箱庭世界のモノガタリ (三倍ソル)
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箱庭世界のモノガタリ

青空優成さんとのコラボです。
作品は、私の「とある世界のモノガタリ」と青空さんの「箱庭物語」です。
では、始まります。


……生きろ、生き返るんだ!!

 

 

 

ここで本当に死んでしまったら、俺は何をすればいいんだ!?

 

 

 

お願いだ!目を覚ませ!覚ましてくれ!!

 

 

 

 

これは、クライヨ平原はタカイヨ塔を攻略した二人のすぐ後の短いお話である。

突如、二人は村長の家へと出現(スポーン)した。

その二人とはスティーブやアレックスとは違う。スティーブと格好も名前も似ている「スティーヴ」、緑色のパーカーと短パン()()の少女、クリーパーだ。…つまりいえば彼女は…裸パーカー。

 

「あれ?ここどこ?」

 

俺は頭を掻きながら辺りを見回す。

そこは、いつも俺が見た世界であった。

でも、少なくともレティスではない世界であった。

 

「あれ?…マインクラフトの世界じゃないかな?」

 

俺の耳元に明るい元気な女性の声が入り込む。

やはり、彼女もいるようだ。

 

「本当だね。でもここレティスじゃないよ?」

「ああ…あのワールドは削除したしね…懐かしいなぁ。にしても、ここどこ?」

 

俺らはそれを疑問に思っていると、誰かがドアを開けて入ってきた。

どうやら、年老いた人の様だ。

 

「おお、来おった。」

「誰だジジイ。」

「いやちょっと!初対面の人にジジイなんて言っちゃ駄目だって!」

「はっはっは、まあ許しちゃる。」

 

このジジイの名は村長というらしい。

妙に鼻が長いな。たまにハァーハァーと言って鬱陶しいし。

 

「まあまず、状況説明じゃ。まずおぬしらがここにスポーンした理由は分からん。でもこの世界はカクカクシカジカ(本編参照)というわけで。」

「へぇーこの世界をボブという男がバグを…誰だよそれ!?」

「そいつがバグの元凶じゃな。」

 

まあ要するに、この世界ボブのせいでいろいろバグってるという事だな…。

あとはこの世界をさまよっているスティーブと、アレックスに会えと…。

俺は村長に軽く会釈をして、家を出た。

そこには、レティスよりもずっと小規模な村が広がっている。

 

「レティスを作る前は、確かにこんな景色だったなぁ…。」

「私も覚えてるよ。レティスが生まれる前からあの世界に居たもん。」

「そういえば俺に餌付けされる前朝とかどうしてたの?」

「餌付けって何!?…まあいいか。穴蔵掘って隠れてたよ。っていうか、私をプログラムしたの君でしょ?私の事なんでも知っているんじゃないの?」

「そういう細かいところまでは決めてないさ。というか、あのワールドは作りかけで、お前のプログラムも実は作りかけだったんだ。だからそういうところはお前の行動に任せてたさ。」

「へぇーそう…。」

 

ん?あれは?村長の言っていたスティーブらではないか?

よし!そうと決まればちょっと接触を試みてみよう。

 

「あのーすんません。」

「ん?誰だ?」

「スティーブとアレックスだね?」

「え?何故俺らの名を?」

「村長から話を聞いたんだよ。」

 

スティーヴ説明中

 

「ああ、そんなことがあったのか。俺らと同じ境遇だな。」

「まあそうだな。でも、目的が分からないな。何をすればいいんだ?」

「山の向こうに生えている伝説の薬草の花アルティメットポピーを取ってくるのじゃ。」

「ファッ!?…村長いつの間に。」

 

俺らは驚いたが、スティーブとアレックスは少し身構えただけで驚いたような表情は一切しなかった。

いつも突然来たりするから、慣れたとかなのか?随分変わった人たちだなぁ…。

というかスティーブって、俺と名前も服装も似ているんだが。俺はあくまでスティー()だが、間違えそうだ。主に作者がタイピングするときとか。

 

「…まあとりあえず、伝説の薬草「アルティメットポピー」を取ってくればいいんだろ?」

 

スティー()が、村長に問いたださせる。俺じゃない元々この世界に居る方だ。

 

