転生したから美佐枝さんと結婚したい (あいうえお)
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読んでも読まなくてもいいよっ!

でも、読んだ方が楽しめるかもよ!


『三浦綱汰』 

 

 

 

本作主人公。CLANNADの登場人物である美佐枝さんへの想いだけで世界線を越えるバケモノ。元の世界での高校入学式の日に雷に打たれCLANNADの世界へ転生。 

 

身長は180cm、体型は痩せ型。

好物は美佐枝さんの料理。むしろ美佐枝さん。

 

 

しっかりしてるようで抜けてる部分もある。CLANNADの世界へ転生した際に記憶に残っている部分(原作知識)をメモとして書いたが、深夜に書いた為、自分でも意味不明な部分がある。(ヴァイオリン、ヒトデ、胸糞ENDなど)そのため、朋也、渚、春原、智代に関しては知っているがその他のヒロインについてはあまり覚えていない。きっかけがあれば思い出すかもしれないが…… 

 

 

これは転生初日に美佐枝さんと知り合いになり、舞い上がってしまったことも影響している。曰く、「美佐枝さんと知り合ったらもう原作知識とかいらなくね?」この男には美佐枝さんがすべてなのである。

 

 

月一で振り込まれる生活費で十分すぎるほど生活出来るが、長期休み中には短期バイトをしている。

 

 

学校では、岡崎朋也、春原陽平と並び不良として認識されている。遅刻はしないが、サボりや授業態度が悪いためである。しかし、成績が悪いわけでもないため教師は強く出られない。

 

 

本人は教師にどう思われようが気にしていない。授業は寝るもの、そういう認識である。

 

 

喧嘩はそれなりだが、スタミナがない。そのため総合的な喧嘩の強さは中の下である。

 

智代>>>>>朋也>>綱汰≧春原

こんな感じの強さである。

 

 

 

 

 

 

転生特典 

 

 

『光坂高校の制服』──CLANNADの世界に転生した際に着ていた。元の世界で着ていた制服は跡形もなく消えてしまっている。

 

 

『学力』──元の学力じゃ光坂に入れず、矛盾が生まれてしまうために与えられた。なお、さじ加減をミスって与えすぎた模様。 主人公はラッキー程度にしか思っていないが、その気になればノーベル賞とか取れちゃう頭脳になっている。まぁ、この主人公はそんなことしないが。

 

 

 

転生特典だと思っているもの 

 

 

『自宅』──アパートの一室。風呂トイレ別である……別に物語に関係はない。

 

 

『生活費』──家賃は含めず、月15万円ほど振り込まれている。一度全て下ろしたらまた15万円が振り込まれ少し引いたことがある。なお、昼と夜は美佐枝さんのところで食べるため、貯金が貯まる一方。美佐枝さんとの結婚資金が貯まると喜んでいるが、実際は気味悪く感じている。

 

 




はい、遅れました主人公設定…

遅れたせいで読者の方を混乱させてしまい申し訳ない。


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彼と彼女の出会い(プロローグ)
第1話


取りあえず1話は出来たので投稿します

2話?何のこったよ(すっとぼけ)

そして今回、なんと!美佐枝さんが出ません!
書いてる意味を見失いそう


『美佐枝さん、俺と結婚してください!』

 

 

 

「……ハッ!夢か……」

 

 

最近こんな夢をよく見るようになった

 

決まって俺がCLANNADの登場人物である美佐枝さんに、結婚の申し込みをするというシーンだ

 

プロポーズする場所は港だったり観覧車の中だったりと背景のバリエーションが豊富だが、決まって俺は同じ台詞を言っている

 

と、現実逃避は程々にして学校という地獄に行かなければならない

 

 

『……今日は全国的に雨が強く降り、落雷や突風に注意が必要です特に急な落雷に注意して下さい……』

 

 

天気予報で落雷に注意が必要とか言ってるが、まぁ関係ないだろう

それにしても学校が面倒だと思っていた時に、学校に行くのが嫌になるニュースを流すのはどうなのだろうか

 

 

学校に行くのは構わないが大半の時間が詰まらない授業に浪費されるのに耐えられないのだ

そしてこのまま詰まらないと言い続け、詰まらない大人になり社畜になって、何の楽しみもなく生きていくことを考えると、憂鬱にもなる

 

べっ、別に厨二病ってワケじゃないんだからねっ!それに今日から高校一年生になるから厨二病ごっこだもん!

 

……着替えながらツンデレとか誰も得しねぇな……アホらしとっとと学校行くか

 

 

巷に溢れた転生オリ主俺TUEEEEEモノなら、ここらで転生トラックが俺をひき殺して神様の元に導いてくれるのだろう

 

だがこれは現実だ、そんなご都合主義的な運ちゃんも居なきゃ隕石だって落ちてこない

 

 

──そう思ってた時期が私にもありました

 

 

頭上で雷鳴が轟くまでは──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

えっ、何今の雷鳴は……(ドン引き)

 

 

そしてここ何処だ?

 

 

 

さっきまで俺は雨の中傘を差して学校に向かって歩いていたはずだ

なのに今俺が居る場所は雨なんて降っていないし滅茶苦茶快晴だ……

 

 

なぁにこれ?

 

 

 

……取りあえず状況を整理しよう、俺は今日から高校一年になる、そして学校へ向かう為に家を出てドアに鍵を掛けた

 

ここまでは鮮明に思い出せる……じゃあその後は?

 

そう聞かれると記憶に白いもやがかかったように上手く思い出すことが出来ない

雷鳴が自分の頭の上で轟いたことまでは憶えているが、その後がよく分からないのだ

 

えっ、マジで何この状況……多分雷に当たって死んだか意識不明かギャグマンガのように頭がパンチパーマになったりアフロになったりするんじゃないのか?

 

何で俺は生きてるんだ?

 

とりあえず、ここは何処ですかー!!誰か教えてくださーい!!

 

マジで何なの?雷落ちる前にみうらさんでも俺の頭の上に居たの?

 

そう思い頭の上をまさぐったが特に何も無く、ただ虚しくなっただけだった

 

一瞬期待したんだけどなぁ……みうらさんでワープとか旅費とか浮いて最高だと思ったんだが

 

 

……現実逃避はやめて取りあえず目の前の坂でも上って行くか

 

何か分かれば儲けもんだし分からなくても町ぐらいは見れるだろ

 

 

 

 

坂を上りきった俺が見たものは、ついこの間まで見慣れていたものだった

 

別に自分の家だとかそう言う訳じゃない

 

ただ、とあるアニメでアホほど見た学校があったのだ

 

 

 

そう、『私立光坂高等学校』が……

 

 




主人公は厨二病、はっきりわかんだね

みうらさん──『ぷちます!』に登場するキャラクター近くで大きな音がするとワープする。混乱する主人公はみうらさんを手に入れたと勘違いしました。

次話はいつできるんですかねぇ…?
あと文字数少ない…少なくない?


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第2話

今回は美佐枝さんが出ます!

やったね!



坂道を上りきった俺の目の前には『私立光坂高校』がそびえ立っていた

 

 

うん?ここって……いや、早まるな、ただ同名の学校がたまたま坂の上にあっただけかもしれないんだ

 

例え上ってきた坂道に桜が植えられていたとしてもそれはきっと偶然の一致なんだ……

 

それに冷静に考えろ、あり得ないだろう?だってCLANNADに出てくる高校なんて所詮はただのフィクション、実在なんてしてないんだ

 

 

──けど、もしこの状況が現実で俺が創作物の中に入っていたとしたら?

 

 

俺は──

 

 

「キミ!何してるんだそんなところで!もうすぐ入学式が始まるぞ!」

「えっ?俺ですか?」

「そうだ!キミ以外に誰がいる!ほら、早く来るんだ、入学式が始まるまであまり時間はないんだからな!」

「えっ、ちょっ、……」

 

そうして俺は光坂高校の入学式に連れて行かれた

 

そして今更気付いたのだが、俺の制服が学ランからブレザーのものにすり代わっていた

 

「ホ!いつの間に!」

 

「何を言っているんだ?ほら、あそこが受付になっているから、出席簿に名前を書いて待機場所に向かいなさい」

 

 

キャッ!独り言を盗み聞きするなんて先生エッチなんだから!

 

 

……怒られました、はい

 

じゃあとっとと受付して入学式に出ましょうかね

 

 

 

 

 

式典とか形式ばったモノはやっぱり詰まらないな、まぁ必要なことだとは分かっているんだけどな

 

眠っちゃったのはしょうがないよね?

 

 

 

それよりも、これから各クラスに分かれてHRを行うそうだ

 

ちなみ俺のクラスはB組だった、まぁストーリーには関係ないから覚えなくても良いと思うよ

 

 

「じゃあさっそくですが、皆さんに自己紹介をして貰いたいと思います」

 

 

入学式でのお決まりのフレーズが我らがクラス担任の先生から飛び出した為、現在クラスメートの自己紹介タイムとなる

 

 

「じゃあ出席番号順でいいかな?……それじゃあ岡崎くんよろしく」

 

わっつ!?え、朋也居るの?うちのクラスに朋也居んの!?やっべぇよテンション上がってきたよ!

 

あっ、でも今の朋也って確か……

 

「はい、じゃあ次は……三浦くん、よろしく。三浦くん?」

 

思考の海に沈んでいたため、先生の呼びかけに反応が遅れてしまった

 

 

「えっと、三浦綱汰です。皆さん三年間よろしくお願いします」

 

そして自己紹介を考えていなかった所為で、ありきたりな自己紹介をすることになった

 

 

「それじゃあ皆さん、明日からクラスメートとして仲良くしてくださいね!」

「それじゃあHRを終わります!」

 

 

こっちの世界に来て初めての学校が終わった

 

まぁ、家に帰ってから考えることも色々あるし(主にこの世界がゲーム基準かアニメ基準なのかなど)それに、この世界の地理がよく分からない為、そこら辺の知識は必要不可欠だろう

 

主に美佐枝さんとのデートの時のために……

 

 

 

ん?そういやこの世界に俺の帰る家ってあるのか?そもそも地形が違うし、もし俺の家があったとしても俺はその場所に辿り着ける気がしないぞ……

 

 

ヤバい、どうすればいい?

 

どうすれば自分の家の場所を知ることが出来る…?考えろ!考えろ!クールになれ前原K一!

 

 

閃いたぞ!先生に聞けばいい!確か住民票だか戸籍謄本だか持ってたはずだ!先生に聞けばいいんだ!なんだよ心配して損したぜ~

 

 

────どうやって聞き出す?

 

「すいませ~ん自分の住所分からないんですけど~」

 

なんて真正面から言ったらマジで頭残念な可哀想な奴だと三年間思われ続けることになってしまう!それだけは何としてでも避けなければならない!

 

でも、住所が分からなければ自分の家に帰ることも出来ないで三年間公園でホームレスとして過ごすことに……!

 

 

くっ!究極の選択だ……残酷すぎる、神様アンタって奴は本当に残酷すぎるぜ

 

 

 

 

結果だけ言おう、住所を先生に聞いた

 

後はまぁ、想像してた通りだった。可哀想な人を見る目で担任から見られて、俺のガラスよりも繊細なハートはズタボロにされた

 

しかし!しかしながら!私は我が家の住所を手に入れたのである!これで三年間ホームレス生活とはおさらばなのだ!

 

さらば段ボール!こんにちはマイホーム!

 

 

職員室前で右手掲げてこんなことをやっている彼を見た担任が、生暖かい目をしていたのを彼は知らない

 

 

「さてと、そろそろ家に帰りますかね」

 

家に帰ると言うのは口実なのかもしれない

 

なんせ俺は期待しているのだから、あわよくば彼女に出会おうと考えているのだから

 

 

 

坂道を下りきった俺が見たのは学生寮の前を掃き掃除している寮母さんの後ろ姿だった

 

 

俺はこの時になってやっと自覚した

 

この世界が俺の夢なんかじゃないこと、この世界が紛れもない現実だって事を

 

 

 

 

「ふぅ~、次は廊下の掃除か……ん?あなたどうしたの、そんなところで?入寮予定の子?でも、こんな時期に居ないわよね」

「あっ、すみません……ただ、その忙しそうだなって」

 

「ん~まぁ、これも仕事だしねぇ好きでやってるってところもあるし……」

 

「えっと、良かったらお手伝いしましょうか?」

 

 

 

 

これが俺と彼女の出逢い────

 

 

 

────そして彼女との始まり

 

 




やった!2000字!次は3000字目指しますよ~イクイク…
今回やっと主人公のフルネームが出ましたね

ホ!いつの間に!─神「すり替えておいたのさ!天国からの使者スパイダーマッ!」
ついでに主人公の転生特典は光坂の制服で終わりです、多分
この頃の朋也くん─家庭がズタボロでついでに肩もズタボロ
朋也くんバスケ続けてたらどうなったか気になりますねぇ…

前原K一─ウッディ!の人。別に雛見沢症候群の伏線とかではない

次回、せめて、人間らしく
さぁてこの次もサービスサービスゥ!


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第3話

割と早く書けた気がする3話です


今回、会話回なので地の文がいつにも増して少ないです

地の文って難しい…

4000文字近く書けて、僕、満足!


「良かったらお手伝いしましょうか?」

 

「手伝って貰えるなら有り難いけど、この後用事とか無いの?」

 

「ええ、まぁ……暇人なんで」

 

面と向かって貴女に会いに来ましたなんて言えねぇよな

 

「暇人って……分かった!手伝ってくれる?えぇっと名前聞いても良いかな?私は相楽美佐枝、ここの寮母やってるの、よろしくね暇人さん?」

 

「俺は三浦綱汰です。よろしくお願いしますね、美佐枝さん……って呼んでもいいですか?俺のことは綱汰って呼び捨てでいいんで」

 

「うん、別に呼び方なんか気にしないわよ、えーっと綱汰、バケツに水汲んできて貰える?水道はあっちにあるから」

 

「了解でーす」

 

 

俺は美佐枝さんに指示された通りに水を汲みに行った

道中の気分は最高に良かったのは言うまでもない

そんな時だ……曲がり角から背が低い金髪の男が現れたのは

 

 

「ん?アンタここに入る人?俺、春原陽平。よろしくな」

 

 

今日は出会いが多い日だとは思ってたがここで春原とも会うのかよ……取りあえず自己紹介するか

 

 

「三浦綱汰だ、よろしく。まぁ俺は寮に入らないけどな」

 

「あれ?入らないの?じゃあ何で寮に居るんだ?残念ながら男子と女子は別寮だぞ?覗きも出来ないとか本当意味ないよな~」

 

「いや、別に覗きなんてしたくもないしな」

 

「ハァ?それ本気で言ってんのか?」

 

「あぁ、つーか覗きしたとしてその後が怖すぎる」

 

「バッカお前そんなこと考えてたらこの先何も出来ないじゃないか!」

 

お前にバカなんて言われるとは思わなかったよ

 

「はぁ……じゃあ美佐枝さんにさっき言ってたこと全部伝えるな」

 

「な!?止めろ!止めてくれ!止めて下さいお願いします!」

 

「え~でもなぁ……お前覗きにスリル感じたいみたいだし、美佐枝さんに伝えた方がスリルが出て楽しいと思うぞ!」

 

「えっ、ちょっと待って何その滅茶苦茶いい笑顔」

 

「みっさえさぁ~ん!」

 

「うわぁぁぁぁぁ!ごめんなさぁぁぁい!!!」

 

 

春原は逃げ出した!しかし、美佐枝さんに回り込まれてしまった!

 

 

「春原ぁ~?何してるのかなぁ?」

 

「ヒィッ!」

 

「春原が覗きしようって言ってましたー!」

 

「ちょっ、何言ってんだよ!違う、違うよ美佐枝さん!俺はそいつに誘われて……」

 

「あっちでお話しよっか?」

 

「はい……」

 

 

春原は美佐枝さんに連れて行かれた

 

世界は平和になった!……てゆーか美佐枝さん怖かったな……これから怒らせないようにしよう

 

そしてさらば春原、お前のことは三分ぐらいは忘れないよ、きっと、多分

 

 

それから少しの間誰かの悲鳴が聞こえてきたが気のせいだろう

 

春原が連れて行かれた方から聞こえたような気がするのも気のせいだ

 

 

 

 

「ふぅ、全くあのバカは……ごめんね、待たせちゃったわね」

 

「あぁ気にしないでください、それで床拭いてけばいいですかね?」

 

「そうね、玄関の方任せていい?あそこ汚れが多くて大変なのよ」

 

「分かりました、それじゃまた後で」

 

 

玄関の掃除をしながら俺はこれからの事について考えていた

 

この世界は原作であるゲーム準拠なのか、それともアニメ準拠なのか

 

ゲームとアニメがごちゃ混ぜでもそれはそれで良いと思うが、それは俺が三年にならなければ分からないことだから今考えても仕方がないだろう

 

だが、どうしようもなく不安なのだ

 

自分がこの世界に居てもいいのか、自分が関わることで大好きだったCLANNADが違うモノになってしまわないか、何より美佐枝さんに拒絶されてしまったらと考えると……

 

 

そんな迷いを吹っ切るように俺は玄関の掃除に没頭した

 

土や砂の汚れが多く雑巾を何度も洗うことになったが、自分で思っているよりも掃除は進んでいた

 

掃除をすることで悪い考えから目を逸らしたいという、一種の現実逃避がそうさせたのだろう

 

俺はこれからどうすれば良い?原作を壊さないために関わらないようにするか?でも、もう春原とは知り合ってしまったし、朋也のことも放っておけるとは思えない

 

それになにより美佐枝さんと関われなくなったらこの世界に来た意味が無くなってしまう

 

 

俺はどうするべきなんだ……?

