代役者の軌跡 (乾拓海)
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「こうして彼は参加しました」

小説って難しいですね。特にFateとか設定鬼門なジャンルで敷居が高過ぎる……。
日本語不自由ながらも完結まで頑張って行きたいです。


 

 

 

「お前さんがレイオット・ロトレックか。こうして顔を合わせるのは初めてじゃな」

 

 朽木にニスを塗った木工細工を想起させる顔に興味深けな笑みが浮かべられる。乱雑な部屋に見合った乱雑な執務机越しの眼光は炯々と力強く、背筋はしゃっきりと芯棒でも入っているかのように真っ直ぐだ。老齢に見合った――特に自身の延命にまで手が回るようになった魔術師特有の――含蓄のある怪しげな気配に、心中でそっと息を呑んだ。

 

 ――ロッコ・ベルフェバン。魔術協会の総本山である時計塔において、召喚科の学部長を務める一流の魔術師が面前の老爺の正体である。

 自身が過去、時計塔に在籍していた時分に召喚科の講義を受講したことはあったが、学部長であるベルフェバンとの面識は、当然ながら一切ない。

 学部長なる地位は権威だけでなく様々な仕事とそれに付随する責任を課される。特に近年『亜種聖杯戦争』が頻繁に勃発している上に、召喚科を中心に時計塔内の複数の学科へ呼びかけ、冬木聖杯の再現プロジェクトが稼動しているらしい。そんな現状では講義なんぞに顔を出す機会など、十年に一度あるかないかだろう。

 

「はい。こうしてベルフェバン翁に御目文字仕り、感謝と光栄の至りで――」

 

「あぁ、よいよい。堅苦しい話し方に慣れておらんだろう。崩してくれてかまわんよ」

 

「っ……ありがとうございます。では遠慮なくそうさせてもらいます」

 

 口調は自己評価で及第点を出していい出来だったと自負しているが、百年を越える時を生きた老魔術師にとっては、口調も文句も余所行きのものであることを看破するのは容易かったらしい。

 おまけにどうやらこの御仁はなかなか開明的……いや、柔軟性のある人物のようだ。保守派と聞いていたのでイコール旧弊な権威主義と見ていたが、感触的にそれだけの人物でないというのは正直ありがたい。おかげで不慣れなクイーンズ・イングリッシュの発音と、堅苦しい言い回しをしなくて済む。

 勧められた薬湯の激辛味に内心で絶叫しながら、緊張の糸をほんの少しだけ緩めた。

 

「それで、お前さんは聖杯大戦への参加を希望する、ということでよかったかな?」

 

「はい。あとはあなたの許可さえ頂ければ、すぐにでもルーマニアへ向かうつもりです」

 

「ほっ。気が早いのは若者らしく大変結構じゃが、そう急ぐものではない。ワシらが聖杯大戦のマスターを集める矢先、未だ各候補者に接触もしていない段階でロード・エルメロイとアムニスフィア家からの推薦状に、セイバーを召喚するための聖遺物を用意。耳も息も長い上、かかる手間や根回しも迅速。正直、お前さんの本業も含めて考えると、協会の上層部としてはそう簡単に往かせるのも惜しいのだよ。当代随一の修復師たるロトレック殿」

 

 修復師。一般的な意味合いでは経年劣化や何らかの破損の憂き目にあった物品を元の状態に戻す職業である。僕の魔道に関わりのない、表向きの肩書も一応これになるわけだ。

 しかし、ここは西洋魔術の伏魔殿たる時計塔であり、その中でも一定の権勢を保持するロッコ・ベルフェバンの私室である。そこで発せられた修復師という単語が一般的な意味合いで用いられるものであるはずがない。僕の魔術師方面での肩書もまた、修復師と呼ばれるものだ。

 

 魔道の家系では次代へ交代する際、必ず引き継がれるものがある。それは蒐集・作成した礼装であったり、金銭的な財産や土地であったりと様々だが、もっとも重要なものは、その家系が研鑽と蓄積の結晶、家系の秘奥たる魔術と、魔術刻印である。

