トリガー使いは幻想に生きる (実力派エリート)
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転生

「どこだ?ここは...」

 

目を開けると真っ白い空間が広がっていた。

 

「なんだ?どうしてこんな所に俺は?」

 

「目が覚めたかのう?」

 

「!! 誰だ?お前は?」

 

俺は体を起こして急に現れた爺さんに質問する。

 

「儂か?儂は神じゃよ。」

 

「はあ?」

 

「信じていないようじゃな」

 

いや当然だろ。急に現れた爺さんが神って誰が信じるんだよ。

 

「証拠を見せろ証拠を」

 

「良かろう、見せてやろう。儂が神だという証拠を。」

 

そう爺さんが言うと急に周りが光始め、俺は光に呑み込まれた

 

「ふむふむなるほどお主は東京都のB12地区第3南高校の2年生

身長は173cm体重は59kg誕生日は5月19日なんじゃな。」

 

「!? 何で知ってるんだ!?」

 

「言ったじゃろう儂は神じゃと。神ならばこんなこと簡単に出来るんじゃよ。」

 

「なるほど、あんたが神だというのはよくわかった。じゃあ何故神様が俺の前にいるんだ?」

 

「覚えてないのかのう、自分が死んだということを。」

 

「え、待って俺死んだの!?」

 

「そうじゃよ。通り魔に刺されてな。」

 

「マジで?」

 

い、一旦頭の中を整理しよう。

 

俺は最初同級生の早苗と通学してたはずだ。そしたら前からナイフを持った奴が早苗めがけてつっこんで来たから

庇って刺されたんだ。ってことは...

 

「俺死んだーーーー!!!」

 

おい、マジかよ。確かに俺は刺されたけどそこまで急所じゃなかっただろ。

それでも死んだってことは現代医学はそこまで進歩してなかったのかよ

うわあああマジで死んだせっかく高校ライフを満喫してたのにもう終わりなんだああああ

 

「お、落ち着けそうだお主にいい話をしてやろう。」

 

「 ...ぐすん。一旦なんだよ」

 

「それは転生じゃ。」

 

「え、も、もう一度言ってくれ。」

 

「じゃあもう一度言うぞお主転生をしてみないか?」

 

「な、なんで俺が?」

 

「あの場面で同級生を庇うというお主の勇気に儂は感動したんじゃ。

だからこのまま死なせるにはちと惜しいと思ってな。だから好きな世界に転生させてやる。」

 

「やっほう俺転生出来んのか!?ありがとう爺さん」

 

俺はめっちゃ興奮していた。だって俺の長年の夢である転生が出来んだぞ!!

俺何度そのシチュエーションに憧れたことか。

 

「そ、それで?転生の行き先は?」

 

「それはだな...」

 

「そ、それは?」

 

「東方projectじゃ。」

 

「キターーー!!!」

 

マジかよ、よりによってあの超人気な東方の世界に転生出来んのかよ。

じゃああれじゃん、こう美少女との恋愛だって出来るんだろ。もうこれ俺死んで良かったよ。

 

「じゃ、じゃあさ東方の世界に行くってことは能力も当然あるんだろう?」

 

「もちろん能力は付けてやる。ただ...」

 

「何か問題でもあるのか?」

 

「お主に付ける能力が決められないんじゃ。」

 

「どういうことだ?」

 

「お主も知ってると思うが、東方の世界は幻想郷という場所に成り立っておる。

そして、その世界にお主を送るわけだが、弱い能力を付けて送っても妖怪に喰われるかもしれん。

かといって、強すぎる能力を付けて送ると、幻想郷のパワーバランスが乱れるのじゃ。」

 

「ふむふむ」

 

「だからちょうどいい能力を探しているんじゃが、なかなか見つからなくてのう。

だから困っておるんじゃ。」

 

「じゃあさ、俺に決めさせてくれよ。」

 

「別にいいが、何にするんじゃ?」

 

「それはトリガーを自在に操る程度の能力だ。」

 

「トリガー?なんじゃそれ」

 

「俺の好きな漫画にワールドトリガーっていう漫画があるんだが、その中に登場する武器がトリガーなんだ。

だからそのトリガーを自在に操れるようになりたかったんだ。」

 

「なるほど、トリガーか...」

 

爺さんは少し考えてから

 

「良かろう。お主の能力はトリガーを自在に操る程度の能力じゃ。」

 

「よっしゃあーー!!!」

 

なんということだ。俺の大好きだったワールドトリガーの武器を使えるようになるとは。

 

「じゃあこれから少し注文するけどいい?」

 

「何じゃ?」

 

「まずトリオン能力は原作の二宮さんと同じ程度で、身体能力とかは今と同じ感じで。

そんでサイドエフェクトは相手の感情が色で見える的なやつでお願い。」

 

「それだけでいいのか?」

 

「ああそれだけで十分だ」

 

「わかった。ならばそこで立っててくれ転生を開始する。」

 

俺が言われた通りに立ってると足下が光始めた。

 

「じゃあな爺さんあっちでもうまくやっていくよ」

 

「うむ、達者でな。」

 

こうして俺は東方の世界に転生することになった。




彼が住んでいる世界では、早苗さんがいない東方が存在しています。
なので私たちが住んでいる世界とは若干違いますね。


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ルーミアと友達になれるか?

「ここが幻想郷か...すげぇな。」

 

俺は、幻想郷の雄大な自然に驚いていた。

 

「外の世界でも相当田舎に行かなきゃこんな大自然にはお目にかかれないぞ。」

 

とりあえず幻想郷の自然を堪能したところで、俺はこれからのことを考えることにした。

 

「さあてこっからどうすっかなあ...」

 

幻想入りした者が最初に行く所はほとんどが博麗神社だろう。

博麗神社には、幻想郷でも屈指の力を持っている博麗霊夢がいるのだ。だから、妖怪に襲われるのを防ぐためにも行って損は無いだろう。

 

「それに、今のうちから幻想郷の有力者と仲良くなれたらいざという時になんとかしてくれるかもしれないしな。よし、博麗神社に行こう。」

 

俺は博麗神社を目指して歩き始めた。

 

 

一時間後...

 

「ぜ、全然見つかんねー...まじどこにあるんだ?博麗神社。」

 

あれから一時間、歩き回ったが全然見つからなかった。

 

「もうこれ人里にいった方がいいんじゃないかな。」

 

俺が探すのを諦めかけていた時、草むらから何か飛び出してきた。人間のようだ。

 

「ようやく人に会えた~。これで博麗神社の場所が聞けるぞ!ちょいとそこのお方... なんてこったい」

 

俺が話しかけたのは、妖怪であるルーミアだった。

 

「っ!!まずいトリガーオン!!!」

 

ルーミアは、見た目こそ可愛らしいが本当は人喰い妖怪だ。能力も闇を操る程度の能力と強力なものを持っている。

だから、危険度はMAXだ。一応トリオン体に換装したから即死はしないだろうが、正直今の俺じゃ歯が立たない可能性がある。

だからさっさと逃げようと後退しはじめた時、声をかけられた。

 

 

 

 

「ねえ?あなたは食べれる人類?」

 

 

まじか...

 

「あ、えーとそのだな、お、俺はあまりおいしくないから喰わないほうがいいぞ。」

 

「なんちゃって冗談だよ~。だってあなた不味そうだもん。」

 

「お、おうそうか。」

 

何でだろうどこかでめっちゃ落ち込んでる自分がいる気がする。

 

「ところで、君は博麗神社がどこにあるか知ってるかい?」

 

「ん~?何で博麗神社に行くのか~?」

 

「俺、博麗神社に用があってさ(嘘)だから博麗神社に行きたいんだ。」

 

「そういうことなら、案内してあげるよ~。」

 

「ありがとう。優しいなルーミアは。」(なでなで)

 

は!ついついやってしまったヤバい怒られるかも...

 

「す、すまんルーミアついやっちまった」

 

「え~やめなくてよかったのに~」

 

何ィ!今ルーミアは何て言った?

 

「も、もっと撫でてもいいのか?」

 

「うん、いいよ~」

 

やったぜ!こんな美少女の髪を撫でることができるだなんて。こりゃ一生分撫でとかないとな。

 

こうして俺達は博麗神社に向かうのだった。

 

 

「そういえばさ、あなたの名前はなんて言うの?」

 

「そういえば自己紹介がまだだったな。俺の名前は神田蒼也(かんだそうや)だよろしく。」

 

「ふ~ん蒼也って言うんだ。あなたも知っていると思うけど私はルーミア人喰い妖怪だよ。」

 

「じゃあさ、ルーミアこれから俺と友達になろうぜ。」

 

「別にいいけど、一つ聞いていい?」

 

「ん?なんだ?」

 

「あなたは、何で私を怖がらないの?私は人間を喰うんだよ。」

 

「でも、俺のこと喰わなかったじゃん。」

 

「でも、もしかしたら今喰わないだけで後から喰うかもよ?」

 

「たとえ、そうだとしても俺はお前と友達になるな。」

 

「何で、そこまでして友達になりたいの?」

 

「何でって、そりゃお前が優しいからに決まってんだろ。」

 

「たとえ、後から俺を喰ったとしてもあの時俺を食べなかったのは事実だし、現に今こうやって案内してくれてるだろ?