 

 

「……た?こ……た!綱汰!」

 

「ん?あぁ美佐枝さんどうしたの?」

 

「どうしたのってアンタね……」

 

そう言い美佐枝さんは大きなため息を吐いた

 

「別にため息吐くことないだろ?」

 

「人が呼んでるのに全然反応無いんだもの心配にもなるでしょ?全く……」

 

「ごめん、ちょっと考え事してたんだ俺」

 

「そう、でその悩みは解決しそうなの?」

 

「うーん、どうなんだろ分かんないや。それに今すぐ解決しなきゃいけないって問題でもないし」

 

「ふーん、まぁ自分で解決出来そうに無かったらお姉さんに聞きに来なさい?一応人生の先輩としてのアドバイスぐらいは出来ると思うから」

 

「うん、分かったありがとね」

 

「いいのよ、掃除手伝って貰っちゃったしね」

 

そう言い無邪気に笑う美佐枝さんはとても綺麗で、転生して良かったと感じてしまったのは完全に余談だ

 

 

 

「掃除手伝ってくれたお礼に何かして欲しいことある?」

 

「して欲しいこと?」

 

「そ、タダ働きって訳にもいかないでしょう?玄関凄く綺麗になってるし」

 

「うーん、じゃあ美佐枝さんとお茶したいな」

 

「お茶?私と?……まぁいいか、でもそんなので良いの?」

 

「そんなのって……俺は美佐枝さんとお茶飲めるなら1000円ぐらい出すよ?」

 

「はぁ……何言ってるの、こんなおばさんの何処が良いんだか……着いてきて」

 

 

 

そうして美佐枝さんに連れられて入った部屋はなんか……いい匂いがしました

 

 

「ここって美佐枝さんの部屋?」

 

「そうよ、私の部屋、どう?ドキドキしちゃう?」

 

「……うん」

 

「そう……あっ、お茶入れるから適当な所に座っててね」

 

「うん」

 

 

給湯室でお湯を入れてきた美佐枝さんが帰ってきた

 

 

「お待たせ、はい粗茶だけど」

 

 

「頂きます」

 

「あとお煎餅もあるから、良かったら食べてね?」

 

「おぉ、ありがたい……やっぱり緑茶と煎餅は一緒に食べたいよなぁ」

 

「……お爺ちゃんみたいね」

 

「むー、笑ったなぁ美佐枝さん」

 

「ごめんごめん、でも緑茶とお煎餅妙に似合うわね」

 

 

「ニャ~ン」

 

 

 

「ん?猫?」

 

「あぁ、ソイツ前から居着いてるのよ」

 

「飼い猫じゃないのか?……おっ、来い来い」

 

「そう、別に飼ってる訳じゃないんだけどねぇ、まぁ成り行きよ」

 

「ふーん、そうなのか」

 

「それより綱汰懐かれてるわね、猫好きなの?」

 

「うん?まぁ好きだけど、こんなに懐かれるのは久しぶりだな」

 

「へぇ、家で飼ったりはしてないの?」

 

「んー飼いたいけど俺今アパートに住んでるから飼えないんだよ」

 

「え?アパートってもしかして一人暮らしなの?」

 

「うん、あれ?言ってなかったっけ」

 

「聞いてないわよ、もう……じゃあ掃除の手伝いなんてしてる時間無かったんじゃないの?夕ご飯どうするの」

 

 

この時俺は夕飯の事を考えていなかったことを思い出した

 

ヤバい!ホームレス脱却だと思った矢先、次は乞食になってしまう……

 

 

「どうしたの、綱汰?顔真っ青だけど……もしかして夕ご飯のこと考えてなかったの?」

 

「うん……」

 

「はぁ……もう、今回だけだからね?」

 

「??」

 

「夕ご飯、今日だけ食べさせてあげるから、明日からはちゃんと自分で作るのよ?」

 

この時の美佐枝さんは俺にとって女神のようだった

 

 

「女神……」

 

「はいはい、ほら食堂行くから着いてきなさい」

 

 

 

「座って待ってなさいね」

 

「うん、ごめんね」

 

「いいのいいの、掃除のお礼ってことにしておくから」

 

 

そう言ってめが…美佐枝さんは厨房に消えていった

 

 

 

 

「はい、お待たせ、あんまりちゃんとしたの作れなかったけど許してね?」

 

そう言って美佐枝さんが出してくれた料理は俺にはとてもじゃないが作れそうにないもので、出来れば毎日食べたいと思ってしまうものだった

 

 

「そんなことないよ、すげぇ美味そうだよ」

 

「そう?そう言って貰えると嬉しいけど、まぁ食べてちょうだい」

 

「うん、頂きます」

 

「はい、どうぞ」

 

 

 

「この肉じゃが美味しいよ、美佐枝さん!」

 

「口に合ったなら良かったわ」

 

「この料理を食べられるなら……」

 

「ん?どうしたの綱汰?」

 

「ねぇ、掃除手伝うから飯食わせてくれない?」

 

「は?」

 

「いや、一人暮らしで飯作るのって結構しんどいからさ(やったことはないけど)それだったら美佐枝さんとこうして飯食った方が幸せになれるしさ」

 

「幸せ、ねぇ……私みたいなおばさんと一緒に食べて幸せになれるとは思えないけど、まぁ掃除の手伝いしてくれるって言うならお昼と夜のご飯は作ってあげる。朝ぐらいは自分で作りなさいよ?」

 

「いいの?大変なんじゃないの?」

 

「いいのよ、綱汰が掃除してくれるなら綱汰のご飯作った方が楽だからね」

 

 

「じゃあ、契約成立ってことでいいかな?」

 

「ええ、でもいつでも止めていいからね?」

 

「美佐枝さんの飯が食えるなら掃除くらいチョロいよ」

 

 

 

「ふぅ、美味しかった、ごちそうさま美佐枝さん」

 

「お粗末様でした」

 

「それじゃ、俺帰るわ色々ありがとね、美佐枝さん」

 

「んー、また明日ね、気をつけて帰んなさいよ」

 

「はいはい、また明日よろしくねー」

 

 

 

 

 

今日は良い日だったな……まさか美佐枝さんとお茶飲むだけじゃなくて夕飯まで一緒に食べられるとはな

 

それに明日からも夕飯を一緒に食べられることになったしな

 

 

「おっ、綱汰じゃん!もう帰るの?」

 

「あぁ春原か、そうだ、もう良い時間だしな」

 

「そっか、じゃあまた明日学校でな」

 

「お前違うクラスだから会わねぇだろ、バカか?」

 

「さらっと人をバカにしないで貰えますかね……それに友達に距離は関係ないだろ!?」

 

「えっ、友達?お前友達居たの?」

 

「アンタほんと酷いッスね……」

 

「冗談だよ冗談、また明日な春原」

 

「えっ、あぁうんまた明日」

 

そう言い、俺は春原との馬鹿話を切り上げ家へと向かっていった

 

 

 

 

 

────あれ?住所書いた紙どこやったっけ

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?何だろこの紙……はぁ、綱汰の忘れ物か」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




Q:この世界はアニメ準拠?ゲーム準拠?
A:作者も分からない…多分アニメ準拠になる

男子と女子は別寮─確かゲームでそう言われてた気がする

美佐枝さんの料理─ご飯、味噌汁、肉じゃが、あじの開き、納豆
そこはかとなく朝食感がありますが冷蔵庫にこれしかなかったということにしてください
彼氏に肉じゃが作るって古いんですかね…?
味噌汁は豆腐とわかめが入ってれば完璧

そして主人公ちゃっかり美佐枝さんと一緒のご飯を毎日食べられるように…何だコイツ


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第4話

美佐枝さん視点も書きたいと思う今日この頃

次ぐらいにやろうかな…


自分の住所を書いた紙を無くした場所から歩いてきた道を遡って探しているが一向にメモが見つからない……

 

 

寮が見えそうな所まで戻った時に俺を呼ぶ声が聞こえた

 

 

「あっ、綱汰!」

 

「ほら、これ、忘れ物じゃないの?どこかの住所が書いてあるけど」

 

そう言って美佐枝さんに手渡された紙には確かに俺の住所が書いてあった

 

 

これで帰れる……

 

「やっぱり美佐枝さんって女神なんじゃないの?」

 

「なぁにバカなこと言ってんの、それよりそれ綱汰の?」

 

「あぁ、俺の住所だよ」

 

「え?住所って……」

 

ヤバい、これじゃあただ自分の住所も覚えられない頭が残念な奴だと思われてしまう!

 

「いや、違う、違うよ?引っ越してきたばっかりでまだあんまり覚えてないだけだからね?」

 

「ふーん、ま、気をつけて帰りなさいよ?」

 

「分かってるよ、ありがとね美佐枝さん助かったよ」

 

「大げさよ、それじゃあね綱汰。明日の朝忘れずに寮に寄りなさいよ?」

 

「え?あぁ、昼飯か……持ってきてくれない?」

 

「だーめ、お昼にも食材買いに行かないとだし結構忙しいのよ?」

 

「そっか、じゃあ明日忘れずに寄るよ。それじゃまた明日、おやすみ美佐枝さん」

 

「ん、おやすみなさい綱汰」

 

 

 

 

 

ふぅ~……やっと家に帰ってこれたぜ

 

 

 

──ここが俺の家か、案外整理されてるなそれにしても一人暮らしか

 

……明日の朝ご飯はどうしようかな、さっき食パンが有ったような気がするからいいか、最悪朝飯抜きでも良いしな

 

 

それにしても今日は色々有りすぎたな……今日の出来事は病院で眠ってる俺の夢って事はないのかな

 

あの落雷で生死の境を彷徨って、今俺の精神だけが生きてて夢を見ているとか、そっちの方がしっくり来るんだよな……

 

 

まぁ、いいか明日も朝から美佐枝さんに会えるんだし、昼と夜は美佐枝さんの手料理を食べられるし。

 

 

 

──あれ?俺結構いいポジションまで行ってね?

 

 

これからどうするのか、原作の通りになるように立ち回るのか、それとも原作なんて無視して動いていくのかはまだ決めかねている。

 

けど、もう美佐枝さんに関しては原作通りに行かないような、そんな確信めいた予感は頭の片隅にくすぶっていた。

 

 

 

 

 

「おはよー美佐枝さん、弁当取りに来たよ~」

 

「おはよ、綱汰……酷い顔ね、夜更かしもほどほどにしときなさいよ?」

 

「ふぁい……」

 

「もう、ほらお弁当」

 

「ありがと、ふぁぁ……いってきまーす」

 

「いってらっしゃい」

 

 

美佐枝さんにだらしない姿を見せてしまったが仕方がない、だってこれからのこと考えてたらいつの間にか午前四時になってしまっていたのだから

 

今後の事はもう考えないようにしよう、うんそれが良い

 

それに今の俺に何が出来るかなんて分からないし、その力があるとも思えないからな

 

 

まぁこんな状態で退屈な授業を起きれる訳もなく学校にいる時間はほぼ寝ていた

眠いときの教師の声は良い子守歌になるんだよな、不思議だ

 

 

 

昼休みに朋也がバスケ部の連中に連れて行かれたのを見た

 

朋也に着いていきたかったんだが……

 

 

「よぉ綱汰!一緒に飯食べようぜ!」

 

 

この金髪と一緒に飯を食うことになってしまった

 

 

「なぁ春原一つ聞いて良いか?」

 

「なんだよ綱汰聞きたいことがあるなら聞いて来いよ、僕たち友達だろ?」

 

「まぁ、その俺たちが友達かどうかは後でじっくり話し合うとしてだな……どうして俺はお前と飯を食ってるんだ?」

 

「そんなの決まってるじゃないか友達だからさ!」

 

「春原、友達ならジュース買ってきてくれるよな?もちろん、お前の奢りで」

 

「それ友達じゃなくてパシリじゃないッスかね……」

 

「気のせいだ、気のせい俺カフェオレな」

 

「買いに行くのは決定してるんですね……分かったよ今回だけだからな!」

 

「おう、ありがとな春原!やっぱ持つべきものは友達だな!」

 

「本当調子良いッスねアンタ……」

 

 

そう言いながら春原は俺のカフェオレを買いに行ってくれた

 

友達って良いもんだなぁと考えていたら朋也が教室に戻ってきた

 

ついでに春原も帰ってきた……帰ってこなくて良いのに

 

「アンタ今失礼なこと考えてなかった?」

 

「んー?春原はカフェオレ置いて帰ってくれねぇかなって考えてただけだぞ」

 

「本当ナチュラルに酷いねアンタ、それ買ってきたの僕なんですけど」

 

「あぁそうだな、当然だろ?何言ってんだ……まさかお前そこまで」

 

「そこまで何なんですかね!?人をそんな可哀想なもの見る目で見ないでくれません!?」

 

「あぁ、すまない……てっきりお前の脳味噌が腐り落ちて頭の中すっからかんなんだと思ったよ」

 

「もういいですよ……飯食べようぜ、時間もあんまりないし」

 

 

 

美佐枝さんのお弁当は冷えても美味しい煮物が入っていて、もう本当早く美佐枝さんをお嫁にしたいと思うお弁当だった

 

 

「何、にやにやしてんだよ気持ち悪いぞ綱汰」

 

「うっせバカ原、美佐枝さんに春原が覗きやってたって嘘の報告すんぞ」

 

「嘘って言いながらそれ美佐枝さんに言おうとするの止めてくれませんかね!?」

 

 

 

「で、春原って部活やってんのか?」

 

「唐突に話題変えるなよな……」

 

「で、やってんのか?まぁお前の頭で一般入試は無理だよな……ごめんな春原」

 

「その目本当止めて貰えません!?まぁ、スポーツ推薦で入ったから強く言えないんだけどさ」

 

「サッカー部だよサッカー部、どーだ格好いいだろ?」

 

「格好いい格好いい、春原くんステキ~」

 

「ステキってホント適当ですねアンタ……」

 

 

「おっ、昼休み終わったぞ」

 

「そうだね、じゃあまた明日も来るから、じゃあねー」

 

「もう来なくて良いぞ春原、じゃあな」

 

 

 

それから午後の授業が始まった……ようだ

 

 

まぁ寝ていたせいで記憶もないし、それに何故か分からないけど習っていない筈の数学の公式を見ただけで理解出来るため授業を聞く必要もないだろう

 

 

「ふぁぁ……ん、もう放課後か、帰ろ……ぅお?」

 

そう思い席から立った所までは良かったが、その後がまずかった

 

寝起きで足取りがおぼつかず、よろけてしまったのだ

 

そして、俺が倒れた先に居たのは可愛い女の子などではなく、我らが主人公、岡崎朋也その人だったのだ

つーかこういう所で巻き込まれるのって藤林椋さんの仕事じゃない?え?違う?そっかぁ……

 

「いってぇ……おい、大丈夫か?」

 

「大丈夫かってお前な……急に倒れてくる奴があるかよ」

 

「悪いな、寝ぼけてたんだ、それより大丈夫か?岡崎」

 

「んー、まぁお前の肘貰ったわき腹以外は無事だよ」

 

「そうか、じゃあ大丈夫だな。良かった良かった」

 

「良かったってお前な……」

 

「悪かったな岡崎、詫びとして明日の昼何か奢るわ」

 

「あぁ、まぁそれで許してやるよ。それよりお前気をつけろよ?なんかお前危なっかしい気がするからさ」

 

「気をつけるさ、それじゃあまた明日な岡崎」

 

「おう、じゃあな」

 

 

朋也にぶつかってしまうというアクシデントが有ったが、まぁ明日も春原に奢らせれば良いだろう

 

それよりも今は美佐枝さんに会うことが一番重要だ

 

美佐枝さんは俺のことをどう思っているんだろうか……嫌われてなければそれで良いんだが

 

 

また美佐枝さんが寮の前を掃除していた

 

「美佐枝さん、手伝いに来ましたよ」

 

「綱汰、早かったわね」

 

「じゃあ今日は窓拭きでもして貰おうかな?」

 

「りょーかい、後は何かない?」

 

「終わったらまた指示出すから」

 

「分かった」

 

 

とは言ったものの、想像してた以上に窓が多く掃除には手こずったが、美佐枝さんと夕飯を食べる為だと考えればどんな大変な作業も苦じゃなくなるのは何でだろうか

 

 

ちなみに窓拭きの後は昨日と同じく玄関の掃除を追加されたため、腰への負担が結構ヤバい事になった

 

 

 

「綱汰、晩ご飯出来たからそろそろ終わって良いわよ」

 

「ん、了解じゃあここのゴミ捨てたらすぐ行くから先行ってて」

 

 

 

 

「それじゃあ頂きます!」

 

「はい、どうぞ」

 

「それにしても、こんなおばさんと一緒に食べて本当に楽しいのかねぇ」

 

「何言ってんの、昨日も言ったけど俺は美佐枝さんと一緒に食べられると幸せだよ」

 

「そうは言ってもねぇ……私よりも若い娘とか学校にいっぱい居るだろうに何で私なんかと食べて幸せなんだか」

 

「むっ、そう言う言い方は無いんじゃないの?俺からしたら美佐枝さんだって充分魅力的な女性なんだしさ」

 

むしろ一番魅力的だしな

 

「そうかねぇ……まぁ褒められて悪い気はしないけどね」

 

 

「学校はどう?楽しい?」

 

「ん?あぁ、学校……学校ね」

 

