某学園にアニオタが入学した世界線(凍結) (炊歌黄 帝一)
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プロローグ

初投稿!ですがはっきりいってド素人です。趣味でなんとなく始めただけですので評価や感想など教えて頂けると嬉しいです。

※ここは飛ばしても構いません。後で物語ででると思います。

結論、オリ主は一夏の幼なじみ



 俺が親の都合で物心着く前に【織斑一夏】と出会ったのが始まりかもしれない。

 引っ越したのが織斑家の隣で既に家族は千冬さんと一夏のみであった。小さい頃から一夏とは隣人同士として仲良く遊んでいた。小学生の時もいつも2人は仲が良かったのだ。

 小学一年で剣道を一夏に連れてなんとなくはじめ、もう一人の知り合った【篠ノ之箒】その道場の見ると娘として同じく剣道をしていたがどうにも俺達とは馬が合わなかったのだ。だが一年が経って小学二年の時にあることがあった。

 ある日の放課後、一夏と俺、箒は掃除をしていた。目の前にはクラスメイトの男達がだべっていたが、途中で箒に話を振ってきた。

 

「おーい、男女(おとこおんな)~。今日は変な木刀持ってないのかよ〜」

 

「‥‥竹刀だ」

 

「へっお前みたいな男女ならあの武器がお似合いだよな~」

 

「‥‥‥‥」

 

「喋り方も変だしな〜」

 

 箒は黙り、3人の男子が取り囲ってからかっていたのだ。

俺達はその光景をみていた。

 

「やーいやーい、男女~」

 

 黙ってるのが嫌になったのか、そこで一夏は口を開く。

 

「うっせーなぁ、お前ら暇なら帰れよ。それか掃除手伝え」

 

 流石の一夏も苛立った口調になっていた。

 

「なんだ?織斑、お前はコイツの味方かよ」

 

「へへっこの男女が好きなのか?」

 

 こんな状況でも俺は部屋の隅で、大人しく掃除をしながら黙って傍観している。

 

「邪魔なんだよ、掃除の邪魔。どっか行けよ。うぜぇ」

 

「へっ真面目に掃除してよぉーバッカじゃねーの──おわっ!」

 

 いきなり箒は男子の胸倉を掴み出すが、黙っている。それと真面目に掃除するのは当たり前のことだろうに。

 

「真面目にすることの何がバカだ?お前らのような奴よりははるかにマシだ」

 

 一夏もほぼ同じ意見のようだ。

 そのまま、一夏たちを見続けていると、一人の男子がこちらを見てきた。

 

「な、なんだよ‥‥何ムキになってんだよ。なぁ?【城谷上(しろやがみ)】?」

 

 端っこで黙っていたが遂にこちらに飛んできた。俺は傍観者だ。話しかけるなよ‥‥

 

「知らん。俺に振らないでくれ」

 

「なんだよ、お前も男女の味方か?‥‥てか離せっ、離せよ」

 

「あー、やっぱりそうなんだぜー。知ってるんだぜ。お前ら朝からイチャイチャしてるんだろ」

 

 その言葉は俺ではなく、一夏と箒に向かっているのが分かった。確かに道場に通うようになってからはよく言われている。俺はたまに通う程度のためそのようなことは言われていない。単に影薄いだけかも知れないが‥‥

 

「だよなー。この前、こいつリボンしてたもんな!男女のくせによー。笑っちま────ぶへっ?!」

 

 今度は一夏が激怒したのか男の1人に顔面パンチを食らわせた。これにはスカッとしてしまう。

 

「笑う?何が面白いって?あいつがリボンしてたらおかしいかよ。すげぇ似合ってるだろうが、あぁ?なんとかいえよボケナス」

 

「お、お前っ──!先生に言うぞ!」

 

「勝手に言えクソ野郎。その前にお前らはぶん殴る」

 

 3人を一夏がボコボコにしている途中に騒ぎを聞きつけた教師が入り込んで取り押さえられ終わった。

 そして、面倒事になってしまった。

 あの3人の親が怒り騒ぎ立てていたのだ。それらの親は馬鹿らしくうざくて俺は苛立っていた。その時は千冬さんが頭を必死に下げて謝っていた。

 何とも気に入らない光景である。確かに殴ったのはいけないが、元はからかっていたアイツらが始まりだと思うのだが‥‥

 数日後、放課後の修行を終えて顔を洗う一夏と俺に箒は一夏に対してのみ話しかけてきた。俺は蚊帳の外。

 

「お前は馬鹿だな」

 

「はぁ?馬鹿じゃねぇよ」

 

「あんなことをすれば、後で面倒になると考えないのか」

 

「ん?ああ、あのことか。そうだな許せねえやつはぶん殴るから考えないな」

 

「大体、複数でっていうのが気に入らねぇ。ただの男のクズだ」

 

「確かに気に入らないよな」

 

 そこで俺も話に入る。途中から箒は黙っていた。

 

「‥‥‥‥‥‥」

 

「だから、気にすんな。あのリボン、似合ってたぞ」

 

 当時小学生とはいえ、爽やかなイケメン一夏にはカッコイイ言葉である。俺には効果ないな(確信)

 

「ふ、ふん。私は誰の指図も受けない」

 

「俺、先帰るわ。じゃあな」

 

「まて、俺も行くわ。またな篠ノ之」

 

「────だ」

 

「「ん?(うん?)」」

 

 箒は何か喋っていたらしいが、あまりに小さ過ぎて俺達に最後しか聞こえなかった。

 

「私の名前は箒だ。いい加減覚えろ。大体、この道場は父も母も姉も篠ノ之だからな。だからお前達は名前で呼べ」

 

「わかった。俺は身近なやつの指図は受けるんだ。じゃぁ、一夏な」

 

「なら、俺は太一で」

 

「な、なに?」

 

「だから、名前だよ。織斑は二人いるし城谷上は三人だろ?だから俺達も名前で呼んでくれ」

 

 何故かは知らないが、俺にはいても一夏には両親がいない。基本的に千冬さんが俺の親と話していることがあるらしい。

 

「う‥‥む」

 

「分かったな箒」

 

「わ、わかっている!い、い、一夏!と太一!これでいいのだろ?ふ、ふん!」

 

 最後に強がりを残して立ち去っていった。

 この時の俺は気づかなかったが、一夏の名前だけ躊躇っていたため、好意を一夏に寄せていたと、記憶を見返して推測した。

 そこからは3人とも仲良くしていたのだ。特に箒は一夏を優先に話しかけていたが、そこら辺は恋愛感情と友達感情の違いだろう。ちなみに次第に一夏も剣道が強くなり箒を越していった。俺は元々、素質がないのか3人で一番ヘタクソなのである。他の2人よりやっていないし‥‥

 時は戻って四歳の春、俺は 箒の姉【束】さんに会った。

 

「やぁやぁ!いっくんとたっくん!」

 

この頃からこの人は常にこんな喋り方だった。それでも千冬さんと同い年で親友だと言う。初めてあってからは分からなかったが素晴らしい【天災】なのは分かったのだ。たまに俺達は場所の分からない研究所で色々見せられた。

 月日が経ち秋。一夏と俺は呆然と何かをみていた。

 それは丸い球体である。最初は水晶か何かと思ったがこれは束さんが作ろうと計画している。これは【ISコア】だという‥‥。これを見せられてある事件が起こるまで俺達は誰も予想していなかったことがあったのだ。

 小学生二年の終わりごろ、親の都合で北海道に帰る(引っ越す)ことになった。ちなみに俺は北海道出身である。一夏は勿論、箒や千冬さん、束さんやその家族に見送られ俺は引っ越したのだ。

 そこからしばらく北海道での学校生活だが上手くいったわけではないが平凡な日常だった。元々喋ることが少なかったためクラス友達は少なく3人4人しかいなかった。仲は良かったが中学生になる前にまた一夏のところへ引っ越すことになったのだ。何故かは知らなかったが‥‥

 中学生になって一夏に久しぶりにあった頃にはいつもの箒はいなく代わりに別の女の子【凰鈴音】が一緒にいた。

 なんとも箒はある事件をきっかけに何処かへ引っ越してしまったという。

 

「久しぶりだな、太一。元気だったか?」

 

 久しぶりにみた一夏は声が低くなっており、身長が伸びて俺より少し高かった。そして、見た目が一層イケメンになってることに少々羨ましいものだった。

 

「ま、まあな元気だったぞ」

 

「そうか。でコイツは────」

 

「アタシは凰鈴音よ。鈴でいいわ。よろしくね太一」

 

「おうよ。よろしく鈴」

 

他にも【五反田弾】や【御手洗数馬】など友達が増え楽しい学校生活を送っていたのだ。後で気づいたのだが鈴も一夏に好意を寄せているらしい。やっぱり一夏はモテてるんだな。言ってしまえば、俺がアニメオタクへと変わった原因の1つは一夏である。一夏に好意を寄せている知り合いはこの時3人もいる。箒と鈴、そして弾の妹【蘭】だ。顔が自称フツメンで身長が低くモテナイ俺は萎えて家で過ごすことが多かったのだ。なんとなくみた二次元の動画がきっかけでアニメオタク化してしまったのだ。中学二年にはアニメを大量にみるようになる。どうやってアニメをみたかは言わないでおく。機密情報なんでね( -ω- `)フッ

 言い忘れていたがアニオタだけではない。小学二年の時点で自衛隊‥‥所謂、軍事的なものに興味があったのだ。そして中学生にはミリオタ化していた。部屋には軍事的なプラモやゲームが沢山ある。実際はアニオタかつミリオタである。これをオタクと言っていいのか分からないが仮にオタクということにしておこう。

 俺が変わったのはここら辺だが、世界も変わっている。ある事件をきっかけに変わってしまった。

 いい加減ある事件、ある事件、うるさいだろうから言うが、その事件とは【白騎士事件】である。

 あの束さんによってISの存在が発表されてから1カ月後に起きた事件。日本を射程距離内とするミサイルの配備されたすべての軍事基地のコンピュータが一斉にハッキングされ、2341発以上のミサイルが日本へ向けて発射されるも、その約半数を搭乗者不明のIS「白騎士」が迎撃した上、それを見て「白騎士」を捕獲もしくは撃破しようと各国が送り込んだ大量の戦闘機や戦闘艦などの軍事兵器の大半を無力化した事件。この事件での死者は皆無だったらしい。この事件以降、ISとその驚異的な戦闘能力に関心が高まることとなったのだ。その後、ISコアが467個見つかる、ISは女性にしか使えないなど、色々あって、いつの間にか女尊男卑主義になっていたのだ。そして、【モンドグロッソ】では一夏が誘拐されるだの色々あった。

 

 

とまあ適当に説明してしまったが、これがある学園に入学する前の話である。




※この物語はアニメネタ、ネット用語、縦書きは読めない、顔文字など含んでおります。ヒロインは徐々に好感度を上げる。擬人化ISやオリジナルISもあります。挿絵もあります。(ヘタクソなISなので見ない方が良い)
ではこれから宜しくお願いします。


息抜きに大幅訂正


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外伝 IS+ココロコネクト計画
番外編 ヒトランダム


はいお待たせしました。本編とは違いますが、ご了承ください。
一応、初見でも読める時系列にはしています。原作第2巻終了後の番外編です。なのでオリ主はシャルロット呼びです。
そして、長い……。12,000文字。

※ 太一【一夏】などと表記されている場合、【】内の体になっています。人格はそのまま


 

 

「かんせーいっ!」

 

 静かなラボの中、一人の天災は歓喜の声を上げる。

 自分が楽しそうなものを作って、飽きたら他の新しいものを作り出す。

 そんなとき、彼女は新しい発明品を作り出した。その名も――

 

 

 

――『人格入れ替わり薬』

 

 

 

 なんともネーミングセンスが殆ど無い名前だが、その名の通り人格がアトランダムに入れ替わってしまう薬だ。

 その薬はどんな飲み物に入れても、薬は溶けて見えない上、身体に害はないという完璧なもの。ただし、有効期限は二十四時間。

 

 この天災が行う今回の目的は、あの三人を楽しませたい。ただそれだけのためにIS学園へ送り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 放課後、箒と剣道の特訓で疲れたので部屋でのんびりしていたが、身に覚えのない飲み物が置いてあった。

 それは俺のお気に入りの飲み物である『コーラ』だ。買った覚えなんてないし、知らないメーカーの名前である。んー、一夏のだろうか?

 

「なぁ一夏。これお前の?」

 

「ん? んー、知らないな」

 

「そうか……」

 

 誰かが勝手に入れたのだろうか。だとしてもどうやって鍵を開けたのだろう。まさか、ラウラか楯無さんか?

 あの二人は鍵というものを難なく開けてくる危険人物である。特に、楯無さんの裸エプロン事件や全裸ラウラ事件がいい例だろう。

 でも貰えるなら有り難く頂くとしよう。毒なんて入ってるわけないし。

 ゴクゴクと飲み干す。うん、普通に美味い。

 

「ぷはぁー!」

 

 そう言って爽やかになった俺を見た一夏は、何かを飲みたそうにしながらやってくる。冷蔵庫から今度は『スポーツドリンク』を取り出す。

 

「なぁ、これはお前が買ったのか?」

 

「ん? いや、違うぞ」

 

「なんだそれ……」

 

 どうやら、一夏にも見覚えのない飲み物があったらしい。多分、一夏のはラウラだろう。

 ヤケクソになった一夏は「まぁ、いいか」と言ってそれを飲み干す。

 

「ふぅ……」

 

 このときの俺達は気づかなかった。これらの飲み物が天災によるいたずらの罠だったことを‥‥。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここはシャルロットとラウラの寮部屋。初めて出会ってからトーナメント戦までは、険悪なムードの二人であったが、今は仲良く過ごしている。

 シャルロット自身は、太一と一緒に過ごすことが好ましいのだが、ラウラといるのが嫌なわけではない。なにせラウラはとても可愛いのだから。

 

「ん?」

 

 そんなとき、部屋の冷蔵庫に身に覚えのない飲み物があった。それは『カフェオレ』である。よく確認すると、『礼はいらん。By太一』と彼が書く字体と瓜二つだった。無論、彼自身はこんなこと書いてなどいない。

 これはあの天災が開発した、他人の文字の書き方を真似る機械を利用したからだ。この真似文字を見破れる者は殆ど存在しないだろう。

 

「ありがとう、太一」

 

 ラウラも同様、『By一夏』と書かれた飲み物が置いてあったが、太一同様、一夏も書いていない。

 

「ふん、さすがは私の嫁だな」

 

 二人はまんまと天災に騙されながらも飲み干した。現役軍人でもこればかりは見破れない。

 

 その後も、箒や鈴、セシリア、本音に簪、楯無さん(生徒会室の冷蔵庫の飲み物)もそれぞれに贈られた飲み物を飲んだ。ちなみに本音は、メッセージに気づかないでお菓子を食べながらジュースを飲んだそう。

 ここで一つの疑問を生じないだろうか。

 

 なぜ飲み物を格部屋の冷蔵庫に入れたことを信じたのか。

 

 答えは簡単、太一ならいつも格部屋に遊びに行く仲の女子が三人いるし、一夏も最近格部屋で遊んだばかりであるからだ。所謂、一夏ラバーズの抜け駆け。

 しかし、それでもおかしいと思うのなら『ちょろい』の一言が答えになるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の深夜、急に一夏が暴れだして起こされた。俺が寝ている間に「ど、どうして太一がいるんだ!?」とか意味の分からないことを言い出した。

 それから一夏が洗面所に行き、「私が……一夏だと!?」など口調も喋り方も違和感が半端なかったのだ。正直ついに頭が逝っちまったのか、と心配した。

 それでもかなり眠い状態であったために一夏が不審な行動をしている中、俺はぐっすりと安眠した。

 

 

 

 ――翌日。

 

 

 

「本当なんだって!」

 

 朝っぱらから部屋の中で大声を出す一夏。その声で強制的に目を覚まされた。

 

「真夜中に起きたら、体が箒になってたんだよ!? 信じてくれよ!」

 

「そんな非日常なんてあるわけ――いや、この学園で過ごしてること自体が非日常だった……」

 

 そう、この女子学園に入学した時点で非日常なのに俺はすっかり慣れてしまったようだ。慣れって怖いね(確信)。

 

「だろ? ならこれくらい信じてくれてもいいだろ……」

 

「ワカリマシタ。シンジマス」

 

「棒読みじゃねぇか……」

 

 ISが動かせると体が箒になるとではわけが違う。だが、真夜中で起こった事を考えると確かに信じないこともない。

 

「お前さ夜中にすげぇ慌ててたんだけど、それは――」

 

 突然、バタンッ!と大きく扉が開き、竹刀を装備した箒が現れた。

 

「一夏……貴様、私の部屋で何をした!」

 

 そして、怒鳴ってくる箒に一夏は焦り出す。

 

「ち、違うんだ箒。状況を判断するために……仕方なく――」

 

「ではどうしてし、下着姿になっていたのだ! 静寐に変な目で見られたではないか!」

 

「う……面目ない」

 

 うん、話がよく理解できましぇん。

 推測すると、一夏と箒が入れ替わった? 的な解釈をすればいいのだろうか。なんとも信じ難い話だな。

 

「ってことはお前……私の、か、体で遊んだりしたのだろう!」

 

「い、いやそんなことまではしてない! 絶対にしてない!」

 

 竹刀を構えながら問う箒に、一夏は手をぶんぶん振りながら否定した。

 

「……本当か?」

 

「ああ、いくら何でもそんなやましいことを俺がやるわけないだろ」

 

「そうか……一夏なら信じよう」

 

 あっさりと信じる箒。修羅場とかでなければ一夏の言葉を信じやすくなるようだ。しかし、『一夏なら』ということは立場が俺だったら確実に信用の欠片も貰えず、天国へ飛び立っていただろう。いや、地獄行きか。

 

「あのぅ、お二人さん。……何があった?」

 

 とりあえず割って入って事情を訊き出す。俺を蚊帳の外にされては困るのだ。

 

「「箒(一夏)と体が入れ替わったんだ!(のだ!)」」

 

「お、おう……」

 

 幼なじみの本気。素晴らしく見事なハモリっぷりである。

 本当に信じていいのだろうか。まさか悪戯なのでは? と思ったが、こいつらにそんな真似できるとは思えない。

 

「まぁ、とりま飯でも食いに――」

 

 

 

――突然、世界が暗転した。

 

 

 気がつくと、そこには二人の姿はなかったが、変わりにラウラが目の前にいた。

 

「……どうしたシャルロット? 頭が空っぽそうな顔してるが」

 

 ラウラは俺の方を向いて、『シャルロット』と呼んでいた。あれ? 俺の名前が違うと思いますけど……。

 

「い、いや……あれ?」

 

 明らかこの声に違和感を覚える。理由は簡単……俺の声じゃない。

 喉仏の隆起がほとんど感じられず、とても聞き覚えのあるふわふわした声だった。

 

「おーい」

 

「お、おう……すまんラウラ」

 

「? ……なぜ喋り方を変えたのだ? なんか変だぞ」

 

「え、いや、その……。ち、ちょっとお手洗い行ってきマース!」

 

 心慌意乱になった俺は、レンジャー部隊の如く洗面所へ走り込んだ。

 辺りを見渡したが、何の変哲もない普通の洗面所。なのに見知らぬ生活用品が設置されていた。

 しかし、問題はそこではない。

 

(なん……だと……)

 

 鏡に映りこんだのは、自称フツメンな顔の俺ではない。服装がジャージ姿の――

 

 

――シャルロットだった。

 

 

 あまりにも衝撃的すぎて言葉が出なくなる。

 

(……これは夢なのか?)

 

 否、これは夢ではない。どう考えても現実だ。

 もしかしてこれが一夏と箒が言っていたことなのだろうか。わからない、まだ理解ができていない。

 

 俺は自分の――シャルロットの顔で鏡をじっと見つめる。フランス人としての顔つきでバランスよく整っている。尚且つ美少女にしか俺は見えなかった。

 それに、ここまでシャルロットの顔を眺めたことなど一度もない。女子、しかもJK(女子高校生)の顔をジーっと見つめるなど到底できるものではないのだ。

 

(……ってことは)

 

 こんな状況でも俺は変な思考を持ってしまう。

 これがもし人格が入れ替わったというのなら、多くはアニメを思い出すことだろう。

 

 例えばそれは、『君の名は』だったり。例えば、『山田くんと七人の魔女』だったり。さらには、『ToLOVEる』や『ストライク・ザ・ブラッド』、『ココロコネクト』など、アニメでは王道としか思えない展開である。

 

 今、自分が女の子に変化してしまったと仮定すると、色々とやりたいことがあるのだ。

 

……ゴクリ。

 

 体に纏っているジャージのファスナーを恐る恐る掴む。そのままスーッと下げて、それを全開に緩めたところで我に返る。

 

(いやいやいや、俺はなにしてんだよ!)

 

 幸いジャージの中は下着で、首には《ラファール・リヴァイヴ カスタム Ⅱ》の待機形態をかけているだけだった。いや、幸いじゃねぇよ。と思い、ファスナーを締めた。

 

 次に気になるのは『手』だ。最近女性の手というものに関心してしまったようで、俺はそれを眺める。手は女の子らしくスラッとした手のひらで、爪はちょうど良い長さで美しい。嗚呼、手は最高なり。

 

 そして、思春期真っ盛りのDK(男子高校生)の俺にとって最も気になってしまうのは、この大きな『まんま肉まん』である。

 この尋常ではない膨らみは、明らかに一般男子の胸筋ではまかなえない量だ。

 疑いようもなく、本来なら女性にしか付いていないはずの『お』から始まる『アレ』であろう。

 

 俺は現在、【シャルロット・デュノア】の体になっていると仮定する。つまり、この胸を揉んだとしても、触れたのは【シャルロット】であって俺ではない。

 

 故に、問題なんて存在しない。

 

 そのような無茶苦茶な理論を思い込みながらも意を決する。

 

 やがて、俺は自分の両手を胸の前に持ってきて、左手で左のメロンを、右手で右のメロンを掴み、揉んだ。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

※イメージです。

 

 

 

 もにゅ、もにゅ、もにゅ……。

 

 とろけるような柔らかさでありながら、それでいてしっかりした弾力。なんというか、言葉にならない感触だった。

 

(Oh.....)

 

 完全に我を忘れた俺は、そのまま揉み続ける。

 生まれてこの方女性のアレを揉んだことは皆無である俺にとって、それはそれは素晴らしいものだった。

 そして、まんま肉まんを揉むたびに、こそばゆい感覚が自分に伝わって――

 

 

 ――ガチャ。

 

 

「シャルロット? 一体どうし……」

 

 最悪なタイミングでラウラが心配した表情で入ってきた。しかし、扉を開けた先には胸を揉んだままの太一【シャルロット】だ。すぐ手を離したが、これはマズい。

 

「私は、その……。今日のシャルロットは変だなと思って入らせてもらったのだが……なにをしているんだ?」

 

 ラウラが困惑しながら、ナニをしているか質問してきた。この状況を打破できる策を咄嗟に俺は考える。

 

「こ、これは……む、胸が大きくなると言われる噂を試してたんだ!」

 

 自分で言って、初めて俺は馬鹿だと気づいた。

 これに驚いたラウラは、鈴と並ぶほどするペタなヒンヌーを直視して、こう言った。

 

「ふん、わ、私は別に気にしてないぞ……」

 

 とラウラは言ったものの、気にしていないとは言い難いほどラウラは動揺していた。素直じゃない子ですねぇ。

 ここで(変態)紳士たるもの、次に俺は別の発想をする。

 それは――

 

 ――このままラウラに噂を信じさせることでラウラの〇っぱいを揉めるのでは。

 

 というものである。これも、触るのは【シャルロット】であって俺ではない。これに異論は認めない。

 

「……そ、そうだ! 一夏は胸が大きい女の人が好きって言ってたなー!」

 

 勿論、こんなことを一夏は言っていない。言うわけがない。キングオブ唐変木だし。まぁ、ヒロインが本気になれば大丈夫でしょう。

 

「しかし、それはあくまで一夏の好み。私は私だ」

 

 あぁ、そうだった。この方法じゃ通用しない。ならば――

 

「一夏はラウラの大人っぽい姿が大好き、とも言ってたなー?」

 

 まるで独り言のように言い張る俺氏。今度こそ! とラウラの方を見やる。

 

「っ! 私は私……わ、私は……うぅ」

 

 一夏がラウラに対して大好き、という部分には弱いラウラであった。

 ラウラの大人っぽい姿って可愛いんじゃないか(俺が一夏に訊いてみた)、というのが本当の言葉だが、有難く捏造させてもらった(ニッコリ)。

 

「……シャルロット。私には、魅力が……ないのか?」

 

 シャキッとした軍人娘モードから一転、ラウラはか弱くて可愛らしい女の子へと切り替わった。ギャップ萌えロリ天使。

 ラウラに魅力がない、なんて俺からしたら有り得ない。断じて有り得ない。

 現代の日本女性の平均身長より十センチほど低い背丈。Aカップ程度のちっ〇い。そして、銀髪とぷるっとした唇に眼帯オッドアイなど、俺得の魅力はかなり多い。決して、ロリコンではないがな(震え声)。

 

「魅力はあるよ。ラウラが知らないくらい沢山ね」

 

 まだ不慣れだが、シャルロットの喋り方に俺は気に入っていた。

 

「そういえば、他人に胸を揉んでもらうと大きくなる、なんて噂を聞いたことがあるなー」

 

 ニヤリとしながら俺【シャルロット】は先程と同じように独り言を言う。他人、というより男性(好きな人)が本来ネットにある情報なのだが、金輪際、今は関係ない。断じて(ry。

 

「うむ、確かにクラリッサがそのようなことを言っていたような……。シャルロット、宜しく頼むぞ」

 

 キマシタワー!!!と心の中で俺は叫ぶ。シャルロットに続いてラウラのアレを揉める。それだけで興奮しそうだ。

 しかしクラリッサよ、お主とはマジで美味い酒が飲めそうだな。

 

「うん。じゃあ、始めるぞ?」

 

 深呼吸をしつつ、両手を胸の前に出す。ちなみに洗面所では狭いのでベッドの近くまでラウラを連れて戻っている。

 ドクンドクンと心臓の鼓動が鳴り響く中、俺【シャルロット】とラウラは赤面状態になっていた。これが百合というものか。素晴らしい。

 

「い、いいぞ……」

 

 そして、両手がラウラの胸へ触れたその刹那――

 

 

――ドカァァンっ!!

 

 

 扉が何者かによって破壊。いや何者ではない、箒だ。その手には木刀を構えている。くそぅ、聞かれてたか!

 

「太一、貴様ぁ! ラウラに何をしている!」

 

「? 太一、だと?」

 

 当のラウラは『太一』という言葉を理解できなかった。なぜか。それは箒の背後に俺の外見をした何者かが立っていたからだ。

 

「覚悟ぉぉぉぉ!」

 

 箒の木刀が俺【シャルロット】の頭に直撃、と思いきや、箒はそれを横の壁へ投げ飛ばす。ぐさりと刺さって隣の部屋からは誰かの悲鳴が聞こえた。

 推測だが、箒は確実に俺を木刀で殴ろうとした。しかし、外見は太一ではなくシャルロットであったため殴れなかった、ということだろう。

 

「……? これはどういうことだ、箒」

 

 それでも状況理解できないラウラは、元の軍人娘モードになって問う。

 箒がかくかくしかじかと説明をしていく。

 その隙に特殊部隊の如くこの場を去ろうと試みたが、俺の外見をした誰かに捕えられた。

 

「どこへ行くのかなぁ?」

 

 俺の声が甲高くなったバージョンでにっこりしながら言ってくる。あぁ、予想通り中の人はシャルロットなんだろ――

 

 

 

「――ん……。おっ」

 

 一瞬の暗転。気づいたら目の前にシャルロットがいた。なんとか人格が元に戻ったようだ。少し残n(ry

 

「よっしゃ、さて飯――」

 

「どこに行くのかなぁ?」

 

 元の姿に戻ったシャルロットが、にっこりとしながら同じ言葉を言う。あぁ、これはオワタね。

 結局、朝のホームルームが始まるギリギリの時刻まで説教をくらった。主に箒とシャルロットによって。

 ちなみにラウラからはこれっぽっちも怒られなかった。曰く、『それは太一が私のために実行しただけで、触れたのはシャルロットだ。問題ない。クラリッサも言ってたからな』ということらしい。俺と同じ考え様で助かった。そしてちょろい。

 

 

 

 

 

 放課後、今朝の不可解な出来事から俺達は一夏&俺ルームで会議を開くことにした。

 アニメポスター他、垂れ幕やゲーム機がポンポコ置いてあるのだから、数名は嫌気がさしているだろう。なのにこの部屋である。そんなに一夏が好きか!

 

「さてと、今朝や授業中の件について話すわよ」

 

 直接事件には巻き込まれていないので、半信半疑な鈴はそう言う。

 今朝はいいとして、授業中にもアレが何度か起こってしまったのだ。

 

 最初に一夏はセシリアと人格が入れ替わったらしく、しかも一夏は尿意が限界だったそうで。

 その後のセシリアの行動は明かされていない。顔が真っ赤だったのはわかっているが。

 

 次は楯無さんが犠牲となったらしい。入れ替わったのは休憩中で、簪と姉妹仲良く?ということだ。ついでに簪はパニック状態だったそう(楯無さんは冷静)。

 

 そして最後にラウラと本音が入れ替わった。

 昼休みに『おぉ! 私の胸が大きくなったぞ!』などと本音の姿で叫ぶものだから、みんな呆然としてしまった。

 ラウラと姿が入れ替わった本音にとっては理不尽極まりないものである。『ラウラウのせいでみんなに引かれちゃったよ〜』と本音は怒ってラウラをポコポコ叩いていた。もちろん、ラウラはペコペコと謝った。

 

「あんたたち本当に人格が入れ替わったわけ? 信じられないんだけど」

 

「僕だって信じられないよ。太一と体が入れ替わるだなんて」

 

「お姉さんも驚いたわ。まさか簪ちゃんの体になっちゃうだなんて♪」

 

 シャルロットと楯無さんの言葉に俺も同感だ。心做しか楯無さんは姉妹で入れ替わって喜んでいるようだが。ちなみに、未だに朝の別の胸揉みの件はバレていないのでヒヤヒヤしている。

 

「どうして嬉しそうなの……。それにしても、まさか……このままずっと、なんてことはないよね……」

 

 アニメみたいで新鮮だけど。と最後に呟く簪。これにも同感。

 

「まぁ、起こってしまったものには仕方がありませんので、お互い気をつけるべきかと……」

 

 セシリアが顔を赤くして意見を出す。きっと一夏と入れ替わってなにか思い出したな。

 

「セシリー、顔赤いよ。おりむーと何かあった〜?」

 

「い、いえ、べ、別に何もありませんでしたのよ。おほほ、おほほほ」

 

 セシリアの頬を見た本音は、露骨に訊いてみる。セシリアはわざとらしい高笑いで誤魔化した。

 

「ふぅん。で、入れ替わったときどんな感じだったの?」

 

「夜中に一夏が暴れてたな。駄目だこいつ……早くなんとかしないと……って思ったね」

 

 鈴に訊かれ、箒と一夏が入れ替わったときな。と追加して伝える。久しぶりに深刻そうな表情で言ってみた。

 

「今朝、私がシャルロットと話していたら、喋り方が変わって急に慌てふためき、洗面所へ逃げ込んでいったぞ。心配になったから扉を開けたところ、シャルロットが自分の胸を揉んで――んっ」

 

「ちょちょ、余計なこと言うなよラウラ!」

 

 ラウラがバレたら不味いことを漏らそうとしたので、隣にいたラウラの口を咄嗟に俺は塞いだ。手が唇に当たらないように。

 

(ラウラの肌プニってやがる!)

 

 そんな感想を考え出している場合ではない。まぁ……手遅れだけど。

 

「ねぇ城谷上くん。それはどういうことかなぁ?」

 

 急に苗字呼びに変えたシャルロットが、殺気立つ笑顔で訊いてくる。

 この部屋から飛び出そうと必死になって走ろうとしたが……。

 

「どこに行くのかなぁ?」

 

 デジャヴ、しかも今朝と同じ展開。

 

 

 

──────────────────────────

 

 激おこのシャルロットが現れた。_

 

 どうする?_

 

 

 ・戦う (勝率1%)

 

 ・逃げる (扉付近に箒)

 

 ⦿叫ぶ (未知の世界)

 

 ・開き直る (バッドエンド)

 

 ・舐める (死亡フラグ)

 

──────────────────────────

城谷上 太一

 HP 100/100

 SE(シールドエネルギー)1000/1000

──────────────────────────

 

 

 シャルロットのIS型拳が展開されたとき、俺は部屋にある【ロウきゅーぶ!】のポスターを眺めてこう叫ぶ。

 

「まったく、小学生は最高だぜ!――」

 

 そこで俺の意識は吹っ飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……イテテ」

 

 頭に若干の痛みを感じつつも、俺は目を覚ました。どうやら自分の部屋で寝かされていたらしい。腕時計(ISの待機形態)を確認すると、夕食の時間帯になっていた。

 

(……腹減った)

 

 朝昼は飯を殆ど食べていない。朝は説教、昼は皆と超常現象について話し、放課後は会議。食う時間ねぇ。

 夕食と同時に女子が風呂に入る時刻。さすがにこの状況では、会議に参加した女子達は風呂に入らないだろう。まぁ、仮に期待しても無駄か。

 

 まだ身体中が痛む中、廊下で一人歩く。すると本音と(運命的に)出会った。その手には豚カツ定食が載ったトレーを持っていた。なんか減ってるけど。

 

「およよー目が覚めた〜? はいやがみーん」

 

「おぉ、さんきゅー本音」

 

 なんて心優しい美少女なんでしょう。俺のために料理を運んでくれるとは思ってなかった。まるで風邪ひいて看病されている気分ではないか。……ってことは風邪わざと引くのも悪くないかもしれない。

 

「えっへん! 私もやればできる子なんだよ〜」

 

「そうですねぇ〜」

 

 本音につられてのほほんとしてしまう俺氏。本音と共に俺の部屋へ戻って、本音と気絶する前について会話する。話の途中で瞬きをした瞬間――

 

 

 

 

「――ふぁっ」

 

 始まった。また人格入れ替わりである。場所はシャワールーム。つまり自分は裸の状態ということ。ってことはもしかして女子なのでは!と恐る恐る足元を見る。

 

 高校生にしては固く鍛えられた胸筋や腹筋と、それなりの筋肉が腕などついている。肩幅は広く、下半身には突起物が獣のようにあらわになっている。なるほど、この体の所有者は――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「Sh〇t! 一夏じゃねぇか!!」

 

 知ってた。しかし、1%の確率でも奇跡を求めて期待していた。結果は非常にがっかりである。やはり一夏の一夏ってすごく……大きいです……。

 

 そんなことはどうでもよく、俺は即行でタオルで水気をとる。寮を出ようと考えたが、俺はビビビッと何かを閃いた。

 俺は今、【一夏】になっている。シャルロットのように女子ではないが、今度は男と人格を交換した。ならば別の面白いことを実行しようではないか(ゲス顔)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……はぁ」

 

 一方、箒はため息をついていた。場所は箒とルームメイト、鷹月静寐の部屋である。静寐は夕食中でいない。

 

(また大きくなったような……)

 

 むにむにと自分の胸を触る箒。日本人高校生としてはかなり豊満な胸。本音の方が微妙に大きいが、コンプレックスな箒にとっては全く関係なかった。

 

(い、一夏は胸が大きい方が好みなら、話は別だな……)

 

 一夏の好みというか、胸全般を意識することは多いが、胸を凝視するほどではない。凝視するのは太一。

 ちなみに太一が思うに『一夏と箒は脈アリだろうね』だそう。それを太一に言われた箒は、結ばれることに自信がないこともない。

 しかし、何かとラウラの方を優先しているため、本当に自分達を応援しているのか箒は少し疑い気味である。

 

 コンコン。

 

「おーい。箒ぃ〜」

 

 太一【一夏】が爽やかな声でそう呼んだ。もちろん、箒は中身が太一だとは知らない。

 

「わ、わぁ!? ち、ちょっと待ってくれ!」

 

 時間帯的に剣道の修行を終えたところである。汗をかいたので箒は部室のシャワーを入ろうとしたが、途中で一夏か太一と入れ替わるのではないか思い、入るに入れなかった。結果、部室で制服に着替えただけである。

 

「あ、あのだな……」

 

「ん?」

 

「じ、実は今朝の件もあってシャワーを浴びていないのだ。だからまた今度にして――」

 

「全然大丈夫だぞ。気にしないからな」(寧ろ歓迎)

 

 結局、太一【一夏】は部屋にお邪魔した。太一は匂いフェチではないのだが、一夏の体でクンクンと箒の匂いを嗅いだ。

 

(んむぬ!? なんだこの感覚は!)

 

 どうやら太一【一夏】は新しいフェチに目覚めたようです。無性にhshsしたそうである。

 

「ほら! 匂わないだろ」

 

「ほら、と言われてもわからないだろう!」

 

 自分の匂いなんて普通にしてたら誰もわからないだろう。そのためか箒には『匂わない』の言葉が信じれなかった。

 

「まぁまぁ、箒はいい香りがするから大丈夫だよ」

 

 不自然なくらい笑顔で接する太一【一夏】。そんなことを言われて箒はポワっとと顔を赤くした。

 

「い、いい香りか? そうか、そうか!」

 

「――にしても、箒って美人だよな」

 

 ジーッと箒を見つめていた太一【一夏】が、突然、箒を褒めた。

 

「い、いいい、いっ、一夏!? い、今、なな、なんと!?」

 

 今度はボワッと顔が赤くなる箒。びっくりして普段より動揺が激しかった。

 

「だから大和撫子(やまとなでしこ)のような女性だ、と言ってるだろ」

 

 だから、と言っておきながら太一【一夏】は別の言い方で褒め称えた。

 

(大人しければ……だけど)

 

 決して、太一は口に出さないが、心の中で念じる。一夏本人も箒を美人と思っているのは事実。しかし、口に出して褒めることは滅多にない。

 

「や、やま、大和撫子だなんて……きゅ、急にどうしたのだ?」

 

 頬に両手を添えながら、箒は上目遣いで訊いてくる。元々太一の身長は高くないが、一夏の体となった太一にとって、箒の上目遣いは心奪われそうなほど、美しくも可愛いものだった。

 

(結婚しよ)

 

 太一が思ったことは、まるで【進撃の巨人】でライナーの心の声である。もちろん、本気で恋してしまう訳ではない。太一には愛する嫁(二次元)が沢山いる。裏切るつもりは無い。特にロリ。

 

「いやぁ、今朝入れ替わったときに、箒なのか信じられなくてな? 鏡を隅々まで見つめていたんだが、腰が抜けるほど美しく感じたぜ」

 

 ボフン、と頭が沸騰して今にも失神しそうなほど真っ赤になった箒は、嬉しい過ぎたのか、恥ずかし過ぎたのか、壁を思い切り殴って大穴を開けた。慎ましやかな大和撫子とは何処へ行ったのだろうか。

 

(もしかして、一夏は私のことが――)

 

 ――好きなのだろうか。その言葉を箒は思い浮かべた途端に、高速ピストンパンチを繰り出す。壁がベコベコにされてしまった。

 

「な、なぁ、一夏……」

 

「なんだ?」

 

「いや、その……一夏は、わ、わ、私のことが……す、すすすすすすす」

 

「す?」wktk

 

「――好き……なのか?」

 

 ついに言えた。その瞬間にもう箒は絶頂(意味深)したかのように力が抜けた。

 

(KI☆TA☆KO☆RE)

 

 太一【一夏】は喜びに満ちていた。それは箒の口からそんな言葉を聞けたから。

 明らかに太一は取り返しのつかない方向にまで進んでいるのだが、当の本人は全く気にしていなかった。

 

「ああ、好きだぜ」

 

「幼なじみ、として……ではなくか?」

 

 そうだぞ。異性として愛してる。

 このように一夏にしか許されないであろうセリフを太一【一夏】が言おうとした刹那――

 

 

 ――爆発。扉が木端微塵と化した。

 

 

 これができるのは誰かって? あの軍人娘さんの手榴弾でございますよ。

 

「あんたねえ!!!」と鈴【ラウラ】。

 

「夫がいながら浮気とは、嫁失格だ!」とラウラ【セシリア】。

 

「一夏さん! これはどういうことですの!?」とセシリア【鈴】。

 

「はぁはぁ……ん?」と一夏【太一】。

 

 全く状況理解ができないだろう。それもそのはず、人格入れ替わりがバラバラに同時発生していたのだ。

 一夏は【太一】になったとき、本音のことは放っておいて、真っ先に太一【一夏】へ通話をかけた。しかし、出てこなかったのである(太一が電源を切った)。

 仕方なく、一夏は探しに色んな場所を回った。それから、一夏ラバーズ全員で居場所を突き止め、後から一夏【太一】がやって来たのである。

 

「……?」「ギクッ」

 箒は理解ができずにポカンとしている。一方で太一【一夏】は、この世の終わりを感じていた。

 

「なぁ、太一。探したんだぜ?」

 

「「「「?」」」」

 

 太一。その言葉にその場にいる太一【一夏】以外の全員が振り向く。いきなり振りかれたので、一夏【太一】は若干驚いた。

 

「え? あんたが一夏なの?」

 

 鈴【ラウラ】が訊く。ラウラの形相で鈴の口調なのだから、違和感しかなかった。例えるならラウラの声が高くなった状態だろう。

 

「あぁ、みんなは知らなかったか。俺達入れ替わってたんだよ」

 

「……ということは、つまり?」

 

 箒の言葉で全員が太一【一夏】の方を向く。完全にバレた。

 

「いや、あ、あはは……何言ってんだよ太一。俺は――」

 

 

 

 

 

「――一夏だ。…………あっ」

 

 あっ…(察し)。目の前には一夏がいる。つまり、元の姿に戻っているということだ。

 

 ゴゴゴゴゴゴゴ。

 

 大和撫子とはかけ離れた存在が、目の前に現れた。怒りのオーラが目に見えるほど凄い憤怒である。

 

「太一いぃぃ、貴様ああああっ!!」

 

「は、はい! 箒様!!」

 

 物凄い罵声を浴びせられ、俺は焦って様付けして敬礼する。

 

「乙女の純情を汚しおってっ……!」

 

「い、いや、まて箒。こ、これは箒に喜んで欲しくてな?」

 

 咄嗟の言い訳。しかし、全くの意味をなさなかった。

 

「あんた、いっぺん死んだ方がいいわよ」と鈴。

 

「太一さんは反省をするべきですわ」とセシリア。

 

「骨は拾っておく」とラウラ。

 

「ご、ご愁傷様」と一夏。

 

 どうやら全員元に戻ったようだが、救いようのない言葉しかなかった。いや、自業自得だから当たり前か。

 ちなみに反省はしている。後悔はしていない。

 

「問答無用っ! 成敗してくれる!!」

 

 箒が木刀を手に構え、突撃してくる。振りかざしたそれを俺は間一髪で避け、部屋を出て全力で逃げるが――

 

――ガシっ。

 

 何者かに両腕を掴まれる。

 

「城谷上くん?」「太一?」

 

 シャルロットと簪だった。シャルロットはまた呼び名が苗字になっている。その後ろには本音がいた。

 そして、気づいた時には箒の木刀が頭上に見えて腰を抜かす。――俺氏終了のお知らせ。

 

 最後に見たのは、箒の白いパンツであった。

 

 ドカッ!!!

 

(ごち、そうさま……で……した)

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふんふんふーん。さぁーて、三人とも楽しんでくれたかな~?」

 

 鼻歌を歌いながら、モニターへと辿り着く。映っていたのは、箒の木刀で殴られる太一の姿であった。

 

「……あれれぇ? 箒ちゃんがたっくんをいじめてるのかな?」

 

 先程まで次の面白い物を作っていた束は、現状理解できなかった。それでもポジティブな思考で束は考える。

 

「きっと、えすえむぷれいってやつだね! 箒ちゃんは『えす』だったんだぁ。束さんも混ざっちゃおっかな~♪」

 

 冗談交じりに微笑む束。束が創り出す物語はまだ始まりに過ぎなかった。

 

 

 

 

 




長い(確信)。ココロコネクト計画まだ続くかも知れません。万能なんですよ。ココロコネクトのストーリーを他作品に混ぜるの。

なんか番外編のくせにシャルロットばかり出ているのはなぜだろうか。本音、簪、楯無出番少ねー。ラウラと箒を優先させるあたりもおかしい……。

次回は他ヒロインを優先して登場させます(多分)。

━━『君の名は』『山田くんと七人の魔女』『ToLOVEる』『ストライク・ザ・ブラッド』『ココロコネクト』

人格入れ替わり最高っすね。

━━挿絵

色々バランスがあれですが許してヒヤシンス。ココロコネクトのワンシーンからもぎ取ってトレスさせてもらいましたよ( ´∀`)ハハハ

━━ラウラ

あーいいっすねー。ヒロインでもないのに何やってんだ俺は……。

━━太一はロリコン

ロリコンなのにヒロインがロリじゃないのは色々とあれですね。

━━一夏&太一ルーム

部屋の奥の空きスペースにフィギュアやらポスターやら垂れ幕、ゲーム、パソコンなどがあります。手前が一夏のベッドです。

━━申し訳程度の楯無と簪、本音

次回は優先します。

━━RPGからのロリコン宣言。

少なくともいつものメンバーは太一が二次ロリコンなのを知っています。

━━一夏に入れ替わる。

誰得

━━匂いフェチ

箒の匂い、汗臭い(大嘘)

━━結婚しよ

神様
女神
結婚したい

━━太一

欲望に忠実過ぎないかと思った今日この頃。まぁ、いいか(ニッコリ)。



※感想宜しくお願いします。


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リメイク版第一章
第1話 ハジマリ


※ここからリメイク版第一章が始まります。











 

 

 

 

 

 藍越学園試験会場。俺は一夏とそこへ受験に来ていた。今日は藍越学園に入学するための入学試験である。

 俺は基本、親友には人任せな性格だったようで一夏に任せっきりであった。

 そんなとき、一夏が妙に焦ってるように感じた。そのお陰で“シュタインズ・ゲート”的な世界線が変わることなど、当時の俺が知る由もなかった。

 

「おい一夏、本当にここが試験場か?」

 

「多分、間違ってない筈なんだが……」

 

「勘弁してくれよ……間に合わなかったら拙いぞ」

 

「んなこと言われてもな……お、ここじゃないか?」

 

「え? そうか?」

 

 恐る恐る入るとそこにはやる気無さそうな女性がいた。

 

「あー受験生か? すぐ着替えて始めてねぇ」

 

 なにやら試験官らしき人が気だるそうに言ってくる。

 

(なぜ着替えるのか? あ、コート類の話か……)

 

 それにしても、試験場の割には人がいないし、机もないのだが、ここは本当に試験場なのだろうか。

 

「おい見ろよ……あれ、ISじゃね?」

 

 一夏に言われてそのまま進んで行くと、何故か『IS』があった。

 かつて、世界を女尊男卑主義に変えたものの一つであり、絶対に女性にしか扱えないものである。ISコアと呼ばれるものを間近で見たのは小学二年生のときだ。あの天災、篠ノ之束さんが作り上げたISである。

 そして、これは試験用のISみたいだ。どうせ男には使えっこないのだが。

 

 どうでもいいが IS(イスラム国)でもソ連が開発した戦車IS(スターリン戦車)でもない、IS(インフィニット・ストラトス)。日本語で直訳すれば、「無限の成層圏」である。

 

「な……絶対、部屋間違えてるぞ一夏」

 

「ちょっと触れてみようぜ。少しくらいならいいだろ」

 

「それは拙いだろ――」

 

 時既に遅し。一夏はそっとISに触れていたところだった。どうせ動かないだろう、と思った刹那――

 

 ――ISが起動した。

 

 ISを男は動かせないと思ってた時期が俺にもありました。それは女性にしか動かせず男にとっては金属の塊の様なもの。それが男である一夏が動かしたのだ。

 まさか、この男は女の子だったのだろうか。だが修学旅行ではちゃんと立派な息子(Icika's son)が付いていたはず。いや、なに変なこと思い返してるんだろう。そうか、俺はホモだったのか。

 

「う、嘘だろ!?」

 

 そう言って、俺は一夏がISを動かした後に、恐る恐ると試験場にあったもう一つのISに触れてみる。

 

 ――またしても動いたのだ。

 

 頭に色々な情報が入ってくる。何か変な気分だ。

 

 そこから先は大騒ぎであった。IS学園の試験員に連れていかれ、色々な目にあった。とはいえ、殆どは個人保護プログラム的なもので安全なところで過ごしていた。

 

 時は進んでIS学園入学式前日。

 

「ついに、入学式がくるのか……」

 

「あぁ……」

 

 俺は一夏と一夏の実家で過ごしていた。未だに近所には監視カメラが大量に置かれ、それなりの人数の警備員が巡回している。俺らはどこぞの有名人にでもなったかのようだ。そんなことを考えながらふと明日のことを考え、鼻で笑った。

 

「ふっ……」

 

「どうした? 急に鼻で笑いだして」

 

「IS学園なんて女子だらけの楽園なんて夢みたいでな、つい……」

 

 ついにラブコメの青春キターー、みたいな気分だ。

 

 こんな感じの展開などアニメで〝精霊使いの剣舞(ブレイドダンス)〟や〝銃皇無尽のファフニール〟みたいなのに似ているかもしれない。もっといえば〝最弱無敗の神装機竜(バハムート)〟あたりだろう。

 尤も、一夏にはそういう展開が似合っている。それに対して俺には全く似合わないだろう。よくよく考えると俺はテンションがガクッと下がった。

 

「でも、周り女子ばっかだぜ? 大丈夫だろうか……」

 

「……まぁ、一夏なら問題ないさ。俺は心配だが」

 

 なにせ、一夏は見た目が爽やかなイケメンだが、俺は自称フツメンだ。嫌な予感しかない。基本、キャーキャーちやほやされるのは一夏で、俺は影薄い凡人。俺は眼中にない存在なのかもな。

 

「何が心配なんだか……まぁ、もう夜遅いし寝ようぜ」

 

「おう」

 

 それから睡眠を取ろうと寝室へ向かったが、実際に寝たのは一時間後である。明日の入学式について考えていると緊張して寝れなかったのだ。決して一夏に欲情したとかではない。本当だぞ?

 冗談はさておき緊張したのは事実だ。お陰で次の日は眠かった。

 

 

 翌日、一年一組の教室。入学式が終わり、教室へ席に着くと先生らしき人がやってきた。やっべ緊張する。

 

「全員そろってますねー。SHR(ショートホームルーム)始めますよー」

 

 教室内に入ってきたのは緑色の髪の女性だった。

 俺は滅多に見られない人を見て、驚きを隠せないでいた。こんな髪のキャラって“GJ部”神無月環や“らき☆すた”の岩崎みなみ、“暗殺教室”の茅野カエデなど色々いる。

 この副担任の名前は、山田真耶(やまだ まや)後ろから読んでも同じである。そして、どことは言わないがデカイ(確信)。

 

「それでは、皆さん一年間よろしくお願いしますね」

 

「「…………」」

 

 誰も反応せず沈黙である。恐らく皆緊張しているのだろう。特に俺、手がぷるぷるしてますから。

 

「じゃあ……自己紹介お願いします。えーと……出席番号順で……」

 

 またしても誰も反応しない。こればかりはだんだん副担任が可哀想にみえてくる。

 そんなことより、先生がなんだか可愛くて眼鏡がないほうも見てみたいと思ってしまう自分がいる。所謂、童顔で同い歳まではいわないが、高校三年生辺りに紛れても違和感ない気がする。

 一夏はそわそわして周りを見ている何かに気づいたのか驚いた顔している。ちなみに俺の席は廊下側で最前列の一夏の隣である。

 

「あのー、織斑一夏くん。織斑一夏くーん?」

 

「呼ばれてっぞ、一夏」

 

「は、はい!?」

 

 素晴らしい声の裏返りっぷりである。これに思わず吹きそうになる。周りのクラスメイトとなる女子達もクスクスと笑っていた。

 

「あっ、あの、大声だしちゃってごめんね。お、怒ってる?怒ってるかな?で、でもね、出席番号だと、次は織斑くんなんだ。だから自己紹介ダメかな?」

 

 いや山田先生が頭を下げる必要はないと思うのだが。

 

「落ち着いて下さい。今、しますんで。えっと……織斑一夏です。よろしくお願いします」

 

 もうちょい喋れよ高校生なんだからさ、と一夏に対して視線をおくる。なんとか察したのか一夏は息を吸い……

 

「――以上です!!」

 

「なんでさ!」

 

 ドデンっ!とクラス中がズッコケる。おいおい息吸った意味ないだろう。期待した俺が馬鹿だったようだ。思わずツッコミ入れちまったわ。

 

「えーとで」

 

 そらみろ、先生困っちったぞ。

 

――パァンッ!

 

「うぐっ!」

 

 ほう。今時、体罰とは、いくらここが日本領土でもどこの国にも属して無いと言われてるとはいえ、容赦ないなぁ――あっ、千冬さんだった。

 

「げぇっ関羽(かんう)!?」

 

「うお! 本当(マジ)だ!」

 

――パァンっ! パァンっ!

 

 俺も一緒に叩かれた。この人は生徒に対して容赦ないのか。ちなみに関羽とか知らない。……頭いてぇ。

 

「なわけあるか、馬鹿者」

 

 ノリに乗らなきゃ良かったと反省している。後悔はしていない。決して俺は(マゾヒスティック)ではない。本当だぞ。

 

「あ、あの織斑先生。会議は終わりました?」

 

「すまない。山田先生。挨拶を任せてしまって」

 

「いえ、副担任ですので……これくらい問題ないです!」

 

 ピタッと敬礼をする山田先生。この動作に思わず吊られるところだった。

 

「諸君、私が担任の織斑千冬だ。君たち新人を一年で使い物になるIS操縦者に育てるのが仕事だ。私の言うことはよく聴き、よく理解しろ。出来ない者には出来るまで指導してやる。私の仕事は十五歳を十六歳までに鍛えぬくことだ。逆らっても構わんが、私の言うことは絶対に聞け。いいな?」

 

 なんという軍事的発言。まぁISは兵器として使われてしまっているから軍事的ではあるが。しかもこの人、数年前はドイツの教官をやってたらしい。

 

「キャ~~! 本物の千冬様をこの目で見られるなんて!」

 

「お目にかかれて光栄です!」

 

「私、お姉様に憧れてこの学園に九州から来ました!!」

 

「神はいたっ!」

 

「くぁwせdrftgyふじこlp;@:」

 

 クラスメイトの女子の殆どが騒ぎ出す。神はいたって何か聞いたことあるぞ。そして最後の人、落ち着け。

 

「あの千冬様にご指導いただけるなんて嬉しくも本望です!」

 

「私、お姉さまの命令なら何でも聞きます!」

 

「(俺もー!)」

 

 ドサクサに紛れる俺氏。多分誰にも聞こえてない、はず。

 

「……はぁっ。毎年毎年、よくもこれだけ馬鹿者共がたくさん集まるものだ。ある意味感心させられる。それとも何か? 私のクラスにだけ馬鹿者だけを集中させるように仕組んでいるのか?」

 

 千冬さんも呆れてしまっている。違うんです。千冬さん!貴女を尊敬する奴しかいないだけです(白目)

 

「きゃあああああっ! お姉様! もっと叱って! 鞭で叩きながら罵って!」

 

「でも時には優しい笑顔を見せて!」

 

「(俺も罵ってー!)」

 

「そして絶対につけあがらないようにキツイ躾をして私たちを跪かせて!」

 

 またドサクサに紛れて小声でM発言する。もう一度言うがMではない。二次元主義が故に好きで発言してるだけだ。

 

「静かにしろ!!」

 

 その言葉で静まり返る。うん、さすが千冬さん。

 

「それより、挨拶も満足にできんのかお前は」

 

「だって、千冬姉! 俺――」

 

パァンッ!

 

「織斑先生だ! 馬鹿者」

 

「はい……」

 

「え……? ひょっとして織斑くんって、あの千冬様の弟なの……?」

 

 苗字で察しろよ。そうそういないぞこんな漢字の人。……多分。

 

「それじゃあ、世界で男で『IS』を使えるのはそれが関係してるのかな?」

 

「なら、もう一人はどうなの?」

 

「織斑くんの隣にいる男子って、知り合い?」

 

 確かに知り合いだ。一応幼なじみだし。

 

「そうだ。城谷上自己紹介してないだろうから頼む」

 

 いや、まだ他にもいますけどね。

 

「はい。……えっと、一夏と同じく入学しました。城谷上 太一といいます。一夏とは中学の同級生です。趣味はゲームです。宜しくお願いします」

 

 キリっと一夏よりまともな挨拶をする。ほらこれがお手本だ。

 実際、話が長いので適当に言ったけど、本当のところ一夏とは自分が小さいときから会っている。勿論、あの有名な天災博士や千冬さん、箒とも関わりはあるのだ。

 小学二年で北海道へ引っ越したが、出身が北海道だったりと何度も引越ししている。

 

「織斑、城谷上を見習え。お前よりマシな自己紹介だぞ」

 

 ドヤァと一夏に視線を送った。

 

「はい……」

 

「よしっと、SHRはもう終わりだ。あまり時間が無いので、諸君らにはこれからISの基礎知識を半月で覚えてもらうぞ。その後実習だが、基本動作は半月で身体に染みこませてもらうぞ。いいか、いいなら返事をしろ。文句があっても返事をしろ、私の言葉には絶対に返事をしろ。いいな?」

 

「「「はい! (イエスマム!(小声))」」」

 

 もう軍人でいいなこの人。威圧感パネェっす。

 

 この織斑千冬と言う人は、第一世代IS操縦者の元日本代表。しかも公式試合の戦歴は無敗。そして世界最強で『ブリュンヒルデ』の称号を持っている。うん、勝てない(確信)

 

 

 




読んで頂きありがとうございます。どんどん気軽に読んでいってください。

※この物語はアニメネタ(ジャンル豊富)、ネット用語、顔文字(縦書壊し)、など含んでおります。中盤からヒロインの好感度を上げてスキルートまであげる、擬人化ISも予定しています。


挿絵(オリジナルIS)も用意してます。どうぞこれから宜しくお願いします。




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第2話 アラソイ

はい、リメイク版第一章の2話目です。
旧2話と比べても、さほど大きな変更点はないです。

簡潔に言うと、

 セシリアと主人公の言動が変わる。
 文章を少しマシにした。

これだけです。


※同時投稿しましたが、話数がバラバラになると思います。ご了承ください。



 SHRと一時間目終了後、俺たちは女子たちの視線に囲まれていた。

 俺は斜め後ろの女子たちをよそ目に見る。はっきりと分かるほど見られているのを確認したが、その大半は一夏に集中しているだろう。

 

「なぁ、太一 ――」

 

「ちょっといいか?」

 

 一夏に割り込み、黒髪の女子が来た。二つに別れたポニテで凛々しい感じと懐かしさを感じるのは、俺が小学生で引っ越す前に過ごした篠ノ之箒(しののの ほうき)である。

 にしても、随分と久しぶりである。その美貌は昔の面影を残しているが、胸は……すごく、大きいです。

 

「お、箒じゃないか! 久しぶりだなー」

 

「おひさっ、箒」

 

「あ、あぁ、久しぶりだな……だがすまない、一夏を借りても構わないか?」

 

「お、おうよ」

 

 なんだかよく分からないが、二人はどこかへ行ってしまった。

 ということは、男子は俺一人になった訳だが、クラスメイトの視線が一気に俺に集中したようだ。頼む、気まずいし、恥ずかしいのでおやめ下さい。

 

 ……仕方ない、俺の秘奥義、睡眠(現実逃避)でこの場を凌ごう。なるべく顔を見せないように腕で顔を隠した寝方で。

 

 

 

 zzz……。…………。………………。

 

 

 

 

 

 

 ――パァンッ!

 

 

「ぐぶぉへっ!」

 

 突然、いい音鳴らして誰かに叩かれる。わかってはいたが、やはり織斑先生だった。今のはマジでほぼイキかけました。

 

「初日から寝るな馬鹿者。授業も始まったぞ」

 

「……すみません」

 

 その直後、若干遅れた一夏と箒も出席簿で叩かれて痛がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「――であるからして、ISの基本的な運用は現時点で国家の認証が必要であり、枠内を逸脱したIS運用をした場合は、刑法によって罰せられ――」

 

 すらすらと教科書を読んでいく山田先生。俺の机には、電話帳並の教科書が数冊ある。一応、入学前にサラッと見たが最初しか分からない。何ヶ所かわからないところがあるが、まぁ何とかなるだろう。

 

「城谷上くん。何かわからないところはありますか?」

 

 俯く俺に山田先生が訊く。

 

「あまり分かりませんね……初めてみます」

 

 参考書はあったが予習はほぼしていない。元々、家庭学習を放置気味な俺に勉強してと言われてもやる気にはなれない。まぁ、受験のときは流石に一夏とやったが、そのせいで勉強する気力が全くでなかったのだ。

 

「えーと……初めてみるんですか?」

 

「はい、予習なんてしてないです」

 

 パァンッ!

 

「予習しろと言っただろ馬鹿者」

 

 またもや罰を食らう。いつの間にか後ろにいたんだ?もしかして忍者なのか? アイエエエエ! ニンジャ!? ニンジャナンデ!?

 

「受験後はやりたくなかったんです」

 

 パァンッ!

 

「言い訳無用だ馬鹿者。一週間で覚えろ」

 

「ええ?! でも――はい。ワカリマシタ」

 

 織斑先生に思いっきり睨まれ諦めた。仕方ない、ここは引こう。

 

「山田先生、続きを」

 

「は、はい……他に誰かわからないところありますか?」

 

 やっぱりこの緑髪の眼鏡の山田先生は素晴らしい。今までで一番好きな先生だ。どっかの誰かさんと違って……っと顔にでてるから辞めよう。自分でも分かるくらいニヤニヤしてるからな。こんな感じ→( ̄∀ ̄)

 

「じゃあ、織斑君はどうですか?」

 

「えっ!?」

 

 山田先生に呼ばれて驚く一夏。

 

「あの、先生!」

 

「はい、なんでしょう!」

 

「ほとんど全部わかりません!」キリッ

 

 真面目な顔で、とんでもない発言をする一夏。ここは俺が叱りたいところだが、人のこと言えない立場なので断念した。

 

「……織斑、入学前の参考書は読んだか?」

 

 教室の端にいる織斑先生が、呆れながらも問いかける。

 

「古い電話帳と間違えて捨てました」

 

 パァンッ!

 

「電話帳と間違えるとは何事だ! 馬鹿者」

 

 またまた一夏のトンデモ発言に、織斑先生が余計に呆れていた。

 

「あとで再発行してやるから、城谷上 と同じく一週間以内に覚えろ」

 

「い、いや、一週間であんなには……」

 

 織斑先生はさっきより鋭い目つきで一夏を睨む。これには一夏もどうしようもない。

 

「やれと言っている(威圧)」

 

「はい、やります!」

 

「ISはその機動性、攻撃力、制圧力と過去の兵器を遥かに凌ぐ。そういった『兵器』を深く知らずに扱えば必ず事故が起こる。そうならないための基礎知識と訓練だ。理解が出来なくても答えろ。そして守れ。規則とはそういうものだ」

 

 別に望んで来たわけではございません。俺が受けたのは藍越学園です。

 

「おい、織斑、城谷上。貴様等、『自分は望んでここにいるわけではない』とか思っているようだな?」

 

 見事に心を織斑先生に読まれる。さすがは世界最強(ブリュンヒルデ)さんですわ。

 

「望む望まざるにもかかわらず、人は集団の中で生きなくてはならない。それすら放棄するなら、まず人であることを辞めることだな」

 

 ということは、ヒキニートになれば人間辞めたことになるのだろうか。是非ともヒキニートにならせて頂きたいものだ。食う寝る遊ぶの三連コンボ。土間うまるのようにな。

 

「まさかとは思うが、『引きこもることができるなら人間辞めよう』とか思ってないか? 城谷上」

 

「お、思ってないですよ。織斑先生」

 

 また心を読まれた。恐るべしブリュンヒルデ。

 そして、二時間目が終わって休憩時間。俺と一夏で駄弁っていた。

 

「ちょっと宜しくて?」

 

「「はい?」」

 

 また誰かが割り込んでくる。そこには金髪の縦ロールでモデルの様な体型、かなり美しいといった見た目の女子である。おそらくイギリス人の貴族様だろう。

 

「訊いてます?」

 

「あ、ああ」

「お、おう」

 

「なんですのその間抜けな返事は! わたくしに声を掛けられただけでも光栄なのですから、それ相応の態度があるのではなくて?」

 

 んな無茶苦茶な。あなたのことを知りもしない俺がフレンドリー?に対応して何が悪いのか。このクラスにいる限り、明らかに同い年である。

 

「あ、あのー、誰ですか?」

 

 俺も思ったことに一夏が問う。

 

「な! わたくしを知らないですって!? このセシリア・オルコットを? イギリス代表候補生にして、入試首席のこのわたくしを!?」

 

 あのときの自己紹介も中途半端に終わった上、俺はテレビをあまり見ないでゲームやアニメを優先してたから、なんとも言えない。

 

「へー、知らなかったですなぁ」

「知らないな……」

 

「あなたたち、テレビや新聞紙などでご存知ないですの?!」

 

「すまん、テレビはゲームするときとアニメみるとき以外、滅多に使ってない」

 

「くっ……」

 

「あー……質問いいか?」

 

 一夏が申し訳なさそうに挙手する。

 

「はい、このわたくしにどんな質問でしょうか?」

 

「そもそも、代表候補生って何?」

 

 ガタンと周りから音が響く。おいおい一夏殿、さすがにそれは知っとけよ。俺でも知ってたぞ。

 

「あのな一夏。所謂、国家の代表のIS操縦者の候補生、つまりエリートってところだぞJK(じぇーけー)

 

「へー……」

 

「はぁ……反応が薄いですわ……ですから――」

 

 セシリアが話し終わる前に、鐘が鳴る。これはある意味、素晴らしいタイミングだ。

 

「……っ。また後で来ますわ! 絶対に、逃げないことでいいですわね?」

 

 トイレと緊急時以外なら逃げませんよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「それではこの時間は実戦で使用する各種装備の特性について説明する」

 

 次は千冬さん――いや、織斑先生が主催の授業のようだ。山田先生は端っこでノートをとっている。

 

「ああ、その前に数週間後に行われるクラス対抗戦に出る代表者を決めんといけないな。クラス代表者とはそのままの意味で対抗戦だけではなく、生徒会の開く会議や委員会への出席……まぁ、クラス長だな。ちなみにクラス対抗戦は、入学時点での各クラスの実力推移を測るものだ。競争は向上心を生む。一度決まると一年間変更はないからな。誰か立候補はあるか? 立候補でも推薦でもいい」

 

 うん、面倒くさい。今まで、中学から委員会や部活をやってないからスルーしよう。どうせ推薦も一夏だけだろうし、問題なかろう。

 

「私は織斑くんを推薦します!」

 

 予想通りでなりよりです(ちょっと傷つきました)

 

「私も賛成です!」

「同意見です」

「やっぱ織斑くんだよねぇ」

「それな!」

「城谷上くんは……やっぱり織斑くんは織斑先生の弟だし?」

 

 うっ、なんだか胸が痛い。べ、別に羨ましいとか思ってないんだからね。

 

「では候補者は織斑……他には?」

 

「お、俺?」

 

 思わず一夏は立ち上がる。

 

「織斑。席に着け。さて、いないなら織斑に決まるが」

 

「ちょっ、ちょっと待て! それなら俺は太一を推薦だ!」

 

「なんでさ!!」

 

 巻き込まれたことに耐えきれず、思わず叫んでしまった。多数決なら一夏だろう。なかったらじゃんけんでもなんでも、わざと負ける以外は残されていない。

 

「では、この二人の多数決で決めるが」

 

「えぇ、でも――」

 

「自薦他薦は問わないと言った。他薦されたものに拒否権などない。選ばれた以上は覚悟をしろ」

 

「うそーん……」

 

 一夏よ、後で地味な悪戯を百回はやらないと俺の気が済まない。覚悟しやがれ。

 

「待ってください! 納得がいきませんわ!」

 

 良かった。納得の行かない人が、ここにいたようで。

 

「そのような選出は認められません! 大体、男がクラス代表だなんていい恥晒しですわ! わたくしに、このセシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか!?」

 

 でしたら最初から立候補をしてくださいセシリア・オルコット様。

 

「実力でしたら、わたくしがクラス代表になるのは必然。それを、物珍しいからという理由で()()()()()()()を代表に選ぶとは、非常に、嫌で嫌でたまりません! このクラスはそのような()()()()()()しかいないのですか!」

 

 オルコットは怒涛の勢いで声を荒らげる。ん、言っていい事と悪い事くらいわからないのか。この人は。

 

「わたくしはこのような()()()()()()までIS技術の修練に来ているのであって、サーカスをする気は毛頭ございませんわ! いいですか!? クラス代表は実力トップがなるべきはわたくしですわ! 大体、文化としても()()()()()で暮らさなくてはいけないこと自体――」

 

 今の発言、ヘイトスピーチもいいところだぞ。この女子は俺の癪に障った。

 

「イギリスだって大してお国自慢ないだろ。世界一まずい料理で何年覇者だよ」

「悪いけど、それ以上怒鳴るなら帰ってくださいよ。上品(この上なく下品)な貴族様?」

 

「下品……っ!」

 

 俺たちの言葉に、オルコットの怒りはさらにヒートアップしたようで。

 

「あっ、あっ、あなたは! わたくしの祖国を侮辱しますの!?」

 

「ブーメラン乙。先に侮辱したのはどちら様でしょうか?」

 

「なんですの?! 私は侮辱なんて――」

 

「ふっ、おいおい。無知で下品な猿や、程度の低い輩とか言っておきながら、自分が侮辱したことすら頭にないだなんて、可哀想なやつだな、君は」

 

 この人の脳ミソが空っぽに見えてしまい、ついつい鼻で笑いながら煽ってしまった。

 

「俺を馬鹿にするなら、まだマシだが、クラスメイトや母国にまで侮辱したのは感心しないな」

 

「っ……!」

 

 これでようやく彼女は黙った。そう思ったのもつかの間――

 

「決闘ですわっ!!!」

 

 甲高くデカイ声が教室に響く。だから、五月蝿いって黙らっしゃい。

 

「いいぜ。やってやるよ」

 

「拒否する。俺は傍観者希望」

 

「あなたもですのよ!」

 

「はい? 言い負かされて決闘申し込む人と戦う気ないんですけど」

 

「そんなもの関係ありません! クラス代表選抜として戦う責任がありますわ!」

 

「……仕方ない、わかったよ」

 

 どうせ、奴に勝てないんだろうけどね。代表候補生と素人、異能でもない限り、普通に戦ったらボロ負けだ。

 

「さて、話はまとまったな。それでは勝負は一週間後の月曜。放課後、第三アリーナで行う。織斑と城谷上、オルコットはそれぞれ用意をしておくように」

 

 かなり面倒くさいことをしてしまった。わざと負けるってのも手だが、どうもそれが気に食わない。二対一っていう選択肢はないんでしょうか……。

 

 




2話はこれにて終了です。

セシリアの侮辱度が上がってますが、まぁ、大丈夫でしょう。これが伏線になりますから。

主人公の言動については、旧版だとリゼロのナツキスバルみたいな性格になりそうなんで変えました。なんか煽りが増えてますけど


3話以降はほぼ別物になります。初見さん及び既読者の方もお楽しみください。


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第3話 ソウグウ

どうも、ここからはリメイク版のスタート地点です。

前よりマシになったストーリーをどうぞ、ゆっくりしていってください。


 

 

「いやー、太一ぃ~。今思うと最悪な決闘受けちまったな……」

 

 昼休み、一夏は机にうなだれながら言っていた。

 

「しゃーないさ。きっとなんとかなる」

 

「なんとかなるってなぁ……。一週間の内に訓練しないとな」

 

 どう足掻いて一週間ずっと特訓しても、代表候補生に勝てる可能性は低い。相手が専用機ならこちらも専用機で対抗しなければ勝てっこないだろう。

 

(まずは教えてくれる人探さないとな……)

 

「それな……とりま飯行こうぜ、一夏」

 

「そうだな初めての食堂だぜ」

 

 一夏はとりあえず定食、俺はパン四種類を食べる。周りの目線が気になったが絡まれることなくなんとか食べ終わった。しかし、俺ではなく一夏への目線が多いのは言うまでもない。

 それから放課後。

 

「うぅ……なんでこんなにややこしいんだ、意味わからん……」

 

 また一夏は机にうなだれている。

 

「まぁギリギリついていけるか、いけないか。はぁ、この先、ずっとオリエンテーションでいいのに……」

 

「はは、だよなぁ……」

 

 偏差値の高いIS学園だけあって、普通教科も難易度が高いらしい。つまり、俺の頭のレベルについていけなくなる可能性が出てくるということだ。やったね(白目)。

 

「あぁ、織斑くんと城谷上くん。居たんですね。良かった良かった」

 

 お互いグデーンと机にうなだれていると、廊下から山田先生が笑顔でやって来た。

 俺はその輝かしい笑顔で活力が少し回復した。

 

「どうしました?」

 

「えーとですね……二人の寮の部屋が決まりました」

 

「あれ? 一週間ほど自宅通学と聞きましたが?」

 

 俺は一夏もとい千冬さんの自宅で一週間泊まるつもりだったのだが、楽になって良かった良かった。

 

「まぁその筈ですけど、事情が事情なので無理矢理、部屋割りを変更しまして……」

 

 恐らく政府とかからの申し出だろう。人権保護とか監視とかそんな理由で。帰宅したらいきなり、誘拐され、拉致、監禁とかなったら死亡フラグですしおすし。

 

「それで、お二人の寮なのですが……無理矢理、変更したのでお互い別々のお部屋になってしまいました。城谷上くんは定員オーバーしてる部屋なのですが……一ヶ月くらいなので我慢してくれませんか?」

 

 バラバラなのは仕方が無いと思えるが、まさかの俺の部屋は女子二人と一緒に過ごせるようだ。どんな見た目であれ、嬉しいことは嬉しいのだが、さすがにそれはまずいと思われます、色々と。

 

「わかりました、けど……俺、一度家に戻って荷物用意しないと」

 

「あー俺も荷物が――」

 

「その荷物についてですが――」

 

「私が二人の分手配した。有り難く思え」

 

「「あ、ありがとうございます」」

 

「まぁ織斑に関しては生活必需品だがな。携帯電話、充電器、着替えとかで充分だろ。城谷上に関しては部屋に置いてあった荷物全てまとめて私が運んどいたぞ。感謝しろ」

 

「は、はい……あざーす」

 

 いや、一夏には適当過ぎると思う。いくら元々一夏の部屋にあまり家具がないとはいえ、大雑把な気がする。

 ちなみに生活必需品の他に様々なゲーム機や高性能スピーカー、高画質モニター、ゲーミングパソコン他、ラノベ、飲み物十本など入っている。事前準備も兼ねて、ある程度しまっていたのが幸いだ。

 

「それと、夕食は六時から七時の一年生食堂で、部屋にシャワーと御手洗は有りますし、時間ごとに学年で使う大浴場もあります。ですが、お二人は今のところ使用できません」

 

「え? なんでですか?」

 

 一夏がお馬鹿なことを言ったので、俺がツッコミを入れる。

 

「お前はアホか。同年代の女子と風呂に入る気か?」

 

「あ、そうだった……」

 

「えぇ?! 織斑くん女子と風呂に入りたいんですか!? だ、ダメですよ!」

 

 ほら一夏が余計なこと言うから山田先生がわたわたしている。

 

「い、いや入りたくないです……」

 

「ええ!? 女の子に興味ないんですか?! それはそれで問題があるというか、ないというか……」

 

 まずい、後ろの女子達が反応してしまった。これは一大事である。

 

「え? 織斑くんって男好きなの?」

 

「それはそれで……いいわね」

 

「つまり、ホモ……これは良い小説が書けそうだわ!」

 

 最後の人はBL小説家かよ。俺は歴とした二次元の女の子好きの日本男児なんだぞ。薄い本みたいになってたまるか!

 

「いや、やっぱり入りたいです!」

 

 なるほど、そうきたか……。

 

「ええ!? やっぱり入りたいですか?! やっぱり思春期の男の子はそんなことを望んでいるのですね……」

 

「俺……どの選択肢も逃れることできない気がするんだが、太一……」

 

「ドンマイ。俺はお前がホモでも大丈夫さ。絶対、部屋に入れるつもりはないがな。HAHAHA!」

 

「おいおい、違うぞ! 俺はそんなんじゃねぇ!」

 

「冗談だ。わかってるから安心しろ」

 

「おう! さすが親友だな!」

 

 はっはっはっ、と俺と一夏は二人揃って高笑いする。これはいつものノリということにしておこう。実際は、親友というか幼なじみだが。

 

「で、では会議があるので失礼しますね……」

 

 そう言って織斑先生と山田先生は去っていった。

 

「一夏、寮に行くか……」

 

「あぁ――っと、そのまえにトイレ行くから、お前は先行ってこいよ」

 

「そか、また後でな」

 

 一夏と途中で別れて、廊下を歩く。たまにすれ違う女子たちの視線が苦しかったが、そのたびに香る女子のいい匂いが癖になるものだった。

 それからようやく学生寮に到着する。

 

「およよー? もしかして、やがみんかな~?」

 

 学生寮の廊下のど真ん中。すれ違いざま、変な名前で誰かに声をかけられた。どこか間延びした声が特徴である。

 どこかの貴族様より良さそうな生徒だと俺は思い、少し緊張してロボットのような挙動で振り向いた。

 

「……それ、部屋着?」

 

 彼女を見て、俺の第一声がそれだった。なぜなら、よく分からない黄色い狐っぽい着ぐるみを着ていたから。

 服だけ見るのは失礼なので、その子の目を見ようと顔を窺う。

 すると、なんということでしょう。常に眠そうなタレ目でのほほんとした顔だからこそ、その目、鼻、口などのパーツが絶妙なバランスで整っている。一言で表すなら、美少女(pretty girl)である。

 

「うん。まぁそんなところ~。まぁそんなことより自己紹介しないとね~。私は一年一組の布仏 本音(のほとけ ほんね)、出来立てほやほやの女子高生ですー」

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

※イメージ

 

 出来立ていうな、意味深に聞こえる。

 それより名前は布仏さんか。確かにそんな子いたかもしれない。といってもクラスメイトの顔なんてチラ見した程度なので、ほとんど名前も顔も覚えていない。それに自己紹介途中で終わったし、初日だし。

 

「俺は城谷上 太一。この近くの部屋で滞在させてもらう者だ」

 

「ちなみにその部屋というのはー、私たちの部屋で~す」

 

「な、なんだってー!? その話は本当か?」

 

 驚くべき展開に俺は、露骨な喜び方をしてしまう。

 いくらなんでも、初対面の美少女と同棲するのに、ここまで喜ぶのは好感度が下がるというものだ。自重しなければ。

 

「さぁ、やがみん。さっそくお部屋にれっつご~」

 

「おぉー!」

 

 なにかとテンションの高い布仏を後ろに俺は付いて行く。

 

「なぁ、気になったんだが、やがみんってなんだ?」

 

「やがみんはねー、やがみんだよ~」

 

「説明になってねぇ……」

 

 とりあえず、勝手に付けられたニックネームなのは確かだ。これはこれで親しみやすさが感じられるので、悪い気はしない。

 

「そうだ、名前はなんて呼べばいい?」

 

「なんでもいいけど、本音って呼び捨てでいいよ~」

 

「わかった。よろしく本音」

 

 そんなやりとりをしていたら、すぐに部屋の前に着く。

 

「ここがしばらく一緒に寝泊まりするお部屋だよ~。ゆっくりしていってね~」

 

 お邪魔します、と当分は言わなくなるであろう言葉で部屋に入り込む。布仏さんは他の友達に用があるそうで、どこかへ行ってしまった。

 部屋にはさっそくもう一人の女子がいたが、ずっと空中投影ディスプレイとにらめっこしているようだった。これは、俺が来たことにあまりよく思われていないか、気づいてないかの二択だろう。困ったな、どう話しかけるか。

 

「あ、あのぅ……」

 

「…………」

 

 反応がない、ただのしかばねのようだ。……じゃなくて、もう一度だ。

 

「こんにちはー。今日からお世話になるルームメイトです。初めまして」

 

「…………」

 

 ……なんか変だな。

 そう感じて、その子の真横まで俺は近づき、顔を横から覗き込む。なんと、その子は椅子に座ったまま熟睡してしまっていた。どうやら三択目の、睡眠だったようだ。

 横顔なのでよく見えなかったが、彼女は眼鏡っ娘の美少女と判明した。俺がそう感じたのだから、確定である。

 それにしても、寝顔まで見られるとは今日は素晴らしく運がいいようだ。

 

「ん……。本音……?」

 

 眼鏡を片手で避けながら、目を軽くこする簪。どうやら寝ぼけているようです。

 

「ひっ!? ……だ、誰?」

 

 この俺を見て怯えるとは、湯豆腐メンタルな俺はほんの少しだけ傷ついた。まぁ、この子は人見知りなのだろう。

 俺の思った通り、眼鏡っ娘で髪型は、水色のセミロング、そして、毛先が内側に跳ねている。ちなみに胸は平均的かな、チラ見だから確信はないが。

 やはり正面から見ても、その子は普通に顔のパーツがバランス良く整っていた。正直、布仏さんと比較的してしまったら難しいくらい、美少女だった。きっと、髪は地毛だろう。

 

「あっと、その、俺が来ること、聞いてなかったかな……?」

 

「……もしかして……城谷上太一、くん……?」

 

「なんだ、聞いてるじゃないか。勝手な都合で悪いけど、これからしばらくお世話になります」

 

 俺はペコリとお辞儀をする。年頃の女子生徒とシェアハウスみたいにされた理由が何か理解には至らないが、いつかわかる日がくると信じよう。

 

「……うん」

 

 うーむ、本人はあまり乗り気ではなさそうだ。こんなことがあろうとは考えていたが、時間の経過でなんとかなるだろうか。

 

「で……君の名前は?」

 

「あ、うん。えっと……さ、更識……簪」

 

「更識さんね。よろしく」

 

「……う、うん」

 

 どことなく簪は腑に落ちない返事だったが、気のせいだろう。

 

「……じゃあ、私、忙しいから」

 

 簪はそう言ってすぐにコンピュータを操作する。カタカタカタとタイピングがプロ並に早く、羨ましいものだった。

 少しでもルームメイトとして馴染むようにコミュニケーションをとりたいところだが、忙しいなら致し方ない。

 

「げっ、簡易ベッドじゃん」

 

 本来、全寮制であるこの学園には二人一組部屋がほとんどなので、寝室器具も二人分しかない。

 そのおかげか、俺のベッドは申し訳程度のマットレスが敷いてあるだけの細長い簡易ベッドだった。そして、律儀にもプライバシー保護用の青いパーテーションが置かれていた。

 

(うぅ、気まずい。少し学園を探検してくるか)

 

 部屋を出る際に、俺は「学園内を冒険してくるわ」と軽く告げた。

 簪がコクンと頷いたのを確認して、俺は部屋から去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

(……。少し、冷たすぎたかな……)

 

 カタカタとキーボードを操作しながら、簪は太一に対しての己の行動に罪悪感を感じていた。

 

 一年四組の代表候補生という非常に優秀な役割を持っていながら、性格はかなり暗く、友達もいない。まだ入学初日だろうと思うかもしれないが、現に中学では一人もいなかった。

 しかし、唯一、彼女に関わっているのは、更識家の使用人家系で簪の専属メイドかつ幼なじみの布仏本音、ただ一人である。

 とはいったものの、当の本人は本音のことをよく思っていない。簪は本音を姉のさしがねだと常に思い込んでいる。

 

 姉とは、更識家当主でIS学園の生徒会長を務める更識楯無(さらしき たてなし)である。たった一つ年上というだけで実力差が激しく、幼い頃から他人に比較されてきた姉に、簪は劣等感を持っている。つまり、姉の影に怯えているということだ。

 

 そして、この日、太一がやってきてしまったのである。部屋の定員数が限度を超えてしまうはずなのに、教員より許可を求められてきた。

 それに、真っ先に本音が快く受け止めてしまい、簪が否定する間もなく決定してしまった。

 しかも、男性に苦手意識も多少だがある。これとは別に、織斑一夏に対しては恨みを抱えている。

 

(でも……いくらなんでも、それは最低かな……私……)

 

 なぜ、一夏に恨みがあるかと問えば、答えは一つ――()()()()()()()()()()()()()()()であるから。

 元々、打鉄弐式を開発していた倉持技研が、一夏と太一がISを動かしたことを口実に、一夏の専用機に人員を全て回した結果がこれである。

 この説明でわかる通り、一夏には専用機が渡されることが確定している。

 

 完全にとばっちりだが、簪は一夏を恨み、そして、間接的に一夏と関わっている太一までも嫌になっているのだ。

 

(違う、私は……この打鉄弐式を作り上げなきゃ……)

 

 それでも、簪は打鉄弐式を完成させようと努力している。

 それにも理由があり、本人にとって「他人に能動的な行動を取るのは甘え」であり、そのせいで泣き言を言えず、ただ心を閉ざしたことや楯無が機体を一人で組み立てたことにも深く影響してしまっている。

 

(でも、やっぱり……城谷上くんは悪くない……よね……)

 

 心の奥深くに、善の心を持つ簪と悪の心を持つ簪が、頭の中で妄想として出てくる。結局、決着のつかないまま日が沈んでいった。

 

 




読んでいただいてありがとうございます。
ここで、旧3話の変更点を軽く説明します。

・本音を先に登場させ、口調のパターンを増やしたこと

――ここらへんは原作ののほほんさんに近づけたかっただけです。そちらの方がしっくりくるでしょう?

・簪の性格度を、原作並みに戻したこと

――原作のような状態にすることでシリアスさを増やす傾向にしました。これにより、旧第一章よりまともになります(震え声)。

・文章の改良

――リメイク版全てに言えることですが、最大の変更点は文章の改良でしょう。プロの小説家と比べたら、ミジンコみたいな文ですが、旧第一章よりかは明らかマシになってると思います。


第3話の変更点は以上です。


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第4話 シンテン

リメイク版第一章の4話目です。
前回同様、ここらへんから話はだいぶ変わっていきます。


 

 

 

「~♪ ~~♪」

 

 寮を出てから数分後、中庭をのんびりと散歩しながら、口笛で音楽を奏でている。

 これといった自慢ではないが、メロディ部分くらいなら余裕で音を出せる。

 今、奏でている曲は、あの名作、〝一週間フレンズ〟のエンディングカバー曲『奏』である。J-POPでありながら、人気女性声優がカバーしたこともあり、アニソンとしても活躍する素晴らしい曲である。

 滅多に学園の人間とすれ違わないこともあり、遠慮なく口笛を吹いている。

 清々しい天気に囲まれ、脳内お花畑&口笛で呑気に歩いていると、突然、目の前が暗黒の闇に包まれた。

 

「!?」

 

「だーれだ?」

 

 いや、本当に誰ですか。

 透き通った美しい声でありながら、どこかお姉さんキャラに向いてそうなものが今の話し方で感じる。

 しかも、この声は確実に女性――いや、たまに男で女声を出せる両()類がいるが、ここはIS学園だ。ほぼ女性しかいない。

 

「……ヒントは?」

 

「ない」

 

「そ、そんなぁ……」

 

「冗談よ。そうねえ……おねーさんは生徒の長と呼ばれる存在よね」

 

 生徒の長、つまり、生徒会長のことだろうが名前を思い出せない。何せ入学初日だ。そこまで覚えとらん。

 

「ぶっぶー。時間切れ」

 

 イタズラを楽しむ子供のような声で言われる。手を離してくれたので、ゆっくりと後ろを振り向いた。

 そこには、綺麗な水色の髪に赤い目、顔のパーツがこれまた整っていて可愛さと美しさをあわせ持ち、何処とは言わんがそれなりにデカイ、二年の先輩で生徒会長がいた。

 今更だが、この学園には美少女が多い。もしかしたら、学園の闇で美少女だけが入学できる不平等な場所だったのかもしれない。……いや、ないな。

 

「私は生徒の長で学園最強、更識 楯無(さらしき たてなし)よ。もう分かるわよね?」

 

 学園()()最強、と脳内で捏造してしまった俺は末期だろうか。そんなことはどうでもよく、更識の部分で何かを察した。

 

「あ、もしかして――」

 

「そう、そのもしかしてよ。私の妹、簪ちゃんのお姉さんなの」

 

 確かに髪色も顔もどことなく似ている。どうして気づかなかったんだ。

 

「ど、どうも初めて。妹さんの新たなルームメイトの城谷上 太一です」

 

「大丈夫、生徒の名前なら熟知しているわ。それよりも、折り入って話があるのよ」

 

 先ほどまでの口調とは打って変わって、真面目な口調に変わる。

 

「妹と友達になってください!」

 

 ……はい?

 

「な、なんで……俺なんですか?」

 

「そ、それは……簪ちゃんは暗いから、人見知りで友達も本音ちゃんくらいしかいないし……この先、友達できないんじゃないかなぁ……って」

 

 話を聞くに、中学でも友達がいなかったと推測する。そこまで性格暗いのか簪さん。なんでだろうか。原因を追及したい。

 

「つまり、寮部屋を同じにしたのも――」

 

「そうよ、私が決めたの。城谷上 太一くん、あなたがアニメ好きって聞いてね」

 

 おそらく入学前の自己紹介文に『趣味・一にアニメ鑑賞、二にゲーム、三に音楽鑑賞、四に読書』と書いたのを生徒会で確認したのだろう。それが理由であの部屋になるとは……恐ろしき生徒会。

 

「ということは、妹さんもアニメが……好きってことですか?」

 

「うん。あの子はヒーローアニメが特に好きみたいね」

 

 ヒーローアニメか。俺が見るのは深夜アニメ限定だが、ヒーロー系がない訳ではない。簪が見るジャンルによる。ちなみに俺のお気に入りジャンルは、学園ラブコメ。二番目に日常系。

 

「でも、いいんですか? 会長から友達になれってさしがねみたいでいい方法とは言い難いかと……」

 

「大丈夫。私の名前を出さなければ問題ないわ。城谷上太一くんだって簪ちゃんと友達になりたいでしょう?」

 

「ま、まぁ、確かに妹さんと趣味が合いそうですけど……なんで名前出しちゃいけないんですか?」

 

「あぁ、えっと、その……あの子、私に対して引け目というか……なんというか……」

 

 もごもごと言葉を濁す生徒会長。その姿が姉妹の仲になにか問題があることを悟っていた。

 

「仲があまり宜しくないようですね……」

 

「ええ……そうみたい」

 

 学園最強の生徒会長の威厳が急に小さくなっているように見える。この人の弱点は簪、はっきりわかんだね。

 

「ま、任せてくださいよ、会長。タイミングを見計らって妹さんと友達になります!」

 

 ピシッと敬礼して決心する。

 

「本当? なんなら簪ちゃんを落としちゃっても構わないわよ♪」

 

 いきなり本調子に戻ったと思ったらこれだよ。冗談でもキツいっすよ先輩。

 

「からかわないでください!」

 

「えー? じゃあ、おねーさんを落としちゃう?」

 

「そういうことじゃなくて!」

 

 なんだか良いように弄られている気がする。

 

「ふふーん、君は面白いね。おねーさん興味が湧いちゃった」

 

「あはは、それはおめでたいですね……」

 

「ということで、私のことは楯無、もしくはたっちゃんと呼んでね」

 

「前者でお願いします。楯無さん」

 

「ちぇー、つまんないの。なら、私は太一くんって呼ぶね」

 

「あはは、どうぞご自由に」

 

 この人に何を言っても無駄だと思い、なすがままに肯定する。

 それから、楯無さんと生徒会の仕事があるからということで解散となった。

 また学園内を散歩して夕食前の夕方。寮に戻ってきた。

 俺はレバー型のドアノブをそっと掴む。ここでアニメの見すぎな俺はこう妄想する。

 

 ――妄想タイム。

 

 ガチャ。

 

『ただいま戻りまし――!?』

 

『きゃああっ! 見ないで、変態!』

 

『ウボァッ!』

 

 ちーん。

 

 ――妄想終わり。

 

 女子の着替えを目撃してしまい、鉄球を投げつけられて死亡といった展開が起きてしまうのではないか、そう考えるのが俺は普通である。

 ということは置いといて、軽く深呼吸する。ついでにノックをしてから扉を開けた。

 

「ただいま、戻りましたー」

 

「あ、やがみん、おかえり~」

 

「た、ただいま」

 

 至って普通の展開だった。うん、わかってましたよ。

 しかし、同級生におかえりと言われる展開も悪くない気がする。

 一方、簪はまだカタカタとキーボードを操作するのみである。

 

「ほら、かんちゃんも、やがみんが戻ってきたよ〜!」

 

「……う、うん。……だから、その呼び方、やめて……」

 

 本音にそう言われて、簪はキーボードから手を離した。やはり姉となにか引っかかってるのか、俺の存在か。なんとかして仲良くならないとな。にしても、更識さんはそのニックネーム好きじゃないのか。

 

「お、おかえり……」

 

 俺をチラッと見ながらそう答えてくれる。

 

「おう、ただいま」

 

 やはり、こういうのも悪くない。

 

「ねね、ねぇーやがみん。この迷彩柄のカバンになにが入ってるの~?」

 

「あぁ、それか。それは後で、この部屋に設置する。モニターとかパソコンとかゲーム機とか入ってる」

 

「おぉー、それは楽しみだね~」

 

 本音は着ぐるみの裾で喜びを表しているかのように振る。見てるこちらは楽しくなってしまう。

 

「ここらへんの棚、使ってもいいか?  おふたりさん」

 

「ぜーんぜん、おーけぇ〜!」

 

「……別にいいよ」

 

 よし、許可を得たから後でゲームし放題だな。本音や簪との仲を少しでも進展させたら、テレビゲームを一緒にプレイしよう。ちなみに、カバンにギャルゲーも一応入ってるがやらない。まぁ、美少女と同室っていう状況が予想外ですし。

 

「さて、入学初の夕飯。食べますかね」

 

 IS学園の料理は一般的な高校の食堂とは格が違うらしい。そこらにあるレストラン並に美味いとのこと。

 

「じゃあさっそく、食堂にいきましょ~」

 

 約一名はものすごいテンションで食堂へ向かった。

 

 到着したのは、一年生寮の食堂。さっそく、券売機へ向かうのだが、どうも視線が気になる。四方八方に女子生徒が食事をとっているのだが、チラチラと俺を見ているのがバレバレである。

 

「へー、あの子が男性IS操縦者の二人目ね……。なんというか、普通ね」

 

「確かに。かっこいいってわけでもないし、ブサイクってわけでもない」

 

「近くで見たら、意外とかわいかったり?」

 

「それはないでしょ。ふふふ」

 

 券売機が空くのを待つ中、近くのテーブル席で俺の話をしている四人の女子生徒の声が聞こえてきた。一夏との差を考えると少し虚しいが、ブサイクと言われるよりかマシだろう。……お、順番がきた。

 

「やがみんはどれにする~? 私はデザートとデザートとデザート」

 

 主食はどこにいったんですか、本音さん。

 

「俺は、小手調べに味噌ラーメンにするよ。……で、更識さんは?」

 

「えっと、私は……かき揚げ……うどん」

 

 三人とも食券を購入し、注文を受けてから数分で全ての飯が揃った。

 いくらこの食堂が広いとはいえど、遠くまで運ぶのは面倒なので、近場のテーブル席に座る。ちょうど三人席だったようだ。

 

「いただきます」

「いただきま~す」

「……い、いただき、ます……」

 

 結局、本音はハンバーグ定食にデザート(プリンとゼリー)で落ち着いた。そんなことはどうでも良く、まずはラーメンのスープを蓮華で掬って飲む。

 

「美味いぞ。これは本格的だ」

 

 かなりお手軽な値段でありながら、量が多く、味が濃すぎず薄すぎずでコクがあって美味しい。しかも、良心的にスープの辛さが分けられて売られているのも素敵である。

 これはそこらのラーメン屋に行かなくてもいいほど美味い。星三つだ。

 

「……美味しい」

 

 うどんを啜っていた簪が、幸せそうな顔で感激する。

 

「そのうどん。好きなのか?」

 

「……あ、うん」

 

 簪はかき揚げを箸でつゆの中に沈めている。これはどんな派閥なんだろう。べちょ漬け派?

 

「へー、かき揚げは何派なんだ?」

 

「……たっぷり、全身浴派……」

 

 あら、ニュータイプでございましたか、これは予想外。

 そういえば、一夏を誘うのを忘れてしまった。なにか連絡が届いているのではないか、そう思ってスマートフォンを操作する。

 今の時代はSNSの利用者が多い時代にあり、通常のメール機能は滅多に使わない。大抵の知り合いはSNS・L〇NEで連絡を取り合っている。

 

「やっぱり、きてないか……」

 

「んー、なんのこと?」

 

「一夏だ。誘おうと思ったの忘れてた」

 

「あー、おりむーのことだね~」

 

 一夏にはそのニックネームだったのか。知り合いには誰でも名前を変えてるのかこの子は。

 そのとき、本音が着ぐるみのポケットからスマートフォンを取り出す。そのスマホには黄色い狐みたいなカバーを付けていた。

 

「はい、やがみん」

 

 本音がLI〇EのQRコードを開いた状態で画面をこちらに向けてくる。

 

……これはもしや?

 

「どうしたのー? もしかして、このアプリを使ってない系でしたかな~?」

 

「いや、そうじゃないぞ。ありがとう」

 

 ささっと連絡先を交換する。初めての女子と連絡先交換に、バレないように俺は小さくガッツポーズする。今すぐ踊りたい気分になった。腰振りで。

 ちなみに簪は連絡先を見せてくれる気配はない。……うむ、まだ先になりそうだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 夕食を終えてシャワーを浴び、また学園内を探検した後、就寝時間になった。

 風呂に関しては、ルームメイトの二人が大浴場を使うので、シャワーは貸切にしてもらえた。まぁ、個人的には美少女が使ったあとのシャワー室を使いたかったんだけどね。背徳感を感じそうで。

 

「おやすみなさ~い」

 

「おう、おやすみ」

 

 パーテーション越しに反応する。簪は特に反応なしだが、すでに寝てしまったのだろうか。なんにせよ、こういった何気ない挨拶が、俺には最高の一時(ひととき)である。さて、寝るか……。

 

 

……。…………。………………。

 

 

 

――寝れねぇ。

 

 やはり、目と鼻の先に美少女が寝ていると思うと緊張して眠れない上、寝顔見たすぎて寝れない。さらに、小さいながら、耳を澄ますと本音の寝息が隣から聴こえてくるのだ。余計に眠れなくなる。

 仕方ないので、冷蔵庫から緑茶を手に取って飲む。キャップを締めたところで、簪の布団がモッコリしていることに気づいた。

 

「更識さーん、起きてるか?」

 

 ピクッ。今、布団が少し痙攣した。

 

「……な、なに?」

 

 真っ暗な部屋の中、簪が布団から少し顔を出す。う……見えないけど、なんか可愛い。

 

「な、なにしてるんだ?」

 

「なにって……あ、アニメ……見てる」

 

「へぇー、アニメ見てるのか。どんなアニメ?」

 

「ひ、ヒーロー……もの」

 

「マジで!? 他には何見てるの?」

 

 簪の趣味をすでに知っているので、わざとらしさが残ってしまうが、問題なかろう。

 

「ろ、ロボットとか……せ、青春恋愛もの……とか……そんな感じ」

 

 ヒーローだけなら余り興味ないが、青春恋愛、例えば、"凪のあすから"とか〝Charlotte〟、〝あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない〟とかか? ここは敢えて……

 

「〝コードギアス 反逆のルルーシュ〟。これなら見たことあるかな?」

 

 かなりの有名どころ、とあるアニメサイトでは堂々のトップ10に君臨する神アニメである。一応ロボットアニメだが、主人公が悪役という珍しい設定が魅力的。

 

「……メジャーだけど、それも……好き……」

 

「おお、いいねぇいいねぇ。じゃあ、〝氷菓〟なんてどうでしょう?」

 

 少し興奮してきた俺は、簪のベッドのライトを点ける。ほんのりと明るい感じが俺に深夜テンションを巻き起こす。

 

「あ……それも、知ってる……」

 

「じゃあ、これならどうだ? 〝瀬戸の花嫁〟」

 

「……それも、見たことある」

 

 瀬戸の花嫁まで知っているとは、これはもしや俺の求めていた同志ではないだろうか。

 

「同志よ、君とはいい友達になれそうだ。握手しよう」

 

「……う、うん」

 

 簪の右手を優しく握って握手する。

 

「今日は遅いから、明日、アニメ鑑賞会やろうぜ」

 

「……うんっ」

 

 心做しか簪が笑顔になった気がする。一日で美少女二人と仲良くなれるとは俺は幸せものだなぁ。

 

「じゃあ改めて、これからよろしく、更識さん」

 

「……よろしく。それから……おやすみ」

 

「おう、おやすみ」

 

 少々長く話していたが、本音は一向に起きることはなかった。相当熟睡していたのだろう。

 

 どうしても、寝顔が見たくて体がうずく。

 しかし、眠っている無防備な女の子の寝顔を確認するのは、紳士として恥ずべき行為。

 だからこそ、俺は普通に寝る。

 

(楯無さん、妹さんと友達になれそうです!)

