はーとふる☆ぷりずむすとーりー (ぺちぺち)
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プリズマ☆イリヤ
第0話:ぷろろーぐ


 第0話です。
 原作開始前の内容となっておりますので見ないでも大丈夫な内容です。


--(1)

 

 う~開錠開錠…今現在古ぼけた南京錠を相手にピッキングツールで格闘している俺はごく一般的な八歳児、強いて違うところがあるとすれば前世の記憶(?)があるってことかナ。

 まぁ記憶と言っても破損ファイルみたいな状態だからまるで役に立たないんだけどね、影響が出たと言えば精神年齢が加速したくらいだし。

 今日は久方ぶりに海外から帰ってきた両親の目を盗み、一度も入る事を許されていなかった地下室に踏み入るべく塞いでいる南京錠を相手に10分くらい挑戦中…

 面倒になったので「開かねぇぞオラァ!」と素手で叩き壊して侵入、ストロングだぜ。

 

 …………何だここ^q^

 

 地下室がキモかった。

 広辞苑の如き分厚さを誇る本が幾つも置いていたり地面や床など至る所に魔法陣が描かれたりしてかなり不気味。

 しかも地下室なのに照明は無く、その代わりなのか至る所に蝋燭が置いてある。

 LED大流行のこのご時世に蝋燭て…懐中電灯持ってこなかったら即撤退だった。

 しかしまぁ珍しい物が多いのは飽きなくて良い、ちょっとした冒険に出たような気分だ。

 宝石、鉱石、見た事も無い草花。理科の実験に使いそうな器材と薬品。更には何かの生き物の毛皮や剥製、魔法陣そして頭蓋骨……ファーww魔法陣に頭蓋骨とかファンタジーww

 触れたら光るインクとか始めて見たわ、蛍光マーカーとか進化しすぎでしょ。

 やっぱ科学は最強だな!!

 

 やんややんやと騒いでいたら騒ぎに気付いた両親が乗り込んできた。

 このインクすっごいよ!

 触れたら光る!

 拭いても消えない!

 なにより俺にも線が入って一緒に光る!

 人修羅気分を味わえるとかヤベェな、東京受胎待った無しの予感。

 東京じゃないけど。

 

 俺のセルフライトアップを見せつけると母上が泣き崩れ、親父は眼が死んだ。

 な、何だよ。

 

 

 

 

 

 

--(2)

 

 速報:魔術は実在した。

 根拠は俺のセルフライトアップ、そもそもあのインクも蛍光塗料じゃないらしい。

 科学じゃないんかい…

 俺も最初は魔術なんて信じて無かったけど実際に魔術を披露して頂いたので半信半疑ながらも納得。

 でも爪先から火を灯すとかショボすぎだと思うんですよ、マッチ使え。

 

 

 

 

 

 

--(3)

 

 ク  ソ  長  い  話  が  始  ま  っ  た

 

 

 まず地下室は親父の親父のそのまた親父、つまり俺の曾祖父にあたる人の"魔術工房"と呼ばれる部屋なんだって。

 魔術工房は魔術師の拠点なんだとか。

 で、肝心の魔術なんだけど要するにプログラミングの様な物らしい。

 しかも土地毎に文化や歴史も違うからからPCやスマホのOSみたく魔術の種類も大量に存在する。

 発動場所によって威力が上下する魔術も結構あるらしい、例えば土着宗教の魔術、とある伝説に纏わる魔術をその伝説と関係のある場所で使えば大儀式になるが、一歩でもそういった場所から離れれば最下位の占いになっちゃう事もザラにあるとか。

 ……俺の知ってる魔術と違う、MP使えばなんでも出来るワケじゃないんだなぁ…勉強必須とか萎える。

 

 更に魔術を行使する人間にも種類が存在し、主に『魔術師』と『魔術使い』に分類されるらしい。

 まずは魔術師。

 これは『根源』、別称『根源の渦』と呼ばれる凄い所に至る為に魔術を勉強する人を指すらしい。

 この根源は物質、概念、法則、空間、時間、位相、並行世界、星、多元宇宙、宇宙の外の世界、無、生命、死などを含めた全ての発生源であり、かつそれ等が最終的に行きつく場所なんだって。

 かの有名な"アカシックレコード"ですら機能の一部でしかないとか。

 どんだけぇ……。

 

 魔術師の説明に戻ろう。

 前述したとおりこの根源に至る事を目標にしているのが魔術師なのだが…ぶっちゃけキチガイしかいないっぽい。

 それこそ生粋の魔術師なら『実は科学の方が根源に近い』とか明示されれば余裕で科学者に転職するし『1000年間逆立ちやってれば根源に至れる』なんて答えが出れば喜んでやる。

 が、魔術が使用できるかどうかは『魔術回路』っていう先天的素質に左右されるせいか現在は選民思想を拗らせた貴族様が跋扈している状態であり、魔術師自体の有様も大分変わっているとか。

 まぁ魔術を研究するには莫大な費用が掛かる為貴族が残って行くのも仕方ないんだろう、問題なのは費用云々ではなく貴族思想の方にある。 

 この貴族思想、厄介な事に一般人の事など歯牙にもかけない場合が大半を占める。

 それこそ『目撃者は消す』は当然ながら『公にならないならパンピーなんざ実験材料にしてもおk』なんて輩もわんさか居るらしい。

 親父曰く、一般人視点で魔術師を見るなら『マッドなサイエンスに生きる外道のサイコ野郎』にしか見えないくらいだとか…。

 魔術師が基本的に碌でもないってのと親父が魔術師を毛嫌いしているって事は伝わった。

 まぁ例外も居るようだが。

 

 そしてもう片方の魔術使い。

 これは魔術師のように根源を目指すのではなくあくまで魔術を"手段"として用いる者を指すらしい。

 簡単に言うなら「魔術で人助けをしよう」「魔術を使えばこの作業は楽だから魔術を勉強しよう」「魔術で楽して金稼ぎじゃヒャッハー!」みたいな人達。

 俺の両親も魔術使いの分類らしく、こういった方々は基本的に…

 

 「根源?ナニソレ美味しいの?」

 

 「根ww源wwとかwwwそんなモンに人生使うとかテラワロスwww」

 

 「あー根源ね。知ってる知ってる…(゚Д゚)≡゚д゚)、カーッペッ」

 

 上記のような思考回路で動いてるから魔術師の方々からは思いっきり見下されているようだ。

 それこそ魔術使いからすれば魔術師の評価なんざもっぱらどうでもいいようだが。

 ちなみに我が家世の魔術家系が終了したのは金銭問題からの自動消滅。

 高祖父母の代から既にヤバくて祖父の代から終わったらしい、資本主義は時として残酷なのだ。

 

 

 くぅ~疲れましたw これにて長話終了です!

 

 長すぎるわ。

 

 

 

 

 

 

--(4)

 

 俺の魔術回路が凄いらしい。

 戦闘力に換算すると1億5000万くらい…しゅごい、53万とか鼻で笑えちゃう。

 本体がパンピーだから使い道ないけど。

 パンピー、パンピーと連呼していたら母上が切嗣さんとアイリさんを連れて来た。

 お二人も魔術関係者らしい、世界の狭さにビビる。

 いやもうオカルトの侵食率どうなってんのさ、俺が知らないだけで学校とかエラい事になってたりしないよな…しないよな?

 

 隣人夫妻が人修羅ボディにビビってた。

 仕方ないね、人修羅だもん。

 

 

 

 

 

 

--(5)

 

 (´父`)<「これは あの 一本一本光ってる線があるじゃないですか?」

 

 (´父`)<「あれが…全部魔術回路」

 

 鍋Pをインストールした親父の検査で俺の回路が常時オン状態である事がわかった。

 地下の魔法陣に魔術回路のオンオフをバグらせる呪いが仕込まれてたんじゃね?って事で大筋も掴めたらしい。

 呪いに関しては解呪をしない限り永遠にこのままだが厄介な事に外部からの解呪が不可能な模様。

 最終的に俺が修行して自力で解呪するしかねー!って事で話はまとまった。

 

 …ちょっと何言ってるか分からない^^;

 

 

 

 

 

 

--(6)

 

 人修羅状態じゃ外出する事すら論外なので不本意ながらも全力で魔術を学んだ。

 貿易商をしている親が滞在出来る期間も二ヶ月程度なのでもう超頑張った。

 でもまぁ二ヶ月の間に学べる事なんざ知れてるワケで…結局魔弾と軽い暗示に軽い契約、結界くらいしか覚えられませんでしたっていうオチですよ。

 因みに使用している魔術系統は数秘紋(カバラ)のノタリコンだったりする、発動までが速くて良いんだよね、瞬間契約(テンカウント)もすぐに使えるし…だがゲマトリア、同じ数秘紋でもテメーは駄目だ。

 主にヘブライ語が難解すぎて無理。

 

 「解呪覚えてられてねーぞ」と今なお忌々しく輝く元凶の魔法陣に魔弾をぶっぱ…壊れた電球みたく明滅したと思ったら消滅した。

 で、俺の人修羅化も解除された。

 ……。

 …………。

 …………………^q^

 

 

 

 

 

 

--(7)

 

 人修羅化の解呪は成功したのだが両親曰く「半端な状態が一番危うい」らしいのでもう暫くの間魔術の修練を積む。

 そんなワケで最近は母上のお友達である"青子さん"を相手に模擬戦(弾幕ごっこ)をするのが日課となっている、フルネームで呼ぶと殺意の波動に目覚めるらしいので要注意。

 で、この青子さんなのだが放浪人の居候モドキにも関わらずメッチャ強い…同じ数秘紋のノタリコンでも手数と詠唱速度、威力の差が激しすぎて最初の方は秒殺されたくらいだ。

 暫くフルボッコにされ続ける事により青子さんお得意の超高速詠唱、通称『無限回転』を真似る事に成功。

 お陰で魔弾の質も威力も量もある程度追いつくようになった。

 

 だからどうしたと言わんばかりにボコされるんですけどね!

 やっぱ戦闘経験の差はどうにもなんねーです。

 あと魔法とかズルい。

 

 

 

 

 

 

--(5)

 

 更に五ヶ月が経過。

 「近接が雑魚すぎんぞオラァ!」と青子さんから慈悲も容赦も無い修練を受けてあらゆる格闘技術を叩き込まれた。

 もうヤベーの、青子さん頭オカシイの。

 「痛くしないと覚えないでしょ」とか言って真顔でボコして来る。

 ナイフ一本で孤島に放り込まれて三ヶ月サバイバル(魔術禁止)を強要された時にはマジで呪い殺してやろうかと思った。

 呪いとか使えんけどさ。

 

 まぁお陰で今となっては青子さん相手でも引けを取らないくらいに成長したけど。

 火事場の馬鹿力という奴だろうか?マジで命がヤバくなると学習能力とか成長速度とかがバグるからその状態に物を言わせて無理矢理強くなった感じ。

 

 正直な話もう魔法使われなきゃ負けなくなって来た…だからって複数の時間軸から飽和攻撃とか止めろわぁぁぁあぁぁあぁああああああ^q^

 

 

 

 

 

 

--(6)

 

 青子さんの地獄の特訓(ガチ)が終了したので日常に回帰、その先は魔術を知る前と同様にアインツ家の皆さんを頼って暮らしている。

 本来ならウチも家政婦を雇うべきなんだろうがその辺りはアイリさんと切嗣さんのご厚意に甘えている状態だ。

 持つべき物はなんとやらってヤツだな。

 

 

 ……で、ここからが本題なんだけどたった今青子さんから「死徒が冬木に潜入してるから注意しろ」的な連絡を頂戴した。

 ただし埋葬機関ってトコの凄い人が既に死徒殲滅の為に冬木に向かってるから間違っても手は出すなとの警告付きで。

 

 ……今まさに現在進行形で俺の目の前にはミンチと化した人外君が居るワケですが…ど、どうすんべこれぇ……^q^

 砲撃で消し飛ばして隠滅とけって言われた。

 オラァ(ドカーン

 

 

 

 

 

 

--(7)

 

 ちょっとした野暮用で父の友人宅である両儀家へお邪魔した。

 暴力団の元締めらしいが訓練という名の地獄を乗り越えた俺にそんな肩書きは通じない…というか一度マジモノの恐怖を味わった俺はもう些細な事でビビらない自身がある。

 例えるなら一度ルナティックを攻略するとそれ以下の難易度があまり難しく感じなくなるような…そんな感じ。

 青子さんの訓練がどれだけぶっ飛んでたかわかるね。

 

 用事を済ませた他は両儀夫妻が俺の出産に立ち会ったという話を聞いたり食事を御馳走して頂いたり娘さんに凄い懐かれたり…。

 「にーさま」って呼ばれるのは新鮮だな、基本末っ子ポジだし…舌足らずな声で呼んでくるとかメッチャ萌える。

 全力で愛でて猫可愛がりした。

 末那ちゃんの可愛さが天元突破しててヤベェわ。

 

 

 

 

 

 




 宜しければ感想や評価、誤字報告下さい。リクエストやシナリオ内の疑問なども歓迎です。


●主人公
 魔術刻印は無いが超抜級の魔術回路を有した最高スペックの魔術使い。
 但し師匠が破壊特化のポンコツ・オブ・ポンコツな為魔弾と身体強化程度しか教わっておらず、また当人もそれ等の魔術の他、簡単な暗示程度しか使用できない。
 言ってしまえば全知全能のパラメータを全て戦闘にガン振りし、魔術師として必要な知識、考えを全て排斥した状態。
 某人形使いが知れば乱心する可能性アリ。






●主人公の父親
 主人公一家の大黒柱。
 基本的には嫁と共に自営業の貿易商として働いている。






●主人公の母親
 基本は優しく怒ると怖い典型的とも言えるオカンタイプ。
 あの"ミスブルー"に貸しを作っており更に弱みを握っている為ソレをネタにして度々揺すりをかけるデンジャーウーマン。
 主人公の修練が激化したのは主人公母に対する憂さ晴らし+原因でもある主人公への発散も兼ねている為(殺されないだけマシ)






●両儀夫妻
 主人公の出産にも立ち合った父親の友人夫妻。
 極道だが退魔の四家は基本的に裏社会に精通しているので特に気にする事ではない。






●両儀末那
 大天使






●死徒
 瞬殺されたかませ。







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第1話:vs ボディコン

 第1話です。
 ライダーさんまじエロい。


--(1)

 

 魔術を知って早2年…波乱でした。

 半年前なんざ最終試験と銘打って青子さんと我血死闘(ガチバトル)して島を一つ消滅させるという快挙。

 まぁ消滅させたといっても地図にも載ってない絶海の孤島だし…多少はね?

 海洋資源の幾つかは無駄になったかもしれんが。

 戦闘に関してはもう時間軸回避とかの魔法関連は全部割り切って青子さんが攻撃してくる時にカウンター掛けまくってた。

 それくらいしかまともに攻撃当たらんし。

 因みに当たっても魔術刻印の力で直ぐ様回復されるからどれだけ効率的に連撃を叩き込めるかが重要になってくる。

 

 ……俺も中々人外って来たなぁ…。

 

 

 

 

 

 

--(2)

 

 平和だナー。

 もうホント平和。

 超平和。

 平和最高。

 最高過ぎて変なテンション入っちゃう、色々と戯れちゃう。

 具体的には士郎さんとイリヤの異種帰宅レースに参加しちゃう。

 ハハッ、テンション上々ですわ。

 

 余裕ぶっこいてたらイリヤに抜かれたんですけどぉ…^q^

 舐めプして負けるとかめっちゃ恥ずかしい。

 「やだもー」ってしてたら横でイリヤが吐き始めた。

 なんか全力を出し過ぎちゃったみたい…ゲロゲロですな!

 腹いせに俺の服で口元を拭かれた。酸味を含んだ臭いが凄い事に……。

 やってる事が外道過ぎて流石の俺も激おこっすよ。

 

 

 

 

 

 

--(3)

 

 アインツ家に着いた後は早々に着替えてゲロい服を洗濯する。

 流石に洗濯機に放り込むわけにはいかないので手洗いです。

 セラさんに任せるのアレだしね、基本自分の洗濯などは自分でやってたりする。

 

 洗濯を終えた後はリズさんとイリヤが通販で購入した魔法少女アニメに耽っているのを後目にセラさんの手伝いだ。

 

 手伝いを終えると夕食を頂き、部屋でゴロゴロしてたら士郎さんからお風呂のお誘いが入った。

 風呂場の電気が消えているから誰も使用していない間に入ってしまおうという事らしい。

 

 アインツ家は切継さんとアイリさんが居なくても四人家族、更に居候の俺も加えると五人にもなる大所帯。

 そのせいか入浴時間削減という名目で男である俺と士郎さんは揃って入浴する事が習慣化しているのだ。

 女性陣は各自別々だが……風呂だけは実家で入るようにしようかな。

 

 「光熱費どうするかなー」とか考えながら風呂場に到着すると全裸のイリヤが居た。

 おう、電気ぐらい点けときなさいよ。

 

 至近距離で桶をぶん投げて来たので回避、後ろの士郎さんにぶち当たった。

 更に窓から飛来した何かにより二撃目を食らった士郎さんは今度こそ意識を狩られた。

 

 まさに二撃決殺である。

 なにこれエグい。

 

 

 

 

 

 

--(4)

 

 イリヤの部屋にて状況整理。

 

 ①全裸イリヤがコスプレイリヤにメガシンカ

 ②全体的に赤い属性盛り過ぎな女性も湧いて出る

 

 イリヤがポケモンである可能性を垣間見たことしかわからん。

 あと全裸を見た事に対してイリヤがギャーギャー言ってる。

 今度魔法少女アニメのBD版買ってきてあげるから…静かになった。

 物で釣るのは資本主義の基本だね、ハイリスクローリターン過ぎて草も生えんが。

 

 そして士郎さんをノックダウンした飛来物こと謎ステッキなのだが『マジカルルビー』って名称で超高等愉快型魔術礼装なのだそうだ。

 『キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグ』とかいう魔法使いの爺さんが作ったらしく色々な便利機能満載なんだとか。

 凄いね、宿ってる人工精霊の人格と外観、ネーミングセンスがトチ狂ってる以外は。

 ひょっとしてもう痴呆が始まってたりするんじゃない?大丈夫?

 腹いせも兼ねて魔法使いの爺さんをディスったら途端にスカーレットウーマンがブチギレ始めた…てか貴女誰よ。

 ……遠坂凛…?…あー…遠坂って言うとこの土地の管理人(セカンドオーナー)の…知ってる知ってる。

 

 イリヤが何とも言えない表情でこっちを見てくるので俺も魔術は使える事を説明…魔術師じゃないけどね。

 凄い驚かれた、そして不貞腐れた…隠してたのが気に障ったらしい。

 色々危険だし秘匿義務とかもあるから言い出せなかったのよ、スマンな。

 

 で、管理人様こと凜さん曰く現在冬木に眠ってるクラスカードとか言うごっついカードを回収する為に態々ロンドンの時計塔からやって来たんだとか、ご苦労な事で。

 

 問題なのがこのマジカルルビー…言い辛いな、ルビーがマスター登録をイリヤから凜さんに移行する気が起きるまでイリヤが代わりに戦わなきゃいけない事だ。

 

 正直な話ソレは不味い、非常に不味い。

 何が不味いっていかにルビーが魔術戦において最高峰の礼装であったとしても魔術世界の危険度は半端じゃないのだ。

 何より時計塔の主席候補がそんな凄い礼装を使用した上で事に当たるという時点でどれだけヤバい事態なのかは把握出来る。

 ソレを今現在魔術を認知したばかりの女児に任せるとか判断能力が狂ってるとしか言いようがない、俺は断固反対する。

 なんなら俺が代わりに回収を手伝っても良い、伊達に吸血鬼を磨り潰してはいないからね。

 

 魔術回路とか色々解析された。

 「やべーわーコイツ化物だわー」みたいな事言われたけどカード回収に同行する許可は貰った。

 

 …アレ?同行?なんかニュアンスが違うような…。

 

 …………アレ?