「何その反応、まさかアンタ今日の授業寝てたんじゃないでしょうね?」

 

「面目ない……昨日あんまり寝れなかったからさ」

 

「もう、ちゃんと授業受けないと駄目よ?退屈かもしれないけど内申点とかもあるんだから」

 

「分かってる分かってる、明日からちゃんと受けるよ、多分」

 

「はぁ、絶対寝るわね。で、友達はできた?」

 

「んー、まぁ出来たかな?」

 

そう言い俺は春原のことや朋也のことを話した

 

美佐枝さんとお茶を飲みながら話を楽しんでいたが、もうそろそろ帰らなければいけない時間になってしまった

 

 

「それじゃあもう帰るから、明日の昼と夜もよろしくー」

 

「もうそんな時間か、それじゃあね綱汰また明日」

 

 

 

そうして家に帰った俺は昨日出来なかったことを始めることにした

 

 

これからこの世界で生きていく上で俺の武器となるであろうCLANNADの各ルート覚え書きの作成だ

 

 

 

──まぁうろ覚えだし詳しいところまでは書けないんたけども

 

 

 

「それじゃあ今夜も頑張りますか!」

 

 

 

 

この時、明日の学校をを考慮していなかったことを午前三時ぐらいに後悔するのは完全に余談である

そして、CLANNADは高三からということを思い出して睡眠時間を無駄にしたことを後悔するのもまた余談である

 




心の声→朋也
現実→岡崎
呼び方違いますけどよく知らない奴にファーストネームは難しいよねっていうことで


多分次は高三になってると思うんですけど…(名推理)
空白の二年は美佐枝さん視点で番外編としてやって終わると思います

主人公美佐枝さんに対してガツガツし過ぎじゃない?想定以上に関係進んでるんですけど…

完全に余談ですがCLANNAD AFTER STORYの6話最後の美佐枝さん滅茶苦茶色っぽくて筆者的に最高におすすめのシーンです


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第5話

美佐枝さん視点です

口調おかしかったりするかもしれませんのでそこら辺はあしからず

あと時間が急に二年近く飛びます

すまない…原作に入りたかったんだ


 

 

「美佐枝さんおはよ!今日も美人だね!」

 

「おはよ綱汰、はいこれ今日のお弁当。あと、そういうことは好きな人に言ってあげなさい」

 

「むぅ……本気何だけどなぁ」

 

「はいはい、分かった分かった。ほら、そろそろ行かないと遅刻しちゃうわよ?」

 

「はーい、行ってきまーす」

 

 

そう言い、綱汰は学校へ続く坂道を走っていった

 

 

 

こんな風に彼と過ごすようになってもうすぐ二年経つ

 

 

初めて彼に会った時は寮の方をボーッと見てて様子が変な子って感じたけれど、掃除を手伝うって言われた時は驚いちゃった

 

だって今まで寮に入ってた奴らには一回も言われたことが無かったから……

 

それに彼、時々抜けてて目が離せないっていうか、手が掛かるっていうか

 

そうそう、最初に会った日なんか彼、自分の夕ご飯のこと全く考えてなくって夕ご飯を作ってあげたら掃除手伝うからご飯作ってくれって言われて……美味しいって料理を褒められたのは素直に嬉しかったし、作ってあげても良いかなって思ってしまって

 

それからは彼と会わない日が無いくらい彼とずっと会ってるのよね……

 

 

 

 

──そっか、もう二年経つんだ

 

 

 

時の流れは早いって聞いたことがあるけれどこんなに時間が経つのって早かったかしら?

 

それに、さっきみたいに私のことを褒めてくれることが最近増えたように感じる

 

自意識過剰なのかもしれないけど、でもこんなおばさんに何で本気になっちゃうかなぁアイツも……

 

 

私なんて────なのに

 

 

それに綱汰は若いんだから私なんかよりも学校で好きな人探した方が良いと思うんだけどなぁ……なんで私なの?ねぇ、綱汰どうして私なんか選んじゃうのよ

 

 

 

「考えてても仕方ない、か……取りあえず買い物に行こうかな」

 

 

 

 

買い物の時にも彼の顔が時々チラついてしまう、この料理が好きだって言ってただとか、この野菜は嫌いだと言っていたとか……そして一緒にご飯を食べていた時の事を思い出して顔が熱くなった気がした

 

それに今朝言われたことも今更恥ずかしくなってきて、気づかない内に必要ないものまで買ってしまうのだった……

 

 

 

「何やってんだろ、私……」

 

「にゃ~ん?」

 

「柄にもなく喜んだり、落ち込んだり……私どうすればいいのかな?」

 

「にゃ~」

 

「バカみたいね……アンタが喋れるわけないのにね」

 

「ふぅ、そろそろアイツが来る時間だしお茶の準備しとこうかね」

 

 

 

 

 

 

「ただいま~美佐枝さん」

 

「いつからここはアンタの家になったのよ……」

 

「えぇ~だって家に居るよりこの部屋に居た方が落ち着くんだもん、しょうがないじゃん?」

 

「しょうがないってアンタねぇ」

 

「それよりも、はいお弁当!今日も美味しかったよ」

 

「そう?それなら良かったけど」

 

「あぁ、そうそう後……」

 

「明日から春休み、でしょ?昼と夜はどうするの?止める?」

 

「ん?いつも通りにするよ?つーかこれまでもそうしてたじゃん、どーしたの急に」

 

「なんか予定とかあったの?それだったら別に断ってくれてもいいんだけど」

 

「んー、そう言う訳じゃないんだけどね」

 

「まさか俺美佐枝さんに酷いこと言ったりした?それとも何か気に障ることやっちゃったかな……」

 

「ううん、綱汰は何も悪いことなんかしてないわよ。ただ、自分の気持ちが分からなくってね……整理したいって言うかきちんと考えたいって言うか……」

 

「それって俺のこと?」

 

「……えっ?」

 

どうして彼に私の気持ちが分かるのだろうか、そして彼はきっとこう言うのだ

 

 

「分かった」

 

 

と、そして「また今度」と言いながら彼は部屋を出て行ってしまった

 

どうしてそんなにも私に優しくしてくれるのか、どうしてあんなに無条件に許してくれるのか……それを考えると彼が居た時よりも心は落ち着かなくて

 

 

何よりも彼に会いたくて──

 

 

 

あの時に戻れたら……そう思ってしまうのはきっと私が愚かだからで、彼の優しさに甘えきった私の弱い心のせいで、そう知ったとしても彼は自分を許してくれそうな気がして……それが彼に甘えていることだと分かっているのに、なのに私は彼に甘えてしまう

 

 

それに、心地が良いんだと思う。今のこのどっちつかずの状態が

 

彼からの真っ直ぐな好意は一緒に話しをするだけで嫌でも伝わってきて、それを心地良く感じている自分が居て──

 

 

ふと、思った……彼がもしこの事を知ったらどう思うのだろう、と

 

いつもみたいに笑い話にしてくれるのだろうか?「勘弁してよ美佐枝さん」と言いながら

 

それとも私に怒ってくれるのだろうか?「ふざけるな!」と……自分の好意をはぐらかされていたんだから当たり前だけど

 

でも、彼が怒った姿を私は見たことがないんだと今更ながらに気付いたりして……

 

 

どうしてだろう、彼が居ないのに彼のことばかり考えてしまっている……

 

 

 

『どうして?』そんな風に誤魔化すのはもう、止めよう

 

 

 

 

私は彼のことが好き──

 

 

 

 

そう、綱汰のことが────

 

 

 

 

 

それなのに彼は今、ここに居ない

 

私が彼をこの部屋から追い出してしまった……運が良ければ春原の部屋に居るだろう、でも、春原の部屋には行けなかった

 

突然、怖くなってしまって……もし、綱汰に拒絶されたら……そう考えると足が竦んで前に進めなくなって……綱汰に自分の気持ちを伝えるのを躊躇ってしまった

 

 

 

「にゃ~ん」

 

「何やってるんだろうね、私……さ、寝よっか」

 

「にゃ~」

 

「なぁに?心配してくれてるの?ありがとね、ふふっ私今初恋中の女の子みたいね?」

 

 

でも、こんなのもたまには良いかなって思ったり……ね?

 

 

 

 

「おやすみなさい、綱汰……」

 

 

 

 




別視点って難しいなと思う今日この頃です

美佐枝さんかわいかったですかね?ちょっとでもそう感じて貰えれば作者冥利に尽きます

次回から新章(原作)突入予定です

それではまた次回も、よろしくお願い致します


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第6話

今回から原作に入ると言ったな、アレは嘘だ

次回から入ると思うので許してつかぁさい

評価、感想ありがとうございます!滅茶苦茶嬉しいッス!


美佐枝さんに気持ちの整理をしたいと言われてから、彼女の部屋に行く勇気が中々持てず、遂には春休みも終わろうとしていた

 

 

「はぁぁぁ、俺なんでお前の部屋に居るんだろうな?」

 

「そんなの知らないよ、美佐枝さんに振られでもしたんじゃないの?」

 

「うっせバカ原、振られてないし?気持ちの整理がしたいって言われただけだし?だから別に振られたことにはならないし?」

 

「じゃあ美佐枝さんに聞きに行けばいいだろ?別にそれで死ぬって訳じゃないんだからさ」

 

「俺が美佐枝さんに振られてみろ、お前死ぬぞ?」

 

「何で僕が死ぬんですかね!?それ絶対アンタの八つ当たりの所為ですよね!?」

 

「うるさいぞ~春原、綱汰に謝っとけ?そうすれば死ぬこともないぞ」

 

「うぐっ……何かよく分からないけど、ごめん」

 

「しょうがねぇなぁ~許してやんよ」

 

「何でそんなに上からなのさ……」

 

「まぁ、春原のことは置いといて、だ。綱汰、まだ美佐枝さんに告白してなかったのか?もう二年経つんだろ?」

 

「なんつーかな、決心できないって言うのかな……今のままでも良いんじゃないかとか考えちまうんだよな」

 

「今のまま、ねぇ。どっちにしろ後一年しかないんだから頑張れや」

 

「おうおう頑張る頑張る……で、お前らは好きな人とか出来ないわけ?」

 

そう聞くと春原が胸を張って答え始めた……あんまり期待できそうにないなこりゃ

 

 

「何言ってんだよ綱汰、僕が誰かを好きになっちゃったら全国に居る僕のファンの娘が泣いちゃうだろ!」

 

「はいはい、カッコいいカッコいい」

 

「ちょっ、さっきから僕の扱い適当過ぎません!?」

 

「春原、良いことを教えてやろう綱汰からの扱いが適当って言うのはいつものことだ」

 

「あっ、そうだったんスね……」

 

あれ?春原泣いてね?何でだろ

 

 

「それより、朋也は誰か良い女居ないの?お前なら二、三人引っ掛けそうだけど」

 

実際二、三人どころじゃないけどなコイツは

 

「ん?あぁ別にそういう奴は今んところ居ねぇな」

 

「ホントに?」

 

「あぁ、つーか出来たらお前と(多分)春原にも言うさ」

 

「じゃあ三年になってからのお楽しみ、か?」

 

「そうだな、出来るとは思えないけど……まぁその時はよろしくな」

 

「あぁ、任せとけアドバイスもしてやるぞ!伊達に二年も片思いやってねぇしな!」

 

「頼りがい有るのか無いのかよく分かんねぇぞ、それ」

 

「綱汰は二年も片思い出来て凄いよね~、僕なんて一ヶ月経ったら多分諦めるよ」

 

「そんなに凄いか?」

 

そう聞くと二人とも滅茶苦茶頷いていた

 

うーん、俺にとっちゃ当たり前だけど確かに普通の感覚だと長いよなぁ……

 

「まぁ、それだけ好きってこったよ」

 

「そう言うのを照れずに言える綱汰は凄いと思うよ、僕」

 

「そうか?好きだから当然だろ?」

 

「いやいや、普通は照れたりするもんだからね?そんなにおっぺけぺーと言えないよ」

 

「褒められるのは嬉しいけどお前おっぺけぺーじゃなくてあっけらかんな?」

 

「あれ?そうだっけ?まぁ、何はともあれ綱汰は凄いってこったよ、な?岡崎?」

 

「良い話にしようとしてるけど、お前ただ言い間違えた恥ずかしい奴だぞ?」

 

「何で今日はこんなに責められてるんですかね……」

 

春原っていつもは残念な奴だよなぁ

 

まぁ、春原の本気は芽衣ちゃんが居ないと見れないからな……つーか芽衣ちゃんが居ないと本気出さないって、コイツまさかシスコンか?

 

 

 

「まぁ、そんなことよりもだ、お前らよく進級出来たよな」

 

「あぁそれ僕も不思議だよ、どうしてだろうな?」

 

「ん?多分だけど幸村の爺さんが手回したんじゃないか?そうじゃなきゃ綱汰はともかく俺らが進級出来るわけないからな」

 

「お前ら幸村の爺さんにどんだけ借り作ってんだよ……」

 

「いや~それほどでも……」

 

「春原、褒めてないからな?」

 

 

実際コイツらは幸村の爺さんに世話になりっぱなしだと思うんだが……まぁ、俺もたまに世話になってるから強くは言えないけど

 

 

そう考えていたら朋也がさっきの話をぶり返してきた……

 

「綱汰って何で美佐枝さんが好きなんだ?」と

 

それに乗るのが俺の隣に座ってる金髪の奴なんだよな……はぁ

 

「やっぱりおっぱいだろ?そうなんだろ?そうだよな~あんなおっぱいそうそう居ないもんな~」

 

「なんでそこでおっぱいが出てくるんだよ……」

 

「え?綱汰って美佐枝さんのおっぱい見るために頑張ってたんじゃないの?」

 

「そんなこと頑張る奴いるか?お前じゃないんだしさぁ」

 

「お前!おっぱい馬鹿にしたらおっぱいに泣くぞ!」

 

「いや、泣かねぇからな?」

 

「いーや泣くね!その時になって『おっぱいショッーーーークッ!』って頭抱えて叫んでも遅いんだからな!?」

 

「んなこと頼まれてもしねぇし、お前にとって美佐枝さんの良いところ、おっぱいだけかよ……」

 

「んー……まぁ、そうなるのかな?」

 

「かな?じゃなくて、そうなってるからな……で、美佐枝さんの好きなところだっけ?」

 

 

春原のせいで話が大幅に脱線してしまった……何だよおっぱいショックって

 

 

「まず優しいところだろ、俺が最初に美佐枝さんに会ったときの話はしただろ?」

 

「あぁ、飽きるほど聞いたな……その様子じゃ春原も聞いてるっぽいな」

 

「うん、僕も飽きるほどっていうかもう夢で聞くぐらい聞いてるよ」

 

 

コイツらにはあの話を馬鹿みたいに話しているせいで若干呆れられている

 

美佐枝さんのことを話せるような奴はコイツらしか知らないし、それに俺に友達がこの二人しか居ないというのも原因になっている

 

べっ、別に友達作れないんじゃないし?作らないだけだし?ぶっちゃけ他の奴らと連もうとも思えないだけだし?

 

 

 

「で、次に好きなとこはなんだよ?」

 

「おっ、知りたいのかね朋也くん?」

 

「いや、別に知りたかないけどお前聞いて欲しそうにしてたからさ」

 

「ホント美佐枝さんの話してる時だけは、楽しそうだよな」

 

春原に茶化されながら言われると何か腹立つな……」

 

「アンタ声に出てますからね?……けど実際さ、学校にいるときの綱汰は目が死んでるし無気力、って感じが一目で分かるんだよ」

 

「目が死んでんのはいつものことだろ……それに学校糞つまんねーしさ」

 

「そう言いながら遅刻もしないし、ちゃんと学校行ってるじゃん?」

 

「アレは、一回昼頃に登校したら美佐枝さんに怒られて夕飯も作って貰えなかったからな……飯の為に行ってんだよ」

 

「ふーん……僕も三年になってからは遅刻しないようにしようかな」

 

「止めろ!春原!空から槍が降ってくるから!」

 

「そうだぞ春原!槍で済めば良いが、隕石が落ちてきたらたまったもんじゃない!」

 

「アンタら、ホントに僕の扱いに関してはブレないッスね……」

 

春原の目から汗が流れていたように見えたが、目の錯覚だろう

 

 

 

そんな事よりも、昨日の美佐枝さんの様子の方が俺は気になっていた

 

だから今日、春原の部屋に来たのだろう二年前と変わらず……彼女に会えるかもしれないと期待して

 

 

 

「はぁ、馬鹿らし……朋也、春原俺帰るわ」

 

「あれ?美佐枝さんに会っていかないの?てっきりその為に来たんだと思ってたんだけど」

 

「不本意だが、俺も春原と同じ考えだったぞ。美佐枝さんに会わなくて良いのか?」

 

「うーん、会いたいけど会いたくないって感じなんだよ」

 

「なんだよそれ、美佐枝さんに告白して花火みたい散にってこいよ」

 

「散ったら意味ないだろ、それ……まぁ、帰るわそれじゃまた新学期にな」

 

「綺麗だと思うんだけどなぁ……」

 

「おう、じゃあな綱汰コイツは俺がシメとくから気にしないでいいぞ」

 

 

 

そして心のモヤモヤを気のせいだと思いながら家に帰ろうというところで、会いたくも会いたくない人に出会ってしまった

 

 

「偶然ね、綱汰は今帰り?」

 

「ん、まぁそんなとこ……かな」

 

「これから時間ある?ないなら別の日にしようと思うんだけどさ……」

 

「何か用あるんなら今聞くよ、明日もどーせ暇だしね」

 

俺の言葉を聞いた美佐枝さんは、どこかほっとしたような、それでいて緊張しているような表情をしながら俺にこう告げた……

 

 

 

 

 

 

────答え、出たの

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉を聞いた俺は頭が真っ白になって、不安で……でも美佐枝さんに受け入れてもらえるかもしれないと期待してる部分もあって……

 

 

 

「私の部屋で話、しましょ?」

 

 

そう聞かれれば頷くしか手段はなくて……

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、綱汰……私、卑怯な女なのよ?綱汰が思ってるような良いヒトじゃないの……むしろ逆よ、だって私ずっとアナタの気持ち分かってたのにはぐらかして、逃げて……そのくせアナタに甘えて……だから幻滅するかもしれない」

 

「でも、それでも私で良いって言ってくれるなら……それでもこれは全部私の我が儘だから、だから」

 

「私と、付き合ってください」

 

 

そう言った美佐枝さんはとても綺麗で……言葉の表現力だけじゃ言い表せないぐらいに魅力的で、目を奪われてしまった

 

 

「…………美佐枝さん、結婚しよう」

 

「え?」

 

 

だから少しぶっ飛んだ答えを出してしまったのも仕方ないだろう

 

 

 

 

 

 

「は~それにしても美佐枝さんに告白されるとはなぁ~……俺からするつもりだったんだけど」

 

「ふふっそれよりも綱汰には驚かされるわ、まさかプロポーズしてくるなんてね……」

 

「それは……気持ちが逸ったっていうか、美佐枝さんが綺麗過ぎたって言うか……」

 

「ありがと、でも将来のことはまだ分からないわよ?こんなおばさんに飽きちゃうかもしれないしね」

 

「それはないよ、絶対に」

 

「そう?まぁこれからよろしくね?私の彼氏さん」

 

「うん、よろしくね美佐枝さん」

 

 

 

 

──こうして一組のカップルが誕生した

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、この世界の物語も始まろうとしていた────

 

 




Q:寮母と生徒って付き合っていいの?
A:バレなきゃイカサマじゃあないんだぜ?