 

 仰向けの状態で、天井に大きくガッツポーズする。俺の学園生活は、まだはじまったばかりだった。




記念すべき第4話です。
ここからは旧第一章にないオリジナル展開が多いです。

主な変更点は、

・楯無登場シーンを早めた。

――原作7巻の楯無さんの話がベースです。

・食堂シーンの追加。

――簪はかき揚げうどんが好きだ、というシーンがなかったので追加。

・アニメの話で簪と進展する内容を遅くさせた。

――旧第一章では3話で進展しちゃってます。しかし、今回はシリアスなので遅らせました。


━━一週間フレンズ

神アニメの一つですね。何度見ても感動できます。三次元化した一週間フレンズは見たことないです。というか、見たくないです。

━━両声類

よくニコ動とかで見かけます。男女の声を出せる人とか羨ましいですよね。

━━学園都市最強

一方なんとかさん。

━━L○NE

私がよく使っててわかってることなので、これにした。

━━凪のあすから、Charlotte、あのはな

とりあえず記憶を探ってだした名作の神アニメ。
どれも感動的な青春恋愛といっても過言ではないでしょう。

━━コードギアス、瀬戸の花嫁

古参アニメの一つ。コードギアスに至っては未だ廃れることのない最強アニメですね。僕は一番好きです。

瀬戸の花嫁は地名が低い――らしいです。私は知っていましたが。ジャンルはラブコメギャグ系ですかねぇ……。


━━次回からシリアス度が増します。


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第5話 ウタガイ

ここでは旧第一章の4話目にあたります。内容はガラッと変わっています。


 

 朝六時、若干寝足りないが、昨日やらなかったゲーム機器のセッティングを行おうとする。その前に、簪が起きていたのに気づく。どうやら、コンピュータを操作しているようだ。

 

「よ、おはよう」

 

 ひょこっと空中投影ディスプレイをのぞき込みながら挨拶をする。

 

「……あ、おはよう……」

 

 簪は深夜のときとは違い、朝はテンションが低いようだ。まぁ、大抵の人間はそうなるかもしれないが。

 

「なにをしてるんだ?」

 

「……私の、ISに……ついて……」

 

「へぇー、更識さんって頭がいいんだな」

 

 俺は行くはずだった藍越学園の受験前には猛烈に勉強していた。だから、五教科分はそこそこ分かるが、副教科は壊滅的だ。五段階評定としては『2』がほとんどである。それほど俺は怠け者ということ。

 

「そんな……こと、ない……」

 

 この話題は失敗だったようだ。いや、確か簪は楯無さんに引け目――なるほど、姉との差に劣等感があるのか。ならばここは、

 

「俺からすれば、すごいことなんだよ。ちなみに異論は禁止な」

 

「……それは、ずるい……」

 

「あはは……」

 

 なんにせよ、少しは元の簪に戻ったようだ。

 ひと安心してやることを思い出した俺は、またセッティングに取り掛かる。

 俺の簡易ベッドの向かいの棚に27インチのモニターを設置。次に、そのモニターの両端にそこそこ高価なスピーカーを設置。それから、ゲーミングキーボード、ゲーミングPCなどを設置。そして、ゲーム機器を適当なところに置いたら、完成。

 

「ふぅ……」

 

「……城谷上くんは、ゲーム……好きなの?」

 

「いえす。アニメの次にね」

 

 普段やるのは、戦争バトル系のゲームソフト。例えば、World of tanksやBattleFieldなど、有名どころがお気に入り。ちなみに両方、PC版。

 

 喉が渇いたので軽く水を一杯飲む。それを飲み干したところで、あることに気づいた。

 

――本音が寝ている。

 

 これはつまりそういうことだ。寝顔が見れるし、寝息も聞ける。しかも、朝なので明るい。これは絶好のチャンスだろう。

 

 しかし、昨夜にも言った通り、無防備な女子の寝顔を見るのは、紳士として恥ずべき行為――

 

――だからこそ、俺は拝みに行く。

 

 それが、変態紳士の称号として相応しい。

 昨夜と言ってること違うだって? 気にするな。

 

 チラッ。

 

「す~……すぅ……」

 

 まるで愛らしい子猫が気持ちよさそうに寝ているかのようだ。ちょうど狐着ぐるみの耳が猫っぽさを想像させ、なんとも可愛い寝顔である。今、俺は幸せだ。そしてこの背徳感、素晴らしい。

 

hshsprpr(ハスハスペロペロ)

 

 いかんいかん。こんなところを簪に見られでもしたら好感度駄々下がりしちまう。

 

――ならば、本音を起こすつもりで顔を眺めれば問題なし。

 

「おはよう、本音(あぁ可愛い)」

 

 まだ、起きない。

 

「〝にゃんぱすー〟(時間稼ぎだ)」

 

「……んっ、あー、おはよーやがみ~ん……」

 

「お、おはよう(あれ、起きた)」

 

 ポケーっとしながら目を擦り起きた本音。これは可愛いのだが、なぜ「にゃんぱすー」で起きるんだよ。まさか、君は〝のんのんびより〟を知っているのか、本音。

 

「……ピクッ」

 

 そのとき、コンピュータを(いじ)っていた簪が反応する。そのまま、こちらを覗くように彼女自身の顔を見せた。

 

「……のんのん、びより……だよね……?」

 

「ほほう……日常系も知ってるんだな」

 

 俺は簪にグッジョブと手でサインを送る。少し躊躇ってはいたが、簪も同じく手で返してくれた。

 

「あ、そうだ。本音はアニメ見てるのか?」

 

「ふぁ~ぁ……。たまにー、かんちゃんの見てるん〜」

 

 本音はあくびしながらゆっくりと答えてくる。なんで最後、宮内れんげの口調になったんですかね。なるほど、そのアニメを見たということか。

 

「無理矢理……というか……仕方なく見せてる……」

 

 簪はそこまで良く思ってない様子。これは本音がしつこくて嫌なのか、単に本音が嫌いだからなのかは迷いどころ。いや、もしかして別の理由が?

 

「ね、ねねー、そろそろ、朝ごはんの時間だよ~。早く食べに行こうよー」

 

 部屋の時計を見た本音が、目を輝かせて俺に推奨してくる。眠気を食欲で吹き飛ばすとは、食いしん坊ですね。

 

 というわけで、三人揃って食堂へ。ついでに一夏と箒も連れてやって来た。

 俺は朝なのでバタートーストとヨーグルト、そして、牛乳。一夏と箒は和食。本音や簪、その他の生徒は俺と似たような食事をとっていた。ちなみに本音は着ぐるみのまま。

 

「太一の部屋、三人なんだってな」

 

「そうなんだよ。部屋の端っこに簡易ベッドが一つあるだけなんだぞ。狭い狭い」

 

「それは辛いな……」

 

 幸い、一夏の部屋は箒と同室らしい。これは箒にとって好機――の割には、見るからに不機嫌なオーラが箒から漂っている。

 

 しかし、特に不機嫌なオーラを漂わせているのがここにいた。それは、俺の隣にいる簪である。そして、なぜか一夏を冷酷な目で凝視しているし。

 

「わぁ、彼が噂の男子だわ!」

 

「一人は千冬様の弟さんだって~」

 

「でも、もう一人は中学の同級生だってね。どうも信じられない……」

 

 昨日からこんなである。女子生徒は皆、興味津々でコソコソと噂話をしているのだ。中には男性IS操縦者がいることを信じられない人もいる。特に俺は一夏の友人ってだけなので、無理もない。

 

「にしても皆、朝からそれだけしか食べないのか?」

 

「私は……ねぇ……?」

 

「う、うん、食べなくても……平気だしっ?」

 

 クラスメイトが語尾にはてなマークが出る答え方をする。一夏のことだからそう訊くと思ってました。大抵の人はダイエットのことを考えているのだろう。

 

「お菓子よく食べるし~!」

 

「おい、本音。お菓子ばっかだと太らないのか?」

 

「のほほんさんは太らないのか?」

 

 俺と一夏が考えることは同じであった。そうか、中にはお菓子のために朝食を減らす人も存在したのか。メモっとこう。

 

……のほほんさん?

 

「大丈夫、大丈夫~」

 

 そうそう、着ぐるみ越しだとよくわからないだろうが、本音はどことは言わないがでかい。とにかくでかい。ココ重要。

 

「へぇー、もう名前で呼ぶようになったのか、太一」

 

「まぁ……なんか成り行きでな。ってか〝のほほんさん〟ってなんだよ」

 

「名前が思い出せなかったから、のほほんさん」

 

「へー」

 

「……太一。私は……もう、戻る……」

 

「おう、またな」

 

 箒といい、簪といい、一体どうしたのだろう。同時に箒まで去っていった。……何かあったのか?

 

「……なぁ一夏。あの二人と何かあったのか?」

 

「いや、その……箒が怒ってる理由はわからない。で……もう一人は誰だ?」

 

「なんだ、知らないのか……。変だな……」

 

 一夏と面識のない簪が、不機嫌な理由が俺には特に理解できない。過去に何かあったのか、はたまた別の理由か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 朝食を終え、二時間目始まり頃。織斑先生が俺たちの前に現れた。

 

「織斑と城谷上。お前達に専用ISが用意されることになっている。予備機がない。織斑にはすでに専用機が決まっているが、城谷上には幾つか候補がある。昼休み、山田先生の所へ行ってこい」

 

「はい」

 

 専用機、その言葉だけで興奮しそうになる。オルコット相手に真っ向から勝負できる上、自分だけのパートナーともなれば、最高の家宝も同然だ。

 

「いいなぁ、専用機」

「私も欲しい! 欲しい!」

「さすが世界で二人しかいない男性IS操縦者ってとこか」

「羨ま〜」

「それな」

 

 女子達が羨ましそうに見ている中、一夏はあまり理解できてないようなのか、織斑先生がため息をついた。

 

「教科書六ページを読め織斑」

 

「え、えーと『現在、幅広く国家・企業に技術提供が行われているISですが、その中心たるコアを作る技術は一切開示されていません。現在世界中にあるIS467機、そのすべてのコアは篠ノ之博士が作成したもので、これらは完全なブラックボックスと化しており、未だ博士以外はコアを作れない状況にあります。しかし博士はコアを一定数以上作ることを拒絶しており、各国家・企業・組織・機関では、それぞれ割り振られたコアを使用して研究・開発・訓練を行っています。またコアを取引することはアラスカ条約第七項に抵触し、すべての状況下で禁止されています』……」

 

「つまりはそういうことだ。本来なら、IS専用機は国家あるいは企業に所属する人間しか与えられない。が、お前の場合は状況が状況なので、データ収集を目的として専用機が用意されることになった。理解できたか?」

 

「は、はい。なんとか」

 

 どうやら、一夏も理解できた模様。ここらへんの情報はインターネットで出てくるし、中学で承知済みだ。

 

「先生。思ったんですけど、篠ノ之さんって、もしかして篠ノ之博士の関係があるんでしょうか?」

 

 クラスメイトの一人が気になったのか質問し始めた。これにはプライバシー的に言えないでしょう。

 

「そうだ。篠ノ之はあいつの妹だ」

 

 プライバシーなんて言葉はなかった。

 

「ええーっ! す、すごーい! このクラス有名人の身内がふたりもいる!」

 

 俺も半分くらいは身内ですけどね。小さい頃からお世話になってますしおすし。

 

「ねえねえっ、篠ノ之博士ってどんな人!?」

「やっぱ天才なの!?」

「篠ノ之さんも天才だったりする!?」

「ねぇねぇ、どうなの?」

 

 授業中なのだが、箒の周りに女子たちが集まる。どうやら教師も止める気はないみたいだ。肝心な時に何もしないとは何を考えているん――

 

「あの人は関係ない!」

 

 いきなりの箒の大声。教室がその言葉で静寂に包められる。

 

「……大声を出してすまない。だが、これだけは言わせていただく。私はあの人じゃない。教えられるようなことは……何もない」

 

 どうやら事情があるらしい。推測するには一夏関連だろう。束さんが原因で一夏と離れ離れになった訳だし、箒自身も良い思いはしていないはずだ。まぁ、結果的には再会できたんだけど……。

 

「……さて、授業をはじめるぞ。山田先生、号令」

 

「は、はい!」

 

 織斑先生の言葉で皆が反応する。やっと始まったか。

 

 そして、昼休み。休憩時間の途中でオルコットが調子に乗って話しかけてくる事態になったが、特に大事なく終わった。

 

「なぁ、太一。もう一週間もないんだが……コーチとかどうするんだ?」

 

「知らぬ。まぁ、一応敵なんだし別々に誰かをコーチとして頼んだ方が良くね?」

 

 教官になってくれそうな人が俺にいるのかどうかは置いておこう。

 

「それもそうだな……そういえば、お前、企業決めるだか何だか言ってなかったか?」

 

「おっと……そうだったな。じゃ行ってくる。頑張ってコーチ探せよ」

 

「おう」

 

 そう言って急いで山田先生のいる職員室に行く。

 最初は道に迷ったが、途中に一人で歩いていた先輩に俺はその場所を訊いた。それで、なんとか目的地に辿り着いた。ん、その人の顔? 普通でしたよ。

 

「この中から企業を選んでください。どれもIS委員会の審査を通っているため安心ですよ。――多分」

 

 今の『多分』は聞かなかったことにしよう。アーアーキコエナーイ。

 

「り、了解です」

 

 日本の中では二つ、アメリカでは一つの候補が上がってる。これは迷うところだが、俺は違った。

 【アドバンス・サンダー社】(略称、Ad'Th)この企業である。ISの研究もしながら、他のコンピューターや電化製品など様々なものを研究、開発、販売しているらしい。日本では有名な企業だ。

 

 尤も、俺が惹かれたのはそこじゃない。その会社のISである。なんと、自衛隊とも繋がっている会社だからだ。しかも自衛隊の兵器も流用したISとのこと。ミリタリー好きには持ってこいの機体だ。

 

「アドバンス・サンダー社でお願いします」

 

「はい。この企業ですね。後は私にお任せ下さい」

 

「了解です。失礼しました」

 

 職員室を出た後、また目の前が真っ暗になった。

 

「だーれだ?」

 

 何者かの声が聞こえる。それも変な声で。あっ…(察し)。

 

「楯無さん、ですね」

 

「あは、バレた?」

 

「声を変えても無駄ですよ」

 

 特徴的な声なのですぐに分かってしまう自分がいる。なんというか、どっかのキャラクターの声にそっくりだ。ケロロ軍曹とかにいませんでしたっけ。

 

「それよりねぇ、太一くん。今さ、コーチがいなくて困ってないかな?」

 

「なぜわかったんですか……」

 

「それは当然、生徒会長だからよ♪」

 

 そう言って、楯無さんは扇子を取り出す。それを開くと『御見通し』の文字が書かれていた。生徒会長だからってなんでも知ってるとは限らないと思うですがそれは……。

 

「まさか、盗聴器を……!」

 

「ふっふっふ、そう思うのも無理ないわね。でも大丈夫、噂で耳にしただけだから」

 

「は、はぁ」

 

 おそらく、俺がオルコットや一夏と対戦することが三年生にも広まってしまったのだろう。女の噂の広まりようは恐ろしいものである。まだ二日目なのに。

 

「そこで、おねーさんが君のコーチになってあげちゃおっかなって話」

 

「ほう……?」

 

「それに、簪ちゃんとはどうなったの?」

 

「順調です。一緒にアニメを見るレベルまで進展しました!」

 

 俺はビシッと敬礼する。

 

「なら大丈夫ね。これからも簪ちゃんをよろしく♪ じゃあ、明日の放課後にね」

 

「うっす」

 

 楯無さんが去っていくのを見てさっと時計を見ると、時間は予鈴まで二十分を切っていた。

 とりあえず、適当に購買のパンで済ませた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 簪が昼間に整備室へ行く途中、近くで姉である楯無と太一の会話が聞こえてきた。気になったので、簪は聞き耳を立ててみる。

 

「――簪ちゃんとはどうなったの?」

 

「順調です。一緒にアニメを見るレベルまで進展しました!」

 

「なら大丈夫ね。これからも簪ちゃんをよろしく♪ じゃあ――」

 

――!?

 

 思わず声が出てしまいそうになった簪は、慌てて口を塞ぐと壁に背中を押し付ける。

 

(……や、やっぱり……姉さんの――さしがね……!)

 

 幻だった。

 満員の部屋に男が住むことになったのも。

 簪と仲良くなろうとしていた太一も。

 過去も全て姉の仕業だったのか、そう思ってしまった。

 段々と人を信じることすら簪は危うくなる。

 放課後には太一が部屋に戻ってくる。彼になんて顔をすればいいのか、簪は分からなくなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんとか授業を乗り切り放課後。部屋に戻ってきた訳だが、今朝の暗いオーラを放出する簪が、部屋の隅にいた。

 

「た、ただいま……」

 

「ぅ、ぅん……」

 

 非常に弱々しい声で頷いてきた。簪はなぜか俺から背を向けている。なんだかよく分からないので、今朝の件について訊いてみる。

 

「ど、どうしたんだ? 今朝から元気がなかったぞ」

 

 しかし、簪は何も言ってこない。

 幾分かの沈黙が続く。相手はこちらから背を向けたままだ。

 

「………そ……ん……でしょ……」

 

 やっと話したと一安心した刹那――

 

「……友達、なんて……嘘だったんでしょ……」

 

「え? な、なにを――」

 

「私、見たの……あなたが、姉さんと、話しているところを……」

 

 楯無さん、僕らの会話を聞かれていたみたいです。どうしましょう。このままじゃ簪と――疎遠になってしまう。

 

(絶対にそれだけは阻止してやる!)

 

 まだ出会って二日目、せっかく仲良くなれたと思ったらこれである。おそらく、簪は俺を姉のさしがねと思い込んでしまっている。楯無さんの名前は出せないはずだったが、バレてしまっては仕方が無い。

 

「これは、違う! た、確かに、楯無さんのさしがねかも知れない……で、でも――」

 

「――でもって……なに? 違わない、でしょ……? 姉さんが、勝手に部屋を決めて……私がいつも一人だから……友達、を作らせようとした」

 

「違う! 話を最後まで聞いてくれ――簪!」

 

 無意識に名前で叫んでしまう。思ったより悪い方向に進んでしまったようだ。簪は冷静さを失って俺を敵対視している。どこまで姉さんに引け目があるのか、今の俺では全くわからない。

 俺は無意識にも簪の両肩を掴んでしまう。

 

「頼む! 俺の話を――」

 

「――離して……!」

 

 バシッ! 左頬に平手打ちをくらう。

 そのまま簪は部屋を出て、走り去ってしまった。

 ヒリヒリする頬を抑える。こんなまずい状況なのに、女子に本気で叩かれるという展開が起きてしまったはずなのに、なぜ、なぜ俺は――ゾクゾクしてしまったのだろうか。

 

 ――いや、そんなことは後回し。

 

「……楯無さん。あなたの妹に、何したんだよ……」

 

 静寂と孤独になってしまった部屋。そこで俺は小一時間は立ち尽くすままだった。

 

 

 




旧第一章と比べて、文字数が多くなってます。


旧第一章との変更点は、

・旧4話の早朝シーン

――ここは、あまり変わっておりません。PCゲームを持ってる設定に変えたくらいですかね。後は、内容を濃くした程度です。

・楯無さんのシーン

――旧4話では初登場でしたが、今回は既に出会っているので、内容が変わってます。

・簪のシリアスな描写を追加。

――ここから大きく変わってます。旧第一章では、すんなりと仲良くなっているのは違和感があるので、かなり変えてます。原作に近いといえばいいかもしれません。


━━のんのんびより

田舎の日常系で有名。声優も豪華。キャラも可愛い。
個人的には日常アニメの上位にあります。


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第6話 トモダチ

シリアス回っぽいです。




 時刻は午後五時、誰もいない第二整備室。簪は自身の専用IS『打鉄弐式』の傍で座り込んでいた。

 

 簪は太一を叩いてまでして逃げ出してしまった。実の姉に怯えて、太一に勝手な都合を押し付けて、彼の話をことさらに聞こうともせず、逃げてしまった。

 

(こんな……つもりじゃ……なかったのに。……私が悪いのに……)

 

 心の奥底で深く反省する簪。

 本人は殴るつもりなどなかったが、自分の感情が抑えられなかった。

 今にも簪は疑心暗鬼になりそうである。

 

(どうしよう……。城谷上くんに合わせる顔がない……)

 

 自分のしてしまった過ちで太一を傷つけてしまった簪は、罪悪感でいっぱいでになる。

 とはいえ、本人があまり傷ついていないのは、簪が知る由もなかった。

 

『話を最後まで聞いてくれ、簪!』

 

 ふいに思い出す太一の言葉。その視線は真っ直ぐ簪に向けられており、その眼差しは嘘、偽りの概念が簪には感じられなかった。

 

(……友達……)

 

 今の簪には、友達と思える人はいない。いつも一緒にいる本音のことは姉のさしがねで関わっているだけと思い込んでいる。

 でも、本当にそうなのだろうか。

 簪は微かにそう感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 簪が部屋を飛び出してから一時間が経つ。こうなってしまったからには思い切って、楯無さんがいるであろう生徒会室へとやって来た。

 軽く深呼吸する。意を決して扉を叩く。

 

コンコン。

 

「一年一組の城谷上 太一です。生徒会長に用があって来ました」

 

「どうぞ~」

 

 どこか聞いたことのある声で許諾されたが、俺は気にせず部屋に入る。

 部屋のすぐ近くのソファで、本音が紅茶を飲んでいた。

 

「あれ、本音って生徒会役員だったのか……」

 

「うん、そうだよー。始めてまだ二日しか経ってないけどね~」

 

 それにしてものんびりしすぎではないでしょうか本音さん。というか、初耳なんですが。

 

「いや、それより、楯無さんはいないのか?」

 

「たっちゃんさんなら、さっきどこかへ行っちゃったよ~?」

 

 どうやらすれ違った系のようだ。それよりなんだよ、『たっちゃんさん』って。

 

「ありがとう。俺、急いでるから、また」

 

「――ちょっと、待ってー!」

 

「はい?」

 

 ドアノブに手をかけたところで本音に呼び止められる。

 

「なんだかよくわからないけど〜、頑張ってー!」

 

「おう!」

 

 何も知らない本音に応援される。

 それだけで元気百倍になった俺は、教師にバレない程度で走り出した。

 

 俺は楯無さんが行きそうなところを模索する。

 まずは、生徒会としてよくお世話になりそうな職員室へ。

 

「ん? 城谷上くんじゃありませんか。どうしたんですか?」

 

 廊下のど真ん中、山田先生と対面した。

 

「いえ、生徒会長を探していまして……」

 

「更識さんのことですね。それなら、一年生寮の方へ向かっていきましたよ。どうして行ったのかはわかりませんが……」

 

「先生、情報ありがとうございます。それでは」

 

「はい、どういたしまして!」

 

 山田先生に軽くお辞儀して、俺はすぐさま一年生寮に向かう。山田先生は役に立てたことがとても嬉しそうであった。

 

 一年生寮には着いたが、問題はどこにいるかである。一番可能性が高いのは俺の部屋だが、簪がいないとも限らないので来るとは思えない。

 次に、一夏の部屋だと考える。俺という男子生徒に顔を合わせたのだから、そのまま一夏にも会うだろう。

 

 しかし、どこにも見当たらなかった。

 たまにすれ違う女子生徒にも訊こうとしたが、肝心な時にコミュ障発揮して話せなくなった。

 

「あ、代表候補生と勝負することで有名なクラスメイトだ。ちょっと話しかけてみない?」

 

「えー? 織斑くんの方がいいよ」

 

「いいじゃん同じ男なんだし。変わらないしょ」

 

 普通に聞こえそうで聞こえない声でコソコソと話すクラスメイト。名前の知らないその二人とすれ違う直前――

 

「ねぇ、城谷上くん」

 

 やはり話しかけられた。

 

「は、はい、なんでしょう?」

 

「あのセシリアって代表候補生と勝負するの?」

 

「ま、まぁな……」

 

「普通に勝てなくない? 城谷上くん初心者でしょう?」

 

 その隣の子まで話してきた。ちなみに二人の顔レベルは、一から十でいうと六くらい。そこそこ美少女だね。

 

「まぁ、専用機が貰えるって聞いたからやれるだけやるけどね。元々、仕方なく了承しただけだし」

 

「そっかー、専用機貰えるんだっけ? なら、あんな金髪女、ぶっ飛ばしちゃいなよ!」

 

「そうよ! 私たちを侮辱した罪は重いんだから!」

 

「あはは、頑張ってみるさ……」

 

 軽く挨拶を交わして女子生徒と別れる。

 専用機、一体どんな機体なのか楽しみだ。おそらく俺の一生の相棒(パートナー)となるもの。どんなものか想像したいところだが、今は人探しの途中なので後にしよう。

 

 そこから三十分も探したが、全く見当たらなかったので、自分の部屋に戻ってきたのだが……。

 

「やっと見つけたわ、太一くん」

 

 なんと楯無さんは俺の部屋にいました。鍵かけたのになぜいるのかは訊かないでおこう。

 

「楯無さん! 探したんですよ……」

 

「あら、おねーさんとそんなに会いたかったの? ハグして欲しかった?」

 

 確かに会いたかったが、ハグをして欲しいとは思ってない。いや、そんな願望はもちろんありますけどね。

 

「冗談はやめてください。今はそれどころではないので」

 

 俺が真面目な顔になったのを確認した楯無さんは、同じく顔が変わった。

 

「……やっぱり、簪ちゃんとなにかあったのね」

 

「はい、楯無さんとのやり取りがバレました」

 

「私としたことが、簪ちゃんに見られていたことに気づけないなんて……」

 

 しょぼんとなる楯無さん。急激に生徒会長の威厳が小さくなっていく。

 

「それで、どうしてこんなところにいるんですか」

 

「一時間前に、簪ちゃんが廊下を走ってくのが見えたのよ」

 

「やっぱりそうですか……。多分、俺が叩かれた後ですね」

 

「え?」

 

 なぜか驚く楯無さん。もしかして簪って普段、手を出さないタイプの女の子なのだろうか。いや、多くの女子はそうか。

 

「あの子、そういう非生産的な行動にはエネルギー使いたがらないはずなんだけど……」

 

「……そうなんですか」

 

「お尻でも触ったの?」

 

「なんで痴漢したと思うんですか!」

 

「んー、……オタクだから?」

 

「それ、オタクに対する偏見……」

 

「じゃあ、おっぱい?」

 

「どうしてセクハラ方向なんですかねぇ?!」

 

 おうふ、その甘いお姉さんボイスでその言葉は刺激が強すぎます。どこかにいたよね、こんな声の人。

 

「うふふ、これで少しは気が楽になったでしょう?」

 

 だとしてもひどいやり方ですよそれ。

 いつの間にか、俺たちは元の表情に戻ってしまっていた。

 

「まぁ、そうですけど、今は話があるので、どこか人気(ひとけ)のない場所へ行きましょう」

 

「あら、もしかしておねーさんに壁ドンでもするのかしら」

 

 いや、やらねえよ。やってみたいけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 とりあえず、適当に屋上へとやって来た。周りは海と同時に夕方ということもあって絶景であった。

 

(おっと、スタートさせとこ)

 

 一瞬だけスマホを弄ったあと、俺は壁に背を預けるように座る。楯無さんも俺の隣に座り始めた。

 

「その、あまり俺が楯無さんの姉妹事情に介入するのもなんですが……訊きたいことがあるんです。大丈夫ですか?」

 

「ええ、いいわよ」

 

 楯無さんはいつになく真剣な眼差しに変わる。

 

「……あなた、妹さんに何かしでかしました?」

 

「え? い、いや、それが、その……」

 

 と思ったら楯無さんは戸惑いを見せてきた。すみません、会長の威厳がどこかへ消えましたよ。

 

「した、というか。してないと……いうか。間接的にさせちゃったかなぁってのは……ある」

 

 そのまま、俺は話を聞き続ける。

 

「ほら、私って簪ちゃんとは歳が一つ違いだから、なんというか、色んな人に比べられちゃったみたいで……。日に日に避けられて、今は冷えきった仲になっちゃって……。ええと、私をずっと追いかけているようなのよ……。現にずっと一人でISを組み上げてるみたいだし……」

 

「……ってことは楯無さん、一人でISをつくったんですか?」

 

 姉を追いかけているからISを組み上げる。つまり、姉である楯無さんが一人で組んだ可能性が高い。姉妹揃って天才かよ。やべえな。

 

「うん、まぁ、七割方できてたからできたんだけどね……。それに知り合いの整備科によく意見も貰ってたし……」

 

「え? なら、妹さんは……」

 

「ええ、きっと意識しすぎちゃってるのよ。……気にしなくていいのに」

 

 この楯無さんが嘘をつくとは思えない。しかし、たった二日間の付き合いで信頼性もクソもないと思うかもしれない。でも、なぜか俺にはそう思えた。

 

「ちなみに、楯無さんの得意なことはなんですか?」

 

 簪があそこまで楯無さんを避けるようになった一部分を探す。あまり私情に突っ込むのは宜しくないかもしれないが、今の俺は見過ごせない。

 

「ええと、マーシャルアーツや古武術、カポエラとか、色々な格闘技はマスターしているわ」

 

 なにそれ? おいしいの? ってくらい聞いたことのない格闘技だった。

 しかし、初耳でもこの人には生身で勝てないと俺は確信した。タイマンだと瞬☆殺だね。

 

「で、それが妹さんには……?」

 

「……あまりできていないのよ」

 

 やっぱりそうだったようだ。簪が格闘技マスターの習得に努力したのかはわからないが、楯無さんが言うならそうなのだろう。

 次に、女の子に有り得そうな姉に劣等感を持ってしまう理由を考える。

 隣でしょぼんとしている楯無さんを、俺は横目でのぞき込む。

 

 胸は楯無さんの勝利(確信)。

 

 スタイルも楯無さんの勝利(多分)。

 

 顔は……引き分け(震え声)。

 

 うむ、なんとも言えない。

 

 しかし、女の子ならスタイルの面において理由にはなるだろう。

 

「ねえ、太一くん。今おねーさんの体を舐め回すように見ていたわね?」

 

 非常に生々しい言い方で訊いてくる。まさか、横目で見たのにバレるとは恐るべし学園最強(更識 楯無)

 

「こ、これは、妹さんが楯無さんを避けてる理由を探すためですから……」

 

「だとしても、少しは邪な目で見てたんでしょう?」

 

「……ごめんなさい」

 

「素直でよろしい」

 

 この人には逆らえない。逆らったら俺の命が危ないだろう。

 

「は、はぁ……でも、妹さんに嫌われているわけではないでしょうね」

 

「……根拠は?」

 

「ありません」

 

「即答!?」

 

「いや、姉妹なんてそんなもんでしょう。喧嘩したわけでもないのに、嫌う理由がありませんよ。兄弟いない俺が言うのもなんですけど……」

 

 おそらく、この姉妹は喧嘩したことがないだろう。特に楯無さんはそういった性格には見えない。確信はないが。

 

「そう、だといいけど……」

 

 楯無さんは簪の前では不器用なのだろう。妹に気を遣って行った楯無さんの優しさが、時に仇になることもある。

 

「たぶん、今回の一件で俺は妹さんに偽りの友達だと認識されちゃいました。これは楯無さんの優しさにも問題があると思うんです」

 

「ぅ……そうよね……」

 

「妹さん、好きなんですよね? 宇宙一」

 

「ええ、大好き――って太一くん? それはちょっと盛りすぎじゃないかしら」

 

「でも否定する気はないでしょう?」

 

「……ま、まあね。あはは」

 

 あれ、俺と楯無さんの立場が逆になっている気がする。それにしても、楯無さんはシスコン、はっきりわかんだね。

 

「それはいいとして、俺、妹さんと友達になれる機会を与えてくれたのは感謝しています。だから、俺は妹さんを探しに行きます」

 

「ええ、頑張ってね太一くん。はいこれ」

 

 楯無さんが新型スマホを取り出す。やべ、超高価な代物だ。

 そこから空中投影ディスプレイが浮き出して、簪の居場所が表示されていた。場所は第二整備室。

 

「生徒の長として、学園内の監視カメラは、ほとんど確認可能なのよ。でも、別に監視室があるからその人たちに任せてもらっているけど」

 

 さすが生徒会長。特権が多くてびっくりです。

 

「じゃ、行きますか」

 

 もう日が沈みそうな時間帯。夕食は後回しにして俺は小走りで進んだ。

 

 

 すぐに、IS第二整備室に到着。ここは本来、二年次からはじまる『整備科』が使うそうだが、簪は例外なのだろう。

 俺は軽く深呼吸した後、ゆっくりと自動ドアが開く。

 

「更識さん、いるか?」

 

 反応がない。まだ怒っているのだろうか。

 

「いるんだろう? 返事してくれ」

 

「…………どうして、わかったの……」

 

 簪がものすごい暗い声で訊いてきた。簪の姿はこちらから見えない。

 

「監視室の人に教えてもらった。それより、今は更識さんに言いたいことがあって来た」

 

「……なに」

 

「俺は……更識さんと友達になりたい!」

 

 俺には似合わないセリフを整備室いっぱいにぶつける。人のいない部屋だからこそ音が響いた。ああ、恥ずかしくて窓から飛び降りたい気分だ。

 

「……嘘、なんでしょ……」

 

「いや、嘘じゃない。これは本心だ」

 

「…………!」

 

 俺の真剣な眼差しに簪は少し怯む。

 そのまま俺は、簪の目をじっと見つめながら語り出す。

 

「俺は……アニメが好きだ、大好きだ! そして、俺のモットーは『三度の飯よりアニメ』だ。……いいか、更識さん。アニメが大好きなやつに悪い奴はいない。少なくとも俺はそう信じてる。だから、この通りだ。信じてくれ! 更識さん、俺と友達になってください!」

 

 まるでどこかのアニメからコピペしたようなセリフを叫んで、俺は完璧な土下座をする。使うはずもないのに、長年極めてきた甲斐があったようだ。なんかある意味告白みたいだ。土下座だけど。

 

「………そこまでするなんて……どうして……?」

 

「――坊やだからさ」

 

 なぜ土下座までするのか簪に訊かれて思いつかなかった俺は、咄嗟に有名な名言を発する。今になって俺は馬鹿だと実感した。

 

「……そこで〝シャア〟のセリフ、言えるんだ」

 

「……ダメでした?」

 

「……ダメ、じゃない……」

 

 あ、いいんだ。

 

「あ、ほら、それに昨日、約束しただろ? 一緒にアニメ見ること」

 

「……約束。……うん、約束」

 

 やっと簪の声から暗さが消えてきた。そう、昨夜に俺たちはアニメ鑑賞の予定を立てていた。美少女との約束だ。絶対に忘れるわけがない。

 

「今日から毎日。俺が更識さんに信頼されるよう努力するからさ」

 

「…………わかった」

 

 俺と簪の無言の握手。絶対的な信頼関係を築けるように、俺はぐっと握る。意識してなかったけど、女の子の手ってイイっすね。

 

 さて、ここからが問題だ。更識姉妹の関係を良くするためにはどうすればよいのか。

 しかし、今は簪の信頼を勝ち取って間もない。一週間後には、セシリア・オルコット戦かつ織斑一夏戦が待っている。ここは一旦引いて、来週の戦闘に備えるか。

 

 グゥ〜。

 

「あ……」

 

 空気の読めない俺の腹が鳴る。一瞬の静寂にこの仕打ちは恥ずかしい。

 簪は聞かなかった振りをしているようだが、余計に恥ずかしいので辞めていただきたい。

 

「……夕食、食べに行く……?」

 

「……だな」

 

 ある意味、お腹は空気を読んでいたようだ。

 

 その後、俺と簪は本音も連れて食堂へ向かった。軽く夜に見るアニメの打ち合わせを行いながら、ご飯を食べた。

 それから十一時。俺たちは〝中二病でも恋がしたい!〟のアニメ鑑賞会を開いた。十二時には本音が寝て、その後に俺は寝たが簪はまたキーボードを弄り始めていた。

 簪の専用機問題。まだまだ解決の先は長そうだ。

 

 

 




ほぼオリジナル回。そして、ひとまず一件落着。
旧第一章にはない部分だらけです。

変更点――というより追加点、

・本音が生徒会と初めて知るシーン。

・楯無さんと合流するシーン

・楯無と屋上シーン

・簪と和解(仮)シーン

━━中二病でも恋がしたい。

好きなキャラは、富樫くん――じゃなくて六花です。

━━坊やだからさ

汎用性の高いセリフ。
一夏「太一がゴリ押し主義なのは、なぜだ!」
俺 「坊やだからさ」






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第7話 トックン

ここは旧5話の時系列っぽい。


 

 

 

 入学して三日目、水曜日の放課後。昨日の簪との疎遠危機については一件落着。しかし、まだ姉妹の関係には解決に至っていない。

 

 それよりも、初めて女子と見たアニメ鑑賞会はとても楽しいものだった。

 今夜も約束しており、次は昨夜の〝中二病でも恋がしたい!〟の続きを視聴する予定だ。おかげで、授業中は俺は大半が脳内お花畑になっていた。

 ちなみに、織斑先生による今日の叩かれ数は四回だ。ありがとうございます。我々の業界ではご褒美です。(ここまでテンプレ

 

 気を取り直して、今から俺は生徒会室にお邪魔することになっている。

 今日は待ちに待った楯無さんとの訓練だ。「オラわくわくすっぞ」って気分なのだが、相手は学園最強でいたずら好きな先輩。どうくるかは想像つかないものである。

 

 俺は扉をノックをしようとしたが、〝生徒会役員共〟という下ネタしかない漫画兼アニメを思い出す。

 そして瞬時に〝生徒会の一存〟も思い出した。他にも〝会長はメイド様!〟や〝恋愛ラボ〟など生徒会に関係するアニメは山ほど見ている。まぁ、どれも現実では有り得ないだろう。

 すぅーはぁー、といつもの深呼吸をしてドアを軽く叩く。

 

 コンコンっ。

 

「どうぞ」

 

 昨日とは違う、誰かのシャキッとした声が聞こえた。

 

「失礼します」

 

「わー、やがみんだー。ようこそ〜」

 

 しかし、昨日同様、本音がソファに座りながら歓迎してくれた。

 

「おう、また会ったな」

 

 部屋が同じなので何度も顔を合わせてはいるが、生徒会室で会うのは昨日ぶりってとこだろう。

 

「でぇ、そちらの方は……」

 

 本音がいるソファの後ろに、三年生の女子がいた。眼鏡に三つ編み、ファイルを片手に持ち、いかにも頭が良さげで容姿も美しい人だった。

 

「私は本音の姉で布仏虚です。――最近、妹が迷惑をかけていませんか?」

 

 途中から俺の耳元で小声で訊いてきた。今の声、最高です。ほぼイキかけました。

 それにしても、この人は本音の姉さんだったか、姉妹揃って生徒会とは驚きだ。

 

「大丈夫ですよ。寧ろ僕の方が迷惑をかけてしまっている、というかなんというか……」

 

 なにせ部屋に男だ。まだ女子が二人いるからいいものの、これで女子一人なら気まずさが増す。

 

(にしても、本音とは雰囲気が違うなぁ)

 

 いつものほほんとしている本音。それに比べて虚先輩はしっかり者のイメージだ。姉妹にもこういったパターンもあるのか。なんというか、楯無さんが求めている姉妹想な気がする。

 

「やがみん。今、雰囲気違うーとか、思ってない?」

 

 おうふ、心を読まれてしもうた。

 

「すまんすまん……でー、楯無さんはどこですか?」

 

「お嬢様はもうすぐ来ますよ。はい、お茶をどうぞ」

 

 いつの間にか虚さんが紅茶を用意していた。そして、カップ一つ一つに虚さんは注いでいく。なんだろう。秘書というかメイドスキル高くないですかね。ん、お嬢様?

 

「すみません、お嬢様って……なんすか?」

 

「私たちはねー、むかーしから代々伝わる、更識家のお手伝いさんなんだよ〜」

 

 つまり、本音と簪は幼なじみということだろう。だとしても、本音がメイドには見えない。いつもやらかしそうな性格してるし、駄メイドっぽい。

 

「むむむー、今度は私にひどいこと考えてるな〜」

 

 どうしてバレているんだろうか。そこまで顔に出る俺じゃないのだが。

 

「どうぞ、城谷上くん」

 

「あ、い、いただきます……」

 

 心が静まる紅茶をゆっくりと飲む。ふぅ、無糖じゃなくてよかった。

 

「おいしいでしょ? 虚ちゃんの紅茶は世界一よ」

 

 誰かと思えば、後ろから楯無さんがいた。妹は宇宙一好きな人だね。

 

「はい、とてもおいしいですね」

 

「でしょう? さて、さっそくだけど訓練に行くわよ」

 

 紅茶を飲み干した後、すぐに楯無さんと訓練をすることになった。

 俺と楯無さんが生徒会室を出る時に、本音と虚さんに「いってらっしゃい」の言葉がきたのが嬉しく感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、まずは基本操作から」

 

「イエスマム」

 

 ここは第三アリーナ。今乗ってるのは学園の訓練機『打鉄』である。

 簪の組み上げている『打鉄弐式』はその後継機だろう。形状は特に似てはいない。

 もう一種類ある訓練機『ラファール・リヴァイヴ』と比べると防御に優れている。

 

 楯無さんは専用機を持っており、名は霧纒の淑女(ミステリアス・レイディ)だそうだ。見た目は生身の露出部分が多く水色の装甲がついて半透明な羽が見える。なんというか美しいの言葉が似合う機体だ。

 

 とりあえず、基本操作と言うことで動き始める。ちなみに俺のIS適正はBだ。一夏と同じである。

 

「うん、悪くない動きね。ぎこちない感じは特にない」

 

「そうですね、不思議な感覚ですよ。本当に」

 

 途中から敵の攻撃を避ける動作を学ぶ。ISなので全くといっていいほどGはかからないので楽に動く。とはいえ、あまりに機敏過ぎて違和感があった。

 本当に俺が動かしているのだろうか。

 

 だいぶ慣れてきたので、今度は近接戦闘について学ぶ。

 来週に戦う相手であるセシリア・オルコットの機体『ブルー・ティアーズ』は中距離型らしいので射撃で戦うのが効果的だ。しかし、今からどう足掻いても射撃で代表候補生には勝てないため、接近戦を優先に指導されることになった。

 

「とりあえず、その刀を私に当てたら勝ちね」

 

「了解です」

 

 標準装備の刀型近接ブレードを呼び出し(コール)、展開する。

 楯無さんはその場を動かず、指で「かかってこい」と合図される。

 その合図に合わせて俺は刀を構え、突撃した。

 

 スカッ。

 

 楯無さんは俺の斬撃を軽々と避ける。それから何度も、斬撃を繰り返したが、かすり一つしなかった。

 

「……楯無さん、無理っす」

 

「こら、諦めるの早いわよ。まだ本気の三割も出してないのに弱々しい」

 

 まだ二割だったようです。弱くてサーセン。いや、弱くて当然だよな、これ。

 しかし、楯無さんに少しでも当たらなければ、代表候補生相手に太刀打ちできない。

 

(いや、勝つ必要はないのか……)

 

 元はといえば、クラス代表を決定する試合である。代表になりたくもないのに勝つ必要はあるのだろうか。辞退できるものなら、今すぐしたい。

 でも、それで目の前にいる生徒会長は許してくれるだろうか。否、無理に決まっている。それに、強くなって損はないし、ここは真面目に努力しよう。

 

「そぉい!!」

 

 軽く軌道を変えながらの斬撃。楯無さんは滑らかに避けるが俺は諦めない。横に刀を振り、斜めに刀を振る。

 

 五分後、楯無さんとの間合いをさらに詰めることができたが、これでも斬撃が当たることはなかった。

 

「まぁ、こんなものかな。太一くん、今度はこの攻撃を避けてね」

 

「は、はい」

 

 今度は敵の射撃に対して回避する訓練が始まる。

 十数秒がたった後、楯無さんは蒼流旋の四門のガトリングガンを発砲。

 適当に飛翔してたのに、たった一発の射撃を俺は避けることができなかった。

 

「なぜ、当たったし」

 

「だって太一くん、さっきから同じパターンの行動しかとってないもの。これじゃ、どうぞ当ててくださいとしか聞こえないわよ」

 

 うっ……ごもっともでございます。

 いつもやるテレビゲームでは一定の回避行動はしたことない。しかし、ISは動き方が慣れてないせいか規則性ある動きしかできていなかった。今後の課題はこれかな。

 

 その後、楯無さんにボコボコにされ、シールドエネルギーがゼロを示した。ガトリングガンを連射しながら、ストレス発散のつもりなのかとっても笑顔だった。た、楽しそうで何よりです。

 

『アリーナ利用終了時刻になりますので、残ってる生徒は速やかにピットへ戻って下さい』

 

 アリーナ内に放送が流れる。この声は山田先生だ。あのグリーン・アンド・パイオーツが当番だったようだ。決して馬鹿にしてはいない。決してだ。

 

「あら、もうちょっと楽しみたかったのにぃ、おねーさん残念」

 

「あはは……」

 

「そうだ。明日(あす)、専用機が届くわよね?」

 

「そうですね」

 

「なら、明日からその機体で特訓よ。楽しみにしてなさい♪」

 

 ……このコーチで大丈夫だろうか。

 

 まぁいいか、と心の中で吐き捨て、楯無さんと解散になった。

 ピットへ戻り、冷たいスポーツドリンクを飲む。まさか、生徒会長がコーチだとは凄いものだ。そう言えば、一夏はどうするのだろう。

 

 寮に戻る途中、 竹刀がぶつかる音と誰かの悲鳴が近くに響いた。

 そこは格技室である。チラッと覗いてみるとそこには一夏と箒が剣道をしていた。

 

「あ……。一夏に箒だ」

 

「あぁ……。た、太一か……」

 

「……ふん」

 

 一夏は疲れ果て座り込んでいて、箒はそっぽを向いていた。なんだこの状況は。

 

「あの……一夏がどうかしたのか? 箒」

 

「……私がISを教えようと思ったのだが、それ以前の問題で剣道の腕が鈍っていたのだ」

 

 なるほどね。そりゃ一夏は家計のために学校に内緒でバイトしてたしな。

 そうなれば、腕が鈍るのも無理はない。箒は剣道全国大会で優勝してるわけで勝てるわけがないだろう。

 ちなみに俺は小二以来全くやってないため、剣道は初心者並に腕が鈍ってる。ルールとかそこらはそれなりに。

 

「まぁそうだな……。それ以前の問題だな……ははは」

 

「そうだろう? それで鈍さを戻すために剣道の特訓をしてる所だ」

 

「まぁ程々にな。じゃあの」スタタタタッ

 

「ああ! 太一」

 

「まだ終わっとらんぞ! 早く立て!」

 

「は、はいぃ!!」

 

 一夏よ、骨は拾っておくぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 楯無先輩との特訓一日目は本当に疲れた。ただでさえ運動神経鈍いのに数時間もISを動かせばそうなるだろう。

 部屋に戻ってすぐシャワーを浴びた後、椅子に座ってグッタリする。

 

「とってもー、お疲れのようだね~」

 

「おぅ……なまら疲れたわ〜」

 

 気分で方言を使ってみる。いくら出身が北海道でも人生(マイライフ)の半分は一夏と過ごしているので、使うことは滅多にない。

 

「なまら~? あー方言ね〜……ってことは、ほっかいど〜出身?」

 

「一応な。中学に入る時に親の都合で一夏の中学に入学したんだ」

 

 本当は小さい時に1度一夏と出会ってるが、話が少し長くてだるいので敢えて言わない。言うのは、もっと仲良くなってからがちょうどいい。

 

「そうなんだ~」

 

「……そうだ、更識さんは?」

 

「かんちゃんは整備室だよ〜。もしかしてー、気になっちゃう〜?」

 

 どういった意味での「気になる」かは訊かないでおくとしよう。

 

「ほら、更識さんの専用機について気になってな」

 

「ふむふむ〜、それは確かに気になるかもね〜」

 

「手伝えることはないのかなぁ……」

 

「私もできることならやりたいんだけどねー。私、整備は得意だからある程度なら協力できると思うんだ〜」

 

 いつもと違うトーンで話す本音。

 

「なにそれ初耳。お前も頭いいのか……」

 

 まさか、本音が整備科志望だったとは、意外の一言に尽きる。ほら、見た目はそこまで整備科っぽくないし。

 とはいえ、仮にもIS学園は超難関高校と言われる存在だ。頭が良くて当然といえば当然である。

 つまり、ほぼ必然的に俺は頭脳で学年最下位の確率が高いということだ。

 

「むむむー、人を見た目で判断してはいけませんよ〜?」

 

 ひぇ、鋭いですね、本音さん。

 

 ともあれ、本音も簪の専用機のことで力になりたいようだ。

 楯無さんは一人だけではISを組み上げていない。それなのに、簪は一人だけで組んでいる。ただの勘違いか、それとも、別の理由が? ……わからない。

 

「クラス対抗戦まで一ヶ月もないよう。大丈夫かな〜……」

 

「あぁ、そうだな……」

 

 簪だって代表候補生で、四組の重要な役割を持っているはず。それなのに、専用機がないときたら簪の実力を発揮できずに試合に参加することになってしまう。

 

 ずっとこんなところで悩んでいるのもあれなので、話を変えることにした。

 

「まぁなんだ。とりあえず、今は飯でも行こうぜ。今日はもうヘトヘトだ……」

 

「やったー、デザートの時間だ〜!」

 

 いや、切り替えはええよ。

 

 ともあれ、いつもの本音の方がこちらとしても嬉しいので、否定するつもりは全くない。

 俺は簪に「本音と飯ってくる」とトークに送信して部屋を去る。

 

 眼鏡っ娘スタンプで「わかった」という簪の返信を確認し、本音と食堂でご飯を食べた。ついでに途中で一夏と箒も誘った。

 一夏も俺と同じく――いや、俺以上に疲れていたのは言うまでもない。

 

 夜には簪が部屋に帰っていたので、約束通り、中二病でも恋がしたい!の続きを視聴した。

 

 

 

 




今回は旧第4話後半と、旧5話前半の内容です。

変更点は、

・生徒会シーンにおいて、布仏姉妹がメイドと太一が知るシーン

――これも本編ではカットされていたと思います。

・楯無さんとの初特訓のシーン

――特訓の内容をガラッと変えました。

・本音と部屋で話すシーン

――旧版と違い、簪はいません。

━━生徒会役員共、生徒会の一存、会長はメイド様!、恋愛ラボ

生徒会要素、マジ最高です。まだまだ生徒会系アニメはあるんですけどね。引き出しは残しとかないと……



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第8話 アイボウ

今回は旧5話後半と、旧6話前半の内容となっています。


 

 

 

 次の日の放課後、第一アリーナ。ここでは基本、IS機体の試験などを行う場所らしい。だから、授業では基本使わない所だ。

 今日は俺の専用機が届くようで、俺の他に織斑先生や山田先生、アドバンス・サンダー社の開発部の方が集まっていた。そして、緑のシートに包まれた巨大な金属の箱が、目の前にそびえ立っていた。

 

「では、鍵山さん宜しくお願いします」

 

 織斑先生が言う。

 

「初めまして城谷上くん。私は鍵山 健二(かぎやま けんじ)。私のことは鍵山さんで構わないからね」

 

「はい。宜しくお願いします」

 

 見た目はしっかりした中年の社会人で身長は一夏より若干上くらいであろう。元々、自分の身長はそこまで高くないのでどうでもいいことだが。

 ちなみに俺の身長は163センチである。どうやら中三で成長が止まったようだ。今になって規則正しく生活すればよかったと後悔している。

 

「こちらの方は社長だ」

 

「こんにちは、城谷上くん。私は佐奈樫 紗苗(さながし さなえ)と言うよ。これからよろしくね」

 

 何ともお美しい女性である。年齢は三十代といったところ。眼鏡を掛け、服装は紺色のスーツ姿、おまけにスタイルも良さそうである。ジロジロと見るわけにはいかないので自重はしているが、それでもパッと見でわかるほどだった。

 

「宜しくお願いします」

 

「そして開発者の一人、梶平 宗也(かじひら しゅうや)さんだ」

 

「よろしく。城谷上くん――とその前に……」

 

 梶平さんという一見若そうな人が、俺に名刺らしき紙を渡してきた。

 軽くその紙を確認すると中には、

 

『君はアニメが好きと聞いている、だから俺と気が合いそうだ。あとで色々話そうぜ。by梶平』

 

 とてもフレンドリーな言葉でそう書かれていた。アニメという文字だけで俺は気分が高揚した。

 

「それじゃあ、君の専用機をみせるとしよう!」

 

 梶平さんがそのセリフと同時に緑のシートを引っ張る。さらに、金属の箱の全面が開いて、ついに俺専用のIS(相棒)が現れる。

 

「これが城谷上くん専用のIS、獰飆(どうひょう)だ!」

 

 色は量産型ISのラファールリヴァイヴによく似た深緑の機体。軍事的な要素を想わせる俺の追求していたパートナーと呼べるだろう。ただし、見た目はまだ初期状態らしい。これからどう変わるか楽しみだ。

 

「これが、俺の……専用機(永遠のパートナー)!」

 

 猛烈な独占欲と感激を隠せなくなる。それほど俺は興奮していた。

 

「じゃあ、フィッティングを開始するから装着よろしく」

 

「了解です」

 

 梶平さんの言葉に合わせて、獰飆に乗る。彼の高速なタイピングで調整は直ぐに終わった。

 一次移行(ファースト・シフト)も完了し、一気に機体の形状が変わる。これが獰飆の真の姿である。

 

 

【挿絵表示】

 

 

※イメージ

 

 深緑だけではなく、明暗のある緑色の部分も多くも加わり、スラスターである両翼にはそれぞれ二つのビットが出現した。

 

「これで、君の専用機となったよ。それとISのコアにVOICEROID(ボイスロイド)みたいなAI機能も入れてるから、楽しみにしろよ」

 

「はい!」

 

 ――VOICEROID

 

VOCALOID(ボーカロイド)という歌に特化したものとは違い、話すことに特化させた音声合成ソフト。それがAI(人工知能)として機能しているなら、wktkが止まらなくなりそうだ。一体どんな声なのだろう……。

 

『system 起動。よろしくお願いします。マイマスター』

 

「おぉ……」

 

 感激しすぎて言葉にできなくなる。これは所謂、萌え声で〝モンスター娘のいる日常〟のパピみたいな声だろう。

 ちなみにこのアニメは上級者向けである。ハーレムものでありながら、ヒロインはマニアックな亜人種ばかりである。そのため、マニア向けに近いアニメかもしれない。無論、俺はありですけどね。

 

「よし軽く試運転をしよう。とりあえず、空中を軽く飛んでみて」

 

 言われて俺は上空へ飛び出す。慣れてないせいか少し動きが鈍かったが、特に何か言われるわけでもなくことは進んだ。

 その後、俺は生徒会長と専用機を用して第三アリーナにて訓練をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの日から毎日、楯無さんと猛特訓を繰り返した。

 

 金曜日。この日は生身での近接で、竹刀を徹底的に叩き込まれた。おかげで剣道の腕が戻った気がした。尤も、元々ヘタクソだったため大したことない腕前だったが。

 

 その日の夕方、だだっ広い男子更衣室のベンチで寝転がっていた。

 

 ペチっ。

 

「わっ!?」

 

 目を瞑ってリラックスしていたところに、頬からとてつもなく冷たい感触に襲われる。驚いて声が裏返ってしまった。

 

「ははは、いい反応だわ。はいこれ、私の奢りね」

 

「え? あ、ありがとうございます」

 

 スポーツドリンクを受け取り、それをがぶがぶと飲み干す。犯人は楯無さんだったようだ。

 それにしても、このスポーツドリンクはキンキンに冷えてやがる。ありがてぇ。

 

「今度、ジュースを二十倍くらいに奢ってね♪」

 

「小学生ですか!」

 

「ダメ? なら、私のジュースの飲みかけは飲む?」

 

 う、そう言われると飲みたいが、ここで釣られるわけにはいかない。自重しておこう。

 

 

 

 

 土曜日は射撃訓練。ゲーマーだったこともあったり軍事的なものには徹底的に調べていたため、射撃に関してはある程度の知識を持っていた。

 獰飆に搭載されていたガトリング砲を撃つ練習もした。霧纒の淑女には掠ってすらいなかったのは言うまでもない。

 この日の夕方で寮に戻る途中、楯無さんと廊下で会話していた。

 

「どう? 太一くんはこの学園にもう慣れた?」

 

「まだこれっぽっちも慣れていません。女子高に男が乱入しているも同然ですよ。慣れる訳ないじゃないですか」

 

「そんなこといって、君は女装趣味があるんじゃないかしら?」

 

「ありませんよ!」

 

 またいつもの調子でからかわれる。

 

「あら、残念ね。太一くんが女装趣味だったら、おねーさんの服をいくらでも貸してあげたのにぃ」

 

 確かに身長もさほど変わらないが、ウエストとか色々合わないと思う。俺の方が太いみたいだし。まぁ、この先輩と比べる時点で意味はないと思いますけど。ちなみにISスーツを着ているときの楯無さんのスタイルはモデル級である。

 

「それはそうと、今日はお疲――あっ」

 

 途中、まさかの簪とすれ違ってしまい楯無さんは一瞬黙り込んでしまう。 

 簪は下を向いたまま何も言わず去っていった。

 おそらく楯無さんは「お疲れ様」と言おうとしていたのだろう。だが、その言葉も妹が現れてはどうしようもなかった。

 俺と楯無さんはしばし無言になるが、すぐ楯無さんが笑って誤魔化す。

 気まずい。とても気まずい雰囲気になっていた。困ったなり。

 

 

 

 

 そして、対戦前日。近接と射撃の両方を訓練した。射撃の腕が若干上達したらしいが、霧纒の淑女には全く当たらなかった。

 そして、近接も順調に上達した。楯無さん曰く、『ここまで上達するとは正直思わなかったわ。太一くんは素質があるのかしらね』と褒められた。あの時はさすがに照れて顔に出てしまい、楯無さんに思いっきりからかわれた。

 

「はい、訓練はおしまいね。お疲れ様。太一くん」

 

「今までありがとうございました」

 

「明日の試合、頑張ってね」

 

「相手は代表候補生ですが、全力を尽くして立ち向かってみせます!」

 

「ふぁーいと♪ おねーさんも観にいくわ」

 

 そう言って楯無さんは扇子を開く。【完全勝利】と書かれている。気になったが、その扇子はどんな構造しているのだろうか。

 

 ヘトヘトになりながら、寮に戻る。本音は別の友達と遊びに行ったようで、部屋には簪しかいなかった。相変わらず、パソコンと向き合って作業しっぱなしである。

 

(……はぁ)

 

 簪にバレないように小さくため息をつく。

 どうも更識姉妹の関係が気になって仕方がない。こうして二人と仲良く関わっているわけだが、複雑な関係になってしまっている。

 簪と俺の関係は良好。楯無さんと俺も良好。しかし、簪と楯無さんは気まずい雰囲気を醸し出しっぱなしである。

 似たような話、恋愛でいう三角関係のようなものだ。

 なんというか悲しい。そのような状態が続いてしまっては俺の精神が持たなくなりそうである。

 

(……やっぱり、正直に伝えよう)

 

 真面目な顔で俺は簪をベッドの上に座らせて俺もその隣に座る。作業を中断させたのは本当に申し訳ない。

 

「あのさ、簪」

 

「……うん?」

 

 お互いを見つめ合うことなく、窓を眺めながら話す。これまた気まずい雰囲気になっているが、俺は気にせず続ける。

 

「俺さ、更識さんの姉さんと和解してほしいと思ってるんだ」

 

「……でも、それは――」

 

「あなたには関係ない、だろ? わかってるさ。けど、俺は苦しいんだ」

 

 あるときには、楯無さんとの会話だけで最悪な誤解をされ、あるときには、姉妹同士ですれ違うだけで気まずい雰囲気になる。他にも、様々なところで姉妹は出くわし、俺は困り果てていた。

 

「わかってると思うけど、俺は更識さんと姉さんも両方と仲良く学園生活を過ごしたいんだよ。これから先、仲が悪い状態で卒業するつもりか?」

 

「……」

 

 簪は何も話さない。昨日すれ違ったときと同じ、ずっと下を向きっぱなしの状態だ。

 

「……姉さんのこと、嫌いか?」

 

 少し躊躇いがちに簪に訊いてみる。これで嫌いと答えられたら、楯無さんに言ったことが嘘になってしまう。

 

「…………嫌い……じゃない」

 

 数秒の間があったが、簪はそう答えた。

 少々、ホッとする俺氏。この調子なら姉妹の関係の改善も夢ではないかもしれない。

 

「更識さん、明日の対決、見に来てくれるかな?」

 

「……いや、遠慮す――」

 

「頼む! 専用機を優先してるのはわかってる。けど、俺は簪に見せたいんだ。この通り!」

 

 そう言いながら、俺はベッドの上で頭を下げてお願いをする。簪はちょっとだけ驚いている様子だった。

 

「……わかった」

 

「俺さ、あのオルコットに勝ってみせるよ。たとえ、負け確だとしても、俺は諦めないから――そのかわり」

 

 明日の戦いの意気込みをした後、俺は簪の肩に手をあてる。彼女は多少だがビクンと動いた。今の意味深ですかね。

 

「俺が勝ったら、姉さんと話をしてみないか? 俺が必ず、あの人を連れてくるからさ」

 

「……なんで、そこまで……」

 

「俺は二人と仲良くしたいのに、当の姉妹がこうじゃ、いやなんだよ。ただそれだけの話」

 

 今度はあのセリフではなく、俺は真面目に答える。

 

「絶対に……負けないで」

 

「おう!」

 

 俺と簪は強く手を握り握手する。簪の小さくて華奢な手が、俺にはどこか刺激する感覚が走らせたのは気のせいだろうか。

 

 ちなみに今日のアニメ鑑賞会は中止になっている。明日には試合が控えているためというのが第一。後は、疲労感が半端じゃないからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 決戦当日。この一週間、足が動かなくなるほどの特訓をして準備は万全だ。

 しかし、相手はそれ以上に訓練している代表候補生。それに対し、俺はたった一週間しか訓練していない素人である。勝つ確率を表すなら低いだろう。

 だがしかし、俺は諦めるつもりはない。素人が最強に勝てないなどという道理はないからな。いや、あるか?

 

 ちなみに一夏は、剣道の腕が鈍ってることを箒に叱られ、ずっと剣道しかしてなかったようだ。楯無さん万歳。

 

 ここはアリーナの待機室で『織斑一夏VSセシリア・オルコット』の試合が終わるのを待っている。試合をみたいのだが、その後の試合を公平にするために観ることはできない。非常に残念だ。

 

「太一くん、君にこれを渡すわ」

 

「あ、どうも」

 

 待ちくたびれて戦い方のおさらいを脳内で行っていたところ、楯無さんに声をかけられ、何かを渡された。

 見た目的に『お守り』といったところだろう。なんというか、有難い。……語彙力ねぇな、俺。

 

 一方で簪は観客席で観戦しているそうだ。SNSでそう伝えられた。

 

(あぁ、緊張するな……)

 

 どこか大勢の人前でスピーチをするときのように、かなりの緊張感が溢れてくる。

 そんなとき、ぺちぺちと扇子で頬を軽く叩く楯無さんの行動が、なぜか俺の緊張を和らげていた。

 

――勝者……セシリア・オルコット!

 

 数分後、かなり時間がかかったが、惜しくも負けてしまったようだ。まぁ、剣道しかしていなければそうもなるだろう。

 次はセシリア・オルコットとの戦いに身を引き締めておこう。

 

「城谷上、もうすぐ試合だ準備はできてるか?」

 

「勿論です。いつでも行けます」

 

 俺は簪との約束を果たしに行く。目的は『勝利』ただ一つのみ。

 

 ……俺と相棒の力舐めるなよ、オルコット氏?

 

 高貴で女尊男卑主義者のオルコットを俺は思い浮かべ、彼女がボコボコにされるリョナ像を想像する。なんだかゾクゾクして危ないゾーンに入った気がしたが、すぐ我に返った。

 

「向こうの準備が完了した。よし、思う存分戦ってこい」

 

「――イエスマム!」

 

 コーチ(教官)となってくれた楯無さんの為にも全力でぶつかってきます。

 

「いくぞ、獰飆!! パンツァーフォー!」

 

 いや、別に戦車道ではないけどな。

 

 

 




変更点は、

・専用機が届くシーン

――旧第一章より早く届いています。

・その後の特訓の話に追加要素

――ないよりは、いい。

・簪との会話を追加

――旧版より、シリアスさは増してます。



━━モンスター娘のいる日常

上級者向け、ケモナーなら好きになれるアニメだと思いますよ(白目)

━━リョナラー太一

開幕からやばい性癖を持ちそうな主人公だ( ´∀`)

━━パンツァーフォー

ガルパンはいいぞ。


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第9話 ケッセン

ようやくセシリア戦です。


 

 

 

 

 

 

「……待ってましたわ。城谷上さん」

 

「おう」

 

 第三アリーナ。目の前には、セシリア・オルコットの専用機『ブルー・ティアーズ』が、手を腰に当てたポーズで待ち構えていた。その外見は、特徴的なフィン・アーマーを四枚背に従えている。

 主装備はオルコットの手に持つ二メートル以上ある銃器、六七口径特殊レーザーライフル≪スターライトmkⅢ≫である。

 

 言うまでもなく、相手は相当優秀な狙撃手だろう。俺の機体は現在は機動性特化型だ。最後の訓練では生徒会長並に速く機動ができたとはいえ、油断は禁物だ。

 しかし、最高な相棒と共に戦えることができるなら、誰にも負けるつもりはない。まぁ、専用機になるだけでここまで速いとは正直思ってなかったが。

 

(そうだ、獰飆、録画を開始してくれ)

 

『了解です、マスター。録画を開始します』

 

 ハイパーセンサーで●RECと右上の画面端に出てくる。これでセシリアの尻を――いや、何でもないッス。

 

「準備OKか、オルコットさん?」

 

「ええ……もちろんですわ」

 

 んー、なんだかうわの空のようだ。何かあったのだろうか。まぁ、今は気にする場合ではないな。

 

「行くぞ!」

 

「……行きますわ!」

 

 大きなブザーと同時に試合が始まる。

 オルコットはレーザーライフルを構え、俺は《雷焱》を展開する。

 雷焱は名の通り、雷と炎だが基本は熱を利用した刀である。最大でも8000℃までなら耐久性があるが、それ以上は溶ける。

 そして、雷はある意味ただの静電気。単なる飾り物だ。機動性特化なので火力は、従来の自衛隊が利用していたであろう物を改造して、拡張領域(バススロット)に収納してある。

 

 まずはオルコットの攻撃を空中で交わしていく。

 相手は中距離型なので下手に突っ込めば百発百中で当てられてしまうだろう。

 そのため、俺は相手の隙を見て行動しているわけである。

 

 得意の機動性を駆使してギリギリ避けていく。しかし、ところどころで攻撃を食らってしまい、シールドエネルギーが大きく削られる。

 楯無さんが訓練時、常に本気で四門のガトリングガンを撃ってきたため、かなり避けやすくなっているのが感謝すべき点だろう。

 

「その程度でわたくしには勝てなくてよ?」

 

 先程からひたすらに俺を撃ってくるオルコットが、軽く煽ってくる。

 

「あぁ、そうだろうよ。だがな、俺は諦めない。それだけは覚えとけ」

 

「その言葉、わたくしが無意味にして差し上げますわ!」

 

 オルコットがそう断言した途端、彼女の周りに浮いている四つの自立機動兵器を起動させる。四つのそれがまばらにオルコットを囲んだ。

 

 その兵器はフィン状のパーツに直で特殊レーザーの銃口が開いている。しかも、ややこしいことに『ブルー・ティアーズ』というらしい。もっと、こう……あるだろ。

 

「うおっ!?」

 

 突然、オルコットのビット4機が交互にレーザーを放ち、そのうち二発直撃する。

 いくらハイパーセンサーが付いていようと俺の反応速度はついていけなかったらしい。

 

(確か……俺にも似たようなのが……)

 

 四つのビットに追いかけ回されながら、ハイパーセンサーの武器情報を確認する。

 その一つに、オルコットと似たような四つの自立機動兵器があるので、すぐさま展開する。

 

「ならば、こちらも!」

 

 このビットは《エネルギー吸収シールド》とのみ表記されている。

 その名の通り、エネルギー兵器に対して無類の防御力を発揮する。

 ただし、欠点が二つほどある。

 まず、実体兵器にはただの鉄の塊なので盾もどきにしかなれない点。

 そして、エネルギーを吸収するたびに自身のシールドエネルギーも消費する点だ。

 しかし、相手は実体兵器はないといってもいいだろう。

 

「よいしょっ!」

 

 オルコットのビットによる攻撃を、こちらのビットで吸収する。消費するシールドエネルギーは大したことはなかった。

 

「なっ……!?」

 

「どうした、オルコットさん?」

 

 急に驚いて身を引いたオルコットに、俺は問う。

 

「な、なぜ? わたくしのブルー・ティアーズのようなものを……?!」

 

 何を驚いているのだろうか。確かに、このシールドビットはブルーティアーズの自立機動兵器と感覚が似ている。まさか、俺の専属企業の闇というやつだろうか。

 色々気になることはあるが、今は試合中、このまま続けよう。

 

「すまない、その話は後だ。今は決着を付けるのが先だろう?」

 

「ええ、そうでした。仕方がありません。わたくしの本気を見せて差し上げますわ!」

 

 続けてオルコットは、四つのビットで射撃を繰り返す。

 そのビットの発射速度や弾速は、従来の戦車砲と比べて異常に早い。故に、避けるだけで精一杯であった。

 しかし、このシールドビットのおかげでダメージを負いにくくなった。

 

「くっ……上手いですわね。ですが、わたくしとのエネルギー残量差は一目瞭然。あなたの負けですのよ」

 

「おいおい、それは慢心ってやつだぞ、オルコット氏。その言葉をことごとく打ち砕いてやる」

 

 本気を見せつけてやろうと、後付装備である【30ミリ GAUー8 アヴェンジャー ガトリング砲】でオルコットに向けて俺は弾幕を張る。

 

「おらおらぁ! くらいやがれ!」

 

 セシリアと俺で真っ向から撃ち合う。なぜだかその間に、オルコットのビットが攻撃してくることはなかった。……なんだろうか。

 

「よし、どうだ。……オルコット」

 

 装弾数をすべて撃ち終え、俺は少々疲れる。

 こちらのダメージ量は160程度だ。そして、目標のオルコットは――無傷。

 

「やっぱダメじゃねぇーか!」

 

 思わず、自分で突っ込む。

 銃器を扱ってもオルコットに当たらないことなど、百も承知であった。しかし、少しは当たるのでは、という希望が俺にはあったのだ。

 たった一週間程度の努力で、中距離型の武装を持つ代表候補生に勝てるわけがなかった。

 

「おほほ、未だにわたくしのシールドエネルギーは満タン(フル)ですのよ? あなたでは無理ですわ」

 

「だから慢心はやめた方がいい。それともなんだ? 慢心王にでもなりたいのか?」

 

 慢心王とは〝fate〟で登場する英雄王を指している。

 

 しばらくオルコットの様子を伺ってわかったが、彼女とビットの同時進行はできないようだ。ならば、ビットが停まっている時に隙を見て撃てばいいのだろう。

 俺のビットの場合、攻撃手段が特攻しかないため機体とビットを同時に動かせるが、集中が必要だ。ゲーマーだからこそ出来たことかも知れないが、ここまでできるものなのだろうか。これが相棒(IS)のおかげというなら感謝したいところ。

 

「うおぉぉぉ!!」

 

 オルコットに向かって俺は雷焱を手に持ち、ミサイルランチャーを肩に構えて突撃する。多少のダメージを負ってしまったが、相手の銃身にぶつかる。

 その瞬間に、展開していたミサイルランチャーを発射。

 六発中四発をオルコットのビット全てに向けて放たれる。結果、全てのビットを破壊することに成功した。

 

「なっ!? またですの!?」

 

 またという言葉で俺は確信する。同じような手口で一夏もビットを破壊していたのだろう。

 

「だから言ったろ。俺は諦めないとな」

 

「……っ! もう許しませんわ、閉幕(フィナーレ)と参りましょう!」

 

 それは、ティロ・フィナーレの間違いだろ?と言いたいところだが。

 

「望むところだっ!」

 

 機動性を駆使してセシリアに向かい雷焱で切りかかる。

 現在、シールドビットを四機持っている俺は明らかな有利となっている。

 しかし、慢心はできない。技量で劣る俺は、戦略で勝つしか方法はない。

 

「……っ!」

 

 レーザー攻撃も俺のシールドビットで吸収し、雷焱でオルコットに多大なダメージを負わせる。

 

 体勢を立て直しながら、二度目の突撃を狙う。

 

「――人のことは言えませんわね?」

 

 にやり、と笑うオルコットに俺は危険を感じ、シールドビット四機を前に出そうとする。

 

――が、間に合わない。

 

 その瞬間、オルコットの腰部から砲口が出現、発射された。

 炸裂する爆発音と共に、煙が辺り一面に舞う。

 その攻撃は想定外のミサイル攻撃だった。油断した。実体兵器を潜めているとは、本当に人のことが言えないな俺は。

 

「おあいにく様、ブルー・ティアーズは六機ありましてよ?」

 

 煙が消え去った頃にオルコットはいつものポーズをかましていた。

 俺のシールドエネルギーはさほど減ってはいないが、その分、シールドビットは二機も大破してしまった。

 だからといって、諦めるのはまだ早い。

 

「あぁ、これは重大な損害を受けた。でもな、オルコットさんもダメージを負っているだろう?」

 

 先ほどの攻撃は至近距離であり、咄嗟に砲口付近にシールドビットを向かわせた。犠牲になったビットはあれど、相手にはそれ相応のダメージはあるに違いない。

 

「さすがですわ。素人の頭でも、それくらいは見破りますのね」

 

「素人を舐めてもらっちゃ困るっ!」

 

 会話しながらも、俺はオルコットに突撃する。ビットが残り二機になろうともそれらを駆使してレーザー攻撃を吸収する。

 

「……っ!!」

 

 俺の斬撃でオルコットが怯む。その隙を見逃さず、そのまま刀で横に切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……」

 

 試合開始から七分が経つ。

 元々体力が極端に少ない俺は、息が上がってしまう。

 一方、オルコットは若干の疲労が見えるがピンピンしていた。

 

 こちらのシールドエネルギーは、残り114。向こうは334(33-4)である。俺の機体の部位ダメージは多数。かなりボロボロだ。

 相手はのビットを全て壊し、接近戦に持ち込んだのが救いだったのだろう。銃器ではまともに当たらなかったしな。

 

「……まだ諦めませんですこと?」

 

「あぁ、諦めない」

 

 一度、戦いを止め、オルコットと向きあう。

 

「なぜ、そこまで戦いますの?」

 

「――約束したからさ」

 

「……約束、ですの?」

 

「ああ、俺の知り合いに厄介な姉妹がいるんだよ。俺はその二人と仲良く過ごせてる。でも、当の二人は仲がよろしくないんだ。だから、俺が勝ったら話し合おうと、そう約束したんだ」

 

「そう……だったんですのね……」

 

 どこか考え込むオルコット。何を思っているか俺には理解できた気がした。

 

「……でしたら、わたくしはじ――」

 

「――辞退する、っていうのか? そんな同情はいらない。最後まで闘えよ、オルコットさん」

 

「……。わかりましたわ。あなたがそう仰るなら、こちらも、負けてはいられませんわ」

 

 俺は雷焱を高熱状態にして構え、オルコットはレーザーライフルを構える。

 

「なぁ、オルコットさん。落第騎士の英雄譚(キャバルリー)って知ってるか?」

 

 ハイパーセンサーのディスプレイには瞬時加速の文字。

 

「いえ、そのようなものはわたくし、知りませんわ」

 

「まぁ、そうだろうね。面白いものを見せてやる……」

 

……シールドビット待機。

 

 息を吸ってしばらく息を止める。

 

「僕の最弱(さいきょう)を以て、君の最強を打ち破る!!」

 

 アリーナ内に自分の声が響く。

 このアリーナの観客席に人は多い。故に、俺の叫びを聞こえるのは必然。 

 あぁ、なんでこんなことをしたのだろう、と俺が後悔したのはまだ先のこと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 アリーナ観客席にて簪と本音は観戦していた。

 

――落第騎士の英雄譚。

 

 それは四日前の夜、城谷上 太一が簪に勧めたアニメのことである。

 そのときに『ただし、際どいから気をつけろ』と忠告された。

 後々、暇な時間にそれを見ていた。言われた通り際どいシーンもあっが、物語自体はとても面白かった。

 

 だが、それよりも思うことがある。

 それは、太一がセシリアに立ち向かうその姿である。明らかな不利の状態でも諦めないその心は、何のために戦っているのか。それが簪にはすぐに理解できた。

 

(私と……姉さんの、ため……)

 

 たった一週間、その短い期間で様々な出来事が起こった。

 例え、それが全て姉さんのさしがねだったとしても、太一だけは信じたい。そう簪は思ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

――「僕の最弱(さいきょう)を以て、君の最強を打ち破る!   ……一刀修羅ぁ!!!」

 

 見事な決めゼリフと同時にエネルギーを溜め込み、瞬時加速(イグニッション・ブースト)を発動。そのままオルコットに一直線で突進する。

 冷静にオルコットはレーザーライフルを撃つが、無効化される。なぜなら、機体前面に待機させたシールドビットが吸収したからだ。

 

「うおおおおおおおおおお!!!」

 

 驚異的な加速とスピード、そして、我の咆哮と共にオルコットへ《雷焱》を振り下ろす。静電気と灼熱の炎を纏ったそれは、大きな一撃として食らわせた。

 ここまでで二秒しか経ってないだろう。

 

「きゃあっ!!」

 

 体勢を崩したオルコットに、俺は何度も斬撃を繰り返すが、擦る程度。

 

「……い、インターセプター!」

 

 焦りを感じたのかオルコットは、ブレードを今更ながら展開。その間に、もう一撃を彼女に食らわす。

 

 刀と剣がしばらくぶつかり合うが、近接の技量ではこちらの方が勝っていたようだ。

 

「せいっ!」

 

「――っ!」

 

 金属の弾く音でオルコットの剣が真上に飛ばされ、彼女は上を見てしまう。

 

――その一瞬を、俺は見逃さなかった。

 

「トドメだ! 203ミリ 37口径榴弾砲(ハウザー)!!」

 

 あらかじめ量子変換で展開していた大口径榴弾砲を、オルコットに向かって撃ち込む。

 アリーナに大きな爆発音が鳴り響いた。

 

 煙が巻いた後には、オルコットのシールドエネルギーはゼロを示していた。ちなみに俺は、若干の奮闘や瞬時加速も相俟ってエネルギー残量は、25であった。

 

『勝者……城谷上 太一!!』

 

 アリーナの放送と同時に歓声が上がる。

 ハイパーセンサーで楯無さんを見つけ手を振る。楯無さんは扇子を開いて【速戦即決】の文字があった。

 そして、簪も見つけ手を振ると、彼女も軽く手を振り返してくれた。

 

「ほら、立てよ。オルコットさん」

 

「……あの城谷上さん」

 

「はい?」

 

「……あの時は日本国やあなた方のことを侮辱してしまい、本当に申し訳ありませんでしたわ」

 

 オルコットは頭を下げて話す。

 

「この決闘も、慢心していたわたくしが馬鹿でしたわ……」

 

「ま……俺も悪かったし、気にしなくていいよ。君は後でクラスの皆に謝っとくといいよ」

 

「はい、そうしますわ……」

 

「一夏には謝ったのか?」

 

「え? い、一夏さんにですか? ええ……勿論、謝罪しまして許していただきましたわ」

 

 急に顔を赤くして答える。まさかの攻略済みだったようで。流石、ハーレム主人公の一夏だけのことはある。

 

「そうだ、俺のことは太一でいいぞ」

 

「わかりましたわ。太一さん、わたくしのこともセシリアと呼んでください」

 

「おうよ、セシリア」

 

 俺はセシリアと握手をする。貴族様の高貴な手は、とても綺麗に手入れをされていた。いかにも女性らしいといえばいいだろう。

 

 試合終了後、速攻で織斑先生もとい千冬さんのいる場所に向かった。

 

「ああ、城谷上か。先ほどの試合はよくやった」

 

「あ、ありがとうございます。……それで、折り入って話がありまして」

 

 千冬さんに軽く褒められ、満更でもない気持ちになる。しかし、その気持ちもすぐにしまって話を変えた。

 

「ん? なんだ、話してみろ」

 

「……次の試合の辞退を希望します」

 

「なぜだ、理由を説明しろ」

 

 少々顔を顰める千冬さんに、俺は説明する。

 

「私はオルコットさんを倒すために戦いました。なので、もうやることは無いです。……それに、織斑先生は、()()が目的でもあるんでしょう?」

 

「まあ、否定はしない。自薦他薦の試合とは言ったが、オルコットの件といい気が変わった……とでも言えばいいだろう」

 

 思った通り、この人の目的はセシリアの改心だ。俺が出会った当時から彼女は慢心かつ自国を侮辱していたため、反省させようと試みたのだろう。……ぶっつけ過ぎないかそれ。

 

「とはいえ、お前だけがオルコットに勝利している。クラス長は必然的にお前になるかもしれん。しかし、今日の織斑の試合を見る限り、アイツはたった二度目の操縦で、オルコットを敗北寸前まで追い込んだ。……ということはわかるな?」

 

「……一夏は実戦で伸びるタイプってことですか?」

 

「そうだろうな」

 

 初めて聞いたが、一夏はセシリアを追い詰めるところまでは行っていたようだ。しかも、たった二回の操縦で。

 俺は一週間休まず特訓していたのだが、この差はなんだろうか。謎の敗北感。

 

「ま、そういうことだ。お前はゆっくり休め。クラス長に関してはオルコットにも話をつけておく」

 

 尚、一夏には無断で決める模様。

 

「わ、わかりました!」

 

 ビシッと敬礼する。

 とりあえず、自身の部屋へ向かうことにした。

 それにしても、あのエネルギー吸収シールドビットは一体何なのだろうか。

 

 

 




やはり、戦闘描写は苦手ですわ。

変更点は、

・セシリアの呼び方がまばら。

――さん付け、呼び捨て、氏付け。

・煽るのはセシリア。

――しかし、動じない太一

・旧6話より、内容は濃い。

――割りと接戦にしてます。

・一夏と対戦は棄権

――一夏と戦う必要性、ある?と思って棄権させた。

━━慢心王

ギルガメッシュ

━━ティロ・フィナーレ

魔法少女まどか☆マギカから

━━33-4

な阪神無

━━落第騎士の英雄譚

ベタな展開が多い。だが、それがいい。

基本的な俺TUEEEE系の主人公だと思います(多分)。

━━






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第10話 サラシキ

はい、これでリメイク版第一章は終わりです。長かった。



 

 

 

「どうぞ~」

 

「失礼します」

 

 試合終了直後。極度の疲労でヘトヘトになった俺は、生徒会室にお邪魔する。

 本音の向かいのソファへ俺は腰をかけた。

 

「はぁ……疲れた……」

 

「おっつ〜、やがみん!」

 

「お疲れ様です、城谷上くん」

 

「お疲れ、太一くん」

 

 目の前にいる本音にダボダボの袖を上に挙げて返事をされ、虚さんには紅茶を用意してもらい、楯無さんには扇子で『悠々閑々』と書かれている。やっぱり、それってどんな構造してやがる。

 

「いやぁ、すごかったよ〜。やがみん、カッコよかったー」

 

「お、おう……さんきゅー本音」

 

「本当、本当。一週間であの代表候補生に勝てるとは、驚きよ」

 

「あはは……あれは専用機の力のおかげですよ。訓練機ならメッタメタでした」

 

 特にあのビットに助けられた気がする。そしてセシリアの驚きっぷり、企業には何か隠し事があるのだろうか。盗作じゃなければいいのだが。

 

「確かに……。それにあの子、近接戦闘はまるでダメだったわね。あと、最初の試合の決めゼリフ、あれは一体何かしら?」

 

 疑問に思ったらしく首を傾げて楯無さんが訊く。これに少しでも可愛いと感じてしまった自分が憎い。

 

「あー、あれ〝落第騎士の英雄譚〟っていう小説兼アニメの決めゼリフですよ。一度、やってみたかったんで……」

 

 今思うと若干どころか、黒歴史である。「僕の最弱(さいきょう)を以て、君の最強を打ち破る! 一刀修羅!」なんて試合中に叫んだから尚更である。後で新聞やポスターとかに載らないことを祈ろう。

 

「それより、楯無さん。これで特訓はおしまいですかね?」

 

「うーん、太一くんの意見は?」

 

「できれば続けて指導してもらいたいです」

 

 仮にもこの学園のISはスポーツ扱いであり、俺としてはゲーム感覚である。やり込み要素が高いと思えば教官も必然的に欲しくなる。特に学園最強のお姉さんのご指導は美味しいです。

 

「勿論よ。いつでも――」

 

「生徒会の仕事ありますからね?」

 

 普段の楯無さんを見てきているからか、虚さんは楯無さんに忠告する。表情こそ怒ってはいないが、言動的にはかなり怒っているだろう。……楯無さん、そこまで怠け者でしたか。

 

「わ、わかってるわよ……。んー、いつ出来るかわからないから、はい連絡先」

 

「は、はい」

 

 ついに楯無さんとも連絡先を交換してテンションは上がり、俺は脳内ガッツポーズする。

 楯無さんのSNSでは、JK(女子高生)らしくアイコンが加工された自撮りである。流行りに乗ったのだろうか。……にしても、可愛いぞ。角度も絶妙なバランスで美少女の極みと言ったところ。

 ちなみに俺はとあるエロゲのロリ美少女キャラをアイコンに設定している。人によっては引かれそうだが、大丈夫だろう。

 

 

 場所は変わって寮部屋。ノロノロと足を滑らせて帰ってきた。

 

「ただぁ〜いま〜……」

 

 まるで俺がのほほん(布仏 本音)化したかのように間延びした声になった。

 

「お、おかえり……」

 

 部屋で出迎えてくれたのは、この話し方の通り更識簪である。

 あたかもこちらを待ち構えていたのかように簪は棒立ちしていた。

 

「約束通り、俺は勝ったぜ」

 

 右手で「グッジョブ」とサインを送る。簪からは頷く程度の反応が返ってきた。

 

「……姉さんと会う約束、だよね?」

 

 やはり、簪は楯無さんと会うのは乗り気ではないようだ。

 しかし、姉妹の和解エンド(ハッピーエンド)に近づくにはこれしか方法がない。すまねぇ簪、頑張ってくれ。

 

「既に連絡はしてある。人気(ひとけ)のない屋上に集合ってね」

 

「……う、うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 もう日が沈みそうなくらい赤みがかった夕方の屋上。太一と簪がここに来るまで楯無は黄昏ていた。

 

 ずっと妹を気遣っていた姉。

 

 ずっと姉を恐れていた妹。

 

 その二人が今、数年ぶりに話すこととなる。

 

「……姉さん」

 

「あ、簪ちゃん……」

 

 二人は向き合ったまま黙り込む。

 そんな中、この計画に至らせた張本人である太一は、少し距離を置いた場所で見守っていた。スマホのとあるアプリを表示させたまま。

 

「あの、ええと……簪ちゃん。私のことやっぱり……き、嫌い……なの?」

 

 始めに問いかけたのは、生徒会長の威厳が薄れた状態の楯無である。

 この質問は太一が提案した内容だ。彼曰く、「単刀直入に行きましょう」である。とてもゴリ押し主義らしい考えだった。

 

「……嫌い――」

 

「……っ!」

 

「――じゃない」

 

「……ふぅ……」

 

 一瞬の紛らわしい間のせいで、楯無はショックを受けかける。心臓が止まりかけた、というのが正しい例えかもしれない。

 

「……姉さんは、どうなの?」

 

 今度は簪が問い出す。楯無が「もちろん」という刹那、太一がチャンスと感じてふたりのそばに駆け寄る。

 すぐさま太一は二人に向かってスマホをかざし、再生ボタンをタップする。

 

 

『妹さん、好きなんですよね? 宇宙一』

 

『ええ、大好き――って太一くん? それはちょっと盛りすぎじゃないかしら』

 

『でも否定する気はないでしょう?』

 

『……ま、まあね。あはは』

 

 

 一瞬の静寂。楯無さんは顔を真っ赤にして太一を睨みつけた。

 

「ち、ちょっと太一くん! それは聞いてないわよ!? 今すぐそれを貸しなさい!」

 

 ポカンとする簪の前で、楯無は太一のスマホをとりあげようと彼の制服に掴みかかる。これだけは渡すまいと太一は逃げ惑った。

 

(……姉さんが、大好きって……私を? なんで……?)

 

 簪は困惑して周りに起こっている状況すら目に入らなくなる。

 

「辞めてください楯無さん! これだけは渡せません!」

 

「ダメよ! 今すぐ渡すか、その音声データを消しなさい! 早急に、即刻に、早く!」

 

「ヒェ〜!」

 

「……」

 

 少し簪の気持ちが落ち着いたところで、太一と楯無が追いかけっこしていることを彼女は確認した。

 

――羨ましい。

 

 なぜか、そんな言葉を簪は思い浮かべる。

 

――妬いているのか。

 

 簪の顔が火照ったことに気づいた途端、ブンブンと頭を横に振って彼女は否定する。

 太一という存在が、次第に特別なものと思うようになることは、まだ簪は知らない。

 

(あれが、姉さん……)

 

 あのような姉の姿を簪は久しぶりに見ている。本当に幼い頃の話だが、簪はうっすらと記憶に残っていた。

 

「くそう! 盗られた!」

 

「ふっふっふ、おねーさんに本気を出させたら、このくらい朝飯よ」

 

「恐れ入りました」

 

 長いようで短い奮闘だったが、楯無の力に太一は勝てなかったようだ。

 

「ふふ……」

 

 ふと、簪の笑みがこぼれる。この笑いがどんな感情からきたのか、彼女にはわからない。

 そんなことは置いといて、簪は楯無に近づき声をかける。

 

「……姉さん」

 

「……あ、なにかしら?」

 

「本当に、私のこと……好きなの?」

 

「……もう言い逃れできないわね。ええ、事実よ。私はあなたが大好き。なんてったって自慢の妹よ。当たり前じゃない」

 

 今の楯無の言葉は嘘ではない。簪にもそれは理解できたことであり、太一にとっては疑いすらない。

 

「それじゃあ、訊きたいんだけど、簪ちゃんは私が()()()ISを組み上げたと思ってる?」

 

「……うん」

 

「残念だけど、それは誤情報よ。私がいつ『一人で』なんて言ったのかしら? あの時は、専用機も七割型完成してたし、知り合いにも手伝ってもらったのよ?」

 

「……え?」

 

 簪は今まで勘違いをしていたこと気づく。

 

 姉が完全無欠と思い込んで勝手に壁を作り、姉を恐れていた。

 どこか馬鹿みたいに簪は思って、また笑いそうになる。

 

 姉さんには、追いつけない。

 

 ――その背中を追わなくなったのは。

 

 ――その顔を見つめられなくなったのは。

 

 ――同じ名前を背負うのを、苦痛と感じたのは。

 

 けれど、そんなものは全て、どこかに飛んでいってしまった。

 

「――ごめんなさい……」

 

 簪のその言葉は無意識に出ていた。

 勝手なイメージで壁を作り、姉を避け続けてきた。

 今思うとそれは、簪にとってとても恥ずかしいものだった。

 

「いいのよ簪ちゃん。頭を下げるのは私の方なんだから、あなたは悪くない」

 

「……で、でも――」

 

 それでも悪いのは自分と思っている簪に、楯無は頭を撫でる。何も言わず、ただただ撫でる。

 

「お姉ちゃん……おねえちゃん……」

 

 撫でられた勢いで簪は今まで抑えてきた涙が溢れ出す。それを眺めていた太一は、軽くもらい泣きしそうになった。

 

(……にしても、俺って空気だなぁ)

 

 また二人から離れた場所で眺めているせいか、空気と化している城谷上 太一。

 ついには姉妹同士で抱き合う。

 完全に夕日が見えなくなるまで、この状態は続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから一時間後、更識姉妹のわだかまりがほぼ解けて俺は気が楽になる。

 シャワーを浴びたとはいえど、疲労感は全く解決していない。

 速攻で寝たいのだが、俺は腹を空かせては眠れないタイプだ。

 というわけで、最低でも夕食は摂ろうと食堂にいる。もちろん、本音と簪、そして楯無さんもご一緒だ。

 

「うんめぇ〜〜!!」

 

 今回はハンバーグ定食を選択、これはファミレスにある料理と同等かそれ以上の美味さを誇るだろう。

 

「このかき揚げうどん、とても美味しいわね」

 

「……うん」

 

 姉妹揃ってかき揚げうどんを選択してたようだ。楯無さんも気が楽になって、妹である簪と仲良さげに見せたかったのかもしれない。

 

「それにしても、ここ一年生食堂ですけど、大丈夫なんですか?」

 

「いいのよ、生徒会長だから」

 

 生徒会長の特権強すぎませんかね。もし俺が生徒会長になったら、生徒の制服を全て競泳水着に変えるとかダメですかね。いや、無理だわ。

 

(あぁ……これだよ、こんな感じ)

 

 俺はこうして仲良く過ごせている光景を求めていた。

 自分の知ってる友達で、その友達同士で問題を抱えている状態が、俺は好きじゃない。かなり私的な感情であるが、何も解決しないよりよっぽどマシだと俺は思っている。

 今回の一件で、何もしなかった場合より必ず良かった点はあるだろう。

 もし何もしていなければ、俺はこの先もこの姉妹の関係に悩まされ、簪は姉を避けたままIS学園を卒業。そして、楯無さんはいつまでも妹に気を遣いっぱなしであっただろう。そんな疎遠ルート、俺は御免だ。

 

「……もぐもぐ」

 

 存在を忘れかけたが、本音はひたすら口に食べ物を放り込んでいる。既に料理は食べ終わり、デザートは三個目に突入していた。

 癒される小動物美少女系の布仏 本音は、どんなときでも俺たちの場を和ませる最高の友達といえよう。おうふ、その笑顔、百二十円です。

 

「……んー、わにはようふぁな((なにかようかな))?」

 

 俺の無意識に誰かを眺める癖で本音にバレた。もし虚さんがここにいたら……

 

「こら本音。食事をしながら喋るのは辞めなさいとあれほど……」

 

……ってなるだろう、ってかなったわ。マジで虚さん居た。

 

 生徒会長というか生徒会役員全てに何かしらの特権がありそうで怖い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 時は進んで夜になる。部屋では本音が熟睡中、簪はアニメ鑑賞中だ。

 

 どんなアニメかというと、〝お姉ちゃんが来た〟である。このアニメは主人公の義理の姉が超ブラコンである日常系だ。まるで義理の姉が『楯無さん』を指しているような気がするが気のせいだろう。

 

 一度見たアニメということや疲れていることなどがあり、俺は鑑賞会を遠慮したのだ。

 というわけで、今はベッドで寝ながらスマホを弄っている。

 弄っている、というかある人と連絡を取っているのだが。

 

 「すいません、今いいですか?」

 

 ある人とは楯無さんのことで、SNSでやり取りをしている。

 

 『どうしたの?』

 

 「前から気になってたんですけど、更識家について何となく、知りたくて……」

 

 興味本位で俺はメッセージを送る。

 更識家はその名の通り、かなり有名である。その中の二人に、俺は関わっているのだから、色々と知りたいことがあるのだ。

 

 『そうねぇ、今からプライベートチャネルを繋げるわ』

 

 いやそこまでしなくても、と送ろうとしたが手遅れだった。

 

『今日のこともあるし、太一くんには話してあげようかしら』

 

「は、はい」

 

 プライベートチャネルなので声を出さなくていい。しかし、許可なしにISを利用してはいけなかったはず。……生徒会長権限ってやつですね。

 

『ただし、このことは機密事項よ。あなた、口は軽い方?』

 

「バラしたらどうなります?」

 

 なんだか訊いてはいけない気がしたが、恐る恐る質問を返してみた。

 すると、SNSから楯無さんの自撮り画像が送られてきた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 その画像の中では、扇子を開いて【処刑】と書かれてある。冗談なのか本当なのか分からないため、身体がブルブルと震えた。

 

「はい、この胸に誓って口外しません」

 

『よろしい。ええとね、平たく言うと、私は更識家党首なの。工作を実行している暗部に対する対暗部用暗部なのよ』

 

 ちょっとなに言ってるか分からなかった。とりあえず俺が言えることは、

 

「……そういうことでしたか。へぇー、重大なことなこと聞いてしまったな……」

 

『わかった? じゃあ、今日はこれでおしまい。ゆっくり休んでね、太一くん♪』

 

 俺は「うぃっす」と軽く挨拶してプライベートチャンネルを解除する。

 

 スマホの電源も切り、明日に備えて就寝しようとした。しかし、もう目が覚めてしまい眠れなくなっていた。

 寝る前にスマホを長時間弄っているので、こうなるのは日常茶飯事である。

 結局、簪と共にアニメを鑑賞することにした。

 とりあえず、そのアニメについて語ろうと俺は話しかけてみる。

 

「ねえ、更識さ――」

 

「簪」

 

 名字で呼んだ途端、簪という名前が聞こえた。

 

「え?」

 

「……簪でいい」

 

「? よくわかんねぇけど、わかった。簪、これでいいか?」

 

「……うん」

 

 今、簪はニッコリと微笑んでいるのだろう。さすがにそれだけはわかるほど、嬉しそうな返事だった。

 

「それじゃ、俺も太一でいいよ。改めてよろしく」

 

「うん。よろしく太一」

 

 薄暗い中、ベッドの上で俺と簪は握手する。

 この状況だけ見れば、とんでもないアニメ的なイベントである。しかし、慣れてくるとこれが普通の日常と思えてくるのだった。慣れは怖い。

 そして、一時間後には就寝解散となった。




これにてリメイク版第一章は終了となります。
最後に一つ、11話が残っていますが、基本的には旧8話と8.5話を混ぜて、リメイク版と内容を合わせただけになります。

変更点は、

・序盤は、旧7話と同じ内容。

――旧7話の名残

・後半はオリジナル

――旧7話後半よりまともなシリアスです(震え声)

・食堂シーン追加

――後日談(一時間)

・夜の話を追加

――ここにて、旧7話通り、楯無の機密情報を知り、太一が簪と呼べるようになる。これで、第二章へと繋がるでしょう。



━━楯無さん、自撮り

見てみたい、なら、作ればいい(ゲス顔)

━━ゴリ押し主義の太一

それはそれでロマンありますね(白目)

━━



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第二章
第11話 ツイラク


リメイク版第二章の第11話です。


 

 

 

 

 

 

 

「では、一年一組代表は織斑一夏くんに決定です。あ、『一』繋がりでいい感じですね!」

 

 翌日のSHR(ショートホームルーム)。一夏と俺以外の皆が大いに盛り上がっている。俺も一応『一』が付く名前なんですがそれは……。

 

「先生、質問です」

 

「はい、織斑くん」

 

「昨日、太一が俺との試合を棄権したのはわかっていますが……なぜ、それで俺になるんですか? セシリアか太一が代表になるはずじゃ……」

 

「それは――」

 

「――俺とセシリアが辞退したからだ」

 

 山田先生が説明しようとしたところで、俺が勝手に割り込む。少々しょんぼりしてしまった山田先生に、罪悪感を俺は感じていた。

 

「え、なんでだ?」

 

「理由としては俺の場合、どう考えてもお前の方が目立つ立場として向いているし、戦闘力向上のためにも今後の行事に出るべきだからな……」

 

 ぶっちゃけると、ただセシリアを倒すために試合に参加しただけで、クラス代表になる気はさらさら無かった。

 もしクラス長になっていたら、意地でもクラス対抗戦を棄権するつもりだっただろう。

 

「セシリアの場合――」

 

 とまで話したところで、今度はセシリアが横入りしてくる。

 

「――勝負は一夏さんの負けでしたが、それは当然のこと。なにせわたくしセシリア・オルコットが相手だったのですから。それは仕方のな――」

 

「俺には負けたがな。へっ」( ・´ー・`)

 

 俺はドヤ顔でセシリアに向かって自慢する。まぁ、相棒である獰飆に助けられたってのもあるが。

 

「……それは、まぐれでしたのよ。おほほほほ」

 

 セシリアは引きつった笑い方で誤魔化していた。しかも、貴族らしい高笑いがわざとらしい。

 

「まぁ……それで大人げなく、怒ったことを反省しまして、太一さんが辞退なさった後、わたくしも辞退して一夏さんに譲ることにしましたわ。後は、太一さんが仰る通りです」

 

 やったね一夏、訓練量が増えるよ! と、心の中で歓喜の声を上げる。

 その言葉でクラス中が騒ぐ。全部一夏に対しての祝福ってところだろう。

 一夏は腑に落ちない顔だったが。

 

「わたくしのように優秀かつエレガントな人間がIS操縦を教えて差し上げれば、それはもうみるみるうちに成長を遂――」

 

 バンっ(机を叩く音)。急にそんな音が鳴る。振動した場所から確認するに、間違いなく箒だろう。

 

「生憎だが、一夏の教官は足りている。私が、()()頼まれたからな」

 

 妙に『直接』だけ強調した言い方になる箒。一夏は頼んでないと言っていたが、これは箒側の嘘だろうか。いや、嘘だろう。

 

「あら? あなたはISランクCの篠ノ之さん。Aのわたくしに何か御用かしら?」

 

「ランクなんて関係ない! 頼まれたのは私だ。一夏がどうしてもと懇願したからだ!」

 

 一夏はしてないような気がする。ほら、本人もあからさまに「言ってねぇよ!」って顔になってる。

 

「ですが――」

 

「座れ、馬鹿ども」

 

 セシリアと箒を叩き黙らせる織斑先生。この学園限定で許される体罰、マジパネェっすよ、先生。

 

 ――パシン。

 

「その得意げな顔はなんだ? やめろ」

 

 理不尽だが一夏も叩かれる。おそらく、しょうもないギャグでも考えついたんだろう。

 

「お前たちのランクなんてゴミで、私からすれば平等にひよっこだ。まだ殻も破れていない段階で優劣をつけるな」

 

 言い方は若干酷いが仰る通りでごさいます。ブリュンヒルデ様。

 こうして、一夏がクラス代表と決定したのだった。めでたしめでたし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 平凡な授業を終えてからの放課後、俺はある人と連絡して待ち合わせをしていた。

 ある人とは開発者の一人で梶平 宗也さんだ。SNSで連絡しているとアニメ好きでミリタリー好きという素晴らしい共通点を確認した。

 そんなこんなで、専用機の報告やら告知も兼ねて、秋葉原へ行こうという話になったのである。

 

(秋葉か……一年ぶりだな)

 

 駅前で待ち合わせをして梶平さんを待つ。秋葉原には中学の修学旅行以来である。余ったお小遣いでアニメグッズを大量買いしたことが懐かしく思う。

 先に言うが、決してデートではない。

 

「よ! 城谷上くん」

 

「あ、どうもです、梶平さん」

 

 俺の服装は普段着の一つで無地のパーカーとジーパンを履いている。ダサいとか言わない。

 もしもの為にISスーツも着ているため事件があっても対処できるだろう。ただし、クソ暑い。

 一方、梶平さんも普段着らしい。男同士で遊びに行くみたいなものだから、特に気にすることもないだろう。

 

 それからというものの、電車から秋葉へ行き、アニメイトやメロンブックスやらミリタリーショップなどに寄って多くのお宝を買った。

 買ったのは基本、ゲームソフトで簪と本音もできるようなパーティゲームだ。フィギュアに関しては興味がない。それは冗談だが、部屋に置けると思うだろうか。置けないだろう、女子がいる寮に。

 そして、掘り出しものといえば、ガールズ&パンツァーのプラモデル(黒森峰Tiger)だ。暇つぶしには持ってこいの代物である。

 

 時刻は夕方、適当にファストフードを食べた後、専用機の件で本社である【アドバンス・サンダー社】へ行くことになった。

 本社に行くのは初めてなので緊張する。

 

「ここが本社だ」

 

 さすがは日本の大企業。このまま就職してもいいくらいだ。いや、俺は働いたら負けだと思っている。

 

「おぉ……」

 

「とりあえず、ついてきてくれ。少し案内するよ」

 

 梶平さんに色々と案内された。道に迷うほどわけわからん広さだ。

 案内された後は、専用機について用があるため応接室へやってきた。

 

「やぁ、また会ったね。城谷上くん」

 

 この方は前回もお会いした開発主任の鍵山さんだ。

 

「どうもです。鍵山さん」

 

「早速だが本題に移るよ。君の専用機にビット兵器があっただろう? あれは私たちが作ったものではない」

 

「え、じゃあ、一体誰が……」

 

「……ウサミミの女性だ」

 

あっ…(察し) 。これはあの天災の仕業だろう。

 

「あー、篠ノ之束さんですか……」

 

「そういうことだ。いきなりセキュリティを解除して侵入され、しまいにゃ獰飆を奪われるという始末だ。だから織斑さんに連絡をしておいて、一日で返されたのだが……改造を施されていたようでな」

 

「……それは大変でしたねぇ」

 

 あの人は何がしたいのだろうか。改造とか言ってたけど、まさか――

 

「――まさか、あのビット兵器が……」

 

「そのまさかさ」

 

 デスヨネー、知ってた。本当に皆様、申し訳ありません。

 

「それから、イギリスからも苦情やらなんやらで、大変だったよ……」

 

「う……本当にすいませんでした」

 

「君が謝ることはない。……で何が変わったかと言えば、スラスターにエネルギー吸収シールドビットが備わったことだな。あれは篠ノ之博士が搭載したやつらしい。ISのシールドエネルギーと引き換えにエネルギー系ならほとんど吸収して溜め込むという防御兵器だそうだ。ある程度溜まったら強力な兵器になる……とデータに書いてあった」

 

「は、はぁ……」

 

 吸収=無効化なのだから白式の零落白夜に似てる気がする。しかし、単一仕様能力とは別物らしい。相手のシールドバリアを無効化できるわけではないからだろう。

 

 ちなみに零落白夜とは一夏の専用機の単一仕様能力らしい。この前、試合の動画で見させてもらった。かなり接戦でしたよ、まじで。

 

 拡張領域もスラスターにビットがあるためか大して使ってないとのことらしい。なんとまぁ、素晴らしくよく分からない兵器ですこと。

 

「とまぁ、これだけ覚えておいてくれ。次は新しい装備の追加と……あとはのんびり見学するといい」

 

「了解しました」

 

その後は新しい装備《雷鉄(パイルバンカー)》を量子変換し、本社を見学して寮に戻った。

 ちなみにあの時はエネルギー吸収シールドビットに名前がなかったため、急遽《雷艦》ということになった。基本的に会社にサンダーが付くことから。武装名も雷が付くらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

「それではこれよりISによる飛行訓練と解説を始める。織斑、オルコット、城谷上、前に出ろ」

 

 IS学園のグラウンド。織斑一夏がクラス代表に決まって、しばらく日がたった頃、俺たちはグラウンドで授業を受けていた。

 

「よし、ISを展開しろ」

 

「はい」

 

「了解です」

 

  織斑先生に言われ、俺は獰飆を、セシリアはブルー・ティアーズを展開する。セシリアより展開は遅いが三秒くらいだ。

 

「オルコットは文句無しだが、城谷上は一秒で展開するようにしろ」

 

「はい……」

 

 とっても厳しいお言葉感謝致します。これでも最初よりかは三秒早くなったんだがな。

 

「で、織斑、さっさと展開しろ」

 

「は、はい……」

 

  一夏だけは未だに展開できずにいたが、左手のガントレットに右手を添えてなんとか展開した。最初よりはマシになっただろうよ、きっと。

 

「熟練したIS操縦者なら一秒も掛からないぞ。だから一秒で展開できるようになれ」

 

  俺はそのつもりですよ、織斑先生。しかし、まだIS始めて二週間くらいなんで大目に見てやってくださいよ。

 

「よし、では飛べ」

 

「「「はい!」」」ビューン

 

 勢いよくスラスターを吹かせて俺とセシリアは上空150メートルまで一気に飛翔した。機動性が良過ぎるので少し手加減して飛んだが。

 

「やっと追いついた……」

 

 遅れて一夏も追いつく。

 

「一夏さん、太一さん、お上手ですわ」

 

「おう。ありがとう」

「お、おう」(俺)

 

 セシリアに褒められる一夏と俺。悪くない気分だ。

 そして俺達は、グラウンドの周りを旋回して飛行する。

 機動性特化のためセシリアより早く行けるが、まだ旋回制御が微妙である。

 そのため、敢えて彼女の後ろにペッタリとくっついて行く。ただミサイル気分を味わってるだけだが、よく考えたらセシリアの高貴なHipを見ているただの変態である。

 

「あら、太一さん。どうしてわたくしにくっついて来るのです? あなたはスペック的に……まさか! わたくしの華麗な尻をみたいからですの?!」

 

「違うわ! まだ制御自体は不慣れだから敢えて後ろについて行ってるんだよ。あの試合のときはかなり適当な旋回だったからな」

 

「なんでお前らそんなに速いんだ? イメージとか必要なのか?」

 

「一夏さん。所詮はイメージですわ。自分がしやすい方法を模索するのが賢明でしてよ」

 

「俺は楯無さんの特訓で限界近くまで出せたがその分制御が困難で壁に激突(壁ドン)しちまったからな」

 

 生徒会長が壁の件を和らげてくれたから感謝してる。全く、いい教官を持ったこと。

 

「壁ドンって……そこまで出せる方がすげえと思うぞ。だが、なんで飛んでいるのか気にならないのか? こっちは空を飛んでいること自体あやふやだというのに」

 

「説明しても構いませんが長いですわよ? 反重力力翼と流動波干渉の話になりますもの」

 

 俺自身もそれには大して理解していない。

 しかし、心で飛んでると感じていれば関係ないさ……うぇ、自分で言ってて吐きそうだ。

 

「いやいい。今は遠慮しとく」

 

「でしたら放課後にでも教えて差し上げますわよ?」

 

「おう、そうさせてもら――」

 

『一夏! いつまでそんなところにいる! 早く降りて来い!』

 

 急に大声が聞こえて、ハイパーセンサーでズームして箒の方を見ると、山田先生のインカムを箒が奪って叫んでいた。慌てている山田先生が見える。

 

――パシンっ。

 

「教師のものを奪うとはいい度胸だな、篠ノ之? 後で反省文だな」

 

 反省文、お疲れ様です。自業自得なので弁護とかそういった類いはないですね。

 

「三人とも急降下と完全停止をやって見せろ。目標は地上から10センチ以下だ」

 

 10センチはまだ無理なんですが、ヤケクソでやるか。精精、二メートルが限界だろう。

 

「了解です。ではお先に」ヒュー

 

 そう言って急降下をし始めたセシリアは地表すれすれのところで機体を止め地面に着地する。さすが代表候補生ってとこだろう。

 

「次は俺だ」

 

「おう」

 

 元々機動性が良いため上手く制御できずに急降下する。一瞬で地表まで近づいてしまう。ヤケクソで着地しようと最近新しく追加された足の裏の《雷鉄》でズボッって感じに地面に突き刺した。

 

「城谷上……地面にパイルバンカー刺して誤魔化してどうする。減速や制御について考えておくことだな」

 

「は、はい」

 

 誤魔化してもやはりバレるものだな。ふと上を見ると一夏が物凄い速さで急降下している。上手く制御ができてないみたいだが――

 

 ドオオオオン!!!