 

 

 

 

 

 

--(5)

 

 つらい。

 とてもつらい。

 俺式平和デイズは崩壊するしイリヤのBD代として所持金は差っ引かれるし結局イリヤは参戦する事になっちゃうし挙句の果てに当の本人はワクワクしちゃってるし…。

 はぁ、つっら。

 

 余りにもつらかったのでこの日は学校には行かず友人達とゲーセンで遊び倒した。

 適度にガス抜きせんとやってられんのよね。

 誘った連中が全員参加っていうのには驚いたがこれも人徳だろう、端から見ればただのサボり集団だが。

 「おれパンチングマシンで100とか普通に出すし」とか言いながらパンチングマシンを粉砕したり、刹那君とガンプラバトルで無双したり、上条君を格ゲーでボコしたり、代わりに桐ケ谷君にボコされたり、遊星君とレースゲーでエキサイトしたりと色々やった。

 

 「アアアアァァクセルシンクロォォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

 

 うるせぇスタダぶつけんぞ。

 

 

 

 

 

 

--(6)

 

 夜中。

 イリヤの下駄箱にあったらしいあかいあくまからの脅迫状を持って穂群原学園高等部へ。

 戦いと聞いていた為かイリヤとルビーはちょっとばかし特訓してから来るらしいので先に学園へ向かう。

 まぁ即興の特訓でも何もしないよりはマシっしょ、戦闘の場合は特に。

 

 到着した先で凜さんと合流し情報を共有して貰う。

 まず回収すべきカードは全て合わせて七つ、既に回収済みのモノが二つ、そして現実世界に存在するわけではなく鏡面界とかいうカードの力が生み出した謎空間に存在しているらしい。

 ただし回収しようものならカードは自衛能力を発動し、地脈から吸った魔力で宿っている英霊の力を使用して襲い掛かって来るから戦闘は必須なんだとか。

 要は隔離空間でボス戦って訳ね…戦闘の被害を考えなくていいのは良いな、遠慮抜きで吹き飛ばせる。

 孤島みたく校舎を消滅させるワケにもいかんし。

 

 「消滅…」とか呟いている凜さんを後目にウォームアップをしている間にイリヤも到着。

 イリヤを中心にして魔法陣が展開し、視界が反転したと思ったらソコはもう一帯が魔力に満たされた異空間。

 お仕事開始ですね、サクッと回収して終わらせよう。

 

 意気込んでいると空間を裂いて目隠し女が湧いて出た。

 ……新種の貞子?(砲撃)

 

 

 

 

 

 

--(7)

 

 反射的に放った砲撃により爆炎を上げて貞子(?)の居た辺りが吹き飛んだ。

 あまりにもあんまりな仕打ちに女性陣はドン引きである。

 悲しいけどこれ闘争なのよね(諸行無常)

 

 で、そんな砲撃に飲まれたにも関わらず無傷な貞子(?)

 うめき声上げてるから貞子じゃなくて伽椰子の可能性もあるな、或いは融合体のサダカヤという線も…面倒だからもうボディコンでいいや。

 うーん、でも無傷かぁ……OK、少し話し合いません?

 提案も虚しく振るわれる短剣に付いた鉄鎖を回避。

 返答も無し襲って来るとか…やはり人は争う事しかできないのか…(苦悩)

 

 続く魔弾も物ともせずに追い回してくるボディコンを鬼ごっこの要領でやり過ごしつつ対策を考えていると横合いから放たれた一撃によりボディコンが吹き飛ばされた。

 イリヤが放ったようだが今の一撃はダメージが入ったらしい…謎耐性を貫通できるカレイドステッキつえー。

 というかその貫通性能をよこせ。

 

 ボディコンの興味がイリヤに向いたのを良い事にそのまま押し付けて凜さんの元へ。

 カレイドステッキの力で諸々強化されてるらしいから死にはしないでしょ、ヤバくなったら助けに入るし。

 

 追加で頂いた情報だがボディコンはただ無差別に攻撃を無力化しているワケではなく一定のランク以下の魔術を無効にする能力を有しているらしい、俺の砲撃が無力なのもそのせい。

 ただしカレイドステッキは魔力を魔術で加工せずに純粋な塊として使用する事が可能だからボディコンの魔術無効の能力を貫通出来るとか。

 つまり一定のランク以上の魔術、或いは近接戦なら叩きのめせるって事だね…成程成程。

 

 ヌルゲーやん。

 時間軸移動とか積んでから出直してこい。

 

 ボディコンに視線を向けると丁度イリヤが広範囲に魔弾を撃ち落とした所だった。

 あんなにバラつけちゃうと威力もガタ落ちなのでは…。

 不意を突かれると面倒なのですかさず砲撃で土煙を吹き飛ばしてボディコンの居場所を特定。

 ……なんか阿呆みたいに魔力を高めてらっしゃるんですけどぉ…。

 

 凜さんが「げぇっ宝具!?」とか「はやくしろっ!! 間にあわなくなってしらんぞーーっ!!」みたいな感じで逃走を促してくるが纏われている魔力と距離感的に不可能と判断。

 この場で叩き潰す。

 そもそも宝具って何よ…必殺技?へー。

 

 『騎英の(ベルレ)―――…!?』

 

 宝具とやらが発動する前に距離を詰めて顔面を鼻柱から殴り倒す。

 続けて怯んだボディコンの足を掴み上げては地面に叩き付け、衝撃で浮いた所で懐に向けて回し蹴りを放ち学園校舎に叩き込む。

 結果、校舎の外壁は吹き飛び、窓ガラスは全壊、駄目押しに砲撃を撃ち込んだところ大爆発を起こした。

 家庭科室でも吹っ飛ばしたかな?

 流石にくたばったと思ったが一瞬の間に魔力の奔流が溢れ出し、その圧力で吹き飛ばされる炎と煙。中心には目隠しが剥がれ、爛々と輝く両目で俺を睨み付けつつ再度宝具を展開するボディコン…いいよ!来いよ!魔眼は抵抗(レジスト)したけど…「刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)」なんとォ!!?

 

 ボディコンの宝具に対処しようと気合い入れたらボディコンに槍がブッ刺さって死んだ。

 具体的には上空から校舎をブチ抜いて突貫して来た黒髪少女に脳天から股間にかけて串刺しにされて死んだ。

 気合いの入れ損である。

 で、突貫して来た本人はボディコンの事なんざ目もくれず俺を凝視してきやがるわけで…

 

 「…………」

 

 ……何か言ってよ(切実)

 

 

 

 

 




 宜しければ感想や評価、誤字報告下さい。リクエストやシナリオ内の疑問なども歓迎です。


●ボディコン
 皆様ご存じライダーさん、二度も宝具を中断させたれた可哀想な子。
 終盤は唯でさえ主人公のバイオレンス技でボロボロだった上に乱入した黒髪少女により頭頂部からの串刺しにされグロ画像の刑に処された。







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第2話:ベタな転校生

 第2話になります。
 真・美遊っち無双、20XX年×月△日に発売。
 予約特典はなんとオーギュストさんの等身大抱き枕カバー。


--(1)

 

 黒髪少女とにらめっこをしていると金髪縦ロールに高笑いというこれまた濃すぎる外人さんが現れた。

 リアルで「オーッホッホッホ!!」とか使ってる人初めて見たわ、それにしても日本語が堪能だこと。

 しかし登場するや否や凜さんとド突き合いを始める辺りかなりの脳筋と見た…お嬢様キャラの気品が相殺されるレベルの大乱闘にドン引きです。

 空間が崩壊しかかってるのに気に留めないとか相当だわ。

 

 ……割とマジでヤバいのでさっさと脱出しません…?

 

 

 

 

 

 

--(2)

 

 超冷静な黒髪少女の英断により崩壊する鏡面界から脱出成功。

 転移中でも殴り合っていた凜さんと外人さんを放置して黒髪少女とコンタクト。

 出会い頭に「違う、オリジナル…?」って呟かれた。

 

 どこが違って何がオリジナルなんですか(困惑)

 

 聞いてみても「忘れて欲しい」の一点張り…思わずぐぬった。

 まぁいいや、助けて貰った事には変わらんし緊急で必要な情報でも無いからね。

 軽い挨拶を言い終えた辺りで凜さんから撤収指令が下る…女性同士が殴り合ってズタボロとか優雅の名が泣くぞ。

 まぁ既に優雅()になっているのは確定的に明らかなんですけどね。

 

 

 

 

 

 

--(3)

 

 翌朝には黒髪少女こと美遊・エーデルフェルトが我がクラスに転入して来た。

 展開がベタ過ぎて生えてた草も枯れ果てる勢い。

 

 朝のホームルームが終了すると案の定美遊がクラスメイトに包囲されて質問攻めが勃発。

 "大変だねー"とか考えながら眺めていると窓際に移動していたイリヤに絡まれて俺も窓際へ連行された…何?カツアゲ?

 

 違ったようだ。

 美遊が所持している"マジカルサファイア"こと"サファイア"も含めてカレイドステッキの役割と今回の騒動の原因であるクラスカードについてとか色々教えて貰えるらしい。

 長かったので肝心の話を要点で纏めると…。

 

 ①カードには英霊の力が宿っている。←凜さんから聞いた。

 ②カード回収には前任者が居た。

 ③凜さん達が既に所持していた2枚のカードはその前任者が回収した物。

 ④前回戦ったボディコンこと"ライダー"は対魔力持ちなので魔術師じゃ無理ゲーと判断される。

 ⑤対魔力持ちを潰せるという事でカレイドステッキに白羽が立つ。

 ⑥先日の金髪ドリルと凜さんがカレイドステッキを用いた事件解決に抜擢。

 ⑦時計塔ツインズ、現地入りした瞬間に私闘を繰り広げステッキに見放される。

 ⑧結果的に俺達が今回の騒動に巻き込まれる。

 ⑨ライダーぶっころ←今ココ

 

 ……沈めたろかあの阿呆共(#^ω^)

 

 時計塔ツインズの低能ぶりに対して激おこモードに突入しているとサファイアが"魔術師なのに対魔力持ちを圧倒するなんてスゲー"と褒めてくれた。

 (魔術師じゃ)ないです。

 対魔力は神秘を纏わせた物理で余裕と説明。

 小学生でも見抜けた欠点に気付かない魔術協会の無能さが浮き彫りになっただけっていうね。

 更に言うなら2枚のカードを単騎回収出来た前任者さんなら現場特有の感覚で勘付けたと思うんですよ。

 

 時計塔ツインズにしろ2人を送り込んだ上層部にしろやっぱり魔術協会って無能集団なんじゃないかな(偏見)

 

 それに俺よりも理屈抜きで英霊を相手に出来るステッキツインズの方が凄い。

 戦闘ド素人のイリヤでもある程度戦えるし対魔力貫通できるしで至れり尽くせりじゃん、俺もサポートして欲しいくらいだわ。

 

 「転身したいんですか?」

 

 お前啓蒙高いって言われない?(ブラボ並感)

 

 

 

 

 

 

--(4)

 

 美遊がハイスペック過ぎて凄い、つーかしゅごい。

 完全に無双モード、別ゲー感ハンパないっす。

 

 

 

 ・算数:数式無双

 "およそ"で済む部分をsin,cos,tan,を用いて計算するという小学生にあるまじき行為を披露。

 …三角関数は高校の範囲だから小学校でやるのは勘弁して下さいませんかね(真顔)

 

 

 

 ・図工:絵画無双

 刹那君と二人掛かりでAC×ガンダムのコラボイラストを描ている間にキュピズム?とかいう手法を使った凄い絵を描いてやがった。

 形態を解体だの単一焦点だのと専門用語が湧いて出るが価値観が一般庶民な俺はスルー安定。

 やっぱ時代は意味不明な芸術よりも万人受けするイラストだよね。

 え、課題は人物画?…人型だったら人物画に入るでしょ(暴論)

 やっぱ時代はロボですよ。

 

 

 

 ・家庭科:料理無双

 調理実習だが俺は料理が苦手なので近くの席に居る幸平君にフォローして貰いつつ何とか完成させた。

 一方美遊はハンバーグの実習にも関わらず豪華定食(デザート付き)と作るという快挙…というか怪挙を達成させた。

 流石の幸平君も顔を引き攣らせるレベル。

 味も素晴らしいらしくツッコミに入ったタイガーが奇声を上げて陥落した。

 

 お黙れ下さいファッキン御教師様(おこ)

 

 

 

 ・体育:短距離無双

 本日の授業内容は短距離走、自分の番じゃない間は木陰でサボれる素晴らしいモノだ。

 イリヤは散々無双した美遊に一矢報いたいらしく「短距離走なら」と意気込んではいるが…まぁ案の定負けてた。

 6秒09かー…速いね。

 木陰で無双大将美遊先生の走りっぷりを眺めていると消沈したイリヤに泣き付かれた。

 悔しいのはわかったから人の体操着を汁だくにするのはやめーや^q^

 

 

 

 

 

 

--(5)

 

 未だに消沈しているイリヤを無理矢理再起動させてアインツ家への帰路につく。

 この先も予定があるからさっさと歩いてくれないかなー…とか考えていると美遊とバッタリ遭遇。

 何故カード集めに協力しているのかを聞かれた、強制でも本気で嫌がればルビーも諦めるとかなんとか…ふむ。

 

 ○イリヤ:ルビーに強要されたという部分もあるが元々こういった"魔術"だの"鏡面界"だのといった非常識に憧れていたから協力。

 アニメやゲームのような展開に少しワクワクしているようだ。

 ○俺:イリヤが怪我をしないようにというのとカード回収その物が目的。

 前者は読んで字の如く、後者は自分の住む土地が魔術騒動で侵されるのが嫌だから。

 「放置したお陰でイリヤが怪我した挙句手遅れになりました」とか笑えんし。

 

 美遊がイリヤの返答により激おこモードに突入してどっか行った。

 ゲーム感覚でカード回収に参加して欲しく無いらしい、遊び半分で英霊を打倒できると思っているのかとかなんとか…。

 俺にはノーコメントだったので多分セーフ、何とも言えん表情で一瞥されたがソレでも悪態をつかれたワケじゃないから恐らくはセーフ。

 ……セーフだよね?

 

 

 一抹の不安を残してアインツ家に帰宅すると向かいの民家が軒並み消し飛んでおり、その代わりと言わんばかりに馬鹿でかい豪邸が\ドォォォン/と佇んでいた。

 でかい、とてもでかい。

 一体どれだけの直接税を支払っているのか…市の懐が潤っていくのが目に浮かぶぜ。

 資本主義はサイコーだよ!(Ich liebe Kapitalismus!)(CV:麦人)

 

 「元々住んでた人は何処行ったんでしょうね」などとセラさんと会話をしている間に美遊と再び遭遇。

 話を聞くと昨晩の縦ロールと美遊はこの豪邸に住んでいるらしい、元の住民達は買収して退去して貰ったんだとか。

 

 …家一つ建てる為に宅地を一掃するとかやっぱ魔術師は頭おかしいな^q^

 

 

 

 

 

 

--(6)

 

 制服から着替えた後は友人ズと合流してガンプラシミュレータにのりこめー^^

 

 ルルーシュ君はハドロン砲と絶対守護領域で無敵砲台だ!

 刹那君はセブンソードで空飛ぶ通り魔だ!

 俺は全身アクアビット(一部レイレナード)でコジマの使者だ!

 空戦?

 海戦?

 地上戦?

 皆コジマの洗礼を受ければ良いんだよ!

 俺のアクアビットマンは宇宙空間だって動けるのさ!

 抵抗する奴はパイルで穴開けて死ね!

 躱した奴はコジマの光に飲まれて死ね!

 堕ちた機体はただの鉄屑だ!

 堕ちてない機体は今すぐ叩き堕とす鉄屑だ!

 ホント シミュレータ内は地獄だぜ!フゥハハハーハァー!

 

 

 

 イラト婆さんにめっちゃ怒られた(´・ω・‘)

 

 

 

 

 

 

--(7)

 

 ゲーセンで良い感じにストレス発散した後はアインツ家で夕食を取り、実家の風呂を沸かし、いつでも入浴出来る状態にした上で凜さんから呼び出されている公園に向かう。

 イリヤと美遊は放課後からの延長でギスギスしっぱなしであるが…まぁ戦闘の邪魔にならないなら気にする事ではない、さっさと終わらせて寝よ。

 

 

 

 5分で負けて帰って来た。

 確かにさっさと終わったがそういう意味じゃないんだよなぁ…。

 焦げ臭いから風呂に入りたい。

 

 

 

 

 

 




 宜しければ感想や評価、誤字報告下さい。リクエストやシナリオ内の疑問なども歓迎です。


●アクアビットマン
 圧倒的なコジマ粒子の煌めき(PA整波性能19103&KP出力999)を持った最強の汚染兵器。
 当然の様にレギュレーション1.15仕様で襲い掛かるその姿は正に変態。







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第3話:空戦特訓

 第3話になります。
 今回はあまり修正を加えておりません。


--(1)

 

 接界(ジャンプ)すると既に上空では大量の魔法陣を展開した敵さんが\ステンバーイ/していらっしゃった。

 なにこれすっごいデジャヴ、主に青子さん的な意味で。

 「リアル弾幕ゲーとかホント嫌い」などとほざいている間に魔法陣から凄まじい勢いで砲撃が放たれた。

 嫌いって言った瞬間からこのザマだよ。

 対して超反応で障壁を展開するステッキツインズ…コイツ等やっぱ有能だわ、ランクA相当なら安心だね!

 

 甘かった。

 余裕ぶっこいていたら想定以上の威力と弾幕で障壁を抜かれた。

 貫通ダメージが来るとか聞いて無い、熱くて痛いとかホント嫌…あ、服が焦げてる…自力で防いどきゃよかった。

 士郎さんのお下がりで貰ったヤツがオシャカになった瞬間である。

 悲しい…。

 

 

 反撃に魔砲使い直伝のスフィアを撃ち込んだが無傷だった。

 というか砲撃が届かなかった、ほぼ同時に撃ち込まれた美遊の砲撃も同様。

 解説の時計塔ツインズ曰く『魔力指向制御平面』とかいう謎バリアで防がれているらしい。

 ナニソレ聞いて無い。

 

 あと砲撃の際に「やりますねぇ!」とか抜かしたルビーはきっとホモ。

 そして間髪入れずに魔術で竜巻を起こして逃げ場を封じるフードは鬼畜。

 はっきりわかんだね。

 

 「でも少し…この風…泣いています…」

 

 うるせぇぞルビー。

 

 

 

 

 

--(2)

 

 帰って早々ヒスったルヴィアさんがサファイアに当たり始めたがルビーに目を突かれて悶絶してた。

 やりとりの内容は魔法少女は無敵だの慢心だのといった事だった為男の俺は蚊帳の外だったよ。

 仕方ないね(許容の心)

 

 ルビー曰くあの砲撃は魔術を越えているレベル、失われた神代の魔術だと考えるのが妥当らしい。

 ……魔術越えてたかなぁ…?時間軸をズラして回避とか別の時間軸からの同時攻撃とかされない分大分優しいと思うけど…それにあの砲撃の雨だって気合い入れて障壁張れば十分に防げたと思うよ?

 

 何故か時計塔ツインズにドン引かれた。

 引くなら俺じゃなくてミスブルーにすべし。

 

 話を戻し、ルビーが攻撃陣も反射平面も座標固定型だから陣の上まで飛んじゃえば無問題という案を切り出してきた。

 ん?反射平面って何だ?…魔力指向制御平面の略?先に言え。

 

 しかし飛ぶねー…凄い事をさも簡単そうに言ってくれやがりますなーアハハ、それが出来れば俺だって青子さんとの模擬戦(弾幕ごっこ)で三途の川を幻視したりしてないだろうよ。

 "大人しく別の案を考えましょー"と思考を切り替えようとしたところ視界の端でイリヤが浮いてた。

 イリヤが浮いてた。

 浮いてた。

 こわっ。

 

 魔法少女は空を飛ぶもの!と本気で思っていたら飛べたとかなんとか…マジかぁ……。

 ルビーが魔法少女の力の元はイメージ(妄想)、更に言うなら思い込みだとドヤりながら解説。

 アレか、"常識に囚われてはいけないのですね!"ってヤツか…流石はカレイドステッキだぜ、便利どころかいっそ反則の域だわ。

 羨ましい。

 

 ………飛べない俺は大人しく反射平面ブチ抜き計画でも立てますか、丁度明日は休みだし。

 

 

 

 

 

--(3)

 

 午前の全てを反射平面対策の脳内会議に費やすハメになった。

 まぁ対策といっても魔力砲の術式を二十節程の詠唱に拡張+術式が破損しない限界まで魔力を注入し、高威力砲に仕上げて反射平面の処理落ちを狙うという手法だ。

 ゴリ押しにも程があるがコレが一番手っ取り早い筈。

 なにせ魔力の流れる方向を制御しているというなら、アレは魔力を水とした場合の河川の役割をしているワケだ。

 ならば話は単純であり、許容量を超える水…この場合は魔力を一度に捻じ込んで氾濫を起こしてやればいい。

 水害戦法でゴリ押しとか楽でいいわー。

 

 まぁ反射平面は破れてもフードに当たらなきゃ意味無いんだけどね。

 うーん、青子さんとの模擬戦(弾幕ごっこ)の時みたくこの手の砲撃を弾幕にして撃ちまくるとか?