春原のおっぺけぺーはただの打ち間違いだけど春原だからいいやってことでセリフになりましたとさ
おっぱいショッークッ!は原作の美佐枝さんルートで過去編始まる前ぐらいでの春原のセリフ
確かアニメではカットされた幻のセリフ作者はこのセリフが大好きなので、今回出しました

原作前に二人がくっ付いたけどこの作品はあくまで『美佐枝さんとの結婚』を最終目標にしてるので大丈夫なはず…
未来の自分が苦しんでそうですが、まぁ…何とかなるはずです

CLANNAD AFTER STORYのOPで志摩の手で招き猫やってる美佐枝さん最高に可愛い…招かれたい


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彼と彼女は惹かれあう(序章)
第7話


なんかいつもより少ないし美佐枝さんに関してはちょっとしか出ないしでもうなんて言うか…

今回からやっとこの小説が始まります
プロローグが長い?…知らんなぁ(目逸らし)

章タイトルが良いの決まらない…


あれから俺は美佐枝さんと付き合い始めた

 

 

──夢、じゃないんだよな

 

 

 

 

 

 

 

 

俺がこの世界に来てから、もうすぐ二年経つ

 

その間にこの世界の自分に関して役所に行って調べたりしたが、出生日、住所などは判明したが、俺の両親に関しては俺を出産してからすぐに交通事故で死んだ事になっていた

 

それから、俺の後見人はどこに居るかも把握できないような状態だった。しかし、毎月住んでいるアパートの家賃と生活費が俺の預金口座に振り込まれるのは何というか薄ら寒いものを感じた

 

 

 

それでも、俺はこの町が好きだ。美佐枝さんと出会えたこの町が──

 

 

 

 

『転生したから美佐枝さんと結婚したい』

 

 

 

 

「三浦綱汰」について、ある人物はこう言う

 

曰く、寝てばかりいる……と彼は遅刻こそしないものの、体育など机で寝れない授業を除いて基本的に机に突っ伏して寝ているのである。そのため、成績不振に陥っていると考えるであろうが答えは否、と答える他ないだろう。しかし、彼が連んでいる岡崎朋也、春原陽平は遅刻とサボりの常習犯として知られており、彼も不良の仲間として周囲には認識されていた

 

 

 

「よぉ、朋也今日も遅刻か?」

 

「おう綱汰、おはよ。春原はサボりか?」

 

「ん?あぁ、だろーな。帰り寄るか?」

 

「あぁ、それは良いけど……昼飯奢ってくれねぇか?財布持ってくるの忘れちまってよ」

 

「500円で足りるか?」

 

「全然余裕だ……サンキューな」

 

 

そして午後の授業を寝て過ごして放課後に学生寮に行ったら、春原らしき物体がラグビー部にボール代わりにされていた

 

 

うん、多分気のせいだな

 

「ごめん、朋也俺ちょっと美佐枝さんに会ってから行くから先行っててくんね?」

 

「おーう、ゆっくりしてこいよ~」

 

「岡崎!綱汰!助けてッ!」

 

 

「……朋也なんか俺疲れてんのかな?幻聴聞こえんだけど」

 

「お前もか……こりゃ春原に八つ当たりするしかねぇな」

 

「八つ当たりって分かってんなら止めて貰えません!?」

 

「あれ?春原じゃん、何でこんなとこにいんだよ?」

 

「僕の聴いてた音楽が気に入らないって言われてね……」

 

「あぁ?どうせ大音量で流したんだろ。お前の自業自得だよ」

 

「身も蓋もないッスね……」

 

「まぁ、その話は後で聞くわ」

 

「ん?綱汰……あぁなるほどゆっくりしてこいよ」

 

「そのゲス笑い止めろ春原、危うく殴りそうになったわ」

 

ナチュラルに暴力振るおうとしないでくれません!?とか後ろで聞こえてるが無視だ無視、そういやあの時からまだ数回しか会えてないんだなぁと思いながら俺は美佐枝さんの部屋へと向かっていた

 

 

 

 

「美佐枝さ~ん会いに来たよ~」

 

「はいはい、今開けるから……いらっしゃい、綱汰。お茶飲んでくでしょ?」

 

「できたら夕飯も食べたいんだけど」

 

「綱汰、これからは自分で作るとか言ってなかった?……はぁ簡単なのしか出来ないわよ?」

 

「やった!美佐枝さん大好き!」

 

「何でこんなの好きになっちゃったんだろ、私」

 

そう言いながらも美佐枝さんの目は優しく微笑んでいて……俺はこの心地良い時間が一秒でも長く続くように神に祈るのだった

 

 

 

 

 

美佐枝さんとの飯を食い終わって春原の部屋へ行くと、先程の事について二人が話していた

 

 

「くそぅ、ラグビー部め……いつか目にもの見せてやる……」

 

「そんな声じゃ聞こえないだろ?」

 

朋也と俺は顔を見合わせて、笑顔で春原の代わりに『大声で』叫んでやることにした

 

「「くそぅ!ラグビー部めえぇぇぇーッ!」」

 

「ヒィィィッ!」

 

「誰だ今言った奴!」

 

 

「二人とも僕を殺す気なのか!?」

 

「ん?お前なら生き返りそうじゃん?」

 

「僕はゾンビですかね!?後、岡崎は何良い笑顔してんですかね……」

 

「春原、派手に散ろうぜ?」

 

「後、一年残ってるよッ!」

 

「でもまぁ、卒業間際になったら派手にやるのもいいかもね。そん時は岡崎、僕の背中はお前に任せるぜ!」

 

「ラッキー!ザックリいくな」

 

「じゃあ俺は春原の目に砂入れまくるわ」

 

「来るなよッ行けよ!後、綱汰はただの嫌がらせだからね?」

 

「いや~だって俺たち……な?」

 

「あぁ、ラグビー部側だぜ?」

 

「アンタら本当に……僕たちが一緒に過ごした二年間は何なんだったんですかね!?」

 

 

 

「春原~喉渇いたんだけどお茶飲みてぇなぁ」

 

「アンタさっき美佐枝さんとお茶飲んでたんじゃないんですかね……」

 

「悪い春原、俺にもお茶」

 

「出ねぇよ!」

 

「だから悪い、って言ってんじゃんか」

 

「いや、頭下げられても出ねぇよ!……アンタらここが食堂か何かだと勘違いしてない?」

 

「ここはお前の部屋だ」

 

「分かってるじゃんか」

 

「そして、お前は俺たちの小間使い、すなわち下僕だ」

 

「全然分かってないッスね……つーか僕の扱い酷すぎませんかね。それと自分で汲み行くっていう発想は無いんですかね」

 

「だってお前、俺に命を助けられてからというもの俺の役に立ちたくて立ちたくて、仕方なかったんだろ?」

 

「マジかよ朋也、お前こんな奴の命助けたのか!?良い奴だなお前」

 

「そんな裏設定は隠されていません!つーか綱汰の僕に対する認識やっぱそんなもんなんスね……」

 

「春原!お前、あの時俺に言った言葉は嘘だったのか?……春原という男は今、ここで死にました。ここに居るのはあなたにお仕えするただのお茶くみなのですって言ってたじゃん。はい、お茶」

 

「どんだけ壮大な嘘吐かれても出ないもんは出ないからな?」

 

 

それからはいつもの用にダベって過ごして、気づいたらもう日付が変わってしまっていた

 

「ふぅ、そろそろ俺帰るわ朋也はどーする?」

 

「んあ?もう、そんな時間か俺も帰るわ」

 

「そう?じゃあね二人ともまた明日~」

 

「ん、お前は学校来いよな」

 

「起きれたら行くさ、じゃあね~」

 

春原の部屋を出てからしばらく歩いて、朋也との分かれ道に差し掛かった。ここも、もう二年ほぼ毎日通っている

 

「じゃあまた明日な、朋也」

 

「おう、またな綱汰」

 

 

それから俺は足取り重く自分の家へ歩くのだった

 

 

 

 

 




次回!唐突に美佐枝さんとのデート回!…やりたいけど物語が進まなくなっちゃうんだよなぁ

付き合ってから数回しか会わないとかこの主人公頭おかしい→一応自活出来るぐらいの力は必要かな?とか唐突に思ったらしい、なお無理な模様

ストーリーに美佐枝さん絡めるのホント難しい…次回は渚ちゃん登場かな?かな?






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第8話

上げ直しです。

デート回までの繋ぎが大変で、9話相当の話が少なくなってしまったので、8話と9話を繋げました。

それでは、どうぞ


「今日も朋也と春原は遅刻、か。さぁて寝るか」

 

 

チャイムが鳴る……なぜか俺はここで目が覚めてしまった。解せぬ

 

ん?朋也も来てたんだな

 

あっ、藤林が朋也に向かっていった。なんだろ告白かな?

 

「あのっ」

 

呼びかけられて朋也は後ろに振り向いた……つーか振り向きざまの目つき悪すぎだろアイツ

 

「なに?」

 

ほーら藤林も怖がって「あ、あのっ、これ」とか言っちゃってるじゃん……あれ?告白じゃね?大人しそうに見えて意外と大胆なんだなぁ

 

「なに?ラブレター?」

 

「えっ、ち、ちがいま……」

 

「見かけによらず大胆なんだな?」

 

「その、ラブレターとかそう言うのじゃなくて──」

 

うっわぁ藤林の顔真っ赤だよ、アイツ何やってんだか……後でからかってやるか

 

そうこうしている内に藤林が朋也の胸に紙を押しつけた!やっぱり大胆じゃないか!

 

「朝のHRで配られたプリント、です。……それと、遅刻とかあんまりしない方が良いと思うんです」

 

「別にお前には関係ないだろ。それとも何だ?委員長ともなると同じクラスの奴にまで口出すのか?」

 

「そういうわけじゃ、ないです……でも」

 

あーあアイツ藤林のこ泣かしそうになってんじゃん、何やってんだか。お、ちゃんと謝ったか偉い偉い

 

 

「おい、岡崎委員長泣かすなよ?姉貴が来るぞ」

 

そう他の男子生徒Aが忠告した……あれ?俺このクラスで知ってる奴三人しか居なくね? やべっ、なんか目から汗が出てきたな……

 

 

 

「朋也何やってたんだ?」

 

「ん?何か藤林が占いしてくれたんだよ、でその占いによると俺は明日遅刻するらしいぞ」

 

「へ~いつもの事じゃん、あんま気にする必要ないだろ」

 

「ま、それもそうだな」

 

 

 

三時間目が終わった……もう一寝入りってところで能天気な声が聞こえてきた。

 

「グッモ~ニン、良い朝だね~ボンバヘッ!って感じ?」

 

「春原うるさい、どーせ寝るんだろ?」

 

「ん~まぁね、てゆーかアンタはずっと寝てますよね……」

 

「俺は良いんだよ、ほら寝るぞ春原」

 

「お前ら生徒の鑑な……ふぁぁ俺も寝るか」

 

 

 

そして四時間目も終わった。教師の声はさっぱり聞こえないけどチャイムの音はしっかりと聞こえる俺は凄いと思うな

 

 

「さてと昼飯か」

 

「綱汰はどーせ美佐枝さんのお弁当なんだろ!岡崎、外に食べ行こうぜ!」

 

「外に行くのはいいが、俺金無いぞ?」

 

「僕もないです……」

 

そう言い二人は学食に消えていった。つーか金が無いのに外食しようとする春原って

 

 

二人と別れてから学生寮へと向かっていく

 

 

「あっ、綱汰いらっしゃい。早かったわね」

 

「授業終わってからすぐ来たからね。腹も減ってたしさ」

 

「で、自分でご飯作るって言うのはどうなったのかな~?」

 

「うっ、……だって美佐枝さんみたいに美味い飯作れないしさぁ」

 

「で、諦めたってことね。じゃあ今日からまた寮の掃除頼んだわね」

 

「りょーかいりょーかい、美佐枝さんの料理が食えるなら掃除ぐらい軽い軽い」

 

「はぁ、調子良いんだから……はい、お昼ご飯。足りなかったら言いなさいね、もうちょっと残ってるから」

 

「うん、ありがと。いただきまーす!」

 

 

 

 

「ふぅ~食った食った、ふぁぁ……」

 

「綱汰、ここで寝ていこうなんて考えてないでしょうね?」

 

「えーダメー?今寝たらすっげぇよく寝れると思うんだけど」

 

「ダーメ、せめて学校で寝なさい?……ベッドに向かわないの!もう」

 

「え~美佐枝さん一緒に寝ようよ~……一時間だけでいいからさ」

 

「何よそのちょっと譲歩したみたいな雰囲気。ほら、もうすぐ昼休み終わっちゃうでしょ?早く学校行きなさい」

 

「そんなこと言って照れてるくせに~分かった、分かった学校行くよ」

 

「分かればいいのよ、分かれば」

 

「じゃあ今夜一緒に寝ない?」

 

「バーカ私はそんなに軽くないの。ほら、学校行きなさい!」

 

「むう、俺は諦めないからな!」

 

「何の宣言よ、もう」

 

「じゃあ、また放課後にね~」

 

「ん、待ってるからね」

 

 

 

教室に着いたのは昼休みの終了時間ギリギリだった……サボればよかったかな

 

「よぉ朋也、あれ?春原は?」

 

「アイツならラグビー部に連れて行かれたぞ。何だアイツに用があったのか?」

 

「いや、別に用は無いんだけどな」

 

「はぁはぁ……死ぬかと思った」

 

後ろから荒い息づかいが聞こえたと思ったら、そこには色々ボロボロな春原が立っていた……えっ、怖いこう言うのは無視に限るな

 

 

そして授業が始まる時間が迫ってきていたため俺は急いで寝るのだった

 

 

「うぉーー!マジかよ!」

 

 

……なんだ?うるせぇな。人がせっかく惰眠を貪ってるって言うのによ

 

 

「ん?女の子?」

 

「あぁ、暴走族に立ち向かっていくなんて普通の女の子には無理だろ?僕はヤラセだと思ってるんだよね~」

 

「へぇ……あれ?あぁ、なるほど」

 

「ん?何一人で納得してんのさ」

 

「いや、まぁ頑張れ春原!」

 

「何かよく分かんないけどありがとな!」

 

二日後ぐらいにこのアホはダストシュートにシュートされるんだっけか……強く生きろよ、春原

 

 

さてと、周りも静かになったしもう一寝入りだな

 

 

起きたら朋也も春原も居なかった……つーか五時ぐらいになってね?やべーな美佐枝さんに怒られちゃうかもな。ってこんな悠長にしてる時間ねーよ!