 

 なんと一夏が地面に墜落して煙が舞い散る。風で煙が消えた後、一夏は地面にクレーターを作りグデーンとしていた。Anotherなら死んでた。

 

「馬鹿者。誰が墜落してグラウンドにクレーターを作れと言った。後で直しておけ」

 

「……すいません」

 

「情けないぞ一夏。昨日私が教えただろう」

 

「大丈夫ですか? 一夏さんお怪我はなくて?」

 

「ISを装備していて怪我などないだろう」

 

「あら? 篠ノ之さん。他人を気遣うのは普通ですのよ?」

 

 実際お前は一夏にしか気遣わないだろ、と心の中で突っ込んでおく。

 

「お前が言うか、この猫被りめ」

 

「鬼被りよりはマシですわ」

 

 少々低レベルな争いになってしまっている。

 

「馬鹿者ども邪魔だ端っこでやっていろ」

 

 織斑先生の威圧でてくてくと戻る二人。そして、本当に端っこで言い合いを数秒だけ続けていた。

 

「織斑、武装展開ぐらいはできるようになっただろ。実践してみろ」

 

「はぁ」

 

「教師にはハイ・イイエで答えろ」

 

「はいっ」

 

「ではとっととはじめろ」

 

 慌てて一夏は実践する。白式の手に光の粒子が集まり、恰好いい【雪片弐型】が展開された。

 

「遅い、0.5秒台で展開できるようになれ。では城谷上、何でもいいから武装を二つ以上展開しろ」

 

 流石に0.5秒は無理だったが、《雷焱》は一秒、バルカン砲は二秒、榴弾砲も二秒となった。

 

「お前も同様0.5秒で出せるようにしろ。次はオルコットだ」

 

 ヒエ〜厳しいっすね。

 

「はい」

 

 そう言われたセシリアは手を真横に掲げる。直後に光が弾け一秒掛からずに『スターライトmrkⅢ』が展開された。

 

「さすがだなオルコット、だがそのポーズはやめろ。理由がわかる奴はいるか?」

 

「はい、武器を横に向けるのは敵に隙を見せると同じです」

 

 例えば、戦争中に歩兵がアサルトライフルを横に向けて構えるだろうか?死亡フラグ全開である。

 

「ですが! これはわたくしがイメージをまとめるのに必要な――」

 

「なおせと言っている」

 

「は、はいそうですわね……」

 

「そういうことだ。次は近接武器を出せ」

 

「えっ、あ、はい」

 

 近接武器に関しては俺よりも遅かった。

 

「まだか?」

 

「もう少しです! ああもう! 『インターセプター』!」

 

 結局、声に出すという初心者のやり方となってしまった。しっかりしてよ代表候補生さん。でも声に出した方がカッコイイので個人的には推奨したい展開方法である。

 

「何秒かかっている。お前は、実戦でも相手に待ってもらうつもりなのか?」

 

「じ、実戦では格闘の間合いになんて入らせません! ですから、問題ありませんわ!」

 

「ほう? どこかの対戦で()()も接近戦を持ち込まれた筈だが?」

 

「い、いや、その、あれは……」

 

『あなた達のせいですわよ!』

 

 プライベートチャネルで一夏と俺に向かって言われた。知らんがな。

 

『普通の銃火器でお前に当たるはずないだろ』

 

『……責任を取って頂きますわ!』

 

 意味深だし、何の責任だよ。

 このとき一夏は無反応だったが、この機能を余り理解できてないだけだと推測した。

 

「時間だな。今日の授業はここまでだ。織斑は言われた通りグラウンドのクレーターを埋めとけ。城谷上は小さな穴を埋めるだけでいい」

 

 パイルバンカーのお陰で大したことない穴で良かった。

 

「太一、悪いが手伝ってくれないか?」

 

 直ぐに小さい穴は終わったが流石にあのクレーターは面倒だ。

 

「だが断る。トイレしたいからとっとと戻るわ。残念だな。ハハハ!」スタタタタ

 

 すたこらサッサと更衣室に戻ろうと走る。一夏が何か言ってたがキコエナーイ。キコエナーイ。

 ちなみに後ろには多数の女子が集まり手伝っていた。優しいクラスメイトで良かったな一夏。それが俺だと来なかっただろうね。

 

 




本当なら同時投稿するつもりはありませんでしたが、旧第一章と合わなかったので、これだけはリメイク版第一章と同時投稿してます。

変更点は、

・リメイク版第一章と話を合わせたこと

・旧8.5話を挿入したこと

ぐらいです。

━━Anotherなら死んでた

とってもグロイアニメ。閲覧注意ですよ、これ。



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第12話 リンイン

改良した第一章と第二章の中で、一番多い8200文字。

※改良しました。2017/05/09

ということで鈴登場回です。( ゚∀゚)o彡°リンイン!リンイン!( ゚∀゚)o彡゜リンイン!リンイン!リンちゃん!リンちゃん!リンちゃん!リンちゃんなう!リンちゃんなう!リンちゃんなう!リンちゃんなう!( ゚д゚)ハッ!


 

 

 

 

 

 

 一夏がクレーターを作った日の夕食前、楯無さんとの特訓で疲れたため俺は自販機で飲み物を買っていた。

 

「ちょっとアンタ」

 

 活発系女子のような声が聞こえたので振り返ると、ボストンバッグを身につけてるツインテール美少女、凰 鈴音(ファン・リンイン)がいた。

 この子も同様、一夏に好意を抱いている女子の一人である。

 彼女は本校舎総合事務受付と書いてあるクシャクシャの紙を見せてきた。

 

「あ、鈴じゃん、久しぶりだな」

 

「あー、やっぱりアンタだったの? 二人目のIS操縦者って」

 

「……まぁな。で、受付に行きたいのか。なら案内してやるよ」

 

「あ、サンキュー」

 

「それで? 一夏に会うためだけにIS学園に来たのか?」

 

 顔をわざとらしくニヤニヤさせながらそう訊くと、

 

「ば、ばか! そんな訳ないでしょ!」

 

と頬を赤くして言ってきた。図星なのに素直じゃないね(ニッコリ)。

 

 そこそこ話して数分後。

 

「着いたぞ。じゃまたな」

 

「同じクラスだったら宜しくね」

 

「おう」

 

 一年とちょっとぶりだからか、鈴に大して変わった様子はなかった。力強さというか、気の強さは増したかも知れないが。

 

 

 

 

 

 

 

 

「というわけで! 織斑一夏くん、クラス代表おめでとう!」

 

「「「「「おめでとー!!」」」」」

 

 パンパカパーン。

 

 大量のクラッカーが発射されて、食堂に響き渡る。今は一年生食堂で【織斑一夏クラス代表就任パーティ】を開いている。

 自分は大してノリ気ではないのだが、適当に楽しむことにした。代表が自分ならこんなことにはならなかったな(確信)。

 

「おー、やがみんも参加してたの~」

 

「まぁな、ちょっと女子の声がうるさいのが困ったものだが」

 

 男なんて二人はしかいないし、周りは見渡す限り女子だ。圧倒的男子不足である。

 

「確かに、他クラスの子も来てるからね〜」

 

「あー、で、簪も来てるのか」

 

「うん、本音に……無理矢理」

 

 無理矢理連れてくるなよ、本音。

 

「えー、かんちゃんが行きたいっていったんだよ~」

 

「……い、言ってない」

 

 なんだか和むやり取りをしていると、スッと扉から楯無さんがやってきた。

 

「あっ……楯無さん」

「お姉ちゃん……」

「たっちゃんさ~ん」

 

「やぁ、太一くん、簪ちゃんに本音ちゃん。私も来たわよ」

 

 なんて屈託のない笑顔。さすが先輩、可愛いです。

 

「どうも、あれ? でも生徒会があるとかないとか……」

 

「え? う、うん何もないわよー、あはは――」

 

「お嬢様、仕事は終わってませんよ? さぁ、早く戻りましょう」

 

「あぁん待って虚ちゃん、私もパーティ参加したかったぁ〜」

 

 太一くぅ〜ん、と楯無さんは叫びながら虚先輩に連れていかれた。自業自得ですな。周りの女子も呆然としてるし。

 

「ま、まぁテンション上げていこうぜ」

 

「う、うん」

 

「ほれ一夏もテンション上げろよ」

 

「って言われてもなぁ……」

 

 一夏はあまり乗り気ではなさそうだった。

 

「はいはーい! 新聞部でーす! 話題の男性IS操縦者の二人に独占インタビューしちゃいまーす! あ、これ名刺ね。私は二年の黛薫子、新聞部の部長やってます」

 

「あ、はい」

 

 ここで突然、黛先輩と呼ばれるメガネ女子が現れた。もちろん、名刺の対象は一夏である。

 

「さて! まずは織斑君! クラス代表になった感想をどうぞ!」

 

 と、黛先輩はポケットからボイスレコーダーを取り出してきた。録音とかあまり好きではないな。

 

「まあ、何と言うか、頑張ります」

 

 一夏はなんとも微妙な感想答える。

 

「えー、もっとこうあるでしょ? 『俺に触るとヤケドするぜ!』的なの」

 

「えらく前時代ですね」

 

 それな。

 

「じゃあ……自分、不器用ですから」

 

「うわ、前時代的。まぁいいや捏造すればいいし」

 

 おいおい捏造すんなよ、と思ってしまうが一体どんな捏造をするのか気になってしまうものである。

 一夏のことだからめちゃくちゃキザなセリフにされそうだ。例えば、「クラス長になれて、オラわくわくすっぞ」とか。キザなのか、これ。

 

「――じゃあ、次は城谷上くん」

 

「……え、あ、はい」

 

 ボーッと考えている時に呼ばれたため、少し反応が遅れてしまった。

 

「織斑くんとはどんな関係?」

 

 どんな関係か、話長いし、ややこしくなるから適当に同じこと言うか。

 

「中学からの付き合いってことに……」

 

「なるほど恋人関係っと……」

 

「な訳あるか!」

 

「違いますよ!」

 

 思わず、俺と一夏で突っ込む。下手に誤解する冗談辞めてくれよ。腐女子が湧いちゃう。あ……湧いた。

 

「冗談よ冗談。じゃあ最後に写真撮るから二人とも並んでー」

 

 俺と一夏で写真を取ろうとする。写真を撮られるのは苦手だ。一夏との身長差と顔も気になる。

 

「じゃ、撮るわよー。35×51÷24は?」

 

「「えーと2?(知りません)」」

 

「残念。74・375でした」

 

 パシャ。

 

「あれれー……?」

 

 俺と一夏とツーショットの写真のはずだったが、なぜか全員が入った写真になっている。

 それにしても俺の顔が気に入らない。そう思うとやはりイケメンの一夏が羨ましい。ちなみに本音と地味にだが簪もいる。

 きっと本音が無理矢理入れたな。本音は無邪気な笑顔ですこと。

 

「まぁ、いいか」

 

 それからパーティは10時半まで続いたらしいが、その前に俺と本音、簪は部屋に戻った。

 

「今日は楽しかったね〜。お菓子いっぱい食えたし!」

 

「お菓子食ったことだけだろ、楽しかったことは」

 

「そ、そんなことないよ〜」

 

「……図星でしょう」

 

「かんちゃんまで〜……」

 

「そんなことよりアニメみようず」

 

「そうだね……何見るの?」

 

「〝WORKING(ワーキング)!〟にしようか。北海道が舞台のアルバイトラブコメってやつだな」

 

「へぇー、面白そうだね」

 

「早く見よ〜」

 

 いつの間にか二人とも深夜アニメに染まっていた。同志が増えるのは大歓迎なので問題はない。

 

 どうしてこうなったかといえば、簪は姉との和解以来、彼女の専用機を組み上げている時間が減っていた。そのため、よく俺のオススメがみたいと言ってくるのだ。

 本音もそれに便乗してアニメ(特に日常系)が気に入ってしまったようで一緒にみている。

 

 ちなみに、正確にはアニメは170作、見終わっただけで知ってる(又は途中視聴)アニメは350作超えているほどのアニオタみたいなものだ。

 この程度ではアニオタではない、と思うかもしれない。しかし、周りからオタクと言われるのだからどうだっていいだろう。

 

 その後はアニメを一期半分見終わって寝た。

 特に気にしてなかったが、本音がまたお菓子食ってたことに驚いた。君の胃袋はブラックホールのピンクボール並だろうか。それでいて全く体型が変わらないのは不思議なものである。

 

 

 

 

 

 

 

 

「織斑くんに城谷上くん、おはよー。ねえ、転校生の噂聞いた?」

 

 次の日の朝、一人のクラスメイトに挨拶をされる。俺にはついでに感覚で言われたと思うが、言われないよりかはマシである。

 

「あぁ転校生? それなら昨日会ったぞ」

 

「えっ!? マジ!?」

 

「ああ、鈴のことだな」

 

「え? 鈴ってあの鈴か、太一」

 

 心当たりアリアリな一夏が反応する。

 

「そうだぜ、凰鈴音のことだ」

 

「へー、あの鈴が……」

 

「代表候補生らしいしな。後、一夏、次のクラス対抗戦は絶対優勝しろよ」

 

「そうだぞ一夏、男なら勝ってこい」

 

「一夏さん、わたくしの分も受け継いで勝って下さいな」

 

「まぁやれるだけ頑張るさ」

 

 理由の一つとしては、優勝景品が一クラスに与えられる半年間デザートフリーパスであるからだ。

 甘いもの好きにはたまらない景品(特に本音や本音とか本音など)だろう。

 しかし、生憎、俺は甘いものは好きであり苦手だ。甘すぎると口に入らなくなるからな。だから、大して要らないけども、女子の目がキラキラしてるので一夏に言っておく。

 

「頑張ってね、織斑くん!」

 

「フリーパスのためにも!」

 

「まあ、専用機を持っているのは一組と四組だけですし、特に問題ないと思います――」

 

「その情報、古いよ」

 

 いつの間にか、扉の前に鈴がいた。なんだかカッコつけており、声質も若干違う。うん、似合わん。

 

「二組も専用機持ちが代表になったの。だからそう簡単に優勝はできないから」

 

「おお、言われた通りの鈴か、久しぶり」

 

「久しぶり……って言われた通り? ちょっと太一、アンタ一夏に教えたでしょう。あーあ、驚かすつもりだったのに……」

 

「だってなんも口止めとかされてませんし?」

 

「……まぁ、いいわ。それより、今日は宣戦布告に来たのよ」

 

 素の鈴に一瞬だけ戻ったが、またカッコつけた鈴が復活した。

 

「なに格好つけてんだ? あんまり似合わないぞ」

 

「んなっ…! なんてこと言うのよ、アンタは!」

 

 結局、鈴はまた素に戻った。

 

「あ、戻った」

 

「あ、って何よ! あ、って!」

 

「そりゃあ、いつもの鈴に戻ったしな」

 

「それな」

 

 そうこう話していると、鈴の背中から危険信号を察知した気がしたので席に座った。

 

「おい」

 

「なによ! ……っ!?」

 

 鈴が後ろを振り返ると、威圧的で凄まじい鬼教師が立ち止まっていた。コワーイ(棒)。

 

「ち、千冬さん……」

 

「学校では、織斑先生と呼べ。それとどけ、入口を塞ぐな」

 

「す、すみません」

 

 そう言って逃げていくようにサササッと二組に戻っていった。さすがの鈴もこの弱り様である。まぁ、常人はあの人に反抗なんて出来っこないだろうな。

 それから、いつもの授業が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前のせいだ!」

 

「あなたのせいですわ!」

 

 昼休みになってすぐ、箒とセシリアが一夏に向かって文句を言った。

 実は午前中の授業で二人は、何故か織斑先生に出席簿アタックを食らったり山田先生に注意されたりで散々だったのだ。

 理由は分からないがこの状況となるならば、恐らく今朝の件で一夏と鈴の関係とかでも気になって授業に集中できていなかった、と推測しよう。多分あってる。多分。

 

「えぇ、なんでだよ……」

 

 一夏は全く心当たりがない、いや、あるわけないので困ったように言う。

 

「大丈夫だ。一夏は何もしてないさ」

 

「そうか、なら良かった」

 

 ふぅー、と気を落ち着かせる一夏。

 

「「――良くない!(ですわ!)」」

 

「ならなんでだよ!」

 

「そうだぞ! なんでだよ!」

 

 大きな声で二人に怒鳴られたので、俺と一夏はヤケクソに言い放つ。

 

「それは……その……」

 

「それはですね……」

 

「ほら、言ってみろ――」

 

「やがみーん、食堂行こ~」

 

 このタイミングで本音に誘われる。この子は空気が読めるのか読めないのかわからんなぁ。

 

「ま、そうだな、お前ら。食堂で飯食いながら一夏に訊けばどうだ? はよ一夏も来い。じゃお先に」

 

 そう言って俺は、本音と簪(食堂なう)のところに小走りで行ってくる。

 一夏もそれに続いて食堂に向かった。

 

「「待て!(待ってください!)」」

 

 置いてきぼりにさせまいと、残りの二人も急いで食堂へと向かった。

 

「待ってたわよ。一夏と太一」

 

「お、おう」

 

 一年生食堂。一夏が食券買う前に鈴が目の前に現れた。

 

「まあ、とりあえずそこどいてくれ。食券出せないし、普通に通行の邪魔だぞ」

 

「う、うるさいわね分かってるわよ」

 

 ちなみに鈴の手にはお盆を持っていて、そこにはラーメンが乗っている。これは美味そうだ。

 

「のびるぞ」

 

「わかってるわよ! 大体、アンタたちを待ってたんでしょうが! なんで早く来ないのよ!」

 

「知らんがな、約束してないし」

 

 と言って俺は食券を渡し一夏も並んで渡す。

 

「それにしても久しぶりだな。ちょうど一年ぶりくらいになるのか。元気にしてたか?」

 

「いや、見ればわかるだろ……」

 

 一夏の言葉に、俺は軽く突っ込んでおく。

 

「まぁね、体調なんていつも良いわ」

 

「それは何よりだな」

 

 三人で会話していると近くから、

 

「あー、ゴホンゴホン!」

 

「ンンンッ! 一夏さん? 注文の品、出来てましてよ?」

 

と、やけにわざとらしい咳払いをしてくる。

 

「そうだな、向こうの本音と簪がいるテーブルで待ってるわ」

 

 そう言って本音と簪の所へ行く。

 ちなみに自分は海老フライ定食だ。

 簪は既に食堂にいたため、先に待っていたそうだ。

 

「待たせたな(スネーク風)」

 

「太一、それ気に入ってるのね……」

 

「似てる訳ではないが気に入ってる」

 

 簪はきつねうどんを啜っていて、本音はパン系にデザートってところである。

 普段は簪はかき揚げうどんオンリーが多い。しかし、今は気分で変えたらしい。

 三人でご飯を食べていると、他四人もやって来て座った。

 

「それにしても久しぶりだな。いつ日本に来たんだ? おばさん元気か? なぜIS学園に? いつ候補生に?」

 

「質問攻めしないでよ。アンタたちこそ、なにIS使ってんのよ。ニュース聞いてビックリしたわよ」

 

 ふと横を見ると、不機嫌な顔している箒とセシリアが何か言いたそうだ。

 

「一夏、そろそろどういう関係か説明してほしいのだが!」

 

「そうですわ! 一夏さん、まさかこちらの方とつ、つつ付き合ってらっしゃるの!?」

 

 耐えられなかったのか周りに聞こえるくらいの声量で問い出した。それを耳にした女子達がこそりこそりと寄ってきてしまった。

 

「べ、べべ、別に私は付き合ってる訳じゃ……」

 

「そうだぞ。なんでそんな話になるんだ。何の変哲もない()()()幼なじみだよ」

 

「………………」

 

 デレた顔から不機嫌な顔に切り替わる鈴。なにかと余計なことを言ってしまうな、一夏は。

 

「何、睨んでるんだ?」

 

 知ってた。コイツが恋愛に超がつくほど鈍感なんだった。

 

「なんでもないわよっ!」

 

「幼なじみ……?」

 

 箒には幼なじみがいることに疑問を抱いたようで。

 

「あー、えっとだな。箒が引っ越していったのが小四の終わりだっただろ? 鈴が転校してきたのは小五の頭だよ。で、中二の終わりに帰ったから、会うのは一年ちょっとぶりだな――」

 

 俺は小二の終わりに親の都合?で故郷へ帰ったけどな。

 

「――で太一も小さい頃から過ごしてたから」

 

 あっ...(察し)。

 

「え、太一って織斑くんと幼なじみ……だったの!?」

 

 うどんを啜っていた簪が、箸を止めて驚き出した。これはまずい。

 

「あれ? やがみん、おりむーとは中学からとか言ってなかった〜?」

 

 おうふ、少しだけ面倒事になった。

 

「太一さん、説明を……」

 

「アンタ伝えてなかったの?」

 

「あの時、適当に言うからだ……」

 

「あ、口が滑った。すまん」

 

 セシリア、鈴、箒、一夏と次々に言ってくる。

 それを聞きながら、周りの女子達もガヤガヤと喋り始めた。やっぱりあの時、言うべきだったか。

 

「サーセン、話長くなるので省きました。一夏、説明求む」

 

「俺かよ……まぁ、太一は俺が幼稚園はじめの頃に北海道からお隣に引っ越してな、いつも遊んでたんだよ2人で。それから小学生で箒とも仲良くなっていたんだけど今度は小二の終わりに北海道へ帰っちまってさ。そして、中一の時にまた戻ってきたって訳」

 

 と一夏が代わりに説明をした。

 補足で、箒と関わり始めてからあの天災とも関わることとなった。一夏とよく近所を探険してたからな。ちなみに『たっくん』ってあだ名も付けられている。

 

「とまぁ……そういうことだ」

 

「なるほどな……」

「理解しましたわ」

「へぇ〜」

 

 理解した三人は口を開けていた。

 

「まぁ……とりあえず初めまして。これからよろしくね」

 

「ああ。こちらこそ」

 

 長い話を聞いて挨拶を交わした後、鈴と箒は火花を散らすかのような顔で力強く握手する。これは修羅場が多くなりそうだ(確信)。

 

「ンンンッ! わたくしの存在を忘れてもらっては困りますわ。中国代表候補生、凰鈴音さん?」

 

「誰?」

 

「なっ!? わたくしイギリス代表候補生セシリア・オルコットを知らないのです?!」

 

 セシリアよ。世の中で君を知らない人は多いんだよ。残念だけど。それと、知名度の低いアニメみたいにね。

 

「うん。あたし、他の国とか興味ないし」

 

「な、な、なっ……!?」

 

 前にもみたような光景であるが、セシリアにとっては非常に悔しいようで。

 

「い、言っておきますけど、わたくしあなたのような方には負けませんわ!」

 

「いや、あたしが勝つよ。悪いけど強いもん」

 

 自信満々に答える鈴である。こいつが言うのだから本気で強いに違いない、と俺は思う。慢心するようなやつではないからな。

 

「ところで一夏。アンタ、クラス代表なのよね?」

 

「ん? そ、そうだが」

 

「ISの操縦、見てあげようか?」

 

 鈴は照れくさそうにしている。

 この時の鈴は性格的にも見た目的にも可愛く見えてくる。ただし、大人しくしていれば、大人しくしていれば。※大事なことなので二回言いました。

 

「そりゃ助か――」

 

 バン!

 

 いきなり箒とセシリアがテーブルを叩いて立ち上がったため、俺、一夏、本音、簪、鈴は若干驚いた。

 

「一夏に教えるのは私の役目だ!」

 

「あなたは二組でしょう!? 一組の問題に口を挟まないでほしいですわ!」

 

 どうやら既に修羅場になってたようだ。これは期待せざるを得ない。

 

「私は一夏に話してるの。関係ないのは引っ込んでなさい」

 

「か、関係ならあるぞ。一夏は私の幼なじみだ。私の家で何度も共に食事もした間柄だ。たまに太一もいる時があったが……」

 

 一応、俺も箒と一夏同様、剣道してた事がある。三人中、断トツで最弱の極みだったが……あれ、前も回想したような。

 

「アタシだって一夏の幼馴染よ。それにご飯くらい、アタシの家でほぼ毎日食べてたわよ。たまに太一もいたけど……」

 

 どちらも俺がいたことをいう時に不機嫌になる。俺がいて本当にすみませんね。

 

「な、ほぼ毎日だと? い、一夏! 一体全体どういうことだ!」

 

「そうですわ! 一夏さん! 納得のいく説明をしてください!」

 

「いやぁ、これは凄いね〜。やがみんとかんちゃん」と本音。

 

「そうだな、修羅場は最高だぜ」と小さくガッツポーズする俺。

 

「確かに……修羅場だね……」と簪。

 

 この三人は至って平和である。俺たちは全員がのほほん状態だ。

 

「一体って、別に鈴の両親がやってる店に食いに行ってただけだぞ」

 

「み、店? ……なんだ店か。そ、それならいい」

 

「安心しましたわ」

 

 あ、いいのね。

 

「親父さん、元気にしてるか? まあ、あの人こそ病気と無縁だよな」

 

「それな」

 

「あ……。うん、元気――だと思う」

 

 あ、何かありそうだがここは触れないでおこう。

 

「そ、それよりさ一夏、今日の放課後って時間ある? あるよね。久しぶりだし、どこか行こうよ。ほら、駅前のファミレスとかさ」

 

 お前は来るな、というメッセージが鈴から目で送られてきた、というより睨んできた。言われなくてもわかっとるわ。デートしたいんですねわかります。

 

「あー、あそこ去年潰れたぞ」

 

「あぁ、確かにそうだったな……」

 

 その言葉で鈴は少ししょぼーんとする。

 

「じゃ、じゃあさ一夏、学食でもいいから。積もる話もあるでしょ?」

 

「別にいいけど……何故そこまでして誘うんだ?」

 

「べ、別になんでもないわよ! とにかく! 今日の放課後にでもアンタの操縦見てあげるわ!」

 

 ツンデレパワー全開ですな。(´ー`)

 

「――生憎だが、一夏は私とISの特訓をするのだ。放課後は決まってる」

 

 一夏が「聞いてねぇぞ、てめゴラァッ!」的な顔をしている。いや、今のは盛った。

 

「そうですわ。クラス対抗戦に向けて、特訓が必要ですもの。特にわたくしは専用機持ちですから。一夏さんの訓練にはわたくしは欠かせない存在なのですわ」

 

 セシリアお前もか。ほら一夏が、「だから聞いてねぇぞ、クソビ○チ」って顔してる。いや、これも盛りました。サーセン。

 

「じゃあそれが終わったら行くから。空けといてね。じゃあね、一夏!」タッタッタ

 

 鈴はラーメンを食べ終わり、食堂からサササッと出ていった。

 

「一夏、当然特訓が優先だぞ」

 

「一夏さん、お忘れなく」

 

「は、はあ」

 

 ここにて、長いようで短い修羅場が終わったのだった。既に俺、簪、本音も食べ終わったため、食堂から出た。

 

「長かったねー。しゅらば~」

 

「見てて疲れたな。少し楽しかったが」

 

「なんかアニメみたいで……面白かった」

 

「そうだな……今日はハーレムアニメでもみるか?」

 

「うん……でも、何見るの?」

 

「ふふふ……聞いて驚け【俺の脳内選択肢が学園ラブコメを全力で邪魔している】だ」

 

「タイトル長いね〜」

 

「面白そう……」

 

 二人とも興味があるみたいにこちらをみる。本音はダボダボの袖をパタパタしていた。あら何この生き物可愛い。

 

「作画はこんな感じだ」

 

 さっとスマホから画像(ショコラ)をみせる。二人は可愛いものをみるような目でキラキラさせていた。

 ついでに写真は全て二次元である。三次元?なにそれ?おいしいの?

 大半がアニメキャラのイラストだが一部はミリタリーな画像もある。これは三次元と思うが、これは例外だ。異論は認めない。

 あとムフフな画像を入れてない訳ではないが個人的な機密ファイルに保存してある。

 

 その後はいつもの授業(織斑先生)だった。

 

 

 

 

 




━━本音がアニメ好きに変化

別に問題ないと思います。違和感なさそうですし

━━入学初日に幼なじみって何故言わなかったのか

周りが五月蝿くなるからです。あまり五月蝿いのは好まないタイプということに

━━たっちゃん先輩

記憶が曖昧です。原作では本音はなんて呼んでましたっけ‥‥

訂正‥‥仮にお嬢様へ変更しました。と思ってたら、原作で「たっちゃんさん」と呼んでました。なんてこったい。

そして今更、たっちゃんさんに変更。誠に申し訳ない。

━━簪のお気に入りはかき揚げうどん

毎日、かき揚げだと思います?たまには別のうどんに(震え声)

━━WORKING!

この場合は、1期ということにしています。ちなみに個人的にはWWW.WORKING!!の方が好きです。

━━ssでは170作

と記載していますが、投稿主の私はもっと多く見てます。でないと、ネタが思いつかん。


━━脳コメ

脳内選択肢という要素が素晴らしいアニメです。
好きなキャラは、道楽宴先生です。

中の人は有名な野原家の(ry


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第13話 シュラバ

改良しました。2017/05/09


 

 

 

 

 

 

 

 放課後。一夏がクラス対抗戦に向けて箒とセシリアから訓練を受けている中、俺はある事を考えていた。

 それは、自分の専用IS《獰飆》の別名である。

 俺のISにはVOICEROID的なものが備わっており、ある程度のことは音声で伝えてくれる。声的には小澤〇李さんそっくり。つまり、梶平さんが興味本位で入れたといえばいい機能である。

 

 それはいいとして。

 

(獰飆、応答してくれ)

 

『はい、マスター』

 

(君の名前を変更したい)

 

『はい、どのような名前にしますか?』

 

 この通り、あくまでAIだが普通の女子のような感じで話せるのだ。今でいう『Si○i』的なやつだろうか。

 擬人化したらどうなるのかなと妄想で創る。

 そんなことより名前考えようか。

 

 アリス……霊夢……妖夢……咲夜……あれ、全部東方だ。

 

――氷歌(ひょうか)とか?

 

 別にアニメの〝氷菓〟から取ったとか〝とある魔術の禁書目録〟の氷華とかではない。おそらく。

 

(よし、氷歌で)

 

『了解です。名前を 氷歌 に変更します』

 

 機体名ではない、あくまでもAIネームである。これがあるだけでもかなり愛着というか親近感が湧く。

 そんなことを考えたあと、急に携帯のバイブレーションが鳴った。

 どうやら、専用機の開発者の一人、梶平さんのようだ。とりあえず屋上へ行こう。

 

⦅やぁ、久しぶりだね。城谷上くん⦆

 

「どうもです。梶平さん」

 

 誰もいない屋上。そこで、俺は梶平さんと電話をする。

 この人は専用機が届いた日から、既に一回会っている。

 半分は趣味(アニメ、ミリタリー)で出掛けただけだが、半分は専用機のことを見るための検査だったりする。普通に高いビルであったし敷地も広く、いかにも大企業って感じであった。つまり本社に行ったのだ。

 

⦅すまないね。定期報告も兼ねて伝えることがあるんだ⦆

 

「はい、定期報告は特にありません。機体の異常や武装の異常なども見当たりませんので」

 

⦅そうか、で……本題だが君に新しい機能のアップデートが可能になった⦆

 

「どんな機能ですか?」

 

⦅それはね――幻想殺しの音を追加する機能だよ⦆

 

 幻想殺し、それは〝とある魔術の禁書目録(インデックス)〟に登場する主人公、上条当麻が異能を消した音である。

 あの音を聞けた時は本当にたまらないだろう。

 

「ありがとうございます! 最高の機能ですね!」

 

⦅――ただ⦆

 

 ……ただ?

 

⦅それだけなんだよね……⦆

 

「えぇ……」

 

⦅獰飆の右手で殴ったときに音が出るだけだよ。攻撃力は相手のシールドエネルギーが30減るか減らないかだと思う。加減によるけどね⦆

 

「デスヨネー」

 

⦅……じゃ忙しいからまたね⦆

 

 通話が切れる。なんにせよ、最高のアップデートであることには間違いない。後で実行しようか。

 

 その後、第三アリーナに来てみたが一夏がセシリアと箒に集中放火されている姿が見えた。大変ソウダナー(小並感)。

 

 コーチが生徒会長であることにより感謝する俺氏であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「――はっ! 今、誰かに感謝されたわ」

 

「そんなことより早く書類を片付けて下さいお嬢様。でないとあの子に訓練させられませんよ」

 

「は〜い……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 楯無さんの仕事が終わり、いつも通りの訓練をした。若干の疲労が楯無から見えたが、彼女なら問題ないだろう。謎の余裕。

 ちなみにいつも通りとは、近接又は射撃訓練である。模擬戦は見事にボロ負けするのでやらない。ってかやりたくない。

 

 そして、一夏がいるアリーナで丁度彼が終わるのを確認してピットに向かう途中、鈴に会った。

 

「よぉ、鈴」

 

「やぁ、太一」

 

「アンタ、どこ行くの?」

 

「一夏がいるピットへ」

 

「ならアタシもよ」

 

「なるほどだから、スポドリとタオルか」

 

 こういった小さなアプローチのようなものは一夏に対してほとんど、いや、全く無意味だったりする。ただし、好印象にはなるが。

 

 スライドドアが開く。入るとそこには一夏と箒がいた。

 

「よぉ、一夏と箒」

 

「一夏っ、お疲れ様。はいタオルとスポーツドリンク」

 

「お、おうサンキュ」

 

「あぁ太一と鈴か……」

 

 一夏はスポドリを半分まで一気飲みした。

 

「ぷはぁー、生き返るぜ」

 

「変わってないね、若いくせに体のことばっかり気にしてるとこ」

 

「あのなぁ、若いうちから不摂生してたらいかんのだぞ。クセになるからな。あとで泣くのは自分と自分の家族だ」

 

「「ジジくさい」」

 

 俺と鈴でハモった。ここら辺は中学からの絆ってところか。

 

「ふ、二人してうっせーな……」

 

「それでさ一夏。一年間アタシがいなくて寂しかった?」

 

「まぁな、やっぱり太一や弾、数馬がいても違和感は感じたさ」

 

「そ、そうなんだ……」

 

 鈴は顔を赤らめて言う。だが一夏は鈴の思うような男ではない。遊び相手が減ったからとかしか彼は思ってないだろう。

 

「で箒シャワーのことだが――」

 

「シャワーの件は先に使っていいぞ。それじゃあ私は帰るとする」

 

「おお、それは有難い」

 

「では、またな一夏」

 

 そう言って箒はピットから出ていった。

 俺はふと鈴を見ると、随分と不機嫌なオーラを醸し出している。嫌な予感がしますね。

 

「ねぇ一夏、シャワーってどういうこと?」

 

「あぁ、いつもは箒がシャワーを使うのが今日はすげぇ汗かいたからシャワーを先に借りただけだが?」

 

「え?! アンタ! あの子とどういう関係?!」

 

「いや、普通に幼なじみ――」

 

「鈴、現在進行形で一夏と箒は同じ部屋なんだよ」

 

 話が長くなりそうなので俺は話に割り込み、手っ取り早く鈴に伝えた。

 

「は? なんでアンタたち二人が一緒の部屋じゃないのよ!?」

 

「これには深い訳がですねぇ……」

 

「部屋がなかったんだよ俺達は特殊だったからさ……でも箒だから助かるよ見ず知らずの相手だったら緊張して寝れねぇよ」

 

 実際、俺は見ず知らずの美少女二人と同室だったんですがそれは。睡眠欲に弱いから割りとすぐ慣れたけど。

 それでも最初の一週間は、女子の寝息のせいでうまく寝付けなかったのは事実だ。というより、寝息を聞きたかったから寝たく無かった、というのが正しい。

 

「つまり……幼なじみだったらいい訳ね!?」

 

「はい?」

 

「幼なじみが二人いるってこと忘れないでね!」

 

「いや三人だぞ、鈴」

 

「うるさい! どっちでもいいでしょそんなの!」

 

「……お、おう」

 

 咄嗟に突っ込んだが見事にそれを吹き飛ばされた。

 本当に小五から幼なじみは有りなのだろうか。幼なじみの定義を知りたい。

 

「じゃ、後でね一夏!」スタタタタ

 

 そのまま鈴はピットから出ていった。嫌な予感がする。後で一夏の部屋に行くしかないな(使命感)。

 

「……どうしたんだ? 鈴のやつ」

 

「一つ言わせてくれ、一夏」

 

「ん?」

 

「部屋に戻ったら気をつけろ、鈴が来る筈だ」

 

「そうか……」

 

「なぁ……一夏」

 

「……今度はなんだ?」

 

「箒って俺には幼なじみに入るのだろうか?」

 

「入ると思うぞ、多分な……」

 

「そうか、一夏と箒が俺の幼なじみか。違和感アリアリだな」

 

 違和感とは、箒は基本的に一夏しか見てないため俺は眼中には殆どないからだ。しかも途中で転校したからな。微妙な所だ。

 

「何の違和感――」

 

「自分で考えろ。じゃお先に」スタタタタ

 

「ちょっ……行っちまったよ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 案の定、修羅場が起きた。幼なじみ二人のぶつかり合いである。

 俺は、部屋にいた簪と本音も部屋の前に連れていき、待機させて盗聴していた。俺は中に入ったけど。

 ほら、幼なじみの修羅場って現実(リアル)じゃ珍しいだろ?

 

「鈴……それ荷物全部か?」

 

 一夏がまさかと思い問いだす。

 

「そうよ。ボストンバックだけで何処でも行けちゃうんだから」

 

 鈴がIS学園に転向した当初もボストンバックだ。

 

「俺より少ないじゃないか」

 

 俺が言うのもなんだが、俺はほとんど趣味用しか持ってきてない。私服ならスウェットとか普段着だけである。

 しかし、普通の女子なら俺よりもある筈だ。本音なんて着ぐるみが数着あるし普段着もそれなりにある――と思う。

 簪もそれなりに持ってたが、鈴は私服はなく下着だけで過ごしているのだろうか。いや、それはないか。

 

「まぁとにかく、今日からアタシもここで暮らすわ」

 

「ふ、ふざけるな! ここは私の部屋だ!」

 

「ここは一夏の部屋でもあるのよ? じゃあ問題ないわ」

 

 二人は一夏に顔を向ける。これは一夏にどちらか決めさせたいからだろう。一夏は「俺に振るな」みたいな顔をしているが。

 

「とにかく、部屋は変わらん! 自分の部屋に戻れ!」

 

「――それより、一夏? 約束覚えてる?」

 

 華麗なスルーをした鈴に、箒は爆発寸前になる。

 

「無視をするな! ええい! こうなったら――」

 

 その瞬間、箒が近くの竹刀を取り出し、鈴に向かって振り下ろした。

 俺は拙いと思い、一夏と止めようとしたが速すぎて対応できなかった。

 

 バシーンっ!

 

「鈴! 大丈夫か?!」

 

 一夏が心配していたので俺は鈴の方をみると、部分展開されたISの右腕が竹刀を受け止めていた。

 驚いたのはそこではない。この一瞬で部分展開できたことである。今のは人間の反射速度並に速かったかもしれない。

 箒は微動だにせず驚いていた。

 

「大丈夫に決まってるでしょ代表候補生なんだから……それより今の生身には本気で危ないよ?」

 

「う……」

 

 仰る通りである。これが普通の人なら間違いなく拙いことになっていただろう。下手したら人殺しになる。

 そうなると鈴は相当凄いわけだ。

 

「ま、いいけどね……。それで一夏、約束のことだけど」

 

 箒はさっきの出来事で無言のままだが、鈴は何事も無かったかのように部分展開を解き、一夏に問いかける。

 急に顔を伏せ上目遣いだ。

 

「あーあれか、鈴の料理が腕が上がったら……毎日酢豚を――」

 

 そうそう、それの味噌汁バージョンのやつだ。所謂、プロポー――

 

「――奢ってくれるやつか!」

 

 ……知ってた。

 

 鈴は顔を暗くして黙っている。これは地雷踏んだな、一夏のヤツ。

 

「いやー我ながら記憶力には感心――」

 

 パシーンっ!

 

 急に鈴にビンタされた一夏は、理解出来ないのか唖然としていた。

 

「最っっっ低! 女の子とした約束も覚えてないなんて、男の風上にも置けないヤツ! 犬に噛まれて()()()()!」スタタタタ‥ガチャ‥バタン!

 

 鈴は怒り爆発して叫ぶ。俺からは少し涙が見えた気がした。

 そういえば、二回死ね、という言葉が聞こえた気がする。これは〝迷い猫オーバーラン〟というアニメで出てくる迷言の一つだと思われる。よくメインヒロインの口癖として出てくるので非常に馴染み深いセリフであるが、

 

――今はそれどころではない。

 

「怒らせちまったか……。何故だ……?」

 

 理解できてないアホは困っていた。鈍感も罪、はっきりわかんだね。

 しかし、言ってしまえば「毎日、味噌汁を~〜」のやつを知らない人もいるのではないだろうか。俺だって一夏と同じ考えだったからな。

 

「一夏」

 

「なんだ……箒」

 

「馬に蹴られて死ね! ふんっ」

 

 箒も気づいていたのかお怒りのようだ。

 

「一夏」

 

「今度は太一かよ……」

 

「お前は記憶を履き違えている。それだけ覚えとけ。じゃ」

 

「は、はあ……」

 

 部屋の外に出たのはいいが、簪と本音がいることをすっかり忘れていた。 

 まさかここまで修羅場が酷くなるとは予想外だったのだ。

 

「すまん、二人とも。まさかこんなことになるとは……」

 

「大丈夫。向こうは気づいてなかったから……」

 

「でも……リンリン泣いていた気がするけど~」

 

「今はそっとしておこう……ま、部屋に戻ろうぜ」

 

「うん……まさか『二回死ね』が現実で聞けるなんてね……」

 

「それな。俺も驚いたぜ。あれは」

 

 あのアニメは最近簪と本音で見たばっかり(俺は一年前に一通りみた)なのだ。偶然にも程があると思うが‥‥

 

「やがみーんお菓子食べた~い」

 

「そうだな。お菓子食って、迷い猫オーバーランの続きみるか!」

 

「お~」

 

「……うんっ」

 

 その日もアニメみて盛り上がった。もう完全に本音も深夜アニメに染まっているだろう。

 ちなみにお菓子に関しては、本音と俺で食べながらみている。簪はジュースだけだ。多分、太ることを気にしてるため、控えめにしているのだろう。

 

 そんなことを思ってジーッと簪の身体を見てたことがバレて、簪にジト目で見られたことがある。

 あれはある意味最高だった。ごちそうさまでした。

 今更だが、美少女二人に囲まれてアニメ鑑賞してる俺は幸せな男ではないだろうか。それでも、特別な感情を持ってる訳ではないが。

 

 二次コンな俺は恋をするのだろうか?

 

 

 




━━小澤〇李

がっこうぐらし!や 月刊少女野崎くん、モンスター娘のいる日常とかで有名ですね。個人的に他の声優より独特な声質なので好きです。

━━氷歌

咄嗟に思いつきました。主人公の出身が北海道ですし結構いいんじゃないですか?

━━幻想殺し音

音は調べて下さい。敵の異能が消えたときにでる音です。

━━迷い猫オーバーラン!

二回死ね!元ネタがこれなのかは分かりませんが気に入ってます。

━━二次コン

二次元コンプレックス

━━開発者

別に1人ではないが基本的には梶平さんがつくった。つまり他にも開発者関係者がいます。




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第14話 ウチガネ

リメイク版を早めに投稿しておきました。残りはもうしばらくお待ちください。


 

 

 

 

 

 

 

 あれから一週間近く経つが、鈴の機嫌は未だに良くないらしい。

 

 そんなことより簪の専用機の方が心配である。

 姉と和解して姉妹関係は良好なものの、肝心の専用機は自分で繰り上げ続けている。

 本人曰く、「能動的な行動をとるのは甘え」だそうだ。

 このままでは二週間もないうちにクラス対抗戦が始まり、間に合う可能性が低い。

 だから俺と本音は彼女の手伝いをしたいため、簪のいる整備室へと向かっている。他にも、人と協力することの大切さとか、そういった理由もある。

 

 よく考えると本音と二人で行動するのは久しぶりだ。

 本音のダボダボの制服と彼女のまんま肉まんを見ると、毎回、どうしてこうなった……って思ってしまう。

 

「むむ〜、なにみてるの〜?」

 

 本音のアレをみていたことがバレたのか、上目遣い且つジト目でこちらを窺ってきた。

 それは反則っすよ本音さん。可愛いすぎて生きるのが辛い。

 

「……い、いや、何でもない」

 

 自分でも顔を赤くしてるのが分かってしまうので誤魔化し用がないが、

 

「そっか~」

 

 と、なんとかなったようだ。

 そんなやり取りをしていると既に整備室に着いていた。

 

「やっはろー、簪」

 

「にゃんぱすー。かんちゃん〜」

 

 室内に入った途端に、俺たちが三大アニメ挨拶で言ったからなのか、簪は少し戸惑っていた。

 

「え、えーと……スラマッパギー……」

 

 随分と顔を赤くして恥ずかしがりながら言っていた。もう可愛いすぎて生きるのが辛い(2回目)。

 

「ISの調子は?」

 

「まだ五分の三くらいしかできてない」

 

 それ結構出来てる方だぞ。確か、簪は三割ぐらいから一人で組み上げているのだから……マジやばくね。

 

「クラス対抗戦に間に合う~?」

 

「間に合いそうにない……」

 

 なんとなく察したがやはり、終わらないらしい。こちらは何か手伝いたいのだ。俺がやることなんて自身の企業に頼るか、パシリしかないけど。

 

「何か手伝えることはないか?」

 

「……でも」

 

「ほら、引きずってるんだろ? 姉の件で」

 

「……うん」

 

「そんなこと気にしなくていいって、楯無さんもそう言ってたろ? それに、簪は簪で、楯無さんは楯無さん。俺は比べるつもりは一切ないぞ。簪って俺よりも凄いだろ普通に」

 

 特にISを一人で組み上げようとする剛の者が居てだな。

 

「わたしも~」

 

「他人に能動的な行動を取るのは……私にとって甘えだから……」

 

「甘えて何が悪いんだ?」

 

「え……」

 

「別に俺達が手伝いたくてやってるんだし深く考える必要なくないか? それに、仲間と協力して作り上げることって大切なことだぜ? 当たり前だけどさ」

 

「そうだよ~、かんちゃん」

 

 本音はいつも通りのほほんとした感じだが、今は真面目そうにみえていた。

 

「大体この場合だと能動的じゃなくて受動的だろ? なら問題ないだろ」

 

「……そうだよね、うん」

 

 太一にゴリ押しされて、強制的に納得させられる簪。

 

「俺のデータの一部もやるからよ。そこらへんは企業に許可得た。三人でやろうぜ? あとは企業の協力も得るかもしれないけど」

 

 勝手に《打鉄弐式》の情報を企業に渡すのもどうかと思うが、その機体の開発は凍結、捨てたも同然だろう。多分。

 

「……わかった」

 

 簪の表情が少し明るくなった。これなら三人で協力することができそうだ。

 

「よっしゃー、がんばるぞ!」

 

「「お~! (おー……)」」

 

 それからというもの、許可を得て企業にも少し手伝ってもらったり、俺達三人で協力したりして無事、クラス対抗戦前に完成型へと辿りついた。

 

 改めて言うが、簪の専用機の名は《打鉄弐式》である。

 日本の量産機IS《打鉄》の後継型で全距離対応型であり、若干俺の機体データが流用されている。

 主な武装は、

 

・連射型荷電粒子砲《春雷》

・二門対複合装甲用超振動薙刀《夢現》

・独立稼動型誘導ミサイル《山嵐》 六機×八門=四八発

 

だそうだ。これだけ見ると俺の武装より強く見えて仕方がなかった。

 

 ……ミサイル四八発って、俺の装備ミサイルの六倍やん。

 

 そして、簪の専用機が完成した日の夜、寮の部屋。俺と本音は彼女に待たされていた。

 

「なんだろうな、一体」

 

「そうだね~。お菓子とかくれるんじゃないかな~?」

 

「お前はお菓子しか頭にないのかっ」

 

 軽く本音の頭にチョップを食らわせる。

 本音は涙目でなんか抗議してきた。あれ……なんかゾクゾクしてきた。

 

「お待たせ」

 

簪が扉を開けると出来たてホヤホヤのカップケーキを持ってきていた。

 

「あの……私、抹茶カップケーキ、作ったんだけど……食べる?」

 

食べりゅうううう!(ありがとう、頂くよ)

 

 俺の思ってた返事と実際に出た返事は全く違う件。

 ちなみに「食べりゅうううう」とは、食べりゅ教に属する人しか扱えない仕様である。〝艦これ〟を知っていれば瑞鳳もわかるだろう。

 

「わーい! かんちゃんのカップケーキだ~」

 

 抹茶のカップケーキなんて食べたことない上、抹茶もあまり好きではない。

 しかし、美少女が作ってくれたケーキを食べない男なんていないだろう。たとえ、不味くても。いやまぁ、アニメみたいに即死級の料理は遠慮します。

 

 パクッ。

 

 普通に美味しい。抹茶なのに美味しいし、これは気に入ったかもしれない。抹茶が好きになってきた。

 

「美味い……」

 

「美味しい〜」

 

「……ありがとう」

 

 二人の感想に照れたのか簪の顔が赤い。

 

「それと、クラス対抗戦……絶対に負けないから」

 

「おう! 一夏は本番に強いからな」

 

「……うん」

 

 一夏の言葉で簪の顔が強ばったのは気のせいと信じたい。

 その後はいつもの如く、ラブコメを――と言いたいところだが、たまにはヒーロー系でも見ようってことになった。なので、〝ワンパンマン〟をみることにした。

 この漫画兼アニメは普通のヒーローアニメというよりギャグ系なので好きだ。特に何でもかんでもワンパンチで終わるのが面白い。

 分かってると思うがアンパ〇マンではないぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 IS学園、大浴場。簪は湯船に浸かって考え事をしていた。

 

(……城谷上 太一)

 

 初めて会ったときから、簪はその少年が気になって仕方がない。

 彼は別にイケメンでもない、それに、ブサイクでもない。なのに、その人と一緒にいるとドキドキしてしまう。

 

 ――これってもしかして。

 

 恋。そんな言葉を思いかけて、簪はまたブンブンと首を振る。

 

「か~んちゃん!」プニッ

 

「ひゃっ!」

 

 簪は甲高い裏声で驚いてしまう。こんなときに、本音が簪の背中に抱きついてきたのだから。

 簪は一般的な恋愛感情をもつ女性であり、百合な展開を求める趣味はない。

 しかし、基本的な悩みである。胸のサイズに関してはどうも気になっていた。特に本音のソレと比べたら。

 

「……それはやめて、本音……」

 

「えへへー、ごめんごめん~」

 

 やっぱり、簪は今でももう一つ気になることがある。

 

 ――本音は私をどう思うのか。

 

「ねぇ……。……本音はメイドだから私と関わるの? ……それとも――」

 

「友達――幼なじみ、だからだよ〜」

 

 即答された。簪と本音の関係は、仮にもお嬢様と専属メイドの関係だ。

 しかし、なんだか疑っていたことが簪は馬鹿らしく思えてきた。

 

「そっか……ありがと本音」

 

「ほぇ? わたし、なんにもしてないけど~」

 

「……気にしなくていい」

 

 自分でも少し笑ってるのが分かった。

 ああ、この先の人生が楽しみだ。そう簪は感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 クラス対抗戦前日。俺と簪、本音はクラス対抗戦に備えて、第三アリーナにて最終テストを行っていた。

 

 そういえば、一夏がまた鈴とケンカしたらしい。

 なぜ鈴とケンカしたのか、説明すると、

 

 

・一夏と鈴が約束の意味について揉める。

      ↓

・話し合いの結果、クラス対抗戦で負けたら言うことを聞く。

      ↓

・でも、鈴は約束の意味を説明できないと答える。

      ↓

・それに対し、「なんだ、やめるのか」と一夏が問う。

      ↓

・鈴は「やめないわよ! だから謝る練習でもしてなさい!」と答える。

      ↓

・「なんでだよ、馬鹿」と一夏が言うと、鈴の悪口が色々飛んでくる。

      ↓

・「うるさい、ヒンヌー(貧乳)」と一夏は怒鳴る。

      ↓

    鈴、キレる。

 

 

 まぁ、ヒンヌーは俺の捏造で、正しくは貧乳。

 色々あったようだが、俺は鈴の味方にはならない。一夏も悪いのは事実だが、話を聞く限り、鈴の方が悪かったと俺は思う。

 

 というわけで、話は最終テストに戻る。

 

「よーし、かもん、獰飆!」

 

「……来て、打鉄弐式!」

 

 俺は二秒で獰飆を展開、簪は一秒も掛かっていない。さすがは日本の代表候補生だ。

 

「よし、最終テストも兼ねて軽く模擬戦しようぜ。俺は攻撃しないから」

 

 下手に攻撃して損傷させたら元も子も無い。明日が本番だからだ。といっても、攻撃したところで当たらない未来が見える。

 

「……わかった」

 

 そう言って簪は最初に《春雷》を展開し、俺に向かって連射した。

 いきなり本気で撃ってきたため焦ったが軽々と避けていく――嘘です。ギリギリ当たってます。

 少しでも気を抜いたらガッツリ削られる勢いだ。

 

 三分経った今でも、命中、交わす、命中、交わすを繰り返す。

 最近の俺は、得意の機動性を活かした訓練を重点的に、楯無さんから教わっている。そのため、これでも避けることは一番上達しているらしい。

 

「やっぱり、凄いな……簪は」

 

「凄くない……さっきから太一に避けられてばかりだし……」

 

「いや、凄いぞ。ギリギリ避けるので精一杯だわ。……まぁ、《雷艦》使えば普通に防げるけど」

 

 その代わり、シールドエネルギーを消費してしまうのだが。

 

「確かに……じゃあ、これならどう?」

 

 簪は《春雷》から《山嵐》に切り替え、マルチロックオンシステムのミサイルを十発、発射してきた。

 このミサイルは壊すことすら困難な武器だ。これが四八発あると思うとトラウマものである。

 

「うお!?」ドカーン

 

 挟み撃ちをくらい、ミサイルが思いっきり命中してしまう。シールドエネルギーも大幅に減らされた。

 

「だ、大丈夫?」

 

「大丈夫だ。問題ない」(イーノック風)

 

「おー凄いね~、かんちゃんの山嵐〜」

 

「あー凄いよ。武器ないと回避してられないわ」

 

「簪ちゃーん、太一くーん、本音ちゃーん」

 

 模擬戦が終わったのを確認したのか楯無さんが走ってきた。ISスーツなので大して揺れないが、少なくとも少しアレが揺れたと思って興奮した。

 

「どうも楯無さん」

 

「あ……お姉ちゃん」

 

「どうもー、たっちゃんさ~ん」

 

 もう今ではわだかまりなどなかったように清々しい笑顔な姉妹である。

 

「いやー凄いわ。あのミサイル」

 

「本当に凄いですよ。挟み撃ちに合ってしまいました……」

 

「この調子なら、簪ちゃんはクラス対抗戦優勝かしらね♪」

 

「そうかもしれませんね」

 

「あらら、太一くんは自分のクラスを応援しなくていいのかなー?」

 

 確かにそうだ、と思い込む。

 どちらかと言えば、三人+企業で完成させたISなのだから四組を応援したい。しかし、俺は一組であり学食デザートの半年フリーパスが掛かっている。ゼリーとかアイスとかなら普通に食べたい。ちなみにお気に入りはチョコミントアイスだ。

 あれが好きな時に食えるのは嬉しいものだが……、

 

「よし、簪を応援しよう!」

 

 結局、簪側に付くことにした。

 

「さんせ~い!」

 

「あ、ありがとう……」

 

 本音も賛成して、簪は照れている。

 

「かんちゃん、顔赤いな〜」

 

「……べ、別に、そうでもないよ……あはは」

 

 本音にからかわれて、簪は苦笑いしている。

 

「でも……何故一組を応援しないの?」

 

「なんでって言われても、……俺たちで協力してできた打鉄弐式ですしね?」

 

 それから理由を簪に訊かれたので、俺は素直に答える。

 

「……そっか」

 

 ちなみに、専用機を三人+企業で作ったことくらい楯無さんは気づいている(シスコンだし)。

 それに楯無さんは特に何も思ってなく、簪に仲の良い友達と協力できたことに喜んでいたらしい。※虚さん調べ

 

「さーて、私も模擬戦に参せ――」

 

「お嬢様?」

 

 この声は、と思い振り向くと、いつの間にか虚先輩が来ていた。また仕事サボったな、楯無さん。

 

「はーい。仕事終わってませんからねー」

 

 虚さんが凄いニコニコしている。コワイですよ、笑顔が。

 

「……はーい」

 

「いってらっしゃいませ〜」

 

「頑張って下さいね」

 

「じゃあねお姉ちゃん」

 

「ねぇねぇ、誰か手伝ってくれないかしら?」

 

「「「だが断る」」」

 

 この言葉で楯無さんはシュンとなって去っていった。素晴らしいハモリっぷりだ。

 本音も生徒会役員だから行くべきだが逆に仕事を増やすらしく、放ったらかしだそうだ。

 ちなみに、あの言葉を俺が使ってるうちに二人は洗脳されてしまったらしい。元ネタはジョジョだが別に漫画などを読んだことは無い。アニメは見た。

 

 

 

 




━━まんま肉まん

アマガミSSで登場する。手のひらで揉むことが可能なくらい大きな肉まんである。それを例えて使ってます。実際に主人公がまんま肉まんで変なこと考えていたと思いますし。

━━三大アニメ挨拶

他にもトットゥルーとか、おはようごじゃいまーす。とか、あると思います。

にゃんぱすーはのんのんびより、やっはろーはやはり俺の青春ラブコメはまちがっている。スラマッパギは日常です

━━食べりゅうう

瑞鳳はまじで好きです。

━━簪 スキルート突入

(゚∀゚ノノ"☆パチパチパチ
やっと1人目ヒロイン化しましたね。好きになった理由としては初めての男友達、とか?一緒に過ごして楽しい。とか?専用機の件とか姉妹の件とかで好感度上げたことにしてください。〇┓ペコッ

━━そんな装備で大丈夫か?

大丈夫だ、問題ない。

━━だが断る。

この3人がそんなこと言っても違和感ないと思います。脳内再生頑張ってください。〇┓ペコッ


━━


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第15話 ムジンキ

かなり文章を訂正(2017/05/08 )






※予定では、ここまでがリメイク版第一章と二章の終着点です。








 

 

 

 

 

 

 

 クラス対抗戦当日。いよいよ始まるだろうクラス対抗戦は、それぞれのクラス代表が戦い勝ち抜いていくリーグ戦だ。

 優勝景品は【学食デザートの半年フリーパス】なので、それが目的のクラスが殆どである。

 特に本音が、デザートを求めて一夏を人一倍応援している。簪を応援するんじゃなかったのか、本音は。

 そうそう、俺達はアリーナ観客席の出入口付近で観戦するつもりだ。

 

 第1回戦は、

 

 更識 簪 VS ロミー・ベンサム(仮)

 

 最初の相手は訓練機【ラファール・リヴァイヴ】であったため勝てそうだ。しかし、クラス代表ということもあり、侮ることは出来ない。

 

 それでも、結果は勝利した。

 最初は《春雷》で撃ち合い交戦した後、全弾は見せる気がなかったのか《山嵐》が十二発程度で終わった。

 俺のデータを入れたおかげか、相手を見失わなければ通常よりも追尾力が上がる。それでも流石は日本の代表候補生である。

 

「お疲れ簪。かっこよかったぞ」

 

「かんちゃんカッコイイ~!」

 

「ありがと……」

 

 簪は顔を赤くして答えた。褒め慣れてないのか少しだけ照れている。

 

「……えーと、次は鈴と一夏か」

 

 どちらが勝つか楽しみだな。

 

 第2回戦は、

 

 織斑 一夏 VS 凰 鈴音

 

 鈴の専用機である【甲龍】は中国製の第三世代ISでカラーはマゼンタと黒らしい。装備は忘れた。

 どうでもいいが、七つのアレを集めて願いを叶える方のシェンロンではないぞ。

 

 あ、思い出した。《龍砲》と《双天牙月》って誰かが言ってた。

 

 そんなことを考えていると、試合直前の放送が掛かる。

 すぐにブザーがなって試合がスタートした。

 

 試合開始からすぐに一夏と鈴は同時に突撃し、一夏は剣をはじき返された。

 すぐに体勢を立て直そうとして、一夏は三次元躍動旋回(クロスグリッドターン)をどうにかこなす。

 鈴の近接装備である《双天牙月》は太い青竜刀を両端に付けたような形をしていて、回転もできるので一夏には厄介だろう。

 それから一夏が一旦、距離を取ろうとした途端――

 

――一夏がいきなり吹き飛んだ。

 

 肉眼ではよく分からず、俺は呆然としていた。

 

「あれは……《龍砲》。空間自体に圧力をかけ、砲身を作りだし……余剰で生じる衝撃自体を砲弾にする第三世代兵器……」

 

 簪が言うには甲龍の最大の特徴である龍砲が一夏を吹き飛ばしたらしい。所謂、衝撃砲だ。

 

「流石、よく知ってるな」

 

「そんなことない。これくらいは知ってる」

 

「なら、お前は何でも知ってるな」

 

「〝何でもは知らないわよ。知ってることだけ〟」

 

「〝化物語〟だな」

 

「……バレた?」

 

 若干笑いを堪えながら言う簪。笑っているところを見ていると、こちらまでつられて笑いそうになった。ま、化物語は知名度が高いからな。

 

「バレバレだよ。それより《龍砲》は砲身も砲弾も見えないみたいだし、相当厄介だな……」

 

 これでは零落白夜がそう簡単には当たらないだろう。

 ふと思ったが、《雷艦》で衝撃は防げるのだろうか。エネルギー系とはいえど、目に見えないから反応できないのではないだろうか。

 途中から二人は戦闘を一度止め、オープンチャネルで何か話していた。

 すると鈴は両刃青竜刀を回転して構え、一夏はここぞと思ったばかりに瞬時加速を発動して《零落白夜》を使用し斬り掛かる。

 これは鈴に当たると思ったが――

 

ズドオォォォォォン!!!

 

 突如、アリーナ内に爆発音が鳴り響く。これは一夏の攻撃や鈴の攻撃でもない。

 全く別のものがアリーナの遮断シールドを貫通させたようだ。

 俺は何事かと驚き侵入してきたものを確認したかったが、遮断シールドが増えて目の前が見えなくなった。

 その瞬間、周りの皆はパニックに陥り、脱出を試みようと一気に動き出した。そのせいで、大量の女子に俺と簪、本音が押されてはぐれそうになる。

 俺は咄嗟に二人の手を繋ぎ、はぐれないような体勢をとる。その行動に二人は驚いていた。なぜ?

 

「簪、本音。大丈夫か!」

 

 その言葉は二人に届いていなかった。

 付近でパニックになってる女子が五月蝿いのだ。黙ってくれないだろうか。

 仕方が無いのでISのプライベートチャネルで楯無さんに連絡した。

 楯無さんは至って冷静だったと思う。

 ちなみに俺は二人の手を繋ぐ中、周りから押されているため何かが当たってしまっているが、それどころではなく焦っていた。

 

〘 話は聞いてる。とりあえず私は別のアリーナからそっちに向かってるわ。でも遮断シールドがレベル4に設定されてるみたい。だからそう簡単には開かないわよ。でも扉はなんとかすれば開くと思う。ここは織斑先生に連絡しなさい〙

 

「了解です。とりあえず周りを黙らせます」

 

 外の状況を確認するため、プライベートチャネルを一夏に切り替える。

 

〘一夏、大丈夫か? 〙

 

〘かなり、拙い状況だが……今のところ問題ないさ〙

 

〘そうか……俺も俺でなんとかするからそっちは任せたぞ。死ぬなよ一夏 〙

 

〘分かってるって俺達に任せろ〙

 

そう言ってプライベートチャネルを切り、息を大きく吸って叫ぶ。

 

「皆さん! 落ち着いてください!!」

 

 それでも女子たちには届かない。こんなことはゲーセンやコミケとかのレベルじゃねぇぞ。

 

「くそっ……」

 

 その時、手を繋いでいた本音が押されて解けてしまい転び、本音が他の人に踏まれる瞬間をみて俺は苛立ちから怒りへと変わる。

 

「いいから黙ってくれぇぇえええ!!!!!」

 

 今までにないくらいの咆哮で叫ぶと少なくとも俺の周りは静かになり。皆、こちらをみていた。

 

「……俺がなんとかするから落ち着いてくれ。このままだと怪我人がでるぞ」

 

 そう忠告すると、周りの女子はアリーナ全体にいる女子に静かにするようにと次々と伝えていった。

 そして、静かになったことを確認して息を吸う。

 

「今から俺が脱出方法を考えるから少し落ち着いてくれ!」

 

 これに納得したのか女子たちが少し落ち着いた。それを確認して本音に手を貸す。

 

「大丈夫か」

 

「大丈夫、ありがと〜」

 

 その言葉と同時に本音が腕に抱きついてきた。え?

 

「あたってるんですけど?!」

 

「あててるんだよ〜」

 

「( 'ω')ふぁっ!?」

 

 本音はにひひ~と笑ってきた。これ何てエロゲ?

 ふと横をみると簪が睨んできた。怖っ。多分、手を繋ぎ押されてあれが当たってしまったからだろう。本当にごめんなさい(ごちそうさまでした)

 そんなやり取りをしていると織斑先生からプライベートチャネルに通信が来た。

 

〘城谷上、そちらの状況は? 〙

 

〘俺が皆を落ち着かせました 〙

 

〘ご苦労だったな礼を言う 〙

 

〘いえ、ちょっと苛立っただけですから……遮断シールドがレベル4と生徒会長から聞きました。安全のため扉を破壊するのはダメでしょうか?〙

 

〘できれば自重してもらいたいが、正体不明のISは遮断シールドを破壊するほどの威力を持っていた。油断はできん……〙

 

〘 では、破壊するのは問題ないでしょうか? 〙

 

〘やむを得ん。好きにしろ〙

 

「イエスマム!」

 

 プライベートチャネルを切り「皆、離れてくれ」と叫びつつISを展開する。

 《大口径榴弾砲(ハウザー)》を肩で構え、扉に砲身を向ける。人がいないか心配なのでプライベートチャネルで楯無さんに伝える。

 

〘楯無さん。扉付近に人は?〙

 

〘大丈夫。私だけだから〙

 

〘了解です〙

 

 プライベートチャネルを切り皆に伝える。

 

「爆発音が聞こえるぞ! 耳を塞げ!! FIRE IN THE HOLE!!」

 

 皆が耳を塞いだ瞬間に俺は砲撃した。先程の英語は意訳すると爆発するぞ、という警告である。

 

ドカアァァァァァン!!

 

 扉を破壊し、アリーナ観客席内の生徒が一気に飛び出す。中にはお礼を言ってくれる人もいたので少し照れくさくなった。

 

「ふぅ……」

 

 その後は一夏の様子を見るため扉の前で簪と待機する。本音は危険なのでクラスメイトの谷本さんに引き渡した。

 楯無さんは司令室に用がありいない。開かない扉から交戦中の音が聞こえてくる。

 しばらく無事を祈って待っていると目の前の扉のハッキングが成功したのか開き、簪とアリーナへ向かった。

 そこにはボロボロになった一夏と破壊された【正体不明のIS】がいた。

 他にも鈴やセシリア、何故か中継室に箒がいた。

 だがしかし、ホッとしたのも束の間(つかのま)、上から更に何か降ってくる。

 

ドォォォン!

 

 またもや正体不明のISがやって来た。

 先程とは違って腕が巨大で触覚の様なものがなく、言ってしまえば別のISだった。遮断シールドもまた締まってしまっている。

 

「おい、嘘だろ……」

 

「不味いわね……一夏、アンタはエネルギーがないからピットに避難しなさい」

 

「で、でも」

 

「行けよ一夏。お前は頑張った。後は俺らに任せろ」

 

「お、おう、分かったお前ら死ぬなよ!」

 

「もちろんですわ」

 

「了解」

 

「わかった」

 

「わかってるわよ」

 

 そのまま鈴がボロボロの一夏をアリーナの死角まで運び俺達は奴の相手をする。

 

「さぁ……かかってこい三下ァ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「太一と簪、アイツは恐らく無人機よ。さっき破壊したISには人がいなかったわ!」

 

 無人機、ISは人がいないと動かない筈だがどういうことだろうか。

 ええい!そんなのどうでもいいや破壊することだけ考えよう。

 

「ご報告どうもこれなら破壊する気満々で戦えるぜ」

 

 途端に無人機にロックオンされ、セシリアより高い威力のビーム兵器が飛んでくる。

 咄嗟に《雷艦》でそれを吸収した。アリーナのバリアを貫通する威力だ。当たったら一溜りも無い。

 

 セシリアが隙をみて撃つが無人機は普通に避けてビームを放つ。

 この無人ISは基本遠距離型らしくセシリアが適任だ。

 俺はビーム兵器なら吸収できるので援護にまわることになる。

 

「セシリア、簪を攻撃に鈴は隙をみて切りかかってくれ。俺は援護する」

 

 獰飆の《雷艦》は全部で四つだ。三人くらいなら余裕で援護可能である。四人はちょっと忙しくて難しい。

 セシリアが戦い、鈴も《龍砲》や《双天牙月》で戦っていたが先程の戦闘でシールドエネルギーが残っていなかった。

 

「鈴、そろそろ一夏のところへ避難した方がいい」

 

「仕方ないわね。アンタたち頑張りなさいよ!」

 

「おう!」

 

「もちろんですわ!」

 

「わかった!」

 

 俺は《改良型ガトリング砲(レーザーバルカン砲)》を展開する。

 これは前回のガトリング砲に荷電粒子砲を搭載させ、IS用に改良されたものである。これならISに対応しやすくなるため頼りがいがある。ただし、当たるとは言ってない。

 三人で戦闘中だが、未だにかする程度しか与えてないため向こうはピンピンしている。こちらのシールドエネルギーも吸収し過ぎたせいで半分消耗してしまった。ここまできたなら。

 

「簪、今だ!」

 

「わかった……!」

 

 簪は《山嵐》のミサイルを全機放つ。四八発のミサイルが無人機に向かう。

セシリアもBT兵器を操作してビームを放つ。流石に避けることが出来なかったのかミサイル八発、ビーム五回程度命中した。

 かれこれ五分経つがまだ無人機(仮)は動けるようだ。しぶといな。

 自分はビームを吸収しつつ無人機に吹き飛ばされたりしたため、シールドエネルギーが残り少なくなってきた。

 

 再びビームが飛んできたためエネルギーを吸収すると、

 

『エネルギー吸収率 80%です』

 

と氷歌から伝えられた。これが100%の時、強力なものになると聞いたが、どんなものなのだろう。

 それに皆、シールドエネルギーも残り少ない。一か八かやるしかない。

 

無人機(仮)から次々と飛んでくるビームを俺は4つの《雷艦》で吸収していく。

 

『84%』

 

シールドエネルギー残り165

 

『89%』

 

シールドエネルギー残り136

 

『94%』

 

シールドエネルギー残り112

 

『99%』

 

シールドエネルギー残り79

 

『100%…《雷艦》

REFLECTION LASAR(リフレクションレーザー)発射可能です』

 

 エネルギー満タン。全ての《雷艦》が一体化し砲身の形となり、水色の輝く球体の光を灯す。

 そのまま、無人機(仮)に向かって一直線にレーザーが放たれた。

 その威力は無人機のビーム兵器より遥かに強く音速を超えそうなほどの勢いで進む。

 さらに、ロックオン機能もありレーザーは空気上で屈折し、反射させながら無人機を追いかける。それを擦り削りを繰り返し――

 

――無人機(仮)の肩を貫いた。

 

 怯んだ隙をみて簪、セシリアは集中砲火を食らわせる。ほぼ大破しかけている無人機(仮)は最後まで動こうとしていた。

 

「失せろ!」

 

 拳を握り瞬時加速で無人機(仮)に向かい、渾身の力を振り絞って思いっきり殴ると、幻想殺し音が鳴り響いた。

 

 無人機(仮)の顔面に直撃しガクガクと音を立てながら停止した。幻想殺しの効果音が素晴らしくてスッキリした。

 

「一件落着かな」

 

ふぅ、と安堵の息。

 

「多分……近くにIS反応はないから」

 

「やっと終わりましたわ……」

 

 俺達は一夏や鈴がいるピットまで向かい無事を確認した。一夏は背中を痛めていたが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 保健室。この正体不明IS侵入事件で一夏が一番ボロボロだった。言ってしまえば一夏以外元気だ。

 今は俺と一夏の二人で話していると、誰かが来たのに気づき振り向いた。

 

「あ、どうもです。織斑先生」

 

 織斑先生が一夏の元へやって来た。

 

「特に体に異常はないが背中に打撲がある。数日間は我慢するんだな」

 

「は、はあ」

 

「最大出力の衝撃砲を背中に思いっきり受けたんだぞ。しかも、絶対防御もカットするとは、よく死なずにすんだな」

 

 絶対防御カットってどうやったんだよ。

 

「まぁ、無事で何よりだ。一人しかいない弟に死なれては目覚めが悪い」

 

 多分、内心は若干違うだろうが照れ隠しだろう。

 俺がいるから言えないだけかもしれないが、そうでもなさそうだ。

 その表情は俺達にしか見せない柔らかな顔をしている。

 

「何を考えている? 城谷上」

 

「いえ、別に何も」

 

 ひぇー、心読んだのかよ怖っ。

 

「さて、仕事に戻るとしよう」

 

その時、箒が入ってくるが、

 

「一夏――」

 

「お前には聞きたいことがある。私と一緒に来るんだな」

 

 どうやら説教タイムらしい。箒、おめでとうございます。南無阿弥陀仏。

 

「えっ、何のことですか?」

 

「ほう? 勝手に中継室に入ってマイクを使い、叫んだのはどこのどいつだろうな」

 

「……私です」

 

「宜しい。じゃ行くぞ」

 

 そして二人は保健室から出ていった。

 

「にしても三人で集まるとは懐かしいくらいだな」

 

 一夏が懐かしさを感じたのか呟き出した。

 

「そうだな。小さい頃、千冬さんもたまに居たからな」

 

 思い出話をしていると鈴がてくてくとやって来た。

 

「大丈夫だった? 一夏」

 

 心配そうに首をかしげる鈴。これは狙ってるだろう。しかし、一夏には無意味だけどな。

 

「まぁな、打撲ですんだし」

 

「よく打撲ですんだわね……それと、試合は無効だってさ」

 

「じゃあ勝負の決着はどうするか……」

 

「あの事はいいわ。その……私も悪かったし」

 

「ごめんな、俺も色々悪かった」

 

 いい雰囲気になった二人は握手して仲直りした。鈴は少し頬を赤くしていたのは言うまでもない。

 

「――あっ、思い出した」

 

 約束のことでも思い出したのか、突然一夏は手のひらをポンっと叩いた。

 

「おぉ、思い出したか!」

 

 ついきたか、と興奮した俺は一夏に詰め寄っていく。

 

「あぁ、確か……『料理が上達したら、毎日あたしの料理食べてくれる?』だろ?」

 

 その言葉に鈴はさっきよりもっと頬を赤くし照れていた。これは期待せざるを得ない。

 

「……てっきりタダ飯かと思ったが……もしかして別の意味なのか? 例えば『毎日、味噌汁を――」

 

 ついに、一夏がプロポーズの意味に気づくのか。

 

「ち、違わない! 違わないわよ! 幼なじみに食べてもらったら上達するとかそういうことよ!」

 

 知ってた。鈴もそうだが一夏ヒロインはヘタレなのが弱点だろう。

 一生に一度くらいのチャンスをみすみす逃すとは、もう終わりだろ、これ。

 あとで、鈴に煽りメッセージでも送ろ。

 

「……お、おう。それでこっちに戻ってきたってことはお店またやるのか?」

 

「……ええと……実は……私の両親、離婚したからもうお店はしないんだ……」

 

 地雷踏んだ一夏であったがこれはしゃーなしだな。

 

「そうだったのか……」

 

「そういうことだったか……」

 

「家族って難しいよね」

 

 俺には余り分からない。なので、ここは一夏が適任だろう。一夏には家族は千冬さんだけだ。俺には両親がいるからな。個人保護プログラムで何処かへ旅したが。

 

「……今度、遊びに行くか!」

 

「え? それってデー――」

 

(あっ…(察し))

 

「太一と弾、数馬も一緒にさ」

 

 知ってた(2回目) 。一夏に期待なんてしてはいけないね。ほら、鈴はすげぇ不機嫌だし。

 

「……行かない」

 

 デスヨネー。これがわからない一夏もそうだが、それ以前にコイツに期待するだけ無駄だとわからない鈴も鈴だろう。何年の付き合いだと思ってんだ。

 

 その後はセシリアが来て、一夏のコーチ的なもので争い始めた。関わりたくないので、コッソリ逃げてきた。

 

「はぁ……」

 

「太一くん」

 

「あ、え? ……楯無さんですか」

 

「あ、え? じゃなくて今日はお疲れ様」

 

「あ、はい。ありがとうございます」

 

「いやー驚いちゃったわ。映像みたけど何? あの必殺技みたいなの……」

 

 《雷艦》のことか。実際、俺も初めて使ったからよくわからんのだが。

 

「やがみ〜ん」

 

「太一」

 

 本音と簪もやって来た。

 

「おう、本音に簪」

 

「それで太一くん。《雷艦》のことで聞きたいことが」

 

「はい。簡単に言えば、エネルギーを貯めて満タンになったら強いレーザーを出せるヤツです」

 

「随分とテキトーね。まぁ皆、無事で何よりよ」

 

「はい。ではこの後は寮待機なので……失礼します」

 

「じゃあね、三人とも♪」

 

 そう言って簪と本音で部屋に向かった。

 今日は非常事態が発生したこともあり、早くから寮待機となったのだ。

 こっちも疲れてるので有難い。シャワーも一時間早く浴びたいくらいだ。

 

「早速だが本音、何故腕に抱きつく……」

 

「落ち着くから〜」

 

「お、おう……」

 

 あの時といい俺には素晴らしいご褒美であるが、廊下のど真ん中でやるのはどうかと思う。今度は簪が羨ましいそうにみてるし。あ、睨まれた。

 

「本音……離れて」

 

「え〜」

 

 簪が本音を退かそうとするが、本音は俺の右腕から離れる気はないようだ。

 

「……はぁ」

 

 どうやら簪は諦めたようで。

 ふと時計をみると夕食まで時間があった。ということで、部屋でアニメをみることにしよう。

 その名は、〝プリズマ☆イリヤ〟だ。Fateシリーズだが、全く別物である。

 これは百合要素が豊富、イリヤ救済の一つなので、かなりお気に入りだ。

 

 流石に本音は部屋に戻ると腕に抱きつくことはなかった。

 本音は落ち着くからと言っていたが、本当にそうなのだろうか。

 まさか――

 

――いや、ないない。有り得ない。

 

 全く縁のない考えに、俺は全力で否定する。

 そう言えば、イリヤの声と本音の声似てる気がするな。

 すぐに別の思考へと逃げ込む俺氏であった。

 

 




7400文字、少し多いほうかな。


━━ロミー・ベンサム(仮)

アニメで簪の相手として表記されていた人ですが‥‥画質悪くて読みにくかったんで(仮)です。

━━何でもは知らないわよ、知ってる事だけ

物語シリーズにありましたね。
羽川もブラック羽川も悪くないっすね。最高っす。特におっp(自主規制)

━━あててんの~(あててんのよ)

これは、主に女が胸を男の背中に押し付けながら言い放つ台詞の一つですが、ここでは腕に当たってます。元ネタはググってくんさい。

━━( 'ω')ふぁっ

調べなくて結構です。

━━ゴーレムⅠ

最初に原作バージョンと一夏たちが戦い、2回目はアニメ版のゴーレムⅠです。ゴーレムⅠとゴーレムⅠv2ですね。

━━三下ァ!

本当の意味的には«雑魚»とか口の悪い言葉ですが、とある魔術の禁書目録に出てきたセリフとして使ってます。

━━REFLECTION LASAR

エネルギーを満タンにしたときに起こる必殺技です。
ご都合主義にはもってこいですね!
四つのビットが合わさり砲身を作り出しますが展開装甲ではないです。はい。ロックオン追尾でレーザーは反射しますがそこらへんはISなので問題ないでしょう。IS自体が非現実的なので‥‥

━━箒の扱い

箒ファンの方すみません。箒の扱いは途中で良くなるんで、もっと後になってからのお待ちを。

━━しゃーなしだな

これはゾンビですか?のハルナが言うのが元ネタのつもり。

━━楯無さんはヒロインの筈

もうすぐ楯無の出番が増えます多分

━━本音がアコガレルートへ到達しました。

ワァ───ヽ(*゚∀゚*)ノ───イ
腕に抱きつく程度なら本音はやるのでこうしました。後ほどスキルートになります。

━━簪は抱きつかない。(抱きつけない)

恥ずかしいでしょうから(震え声)

━━プリズマ☆イリヤ

百合要素ありのFate、イリヤの中の人と本音は同じです。
いや、前言撤回!中の人などいない!

━━主人公も鈍感

この場合、主人公は二次コン主義になっているので一夏並ではないが自分を悲観して鈍感化してます。つまり腕に抱きつくくらいならご褒美みたいなもの。


まぁ、言ってしまえば、太一は本音を、人に平気で抱きつくビッ○と思ってるんでしょうね。





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第三章
第16話 ヒッコシ


ついに2巻目突入ですね\( 'ω')/

やっとシャルロットが登場すると思った?残念次回に出ます。サーセン



※最近、リメイク版第一章と第二章を投稿したので、ここから文章のクオリティが下がっていると思われます。後ほど、修正しますのでしばらくお待ちください。





 

 

 

「という訳で寮の変更ができたのでお引越しですよ」

 

 正体不明IS侵入事件から翌日の日曜日。今いるのは寮の部屋で、本音と簪もいる。

 山田先生が急とはいえ、引っ越しの知らせに来た。正直、美少女二人に囲まれて楽しく過ごせたから引っ越しはしたくはない。しかし、山田先生が頑張ってくれたので否定したくない気持ちも多い。

 

「り、了解です」

 

「えー、引っ越しちゃうの~?」

「そ、そんな……」

 

 二人は寂しそうに俺の方を向いて、ここに残ってビーム(KNB)を発動した。

 俺だって同じ気持ちである。しかし、頑張ってくれた山田先生が可哀想だろう。

 

「仕方ないさ。元々は一夏と一緒のはずだったしな」

 

「あ……二人の部屋はバラバラです。理由としては――」

 

 山田先生が小声で「転校生が来るんです。内緒ですよ」と言われ頷く。耳元で囁くのはやめてください、興奮してしまうので。

 

「つまり……どちらかに転校生が入ると?」

 

「はい。そうですよ」

 

「そういうことになれば、俺が引き受けますよ」

 

「本当? ありがとう、城谷上くん! それじゃあ……はい、鍵をどうぞ」

 

「あざっす」

 

 鍵を受け取ると、山田先生は急いでどこかに行ってしまった。番号は『1030』と書いてある。

 

「やがみ~ん、行っちゃうの~?」

 

「……太一」

 

「大丈夫、俺の部屋に来いよ。それなら問題ないし、部屋も近い」

 

「それじゃあ、お泊りしよ~!」

 

 ダボダボの袖を上に挙げて下げてを繰り返してはしゃぐ本音。見事にぴょんぴょん飛んでいる。あ^〜心がぴょんぴょんするんじゃ^~。

 

「……そう、だね。お泊り」

 

 まだ引っ越しすらしてないのにお泊りの準備をし始める簪。

 

「お、おう……」

 

 実際、校則で就寝時間の出入りは禁じられている。しかし、夜間の他部屋の宿泊は問題ない。

 なので、俺としてはいいが、それだと毎日転校生も合わせて四人部屋になってしまう。

 そういえば、転校生って女子だろうか。男だったら凄いことだが、訊いておけば良かった。女子なら非常に拙い。色んな意味で。

 

「さて、引っ越しの片付けとしますか」

 

 俺と同時に本音と簪はお泊りする準備をしていた。

 気が早すぎないだろうか。そこまで俺とアニメみたいということか。俺も大歓迎だから構わないが。

 

 片付けが終わり、1030号室に入る。

 部屋の中はベッド二つでモニターが五つ、椅子とテーブルに色々、最低限必要な設備が整っている。

 

――結論。ほとんど変わらない。

 

 まぁ、寮なんてそんなものだと思った。

 生活的に変わったのは俺専用のベッドがあることだろう。

 ん、なんかすげぇ飛び込みたい気分。

 

三 ヾ(⌒(ノ'ω')ノ ブーン

     ∩――――∩←ベッド

 

 とベッドに飛び込みぴょんぴょん跳ねる。周りから見れば 威勢のいい魚だ。

 

 コンコンっ。

 

 誰かきたが、まぁ、誰かは想像つく。本音と簪だろう。

 

「やがみん、きたよー」

「太一……入っていい?」

 

「おう。構わないぞ」

 

 ガチャっと入って無邪気に「わ~!」とはしゃぐ本音と、落ち着いた雰囲気だがはしゃぎたそうな簪だ。部屋の内装はほとんど変わってないんですがそれは。

 

「本当にここで泊まるのか?」

 

「「うん!」」

 

「いつまでだ?」

 

「知らな~い」

「分からない」

 

 おいおい、それじゃ『泊まり』じゃなくて『居候』みたいだろう。転校生も含めたらベッド二人に一つだぞ、狭すぎるわ。

 

コンコンっ。

 

「おーい、太一。お邪魔していいか?」

 

 またノックされて誰かと思ったら一夏だった。ここに二人も女子を連れてきているが、いつも女子と戯れている一夏なら問題ない。

 

「おう」

 

 一夏がゆっくりと扉を開けて入ってくる。

 

「やっと一人部屋になったけど、転校生引き受けて本当に良かったのか?」

 

大丈夫だ。問題ない((いえ、大丈夫ではないです))

 

「そうか……って、のほほんさんに簪さん。何故そこに……」

 

「ここで泊まるんだ〜」

「泊まるから……」

 

「泊まる?! 転校生も来るのにか?」

 

「そこなんだよなぁ。四人でベッド二つって……」

 

「一緒に寝よ〜!」

 

「はい?!」

 

 本音が提案した言葉に驚いてしまった。少なくとも俺に向けて言われたのがよく分かったからだ。なんて恥じらいのない子なんでしょう。

 確かにあのベッドは二人ほど余裕で入れるが、俺はその状態で寝れるだろうか。理性を保つために寝れなくなって朝になるオチだろう。

 

「ま、まぁ……太一。俺、箒に呼ばれてるからまたな」

 

「お、おう」

 

 一夏が部屋から出た後。

 

「じゃあ、私はやがみんのとこ〜」

 

「本音……それはちょっと」

 

 簪は羨ましそうな顔をしていたが、結局、ベッドは簪と本音で使うこととなった。転校生が来たら泊まらないと言ってたのでこちらとしては助かる。

 

 この日は三人で〝ご注文はうさぎですか?〟を見た。

 見事に心がぴょんぴょんしたが、これは今朝本音がぴょんぴょんしてたから決めた訳では無い。これに異論は認めない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱハヅキ社製っていいね」

 

「えー? ハヅキってデザインだけって感じしない?」

 

「デザインがいいのよ。デザインが」

 

 六月頭の月曜日。俺が本音の横で立ち往生していると、後ろの女子はISスーツの話をしていた。

 なぜ立ち往生してるかって? 本音が俺の机で寝ちまったからだよ。

 

「そうだ。織斑くんと城谷上くんって何処のISスーツ?」

 

「あー、特注品だと。男のスーツがないから、どっかのラボが作ったらしいよ。もとはイングリッド社のストレートアームモデルって聞いてる」

 

「俺も一夏同様だけど。形が違うね」

 

 俺のISスーツは一夏に比べ露出度が低い。

 一夏は腹の周りが剥き出しだが、俺の場合、腹筋とかそんなもの見えるわけないので身体に自信が無いのだ。だから、腹回りも覆われている。

 

「ISスーツは肌表面の微弱な電位差を検地することによって、操縦者の動きをダイレクトに各部位へと伝達、ISはそこで必要な動きを行います。また、このスーツは耐久性にも優れ、一般的な小口径拳銃の銃弾程度なら完全に受け止めることができます。あ、衝撃はきえませんのであしからず」

 

 そう言いながら山田先生がやって来た。

 言ってしまえば防弾チョッキの軽量化版みたいなやつだろう。これを毎日来て、テロリストとかに撃たれても骨にヒビが入る程度と言うことになる。それって重傷やん。

 

「山ちゃん詳しいね!」

 

「一応、先生ですから……って、山ちゃん?」

 

「山ぴー見直したぁ!」

 

「今日が皆さんのスーツ申し込み開始日ですからね。ちゃんと予習してきてあるんですよ。えっへん……って、山ぴー?」

 

 入学してから二ヶ月経つが山田先生には九つほどのニックネームがあったはず。確か、本音が「やまっちー」とか言ってたかもしれない。

 

「あのー教師をニックネームで呼ぶのはちょっと……」

 

「えー、いいじゃんか」

 

「まーやんは真面目だね」

 

「まーやんって……」

 

 山田先生が段々可哀想にみえてくる。教師が生徒と親しい仲になるのは別に悪いことではないと思うが、ニックネームが多いにも程がある。

 ついでに俺もあだ名を考えよう。真耶、まや、マヤ、やべ、心がポイポイしそう。〝条河 麻耶〟か、道理で引っ掛かると思ってたがスッキリした。今度から山田先生を麻耶先生って呼ぶか。

 そんなことを考えていると織斑先生(鬼教師)が来たので本音を起こすことにした。

 

「起きろ、織斑先生がきた」

 

「ほぇ〜? うん、わかった~」

 

 寝ぼけてるのかいつもより余計にのほほんとしている。

 普段どれだけ彼女がのほほんとしてるか、実感できるだろう。寝起きの本音はいつ見ても可愛い(確信)。

 

「諸君、おはよう」

 

「「「「おはようございます!」」」」

 俺のみ小さく敬礼する。もう、ここは軍事基地でいいんじゃないですかね。実際、こんなのも悪くないけどね軍人気分になれるし。

 

「今日からは本格的な実戦訓練を開始する。訓練機ではあるがISを使用しての授業になるので各人気を引き締めるように

。各人のISスーツが届くまでは学校指定のものを使うので忘れないようにな。忘れたものは代わりに学校指定の水着で訓練を受けてもらう。それもないものは、まあ下着で構わんだろう」

 

 下着は冗談でもまずいと思われる。俺達は男なわけで、ここでそのような話は遠慮願います。あ、色々な人からの視線を感じるのですがそれは。

 

 ついでに、体操服はブルマという素晴らしいジャージだそう。

 そして、制服は基本的な改造のみ許されている。露出度が高すぎるとレッドカードを出されるらしい。

例えばわ本音ならダボダボの袖になっているし、簪は二の腕部分に腕輪みたいなものを付けている。

 俺は一夏の制服と大して変わらないが、袖を切り離すことができるようにしている。つまり、半袖状態に出来るわけだ。夏は暑いので冷房が効いていようとも暑いものは暑い。

 

「では山田先生、ホームルームを」

 

「は、はいっ」

 

 山田先生にバトンタッチする織斑先生。

 眼鏡を吹いていたらしくわたわたしていた。可愛いです。

 

「ええとですね、今日はなんと転校生を紹介します! しかも二名です!」

 

「はい?」

 

「「「えええええっ!?」」」

 

 転校生が来るのはもちろん知っていた。だが、転校生が二人というのは聞いてないし、どうして一組に転校生が集まるのかわからんのだが。

 

「失礼します」

 

「……………」

 

 入ってきたのは女子一人と男子?一人であった。

 

 

 

 




他作品ネタが全部、ごちうさじゃないですか。

※改良しました。2017/05/14

━━ご注文はうさぎですか?