 特に魔術刻印は神秘を象った固定物、つまりは物質化した魔術そのものだ。その家系の血統の象徴でもあり、歴史と言い換えてもいい。

 魔術刻印はその家の魔術師が代を重ねるごとに成果を蓄積していく。それは即物的に見れば機能の強化であり、解りやすい成長といえるだろう。

 

 反面、いい事尽くめというわけでもない。

 物質化するということは、自然物・人工物に関わらず物質にとって逃れることのできない劣化や衰退、あるいは破損の可能性を得るということでもある。

 簡単な異常ならば調律師と呼ばれる者たちの施術によって事なきを得るだろう。しかし、成長限界を迎えた魔術刻印は以後一切の機能拡張が望めない。それは物質化した際に得た寿命だからだ。そうなれば家系そのものの衰退をいかに留めるか、遅らせるかを苦心するばかり。

 

 また、魔術刻印の破損も問題である。なにせ家系が築き上げた成果が文字通り損なわれるのだ。魔術刻印は各家の魔道書と言い換えても過言ではない。破損とはページの欠損だ。欠損部分のある魔道書など程度にもよるだろうが、片手落ちどころの話ではない。元通りに直したいと思うのが人情――いや、魔術師の妄執だろう。

 

 そこで修復師と呼ばれる魔術師の出番である。魔術刻印の修復という技術をもつ彼らは、その秘術をもって、魔術刻印を衰退する状態や破損状況から回復させる存在だ。滅多にできることではないため、そう呼ばれる魔術師は希少で重宝される。

 近年での有名所では、剥離城アドラの城主ゲリュオン・アッシュボーンが有名だろう。もっとも、こちらは故人であり、後継者もいないため、アッシュボーン式修復技術は失われてしまった。

 魔術協会が接収したという噂もあれば、密かにその遺産を引き継いだ魔術師がいるともされるが、どれも噂の域を出ない与太話だった。もっとも、否定する材料もまたないのだが。

 

「いやいや、自分程度の腕前なんて掃いて捨てるほどいますよ。きっと何年もすれば同業者に埋もれる程度の名前です」

 

「謙遜も過ぎれば滑稽だと思うがね。君を封印指定にする声すら一部から上がっているくらいだ。まぁ、お主の技術はこれからも必要な家系が掃いて捨てるほど出てくる。失われれば死活問題の者も少なくない。それゆえの一時保留に過ぎんのだよ」

 

 落ち着いた声音だったが、瞳の奥にちろりと覗く鬼火は、こちらの心臓を底冷えさせるのに十分過ぎる威力を秘めていた。

 

 封印指定――魔術協会に所属する魔術師にとってメリットの一切ない厄介事である。確かに最高級の名誉であるのだろうが、続く末路は惨憺たる有様だ。

 魔術協会をして、奇跡の領域と判断された希少能力をもった魔術師を、レッドリストの絶滅危惧種ばりに保護するシステム、といえばまるで優遇措置のように聞こえるが、無論実態はそうではない。

 実態は、いってみればホルマリン漬けの標本にして保管するという理不尽極まりないものだ。

 対象となるのは学問としての魔術では習得できない特殊技能ないし、その域まで突出して発展した技術である。一点物の希少価値を備えた畸形や突然変異と大差ない。別の魔術師が習得できないということは、再現性がないということだ。つまりは、その魔術師当人が死ねば、その場で遺失してしまう技能。そりゃあ大事に封印したくもなるだろう。

 

 確かに自身には異能がある。それがあるからこその修復技術であり、次代に継承できるかは子供をつくってないので不明だが、おそらくその蓋然性はほぼ無いと予想できる。ましてや、他者に伝授するなど論外な代物。

 自画自賛するわけではないが、主観的にも客観的にも、封印指定となるに相応しい逸材といえる。

 であるからこそ、いずれ封印指定にされるのは自覚していた。

 この聖杯大戦の勃発前に封印指定されなかったのは、本当に僥倖だったのだ。いや、それこそが自身に〈役割〉を真っ当させるための措置なのかもしれなかった。

 