 

そして俺は駆けだした、この長い坂道を

 

 

 

「ゴメン美佐枝さん!遅れた!」

 

「来るの遅いわよ、もう……放課後になっても寝てたんでしょ?」

 

「その通りでございます……申し訳ない」

 

「はい、廊下の掃除して?今日はそれで終わりで良いから」

 

「ありがとう美佐枝さん!大好きだよ!」「はいはい、分かったから早く掃除終わらせてちょうだいね」

 

 

 

 

 

「さて、美佐枝さん夕飯も終わった訳だけどさ」

 

「何よ改まって、これから何かすることあるの?」

 

「ん?昼にも言ったじゃん、一緒に寝よ?」

 

「はぁ、ダメって言ったわよね?」

 

「じゃあ、膝枕してよそれで許してあげるから」

 

「別に許してもらわなくても良いんだけどね……ほら、おいで」

 

「やったぁ!美佐枝さん愛してるよ!」

 

「軽々しくそう言うこと言わないの、それにしても身長の割に甘えん坊よねアナタ」

 

「んー、それは美佐枝さんだからじゃないかなぁ」

 

そうして美佐枝さんの膝枕の上で三十分ほど過ごした……軽く寝落ちしたのは仕方がないだろう。だって美佐枝さんの太ももめっちゃ柔らかくて心地良かったから

 

 

「綱汰?もう、足痺れそうなんだけど」

 

「ん、ああゴメン、ちょっと寝ちゃってたみたいだね……今退くね」

 

「ふぅ、これで満足してくれた?」

 

「うん、最高だったよ。明日も頼みたいぐらいだ」

 

「毎日は勘弁してほしいわね……まぁ、たまにならしてあげるから、そんな残念そうな顔しないでちょうだい?」

 

 

それからも二人でお茶を飲んでゆったりとした時間を過ごした

 

 

「ねぇ、美佐枝さん今度の日曜にデートしない?」

 

「デート、ねぇ。誰かに見られたらどうする?」

 

「美佐枝さんは俺なんかが彼氏だと恥ずかしいか?」

 

「馬鹿言わないで、私が悪かったから。待ち合わせ場所はどこにするの?」

 

「うーん、迎えにくるから11時ぐらいまでに支度しておいてくれない?」

 

「ん、分かった。じゃあ日曜日楽しみにしてるわね?」

 

「うっ、あんま楽しく無いかもよ?」

 

「それを楽しくするのが男の子仕事でしょ?……まぁ、私は綱汰と一緒ならそれで充分……」

 

「うん?何か言った?」

 

「何でもないわよ、もう。日曜日期待していいでしょ?」

 

「まぁ、振られないように頑張るさ」

 

「よろしい、じゃあまた明日ね」

 

「え~寝てっちゃダメ?」

 

「まだ諦めてなかったのか……ダメよ。ほら、早く帰って寝なさい」

 

「はいはい、おやすみ、美佐枝さん」

 

 

まさかデートの約束が出来るとは思わなかった……言ってみるもんだな。さぁて今週も頑張りますかね

 

 

 

 

気付いたら朝になっていた……ヤバい一睡も出来てないな

 

まぁ、どーせ行っても寝るだけだし美佐枝さんの弁当の為に学校行きますかね

 

 

そして、いつものように美佐枝さんから弁当を受け取って学校に着く直前で朋也が藤林(姉)に轢かれそうになっていた……おぉ怖っ

 

 

「よぉ、朋也災難だったな」

 

「綱汰か……見てたなら助けてくれよ」

 

「うちの学校には荒っぽい女が多いねぇ」

 

「!?春原……なんでこんな時間に居るんだ!?まさか今日は雪か!?」

 

「アンタほんとブレないッスね……今日は借りを返すために来たんだよ、もう一人の荒っぽい女にな」

 

 

朋也から大体の顛末を聞いたが、これ春原がただ弱いだけじゃね?

 

 

当の春原はと言うと「登板感覚が~」とか言いながら智代に殴りかかって返り討ちにあってダストシュートにシュートされていた……うーんアイツの体ってどうなってるんだ

 

 

 

「あれ?岡崎どこだろ?なぁ綱汰、岡崎見てない?」

 

「あぁ?知らねぇよサボったんじゃないの?」

 

「フーン、まぁいいや。じゃあ僕は特訓してくるから!」

 

「特訓って、何のだよ」

 

「坂上智代を倒す特訓さ!」

 

そう言い残し、春原は去っていった……教室に平和が訪れるのは良いことだ。さてと、もう一寝入りしますかねぇ

 

 

 

放課後になって掲示板の前に居る朋也を見つけた──貼り紙、してるのか?

 

 

「よぉ、とも……」

 

「演劇部員募集?岡崎、こんなことやってんの?」

 

「お前こそ何してたんだ」

 

「坂上智代を倒すための特訓さ。しかし、演劇部ねぇ……お前部活してる奴なんて吐き気がするほど嫌いだと思ってたよ。ま、話は後で聞くよ」

 

「岡崎さん……部活、嫌いなんですか?」

 

うっわなんだよ春原の奴、すげぇ居辛いんですけど、あ、けど俺空気っぽいからこのままフェードアウト出来んじゃね?

 

つーか朋也の奴いつの間に渚ちゃんと知り合ってんだ

 

 

それから俺はごく自然にフェードアウトした、したはず、したと思いたい

 

そして、日課である美佐枝さんとの晩ご飯タイム(この時の為に生きてる)となった

 

 

「明日は雨、かぁ……何か嫌な感じだな」

 

「なに?何か用事でもあったの?」

 

「いや、別に用は無いんだけどさ。何か胸につっかえるっていうかさ」

 

「そっか、私としては洗濯物干せなくなっちゃうから勘弁して欲しいんだけどね」

 

「ねぇ、美佐枝さん明日って半ドンじゃん?」

 

「土曜だからねぇ」

 

「で、昼飯の弁当受け取っても学校で食わないじゃん?」

 

「はぁ、だから?」

 

「明日一緒に食べよ?美佐枝さん!」

 

「そう言うと思ったわよ……まぁ、良いんだけどね」

 

そう苦笑しながら美佐枝さんはお茶を注いでくれた

 

 

 

 

「天気予報って当たるもんだなぁ。この雨じゃ春原と朋也はサボるかもな……ふぁぁ……この席は眠くなる、な」

 

 

 

放課後、渚ちゃんがグラウンドに傘も差さずに一人で立っていた。

 

「ねぇ、コレ使って良いから。傘差さないと風邪引くぜ?」

 

「えっと……」

 

「あぁ、俺は三浦綱汰、岡崎朋也と同じ組だ。アンタは?」

 

「あっ、B組の古河渚です。よろしくです」

 

「あぁ、よろしく。じゃあ、またな」

 

「はい、また明日、です」

 

後ろで「あっ、傘!」とか聞こえてるけど気のせいだ。つーか普通にこんな雨降ってる状態で女の子が立ってて見過ごせるはず無いよな……

 

 

 

「綱汰、いらっしゃ──って何でそんなに濡れてんの!タオル持ってくるから、ちょっと待ってて」

 

「あぁ、ごめん」

 

そして、慌てて美佐枝さんはタオルを持ってきてくれた……ありがとう美佐枝さん

 

「で、何であんなに濡れてたのよ?」

 

「あぁ、何て言うのかなカッコつけたせい、かな?」

 

「カッコつけたってねぇ……何、そんなに可愛い子居たの?」

 

「んぁ?美佐枝さんほど可愛い子を俺は知らないけど、まぁそれなりに可愛い子だったよ」

 

「そう、まぁ髪乾かし終わったらお昼食べましょ」

 

 

 

 

「美佐枝さん、明日は何の日でしょうか?」

 

「んー?スーパーの特売日は月曜日だし、日曜日に特売日のスーパーってここら辺にはないしなぁ……って、嘘嘘!デートでしょ!分かってるわよ、ただの冗談じゃないの、もう」

 

「真顔で冗談言うの止めてくれ……心臓に悪いから」

 

「ゴメンね、ちょっとからかってみたくなっちゃって」

 

「膝枕で許してあげる」

 

「はぁ、分かったわ、ほら」

 

美佐枝さんが正座して太ももを叩いてる……最高にかわいい

 

「なぁに考えてるんだか……するの?しないの?」

 

「する!します!お願いします!」

 

 

 

 

「それじゃあ、また明日ね美佐枝さん。待ち合わせ忘れないでね?」

 

「はいはい、支度も終わらせとくから安心して良いわよ。明日、楽しみにしてるわね綱汰」

 

 

 

 

──明日はついに、美佐枝さんとの初デート、かぁ……まさか、ここまでの関係になれるとはなぁ

 

 




筆者が至らないばかりに、読者の皆様にはご迷惑をおかけしたと思います。申し訳ない

次回、美佐枝さんとの初デート回!頑張ります!


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第9話

美佐枝さんとのデート回です。原作は進みません




 

 

 

今日は待ちに待った、美佐枝さんとのデート当日だ。こっちの世界に来るまでは妄想でしか出来なかったんだよなぁ……こんな事考えると気持ち悪いって思われるだろうが、美佐枝さんは俺にとってそれぐらい好きな人なんだ。

 

 

そんな人とこうして彼氏と彼女の間柄になるなんて、こっちの世界に転生することが出来なければ考えられなかっただろう。

 

 

だから、今日は美佐枝さんに楽しんでもらえるような、そんなデートに出来たら良いとは思う。だが、流石に経験が無いことまでは上手く出来るとは思えないけど……まぁ、美佐枝さんなら大概のことは許してくれると思うから、まぁ、頑張りますか。

 

 

 

「綱汰、遅いわよ!」

 

「ごめん、待たせちゃった?」

 

「違うわ、私が待てなかっただけ……柄にもなく楽しみだったのよ。」

 

「そう言って貰えると俺も嬉しいよ。じゃあ、そろそろ行こう?」

 

「ええ、そうね……」

 

ん?何か残念そうな……あっ

 

「美佐枝さん、その服よく似合ってるよスッゴく綺麗だ」

 

「そう?……ありがと」

 

やっぱ照れてる美佐枝さんって可愛いよなぁ……そんな美佐枝さんをしばらく愛でてから俺たちは初めてのデートへ向かうのだった。

 

 

「で、どこに連れて行ってくれるのかしら?」

 

「んー、そうだなぁ美佐枝さん今、腹減ってる?」

 

「今日遅めに食べたからまだ減ってないわよ……まぁ、綱汰が食べたいって言うなら食べられるけどね。」

 

「昼は軽めにする予定だからさ、三時とかになると思うんだ。それまでお腹大丈夫かなって。」

 

「ふーん、そっか……でもそう言うのは先に言ってちょうだいね?今回は許してあげるけど、次はないわよ?」

 

「うっ……ごめん美佐枝さん。」

 

「ほら、もう謝るのはいいから早く行きましょ?」

 

そう言い、俺の手を引いて歩き出す美佐枝さん……あるぇ~?今日俺がエスコートするんじゃ

 

 

気が付いたらランジェリーショップの前に来ていた。美佐枝さんは迷いなく入っていった……まぁ、それは良いんだけど問題は美佐枝さんと手を繋いだままってことだ。それは、つまり俺も入ってしまうってことで

 

「ちょっ、待って美佐枝さん!どこ向かってんの!……ホントに待って!ここブラとかあるから!恥ずかしいから!俺変態に思われるからぁ!」

 

「いいから来なさいよ、ほぉらこれなんかどう?結構可愛いと思うんだけど。」

 

「似合ってる!似合ってるから!手ぇ離して!お願い、俺が悪かったから!」

 

「あら、そう?じゃあこっちの際どいのとかどう?……ってこれ流石に布の面積少な過ぎじゃない?」

 

「ちょっ!マジで美佐枝さん勘弁してくれ!」

 

「もう、つまんないの……じゃあ真面目に考えるからちょっと待っててね。」

 

そう言って美佐枝さんは下着を選び始めた……って俺がここに居るの忘れてないか?

 

「綱汰~お会計~」

 

あっ、忘れてなかったんですね

 

 

「12000円になります。」

 

オゥフ……まぁ、この為にも金を貯めといて良かったな。けど流石に所持金がもう残り少なくなってしまった。

 

 

「いや~ありがとね綱汰。さ、次は服買いに行くわよ!」

 

「ラジャー……あ、ちょっと待ってATM寄っていいか?」

 

「うーん、まぁ買いすぎちゃった感じはあったしね。ほら、早く行ってきて。」

 

「ん、ここで待っててね~」

 

 

ATMでとりあえず諭吉を5人ほど引き出した。そして財布には3人の諭吉を入れておいた。残りの2人の行方は……まぁ、追々分かるだろう。

 

しかし、美佐枝さんのファッションショーの観覧料に3万は少なすぎた……それだけ言っておこう。まぁその分の価値は十分にあったし、着飾った美佐枝さんの破壊力はもう、ヤバかった。主に下半身がヤバかった……なんだよあの胸元開いたドレスやべぇよあんなの。

 

 

「良かったの?あんなに買ってもらっちゃって。私の前だからってカッコつけすぎる必要ないのよ?」

 

「あぁ、大丈夫だよ。美佐枝さんのとこで飯食ってるお陰で食費が浮いてるしさ。それを考えるとまだまだ返せてないぐらいだよ。」

 

「そう……でも、ご飯だけは割り勘にしましょうね?年下に奢らせっぱなしも性に合わないしね。」

 

「まぁ、それぐらいなら構わないけどさ。けど俺が好きで奢ってるんだからあんま気にしないで欲しいんだけど。」

 

「そう言われても、ね……」

 

「はいはい、もうこの話は終わり!次は俺のオススメのパン屋行こ!」

 

「ホントに強引なんだから……」

 

 

 

「ここ?」

 

「そ、ここがオススメのパン屋古河パンだよ。まぁ、ここの店主と俺が知り合いってだけなんだけどな。おっ、アッキーパン買いに来たぜ。」

 

「よう、綱汰かよく来たなどーだ早苗のパンなら半額で売ってやるぞ?」

 

「じゃあ一個だけな……なぁ、早苗さんのパンってどうしてたまに光ったりするんだ?」

 

「俺にも分からん──って隣の美人は誰だ!まさかお前……人妻に」

 

「人妻じゃねぇよ、俺の彼女だ彼女。」

 

「まぁ、綱汰さん彼女が出来たんですか!お好きなパン持って行って下さいね!お祝いです!」

 

「いや、流石にお金払いますよ?つーか俺に彼女出来るのそんなに不思議ですか……はぁ、美佐枝さん食べたいパン選んで下さいね。」

 

「えっ、えぇ……あ、相楽美佐枝です。彼氏がお世話になってるようで、ご迷惑おかけしてます。」

 

「おうおう、しっかりしてる彼女じゃんかよ。お前にゃ勿体ないな!」

 

「秋生さん!綱汰さんには色々お世話になってるんですから。相楽さん、綱汰さんのことよろしくお願いしますね?」

 

「もう慣れてますから、大丈夫ですよ。あっ、お会計お願い出来ます?」

 

 

 

あれ?いつの間にか会計終わってたんだけど……やっぱアッキーと絡むと時間の感覚無くなるなぁ。

 

「ほら、綱汰次行くわよ!」

 

なんか美佐枝さんまた元気に……あと、胸を腕に押し付けるのは止めてくれ。最悪歩けなくなっちまうから。

 

「あのさ、美佐枝さん……胸、当たってんだけど。」

 

「ふふっ、当ててたとしたら?」

 

そう言う美佐枝さんの顔は悪戯っ子のように無邪気な顔で、俺は気の抜けた返事しか出来なかった。

 

 

それからは、公園で一緒に古河パンで買ったパンを食べて過ごしていた

 

「ん、もう夕方か──綱汰、今何時?」

 

「あぁ、5時前だなどーする?夕飯食べる?あぁ、後次のとこは俺の奢りね。」

 

「もう食べるの?……次は奢り、ねぇ。まあ、良いけどさ。」

 

「隣町に行こうと思ってるからさ。じゃあ行こう美佐枝さん、最高のディナーにしてみせるよ。」

 

 

そうして、俺と美佐枝さんはバスで隣町まで移動した。予約したレストランを気に入って貰えればいいんだけど。

 

 

「このレストランイタリアンなんだけど、大丈夫?」

 

「ん、大丈夫よ。それより綱汰のお財布の方が心配なんだけど」

 

「大丈夫大丈夫、心配ご無用!さ、入ろう美佐枝さん」

 

そして、事前に予約しておいたお陰でスムーズに個室に通して貰えた。こんなとこでグダるのは流石に看過出来ないだろう。

 

 

「ふぅ、美味しい……こんなに良いところいつの間に見つけたのよ。」

 

「まぁ、色々調べたしねぇ。美佐枝さんに喜んで貰えたならそれで十分だよ。」

 

食事ももう終わりそうな時間になってきたため、美佐枝さんへのプレゼントを渡すことにした。

 

「美佐枝さん、これネックレスなんだ。良かったら着けてよ。」

 

「こんな高そうなのいつ買ったんだか……そうだ、綱汰に着けてもらいたいな。」

 

「うん、分かった」

 

そう言って美佐枝さんの後ろに来たはいいけど、いい匂いがしてきてヤバい……絶対俺の顔赤いな。

 

「はい、着けたよ。どう?」

 

「ん、いい感じ──綱汰、どうかしら?」

 

「うん、良いと思うよ、うん」

 

「なによ、その素っ気ない感じ……ほら、見て?谷間に埋もれちゃいそうなのよ。」

 

「分かってるから!言わないでよ!」

 

「良いのよ?綱汰なら好きなだけ見ても……だから、ちゃんと見て?」

 

美佐枝さん顔赤くしながら言うセリフじゃないと思うんですけど……あと、ネックレス買って良かったなって思いました。

 

 

それから、俺は美佐枝さんを寮まで送っていくことにした。

 

「別に送ってくれなくても良いのよ?綱汰も疲れただろうし……」

 

「そんなこと言わないでさぁ。」

 

「じゃあ最後までエスコートお願いね?」

 

「りょーかいお姫様」

 

 

気付けばもう、寮の前に着いてしまっていた。

 

「美佐枝さんどうする?帰る?」

 

「ここまで来ておいて?それとも、帰りたくないって答えてあげよっか?」

 

「それはそれで嬉しいけど──今日のとこは止めとこうかな。まだ、学校もあるしね。」

 

「詰まんないわねぇ……じゃあ最後に私からもプレゼント、あげるわ。」

 

そう言い、美佐枝さんが急に近づいてきた。あぁ、やっぱりいい匂いだなぁ。

 

そう考えていたら、美佐枝さんにキスされた。

 

 

 

 

──今日は、ありがと。楽しかったわ綱汰

 

 

 

 

 

 

 

そこから俺はどうやって帰ったのか覚えていない。

 

ただ、俺はニヤニヤしていただろうことだけは容易に想像出来るのだった。

 

 




やぁ、筆者だよ。主人公の財力パネェなって思ってるよ

アニメ見て風子ぉぉぉとかなってたけど、この作品じゃ結構あっさりめになると思います。アレは無理ですわ。
その代わりことみちゃんで頑張ります。

あと、主人公が古河パンの常連なのに渚と知り合いじゃないのは渚が寝込んでた9ヶ月で常連になったからです。間が悪いですね。

じゃあまた次回に。


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彼と彼女と天才少女と
第10話


今回から新章ですね。

美佐枝さんの出番少ないです。申し訳ねぇ…


──過去がない人物に"今"は無く、皆等しく過去があるからこそ"今"がある──

 

 

 

 

 

日曜に美佐枝さんとの初デートをしたせいで、いつもより学校をダルく感じてしまう。……こんな日は教室以外で寝るに限る。

 

いままで寝たことが有るのは旧校舎の空き教室や、屋上ばかりで実は図書室で寝たことがない。あそこ昼休みと放課後以外は鍵かかってんだよな。あそこで寝れたら最高だと思うんだけどな。

 

取りあえず図書室に向かってみると、鍵が開いていた。この学校って変な所で不用心だよなぁ……

 

 

「……お邪魔しま~す。」

 

とは言ったものの返事に期待している訳ではなく、ただの癖でつい言ってしまったのだ。……そう、本に没頭している少女を見つけるまでは。

 

 

「お~い、もしも~し……春原レベルで無視されんな。俺この子になんかしちゃったか?でも、初めて見るんだよなぁ」

 

そう思って見ていたら、少女が徐にハサミを手に取り……って!