「そうじゃそうじゃ。あの高いトスレベー山の頂にある薬草を取ってくるのじゃ。」

「なんでなの?」とクリーパーは質問をする。

「いま村民の一人が重い病にかかっておる。それを治すには、そのアルティメットポピーがどうしても必要なのじゃ…。」

「そうなんだ。というかそれスティーブ達で行けるんじゃないの?私たちはこの村に残ってさ。」

「だったらここに来た意味がないじゃろう!それに私の野生の勘が告げてるんじゃ。お前らもついてけと。」

「ハイソウデスネ。」

 

というわけで、そのアルティメットポピー採取に俺達も出向かうことになった。

久しぶりのマインクラフト世界だ。あのワールドを削除してからそれっきりパソコンにすら手を付けてなかったしな…。ちなみに俺がこの世界に来たのはこのワールドを開いたからというわけではない。勝手にこの世界に来たのだ。理由はわからない。

 

「そういえば、自己紹介がまだだったな。俺はスティーヴ。」

「初めまして、クリーパーです。」

「(クリーパー…?)俺はスティーブ。スティーヴと名前が似てるな…。」

「僕はアレックスだよ。よろしく。」

 

俺達はそれぞれお辞儀をした。

そして俺らは二人と雑談を交わしながらトスレベー山へと向かう―――。

 

「スティーヴがさ、昔居た世界ってどんな世界だったの?」

「んー…俺は街をコイツと作り上げて、レティスっていう街を作ったんだ。」

「レティスね…。どんな街なの?」

「まあ簡単に言うと…ニューヨークみたいな街かな?その街にはたくさんのモンスターが住み着いたよ。」

「え!?」

「あ、俺に対して友好な奴らだから。こいつもモンスターなんだよ。」

 

と言って、俺はずっと二人を警戒しているクリーパーを指さす。

 

「ウソ!?マジで!?こんなかわいい奴が!?」

 

アレックスが驚く。

…いや、普通そうじゃないのか?

 

「…かわいい…。っていうか、何で驚いたの?」

「え!?いや、えっと…。」

 

アレックスはクリーパーに質問をされて少ししどろもどろになっている。

…こいつの事、一目惚れしたんじゃないのか?夜中に襲われないように、警戒しとこう。

 

「うーん、なんていえばいいんだか…。というか、こんな人間じゃないよ!?クリーパーって!」

「え!?マジかよ!?」

「いやいやこっちがマジかよ。そっちの世界は人間型クリーパーしかいないのかよ。」

「うん。」

「ゑーーーーーーーーーー!?」

 

アレックスが叫ぶ。

 

「あと、一応言うけどエンダーマンとかも人間だけど。」

「「ゑーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!??」」

 

スティーブと一緒にアレックスが驚く。

マジか、この世界のクリーパー、エンダーマンは人間型じゃないのか…。どんな姿なんだろう。

 

「じゃあさ、このクリーパーって自爆とかしないの!?」

「いや、火薬は常時してるだけで、自爆とかは…え!?そっちの世界のクリーパーって自爆するの?」

「ああ…たまに自爆で家をぶっ壊してくれて、リフォームの匠とか言われているが…。」

「えー!?この世界の私が!?」

 

クリーパーはショックを受ける。

 

「…あ、夜になった。もうすぐ本物のクリーパーが現れる頃合いかな。」

 

俺達は草原のあたりを見渡すと、まず目に入り込んだのは、全身真っ黒で凄い細長い、()()のエンダーマン。

こっちの世界では、普通にスレンダーな黒い服を着た人間の男性なのだが―――。

そして、目を反らそうとしたら次に入ってきたのは緑色で気持ち悪いフォルムの…クリーパー。

 

「ぎゃーーー!!これがこっちの世界の私と同じ生き物!?」

「あ…まあ…そうなるな、クリーパーェ…。」

 

クリーパー(気持ち悪いフォルムの方)はこちらに気づくと、こちらに歩いてきた。

 

「うわー!逃げろー!爆発するぞー!」

「えー?」

 

シュー…という音を出し始めた。

俺達は素早く逃げて少し間をあけると、気持ち悪いフォルムの方のクリーパーが爆発四散するのが見えた。

すこし爆心部の地面に穴が開く。

 

「う、うわー…。こっちの世界に生まれなくてよかったー…。」

 

