リアルでもダメになりたくないなぁ……( ̄▽ ̄;)  IFルート (先詠む人)
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1話 運命の変換点に気付くことは難しい

 まず最初に言っておきますが、いきなりこの小説を読んでもよくわからない人がいると思います。
 なので簡単に説明します。

 風邪をひいて大熱を出して寝込んでいた主人公岡本隼人の前に現れたのは艦これに出てくる秘書艦の雷だった。
 雷を連れて街に出てる間に艦これを隼人が始めた直後に家に訪れた従弟によって轟沈させられた雷がレ級となって自室に侵入。隼人の布団にくるまってフガフガ。
 家に帰ったらレ級が布団にくるまってて隼人びっくり雷大混乱。
 話してみたらレ級の正体が以前沈めさせられた雷と判明。隼人はそれを受け入れた。
そして現実(こっち)での名前を決定。

雷→岡本雷香
レ級→岡本玲奈

となってみんなで一緒に飯食って寝て仮面ライダードライブを見た後ぐらいからこのIFルートは本編と分岐しています。

 詳しい内容は
「リアルでもダメになりたくないなぁ……( ̄▽ ̄;) 」
 https://novel.syosetu.org/68725/
 を読んでください。
 






 「で、これどうすっかなぁ~。」

 

 夜遅くに明日学校に持っていく鞄を前にして、俺は右手にオレンジを模した形をした錠前を、左手に黒色の大きなバックルを持って迷っていた。

 

 「一応持ち歩いていてくださいって言われてもロックシードはともかく戦極ドライバーは厳しいだろ~がよ~。」

 

 俺の悩みのきっかけは今朝、仮面ライダードライブを見終わったあと妖精さんが箱を2つ俺たちが居るリビングに持ってきた所から始まる。

 

 

~以下回想~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 「ていとくさんにおとどけものです。」

 

 「ゑ?」

 

 「提督。なんか、発音が変よ?」

 

 「………。これ開けない方が良い気がするわ。」

 

 「ほら、いっきにべりっと!!」

 

 「そんな酒みたいに言わなくても。まぁ、開けるけど。」

 

 「「開けちゃうの!?」」

 

 驚愕する二人をおいておいて俺は取り合えず20センチ四方の箱を開けた。

 

 「あー、これ………妖精さんもしかして俺の部屋からこれら持ってったの?」

 

 「そうですがなにか?」

 

 「いや、何かも何もこれ俺の部屋のベッドボードに置いてたロックシードだよね。なんで持って行ったの?」

 

 「かいぞうしたらおもしろそうとおもいまして。」

 

 「えぇぇ~。」

 

 俺はげんなりしながらその発言を聞いた。

 

 俺が妖精さんと話している間中、雷香と玲奈は部屋の隅でこそこそと二人で話をしていたから何を話していたのかは気になるけど距離があったから何を話しているかまではわからなかった。

 

 そしてもう一つの箱を開けると、

 

 「・・・・・これ本物って訳ないよね。おもちゃを少し改造しただけだよね?」

 

 箱の中には緩衝材とともにLS-07と書かれたロックシードとともに全体的に黄色い小刀の付いた黒光りするバックルが収められていた。もちろん本来顔が描かれているはずのパーツもまるで誰も認識していないかのように真っ黒に染まっている。

 

 「………(ゴクリ)」

 

 無言のままそのバックルを箱の中から取りだし、そして調べていくと俺の微かな希望を打ち砕くような事実が解った。

 

 「……うげぇ……電源スイッチが

 

 

 

 

 

     …………………ねぇ……。」

 

 もし今この手に持っている物がおもちゃならば、裏面の上部にあるはずの電源スイッチがそれには無かった(・・・・)………。

 

 「あ、そういえばいまここでそのじょうまえをかいじょうしてもらえますか?」

 

 俺が知りたくなかった事実に顔をしかめていると妖精さんがそう声をかけてきた。

 

 「正直なことを言えばインベスが出てきそうで嫌なんだけど。」

 

 俺がそう言うと

 

 「それならだいじょうぶです。つながるさきはへるへいむのもりじゃないので。」

 

 妖精さんはそう返してきた。

 

 「ヘルヘイムじゃねぇの?じゃあ一体何処に?」

 

 「ちんじゅふ(・・・・・)にです。」

 

 「・・・・・・・・・・・へ?」

 

 ヘルヘイム以外に繋がると言われて尋ね返したらそんなことを返されて、ショックのあまり間抜けな様子を見せてしまったことは今でも恥ずかしいと思ってる。

 

 そんで使い方はそのままだと伝えた妖精さんは俺にクラックを開かせると、

 

 「そのどうぐはいつでもていとくさんがもちあるいていてくださいね?そうすればていとくさんのいのちはまもれるはずですから。」

 

 そう言い残して鎮守府に帰って行った。

 

 「・・・・・・・・。」

 

 俺が両手にオレンジロックシ-ドと戦極ドライバーを持ったまま沈黙していると、

 

 「司令。」「お兄ちゃん。」

 

 雷香と玲奈が声をかけて来た。

 

 「ん?」

 

 俺が反応すると二人は俺の背中に抱き着いて、

 

 「できれば司令にはそれを使わないでほしいな。だってそれを使ったら何か取り返しのつかないことになりそうで怖いんだもん。」

 

 「こっちには深海棲艦の脅威なんてないんだからそんなものいらないじゃない!それに・・・」

 

 「それに?」

 

 なぜか少しそこで一旦溜めた玲奈に尋ねてみると、玲奈は雷香と目を合わせてから

 

 「「だって私たちが居るじゃない!!」」

 

 二人息を合わせてそう言った。

 

 「ハハ・・・・。まぁそうだよね。」

 

 俺はそう言って二人の頭を撫でた。

 

 (でも、そうなるともし何かあったとき幼い二人を前に出して自分は安全圏で二人が傷つくのを見てるだけってことになる・・・・。それってあってるのか?間違ってるんじゃないか?それが正しいお兄ちゃんなのか?)

 

 そんなぐるぐる空回りする思考を抱いたまま。

 

~改装終了~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 そして今に至るってわけだ。

 

 「はぁ~、考えても考えても答えは出ないし持ってくだけ持ってくか・・・・。」

 

同じ地点を回り続けて疲れた俺は、戦極ドライバーとオレンジロックシードをすでに教科書など詰めた鞄に放り込んでそのままベッドに潜り込んだ。

 

 次の日俺はその適当に下した判断に助けられることになる。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

3ch 艦隊これくしょんでやりたいことって何? スレッド589

 

751. 名無しの提督 投稿日 2015/4/6(月) 00:12:11:89 ID???????????

>733

俺は嫁がこっちに来れば頭撫でてあげるんだ。

 

752. 名無しの提督 投稿日 2015/4/6(月) 00:12:14:25 ID??????????

ログ切り悪いが、広島港で、なんか駆逐イ級っぽいのみかけたんだけどお前ら見たい?

 

754. 名無しの提督 投稿日 2015/4/6(月) 00:12:35:17 ID???????????

>752

見たい

 

755. 名無しの提督 投稿日 2015/4/6(月) 00:12:35:32 ID???????????

>752

見たい

 

756. 名無しの提督 投稿日 2015/4/6(月) 00:12:35:33 ID???????????

>752

見たい

 

757. 名無しの提督 投稿日 2015/4/6(月) 00:12:35:34 ID???????????

>752

見たい

 

758. 名無しの提督 投稿日 2015/4/6(月) 00:12:35:37 ID???????????

>752

見たい

 

759. 名無しの提督 投稿日 2015/4/6(月) 00:12:35:39 ID???????????

>752

見たい

 

760. 名無しの提督 投稿日 2015/4/6(月) 00:12:35:58 ID???????????

>752

見たい

 

761. 名無しの提督 投稿日 2015/4/6(月) 00:12:35:88 ID???????????

>752

見たいが、釣りじゃないよな?

 

762. 名無しの提督 投稿日 2015/4/6(月) 00:12:56:92 ID???????????

ちょっと待ってろ写真撮ってくる

 

763. 名無しの提督 投稿日 2015/4/6(月) 00:13:05:42 ID???????????

>762

wktk

 

764. 名無しの提督 投稿日 2015/4/6(月) 00:12:05:55 ID???????????

>762

wktk

 

765. 名無しの提督 投稿日 2015/4/6(月) 00:12:05:68 ID???????????

>762

wktk

 

767. 名無しの提督 投稿日 2015/4/6(月) 00:12:05:87 ID???????????

>762

wktk

 

768. 名無しの提督 投稿日 2015/4/6(月) 00:12:05:99 ID???????????

>762

wktk

 

769. 名無しの提督 投稿日 2015/4/6(月) 00:12:06:12 ID???????????

>762

wktk

 

770. 名無しの提督 投稿日 2015/4/6(月) 00:12:06:13 ID???????????

>762

wktk

 

771. 名無しの提督 投稿日 2015/4/6(月) 00:12:06:15 ID???????????

>762

wktk

 

772. 名無しの提督 投稿日 2015/4/6(月) 00:12:06:17 ID???????????

>762

wktk

 

773. 名無しの提督 投稿日 2015/4/6(月) 00:12:06:19 ID???????????

>762

wktk

 

774. 名無しの提督 投稿日 2015/4/6(月) 00:12:06:35 ID???????????

>762

wktk

 

775. 名無しの提督 投稿日 2015/4/6(月) 00:12:06:48 ID???????????

>762

wktk

 

776. 名無しの提督 投稿日 2015/4/6(月) 00:12:06:78 ID???????????

>762

wktk

 

777. 名無しの提督 投稿日 2015/4/6(月) 00:12:06:88 ID???????????

>762

wktk

 

778. 名無しの提督 投稿日 2015/4/6(月) 00:12:06:97 ID???????????

>762

wktk

 

778. 名無しの提督 投稿日 2015/4/6(月) 00:12:08:13 ID???????????

>762

wktk

 

779. 名無しの提督 投稿日 2015/4/6(月) 00:12:08:18 ID???????????

>762

wktk

 

そのスレッドに居たみんなが期待して待っていたが、その後762のIDが現れることは全くなかった。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

 次の日、俺が朝起きてリビングの方に行くと、点いていたテレビのニュースで

 

『今朝未明、広島港で不審死している遺体が広島港に着いた漁師に発見されました。遺体の損壊は激しかったのですが、幸い持ち物の一部が被害者のズボンに残っていたため身元は分かっています。被害者の身元は・・・・・』

 

 そんなことがあったと流していたが俺はそれを気にしていなかった。。

 

「ふぁぁ~、おはよ。雷香、玲奈。」

 

 昨夜起きた事件を話し続けているキャスターが映っているテレビの画面の前を横切ってあいさつしながら俺はテーブルに着席した。

 

「あ、おはようお兄ちゃん。」

 

 玲奈はすぐに返してくれたが、雷香はなぜか眉間にしわを寄せてテレビのニュースを聞いていた。

 

「ん?どうした?眉間にしわなんか寄せちゃって。」

 

 そのことに気付いた俺はすぐに雷のおでこに手を当てて

 

「眉間にしわを寄せてたら幸せが逃げちまうぞ。」

 

 そう言って雷香の眉間のしわを両側から引っ張って伸ばした。

 

「あぅ!何するの!!」

 

「何って、しわ伸ばしてる。」

 

「あぅぅぅぅぅぅぅ~。」

 

「さて、飯食おうか。俺も遅刻したくないし。」

 

あの時、俺が聞かなかったニュースはこう続けていた。

 

『~死体にはサメが持つような鋭利な歯で食いちぎられたような(・・・・・・・・・・・・)傷跡があったとのことです。死因はその傷からの失血によるものだと警察は発表しています。』

 

と。

 




 感想、評価を貰えると先詠む人はうれしいです。

 アンケートを活動報告でとります。内容は「リアルでもダメになりたくないなぁ……( ̄▽ ̄;)」の本ルート(https://novel.syosetu.org/68725/)の分岐するまでの内容を第1話の前に挿入するかどうかです。

 解答よろしくお願いします。


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第2話 突然巻き込まれた者 空から降ってくる物

第2話です。
今回変身します。


「ハァッ!ハァッ!ハァッ!」

 

 俺は全力で人気が急に無くなった大通りを走り続けていた。

 本来ならば今走り続けているこの通りは車が終始通り続けてたくさんの人で埋まっているはずなのだが、俺の周りには誰一人の影もなく。そして空は真っ黒に染まっていた。そう、まるで深海棲艦に奪われた海域の空の色のように。

 

 さらに逃げ始めてからずっと、後方から黒い影がこうやって全力で走ってるにも関わらず、今もなお迫ってきている。

 

(一体何がどうなってこんな事態になっちまったんだ!?)

 

 俺は数分前のことを思い出していた。

 

 ~回想~

 

「なぁ隼人~。」

 

 大学の帰りのバスがそろそろ俺が降りる予定のターミナル停留所に着くぐらいのときに俺の大学の同級生の岸島優斗が声をかけて来た。

 

「ん~?どしたよ優斗?」

 

「お前ってさぁ~艦これしてたよな。」

 

「そうだけどそれがどうかしたのか?」

 

「このPwitterの発言に書いてあるスレの内容ってどう思う?」

 

 こちらに話しかけてきた優斗はそう言ってPwitterのアプリを起動させたスマホの画面をこちらに向けて来た時に丁度バスはバス停に着いた。

 

「なんじゃらほい。え~っと、今朝広島港で見つかった死体は駆逐イ級に食われた被害者じゃないのかって?ハ!んなあほなことは絶対ないだろ。」

 

 俺はそう言うと、財布をポケットから取り出して定期券をバスの出口で通してからバスを降りた。

 

 どうやら優斗も今日はバイトの関係でこのバスターミナルで降りなければいけなかったらしく、一緒に降りてきた。

 

「そうだよな。というか駆逐イ級ってどんな感じの奴なの?」

 

「え~っとなぁ、駆逐イ級は最初に現れる敵だな。艦これの敵勢力である深海棲艦の中ではかなり弱いほうの奴だ。」

 

 バスを降りてからもさっき見せてもらった件の話は続き、

 

「へ~。それでどんな形したりしてるの?」

 

「そうだな~。例えるならクジラみたいなやつだな~・・・・・・ってあれ?優斗どこ行った?」

 

 ふと気づくと、優斗を含めたバスセンターのホームにいる人たちの姿がすべて(・・・)消え去っていた。まるで先ほどまでの光景が俺が見ていた夢か何かのように。

 

「・・・・・・・誰も居ない?どうなってんだ?」

 

 俺がこの訳の分からない現象をどうにか認識しようとしていると、

 

「ィィィィィィィィィィィィィィィィィィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 そんな叫びとともに白い牙をもった黒い弾丸がこちらに(・・・・)尋常じゃない速さで突っ込んできた。

 

「ハァ!?」

 

 俺はそれを慌てて横に転がることで避けた。するとその弾丸は俺がさっきまでいた個所をものすごい勢いで通過していき、壁を貫いてどこかへと飛んで行った。

 

「今のって・・・・。」

 

 一瞬すぎてはっきりとは分からなかったが、俺は通り過ぎたものを見てあるものを思い出していた。

 

「・・・・・・・駆逐イ級・・・・・なのか?」

 

 駆逐イ級・・・・それは最初に現れた深海棲艦の中の一つで、本家艦これでは熟練の提督たちが最初のエリアに出てくる彼らをイベント時に艦娘のキラ付けのために某巨人漫画のごとく文字通り駆逐していく光景が見られたりする存在でもある。

 なお、”くちくいきゅう”と言う名前でかわいがられる存在もいる。その場合はすごいデフォルメされていることもあり、二次創作ではよくヲ級とセットになって人類から可愛がられてたり、人類に友好的だったりしている。

 

 見た目はさっき俺が言ったようにクジラのようなフォルムにサメか!!と突っ込みたくなる程鋭そうな歯。そして駆逐艦の名前とイの字が背負っている通り他の深海棲艦に比べたら一番弱かったりもする。(深海棲艦の名前は上級艦以外はいろはにほへと・・・・という古い和歌を基にしたひらがなの覚え方を基準に出て来た順に割り振られている。事実、かなり後ろの方に出てくるレ級も戦艦の深海棲艦なのもあって恐ろしいほど強い・・・・らしい。)

 

 

 

「・・・・・とにかくここから逃げないと。今の状況を把握するのにもまず安全確保からだし。」

 

 俺はそう一人つぶやきながら避けた際に着いた汚れを手で払い。そしてバスターミナルから外へ飛び出した。

 

 

 ~回想終了~

 

 

「『玄関開けたら佐藤のなんたら!』ってCM昔見た気がするけど『外に飛び出したらイ級のそば!』って笑えねぇよ!!」

 

 腹をくくってバスターミナルを飛び出したところまでは良かったのだが、バスターミナルの出口そばにある川の中からイ級に襲いかかられてそこから最初に至るまで今までずっと追いかけっこが続いているってわけだ。

 

「ハァ!ハァ!ハァ!誰だよ深海棲艦が陸に上がれば弱体化するって言ったのは!むしろ生き生きとしてねぇかおい!!」

 

 ィィィィィィィィィイィィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!!!

 

「ッ!」

 

 そうやって悪態をつきながら逃げるものの、どんどん迫ってきている死の影。そしてついに俺は・・・・・

 

 

「(ドゴ!)カハァ!!」

 

 

 追いつかれて後ろから衝突された。

 

 幸いにもイ級にあたった場所が良かったのか、もしくは衝突された際に何回かバウンドして横の方に吹き飛ばされたせいなのかどちらかはわからないが、そのまままっすぐに進む勢いで食われるということもなく、背負っていた鞄の中身が衝撃で俺の周囲にばらまかれる程度で済んだ。

 

「フゥ・・・・・フゥ・・・・・フゥ・・・・・・・」

 

 だけどもう逃げることはできない。さっき逃げれたのも偶然遭遇したタイミングで突進される中、足がつまずいて転んだから真上すれっすれを通過して近くの建物にぶつかったイ級が身動きを取れなくなったのが原因だったぐらいだからだ。

 

 イ級だけが突っ込んで行ったさっきと違って今回の場合、俺は建物際に追い込まれた上にさっきの衝撃で満身創痍だし、駆逐イ級の方はあれほどさまざまな建物を破壊したりしているのにもかかわらずぴんぴんした様子だった。

 

「ふざけんなよ・・・・今日この後俺雷香達に飯作んなきゃいけねぇんだよ!」

 

 死にたくない。その一心で俺は目の前にいるイ級(絶望)に向けて遮二無二に手元にあったものを投げようとした。

 

 ・・・・・・そして俺は偶然()()をつかんだ。

 

「!!」

 

 俺が右手で投げようとしていたものは戦極ドライバーだった。

 

 戦極ドライバーを見て俺は自分が昨日適当にこれと()()を鞄に放り込んだのを思い出した。

 

 周囲を見渡すと探し物はすぐに見つかった。俺は必死になって駆逐イ級と俺との丁度真ん中の位置に落ちているLS-07とナンバリングされているそれをつかむと同時に突っ込んできたイ級を横に跳んで躱した。

 

「まさか、これをマジで使うことになるなんてな・・・・。でも死なないためにはこうするしかない!!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 俺は戦極ドライバーを左手に持ち替えてから腰にかざした。

 

 ドライバーの両端から腰を囲うように黄色い帯が飛び出し腰に巻かれてドライバーの位置が固定される。そしてドライバー左部分についているライダーインジケーターが真っ黒な状態から俺からしたら見慣れたものに変わった。

 

 それを確認することもなく、俺は右手に持ったオレンジロックシードを前に掲げた。

 

「変身!!!」

 

<オレンジ!>

 

 叫びとともにオレンジロックシードを開錠すると、頭上にクラックが開き果実のオレンジを模した何かがゆったりと降りてくる。

 

 俺は開錠したロックシードをそのままドライバーの中心にあるくぼみへと取り付けたのち、開錠した際に上向きに開いた南京錠だとクルクル回る部分を下向きに押し込んだ。

 

<Lock On!>

 

 その掛け声とともにほら貝の音が大音量で鳴りだす。

 少しうるさいと思うが、ほら貝の音は他のトランペットがパンパカする待機音よりはうるささはマシなのである意味ありがたかった。

 

 そして俺はドライバーの右側についている小刀を下向きに押し込みロックシードを半分に割った。

 

<ソイヤ! オレンジアームズ 花道 オンステージ!!>

 

 ロックシードを割ることで、その製作者のセンスが多大に出ていると作中で言われていた音声が流れると同時に俺の視界は一時的に上から落ちて来たオレンジによって塞がれた。

 しかし、それもすぐにそのオレンジが展開して上半身を覆う鎧へと変わることで開かれる。

 

「ここからは俺のステージだ!!!」

 

 そんな感じで俺は画面の向こうの存在だったはずの鎧武(ヒーロー)に変身した。

 

 駆逐イ級は俺が変身してキメ台詞を言う光景をただ黙ってじっと見ていた。しかしすぐにこちらにまた突っ込んできた。

 

「ハッ!」

 

 俺はその突進をこれまで同様躱すのではなく、変身するのと同時に右手に現れたオレンジの一片を模した片手剣である橙々丸と右腰にマウントされている無双セイバーによる二刀流で下向きに突っ込むようにイ級のベクトルを操作するのを意識しながら受け流した。

 

 すると狙い通りイ級は俺の目の前の地面に食い込み、そして頭がはまったのか動かなくなった。

 

 その隙を無視していれば今度は自分が危ういかもしれない。そう思った俺は即座に再び小刀を一度振りおろし、

 

<ソイヤ!! オレンジ スカッシュ!!!>

 

「ライダーキック・・・・・ふん!!」

 

 某天の道を行き総てを司る男風に回し蹴りを決めてイ級を爆散させた。相手に蹴りをぶち当てた後にそのままノリで人差し指だけ伸ばした右手を天に掲げるのも忘れない。

 

「・・・・・・・・・・・フィ~。」

 

 少しふざけた後、後ろを振り向いてイ級が完全に消えたことを確認した俺はその場に変身解除するのも忘れてへたり込んでしまった。

 

「あ、空が明るく・・・・・。」

 

 空が先ほどまでと違って明るくなると変身が強制的に解除され、俺はいつの間にか近くに現れた中身がきちんと入った鞄とともにバスセンターの待合室にいた。

 

(え!?今の夢!?うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!)

 

 そう思って焦る俺が鞄の中を慌てて確認すると、鞄の中にはライダーインジケーターが鎧武のものに変わった戦極ドライバーがあった・・・・・。

 

 

 

隼人が焦っている丁度その時、崩壊した空間のなかで一人の女性が何やら写真が貼ってあるカードを片手に不適に微笑んでいた……

 




隼人が変身したときに鎮守府では・・・・

技術長妖精「おまえら~LS-07をいそいでげーとのいちへとはこべ!!」

妖精さんたち「「「「はい!!!」」」」

必死になって以前こっそり作ったミニコエール君のゲートにオレンジアームズが入ったLS-07と書かれた箱を運び、そしてゲートの上に置いた後ゲートを起動してオレンジアームズを隼人の真上に開いたクラックを使って転送していた。

はい、今のところ書いた通り人力ならぬ妖精力で頑張ってきます。

次回は明日投稿します。


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第3話 日常の破壊者

サブタイトルで今回出てくる物がわかる人はわかるかもしれませんが、今回はまだ変身しません。

それと言い忘れていたのでここで報告しますが、この作品で隼人が変身するのは

平成2期(オーズ、ウィザード、ゴーストを除く)と今回触りが出てくる奴だけです。

オーズはコアメダルを妖精さんクオリティでも製作は無理と判断したからで、ウィザードは隼人が一回絶望しないといけないからで、ゴーストは隼人が一度死ぬ必要があるからです。



 あの日、家に帰ってからすぐに俺は倒れてしまったらしい。

 

 ・・・・・・・らしいって言うのはその日の俺の記憶が家に帰ったところで一旦途切れてるからだ。

 

 

 

「・・・・・ちゃん!!お兄ちゃん!!」

 

 どうも呼ばれている声がして目を開けると、俺の目の前には今にも泣きそうな顔をしている雷香の顔があった。

 

 

「あ、悪い雷香。俺寝てたのか?」

 

 俺が体を起こしながらそう言うと、雷香は俺にヒシッとしがみついて

 

「家に帰ると同時に倒れたのよ!!ホントに心配したんだからぁ!!!」

 

 泣きながら俺をしっかりと抱きしめた。

 

 それに対して俺は

 

「悪い・・・・。ごめんな。」

 

 そんな簡単なことしか言えなかった・・・・。

 

 俺は雷香に抱きしめられながら泣かせたという罪悪感のあまり顔を直視できなかった。ふと周囲を見渡すと、今いるのは玄関とリビングをつなぐ廊下で雷香以外誰も家にいないってことに気付いた。

 

「・・・・・はぁ。」

 

 ため息をつきながら俺を抱きしめたまま今度は泣き始めた雷香の頭を俺は撫でていた。

 

 

 

 

 

 

 その夜、自分のベットの上でごろごろしていたが、ふと思いついてLIMEを起動したら通知OFFにしていた所属しているクラブのLIMEに新着メッセージがかなり入っていた。

 それだけだったら多分無視したんだろうけれど、すぐに他のメッセージに上書きされたとはいえ一瞬現れたその単語を俺は見落とさなかった。

 

「バスセンターに仮面ライダーが出た・・・・?」

 

 嫌な予感から背中に汗をたらしつつ、俺はグループのLIMEのトーク画面を展開させた。

 

  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

 -文芸倶楽部 休憩室-

 

「」 なぁ、仮面ライダーがバスセンターにいたという話を聞いたやつはいるか?

 

 ふがし そう言えばプイッターでそう言う話が上がってましたよね。

 

 Mac どうせ寝たとかそう言う系のデマなんだろ。ほっとけほっとけ

 

 バース こんな画像が出回ってんだけどこれってミラーワールドか?

 

 バース 画像(仮面ライダー鎧武が窓ガラスの向こうで黒い何かを切り裂いている)

 

 歩 なんでそこで鎧武なんだよ!!

 

 わらわら あ、部長。

 

 歩 そこは龍騎だろ!!!

 

 Mac さっぱりわから~ん

 

「」 同じくわからん

 

 バース 俺に言うな。俺も仮面ライダーはブレイドが最後だ!

 

 コロッケ どれどれ、気合の入ったコスプレイヤーさんなのかな?

 

 隼 どうも

 

「」 この写真っていつから上がってる?

 

 ふがし そう言えば、イーグル(※部内での隼人のあだ名)が仮面ライダー今もみてなかったっけ?

 

 バース 今日の夕方ぐらいからだな

 

  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

「・・・・・・・」

 

 血の気が引いた。

 多分その時の俺の顔色をうかがうやつがいたら真っ先に「大丈夫か!?」と聞いて来ただろう。

 その時の俺の顔はそれぐらい真っ青になっていた。

 

 今日の()()、そして()()。要するにあの写真に写っていたのが俺であることに間違いない。なんであの謎空間の中でその上バスセンターから遠く離れた場所で戦闘したはずなのにバスセンターの窓ガラスに映ってんだよとかいろいろと思うところはあるけれどただこれだけは思った。 

 

「認めたくねぇ~。」

 

 そう心の内をつぶやきながらでこの上に左手の甲が当たるように腕を置きながら横になっていたら気付いたらそのまま落ちて(寝て)いた。多分いきなりあんなことに巻き込まれたことからくる精神的な疲れもあったのに追い打ちをかけるかのようにそのことを知ったからだろう。

 

 

 次の日の朝。右手に握っていたスマホから流れるJUST LIVE MOREで目が覚めた俺の目の前には

 

「おはようございます。ていとくさん。」

 

 鼻頭に座るようにして俺の目と鼻の先(物理)にいる妖精さん(夕張そっくり)の超ズームだった。

 

 

「ファッ!?」

 

 驚きのあまり変な声も出てしまったけど、仕方ないと思う。

 

「ていとくさんががいむにへんしんしたのをかくにんしたのでそのえいきょうがでてないかしらべにきました。」

 

「それとこちらをどうぞ。」

 

 そう言って俺の鼻頭から退いた後、妖精さんが俺に差し出したのは

 

「ディケイドライバー・・・・・だと?」

 

 妖精さんに渡されたそれはディケイドライバーのバックル部分だった。

 

「はいそうです。はかいしゃでもきゅうせいしゅでもなんにでもなっちゃってください。」

 

「破壊者にねぇ・・・・。」

 

 前回の鎧武のこともあったので俺は即座にドライバーを腰にかざした。

 

「やっぱりこれも本物か・・・・。」

 

 腰にかざした結果、予想通りドライバーの両端からベルトが伸びてそれが腰に巻かれた。もちろんライドブッカーも自動的にベルトにかかった状態で出現していた。

 

「さて、一応ありがとうって伝えておくよ。・・・・・ってあれ?いない?」

 

 俺がベルトが腰に伸びたのを確認している間に妖精さんは置手紙を残して消えていた。

 

「『戦極ドライバーはデータ取りと調整がしたいので持って帰ります』・・・・?あ、そのためのこれなのね・・・・。」

 

 俺は腰からドライバーを外し、そしてそれを鞄に放り込んでからリビングに出た。

 

 

 

 

 通学に一時間ほどかけて大学に到着すると、大学の数ある校舎の内の本館の前になにやら人だかりができていた。

 

「お~い、なんでこんなに人集まってんだ?」

 

 人だかりの中に知り合いの早崎の顔を見つけた俺がそうたずねるとこういった返事が返ってきた。

 

「なんか、美人の女性たちが武器もって学生センターに立てこもってんだと。」

 

「は?なんで学生センターに立てこもり?」

 

 俺があほみたいな面をさらしてそう尋ね返すと向こうもよくわからないと返してきた。その時に俺はとてつもない疑問を覚えた。

 

「そう言えば警察いねぇな。いつからこんな状態なんだ?」

 

「俺もちょっと前にここに来たからよくわかんないけど、十数分ぐらい前らしいぞ。「おかしい・・・」へ?」

 

「なんで、そんなに経ってんのにパトカーが一台も来てないんだ?」

 

「「「「「「「あ・・・・。」」」」」」」」

 

 俺のその指摘で周囲で俺らの話を聞き流していた全員がこの異常な事態にようやく気付いたらしい。

 

「普通、警察が来るまでにかかる時間がどれほどかかったとしてもこの大学と近隣の警察関係の施設との距離からすれば十分以内には来てるはずだろ。なのに何でここに来てないんだ?」

 

「確かにおかしいよな。それに立てこもっている理由もわかんないから尚更だよな。なぁ、岡本はこの立てこもr「そいつが岡本か!?」・・・・・なんか、呼ばれてるぞお前。」

 

「あぁ。だけど俺なんかしたか?・・・ってずんずん寄ってきてこぇぇんだけど!?」

 

 俺の名前が出たとたん急に前方にいた奴がこっちを向いて俺の方にずんずんと血走った眼をして近寄ってきた。

 

「今すぐこっちにこい!犯人の女性たちはお前をご所望だ!!」

 

 とか言いながら。でもさぁ。

 

「いや、知らねぇからな!!そんな過激な女性たちと接点持った覚えもねぇよ!!」

 

 そう叫びながら俺はとりあえず逃げだそうとした。

 

「いいからこっちに来い!!人命がかかってんだぞ!!おいそいつを捕まえろ!!」

 

「ちょっ!ざっけんなぁーーー!!!」

 

 そう言いながら後ろに下がった俺の手をつかんだ奴がいた。

 

「悪い岡本。あの男・・・・なんか変だし、俺も命が惜しいんだ。」

 

 俺が最初に声をかけた早崎の友達の塙とかいうやつだった。

 

「よくやったぁ!!!」

 

 そして俺はそのずんずんと迫ってきた男につかまって荷物を担ぐように担がれた。

 

「うぉっ!?離せ!!!離せや!!!」

 

 その男に担がれている状態で俺は必死に暴れたが、そいつは後々聞いた話によるとバーベル上げる競技の家の大学のエースだった・・・・。そりゃ逃げれるわけねぇわ・・・・・。

 

 そして俺は

 

「オラ!!!お前らが要求していた男を連れて来たから俺の彼女を離せ!!!」

 

「うぉわぁーーー!!ゲフッ!!!」

 

 俺を担いでいたそいつのその言葉とともに俺は思いっきり自動扉があいている学生センターの中へ投げ込まれた。幸いだったのはその日は珍しく鞄を肩掛けにしていたのにも関わらず、その際に離すことはなかったことぐらいだろうか。

 

 そして投げ込まれた反動で数回床の上をバウンドした俺が見たのは真っ白い髪をして赤い目を持ち、そして黒いとげとげした変な鎧のようなものを着た肌が白い女性が一人。

 

黒い髪をしてとがった部分を持つ盾のようなものを多分さっきの男が言っていたのであろう彼女に突き付けている黒色のズボンを穿いている女性が一人。

 

最後に顔の一部を黒い甲殻で覆い、そして白い髪をして黒い服を着ている女性の計3人だった。

 

「ハハハ・・・・空母棲姫に戦艦ル級、その上よく知らない深海棲艦かよ・・・・・。」

 

 先ほど思いっきり投げ込まれた際にぶつけたのか脇腹が痛い上に現実(リアル)で姫級と遭遇するという状況に巻き込まれたせいでSAN値限界な俺は、顔をしかめつつそう言うことしかできなかった・・・・・・。

 

 

 

 




次回は書けたらです。
できれば来週中には更新したいと思ってます。

感想、評価をもらえると作者はキラキラします。


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巻の4 燃える鬼

どうも、かけました!!

ここからは完全新作ですよ!!(まぁ、0つけられて泣いたとは言わせない)

それではどうぞ!!



「ハハハ・・・・。ケホッ!」

 

 正直、こんなに絶望したのは小学校の時にけがしてサッカー出来なくなるんじゃないかってなったとき以来だ。

 

 じわじわと迫ってくる俺が知らない深海棲艦とそれまでにずっと盾を突きつけていた女性を放ってこっちに向けて腰を低くして構える戦艦ル級。

 

 それだけでも()()の人間が勝てるわけないって言うのにそれに加えて後ろの方には空母棲姫が控えているというこの状況で俺は乾いた笑いをするしかなかった。

 

「サテ、貴様ダナ。斥候トシテ出シタイ級ヲ撃破シタノハ。」

 

 俺のすぐそばまでやってきてその背中の方にあった砲口を突きつけた謎の深海棲艦がそう言った。

 

「フゥ…フゥ…そうだと言ったらどうするんだ?」

 

 痛みに耐えながら俺がそう答えると、それは

 

「コロス。」

 

 そう言って砲撃を俺に放とうとした。

 

(どうする、ディケイドライバーは鞄の中だ。でも、今この状況で鞄の中身を引っ掻き回してたらその瞬間砲撃で殺される!!どうする………どうすればいい!?)

 

 俺が必死にこの現状を打破しようと思考の海に沈もうとした

 

 …その時だった。

 

「マテ。ソイツヲコロスノハ私ヨ。」

 

 そう言って、さっきまで黙っていた空母棲姫が動き始めた。

 

「イケ。ソシテ沈メ…!」

 

 そう言うと砲口を俺に向けてその砲弾をぶっ放し、さらに艦載機を俺に向けて飛ばした。

 

 

「うぁ!!」

 

 しかし俺にとって運が良かったのか悪かったのか、空母棲姫は自分の近くにいたル級と俺に砲口を突きつけている謎の深海棲艦のせいでうまく照準を合わせそこなったようで、俺のすぐ右横の方を砲弾は通り抜けて行った。

 

 だが、直撃しなかったとはいえ砲弾は砲弾。その発射された勢いとか何やらで生じる反動も大きく。

 俺はそれによって吹き飛ばされて、最初に投げ込まれたときにぶつかったカウンターを飛び越えてその向こう側。要するに大学の事務員たちが普段仕事をしているコーナーに鞄とともに飛ばされた。それによって艦載機も俺が先ほどまでいた位置に砲撃を落としたが誰もいないのでただの空振りに終わった。

 

「チィッ!!」

 

 砲弾の弾着によって生じた煙幕によってしっかり黙視できない中、唯一空母棲姫のみがそのことに気付き、舌打ちをして再び艦載機を飛ばしたのだった。

 

 一方、吹き飛ばされたことで攻撃範囲から一時的に逃れることができた俺は

 

「グ・・・。(だけど、これで鞄を漁る余裕ができた!)」

 

 そう考えて血で染まって赤。そして煙の黒で染まった視界の中で鞄に手を突っ込んで目的のものをカウンターの陰に隠れた状態で探し始めた。

 

 幸い、煙による幕が切れる前にそれを見つけた俺は、それを腰に当てながら煙の中のおそらく空母棲姫がいるであろうあたりへと飛び込んだ。

 

 

~SIDE空母棲姫~

 

 

 空母棲姫は焦っていた。駆逐イ級が最後に寄越した情報が正しければあの男は謎の鎧を身にまとうことで艦娘しか対抗できないはずの深海棲艦を切り裂き、撃破したということになる。

 

 そこであの男が鎧を身にまとう前に決着をつけようとしたところでこれだ。あの男を仕留めたような確実な情報はなく、その上この煙幕で周囲の状態をはっきり把握することすらできない。

 

 そう焦る空母棲姫の耳に音が聞こえた。

 

<KAMENRIDE>

 

 ~♪テュ~ルルルルルル テュ~ルルルルルル テュ~ルルルルル♪~

 

 敵は生身の人間一人、こちらは深海棲艦のかなり錬度が高い艦隊であるために自分が優勢だという戦場と言う盤上の展開をひっくり返す切り札が切られる音(変身待機音)が。

 

「変身」

 

 そして先ほどまで追い込んでいた青年のつぶやきが聞こえるとともにようやく青年のいる場所に光りながら円を描く謎の文様が浮かんでいるのに空母棲姫は気付いた。

 

「クッ!艦載機!!!」

 

 青年が情報に会った通りに鎧を纏おうとしていると悟った空母棲姫は艦載機を発艦させて鎧をまといきる前に爆撃しようとしたが

 

<KAMENRIDE DE・DE・DE・DECADE!!!>

 

 …………その行動は間に合わなかった。

 

 その瞬間煙の一部を切り裂いて、10枚ほどの半透明な板がすさまじい勢いでこちらに跳んできた。そのうちの5枚は空母棲姫が飛ばした艦載機を切り裂き、残りの5枚が直接こちらにぶつかるようなコースを描いていた。

 

 砲撃は間に合わない、この状況は回避しかないと判断したル級とネ級、そして空母棲姫が彼女達からしたら不意に飛んできたそれを避けると、その板は今度はブーメランのように飛んできた方向に帰って行き、そして煙の中から現れたのは…

 

 

 

 

~SIDE隼人~

 

 腰にディケイドライバーを巻きつけてからドライバーのコアにあたる読み取り部をドライバーの側方にあるハンドルを引っ張ることで90度回転させる。

 そして左腰に出現したライドブッカーからディケイドの写真が描かれているカードを引き出し、ディケイドの写真が空母棲姫の方を向くように(とは言っても確信はないが)構えた。

 

 

「変身」

 

 カードを反転させてからドライバーの受け入れ口に投入する。

 

<KAMENRIDE>

 

 投入したカードは無事に読み込まれたらしくて、ドライバーのコア部分の中心にある透明なクリスタルを起点としてバーコード状の文様が空間投影されながら辺り一帯に待機音が鳴り響いた。

 

 ~♪テュ~ルルルルルル テュ~ルルルルルル テュ~ルルルルル♪~

 

 待機音を聞きながら俺は煙の向こうにうっすらと見える白い肌を目印にあの3体が大体あのあたりにいるであろうと予測を立て、そしてハンドルを今度は押し込むことで自らの姿を黒色で目だけが緑色の素体へと変身させた。

 

 その次にドライバーのコア部分から半透明な板が10枚回転しながら敵がいる方へと飛んでいき、半分ほどが何かを墜落させ、そして残りのもう半分は何も起きずに10枚全部がUターンして頭部に突き刺さった。

 

 半透明な板が頭部に突き刺さった途端それまで黒い姿だった素体のあらゆる箇所がマゼンダピンクへと染まり、そして俺は両掌を胸の前でサッサっとこすり合わせたタイミングでようやく煙が晴れた。

 

 そして敵をしっかりと再度視認した俺は右手を一度握ってその後に開くことで調子を確認し、大丈夫そうだったから指を空母棲姫に向けて突き刺して宣言した。

 

「通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ!!」

 

 ………タイミング間違ってると少し自分でも思ったけどね。

 

 そして俺はあるカードを寄越せと願った。

 

 それは確か、仮面ライダーディケイドの持っているライドブッカーは思ったカードを射出してくれる機能があったはずだと覚えていたからだ。

 

 すると、

 

 Boooooon!

