るろうに剣心 ー空と海と大地と呪われし姫君ー (トルネコ)
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第壱幕 出会い・旅立ち・出会い
Lv.1 少年とトロデーン城
内容は結構変えてます!
とある春の昼下がり、トロデーン城というお城の庭先で国王のトロデと姫君のミーティアが花摘みをしている時の事だった。兵士を付けずに2人だけで城近くの森林の花畑で花を摘むのが日課になっていた2人はいつも通り花を摘んでいた。
「お父様お父様!見て見て、桜が咲いてる!」
「おぉ、ミーティアよ、お前もこの立派な桜の様に大きく綺麗になるのだぞ?」
そう言ってトロデ王はミーティア姫の頭を微笑みながら優しく撫でた。すると小さなネズミがミーティア姫のそばに寄って来た。
「あ、ネズミさん!」
「おぉ、本当じゃのう、どれ、これをあげてみぃ」
そう言ってトロデ王はポケットの中から布袋に入ったチーズの欠片とビスケットを取り出し、ミーティア姫に手渡した。トロデ王はもしもの為におやつや薬草などを布袋に入れいつも持ち歩いているのだ。
「わーい、あれ?どこ行くの?待って!」
ミーティア姫は立ち上がりネズミの走る方に付いて行った。
「これこれ、転ぶ出ないぞ、薬草は一つしか無いのだから」
「大丈夫だいじょうぶ〜!」
そう言って泉の方に走っていった。それをやれやれとトロデ王も後から歩いていくと突然、ミーティア姫が泉の目の前でピタリと止まった。
「どうしたのだ?」
「お父様!この子、大怪我してる!」
そう言って泉のほとりで倒れている少年を引き摺りあげようとミーティア姫が力を入れた。するとトロデ王が近寄りその少年を抱き上げ、急いで日の当たる桜の根元に横にした。
「大丈夫か!少年よ!大丈夫か!?」
「お父様!心臓は動いてるみたい!生きてるよ!」
「おぉ、そうか!ならばこれを呑ませよう」
そう言ってトロデ王は腰にしていた短剣の持ち手を取り外し、中に入っている水をその少年に飲ませた。
「お父様…なんですか?それは」
「これはアモールの水という神聖な水だ。時期に目を覚ますだろう」
「あ…うぅ…ここは…?」
「あ!気付いたみたいよ!」
「大丈夫か!?何があったのだ!?」
トロデ王は少年の頭を持ち上げ、呼吸のしやすい角度にした。
「さ…むい…」
そう言って少年は再び気を失った。
「ミーティアよ、今日はこれで終わりだ!早く帰って神父殿に見てもらわねば」
「お父様、私がこの子の看病してもいい?」
「む?あぁ、同じくらいの歳だしな、見てやりなさい」
「はーい」
そう言って2人はその少年を背負って城に戻った。それから一週間、40度を超える高熱でずっと目を覚まさなかった。ある日、王家専属の魔法使いはその子には恐ろしく膨大な魔の呪いがかかってる、もう一生目は覚ますまい。といって城から姿を消した。しかし城内の神父やシスター、村の人々が不眠不休で看病したお陰で熱は下がり、一命を取り留めたのである。それから2日が経ったある日の朝の事だった。シスター達の部屋で寝ている少年の様子を見に来ていたミーティア姫が目を覚ましていた少年を発見したのである。
「あなた、もう大丈夫なの!?」
「え?あ、うん…ここは?」
「ここはトロデーン城よ。何も覚えてないの?」
「…うん」
「あなた泉の淵で横たわって倒れてたのよ?」