 

「ちょっ!待て待て!切っちゃダメだ!」

 

「……?……!」

 

どうやら俺に気付いてくれたらしい。それにしても本を切ろうとするかね、普通。

 

「よぉ、俺はD組の三浦綱汰っつーもんなんだけどな、図書室の本切っちゃダメだろ?」

 

「ことみ。ひらがなみっつでことみ。呼ぶときは、ことみちゃん。……食べる?」

 

そう言い、彼女は弁当を取り出した……食べる?ってことはそう言うことか。後、後半部分は思いっきり無視なんすね、ことみさん……

 

「特に、この辺が自信作……あっ、お箸、一膳しかないの。」

 

「気にするとこそこか?……手で食べるから良いよ。」

 

そう言い、彼女のおすすめである玉子焼きを食べた。

 

「うん、美味い。……そろそろ授業始まるから片づけ始めとけよ?……俺はここで寝るから、秘密な?」

 

「うん、おやすみなさいなの。綱汰くん」

 

「ああ、おやすみ。」

 

 

そうして、いつもより静かで穏やかな睡眠時間を過ごせたのだった。枕持ってくればもっと寝れるな……考えとくか。

 

「綱汰くん、おはようなの。もう、お昼休み終わちゃってるの。」

 

「おはよー……ってなんだまた図書室に来たのか?」

 

そう訪ねると予想していた答えとは違った答えが返ってきた。

 

「ううん、ずっと居たの。」

 

「ずっと居たって、そこにか?……授業は?」

 

「出てないの。ずっとここでご本読んでたの。」

 

「サボり……か。その割に難しそうな本読んでるな。」

 

「綱汰くんも、読む?」

 

そう言い彼女は座っているクッションの半分を開けて、手で叩いている。が、流石にあそこまでのレベルの本は分かるとは思えないんだよなぁ。

 

「ゴメン、多分俺が読んでも訳わかんないからさ、俺は小説とかの方が良いかな。」

 

「そう?……あっ、ちょっとだけ待っててね?」

 

そう言い彼女は窓を開けて、換気し、司書席に向かって彼女の座っていたクッションを置いてから、後ろにある清掃用具の入ったロッカーからモップを取り出し、掃除を始めた。あれ?今って授業中だよな?……まぁいいか。

 

「ん、手伝った方がいいか?」

 

「ううん、すぐ終わるの。」

 

そう言い、彼女はさっきよりも急いだペースで掃除を再開した。……急かしてどうするんだか、はぁ。

 

 

 

「お掃除、終わったの。とっともきれいで、ピカピカ。これなら床に座ってもスカートが汚れないの。」

 

「あぁ、そうだな。」

 

「もうちょっとだけ待っててね。」

 

そう言い、彼女はパタパタと司書席に走っていき、先ほど置いたクッションをぱふっと放った。

 

「えい。」

 

それから、クッションを本で囲い、満足そうに呟いた。

 

「これで完璧なの。」

 

……もう何も言うまい。

 

そして彼女は立ったまま両足の上履きと靴下を脱ぎ、裸足になった。

 

「この方が気持ちいいの。ひんやりしてるけと、でもじんわり温いの。」

 

そう、微笑みながら話しかけてくる。……なぜ彼女は俺にこんなに話しかけてくるのだろうか。見たところそういうタイプには見えないんだがなぁ。人は見かけに寄らないってことか?

 

 

彼女が俺を見上げてくる。なんだ?

 

「一緒に読まない?」

 

気付くと半分開けられたクッションと、俺がさっき言ったからだろう、手には推理小説が握られていた。

 

「まぁ、ちょっとだけなら。」

 

ここまでされて断るのは俺にはちょっと無理だった……美佐枝さん!誓ってこれは浮気じゃないんだ!信じてくれ!彼女の柔らかさに心奪われたりしないから!許してくれ!何かいい匂いまでしてくるんだ!

 

 

美佐枝さんに誓っていたせいで俺は見逃してしまった。彼女の嬉しそうな微笑みを、彼女の頬がうっすらと紅くなったことを……

 

 

 

彼女の読むペースに合わせるのでいっぱいいっぱいで、ストーリーは全然頭に入らなかった。

 

 

「もう放課後かぁ。俺そろそろ帰るわ。またな、ことみちゃん。」

 

「うん、またね。」

 

その時の彼女の顔は嬉しそうに微笑んでいた。

 

 

 

 

「って、事があったんだけどさ。これって浮気じゃないよね?」

 

今日あったことを夕飯の時間に美佐枝さんに話していた。

 

「うーん、まぁ綱汰の話だけじゃ判断できないわねぇ。でもま、浮気したらキッチリしっかりシメるから心配しなくていいわよ。」

 

「何そのもっと心配になる言い方……でも、不思議なんだよなぁ。なんつーか懐かしいっていうか、なんか上手く言えないんだけどそんな感じがしてさ。彼女もそんな感じだったし。」

 

「ふーん、じゃあ昔会ったことがあるのかもね。」

 

「そうなのかなぁ。うーん……」

 

 

俺がこの世界に転生したのは高一の入学式の日だったから、もしかしたらこの世界の『三浦綱汰』がそれまで生きていたとしてもおかしくはない、のだろうか。

 

そうなると、高一までの俺が何をしたのか、どういう人物だったのか……それが無性に気になるのだった──

 

 

 

「ねぇ、美佐枝さんにとっての俺ってどんな感じ?」

 

「ん?そうねぇ……前に進む勇気をくれた人、かしらね。」

 

「へ?俺なんかしたっけ?」

 

「んーん、でも私にとってはそう言う人よ。……綱汰は私のことどう思ってるの?」

 

「どうって……綺麗で優しくて頼りになるお姉さんって感じかなぁ」

 

「それ、彼女じゃなくて近所のお姉さんに言うセリフじゃない?」

 

「そうかな?……じゃあ、綺麗で優しくて頼りになるけど二人っきりになると、時々悪戯したり、俺をからかってくる可愛い女性……で、どう?」

 

「ん、まぁ許してあげる。ね、綱汰──今日、一緒に寝よっか?」

 

「えっ、どうして急に」

 

「綱汰のこと可愛がりたくなっちゃって……ダメ?」

 

いや、そんなうるんだ瞳で見上げられたら理性とか色々崩壊しちゃうんですけど……それに俺に拒否権なんてないしな。

 

「美佐枝さん、俺で良いの?」

 

「馬鹿ね……綱汰が良いの。ほら、私の気が変わらない内に行くわよ?」

 

「うん……」

 

 

 

 

 

別にその夜はRで18なことにはならなかったが、まぁ、なんだ……美佐枝さんってスッゲェ柔らけぇなって思いました。

 

 




過去と現在、この二つを裏で大事にしていきたいと考える今日この頃
特に今回の章では主人公に色々悩んでもらう予定です。まぁ筆者が一番悩むんですけどね。

はい、ことみちゃんサブヒロイン化です。落とし所は一応考えてはいるので大丈夫なはずです。

風子の話はちょっとずつやっていく感じになります。

最後の美佐枝さんはことみちゃんに完全に嫉妬してます。
嫉妬する美佐枝さんも可愛い!

ってなことでまた次回も読んでいただけたら幸いです。


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第11話

今回なんか5000字越えてんだけど…まぁゲーム内の二日分やったらこうなりますわね

あと、お気に入り登録数100到達ありがとうございます。


 

 

「うーん……」

 

何かいつもよりよく寝れたなぁ……それになんか体が温かいんだよなぁ、うーん柔らかくて気持ちいいなぁ。

 

 

「んっ……」

 

んー?女の人の声かな?なんかエロかったなぁ……まぁ思春期特有の幻聴とかそこら辺でしょ。もう一寝入りもう一寝入り。けど、俺の手が当たってるところスゲェ柔らかいよなぁ。

 

 

 

「綱汰?この手は何かしら?」

 

「あれ?美佐枝さん?……おはよ。俺の部屋まで起こしに来てくれたの?」

 

「なぁに馬鹿なこと言ってんの……昨日、私の部屋に泊まったでしょ?」

 

「あぁ、そうだったね。で、俺の手がどうしたの──ゴメン!柔らかくって気持ち良かったからつい!」

 

「もう、別に良いんだけどね。私以外にこんなことしちゃダメよ?」

 

「はい……」

 

そう言う美佐枝さんの顔は少し紅かった……照れてんなら無理しなきゃ良いのに。

 

「美佐枝さん照れてんの?」

 

「照れてないわよ。朝ご飯作らないとだから、お茶でも飲んで待ってて。」

 

「はーい。美佐枝さんはやっぱりかわいいなぁ……」

 

おっ、また紅くなった。いや~眼福眼福。

 

 

 

 

「ごちそうさまでした!」

 

「はい、お粗末様。」

 

 

「いや~朝から美佐枝さんと一緒に飯食べると何か夫婦になった感じ、しない?」

 

「うーんそうねぇ、綱汰が旦那、かぁ。うーん、なんか違和感あるわねぇ。」

 

そう言い、美佐枝さんはお茶を注いでくれる。

 

「ま、その内慣れるのかねぇ。」

 

「ん?何か言った?美佐枝さん」

 

「何でもないわよ──それより歯、磨いたら?新しい歯ブラシも洗面所にあるからそれ使ってね。」

 

「んー、じゃあ歯磨いてくるわ。」

 

 

 

 

 

「じゃあ、そろそろ行くわ……春原に悪戯してから。」

 

「はいはい、行ってらっしゃい。これ、お弁当」

 

「さんきゅ。じゃあまた今夜ね。」

 

さてと、春原の部屋に向かいますかね~

 

 

 

「グー……ガー……グゴゴゴ……」

 

えっ、コイツのいびきおかしくね?つーかコイツ今日も遅刻か……さてと、油性ペンどこだったかなぁ。おっ、あったあった……おっ、赤ペンなんかもあるじゃん!さっすが春原!やっぱ持つべきものは友達だよなぁ~さてと、どうしてくれようか……歌舞伎っぽくするか。

 

それじゃあな春原、良い夢見ろよ!

 

 

 

 

 

なんか教室がうるせ……あぁ、春原かぁ

 

「よぉ、春原」

 

「やぁ綱汰!なぁんか朝から皆が僕の顔見てくるんだよねぇ。」

 

「ん?そりゃ、お前が日本一イケメンだからだろ」

 

「マジで?いや~やっぱり気付かれちゃうか~そうだよねぇ、こんなイケメンそうそう居ないもんね~」

 

朋也、そんなに笑うな……俺も耐えるのに必死なんだから。

 

「ほら、鏡見てみ?世界一イケメンが映ってるから。」

 

「おっ、用意が良いねぇ──ってなんじゃこりゃあーーッ!」

 

 

 

「やっぱりアンタの仕業か!」

 

「いや~お前のいびきがうるさかったからさぁ。スマンスマン」

 

「絶対悪いと思ってないよこの人。しかもいびきがうるさかっただけでこんな悪戯されるとか僕の扱いホント酷いッスね!」

 

 

春原がうるさい……まぁ、三割ぐらい俺のせいだけど。こんな状態じゃ教室で寝れないな──旧校舎に行くか。

 

 

 

「痛っ……」

 

ん?ここ、空き教室だよな?人、居るのか?

 

そう思い教室に入ると一人の少女が彫刻刀で星を作っていた。

 

「よぉ、何やってんだ?」

 

そう問いかけると少女は俺を見上げた。

 

「うわぁぁぁぁぁ!!」

 

そしてそのまま叫んで教室の隅に走っていった……え、普通に傷つくんだけど。

 

「ゴメン、驚かせたか?」

 

「また、変な人です!」

 

「いや変な人ってお前な……授業サボってまで何作ってんだよ?」

 

「これは……ですね~……」

 

そう言い、悦に入る少女……無視した方が良いのかな?これ。うん、なんか深く関わらない方が良さそうだし今の内に逃げとくか。

 

そう思い俺は素早く教室を抜け出した。

 

 

「ハッ!いけません、ヒトデのことを考えていたら……って変な人が居ません!もしかして、忍者だったんですか!」

 

 

 

 

そして俺がたどり着いた教室は段ボールが沢山積んである準備室のような教室だった。

 

「うっわ何これ……絶対掃除してないな、これ。まぁ、バレる危険が減るから良いかな。さて、昼まで寝るか」

 

 

 

 

 

「……私が……を復活させようと思ったのは……」

 

ん?なんか声が聞こえるな……

 

 

「んぁ?朋也か?こんなとこで何やってんだ?」

 

「ん、ああ綱汰か。こんなとこってなぁ……お前こそ何やってんだよ。」

 

「俺は寝てたんだよ……おっ、俺は邪魔みたいだな?二人で仲良くな~」

 

「おい待て!お前、それは誤解だ!」

 

「そうです!邪魔なんかじゃないです!」

 

「あれ?渚ちゃんじゃん……やっぱ、不良ってモテるんだな。」

 

「お久しぶりですっ。……ってそうじゃなくってですね!」

 

 

 

それから、朋也はこれまでの経緯を説明してくれた。

 

「……って訳だ。分かったか?」

 

「なるほどなるほど渚ちゃんが演劇部を復活させたいのは分かったよ。じゃあま頑張れ。応援してるから。」

 

「いや、待て。お前にも手伝ってもらいたい。どうせ暇だろ?」

 

「まぁ、否定は出来ないんだけどな……うーん、今まで貼り紙やったんだっけ?」

 

「はい!知らない人にも興味をもってもらえるようにって思いまして……」

 

「生徒会の許可は?」

 

「へ?生徒会、ですか?」

 

「生徒が掲示板に貼り紙する時には、生徒会の許可が無いと剥がされちまうぞ?」

 

「知らなかったです……」

 

 

『3年B組の古河渚さん、生徒会室にお越し下さい。』

 

 

「な?」

 

 

 

 

「で、何て言われたんだ?」

 

「演劇部は、部として活動していないから部員の勧誘は認められないそうです。部として休止状態なんだから、ポスターも禁止するって言われちゃいました。」

 

「そんなのっ!どうしろって言うんだ!」

 

「はぁ~、やっぱ今の生徒会って……ちょっと脅してこようか?まぁ三日もあれば認めると思うんだけどさ。」

 

「そんなことしたらダメです!でも、どうすればいいんでしょう……」

 

「諦めるな!まだ、手はあるはずだ!」

 

「岡崎さん……」

 

いや~朋也って主人公っぽいよね~

 

その時見慣れた金髪が見えたような気がした。気のせいか。

 

 

そして良い案が出ないままその日は解散した。

 

 

 

俺はそのまま図書室に向かった。昨日の少女のことが気がかりだったから

 

 

「ことみ~遊びに来たぞ~」

 

そこには、いつものように読書をする少女の姿があった。

 

「こんにちは、綱汰くん……お弁当食べる?」

 

その手には黒塗りの弁当箱があった。俺のために作ってくれたのか?