 ………疲れるだろうなぁ……あーヤダヤダ。

 

 この先に待ち受けているであろう未来像に若干ブルーになっていると携帯が鳴り出した…知らない番号だが誰だろう…?

 ルヴィアさんだった。

 無論俺は番号を教えた覚えは無い。

 何処で知りやがりましたか貴女。

 

 『企業秘密ですわ!』

 

 通話中に大声を出すとは非常識な。

 

 

 

 

 

--(4)

 

 電話の用件は美遊に空戦特訓を施すから一緒に参加しないかというお誘いだった。

 凜さん側の俺を誘っても良いのだろうかと思ったがソレに関しては「NTRというヤツですわ!」とか言ってたっけ。

 流石はGAIZIN、無知って怖いわー…間違った日本文化とか知ってそう。

 

 エーデルフェルト邸のインターホンを押すと渋い叔父様ボイスで入場を許可された。

 そしてお出迎えしてくれたのはドヤ顔のルヴィアさんとメイド服を纏った美遊。

 因みに美遊は恥ずかしいのか半泣きである、何その羞恥プレイ。

 とりあえず一枚激写、俺の内に秘めた富岳は本日も絶好調の様だ。

 

 スマホを粉砕するのはらめぇ^q^

 

 データ破壊ではなく本体を物理的に粉砕してくるあたりに執念を感じる、しかも魔力砲で精密射撃とか…。

 なんだろ、俺への対応に関して少しずつ美遊から"遠慮"というものが無くなっている気がする。

 例えるとすれば久しぶりに再会した友人、或いは親族への扱いに近い。

 最初はどう接したら良いか分からないから距離を取るが少しだけ時間が経つと元に戻る…みたいな。

 まぁ実質的には初対面から数日しか経っていない為例え話として成立していないのだが。

 

 

 

 

 

--(5)

 

 スマホが\デストローイ/されるという悲しみを背負ったままルヴィアさんの所有するヘリに乗り込む。

 で、高度数百メートル地点から有無を言わさず蹴落とされた。

 青子さん並みにスパルタである。

 この状況でさほど怒りが湧かないのも青子さん的教育の賜物だろう。

 慣れってスゲー。

 

 豪速で落下する間に全魔力を物理保護、衝撃緩和、衝撃拡散、振動伝達率減少、耐熱防御、対摩擦壁、その他諸々に回して着地。

 地上に到達すると同時に轟音と衝撃波が辺り一面に撒き散らされ一帯を荒々しく塗り替える…爆心地みたくクレーターになっててヤベー。

 お陰で俺は無傷だが、全ダメージを母なる大地に押し付けたお陰でノーダメージだが。

 スマンなガイアよ、悪く思え。

 

 クレーターから抜け出すと何処からかイリヤが飛んできた。

 続いて美遊も落ちて来た。

 同じ魔法少女なのにこの差である。

 「しょうがねぇなぁ(悟空)」と落下速度やら摩擦熱やらで凄い事になっている美遊を受け止める体勢に入る。

 女の子が地面に叩き付けられるのを黙って見てるわけ無いでしょ(聖人)

 さぁ!俺の胸に飛び込んでおいで!

 

 

 腕と胸部全般の骨格を纏めて粉砕された^q^

 

 

 

 

 

--(6)

 

 青褪めた表情のまま硬直している美遊を余所にグチャミソなった骨格やら血肉やらを『復元』を用いた回復魔術で直す。

 青子さんの魔術刻印が羨ましくて勉強したのよね、流石に重症+意識不明からのオートリジェネとかは真似出来んが。

 ていうか意識無いのに刻印の力だけで自動回復とかおかしいでしょ。

 やっぱ青子さんってズルいわ。

 ……魔法使いの段階でズルいもへったくれも無かった。

 

 自己完結している間に本格的に治療を開始。

 損傷した部位が巻き戻し感覚で戻る為痛みも凄い。

 どの位痛いかと言うと損傷部位にミキサーを突っ込んで抉りまわす感じ。

 あまりの痛みで泣きそうになるわ。

 麻酔が足りてない証拠だな。

 でもグロさは足りてる、むしろ余ってる。

 お陰でイリヤがゲロった。

 ごめんね。

 

 完全回復を果たした所で美遊の無事を確認。

 怪我が無いようで良かった良かった。

 美遊は俺の負傷に関して気にしている様だがその必要はない。

 むしろ調子に乗って受け止めようとした俺が悪い。

 そして原因を作ったルヴィアさんはもっと悪い。

 だから全部ルヴィアさんが悪い。

 完璧だな!

 

 イリヤは自分がゲロった事に対して抗議して来た。

 グロさは据え置きでしょ(迫真)

 

 

 

 

 

--(7)

 

 ルビーがイリヤは『魔法少女は飛ぶもの』と考えているという点に着目してイリヤにイメージの元があるのではと推測。

 そこからなんやかんやあってアインツ家で魔法少女アニメの鑑賞会と相成った。

 興味が無い上影響も受けない俺は暇になると思ったが作中のキャラクターに対して一々突っ込みを入れる美遊が存外に面白かった。

 航空力学とか持ち出してきた時には爆笑しそうになるのをキラ様的忍耐力で堪えてたし。

 「だ…駄目だ、まだ笑うな…こらえるんだ…し…しかし…」みたいな。

 今度美遊に空想科学読本でも進めてみようかな?

 

 混乱し続ける美遊を見かねたルビーがイリヤを貶しながら魔法のコツを説明。

 一応アレでも褒めてるらしい、それもベタ褒めで。

 ありえん(ミズチ)

 

 なんかごちゃごちゃ語っていたが、最終的にルビーの『人が空想できること全ては起こり得る魔法事象』とイリヤの『考えるな、空想しろ』という超解釈でFA。

 

 うーんこの名言感。

 

 言われた側は意味不明も良い所のようだが。

 俺も理解出来ないし無理に分かろうとしなくても良いんじゃね。

 

 

 

 

 

--(8)

 

 まあ、なんだ。

 飛ぶとか無理です^q^

 物理的に無理。

 航空力学的にも無理。

 魔術的には可能かもしれんが新しい方面を勉強するとか時間的に無理。

 

 やっべ詰んだかも。

 

 

 

 

 

--(9)

 

 飛べなくても反射平面の上にさえ行ければ良いという前提で美遊と案を出し合う。

 

 魔力放出を利用したジェット噴射で飛ぶという案も出たが単純に距離が届かん。

 そもそも直線移動しか出来ない為弾幕の前では良い的になる。

 全身火傷 or 蜂の巣は決定ですよ(経験談)

 

 もういっそ高度を維持したヘリごと転移すれば良いんじゃないですかね?

 駄目?そっかー。

 

 

 

 

 

--(10)

 

 休憩に格ゲーをしていると美遊が二段ジャンプに注目、真似出来ないかという話になった。

 

 結論から言うと出来た。

 やっぱり航空力学を学んでるやつは違うな。

 発想力とかじゃなく実用性の有無を論点に持ってくるという意味で。

 俺も実際にやってみたが感覚としては空中に足場がある感じ。

 死神にでもなった気分だ。

 瞬歩とかしたい。

 

 

 

 

 

--(11)

 

 空戦問題も解決したので美遊をエーデルフェルト邸まで送ると庭の一角でルヴィアさんを発見。

 のうのうと紅茶飲んでたのがムカついたので砲撃を撃ち込みたくなる衝動に駆られたがグッと堪える。

 だって巻き沿いでエーデルフェルト邸の一角が倒壊して弁償とか言われたら支払えないですもん…。

 庶民にとってお金はプライド以上に大事なんです…。

 

 

 

 ………そういうの気にしなくていい貴族様羨ましい嫌い!!!!!

 

 

 

 

 




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●『復元』の魔術:蒼崎家が得意分野とする魔術。
 致命傷を負ってもこの魔術を行使すれば元の状態に回復する事が出来る。
が、麻酔効果は無い為再生の際には受けた痛みを逆再生感覚+スローペースで受ける事になる。
 更に魔砲使いの様に魔術刻印による自動再生能力は無い為意識を飛ばすと回復出来ずに死ぬ。
 いわば蒼崎版復元魔術の贋作兼粗悪品。







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第4話:vs フード & 金髪

 第4話です。
 後半は超真面目戦闘になるので苦手な方はブラウザバック推奨です。
 無理に閲覧された場合は頭痛や吐き気、ひどい場合は血便や吐血が起こり最悪死に至る場合がございます。
 ご注意下さい。

 ……シリアス戦闘って疲れる…。


--(1)

 

 夜になったので先日と同様冬木市内にある河川敷に集まる。

 今回は前回とは違い、行き当たりばったりのゴリ押しではなく役割を分担して行動するようだ。

 

 ・イリヤ:陽動と攪乱担当。

 ・美遊:本命の攻撃担当。

 ・俺:地上で反射平面の破壊と的担当。

 

 ……。

 ………ホワッツ?

 

 「間違ってもアンタは上がらないでよ、的なんだから」

 

 ……………ホワッツ?

 

 

 

 

 

 

--(2)

 

 かぁーっ!つれーわー!イリヤ達が反射平面越えてから全砲門が向いて来てマジつれーわー!かぁーっ!

 もう逃げ回るしかねーわー!しかも術式破壊して回ってるのに砲撃の密度がまったく変わってくれねーわー!かぁーっ!

 

 つらい。

 本当につらい。

 俺の事なんざ無視してイリヤ達とのドンパチに集中すればいいのに。

 アレか、さり気無く砲撃術式ごと反射平面ぶち抜いて嫌がらせしてるからか、そこんトコは指示なんだから大目に見てよ。

 スライム並みにぷるぷるしてチワワ的雰囲気を醸し出す。

 俺の熱い無害アピールをフードは……まるで気に留めていない。

 マジつれーわー!かぁーっ!

 

 弾幕シューティングの第二面が開幕した。

 マジでさっさと沈んでくれませんかね。

 

 

 

 

 

 

--(3)

 

 降りかかる魔弾の雨から只管逃げ回っていると美遊が叩き落とされた。

 お前は沈んじゃいかんでしょ…。

 で、地面に叩き落とされた美遊が「ろっくおん☆」と言わんばかりにレーザーポインターっぽいので"ピー"ってされた。

 しかも足を負傷してるから満足に動けないっぽい。

 …あー、これ頑張らなきゃいけないヤツだ。

 

 降りかかる魔弾を弾きつつ超スピードで美遊を回収し、勢いを殺さ無いままイリヤに向けて投擲。

 繋ぐ形で魔弾を放ち、意識を逸らさせた上で俺も空に上がる。

 ポジションの維持?

 役割分担?

 もう色々と破綻してるんだから許せ。

 

 イリヤ達に回復するよう伝え、反射平面を越えると同時に魔弾を展開。

 さぁ見るも懐かしい魔弾戦争の始まりだ!

 

 ……最近の根気が無いラノベ主人公は女子を守る為にトラウマを掘り返す俺を崇め奉るがいいよ。

 はぁ、つっら。

 

 

 

 

 

 

--(4)

 

 魔弾がびゅーん!障壁がパリーン!フードが転移!

 もっかいびゅーん!障壁がパリーン!フードが転移!

 

 ……転移ウザ過ぎワロエナイ。

 どれくらいウザいかというと某水銀蛇レベルでウザい。

 「メルクリウス超うぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」って叫びたくなるくらいウザい。

 具体的にどんな状況なのかと言うと…。

 

 ・魔弾戦争では俺のが上 ←天下無双

 ・でもフードはガードが超硬い ←鉄の女

 ・ガードごと潰す ←火力万歳

 ・転移で躱される ←死ね

 ・頑張る ←褒めて

 ・でも逃げられる ←悲しい;ω;

 ・超頑張る ←褒めて

 ・無限ループする ←は?

 

 こんな感じ。

 火力でガードごとゴリ押ししても逃げられる。

 襲って来る魔弾ごと叩き落としても逃げられる。

 転移先を読んで先手を打っても逃げられる。

 うぜぇぞオラァと魔弾を乱射するがやっぱり逃げられる。

 で、逃げに逃げを重ねられた上で偶にフェイントで撃たれる魔弾にぶち当たる。

 もうどうしたらいいのかわかんないんですけど。

 なんだこのクソゲー(おこ)

 

 フード「プークスクスwww」

 

 I’m going to fucking kill you. (訳:ぶち殺す)

 

 

 

 

 

 

--(5)

 

 激おこモードで魔弾を乱射するが悲しい事に当たらない。

 なので俺がフラストレーションを溜めている間に美遊が立てた作戦でフードをボコす事にする。

 何が"なので"なのか接点はまるでないがそこは気にいない方向で。

 まずイリヤが反射平面を利用した散弾で逃げ場を潰しつつ一瞬の隙を作る。

 続けて動きが止まったフードを上空で待機していた美遊が狙撃し、地面に叩き付ける。

 

 締めに俺が殴る蹴るの暴行よ…!

 

 「我が胸に燃ゆる怒りを、力に変えてッ!」とボロボロのフードをぶん殴ったり膝を逆方向に圧し折ったり「関節技(サブミッション)こそ王者の技よ!」ってしてたらカード化して消え去った。

 やっぱ戦闘は筋肉なんやなって。

 

 カレイド組と合流し、カードを見せて喜びを分かち合う…肉体言語が苛烈過ぎたのか二人に若干引かれた。

 作戦立案したのお前等じゃんかよぉ!

 

 …爆発音?

 

 

 

 

 

 

--(6)

 

 爆発音の方向に振り向くと時計塔組が金髪の通り魔にぶっ殺されてた…あ、生きてた。

 いっそ死んでれば放り出してやるのに…(マギー並感)

 ……冗談だ。

 

 どの道足手まといだけどな!と心中で叫びつつ美遊と作戦会議である。

 美遊の提案は二つ。

 

 ①速攻で金髪を潰す。

 ②隙をついて時計塔組を回収して即撤退。

 

 作戦を行う前の前提として美遊の槍…ランサーのカードなら一撃で終わるらしいが展開可能時間が数秒なのに加えて一度使うと数時間は使えないらしい。

 そして他のカード、先日戦ったライダーは単体では意味をなさず、キャスターはいきなり使うには危険が大きく、アーチャーは役立たずの産廃だそうだ。

 つまり実質切り札になりうるクラスカードはランサーだけという事、一発勝負にも程がある。

 

 必然的に②で行くしか無いな、①は②の進行上可能なら美遊のカードでブッ刺すという事で。

 時計塔組が傍に居るせいで火力を出し切れないのが難点だがそう言っていられる状況でもないので撤退戦を開始。

 俺が近接、美遊が遠距離から同時攻撃を行い、金髪がこっちに気を取られている隙にイリヤが時計塔組を回収して即接界(ジャンプ)というシンプルな作戦だ。

 

 身体強化で地面を蹴り、加速した勢いで懐に飛び込みバイザーに殴りかかる…が、当然の様に剣の腹で受け止められた後はカウンターの容量で逆に斬りかかられてしまう。

 振るわれる剣戟を紙一重で回避し、距離をとりつつ小規模の魔弾を放つも先日のライダー同様金髪に届く前に霧散させられた。

 またお前か対魔力…。

 

 俺が金髪から離れたことにより、射線を確保した美遊がマシンガンの如く魔力弾を速射する、しかし美遊の魔力弾も金髪の周りを滞空している黒霧に阻まれてしまう。

 更に金髪が上空に剣を掲げて黒霧を収束させ…振り下ろすと同時に俺と美遊に向けて黒霧を射出してきた。

 攻防一体かよふっざけんな。

 

 あまりの速度に体勢を崩した状態ではまともに対応出来ず不格好にその場を転がって回避。

 が、転がった先で回り込む様にして距離を詰めてきた金髪に腹を蹴り上げられ木の幹に叩き付けられる。

 衝撃で肺にある空気を全て絞り出し、意識を飛ばしかけるが更に追い打ちと言わんばかりに首を締め上げられ、再度木の幹に押し込まれてしまう。

 挙句イリヤの行動を勘付れて黒霧を飛ばされ戦意喪失モードにされるオチですよ。

 

 

 まぁ、お陰で密着状態ながら俺から意識が逸れたんですけどね。

 

 

 

 

 

 

--(7)

 

 「隙ありィ!」と黒霧を飛ばし終えた直後の金髪の顎を殴り上げる事で拘束を解き、上を向いた顔面をバイザーごと地面に向けて殴りつける事で体勢を崩させ、勢いをそのままに腹部に向けて全力の蹴りを叩き込む。

 蹴りそのものは剣の腹で防がれたがそれでも十数メートルの距離を吹き飛ばす事に成功した。

 続けて吹き飛ぶ金髪に密着し、そのまま殴る蹴るの押収を繰り出す。

 

 拳で剣を相手にする場合、恐ろしいのはリーチと殺傷力だ。

 得物を使っている分攻撃を当てられる範囲が広く、また打撃と違い『斬る』という効果がある為一撃貰うだけでも即死に至る可能性がある。

 ただし、拳も同様に剣に勝る部分がある。

 まず剣はリーチが柄から刃先までという制限があり、ギリギリの密着状態では上手く機能し辛いという事。

 得物を主体として攻撃を行う為、四肢を主体にして戦う相手と比べて柔軟性に欠ける事。

 そして、咄嗟の行動を行う場合、得物を介している分動きが単調になり安いという事だ。

 

 だから俺は金髪から一歩も距離を離さない。

 完全な零距離、引けば斬られるなら引かなければ良いという愚直すぎる策。

 拳の連打を重ね、距離を詰めたまま魔弾を炸裂させ、自身諸共爆発に飲み込む強引な戦い方。

 対魔力の所為で魔弾によるダメージは期待出来ないが、副産物として産まれる振動や衝撃を活かした捨て身の戦術。

 

 滅茶苦茶が相手なら、自分も滅茶苦茶をすれば良い。

 まともにやって勝てない相手ならまともじゃない戦いをすれば良い。

 常識をブッチ切った青子さんと何度も戦って分かった事だ。

 自分ごと魔弾を爆破させる事で衝撃を生み出し、体勢を崩した金髪の顔面を更に殴打する。

 振るわれる剣を出血する事も厭わずに掴み、がら空きである胴部に膝を入れる。

 独立した攻撃性を持ち、全身から放出して鞭の様に襲い掛かる黒霧を魔弾の爆風で吹き飛ばし、隙が出来た金髪に更なる攻撃を加える。

 

 どうせ傷は復元の魔術で治せるのだ、今現在どれだけ血塗れになろうと知った事じゃない。

 ともすれば重要になるのは『どれだけのダメージを受けるか』よりも『どのような痛みを受けるか』になって来る。

 肉弾戦による打撃や魔弾・魔力砲による熱・魔力ダメージは青子さんとの修練で"慣れている"為多少の痛みなら耐えられる。

 対して斬撃等によって生み出される切り傷は日常的に起こる裂傷や修練で受けるダメージとは違い殆ど受けた事の無い未知の痛みだ。

 どんな反応を取り、その結果どのような隙を生み出してしまうか分からない。

 

 だからこそ、例え自分ごと爆破しようが魔力砲に飲み込もうがそのような事態だけは絶対に避けなければならない。

 危険が迫れば即爆破、攻撃を貰う疑いがあれば即爆破、攻撃が避けられそうになっても即爆破。

 受けるダメージは全て自爆によるダメージに留め、復元による治癒を施しつつ魔弾を展開し、更に爆破しながらも殴り続ける事を止めない。

 爆発による衝撃は術者である俺がある程度指向性をもって制御出来る為、金髪の行動を妨害しつつ俺にとって最も効率の良い爆発を見舞う事が出来る。

 

 ――――――そして何より。

 

 「―――接続(セット)直流数紋(ディレクト)、一層から二十層まで用意、魔力提供、鏡面界中心に固定、循環、射角、術式、全工程安定稼働(オールグリーン)

 

 魔術師、魔術使いを問わず魔術を扱う者の殆どは。

 

 「魔弾形式(ツアープラン)遠隔収束投射(リモート・スターマイン)、全階層展開、全術式、連結起動」

 

 一手の中に幾つもの策を巡らせているという事。

 

 「ッッ!?」

 

 爆風と暴力の嵐にさらされながらも、金髪はバイザー越しに見えたある一点を凝視する。

 それは今居る鏡面界の中心、正確にはその中空。

 その場所に、途轍もない速度で青く、巨大な魔力球が形成され、ソレが更に肥大化していく。

 凝縮された魔力、収束された力の渦は魔力が凝縮されているというだけでプラズマを形成し、大蛇の如くのた打ち回らせる。

 

 今更気付いた所でもう遅い。

 しかし気が付いてしまったが故に生まれた本能的な動揺は決定的な隙を生む。

 更にそんな隙を見逃すほど、俺も甘くなった覚えはない。

 動きを止めた甲冑の襟を掴み、剣を振るう腕を掴み、河川敷の中心、鏡面界の中央へと背負投の形で投げ飛ばす。

 

 「接続(セット)一点斉射(ワンポイント)―――全回路、全階層、最大回転」

 

 青白く輝く光球の真下まで投げられた金髪は早々に体勢を立て直そうとする。

 しかし継続して与え続けられ、蓄積されたダメージがそれを許さない。

 そして青い光球は立て直し切れない身を射線に捉えられたまま―――

 

 「遠隔収束投射(リモート・スターマイン)全魔力解放(フルバースト)――――!」

 

 蹂躙という言葉すら生温い莫大な魔力の奔流を撃ち放つ。

 砲身から撃ち出された力の渦は発射の際に飛散した余剰魔力だけでも近場の吊り橋を破壊する。

 術者から遠隔で放たれる常識を超えた魔力砲、そして如何に対魔力であろうと貫通しうる術式構造と魔力量。

 それは目の前にいる金髪をあっさりと飲み込み、視界に入る全てを青く塗り替え――

 

 

 「約束された勝利の剣(エクスカリバー)

 

 

 ―――勝利を確信する間もなく、青い視界が黒く染まった。

 

 

 ……何で俺は②の作戦なのに正面から殴り合ってたんじゃろ…?