あ^〜心がぴょんぴょんするんじゃ^~

━━条河麻耶

ごちうさに登場する。チマメ隊の一人

━━KNB

思いつきで適当に入れた。反省も後悔もしている。



次回からシャルロットとラウラです。


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第17話 エプロン

これはクラス対抗戦の翌日の話です。転校生が来る前に戻ります。ご了承ください。



 

 

 

 

 

 翌日、部屋の引越しを終えた後の昼食後、俺は一夏にSNSで「俺の部屋に来てくれ」と呼ばれた。

 したがって、今は一夏の部屋の前にいる。

 本音や簪には待機命令を俺が出したため、部屋でなにかしてるところだろう。本音だけはお菓子を食べているはずだ。

コンコンっ

 

「入っていいぞ」

 

「何でしょう?」

 

 部屋に入ると一夏以外に鈴、箒、セシリアもいた。

 一夏は立っていて、鈴は手前のベッドであぐらをかいている。それから、箒は鈴の隣で腰掛けていて、セシリアは礼儀正しく椅子に座っていた。

 

「あれよ、あれ。昨日のレーザーのやつ」

 

 昨日のレーザーとは《雷艦》の必殺技のことだろう。〝とある科学の超電磁砲(レールガン)〟の御坂美琴が放つレールガンのようににカッコイイ反射レーザーのことだ。名前は、なんだったか。

 

(氷歌、雷艦の必殺技名は何だっけ?)

 

『REFLECTION LASARです。マスター』

 

(あざす)

 

 勿論、このやり取りは周りに聞こえない。しかし、これでは数秒間俺が黙って空中ディスプレイを眺めているだけに見えてしまう。

 

「……REFLECTION LASAR だ」

 

「……あれは一体何なのです! ブルーティアーズが最大稼働でないと不可能なビームの軌道も変えられるんですの?!」

 

 そうだった。セシリアのブルー・ティアーズは本来、ビームの軌道も変えることができる兵器だ。

 だが、俺のはビームの軌道を変えられるのではなく、追尾反射射撃である。

 

「いや、あれは追尾反射射撃だ」

 

「追尾反射射撃ってなんだ?」

 

「そのまんま、相手をロックオンして追尾できるレーザーで空中で反射することも可能な射撃だ」

 

「なん……だと……」

 

 一夏が疑問に思ったので俺が答える。

 その後の一夏の反応が、ネットスラングな言い方だった。どこで覚えたかと思えば、教えたのは俺だったのを忘れていた。

 

「アンタのそれ脅威的すぎない?」

 

「規格外過ぎますわ!」

 

確かに規格外で脅威的過ぎるかも知れないが、それを作り上げたのは束さんなのでなんとも言えない。どちらかといえば、白式の零落白夜の方が規格外だと思われる。

 

「太一。お前の雷艦やらと一夏の零落白夜の違いは何なのだ?」

 

 今まで黙っていた箒も疑問に思い、俺に訊いてきた。

 

「そうだな……雷艦はエネルギー類ならほとんど吸収するけど、シールドバリアは吸収できない。見えないからな。攻撃も100%まで溜めないと使えない。それと単一仕様能力でもない――」

 

 もしかしたら、実体あるエネルギー系でないと吸収出来ないのかもしれない。龍砲の衝撃砲みたいなものとかシールドバリアとかは目に見えないからな。

 

「――零落白夜の場合、単一仕様能力だし攻撃特化型だ。絶対防御すら貫通切り伏せることができる下手したら殺人兵器。違いって言ったら防御と攻撃の違いではないのか?」

 

「でもREFLECTION LASARなら絶対防御も貫通しちゃうんじゃ……」

 

 鈴が心配そうに言う。

 

「安心しろ。あの無人機は絶対防御が無かったから貫通できただけだ。おそらく本来はシールドエネルギーを削らせるためのレーザーだと思う――」

 

 それでも、当たればシールドバリアは貫通し、シールドエネルギーは半分以上どころか全て吹き飛ぶらしい。エネルギー満タンまで無人機のレーザーを十数回吸収しないと撃てないからな。攻撃力は半端ない。

 

「――難点としてはエネルギー満タンまで時間がかかること。いくら反射レーザーでも避けれない訳では無いこと。零落白夜みたいにシールドエネルギーも減っていくこと。とか……段々ややこしくなってきた……」

 

 説明しすぎて頭が混乱してきてしまった。

 他にも雷艦はスラスターと連結してる状態が基本なので壊されやすいこと、実体攻撃に弱い、ビーム系しか防御できないなど、多々ある。

 

 だが単一仕様能力じゃないのがよく分からない。まだ単一仕様能力にまで至ってないということだろうか。

 

「言ってしまえば対エネルギー兵器用兵器ってところか?」

 

「そうなるかもな」

 

 一夏の答えは正解だと思う。

 

「それなら一夏さんは対IS用兵器となりますわね……」

 

「そういうことだ。例えば、一夏が攻撃なら俺は防御ってことになる」

 

 あくまで例えばの話だ。両方とも束さんが作ったものなのでどんな意図があるか分かっていない。束さんが白式に零落白夜を埋め込んだという情報は織斑先生からきた。

 

「それにしても、羨ましいですわ……。似たようなビットを持ってますのに」

 

 セシリアは最大稼働時、ビームの軌道を変えることができるらしいが、それ以前の問題で移動しながらビットが使用できないのだ。多分そのことだろう。

 

「どうにかして、ビットと移動を同時にできるようにしないとな……」

 

「何かコツとかありませんこと?」

 

「……ない」

 

「そんなむちゃくちゃですわ……」

 

「集中力しかないな」

 

「集中力……」

 

「セシリアの場合は攻撃しながら動かすから、まずは攻撃なしで同時に動かす努力をすればいいと思う」

 

 イマイチ説得力ないな。

 

「なるほど……分かりましたわ」

 

「お、おう」

 

「まぁわかったわ。アンタのビットのこと」

 

「じゃ、俺は用があるから」

 

「用ってなんだ?」

 

「この後、楯無さんと訓練だからな」

 

「いいなぁ……俺も楯無さんに教えてもらいたいぜ」

 

それをここで言える一夏は凄いと俺は思った。

 

「それはどういうことだ一夏!」

「アンタねぇ……せっかく教えて上げてるのに!」

「わたくしが一生懸命教えて差し上げてますのに感謝の気持ちもありませんの?!」

 

 ほらね。

 

「一夏、骨は拾っとくぜ」スタタタタ

 

「おい!まってくれ――」

 

 無言で扉を閉める。「さて、楯無さんと訓練してくるか」と呟いたら、部屋の中から怒鳴り声が聞こえてきた。

 

『大体、お前が理解出来ないのが悪いだろうが!』

 

『感覚よ! 感覚でわかるでしょ!』

 

『とても素晴らしく丁寧な教えをどうして理解出来ないんですの?!』

 

 だって箒は擬音ばっか使って教えてるし、鈴は感覚で教えようとするし、セシリアは間違ってないが戦争みたいに 『一時の方向に斜め45度……』みたいに聞こえるから、一夏には理解しにくいだろう。それぞれが何もわかっちゃいない。

 

 結論、楯無さんは最高だぜ!

 

 俺は気分が良くなったため口笛を吹いていた。

 

パシンっ!

 

「いでっ!」

 

「廊下のド真ん中で口笛を吹くな馬鹿者」

 

「すみませんでした……」

 

「分かればいい」

 

 織斑先生が去った後、ほっと一息ついてから、特訓の準備をするために自分の部屋に着いた。

 

ガチャっ

 

「ご飯にする? お風呂にする? それとも わ・た・し?」

 

「……」

 

 無言のそっ閉じ。一瞬、裸エプロン先輩が見えた気がする。

 何かの間違いかと思って部屋の番号を確認する。1030、間違いない。

 

 深呼吸して扉を開ける。

 

「ご飯にする? おふ――」

 

 速攻で閉める。

 

 これは夢だな、きっと夢だ、そうそう夢なのさ、と俺は思って目をこすり、顔を両手で叩き気を取り直す。

 そしてまた、扉を開ける。

 

「ご飯――」

 

 バタンっ!

 

 どう足掻こうと、これは夢ではなかったようだ。

これはやはり、裸エプロンだ。〝おくさまが生徒会長!〟とかにある裸エプロンだろうか。

 いやいやいや、おかしいおかしいおかしい。何で楯無さんが裸エプロンなのか。

 

 結局、意を決して扉を開けた。

 

「ご飯にする? お風呂にする? それともわ・た・し?」

 

「……ご飯で」

 

「もう、太一くんったら、どうして私にしなかったの?」

 

「俺みたいなヘタレアニオタにそんなセリフが言えるとでも?」

 

「無理ね」

 

 はっきりと言われてしまった。いや、自分からヘタレって宣言したから別にいいのだが。本当にいいのだが。

 

「……それで。楯無さんは何故、ここに?」

 

「君を驚かすためよ。ほら」

 

 くいっと楯無さんが腰を曲げる。すると、しっかりと青い水着らしきものを着ていた。少しがっかりしたのは言うまでもない。しかし、おかげでキングダムが平常である。

 

「なんだ、水着か……」

 

「なぁに? その期待外れで残念そうな顔は」

 

「そりゃ、期待するでしょう。アニメでしか見たことない状況なんですから」

 

「じゃあ脱いだ方がいいかしら?」

 

 チラッと水着の紐を指で摘み解こうとする。その動作がいちいちセクシーだった。

 

「い、いや! やっぱりやめてください!」

 

「冗談よ♪」

 

「……デスヨネー」

 

 本当にこの人は俺をからかうのが好きみたいだ。

 

「それで、特訓は……?」

 

「あら、すっかり忘れてたわ」

 

「それじゃ今すぐ――」

 

コンコンっ

 

「ゲッ! 誰だ?!」

 

「私とかんちゃんだよ〜」

 

「なんだ、本音と簪か。なら――」

 

 良くない良くない良くない良くない!

 この状況は拙いぞ。拙い拙い拙い。しかも何故、楯無さんは呑気な笑顔なんだ。

 

「入るよ〜?」

 

「あっちょま――」

 

 ガチャ。

 

 本音と簪が入った途端に、楯無さんの姿を見る。それに本音は驚き、簪はドン引きしていた。

 

「あら、簪ちゃんと本音ちゃん」

 

「お姉ちゃん……」

 

「あ、たっちゃんさーん。大胆なプレイですね〜」

 

「これは違うぞ……プレイとかじゃなくて俺がいる前からな」

 

「大丈夫。分かってるから」

「だいじょ〜ぶ」

 

 信頼性を勝ち取ってて助かった。本音と簪だから許してくれたのか。

 

「そっか……良かった」

 

「どうして、そんな格好してるの? お姉ちゃん」

 

 簪が楯無さんの水着エプロンに疑問を抱く。

 

「驚かすためよ」

 

「驚かすって……」

 

 自分の姉が驚かすために裸エプロン(水着エプロン)をやってるから引くだろう。

 

「ほら、いつも特訓頑張ってるからご褒美よ」

 

 どうやら、あれはご褒美だったようだ。なんか複雑な気持ちだけどすげぇ嬉しいです。

 

「あ、そうだったんですか……ははは」

 

「……太一は裸エプロンが好きなの?」

 

「いや、好きっていうか。嫌いではないというか……ねぇ?」

 

 微妙なところだ。ここで好きとか言えば全員に引かれてしまいそうであり、嫌いって言えば俺のアニオタ魂が廃るからである。

 

「――今度やってみようかな……」

 

「はい?」

 

 簪が何か言ってたがあまり聞こえなかった。本音は聞こえてたのかニヤニヤしていた。

 

「……何でもない! 何でもない!」

 

「お、おう」

 

 なんか変な簪だなぁ。

 

 その後は楯無さんと第三アリーナで特訓を二時間ほど行った。模擬戦もしたのだが見事に負けた。

 楯無さんのISは基本的に最強のナノマシンを利用してるため、雷艦が役に立たないのだ。なんとも素晴らしい欠点である。

 

 

 




楯無の出番が少ないのでそろそろこのシーンはと思い書こうとしましたが他作品とタイミングが被ってしまうので時系列を戻しました。

※改良しました2017/05/14

━━とある科学の超電磁砲

レールガン最高だよね。カッコイイ。んーなんだかんだでとあるネタ多い希ガスる‥‥。

━━なん・・・だと・・・

BLEACH

━━おくさまが生徒会長!

エロアニメの部類に入ります。r18とは違いますけど。

━━キングダム

ここでは【だから僕は、Hができない。】の加賀良介が自分の股間に対していうセリフ(多分)

あのアニメってATXとかだったらほとんど規制がなく戦闘中すらB地区(ち〇び)が見える素晴らしいアニメなんですよね。





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第18話 フツドク

やっとシャルロットが登場しました。(o´Д`)


他作品と文が似てる又はそっくりな場合、原作の文をそのまま書いてます。


 

 

「では、挨拶宜しくお願いします」

 

「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。この国では不慣れなことも多いかと思いますが、みなさんよろしくお願いします」

 

 教室。三人目の男子であるシャルルは、にこやかな顔をして一礼をした。

 本来なら、俺は三人の男子が来たことに驚くはずだ。しかし、それどころではない。目の前にいる男子がまるで女子のようだったからである。

 ブロンズカラーの金髪を後ろに束ね、見た目は中性的に整った顔立ちで男には見えなかった。所謂、男の娘だ。

 

 ここで思うのが、男の娘という言葉についてである。例えば、

 

〝バカとテストと召喚獣〟木下秀吉

 

〝やはり俺の青春ラブコメはまちがっている〟戸塚彩加

 

〝シュタインズ・ゲート〟漆原るか

 

 もっとあるが、これらは全て男の娘だ。身長も低く、顔も声も女らしい。

 

――だが男だ。

 

 いや、秀吉の性別は『秀吉』なのが常識だったかもしれない。

 

「お、男……?」

 

「はい。こちらに僕と同じ境遇の方々がいると聞いて本国より転入を――」

 

「きゃ……」

 

「はい?」

 

「「「きゃあああーーーっ!!!」」」

 

 興奮したのか声を荒らげる女子たち。

 ここが共学であったなら、バランスよく男子の低音ボイスが混ざり合っただろう。だが、ここはあくまでも女子高。高音だけが耳に響いてしまう。

 

「三人目の男子だよ!」

 

「しかも、うちらのクラスぅ!」

 

「美形! 守ってあげたくなる系の!」

 

「マジやばくない?」

 

「男の娘みたい!」

 

 次々と言われる女子たちの歓喜の声。

 そして最後のお主、男の娘と言ったな? 同志よ君とは美味い酒が飲めそうだ。

 

「騒ぐな。静かにしろ」

 

「皆さんお静かに。まだ自己紹介が終わってませんよ!」

 

 二人の先生の言葉で教室は一瞬で静まる。これが山田先生だけなら騒ぎっぱなしかもしれないが、流石に織斑先生の前では逆らえないらしい。

 シャルルの隣にいたのは女子で、シャルルより身長が小さくロング銀髪で赤目、左目には本物の軍隊が使うような眼帯をしている。そして、美少女。

 ドイツの少女かどうかはわからないが、第二次世界大戦のドイツ軍で使われていた軍服みたいな格好をしていた。俗に言う乗馬ズボンだ。

 

 あの感じなら、

 

『爆ぜろリアル弾けろシナプス! バニッシュメントディスワールド!!』

 

とか言うと似合いそう。

 

「………………」

 

 だが今は、とてつもなく冷酷なオーラを彼女から感じる。

 ずっと黙っている上、腕も組んでいるのだから機嫌が悪そうだ。

 下手にあの少女を見ない方が身のためだろう。美少女なので見たい欲が溢れてしまいそうだが。

 

「……挨拶をしろ、ラウラ」

 

「はい、教官」

 

 そのラウラという美少女は、織斑先生を教官と言った。もしかして、本当の軍人なのだろうか。

 

「ここではそう呼ぶな。もう私は教官ではなく教師、お前も一般生徒だ。私のことは織斑先生と呼べ」 

 

「了解しました」

 

やはり、本物の軍人らしい。織斑先生も数年前にドイツへ行っていたと一夏から聞いたから、この先生の教え子だろう。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

 

「…………………」

 

 続きはないかとクラスメイトたちは思ったが、この軍人娘は黙ったままだ。

 

「あ、あの、以上……ですか?」

 

「以上だ」

 

 これは入学初日の一夏並に早い自己紹介だった。山田先生が泣きそうになってる。可哀想だな。

 

 そんなことを考えていると、急に軍人娘は俺の前に立つ。

 

「貴様が織斑一夏か?」

 

Nein(ナイン)(いいえ)。隣が一夏だ」

 

「……そうか」

 

 ドイツ語の数字とイエスノーだけは知ってる為、つい言ってしまったが理解できてくれたようだ。ドイツ人なら当たり前――

 

「貴様が……!」

 

――バチンっ!

 

「う?」

 

 突然軍人娘が一夏の前に立ち、彼をビンタしたので皆は呆然としていた。

 

「私は認めない。貴様があの人の弟であるなど、認めるものか」

 

 何を怒ってるのか、俺には理解し難いものだった。

 

「いきなり何しやがる!」

 

 流石の一夏もこればかりはキレるだろう。俺もビンタされたら――ビンタされたことあるわ。

 

「ふん……」

 

 一夏の言うことをラウラは華麗にスルーして自分の席へと座り、腕を組んだ。

 

「あー……ゴホンゴホン! ではHR(ホームルーム)を終わる。各人はすぐに着替えて第二グラウンドに集合。今日は二組と合同でIS模擬戦闘を行う。解散!」

 

 織斑先生、あの問題児を後で何とかして下さいよ。

 

「おい織斑、城谷上。デュノアの面倒を見てやれ。同じ男子だろう」

 

「あ、はい」

 

「了解です」

 

 改めて分かったが、シャルルがルームメイトになるらしい。つまり、男の娘と同室になるわけだ。

 

「君たちが織斑君と城谷上君? 初めまして。僕は――」

 

「ちょいその話は後でな。女子が着替えるから」

 

「だから早く更衣室に行こうぜ」

 

「え? う、うん」

 

 シャルルに説明して、俺達は急いで教室を出た。

 だが、途中で予想外の事態が起こった。

 

「あ! 転校生いたよ!」

 

「本当だ! 織斑くんも城谷上くんもいる!」

 

「みんな走って!」

 

「者ども! 出会え! 出会えい!」

 

 俺たちは武家屋敷にきた侵入者だろうか。ここで捕まると厄介だろう。詰んで、遅刻して、おじゃんの巻だ。

 

「これはどうしますかな~」

 

「えらく呑気な喋り方だな……」

 

 俺達は走って追っ手を撒こうとするが、かなりしぶとい奴らだ。

 

「な、なに? なんでみんなあんなに騒いでるのっ?」

 

「そりゃ、俺らが男子だからだろ」

 

「……?」

 

 一夏の言葉に首をかしげたシャルル。なぜかしげるのだろうか。男なら理解できることだろうに。可愛いからいいけど。

 

「いや、珍しいだろ。今んとこISを動かせる男子は三人だけなんだから」

 

「ああ、うん。そうだね」

 

 代わりに俺が説明してシャルルは納得したみたいだ。なんだか変わった子が多いようだ、今回の転校生は。

 

「あ、そうだ。俺は織斑一夏だ。一夏って呼んでくれ」

 

「俺は城谷上太一。太一で構わん」

 

「わかった。宜しくね。一夏と太一」

 

「おうよ」

 

「宜しくシャルル」

 

 そんな会話をしながら目的地の更衣室に逃げ込み、女子たちを撒いた。

 

 疲れた……この俺にはこの距離は辛い。

 

 元々体力のない俺は、息切れする。一方、他二名はピンピンしていた。

 

「よーし! 着いたぞ。とっとと着替えようぜ」

 

 俺と一夏がISスーツに着替え始めて、Tシャツを脱ぎ始めると――

 

「わぁ!?」

 

「「?」」

 

 いきなりシャルルが驚きの声を上げた。

 

「忘れ物でもしたか? あと何で着替えないんだ? はよ着替えないと遅れて、織斑先生が激おこプンプン丸に――」

 

「う、うんっ? き、着替えるよ? でも、その……あっち向いててね?」

 

 俺が言うと、随分恥ずかしそうにしているシャルル。やはり、女より女らしい。

 

――だが男だ。

 

「別に男の着替えをジロジロみるようなホモじゃないぞ」

 

「ほ、ホモ? なんの言葉かな……?」

 

 これは失礼した。ホモという言葉を知らない純粋な男の娘だったらしい。

 

「なんでもない、それより君の方がジロジロ見てるじゃないか」

 

「み、見てない! 僕は見てないよ!」

 

 両手を突き出し、慌てて顔を下に向けるシャルル。いくら何でもここまで女らしいと疑いたくなるなるものだ。

 

「まぁ、急げよ。遅れると本当にシャレにならないからな」

 

 一夏の言葉で俺たちは着替え出す。

 

「……………」

 

 なんか俺達に視線を感じるんですが、それは。

 

「シャルル?」

 

「な、何かな?!」

 

 一夏の言葉で気になり振り向く。するとシャルルは慌てて壁の方へ向き、ISスーツのジッパーをあげた。

 

「うわ、着替えるの早いな。なんかコツでもあんのか?」

 

 一夏はまだISスーツのズボンだけだが、俺とシャルルはISスーツを着終わっている。

 

「ただ上だけ気っぱなしにしてただけだしな」

 

「い、いや別に……って一夏はまだ着てないの?」

 

「これ、着る時に裸っていうのがなんか着づらいんだよなぁ。引っかかって」

 

 一夏の言うことには分からなくもない。あれだ、俺の息子だ。

 

「ひ、引っかかって?」

 

「おう」

 

「………………」

 

 何故か顔を赤くするシャルル。

 本当にこの子は男子か。性的な表現が苦手な純粋男の娘、ということだろうか。それなら歓迎だ。

 

「着終わったな。よし、行こうず」

 

 一夏が着終わったので三人でグラウンドに出た。

 

「それにしてもシャルルのISスーツは着やすそうだな。どこのやつだ?」

 

「あ、うん。デュノア社製のオリジナルだよ。ベースはファランクスだけど、ほとんどフルオーダー品」

 

「デュノア社? どっかで聞いたような……?」

 

「あれだよ。量産機ラファールリヴァイヴで有名な企業だ」

 

「太一の言ったとおり父が社長なんだ。多分フランスで一番大きいIS企業だと思うよ」

 

 すげぇ企業だな。俺の専属企業より凄いかも知れない。いや、まず日本で一番大きいIS企業知らなかった。

 

「すっげぇ! じゃあシャルルって社長の息子なのか。道理でな」

 

「道理でって?」

 

「なんつーかさ、いいところの育ちって感じがするからさ。納得」

 

「確かに……納得」

 

「いいところ……ね」

 

 なんだか、シャルルの顔が暗くなったような気がする。いいとこ育ちなのがコンプレックスなのだろうか。

 

「それより一夏の方が凄いよ。あの織斑千冬さんの弟だなんて」

 

 俺には凄いことはないのだが。あっ、織斑先生と昔ながらの知り合いだった。

 

「ははは、こやつめ」

 

「「へ?(は?)」」

 

 驚いてしまったが、一夏ってこんなこと言うんだな意外だ。

 

「どうしたんだ。一夏」

 

「――いや、なんでもない。まあお互い地雷を踏んで一機ずつ減ったってことで」

 

 シャルルにその意味で使う地雷って言葉は理解できないと思われる。

 

「?」

 

「……………いやいや。それはマズイ。さすがにダメだ」

 

 本当に大丈夫だろうか。長い付き合いだけどここまで酷いことは殆どなかったぞ。

 

「?」

 

「いい精神科の病院。教えようか?」

 

「……遠慮します。……ええーシャルルくん、太一くん。物理の問題です」

 

「「何故、君付け?」」

 

 シャルルとハモるほど、一夏が何がしたいのかサッパリだ。

 

「いいから。高速下での運動のおける物体aが受ける抵抗力は?」

 

( 答え 『コロンビア 』)

 

「ええと、物体aの速度に二乗」

 

 すぐにシャルルが答える。知らんがな、俺は頭良くないっての。大体一度で聞き取れるようなリスニング力はない。

 

「そういうことだ」

 

 結局、何がしたいんだこいつは。

 

「駄目だこいつ……早くなんとかしないと……」

 

「…………」

 

 俺は深刻そうな感じで言う。そして、シャルルは黙りこくってしまった、と思ったら、

 

「ぷっ……あははっ! なにそれ太一。ふ、ふふっ、一夏っておかしいなぁ」

 

とツボにはまったようだ。

 

「あ、ツボった」

 

 こうして笑うシャルルを見ると、可愛いと感じてしまう俺がいた。――だが男だ。

 

「同じ笑われるなら『ハハハ、こやつめ!』で返して欲しかったぜ……」

 

「もー拗ねないでよ。一夏のギャグセンスを褒めたんだから」

 

 やはりギャグだったのか。この一夏はよく分からないものだ。

 今気づいたが織斑先生がこちらの方を見て睨んでいる。つまり、これは遅れてしまったという合図だ。あかんこれ。

 

 

 

 

 




改良(2017/05/14

━━男の娘

見た目が女らしい男みたいな意味

━━バカとテストと召喚獣、やはり俺の青春ラブコメはまちがっている、シュタインズ・ゲート

他作品が三連コンボで現れましたね。やはり男の娘は最高っすね!とつかわいい

━━だが男だ

シュタインズ・ゲートの主人公、岡部倫太郎がいうセリフ。

━━爆ぜろリアル弾けろシナプスバニッシュ(ry

中二病でも恋がしたい!の小鳥遊六花のセリフ
‥‥ラウラにさせてみようかな(ゲス顔)

━━詰んで遅れておじゃんの巻

おじゃんの巻自体は 【生徒会役員共】の萩村スズのセリフから取ってます。あのセリフ可愛いんですよね素晴らしい。

意味的には 捕まって遅刻しておしまいの巻

━━激おこプンプン丸

ggりましょう。

━━答え コロンビア

┗( ・´ー・`)┛コロンビア
なんかのネタです。




感想募集中です。入れて欲しいアニメネタがあれば私にメッセで伝えてください。


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第19話 クンレン

まだ本音は完全攻略してません。
完全攻略の場合、本音が腕に抱きつく状態が増えます。確かwikiには一夏によく腕に抱きつくとか書いてましたからね。新党のほほん万歳!


 

 

「遅い!」

 

  第二グラウンドに無事到着、なんて言葉は無かった。なぜなら、鬼教官が腕を組んで睨んでいたからだ。

 

「さっさと並べ!」

 

 バシンっ!

 

 織斑先生の出席簿らしきものに頭を叩かれる。ありがとうございます。我々の業界ではご褒美です(ここまでテンプレ。

 そして、俺達は一組の一番端の列に入った。

 

―――――――――――――――

 

〇〇〇〇〇

〇〇〇〇シ

〇〇〇本俺

〇〇〇セ一

◉◉◉◉鈴

 

 

シ→ シャルル

本→ 本音

俺→ 俺

セ→ セシリア

一→ 一夏

鈴→ 鈴

 

〇1組◉2組

 

―――――――――――――――

 

 並び方はこの通りである。奇跡的に知り合いばかりが集まったようだ。必然的かもしれないが。

 尚、簪は四組なのでいない。

 

「やがみん、随分ゆっくりだったねー」

 

 たまたま横にいた本音に小声で言われた。その言葉に俺は少々ムカっときたので、俺はこう答える。

 

「本音には言われたくないな」

 

「むむむー、それはどういうことなのかな〜」

 

「さぁな?」

 

「むむ〜」

 

 本音は頬を膨らませていたが、彼女の上目遣いが可愛かったので何とも言えなかった。

 それにしても、ISスーツ越しで見ても胸はかなり爆弾級だ。高校一年生にしては非常に大きな部類だろう。いかんいかん、アレを見てることが本音にバレてしまう。

 ついでに一夏は近くにいたセシリア、鈴と話している。いや、一夏は黙っているのが正しい。

 

 あっ、鈴とセシリアが大きな声で今朝の件を話していたからか鬼教官からの天罰を食らってる。

 

「――では、本日から格闘及び射撃を含む実戦訓練を始める」

 

「「「「はい!」」」」

 

 この二クラスは完全に軍隊並みに訓練された状態になっている。このまま敬礼しても違和感ないのではないだろうか。一度皆で「イエスマム!」って言ってみたいものだ。

 

「くう……何かというとすぐにポンポンと人の頭を」

 

「……一夏のせい一夏のせい一夏のせい一夏のせい」

 

 俺は一夏の前なのでチラ見しかできないが、鈴は一夏の頭をポンポコ叩くという八つ当たり行為をしていた。一夏「解せぬ」とか思ってそうだ。

 

 あっ今度は一夏を蹴ってる。もうやめて! 一夏のライフはもうゼロよ!

 

「今日は戦闘を実演してもらおう。ちょうど活力が溢れんばかりの十代女子もいることだしな。凰! オルコット!」

 

「なぜわたくしまで!?」

 

 理不尽だがセシリアも呼び出される。そんな日もあるだろう。少し可哀想だけど仕方ないよね。

 

「専用機持ちはすぐに始められるからだ。ほらさっさと前に出ろ」

 

 俺も一応は専用機持ちなんですがそれは。

 

「だからどうしてわたくしが……」

 

「一夏のせいなのになんでよ……」

 

 セシリアは仕方がないだろうが、鈴、お前は自業自得だと思われる。

 

「太一……何故、俺のせいなんだ?」

 

「知らぬ。少なくともアイツの自業自得だよ。プギャー」

 

「……プ、プギャー?」

 

「嘲笑うことだよ」

 

「納得」

 

 小声で一夏に訊かれたので、こちらも小声で答えた。

 

「お前らすこしはやる気を出せ。――アイツにいいところを見せられるぞ?」

 

 最後の方は聞き取れなかったが、

 

「やはりここはイギリス代表候補生、わたくしセシリア・オルコットの出番ですわね!」

 

「まあ、実力の違いを見せるいい機会よね! 専用機持ちの!」

 

 と随分とやる気に満ち溢れている状態になった。何を言ったのか気になるが、おそらく一夏関連だろう。

 

「急にやる気満々だな。何故だ?」

 

 また一夏が小声で訊いてきた。面倒なので適当に返すことにした。

 

「知らんがな」

 

「お前もかよ……」

 

「それで、相手はどちらに? わたくしは鈴さんとの勝負でも構いませんが」

 

「ふふん。こっちの台詞。返り討ちよ」

 

「慌てるなバカども。対戦相手は――」

 

 

 キィィィィン……。

 

 

 どこか輸送機が被弾して墜落しそうな音が、急に聞こえてくる。空を見上げると、とんでもない飛翔体が落下してきた。

 

「ああああーっ! ど、どいてください~っ!」

 

「親方ぁ! 空から山田先生(女の子)が!」

 

 俺は獰飆を1.5秒で展開して落下地点から間一髪で避ける。

 

「げっ!? こっち来た!」

 

 だが一夏は気づくのが遅かった。

 

ドカーンっ!

 

 空から降ってきた山田先生は、一夏に衝突した。二人は数メートル吹っ飛び、ゴロゴロと地面を転がっていった。

 なんとか白式の展開はしてたので一夏自体に怪我はないようだ。

 

 ホッと一息、と言いたいところだったが。

 

「あ、あのう、織斑くん……ひゃんっ!」

 

 なんということでしょう。一夏が山田先生の(パィオゥツ)を揉んでいたのだ。一夏め、ラッキースケベとは羨ま――けしからん。

 

「そ、その、ですね。困ります……こんな場所で……いえ! 場所だけじゃなくてですね! 私と織斑君は仮にも教師と生徒でですね! ……ああでも、このまま行けば織斑先生が義理の姉さんってことで、それはとても魅力的な――」

 

 山田先生の変な妄想スイッチが入ってしまった。こうなれば、もう手に負えないだろう。

 だが、良く考えたら、この状況を鈴とセシリアが黙っているはずが無い。つまり、

 

 その瞬間、セシリアはISを展開し一夏に向けて射撃した。

 咄嗟に俺は《雷艦》でビームを吸収した。

 

「ホホホホ……残念です。太一さんが余計なことをしなければ命中しましたのに……」

 

 セシリアさん、その笑顔が怖いんですがそれは。

 その次には鈴の《双天牙月》の連結音が響く。やばいと思ったが、流石に遠いので反応できなかった。

 一夏は間一髪交わしたが、鈴のそれがブーメランの如く戻ってきた。これでは一夏はかわせない。

 

 フル回転して飛んでくる武器が一夏に当たると思いきや――

 

ドンッドンッ!

 

 何かの射撃音が二度鳴り、回転してた武器は弾き飛んでいった。――射撃したのは驚くことに山田先生だった。

 

「「「「おぉー」」」」

 

 それを見ていた二クラスも驚いていた。

 先ほど山田先生が使用していたのは、五十一口径アサルトライフル《レッドバレット》だ。アメリカのクラウス社製実弾兵器で、実用性と信頼性の高さから多くの国で採用されているメジャーモデルらしい。カッコイイの一言に尽きるよ。

 

「山田先生はああ見えて元代表候補生だからな。今くらいの射撃は造作もない」

 

「む、昔のことですよ。それに候補生止まりでしたし……」

 

 代表候補生でも凄いですよ山田先生。今の俺では確実に勝てない相手だろう。大体、雷艦はエネルギー兵器でないと防げない上、射撃も下手くそだからな。

 さっきの山田先生からノーマル山田先生に戻った。

 

「さて小娘どもはいつまで惚けているつもりだ。さっさとはじめるぞ」

 

「え? あの、二対一ですの……?」

 

「いや、さすがにそれは……」

 

「安心しろ、今のお前たちならすぐ()()()

 

 その言葉に気に障ったのか、セシリアと鈴は再びやる気に満ち溢れた。特にセシリアは一度山田先生に勝っているのかさっきより増して力がみなぎっていた。

 

「では……はじめ!」

 

 織斑先生の言葉と同時にセシリアと鈴が飛翔すると、山田先生が目で確認してから空中へと躍り出た。

 

「手加減はしませんわ!」

 

「さっきのは本気じゃなかったしね!」

 

「い、行きます!」

 

 言葉自体はいつも山田先生だが、今の山田先生の目はさっきの一夏を助けた時の鋭く冷静な物へと変わっている。

 先制攻撃をするセシリア、鈴だったが、それは軽々と回避された。

 

「さて、今の間に……そうだな。ちょうどいい。デュノア、山田先生が使っているISの解説をしてみせろ」

 

「あっ、はい」

 

 空中での戦闘を見ながら、シャルルはしっかりした声で説明する。

 

「山田先生の使用されているISはデュノア社製――」

 

 もう知っている情報なので、観戦に集中することにした。

 

 山田先生はセシリア、鈴を相手に一切隙をみせずにわざと当たらないように撃っていた。なんとなく見てわかったのは、セシリアと鈴が段々と近づいているということだ。

 

 そして、ついにはセシリアと鈴で激突した。その隙に山田先生がグレネードを投げて見事命中し、爆発して二人とも地面に仲良く落下した。

 

「くっ、うう……まさかこのわたくしが……」

 

「あ、アンタねえ……何面白いように回避先読まれてんのよ……」

 

「り、鈴さんこそ! 無駄にばかすかと衝撃砲を撃つからいけないのですわ!」

 

「こっちの台詞よ! なんですぐにビットを出すのよ! 太一みたいに動けないならやらないでよ!」

 

 確かにビット使いながら動けるが攻撃手段はないだけである。エネルギー吸収して満タンまで攻撃できないからな。

 それでも楯無さんからは不思議と言われたのだが。

 

「ぐぐぐぐっ……!」

 

「ぎぎぎぎっ……!」

 

 なんか似た者同士だな。オモシローイ。

 

「さて、これで諸君にもIS学園教員の実力は理解できただろう。以後は敬意を持って接するように」

 

 ぱんぱんと手を叩いて言う織斑先生に皆の意識は切り替える。

 

「専用機持ちは織斑、城谷上、オルコット、デュノア、ボーデヴィッヒ、凰だな。では7人グループになって実習を行う。各グループリーダーは専用機持ちでやることいいな? では分かれろ」

 

 早急に分かれたのだが、殆どが一夏やシャルルだった。知っていたし、少なくともこちらには本音が何故かいるので寂しいとは思わない。

 ちなみにセシリアと鈴に2、3人ラウラは0だ。

 

「本音は一夏の所じゃなくていいのか?」

 

「私はやがみんの方が楽しくできるから、ここが良いんだよ〜」

 

「それはありがたい」

 

例え、ぼっちな俺のために来たとしても、それでも嬉しい。

 

「あ、訓練しないと――」

 

「この馬鹿者どもが……。出席番号順に一人ずつ各グループに入れ! 順番はさっき言った通り。次にもたつくようなら今日はISを背負ってグラウンド100周させるからな!」

 

 織斑先生の素晴らしい脅迫じみた言葉で、一気にバラバラになる。俺の方にも数人のグループがやって来た。勿論、奇跡的に本音もいる。

 

「最初からそうしろ。馬鹿者どもが」

 

 それな。こればかりには織斑先生に同情だ。

 それから、バレないようにとそれぞれの班からお喋りをしていた。

 

「……やったね。織斑君と同じ班だ。名字のおかげだねっ」

 

「……うー、セシリアかぁ……。さっきボロ負けしてたし。はぁ……」

 

「……鳳さん、よろしくぅ! あとで織斑君のお話聞かせてよっ」

 

「……デュノア君! わからないことがあったら何でも聞いてね! ちなみに私はフリーだよ!」

 

 〝Free!〟? あのアニメは京アニだから良さそうだけど、あのアニメはあまり興味無い。

 

「……城谷上君ならいいかっ」

 

「…………………………」

 

 全力で拒否られるよりはマシな反応だろう。

 それより、軍人娘のところは無言だ。それもそのはず、常に不機嫌な顔をしているからだ。なんというか、あっちいってこっちこないでフィールド、通称、AKフィールドを発動してる感じだ。見た目は可愛いのに勿体ない性格してやがる。

 

「ええと、いいですかーみなさん。これから訓練機を一斑一体取りに来てください。数は『打鉄』が四機、『リヴァイヴ』が二機です。好きな方を班で決めてくださいね。あ、速い者勝ちですよー」

 

 山田先生が今までよりしっかりしている。さっきので自信を取り戻したようだ。それでも見た目は変わらないのは事実だがな。

 

「やがみーん。やろうよ〜」

 

「おう。そうだな」

 

「リヴァイヴでお願い、城谷上君」

 

「おうよ。任せろ」スタタタタタ

 

 急いで先生の場所に向かい、残り一つだったリヴァイヴを取ってきた。個人的にこの機体が好きである。理由は獰飆と色が似てるから、ただそれだけだ。

 

「お待たせしました――」

 

『各班長は訓練機の装着を手伝ってあげてください。全員にやってもらうので、設定でフィッティングとパーソナライズは切ってあります。とりあえず午前中は動かすところまでやってくださいね』

 

「――とりま、装着と歩行を先にやるか。最初は誰にする?」

 

「はい! はーい!」

 

 潔く本音がぴょんぴょん飛んで手を上げる。

 その動きは辞めろ、ごちうさ以外に〝未確認で進行形〟を思い出してしまう。

 

 ん……? 未確認で進行形、ダボダボの袖、三峰真白、あ――

 

「――本音と似てんじゃん!」

 

「「「???」」」

 

 無意識に声に出してしまい、近くにいた女の子たちに驚かれる。

 

「おっとスマン」

 

「ほぇー、どうしたの? 私が何に似てるの〜?」

 

「未確認で進行形の三峰真白だ」

 

「うーん、よくわからないな〜」

 

「今日はそのアニメにするから後でな」

 

 今日のアニメ鑑賞会の内容はこれで決まった。しかし、よく考えたら今日からシャルルが寝泊まりするジャン。まぁいいか。

 

「わかった〜」

 

「今思ったけど……本音と城谷上君ってどんな関係?」

 

 俺のグループにいた一人のクラスメイトにそう訊かれた。その人は谷本癒子氏だ。本音と仲のいい友人の一人である。

 

「あーあれだよ。アニメ仲間ってやつ」

 

「「アニメ仲間?」」

 

「俺の部屋で夜にアニメ鑑賞会をしてる仲なんだよ」

 

「そそ、男女が一つ屋根の下なんだ〜」

 

 本音がいつの間にか素晴らしい言葉を覚えてしまったようだ。

 

「……二人って付き合ってるの?」

 

 どうしてその質問にたどり着くんですかね。そんな訳ないだろうに。

 

「そういう訳では無い。簪だっているしな」

 

「そんなことはない……かなぁ〜」

 

 ほら、本音だって同じこと――なんで若干躊躇ったんだろうか。別に問題はないが、誤解を招くことは避けてほしいものだ。

 

「へぇー……」

「ふーん……」

「ほほぅ……」

「ふむふむ……」

 

 皆さん本当に納得していらっしゃるんですかね。

 

 その時、遠くから硬い物体で誰かが叩かれたような音が響いた。

 

「「「いったぁぁっ!!」」」

 

 何事だ、と思ったら、見事なハモり悲鳴をあげているシャルル班女子たちが見えた。これは織斑千冬の鉄槌だ。

 

「やる気があってなによりだ。それならば私が見てやろうか。最初は誰だ?」

 

「あ、いえ、その……」

 

「わ、私らはデュノア君でいいかなぁ……なんて」

 

「せ、先生のお手を煩わせるわけには……」

 

「なに、遠慮するな。将来有望な者には相応のレベルの訓練が必要不可欠だろう。……さあ、出席番号順ではじめるか」

 

「「「ひぃぃ!」」」

 

 と、大変なことになっていた。

 

「シャルル班女子は犠牲になったのだ……」

 

「あんなの御免だわ! 早く始めよう!」

 

「そうよ! 早く!」

 

「イエスマム」

 

 皆はシャルル班の状況を見て焦っていたため、俺達は急いで訓練を開始した。

 先ほどの通り、最初は本音にISを装着させた。

 

「歩行はできるな?」

 

 特に歩行は問題なし。

 

「その状態でしゃがんで降りてくれ」

 

 すっとISの状態でしゃがみ、本音は降りる。

 

「次は……」

 

 ふと一夏班の方をみると、ISから降りるときにしゃがませることを忘れていたらしい。結果、一夏がお姫様だっこをしている所が見えた。

 ここの女子たちも羨ましいそうな顔で一夏をみていた。

 

「いいなぁ」

「お姫様だっこかぁ……」

「羨まぁ……」

「それな」

 

 ジーーーーッ。

 

 本音だけは違ったようだが。

 

「何故、ジーッとみてるんだ?」

 

「お姫様だっこをして欲しいなぁって思って〜」

 

 それは分かるが何故、俺であるのか。

 

「いや、別にISが立ってないし……」

 

 それに筋肉ないんで勘弁してください。一人持つだけでも辛いです。本音は軽い方だけどすまぬ。

 

「む〜……」

 

 なんか若干、頬が膨れてるけどいいか。ふとここの女子たちをみると微笑んでいた。きっと頬を膨らませてる本音が可愛いからだろう。納得だ――

 

――スパーンっ!×6

 

「ウボァ!」

「ウミュ!」

「ぎゃっ!」

「痛っ!」

「キャ!」

「ヒャッ!」

 

 鬼教官に連続コンボで叩かれてしまった。順番は俺、本音、谷本、……だ。

 ありがとうございます。我々の業界ではご褒美です。ここまでテンプレ(二回目)。

 

「貴様らも私が見てやろうか? 最初は誰にする?」

 

「すみません! やります! やりますから!」

 

 怒られたので2人、3人目と早急に訓練をしていった。

 ついでに鈴、セシリアの班は順調で一夏の班は若干遅れている。一夏班の理由は一人一人必ずISを立たせて降りるからだ。そこまでお姫様だっこして欲しいのかよ。

 それよりも軍人娘の方なんて何もしてない。そりゃ進むわけないよな。ずっと黙っているし腕組んでるし。AKフィールドだし。

 

 

 

 

 




感想、募集中でし。

※改良しました2017/05/15

━━我々の業界ではご褒美です!

人の為に自己犠牲をもいとわない変態は、ある意味、愛の道において究極の紳士である(ここまでテンプレ)

━━簪は4組なのでいない。

鈴は2組なのでいないの別バージョン。何故簪は4組なんだ!クソ!

━━解せぬ

理解出来ない、納得いかない

━━もうやめて!一夏のライフはもうゼロよ!

元ネタは遊戯王デュエルモンスターズっすね

━━親方!空から女の子が!

元ネタ 天空の城ラピュタ

━━パァイオゥツ

俺の脳内選択肢が学園ラブコメを全力で邪魔している。

の雪平ふらの が言ったセリフ

━━Free!

男子の水泳 以上

━━AKフィールド

ここでは 30歳の保健体育 のネタです。オススメしますよ。かなり素晴らしい保健体育なのが難点

━━ジャン

ジャン キルシュタイン & とある魔術の禁書目録 黄泉川愛穂

━━未確認で進行形 三峰真白

ggってください。袖がだぼだぼの小さくて可愛い小姑が出てくるのでprpr

━━本音

「はい!はーい!」「うみゅ!」

この二つはどっかでアニメとして喋ってたはずです。うみゅ!は臨海学校編のビーチバレーです。間延びしないときの使い分けが難しい。
そうですね‥‥ニコ動で 布仏本音 とキーワード検索して 本音だけを集めた動画にあるはずです。



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第20話 ヒルメシ

昼飯編です。


 

 

 

 

 

「では午前の実習はここまでだ。午後は今日使った訓練機の整備を行うので、各人格納庫で班別に集合すること。専用機持ちは訓練機と自機の両方を見るように。では解散!」

 

 時間がギリギリであったが、全ての班がやっと起動テストを終えた。

 二クラスの合同班は、格納庫にISを移してから再びグラウンドへ戻る。一夏班が遅れていたので時間が一杯一杯なのか全員が全力疾走をする羽目になっている。

 ただでさえ体力ない俺に走らせるとは、鬼畜なものだ。これでも入学当初よりはマシになったが、当初は3キロマラソンでギリギリ耐えれる程度だった。今は3キロ程度なら難なく走れるようになっただけである。

 

 織斑先生は連絡事項を伝えると山田先生と一緒にササッと引き上げて行った。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 もう完全に息切れを起こしている。走り終えたと思えば、訓練機を運ぶためにISカートを人力で押し運ぶ。そして、また走るで疲れた。

 

「お、お疲れ~、やがみ〜ん……」

 

「お、お〜う……」

 

 本音もこればかりは疲れてしまっている。俺一人では運べないので本音や俺の班の女子数人に手伝ってもらったのだ。

 しかし、一夏班は一夏ぼっちで運んでいたが。

 

「やがみん、また後で〜」

 

「おう」

 

 軽く返事して本音と別れる。

 

「一夏は特にお疲れだな」

 

「あー、あんなに重いとは……」

 

「俺は手伝ってもらったからなんとかなったけどな」

 

 本来なら本音以外は手伝う気などないのだろう。しかし、時間が時間であり、一夏よりかなりペースが遅いため手伝ったという感じだろう。なんて俺は弱々しいんだろうか。

 

「お前は力が弱いからな」

 

「うるせーよ。体力がないだけだ」

 

「まぁいいや。シャルル着替え行こうぜ」

 

 近くにいたシャルルに声をかける一夏。

 

「ええっと……僕はちょっと機体の微調整とかをしてからいくから、先に行って着替えてていいよ。時間が掛かりそうだし待ってなくても大丈夫だから」

 

「いや、別に待ってても平気だぞ? 俺は待つのには慣れ――」

 

「い、いいから! 僕が平気じゃないから! ね? 先に教室に戻っててね?」

 

 なんて女の子らしいんだ。世界中の男の娘の中でもダントツ一番女の子らしい。――だが男だ。

 

「ほら、あんまりしつこいと嫌われるぞ? 行こうぜ、一夏」

 

「お、おう。わかった」

 

 シャルルの好感度を下げるわけにはいかないので、とりあえず一夏と着替えることにした。

 

 更衣室に行き俺達が着替ていると、

 

「なぁ……お前ってのほほんさんと仲いいよな」

 

「まぁ、そうだな。それがどうした?」

 

「なんっていうか……お似合いっつーか、和むと言うか……」

 

「そうなのか? 仲のいいアニメ仲間なだけだしな。大体、俺に恋愛感情抱く人なんていないだろ。有り得ないわ」

 

「でたよ、悲観主義……」

 

「お前がモテすぎだからだ」

 

「そんなことないけどな……」

 

 周りから見れば、そんなに和んだりするのだろうか。確かに本音は小動物みたいで可愛いが、恋愛感情があるってほどでもない。俺は二次コンだし。

 時間がないため俺と一夏は急いで着替え教室に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……どういうことだ」

 

「ん?」

 

 晴天の昼休みの屋上。ここには俺、簪、本音、一夏、箒、鈴、セシリア、シャルルが集まっている。

 最近では屋上を使えない高校が増えてきているらしいが、IS学園はそんなもの関係ない。アニメでは鉄板中の鉄板で屋上が使えるシチュエーションなんて珍しいのだ。ここには俺達しかいないので貸し切りで最高である。

 

  一 箒 シ

 セ     簪 ←この並び

  鈴   俺

    本

 

「天気がいいから屋上で食べるって話だっただろ?」

 

「そうではなくてだな……!」

 

「せっかくの昼飯だ。大勢で食った方がうまいし、シャルルなんて転校してきたばかりで右も左もわからないだろうしな」

 

「そ、それはそうだが……」

 

 箒は何か言いたげにしながら持ち上げた拳を握り締めた。その手には包みにくるんだ手作りの弁当が握られていた。ということはつまり、その弁当は一夏のためということだ。

 

「はい、一夏と……ついでに太一」

 

 そう言ってタッパーを俺と一夏に向かって放る鈴。常識的に食べものを投げてはならないだろう。ってかついでかよ。

 

「おおぉ酢豚だ!」

 

「あ、あざーす」

 

「今朝作ったのよ。アンタたち前に食べたいとかって言ってたでしょ」

 

 確かに言ったけど、酢豚オンリーじゃないですかヤダー。

 できたてホカホカのお米はないのだろうか。誰か一人は持っていると俺は信じている。

 

「コホンコホン。――一夏さん、わたくしも今朝はたまたま偶然何の因果か早く目が覚めまして、こういうものを用意してみましたの。よろしければおひとつどうぞ」

 

 セシリアのは明らかに必然的に作り上げたと思うのだが。

 忘れていたが、これは食べてはいけないやつだ。食べたら死ぬ Dead or die。

 

「お……おう。あとでもらうよ」

 

 苦笑いしながら言う一夏。

 一夏から聞いた話だとセシリアの料理は見た目が良いだけで中身は不味いらしい。壊滅的に料理が下手ということだ。どうして見た目だけは良いのか不思議で仕方がない。

 

「本音、簪。セシリアの料理は食べない方がいい。Dead or dieだぞ」

 

「わかった〜」

「……わかった」

 

 本音や簪は知らないはずなので小声で伝えておく。

 

「ええと、本当に僕が同席してよかったのかな?」

 

 一夏の隣にいるシャルルが遠慮深さが全開で言ってくる。

 

 実は、さっきまでシャルル争奪戦が起きていた。クラスメイトが大量に大挙して押し寄せてきたのだ。そんな女子に対して男の娘のシャルルは素晴らしい対応で断った。

 

『僕のようなもののために咲き誇る花の一時を奪うことはできません。こうして甘い芳香に包まれているだけで、もうすでに酔ってしまいそうなのですから』

 

 なんというべきか、全然嫌味には聞こえなかった。

 それは本当にそう思ってるような態度で、堂々とした雰囲気の中にある儚げの印象、そして、その言葉の輝きを引き立たせていたのだ。それでいて優しさを感じるのが更に良いのだろう。ちなみに手を握られた三年生の一人が失神していた。個人的には、失禁(ry。

 

 そして、一夏がシャルルを誘い、鈴とセシリアも誘って俺は本音と簪を誘ったわけで。

 

「大丈夫だ。男子同士仲良くしようぜ。色々不便もあるかも知れないが協力してやっていこうぜ。わからないことがあったら何でも聞いてくれ。――IS以外で」

 

「俺にはISだけなら聞いてくれ。でもシャルルは代表候補生だし必要ないと思うが……」

 

 IS科目だけならそこそこ理解できてるつもりだ。一応ミリタリーだしな。ISの本来の目的ではないが。

 

「アンタたちはもうちょっと勉強しなさいよ。特に太一」

 

「わかってるけどな……」

 

 一応、本音と簪に結構前から復習として教えて貰っている。両者とも頭は良いので教え方もよく、とても助かっている。

 

「してるって。覚えることが多いんだよ。お前らは入学前から予習してるからわかるだろ」

 

「ええ、まぁ適性検査を受けた時期にもよりますが、遅くてもみんなジュニアスクールのうちに専門の学習をはじめますわね」

 

 今のところ、模擬戦でのトータル勝率は鈴、簪が1位、俺が2位、セシリアが3位、箒が4位、一夏が5位だ。それでも簪は鈴と互角に戦えると思う。俺が鈴に勝てないのは接近戦で負けるからだな。衝撃砲は雷艦じゃ防げないのが難点である。

 ちなみに俺が一夏と戦うと互角になる。

 

「色々教えてくれるなんてありがとう。二人とも優しいね」

 

 あれれ、なんかドキドキする。

 俺はついにBLに目覚めてしまったのだろうか。確かに〝おそ松さん〟とかは好きだが、それとこれとは違うだろう。

 

 これじゃ俺はシャル松BOYSだよ!

 

「友達だからな」

 

「そうだな。友達だし」

 

 一夏の後に俺が続く。

 今更だが現在、本音は俺が購買で買ったパンを幸せそうに食べている。でも……それ、俺のなんですがそれは。

 そして、簪もパンで済ませている。だからそれ俺のなんだけど!

 

「………………」

 

 そんな中、一夏の隣で弁当の包みすら広げていない箒は、ずっと黙ったままであった。

 恐らく、不機嫌だからかも知れないがこればかりは仕方ない。こんなヤツだと分かっておいて、ちゃんと伝えないと意味が無いのだ。例えば、「今日は屋上に2人きりで弁当食べないか?」とか。

 

「どうした? 腹でも痛いのか?」

 

「違う……」

 

「そう……ところで箒、そろそろ、俺の弁当をくれるとありがたいんだが――」

 

「………………」

 

 無言で弁当を差し出した箒に、一夏は困っていた。彼女の不機嫌さは健在だ。

 

「では早速。……おおぉ!」

 

「すげー美味そう」

 

 一夏が箒からの弁当を開けたので覗いてみると、鮭の塩焼きに鶏肉の唐揚げ、こんにゃく&ごぼうの唐辛子炒め、ほうれん草のゴマ和えと言った素晴らしい料理の数々だ。食べたい。

 

「これはすごいな! どれも手が込んでそうだな」

 

「つ、ついでだぞ。あくまでも私が自分で食べるために時間をかけただけだからな」

 

やはり、箒も素直じゃないやつだ。素直になれば、この先のエンディングが良い方向に進むのに。このままでは、疎遠エンドである。

 

「だとしても嬉しいぜ。ありがとう箒」

 

「ふ、ふん……」

 

 それでも、箒が若干だが上機嫌になり自分の弁当を開けた。

 

「箒、なんでそっちには唐揚げがないんだ?」

 

「こ、これは、だな。えっと……私はダイエット中なのだ! だから、一品減らしたのだ。文句があるか?」

 

「文句はないが……別に太ってないだろ」

 

「一夏、それはデリカシーがないぜよ」

 

 女子のNGワードを口にした一夏に俺は注意する。

 

「あー、男ってなんでダイエット=太っているの構図なのかしらね。太一は分かるようだけど」

 

 俺はそういう訳では無いが、痩せすぎは体に毒だ。実際に本音や簪の体は見たことは無い――見られる訳がないが、共にスタイルが良さそうなのは目に見えてる。ついでに俺は別にノーマル体型だ。アブノーマルではない。

 

「まったくですわ。デリカシーに欠けますわね」

 

「……よくわからないなぁ」

 

 大丈夫だ。俺も大して分かってない。それよりも――

 

「本音、簪。俺の分のパンは?」

 

「「あっ…」」

 

 既に本音と簪は最後のパンの二つを食べていた。酢豚オンリーではありませんか。

 

「……俺、酢豚だけじゃん」

 

「何よ。酢豚は嫌なわけ?」

 

「違うわ。大体、酢豚はおかずだろ」

 

「それもそうね……」

 

  一夏に食べさせたい一心におかずである酢豚しか作らなかったことを、鈴はやっと気づいたらしい。一夏は美味しいと思ってるらしいから特に気にしてなさそうだけど。

 

「は〜い」

 

 ほいっとメロンパンの一部を本音が摘み取り俺に向かって寄せてきた。これ何てエロゲ? アマガミかな? 絢辻さんかな?

 

 絢辻さんは裏表のない素敵な人です! (ここまでテンプレ。

 

「ほら〜」

 

「え?」

 

いくらなんでもこの状況はちょっと。

 

「食べないのー? 私が全部食べちゃうよ〜?」

 

「……じゃぁ遠慮なく」

 

  本音の指で摘んでいるパンを食べようとしたが、ふと周りをみると、全員がドキドキしながらこちらをガン見していた。

 余談だが、本音の手から爪について語ろう。

 女子としては手のサイズが小さく可愛い上、爪垢の「つ」の字もない爪の綺麗さを保っている。俺、手フェチになりそう。

 

「あ〜ん」

 

パクッ もぐもぐ

 

「美味いね」チョンチョン

 

  俺がそう言うと本音はよりにこやかになる。

 そう思ってる時、逆方向にいた簪につつかれ振り向くと、今度はコッペパンを摘んでこちらに寄せてきた。

 簪の手は、本音よりは大きいが、女性としては小さい。そして、手先はすらっとしていて、爪も健康的で手入れがなされて綺麗である。もう俺、手フェチでいいや。

 らららコッペパンらららコッペパン♪

 

「食べて……」

 

「お、おう」

 

少々強引に言われたが食べさせてくれるなら本望なので素直に応答した。

 

「……あーん」

 

パクッ もぐもぐ。

 

「美味い」

 

 もう満足。普通はリア充がやるような「あーん」を2回も、しかも美少女2人にされたのだから最高だ。

 また食べるか二人に聞かれたがもう満足なので断った。何故か残念そうな顔してたが、そんなに食べさせたいのだろうか。ただのご褒美だと思ったが。

  先ほどの光景を羨ましそうにみていた箒、鈴、セシリアはここぞとばかりに行動を開始しようとしていた。

 

「「「一夏!」」」

 

「は、はい?」

 

「「「あ、あーん」」」

 

「話の流れでどうしてこうなった?!」

 

 箒は一夏から取った唐揚げを鈴は酢豚をセシリアはサンドイッチを一夏に食べさせようとしていた。

 

「いいから早く食わんか!」

「早く食べなさいよ!」

「早く食べてくださいな!」

 

「お、おう……」

 

 一夏、良かったなお前も「あーん」ができるぞ!セシリアのサンドイッチはご愁傷様です。

 

「「「はい、……あーん」」」

 

パクッパクッパクッもぐもぐ

 

「……3つ合わさって変な味がするぜ」

 

 内心の一夏はセシリアのサンドイッチのせいとか思っているだろう。

それでも頬を赤らめる箒、鈴、セシリア。お前ら一夏は褒めてないぞ。「あーん」だけやって恥ずかしいだけだろ。

 それより、セシリアの殺人料理とか言うものは大丈夫だったのだろうか。知らぬ間に青酸カリとか混入してたら大惨事じゃ済まされない。タヒるよ!

 

「……これって日本でカップルがやるという『はい、あーん』ってやつなのかな? 二人同時だったり三人同時だったりしてるけど」

 

「……私と一夏が……か、カップルだなんて……」

「一夏さんと……か、カップルですの……?」

「そうか、一夏と、か、カップルかぁ……!」

 

鈴、セシリア、箒と続いているが、一夏はフ〇ッキン唐変木なのでよく分かってない。

 

「太一と……か、カップル?!」

「えへへ、やがみんとカップルだってー」

 

そして、簪と本音は何を言ってるんだか。ノリに乗ってるパターンだと思うが、とっても紛らわしい言い方である。

 

「なぁ……昼休み、あと20分しかないから早く食べようぜ」

 

「そうだな。俺は食べるものがほとんどないから購買行ってくるわ。酢豚は一夏に全部やるよ。じゃ」

 

「お、おう。また後でな」

 

「あ……待って太一」スタタタタ

「待って〜」テクテクテク

 

 

 

 

 

 

「……思うんだけど。あの2人のどちらか太一と付き合ってるのかな?」

 

 シャルルが疑問に思うのか問い出す。

 

「さぁ? 付き合ってる訳ではないみたい」

 

「それに太一さん。気づいてないみたいでしたし……」

 

「何故なのだ?」

 

 鈴、セシリア、箒の疑問に一夏は、

 

「アイツ、悲観主義なんだよ。それでオタクの極みを目指すだの言ってたし。あくまでも恋愛感情に対して悲観主義だけど」

 

「道理で一夏みたいに気づかないと思ったわ」

 

「ん? 何のことだ?」

 

「五月蝿い唐変木」

 

「えぇ……」

 

 

 

 

 

 




模擬戦が授業でやる模擬戦なのか、個人的な模擬戦なのか分からなかったのですが個人的な模擬戦の結果にしました。

※改良(2017/05/16

━━恋愛感情には悲観主義な太一

この先鈍感な太一を続けるか、後々好感度に気づいていくか悩んでますどうしますかなー

━━ベタな屋上

沢山あってアニメタイトルなんて出す気すら失せましたね。がっこうぐらし!もそうですがラブライブ!もそうですし、日常 から何まで多すぎですね。

━━並び方

ハート型に見えるって?たまたまですよ(震え声)

━━Dead or Die

どっちも死にます。

━━シャル松BOYS

元は一松が言った、カラ松boys を改造してます。
シャル松ってなんぞや。

━━絢辻さんは裏表のない素敵な人です!

アマガミをしってる方なら分かるはず。

━━らららコッペパン

らき・すた のBGMに歌詞をつけた。以上

━━タヒるよ

死ぬよ

━━おそ松さん

なぜか、ニコ動の関係ない動画で、このコメが出ると荒れるんですよね。カゲプロとかHoneyWorksも有名ですけど。俺はなんとも思いませんけどね。








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第21話 ドウシツ

改良しました(2017/05/21


 

 

 

 

 売店へとやってきた俺達だが、見事に商品の種類が減っていった。

 この通り、IS学園では食堂は勿論、売店もある。売店で買う方が金銭的に優しいので、こちらで買う人が多い。主にダイエット関係で買う人もいるらしい。

 それでもIS学園なのでパンだけでも種類は半端ない。少なくとも40種類近くある。

 他におにぎりや弁当、飲み物もあるので、売店で買って寮で飲み食いする人もいる。普通に文具や生活用品もあるためコンビニと言っても過言ではない。ただし、閉店時刻は夜8時で開店時刻は6時。

 

 俺は金銭的にはかなり余裕がある。なぜなら、IS学園入学前に政府から100万円ほど支給されたからだ。

 最初のころは20万ほど生活費も兼ねて使っていたが、入学後はほとんど使っていない。故に、現時点では約75万円貯金している。現金は5万円だ。

 とりあえず、本音に何を食べたいか訊く。

 

「何にする?」

 

「メロンパンと、アンパンに、揚げパン、チョココロネー、それから〜」

 

 とりあえず頭にチョップを食らわせると本音は頭を抑えてしゃがんでいた。

 俺の場合、このやり取りが〝中二病でも恋がしたい!〟の富樫勇太が小鳥遊六花にチョップしてるシーンを思い浮かべる。

 

「あうっ……」

 

 ――本音は5のダメージを受けた。

 

「一個にしなさい」

 

「は〜い。えーと……アンパンで!」

 

「おけ」

 

 まるで俺が本音の保護者のようである。せめてお兄ちゃんの立場になるならまだしも、父親の立場にはなりたくない。本音から「パパー」なんて言われてもちっとも嬉しく――なくはない。寧ろ一種のプレイとして大歓迎だ。

 

「簪は?」

 

「このサンドイッチで」

 

「おけ、なら俺はカツドゥーンだ」

 

「それって……〝はたらく魔王さま〟?」

 

「正解だ。やるな簪」

 

「だってオススメって教えてたし」

 

「あ、そうなのか」

 

 最近、簪にオススメのアニメを教えている。もうかれこれ30作品ほど教えたためか自分も覚えてない。

 

「ふふ……自分で言ったのに覚えてないんだ」

 

「五月蝿いな……仕方ないだろ」

 

 若干笑った簪。その笑顔は本音に負けないくらい可愛いものだった。

 

「ん……あと十分しかない」

 

 ふと腕時計(ISの待機形態)をみると、昼休み終了間近になっていた。その後、急いで食べて教室にギリギリ間に合った。

 

「遅かったな」

 

「カツドゥーン食ってたら時間かかった」

 

「か、カツドゥーン?」

 

 ちなみに、本音からまた「はい、あーん」をする事になり、周りの目が気になった。簪はやってない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「改めて宜しくシャルル」

 

「うん。宜しく太一」

 

 学生寮、1030号室。俺はともかくシャルルは三人目の転校生で男の娘だ。故に、女子達が押し寄せてきたのだが、ステルスミッションの如く俺とシャルルはバレずに到着した。 

 

「へー、ゲーム機とか置いてあるんだね」

 

 シャルルが興味津々に呟く。このときのためにセッティング済みでいつでもゲームができる状態にしてある。最近発売したISのゲームもあり、少なくともゲーム上では俺はそこそこ強い……と思う。

 

「まぁな、暇つぶしにはもってこいだし。まぁ、本音や簪がルームメイトだったときはあまり使ってなかったが……」

 

「布仏さんや更識さんとルームメイトだったの?」

 

 ここで俺は、相手が男子だからこその自慢衝動が巻き起こってくる。

 

「そうだぜ。美少女二人とか最高だろ!」

 

 まずは本音と簪について自慢する。目の前に美少年がいたり、教官に生徒会長がいたりと話のネタは山ほどある。しかし、男の娘のネタは自重しておこう。

 

「あの二人可愛いもんね」

 

「シャルルも分かるんだな、同志よ」

 

「あはは……それで好きな子とか居たりするの?」

 

 唐突に恋バナへ変わる。シャルルにも好きな子がいたりするのだろうか。

 

「これといっていないかな」

 

「あれ? 布仏さんや更識さんは?」

 

 なぜ本音と簪が来るんだろう。二人とも可愛い上、共に過ごした仲であるからそう思われるのだろうか。だとしても、俺は二次元主義であり、三次元はまた別物だ。

 

「まぁ、あの二人と一緒に過ごして悪い気はしないが、特にそんな感情はない」

 

「どちらもお似合いだと思うけどね」

 

 なぜ周りは皆、そういうのか。見た目的に不釣り合いであるが故、この俺が二人と似合う訳がない。

 

「……いや、合わないだろ」

 

「――やっぱり悲観主義なんだね」

 

「ん?」

 

「何でもないよ」

 

「お、おう」

 

 彼女が何て言ったのか分からないが、まぁいいだろう。

 

「でだ、まずはシャワーはどうする? 前後どっちとか」

 

 本音と簪がルームメイトであった頃は、シャワールームを貸切にしてもらえたが、今回は仮にも男同士。したがって、シャワーの順番も考えなければならない。一緒に入るという選択肢は俺にはない。危ない性癖になりそうだからな。

 

「僕が後でもいいから、太一が先に使ってよ」

 

「おけ」

 

 しかし、一夏ルームに遊びに行くこともしばしば、遅くなるときは連絡しておけばいいだろう。ちなみにシャルルの連絡先はまだ交換していない。

 

「そういえば、太一って生徒会長と特訓してるってきいたけど、そうなの?」

 

「週に1、2回程度だけどね。それ以外は簪や一夏達と特訓してる」

 

 簪も楯無さん同様、教え方が上手いので一夏より上達してると思う。おかげで避けるだけなら代表候補生にも負けないレベルだ。

 近接戦闘に関しては、セシリアもクラス代表決定戦以降上達してるため、俺も負けずと特訓を重ねている。

 

「そうなんだ。じゃあ僕も加わっても大丈夫かな?」

 

「大丈夫だ、問題ない」

 

「そっか。ありがと」

 

 ニコッと微笑むシャルル。いつ見ても可愛くて、女より女らしい。

 

――だが男だ。

 

「それじゃ、シャワー使うから後でな」

 

「わかった」

 

 その後はシャワーを浴びてからシャルルと交代し、シャルルが戻って来た後。

 

「シャルル。お前はもう寝るか?」

 

「いや、まだ寝ないから大丈夫だよ」

 

「なら、アニメ鑑賞会を開くから。まぁ、把握ヨロ」

 

「うん、わかった。……太一ってアニメ好きなの?」

 

「それはもう生き甲斐並に」

 

 勿論、アニメの他にゲームも生き甲斐だ。

 

「いいね。太一にはそういうのがあって……」

 

「……? お前にはないのか?」

 

 急にシャルルの顔が暗くなった。これは訊かない方が良かったパティーンだろう。

 

「……大したことないから気にしなくていいよ」

 

「お、おう……まぁ、相談はいつでも構わないからな?」

 

「ありがとう。今は気持ちだけ受け取っとくよ」

 

 コンっコンコンっ。

 

 扉のノックする音が響く。これは本音と簪が来たことの合図だ。引越しもして、この時間帯で部屋に来ることが誰かわかりやすくするために三人で考えた共通のノック方法だ。正直、あまり意味は無い。

 

「いいぞ」

 

「やほー、やがみんとデュッチー~」

 

「……どうも」

 

 本音が着ぐるみの状態、簪は制服のままでお邪魔してきた。いつの間にか、シャルルのニックネームを本音は作ったらしい。

 

「デュ、デュッチー?」

 

「デュノアだからデュッチ~」

 

 本音は誰にでもニックネームを付けたい主義らしい。例外として織斑先生がいる。付けたら何を言われるかたまったものではないからだろう。

 

「シャルル、本音は知り合いによくあだ名を付けるんだ」

 

「へーそうなんだ。まぁ、宜しくね」

 

「よろしくー。同じクラスの布仏 本音、名前呼びでもいいよ〜」

 

「更識 簪……簪で大丈夫」

 

 簪は躊躇いがちだが、本音の方は名前で呼んで欲しいらしい。そう言えば、俺がこの前に「簪っていい名前だよな、美しくて」と簪に褒めたら喜びに満ちていた。本音も同様である。

 

「わかった。よろしくね本音さん、簪さん」

 

 シャルルは本音や簪と握手をした。

 これが全員女の子なら美少女が三人に増えていただろう。実際のところ、俺の周りは皆可愛いのは事実だ。学園の闇を感じてしまうよ、マジで。

 

 その後は約束通り〝未確認で進行形〟を見ることにした。

 さっそくベッドの上に簪と本音が乗ったのだが、本音はいつものように腕に抱きついてきた。シャルルはもう片方のベッドに座っている。

 

「本音さんって太一によく抱きつくの?」

 

「何故か部屋に入るとこうなる」

 

「えー、嫌なのかなー?」

 

「悪くないぞ」

 

 俺へのご褒美、いつもありがとうございます。

 

「そっか〜」

 

 ギリギリ当たってないから大丈夫だが、本音の考えていることはよく分からなかった。恐らくご褒美だろうが。

 

「やっぱり、仲睦まじいね」

 

「ま、まぁな……で、簪は何故睨む……」

 

 ふと横を見ると、そこには俺をジト目で睨む簪がいた。ジト目久々にありがとうございます。

 

「太一」

 

「は、はい?」

 

「……ご褒美」

 

 何かするのかと驚いたが、簪が顔真っ赤にして本音同様に俺の腕に抱きついてきた。勿論、ギリギリ当たってない。ご褒美は素晴らしいです。このまま死んでもいいくらいだ。

 

「あはは……仲睦まじいね……」

 

 シャルルは反応しきれないのか、若干笑顔が引きつっている。

 

「なんだ、この状況は」

 

 ご褒美にしては面白い。ギャルゲーの主人公になった気分である。

 

「あはは……――太一の鈍感」

 

「ん、なんか言った? シャルル」

 

「何でもないよ」

 

「お、おう」

 

 シャルルや簪は、たまにボソっと何かを口にする事がある。しかし、それが聞こえないことが多い。何か気になるものである。

 

「とりま、未確認で進行形をみようず」

 

 こうして俺達はそのアニメを半期分みた。OPの空耳は実に面白い。

 そして、三峰真白と本音が袖の部分だけ似てると言うのも確信した。あと他に袖余りなキャラクターは、忍野扇や艦これでもいた気がする。

 

 最後に初めてこういったアニメを見たであろう感想としてシャルルに訊いてみる。

 

「小さい頃に日本のアニメをみたことがあってね、結構好きなんだ。このアニメは可愛いし面白かったよ。実はフランスのパリに日本のアニメや漫画のお店があるのを聞いたことあるんだ。フランスの人も日本のオタク文化が好きなんだね」

 

 ニコッと微笑みながら答えるシャルル。可愛い。確かにフランスにオタク文化がパリにあるのは聞いたことある。メジャーなアニメもあればマニアックなアニメも一応あるらしい。

 

「好評で何よりだ。また今度みようぜ」

 

「わかった」

 

 最後には簪、本音と分かれて寝た。のはずだが、シャルルの寝息を聞くために俺はしばらく起きていた。一時間後に聞こえたシャルルの寝息は非常に可愛いものだった。

 シャルルは男の子なのにそのような行動に出るのは、自分がホモだということだ。いや、認めたくはないが、いまだけはそういうことにしよう。

 

 ちなみに寝顔も窺ったのは言うまでもない。女より女らしい――だが……男だ。

 

 

 

 




若干の独自設定ぶち込んでます。
誤字報告ありがとうございます

━━中二病でも恋がしたい!

言ってしまえば そのシーン をそのままこの話に入れているので動き的には富樫勇太と小鳥遊六花のやり取りが太一と本音に変わっただけです。反省はしている。後悔はしていない。

━━本音は5のダメージを受けた

元ネタ、男子高校生の日常で

タダクニは5のダメージを受けた。のこと

━━カツドゥーン

はたらく魔王さま冒頭では日本語がガバガバだったのでこうなった。多分

━━ISの待機状態

多分、書いてなかったと思います。書いてあったら報告下さい。すぐに訂正しますので‥‥

1通り読んだけどそんな描写ないよね。

━━パティーン

パターン

━━袖余りキャラ

本音の他に三峰真白、忍野扇、艦これの妖精?十四松も一応入りますね‥‥それから‥‥わかんね。

━━独自設定

シャルロットは小さい時に日本のアニメをみたこと、パリ情報

IS学園のコンビニ要素

銀行

以上かな?


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第22話 ボウガイ

前回より文字数増し


 

 

 

 

 

「なるほどね。太一は接近戦が苦手で、一夏は射撃の特性を理解出来ていないんだ」

 

「そうなんだよな。射撃はそこそこできるけどね」

 

「一応わかっていたつもりだったが……」

 

 シャルルが転校して来て五日が経つ。今日は土曜日で、IS学園では午前授業のみ、午後からはフリータイムだ。

 とはいえ、土曜日はアリーナが全解放なのでほとんどの生徒が実習に使う。今はシャルルと一夏も共に第三アリーナで訓練をしている。あの三人はぶつぶつと何か言ってるけどスルーしておこう。簪は別の用事でいなくて、本音は()()、生徒会。

 

「太一と戦ってわかったけど、避けるのは凄く上手いよ。僕が撃っても全然当たらないし」

 

 本当に俺は避けることだけは特化してるらしい。楯無さんの攻撃も避けれることが増えたが、それは本気を出されていないからで。なんにせよ、俺が最初より上達したことは確かだ。

 

「褒め言葉、あざーす」

 

 軽くお礼を言っておく。たまには素直に受け止めることも重要だろう。

 

「一夏は射撃の特性を知識として知ってるって感じかな。間合いも詰められてなかったし」

 

「うっ……確かに。瞬時加速(イグニッション・ブースト)も読まれてたな……」

 

「一夏は近接オンリーだから、もっと深く射撃武器の特性を把握しないとダメだろ」

 

 接近戦に強くなれば箒やセシリア、簪、鈴だって歯が立たないくらい最強なのだが。

 

「一夏の瞬時加速(イグニッション・ブースト)って直線的だからね。反応できなくても軌道予測で攻撃できちゃうよ」

 

 俺も瞬時加速(イグニッション・ブースト)は直線的だが基本的に使ってない。セシリア相手なら使えるが鈴や簪などには通用しないのだ。雷艦で防げない武器を持っているからである。

 

「直線的、ね……」

 

「でも、瞬時加速(イグニッション・ブースト)中で無理に軌道変化させない方がいいよ。下手したら骨折しちゃうから」

 

「なるほど」

 

「太一は近接と射撃の上達すればそれなりに上手く戦えると思うよ」

 

「そうだな」

 

 シャルルも簪や楯無さん同様、教え方が上手い。一夏の周りの三人は愛情が故に教えてるのかもしれないが、未だに教え方は微妙だ。教官の質の差が俺と一夏ではかなり離れているといっても過言ではない。

 また三人がぶつぶつとなにか言ってるけどスルーしよう。

 

「そういえば、太一ってパイルバンカーを付けてない?」

 

「おう。そうだが?」

 

 どうやらシャルルもパイルバンカーを持ってるらしい。威力がどれくらいか不明なので試してみたい。ロマン兵器の一つだからな。

 

「少し比べてみない? どんな違いがあるのか」

 

「おう。いいぞ」

 

 シャルルは一秒もかからずにパイルバンカーを展開する。

 シャルルの展開が誰よりも早く、俺は驚いた。それでも、《雷鉄》は足元にあるため元々展開しているため、劣等感は特にない。

 

「あれ? 太一、パイルバンカーださないの?」

 

「いや、足元みろ」

 

 ビョーンと足裏からパイルバンカー《雷鉄》をみせる。円錐で尖った金属がみえ輝いていた。

 シャルルのそれは腕に展開された本格的なパイルバンカーだ。おそらく《雷鉄》よりもロマン溢れた兵器だと推測する。

 

「二人とも強そうだな。そのパイルバンカーとか」

 

 模擬戦とかで《雷鉄》は使ったことは何度かある。一夏や箒、セシリアに使って大ダメージを与える機会も得られた。《雷焱》を展開しつつ使えるため、非常に効率的だ。難点はリーチが短いこと。

 

「まぁね。そういえば一夏は後付武装(イコライザ)がないんだよね?」

 

「一夏は拡張領域(バススロット)がないらしい。おそらく単一仕様能力に使ってるからだ」

 

 獰飆の拡張領域(バススロット)は《雷艦》に多く使ってる為、初期の予定より拡張領域(バススロット)は減ってしまっている。それでも後三つ程度、武装が量子変換(インストール)できるらしい。

 

「そうなんだよなぁ……」

 

「本来なら第二形態で発現するんだよ。それでも発現しない機体の方が多いから、それ以外の特殊能力を複数の人が使えるようにしたのが第三世代型ISだよ。凰さんやオルコットさん、太一のISとかいい例かもね」

 

「それが『零落白夜』なのか……まぁその話は置いとこうぜ。あまり長居するのも時間の無駄だし」

 

「あ、うん。それもそうだね。次は射撃の練習しようか。はいこれ」

 

 シャルルが一夏に渡したのは、先程シャルルが使用していた五十五口径アサルトライフル《ヴェント》だった。

 

「え? 他のやつの装備って使えないんじゃないのか?」

 

 これに一夏は疑問を抱いた。

 

「普通はね。でも所有者が使用許諾(アンロック)すれば登録した人のみ利用できるよ」

 

「なるほど」

 

 これは楯無さんから既に教わり済だ。

 一応、一夏やシャルル、簪などには使用許諾(アンロック)してある。模擬戦で装備が奪われるなんてことないと思うからだ。それほど信頼しているということである。

 

 その後は一夏がシャルルと共に射撃訓練をしている中、俺はセシリアに用があった。

 

「セシリア、少し《雷艦》の性能について協力してくれないか?」

 

「えぇ、まぁ太一さんの頼みでしたら、構いませんが」

 

「じゃあ、《雷艦》に向かってレーザー撃ちまくってくれ」

 

「? ……は、はい。わかりましたわ」

 

 セシリアは《スターライトmkⅢ》を展開し《雷艦》に向かって撃ちまくる。これをやってる理由は満タンまでどれくらいのエネルギーが必要か調べるためだ。

 ついでにこれは今まで80%からしか表示されなかったが、現在は0%から表示可能となりわかりやすくなった。

 

「いつまで続くのです?」

 

「エネルギー満タンまで」

 

「はい? そこまでやるんですの!」

 

「おうよ」

 

「……わかりましたわ」

 

 セシリアはレーザーを連射しまくる。自身のシールドエネルギーが減るがその分エネルギーも溜まっていく。

 

『12%』 

 

『14%』

 

『16%』

 

『18%』

 

と2%ごとに増えていった。シールドエネルギーは少しずつ減っていっている。

 

――吸収し続けて5分が経つ。

 

「まだですの?」

 

「まだ半分」

 

「は、はい……」

 

「――……太一」

 

 ……ん、誰かの声が。

 

 軽く振り返ると、走って疲れたのか深呼吸をしていた簪がいた。

 

「おぉ簪ちょうどいいや。《雷艦》に荷電粒子砲撃ちまくってくれ」

 

「ふぅ……え? ……うん。わかった」

 

 簪も参戦して計二人からエネルギー兵器を撃たれるという素晴らしい状況となった。これはAnotherなら死んでたな。

 

「今、85%だ。もう少し頑張ってくれ」

 

『90%』

 

『95%』

 

『100%《雷艦》-REFLECTION LASAR(リフレクション レーザー)-発射可能です』

 

「ストップ! さんきゅ」

 

 氷歌の言葉で左手を上げて射撃を停止させた。セシリアは若干疲れているようだった。

 

「はぁ……疲れましたわ」

 

「太一……それでどうするの?」

 

 疑問に思った簪。そう言えば、まだ何のためにやったか伝えてなかった。

 

「あぁ……これで分かったけど。常に吸収し続けたら15分程度で溜まるみたいだ。これが調べたかったんだ」

 

 途中から簪も参戦したから本来なら20分以上掛かる。しかし、エネルギー兵器の出力差もでるだろうが、こんなものだろう。

 これを撃ちたいところだけど、今日は非常に人が多すぎる。撃つのは断念するべきだろう。ISスーツを来ただけの生徒が多すぎるからだ。

 

「そうなんだ――」

 

「ねぇねぇ、あれ見て」

 

「え、ウソ……ドイツの第三世機よ」

 

「あれってトライアル段階だったはずだよね……?」

 

 知らない女子及びクラスメイトの言葉に俺は何かを察した。

 まさか――

 

「……………………」

 

 そこにいたのはもう一人の転校生、ドイツ代表候補生の軍人娘ことラウラ・ボーデヴィッヒだった。

 転校初日以降、誰ともつるんだり話したりすらいなかった彼女は、AKフィールド全開に発動していたアイツはTheぼっちであった。見た目はとても可愛いのに勿体なく残念な性格である。

 

「おい」

 

 やっと声を上げだしたと思えば、オープンチャンネルで誰かを呼んでる様だった。軍人娘が見てるのは俺でもシャルルでもない、一夏だった。

 

「……なんだよ」

 

 一夏は気が進まなさそうに言った。

 

「貴様も専用機持ちだそうだな。ならば話が早い。私と戦え」

 

「嫌だ。理由がねぇよ」

 

「貴様にはなくても私にはある」

 

 なんだこの面倒くさい展開は。REFLECTION LASAR(リフレクション レーザー)でもぶち込みたい気分だ。彼女の理由は思い当たることがないこともない。おそらくあの誘拐事件が関係してるのだろう。

 

「貴様がいなければ教官が大会二連覇の偉業をなしえただろうことは容易に想像できる。だから、私は貴様を――貴様の存在を絶対に認めない」

 

 そんなこと言う君の存在を俺は認めたくはない。可愛い女の子の一人が世界から消えるのは悲しいけれど。

 例えると、〝僕は友達が少ない〟の三日月夜空や〝犬とハサミは使いよう〟の夏野霧姫、〝デート・ア・ライブ〟の夜刀神十香、〝進撃の巨人〟のアルミン アルレルトが居なくなると同じくらい悲しいよ。

 

「また今度な」

 

「ふん。ならば――戦わざるを得ないようにしてやる!」

 

 一夏は拒否したが、軍人娘は漆黒のISを戦闘状態へシフトさせる。刹那、左肩に装備された大型の実弾砲が火を噴いた。

 

「!!!」

 

 ゴガギンッ!

 

「……こんな密集空間でいきなり戦闘を始めようとするなんて、ドイツの人はずいぶん沸点が低いんだね。ビールだけでなく頭もホットなのかな?」

 

「こいつ、頭沸いてんだろ」

 

「貴様ら……」

 

 横合いから割り込んだシャルルが、シールドで実弾を弾き、同時に右腕に六十一口径アサルトカノン《ガルム》を展開しラウラに向ける。俺はいつでもREFLECTION LASARを撃てるように戦闘態勢に入り、簪や鈴、箒、セシリアは呆然としていた。

 

「フランスの第二世代型と日本の盗作兵器ごときで私の前に立ち塞がるとはな」

 

「未だに量産化の目処が立たないドイツの第三世代型よりは動けるだろうからね」

 

「悪いが好きで盗作した訳じゃねぇよ」

 

 大体、束さんのせい。実際、《ブルーティアーズ》と《雷艦》の構造自体は全然違う。パクられた、というのが正しい解釈だ。

 

『そこの生徒! 何をやっている! 学年とクラス、出席番号を言え!』

 

 突然、アリーナのスピーカーから怒鳴り声が聞こえた。おそらく騒ぎを聞きつけた担当の教師だろう。

 

「……ふん。今日は引こう」

 

 軍人娘はその言葉でアリーナから去っていった。

 

「一夏、大丈夫か?」

 

「あ、ああ助かったよ」

 

「なら安心だ」

 

 ついさっきまで軍人娘と対峙していた鋭い眼差しはなかった。いつもの女の子らしくみえるシャルルに戻っていた。

 

「おう。そうだな。あ、銃ありがとなシャルル。参考になったぜ」

 

「それなら良かった」

 

「太一はあの状態をどうするんだ?」

 

 一夏に指摘されて何のことかと思ったが、それはREFLECTION LASARが発射可能な形態になったままのことだろう。あの軍人娘に撃ちたかったが、撃てる状況ではなかったのが残念だ。ISを待機状態に戻せば吸収したエネルギーはリセットされるようなので、今戻れば無駄になる。

 

「待機状態に戻せば溜めた分は消えるから問題ない」

 

「へぇーそうなんだ」

 

「……そろそろアリーナの閉鎖時間」

 

「おう。そうだったな」

 

 簪の言葉で俺達はアリーナから出ようとする。

 

「えっと……じゃあ、先に着替えて戻ってて」

 

 言うと思った。シャルルはここ最近ずっとこんな感じで恥ずかしがっている。

 恐らく、なにか後ろめたい事情があるんだろうが、どうしても気になってしまう。相手は男なのに、俺はやっぱりホモだったらしい。

 

「たまには一緒に着替えてみようぜ」

 

 一夏はそれでもシャルルと着替えたいらしい。このままでは腐女子がわいて、薄い本が出来てしまうから辞めてもらいたい。いや、密輸入で試しに読んでみるか。

 

「え、イヤ」

 

「そんなこと言わずにさ」

 

 最近はずっと一夏は、シャルルに「着替えよう」と誘いに誘ってしつこいのだ。正直、度が過ぎると思う。ガチホモは一夏、はっきりわかんだね。

 

「太一、コイツを連行しろ」

 

「イエスマム」グイ

 

 箒がそう言ったので俺は一夏の首根っこを掴み引っ張った。

 

「ちょ……太一、離せよ」

 

「はーいはいアンタはさっさと着替えに行きなさいよね」

 

「は、はい……」

 

 鈴も加わり一夏を連行した。周りから見れば、犯罪者を痴漢容疑で現行犯逮捕して連行中みたいだ。一夏は犯罪者、はっきりわかんだね。

 そして、シャルルは今日も女の子らしい――

 

――だが……男だ。

 

「こ、コホン! ……どうしても誰かと着替えたいのでしたら、そうですわね。気が進みませんが仕方がありません。わ、わたくしが一夏さんと一緒に着替えて差し上げ――」

 

「こっちも着替えに行くぞ。セシリア、早く来い」グイ

 

「ほ、箒さん! 首根っこを掴むのはやめて――わ、わかりました! すぐ行きましょう! ち、ちゃんと女子更衣室で着替えますから!」

 

 反論しようとするセシリアだが、そんなことさせまいと箒は首をぐいっと引っ張った。ナイス箒。

 

「さて鈴、後は俺が連れてくから任せろ」

 

「わかったわ。またね一夏、太一」

 

「あぁ、またな」

「おうよ」

 

 鈴は箒、セシリアと共に女子更衣室へ向かった。

 

「簪もまた後でな」

 

「わかった。またね」

 

 簪も箒たちと一緒に女子更衣室へ向かって去っていった。

 

「何であそこまで拒否られるんだ?」

 

 だだっ広い男子更衣室。まだ理解できない一夏は、俺に訊いてくる。

 

「知らぬ。本人が恥ずかしいって言ってるんだからしつこくしない方がいいぞ」

 

「でも――」

 

「しつこ過ぎるとシャルルに避けられるかもしれないぞ。まぁそんなことにはならないと思うがな」

 

 ひょっとすると、性同一性障害的な何かがあるのだろうか。いや、しかしよく分からない。

 

「……そうだな。やっぱりしつこくするのは控えるか」

 

「あぁ、そうした方がいい」

 

 そして、着替えを終えた後、一夏と俺は部屋を出ようとした時。

 

 コンコンっ

 

「あのー織斑君と城谷上君、デュノア君はいますか?」

 

 誰かと思ったら麻耶(真耶)先生だった。何の用だろう。

 

「シャルル以外いますよ。後、着替えは終わってます」

 

 俺がそう伝えると、「失礼します」と言って麻耶先生は自動ドアを開けて入ってきた。

 

「何の用ですか?」

 

 一夏が麻耶先生に問う。

 

「いえ、それほど大事な話ではないですよ。お二人がデュノア君に伝えておいてください。実は、今月下旬から大浴場が使えるようになります。時間帯を別にすると問題が起きそうだったので、男子は週に二日の使用日を設けました」

 

本当ですか(一夏)!」

 

マジすか()!」

 

 一夏は喜びのあまり麻耶先生の手を取っていた。

 これは嬉しい。ついに待ちに待った大浴場なのだ。正直、シャワーじゃ物足りないとずっと思っていたから、麻耶先生に感謝しなければ。

 

「本当に助かります。ありがとうございます。山田先生!」

 

「い、いえ、仕事ですから……」

 

 麻耶先生の手を握りしめて話している一夏だが、これをあの三人がみたら大変なことになるだろう。確信。

 

「……二人は何してるの?」

 

「あっ握りっぱなしだった。すみません」

 

 シャルルが戻ってきたと同時に、一夏はパッと手を離す。山田先生はその言葉に気づいて恥ずかしくなったのか、くるんと背中を向けた。

 

「2人とも、先に戻ってって言ったよね」

 

 若干シャルルの表情は普通だが、恐怖感を感じたため、ここはちゃんと謝っておくべきだろう。

 

「それに関してはすまん。山田先生に呼ばれて更衣室からでるの忘れた」

 

「なら仕方ないか……何を話してたの?」

 

「まぁ、今月下旬から大浴場が使えるらしいんだ」

 

「そう」

 

 シャルルはあまり乗り気な反応ではなかった。まぁ大して重要な話じゃないしシャルルにとって俺達と風呂は恥ずかしいからだろう。

 

「あ、それでですね、城谷上君と織斑君には他にも用事があるんですよ。ちょっと二人には書いてほしい書類があるんで、職員室まで来てもらえます? 白式と獰飆の正式な登録に関する書類なので」

 

「わかりました」

 

「了解です。じゃあシャルル遅くなるからシャワーはご自由に」

 

「うん。わかった」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………。……はぁぁぁ……」

 

  ドアを閉め、寮の自室に一人だけになったところでシャルルは、はき出すようにため息を漏らした。それまで我慢してたからなのか、無意識に出たそれはシャルル自身も驚くほどだった。

 

(何をイライラしてるんだろう……)

 

 先ほどの更衣室での態度が今になって恥ずかしい。きっと二人とも面食らっていたに違いないと思うと、どんどん落ち込みに拍車がかかる。

 

(シャワーでも浴びようかな……)

 

  シャルルはクローゼットから着替えを取り出し、シャワールームへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、帰るか」

 

 獰飆に関する書類については、枚数も少なく名前を書くだけだったので、すぐに終わることができた。一夏は名前を書くだけだが、枚数が多いらしい。俺はトイレがしたいため、先に部屋に戻ることにした。

 

 

――俺はこの時忘れていた。シャルルがシャワーを浴びていたことを。

 

 

 

 




改良しました(2017/05/22

━━シャルロットのパイルバンカー

連射式でしたよね。ズカンッズカンズカンって
太一のは連続で使えません。

━━AKフィールド

ATフィールドと勘違いしてはいけません。あくまでAKです。

━━僕は友達が少ない、三日月夜空、
犬とハサミは使いよう、夏野霧姫
デート・ア・ライブ、夜刀神十香
進撃の巨人、アルミン アルレルト

それぞれのキャラクターの共通点は何でしょう?

答え 中のひ――中の人などいない!

━━麻耶先生

基本的に 麻耶先生 で行きます。正しくは真耶先生

━━シャルロットのニックネーム。

シャルはありきたりだろ。ならば‥‥あれ‥‥心がぴょんぴょん――


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第23話 ラブコメ

ついに、ラッキースケベイベントです。


改良しました2017/05/26


 

 

 

 

(……トイレしたい)

 

 そう思って部屋に戻り、シャワールームへ続く洗面所への扉を開ける。

 

 ガチャ。

 

 扉を開く音が二重に鳴る。本来出るはずのない音が混じっているが、一方は俺が開けた音で、もう一方は風呂場からの音だ。つまり、シャルルが風呂から上がったということだ。

 

 彼は恥ずかしがり屋であり、共に着替えるのを頑なに拒む男の娘。ここで裸をチラ見するのは、いけない事だと分かっていても、俺は気になってしまった。

 そのせいで、俺は判断が遅れ、シャルルの裸――

 

「――Oh…………」

 

 

【挿絵表示】

 

 

※謎の光発生中

 

「……た……た、たい……ち……?」

 

 俺は顔が真っ赤になり、無言のそっ閉じ。

 シャワールームから現れたのは、シャルルと呼ばれる男の娘ではない。金髪ロングで可愛い()()()の全裸姿であった。

 

 俺は今、アニメではベタの中のベタでラブコメアニメには欠かせないラッキースケベイベントが起こった。

 

 例えば、

〝とある魔術の禁書目録〟

〝最弱無敗の神装機竜〟

〝さくら荘のペットな彼女〟

〝二セコイ〟

〝ToLOVEる〟

〝神のみぞ知るセカイ〟

〝ストライク・ザ・ブラッド〟

〝まよチキ〟

〝這いよれ! ニャル子さん〟

〝ロウきゅーぶ〟

〝DOG DAYS〟

〝この中に1人、妹がいる!〟

〝極黒のブリュンヒルデ〟

〝精霊使いの剣舞〟

〝俺がお嬢様学校に、「庶民サンプル」として拉致られた件〟

 

 など、これらは全て女子の裸が見えてしまうラッキースケベイベントが含まれるはずだ。他にも沢山あるかも知れないが、短時間でこれらを思い出す俺は凄いと信じたい。

 あの時、相手が男だという解釈で謝れば許してくれるだろうと判断していたのが間違いだった。

 部屋でも間違えたかと思えば、部屋にあるゲーム機で紛れもなく俺の部屋だとわかる。そして、なぜ美少女が俺の部屋にいたのかと思っていても、面影はどう足掻こうとシャルルであった。

 今ならはっきりと言える。彼は()()()だ。胸が見えたことで俺はそう判断した。

 

 ……あぁ、鎮まれ、俺のキングダム!