 

 と言うバイクの排気音のような音声とともに俺が思ったライダーカードが目の前に射出された。

 

 それを俺は無言でコア部分の読み取り部の口を開けているドライバーにカードの一部が入るまで押し込んであとは重力でコア部分の中へと落とした。

 

<KAMENRIDE>

 

 ~♪テュ~ルルルル♪~

 

 そして待機音が流れはじめたのを確認することもなく、俺はハンドルを押し込んだ。

 

<KAMENRIDE HI・HI・HI・HIBIKI!!>

 

 ~♪リーン コォーーーーータァーン!!!♪~

 

 そのカードを読み込ませたとたんに体中を紫色の炎が多いつくし、そしてその炎を払ったときには俺の姿はディケイドのものではなくなっていた。

 

 平成ライダー6作目、体を鍛えて人外となり、人々を脅かす魔化魍と戦う音激戦士。

 仮面ライダー響鬼の能力を使えるディケイド響鬼へと再変身していた。

 

<ATTACKRIDE ONIBOU REKKA>

 

「ホっと。」

 

 目の前で行われた謎の現象に呆然としている敵を警戒しつつ、俺は背後から鬼棒烈火を取り出し構えた。

 

「さて、一丁(いっちょ)行きますか!!」

 

 俺は手を組み合わせ、そして気合を込めると、

 

<FORMRIDE HIBIKI KURENAI>

 

 今度は紅い炎が体中から噴き出して、姿が響鬼紅へと変わった。

 

「イッタイ貴様ハ何者ナンダ!!!」

 

 目の前で繰り広げられた3段変身を前にして恐怖を顔に浮かべたル級が叫んだが、俺はその言葉を無視して駈け出した。

 

(思い出せ!音激鼓を使わないあの技を!!)

 

 そして俺は頭の片隅から引き出した記憶をもとに音激棒をル級と謎の深海棲艦に向けて一本ずつ振り上げた。

 

<ATTACK RIDE 音撃打 灼熱真紅>

 

 叩いて叩いて叩いて叩いて叩いてただひたすらに音激棒に力を込めて叩きまくる。

 

 そしてひたすら叩いて叩いて叩き続けた結果、

 

「グァ!!」「グゥ!!」

 

 ル級は俺が叩き込んだ清めの音に耐えきれずに爆散。謎の深海棲艦の方は爆散することなくその場に崩れ落ちて黒い装甲のようなものがはがれ始めた。

 

 それを視界の端に置きながらさっきまでこちらに攻撃することもなく、ただ見ていた空母棲姫の方を睨み付けると、空母棲姫は一歩退いた。

 

()()()()()。」

 

 そう言ってゆっくり、特に意図はしてなかったけれど相手に恐怖感を与えるような歩き方で俺が近づいていくと

 

「ク・・・・クルナァ!!!!」

 

 恐怖のあまり恐慌状態に陥った空母棲姫はそう言って艦載機をこちらに飛ばしてきた。

 

「つぅっ!!」

 

 しかし俺がそれに向けて反射的に鬼棒を振るうことで火炎弾を飛ばす技を放つことで空中で爆破。俺自身や後ろで何かへと変化し始めている謎の深海棲艦には特にダメージはなかったけれども、その際に発生したとても黒くて濃い煙によって今度は俺が空母棲姫を完全に見失ってしまった。

 

 そしてそのまま不意打ちを警戒していたが、結局そのまま襲われることもなく煙が晴れたとき、そこには何もいなかった。

 

「…逃げたのか。まぁ、いいけど。それにしても俺の学生証拾われてたとはな。」

 

 俺が空母棲姫が逃げるときに落としていったのだろうか、さっきまで空母棲姫がいたところに落ちていた俺の学生証を拾ってそうつぶやいていると。

 

「……なぁ、あれ響鬼だろ。なんで現実に居るんだよ。」

 

「それにしても仮面ライダーって現実に居たんだな。」

 

「いや、その前にディケイドって聞こえなかったか?」

 

「お前らそれ以前にあの不幸な目に遭った奴の安否を心配しろよ。」

 

「いやはやすまん。」

 

 …と言った感じの会話を聞き取ったことで俺は学生センターの入り口付近で人が野次馬根性丸出しで集まっていたことを忘れていたことに気付いた。

 

「………やべ。逃げよ。」

 

<ATTACKRIDE INVISIBLE>

 

 俺は足元で気絶しているどうも髪の色が()()()()へと変わりだした謎の深海棲艦を抱えて透明になってその場から逃げだした。

 

 

 

 そして俺が逃げようと思って透明化した丁度そのときに、俺を投げ込んだ奴と塙は他の多くの奴らから袋叩きにされていたそうだ。

 理由としては一瞬俺が砲撃を受けた際に居た辺りの煙が晴れた時に血が飛び散ったような跡が見えたことで人殺しと紛糾されてやられていたらしい。

 やられる側もやられる側で自分がした行為がこんなことになるとは…と呆然としてやられるがままにされていたそうだ。

 

 まぁ、実際に避けた砲弾の衝撃波で額の一部が切れていたからそれなりに出血はしていたけど、それで飛び散った血と、吹き飛ばされたことで俺自身がその場にいなかったことで俺が爆散したと想像されたらしい。

 

 それを見て、そんなことを引き起こした女性たちに立ち向かうのは恐ろしい。だったら間接的にそれにかかわった奴に死を!って扇動した何者かのせいで見ていた野次馬たちの内の一部が暴走してそんなことを引き起こしたそうだ。

 

 その結果、俺を放り投げた人はもともとかなり体を鍛えていたからか打ち身程度で済んだらしいが、塙の方は鼻の骨が折れて鼻血を大量に噴出。そのまま呼んだらパトカーと違ってなぜか()()()来た救急車で病院へ緊急搬送されたそうだ。もちろんあんなことになってしまったので昨日の学校は休校になったらしい。

 

 次の日に額に絆創膏を貼って登校した俺にすさまじい勢いで詰め寄ってきた優斗が教えてくれた。

 

ただ、その際に「あの時一体どうなったんだ?」って聞かれたから

 

 「吹き飛ばされてその後は覚えてない。気付いたら図書館の裏手の道路だった。」

 

って言ってごまかしておいた。だけど、疑うような視線を向けられたから多分バレたな…って一人内心でどんな罵倒も受け取る覚悟を決めていたら………

 

 「………まぁ、そう言うことにしておいてやんよ。」

 

って言って優斗は俺の肩をたたいてその場を去って行った。

 

 

 それと結局、謎の深海棲艦は透明化して逃げてる途中で髪の色が完全に緑色になって肌の色も肌色になった。

 

 だけど目を覚ます様子はないし、さっきまでつけていたその黒い何かが完全に剥離して生まれたままの姿になってきていたから大学構内の人があまり来ない図書館裏の陰になっているところで俺は変身を解いて妖精さんを呼び出し、預けることにした。

 

 ……えと、なんというか、その……妖精さんに引き渡すときに見ちゃったんだけど…いろいろと大きかったです。はい。ごめんなさい。

 

 それと残念なこともあって、変身を解除して妖精さんたちにその謎の深海棲艦が変わった少女を引き渡している際に急にライドブッカーから龍騎とカブトとディケイド以外のライダーカードが飛び出したかと思うとそのカードに書かれている絵柄が燃えるように消えていってそのカードに関係する能力が使えなくなった。

 その場にいた妖精さんたちもその光景に唖然としていたから妖精さんたちからしてもこれは異常事態のようだ。

 

 勿論こうなった理由は不明だけど、何となくディケイドの第1話を連想する事態だった。

 しかし、ディケイドのライダーカードには何の異変も起きないのはわかるんだけど、龍騎とカブト。この2つの力が失われなかったのはなんでなんだろうか…。すべてのライダーの能力が使えなくなったディケイド1話と違うこの謎のイレギュラーな事態に俺は首をかしげたけれども答えがわかることは無かった。

 

 それにしても未だに空母棲姫を倒してない。と言うことはまたどこかで襲われる可能性がある。今度は別の姫級と一緒に現れるかもしれないからまた襲われるまでにすべてのライダーカードをディケイドのように使えるようになんなくちゃいけない。それか鎧武をとことん極めるかどちらかだ。

 

 家から大学に持ち込んだ絵柄の消えたライダーカードを手元で広げて見つつ、昨日行われた戦闘で得た不安を感じながら俺は無言で曇っている空を見上げたのだった。

 




これで、出す予定のライダーの半分は終了。
後は宇宙がやってくるのと、半熟卵だけです。

感想、評価を貰えると、先詠む人はキラキラします。

…やっぱり、本家の分岐するところまではこっちでも載せたほうがいいんですかねぇ…?


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第5話 ギャル娘は突然に

どうも先詠む人です。
前話でとりあえず実験的に書いてみた変身待機音が思いのほかアウトだったみたいなので消すか迷ってます。

それでは本編第5話をどうぞ。



 大学が空母棲姫を旗艦とした深海棲艦の勢力によって立てこもり事件の舞台となったあの日から数日が経った。

 

 あの日、ル級に人質にされていた女性は針のようなものを突き刺されたような跡があった以外は外傷は無かったため、その日のうちに病院から退院したがそのまま行方不明になったらしい。

 

 病院から自分の家に帰ってその後田んぼの横を目の焦点が合わないでふらふらしている彼女の姿が最後に見られた姿だったそうだ。

 

 その様子を見ていた人によると

 

「そう言えばあの子の目がおかしなことになっとったねぇ。あれは充血かとあの時は思っとったけど案外違ったのかもしれんねぇ。よぉよぉ考えたらあんな真っ赤になることなんてふつうないわよねぇ。」

 

 と言われるほど目が真っ赤に染まり、そして髪の色が薄くなっていたらしい。

 その人は立てこもり事件のことを自分の息子経由で知っていたので、彼女がてっきりそのショックで髪の色が薄くなったのかなと特に気にも留めず、声をかけずにそのまますれ違ったそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてその女性がいなくなっていることを含めてその関係のことを俺が知ったのは()()()の次の日だった。

 言い訳はしない。だけど、もっと早く知ってたらあの決着以外の方法でどうにかできたのかもしれない。そう思うと俺はいつも………

 

 

 

 胸をきつく握りしめてその思いを忘れないように誓っている。

 

 これが俺に課せられた罪で、それを背負いながらも握った剣で深海棲艦()を倒さないといけないってことを………。

 

 

 

 

 

 

 

「はい、ていとくさん。せんごくどらいばーのでーたどりがおわったのでもってきました。」

 

「あ、提督さん。ヤッホー!」

 

 俺がディケイドに変身して空母棲姫を旗艦とした艦隊の内、旗艦である空母棲姫以外の2体を倒した次の日に半日分の授業を終えた大学から帰ると机の上で戦極ドライバーを掲げている妖精さんたちと、ギャルみたいだと言うことで有名な艦娘である鈴谷が俺のベッドの上でスプリングの反動を用いて飛び跳ねながら俺が帰ってくるのを待っていた。

 

「…………妖精さんはともかく、鈴谷。お前安静にしてなきゃいけないんじゃなかったんじゃないか?」

 

 俺はその光景を見て半ばあきれながらそう言った。

 

 事実、鈴谷は昨日俺が妖精さんたちに託して鎮守府に送ってもらった後、夜の9時前までずっと意識不明だった。

 

 その上、深海棲艦だったことも影響したのか目覚めてから暫くの間意識の混濁が激しかったので明石の判断で医務室で絶対安静となっているというのを俺は昨日寝る前に画面の向こうでしんどそうな顔をした龍驤から聞いていた。

 

 どうも現実側(リアル)に向かったはずの妖精さんが、素っ裸の艦娘を急に連れて帰ってきたために鎮守府で大混乱が起こったそうだ。そんな会話を俺が龍驤としている間にも大淀が栄養ドリンクを飲みながら資料を必死になってまとめていたらしい。

 

 その話を聞いて、大淀に間宮のアイスをあげたい気分になったが、残念ながら家の鎮守府には大淀は着任していなかったためあげることはできなかった。

 

 一応、龍驤に

 

「『間宮のアイスを食べてもいいぞ。』って伝えておいてくれないか?」

 

 と、伝言を頼んだから多分慰安はできたはずだ。・・・・・・・・そうだと信じたい。

 

 

 ………話を戻すけれど、それで医務室で絶対安静になっていたはずの鈴谷がなんでここにいるのか。それが家に帰ってすぐに俺が思った一番知りたいことだった。それで尋ねてみたわけだけど、

 

「え?だって、起きたのはいいけど暇じゃん?だから服を着て鎮守府内をうろうろしてたら妖精さんが提督の所に今から行くって言うじゃん?だからそれをなんとなく見送りに行ってみたら鈴谷の目の前に門が開こうとしてたからそれをくぐってみたらこっちに来れただけだし。」

 

 そんな返事が返ってきた。

 ……要はこっちでドロップ(再誕)したから龍驤みたいに自由にこっちに来れるようになったってことか。

 

「あんまりこっちに来れるからって、頻繁に来るなよ。俺だって忙しいことがあるんだし、俺の親がこの部屋に入ってきたら大騒ぎになること間違いないからな。ってそうじゃない。なんで安静にしなかった?」

 

 俺はそう言いながら妖精さんから戦極ドライバーを受け取って、鞄を下して鈴谷がいるベッドの方に背中を向けて椅子に座った。すると後ろの方で鈴谷が

 

「え~!いいじゃん、鈴谷の好きにしたってさぁ~。」

 

 そう言いながら課題のレポートを書くためにパソコンを起動させた俺の背中に寄っかかってきた。

 

「……昨日の夜遅くまで意識が混濁してたくせによくそんなことが言えたな。(…背中に何やらやわらかい物が!!!!!おちつけおちつけこういう時って素数を数えればいいんだっけ?あぁ!!!もうやべぇ!!!)」

 

 結局、俺は口では普通の反応してたけど心の中では結構ヤバかった。彼女いない歴=年齢の俺にとって同年代位の女子に触れる機会とか壊滅的にあるわけなくて、そんな事態に免疫が無かったことが原因だと思う。

 

「ニヒヒヒヒヒ!提督さんも男の子なんだねぇ~。」

 

 俺が内心かなり焦っていると、鈴谷は俺のある個所を見てからそう言って俺から離れた。

 

「…………。」

 

 俺は恥ずかしさのあまり顔を真っ赤にして両手で顔を抑えて何も言えなくなってしまった。そんな俺の上半身と対照的にある個所は元気だったが………ってそのせいで恥ずかしいんだよ!!!

 

「それじゃ、鈴谷はそろそろ帰るね~。ちょっと提督のいてね~。」

 

 そう言うと、鈴谷は起動したパソコンの前でピクリとも動かない俺を椅子ごと動かしてパソコンの前に手をかざすと

 

「いつか、鈴谷とナニしちゃう?」

 

 そんな爆弾発言と、俺のほっぺにキスをしてから向こう(あっち)に帰って行った。

 

 暫くの間、俺は全く動けなかった。

 結局さっきのことのせいで課題のレポートを書く気分じゃなくなったから、俺はそのままパソコンの電源を落としてディケイドライバーと戦極ドライバーをリュックに入れ、オレンジロックシードを腰からぶら下げて町へと自転車に乗って繰り出した。

 

 学校に行く際にいつも使っている市営駐輪場に自転車を止めて、街の方にある大きめの古本屋になんとなく行ってみたら、劇場版仮面ライダー(ブレイド)MISSING ACEの初回限定盤が置いてあった。俺は財布の残金と値札に書いてある値段を見てからノータイムでそれを持ってレジに並んで購入した。

 

 買い物を済ませて店から出たら暗くなってきていたから家に帰ろうと、市営駐輪場から自転車に乗って川沿いの護岸工事をされてできた土手の上の道を走っていると、下の川から何かが川岸に上がってきたのに気付いた。それがたまに川を北上しているウェットスーツを着た人だったら特に何も思わなかったけど、その上がってきた人は一言でいうなれば()()だった。

 

「……‥何で。」

 

 俺はその場で一旦自転車を止めてつぶやいた。

 

「何で…………半裸の女性にヲ級の艤装がくっついてんだよ!!」

 

 俺が見たその女性は服をかなり危ない状態(見えちゃいけないところがぎりぎり見えてないレベル)まではだけさせていたうえにその頭にはヲ級の艤装が引っ付いていた。

 その光景を見てそう叫びながらリュックに入れていた戦極ドライバーを腰に巻きつけ、俺は自転車が倒れるのも知らずに川土手へと飛び降りた。

 

「変身!!!」

 

<オレンジ!>

 

 飛び降りながらロックシードを開錠してオレンジを模した鎧を頭上に召喚する。だけど、それを確認せずに俺は即座にロックシードをドライバーにたたきつけた。

 

<Lock On!>

<ソイヤ!オレンジアームズ!花道オンステージ!!>

 

 叩きつけると、間髪入れずにロックシードをドライバーについていたカッティングブレードで割り、頭上に召喚されていた鎧をかぶった。

 

 そして、着地した時、俺は仮面ライダー鎧武に変身していた。

 

「人間に深海棲艦が化けてんのかそれともヲ級の艤装が人間を襲ってんのかよく知らねえが、ここでつぶす!!」

 

 そして着地して膝を曲げている状態の元に戻るエネルギーを使ってそのまま無双セイバーを構えて女性のもとにそう叫びながら突っ込んだんだ。

 

 俺はその時、浮かれてたんだろう。現実であこがれの仮面ライダーに変身できるということだけに目を向けていて、肝心なことに気付いてなかった。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という簡単なことに全く思い当たってもいなかったんだ。

 

 そのまま突っ込んで行って、決着は簡単に着いた。

 俺が突き出した無双セイバーの切っ先はヲ級の艤装を簡単に貫いた。だけど、そのヲ級の艤装の下にあった顔は………

 

「え!?」

 

 ()()()()()()()()()()()()女性のものそっくりだった………。

 

 

 そして俺が空中で唖然として固まったその時に、その女性はまるで深海棲艦の姫級のように真っ赤に染まった眼を見開いて

 

()()()()()。」

 

 そう壊れたラジカセのような声で言うと、そのまま俺を拘束した。

 

 その瞬間、彼女の姿は大きく変わってさっきまでのはだけた服から黒いドレスのような服装へ。

 さらには額から角が生え、そしてこう言った。

 

「コレデ、オ前ハ私タチニ勝テナイ。ナァ、空母。」

 

 そう言うと、ドライバーを俺の腰から血力づくで剥ぎ取り、そして変身解除された俺を蹴飛ばした。

 蹴飛ばされた先にはいつの間に現れたのだろうか、空母棲姫がニヤニヤと笑いながら立っていて

 

「ソウネ。ソシテヨウコソ深海ヘ、戦艦棲姫。」

 

 そう断言した。

 

「そんな……。てことは…」

 

 俺がさっき見たことを思い出しながら振り返ると、空母棲姫に戦艦棲姫と呼ばれたあの女性は

 

「エエ。ナンテイイキモチ……。」

 

 と、うっとりとした表情でこちらを見ていた。しかし、顔はあの女性そっくりなままだった。

 

「人間を深海棲艦にしたのか!?」

 

 確信はない。だけど、もしそうだとしたら受け止めきれない事実への俺の叫びが自分たち以外誰もいなくなった川土手にただ響いたのだった………………。

 

 




最近、クソが付くほど忙しいので次回更新は未定です。

それと、サブタイトルにある規則性があることに気付いた人はいますかね?

感想、評価を貰えると先詠む人は喜びます。


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第6話 運命を切り裂く剣

 はい、所属しているサークルの部誌に載せる作品を書いてると親に言ってカモフラージュし、こっち書いてる先詠む人です。

 名前の所を見ればお察しですが免許の試験(卒業検定)はまだとおってません!!(号泣)

 お金が飛んでいく日々を見ております。(一回で1万以上跳んでくとかキツイわ~。)

 さて、それでは本編。行く前に前回のおさらいを…

 一つ、大学が襲撃されて、その際に人質になっていた女性は行方不明に
 二つ、重巡艦娘鈴谷がこっちに来たりしたりやりたい放題?
 三つ、大学が襲撃された際に人質になっていた女性そっくりな戦艦棲姫にドライバーをむしり取られた状態なのに空母棲姫迄あらわれて大ピンチ!!

 では、本編スタート!!



「人間を深海棲艦にしたのか!?」

 

 俺の悲痛な叫びが強制的に変身を解除させられた俺と、俺を拘束してドライバーを腰からむしり取った戦艦棲姫、そして余裕の表情を浮かべている空母棲姫以外誰一人いなくなった川岸で響いた。

 

「フフフ、ドウデショウネ。ソウカモシレナイシ、ソウジャナイカモシレナイワネ。タダ…」

 

 そう言うと、空母棲姫はフィンガースナップをした。それと同時に俺の頭の後ろに何かを突きつけられる感触とゴトリという重い音がした。

 

「ココデ死ヌアナタニハ関係ナイコトダケドモネ!!!」

 

 後ろにいるのは戦艦棲姫。そしてなんか俺の真後ろにそれとも違う何か異質な気配が存在していた。と言うことはつまりこういうこと(詰み)だろう。戦艦棲姫が俺を殺そうとすれば後ろに突き付けられたものから飛び出した何かが俺の頭をぶち抜き、そして俺は物言わぬ冷たいモノに成り果てる。……そうなるはずだった。

 

 急にターンテーブルの上に乗った読み取り部があるドライバーが俺の腰にまるで意志を持っているかのように巻き付き、俺が生身の状態であるのにあるカードが勝手に読み込まれさえしなければ。

 

<ATACK RIDE CLOCK UP>

 

 そのカードが読み込まれた瞬間、俺の時間は世界から切り取られた。

 

 これは死んだな。と思って目をつぶってはいたが、いつまでたっても頭に銃弾が当たる感触はない。おかしいと思ってふと目を開けると、そこは全体的に白みを帯びた世界だった。

 

「え……‥?これって……」

 

 頭の後ろの方にかかる重さから逃れるように体を動かしてその場から少し離れた場所へ移動した後、砲塔から自由になった首で周囲を見渡すと「殺った(とった)!!」とでも言いそうな表情を浮かべている空母棲姫とさっきまで俺に銃口を向けていた戦艦棲姫の艤装。さらには何か不思議そうな顔をした戦艦棲姫がそこにはいた。

 

 これで今俺がいるのは死後の世界だという線はなくなったと俺は確信した。そしてその時になって初めて腰にディケイドライバーが巻かれていることに俺は気付いた。

 

「俺は今クロックアップしてるのか………?」

 

 こんな現象を引き起こすのはあのときに消えなかったカブトの力、その中にあるアタックライドの一つクロックアップぐらいしか俺は思いつかなかったんだ。

 

 それを裏付けるかのように俺がつぶやいた次の瞬間

 

<CLOCK OVER>

 

 の音声とともにドライバーから1枚のカードが射出された。それを取って見てみるとそこにはカブトが残像を描きながら移動している写真が描いてあった…と言うのを確認した瞬間放たれていた砲弾の弾着によって周囲一帯に土ぼこりが発生、俺は反射的に飛んでくるものから顔を守るために顔を腕で覆い隠した。

 

「……ソンナ!!バカナドコヘイッタ!!!!」

 

 煙が晴れた時に俺は土ぼこりがひどすぎて全く動けなかったけれど、もともとの弾着点にはいなかったので空母棲姫たちが求めていたスプラッタ映像は展開されておらず、二人はあわただしく周囲を見渡してパニックに陥っていた。

 

「ケホケホッ…………ここだっつーの。」

 

 俺は土ぼこりでせき込んでからそう小さくつぶやいて前を見据え、空母棲姫と戦艦棲姫()との距離を見ながら拳を構えた。

 

 そして、その声を聴いて目の前でパニックになっていた二人はこちらをギョロリと向いた。

 

「ナッ!?貴様ドウヤッテソコニ!?」

 

 五体満足な俺の姿を見るなりそう言って戦艦棲姫は自分の艤装と俺を交互に見て困惑し、

 

「アリエナイ。我々ノ知覚速度ヲ越エルナドアリエナイ。」

 

 空母棲姫はうつろな目をしてそうつぶやき続けた。

 

 あの戦艦棲姫はあの時の女性なのかどうか、それに関しては未だに答えは出てない。これがお前の運命だかいうやつもいるのかもしれない。だけど……

 

「……ここでお前らをつぶさないと他の人も深海棲艦にされるかもしれないってことはなんとなくだけど思った。だからここでその流れを断ち切る!!!!」

 

 俺がその時心の底から思ったことをそのまま叫ぶと、腰に巻かれたディケイドライバーの右側に出現していたライドブッカーから1枚のカードが飛び出し、俺の前で静止した。

 

 そのカードは下の方にはあるライダーの名前が英語表記で書いてあったが、肝心のそのライダーの写真が最初からそこには何も描かれていなかったかのように白く抜けていた。

 

「あ……。」

 

 本来なら写真が無い(力がこもっていない)ために使えるはずがないそのカード。だけど、俺はそれを何かに導かれるかのように手に取った。その瞬間、絵柄の部分が空白になっていたカードにある変化が生じた。

 

 まるであの日に絵柄が消えた時の逆再生のようにどこからか現れた小さな光が集まり、絵柄のあった個所の上にモザイク状の何かを描き出した。そしてそのモザイク状の何かはカードに吸い込まれていき、次の瞬間そのカードに描かれていた写真がまるで最初からそうであったかのように復活した。

 

「ブレイド……。」

 

 俺の目の前に射出されたカードは平成仮面ライダーシリーズ5人目の主役戦士、仮面ライダーブレイドのライダーカードだった。

 

「貴様、何ヲ……何ヲシタンダァァァァ!!!!」

 

 俺がそのカードの異変にあっけにとられている間、空母棲姫たちの方にもある現象が起きていた。

 

 カードの方に意識を取られている俺に砲弾を放とうとした戦艦棲姫には雷を纏う人型のシカが襲い掛かかり、「ソレナラバ!!!」と艦載機を発艦して攻撃しようとした空母棲姫には朱いオーラを纏った人型のイノシシと上空を完全に自分のテリトリーとしている人型の大鷲が襲い掛かっていた。

 

 彼女たちは思うように攻撃することは叶わず、しかもその上自分たちは攻撃を一方的に受けるという本人たちからすれば屈辱的な事態に思わず空母棲姫は叫んでいた。

 

 その叫びでようやく空母棲姫たちの方を見た俺は笑ってしまった。なぜなら

 

「ハハッ!ボア(♠の4)ディアー(♠の6)。その上イーグル(♠の11)かよ。全部ブレイドの使うスート♠(マークが♠)のラウズカードじゃん。」

 

 実際、俺の指摘は間違ってない。

 仮面ライダーブレイドはトランプをモチーフにしたラウズカードを使って戦う戦士だった。

 そしてそのラウズカードに封印されている存在はアンデッドと呼ばれ、その名の通り不死であったからライダー(一部例外除くしか)倒してラウズカードに封印して無力化させることはできなかった。そして今、空母棲姫たちに襲いかかっているのは半透明ではあったけれどもそれ(ラウズカード)のスート♠に所属しているアンデッドたちだった。

 

 俺はそれを見て少し笑いながらドライバーにブレイドのカードを押し込んだ。

 

<KAMENRIDE>

 

 ドライバーにブレイドのライダーカードを押し込んだことで変身待機音が周囲一帯に響き渡った。

 

 俺はブレイドに変身した剣崎のように右手の甲を前に突出し、叫んだ。

 

「変身!!!!」

 

 と。

 

 そして叫びながら前に突き出した右手を甲から平へと反転させてから一気に引き寄せ、同時進行で左手を前へと伸ばした。そうすると、腰の方に右手は近づくからそのままドライバーのハンドル部分を押し込んで本体部分を90度回転させカードを読み込ませた。

 

<KAMENRIDE B・B・B・BLADE!!!>

 

 ドライバーの中心部に設置された透明なクリスタルの前にブレイドの紋章が現れ、次の瞬間俺の前に青色のベースの半透明な光のスクリーンが展開された。それと同時にそれまでの間空母棲姫たちを抑えていた半透明状態のアンデッドが光の玉となってスクリーンへと吸い込まれていった。

 

「ぅおおおおおおおお!!!」

 

 その光景を見た俺は叫びながらそのスクリーンを駆け抜けた。スクリーンを駆け抜け、くぐり終わった瞬間、俺の姿はディケイドでも響鬼でもましてや鎧武でもない、新たな姿になっていた。

 

 それを見て空母棲姫は驚愕に顔をゆがめて、

 

「オ前ハ一体何者ナンダ!!!」

 

 そう叫んだ。

 それに対して俺はライドブッカーをこの姿なら剣を使うのが妥当だろうと思いソードモードにしてサッと振ってから答えた。

 

「…………通りすがりの仮面ライダーだ!!」

 

 実際、この発端の時は通りすがりだったし今回はこのセリフを叫んでも問題ないだろう。また名乗るタイミング違うけど。

 

 そして俺はあるカードを呼び出し、読み込ませた。

 

<ATACK RIDE MACH!!>

 

 そのカードが読み込まれた瞬間、俺は高速で動き出した。

 

 そして一拍後、俺の姿は戦艦棲姫の後ろにあって戦艦棲姫はその場に赤い液体をまき散らしながら崩れ落ちた

 

「ナ・・・・・・。」

 

 そんな空気漏れのような声を残して。

 

「ナンダト…!!」

 

 俺はライドブッカーの切っ先を一瞬で俺が戦艦棲姫を切り倒したことに驚愕している空母棲姫に向けて向け、

 

「オレァクサムヲムッコロス!(俺は貴様をぶっ殺す!)」

 

 ……あれ?カッコつけて言ったはずなのにどうしてムッコロさんが……?

 

 そんな困惑を抱えた瞬間、空母棲姫はまた艦載機を俺の近くに落とそうと後ろの方に下がりながら発艦させた。

 

「……ッチ!!」

 

 俺はそれを見た瞬間、黄色い縁のカードを思い浮かべながら空母棲姫の方に向けて駈け出した。

 

 Booooon!!!!!

 

 バイクの排気音のような効果音とともに俺が思い浮かべたカードが俺の前に射出され、それを俺は勢いよくドライバーの読み取り部に叩き込みそのままドライバーのハンドルを押しこんだ。

 

<FINAL ATACK RIDE B・B・B・BLADE!!!!!>

 

 その音声が聞こえる中俺は飛び上がって

 

「ウェーーーーーイ!!!!!!」

 

 雷を纏いながら俺は艦載機と空中で交差しつつ、そのまま空母棲姫に必殺のキックを叩き込んだ。

 

 俺が空母棲姫を蹴り抜き、そのまま数メートル後ろで右ひざを立てた状態で静止すると、後ろの方で

 

「静カナ…気持チニ…ソウカ、ダカラ私ハ……」

 

 そう言い残して空母棲姫は爆散した。

 

「ハァ・・・。ハァ・・・。」

 

 変身を解除し、痛む体を必死に動かして先ほど斬り裂いた戦艦棲姫のもとにたどり着くと、戦艦棲姫は

 

「ダメナノネ……ウッ!私ハ………モット…………生キタカッタ!!!()()()()!!!!」

 

 そう慟哭してから目を閉じ、それから二度と目を開けることは無く、その死体も灰色の粒子となって空へと昇って行った。

 

「………。」

 

 俺は無言でその場に立ちつくしていた。

 

 黒い雲に染まった空が晴れて、夕焼けで赤く染まった空へと切り替わっていく。

 

 だけど、その空の色は俺には…………

 

 

 

 

 さっき俺がまき散らした戦艦棲姫(あの女性)の血の色のように見えた………。

 

 

 その後、俺がどうやって家に帰ったか覚えてない。ただ、気付いたら心配そうに俺の顔を見つめる雷香と玲奈の姿がベッドに入っている俺の視界の横の方にあった。

 

 二人は何も言わず、そして俺に何も聞こうとしなかった。

 

 ただ、その優しさが俺にはうれしかった………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の夜に俺は艦これをするつもりにもなれず、飯も食わずにそのまま布団に入っていた。だけど、いくら寝ようと目を閉じてもあの瞬間の戦艦棲姫の叫びが瞼の裏に浮かんで全然寝ることはできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 日付は変わって深夜2時ごろ。パソコンの画面の前に0と1で構成された渦が現れてそこから誰かが出て来た。

 

「ん?提督さん別に病気とかじゃないじゃん。」

 

 俺が顔を枕にうずめて息をひそめていると、出て来た誰かは明るい声でそう言った。

 

 ……声で分かった。俺の部屋にやってきたのは鈴谷だった。

 

 

 

 

「ねぇ、提督さん。多分寝てると思うからこれは鈴谷の独り言だと思ってね?」

 

 そう前置きをして彼女は語り始めた。

 

「……‥私ね。今でこそ、こうして艦娘の鈴谷として生きてるけど前は重巡ネ級だったんだ。」

 

 ……知ってる。あの事件の後、家に帰るまでの間にネットで深海棲艦の画像を片っ端から見て行ったらあの謎の深海棲艦が重巡ネ級だったってことを俺は知った。

 

「……って、もう提督さんは知ってるか。それでね、鈴谷想うんだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?って。」

 

 それは今の俺が抱えているものと一緒だ。と言うか、俺の場合は被害者を自分の身を守るためとか言って殺したただの殺人者だからその部類には当てはまらない……。

 

 そう思っていたのを見抜いたのかどうかはわからないけれど、鈴谷が俺の方に寄ってくるのが声の大きさがどんどん大きくなることで分かった。

 

「それでもね。鎮守府のみんなは鈴谷にやさしくしてくれるんだ。特に龍驤さんとかね。」

 

 そして最終的に彼女はベッドに寝転んでいる俺の顔のすぐ横のあたりに腰を下ろして

 

「だけど、そうされると返って日常のふとしたタイミングで思い出しちゃうんだ。重巡ネ級だったころに人を殺したり、小さい子供が残虐に人形を扱うように人を扱ったりした記憶を、そんでその時に聞いていた悲鳴をさ。」

 

「………‥。」

 

 俺は黙って聞いていた。多分、俺が清めの音を直接流し込んで倒した重巡ネ級から変化した鈴谷には当時の記憶がそのまま残っているんだろう。

 

「……提督さん本当は起きてるんでしょ?鈴谷が慰めてあげるからほら。こっち向いて。」

 

 そんなことを考えてたら鈴谷に俺が起きているのがバレた。

 

「……はぁ。なんでわかったのかは置いといてやるよ。ただ、その話を何で今俺にしに来たんだ?」

 

 俺は観念して顔を上げ、上半身を起こしてから鈴谷の横に座りなおした。

 

「雷ちゃんから聞いたよ。提督が自分は人を殺したって言ってたって。」

 

「え……?」

 

「今日ボロボロで帰ってきたと思ったら鞄を放り投げてそのまま倒れたらしいじゃん。」

 

「………。」

 

 確かにその辺を含めて全く記憶が無い。

 

「倒れたときに頑張って雷ちゃんたちが運んだんだって。それでその時にうわ言のようにずっと言ってたみたいだよ?『俺は人を殺した。』とか『ごめんなさいごめんなさい未来を奪ってごめんなさい』とか。」

 

「……。」

 

「それでね。雷ちゃんは自分じゃあどうしようもないって思って鎮守府に連絡したんだって。それを大淀さんが聞いて、みんなが誰がどんな言葉を提督/司令官さんに告げればいいのかって。」

 

「……‥それで?」

 

「結局、コエール君も完全に直ってないし、行くのは私か龍驤さんってなったんだけど。」

 

「ど?」

 

「龍驤さんが快く譲ってくれたんだ。それで何を伝えるかってなったんだけど、私が自分で考えたことを伝えるってことをみんなに言って納得してもらったよ。」

 

「そっか……。」

 

 俺がそうつぶやきながら顔をあげると、こっちを見ている鈴谷がいた。

 

「だから、重たいものを抱えた者同士傷のなめあいを…って思ってさ。」

 

 そう言うと、鈴谷は俺の唇をいきなり奪った。そして舌を俺の口の中で動かした後、口を離した。鈴谷の赤くなったほほと唇には俺とディープキスしたせいか、糸が引いていた。

 

「私におぼれてもいいんだよ?提督さん。」

 

 窓から入る月明かりの下で彼女は笑いながらそう言った。




 感想、評価を貰えると先詠む人はすごいうれしいです。

 あ、それとアンケートを活動報告でとります。内容は「リアルでもダメになりたくないなぁ……( ̄▽ ̄;)」の本ルート(https://novel.syosetu.org/68725/)の分岐するまでの内容を第1話の前に挿入するかどうかです。
 そちらの方の回答をどうかよろしくお願いします。一応同様の文章を1話の後書きにもこれから入れます。


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第7話 蹴破る扉

はいはい、おはこんばんにちわー。
学校の課題をするふりをしてこっちかいてる先詠む人です。
さてさて、前回の最後で鈴谷ルートか!?と反響が大きくてニヤニヤしながら感想返しをしてました。

それとアンケートを活動報告で実地中です。
現在はそれぞれ1票ずつとなっています。
期限としてはGW終了までとしたいと思います。
それでは本編をどうぞ。


「ん……?」

 

 瞼越しに感じる明るい光で俺の意識は覚醒した。

 

 瞼越しでもまぶしい日差し、頬を撫でる風、ザッパーンと音を立てながら飛んでくる飛沫、そして尋常じゃなく鼻腔を刺激してくる魚屋とかでよく嗅ぐ……………

 

 

 

 

 

 

「すげぇ磯くせぇ!!!」

 

 あまりの磯臭さに、ガバッっと言う擬音が聞こえそうな勢いで俺は身を起こした。

 

 しばしばする目を擦りながら周囲を見渡すと、そこは見慣れた俺の部屋ではなく、見知らぬ護岸だった。

 

 服装はいつも大学に行くときに着ているような半袖に薄手の上着を着て、ジーパンを履き、そして黒い運動靴を履いていた。

 

「ここ……どこだ?」

 

 俺は呆然としながら目が覚めるまでに起きたことを整理し始めた。

 

「昨日の夜はえ~っと、鈴谷が俺を慰めに来て……あ。」

 

 思い出した。

 