 

 

 

 

 




 宜しければ感想や評価、誤字報告下さい。リクエストやシナリオ内の疑問なども歓迎です。


遠隔収束投射(リモート・スターマイン)
 術者からかなり離れた場所から放つ超高威力の収束投射(スターマイン)
 主人公の神懸かった魔力の扱いと常識外れの魔術回路、莫大な保持魔力があったからこそ出来た反則技。
 でも極光反転カリバーには負けちゃう(ネタバレ)
 聖剣には勝てなかったよ…。






●主人公の戦術
 「自爆した方が軽傷って素敵じゃない?」という暴論に基づいた考えで構成された戦術。
 その実態は復元による回復に物を言わせたゾンビ戦術。






●旧カレイドライナー
 時計塔組の転身なんて無かった。







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第5話:あらすじ回収(半分)

 第5話です。
 これにて一期は終了となります。
 バサクレス戦を乗り越えられたので個人的には峠は越えられえたと思っていますがモチベーションが消し飛んでいるのでツヴァイを書くかはわかりません。

 英霊戦での縛りプレイ(物理無効)と十二の試練での縛りプレイ(耐性云々)を攻略するのが本ッッ当に疲れました……。
 というか燃え尽きました(真っ白)

 そもそもリアルが忙しスギィ!


--(0)

 

 「貴方は私の目になって、世界を見るの」

 

 「貴方は私の耳になって、世界を聞くの」

 

 「代わりに私からは安らかな眠りを上げる…貴方が終わる時まで、子守唄を歌い続けてあげる」

 

 「だから…」

 

 

 

 

 

 

 

 「貴方の世界(視点)を、私に見せてね」

 

 

 

 

 

 

--(1)

 

 なんか変な夢を見たんですけどぉ!

 しかも内容がホラー臭いんですけどぉ!

 起きぬけからからゲンナリである、気分は零シリーズの主人公…テンション下がるわ……。

 

 「ようやく起きましたわねッッ!!」

 

 ドヤ顔お嬢様ポーズを決めたクソお嬢(ルヴィアさん)を見て更にテンションが低迷した。

 いい加減にしないと殺すぞ(おこ)

 

 

 

 

 

 

--(2)

 

 ルヴィアさん曰く金髪の放った黒いのにぶっ飛ばされた俺は丸一日昏睡していたらしい、因みに金髪は美遊がぶっ倒した。

 で、その翌日にイリヤが自爆してアサシンのカードを回収したらしい。

 

 ……は?^q^

 

 更に日が進んだ今日はイリヤが魔法少女を辞退した事を伝えられた…思わず頭を抱えてしまう。

 あまりにも状況が進み過ぎている、キンクリとかそういうレベルじゃない。

 一日寝過ごしただけで浦島状態とかこれもうわかんねぇな。

 そもそも自爆ってなんだよ、アサルトアーマーか何かか。

 ボンバーマンの可能性もある。

 ファイナルエクスプロージョンだったら日本滅んでた。

 

 

 

 

 

 

--(3)

 

 顔見せは必要だよねとエーデルフェルト邸からアインツ家へと戻り丸一日帰らなかった事等を言い訳する……かなり心配させてしまったらしくセラさんは激おこ、リズさんからは平手、士郎さんにもやんわりと叱られてしまった。

 やはり言い訳に徹夜でレゴとか無理があったか……。

 

 今晩も外出する事を告げ、指定時刻になるまで部屋でゴロゴロし、時刻が近づいた所で外出の準備をしていると表情の晴れないイリヤから今日も戦うのかと聞かれた。

 そりゃね、俺の動機自体イリヤが心配ってのの他に土地が侵されるのが嫌ってのがあるからね…更に理由付けするなら美遊も心配だからな。

 後一回で終わるしそこまで気にする事じゃないっしょ、どの道今晩で終わりだ。

 

 未だ表情の晴れないイリヤの頭を小突き「そろそろ行く」と言い残してアインツ家から出る。

 真意はどうあれイリヤ自身が行かないと決めた以上俺からどうこう言うことは無い、言うつもりも無い、そもそも何も言えない。

 

 

 

 

 

 だって事情とか知らないんだもん☆

 浦島モードの情弱にフォローとか無理っす。

 

 

 

 

 

 

--(4)

 

 冬木の新都内にある高層ビルに集合し、屋上から鏡面界に転移したら黒くて大きい半裸に襲われました(現在進行形)

 ヤダ、なんか字面が卑猥…しかも血管っぽいのが赤く浮き出てるし…完全にご立派ァ!モードに突入したマーラ様ですわ。

 ……やっぱり卑猥物じゃないか!(偏見)

 とりあえず仇名はマーラ様で決定……流石にあんまりだから半裸で我慢してあげようじゃないか(自重)

 

 

 一瞬で迫る半裸に対し魔力弾で牽制するが意に介した様子も無く、そのまま突撃が迫る。

 突撃そのものは飛び退く事で回避したが続けて振るわれる丸太程の剛腕には対応仕切れず障壁を展開して防ぐ事に……障壁ごと防御した筈の右腕が砕けた^q^

 なにコイツつっよ。

 

 すかさず復元で治癒し、魔弾を乱射して距離を取るが屋上内をぐちゃぐちゃにするだけで半裸にはまるで効果無し、美遊の放つ対魔力特攻の魔力砲も完封された。

 

 ヤバない?

 近接戦は死地のクセに遠距離技無効とかヤバない?

 しかもフィールドが狭い=逃げ場がないとかいうオワタ式仕様、マジヤベーっす。

 サファイアが「宝具じゃ、宝具の仕業じゃ!」(意訳全開)と騒いでいるが要するに一定ランク以下の攻撃を完封する宝具が常時展開されている状態らしい。

 ………つまり近接技も無効の可能性が高い…?

 そんなの絶対おかしいよ!

 

 そうこうしている間に再度襲い来る半裸、速い・硬い・強い・デカイと三拍子どころか四拍子揃ったマッスルの化身が超スピードで迫って来るとか恐怖でしかない。

 突撃と同時に振るわれる剛腕にタイミングを合わせカウンターアタッコォ!……吹っ飛ばしただけでやはりノーダメっぽい。

 うぜぇ……。

 

 

 

 

 

 

--(5)

 

 時計塔組から美遊がランサーの限定展開(インクルード)で仕留めるので数秒だけでも半裸を停止させろとの指令が下った。

 難易度がルナティックを越えてギャラクティカなのですがそれは……そもそも近接戦は死地だって言ったじゃん、カウンターしたけど。

 

 「当たらなければどうという事はありませんわ!」

 

 当たったら砕けるけだとよ。

 

 

 「やっぱ時計塔滅ばねぇかな」とか愚痴りつつ馬鹿の一つ覚えで突っ込んでくる半裸の剛腕を受け流し、がら空きの胴部に掌底を入れ、続けて半裸に触れている掌から強引に魔力を捻じ込み、瞬間的に半裸の全身に行き渡らせる。

 霊体というのは紙と同じだ、紙は元になる繊維を水の中で絡み合わせて平たくし、脱水した後に乾燥させて作り上げる……要は細かな繊維を縫い合わせた上で水素結合で固めているのだ。

 更に紙が水に弱いのは繊維同士の水素結合の間に水が入り、繊維と水が水素結合してしまうことで繊維同士の結合が壊れしまうから。

 そして前述した通り霊体もこれと同じく全身を魔力という素材で構成し、縫い合わせ、更に別の魔力で水素結合の様に魔力同士を結び合わせている状態だ。

 ならば紙にとっての水の様に霊体の魔力結合に対して過剰魔力を送り込み結合を崩壊させに掛かればいい、流石にここまで精巧な作りの魔力結合をこの程度で破壊出来るとは思えないがそれでも一時的になら霊子構造に異常を起こさせる事が出来る筈だ。

 

 掌から捻じ込んだ魔力を脳天から足先まで到達した瞬間に一気に暴発させる。

 暴発させた魔力は結合の破壊とまではいかないものの半裸の魔力結合を弛緩させ、その一挙一動を遅延させ、最終的には数秒の間霊体その物を機能不全に陥らせ完全に停止させた。

 

 おら、これで要望通りだろ。

 喜べ、湧いて喝采するが良い。

 むしろ崇めろ、そして俺という存在を末代まで語り継げ。

 ……ちょっと盛り過ぎたかもしれん。

 

 そうしている間に美遊が停止した半裸に紅槍をぶっ刺さした、これで流石に死んだじゃろ。

 何はともあれこれで一件落着だ。

 (N)長く(K)苦しい(T)戦いだった。

 デレデレデェェェェン

 IGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA

 

 

 

 

 ………なんか半裸が再起動して美遊がぶっ飛ばされたんですけどぉ……。

 まさかの魔法カード死者蘇生である。

 

 ……何で死なねぇのコイツ。

 

 

 

 

 

 

--(6)

 

 時計塔組は「蘇生能力とか無理!逃げる!」(意訳)という事で美遊を担いでバックれるぽい。

 凜さんから「アンタも一緒に!」と呼ばれたが俺は無理だ。

 何故かって?

 タゲが俺に集中してるからだよ!!

 もぅゃだこの半裸ちょぅこゎぃ。

 

 美遊が完全復活するまでは鏡面界から出てているよう伝え「ここは俺に任せて先に行け!」の精神で陽動モードへ移行、時計塔組が離脱し半裸が俺のいる場所に向けて襲い掛かる直前に全身の回路に魔力を張り巡らし、同調させ、並列運用した上で全回路の回転効率、回転数、駆動率、伝達速度をそれぞれ調整し、出力を無理矢理底上げさせる。

 負担なんざ二の次だ、青子さんとの我血死闘(ガチバトル)でのみ使った全力中の全力を見せてやんよ。

 

 「"超過運用(オーバード)"、開始」

 

 その一節を言い終えると同時に全身の回路がある"一線"を越えた事を理解する。

 限界を越え、常に臨界以上で酷使され続ける回路は運用可能時間こそ極端に短いものの爆発的な力を生み出してくれる。

 制御が不安定はあるがこの手しかない、俺の限界が来る前に目の前の半裸を叩き潰す。

 

 半裸との距離は既に1mも無い至近距離。

 振るわれる剛腕、赤い双眸が見据えるのは俺自身。

 その腕を正面から殴り潰し、同時にその双眸の付いた頭を一息に捥ぎ取る。

 首から上が無くなった半裸は膝を突くが半裸自身が消滅する兆しも、鏡面界が消える兆しも無い……まだ来る(蘇生する)

 

 「接続(セット)、行使七層、交流数紋(オルタネイト)

 

 蘇生が始まると同時に捥ぎ取った頭を再生し始めた首元に強引に捻じ込みつつ術式を構築する、蘇生が終わるまで待ってやる道理なんて無い。

 そのまま手刀で胸を貫き心臓を抉り出して握り潰す。

 既に半裸の右腕は完全再生し、頭も8割程治ってしまっているが心臓を潰すことでまた一瞬動きを鈍らせる。

 再生した顔面を鷲掴みにし、内部の鉄筋までズタズタになった屋上の床に叩き付ける事で崩落を起こし、蹴りつける事で一気に階下まで叩き落とす。

 

 「魔弾形式(ツアープラン)収束投射(スターマイン)

 

 術式の構築を更に押し進め、再び半裸の首を捥ぎ取りにかかる…が、以前よりも更に硬さが増している。

 耐性が付いたか、それとも防御力が上昇したか…恐らくは前者、しかし耐性がついたとしてもその上から磨り潰してやればいいだけの事。

 完全に蘇生し、雄叫びを上げる半裸と殴り合う。

 圧倒的なパワーに翻弄されれ続けた先程までとは違い、拳と拳を正面から打ち付けあう。

 拮抗する力がぶつかり合い文字通りの接戦を繰り広げる。

 

 「回路(タービン)放て(ファイア)

 

 半裸の筋肉の動きを読み、剛腕が振るわれるのと同時に、瞬間契約(テンカウント)を構成する右腕をクロスカウンターとなる形で振り切る。

 砲身(右腕)から解放され、光弾と化した魔力は半裸の胸を穿ち、接触部位全てを消し飛ばし、鏡面界内で荒れ狂う。

 これで3度、美遊の限定展開(インクルード)も含めれば4度殺した事になるがまだ蘇生が始まる。

 まだまだ足りない。

 奴の自動蘇生(オートレイズ)は確かに破格の能力だがそんなチートを無制限に行える筈がない。

 限界は必ずある、だがそこに行きつくにはまだ遠い。

 

 全身に通う魔力を更に高め、既に臨界まで到達している回路を更に酷使する。

 限界を越えた回路から熱さと痛みが更に膨れ上がり、それと同様にに俺自身の力もまた更に膨れ上がる。

 耐性が何だと言わんばかりに英霊の頭を殴り潰す、これで5回。

 再び殺す事で更に耐性が増したであろう英霊、しかし俺自身も同様に力を増す事でその耐性を更に正面から潰しに掛かる。

 背部から魔力放出を行い、ジェット噴射の様に吹かすことで一瞬の間に英霊の背後をとり回し蹴りを放つ事で吹き飛ばす。

 吹き飛ばした英霊は無様に転がりながらも早々に体勢を立て直し再び俺に向かって来るが、一工程(シングルアクション)で構成された魔弾を迫る英霊の足元へ向けて撃ち、体勢を崩させた所で急接近し、顔面に膝蹴りを叩き込む事で更に英霊の勢いを殺した上で再度その頭を潰しにかかる。

 

 しかし耐性が更に上がっている為か少量のダメージしか与えられず、逆に全快した英霊に殴り飛ばされるのを辛うじて右腕で防ぐ。

 避ける事も受け流すことも叶わず、圧倒的な暴力を叩き付けられた右腕は潰れて使い物にならなくなるが、全開で魔力を使用し続けている現状では常時発動している身体強化や使い慣れた魔弾以外は碌な魔術は使えない為放置する他ない。

 残った三肢で戦線を維持する必要がある。

 右腕への魔力供給を取り止め、それ以外の箇所への供給を更に上げる……それと同時に英霊の胸から剣が生えた。

 

 

 英霊の背後から剣を刺したのは美遊だった……全身コスプレモードの。

 何故居るし。

 そしてその恰好はなんだし。

 ………コスプレはいつもの事でしたね。

 

 

 

 

 

 

--(7)

 

 「まだ終わってない」と動きを止めている英霊を蹴り飛ばす。

 この際美遊がこの場に居ることも今の美遊の状態もどうでもいい、気にするべきは半裸が6回殺してもまだ死んでいないという事。

 そして今の攻撃で美遊の刺した剣に対しても耐性がついたという事だ、面倒臭いにも程がある。

 美遊に半裸の特性と今以上に出力を上げない限り耐性の壁は突破不可能な事を伝え、左腕に魔力を集中させる。

 

 「再接続(セレクタ)交流数紋(オルタネイト)、一層から二十層まで用意、魔力提供、鏡面界中心に……いや、全域に固定」

 

 加えて右腕を潰された時に理解したが、俺の近接攻撃に対する英霊の耐性は既に手に負えないレベルになってしまった。

 つまり俺の近接攻撃ではもう英霊を殺し切る事は出来ない。

 

 

 「接続(セット)八芒星(オクタグラム)―――全階層使用。 全回路、全階層、最大回転」

 

 

 ならば別の手段で叩き潰す。

 俺の撃てる最大威力の魔砲で消し飛ばす。

 というかぶっちゃけ他に手が無い、悲しい事に。

 失敗したらどうなるかって? ハハハハハ……死ゾ(真顔)

 

 

 「接続解除(チェンジ)領域拡大(チェンジ)領域拡大(チェンジ)領域拡大(チェンジ)再接続(チェンジ)―――」

 

 

 美遊が俺の横に立ち黄金に輝く剣を構える、俺の左腕と同じく鏡面界中の魔力(マナ)が集約されていく。

 どうやら俺の一撃に合わせて美遊も全力の技を叩き込むつもりらしい、他に打つ手が無い身としてはありがたい事だ。

 そうこうしている間に美遊の持つ剣から光が溢れ、俺の術式から魔力が迸る。

 龍脈からの魔力で構成された鏡面界の恩恵により高速で構築された術式は既に臨界にまで到達していた。

 

 

 「――魔弾形式(ツアープラン)

 

 

 蹴り飛ばした先で蘇生を終わらせ、異変を察知した英霊が突進するかのように迫る――スマン、もう発射工程は終わってるんだわ。

 

 

 「大月蝕(ブラックライト)収斂投射(スターボウ)―――――!!!!」

 

 「約束された勝利の剣(エクスカリバー)―――――!!!!」

 

 

 溜めに溜められた俺の魔力と美遊の魔力が同時に解放され、二条の光が撃ち放たれた。

 放たれた光は射程内の空間を飲み、鏡面界内を文字通り蹂躙し尽くし、視界に入る物全てを消し飛ばす。

 

 

 そして収斂投射終了と同時に俺も全身から血反吐ぶち撒けて卒倒した^q^

 これだから嫌なんだよ……。

 

 

 

 

 

 

--(8)

 

 例によって例の如くエーデルフェルト邸で目を覚まし、時計塔組からの報告を聞く……まず英霊はイリヤと美遊が超頑張ってぶっ倒したらしい。

 あの半裸の英霊…なんと俺と美遊が放った一撃で消滅しながらも鏡面界を介して地脈から超強引に魔力(マナ)を搾取し、無理矢理霊核を再構築して死に掛けの俺と美遊を殺そうとしたっぽい、執念ってこえー。

 で、マジでピンチなところをイリヤと時計塔組のファインプレーで救出され、そのまま不思議な事が起こって英霊をオーバーキルしたとか。

 不思議な事って何だよと思ったがカレイドステッキ関連=魔法関連なのは確定的に明らかなので聞かないでおいた。

 面倒臭さがカンストしてるのは目に見えてるからね。

 

 で、血反吐をぶち撒けた俺の体の方だが魔術回路は半断線状態で暫くの間は使い物にならないだの、体中の血管が内側から破裂してるだの、至る所の筋線維がズタズタだの、内臓にもダメージがいってるだの、右腕がスプラッターと化してるだのと瀕死モードだったらしい。

 ……右腕以外は全て"超過運用(オーバード)"の反動なのだから笑えない。

 やっぱ使うもんじゃないねアレ、痛いし、死に掛けるし、使用中は頭もテンションも可笑しくなるし。

 因みに傷に関しては凜さんとルヴィアさん、オーギュストさんの三人が数時間治療魔術を掛け続ける事で何とか完治して貰えたらしい……特に右腕の再生には2日間完徹で取り組む必要があったとか。

 ……流石に少し申し訳なくなったので素直に謝ったら逆に謝り返された、なんか元々の責任は云々。

 向こうがそう思ってくれてるならそれで良い……のか?