それだけでも、俺は十分優しいと思うんだ。だから、優しい人とは友達になりたい。そんなんじゃだめか?」

 

「わ、わかったわよ。そこまで言うんだったら友達になってあげるわよ。」

 

「おっ、ありがとな。やっぱりルーミアは優しいよ。」

 

「も、もう蒼也のばかぁ」

 

「あらら、怒られちゃったな。」

 

そうして、見事友達となった俺とルーミアは博麗神社にたどり着いた。

 

 




ワールドトリガー語録解説

トリガー:ネイバー文明の根幹を支えるテクノロジー
    トリガーホルダーに入れるチップ状の物がトリガー
    
トリオン体:トリガーを起動している間使用者の肉体は
     トリオンで作られた戦闘用のボディと入れ替えられる。
     このボディは生身の攻撃はほとんど通らず
     また、運動能力も生身の体より大幅に強化される。
     このボディのことをトリオン体と言う。

トリオン:トリオンとは、トリガーの動力源である生体エネルギーのこと。
    トリオンはトリオン器官と呼ばれる見えない内臓で生み出されている。
    


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蒼也博麗神社に行く

「じゃあ私は戻るね。」

 

「ああ、ありがとなルーミア。」

 

「それと、私は人里の寺子屋に通っているから遊びに来てね。」

 

「りょーかい」

 

博麗神社の階段の前で俺達は別れる事にした。ほんとは、境内まで着いてきてほしかったけど

博麗の巫女にお賽銭をせがまれるという理由で却下された。どんだけ貧乏なんだよ。

 

「さて、とりあえず登りますか。」

 

俺は結構長い階段を登り始めた。

 

 

 

「おー結構綺麗な神社だな。」

 

階段を登り切ると、意外にも綺麗に整備されている博麗神社があった。

 

「ま、普通に参拝しますか。」

 

俺は二礼二拍手一礼をして賽銭箱に体を向ける。

 

「さて、賽銭をする前に...」

 

「あのーこっちをジロジロ見ないでくれるか?」

 

襖の隙間から、少しだけ顔を覗かせている霊夢に話しかける。

 

「あんたがちゃんと賽銭するか見張ってんのよ。」

 

「酷いなあ。参拝しに来てお賽銭を入れないような人に見えるか?」

 

「見ようと思えば見れるわね。」

 

おい、今のはさすがにカチンときたぜ。

 

「あ~あせっかく一万円を賽銭しようとしてたのにな~。」

 

俺は一万円の紙幣をみせびらかす。

 

「一万円!?ほんとに!?」

 

「だけど、もう入れる気が失せちゃった。じゃ帰るね~」

 

「ま、待って! そのお金入れてくれない?」

 

「え~でも俺のこと馬鹿にしたよね。だから入れない。」

 

「そ、そんな」

 

霊夢を見てみると、凄く落ち込んでいた。ちょっといじめすぎたか。

 

「なんちゃって。」

 

俺は賽銭箱に一万円札を入れた。

 

「あ、ありがとう!!恩に着るわ。」

 

見ると、霊夢はめっちゃ喜んでた。ずっとその笑顔を見てても良かったけど、すぐにここに来た目的を思い出し、

改めて霊夢の方に体を向けた。

 

「おい、話があるんだが...」

 

「話なら中でしましょ。さあ入った入った。」

 

ああ、これ完全に浮かれちゃってるな。落ち着くまで待つか。

 

 

十分後...

 

「あれから十分もはしゃぎ回るとかお前普段の生活どうなってんの!?」

 

「だって久しぶりの賽銭なんだもの。しょうがないじゃない。」

 

「まったく。そもそもお前はなあ...」

 

「わかった、わかったから。そこまでにしといて。あんたも、話があるんでしょう?」

 

「そうだったな。じゃあまずお前に聞くぞ。今の俺の格好を見て思ったことは?」

 

「見慣れない服装してるから外来人ってとこかしら。」

 

「そう、その通り。でもその外来人は、ある事情で外の世界には戻れない。

しかも家もないから、ここに泊まりたいと言っている。さあ、いくらで泊まらせる?」

 

「三万円ってとこね。」

 

「OKわかった。」

 

俺は財布から三万円を取り出した。これで所持金は0だ

 

「頼む。俺をここに泊めてくれ。」

 

「まったく、四万円も出してくれた相手を泊まらせないわけないじゃない。」

 

「ってことは...」

 

「今日は豪勢に作るわよ。手伝いなさい。」

 

「ありがとう!!」

 

「そういえば、自己紹介がまだだったわね。私は博麗霊夢よ。」

 

「俺は神田蒼也だ。よろしく。」

 

こうして、俺は博麗神社に泊まることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「フフ、明日が満月ね。明日の夜に幻想郷中が恐怖に包まれると思うとワクワクしない?」

 

???「ええ、そうですねお嬢様。」

 

 




次回をお楽しみに。


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射命丸の取材 そして魔理沙との勝負へ

「ふあ~あ。よく寝た~。」

 

俺は、暖かい布団から出て近くの川に顔を洗いに行く。昨日は、霊夢がお酒を飲み過ぎてで大変なことになったからな。

そもそも何で未成年がお酒飲んでんのかって話だが、幻想郷では外の世界の法律は適用されないから良いらしい。

でも、酔いつぶれるまで飲んじゃいかんと思うんだが。後片付けする身にもなってほしい。

 

そんなことを考えながら顔を洗っていると、ものすごいスピードでこっちにくるなにかを見つけた。おそらく、あの速さは天狗だな。

しかも、わざわざこんなところまで来るという天狗っていったら...

 

「射命丸文到着~。さあさあ、あなたと霊夢さんとの関係を教えてもらいますよ!」

 

厄介なのが来てしまった。

 

 

 

 

「あのな~射命丸、何度も言ってるが俺と霊夢はお前がネタにするような関係じゃないんだよ。」

 

「でも、博麗神社に泊まったり、霊夢さんと一緒にご飯食べたりするなんて完璧に恋人同士ですよね。」

 

「何故、それを知っている?」

 

「わたくし、射命丸文はネタのためならどこまでも行くのですよ。」

 

「その熱意を、真面目な記事の方向に向けてほしいんだがなぁ。」

 

「なに言ってるんですか、私はいつも真面目ですよ。ささ、とっとと喋っちゃってください。」

 

「あのだな、言っとくが俺は外の世界から来たんだぞ。だから、一人で生活出来るようになるまでここに居候させてもらってるだけだ。わかったか?」

 

「またまた~そんなこと言って実は恋人同士だったりするんじゃないですか~?」

 

「しつこい!!」

 

「あんた達なに朝っぱらから騒いでんのよ。」

 

「あ、霊夢助けて。めっちゃしつこい天狗に絡まれてんの。」

 

「何で絡まれてんのよ。」

 

その後、射命丸が霊夢に俺と同じ質問したらめっちゃ顔を赤くして怒ってた。そりゃそんなこと聞いたら誰だって怒るよなぁ。

 

 

 

「せ、せめて蒼也さんのことくらい質問させて下さい」 

 

「そんくらいなら良いけど嘘は記事にしないように。もし変なこと書いたら、霊夢がどうなるかわからないから。」

 

「わ、わかりました。それじゃあいくつか質問しますね。」

 

それから、一時間ほど質問が続いた。

 

 

 

「それじゃ、今日質問したこと記事にしますから楽しみにしていてくださいね~。」

 

「わかった。楽しみにしておくよ。またな。」

 

そう言って、俺と射命丸は別れた。

 

 

 

「ふう。なかなかいろんなことを聞いてきたな。楽しかった。」

 

「あんたも変わってるわね。」

 

「ん?何でだ?」

 

「一時間も質問攻めを受けて楽しかったって言う人はそうそういないわよ。」

 

「まあ、でも普段から質問攻めなんてされなかったからな。貴重な体験だと思えば楽しくなってくるよ。」

 

「そういうものかしら。」

 

「そういうものさ。」

 

こんなふうに、雑談しながら午前中を過ごしていった。

 

 

 

 

「お~ありゃ魔理沙だな。」

 

俺が外を適当に掃除してると、こっちにやってくる人がいた。射命丸とは、さっき別れたから十中八九魔理沙だろう。

 

「おっ、お前見かけない顔してるな。誰だ?」

 

「俺は、神田蒼也。よろしく。」

 

「私は、霧雨魔理沙だぜ。よろしくな。」

 

「あら、魔理沙じゃない。来てたの?」

 

俺と魔理沙が話ていると、霊夢が出てきた。

 

「よう、霊夢お邪魔するぜ。」

 

「どうぞ。入っていいわよ。」

 

俺達は、博麗神社の中に入っていった。

 

「なるほど、つまり蒼也は外来人で一人で生活出来るようになるまで博麗神社にいるってことだな。」

 

「そういうこと。」

 

「ねえ、蒼也その小さい箱みたいなものなに?」

 

霊夢が俺のポケットからはみ出ていたホルダーを指差す。

 

「ああこれね。これはトリガー。武器さ。」

 

「武器って刀とか槍とかそういうの?」

 

「そうだ。あとトリオン弾も撃てるぞ。」

 

「なんだ?そのトリオン弾って。」

 

「まあ、弾幕と思ってもらえればいい。」

 

「おお、蒼也弾幕撃てるのか!じゃあ弾幕ごっこやろうぜ。」

 

「別に良いよ。」

 

「ちょっと蒼也なに勝手にやろうとしてるわけ?魔理沙はとても強いのよ。勝てるわけないじゃない。」

 

確かに相手は弾幕ごっこのプロだから、今の俺が戦えるような相手じゃない...けど、弾幕ごっこは幻想郷のルールだ。

なら、今のうちに少しでも経験を積んでおいたほうがいい。

 

「悪いな霊夢。俺の意志は固いんだ。」

 

「まったく、やるのならやっても良いけど無理はしないように。」

 

「ああ。わかってる。」

 

「久しぶりに弾幕ごっこ出来るな。蒼也、悪いが容赦はしないんだぜ。」

 

「容赦なんかしなくていいさ。さあ来い!」

 

こうして、俺と魔理沙の弾幕ごっこが始まった。




次回をお楽しみに。


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魔理沙との弾幕ごっこ

「ルールを説明するわ。弾幕を三回被弾させる。もしくは、相手を気絶させたら勝利よ。スペカの枚数は一枚だけ。それでいい?」

 

「わかった。」

 

「それじゃあ始め。」

 

始まった瞬間、俺は魔理沙と距離を取った。魔理沙の弾幕は威力重視。だから、食らえばかなりダメージが入るだろう。

 

「この場合は相手の射程外から射撃だな。」

 

俺は射程重視にカスタマイズしたアステロイドを構える。

 

「一応レイガストも出しておくか。」

 

これなら、魔理沙の弾幕も少しは防げるだろう。

 

「よし、それじゃあ行くか。」

 

俺はアステロイドを魔理沙めがけて放つ。

 

「こんなんじゃ当たらないぜ。」

 

「む、立ち回りが速いな。」

 

俺の弾幕をスイスイと避けながら、射程内に入ってきた。

俺は牽制としてアステロイドを一発放つが大量の弾幕で相殺してきた。

 

「げ、まずいシールド。」

 

大量の弾幕がシールドに当たる。しかし、徐々にひびが入り割れてしまった。

 

「俺のトリオン量でも防ぎ切れないか。こりゃ余計被弾できないな。」

 

シールドはトリオン量が多いほど、強度も増す。しかし、かなり多いトリオン量を持つ俺でさえ魔理沙の弾幕を防ぐことができなかった。

つまり、威力がとても強いということだ。

 

「さあ、次はこっちの番だぜ。」

 

魔理沙がすごい量の弾幕を放ってくる。さっきの攻防でシールドで防げないのは分かった。ならば...