 俺は人を殺すことになって、そのまま部屋でひきこもっていたんだ。そしたら深夜にいきなり俺の部屋に現れた鈴谷が急に俺にディープキスをしてきたりしてから

 

「私におぼれてもいいんだよ?提督さん。」

 

 とか言って月明かりの下で誘ってきたんだ。でもそれに対して俺は

 

「そんなことはできない。これは俺が背負わないといけない罪だし、そんなことをして逃げても意味がないから。」

 

 そう言って断ったんだ。すると鈴谷は頬を膨らませて

 

「だったら~、そうせざるを得ない状態にしてあ・げ・る♪」

 

 頬を赤らめさせやけに艶めかしい目をしたと思った途端、俺を押し倒して首根っこをつかみ、そのままPCの前でデータの渦を作り上げたかと思うと

 

「それじゃあ、鈴谷の自室へレッツゴー!!」

 

「ちょッ!!おい!!!」

 

 って言う俺の悲鳴を無視して俺を引きずったままその渦に飛び込んだんだ。

 

 その際に俺は頭に強い衝撃を受けて意識を失って……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……で、今に至ってるよなぁ…。」

 

 そうつぶやきながら、一体全体ここはどこだろうか…そんな思いを胸にあたりを見渡していると、チャキっという金属音とともに背中に何かを突きつけられた。

 

「ここで何をしている。ここは軍関係者以外立ち入り禁止だ。」

 

 その上、こんな声までかけられてしまった。

 

「………」

 

 そんなこないだまで超が付くほど一般市民だった俺がどこからどう考えても俺が悪いこの状況で、抵抗できるわけがなく、軍の施設と言うことは後ろにつきつっけられているのも銃だと思った俺は無言で両の手を上へと上げた。

 

「そうか、無駄な抵抗をしないとはいさぎ良いな。ただし、取り調べのためにお前を一旦牢屋に入れさせてもらう。」

 

 その声とともに、上に上げた俺の両の手には金属の重みが付けられて、そのまま無理やり立ち上がらせられた………。

 

 立ち上がらされた時に振り返った俺が見たのは緑色の服を着て、銃身が長い銃を持った男と、その後ろで黒い服を着たおかっぱ頭の少女だった。

 

「え……?憲兵さんにあきつ丸?」

 

 俺がそうつぶやいた瞬間、俺の目の前にいる二人が放っている気配が警戒から殺気へと変わったのが分かった……。

 

 

 

 

「取り調べをさせてもらおう。」

 

 数分後、俺は牢屋の中へ放り込まれ、檻越しで取り調べを受けていた。

 

「貴様の名前と年齢。そして、何のためにこの()()()()()()に侵入していたのか答えろ。」

 

 と、憲兵さんが言うとそれに続いて、

 

「それとなぜ自分の名前を知っていたのかも教えてもらいたい……であります。」

 

 あきつ丸がそう言った。

 

「え?」

 

 質問に答えようと思って口を開こうとした俺はその質問に続いたあきつ丸の質問にどう答えればいいのかわからずまた口をつぐむことになった。

 

 なんでそうなったのかというと、俺からしたらあきつ丸は手に入れてはないとはいえ艦娘として既に実装されているのは知っている。だから知ってるだけなんだが……

 

「あ……。」

 

 と、そこまで考えたタイミングであることに気付いた。

 

 横須賀鎮守府、そして目の前に確かにいるあきつ丸。さらには昨日の鈴谷の行動。………もしかしなくてもここ()()()()()()()()()()と。

 

 そこまで考えたらあとは楽になった。そして俺は口を開いた。

 

「信じてもらえないかもしれないけど、俺はこの()()()()()()()()()()()。」

 

 その瞬間、憲兵さんの顔は怒りに染まったが、あきつ丸の方はなぜか顔色が真っ青になった。

 

「この、ふざけてるんじゃない!!!」

 

 そう言って、檻越しに俺を殴りつけようとした憲兵さんを止めたのは

 

「待つのであります!!!!」

 

 あきつ丸だった。

 

「貴君に聞きたいことがあります。」

 

 碇に身を任せて腕を振り上げていた憲兵さんの腕を実力行使で止め、俺の方を向きなおしてから彼女はそう言い、続けた。

 

「艦これ、ロリお艦、深海棲艦化。この3つの言葉に何か聞き覚えは?」

 

 俺はウソ偽りなく答えた。

 

「……大ありだ。艦これはともかく、ロリお艦は家の鎮守府の秘書艦の雷の異名だし深海棲艦化はこの目で実例を見たことがある。」

 

 ここで言う実例と言うのは玲奈のことだ。実際、玲奈(レ級)はもともと家の鎮守府の雷が轟沈後、深海棲艦の手によって深海棲艦へと改造された姿だった。

 体感時間で昨日倒した戦艦棲姫はまだ認めたくないって思いが強いからそれはカウントしない。

 

「フム…。わかったであります。それでは貴君が所属する鎮守府へとお送りするので教えてもらえないだろうか?」

 

「え~っと、呉の方にある『暁に勝利を刻む鎮守府』だ。」

 

「わかったであります。憲兵さん、この人の言うことは本当のようであります。先ほど聞き覚えがないか聞いたあの3つの言葉は、ある特殊な方法で運営されている鎮守府内で提督がグダグダ言い続けていると報告が上がっている言葉の一部であります。それがわかるということはこの人もその一人だということになるのであります。」

 

「となると、こいつ、いやこの人は……」

 

 そう言うと、憲兵さんは俺の方を見た。俺は肩をすくめながら

 

「一応、少将ですよ。と言っても、運がいいだけですけどね。」

 

 と言うと、憲兵さんは土下座しようとして、俺は必死にそれを止めることになった。

 

 

 憲兵さんに手錠を外してもらって、楽になった手首を回しながら俺は憲兵さん先導の元、元帥がいるという部屋に向かっていた。

 

「ふぃ~、どうにかなりそうだな。最初はどうなることかと思ったぜ…。」

 

 そう一人つぶやきながら俺が部屋の中へと案内されると、

 

「よく来たね。ただ、君は本当に異世界人なのかな?」

 

 軍の偉い人が良くつけてるのを見る金きらりんのすだれ?のようなものを着けたりしている歴戦の戦士を感じさせる男があきつ丸の横にいた。

 

「え?そうですけど、何か問題でもありましたか?」

 

 俺が部屋に入るなり突きつけられた質問の意味が分からずにうろたえていると、元帥さんは

 

「君が指揮しているといった鎮守府は存在しない。それで意味が分かるだろう?」

 

「は…………?ア゙?」

 

 と、唖然とした俺の視界に入ったのは俺が雷香達から聞いた日付よりもかなり前。具体的には半年ほど前の日付が書かれているカレンダーだった。

 

「どうしたのかね?」

 

 俺の一人百面相を見て元帥さんは俺にそう尋ねて来た。

 

「日付が…。」

 

「日付が?どうかしたのかね?」

 

 俺は自分の中でこの事実をかみ砕いて無理やり納得したのちこう絞り出した…。

 

「俺は…異世界人であると同時に……()()()()()()みたいです………。」

 

「「「は?」」」

 

 部屋の中に困惑の雰囲気が流れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「つまりこういうことか、君が指揮していた鎮守府は今から約数か月後に稼働し、その際に君の指揮する艦娘が自分のいる世界に来たと。」

 

「はい。」

 

「そして、深海棲艦側も同様に君のいる世界に世界を越えて進行してきたが、君はそれを倒したと。」

 

「はい。」

 

「その結果現れた艦娘にこちらに引きずり込まれて気付いたら時間と世界を越えていた。」

 

「完全にその通りです。」

 

「…………。とにかく、君はこれからどうするんだ?もともと君が指揮する鎮守府へ送ろうとしていたのにこれでは不可能じゃないか。」

 

「それに関しては面目ないです。とりあえずは地道に働いて俺がこちらに来た日まで生きていこうと思います。」

 

「とすると?」

 

「俺がこちらに来た日に自分の指揮する鎮守府に行ってそこで指揮を取ろうと思います。多分、半年ぐらいしか今の俺とその時の俺は違わないはずなので特に問題はないと思います。」

 

「そうか、それならば………。」

 

 そこまで言うと、元帥さんはうんうんうなり始めた。その時に俺は下の用を催した。

 

「あ、すみません。ちょっとトイレに行きたいんですけど良いですか?」

 

「いいでありますよ。私が案内しますので。」

 

「いや、漏れそうなので場所の説明受けたら全力で走って用を足してきます。」

 

「いや…、まあわかったであります。トイレの場所は………」

 

 俺はトイレの場所を教えてもらった後、部屋を飛び出して用を足しに行った。

 

 

 

 

 ぎりぎりだったが漏らさずに用を足した後、俺は歩いて先ほどの部屋に戻ろうとしていた、すると

 

「……や!!…や…て!!!!」

 

「ん?」

 

 廊下の途中で女の子の嫌がるような声が聞こえた気がした。

 

「なんだこの声?」

 

 俺はその声に疑問に持って、その声の元へと聞こえる音をたどって動き出した。

 

 

「……ニーソックスくれ!!」

 

「こいつう……な!黙ら……ろ!!!」

 

「…ヤァァァァ!!!」

 

「……は?」

 

 正直何だこれと思った。聞こえた野太い声、そして少女の悲鳴っぽい声が正しければ声の元で強姦か何かが行われてんじゃね?と思える内容だった。

 

 俺が声の元へと走り出すと、今度は絹を裂くような悲鳴が聞こえた。

 

 

「ここか?一体何がこの部屋で行われてんだよ!?」

 

 

 それはしばらくの間続いていたので不謹慎だと思うが、そのおかげで俺は声の元へとたどり着くことができた。しかし、その部屋にたどり着いたはいいけれど、なんで悲鳴が聞こえたのかはわからなかった。

 

 それで俺が部屋に入るのをためらっていると、部屋の中から

 

「「「「「「「犯させろぉぉぉぉ!!」」」」」」」」」

 

 野太い男たちの………最低なことをしようとしている声が。そして

 

「……助…けて。」

 

 小さな少女の助けを求める声が確かに聞こえた。

 

 俺はその声を聴いたとたん無言のまま全力でその扉を蹴破った。

 

 

 

 

 内側へと飛んで行った扉の向こうには服を脱いで汚いもんぶら下げたおっさんたちが沢山いた。そしてそれに囲まれているピンク色の髪の本来白露型の黒いセーラー服を着ているはずの少女が、ほぼ全裸の状態で抑え込まれており、その上右腕はありえない方向へと曲がっていた。

 

 その光景を見た瞬間、俺の中で何かがはじけた。

 

「てめぇら、何してんだ。」

 

 そう言いながら、蹴破った扉の上を歩いて室内へと入って行く。

 

 扉越しに何かを踏んづけた気がするが気にしない。

 

「貴様何者だ!!!!」

 

 太った男たちの内、少女の一番近くにいて、男たちの中で一番太っていた男が俺の方に銃を向けて言った。

 

 俺は迷わずに叫んだ。

 

「通りすがりの仮面ライダー(正義の味方)だ!!」

 

 この時に俺はようやく吹っきれていたんだと思う。

 あれほど、それまで人を殺したと迷って、うなだれて、自分の道を見失っていたのにそれを一瞬で見据えなおした。そしてそれは過去に自分がなりたかったものへとつながっていたんだ。

 

 叫ぶと同時に俺は少女を助けるために勢いよく踏み込んで突っ込んだ。

 

 パンッ!

 

 そして1発の銃声が鎮守府内に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『みんなが笑っていられるように僕は仮面ライダーになりたいんだ。』

 

 

 跳んでくる銃弾を見据える最中に一瞬見えた記憶の向こうで、幼い俺がそう言って笑っていた。

 

 

 本当に仮面ライダーになれるようになった今、それ(その夢)に恥じない生き方をするためにも俺は……、俺は……………

 

 

 

絶対(ぜってー)に君を助ける!!!!」

 

 そう叫びながら右斜めに飛び上がり、体を空中で回転させることで、当たっていれば致命傷となった銃弾を俺は避けきった。

 

「なんだtヘヴゥ!!!」

 

 俺が銃弾を避ける光景に唖然としていた銃をこちらに向けていたおっさんの顔に一度床に就いた足で加速した跳び蹴りをくらわせ、そのままの勢いで足を開いて近くのおっさん二人のアゴに蹴りを入れることでノした。

 

 そのまま床に一回着地して少女を抱え上げる。

 

「行くぞ!!」

 

 俺はその少女、白露型5番艦春雨をお姫様抱っこして元帥の元へと駈け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結局、あの後春雨ちゃんがどうなったのか俺にはわからない。

 なぜなら、元帥のもとにたどり着く寸前に俺はあの世界から消えたからだ。

 

 

 まず最初に春雨ちゃんの足の方を抱えていた右手が薄れて実態を保てなくなり、抱えていた春雨ちゃんが落ちそうになった。

 

 だから慌ててその場に止まり、春雨ちゃんを元帥の元へ行かせて俺は春雨ちゃんだけをとにかく助けようとした。だけど、春雨ちゃんは俺から離れるのを嫌がってその場を離れようとしなかった。

 

 だから俺は、

 

「約束する。いつかまた会えるから!だからそれまで生きるのをあきらめるな!!だから今は行けぇ!!!」

 

 そう言いながら俺の体は粒子となってその世界から消えた。

 ちゃんと言いたかったことがすべて伝えきれたかは………春雨ちゃん本人にしかわからない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「お兄ちゃん!!」」

 

 目を開けたとたん雷香達が俺に抱き着いて来た。

 

「ぇ?」

 

 やけに口元が苦しいと思ったら原因は酸素吸入器をつけられていたためみたいだ。周りを見渡すと、心電図が出るモニターに驚いた顔をして慌てて廊下の方へと駈け出した看護師、そして泣きそうな顔をした雷香と玲奈だった。

 

「どうした?なんで泣いてんだ?」

 

 俺が率直に思ったことを聞くと

 

「だって。お兄ちゃんさっきまで心肺停止状態だったんだからぁ!」

 

 と、雷香が俺の胸に顔をうずめながら言って

 

「お医者さんからもこれ以上手の打ちようがないってさっき言われたんだからぁ!!」

 

 と、玲奈が俺の腰にしがみついて言った。

 

「……マジで?」

 

 驚愕の事実に俺はそれだけしか言えなかった。

 

 

 

 今回の後日談みたいなもの。

 

 目を覚ました後に医者から聞いた話によると、今朝俺を起こしに来た玲奈が俺の部屋に入ったら俺が机のそばで倒れていたらしい。

 

 それで俺を起こそうとしたんだが、その時の俺の体は脈が不規則に乱れていて息をしていなかったそうだ。

 

 その状況でパニックを起こして叫んだ玲奈の声で慌てて母さんが俺の部屋に駆け込んできて、雷香は母さんの指示で救急車を呼んだそうだ。

 

 そして、俺が病院に搬送されて十数分後に俺の心臓は完全に停止して、電気パルスももう意味をなさなかったそうだ。

 

 医者は俺の蘇生をあきらめ、雷香達に「ご臨終です」と言って病室から出て行ったあたりで俺がいきなり息を吹き返したらしい。

 

 その結果、俺はいろいろと検査されるハメになった。

 

 別に何ともなかったし、オルフェノクになったというわけでもなかった。

 

 それについて明石さんに相談してみたら

 

「もしかしたら、提督の魂だけがこちらに連れて行かれてたのかもしれないですね。」

 

 と笑いながら言っていた。

 

 笑い事じゃねぇんだけどなぁと思いながら艦これの接続を切り、救急車を呼ぶまでの間にぐちゃぐちゃになった部屋の片づけをしていると、ライダーカードが落ちているのに気付いた。

 

「…?どうしてこれはいきなり戻ってんだ?」

 

 そのカードは仮面ライダー電王のカードだった。




感想、評価を貰えると先詠む人は喜びます。

因みに今回、春雨ちゃんが遭っている被害は、コラボを予定している作品がコラボした作品でその主人公が受けた被害です。
こちらでは隼人が助け出しましたが、あちらでは青葉が助けてました。
その回を読んでいて
「何この青葉、マジイケメン……」とか言いたくなったりしたのはナイショの話(笑)


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EPISODE8 遭遇

 どうも、おはこんばんにちわ~(ケロちゃん感)。

 最近、勉強してる途中で小説のプロットが出てきて全然集中できないから必死に書くということで頭の中を空っぽにしようとしている先詠む人です。

 今回はある娘が出ます。そして、その娘はコラボ予定にも出てる子で、その作品の作者さんからは事前にその設定を使わせてもらう許可をいただきました。

 それではどうぞ~。


 俺が鈴谷に艦これの世界に連れ込まれそうになった結果、心停止になるのと引き換えに電王の力が復活した。

 何を言ってるのかわかんないと思うが、それが現実だ。すげぇ(もん)を見たぜ……。

 

 

 

 

 

 

 

 …と、おふざけ(ポルナレフごっこ)はここまでにして、今日はみどりの日だ。

 そんで俺は今フラワーフェスティバルで盛り上がる町の中をすり抜けて高校時代の友人との集合地点へと向かっていた。服装はいつも大学に着ていく服装に、一応ディケイドライバーを入れた肩掛けカバンをかけている。

 

 雷香と玲奈にも一応聞いてみたんだけど、二人は小学校の友達と一緒にフラワーフェスティバルを回る約束をしているそうだ。

 

「それにしても、いきなり『カラオケ行こうぜ』って俺が雷香達とフラワー回るつもりだったらどうするつもりだったんだよあいつら。」

 

 俺はため息をつきながら、集合地点の公園へと入った。

 

 

 

 

 

 ………探すまでもなくあいつらはすぐに見つかった。と言うか、目立ち過ぎだった。主に多井の嫁艦。瑞鳳がなぜか中破姿でいたせいで。

 

「う~っす。(なんで瑞鳳は中破状態?)」

 

 と疑問に思いながら俺が片手をあげながら3人に近づくと多井が

 

「お、おかもっちん。あれ?雷ちゃんは?」

 

 と俺に反応してから聞いて来た。

 

「今日は友達と約束があるんとさ。んじゃ、さっさと行こうぜ。」

 

 俺がこれ以上目立つのは避けたいと思ってカラオケ店に行くのを促すと、

 

「そうだな。じゃ、おかもっちんの瑞鳳への自己紹介は店に入ってからにするか。」

 

 そう宇治原が言って俺たちは動き出した。

 

 多井の先導の元で近くのカラオケ店に向かって予約を取ってあった部屋に入った。

 

 そつがなく自己紹介を終えて、俺たちは歌う曲を選び始めた。

 

 いつものごとく現時点で合計16曲ある平成仮面ライダーの主題歌からどれを歌おうか悩んでいた俺に、宇治原と多井が肩をたたいて外に出るようモーションを示した。

 

 俺は少し不機嫌になりながら、二人に続いて部屋を出ることにした。

 

 

「で?なんだよいきなり。」

 

 俺は部屋を出てすぐに二人に尋ねた。すると宇治原が

 

「これ、おまえだろ。」

 

 そう言って少しスマホを操作した後、その画面を見せて来た。

 

「あ?………俺だな。どこからどう見ても。…………ってなんで俺の画像がPwitterで大量流出してんの!?個人情報保護法とか肖像権とかどこ行った!?」

 

 スマホの画面に映っていたのは”高校時代にコンビニの前でアイス喰ってる俺”、”中学時代に友達と町のゲーセンで遊んでいた俺”、そして極めつけは”川岸でたたずむ()()()()()()()()()()()()()()()俺”等の画像の数々がPwitterでモザイクもかけずに流れまくっている様子だった。

 

「それを見つけてさ。俺たち思ったんだよ。」

 

 多井がスマホの画面を見せられて驚いている俺を見て言った。

 

「最近話題になっている仮面ライダーって()()()()()?」

 

 俺は内心ギクっとしたが、その質問に対して

 

「さあな。なりたいと思ったことはあるけど成れちゃいねぇよ。」

 

 そう言って無理に笑ってごまかした。ただ、このままだと根掘り葉掘り聞かれて最終的にげろりそうな気がしたから

 

「ところで、ジョジョ。お前と瑞鳳の関係どこまでいったよ?な?な?」

 

 そう話をずらしてうやむやにすることにした。

 

「まぁ、一戦した………かな。」

 

 頬を掻きながらそっぽを向いた多井がそう言った瞬間、世界が止まった(実際には止まってない)。そして

 

「「このリア充がぁ!!!!!」」

 

 カラオケ屋の廊下で俺と宇治原の叫びが響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 俺達が叫んだことで慌ててやってきた店員にすごい怒られ、結局話をそらすことには成功したが、その場では…と言うだけだった。

 

 俺が気付いていないだけで、二人は俺が噂の仮面ライダーだと確信していたんだ。

 

 そして二人は瑞鳳が歌っている最中に俺のカバンへと手を伸ばし、その中身を覗くことに成功した。

 運悪く、その時俺は下のドリンクバーにジュースを注ぎに行っていて気付くことは無かった。ただし、彼らが鞄を開けた瞬間彼らの視界は真っ白になったが………。

 

 

 

 

 

 

 

「ん?スマホが…」

 

 スマホにいきなりメールが届いて俺はその中身を見た。

 

<From ちんじゅふ>

 

「ぶっ!!」

 

 俺はそのメールの宛先を見て噴き出した。

 俺はこれまでに”ちんじゅふ”というアドレスを登録した覚えはない。というか、なんでひらがな?

 

 そんな疑問を抱きながら、俺がメールを開くと

 

 To 提督

 From ちんじゅふ

 

 せんのうようせいからのおしらせです。(洗脳妖精からのお知らせです。)

 ていとくさんのかばんがみしらぬおとこたちにあさられていたのでわたしがじつりょくこうしでむりょくかさせました。(提督さんのカバンが見知らぬ男たちに漁られていたので私が実力行使で無力化させました。)

 げんざい、ずいほうさんににひかれていたりしてますが、どういたしましょうか?(現在、瑞鳳さんにひかれていたりしてますが、どういたしましょうか?)

 

 

 

「は??」

 

 訳が分からない。それがそのメールを読んだ時に感じた第一印象だった。しかし、よくよく読み直してみると、俺のカバンが漁られていて、それを洗脳妖精さんが実力行使で止めたとわかった…………っておい!?

 

 俺は慌てて、某白い乳酸飲料が入ったコップの中身がこぼれないように注意しながら階段を駆け上がった。

 

 そして、カ◯ピスがこぼれないように廊下を駆け抜けてカラオケルームに飛び込むとそこには…………

 

 口を半開きにしてあほみたいな顔をしている宇治原と、黄色い服を着てワンパンチで怪人を倒せるようになってしまったことで|何もかも空虚に感じるようになってしまった男《ハゲマント》のように感情が全く見えない表情になってしまった多井がいた。

 

 

 

「………‥何が起きたんだ…………?」

 

 俺のそのつぶやきに答えたのは瑞鳳に抱かれていたなぜかグラサンをかけた洗脳妖精さんだった。

 

「きみつほじのためにいぜんていとくのおうちでみさせていただいた『めん・いん・ぶらっく』とやらにでてきたきかいをさいげんしたものをつかってぱしゃっと。(機密保持のために以前提督のお家で見せさせていただいた『メン・イン・ブラック』とやらに出て来た機械を再現した物を使ってパシャッと。)」

 

 そう言いながら洗脳妖精さんは妖精サイズの銀色の筒を取り出した………って、ヲイ。

 

「それって、エレクトロバイオメカニカルニュートラルトランスミッティングゼロシナプスレポジショナー。略称ニューラライザーじゃねぇか!!!」

 

 なんでそんな長い名前を覚えてたのかは自分でも分かんないけれど、今洗脳妖精さんが持っているそれはメン・イン・ブラックで記憶を消してすり替えるために使う機材だった。

 

「じえいのためです。(自衛のためです。)かれらはそのためのぎせいとなったのです。(彼らはそのための犠牲となったのです。)」

 

 洗脳妖精さんはドヤ顔でそう言った。

 

 俺はそれに対してため息をつきながら

 

「そんなことよりもお願いがあるから後で部屋に来てくれないか?」

 

 と、伝えてからロックシードを開錠することで瑞鳳のすぐ横にクラックを開き、洗脳妖精さんを鎮守府に引き返させた。

 

 洗脳妖精さんを帰らせてから俺はちょっとの間、考え込んだ。

 

「………よし。内容は決めた。」

 

 もし洗脳妖精さんが持っていたあれが俺のツッコんだ通りニューラライザーなのならすりかえる記憶を言えば二人は元に戻るはずだ。

 

「お前らは期待を込めて鞄の中を見たが、()()()()()()()()()()()()()()()。」

 

 俺が耳元でそう言った途端に

 

「「はっ!?」」

 

 二人の顔は普通に戻った。

 

「よ~し、じゃあ歌おうぜ!!」

 

 その様子に少しホッとした俺がそう言った瞬間に、

 

「ちょっと、こっちに来てくれない?」

 

 今度は瑞鳳がそう言って俺を手招きして外へと連れ出した。

 

「……なんだよ?何かあるのか?」

 

 俺がまたまた歌えないことに少し不機嫌になってそう瑞鳳に尋ねると、彼女は

 

「あの妖精さんって一体何者なの?私見たことないんだけど。」

 

 そう言って俺に質問を返してきた。

 

「質問を質問で返すなよ………。…ったく、あれは洗脳妖精さんって言()って家の鎮守府に俺の知らない間に居た人を洗脳したりすることができる妖精さんだよ。」

 

 俺は最初質問を質問で返してきた瑞鳳に不満をぶつけたが、そうしたら上目づかいで泣きそうな顔をしながら俺に顔を近づけて来たのでさすがに答えないわけにはいかなかった。

 

 …………さすがに女の子の涙にはライダーでも勝てんよ………。それで、俺がそう答えると瑞鳳は

 

「ふ~ん。」

 

 と、言って舌をペロッとしながら俺から離れた。それを見た瞬間、俺は

 

(あ、こいつ絶対悪女になるわ。ジョジョも災難だな。)

 

 と内心手を合わせながらそう思った……。

 

 

 

 結局、外はお祭りだっていうのに6時ごろまで歌い続けて俺たちは解散した。しかし、俺からしたら()()()()が一番忙しくなることになった。

 

 

 

「………?あれ?あいつらまだ帰ってなかっ………!!」

 

 俺が鞄を肩に下げてカラオケ屋から駐輪場に向かっているさなかに飲み屋街の途中にある公園を通り抜けていると、公園内に出店しているリンゴ飴の屋台の前で仲良く並んでリンゴ飴を食べている雷香と玲奈。そして玲奈のように真っ白で、()()()()()()()()()()()がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「北方棲姫!?てか、なんであいつらあんなに和やかに一緒にいんだよ!?」

 

 それを認識した瞬間、俺は慌てて雷香達がいる方へと駈け出した。

 

 

 俺が近づくと二人は俺のことに気付いたみたいで

 

「「あ、お兄ちゃん!!!」」

 

 そう言うと、こちらに向かって北方棲姫の手を引っ張りながら仲良く手をつないで走ってきた。

 

「あ?」

 

 俺はその時点で内心

 

(あれ?おかしくね?なんで受け入れてんの!?それ姫級の中で結構ヤバい奴って聞いたことあるよ!?)

 

 こう思いながら近づいた。

 

 

 俺と3人が合流すると、雷香が

 

「あのねお兄ちゃん。友達ができたんだ。ほら私の後ろに隠れてないで前に来て!!」

 

 そう言って俺の前に自分の後ろでおどおどしていた北方棲姫を引っ張り出した。

 

「ドウモ、ホッポデス。……アノ………。ソノ………。」

 

 北方棲姫は自分のことをほっぽと名乗った。ってことは雷香達を騙してこちらの世界で殺すつもりなのか?と俺はそう穿った予想をして何か言いづらそうにしている彼女を遮って

 

「………北方棲姫だろ、お前。なんで俺の妹たちに近づいた。」

 

 ドスを効かせながらそう言った。……が、

 

「お兄ちゃんのバカ!!!この子は普通の深海棲艦じゃないの!!!」

 

「は?」

 

 玲奈が怒って俺に詰め寄ってきた。

 

「何で?深海棲艦って基本的にみんな敵じゃん。じゃあ、その北方棲姫は一体「元々この世界の人だとしても?」……へ?どういうことそれ?」

 

 急に知らされた真実に困惑する俺を見て玲奈は説明を始めた。

 

 曰く、北方棲姫はこの世界で艦これをしていた人間の魂が宿っている。

 曰く、北方棲姫を取り込んだ深海棲艦は強大な力を得ることができる。

 曰く、深海棲艦側は彼女(北方棲姫)のことを狙うべき存在としていくらでも覚えているが、艦娘側はもし深海棲艦に北方棲姫が取り込まれたりなどした場合関連するすべての記憶等を失う。

 などなど…。

 

 

「……………ってことは玲奈がそのことを知っていたのはレ級に改造されたときにその辺の知識を無意識のところインストールされていたのをさっき思いだしたからで……」

 

「うん。」

 

「そこの北方棲姫は自分の最後の記憶が正しければ縮毛湾泊地サーバーに着任していた提督だって言うんだろ?」

 

「ハイ……。目ヲ覚マシタラ海ノ上デ、深海棲艦ニ拾ワレテ食ベラレソウニナッテ、慌テテ逃ゲテタラ気付イタライツノマニカコッチニ来テタンデス。」

 

「マジかよ…。」

 

 俺からしたら北方棲姫は深海棲艦の姫の一人で、港湾さんの娘さんと言う印象しか無かった。

 

 だけど実際は違って、北方棲姫は元人間が艦これの世界に投げ込まれたときに生まれる存在のようだ。しかも、深海棲艦側からは簡単に経験値を大量に手に入れれるはぐれメタル感覚で取り込まれ、深海棲艦の進化につながってるみたいだ。

 

 それを聞いた俺には二つの選択肢が与えられた。

 

 一つ目はとにかく、人気のない場所へ連れて行って北方棲姫(この子)を倒す。

 二つ目はこの子を家の鎮守府に送って守る。

 

 この二つだ。

 一つ目を選ぶのは簡単だ。艤装を展開していない深海棲艦はライドブッカーで斬り裂くだけで終わらせれる。

 だが、それって正しいのか?俺はそれが引っかかって二つ目の選択肢を考え出した。

 

 二つ目はこの子をまな板か鈴谷に頼んで家の鎮守府に送ってもらえば家の鎮守府で保護できるかもしれない。ただし、こっちももし大本営の査察か何かが入れば家の鎮守府が詰む。

 

 俺は迷って迷って、迷った。

 

 そんな時だった。

 

「ミィツケタワァァァァア!!!!」

 

 絶叫のような声が俺達が固まっている公園の隅とは真逆の方から聞こえてきたのは。

 

「!?」

 

 俺はその声に即座に反応して周囲を見渡した。すると、赤い波動が目の前に迫ってきてそれを通り抜けたと思った瞬間、俺と北方棲姫以外の人間は誰もいなくなっていた。

 

「ここって……まさか。……ッ!!」

 

 俺はこの状況に見覚えがあって周囲を注意深く警戒していると、背中の方に居る北方棲姫のそばに殺気を感じた。

 

 反射的に北方棲姫を腕の中に抱えて跳ぶと、さっきまで北方棲姫が居た辺りにいきなり大きな口が現れて空を丸かじりした。

 

「な!?あれは!?」

 

 俺にはその艤装に心当たりがあった。というか、あの時倒したはずだった。

 

「なんで空母棲姫の艤装があるんだよ!!!」

 

 俺はそう叫びながら顔を赤く染めている北方棲姫を一旦下ろし、カバンからディケイドライバーを取り出して腰に巻き付けた。

 

 俺は急いで変身しようとしたが、しかし敵の行動は大規模なうえに俺の一手先を取った。

 

「ワタシノ提督ゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!」

 

 空母棲姫の艤装の方からその叫び声が聞こえたと思ったら次の瞬間、どす黒いオーラが空母棲姫の艤装を中心に集まりだし、そして…

 

「………でかぁ!!!」

 

「デカァ!!!」

 

 高さ5メートルほどの巨大な空母棲姫が出現した。俺はその異常としか言いようがない光景に唖然として変身するタイミングを逃してしまい、北方棲姫もその光景に驚いて固まってしまった。そしてその一瞬がすべてを分けた。

 

「ワタシノ提督ヲォォォォォォォ!!!!!」

 

 空母棲姫(巨大)はそう叫びながらかろうじて認識できるスピードで北方棲姫へ手を伸ばし、俺が彼女を抱えて移動する前に捕獲した。

 

「イヤァァァァ!!!!!」

 

 そしてそのまま恐怖で泣き出した彼女を自分の艤装の中へと放り込もうと口を大きく開いた艤装の中へ落とした……………

 

「やめろぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

 俺は北方棲姫が捕まえられたと気付いた時点で駈け出していた。

 

 しかし空母棲姫のスピードの方が圧倒的に早く、北方棲姫が艤装の口の中へ入るまで残り3メートルと言う時に俺はまだ空母棲姫(巨大)から5メートル離れた位置にいた。

 

 

 

 

 このままじゃあ間に合わない。

 

 それに助けようとしている対象が深海棲艦であること。

 

 それがこれまで倒してきた敵であり、自分がしようとしていることは矛盾しているということ。

 

 理屈じゃわかっていた。だけど、俺は目の前で喪われそうになっている命を認めることができなかった。そして、こんな冗談抜きで詰みゲーな状態でも俺は助けようとするこの自分の気持ちをあきらめることはできなかったんだ。

 

 

 

 

 

(諦めたくない!もっと早く!!もっと!!!)

 

 

 そう思った次の瞬間、俺の時間はあの時(VS戦艦棲姫&空母棲姫)と同様に切り取られ北方棲姫の落下のスピードもほぼゼロになった。

 

 

「間に合えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」

 

 

 そう叫びながら俺は北方棲姫のもとに身を投げ出した。

 

 

 

 そして北方棲気に障った瞬間、俺の時間は周囲の時間と同様のものに変わり、そのまま俺は空母棲姫(巨大)の艤装の中へと一緒に落下していった………。

 

 

 

 

 

 




 さて、次回あたりでサブタイトルの規則性に気付く人もいるんじゃないですかね?(EPSODE8と9は前後編構成の名前(サブタイトル)が違うだけ)
 それは先詠む人からの問題とさせてもらいます。解答は感想板でどうぞw(アンケートじゃないから多分規約に引っかかんないはず…はず)。

 今回、使わせていただいた設定はハルバーの懐刀さんが連載している”北方の白き少女~Heart of the admiral~(英語の所のつづりあってるかな?)”の北方棲姫についての設定です。

 感想、評価を頂けると先詠む人はすごいうれしいです。

それでは次回をお楽しみに。
重い荷物を枕にしても首が痛くなるだけだと思う先詠む人でしたw。



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EPISODE9 笑顔

お知らせがあります!!
名前の通り、ようやく………ようやく卒業検定通りました!!!!

これで、あとは筆記試験に合格すれば免許ゲットです!!

それでは前回の続きを合わせてどうぞ!!


「………っつー!!!」

 

 背中に走った強すぎる痛みで俺は目を覚ました。

 

 最初に俺の視界に入ったのは白い天井。そして黒く染まった空が見える窓だった。

 

 体を起こして周囲を見渡すとどこかの木造の建物の中の廊下に俺は横たわっていたみたいだ……ってあれ?

 

「なんで、俺空母棲姫の艤装の中に飛び込んだはずなのにこんな()()()()()()にいるんだ?」

 

 はっきり言って今の状況は異常としか言えなかった。

 俺は空母棲姫の艤装の中に北方棲姫を助けるためとはいえ結果的に飛び込んでしまったが、その中がこんな風に板張りの建物のようになっているとは到底思えなかったのだ。

 

「一体何がどうなってるんだ………?」

 

 そうつぶやく俺の言葉に答えてくれるものは誰もいない。答えは自分で探すしかなかった。

 

 

 

 

 

 得体のしれない一本道の廊下をただ一人、周囲を警戒しながら歩く。

 するとしばらく行った先に扉が見えた。

 

「あれもあれで胡散臭いんだけど…。というか()()()()()()()()()()()()()()?あれ?なんでだっけ?」

 

 俺はいきなり現れたその扉を開けることに自分の記憶の混乱も原因で躊躇していた。すると中から

 

「「「ココニズットイテクダサイネ……ワタシノテイトク…。」」」

 

 そんな二重にも三重も重なったような声が聞こえたと同時に。

 

「くっ!うぅぅ。」

 

 と言う声の感じからして雷香達ぐらいの年齢の女の子の苦悶の声が聞こえた。

 

 ただ、その声に俺は聞き覚えが少しあった。だけど、どこでこの声を聞いたんだろうか…?

 

 そんな感じで頭に霞がかったような胸糞の悪い気分を感じていると、無意識のうちに俺の手はその扉のノブを握りしめ、勢いよく開いていた。

 

 すると中に居たのは

 

「「「ナ!?ナゼキサマガココニ!!」」」

 

 そう驚いた顔で二重三重に重なった声で叫ぶ喪服のような黒い服を着て顔を黒いベールに包んで隠した女性と、

 

「うぅぅぅぅぅぅぅ!!!!あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

 先ほどまでは苦悶の声をあげていたのが、いつの間にか絶叫へと変わっていた喪服の女性によって隠すように顔を手で覆われていた真っ白い軍服に身を包んだ少女だけだった。

 

 少女は提督の机セットのようなものの椅子に座っていて、それに覆いかぶさるかのように女性が後ろから顔を手で覆い隠していた。

 

 その子と女性の手越しとはいえ目があったような気がした瞬間、俺の頭にかかっていた霞が一瞬で晴れ、ある少女(北方棲姫)と目の前で苦しんでいる少女の姿が重なった。

 

 

 

 

 

 

 その頃、隼人と北方棲姫を飲み込み力を得た空母棲姫(巨大)は己が存在する空間に大量の人間を取り込み、遊び感覚で殺していた。

 

 だが、それも長くは続かなかった。空間に取り込まれて死んでいった人たちの血でできた海の中で恍惚の表情を浮かべていた空母棲姫(巨大)の顔が不意にゆがんだ。

 

 丁度その瞬間、隼人は空母棲姫の艤装の中の世界で謎の女性と少女の二人に遭遇していた。

 

 

 

 

 

「まさか、お前がそうなのか…?」

 

 俺は一人小さくつぶやいてから女性を睨み付けた。

 

「その子から手を離せ!!」

 

 俺は叫びながら女性に向かって拳を振りかぶりつつ距離を詰めるために机の方に飛び込んだ。

 

「クッ!!」

 

 そう吐き捨てるかのように小さく叫んだあと、女性は少女の顔から手を離さずに無理矢理その場を移動しようとした。

 

 だが、目の前にいる(隼人)それ(離脱)を簡単に許すような奴ではなかった。

 

「ぅおらぁぁぁ!!!」

 

 俺はそのまま机の上でさらに体勢を整えてから女性の顔を右手で殴り飛ばし、殴っていない左手で少女のこちらに伸びてきた手をしっかりとつかんだ。

 

 殴り飛ばした際に、喪服の女性の手は少女の顔から離れ、その下にあった赤い目をした美少女と俺は今度はしっかり目があった。

 

 その瞬間、世界がひっくり返りすべては真っ白に染まった。

 

 

 

 

 

 

 

「っ!!のわぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「キャァァァァァァァァァァ!!」

 

 真っ白に染まった視界が元の色を取り戻したとき、俺は北方棲姫の手をつかんでかなりの高さを舞っていた。

 

「ウググググググァガガガガギギギギギゲゲゲゲゲ」

 

 あまりの急展開に困惑しながら空中を舞っている間に、いきなり何の音なのかよくわからない音が周囲に響き渡った。

 

 

「「!?」」

 

 二人揃って反射的に音の鳴っている方を見ると、それ(音源)は体の一部が崩れ始めている空母棲姫(巨大)の口元からだった。

 

「ワタシノ提督ヲカエセェェェェェェェェェェェ!!!!!!!」

 

 半分ほど崩れた体でこちらに先ほどまでとは比べ物にならない遅さで手を伸ばしつつ、空母棲姫(巨大)はそう叫んだ。

 

「させっかよ!!」

 

 しかし、その手が届く前に俺たち二人は着地して俺が北方棲姫を抱えてその場から距離を取るように後ろに跳んだ。

 

「アノ・・・アリガトウ。ワタシヲ助ケテクレテ。」

 

「ん?」

 

 俺が後ろに跳んでから距離を置き、抱えていた北方棲姫を下ろすと顔を真っ赤にさせながら北方棲姫はそう言った。ただ、俺はたとえ相手が深海棲艦だとしても泣いてるのを見たくないとだけ思って無意識に行動した結果ああなっただけだから恥ずかしかった。

 

 俺が頬を掻きながらどうしたもんかと思っていると、北方棲姫はこちらに向けていい笑顔で

 

「ホントウニアリガトウ!!」

 

 と俺に言った。

 

 そしてそれを見て俺は

 

(やっぱ、誰かの。特に子供の笑顔っていいよな。これを守って行かないとさすがに兄として、いやそれ以前に大人としてダメだよな………。)

 

 サムズアップを顔の高さを合わしてした後、そう思いながらこちらにゆっくり迫ってくる空母棲姫(巨大)に北方棲姫をかばうような形で対面した瞬間だった。

 

 Boooooonn!!