 でもまぁ感謝するに越した事はないよね、向こうにどれだけ非があろうと世話になった事には変わらんし……。

 

 「あとアンタが倒れてから5日経ってるから」

 

 

 うっそだろお前。

 

 

 

 

 

 

--(8)

 

 「嗚呼、何でこんな事に……」とぶつぶつ呟きながら学校へ。

 既に午前の授業は大半が終了し、昼食前の授業に乱入する形になるがまぁ行かないよりはマシじゃろという思いと共に教室に入る。

 数日間休み続けた事に関する言い訳はとかは特に考えていない、困ったときは愛想が一番、他は知らん。

 最近のご時世は取り敢えず笑ってりゃ乗り切れるっぽいからな、スマイル=最強便利ウェポンなのは確定的に明らか。

 さぁ俺のエンジェル☆スマイルで魅了されるがいい!!そして全部許せ!!

 

 

 男子が狂乱して収拾がつかなくなった^q^

 何なのお前等ホモなの?

 

 

 

 

 

 




 宜しければ感想や評価、誤字報告下さい。リクエストやシナリオ内の疑問なども歓迎です。


●主人公
 無印最後の最後で凶暴性を露にし大英霊を消滅一歩手前まで追い詰めた半人前の魔術使い。
 第5話(実質6話目)で漸くあらすじの半分を回収ってどうなの。






超過運用(オーバード)
 第1話で語られた『魔法使いとの戦闘で島を一つ消滅させた力』、主人公の全力中の全力。
 使用の際は全身の魔術回路を同調させ、回転数や伝達速度といった回路の全パラメータを均一になるよう調整し、出力を一気に底上げする事で無理矢理限界以上のパワーを引き出させている。
 ストレートに言うなら魔術回路の限界突破。
 使用中は術者の十八番系魔術(主人公で言うなら強化や魔弾)といった類の魔術を一瞬且つ高レベルで使用する事が出来る。

 しかし制御が不安定な為発動可能時間は極端に短く、また負荷も尋常ではない。
 その上魔力の使用に関しても無駄が多く、浪費を体現したかのような使用方法でしか扱えていない為本来の60%程の力しか発揮できていない。
 復元による回復等が行えないのも制御仕切れていない事が原因。

 そもそも超過運用は『魔術回路の強制暴走』とも言えデメリットとの兼ね合いも考えると発動させる事自体が非効率であり、限界を越えた運用という面から見ても『安定した使用』という事はまず不可能。
 最大限の力を発揮するのであれば限界を越えさせるのではなく全ての回路を常に臨界状態で維持させるのが最良なのだが、難度がとてつもなく高い為妥協案として使用しているという裏事情もある。
 しかし妥協案であり難易度が下がるといえど極めて高水準な魔力コントロールが要求される事は変わりなく、その使用難度も一線を画す。

 因みに制御に失敗すると全身の回路が暴発して死ぬ。
 成功しても使用後は肉体の不可から血反吐を吐いて瀕死になる。
 どちらにしても実戦向きではない。






●主人公のクラスメイト。
 上条当麻とか赤馬零児とか桐ヶ谷和人とか不動遊星とかソラン・イブラヒム(刹那)とかルルーシュ・ランペルージとか色々いるカオスゾーン。
 決してホモではない。






●余談
 奥の手使用中の主人公は阿頼耶識覚醒状態の三日月inガンダムバルバトスをイメージして執筆しました。
 鉄血が放映してなかったら心折れてた^q^







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プリズマ☆イリヤ ツヴァイ!
第6話:単細胞生物系女子


 今回からツヴァイなので初投稿です。

 ツヴァイ一巻が書き易い→筆が進む→感想を読む→モチベが上がる→筆が進む。
 一週間だけ予定が緩んだのも理由の一つでしょうが上記の理由と合わせてかなり早く投稿できました、やったぜ。
 感想とか評価の力って凄い、主に外的動機付けがハンパ無い。

 書いてくれた方々、本当にありがとう。

 あと気付けば総UA数が10万突破してました、驚きで禿げそう。


--(0)

 

 半断線状態になっていた魔術回路が漸く復活した。

 俺が目を覚ましてから3日、最後の黒化英霊戦から8日も掛かるという無駄に長い閉塞期間のお陰でぶっ壊れたかと思いましたよ。

 

 よかったー^^と安心してたら時計塔組に呼び出された、何でも閉塞期間が余りにも長かったから異常が無いかを検査するらしい。

 体感的にはむしろ前より魔力の通りも良いし炉の調子も良いのか作れる魔力も前より増えたしで調子は最高なんだが……まぁお言葉には甘えておこう、無料だし。

 

 

 「……なんか前より増えてるわよ、回路」

 

 そげな馬鹿な。

 

 

 

 

 

 

--(1)

 

 極限に端折るが黒化英霊戦から一ヶ月が経過した。

 英霊共と殴り合っていた頃とは違い十分な睡眠を取れるようになったお陰か幾分か早起きになった気がする、起床時間も士郎さんより速くなったし。

 今日も布団という名の炬燵と並ぶ最強アイテムから脱するという偉業をなし、制服に着替えた後は目覚まし代わりに士郎さんを起こす。

 二人揃って朝食を取った後は朝練行きの士郎さんを見送り、洗い物を終わらせた後はイリヤを起こしにゴー……ちょ、近い近い。

 なんか寝惚けてらっしゃるのか顔が急接近して来たので口の中に氷をぶち込む、おっし目ぇ覚ました。

 

 光の速さで覚醒したイリヤに凄い文句を言われたがスルー安定。

 「全ては目覚ましガン無視で爆睡してやがった貴女の責任デース」とカンタンロンパをぶちかまし、ぐぬるイリヤに時計を見せる。

 現在時刻は8:15、朝礼時刻は8:30。

 イリヤは着替えてすらいないパジャマモード、しかも本日の日直担当である。

 

 絶望モードだけどまぁ頑張れや日直!(イケメンスマイル)

 俺?俺は赤馬君のリムジンに送迎して貰う約束してるから余裕でぇす!

 

 

 

 「この裏切り者ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」

 

 

 

 まるでセキュリティにタイーホされる直前のような怨嗟を受け流し、アインツ家から出発して赤馬君と合流、そのまま磯野…じゃなくて中島さんの運転するリムジンに乗せて貰い我らが学び舎へ。

 

 

 

 なんかリムジンから転身したカレイドツインズが見えたんですけお^q^

 

 

 

 仮にこれが原因で後々魔術の秘匿が暴かれても俺に非は無いからな?

 分かるな?

 分かれよ?

 

 

 

 

 

 

--(2)

 

 騒ぎ倒している一部の女子を後目に遊星君と遊戯王で遊ぶ、審判は織斑君で他にも赤馬君とか上条君とかのギャラリーが結構いる状況だ。

 外で遊べ?悪いが俺は両刀使いなんだ(意味深)

 

 「俺は魔法カード《ワン・フォー・ワン》発動、手札の《ボルト・ヘッジホッグ》を捨てて《アンノウン・シンクロン》を特殊召喚、そして《ジャンク・シンクロン》を通常召喚、効果で《ボルト・ヘッジホッグ》を蘇生、更に《ドッペル・ウォリアー》を特殊召喚、《ジャンク・シンクロン》と《ドッペル・ウォリアー》で《TG ハイパー・ライブラリアン》をシンクロ召喚、更に《ドッペル・ウォリアー》の効果で《ドッペル・トークン》を2体生成、《ドッペル・トークン》と《アンノウン・シンクロン》で《フォーミュラ・シンクロン》をシンクロ召喚、《フォーミュラ・シンクロン》と《TG ハイパー・ライブラリアン》の効果で2枚ドロー、更に魔法カード《死者蘇生》を発動して《ジャンク・シンクロン》を蘇生、《ジャンク・シンクロン》と《ボルト・ヘッジホッグ》で《ジャンク・ウォリアー》をシンクロ召喚、《TG ハイパー・ライブラリアン》の効果で1枚ドロー、《ジャンク・ウォリアー》、《TG ハイパー・ライブラリアン》、《フォーミュラ・シンクロン》で《シューティング・クェーサー・ドラゴン》をシンクロ召喚、ターンエンド」

 

 これがデュエルの最強進化系、ヒトリデ・ヤッテロ・デュエル。

 遊星君迫真のソリティアである、始めてやった時はあまりの長さに禿げるかと思った。

 どれくらい長いかと言うとソリティア中に学校の自販機で飲み物を買えるレベル、つーか買い終わって教室に戻ってもまだ続いてるし……。

 織斑君には審判料として炭酸飲料を渡し、俺も自分の分を飲んでいる間にやっと終わるのだ……んじゃまぁ俺のターンですね。

 

 「ドロー、手札の《シャドール・ハウンド》を通常召喚、速攻魔法《超融合》を発動、今召喚した《シャドール・ハウンド》と遊星君の《シューティング・クェーサー・ドラゴン》で《エルシャドール・ネフィリム》を融合召喚」

 

 「そんな事しちゃいけない!」

 

 チェーン組めない上にタイミングも逃すから《シューティング・スター・ドラゴン》も呼べないもんね^^

 

 ターン中に《エルシャドール・ミドラーシュ》と《M・HERO ダーク・ロウ 》を追加で召喚し、特殊召喚と墓地効果を徹底的にメタった上でボコボコにしてやった。

 

 やっぱ九期テーマは頭おかしい。

 

 

 

 

 

 

--(3)

 

 イリヤ達が嶽間沢の誘いで夏休みに海に行くっぽい。

 で、いってらっしゃーい、とか思っていたら俺も誘われた……ハハッワロス。

 俺も同行するとか男女比的にアリエナイ、単純計算で6対1だぜ?拷問かよ、いやむしろ拷問だよな、完全に狙ってるよな、やっぱ女子って怖いわ……。

 

 「違うから!!」

 

 イリヤがキレた、正にキレる若者状態だ。

 思考を読んでくるとか新人類かよ、ニュータイプだった場合は是非とも人類を導いて欲しいものだ、俺はイノベ派だが。

 ……なんか刹那君がガン見してくるんだがどうかしたんだろうか?

 

 更にイリヤの話を聞くと美遊のリクエストらしい、俺とイリヤが行くなら美遊も海に行くとか。

 …………何故俺をカウントしたし。

 イリヤだけで良いじゃん。

 スゲー仲良いじゃん。

 もう百合百合じゃん。

 ……はぁ。

 

 何故懐かれたのか本気で見当がつかない……が、せっかく向けられてる好意を無下にするのも何かな……仕方が無い。

 

 

 俺「海行き計画(オーシャン・プラン)───朋友議決開始(デシジョン・スタート)!」

 

 上条君「承認」

 

 桐ヶ谷君「承認」

 

 赤馬君「承認」

 

 織斑君「承認」

 

 遊星君「承認」

 

 

 俺「是は、俺を救う戦いである!!!!」

 

 

 そんな訳で男子組と共に夏休みの海行きが決定した。

 

 

 放課後になると校門を出た瞬間にイリヤと美遊がリムジンに掻っ攫われた。

 チラッと見えたのは見覚えのある金髪ドリル……いってらっしゃい、何の用かは知らんけど鏡面界騒動も終わったし俺も含まれてないから危険は無いっしょ。

 

 喧しい女子組を放置して帰路へつく……やっぱ平和って素晴らしい。

 

 

 

 

 

 

--(4)

 

 今日はアインツ家じゃなく久方ぶりに我が家に帰宅した。

 というのも自宅の方は週一間隔で掃除しているのだが、士郎さん曰く偶に使わないと色んな部分が劣化するらしいので二週間ほど前からなるべくこっちの家を活用する事にしているのだ。

 流石に水道やガスなんかのライフライン系統が死んだら笑えんし……。

 

 そんな訳で今日から数日間はこっちで過ごす、まぁカップ麺の買い置きもあるから夕飯には困らん、何より一人きりでフリーだから自由に出来る。

 正に気分は一人暮らしの大学生状態ですね!さぁ今日は時間いっぱいまでゲームを……。

 

 "ピンポーン"

 

 ……いざ遊ぼうと意気込んだ所でインターホンが鳴りやがった。

 あれだぞ?泣くぞ?

 最高まで高まったテンションを横合いから叩き折るとか人の所業じゃねーからソレ。

 

 宗教の勧誘だった場合は不審者として通報してやろう。

 新聞だった場合も同上。

 今時飛び込み営業なんて流行らないんですよ、小学生の家をタゲったその身を呪うがいい。

 

 なんてね☆

 

 

 

 

 

 

--(5)

 

 宗教でも新聞でも不審者でも無かった。

 ぶっちゃけイリヤだった、但し全身コスプレモードの。

 いつもの事ですね、格好は違うが今朝もそうだったし。

 肌が多少黒い気もするがそこら辺も気のせいだろう。

 普通ならもっとリアクションを取るかもしれんが…割と自然に受け入れる事が出来た。

 

 ……慣れちゃったか、コスプレ。

 

 慣れたく無かったな、コスプレ……。

 

 

 なんか変態の領域に片足突っ込んだ気がしたがきっと気のせいだ。

 そもそもコスプレ見るのに慣れたくらいで変態なら世のレイヤー様はきっと魔神的なサムシングに違い無い。

 やべぇ、超裁かれそう。

 百万回くらいゲザれば許して貰えるだろうか?

 

 

 すごいテキトーな事を考えつつイリヤから要件を聞くと、なんか泊めて欲しいらしい。

 えー…まぁいいけど食材無いから晩飯はカップ麺だけよ?それでセラさんから怒られるとか嫌なんだけど……。

 

 「なら食材を買ってくればいいじゃない、ほら、私も付き合ってあげるから。一緒に行こ♪」

 

 コイツこんなキャラでしたっけ……?

 

 

 

 

 

 

--(6)

 

 買い物に行くのは構わんから服装を何とかするよう伝えて財布を取りに行く。

 ……戻った時には既に私服になっていた。

 

 精々数秒程度だというのに早過ぎである、もしかしてさっきの格好も転身だったのだろうか?

 だとすればこの速さも納得だ。

 転身してた理由に関しては意味不明だけど。

 

 まぁ服装云々はもうどうでもいいのでとっとと食材を買いに行く。

 最寄りの八百屋でニラともやしを買い、その先にあるスーパーでベーコンと米、鶏ガラスープの素を買う。

 材料は揃ったので後は帰るだけ……なのだがイリヤが見当たらない。

 

 ……鯛焼きの屋台眺めてやがった。

 この後晩飯なんだから食えるワケないでしょ(ド正論)

 スマンが是非も無しと今は諦めて欲しい。

 あと俺は少し用事が出来たから先に帰っておいてね。

 

 

 ………予定外の出費が出ちゃったなぁ……。

 まぁ偶には良いか。

 

 

 

 

 

 

--(7)

 

 家に着いたので早々に調理を開始する。

 イリヤも手伝いたいらしいのでベーコンとニラを5センチほどの長さに切る作業を頼み、その間に俺は炊飯の準備を整える。

 終わった後はフライパンに油を引き、イリヤの作業が終わった所でベーコン→ニラ→もやしの順に十数秒の間隔を空けてフライパンに投入、そして炒める…この十数秒の間隔が実は結構大事だったりそうでもなかったり。

 そして炒めながら元々家にあったオイスターソースを大さじ一杯、買ってきた鶏ガラスープの素を小さじ二杯、最後に水を大さじ一杯入れて味付けを施し、再び炒め直せば……完成だ。

 

 完成した"俺式もやし炒め"だが結構いい出来だった、イリヤも大満足らしく御飯が進む進む。

 やっぱ炒め料理と白米のコンボは最強っすね。

 

 そんな感じでもやしと白米で腹を八分まで満たし、浴槽に湯が溜まるまでの間は二人でゲーム。

 湯が溜まった後は身に危険を感じたので先にイリヤを風呂へぶち込み、その後に交代して俺も入り十分に体を癒す。

 さて……。

 

 「2時までダクソですね」

 

 「寝ないの?」

 

 折角のフリータイムを活用しないとかありえない。

 

 

 

 

 

 

--(8)

 

 翌朝になるとイリヤはいなくなっていた。

 現在時刻は11時過ぎである、最早朝じゃない、そして寝坊なんてレベルじゃねぇ…しかも妙に気怠いし。

 そりゃイリヤもいなくなるわ、大人しく学校行くわ。

 

 取り敢えず今日は休むと遅ればせながらタイガーに電話。

 理由は体調不良でいいじゃろ、嘘は吐いてないし、実際体が重いし。

 つーか魔力がカツカツだ。根こそぎ無くなった感がある…怠さの原因はコレだろうか…?

 あと友人ズには事情説明のメールを送る、送らないと間違い無く見舞いと称して突貫して来るのでこの辺りは周到にしておく必要がある。

 さて、今日の昼飯は何にしますかねぇ…イリヤもいないしカップ麺でいいや、味噌のヤツな。

 

 「ただいまー」

 

 湯沸ししてたらイリヤが帰って来た。

 ただし窓から、しかも半裸で。

 ……。

 …………。

 …………………体冷やす前に風呂に叩き込んだ。

 

 

 

 窓から半裸の知り合いが湧くとか意味わかんないつらい。

 

 

 

 

 

 

--(9)

 

 今日こそフツーに登校する…というのも友人ズが玄関前を陣取ってやがったのだ。

 全然普通じゃないですね、俺ってそんなに休みそうに見えますか…確かに昨日は休みましたけども。

 

 「いや、ソリッドビジョンの試作運用の為に人員集めだが」

 

 自分の自意識過剰ぶりに泣きそうになった。

 むしろ情けなさ過ぎてゲロ吐きそうでぇす!

 

 ………今日?

 

 「今日」

 

 わぁい^q^

 

 

 放課後の予定が決定した。

 

 

 

 あとイリヤについてだが昨日の晩はウチに泊まらなかった。

 すこぶるどうでも良い情報ですね!

 別に多めに焼きそば作って後悔したとかないから。

 食費無駄にしたとかで嘆いてないから。

 

 ……な、ないから(震え声)

 

 

 

 

 

 

--(10)

 

 廊下で美遊 vs 女子組+担任教師という謎の構図が展開されていた。

 何だこれ。

 意味不明すぎる。

 取り敢えず触らぬ神に祟りなしという事で眺めているとまず始めに嶽間沢君が美遊の防衛網を縫う様にして突破。

 更に栗原が続き、その後を美遊が追撃、最後に森山とタイガーが走って行くという謎レースの開幕である。

 

 えぇ…何してんのアレぇ……。

 

 行動の脈略の無さにドン引きしつつも怖いもの見たさの感覚で後を追うと屋上で転身したイリヤとちょっと黒いイリヤが対峙していた。

 つまり眼前にイリヤが二人居る現状。

 

 

 増殖してらっしゃるとか本気で意味不明なんですけどォ!!!(マジギレ)

 

 

 単細胞生物系女子とか新し過ぎて人類が追いつける気がしねーわ。

 いや、この場合は先祖返りと言うか細胞的には退化している事になるのか?

 生物進化は謎が多いですね。

 まさに生命の神秘!

 人には決して解明できない神威の極地!!