クリーパーが少し怯えて、俺の腕をしっかりと握る。

怖さを紛らわすための行為だろう。というか、あっちの世界より残酷だな。正直怖い。クリーパー可哀想。

 

「まあ、こんな感じで爆発する。気をつけろよ。そうだ、ベッド持ってきたから周りにモンスターが居ない今のうちに、寝て朝にしとこう。」

 

と言いながらスティーブはベッドを次々と三つ設置した。

 

「あれ!?俺達4人なのに三つ!?」

「あーすまん。羊毛が足りん。まあいいだろう。クリーパーとスティーヴは一緒に寝ろ。狭いと思うが。」

「…えー、分かったよ。」

「えーいーじゃん!あの時の様でさー。」

 

クリーパーは俺のそばで寝れると思ったのか派手に喜んでいる。俺は暑苦しいから嫌なんだが…。

俺達は一斉に布団に潜り込み、そのまま夜を過ごした。

 

「すぴ~……。」

(…アイツ…。後ろから俺に抱きやがって…暑いよー。)

 

クリーパーが抱き着かれているせいで寝がえりができない。それどころか動けない。

別々のベッドが良かったか…。アレックスと一緒に寝かせたらどうかな?

駄目だ。もう眠い。レム睡眠が襲ってくる。寝よう。……。

 

 

朝、眩しい太陽の光に目が覚めた。

同時に、クリーパー、スティーブ、アレックスも起きる。

 

「おはよー…。さあ、山のふもとに向かおうか。」

「うーん…久々にゾンビとかと戦闘とかやった方がよかったかな…。」

「いや。やんないほうがいいよ。モンスターがバグってるから。」

「え!?どういうふうに?」

「ボブのせいなのか、モンスターがレガシーとかで劇的に強くなっちゃうんだよね。だから、夜になったらまず寝る。」

「へー…そうなんだ。」

 

俺達はトスレベー山へ歩き出した。

また再び、雑談を交わす―――。

 

「気持ち悪いフォルムのクリーパーって言うの面倒臭いな…。ラリーパーって呼ぼうかな。」

「いやあれが普通のクリーパーだから!私がこの世界では変なだけだから!」

 

そう言う会話を交わしているうち、何かアレックスからの視線を感じる。

やっぱりクリーパーに気があるのか?一応告白しようもんなら半殺しにでもしようか。

いや、するのはやめとこう。告白されたらあとはクリーパーの判断に任せるか。

 

「なあスティーヴ。このクリーパーは元々プログラムだったんだろ?なんでプログラムの箱(パソコン)から出れたんだ?」

「ああ…そういえば、あれから俺気に掛けたことがあんまいなかったな。何故なんだ?クリーパー。」

「えー?私に聞かれても分かんないよ?多分私のプログラムが変異して、だから私が自意識を持ったんじゃないかな?」

「まあ分からないね。仕方ないね。」

 

…それから5分後。トスレベー山の(ふもと)に着いた。

そこから先の山の道は真っ暗で、ちょっと進んだら行き止まりだった。

 

「うわっ、マジかよ…こっから先が進めないじゃん。どうしよ…。」

 

俺達が悩んでいると、クリーパーが手を挙げた。

 

「はいはーい!いいですか!?」

「クリーパー…?…あっ(察し)」

 

俺は何をするか予想がついた。

二人は何をするのか分からないようだが…。

 

「私、火薬出してTNT作るから。それでこの壁に道を開けよう!」

「え!?どこから?パーカーのポケット?」

「口から。」

「え…?うわぁ。」

「いや大丈夫だからスティーブ。口から出してるけどなぜか唾液ついてなくて、サラサラだから。」

「へぇ、そうか、クリーパー。」

 

クリーパーは火薬を出して、それを慎重に押し固めTNTを作った。

そして、それを壁に投げて爆発させようとする。

 

「…おい、爆発しないぞ。」

「うーん…そういえば、火薬がちょっとべたついてたんだよね…。それになんか体が重いし。」

「え…?お前もしやそれって、風邪でも引いたんじゃないか!?」

「え!?モンスターでも風邪ひくの?」

「ああ、アレックス。」

 

俺がプログラムした時は、こいつは体調を崩したら口から出る火薬がべたつくというようにしてある。

クリーパーは元気という設定にしたため、分かりやすくしないといけないからだ。

 

