Iron man on the sea. (千草流)
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一つ目の想い

 急に思いついて書いてみた。まあ、ときどき理屈に合わないことをするのが人間だから突発的に思いつくのもしょうがないよね。


 例えば、タイムマシンがあったとして過去を変えるとどうなるか。

 

 時の流れは常に一本道であり、過去、即ちより後ろの道の向きを変えれば、必然、そこから先の道も変わってしまう。しかし、それが本当に正しい理論なのかは甚だ疑問である。

 

 例えば、親や自分自身、或いはその他の自分という存在を確立させた者達、そういった者達を今よりも過去の時間において、殺害やなんらかの手段で自分との関わりを絶った場合、果たして自分という存在のありどころはどこになるのか。親殺しのパラドクス、過去で自分が親を殺せば、現在の自分は生まれなくなる、しかし自分がいなければ親は殺されない、親が殺されないなら、自分は生まれてくる、自分が存在しているならば、やはり親は殺される、しかし親が殺されれば……と永遠に続いていく。親を殺した瞬間、自分はどうなるのか、この解消できない矛盾はいくつかの説を生んだ。

 

 例えば、そもそも時間逆行は不可能であるという説、またはどうやっても未来に影響を与えるような改変は失敗に終わるという説、そして時間の道は一本ではなく幾つも分岐しているという説。それらの説はきっと人類が時間旅行を可能とするまで議論が続いていくだろう。

 

 そしてある時、とある物が過去を変えた。その物は、争い、憎みあい、いがみ合い、互いを思いやる暖かい心を持っていない同胞達を嘆き、争い、憎みあい、いがみ合い、それでも互いを思いやる暖かい心を持った人間の為に、自らが消失してしまうかもしれないことを分かった上で、過去を変えた。

 

 そしてその物は世界から消え去った。だが、その物は知らなかった。世界から消えることは、存在が消えるということではないことを。世界は、過去を変えたその物達をその時間軸から追放したのだ。彼らの歩んできた歴史の線は丸々切り取られ、そこに改変された新たな歴史が組み込まれる。元の歴史の線は一度世界の外側に出され、斜めに傾く。そして崩れるように上端、つまり過去の方からさらさらと砕け、その破片は滑り台のように歴史の線を流れてゆく。段々とその線は短くなってゆき、そして最後の一欠片が落ちる。

 

 彼らの歴史は消え去った、ただ彼らは、そこで起きた事象は細かく分けられ、世界に歪みが起きないように様々な歴史の糸に無作為に散っていった。

 

 世界は合理的だ、新たな歴史の為に消費されてしまった糸は、補う必要がある。外から持ってくる必要はない、いままであったものをまた使えばいいだけの話。そして、また糸が必要になった時は既に存在している糸から少しずつ集め新たな糸にする。そうして世界は均衡を保っていたのだ。

 

 そこには神などいない。完全に無作為、機械のように合理的に物事は完遂される。だからきっと、その物が、否、その者が、もう一人と共に辿りついたのは絶対に間違いなく神の悪戯や運命なんてものではない。

 

 それをなしたのは、合理的とは正反対で理屈に合わない、だけれども強いチカラを持っている感情だろう。

 

 それは人によっては愛と呼ぶものかもしれない、だけれどもここでは愛に近いがまた少し意味の異なる別の名前で呼ぶことにしよう、それは友情と呼ばれる。愛なんていうほど大層なモノではない、けれども互いに思いやることの出来るその感情は愛にも引けを取らない。

 

 その者は、彼女はゆっくりと瞼を開けていく。体の中でエネルギーが再び回り始めるのを感じる。目が覚めて始めに思い浮かんだのは疑問だった。彼女の記録、否、記憶は確かに残っている。そして彼女が大切な友達から受け取った暖かな感情も確かに心が覚えていた。次に彼女は喜んだ、今自分がどうなっているのか、どこにいるのか、そんな事はどうでもよかった。友達との大切な思い出が残っていたことがとても嬉しかったのだ。