 

 

 

 ふざけろ^q^

 

 

 

 

 

 

--(ex:Chloe)

 

 今日"私"という存在は産まれた。

 私という"自我"は10年前から存在していたけれど、それでも"一つの生"としての私は産まれたばかり。

 要は人生一日目と言っても差し支えない日だ。

 そんな記念すべき日を、仕方が無いとはいえ一人きりで過ごすのはなんというか…味気なく、少し寂しいと感じた。

 ほんの少しだけでも素晴らしい日にしたいと思った。

 そして気が付いた時には"彼"の家の前に居た。

 無意識の内にインターホンを押し、彼を呼んでいた。

 

 そこから先の体験は"私"にとって初めての連続だった。

 

 初めて人と会話をした。

 初めて買い物をした。

 初めて料理を作った。

 初めて食事を食べた。

 

 上げて行けばキリが無く、本当に大した事無いであろう出来事ばかりだけれど。

 私がこれから行おうとしている事を考えれば、それは凄く尊い事なんじゃないかと思う。

 

 「ほら」

 

 そんな事を考えながらソファで寛いでいる私の口に何かが放り込まれた。

 噛んでみると柔らかい生地が裂かれ、口の中が餡子の味で満たされていく。

 

 「……鯛焼き?」

 

 「正解」

 

 言いながら彼は自分の手にある鯛焼きを口に加える。

 ……買い物に行った時は諦めて欲しいって言っていたのに。

 

 「"今は"って言ったろ」

 

 そう言いつつ彼はそっぽを向き、自分の鯛焼きを本格的に食べ始めた。

 多分彼の言っていた"用事"というのはこの鯛焼きを買う事だったんだろう。

 照れ隠しなのか愛想が無いのかはわからないけれど…今私に向けられた感情は、間違いなく彼なりの"優しさ"なのだと思った。

 暖かい感情を向けられていると実感し、同時に心の柔らかい部分を彼に預けている事を自覚した。

 

 「……そっか」

 

 『過程を省いて望んだ結果を得る』

 私が持っている便利な"力"であり、私が"眠る"原因の一端ともなった力。

 その力が私の願いに呼応し、私をここに導いたのだ、我が事ながら今更気付いた事に少し恥じらいを覚える。

 "今日という記念すべき日を素晴らしい一日にしたい"…彼にとっては今まで通りの普通の日常なのかもしれないけれど、私の願いは間違いなく果たされていた。

 

 「……ありがとね」

 

 「ん」

 

 たった一言だけのやり取り、これでいい。

 今の一言に私の中の感謝を全て込めた、例え届いていなくても私は感謝を述べられた。

 それが今の私にとって、最大の満足だった。

 

 今日の事を、私は一生忘れない。

 "私"が産まれたその日は、間違いなく"特別な人"の傍で過ごせたという事を。

 

 

 

 

 

 




 宜しければ感想や評価、誤字報告下さい。リクエストやシナリオ内の疑問なども歓迎です。
 ……………感想下さい。


●増えた魔術回路
 実際には増えたのではなく放棄され、眠っていた回路が目覚めた。
 UBWに置ける士郎と全く同じ症状と言えば分かり易いかもしれない。

 つまりまた強くなったよ、やったね主人公!
 そもそも魔術回路は増やせないってそれ一番言われてるから。






●両刀使い
 インドア派とアウトドア派と併せているという意味。
 性的な意味で考えた人は手遅れです(無慈悲)






●主人公の手料理
 リアルにおける筆者の得意料理、文中のレシピそのままで作れるのでおすすめ。






●主人公の世界の遊戯王
 基本ルールはマスタールール3だがペンデュラム召喚が存在しない。

 EMEm「お楽しみは一人!この俺だ!」

 控え目に言って死ね。

 クリフォート「あの」

 セフィラ「僕達は」

 イグナイト「どうなるんですか」

 一緒に死ね。

 征竜「許された!」






●(ex:Chloe)について
 今回の最後は純粋に"彼女が産まれた日"に主眼を置いて書きました。
 折角産まれたのに事情を知る者からは警戒され、一般人や家族に進んで関わるわけにもいかず、英霊の力を持っているとはいえ着の身着のまま野宿生活というのは前々から結構辛いなと思っていましたので。

 まぁ多少の変化なら誤差だよね!







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第7話:彼女が受け入れられた日

 第7話です。
 GWがあったお陰でなんとか書き上げる事が出来ました。
 感想と評価の力って凄い、改めてそう思った。

 信じられるか?二巻の話なのに原作二巻の二割くらいしか絡まずに終わったんだぜ?
 女風呂回とかいう男子禁制話が憎い……。


--(1)

 

 イリヤが増殖したと思ってビビったが違うらしい。

 ちょっと黒い方はクロエって名前で従妹だとか、愛称はクロ。

 つまり単細胞生物ではないと。

 生物進化がトチ狂ったワケではないと。

 ホラー的なアレではないと。

 よかったー^^

 

 安心してたらイリヤが逃走してクロエも消えた。

 消えるって何だよ。

 透明マントかな?

 光学迷彩の可能性もアリ。

 或いは今まで見えていたのは全て幻影で実体の存在しない霊的な何かだったり……。

 

 

 ホラーじゃないですか(憤怒)

 

 

 

 

 

 

--(2)

 

 放課後になったので赤馬君達と一緒にレオ・コーポレーションに遊びに…じゃなくて実験の手伝いに向かう。

 話を聞くとバイト代も出るとか。

 最高だな。

 最新技術+遊び(実験)+バイト代という黄金コンボ、しかもゲームデバッカーみたくバグを捜すワケじゃ無くてただ遊んでいればいいという破格の待遇。

 イリヤから一緒にルヴィアさんの元に行くよう誘われたが余裕でキャンセルですよ。

 行く理由とか無いし。

 そもそも赤馬君とは約束してたし。

 

 そんな訳でソリッドビジョンシステム(試作)を運用するべくデュエルコートへのりこめー^^

 始めて体験したけどソリッドビジョンってマジで凄い。

 ブラック・マジシャンはイケメン!

 BMGは可愛い!

 スターダストは綺麗!

 ジャンク・ウォリアーは浪漫!

 ダーク・ロウはダークヒーロー!

 ネフィリム様は超デカイ!

 四征竜は圧倒的威圧感!

 ダークマターはラスボスの風格!

 

 

 サイコ・ショッカーさんの怖さが異常でチビりかけたんですけど(半ギレ)

 お化け屋敷に配置したら死人が出そうなレベルで怖かった。

 

 

 因みに一回だけ桐ヶ谷君とデュエルしたけど《増殖するG》を使ったら余りのキモさに二人揃って吐いた。

 もうゲロッゲロ。

 アレはヤバイ。

 一匹一匹を忠実に再現とかしなくていいです。

 サイコ・ショッカーさんが霞むレベルの恐ろしさだった。

 開発班が全力過ぎててヤバイ、もうちょっとマイルドに作って欲しかった。

 プレイヤーのSAN値を削る事に命でも掛けてるんじゃなかろうか……。

 

 「俺は手札から《飛翔するG》の効果を発動!」

 

 「桐ヶ谷ァァああああああああああああああああああああああああああッッッ!!!!」

 

 うわあああああああGが、Gが俺のフィールドに飛んで来て……あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!?

 

 

 

 神の力が無ければ即死だった(警告)

 取り敢えず桐ヶ谷君は無敵のライトニングで殴り倒しますか(ガチギレ)

 

 

 

 

 

 

--(3)

 

 桐ヶ谷君に怒りのライトニングスラッシュを叩き込んだ所で今日の体験会…じゃなくて起動実験は終了した。

 ホープ剣?何そのダサいネーミング。

 技名に関してはどうでもいいがソリッドビジョンはこの先回数を重ねて実験を繰り返し、ある程度の安定域を確保出来たら実用化に乗り出すらしい。

 完成した暁にはデモンストレーションとして市と提携して冬木一帯を利用した大規模なデュエル祭りを開催する計画もあるとか。

 それなんてバトルシティ?

 

 胸熱なんだけど一企業のデモンストレーションに街一つ使うってどうなのよ。

 しかもやってる事はカードゲーム。

 ……想像してみよう。

 

 公道だろうと関係なく繰り広げられるカードゲーム。

 出現するモンスター。

 鳴り響く騒音。

 ソレを眺める一般人。

 

 「通行人はどいてた方がいいぜ! 今日この街は戦場と化すんだからよ!」

 

 そして粋がるデュエリスト。

 

 

 

 

 

 迷惑ってレベルじゃなくてやーんなっちゃう^q^

 

 

 

 

 

 

--(4)

 

 家に帰るとイリヤ…じゃなくてがクロがソファでゴロゴロしていた。

 「何不法侵入かましてんだオラァ」と寛いでいるバカに帰り道で買った果物ゼリーを投げつけるが「いただきまーす」とか言いながら難無くキャッチして食べ始めるあたり運動神経はそれなりに良いらしい。

 

 それにしても本当に似ている、屋上でイリヤと居た所を見たお陰で肌や髪の微妙な色合いで差別化出来る様になったがそれでも見間違えそうになる。

 親戚とか絶対嘘だろ、双子どことか生き写しレベルじゃないですか。

 

 アハハーと笑いながら言うと「生き写し…まぁ間違ってないかな」とかのたまい出した。

 

 

 えっ^q^

 

 

 前に時計塔ツインズがイリヤと美遊を掻っ攫って行った先で龍脈がバーン、イリヤがドーンで魔力が云々、そこからなんやかんやあってアーチャーのクラスカードを核にクロが産まれたらしい。

 

 まさかの嘘から出た実である、嘘じゃなくてジョークだけど。

 というか言ってる事が意味不明すぎる。

 わかるわけがない。

 なぁにそれぇって思っていると私の聖杯としての力がどうこうとか言い始めた。

 

 聖杯ってなんやねん……。

 いきなりそんな新ワードを出されても困る、今までの話で魔術案件っていうのはわかりましたけども。

 面倒事は勘弁して欲しいんですけど……、とゲンナリしていたら別に面倒事を起こすつもりも誰かを傷つけるつもりもないと言われた。

 普通の日常を謳歌してみたいだけとか。

 

 

 じゃあどうでもいいっすね。

 折角産まれたんだから自由に自分のやりたい事をやれば良いと思うよ。

 

 パパッと結論を出して伝えると逆に困惑された……否定されたかったんだろうか。

 この場合俺が否定する=ぶっ殺 or 消えてなくなれェ!的な意味に通じてしまうんですがそれは……成程、これがドMってヤツか。

 ちょっと拗らせすぎじゃないですかね、流石の俺もドン引きっすよ。

 

 

 全力で偏見を使用していたらクロがおこモードに突入した。

 からかったのは悪かったが余裕そうに見えて直ぐ感情的になる辺り内心ではあまり余裕が無いのかもしれない、不安か焦りか、或いは何故自分が産まれる事が出来たのかも理解出来ていない事から生ずる無意識化からの恐怖心か。

 何にせよコイツの心理状態がかなり不安定である事は確信出来た。

 

 で、取り敢えず宥めながら話を聞くと何故こうも簡単に受け入れる事が出来るのかという話らしい。

 俺達は一ヶ月前まで同様にカードを核にし、全身が魔力で構成された黒化英霊と戦っていた、俺も何度も死に掛けた。

 その存在と同じ体に同じ力。

 それどころか知性を持ち、尚且つ鏡面界という領域に縛られる事無く行動する存在。

 姿形がイリヤと似通っているとはいえ内面は赤の他人どころか敵対するソレと同質の存在、危険度で言えば更にソレ以上。

 事情を知っている以前までと違い、事情を知った後にも関わらず何故そう簡単に受け入れる事が出来るのか、この部分で困惑しているようだ。

 

 

 まぁ言っている事も一理ある、確かに黒化英霊は脅威だったしクロの力が連中と同質であるという事も理解している。

 しかしクロの在り方は黒化英霊とはまるで違う、龍脈を狂わせるワケでも無ければ視界に入った相手を刹那的な判断で殲滅しに掛かる様な物騒なモノでもない。

 黒化英霊とは違って理性や知性といった部分が存在し、それが現代日本の一般的な価値観を持っているのであれば脅威性は一気に薄れると思う、この辺りは完全に俺の尺度だが。

 それにさっき『面倒事を起こすつもりも誰かを傷つけるつもりもない』って言ったじゃん、無害アピールされて尚食って掛かるつもりはないです。

 

 

 というか数日間一緒に過ごした間一度だって敵意も悪意も見せなかった相手に今更警戒心を抱けとか無理っす(極論)

 そもそもシリアスに考えるのが面倒臭い。

 ほのぼので行こうよ、もしくはギャグ時空。

 日常を謳歌したいんならそれくらい余裕っしょ。

 

 言いながらPS4を起動しPSstoreでセール販売していたBloodborneことブラボを開始。

 ブボーンとかいうクッソ格好悪いって略し方するヤツは極刑な。

 

 

 

 

 

 

--(5)

 

 翌週、宣言通りクロが転校して来た。

 ついでにタイガーがキモい。

 担任教師が自分の担当クラスに編入して来た女児に乙女顔で熱い視線を送るという地獄絵図。

 ヤバイっすね。

 

 何にせよ今日は体育の授業があるのだが怠いので木陰でゴロ寝して時間を潰す。

 いつもなら溌剌とした気持ちで体を動かしているが昨晩桐ケ谷君と上条君そして遊星の四人で夜通しACVDでマルチをしていた身としては些か辛いものがあるのだ、精神年齢が加速していても肉体年齢は小童ですし。

 

 日差しの温もりと風の心地よさに微睡んでいたが桂に起こされてしまった。

 もう少しで眠れそうだったというのに酷いヤツだ、一体何の用だというのか……話を聞くとドッジボール中にイリヤとクロが卒倒したそうだ。

 貧血かと思ったがイリヤの方はボールが顔面にダイレクトアタックして倒れたとか、という事は貧血なのはクロだけか。

 要するに桂は保健室まで様子を見て来いと言いたいらしい、完全に保護者扱いで笑う。

 まぁ笑いは笑いでも出てくる笑いは苦笑いなんですけどね。

 ……なんか『笑い』を使い過ぎた気がする、ゲシュタったら泣く。

 

 大丈夫だと思うがちょい心配なので保健室まで行くとクロの方は既に復活しており白髪保険医と会話していた。

 ……何で倒れてから10分もしない間に動こうとしてるんですかねこの戯けは。

 後ろから強襲し、「病人は寝とけやオラァ」と開いたベッドに投げ入れる、更に流れる様にして予め水にに浸けておいたタオルをクロの額に置く。

 「健康体は出て行け」とか抜かしてやがる白髪は無視だ、相手をしてもこっちのメンタルが磨り減るだけだし。

 クロもクロで倒れて直ぐに動くとか論外にも程がある、既に回復していようが全身が魔力体だろうが病人は安静にして置く事が常なのだ、最低あと一時間は寝ていて貰う。

 

 

 「イリヤちゃん目を覚まして―――!! ホラ、お兄ちゃんも連れtモゲェアッッ!!!?」

 

 空気を読まない虎の顔面にスーパー魔力パーンチ。

 魔力の乗った右ストレートはパァン!という強烈な打撃音と共に捉えたタイガーを5メートル程吹き飛ばした後に泡を吹かせて沈黙しさせた。

 士郎さんを連れて来るとかいうクロが居る現状ではクッソ面倒になる事をしでかした時点で有罪確定である、そこで寝てろ。

 そして一連の流れに脳が追いついていないのか、呆然と立ち尽くしている士郎さんを横目に転がっていた空き缶を拾う。

 そして笑顔で告げる。

 

 「教室に戻りますか? 家に帰りますか? そ・れ・と・も……」

 

 

 

 

 

 

 「アレ(藤村)と同じになりますか?」

 

 

 

 

 

 

 言葉と共に空き缶を引き千切った。

 

 

 

 

 

 俺の真摯な説得が功を成したのか士郎さんはとても素直に教室へ戻ってくれた。

 対話完了である。

 話し合いは何事にも替え難い人類の叡智だと痛感できるね。

 哀愁を漂う士郎さんの背中を見ながらそう思った。

 

 タイガー?アレは獣だから人類の叡智は適用外っす。

 獣狩るべし慈悲は無い(ヤーナム脳)

 

 

 

 

 

 

--(6)

 

 イリヤがエマージェンシーコールを飛ばして来たので何事かと思ったら給湯器が破損してた。

 新技開発してたら手元が狂って誤爆したそうな。

 何してんのお前。

 家の裏でするとか家族バレの可能性もあるのに何してんのお前。

 

 復元の魔術で直して欲しいとの事だが俺が復元出来るのは自分の肉体だけですよーと死刑宣告。

 そして士郎さんをウチの風呂に入れて女性陣はエーデルフェルト邸の風呂を借りればいいのではという救済措置を提案。

 正に落として上げるモードである。

 

 続けて給湯器の損壊に関しては家族が気付くまで知らない振りを決め込む事、そしてもし提案が却下された場合も絶対に余計な事を言わずにセラさん達の言う事に従う事を念入りに言い付けておく。

 イリヤは嘘が下手だからね、余計な事は言わないに限る。

 

 もし仮に口を滑らせて魔術バレでもしそうなものならルビーに記憶操作でもして貰え。

 IQが減る可能性がある?

 家族バレするよりか万倍マシだと思うんですよ。

 

 

 

 

 

 

--(7)

 

 給湯器損壊案件はイリヤの誤魔化しが成功したらしく士郎さんが風呂を借りに来たのを快諾するだけで解決した。

 まぁ予定調和ですね。

 

 で、士郎さんが帰って数分後にクロが俺の自室に侵入していた。

 これは予定外ですね。

 

 この前といい今回といいどこから入って来てんだコイツ(真顔)

 ……ま、どうでもいいか。

 今まで害が無かったんだから今回も害は無いだろうし。

 

 用を聞くが今夜一晩泊めて欲しいだけらしい……うん、知ってた。

 まぁこんな時間に来る辺りそれくらいしか用は無いよね。

 謹んで了承すると同時に二人分のホットココアを作り、一緒に飲む。

 クロは自分の分も用意されていた事に何故か驚いていた……俺ってそんなに利己的に見えるのかしらん。

 少しだけ悲しいぞフォルア。

 

 「あーいや、そういうんじゃなくて……アナタはちゃんと私を見てくれるんだなって……」

 

 そりゃ目の前にクロが居たらクロを認識する事は簡単っすよ。

 え、意味が全然違う?

 じゃあわかんね^q^

 

 

 

 

 

 

--(8)

 

 翌朝起きるとクロはいなくなっており、学校にも来なかった。

 まぁ前に泊めた時も寝てる間にいなくなっていたし今回も暫くしたら出て来るでしょ。

 そうこう考えながら放課後を迎えると今日は部活がなかったのか士郎さんが一緒に帰ろうと言って来た……そういえば二人だけで一緒に帰るのも随分久し振りな気がする。

 勿論了承した。

 

 

 帰り道の話題は殆どアインツ家における士郎さんの愚痴で終わった、やはり女性複数に対して男一人と言うのは随分と堪えるらしい。

 大変だなーと思うが思うだけってのもなんかなー……俺もそろそろアインツ家に帰りましょうか?(提案)

 前にもセラさんから子供一人は心配だからまたこっちに住まないかって誘われましたし。

 

 士郎さんからまるで救世主を見るかのような目で見られた。

 ははは、苦しゅうない苦しゅうない。

 

 アインツ家に到着次第「今日からまた暫くお世話になります」という事をセラさんとリズさんにお願いし、夜まで士郎さんと遊んでいると凄い久しぶりにアイリさんが帰って来た……イリヤとクロを引き連れて。

 ……ヤバくね?

 

 「家族バレしてるじゃないですかー」と戦慄しているとイリヤからクロ関係の事と魔術関係の事が全バレした事をコソッと伝えられた。

 ………つまり鏡面界騒動についても全バレした可能性も高い………?

 

 嘘だと言ってよバーニィ(迫真)

 

 

 

 ……でもまぁ、特に波乱も無くクロも受け入れられてるし……一応ハッピーエンドチックなら良いか。

 

 "家族"と触れ合っているクロを見ながらそう思った。

 

 

 

 

 

 




 宜しければ感想や評価、誤字報告下さい。リクエストやシナリオ内の疑問なども歓迎です。
 ……………感想下さい。


●ソリッドビジョンシステム
 大脳の記憶領域になんとかかんとかしているシステムな為、システムとしては劇場版遊戯王に登場したパワービジョンに近い。
 その為凄まじくリアルであるがその分ホラー系のカードは本当に怖い、モノによっては失神するレベルのカードも存在する程リアル。






●《増殖するG》《飛翔するG》
 ソリッドビジョン中に使用するとプレイヤーも相手プレイヤーも盛大にダメージを受ける手札誘発。
 精神攻撃は基本を体現したある意味最強のカード、ソリッドビジョン中では安易に使用してはいけない(戒め)。






●怒りのライトニングスラッシュ
 ホープ剣スラッシュことホーケースラッシュなんて無かった。






●クロの発言の意味
 「あーいや、そういう…(略)…見てくれるんだなって……」の部分。
 クロの正体を知りながら警戒も否定もせず、唯一彼女の存在を肯定的に受け入れ続けた事に対する彼女なりの主人公への賛辞。
 主人公からすれば平常運転にも程があるので伝わる筈が無かった。






●嘘だと言ってよバーニィ
 バーニィって誰だよ。






●"家族"と触れ合っているクロ
 誰がどう見てもハッピーエンド。







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第8話:怪物には怪物をぶつけんだよ

 遅れまして第8話です。
 7/12には主人公設定の投稿と活動報告にて今後の方針を投稿しようと思っていますのでそちらもご覧頂ければと思います。

 他キャラ視点で書くのスゲー面倒だったゾ。


--(1)

 

 「立場をはっきりさせておくべきだと思うの!」

 

 朝食時、睡眠中である人様の顔面を引っ叩いたクレイジー銀髪ロリがそう言い放った。

 叩かれた理由は完全に不明である、というか叩かれた衝撃で起きたようなもんだし。

 俺としては立場云々の前にシバかれた理由の方を教えて頂きたいんですけど(おこ)

 

 なお立場云々に関してはイリヤ曰くクロも家族になったなら家庭内ルールの他に力関係も最初に取り決めておいた方がいいという事らしい。

 男子の立場が弱いのはわかりきってるんで俺と士郎さんからすればどうでもいいなんてレベルじゃないんですけどね。

 アイリさんの書いた力関係の図も下記の通り底辺だし。

 

①アイリ

―――神の壁―――

②キリツグ

―――親の壁―――

③イリヤ

―――お嬢様の壁―――

④セラ リズ

―――メイドの壁―――

⑤シロウ

―――兄の壁―――

⑥マイネーム

 

 予想通りのクソザコですなぁと男女比の影響力を痛感する。

 我が家の方で士郎さんとホームシェア出来ればそんな事も気にしなくていいんだがなぁ……。

 ……。

 ………。

 すればいいじゃん、ホームシェア(名案)

 姉だなんだと言い争っているイリヤ達を後目にそう思った。

 

 というかカースト制で表すって地味に酷くない?