 

「おっ!?」

 

 バイクの排気音のような効果音とともに腰に巻いたままだったディケイドライバーについていたライドブッカーから俺の目の前にあるカードが射出された。

 

 そして、そのカードもまた以前見たブレイドのように周囲から光の粒が集まってモザイクをカードの上に作り上げ、そしてそれが吸収されると同時に絵柄(込められた力)が復活した。

 

 それを見て俺は少し笑った。なぜなら、そのカードに込められた力の持ち主は、誰かの笑顔を守るために古代から復活した戦闘民族たちと闘った男だったからだ。

 

 俺は『自分も戦える!!!』と言わんばかりに前に出ようとする北方棲姫を押しとどめてこう伝えた。

 

「こんな奴らのためにお前の手が血に染まったり、笑顔が失われるわけにはいかない。だからここで見ててくれよ。俺の………戦いっぷり!!」

 

 俺はそう言うと、振り返って先ほど力が復活したカードを前にかざした。すると、こちらに迫ってくる空母棲姫(半壊)が

 

「ジャマヲスルナァ!!!!キサマハイッタイナニサマダァァァァァァ!!!!」

 

 それに対して俺は鼻で笑ってからこう答えた。

 

「通りすがりの仮面ライダー様だ。覚えておこうがどうしようが勝手にしとけ。」

 

 そしてチラっと北方棲姫の方を見てから

 

「変身!!!」

 

 そう叫んで先ほど力が復活したライダーカードをディケイドライバーに装填した。

 

<KAMENRIDE KU・KU・KU・KUUGA!!!!! >

 

 何かが回転するような効果音とともに俺の姿は腕、足、胴体、そして頭の順にあるライダーのものへと変身していた。

 

 黒のインナーに赤をメインとした軽装の鎧を見にまとい、膝と肘には赤が円を描くように入った膝、肘当てを身にまとったディケイドクウガ(マイティフォーム)になっていた。

 

「まずは小手調べからだ!!!」

 

 そう言うと、俺は距離を詰めてただ、殴り、蹴るを何度か繰り返し行った。それによって流し込まれた封印エネルギーはそれなりに効果があったらしく、

 

「「「アgヴィナウ;gいjgいおr;jgmjんがぃhgじゃv;まjぁ」」」

 

 空母棲姫(半壊)はもはや言葉ではない悲鳴を発していた。

 

 それを見て深海棲艦にもクウガの封印エネルギーは効果があるんだと確信した俺は

 

「さて、正直長引かせるのも面倒だし、さっさと決めるぜ!!!」

 

 そう言って縁が黄色いカードを射出させてそれをドライバーに放り込んだ。

 

<FINAL ATACK RIDE KU・KU・KU・KUUGA!!!!!>

 

 それを放り込んでから俺は構え、

 

「はっ!!」

 

 空母棲姫(半壊)よりも高く飛び上がった。そして

 

「喰らえぇ!!!」

 

 そう叫びながら俺は封印エネルギーを込めた右足をぶつけてそのまま空母棲姫(半壊)の艤装の上に会った本体の腹部を突き破った。

 

「「「GAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!」」」

 

 その結果、声にもならない声をあげて空母棲姫(半壊)は爆散した。

 

「ふぅ~。」

 

 そう、俺が変身を解いてから一息ついていると

 

「スゴイ………。」

 

 と、北方棲姫がつぶやいていた。

 

 それに見た俺が笑顔でサムズアップをしながら近づくと、北方棲姫も一瞬面食らったような顔をしていたが、その後にこちらに向けて笑顔とサムズアップを返してくれた。

 

 

 

 

 

 

「ワタシノキオクハ、エキデツキトバサレタトコロマデナノ。(私の記憶は、駅で突き飛ばされたところまでなの)」

 

 空母棲姫(巨大)を倒してもなぜかこの空間から解放されなかった俺たちは公園のベンチに座っていろいろと話していた。するとその話の流れで北方棲姫が()()()()()()()()()()の話をし始めた。

 

 その内容を聞いていて、彼女が受けた理不尽に俺は泣きそうになった。

 

 ……もともと、彼女は高校生だったらしい。ただ、兄が一人いてもともと提督だったそうなのだが「飽きた」と言ってDMMのアカウントを譲ってくれたから以前から興味があった艦これの提督として着任できたそうだ。

 

 そして、彼女は学校でいじめられていた。理由は今の姿のように髪や肌の色が生まれつき白く、そして目が赤かったためらしい。

 

 それを聞いて俺は

 

「アルビノだったの?」

 

 と尋ねたらその通りだった。

 

 そして、髪の色が生まれつき人と違うということで小学校も中学校もいじめられたが、それほどひどいものではなかったらしい。

 

「オバアチャントカソウイウフウニカラカワレルグライデシタカラ(おばあちゃんとかそう言う風にからかわれるぐらいでしたから)・・・・・・・・」

 

 彼女はその見た目に合わない少し疲れたような顔でそう言った。

 

 話の続きを聞いていると、問題は高校に入ってからだったらしい。

 彼女の通っていた高校は進学校だったそうだが、その高校に大物政治家の娘が入ったのが問題だったそうだ。

 

 その娘は自分の言うことに人が従わないと気が済まないという俺からすればどこからどう見てもクソな性格をしていて、しかも親の金でゴロツキを雇い、取り巻きをいつも連れて行動していたらしい。

 

 そして、彼女はその白い髪が原因で目をつけられ、いじめの対象になったらしい。

 人間、誰しも自分に火の粉がかかりそうなものを徹底的に避けようとするもので担任に訴えても親が権力者だからと受け取ってもらえず、その上その担任がその娘に相談に来たことをチクリ、激高した娘によってゴロツキどもに強姦されかけたこともあるそうだ。その時は運よく近くを交番勤務の警官が通ったことで助かったそうだが、それがうまくいかなかったせいか、娘はありえない手段に出た。

 

 それが事故死に見せかけた殺害だった。

 

 その日、彼女は学校から帰るために駅で電車を待っていた。

 そして、通勤快速が駅に入ってきて彼女の目の前にあと少しで来る……という瞬間だった。後ろからドンっと押され、そのまま彼女は体勢を崩した。

 

 そして、そのまま迫る電車のライトを目にした…と認識した瞬間、体を引き裂くような痛みで意識が跳んだらしい。

 

 本人もそうだろうと言っていたが、多分その時に彼女は電車によって物理的に引き裂かれたんだと思う。

 

 そして、気づいたらこの姿(北方棲姫)になって海の上にいた………という訳らしい。

 

 それを聞いて俺は

 

「……………」

 

 絶句するしかなかった。ただ、そんなことを認めちゃあいけないってことだけは思ったんだ。

 

 そうやって黙っていると、北方棲姫は目元に涙をためて顔を下へと向けた。俺は黙って抱きしめてあげてただ、頭を撫でてあげた。

 

「ウワァァァァァァァーーーーン!!!!」

 

 数十分もの間、北方棲姫になる前もなってしまってからも誰にも助けてもらえなかった少女の慟哭は続いた。

 俺はその間、ただ黙って頭を撫で続けていた。北方棲姫の涙や鼻水で着ていたシャツがぐちゃぐちゃになるのも気にせずに……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今回のオチっていうか、まとめ?

 

 数十分の間、泣き続けていた北方棲姫はようやく落ち着いたみたいで俺の膝の上で眠っていた。

 

 それを見ながら俺は

 

「こうなったら第1の選択肢どうこうじゃなくて、この子が幸せになれるようにしなきゃな。せっかく北方棲姫の姿とはいえ第2の人生を生きるチャンスを得たんだから。」

 

 そう言っていると、空が赤黒い物からただの漆黒へ変わってきているのに気付いた。

 

「あ、そうだ。これ(ディケイドライバー)しまわねぇと。」

 

 その空の様子を見て初めて未だにディケイドライバーを腰に付けていることを思い出した俺は肩掛けカバンにディケイドライバーを詰めたところで

 

 パリーン!!

 

 というガラスが割れるような音とともに急に世界に人が戻ってきた。すると、雷香と玲奈が必死に何かを探すかのようにきょろきょろしていたが、こちらを見て

 

「「お兄ちゃ~ん!!!」」

 

 そう叫びながら飛び込んできた。ただ、玲奈が

 

「お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん」

 

 こんな感じで壊れたレコードのようにハイライトの消えた目で飛び込んだ後に迫ってきたからそれは勘弁してほしいと思った俺だった。

 

 後それと、北方棲姫のことを俺もほっぽちゃんと呼ぶことにした。

 理由はあの子自身の願いだからなんだけど…………

 

「お兄ちゃんは私のだからね!!」

 

「いや、違う私のよ!!!」

 

「イイエ、ワタシガモトモトノネンレイモチカイデスシ。ワタシガイチバンテキニンダトオモイマス!!!!(いいえ、私がもともとの年齢も近いですし。私が一番適任だとおもいます!!!!!)」

 

 こんな感じで、たまにこっちに龍驤を保護者代わりにして来るようになったほっぽちゃんと雷香達がキャットファイトを繰り広げるようになったのは彼女自身にとっていいことなのかどうなのか……。正直謎だ。

 

 まぁ、笑顔を見せれてるみたいだし、いいことかな!!(そう信じたい!!!!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 隼人が北方棲姫の話を聞いていた時、艦これの世界のとある海域では………

 

 

(ごめんなさいお兄さん。私はあの時お兄さんがしてくれた約束を守れそうにないです…………。)

 

 ある一人の艦娘がボロボロの状態で沈んでいっていた。

 

 少女はかつてある青年に精神的にも肉体的にもいろんな面で助けられた。そしてその青年は彼女の前から消える前に「生きろ!!」と言っていた。

 その言葉を胸に少女はどんな窮地でも死に物狂いで頑張った。すべては再び青年と出会ったときに「あの時の言葉で私は今ここまで頑張れました!!!」そう伝えるために。

 そしてその努力は実を結び、自分がその一件の関係で所属しなおした鎮守府の第1艦隊の旗艦を任せられるほどになっていた。

 しかし、今回は相手が、そして運が悪かった。

 

 その前の海域で小破していた彼女は自分たちを指揮する提督の指示に従って次の海域へと向かっていたが、その海域で事件は起きた。

 深海棲艦と接敵した際に開幕いきなりで魚雷が少女に直撃したのである。

 そのダメージによって、少女は大破。その状態で撤退できればまだ少女は今のように沈まずに助かったかもしれない。しかし目の前にいたのは未だ誰も遭遇したことが無い未知の深海棲艦。その上に背後からは援軍ではなく、戦艦棲姫が迫ってきていた。

 本来ならばありえないおそらく上位種同士による挟み撃ち。

 

 その結果、大破していた少女は仲間に「自分を見捨てて自分たちだけでも助かってこの情報を司令官に伝えて!」と時間稼ぎを自らが大破している上に他のものが止めるのも聞かずに勤め、大破した駆逐艦一隻だけでは上位種相手にそれほど長く耐えることもできずに沈んだのである。

 

 

 

 

 少女が被っていた帽子が海上へと昇って行くのと反比例してその体はどんどん暗い海の底へと沈んでいく……。

 

 その瞳が最後に見たのは桃色の髪が上へと揺らいでいく中、光が届かない場所へと自分が落ちていく様子だった。

 

 そして少女の意識はその体と同じように暗く深い闇の底へとある大きな後悔を抱えたまま沈んで行った………。

 

 その後ろの方でにやけ顔をしながら迫ってきている存在に最後まで気付かないままに……。




感想、評価を貰えたら先詠む人はすごい喜びます。

今回、沈んだ子が出ちゃってますけどその子がどうなるかは本ルート見てたら予測はつきますよ。
そのまま不幸な展開にはさせないつもりです。てか、それをしたら自分で自分を許せなくなると思うし。


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第10話 再び超える世界線

前回ほっぽちゃんを無事に救出して自分の鎮守府に保護した隼人。
さて、今回起きることは……?


 あの空母棲姫を旗艦とした艦隊がこちらの世界に攻めてきたことで始まった一連の戦いは北方棲姫を家の鎮守府で保護することになったあのみどりの日の戦闘で一時的に終わった。

 

あの日の後に、ほっぽちゃんから聞いたほっぽちゃんの前世?を殺させた娘のことをネットで調べてみたら、その親父は麻薬とかの汚職で捕まって、娘の方も傷害とかほっぽちゃんの前世以外の人に対して起こしていたらしくてつかまっていた。

 しかもその流れで一部サイトで名出し顔出しで全部これまでその娘がしてきたことがさらされていたから例え少年院から出て来たとしてもまともな社会復帰は無理そうだ。

 そして、その中にほっぽちゃんの前世である北野美香ちゃんの名前が殺された人の名前として出ていたのを見つけたから俺はそれを管理人に報告して消してもらうことにした。数日後、ほっぽちゃん自身の望みで一緒にそのサイトを見てみたらサイト自体が閉鎖されていたのをみて俺は内心ほっとした。肝心のサイトが消えていたので、ほっぽちゃんには別のニュースサイトの方を見てもらうことで納得してもらうことができた。

 

 

 

 

 あれから、こんな感じでいろんなことがありつつも数か月経ったけどコエール君が直ったって言う報告もないし、新たな深海棲艦に俺が襲われることもなかった。

 

 あ、ほっぽちゃんが龍驤を保護者代わりに寝起きドッキリ仕掛けに来たことは何度かあったけどな。それはカウント外だろ……………‥?

 

 まぁ、そん時に大体雷香か玲奈のどっちかが同じように俺の布団に潜り込もうと部屋に入ってきて遭遇戦(キャットファイト)を始めるんだけどな。

 

 それでもその寝起きドッキリはごくごくまれに成功することがあって、これから話すのはその一例。その後の龍驤の死んだような目をした顔つきが印象的だったあの日のことだ。

 

 

 

 

 

「…グヘヘオニイサンダイシュキー。(お兄さん大しゅきー)」

 

「………?」

 

 ある朝、変な声が聞こえた気がしていつもより少し早めに目が覚めた。

 

(やけに体が重い…?昨日の夜は結構早目に課題済ませて寝たよな。それなら風邪ひいた?………‥いや、そうだとしてそれだったらなんできちんと布団被ってんだ……って何このこんもり。俺の腹ってそこまで出てなかったはずなんだけど?)

 

 起きてすぐに動き出そうと思ったが、その時はなぜか体がすごく重くて動かせなかった。かろうじて腕は動かせたので目を擦っていると、俺の布団がおなかのあたりでぽこっと膨らんでいた。

 

(まさか……な……?)

 

 俺は少し前に見たあるホラー映画のワンシーンを思い出しながらゆっくりと布団の中身が見えるように自分の胸の所にかかっている布団の端を持ち上げた……

 

「ッ!?」

 

 持ち上げた瞬間、俺は悲鳴をあげそうになったがかろうじて耐えることに成功した。

 

 持ち上げた布団の中身で真っ先に目に入ったのは真っ白な髪。そして赤い二つの角。それに白いミトン…………‥と、そこまで認識して初めて俺の布団にほっぽちゃんが潜り込んでいたということに気付いた。

 

「ふぅ………驚いたっつーの。」

 

 そう言いながら俺は寒そうに少し震えたほっぽちゃんの頭を撫でてあげていると、急に

 

「んにゅ?あ、お兄さんおはよう!」

 

 と、最近上手に話せるようになった言葉でいい笑顔を浮かべながらこちらに顔を向けて来た。ただし、寝言とかはいまだにカタコトみたいだけど。

 

「うん。おはよう。ただ、早く退いてくれるとうれしいかな。少し苦しいからさ。」

 

 と俺が伝えたが俺はその言葉をもう少ししてから言えばよかったと即座に後悔することになる。

 

「わかった!」

 

 俺の言葉に対してそう答えてからほっぽちゃんは()()()()もぞもぞと動き始めた。

 

(心頭滅却空即是空ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!)

 

 俺の上で動くということは結構腹の方に圧力がかかったり、寝起きで息子の方に血が回ったりしていろいろと危険だと判断した俺は

 

「ほっぽちゃんストーップ!!!」

 

 ………と結局叫ぶ羽目になったのだった。

 

 

 そしてその声を聴いて玲奈が勢いよく俺の部屋に入ってきて

 

「あーーー!!!!ほっぽちゃんがお兄ちゃんを押し倒してる!!!」

 

 なんて叫ぶもんだから

 

「なんですってーーーー!!!!」

 

 って雷香まで俺の部屋に駆け込んでくることになった。そして………

 

「あらあら~。仲がいいことね。」

 

 と、母さんが俺の部屋にやってきてニヤニヤしながら言うまでの間俺は起き上がることは出来なかった。

 

 理由…?聞くなよ。言いたくない。だって………

 

 

 

 自分よりも見た目は十数歳年下の子3人に完全に抑え込まれてたなんて恥ずかしすぎるからだよ!!!

 

 

 そんな中、死んだ目をした龍驤の目に涙が光っていたのに気づいた梅雨の日の朝だった。

 

 

 

 そして季節は移り行き…………

 

「お兄ちゃ~ん早く行こう!!」

 

「ゴフッ!」

 

 くっそ暑い日の朝。

 めんどくさい課題やレポートやテストを済ませてようやく夏休みに入れたから寝だめをしようと目論んでいた俺の腹の上に玲奈が飛び乗ってきた。

 

「玲奈!お前なぁー!!」

 

「アハ!」

 

 俺がその行動に抗議しようとすると、玲奈は笑ってそれを受け流した。

 

 そんないつもと変わらない日常のさなかにそれは起きた。

 

 ブブッ!

 

 そんなノイズのような音が鳴り響いたと同時に俺の視界は玲奈を除いてすべてモノクロに染まった。

 

「は!?なんだこれ!?何が起きてんだ!?」

 

 俺が困惑していると玲奈がパソコンの画面の方を見て

 

「何か……来る!!」

 

 そう小さく、そして鋭く言った。その顔は俺がこれまで見たことが無いほど険しいものだった。

 

 それにつられて俺もパソコンの画面を見ると起動していないはずのパソコンのOS起動画面が表示されていて、しかもその下には

 

 =Count 123sec=

 

 と表示されており、しかもそれがすさまじい勢いで減少していた。

 

 これは何かやばいんじゃないか!?と思った俺は即座にディケイドライバーと戦極ドライバーを入れたカバンの方へ走り出し、それを持ち上げた瞬間だった。

 

 カウント0を示した画面が一瞬暗転し、その次の瞬間0と1がはっきり見えるように構成された渦が俺めがけて画面から弧を描きながら飛び出してきた。

 

「!?」

 

 そしてその光景に驚いた俺が一瞬固まった瞬間、俺はその渦にのみ込まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐわぁーーーーー!!!!」

 

 痛い!!痛い!!!痛い!!!!マジで体が張り裂けそうになるぐらい痛い!!!!!

 

 これまで19年間生きてきた中で感じたことのないレベルの痛みに意識が跳びそうになりながらも俺はぎりぎりでその意識を保っていた。

 

 …………渦にのみ込まれた結果、俺は0と1、そして半透明な緑色のクリスタルで構成されたチューブのようなよくわからない空間に放り込まれ、そしてその中をとてつもない勢いで落ちて行っていた。

 

(これ一体どこまで続いてんだぁーーーーー!!!!!)

 

 俺の声なき叫びが続く中、これまで先が見えなかった謎の空間の奥に一点の光が見えた。

 

(あれが出口か!?)

 

 そう思った俺がそちらに向けて無意識に手を伸ばすと、それをあざ笑うかのようにその光は消えた。

 

(は!?)

 

 俺がその信じたくない光景に固まった次の瞬間だった。

 

「お兄ちゃーん!!!!」

 

 玲奈が後ろの方からすごい勢いで落ちてきてそのまま俺に抱き着いた。

 

(れ!玲奈ぁ!?)

 

 一瞬困惑したが、その次の瞬間玲奈が俺の耳元に口を近づけてきて

 

「大丈夫だよお兄ちゃん。私がついてるから。」

 

 そう告げた瞬間、俺と玲奈は光に包まれてその謎の空間から脱出した………所までは良かった。

 

 その謎の空間から出た場所がおかしかった。なぜならそこは

 

「「た………高ぁぁぁぁぁぁーーーーーーーー(い)!!!!!!」」

 

 自分が知っている知識の中で一番高いのは通天閣の展望台だけど、それよりも高い位置に俺と玲奈は放り出されていた。

 

 下を見れば海で完全に埋まっていて、頭が下になって落ちるスピードが今よりも早くなるのを覚悟したうえで逆立ち状態になってみればそこにあったのは真っ青な空だった………ってそうじゃない!!。

 

 この高さをどうにかしないと落下のダメージで死ぬ!!!

 

 俺は必死になって鞄に手を伸ばし、ジッパーを小さく開けてそこから中へと手を突っ込み目的のものを探した。

 

「お兄ちゃん前!!前!!」

 

 そうやって必死になっていたせいか、玲奈に指摘されるまで俺たちの目の前に灰色のオーロラが展開しているのに気付けなかった。

 

「おいおいマジかよぉ!!!」

 

「キャーーーーー!!!!」

 

 叫びながらそのオーロラを通過した瞬間だった。

 

「-----。」

 

「!?」

 

 何かの声が聞こえた気がした。しかし、その声を思い出す余裕はもうなかった。

 

「お兄ちゃんさっきよりも海面が急に近くなってる!!!」

 

「ウソだろ!!」

 

 オーロラを潜り抜けるまでは海面までの高層ビルの20階ぐらいの高さだったのが、オーロラを潜り抜けた瞬間にはもう高層ビルの5階ぐらい高さまで迫っていた。

 

「(迷ってたら死ぬ!!)変身!!!」<オレンジ!>

 

 俺は玲奈に抱き着かれたまま戦極ドライバーを装着してオレンジロックシードを解錠してオレンジアーマーを召喚し、

 

<Lock On!! ソイヤ!>

 

<オレンジアームズ!花道!!オンステージ!!!>

 

 仮面ライダー鎧武に変身した。この時点で海面まで残り10数メートル。

 

「間に合え!!!」

 

 俺はドライバーのロックシード受けに自動的に引っ付いていたタンポポを模したロックシードを開錠してそれを上に(この場合は下に)掲げた。

 

 すると、そのロックシードは巨大化しそして乗り物(ダンデライナー)へと変化した。俺はその状態で握っていたハンドルを軸に体を回転させてシートにまたがった。

 

「ッ!?」「いったーい!!!」

 

 シートにまたがった瞬間それまでの落下で発生したエネルギーが体を直撃したが、海面にそのまま落下するよりはだいぶましなダメージだった。もしそのまま海面に落下していれば変身していても死んでいただろう………。

 

「はぁはぁはぁ……助かったぁ~。」

 

「助かったわね……。」

 

 二人で自分の命が助かったことに安堵して俺が振り返ったときにあることに気付いた。

 

「え?玲奈その恰好…。」

 

「ん、何?お兄ちゃん。」

 

「自分の今着てる服を見てみろよ。」

 

「?…………え?」

 

 玲奈の姿は俺の部屋にやってきたときに着ていた水色のキャミソールから水着にコートという戦艦レ級本来のものへと大きく変わっていた。

 

「な?」

 

「ウソ……私着替えた覚えないし、この服今は私の部屋の箪笥に入れてるはずなのに…。」

 

「…理由はわかんねぇけど兎に角陸地探すか?」

 

 俺も自分の変身を解きながら玲奈にそう提案すると、玲奈はうつむきながら

 

「………うん。」

 

 と小さくつぶやいた。

 

 

 

 

 

 

 その頃、隼人たちが投げ出された海域に最も近い鎮守府では………

 

 

「うぇっへっへっへ~天龍さんのお胸~。」

 

「お前いい加減にしろぉ!!!!」

 

 ある軽巡の艦娘が淫獣によっていつものごとく朝一で襲われていたのであった…………。




はい。コラボ開始です。

コラボ相手は鳴神ソラさんの『憑依天龍が行く! 』です。

おそらく前回の北方棲姫事件でわかっていた方もおられたかもしれませんねw。

感想、評価を貰えれば先詠む人はうれしいです。


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第11話 色々と知るとき

今回のコラボは
スタート(この作品)→その次(憑依天龍)→その次(この作品)といった感じで続いていっています。
なので、今回の話は憑依天龍が行く‼の『別の世界から来たり~の』の続きです。


 ダンデライナーに乗ることで高所からの落下ダメージを少なくすることに成功した俺は玲奈を連れて陸地を探して海の上をさまよいながら飛んでいた。

 

 なお、服装が玲奈の場合は水色のキャミソールから見慣れたレ級のものへ、そして俺の場合はパジャマからジーパンに白い半そで、その上に黒い上着を着て運動靴を履いている状態へと変わっていた。

 

 玲奈の服装の変化の感じから見て、おそらくあの灰色のオーロラを通り抜けた際にディケイドの門屋士のように服装が変わったんだと思う。そうでなきゃさすがにこれは納得できない状況だった。

 

「♪~♪~♪~」

 

「ねぇお兄ちゃん。艦載機だしていい?」

 

 俺がドライブのOPを歌っていると、不意に玲奈がそう言った。

 

「………!?てか、出せるの?」

 

 その発言に一瞬呆然とした俺がそうたずねると、

 

「出せるよ?ちょっと待っててね。」

 

 そう言ってパーカーの中でごそごそと何かを探し始めた。

 

「この服が本当に私が着てたやつなんなら…………あった!!」

 

 そう言って玲奈はパーカーの中から深海棲艦の艦載機を取り出してそれを空へ飛ばそうと……………ってちょっと待ったー!!!

 

「ストップ!その艦載機は飛ばしちゃダメ!!」

 俺は必死に玲奈の腕をつかんで艦載機を飛ばそうとするのを止めさせた。

 

「え~!!なんで~!!!」

 

 その結果、予想はしていたけれど玲奈は不機嫌になった。だから俺は一から説明することにした。

 

「もし、探していた陸地に人がいたとするじゃん。」

 

「うん。」

 

「その人はその深海棲艦の艦載機を見てどう思う?」

 

 俺がそう問題を出すと、玲奈は少し考えてから

 

「う~ん?……驚く?」

 

 と答えた。まぁ間違ってはない…間違ってはないんだけど……

 

「おしい!それも答えとしてはあってるけど、正解は深海棲館が攻めて来た!って鎮守府に連絡が行って下手したら遠距離から砲撃される。」

 

 俺は玲奈の頭を撫でながら俺がした最悪の予想を言った。

 

「……考え過ぎじゃない?」

 

 俺がその予想を言うと、玲奈は首をかしげながらそう言った。だけど、この見知らぬ世界のいつどんなところで何が起きるのかわからないという状況で考え過ぎるのに越したことは無いと俺は思う。

 

「そうだとしても深く考えることにこしたことは無いからな。ましてや今どこにいるのかすらわかんないからにはさ。」

 

 俺は前を向いてハンドルを握って、さっき後ろを向いて玲奈の頭を撫でていたことで崩れたダンデライナーの姿勢を安定させながらそう言った。

 

「ふ~ん。………あれ?もうちょっと向こうに陸があるよ!!!」

 

 俺がそう言った後に、少し不機嫌な感じが薄れた玲奈のそんな声が聞こえた。

 

「え?どこ?全く見えねぇ。」

 

 言われてすぐに俺は周囲を必死に見渡して見るが、何も見えない。360度どこを見ても真っ青な水平線しか見えなかった。

 

「え~っと、11時の方向距離4000!!!」

 

 そうやって俺がきょろきょろしていると今度は具体的な方角と距離を言ってきた。流石に具体的な方角と数値を言われるとそれを信じないわけにはいかないよな!!

 

「おっしゃ了解!!!」

 

「キャー!」

 

 俺はそう言ってダンデライナーのアクセル部分を踏み込んだが、勢いをつけすぎて玲奈が俺の首に慌ててしがみつくことになった………。

 

 

 

 

 

 

 

 暫く海の上をダンデライナーで走っていると、本当に陸地が見えた。

 

「誰かいるのが見えるか~?」

 

 俺が前を向いたまま玲奈に尋ねると、

 

「何人かいる~。多分、艦娘が3人に男の人が1人~。」

 

 と返ってきた。

 

「とにかくそっちに行ってみるぞ。それで、もし敵対的な感じだったらすぐに離脱して別の場所を探そう。」

 

「わかった~。」

 

 玲奈の返事を聞きながら俺はとりあえず護岸の方の人が集まっているあたりへと向かってハンドルを切った。

 

 

 

 

 

 護岸に近づくにつれて俺にも4人の人影がみえた。

 

「え~っと、カウボーイハットをかぶった男の人はわからんがいるのは天龍、吹雪それにマイクチェックの………え~っと………名前忘れた…………」

 

 かなり失礼なことを言っている自覚はあったが、俺はマイクチェックのネタしかメガネをかけて改造巫女服を着た女性のことに関して思い出せなかった。

 

(それにしてもここは艦これの世界か。あの子(春雨ちゃん)は結局大丈夫だったのかな……)

 

 俺が前に起きたことを思い出しながら陸地の方に近づいていると護岸の方で天龍がこちらに向けて釣り竿を振っていた。敵対的な感じはその様子からなさそうだったから俺はすぐ近くでダンデライナーを着陸させることにした。

 

 

 

 

 とりあえず着陸させて先に自分がダンデライナーから降り、玲奈一人では高さがあり過ぎてダンデライナーから降りれないので脇を抱えて一回持ち上げてから地面に下ろした。

 地面に玲奈を下して腰を伸ばしたところで

 

「ウェルカムと言えば良いかな」

 

 と、カウボーイハットをかぶった男に声をかけられた。いきなりだったし、見た目が外人だったからビビった俺は

 

「え、えっとあんたは?」

 

 と返すことしかできなかった。すると、

 

「俺はハーケン・ブロウニング。さすらいの提督さ。今はここ、ラバウル鎮守府に滞在してる所さ」

 

「そして私は秘書艦の霧島です」

 

「俺は天龍。ここの所属だ」

 

「同じくラバウル所属の吹雪です!」

 

 と、その場にいた全員が自己紹介をしてくれた。向こうが自己紹介をしてくれたならこちらも返さなくては礼儀知らずだと思われると思ったので

 

「は、はぁ…俺は岡本隼人。こいつは見た目は戦艦レ級だけど妹の」

 

「玲奈でーす」

 

 とりあえず俺達も自己紹介をすることにした。

 

 名乗った後にふと、天龍の視線が俺の腰の戦極ドライバーに向かっているのに気付いた。

 

(そう言えば、二次創作で天龍って中2病だったりしたよな~。でも流石にこれを渡すわけにはな…)

 

 と、その視線から「くれ!」と言われそうでやだなぁと考えたことに端を発した考え事をしていたら

 

 

「OK、訳アリボーイ&ガール。そんなに固くならなくても俺は気にしないから肩の力を抜いたほうが良いぜ」

 

 と、先ほどハーケンと名乗ったカウボーイハットの男が言ってきた。

 そんなノリのやつと会ったり喋ったことが無かった俺は気の抜けた返事をするので一杯一杯だった。

 

 そんな時に「すいませ~ん」

 

 と言いながら、かなり色白のメガネをかけた女性が武蔵と見慣れたクジラのような深海棲艦(駆逐イ級)を連れて………て

 

「駆逐イ級!?」

 

 初めて鎧武に変身したときにフルボッコにされたのを思い出して、反射的に俺は腰のホルダーからオレンジロックシードを取り外しそうとしていると色白の女性が

 

「あ、だ、大丈夫です。この子は良い子なので…えっとラバウル鎮守府の提督を務めてます信濃と言います」

 

 と言い、

 

「最近になって建造された信濃の姉の武蔵だ。よろしくな」

 

 武蔵も自己紹介をした。

 

 それに対して反射的に

 

「あ、これはどうも…はい?」

 

 と、答えたが答えている途中で

 

(信濃って実装されてたっけ?っていうか、信濃って確か第二次世界大戦で構想だけで結局建造されなかった艦だった気が…)

 

 と疑問に思ってしまった。

 

 それで顎を抱えて思考の渦に落ちかけた俺を見てハーケンさんが

 

「まぁ、ここは1つ情報交換が良いんじゃないか信濃」

 

 そう言って信濃さんも

 

「そ、そうですね。一緒に来てくれますか?」

 

 そう言って後ろを向いた。

 

 その時になってようやく気づいたが、玲奈は俺にしがみついて少し震えていた。

 まぁ、仕方ないだろう。一応中身は雷と一緒とはいえ見た目とスペックはレ級そのものなのだから、自分が原因で攻撃されたらどうしようとかでも考えているんだろう。

 そうなったら玲奈を守りつつ暴れるだけだが……まぁ、大丈夫だと思う。だってイ級が普通に接されているならレ級な見た目の玲奈も大丈夫だろう。

 

 俺はそう思いながらダンデライナーをロックシード(待機モード)に戻し、鎮守府に向かい始めた一行の後ろを玲奈を急かしつつ、ついて行った。

 

 

 

 

 

「え~っとさっきも言ったと思うけど、俺は天龍。それで、こちらが提督の信濃でその横が現在こちらに滞在しているハーケン提督だ。」

 

 会議室のようなところに連れて行かれて全員が座ると同時に天龍が再び自己紹介と信濃さんの説明をした。

 

「ああ、覚えたぜ。てか、一つ先に言わせてくれ。」

 

 俺はその天龍の確認に覚えたから大丈夫だと伝えてから言いたかったことを言うことにした。

 

「何を言われようともこの戦極ドライバーは挙げないからな。ある意味俺の生命線でもあるし。」

 

「な!?何を急に!!!」

 

 俺がそう言った瞬間霧島が声を荒げた。まぁ、仕方ないだろ。これ無かったらディケイドライバーしか生命線なくなるし、しかもまだディケイドまでの全部の平成仮面ライダーの力が復活したわけじゃないから心もとないんだもん。

 

「まぁまぁ、霧島落ち着け。」

 

 そう言って、ハーケンさんが立ち上がった霧島を落ち着かせてから信濃提督の方をみた。すると信濃提督は

 

「こちらから質問させてもらってもいいでしょうか?」

 

 と、俺に確認を取ってきた。俺からしてもその提案はもってこいだったので断る理由もなかった。

 

「それでは…あなたたちは一体何者で、どこから来たんですか?」

 

 …………よりによっていきなり核心を突いてくる質問だった。

 

「俺は提督で、かm……じゃなくて。え~っと。その…。あの…。」

 

 こうなったら流石にどもるしかないよね!!混乱するもん!!!

 

「お兄ちゃん……。」

 

 玲奈の小さい声が俺の耳を叩いて俺は横を向いた。

 

「全部言っちゃったほうが信頼を築くにはいいんじゃないの?」

 

 と玲奈は至極まっとうなことを言ってきたんだけど、この場合それは下手したら悪手にしかなりかねない。

 

「信じてもらえると思うかふつう?」

 

 と、俺が心配そうに玲奈に尋ねると

 

「うん。」

 

 と玲奈は返してきた。だったら言うしかないのか……………

 

 俺はあきらめて1から10まで全部言うことにした。

 

「信じてもらえないのは十分承知の上ですがこれは最初に言っておかないといけないと思うので言います。」

 

 俺はそう切り出した。すると、当然周りの緊張は高まった。そこである程度貯めてから俺は

 

「俺、岡本隼人は提督で仮面ライダーです。それと俺はこの世界の人間じゃありません。玲奈はもともとこっちの世界の子ですが。」

 

 カミングアウトした。

 

「「「「は!?」」」」」

 

 俺がカミングアウトした瞬間その場にいた天龍と玲奈以外の反応が重なった。…………ってなんで天龍は冷静なんだよ!?

 

 そう思った次の瞬間だった。

 

「失礼します!現在深海棲艦の大群がこちらに向けて迫って来ています!!!」

 

 栗色の髪をポニーテールにした赤い色が目立つセーラー服を着た少女が会議室にそう言いながら走ってきた。他のみんなはその報告の内容に関して驚いたみたいだったが、俺だけ別のことで驚いていた。

 

「大和だぁぁぁぁあああ!!!!」

 

 驚いた後に俺だけは立ち上がって大和に向けて指を差して喜びの叫びをあげていた。

 

 始めたばかりだったから会えるはずのない戦艦のレア艦。

 広島県民としては誇りと言ってもいいかもしれない戦艦。

 

 それが大和だった。というか、大和欲しいよまじで。課金はしたくないけど。

 

 俺からしたらそんな印象の艦娘が大和の全てだった。だけど、あの有名な映画『男たちの大和』は嫌いです。血がいっぱい出過ぎているので。見たら多分途中で気絶して最後まで行き着きます多分。

 

 っと、一人だけおかしな反応をしているから他のみんながあほみたいな面さらして俺を注視しているよ………。

 

 

 

 

 恥ずかしぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!!!!

