ネオ・ジオン総帥の幻想入り (黒の煌めきパールバティー)
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シャア、アムロとの最後の戦い
「アクシズは地球の引力に引かれて落下している!私の勝ちだアムロ!」
「νガンダムは伊達じゃない!」
アムロはそんな絶望的とも言える状況でも、諦めることはしなかった。
νガンダムで、アクシズを止めようと言うのだ。
「無駄だ。モビルスーツのスラスター程度で、アクシズの落下は止められんぞ!」
「そんなこと、やってみなきゃわからないだろ!」
何故そうまでして
奴らは地球に負担をかけすぎた。地球は既に保たんところまできているというに!何故!
だが、幾ら高性能のνガンダムであろうと、小惑星を止める程のパワーは無い。
所詮貴様のやっていることは、自分をも犠牲にした無駄死にだ。
「貴様の所為で.......多くの部下達やララァが死んだというのに、貴様はその命を自ら捨てると言うのか!!」
「そんなことはない!僕は、確かに多くの人を殺した。だけど!だからこそ、その命を背負って、新たな命を守る為に戦うんだ!」
......アムロ.....。お前は、私が見ていない間に随分成長したというのか。
大切なものを、守る為に、強くなったのか。
だが.......もう終わりだ.....。
そう思った時、
「む?」
ジェガンやギラ・ドーガが無数にやって来た。
そして、アクシズを押し返す。
だが、機体性能のあまり高くないジェガンやギラ・ドーガでは、衝撃に耐えられずパワーダウンするのは目に見えている。実際、一機、また一機と、引き剥がされていく。
それなのに何故?
「!!」
突然、淡い光がアクシズを包んだ。
この光は....?
「これは....サイコフレームの共振....。そうか、人の想いが集中しすぎて、オーバーロードしているのか。だが、不思議と恐怖は感じない。むしろ、温かさと安心さえ与えてくれる。しかし、この温かさを持った人間でさえ、地球を破壊するんだ。それをわかるんだよアムロ!!」
「わかってるよ!だから、こうやって人類の希望の光を見せなきゃいけないんだろ!」
私は、またアムロに負けるのか?
ララァの仇も討てず、自分の信念さえ撃ち破られて....。
そして....
『アクシズ、地球圏から離脱!進路変更確実です!』
ラー・カイラムの乗員の通信音声が、私の敗北を告げた。
ああ、アムロ。君の勝ちだよ。
君は、常に自分を曲げずに進んできた。大切なものを、守る為に。
一方私はと言えば、ザビ家への復讐の為に戦う決意をしたのに、結局はそれさえ放棄し、父の意思も継ぐことなく生きてきた。
私と君の違いは、最早歴然だ。
私は、ゆっくりと目を閉じた。
次の人類は、どんな進化を遂げて、どんな未来を歩むのかを、思い描きながら。
一話目は東方要素はありません。
因みにこの作品は解説はほとんどないので、ガンダムシリーズを知らない人には分かりにくいです。ご了承くださいm(__)m
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シャアを捨てたキャスベル
「.........む?」
消えかけていた感覚が戻ってきた。
まるで、まだ自分が生きているかのような...。
「!! まだ....私は生きているのか?」
目を開けると、見覚えのない林のような場所にいた。
ここは地球か?
そして、自分が離別したコックピットにいる筈なのに、MSと変わらぬ高さにいる感覚がして、モニターに映すと、
「! サザビーが.....そのまま...」
確かに破壊された筈のサザビーが、造られたばかりの姿で立っていた。
更にそれだけでなく、
「ザク、ズゴック、ゲルググ、ジオング、リック・ディアス、百式.....今まで私の機体全てが揃っている。しかもどれも新品同様ではないか......!!」
しかし、見たことのないMSもあった。いや、正確には見たことはあるのだが。
見た目は若干サザビーに似ているが、全体的にサザビーより重厚なボディをしている。
「ナイチンゲール.....!!既に完成していたのか...!?」
サザビーと共に製造される予定だったのだが、実際には計画だけに終わったと聞いていたのだが.....。
「それに、このMS達は一体....」
「それは貴方が幻想になってしまったからよ」
「!!」
私はカメラを声の方に向けた。
そこには、ジェットパックも背負っていないのにも関わらず、空中に浮かぶ女性の姿。
服装は、紫色のドレスのようだった。
「(一体どのように浮いているのだ?)」
「私は八雲紫。この『幻想郷』を作った者よ」
「幻想郷?」
シャアは周りを見渡す。
だが目に入るのは地球の木々のみ。
「ここは地球なのか?」
「ええ、そうよ。でも貴方のいた地球ではない」
「.....どういうことだ」
「分かりやすく言うと、貴方は別の世界に来てしまったの」
別の世界?
そんなものが存在するのか?
「元の世界で、恐らく貴方は誰もが知るような偉大な人物だったのでしょうね。でも、貴方がいなくなった途端に、その才能、行動、歴史等と、他の誰にもできないことでもあった。だから、貴方という人物が存在していたかさえ、幻想のものとなってしまったのよ」
「そして、私がいないと言うことは、このMSも、と言うことか」
「そういうこと。で、貴方は一体何者かしら?」
「失礼。自己紹介がまだだった。私はシャア・アズナブル。だが、本名はキャスベル・レム・ダイクンという。君は胡散臭くはあるが、信用はできそうだ」
ここにあるMSは、偽物には見えなかった。
だとすれば、彼女の言っていることは真実であり、狙われることはない。
その為、本名を明かした。
「そう。じゃあ私はキャスベルと呼ばせてもらうわ。そっちの方がなんかしっくりきたし」
「できればシャアの方が良かったのだがな。まぁ構わんさ」
そう言って私はサザビーから降りた。
「あら、結構良い顔してるじゃない。モテるでしょう?」
「私が求めた女性は一人だけさ。ともかく、この世界がどういうものかを知りたい。私はもう戻りたいとは思わんからな」
私は......『シャア・アズナブル』を捨てることにした。
赤い彗星やネオ・ジオン総帥でもない。
ただの人間、『キャスベル・レム・ダイクン』として生きる為に。
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