 

「あぁ、貰うよ。けど、明日からはデザート系が良いかな。弁当はいつも作って貰ってるからさ」

 

「分かったの。……いただきましょう。」

 

「いただきます。」

 

 

食べた……俺は食べきった!けど、夕飯ちょっとキツいなこれ。

 

そう頑張って食い終わった後に

 

「お弁当、誰に作ってもらってるの?」

 

そう、彼女に尋ねられた。まぁ、コイツなら言っても大丈夫だろ。

 

「男子寮の寮母さん知ってる?その人に作ってもらってるんだけどさ。」

 

「知らないの。綱汰くん、迷惑だった?」

 

「ん?いや、迷惑じゃ無いんだけどな流石に腹に入らないからさ。」

 

「デザートなら入るの?」

 

「あぁ、デザートは別腹だからな。」

 

「綱汰くん凄いの!胃が二つあるなんて学会で発表すればノーベル賞取れちゃうかもしれないの!」

 

「いやいやいや……喩えだからね?ホントに無いからね?」

 

「そうなの?それじゃあ明日アップルパイ焼いてくるから楽しみにしててね。」

 

「おう、じゃあまた明日な。」

 

「綱汰くん、また明日ね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前さ、演劇部の女の子と付き合ってんの?急に部活とか始めるからビックリしたけど、女の為なら納得だよねぇ。」

 

春原の部屋に集まったと同時に春原がそう言った。スゲェムカつく。殴りてぇ……もしくは蹴りてぇ……

 

「あの、綱汰さーん?顔スゲェ怖いんですけど……えっ、ちょっ蹴らないで!許してーッ!!」

 

 

「実はな、アイツの家、パン屋なんだよ。で、仲良くしてるとパンが無料になるんだよ。」

 

「マジかよ!」

 

「そうじゃなきゃ、俺が部活になんて関わるはずないだろ。」

 

「ま、それもそっか」

 

「それよりもお前は智代にリベンジする事だけ考えとけよ。」

 

「は?まだやってたのお前ら」

 

「アイツは絶対男だ!アイツがボロ出すまで僕は諦めないからな!」

 

はぁ、こんな奴に粘着されるなんて可哀想な子だ……

 

 

 

 

 

さぁて一日の終わり、愛しの美佐枝さんと夕飯を過ごすとするか

 

 

 

 

「明日、アップルパイ焼いてくるって言われてさ。」

 

「どうしてそういう流れになるかねぇ……綱汰、浮気したら……ね?」

 

「分かってる!分かってるから!……でも、どうにも断れないんだよねぇ。なんだろ、子供が出来たらこんな感じなのかなぁ。」

 

「子供が出来たらって、凄い気が早いからね?」

 

そう、呆れた表情で言われる。いや、可哀想な人を見る目か?

 

「アンタ、好かれてるんじゃないの?昔、会ったことあるかもしれないんでしょ?」

 

「好かれてる、ねぇ。俺を好きになる人なんてそうそう居ないと思うんだけど」

 

「けど、アンタのこと好きになるような物好きはここに居るわよ?」

 

「真っ正面からそんなこと言われると照れるんだけどさ……一回連れてこようか?」

 

「んー、そうねぇ色々聞きたいこともあるし……それじゃあ明日連れてきてくれる?でも、無理矢理はダメよ?ちゃんと相手が了承してくれたらで良いから。」

 

「りょーかい美佐枝さん。」

 

「あぁ、それと二人で話したいからアンタ春原の部屋にでも行ってなさい。」

 

「え?俺居たら邪魔?」

 

「そ、邪魔だから……女同士でしか喋れない事もあるのよ。気分悪くしないでね?」

 

「分かった分かった。でもどうなったかは教えてよね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつも通り学校に行くと、もう朋也と体中ボロボロになっている春原がいた。

 

「よぉ、朋也今日は早いな。」

 

「あぁ、コイツが智代に用が有るって言うからな。」

 

「で、その結果は?まぁ、聞かなくても分かるけど」

 

 

 

「あっ!変な人居ました!」

 

あれ?この声聞いたことあるな

 

「俺は変な人じゃないから無関係だな~」

 

朋也もアイツに会ったこと有るのか。大変だな、コイツも。

 

「って、変な人待って下さい!」

 

そう言いながら少女は朋也の袖を掴んだ。

 

「やっぱ俺かよ……」

 

「はい!あなたみたいな変な人は10年に一人の逸材です!」

 

「はぁ……俺、3年D組の岡崎朋也な。」

 

その隣で春原が少女に近づく

 

「何このおこちゃま、知り合い?」

 

「わぁ!変な人がダブルで居ます!髪の毛が有り得ない色です!」

 

「初対面なのに失礼なこと言うねぇ⁉」

 

あっ、俺のこと見た。気付くなよ~気付くな

 

「──忍者さんです!」

 

「はぇ?」

 

 

「風子は変な人と話がしたいだけです!二人で話したいので、着いてきて下さい。」

 

そう言い、少女は朋也の袖を引いていく……あっ、春原も着いてった。まぁアイツの方が変な人だもんな。

 

 

 

 

昼休みになって、演劇部の部室へ行くか図書室に行くか迷ったが、今日は図書室に行くことにした。

 

 

 

 

「よ、ことみ。一緒に飯食おうぜ。」

 

「綱汰くんこんにちは。アップルパイも焼いてきたの。だからご飯食べ終わったら食べよ?」

 

「ホントに焼いてきてくれのか……ありがとな。あぁ、そうだ今日の放課後暇か?」

 

「うん。大丈夫なの。」

 

「そか、ことみってA組だよな?放課後になったら迎えに行くから教室で待っててくれるか?」

 

「分かったの。」

 

ことみが焼いてきたアップルパイは昼飯後に食べる量じゃなかったため、寮に行ってから食べることになった。

 

 

 

 

 

そしてようやく放課後になった。用がある時の授業の遅さはどうにかならんもんかなぁ。まぁ、ことみを迎えに行きますか。

 

 

 

「綱汰くん、どこに行くの?」

 

「あれ、言ってなかったっけ……美佐枝さん、寮母さんのとこだよ。」

 

「寮母さんって、綱汰くんのお弁当作ってる人?」

 

「そ、その人にこれから会いに行くんだよ。」

 

 

 

 

寮に着いてから、美佐枝さんを探したが掃除はしてないから部屋に居るのかな。

 

 

 

「美佐枝さん、連れてきたよ。」

 

「一ノ瀬ことみです。よろしくお願いします。」

 

「ここの寮母やってる相楽美佐枝です。よろしくね、ことみちゃん。さ、入って──綱汰は春原のとこ行ってきなさい。」

 

「ん、りょーかい。じゃあまた後でね。ことみもまた後でな。」

 

「うん、綱汰くんまたね。」

 

その後、一時間ほど美佐枝さんとことみは話し合っていた。どんな内容だったかは俺に知る由はないが、二人の表情は明るかったから大丈夫だろう。

 

「綱汰くん、また明日なの。」

 

「ん?もう帰っちゃうのか?」

 

「もう、夜になっちゃったの。だから、また明日。美佐枝さんもさようなら。」

 

「あぁ、また明日な」

 

「いつでもいらっしゃいね。ことみちゃんならいつでも来て良いから。」

 

バイバイ、そう言いことみは手を振って帰って行った。さて、美佐枝さんに聞きますかね。

 

 

先ほどのことを美佐枝さんに聞くと美佐枝さんは呆れたような表情になった。

 

「アンタってホントに罪つくりよねぇ……ま、綱汰ならその内気付くのかもね。ねぇ綱汰、もしも、もしもずっと昔から貴方を思い続けていた人が居たら、貴方は私とその人どっちを取る?」

 

「ん、どっちを取る──かぁ。ずっと思い続けてくれたのは嬉しいけど、今の俺には美佐枝さんが居るからなぁ。」

 

 

そう言うと美佐枝さんはくすぐったそうに笑った。

 

「そうね、まぁあの子のはそっちとはちょっと違うのかもねぇ。随分と大きい子供になっちゃうけど。」

 

「うん?なに、その大きい子供って。」

 

「アンタならいつか気付くだろうから、自分で答えを見つけて、自分で考えなさい。ちゃんと私も支えてあげるから。」

 

 

そう言い笑った美佐枝さんは、頼りになる俺の自慢の彼女だった。

 

 

 

 

 




今回は風子出して、美佐枝さんとことみを引き合わせました。
この二人の会話の内容は…まぁ自由に想像してください。

俺の自慢の彼女(嫁)ですね、分かります。


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第12話

お気に入り登録や感想ありがとうございます。

何かご要望がありましたら、感想で書いていただけると幸いです。


『一昨日は兎を見たの。昨日は鹿、今日はあなた。』

 

そう言い、少女が俺に微笑みかける。

 

 

 

炎に包まれ少女が泣いている……

 

『ごめんなさい……良い子になるから……だから……!』

 

 

俺が少女に何事かを囁いている……少女が笑ってくれた……俺はそれだけで幸せだった。

 

 

 

 

 

 

「うーん……何だったんだ今日の夢は……」

 

顔を洗う時に気付いたが、涙が流れていたようだ。そんな歳じゃないんだが。

 

「一昨日は兎、昨日は鹿、今日はあなた。ねぇ、なぞかけなのか?生憎と俺は一休さんじゃないんだけどな。」

 

元の世界で見たことがない少女だった。まぁ、幼少期の記憶までは分からないのだから断定は出来ないけど。でも、あの女の子どっかで見たことあるんだよなぁ……

 

 

 

 

 

 

「ホームランだー!」

 

朝から元気だなコイツは……また智代ちゃんにやられるんだろう。つーかよくコイツも飽きないよなぁ。

 

「いきなり何だ?」

 

ほら智代ちゃんも狼狽えてるよ。

 

「今日は違うんだよ。お前の見方が変わったんだって。」

 

「まず、身に付けているものを褒めろ。」

 

おっ、朋也がアドバイスしてる……なるほど、これは面白そうだ。

 

「いや~その頭に着けてるの似合ってるよな~」

 

「ん、そうかありがとう。」

 

満更でもなさそうだな……そうだ

 

「春原、屈伸しながら『智代ってこんなに美人で優しいからモテるんだろうな~』って言え。」

 

「りょーかい綱汰!」

 

 

うっわアイツ本気でやってるよ……朋也と顔を見合わせる。まだまだ楽しくなりそうだ。

 

「ちょ、引かれてない?」

 

「大丈夫だ、安心しろ」

 

「次はヒンズースクワットしながら『あぁ~僕無性に彼女募集中ッス』って言え。」

 

 

 

「って、僕無茶苦茶怪しくない?」

 

「大丈夫だ。」

 

「次はボーリングの投球フォームで『智代さん、毎朝僕の朝食を作ってください』って言え。これで智代ちゃんはイチコロだ!」

 

「マジッスか!」

 

 

「ってこのポーズに意味あんのかよッ!」

 

「別に、なぁ?」

 

「あぁ、特にこれと言って意味はないな。」

 

「じゃあやらせるなぁ!こうなったら……」

 

あっ、殴られに行った……おっ、智代ちゃんと朋也のコンボかあれはエグいな。

 

「涼しい顔してっけどトドメ刺したのお前だからな?」

 

朋也が変なこと言ってる──ちょうど足下に来た金色の物体を踏んだだけなのに。

 

 

 

その後、朋也が智代ちゃんを演劇部に勧誘したが生徒会長になりたいらしく断られていた。

 

ことみならやってくれそうだな……

 

「朋也、知り合いに演劇部入ってくれるかもしれない奴居るから声かけてみようか?」

 

「おっ、マジか?それじゃあ頼むわ」

 

 

 

 

「よ、ことみ昼寝に来たぞ」

 

「綱汰くん、こんにちは。」

 

「昨日のアップルパイ美味かったぞ。また時間があったら焼いてくれるか?」

 

「うん……綱汰くんに喜んでもらえて良かったの。」

 

その微笑みは夢で見た少女に似ていて──少しの間呆然としてしまった。

 

 

「えっとな、ことみお願いって言うか頼みがあるんだけど」

 

「お願い?」

 

「ああ、友達が演劇部を作ったんだけど部員が足りないらしくてな、それで出来れば演劇部に入って欲しいんだけど。」

 

「演劇部……綱汰くんも入ってるの?」

 

「んー、入ってない、かな?」

 

俺の答えを聞いたことみは少し寂しそうに見えた。そして俺は自分が入ってない癖に他人には入部するように頼むなんて都合が良いことをしようとしていることに気付いた。

 

「ことみ、ごめん今の話、無しにしてくれ。」

 

「?うん、分かったの。」

 

その後はいつものように昼寝をして放課後まで過ごした。

 

 

 

 

 

放課後、学生寮に向かうと春原が美佐枝さんに関節技をキメられていた……何やってんだアイツは。

 

 

「うぅっ……腕が痛い……これじゃ生徒会の連中をシメてやることも出来ない……」

 

「泣くな、ウザったい。」

 

「演劇部のことなら、しばらくは活動延期だ。他にやることが出来たんだ。」

 

「ん?何すんだ?」

 

「僕は無視ッスか……」

 

「幽霊少女のお守りだ。と言っても俺は信じちゃいないがな。」

 

「「は?幽霊?」」

 

春原とハモった……死ぬしかないな。

 

「風子も気になるけど、古河のことも心配だ。当分は手伝いながら様子見だ。ってことでお茶」

 

「話が見えません!」

 

どういうことだ?風子とかいう子と渚ちゃんの関係ってどうなってんだ?

 

 

 

 

家に帰ってから演劇部の勧誘に失敗したことを伝えてなかったのに気付いた。ま、いっか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝学校に行くと、いつか見た少女が木彫りの星を配っていた。あれ?朋也と渚ちゃんも居るな……つーかあれで付き合ってないってどう言うことなの。

 

 

「これ、どうぞ!」

 

「これ何?星?」

 

「星じゃありません!これはヒトデです!」

 

「マジ?……朋也、これヒトデなの?」

 

「あぁ、ヒトデらしいぞ。とっても可愛いらしい。」

 

「ふーん、そうなのか。さんきゅな、じゃ俺はこれで。」

 

「待って下さい!」

 

少女が俺の背中を掴んだ……

 

「風子のお姉ちゃんの結婚式に出て欲しいんです!」

 

「りょーかいりょーかい。じゃあまたな。」

 

風子のお姉ちゃん、ねぇ。つーか結婚式どこでやるんだ?

 

 

──でも何だろうな、これ見覚えあんだよな……ヒトデ……祭り?

 

図書室で考えるか。

 

 

 

「ことみ、ヒトデって覚えないか?」

 

「ヒトデ?ヒトデっていうと、学名はAsterias amurensis。無脊椎動物、棘皮動物門。英語ではStar fishとかSea starとか呼ばれる、肉食の海星生物の、あのヒトデ?」

 

「そのヒトデなんだけどな……なんか引っかかるんだよなぁ。」

 

 

ヒトデ……伊吹風子……姉が結婚する……分からん。あぁ!モヤモヤする!

 

 

「まぁ深く考えすぎるのもダメか──俺、寝るわ。」

 

「うん、おやすみなさいなの。」

 

 

 

 

 

夜、朋也から電話が掛かってきた。明日風子ちゃんと一緒に授業しないか、と。まぁ特に断る理由も無かったし、面白そうだったからOKしておいた。

 

 

 

次の日の学校は創立者祭の準備のため、休日だというのに活気があった。

 

藤林姉妹と春原と共に教室に居ると、朋也と渚ちゃんが連れ立って入ってきた。だからお前ら付き合ってるだろ……

 

風子ちゃんは教室の前で立ち止まっていた。

 

「風子ちゃん、どうしたんですか?」

 

「風ちゃん、来て下さい。もうすぐ授業が始まりますよ。」

 

「こっちこっち~」

 

「ほら、早く来いよ。」

 

藤林姉妹と渚ちゃん、朋也が呼びかけると風子ちゃんは教室に入ってきた。

 

さて、問題は教師役だな……

 

「綱汰、アンタこの中で何故か一番成績良いんだからアンタがやりなさいよ。」

 

「あぁ?教卓で寝ても良いならやるけど。」

 

「アンタに任せようとした私が馬鹿だったわ。」

 

いや、そんな呆れられても困るんですけど……

 

 

「はーい、授業を始めますよ~」

 

あれ?この声……

 

「早苗さん?どうして早苗さんが……」

 

朋也の疑問は正しい。つーかよく入ってこれたな……

 

「渚から話を聞いたんです。私でよければ、先生役をさせてください。」

 

「ちょっと朋也、誰あの人?渚の姉さん?」

 

杏よ、あの人は渚の母ちゃんだぞ。

 

「ん、ああまぁそんなところだ。」

 

「マブいぜ!ヒューッ!これは楽しい授業になりそうだぜッ!」

 

「一人だけ昔の学園ドラマのノリだな。」

 

「なぁ、朋也知ってるか腐ったみかんは他のみかんを腐らせるんだぜ。」

 

「マジか、じゃあアイツ外に出さねぇと。」

 

「アンタらも大概だと思うんスけどね……」

 

 

「はーい、皆さーん席についてくださーい。それじゃあ皆さん自己紹介をしてください。」

 

 

「はーい!僕春原陽平ッス。春原は春の原っぱって書くッス」

 

「まぁ、綺麗なお名前ですね。」

 

あ、杏が手挙げた。まぁここで春原にダメージ与えるのがアイツだよな。

 

「先生、春原くんはアホです。」

 

「余計なこと言うなーッ!」

 

「どーせすぐバレるだろ。」

 

春原、よく考えろ俺より朋也の方が酷いと思うぞ。

 

「春原くん、元気でカバーです!」

 

早苗さん、それフォローになってないから……

 

 

「三浦綱汰です。学校では寝るか飯食ってます。よろしくー。」

 

「はい、寝る子は育つ。ですね♪」

 

この人ホント楽しそうだよなぁ。

 

 

 

そして自己紹介は進んでいって、授業が始まったらしい。らしい、と言うのは気付いたら夢の中に入っていたせいで記憶が無いからだ。

 

 

 

 

 

 

 

「美佐枝さんってさ、創立者祭来る?」

 

「んー、そうねぇ仕事もあるし、行くとしたら少しの間になるわね。」

 

そう答えながら、お茶の給仕をしてくれている。

 

「そっか、じゃあ来る時間とかも分かんないか。」

 

「ニャ~」

 

「お前は来る気満々か?」

 

「ニャー」

 

「止めてよ、ソイツ誘うの……探すの大変なんだから。」

 

「分かってるよ。ほれ、さっき買ってきたチーカマやるぞ~」

 

「ニャッ!」

 

「もう……」

 

 

その日は美佐枝さんのとこの猫と戯れてから家に帰った。

 

 

 

 

 

この日の夜になっても、伊吹風子という少女について思い出せることがなかったのは俺の記憶力が貧弱なせいなのだろうか。

 

 




ことみを入部させといて自分は入らない→おかしいよなぁ?