その声を聞き付け、神父がやって来た。
「おやおや、やっと目が覚めた様ですね」
白と青の服を纏った優しそうな初老の神父がドアを開けて言った。
「お主、記憶を失ったようじゃの」
「…うん、全然覚えてない」
「ならばワシが命名してやろう」
神父がそういった瞬間、ミーティア姫がバッと立ち上がった。そして神父の方に近付いて行った。
「私が名前を付けてもいい?」
「まぁ、ワシは構わんが、少年に聞いてみると良い」
「ねぇ、いい?」
「え?うん、いいよ!」
「えっとねぇ〜、ネルメクア!どう?気に入った?」
「うん、ちょっと長いけど…気に入った!」
それを聞いた神父がボソッと口にした。
「ネルメクア…まさかな」
「「???」」
この時、2人はその言葉の意味を理解出来なかった。その日の内に少年・メクアが目を覚ましたという噂はは城中に行き渡った。それから半月後、住み込み小間使いとしてトロデ王に命じられたのである。
「メクア〜、住み込み小間使いになったって本当?」
「うん、トロデおじさんに言われてなったんだ、お金も貰えるって言ってた!」
「でもたくさん遊べなくなっちゃうね…」
「…うん、でもお話ならできるよ!」
メクアがそう言ってガッツポーズをとると後ろから頭をポンポンと叩かれた。
「こんな所で油売ってたらダメですよ?小さな小間使いさん」
「あ、マリ姉…」
マリ姉とはメクアがこの城に運ばれてから身の世話をしてくれているシスターで、歳も10しか変わらないので2人にマリ姉と親しまれている女性である。清楚で優しく、トロデ王からの信頼もあるシスターなのだ。
「今回だけは姫様のお相手をしていたと言う事で王様には言いませんが継は言っちゃいますからね?では、わたしは仕事があるので。またね」
そう言って二人のいる部屋を出ていった。
「マリ姉、優しいよね」
「うん、内緒にしてくれたしね」
その後、2人は夕暮れまで会話を続け、結局大臣に見つかり2人は怒られたという。その夜の事だった。
「してマリアよ、儂に用とはなんじゃ?」
「こんな夜遅くに申し訳ございません」
マリアはトロデ王に深い礼をした。しかしトロデ王は笑顔でよいよい、と言ってマリアの話を聞こうとした。
「話と言うのは他でもありません。新人小間使いのネルメクアを姫様に付けてはくれないでしょうか?」
「何ゆえじゃ?」
「あの2人は歳も同じでとても仲が良いのです。少々城内ではヤンチャもしておりますが…しかしネルメクアの来る前の姫様と比べるといつも笑っております」
腕を組んで険しい顔をしたトロデ王に再び深い礼をした。マリアにトロデ王は笑顔になり、口を開いた。
「マリアよ、とても良い提案じゃと思うぞ。確かにネルメクアの来る前は儂との散歩意外全く笑わんかったしのぉ。よし、メクアを連れてきなさい。ミーティアの部屋に居るじゃろうから二人ともじゃぞ」
こうして、1人の新人小間使い・ネルメクアがミーティア 姫の小間使いとなった。その仕事というのが大変なものだった。主に他の使用人が…。トロデ王は2人の前でミーティアの小間使いとなって一緒に遊び、世話をしろ。と言うのだ。それで毎月お金が貰えるのだからメクアにとっては願ったり叶ったりなのである。その後、2人で遊びに行って迷子になったり泉に通うのが日課になり城内を多々騒がせていたという。
どうだったでしょうか?まだるろ剣要素ないですが後で出す予定です!