 

 

 

 

「すみません。報告を続けてください。」

 

 そう言ってから俺は顔を真っ赤にして椅子に座りなおした。というか、そう言うのがやっとだった。

 

「……。報告を続けます。」

 

 大和さんは何も言わずに続けてくれた。正直このタイミングでのその扱い方は俺からしたらすごいありがたかった……。

 

「現在、深海棲艦の大群が2時方向から接近中です。発見したのは哨戒中の加賀さん。距離は10000といった所だそうです。」

 

「その深海棲艦の大群の旗艦はわかるか?」

 

 天龍がそう大和に尋ねると

 

「確認されている限りでは姫級が4体。そして言いにくいことなんですが、鬼級も2体確認されています。その上、ル級やイ級、そしてヲ級まで確認されているのでかなりの規模ですし、被害が発生するのは確実かと…。」

 

 そんな返事が返ってきた。

 

「こいつはまずいかな。」

 

 ヤマトの報告を聞いてハーケンさんがそう言うと、

 

「確かに難しいですね。」

 

 とその意見に信濃提督も同意した。

 

「……。」

 

 一気に暗い雰囲気になった会議室の中で俺は一人無言でこっそり立ち上がって部屋を出た………つもりだった。

 

 その時耳みたいな電探に俺の動きはしっかり補足されていた。

 

 

 

 

 

「さて、やるか。」

 

 そう言って先ほど天龍達と会った護岸でダンデライナーを再び展開し、()()()のロックシードを開錠しようとした時だった。

 

「やっぱり一人で何かするつもりだったか。」

 

 後ろから天龍の声がした。

 

「…はぁ。その感じじゃ何するつもりかわかったような口ぶりだな。」

 

 そう言いながら振り返るとそこには艤装を身にまとって口を弧の字にゆがめた天龍の姿があった。

 

「だって、そのドライバーと今お前が持っているロックシード。それを考えたらおのずと答えは出るだろ?」

 

「じゃあ、俺を止めに来たってことか?」

 

 俺としてはそうだとしても振り切って飛び出すつもりだった。しかし、

 

「ちげーよ。むしろ逆だ逆。」

 

「は?」

 

「じゃあ逆に聞くけどよ。もしそれ(ダンデライナー)が壊れたらどうするつもりだったんだ?」

 

 ………考えてなかった。

 

「その様子じゃ俺の予想通り考えてなかったみたいだな。だから尚更一緒に行くんだ。」

 

「………後ろ乗れよ。戦闘海域まで燃料もったいないだろうし飛ばしていくから尚更だ。」

 

 少し考えて、天龍の言うことすべてが正論だと思った俺は折れることにした。だから天龍にダンデライナーの後ろに乗るように指示した。

 

「よっしゃ!」

 

 そう言うと、天龍は俺がまたがった後ろに乗って俺にしがみついた。

 

「それじゃ行くぞ!!」

 

 俺はアクセルをふかして護岸から飛び出した。

 

 

 ラバウルの鎮守府から少し離れた地域で俺は

 

<イチゴ!!>

 

 ロックシードを開錠した。

 

「お!?変身するのか!!」

 

 後ろで天龍がうるさいが、今は無視だ。

 

「変身!!!!」

 

<Lock On!>

<ソイヤ!! イチゴアームズ!シュシュっとスパーク!!>

 

 俺は仮面ライダー鎧武イチゴアームズに変身してさらにアクセルをふかして加速した。

 

 迫ってきている深海棲艦との距離は残り5000。




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第12話 いざ出陣!カチドキをあげろ!!

どもー。
最近はまっている俺ガイルの2次作の作者がサークルの後輩の知り合いで、それを後輩が知らせたら相手が動揺してしまった先詠む人です。

まだまだコラボは続くよぉ!!《*≧∀≦》


「ようし!ここから俺達と艦娘のステージだ!」

 

 そう俺は叫んだ。

 

 時間はこの瞬間から少しだけ巻き戻る………

 

 

 俺が一人でこっそり出撃してできる限り敵の戦力を減らしておこうと海岸に出ると、天龍が既に俺の動きを読んでいた。

 そんで一緒に出撃したら………

 

「俺も仮面ライダーだからな!変身!」

 

 ターンアップ

 

 ……って天龍まで仮面ライダー(ブレイド)に変身するとか聞いてねぇよ!!!つか、この中途半端なブレイド何!?なんかいろんなところがおかしいだろ!!

 

 仮面の角の様な所が短いし肩も角ばってるのじゃなくクウガの基本フォームの肩の様に丸っこい感じになってっし、胸の部分もスペードのマークっぽいのがねぇ!!!

 

 ディケイドとしてブレイドに変身できるようになっていたからか、なぜかその違いが異様に気になった。

 

 その違いに気付いたせいで無性に突っ込みたくなったけれど、今はそんなことをしてる暇はない。突っ込みたいことは後々突っ込むことにして俺はダンデライナーを加速させた。

 

「見るからに、戦艦棲姫に軽巡棲姫、装甲空母姫と中間棲姫、んで空母水鬼と港湾水鬼と…数20体以上のル級やイ級、そしてヲ級…こりゃまたほっぽの所であったほっぽを狙った空母棲姫のを思い出させる大群だな」

 

 暫く変わりのない海面上をダンデライナーで駆け抜けていると、天龍が不意にそう言った…………って今天龍(こいつ)()った?

 

「ちょっと待て、ほっぽって北方棲姫の事か!?」

 

 俺からしたら、北方棲姫は家の鎮守府に保護している子がいるのでそれはさすがに聞かなきゃなんないと思った。そして、俺が慌ててそう突っ込むと天龍は何やら納得した様子で(仮面で顔は見えないが)

 

「ああ……な~る。もしかしてお前の方でも似た様なのあったんだな」

 

 そう言った。それで俺はなんとなく察した。

 

 ・天龍はこちらの世界で北方棲姫に会ったことがある。

 ・多分、その北方棲姫も今もどこかで暮らしている。(これに関してはカン)

 

 そこまで考えたところで俺はふとそれまでに尋ねなきゃいけないことがあったのに聞いてなかったことを思い出した。

 

「あ、ああ…なぁ、なんでお前はそんなに驚かないんだ?さっきだって俺が自分の事言った時驚いてなかったし」

 

 そうなんだよ。なんでか知らないが天龍はさっき俺が異世界人てカミングアウトした時もただ一人落ち着いてたし、仮面ライダーに関して知ってるし俺からしたら謎の存在だった。

 

 そこでこの機会にと聞いてみたんだが帰ってきた答えが

 

「まぁ、オフレコで頼む。実は俺は精神は艦娘じゃない。人間の男だ」

 

「はぁ!?」

 

 衝撃的過ぎてダンデライナーの操縦をミスるところだった。って言うかミスった。体勢を崩して二人そろって落下しそうになった。

 

(うぉお!!やべぇやべぇ!!!!)

 

 慌てて俺がダンデライナーの挙動を安定させてから

 

「ど、どう言う事だ!?」

 

 と尋ねると、

 

「さあ?俺も分かんない内に目覚めたら天龍になっててよ。ちなみにこの姿になる前の実年齢は20歳以上30歳以下だ」

 

 更に驚愕のカミングアウトが待っていた。

 

「そして年上だった!」

 

 まさにそのとおりである。俺、今年で19歳。天龍の中の人、確実に俺より年上。

 

(やべぇ、これ俺のポリシー的に敬語一択なんだけど………)

 

「えっと…んじゃあどうして俺に教えたんですか?」

 

 とりあえず、敬語で何で俺にそんなことを教えたのか聞いてみた。

 

「まぁ、同じリアル的な住民と言う事でな…いやーホントこの姿になってマジで大変だったからな。着替えとか女湯で裸体見ない様に目を瞑って五月雨にだけ話して手伝って貰ったり、吹雪にセクハラされたり…」

 

「た、大変なんですね(そんな理由で聞きたくもないこと言わないでマジで!!!吹雪にセクハラされるとか一番(いっちゃん)聞きたくなかった!!!!)」

 

 俺が冷や汗をかきながら答えると、

 

「さてと…色々と逃避な為の雑談はここで終わりにしますか?」

 

 天龍が意味深なことを言った。

 

「え?逃避って(何に対しての逃避だ?)」

 

 俺が首をかしげていると、天龍はその答えをすぐに教えてくれた。

 

「そりゃあ…久々に同じリアルとかの奴と出会ってからの深海棲艦とはいえ殺すと言う事への重みかな」

 

(あ、それ俺もう辛うじて乗り越えましたわ……………死に掛けるのと引き換えに)

 

 俺が天龍のその発言でポカーンとしていると天龍は腰からブレイラウザーを引き抜いてカードトレイを展開した。そしてトレイの中から一枚のラウズカードを引き出して

 

 サンダー!

 

「おりゃあ!!」

 

 

 それをラウズ(読み込み)してから雷をブレイラウザーにまとわせつつ飛び降り、そしてル級を切り裂いて大破させた。そしてそのまま艦載機を発艦させようとしているヲ級のもとにちかづいてそれも斬り裂いた。

 

「あ!俺も仕事しなきゃ。」

 

 天龍の言葉でポカーンとしていた俺はそれで飛び散った血を見て正気を取り戻し、本来の目的だった敵の数を減らすための行動を始めた。

 

 戦極ドライバーからイチゴロックシードを取り外し、それを無双セイバーにはめ込む。すると、

 

 イチ…ジュウ…ヒャク…

 

 とカウントとともにエネルギーが無双セイバーの先端に集まって行ったのを確認してから俺はトリガーを引いた。

 

「はっ!!」

 

 イチゴチャージ!!

 

 その瞬間、多数の深海棲艦がたむろっている戦場へイチゴのように赤い色をしたクナイの形をとるエネルギ-体が大量に降り注いだ。

 

 勿論大量のクナイを無双セイバーの先端から放出させながらダンデライナーを操縦して移動するのも忘れない。

 そうして俺は当初の目的だった敵戦力の減少に成功した…………ところで俺は天龍の方を見ると、そこには姫級と鬼級の砲撃にさらされる天龍の変身するブレイドの姿があった。

 

「天龍!!うお!?」

 

 それを見て反射的に叫んだ瞬間、俺の方にも装甲空母姫の砲撃とヲ級の艦載機が攻撃をしてきた。その不意打ちに近かった攻撃を俺は避けることができずにダンデライナーに攻撃の一部が直撃してその衝撃で俺は体勢を崩してダンデライナーから落っこちてしまった。

 

 落ちる寸前にダンデライナーを待機状態(ロックシード)に戻すことはできたが、先ほどの攻撃で一部機能が故障したらしく再展開ができなかった。

 

 ただでさえ、下からの砲撃に狙われないよう高高度で攻撃をしていたからこのままだと俺は戦乱の渦中に高いところから落ちて落下ダメージを食らうだけではなく、落ちているってことは避けることも叶わないいい的になってしまうということだ。

 

「(やばい!)」

 

 内心焦った結果、落ちるという最近体験したとはいえ慣れない経験のせいで俺は反射的に目をつむってしまった。

 

 マグネット!

 

 真っ暗に自分でした視界の中でそんな音声が聞こえたと思った瞬間、何かに引き寄せられるかのような力を感じてそのまま俺の体は誰かに受け止められた。

 

 衝撃が自分が思っていたものよりも少なかったことに安堵しながら目を開けると、そこには

 

「たくっ、やっぱり予想通りじゃねえか」

 

「!天龍。すいません!」

 

 ブレイド(天龍)が少し傷が入ってはいるが健在の状態で俺を抱えて立っていた。

 

「さてと…この状況をどうするかだな」

 

「確かに」

 

 俺は艦娘じゃないから海の上に立てない。だから沈まないためには今のまま天龍に抱えてもらいながら戦わないといけないんだけど、それは天龍に大きな隙を作らせてしまうことになる。それを俺はよしとしなかった。

 だが、敵はそんな風に俺たちが作戦を立てるのを待ってはくれない。実際今も装甲空母姫やイ級がこちらに向けて迫ってきている。

 

 この状況を打開する策が立っていないまま迫ってくる敵に対して身構えると、後ろの方から

 

 

「まてい!!!」

 

「全艦隊!うてい!!」

 

 聞き覚えがあるけどなんでここにいるのかわからない声(丹下桜Voice)と、同じく聞き覚えがあるけどテンションの違いに困惑する声の二つの声が聞こえた。

 

 その声の後に後ろの方から砲弾や空爆、そして魚雷…って今足元かすったぞオイ!!

 

 慌てて声がした方を二人そろってみると、

 

「ふっははははははは!!待たせたな天龍に仮面ライダーに変身する異界の提督よ!!」

 

 本来この世界に居るはずのない両刀の暴君(ネロ)がいた。

 

「音呂提督!?」

 

「赤セイバーだぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 この衝撃判るか?だって、赤とか白とかしまいには嫁とかなってるローマの暴君がこの世界にいるとか予想できるか?俺には無理だ。そんなの予想できなかった。

 

「待たせたな天龍!信濃に第1艦隊、さらに彼らの艦隊も増援で来た!」

 

 そんな風に混乱収まっていない俺を無視して状況は進んで行く。なんか、こちらに来ているボートを含めた艦隊に天龍が近づくと信濃提督がキャラ180度変わった状態で海の上に立っていた。てかナニソレ。ナニソレ……なんじゃそれぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええええ!!!!!!!

 

「(ポカーン)

 

「…信濃。今は戦艦モードだから鎧武ボーイが誰って感じになってるぜ」

 

 オーバーフローした俺をフォローするかのようにハーケンさんが肩をすくめながらそう言って、

 

「やる気ださせる為に戦艦にしたが普通に装甲空母が良かったか?」

 

 その横に立っていた白髪の青年が頭を抱えた。

 

「仕方ありません零児殿、信濃殿は装甲空母の時は演習しかしてないのですから」

 

 それを見てボートを運転していた馬鹿でかい丁髷の青年がそう言った…………てか丁髷?なんで丁髷?

 

「零児提督まで、ってかいたのか?」

 

「丁度演習をしに来たらな」

 

「余も同じだ!話を聞いたからには余達も手伝うぞ!」

 

 混乱が未だに収まらない俺を放置して天龍とやってきた援軍との話は進んでいた……っと、そう言えば援軍出来た人の名前とか全然俺知らねぇよ。

 

「あなた方は?」

 

 とりあえず、名前を聞くことにした。

 

「自己紹介がまだだったな。俺は有栖 零児。別の鎮守府の提督だ」

 

「同じく別の鎮守府の提督を務める帝政 音呂とは余の事だ!嫁は扶桑と山城だ!よろしくな異界の提督よ!」

 

「ハーケン殿のツァイト・クロコディールの操縦を務めておりますアレディ・ナアシュと言います。ハーケン殿から大体の話は聞いております」

 

(あ、やっぱ百合(レズ)なのね……)

 

 2番目に紹介した音呂提督の自己紹介のせいで丁髷の人の言っていることが全然頭に入ってこなかったけど一応名前は覚えた。

 

 自己紹介の後に、音呂提督は零次提督に怒られていた。まぁ、当然だとは思ったが…と、一人考えていたら

 

「お兄ちゃん!」

 

 玲奈が音呂提督の背後からひょこっと顔を出した。……貞操大丈夫かな…?

 

「玲奈!お前も来てたのか!(貞操的な意味で大丈夫なのか!?)」

 

 俺がこの海域に来ていた玲奈に声をかけると

 

「お兄さんがいない事で心配してたぞ」

 

「シスターは大事にした方が良いぜミスター鎧武」

 

 そんな風に年長者二人に怒られた。そんな風に喋っていると、

 

 

「忌々シイ艦娘ニ人間共メ!」

 

「……やはり違うか」

 

「おおっと今回も外れとはなかなか出くわさないな」

 

 戦艦棲姫が憎々しげにこちらに叫んできて、ハーケンさんと零次提督が謎の会話を繰り広げた。

 

「?どういう意味ですか?」

 

 それで疑問に思ったから尋ねてみると

 

「なあに、昔の育て親を探しているのさ」

 

「え?戦艦棲姫が育ての親!?」

 

 さっきの天龍の発言で驚いたのと別ベクトルで驚きの答えが返ってきた。

 

「小さい時に親父の船に乗っていた時に別の深海棲艦に襲撃された事で海に放り投げだされた後にとある無人島で怪我を負っていた俺をとある戦艦棲姫が助けてそのまま育てられただけだ…それに俺を育てたのは白い髪に右側の角が折れた個体だ」

 

 …………そんな個体いるのか?てか、見たことないな……現実(リアル)でも言い方が悪いのは重々承知だが艦これ(ゲーム)でも。

 

 そんな風に記憶の中を穿り返してさっき聞いた情報に心当たりはないか考えていると、

 

「さて、それよりも行くぞハーケン」

 

「OK、ミスターアリス。さっき貰ったのを試すとしますか」

 

 俺からしたら()()()()()()()()()物を二人はとりだした。

 

「なっ!?それって!?」

 

 それは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だった。

 

「それ!?(俺のじゃね!?)」

 

「ん?ああ、これは妖精さんが作ったのだ」

 

「なんか天龍のブレイバックルを見て即発されたんだってな」

 

 そう言いながら零次提督は腰にディケイドライバーを装着してこれまた見覚えがあり過ぎるカードを装填し、ハーケンさんはディエンドライバーにあるライダーカードを装填した。

 

 カメンライド!

 

「「変身!」」

 

 ディケイド!!

 

 ディ・エンド!!

 

 エフェクトが発生して各々半透明の板が突き刺さったのちに二人の姿はディケイドとディエンドに変わっていた………と思ったら二人そろって水上に飛び出して艦娘のように水面に立っていた。

 

(は?変身したら浮けるの!?俺浮けないよ!?)

 

 俺が一人その光景に戦慄していると、音呂提督が

 

「ほれ!お前もこれを付けろ!付ければ水の上を浮けるぞ!」

 

 そう言ってブーツみたいなものを投げ渡してきた。

 

「あ、はい!」

 

 とりあえず俺はそれを指示通り足に付けて、その後に恐る恐る海面に足をつけてみると一瞬沈みはしたが、すぐに艦娘のように海面に立つことができた。

 

(おぉーーー!!!)

 

 と、一人内心感動しているとハーケンさんが変身したディエンドにこっちに来いとモーションで示されたから俺は近づいた。

 

 すると、変身を解除した天龍が信濃提督の艦隊に合流したあたりで

 

「全艦隊に告げる!目の前の深海棲艦の艦隊を迎撃せよ!」

 

 音呂提督がそう言った。

 

「乗り遅れるなよお前等!さあ、ショウ・ダウンだ!」

 

「行くぞ!切り開く!」

 

「艦隊、戦闘開始せよ!」

 

 他のメンバーも見方を鼓舞している。だったら俺も!!!

 

「ようし!ここから俺達と艦娘のステージだ!」

 

 こういうしかないだろ!!!!

 

 

 

 

 そう勢いづきはしたが、俺は他のみんなと違って海面に浮かぶという経験が全くない。そんなのだから……

 

「恥ずかしい恥ずかしい……」

 

「ほら、そんなこと言わないの!3時の方向に敵来てるよ!」

 

「泣きたい…(パシューン!)」

 

 先行して突っ込もうとし、顔面から豪快に転んだ。それで恥ずかしさのあまり、まともに戦闘ができなくなってしまったので玲奈が自分の(レ級の)艤装(しっぽ)を出して俺を曳航しながら戦うことになった。

 

 ただ、それだとイチゴアームズは混戦に不向きだから玲奈が自身の判断で勝手に両手で顔を隠している俺の戦極ドライバーからイチゴのロックシードを外し、ホルダーに引っ付いていたブドウのロックシードを開錠した。

 

<ブドウ!>

 

「ほらお兄ちゃん。アームズ変えるよ!」

 

「もうどうにでもなれ………」

 

<Lock On! ソイヤ!!!ブドウアームズ!!龍・砲・ハッハッハ!!>

 

 そうすると、武装がブドウアームズ専用武器のブドウ龍砲に変わるので砲撃戦ができるようになる。それで玲奈は俺を引っ張りながら戦場の外周を回り、そこからアウトレンジで戦闘をすることにしたのだった。

 

 そんなグダグダな精神状態でも俺のAIM(狙い)はしっかりしたものだったらしく今さっきも敵影を見ずに艦載機数機を撃墜した。

 

 さっき俺たちが集まって戦闘を開始してから数分が経っている間に全員が手に入れた戦果

 

 俺→空母ヲ級と装甲空母姫を撃破。ブドウスパーキングをノールックで放ったら装甲空母姫の方へと向かった。それに気付いた装甲空母姫が近くにいたヲ級2体を盾にして自分の身を守ろうとしたけれども威力が強すぎて三人まとめて蒸発。

 

 音呂提督→自分の艦隊を指揮して現在進行形で軽巡棲姫(通商わるつうさん)と戦闘中。わるつうさんは中破状態。しかし、扶桑も中破で音呂提督の精神がヤバイ。

 

 信濃提督→空母水鬼相手に奮闘中。今のところは被害艦無し。取り巻きは全員撃破済み

 

 ハーケンさん→港湾水鬼が率いる艦隊相手に無双中。今の所ハーケンさんが優勢

 

 零次提督→戦艦棲姫が率いる艦隊を一瞬で撃破。残りは戦艦棲姫(小破)のみ

 

 

 ………俺一番活躍してなくね?

 

 

「俺一番活躍してねぇ!!!」

 

「わ!?急にお兄ちゃんが復活した!!!」

 

「あ、悪い。」

 

 俺が急に顔をあげて叫んだことで玲奈を驚かせてしまった。

 

「もう…いつものお兄ちゃんに戻って良かった。そう言えば昨日お兄ちゃんがいないときにこれを妖精さんに渡されたんだけど…………どこにやったけな……?」

 

「ん~。服装変わってるから無いとさすがに思うぞ。」

 

「え~、だってキャミソ-ルに入れてたスマホは入ってたんだもん。だから同じポケットに入れてたあれも入ってると思うんだけど……あった!!」

 

 そう言って玲奈が上に掲げたのは

 

「は?ちょっと待ってそれ……」

 

 俺が驚くのも無理はないだろう。俺は正直次に妖精さんが持ってくるならエナジーロックシードだと思っていた。しかし、玲奈が上に掲げているその()()()()()()()()()()()()()()()()()()は!!!

 

「カチドキじゃねぇか!!!!」

 

 カチドキロックシードだった。てか、エナジーちゃうんかい!!!

 

「とにかく、ありがとな。」

 

 俺は玲奈からカチドキロックシードを受け取りながらそう言うと、玲奈は顔を真っ赤にしながら

 

「いいわよ…だからたまには私にもかまってよね!!」

 

 最近ほっぽちゃんにばかりかまっていたせいで不服だったらしい。

 

「わかったわかった。」

 

 俺はそう言いながらブドウロックシードを外してカチドキロックシードを開錠しようとした。

 

 その瞬間、俺にも予想してなかったエネルギーの奔流が俺を中心に発生した。

 

「!!あれは!?」

 

「あそこにいるのは鎧武ボーイ!?」

 

「一体何してるんだ!?」

 

「扶桑!一回引け!!余が相手をしてやろう!!」

 

 一人だけこちらを見ていなかったが、その時その場にいた全提督の視線が俺の方に集まった。……が、俺にそんなことを気にしている余裕はなかった。

 

「うぐっぉっぉぉぉおぉぉぉお!!!!」

 

 何か、開錠しようとした瞬間得体のしれないエネルギーがこのロックシードめがけて流れ込み始めたせいでその重さが尋常じゃないものになっていた。

 

「うぉぉおぉぉぉぉぉぉ!!!!!変身!!!」

 

 その尋常じゃない重さに耐えながら俺はプルプル震える右手の指先で頑張って開錠ボタンを引っ張った。

 

<カチドキ!!>

 

 開錠した瞬間、エネルギーは一気にロックシード内に収縮し重さは普通のものになった。なんでそうなったのかを気にする暇もなく俺はそれをドライバーにはめた。

 

<Lock! On!>

 

 ほら貝の音が戦場に鳴り渡る。俺は鎧武の素体の状態で右手を顔の前を回すように背中側へと動かしそれに合わせて左手を手の甲を前に向けるように顔の前へと動かした。

 

 そして顔の前に置いていた左手で叩きつけるように俺はカッティングブレードを下に倒してカチドキロックシードを半分に割り裂いた。

 

<カチドキアームズ! いざ出陣!エイエイオー!>

 

 そんな音声とともに頭上から大きな鎧が降りてくる。それをかぶった後、俺の姿は重厚な鎧に身を包み、そして鎧武の持つアームズの中で圧倒的な火力をもつカチドキアームズへと変身していた。

 

「……お兄ちゃん?」

 

「…………」

 

 無言で立ち尽くす鎧武カチドキアームズを心配するかのように近づいてくる玲奈。そんな玲奈が鎧武カチドキアームズに触れるか触れないかのところでそれは動き出した。

 

「……‥砲撃用意……」

 

 その言葉とともにどこからか火縄大燈DJ銃が現れ、その銃口は空母水鬼の方へと向いていた。

 

「お兄ちゃん!?」

 

 その射線上に玲奈がいるにもかかわらずそれは異常に圧縮されたエネルギー弾を空母水鬼に向けて放ったのだった……。

 

「………」

 

「!!!髪が焦げた…でも、体は大丈夫………。お兄ちゃんどうしちゃったの!!ねぇ!!!」

 

 玲奈のその問いに対する答えはない。理由は簡単だ。なぜなら隼人はその時()()()()()()()()()()()……。

 

 なら、なぜカチドキアームズが戦っているのかと言う答えも単純だった。それは

 

「「「「憎い!!!憎い!!!!!憎い!!!!!深海棲艦が憎い!!!!!今生きている奴らが憎い!!!!!!!!」」」」

 

 憎悪を込めてそうつぶやく鎧武カチドキアームズ。なぜ隼人が気絶しているのに声が出せるのだろうか。その問いに対する答えも簡単だった。

 

 カチドキアームズに変身する前にカチドキロックシードに流れ込んでいたエネルギー。その中にはこの海域で深海棲艦の手によって殺された人たちの怨念が大量に含まれていた。

 

 それに中てられて隼人は変身直後に気を失ってしまったのである。そして気を失った隼人の体の制御を怨念たちは乗っ取り、そして暴れ出したのだ。

 

 こうして戦場は三つ巴のバトルロワイヤルへと発展していった………

 




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第13話 少女の決断

ども、更新乙です。
コラボは続くよまたまだね


 少女(玲奈)が兄と慕う青年(隼人)は以前一応妹となっている少女(雷香)がしていた心配通りに壊れた。

 

 目の前で憎悪をまき散らすお兄ちゃん(隼人)が変身した仮面ライダー鎧武カチドキアームズを見てそう彼女()は思ってしまった。

 

「お兄ちゃん!!」

 

 玲奈()は天龍さんに抱えられて強制的にお兄ちゃん(隼人)との距離を開けられながら、ハーケンと名乗ったおじさんと零児と名乗ったお兄さんたちが変身した仮面ライダーに抑え込まれて苦しそうに唸っているお兄ちゃんの姿を見てただ呼ぶことしかできなかった。

 

 戦艦レ級という強大な戦闘力をその体に持ちながらも、彼女()は兄が壊れてしまったという今の状況を打開するにはあまりにも無力だった。

 

 そしてそのまま天龍さんに抱えられてボートの方へとたどり着く。ボートの上には深刻な表情を浮かべたアレディさんがいてボートの移動中に自分を変な目で見ながら舌なめずりをしていた音呂さんの質問に答えていた。

 

「文字通りです。彼は乗り移られたのです。この海域に渦巻く怨念に…今の彼は深海棲艦への恨みと生きる者達に対する憎しみに囚われた怨念です」

 

 ようやくたどり着いたボートで告げられたアレディさんのその言葉に

 

「マジかよ!」

 

「そんな!?」

 

 私も天龍さんもそう言うことしかできなかった……。

 

 その時だった。

 

「「「「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」」

 

 そんなお兄ちゃんの悲鳴のような叫び声と

 

「!皆避けろ!!」

 

 という仮面ライダーに変身した零児さんの叫び声が戦場に響いたのは………その直後、アレディさんいわく乗っ取られているお兄ちゃんが抑え込みを力づくで引きはがしてさっき空母水鬼を轟沈させた銃を乱射したの。

 

「危ない五月雨!」

 

「ひゃあ!?」

 

「うお!?今眼帯かすった気がする!?」

 

「それよりも髪じゃない?あ、アタシもなってた」

 

「北上さんの綺麗な髪を焦がすなんてあの武者はゆ”る”ざん”!」

 

「あわわ!大井さん落ち着いてください!」

 

「姉様!雪風ちゃんの近くにいれば大丈夫ですよ!」

 

「あ、ホントに来ないわ」

 

「遅い遅い!」

 

「島風は相変わらずよのう…うっ、行く前にやったダンスと先ほど避けたので腰が…」

 

「はわわ!?初春ちゃん大丈夫!?」

 

 その急な攻撃に長門さんは五月雨ちゃんを抱えて避けて、木曾さんは間一髪、顔スレスレの光弾を避けていたわ。北上さんは後ろ髪の所を光弾が掠ってそれを見て怒った大井さんが魚雷を放そうとしたら雪風ちゃんに止められてたわ。それを見ながら扶桑さんと山城さんは雪風ちゃんの近くまで光弾に当たらない様にと移動してたの。

 

 そんな風に大慌てになる人たちがいる一方で、島風ちゃんはそのスピードで光弾を全部避けて、それを初春ちゃんは横目で見た後にイナバウアーみたいに体を仰け反らせて避けたのはが良かったけれど、顔を一気に青くして、それを近くで見ていた榛名さんが慌ててモーターボートまで運んだの。

 

「翔鶴姉大丈夫!?」

 

「大丈夫よ瑞鶴、ちゃんと避けれたわ!」

 

「いえ翔鶴さん!服が!!(はあはあ)」

 

「半分見えかけてますよ!!」

 

「この淫獣は大事でも肌の露出があると平常運転になりますね」

 

 光弾が掠めてないか安否を聞く瑞鶴さんに先ほどの光弾で服の半分が吹き飛んで服が中破な翔鶴さんを見ながら吹雪ちゃんが顔を赤らめて息を荒げながら指摘したわ。はっきり言ってその時の吹雪ちゃん気色悪かったけれど。

 

 そしてそんな風に肌が丸見えな翔鶴さんに大和さんは慌てて自分の傘を渡して隠す様にする中で加賀さんは辛うじて艦載機で迫ってくる光弾を迎撃しつつ毒づいてたわ。

 

 そんな混沌を極めた状態で

 

「くそ厄介もそうだがカオス過ぎるだろ!」

 

 天龍さんも毒づいていた。

 

「ねえ!お兄ちゃんを助けられないの!」

 

 私がそうアレディさんをつかみながら泣きそうな顔で言うと、

 

「…いえ、あります。その為には死なない程度に大きい衝撃を与えて彼と怨念を切り離す必要があります。その後に私が怨念を浄化します」

 

 自信満々な顔でアレディさんがそう言ったの。

 

 それを聞いて天龍さんが

 

「だったら…玲奈、お前がお兄ちゃんを助けてやれ、俺も1つ手伝うぜ」

 

 って急に言ってごそごそし始めたの

 

「え?(私何もできなかったんだよ?それなのに何をすればいいの?)」

 

 と私が困惑していると、天龍さんはTの字をした手のひらサイズの機械を取り出して私の方にその小さい機械の画面を向けたの。

 

 その次に青色のカードを取り出したかと思ったら

 

「カードスラッシュ!マトリックス!エボリューション!!」

 

 って言いながらそのカードを手のひらでもっている機械に通したわ。すると

 

<Matrix Evolution>

 

 そんな電子音声が鳴ると同時に私を映している画面から光があふれだして私を包み込んだの。

 

(え!?え!?なにこれ!怖い!!)

 

 一瞬あの(洗脳された)時の記憶がよみがえって恐怖に包まれたけど、

 

「暖かい…それに、力が湧き上がってくる」

 

 すぐにその考えは違うって思ったわ。あのときに感じたのは暖かさじゃなくて冷たさ、それは今と全く逆のものだったから。

 

 それにあの時は外から何かを流し込んできたみたいだけど、今回は中から何かが生まれてくるみたいに力が溢れて来たしね。

 

 

 

 そんな風に気持ちよさを感じていたら私の体は気付かぬうちに変化を始めていたの。

 

 背丈が伸びて金剛さんのような大人の女性みたいに、肌の色が深海棲艦特有の真っ白から普通の艦娘のように肌色に。

 

 レ級になって以来真っ白に染まっていた髪が雷だった時みたいに赤っぽい栗色へと変わり、あとで海面を見るまで気付いてなかったけど目の色も茶色に戻っていたわ。

 

 そして暁ちゃんや清霜ちゃんが見たら嫉妬しそうな大人の姿に適した金剛さんたちが着ているような改造巫女服の袖が無いのが纏われて帯が勝手に締まる。

 

 最後にさっきまで私のお尻の方についていた艤装のしっぽは、光を纏って雷の龍のような姿へと変化したの。

 

 そこまで変わったところで私を覆っていた光がはじけて私は目を開いたわ。

 

「ぐおぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

 まるで生誕の咆哮をあげるかのように光がはじけたとたんに背中の龍が大きな声を上げたわ。

 

「うお!?」

 

 それに天龍さんも音呂さんもびっくりしていたわ。ただ、少し離れた位置にいた吹雪ちゃんの目の色が怪しく光ったのを私は見逃さなかった。………なぜか嫌な予感しかしないわ。

 

「すっげぇ…ほっぽとはまた違う意味で進化した…」

 

 そんな予感を感じて吹雪ちゃんの方を警戒していると天龍さんがそう漏らした。

 

「これが私?大きくなったのもそうだけど肌も髪も目も戻ってる…尻尾も変わってる」

 

 正直、信じられなかった。だって、深海棲艦に改造された際に艦娘として生きた数日間の体の全てを破壊されて作り直されたからもうあの時のようには戻れないと誰にも明かさずにこっそりと思っていたのに、今の私は艦娘のような姿に戻っていたのよ?信じられなくて当然よ!

 

「ぐおう」

 

 だけど、そんな私に『現実だ』とでも言いたいのか尻尾の龍がそう言って私の頭をお兄ちゃんがよくするみたいに軽くポンとたたいたの。

 

「ほほう、巫女の様な戦艦、さしずめ今のお前は戦艦巫姫(みき)と言えば良いかな」

 

 そんな私の様子を見て音呂さんがそう言った所で

 

「玲奈殿、ベルトのあれを攻撃してください。あそこに怨念が集中しています。そして呼びかけてあげてください。それもまた彼を取り戻す為の力になります」

 

 アレディさんが私の方を見てそう言った。あれ……そう言いながらアレディさんが指を指しているのは私が渡したカチドキロックシードだった。

 

「カチドキロックシードに…分かった!(お兄ちゃんへの思いはここにいるだれにも負けないんだから!!)」

 

 そう思うと同時にしっぽの龍がお兄ちゃんの方を向きエネルギーを集め出したわ。すると、視界にターゲットサイトって後で聞いたら霧島さんが教えてくれたけど円状の何かが現れてそれが拡大したり縮小したりし始めたの。

 

 その中心は最初はお兄ちゃんの頭だったけど、それをずらしてお兄ちゃんの戦極ドライバーにはまっているカチドキロックシードに合したわ。

 

 そして

 

「お兄ちゃん戻って来て!」

 

 私はありったけの思いを込めて叫んだ。それに続くように

 

「隼人!お前は守るために仮面ライダーになったんだろ!自分を取り戻せ!単独で出ようとしたのも妹を、家族を守る為だろ!!」

 

「聞いてるだろ鎧武ボーイ!悪いゴーストに自由を奪われてる場合じゃないだろ!」

 

「俺はさっき会ったばかりだがお前にも提督としての信念があるのだろう!起きろ!!」

 

「妹を泣かせて何が兄じゃ!根性を見せろ!」

 

「隼人!天龍の言う通り!守る者がいるのに良い様に使われてそれで良いのか!!」

 

 他の提督さんたちが大声でお兄ちゃんに叫んだの。それが聞こえたのか、一瞬動きを止めたお兄ちゃんだったけど

 

「「「「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!黙れ!!!!」」」」

 

 そう言うと同時に私の方に銃を向けて光弾を発射した。

 

(エネルギーをためてるせいで動けない!!ここは我慢して受けなきゃ!!)

 

 私が覚悟を決めて痛みに耐えようと構えていると、天龍さんが腰に何かを巻きながら私の前に立った。そして

 

 

「なあ、隼人、俺は現実で殺す事はめっちゃ嫌いだ。深海棲艦だろうと深海棲艦だからで殺していい訳がない。だけどそうしないと俺達は生き残れない。そんな色々な事がある中で俺達は生きている。だから中途半端かもしれねえ…だけどな…手の届く奴を守れないで、守れるなんて強く言えなくなる。それが俺が今生きてる中で一番いやだ!変身!!」

 

 ターンアップ!

 

 

 そう言って腰の方の何かをいじって自分の前に半透明な()()の板を出したの。

 

 そしてその板を潜り抜けて金色の騎士に変身したと思ったらその手に持った大きな剣で迫ってきていた光弾を切り裂いたの。

 

 それで力を使い果たしたのか天龍さんは倒れてしまったけれど、射線上からは外れてくれたからお兄ちゃんへ一直線に(射線)ができていた。

 

「いっけぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 私はしっぽから全力を込めた一撃をカチドキロックシードに向けて放ち、それは無事に抑え込んでいたハーケンさんと零児さんにあたることなくカチドキロックシードに直撃して霧散したわ。そうしたら

 

「「「「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」」」

 

 って耳がいたくなるような声をあげながらお兄ちゃんの体から黒い球体が飛び出して蠢いたの。それを見てアレディさんが

 

「今が浄化の時!」

 

 って言ってポーズを取り始めたけど………そのポーズはお兄ちゃんが前に冗談半分で見せてくれたクウガの変身ポーズの最初のポーズじゃあ!?

 

 私が横目で見ながらそう思った瞬間、アレディさんの腰が鈍く輝き中心に赤く染まった宝石が埋まっているベルトが現れたわ。

 

「アレディ!ド浄化してあげなさい!」

 

「はい!ビスマルク殿!わが師より授かりし霊石よ!我に浄化の力を!変身!」

 

 さっきから影がすごい薄かったビスマルクさんがアレディさんにそう言うと、アレディさんは前にお兄ちゃんがふざけてやっていたモーションをなぞるかのように動いて、さらに右手を左から右へと動かした後にそう叫んだわ。

 するとベルトの中心にはめ込まれている宝石を光ってその姿は仮面ライダークウガのものへと変わっていたの。

 

 そしてお兄ちゃんから飛び出した黒い球体へ向けてとび蹴りをするかのように飛び上がったわ。

 

「怨念よ、お前達の憎む気持ちは分かると言えない程深いかもしれない。だがそれで命ある者を自分たちと同じ様にするのは己をそんな存在にした者と同じだ。だからこそ我が霊力で安らぎを与えん!」

 

 そしてお兄ちゃんから飛び出した黒い球体へ向けてとび蹴りをするかのように飛び上がったわ。

 

「真覇!朧撃烈破!!」

 

そう言いながら黒い球の方へと光りながら向かって行ってその右足は黒い球を貫いた。

 

「汝らの魂に良い来世が訪れん事を」

 

「「「「ああああ…そうか…私たちは…逝けるのか」」」」

 

 クウガに変身したアレディさんは貫いた後に着水してからそう言うと、黒い球は白くなって行ってそのまま消えて行ったわ。その球が完全に消えるのと同時にお兄ちゃんは糸が切れたかのように変身を解除しながら倒れ始めたの。

 

「あ!」

 

 私は急いでお兄ちゃんの方へと駆け寄ろうとするけれど、さっきの砲撃に全力を注いだせいか体がうまく動かなかった。だけど、お兄ちゃんがそのまま水面に突っ込むことは…

 

「おっと」

 

 と言ってハーケンさんがお兄ちゃんを支えてくれたからなかったわ。

 

「ひとまずは…これで大丈夫か?」

 

「そうだな。あっちも退散したみたいだからな」

 

 そう言うハーケンさんに零児さんは撤退していく戦艦棲姫を見てそうく呟いていた。

 

「天龍さんしっかりしてください!」

 

 そう言いながら吹雪ちゃんがこちらを名残惜しそうに見つめながら天龍さんの方へと急いで向かって行って、

 

「お兄ちゃん!」

 

 私はお兄ちゃんの方へとうまく動かない体を必死に動かして向かったわ。

 

 そしてお兄ちゃんをボートに乗せてから急いで鎮守府に帰ることになったの。

 

 

 

 

 

 そんなことがあっても次の日はやってくるのね。

 

 昨日鎮守府に帰還してから即座に医務室に運ばれたお兄ちゃんが昨日のうちに目を覚ますことは無かった。

 

 一応脈拍とかは安定してるそうなんだけど、意識が戻る様子が無いんだって。

 

 それだけじゃなくて私の方も少し異変が起きていて、本来一戦闘の間しか効力を発揮しないはずのあの手のひらサイズの機械の効果が私には残留してしまったみたいで未だに戦艦巫姫(みき)の姿から戻れないでいるの。

 

 まぁ、その分雷香やほっぽちゃんとのお兄ちゃん争奪戦を一歩先を行けるからいいんだけどね!