「存じてます。だから、そちらの納得できる取引材料も用意して来ました」

 

 特段肚に力を込めて口角を釣り上げる。これから行うのは交渉ではない。餌を与えて獲物を釣り上げる。ただそれだけの単純作業なのだ。

 

 僕は持参したアタッシュケースから書類束を取り出す。書類といっても印刷紙の類ではない、どれも年代物の羊皮紙である。一枚一枚に魔術で加工したインクで文字が綴られており、さらに特殊な施術によって電子業界におけるデータディスクのごとく、術式を発動すれば使用者に筆記者の刻んだ知識を開示する魔術師用の情報媒体である。

 書類そのものに施した術式は魔術の半人前ですら閲覧できる簡易なものだ。

 その内の一枚を差し出す。

 

「こちらを見てもらえますか」

 

「ふむ。ではどれほどの材料か確認させてもらおう」

 

 ベルフェバンもまた笑みを浮かべ、羊皮紙を受け取る。執務机の手元に置いたそれへと指で軽くタッチし、あくまで一枚目の情報を読み取ってぎょっと自信と自負に満ち溢れた相好を崩す。その様が少なからず痛快で、表情に出さないようにするのがほんの少し苦労した。

 

「馬鹿なっ。これは、これらの魔法陣が刻まれた場所は――っ」

 

「第三次聖杯戦争でナチス・ドイツが、いえ、実際に糸を引いていたのは当時の参加マスターで、今回の聖杯大戦騒ぎの首謀者のダーニックですね。彼が持ち出した冬木の大聖杯が稼働していた頃の儀式基盤の記録です」

 

 それは今となってはあり得ない光景だろう。

 およそ70年前、冬木市で開催された第三次聖杯戦争。この時の戦争終盤に大聖杯の本体と儀式場に刻まれた魔法陣の大半は強奪され、残った魔術炉心の一部は近代兵器の火力によって永久に失われてしまった。

 

 ユグドミレニアから生還した魔術師の記憶に残る現在の大聖杯の映像とも違うだろう。彼の手元の羊皮紙に保存された映像は、本家本元、オリジナルの聖杯戦争が行われていた頃の、超抜級の魔術炉心のものだからだ。

 聖杯の再現という計画に関わっている魔術師から見て、情報の真贋は本物と判断せざるを得まい。そしてその価値の重要性も、僕以上に把握しているはずだ。

 

 こちらの説明を咀嚼して数秒、溜息とともにベルフェバンは落ち着きを取り戻した。餓狼のような視線でこちらの手元、正確には抱えた羊皮紙の束を注視する。

 どうやら老獪な魔術師をして、こちらの出した餌は破格の威力を持っていたらしい。交渉の駆け引きなどもはや成立する段階を飛び越えているのだ。

 

 うん、こうなることは予想できていた。どうせ聖杯大戦に参加するのは自身の中では確定事項なのだ。下手をすれば死ぬし、おそらく時計塔来訪はこれが最後となるので、出し惜しみはしない。

 

「――どうやってこれを用意したかは、とても気になるがこの際重要ではないね。残りの束全てがそうなのかね?」

 

「はい。これら全てを合わせても完全には至らないでしょうが、協会の行っている聖杯作成に大いに貢献できるものだと思います」

 

 本当に再現されても困るので、意図的に省いた箇所も存在するが、その辺りはアトランダムに選択した。仮に発覚するとしても、それは聖杯大戦が終わってからだろう。

 そしてこれを用意した方法も知られるわけにはいかない。知られたら最後、その場で封印指定確定だろう。執行者がわんさと押し寄せるのは火を見るよりも明らかだった。

 当時の大聖杯強奪を実行したナチス・ドイツの兵士達の生き残りがいたとして、彼ないし彼らの古い記憶を掘り起こしてそれを情報として抜き出す、という非常に手間のかかる手段などもあるが実行は不可能だ。調べてみたら全員死んでいるのだから仕方ない。

 