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Lv.2 謎の道化師の呪いと旅立ちの決意
メクアがトロデーン城に迷い込んでから10年の年月が過ぎた頃だった。とても働き者で全てを完璧にこなし、勉学や身体能力においても天性の才を発揮し、その上、城内の人々や村人達からの信頼も厚い為、実質13歳にして姫君専属小間使いから王近属兵団に入隊した。それからまた5年程経った頃の事だった。
「ネルちゃ〜ん、今度はこっちの木箱お願いね〜」
「はい、分かりました」
スカーフを羽織った初老婦人の手伝いをしていたメクアは三段重の木箱を持って返事をした。前の見えない為、ロヨロと動きながら前に進んだ。するとドンと誰かにぶつかった。
「あ、すみません。…旅のお方ですか?」
少し顔色が悪く、どことなく奇妙な長身のその男不気味に笑い、歩いていった。
「なんだあれ、無愛想な人だなぁ…」
「あの人ね、二日前くらいからウチの宿屋に泊まってるのよ。口も聞かないで何しているのか分からない人だから、あんまり近づかない方がいいよ」
近くを通った城内にある宿屋の女将がネルメクアに言った。すると手伝いをお願いされていた初老婦人が後ろから口を開いた。
「やだねぇ、わけのわからない旅人ってのは、まぁ、何かあればネル君がコテンパンにしてくれるから安心だけどねぇ」
「それもそうね」
おばさん方の世間話についつい苦笑いをする。自分は近護衛でもなければ王近属兵隊の団長でもない。もっとも、剣術以外は恐らくこのおばさん方にも劣るだろうが。おばさん方の世間話が弾んでいる間に木箱運びを終わらせておこう。
「…はぁ」
「どうか致しましたか?」
城の窓際で城下にいるメクアを遠目で眺めながら長い溜息をしたミーティア姫に紅茶を入れに来たメイドが心配そうな顔をしてミーティア姫の顔色を見やった。
「え?あ、ううん…気にしないで!何でもないから!」
「左様ですか、ではまた、御用がありましたらお呼びください」
そう言ってメイドは退室した。部屋に誰もいない事を確認したミーティアは再び木箱をせっせと運んでいるメクアを遠目で見やり、深い溜息を付いた。そして夏空をぼんやりと見上げ、呟くように口を開いた。
「もっとメクアとお話したいのに…」
そんな呟きは夏の風に流され消えていった。メクアを『メクア』と呼ぶのはトロデやミーティアの2人だけで、使用人などは『ネルメクア様』や『ネル君』など『ネル』という名で呼んでいる。いわゆる本人確認というやつだ。
夏の終盤に差し掛かった頃、城中で大きな新任式が行われた。ミーティア姫の要望で初の姫専属近護衛にメクアが指名推薦、新任したのである。村の人々や城内使用人などからの信頼も厚くトロデーン城全体からの評価はダントツで高かった為、新任したのだ。そのつぎの日の事だった。不気味な服装をしたドルマゲスという手品師がトロデ王とミーティア姫、そして近護衛のメクアの前で手品を披露したのである。
「うむ、ドルマゲスとやら、見事であった。礼と言っては何じゃが、我が城に泊まっていくといい」
トロデ王とミーティア姫は拍手をしながら言った。するとドルマゲスは不気味な笑みを浮かべ口を開いた。
「ありがたきお言葉。ではお言葉に甘えて」
そう言って玉座の間から出て行った男をただ一人、メクアがずっと睨んでいた。
「どうしたの?メクア、アナタにその顔は似合わないわよ?」
「いや、あの男、どこか変だったから…」
「もしやお主…」
さすがトロデ王。一国の王たる者、怪しい者の身柄を取り押さえておく為に自城に止めようとしたのか。
「あの男が褒められたので嫉妬しておるな?」
「ほぇ…?!」
嫉妬?まさかの答えに一瞬戸惑った。
「い、いえ。僕はただドルマゲス殿が殺気というか邪気というか…何か嫌な様なものを感じたから…」
「うふふ、そんな堅苦しく話さなくていいよ?3人だけなんだから」
「あ、そう?結構疲れんだよ?敬語ってさ」