 

「相殺させればいいんだな。低速散弾。」

 

俺の周りをアステロイドが覆う。大量の弾幕は、アステロイドに当たって相殺された。

 

「よし、上手くいってくれたな。さあて次だ!ハウンド。」

 

魔理沙は、さっきと同じように避けようとするが、追尾してくることが分からず被弾してしまった。

 

「まずは、一回だな。」

 

「なかなかやるじゃないか、蒼也。でも次は食らわないんだぜ。」

 

「そうかい。じゃあ次も食らわせてやるよ。バイパー。」

 

「うお、この弾は曲がるんだな。」

 

魔理沙は、俺のバイパーをなんとか避ける。初見でバイパーを避けるとは、凄いな。

う~ん困ったな。これで、相手に見せていないトリオン弾はメテオラだけだが、メテオラは弾速が遅い。

だから、相手に当てるのは結構難しい。

 

「どうしようかな~。」

 

「なにぶつぶつ言ってるんだぜ?」

 

「あ。」

 

気がつけば後ろに魔理沙がいた。そして、案の定被弾してしまった。

 

「戦いの最中にボーッとしてちゃダメだぜ。」

 

「す、すまんな。考え事をしてたらついボーッとしてしまった。」

 

でも、いい作戦を思いついた。この作戦が成功しやすいのは...あそこの林の中だな。

 

「とりあえず、林の中に逃げる!」

 

「あ、ちょ、おい待て蒼也!」

 

よし追ってきたな。これで、作戦成功だ。

 

「あれ~どこいったんだ?蒼也の奴。」

 

ここで、石ころを投げて音を出す。

 

「お、あそこに居るんだな。」

 

よし!かかった!

 

この時、魔理沙は気がついていなかった。自分の服に銅線のような物が引っ掛かっていたことを。

 

ドドドドドドオン

 

一斉にメテオラが爆発した。

 

「うお!なんだ!?」

 

魔理沙が慌ている隙にアステロイドを大量に放つ。

土煙で周りが見えなくなっていた魔理沙は、アステロイドに気づかす被弾してしまう。

 

「これで、二回目だ。」

 

「くっそ~。罠が仕掛けてあるとは思わなかったんだぜ。」

 

「さあ、次で終わらせてやる。」

 

「そう、簡単に負けはしないんだぜ。」

 

俺達が、弾幕ごっこを再開しようとした時、

 

「オイコラ蒼也こっち来い。」

 

「え...」

 

鬼の形相をした霊夢がいた。

 

 

 

 

 

 

 

「なに、あんたは林を平らな土地にしとんのじゃあ!」

 

「わ、悪かった霊夢。俺だってあそこまでの威力があるとは思わなかったんだよ。」

 

「そんなもんは言い訳でしかない!」

 

「ちょ、だからごめんって言ってるでsy痛だだだだだだだ間接技決めないでえぇ!」

 

「お、おい霊夢もう許してやりなよ。蒼也だって謝ってるんだからさ。」

 

「まったく、しょうがないわね今回だけよ。」

 

「た、助かった...」

 

 

 

こうして、俺と魔理沙との弾幕ごっこは勝敗がつかずに終わった。




ワールドトリガー語録解説

アステロイド:特別な効果はないが、その分威力が高い通常弾。

メテオラ:爆発して、広い範囲を攻撃できる炸裂弾。

バイパー:弾道を設定して、好きなコースを飛ばせる変化弾。

ハウンド:目標を追尾する誘導弾。視線誘導と探知誘導がある。

シールド:薄い板のような物。弾を防ぐことができる。一点に集めることで、強度を上げることができる。

レイガスト:ブレード部分を自由に変形でき、攻撃力を捨てて耐久力を上げる
「盾モード」を使用できる。また、トリオンを噴出してブレードの動きを加速する
専用オプション「スラスター」がある。

スパイダー:トリオンで作られたワイヤー。メテオラとあわせて罠のような物もできる。


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紅霧異変その1

「あ~極楽極楽。」

 

なぜ、俺がこんなじじくさい声をあげてるかって?それはだな...

 

「俺がめっちゃ気持ちいいお湯に浸かっているからさ!」

 

霊夢のお説教をこってり受けた俺は精神的な疲れもあって、さっさと風呂に入る事にした。

そしたら、このお湯がめっちゃ疲れに効くわけよ。さすが入浴剤パワーといったところだな。

ん?何で入浴剤があるのかって?どうやら紫さんって人にもらってるんだとさ。

 

「しかし、幻想郷に給湯器があるなんてびっくりしたな。」

 

この給湯器、河童が自作したんだってさ。幻想郷の河童は発明家のようだ。

 

「よし、そろそろ上がるか。」

 

俺は、この温かい風呂から上がり脱衣場に向かった。

 

「霊夢~風呂から上がったぞ~。お前も入れよ。 」

 

俺は、風呂を霊夢に勧める。しかし霊夢の返事がない。

 

「あっれ~どこに居るのかな?霊夢は。」

 

居間や、キッチンなんかを探して回ったがいない。

 

「もしかしてここか~?」

 

俺は、縁側に通じる障子を開けた。するとそこには、真っ赤な霧に染まった夜空と、その夜空を見ている霊夢の姿があった。

 

「幻覚が見えるなんて、初めてだぞ。しかし、初幻覚がこんな幻想的な幻覚だなんて運がいいな。」

 

「なに言ってんの。これは、現実よ。」

 

「いやいや、なにいってんのさ。真っ赤な夜空だなんてあり得ないじゃないか。だから幻覚なんだよ。これは」

 

そう、自分に言い聞かせる。

 

「じゃあ、何で私にも同じ光景が見えるのよ。」

 

え、霊夢も見えてるってことは本当に真っ赤になってんの?

 

「だから、さっきも言ったじゃない。これは現実。異変ってことよ。」

 

「じゃあ、異変解決には霊夢が行くのか。頑張ってこいよ。」

 

「なに、寝ぼけたこと言ってんの。あんたも、一緒に行くのよ。」

 

「え、何で?」

 

「少しでも味方が居れば、私が楽になるじゃない。」

 

「俺を殺す気か!?」

 

「あんたの体はトリオン体だから死なないって言ってたじゃない。」

 

「ちなみに、拒否権は?」

 

「無し!」

 

「デスヨネー。」

 

仕方ない。ベイルアウト先を博麗神社に設定したら行くか。

俺は、小さなトリオンキューブのような物を布団の上に置く。これで、ベイルアウトしたら博麗神社に戻って戻って来られるようになった。

 

「よし蒼也、霧の発生源まで行くわよ。」

 

「はいはい。」

 

こうして、俺達は異変解決に向かうのだった。

 

 

 

 

 

「おっ、開けた場所に出たな。」

 

「ここは、湖みたいね。」

 

「へぇ、結構広いんだな。」

歩くと、一時間くらいかかりそうだ。

 

「よう、霊夢。」

 

「魔理沙も異変解決にきたの?」

 

「そうなんだぜ。今回は蒼也も参加するのか?」

 

「ほとんど強制的なんだけどね。」

 

「そうか。蒼也が居れば、百人力だな。さ、行こうぜ。」

 

「待ちなさい!」

 

俺達が再び歩き始めようとした時、突然俺達を呼び止める声がした。

 

「この、さいきょーのあたいが居る限り先には行かせないわ。」

 

おお、青色の服を着た妖精みたいなのが現れたぞ。

 

「あの~そこの君、道を通らせてもらえないかな?」

 

「さいきょーのあたいに勝てたら通してあげてもいいわよ。」

 

「それは、弾幕ごっこでってこと?」

 

「当然!」

 

「んじゃ遠慮なくやらせてもらうよ。先手必勝!アステロイド!」

 

大量のトリオン弾が、一斉にチルノに襲いかかる。

 

「え、こんなの聞いてないってキャアアアア」

 

チルノはアステロイドをモロに食らい撃沈した。

 

「悪いなチルノ。俺達は先を急いでるんだ。」

 

「容赦ないわね。蒼也。」

 

「容赦なんかしないさ。さ、行くぞ。」

 

改めて、俺達は霧の発生源に向かうことにした。

 




ワールドトリガー語録解説

ベイルアウト:トリオン体が破壊されると強制的に基地に送還される仕組み。
      (本作品では、送還先を設定出来るようになっている。)


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紅霧異変その2

「ここが、霧の発生源ね。」

 

「おお、随分と立派な建物だな。」

 

俺達が、霧の発生源に向かうとそこには赤い館が建っていた。

 

「とりあえず、中に入ってみようぜ。」

 

「だな。じゃあ入口を探して...」

 

「そんなことしなくても塀を越せば良いじゃない。」

 

見ると、霊夢は空を飛んで塀を越えていた。

 

「まあ、入口には誰か居るかもしれないしそのほうが良いな。」

 

俺はグラスホッパーを踏んで塀を越えた。

 

魔理沙も飛んでついてきた。

 

「さて、じゃあ早速中に入るか。」

 

俺は大きな扉を開けて中に入った。

 

「うおお、広いな。」

 

扉を開けると、広いエントランスが出迎えてくれた。

 

「さて、上のルートと下のルートどっちに行く? 」

 

「じゃあ、私は上に行くから、魔理沙と蒼也は下に行って。」

 

「了解だ。しかし、下のルートは左右に別れているんだよなぁ。」

 

「じゃあ、私が左に行くから、蒼也は右に行って欲しいんだぜ。」

 

「わかったけど、何で左を選んだんだ?」

 

「左からは魔導書の匂いがするからなんだぜ!」

 

「犬かよお前は。」

 

「でも、決まったからいいでしょ。それじゃ、行くわよ。」

 

「了解!」

 

「了解なんだぜ。」

 

こうして、俺達は異変の元凶を探すことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しっかし広いなこの館。」

 

かれこれ10分くらい歩き続けている。が、何の進展もなく廊下と小部屋しか目に入ってこない。ひどく殺風景だ。

 

「一回霊夢の所に行こうかな。」

 

俺がそう言ったその時...

 

「うおっと。」

 

俺は、飛んで来た何かをかわした。見ると、さっきまで居た所に大量のナイフが刺さっていた。

 

「なんて物騒な物投げてんだよ。居るんなら出てこい!」

 

そう俺が言うと、俺の前にメイド服を着た女が現れた。

 

「侵入者なら容赦はしないわよ。」

 

そう女が言うと、手に大量のナイフを持ち一斉にこっちに放って来た。

 

「『エスクード』!!」

 

俺はエスクードを出し、飛んで来たナイフから身を守る。

 

「これを防ぐなんて、やるじゃない。なら、次は防げるかしら?」

 

そう言うと、彼女が何もしてないにも関わらず、ナイフが目の前に現れた。

 

「はあ!?一体どうなってんだよこれ。」

 

俺はとっさにジャンプしてかわすが、目の前にアイツが現れ殴り飛ばされた。

 

「ぐはっ!!」

 

戦闘体に換装してあるので、生身の攻撃は通らないが壁に打ち付けられ、怯んでしまった。そこに、大量のナイフが投げられる。

 

「くっそ!『シールド』」

 

シールドでナイフを防ぎながら俺はこいつの能力について考える。

 

アイツは急に現れたり、別の場所に移動したりする。これだけで考えると、瞬間移動的な能力だと思う。けれど、アイツは何もない所からナイフを出したりもできる。

それを考えると、瞬間移動っていうのはちょっとおかしい。だから、瞬間移動と何もない所から物を出現させれることができる能力は...