 

 

 

 

 ……………………そんな風に強がっては見てはいるけれど、さびしいよ…。早く目を覚ましてよお兄ちゃん……。

 

 

 そんな風に今にも泣きそうなわたしを心配した天龍さんのご厚意で他のみんな(吹雪ちゃんは除く)と一緒にお風呂に入らせてもらって、榛名さんに浴衣を借りて、信濃提督に客間へと案内してもらって寝たのは日を越えていたから今日は本当は遅くに目が覚めるはず………だったわ………。

 

 

 モニュムニュモニュモニュ

 

「ん……」

 

「(お?感度がよさそうですね。これは期待大です。)」

 

 スリスリスリ

 

「あ………アン!」

 

「(柔らかいですね~乳首も感度が良いみたいでこれは天龍さんに続く名器の予感!!)」

 

 モムモムモムモムモムモム…………

 

「………ヒッ!」

 

「あ、目覚めてしまいましたか。これは残念。」

 

 私の安眠を妨げたのは、顔をマシュマロのようにたゆんたゆんにして未だに戦艦巫姫の姿だったから大きい私の胸に顔をうずめてもみしごく吹雪ちゃんの姿だった。

 

「キ…」

 

「キ?」

 

「キャーーーーーーーーーー!!!!!!!」

 

「あ!耳が………耳が痛いでsアバババババババババババ!!」

 

 叫んだあと、私は反射的に艤装のしっぽを出してそれで吹雪ちゃんを殴ったの。すると吹雪ちゃんは雷に打たれたかのように痙攣してその場で煙を上げて倒れて動かなくなったわ。

 

「大丈夫ですか玲奈さん!!」

 

「大丈夫かいシスター!?」

 

「余は来たぞ!大丈夫か!!!」

 

「大丈夫………じゃなさそうだなどっちも。」

 

 今この鎮守府に居るお兄ちゃん以外の提督さんのみんなが私の叫びにびっくりして部屋に駆け込んできたの。

 

「あっちゃー!!あの野郎またやりやがった!!」

 

 最後に遅れてやって来た天龍さんが胸元をはだけさせて手で隠している私の状態と、今なお痙攣し続けている吹雪ちゃんを見てやっちまったーと言わんばかりの顔をしてそう言ったの。

 

「確かにこれはひどいな。彼が起きてきてこれを知ったらどうなることやら……。」

 

 そうハーケンさんがつぶやくと、

 

「信濃提督大変です!!隼人さんの姿が医務室から………ってなんですかこの集まりは?」

 

 大和さんが信濃提督さんを探しに駆け込んできたけど、今なんて言ってたの?

 

 ()()()()()()()()()()()()()()って?

 

「ねぇ大和さん今なんて!?」

 

 ドスン!!

 

 私が大和さんにさっきの発言をもう一度言ってもらおうと思ったら後ろの方で何かが落ちる音がしたの。

 

「「「「「「……」」」」」」

 

 無言なうえに唖然とした表情でこちらを見て固まっているみんなの様子を見て私は後ろを振り向いたわ。したら……

 

(玲奈)を泣かせたのはお前かぁーーーーー!!!!!」

 

 幽鬼のように目を血走らせながら窓から入ってきてまだ痙攣している吹雪ちゃんの頭をわしづかみにしているお兄ちゃんの姿があったわ……。

 

「お兄ちゃん!!」

 

 私はそれを見た瞬間お兄ちゃんに跳びついたの。だけど私は肝心なことを忘れてたわ。それは今の私は雷香と一緒の7歳児ぐらいの大きさではなくて、お兄ちゃんと同じぐらいの年齢の姿になっているってことを………

 

「ガハッ!!!」

 

「お兄ちゃん!?」

 

 私が抱き着いたせいで膝が震えていたお兄ちゃんはそのままつぶされてしまったのでした。

 

 だけど、これは好都合。

 

「お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!」

 

 このまま昨日補充できなかったお兄ちゃん分を補給させてもらおうっと。あれ?みんなの反応が変だけど私何かおかしいことしてる?

 

 そんな風にお兄ちゃんの上で小首をかしげた私でした。

 

 

 




最後の吹雪はコラボ先の憑依天龍に出てくる通称婬獣吹雪です。

コラボの度に不憫な目に会う子なので今回も会わせました(笑)

感想、評価を貰えると先詠む人は嬉しく思います。


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巻の14 修行する男

どうも!( ・∇・)

お待たせしました先詠む人です。

TOEICを受けるために一時的に執筆をお休みしてましたが…………………………新型難しすぎんだろぉぉぉぉぉぉ‼(#`皿´)

一応、新型に対応したと名乗っている参考書をやり込んでから受験しましたが、死にました。
自分が買った参考書に書いてない問題や、その参考書に載っていた攻略法がまるで役に立たず( ;∀;)

今月末もあんな感じに姿を消すと思いますが、受験後は書き始めますんで宜しくお願いします。


『『起きて…』』

 

 聞き覚えがあるようでない声に導かれて俺は目を開く。

 

 前後左右真っ暗で何もない空間の中、気付けばただ一人そんな空間に浮いていた。

 

「ここ……どこだ……?」

 

 そう一人つぶやいて呆然としていると、

 

『ここはお兄さんのいるべき場所じゃない…だからお兄さんがこっちに来ちゃダメ…』

 

 後ろの方からそんな声が聞こえた。

 

「誰だ…?」

 

 声の主を探りたいという俺の思いとは裏腹に体は全く動いてくれない。

 

 頑張って首をひねり、声の主を見ようとした俺の顔に()()?の長い髪をたなびかせた少女がキスをした。

 

『またね』

 

 顔を俺から離して、そう彼女が告げた瞬間俺の視界は光に包まれて何も見えなくなった。

 

「!!」

 

 目を開けると今度はまぶしい光が俺の目を突き刺した。

 

「今のって一体……?」

 

 さっき見た夢?のことを思いながらそう呆然としていると、

 

「キャーーーーーーーーーー!!!!!!!」

 

「ッ!!玲奈!?」

 

 記憶の中より少しだけ高い玲奈の悲鳴が聞こえた。

 

 玲奈のもとに駆け付けようと少しだけ痛む体を無理に動かして部屋から出ようとしたが、なぜか入口に鍵がかかっていて開かなかった。

 

「チッ!」

 

 仕方がないから窓を開けて外からさっきの声が聞こえた部屋へ行こうと俺は窓を乗り越えた。

 

 窓際をなぞりながら少し歩いていくと大きな声が未だに漏れている部屋が俺がさっきまでいた部屋のすぐ近くにあった。

 

 ここか?と思って窓の外から中を覗いてみると、その中には

 

 玲奈っぽい感じがする見たことない女性の後ろ姿と痙攣している吹雪の姿があった。だけど、吹雪の手が何かをもむかのようにひくひくと痙攣しているのを見て俺はなんとなく悟った。

 

(あ、こいつだな。玲奈を泣かせたのは…)

 

 と。いろいろと過程をすっ飛ばしたのは後々考えたら実際そうだと思ったけど、その時の俺はそのまま窓を開いて中へと入ろうとした……が

 

 ドスン

 

 と、言う音とともに頭から床に落ちてしまった。だけど、そのまま手を伸ばして未だに痙攣している吹雪の顔へと手を伸ばす。

 

 そして

 

(玲奈)を泣かせたのはお前かぁーーーーー!!!!!」

 

 その言葉とともに全力で頭を握りしめた。だけど、次の瞬間

 

「お兄ちゃん!!」

 

 の言葉とともにさっきはこっちに後ろを向けていた女性が俺のことをそう呼びながら飛びついて来た。

 

 いきなりすぎたその衝撃に俺は耐えきれなくて

 

「ガハッ!!!」

 

「お兄ちゃん!?」

 

 その女性に押しつぶされてしまった。

 

 すると、何を思ったのかその女性は

 

「お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!」

 

 そう言いながら俺の鳩尾のあたりを頭でぐりぐりし始めた。

 

 ヤバイ…息できない………死ぬ……………。

 

 そうして俺の意識は再び途切れた。

 

 

 

 目を開けると、自分の部屋のものじゃない天井だった。

 

「知らない天井だ……。」

 

「いや、知ってるだろ。」

 

 内心、鎮守府の天井とわかっていたうえでネタに走ったのにすぐ近くで俺が起きるのを待っていた天龍に突っ込まれてしまった。

 

「ま、ネタに走るのここまでとして、未だに俺に抱き着いていて今度は頬ずりを始めたこの女性は誰ですか?」

 

 誰も聞いてないと思ってしたネタだったせいで恥ずかしいと思いながら俺は未だに俺にしがみついている女性について尋ねてみた。

 

()()()()だ。」

 

「………One more please.」

 

 天龍の口から出た言葉が信じられなくて俺はなぜか英語で尋ね返していた。

 

「何で英語?だから、お前の妹の玲奈だよ。」

 

「……‥ハァ!?」

 

 だけど、その内容が変わることは無かった。

 

「お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!」

 

「もしそうだとしてもなしてでっかく!?」

 

 いきなりすぎる事実に混乱したせいで敬語をつけるのも忘れて俺は聞いてしまった。

 

「あ~っと、それは俺のせいだ。これ知ってるか?」

 

「Dアーク?まぁ、知ってますけどそれが?」

 

「これとブルーカードのせいなんだ。」

 

 Dアークとブルーカード………………要は進化したってことか?

 

「今の玲奈の姿は戦艦巫姫と一応分類してる。」

 

「は…はぁ。」

 

「とにかく、飯食いに行こうぜ。お前も昨日から何も食ってないだろ?」

 

 そう天龍さんが言った途端に俺の腹が

 

 グー

 

 と、間抜けな音を立てた。

 

「ありゃりゃ…。お相伴にあずかります。」

 

 そう言って俺を飯に誘って立ち上がった天龍さんの後ろを玲奈にすりすりされながら食堂へと歩き出した。

 

 

 

 ……食堂のごはんは正直に言って少し物足りなかったのを簡単に言っておく。

 

 それと、天龍さんに食堂でご飯を食べているときにに見せてもらった俺の記憶が跳んでる間の映像はひどいものだった。いくら操られていたからってあれが俺だとは認めたくなかった……。

 

 

 飯を食べさせてもらった後、俺はハーケンさんと音呂提督、そして零児提督と話していた。

 

「まぁ、ハヤト、愛は色々とあるが家族は大事だぜ」

 

「うむ、その愛がなんだろうと行き過ぎなければ良いのだ」

 

「ちょっとお2人さん!何言ってるの!?」

 

「お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!」

 

「その未だにスリスリしている妹の事だろう」

 

「た、大変ですね;」

 

「止めて!現実逃避していたのに直面させるのは止めて!!」

 

 内容はアレだったが……………。

 

 最後の言葉に手のひらで顔をうずめたくなった俺に

 

「んでこれからどうするんだ?確か帰る目処がないんだったな」

 

 零児提督が聞いて来た。

 

「あ、はい…ホントそこが…(家の鎮守府にたどり着ければなんとかなるかもしれないけど今がいつなんだか…)」

 

 不安を覚えながら聞いて来た内容に答えると、

 

「まぁ、しばらくは信濃の所で厄介になっとけば良いんじゃないか?俺も帰れるまで気になるからしばらく此処にいるしな」

 

 ハーケンさんは俺にそう提案してきた。

 

「え、それは迷惑じゃあ」

 

 と、俺が正直な気持ちを告げると

 

「大丈夫ですよ。それに賑やかなのは嫌いじゃないですし」

 

「まぁ、ブラコンに頑張れ」

 

 要らないことがついてきてはいたけど、好意的に受け入れられていた。

 

「ちょっと!?いや、まぁ、それは助かりますけど…」

 

 その申し出は確かに助かる。

 

 大本営の方に接触できれば呉サーバーに所属している家の鎮守府を見つけるのは簡単になるに違いない。とはいえ、今回は前に一人だけ飛ばされたときと違って玲奈も一緒だったというのがネックだった。

 

 もし、深海棲艦である玲奈を連れて俺が大本営にたどり着いたらどうなるのか…予想は簡単にできそうだけどそれを俺はしたくなかった。

 

 だから俺は玲奈についてどうするかを決めきるまではここに滞在させてもらうことにした時だった。

 

「邪魔するぞ」

 

「グッモーニングだな諸君」

 

 そう言って二人の男が部屋に入ってきた。

 

 ……音呂提督がいた時点でなんとなく悟ってはいたけど二人の内の片方に俺はものすごく既視感があった。というか、第2章の攻略中に散々見た顔だった。

 

「おお!叔父ではないか!」

 

「オヤジ!?どうしてここに!?」

 

「誰?(もう1人は分かるけど)」

 

「音呂の叔父の帝政 刈牛羅元師とハーケンの父のジョーン・モーゼス中将だ」

 

 俺がカリギュラっぽい人ではない方のことを思って尋ねると零児提督がそう教えてくれた………ってアレ?

 

「はぁ!?元帥ってあの元帥ですか!?」

 

「ああ、お前が考えてるのと同じ元帥だ」

 

「オーライ、ブラコン好かれボーイ、照れるじゃないか」

 

「オヤジは中将だろ」

 

(いやいや、待て待て!!今さっき()()って言ってたけど俺と会ったあの人じゃねぇ!?)

 

 俺が一人困惑していると

 

「ってか何で2人とも来たんだ?」

 

「そりゃあ霧島から報告が来てな。異世界から来た提督と言うのに興味があってな」

 

「我もジョーンから聞いて来たのだ」

 

 話が俺を放置して進んでいた。

 

「OK、ファーザー、本題を頼む。それだけで来た訳じゃないだろ」

 

「…オーライ、マイサン。その前にハーケンの榛名、オレの右に、ビスマルクは左に」

 

「はい」

 

「また?」

 

(……あ、やべ。鼻の奥が熱く……。)

 

 ジョーン中将が俺を置いてけぼりにして話していたうえに胸が大きい艦娘たちを自分の横に並ばせたのを見た瞬間、揺れるものを見て鉄っぽい臭いに俺は包まれた。

 

「さて、本題だが」

 

「またかオヤジ」

 

「お、おう…」

 

「(むう)」

 

 次の瞬間、頬を大きく膨らませた玲奈に思いっきり脛を抓られることになったが。

 

「痛てぇ!?」

 

 脛を抓られた痛みからつい叫んでしまった俺を無視して

 

「まずここに来たのは…ハーケン・ブロウニング中佐、岡本隼人提督ならび岡本玲奈の保護の為2人がいる間ラバウル鎮守府に着任して信濃中堅少佐と共に護衛せよ」

 

「OK、モーゼス中将。その任務は承った」

 

 なんかまた話が進んでた。

 

「そして有栖 零児中佐、帝政 音呂中佐は情報を漏らさない様にし、なおかつこれからもブラック鎮守府の摘発を頑張ってもらう」

 

「了解」

 

「心得た!」

 

 しかも、ブラ鎮という聞き覚えがある危険なワードまで聞こえた。

 

「え?2人ともそう言うのをやってたのか!?」

 

「ああ」

 

「うむ、艦娘を艦娘として見ない奴らを野放しにはせん!」

 

「そうなんですか」

 

 ブラ鎮という言葉から俺はあの子(春雨ちゃん)のことをまた思い出していた。

 

「ただな、余達も人の子。完璧ではない所もあるからな」

 

「確かにな、だが、元帥や中将は結構ぶっ飛んでるから色々とはしょっている分、早かったりするがその際の書類とかがな…」

 

「オヤジの所の海軍部下が徹夜ですって愚痴って来るしな。よ~く今の地位に普通でいられるのはこれまでの功績もあってだろうがホントにこの元帥とオヤジは…」

 

「そんなの待っている暇がないだろ?」

 

「その通りだ。元帥として我々と共に戦ってくれている者達に敬意を払わない者に提督を、そして海軍を名乗る資格はない」

 

 っと!ぼーっとしてたらまた話が進んでる。

 

 そう思った俺の耳に飛び込んできたのは

 

「しっかし、ほっぽの時と同じ様に進化したままって…やっぱ勝手が違うのか?」

 

 Dアークを持ってそう言う天龍さんの声だった。

 

「え?そっちの北方棲姫も玲奈の様な状況になったのか?」

 

「ああ、ほっぽの場合は港湾棲姫になったけどな、玲奈の様にじゃなかったぜ」

 

 俺たちは事実のすり合わせを行った。

 

 その結果、わかったのは北方棲姫は港湾棲姫に進化してたが、姿が戻らなかったということだった。

 

 それについて俺が自分の中で噛み砕いて納得していると

 

「お、妖精さん。そっちはあれの調査はどうだ?」

 

「はい、せんごくどらいばーはしらべちゅう。そんしょうというそんしょうはないけどふぐあいとかふちょうがないかでまだまだかかります」

 

 天龍さんが妖精さんにそうたずねていた。

 

「調べてくれてるのか…ありがとうな」

 

 それを聞いて正直な感謝の気持ちを伝えると、

 

「いえいえ、あ、それとなくなったやつのかわりをわたしておくです~」

 

 そう言って妖精さんはカチドキロックシードを渡してきた。それを見たとたん、あのことを思い出して顔が歪むのが自分でもわかった。

 

「あ、ああ…ありがとう…」

 

 一応、感謝の言葉とともにそのカチドキロックシードを受け取っていると

 

「隼人殿、起きられたのですね」

 

 丁髷(アレディ)さんが俺に話しかけてきた。

 

「あ、アレディさん。ありがとうございます。あなたも俺を助けてくれたそうで」

 

 クウガに変身して俺を助けてくれたみたいなので俺は頭を下げて感謝の意志を告げた。

 

「いえ、それで隼人殿。あなたに提案があります」

 

 すると、アレディさんは俺に

 

「ええ、私とライダーの力に関する修練をしませんか?」

 

 そう提案してきた。

 

 修練…修行…あの時の俺………鍛えねぇと。

 

 俺は鍛えなきゃなんないと思ったのとあることを連想してすぐにお願いしますと頭を下げて告げた。

 

 

 

 

 

「では双方!ド準備は良いかしら?」

 

「はい」

 

「俺も大丈夫…ってかこれ有無も言わさず着せられたけどこれは?」

 

 数分後、俺は鎮守府内の広い場所で妖精さんから変なスーツとかを押し付けられ、それに着替えた状態でビスマルクとアレディさんとともにいた。

 

 何か渡されたのはダイバースーツの様なのとフルフェイスなマスクだった。

 

「妖精さんが作った対深海棲艦用の特製防弾+衝撃吸収スーツ一式です」

 

「いや、別にライダーに変身するのなら必要ないんじゃ…」

 

「甘いぞ隼人提督。例えライダーに変身していても衝撃などが通り越して中に来たら外は無事でも装着者に影響があっては意味がない。必要なのは勝つ事以外に生き残る事を重心的にせねばならん」

 

「まぁ、元帥の言う通りだ。たとえプロでも艦娘だろうと直撃を受けちまったらその場で御終いだ。年長者の意見としてはライダーであろうと変身する前の防具にも注意しとけって事だ」

 

(いや、スーツはそうだとしてもフルフェイスのヘルメットとか逆に視界が狭まっていらなくね?)

 

 他の人達に自分が思ったことを言ってみると、めちゃくちゃ怒られた。……でもさ

 

「え?けどハーケンさんと零児さんは?」

 

 二人ともあの時こんなの着てたり付けたりしてなかったよね。そう思ってついつい聞いてしまったら

 

「当たらない様に動くだけさ」

 

「頭はともかく、ちゃんと服の下に特製防弾+衝撃吸収スーツを着ている。生身のままで動くわけないだろ。後ハーケンもカッコつけるな。お前も着てるだろ。」

 

(あ、服の下に着てたのか。)

 

 そんな答えが返ってきた。というかハーケンさん。ホントにそれができるならもう人間業じゃなくないですか?

 

「男はカッコつけたくなるからな」

 

「カッコよさより守りだ」

 

「(ああ、ハーケンさんって中将の影響受けまくってるんだな…なんで元帥は普通なのに姪は俺の知る性格なんだろうな…)」

 

 ハーケンさんの言動と中将さんの言っていることがあまりにもロマンを追い求めすぎていて、俺はネロー!!って叫ばない(普通すぎる)カリギュラさんと見比べながらつくづくそう思った…。

 

(そう言えば、アレディさんは?)

 

 ふと、疑問に思ってアレディさんにも聞いてみることにした。

 

「ちなみにアレディさんは?」

 

「避けたり腕に霊力を纏い、弾く。それだけです」

 

「アレディさん。それ私たちでも無理なんだけど;」

 

 真顔ですごいことを言ったアレディさんに対して玲奈が突っ込んでたけど艦娘にできないことは一般人(パンピー)の俺ができるわけないがな………。

 

「は、はぁ…まぁ、行きますね」

 

 内心すでにグロッキー状態の中、俺はディケイドライバーを腰に巻き付けた。

 

 アレディさんも俺と同様に腰にアークルを装着している。

 

「本当にアークルを装着してるんですね」

 

「我が部族に伝わる霊石が遠いこの地でまさかああいう形で伝わっていたのには私や師も驚いています」

 

 映像で見ていたとはいえ正直な感想を俺が言うと、アレディさんはそう返してきた。

 

「私の部族でのクウガは空より来る牙と書いて空牙と呼ばれ、はるか昔に我が部族の土地に落ちて発見された霊石が装着者を選び、憎しみや悪意のある魂を浄化する力を授けます。無論、変身する者も恥じぬ様に己を磨いて行くのです」

 

「な、成程…(そうなるとこの世界だとアレディさんの所のを元に仮面ライダークウガは生まれたって事か?)」

 

 思ってたよりすごい話を聞いて驚いたが、その話を聞いて俺はそんな仮説を建てていた。

 

 というか、それよりも今は修行だな。と俺は思考を切り替えるとディケイドのカードを自分の前に構えた。アレディさんも同様に変身ポーズをとっている。

 

「「変身!」」

 

<KAMENRIDE DE・DE・DE・DECADE!!!>

 

 そして、俺たちは同時に変身した。

 

「それじゃあお願いしますアレディさん!」

 

「はい!こちらこそ、理を轟き破壊する者との闘い、糧にさせて貰います!」

 

 変身後、俺とアレディさんはそう叫ぶと同時に駆け出してお互いの拳を衝突させた。

 

 

 

「ウラァッ!!」

 

 俺がケンカの時に多用していた上段回し蹴りを放つと、アレディさんはそれをかわしながら

 

「ハーーーートゥ!!」

 

 残像が見えるほどの速度で何十発のパンチを放ってきた。

 

「シッ!」

 

 それを数発貰いながらも後ろへとバク転しながら下がって避け、俺は上の方へと飛び上がって高所からのとび蹴りの体勢に入った。

 

「甘い!!」

 

 それを見てアレディさんはそう言いながら構えて

 

「覇王空円脚!!」

 

 と、言いながら空中蹴りのコンボを放ってきた。

 

「まずい!!」

 

 空中でうまく体勢を変えられない俺はこのままだと全部の攻撃を受け続ける良い的になる。そう悟った俺はあるカードをドライバーに投げ込んだ。

 

<ATACK RIDE BLADE METAL>

 

 体を鋼のごとく(物理的)固くすることで落下速度を速めて地面に素早くつけるようにする上に、攻撃のダメージを減らそうと考えた末の行動だった。

 

 だが、それすらもアレディさんの前では意味が無かった。

 

「機神乱獣撃!!」

 

「ガハッ!!」

 

 体をメタル化させることでダメージを軽減できると読んだ俺だったがアレディさんの攻撃はなんとその防御を貫いてきた。

 アレディさんが腕を振るうたびに炎のオーラでできた塊が俺を打ち貫く。そしてそれが何発も続いたのちに、勢いよく突き出した手から直線的に放たれたオーラによって俺は吹き飛ばされた。

 

「クソッ!だったらいきなりだけど決めてやる!!」

 

<FINAL ATACK RIDE DE・DE・DE・DECADE!!>

 

 これ以上は体が持たない。そう思った俺はファイナルアタックライドのカードをドライバーに読み込ませて黄色いバーコードを前面に浮かばせながら中腰になるよう構えた。

 

「さすがに早すぎやしませんか?」

 

 そう言いながら俺の様子を見てアレディさんも何かに気づいたらしく両手に炎でできたエネルギーを浮かばせながらその手を回した。

 

 それを見て嫌な予感を感じながらも俺は飛び上がった。

 

 すると、アレディさんの手に貯められていたエネルギーがかめは◯破のように俺の方へと飛ばされてきて俺はそれにまっすぐ突っ込んだ。

 

 炎の壁となったそのエネルギーを越えてアレディさんの元へ必殺のキックを放とうとするも、その瞬間勢いよく俺のいる空中のさらに上へと飛び上がってきたアレディさんに下に叩き落され、そのまま地面に着くことさえも叶わない連続ラッシュを食らった。

 

 しかもラッシュの最後に上空へと打ち上げられ、その状態で

 

「真覇朧撃烈破!!」

 

 おそらくアレディさんの必殺技である打ち上げ型のとび蹴りを食らって俺の中に封印エネルギーが流れ込んだ。

 

「ヤバッ!!」

 

 打ち上げられて空中浮遊してるさ中、蹴りが当たったあたりに浮かび上がったクウガの紋章を見て俺は焦った。このままだと爆死すると思ったからだった。

 

 必死に助かる道を探す中、ふとあるシーンを思い出した。

 

 それは仮面ライダークウガのワンシーン。

 

 必殺技を食らったがその時に流し込まれた封印エネルギーを気合で消してやられなかった奴がいた。それを俺も再現できるんじゃないか…と思った。

 

(バクチになるが何もしないよりマシだ!!)

 

 俺は体の中の丹田を意識して力を紋章が出ているあたりに集めるイメージを強く持った。

 

 ドクン

 

 すると鼓動の音とともに、体中から紫色の炎が吹き出し、紋章は掻き消え、次の瞬間俺の体は爆発したわけではないのに炎に包まれた。

 

「はぁぁぁぁぁーーーーーーーー!!!!!」

 

 自らの中の力(チャクラ)を全力で引き出すために、そして折れそうになる自分自身に活を入れるために俺は叫びながら地面へと落下していった。

 

「これは!?」

 

 俺を上に飛ばすかのように蹴り飛ばしていたため、先に地面に着地していたアレディさんが人が紫色の炎に包まれているという異様な光景に気付いたがその時既に俺の姿は大きく変わっていた。

 

 体の色はマゼンダピンクからつややかな紫色へと変わり、そして頭には二本の角が生えていた。

 

 その姿はまるで日本の神話に伝わる鬼そのものに近く、そして未だに体中から吹き出ている炎はその不気味さを際立てていた。

 

 しかし、それは隼人が変身したディケイドも腰に付けていたディケイドライバーを腰に付けていた。

 

「あれは!!」

 

 と、天龍は驚き

 

「お兄ちゃん!?お兄ちゃん!!!」

 

「危ないから離れなさい!!あ~もう!何で戦艦の子ってこんなに馬力がド強いのかしら!!!」

 

 玲奈は兄が燃えているという異常な事態に対してパニックを起こしそうになってビスマルクに抑え込まれていた。

 

「ほぅ…。これは!」

 

 そして離れた場所から紫色の炎に包まれた隼人がゆっくり着地するのを見てアレディはそうつぶやいた。

 

「ハァ!!!」

 

 周囲から聞こえる声を無視して俺は体中にまとわりつく炎を勢い良く振り払い、そして

 

「ここからは第2ラウンドだ!!」

 

 専用武器である阿形と吽形と呼ばれる口を開いた鬼と口を閉じた鬼を模した赤い石が先端についているバチ(音撃棒烈火)の吽形の方の先をアレディさんへと向けて叫んだ。

 




感想、評価をもらえると先詠む人は嬉しいですが、ただの作者アンチに対してはマジでキレてます。


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第15話 覚醒・目覚める鬼と王

お待たせしました。
今回はかなり長いです。20000字いってます。
それではどうぞ!!


「ここからは第2ラウンドだ!!」

 

 某果実の武者のセリフをパロって叫んだ後に、俺は格好(カッコ)つけて体を斜にする感じで音撃棒を構えた。

 

 すると、アレディさんが変身したクウガが

 

「どうやら1つ、覚醒したようですね」

 

 と言ってきたので、

 

「ああ、やられっぱなしにはならないぜ」

 

 と返しながら俺は左手に握っている吽形の方の音撃棒をドラマーがスティックを回すように一回転させた。すると、

 

「ならば私も…水よ!我と共に清めん!」

 

 アレディさんがそう言ったのと同時にアークル(ベルト)の中央部分にはめ込まれている霊石(アマダム)が赤から青へと染まり、背後の海から水がこちらへと噴き出してきて、アレディさんが変身したクウガ を包み込んだ。

 

 その光景を見て

 

「んな!?」

 

 と、模擬とはいえ戦闘中に俺は驚いてしまった。

 その理由はいたって単純で、アレディさんが変身している仮面ライダークウガがその姿(フォーム)を変える光景が俺が知っているものと違っていたからだった。

 

 俺が知っているクウガのフォームチェンジは、腰にはめられたアークルの中央にはめ込まれているアマダムの色が変わるのと同時に、そこを起点として体の各所の色が変わっていくものだった。

 

 しかし、今目の前で行われているフォームチェンジはそれと全く違うプロセスを経ていた。

 

 そうやって俺が驚いている間に、アレディさんがフォームチェンジする過程で生まれた水製の繭がはじけ跳び、その中にいたアレディさんの様子が分かるようになった。

 先ほどまでアレディさんが変身していたクウガは、格闘家のように体の要所要所を守るためだけの軽装の赤い装甲をまとっていた。しかし、今のアレディさんは先ほどの赤いクウガよりもさらに軽装の青い装甲をまとった姿に変わっていた。

 しかし、俺の驚きはそれだけにとどまらなかった。

 

「(なんで専用武器(ドラゴンロッド)がすでに展開されてんだよ!!?)」

 

 アレディさんの手には俺の知識ならば細い棒状のものを掴んでからじゃないと手に入らないはずの専用武器のロッドが握られていた。だが、アレディさんは先ほど繭を弾き飛ばしてから一度も細い棒状のものを持ってはいない。だから、本来ならばその武器は手元にないはずなのだが、実際問題アレディさんはそれをもって構えていた。

 

 しかし、俺の驚きを無視して戦況は進んでいく。

 

「マジかよ!?」

 

「参る!」

 

 俺が目の前で繰り広げられた光景を見て心に思ったことをそのまま叫んだのと同時に、アレディさんはドラゴンロッドを振りかざしながらドラゴンフォームが一番優れているスピードを生かして迫ってきた。

 

「っ!?」

 

 左から横に一閃するかのように振り払われたロッドの一撃を俺は両手に持つ音撃棒を交差することで防ぐ、あるいはそらしてから後方へと下がってアレディさんへと烈火弾を撃とうとしていた。だがその行動に効果はなく、俺は後方へと吹き飛ばされた。

 

「がはっ!?」

 

 吹き飛ばされ、何の受け身も取れないままに地面にたたきつけられたことで肺から空気が強制的に吐き出させられる。

 

「(な、なんでだ……)」

 

 一瞬酸欠状態になってぼーっとする頭を無理やり動かし、即座に起き上がろうとするも、何故か俺の体は30分間休みなしで走り続けた後にそのまま25Mシャトルランをやらされた状態のように動いてくれなかった。

 

「(まだ、この戦闘訓練を初めて10分もたってない。ダメージを受けたとはいえサッカーでキーパーやってた時のものと比べたらそこまでひどいものも受けてない。だからまだ普通に動けるはずなのになんでだ!?)」

 

「(最低でも響鬼に再変身するまでは普通に体力はまだあった。なのにここまで体が動かなくなるなんて一体全体どういうことなんだ?)」

 

 そこまで考えながらなんとか起き上がったところでアレディさんが再び迫ってきて

 

「はあ!」

 

「ぐああ!!」

 

 俺はドラゴンロッドによる猛烈な突き攻撃を喰らい、そのまま地面を転がりながら変身が解けた。

 

「(やべ……転がるのを止めることすらできねぇ…)」

 

 変身が解けてもなお、先の突き攻撃の威力で転がり続けた俺を見て

 

「お兄ちゃん!」

 

「お、おい隼人、大丈夫か!?」

 

 玲奈と天龍さんが俺のもとへと急いで駆け寄ってきた。そのタイミングで仰向けになる形で回転が止まって、俺はそのままかすむ視界の中で二人が駆け寄ってくるのをただ見ていた。

 

 二人がこちらに駆け寄ってきてから俺は

 

「あ、ああ…けど、体がすっごく言う事をきかねえ」

 

 とやっとの思いで答えると、

 

「きかないのは当然です」

 

 そう言いながらアレディさんが近寄ってきて俺の上半身を起こすと背中に手を当てて

 

「我が霊力よ。かの者に癒しを…」

 

 と唱えた。すると、背中に当てられている手から何かが俺の体の中に流れ込んでくるのを感じたのと同時に体中から疲労が抜けていく感じがした。

 

「どうですか?」

 

 俺が急に体が軽くなったことに呆然としているとアレディさんがそう声をかけてきた。

 

「あ、はい、さっきまで感じてたのが無くなりました」

 

 俺は半分呆然としながらそう返すと、まだ少し震える手でヘルメット外した。それから天龍さんと玲奈に支えられてどうにか立ちあがったところでさっきの模擬戦で感じた疑問をつい口に出してしまった。

 

「さっきのはなんでだ?今まで変身した時は重みなんてなかった筈なのに…」

 

「それは隼人殿…あなたが霊力を過剰に放出したからですよ」

 

 その疑問に対してアレディさんはすぐに答えてくれた。だけど…

 

「過剰に放出?」

 

 俺にはそのあたりが理解できなかった。だから今度は炎に包まれてマイティフォームへとフォームチェンジしたアレディさんに聞いてみると

 

「ええ、あなたは私の霊力を吹き飛ばす為に自身の霊力を放出しました。しかしあなたはそれに慣れていなかったので霊力の放出を限界ギリギリまでやってしまい、先ほどの状態になりました」

 

 と教えてくれた。そしてそのまま「これを……」と言いながら某忍者漫画とかに出てくるような兵糧丸みたいなものを俺に渡してきた。

 

「これは?」

 

 と、受け取ってから聞いてみると

 

「師匠直伝の霊力回復を促進させる薬です。苦いでしょうがそれを飲んでください。昼には霊力も回復しますでしょう」

 

 とのことだった。正直「(苦いのか…)」って思い、いやな気持になったけれども、これを食べるのが早く回復するには必要だと割り切って口に放り込んだ。

 

「(に……苦ぇ……)」

 

 口に放り込んでそれを噛みしめると最初に草のような味が口の中全体に広がったかと思った次の瞬間青汁を数十倍に苦くしたかのような苦みに襲われる。

 

 それを我慢して無理やり喉の奥につばと一緒に飲み込んでから、俺はライドブッカーからあるカードを取り出した。

 

「(変身はできたけど完全じゃないのかよ…)」

 

 取り出したカードは響鬼のもので、カードの絵柄こそ復活していたがその色はカラーではなくセピア色になっており、俺はそう思いながら顔をしかめたところで

 

「修練は昼からまたやりましょう。その間は休んでおいてください」

 

 と、アレディさんが声をかけてきたのだが

 

「あ、はい…で、なんで変身を解いてないんですか?」

 

 そのアレディさん自身が未だに変身を解いていなかったので気になって聞いてみた。すると

 

「隼人殿とやる前に生身での修練を行ったので今度は変身しての修練を行う所です」

 

 といった返事が返ってきたので

 

「な、成程…ちなみに朝やった練習は?」

 

 その修行熱心なところに若干引きながらも、少し気になったことを尋ねてみた。すると

 

「拳立て伏せを1000回やってきました」

 

 とのこと………ん?なんかいろいろとおかしな箇所があるような……って

 

「せ、1000回!?しかも腕じゃなくて(こぶし)!?」

 

「嘘でしょ!?」

 

 先のアレディさんの発言を自分の中でかみ砕いて理解しなおしたところでおかしいと思った箇所に気付いて玲奈と一緒にツッコんでみると、

 

「事実してるな」

 

「してますね」

 

 天龍さんと変態吹雪がそう答えたから俺は唖然とすることになった。

 しかし、玲奈はそこで止まれなかったらしく

 

「え、ホントこの人何者!?」

 

 と、さらにツッコんだ。すると、

 

「人間の域を超えてる人」←天龍

 

「艦娘顔負けの実力持ちなのになんで提督にならなかったのか不思議な人ですね」←吹雪

 

「ド強いす…(こほん)仲間よ!」←ハーケンさんとこのビスマルク

 

「ハーケンさんと成すウチの鎮守府に欠かせない人です~」←ハーケンさんとこの榛名

 

「掌底が上手い人ニャ」←ハーケンさんとこの多摩

 

「零児提督と共にドMを作るのが上手い奴よのう」←ハーケンさんとこの初春

 

「魚とりが上手いくま」←ハーケンさんとこの球磨

 

「チョー真面目ボーイでガンス」←ハーケンさんとこの霧島

 

 って全員が返してき………ヲイ

 

「ちょっとぉぉぉぉぉぉ!?後半おかしい!後、ハーケンさんの所の霧島!?なんか口調おかしい!?会った時はそんなんじゃなかったよな!?」

 

 俺は後半の意見、特にメガネが外れて目が3の字になっている霧島に対して激しくツッコんだ。しかし、そんな俺に対して霧島は

 

「ぎゃあぎゃあ騒ぎ過ぎじゃないかな思春期ブラコン好かれボーイ。そんなんだと疲れちゃうぞ」

 

 と呆れた表情で肩をすくめながら返してきたが、それどころじゃねぇって!!