「今直ぐ降りよう。まだ夜ではないし、今帰れば多分間に合う筈だ。」

「分かった。…えーと、クリーパー歩ける?」

「…異世界の人に心配されちゃうなんてね。なんか不思議な気持ちだ…。」

 

…村に帰る。

 

「村長。こいつ、病気にかかったみたいなんで帰りました。」

「なんじゃと?…しばらく安静にした方がよさそうじゃな。もしかしたら重い病気かもしれん。」

 

というわけで、クリーパーにはしばらくベッドで休んでもらうことになった。

 

「そういえば、最初に言ってた重い病って何ですか?」

「ああ、そういえば話してなかったの…。エターナルタイプウィザー(永久型生命吸引病)じゃ。とても発症が稀な奇病で、ふだんの人間がかかるはずのない、いわば伝説上の病気なんじゃが…なんでじゃろう?ボブか?」

「うーん、ボブのバグだろうな。」

 

スティーブは悩むことなく病気を発症した原因の予想をする。

アレックスもそれに頷き、肯定する。

こういうものって大体、ボブのせいにされるのか。よし俺もそう思っておこう。

 

「というか永久型ウィザー…?」

「ん、まあそうじゃ。永遠に命が削り取られる。」

「はい!?ヤバいくない!?」

「大丈夫じゃ。死ぬことはない。だから休ませるんじゃ。」

「そうなのか…。急いでアルポピ取らないとな。」

 

今日は寝て、また改めて出発することにした。勿論クリーパーは休みだが…。

あの壁の穴はまだ開いていない。だから、寝る前にパーカーのポケットに入って居る火薬を拝借することにした。

 

「クリーパー…寝てるようだな…すまん、火薬貰うぞ。」

 

俺はそういうと、こっそりポケットに手を突っ込み、火薬を取り出した。

クリーパーは少し息が荒いでいる。見方によっては苦しんでいるようにも見える。…どんどん命が奪われているんじゃないか…?そうは思いたくないが…。

 

とりあえず、寝るか…。

 

 

「大変じゃ~~!!起きろ~~~!!」

「…朝早くからなんですかジジイ。」

 

俺達三人は村長の大声に目が覚める。

 

「あの病気に死人が出た!」

「「「ええええええええええええええええええええええええええええ!?」」」

 

俺達は心臓発作を起こしそうなほどに驚く。

まさか、あの病気のせいでは…。

 

「病気を発症した一人が今朝、亡くなっていることが判明したんじゃ!死亡推定時刻は今夜の3時、発症した時刻は推定昨日の3時じゃから…こんな事例初めてじゃ!もしやクリーパーの寿命は近いかもしれん!」

「え?…ええええええええええええええええええええええええええええええええ!?」

 

昨日、発症した時刻が丁度正午だ。という事は、今は6時。となると、寿命はあと6時間という事になる。

俺は、普段一緒にいる奴はクリーパーしかいない。というわけで、クリーパーが居なくなるとヘタすれば俺も死んでしまうかもしれない。再びボッチになるのは御免だ。

 

「…出発するぞ、スティーブ、アレックス。クリーパーの寿命はあと6時間だ。」

「半日しか持たない緑の可愛い爆薬箱の儚い命よ、おおぉぉ…。」

「アレックス…やっぱりお前、気があるのか。」

「…一目惚れしちゃって。」

 

というか、緑の可愛い爆薬箱とは、すごい表し方だな。

たしかにそうだが、その発想はなかった。

 

 

取りあえず、落ち着いた。

ここから出来るだけ急いで、アルポピ取らないと行けないが…。」

 

「再び麓に着いた。」

「あ、壁どうする?すっかり忘れてた。」

「大丈夫だ。火薬持ってきた。」

「…盗ってきたのか。」

「まああいつ火薬こっそりとってもばれないし。」

 

俺は懐から火薬を取り出し、クリーパーの時の様に慎重に固め、TNTを作る。

そして、壁に投げつけちゃんと爆発させた。

壁には穴が開き、先へ進めるようになった。

 

「…しっかしまあ、俺にとっちゃクリーパーが居ないってのはいまいち落ち着かないなぁ…。」

「いっつも一緒に居たの?」

「そうだ。俺がプログラムに入ってた時もあいつがプログラムから脱出してきたときも。俺はクリーパー(アイツ)が居なくちゃ駄目なのか…。」

 

我ながら、自分のメンタルが脆くなってきている気がする。

自分の作ったプログラムで、あんなことになるとは思わなかった…。

いっそ、削除するか…?