 

 暫く、その暖かな感情を味わった後に、彼女は自分が置かれている状況を確認し始めた。小さな暗い部屋のような空間、そこは彼女にとって見知った場所だった。慣れ親しんだ様子で辺りに手を伸ばし、ボタンやレバーのような物を幾つか彼女が動かすと、モーターの回り始めるような音と共に部屋に明かりが灯る。その部屋は幾つものボタンやレバー、計器やレーダーのような物が配備されており、何かのコックピットを想像させる。

 

 再び、彼女が幾つか装置を動かすと彼女の前面にスクリーンが現れる。どうやら部屋の外の様子が映し出されている様だった。

 

 「水の中…海の底かしら?」

 

 そこには岩場が広がっており暗く、生き物の姿は殆ど見当たらないようだった。

 

 「ジュド、聞こえるジュド?」

 

 彼女は部屋全体に向けて問いかける。マイクや電話でどこかに連絡をとっている風ではなく、その部屋そのものも声を掛ける。その呼び声に応じるように、部屋の天井から丸くて穴のようなものが三つ空いた青いボウリングの玉のような物が、すり抜けるように落ちてきた。落ちてきた音に気が付いた彼女はその丸い物体に駆け寄り抱きしめる。

 

 「よかった…ジュド無事みたいね」

 

 「うーん…ぼくもう食べられないよう…むにゃむにゃ…」

 

 よくみるとその球体の下半分は黄色になって、手や足、口や目のような物がついていた。誰かが見たならその色合いからヒヨコのようだと言うだろう。彼女に抱きしめらたヒヨコは瞼を閉じなにやら夢見心地の様子だった。

 

 「起きて、ジュド起きて」

 

 彼女が揺り動かすとヒヨコはゆっくりと目を開け、大きく欠伸をした。そして彼女の手元から飛び降りるとまだ半分ほど閉じている目で辺りを見回し、ゆっくりと自分のいる場所を確認する。やがては自分がどこにいるのか、目の前に誰がいるのかを確認してはっきりとそのヒヨコは目を見開いた。

 

 「リルル…?」

 

 「ええそうよ」

 

 「ほんとにほんとにリルルなの?」

 

 「だから、そうだって言ってるでしょ」

 

 目の前の彼女が、自分の知っている彼女だと分かると、彼は短い脚を限界まで使い、彼女の胸に飛び込んだ。その目には涙が光、ヒヨコとは思えないほど感情豊かに表情を変えていた。

 

 「リルル…リルル…よかった、よかった」

 

 「ジュド、大丈夫よジュド」

 

 彼女もまた彼を拒むことはなく、あやすように彼を抱きしめる。暗い海の底の小さな部屋での再会はゆっくりと過ぎ去ってゆく。時間の経過の分かり難い海の底で、彼らにとってはとても長く時間が感じられた。

 

 やがて涙の収まった彼が顔を上げる。

 

 「リルル、ここはどこなの?」

 

 「分からないわ…でもメカトピアじゃなさそうだし、たぶん地球だと思うわ」

 

 「でも、過去を変えちゃったから僕たちは消えてしまう筈だったんじゃないの」

 

 「それも…分からないわ、でも確かに過去は変わった筈」

 

 彼女達は進んだ技術を持っていたが、時間旅行に関する技術にまで到達していなかった。故に過去改変による影響を理論でしか知らなかった、それ故に消えてしまう筈だった自分達が存在していることには疑問を抱かずにはいられなかった。

 

 「ならいいんじゃないかな」

 

 「……そうね」

 

 「なんで僕たちがここにいるのかは分からないけどさ、ここが本当に地球ならまた皆と会えるかも知れないじゃない!」

 

 「そうね、その通りね。 なら早速彼らを探してみましょう、とりあえず海から上がってみましょう」

 