 

「時を操る能力か?」

 

「!!」

 

アイツは何も答えないが、サイドエフェクトでアイツの心を視ると動揺の色が見えたから、おそらく当たりなのだろう。

 

「なるほど時を操る能力か。これは、かなり厄介そうだ。」

 

「ま、だからどうってこと無いけどな。」

 

「『テレポート』」

 

俺は、アイツの後ろに瞬間移動し、手刀を降り下ろす。

アイツはかろうじて避けるが、避けた先には、前に魔理沙との戦いに使ったトラップがあった。

 

ズズン

 

爆発がおきて視界が悪くなった瞬間に、俺はカメレオンを起動して

アイツの首筋に手刀を叩きつけた。

 

「よし、これで終わったな。」

 

アイツが気絶したのを確認した後、俺は霊夢の所に向かった。




ワールドトリガー語録解説

テレポート:視線の数十メートル先に一瞬で移動せできる。長い距離を移動した際にはインターバルが発生する。

サイドエフェクト:優秀なトリオン能力を持った人間に稀に発現する超感覚。
        あくまで、人間の能力の延長線上のものなので炎を出したり空を飛んだりはできない。

カメレオン:隠密トリガー。使用している間は他のトリガーが使えない代わりに姿を消すことができる。

エスクード:任意の地面からバリケードを発生させ、身を守るトリガー。
     単純に盾として使うことも、相手の斜線を遮る簡易的な隠れ場所として
     使うこともできる。


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紅霧異変その3

「おっ、霊夢頑張ってるな。」

 

霊夢は、レミリアと戦っていた

 

「蒼也も、さっさと手伝いなさいよ。」

 

「わかったけど、魔理沙はもうこっちに来たか?」

 

「まだよ。」

 

「そうか、魔理沙の奴大丈夫かな?」

 

「いいからさっさと手伝いなさいってば。」

 

「はいはい。」

 

「なんだ?二対一か?」

 

「悪いね。アンタは、二人がかりで確実に倒すよ。」

 

「ふん、良いだろう。人間どもが一人増えただけで吸血鬼に勝てるわけが無いからな。」

 

おっ、なかなか言うねぇ。なら、その余裕を無くしてやろう。

俺は、右手に槍弧月を構える。

 

「行くぞ!『幻踊弧月』」

 

俺は、レミリアの首筋に向けて槍弧月を突き出す。それをレミリアはうまくかわす。

 

「不意討ちがバレバレよ。」

 

 

 

 

 

「と、思うじゃん?」

 

 

「!?」

 

レミリアの首に傷が出来る。しかし、傷は浅かった。

 

「やっぱいきなり首は無理か~。」

 

「貴様、何をした。」

 

「そう簡単に教えるかよ。次行くぞ!」

 

俺は、レミリアの足元に槍弧月を一突きする。レミリアはかわすが、変則的に伸びる刃がレミリアの足に傷を付けた。

 

「なかなかやるわね。でも無駄よ。」

 

レミリアが、俺から距離を取ると、傷がみるみる内に戻っていった。

 

「外傷を付けても意味は無さそうだな。霊夢、一旦バトンタッチ。」

 

「行けそうだったのに、何で代わるの?」

 

「近接武器が封じられた今、俺に出来る攻撃は弾幕しかない。手数が少ない状態で敵の近くで戦ったら負けるかもしれないからな。だから、弾幕のプロである霊夢に代わってもらったほうが、勝率が高くなる。ということだ。」

 

「なるほどね。わかったわ。けど、援護もちゃんとしなさいよ。」

 

「了解だ。」

 

「なら、早速行くわよ。『妖怪バスター』」

 

「ぐっ!」

 

「よしよし足が止まったな。一気に削り倒してやる!『アステロイド』!」

 

「吸血鬼をなめるなよ。『天罰スターオブダビデ』」

 

「おいおい、防いじまうのかよ。厳しいな。」

 

俺の放ったアステロイドは弾幕で掻き消され、レーザーで攻撃してきた。

 

「何だ?その程度か?期待外れだな。所詮は人間といったところか。」

 

「あ~もうムカつく!」

 

「落ち着いて蒼也。ここで、感情に任せて行動すると相手の思うつぼよ。」

 

「わかったよ。でも、必ずアイツに一発いれてやる。」

 

「じゃあ、作戦があるわ。耳を貸して。」

 

 

 

「なるほどな。確かにそれが良さそうだ。」

 

「じゃあ、それで良い?」

 

「わかった。」

 

 

 

「話は終わったか?」

 

「ああ、必ずお前を倒すからな。」

 

「面白い。なら、この攻撃を耐えてみろ!『獄符千本の針の山』」

 

「うおっ尋常じゃない量の弾幕だな。」

 

霊夢は、うまく避けたり相殺したりしている。さすが弾幕のプロだ。

 

「ま、どうってこと無いけどね。『エスクード』」

 

堅牢な盾が、迫り来る弾幕を防いでくれた。

 

「どうした?こんなものか?」

 

「ふん、そんなこと言っていられるのも今のうちだぞ。『紅符スカーレットマイスタ』」

 

「なるほど、大玉と小玉が混ざりあった弾幕か。確かに動きは複雑だけど...」

 

俺は槍弧月をスコーピオンに持ち替える。

 

「落とせねー速さじゃねーな!」

 

俺は弾幕をスコーピオンで叩き切った。しかし...

 

パキンッ

 

「うおっ、もうスコーピオンが折れちまったか。」

 

スコーピオンの刃が、すぐに折れてしまった。

 

「とりあえずシールド!!」

 

俺は、シールドを固定モードで展開する。これで、いくらかは弾幕を防げると思っていたが...

 

バチチチチッ  パリン

 

「!?」

 

あっという間に割れてしまった。

 

「マジかよ。トリオンが少ない木虎でさえイルガーの爆破を防いだってのに」

 

基本的にトリオンが少ないほど、シールドは脆くなる。しかし、固定モードを使えば大幅に強度が上がるのだ。

当然、トリオン能力が多い使用者が使うと強度は、尋常じゃないものになる。

だが、レミリアの弾幕は、固定モードのシールドにたった数発当てただけで割ってしまった。

 

「こりゃ、かなりまずいな。」

 

「人間共め、これで終わりだ!『紅色の幻想郷』」

 

「うわっ、えげつない弾幕の量だな。」

 

もはや、この弾幕に隙間はなかった。

 

「まずいわね蒼也。作戦は中止。一旦下がるわよ。」

 

「大丈夫だ。そのまま作戦を続ける!」

 

「え、でもこのままじゃ...

 

「じゃあ、俺の後ろに隠れとけ!」

 

「わ、わかったわ。」

 

霊夢が俺の後ろに隠れたのを確認すると、俺は両手にハウンドを出した。

 

「『追尾弾嵐(ハウンドストーム)』!!」

 

両手から放ったハウンドが、レミリアの弾幕相殺していく。チャンスは一瞬だけ。俺は、とてつもない集中力を使って前方の弾幕を凝視した。

その時、弾幕を放っているレミリアに僅かな隙が生まれた。その瞬間俺は能力を使い、あるトリガーをセットした。

 

「『スイッチボックス』オン!!」

 

俺の後ろにいた霊夢が、一瞬でレミリアの後ろに移動した。

 

「これで終わりよ。『神霊夢想封印』」

 

霊夢が放った七色の弾幕が、レミリアに直撃した。

 

「よし、終わったな。」

 

こうして、見事レミリアを倒すことが出来た。




ワールドトリガー語録解説

槍弧月:弧月を槍型に改造した物。柄の部分が伸縮する。

幻踊:槍弧月の穂先の形を自由に変形させることができるオプショントリガー。

スイッチボックス:「トラップトリガー」と呼ばれる、特殊工作兵専用のトリガー。
         様々な効果のトラップを設置でき、特殊工作兵が任意のタイミングで起動する。攻撃用、移動用など発動効果は様々。


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紅霧異変その4

更新遅くなって申し訳ありません。


「この私が、人間に負けるとは・・・」

 

「まだ意識があんのかよ。すげえな。」

 

夢想封印を直にくらっても立っていられるとは。さすが、吸血鬼といったところか。

 

[で、どうすんの?こいつ。そのまま放っておくわけ?」

 

「いや、俺の罠トリガーで捕縛する。いろいろ聞きたいこともあるしな。」

 

俺は、捕縛用の罠トリガーを起動させ、レミリアを拘束した。

 

「さて、まずお前に聞きたいことがある。なぜ、この異変をおこした?」

 

「なぜって、ただの暇つぶしよ。ここの所退屈だったから。」

 

レミリアは、涼しい顔で答えた。しかし、心の色が見える俺にとっては、そんな誤魔化しは通用しない。俺は、縛ってある鎖の締め付けを強くした。レミリアの表情が、苦痛に歪む。

 

「嘘をつくのは良くないな。もう一度言うぞ。なぜ、この異変を起こした?」

 

「どうして私が嘘をついてるってわかるのよ!」

 

「それは、俺がお前の心の色を読めるからだ。」

 

「心の色を読める?」

 

「そうだ。このサイドエフェクトを俺は、感情色彩識別と呼んでいる。」

 

「どういうこと?」

 

「例えば、怒りの感情は赤。喜びの感情は黄色。そして、今お前が感じてる焦りの色は黄緑色だな。」

 

「!!!」

 

「分ったか?つまり、いくら巧妙な嘘をついたって独特の色が視えてる時点でお見通しだってこと。」

 

「・・・」

 

「さあ、最後にもう一度聞くぞ。なぜ、この異変を起こした?」

 

「ハッタリ、ということでもなさそうね。いいわ。教えてあげる。異変を起こした理由について。」

 

ーー少女説明中ーー

 

「なるほど。つまり、狂気に取り憑かれたフランって奴の心を救うために異変を起こしたのか。霧を出したのは、日光に弱いという吸血鬼の弱点をなくして外に出て来てほしいからだったんだな。」

 

「そうよ。でも、外に出られるってことを伝えても全然返事が返ってこないし、今こうしている間にも地下牢で苦しい思いをしているの。」

 

「だから、お願い!フランを助けて!」

 

「なんで俺に?」

 

「私の話は全然聞いてくれないし、食事を運ぶ従者の咲夜も扉の前に置くだけで精一杯だって言ってるの。だけど、あなたの能力なら暗い闇に包まれたフランの心を救えるのよ!」

 

「あのな、レミリア。俺のサイドエフェクトはそんな都合のいい能力でもないし、フランの心を救えるような力だってないんだぞ。」

 

「でも、頼れる人があなたしかいないのよ!」

 

「!!]