 

 

 

 

 

 

--(2)

 

 お引っ越しタイムだオラァと士郎さんと共に家具や雑貨等を俺の家に移動させていく。

 何故かって?

 士郎さんと一緒にアイリさん達を説得したからかな。

 もう全力だった。

 どれくらい全力かというと表情筋がぶっ壊れるレベルで全力。 

 詳細については端折るが原稿にすれば40頁分に及ぶ交渉戦が行われていたとだけ言っておこう。

 最終回どころか劇場版レベルでしたわ。

 『絶対に負けられない戦いが、そこにはある(キリッ)』みたいな。

 

 そんな訳で『好機逸すべからず』『今日なし得ることは明日に延ばすな』という素晴らしいことわざの元今日は士郎さん共々学校を休んでワンルーム分の引っ越し作業である。

 つっても余り部屋を掃除してそこに士郎さんの荷物を持って行くだけの簡単作業なんだけどね、箪笥とかの重い家具も魔力使えば難無く運べるし。

 勿論限度はあるから鍛えてるからって言い訳が立つ程度に抑えなきゃいけないんだけど。

 

 箪笥「ベキィッ!」

 

 士郎「( ゚д゚)」

 

 ヤベッ、力加減間違えた。

 

 

 

 

 

 

--(3)

 

 時刻は丁度午後辺り、多少しくじった部分もあったがなんとか終わらせる事が出来た。

 冷蔵庫から出した麦茶を「キンキンに冷えてやがる……!!」と五臓六腑に沁み渡らせながら味わっていると当麻君からメールが来た。

 件名は『マジやばくね』本文は無く動画が添付されているだけのようだ。

 

 再生してみると奇天烈な頭髪から始まり続けて謎のツンデレアピール、締めに缶ジュースを中身の入ったまま握り潰し中身をぶち撒けたイリヤが映っていた。

 しかもこの一連の動作が休み無しで映され続けるという地獄絵図、俺はおろか一緒に見ていた士郎さんすらもドン引きである。

 

 「マジやばくね」

 

 意図せずして漏れたであろう士郎さんの言葉が俺の心境を物語っていた。

 

 

 

 

 

 

--(4)

 

 調理実習の時間だオラァ!

 実習内容はパウンドケーキ、レシピも材料も揃っている上に調理自体も簡単極まりないがだからといって手は抜かない。

 むしろ最高のパウンドケーキを作り上げて他の班との格の違いって奴を思い知らせてやろうじゃないか。

 何故そこまで気合いが入っているのかって?

 勝負事になったからだよ。

 

 朝のHR前にイリヤとクロが競い合いを宣言し、俺が審査員になる予定だったのだが勝った側には俺が一つだけ命令を聞かなければならないという理不尽ルールだったので急遽参戦した次第。

 ルールを『勝った側が負けた側の内一人に公序良俗に反さない範囲で命令出来る』という内容に改正し、審査員の座は公正かつ平等な判定が出来る美遊にお願い……しようと思ったが美遊も参戦したいと言い出したので零児君に頼む事にした。

 

 A班:イリヤ、嶽間沢、栗原

 B班:クロ、桂、森山

 C班:美遊、篠ノ之、吹寄

 D班:俺、一夏君、結城

 

 A班はほぼ見えた地雷、B班は桂がいるお陰かマイルド、C班は戦力過多、我等がD班は俺を除けば優秀な人材なのでまぁ問題なかろう、なにせ男子のプライドを圧し折って女子である結城に救援要請をしたのだから。

 さぁ、戦力確認も終わった所でいざ尋常勝負といこうか!!

 

 

 零児君「判定するまでもなくC班」

 

 

 でっすよねー^q^

 

 

 A班:ナツメグ等が投入された論外。

 B班:可もなく不可も無くを貫いた期待通りのマイルド。

 C班:ウェディングケーキという調理テーマからぶち壊しにかかる変態。 勝てるわけが無い。

 D班:パウンドケーキとしての完成度は高かったがウェディングケーキを引っ提げたC班に対抗出来るわけがなかった。

 

 で、美遊の命令なのだがタゲが俺に向いた。

 「何を言われるか予想できねぇぞヤベーッ」っと思っていたが都合の良い日に一日だけ俺の家に泊めて欲しいという内容だった。

 

 軽い内容で良かったーと胸を撫で下ろすが美遊は本当にそれで良かったのだろうか?

 しかも家には士郎さんも居るから居心地が悪いのでは……別に構わないと言われた。

 マジかよ。

 なんか悪い気がしたので美遊が泊まる際には出来る限り言う事を聞くと約束しておいた。

 多少なら無茶振りも可。

 まぁ多少だからあんま期待しないでおくれやす。

 

 

 

 

 

 

--(5)

 

 パウンドケーキ案件から更に数日が経った。

 今日は放課後から刹那君とガンプラバトルの模擬戦である。

 俺の機体はガンダムじゃなくてACだろって……?

 ガンプラバトルは自由だって三代目メイジンが言ってたゾ。

 

 刹那君のカスタムエクシアが射程に飛び込んで来た所で即アサルトアーマーをぶっぱ。

 更にコジマの光に飲まれた状態のカスタムエクシアに向けてコジマキャノンをぶち込み一息の間で撃墜する。

 これで23回目の撃墜だ。

 

 傍に控えているチーム顧問のイアンさんから「容赦ねーな」との言葉を頂くがいかに近接特化とはいえ自分からキルレンジに飛び込んでくるのが悪い。

 そもそも刹那君の操縦技術がどれだけ優れていようと特化型機体の出来る事は汎用機に比べると圧倒的に限られているのだ、そういう機体はちょっと戦術を組めば簡単に潰せる障害でしかない。

 というか多少の操縦技術の差や機体性能の差はメタの理不尽で叩き潰せちゃうのよね。

 

 イアン「お前の機体もPA整波性能とKP出力特化の変態構成じゃねぇか」

 

 俺のは浪漫に生きてるから良いんだよっ!!(暴論)

 しかもレギュ1.15仕様な上ガンプラバトルはアセンブルの自由度が本家ACfaよりも遥かに充実してるから魔改造し放題だし。

 今の構成だと実質汎用機みたいなもんだし。

 アセンブルに関してはアンサングを組んでも重量過多にならないどころか積載量が余るくらいの自由度と言えば伝わるだろうか?

 

 大量の遠距離攻撃を無敵のプライマルアーマーで防ぎつつ一方的にコジマキャノンやプラズマライフルを叩き込む理不尽さと快感は形容し難いものがある。

 それ以前に適当にクイックブーストを吹かしてるだけでも余裕で避けれるし。

 近接戦も多段クイックブースト状態で掠めるようにKIKUをぶち込んでやれば殆どの機体はアッー!ってなるから無問題。

 伊達にアンサラーを叩き落とす火力はしてないぜ。

 いざとなったらアサルトアーマーでフィールドごと消し飛ばせばいいし。

 やっぱコジマの光って至高だわ。

 

 コジマキャノンを溜めながらオーバードブーストを吹かして距離を詰め、再出撃したカスタムエクシアにゼロ距離ぶっぱを浴びせながらそう思った。

 

 

 あぁ^~汚染物質がぴょんぴょんするんじゃぁ^~

 

 

 

 

 

 

--(6) 

 

 結局アレから50戦以上も続けてしまった。

 イアンさんが止めてくれなければいつまで続けていた事やら……というか刹那君がしつこ過ぎる。

 50回以上倒されてなお続けようとするとか正気の沙汰じゃねぇぞ、今思えばノリノリで付き合っていた俺自身もどうかと思うが……勢いって怖い。

 

 

 そんな至極どうでもいい事に思いを馳せつつ帰路を辿り、我が家とアインツ家、エーデルフェルト邸等の並ぶ宅地の街路まで着いた所で、妙な違和感を感じた。

 違和感と言うか気持ち悪い感じ、なんかザワザワする。

 

 原因はまずエーデルフェルト邸から漏れる僅かな魔力の残滓。

 続けてほんの僅かに体を圧す威圧感。

 そして最後に認識阻害の掛けられている筈のエーデルフェルト邸から感じ取れる微量ながら明確な衝撃と破壊音。

 ……絶対面倒な事になってる(断言)

 

 後々に何かしらの影響が合ったら困るから介入させて貰いますけどそろそろ迷惑手当てあたりくれよなー、とか思いつつ門を開ける。

 

 

 ………ウチのロリっ娘三連星が見知らぬ不審者にボコされていた。

 

 こいつ、今すぐ殺さなきゃ(使命感)

 

 

 

 

 

 

--(ex:Miyu)

 

 何が起こったのか理解出来なかった。

 イリヤから託されたカード、その真価を発揮し、目の前の敵を確実に倒す筈だった。

 結果は違う。

 発動させた筈の宝具は強制的に解除され、私は地面に伏せていた。

 確実な勝利を決める筈の奥の手が一瞬で攻略されてしまった。

 

 「美遊!後ろ…!」

 

 「あ……っ!!」

 

 クロの警鐘に意識を戻し、同時に原始的な危機感を覚えるも既に手遅れ。

 敵は既に距離を詰め、最後の止めを刺そうとしている。

 体を動かし距離を取ろうにも、足掻きにすらならない絶望的な状況。

 

 (やられ……っ!!)

 

 『やられる』そう確信した瞬間。

 私と敵の僅かな間合いに一つの影が割り込み、眼前に居た敵を弾き飛ばした。

 

 「また新手……っ!!?」

 

 弾き飛ばされつつも体勢を立て直し、いい加減忌々しいと顔を歪める敵、その視線の先。

 

 

 「…生きてる?」

 

 

 日常会話の様な軽い声色と共に、私と敵を遮る様にして"彼"がいた。

 

 「美遊、動けそう?」

 

 「え、あ…うん、けどイリヤとクロが……」

 

 「……そっかー」

 

 返答しつつ彼はボロボロのイリヤとクロの姿を確認し、「フゥー…」と目を閉じながら息を吐く……そして。

 

 

 「じゃあ二人を連れて適当に離れてて」

 

 

 言葉と共に目を開き、地面を踏み砕くと同時に敵へと跳んだ。

 

 

 

 

 

 

--(ex:Bazett)

 

 協会からカード回収任務が再発行され、私は再び冬木市へと赴いた。

 カードを回収する上で障害となったエーデルフェルトの現当主とその執事は打倒した。

 援軍であろうアーチャーのカードと同種の力を扱う少女とゼルレッチ卿の礼装を持つ少女達も討ち果たした。

 

 あと二枚、アーチャーとライダーのカードを回収するだけで終わる。

 任務は完遂される。

 その最後の締めとも言えるべき盤面で……ソレ(・・)は現れた。

 ソレは、未だ幼い少年だった。

 年齢は恐らく少女達と同年齢、比較的整った顔立ちに艶のある黒髪と無機質さを感じさせるガラス玉の様な青い瞳。

 蒼い少女への攻撃を妨害した事から考えるにこの少年も敵の援軍。

 戦力で考えれば蒼い少女がライダーのカードを使用した事と同様にこの少年もカードを使用する可能性は十二分にある他、ゼルレッチ卿の礼装の様な特殊礼装を所持している可能性も否定出来ない。

 しかし七枚のカードの内五枚は私が所持し、残る二枚は二人の少女が別々に所持している以上彼がカードを握っている可能性はゼロ、加えて先程私を妨害した際も礼装等を起動させた上で強襲した方が効率が良いにも関わらず使用した形跡が見られない事からそういった礼装を所持している様には見受けられない。

 つまり完全な丸腰、であれば如何ほど魔術が扱えようと打倒する手段は余るほどある。

 

 

 

 

 筈だった(・・・・)

 

 

 

 

 弾丸の様な勢いで迫る少年に一瞬で間合いを詰められ、殴り飛ばされた。

 反応が遅れた?否、防御が間に合わなかった?否、踏ん張りが利かなかった?否。

 防ぎっ切ったにも関わらず、体勢が整っていたにも関わらず…純粋な威力に押し負け、ガードの上から殴り飛ばされたのだ。

 何の変哲もないただの子供に。

 

 「何っ……!?」

 

 その事実が理解出来なかった。

 疑問に思ってしまった。

 そして疑問は精神を揺さぶり、揺らいだ精神は無意識的な不安を呼び起こし、そして……。

 

 「後ろッッ!!!?」

 

 不安は決定的な隙を生み、受け身を取った直後に回り込んだ少年から抉り込む様な蹴りを入れられ、倒壊したエーデルフェルトの邸宅に叩き込まれる。

 蹴りは的確に脇腹を捉えており、魔術で強化した肉体が内臓まで悲鳴を上げる程のダメージを与えられた。

 そこまでされて、漸く冴えて来た頭が自信の過ちに気付く。

 

 何がただの子供だ、本当にただの子供であれば蒼い少女への攻撃を妨害された時から吹き飛ばされる筈が無かった。

 否、妨害されること自体無かった筈なのだ。

 加えてカード回収に関わっていたとあれば黒化英霊との戦闘は避けては通れない、つまりこの少年も黒化英霊と刃を交えた可能性が十分に存在する事になる。

 

 『特殊な礼装も、宝具級の切り札も無く、ただの魔術だけで』

 

 その事実がどれ程驚異的であるか理解する。

 丸腰という事だけで無意識に油断していた己を叱責し、これまで戦って来た者達以上の脅威として再認識する。

 『次は無い、もう油断はしない、同じ失敗は有り得ない』そう自身に言い聞かせ、コンディションを整えると同時に―――。

 

 「接続(セット)交流数紋(オルタネイト)――」

 

 「ッッ!!?」

 

 詠唱と共に少年の右腕から煌々と輝く魔法陣が展開され、一瞬の間に二工程の術式が構築される。

 二工程とは思えない異常なまでの魔力が籠められたソレは既に射出準備を終えたと言わんばかりの輝きと魔力を迸らせ――。

 

 (不味…っっ!!)

 

 「回路(タービン)放て(ファイア)

 

 詠唱の終了と共に極光と化した魔弾を撃ち放つ。

 地面を抉り飛ばしつつ迫る魔弾を瓦礫の山から転げる様にして回避する事で間一髪で射線から逃れ……。

 

 

 着弾と同時に自身が先程まで居た瓦礫の山が消し飛んだ(・・・・・)

 

 

 「何だこれは」その言葉を呑み込み、同時に息を呑む。

 放たれたのはたかだか二工程の魔弾だった筈だ、撃ち込まれた魔弾はたった一発しかなかった筈だ。

 にも関わらず…一般的な家屋よりも遥かに巨大な邸宅の残骸が、あの超質量の塊が跡形も無く消し飛ばされた。

 即興で製作した術式で、牽制でしかない魔弾でこの威力。

 

 「やっぱり点じゃ駄目だな……交流数紋(オルタネイト)、複写術式展開」

 

 底冷えするかの様な声が耳に入ると共に、少年の背後から二十を超える術式(砲門)が現れる。

 その全てが、先程瓦礫の山を消し飛ばしたモノと同様の物であると理解した。

 先程展開された術式と同様に煌々と輝く二工程の魔法陣、その一発一発が必殺級の威力である事を先程の魔弾が物語っている。

 

 

 「………怪物め」

 

 

 今まで自身が其処彼処で散々言われ続けた表現を思わず口にする。

 十数メートルの距離を一瞬で詰める程の速力、白兵戦については未知数だが、速力と相乗させた瞬間的な爆発力であればライダーのカードを利用した突進攻撃にも迫りうる近接攻撃力、たかだか二工程の単発魔弾であっても出鱈目な火力を叩き出す遠距離攻撃力。

 これを怪物と呼ばずに、なんと呼べるのだろうか。

 

 しかしここで退くわけにはいかない。

 目の前の怪物が少女達を護ろうとする事と同様に、自身にもカードの回収という責務がある。

 故に……。

 

 「魔術協会所属封印指定執行者……」

 

 この場で怪物を打倒する突破口を模索する。

 相手の切り札を引き吊り出さない限り斬り抉る戦神の剣(フラガラック)は使えない。

 加えて怪物との距離は15~20メートル程も離れているにも関わらず遠・中距離戦での戦闘は絶望的に不利…しかし。

 

 「バゼット・フラガ・マクレミッツ」

 

 近距離に潜り込みさえすれば、自身の十八番である近接格闘戦であれば、如何に爆発力のある相手であろうと勝機はある。

 距離を詰める事さえ出来れば、勝ち目が産まれる。

 それだけで十分、玉砕など端から覚悟の上。

 

 

 「推して参ります……!!」

 

 

 名乗りを上げると共に怪物へ向けて駆け、自身の出せるトップスピードを以て迫る……そして。

 

 

 「回路(タービン)放て(ファイア)

 

 

 怪物が詠唱を完了させると同時に、視界の全てが青に飲まれた。

 

 

 

 

 

 

--(ex:Illya)

 

 「うわぁ……」

 

 目の前の光景に、気が付けばそう呟いていた。

 ダメージで思い通りに動かない体をクロと一緒に美遊に担いで貰い、私達はルヴィアさんの所有する敷地内の離れまで移動して彼とスーツの人との戦いを眺めている。

 

 一方的だった。

 

 弾幕の雨が敷地内の全てを吹き飛ばし、今まで私たちが攻立てられていた相手を彼が攻めたてている。

 攻防にすらなっていない蹂躙。

 黒化英霊との闘いとは比にならない強さを発揮する彼がそこにいた。

 

 「いやー、分かっていたつもりですけど最高クラスの執行者を相手にここまでとは…やっぱり"全開の彼"はトンデモないですねー」

 

 「ルビー…これ何?」

 

 「ん~……何と言いますと? ルビーちゃん的には主語が抜けていてイリヤさんの質問を図りかねますよ~」

 

 「私もクロも美遊もすっごく頑張ったよ、でも全然敵わなかった……カード回収の時は皆一緒でやっと戦えてたのに何で……」

 

 「何で一人で戦えるの?」そう口にせずにはいられなかった。

 それ程までに差があった。

 黒化英霊との戦いでは自分達と同程度の力しか出していなかった筈の彼が、何故自分達が終始劣性だった相手に優勢を維持し続けられているのかが不可解でしかたなかった。

 

 ……まぁ黒化英霊云々以上に友人がゲームに出て来る裏ボスの如き恐ろしさで破壊光線(仮称)を撃ち放つ人間ビームランチャーと化していたら誰でも説明を求めるとは思うけれど……(引き気味)

 

 「あぁ~、それは仕方がありませんよ。 黒化英霊との戦いと、今の執行者との戦いは彼にとって根底から違いますからね~」

 

 「根底……?」

 

 「そのとーりです。 イリヤさん、始めての鏡面界での戦い…ライダーとの戦いで一番最初に起こった事を覚えていますか?」

 

 ライダーとの戦いで一番最初に起こった事……それは彼が今と同じ様に出て来たばかりのライダーに魔弾を撃ち込んだ様な気がする。

 それを正面から食らったライダーは全くの無傷で……。

 

 「あぁ、そういう事……そりゃ何もかも変わるわよね、自分の十八番が封じられちゃってるんだから。 私が同じ状態になったら即死だわ」

 