 

「…午前8時。残り、4時間…。」

「間に合うか?まだ結構アルポピまで遠いぞ?」

「…俺がここでクリーパーを助けられなかったら、命をも捨てる覚悟だ。」

「漢だねぇ。というかそこまで大事か?」

 

ブチッ

 

「…おい、スティーブ…。今なんつった?」

「へ?い、いや…。何でも…。」

「いまお前クリーパーを軽蔑したな!?」

「え!?そうは言ってないよ!?」

「…スティーブ。僕の今の気持ちわかる?」

「アレックス…。」

 

俺は自分の憤怒の感情に我を忘れ、二人とは別方向に走ってしまった。

 

「チッ…。何だあいつ。クリーパーを…軽蔑してよぉ…。」

 

俺が一人で山を登っていると、目の前に人が立ちふさがった。

 

「おいおい、仲間割れか?なんなら、今がチャンスだな。」

「…誰だ。山賊か?」

「イェスアイアム!悪いがここで死んでもらおうか。」

「悪いが、今は急いでいるんだ。そこをどいてもらおうか?どうやら、3人がかりか。朝飯前だ。」

「何だとこの野郎。打っ殺してやる!」

 

俺は鉄剣を取り出し、突進してくる山賊三人をいとも簡単になぎ倒した。

無駄な時間を食ってしまった。…急ぐか。

 

「…待て…。まだやるぞ。」

「馬鹿かお前?また戦おうとしたら死ぬぞ?」

「…アルティメットポピーを狙っているだろう。」

「ああ、そうだが?」

「…そこには、我ら山賊の拠点を構えている。精々覚悟しておくんだ…な…。」

 

山賊はそういうと、煙になって倒れた。この世界ではもうスポーンも出来ない。

 

 

 

その頃、スティーブとアレックス。

 

 

「大丈夫なの…?別れちゃって…。」

「…自分が悪いんだが、もう姿をくらました以上、見つかることはないか…。」

「…ん?なんだ?山賊かな?大勢だけど…。」

 

二人はその大勢が来るのが林の中でも目に見えた。

何故なら、そこに、大量にいるのだから…。

 

「うわ、うわー、何だこいつら…。うわーーーーーーーーーーー!!」

「アレックス!?おい、何だよお前ら!!俺達を拘束して!!うわあああああああ!!」

 

それは数の暴力だった。

スティーブとアレックスは抗う間もなく腕と足を縄でグルグル巻きにされた。

そしてその後担がれ、山の奥へと連れてかれた…。

 

 

スティーヴサイド

 

今、出発してから3時間が経ち、クリーパーの寿命は3時間になった。

さっきからずっとずっと登山しているが、どうも山賊の拠点というものが気掛かりだ。

もう少しで頂に着くが、そこで時間を大量に食ったらどうしようか…。

 

…頂。

 

早速目に見えるのは、石レンガの巨大な建物。

その中に、山賊どもが居るんだろう。どうやらここを攻略しないと、先に進めないようだ…。

俺は、堂々と中に入った。今更あの時の潜入捜査は出来そうにはないだろうな。

 

「おい、誰だよお前?初めて見る顔だが、お前此処をつぶしに来たんじゃないだろうな?」

「如何にも。」

「ちょ、ちょっおまっ…。素直すぎるだろう…まあいい、打っ殺してやる!」

「その言葉、さっきの山賊と同じだな。はい。」ザシュッ

「…!?」

 

俺は高速で敵に接近し、剣を勢いよく振るった。

刹那、山賊の一人は紅いバラを咲かせ、土に還る。

それを目撃した他の山賊たちは、一斉に攻撃するも、全員瞬く間に土に還った。寸劇の出来事だった。

…あの組織、ヒーローを思い出させてくれる…。

 

この後もずっと同じような光景が続いたので、飛ばす。土に還った山賊の命すまん。

 

「…ここが、最上階か。」

 

いかにもな大きい扉があるので、開ける。

…重い。

 

「…来たようだね。」

「なんかヒーローと全く同じパターンだねぇ…。ところで君誰?」

「俺は山賊のボス、とかいうところで十分じゃないかな。これから死ぬ君に、俺の名前は教えても意味がないでしょ?」

 

俺が死ぬ前提とは、生意気な奴だ。

もしそこでお前が死んだら、とてもダサいが。それを分かってたうえで?