 

「騒ぐよ!と言うかホントにどうした!?」

 

「また霧島の眼鏡外れてるくま!」

 

「何時の間にか外れたにゃ」

 

「ちょっと榛名!またあなたのシスターが眼鏡外れてド暴走してるわよ!」

 

「あ、すいません!霧島、眼鏡!」

 

 俺の残り少ない体力すべてを燃やして行ったツッコみで漸く周囲も霧島に起きている異常事態に気付いたらしく、球磨に続いて多摩がぼやき、ビスマルクに言われて榛名さんが慌てて霧島にメガネをかけなおさせた。

 

「………」

 

 メガネをかけなおさせられた後、霧島はしばらく固まって…

 

「色々とすいませんでした」

 

 といきなり土下座してきた。

 

「どう言う事?」

 

 この急展開についていけていなかった玲奈が尋ねると、

 

「あー、なんかハーケン提督の霧島って眼鏡外れると性格と言うかキャラが陽気でめっちゃ明るい感じに変わっちゃう様でさ」

 

 と、天龍さんが教えてくれた。だけど、

 

「……ハーケン提督の所の艦娘、変わり者多くね?」

 

 正直そんな感想をおぼてしまったのは当然だと思う………。

 そうやって、結局体力が回復しないままに騒いでいると、

 

「隼人提督、少し聞きたい事がある」

 

 と、言いながら狩牛羅元帥が歩いてきた。

 

「あ、はい!何でしょうか?」

 

 俺がその声掛けに姿勢を正しながら返事をすると、

 

「貴様が着任している鎮守府を教えてほしい。我の情報網で探し出しておこう」

 

 そんなありがたいことを言ってくれたので俺は

 

「え、あ、ありがとうございます!お、私の鎮守府は呉の方にある『暁に勝利を刻む鎮守府』です」

 

 即座に反応してから自分の鎮守府名を言った。すると、何か納得したような口調で

 

「ほう…そうか、やはりあやつが言ってた奇妙な提督は貴様だったか」

 

 そう漏らしたから俺は

 

「え?どう言う事ですか?」

 

 と、聞いてみると

 

「貴様、数か月前に横須賀鎮守府に世界と時間を超えて来たとそこに所属しているあきつ丸や憲兵、そして元帥に話したであろう?そこの元帥とは知り合いでな、貴様の事を教えて貰っていたのだ。もしも我の知る範囲での鎮守府に来た場合のサポートをして欲しいと言う事でな」

 

 とのことだった。そのありがたい言葉に対して俺は驚きを隠せなくて、

 

「そ、そうだったんですか…(そういえばそんなこともあったな………)」

 

 半分別のことを考えながそう呟いた。

 

「とにかく、見つかったら連絡をするので待っててほしい」

 

 俺が考え込むような顔をしているのに気付いたのか、狩牛羅元帥はそう言って俺の肩をたたいた。

 

「あ、ありがとうございます(その時がどれ位になるかとか俺が戻るのとかしちゃった時どうしよう…)」

 

 肩をたたかれたことで漸く声をかけられたことに気付いた俺は慌てて礼を言ったが、それと同時に今度は別の不安を抱いた。

 

「(あ。そういえば春雨ちゃん…。)」

 

 そして、不安を抱いたところで俺はあることを思い出した。粒子となって消えていく俺のことを縋るような目で見る桃色の髪の少女のことを。

 

「そう言えば元帥。その時、私は乱暴されかけた春雨を助けたんですが…その春雨はその後はどうなったんでしょうか?」

 

 そこで俺は何の気なしに聞いてみた。多分この人なら知ってるだろうと思ったからだった。

 

「………」

 

 だけど、俺がその質問を言った直後に狩牛羅元帥はその顔をしかめた。その様子に俺はすごい嫌な予感を感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、その予感は的中する。

 

「貴様が助けた春雨は…轟沈した」

 

「………え……?」

 

 今何て言った?

 ごうちん…………ゴウチン………郷鎮………豪鎮………轟沈……ごうちん………

 

 俺は目の前にいる狩牛羅元帥の言葉を頭の中でうまく変換できずに完全に固まっていた。

 

 そんな俺に追い打ちをかけるかのように狩牛羅元帥は

 

「………隼人提督に助けられた後、春雨は配属し直された鎮守府にてどんな窮地でも死に物狂いで切り抜けた艦娘として第一艦隊の旗艦を任される程の実力を付けていった…だが、とある海域での作戦の際、未知の深海棲艦と遭遇、その際の開幕での魚雷にて大破…普通ならば撤退出来るのだが彼女たちの艦隊の背後に戦艦棲姫が迫っていると言う本来ならばありえない上位種同士による挟み撃ちと言う状況に追い込まれた。その際、彼女は大破した体で止めようとした艦隊を逃し…上位種2体により轟沈した…それが報告されて来た彼女の最後だ」

 

 そう続けたが、その話している内容の半分も俺は理解できなかった。……いや、理解したくなかった。

 

 だけどそれは変わらない事実であって、ようやくそれを理解したとたん俺の中で

 

 

 コワセ……コノ認メラレナイ現実ヲ、全テヲ!コワセ……………コワセ!!!!!

 

 

 何か黒いものが俺の中のどこかから沸き上がり、抗うことなくその黒い感情の奔流に身を任せそうになった……その瞬間だった。

 

「岡本隼人提督!!」

 

 いきなり呼ばれたその言葉に無意識のうちに反応して顔を上げたのと同時に俺の視界が拳で埋まった。…と認識した次の瞬間、鋭い痛みとともに俺の体は右側へと吹き飛ばされた。

 

「ガッ!!?」

 

 吹き飛ばされて一瞬意識が跳び、地面に後頭部が叩き付けられた際に発生した痛みで思考がクリアになった。

 

「ちょ!?何するのよ!?」

 

 思考がクリアになったことで周囲を認識できるようになった結果、顔を殴られたことで反射的に出てきた涙でかすむ視界の中、玲奈が狩牛羅元帥にそう抗議するのが見えた。

 

「貴様が今するべき事は春雨の轟沈に嘆くことか?それともその深海棲艦へと復讐する事か?否!!貴様の今やるべき事は家族や仲間を守る為に己が持つ力へと向き合い、そして鍛えて行く事!嘆いている暇があるなら轟沈した春雨の為にも他の者達を守るのが彼女への弔いではないのか!!」

 

 しかし顔を真っ赤にして抗議する玲奈を無視し、狩牛羅元帥は鬼気迫る表情で俺の方を向いてそう言った。

 

「………そうですね……すいません。頭に血が上ってました」

 

 俺はその表情の狩牛羅元帥をみて、自分がさっきまでまたおかしくなっていたことに気付き、謝罪した。

 ズキズキと痛む左ほほを抑えながら立ちあがり、頭を下げる。

 

「それでいい…我も先ほどいきなり殴ったのはすまなかった。だが、そうしなければ貴様は種族関係なく殺す事に戸惑いもしない無慈悲な修羅になっていただろう」

 

 そんな俺の様子を見て狩牛羅元帥は安心した様子でそう告げた。

 

「(修羅………か……。)」

 

 俺はその言葉を聞いて今の自分の拳に、中学時代に起こした事件で血まみれになった自分の拳を重ねながら心の中でそう呟いた。

 

「隼人提督。貴様の精神は言わば1つ間違えれば割れやすいガラス細工に近い。家族に何かあれば自分の事をたやすく捨て去る程の感情。だが、貴様もまた〝提督”として〝守りし者(仮面ライダー)”としても、感情に流されるなとは言わん。だが、その感情を制するのもまた戦う者の大切な事だ。肝に銘じておくのだ」

 

「……はい、ご忠告ありがとうございます」

 

 俺に自分が持っている力のことを自覚させるかのように強調する狩牛羅元帥の言葉を俺は肝に銘じながら頭を再び下げた。

 

 そして視界の端の方で玲奈を見て、記憶の中から今はほっぽちゃんになった少女のことを思い出す。

 もし自分がただ敵を倒すだけの存在となり果ててしまったならば、それは二人のような存在すら何も感じずに殺してしまうFateで言う守護者のような存在だと思う。

 

 そうなってしまったらもう俺という存在は終わっているだろう。そこにいるのはただ機械のように深海棲艦を殺すだけの存在だ。

 そして、それは玲奈やほっぽちゃんの例からしてあり方を間違えている。

 

 だからこそ、俺は自分を見つめなおしてさっき肝に銘じたことを心に刻んだ。

 

 

 

 

 

 それからしばらくして、ハーケンさんを除いてこの場に集まっていた人たちは各々の理由でこの鎮守府を去って行った。

 

 

「では、玲奈殿、お互いに精進しましょう」

 

「ええ!やってやるわ!」

 

「イエース!頑張りましょう!」

 

「ふふ、やろうではないか」

 

 そして今、俺の目の前ではクウガに変身したままのアレディさんが玲奈や大和、そして武蔵と対面して各々構えている。

 

「では、始め!」

 

 その場にいた全員が準備を終えていることを確認した赤城さんの掛け声とともに砲撃が始まりそれをアレディさんは避けたり、腕で弾いたりしていた。

 

 そんなアレディさんたちの様子を見ながらも、俺は何となくポケットからセピア色の響鬼のカードを取り出して見つめていた。

 

「(『鍛えてますから』がある意味での代名詞だった響鬼だから、鍛えれば変身できるようになるって思ってた。だけど、そうじゃなかった。)」

 

 俺は覚えている限りの仮面ライダー響鬼のシーンを思い出しながら物思いにふける

 

「(重要なのは肉体(からだ)じゃない、精神(こころ)だったんだ………)」

 

 そこまで考えたところで俺はその場に寝転がって空を見上げた。

 

「だけど精神を鍛えるとしてもな…」

 

 精神を鍛える。その方法で俺が思いつくのは座禅程度だった。そのために俺は何をすればいいのか全く分からず、袋小路へと思考が突入してしまっていた。

 

「隣良いか?」

 

 そんなときに空と俺との間を遮るかのように天龍さんが顔を差し込んできた。

 

「いいですよ。」

 

 正直色々と考えることが多くなりすぎたせいで一度考えをリセットしたかった俺は、その申し出を受け入れ、体を起こした。

 

「色々と大丈夫か?」

 

 天龍さんが俺の横に座り、俺が体を起こしてから数分後に天龍さんがそう聞いてきた。

 

「まぁ…色々と考えてます」

 

 俺はそう答えるしかできなかった。すると天龍さんは一瞬遠い目をしてから

 

「隼人、お前は轟沈させた事あるか?」

 

 悲しい質問をしてきた。俺はその質問に対して玲奈の方を見ながら

 

「………従弟に勝手に弄られてあいつを…」

 

 と答えるのが精いっぱいだった。いまだにあのことは俺の中でもうまく呑み込めていない。。

 結果的に深海棲艦。初めて出てきたイベントで巻き起こした惨劇のせいで悪夢とか言われている〝レ級”となって玲奈は帰ってきたが、それでも俺は………

 

「なら俺よかマシだな…艦これを始めた当初…俺は2人も轟沈させちゃったからな…まだ分かり切ってなくて雷と加古をな…」

 

 吐き出すように言った俺の言葉を聞いて、天龍さんも遠い目をしながら俺を慰めるかのようにそう言った。

 

「それでも、轟沈させたのは変わりないですよ」

 

 だけど、俺が直接その指示をしたわけではないとはいえ、DMMに登録したときに自分に建てた〝不沈”の誓いを守れなかった時点で俺の罪なのには変わりない。

 

 

 

 と、ここまではシリアスな内容だったのだが…

 

「ちなみに実はと言うと俺はゲームでの所属はブルネイだ」

 

「………え?」

 

 天龍さんのその一言でシリアスがどこかへと飛んで行き、俺はあっけにとられた。

 

「え?ここ、ラバウルですよね?」

 

 現在地の再確認をしたくて俺がそう尋ねると、

 

「うん。そこは疑問に思ってるけどもうリアルだし考えるの止めてる」

 

 との答えが返ってきたから

 

「(それは止めちゃあかんような…)」

 

 と、俺はさっきよりも遠いどこかを見つめている天龍さんを見ながら内心そうつぶやいた。

 

「(……話変えなきゃやばい…かこれ?)」

 

 天龍さんの様子を見てそう思った俺が話のタネを必死に探していると、腰の方に着けられた懐かしいものを見つけた。

 

「そ、そう言えばあのDアークも妖精さん製ですか?」

 

 その懐かしいものの名称はDアーク。T字型の手のひらサイズの機械で、デジモンテイマーズという結構昔にやっていたアニメの主人公たちが持っていた道具だった。

 

「ああ、正式名称もBアークだ。主に艦娘専用にされたのと考えればいいぞ。オリジナルと違ってこのキャンセルのカードで付加したのを消して元に戻す感じだ」

 

 俺のその質問に対して、天龍さんはBアークと、たくさんのカードの束を俺に見せながらそう答えた。

 

「へぇ~ちなみに使い方は?」

 

「この液晶画面に艦娘を映して、その後にこの艦娘が描かれたカードをスラッシュする事でカードの艦娘の力を付加させるんだよ。例えば雷巡じゃない五月雨に向けて北上改二のカードをスラッシュすると北上改二の力を付加させて開幕雷撃なんか出来る様になるんだ」

 

 俺がその機能に感心し、使い方を聞いてみると天龍さんはそれも教えてくれた。そんな風に会話していると、こちらにラバウル所属の六駆の4人が歩いてきた。

 

 それを見て天龍さんは

 

「どうせだし見てみるか?暁、ちょっとこいつにBアークのを見せたいからやらせて貰っても良いか?」

 

 と、俺の方を向いて尋ね、

 

「あ、天龍さん。良いわよ~レディーに任せなさい」

 

「その次は私にね」

 

 その様子を見ていた暁は胸を張りながら、響はその被っている帽子を深くしながらそう答えた。

 響鬼が答えるときに見せた様子を見て、何故か背中がゾクゾクッとするような嫌な予感がしたのは気のせいだろう。……たぶん。心当たり無いから。

 

 そんな風に独り相撲をしていると、天龍さんが暁にBアークの液晶画面を向けて

 

「行くぞ…カードスラッシュ!ビスマルク!」

 

 そう言って、ビスマルクの写真が描かれているカードをBアークに通した。すると、光がBアークから暁の方へと飛んでいき、暁の全身を包み込んだ。

 

 そしてその光は暁の全身を包み込むと、今度は体、腕、足の順ではじけ飛んでいき、そのあとにさっきまで暁がいた場所にいたのは……

 

「あの、天龍さん。1つ聞かせて貰っても良いですか?」

 

 俺はその光景を見てまず最初にそう言った。

 

「聞きたい事が大体わかるけど、なんだ?」

 

 そんな俺の発言に対して苦笑しながらも天龍さんは聞き返す。

 

「んじゃあ…艤装とか纏うの分かってたけど…なんで身長とかスタイルも変わってるんですか!?後、服装も!」

 

 さっきまで暁が立っていたところにいたのはビスマルクのように高身長……というか、スリーサイズ含めて顔と髪の色以外ビスマルクな暁らしき女性だった。

 

「妖精さん曰く、付加するならば分かり易い方が良いとの事、ちなみに身長のは後で追加されて付加される艦娘の意思でそのままでいられるとの事」

 

「スリーサイズと服変化は最初からデフォなのかよ!?」

 

 そんなむちゃくちゃな機械の効果を聞いて、血を吐くように俺は叫んだ。しかしそんな俺に対して

 

「ふふん。戻るまでの間は暁は立派なレディーよ」

 

 と、暁はその大きくなった胸をたゆんと揺らしながらむふんとした。

 

「(………元のままならこれ小さいビスマルク……あれ?そういえばそんなコンセプトの短編マンガ横須賀の方であったよな…)ゲホッ…」

 

 な~んて、暁の様子を見ながら軽く血を吐き、俺はそう思った。

 

 そんな俺の様子に目もくれずに、天龍さんは今度は響の方を向く。そして、

 

「んじゃあ、響は…カードスラッシュ!日向!」

 

 と言ってからカードを読み込ませ、今度は響が光に包まれた。

 光がはじけると、そこにいたのは日向と同じ大きさにまで成長し、そして航空戦艦である日向の艤装をまとった響が立っていた。

 

 それを見た瞬間、俺の頭の中には様々なイメージが流れ込んだ。

 

 猫耳をはやして俺のズボンを引き下ろそうとする今のように大きくなった響

 

 黒い下着をはためかせながら夜這いをかけに来る大人サイズの響

 

 俺の体のあちこちを蠱惑的な視線を向けながら嘗め回す大人サイズの響

 

「でっかい響…う、頭が…」

 

 俺は無意識のうちに額に手を当てながらそう呟いてしまった。

 

「え?なんか大きい響に悪い思い出でもあるのか?」

 

 そのつぶやきを天龍さんは聞き取ったらしく、俺にそう尋ね。

 

「ある意味失礼だな」

 

 響はほおを某貯金のリスのように膨らませてぷくーっとさせて拗ねていた。

 

 そこで天龍さんが響を慰めていると、

 

「はいは~い!次は私ね!」

 

 と、雷が元気よく言い

 

「えっと、この流れだと電もやる事になるんでしょうか?」

 

 ちょっとおどおどしながら電もそう言った。

 

「なるんじゃね?カードスラッシュ!榛名改二!」

 

 その電の言葉を聞いてからすぐに天龍さんは雷に向けてカードを読み込ませる。

 すると、雷の姿はハーケンさんとこの榛名のように大きく育ち、そして

 

「へへっ!頼ってもいいんだからね!」

 

 元気そうにそう言った。その姿に俺は雷香の嫁入り姿を連想して

 

「なんだろう…凄く、目から涙が」

 

 娘を嫁に出すおやじの気持ちになって涙が止まらなくなった。

 

「ホントお前はどういう日常過ごしてるの…カードスラッシュ!扶桑改二!」

 

「なのです」

 

 完全に情緒不安定になっている俺を見ながら軽く引いた天龍さんは、今度は電に向けてカードを読み込ませた。

 

「航空戦艦となった電の本気を見るのです」

 

 そして、扶桑サイズへと成長した電があの扶桑型のでかい艤装をぶんぶん振り回してから両の拳を胸の前に引き寄せるようにそう言った。

 

「すっごいですね…こう、実際に見ると…」

 

 俺がその様子を見ながら思ったことをそのまま言うと、

 

「まあな、ちなみに重ね掛けも出来るけど、その場合はスタイルは変わらないで服と艤装とかが変わる」

 

 実はすごいように見えて案外中途半端であることが分かった。

 

「なんですその一部分変わらない所」

 

 それを聞いて俺はえーと口を半開きにしながらそう呟く。

 

 そこまで話してからは、天龍さんと二人並んでキャピキャピ楽しそうにしている六駆のみんなの様子を黙って見ていた。

 

「(平和だな……)」

 

 俺がそう思いながら見とれていると、

 

「なぁ、あいつ等元気に笑ってるだろ?」

 

 急に天龍さんがそう声をかけてきた。

 

「?ええ、そうですね。普通の人間の様に」

 

 その質問の意図がうまくつかめずに俺が思ったことをとりあえずそのまま返すと、

 

「ああやって笑っていられるのはここがそう言うのが出来るって事だからな」

 

 天龍さんは感慨深そうな顔をしてそう言った。

 

「………そうですね」

 

 俺は天龍さんが言いたいことが何となくわかったからそれに同意する。

 

「人間はホントに怖いって再確認させられるよな…自分とは違う種族や考えられない力を持っていると忌み嫌って迫害する。リアルでもそこは変わんないからきついもんだよな」

 

 アレディさんと一緒に模擬戦をしている玲奈の方を見ながら出たその天龍さんの言葉は人から艦娘になったことで得たものなのだろう。

 俺もその考え方自体は昔から持っていたからよくわかった。

 

「確かに」

 

 あくまでもこれは自論だけど戦争っていうのは結局は人間のエゴが露出しただけなのだろう。

 それがこの世界では人間のように見えるが人間ではない存在が目に見える敵としてあるからそこまで至らない、いや、至れない人が多いだけで……

 

 俺はそう思いながら天龍さんのその言葉に同意し、うなずく。

 

 すると、天龍さんは

 

「だからこそ、そう言う心とかを守って行きたいと俺は思うよ」

 

 と、俺の方を向いて言ってきた。

 

「心か…」

 

 その言葉に俺はあるライダーを思い出し、そう呟きながら腰につけたままだったライドブッカーからあるカードを取り出す。

 

 何も描かれていないカードの下の方に書かれている文字は〝KIVA”。

 人と敵勢力の間に産まれた主人公が人の心の音楽を聴き、そしてそれを守るために戦ったライダーだった。

 

「(そうだよな…俺も…守りたいから仮面ライダーとして戦うんだ)」

 

 カードを見ながら再び俺がさっき考えていたこと決意しなおすと、

 

「ああ、そういや隼人は神通や春雨の姿をした…と言うか2人が深海棲艦になった姿の深海棲艦を知ってるか?」

 

 唐突にそんな問いを投げかけられた。

 

「春雨は知ってますけど…姿の神通の深海棲艦がいるんですか?」

 

 

 大学を襲われて以来ネットで深海棲管のゲームで確認されている種類を何度か調べたことはあったが、春雨ちゃんそっくりな深海棲艦(恐らく轟沈後春雨ちゃん)の駆逐棲姫(通称わるさめちゃん)しかレ級を除いて艦娘にそっくりな深海棲艦はいなかった。

 

 だからこそ、その天龍さんの言葉に驚いてそう返すと

 

「ああ、いるんだよ。一応気を付けておいた方が良いぞ」

 

 と、恐らく警告を兼ねた言葉が返ってきた。俺はその言葉に相槌を打ったのだった。

 

 それからとりとめのない話をしていると、間宮さんがご飯ができたと呼びに来た。

 

「よし、行くか。」

 

「そうですね。おーい!!!はよ食堂行くぞ!!」

 

 俺が天龍さんと一緒に立ち上がって模擬戦を未だに元気続けていた玲奈たちの方に向けて叫ぶと

 

「呼びましたか?」

 

 と、赤っぽい茶髪を肩甲骨ぐらいまで伸ばしたおっとり系の緑色のセーラー服を着た女性がいきなりそう言いながら歩いてきて、

 

「あ……」

 

 と、固まる俺を見るなり

 

「用がないのに呼ぶなんて………海の藻屑となりなさいな!」

 

「ヘブッ!!」

 

 怒りに震えた表情で俺の頬を全力で張り飛ばした。

 

 

 

 そんな軽い問題があったものの無事に玲奈たちと合流し、一緒に食堂の方へと向かった。

 食堂の方につくと、

 

「へ?」

 

「うそっ!!!」

 

「お?」

 

 ………大量のそうめんが準備されていた。

 

 繰り返す。()()()そうめんがとんでもない大きさのボールに入れられてテーブルの上に鎮座していた。

 

「朝とえらい違いだ……」

 

 俺がそうぼやくと、割烹着を着た妖精さんがどや顔しながらやってきて、

 

「おまえ!今朝!!たりなそうなかおしてた!!!だからほんきだした!!!!」

 

 と言って、間宮さんの方に走り去っていった。それを視線だけで追うと、その先には笑顔の間宮さんがこちらに手を振っていた。

 

「……いや、だからってこれは……」

 

 俺は玲奈が持ってきてくれた出汁入りの容器を片手にボールの前に立ってぼやいた。

 

 結局、数分ほど考えてから、

 

「ふぅー、よし。気合い!入れて!!食います!!!」

 

 俺は片手を腕まくりしてから勢いよく箸をボールの中に突き刺した。

 

「「ひぇーーーー!!!!私のセリフ取らないでぇーーーー!!!!」」

 

 変態次女の悲鳴が聞こえた気がするが気にしない。

 

 ………今はただ、この意識を目の前のそうめんに!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結局食べきれずに困っていたら、赤城さんと加賀さんのブラックホールコンビに目の前であっという間に食べられてしまった…………。

 

 俺情けね………

 

 

 

 大量のそうめんを食べ終えてから数十分後、俺とアレディさんは再び変身した状態で向かい合っていた。

 

「では、再開しましょう」

 

 と、声をかけてきたアレディさんに

 

「はい!今度こそ行かせて貰いますよ」

 

 そう返事してからあるカードを取り出して顔の前で斜めになるように構える。

 

「(俺は皆の音楽を守りたい。その為にも…俺に力を貸してください!)変身!」

 

 自分勝手な理屈かもしれない。だけど、それでも!!!と、俺はそんな祈りを込めてから俺はディケイドライバーにそのカードを叩き込んだ。

 

<KAMENRIDE!KI・KI・KI・KIVA!!>

 

 カードが読み込まれる。

 姿が一瞬灰色のガラス質の何かに包まれる。

 そして、そのガラス質の何かがはじけ飛ぶと……

 

「(キバって…行くぜ!!!)」

 

 俺の姿はディケイドから蝙蝠と、裏モチーフとしてジャック・オ・ランタンが使われている両肩、そして右足を(カテナ)で拘束された鎧姿へと変じる。

 その鎧の名前はキバ。そして、その姿を指す名前は仮面ライダーキバ。

 

 俺もアレディさんも構えたまま動かなかった。

 そして、どこかでピチャンッと水がしたたり落ちた。

 

「参る!」

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 その瞬間、俺とアレディさんは変身したことで強化された聴覚でその音を聞き取り、同時に動き出した。

 お互いにパンチを高速で繰り出し、それを互いに相殺し合う。

 

「(このままじゃじり貧だ!!)ならこれだ!!!」

 

<FOAMRIDE!KIVA・GARULU!!>

 

 俺は膝蹴りを繰り出して一瞬間合いを稼ぎ、その刹那に新たなカードを読み込ませた

 すると、それまで黄色だった目が青へと変じ、左肩につけられていた鎖がはじけて荒々しい鬣のような装飾が姿を見せる。

 そして、それまで赤かった胸の装甲の色が青く変じたところでオオカミを模したような彫像がどこかから飛んできてこの手に収まった。

 

 俺のその様子を見てアレディさんも

 

「水よ!我と共に清めん!」

 

 の言葉とともに軽装の青い戦士、ドラゴンフォームへと姿を変えた。

 

 そして、再び距離を詰める。俺はその手に持った彫像を変形させて剣へと変えて荒々しい剣筋で振るった。

 

「はっ!」

 

「むん!」

 

 そうして振るわれた剣、ガルルセイバーの一撃をアレディさんはその手に持つ棒、ドラゴンロッドで受け止める。そしてそのまま打ち合いが数合続いた。

 

「この!」

 

 このままじゃらちが明かないと判断した俺は、狼の彫像の口部分に仕込まれているギミックを開放して衝撃波でアレディさんを吹き飛ばす。

 すると、吹き飛ばされた方のアレディさんは

 

「!舞え霊気の水龍よ!!」

 

 の言葉とともに水でできた龍をこちらに向けてはなってきた。俺はそれが着弾するまでの間に新たなカードを読み込ませる。

 

<FOAMRIDE!KIVA・BASSHAA!!>

 

 すると今度は緑色の彫像が飛んできて右手に収まり、それに続いて目が緑色へと変じるのと同時に右肩の鎖がはじけて魚のエラのような意匠の装飾が出てくる。

 そして、胸の色が青から緑へと変じたところで俺は右手に収まった彫像を変形させて銃へと変えた。

 

 右手に収まっている銃を構えながら迫ってくる龍を避け、そして照準を合わせて撃つ。

 すると、水でできた弾がアレディさんめがけて複雑怪奇なコースを描きながら跳んでいく。

 

 そんな俺の攻撃に対してアレディさんは

 

「風よ!我と共に射ぬけ!!」

 

 との言葉とともに今度は風に包まれてその姿を三角が目立つ鎧を身にまとい、そして大きなクロスボウのような銃を持った姿へと変えた。

 

「天馬覇皇嵐!」

 

 そして俺の放った攻撃をジャンプすることで避け、そのまま嵐のようにこちらへ向けて風でできた矢を放ってきた。

 

「(やば!ペガサスフォームとか避け切れるわけねー!!)うええ!?」

 

 情けない悲鳴を上げながら俺はその手に持った銃、バッシャーマグナムで迎撃しようとするも慌ててしまったせいか、数発撃ち漏らした。

 

 そのまま打ち合いに発展したが、超感覚という半ばチートすぎる能力を持っているペガサスフォームに銃撃戦で勝てるわけがない。

 だから、応戦しながらも俺は3枚目のカードを取り出して読み込ませる。

 

<FOAMRIDE!KIVA・DOGGA>

 

 今度は両方の肩の拘束が解け、両肩、胸、両腕が頑強な鎧のようなものへと変わる。

 そして、最後に目の色が紫色へと変わったところで握りこぶしのような意匠を持つハンマーを両手でつかんだ。

 

 ハンマーを手に持ち、飛んでくる風の矢を意ともせずに勢いよく突っ込み、致命傷になりそうなものだけをハンマーで弾く。

 

 すると、このままだと接近戦になり、今のままだと分が悪いと判断したのか

 

「地よ!我が刃となって切り裂け!」

 

 との言葉とともに今度は地面から湧き上がってきた岩に覆われ、その岩ごと吹き飛ばそうとして迫る俺の目の前に金色の刃の大剣を持ったアレディさんが上から突っ込んできた。

 

「はあ!」

 

 俺はその言葉とともに両手で握っているハンマー、ドッガハンマーを全力で振るう。

 

「でやっ!」

 

 その振るわれるハンマーをその両手で握る大剣、タイタンソードで弾きながらその際にできたエネルギーを使ってアレディさんも斬りかかってくる。

 

 大槌(ハンマー)と大剣。どちらもパワー系の武器であり、その使い手同士が戦うとすればそれの勝敗を決めるのは技術を除けば体力勝負となる。

 

 

 

 

 そして、先にバテたのは俺だった。

 

「(両手が………きつい!?)」

 

 いくら変身して身体能力が果てしなく上がっているとはいえ、元々かなり鍛えられているその道のプロと、力を手に入れてまだ日が浅い元一般人。

 高質量同士の武器の打ち合いとなると、それまでに積み重ねてきた経験がものをいう世界となる。

 

 その結果、経験から体の使い方をきちんと抑えているアレディさんに対して、がむしゃらにハンマーを振るっていた俺の方が先にバテたのだった。

 

「くそっ!!」

 

 そんな俺の体の状態に対して小さく毒を吐き、俺はドッガハンマーを勢いよく地面にたたきつけてアレディさんとの距離を無理やり稼いだ。

 

 距離を稼ぐとすぐさまカードを取り出して読み込ませる。

 

<KAMENRIDE!KI・KI・KI・KIVA!!>

 

 もう一度、基本フォームに戻り俺は淵など所々が黄色いカードを取り出してドライバーに放り込んだ。

 

<FINAL ATACK RIDE…………KI・KI・KI・KIVA!!>

 

 その音声とともに勢いよく両手を開いて腰を落とす。

 俺がその体勢をとるまでの間に世界は闇に覆われて、月だけがこの闇の世界の中で光った。

 

 その様子を見てアレディさんも炎に包まれてマイティフォームへと姿を変える。そして力をためるかのように腰を落とした。

 

 俺はそんなアレディさんの様子を見ながら右足を勢いよく踵落としをするかのように振り上げる。

 すると、右足に巻かれた(カテナ)がはじけ飛んでその中に隠されていた3つの光る緑色の宝石が埋め込まれた蝙蝠のような大きな羽をもつ赤い装飾が露出する。

 

 カテナが解放されたところで俺が左足を少しまげて高いところへと飛ぶ頃には、アレディさんは炎に包まれて力をため込んでいた。

 

 そして、俺は月を背後に背負ってアレディさんへと必殺のキックを叩き付け………

 

 

 

 

 ることはかなわなかった。

 上から下へと叩き付けるかのように高速で落ちる俺に対して、下から飛び上がる形で必殺のキックを放ってきたアレディさんのキックは俺のキックがかすったのに対して完全に俺の胸をとらえた。

 

 胸の蹴られた場所で封印エネルギーによって大爆発が起こる。

 

 そして煙をくすぶらせながら俺はコンクリートが露出している地面へと落ちていき、アレディさんはそんな俺と対照的に華麗に着地した。

 

 さかさまになった世界の中で俺はポケットから零れ落ちてきた完全に色が戻った響鬼のカードを見つつ、

 

「(まだまだ、色々と覚えなきゃいけないな……)」

 

 そんな思いを抱きながら頭を下にした体勢で鈍い音を立ててコンクリートへと落下した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お…ぃ…ん……駄目!!」

 

 そう何かを叫びながら白い少女が俺を突き飛ばす。

 その少女の顔は何故か影になっていて見れなかったけれどどこか懐かしい感じがして………

 

 …………それでいて悲しいという気持ちがこもったような声をしていた。

 

 そして俺を突き飛ばした少女の体は右横から飛んできた3つの鋭い物体によって突き通され、壁に縫い付けられる。

 

 貫かれた際に飛び散った血が俺の顔に大量にかかる。

 

 真っ赤に染まった視界の中で俺を突き飛ばした少女が白い肌の女性たちにリンチされている。

 

 そしてその少女は左腕をもがれ、もがれた腕とともに俺がへたり込んでいる方へ投げ飛ばされる。

 

 …………そこまでの流れを俺は何故か他人事のように見ていた。

 

 光が消えかけている少女の灰色の目と俺の目が合う。

 少女は俺の様子を見て何故か安心したように「よかった……」とつぶやくと、その体を起こしてぼろぼろになっている手につけられた砲塔を構えようとする。

 

 しかし、こちらの方にまで歩いてきた黒い髪の女性はそんな少女の必死の抵抗に対して顔を蹴り飛ばす形で応じる。

 

 そして、

 

「死ニナサイ。」

 

 その言葉とともに黒い髪の女性はその背後に召還したなにかから大量の砲弾を俺をかばうかのように立つ少女へと放った。

 

 少女は「させません!!!」と叫んでからこちらを向いて、体を引きずりながらまるで自分自身が最後の盾であると言い張るかのように俺を抱きしめる。

 

 少女の体に砲撃がすべて直撃する。

 必死に俺を守ろうとするかのようにその痛みに耐える少女のすぐ目の前で、まるでその意思をあざ笑うかのように砲弾の破片は俺の額を切り裂き、血が流れる。

 しかし、少女は必死に俺を抱きしめる。かろうじて見えたその表所は、自分の身を犠牲にしても俺だけは守るという意思を感じさせた。

 

 

 

 大量に放たれていた砲撃が止まる。

 俺を抱きしめていた少女はすでに体中血まみれになっていた。

 

 そして、黒い髪の女性がこちらにやってきて、何かを目の前の少女に言う。

 そして、彼女のことをあざ笑うかのような表情を浮かべながら彼女の頭に砲口を当てて撃とうとした瞬間、視界が急に動き出す。

 

 一気に彼女のもとへと駆け寄り、そして彼女をお姫様抱っこしながらかける。

 

 しかし、彼女は俺のその行動を止めるかのように俺の腕をたたく。

 そして片目もなくなって、血まみれになっているというのに「 」「 」「 」「 」「 」と、口を動かしてそのまま光の粒子となって消えていく。

 

 それに縋るかのように必死に俺が手を伸ばしても彼女を掴むことはできない。

 

 そして、その光の粒子ですら完全に消えた…。

 

 

 

 その瞬間世界が真っ暗へと変じて大量のイメージを流し込まれた。

 

 血のように紅いオレンジ

 

 白っぽい銀色の髪を振るって暴れる何か

 

 泣き顔のまま凶剣によって貫かれる玲奈

 

 そんな膨大な量のイメージを流された俺が最後に見たのは、大量の返り血を浴びたのか鏡に映る血まみれの鎧武の姿だった………。

 

 そしてその鎧武は鏡に手を突っ込んで俺の首へと手を伸ばしてきて………

 

 

 

「うぁあああああ!!?!!?!?!?!!??!」

 

 俺は叫びながら目覚めた。

 

「はぁ………はぁ…………何かとてつもなく洒落にならないものを見てた気がする…。」

 

 目覚めた俺に先ほどまでのイメージは残されておらず、体中が汗でべたべたするせいで俺はそう呟くしかなかった。

 

「ん?」

 

 ふと、額に触れた手が汗でぐじゅぐじゅに湿った布の感触を得た。

 

「布がまかれてるって……包帯か何かか?」

 

 そんな独り言を言いながら立ちあがり、少し離れたところにある鏡で自分の状態を確認するために俺は歩き出した。

 

 やけに、体が重たいことを気にしながら鏡の前に立つ。そこに写っているのは本来なら黒髪黒目の少し彫りが深い平均的な男子大学生のはずだった。

 

「……なんでさ。」

 

 しかし、鏡の前に立って俺はそう呟いてしまった。

 その理由は黒髪だったはずの髪が一部くすんだ銀色へと変わっていた上に、左目が赤く染まっていたからだった。

 赤く染まっているといっても充血しているわけじゃない。虹彩の本来ならば黒く染まっているはずの箇所が赤くなっていた。

 

 

 …………そう。まるで()()()()のように………

 

 

 

 

 そんな感じで俺が鏡に映った自分の姿を見て呆然としていると、

 

「あ、起きられたんですね。」

 

 と言いながら明石が部屋に入ってきて、俺は反射的に構えた。

 

「あ……アハハ……。その拳を引っ込めてもらえませんか…。ちょっと怖いんで…。」

 

 そんな俺の様子を見て恐怖におびえるかのように明石は頬をひきつらせたが、即座にそう言ってこちらに歩いてきた。

 

「はい、包帯を変えさせてもらいますね。それといくつか質問がしたいんですけどいいですか?」

 

「あぁ。それは構わないけど……というか、俺の体一体どうなってんの?」

 

 俺の額に巻かれた包帯を変えながらそういう明石に俺は逆に尋ね返した。

 

「それでは岡本さんはどこまで記憶を覚えてますか?」

 

 尋ね返した俺に、明石は包帯を変える作業を行いながらそう聞いてきた。

 

「アレディさんとキックで競り負けて頭から落ちたとこまで……ですわ。」

 

「そうですか……。じゃあ、やっぱりあのことを覚えてはないんですね。」

 

「あのこと?」

 

 何やら含みがある言い方をした明石の反応が気になった俺はそう聞いてみた。すると、

 

「えぇ、岡本さんは本当に人間ですよね?親が片方艦娘なんてことはないですよね?」

 

 と、よくわからない質問をしてきたから

 

「当たり前だろ。なんでそんなこと聞くんだ。」

 

 と、言い返した。そんな俺の反応を見て明石さんは

 

「でも、頭が割れて瀕死の状態になっていた岡本さんに高速修復材を慌てた五月雨さんがかけたことである程度傷がふさがりましたし……」

 

「え……………?」

 

 とんだ爆弾発言を落としてきた。

 

「いいですか?岡本さんはさっき模擬戦の最後の方で頭から落ちた際に額は割れ、恐らく首の骨も数本折っていたと思います。それは、あなたが落ちてから起き上がらずに痙攣して泡を吹いていたからです。そこで私たちが急いで駆けつけていたんですが、私たちが到着する前に五月雨さんが遠征帰りに通りかかってあなたに引っかかって転びました。その時に五月雨さんが持っていたバケツがあなたに被るように中身がぶちまけられて、全てあなたにかかったんです。本来ならば、艦娘以外にはバケツの中身の修復材は効力を発揮しません。ですが、あなたは修復材がかかった直後に一瞬光ったかと思うと、瀕死だったはずのあなたは額に少しだけ切り傷が残った程度まで回復していました。私はその光景をすぐそばで見ていたので何が起こったのか知りたいんです。」

 

 俺が唖然としている間に明石はマシンガンのごとく言葉をつらつらと並べたが、俺は

 

「(首折れてた?いや、それ俺死んでね?)」

 

 一番最初に言われた言葉の衝撃が大きすぎて全然話を聞いていなかった。

 

「そこで………って話聞いてませんね。怒りますよ?」

 

「あ、ごめんごめん。で、なんだって?」

 

「もういいです。質問動向よりも先に血を取らせてもらいます。」

 

「………は?なんで?」

 

「ちょっと気になることがありましてね?」

 

 そう言うなり、明石は俺の腕を動かないように強引に固定して注射器を俺の静脈に何の予告もせずに差し込んだ。

 

「!?!??!?!?!!?!!?!?!?!!?!??」

 

 当然何の心構えもできてないから俺は悶絶することになる。

 

「はい、結構取れました。これだけ取れればいろいろ調べれますね~♪」

 

 楽しそうにそういうと、明石はスキップをしながら俺の血が入ったかなり大きめの注射器を片手に部屋から出て行った。

 

「クゥッ!!ガァ!!!!」

 

 そして、部屋には注射器を刺された箇所を左手で抑え、痛みに悶え狂う俺だけが残された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数分後、ようやく痛みが引いてきたことで普通に呼吸ができるようになった俺はそのまま憔悴しきった状態でベッドに倒れこんで寝た。

 

 

 

 

「お兄ちゃん、起きて。」

 

「んん~。」

 

 肩を優しく揺さぶられて目を開けると、心配そうに俺の顔を見る玲奈がいた。

 

「玲奈か。………俺の目、怖くないのか?」

 

 一瞬玲奈から視線を外してみた外はまだ暗く、もし俺の左目が深海棲艦のものと全く一緒になってしまっているのならば赤く光っているはずだ。

 

 そう思って玲奈に聞いてみると、

 

「お兄ちゃんの目はいつも通り優しい目だよ?どうしたの?何かあったの?」

 

 そう言いながら玲奈は俺を抱きしめた。

 

 ふと、抱きしめられた玲奈の肩越しに鏡みたいになっている窓に俺の姿が映っているのに気づき、そして映っているものに驚いた。

 

 窓に映る俺の姿は、()()()()()()()()()()のものに戻っていた。

 

「え……」

 

 そんな俺のつぶやきが俺に抱き着いたまま眠ってしまった玲奈の寝息以外何も音がしないこの部屋に響いた………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?戻ってますね?何があったんですか?」

 

 翌日の朝、結局玲奈をベッドに入れて、近くにあったソファで朝を迎えた俺は明石の驚きの声に起こされた。

 

 そんな明石に対して

 

「知らねー。」

 

 とだけ返して俺はソファから立ちあがって伸びをした。

 

「そういえば、岡本さんの血液をしかるべき研究所に調査を依頼しました。恐らく数時間後には結果が出てると思うんで……って今結果きました。相変わらず早いですね~。結果見ます?」

 

 俺が伸びをしている間に一人百面相をした明石はそう言ってから持っていた携帯端末を俺に差し出した。

 

「見ます?って勝手に人の血液抜いてやりたい放題してるみたいだなオイ。」

 

 俺は差し出されたその端末をひったくってから報告書と書かれているそのデータを見た。

 

「………おい、これどう言うことだ?」

 

 その報告書を読んでいるうちにその中のある箇所に信じたくない言葉が書かれていた。

 

 《該当者(以下甲とする)の血液からDNAを鑑定したところ、以前採取することに成功した深海棲艦のDNAそして数名の艦娘と酷似した箇所を発見。甲は何らかの原因で深海棲艦ないしは艦娘に近い存在になっている可能性が高い。当研究所としては貴君のところにいるであろう甲をサンプルとして我々に譲ってもらいたく思う。》

 

「(……待て待て。どういうことだよ……。それにこの文の最後。『甲をサンプルとして我々に譲ってもらいたく』ってどう考えても俺を実験動物扱いじゃねーか!!!)」

 

「……どうしました?あ、それと早くその端末を私に返してくれませんか?」

 

 俺が端末をもって固まっているのを見かねた明石は俺から端末をひったくり返して読み始めた。

 

 明石がそれを読み始めた瞬間、俺はその横を駆け抜けて部屋から飛び出した。

 

「どれどれ~……いや、ありえないでしょ。あそこの研究所の爺さんも耄碌したのかな~。ってあれ?岡本さんどこに行かれましたか?」

 

 明石が部屋の中で爆笑しながらそんなことを言ってるとは露知らずに……

 

 ただ、足の向くままに部屋から飛び出して非常口の扉を蹴破り、そのまま外へと飛び出した。

 

 ………そう、文字通り”()()”出した。何もない空中(そら)へ。

 

「(あ、これまたアカンやつ…)」

 

 そんな考えとともに俺は地面へと4階相当の高さから地面へと落下していった……………。




感想、評価を楽しみにしています。

別の世界観の艦これのお話
『お父さんが鎮守府に着任しました。これより私たちのお世話を始めます!!』もよろしくお願いします。

URL

https://novel.syosetu.org/89125/


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16 俺の体、そして研究所

 艦これの夏イベは盛り上がって一部提督がニムちゃんが掘れないと阿鼻叫喚の騒ぎになっているようですが、先詠む人はそんな中でのんきに1-4攻略目指して戦力強化中です。
 今回のサブタイトルはビルマニアで有名な俳優さんが主役を張っていた作品がモチーフですが、そのライダーに変身することはありません。

 それでは本編をどうぞ。


 大きな音を立てながら非常階段へと繋がる扉を蹴破る。

 そしてそのまま外へ飛び出して曲が………れない!?