 何かに気が付いたのか「あぁ、納得」とでも言いたげにクロが呟いた。

 

 「さっすがクロさんは目の付け所がシャープですねぇ♪ そう、あの時も彼は魔弾を放ちましたがライダーには全く通用しませんでした…"対魔力"が原因で」

 

 "対魔力"…美遊が転校して来た日にルビーとサファイアから聞かされた、ルビー達カレイドステッキがカード回収に指名された理由の一つ…たしか『魔術を無効化する概念的な守り』って言っていたような……。

 

 「あっ!」

 

 「漸くニブチンで鈍感なイリヤさんも気が付きましたかー? そう、お察しの通り彼が短期間で劇的に強くなった訳ではありません、そもそも黒化英霊との戦いは彼にとって『受ける事すら無謀な戦い』だったんです。 ライダーとセイバーの『対魔力』、キャスターの『反射平面と転移』、バーサーカーの『一定以下の攻撃を無力化する宝具』その全てが彼にとって天敵なんですよ、TCGで言う所のメタゲームに例えても良いかもしれません……まぁ反射平面に関しては時折ゴリ押しで粉砕してらっしゃいましたけど」

 

 「メタゲーム……相性最悪って事?」

 

 「えぇ、恐らく彼本来の戦闘スタイルは今行っているような格闘と簡易魔弾を織り交ぜた変則的な遊撃だったんでしょう。 ですが相対した全ての相手が何かしらの"耐性"を持ち合わせていた為本来の戦術が使えなかった…余程格下が相手でもない限り戦いから"相性"は切って離す事は出来ません、そして彼はその"相性"の溝に見事嵌ってしまった。 それも考えうる限り最悪な形で」

 

 「色々と穴のある姉さんの解説に補足させて頂きますと、現在使用されている二工程の大砲(ドロウ)から更に上の魔術、四小節の大魔術(フォース・トゥ・フォース)の魔力圧縮といった類の魔術であれば如何に対魔力であろうと対処出来た可能性はあったかと思われます。 ですが相手となった黒化英霊は全て機動性・移動能力に優れている英霊ばかりであった為、連射制度の低い高ランク術式の使用は極力控えていたのではないかと推察されます」

 

 「流石はサファイアちゃん、的確かつ迅速な補足ですねぇ! 最初の部分が無ければもっと良かった!!」

 

 「姉さん、空気を読んで下さい」

 

 「というか、そんな小難しい話にしなくても私が投影魔術を封じられた状態って言えば良かったんじゃない? 弱冠キャラ崩壊してて気持ち悪かったんだけど」

 

 「そこはアレですよクロさん、ルビーちゃんの華麗な知的キャラをアピールして新たなキャラを開拓しようとですねぇ」

 

 「ルビー、多分もう今の発言だけで知的キャラは無理だと思うよ……」

 

 「あぁん! 無慈悲!!」

 

 「はぁ……」

 

 溜息と共にビクンビクンと脈打つルビーから彼の戦っている方向へ目を移す。

 いつの間にか衝撃も戦闘音も途切れており、戦闘によって生じた土煙も薄れて視界に映るのは三つの人影だけになっていた。

 

 まず一人目は全身を焼かれ、着ていたスーツの八割が消失し、四肢が異様な方向へ捻じ曲がっているスーツの人。

 二人目はその首を片腕で締め上げ、今すぐにでも握り潰さんとしている彼。

 そして三人目は何を言っているのかまでは聞こえないけれど彼に向けて言葉を投げかけている凜さん。

 ………凜さん?

 

 「元マスター生きとったんかワレェ! というか今までどこに居たし!」

 

 珍しくルビーと意見が一致した。

 

 

 

 

 

 

--(7)

 

 ………どうしようこれ。

 

 ボロ雑巾モードな不審者の首を締め上げている状態でそう思った。

 思ったというか我に帰った感じ。

 ビークール、ビークール、冷静になれ俺。

 怒りのままにボコしたがよくよく考えると事情を何一つ理解していなかった。

 まぁウチのロリっ娘共に手を出していた時点でボコすのは決定してたけど。

 

 敵なのは間違いないんだが今の戦いぶり……ルーンの扱いとそれを元にした戦術を熟知し、且つ人並外れた耐久と敏捷性、格闘能力を持っていた点から見るに格闘主体の戦闘に特化した魔術師だろう。

 そして時折口に出していた『カード』『回収』『協会(或いは教会)』『任務』といった単語、これ等の発言からはコイツの目的はクラスカードであり、誰かさんからの指示でカードを回収しに来たと考えられる。

 

 カードの事知っている点と無駄に高い戦闘スキル、『協会(教会)』といった単語からどう考えても魔術協会か聖堂教会から送られてきた戦闘屋です。

 本当にありがとうございましたクソが。

 ……後処理どうしよ。

 

 今気付いたとはいえ半殺しどころじゃ済まないくらいボコボコにしてしまった。

 四肢の骨格はほぼ全壊、それ以外の骨も所々イッてるだろうし何より魔弾の魔力ダメージや熱、衝撃波で目に見えない部分も相当ダメージが蓄積している筈だ。

 ………内蔵がいくつか死んだ可能性も……?

 これは殺っちまったかもしれんな。

 まぁ相手も殺る気まんまんだったんだし仕方ないよね?

 

 

 ………んな言い訳通用する訳ねぇだろやっべえええ……。

 これで俺もまさかの裏世界デビューっすか嘘だろ。

 ……嘘だろ。

 

 

 死体を消し飛ばせば隠滅出来るかしらんとか考えてたら凜さんが現れた。

 話を聞くに俺が無表情で不審者をぶっ殺そうとしているように見えた為、それを止めようとしたらしい、というか更に噛み砕くと不審者の身柄が欲しいようだ。

 俺としては生かしても殺しても結局面倒臭い存在なので喜んで引き渡した。

 そもそも前提条件として不審者の口止めと協会への言い訳、それなりの報酬を約束してくれた状態で渡さない筈が無い。

 メリットしか無いとか万々歳だぜヒャッハー。

 

 因みに不審者を引き渡したのは良いのだがボコし過ぎた為か相当の治療が必要らしく完治にはかなりの時間が掛かるとの事。

 最短で行っても夏休みに間に合うか否かというレベルらしい。

 まあ俺も正直やり過ぎたと思ってる。

 ただあの時は俺も加減してられる心理状態じゃなかったんだわ、スマンな。

 

 そんな事よりも凜さん……というか時計塔組は不審者を確保してどうするつもりなのかが気になる。

 

 「奴隷にするわ」

 

 直球過ぎて草生えた。

 

 

 

 

 

 

--(8)

 

 魔法少女組の安否を確認し、概ね問題無しと判明して安心した所で凜さんから地脈図を見せられた。

 どうやら黒化英霊が龍脈に与えていた影響が治っているかの経過観察を行っていたらしく、これは丁度今日の夕方頃に作ったものなんだとか。

 で、なんと大変な事に八枚目のカードが見つかってしまったらしい。

 

 ……へー八枚目。

 ……へー………。

 

 

 八枚目のカードってなにいいいいいいいいいいンァッ↑ハッハッハッハーwwwwwwア゛ン!!ンフンフンッハ アアアアアアアアア↑↑↑アァン!!!!!!アゥッアゥオゥウア゛アアアアアアアアアアアアアーーーゥアン!!!!!

 

 

 発狂したらシバいて正気に戻された。

 ソビエト式修理法で治るとか俺はレトロマシーンである可能性が高い……?

 

 ねーわ^q^

 

 

 

 

 

 

--(9)

 

 八枚目のカードの存在が判明してから盛大に意気消沈している美遊といつの間にか復活していたルヴィアさん、そして凜さんを連れて帰宅する。

 家が倒壊しているので今晩からエーデルフェルト邸が復活するまでの間はウチで生活する事になったのだ。

 因みに対価として美遊は調理実習で獲得した宿泊権の消費、ルヴィアさんからは現金、凜さんはほぼ一文無しだったのでメイド服で給仕をして貰う事にした。

 

 「何で私だけ羞恥プレイ染みてるのよぉ!!!」

 

 そこにメイド服があったからかな(ニヤケ面)

 実は八枚目カードに関しての八つ当たりが含まれていたりいなかったり。

 

 因みに凜さんとルヴィアさんが泊まる事により士郎さんの安寧が数日間消滅する事になった。

 なんかごめん……。

 

 

 

 

 

 




 宜しければ感想や評価、誤字報告下さい。リクエストやシナリオ内の疑問なども歓迎です。
 ……………感想下さい。


●主人公の本領
 元々主人公の主戦力は魔弾であり、対魔力や十二の試練といった何かしらの耐性を持っている相手と戦う場合は英霊と人間であるという点以上に魔弾禁止という盛大なハンデを食らってしまう。
 本領というのはそれ等のハンデが全て無くなった状態であり、主人公が正しく全力を振るう事が出来る状態を指す。
 クラスはランチャー(大嘘)






●バゼット・フラガ・マクレミッツ
 本来の戦闘距離であるショートレンジで戦う事が出来ず、ならばと投擲した瓦礫等は全て撃ち落とされ、奥の手である斬り抉る戦神の剣(フラガラック)はそもそも発動条件すら満たされたないという打つ手の無い状況下で徹底的に絨毯爆撃で焼かれ、ボロボロに疲弊しきった所を近接でボコられた。
 バゼットにとっては主人公こそが相性最悪の天敵である。
 そもそも歩兵相手にB29の絨毯爆撃とかクソゲーにも程がある。
 そしてそのクソゲ―で敗北した暁には奴隷ルートへ突入という原作以上の苦行ルートを歩む事に……。






●士郎の安寧消滅
 やっと男女比の気疲れから解放されたと思ったら家主が女性を三人も連れて来た。
 しかも内二人は常に自分の争奪戦で修羅場を展開しておりストレスがマッハ。
 そろそろ胃に穴が開くかもしれない。






●調理実習のウェディングケーキについて。
 審査員担当の赤馬零児の証言
 「実習内容はパウンドケーキだったが勝負内容をパウンドケーキに縛ったワケではなく、ルールを決めていた訳でもないので反則ではない」






●結城美柑
 ToLOVEるより参戦、主人公のクラスメイト。
 主人公程ではないが年齢と比較して精神年齢が高い為、主人公の事はある種の同類として見ていると同時に大切な友人として接している。
 また兄についての愚痴や日頃悩み等も積極的に話している等良好な信頼関係を築いており、最近はお互いの兄(兄のような存在)に対する話題で盛り上がったらしい。

 今回のパウンドケーキ対戦ではその家事スキルを見込まれて戦力として参戦したがメニュー破りのウェディングケーキを前に完敗を喫した。





●主人公製アクアビットマン。
 ただでさえ型破りな性能の機体をガンプラバトルのアセンブルシステムに物を言わせて魔改造を施した悪魔の機体。
 アクアビット社員、トーラス社員は垂涎の大変マニアックな代物と化している。
 というより完全に主人公の俺得機、ネタにガチになった変態程恐ろしいものは無い。

 その魔改造っぷりたるやアサルトアーマーを搭載した機体にコジマキャノンを背負わせ、両肩部には「これスタビライザーです(大嘘)」と言い張り小型化したコジマミサイルを搭載したミサイルポッドを設置、更に前腕部分には近接用に皆大好きアンサラーキラーであるとっつき『KIKU』を無理矢理装備させ、空いた両腕部にこれまた無理矢理コジマライフルを持たせた究極至高の俺得機。
 相手は死ぬ。

 重量過多……?
 ガンプラバトルにそのような制限は存在しない(断言)







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番外編
主人公設定(Wiki風)


 ※ネタバレを含むため第6話を読まれてからのご拝読を推奨致します。

 また活動報告にて今後の方針に関する事も同時投稿しております。
 アンケート込みの内容となっていますので宜しければ目を通して頂けますと幸いです。


 ●『魔法使いの夜』風ステータス

 ・名前:‐‐ ‐‐(姓名共に漢字二文字)

 ・身長:‐‐cm / 体重:‐‐kg(イリヤよりは高く、重い)

 ・誕生日:3月31日 / 星座:牡羊座

 ・好きなもの:親しい人、ゲーム / 嫌いなもの:敵対する存在

 ・魔術系統:数秘紋による魔力加工、変換、出力。その他汎用魔術。

 ・魔術回路・質:A+ / 魔術回路・量:A+ / 魔術回路・編成:正常。万能。

 

 

 

 ●『Fate』風ステータス(第1話~第5話)

 ・筋力:C

 ・耐久:C+

 ・敏捷:B+

 ・魔力:A-

 ・幸運:C-

 

 

 

 ●『Fate』風ステータス(第5話:超過運用)

 ・筋力:A+

 ・耐久:B+

 ・敏捷:A+

 ・魔力:A+

 ・幸運:C-

 

 

 

 ●『Fate』風ステータス(第6話以降)

 ・筋力:B

 ・耐久:B-

 ・敏捷:A

 ・魔力:A

 ・幸運:C-

 

 

 

 ●略歴

  何代も前の先祖が工房に残した呪いにより魔術を学ぶ事になった一般市民A。

  親の伝手により魔術世界でも有名な魔砲使いから直々に手ほどきを受け、本人の潜在能力も合わさり絶大な力を手に入れるがそれを振るう機会も振るうつもりも無く持て余す事になる。

  本人はその在り方を良しとしていたものの、不運にも隣人兼友人兼居候先の御令嬢が魔術案件に関わってしまった事から自身も身を投じる事になる。

 

 

 

 ●人物

 眉毛より上で切られた艶のある短髪の黒髪とガラス玉の様な青い目が特徴的な少年。

 加速した精神年齢により僅か十代過ぎの少年に有るまじき言動と性質をしており不気味がられる事もしばしば。

 基本的に自己中心的な癖に身内に対してはダダ甘であり友人、知人からはそれなり以上に信頼されており、当人も相手の事を信頼している。

 また、一見怠惰に見えつつ必要な事であれば努力も労力も惜しまない為基礎的な能力値は高く、師匠譲りの前向きさも影響して負けず嫌いな部分も見られる。

 

 

 

 ●能力

 自他共に認める規格外の魔術回路を有する魔術使い。

 魔術刻印は有していないものの、師である魔砲使いを推して「底が見えない」と言わしめる程の極めて高い潜在能力を持ち、その魔術回路の数は数百を越えているとされていたが第6話の診察により眠っていた回路を含めれば千を越えている事が判明した。

 師の教育により戦闘にのみ特化した魔術使いとして育て上げられ、持ち前の潜在能力の高さと相まって僅か二年と少しの修行で英霊すらも相手取る事が出来る程の驚異的な戦闘力を身に着けた。

 使用する魔術は数秘紋の『魔弾』と『身体強化』が多く、魔弾は僅か二工程の術式で構成された一撃でさえ15トンの衝撃を産み、身体強化に関しては(第1話~第5話の段階で)筋力B-相当の怪力を産む。

 更に前述した魔術の他に『復元』の魔術も体得しており、意識がある限りは粉砕骨折程度の傷は自己再生が可能。

 しかし主戦力が魔弾と身体強化の二通りでしか無い為、どちらか片方…特に魔弾の側を封じられると戦闘力が四割程低下するという大幅な弱体化を強いられてしまう。

 

 

 

 

 

 




  宜しければ感想や評価、誤字報告下さい。リクエストやシナリオ内の疑問なども歓迎です。

 また活動報告にて今後の方針に関する事も同時投稿しております。
 アンケート込みの内容となっていますので宜しければ目を通して頂けますと幸いです。


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短編:セラの脂肪分討滅録(イリヤ視点)

 初短編なので初投稿です。
 過去の感想を漁っていたら『イリヤ視点も書いて欲しい』という感想があったので書いてみました。
 こんな感じに感想の意見も取り入れるかもなので積極的に書くべきそうするべき。

 ただし今回は『短編』なので文字数は1300ちょいです、ざっと原稿用紙3枚程度なのでボリュームは期待しないで下さい。




 いやー就活生キツイっす^q^


--(1)

 

 これは私がルビーに出会う前の、魔法少女になっちゃう少し前の話。

 セラが体重増加と言う名の地雷を盛大に踏み抜き、脂肪分討滅計画が始動したせいで家族の食生活が激変した時のお話です。

 

 「ダイエットってゅうのゎ。。」

 

 「逆から読むと。。『トッエイダ』」

 

 「ィミゎかんなぃ。。。。」

 

 「もうマヂ無理。」

 

 「何が無理なのかってゅうと。。ハラヘッタの。。」

 

 「空腹ヲガマンとかもうホント無理。」

 

 「ウドンクぉ…。。」

 

 セラによる脂肪分討滅計画が始動して三日、私の目の前にはよく分からない口調で話し、文字通り幽鬼と化している"彼"が居た。

 理由は単純にお腹が空いたから…だと思う、セラの計画が始動してから出されるショウジン料理は僅か三日で彼の精神を摩耗させてしまったみたい。

 昨晩の「何でネロってパトラッシュでBBQしなかったんじゃろ」などという感動物語を粉砕しにかかる発言から考えると二日目で既に相当キテいたのかもしれない……いや、彼のこういった所はいつも通りなのかもしれないけど。

 

 「イリヤも来る?何か奢るけど」

 

 「行くー」

 

 口調が戻った彼の誘いに二つ返事で答えてついて行く、こういった所で勿体を付けずにさり気無く誘ってくれるのは素直に嬉しい。

 ………だから人気なのかもしれない、主に男子に。

 

 「うどん屋で何食べよっか?ざるうどん?」

 

 「肉でも釜揚げでも何でも良いじゃろ…計画性なんて知らん、我慢してた分好きな物を好きなだけ貪れ。 何なら丼でも頼むか?」

 

 貪れ…なんというか、本当に彼らしい表現だと思う。

 一体どこからそんな言葉を覚えて来るんだろう、昔からこんな感じだった気もするけど……今はいっか。

 

 「一応食べた後だから丼は流石に……お兄ちゃんとリズお姉ちゃんは誘わないの?」

 

 「リズさん呼ぶと散財どころか財布が炭化する、士郎さんは……自炊出来るから無問題だろうけど一応誘っとくか」

 

 後が怖いからリズさんには内緒な、と人差し指を口に当てる姿は何というか、少し大人びているようで…ほんの少しだけかっこ良く思えた。

 

 

 「……財布忘れた」

 

 

 あとそういった感想をものの3秒で撤回させるのも実に彼らしい……。

 ついつい溜息をついてしまうのも仕方ないと思う。

 

 「幸せ逃げるぞ」

 

 「誰の所為だと思ってるの……」

 

 「知らん」

 

 変わらず無関心を貫く彼に再び溜息を吐いた。

 

 

 あと結局仲間外れにして外食したのがリズお姉ちゃんにバレてしまい彼はアームロックをかけられていた。

 痛そう(小学生の感想)

 

 「があああああ!!!」

 

 それ以上いけない。

 

 

 

 

 

 

--(2)

 

 セラの脂肪分討滅計画が始動してから7日、とうとうセラが倒れた。

 彼曰く「最低限な食生活に対して日常的な業務、急な運動量の増加、サウナなんかを追加した生活リズムの変更、そりゃ倒れる」との事らしい。

 あとセラがダイエットを止めた事で家にいつもの食事が帰って来た、これで彼も夜な夜な外食をする事は無いだろう、昨晩なんか友達と鍋パしてたみたいだし。

 やっぱりうどんだけじゃ物足りなかったんだろうか?

 

 「炭水化物オンリーとか飽きるじゃん」

 

 さいですか。

 

 「セヴァ―――ッッ!!?」

 

 あ、お兄ちゃんがセラに殴られてる…実にいつも通りな光景に私は少しだけ安心感を覚えるのでした。

 

 「士郎さんって何で女じゃないんだろ、女子力スゲーのに」

 

 ほんとそれ。

 

 

 

 

 

 




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 ……………感想下さい。


●イリヤスフィール・フォン・アインツベルン
 主人公の行動、言動、奇行を日常的に見ていた為か原作と比べると微粒子レベルで成長しているのかもしれない。
 縦しんば成長していたとしても誤差レベルなので殆ど変わらない、というか違いを見つける方が大変。






●裏話
 原作ではツヴァイの第6.5話として描かれた番外話だそうですがルビーが一切介入していない点や仮に第6話後の話だとするとクロのアインツ家合流までの期間は僅か2日~4日程度。
 ソレを踏まえるとラストにクロが登場していないのは不可解と考え今作では原作の少し前として作成しました。







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