「やれやれ。本当は君を引き止めるよう方方にいわれていてね、許可を出すつもりも実は無かったんだよ」

 

 おどけるように両手を掲げられ、思わず糸目の瞼を開きそうになる。流石にこの場で魔術戦を仕掛けては来ないだろうが、最低限の警戒はしていた。もし実際に戦闘になった場合、時計塔そのものからの脱出は至極困難である。

 眼前の相手は召喚科の学部長、純粋な魔術の技量では段違いの格上だ。纏う空気は戦闘者のそれではないので、付け入る隙も当然ある。それをどうにかする凄味もまた感じられたが、やってやれないことはないだろう。

 しかし、魔術協会の中枢都市から五体満足で逃げ出せるかといえば神のみぞ知る、と判じざるを得ない。だからこそ、二重三重に保険は掛けてはいるが。

 

「こんなものを提示するのだ。相当の覚悟を持っているのだろう。それを踏まえて訊ねるが、君が聖杯大戦に参戦するための動機が知りたい。ついでに、君が「赤」の陣営の戦力として信用するに足る担保が欲しい。この二つがこちらの提示する条件だ」

 

 それらは当然の要求だ。ここまでの手札を切った以上、逆に信用できないのも仕方ない。僕だって逆の立場なら疑う。胡散臭いにも程があるからな。

 彼の中ではこちらの動機がどれだけ魑魅魍魎の跋扈する時計塔らしい思考で憶測がなされているのか、正直聴きたい気分でもあったが、話がややこしくなるので諦める。

 さて、動機と担保か。動機、つまり参戦理由は担保足り得ない。拘束力のある某かを差し出せということなのだ。である以上、魔術師らしく契約を交わすべきだろう。

 

「まず担保はこれでどうですか?」

 

 予め用意しておいた自己強制証明をアタッシュケースから取り出す。

 内容を確認すれば、どれだけこちらが譲歩してるか解るだろう。なにせ、

 

「要約すれば、こちらから金銭をはじめとした報酬の一切を要求しない。ただし協会側から出すのであれば受け取る。「赤」の陣営が勝利し聖杯を手に入れた場合は協会へ譲渡する。聖杯大戦途中で死亡した場合、さらに遺体が残っていた場合はこれを協会に譲渡する。なお、サーヴァント召喚前に自身が亡くなった場合、遺体の譲渡は無し。その場合は灰も残らず荼毘に付します」

 

 死んだ後の身体を弄くられるのは、想像するだけで耐え難い悍ましさを感じるが、あくまで途中退場した場合に限る。それでも、ここまで譲歩し(たように見せ)ないと多分駄目だろうと半ば確信していた。

 当然、協会側からのサーヴァントを召喚する前に僕へと封印指定執行者を差し向けてくる可能性もある。労せず確実に僕を捕まえるとなれば、ルーマニアへ着く前をおいて他にない。と向こうは思っているはずだ。

 ルーマニアに入れば聖遺物でいち早くセイバーを召喚する。そうなれば大戦中の戦死でしか僕の遺体の権利を縛れない。「赤」と「黒」の陣営に別れて戦っている内はいいだろうが、「黒」を滅ぼした後の「赤」同士の潰し合いになった際、残った陣営から魔術協会のバックアップ込みで袋叩きに合う可能性だってある。

 

 その対策のため、最終的に定条文の裏をかける程度の曖昧さは残している。一緒に戦ったサーヴァントへの報酬は、やはり聖杯の使用権だろう。主従揃って生き残れたなら、彼の願いが賛同できるものならば、是非とも叶えてもらいたい。協会に聖杯を渡すのはその後だ。

 

「ワシはてっきり聖杯で叶えたい願いでもあるのかと思っていたんだが」

 

「聖杯が目的なんじゃなくて、聖杯大戦への参加が目的なんですよ。だから動機なんて聖杯が必要なものじゃない…………強いて挙げるなら、『負債の解消』でしょうか」

 

「うん? 負債の解消とはどういうことかね?」

 

