイロ、お前すごいやつなんだなー!」

「芳香ちゃん!何やってるの!?」

食器を片付け終えた青娥は芳香のところへすぐに駆けつける。

「お、青娥帰ってきたー。ジャイロが、あ、ジャイロサンが腕を曲げてくれたー!」

芳香の語彙力の無さに青娥は首をかしげ、俺を見た。

「?・・・えっと、どういうことですか?」

「コイツ、腕が曲がらないから、俺の能力で曲げれるようにしてあげたってだけだ。まぁ、本当一瞬だったけどな」

「その能力すごいですね。回転・・・でしたよね?」

「・・・どうしてそれを?」

「食事中に思い出しまして。新聞で話は聞いております。色々な場所で異変を解決してますよね?」

「やっとわかってくれる人がいたか・・・」

「話題作りのために新聞を取っていたのですが、まさかここで役に立つとは思いませんでしたよ。」

俺は青娥の言葉に安心したと共に、何かを隠しているというのがわかった。

臭いにこの世界ではありえないハーブの臭いがした。

紅魔館は紅茶など、ハーブの臭いがしてもおかしくはない空間だった。

独断と偏見だが、ここではハーブティーよりも、食事風景を見た限りではお茶の方が良く飲まれているはずだ。

「何か俺に隠していることはないか?」

「隠し事ですか。ないですね。しいていえば、芳香ちゃんみたいに、死体で遊ぶことが好きってことくらいですかね?ふふふ」

青娥は奇妙な笑みを見せる。

「一つ聞いていいか?」

「なんですか?」

「おたくからただようハーブの臭いはなんだ?」

「私、ハーブティーが好きで、ちょっとリラックスしたいときに飲むんです。今度、作りましょうか?」

「・・・そうか。じゃ、今度飲ませてくれよ。ここに来るまでずっと異変と戦ってたからよォ~」

「わかりました。・・・あとで私の部屋に来てください。あ、部屋は離れにありますので。それでは失礼させていただきます」

「じゃ、後で行くからよ」

「ジャーナー!」

「おう!・・・しっかしよォ~。怪しすぎるよなー」

 

 

「あなたのパートナー。なかなか鋭いですわね」

僕はずっと部屋の中で抵抗していた。

ときどき、飯を運んでくるが全て、手をつけずに残していた。

監禁するヤツの飯なんて食えるか。何が入っているかわからない。いたって、普通に見えるが毒が入っていてもおかしくない。

「あら、食べないんですか。せっかく、屠自古様が作ってくださるのに」

壁に何度も爪弾を撃ち込むが穴一つ開きそうにない。

「あなたの能力では、この結界に穴一つ開けられないでしょう」

「ッ!・・・何が目的だ」

「私のコレクションにすること・・・ですかね。キョンシーって知ってるかしら?」

「なんだそれは?」

「まぁ、なってみればわかるかもしれませんわね。そのためにはまず死なないと」

僕は目の前でハーブティーを飲む青娥に爪弾を向ける。

「あ、そういえば、ジョニィ様はハーブティーが好きなんですよね?ジャイロ様が仰ってましたけど」

「ジャイロ!?ジャイロが来てるのか!」

「えぇ。でも、彼もここに来るかもしれませんね」

「どういうことだ?」

「ジャイロ様と、お茶会をする約束をしましたから。たぶん、少ししたら来るでしょう」

 

コン、コン、コン。

 

誰かが扉をノックする音が聞こえる。

「おや、噂をしていれば・・・。」

「ジャイロ!ジャイロ!」

僕は足を引きずりながら、青娥の言う結界の壁を拳で叩く。

「無駄ですよ。私以外、その結界の中からの音は聞こえませんから・・・」

「ジャイロ、助けてくれ・・・」

 

 

「はーい、今開けますよ」

離れの建物の扉から青娥が出てきた。

中からはジョニィの好きそうなハーブの良い臭いがする。

「約束通り来たぜ。・・・芳香はどこだ?」

「芳香ちゃんならきっと物部様のところじゃないかしら?この時間はいつも自由にしてますので」

「いや、死体と聞いたが、俺の鉄球を見ていたときの目がまるで子供みたいにキラキラしてたからよォ」

「そうですか。また夕食時になれば、芳香ちゃんも食べに行くと思いますので」

「お、そうか。とりあえずハーブティーを・・・と言いたいところだが。気になることがある」

「なんですか?」

 

「ジョニィを、返してもらえないか?」

 

青娥は俺の言葉に表情一つ変えていない。だが、確かにジョニィがいるという手がかりとその根拠だけは揃っていた。

「返すと言われても、ここにジョニィさんは」

「なら・・・オタクのその服についた穴はいったいなんだ?」

「穴?なんのことですか?」

肩の辺りに不自然な穴が開いている。

青娥はその穴を目だけでなく、触れて確かめる。

「触れると危ないぜェ~。なぜなら」

 

その穴が、ジョニィ・ジョースターなんだからヨォ

 

穴は肩から足へ、足から地面へと移動する。そして穴はしだいに広がり、広がった穴からジョニィが現れた。

「ふぅ、作戦成功かな?」

「ニョホ。久しぶりだなァ、ジョニィ。少し見ないうちに老けたんじゃあないか?」

ジョニィの顎には髭が見え、少し歳を取っているように見えた。

「ジャイロこそ、老けたどころかオジサン臭くなったんじゃあないか?」

「ニョホホ、言うねェ~」

目の前で起きたことに、青娥はおもわず表情を変えた。

自身の結界から出たということ。それは青娥のプライドを踏みにじる行為そのものだった。

だが、変えた先の表情。まだ何か策を隠し持っている。余裕じみた表情。あれが示すものとは・・・

「正直、驚きました。まさか、あの結界から異世界の人間が出れるなんて、それに背中についたお札が機能しないなんて・・・でも、まだ予想通りといえば、予想通り。まだ策は尽きたわけではありません。」

「じゃあ見せてみろよ、オタクの策ってもんをよォ。」

「わかりました・・・じゃあ、これなんてどうですか?」

青娥は手のひらを合わせ、何かを詠唱する。

「こ、これは!?」

「ジョニィ!」

突如、ジョニィが光始め、ジョニィの周りに見たことのない文字列が浮かび始める。

「ジャイローーーッ!」

そしてジョニィはその場からあとかたもなく消えてしまった。その場にジョニィのフードに付いていた羽だけが残る。

 

「ジョニィーーーーーーッ!」

 

 

 



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