 

「やっぱり・・・ダメかしら・・・」

 

「分かったよ。」

 

「え!?」

 

「お前の今の状況は溺れるものは藁をもつかむようなもんだろ。だったら、藁は藁なりにお前を陸地に連れてってやらないとな。行くぞ!霊夢。」

 

「面倒臭いけどしょうがないわね。行くわよ蒼也。」

 

「感謝するわ。二人とも・・・」

 

こうして、俺たちはフランのいる地下牢へとむかった。

 

 

 

「そう言えばさ。魔理沙と全然会えてないけど大丈夫かな?」

 

「魔理沙はそう簡単には負けないわよ。」

 

「それもそうだったな。余計な心配だったか。」

 

「もうそろそろ着くわよ。地下牢への入口がある図書館に。」

 

「そうだな。気を引き締めていこう。」

 

 

 

「これが、図書館の入口だな。」

 

「いいからさっさと開けなさいよ。」

 

「わかったわかった。」

 

大きな図書館の扉を開けるとそこには・・・

 

 

 

 

 

炎の剣を手にしている少女と、血だらけの魔理沙がいた。




感想、評価よろしくお願いします。


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紅霧異変その5

主人公の設定を書いてみました。


名前:神田蒼也

 

種族:人間

 

性別:男

 

年齢:17歳

 

身長:173cm

 

体重:59kg

 

誕生日:5月19日

 

職業:高校生

 

好きなもの:炭酸飲料、寿司、仲間

 

家族構成:祖父、祖母

 

東方知識:蒼也が知っているのは、霊夢と魔理沙。そして、友人に教えてもらったレミリア、射命丸のみ。

 

サイドエフェクト:感情色彩識別

 

能力:トリガーを自在に操る程度の能力

 

能力の利点:いつでも好きな時に、好きなトリガーをセットできる。

      

戦闘スタイル:カメレオンや、テレポーターを使った奇襲攻撃を得意とする。また、蒼也は血を見るのが嫌いなため、とどめを刺すときは、気絶させることが多い。

また、サイドエフェクトを使った心理攻撃も得意としている。

 

戦闘力の数値化:MAX100

 

        トリオン・・・14

   攻撃・・・13

   防御・援護・・・7

        機動・・・7

        技術・・・7

        射程・・・7

        指揮・・・5

        特殊戦術・・・6

        トータル・・・66

 

蒼也の、周りからの好感度:MAX10

 

 ルーミア・・・4

            霊夢・・・3

            射命丸・・・1

            魔理沙・・・2

            レミリア・・・3

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「おい、魔理沙!大丈夫か!?」

 

俺は魔理沙に言った。しかし反応はなかった。

 

「まずいな・・・出血の量が多い。すぐに治療しないと・・・」

 

「私がやるわ。」

 

「あなたはだれ?」

 

「パチュリー・ノーレッジ。この図書館の主で魔法使いよ。私の治癒魔法を使えば、なんとかなるかもしれない。」

 

「じゃあよろしく頼む。パチュリーさん。」

 

「でも、ここじゃ危険だわ。どこかに移動しないと・・・」

 

「その点は大丈夫だ。エスクード」

 

俺がエスクードを起動させると大量のエスクードが道を塞いだ。

 

「さて、こっちも仕事をしないとな。」

 

俺はフランに向き直った。

 

「次の相手はあなた達?」

 

「そうだ。手加減はしないぞ。」

 

「じゃあ私を楽しませてね。きゅっとして-」

 

「!!」

 

ゾワリと背中に悪寒が走る。逃げろ。そう本能が警告してくる。瞬時に俺は横に跳んだ

 

「どかーん。」

 

ボンっと足首から下が破裂した。そこからトリオンが漏れ出す。俺は、スコーピオンを流し込み義足のようにした。

 

「おお、かわすなんてすごーい。じゃあ次いくねー。」

 

「禁忌レーヴァテイン、禁忌フォーオブアカインド」

 

「は!?」

 

炎の剣を持ったフランが四人に増える。

 

「くそ、アステロイド。」

 

俺はアステロイドを放つが・・・

 

「全員避けやがった!?」

 

見事にかわされた。全員避けたってことは、それぞれが自立してるってことだ。

 

「やべっシールド。」

 

二人止める。しかし、残りの二人が迫って来る。

 

「エスクード!」

 

一人止める。俺はレイガストを持つ。

 

「盾モード!!」

 

ギャリンと音を立て、盾と剣がぶつかりあう。力勝負では、男の俺のほうが上と思ったのだが、人間と吸血鬼では基本的な性能が違うらしく、押し負けそうになっていた

 

「このままじゃまずい。スラスターオン!」

 

俺はスラスターを起動させ、フランを吹っ飛ばした。そして、壁に打ち付けられたフランに向けてスラスターで加速させたレイガストを放った。すると、フランはレイガストと壁に挟まれるような格好になった。

 

「うーんなかなかやるねー」

 

フランは、レイガストを破壊し抜け出てきた。

 

「まあ、参考にする動きを見てるからな。戦い方はよく知ってるつもりだ。」

 

勝てると油断させておいて隙を突く空閑の動きや、死角からの攻撃で回避不可能な風間さんのモールクローなんかな。

 

「でも、強い相手ほど壊しがいがあるってもんだよねー」

 

「おもしれぇ。やってみろよ。」

 

「なら、遠慮なく。」

 

そうフランが言った瞬間、漫画なら効果音が付きそうなほどの殺気が向けられた。トリオン体であるという心の余裕がなければその場に座り込んでしまいそうなほどの殺気だった。

 

「地雷踏んじまったかもな。」

 

とてつもない恐怖心になんとか耐えながら、俺はフランの方に体を向けた。




感想、評価よろしくお願いします。


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紅霧異変その6

ドギン ガキン ガキキキキン

 

ギャリィイン!!

 

「くそっ!」

 

体に受けた傷を見ながら、俺は感じていた。種族の間にある、決して埋まることのない溝というものを。

 

「スラスターオン!」

 

スラスターを使い、相手との間合いを大きく取る。

 

「勝てる気がしない・・・」

 

吸血鬼というのは回復力が非常に高い。それはレミリアと戦っている時に気づいていた。傷を受けた部分が見る見る内に回復したから。だが、脚を切り落とされてもすぐ復活するのは想定外だった。おかげで、あっちは無傷。こっちボロボロという有様だ。まさに無理ゲーだ。割に合わない。

 

「しんどいな・・・」

 

もはや、フランの心のことなど考えてもいなかった。適度な戦力差だと、倒しがいがあるのだが、圧倒的な戦力差の前では絶望するしかない。

緊急脱出も考えていた時、一つの声が届いた。

 

「どうか・・・諦めないで!」

 

「レミリア!?」

 

「こんなとこで負けちゃだめよ!」

 

「パチュリーさん!」

 

「いい?負けたらお嬢様の餌になると思いなさい!」

 

「咲夜さん!?なんでここに!?」

 

一つ。また一つと声が聞こえてくる。

 

「蒼也ァ!負けたら晩飯は抜きよ!」

 

「霊夢まで・・・」

 

そうだ。何俺は勘違いしてる?勝手に諦めちゃいけないんだ!あいつらのためにもここで勝たなくちゃいけない。あいつらにとっての勝利は、フランの狂気から救うこと。あいつらにとっての喜びは、フランの笑顔がみれること・・・!

 

「フラン。」

 

「何?」

 

「俺は必ずお前を救ってみせる!」

 

「へぇ。本当にそんなことできるのか試してあげる。」

 

フランの苛烈な攻撃が始まった。目で追えないほどの素早い動きで翻弄し、確実に急所を狙ってくる。手を切られ、足を切られ、立っていることさえもできない。しかし、決して俺は諦めない。あいつらのためにも・・・

 

「ねぇ。」

 

「何だ?」

 

すでに満身創痍な俺に向かってフランが聞いてくる。

 

「どうしてあなたは諦めないの?どうしてそんな目で私を見れるの?ねぇどうして?どうして?」

 

「そんなの・・・決まってるだろ。」

 

「俺を頼ってる奴がいるかぎり・・・諦めちゃだめなんだ。当然のことさ。」

 

「・・・」

 

「お前の過去になにがあったかは詳しく知らない。でも、たくさん傷ついたのならその分たくさん傷を癒せばいい。」

 

「・・・」

 

「まだ、遅くない。今からでも遅くないんだ。だから狂気に染まった顔なんかじゃなくて・・・

 

 

 

 

 

笑顔を見せてくれ。」

 

 

 

 

 

 

「もう、こんな自分はうんざりね。」

 

「!!」

 

「私らしくないもの。これからは笑顔を見せなくちゃ。」

 

フランの心が明るい色に染まっていく。

 

「・・・わかってくれたんだな。」

 

「うん。私お兄さんのおかげで、本当の自分を見つけることができたみたい。ありがとう。お兄さん。」

 

そう言って笑ったフランの顔は、まるで天使のようだった。

 

 

 




フランの狂気を救うという内容が、ここまで難しいとは思いませんでした。一か月近くも悩みましたからね・・・。難所を乗り切ったのでぼちぼち投稿していきます。長い間更新できなくて申し訳ありませんでした。

感想・評価よろしくおねがいします。


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紅霧異変その7

「一件落着だな。」

 

使えなくなった戦闘体をトリガーホルダーに戻しながら、俺はつぶやいた。

 

「よくあの状況で諦めなかったわね。」

 

霊夢が言った。

 

「外の世界に性格がとても熱い人がいるのさ。その人が言ってたんだよ。絶対にどんな時でも諦めるなって。そしてこうも言ってたよ。無理だと思う前にもう少し頑張ってみろってね。あの人の言葉がなかったら俺は諦めてたかもしれないな。」

 

「へぇ、じゃあその人のに感謝しなきゃね。」

 

「ああ。」

 

俺は、目の前に広がる光景を見ながら言った。

 

「それにしても、やっぱり姉妹の仲ってもんはそう簡単には崩れないもんだな。」

 