 その言葉を聞き彼は落ちてきた天井に向かってジャンプして、またもすり抜けるように天井に入りこんでいった。

 

 「操縦は任せて、リルルは回りに何かないかよく探してみて」

 

 「分かったわ」

 

 彼女の見ている画面がゆっくりと動き出し、海底から浮上していく光景が映し出される。だんだんと画面が明るくなっていき海面に近づいているのが分かるようになり、遠くの方で魚影らしきものも確認されるようになってくる。やがてザバッと水を掻き分ける音と共にまぶしい程の光が差しこんでくる。周囲には何もない海が広がり、空は快晴、太陽の光が直接降り注いでいた。

 

 「ジュド、周囲に島影は見える?」

 

 『うーん…よく見えないけど、なんかあっちのほうで光が見えたようなきがする』

 

 「いいわ、ならそちらを目指して進んでみましょう」

 

 水面近くを映し出していた画面はまたもゆっくり動き始め、完全に水面から浮かび上がった位置で一度止まり、光の見えたという方向に向きを変える。そしてその高さのままその方向に向かって映像は移り変わっていく。

 

 ある程度進んだところで、普通の人類よりも遥かに高性能に造られた彼女の視界があるモノを捉えた。

 

 「あれは…人間? それと魚みたいな変なのもいるわね」

 

 『リルル、あの人達、あの変な魚みたいなと戦ってるんじゃない? 助けにいかなくていいのかな?』

 

 彼が発した助けるという言葉に、彼女は一瞬だけ躊躇いを抱いたが、それも本当に一瞬のこと。彼女達の大切な友達は命がけで、同胞である人間達を守ろしていた。かつてはそれが何故か理解出来なかったが、今は違う、暖かな感情を持って思いやるということを知った彼女は躊躇いを振り解く。彼女は人間の全てを見たわけではない、全ての人間が優しい心を持っているなんて思わない、けれども彼女の友達が守ろうとした人間達を見捨てることは出来なかった。

 

 「行くわよジュド」

 

 遠く離れた時間軸の遠く離れた星からやって来た彼女は、その日、再び人類と出会う。そして初めて、深海棲艦と艦娘に出会う。

 

 

 

 



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二つ目の想い

艦娘、未知との遭遇
ロボット、人間?との遭遇


 最初にその姿を捉えたのは空母赤城であった。空母である彼女(・・・)は目の前で交戦中の敵を視界に収めながらも油断することなく、全方位を警戒していた。そこで自分から見て左手、大凡南東の方角から何かが飛来してきているのを発見した。それなりの距離がありはっきりとした姿はまだ見えていなかったが、艦載機にしてはそれは大き過ぎることは分かり、敵の援軍かと身構える。

 

「南東の方角に未確認機確認! 皆さん警戒を!」

 

 幸いにして彼女たちの目前の敵は駆逐艦一体のみであった。それに反して彼女達は空母一、戦艦一、軽巡洋艦二、駆逐艦二、のバランスの取れた艦隊であり、被害状況も先の戦闘で戦艦が小破された程度であった。弾丸、燃料共に余裕があり、まだまだ戦力は残っていた。

 

「了解ネ!早くこっちを終わらせて、次の相手をするヨー!」

 

 空母の指示を受けて、戦艦金剛の彼女(・・・)は新手がやってくる前に目の前の敵を殲滅に掛かった。だが勇んだ所で弾の命中率が上がるわけではない。相手は駆逐艦、すばしっこく動き回ることにかけては髄一だ。それ故、彼女達の艦隊に所属する駆逐艦と軽巡洋艦もなかなか弾を当てることが出来ずにいた。

 

「あーもう当んないないなぁ」

 

「いい加減に沈みなさいな!」

 

 どこか間延びした声の軽巡洋艦北上と鋭く声を上げる同じく軽巡洋艦大井の二人も、味方への被弾を避けるために得意の魚雷を扱えずにいた。ならばあとは相手の同じ土俵に立つ、駆逐艦の出番であったが彼女達はまだ練度が低く、実践経験が不足していたためにうまく立ち回れないでいた。