その後、三人は夕暮れ時まで雑談をして大臣に叱られたとかされてないとか。
「あの近護衛の少年の目…私の事を疑いの目で見ていた…まさか私の目的を見抜いたのか…?」
「どうかなさいましたか?ドルマゲス殿」
部屋に案内をしている案内兵が突然止まってブツブツと独り言を言っているので聞いた。
「あの玉座の間にいた一人の兵は何なのだ?」
「え?あぁ、ネルさんの事ですか?いやぁ、彼は凄いですよ」
そう言って案内兵はドルマゲスを部屋に案内をしながら話した。
「今から十年前、ちょうど彼が8歳の頃に記憶を無くして大怪我をして倒れている所をトロデ王とミーティア姫が助けた少年で身元も素性も謎なのですがたった十年で最上級高位兵の近護衛になったエリート中のエリート何ですよ」
「ほう、してその少年の名は何と申す?」
「ネル・メクアさんですよ。その名付け親はあのミーティア姫何ですよ!」
「…ネル…メクア…!?いや、まさかな」
「え?」
「いや、なんでも」
2人はそう言って客人部屋へと入っていった。
「やっぱり昼間の
ミーティア姫の部屋の前で見張りをしているメクアはドアの横に掛けておいた銅の剣を手に持って下の階にあるドルマゲスの部屋を見に行くことにした。その途中の事だった。
「ぐあぁぁー…ッ!」
封印されし宝物庫の方から見張り兵の叫び声が聞こえた。
「どうしたんです!?大丈夫ですか!?」
宝物庫の前に倒れている兵に近寄った。
「ドル…マゲ…ス…」
そう言って兵士は気を失った。その兵を仰向けに寝かせ、やくそうを口に含ませてメクアも宝物庫に走って入った。
「ドルマゲス!」
「ほう、やはり貴様が一番乗りか」
宝物庫の一番奥にある『封印されし杖』を手に持ったドルマゲスが宙に浮きながら言った。
「その栄光を称えて一番強い呪いを貴様を中心にこの城に掛けてやろう」
そう言ってドルマゲスはその杖をメクア目掛けて振り下ろした。
『
すると杖から太く大きい多数のイバラが襲い、吹き飛ばされて壁にぶつかった。
「かはッ…!ミー…ティ…ア…」
掠れた声でそう言うとメクアの視界は燃える様な緋色になり、気を失った。
「ククク…悲しいねぇ…悲しいねぇ…」
宙に浮いたドルマゲスは空高くからトロデーン城を見下ろした。
「ククク…ヒャーハハハハ!アヒャハハハ!アーッハハハハ!」
甲高い声を上げながらドルマゲスは夜の闇に姿を消した。するとその瞬間、トロデーン城の内部から大きなイバラが城を襲った。そしてたった一夜にして一国の城にイバラが根付いたのである。
それから三日後の事だった。宝物庫の前の壁に叩き付けられたメクアが目を覚ました。確か宝物庫の扉の前で倒れたはずなのだが、王室の隣にある近護衛の部屋のベットに横になっていた。完全に傷は無くなり、流血後と服の裂けた後だけが痛々しく残っていたのである。とは言ったものの、頭を強打したからか、まだ少し頭がぼんやりして上手く頭が回らない。
「…ミーティアは!?」
やっと頭が治まってきた頃にふと我に返ってミーティアの事を思い出したメクアは走ってミーティアの部屋に行った。
「ミーティア!」
そこにいたのは純白の毛並みでとても美しい白馬だった。窓から差し込む光が白い毛に反射してとても綺麗な白馬はメクアの方に近付いて口を開いた。
「メク…ア…」
白馬は震えた声でメクアの名を呼んだ。
「どこも…怪我してない…?ミーティア」
「…私が…分かるの…?言葉も!」
「もちろん。ひと目でわかるよ。10年も一緒なんだから」
「お父様はさっき来たけど私が分からなかったから…」
メクアとミーティアが話しているとドアがガチャっと開いた
「む?…!メクア!無事だったか!わしが見つけた時には心臓が動いて居らんかったのでな、部屋に運んで葬ってやろうと思っておったのじゃが…いや失敬失敬、それにしてもこんなに嬉しい事は無いわい!」
緑色の魔物の様な姿をしたトロデ王がメクアに抱き着いて来た。背丈は変わらず、どことなく面影が残っていた。
「…ミーティア」