「ええ。見てて微笑ましいわね。」

 

「なんか、羨ましいな。ああいうのって。」

 

「なんで?」

 

「俺には兄弟もいないし、両親も小さい頃に死んだんだ。だから、まともな愛情ってものをあんまり受けてないのさ。だから羨ましいんだ。」

 

「ふーん。あんたも苦労してんのね。」

 

「ああ。」

 

「・・・今度人里で、何か奢ってあげるわよ。」

 

「いいのか?あんまりお金無いんだろ?」

 

「細かい事は気にしなくていいの。私が奢るって言ってんだから感謝しなさいよね。」

 

「うん、ありがとな。霊夢。」

 

「な、なんかこう面と向かって感謝の気持ちを言われるのって、なんか恥ずかしいわね。」

 

「はは、なんだよそれ。霊夢らしくないなぁ。」

 

「うるさいわね!」

 

こうして、紅い霧が空を覆う異変は、見事に解決した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなた、紅魔館の執事になりなさい。」

 

「え?」

 

「は?」

 

霧の異変も終わり、いよいよ帰ろうとした時にレミリアからそう声を掛けられた。

 

「あんたねぇ、蒼也は今私の神社に住んでるのよ。勝手に引き抜かないでくれる?」

 

「いいじゃない別に。あんたの神社貧乏なんでしょ。」

 

「うっ・・・そう言われると返す言葉が・・・」

 

「どう?蒼也。紅魔館の執事にならない?」

 

「うーん、誘ってくれるのは嬉しいけど、今回は遠慮させてもらうよ。」

 

「どうして?」

 

「だって俺この世界に来て一週間も経ってないんだぞ。なのにいきなり執事の仕事は、少々荷が重い。だから無理だ。あと、霊夢にも食い物を奢ってもらわなきゃなんないしな。」

 

「そういうことね・・・なら仕方ないわ。」

 

「意外とあっさり引いてくれたな。」

 

「変えられない運命だもの。しょうがないわ。」

 

「まあまあ、そんな落ち込んだ顔すんなって。幻想郷に慣れてきたら、また遊びに来るから。」

 

「本当?約束してくれる?」

 

「ああ。約束する。」

 

「蒼也ー、ごちゃごちゃやってないでさっさと帰るわよー。」

 

霊夢の声が聞こえた。どうやら早く帰りたいらしい。

 

「それじゃあな、レミリア。また会おう。」

 

「ええ。さようなら。蒼也。」

 

こうして、俺達は帰路に着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「不思議なお方でしたね。」

 

「そうね。食卓に並べるにはもったいない人だったわね。」

 

「まぁでも食肉を調達する私がこのざまじゃ、食卓に並べるのにも一苦労といった所ですかね。」

 

「あら、咲夜。蒼也に負けてしまったの?」

 

「この格好を見て少しは察して下さい・・・」

 

「ふふ、ごめんなさいね。」

 

ボロボロの咲夜を見ながら私は言った。

 

「そうそう、あなたの着替えのついででいいから紅茶を持ってきて頂戴。喉が渇いちゃったわ。」

 

「はい。少々お待ち下さい。」

 

そう言って咲夜は消えてしまった。

 

「蒼也・・・」

 

私はあの外来人のことを思い出していた。不思議な力を持ち、決して諦めないような不屈の精神力を持ちながらも、自分のするべきことが終わったら颯爽と去っていく。そんな人間は500年生きてきて初めて見た。

 

「ぜひ、紅魔館の執事として迎え入れたかったんだけどねぇ。」

 

まあ、来てくれるのを信じて待つしかないか。

 

「あら?どうして私はあいつの事を、こんなにも考えているのかしら。」

 

なぜだろう?蒼也のことが頭から離れない。それに、蒼也の事を考えると胸の奥がちょっぴり痛い。

 

「紅茶をお持ちしました。」

 

この気持ちについてもっと考えたかったのだが、咲夜が紅茶を持って来たので考えるのをやめた。

 

「お味はいかがですか?」

 

「甘すぎるわ。もうちょっと砂糖を少なくして頂戴。」

 

「申し訳ありませんでした。すぐに別の紅茶を持って来ます。」

 

 

 

 

 

咲夜が消えたことでまた考えようかと思ったが、考え事をするには先程の紅茶の後味は、いささか甘すぎるようだった。

 

 

 




紅魔館の執事は、後の方で主人公にやらせますので楽しみに待ってて下さい。
それと、文章中に出てきた、外の世界にいた性格がとても熱い人。モデルは松〇修造さんです。どーでもいいですね(笑)すみません。では次回もお楽しみに。


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妖怪の賢者の訪問

「霊夢起きろ!もう昼だぞ!」

 

「う~んあと一時間・・・」

 

「朝方に帰ってきたから眠いのはわかるけど、いい加減起きろよ。魔理沙が来てくれてるぞ。」

 

「お~い霊夢。宴会の準備をするんじゃないのかよ。」

 

「あ。」

 

霊夢はとたんに起きて、あたりを見回した。

 

「忘れてた!!」

 

それからの霊夢の働きぶりはすごかった。あっという間に着替え、(もちろん覗いてはいない)すぐにごちゃごちゃした机の上を整理し、酒とつまみの準備を始めた。宴会の準備のほうは、霊夢達に任せておいていいだろう。俺は、博麗神社の縁側に座った。

 

「そろそろ姿見せたらどうです?妖怪さん。」

 

そう俺が言うと、俺の隣に割れ目のような空間ができ、中から人らしきものが出てきた。

 

「結構勘が鋭いのね。霊夢と似ているわ。」

 

「そうですか、そりゃどうも。ところで、あなたの名前教えてくれませんか?」

 

「私は八雲紫。妖怪の賢者よ。」

 

「妖怪の賢者ですか。となると、妖怪の中では位は結構高いほうで?」

 

「ええ。大妖怪の中で最も位が高い地位。それが、賢者よ。」

 

「それはすごい。でもそしたら何故、俺のような人間のことを観察しているのでしょう?」

 

「・・・単刀直入に言うわね。」

 

 

 

 

 

 

 

「あなた、幻想郷から出て行ってくれない?」

 

 

 

 

 

 

「・・・理由を教えてください。」

 

「あなたのその能力、確かトリガーを操る程度の能力だったわよね。」

 

「ええ、そうですがなにか?」

 

「その能力、私はとても危険視してるのよ。」

 

「何故です?」

 

「まったく訳が分からないのよ。どうやって弾幕を出すのかも、戦う時に血が出ない理由も、どういう原理で武器を作り出すのかも。」

 

「・・・」

 

「正体も分からない能力を持った外来人を、この世界に居させることはできないわ。」

 

 

 

 

 

「・・・ワールドトリガーって知ってますか?」

 

「知らないわ。」

 

「外の世界で今人気になっている漫画です。独特の世界観や、心踊らされるような武器の数々、リアルな会議の様子などが話題を呼び、一躍有名になりました。」

 

「ワールドトリガーの読者層は、主に俺のような若い世代で、当然俺もハマりました。高校で友達と話したり、毎週漫画雑誌を買って読んだり・・・それは楽しかった。」

 

「何が言いたいのかしら?」

 

「俺は外の世界で死んだんです。通り魔に刺されて。だから、この世界に転生できることになって嬉しかったんです。でも、この世界で生きていくためには能力が必要と言われました。そこで頭に浮かんだのが、その漫画に登場する武器、トリガーです。」

 

「つまり、あなたは外の世界で殺されて、転生の時に得た能力が、そのトリガーという物なのね。」

 

「俺には出ていけと言われても、帰る場所がありません。でも、だからと言って殺さないでください。俺は、せっかく手に入れたこの能力を手放したくないんです。もしだめと言うなら、能力を使ってでも全力で抵抗します。」

 

俺は相手を全力で睨んだ。

 

 

 

 

 

「そこまで言うのなら別に良いわ。あなたも異変の解決を手伝ってるみたいですからね。」

 

「良かった・・・」

 

「でも、これだけは約束していただけます?」

 

「なんですか?」

 

「絶対にその能力で悪事を働かないこと。もしこの約束を破ったら・・・

 

 

 

 

 

 

 

「私があなたをこの手で殺すわ。」

 

とてつもない威圧感は、俺を圧倒するのに十分すぎる程のものだった。

 

「わ、分かった。約束しよう。」

 

そう俺が言うと、紫さんは満足そうな顔をして別れの言葉を告げた。

 

「それじゃあごきげんよう。また宴会で会いましょう。」

 

「ああ、さようなら。」

 

紫さんが消えた後、俺は大きく息を吐いた。

 

「なんとかなったな。」

 

頬を伝う冷や汗を拭う。

 

「蒼也ー、あんたも宴会の準備を手伝いなさいよー」

 

「すまないが、ちょっと休ませてくれ・・・」

 

霊夢には悪いが、今はとても手伝う気分にはなれなかった。

 

 




蒼也は、自分より立場や力が上の者や、年上の者には敬語を使います。

追記:蒼也と紫の会話で、高校と中学校を間違えていたので修正しました。

修正前:中学校で友達と話したり…
修正後:高校で友達と話したり…


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宴会

投稿遅れて申し訳ないです。夏休み中は暇だからと甘く見てたら予定てんこ盛りでびっくりしました。長い休みのときはかえって忙しくなりそうです・・・なので、平日の夜なんかにちょくちょく投稿していきます。完結するまで失踪はしませんので安心して下さい。本当に申し訳ございませんでした。


「さて、そろそろ宴会の準備を手伝ってやるか。」

 

紫さんの強烈な威圧感に圧倒された俺は、動揺と恐怖で気が滅入っていた。自分が紫さんに迷惑を掛けていた事の申し訳なさと、本能が察知した情報。つまり死への恐怖が、頭の中を渦巻いていた。だが、いつまでも悩んでちゃ仕方がない。そう思い、俺は霊夢の所へと向かった。

 

 

 

 

 

 

「さっき紫と何を話してたの?」

 

いきなりその話か・・・。できれば思い出したくないんだが・・・

 

「実はこういう事があってだな・・・」

 

ーー青年説明中ーー

 

「ふ~ん。そんな事があったのね。」

 

「結構紫さんに迷惑掛けてるみたいだったから、申し訳なかったよ。霊夢はどうだ?俺が居るとやっぱり迷惑か?」

 

「そんな訳無いじゃない。むしろ異変解決を手伝ってくれるから助かってるわ。」

 

「そうか。ならいいんだ。」

 

「まぁアイツは昔から慎重に物事を進めてきたからね。神経質になるのもしょうがないわよ。」

 

「そうだったんだな・・・」

 

紫さんも結構苦労してるんだな。

 

「だから、あんたは安心して宴会の準備を手伝っていいのよ。はい、じゃあおかずを最低5品つくってね。」

 

「ったく、ふてぶてしいやつだ。」

 

そう愚痴りながらも、俺は料理に取りかかった。

 

 

 

 

 

「お~い霊夢、とりあえず5品作った。味見してくれ。」

 

俺が作ったのは、野菜炒め、揚げ出汁豆腐の醤油炒め、牛乳と調味料と野菜を混ぜ合わせて作った手作りシチュー、そうめん、川魚の天ぷらだ。

 

「どれどれ、ちょっと一口。」

 

さて、おいしく作ることが出来ただろうか?