 

 そして戦況がなかなか進まない中、ついにそれの姿がはっきり捉えられる位置までやってきた。

 

 まずその姿に、彼女達は圧倒された。その時、敵駆逐艦もその存在の重圧感に圧されたのか動きを止めてしまう。

 

 自分達の十倍はあるのではないのかと思える程の巨体、金属のようなその表面は鮮やかに三色、所謂トリコロールカラー、フランスの国旗と同じ色で塗装されていた。角ばったその体は人と同じような形をしており、手や足があり、顔にあたる部分には口や鼻こそ無いが太陽の光を反射するサングラスのような目のような物がついていた。彼女達の知識の中にはそれを表現する物は無かった、彼女達からすれば巨人といったところだ。しかし、彼女達の総指揮を執る立場にいるある人物が見たならば、わかりやすくこう言っただろう。

 

 即ち、巨大ロボットであると。

 

 その姿に呆気に取られていた彼女達だが、すぐに気を取りもどす。もっともまだ建造されて間もない子供といってもいいような駆逐艦の二人は目を回して気絶していた。かろうじて沈むことはなく海の上には立っていたが。

 

 それよりも、歴戦の戦士といってもいいような赤城と金剛の二人はすぐに思考を切り替える。この巨人が敵か否か、それを見極めないことには始まらない。もしこれが敵の新兵器か何かであった場合、少しでも相手の戦力を把握し、それが強大な物であるならば、犠牲を払ってでもその情報を彼らの基地、鎮守府に持ち帰る必要があった。

 

 誰かがゴクリと息を飲む。それと同時に巨人も緩慢な動きで腕を動かし始める。そしてその手は未だ硬直したままの敵駆逐艦に伸びる。そしてその巨大な手でつまみあげるようにして掴むと顔の前にまで持ち上げる。この段階になってようやく敵駆逐艦も逃れようともがくが、相当な力があるのか巨人の指はピクリとも動かない。

 

 まだ、彼女達は動かない。

 

 そして巨人は次に反対の手を動かし、目を回していた駆逐艦のほうへと伸ばした。

 

「Stop! 彼女達には手を出させないネ!」

 

 駆逐艦に害が及ぶ前に金剛が動いた。砲を向け停止するように勧告する。それに従うかのように巨人は手を止め彼女の方へと視線を向ける。

 

「こんだけ大きいと魚雷も当たりやすいよね~」

 

 同時に北上と大井も散開し、互いに敵を射程圏に収める。さらにその時、赤城もまたいつでも艦載機を発艦出来るように、その手に持つ発着甲板の役目をする弓の弦を引く。

 

 時間が止まったかのように錯覚する中、波の音と敵駆逐艦の鳴き声のみが静かに辺りに響いていた。

 

 十秒か二十秒か、はたまた一瞬か永遠かと思われた時間の中、緊張を破ったのは巨人であった。巨人は敵駆逐艦を摘み上げた時のように緩慢に手を動かし始める。

 

 彼女達はそれを見てもすぐには動かない、その理由は二種類。まだ巨人が敵かどうかわからない、もし敵で無かったならばまだ手を出すわけにはいかない。先に弾を放ってしまえば、戦争の口実を造る事になることを軍艦であった彼女達は知っていた、故に決定的な敵対行動を取るまでは手を出すことは出来なかった。そしてもう一つ、巨人が敵ならば、致命的な隙を狙う必要があった。戦力が未知数である以上は軽んじた行動は慢心でしかない。やるならば少しでも有利になるようにする必要があったのだ。

 

 巨人の手が駆逐艦達に届く。まだ弓は放たれない。

 

 敵駆逐艦と同じように味方駆逐艦も摘み上げられるのかと、思っていた彼女達の前で、巨人は優しくそっと手の平に駆逐艦達を救い上げた。

 