無理に喜んで抱き着いて来たトロデ王の耳元で呟いた。するとトロデ王は顔色を変え、ミーティアのベットに腰を下ろした。
「ミーティアは…いなくなってしまったのだ…」
「トロデさん、この白馬がミーティアなんですよ」
そう言って白馬をトロデの方に近付かせた。
「おぉ!そうじゃったか!…そう言われると面影があるのぅ!」
「…信じてくれるの?」
「無論、お前がわしに嘘をついた事があるか?」
がハハハハと笑いながらミーティアの首に抱き着いた。そのトロデの目から光る物が見えた。涙だろうか。
「トロデさん、それで城がこんなふうになった理由なんだけど…」
「あぁ、大体は調べはついておる。ドルマゲスがあの杖を盗み呪いをかけたのであろう?わしはヤツを追うために城を出る。ヤツの師匠なら何か知っているのではと思うてな、トラペッタに行く」
「なら僕もお供します」
「…私もお父様に付いて行くと伝えて?」
そしてこの二日後、三人はトロデーン城を後にした。憎き道化師・ドルマゲスを倒さなければ城の呪いは解けないカラである。身分を隠す為、メクアは私服を、トロデは王冠を置いて行き、ミーティアには…メクアが二日で仕上げた綺麗な服を着せた。こうして身分を隠した三人はドルマゲスの師匠・マスターライラスの住む町、トラペッタに向かった。
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Lv.3 仏の村と謎の廃村
私的にはるろ剣のキャラと技を全部出したいんですよね!笑
メクア一行がトラペッタに向かう途中、一人の中年盗賊ヤンガスを仲間にした。架け橋で落ちそうになったところをメクアが助けたのである。
「にしてもアニキ、なんでこんなオッサンなんかについて行くんでガスか?」
「誰がオッサンじゃ!」
「んじゃバケモンだな」
「ば、バケモンじゃと?!」
「まあまあ、二人とも。落ち着いて」
突然、ヤンガスとトロデのくだらない言い合いが始まりメクアがそれを止めにかかる。ヤンガスと出会ってから数日、これがメクア一行の昼間の日常風景になりつつある。一度、この言い合いをメクアが止めなかった事があるが低レベルな言い合いが延々と続いた事がある。なんというか、この2人の思考回路は単純なのだろう。
「メクアよ、この阿呆に言ってやれ!ワシの方が位が高い事を!」
「はぁ…」
メクアが眉間に手を当てて溜息を吐くとミーティアが哀れみの目で見てきたのがよくわかる。一日一回ならまだしも、これが一時間に一度の頻度で来るから流石に疲れる。しかも内容がくだらないときたもんだ。
「アニキ、こんなオッサンの言う事なんで聞かなけりゃいいんでゲスよ」
「あ、あはは…はぁ…」
今日は一刻も早く宿屋に行って休みたい気分だ。
「メク、大丈夫か?」
「うん?あ、トーポ」
メクアの胸ポケットから話し掛けてきたトーポを自分の肩に乗せながら言った。
「大丈夫だよ、もう慣れてきたし」
「そうか、でも無理はするなよ?いざとなればアイツらの耳を引きちぎってきてやる」
「口が悪いね〜?」
トーポの声は他の人間には聞こえないから暇な時の話し相手に持ってこいだ。まぁ、メクアがただ動物と話せるだけなのだが…。
「メクアよ、そろそろ日も暮れる、今日はあそこの村で一泊しよう」
日が暮れればB級モンスター、俗に言う強モンスターが活動を始める為、今は手も足も出ないメクア一行は宿屋や村で一泊するのである。
「イム…きょう…村???」
「メクア、それは
「…これカタカナじゃなかったの…?」
「小間使いの時に姫としっかり勉強していないから読めないのだぞ?」
「…すみません」
「まぁ、漢字以外は頭脳明晰の秀才だったからな、漢字くらいは大目に見ておくわい」
「ありがとうございます」
漢字、それは遥か昔に栄えた今は無き大陸の国が作り出したとされる独特の文字である。画数が多いが文章を短く簡潔にまとめることが出来る。まぁ、メクアにとっては暗号も同然だが。
「兄貴、ここの宿は馬小屋もあるそうでげす。ここに泊まりましょう」