 

 そんなことより、ラッキースケベイベントが起こってしまったので、それ相応の対処法を考える。

 言うまでもないだろうが、ここでは日本人ならではの謝り方である土下座だ。これで行くしかない。

 

「あ、あがったよ……」

 

 シャルルであろう美少女が出てきた瞬間、

 

「すみませんでしたあぁぁぁぁあっ!!!」

 

 と、おでこが床に付くまで頭を下げ、ほぼ完璧であろう土下座をする。そして、廊下に響くほど大声で謝った。

 

「い、いや、うん……だ、大丈夫だから……そんな頭下げないで……頭を上げてね? ……」

 

 シャルルらしき美少女にそう言われたので、俺は頭を上げてシャルルを近くの椅子に座らせた。

 

「………………」

 

「………………」

 

 沈黙が続いているが、とりあえずトイレがしたい。別にナニをする訳ではない。これは本当だ。

 

「……ちょ……ト、トイレ行くわ」

 

「う、うん……」

 

 トイレに入ると、俺はさらに困った。やはり、正真正銘のシャルルだった。湯気が多くてよく見えなかったが、少なくともアレは付いてなかった。やはり、シャルルは女の子だったようだ。

 

 そして、戻ってきてからも気まずい状態が数分、いや、二十分が経つかも知れないが、俺たちは無言だった。

 このままでは沈黙のループなので、勇気を振り絞って俺は声をかける。

 

「あああ、あ、あの……そ、その……え、えーと……」

 

「ななな、なにかな?」

 

 声をかけたのはいいいが、俺が緊張し過ぎた喋りだったので、シャルルまで変な反応をしていた。

 

「君は……シャルル・デュノアさんだよね?」

 

「う、うん。間違ってないよ」

 

「そうか……」

 

 シャルルは女の子ということがここで確信に変わった。元から可愛い見た目であったが、シャルルが女子と知り、より一層可愛く見えて仕方がなかった。

 

「あと……その……チャック締めてくれないか?」

 

 現在、シャルルは風呂上りに今まで使ってたであろうコルセットとかは使用せず、ジャージのみでチャックが空いている。そのため、軽く谷間が見えてしまうのだ。目のやり場に困る。

 

「……だ、太一のえっち…………」

 

 指摘に気づいたシャルルが、チャックを締めた途端に真っ赤な顔で言われた。ありがとうございます。我々の業界ではご褒美です。ここまでテンプレ。

 

「ま、まぁ……それより何故、男装してたんだ?」

 

「それは、その……実家からそうしろと言われて……」

 

 さっきとは別にシャルルは何か暗い顔になっている。

 

「まさか、デュノア社の――」

 

「そのまさかで僕の父は社長をしてるんだ。その人の直接の命令なんだ」

 

「え、命令って……何故――」

 

「太一。僕は愛人の子なんだよ」

 

 俺は絶句してしまった。愛人の子というのは、一般的に平凡な家庭であると思われる俺には重すぎる言葉だった。

 

「引き取られたのが二年前。ちょうどお母さんが亡くなったときにね、父の部下がやってきたの。それで色々と検査をする過程でIS適正が高いことがわかって、非公式ではあったけれどデュノア社のテストパイロットをやることになってね」

 

 おそらく、シャルルは本当は言いたくない話をそれでも健気に話してくれているのだろう。俺にとっては真面目な話なので、黙って聞いていた。

 

「父にあったのは二回くらい。会話は一時間にも満たないかな。普段は別邸で生活をしているんだけど、一度だけ本邸に呼ばれてね。あのときはひどかったなぁ。本妻の人に殴られたよ。『泥棒猫の娘が!』ってね。参るよね。母さんもちょっとくらい教えてくれたら、あんなに戸惑わなかったのにね……あはは」

 

 シャルルは愛想笑いをするが、声も目も全く笑っていなかった。これには、俺は笑い返すことはできない。いや、できるわけがない。

 俺が表情に出ていないか心配だが、あの社長と本妻に怒りを感じていた。

 

「それから少し経って、デュノア社は経営危機に陥ったの」

 

「え? デュノア社は量産機ISのシェアが世界第三位とかなんとか……」

 

「そうだけど、結局リヴァイヴは第二世代型なんだよ。ISの開発ではお金が凄くかかるし、殆どの企業は国の支援でやっと成り立っているところばかりだよ。それで、フランスは欧州連合の統合防衛計画『イグニッション・プラン』から除名されているからね。第三世代型の開発は急務なの。国防のためでもあるけど、資本力で負ける国が最初のアドバンテージを取れないと悲惨なことになるんだよ」

 

 国やIS企業とかの社会のことに関して、俺には難しい事だと思った。理解するのもやっとだ。

 

「……それで、何故、男装することに?」

 

「そんなの簡単だよ。……注目を浴びるための広告塔。そして――」

 

 シャルルは俺から視線を逸らして苛立ちを含んだような声で続ける。その瞬間に俺は一時的に息を止めた。

 

「――白式、又は獰飆のデータを盗め。……それがあの人からの命令だよ」

 

 シャルルの親父には呆れた。どんなに愛人の子であろうと、血が繋がってる、繋がってないにしても、子供を奴隷――いや道具のように扱うのは狂っていやがる。何故、この子がこんな目に合わなければならないのか。

 

「まぁ、太一にバレちゃったし、僕は本国へ呼び戻されて……デュノア社は潰れるか他企業の傘下に入るか……フランス政府が事の発端を知ったら……僕は代表候補生を下ろされて、良くて牢屋行きかな」

 

「……」

 

 良くて牢屋行き、それはシャルルの思い込み過ぎだろう。シャルルのような優秀なIS操縦者を政府が牢屋行きにするだろうか。否、その可能性は低いだろう。

 

「ごめんね。今まで嘘をついていて……それと、愚痴みたいになっちゃったけど、聞いてくれてありがとう」

 

 土下座ではないが、精一杯頭を下げて謝るシャルル。それでも俺は謝られていい気はしない。シャルルは悪くないからだ。

 

「謝らなくていいよ」

 

「え……?」

 

 俺はシャルルの親父への怒りに耐えられなくなる。

 

「悪いのは殆どがあの父親だろう! 愛人の子であろうと血は繋がってる娘を道具みたいに利用していい権利なんて無いはずだ! 大体、頭がおかしいだろあの親は……男装させるならまだしも、データを盗ませるという犯罪行為までさせるなんて、そんなの親じゃねぇよ……」

 

 しかし今のは、俺が思ったことを言っているだけであって意味の無いことだ。

 

「それに俺はお前をフランスへ帰らせたくない。せっかく仲良くなれたのに……俺はこれからもシャルルと友達でいたい」

 

 ここまで来ると、俺が俺じゃないみたいだ。またこんなセリフ、言ってて恥ずかしくなる。

 

「え……?」

 

「いや、まぁこれは俺の思っていることであって、お前の意思ではない。だから、お前の――シャルルの意思を聞きたいんだ」

 

「‥‥そんな権利、僕にはない――」

 

「あるさ。自分の人生は自分が決めるもの。他人がどうこうできるものじゃないに決まってるさ。……だからな、もう一度言うぞ。シャルルの意思はなんだ? フランスに帰りたいのか? それとも……」

 

 数秒の沈黙の後、シャルルは涙を流し始め話し出す。

 

「……この学園にいたい……せっかくできた友達と楽しく過ごせたのに……帰りたくないよ。太一……僕は……僕は……」

 

 シャルルは泣きながら俺に抱きついてきた。何か当たっているが、俺は状況が状況なので気にしない。気にできない。

 

「ならここにいればいい」

 

「え……?」

 

 そう言って俺は生徒手帳を取り出し、IS学園特記事項第二一のページを開く。シャルルに抱きつかれていたので取りだしにくかったが、特に問題ない。

 

「ここに書いてあるとおり、少なくとも三年間は安全だ。なんとか後で策を考えるからさ」

 

「……ありがとう、太一」

 

 少し泣いて落ち着いたのか、それとも抱きついていたことに恥じらいを感じたのか、シャルルは俺から少し離れた。

 

「ほら……これで涙拭け」

 

 制服のポケットから全く使っていなかったハンカチを取り出す。これはほぼ新品だ。IS学園では設備が整い過ぎてて、ハンカチの出番なんて滅多にないのだ。

 

「ありがと……あ……ごめんね。太一の肩が少し濡れちゃってた……」フキフキ

 

 シャルルの涙で濡れた制服の肩を、シャルルがハンカチで拭こうとする。

 さっきからそうだが、シャルルの顔が近い。ここまで近距離に詰められることがないので、彼女の顔が精密に見れてしまう。余計に可愛さが増した。

 

「あ、あざーす」

 

――シャルルが少し落ち着いた後。

 

「どうするか、この事は内緒にする? 俺的には本音や簪に伝えるべきだと思うが……」

 

 あの二人は毎日のように俺の部屋に来て、アニメ鑑賞会したりする。下手にバレるとややこしくなるだろう。

 

「僕は構わないよ。いつも一緒にいるから、本当のことを言わないとね」

 

 コンッコンコンッ。

 

「あっ……丁度いいタイミングだな。入っていいぞ」

 

 本音と簪が入室した後、シャルルから先程聞いた話をゆっくりと話した。本音と簪も話を理解してくれて、本音はシャルルと抱き合って慰めていた。キマシタワー。

 

「それで、どうするの……?」

 

「そこだよなー」

 

 簪の言葉で俺は思ったが、策が思いつかない。デュノア社の縁を切るか、アドバンス・サンダー社に協力して貰うか、生徒会長であり対暗部用暗部の楯無さんに協力して貰うかと案は思いつくが、策ではない。

 

「まだ。考えなくてもいいよ」

 

「え? でも――」

 

「大丈夫。三年間もあるんだから」

 

「それでも、何か助けて欲しいことがあったら言うんだぞ?」

 

「うん。ありがと太一」

 

 これである程度は一件落着だろう。いや、一件落着ではない――って、いつの間に本音は俺のお菓子食べてたんだ。

 

「そう言えば……どうして太一はシャルルが女子って分かったの?」

 

 ギクッと俺とシャルルは焦ってしまった。ラッキースケベイベントが起こりましたなんて言えるわけがない(確信)。

 

「イヤ……シャルルカラオシエテクレタノダヨ」

 

「そ、そうそう。た、太一の言う通りだよ」(焦)

 

 俺は棒読みだし、シャルルは焦ってるのが目に見えてしまっている。

 

「「あやしい……」」

 

「「あはは……」」

 

 すみません。二人とも俺を睨むのは辞めてください。ジト目とか特に興奮しちゃうので。

 

「それより……夕食行こうぜ……夕食」

 

「そうだね……あはは」

 

 という訳で俺とシャルル、本音、簪は夕食を摂ることにした。部屋を出ると、ちょうどすぐ近くに一夏とセシリア、箒がいた。

 最近、廊下でも本音が俺の腕に抱きつく状態が増えてしまっている。なんというかクラス対抗戦の時、廊下で本音が腕に抱きついてきた時を思い出す。

 

「本音……離れて」

 

 なんとかこの状態を避けようと簪は本音を引っ張って頑張っていた。確かに、この状態は恥ずかしいから辞めて貰いたい。

 

「はぁ……もういいや……えいっ」

 

 え? ちょっとナニシテルの。簪氏?

 今度は簪まで廊下なのに腕に抱きつかれた。シャルルや一夏達にも見られてる。さらに、セシリアと箒も一夏の腕に抱きつき始めた。

 

「殿方がレディをエスコートするのは当然のことですわ」

 

「そうだな。男がレディをエスコートするのは当然だな」

 

 オウフwww。この状態はやばいやばいよ、どれくらいやばいかっていうとマジやばい。

 俺と一夏の周りに美少女が二人、腕に抱きついていて、シャルルが何故か若干羨ましそうに見てるし、周りの女子も羨ましそうにして集まってくる始末。ご褒美だとしても、これ何てエロゲ?

 

「あのだな」

 

 一夏が何かを言おうとしている。

 

「「なんだ? (なんですの?)」」

 

「歩きづらい」

 

「一夏のアホ」

 

 とりあえず、一夏が言ったことにはアホって言えばいいだろう。ほら、2人からギリっ! っと腕を抓られてるじゃん。

 

「……太一」

 

「ん?」

 

 簪に呼ばれた。もしかして、一夏と同じ事考えていると思ったのか。

 

「……太一は歩きづらいって思ってる?」

 

「滅相もない。マジ最高ッス」

 

 半分は本心だが、場所が場所なので辞めてもらいたい。あれ、本音氏、胸があたり始めたのですが、あててるんでしょうか。

 

 もにゅ もにゅ。

 

 これ以上のご褒美は俺のキングダムが上に凸してレベルアップしちまうから辞めてくれ……。

 

 

 夕食を摂り、部屋に戻ってシャルルが寝た後、真っ暗な部屋でベッドの布団に入り考え事をしていた。

 

 いくら三年間安全とはいえ、三年後にどうなるかが怖い。俺一人で何かできる問題ではない上、誰かと協力するのも何だか躊躇ってしまう。どうすればいいのだろう。

 そういえば、連絡先にあの人を登録していたのを忘れていた。連絡先には、シャルルと本音に簪や楯無さん、一夏、織斑先生、鈴、弾、数馬、そして、――天災だ。尚、両親は個人保護プログラムでどこかへ行った。死んでしまった訳では無いので、特に悲しくはない。

 

――あの人に頼んでみるか。

 

 だが、あの人は他人に興味がないため、スルーしかねないかも知れない。いや、俺の頼みなら聞いてくれるかも知れないだろう。シャルルに許可を得て、一夏にあの事を話し、二人で頼んだら、この問題の解決に繋がるかも知れない。明日、電話を掛けてみようか。

 ついでに、一夏はあの人の連絡先を持っていない。俺は中学生になる前に一度会っており、その時になんとなく連絡先を貰った。

 

 

 

 




一件落着‥‥できませんでした。

次回はみんなのアイドル束さんです!早っ

追記


この世界では時系列が現代設定なのでスマホが普通です。ISが未来的過ぎるんですからスマホも普通でしょう。
未来的なスマホは一般人で持ってる人は少ない設定。空中投影ディスプレイなんてお高いでしょうに。

※トレス絵追加

━━【とある魔術の禁書目録】
【最弱無敗の神装機竜】
【さくら荘のペットな彼女】
【二セコイ】
【ToLOVEる】
【神のみぞ知るセカイ】
【ストライク・ザ・ブラッド】
【まよチキ】などなど

他作品アニメネタがゴリ押しスギぃ!
まぁ、本当に全裸の美少女と対面するラッキースケベイベントがある筈です(多分)。

━━キングダム

ここでは太一の息子を意味しています。これから先、この言葉=息子です。以後お見知りおきを

━━上に凸、レベルアップ

本当はどっかの替え歌の歌詞を利用しただけですけど、俺の息子が上に向かって勃つことを言っているのだよ。

━━次は早めの天災登場かしらね?いや、プロローグで既に出てるけど‥‥。


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第24話 デュノア

早めの束さん登場回!

本編での束さんは独自解釈となっています。それでも、原作と殆ど変わらないのでご安心を。束さんの喋り方難しいなぁ。





 

 

 

 

 

 

 

 

 日曜日の朝五時から、俺は屋上へ向かった。

 シャルルはすやすやと寝ていたので、適当に「数時間ほど、用事あるから専属企業へ行ってくる」とメモに残しておいた。

 メモならSNSと違っていつ書いたか判断しにくいゆえ、本人も気づかないだろう。

 シャルルに内緒にする理由としては、あの天災は彼女自身の身内と思ってない限り、人間の区別がつかないらしい。それが分かるのは、冷酷な対応しかしないときである。織斑先生、いや千冬さん曰く、「今までアイツは他人を何度も無視してきたが、これでもマシになった方だ」とのこと。まぁ、こんな感じでシャルルに会わせられる人ではないのだ。

 

(それにしても、可愛かったなぁ、シャルルの寝顔)

 

 女の子と知ってから、彼女を見る目は大幅に変わった。といっても、相手が男の娘と判断していたときと比べて、殆ど変化はない。

 そんなことより、

 

「どうしますかなぁ……」

 

 屋上で一人、ため息をつく。右手にはスマホを持ち、その連絡先を開いていた。あの天災に協力して貰うか迷っているのだ。シャルルのためとはいえ、他人の能力を借りてもいいのだろうか。

 

「――ええい、もうヤケクソだ!」

 

 ノープランで決心する。連絡先から 『天災』にメールは面倒なので、通話をかける。すると、数秒で出てきた。

 

『もすもす?終日~?はぁ~い!みんなのアイドル、篠ノ之束だよ~!おひさ~』

 

 いきなり、電話越しでVサインしてそうな話し方だった。こんな変な対応には、

 

「間違えました。失礼しま────」

 

「あぁ!待って待って切らないで!たっくぅーん」

 

 はぁ‥‥っとため息をついて俺は話す。

 

「切らないですから。‥‥それより協力して欲しいことがありまして‥‥」

 

「何ナニ?この天才、束さんなら何でも了承しちゃうよ!」

 

 ん?今、『何でも』と言ったな?いやいや、今は真面目な話をするんだった。

 

「その‥‥デュノア社って知ってますよね?」

 

「あぁ、白式と獰飆のデータを盗もうとして男の振りしてた金髪のことかな?」

 

 どうして知ってるか分からないが、流石、束さんである。でも、シャルルは悪くないから説明しないといけないな。ちなみに《雷艦》についてはデータを盗んでない。あの人が興味本位で最初から作り上げただけだ。天災にも程がある。

 

「その子は関係なくて、その社長の事です。‥‥あの計画を止めさせるために何かできないかな‥と‥‥」

 

「うんうん。それくらいならお安い御用だよ!でー、何して欲しい?会社ごと消滅?それとも、会社ごと消滅?」

 

 アンタの頭は破壊しかないんかい!会社消滅させたら大問題だよ。

 

「ではなくてですね‥‥デュノア社を説得と言いますか‥‥なんとか」

 

「説得~?んー、面倒くさいなぁー。でも、たっくんの頼みなら良いか!じゃ、今からそっちに向かうねぇ~」

 

「は、はぁ」

 

 ピッっと通話が切れる。その数分後、

 

 ヒュゥーーー

 

 っと空から大きなニンジンが降ってきた。一瞬、屋上を突き破って墜落するかと思ったら、ピタっと床スレスレで着陸した。

 もし、墜落してたら【シュタインズ・ゲート】の人工衛星がラジ館で埋もれた時みたいになって大問題である。

 

 パカッっとニンジンが二つに割れて出てきたのは、メカニックなうさ耳着用で非常に独特なファッションセンスの服を着た【篠ノ之束】さんである。

 

「やぁやぁ、たっくん久しぶり~!どう。驚いた~?ブイブイ♪」

 

 あぁ、なんか久しぶりにみたけど、大して変わってないわこの人。しかも胸元の谷間が凄いわ。麻耶先生並にデカい(確信)。まぁ、その程度では俺のキングダムは反応しませんよ。束氏?

 どうでもいいけど、こんな感じの人って【アブソリュート・デュオ】のうさ先生とキャラ被ってるんですけど。なんか声似てるし。気のせいかな?

 

「まぁ、驚いたって事になりますね」

 

「やったね!作戦大成功~!」

 

 ん~‥‥会話しにくい人だなぁ‥‥。調子狂っちまうよ。

 

「とりあえず。この機体に入って入って!」

 

「は、はい」

 

 大きなニンジンの中に入ったが、割と面白い構造をしていた。このニンジンは二人乗りで透明ステルス化できるらしい。ここは決して広い訳では無いが、狭い所が好きな俺にとっては落ち着く。

 

「それより、デュノア社を説得するために脅しでも何でもいいんで良い方法ないですかね?」

 

「じゃあ!破k────」

 

「破壊は無しで!」

 

 この人は、人を殺しはしないと思うけど、やはりデュノア社を消滅させることしか頭にないのかね?それが消滅したら罪の無い社員の行き場が無くなっちまうわ!目的はあくまでもデュノア社長だぞ。

 

「どうしますかね‥‥束さんの事ですから要らない第三世代機のデータってあります?」

 

「要らない第三世代機のデータ?えーとねぇ‥‥ないこともないよ」

 

 確か、束さんは作るものも完璧でないと意味が無い。とか言ってたの聞いたことあるな。

 

「それをデュノア社に渡して取引するんですよ」

 

「えぇー‥‥?あんな会社なんかに渡さないとダメ~?」

 

 いやー本当にすみませんね。デュノア社の皆さん(社長と本妻以外)。こんな人ですがお許しください。

 

「そこ何とか‥‥何でもしますんで!」

 

 あっ...(察し)。俺は言ってはいけない事を言った気がする‥‥。

 

「え、本当に?やった~!じゃあ、何してもらおうかな~♪」

 

「俺のできる範囲でお願いします」

 

 頼むから変なお願いにならないでくれ!マジであれだけは辞めてくれ‥‥。

 

「たっくん。《獰飆》みせて~!」

 

「ふぅ‥‥それなら問題ないです」

 

 そう言って俺は《獰飆》を展開、束さんは数個ある空中投影ディスプレイを操作して《獰飆》へ接続して作業していた。

 

「それで‥‥何するつもりです?」

 

「ちょっと待ってー改良型《雷艦》ができたから量子変換するよん♪」

 

 改良型?エネルギー吸収とREFLECTION LASARの他に増えるのか?wktk

 

「はい!終わり~。改良されたのはね~なんと!《雷艦》の強度が大幅にアップしたのだよ。少なくとも、近接武器ならびくともしないし、実弾はほとんど弾いて爆発にもかなり耐えるよ!」

 

「あ、ありがとうございます」

 

 これで最強シールドの完成じゃないすか!これなら近接武器の打撃や実弾兵器による防御が可能になった訳だ。

 

「それで~‥‥もう1つお願いしていい?」

 

「ええ!?いや、流石に‥‥それは‥‥」

 

「じゃあ、データ上げな~い!」

 

「いや、すみません。あと1つだけなら。構いません」

 

 今度こそ、嫌な予感しかない。マジであれだけは辞めてくれマジで。

 

「────『束お姉さん』って呼んでー!」

 

 あっ‥‥一番聞きたくなかったお願いだ‥‥。記憶はないが、小さい頃に俺は束さんをそう呼んだらしい。そのせいでこのザマである。俺のバカ!

 

「デスヨネー」

 

「さあさあ!呼んで呼んで!」

 

「‥‥‥‥束オネエサン」

 

「わーい!たっくんから『束お姉さん』って呼ばれた~バンザーイ!」

 

 本当、これから重要なことするのにテンション高いなぁ‥‥。俺の棒読みで喜んでるし‥‥。

 

「さてと。デュノア社に行けばいいんだね」

 

「そうです。よろしくお願いします」

 

「じゃーポチっとな~!」

 

ゴゴゴっと音をたてて空高く飛んだ。音以外は周りからは気づかれないため、安心だ。本来なら到着まで相当係るが、束さんのニンジンロケットは伊達じゃなく、30分で到着した。

 

 

―――デュノア社前

 

 

「束さんはどうします?」

 

「一緒に窓割って入ろうか!」

 

 正気かよ!?このビル50階まであるんだぜ?いや、束さんならできなくもない。

 

「じゃあ、この機械を使って飛ぶから捕まっててね~!」

 

「え?ちょ‥‥ま────」

 

 最後まで言わせてもらえずに一瞬で最上階まで飛び、窓を突き破った──のではなく、奇跡的に窓が開きっぱだったので、俺だけ中へと侵入した。束さんはあとで待ち伏せすると言っていた。

 

「Qui!」(誰だ!)

 

「おっと‥‥私は怪しいのものではありません」

 

 入った途端にデュノア社長らしき者から、拳銃を構えて銃口を向けられた。

 

「‥‥貴様は、城谷上 太一か?」

 

「そうです。何もしませんので安心して下さい。あなたはデュノア社長ですよね?」

 

 俺の言葉でその人は拳銃を下ろす。すげぇヒヤッとした。一応、ISスーツ着用してるが怪我は避けられないし、下手したらヘッドショットで人生おじゃんの巻だからな。あと、日本語は話せるんだな‥‥。

 

「そうだが、何の用だ」

 

 この人は短い金髪で高身長、年齢は40代前半って所か‥‥。顔はムスッとしてて悪役にピッタリ。幸いシャルルは母親似なんだな。つまり、シャルルママンも可愛いかったんだろうなー。おっと、今はそれどころではない。

 

「いえ、用件は1つです。シャルル・デュノアに2度とあのような事はさせないでください」

 

「まさか、アイツが全部バラしたのか?」

 

「シャルルが殆ど教えてくれました」

 

「ちっ‥‥しくじりやがったか」

 

 イラッときたけど、今は取引だけでとっとと帰らないとシャルルが心配してしまう。

 

「その代わり、このデータを渡しますので‥‥シャルルの件は諦めてください」

 

 束さんに渡された。空中投影ディスプレイのデータをみせる。パッと見、膨大なデータがみえるが、これが要らないデータと言うのが、俺には理解不能だ。

 

「何‥‥?それは第三世代機のデータか?」

 

「そうです。これを無料で渡すのでシャルルの件は許して頂けませんか?」

 

「分かった。‥‥もうこの件のことは諦めるよ。あの子の男装もする必要はないと私から伝えておくさ」

 

 不思議とデュノア社長がアイツからあの子へ変わっていた。謎だな色々と。

 

「そうですか。ありがとうございます。それでは────」

 

「待て。最後に聞きたい。そのデータは誰のだ?」

 

 窓から巨大なニンジンが見えた瞬間、俺は窓際で背中を向けながら、口を開ける。

 

「誰とは言いませんが、私の知り合いには───がいるんですよ」

 

 ギリギリ聞こえる声で天災の名を答えた。そして、俺は窓からニンジンロケットへ飛び乗った。

 

 

 

 

―――ニンジンロケット内部

 

 

「もー遅いよ!たっくん!」

 

「サーセン」

 

「暇すぎて、束さんは超小型ISプラモデルが3個もできちゃったよ~!」

 

 ふと座席の隣をみると、1センチくらいの白式と獰飆、知らない紅いISのプラモデルが置いてあった。この人、神の手だわ。GOD HAND‥‥。

 

 

 ここから先は、何故か千冬さんの話をされた。無駄な情報まで知ってるこの人は、常に盗撮してるのでは?と俺は恐怖感を抱いた。

 

「そろそろ、着くね~!」

 

「あ、はい。ご協力ありがとうございます」

 

 ジャンプしてIS学園屋上に到着する。屋上の扉を開けようとした時、

 

「あーそうそう。最後に1つ」

 

「はい。なんでしょう」

 

「君は、──箒ちゃんがいっくんと結ばれるのを応援してる?」

 

 この人は、言うまでもないがシスコンだろう。妹の望みなら何でもする。いろんな意味でこの人は怖いよマジで。そんなことより、箒を応援か‥‥一夏に好感を持っている人は多い。箒の他に鈴やセシリア、蘭だってそうだ。もしかしたら、他にも沢山いるかも知れない。それでも俺は箒がどんなに問題を起こしても、それらを直して成長してるなら、

 答えは決まってる───

 

「応援してるに決まってるじゃないですか」

 

「うんうん。たっくんも思うよね!束さんの思った通りだよ~!」

 

「あはは‥‥で‥‥俺からは1つ‥‥箒は俺のことどう思ってるか、分かります?」

 

 箒にとって俺は眼中にないだろう。でも、確信はない。だからこそ、何でも知ってそうなこの天災に訊く。

 

「箒ちゃんはたっくんのことを───幼馴染みって言っていたよ」

 

 何処で聞いたかは知らないが、この言葉が本当なら、疑ってた俺が馬鹿馬鹿しく思う。それもそうか、あの時の記憶は殆ど覚えてないけど、箒の友達は俺と一夏くらいしか居なかったからな。つまり、俺の幼馴染みは2人いるんだ。

 

「あざーす」

 

 そして、俺は寮へと戻った。

 

 

 

 




デュノア社の解決策が被って仕方ないので、多少似ててもスルーして下さい。これでも頑張った方なんで‥‥。

この世界のデュノア社は奥が深いことにします。

束さんとの関係性はある程度、構想済みです。

━━シュタインズ・ゲート

のタイムマシンより少し大きなニンジンロケットです。透明ステルス化機能搭載。二人乗り、音以外は気づかれない。と言っても音は大して大きくない。監視カメラ等は束がハッキング済

━━アブソリュート・デュオ

思いっきり、声優も同じだし。キャラ被りしてるじゃないですか!ヤダー!

━━フランス語

とかよくわかんないです。こんな適当な文字で通じるんですかね‥‥映画みたいに「誰だ!」をフランス語に訳せる人はいませんかね‥‥。

━━紅いISのプラモデル

あっ...(察し)

束さんと知り合いな理由を色々考えました。

理由の1つは箒ちゃんの幼馴染みですかね。ついでに一夏も。



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第25話 キショウ

今回は他作品アニメネタが殆どないです。

感想募集で入れて欲しい他作品アニメあったら教えてください。自分ではパッと思い浮かばないので‥‥。


―――寮部屋

 

 

「ただいま」

 

「おかえり太一」

 

 時刻はお昼前、デュノア社と交渉が成立した後、部屋へ戻るとシャルルがいた。なんか新鮮だ。新婚さんみたいで面白い。それより、あの時間で屋上に人が居なかったのは奇跡的だった。誰かいたら確実にややこしい事になっただろう。

 

「朝起きたら、誰も居なくて驚いちゃったよ。いつもは太一が遅く起きるのにね」

 

「あはは‥‥まあ、企業に用事あったからな。無理矢理早起きした」

 

 企業は企業でもデュノア社ですけどね。

 

「朝ご飯は食べたの?」

 

「‥‥食ってない」

 

 シャルルにそれ言われた瞬間に腹減ってきた。昼飯食いたい。

 

「なら、今からお昼ご飯食べに行こうよ」

 

「そうだな。メシ食うか」

 

「それと‥‥2人きりで食べない?」

 

 何故、2人きりなんだ?本音と簪は誘わないのか、いつも一緒なのに‥‥。でも、悪くないから別にいいや。

 

「2人きり?別に構わんけど」

 

「良かった。ありがと太一」

 

「お、おう」

 

 なんか変なシャルルだなぁ‥‥。まさか、もうバレたのか?!いやいや、そんな訳ないか。

 そういえば、あのデュノア社長に最初は怒りとかあったけど、あの子と呼んでいたことでなんか色々複雑な事情あるんだなと思った。気になるけど、これ以上は踏み込むと厄介だ。関わるのは辞めるべきだろう。

 

「ねぇ。太一は何で朝から専属企業へ行ったの?」

 

 あーこうなることは考えてなかった。デュノア社にしか行ってないから専属企業関係では何もしてな‥‥‥‥《雷艦》が改良型されたんだった。これで誤魔化そう。

 

「実は《雷艦》がグレードアップしたんだ」

 

 前にもあった通り《雷艦》の強度が大幅に高くなったことで、装甲が硬くなるから戦術が増えるからな。

 

「そうなんだ。どれくらいグレードアップしたの?」

 

「それは、後々見せるよ」

 

「うん。分かった」

 

 ニコッと微笑むシャルル。今までは男の娘だと思って見ていたが、女の子と分かったことで、自分が『───だが男だ。』とか思ってた事に恥ずかしさを感じている。

 

「あっ箒じゃん」

 

 廊下でシャルルと話していると、箒に出会った。随分、不機嫌な顔してますな。何かあったのだろうか。

 

「あ‥‥太一とシャルルか‥‥」

 

 一応、箒はシャルルって呼んでるんだな。まぁ、確かにそうか。まだ女の子ってバレてないし、俺も一夏も名前呼びでシャルルが苗字呼びも変な気分だからな。

 

「何してるんだ?」

 

「一夏を探しているんだが‥‥」

 

 どうやら一夏を探しているらしい。少なくとも午前中あそこへ行ってた俺には分からないな。

 

「すまん、知らぬ」

 

「ごめんね。僕も分からないよ」

 

「そうか‥‥あ、そうだ太一」

 

「ん?」

 

「久しぶりに剣道の特訓をしないか?一夏もそうだが、一夏より下手なお前が、幼馴染みなのも変だからな」

 

 剣道の特訓か‥‥楯無さんから教わってるとはいえ、未だにセシリア以上一夏未満の腕だからな。ってか箒から幼馴染みの単語が出てくるとは、束さんの言う通りだったようだ。

 

「お、おう。お手柔らかにお願いします」

 

「うむ。それじゃあまたな」

 

「おう」

 

 箒は早歩きで一夏を探しに走っていった。何故、一夏にメールとかしないのだろう。ん‥‥?そういえば、楯無さんが一夏の特訓を一時的にしたいから借りるとか言ってたな‥‥。だから通知に気づかなかったんだな。

 

 

 

 

 

───本音SIDE

 

 

コンッコンコンッ

 

「やがみ~ん」

 

 数秒間待ったが、返事がない。

 

「あれ?もしかして‥‥寝てる?」

 

 簪はそう言うが、お昼ご飯の時間になっても寝てることなどを本音は見たことがない。しかし、本音はお昼まで寝たことがある。

 

「留守かな~?」

 

「シャルルもいないみたい‥」

 

 シャルルもいないなんて不思議、と思う本音。もしかして二人で何処かへ出掛けたのかと二人は考える。

 

「連絡するべきかな‥‥」

 

「そうだね~」

 

 スマホから連絡先欄を開く。名前は『やがみん』と登録していて、シャルルは『デュッチー』。本音は太一へ通話を掛けた。

 

プルルルル

 

 

 

 

「いつもの事だけど、今日は特に女子達が見てくるな」

 

「あはは‥‥そうだね」

 

 女子達が集まる理由は分からなくもない。現在、食堂で俺はシャルルと向かい合い、2人きりで昼食をしているところだ。本来なら、本音や簪、一夏たちで食事をしているのだが、この状態はかなり珍しいのだろう。

 

「みてみて、デュノア君と城谷上君が2人きりよ!」

 

「本当だ。カップルみたい」

 

「織斑君とデュノア君ペアの方が見たかったぁ‥‥」

 

「薄い本の素材になるわ!」グヘヘ

 

 一夏みたいにイケメンじゃなくて悪かったな。後、腐女子は黙らっしゃい。勿論、シャルルが女の子なのはバレてない。知ってるのは本音と簪だけで、後に一夏に伝えるつもりだ。

 

「太一と‥‥カップル‥‥」

 

 何でシャルルは顔を赤くしてるんですかねぇ‥‥。シャルルとカップルか‥‥有り得ないの極みですな。

 

「まぁ、いいや。食べようぜ」

 

「う、うん。そうだね」

 

 シャルルは礼儀正しく「頂きます」と言って食べ始める。男の娘モードだと貴公子みたいだな。

 ちなみに俺は、IS学園特製味噌ラーメンを食べていて、シャルルは名前は分からないが洋食だ。スプーンとフォークなどを器用に使用している。

 

 シャルルと食事をしていると、

 

ヴイィィィィン

 

とスマホからバイブレーションがなる。通話相手は本音だ。何の用だろう。

 

「なんだ?」

 

『今どこ~?』

 

 多分、昼飯の時間だから部屋まで探しに来てたのだろう。俺やシャルル、簪、本音はいつも一緒に行動してるからな。

 

「食堂だ」

 

『分かった~。今からかんちゃんとそっち行く~』

 

「おう」

 

ピッ っと通話をきる。シャルルはどうしたの?的な顔をしていた。

 

「本音と簪が来るってよ」

 

「そ、そうなんだ‥‥」

 

 その後は、本音と簪も合流して昼食を摂った。本音はスパゲティで簪はかき揚げうどんだった。簪はこれが一番お気に入りらしい。ついでに俺のお気に入りはラーメン系全てだ。

 

 

 

 

 

 

「では、かかってこい。太一」

 

 という訳で、俺は箒と一体一で剣道の試合をする事となった。案の定、一夏は楯無さんにコテンパンにされて、格技室の隅っこでグデーンとしていた。いやぁ本当にお疲れ様です。シャルルはデュノア社からの電話で、本音と簪は用事。デュノア社長に口止めするの忘れてた‥‥。バラさないことを祈ろう。

 それより箒の圧倒的な威圧感が半端ない。流石は剣道全国大会優勝者だな。もうこれは勝敗が確定している。

 

「行くぞ。箒!」

 

 

 

 

 

 

 

────負けました。\(^o^)/

 

 

 最初の数回ほど、竹刀同士がぶつかり合う音が響いたが、箒に高速かつ威勢のいい声で一本取られた。無念なり。

 

「お前は弱いも程があるぞ‥‥」

 

「しゃーないだろ。これでも上達した方だぜ?」

 

 上達したと言っても、初心者の上くらいでしかない。一夏にすら勝てない弱さは、情けないの言葉がお似合いだ。

 次に一夏と勝負した。箒同様、最初だけいい勝負だったが、普通に一本取られた。これはへなちょこ過ぎですわ‥‥。

 

「にしても、3人だけで剣道なんて久しぶりだな」

 

 一夏の言う通り、小学二年生の冬以来3人揃って剣道はやってなかったのだ。数年ぶりとはいえ懐かしい。あの時は箒とそれなりに互角で闘えたからな。今は箒がプロ並みで勝てなくなったけど‥‥。

 

「そうだな。久しぶりだな」

 

 箒は腕を組み頷いて、微笑みながら言う。

 

「あぁ。懐かしいぜ‥‥」

 

「そうだ。今度3人だけで出かけないか?」

 

「ほう。いい提案だな」

 

「ほ、本当か!一夏!」

 

 俺は感心して、箒は喜んでいた。でも、俺が邪魔ではないだろうか‥‥。

 

「2人で行きなよ。俺は他の事するから」

 

「えー、折角3人揃ったのにか?」

 

「太一。お前も行くぞ」

 

 あれ?箒まで俺を連れていくつもりなのか?デートとして俺が抜けるべきなのに‥‥。

 

「(箒、俺が居ていいのか?)」

 

「(他の女がいるよりはマシだ)」

 

 俺と箒は一夏に聞こえないように堂々と小声で話す。なるほど‥‥一夏に好意を寄せている他の女子(鈴やセシリアなど)とかがいると嫉妬してしまうからか。

 

「何2人でこそこそ話してんだ?」

 

「「何でもない」」

 

「お、おう‥‥」

 

 素晴らしいハモリっぷり。こんな展開、前にもあったな‥‥別の人だけど。

 

「とりま、いつ何処へ行くんだ?」

 

「それもそうだな‥‥」

 

 箒のご両親は個人保護プログラムで何処か行ったしなぁ、俺の家もガラ空きだけど。最後に帰宅したのは数ヶ月前‥‥。

あっ────

 

「一夏ん家で良くね?」

 

「あぁ、それもそうだな」

 

「そうだな。一夏の家にお邪魔するとしよう!」

 

 俺の提案に賛成の一夏。そして、箒はいつも以上に機嫌が良くなり、にこやかになっていた。今の箒なら抜群に可愛いと思うのは俺だけ?和服とか結構似合いそうだけど。

 

「で、いつにする?」

 

「個人トーナメントが終わったあとにしようぜ」

 

 個人トーナメント戦か‥‥俺が優勝できるのだろうか。《雷艦》がグレードアップしたからより強くなったはずだが、接近戦は微妙だ。避けるだけなら特化してるし攻撃が当たらなければどうということはない。まぁ、【学戦都市アスタリスク】みたいなタッグトーナメントの方よりか個人の方が楽だったりするから良いんだけどな。

 

 

 

 

 

 暗い。ダークな闇の中にそれはいた。

 

「‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

 いつ頃からこうなったのかはもう覚えていない。ただ、生まれた時にはもう闇の世界の怖さを知らされていた。人は生まれて初めて光を見るといっているが、この少女は違っていた。暗い暗い闇の世界で育まれ、影の中から生まれた。そしてそれは今も変わりがないのだ。

 光という概念が存在しない部屋で影を抱いて闇に潜み、そのレッドアイの右目は鈍い光を放っている。

 

────ラウラ・ボーデヴィッヒ

 

 それが私自身の名前だと知っているが、別にそれがなんの意味も持たないことは分かっている。

 けれど、唯一例外はあるのだ。それは教官に────織斑千冬に呼ばれている時のみ、その響きは何か特別な意味を持っているような気がしていて、そのたびに少しだけ心の高揚を感じていた。

 

(あの人の存在が‥‥その強さが‥‥私にとっての目標であり、存在理由だ‥‥)

 

 それは一条の光みたいであった。

 出会ったときに一目でその強さに震えた。恐怖と感動、歓喜に心が揺れた。体が熱くなり、そして願った。

 

 ああ、こうなりたい────と。

 これに、私はなりたいと。

 

 空っぽだった世界が急に埋まり、そしてそれが全てとなった。自らの師であり、威圧的かつ絶対的な力であり、理想の姿。

 だが、完全な状態であったあの人に汚点を残させた奴がいる。織斑一夏────。

 

(排除する。奴だけは絶対に。どんな手段であろうとも消してやる‥‥)

 

 

 

 

 

 

 




この学園ではスマホなどの利用は授業中以外可能な設定です。

━━\(^o^)/

オワタ

━━当たらなければどうということはない

機動戦士ガンダム シャア

━━学戦都市アスタリスク

無理矢理ねじ込んだ。反省はしている後悔はしていない。

━━次回からアニメネタを頑張ります。増やして増やしまくれ。


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第26話 タイリツ

今回はそこそこ時間がかかりました。

感想お待ちしています。


「それは本当ですの!?」

 

「う、嘘じゃないでしょうね!?」

 

 剣道の特訓から次の日の月曜日SHR前、廊下を歩いている時、セシリアと鈴の無駄にデカい声が聞こえてきた。

 

「なんだ?」

 

「知らぬ」

 

「さぁ‥‥?」

 

 一夏が疑問に思っているが、それは俺とシャルル(男の娘Ver)も同じである。

 

「本当よ!この噂は学園中で持ちきりなのよ? 月末の学年別トーナメントで優勝できたら織斑君と交際────」

 

「俺がなんだって?」

 

「「「きゃあ!!!」」」

 

 どうやら何か一夏の噂をしているらしく、一夏が話を訊きに現れたため女子達が悲鳴を上げた。

 

「で、何の話だ?一夏の名前が出てたようだけど」

 

「う、うん?そうだっけ?」

 

「さ、さぁ、どうだったかしら?」

 

 俺の問いに鈴とセシリアはあははうふふと話を逸らすつもりみたいだ。誤魔化せると思うなよ?

 

「じゃ、じゃあアタシは2組に戻るから!」

 

「え、ええ。わたくしも席につきませんと」

 

 結局、二人とも逃げていった。それと同時に他の女子も席へと戻った。ついでに本音は朝からスリーピング状態。

 

「‥‥なんなんだ?」

 

「知らぬ」

 

「さぁ‥‥?」

 

 さっきと殆ど同じやり取りになってしまった‥‥。

 

 

 

 

 

 

(何故‥‥このような事になってしまったのだ‥‥)

 

 教室の窓側の席で箒は外面的には平静でも内面的には頭を抱えていた。近頃変な噂が流れているのは知っていた。だが、問題は内容である。

 

『学年別トーナメントの優勝者は織斑一夏と交際できる』

 

(それは私と一夏だけの話だろう!)

 

 一夏が言いふらし魔でないことは確かだと信じているので、情報が漏れた原因が分からない。といってもあの時の声はやたら大きかったので、普通にバレバレだったのかも知れない。

 

「‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

 いつの間にか噂は殆どの女子が知っているらしく、先ほど上級生が「学年が違う優勝者はどうするのか」「授賞式で発表は問題ないか」などと情報通を訊きに来ていた。

 

(拙い‥‥非常に拙い‥‥)

 

 勿論、自分以外の女子が一夏と付き合うことがかなりの抵抗感があるのは言うまでもないが、これでは自分が一夏と付き合い出したときに速攻で噂が広まってしまう。

 正直、箒は『ふたりだけの秘密の関係』という夢想も抱いている。

 

(とにかく、優勝。優勝だ。そうなれば問題ない‥‥筈だ‥‥)

 

 しばらくの間、箒は過去のことで意識を埋め尽くしていた。

 

 

 

 

 

 

「はぁ‥‥この距離だけはどうにもならないな‥‥」

 

「本当それ」

 

 寮ではなく学園内では、俺達男子(シャルルは除く)が使えるトイレが3つしかないという現状、休憩タイムには中距離走みたいに走って行き帰りしなければならない(俺にはかなり辛い)。 

 たまに「廊下を走るな」と色々な教師に言われるが、走らないで行くと遅刻して怒られてしまうので、かなり理不尽で鬼畜な休み時間になる。

 

(思ったがシャルルは何処でトイレしてるんだ?)

 

 シャルルには訊いたことなかったが、多分男子トイレを使ってると推測する。 

 シャルルが男子トイレを使ってるのだとすると【デート・ア・ライブ】や【まよチキ】とかでトイレによるラッキースケベが有名だよな。いかん‥‥興奮して息子が上に凸するから辞めよう。

 そういえば、一夏にシャルルが女子だってこと伝えようと思ったが、シャルルに許可得てなかった‥‥。

 一夏と廊下を走って急いでいると、近くから軍人娘と千冬さんの声が聞こえた。

 

「何故こんなところで教師など!」

 

「やれやれ‥‥」

 

 気になってしょうがないため、俺達はしばらく注意を向けることにした。

 

「何度も言わせるな。私には私の役割がある。それだけだ」

 

「このような極東の地で何の役目があるというのですか!」

 

  あの常時AKフィールド展開の軍人娘ことラウラ・ボーデヴィッヒがここまで声を荒らげているのは珍しい。千冬さんの仕事を否定しても無意味だろうに。

 

「お願いします、教官。再び我がドイツでご指導願います!ここではあなたの能力は半分も活かされません」

 

「ほう」

 

「大体、この学園の生徒など教官が指導する人間ではありません」

 

「なぜそう思う?」

 

「この学園の生徒はISをファッション的なものと勘違いしている。そのような程度の低い人間たちに教官が時間をさかれるなど────」

 

「その辺にしておけよ、小娘」

 

「っ!」

 

 軍人娘の言葉にブリュンヒルデストップが入った。アイツは何馬鹿な事言ってるのかと思う。確かにファッションか何かと勘違いしてる生徒はいるだろう。だが、全てがそんな生徒だとは限らない筈だ。てか‥‥本来ならISはファッションでもスポーツでも兵器でもないんだけどなぁ。

 

「少し見ない間にえらくなったなボーデヴィッヒ?十五歳でもう選ばれた人間気取りとは恐れ入る」

 

「い、いえ‥‥私は‥‥」

 

 さすがの軍人娘も千冬さん相手では、声を震わせていた。奴は恐怖感を抱いているのだろうか。

 

「この話は終わりだ。もうすぐ授業も始まるだろうからな」

 

「了解しました‥‥」

 

 軍人娘は早歩きで教室へと戻っていった。ん‥‥まてよ‥‥あっ...(察し)

 

「貴様ら。盗み聞きなどと異常性癖は感心しないぞ」

 

 これはバレるも何も、先ほど廊下を走ってた時点で音バレしてたんでしょうね。

 

「な、何でそうなるんだよ!千冬ね──── 」

 

バシーン!

 

 最初に反論した一夏は呼び方を間違えていつものように叩かれる。プギャーメシウマ状態だわ────

 

パシーン!

 

「ウボァッ」

 

「お前もだ。馬鹿者」

 

 ありがとうございます!我々の業界ではご褒美です。(ここまでテンプレ

 

「そら、戻れ劣等生共。それと織斑。このままでは月末のトーナメントで初戦敗退だぞ。少なくとも城谷上に追いつけるようにな」

 

 千冬さんは一夏に対して教師としてでなく姉として言っていた気がした。てか、とりあえず俺が目標点なのね‥‥。

 

「わ、わかってるって‥‥」

 

「了解です」

 

「おう。急げよ。───あぁ、お前ら」

 

「「はい?」」

 

「廊下は走るなとは言わんが、バレないように走れ」

 

「了解」「イエスマム」

 

 俺達は忍者のようにササッと教室へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「「あ」」

 

  間抜けな声を出す鈴とセシリア。現在は放課後で、ここは第三アリーナであるが、生徒の数は殆どいない。

 

「あら、奇遇ね。あたし今からトーナメント戦に向けて特訓するんだけど」

 

「本当、奇遇ですこと。わたくしもですわ」

 

 睨み合い、優勝を狙っているだろう鈴とセシリアからは、見えない火花を散らしていた。

 

「いいタイミングね。この前の実習のことも含めてどっちが上かはっきりさせようじゃない?」

 

「珍しく意見が一致しましたわ。どちらが優勝者に相応しいか、この場ではっきりさせましょうではありませんか」

 

 2人はそれぞれの武器を展開し、構えて対峙する。

 

「では────」

 

ヒュンッ!!

 

「「!?」」

 

 いきなり飛んできた超音速の砲弾に緊急回避した鈴とセシリアは、同時に射撃された方向を確認する。そこには───

 

漆黒のISがたたずんでいた。

 

 その機体の名は『シュヴァルツェア・レーゲン』、操縦者は

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ‥‥」

 

「‥‥どういうつもり?突然撃ってくるなんていい度胸してるじゃない」

 

 ガシャンと連結した《双天牙月》を肩に預けながら、鈴は警戒する。その目は先程セシリアと対峙したときより鋭い眼差しだ。

 

「中国の《甲龍》にイギリスの《ブルー・ティアーズ》か。ふん、データで見たときの方がまだマシな強さだったな」

 

 挑発するボーデヴィッヒに、鈴とセシリアは苛立っていた。

 

「何?やるの?わざわざボコられに来てくれるなんて馬鹿ねアンタ」

 

「そうみたいですわね。こんな方には少々痛めつけた方が良いのでは?」

 

 セシリアの言葉で2人は戦闘態勢へと移る。鈴は衝撃砲、セシリアはレーザーライフルを構えいつでも交戦可能な状態だ。

 

「はっ‥‥。二人がかりで量産機に負ける程度の実力者が専用機を持っているのは無駄としか言いようがないな」

 

 この言葉に更に苛立っていく鈴とセシリア。もう怒りの我慢は限界寸前だ。

 

「もう分かった。ボコボコにしてやるわ!」

 

「わたくしもそろそろ限界ですわ!」

 

「ふっ‥‥雑魚2人でかかってこい。相手になってやる」

 

「「上等!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてと、特訓だな」

 

「で‥‥今日使えるの何処だっけ?」

 

「えっと‥‥確か────」

 

「第三アリーナだ」

 

「「「わぁ!?」」」

 

 俺と一夏、シャルルが話している中、いきなり別の方から声が聞こえたため3人は驚いてしまった。

 いつの間にか横にいた4人目である箒は3人の反応に対して眉をひそめる。

 

「失礼だな。そこまでして驚くものか?」

 

「お、おう。すまん」

 

「サーセン」

 

「ごめんなさい。いきなりの事でビックリしてしまって‥‥」

 

「い、いや‥‥別に責めてはいないのだが‥‥」

 

 一夏と俺に続いてシャルルは素晴らしい角度で頭を下げ謝っていた。これでは箒もその気勢を削がされてしまう。彼女は申し訳ない気持ちになっていた。

 

「と、ともかくだ。第三アリーナへ行くぞ。今日は使用人数が少ないらしいから空間が空いていれば模擬戦もできるかもしれない」

 

「なるほど。なら早く行こうぜ」

 

 一夏がそう言うと、俺達は小走りで第三アリーナへ向かう。途中でザワザワと観客席で女子達が集まって騒いでいたため、そこへ向かった。

 

「何事だ?」

 

「あっ‥‥やがみ~ん‥‥」「太一‥‥」

 

 観客席には本音と簪も居たのだが、2人は何処か浮かない顔をしていた。2人が指を指す方向を確認すると、かなりボロボロな状態な鈴とセシリアのISと、漆黒のIS『シュヴァルツェア・レーゲン』を駆る軍人娘でありラウラ・ボーデヴィッヒだった。

 

「鈴、セシリア!」

 

 鈴とセシリアが機体損傷が激しい状態であったり、相手が軍人娘でもあるため、一夏は心配になり叫ぶ。当然、この声は向こうに届かない。一方の軍人娘のISは擦り傷程度の損傷だった。

 

「何をしてるんだ?──お、おい!」

 

 それでも一夏の声が届くことは有り得ない。どうやら二対一で模擬戦のようだが、明らかに鈴達側が不利な状況になっている。

 

「くらえ!」

 

 鈴がこれでもかと最大出力の衝撃砲を軍人娘に向かって放つが、それを見えない何かで難なく受け止められた。

 

「この停止結界の中では、無駄だと言っている」

 

「くっ‥‥相性が悪すぎるわね‥‥」

 

 俺にはよく分からないが、何かのバリアーだろうか‥‥《雷艦》は目に見えないエネルギーは吸収できないが、一体アイツは何の兵器を使ってるんだ?エネルギーバリアか?

 

 その後も、鈴とセシリアは苦戦の一方である。軍人娘からは新たな武装である。ブレードとワイヤーを混ぜたような武器を使って、2人を吹き飛ばしていた。

 セシリアが鈴を援護するために、ビットを起動させるが、それでも当たらない。隙を見て軍人娘はワイヤーでセシリアを掴み、振り子の如く鈴へと向かい衝突させた。

 それでも、計算通りかのようにアイツは瞬時加速をする。どうやら、接近戦に持ち込むようだ。衝撃砲も奴の砲弾で無効化され、鈴は完全に追い込まれてしまっている。奴がプラズマ刃を展開させ、鈴に切りかかるが────

 

 ドガァァァァン!!

 

 セシリアが決死の覚悟でミサイル攻撃を撃ち、鈴やセシリア自身も巻き込むほど無茶なことをしたのだが、それでも軍人娘にはダメージを与えられてなかった。

 俺はここで2人のシールドエネルギーが尽き、敗北で終わるのを望んでいたが、現実はそうならなかった。

 それからは、完全なアイツの一方的な残虐状態だ。奴は2人に拳を何度も何度も何度も叩き込み、機体維持警告域に達する。そして、操縦者生命危険域まで達する瞬間、怒りが込み上がる。俺の何かが切れた。

 

「いくぞ!」

 

「わかってる!」

 

 このままでは2人が重傷どころか重体、いや、死んでしまうだろう。そうはさせない。あんなクズ野郎にそんな真似はさせる訳にはいかない。

 

 俺と一夏がISを展開し、零落白夜でアリーナのバリアーを破壊して、全速力で止めに入る。俺はISが解除された2人の前に《雷艦》を全て待機させ、奴が掴んでいた手を離させた。

 

「てめぇ、俺の仲間に何しやがる!」

 

「ただで済むと思うなよクソ野郎が!」

 

 俺はレーザーバルカン砲を展開して、一夏は零落白夜の出力を上げて戦闘態勢へ入る。

 

「ふん‥‥‥‥貴様らもこの雑魚どもと同類になりたいのか?ならば、私が相手になってやる」

 

 挑発だと分かっていても、俺達の怒りは収まらない。コイツを今すぐにでも殴り飛ばしたい───

 

「よろしい‥‥ならば戦争(クリーク)だ!」

 

 最初に一夏が一直線に最大出力の零落白夜で突撃する。だが、その動きは軍人娘の前でピクリと止まった。一夏の危険を感じ、奴の後ろへ回り込もうとする。

 

「一夏!離れろ」

 

 奴に向かって近距離で大口径榴弾砲を放つが、咄嗟にその場から離れ避けられる。

 

「ちっ‥‥雑魚が‥‥」

 

「「太一!一夏!(織斑君!)」」

 

 奴が体制を立て直している時に、一夏と俺の周りにカバーに入ってきた簪とシャルルがいた。

 

「簪、シャルル!一夏を頼む!」

 

「うん!」「わかった!」

 

 軍人娘相手に3人が交戦している間、俺はISが解除された2人の元へ急ぐ。

 

「う‥‥…。太一……」

 

「無様な姿を……お見せしましたわね……」

 

「喋るな。俺が一時的にピットまで運んでやる」

 

 2人は何処か痛がっていたが、2人をピットまで運び、近くにいた生徒に任せた後、すぐに3人と合流した。

 

「面白い。世代差というものを教えてやろう」

 

 確かに鈴とセシリア相手に圧倒できる強さを誇る軍人娘だが、現在は、2人追加されて四対一だ。数の暴力で奴が俺達に勝てるとは到底思えないが、奴は全く動じていない。

 

「行くぞ!‥‥」

 

 軍人娘がまさに飛び出そうとした瞬間、俺達の間に影が割り込んできた。

 

ガキンッ!

 

 金属同士が激しくぶつかり合う音が響いて、軍人娘は割り込んできた影に加速を中断させられた。

 

「……やれやれ、これだからガキの相手は疲れる」

 

「千冬姉!?」「千冬さん!?」

 

 こればかりは俺も名前で呼んでしまうが、それもそのはず、千冬さんは普段通りのスーツ姿で、ISスーツすら着てないのに俺の身長より長いだろうブレードを手に持っていた。その状態で奴を止めたのだから、驚くのは無理もない。人外にも程があるんですが‥‥

 

「模擬戦をやるのは構わん。──が、アリーナのバリアーまで破壊する事態になられては教師として黙認しかねる。この戦いの決着は学年別トーナメントでつけてもらおうか」

 

「教官がそう仰るなら」

 

 奴はISを解除して、元の姿に戻った。

 

「他の四人もそれでいいな?」

 

「はい」「了解です」「わかりました」

 

 シャルル、俺、簪と返事をするが、一夏は───

 

「あ、ああ‥‥」

 

 惚けていたのか、素で応えた。

 

「教師には『はい』と答えろ。馬鹿者」

 

「は、はい!」

 

 一夏がちゃんと返事したのを確認した後、織斑先生は改めてアリーナ内全ての生徒に向けて言う。

 

「では、学年別トーナメントまで私闘の一切を禁止する。解散!」

 

 千冬さんが銃声のような音を手を叩いて鳴らし、この争いを終わらせた。

 

 

 




次回の展開を構成するのに迷った‥‥。


━━デート・ア・ライブ、まよチキ

まよチキだと、美少女が執事となってる話だから、シャルロットでトイレイベントが起こっても違和感ないね(確信)

━━よろしい‥‥ならば戦争だ

クリークはドイツ語で戦争です。ラウラ相手に持ってこいのセリフですね。

元ネタは漫画【HELLSING】の少佐の演説から来てます。


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第27話 オミマイ

あれ‥‥8000文字超えた。
という訳で、オタク要素ぶち込みました。
感想お待ちしております。

後、お気に入り400突破ありがとうございます。


 アリーナでの騒動の後、俺と簪、本音、シャルルは、軍人娘との戦いで負傷してしまった鈴とセシリアの見舞いに向かっている。幸い怪我は軽い全身打撲で済んだとのこと。骨折とか後遺症とかではなく安心する。

 といっても少しの間、保健室で過ごす事が決定してるらしいので、俺は『PFP』という次世代ポータブル機器を持ってきて、シャルルは2人にぴったりの烏龍茶と紅茶(ストレート)を持ち、本音はお菓子、簪もお菓子だ。

 

「大事に至らなくてよかったね」

 

「そうだな」

 

「そうだね‥‥」

 

「そうだね〜」

 

 そんな、他愛のない会話を3人としていると、保健室から鈴とセシリアの声が聞こてきた。

 

「こんなの怪我のうちに入らな───イタタタタっ!」

 

「大体、このように横になること自体無意味───つううっ!」

 

 好きな人の前だからって強気になるなよ。お馬鹿さんかな?

 

「バカって何よ!バカ!」

 

「一夏さんこそ大バカですわ!」

 

 あれ?扉越しなのに心読まれた?と思ったら一夏に対してだった。それでも一夏は俺みたいに図星だろう。その時に、シャルルが扉を開けて入り、鈴とセシリアの前に来る。

 

「きっと好きな人に格好悪いとこ見られて恥ずかしいんだよね」

 

「ん?」

 

 シャルルが小声だったため、俺達は聞こえてなかったらしい。何を言ったのかは想像できなくもない。それでも、鈴とセシリアはちゃんと聞いていたらしく顔が赤くなりおこになった。

 

「なななな何を言ってるのかままま全く分かんないわね! ここここれだから欧州人は困るのよねぇっ!」

 

「べべっ、別にわたくしはっ!そ、そういう邪推をされると些か気分を害しますわねっ!」

 

 更に顔を赤くしだす鈴とセシリア。これは面白いな。

 

「はい、烏龍茶と紅茶をどうぞ。とりあえず飲んで落ち着いてね?」

 

「ふ、ふんっ!ありがと」

 

「不本意ですが頂きますわっ!」

 

 鈴とセシリアはシャルルが渡した飲み物をガバッと受け取り、ごくごくと一気飲みする。下手に飲むとむせるぞ?

 

「「ゲホゲホッ!ゴホッ!」」

 

 ほら、言わんこっちゃない‥‥。

 

「おいおい。そんな一気飲みするからだ。予感的中したぞ」

 

 どうやら一夏も同じこと考えていたらしい。2人がむせ終わった後、本音が袋からお菓子を取り出した。あくまで取り出したのは一部で半分くらい自分で食べるらしい。

 

「は~い。セシリーとリンリン~」

 

「どうぞ‥‥」

 

「あっ‥‥どうもですわ」

 

「ど、どうも‥‥」

 

 本音と簪が用意したお菓子をセシリアと鈴は受け取る。鈴は本音からリンリンと呼ばれるのは、ある過去があって呼ばれたくないが、今は諦めているらしい。

 そして、本音と簪の次に俺は用意した物を取り出す。

 

「まぁ、はいよ。ここで少しの間、過ごす事になるんだろ?暇になるだろうから俺が『PFP』持ってきたぞ」

 

「PFPですの?」「あぁ、PFPね」

 

 俺が鞄から取り出した2つのPFPに疑問を抱くセシリア。鈴は勿論、知っている。

 これは二年前に発売された次世代ポータブルゲーム機器で、かなり綺麗なグラフィックや携帯可能なのが売りだ。かれこれソフトは30作ほど持っている(これでも少ない方)。

 

「ゲーム機だ。暇潰しにオススメだぞ」

 

「ですが、わたくしそういうのは‥‥」

 

「試しにプレイしてみろ。ソフトなら沢山あるから」

 

 そう言って俺は鞄から箱を取り出す。その箱にあるスイッチを押すと、箱が色々な方向に開く。中にはソフトがズラリと並んでいた。

 

「さあ、やってみたいのを選ぶがいい。ジャンルも沢山あるぞ」

 

 ソフトのジャンルは様々で、アクション系やシューティング系、恋愛・美少女系は勿論、RPG系にシュミレーション・ストラテジー系、アドベンチャー系などがある。

 俺のお気に入りはシューティング系とギャルゲーとノベルゲーだ。美少女系はルームメイトが女子なので殆どやってない(やれない)。

 

「え、ええ‥‥ではこのゲームで」

 

「なるほど。『機動戦士ガンダム』か。良いものを選んだな」

 

「シューティング要素がありましたので選びましたわ」

 

 半年前に発売されたもので、ロボット系ではかなり有名な作品だ。実在していたら色々なガンダムとISで戦わせてみたいものだが、ISが負けるオチが見えてくる。どうでもいいけど、白式と『百式(ひゃくしき)』の白式とで紛らわしい。

 

「あたしはコレ」

 

 鈴が選んで取り出したのは、 『ストリートファイター X 鉄拳』だ。鈴には格闘ゲーム好きなのは中学から知ってる。凌暁雨(リン・シャオユウ)がお気に入りらしい(名前がリンだから)。

 

「じゃ、返すのはいつでもいいから。把握ヨロ」

 

「わかりましたわ」「おーけー」

 

 ちなみに、俺のお気に入りソフトは、最近発売された『ミラクルガールズフェスティバル』だ。

【ご注文はうさぎですか?】や【きんいろモザイク】、【のうりん】や【ゆるゆり】など、人気の美少女が登場する音ゲーである。お気に入りはごちうさ、きんモザだ。

 

「ま、応急処置も終わったし、2日ここで休めば動けるようになるってさ。しばらく休んだら────」

 

ドドドドドドドッ!

 

「なんだ?」

 

 一夏が話している時に遠くからドタドタと何者かが走る音がする。あれ?段々音がでかくなるぞ?まさか───

 ドカーン!と扉が吹き飛んだ。なんか漫画みたいだった。見るの初めてでマジ半端ないけど、後でこの生徒達は説教だわ。

 雪崩のように入ってきたのは数十人の女子であった。軽くホラー現象ですね。

 

「「「織斑君!」」」

 

「「「デュノア君!」」」

 

「城谷上君!」

 

 次々と一夏とシャルルの名前が呼ばれる中、俺の名前も少数から呼ばれたようだ。全く呼ばれないよりはマシだが、とりあえず現状理解ができない。

 

「な、なんなんだ?」

 

「せ、説明求む」

 

「ど、どうしたの?みんな‥‥お、落ち着いて」

 

「「「「これ!」」」」

 

 状況理解不能な俺達に、バン! と女子たちが見せてきたのは学内の緊急告知文が書かれている申込書であった。

 

「「「?」」」

 

「『今月開催する学年別トーナメントでは、より実戦的な模擬戦闘を行うため、2人一組での参加を必須とする。尚、ペアが出来なかった者は抽選で選ばれる生徒同士で組むものとする。締切は』────」

 

「ああ、そこまででいいから!とにかく!」

 

 一夏が読む途中で話を切り出す女子生徒。

 

「私と組んで!織斑君!」

 

「私と組んで欲しいな、デュノア君!」

 

「うちと組まない?城谷上君」

 

 どうやらこの生徒たちは俺達とペアを組みたいらしい。勿論、学年別なので一年生しかいない。一夏やシャルルは人気だから取るのだろうけど、俺の場合は勝利目的で組むつもりだろう。でも、そこまで俺は強くないぞ?セシリア以上鈴以下ですしおすし。それより────

 

「え、えっと‥‥」

 

 そう、シャルルは男の娘ではなくボクっ娘だ。誰かと組んだら正体がバレてしまう可能性が高くなってしまう。

 そんなことを考えながら、シャルルを見ると困った顔で一瞬だけもとめているのが分かった。すぐに視線を逸らされてしまったが‥‥。シャルルの事だから遠慮しがちなのだろうがここは俺が前に出るべきだろうな。ならば────

 

「すまぬ。俺は───「悪いな。俺は太一と組むから諦めてくれ!」

 

 五月蝿かった部屋がしーんと静寂に包まれる。

 

(一夏よ‥‥なんてこと言ってくれたんだ‥‥)

 

 だが、一夏に悪気はないのは分かっている。原因は俺だ。早めにシャルルに許可を得てから、一夏に正体を説明するべきだったのだ。

 

「まぁ、他の女子と組まれるよりかは‥‥」

 

「男同士も絵になるしね‥‥」

 

「じゃあ‥‥デュノア君は?」

 

 俺と一夏がペアなのは少し納得しているみたいだが、肝心のシャルルに対しては殆どの女子が諦めていなかった。

 これでは、シャルルが他の女子と組む事が確定してしまいそうだ。何か方法はないか俺は策を────

 

「ごめんなさい‥‥僕は簪さんと組むことにします。これを決めたのは僕なので、簪さんを責めたりしないで下さい‥‥。お願いします‥‥」

 

 シャルルは咄嗟に、自分の正体を知っている中の1人、簪と組むと伝えた。

 でも、これでは簪が他の女子に叩かれてしまう恐れがあるので、あの時のように完璧な姿勢で頭を下げながらお願いしていた。これでは女子達は彼女を責めたりできない。

 

「デュノア君‥‥そこまでしなくても大丈夫よ‥‥」

 

「うんうん。私は更識さんを責めたりしないわ」

 

「デュノア君がそう言うなら‥‥」

 

 とりあえず納得してくれたらしい。女子達は、一人また一人と部屋を出ていき、またペア探しへと向かっていった。

 

「ふぅ‥‥」

 

「はぁ‥‥」

 

「お、おい。一夏────」

 

「一夏!」「一夏さん!」

 

 安堵のため息をついたシャルルと一夏。俺は一夏にペアの話をしようとしたが、あの2人に妨害されてしまった。

 この時にシャルルと本音、簪には少し残念そうな顔になっていたような気がした。

 

「あ、あたしと組みなさいよ!幼馴染みでしょうが!」

 

「いえ、クラスメイトとしてここはわたくしと!」

 

 怪我人とは思えないほどの勢いで声を上げる鈴とセシリア。先程のように、そう簡単には説得できなさそうだ。これは面倒だな‥‥はぁ‥‥

 

「ダメですよ。二人とも」

 

 ここで登場ピンチヒッター!と救世主が現れた(バットは持ってません)。その人は麻耶(真耶)先生だ。この状況に俺を含む部屋の全員が驚き目をパチクリさせていた。

 

「お二人のISの損傷度を確認したところ、ダメージレベルがCを超えています。当分は修理に専念しないと、後々重大な欠陥を生じてしまいます。ISを休ませる意味でもトーナメントの参加は、許可できません」

 

 さぁ、麻耶先生の素晴らしき説得に2人の反応は‥‥?

 

「ぐぬぬ‥‥わ、分かりました‥‥」

 

「非常に、非常にっ!不本意ですが、トーナメントの参加は辞退します‥‥」

 

 これは麻耶先生の勝利だ。万歳!‥‥って俺は何故、実況みたいなこと考えてたんだろう‥‥。

 

「分かってくれて先生嬉しいです。ISに無理をさせて重大なことになって欲しくないですからね」

 

「はい‥‥」

 

「分かっていますわ‥‥」

 

 2人は納得はしていないようだが、トーナメントに参加できないことは理解したらしい。

 

「太一、一夏。IS基礎理論の蓄積経験についての注意事項第三だよ」

 

 えっと‥‥ISが経験で自己進化するだかなんとか‥‥

 

「‥‥『ISは戦闘経験を含む全ての経験を蓄積することで、より進化した状態へと自らを移行させる。その蓄積経験には損傷時の稼働も含まれ、ISのダメージがレベルCを超えた状態で起動させると、その不完全な状態での特殊エネルギーバイパスを構築してしまうため、それらは逆に平常時での稼働に悪影響を及ぼすことがある』」

 

「おお、それだ。流石はシャルル!」

 

「おお、お見事」

 

 大雑把にしか覚えていなかった俺に対し、シャルルは文章全て暗記できていた。俺の周りは皆、頭良いな‥‥。

 

「しかし、何だってラウラと戦うハメになったんだ?」

 

 一夏の疑問には、俺も同感である。

 

「え、いや、その‥‥」

 

「ま、まぁ、それは‥‥女の自尊心を侮辱されたから、ですわね‥‥」

 

「ふうん?」

 

 なんとなく、2人が言いにくそうにしてる理由が分かった。一夏以外も感ずいてるらしい。‥‥あっ‥‥なるほど、

 

「ああ。あれだな‥‥一夏のことを────」

 

「あああっ!余計なこと言うな!太一!」

 

「そ、そうですわ!全くです!おほほほほ」

 

 やはりそう簡単に言わせてくれないのは察していた。怪我人のくせに立ち上がってるし‥‥。

 

「こらこら。怪我人が体を動かすのはダメだろ。ホレ」

 

 2人を落ち着かせるつもりで一夏は2人の肩を指でつつく。

 

「「ぴぐっ!」」

 

 案の定痛みが走ったようだ。一夏、それは流石に2人が可哀想だぞ。

 

「「‥‥‥‥‥‥」」

 

「あ‥‥すまん。そこまで痛いとは思ってなかった。悪い」

 

 今更謝っても無駄に決まっている。2人がピンピンしていたら、一夏終了のお知らせがなる所だった。セーフ‥‥。

 

「い、一夏ぁ‥‥アンタねぇ‥‥」

 

「あ、後で‥‥覚えてらっしゃい‥‥」

 

 あっ...(察し)。それより、困ってる麻耶先生に扉の件を伝えないと‥‥。

 

「まy‥‥山田先生。扉が吹き飛んだ事に気づいてます?」

 

「ん?‥‥‥‥ええ!?何故、扉がここにあるんですか!?」

 

 気づいてなかったんかい!飛んだド天然だなこの人‥‥。ある意味萌えるわ。

 

「先程、一年の女子生徒が扉を破壊しましたので織斑先生に宜しく言っといてください」

 

「は、はい。分かりました。では」スタタタタ

 

 扉の件を伝えるため、山田先生は保健室から出ていった。

 え?チクったって?いや、後で扉の事バレたら矛先が俺らの所に飛んで来るではありませんか‥‥。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ。太一」

 

「ん?」

 

 保健室での騒動が終わって夕食を食べた後、部屋に戻った瞬間にシャルルが口を開いた。

 

「太一は誰とペアを組むつもりだったの?」

 

「あぁ‥‥あの時はシャルルの正体がバレてしまっては拙いと思ってシャルルとペアを組むつもりだったけど‥‥」

 

「一夏が先に決めちゃったから仕方ないよ。一夏だって悪気はないんだし」

 

「それでもごめん。一夏に早く伝えるべきだった‥‥」

 

「ううん。僕の秘密を守ろうとしてくれてたんだから気にしてないよ。それに簪さんも居たから問題なかったし」

 

「そっか‥‥なら良かった」

 

 嗚呼、なんてこの子は天使なんだろう。それより本音が「解せぬ」なのかも知れない(いや、それはない)けど、それもそのはず、本音は知識派なので実戦的な能力は余り高くないからだと思う。

 

「ねぇ、太一。‥‥その‥‥気になるんだけど‥‥僕って女の子っぽくないかな?」

 

「女の子っぽくない?そんな事ないと思うけど‥‥」

 

 シャルルは見た目も仕草も女らしいから、the女の子だと思うけどな‥‥。ボーイッシュなシャルルも最高ですしね!

 

「その‥‥自分のことを『僕』って言うとさ‥‥」

 

 どうやら勘違いをしているみたいだ。この子にはオタク魂モードの語りで納得させることにしよう。

 

「君は何を言っている?いいか?一人称が僕っていう女の子は、ネットで通称『ボクっ娘』と呼ばれていてな。俺はボクっ娘が最高だと感じている。だから、これから先ずっとボクっ娘のままでも女の子らしくて可愛いと俺は思うぞ。まぁ、ボクっ娘のままがいいのかは、シャルルが決めることだけど‥‥」

 

 ボクっ娘なんて漫画やアニメでしか見た事ない。リアルでボクっ娘なんて珍しい者である。このチャンスを絶対に逃す訳にはいかない。

 

「か、可愛い‥‥?僕が‥‥?本当に?」

 

 随分、近づいてきて訊いてくるな‥‥。まぁ、シャルルはぶりっ子じゃないと思うから、自分が可愛いことを自覚してる訳ないよな。あっ‥‥でも、ここではボクっ娘が可愛いのかと訊いてきてるのか?

 

「勿論、ボクっ娘は最高だ」キリッ

 

 うん。色々言ってて恥ずかしくなってきた。穴があったら埋もるか、「おそと、はしってくるーー」と外へ走りたい位だ。

 

「そ、そうなんだ‥‥なら‥‥このままでもいいね」

 

 ニコッっと微笑むシャルル。マジ天使だわ。本音、簪に続いて3人目の天使だわ。ん‥‥そういえば、制服のままだった。相手は女の子だし、洗面所に行くか。

 

「じゃ‥‥着替えるから洗面所行くわ」

 

「え、どうして?」

 

「お前は何を言ってるんだ?俺がいたら着替えられんだろ」

 

 こんなやり取り本音と簪がルームメイトの時もあったような、なかったような‥‥。

 

「い、いや、別に気にしてないから‥‥遠慮しないでさ‥‥ね?」

 

「い、いやぁ‥‥流石に────」

 

「そんな事言わずにさ‥‥気遣わなくても大丈夫だから‥‥普通にね?お願い」

 

 俺としては恥ずかしいから嫌なだけだが、こうまでお願いされると気が狂うな。仕方ないからなるようになれ。

 

「お、おう。わかったよ」

 

「うん。そうして」

 

 再びニコッと微笑むシャルルだが、頬は赤くなっている。恥ずかしいんだろうか‥‥可愛いですな。

 俺は言われた通り、目の前で堂々と制服を脱ぎ出す。

 

「‥‥‥‥」

 

「どうした?シャルル‥‥あ‥‥背を向けないとダメだったな。すまん」

 

 そう言って、シャルルに背を向けてワイシャツを脱ぎ捨てる。

 

「あ、ううん。‥‥じゃあ、着替えるね」

 

「お、おう」

 

 俺が着替えている沈黙していたシャルルも数秒後には着替え始める音が聞こえてくる。何か生々しくて興奮しそう。理由は、現在進行形で美少女が後ろで着替えてるからかな。

 

(‥あぁ^〜シャルルの甘い匂いがプンプンするんじゃ〜‥‥)

 

 シャルルが男の娘だと思ってたときは、いい匂いがしても気にしなかったが(ちょっと気にした)、ボクっ娘と分かってからはその匂いを意識してしまい、鮮明となっていた。

 これと似た光景としては、本音と簪がルームメイトだった頃もそうだ。近くにいるときは甘い匂いがプンプンするので、たまに興奮してしまいそうになる。特に髪の甘い匂いが。

 

(うぅ‥‥手フェチの次は匂いフェチになりそうだな‥‥いかん、シャルルの手を近くで眺めたい‥‥)

 

「た、太一。着替え止まってるけど‥‥」

 

「おっと、すまぬ」

 

 止まっていた着替えを再開、ズボンまで下ろそうとした時。

 

「‥‥‥‥‥‥」

 

 じーーー。

 

 何か視線を感じる。それはシャルルの着替え音が聞こえないからだ。

 

「シャルル?」

 

「ふぇっ!な、何かな?!」

 

 俺が名前を呼ぶと急にワタワタと動揺しだしているのがわかる。ふぇっ!って何だよ。すげぇ可愛いな。

 

「いや、何でもない」

 

「あ、うん‥‥‥‥」

 

 また着替え始める俺氏。だが、肝心のシャルルの着替え音が聞こえてこない。

 

「‥‥‥‥‥‥」

 

じーーーー。

 

「シャルル‥‥覗くなよ」

 

「ふぇっ!?い、いや僕はそんな───きゃんっ!」

 

 シャルルから子犬のような悲鳴が聞こえて、ドタン!と音が鳴ったときに反射的にシャルルの方を見てしまった。

 

「いたた‥‥。足が引っかかっちゃっ‥‥‥た?」

 

「え?」

 

「「え」」

 

 俺は人生で2度目のラッキースケベイベントが発生しました。目の前でズボンに足を引っ掛けて床に転ぶシャルルを見ているが、本題はその姿である。上はワイシャツ、下は────下着‥‥そう。パンツである。当然、女性用の下着状態だ。しかも、裸ワイシャツ状態にかなり近いから、尚更興奮してしまう。あっ‥‥

 

(やべ‥‥俺のキングダムが上に凸した‥‥)

 

 俺はこの緊急事態に対処できなくなり、必死に俺の貞操をワイシャツで隠した。これは温泉に入る時のおっさんみたいである。

 

「きゃ────」

 

 おい!悲鳴はやめて下さい。お願いします。部屋の外に響くから────

 

 コンッコンコンッ

 

「「あ」」

 

 ガチャっと音が鳴り、扉が開き出す。俺は今、この世の終わりを感じた。パンツ一丁で貞操を隠す俺、ワイシャツと下着状態で床に転げてるシャルル。この二つが揃って素晴らしいものを作り上げた。

 

「やっはろ〜やがみ‥‥ん?」

 

「たい‥‥ち?」

 

 入ってきたのは勿論、着ぐるみ姿の本音と私服姿の簪。2人は入ってすぐ動きが止まった。

 

「え、あっ‥‥その‥‥こ、こここれはだな‥‥つまり‥‥」

 

 言い訳する言葉も見つからず、ただただ低層を隠しながら慌てる俺氏。

 

「こ、これは違うの‥‥ほほ、本当に‥‥違くて‥‥そ、それで‥‥」

 

 シャルルも同じように慌ててスボンを履き出す。他の二人は目が笑ってない顔をしてる気がした。

 

「デュッチーは大胆だな〜」

 

 そこで、本音と簪はシャルルに近づいて耳元に二人とも顔を寄せながら、

 

「「────抜け駆けはずるい!」」

 

 俺には聞こえないが、シャルルは急に頭を下げ「ごめんなさい!」と謝り出した。‥‥何を言ったんだ?

 

「それよりやがみ〜ん‥‥どうしてそこを隠してるの?」

 

 本音は疑問に思い、俺に近づき何故かワイシャツと手を解こうとしてきた。ちょ‥‥ちょ‥‥やめい!

 

「よ、よせ!────あっ!」

 

 するんとワイシャツと手が解けてしまう俺氏。貞操は無事守れませんでした。ありがとうございます。

 

「‥‥ふぇ〜!?」

 

 ブリーフとはいえ、突起物が現れる。見えてはいないが形はもろバレだ。

 

「「「‥‥‥‥‥‥」」」

 

 3人ともカァーっと顔を赤くして止まっている。俺は頭が真っ白で思考停止してしまっている。その時、一人が何かを持ち始め‥‥

 

「きゃあーー!!!」

「やがみんのえっち〜っ!」

「私はみてない……私はみてない‥‥」

 

 シャルルの悲鳴などと同時に不明物質が飛んできて、俺の頭に直撃し、そこで意識が吹っ飛んだ。

 

 

 

 




今回はリクエスト要素を入れました。感想募集中です。

軽く改正※最後の方の修羅場に笑ってるようで目が笑ってないことを追加。


楯無さんの出番ないじゃないですか!やだー!
━━PFP

play field personalの略

神のみぞ知るセカイを知っている方ならわかると思いますが、性能はVITAだと思ってくれれば大丈夫です。

━━機動戦士ガンダム

マニアックなアニメネタより、たまには王道ネタもありですね。白式かっこいいわ。え?ワンサマー?何を言ってるんだ。百式だ。百式。

━━ストリートファイター X 鉄拳

コラボ格闘ゲーム。鉄拳の方がキャラが可愛いので好きです。やったことはあるけど下手くそでした。

━━ミラクルガールズフェスティバル

あ^〜心がぴょんぴょんするんじゃ^~
\アッカリーン/
マジーデナットウウメースキー
(」・ω・)」うー(/・ω・)/にゃー

────割愛

━━この世界は何年だ?

決まってません。ソフトの発売日とかは関係ありません。

━━ここで登場ピンチヒッター!

パッパッパラパッパバラパー あれはきっとパンダヒーローさらば一昨日 殺人ライナー♪

━━ボクっ娘

一人称を『僕』という女の子のこと。現代社会では滅多にいない。

━━匂いフェチ

手フェチの次は匂いですか‥‥次はどこフェチ化するのかね?

━━おそと、はしってくるー

俺の彼女と幼なじみが修羅場すぎる。の冬海愛衣です。

━━なぜ、本音はワイシャツと手を解いたのか‥‥

何か隠し持ってると思ったんです。(震え声)



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第28話 グンジン

遅れてすみません。展開自体は原作通りですが、時間の関係といい、かなり手こずってしまいました。


※感想お待ちしております。


シャルルSIDE

 

 

 

 

「‥‥‥‥」

 

 気を失った太一をとりあえずベッドに3人がかりで寝かせたシャルルと本音、簪は、まだ頬の赤らみが引かないままで部屋にいた。

 

「う〜やがみ〜ん‥‥」

 

 本音は太一が死んでしまった訳ではないのにも関わらず、ベッドの横で太一の手を握っている。本人は半分冗談であるが、シャルルにとっては少し申しわけない気持ちである。

 

「ねぇ‥‥協定を結ばない?」

 

 そんな時、ずっと太一が使うパソコンを何故か弄っていた簪が、口を開く。それをシャルルは何の協定かは分からなかった。

 

「協定?」

 

「そう。抜け駆けのきょ〜て〜い。はいこれ〜」

 

 本音がポケットの中からメモ帳を取り出し、シャルルに渡す。シャルルはそれを黙読する。

 

(えーと‥‥やがみんとの一線を越えないこと 以上‥‥これだけ?)

 

 抜け駆けの意味をシャルルはあまり分からなかったが、先程起こった自体に「抜け駆けはずるい」と2人に言われたため、なんとなく理解している。

 

「随分、緩い協定だね‥‥あはは」

 

「抜け駆け禁止は耐えられないし‥‥」

 

「気づかないうちに抜け駆けしてそうだし〜」

 

 理由としては、3人が抜け駆けをせずにはいられないからである。やりたい事ならすぐ実行してしまう本音、勇気をだせば実行できる簪、やろうと思えば実行できてしまうシャルル。いつ太一との一線を越えてもおかしくない3人で、そのためには協力する必要があるのだ。誰かがヤンデレ化してしまっては溜まったもんじゃない。

 

「じゃあ握手しよ〜」

 

 本音に言われて握手するシャルル。簪も同様に握手したが、本音はニコッとしているのに火花が感じられ、簪はモロに火花が散っているようだった。

 

「それじゃ〜やがみんが起きたら、連絡よろしく〜」

 

「シャルル。またね」

 

「うん。また明日」

 

 2人は手を振りながら部屋を出ていく。シャルルも手を振って、寝間着に着替えた。

 

(あの2人とはライバルになりそうだね‥‥)

 

 シャルルはそんなことを考えて、部屋の照明を消す。そこから、太一がいるベッドの上に座った。

 部屋は暗く、太一の呼吸しか聞こえない静かな状況で、だからこそ不思議とシャルルを大胆にする。

 

(ぼ、僕は何をやってるんだろう‥‥)

 

 そう思いながらも、暗くて目も慣れない中、シャルルは太一の顔を覗き込む。じっと見つめる距離は10センチもないだろう。今でも太一の呼吸や体温までもが感じられて、シャルルは胸の鼓動が早く強くなった。

 

「‥‥‥‥‥‥」

 

 ふと太一のことを考えると、シャルルの表情は真面目なものとなる。

 

『ならここにいればいい』

 

────初めてそんな事を言われた。

 母親を亡くしてからずっと、居場所が見失っていた自分。血縁関係だけの父親には狭い空間に閉ざされたような息苦しさしか感じられず、ただ生気無しに日々を過ごしていた。

 いつしか自分が必要とされることすら求めなくなり、つまらない灰色の生活が繰り返されていることもやがて慣れてしまっていた。

 

(どうして太一はこんなに僕の心を奪ってしまうようなことをするんだろうね)

 

───出会ってしまった。目の前のオタクな少年に。

 

(知ってるんだよ。デュノア社のこと)

 

 あんな事を言われて、それから何もないと思っていた。だが違った。数日前にデュノア社から連絡が来たのだ。あの父親に‥‥何を言われるかと焦ったが、思ってたこととは全く違う事であった。

 

『城谷上君からデータを受け取った。だから────自由に生きろ』

 

 自由に生きろ。そんな言葉、初めて父親から聞いた。今まで冷酷なことしか言わなかったあの人に。内容はそれだけで、シャルルは理解はできなかった。太一の苗字が出てきた時点で混乱していたからだ。

 それからというものの、父親から連絡が来ることが若干あった。シャルルからしてみれば、迷惑極まりないがその分色々言われた。

 父親から謝られたり、本妻とフランス政府が絡んでいたと伝えられたことなど。

 詳しくは知らされてないが簡潔にいうと、父親は実の娘を利用するつもりは全くなかったが、本妻によるシャルルに対しての毛嫌い、経営危機、本妻と政府による命令と重なり、まともに会話もできず連絡も監視されていたのだそう(シャルルに対して冷酷な対応も強制)。

 それだけでもシャルルは少し安心した。完全に捨てられた存在ではなかったのだ。これも太一のおかげなのかも知れないが、実際は天災も関係している。だがそんな事をシャルルが知る由もない。

 

「ありがとう。太一」

 

 太一には聞こえるはずもないが、シャルルは声に出して話した。目も慣れた頃にシャルルとても優しい表情でそっと太一の額にキスをする。

 

「おやすみ」

 

 冷めぬ体の火照りを感じながら、シャルルは長い夜を過ごしたのだった。

 

 

 

 

────────────────────────────

 

 

 

 

────学年別トーナメント当日

 

 

 

 

 時は進んで6月も最終週に入り、IS学園は月曜からしばらくは学年別トーナメントとなる。その慌ただしさは予想以上にすごく、現在こうして一回戦が始まる直前まで、全生徒が色々な仕事で忙しかった。

 それからなんとか仕事を終えた生徒達は急いで各アリーナの更衣室へと向かう。勿論、俺達3人はだだっ広い更衣室にいる。無駄に広いから俺専用の部屋として改造させたいくらいだ。ん‥‥広さ?1周500メートルはあるんじゃね?

 

「しかし、すげぇなこりゃ‥‥」

 

「三年生にはスカウト、二年生には一年間の成果の確認などから人が多いからね」

 

「へー」

 

 ここにいる一夏とシャルルはモニターを見つめながら会話していた。 

 そこには、各国政府関係者、研究所員、企業エージェントなどの方々が来賓していた。勿論、専属企業関係者である鍵山さんも出席してるとのこと。

 

「あ、太一くん見っけ♪」

 

 男子更衣室なのに誰か来たと思ったら楯無さんだった。声で普通に分かってたけど。

 

「あれ?何か用ですか?」

 

「いやいや、仕事が終わったからね。様子見よ。どう?自信の方は」

 

「一夏、自信の方は?」

 

「なんで俺に振るんだよ‥‥そりゃ、自信はあるさ。アイツを倒したいからな」

 

 そう、アイツとは軍人娘、いやボーデヴィッヒのことである。一夏はソイツとの対戦だけが気になってるらしい。それは俺も同じであるが‥‥。

 

「太一君も一夏君もシャルルちゃんもお姉さんが応援しちゃうから、頑張ってね♪」

 

 楯無さんに応援か‥‥チアリーダーみたいに「フレー!フレー!太一!」って言われてみたい。多分、昇天して余計に弱くなるけど。

 後、「シャルルちゃん」って楯無さんが言ってるのは、正体を知ってるからだ。対暗部用暗部かつ生徒会長って怖い、はっきりわかんだね。ついでに俺は何も伝えてない。

 

「はい!全力で勝ってみせますよ」

 

「勿論です。絶対勝ってやります!」

 

「はい。全力を尽くして戦います!」

 

 俺に続いて一夏、シャルルも言う。

 

「元気があってよろしい!それじゃ、またね〜」

 

「了解です」

 

 スライドドアが開いて楯無さんは去っていった。まさか、自信のこと訊きに来ただけなのか‥‥。

 そういえば、箒のペアは決まったのだろうか?あの時は成り行きで一夏とペアを組まざるを得ないことになった(後から他の女子と組んだらややこしいことになる)から、こうして一夏と協力することになったが、箒は誰と何だろう‥‥。ちなみに、本音は谷本さんと組んでいる。

 

「シャルル。絶対勝ち抜いて俺達と決着をつけようぜ」

 

「望むところだよ。一夏、太一」

 

「おう」

 

 一夏の言葉に対抗するシャルル。これは面白くなりそうだな。相手はシャルルと簪だ。実力の高いペアだからこそ、俺達は負ける訳にはいかない。

 そういえば、一夏が抽選くじを引いた結果、Aブロックの一回戦目になったらしい。どうしてくじ引きなのかは知らないが、最初から戦えるのは最高だ。

 

「2人とも、対戦相手が決まったみたいだよ」

 

 モニターがトーナメント表に切り替わる。俺は対戦相手が誰か知りたくて画面をじっと見つめた。

 

「「────え?」」

 

 表示された対戦相手に俺と一夏はぽかんとした声をあげた。

 一回戦の相手はボーデヴィッヒ、そして箒とのペアだったからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

 太一たちが利用しているのとは別の更衣室。人口過密で騒がしい場所であるのだが、冷気を放つ一角が存在した。

 一人はボーデヴィッヒ、そして箒である。

 

(初戦から一夏だと?!なんという組み合わせだ‥‥)

 

 箒は瞼を閉じながら、その気分は嬉しいものではなかった。

 ペア必須への変更が決まった日、箒は日付が変わる前にと夜に一夏の部屋へ訪れたが、「もう、太一と組んじまったぞ」という返事であった。

 結果的に締切に間に合わず、抽選でボーデヴィッヒとなってしまったのだ。一年生で抽選になったのは箒と彼女のみだからである。

 

(私は絶対に優勝せねばならないというのに!)

 

 一言で言えば『最悪』である。

 それでも戦力的にはかなり十分だろうが、箒とボーデヴィッヒでは意見が合わない。向こうは話など聞く気は全くなく、「邪魔しなければそれでいい」の言葉を言われただけである。

 しかし、それ以上に箒が抱くのは────近親憎悪。力が全てだと思っている姿は、かつての自分そのものであった。まるで過去の自分を見ているかのようで嫌でたまらない。

 

(‥‥いや、考えるのはよそう)

 

 そうやって箒は腕に力を込め、我慢をするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「一回戦で当たるとは、待つ手間が省けたぜ」

 

「同感だ。お前を短時間で叩きのめしてやる」

 

 一夏とボーデヴィッヒの会話で俺達は戦闘態勢に入る。試合開始まで15秒前‥‥

 

「いくぞボーデヴィッヒ────エネルギーの貯蔵は十分か」

 

「ふん。思い上がったな、雑魚が」

 

 その言葉と共に試合開始の合図が鳴る。同時に一夏は瞬時加速を使った。

 

「うおおおお!」

 

「ふん‥‥」

 

 ボーデヴィッヒが右手を突き出し、一夏の動きを止めた。

 シャルルから聞いたが、あれは慣性停止能力。通称AICと言われるものらしい。対象の動きを停止されることが可能で厄介な能力だ。少なくとも一体一では完全不利。だからこそ意外性で攻めるまでだ。

 

「くっ‥‥」

 

 AICにより停止された一夏に向かってボーデヴィッヒは大型レール砲を撃とうとする。

 

「させるか!」

 

 その時、俺は予め展開していた2基のバルカン砲(モード切替で実弾モードに変更)の弾幕を奴に向け張った。

 

「ちっ‥‥‥!」

 

 弾幕により、射角がずれてボーデヴィッヒが撃つ砲弾はアリーナの壁へ貫通した。奴は一夏から離れ体制を整えようとする。

 

「逃がさん!」

 

 再度、ボーデヴィッヒに銃口を向け発射するが────

 

「私を忘れてもらっては困る」

 

 目の前に打鉄を纏った箒が現れる。その肩に随時装備されている実体シールドにより弾が弾かれた。

 形状が丸く装甲も雷艦並に硬いため、レール砲の砲弾でも当たりどころによっては弾くだろう。

 

「ならば俺も忘れられないようにしないとな!」

 

 一夏はそう言いながら、箒の方へ瞬時加速を使う。同時にくるりと一夏の背中に後退した。

 

ガキンッ!と一夏と箒のブレード同士がぶつかり合う。

 一夏は箒と何度も打ち合いながらもスラスターの推力を上げ、徐々に箒を押していく。

 

「く‥‥ぐぬぬ‥‥」

 

 押されていくことに焦れた箒は一夏の頭上に大きく刀を振りかかる。

 

「太一!」

 

「イエッサー!」

 

ギィィン!と箒の一撃を受け止めた一夏。

 その瞬間、ボーデヴィッヒの注意を引いていた俺は、ボーデヴィッヒの真横から箒に向かって《120ミリ滑腔砲》を砲撃。至近距離なので外さないはすだが────

 

「!?」「あれぇ?」

 

 箒が突然目の前から消えたため、一夏は驚き、俺はマヌケな声を上げていた。

 

「アベシッ!」

 

 その時、ドカンと横から何か衝突してオレは吹き飛ばされた。よくみると、ぶつかって来たのは箒でその足元にはワイヤーブレードが絡まっていた。

 

「邪魔だ」

 

「な、何をする!」

 

 やはり、ボーデヴィッヒの仕業らしい。こいつの行動からすれば、助けたのではなく、ただ邪魔としか思ってないからだろう。利用された箒が怒鳴り声を発する。

 だが、ボーデヴィッヒは完全なスルーをして、一夏へ攻撃を始めた。

 

『太一!大丈夫か?』

 

『大丈夫だ‥‥問題ない』

 

『そうか、なら箒の方を頼む』

 

『了解』

 

 プライベート・チャンネルで会話した後、本来の目的である『箒優先撃破』作戦だ。

 なぜ、この作戦かというとボーデヴィッヒは一体一では反則的な強さであり、箒を味方とも思わないアイツなら助けることはない。

 それに、ボーデヴィッヒの目的は一夏。ならば箒を倒してから二対一で攻める。それが目的だ。

 

「おっと、まだ俺が相手だ」

 

「な、何!?」

 

 ボーデヴィッヒから離れて箒に接近する。近接武器だと箒と苦戦してしまうため、2基のバルカン砲で射撃する。

 咄嗟に箒は実体シールドで防ぐが、こちらは弾幕兵器、かなりの弾数を所持している。そう簡単には振りきれない。

 箒はシールドを使用しながら弾を避けようとするが、機動性に特化した俺はすぐに回り込もうとする。既に箒は数発被弾していた。

 

「くっ‥‥」

 

 防御しても終わらない弾幕に苦戦の声を上げる箒。そこで、こちらの弾数がゼロになる。しかし、これは仮の装備。本来はレーザーが撃てるものだ。

 俺はレーザーバルカン砲を連射する。実体シールドでは流石に歯が立たない。

 レーザーが箒に命中し、怯んだ隙を見て突撃する。即座に滑腔砲を展開して、箒に向けて撃つ。一発目ではシールドで防がれたが、この砲は自動装填式だ。1秒に一発で計3発撃てる。

 ドカン!ドカン!と砲撃音が鳴り響き、実体シールドの1つを破壊した。

 

「なんのこれしき‥‥」

 

 箒が踏ん張る中、今まで温存していた4つの《雷艦》を使用して、箒に突撃する。かなり硬いのであたればダメージが入る。

 箒は必死に避けているが、それは計画通り。これは前に麻耶先生が行っていたような誘導技だ。そして、だんだんと箒は壁の方に近づいていく。壁との距離がかなり近くなった時、瞬時加速で突撃した。

 

「うおおおお!」

 

「!?」

 

ドカッ!

 

 まずは箒に蹴りを食らわせ、同時にパイルバンカーを使用、箒は壁に叩きつけられる。そして、とどめには展開していた《203ミリ榴弾砲》を放ち、煙が去った時には箒はシールドエネルギーがゼロとなっていた。

 

「ふぅ‥‥」

 

 安息もつかの間、まだボーデヴィッヒが残っている。早く一夏を援護せねばならない。

 気づいた時には、ボーデヴィッヒがワイヤーブレードでボロボロの一夏の動きを封じ込め、大型レール砲を撃つ寸前だった。間に合え‥‥!

 

「させるかぁぁぁ!」

 

 ボーデヴィッヒに向かって雷艦を出撃させ、奴が砲撃した瞬間、上手く角度を付けて一夏の前を防いだ。

 

ガキーーンッ!

 

 ゲームのような音を響かせ、なんとかボーデヴィッヒの砲弾を弾く。その隙に一夏はワイヤーブレードを切断して離脱して俺はボーデヴィッヒに向けてバルカン砲を発射し、ボーデヴィッヒは後退した。

 

「助かったぜ。太一」

 

「おうよ」

 

「あれ、箒は?」

 

「あっちの壁にいるぞ」

 

 一夏に訊かれて、俺はボーデヴィッヒの方に指をさす。箒は悔しそうに膝をついていた。

 

「すげぇな」

 

「まぁ、武装のおかげ────」

 

 ヒュンっ!と俺に向かって砲弾が飛んできて間一髪で避ける。危ねぇ‥‥。

 

「ちっ‥‥当たらなかったか」

 

 舌打ちをするボーデヴィッヒ。ここからが本番だったな。

 

「後はお前だけだな。ボーデヴィッヒ」

 

「ふんっ‥‥貴様らでは私に勝てんな」

 

「その言葉、後で後悔させてやる!」

 

 ここで第二ラウンドが開始するのであった。

 

 

 




━━デュノア社の件

あれだけでは納得行かないかも知れませんが許してヒヤシンス。まぁ、ある程度は構成済みですけどね。

━━楯無さんの登場

ゴリ押し過ぎぃ!

本当にすみませんでした。登場させないとタグ詐欺になってしまうんでね‥‥。

━━「いくぞボーデヴィッヒ────エネルギーの貯蔵は十分か」「ふん。思い上がったな、雑魚が」

リクエストです。元ネタはFateで

「いくぞ英雄王────武器の貯蔵は十分か」

「ふん。思い上がったな、雑種」

のセリフです。勿論、ラウラは知りません。

━━アベシっ!

ググりましょう。(投げやり)

────


次回で決着する予定です。

それと、ラウラは後々副官からオタク文化を吹き込まれますよね?つまり、オタクの極みを目指す太一とは友人になりますが、かなり相性が良いです。‥‥どうなるか楽しみだなぁ(ゲス顔)



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第29話 ヘンボウ

やっと終わった‥‥(o´Д`)=зフゥ…

初投稿から二ヶ月が経って、お気に入りも400を超えて感謝です。後、いつも誤字報告して下さる方、本当にありがとうございます。

感想、又は他作品アニメネタのリクエストをお待ちしております。


「これで決めてやる!」

 

 学年別トーナメント、Aブロック第1回戦で箒を俺が倒した後、一夏は零落白夜を発動させてボーデヴィッヒへ直進した。

 

「一撃でも触れればシールドエネルギーが消し飛ぶと聞いているが‥‥当たらなければどうということはない」

 

 自覚はないだろうが誰かさんが言うようなセリフで話すボーデヴィッヒ。奴は一夏にAICによる拘束技で何度も襲いかかるが、一夏は急停止、転身、急加速などでなんとかかわした。

 

「ちょこまかと目障りな‥‥」

 

 今度はワイヤーブレードも加わり一夏を狙うが、一夏だけ戦ってる訳では無い。

 

「ほらほら、敵は2人だろ?」

 

 一夏ばかり狙っているボーデヴィッヒにレーザーバルカン砲を連射する。初速が1000m/sで飛ぶレーザーが数発命中した。

 

「くっ‥‥邪魔だ!」

 

 標的を俺に変えてワイヤーブレードがこちらに飛んでくるが、なんとか避ける。ワイヤーブレードをくぐり抜けた一夏はボーデヴィッヒに突撃した。

 

「無駄だ。貴様の攻撃は読めている」

 

「普通に切りかかればな‥‥ならば!」

 

 一夏はそれまで足下に向けていた切っ先を起こし、体の正面に持ってきて、特攻した。

 

「!?」

 

 なるほど腕の軌道を捉えにくいようにしたらしい。

 

「無駄なことを!」

 

 ボーデヴィッヒがAICで一夏の体ごと固定した。

 

「‥‥あぁ、なんだ。忘れたのか?それとも知らないのか?今は────二対一なんだぜ?」

 

「!?」

 

 ボーデヴィッヒが視線を動かしたが、もう遅い。ほぼ零距離まで接近した俺が、120ミリ滑腔砲でボーデヴィッヒの大口径レールカノンへ砲撃する。見事に貫通し、砲身を使い物にならなくした。

 

「くっ‥‥!」

 

 これで確信した。ボーデヴィッヒのAICの欠点は『対象を停止させるには意識の集中をさせないと効果を維持出来ない』ことだ。俺自身も集中しないとビットの動きが鈍くなるのと似ている。現に一夏への拘束は解除済だ。

 

「やれ!一夏!」

 

「おう!」

 

 再度、一夏は零落白夜でボーデヴィッヒを切ろうとする。これなら流石に当たるだろう。

 

「‥‥!」

 

 一撃必殺が命中する寸前。やったか?────

 

 キュゥゥゥゥン‥‥‥‥。

 

「な!?嘘だろぉ!!」

 

「なん・・・だと・・・」

 

 ここにきて、零落白夜のエネルギー刃が音とともに小さくなって消えた。

 

「ふっ‥‥残念だったな」

 

 鼻で笑い、即座にボーデヴィッヒは両手にプラズマ手刀を展開する。

 

「限界までシールドエネルギーを消耗してはもう戦えまい!あと一撃で勝ちだ!」

 

 このままでは一夏がやられてしまう。一夏を助けるため、俺はスラスターの出力を大幅に上げて突撃する。

 

「やらせるかぁぁ!」

 

「邪魔だと言っている!」

 

 ボーデヴィッヒは一夏への攻撃をしながらも、突撃しようとする俺をワイヤーブレードで牽制した。

 

「クソッ!」

 

「太一!くっ────」

 

「墜ちろ!貴様ぁ!」

 

 被弾した俺に気を取られた一夏は、ボーデヴィッヒによる一撃を食らってしまう。守れなかった‥‥。

 

「ぐあっ‥‥!」

 

 ゆっくりと白式から力が消えて、床に落ちた。

 

「は‥‥ははっ!私の勝ちだ!」

 

 高らかに勝利宣言をするボーデヴィッヒ。やはりコイツは馬鹿だな。一体一でもあれを使えば、4人分増えるんだぜ?

 

「いつから『勝ち』だと錯覚していた?」

 

 俺は瞬時加速を使用して、レーザーバルカン砲をボーデヴィッヒに向かって撃つ。数発命中させた。

 

「っ‥‥!だが私の停止結界の前では無力!」

 

 突如としてボーデヴィッヒはAICを起動、俺は体が全く動かなくなるが、これは計画通り(ドヤ顔)。

 

「馬鹿め!」

 

ドカッ!

 

「!?」

 

 いきなり背中から打撃による衝撃を受け、ボーデヴィッヒが確認する。後ろには《雷艦》一機が待機していた。  

 そう、これはさっきまで遠くの方に待機させておいたビットだ。奴の弱点ならこれが効果的で集中力を奪うのに最適だ。

 

「これさえあれば、俺の勝ちゲーだよなぁ?」

 

「‥‥貴様ぁ‥‥!!」

 

 俺はニヤリと笑い、ボーデヴィッヒは俺を睨む。

 

「覚悟しろ。ボーデヴィッヒ!」

 

 俺は全速力でボーデヴィッヒに接近する。相手はAICを使用するが、再度雷艦による打撃で怯む。その瞬間に俺は蹴りを入れ込み────

 

「《雷鉄》!」

 

 ズカンッ!