 

「蒼也これ・・・」

 

「ん?なんだ?もしかして不味かったか?」

 

「めちゃくちゃおいしいじゃない!」

 

「そうか?そりゃ良かった。」

 

「蒼也、良くやったわ。これで今までよりももっと宴会に妖怪たちが集まるわ。」

 

「まぁ、役に立てたのなら良かったよ。」

 

こうして、宴会の準備は着々と進んでいった。

 

 

 

 

 

 

「さぁ、いよいよ宴会が始まるわ。あんたの事紹介するから私が呼んだら前に出て来て。」

 

「了解。」

 

そう言うと霊夢は、集まった人(?)達の前に立った。

 

「今日は宴会に集まってくれてありがとう。そこで今日はみんなにお知らせが、あるわ。」

 

「新しくこの世界の住人となった人が居るの。今からそいつに出て来てもらうわ。」

 

「外の世界からやって来た、不思議な力を持つ男。その名も神田蒼也よ!」

 

霊夢がこっちに手招きした。俺は皆の前に出る。

 

「え~この度幻想郷に住む事になりました、神田蒼也です。年齢は17歳、性別は男です。今は、博麗神社に居候しています。用があったら遠慮なく声を掛けてください。以上です。」

 

周りから拍手が送られた。どうやら悪くは思われていないようだ。

 

「ちなみに、こいつの能力は不思議なものだからね。興味がある奴は戦ってもいいわよ。」

 

「勝手にそんな許可だすな。」

 

「まぁ、これで紹介は終わりよ。後はそれぞれで楽しんでちょうだい。」

 

そう霊夢が言うと、皆はいっせいに騒ぎ出した。楽しそうだ。

 

「何ボーっとしてるのよ。さっさと話して来なさい。」

 

霊夢に後押しされ、俺は紅魔館組の所へ向かった。

 

 

 

 

 

「よっレミリア。昨日ぶりだな。」

 

「えぇ、そうね。」

 

「どうだ?フランの様子は。」

 

「あれからフランはとても良い状態になったわ。積極的に館の中をうろついてるしね。でも、あまり外には出たがらないみたいね。今はパチュリーが相手をしているわ。」

 

「そうか、良かったな。」

 

「良かったら明日にでも紅魔館に来ない?フランも会いたがってるし。遊びに来てくれると嬉しいわ。」

 

「そうだな。明日にでも行ってみようか。」

 

「ありがとう。館の全員でお出迎えするわ。」

 

「おう、期待してるぞ。じゃあまた明日。」

 

「えぇ、また明日。」

 

話し終えた俺は、まだ会ってない奴の所へ行くことにした。

 

 

 

 

 

 

「こんばんは。神田蒼也です。隣に座ってもいいですか?」

 

「別に良いわよ。」

 

「お名前を教えてもらえませんか?」

 

「アリス・マーガトロイドよ。アリスでいいわ。後、そんなに丁寧にならなくても良いわよ。」

 

「そうか。ありがとう。」

 

「魔理沙からあなたのことは聞いてるわ。不思議な力で弾幕を出したりしてるんでしょ?」

 

「んー、まぁ原理自体俺自身も詳しく知らないから普通に君達が出してる弾幕と変わらない物として考えていいよ。」

 

「そう・・・」

 

「・・・」

 

「・・・」

 

あ、やばい会話が続かないな。

 

「そ、そういえば、さっき魔理沙の事口にしてたけど友達かなにか?」

 

「そうよ。魔理沙は私の大事な友人よ。」

 

「そうか。じゃあ遊びに来たりとかするのか?」

 

「えぇ、よく来るわ。」

 

「そうなのか。」

 

「・・・」

 

「・・・」

 

だめだ。会話が全然続かない。これは気まずいな・・・

 

「じ、じゃあ俺は他の所に行くから。また話したくなったら是非博麗神社に来てくれよ。」

 

そう言って俺は抜け出した。魔理沙でも呼べばよかったかな?まぁいいや。

 

「次は紫さんの所か。行きたくないけど挨拶ぐらいはしとこうか。」

 

 

 

 

 

 

「こんばんは、紫さん。」

 

「あらこんばんは、蒼也。さっきはごめんなさいね。あんなこと言っちゃって。」

 

「い、いえ気にしてないので・・・。あ、お酒注ぎましょうか?」

 

「あら、ありがとう。蒼也もどう?」

 

「いえ、私は結構です。ところで、紫さん。お隣の方はお知り合いですか?」

 

「ああ、藍と橙のことね。藍は、私の式神。橙は、藍の式神よ。」

 

「一つ聞きますけど、藍さんって狐ですか?」

 

「えぇそうよ。あれは九尾の狐の式神よ。」

 

「えっ九尾の狐!?」

 

まじか。まさかこんな所で九尾の狐に会えるとは。妖狐の中でも最も位が高い狐で絶世の美女に化けて国を傾けるとかなんとか言われてたような、そんな妖怪に会ってしまった。

 

「あれ?でもたしか九尾の狐は数万の軍勢に殺害されて石になったっていう伝説があったような・・・」

 

「あれは私が作り上げた嘘よ。」

 

「え?」

 

「確かに藍は殺されかけたわ。でも私が助けてあげたの。そして、九尾の狐は石になったと嘘を言って藍の存在を誤魔化したの。」

 

「へぇ~そんな事があったんですね。」

 

ん?待てよ。石になった伝説の時の時代は鳥羽上皇が生きてた時代。つまり平安時代だ。じゃあ紫さんはその時から今の時代までずっと生きてるってことだ。じゃあ紫さんの歳は何歳だ?え~と鳥羽上皇が在位したのは1107年だから・・・

 

その時強烈な悪寒が体に走った。

 

「あまり余計な事を考えちゃだめよ?」

 

「ひぃっ!」

 

 

 

 

 

 

正直あの後何があったかは覚えていない。でもこれだけは確信した。

 

 

 

女性の歳の事に深く踏み込んではいけないと

 

 



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紅魔館訪問その1

「よし、行くか。」

 

俺は、昨日約束した通りに紅魔館に行くことにした。

 

「あ、そうだ。どうせ行くんだったら何か持って行ってみようかな。」

 

そう言うと俺は、戸棚から紅茶を取り出した。

 

「霊夢には悪いが、元々俺の渡したお金で買ったって言ってたからちょっとくらい良いだろ。」

 

いよいよ支度が出来た俺は、神社を離れることにした。外は夜だ。

 

「吸血鬼が活動する時間ってのが夜だから、夜行くのは当然なのだろうけどちょっと怖いな。」

 

この前の異変解決時は、たまたま妖精にしか会わなかったけど、本来は力の強い妖怪がよく出てくるらしい。

 

「まぁ、トリガーあるし大丈夫でしょ。」

 

そうして俺は、紅魔館を目指すことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ。やっと紅魔館に着いたか。」

 

道中いろんな妖怪に会ったが、なんとか逃げ切ってきた。

 

「トリガーを使っての殺害は、なるべくしないように決めたからな。」

 

殺されるときの痛みは誰よりも分かってるつもりだ。だからこそトリガーをただ殺すための道具にはしたくない。

 

「まぁ本当にヤバイ時には殺したりもするんだろうなぁ。それを言っても仕方ないんだろうけれども。」

 

そんな事を言いながら歩いていると、門の前に着いた。

 

「確か異変解決の時には、塀から侵入したから、ここに来るのは初めてか。」

 

俺が、さらに門に近づくと、誰か居るのに気づいた。

 

「誰か門の前で立ってるな。門番か?一応声掛けてみるか。すいませーん。」

 

返事はない。さらに近づいてみる。

 

「すいませーん。門番さん中に入れてもらえますか?」

 

返事はない。

 

「ちょっと門番さん、聞いてます?」

 

俺は顔を覗き込んだ。

 

 

 

「ぐーぐーむにゃむにゃ・・・」

 

驚いた。まさか門番が寝ているとは。

 

「起きてください門番さん。」

 

「うーん・・・・・・はっ、咲夜さん!?あ、あのこれには深い理由が・・・」

 

「あのー、俺は咲夜じゃないですよ。」

 

「あ、あれ?客ですか?こんな真夜中に・・・」

 

「そうです。レミリアに呼ばれて来たんです。」

 

「じゃあ名前をお願いします。」

 

「神田蒼也です。」

 

「神田蒼也さんですね。分かりました。それじゃあ咲夜さんに許可とって来ますので待ってて下さい。」

 

「その必要はないわ。」

 

「さ、咲夜さん!?」

 

「よぉ咲夜。約束通り遊びに来たぜ。あ、あと紅茶持って来たからな。たぶんおいしいと思うぞ。飲んだ事ないけど。」

 

「あら、ありがとう。それじゃあ中に入って。あと、美鈴も入って良いわよ。」

 

「あ、あの、咲夜さん。この蒼也さんって人何者なんですか?」

 

「そうね・・・あなたには教えて無かったわね。蒼也はね・・・」

 

 

 

 

「フランお嬢様を狂気から救い出してくれた人よ。」

 

 

 

 

「・・・それ本当ですか?」

 

「ええ本当よ。」

 

美鈴は思った。もしかしたら私は、とんでもない人間と出会ったかもしれないと。



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紅魔館訪問その2

咲夜に連れられて俺は紅魔館のエントランスホールにやって来た。

 

「よっレミリア。約束通り遊びに来たぜ。」

 

「よく来てくれたわね。歓迎するわ。」

 

内装はこの前の騒ぎで俺たちが暴れたにもかかわらず、きれいな状態に修復してあった。

 

「すげえな。こんな短期間でここまで元に戻すとは。」

 

「綺麗にしたのはほんの少しよ。エントランスと大広間。そしてパチュリーの図書館だけ。」

 

「でもまぁ凄いもんだ。」

 

天井から吊り下げられたシャンデリアを見ながら俺はつぶやいた。

 

「蒼也ー!来てくれたのね!」

 

おっと、妹さんのお出ましか。

 