「だめだ、宿賃が高過ぎる。第一、姫を馬小屋に預けるなど言語道断!」
「んだとジジィ!姫ったって馬じゃねぇか!」
「何を言うか!こんなに美しい姫を馬小屋に預けるなんて出来ぬわ!」
「ま〜た始まったよ…」
ミーティアとメクアは睨み合っている2人を見ながら苦笑いをした。今日で何度目だったろうか、もう止める気にもならない。
「メクア、私は大丈夫ってお父様に伝えてもらえる?」
メクアが疲れ切っている事を察したミーティアは馬小屋で寝る事を決意したようだ。案外馬小屋も暖かくて寝心地が良いとミーティアが言っていたが、少し可哀想ではある。よく考えると一国の姫が馬小屋で眠を取るのはどうかとも思うが、仕方ない。
「はぁ…トロデさん、ミーティアが馬小屋でもいいって」
「いや、しかしだなメクアよ──」
トロデがそう言った瞬間、ミーティアがトロデを睨んで何かを伝えようとしたようだ。案の定、何かを察したトロデは渋々と宿屋に入っていった。
「オヤジ、大人3人と馬一匹」
「ではこちらへどうぞ」
村に入った時から思っていたのだがこの村の人々はなにやら奇妙な服をまとっている。男はみんな頭を丸めてツルツルだし、昔の集落かなにかの名残だろうか。
「こちらです。観音の間ですのでお間違いなく」
そう言って宿屋の亭主は受付に戻っていった。それより観音の間とはまた奇妙な名前の部屋に案内されたものだ。どこの村も数字で部屋の名前が付いているというのに。
「ア、アニキ…この部屋…変な臭いが…」
ドアを開けた瞬間、ヤンガスは渋い顔をして鼻を摘んで手で顔の前を扇いだ。
「あぁ、これは線香の残り香じゃな」
部屋から漏れた匂いを嗅いだトロデが続けて言った。
「まぁ、寝るときは心地よいじゃろうて」
その日の夜、確かに線香と畳の香りはとても心地よく、今までの疲れが一気に取れそうな気分だ。
「うるさい…」
トロデやヤンガスは既に寝た。そのイビキがうるさく全く眠りにつけない。
「ミーティアは…寝たかな?」
確か馬小屋は宿の外に一回出てから隣接してる馬小屋に行けたはずだ。少し遠いが散歩がてら、寄ってみようか。
「流石に冬は寒いなぁ…」
毛布を一枚羽織ってくれば良かっただろうか。そう思いながらふと空を見上げると一面に大小無数の星が広がっていた。
「あれ、こんなに夜空綺麗だったっけ…?」
小間使い時代に天体学は一通り教わった。星座も大抵は覚えた。その星座を探しながら夜空を見上げるのは幼少期からの趣味の一つだ。
「そういえばここに来る途中の分れ道…どこに続いてたんだろ」
この村に来る途中、不気味な森に続いている細道につながる分れ道があった。すぐそこだし、行ってみようか。
「はぁ…はぁ…流石に1人での夜はキツいかな…」
軽くモンスターと戦っただけなのにHPのほとんどを削り取られた。その上、やくそうを全て使い切った状況である。
「まぁ…帰っても進んでも同じかな…」
不気味な森の奥に進んで一時間弱、そろそろ森を抜けてもいい頃だが、進んでも進んでもモンスターと森が続いているだけだ。
「そろそろ…戻んないとかな…ん?」
来た道を戻ろうとした瞬間、森の奥の方に光が見えた。自然の光ではなく火のような人工的な火である。
「村…かな?」
村でも集落でもどっちでもいい。一晩休めれば体力も回復し朝になればモンスターも弱くなり簡単に帰れるはずだ。
「ここは…?!」
森の奥にあったもの、それは壁は剥がれ落ち、屋根は穴だらけの廃家の建ち並ぶ廃村だった。
「こんなところじゃ寝るのはは無理か──」
後ろを振り向いた瞬間、メクアの意識が遠のいてその場に倒れ込んだ。
「やれやれ、これくらいで気を失うとは…情ねぇなぁ?馬鹿弟子が…」
体格の良いその大男はそう言ってメクアを引きずって廃村の奥に連れていかれた。
どうだったでしょうか?ちょっと短いですが次回に続きます!
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