 

「ぐぅぅっ‥‥!」

 

 蹴りが当たる直前に足裏のパイルバンカーを使用。ボーデヴィッヒは壁に叩きつけられるが、俺の攻撃は終わらない。

 

「全雷艦。出撃!」

 

 4機全ての雷艦がボーデヴィッヒの四肢を壁に押さえつける。これで身動きは取れなくなっただろう。

 

「せい!!」

 

 ボーデヴィッヒの腹部を思いっきり右手で殴り、幻想殺し音がアリーナ内に鳴り響く。あれ、なんか楽しくなってきたぞ?

 

「ぐはっ‥‥!!」

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!」

 

 殴る・蹴る・雷鉄の三連コンボでボーデヴィッヒをフルボッコにする。これで完全勝利かと思ったが‥‥

 

───ボーデヴィッヒに異変が起きた。

 

 

 

 

 

 

 

 

(こんな‥‥こんな奴に負けるのか、私は‥‥!)

 

 確かに相手の力量を見誤った。それは間違えようのないミスだ。しかし、それでも───

 

(まだだ‥‥まだ終わらん!!負けるわけにはいかない‥‥!)

 

 ラウラ・ボーデヴィッヒ。それが私の名前であり、識別上の記号。

 一番最初に付けられた記号は───遺伝子強化試験体C-0037。

 人口合成された遺伝子から作られ、金属の子宮から生まれた。

───暗い。暗い闇の中に私はいた。

 

 ただ戦いのために作られた。

 知っているのはいかにして人間を攻撃するかの知識。分かるのはどうやって敵軍にダメージを与えられるかという戦略。

 私は優秀だった。性能面では、最高レベルを記録した。

 だがある時、世界最強の兵器───ISが現れたことで世界は変わってしまった。その適合性を上げるために行われたもの『ヴォーダン・オージェ』により、異変が生まれたのだ。

 危険性はなく、理論上は不適合も起きない────はず、だった。

 しかし、この行いにより、私の左目が金眼へと変わり、常に稼働状態の制御不能に陥ってしまった。

 

 この事故により私は部隊でもISにおいても後れを取ることとなる。そして、トップから堕落した私を待っていたのは、部隊員からの嘲笑と侮蔑と『出来損ない』の烙印だった。

 

 こんな最悪な暗い闇の世界に私は、初めて光を目にした。それが────織斑千冬との出会いである。

 あの人にISの訓練を教わり、部隊の中で再び最強の頂点に立った。しかし、安堵はなかった。私を疎んでいた部隊員も、もう気にならない。

 それよりもずっと、あの他人に憧れた。その強さに。その凛々しさに。その堂々とした様に。自らを信じる姿に、焦がれた。

 

──ああ、あの人のようになりたい。

 

 だから私はあの人に訊いてみた。

 

「どうしてそこまで強いのですか?どうすれば強くなれますか?」

 

 ここで教官がわずかに笑みを浮かべたのだ。私はその表情に何故か心がちくりとしたのを覚えている。

 

「私には弟がいる」

 

「弟‥‥ですか」

 

「あいつをみると、分かるのさ。強さとは何なのか、その先に何があるかをな」

 

「‥‥よくわかりません」

 

「今はそれでいいさ。そうだな。いつか日本に来ることがあるなら会うといい。‥‥あぁ、だが忠告をしておくぞ。アイツに──── 」

 

(違う。こんな優しい笑みと気恥ずかしそうな表情するのは、私が憧れる人ではない。あなたは強く、凛々しく、堂々としているのがあなたなのに‥‥)

 

 だから───許せない。あの人にあんな表情をさせる者が。あの男の存在を認めない!

 

(敗北させると決めたのだ。あの男を私の力で、完膚無きに叩き伏せると!)

 

 ならば、負けられない。あの男を‥‥私の邪魔をしたあの男も────

 

(力が‥‥欲しい)

 

 そこで、脳に男のような声が聞こえてくる。

 

『────願うか?汝、自らの変革を望むか?より強い力を‥‥欲するか?』

 

 答えは言うまでもない。力があるなら、全てをくれてでも‥‥

 

 最強の力を────私によこせ!

 

 

Damage Level‥‥D.

 

Mind Condition‥‥Uplift.

 

Certification‥‥clear.

 

 

《Valkyrie Trace System》‥‥boot.

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああああああっ!!!」

 

 俺が攻撃をしてる途中、ボーデヴィッヒが突然絶叫を発し、同時にシュヴァルツェア・レーゲンからで電撃が放たれ、俺は間一髪で回避した。

 

「な、何事‥‥───?!」

 

「なっ?!」

 

 俺と一夏は目を疑う。視線の先では、ボーデヴィッヒのISが変形していた。装甲は全てグニャりと溶け、ドロドロの物体となり、ボーデヴィッヒを飲み込んだ。

 

「なんなんだよ、あれ‥‥」

 

 一夏はそう呟く。それには俺も思っている。

 なぜなら、原則、いやISが変形できるわけがないのだ。形状が変わることはあるが、それは「初期操縦者適応」と「形態移行」のみ───のはずだった。

 

 そこに立っていたのは、ボーデヴィッヒのISではなく、黒い全身装甲のISに似たものだった。ボーデヴィッヒの顔すら見えない。俺達より一回り大きなISだ。

 

「《雪片》‥‥!」

 

 一夏がそう言ったので確認すると、そのISには千冬さんがかつて振るっていた刀である。ほぼ本物にしか見えないものだった。その時、一夏は無意識なのか《雪片弐型》を構えた。

 

「──!」

 

 その瞬間、黒いISが一夏に襲いかかる。よくみると千冬さんの太刀筋そのものだった。

 

「ぐぅっ!」

 

 白式の緊急回避でかろうじて避けたが、一夏は腕を抑えていた。よくみると出血しているようだ。これは拙い。

 

「‥‥‥‥それがどうしたぁぁ!!」

 

 急に一夏が叫びだして、黒いISに向かって突撃しようとする。アイツ正気か?!───

 

「馬鹿者!何をしている!死ぬ気か!?」

 

「何やってんだよ!?一夏!」

 

 咄嗟に、箒と俺は一夏を掴んで無理やり後退させた。

 

「離しやがれ!アイツ、ふざけやがって!ぶっ飛ばしてやる!」

 

 久々にみた一夏の怒りだ。こんなの小二の時以来だろうか‥‥。

 

「どけよ!お前ら!邪魔するならお前らも───」

 

ドカッ!っと俺はISの部分解除した右手で一夏の頬を強めに殴った。

 

「おい。いい加減にしろよ」

 

 一夏は俺を殺気を込めてるかのように睨んだが、少し落ち着かせることができた。

 

「なんでキレてんのか説明しろよ‥‥」

 

「アイツ‥‥あれは、千冬姉のデータだ。千冬姉だけのものなんだよ!それを‥‥クソッ!」

 

 確かに千冬さんのものだからキレるのも仕方ない。だが、それを死ぬ気で行動を起こすのは、馬鹿しかいないだろうに。俺は少しだけ呆れてしまう。

 それより、あのISは微動だにしないな‥‥。もしかして、武器や攻撃に対して反応するやつなのだろうか。

 

「お前は‥‥いつも千冬さん千冬さんだな」

 

 箒は一夏に対して、呆れたように、悔しそうに言った。

 

「それだけじゃねぇ。あんな、わけわかんねぇ力に振り回されてるラウラも気に入らねぇ。ISとラウラ、どっちも一発ぶん殴らないと気がすまねぇ」

 

 俺はボーデヴィッヒをボコボコにしてたから別にどうでもいいけどな。

 

「とにかく、俺はアイツをぶん殴る。そのためにまず正気に戻してからだ」

 

「理由はわかった。だが、今のお前に何ができる?白式のシールドエネルギーがない状態でどう戦うんだ?」

 

「くっ‥‥」

 

 俺の意見に一夏は歯を食いしばって黙ってしまう。今の白式には装甲の展開すらできないほどエネルギーがないからだろう。

 

『非常事態発令!トーナメントの全試合は中止!状況レベルをDと認定、鎮圧のため教師部隊を送り込む!来賓、生徒はすぐに避難すること!繰り返す!』

 

「聞いての通り、お前がやらなくても状況は収拾されるだろう!だから───」

 

「だから、無理に危ない場所へ飛び込む必要はない、か?」

 

「‥‥そうだ」

 

 箒が思っていたことを一夏は当てて言う。だが、一夏はそれに───拒否をした。

 

「違うぜ箒。全然違う。俺が『やらなきゃいけない』んじゃないんだよ。これは俺が『やりたいからやる』んだ。他の誰かがどうだとか、知るか!大体、ここで引いちまったらそれは俺じゃねぇよ」

 

 『やりたいからやる』それは前に簪の専用機の件で俺も言ったことだ。だが、それとこれとは全く違う。コイツは死ぬ気で行動しようとしている。なんかアイツと似てるな‥‥。

 

「『自己犠牲野郎』お前にはそのあだ名がピッタリだな」

 

 俺はそんなことを言って、あるアニメを思い出す。

 その主人公の名前は俺と少し同じで『八重樫太一』だ。そいつは誰かのために、誰かの苦しむ姿をみたくないために自分を犠牲にしてでも実行する『やりたいからやる』タイプのキャラクターだ。『八重樫太一』と一夏とは傾向が違うが、死ぬ気で実行するタイプなのは変わらない。

 

「あぁ、自己犠牲だよ!それがどうした何が言いたい?」

 

 どうやら一夏は開き直るつもりらしい。これは呆れるわ。飛んだシスコンだな。これは参る。

 

「正気か?お前には武器が拳しかない状態で奴に立ち向かったら死ぬぞ?それでも行くのか?」

 

「あぁ、それでも俺はやる。絶対にやってやる」

 

「はぁ‥‥‥お前は自己犠牲シスコン野郎にした方がお似合いだろ────ほれ」

 

 俺は、シャルルから教えて貰ったシールドエネルギーを他のISに送る方法を実行する。腰の部分からコードのような物を取り出した。

 普通のISならできないが、このISは衛生兵的なこともできるようになっているらしく、コア・バイパスでエネルギーを移せるとのこと。

 

「これをお前のガントレットにさせばエネルギーを送ることができる」

 

「本当か!?だったら頼むよ!太一」

 

 白式の待機形態のガントレットにコードを差し込みエネルギーを交換させる。

 

「だが、約束しろよ?絶対に負けないとな」

 

「おう。分かってるさ。負けたら男じゃねぇよ」

 

「ほう?なら負けたら明日から女子のスカートを装着して登校な?」(ゲス顔)

 

「うっ‥‥。い、いいぜ?なにせ負けないからな」

 

 昔ながらのノリで軽いジョークを済ませた俺達。これで緊張が少し解れただろう?いつのまにかイライラしてた俺も今は軽くなっている。

 

「完了した」

 

 俺のISが光の粒子となって消えると同時に、一夏は一極限定モードでISを展開した。腕と武器のみである。

 

「い、一夏!」

 

 それまで傍観していた箒が、急に声を出す。その顔はかなり真剣だった。

 

「死ぬな‥‥。絶対に死ぬな!」

 

「何を心配してるんだよ、バカ」

 

「ばっ、バカとは何だ!私はお前が───」

 

「信じろ」

 

「え?」

 

「俺を信じろよ、箒。心配も祈りも不必要だ。ただ、信じていてくれ。必ず勝って帰ってくる」

 

 無駄にカッコイイセリフを言う一夏。俺からすれば恋人同士にみえるな。

 

「よし、行ってくる」

 

「あ、あぁ。勝ってこい、一夏!」

 

「最後に1ついいか?」

 

「なんだ?太一」

 

 この状況なら、一番お似合いのセリフがあったはず、確かそれは一夏も知ってるはずだ。

 

「───そんな装備で大丈夫か?」

 

「ふっ‥‥大丈夫だ、問題ない」

 

 鼻で笑った後、答える一夏。そして、一夏は雪片弐型を構える。

 

「零落白夜───発動」

 

 いつもより細く鋭くなったエネルギーの刃を展開させる。

 それに反応した黒いISが一夏に襲いかかるが───

 

「ただの真似事だ」

 

 そう言って、ギンっ!と一夏は相手の剣を弾く。その隙に頭上に構え、縦に真っ直ぐ相手を断ち切る。

 

「ぎ、ぎ‥‥ガ‥‥‥‥」

 

 ジジっ‥‥と紫電が走り、黒いISが真っ二つに割れる。遠くなので見えなかったが、眼帯の外れたボーデヴィッヒがみえた。一夏は最後に何か呟いてた気がするな。

 

 

 

 

 

 

 




豊富な他作品ネタε= \_○ノヒャッホー!!!

━━当たらなければどうということはない

元ネタはガンダム、シャアのセリフ。前にも使いましたね

━━なん・・・だと・・・

元ネタはBLEACH、前にも使いました。(またかよ!)

━━いつから『勝ち』だと錯覚していた?

元ネタはBLEACH(連続かよ!)

━━オラオラオラオラオラオラオラオラ

ジョジョネタですね。

━━フルボッコ

太一がSM両方対応してしまったかな?(ニッコリ)

━━自己犠牲野郎

ここではココロコネクトが元ネタです。

━━そんな装備で大丈夫か?大丈夫だ、問題ない

ルシフェルとイーノック

━━完


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第30話 ドンカン

あ^〜お気に入りが500件突破しそうじゃ^~

※感想又はリクエスト募集中です。


「う、ぁ‥‥‥‥」

 

 ぼやっとした光が天上から見えるのを感じて、ラウラは目を覚ました。

 

「気がついたか」

 

 その声には聞き慣れた感覚がある。その人は、自らが敬愛してやまない教官こと織斑千冬だ。

 

「私‥‥は‥‥‥?」

 

「全身の無理な負担で筋肉疲労と打撲がある。しばらくは無理をするな。休んでおけ」

 

 千冬はそれとなくはぐらかしたつもりだが、かつての教え子は簡単に誘導されてはくれなかった。

 

「一体‥‥何が起きたのですか‥‥?」

 

 無理をして体を起こすラウラは、全身にくる痛さにその顔を歪める。しかし、瞳だけは真っ直ぐと千冬を見つめていた。治療のため眼帯が外されている左目は、金色に輝いていた。

 

「‥‥一応、重要な案件であり、機密事項なのだがな」

 

 千冬は機密事項であることを沈黙で伝えると、ゆっくりと言葉を紡いだ。

 

「VTシステムは知ってるな?」

 

「はい‥‥正式名称はヴァルキリートレースシステム。過去のモンド・グロッソの部門受賞者の動きを複製するもので、確か‥‥」

 

「そう、IS条約でどの国家や組織、企業においても研究・開発・使用すべてが禁止されている。それがお前のISに組み込まれていた」

 

「‥‥‥‥」

 

「操縦者の精神状態や機体の蓄積ダメージ、そして操縦者の意志‥‥いや、願望か。それらが揃うと発動する仕組みになっていたそうだ。今、学園からドイツ軍に問い合わせ中だ。近々、委員会からの審査が入るだろう」

 

 千冬が話している時、ラウラは強くシーツを握りしめる。その視線はうつむき、眼の下の虚空をさまよっていた。

 

「私が‥‥求めたからですね」

 

 ──あなたに、なることを。

 

 その言葉は口に出さなかったが、千冬は分かっていた。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ!」

 

「は、はい!」

 

 突然、名前を呼ばれてラウラはびっくりしながら顔を上げた。その時に体が痛かったのは言うまでもない。

 

「お前は誰だ?」

 

「わ、私は‥‥。わた‥‥しは‥‥」

 

 出てこない。自分が誰なのか、自分がラウラであることを、今の状態では言えなかった。

 

「誰でもないか。ならばちょうどいい。今日からお前はラウラ・ボーデヴィッヒだ。時間は山ほどあるぞ。3年間はこの学園に在籍せねばならないからな。その後も死ぬまで時間はある。沢山悩めよ、小娘」

 

「あ‥‥‥‥」

 

 千冬の言葉が意外であった。自分のことを励ましてくれると思ってなかったラウラは、何を言えばいいのかわからない。そのまま、ただぽかん、と口を開けていた。

 そんなラウラに、千冬は席を立ち、ラウラのベッドから離れる。もう言うべきことを言ったようで、教師の仕事へと戻るようだった。

 

「あ、それから───」

 

 そして、部屋の扉を開ける前にラウラから背を向けたまま、再び言葉を投げかけた。

 

「お前は私になれないぞ。アイツの姉は、こう見えて心労が絶えないのさ」

 

 おそらくニヤリと笑って言ったのだろう。それが何故かはラウラには理解できた。

 そして、千冬が部屋を出てから数分後、急におかしくなった。

 

「ふ‥‥ふふふ‥‥ははっ」

 

 あぁ、なんてズルい姉弟なのだろう。二人とも言いたいことだけ言って逃げた。

 あそこまで言ってたくせに自分で考えろなのだから、投げやりみたいでズルいことこの上ない。

 

(自分で考え、自分で行動しろ、か‥‥)

 

 笑う度、全身に痛みが走るが、それすらどこか嬉しく感じた。

 完敗だ。けれどそれが今は凄く心地が良い。

 そうラウラ・ボーデヴィッヒは、これからはじまっていくのだから─────。

 

 

 

 

 

 

 

 

『トーナメントは事故により中止となりました。ただし、今後の個人データ指標と関係するため、全ての一回戦は行います。場所と日時の変更は各個人端末で確認────』

 

 誰かが学食のテレビを消す。俺は普通に学園特製味噌ラーメンをすすっている。シャルルは月見うどん、簪は安定のかき揚げうどん、本音は既にデザート、ついでに一夏は海鮮塩ラーメン。ほとんどが麺類な件‥‥。

 余談でシャルルは前まで箸を使うのが慣れてなかったらしいけど、今は普通に使えるようだ。

 

「こりゃ簪とシャルルの予想通りだったな」

 

「そうだねぇ‥‥」

 

「そうだね‥‥」

 

 シャルルと簪は、心做しか虚しそうに見えた。本音は呑気にデザートを頬張っている。

 当事者なのにのんびりしたものだと誰かかは批判されそうだが、ついさっきまで俺と一夏は教師から事情聴取されていたのだ。なんとか食堂終了30分前に終わったのでこうして合流して食べている。

 

「ふう‥‥ごちそうさま。‥‥ん?」

 

 先程まで俺達の食事が終わるのをずっと待っていた女子達が、酷く落ち込んでいる。

 

「‥‥優勝の‥‥チャンスが‥‥消えた‥‥」

 

「そんな‥‥交際‥‥不可能‥‥」

 

「‥‥うわぁぁぁぁんっ!」

 

 大勢の女子が一斉に去っていく。それもそのはず、学園内で変な噂があったらしい。トーナメントで優勝すれば一夏と付き合えるとかなんとかって本音から聞いた。

 

「なんなんだ?」

 

「知らぬ」

 

「さぁ‥‥?」

 

 一夏が知る必要もない話なので、知らんぷりする俺とシャルル。このやり取りが前にもあったような気がするが気のせいだろうか?

 

「‥‥‥‥」

 

 女子が去った後に、1人呆然と立っていた。それは一夏と俺の幼馴染みである箒だった。

 さっきの女子達より落ち込んでいて中身空っぽの状態みたいだが、一夏が箒のそばへ行ったので俺も向かうことにした。

 

「なぁ箒。あの時の約束だが───」

 

「ぴくっ」

 

 ちょっと反応する箒。少し生気が復活したらしい。

 

「付き合ってもいいぞ」

 

「‥‥?」

 

 え?ついに二人とも恋人同士になるのか?それはおめでたい話だ。お祝いに結婚式を‥‥まだ年齢的に無理か。

 

「────。────え?」

 

「だから、付き合ってもいいって‥‥わっ!?」

 

 突然、箒は一夏の締め上げた。一夏が苦しそうにしてるんだけど‥‥。

 

「ほほほ、本当にか?本当に、本当に本当なのだな!?」

 

 何度も本当を繰り返し一夏に訊いてくる箒。落ち着け落ち着け‥‥いや、無理もないか。

 

「お、おう」

 

「な、なぜだ?理由を言ってくれないか‥‥?」

 

 ぱっと一夏を離し、腕を組んで咳払いをする箒。顔が赤くなっている理由がよく分かる。一夏に関しては言うまでもない。

 

「そりゃ幼馴染みの頼みだからな。付き合うさ」

 

「そ、そうか!」

 

「買い物くらい」

 

「‥‥‥‥‥‥」

 

 知ってた。とりあえず箒に確認してみるか。

 

「(なぁ箒、買い物のことじゃないだろ?)」

 

 かなり怖い顔の箒に小声で訊くと、ゆっくりと頷いた。よし殺そう(笑顔)

 

「‥‥だろうと‥‥」

 

「お、おう?」

 

 そこで俺は一夏の脇の下から上に向かって腕を絡ませて押さえ込む。これで一夏は身動きが取れないだろう。

 

「やっちまえ。箒!」

 

「はい!?」

 

「そんなことだろうと思ったわぁぁ!!!」

 

ドゲシッ!!

 

「ぐはぁっ!!」

 

「ふごっ」

 

 腰のひねりを加えた正拳。まるで鈴の衝撃砲を食らったかのようだ。若干、俺にも食らうという始末。痛てぇ‥‥

 

「ふんっ!」

 

 2度目は蹴り攻撃。今度は一夏のみぞおちに当たったらしい。

 

「ぐ、ぐ、ぐ‥‥」

 

 重みのある歩き方で去る箒。一夏は起き上がることもできずに、床でうずくまっていた。

 

「一夏って、わざとなんじゃないかって思うときがあるよね」

 

「それな」

 

「な、なに?どういう意味だ?」

 

「さあね────太一もだけどね‥‥」

 

 最後の方は聞こえなかったし、なんか急に俺をみて視線をぷいっと逸らされたんだけど‥‥。

 それから一夏が復活したのは、10分後だった。

 腹部を押さえながらも一夏は席に戻る。

 

「そういえば、ISに詳しい3人に聞きたいんだが‥‥」

 

「うん、どんなこと?」

 

「あ、うん。何‥‥?」

 

「なんでもどうぞ〜」

 

 そう、ISに詳しい3人とは、シャルル、簪、本音だ。

 本音は整備科志望だし知識なら代表候補生に負けないだろう。

 

「なんていうか、プライベートチャンネルとは違う、ISで会話みたいで‥‥2人だけの空間的なやつなんだが」

 

「‥‥それはIS同士の情報交換ネットワークの影響と言われている、操縦者同士の波長が合うと特殊な相互意識干渉が起こる‥‥みたいなものかな」

 

 最初に説明したのは簪だ。

 

「おぉ、それだ。‥‥でも、波長ねぇ‥‥なんかよくわからんな」

 

「ISはよくわからない現象や機能がたくさんあるよ。作った篠ノ之博士は全機能を公開してない上に失踪中だし、ISが自己進化するように設定してる部分もあるから、本人も把握はできないって言ってたと思う」

 

「束さんらしいな‥‥」

 

「そうだな」

 

 シャルルの説明に俺と一夏は納得する。

 あの人は興味無いことはどうでもいいと思ってるからな‥‥。束さんにとっての身内が要望しないとやってくれなさそう。いや、でもISはさすがにやる気なさそう。

 

「‥‥なぁ一夏、2人だけの空間ってボーデヴィッヒのことか?」

 

「あ、ああ、そうだが‥‥」

 

 ボーデヴィッヒか‥‥あの事件で一夏が偽物を切り裂いたあとに出てきたときは驚いたな。左目が金色だったからな。

【中二病でも恋がしたい!】の小鳥遊六花とか、【僕は友達が少ない】の羽瀬川小鳩とか、【デート・ア・ライブ】の時崎狂三とか、【Another】の見崎鳴とか、【お兄ちゃんだけど愛さえあれば関係ないよね】の二階堂嵐とか色々あるけどオッドアイキャラって萌えるよな。‥‥萌えるよね?

 

「あ、織斑君と城谷上君にデュノア君。ここにいましたか。実は朗報があるんです」

 

「朗報‥‥ですか?」

 

 なんだか凄くニコニコしながらやって来た麻耶先生の言葉に、俺は反応する。

 

「はい!なんとですね。今日から男子の大浴場が使用可能です!」

 

【朗報】IS学園の大浴場に男子生徒が利用可能。

 

「マジすか!」

 

「おお!てっきり来月からになるとばかり」

 

「それがですねー、今日はボイラー点検で生徒が使えない日だったんです。ですが、点検が終わりましたので男子に使ってもらおうと言うことです」

 

 素晴らしい。この学園に入学して二ヶ月半が経ち、やっと風呂に入れるとは最高に嬉しい。いやー、今日はトーナメントで疲れたからな、ゆっくりのんびり風呂に入るか。

 

「ありがとうございます!」

 

 感動のあまり麻耶先生の手を握りしめてしまう一夏。よっぽど風呂に入りたかったんだな。

 

「あ、あのっ、そこまで近づかれると、少し困りますというか、その‥‥」

 

「はい?」

 

「い、いえ!なんでもありません!」

 

 なんだか落ち着かなさそうに視線をさまよわせているし、顔も赤い。まさか、先生も一夏に!?なんてことはないと信じたい。

 

「と、とにかくですね。三人とも早速お風呂へどうぞ。今日の疲れも癒してゆっくりしていってください」

 

「了解です。では早速、入浴に────あ」

 

 俺が返事をして、あることに気づく。麻耶先生は『三人とも』と言っていた。

 ヤバイヤバーイヤバヤバーイ。

 シャルルは現在も男として通している。しかも、未だに一夏にシャルルの正体を知らせていない。学習能力ないな俺は‥‥。

 

「‥‥えーと‥‥」

 

「二人ともどうしたんですか?織斑君が先に行っちゃいますよ?大浴場の鍵は私が持ってますから。では」

 

 いつの間にか、一夏が着替えを取りにいったらしい。麻耶先生は大浴場に向かって去っていく。

 

「どうするの?太一‥‥」

 

 話を聞いていた簪が訊いてくる。

 

「どうしますかなぁ」

 

「と、とりあえず着替えを取りに行こうよ」

 

「おう。なんとかして、この状況を切り抜けようか。簪と本音、それじゃ後ほどアニメみようぜ」

 

「うん。それじゃ今日は【天元突破グレンラガン】でもいい?」

 

 最近では、ロボット系のアニメをみることが好きになった。シャルルもこのようなアニメは結構面白いとか言ってたので好評だった。

 

「おけ、またな」

 

「は〜い」「またね」

 

 俺とシャルルは簪、本音と分かれて部屋に戻りに行った。

 

 

 

 

 

 

 




最近はアニメネタがヤケクソですね。いつもの事ですが。


━━オッドアイキャラ

オッドアイ女キャラって可愛いですよね。特にラウラとか小鳩とか六花とか。その中の2人とかは中二病なんですよね。ラウラに色々やらせたいですね(ゲス顔)

━━天元突破グレンラガン

ギガドリルブレイク!ISでやってみたいですね。でもあれデカすぎですし、ISごと粉々になりますね。

━━ヒロインアニオタ化

もう、この作品は主人公のヒロインをアニメ好きにするのが当たり前になってますね。そのうち楯無さんも‥‥



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第31話 コンヨク

そろそろ2巻が終了\(^o^)/
あと前回の話数が被ってました。すみません。

※感想やリクエストお待ちしております。






「よぉ、遅かったな」

 

「あ、来ましたね。それじゃあどうぞ!」

 

「は、はい‥‥」

 

 幾分テンション高めの麻耶先生に見送られ、脱衣場のドアが閉まる。このとき、一夏は一番テンションが高かった。

 

「「‥‥‥‥」」

 

 どうしようか迷って、俺とシャルルは沈黙のまま、棒立ちしていた。

 

「なぁ、お前らは着替えないのか?」

 

 一夏はワイシャツを脱ぎ捨て、不思議そうに訊いてきた。

 

「お、おう。着替えるぞ」

 

「ぼ、僕は遠慮するから‥‥お先にどうぞ。二人とも疲れてるでしょ?」

 

 さすがに俺や一夏と一緒に大浴場へ入るのは無理だと思ったのか、シャルルは遠慮した。

 

「でも────あ、そうか、俺達と着替えたりするの嫌だったんだよな。すまん」

 

 どうやら、俺が言ったことを覚えていたらしい。

 一夏はシャルルに向かって、頭を下げて謝った。まぁ、そんな理由じゃないんだけどね‥‥。

 

「い、いや‥‥うん、大丈夫だよ」

 

「シャルル、俺ら早めに風呂上がった方がいいか?」

 

 俺はシャルルも風呂に入りたいかも知れないので、一応訊いてみた。

 

「いや、いいよ‥‥僕はシャワーにするから、ゆっくり浸かってよ」

 

「本当にいいのか?」

 

 申し訳なさそうにいう一夏。なんか俺も申し訳なく思ってきた。

 

「大丈夫だってば、一夏」

 

「ならお言葉に甘えて‥‥ほら、太一も行こうぜ」

 

「お、おう」

 

 シャルルが俺達の死角の方へ向かってから、俺と一夏は服ををさっさと脱いで、タオルで貞操を隠しながら大浴場へ入る。

 

 

 

 

 

「うおー!」「うひょー!」

 

 一夏と俺はあまりの広さに感激する。

 大浴場には湯船大が一つにジェットバブルの湯船中が二つ、檜風呂も一つあり、サウナや全方位シャワー、そして、打たせ滝もついている。さすがに水風呂や電気風呂、露天風呂はないか‥‥。

 チラッと一夏の方をみると、ジャバっとかけ湯をしていた。鍛え抜いた腹筋が凄いな羨ましい。

 ちなみに俺は腹筋のフの字も見えない。楯無さんとの特訓やトレーニングで頑張ってるけど、元々運動してない身だからすぐには変わらないだろう。

 

「わはははは!」

 

 興奮して大声を上げている一夏。

 相当、風呂に入りたかったんだろう。一夏は昔から風呂好きだったからな。

 

「さてと、体洗うか」

 

 俺と一夏はボディソープを使用して体を洗う。

 そのとき俺は頭を洗っているときにふと思いつく。

 

(大浴場で女子が使ってるのを想像すると興奮するな‥‥)

 

 たまに温泉とかで男女の大浴場が入れ替わるところがあるけど、ここは違う。ほぼ毎日この学園のJK(+教師陣)が利用してるのだ。さすがに清掃されているので誰かが使った痕跡は残ってないけど、そこに女子がいたのは事実だろう。例えば、簪とか本音とか‥‥。

 おっと、想像しすぎてはあれが上に凸してしまうから辞めよう。

 

「太一こっち行こうぜ!」

 

 ぜ〜‥‥ぜ〜‥‥ぜ〜‥‥

 さすが大浴場、一夏の声がエコーになって響いている。

 ちょうど体を洗い終わった俺と一夏は、湯船大の方へ入る。

 

「あ〜‥‥‥‥生き返る〜‥‥」

 

 る〜‥‥る〜‥‥る〜‥‥

 エコーが美しい。俺と一夏しかいない大浴場でアニメをみたら最高だろうな。「ヘンタイ!ド変態!」とか、くぎゅうボイスで響いたら超幸せ。【これゾン】のセラに「クソ虫」と罵倒されるのも最高だ。そういえば箒と声が似てたような‥‥?

 

「シャルルはなんで恥ずかしがり屋なのかな〜」

 

 湯船肩まで浸かりリラックスしている一夏は、ふと呟き出す。今なら二人だけだから、そろそろ伝えるべきだろう。

 

「あぁ、そのことなんだが一夏」

 

「ん?」

 

「実は‥‥シャルルは女の────」

 

 カラカラカラ‥‥。

 

(え?‥‥今、脱衣場の扉が開いたような‥‥)

 

 なんと中に入ってきたのは、バスタオルを巻いたシャルルだった。

 俺は驚いて声もでないでいる。唯一やった行動は貞操を手で隠したくらいだ。

 

「おお、シャルル。やっと風呂入る気になったのか!」

 

 シャルルが男だと思っている一夏は、シャルルを歓迎する。

 

「‥‥お邪魔します」

 

「おう、入れ───あれ?」

 

 一夏がなにかに気づいたらしい。なんたってシャルルはバスタオル一枚で無理矢理隠しているが、胸の膨らみは隠せないほど大きい。

 

「一夏‥‥ごめんなさい」

 

「へ‥‥?」

 

 突然、目を閉じながら頭を下げて謝るシャルルに、一夏は混乱していた。

 

「す、少し伝えないといけないことがあるんだけど‥‥いいかな?」

 

「‥‥あ、ああ」

 

 何を話すのか察した俺は、一夏に伝える。

 

「おい。重要な話だろうから後ろ向け」

 

「?‥‥お、おう」

 

 俺達がシャルルから背を向けた後、シャルルは話し始める。

 要約すると、自分が女の子であること、デュノア社の件と、その事が何故か解決できたことを話した。どうやらバレてはいないらしい。

 

「そうだったのか‥‥」

 

 大浴場の中心にある大きな湯船に浸かっている一夏はそう応える。チラッと一夏の顔を伺うと、顔が赤くなっていた。ってことは俺も赤くなってるかも知れない。

 

「嘘をついて本当にごめんなさい」

 

 俺達には見えないが、シャルルがタイルの上で頭を下げているのが分かった。

 

「‥‥いや、俺こそすまなかった。あんなにしつこくして‥‥」

 

「大丈夫だよ。気にしてないから」

 

「おう、そうか‥‥なら良かった‥‥」

 

 なんだろう‥‥お互い背を向けて話してるから違和感が半端ない。普通は向かい合って話し合うんだろうけど、この状況では無理がある。

 

「それと、太一に大事な話があるんだけど‥‥その‥‥」

 

「あぁ、お、俺はもう上がるからごゆっくり」

 

 そのまま一夏は、貞操をタオルで隠し、シャルルを見ないように小走りで脱衣場まで戻った。

 

「だ、大事な話なら‥‥部屋に戻っ────」

 

「ぼ、僕が一緒だと、イヤ‥‥?」

 

「いや、マジ最高ッス!」

 

 つい俺のオタク魂を発揮してしまった。

 別に嫌ではないが、アニメでしかないことが起こったら、そりゃ困るだろ。それに一夏がいないから、バスタオルのみの女子と二人きりだぞ。理性がぶっ飛んじまうよ。

 

「じ、じゃあ‥‥入るね‥‥?」

 

「ど、どうぞ‥‥」

 

 ジャバジャバと音を立てながらシャルルは俺に近づいてくる。

 そして、背中越しに裸の女子がいるという状況だ。バスタオル?そんなものお風呂に入れちゃダメだろ(白目)

 

 なんかこういう展開アニメであったよな。なんか阿良々木暦とか、桂木桂馬とか、大島裕樹とか、色々あるけど、そんな感じ。‥‥‥これ何てエロゲ?

 

「その‥‥前に言ってたことなんだけど‥‥」

 

「前って‥‥デュノア社長のことか?」

 

「そ、そう。実は学年別トーナメントが開始される数日前にね。電話があったんだ」

 

 おそらくデュノア社長からの電話だろう。

 

「‥‥それでどうだったんだ?」

 

「『自由に生きろ』だってさ」

 

 あのデュノア社長がそんなこと言うなんて驚いた。やっぱり複雑な事情を抱え込んでいたのだろう。無事解決できてよかったけど、謎が多くて気になってしまう。

 

「そ、そうか‥‥良かったな」

 

「うん‥‥それに」

 

「そ、それに?」

 

「‥‥‥‥」

 

 何故か沈黙される始末。急に話を止めるものだから、お湯のかすかに流れる音しか聞こえない。

 

 ぴちゃーん。

 

「きゃあっ!」

 

「な、なした?!」

 

 いきなりシャルルが可愛いらしい叫び声を上げたので、自分もびっくりした。今のすげぇ萌えた。録音してたら何度も再生しちまうよ────

 

『録音できました』

 

(お、おう?ありがとう)

 

 あれ?別に録画してとは氷歌に伝えてないはずだけどな‥‥。まぁ、便利な機能ですこと。

 

「す、水滴が落ちて‥‥びっくりしただけ」

 

「お、おう」

 

「「‥‥‥‥」」

 

 再び沈黙へと戻る。なんなんだこの状況‥‥。

 

「なぁ、シャル────」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 ピタッと、背中から抱きしめられる。背中に何か柔らかい感触がして、心臓が飛び出すくらい跳ね上がった。

 え?ちょっとまて、あ、あたってるんですけど!?いや、あててんのか?

 

「僕、感謝してるんだよ?太一にここにいろって言われて────」

 

 シャルルは真面目に話をしてると思うけど‥‥

 

「‥‥おう」

 

 ※現在進行形で僕の息子はビンビンでそれどころではありません。

 

「そして、父親から聞いたんだ。城谷上君からデータを受け取ったってね」

 

 あら、やっぱりバレてたらしい。

 

「それで‥‥何のデータをあげたの?」

 

 訊かれたからシャルルにあの天災のことを話しておく────のはまだ早いか。この状況で話すのも違和感がある。

 

「あぁ、‥‥あ、あれは第三世代機のデータらしい。IS関係の知り合いがいるんだよ。あ、専属企業は関係ないからね?‥‥だ、だから俺はほとんど何もしてない」

 

 所々変に噛んでしまう。早く静まれ俺のキングダム!

 

「ううん‥‥太一が言ったから僕はここにいるんだよ?‥‥だから何もしてないことはないよ」

 

「お、おう」

 

「それと‥‥その知り合い?にお礼を────」

 

「それはダメダメ。絶対にダメだ!」

 

 意地でも拒否する俺氏。あの人に会わせると厄介なことになる。会ったら、シャルルに酷い対応しかしないだろうし。

 

「え?」

 

「あ、いや、その‥‥あの知り合いは他人に興味ない人なんだよ‥‥だから相手にしてくれないんだよねぇ」

 

「そ、そうなの‥‥なんか不思議な人だね」

 

「だろ‥‥あはは」

 

 まだ抱きついたままなんですけど。シャルルの肌(OPI)の感触が常にするから、俺の息子もなかなか静まらないし、興奮してのぼせそう。

 

「ねぇ太一、僕のことは二人きりの時、シャルロットって呼んでくれる?」

 

「‥‥シャルロット?」

 

「そう。僕の本当の名前。お母さんがくれたの」

 

 シャルロットか‥‥ヴァルキリードライヴ マーメイドのシャルロットとか? 機巧少女は傷つかないのシャルロット? あと、ゼロの使い魔のシャルロット? それとも、白猫プロジェ(ry

 いや、今は真面目な話だろう‥‥。

 

「おけ───シャルロットな」

 

「ん」

 

 嬉しそうに返事をしたのが、俺には分かった。きっと無邪気で屈託のない笑顔なのだろう。守りたいこの笑顔。

 

「あ、あのーところでですね。シャルロット、ずっとこの体勢なのは、ちょっと色々あれなので‥‥」

 

 よくここまでSAN値がピンチにならずに理性を保てたと思う。いつの間にか股間も正常に戻ったし。

 

「あ、ああっ、うん!ぼ、僕は先に体と髪洗っちゃうね!」

 

 ひょいっと背中が軽くなり、シャルr──シャルロットはジャバジャバと慌てて水音を立てながら、湯船を上がる。

 

「こ、こっち覗いちゃダメだよ?」

 

「なるほど、覗けってことだな!」

 

「うん!──い、いや違うよ!?冗談だよ!」

 

「わかってるって」

 

「‥‥。覗いてもいいけどね‥‥」

 

 最後なんか言ってたみたいだけど、水音のせいでよく聞こえなかった。

 「覗いたらダメ」は覗けってことにしか聞こえないよな。ほら、アマガミの森島先輩みたいな。

 そんなことを考えながら脱衣場に戻り、着替えて部屋に戻った。

 

 その日の夜は、いつもの3人と天元突破グレンラガンをみた。勿論、本音が腕に抱きついてくるのは健在。まぁ、本音の胸が当たることに耐性がついたからSAN値も減らずに済んでいる。なお簪は滅多に抱きつかない。

 そういえば、一夏と箒と俺で遊ぶ約束してたっけ‥‥でも箒の機嫌が悪いからまた今度にするか‥‥。

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日。朝のホームルームのときシャルロットがいなかった。

 食堂で「先に行ってて」と言われてからだが、なんかあったのだろうか。

 なんとなく周りをみるとボーデヴィッヒもいないようだ。多分、怪我や事情聴取でいないだけだろう。

 

「み、皆さん、おはようございます‥‥」

 

 なんだかテンションの低い麻耶先生が教室に入ってきた。

 

「今日は、ですね‥‥皆さんに転校生を紹介します。といっても、皆さんが知ってる方なんですよね‥‥」

 

 また転校生?もう他のクラスに転校させろよ‥‥。ってか皆が知ってる?どういうことだ?

 まさか有名人とかだろうか。俺は有名人(声優)しか興味ないけど。花〇香菜さんとか来たら発狂するね。

 そういえばシャルロットと声が似てる気が‥‥でもまぁ、そんな偶然は良くあることだろう。

 

「では、入ってください」

 

「失礼します」

 

(この声、まさか!本当にざーさん?!)

 

「シャルロット・デュノアです。皆さん、改めて宜しくお願いします」

 

───スカート姿のシャルロットでした(^p^)

 

 まぁ、声でわかったんですけどね。さっきのは冗談です。本当です。それに年齢が(ry

 

「えーと、デュノア君はデュノアさんでした。ということです。はぁぁ‥‥また寮の部屋割りを組み立てないと‥‥」

 

 麻耶先生、いつもありがとうございます。

 

「え?デュノア君は女の子だったの?」

 

「やっぱり美少年じゃなくて美少女だったわけね」

 

「って、城谷上君、同室だから知らないわけ───」

 

「ちょっとまって!昨日は確か、男が大浴場使ったよね!?」

 

 ザワザワと教室が一気に騒がしくなってしまった。確かに同室だけど、週に二、三回2人女子連れ込んでますしおすし。大浴場の件は知らんぷり。

 

 バシーンっ!教室のドアが壊れそうなくらいの勢いで開く。

 

(氷歌。録画開始)

 

『了解です』

 

 とりあえず、何が起こっても証拠として残せるだろう。

 心做しか最近、氷歌の喋り方というか声質がかなり女の子らしくなったような気がする。

 

「一夏ぁっ!!」

 

 激おこプンプン丸、いや、激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリーム状態で鈴が現れた。

 

「死ねえええ!!!」

 

 そうそう。このときのために録画したのだよ。‥‥ってそんな呑気なこと考えてる場合じゃねぇ!?

 

 鈴はフルパワーの衝撃砲を展開、目標は一夏。俺は咄嗟に自己防衛のために《雷艦》を1基展開。

 教室内でぶっぱなす訳ないですよね?!クラスメイトが死んだらどうするんだよ───

 

 ズドドドドオンッ!

 

「ふーっ、ふーっ、ふーっ!」

 

 激怒のあまり肩で息をする鈴。

 

(一夏は大丈夫なのか!?)

 

「‥‥‥‥‥‥」

 

 どうやら一夏は無事だったらしいが、その一夏を助けた人物が意外だった。なんと───ラウラ・ボーデヴィッヒだった。

 その体には『シュヴァルツェア・レーゲン』を纏っている。多分、AICで一夏を助けたのだろう。よくみると大型レールカノンがない。

 

「助かったぜ、サンk───むぐっ!?」

 

「!?」

 

 一夏が礼を言おうとした瞬間、ボーデヴィッヒが一夏の唇を奪った。所謂キスだ‥‥キスだと!?うらやま───けしからん!そんなことは他所でやれ!

 

「!?!?!?」

 

 周りのクラスメイトや鈴、一夏も理解できない状況だった。

 

「お、お前は私の嫁にする!決定事項だ!異論は認めん!」

 

 へ?今なんと?

 

「‥‥嫁?婿じゃなくて?」

 

 嫁───そう、俺には嫁がたくさんいる。

 香風智乃は俺の嫁、筒隠月子は俺の嫁、小野寺小咲は俺の嫁、佐倉千代は俺の嫁、椎名真白は俺の嫁、金色のヤミは俺の嫁、夜刀神十香は俺の嫁、セイバーは俺の嫁、九条カレンは俺の嫁、パピは俺の嫁、エストは俺の嫁、桜井梨穂子は俺の嫁、第六駆逐隊は俺の嫁だ!!

 

 みたいな感じでボーデヴィッヒはそう言ってるのだろう。そうかボーデヴィッヒもオタク用語に目覚めたのかぁ。

 

「日本では気に入った相手を『嫁にする』と言うのが一般的な習わしだと聞いた」

 

 ‥‥間違ってないけど、なんか違う。

 大体、一般ピーポーまでそんなこと言ってたら、完全に日本オワタだろ!

 だが、その人と話がしたい。美味い酒が飲めそうだからな。

 

「アンタねえええええっ!!!」

 

 また鈴が激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリーム状態に逆戻りした。

 ジャギンッ!と再び衝撃砲が開く。

 

 今度は一夏の生命危機を感じ、雷艦4基を展開、一夏の後ろに待機させる。

 

「待て!俺は被害者サイドだ!俺は悪くない!」

 

「アンタが悪いに決まってんでしょうが!全部!アンタが悪い!!」

 

 この子には話が通じないようです。とにかく一夏は絶体絶命の状況下から脱出しようと教室の後ろ側出口から出ようとする。

 

 ピシュンッ────!

 

 今度はセシリアがレーザーを放ったが、雷艦で防ぐ。そのまま一夏は逃げていった。

 

「まぁ太一さん、なんてことをしてくれますの!あと少しで命中しましたのに‥‥」

 

「HAHAHA。一夏には指1本触れさせん」

 

 とりあえず、笑っておく俺氏。だって録画してるんですから(ゲス顔)

 

「太一‥‥なんか顔怖いよ」

 

 シャルロットからそんなこと言われたけど気にしない。そんなときに誰かが現れる。───千冬さんと一夏だ。

 

「貴様ら‥‥教室内でISを展開とはいい度胸してるな?」

 

「「ギクッ」」

 

 後ほど千冬さんに映像を見せて、鈴とセシリアは説教となったそうで。ちなみに俺とボーデヴィッヒは緊急事態扱い。一夏はISの部分展開すらしてない。

 余談でキスシーンを見せた時に、なんか凄い表情だったのは言うまでもない。

 

 

 




ちょいと展開に迷ってしまいました。鈴とセシリアの扱いは原作のせいにして下さい。

※トレス絵追加

━━くぎゅうボイス

くぎゅううう 釘〇理恵です。

━━セラ

これはゾンビですかのセラフィム

特徴が箒と似てるんですよね‥‥。中の人は同じですし、刀を使いますし、ポニテですし‥‥。箒に「秘剣燕返」させたいなぁ。

━━太一はM

両方対応してます。一松タイプです。

━━阿良々木暦、桂木桂馬、大島裕樹

物語シリーズ 、神のみぞ知るセカイ、恋と選挙とチョコレート、うん。全部最高のアニメですな。

━━勝手に録音

なんでだろうね? ♪~(´ε` ;)

━━シャルロット多スギィ!

皆さんは、機巧少女は傷つかないのシャルロット・ブリューとISのシャルロット・デュノア。どちらが好きですか?ちなみに私はどっちm(ry

━━森島先輩

ヒザ裏先輩 まじ最高!いつかヒロインの膝裏をprp(自主規制)

━━花〇香菜

シャルロットと声が似てますよね。なんでだろ(すっとぼけ)

━━激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリーム

おこ の最終レベルみたいなやつ

━━太一の嫁

欲張りなキモヲタですね(白目)。えーと、ごちうさ、変猫、二セコイ、月刊少女野崎くん、さくら荘とペットな彼女、ToLOVEる 、デート・ア・ライブ、Fate、きんモザ、モン娘、精霊使いの剣舞、アマガミと‥‥

多いな‥‥。


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第四章
第32話 セキララ


かなり遅れました。最近、書きたくてもネタが思いつかない事件が多くなってる。

※感想などお待ちしております。


 

 

 「‥‥むーん」

 

 そこは奇妙な部屋だった。

 部屋の中には機械の備品がちらかり、ケーブルが樹海のように広がっている。

 その金属の上を歩いていくのは、機械仕掛けのリスだ。時折床に落ちているボルトなどを、ドングリ感覚でかじっていることがある。

 カラカリカリと小さく響くその音は、今では貧民しか使われないであろうハードディスクの書き込み音にそっくりだった。

 不要な部品かどうかを調べ、その構成素材を分解して吸収、別の形状へと変えるリスは、世界でこれしかないだろう。

 そう、ここは───篠ノ之束の秘密のラボである。

 

「おー、おー」

 

 ちきり、ちきり、ちきちき‥‥。

 

「お〜‥‥」

 

 彼女の姿は異色そのものである。

 空のように青いワンピース。それは『不思議の国のアリス』が着ていたようなもの。頭には白いうさ耳のようなカチューシャを付けている。

 顔は、やはり箒の姉ということもあり、ところどころ似ている。ただし、かなりかけ離れているところは、箒は武道からくる凛々しいツリ目だが、束は不健康で数年ずっとクマがついたままのツリ目である。

 

ちきり、ちきり‥‥。

 

 シルバーの椅子に座り。彼女はある物を作っていた。それは世界一小さいISのプラモデル。ナノ単位まで小さいそれは誰にも真似できないものだろう。

 

「あー‥‥できちゃった」

 

 実物大のISをそのまま小さくしたものみたいであり、完璧といえるほどである。だが彼女にとってはただの暇つぶしにしかなっていない。

 

「‥‥‥暇ぁ」

 

 そのとき、束の携帯から着信がなる。それにかなりワクワクする束。

 理由は簡単、初めて箒からの電話がかかってきたからだ。

 

「やあやあやあ!久しぶりだねぇ、箒ちゃん!ずっとず────っと待ってたよ!」

 

「──。‥‥‥‥姉さん」

 

「うんうん。用件は分かっているよ。欲しいんだよね? 箒ちゃんだけのオンリーワンで代用なきものの専用機が。もちろん用意してあるよ。最高性能にして規格外!そして、《白式》、《獰飆》と並び立てるもの。その機体の名前は‥‥

 

────《紅椿》」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「面白かったよ。ありがとう太一」

 

「好評でなによりだ」

 

 就寝時間を過ぎた寮部屋、太一とシャルロットは同じベッドの上で座っていた。ちょうど青春アニメの最終回を見終わったところである。

 

「でも、良かったの?今日は本音たちも呼ぶ予定じゃなかった?」

 

「別にいいんだよ。たまにはシャルロットだけの方がいいだろ」

 

「え?」

 

「いや、まぁ、アニメみるのも好きな相手と一緒の方がいいだろうし」

 

 そう言った太一の頬はかなり赤くなっている。

 

「‥‥喉が渇いたな。なんか飲み物────」

 

「僕が持ってくるよ」

 

 太一がベッドから立ち上がる前に、シャルロットが行動を起こす。そのまま冷蔵庫の方へ向かった。

 そこから飲み物を取り出してから振り向くと、太一が近くにいた。

 

「ん?どうし───きゃっ」

 

 ドンッと壁ドンされるシャルロット。その顔は太一以上に真っ赤であった。

 そして、太一は顔を近づけてくる。心の準備ができていないシャルロットは慌てて目を閉じる────

 

 

「────あ、れ?」

 

 ぽけーっとした頭で周りを見渡す。

 場所は寮の自室、時刻は朝六時。

 

「‥‥‥‥‥‥」

 

 シャルロットは寝ぼけたままだったが、二回まばたきをしたところでなんとか状況を理解した。

 

「夢‥‥かぁ‥‥」

 

 はぁぁぁ‥‥っと今までにないくらい深いため息が漏れる。

 

(せめて、あと数秒だけでも見ていたら‥‥)

 

 目が覚めても、先程みた夢を忘れないように脳内再生を繰り返す。

 

「‥‥‥‥‥‥」

 

 ぽっ、と顔が赤くなるシャルロット。

 

(僕は何を考えてるんだろうね‥‥)

 

 先月の学年別トーナメント以降、本来の性別へ戻ったシャルロットは、太一と別の部屋へと変わっている。

 あれから一週間半の七月、かれこれ四回目の同じような夢をみている。

 

「あれ?」

 

 隣のベッドにルームメイトがいないし、使った形跡もない。

 

「‥‥まぁいいや」

 

 それよりも夢の続きを少しでも見ようと、また布団を被り目を閉じた。シャルロットはもっとエッチな内容でもいいのに、と思いながら眠りにつく。

 

 

 

‥‥────

 

 

 

「───シャルロット‥‥」

 

「太一‥‥」

 

 思惑通り、続きをみることができたシャルロットは、顔を赤く染めながらも目を閉じ始める。

 そして、二人の顔が近づいてキスをする刹那────

 

ドカンッ!

 

 扉が破壊され、中から一人の女が入ってくる。その目に光はなく、殺気が込められていた。その手にはナイフを持ち構えている。

 

「‥‥死ねぇ!!」

 

 シャルロットに突き刺さる瞬間、太一が己の身体を犠牲にして彼女をかばう。致命傷を負った彼はそのまま倒れ込んでしまう。

 

「い、いやぁ‥‥」

 

 シャルロットはナイフを目の前にして怯え出す。逃げたくても足が全く動かない。震えて動けない。

 

「‥‥‥‥太一は私のモノ」

 

 そして、ナイフを心臓へ貫かれる。最後にみたのは、高笑いをする女性の姿であった────

 

 

 

「────っ!!?」

 

 最悪な結末の夢から覚め、飛び起きるシャルロット。悪夢特有の寒気でゾッとしていて動くことができなかった。

 

(どうしてこうなっちゃうの‥‥)

 

 求めていた結末と方向性がヤンデレによって殺される夢をみた瞬間に、三度寝は絶対にやりたくない、そして、下手に抜け駆けをするのは怖いと思ったシャルロットだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ズバーンズババハーンズドーン。

 

「ん‥‥」

 

 時刻は六時過ぎの頃、俺は朝から『アーマード・コア』をプレイしていた。

 どうせ朝食の時間も近いのでイヤホンではなく、スピーカーに切り替えている。この音で一夏も起きたらしい。

 

「‥‥五月蝿いなぁ‥‥───っ?」

 

 ズドドーン、ギュイーン、ズドドド

 

「ん‥‥‥‥」

 

 ゲームなうの俺でも誰か別の声が聞こえた気がする。まさかと思い、ゲームをポーズ画面にして停止させる。

 がばっ!と一夏が布団をめくる。するとそこには────

 

「ら、ら、ラウラ!?」

 

 軍人娘ことラウラ・ボーデヴィッヒだった。一週間ちょっと前、ラウラは「私の嫁」宣言をしてからかなり色々あった。

 実は朝起きた時にシーツから二人の足が一本ずつ出ていたみたいだけど、その時は寝ぼけていて気づかなかった。

 問題はそこではない。白くてスベスベ柔らかそうな肌が露出している。言ってしまえば「全裸」だ。眼帯とISの待機形態のレッグバンド以外は何も着ていない。

 俺は今、二度目の全裸女子を目撃したことになる。シャルロットは二回ほど見たようなものだが、二回目はバスタオルなのでノーカウント。

 ラウラの控えめな胸と小柄な体格が、かなりの萌え要素となってエンジェルにみえてくる。これはマジ天使。

 ちなみにロリ体型に興奮はするけど、キングダムは平常です。ある部分が見えない限りだけど‥‥。

 

「ん‥‥。なんだ‥‥?朝か‥‥?」

 

「ば、バカ!隠せ!」

 

 一夏は目を塞いでいたが、俺はチラ見していた。ギリギリ重要な部分がみえないのが残念だ。惜しい、かなり惜しい。

 ってか何この可愛い生き物。prprしたい。hshsしたい。映像に残したい。

 

『映像を録画しておきました』

 

(お、おう。さんきゅー)

 

 だから何で命令してすらいないのに勝手に録画してくれるんだ?別にこれが新機能とかなら嬉しいけど、これじゃただの盗撮なんですがそれは‥‥。

 

「おかしなことを言う。夫婦とは包み隠さぬものと聞いたぞ」

 

 間違ってはいないかもしれないが、身体的には隠すことが一般的ではないのだろうか。だがそれでいい。

 

「それはそうかもしれ‥‥って違うわ!服着ろよ。服!」

 

 一夏の混乱はそっちのけ、ラウラは目をこすっていつもの顔立ちになる。

 

「日本ではこういう起こし方が一般的と聞いたぞ」

 

 違いますよラウラさん。全ての日本人夫婦とかがそんな起こし方だったら、日本はオワタですよ。

 例えば、寝ている間に妹に腹を蹴られて起きるとか、戦車の空砲で起こされるとか、アニメでみたものがオタク文化としての起こし方であろう。

 

「なぁ、ラウラ。その知識を教えたのは誰なんだ?」

 

 とりあえず、誰なのかを訊く。これは一番気になっていたことだ。変なことを教えている犯人はおそらくオタク文化を愛しているのだろう。きっと同志なのだろうな。

 

「私が所属している部隊の副官だ」

 

 ある程度隠しながらこちらを向くラウラ。

 

「ほう?その人と連絡先くれないか?俺はオタク文化に詳しいからな」

 

「オタク文化とな?‥‥確かに伊達や酔狂で日本の少女漫画を愛読してない、とか言っていたが‥‥」

 

 あ‥‥絶対、その少女漫画とやらでラウラに教えているのだろう。なぜ少女漫画が一般的だと思えるのだろうか。あくまでオタク文化に過ぎないだろうに。

 

「まぁいい。あとで副官に伝えておくとしよう」

 

「おう。ありがとよ」

 

 これで上手くいけば、連絡先を交換できる上、ラウラに色々教えることができるだろうな(ゲス顔)。

 

「それより、効果はてきめんのようだったな」

 

「?」

 

「目は冷めただろう」

 

「当たり前だろ‥‥」

 

 俺はとっくに目が覚めてますけどね。最近、ルームメイトが一夏になったから安心してギャルゲーもできる。まぁ、一夏に冷たい目で見られるけど気にしない。

 ‥‥ギャルゲーの知識をラウラに教えたら面白そうだな。

 

「しかし、朝食までに少し時間があるな」

 

 ラウラはシーツを身に纏い、一度束ねた後ろ髪を散らす。朝の陽光で銀髪が綺麗だった。

 

「‥‥‥‥」

 

「二人とも、あまりジロジロ見つめるな。私とて恥じらいはある」

 

 君はうそつきだな。だがしかし、うそつきが頬を染めて視線を逸らしたところが、すげぇ可愛いかった。

 

「ラウラ」

 

「なんだ?」

 

「俺は奥ゆかしい女が好きなんだ」

 

 どうやらラウラの積極性を減らしたいがために言った手段だろう。俺は別に構わない(寧ろ歓迎)が、一夏は耐えられないかもな。

 

「ほう」

 

 少し驚いたように目を開け、頷くラウラ。これで一夏の作戦は上手く行ったのか?

 

「だが、それはお前の好みだろう?」

 

「え?」

 

「私は私だ」

 

 どうやら効かなかったようです。

 

「だ、大体、お前が言ったことではないか‥‥」

 

 どうやらフラグを立てる言葉を一夏は言っていたらしいが、当の本人は忘れているみたいだ。

 

「好きなようにしろと言ったくせに‥‥卑怯だぞ‥‥」

 

 いつの間にか、堂々たる態度から上目遣いに変わっているラウラ。

 簪や本音の上目遣いも可愛くて最高だけど、ラウラのも可愛いな。ギャップ萌えってやつだろう(確信)。

 

「か、隠せと言った割にはご執心なようだが?」

 

「なっ‥‥!?バカ!そうじゃない!」

 

「で、では、見たいのか?朝から大胆だな、お前は‥‥」

 

「だぁっ!待て!」

 

 シーツを緩めるラウラに一夏は慌て出す。ラウラからみて右後ろにいた俺は、一瞬隙をみてサッとラウラの胸をみる。みえ、みえ───

 

───見えた。

 

 その瞬間、鼻血が──出ることはなかったが、そのまま俺は床に倒れ込む。とても嬉しい反面、罪悪感が半端なく襲った。キングダムはギリギリ保ってる。

 シャルロットのときは事故だが、今回は故意に起こしている。本当にごめんなさい。でも写真とりたかったなぁ‥‥。

 

『撮影済みですよ』

 

(だから、なんで用意してるんだ!?)

 

『常に映像を記録していますので』

 

(おう、そうか‥‥)

 

 最近はこんな感じだ。さっきもそうだが、俺のISに異変を感じている。喋り方は女の子らしくなるわ、話しかけてもいないのに、まるで心を読まれているような‥‥。何なんだ?

 

 そんなことを考えているうちに、何故かラウラの寝技で一夏がやられているところを目撃した。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 ※安心してください普通の寝技です。

 

 とまあ、こんな感じになっていた。

 

「お前は少し組み技の訓練が必要だな」

 

 まるで言いざまが千冬さんみたいである。さすが教え子と言ったところか。

 

「し、しかし、そうだな‥‥。ね、寝技の訓練なら、私が相手になってやらないでもないが‥‥」

 

 急に頬を赤らめるラウラ。寝技の訓練(意味深)。ベッドの上で運動会なら他所でやってくれ‥‥。

 

「ば、バカ!女がそんなことを口にするな!」

 

「ほう。お前の口から言いたいのだな?よ、よかろう」

 

「違う!ていうかだな、お前は────」

 

コンコン。

 

「い、一夏と太一、入るぞ」

 

あっ...(察し)。これは修羅場になりそうな予感がする。よし知らんぷりしてイヤホンしながら大音量でゲームの続きをやろう。なにせミッションが途中だからな。

 

がちゃり。

 

「一夏。朝食を一緒に食べようと思うのだが────」

 

「げ」

 

 ぴしり。箒の表情と動きが、全身が固まる。

 ドアを開けて入った室内では、全裸のラウラが寝技で一夏を押さえ込むところを目撃してしまった。

 

「一夏ぁっ!なな、何をしているか!この軟弱者!」

 

 チラッと横を目にやると、箒が何故か持っていた木刀で一刀両断の構えをしていた。

 一夏が何か言ってるが、問答無用で箒が振りかかる。

───が、その刃はギリギリの、ところで止まっていた。というより、止められていた。

 

「嫁に怪我をさせられては困るのでな」

 

「くっ、貴様‥‥!」

 

 ISの右腕のみ展開させたラウラは、そこから放たれたAICによって、箒は全く動けない状態となった。

 ギリギリ全裸のラウラがみえない位置なので。少し安心する。

 

「ふう、助かった‥‥。ん?ラウラ、眼帯外したのか」

 

 ラウラの眼帯が外れたと聞いて、俺はイヤホンをゲームを中断、ラウラのもとへ近づく。ラウラはまた胸と下の方を隠していたが、金色に輝く左目がとても綺麗だったのは確認できた。

 

「確かに、かつての私はこの目が嫌いであったが、今はそうでもない」

 

「ほう、そうか、それは何よりだ」

 

「お、お前がきれいだというからだ‥‥」

 

 おっと、またデレデレラウラ、略してデレラウラに戻った。

 ラウラ・ボー()()ッヒでもいいかも‥‥いや、なんか変じゃね?

 照れて視線を逸らすラウラに、心做しかドキドキしてそうな一夏。そのラウラの行動にニヤニヤしている俺。そして、面白くないのは箒である。

 

「ちぇ‥‥」

 

「ちぇ?」

 

「チェストォォォォォ!!!」

 

 ラウラの集中力が緩くなり弱くなったAICを、箒は気合いと馬鹿力で解除する。その刹那、木刀が一夏の方へ振り下ろされる。

 

「どわぁぁっ!?」

 

 ドサっと布団が凹み破れ出す。どんだけ馬鹿力なんだろうか。きっとあれを頭に食らったらお陀仏だろう。

 箒よ‥‥一応、俺は応援してる側なんだから度が過ぎることはやめてくれよ。いつか人を殺してしまうことになるぞ。

 

「一夏!成敗してやる!」

 

「人の嫁に手を出すとは不躾な」

 

 二人が争う中、俺は寮長の麻耶先生に先程のことを伝えた。そして、麻耶先生が飛んでくるまでドタバタ騒ぎは続いたらしい。

 何故「らしい」かって?その後は本音と簪の部屋へ逃げ込んだからだ。シャルロットの部屋でも良かったが、距離が少し遠いのだ。

 ついでに本音の着ぐるみ姿を記録に残しておいた。だって可愛いんだもん。簪も可愛いけど、既に制服だったので残してない。(でもISが勝手に録画している)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




夢の続きはバッドエンド(ゲス顔)
かなり展開に手こずってます。ラウラをどうするか展開に悩みますね‥‥。

━━青春アニメ

なんか感動するアニメ。あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない。とかどうでしょう。‥‥え、ダメ?

━━ヤンデレの正体

誰でもありません。(本音でも簪でもない)
下手に抜け駆けしたらどうなるか思い知らされる夢ですね。別にそうならないと思いますけど。

━━アーマード・コア

ISに入れる要素として人気のゲーム。実は最近、Vを108円で買ってやってたんですよね(そのせいで遅れたとは言えない

ちなみに零落白夜みたいなレーザーブレードがお気に入り。

━━ラウラ呼び

キス事件の後、嫁の親しきものは名前で呼んだ方がいいってラウラに言われ、そうなった。

━━マジ天使

どうでもいいけど、「マジで天使を作ってみた」っていうゲームが面白い。天使を作って嫁にして毎日を過ごすゲームだけど。略してマジ天

━━ロリコン

太一はロリコンはっきりわかんだね。
本音はロリ巨乳の部類です。簪は眼鏡っ娘(ロリとは言えない)。楯無はロリじゃない。

━━起こし方(アニメ)

妹にキスされて起こされるのって最高ッスね。ラウラにやらせたい。

━━ギャルゲー

アマガミはもちろん、メモリーズオフシリーズ、車輪の国、シュタゲとか色々もってる設定

━━挿絵

手の込んだ手抜き。これなら引っかからないだろ色々と。

━━IS

擬人化への道が開かれる。



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第33話 オナマエ

最近、小説の展開が思いつかなくなってきた。三、四日に1話になりそうですね。

※感想などお待ちしております。


 

「‥‥‥‥‥‥」

 

 全裸ウラ事件が終わり、場所は変わって、一年生食堂である。一夏達はトラブルから開放されるまで時間が掛かったため、俺達より遅く朝食を食べている。

 ちなみに一夏グループと俺グループにテーブルを分けていて、右に本音、左に簪、シャルロットは正面だ。

 メニューは俺と一夏が納豆と焼き魚定食(ただし俺は碾き割り一夏は小粒)。シャルロットも焼き魚定食。ラウラはパンとコーンスープにサラダ。箒が煮魚とほうれん草のおひたし。簪はトーストとチキンサラダ。本音は色々なジャムパンとデザート。うん、どれもうまそうだ。特に本音のリンゴゼリーで少し目移りしてしまう。

 

「ほぇ、食べたいの〜?」

 

 俺の視線に気づいた本音が「どうぞ〜」と言って本音が使っていたスプーンでリンゴゼリーを掬って俺の口へ持っていく。え、それ本音が使ってなかった?それだとあれだろ‥‥。

 

「‥‥どうしたの〜?」

 

「い、いや、だってこれじゃ関節キs────」

 

 そんな俺の言葉はスルーされて、そのまま口の中へゼリーが入る。ゼリーのプルプル感が半端ないですな。

 

「うん、美味しい」

 

 俺がそう言うと、本音の頬が少し赤くなっていた。簪はジト目なう。ありがとうございます。我々の業(ry

 俺のファースト関節キ───いや、最初は一夏だった‥‥。それよりご褒美ありがとうございます。できればそのスプーンもprpr(自主規制)。

 

「ほら、お前も欲しいか?」

 

 チラッと一夏方面をみると、ラウラが本音と似たようなことをしていた。

 そこで箒がテーブルをガンと叩いたりしてこわい笑顔だったが、そんなことより飯を食べることにしよう。

 

「‥‥そういえばシャルロット、なんかテンション低そうだね」

 

 俺はふと思ったことを言う。今朝からそうだが、いつもより暗いというか何かに怯えているような、そんなオーラを感じる。気のせいか?

 

「え?う、うん、‥‥その‥‥へ、変な夢を‥‥見ちゃって‥‥」

 

「へぇー変な夢か‥‥どんな夢だ?」

 

「い、いや‥‥その‥‥そ、それは言えないかな‥‥あはは」

 

 なんだろうか、シャルロットは若干歯切れの悪い言葉で受け答えをしている。しかも、心做しか俺から離れているような‥‥?まさか───

 

「シャルロット」

 

「う、うん?」

 

「なんだか俺のこと避けてない?」

 

「そ、そんなことは、ないよ?うん。ないよ?」

 

 本人はそういうが、なんか怪しい。

 一ヶ月ほどルームシェアした仲なので、なんとなくシャルロットがごまかそうとしているときは感覚で理解できるようになっていた。

 

(でも、鬱陶しいだろうから辞めよう。それに誰にだって夢を秘密にしたいことはあるし)

 

 ちなみに俺が最も秘密にしているのは最近みたラビットハウスの夢だ。もう一度みれるのを心待ちにしている。

 その夢とは、ごちうさに登場する店の名前で、たまたまそこに入ると、何故かシャルロットや本音と簪、楯無さんまで居たのを覚えている(というより三十分くらい脳に焼き付けた)。他にも箒やラウラもいたし、セシリアと鈴もいた。一夏?そんなのないよ(チノ風)。

 そんなことより、太陽の光でシャルロットの金髪がとてつもなく輝いている。

 

 

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 ※イラストはイメージです。

 

「た、太一?じーっと僕の方を見てるけど、どうかした?ね、寝癖とかついてる?」

 

「い、いや、ついてないぞ。ただほら、太陽の光で金髪が輝いていたから‥‥綺麗だなと‥‥」

 

「き、綺麗‥‥?」

 

「おうよ。金髪は最高」

 

 褒められることに慣れてないのか、俺の言葉でシャルロットは頬を赤らめる。小豆梓とかヤミとかソーニャとか金髪キャラってなにかと素晴らしい。もち黒髪も最高だけどね!

 

「‥‥そろそろ予鈴がなるよ」

 

 ここで簪が伝えてくれたので、俺達はササッと片付けて教室へ戻り、朝のSHRに間に合った。ナイス簪。

 

「今日は通常授業だったな。IS学園とはいえお前たちの扱いは高校生だ。赤点など取ってくれるなよ」

 

 そう、授業数自体は少ないが、一般科目もIS学園では履修することになっている。中間テストがなく、期末テストがある。ここで赤点を取ってしまえば現実逃避の夏休みが地獄補習へと変わってしまうため、これだけは避けたい。食う寝る遊ぶの三連コンボを求めて頑張らないとな。といってもIS以外殆どわからないからいつもの三人に家庭教師として雇おう。俺は何様のつもりなんだ‥‥。

 

「それと、来週からはじまる校外特別実習期間だが、全員忘れ物などするなよ。三日間学園を離れることになる。自由時間では羽目を外しすぎんようにな」

 

 七月頭に行われる校外学習──所謂、臨海学校だ。二泊三日で一日目は完全自由時間。もちろん近くに広い海があるため、一年女子は先週からテンションが上がりっぱなしである。

 海か‥‥。アニメでは水着イベントで鼻の下を伸ばして興奮していたものだな。それが現実に起こるのだから天国だろう。色々な可愛い女子の水着が早く見たくてたまらんな。

 あぁ、そうだ、水着持ってないから一夏と買いに行こうかな‥‥。

 

「ではSHRを終わる」

 

「あの、織斑先生。今日は山田先生はお休みですか?」

 

 クラスのしっかり者な鷹月静寐さんが質問する。確かに麻耶先生がいない。風邪でも引いたのだろうか?

 

「山田先生は校外学習の現地観察で不在だ。なので代わりに私が山田先生の仕事を担当する」

 

「ええ、山ちゃん一足先に海へ行ったんですか!?いいなー」

 

「私も行きたかったなー。うぅ、待ち遠しい!」

 

「きっと泳いでるんだろうなー」

 

「それなぁ‥‥」

 

(ここIS学園は島だから周りが海なんだけどな‥‥)

 

「あー、鬱陶しいからいちいち騒ぐな。あれは仕事であって、遊びではない」

 

 はーいと皆が返事をする。これはゲームであって遊びではない、的なものが聞こえたのは気のせいか?

 

 

 

 

 

 

  

 放課後、夕暮れ色に染まるアリーナ閉鎖時刻まであと二十分前になった頃、俺は楯無さんといつもの特訓をしていた。

 

「太一君、かなり上達したわね」

 

「そうですか?あざーす」

 

 褒められることに少し嬉しく思う俺。でも楯無さんには勝てない。なんていうかナノマシンがチート並みですわ。クリア・パッションとか鬼畜。

 

「そういえば、もうすぐ臨海学校よね?」

 

 シールドエネルギーが殆ど残ってない状態の俺に楯無さんが訊いてきた。

 

「そうですね。俺、水着持ってないんで週末買いに行くつもりです」

 

「なら私も行こうかしら?」

 

「はい?」

 

 この人は何を言ってるんだろうか。大体、楯無さんは二年生だし買う意味とは。ないですね。

 

「だからぁ、おねーさんも水着を買いに行こうかなーって」

 

「何故です?」

 

「それ訊くー?私も海で泳ぎたいのよ」

 

「いや、あなた二年生でしょうが‥‥」

 

「別にいいでしょ♪じゃあ週末の日曜日にね。それじゃあね〜」

 

 そのまま楯無さんは言い逃げして更衣室まで走って行ってしまった。まぁ、楯無さんの水着姿を拝めるなら本望だし、別にいいか。

 更衣室まで戻った後、タイミングよくスマホから電話がきた。一体誰からだろう。連絡先に追加してないってことはもしかして‥‥。

 

「はい、もしもし」

 

『もしもし、私はドイツ軍特殊部隊シュヴァルツェ・ハーゼ副隊長、クラリッサ・ハルフォーフと申しますが、城谷上 太一殿で間違いないでしょうか?』

 

「はい、そうですよ」

 

 ついにラウラに変なオタク知識を吹き込んでいる犯人から電話がきた。まぁ、自分もそこまでオタク知識がある訳では無いが、それなりに知ってるつもりだ。

 

『隊長から話は聞いております。是非とも協力関係として、隊長を応援しましょう!』

 

「‥‥へ?」

 

『城谷上 太一殿は日本の漫画、アニメ、ゲームなどの知識が豊富と隊長からお聞きしました。私と協力すれば隊長と織斑一夏との関係がより良くなると思いますので』

 

 いや、俺は箒を応援する側なんですがそれは‥‥。でも、ラウラに色々なことをさせたいという願望もあるんだよな。例えば、可愛い妹が起こす朝のお目覚めキスとか(ゲス顔)

 

「そうですね。協力とまでは微妙ですが、アニメ知識などを活用して色々やっていきましょう!」

 

『ありがとうございます。では失礼します』

 

「了解です」

 

 ピッと通話が切れる。クラリッサさんてどんな人なんだろう。身長が俺より高い人って苦手なんだよなぁ‥‥おっとアリーナが閉鎖時刻まで一分もない。急いで部屋に戻ろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 部屋に戻ると、ベッドの上で座っている一夏の他に椅子に座るシャルロットもいた。何の用だろう。

 

「おう、太一。ちょうどいいところに」

 

「ん?」

 

「あ、太一。ちょっと‥‥お、お願いがあるんだけど‥‥」

 

「ん、なんだ?」

 

 なんだかシャルロットがモジモジして両手の指先をつんつんさせている。その仕草が地味に可愛い。

 

「そ、その‥‥し、週末一緒に買い物に行かない?」

 

「買い物?水着のことか」

 

「そ、そう!水着を買いに───」

 

「楯無さんもいるけど‥‥いいか?」

 

「え」

 

 そういった瞬間に、シャルロットは絶望を感じたかのように固まっていた。

 

「ほぼ強制的で買い物に付き合うことになった」

 

「そ、そうなんだ‥‥」

 

 随分としょぼーんとしてるシャルロット。別にそこまで落ち込まなくてもよくね?

 

「ま、まぁ、仕方が無いよね。だ、大丈夫、楯無さんも一緒でも大丈夫だよ」

 

「おう、そうか。じゃあ日曜日な」

 

「う、うん」

 

 若干乗り気ではないようだが、シャルロットは賛成する。

 

「なぁ、二人とも。先月から気になってたことがあるんだが‥‥」

 

「ん?」「なんだ?」

 

 スポーツドリンクを飲み干したあと、疑問に思った一夏は話し出す。

 

「前に‥‥大浴場でシャルロットが女だってことを教えてくれただろ?てっきりしばらく男のフリをするのかと思ってたんだが、翌日普通に女子へ戻ったから、俺にそれを伝える意味ってあったのか?」

 

 確かに一夏の言う通り、少し気になっていた。一夏に伝える必要性とはなんだったのか‥‥。

 

「‥‥そ、それはその‥‥た、太一に用があったからで‥‥」

 

「なるほど、一夏はついでにか」

 

「ち、違うよ!?ちゃんと謝りたくて‥‥」

 

 なんか焦ってるように見えるけど、図星ではないですかね?シャルロットさん。

 

「それは次の日でも良かったんじゃ‥‥」

 

「‥‥ま、まぁ、もうその話は過ぎたことだし、な?」

 

 一夏が軽く笑いながら、話を中断させる。

 

「そ、そうだな。───あっ、そういえば‥‥」

 

「「?」」

 

「一夏が言ってた大浴場のときで『二人きりの時はシャルロットと呼んで』的なこと言われたけど、翌日みんなに知られたから、どうしようかって話」

 

 咄嗟に思い出した疑問にシャルロットのみ反応する。何も知らない一夏は少し驚いていた。

 

「あー、そうだったね‥‥。これじゃ二人きりでも普通の呼び名だね‥‥」

 

 あはは、とシャルロットは苦笑いしながら言う。‥‥どうしますかな。

 

「‥‥なんか複雑な気持ちになるな」

 

 一夏は床の方を向きながら、ボソッと呟く。多分、シャルロットのことを伝えなかったり、同じ友人なのに蚊帳の外みたいで変な気持ちなのだろう。

 

「‥‥そうだ。せっかくの呼び名が普通になっちまったし、なんか別の呼び名でも考えるか?」

 

「えっ。い、いいの?」

 

「シャルロットが良ければな」

 

 そう答えた俺に、シャルロットは慌ててブンブンと縦に首を振る。

 

「う、うんっ。全然大丈夫。せ、せっかくだし、お願いしようかなっ」

 

「じゃあ、何にしようかな‥‥」

 

 シャルロットといえば、シャーロット、それは英語読み。シャルロッテ、それはドイツ語読み。シャア、それはガンダム。ロット、なんか違和感。シャル、なんかデジャヴ感。‥‥ん?なんだか急に心がぴょんぴょんしてきたぞ?おぉ、これだ!

 

「────シャロなんてどうだ?」

 

「シャロ。──うんっ!いいよ!なんか聞いたことあるけど、凄くいいよ!ありがとっ」

 

「そ、そうか。好評でなによりだ」

 

シャルロットもといシャロは「シャロ」と連呼して喜んでいた。ごちうさから付けたのは言うまでもないが、馴染み深いし、好きな名前だから別に大丈夫でしょう。

 

「‥‥なぁ、シャルロット。俺も別の名前を考えてもいいか?」

 

 ずっと黙ってみていた一夏が便乗する。

 

「う、うん。お願いしようかな」

 

「そうだなぁ。シャルなんてどうだ?親しみやすいだろ」

 

「うんっ、凄くいいよ!ありがと」

 

「おう。気に入ってくれて嬉しいよ」

 

 俺が考えた名前と比べると控えめな喜び方のシャロ。常に心がぴょんぴょんしてしまう名前だから最高だな。

 そして、夕食を食べに行くために合流した本音と簪にも買い物に誘われ、結局、四人合同で行動することになった。

 一夏はセシリアや鈴と行くそうだ。箒とラウラに関してはまだわからない。

 

 

 

 

 




楯無さんを登場できたことに喜びを感じる件。でないとタグ詐欺になっちまいますしおすし。クラリッサの展開と喋り方が難しいなぁ。

━━トーナメント後の太一と一夏、箒で遊ぶ約束の意味とは‥‥

 あのときは箒の機嫌が悪くなったので中止させたことにしています。その後、一夏と箒で出かける予定が他の一夏ヒロインの修羅場になってまた中止という設定。

━━ごちうさの夢

夢でもいいから、ごちうさの夢を見たいと思った今日この頃。

━━クラリッサ

これでラウラの件で太一は絡むことになります。やりたい放題やれますね(ゲス顔)

━━シャロ

ごちうさのシャロ。みんなシャルと呼んでいますが、それだとありきたりみたいなデジャヴ簪(感をあえて簪にした)が出てしまうので、太一はシャロ、一夏はシャルに決まりました。

━━


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第34話 オデカケ

やっと書けた‥‥“〇| ̄|_
途中で挿絵ありますが、ほとんどなぞり書きです。


※感想募集中でし

※変更点、《雷焱》の耐熱温度を8000℃へ変える。


「おー、よく晴れてるな」

 

 週末の日曜日、天気は快晴。

 来週からはじまる臨海学校の準備もあって、俺はある女子四人と新型モノレールで街に繰り出している。

 

「お腹空いた〜」

 

 俺の隣で呟いたのは女子四人のうち一人の本音。

 なぜ、隣かというと、女子四人が座席の選び合いをしていたため、ジャンケンでこうなった。相変わらず腕に抱きついている。カップルと誤解されるからやめていただきたい。内心は悪くないけど。

 

「水着買う前になにか昼食を取ろうよ」

 

 そう提案したのは、俺の後ろの席にいる女子二人目、シャルロット────もといシャロ。この名前で呼びはじめてから数日経った今でも慣れていない。それでも、この名前は気に入っているので、そのままにしている。本人も喜んでいるからが一番の理由だが。

 

「目的地の近くには‥‥ファミレスで十分かな?」

 

 そのシャロのとなりにいる女子三人目の簪はそう言う。

 簪にもニックネームをつけようかと思ってたのだが、許可を得る前に却下された。多分、『かんちゃん』と呼ばれるのがバレていたのだろう。本音は『のほほんさん』だと、誰かさんとかぶるので却下。楯無さんは『たっちゃん』と思ったけど、なんか違和感しかなくて辞めた。

 

「私はそこでもいいと思うわ。太一君の奢りなら」

 

 そして、俺の向かいにいる四人目の女子は楯無さんである。──って俺の奢りかよ‥‥。

 

「い、いやおかしいでしょ!」

 

「ふふふっ、冗談よ♪」

 

「デスよねー‥‥」

 

 いつものように楯無さんからいじられる俺氏。この状況が悪くないと感じてしまうのは気のせいだろうか。

 そんなこんなで駅に到着し、ファミレスで食事をして目的地に向かった。四人の服装は───

 

 

【挿絵表示】

 

 

※イラストはイメージです。

 

 服の名前がわからんけど皆可愛いですな。特に本音のトップスがお気に入り。ちなみに俺はシャロからあるものだけでコーディネートしてくれた服装だ。少なくともダサくはないってシャロから言われたけどね‥‥。

 

「よし、ここが水着売り場だな」

 

 俺達は駅前のショッピングモール二階にいる。交通網の中心部でもあるここは電車や地下鉄にバス、タクシーも揃っている。市のどこからでも、どこへでもアクセス可能だ。

 そして、駅舎を含む周りの地下すべてと繋がっている当ショッピングモール『レゾナンス』は食べ物は様々な国のものを完備、衣服も量販店から海外の一流ブランドまで網羅している。これを駅前と言っていいのかは気にしないでおこう。

 ちなみにアニメイトやメロンブックスなど有名どころの店が地味にあるのが最高な点だ。もしかしたら俺の本来の目的はアニメイトかも知れない。

 

「よし、アニメイトに行こう!」

 

「うん、いいね!」

 

「ゴ〜ゴ〜!」

 

「そうね。私もついでにー」

 

 俺に続き、簪、本音、楯無さんと賛成する。水着よりアニメイトなんて俺達はオタクなんだろうな。楯無さん以外。

 

「みんな水着が先じゃないのね‥‥」

 

 ただ一人、シャロは水着が後回しな件に呆れていた。

 アニメイトに入るのは久しぶりである。獰飆の開発者の一人、梶平さんと秋葉原に行ったとき以来だ。

 

「じゃ一時間後に外で集合な」

 

「うんっ」

 

 一度、四人と分かれて行動することにした。所持金は5万円弱あるので、かなりの余裕があるから最高だ。

 

(テンション上がってきたぁぁぁ!)

 

 早速、向かったのはラノベコーナー。【この素晴らしい世界に祝福を】【精霊使いの剣舞】【学戦都市アスタリスク】【妹さえいればいい】【異能バトルは日常系の中で】【落第騎士の英雄譚】の最新巻をとりあえずカゴへ入れる。

 実家にラノベやゲームは大量に保管してある。ラノベに関してはアニメ化されたラノベ作品の五十作ほどは家の棚へ置いてあるが、まだ全ては読んでない。もちろん、半分以上は入学前に貰った金です(ゲス顔)。

 次は、アニメグッズを探しに行く。ちょうど途中で簪に会った。

 

「あ、太一」

 

「おう、簪」

 

 どうやらロボットガールズZコーナーにいるようだ。擬人化ロボが何かと面白いアニメだったりする。

 

「このアクリルキーホルダー可愛い」

 

 簪がロボットガールズZのアクリルキーホルダーを指で摘んで俺に見せてきた。それはグレちゃんキーホルダーである。カゴには他にもキャラクターが沢山入っていた。

 

「へぇー、キーホルダーか、面白そうだな。俺も選ぼーっと」

 

 簪がグレートマジンガーの擬人化なら、俺はゲッタードラゴンの擬人化であるゲッちゃんキーホルダーを取る。

 

「その擬人化なんだ。ゲッターロボ系‥‥す、好き?」

 

 なぜか顔が赤くなる簪。『好き』の言葉が恥ずかしかったのだろうか。別に告白じゃあるまいし気にしなくてもいいよな。

 

「まぁな。深夜アニメが基本だけど、ロボットではゲッターは結構好きだぞ。といっても真ゲッターしかアニメみてないけどね‥‥」

 

 正確には簪から見せられた、である。結果的に面白かったので、別にどうでもいい話であるが。ストナーサンシャインがISで使えたら面白いのに‥‥でも実在したら、IS諸共消滅するからダメだな。

 

「ゲッターは古いからね。仕方ないよ」

 

 簪のことだから、初期のアニメもみているのだろう。さすが、ヒーロー、ロボット系には詳しいやつだな。

 ちなみに俺は深夜アニメ専門だ。本音は日常系、シャロは青春恋愛系の傾向がある。

 

「じゃ他の探すから、後でな」

 

「うん」

 

 簪と分かれて人がかなり多い中、衣服コーナーへ移る。ここはコスプレに似た感じで、色々なアニメの服などが売られている場所だ。今度は本音がそこにいた。手元にはオレンジのフードらしきものを持っていた。

 

「おぉ、やがみ〜ん」

 

「おう‥‥って本音。それはうまるが家でかぶってるアレじゃないか」

 

「そうだよ〜。これを部屋で着てぐ〜たらしたいな〜って」

 

「なるほど、うまるモードがやりたいのか!よし、俺も便乗して買おっと」

 

 俺は本音と同じものを取る。あとで、コーラとポテチも買っておくか。食う寝る遊ぶの三連コンボが楽しみだ。

 次は、青春恋愛系コーナーへ向かう。そこにはシャロがいた。そのカゴには大量のコスプレ衣装があった。もしかして趣味なのかな?

 

「よお、シャロ」

 

「あ、太一。どうかした?」

 

「いや、たまたまここに来ただけだぞ。ほら【となりの怪物くん】のグッズが欲しくてね。ってかそのコスプレ衣装は何?」

 

「あっ、こ、これはね‥‥ラウラに着せようかなと‥‥あはは」

 

 なぜか慌てているシャロ。ラウラに着せると言っていたが、それは是非とも写真を取らせていただきたいくらいみてみたいな。

 

「へーラウラに着せたら、俺にもみせてくれよ」

 

「う、うん。わかったよ」

 

 確かに俺は結構前、コスプレ着てるところが見てみたいと言ったことがあったな。それでシャロはコスプレ衣装を買ってラウラに着せるつもりのだろう。どうせならシャロもコスプレすればいいのにね。あと本音や簪、楯無さんもコスプレ似合うと思う。キャラによっては

 次にデレマスコーナーへ向かう。そこに行く目的はただ一つ───働いたら負けTシャツを買いたいからだ。

 これは双葉 杏の着ているシャツを商品化したもの。これを着てうまるフードを合わせたら完璧なグータラモードが楽しめる。ついでに全員分買っておこう。かぶっても一夏とかにあげればいいし。

 

「あら、太一くん。ここにいたのね」

 

「あ、どうもです」

 

 呑気にそのTシャツを眺めていると、楯無さんがやって来た。楯無さんもコスプレ衣装を購入するつもりらしい。まさか自分で着るつもりじゃないよね?

 

「アニメイトって初めて来たけど、割と良いものがたくさん売ってるものね」

 

「そのコスプレ衣装がですか?」

 

「ええ、そうよ。これをどうするかはご想像にお任せするわ」

 

「は、はあ」

 

 もしかして俺の部屋にコスプレ衣装で来るのではないか、と期待をしておく。楯無さんならやりかねない。なにせ、裸エプロン事件があったからな。

 最後にゲームやアニメのポスターなどを買い尽くし、メロンブックスにある同人誌も購入。これで三万円は使った。

 ポスター(垂れ幕)は部屋に飾りまくって鑑賞する。一夏の許可なんて知らぬ。

 あれから一時間が経ったので俺は集合場所へ戻ることにした。

 

「ふぅ‥‥買った買った」

 

 ちょうど俺が出たときに全員揃っていたため、水着売り場へ向かう。どうやら男性用水着売り場はここから少し歩くようだ。なので一旦ここで四人と別れて、水着を買いに行く。

 俺は適当に、深緑のサーフパンツ的な水着を購入した。

 買い物を済ませて四人のいる女性水着売り場へ向かうと、意外なことにそこには既に皆が立っていた。

 

「あれ、もう買ったのか?」

 

「い、いや‥‥太一に選んで欲しいなぁって思って」

 

「もしかして、他の皆さんも‥‥?」

 

 簪の言葉に俺は他三人に訊くと、うんうんと頷き出した。

 

「そうすか‥‥では実物を見に行きましょう」

 

 行きましょう、とは言ったものの女性専門の水着売り場に入ったことなどない。慣れないこの空間で俺はついつい色々な水着をチラチラと見てしまう。

 

(果たしてどんな水着が来るのだろうか‥‥)

 

 皆、スタイルがよく、顔も可愛い女子なのでワクワクテカテカしてしまう。

 日曜日ということもあって、数名の女性客もいる。向こうも、男性客が入ってきたことに気づいたようだ。

 

「そこのあなた」

 

「へ?」

 

 キョロキョロと周りをみるが、ここには女子四人しかいない。

 

「男のあなたに言ってるのよ。そこの水着、片付けておいて」

 

 と、名前も知らないBBA(30代)からいきなり言われる。ISが普及してから十年で女尊男卑の風潮になっている。どの国でも女性優遇制度が設けられ、男は街をあるいているだけでも、この状況になる。

 ISだけでどうしてこうなった、となるレベルだが、その前に勘違いバカが多すぎる。大して力もないくせに強気になるビッチが調子に乗りすぎてるのだ。

 

「ちょっと何言ってるかわかんないです」

 

 手に耳をあてて煽るように言い放つ。正直、相手するのも面倒くさい。

 

「だから、そこの水着片付けなさいよ!」

 

「だが断る」

 

「ふうん、自分の立場が分かっていないようね」

 

「え、なにそれこわい(棒)」

 

「あなた、頭大丈夫かしら?もしかして日本語通じない?」

 

「ちょっと何言ってるかわかんないです」

 

「ちっ、もういいわ。あなたは精神科の病院でも言った方がいいわよ」

 

「‥‥失せろぅ」

 

 相手がこの店を去った瞬間に言って中指を突き出す。完全勝利(笑)。上手く追い出せてよかった。

 

「あらら、私の出る幕がなかったわね」

 

「まぁ、あのBBAの件は無視して、水着選びましょう」

 

「それもそうね」

 

 というわけで水着を選ぶわけだが、とりあえず一人一人試着して見せることになった。一人目はシャロ。wktk

 

「どう‥‥かな?」

 

「うむ。最高だ」

 

 シャロの水着は、セパレートとワンピースの中間の水着で、上がオレンジ、下が黒とオレンジでパイロンみたいな模様である。なんというかエロスを感じるね。特に谷間が

 

「そ、そう?じゃあ、これにするねっ」

 

 シャロと簪は試着室を交代する。次は簪のようだ。胸は他の四人より控えめな大きさだが、十分大きくスタイルも良い。これは期待せざるを得ない。wktk

 

「どう?」

「おう。最高だ」

 

 簪の水着は、フリルの黒い水着だ。谷間の部分や腰の横部分に白くリボン結びされた部分がとてもキュートなデザインとなっている。

 

「わかった。これにする」

 

 そんでもって次は本音。本音といえばダイナマイトボディで有名だが、どんな水着を選ぶのだろうか。wktk

 

「どぉ〜?」

 

「ふむ。最高────?」

 

(‥‥え、着ぐるみ?)

 

 チラッと周りを見渡すと、なぜか着ぐるみの水着が売られていた。

 そう、本音が今着ているのは黄色い狐みたいな着ぐるみの水着である。これは微妙だが、可愛いから別にいいや。本当はノーマルを期待してたのにね。

 

「‥‥ダメ〜?」

 

「いえ、マジ最高です」

 

「ほんと〜?わ〜いっ」

 

 喜んでくれてなによりです。

 そして、最後は楯無さん。先輩であり、俺より数ミリ低いかの身長でスタイル抜群のこの人は、どんな水着だろうか。wktk

 

「どう?太一くん」

 

「マジ最高ッス」

 

 一見、裸エプロン事件のときに着ていた水色の水着とは違い、青色の水着であった。見た目は変わらないがシンプルイズベストって感じでとても素晴らしい。

 

「あら、褒められちゃった♪」

 

「あはは、まぁ、帰りましょうか───」

 

 ブーーーっとスマホのバイブレーションが鳴る。着信者はクラリッサ氏のようだ。何のようだろう‥‥。

 

「はい、どうしました?」

 

『太一殿、大変です。隊長がスクール水着しか持ってないそうです』

 

「な、なんだってー!?スク水だと?ラウラの見た目がロリ同然の可愛さにスク水とは‥‥それは臨海学校で着るには悪くない!」

 

 箒を応援する側であることを忘れて、俺はラウラの水着に関して興奮しながら語る。控えめな胸こそ、最強であれ!可愛いは正義、貧乳はステータスだ。希少価値だ。

 

『確かにスクール水着は悪くない。悪くはないでしょう。だがしかし、それでは────』

 

「‥‥ゴクリ」

 

『色物の域を出ない!』

 

「そうだった‥‥俺はスク水でも構わないが、一夏には効果はほとんどないでしょう」

 

『そうです。ですから、私に秘策があるので話し合いを致しましょう』

 

「そうですね。では───」

 

 そのあと三十分以上は通話していた。意見を言い合っているうちに、一致した水着に決定したのだ。これなら一夏に効果バツグンだろう(多分)。

 

「太一、電話長すぎ‥‥」

 

「あ、サーセン」

 

 簪に言われて俺は謝る。

 それから学園へ帰還した。今日は楽しかったな。まるで四人同時攻略デートみたいで面白かった。デートかぁ‥‥。デートしてみたいぜ‥‥。

 

 

 

 

 

 




時間の投稿はどうなるかわかりません。失踪はしないですけどね。一週間以内には投稿できるかと‥‥。

━━イラスト

ガチで名前わからないから、ヤケクソで写書きした。反省はしている。後悔はしていない。

━━アニメイト

現実のアニメイトとは違う設定にしています。中身が違うので

━━ロボットガールズZ

アニメは1話しかみてないです。でも面白そう。俺のお気に入りはグレちゃん。

━━うまるフード

本音なら似合うと思ってやってやった。働いたら負けTシャツも混ぜたら、可愛くて死ねる。

━━となりの怪物くん

雫が可愛くて仕方ない。1話みたら止まらなくなる面白い。






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第35話 リョカン

前回の誤字報告ありがとうございます。
今回は水着回ではありません。

※感想募集中


 

 

「───ター‥‥マスター」

 

 目を閉じて暗い視界の中、女の子のような声が聞こえる。一言でいえば、【学戦都市アスタリスク】刀藤綺凛タイプの喋り方だ。

 誰なのかを確認するため、おそるおそる目を開けると声の主の姿はない。見えるのはよくわからない緑の世界というだけ。

 

「後ろです。マスター」

 

 背中から声が聞こえたため、後ろを振り向く。そこには女の子が立っていたのだが、視界がぼやけてよく見えない。

 

「‥‥ここは何処だ?」

 

「ここは‥‥電脳空間とでも言っておきましょうか」

 

 電脳空間。SAOのような世界というのなら話は早いが、そんな世界が実在しているとは思えない。いや、もしかしたら実在するのかもな。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 その少女の姿をみると、エメラルドカラーのロングヘアーで身長はラウラと同じくらい、体型はヒンヌータイプ、服装は深緑の肩出しニットだろう。

 そして、周りは広く上と下には緑のサイバーな壁が見え、遠くの方には薄緑の光が見えていた。

 

「ところで‥‥君は?」

 

 ぼやけた視界で顔が分からないので訊いてみる。

 

「忘れたのですか?────マスターが名前をつけてくれたのに‥‥」

 

 その可愛らしく微妙に小さな声で言われた言葉を聞いた刹那───

 

「───‥‥ん」

 

 目が覚めるといつもの寮部屋にいた。時計を見ると時刻は六時、今日は臨海学校初日だ。俺の服装は働いたら負けTシャツを着ている。

 

(それよりあれは‥‥夢‥‥なのか?)

 

 記憶は鮮明に覚えているが、その光景はぼやけてあまり見えていない。そんな不思議な感覚に茫然自失であった。確かにあの声は似ていた。あの声に‥‥‥‥。

 

 

 

 

 

 

 

 

「わー、海だ〜!」

 

 トンネルを抜けたバスの中でクラスの女子が声を上げる中、本音ははしゃいでいた。

 天候は快晴。陽光を反射する海面は鮮やかで、心地よさそうな潮風にゆっくりと揺らいでいた。

 

「おお、海だ!デュフwwww」

 

「あはは‥‥太一、変に興奮しすぎ」

 

 隣にいるシャロが苦笑いしながら応えてくる。俺は海が見えて興奮してるのではない。海で女子の水着が見れるから興奮しているのだ。所謂、水着回だぞ?これを喜ばないやつはいないだろう(多分)。

 

「拙者、ここに来れたのが夢のようでござる」

 

 約一年ぶりにござるを使った。よっぽど水着を拝みたいのだ。この学園は可愛い女子が多いのでな。

 実際、ISスーツもスク水みたいなものだが、それとこれとでは少し違う。露出部位が多いほど俺は興奮する。

 

 

〇〇 〇〇 セ→セシリア

〇〇 〇〇 夏→一夏

〇〇 セ⃝ラ⃝ 俺→俺

〇〇 夏⃝箒⃝ 箒→箒

〇〇 〇〇 本→本音

〇〇本⃝俺⃝シ⃝ シ→シャルロット

(バス)    ラ→ラウラ

 

※なお簪と鈴は他クラスなのでいない。

 

───といった順番である。

 結局、国家代表である生徒会長かつ暗部の楯無さんは、ロシアへの用事があって来れなかったそう。どの道、来れないだろうけど残念だ。水着姿を拝めると思ったのに‥‥。

 

「ねぇーやがみん。アレ持ってきた〜?」

 

「もちろんだ」

 

「わ〜い。これでぱーてぃができるね〜」

 

 アレとはさっきも言ったとおり、うまるがかぶるアレである。今日一日は自由時間なので、夕食後にフードかぶってのんびりしようという計画だ。

 

「‥‥それよりも本音氏。バスでも抱きつかれるのは恥ずかしいのですがそれは‥‥」

 

 実は現在進行形で本音が腕に抱きついている。なんていうか当たってはいないけど、周りの視線が半端ない。どこまで羞恥心がないんだこの子は‥‥。

 

「そろそろ目的地に着く。全員ちゃんと席に座れ」

 

 千冬さんの言葉で全員が軍人並のスピードで座る。織斑教官マジパネェ。

 数分後、バスは目的地に到着。四台のバスから一学年生徒がわらわらガヤガヤと出てきて整列した。

 

「それでは、ここが今日から三日間お世話になる花月荘だ。全員、従業員の仕事を増やさせないよう注意しろ」

 

「「「よろしくおねがいしまーす」」」

 

 千冬さんがそう言った後、全員で挨拶をする。この旅館は毎年お世話になっているらしく、着物姿の女将さんが丁寧にお辞儀をした。

 

「はい、こちらこそ。今年も皆さん元気があってよろしいですね」

 

 歳は三十代くらいだろうか。三十路だとしても、見た目はそれなりに若くtheお姉さんといった美しい女性に見えた。あのときのBBAと比べたら断然美しい、美しい。大事な事なので2回(ry

 

「あら、こちらが噂の‥‥?」

 

 ふと、一夏と目があっただろう女将が千冬さんに尋ねる。

 

「ええまあ、今年は何故か二人も男子がいるせいで浴場分けが難しくなってしまって申し訳ありません」

 

「いえいえ。そんな。それに、いい男の子じゃありませんか。しっかりしてそうな感じを受けますよ」

 

 一夏ならまだしも俺はしっかりしてませんよ女将さん。特に勉強。なにせヒキニート予備軍ですから(嘘)。

 

「感じがするだけですよ。挨拶をしろ、馬鹿者」

 

 一夏は頭を押さえられるが、間一髪で俺は頭を下げて躱す。千冬さんの攻撃を避けれたとは俺すげぇ。

  

「城谷上 太一です。よろしくお願いします」

 

「お、織斑一夏です。よろしくお願いします」

 

「うふふ、ご丁寧にどうも。清洲景子(きよすけいこ)です」

 

 そう言って再度お辞儀をする清洲さん。やはり大人な女性といえる人だな。

 

「不出来な弟とこの生徒でご迷惑をおかけします」

 

「あらあら。織斑先生ったら、お二人にはずいぶん厳しいんですね」

 

「いつも手を焼かされていますので」

 

 いや、それほど迷惑を掛けてないけどな。きっと一夏好き好き隊のせい。

 

「それじゃあ、皆さん。お部屋の方にどうぞ。海に行かれる場合は別館の方で着替えられるようになっていますから、そちらをご利用になってくださいな。場所が分からないのでしたら従業員に訊いてくださいまし」

 

 一年女子達は、はーいと言って旅館へ向かう。今から自由時間が開始という訳だな。自由時間キタコレ!