「まったく・・・この前会ったばっかりなのに呼びだすだなんて、お前も大した奴だなぁ。」

 

「だってお礼がしたかったんだもん。」

 

「お礼とは?」

 

「私を長い間苦しめていた狂気から救ってくれた恩人。お礼しない方がおかしいわよ。」

 

「俺は当然の事をしたまでだ。礼には値しない。」

 

「蒼也って謙虚なのね。その当然の事をやってのける人間はこの世に何人居るのかしら?」

 

「それもそうか。」

 

まぁ格好つけて言ったわけだが、あの時は俺も必死だったからなぁ。なんとかしてあの場を乗り切らないと俺は間違いなくベイルアウトだったからな。人間追いつめられるとどんな事でも出来るもんだ。

 

「そうだ、せっかくこの館に来たんだもの。食事でもいかが?」

 

「誘ってくれた所申し訳ないが、夜はあまり腹減らないんだ。遠慮しておく。」

 

「あら残念。」

 

「そのかわり、フランの遊び相手くらいならしてやっても良いぞ。」

 

吸血鬼の相手はした事がないが、適当に話してりゃ気が済むだろ。

 

 

 

「弾幕ごっこをしましょう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ・・・」

 

 

「蒼也との弾幕ごっこは楽しいもの。ね、お姉様。」

 

「そうね。私も参加していいかしら?」

 

「もちろんよ!一緒に楽しみましょう!」

 

 

 

「もう勝ち目がないじゃん・・・」

 

 

「あら、結果はやってみないとわからないわよ。」

 

「あーもうわかったよ。やればいいんだろ。やれば!」

 

「ふふ、楽しませてね♥」

 

 

こうして吸血鬼姉妹との勝ち目のない戦いが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「今回は外でやるのか。」

 

「これ以上紅魔館を壊すわけにはいかないもの。」

 

「それより早く始めましょう。」

 

「はいはい。咲夜さんの合図と同時にスタートね。」

 

咲夜さんがうなずく。そして・・・

 

 

 

「それじゃあ、用意始め!」

 

 

 

「トリガーオン!」

 

今回の俺の編成はアサルトライフル二丁にシールドだ。弾幕を張って少しでも近づけさせないようにする。

 

ズガガガガガガン

 

「甘いわよ!」

 

フランとレミリアは弾幕で弾を相殺している。二人にとっては朝飯前なのだろう。

 

「次はこっちの番ね!『禁忌レーヴァテイン』」

 

フランの手には見覚えのある剣が握られている。

 

「その剣は近距離でしか威力を発揮できないだろう!なら近づけさせなければ良いだけの事!」

 

「はたしてそうかな?」

 

フランが剣を一振りすると大量の弾幕が放出された。かなり多い。

 

「おい!そんな攻撃聞いてねぇぞ!そいつはただの炎の剣じゃねぇのかよ!」

 

「だってこれは弾幕ごっこだもん。あの時とは攻撃パターンも違うわよ。」

 

「くそっ、シールドじゃ受けきれないな。『エスクード』!」

 

 

 

「その技の弱点は視線が通らないことかしら?おかげで簡単に近づけたわ。」

 

「!!」

 

上から襲いかかるレミリアは完全に攻撃態勢に入っている。

 

「通常弾幕で事足りるわね。この勝負もらった!」

 

 

「『テレポート』!」

 

「あら残念。その技の攻略法は咲夜に教えてもらったわよ。フラン!」

 

「はい、お姉様。」

 

目に飛び込んできたのは紅い弾幕。これはお手上げだ。

 

「お前らのせいで強制帰宅になっちまったじゃねーか・・・」

 

俺の敗北を意味する機械的な音声が闇にこだました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんなに遅い時間にどこほっつき歩いてたのよ!」

 

ベイルアウトで神社に戻ってきた俺の耳は、怒号という精神衛生上非常によろしくないものにさらされてしまった。

 

「悪い。ちょっと紅魔館に用事があってな。」

 

「ったくもう!妖怪に連れ去られたかとヒヤヒヤしたわ。」

 

「俺がそんなへまをするとでも?」

 

「十分ありえるわよ!とにかく心配したんだから夜間は外出禁止!わかった?」

 

「ダメと言われるとやりたくなるのが人間なんだぜ?」

 

「屁理屈言わない!明日は早いんだからさっさと寝なさい。」

 

「どっか行くのか?」

 

「人里に行くわ。あなたもついて来るでしょう?」

 

「なるほど。じゃあ今日はもう寝るか。おやすみ霊夢。」

 

「悪夢でも見ときなさい、蒼也。」

 

どうやら明日にならないと機嫌はなおらないようだ・・・




一年間も何やってたんですかねこの阿呆投稿者は・・・
いやもうね、申し訳ないです本当に。
完結するまで失踪しないって言ってたのはダレナンダロウナー(棒読み)
改めて、投稿を待っていてくださった皆様、本当に申し訳ございませんでした。


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人里訪問その1

闇から意識が解放される感覚。瞼を開けた先には心地よい光の雨。

そう、朝とは万人にとって至福のひと時なわけなのだが・・・

 

 

 

 

 

 

 

「いい加減起きなさいよ!何回起こしてもらえれば気が済むの!」

 

「あーもう、わかったってば。今起きるよ。」

 

昨日の夜に引き続いて怒号を浴びてしまった。もうこうなったら起きるしかない。

 

「もうちょっとやさしく起こしてくれませんかね・・・朝から大声聞きたくないからさ・・・」

 

「昨日の夜言ったでしょ!明日の朝は早いって。だから起こしたのよ。大声に関しては何回言っても起きないお前が悪い!」

 

「はいはい、わかりましたよー」

 

まぁ昨日夜遅くまで外出てた俺もわるいけどさ、女子なら女子なりに品性のある起こし方を・・・

 

「文句でもあるのかしら。」

 

「いえ、ないです。すいませんでした。」

 

朝から重い気分にさせられた・・・そう思いながら俺は洗面所に向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ、出発するわよ。準備は出来た?」

 

「出来ましたよ。いつでも行ってどーうぞ。」

 

「それじゃぁ出発よ!」

 

俺たちは神社を出て人里へと向かった。

 

 

 

 

「それにしてもさ、今日の霊夢は機嫌良くないか?」

 

「朝は不機嫌だったけどね。」

 

「だから、その件については謝っただろ。」

 

「別にもう気にしてないわよ。それに、今日は久しぶりに人里に出向くから機嫌が良いのよ。いままでろくにお金が無かったから全然行けなかったけど、今回はたくさん買い物ができるわ。」

 

霊夢はこの前俺が渡したお金を使うようだ。

 

「少しくらいお金は残しとけよ。後々困ってくるぞ。」

 

「分かってるわよ、そんなことくらい。私は先が見通せる人間なのよ。お金の使い方くらい心得ているつもりよ。」

 

「だといいんだがな。」

 

まぁ一々気にしていても仕方が無いか。お金に関しては霊夢に任せても良いだろう。それよりも初めて人里に行くんだから、少しでも良い印象を残せるように努力しないとな。人間は第一印象で決まる、なんてよく言われる事だ。

 

「さて、もう少しで見えてくるわよ。」

 

「お、いよいよか。」

 

期待と不安が入り乱れる中、俺は人里へ足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おお、こりゃすげぇ。」

 

俺が見たものは、里の中で生活する人々の活気あふれる姿だった。当然と言えば当然なのだろうが、妖怪という物が存在する弱肉強食の世界の中で、人間という生き物がここまで快適な生活を営んでいるのは意外だ。

 

「にしても、ずいぶんと大きい集落だな。」

 

「あたりまえじゃない。だって人間が居る集落は幻想郷の中でここだけよ。」

 

「本当か?」

 

となると、幻想郷に住んでいるほとんどの人間はここで暮らしているのか。

 

 

 

 

「おや、博麗の巫女じゃないか。それと隣にいるのは?」

 

「あら、慧音じゃない。寺子屋は今日は休み?」

 

「質問に質問で返すんじゃないぞ。まあいいが・・・今は昼休みの時間だ。それよりその男は外の世界の人間か?」

 

慧音と呼ばれる人(?)は俺の方を物珍しそうに見ている。

 

「俺は神田蒼也です。あなたの仰る通り外の世界から来ました。今日は霊夢に連れられて人里を訪問した次第でございます。」

 

「おっと、そこまで丁寧にならなくても良いぞ。私はこの里の守護者である上白沢慧音だ。一応副業としてこの里にある寺子屋の教師もしている。ここで会えたのも何かの縁だ、よろしく頼むぞ。」

 

「こちらこそよろしく。」

 

どうやら悪く思われてはいないようだ。

 

「さて、今日はどういった要件でここに来たのか?」

 

「はい、まだ幻想郷に来て間もないのでいろんな所を訪問しようかと。」

 

「それは良い心がけだ。この世界に馴染む為には環境を理解することが重要だからな。」

 

「ええ。しかし驚きました、ここまで大きなコミュニティを作っているとは。妖怪という存在がいるので、人間がどういう生活をしているのか心配でしたが、この様子では特に問題も無さそうですね。」

 

「ふむ、君の目にはそう映るか。しかしそうでもないぞ。人間はこの里の中でしか生きられない。幻想郷はまだまだ広いが、人間が住める空間は妖怪よりも圧倒的に少ない。人間ももっと活動範囲を広げたいのだろうが、やはり種族間の差というものは簡単には埋まらないものだ。」

 

種族間の差。これは異変の時フランと戦った際、強く感じたものだ。能力を持ってしても埋める事の出来ない差。しかしこれは致し方ない事だろう。

 

「それはこの世界では宿命みたいな物ですよ。俺もその事を痛感しました。でも、ここまで自由で文化的な生活を送れているのだから、この世界でこれ以上の物を求めるのはいささか欲張りすぎだと思いますよ。」

 

「もっともな意見だ。君はこの世界についてだいぶ理解しているようだな。本当に外の世界の住人か?」

 

「少し考えれば誰でもわかる事です。それよりここらで休憩でもしませんか。霊夢がだいぶつまらなさそうにしていますし・・・」

 

俺たちの会話は傍から見るとだいぶ味気のないものだったからな。霊夢がまた機嫌を悪くすると大変だ。

 

「そうだな。そこの団子屋にでも寄るとするか。」

 

人里の守護者との会話は、案外楽しいものだった。




暑い日が続きますね・・・ここまで暑いと小説を書く気も萎えてしまいますよ・・・
まぁでも、これからも適度に頑張って行きます(笑)皆様も熱中症等にはお気をつけ下さい。ではまた次の作品でお会いしましょう。さようなら。


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