問題児たちが異世界から来るそうですよ?  蒼白の皇子の誕生 (コード・アンノウン)
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1話 集結

天帝が進まないので、勢いに乗って書いたこっちを投稿します。
天帝のファンの方には申し訳ありませんが、しばらく投稿できそうにありません。

 これもすべてわたくしのせいです。

 流石にカンピオーネ、問題児、レギオスを同時にはできませんでした……


 

1話     集結

 

 

 

 

 空が青かった。

 

 一つの雲も見当たらない空は、じっと眺めているとその紺碧に吸い込まれるような錯覚を起こす。 それは自分のちっぽけさを知らしめさせてくれている、と僕は思う。

 

 誰も寄り付かない、いや、寄り付こうとしない廃ビルの屋上で、一人ぽつんと空を見上げている少年がいた。

 

 鈍色に輝く流れるような長髪に、ため息をつきたくなるほどに作り物めいた造形の少年が、太陽の日差しにに照らされる姿はどこか別世界のような印象を与える。 

 

 

「どうすればいいのかなぁ」

 

 

 それは独白。

 

 生まれ持った特殊な『能力』のせいで誰とも親しくなれず、誰とも分かり合えず、ただ生きてきた。 ふと自分は何のために生きているんだろうか。 そんな疑問を抱いてしまった。

 

 もう一度自分の生徒手帳を開くと、そこにはシーク・ルドレリアと確かに記されていた。 最近、自分の存在について悩み始めてからの癖だ。

 

 自分はシーク・ルドレリアとして生きている。 周りに認知されている。 そう信じたいがための意味のない愚行に過ぎない。

 

 なぜなら自分は自分でしかないし、確かに生きているからだ。

 

 そこに第三者の意見は介入しない。 あくまで自己認識は主観的で自分本位のものであり自己完結するものなのだ。

 

 

 でも、けれど。

 

 

 

「生きるってのは、難儀なものだよ」

 

 

 周りとのかかわりをことごとく断ち切ったこのチカラ。 不思議と忌々しくはない。 むしろシークはこの能力を好いていた。

 

 この能力も含めて自分なのだから。

 

 だからこそ、この世界が嫌いだ。

 

 シークがシークとして生きるのにはふさわしくない世界。 シークにのみ、優しくない世界。 何度生まれる世界を間違えた神を恨んだことか。

 

 世界が滅亡してくんねーかなぁ、なんて物騒な独り言を漏らすと、蒼々と澄み渡る空に小さな白点を見つける。

 

 

 目をこらして見ると、紙?だろうか。 ひらひらと風にあおられながらも狙い澄ましたかのようにシークの手元に舞い降りた。

 

 手元には一通の封筒。 そこにはDEARシーク・ルドレリアと書かれている。

 

 驚いた。 

 

 度肝を抜かれたと言い換えてもいい。

 

 手紙が自分の手元にやってきたことに驚嘆しているのではない。 確かにそれも驚いているが、そんなことは問題ではない。

 

 真に目を剥くべきは、誰も知らないはずのシークの名が記されていたことだ。

 

 

 

 特級災害指定個体 雪鬼

 

 

 

 それが世間に知られているシークの名である。

 

 「いいね。 面白そうじゃないか」

 

 しばし呆然とするが、やがてシークは喜悦の笑みを浮かべる。

 

 「何処の誰だか知らないが、僕をこの退屈でつまらない世界から連れ出してくれるのかな?」

 

 

 そうして、便箋を開封した。

 

 

 

 

 

 

 

 

『悩み多し異才を持つ少年少女に告げる。

 その異才を試すことを望むならば、

 己の家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨て、

 我らの゙箱庭゙に来られたし』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最初に感じたのは強烈な浮遊感だった。

 

 胃から何か競り上がってきそうなのを気合いで抑え込み、眼下に広がる景色に目を向ける。

 

 そこには不細工なビル群や、無理やり押し込められた人の群れもない。 行き過ぎた科学によって、自然までもが人工物になっていたシークの世界では、考えられない光景であった。 初めて見る空以外の純粋な自然に、思わず口元がほころんでしまう。

 

 シークが感動で打ち震えている間に、地面との距離は縮まり続け、あわや衝突というところで緩衝剤のような水膜を幾重も通り抜け、湖面に衝突した。

 

 

 「もがっ」

 

 

 頭から水中に突っ込んだ弊害で、変な声をあげてしまう。 そのうえ、鼻から水が浸入したせいで頭痛に見舞われる。

 

 頭を抱えて痛みに悶えていると、共に投げ出されたと思しき人物らが三名。 濡れた服で陸地に上がりながら愚痴をこぼしていた。

 

 

「し、信じられないわ! まさか問答無用で引き摺り込んだ挙句、空に放り出すなんて!」

 

「右に同じだクソッタレ。 場合によっちゃその場でゲームオーバーだぜコレ。石の中に呼び出された方がま だ親切だ」

 

「……いえ、石の中に呼び出されては動けないでしょう?」

 

「俺は問題ない」

 

「そう。 身勝手ね」

 

 二人の男女はお互いに、フンッと鼻を鳴らして服の端を絞り始める。 その後に続くように猫を抱えた少女とシークは陸に上がる。

 

 

「ここは……どこだろう?」

 

「さあな、まあ、世界の果てっぽいものが見えたし、どこぞの大亀の背中じゃねえか?」

 

 

 少年少女の会話がどこか遠くの出来後のように、耳に反響する前に消え去ってしまう。 至近距離の声でさえ頭に入らないほどシークは周りの景色に見入っていた。 

 

 世界の果て、新緑の樹林、空中で見たドームのようなもの。 そのいずれもが新鮮で自分を拒絶しない。

 

 異世界にやってきたのではない。 帰ってきた。 その表現がいやにしっくりきた。

 

 ふらっとどこかに行きそうなシークを少女が呼びとめる。

 

 

 「それで? さっきから一言もしゃべらずどこかに行こうとしているあなたは誰?」

 

 「シーク・ルドレリア。 夏には重宝する男の子だ。 シークって呼んでくれ」

 

 「そう」

 

 

 屈託のない笑みで語られた言葉を軽く流し、興味なさげにぷいと顔をそむけた。

 

 

 

 

 

 

 

 心からけらけら笑う逆廻十六夜

 傲慢そうに顔を背ける久遠飛鳥

 我関せず無関心を装う春日部耀

 言葉少なく飄々としたシーク・ルドレリア

 

 

 

 

 

 

 

 

 名だたる英傑たちに勝るとも劣らないチカラを宿す問題児たちが、箱庭に集結した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 留年しそう……


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