 

「ね、ね、ねー。やがみ〜ん」

 

 あぁ、この声は本音か。振り向くと、いつものようにのんびりした速度でこっちに向かってきた。大げさにいえば亀さん並み。

 

「やがみんの部屋ってどこ〜?一覧に表記されてなかったんだけど、知らな〜い?」

 

「知らないんだな、それが」

 

「あー、俺も知らないな。廊下で寝るんじゃないのか?」

 

「なるほど。『床冷てぇ』って言えばいいんだな」

 

 あれは【とある魔術の禁書目録】のステイルが言った迷言だ。廊下で野宿も涼しいから悪くないかもな。

 

「織斑、城谷上。お前らの部屋ならこっちへ来い」

 

 おっと、千冬さんがお呼びのようだ。とりあえず、本音に「またあとでな」と言って別れた。

 

「えーっと、織斑先生。俺達の部屋ってどこになるんですか?」

 

「黙ってついてこい」

 

 一夏がそう訊くが、千冬さんに言論封殺された。ちなみに旅館の中は広くて綺麗である。

 

「ここだ」

 

「え、ここって‥‥」

 

 二つの部屋のドアには『教員室』と書かれている。‥‥?

 

「最初は個室という話だったんだが、それだと確実に就寝時間を無視した女子が押しかけてくるだろうということになってだな」

 

 はぁ、とため息をついて千冬さんが続ける。

 

「結果、私は織斑と同室。城谷上は山田先生と同室になったわけだ。これなら女子も近づこうとはしないだろう」

 

「ふむふむ‥‥」

 

 俺自身も就寝時間に部屋で会おうという約束であったが、こうなるとどうしようもない。それにしても、麻耶先生か‥‥ゴクリ。

 

「一応言っておくが、あくまで私は教員だということを忘れるな」

 

「はい、織斑先生」

 

「それと、城谷上。山田先生に何かしたら覚悟しとけよ?」

 

「イエスマム!」

 

 ビシッと敬礼をする。麻耶先生に変なことするつもりはない(なくはない)けど気をつけよう(確信)。

 

「ふっ、お前は本当にそればかりだな。‥‥だが教員には『はい』と応えろ」

 

「はい‥‥」

 

 千冬さんは最初だけ鼻で笑ってそう言う。昔から軍事的なものが好きなことを知ってるからだろう。

 

「あと、大浴場も使えるが男のお前らは時間交代だ。本来なら男女別で使えるが、一学年の女子は多い。男二人のために全員が窮屈なのはおかしいだろう。よって、一定時間のみ使用可能だ。深夜や早朝に入りたければ、部屋の方を使え」

 

「わかりました」

 

「了解です」

 

 そうして、部屋に入る許可が下りたので麻耶先生も利用する隣の部屋に入る。二人部屋のわりには広く、外側の壁が一面窓となっている。多分窓側で俺が寝るんだろう。そうでないと麻耶先生と隣同士で寝るという素晴らしいイベントとなるからな。あっ、それでもいいかも。

 そして、旅行かばんを部屋に置いて、ノートパソコンが入る程度の森林迷彩柄ショルダーバッグを持ち、一夏と千冬さんの部屋へ向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「‥‥‥‥」」」

 

 俺と一夏で更衣室のある別館へ移動中に箒と出くわした。それよりも、問題は目の前の道端に『ウサミミ』が生えているのだ。ちなみに本物のうさぎの耳ではなく、デジャヴ感が満載のウサミミだ。

 しかも、『引っ張ってください』と露骨に張り紙が貼ってある。‥‥これ絶対、あの天災やん。

 

「なあ、これって────」

 

「知らん。私に訊くな。関係ない」

 

 一夏が天災なのかを訊こうとしたら、箒によって即否定される。となるとこれは篠ノ之束さんで間違いない。

 

「えーと‥‥抜くぞ?」

 

「勝手にしろ。私は知らん」

 

 そう言ってすたすたと箒は去っていった。やはり、箒は束さんを嫌っているのだろう。そりゃ、一夏と離れ離れになる原因を作ったのはあの天災だからな。

 

「‥‥なぁ、お前がやってくれないか?」

 

「だが断る」

 

「‥‥仕方ないか」

 

 若干、嫌々ながらも一夏はウサミミを思いっきり引っ張る。

 すぽんっ。

 

「のわ!?」

 

「ぷっ‥‥」

 

 力を入れすぎてしまったのか反動で一夏は尻餅をついた。なんかじわって吹いたわ。

 

「いてて‥‥」

 

「何をしていますの?」

 

「ああ、セシリアか。いや、今このウサミミを───あ」

 

 尻餅をついたままな一夏の後ろにちょうどセシリアがいたため、振り向いた一夏はスカートの中を見てしまったらしい。

 

「!?一夏さんっ!」

 

 今頃一夏の視線に気づいたセシリアは、サッとスカートを押さえて後ずさる。ここでシャロのパンツ事件がフラッシュバックした。

 

「‥‥で?パンツの色はどうだった?」

 

「えっと、白のレ───って何言わせてんだよ!」

 

「なるほど‥‥ホワイトか」メモメモ

 

「メモるな!」

 

 おっと、ジェスチャーでメモった振りしてたら、セシリアが真っ赤な顔でこちらを見てらっしゃる。

 

「‥‥一夏さん。太一さんにも教えるなんて酷いですわ!」

 

 なぜか俺に非はない模様。でもセシリアさんサーセンした。

 

「い、いや、今のは太一が悪くてだ────」

 

 キィィィィィン‥‥。

 

 あれ?また落下してギリギリ停止するニンジンか?───って、おわっ!

 

 ドカーーーーン!!

 

 今回は落下専門のニンジンだったようだ。おい、人の土地に穴あけんなよ‥‥。

 

「「に、にんじん?」」

 

 何も知らない一夏とセシリアはダブルでそう漏らす。

 

「あっはっは!引っかかったね、いっくん!」

 

 ぱかっと真っ二つに割れたニンジンの中から天災こと篠ノ之束氏が現れた。‥‥前回より登場の仕方がひでぇや。

 

「やーほら、前はステルスロケットで飛んでたけど、その前はミサイルで飛んでたから危うくどこかの偵察機に撃墜されそうになったからね。私は学習する生き物なんだよ。ぶいぶい」

 

 学習とは何だったのか‥‥。前回ロケットで今回墜落しただけだろ。

 ちなみに格好は前にあった時と全く変わっていない。いいかげん別のファッションに変えないのだろうか。

 

「お、お久しぶりです。束さん」

 

「ひと月ぶりです。束さん」

 

「うんうん。たっくんは前に会えたけど、いっくんはおひさだね。本当に久しいね。ところで二人とも。箒ちゃんはどこかな?さっきまで一緒だったよね?トイレ?」

 

「多分、トイレです」

 

 あなたを避けて箒は逃げていきました。なんて軽く言えるわけがないので、曖昧な情報を教えとく。

 

「まぁ、この天才束さんが開発した『箒ちゃん探知機』ですぐ見つかるよ。じゃあねいっくん、たっくん。また後でね!」

 

 ぴゅーんと天災は走り去っていく。探知機ってGPSか何か付けてるんですかね‥‥。ってか最初からそうしろよ。

 

「太一。いつ束さんと会ったんだよ‥‥」

 

「いろいろあったんだよ」

 

「おう‥‥そうか」

 

「お、お二人とも?今の方は一体‥‥」

 

「束さん」

 

「箒の姉さんだ」

 

「え‥‥?ええええっ!?い、今の方が、あの篠ノ之博士ですの?!現在、行方不明で各国が捜索中の、あの!?」

 

「そう、その篠ノ之束さん」

 

 かなり驚いているセシリアに、一夏はそう言う。ちなみにこの臨海学校では『ISの非限定空間における稼働試験』という主題であるそう。そのため、各国から代表候補生宛に新型装備が沢山送られてくる。しかし、一応部外者は参加できないルールになっているため、揚陸艇で装備だけが大量に運ばれてくるらしい。

 しかし、さすが天災。規則無視して侵入してくるんだろうな。

 

「まぁ、いいや。箒に用があるみたいだし、今のところ関係なさそうだし。ところで俺達は海に行くけど、セシリアは?」

 

「え、ええ、わたくしも海へ。そ、そこでですね」

 

 一夏がそう言ったあと、セシリアがこほんこほんと咳払いをする。

 

「せ、背中はサンオイルが濡れませんから、一夏さんにお願いしたいのですけど‥‥よろしくて?」

 

「ん?友達に塗ってもらえばいいじゃないか」

 

「え、ええまあ、そうですけど、できれば‥‥その、一夏さんに‥‥」

 

 セシリアはもじもじしながら落ち着かなそうに視線を泳がせる。もうハッキリ言えばいいのに。

 

「なんなら太一にでも頼めば?」

 

「却下です!」

 

 そく否定されてしまった。そんなに俺に塗られるのが嫌か。いや、それが普通か。でもサンオイルを女子に塗ってみたいものだな‥‥。

 

「冗談冗談。まぁ、それくらいならお安い御用だ」

 

「ほ、本当ですね!?後からやっぱりナシは認めませんわよ!?」

 

 かなり喜んでいるセシリア。よっぽど一夏にサンオイルを塗ってくれることが嬉しいんだな。

 

「わかった。じゃあ、また後でな」

 

「ええっ。また後で!」

 

 セシリアは二回ほど頷いて、別館へ向かって走り出す。こらこら廊下は走っちゃいけませんぞ。

 

「さて、俺らも行くか」

 

「おう、そうだな」

 

 俺の言葉で再び更衣室へと向かうため歩き出す。当然だが男子は別館の更衣室でも一番奥を使えとのこと。

 

(そういえば、途中で女子更衣室が‥‥)

 

 一番奥が男子更衣室ということは。女子更衣室を通るわけで。中は見えないが、中から聞こえる女子のきゃっきゃと騒ぐ声が、俺には新鮮な気分となったり‥‥

 

「わ、ミカってば胸おっきぃー。また大きくなったんじゃないの?」

 

「そ、そんなことないよ───きゃっ、揉まないでよぉっ」

 

「ティナってば水着だいたーん。すごいわね〜」

 

「そう?アメリカでは普通だと思うけど‥‥」

 

(コポォwwこの百合的な感じが堪らねぇぜ)

 

「お前はよく呑気に鼻の下を伸ばすよな‥‥」

 

 どうやら顔に出てたらしい。

 一夏は耐性がついていないようで、これには苦手らしく恥ずかしそうにしていた。

 そうなことを考えていると、あっという間に更衣室へ到着した。

 

 

 

 

 

 




次回は水着回。水着回をいつもより長くさせます。時間稼ぎも兼ねて。

━━夢

本当に夢何でしょうか‥‥?

━━SAOの世界

というより、原作の電脳世界に似てるかも

━━ござる

おそらく主人公はござるを使う機会が増えます。

━━楯無「解せぬ」

仕方ないね。

━━床冷てぇ

ステイルマグヌスのセリフだったはず、ネタとしては有名かな?多分

━━番外編より本編を優先する始末。


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第36話 ラクエン①

挿絵書いてたり、水着回を書いてたら遅れました。

※感想募集中です。


 

 

「よし、行こうぜ太一」

 

 俺と一夏は一分で着替えをして、浜辺へ向かう。ちょうど途中に女子数人と出会った。

 

「あ、織斑君と城谷上君だ」

 

「う、うそっ!わ、私の水着変じゃない!?大丈夫かな!?」

 

「二人ともー、あとでビーチバレーしようよ!」

 

「おう、後でいいぞ」

 

「おー、時間があればいいぜ」

 

 女子一人のお誘いに応じる俺と一夏。その女子数人の水着が素晴らしく、比較的露出度の高いものを着ているため、とても興奮してしまう。いかん、顔に出ちまうな‥‥。

 さて、砂浜へと一歩を踏み出す。───途端、夏の暑さで熱せられた砂によって、足の裏を焼かれた。

 

「あっつ!」

 

「あちちちっ」

 

 どうやら一夏も砂に触れたらしい。

 俺達はつま先立ちで波打ち際へと向かう。ビーチでは既に多くの水着少女たちが溢れていて、のんびりと肌を焼いている子もいればビーチバレーをしている子、もう泳いでいる子もいた。なんというか、美少女率が高いから海の楽園だね。

 

「よっ、と‥‥」

 

「そいっ」

 

 とりあえず準備運動を始める一夏と俺。本当は面倒くさいのだが、元々運動不足なので、俺が泳いで足つって溺れるという死亡フラグを立たせないためにやっている。

 

「い、ち、か〜〜〜〜っ!」

 

 後ろから走ってきた鈴が一夏に飛び乗ってくる。そういえばこいつは水着姿になると一夏に飛び乗る習性があるんだったな。まるで猫みたいだ。

 ちなみに着ているのはスポーティーなタンキニタイプ。オレンジと白のストライプで、へそが出ているやつ。なんだかトド松みたいにへそのしわフェチになりそう。いや、ならねえか。

 

「あんたたち真面目ねぇ。一生懸命体操しちゃって。ほら終わったんなら泳ぐわよ」

 

「おいおい、お前もちゃんと準備運動しろ。溺れても知らねえぞ」

 

「あたしが溺れたことなんかないわよ。前世は人魚ね、多分」

 

 二人の会話を聞いてるとき、鈴が一夏の体をひょいと駆け上がって肩車の体勢になる。これじゃ、前世=猿だね。いや、可哀想だから前世=猫にしておこう。

 

「おぉ、高い高い。遠くまで良く見えるわあ。これなら監視塔になれるわね、一夏」

 

「なるほど‥‥───って監視員じゃなくて監視塔かよ!」

 

「いいじゃん。人の役に立つでしょうし」

 

「誰が乗るんだよ‥‥」

 

「あっ、あっ、ああ!?な、何をしていますの!?」

 

 ここでセシリアがやってきた。手には簡易ビーチパラソルとシート、そしてサンオイルを装備している。

 こちらは鮮やかなブルーのビキニ。腰に巻かれたパレオが格好いい。ガン見はしてないが、美しいモデルみたいに見える。というかモデルにしか見えない。

 

「肩車よ。または移動監視塔ごっこ」

 

「ごっこかよ」

 

「そりゃそうでしょ。あたし、ライフセーバーの資格とか持ってないし」

 

「あーなるほど」

 

「でしょ?まぁ、溺れてる子がいたら助けるけどね」

 

「わ、わたくしを無視しないで頂けます!?」

 

 そこから鈴とセシリアの揉め事?が始まった。すると、周りから声がザワザワと聞こえてくる。

 

「なになに?何かあったの?」

 

「って、あっ!織斑君が肩車してる!」

 

「いいなぁっ、いいなぁー!」

 

「きっと交代制ね」

 

「そして早い者勝ちだわ!」

 

 騒ぎを聞きつけた女子たちが何かを勘違いしたのか、一夏に肩車をして貰おうと詰めかけてくる。

 

「やれやれ‥‥一夏は人気者────」

 

「やーがみ〜〜〜んっ!」

 

「ん?────うおっ」

 

 突然ノロノロと走ってきた本音が後ろから飛び乗って、肩車状態になった。おそらく一夏が鈴に風車をしていたところを見たり聞いたりして駆けつけたのだろう。一瞬だけ当たった胸に興奮してしまったが、この状況に耐性が付いているので股間は平常である。

 言うまでもないが、本音の水着は黄色い着ぐるみ仕様。狐のような外見と頭には狐耳が付いている。なんというか、いつもの寝巻き姿の美少女である。

 

「おー、高〜い」

 

「お、おう。そうかぁ‥楽しそうで何より‥‥だな」

 

 ニコニコと微笑んでいるのだろう本音。すみませんがぶっちゃけ肩が辛いです。まぁ本音の裸体って見たことないけど、私服(まとも)なときは太って見えないから軽い方だろう。それでも筋力が低い俺には耐久戦となっている。あ、シャロの裸を思い出してしまった。

 

「あの二人、なんか和むわね」

 

「確かに、仲のいい兄妹みたい」

 

「布仏さん可愛いわー!」

 

「でもあの子のアレ、水着なの?」

 

「そうらしいよー」

 

 数メートル離れたところにいる女子達からそんな言葉が聞こえたのでチラッと目を傾ける。そういえば兄妹みたいと言っていたな?本音が妹か‥‥悪くないというか、寧ろ光栄だ。うまるみたいだし、可愛いし。本音は俺の妹、異論は認めない。だが俺の妹がこんなに可愛いわけがないってか?

 

「し、してもらいますっ!一夏さん、さっそくサンオイルを塗ってください!」

 

 本音を乗せた肩車状態のままグルグルと辺りを歩いているとき、急にセシリアが大きな声でそう言い出した。

 

「「「「え!?」」」」

 

 その周りにいた女子が声を揃える。皆の目が光っているのは気のせいだろうか。

 

「ちょっとサンオイル取ってくるー!」

 

「私はシートを持ってくる!」

 

「うちはパラソル!」

 

「私はサンオイル落としてくるよ!」

 

 と言って、女子達が全力で走り去っていく。最後の人、そこまでして一夏に塗って欲しいのかよ‥‥。

 一方では、既にセシリアが一夏にサンオイルを塗ってもらおうと準備していた。

 

 つんつん。

 

「なんだ?」

 

 背中から誰がの指らしきものから触れられたので後ろを振り向く。そこには、あのとき買っていた黒のフリル水着を着用している簪がいた。

 

「サンオイル、塗って欲しい‥‥」

 

「へ?サンオイルを塗れって?」

 

「うん。太一にしてもらいたいから」

 

「ほう?俺のプロ並みのテクニックで塗れと?」

 

 本音を肩に乗せたまま、両手両指をクネクネと気持ち悪いくらい交互に動かす。俺は変態、はっかりわかんだね。

 

「う、うん。太一ならいいよ」

 

「お、おう」

 

 冗談で言ったつもりが、普通にOKを貰ってしまった。女の子の肌に触れるなんて手を繋いだこと以外なかった俺が、簪にサンオイルを塗るというボディタッチができるとは素晴らしい。

 

「本音。そろそろ降りてくれ!」

 

「は〜い───ふみゃっ」

 

 本音は肩車の状態から飛び降りるが、上手く着地できずに尻餅をつく。その水着動きにくいだろ‥‥。

 

「よし、やるか‥‥」

 

 いつの間にか簪はシートの上でうつ伏せになっていて、自分の後ろの紐を解く。近くにセシリアも同じように実行していた。‥‥ゴクリ。

 

「いつでもどうぞ、太一」

 

「お、おう‥‥」

 

 簪の体に潰されてむにゅりと形を歪めたoppaiは、セシリアと比べるとやや控えめだが、簪は胸がC以上なのでセクシーという言葉が似合っている。‥‥下手に妄想すると股間から警報がなるからやめるか‥‥。

 

「よ、よし‥‥や、やるぞ?────いや、待て」

 

 とその前にサンオイルを手で温める。一夏方面からセシリアの「ひゃっ!?冷たっ」という悲鳴があったからだ。

 

「よし、い、いくぞ?やるぞ?やってやるぞ?」

 

 こういうときに限ってヘタレモードと化する俺氏。一方でセシリアのところは既に一夏が塗り始めている。だって女の子の肌をスベスベできるんだぜ?嬉しいこと極まりない。

 

「まだ‥‥?」

 

「い、いや、やるよ!」

 

「そう‥‥」

 

 大きく深呼吸をしてゆっくりと簪の肌に両手を近づける。ペタっと軽く音がした。

 

(こ、これが簪の肌‥‥スベスベしてて柔らかい。‥‥なんか楽しくなってきた)

 

「わぁー、気持ちよさそ〜」

 

 この光景を見ていた本音が羨ましそうに言う。本音にもサンオイルを塗ってやりたいところだが、着ぐるみ型水着にそれは必要ないだろ。紫外線ほとんど当たらないだろうし。

 他にも数人の女子が俺達の方を見ている。といってもこちらは二、三人で一夏側は十数人だ。

 

「もういいよ。ありがとう」

 

「おうよ」

 

 こうしてサンオイルを塗り終わった。サンオイルなので簪は海に入るつもりはないのだろう。訊くとラノベをゆっくりと読みたいらしい。俺も午後からのんびりしようかな。

 途中でセシリアの悲鳴が聞こえたり、一夏が謝っていたり、鈴と一夏が海までトンズラしてたりしていた。何かハプニングでもあったのか?

 

「太一!あんたも来なさい!」

 

「はいよー」

 

 大きな声で鈴から呼ばれたのでそっちへ向かう。話を聞くと、どうやら向こうのブイまで競争するらしい。負けた人は駅前の『@クルーズ』のパフェを鈴に奢るとのこと。

 

「よーい‥‥ド〜ンっ!」

 

 本音が腕を上げた合図でいきなり水泳レースが始まる。よく考えたら俺は運動音痴だったので、こいつらには勝てないと確信する。既に数メートル離されてるし‥‥。

 ちなみにあの店で一番安いパフェで1800円。‥‥冗談じゃない!

 

「うおおおおおおっ!」

 

 ヤケクソで泳いでいるとき、目の前にいたはずの鈴がいきなり消えた。

 

「‥‥あ、足が!‥‥」

 

 ジャバジャバと腕をばたつかせて言う鈴。そのまま鈴は沈んでしまい、これは拙いと思ったが、一夏が救出して鈴の無事を確認して浜辺へ戻って行った。これはAnotherなら死んでた。

 ほとんど息切れしている俺が急いで戻るのもあれなので、ゆっくりと平泳ぎで向かう。

 

「ねー、リンリン大丈夫かな〜‥‥?」

 

 俺が浜辺へついたときに本音からそう訊かれる。その目は相当心配そうであった。

 

「大丈夫だってよ」

 

「良かった〜」

 

 本音はその報告でにっこりと笑って喜ぶ。守りたいこの笑顔。そしてぐう天使。

 それから、本音は一度、のんびりとパラソルの下で本を読む簪のところへ行った。

 

「あ、太一。ここにいたんだ」

 

 ふと、声に呼ばれて振り向くと、そこにはシャロと────

 

「なんだ?そのミイラみたいな物体は」

 

 細長いバスタオルを全身に巻き付け、頭から銀色の髪がツインテールとしてはみ出ている。あっ…(察し)

 

「それより、一夏は‥‥いた。一夏〜!」

 

「どうしたー?シャル」スタスタ

 

 別の女子と話していた一夏が、シャロに呼ばれてこちらに来た。一夏もこのバスタオルちゃんに驚いている。

 

「ほーら、出てきなって、大丈夫だから」

 

「だ、だ、大丈夫かどうかは私が決める‥‥」

 

 この声は確実にラウラである。どこかのアニメキャラの声に似ているが、たまたまだろう。そのせいで紛らわしいことが良くある。

 

「せっかく水着に着替えたんだよ?一夏に見てもらわないと」

 

「ま、待て。私にも心の準備というものがだな‥‥」

 

「もー。さっきから全然出てこないじゃない。僕も少し手伝ったんだし、見る権利くらい‥‥ねえ‥‥?」

 

 そういえばラウラとシャロはルームメイトになったらしい。先月まではお互い険悪なムードだったが、今は親友並みに仲が良いそうだ。

 ちなみに最近シャロが買ったコスプレをラウラに着せたいと迫っているが、何度も拒否られているそう。ラウラにはゴスロリでもいいんじゃないかな。でも俺ならアニメの銀髪キャラコスプレさせるけどね。例えば、これゾンのユークリウッド・ヘルサイズとか、這いよれ! ニャル子さんのニャル子とか、ストライクウィッチーズのサーニャとか、魔法少女リリカルなのはのチンクとか。

 

「よし、シャロ。ラウラが出てこないから本音と一夏も連れて遊ぼうよ」

 

「うん、そうしよ。一夏も行こっ」

 

 言うなり、シャロは俺の手をとる。そのまま腕を絡ませて、一夏には手を繋ぎ、波打ち際へと向かう。

 

「ま、待て!私も‥‥────ええい、脱げばいいのだろう、脱げば!」

 

 ばばっとバスタオル数枚を放り投げ、水着姿のラウラが現れる。

 

「わ、笑いたければ笑うがいい」

 

 そこには俺とクラリッサの激論の末の水着を選んだものを着ているラウラの姿があった。

 その水着は黒でレースをふんだんにあしらったもの、なんとなく大人の下着みたいにも見える。さらにいつものロング銀髪ではなく、アップのツインテール仕様にされていた。自分も協力して決めたものだが────

 

(可愛い‥‥)

 

 その一言しかなかった。もちろん、シャロや簪、本音や一夏愛し隊メンバーも可愛いのだが、普段の姿からのギャップというものだ。ギャップ萌え万歳!

 

「一夏、おかしなところなんてないよね?」

 

「お、おう。ちょっと驚いたけど、似合ってるし、可愛いと思うぞ」

 

「なっ‥‥か、可愛い?」

 

 一夏の言葉で今までにないくらい真っ赤な顔になるラウラ。うん、可愛い。

 

「おーい、二人ともー!」

 

「さっきの約束!ビーチバレーしようよー」

 

「わー、みんなで対戦〜。ばきゅんばきゅーん」

 

 さっき約束した女子(谷本さん)と、その友達と、本音だった。んー、あの人クラスメイトなんだけど、名前が思い出せない‥‥。誰だっけ?

 

「チーム分けはどうする?」

 

「私はやがみんとがいい〜」

 

「僕も太一とがいいな」

 

 二人はそういうが、俺が足でまといにならないか心配になる。バレーボールは得意だからなんとかなりそう。

 

「なら私たちは織斑君とボーデウィッヒさんも入れて四人ね」

 

「こっちにはゲストとして簪を呼ぶか」

 

 というわけで本音が簪を連れてきた。簪は微妙に乗り気ではないのだが、そこらへんは許してヒヤシンス。

 

「ところで本音。その水着でやるのか?動きにくそうだけど」

 

「んー、確かにそうかもね〜。なら脱いじゃお〜」

 

「ファッ!?待て待て!ここで脱ぐのは────」

 

 俺の言い分など聞かずに本音は着ぐるみ水着をすぽんっと脱ぐ。思わず尻餅をつき、最初は目を手で隠したが、好奇心でチラッとみると予想外のものであった。

 

「WOW‥‥」

 

 たゆんたゆんな胸とスタイルの良さにシンプルな黄色いビキニが合わさってかなり、いや最高に可愛いかった。しかもセクシーポーズらしきことをしてくるのである。

 

 

【挿絵表示】

 

 

※太一視点

 

「すげぇ似合ってるぞ。可愛いですな」

 

「にひひー、ありがと〜」

 

 ぽわわ〜っと頬を赤くするも微笑む本音。つい可愛いと言ってしまったが、これは紛れもない本心だ。もちろん、他の子にも言えるが‥‥

 

「私には言ってくれないの‥‥?」

 

「僕にも言って欲しいなぁ‥‥」

 

 約二名は羨ましいようです。そこまで男の俺に言ってもらいたいのだろうか。

 

「簪もシャロもすげえ可愛いって!自身持ちなされ」

 

「そ、そうなの?‥‥ありがとう」

 

「ほ、本当?ありがとっ」

 

 簪とシャロも同じように顔を赤くする。言ってて自分は恥ずかしくなってしまう。やっぱり慣れないことはするもんじゃないな。

 

「んじゃ、ルールは適当に、タッチは三回まで、スパイク連発禁止、十点先取で1セットね」

 

「おう、じゃあ、一夏チームのサーブで」

 

「ふっふっふ、七月のサマーデビルと呼ばれたこの私の実力をみよ!」

 

 谷本さんの素晴らしいジャンピングサーブで試合が始まる。

 最初は俺の方にボールが飛んできた。

 

「任せろー!」

 

 俺がそのボールを受け、上に高く上げる。任せろ、だなんてAnotherなら死んでた。

 

「今度は私!」

 

 次は簪がトスをする。簪も運動はあまり得意ではないらしいが、それでも上手いトスだった。

 

「それ!」

 

 とシャロは言いながら、相手のコートへスパイクを決める。かなり美しいスパイクである。

 

「行ったぞ、ラウラ!」

 

 一夏か叫んで指示をするが、本人は気づいていない。

 

「か、可愛い‥‥私が‥‥か────むぅ!?」

 

 ラウラの顔面にボールが直撃ヘッドショット。なんかデジャヴ感‥‥あぁ、ごちうさのココアみたいだな。

 

「だ、大丈夫か?」

 

「ラウラ、どうしたの?」

 

「か、かわ、か可愛いと‥‥言われると‥‥私は‥‥。うぅっ」

 

 俺達が駆け寄ったあと、一夏とシャロが訊き、一夏と目が合ってボッと顔を赤くするラウラ。それから、とある効果音が似合うくらい早いスピードで海の方まで逃げてしまった。

 

「‥‥まぁ、続けるか。ラウラの様子はあとで見とくよ」

 

「さんせーい」

 

 そうして数の上では三体四なのだが、本音の分がマイナスに近く、俺と簪を合わせて一人分みたいなものなので三体二のバレーが続いた。

 

「そーれっ!」

 

「とぅっ!」

 

「でやっ!」

 

「ほいっ!」

 

「あわあわ‥‥ふみゅっ!」

 

「それっ!」

 

(‥‥うむ。乳揺れ万歳!)

 

 さっきから胸ばかり凝視している俺。いつしかボールと胸の見分けもつかなくなってしまったのだろうか。実際、レシーブなどを失敗するのはこれが理由だったりする。

 

「太一、ボール!」

 

「‥‥え?────ウボァッ!?」

 

 簪に指示されるが時すでに遅し、ラウラのように顔面───ではなく額に直撃した。くっ‥‥胸ばかりみるからこうなるのかっ!

 

「もー、太一までどうしたの?」

 

「ナ、ナンデモナイヨ」

 

 シャロに心配までされてしまった。

 女子の体(胸もそうだが手や髪、脇、太ももなども含む)を追う視線がバレたと思って、つい固まりながら片言で話してしまう。

 そんな俺の反応をみて、おかしそうにシャロが微笑む。

 

「くすっ。棒読みなんて変な太一」

 

「ねぇー、さっきはどこを見てたの〜?」

 

「い、いや、そ、それはだな‥‥」

 

 本音にそう訊かれて焦る俺。別のボールを見ていたのは確かであるが、「胸を見てました(真顔)」なんて言ったら、変態王子の称号を得てしまう。横寺陽人になっちゃうよ。

 

「‥‥ま、まぁ、そろそろ昼飯の時間だろ。飯食いに行こうぜ」

 

「なんか誤魔化した気がするけど‥‥いっか」

 

「私も食べる〜。それとやがみんとおりむーの部屋は何処になったの〜?」

 

「あーそれ、僕も聞きたいな」

 

「私も私もー」

 

「‥‥えーと、俺が織斑先生の部屋だぞ」

 

 それまでワクテカ状態だった女子一同がぴしっと凍りついた。そりゃそうなるか‥‥。

 

「でも、太一なら山田先生の部屋だったな」

 

「そうね‥‥その部屋に織斑君が来てくれればいいか!」

 

「だね!わざわざ鬼の寝床に入らなくても────」

 

「誰が鬼だって?」

 

 ギクッ!っと鬼と言った女子が肩を震わせながら首を動かす。他の女子も軋んだ動作でそれを動かす。

 

「お、お、織斑先生‥‥」

 

「おう」

 

 千冬さんをみると、大人な黒の水着を着用している。これこそモデル以上の美しさとクールさがある。ま、年上過ぎは好みじゃないから惚れないけど。

 

「‥‥おい、鼻の下伸びてるぞ一夏」

 

「なっ‥‥!?た、太一?何を言ってるんだよ。ははは‥‥」

 

「へへ、シスコン野郎っ」

 

「シ、シスコンじゃねぇよ!」

 

 そんな会話をしながら昼飯を食べるため、更衣室に向かった。楽しい時間はまだまだ終わらないぜ?持ってきたクーラーボックス(迷彩鞄で隠蔽)にアレが入ってるんだから(ゲス顔)。

 

 

 

 

 

 




次回も少し水着回になります。水着は貴重ですしおすし。

━━トド松

トド松のフェチって凄いね。へそのしわなんて主人公のフェチに入れるのはまだ早いよね(白目)

━━俺妹

本音が妹‥‥本音が欲しいと思った今日このごろ。

━━太一は変態

序盤からみんな知ってるなこれ。

━━ラウラのコスプレ

チンクが一番似合う。だって眼帯だし、中の人同じだし、銀髪だし‥‥混ぜるな危険

━━ギャップ萌え

いいっすね〜ギャップ萌え。無表情な美少女がデレたりするものとか最高。

━━挿絵

元の画像をなぞって改良です。元画像から切り取った部分は目のみです。それ以外はなぞり書き、水着はオリジナル。でも水着変じゃないか心配。

━━Anotherなら死んでた

水着回=Anotherになってしまう俺氏。あれトラウマですしおすし。

━━乳揺れ万歳!

皆さんもそうでしょう。周りは水着美少女、揺れる胸。チラ見しない男はホモだなヾ(。・∀・)
その割には主人公はガン見ですけどね‥‥

━━フェチが多いと見る場所も増える。

このまま、変猫の横寺陽人になっちまうよ( ̄▽ ̄;)

━━アレ

目隠し、棒、割る、食べる。

━━



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第37話 ラクエン②

更新が遅れてしまいました。最近忙しいんです(言い訳)。
今回はタイトル通りです。

※感想などは気軽にどうぞ。


 

 

 午前自由時間が終わってお昼ご飯を食べた後、俺はあるものを砂浜まで運ぶために更衣室まで向かっていた。一緒にシャロと本音も同行している。簪は後から来るらしい。

 

「ねえ、その中に何が入ってるの?」

 

「私も気になる〜」

 

 二人からそんなことを訊かれるが、ここは別館の廊下、下手に教師から見られたくないのだ。まぁ、バレても問題はないと思うけどね。

 

「それは砂浜に行ってからのお楽しみだ」

 

「う、うん」

 

「はーい」

 

 ここで女子更衣室を通ったので、二人と一度別れる。そこからササッと水着を着用して迷彩鞄を持ち運ぶ。

 更衣室から外へ出た後、遠くを見渡す。午前中よりかは少ないが、それなりの女子達がワイワイとはしゃいだり、のんびりしていたりしていた。なんとも平和である。

 

(嗚呼、同年代女子の楽園ですなー)

 

 見渡す限りの水着女子。何度見ても素晴らしいものである。

 ちなみに、持ってきたものはクーラーボックス、アレが一個、棒、新品のブルーシートであるが、それなりに重たかったりする。迷彩鞄が肩掛けになるので持ち運びやすいのだが、肩に負担がかかってしまう。運動不足には辛いよ。

 

「おまたせ〜」

 

「太一、おまたせ」

 

 本音とシャロが水着を来てやってきた。二人とも午前中と同じものだが、本音は着ぐるみバージョンの水着である。‥‥ちょっと残念でござる。だって谷間が見えな(ry

 

「それで、この中身は何?」

 

 シャロが迷彩鞄を指差しながら訊いてくる。俺はその綺麗な指をガン見しながらニヤッとしていた。

 

「それはだな?───スイカだ」

 

「スイカ?かーどのあれ〜?」

 

「んなもん持っていかねぇよ!ウォーターメロンのスイカだ」

 

「わーいっ、すいかだ〜!」

 

 すぐに食べたくて堪らないのかぴょんぴょんとはしゃぐ本音。狐型水着なのに兎みたいで心がぴょんぴょんしてきた。

 スイカ割りといえば、色んなアニメを思い出すほど、ベタな展開である。ラブライブ、みなみけとか、人生とか迷い猫オーバーランとか、レーカン!やキルミーベイベー、銀魂でも出てくるものである。もうベタ以外の何でもない。

 

「でも、近くの海の店でスイカ売ってなかった?」

 

「それは承知済みだ」

 

 そう、この別館から百メートル先に海特有の店が営業されているのだ。そこにスイカ(一玉や半分、一切れなど)が売られている。もちろん、かき氷やソフトクリームなどもある。

 

「じゃあ‥‥なんで?」

 

「スイカ割りだ」

 

「え、スイカ割りって‥‥あの」

 

「そうさ、目隠しして棒で割るやつ」

 

「それは楽しそうだね。僕もやってみたいなー」

 

「私も〜」

 

 シャロと本音が目をキラキラさせながらこちらを見てくる。その目は反則的ですな‥‥。こんな平常な顔してる俺が変に見えてくるよ。

 

「おう、いいぞ」

 

「うんっ、ありがとう」

 

「ありがと〜、やがみん」

 

 ニッコリと微笑むシャロと本音。やはり守りたいこの笑顔。

 スイカを持ってきた理由としては、数日前、専属企業(IS関連の方々)から高級なスイカが贈られてきたのだ。梶平さんからのメールで、

 

『IS開発関係の知り合いが、旅行のお土産でくそうめぇスイカが大量に贈られてきたからタダで丸々一個あげるわ。感謝しろよ( ・´ー・`)ドヤァ』

 

 という感じで受信されていた。なんともありがたいものである。無料で一玉の大きなスイカを貰えるなんて思ってもいなかった。

 というわけで、海から少し離れた砂浜でブルーシートを敷く。今日は風も静かなので吹き飛ぶことはないだろう。

 そして、迷彩鞄の中からクーラーボックスを、その中からスイカを取り出した。

 

「すごく‥‥大きい‥‥です」

 

 シャロがスイカを見ながらそんな言葉を言ってくる。お主、それを何処で聞いたのだ?だってあれ元ネタがホm‥‥いや、何でもない。

 

「‥‥よし、簪が揃うまで待つか」

 

 それから数分後に簪と合流する。そのとき、周りの女子生徒が気づいたのか羨ましいそうに見ていた。

 

「なにあれ、スイカじゃない?」

 

「いいなー、スイカ割りやりたいなー」

 

「そういえば、近くにスイカ売ってなかった?」

 

「いいじゃん買いに行こうよ!」

 

 そんな会話をしながら、普通に女子達が去っていく。スイカ割りって言ってるが、棒とかブルーシートなどは売ってない。仮に割れても砂だらけのスイカになっちまうぞ。

 

「簪もやりたいか?」

 

「いや、私は遠慮しとく‥‥」

 

「そっか、じゃ、本音とシャロはじゃんけんしてくれ」

 

 結果、あいこが多かったがシャロがグー、本音がパーで本音がスイカ割りに挑戦することになった。ジャンケンで本音が水着の袖をまくったのは言うまでもない。

 本音がバンダナで目隠しをしてスイカ割り棒を構えて時計回りに三回、反時計回りに三回ほど回った。指示をする役は俺だ。

 ルールは適当、ただ指示してその人にスイカを割らせるだけ。

 

「はい、じゃあ真っ直ぐ」

 

「は〜い」

 

 ゆっくりと本音が前に進み始める。

 

「右」

 

「左」

 

「前へ進んで」

 

「ストップ。そこだ!」

 

「え〜い!」

 

 ポカッ。

 

 本音の力が弱すぎたのか、スイカはヒビすら割れていなかった。本音はバンダナを取って状態を確認する。

 

「あれれ〜‥‥?」

 

「本音よ、残念だったな。次はシャロだ」

 

「わかった」

 

 本音の装備をシャロに交代し、同じ手順を繰り返す。

 

「準備オーケーだよー」

 

「よーし、じゃあ真っ直ぐ」

 

「右だね」

 

「もうちょい左」

 

「そこだ!」

 

「それっ!」

 

 ドカっ、とシャロが棒を振り下ろしてスイカが叩き割れる。赤い身がブシャっと飛びててブルーシートが汚れた。言葉を変えたらグロテスクになりそうである。

 

「やったーっ、割れたよ!」

 

 その割れたスイカを四人で分けて食べることにした。実はこのときのためにわざと昼食を少ない量しか取っていない。

 

「美味しい〜」

 

「うむ、美味い」

 

 笑顔でスイカを頬むる本音。昼食をガッツリ食べていた割には3Lサイズのスイカの五分の一を食べている。ちなみに俺はスイカの五分の一。簪とシャロは六分の一。

 

「美味しい‥‥」

 

「美味しいなぁっ」

 

 簪とシャロからも好評で何よりだ。三人の笑顔も見れたし、名前は知らないけどお土産ありがとうございます。

 

「おぉ、みんなここにいたのか」

 

 ちょうど別館の方から一夏だけが向かってきた。水着姿なのでここで遊ぶつもりなのだろう。一夏ラバーズは誰もいないが。

 

「お前も食うか?」

 

「おう、サンキュー」

 

 俺は一夏に六分の一サイズのスイカを渡す。一夏は豪快にそれをかぶりついた。

 

「うまっ、こんなの食べたことねえよ」

 

「だろ?これは貰ったものだからな」

 

 スイカを食べ終わってしばらく海で遊んだ後、今度は砂浜の売店でソフトクリームを食べることにした。一夏は鈴に呼ばれて遊びに行っているらしく、遠くでは一夏が砂で埋もれていた。

 

「ソフトクリームも美味しいね」

 

「甘〜い」

 

 シャロと本音はソフトクリームをぺろぺろと舐めながらそう言う。たまに三人の口の周りにクリームが付いてるところをみると萌えそうになる。

 ちなみに、シャロはミルク味で簪は抹茶味、本音はバニラ味、そして俺は抹茶&バニラ味だ。

 

「太一のそれ、美味しいそう‥‥」

 

 簪が羨ましそうに言ってきた。

 

「ん?欲しいのか?スプーン持らいにいこうか?」

 

「い、いや、そのまま頂戴‥‥」

 

「お、おう。じゃあ俺────」

 

 俺が口をつけてない端っこの部分を、と伝える前に、簪はソフトクリームを食べながら顔を赤らめていた。あれ?これ間接キスではありませんかね。

 

「やがみん、私にも頂戴〜」

 

 俺が再びソフトクリームを食べたあとに本音が言ってくる。いや、もっとはやく言えよ‥‥。

 

「いや、今俺が────」

 

 パクッ。

 

 問答無用で本音が俺のソフトクリームを食べる。あ、これ誰も間接キス気にしないやつだわ。俺得。これはいつも以上にペロペロ舐めるしかないな。

 

「た、太一、僕にも───きゃっ」

 

 シャロが何か言おうとた刹那、変に可愛らしい声を上げた。何事かとシャロの方を見たら────

 

 

【挿絵表示】

 

 

※これはソフトクリームです。これはソフトクリームです。大事なことなので2回(ry

 

 ちょうどシャロの専用機待機形態と胸の谷間に溶けたアイスクリームが垂れてしまっていた。意味深過ぎてエロい、エロすぎるよシャルロット氏。そして舐めたい。‥‥このまま妄想したらヤバイのでとりあえず空を見上げる。空は青いぜ‥‥。

 

「あー、こぼしちゃった‥‥何か拭くものない?」

 

「ほいよ」

 

 持ってた迷彩鞄の中からウエットティッシュを取り出す。スイカのときに使うと思って持ってきたかいがあったようだ。

 

「ありがと」フキフキ

 

 そう言いながら汚れた部分を拭き取るシャロ。この仕草も意味深すぎて興奮してしまいそうになる。ソフトクリーム先輩マジ半端ないッス。

 それから一夏や鈴、ラウラ、セシリアとも合流して海で水遊びをしたり、日向ぼっこしたり、寝たりして過ごして、あっという間に夕方となった。

 

(そういえば、箒を見かけなかったな‥‥)

 

 そんなことを考えながら、俺は一夏と一緒に更衣室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所は変わって宴会場。大広間三つを繋げたそこで、俺達は夕食を取っていた。時刻は七時である。

 

「うまっ、昼も夜も刺身が出るとは豪勢だなぁ」

 

「そうだね。ほんと、IS学園って羽振りがいいよ」

 

「それな。でも個人的に昼は洋食が‥‥」ボソッ

 

 そんな会話をする一夏、シャロ、俺氏。俺の隣かつ一夏の隣なのでシャロは真ん中である。もう一方の隣に本音が幸せそうに食事している。なお簪は他クラスなので遠い。

 ついでに二人は浴衣姿というか全員が浴衣だ。なんでも『お食事中は浴衣着用』とのこと。そんなもの着たことない俺は浴衣の着方をシャロに教えてもらったのだ。

 ずらーっと並んだ一学年生徒は座敷なので当然正座である。

 

「別に和食でも良いと思うけどね」

 

「まぁな」

 

 メニューは刺身(カワハギとか)と小鍋、それに山菜の和え物二種類。そして味噌汁とお新香。

 そんなことはどうでも良く、飯を食いながら浴衣を眺めることに専念する俺氏。とはいえ浴衣は紺色の柄なしであるため、そこまで興奮するものでもない。

 

「カワハギもうまいし、しかも本わさじゃないか。すげぇな、これは高校生の飯じゃねえよ」

 

「本わさ?」

 

 一夏の呟きにシャロは疑問を抱く。

 

「シャロ、あれだよ。本物のわさびをおろしたやつ、略して本わさだ」

 

「え?じゃあ、学園の刺身定食のあれは‥‥」

 

「あれは練りわさ。確か、原料はワサビダイコンとかセイヨウワサビとかだったかな。着色や合成などで見た目や色を似せたヤツ」

 

 シャロの問いに今度は一夏が応えた。

 

「ふぅん。じゃあこれが本物のわさびなんだ?」

 

「いえす。でも最近の練りわさもうまいけどな」

 

「そうなんだ。はむ」

 

 俺の捕捉にシャロが納得する。────って今、大豆なみのわさびを食べなかったか?

 

「ん゛〜〜〜〜っ〜〜!!」

 

「ぷっ」

 

 さっきまでのカワボとはかけ離れた悲痛の声が聞こえ、鼻を押さえながら涙目になるシャロ。その光景に思わず吹いてしまう俺。さすがにわさびまで知らないと思ってなかった時期が僕にもありました。

 

「シャル‥‥大丈夫か?」

 

「‥‥だ、大丈夫か?」

 

「大丈夫〜?デュッチー」

 

「ら、らいひょうぶ‥‥」

 

 三人に心配され、鼻声で返事をしながら笑顔を浮かべようとするシャロだが、涙目の笑顔である。

 

「ふ、風味があって‥‥お、美味しい‥‥よ?」

 

 どこまで優等生なんだ、この美少女は。

 

「大量のわさびを口にそのまま入れるやつ初めて見たわぁ」

 

「うぅ‥‥笑うだなんて、ひ、ひどすぎるよー‥‥」

 

 あれ?なんかこのセリフにデジャヴ感。ひ、ひどすぎるよーって部分が。気のせいだと信じたい。

 

「すまん。つい吹いちまった」

 

「つ‥‥ぅ‥‥」

 

 ちなみに一夏の隣ではセシリアがこのようにうめいている。どうやら正座が苦手らしい。

 

「大丈夫か?セシリア」

 

「だ‥‥ぃ‥‥じょ‥‥ぶ、です‥‥わ‥‥」

 

 一夏が訊いたことに反応するセシリアだが、全く言葉のとおりになってない。

 少しずつプルプルと震えだしたセシリアは、英国人としての自尊心なのか意地でも平静を装い、箸をとる。

 

「い、ぃただきます‥‥」

 

 セシリアはずずずっと無理しながら味噌汁を飲む。そこで一夏が口を開く。

 

「セシリア、正座が無理ならテーブルに移動したらどうだ?クラスメイトも数人いるし、恥ずかしくないだろ」

 

 ちなみにその多国籍や他民族、他宗教といったものを考慮して、正座ができない生徒のためにテーブルが利用可能である。

 

「へ、平気ですわ‥‥。この席を獲得するのにかかった労力に比べれば、このくらい‥‥」

 

「席?」

 

「い、いえ、なんでもありませんわ!おほほほ‥‥」

 

「一夏よ、女子には色々あるんだぞ」

 

「そうなのか」

 

「おう」

 

 なんとか納得したらしい。一夏にはこれくらい説明しておかないとダメだからな。

 

「もう‥‥他人のことには鋭いんだから‥‥」

 

 なんかシャロの口からボソッと呟いていたが、最後らへんが聞こえなかった。

 

「他人が何?」

 

「何でもないよ」プイ

 

 何故かそっぽを向かれてしまった。よくわからんなぁ‥‥。

 

「なぁ、セシリア。食事が進まないから食べさせてやろうか?」

 

 セシリアを見てると無性に助けたくなったのか一夏がそんなことを言った。お約束の「はい、あーん」の時間すか?wktk。

 

「い、一夏さん!それは、ほ、本当ですの!?」

 

 セシリアが苦痛の顔から喜びの驚き顔に一瞬で変わった。

 

「お、おう‥‥別にいいぞ。このままじゃ料理も覚めるだろうしな」

 

「で、では。お願いしますわ」

 

 そう言って一夏に箸を預けるセシリア。それを受け取り、刺身を一切れつまむ。

 

「わ、わさびは少量で‥‥」

 

「わかった。じゃあ」

 

「は、はい。あー‥‥」

 

 ゴクリ‥‥。と息を飲んだところで異変が起きた。

 

「ああー!!セシリアずるいよ!」

 

「織斑君に食べさせてもらってる!」

 

「卑怯者!呪ってやるぅ!」

 

「ずるいわ!インチキ!イカサマ!」

 

「うらやまけしからんっ!」

 

 思いっきり他の女子に見つかってしまい、大騒ぎになってしまった。あと最後の女子、同志だな。

 

「あはは‥‥」

 

「もぐもぐ」

 

 こんな状況でも二人は平和に食事をしているわけで。シャロは手が止まってるけど、本音は普通に食べている。

 

「本音はよく呑気に食べていられるな。一夏がセシリアに刺身を食わせてることには気にしないのか?」

 

「だってー、やがみんに食べさせてもらうから大丈夫だし〜」

 

 にっこりと無邪気な笑顔を向けてくる本音。心做しか一夏と同じことをしてって意味に聞こえた。

 

「なんで俺?」

 

「やがみんじゃなきゃ嫌だし〜」

 

 その言葉になんでか照れてしまう俺氏。恋愛感情をもって言ってないのだろうけど、恥ずかしくなってしまう。

 

「あー、やがみんが照れてる!かわいい〜」

 

「う、うるさいなぁ‥‥」

 

「二人でいちゃいちゃなんかしちゃって‥‥ずるいなぁ」

 

 またボソッと小声で呟いているシャロ。最後だけ聞こえないのは仕様なんですかね?

 

「い、いや別にいちゃいちゃしてるつもりは────」

 

「ふんっ‥‥」プイ

 

 これまたそっぽを向かれてしまった。何が何だかさっぱりですなぁ。

 

「というわけで〜、はい」

 

 本音が自分の箸を持ってこちらに差し伸べてくる。え、あれやらなきゃダメ‥‥?

 

「早く〜」

 

「‥‥了解」

 

 気が乗らないが、行動で「やって」と示されて「だが断る」なんて言おうとも思わない。何度かあったかもしれないが、貴重な体験をみすみす逃すわけにはいかないのだ。

 そして、俺は箸で刺身に醤油掴み、醤油をつける。わさびはなし。

 

「はい。あ〜ん」

 

 パクッ。

 

 にこっと満面の笑みになる本音。もうこの子は俺の妹でいいや。今度から「にぃに」って呼んでもらおうかな(ゲス顔)。

 

「あー!城谷上君にも食べさせてもらってるよ!」

 

「何なの!?羨ましすぎるわっ!」

 

「この際、城谷上君から食べさせてもらおうかな‥‥?」

 

「ずるい、ずるいっ、ずるいっ!」

 

 ワーワーガヤガヤと余計に騒がしくなる。おそらく耳がキンキンして痛くなるレベル。この部屋で空砲売ってやりたいくらいだ。鼓膜破れても知らんけど(ニッコリ)。

 

「た、太一!やっぱり僕にも────」

 

「お前達は静かに食事はできんのか!!」

 

 誰かの大声が響き渡り、その場にいた全員が凍りつく。誰かといっても千冬さんであるが。

 

「織斑先生‥‥」

 

「どうにも、体力が有り余ってるようだな。ならば今から砂浜をランニングしてこい。‥‥そうだな。50キロあれば十分だろう」

 

「いえいえいえ!とんでもないです!大人しく食事をします!」

 

 そう言って、立っていた人や一夏のところに集まっていた女子たちが席に戻る。それを確認した千冬さんは俺達を見た。

 

「お前ら、あまり騒動を起こすな。鎮めるのが面倒だ」

 

「わ、わかりました」

 

「は、はい‥‥」

 

 俺は悪くないです。悪いのは一夏なんです。許してヒヤシンス。

 その後も満腹になるまで食べ続けた。

 

 




次回くらいから投稿が一気に遅くなります。福音戦の準備です。

━━食べる食べる食べる

本当に食べるしかなかった件。

━━本音のボケ

本音ならやりかねん。多分
スイカですSuicaではないです。

━━スイカ割り

スイカ割りって現実でもあるから、他作品だす必要な(ry
どうでもいいけど、キルミーベイベー面白いよね(ニッコリ)

━━ソフトクリーム

※ソフトクリームです。3回目
元画像はアニメでいう「一夏とシャルが更衣室に隠れるシーン」です。そのイラスト+手とソフトクリームを描きました。もちろんただのなぞりがき。

━━ひ、ひどすぎるよー

ググると分かりますが、元ネタは「トキトワ」っていうゲームの公式サイトにあった無理ゲームだがなんとか、ちなみに中の人ネタです。

━━少しは修羅場が欲しい

からいつか考えよう(ゲス顔)

━━にぃに

代表作にアマガミがある。

━━


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第38話 カンナイ

かなり遅くなりました。挿絵は今回なしです。

※感想は気軽にどうぞ。


 

 

「あぁ^〜体がポカポカするんじゃ^〜」

 

「そうだなー」

 

 ここは花月荘の大浴場(露天風呂)。IS学園にはない風呂であり、海が見える絶景なので素晴らしいものである。

 先程までは女子生徒が男女両方の浴場を利用していたが、男子用の清掃が終わり、俺と一夏が湯船に浸かっている。女子用の大浴場の場所は少し遠いのだが、耳を澄ますと‥‥

 

「千棘の胸おっきぃなぁーいいなー」

 

「別にそんなことないわよ‥‥」

 

「私なんか‥‥うぅ‥‥」

 

「そんな気にすることないってーもしかしたら、うちの男子生徒の好みのサイズかもしれないわよ?」

 

(あ、それ俺です)

 

「そ、そう?」

 

 などと何処かで耳にした会話が遠くから聞こえるのだ。ちっぱい好きなのは認めるが、「城谷上太一ロリコン説」なんていう社会的に最悪な噂が広がってしまうのは避けたい。

 

「わ〜広ーい!」

 

 少し遠くの露天風呂から本音の声が聞こえてきた。同時にそれぞれの暖簾を潜ったこともあり、他に簪やシャロもいるはずである。

 

(覗きたい‥‥)

 

 俺は列記とした十代の日本男児。本能的にそんなことを思ってしまうものである。だからといって行動に移すなんて馬鹿げたことをするつもりはない。本音ってどんな感じなんだろう、と脳内で想像することしかできないのだ。そうすると、シャロやラウラの記憶が蘇る。

 

『マスター。ISを展開して覗きましょう』

 

(いや、ダメだろ。犯罪だし)

 

 氷歌が覗き見という提案をしてきた。このISは俺の考えを分かってるかのように言ってくるのである意味怖い。一体どんな機能を搭載されてるんだか。

 

『こんなときこそあのセリフですよ。マスター』

 

(バレなきゃ犯罪じゃないんですよぉ‥‥ってか?なるほど一理────)

 

「───ねぇよっ!」

 

「ふぁっ!?」

 

 オウフww声に出すつもりはなかったのだが、つい大声で叫んでしまった。ISとのプライベートチャンネルみたいなものって稀に無意識に発声してしまう癖があるのだ。

 そして、一夏の驚き方が「ファッ!?」である。一夏はホモ、はっきりわかんだね。

 

「すまん、声に出ちまった」

 

「お、おう。しかし、時々どうしたんだ?誰かと話してる感じがするんだが‥‥プライベートチャネルか?」

 

「‥‥まぁ、そういうことにしてくれ」

 

「そうか」

 

 別に隠すことなどないのだが、ISと話してるなんてややこしい事が言えるわけがない。人工知能(Sir○)みたいなものなのかも知れないが、伝える必要はないだろう。俺だけの機能っぽいし。

 

 

 

 

 

 

「ふ〜、さっぱりした」

 

「だなー」

 

 呑気なことを一夏と俺はそう言いながら、それぞれの部屋へ一旦戻る。部屋に麻耶先生がいると思い、一応声をかけてみた。

 

「麻y‥‥山田先生。いますか?」

 

「はい、入っても大丈夫ですよー」

 

「うぃっす」

 

 ガチャっと小さく音をたてて部屋に入る。

 麻耶先生の髪が少し濡れていたので、先程まで温泉に入っていたのだろう。こうして見ると、浴衣姿が可愛いな、と思ってしまう自分がいた。

 ふと床に既に敷いてあった布団を見ると、部屋は広いのに何故かダブル状態になっていた。

 

「先生。布団を窓側まで避けていいですか?」

 

「え?布団を‥‥‥‥ま、まさかそんな、ダ、ダメですよ?一つの布団で教師が生徒と一緒に‥‥ま、まだ早いと言いますか、禁断の────」

 

 また始まったよこの人は‥‥。

 

「勘違いしないでください。僕が窓側で寝ると言ってるんです」

 

「え?あぁ、そうでしたか‥‥そ、そのごめんなさい」

 

「は、はい‥‥大丈夫ですよ」

 

 顔を赤くして謝る麻耶先生が可愛いと思ってしまう。いや、元々可愛い童顔系先生でメガネッ娘(娘?)なので、更に可愛くなったというかなんというか。

 そんなことを考えていると、ふと素朴な疑問を思いついた。

 

「あの、先生」

 

「はい。なんですか?」

 

「その髪は地毛ですかね?」

 

「はい?ええまぁ、この髪は地毛ですけど‥‥やっぱり変ですよね‥‥」

 

 麻耶先生がしょぼーんと少し落ち込んでしまった。どうやら地雷を踏んだらしい。きっと過去にその髪で弄られたのだろう。

 

「いえ、全然、全く、これっぽっちも変じゃないですよ。寧ろその髪が似合ってるであります!」

 

 ビシッと敬礼しながらはっきりと言う。特に口説いているわけではないが、ここで変と言ってしまえばいつかこの人は髪を染めてくるだろう。そうはさせるわけには行かないのだ。

 アニメなどでよくいるグリーンヘアーの美少女たち。三次元でそれにとても似合う人など滅多にいないだろう。

 

「ほ、本当ですね?良かったぁ‥‥」

 

 ホッと一息して心を落ち着かせる麻耶先生。これで一件落着となったわけだが、この後本音の部屋に遊びに行く約束だったことを忘れていた。早めに向かうとしよう。

 

 

 

 

 

 

「〜♪」

 

 一方その頃、食後の後に風呂とシャワーを一回ずつ浴びたセシリアは、部屋で上機嫌に着替えていた。身に纏うのは旅館の浴衣であるが、中の下着は少し特別なものである。

 何故上機嫌かといえば、夕食が終わる直前に一夏から『後で俺の部屋に来てくれよ』と小声で誘われたのである。

 そんなこんなでウキウキしているセシリアにルームメイトの一人から話しかけられる。

 

「セシリア、何かいいことあった?」

 

「いえ、何も♪」

 

「語尾に音符が付きそうな喋り方じゃない」

 

「あら、そうですの?うふふ」

 

「‥‥まぁいいわ。でー、どうするー?城谷上君の部屋で織斑君も呼んじゃう?」

 

「でも山田先生がいるよ?」

 

「それもそうなんだよねー」

 

 それに織斑先生の部屋も近いし、と谷本癒子がそう呟く。それに対し、他の女子もうんうんと頷く。

 ちなみに用意したのはトランプやウノに花札、人生ゲーム、そしてツイスターゲームである。一夏ならまだしも太一の場合は興味を示さないかも知れないが、女子相手だとやる気になる可能性は高い。

 そんなゲームに頼る必要はない、とセシリアは鼻歌交じりにコロンを吹く。

 

「あ〜〜。セッシーがえっちぃ下着つけてる〜」

 

 常に半開きの目だが、どうしてか観察力と洞察力に長けた布仏本音がそう告げる。その言葉を聞いたセシリアは、ギクリとしてしまう。なぜなら‥‥

 

「な、なにぃ!?これは脱がさないとね!」

 

「さぁセシリア。その浴衣を脱ぎなさい!」

 

 くねくねと手を動かしてきた。

 

「きゃあああっ!?や、やめ‥‥引っ張らないで〜!」

 

 セシリアが抵抗するも、相手は女子三人。どう考えてもセシリアにとって生身で逃げ出すことは困難であった。

 

「わーお、マジでエロい下着つけてる‥‥」

 

「えっちぃね〜」

 

 ちなみに布仏本音が履いているパンツは初音ミクカラーの縞パンである。特に誰かに見せるつもりはないのだが、あのムッツリスケベの太一が『やっぱ縞パン最高だ』と呟いたことがきっかけである。

 

「まさか勝負下着?織斑君の部屋に行けないのにそんなの着ちゃって」

 

「まぁまぁ。セシリアのおませさん☆」

 

 言いたい放題言った後、最後に三人が声を合わせて言う。

 

「「「セシリアはえろいなぁ〜」」」

 

「え、エロくありません!こ、これは、その、身だしなみ‥‥そう、身だしなみですわ!」

 

 もみくちゃにされて乱れた浴衣を直しながら、真っ赤な顔で反論するセシリア。それと同時に、自分だけ一夏に招かれてることがバレないことを祈っていた。

 

「そういえばなんか念入りに体を洗ってたわね」

 

「そのあとシャワーも浴びてたし、メイクなうだし」

 

「なんかあやしい‥‥」

 

「あ、あやしくなどありません!これは女としての当然のことですわ!それでは、わたくし用がありますので失礼します!」

 

 そのまま立ち上がるセシリア。部屋を出ようと考えていたのだが、そんなことは見事に止められた。

 

「くんかくんか。あれー?セシリアがいつも使う香水じゃないよね〜。この匂いはレリエルのナンバーシックス?わー、高級品だ〜」

 

 本音の言葉に、女子らの顔がこわばる。それから、女子の執拗なまでの追求がスタートした。

 

「レリエルのナンバーシックス!?一振り十万のあれ?!」

 

「しかも、毎年五十個しか生産されないシリアルナンバー入りでしょ!?」

 

「実物あるの!?ちょ見せて!」

 

「ええ、見ても構いませんが、わたくしはこれで────」

 

 ささっと扉の前に行き、脱出しようと試みるが、普通に手を取られてしまった。

 

「ふっふっふ。逃がさないわよ」

 

「さあ、大人しくかがれなさい!」

 

「脱がしゲーの始まりだ〜」

 

「くっ、こうなったら力づくでも抜け出しますわっ!」

 

 そんなこんなでドタバタと脱がし合いへと変わっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「騒がしいですなー」

 

 俺は呑気に本音とセシリア、谷本さん、鏡さんがいる部屋に向かっているのだが、なんだか徐々にドタバタと音が響いていた。

 

「本音ー、何やってんだ?」

 

「「「「え?」」」」

 

 ガチャっと音をたてて部屋に入る瞬間、俺は「どうしてこうなった」、といえる光景を見てしまった。それと同時に思うことがある。

 

(あ、ここ本音だけの部屋じゃねーわ)

 

 そんな危機感のないことを脳内で呟きながら、目の前の状況で固まっていた。

 どんな状況かというと、セシリアの浴衣がはだけて下着(勝負下着)が見えているし、本音が初音ミクみたいな縞パンを履いていたところを見てしまったのである。幸い他の二人は何も見えなかった。いや、幸いもクソもねぇよ。

 

「すまんお前ら‥‥取り込み中だとは思わ────」

 

「きゃああああああああっ!」

 

 目を塞ぎながら俺はそう言うが途中で、セシリアの耳が痛くなるほど五月蝿い悲鳴と同時に、ブルー・ティアーズの一基が出現。そのまま俺に向かってレーザーが放たれ、俺氏終了のお知らせ、と呑気にも程がある言葉を考えて目を閉じた刹那────

 

「くっ‥‥‥‥え?」

 

 間に合わない筈の《雷艦》がそこにいた。俺は鈴みたいに反射的にISを展開はできないのだ。それなのに、目の前のそれが防いでいた。いや‥‥ISに助けられた?

 

「!?」

 

 その光景にセシリアは呆然としていた。他の三人も同様である。

 

「今、鈴さんみたいに部分展開が早くありませんでした?!」

 

 はだけた浴衣を押さえながらセシリアは驚いていた。とはいえ、ことの発端は俺だろうし、ここはちゃんと謝るべきだろう。

 

「そんなことより、すみませんでした!」

 

 ぴしっとシャロにもそうしたように完璧な土下座をする。すると、少し顔の赤い本音が訊いてくる。

 

「もしかして、私の下着みたの〜?」

 

「お二人のは、はっきりと、鮮明に、確実に、本当に見てしまいました」

 

「もー、ノックくらいしないとダメだよ〜」

 

 ポカポカと可愛い両手で右肩に叩いてくる本音。全く痛くないので寧ろ気持ちいい感じである。

 そんな中、セシリアはかなり落ち込んでしまっている。俺に見られたのも原因の一つだと思うが、あれは一夏に見せるつもりはだったのだろう。本当にサーセンでしたセシリアさん。写真はバッチリ撮ってます。‥‥後で消そう。

 

「頼むセシリア。この件は本当にすまない。お詫びに一夏のとっておきの情報を教えるからさ」

 

 ごにょごにょとセシリアの耳元へ一夏の機密情報を伝えてみる。

 

「そ、それは本当ですの!?」

 

 あ、ちょろい。

 

「お、おう。本気と書いてマジだ」

 

「で、でしたら‥‥今回の件はなかったことにしますわ」

 

 これはちょろインて言われても文句ないかも知れない。どうでもいいけど、ハーレムアニメでは高確率で一人はいそうなヒロインだよな。

 

「他にもいっぱい知ってるから、どんどん教えてやるよ」

 

 セシリアと俺で握手をして和解する。一夏には申し訳ないが、プライベートについて教えていこうかな。

 後に簪とシャロがやってきたので、俺の部屋に向かうことにした。本当ならここでのんびりする予定だったが、なんだかんだで俺(麻耶先生)の部屋の方が広いし、一夏も誘いたいという理由だ。

 なぜかセシリアも付いてきているのだが、そこは気にしないでおこう。

 

「ん?」

 

 目的に到着と言いたいところだが、少し遠くの方に女子三人が千冬さんの部屋の扉に張り付いていた。

 気になったので俺達もその場に近づくことにした。

 

「箒と鈴じゃん」

 

「それにラウラさんまで。一体何を────」

 

「「「シーっ!」」」

 

 鈴、箒、ラウラがそう言ったので、少し黙ってみる。すると、扉の向こうから声が聞こえてきた。

 

『千冬姉、久しぶりだから少し緊張してるか?』

 

『そんな訳あるか、馬鹿者。────んっ!す、少しは加減しろ‥‥』

 

『はいはい。んじゃあ、ここは‥‥‥‥と』

 

『くあっ!そ、そこは‥‥や、やめっ、‥‥んっ』

 

『すぐに良くなるって。そいっ、と』

 

『んぁっ』

 

「「「「「‥‥‥‥」」」」」

 

 意味深過ぎて声も出ない一夏ラバーズとそれ以外。これ何てエロゲ?

 

(ナニをしてるんですかねぇ‥‥)

 

 多分、マッサージをやってると思うのだが、俺にはエロゲのワンシーンにしか聞こえなくもなかった。

 このシチュエーションならアルトサックスを利用したBGMが似合いそうだ。一応、録音しといたというか勝手にされてるし。なんて素晴らしい機能なんだろう。

 

『あっ‥‥そこも‥‥やめろっ!』

 

『あとちょっとだって』

 

『だがな。───んっ‥』

 

「「「「「「「‥‥‥」」」」」」」

 

 なんだか興奮してきた。貞操が危険区域に突入してるし、そろそろ逃げようか。

 

「こ、これは一体、なんですの‥‥?」

 

 口を震わせ、引きつった笑みを浮かべながら尋ねるセシリア。おい、こんなところで声を出すな。バレるぞ!

 

『じゃあ次は────』

 

『一夏、少し待て』

 

 あ、嫌な予感がする。早いとこ此処からトンズラしよ────

 

 バンっ!

 

「「「「「「「へぶっ」」」」」」」

 

「うぼぁっ」

 

 前列の一夏ラバーズがドアに殴られてドミノ倒しの如く、残りの四人にぶつかった。ただし、本音は俺の後ろである。

 

 むにゅ。

 

 頭に柔らかな感触がした。まるでクッションのような、このまま寝ても違和感ないくらい心地よい感覚。確か後ろには本音がいたよな?つまり、本音のクッションか。なるほどなー。

 

(え、本音のクッション(意味深)?)

 

「やがみん。そろそろどけて欲しいな〜」

 

「す、すまん」

 

 顔を赤くしながら本音がそう言った。最高に気持ちよ───嘘です、マジサーセンした。簪とシャロが睨んでますし、今にも殺されそう。

 

「はぁ‥‥。何をしているか、馬鹿者どもが。盗み聞きとは感心しないが、ちょうどいい。入れ」

 

「「「「え?」」」」

 

 予想外の言葉に目を丸くする一夏ラバーズ。

 成り行きで俺達もサーっと部屋へお邪魔することにした。

 

「おお、セシリア。遅かったじゃないか。じゃあ始めようぜ」

 

 ポンポンとベッドを叩きながらセシリアを呼ぶ一夏。それに対しセシリアは顔が真っ赤になっていた。そこまで赤くなるか?普通。

 

「え、あの、織斑先生もいらっしゃいますし‥‥」

 

「‥‥? 別に良いじゃないか。俺も体が温まってるし、早くやろうぜ」

 

 何故か躊躇うセシリア。あ、この子なんか勘違いしてる(確信)。

 

「あ、いや‥‥ですが、こういうのは、その、雰囲気が‥‥」

 

「なんだよ、ただのマッサージなのにそこまで躊躇うのか?」

 

「「「「「「「え?マッサージ」」」」」」」

 

 どうやら、みんな勘違いしてたようです。そんな反応を不思議に思った一夏が訊いてくる。

 

「なんだと思ったんだよ」

 

「それはもちろん男子が────んっ」

 

 ラウラが答える途中で、一夏ラバーズがラウラの口を押さえ込む。そんな行動は俺が無意味にしてあげよう。

 

「あれだよ。聖(性)なる更衣(行為)、略して性行────ん゛」

 

 今度は残りの三人に口を押さえ込まれてしまった。

 最初に俺の口を押さえたのは簪だ。その手の匂いを嗅いだりprprしたりしたいけど流石に自重しよう。そんなことをしたら‥‥あれDeathね。

 

「‥‥?まあいいや、セシリア此処でうつ伏せになってくれ」

 

「は、はい‥‥わかりましたわ」

 

「よし。‥‥ん、しょっ‥‥」

 

 ギュウウウゥゥ〜〜ッ。

 

「い、いたたっ、いたっ!い、い、い一夏さん!?これは痛すぎますっ!」

 

「さすがに耐えられなかったか。すまん、これくらいなら大丈夫か?」

 

「ええ‥‥。気持ちいいです‥‥」

 

 ぐっ、ぐっ、と親指で背骨の付け根、その左右両端を指圧する。

 

「それにしても、腰のコリがひどいな。セシリアって何かやってるのか?」

 

「んっ。ええ、たしなむ程度にヴァイオリンを‥‥」

 

 そういえば、【四月は君の嘘】を見てヴァイオリンを弾いてみたいと中学のころに思ったことがあったな。他には【けいおん】見てギターやベースやら弾きたいと思ってたしな。アニメの力って凄い(小並感)。

 

「ふぅ。‥‥!?!?」

 

 セシリアがマッサージの心地よさでゆったりしていたところで、突然千冬さんがセシリアの尻を鷲掴みにした。

 

「おー、マセガキめ」

 

 ニヤリ、との笑みになる千冬さん。そのまま尻を掴んだ状態で下から上へすくい上げ、浴衣をがまくれ上がり、下着が丸見えな状態だった。少なくとも俺と一夏には見えない位置だが‥‥まぁ、あのとき見たけどね。

 

「しかし、歳不相応な下着だな。そのうえ黒か」

 

「え‥‥いやあああっ!?」

 

 千冬さんの行動により、悲鳴を上げるセシリア。一方、一夏は顔を赤くして視線を逸らしていた。お前はぎりぎり見えてないだろ。

 

「せ、先生!離してください!」

 

 セシリアが真っ赤になってそう叫ぶと、千冬さんはヒュッと手を離した。

 

「やれやれ。教師の前で淫行を期待するなよ、十五歳」

 

「い、い、い、いんこっ‥‥!?」

 

「淫行‥‥だと?───あべしっ」

 

 ぺしっ、と隣にいたシャロに頭を軽く叩かれ、顔を赤くして怒られてしまった。

 

「冗談だ。おい、一夏と太一。飲み物を買ってこい。茶なら何でもいい。此処にいる小娘共用にな。それと、なるべく遅く来い」

 

 なんか千冬さんにぱしられた。

 

「あぁ、わかった」

 

「了解っす」

 

 最後の言葉がなんとなく察したので了承しておく。ん?千冬さんが久しぶりに名前で呼んでたような気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 太一と一夏が去り、どうしていいか分からないまま座布団に座っている女子が七人いた。そのとき、千冬は冷蔵庫の中から缶ビールを取り出し、七人の前で座った。

 

「おいおい、どこの儀式だ?いつものバカ騒ぎはどうした」

 

「い、いえ、その‥‥」

 

「あのですね‥‥」

 

「お、織斑先生とこうして話すのは、ええーと‥‥」

 

「は、はじめてですし‥‥」

 

「まぁいい。そろそろ肝心の話をするか」

 

 プシュッ!といい音を立てて飛沫と泡が飛び出す。それを千冬はゴクゴクと喉を鳴らす。その光景を見ていた七人は教師としての『織斑千冬』と目の前の人物とが一致せず、ぽかんとしていた。

 

「で、そこの四人は一夏の何処がいいんだ?」

 

 言うまでもないが、そこの四人とは一夏ラバーズのことである。太一ラバーズではない。

 

「わ、私は別に‥‥以前より腕が鈍っているのが腹立たしいだけですので」

 

 と、視線を逸らしながら言う箒。

 

「あたしは‥‥腐れ縁みたいなものだし‥‥」

 

 同じく視線を逸らしながら言う鈴。

 

「わ、わたくしはクラス代表としてしっかりして欲しいだけですっ」

 

 先程の行動の反発か、ツンとした態度で答えるセシリア。

 

「ほう。ならばそう伝えておくとしよう」

 

 しれっとそう言った千冬に、三人はぎょっとしてから一斉に詰め寄った。

 

「「「言わなくていいです!」」」

 

 その様子を笑い、千冬は缶ビールを飲む。ほとんどカラになりかけたところでラウラの方を見ていった。

 

「で、お前は?」

 

「あ、ええ‥‥つ、強いところ、でしょう────」

 

「いや弱いだろう」

 

 言い切る前に言われてしまった。だが、それに対し、珍しくラウラは食ってかかった。

 

「つ、強いです。少なくとも、私よりも」

 

 そうか、と言いながら千冬は、二本目の缶ビールをあれから取り出した。

 

「まぁ、強いかどうかは別として、確かにアイツは役に立つぞ。家事も料理もなかなか、マッサージも上手い。付き合える女は得だな。‥‥どうだ、欲しいか?」

 

 え!?と四人が顔を上げる。そのまま目を輝かせて訊いてきた。

 

「「「「くれるんですか?」」」」

 

「やるかバカ」

 

 ええー、と四人は声を揃えて突っ込んだ。

 

「それで、次は他の三人。太一の何処がいい?」

 

 予想してはいたものの、突然矛先を変えられ焦る太一ラバーズ。最初に口を開けたのはシャルロットだった。

 

「僕──私は‥‥優しいところ、です‥‥」

 

 声の小ささとは裏腹にそこに真摯な響きがあった。ちなみに言い直したのは、相手が教師だからである。

 

「ほう。で、更識は?」

 

 千冬が三本目のビールを開けながら訊いてくる。

 

「私は‥‥強────」

 

「弱いだろ」

 

 今度はラウラのとき以上に即答されてしまった。そして、千冬は酒を飲んだ後、そのまま話し出す。

 

「確かにISに関しては上達している。ただし、半分ISの武装で助けられているがな。一方の生身では凡人以下に過ぎん。なので大なり小なり弱いのだ」

 

「は、はい‥‥」

 

 とりあえず返事をする簪。ヒーロー的な強さのことを言っていたのだが、そんなことを千冬は分かっていたようで、分かっていなかった。

 

「布仏はどうだ」

 

「私は‥‥いつも一緒にいて心が落ち着くことですかね〜」

 

 普段そんなセリフを言わないと思っていた女子一同が口を開けて呆然としていた。本音の顔は、ぽわわ〜と赤くなっている。

 しかし、それでは何処が好きという答えになってないのは気にしないでおこう。

 

「まぁ、アイツは一夏のように生身で強くなければ、家事も料理もマッサージもできない。昔は比較的大人しい性格だったが、今は飛んだ自由奔放な少年になってるしな。どうしてこうなった‥‥」

 

 千冬は完全に呆れていた。

 

「剣道は弱いくせにISは強いですしね‥‥」

 

 箒が少し怒っているかのように呟く。太一は趣味に走る傾向があるので、どうしようもないのだ。ISを軍事系と考えてしまえば、本人のターゲットである。

 

「女ならな、奪うくらいの気持ちで行かなくてどうする。自分を磨けよ。ガキ共」

 

 それから千冬が三本目のビールを飲み干したその後、男二人が戻ってしばらく会話して解散となった。

 

 

 

 

 

 

 




挿絵は素材がありませんでした。今回は8700文字

━━城谷上太一ロリコン説

紛れもない事実

━━バレなきゃ犯罪じゃないんですよ

元ネタはニャル子さん。ニャル子さんの元ネタはジョジョ。

━━プライベートチャネル

原作ではそう言ってるのでこうなってます。太一はチャネルではなくチャンネル派

━━縞パン

縞パンは二次元のみ有効ですよまじで。三次元は‥‥微妙かな?

━━ラッキースケベ

鍵閉めろって話ですよね(ニッコリ)

━━生きていた太一

ISが助けたなんて、そんな話あるわけ(震え声)

━━盗み聞き

原作以上に意味深な展開となっちまった。反省はしている、後悔はしていない。

━━クッション

太一そこ変われ、って思うくらい羨ましい( ͡ ͜ ͡ )

━━ヴァイオリンなど

マジで弾いてみたいけど、楽器ない\(^o^)/

━━一夏に劣る太一

IS以外で優性なとこあんの? A、ある(震え声)

ほら、アニメ知識や軍事知識とか?









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第39話 テンサイ

大変長らくお待たせしました!一ヶ月半ぶりですね‥‥。
艦これにハマって抜け出せなったんです。(言い訳)


※この一ヶ月間の誤字報告ありがとうございます。


 臨海学校二日目。今日は午前十時から午後七時までISの各種装備試験運用とデータ取りに追われる。特に専用機持ちは大量の装備が待っているので大変だ。とはいえ俺の専用機は大変とは言い難いものしか用意されてないのである。

 

「ようやく全員揃ったか。──おい、遅刻者」

 

「は、はいっ」

 

 千冬さんに呼ばれて身をすくめたのは、意外にも程があるラウラだった。

 一夏曰く、寝坊したと聞いたらしい。もしかして寝坊じゃなくてラウラが朝オn(自主規制)。

 

「そうだな‥‥ISコア・ネットワークについて説明しろ」

 

「は、はい。ISのコアはそれぞれが相互情報交換のためのデータ通信ネットワークを持っています。これは元々広大な宇宙空間における相互情報交換のために設けられたもので、現在は───」

 

 長ったらしいので、聞き流しておくことにする。それから数十秒後にラウラが説明を完了させた。

 

「さすがに優秀だな。遅刻の件は見逃してやろう」

 

 そう言われて、ふぅと息をつくラウラ。ドイツにいたときは色々あったのだろうな。俺なら罰を食らってた(確信)。

 

「さて、それでは各班ごとに振り分けられたISの装備試験を行うこと。専用機持ちは専用パーツのテストだ。全員、迅速に行え」

 

 はーい、と一年生一同が返事をする。皆の服装はもちろんISスーツであるが、場所が海に近いこともあってスク水にしか見えない現状である。とっても興奮するね!

 ちなみに昨日の夜中、一夏と千冬さんの部屋で集まってから解散する直前に『太一、部屋からでるなよ?』、と酔ってるにも関わらず釘を刺されてしまったので、結局遊びに行くことができなかった。無念なり。その代わり、朝起きると麻耶先生の可愛い寝顔を少し見ることができたおかげで目がスッキリした。ありがとうございます。

 

「そうだ、篠ノ之。お前はちょっと来い」

 

「はい」

 

 打鉄用の装備をクラスメイトと協力して運んでいた箒は、千冬さんに呼ばれて向かう。何事だろうか。

 

「今日からお前には専用k────」

 

「ちーちゃ〜〜〜〜〜〜ん!!!」

 

 あっ…(察し)、と言いたくなるほどの声で天災兎の束さんが崖の上から飛んでくる。目標は千冬さんであったが、ガシッとアイアンクローで天災の顔面を押さえ込んだ。お見事。

 

「やぁやぁ、会いたかったよちーちゃん!さぁ、ハグハグしよっ、愛を確かめ────むぐっ」

 

 ガシリ。

 

「うるさいぞ、束」

 

「ぐぬぬ‥‥相変わらず容赦ないアイアンクローだねっ」

 

 更に力を加えた千冬さんのアイアンクローをひょいと抜け出す束さん。それを見た生徒達が呆然としてしまう。やはり、二人ともただ者ではない。化け物とでもいえば良いだろうか。

 それから天災は岩陰に潜めていた箒の方に向かった。

 

「やぁ!」

 

「‥‥どうも」

 

「えへへ、久しぶりだね。何年ぶりかなぁ。おっきくなったね、箒ちゃん。特におっぱ────」

 

 がんっ!

 

「殴りますよ(半ギレ)」

 

「な、殴ってから言ったぁ‥‥。しかも日本刀の鞘で叩かれた!うぅ、箒ちゃんひどいよぉ!」

 

 頭を押さえながら涙目になる束さん。アニメの世界に出てきそうなその顔がとても可愛いと思ってしまったのは俺だけではないはず。

 

「え、えっと、この合宿では関係者以外立ち入り────」

 

「ん?珍妙奇天烈なことを言うね。ISの関係者というのなら、一番はこの私をおいて他にいないよ」

 

「え、あ、はい。そ、そうですね‥‥‥‥」

 

 その関係者ではなく、学校関係者のことなのだが、麻耶先生は見事に轟沈した。

 轟沈といえば、船→軍艦→WoWs→【艦これ】を想像してしまう俺だが、轟沈させたことは一度もない。

 特にお気に入りは艦これの第六駆逐隊(雷、電、暁、響)だ。べ、別にロリコンなんかじゃないんだからねっ(白目)。

 ちなみにWoWsとはWorld of war shipsの略で、軍艦による海戦ゲーである。戦艦大和を目指して、寮でよくやるゲームの一つだ。

 最近では戦艦長門(ながと)までいったところで止まっているが、長門がロリコンということで愛称はバツグンだと俺は思う。

 

(そうだ。麻耶先生を重巡洋艦の摩耶に変えようかな?)

 

「おい束。自己紹介くらいしろ。うちの生徒達が困っている」

 

「えー、面倒くさいなぁ。私が天才の篠ノ之束さんだよ、はろー。終わりっ」

 

 そう言ってくるっと回ってみせてくる。その挨拶でぽかんとしていた一同も、目の前の人物がISの開発者と気づいたらしく、一気に騒がしくなった。

 

「もう少しまともにできんのかお前は。‥‥おい一年、手が止まってるぞ。コイツのことは無視してテストを続行しろ」

 

「コイツとはひどいなぁ。らぶりぃ束さんと呼んでいいよ?」

 

「黙れ」

 

 なんとなくデジャヴ感を感じるのは当然といえば当然なのだろう。そんなやり取りに摩耶先生がおずおずと割り込んでくる。

 

「え、えっと、あの、このような状況はどうすれば‥‥」

 

「コイツのことは無視して構わない。山田先生は各班のサポートをお願いします」

 

「は、はい」

 

「むむ、ちーちゃんが優しい‥‥。束さんは激しくじぇらしぃ。このおっぱい魔神め、たぶらかしたな〜!」

 

 言うなり、摩耶先生へ飛びかかり、あの豊満な胸をモミモミと鷲掴みにしている。そんな光景で俺は少々興奮気味だ。

 

(‥‥羨ま───けしからん!)

 

「きゃぁぁっ!?な、なんなんですかっ!」

 

「ええい、よいではないか〜よいではないか〜!」

 

 これが俗に言うキマシタワーイベントである。 【桜Trick】とかでよくある百合アニメがたまらなく面白いものだ。

 ちなみに束さんのお⊃ぱ亻は千冬さんより若干デカくて、摩耶先生といい勝負になるほどだろう。素晴────

 

 ベシっ。

 

「いてっ」

 

「‥‥鼻の下伸びてるよ。ふんっ」

 

 近くにいたシャロに俺のヘッドを叩かれてそっぽを向いてしまった。誠にありがとうございます。我々の(ry

 とはいえ、シャロのふくれっ面が俺にはご褒美にしかならないと思われる。この顔をトーク背景にしようかね(ゲス顔)。

 トーク背景というのは、某有名なSNSのことだが、バレないように家宝並の写真を背景として利用している。

 一夏は箒に蹴られた瞬間の写真(あれはマジ痛そう)。本音は着ぐるみ仕様のパジャマ(寝顔)の写真(マジ天使)。簪はアニメ見ながら興奮して語っている時の写真(なぜ撮ったし)などと、かなり凝っている。

 反省はしている。後悔はしていない(キリッ)。

 

「‥‥姉さん、頼んでおいたものは?」

 

 ごほんごほんとわざとらしい咳払いをしてから箒がためらいがちに尋ねる。そう言われて揉むのを止めた束さんの目がキラリーンと光った。

 

「ふっふっふっ。ちゃーんと用意済みだよ。さぁ、空を見てごらん!」

 

 ビシッと快晴の青空に向かって指をさす束さん。その言葉でこの場にいる全ての生徒が上を見上げた。

 

 ズズーンっ!

 

「うわっ!?」

 

 変なものかは予想はしていたが、まさか超高速で落下してくるとは思わなかった。なにやら、金属の塊が砂浜に落ちたらしい。

 瞬間、その銀色の金属が剥がれ落ちて中身が現れだした。

 

「じゃーん!これぞ束さんお手製、箒ちゃんだけの専用機こと『紅椿』!全スペックが現行ISを上回ってるんだよ!」

 

「「「な、なんだってー!?」」」

 

 さすがは俺の仲間達である本音と簪。ただし、シャロは呆然としていた。

 真紅のアーマーに身を包んだその機体は、束さんに応えるかのように動作アームによって外へ出てくる。

 

「さあさあ!箒ちゃん、フィッティング&パーソナライズをはじめようか!私が補佐するからすぐ終わるよん♪」

 

「では‥‥頼みます」

 

「堅いな〜。実の姉妹なんだから、もっとこうキャッチーな感じで────」

 

「早くしてください」

 

「‥‥んー。まあ、そうだね。じゃあはじめるよっ」

 

 ぴ、とリモコンを押す束さん。紅椿の装甲が割れ、操縦者を受け入れる状態に移る。そして、乗り込みやすい姿勢にと変わった。

 

「箒ちゃんのデータはほとんど先行して入れてあるから、あとは最新データに更新するだけっと!」

 

 コンソールを開く束さん。さらに空中投影ディスプレイを六枚ほど呼び出すと、膨大なデータに目配りしていく。それと同時に、同じく六枚呼び出した空中投影ディスプレイを叩く。

 

「箒ちゃんが得意な近接戦闘を基礎に万能型にしてあるから、すぐに馴染めると思うよ。あとは自動支援装備もつけておいたからね!お姉ちゃんが!」

 

「それはどうも」

 

 かなり素晴らしいことをしてもらっているのに、素っ気ない態度の箒である。俺達より最強のISなのだから、もっとこうあるだろ‥‥。

 

「んー、ふふ〜ん♪また剣の腕前があがったねぇ箒ちゃん。筋肉を見ればすぐわかるよ。やあやあ、お姉ちゃんは鼻が高いな〜」

 

「‥‥‥‥‥‥」

 

「えへへ、シカトされちった。──はい、フィッティング終わり!さすが私、ちょー早い」

 

 無駄話をしながらも束さんは作業を続けている。そのキーボードの速さは簪以上で世界一を目指せそうな程だった。天災、恐るべし。

 ちなみに『紅椿』は、初期形態から大きな形態変化はない。おそらくあの人がデータを入れてあったからだろう。

 

(あれは近接特化型‥‥か‥‥)

 

 元々、箒は剣の扱いだけは非常に強い。『自動支援装備』など言っていたが、《雷艦》に似た装備があるのだろうか。ますます箒への勝ち目がなくなっていきそうだ。

 

「あの専用機、篠ノ之さんがもらえるの‥‥?」

 

「身内ってだけで、ずるいよねぇ」

 

「それなぁ」

 

 ふと、後ろの生徒達の中から会話が聞こえてきた。それに反応したのは、なんと珍しい束さんであった。

 

「おやおやぁ?君達は歴史の勉強をしたことがないのかな?有史以来、世界が平等であったことなど一度もないよ」

 

 正論を煽り気味に言われた女子は気まずそうに作業に戻る。束さんはさっきの言葉を発している間も手を止めていなかった。天災、恐るべし(2回目)

 そしてそれもすぐに終わり、束さんはそれぞれのディスプレイを閉じていった。

 

「あとは自動処理に任せておけば終わるね。あ、いっくん、白式見せて。たっくんのはこの前見たからいいや」

 

「え、あ、はい」

 

 一夏が『白式』を展開。それを束さんがその装甲にブスリとコードを刺し込む。なんかエロいね(ニッコリ)

 

「あの、束さん。気になったんだけど、どうして太一と俺がISを使えるんですか?」

 

 ふと前から疑問に思っていたことを開発者本人に訊く一夏。確かに俺も気になる。

 

「ん?んー‥‥なんでだろうね。私にもさっぱりぱりだよ。ナノ単位まで分解すればわかる気がするんだけど、していい?」

 

「遠慮します‥‥」

 

 これは俺達も分解するつもりなのだろう。ただ、分解されて二次元美少女の世界に行けるなら歓迎ですけどね。

 

「にゃはは、そう言うと思ったよん。まぁ、ISって自己進化するように作ったし、こんなこともあるよ。あっはっはっ」

 

 結論、何の解決にもならない。

 

「ちなみに後付武装(イコライザ)ができないのは何故ですか?」

 

「そりゃ、私がそう設定したからね」

 

「え‥‥ええ!?白式って束さんが作ったんですか?」

 

「うん、っていっても欠陥機としてぽいされてたのをもらって動くようにいじりまくっただけだけどねー。でもおかげで第一形態で単一仕様能力が使えるでしょ?でねー、なんかねー、元々そういう機体らしいよ!日本が開発して────」

 

「馬鹿たれ。機密事項をべらべらとバラすな」

 

 べしん!とマジ打撃が束さんの頭に直撃する。もちろん、やったのは千冬さん。絶対頭かち割れるなこれ。

 

「いたた。ちーちゃんの愛情表現は今も昔も過激────」

 

 べしん!

 

「やかましい」

 

 二度目の打撃。と叩かれたところで、セシリアが目を輝かせて束さんに話しかけようとしていた。拙い、ここは止めないと。

 

「あ、あのっ────」

「やめろセシリア、あの人に話しかけると酷い目に合うぞ」(小声)

 

「‥‥な、なんでですの?」(小声)

 

「あの天災は自分が身内だと思ってる人以外興味無いんだ。冷酷な対応しかしてこないぞ」(小声)

 

「そう、でしたの‥‥」

 

 セシリアはしょぼーんとなってしまったが仕方が無い。ここで作業を続けていた束さんが喋り出した。

 

「そうだ!ねえねえ、いっくん。 白式改造してあげようか?」

 

「え、えーと‥‥どんな改造ですか?」

 

「うむ。執事の格好になるとかどうかな?いっくんには燕尾服がお似合いだと思うんだよ。あるいはメイド服とか」

 

「遠慮します‥‥」

 

「ちぇー、じゃあ、たっくんがメイ────」

 

「だが断る」

 

「まだメイしか言ってないよー。んー、なら性別が女の子になるとか!」

 

「是非とm────だが断る!」

 

「ちぇー‥‥」

 

 危ない危ない。つい肯定するところだった。確かに女子になって沢山やってみたいことはあるが、色々やばいことになりそうだ。

 

「ごほんごほん、こっちはまだ終わらないのですか?」

 

 箒がわざとらしい咳払いをして、話に入ってきた。

 

「んー、もう終わるよー。‥‥んじゃ、試運転も兼ねて飛んでみてよ。箒ちゃんのイメージ通りに動くと思うよ」

 

「ええ、わかりました。試してみます」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 連結されたケーブルが外れ、箒が瞼を閉じて意識を集中させると、かなりの速さで上昇していった。

 

「これが第四世代‥‥」

 

「凄い‥‥」

 

「チキン肌立ったわ‥‥」

 

 今までにない加速に驚きを隠せないシャロと簪に俺。ハイパーセンサーで確認すると、箒は高度三百メートルほど先で滑空していた。

 

「どうどう?箒ちゃんが思った以上に動くでしょ?」

 

「え、ええ、まぁ」

 

 どうやらオープン・チャネルらしきものを使っているらしく、会話が飛んできた。

 

「じゃあ刀使ってみてー。右が《雨月(あまづき)》、左が《空裂》だよ。今から武器特性のデータ送るよん」

 

 素早い指のタッチでキーボードを扱う束さん。それを受け取った箒は、二刀を同時に抜き取った。この時点でかっこよさが半端ない。

 

「雨月は対単一仕様の武装で打突に合わせて刃部分からエネルギー刃を放出して敵を蜂の巣状態に!射程距離はアサルトライフルくらいだけど、紅椿の機動性ならスナイパー相手でも大丈夫だよ」

 

 それを聞いて箒が試しに突きを放つ。右腕を左肩まで持って行って構える、篠ノ之剣術流二刀型・盾刃の構え。攻防両方にも転じやすく、刀を受ける力で肩の軸を動かして反撃に転じる守りの型、だった気がする。

 そこから突きが放たれると同時に、周囲の空間に赤いレーザー光が一直線に進み、雲を穴だらけにさせた。これは《雷艦》で防ぐのに苦労しそうだ。

 

「次は空裂ねー。こっちは対集団仕様の武器だよん。斬撃に合わせて帯状の攻性エネルギーで攻撃するんだよー。振った範囲に自動展開だからちょー便利。そいじゃ、これ打ち落としてね」

 

 そう言って束さんが突然十六連装ミサイルポッドを呼び出した。え、あれ前まで自衛隊の最先端だった兵器じゃねえか。ISが出たおかげで影薄くなっちまったんだよな‥‥。

 

「───やれる!この紅椿なら!」

 

 考えているうちにミサイルが一斉射撃され、箒は右脇下に構えた空裂を一回転するように振るう。その一振りでミサイルを全弾撃墜した。

 

「すげえ‥‥」

 

「ビューティフォー‥‥」

 

 その光景で一夏と俺も驚愕してしまう。というよりほぼ全員が同じ状態である。そんな中、束さんは満足そうに眺めていた。

 

「‥‥‥‥」

 

 けれど、一人だけその束さんを厳しく見つめる者がいた。それは────

 

(千冬さん‥‥?なんか鋭い眼差しになってるような‥‥────)

 

「せ、せんせー‥‥織斑先生!た、大変です!」

 

 摩耶先生がおっぱいぷるんぷるん(総統風)させて走ってきた。なんてそんなことを考えている状況ではないようだ。一体何があったんだ?

 

 

To Be Continued‥‥

 

 




お久しぶりです。次回からこの物語の山場みたいなものなので投稿は遅くなります。

━━ラウラが朝(ry

|´д`)ハァハァ

━━真耶の寝顔

ちなみに胸もはだけていたそうです(ニッコリ)

━━アニメの世界に出てきそうな顔

だって本物のアニメでそんな作画になってましたし(´◉◞౪◟◉)

━━艦これ

次話が遅れた全ての始まり(言い訳)

第六駆逐隊、最高ッスね。というやっぱり駆逐艦は最高だぜ!ですね。

ちなみにWowsはやってません。やりたいんですけどね

摩耶(重巡洋艦)、ここにきて愛称変更。

━━百合アニメ

言ってしまえば、美少女しかいない日常系アニメって百合がどっかにありますよね。特にきんモザとか。あややはガチ。

━━我々の業界では(ry

もうこれ何回書いたかわかんねえな

━━某SNS

トーク背景がゲスイ太一。

━━挿絵

ヤケクソに一日で描いてやった。正直いるかこれ?

━━おっぱいぷるんぷるん

わかる人にはわかるネタ。総統の空耳です。


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第40話 ボウソウ

読者の皆様、どうもお久しぶりです。最終投稿日が六月ということで何をしていたか、というと……

他のゲームに没頭してた。設定があやふやで続かなくなった。入試が近い。などです。

というわけで一度設定を見直し、改良などを行って帰ってきました(いつの間にかお気に入りも増えてて焦った。

最後に変更点を軽く、紹介します。



【挿絵表示】


オリ主のISを改良しました。前よりまともになったはずです(震え声)

次に束さんと初めてあった日は4歳くらいに変えました。なにせ白騎士事件が十年前だったので。(忘れてたとは言えない……)

微妙な点として、太一とシャルロットの共に着替えイベントにて修羅場になってしまったヒロインの目が笑っていないことを追加。

そして、5話にて楯無の特訓で打鉄を動きが機敏過ぎることに疑問を抱いていることを追加。

大体は以上です。


張り切り過ぎたのか、今回は一万文字





「では、現状を説明する」

 

 旅館の一番奥に設けられた宴会用の大座敷・風花の間。ここで専用機持ちの俺達が集められた。

 照明は少なく薄暗い室内の中心部に、大型空中投影ディスプレイが浮かび上がっている。

 今日のテスト稼働は中止。殆どの生徒は自室待機となっている。無論、本音は谷本さんへ引き渡した。

 

「二時間前、ハワイ沖で試験稼働にあったアメリカ・イスラエル共同開発の第三世代軍用IS『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』が制御下を離れて暴走。監視空域より離脱したとの連絡があった」

 

 お前は何を言ってるんだ、となってしまうほど面食らってしまう。軍用IS‥‥?それがなんで俺達に連絡が?