 

「そうそう、この二人に見覚え有る?」

「…ん?あれ!?」

 

彼が指を鳴らすと、山賊の手下により縄に拘束されたスティーブとアレックスが連れてかれた。

 

「君が俺を倒すと、それに反応してこの二人が殺される。代わりに、君が死んだらこいつらは助かるよ?」

 

…重大な選択を迫られた。

時歪機械を使いたいところだが、それを遣ったら何かもったいない。

いやケチるというわけではないが、もう少し使うべき場所があるはずだ。

俺は一回深呼吸をし、響く声で宣言をした。

 

「…分かった。俺は今からお前を殺す。」

「は…!?ちょ、スティーヴ!?分かったってクリーパーを軽蔑したの謝るから!!」

「僕も巻き添え!?」

 

二人は大声でそれに止めに入るが、いま俺にはそれよりも良い方法がある。今思いついたけど。

 

「ほう…。君は仲間を見捨てるんだね?」

「ああ。」

 

彼は、剣を抜刀する。

だが、俺は剣を抜刀しない。

彼は突撃をするが、俺は華麗に回避をした。

そのまま、続けて回避をし―――。彼がスタミナが切れてきたころ。

俺は剣を抜いた。

 

「俺には作戦がある。お前が死んであいつらが死ぬんなら、死なせない。が、暴れてもらうと困る。なら、せめて動きを止めればいい。」

 

俺はそう言うと、峰打ちで更に脛に強く強打をした。

彼は激痛のあまり、その場に倒れて動かなくなる。

 

「ああ、そういう事なんだね…。」

 

俺はスティーブとアレックスを拘束している縄を剣で斬った。

 

「…。なあ、俺のこと許すか…?」

「…いいさ。もう、それくらいで怒る自分が馬鹿らしくなってきた。」

「早くアルティメットポピーを取らないと…。」

 

俺達はなぜか部屋の隅に置いてある花瓶にアルティメットポピーが飾られているのを発見して、それを奪取してこの建物から脱出した。

 

「ところで、今何時だ?」

「…太陽で確認すると…。あと1時間か!?ヤバい!早く帰らないと…!!」

 

俺らは走って山を駆け下りた。

途中で転んだり、誤って木にぶつかったりしたが…何とか駆け下りれた。

 

「全身が痛い…。だが、この痛みに耐えれば、間に合う筈だ…!!急ぐぞ!」

 

俺達はなお走り、村に戻ってきた。

日が沈む方角へある村へ…。

 

だが、村人はクリーパーを休ませている家に集合している。

中には、合唱をしている者もいる。

その光景を見て、俺達三人は背筋が凍りついた。

 

「…まさか…だよな…。」

「…12時、過ぎてる…。」

「…おぬしら…。」

 

村長がこっちに近づいてきた。

俺は何があったのか恐る恐る聞くと、それには目を疑うほどの返答が返ってきた。

 

「…死んだんじゃ。彼女が。」

「…ぇ……。」

 

俺は叫び声すら出せなかった。

俺がこの二人と別れたせいで余計に時間を食ってしまい、このような結果になった。

二人は俯いている。いったいどのようなことを思っているんだろう。俺に対しての軽蔑か、哀れな彼女への同情なのか。

 

「…でも、飲まさせてください。」

「何を言っとるんじゃ?彼女はもう死んだ―――」

「それでもいいんです!飲まさせてください!」

「…分かった。ただし、お前も手伝うんじゃ。」

 

村長はアルティメットポピーを手に取ると、それを粉々にして水に溶かし、薬を完成させた。

万病に効く薬だと云われている薬の様だ。

 

俺はクリーパーの家に行き、脈や目などを確認するが、脈拍を感じ取れないし、目に光が灯っていない。

死亡によくみられる生理現象だ。

だが、俺は諦めない。諦めたくなんてない。

俺はその万病に効く薬を飲ませた。

 