朋也の方が春原の扱いが酷い?気のせいじゃね?

風子のこと思い出せない→きっと世界の修正力って奴のせいなんだ!


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第13話

遅れて申し訳ないです。
一回データ吹っ飛びました。


 

 

 

そして、創立者祭の日になった。今日は各クラスや文化部がそれぞれで出し物を出すとても活気がある日らしい。

 

けど、ヒトデグッズを出す店があるのはどうなんだ……

 

我がD組はE組と一緒に喫茶店をやるという話だった。春原が喜びそうだな。

 

 

朋也と春原を朝から見てない……俺ってぼっちなのかな……もういいや、ことみのとこ行こう。

 

 

『あっはーーッ!』

 

外から春原の叫び声が聞こえた、が気のせいだろう。まぁアイツならこんな日はナンパに明け暮れるんだろうな。

 

 

図書室に行く間に気になる噂を聞いた。曰く、少女が一生懸命木彫りの星を配っては『お姉ちゃんの結婚式に出てください!』とお願いしてくるらしい。十中八九風子ちゃんだろう。あと、星じゃなくてヒトデらしいぞ。

 

 

図書室は創立者祭の喧騒から隔離されたように、静かで穏やかな時間が流れていた。生徒達が客引きする声なども、どこか遠くの世界でのことのようにこの部屋は静かだった。

 

「綱汰くん、いらっしゃい。」

 

そう言い、ことみが座っているクッションの半分を開け、座るように促してくる。

 

「ことみは外、行かないのか?」

 

「うん、ご本読んでいたいから。それに、ここに居れば綱汰くんに会えるって思ったの。」

 

そう言い、ことみは俺に微笑みかけてくる。

 

「……そっか。なぁことみ、外行かないか?」

 

ことみは首を振った……

 

「美佐枝さんと約束したの。だから、ごめんなさい。」

 

「そうなのか?じゃあ俺もここに居ていいか?」

 

「うん。ご本、読まない?」

 

「ああ、いいぞ。」

 

 

そうして、ことみと過ごしたが、昼を過ぎても美佐枝さんは現れなかった。

 

その代わりに朋也と風子ちゃんが図書室に現れた……朋也って図書室似あわねぇな。

 

そして、風子ちゃんがことみに星……改めヒトデをプレゼントしている。

 

お姉ちゃんの結婚式、か。

 

「そういや風子ちゃん、お姉さんの結婚式っていつやるんだ?」

 

「まだ、決まってません……」

 

「そっか、まぁ決まったら教えてくれな俺ら暇だからいつでも出られるぞ。」

 

「はい!」

 

うぉ、すっげぇ嬉しそう……まぁ、可愛い子には笑顔が似合う、そう言うことだろう。

 

 

「そういやお前ら、噂になってたぞ。星を一生懸命配ってる女の子が居るって。」

 

「これは星じゃなくてヒトデですっ!」

 

「ヒトデ?ヒトデっていうと、学名はAsterias amurensi……」

 

「ことみ、一昨日も聞いたから大丈夫だ。」

 

「綱汰くんいじめっ子?」

 

「スゴいです岡崎さん!この人風子よりヒトデに詳しいです!」

 

「あぁ、途中切られたのにどうやって判断したか分からんが詳しそうだな。」

 

「動物のことはあんまり詳しくないの……」

 

それから、風子ちゃんは言いたいことを一通り言ってから図書室を後にした。

 

朋也って付き人か何かなのかな?

 

 

 

 

「いや~遅れちゃってゴメンね、ことみちゃん。」

 

「美佐枝さん、いらっしゃいなの。」

 

「美佐枝さん遅いよ~」

 

朋也たちと別れ、しばらくしてからようやく美佐枝さんが来た。創立者祭も残り一時間ってところだった。

 

「あら?どうして綱汰がここに居るの?」

 

 

 

──旅に出ます。探さないで下さい。

 

 

「冗談よ、クッキー焼いてきたから食べましょ?」

 

「美佐枝さん、俺泣きそうになったんだけど……」

 

「ごめんなさいね。ほら、ことみちゃんも食べましょ?」

 

「……いただきます。」

 

ん?ことみ手が動いてないな……腹減ってないのかな。

 

「ことみちゃん、お腹減ってなかった?無理して食べなくてもいいから。まぁ、残ったらそこの男が食べるから大丈夫よ。」

 

「そうじゃないの……でも……」

 

そう言い、ことみは俯いてしまう。

 

「ことみ、美佐枝さんが言ってたみたいに無理してまで食わなくていいんだからな?」

 

ことみの肩が震えている。

 

「ことみ?」

 

「ことみちゃん?」

 

 

「ごめん……なさい……ごめんなさい……」

 

 

「ことみちゃん、大丈夫、大丈夫だからね?」

 

美佐枝さんはことみを泣きやませようとしている。俺は何も出来なかった、いや見ていることしか出来なかった。

 

 

何故、ことみが泣いてしまったのかが分からなかった。美佐枝さんは何か知っているようだったが、結局教えてはもらえなかった。

 

だがそれよりも、俺は気付いてしまった。夢の中の少女が一ノ瀬ことみかもしれない、と。あまりにも似すぎていたのだ。炎の中で泣いていたあの少女と、すすり泣いている先ほどのことみが。

 

そして、泣いたことみを美佐枝さん任せにした、その事が今になって間違っていたんじゃないかと思えてきてしまう。あの時、俺がことみを落ち着かせることが出来たなら、何かが分かったのだろうか。だが、今更そんなことを考えても仕方ないし、何より美佐枝さんが今の俺じゃ役不足だと感じたのだろう。

 

だからもっと考える必要があるのだろう。ことみのこと、前に見た夢のこと、そして俺自身の過去について。美佐枝さんは俺を信頼してくれている。それなのに俺がこんなに不甲斐ないと美佐枝さんにも申し訳が立たないからな。別に俺の過去の全てを思い出す必要はないのだから楽だと思うんだけどな……

 

 

 

 

 

『こらーっ!』

 

美佐枝さんの声が玄関の方から聞こえてきた。

 

「春原、お前覗きやった?」

 

「やってないッス!誤解ッス!」

 

 

 

 

そんな他愛ない会話をしていたら朋也が部屋に入ってきた。

 

「お前、昨日と今日何やってたんだよ風子もお前のこと待ってたんだぞ?」

 

「風子ちゃんか……なぁ岡崎、風子ちゃんって誰なんだ?」

 

「誰って、磯貝風子だよ。お前も知ってるだろ。」

 

「一年の奴に聞いて回った。そしたら一年に磯貝風子なんて子は居なかった。その代わり、風子ちゃんの名字が伊吹なんじゃないかってね。」

 

「何言ってんだよ、そんなこと……」

 

「日曜日に結婚する人伊吹って名字なんだろ?だったら風子ちゃんの名字が伊吹って言うのは間違いじゃないと思う。お姉ちゃんの結婚式に出て下さいって言ってるのに名字が違うのはおかしいだろ?でも、伊吹風子は入院中……だったら僕らと一緒に居る子は誰なんだ?伊吹風子の偽物か?」

 

「岡崎、確かめてきていいか?隣町の病院まで行って見てこようと思うんだ。」

 

「やめろ!」

 

「どうしてさ?……どっちにしろ僕は確かめなくちゃ気が済まない」

 

朋也は何か知ってるんだろうか?……俺も確かめたいし春原に付いて行くかな。

 

 

 

 

 

「美佐枝さん、昼のことみのこと何だけど……」

 

「ことみちゃんならもう大丈夫よ。けど明日は会わない方が良いと思うわ。」

 

「どうして?」

 

「ことみちゃんも綱汰も、どっちも時間が必要だと思うから……それにことみちゃんもまだ会う勇気は無いだろうしね。」

 

そう微笑みながら答えてくれた。俺とことみを慈しむように。

 

 

 

 

 

 

────気付いたら隣町の病院に春原と一緒に居た……コイツの頭の検査に付いて来たんだっけ?

 

「なぁ、春原俺なんでお前と病院に居んの?」

 

「僕も分かんないんだけど……綱汰が連れてきたの?」

 

「はぁ?お前の頭の検査の為に来たんじゃねぇの?」

 

「アンタナチュラルに酷いッスね……」

 

 

「帰るか」

 

「そうだね」

 

 

 

何で俺は病院に来たんだろう……何かあった筈なんだ何か……大切な事が。

 

 

「春原、お前学校行くか?」

 

「ん、そのつもりだけど、綱汰はフケんの?」

 

「あぁ、なんか、な。じゃな春原」

 

「はいは~い美佐枝さんとお幸せにね~」

 

まぁその通りなんだが……怒られっかなぁ学校フケてるもんなぁ。

 

 

 

 

 

「チィ~ッス遊びに来やした~」

 

「綱汰?何してんのよ、学校は?」

 

「何か行く気にならなかったんだよ。今日だけ許してくれない?」

 

そう言うと美佐枝さんは溜息を吐いて了承してくれた。

 

 

「で、どうして学校行く気にならなかったのよ。」

 

「今日さ気付いたら隣町の病院に居てさ、それから何か大事な事忘れた感じがして気持ち悪いんだよ……ん?あれ何?」

 

箪笥の上には木彫りの星?が置いてあった。そういや俺の部屋にも有ったような……

 

「あぁあれねぇ、気付いたらこの部屋に有ったのよ。てっきり綱汰が置いてったんだと思ってたんだけど……違うの?」

 

「俺じゃないと思うぞ。多分だけど俺の部屋にも同じのあるしな。」

 

「星、かしらね?」

 

「星……じゃないと思うんだよ……分かんねぇ……分かんねぇよ……」

 

「綱汰?」

 

「何だろうな……絶対俺何か忘れてるんだよ。多分楽しくて暖かい何かを……」

 

「その人のこと好きだったのね?」

 

「……うん、多分だけど。」

 

「じゃあ大丈夫よ。その内思い出せるから。」

 

「そうかな?……そうだと良いな。」

 

 

 

 

 

次の日、中庭に行くと幸村の爺さんが何か書いていた。

 

「爺さん、何書いてんだ?」

 

「む?岡崎に頼まれたんじゃよ。伊吹先生の結婚式を学校で出来ないか、とな。それで明日行われることになったのじゃよ。」

 

「伊吹先生?そんな先生居たか?」

 

「いいや、もうこの学校は辞められておるよ。」

 

「じゃあどうして朋也はそんなこと頼んだんだよ?」

 

「さぁの。じゃがそう言う間柄なんじゃないのかの?……もしかすると伊吹先生の妹さんが頼んだのかもしれんの。」

 

「伊吹先生の妹?……まぁそろそろ帰るわ。爺さんも腰大切にな。」

 

「うむ。それじゃあの。」

 

 

伊吹先生の妹……か。明日来れば分かるのかな……

 

 

 

 

 

「美佐枝さんって伊吹先生知ってる?」

 

「伊吹先生?私が居た頃に美術の先生してたわよ。伊吹先生がどうしたの?」

 

「明日さ学校で結婚式やるらしいんだよ。で、俺一人で出たらおかしいから一緒に行かない?」

 

「ん、分かった。でも、ことみちゃんも誘ってあげなさいね?」

 

 

 

 

 

 

 

日曜になって、伊吹先生の結婚式が学校で行われた。

 

伊吹先生はウェディングドレスで着飾りとても綺麗だった。美佐枝さんにウェディングドレスを着たいか尋ねたが照れることなく着たいと言われ、俺の方が照れてしまった。ことみもいつか着たいと言っていた。純粋な女の子って可愛いよね。

 

 

 

 

 

そして、花道の終わり──少女が伊吹先生に木彫りのヒトデを手渡した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──おめでとう。お姉ちゃん、いつまでも、いつまでも幸せに……ずっと、いつまでも幸せに──

 

 




今回で風子編終わりです。
次回からことみ編です。

ちなみに全編通して美佐枝編です。


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第14話



更新遅れてゴメンナサイ。免許取ってたんです!許して!久しぶりに書いたせいで短いのも許して!


美佐枝さん誕生日おめでとう!愛してる!





 

 

 

 

 

──夢を、見た。

 

遠い、遠い夢。小さいころの俺が少女と一緒に居る夢を。

 

前に見た夢では分からなかった。俺が彼女に何と囁いたのか。どうやって少女を笑顔にできたのか。けど俺はこう言ったらしい『俺がキミの父親になるから……』と。

 

そう、これは夢。でももしかしたら起こっていたかもしれない、そんな夢。

 

だから夢の最後でまた少女が泣いているのを見たら何故か胸が苦しくなって──

それから猫の鳴き声がして……ん?猫?

 

 

 

 

「なんだお前か」

目を覚ますと座った俺の上に猫がいた。

「な~ん」

「ゆっくり寝てたけど、いい夢見れた?」

「あっ、美佐枝さんおはよ。いい夢かは分からないけど、夢は見てたよ」

「そう。ねぇ晩御飯の支度まで時間あるし、散歩とかどう?」

そんな迷惑かけるみたいな顔されてもな……断れるはずがないし。

「よろこんで」

そう、いつものように返事をするのだった。

 

外は暖かいからだんだん暑いと言うのが似合う気温になりつつあった。まぁ、夕方だしそんなに暑くは感じないんだけど。桜の花びらもすっかり落ちきって今は葉桜になってしまった。

 

 

 

「それでどんな夢見てたの?」

ふと、美佐枝さんが尋ねてくる。

「多分、昔のこと、かな。あんまり覚えてないからはっきりとは分からないんだよね。前と同じで女の子が出てきたってだけでさ」

「そっか」

そう美佐枝さんが呟いたが、その後に言ったことは流石に驚いた。

 

「じゃあ、その子に『俺がお父さんになってあげる』って言ったのも覚えてない?」

「……え?なんで美佐枝さんがその事知ってるの?」

「ヒ・ミ・ツ。ヒントはいっぱいあるわよ?」

そう言い、妖しく微笑む美佐枝さんはホントに綺麗だった。ヤバかった主に下半身の制御が大変だった。

 

しかし、ヒントは出ているらしい。最初に感じたように夢の中の少女はことみなのだろうか……まぁ明日聞いてみればいいかな。

 

まぁ、今は美佐江さんとの散歩を楽しむことにしよう。いろいろと考えるのは後でいくらでもできるし。

 

 

 

 

その後はいつものように夕飯食ったり、春原の部屋でダベったりしたが、夜にことみのことをゆっくり考えることは出来なかった。なんでだろうね、不思議だね(白目)

 

 

 

 

 

 

今日の朝、ふと思いついたことがある。ことみと春原を会わせたらどうなるだろうか、と。

「思い立ったが吉日、いい言葉だよなホント」

「えっ、誰と喋ってるのアンタ。つーか僕をここまで連れてきて何させる気?図書室なんて初めて来たんだけど」

「いいか、春原よく聞け。この中になお前のことが好きで好きでしょうがない女の子が居るんだ。」

「マジっすか!待っててね愛しのエンジェルハーーート!!!」

 

そう奇声を上げながら図書室に特攻する春原……あっもう帰ってきた。

 

「なんなんスかあの人。なにやっても反応しないんスけど……ホントに僕のこと好きなの?」

「いや、そんなこと聞いたことないぞ」

「アンタ、ホントに酷いッスね……」

そう言い、春原は歩いていった。さて、俺も図書室に入るか……でも、夢の少女がことみじゃなかったら俺ヤバい奴だよな。つーか同級生を娘にする発想をした昔の俺も凄いけどな。

そう思い入った図書室は本が散乱していた。あのバカのせいか……

 

「よ、ことみ遊びに来たぜ」

「あっ、綱汰くん。おはようございます……綱汰くん、ご本散らかしちゃいけないの。」

「いや、俺のせいじゃなくてだな……まぁいいか片づけ手伝ってくれるか?」

 

それからことみと一緒に『春原が』散らかした本の片づけをした。アイツが本棚ごと倒してくれたせいで凄く時間が掛かった。

 

 

「ことみ、これで終わりか?」

「うん。もうこんなことしちゃいけないの」

「あぁ分かったよ。もうしないよ」

「それならいいの。……ご本、読む?」

 

そう言い、いつものようにクッションの半分を開けてくれる。

 

「いや、今日はさことみに聞きたいこと、あるんだ」

「聞きたいこと?」

「そう。俺さ、ことみに『お父さんになってやる』って言ったことあるかな?」

 

そう尋ねたのだが、ことみは俯いたまま返事をしてくれない。

 

 

「やっと……やっと会えたの。お父さん」

 

 

 

 

 

 




猫ってな~んてって鳴く、鳴かない?

秘密は女のアクセサリーらしいっすよ兄さん。

主人公の夜には秘密がいっぱい!(誰も得しない)



次はいつでしょうね
まぁできるだけ早く書きますが、大学始まるんでね……


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