 少し周囲の反応が気になったため、俺はチラ見をする。

 

「………………」

 

 一夏以外の全員、厳しい顔つきになっていた。

 俺や一夏、箒とは違う、国家代表候補生だから、このような事態の訓練を受けていたのだろう。特に現役軍人娘のラウラが一番真剣である。

 

「その後、アメリカ側の人工衛星により、福音はここから二キロ先の空域を通過することが分かっている。時間にして四十五分後。学園上層部から我々がこの事態に対処しろ、とのことだ」

 

 本来なら責任を持って(アメリカ)以色列(イスラエル)が対処するのが普通ではないだろうか、と俺は思いながら話を聞き続ける。

 

「教員は訓練機で空域及び海域の封鎖する。よって、本作戦では専用機持ちに担当してもらう」

 

 ……いや、ちょっと何言ってるかわかんないです。

 

「では作戦会議と行こうか。意見があるものは挙手するように」

 

「はい」

 

 真っ先に手を挙げたのはセシリアであった。

 

「そのISの詳細なスペックデータを要求します」

 

「いいだろう。だが、これらは最重要軍事機密だ。けして口外してはならない。漏洩した場合は査問委員会による裁判と二年以上の監視は必ずつけられる」

 

「了解しました」

 

 正直気が気じゃない俺に対して、一夏以外の代表候補生の面々と教師陣とでそのデータを元に相談し始める。

 

「広域殲滅で特殊射撃型‥‥わたくしのISと同じくオールレンジ攻撃ができるようですわね」

 

「攻撃と機動の特化型ISね。しかもスペック上ならあたしのよりかなり上‥‥厄介だわ」

 

「この特殊武装が曲者みたいだね。ちょうどリヴァイヴ用の防御パッケージが届いてるけど、何度でも防げるものじゃないよ」

 

「このスペックだと防御に徹することが多くなりそう。私にはそんなものないからどうすれば‥‥」

 

「しかも、このデータでは格闘性能が未知数でスキルもわからん。偵察は可能なのですか?」

 

 セシリア、鈴、シャロ、簪、ラウラは真剣に意見を交わしている。俺はただただ頷くばかりであった。

 

「無理だろうな。このISは現在も超音速飛行状態だ。最高速度は二千キロを超えるそうだ。アプローチは一度きりのものだろう」

 

「一度きり……つまり、一撃必殺技を持つISがないといけないな」

 

 やっと口を開くことができた俺の言葉に、自分と他の皆が一夏を見る。

 

「‥‥え?」

 

「一夏、お前の零落白夜で落とすんだ」

 

「それしかないかもね。でも僕が思うに‥‥問題は───」

 

「どうやって一夏さんをそこへ運ぶか、ですわね。エネルギーの全てを攻撃に使うことが必要ですし‥‥」

 

「しかも、目標に追いつける速度が出る機体でなければならないな。超高感度ハイパーセンサーも必要か」

 

「ちょっ、おい! 俺が行くのか!?」

 

「「「「「「当然」」」」」」

 

 俺も合わせた六人の声が見事にハモった。

 

「織斑、これは実戦である。もし覚悟がないならば、無理強いはしない」

 

 さっきまで戸惑っていた一夏だが、千冬さんのその言葉で真剣な眼差しへと変化した。

 

「やります。俺が、やってみせます」

 

「よし、それでは作戦の具体的な内容に入る。現時点で最高速度が出せる専用機持ちの機体はどれだ?」

 

「それでしたら、わたくしのブルー・ティアーズが良いかと。ちょうどイギリスから強襲用高機動パッケージ『ストライク・ガンナー』が送られていますし、超高感度ハイパーセンサーもあります」

 

 ちなみに全てのISがこの『パッケージ』と呼ばれる換装装備を持っているそう。

 パッケージとは武装以外に追加アーマーや増設スラスターなど装備一式を指す。中には専用機のみ存在する機能特化専用パッケージ『オートクチュール』というものがあるらしい。少なくとも俺は見たことない。

 

「それで、超音速下での戦闘訓練時間は?」

 

「二十三時間です」

 

「よし、それならば適──」

 

「待った待ーった。その作戦は待ってよぉー!」

 

 突然、明るい声がしたと思ったら、なんと天井に束さんの首部分がひょこっと飛び出ていた。まるで生首がぶら下がっているように怖い。

 

「‥‥束、今は機密会議中だ。早く出ていけ」

 

「とうっ☆」

 

 そんな命令はお構い無しにと一回転して着地。これぞ自由人の極みといったところである。

 

「ちーちゃん! もっといい最高の作戦が私の脳内にナウ・プリンティング!」

 

「だから出てい───」

 

「聞いて聞いてー! こんなときこそ、紅椿の出番なんだよっ!」

 

「なに?」

 

 束さんの頭を片手で掴んで、追い出そうとしていた千冬さんがその言葉で力を緩め、スルッと天災は腕から離れる。

 

「紅椿のスペックを見なされ! パッケージなんかなしで超音速機動ができるよん!」

 

 ひょい、と束さんは千冬さんを囲むように数枚の空中投影ディスプレイを出現させる。これもISの量子変換を利用した技なのだろうか。

 

「紅椿の展開装甲を調整して‥‥ホラ! これでスピードに困らないね!」

 

「展開装甲‥‥?」

 

 聞きなれない言葉に一夏は首をひねって呟いた。それには俺も同感である。ふと、他のディスプレイをみると、いつの間にかこの天災に乗っ取られたようで紅椿の画面しか映らなくなった。

 

「ええとねー、展開装甲とはだねー、この天才の束さんが作り上げた第四世代型のIS装備なんだよ!」

 

 はい? 第四世代……だと?

 

「はいはーい、ここでとっても心優しい束さんの解説たーいむ! いっくんとたっくんのためにね。でー、まず、第一世代は『ISの完成』を目標とした機体でー、『後付武装による多様化』――これが第二世代。そして『操縦者のイメージ・インターフェイスを利用した特殊兵器の実装』というのが第三世代。たっくんの《雷艦》がその一つだね。……で、第四世代は『パッケージ換装を必要としない万能機』という、現在絶賛机上の空論中のもの。はい、理解できたかな? 先生は優秀な子が大好きです」

 

「は、はぁ……。え、えーと……?」

 

 俺も正直、一夏と同じ状態に陥っている。なにせやっと第三世代の試作機ができたばかりが殆どである。それがこの目の前にいる天災が、またやらかしたらしい。色々な漫画やアニメのどの天才キャラもビックリである。

 

「ちっちっちっ。束さんはそこらの天才とは違うのだよ。これくらいは三時のおやつ前なのさ!」

 

 俺達の方を見ながら、メトロノームのように指をふる。なんとも中途半端なイメージなのは束さんらしいな、と思ってしまうものだ。

 

「具体的には白式の《雪片弐型》に使ってまーす! 試作感覚で私が突っ込んだ〜」

 

「「「え!?」」」「ナ、ナンダッテー!!」

 

 こればかりはさすがに他の皆も驚いていた。

 おそらく零落白夜発動時のそれが展開装甲なのだろう。つまり、考え方次第では白式は第四世代、正式にいえば第三世代、曖昧にいえば3.5世代ということになる。なんてこったい。

 

「それで、うまくいったので束さんの力で紅椿は全身のアーマーを展開装甲にしてありまーす。システム稼働時にはスペックデータはさらに倍プッシュだ☆」

 

「ち、ちょ、ちょっと待ってください。え? ぜ、全身が雪片弐型と同じ? それはつまり……」

 

「うん、最強だね。その一言に限るね」

 

 千冬さん以外は全員、ぽかんとしている。目の前の天災の存在に度肝を抜かれていた。

 

「ちなみに紅椿の展開装甲は、攻撃、防御、機動と用途に応じて切り替えが可能。より発展させたタイプだから、第四世代型の目標である即時万能対応機ってやつだね。にゃはは、早くも目標に到達しちゃったよ。ぶいぶぃ」

 

 ……。呼吸音すら聞こえないほど静かな空間になってしまった。聞こえるのは旧式コンピュータのファン音のみ。

 

「あれれー? みんなどうしちゃったの? 誰か死んだかな? お葬式? 変なの」

 

 変なの、どころの話ではない。

 世界中が第三世代型の開発に使っている多額の資金、膨大な時間、優秀な人材というもの。

 それらはすべて無意味になってしまったから。

 これは完全に馬鹿げているだろう。それは世界中がそう思えるはずである。

 

「――束、言ったはずだ。やりすぎるな、と」

 

「えー? そうだっけ? えへへ、つい熱中しちゃったみたいだね〜」

 

 千冬さんに言われてやっと、俺達が静寂した状態になっている理由を理解したらしい。

 

「あ、でもほら、紅椿は完全体とはいえないし、そんな顔しないでよ。いっくん、たっくん。二人が暗いと束さんはイタズラしたくなるよん」

 

 ぱちっ、とウインクをする束さん。そんな場合ではないと思っても、可愛いと感じてしまう俺がいた。

 

「まー、あれだね。今の話は紅椿のフルスペック状態を引き出せたらの話だからね。でもまあ、今回の作戦をこなすくらいは夕食と夜食の(あいだ)前だよ!」

 

 夕食と夜食の間前、ってもうわけわからん。

 

「それにしてもアレだね〜。海での暴走というと、十年前の白騎士事件を思い出すねー」

 

 屈託のない笑顔で話す束さん。これに千冬さんは『しまった!』というポーズになっていた。

『白騎士事件』――。

 もしかしたら、これがきっかけで軍事的なものに興味を持ち始めたかもしれない。

 十年ほど前に束さんが発表したISは、当初世界はその成果を認めてはいなかった。というより、認めたくなかったである。

 

「いやー、世界はあんなに馬鹿だったとはねー。私の才能は信じず、神は信じてるなんて、偶像崇拝もいいところだよ」

 

 IS発表から一ヶ月。事件が起きた。

 各国の旧式から最新鋭の大量のミサイルが、日本へ2,341発ほど発射されたというもの。もちろん、誰も故意でやった訳では無いといわれている。それもそのはず、これら全ては何者かによってハッキングされてしまったのだから。

 この事態に、自衛隊が当時の最新鋭兵器で防御しようとしたが、間に合うわけがなかった。

 そこで登場したのが、白銀のISを纏った一人の女性。

 それをテレビの生放送などで見ていた国民や世界の人々は唖然とした。ヒーローマンガにしか見えない展開だったからだ。

 

「凄いよねぇ。約半数のミサイルを、ぶった斬ったのだから。あれは本当にかっこよかったな〜」

 

 その時の武装は剣のようなもののみ。

 そして、遠距離にあったミサイルは、突然、当時試作型の大型荷電粒子砲を空中に()()して打ち落とした。

 これを恐れた世界各国は国際条約を無視して大量の偵察機を飛ばした。

――だがしかし、それすらも無意味なものだった。

 

「バルカンだろうがミサイルだろうが、何をしてもISに傷なんかつかないよん。エネルギーシールドもあるしね」

 

 まず、戦闘機は当初のIS以上の急速旋回は不可能。乗っている人は急激なGに耐えられないからである。例え急激な旋回が可能だったとしても、今度は戦闘機自体が耐えられないといった問題もあるのだ。

 これに対し、ISはまずブラックアウトより手前のグレイアウトやレッドアウトすら起こらない。ちなみにグレイアウトというのは、簡単には色調失うことでレッドアウトは視野が赤くなる、ブラックアウトは完全に視野を失うこと。そして、最終的にG-LOC(失神)に陥ってしまう。

 その特徴とハイパーセンサーを組み合わせた状態では誰も勝てなかったのだ。

 しかも、無力化されたものは皆、死んではいなかった。白騎士が敵を殺すことなく戦えるほど余裕があるということだ。

 その後、突然姿を消し、どの国のレーダーでも捉えきることはできなかった。

 言うまでもなく、完全敗北である。

 

「いやー、それにしても〜うふふ。白騎士は誰だったんだろうねー? ね? ちーちゃん?」

 

「知らん」

 

「うむん。私の予想では黒髪でー、バストが八八センチの――」

 

 ごすっ。常人では下手すれば死ぬほどの音がした。千冬さんの出席簿ならぬ凄く硬い情報端末アタック。少なくとも俺ならエンジェルになってたね。

 

「ひ、ひどい、ちーちゃん。この天才束さんが死んじゃうよ〜」

 

「この程度で死ぬほど柔らかい天災じゃないだろ」

 

「あれれ、バレちゃったー?」

 

 この程度って……。ひょっとするとこの人はたとえ拳銃で撃たれたとしてもピンピンするんじゃないだろうか。それどころか弾丸を弾かれそう。それか避けるな。

 

「それはそうとちーちゃん。やっぱりあの事件では大活躍だったねー!」

 

「そうだな。白騎士の活躍だ」

 

 うん。どう考えても千冬さん以外に白騎士と思える人物がいないな(確信)。

 

「話を戻そう。……束、紅椿の調整にかかる時間は?」

 

「お、織斑先生!?」

 

 今まで黙っていた俺達の中で、最初に驚いた声を上げたのはセシリアだった。確かに専用機で唯一の高機動パッケージ持ちだからな。そう思うのも無理はない。

 

「わ、わたくしとブルー・ティアーズなら必ず成功させますわ!」

 

「そのパッケージは量子変換(インストール)済みか?」

 

「い、いえ、それはまだ、ですが……」

 

 痛いところを突かれ、花がしぼむように小声になるセシリア。それに対し、満開の桜が咲くほどの笑顔で束さんが口を開く。

 

「ちなみに紅椿の調整は七分で十分だよ☆」

 

「よし。では本作戦では織斑・篠ノ之の両名による目標の追跡及び撃墜――」

 

「ちーちゃん! まだまって!」

 

「いい加減にしろ、束。今度はなんだ」

 

「この作戦にはたっくんも居た方がいいよ! 実は獰飆用に外部接続式のジェットエンジン持ってきたし」

 

 俺用のジェットエンジン……だと? まさか俺も行くのか? それになんで持ってきたし。

 

「え、俺も出撃……ですか?」

 

「うんうん、でもジェットエンジンは片道旅行にしかならないけどね。それでもたっくんには二人の援護に持ってこいだよ!」

 

 二人の援護。それはおそらく俺が持つ《雷艦》に宿る能力を活用できるからだろう。スペック上、暴走ISはエネルギー兵器を使ってるそうで、獰飆にはもってこいの敵である。とはいえ、本当に大丈夫なんだろうか。

 

「……まぁ、迅速に作戦を成功できるのならば問題ないか。よし、では織斑・篠ノ之・城谷上による目標の追跡及び撃墜を目的とする。作戦開始は三十分後。各員、準備にかかれ」

 

 ばん、と千冬さんが机を叩く。それと同時に教師陣はバックアップに必要な機材の設営を開始した。

 

「手が空いているものはそれぞれ運搬など手伝える範囲で行動。作戦要員はISの調整しろ。もたもたするな!」

 

 もたもたするな、と怒られました。

 

「ええと、俺達はどうすれば……」

 

 よくみたら、周りには俺と一夏しかいなかった。他は手伝いに行ったらしい。さすが代表候補生。

 

「白式も獰飆もセットアップを済ませとけ、あとエネルギーも満タンにな」

 

「は、はい」「了解」

 

(氷歌、コンソール展開)

 

『了解です』

 

 ぶわん、と目の前に自分しか見えないディスプレイが現れる。それをみるとエネルギー残量100%と表記されていた。

 

「ふむ、セットアップも問題なし。よし誰かを手伝いにいくか」

 

 ちょっとした気分で、いかにも真面目そうな歩き方をしながら辺りを見渡すと、大きな何かを運ぶシャロがいた。

 

「よ、シャロ。手伝おうか?」

 

「んー? あ、いや、だ、大丈夫……だよ?」

 

 どうみても重たそうにしているシャロ。優等生だからか無理して引き受けたのだろう。シャロらしいというかなんというか。

 

「そんな気にすんなって、こういうのは協力プレイこそ最高ってもんさ」

 

「プ、プレイ?」

 

 自分でも何が言いたいのかわからなくなってきたが、ようするに、仲間同士助け合うのは良い事だ、とでも言えばいいか?

 

「ちょっと前の方持つよ。……ほい」

 

 ピタッ。

 

「ひゃっ」

 

「おっと、すまぬ」

 

「あ、うん。大丈夫」

 

 急いでシャロが持ってる箱を持とうとしたら、シャロの手を俺の手で触ってしまった。申し訳ない反面――

 

(この肌触りと暖かさ、まさに女の子の手、ワンダフォーゥ)

 

 と変態じみた考えしか出てこないのである。ふとシャロを見ると、顔を赤くしていた。はて、気のせいか?

 その後、後ろを見ながら協力して運んでいると、近くでセシリアと一夏が話していた。

 ちょっと気になったため、二人で箱を運びつつ、ゆっくりとそこへ近づく。

 

「こ、こほん。それでは高速戦闘のアドバイスをしましょう。一夏さん、超高感度ハイパーセンサーを使用しましたか?」

 

「ないな」

 

「そうですか。ではまずその注意点から。高速戦闘用に調整された超高感度ハイパーセンサーというのは――」

 

「使うと世界の全てがスローモーションに感じるのよ。ま、最初のみだけどね」

 

 いつものポーズで解説していたセシリアに横入りした人物がいた。

 最近、胸が成長しなくて悩んでいるといわれる鈴だ(根拠の無い個人的調査)。

 

「鈴さん!? わたくしが説明をしていますわよ。大体、高速戦闘の訓練はされてるんですの?」

 

「十二時間くらいね。ま、セシリアほどじゃないけどさ」

 

 予想外の返事に、セシリアは少し怯んだ。

 それでもゴホンと咳払いして、また講義を再開させた。

 

「そ、それではなぜスローモーションになるかというと――」

 

「ハイパーセンサーが操縦者に対して詳細な情報を送るために、感覚を鋭敏化させるんだよ。だから一瞬、逆に周りが遅くなったように感じるんだよね」

 

 今度はシャロが割り込んできた。優等生の癖でついつい教えたくなる衝動でもあるのだろうか。

 

「しゃ、シャルロットさん? わたくしが説明途中で――」

 

「それよりも、注意すべきはブースト残量だな。特に一夏は瞬時加速を多用するクセがあるから、一層気を配るべきだ。高速戦闘状態ではブースト残量はいつもより倍近い速度で減っていくぞ」

 

「ら、ラウラ、さん? わたくし――」

 

「あとは……通常時よりも相対的な速度があがってるから……射撃武器のダメージが大きいし……当たりどころによっては……アーマーブレイクしちゃう」

 

「だからお互いに気をつけようぜ。一夏」

 

「簪さんに太一さんまで! ああもうっ、どうして皆さんわたくしの邪魔をしますの!?」

 

 ついに激おこプンプン丸になるセシリア。俺は特に邪魔したつもりはないが、どう考えてもタイミングがアレだよな。これは後で謝ろう。

 

「あー、えーと、セシリア」

 

「なんですの!?」

 

「色々教えてくれてありがとうな。他にも注意点があれば教えてくれよ」

 

 一夏の行動にきょとんとするセシリア。一瞬で怒りが吹き飛んだことがわかる。こういうときはイケメンな一夏である。いや、常にイケメンか。

 ここで一度、中断していた箱の運搬を再開。シャロと戻る頃には鈴が何か話していた。

 

「――今回の作戦は一夏の零落白夜が鍵になるんだから、瞬時加速は使わないでよ。あれ、エネルギーすぐ減っちゃうから」

 

 そう言ってきたのは、最近(ryの鈴である。どうやら、さっき運んだ機材を最後にしたようだ。

 

「あとは防御をどうするかだなぁ。突撃用のシールドが必要だけど、一夏はモンハンの大剣みたいな装備してるからね」

 

 運び終わって手がヒョロヒョロになったシャロが言う。ちなみにモンハンを知ってるのは俺の影響、とでもいえば解決するだろう。そりゃ、前は同室関係にあったわけですし、色々なゲームで遊ぶことだってあるさ。

 

「でもまぁ、俺の《雷艦》があれば、一夏の防衛くらい、難なくこなせるだろ。あと箒も」

 

「そうかもね。でも自分のことも守らないとダメだよ?」

 

「気をつけて……太一」

 

 シャロと簪にそう言われて、より一層や(殺)る気に満ちていく俺氏。嗚呼、心配されるなんて僕は幸せ者だなぁ。……そんなことより、

 

(絶対に成功させてみせるぞ。氷歌)

 

『はい。マスター』

 

 

 

 

 

 

 時刻は十一時半。

 決戦のとき。天気は絶好の勝負時と言える晴天だった。

 砂浜の上で俺と一夏、箒は、トライフォースの如く三角形に並んで立つ。

 皆それぞれのポーズで機体を展開させ始める。ちなみに俺はISの待機形態をじっと見つめながらである。客観的には腕時計の時間を確認してるだけ。

 

「獰飆、出撃する」

 

「来い、白式」

 

「行くぞ、紅椿」

 

 その言葉で全身が光に包まれ、機体が現れる。

 その背中には小さくてもシンプルなジェットエンジンが装着されている。しかし、デザインがこれまた酷いのは束さんの気分というものだろうか。形状はどうみても人参である。

 

「じゃあ、箒。よろしく頼む」

 

「本来なら男が女の上に乗るなど私のプライドが許さないが、今回だけは許してやろう」

 

 なんというか箒が一夏を乗せている、箒の上に一夏が乗る。空飛ぶホウキ(ry いや、何でもない。

 しかし、箒は機嫌が妙にいい気がする。

 

(まぁ、何かあればサポートするまでか)

 

「それにしても、たまたま私たちがいたことが幸いだな。この三人で力を合わせればできないものなどないだろう」

 

「あぁ、そうだな。でもな箒。これは実戦であって、訓練じゃない」

 

「そうだぞ。十分に注意して――」

 

「無論、わかっているさ。どうした?ふふふ、怖いか?」

 

 俺と一夏の注意に対し、箒はあの天龍ちゃんのようなセリフを返す。

 

「そうじゃねえって。あのな――」

 

「はは、心配するな。お前はちゃんと私が運ぶ。大船に乗ったつもりになれ」

 

 いや、大船じゃなくて魔女が乗るような空飛ぶ(ry いえ、サーセンした。

 

「…………」

 

 とはいえ、ずっとこんな調子である箒。コイツは何かやらかすのではないか、と不安で仕方が無い。

 そこで一夏は箒の上に乗る。

 

『織斑、篠ノ之、城谷上』

 

 ISのオープン・チャネルから千冬さんの声が聞こえる。俺達は皆、うなずいて返事をした。

 

『今回の作戦の要は一撃必殺だ。短時間での決着を心がけろ』

 

「了解」

 

「織斑先生。私は状況に応じて一夏の援護をすればよろしいですか?」

 

『そうだな。だが、無理は禁物だ。お前の実戦経験は皆無。突然、なにかしらの問題が出るとも限らない』

 

「わかりました。できる範囲で支援をします」

 

 箒の冷静な返事。やはり、どこか浮ついているかもしれない。これが気のせいだといいのだけれど。

 

『――城谷上』

 

「あ、はい」

 

 なにやらプライベート・チャネルで千冬さんが話しかけてきた。

 

『織斑にも言ったが、篠ノ之がなにかをし損じるやもしれん。二人のことを頼んだぞ』

 

「了解です」

 

『では、はじめ!』

 

――ミッション、スタート。

 

 突如、オープン・チャネルに切り替え、号令をかけられる。その瞬間に俺はジェット機を噴射。紅椿と同様の速さで飛翔した。

 

(хорошо(ハラショー)、素晴らしい)

 

 どうやら自動的に箒へ付いて行く仕組みになっているらしい。それにしても物凄い速さである。

 たったの数秒で高度五百メートルに達した。

 

「暫時衛星リンク確立……情報照合完了。目標の現在位置を確認。――よし、一気に行くぞ!」 

 

「「おう!」」

 

 箒は言うなり紅椿を加速。脚部及び背部装甲が展開装甲の名にふさわしくばかりと開き、強力なエネルギーを噴出。

 

(この速さにもついていける人参もすごいな)

 

 そんな呑気なことを考えていると――

 

「いたぞ、二人共!」

 

「「!!」」

 

 ハイパーセンサーの視覚情報が俺自身の感覚のように現れる。

『銀の福音』と呼ばれるそれは、名の通り銀色。

 そして何より、頭部から生えた一対の巨大な翼が脅威に見える。それには資料によると、大型スラスターと広域射撃武器を融合させた新型systemだそう。しかし、機密的すぎてあまりよく伝えられてない。ただのエネルギー兵器だと良いのだけれど。

 

(よし、このまま追って倒して――)

 

――がしかし、

 

「なん……だと……」

 

 ISは一機だけではなかった。ハイパーセンサーで捉えた猛スピードで別方向から向かってくるそれは、見たことのないISだった。しかも、かなりの近距離である。

 見た目は何処か従来の戦闘機を思わせるようなスラスター。そして、人が乗れるかわからないくらい細くて小さな形態であった。

 

「緊急事態発生。これより不明ISは俺が相手します!」

 

 咄嗟にオープン・チャネルを開き、千冬さんの方にも伝える。

 

『すまない。こちらのレーダーでは未確認ISの反応は皆無だった。これよりプランBに変更する。織斑、篠ノ之は福音を、城谷上は不明ISを標的にしろ』

 

「「「はい!」」」

 

「太一、奴は頼んだぞ!」

 

「あぁ、任せろ」

 

 オープン・チャネルを切り、一夏と言葉を掛け合った後、不明ISへ全速力で向かう。あくまでも人参ジェット機を使っているため、エネルギー残量に問題はないが、長くは持たない。

 

(……ふふ、面白い)

 

 こんな最悪の事態が重複しているにも関わらず、ふいに笑みがこぼれる。

 クラス対抗戦のときもそうだが、現実とは思えない展開が、男の『ロマン』をくすぐられてしまうのだ。

 そんなことなど普通は有り得ない。

 

――しかし、今此処に、この世界で存在している。

 

 

【挿絵表示】

 

 

※ロリコンで有名な太一です。

 

 一夏達から遠く離れた領海の上空二千メートル。

 何故か一秒たりとも動かない敵とお互い睨み合うように待つ。

 風の音しか聴こえないとき、最初に口を開いたのは俺である。

 

「悪ぃが、こっから先は一方通行だ。

侵入は禁止ってなぁ!」

 

 何処か聞いたことのあるセリフを言い放ち、同時に全速力で突撃した。

 

 

 

……To be continued




はい、今回は闘わず。

というわけで次回は早めの投稿をできればいいなと思っています。(具体的な時間はわからない)

えー、何かやって欲しい描写があれば、直接メッセージをください。(できればラブコメ系が欲しい)

※感想は気軽にどうぞ

━━遅い。

本当にすみません。でも新たな挿絵が完成しましたよ。今までより本気の挿絵。※ただし、基本トレス絵である。コスチュームは違います。

━━太一も参戦

これには理由があるでしょうね(ニッコリ)

━━シャルロットの肌触り

なぜ、思いついたか自分に問いたい。ベタこそ王道ってのが僕のモットーかもしれないですね。

━━根拠の無い個人的調査

要するに、空想上の調査。妄想です。
しかし、間違ってはいない。

━━可哀想なセシリア。

原作でも同じく不遇っぷり。しかも、決めゼリフをカットしちゃったっていう(諸事情)

━━モンハン

モンスターハンターですね。男には結構人気が高いのではないでしょうか。それをシャルロットがあたかもプレイしたかのように……いや、まぁ、男のふりしてた時に仕方なくやったら面白かったってだけですけど。

━━空飛ぶ箒

ほら、魔女の宅急便のキキとか、おジャ魔女どれみとか、リトルウィッチアカデミアとか、ふらいんぐうぃっちとか色々ありますね。

━━хорошо

ここでは艦これの響とか、ガルパンのカチューシャとか、ラブライブとか、色々なキャラが使うロシア語です。

━━ふふ怖

知ってる方は知ってる。※艦これ

━━悪ィがこっから先は一方通行だァ!!!!

完全にアクセロリータですねこれ。とあるネタ好きすぎだろ俺。

━━いつもより文章力上がったはず。
※会話文において!の後の空白や正しい……←これとか学んだ程度。

それってゲームでいうレベルが0から1上がった程度じゃ……


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第41話 フクイン

どうも、久しぶりです。

というわけで四枚ほど新たな挿絵を投稿してました(トレス絵)。


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まるで別のアニメを見てるようだ(個人的な感想)
まぁ、所詮絵をなぞって少しオリジナルに加工しただけのトレス絵ですけどね……。

※感想は気軽にどうぞ。



「うおおおお!!」

 

 謎のISへの突撃。しかし、スルッと躱され、奴のスラスターにある小型荷電粒子砲を素早く連射してきた。

 《雷艦》で防ぎながらこちら《レーザーバルカン砲》で応戦する。

 こちらは数発貰ってしまった代わりに、向こうには十数発のレーザーを命中させた。

 

(変だな、そこまで強くないような)

 

 クラス対抗戦で起きた無人機より、はるかに弱く見える。もしかしたら、自分にとって有利な敵のスペックだからかもしれない。

 相手の武装は八門の荷電粒子砲と徹甲弾を積んだ強力な戦車砲、高精度の機関砲のみらしい。まるで俺に倒してくださいと言わんばかりの装備である。

 

(氷歌、奴は無人機で間違いないな?)

 

『はい。人間の反応はありません』

 

(サンキュー)

 

 氷歌に確認したところ、完全に無人機のようだ。見た目からして人が乗れるような形状ではなかったので察してはいたが。

 無人機との距離を一機に詰めたところで《雷焱》に切り替え、瞬時加速を行う。

 

「どりゃあ!」

 

 見事、斜め斬りに成功し、無人機の片腕を破損させた。

 そこで背部に装着されていた人参ジェットエンジンが停止した。

 

「外部装備システム・解除」

 

 プシュー、と音を立てながら、人参型ジェットエンジンが外れ、海へと落ちていく。ちょっともったいないけど、束さんなら気にしないかな。

 しばらく敵と追いかけっこしているときに、今度は戦車砲を展開して砲撃しきた。それに俺は《雷艦》で華麗に弾く。

 無人機とはいえ、射撃能力はそこらの代表候補生並に高い。おそらく自動偏差射撃の機能でも搭載されているのだろう。だいぶ高性能らしく、《雷艦》を駆使しないと攻撃を避けるのは難しい。

 

「まだ倒せないか……」

 

 お互いに弾幕を張っていながらも、着実に命中したり、されたりしていく。気がつけば、シールドエネルギーが四分の一ほど減っていた。

 

(急いで福音(ゴスペル)の方に行かねば……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 太一から少し離れた海上の空で、一夏と箒は、福音との戦闘を開始していた。

 

「加速するぞ! 目標接触まで十秒後だ。一夏、集中しろ!」

 

「ああ!」

 

 箒はスラスターと展開装甲の出力をさらに上げる。その速度は飛翔する福音の速度より速かった。そして、福音との距離がピンポイントになった時――

 

「うおおおおおっ!」

 

 白式の単一仕様能力(ワンオフアビリティ)、零落白夜を発動。同時に瞬時加速を行い、間合いを詰める。

 

(当たれ――!!)

 

 光の刃が福音に触れる、その刹那。

 

「何っ!?」

 

 福音は、なんと最高速度の状態で、反転、後退の姿となって身構えた。

 

(……一旦、引くか……いや、そのまま続行だ!)

 

 思うなり一夏は再度、押し切ることにした。

 だが――

 

「敵機確認。迎撃モードへ移行。《銀の鐘》、稼働開始」

 

「!?」

 

 オープン・チャネルから一夏に抑揚のない機械音声が聞こえてきた。太一のISにある氷歌の声とはだいぶ違うものである。

 一夏は福音の明らかな敵意を感じて、ぎくりとした。

 そして、一夏の予感は一秒経ってすぐ現実となった。

 ぐりん、と。突然、福音が機体を一回転させ、零落白夜の刃をたったの数ミリの精度で避ける。それはPICを標準搭載しているISであっても、かなり高度な操縦といえる。

 

(くっ……! あの翼のせいか!?)

 

 高出力の多方向推進装置というのはこの世界に多く存在しているが、ここまで精密な急加速を一夏は見たことがなかった。これが、『重要軍事機密』というものなのだろう。

 

「箒! 援護を!」

 

「任せろ!」

 

 時間がかかればかかるほど不利になる状況下で、一夏は箒に再度福音へと切りかかる。

 

「クソッ……!」

 

 しかし、何度も紙一重な回避をされてしまう。シールドエネルギーが残り少ない一夏は、もう一度大振りの一太刀を食らわせるが――

 

「!!」

 

 その隙を見た福音は、スラスターでもある銀色の翼を開く。

 

(しまった! こいつは――)

 

 一夏が思った通り、砲口である。

 次の瞬間、そこから光の弾丸が大量に発射された。目標は白式である。

 

「ぐぅっ!?」

 

 その弾丸は、高密度に圧縮されたエネルギーで、羽のような形状をしている。それが白式のアーマーに突き刺さった瞬間に一気に爆発した。

 問題はその連射速度であるが、とてつもなく速い。太一のレーザーバルカン砲よりかは砲精度がガバガバであるが、爆発弾ということもあり威力は高い。

 

「箒、同時に攻めるぞ。俺は右を行く!」

 

「了解した!」

 

 しかし、二人の攻撃は全くかすりもしない。

 

「くっ……シールドエネルギーが残り少ないだと?! 一夏! 私が動きを封じ込める!!」

 

「お互い様だな。ならばこれで確実に倒す!」

 

 箒は二刀流で、突撃と斬撃の両方を繰り返し行う。さらに、腕部展開装甲が開き、そこから発生するエネルギー刃が攻撃に合わせて自動射出。そして、福音を狙う。

 一夏からすれば、どちらも化け物な機体である。

 機動力と展開装甲による自在の方向転換、急加速を利用した紅椿の猛攻により、さすがの福音も防御をし始める。

 

「はあああっ!!」

 

(――いける!)

 

 そう思った一夏は刀を握りしめたが、そこに福音の全面反撃が待ち構えていた。

 

「La…………♪」

 

 福音の甲高いマシンボイス。その瞬間、ウイングスラスターは全砲門を開く。その数は三十六。しかも、全方位の一斉放射。

 

「やるなっ……! だが、私は負けん!」

 

 箒は豪雨のように降り注ぐ光弾を間一髪で避け、迫撃開始。――隙が、できた。

 

「!」

 

 だが、一夏は福音とは真逆の方向へ全速力で向かった。

 

「い、一夏!?」

 

「うおおおおっ!」

 

 瞬時加速と零落白夜。その両方を最大出力で行い、数発の光弾に追いついた一夏はすべてかき消した。

 

「!? せっかくのチャンスに何を――」

 

「船だ! 下に数隻の船がいるんだよ! 海上は先生たちが封鎖――ああくそっ、密漁船か!」

 

 しかし、一夏に見殺しなどできるわけがなかった。

 

 キュゥゥゥン……。

 

 白式の《雪片弐型》の光の刃が消えていく。ついには、展開装甲まで閉じてしまった。つまり、エネルギー切れ、唯一のチャンスも失い、作戦の要も今、消え去った。

 

「馬鹿者! あんな犯罪者などは見殺しに――」

 

「箒!!」

 

「ッ――!?」

 

「箒、そんな――そんな寂しいこと言うなよ。力を手にして、弱者が見えなくなるなんて……らしくない。らしくないぜ、箒」

 

「わ、私、は……」

 

 明らかな動揺をその顔に浮かべる箒。それを隠すように下を向く。その瞬間、一夏はある存在に気づく。

 

(……しまった! 福音の全砲門が箒に!!)

 

 しかも、箒は先ほど、エネルギー残量が少ないことを言葉に出していた。

 つまり、一斉射撃をもろに受けてしまうと、エネルギー切れ。そして今は、IS学園のアリーナではない。実戦だ。

 

「箒ぃぃぃっ!!」

 

 一夏は刀を捨て、箒へと一直線に向かう。残りのエネルギーを全てを使った瞬時加速。

 

(頼む! 間に合ってくれ!!)

 

 福音は一斉射撃開始まで残り一秒もなかった。

 エネルギー切れのISアーマーは、恐ろしくもろい。絶対防御分があったとしても、あの連射射撃では箒の生命が危ない。

 

(頼む! 頼む!! 白式、頼む!!! )

 

 スローモーションの世界で、一夏は、降り注ぐ光弾を前に突き進んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 一分前、俺は不明ISとの戦闘に終止符を打った。

 シールドエネルギーは半分以上持っていかれ、武装の弾数も同じく減っていた。

 

「すぅ……はぁ……」

 

 過激な戦闘により、深呼吸をする。決して、疲れたわけではないが、何故かそんな気分になる。多量のエネルギーを消費したものの、《雷艦》と八発のミサイルを両方駆使することで、なんとか勝てた。奴は今、海の底でおねんね(永眠)してるでしょう。

 

(……いや、まだ戦いは終わっちゃいない!)

 

 そう、作戦はまだ終わってなどいない。一夏と箒は福音との戦闘中のはずだ。

 ふと、ハイパーセンサーで一夏方面を確認する。どうやら、未だに決着はついていないようだ。

 俺は全速力で福音へ向かう。

 福音との距離が一キロを切ったとき――

 

(……何!?)

 

 よく確認すると、福音が一斉射撃をする瞬間を捉えた。既に、ウイングスラスターの全砲門から、光の弾丸が箒の方角へ降り注いでいる。しかし、その攻撃を一夏が庇った。

 

「一夏ぁっ!!!!」

 

 敵との距離、二百メートルのところで、二人の周りに大きな爆発が起こる。その黒煙の中から、箒を抱きかかえた一夏が落下していた。そして、そのまま海へと飛び込んでしまった。

 

「クソッ……!!」

 

 自分のクラスメイトであり、幼なじみの二人がやられたと思った途端に、猛烈な怒りが立ち込める。大きな破壊衝動と共に、再度海へ砲撃をしようとする福音に改良型203ミリ榴弾砲を俺は放つ。

 しかし、それに気づいた福音は、難なく機体をくるりと回ってかわした。

 

「一夏ぁ!!! 箒ぃ!!!」

 

 今度は武器エネルギー残量の少ないレーザーバルカン砲を展開。福音と戦闘を開始しながら、プライベートチャネルで二人に呼びかける。すると、一人だけ反応があった。

 

「……た、太一……。うぅ……一夏がぁ……一夏ぁっ!!!」

 

 今にも泣きそうな声で叫ぶ箒の声が俺に聞こえた。この状況だと、一夏は意識不明の重体かも知れない。

 箒の涙声につられそうになる俺だったが、グッとこらえて箒に伝える。

 

「……箒。俺が時間を稼ぐ。だから、今のうちに逃げろ!」

 

「だ、ダメだ太一……。太一まで……辞めてくれ……」

 

 涙ながらに叫ぶ箒だが、俺は逃げようとはしなかった、というよりできない。一夏に守られたおかげでシールドエネルギーがごく僅かだけ残っているようで、これでは撤退中に攻撃を受けてしまう可能性があるからだ。

 

「一夏を連れて逃げるんだ。早く!!」

 

「……。……わかった」

 

 箒は残り少ないエネルギーでみんながいる花月荘へ獰飆以上に速い速度で離れていった。その後ろ姿を見て、いつも縛っていたリボンがないことに気づく。あのリボン、ずっと大切にしてたのか。やっぱり箒は、一夏が大好きなんだな。

 

『城谷上、この作戦は失敗だ。至急撤退しろ』

 

 ここで千冬さんから連絡が来た。

 

「いえ、織斑先生。俺は時間を稼ぎます」

 

『何を言っている。これは命令だ。直ちに命令を遂行しろ』

 

「今、俺は福音と交戦中です。残りシールドエネルギーも少ないですから、帰ることができるのも時間の問題です。それに時間を稼げば、この事件の解決に繋がると思います。……では生きていればまた」

 

『おい! 城谷上。応答しろ、太一――』

 

 俺はプライベートチャネルを切る。あぁ、後でお仕置きかな。まぁ、そんなの今更どうだっていいや。

 俺は、目の前で飛んでは光弾を連射する福音の攻撃を、《雷艦》を利用して避ける。これはシールドエネルギーが少ないからだ。福音の連射速度は異常に高い。これじゃ、長くは持たないな。

 

「まだだ……まだ終わらんよ!」

 

 しかし、爆発弾の雨でもあるそれを、俺は全て避けることなどできなかった。威力は低いが命中してしまい、シールドは残り10%になる。

 次の光弾を《雷艦》で数発分のエネルギーを吸収したことでコンソールに映る文字が切り替わる。

 

『100%‥《雷艦》-REFLECTION LASAR-

リフレクションレーザー発射可能です』

 

 やむを得ず《雷艦》を発射形態に移行。目標は福音に、レーザーを放つ。

 

「当たれ当たれ当たれっ!!!」

 

 遷音速の反射レーザーが、空中を反射して何度も福音を追跡するが、全く当たらない。

 

 シールドエネルギー残り86

 

 最後の足掻きとして、《雷焱》を展開。瞬時加速で福音に特攻するが、見事に反撃として数十発の光弾をくらう。絶対防御も途中で機能しなくなり、経験したことのない激痛が自身の体に響く。

 

(くっ……だが、これで隙が……できた……な)

 

 福音の気が逸れた刹那、レーザーが福音に命中――しなかったが、ミリ単位でかすらせることができた。

 福音は驚異的な旋回でそれを避けたのだ。もしかしなくても、一夏や箒が苦戦したのはこの機動力のせいもあったのだろう。完全にシールドエネルギーがゼロになった俺は、海の底まで墜落していく。

 大きな水音と全身を伝播する衝撃。奇跡的に水に浮かび上がった後に獰飆の装甲が消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 それは太一が小学二年だった頃のことだ。

 六月のあの日から箒とも仲良くなり、一夏共々三人で遊ぶことが多かった。当時の太一は一夏と幼なじみでも、箒が幼なじみだとは思ってなかった。というより、思えなかったのだ。

 日々の道場や学校では一夏ばっかりと話をしていて、太一が箒と話すのは一夏と三人でいる時が多かったからである。

 けれども小二の冬、太一が引っ越す前日にて珍しく二人きりで会話することになった。

 夕方、気温が低くなる中、誰もいない道場で二人は道着を着たままでいた。

 

「……なぁ、箒」

 

「ん、何か用か?」

 

「一夏がいなくて寂しいか?」

 

 太一はニヤリとしながら、箒に訊いていく。当時はまだ小学校低学年。まだ二人は声変わりなどしていなかった。

 

「な、何をいきなり!? わ、私は一夏のことなど……」

 

「やっぱり好きなんだな」

 

「……うぅ」

 

 完全に動揺してしまった箒は、赤くなる顔を隠すように下を向く。

 

「まさか、一夏が風邪を引くとは珍しいな」

 

 実はこの日に限って一夏は風邪で休んでいたのだ。学校の放課後、一緒に見舞いに行ったが、「うつすわけにはいかん」と千冬に門前払いされてしまった。おそらく看病に徹していたのだろう。

 

「まったく、一夏は生活習慣がなっていないのだな」

 

「いや……まぁ、そういうことでいいか」

 

 面倒くさくなって否定する気も失せる太一。そんなことより、と太一は箒に別の話を持ちかけた。

 

「明日には引越すんだったな。俺」

 

「そうだったな。早いものだ」

 

 引越しの話をしたのは先週で、あの有名な御方がおっしゃっていた時が経つのを早く感じた。

 

「俺が引越すの嬉しいか?」

 

 一夏と二人きりになれるし、と太一はニッコリしながら冗談交じりに言う。

 

「いや、そんなことはない。お前がいないと……さ、寂しいぞ?」

 

「はてなまーくがついてるぞ、箒」

 

「……まぁ、冗談だ。三人でいるのが当たり前だったからな。寂しいぞ」

 

 特にお互い恋愛的に好感度がある訳でもないが、既に二人だけの絆が生まれていた。

 

「お、そうだ。忘れてたよ――はい箒」

 

 自分のカバンから太一は何かを取り出す。それを箒に手渡した。

 

「な、なんだこれは?」

 

「手作りのお守り。箒と一夏が結ばれるように、俺が思いをこめたやつ」

 

「……あ、ありがとう」

 

 箒は若干困っていたが、内心は嬉しかった。まだ幼いとはいえ、太一らしいプレゼントであっただろう。

 

「しかし、どうしてこれを――」

 

「誕生日プレゼント。ちょっと遅いけどね」

 

「いや、遅すぎるだろう……」

 

 箒の誕生日は七夕の日、それから半年も経っている。これが遅い以外の何者でもないだろう。

 自分の誕生日、と思った箒はあることに気づく。

 

「ああ、すまない。誕生日プレゼント、太一にあげるべきだったな……」

 

「いや、大丈夫。――戦車のプラモデルが欲しかったなぁ」

 

「……聞こえてるぞ」

 

 そう言った後、二人はクスクスと笑う。箒が一夏と二人きりでいる時の笑みとは少し違ったものであった。

 

「太一、最後に勝負するか?」

 

「おう、いいぞ」

 

 もう一度、太一と箒は道着を整え、剣道に必要な防具も装備する。

 

「時間もない。かかってきていいぞ」

 

 箒に言われて竹刀を構え、ルールを無視して試合が始まる。結果はもちろん――

 

 

――太一の完全敗北。\(^o^)/

 

 

「弱い、一夏より弱すぎる……」

 

「あはは……あはは」

 

 だんだんと苦笑いになる太一。それに箒は手を顔にあて呆れていた。

 その後、時間がないとは言ったものの、少し機嫌を損ねたのか、箒は太一を夜まで剣道の特訓をさせた。後ほど、太一が誰かさんに怒られたのは言うまでもなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………」

 

 千冬のいる作戦会議室から少し離れた旅館の一室。チックタックと鳴る壁時計の針は、午後四時前を指している。

 ベッドで横たわる一夏と太一は、二時間経った今でも目覚めていない。

 その傍らでは箒がずっとうなだれている。リボンを失って髪型はロングヘアとなっているため、今の気持ちまでも表しているようであった。

 

(私、のせいだ……。私の……)

 

 不意に思い出した一夏や太一との思い出の中では、二人とも笑っていた。

 しかし、その笑顔は今はない。ただ力なく横わたっているのみだ。

 ISの防御機能を貫通して人体に届いた熱波に焼かれ、一夏の体の至る所には包帯が巻かれている。

 一方、太一は幸い打撲と軽い火傷程度で済んでいたものの、意識は戻っていなかった。

 

(私が……しっかりとしないせいで、二人がこんな目に――!!)

 

 ぎゅうっとスカートを握りしめる箒。今までよりも強い力で握りしめていた。強く、ただただ強く。

 

『作戦は失敗。以降、状況の変化があり次第、招集する。それまで各自現状待機しろ』

 

 無我夢中で帰還し、エネルギー残量ギリギリで戻った箒を待っていたのはその言葉である。千冬は一夏の手当てを指示して、もう一度作戦室へと向かう。何も責められなかったことが箒にとって一層辛いものだった。

 

(私は……いつもいつも……どうして……)

 

 何度も、力を手にする度それに流されてしまう。

 それを使いたくて仕方がない。

 わき起こる暴力への衝動を、なぜか抑えられない瞬間がある。

 

(なんのための、修行だ……!)

 

 剣術は己を鍛えるためではなく、律するものだった箒。

 ――(リミッター)

 けれど……それは非常に危うい境界線なのだと知る。

 

(もう……ISには……)

 

 一つ、決心しようとした刹那、背後にあるドアがバンッ!と開く。

 これに少し驚いた箒だったが、視線を後ろに向ける気など全くない。

 

「あーあ、あんたってわかりやすいわねぇ」

 

 遠慮なしに入ったのは――鈴だった。そのまま、堂々と箒の隣までやってくる。ちなみに簪も地味ながら入室している。

 

「……」

 

「あのさぁ……」

 

 鈴は話しかけてくるが、箒は答えない。答え、られない。

 

「一夏がこうなった理由は、あんたのせいなんでしょ?」

 

 ISの操縦者絶対防御、その致命領域対応によって一夏と太一は昏睡状態に陥っている。

 全てのエネルギーを防御に回すことで操縦者の生命維持にあたるこの状態は、同時にISの補助を相当受けたものになる。それ故に、ISのエネルギーが回復するまで、操縦者が目を覚ますことは全くないのだ。

 

「…………」

 

「で、太一もこうなって落ち込んでますって感じ? ――っざけんじゃないわよ!」

 

 突如烈火のごとく怒りをあらわにした鈴は、うなだれたままの箒の胸ぐらを掴み、無理矢理立たせる。

 

「やるべき事があるでしょうが! 今、戦わなくて、どうするのよ!」

 

「わ、私は……。もう、ISは……使わない――」

 

 バシンっ!

 

 頬を打たれた箒は、床に倒れ込む。

 最初は鈴かと思った箒だったが、その人物は意外や意外、更識 簪だった。

 

「甘ったれないで……。専用機を持つということは……そんなワガママなんて許される立場なんかじゃ……ない」

 

 簪の瞳は、真っ直ぐに箒の目を見続ける。これは普段見せることのない真剣な表情であった。

 

「織斑くんは……あなたを庇ってこんな状態になった……太一だって、二人の助けるために時間を稼いで……犠牲になった」

 

 簪は視線を動かさないままだが、目つきが柔らかくなって話を続ける。

 

「私は臆病だと思う……。でも、太一がどんなときでも諦めずに戦うところを見てると……私だって頑張れるって……思えてくる」

 

 例えばそれは、クラス対抗戦の件だったり、今回の銀の福音の件だったりする。

 ついでに、限定販売だったヒーローアニメのブルーレイを簪の代わりに買いに行く太一の姿もある。

 理由としては、買う場合にそのアニメのとあるセリフを言わないと購入不可な縛りがあったからだ。これも簪にとっては尊敬できる点であったのかもしれない。

 

「私は二人のためにも戦いたい……。あなただって気持ちは同じじゃないの……?」

 

「そ、それは……その……」

 

 箒は戸惑う。そこで鈴が口を開いた。

 

「はっきりしなさいよ! そんなにいつまでも優柔不断だなんて、あんたはあたし達なんかより――臆病者か」

 

 それを聞いた途端に箒の瞳、その奥底の闘志に火がついた。

 

「――ど、どうしろと言うんだ! もうやつの場所もわからない! 戦いたい、私だって戦いたい!!」

 

 やっと箒自身の意思で立ち上がった箒。それを見て、鈴と簪は軽いため息をついた。

 

「はぁ、やる気になったみたいね。……あーあ、めんどくさかった」

 

「……何?」

 

「場所なら……分かる。今、ラウラが――」

 

 簪が話す途中で扉が開く。そこには真っ黒な軍服モードに切り替わったラウラだった。

 

「いたぞ。衛星による目視で発見。ここから三十キロ離れた沖合上空だ。どうやら光学迷彩ではないステルスモードに入っていたらしい」

 

「さすが。ドイツ軍特殊部隊の名は伊達じゃないわね」

 

「ふん……。お前はどうなんだ。準備は?」

 

「ばっちりよ。甲龍の攻撃特化パッケージインストールは完了。シャルロットやセシリアの方はどうなのよ」

 

「ああ、それなら――」

 

 ラウラが扉の方へ振り向く。そしてタイミング良くそれは開かれた。

 

「たった今インストール完了しましたわ」

 

「僕もオッケーだよ。準備万全」

 

「……ええと。……私に何かできることはあるかな」

 

 専用機持ちが全員揃ったのだが、簪は戦う気力はあっても、皆の役に立てる自信が少しなかった。

 

「あんたはあたし達の中で一番頭がいいんだから、サポートを頼むわよ」

 

「うん!」

 

 その言葉で自信を持ち始めた簪が大きく頷く。そこでふと何かを思い出して箒の前へ立つ。

 

「あ、あの……箒」

 

「……?」

 

「さ……さっきはごめんなさい。その、叩いちゃって……」

 

 あのビンタの件に申し訳なく感じた簪は、箒に頭を下げる。

 

「いや、謝らなくていい。寧ろ私は感謝している。おかげで目が覚めたからな」

 

「あ、うん……どういたしまして」

 

 ちょっと困った簪。そのまま箒は拳を握り、未だ目を覚まさない二人を見て決意を表す。

 

「勝つぞ、絶対に。今度こそ、負けはしない!」

 

「じゃあ、作戦会議よ。みんな集まって」

 

 鈴の掛け声で会議が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 暖かい。心地よい暖かさな場所に俺目を閉じて寝転んでいた。

 まぶた越しに眩しい光が差し込み、目を開ける。そこは何処か見たことのある空間であった。

 

(……ここは、どこだ?)

 

 辺り一面は緑に輝くサイバーな床に天井、遠くは緑の霧が深くて先を見ることはできない。そして、上には太陽のような光源がある。

 ふと、自分の体を確認すると、いつの間にか学園の制服に戻っていた。

 

「ここは、もしかして……」

 

 夢に見た世界か、と言おうとした刹那――

 

「お目覚めですか、マスター?」

 

 後ろから女の子の声が聞こえた。やはり夢に見た光景と変わらない。自分はもしや、と思い後ろを振り向いた。

 

「あ」

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

※あくまでもイメージです。

 

 

 あの時と同じ、女の子が俺の傍にいた。

 美少女、と言っても良いくらい可愛い容姿。服装は緑の肩出しニットらしきもののみで、顔は何処となくシャロや簪、本音などの顔を良いとこ取りしたような可愛い顔をしている。

 髪は黄緑色のロング、目は簪のように紅い。身長はラウラくらいで胸は鈴程だろうか、とちょっと下心見え見えで俺は考えた。

 

(夢……なのか?)

 

 「いや、これは夢だ。これは夢だ」と俺はボソボソと呟いていた。

 しかし、前よりも視界ははっきりしていて、より鮮明に少女が見える。

 

「……あの、君の名は?」

 

 ふと思ったことを問い掛ける。前に見たときは名前を教えてもらえなかったからだ。

 

「マスターもご存じのはずですよ? ……強いていえば、――獰飆です」

 

 その言葉で俺は呆然とした。

 

 

 

To Be Continued‥‥

 

 

 




約一万文字です。/(^o^)\ナンテコッタイ
次回も早めに投稿します。


━━これといって他作品ネタは殆どない

戦闘描写ばかりですし、太一がいないし……。

━━太一と箒の過去

ちなみに一夏と箒の過去はプロローグ同様なのでカット。
ロリ箒、くっそ可愛いッスね。
そして、太一弱い。

━━あのさぁ……

わかる人には分かる。

━━やればできる簪

簪にだって殴る権利があるんですよ(ビンタ)。

━━ヒーローアニメ

簪が店員に向かってセリフを叫ぶ、なんてシーンを想像すると可愛いですね。

━━擬人化IS

これ作り始めたの半年以上前ですぜ。なので色々とお察しを……。まぁ、あくまでもイメージですし。

しかし、やっと登場できたことに感動。

━━君の名は

お察し。



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第42話 カクセイ

読者の皆様、どうもお久しぶりです。明けましておめでとうございます(遅)。約三ヶ月も放置してました。

最近ps4を買いまして、おかげでこの有様です。


今回は文字数が落ち着いたようで8500文字


「………………」

 

 海上二〇〇メートル。そこでじっと丸くうずくまっていた『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』がいた。

 頭部から生えた翼が自らを包み込み、守りの体勢へと移行している。

 

――?

 

 何かに気づいた福音は、顔を素早く上げる。

 刹那、超音速で向かってきた砲弾が福音を直撃、大きな爆発音と共に黒煙が舞った。

 

「初弾命中した。次弾発射五秒前」

 

 六キロ離れた地点で浮かぶIS『シュヴァルツェア・レーゲン』を纏うラウラは、福音が反撃を移る前に再度砲撃を行った。

 ラウラの機体には新たな装備に変換されており、八〇口径の大型レールカノン《ブリッツⅣ》を右肩へ装着している。

 さらに敵の遠距離武器に対する対策として、強化型物理シールドが左右正面で構えていた。

 これぞ、砲戦パッケージ『パンツァー・カノニーア』である。

 

(敵機接近まで……あと三〇〇〇――くっ……予想よりも速い!)

 

 猛スピードで向かってくる福音へ何度も砲撃を繰り返すが、相手のエネルギー弾によって半数以上も打ち落とされてしまう。

 

「ちぃっ!」

 

 砲戦仕様の機体は、反動相殺を必要とするために機動性が著しく低下してしまっている。

 対して、機動性特化型の福音は、三五〇メートル離れた場所からラウラへ急加速した。

 

「ふっ……。――セシリア!!」

 

 にやりと顔を歪めたラウラを前に福音が突撃するが、真上から垂直落下した機体に腕を弾かれた。

 ステルスモードの――ブルー・ティアーズによる強襲攻撃であった。

 六機のビットは全てスカート状に腰部接続されており、スラスターとして使われている。

 手には全長二メートルを超える大型BTレーザーライフル《スターダスト・シューター》を装備。

 そして、頭部にはバイザー状の高感度ハイパーセンサー《ブリリアント・クリアランス》を装着している。

 これが強襲用高機動パッケージ『ストライク・ガンナー』だ。

 

『敵機Bを発見。排除開始する』

 

「今度はこっちだよ?」

 

 セシリアへ攻撃を仕掛ける福音を、背中から別の機体が襲い込む。

 それは先ほどとは別の場所で待機していたステルスモードのシャルロットであった。

 大型ショットガン一丁により近接射撃で福音の背中に浴びせる。命中はしたものの、すぐさま体勢を戻した福音の反撃《銀の鐘(シルバー・ベル)》を打ち出す。

 

「太一の《雷艦》ほどじゃないけど、その程度じゃ『ガーデン・カーテン』には勝てないよ」

 

 リヴァイヴ専用防御パッケージは、二枚の実体シールドを重ねてもう二枚のエネルギーシールドが遮っていた。

 そのまま『高速切替(ラピッド・スイッチ)』によってアサルトカノンを呼び、反撃を開始。

 同時に、セシリアとラウラも攻撃を再開する。

 

『……優先順位を現空域からの離脱へ変更』

 

 ここから一度強行突破を図ろうと福音は全方向にエネルギー弾を放とうとする。しかし、その砲撃は他方向から飛んできた大量のミサイルにかき消された。

 

「そんなもの撃たせない!!」

 

 それは簪によるマルチロックオンシステム式小型ミサイル《山嵐》だ。

 全弾を目標のエネルギー弾雨に向かわせ四方八方からの攻撃に成功した。

 福音の一瞬の隙を好機と思い、海から二機のISが飛び出す。それは箒の紅椿とその上に乗っていた鈴の甲龍である。

 

「くらいなさいっ!!」

 

『!!』

 

 すぐに離脱をしようとするも福音は避けきれず、背中に強い衝撃を負う。

 命中させたのは衝撃砲。だが、その衝撃砲は不可視の弾丸ではなく、赤い炎を纏うものであった。しかも、福音に勝るとも劣らない弾雨。

 これが、機能増幅パッケージ『崩山』と呼ばれるものだ。

 

「やりましたの!?」

 

「――そのセリフはダメ!」

 

 このような非常時にフラグを回収させまいと決して口に出さなかった簪だが、見事、セシリアに言われてツッコミを入れた。

 

『《銀の鐘》最大稼働モード――始動』

 

 ついに怒りのモードへと切り替えた福音は、両腕両翼を左右に広げ、眩いほどの光が爆ぜて、エネルギー弾の一斉射撃がはじまった。

 

「くっ!!」

 

「箒! 僕の背中に!」

 

 前回の失敗をふまえて、紅椿は機能を限定している。展開装甲多用によるエネルギー切れを防ぐため、今は防御時にも自発作動しないように設定しているのだった。

 これなら集団戦闘の利点を活かせると判断したのだろう。

 

「でも……想像以上にきついね」

 

 いくら防御専用パッケージといえど、福音のエネルギー弾は異常に連射力が高く、全てを受け止めるには危うかった。

 そうこうしているうちに物理シールドの一枚が大破してしまった。

 

「ラウラ! セシリア! 簪!」

 

「言われずとも!」

 

「お任せになって!」

 

「大丈夫、支援する!」

 

 後退するシャルロットと入れ替わり、ラウラとセシリア、簪の三人が攻撃する。セシリアは高機動を活かした移動射撃を、ラウラは遠距離からの砲撃支援、簪は《山嵐》によるミサイル支援である。

 

「足下注意よ!」

 

 そして鈴の双天牙月による突撃を行い、至近距離で拡散衝撃砲を浴びせる。――ターゲットは福音の頭部に付いているマルチスラスター《銀の鐘》。

 

「まだまだあああっ!!」

 

 エネルギー弾による反撃を受けながらも尚、鈴の斬撃は止まらない。

 互いに大きなダメージを喰らい、鈴はついに福音の片翼を分断させた。

 

「――ぐっ!?」

 

 しかし、片翼を失った状態でも福音は諦めてはおらず、甲龍の腕を掴んだ直後にエネルギー弾雨を速射した。そのまま、鈴は海へと墜とされる。

 

「おのれっ!! 鈴をよくも!」

 

 箒は両手に刀を持ち、福音へ最大加速で切りかかる。

 その速さに一瞬反応が遅れた福音の、その左肩へと刃が食い込んだ。

 

 ――獲った。誰もがそう思った刹那、信じられないことに福音は両刀を手のひらで握りしめる。

 

「っ!?」

 

 刀を抑えられ、無防備な状態になった箒へ残っていたもう片翼からの砲口が向いていた。

 

「――当たって!!」

 

 その時、最も近くで福音を狙っていた簪が、急加速を行い、《夢現(ゆめうつつ)》を装備して福音の後ろから斬撃。確実に決まった。

 ついに両翼を失った福音は、崩れるように海へと墜ちていった。

 通常の打鉄の近接武器とは違い、《夢現》はその完成度の高さから切れ味は獰飆の《雷焱》以上であった。

 

「はぁ、はぁ……ありがとう。簪」

 

「……ど、どういたしまして」

 

 慣れない感謝の言葉に簪は少し照れくさくなる。

 この合間に、墜落した鈴を救助したラウラがこちらに向かってきた。

 

「鈴は近くの孤島で休ませた。それより福音は?」

 

「福音なら――」

 

 ――完全に倒した。全員がそう思っていたのだが、刹那、海面が強烈な光の爆発によって吹き飛ばされた。

 

「!?」

 

 一瞬で蒸発した海は、まるで時間がその場所だけ止められたかのようにぽっかりと空いたままだった。その中心で青い(いかづち)を纏った『銀の福音』が自らを抱くようにうずくまっている。

 

「う、嘘……!?」

 

「そんなまさか!? これは――『二次形態移行(セカンド・シフト)』だ!」

 

 簪が驚き、ラウラが叫んだ途端、まるでその声に反応したかのように福音が顔をこちらに向けた。

 

『キアアアアアアア……!!』

 

 突然、獣の咆哮のような機械音を発し、福音はラウラへ飛びかかった。

 

「なにっ!?」

 

 異常にも程がある速度に反応できず、ラウラは足を掴まれる。

 そして切断された頭部から、鳥が大きく羽を広げるようにエネルギーの翼が生えた。

 

「ラウラを離せぇっ!」

 

 シャルロットは高速切替で切り替えた近接ブレードで突撃する。

 

「シャルロット! 近寄るな――」

 

 その言葉と途中でラウラはエネルギーの翼に(いだ)かれる。

 そのまま、エネルギー弾雨をゼロ距離で食らう。ズタボロになったラウラは、海へと墜ちてしまった。

 

「よくもっ! 許さない……!」

 

 ブレードを捨て、シャルロットはショットガンを展開。福音の顔面へ引き金を引く刹那、福音の異常過ぎるエネルギー弾雨の反撃でシャルロットは一瞬で吹き飛ばされた。

 

「こ、こんなの……こんな性能は異常過ぎますわ!」

 

 セシリアと福音との距離は五〇〇メートルほど離れていた。それだけの距離があろうとも、射撃をする暇もないままエネルギー弾雨で海に沈められた。

 福音の『瞬時加速』しかも、両手両足の計四ヶ所同時着火による爆発加速。その速さにはセシリアですら反応できなかった。

 

「私の仲間を……よくも!!」

 

 殆どの味方が撃墜されて追い詰められた箒は、展開装甲を局所的に用いたアクロバットで福音の攻撃を回避、斬撃を繰り返す。

 しかし、惜しくもエネルギー切れで反撃を食らい、箒は孤島へと墜ちた。

 

「そんな……。みんなやられちゃった……」

 

 最後に残されてしまった簪。完全に壊滅的な状況に絶望しかける。

 それでも諦めまいと自分が動けなくなるまで戦うと誓った簪は、《春雷》を展開して応戦する。

 

 しかし、命中もかすりもしなければ、福音の一方的な反撃でシールドエネルギーがゼロを示した。

 

「……ごめんなさい。太一……」

 

 涙ながらに彼を想いながら、孤島へ力なく墜ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なん……だと……!?」

 

 目の前の彼女に『獰飆』と呼ばれて呆然として数秒静寂に包まれた後、ラグが発生したかのように遅れて俺は驚く。

 まさかと思い、待機形態の腕時計を確認。しかし、腕時計の姿はなく日焼け跡で白い肌にそれを形作っていた。

 

「……まてよ? 獰飆ってことはつまり――」

 

「そうです。氷歌です」

 

「……これもうわかんねぇな」

 

 目の前にいる少女は、獰飆(相棒)もとい氷歌と名乗る。正直に言うと混乱して状況の整理ができていない。

 とりあえず、一つ一つ質問をしようとして再度問い掛ける。

 

「ええと、質問があるんだけど」

 

「はい。何でも答えますよ」

 

 ん、何でも? と言いたいところであったが、そんなこと考えている場合ではない。

 

「順を追って質問させてもらうけど、まず君はボイスロイドプログラムの一種なのか?」

 

「……それに関してはよくわかりませんが、かつてはそうだったということになります」

 

「……だった?」

 

 過去形の言葉に俺は疑問を抱く。この言葉の通りだと過去の氷歌はただのボイスロイドプログラムだったことになる。

 

「はい。私自身よく知らないのですが、気がついたらこうなってたみたいなんです」

 

「……つまりどういうことだってばよ?」

 

 ナ()トのセリフが無意識に出てしまうほどに俺は理解不能であった。

 

「ええと……私、人格を持てるようになったみたいなんです」

 

「ま、またまたご冗談を……」

 

「いえ、本当ですよ」

 

 この美少女(誰かの顔を良いとこ取りした女の子)は輝かしい笑顔で微笑みながら答えてきた。もうわけわからんです。

 ISには自己進化能力があるとは授業で何度も聞いている。しかし、人格まで生成されるとは思ってもいなかった。

 すーはー、と俺は一度深呼吸をして次の質問へ入る。

 

「ええと、次へいこう。君が氷歌なのだということは、今までの言葉は全部、人格があるから喋ったのか?」

 

「うーん。正確にはクラス対抗戦以降からのような気がします」

 

 クラス対抗戦。確かにそれ以降から氷歌の声がより人間に近くなっていたと思う。まだ答え足りないのか、さらに氷歌は話し続けた。

 

「ですが、話せるタイミングには規則性がないようなんです」

 

「……ほぅ?」

 

「私が一人の人格として話せるのは、マスターがボイスロイドプログラムを起動するとき、後はランダムです」

 

「は、はぁ……」

 

 ランダムというのは、おそらく録画や録音をお知らせされた時や昨日の温泉で急に話しかけられた時が例だろう。

 ちなみにボイスロイドプログラムは自分から起動して話しかけるSi〇iのようなシステムである。あれ、どこかで教えたよな。

 

「ちなみに録画機能はマスターの視覚を借りています」

 

「は、はい?」

 

 視覚を借りる、という言葉で俺は声が裏返った。

 

「マスターの見たものは意思疎通ということで私に直接送られてくるんです」

 

「……ってことはもしかして?」

 

「はい。マスターの思考などは筒抜けです」

 

「……マジすか」

 

「全部ではありませんが、本当です」

 

 自分が考えている殆どが筒抜けだということを知り、とてつもなく恥ずかしい気持ちになる俺氏。そりゃ、俺の変態紳士的思考がモロバレしてるんだからな。目の前の美少女(見方によっちゃハーフな女の子)に。

 

「あ、そういえば、元の俺は何処にいるんだ?」

 

 ふと気になったことを訊く。意識を失う寸前、俺は確実に海へダイブしたはずである。

 

「マスターは眠っているのでわかりませんが、おそらく旅館のどこかでしょう。録音してたのでマスターを救出した人もわかりますよ」

 

「それって誰なんだ?」

 

「名前まではわかりませんでしたが、声的に教員の方です」

 

 助けてくれたのは先生だったらしい。目が覚めたらお礼を言いたいところだな。誰かわからんけど。

 

「ふむ……じゃあ、次は……」

 

 えーと、と俺はしばらく考え込む。あれだよ、あれ。なのに思い出せない。

 

「あれって、セシリアさんが殺人未遂を起こしたやつですか?」

 

 氷歌は怖い笑顔で"殺人未遂"とかいう事実だが鬼畜な言葉で言った。そう、まるでヤンデレみたいに。ってか思考が筒抜けだったの忘れてた。

 

「ま、まぁそれだよ。……あれってもしや――」

 

「その通り、私が展開しました♪」

 

 なんて屈託のない笑顔なんでしょう。しかも、『そのとおり』とか言われても俺、まだ何も言ってないんだが……いや、思ってはいました。はい。

 

「ですが、あれはマスターが反射的に《雷艦》を展開させようとしたからできただけですよ」

 

 確かにセシリアが銃口を向けてきたとき、俺は咄嗟にそれを展開しようと思ってた気がする。

 

「なので、あれができるのは限られた場所ですのでセシリアさんにはご注意ください」

 

「お、おう」

 

 まぁ、あの状況では十中八九俺が悪いんだけどな。本音以外に女子いたのになぜ俺自身は躊躇わずに入れたのだろうか。もしかしてこれが"慣れ"というものなのか? 慣れって怖い。いや本当に。

 

「ああ……そろそろ時間ですね」

 

 何やら少し悲しそうな声で氷歌は、天井の光源を見つめながら言う。

 気になったのでその言葉に俺はどうしたのか訊いてみた。

 

「白式の準備ができたみたいです。私達も行きましょう」

 

 氷歌は空中にディスプレイを召喚したようで、それを眺めながら言ってきた。

 

「ん、白式も人格を持つのか?」

 

「今のところ白式のみ人格が存在しています。といっても私とは少し違った存在ですけど」

 

 たまげたなぁ、と俺は呟きながら先ほどのディスプレイをのぞき込む。そこには白式の膨大な情報が表示されていた。しかし、それは全て英語なので大半は理解ができなかった。

 

「あの……マスター」

 

「はい?」

 

「実はコアネットワークを通してマスターのお仲間に危機が迫っています」

 

「へ? まさかとは思ったが、本当に戦っていたのか?」

 

「そのようです。かなり危険な状況と判断されます」

 

「じゃあ、早く行かないとヤバくね?」

 

 もしこれが命に関わるとなれば、俺が助けないといけないのではないか。しかし、一度シールドエネルギーを使い果たした身。参戦などできないかもしれない。

 

「――そこで、マスターに訊きたいことがあります」

 

「お、おう」

 

 思考が筒抜けなのをいいことに、氷歌が良いタイミングで問いかけてきた。

 

「マスターの手助けをするために『力』を貸しても宜しいでしょうか?」

 

「……そりゃいいね。これでも中二病時代があったからな」

 

 ある意味今も中二病だけど、と頭の中だけで思っていたが、氷歌の前では隠すことなど無意味でしかなかった。

 

「その力、俺に貸してくださ――いや」

 

 最初は話の成り行きでなんとなく答えてみたが、その言葉をかき消すように否定した。

 

「これ以上の力を簡単に得ちゃっても良いのかなあって正直なところ感じるな。これじゃただの主人公ヅラした偽善者でしかないんじゃないか?」

 

 ただでさえIS(最強の力)で自惚れて、撤退命令を拒否するという馬鹿げた行動を取ってしまったしな。中途半端な覚悟で受け取るべきではないと思う。

 

「――でも、それが誰かを助けるために必要ならば、その力を受け取るよ。……仮に俺がいなくても解決する話なら、遠慮させてもらいたい」

 

 きっと危機的な状況になったらみんな一夏に助けを求めているのだろう。どうせみんな一夏を一番好きに決まっている。それに俺は脇役がちょうど良いし、一夏はヒーローに最も相応しい。

 

「はぁ……どうしてマスターはそこまでネガティブなんですか?」

 

 読まれた思考に氷歌は訊いてくる。それに俺は咄嗟に言い訳をしようとする。

 

「だって一夏は――」

 

「――イケメンだから、主人公みたいだから、とでも言うのではありませんか?」

 

「ゔっ……」

 

 呆れた氷歌に心を読まれ、完全に図星と化した俺は怯む。

 

「私からすれば、マスターも必要とされていると思いますよ」

 

「……どうして分かるんだ?」

 

 自信ありげに答える氷歌。どうもそれが理解できない俺は、彼女に訊いてみた。

 

「……では、マスターはいつも一緒にいるこの子のことを考えたことはありますか? 別に一夏さんが恰好いいからって皆が皆、彼を求めるわけなんてありませんよ。思い出してください。マスターが成し得てきた数々を。少なくとも少数勢でマスターに興味を持つ方だっているはずです!」

 

「……そうかもな。ありがとう氷歌。目が覚めたかもしれない」

 

 いつの間にか立場が逆転しているように見えるが、そのまま続ける。

 

「別に異性として好きってわけではなくとも、誰かが俺を求めてくれているはずだろうな。緊急事態なんだ。俺も加勢しないとダメだよな」

 

「……それでもネガティブですねマスターは」

 

「なんですと?」

 

「いえ、何でもありませんマスター」

 

 確かに何か呟いていたが、俺には聞き取れなかった。

 そう返された後、すぐに氷歌は敬礼をして訊く。

 

「ではマスター。準備は宜しいでしょうか?」

 

「おう、とその前に……もしわかるなら教えて欲しいんだけど、俺のことを大切に思ってくれている女子っているのかな?」

 

 心当たりがないこともないが、なんとなく、一応、仮に、念のため訊いてみる。それにしても照れくさいなこういうこと訊くの。

 

「少なくとも、本音さんやシャルロットさん、楯無さん、簪さんはそうだと断言できますよ。私の勘ですが」

 

 勘かよ。と思ったが、自分と考えていることは同じだったので一応信じてみる。

 

「ま、こんなとこでモタモタしてられないか。行くぞ氷歌!」

 

「はいっ!」

 

 にっこりと太陽のように眩しい氷歌の笑顔を最後に、俺は長い夢から覚めるように視界が真っ白に覆われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 一瞬で目を慣らした俺は、バサッと布団を蹴飛ばし周りを確認する。

 目の前には一夏が俺を見て、「お前も起きたようだな」と言った。ちょうど一夏も起きあがったらしい。

 

「さて、俺らを怒らせたらどうなるか、思い知らせてやろうぜ」

 

「ああ。今度は負けねえよ」

 

 互いに拳同士をぶつけ合って意気込む。そのまま、ISを展開したとき、妙にお互い機体の形状が違うことに気づく。だが、それについては二人とも触れずに福音の方へ飛翔していった。

 

(――獰飆の本気(マジ)モード、((見))せてやる!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 落ちる、堕ちる、墜ちていく。

 その最中、走馬灯のような感覚で簪は彼を思い続けた。

 

――会いたい。

 

 私のヒーロー、太一に。

 

 いざという時。

 

 絶対来てくれると信じて。

 

「…………」

 

 止めを刺そうと福音が両翼を広げ、光の輝きが増していく。チャージの限界に達したところで一斉射撃がはじまる。

 

「助けて……太一」

 

 涙声で簪はその名を口にし、覚悟を決めて目を閉じようとする。

 

――その刹那。

 

「!?」

 

 かの幻想殺し音(上条さんのあの音)が響いた途端、目の前の福音が()()()

 その代わり、見たことない緑色のISが右腕の拳を突き出したまま静止していた。――太一である。

 

「俺の仲間()に手を出すなぁっ!!」

 

 そう意味深過ぎる言葉を告げた後、落ちていく簪をすぐさまキャッチし、近くの孤島で降ろした。

 

 

【挿絵表示】

 

 

※簪のイメージ画像

 

「た、太一……その機体は……何?」

 

 簪は隠しきれない涙を堪えながら太一をみてそう訊いた。

 

「――獰飆第二形態《雷電(らいでん)》。だそうだ」

 

 太一はいつもの調子で答えてくる。

 ちゃんと答えくれたのにも関わらず、簪は素直に言葉を返せなかった。

 

――この光景が奇跡に思えて。

 

「おいおい。泣くなよ簪。もしかして感動したか?」ニヤニヤ

 

「……そ、そんなんじゃないよ」

 

 決して本当のことは言いたくなかった簪は、上手く誤魔化そうと別の質問をした。

 

「そ、そんなことより……福音は?」

 

「あいつか? 俺が殴り飛ばしたぞ」

 

「……え!?」

 

 それは一瞬であった。

 人の目ではわからない世界。それを太一は実行したのだから、簪は驚きしか残らなかった。

 二次形態移行によって大型四機のスラスターが備わり、その結果、二段階瞬時加速(ダブル・イグニッション)を可能にした。

 その急加速のまま太一が殴った勢いで福音はかなり遠くまで飛ばされたということである。

 

「なんにせよ、無事で良かった」

 

「……でも、みんなは?」

 

「一夏が全員の無事を確認したよ。これで俺は心置き無く戦えるな」

 

「そう……」

 

 そうこう話している間に、福音の存在を確認した太一は、箒のところにいた一夏と合流した。

 

「行くぞ一夏。ここから先は獰飆(オレ)戦争(ケンカ)だ!」

 

「いいや太一、俺たちのケンカだ!」

 

 どこぞの決めゼリフを言った二人は、暴走する福音へと向かうのだった。

 

 

 

To Be Continued‥‥

 




今回は簪がメインヒロインになった模様。
もしかしたら今回の文章を後々改正するかもしれないです。

━━ラウラのレールカノン

アニメ版の見た目と思って問題ないです。

━━やりましたの!?

フラグですね(ニッコリ)

━━氷歌

やっと詳細な情報が明かされましたね。まぁ、だいたい知ってると思いますけど。

━━俺の簪

意味深。その場のノリってやつです。

━━二次形態移行 雷電

一年前に構想したプロトタイプよりはマシになってます。
名の由来は、旧日本軍の雷電と《雷艦》などの雷をいつも通りに付けただけ。

━━ここから先は獰飆の戦争だ

ここから先は第四真祖の戦争だ。知ってる人は知ってる。

ストライク・ザ・ブラッドですね。はい。

━━



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第43話 キリフダ

 どうも皆様、お久しぶりです。一ヶ月半ほど更新を空けてしまい、申し訳ありません。
 では、ついに来ました福音編の終点でございます。どうぞm(_ _)m




 一夏は箒を、俺は簪を見送った後に福音へと応戦し始める。

 白式と獰飆が共に二次形態移行(セカンド・シフト)したおかげでそれぞれの性能が倍近く向上している。これは福音の機動性に劣らないほど優れていた。

 

 ここに来る前、ハイパーセンサーからの情報で装備を確認したところ、今まで世話になった武装がレーザーバルカン砲と《雷鉄》以外消され、代わりに大きく強化された《雷艦》が備わっている。他の旧武装はデータとしてのみ保存されている。専属企業には申し訳ない。

 

 《雷艦》とはいっても従来のものとは殆ど別物に変化しているようで、その個数はなんと十二機ある。それぞれの形状や大きさに差があるが、通常のブレードとしても活用できる上、《雷艦》と同じ能力を持つので非常に万能になったようだ。ただし、エネルギーを吸収できる面積が減ったため、扱いには注意が必要。

 

「まぁ、ミサイルがないのが玉に瑕だがなっ!」

 

 そう愚痴りながらも、福音に《雷艦》二機を飛ばし、最も小さな一機を剣として装備する。全てを動かすには集中力が足りなくなると思い、それらのみ出撃させている。いわば保険である。

 

「任せろ!」

 

 俺と一夏の斬撃をかわした福音に、一夏はそう叫んで左手の新兵器《雪羅》で追った。

 訊いたところによると、それには色々なタイプに切り替えられるらしい。

 

「逃がさねえ!」

 

 一メートルも伸びたクローが福音の脚を掴む。そのまま一夏は俺に向かって福音を投げ飛ばし、その瞬間に俺は手に持っていた《雷艦》で切り伏せた。シールドエネルギーに阻まれはしたが、少なからずともダメージを確実に与えただろう。

 

『敵機の情報更新。攻撃レベルSで対処開始』

 

 エネルギー翼を大きく広げ、さらに胴体から生えた翼を伸ばす。福音の掃射攻撃のようだ。

 

「残念。そんなもので《雷艦》には勝てねぇよ」

 

 余裕がある表情で俺は全雷艦を瞬時に()()させ、巨大なシールドを作り上げる。同時に一夏は、雪羅をシールドモードに切り替えた。そして、福音の弾雨を俺は吸収、一夏は打ち消した。

 

 そう、一夏のシールドは零落白夜のシールドである。実弾兵器には使えない技で、エネルギー消費が俺の《雷艦》と大差ない。

 エネルギーが尽きない限り、俺たちが圧倒的に有利といえよう。

 

「うおおおおっ!」

 

 獰飆と同じく、大型四機のウイングスラスターが備わった白式・雪羅は、二段階瞬時加速(ダブル・イグニッション)が可能となった。ハエのように動き回る福音も、最高速での回避ができるとは限らないのだから、これで十分追いつける。

 

『全方位最大攻撃モードへ変更』

 

 福音の機械音声がそう告げる。途端、翼で自身の機体を包み込み、エネルギーの繭にくるまれた状態になった。

 

「防御態勢に移れ!」

 

「おう!」

 

 一夏の返事と同時に、福音が機体ごと翼を回転させ、嵐のような弾雨を発生させる。幸い、負傷した仲間と距離はおいてあるため、心配することは何もない。

 

(これでもシールドエネルギーが無くならないのか……)

 

 弾雨を《雷艦》で吸収しながら思う。しかし、おかげで吸収したエネルギーが五〇%まで溜まっていた。

 

「今だっ!」

 

 《雷艦》を剣として構え、絶妙なタイミングで福音に攻め込む。その刹那、()()()()()()()()()()()()()()で、福音の翼に詰め寄った。

 これは二段階瞬時加速より上位互換。あの弾雨で《雷艦》に溜め込んだエネルギーをスラスターに転用し、爆裂させたものまで利用した爆裂瞬時加速(エクスプロード・イグニッション)であった。

 

『!?』

 

 さすがの福音も、回避しきれずに雷剣による斬撃を右翼に食らい、右翼の半分を失った。

 福音を大きく損傷をさせたとはいえ、こちらはエネルギーを大量消費してしまい、残り二割をきっていた。白式も同様である。パワーアップのおかげで燃費は悪くなってしまったらしい。

 対して相手のエネルギーは計り知れない。これほどの攻撃を発動しても尚、余裕がありそうである。これがリミッターの外れた軍用ISの恐ろしさなのだろう。

 

「くっ……。これじゃダメージ交換でも勝てねえな……」

 

『一夏ぁ! 太一!』

 

「「箒!?」」

 

 この大ピンチなときに現れたのは箒だった。ダメージを受けて行動不可だった紅椿が、エネルギーフル回復していることに俺たちは驚く。なんにせよ、救世主として間違いない。

 

「太一。援護を頼む」

 

「え? お、おう」

 

 突然、箒の――紅椿の手が白式に触れる。これに理解不能だったわけだが、ちょうど向かってきた福音の弾雨を《雷艦》シールドモードで防ぐ。

 

「ありがとう太一。お前も受け取れ!」

 

 二人の感動の再開が終わったと思ったら、今度は俺の機体に紅椿の手が触れてきた。すると、全身に電流のような衝撃と燃え上がるような熱が走り、みなぎってきた。

 

「むむっ!? エネルギー満タン!? 箒、これは――」

 

「だから、今は考えるな!」

 

「お、おう……」

 

 だから、の一言で俺は一夏と同じことを箒に訊いたのだと察する。

 

(まぁ、箒には感謝しないとな!)

 

 そう意気込んだ瞬間、ハイパーセンサーからのディスプレイで、――単一仕様能力(ワンオフ・アビリティ)独創神力(どくそうしんりき)』の文字が表示された。

 

『ふふっ、マスターへの贈り物です』

 

 明らかにあの子が微笑ましい声で囁いてきた。これほどのプレゼントを貰えるとは感謝してもしきれないものだ。……プレゼント?そして七夕?

 

(あ、今日、箒の誕生日だった)

 

 しかも、先ほど出会った箒のポニテには普段と違うリボンを付けていた。つまり、一夏はプレゼントを渡したのだろう。

 これは困った。俺は何一つ用意してないではないか。また昔のように七夕の半年後に誕生日プレゼントを渡すとか繰り返すのか。……いや、それどころではない。

 

 呑気に考えているうちに、一夏と箒は福音と応戦を開始していた。優勢に見えそうだが、少し苦戦しているようにも見える。やはり、俺が終止符を打ってやるべきだろう。俺に残された最終兵器(ワンオフ・アビリティ)でな。

 

「二人とも、時間稼ぎを頼む!」

 

『何か策があるのか、太一』

 

「あぁ、そのために少し時間が必要だ」

 

 一夏に問われ、俺は答える。

 ハイパーセンサーのディスプレイにはIMAGE POWER(イメージ パワー)のメーターが出現している。これがこの力の鍵なのだろう。

 

『わかった、俺はお前を信じる。だから俺たちも信じろ』

 

「おう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

(さて、どうするか……)

 

 一夏と箒に時間稼ぎを任せたとはいえ、そうのんびりしている場合ではない。一刻も早く、このIMAGE POWER(イメージ パワー)を〇%から一〇〇%に到達しなければならない。

 

 氷歌に説明されたのだが、この単一仕様能力は、操縦者のイメージ(妄想)で発動する必殺技らしい。もっといえば、究極奥義(俺にもってこいの技)である。

 

(ああ、クソ……俺は何を想像すりゃいいんだよ!)

 

 妄想、そんなこといわれてもこの状況下では上手く思いつかない。その言葉だけ聞かされてもパッと思い浮かぶものがない。

 

(いや、待てよ……?)

 

 妄想というものが具現化できるとすれば、この単一仕様能力『独創神力』の意味に繋がるかもしれない。妄想または――想像と創造。読みは同じでも意味は似て非なるもの。俺の解釈が正しければ、どんなものでも生み出せるはずだ。

 

(…………)

 

 しかし、それでも思いつかない。あの福音に百発百中の必殺奥義といえば何なのだろう。福音は今でも超音速飛行であの二人と交戦している。……やはり速い。

 

――なら、動きを止めればいい。

 

 では、何を想像するのか、ここで俺は思い出す。今まで見てきた数々のアニメやゲームの中で、俺は記憶を探る。今このとき、相応しいのは……。

 

「――これだ!!」

 

 "天元突破グレンラガン"。今の俺にはこの技を想像するしかない。

 一番最近見たアニメで、且つ最も思い出深いアニメ。簪たちと共に鑑賞したことで、俺はロボットアニメに改めて関心した。

 今までの俺は忘れていたのだ。ロマン溢れるアニメだって素晴らしいってことを簪に教えてもらった。

 それに、これが成功すれば、簪の前でヒーロー面(ドヤ顔)できるじゃないか!

 

「そうなれば、思い出せ俺。具現化しろ、想像しろ、妄想しろ俺。最強の力を……」

 

IMAGE POWER(イメージ パワー) 一〇%です』

 

 氷歌がそう伝える。これはただのボイスロイドとしてではなく、人格を持った声である。

 

「中二病と言われても気にしねえ。それにISに乗ってる以上、中二病ではない。これに異論は認めない! ――簪っ!」

 

『!? ……ど、どうしたの、太一?』

 

 急に俺からプライベートチャネルが届いて簪が驚いたのか、声を裏返らせて訊いてきた。しかし、それには答えず、俺は続ける。

 

「……無茶で無謀と笑われようと」 

 

 頭の中で妄想をしながら、俺はとある男性声優に似せた渋い声で語る。その言葉で何かを察した簪が、口を開く。

 

「……い、意地が支えのケンカ道!」

 

 若干の躊躇いも、途中から打ち消し簪が叫ぶ。計画通り。

 

「壁があったら……殴って壊す!」

 

 それも交互に、お互いの息はとてつもなく合っているようにみえる。

 

「道がなければ、この手で創る!」

 

「心のマグマが炎と燃える!」

 

「超絶合体グレンラガン!!!」

 

「……俺を――」

 

「「――俺たちを、誰だと思っていやがる!!」」

 

 合体はしないとはいえ、最後のセリフも二人は完璧なタイミングで放つ。その刹那、いつの間にやらIMAGE POWER(イメージ パワー)も一〇から一〇〇%に変わっていた。

 

『太一、いくら回復したとはいえ、シールドエネルギーが持たねえっ……』

 

 プライベートチャネルで一夏がそう伝えてくる。だが、準備が万全となった今、一夏が心配することはない。

 

「大丈夫だ! そいつをこちらに投げ飛ばしてくれっ!」

 

『やれるだけやってみるさ!』

 

 一夏は刀を装備解除し、クローだけで戦いだす。それも箒との連携プレイで福音をだんどんと追い詰めていく。福音の翼は既に片方失っており、二人がやってくれたのだと俺は確信した。

 

「逃がすかぁぁあ!!」

 

 一夏によるクローは雪片弐型よりリーチが短い。対して、福音との距離を詰めても数メートル離れている。かなり厳しいものだろう。……だが、今は信じるのみ。

 

「任せろっ!」

 

 隙を見て、箒が一気に福音へと詰め寄る。箒はあえて一夏へと福音を脚で蹴り飛ばした。

 

「今だ、一夏!」

 

「うおおおおおおっ!!」

 

 ぶっ飛んで体勢を崩した福音の脚を一夏は掴み、ハンマー投げの選手の如く振り回す。その回転力は軍用ヘリのプロペラ並といってもいいほど。

 

「太一! 受け取れえええい!」

 

 百発百中、俺の方向へ福音が飛んでくる。――絶好のチャンス!

 

「全雷艦っ、拘束しろ!」

 

 全ての雷艦が福音を囲み、四肢を拘束する形態に変わる。雷艦の形状こそ変化はないが、福音は身動きが不可能な状態に陥った。

 

「ギガァァ……!」

 

 ISの右腕を天に挙げ、その一言で半透明な水色に輝くドリルが出現する。おまけに頭に三日月のような水色の飾りも出現した。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

「ドリルウゥゥ……!!」

 

 今度はそのドリルが獰飆の機体より倍近く巨大化する。これに感激する簪以外は皆、驚きを隠せなかった。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

「ブレイクウウウゥゥゥゥ!!!!」

 

 今季最大の咆哮と共に、俺は福音へドリルを放つ。膨大な螺旋力を前にして、福音は片翼だけで弾雨を打つが、ドリルによって抹消される。

 

『キエエエアアアアァァァ!』

 

 機械音声で福音は叫ぶ中、ドリルが福音に到達。ドリルは福音の腹部を削り続け、絶対防御を発動せざるを得なくなる。福音のシールドエネルギーが尽きたと同時に、巨大なドリルが花火のように爆発四散し、獰飆のシールドエネルギーも一瞬にして尽きた。

 

「ふぅ……。燃え尽きたぜぇ……」

 

 機体維持の限界までシールドエネルギーを使い果たした獰飆は陸に向かって隕石のように落ちていく。

 

(ん? まてよ。確か中には人が!)

 

 気づいたときには遅く、獰飆と並ぶように操縦者らしき女性も落下していた。……無人機じゃないんだった。

 

「まったく、気を抜くなよ」

 

 海面に叩きつけられる前に、一夏がその女性をお姫様抱っこのように捕まえる。そして、箒は獰飆をキャッチ。

 

(……ってか、さっきの燃費悪い)

 

 先ほどの単一仕様能力、『独創神力』には重大な欠点があるようだ。言うまでもないが、燃費が同じ単一仕様能力・零落白夜以上に悪い。シールドエネルギーフルから一瞬で消費するなんて、ロマン溢れ過ぎだろう。わずか三十秒しかもたなかった。

 

「いでっ」

 

 あの時の打撲が今になって痛みとして返ってきた。……他の仲間も無事だったようだ。ひとまず、一件落着。

 

 

 

 

 

 

 

 

「作戦完了――と言いたいところだが、お前たちは重大な違反を犯した。帰ったら即刻、反省文五枚の提出と懲罰用の特別トレーニングを用意する。わかったな?」

 

「……はい」

 

 英雄(HERO)たちの帰還に歓喜の舞が――なんてことは起こるわけがなかった。

 千冬さんは腕を組んで怖い顔で待ち伏せていた上、ここまできつい言葉を発せられる。福音に勝った爽快感も一瞬にして消え去った。現在、俺たちは大広間で正座させられて数十分が経つ。……絶賛、足しびれなう。

 

「あ、あの、織斑先生。今回はその……け、けが人もいますし、ね……?」

 

「ふん……」

 

 激おこプンプン丸な千冬さんに対して、麻耶先生はわたわたと忙しそうである。何度も部屋から出たり入ったりで。

 

「じゃ、じゃあ、今から診断しましょうか。ちゃんと服を脱いで全身を確認させてくださいね。――あっ! だ、男女別ですよ! お二人とも!?」

 

「そんなもん、百も承知ですよ。先生」

 

 あはは、と最後に笑って俺は言う。言ったところで手遅れだが、『脱いで』の当たりから、女子(JK)が微かに彼女ら自身の体を隠していた。一夏なら多少は傷つくかもしれないが、俺はなぜか少しゾクゾクした。

 

「それでは、皆さんまずは水分補給をしてください。それから診断します」

 

 すぐに俺たちはスポーツドリンクを受け取る。軽く飲んでみると、大分ぬるめの温度だった。一夏的にはこれが普通であるかもしれないが、やはり物足りない。やっぱ「"キンキンに冷えてやがるっ……!"」って感じでないとなぁ。

 

「…………。しかしまぁ、全員、よく無事に帰ってきたな」

 

「え? あ……」

 

 皆が水分補給している間に、ボソッと言ってくる。そして、照れくさかったのかすぐに背を向けられた。

 

「じゃ、お先にどうぞ」

 

 ふと、麻耶先生の方を見ると、診察用の器具の準備ができたらしいので、俺だけ部屋を出る。なんかボケーっとしていた一夏は、女子らの「とっとと出てけっ」の声で慌てて出てきた。

 

「「ふぅ……」」

 

 襖に背中を預けながら、俺と一夏は深い息をつく。

 

 とにもかくにも、これで本当に一件落着だ。なんだか色々あって知りたいことだらけだが、今は置いておこう。

 

(ありがとな、氷歌)

 

『いえいえ、あなたは私のマスターですから、当然のことをしたまでです』

 

 ……特にこの女の子についてもっと知りたい。"千反田える"っぽいお願いの仕方で訊きたいくらい。

 

『訊きたいことでしたら、いつでも構いませんよ?』

 

 あ、心の声が筒抜けなの忘れてた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ね、ねねー。城谷上くん、結局はなんだったの?」

 

「残念だが、機密事項なんだよ」

 

「ねー、シャルロットも教えてよぉ」

 

「ダメだってば」

 

 昨夜の夕食と同時刻、今回の件でかなり空腹になった俺は、かぶがぶと飯を食っている。

 そんなときに限って、周りから女子が群がってあれこれ訊いてくる。こちらは疲れているのだから、勘弁してもらいたい。

 

「えー……でも――」

 

「じゃあ、君たちに何があっても俺たちは一切、責任をとらないけど教えても宜しいかい?」

 

 諦めの悪い彼女たちに俺は忠告する。あえてどうなるか言わないことが重要である。といっても、制約が付いたりするだけだが。

 

「なにそれ怖いこと言わないでよ……」

 

「本当だよ」

 

 そして、にっこりしながら言うシャロ。この笑顔が逆に威圧感を抱かせて、機密事項がマジやばい感を増幅させるのだ。シャルロット……おそろしい子ッ!

 

「…………」

 

 ちなみに俺から右隣には簪が、左には本音、そして、向かいにシャロである。ザ・平和で非常に清々しい。

 

「もぐもぐ……ん、そうだやがみん。あの時はすっごぉーーーく心配したんだよ~?」

 

 たらふく食ってのんびりとお茶を飲んでいたら、本音が急に話してきた。一瞬なんの話かと思ったら、福音戦のときに部屋を飛び出したことだろう。

 

「……あれは許せ」

 

「でも、無事ならいいんだけどね~」

 

 ポンっと俺の背中を本音が叩く。ズキりと背中の打撲が悲鳴を上げた。

 

「いででででっ」

 

「……無事じゃなかったね」

 

 そして、簪にそう言われる。痛みを伴ったおかげか、なにか重要なことを思い出した。

 

(……箒の誕生日プレゼントだ)

 

 チラッとシャロから右に数席離れた箒を俺は見る。なんで見たのかは適当だが、箒を拝めば何か良い贈り物が思いつくだろうと思ったからである。

 そういうことなのだが、どこかいつも以上に大人しい。箒の隣にいる一夏が声をかけたら、箒が敬語でよそよそしく話していた。

 

 それはどうでもいいとして、何気なくシャロの胸元を見る。一見、下心丸出しに思うかもしれないが、今回()()は純粋にネックレスにしようかと考えて見ているだけである。はい、ここテストに出ます。

 

「な、なにかな? ずっと僕を見てるけど……」

 

 やはり、普通に気づかれた。うん、もっと気づかれずに人を凝視する技を極めないとダメだな。まぁ、胸を凝視したのはバレてないから問題ないか。

 

 ……じゃなくて、シャロになにか言い訳を――

 

「――シャルロットさん、浴衣の胸元ゆるんでますよぉ」

 

 シャロの耳元で、ある女子が何かを吹き込んでいる。何を言っているか、俺には見当もつかない。

 

「っ……!!」

 

 あれれ、シャロの顔がアニメみたいに真っ赤だ。何でだろうか。しかも、横顔を見せた状態で、こちらを睨んでいるし。

 

「た、太一のえっち……」

 

「……へ?」

 

 突然の冤罪?に俺はアホみたいな声になる。普通なら焦ってシャロに抗議するだろうが、心中(しんちゅう)では喜んでいる俺がいた。

 

「……うっそ~。浴衣はゆるんでないよん」

 

「!!」

 

 またお隣の女子がシャロの耳元で何か言っている。

 その途端、シャロは耳まで真っ赤になっていた。あ、なるほど理解した。

 

「…………」

 

「この刺身はおいしいなぁ。本当に、うふふ、あはは、あははははは」

 

 すみません、シャロが壊れました。どうしてくれるんですかそこの生徒さん。

 

「それにしてもー。シャルロットさんはえっちぃなぁ」

 

「ち、違うよ!? ぼ、僕は……そ、その、あのっ……!」

 

 と思ったら普通のシャルロットさんに戻ったご様子。大丈夫ですよ。俺はあなたの言い分を今なら理解できます。

 

「あの、えーと、太一? さっきは、ごめんね……許して……?」

 

「大丈夫だ、俺は寧ろ嬉しぃぃ――イダダダダっ!?」

 

 横っ腹に蟹の手で挟まれたような痛みが走る。痛かったのは左であるということは、犯人は簪だろう。

 

「……私には、あなたを……殴る権利がある。でも、疲れるからやらない」

 

 いや、殴ってなくても、抓ってますよ。しかも、シャロ(おこシャルロット)も例の女子を抓ってますし。

 

「やがみん。女の子の身体をじーーーっと見るのはダメなんだよ~?」

 

「うっ……サーセンした」

 

「だから~。今からやがみんに制限をかけますー」

 

 ざわ…ざわ…。ごくり……。

 

「これから~、私以外の女の子を見るの禁止にしまーす!」

 

「そ、そんなぁ……――ってなんだそれっ」

 意味のわからない制限をかけられ、本音の頭にチョップする。かなり久しぶりのチョップであった上に、なぜかゾクゾクした。俺、やっぱSM両方対応してるのだろうか。

 

「……うぅ。女の子の頭を叩くのも禁止~」

 

 いかんいかん。このままだと禁止事項だらけになってしまう。

 

「叩くのは別として、女子を見るの禁止にされたら、俺、この学園で生きていけないだろ」

 

「……太一は女の子を拝まないと生きられないんだ」

 

「そういうことじゃねぇよ!」

 

 簪に誤解を招くことを呟かれ、咄嗟のつっこみをする。でも、確かに女子を拝めなくなるのは死んだも同然かもしれない。いや、二次元があるじゃないか!(歓喜)

 

「なら、三年間、目隠しで過ごせば問題ないと思うなぁ」

 

 なんかシャロまでのってきた。卒業まで目隠しとか、俺には地獄のようだ。はっ!つまりアニメも見れねえ。

 

「まぁ、全部じょーくだけどね~」

 

「デスヨネー……」

 

 俺の周りで微かな笑いが巻き起こる。女子に(いじ)られることに、心の奥底で興奮している自分がいた。なぜ、この状況が嫌にならないのだろう。

 

 もしやこれが、俺の求めていた青春だからなのだろうか。

 

 

 

 To be continued……

 

 




 いやぁ、なんか燃え尽きた感凄いっすね。
 単一仕様能力だけでも相当、試行錯誤しました。
 そして、今回もメインヒロインは簪でした。

━━《雷艦》

 白式の第二形態《雪羅》の名前って武装の雪羅を示していると思うんです。だから、獰飆の第二形態《雷電》も雷電が《雷艦》だと思って大丈夫です。ただ、表記変えるの面倒なだけなので。


━━雷電

 ちなみに新獰飆のスラスター、どこかで見たことありませんか?実はとあるイラストをもとに作成したんです。意外と気に入ってます。

━━爆裂瞬時加速

 でましたチート技その1。これはその名の通り、エネルギーが半分溜まれば使える瞬時加速。つまり、燃費は白式の二段階瞬時加速と大差ないです。

━━天元突破グレンラガン

 これがやりたかっただけだろ!ってなるセリフ。かなり知名度も高いですし、個人的には一番ロマン溢れてると思います。

━━単一仕様能力

 独創神力……適当に作った四字熟語。それっぽさを出したかっただけ。

 ギガドリルブレイク……チート技その2。このssには持ってこいですね。なにせ妄想がそのままリアルに武器として反映されますから。まぁ、欠点もとんでもないですけどね。大きさに比例しますが、燃費はとんでもなく悪い。
 ちなみに効果範囲は無限大ですが、第三アリーナ並の大きさだと一秒も持たないです。

挿絵はやけくそで書きました。

追記、絵と描写に矛盾が生じてますが大目に見てやってください。

━━キンキンに冷えて(ry

カイジ

━━千反田える

アニメ(小説)『氷菓』のメインヒロイン。

━━更新遅っ!

 実は、最近まで20作程度のアニメを見てたり、リメイク版1章の作成をしてたりしてました。

━━次回は俺が一年前に掲げた目標に到達です。


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