「…生きろ、生きるんだ!!ここで死んでしまったら、俺は何をすればいいんだ!?お願いだ!目を覚ませ!覚ましてくれ!!」

 

俺はクリーパーに寄りかかり、必死に叫ぶ。

もしここに神様がいるんなら、こいつを助けてくれ…。なんなら、俺が死んでもいいと思っている。

 

「…ぅ…スティ…。」

「…クリーパー!?」

 

今、一瞬だったが、確かに彼女の声が聞こえた。

同時に、俺を見守っていた二人も寄りかかり、彼女を必死に起こそうとする。

 

「クリーパー!?起きてくれよ!」

「…。」

「なんでだ!?何で起きないんだ!?」

「…ゎ…たし…。」

 

再び、声が聞こえた。

よく見ると、かすかにクリーパーが唇を動かしている。

 

「…死ぬ…の…?」

「…いや、今ここで目を覚ませば、お前はまだ生きられるぞ!」

「…分かった。…起きる。」

 

暫くして、クリーパーはゆっくりと目を覚ました。

 

「…生き返った!!やったーーーーーーーー!!」

 

俺はクリーパーをギリギリのところで助けられた喜びに体を床にたたきつける。

 

「…ちょっと、前が見えないけど…。天国じゃないよね?」

「…いや、違うさ。」

「いや…何か…体がフワフワする。天国なの?」

「うーむ、…ちょっと目覚ましビンタしてもいい?」

「アレックス、ダメだろそりゃ。」

「…いや、いいよ。してみて。はい。」

 

そう言うと、クリーパーは頬をアレックスの方に向けた。

アレックスは少しためらったが、思い切ったような表情で平手打ちを食らわした。

 

「うぶっ!…ああ、なんか、体の意識が戻った。私、生きているみたいだね。」

「…死にかけてたからなのか、だいぶ雰囲気が変わってるな。」

「まあ、しばらくすれば、元に戻るんじゃないか?」

「そうだといいんじゃがな。よし、今夜は一晩眠るぞ。」

「…分かった。だけど私再び死んじゃうかもしれないから起きていていい?」

「…モンスターに襲われないようにするなよ。まあ俺がそばにいていいか。なあスティーブ…。居ない。」

 

もうすでに自分の家に戻っていたようだ。

俺はやれやれと言い、ずっとクリーパーのそばに居る事にした。

 

「…ねぇ、私、本当に、何があったんだろう…。ベッドで休んだ時のことは何も覚えてなくて…。」

「…俺は、お前を救うためにあの二人と奔走したんだ。」

 

クリーパーはお酒を飲んで眠くなった時のような口調になっている。

 

「そうなんだ…。本当にありがとう。感謝の言葉もないよ。」

「礼には及ばないさ。」

 

クリーパーは少し涙を流す。

 

「あとさ、何で私助かったんだろう。」

「ああ、それは俺も気になってたんだ…。…何でだろうな、仮死状態だったんじゃないか?」

「でもそれだったら脈とかあるんじゃないの?(要リサーチ)」

「まあな…。本当なんで助かったんだ。奇跡か?」

「…わかんないや。」

 

 

 

 

「…もう、寝るかな。眠いし、月がもう沈みそうだし。ちょっとは寝とかないとね!」

「ああ、そうだな(いつもに戻った…。)。…ところで、また一緒に寝るのか?」

 

クリーパーは手を縦に振りながら「当たり前でしょー!」と言った。

クリーパーの気持ちはよく分かるが寝てるときに俺に抱き着くのでちょっと迷惑だ…。

 

「…すぴ~。」

(やっぱり俺に抱き着いてるし…。暑い…。)

 

 

「何で助けたんですか?」

「馬鹿。今ここで死なせたらこれからの計画が台無しだろう。」

「それは確かにそうですね…。」

「山賊の勢力が一気に衰えたようだな。今度は我々の出番だ。」

「分かりました。では、明日出発をしましょうか?」

「…そうだな。待ってろよ、スティーヴ、クリーパー。お前らを連れてきたのは…私だ。」




ちょっと最後がひどい文章になりました。疲れました。
そして、伏線を立てているので、次は青空さんにバトンタッチし、これの続きを書いてもらうという計画です。
では、続きをお楽しみに。出次第、こっちでもリンクを張らせていただきます。
最後に、誤字脱字を発見しましたら報告してください。


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