 自己強制証明から顔を上げ、老魔術師はこちらの心中を見抜かんと双眸を煌やかせる。

 その迫力に対抗すべく、こちらも糸目を見開き双眸を露わにした。

 

「――っ」

 

 わずかに見開かれた老魔術師の眼球。その瞳に映る銀色に輝く自身の両の瞳。常に糸目である理由。希少だが探せば見つかる程度の価値しかないとされるもの。外界に働きかける魔眼と違い、外界を理解するのを助ける眼、本来見えないはずのものを視る特殊なカメラ、淨眼である。

 性能は一級品と称していいもので、千里眼の性質も持ち合わせている。

 

「聖杯大戦に参加するのは僕の修復師の仕事の一環です。顧客へのアフターケアといったところでしょうか。すみませんが、僕に話せるのはここまでです。これで納得してもらえないなら、単身ルーマニアへ行きます」

 

 別に職業的矜持なんてものは持ち合わせてはいない。それでもこう言ったのは、それが真実だからだ。

 自身が聖杯大戦に参加するのは、そうする必要が生じたためである。なぜ一介の修復師が、魔術協会とそこから離反したユグドミレニアのサーヴァントを用いた代理戦争に参戦しなくちゃならないのか。

 過去を振り返ると、やはり修復師として仕事をし続けてきた自身に原因があると断じざるを得ない。

 

 

 

 修復師の仕事をすることで、死ぬべき人間を生かし、複数の人間の運命に干渉した。

 メタな言い方をするならば、転生者と称される異物が仕出かすには、度を超えた所業を為したのである。

 数ヶ月前、唯一の同胞に初対面で非難と忠告を受けた。

 

『おまえが助けたのは本来死ぬはずだった人間だ。おまけにその父親はこの世界の命運を左右する決戦でキーパーソンになる配役なんだよ。

 おまえの異能に比べたら「他人の死の因果を読み取る」なんてのは胸糞悪い能力だけどな、役に立つこともある。俺の視たところ、このままだとあの親娘は死ぬぞ。「原作開始」の時点で死の因果は定まる。阻止するなら、おまえが代わりに「原作」での役目を果たす他ない。勿論見捨てるのだってありだ。それはおまえが選んでくれ』

 

 無茶なことををいってくれるものだ。見捨てられるなら、そもそも最初から助けてなんていない。

 見ず知らずの人間がどこで死のうと他人事として受け止められるが、知己の窮状を解決できる手段があるのに放置できるほど、強くもなければ道から外れてもいない。

 もし聖杯大戦に参加するなら、高確率で死ぬとも言われた。だからどうした。過去に戻れたとしても、百回繰り返せば百回とも彼らを助けるだろう。たとえ自分の命が脅かされるとしても、実際に死ぬのだとしても、後味の悪い生き方だけはしたくなかった。

 

 

 

 暫し置物のように沈思黙考した末、ベルフェバンは口を開いた。

 

「はぁ。『生還後に籍を召喚科に移す』という条文を追加するなら許可しよう」

 

 溜息とともに出された条件に苦笑する。それぐらいならお安いご用、と礼を言う前に確認だけは忘れてはいけない。

 

「封印指定になったら逃げてもいいですよね?」

 

「そこまでは拘束せんよ。その際は逃げてもかまわん。逃げ切れるものならな」

 

 ひょっひょっと甲高い笑い声で締めくくられたそれは、保守派にしては珍しいまでの柔軟性を持ちつつも、やはり組織に属する魔術師らしい返事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「獅子劫先生、失礼します。頼んでおいた礼装を取りに来ました。――え、死んだら娘さんが泣くからルーマニアへ行くな? いやいや、なんで僕が死ぬの前提なんですか、失礼しちゃうなー。え、いやぁ、娘さんを馬鹿にしたわけじゃ……ぎゃーっ!? そのナイフこっちに向けないで下さいよっ聖杯大戦に参加する前にヒドラの毒で死んじゃいますってーッ!!」




獅子GOさん、親馬鹿で娘馬鹿。主人公に感謝しつつも悪い虫だと思ってる。


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