 それを見て艦隊の旗艦を務めていた赤城は、北上、大井、金剛の三人と目くばせをすると彼女のみ武器である弓をそっと下す。他の三人は未だに砲を下ろさず警戒を続ける。

 

「こちらは呉鎮守府所属、航空母艦の赤城です。 そちらの所属と名称、行動目的をお教えいただけますか?」

 

 弓を下ろした赤城が代表して巨人に問いかける、人型をした人口物のような外見から知能のある何かだと判断しての行動だった。そしてそれに応える声が巨人から発声される。

 

『こちらリルル、元メカトピア鉄人兵団所属、行動目的は……友人の捜索』

 

 どこか無機質な声であったが、巨大なその姿からは想像出来ない可愛らしい声に彼女達は驚く。

 

「ではリルルさん、まずは味方の救護に感謝を。 そして質問ですが、その手に捕まえている深海棲艦はどうするつもりでしょうか? 差支えなければこちらに引き渡しを求めたいのですが」

 

『深海棲艦というのはこの魚みたいなモノの事かしら? なら問題ないわ、私達はこれを必要としていないわ」

 

「ありがとうございます。 それともう一つ、こちらにはあなたの所属先の…失礼、元所属先の情報がありません、よろしければ私達の鎮守府までご同行願えないでしょうか?」

 

 巨人の口ぶりはまるで深海棲艦を知らないようであった。その事に彼女達は疑問を抱く、世界の海が深海棲艦に支配されてはや数年、空路海路を共に封鎖される原因になったその存在を知らないものなどほぼ存在しないだろう。だが、ひとまずそれを差し置いて巨人が知性を持った行動を取り、仲間を優しく救い上げた姿を見て、彼女達は巨人は敵ではないと判断した。そこからさらなる情報を手に入れる為に鎮守府への同行を申し出た彼女達だが、流石に初対面の者についてくることはないと思っていた、少しでも会話を長引かせ情報を得る為であった。

 

『…いいわ、ついていくわ』

 

「ではすぐに帰投します。全艦、作戦を一時中止! これより鎮守府に帰投します」

 

 赤城の予想とは裏腹に巨人は素直に同行を認めた。その事実に一瞬だけ赤城の表情が揺らぐが、すぐに冷静さを取り戻し艦隊の指揮に戻る。

 

「申し訳ありませんがリルルさん、その二人と深海棲艦を運搬をお願いしてもよろしいでしょうか?」

 

『構わないわ、ジュドもこれくらい問題無いわ』

 

 また新しい単語が出てくる、ジュドとは何か、おそらくこの巨人の事であろうが、ならばこの声の主は巨人そのものではないということになる。彼女達の疑問は募るばかりであった。

 

 進路を変え、帰還へと動きだす彼女達の速度に合わせるような速度で空を飛び巨人はついていく。そんな中、赤城は帰還を待ち切れずに巨人に問いかける。

 

「なぜ砲を向けられているにも関わらず、救護を優先してくれたのですか?」

 

 普通ならば、砲、銃口、刃、それらの物を向けられたならtばまずは声を出し誤解であるならそれを解こうとするだろう。しかし巨人は自らの身が危険に晒されながらも救護を優先した、それが赤城には理解できなかった。

 

『何故って? だってあなた達はこの子達を守ろうとしていたのでしょ? だったら恐れる必要はないじゃない、あなた達は暖かい心を持っているのだから』

 

 その言葉に赤城は、思い悩む、彼女達は人の形をしている。行動もだいたいは人のそれと変わらない。ただ彼女達はかつては人ではなかった。冷たい鉄の城であった自身に暖かい心などあるのか、赤城には分からなかった。

 

 そこで会話は途切れる。以降は鎮守府に辿り着くまで誰も口を開かなかった。彼女達が水を切り進む音と、波の音、それと巨人につままれたままの深海棲艦の鳴き声だけが、海に消えていった。

 



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