 

 実験動物なんかにされてたまるか!!と、部屋を飛び出し廊下を駆け抜け階段の方へと飛び出した俺だったが、勢いをつけすぎた。

 

 左足が遠心力によって宙に浮く、上半身はすでに遠心力に負けて手すりよりも離れた空に浮かんでいる。

 

「(ま………ず!!)」

 

 必死に右手を手すりの方へと突き出すが、その手はかすりもしない。

 

 そしてそのまま

 

「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああ!?」

 

 ……………俺は4階ほどの高さから下へとむけて落ち始めた。

 

「(落ちる落ちる落ちる落ちる落ちるぅぅぅぅぅぅぅぅぅうううう!!!!!!って人いるしやばい!!!)」

 

 落下し始めてからコンマ一秒でそこまで考え、そして俺の目は下の通路を歩いている人の姿を認識した…………次の瞬間だった。

 

「なんでさ!?」

 

 と、落ちる俺と目が合った天龍は某正義の味方の口癖を叫び、

 

「はっ!」

 

 と、気合を入れるかのように叫んでこちらに向かって飛び上がったパツキンのパイオツカイデー(ぱんぱかぱーん)はその胸に俺の顔をうずめさせた。

 

「ムグッ!?」

 

 当然目の前がいきなり真っ暗になり、俺は混乱する。

 

 そして、そのまま母性の象徴(愛宕)に包まれたまま、俺の足は地面についた。

 

 相変わらず真っ暗な視界の中で拍手の音と、「「おぉー」」という声がと「ぐぐぅ~」という鳴き声が聞こえる。

 

 どうやら、あの一瞬では全部識別できなかったけれど、今ここには天龍と五月雨、そしてイ級。さらに今もなお俺の顔をその豊満な象徴にうずめさせているあたごんがいるようだ。

 

「プハッ!!」

 

 俺が完全に埋もれていた顔をどうにか外へ出すと

 

「大丈夫~?」

 

 と、すぐ耳元で囁くように問いかけられる。

 

「え、あ、はい」

 

 俺はそれに対して顔を真っ赤にしながらそう答えるのでいっぱいいっぱいだった。そんな中、

 

「ちょっと~~!大丈夫ですか~!?」

 

 と、階段の上の方から明石の少し抜けたような声が聞こえ、

 

「あ、下にいますね。愛宕さんそのまま抑えていてくださ~い。」

 

 そう言ってから明石は階段を地上へと駆け下りてきた。

 

「すいません、お待たせしました。それじゃあ、岡本さん部屋に戻りましょうね~。」

 

 駆け下りてきてからしれっとそんなことを言う明石に対して俺はジト目で睨みながら

 

「断る。人体実験のモルモットになんざなってたまるか。」

 

 そうはっきりと告げた。そんな俺の対応を見て明石は

 

「あっちゃ~、やっぱり誤解されてましたか……。すみません。そのあたりも含めてきちんと説明したいんで一度部屋に戻ってくらさい……っへいはいでひゅよへんひゅうはん(って痛いですよ天龍さん)!!」

 

「明石お前何した!!!!昨日も大淀に怒られてたろ!!」

 

 誤解を解くやら何やらともごもご言っていたが、その途中で天龍さんが明石の頬を全力で引っ張りながら説教を始めた。

 

「……あの感じじゃあ長引きそうだし先に部屋にでも戻っておきましょう?」

 

 そんな二人の様子を見てあたごんは俺を抱いたままそう言って動き出し、俺は

 

「あ、はい。……ってあ…(逃げられん……)」

 

 反射的に受け答えしてしまい、そのままあたごんに抱っこされたに近い状態で部屋へと連れ戻された。

 

 結局、明石と天龍さんが上がってきたのは俺と愛宕んとイ級と五月雨が部屋に戻って(俺からしたら連れ戻されて)から数分後だった。

 

 

 

 

 

「弁解しておくと私が依頼した研究所の人物は刈牛羅元帥がもっとも信頼してしかも人の事をサンプルとか冗談言わない非人道的なのを嫌うお爺さんですからね」

 

「は、はぁ…」

 

 部屋に戻ってから明石は頬を抑えながらこの部屋にいた全員に俺が非常階段から空中散歩をするまでに起きたことを話した後、俺に件の研究所についての説明を始めた。

 

「ホントにそうなのか?俺も初めて聞くんだけど?」

 

 そうやって明石に尋ねる天龍さんの感じだと天龍さんも件の研究所についてはよく知らないようだ。

 

「本当ですよ!と言うかそんな事する人に頼む訳ないじゃないですか」

 

 そう聞き返した天龍さんの質問に対して明石は両手を頬から離して憮然とした態度で返した。

 

 そのタイミングで明石が持っていた携帯端末から電子音が部屋に鳴り響く。その電子音に対して明石は

 

「はいは~い。」

 

 って言いながら端末を操作してまるで空中ディスプレイかのように恐らく電話相手であろう姿を空中に映し出した。

 

『久しぶりだな明石、新しい鎮守府に着任したそうだが元気にしてるか?』

 

 空中に映し出された通話口の相手の姿は一言で言えば青髪の不愛想なメガネをかけ、だぼだぼな白衣を着た子供。

 

「ええ、元気ですよ~」

 

 そう答える明石の様子を置いておいて俺は反射的に

 

「「ちょっと待った」」

 

 と、天龍さんと息ぴったしに突っ込みを入れていた。

 

『なんだ?人が話しかけてる最中に割り込むマナーのなってないガキどもは?』

 

 当然、俺の予想通りに不機嫌そうな様子で悪態が返ってくる。

 

「いや、それを言ったらあんたもガキでしょう。」

 

 俺はその悪態に対して正論で答えた。なんで俺が突っ込みを問答無用で入れたのか、それは映し出されている相手に問題があった。

 

 相手の姿は先ほども言ったようにメガネをかけただぼだぼな白衣をまとっている青髪の子供だ。

 

 仮に艦隊これくしょんを知っていても、とある同人ゲームから伝説を作り上げた猛者たちのことを知らなければその答えにはいきつかない。否、行きつけないといった方がいいだろうか。

 

 俺からしたら赤ちゃまと一緒である意味見覚えがありすぎるその姿。

 中の人は結構有名な悪魔であるメフィストフェレス卿や、首がもげてるのに平然とそれを戻すエジプトの王様の中身も兼任している。

 

 そしてその答えは……

 

「「(Fateのアンデルセンだよ;)」」

 

 そのとき、俺と天龍さんのシンクロ率は100%だった。

 

『躾のなってないガキどもだな…俺は殺生院アンデルセン。かの有名な童話作家の名前を授かっている。主に艦娘や深海棲艦の研究や艦娘の武装の開発に人のメンタルチェックもしている』

 

「「(名前もまんまなんかい!!)」」

 

「こう見えても60は軽く行ってる科学者さんですよ」

 

「そうなんですか!?」

 

 シンクロ状態を維持したまま再び突っ込みを内心入れた俺と天龍さんを無視して話は続けられる。

 その流れで、明石から殺生院アンデルセンの年齢を聞いた五月雨は驚いていた。

 

「(どうやったらサーバントじゃないのに子供の姿のままでいられるんだと思う?)」

 

 ふと、目が合った天龍さんがそう目で語ってきた気がしたので、

 

「(いや、そんなのわからないです。)」

 

 俺は肩をすくめながらそう心の中で答えた。俺と天龍さんがそうやって顔を見合わせていると明石が

 

「んで博士、なんであんな報告書を送ったんですか?報告書を見たその対象者である人があわや非常階段から落ちて死にかけたんですよ」

 

 と、画面越しのアンデルセン相手に文句を言って

 

『あー…それについてはすまん。忙しかったのでウチの牛女が変わって出したんだが…その報告書を見てすぐさまそっちに連絡を入れた所だ。あの女は対象に安心して来て貰う様に報告書を丁重に丁寧に書けとあれ程言ったのに聞かんバカだからな』

 

 その文句に対してアンデルセンは何とも言えない顔でそう返した。すると、

 

『あらやだ。良くある報告書的な感じで送っただけですよ』

 

 そう言いながら画面の向こうのアンデルセンにいきなり女性が抱き着いた。その女性はあたごんのような省庁を持っていたので一瞬俺は粒状がいないか探したが、幸いなことにいなかった。

 

 その事実にとりあえず一安心してから再び画面を見て、俺は「(あー。)」と内心つぶやくことになった。

 

『ええい抱き着くな。知らん奴もいるんだからとりあえず自己紹介しろ』

 

『分かりました。初めまして殺生院祈荒と申します。旦那様と仲良くお願いします』

 

 確かにアンデルセンの相方としてこの人は適正だわ……。画面越しに俺たちに殺生院祈荒と名乗った女性は、月の裏側で魔人になって主人公に凸された破戒僧とその名前も含めて同一だった。

 

「えっと、お2人は結婚してらっしゃるのですか?」

 

 絶句している俺と天龍さんとは対照的に目を光らせながらそう尋ねた五月雨に対して

 

『まあな…』

 

『そうなんですよ。この人は夜はホント激しく…』

 

『初心なガキどもを惑わすな毒婦が!』

 

 少し困惑したような感じで返したアンデルセンに対して祈荒は何か言おうとしていたが、アンデルセンがその頭をたたいて止めた。

 

『フン』

 

 嫁?の暴走を止めた後にぐだーと間延びしてしまった場の空気を換えるためかアンデルセンは咳払いをし、

 

『まぁ、報告書の書き方はともかく、一度俺の研究所に足を運んで検査を受けて欲しい。と言うか受けに来いそこのガキンチョ』

 

 画面の向こうから俺の方を指さしながらそう切り出した。

 

「命令形!?」

 

 そのあまりの言い方に俺が「((オレ)様かよ!)」と内心突っ込みを入れながらそう叫ぶと

 

「えっと、なんで隼人さんですか?」

 

 五月雨がおずおずと聞いた。

 

 確かに明石はアンデルセンに昨日俺の血を送っただけ。にもかかわらず、俺をご指名で研究所に召還とはいろいろと理屈が合わない。

 

『そんなの簡単だ。あんな血などキザ提督や一緒にいる丁髷にバカレズを除いてお仕置き男はともかく特殊なものはそうそうない。さらに言うならば送られて来た血が男のでお前たち以外に人間の男が写っていると言う事はそいつが血の持ち主と言う事になる。と言うか明石!貴様また有無を言わさず血を抜いただろ!ちゃんと患者の体を考えろ!だから貴様は大淀に怒られるのだ!』

 

 それに対してアンデルセンは懇切丁寧?に説明した後にそのまま一連の流れ化のように明石への説教を開始した。

 

「ちょ、止めてくださいよ。それでホントに昨日も送った後に怒られましたし;」

 

 そう言って顔を青ざめさせる明石を見て俺は

 

「(あ、前科があるのか)」

 

 と、何とも言えない気持ちになった。そんな俺の様子をだれも気にせずに説教は続いていて、

 

『とにかく、お前がいる鎮守府の提督に話しは通しておくから明日に数人の護衛艦娘にキザ提督と丁髷を護衛にして俺の研究所に来い。どうして自分の体がそうなっているかガキンチョ自身も知りたいだろ?後、明石も来い。お前の了承なしの献血でウチの医療担当のフローレンスがご立腹だ。また説教されろ』

 

 いつの間にか俺の召還が確定していた上に明石がさらに説教されることも確定していた。

 

「ひえぇぇぇ!?あの人とことん怪我とか医療関係だと厳しいし、しかも怖いから嫌ですよ!」

 

『そうされる事をした浅はかな昨日の自分を呪うのだな』

 

 顔をさらに青ざめて召還を拒否する明石だったが、その抵抗をアンデルセンはズバッと切り捨てる。そんなアンデルセンの対応に、明石は「マイガー!!」と叫んでその場に頭を抱えて座り込んだ。

 

 なんか、コントみたいな空気になってきたところで俺はおずおずと

 

「あの、妹も連れて行って良いですか?」

 

 と、聞いてみた。

 

 一応ここにいる(ラバウルあるいははーけんさんとこ所属の)艦娘たちは玲奈のことをきちんと理解してくれているから俺がいなくても大丈夫なんだろうとは思う。だが、もし俺が召還されている間に別の鎮守府から艦娘が来て玲奈を殺そうとしたらいらないトラブルの原因になる。だから、俺は玲奈と一緒に行動した方がいいと判断して、聞いてみた。

 

『ん?別に良いぞ?検査を受けてる間に見学して貰えば良いからな…ただし祈荒、貴様はこいつの妹には近寄るな声をかけるな変な事を教えるな』

 

 幸いにも、その提案は断られることなく受け入れられて俺が小さくガッツポーズをしているとアンデルセンは嫁?に厳重注意をしていた。

 

『あら~なんでですか~』

 

 その厳重注意に対して風に吹かれるのれんのように対応する祈荒の様子を見て俺は「(苦労してんな…)」と、内心同情したが、ふと視界に入った天龍さんの顔も似たようなものだったから恐らく同じ考えをしていたのだろう。

 

『教育上、お前は普通に悪いからだ…とにかくホントに明日すぐに来い。カウンセリング的な意味でも来い!貴様、相当ため込んでるだろう。毒抜きしないと倒れてしまうから吐き出した方が良い。これでもメンタルカウンセラーの資格を持ってるからな。もう一度言うがちゃんと来い!良いな!』

 

 そう言って再度念を押す形で来るように言ってから通話は切られ、頭を抱えて小刻みに震えながら何かを呟いている明石以外の部屋にいる俺たち全員は顔を見合わせた。

 

 それから数分後に、俺と天龍さんは執務室に呼ばれ、研究所へ俺を搬送するために護衛艦隊を含めた指定された艦娘は港に30分後に集合するように命令された。そして30分後。

 

「よ~し、行きますよ!!!」

 

「この長門に続け!!」

 

「もう、ドジっ子なんて言わせないんだから!!」

 

「五月雨ちゃん、誰もそんなこと言ってないわよ~。愛宕、抜錨しま~す♪」

 

「一航船、出撃します。」

 

「大事になってきたな。それじゃ、行くか。」

 

 

 港に停泊していたラバウル鎮守府に所属してるらしい小型船のそばには、信濃提督に出撃するよう要請された艦娘たちと、俺と玲奈。そして……

 

 

「嫌だ死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。」

 

 壊れたレコードのように「死にたくない。」と連呼する今にも死にそうな様子の明石がいた。

 ハーケンさんたちも研究所に行くようだが、ハーケンさんはハーケンさんで自前の移動手段があるそうでそちらの準備をしている。

 

「………これどうします?」

 

 俺が腐った魚のような目をして重たい空気をまといながら三角ずわりしている明石を指さし、天龍さんに聞くと、

 

「ん~、とりあえず船に積み込んどいて。」

 

「了解です。」

 

 容赦ない返事が返ってきて、俺は明石の首を掴んで船の方に

 

「そ~い。」

 

 と掛け声を上げながら投げ飛ばした。放物線を描いて明石が船の方に飛んでいくのを見送った後に何かが崩れるような音と、「グヘッ!」というカエルがつぶれたような声が聞こえてきたが無視した。誰が何を言おうと、向かった先でどんな目にあおうと、それは明石の自業自得である。

 

「それにしても<()()()()丸>か~。」

 

 俺がこれから乗る船の船体に書かれていた船名を見てどこか感慨じみたものを感じていると、

 

「ん?船の名前がどうしたの?」

 

 と、レ級であることが露見するのを避けるために今回は俺と一緒に船で移動する玲奈がそう聞いてきた。

 

「あぁ。艦これを起動するときのロード画面に出てくる船の絵があるんだけどその名前がぷかぷか丸っていうんだってさ。だから、ちょっとね。」

 

「へ~。」

 

「ま、それはいいとして。さっき放り込んだ明石大丈夫かね…?」

 

「お兄ちゃん……それ言えた義理じゃないでしょ…。」

 

 ジト目で睨んでくる玲奈を放置して俺は

 

「さ~って、そろそろ船に乗りますかっと。」

 

 船のタラップの方へ歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「う~ん、やっぱり私は自分で海を往く方がいいかな…。」

 

 船が出向してからかれこれ30分立ったタイミングで玲奈がそうポツリと漏らした。

 

「気持ちはわからなくもないけど我慢してくれ。な。」

 

「ちょっとお兄ちゃん!やめてよ!髪をわしわししないで!」

 

 俺はそんな玲奈の気持ちもわからなくはなかったから、玲奈の頭を少し強くなでながらそう言って甲板へと続く扉を開いた。

 

「海の上を直接往くよりかは物足りないかもしれないけど、甲板で風に当たろうか。」

 

 そう言って俺は甲板へと続く廊下を歩きだした。

 

 

 

「ねぇ、お兄ちゃん。」

 

 甲板に出て、風に当たること数分。そのきれいな白い髪を風になびかせながら玲奈が俺の方を見て話し始めた。

 

「もし、お兄ちゃんの体に何か起こっていてそれの原因が私たちのせいだったらお兄ちゃんはどうするの?」

 

 不安げな顔でそう聞いてくる玲奈を見て俺は

 

「どうもしない。変わんないよ。結局俺はある意味で()()なんだから。」

 

()()()()()ってどういうこと?」

 

「秘密だ。」

 

「えー!!教えてくれたっていいじゃんけち!」

 

「ハハハ。まぁ、玲奈が誰かの嫁さんとかになるころには教えてあげるよ。」

 

「本当!?じゃあ、早く大きく…なれてた。そうだ今なら既成事実も…「させねーよ。」……叩かなくてもいいじゃないのぉ!!」

 

 話の途中で玲奈が一時的に成長して戦艦巫姫になっていたことを思い出したのか不穏なことを言い出したので、軽く手のスナップを効かせて玲奈の頭をたたいた。

 

 そんなこんなで会話をしていると、

 

「お~い、そろそろ着くってよ!!」

 

 後ろの方から護衛もかねて船の周囲を航行していた天龍さんが船の上に上がってきてそう叫んできた。

 

「……荷物まとめに行こうか。」

 

「うん。」

 

 俺と玲奈は荷物を置いていた狭い船室の中へと戻り、カバンをもって船室から出、タラップの方へと手をつないで歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

「よっと。ほら玲奈、手。」

 

「うん、ありがとうお兄ちゃん。」

 

 船が岸に着岸してからまず俺が船から飛び降り、玲奈の方へと手を伸ばした。それから目の前に広がっているものへと視線を移したのだが……

 

「いいって。それにしても……」

 

「うん。すごく」

 

「「大きいな(ね)。」」

 

 俺たちの目の前にはラバウルの鎮守府なんて目じゃないほどの横幅を持った建物が鎮座していた。

 

「お~い、隼人!!こっちだとよ!!」

 

 俺も玲奈も目の前に鎮座する建物の威圧で動けなくなっていたが、そんな天龍さんの呼び声で漸く動き出した。

 

「あ、はい今行きます!!行こうか玲奈。」

 

「うん!!」

 

 仲良し兄妹のように手をつないで歩くその姿を、

 

「フム、やっと来たか……待ちわびたぞ。」

 

 薄暗い部屋の中で大量のモニターに囲まれて青髪の子供がモニター越しに見て、不敵な笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここでお待ちくださいね。それと、そんなに睨まないでください。緊張して濡れちゃい「うっせえ、黙れ。玲奈の前で卑猥なこと言ってんじゃねぇ。」……見かけによらず鬼畜な人なんですね。もぅ。」

 

 研究所に到着してから数分後。俺は玲奈をかばうようにどこかのシスターのような服をまとった女性の前に立ち暴言を吐いていた。

 

「(ったく、この世界はどーなってんだ?艦これの世界なのにFateに出てきたキャラクターが普通にいるし、原作通りなキャラとそうじゃないキャラの判断がつかねぇ。カリギュラはまともなのに対して赤ちゃまは赤ちゃまだったし、目の前のこれも完全に同一じゃねぇか。つってもまだ聖杯がないだけマシか……)」

 

 俺は内心そう愚痴りながらも「(これいつか沖田さんとかに会いそうだな。というか、沖田さんに会いたい。喀血している沖田さんの背中をこすってあげたい…って何考えてんだ俺ぇぇぇぇぇぇぇぇぇええ!!!!)」と完全に自分の欲望がはみ出てきて混乱していた。

 

「(はっ!?まさか、これ目の前の祈荒が出してるフェロモンが原作(Fate)と違って欲望のタガが外れるように作用してるのか!?)」

 

 その混乱の先に俺は何となく真実のようなものを見つけ呆然としていたが、そんな俺の背中に

 

「おい、ぼーっとしてないでこちらを見ろ。180度反転して下を見るんだ。」

 

 そんな怒りと呆れがこもったような声が届けられた。

 

「あ、すいません。(………ってやっぱりちっせー……)」

 

「ふぅ、とりあえず貴様が失礼なことを考えていそうなことはわかった。だがまぁそこまで思考が顔に出るほど疲れたのは俺の連れが原因でもあるだろうからな。特に触れずにいてやる。」

 

「………ありがとうございます。」

 

 どうも、俺の周りにいる人は俺の考えていることを読んでしまうらしい……。

 

 そんな思いを抱きながら俺は不機嫌そうに歩くアンデルセンの後ろをついていった。

 

 

 

「ここだ、入れ。」

 

 アンデルセンはある部屋の前で立ち止まり、そう言いながら扉を開いた。

 

「失礼します…」

 

「失礼します…」

 

 俺と玲奈はそう言いながら部屋に入ったが、

 

「ほ~、結構いろんなものが乱雑に積み重なってんな。」

 

 と、護衛としてついてきた艦隊の中でただ一人俺たちについてきた天龍さんはそう言いながら俺たちに続いて部屋に入った。

 

「貴様ら兄妹はそこに座れ。そんでもって変な天龍は棚を触るのをやめて部屋から出ていけ。いいな。」

 

「いや、なんでだよ!!」

 

「そもそも貴様に聞かせるつもりはないんだ。それにどちらかというとお前の場合は………アリーシャ!!」

 

 部屋に入って偉い人が座ってそうな椅子に座ったアンデルセンはまず最初に俺らを椅子に座らせた。そして天龍さんを追い出そうとしたが、天龍さんが抵抗したのをみていきなり誰かを呼び出した。

 

「はいは~い。」

 

 アンデルセンの読んだ声を聴いたのか部屋の奥から褐色のビキニみたいな露出が激しい服を着た女性が出てきて、

 

「あなたはこっち♪」

 

 と言いながら「やめろ!!離せ!!」と抵抗する天龍さんの腕をきっちりとキメて、引きずる形で去って行った。

 

「「……………」」

 

 俺と玲奈がその光景を見て固まっていると、アンデルセンが

 

「それじゃあ、話を始めようか。」

 

 と、切り出し。かけているその眼鏡の鼻あてを一度だけクイッと持ち上げた。

 

 

「それじゃあ、一番に聞きたいんだが。貴様は一度でもいいから深海棲艦あるいは艦娘と濃密な粘膜接触をしたことがあるか?」

 

「…………?濃密な粘膜接触……ですか?言ってる意味がよくわからないです。」

 

「えぇ~い!やはり初心には遠まわしだと説明がしがたい!ようはセッ○スしたことがあるのかと聞いてるのだ!!!」

 

「・・・はぁ!?「うきゅぅ~」あ、玲奈!!」

 

 そうしてアンデルセンが聞いて俺が答える問診は、最初からぶっ飛びすぎたものだった。俺は顎が外れるかと思うぐらい驚き、玲奈は顔を真っ赤にして椅子からずり落ちた。そんな俺たちの反応を楽しそうに見ながらアンデルセンは「で?どうなんだ?」と聞いてきた。

 

「してませんよ!!第一、俺は異世界の人だから艦娘は妹たち以外そんなに触れあえる機会なんてないです!!だからそんなこと不可能ですよ!!!」

 

「ふむ、だったらキス程度はどうだ?したことあるんじゃないか?」

 

「…………えぇ、ありますよ。それがどうかしたんですか?」

 

「そうか、なら粘膜接触で……。とりあえず、お願いがあるんだがもう一度血液を採らせてもらえないだろうか?時間の経過とともにどうなっているのかによって俺が建てた仮説が正しいのか証明できるからな。」

 

「わかりましたよ。俺もその仮説に興味がわきましたし、俺の体に何が起こっているのか知りたいですからね。」

 

「そうか、ならついて来い。無菌室へ行ってから血を取ろう。」

 

 俺は気絶したままの玲奈をおんぶし、移動を始めたアンデルセンの後ろをついていった。

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ、この服に着替えてくれ。」

 

「フブッ!?何でですか?」

 

 無菌室につくと、アンデルセンはいきなり俺の顔めがけて病人が来ているような服を投げつけてきた。

 

「貴様の体がどうなるのかわからないからだ。もし貴様の体に何かがあってその際に大量に出血した場合を考えたらわかるだろう?」

 

「ウグッ………わかりましたよ。わかりました。それじゃあ着替えますよ!!」

 

「着替えるならあっちだ。ここでお前のぶつをさらすんじゃない。」

 

「え?下着まで脱ぐのかよ………。」

 

 俺はアンデルセンに指定された部屋で服を病人服に着替え、出てくるとアンデルセンが玲奈の腕から血を取っていた。

 

「おい!!!何してんだよ!!」

 

 俺が慌てて駆け寄ってアンデルセンを問い詰めると

 

「一応サンプルだ。貴様の血液の中には人間のものと艦娘のもの。そして深海棲艦のものと思われるDNAが混ざっていたが、それでも一部何かわからないものが混ざっていてな。もしかしたらこの娘のものかと思っただけだ。一応中身は艦娘でも外側(カラダ)はレ級なのだろう?そもそもレ級自体が出現する機会が少ないからな。こうして取れる際にサンプルを取ろうというわけだ。それじゃあ、そこに寝ろ。かなりの量を取らなければならないからそうでもしなければお前は気を失うぞ。」

 

「かなりの量って……どんだけですか?」

 

「一応、予定としては1リットルを予定している。」

 

「……いや、それ俺失血死になりかけるじゃないですか!!」

 

「別に問題はない。しばらく貧血で死にたくなるだけだ。」

 

「いや、そういうわけじゃなくて!!」

 

「うるさいな。そんな奴にはこれをプレゼントしてやろう。」

 

 アンデルセンがそう言ってポケットから何かを取り出し、操作した次の瞬間、俺の真下からガスが飛び出してきてそれを大量に吸い込んだ俺の意識はかすんで消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん………。」

 

「もう気が付いたのか。となると回復力も上がっているとみるべきか…。DNAの変異も見る限りやはり俺の仮説は正しかったようだな。」

 

 ぼやける視界の中で見えたのは俺の方を見て何かに気付いたかのような雰囲気をまといながら一人ぶつぶつ呟くアンデルセンと

 

「んー!!!んんーーー!!!」

 

 さるぐつわをはめられて、すさまじい表情で俺がいる場所とを仕切るガラスをひたすら叩く玲奈の姿だった。

 

「あんた………何…が……したかったんだ………」

 

 俺がかすれそうな声でそう呟くとアンデルセンは

 

「無論。抵抗なく血を抜きたかっただけだ。」

 

 そう言って大きな真空パックに入れられた赤い液体を俺の前で振った。

 

「それと分かったことを知るのは今すぐがいいか?それともいったん落ち着いてからがいいか?」

 

 俺の意識がある程度まで回復したことでアンデルセンはそう俺に聞いてきた。俺は

 

「今………は……しんどいから………後……に………して…………く…………れ…………つか……あんたも……明石……と……同類だ………よ」

 

 大量に血を抜かれた弊害なのか、ひどい寒気と頭痛に襲われながらそう答えた。

 

「わかった。なら、もう少ししてから話そう。それと、増血剤を出してやるから感謝しろ。それに俺はきちんと貴様から了承を取ってから動いたぞ?だから、どういう風に血を取るかは俺の自由だ。貴様に文句を言われる筋などない。」

 

 俺の答えに対してフンと鼻で笑ってからアンデルセンはそう言って少し離れたところに座ったのを見たところで俺はまた意識を失った。

 

 

 

 意識を失ってからどれほど経ったのだろうか。それはまったくわからないけれども俺はアンデルセンに肩を強く揺さぶられたことで気がついた。

 

「遅い。目上の人が起こしたのならばすぐに起きるべきだ。」

 

 俺が目をこすりながら開けると視界には不機嫌そうなアンデルセンの顔があった。

 

「そろそろ大丈夫だろう。貴様の意思は先ほど聞いたから説明を始めさせてもらう。」

 

 そう言いながらアンデルセンはメガネのフレームを再びクイっと動かし、

 

「まず最初に言っておく。貴様はもう()()()()()()。」

 

「え………。なんで!!ウグッ………」

 

「落ち着け。まだ完全には回復しきってはいないはずだ。元が人間なだけに流石に。な……」

 

「………ウググググ………俺は生まれも育ちも艦娘と関係ないところだったし、工廠で生まれた記憶もない。だからそんなはずはない。」

 

「フム。そこまで言うのならば簡単に教えてやろう。今の貴様の体に起きているすべてのことをな。」

 

 

 

「貴様の体を構成するのは遺伝子だというのはさすがに知っているだろう。AGTC(アデニングアシンシトシンチミン)の4つで構成されるあれだ。」

 

「その遺伝子の組み合わせが貴様の場合は問題なのだ。」

 

「今貴様の体は性別を決める遺伝子の組み合わせXX以外のほぼすべては人のものではなく、艦娘とそこの娘などの遺伝子の配列と全く同一のものになっている。」

 

「最初に見たときは驚いたぞ。一瞬深海棲艦と艦娘のハイブリッドが生まれたのかと思ったぐらいだ。」

 

「まぁ、すぐに性別を決める染色体の組み合わせが男のものだと気づいて違うと思ったのだがな。」

 

「深海棲艦の血液を飲めば深海棲艦と同一のものになって生き延びれると、昔どこかの阿呆が言いふらしてそれをまねしたバカが沢山出たことがあったが真実だったとはな。」

 

「最初にしたことがあるのか聞いただろう。あれは艦娘とした女性提督の一部が艦娘のような状態になった例があってな。それでだ。」

 

「まぁ、その女性提督は……まぁ、いわゆるユリというやつだ。言わせるな阿呆が。」

 

「コホン。話がそれたな。それで貴様もしたのか聞いたのだが、どうやら貴様は経口摂取で艦娘たちの遺伝子を摂取していたようだな。」

 

「それで深海棲艦側のものは恐らく返り血とあの娘から来たのだろう。」

 

「なぜ艦娘たちの遺伝子を摂取したら貴様のような状態になるのかというとな。発情したり異様に興奮した艦娘たちの遺伝子は単純に言うとほかの遺伝子を取り込んで作り変えてしまうのだ。」

 

「それがよく分かっていない頃は返り血をよく浴びる近接戦闘用の艤装を扱う艦娘たちが深海棲艦のようになった例が多数あった。まあ、その結果軽巡棲姫のような艦娘によく似た深海棲艦が生まれることになったのかもしれないがな。」

 

「そして、その遺伝子の効果は人間にも作用することがまれにある。恐らく貴様はその稀な方なのだろう。」

 

「それと、もう一つ言っておく。これ以上艦娘、深海棲艦どちらとも興奮した状態のものと接触するな。それ以上貴様の遺伝子が書き換えられた場合貴様がどうなるのか全く予想がつかない。」

 

「もしかしたら貴様自身が深海棲艦ないしは艦娘になるかもしれないぞ。現時点でも貴様の遺伝子はあの娘のものに酷似した状態で一部を鈴谷や雷といった艦娘のものと置き換えられている。」

 

「そのために貴様がなる可能性が高いのは現時点では艦娘よりも深海棲艦の方が高い。」

 

「それを念頭に置いたうえでこれからの付き合いを考えるのだな。」

 

 

 

 アンデルセンはそう言って説明を終え、「えぇーい!うるさいぞ!!」と言いながらガラス越しの玲奈を黙らしに向かった。

 

 そんなアンデルセンに対して俺は………

 

 

「じゃあ、一体俺はどうすればいいんだよ…………」

 

 

 先ほどまで寝かされていたベッドの上で三角座りをして考え込むしかできなかった………。

 




 感想、評価をもらえると先詠む人はうれしいです。


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17 Rの発情/Hの悩み

どうも、まだ間に合ってるよな!?Σ(゜Д゜)
今日はエグゼイドの第1話が放送されました。
それを見た俺の感想は「……………なんだこれ」でした。
それでは本編どうぞ!!


「だぁー!!負けたぁ!!」

 

「お兄ちゃんとなんだかんだでやりこんでる私が負けるはずがないじゃない!!」

 

「次のレースはどうするんだ?」

 

 目の前で3人の女の子が水道管工がゴーカートっぽい乗り物に乗って某社のキャラクターを寄せて集めてレースをするゲームをしている。

 

 一人は紫色の髪で眼帯をした少女で笑顔で次のレースについて他の2人に尋ねている。

 

 一人はきれいな白い髪を翻しながら可憐な笑顔を見せている。

 

 そして最後の一人は褐色に焼けた肌を見せながらそのきれいな金髪を後ろでひとくくりにまとめている女の子ぉおっぉおっぉおおお!?

 

「次俺のことを女扱いしたら脳天に刺さるからな。」

 

 まるで矢のようにどこから取り出したのかわからないサーフボードが俺の脳天があったあたりへと突き刺さっていた。

 

「……俺の考え読むなよ!!」

 

 そんな俺の突込みに対してフンと鼻を鳴らしながらテレビの方へ体を向けなおした件のアイツはそのままゲームを再開した。

 

 その少女の名前は紅孩児。その容姿はぶっちゃけF/GOやってる人ならわかるけど、どこからどう見てもApoclyphaで着てた服を華麗に着こなすモーさんことモードレッドだ。

 

 そしてテレビの前でそんな自称女じゃないモーさんと一緒にゲームをしているのは天龍さんとうちの玲奈だった。

 

(………にしてもあれがナイチンゲールと乳上の息子って扱いが現実に見てもあんまり納得がいかね…。)

 

 F/GOユーザーならある程度はわかるのであろうが、以前西遊記イベントと称して天竺の三蔵ちゃんこと三蔵法師を主役に置いたイベントがあった。

 

 その時、敵方の配役としてモードレッド、ナイチンゲール、黒い方の乳上がその世界に召還されており、配役が以下の通りだった。

 

 牛魔王→乳上

 羅刹女→ナイチンゲール

 紅孩児→モーさん

 

 ……なんでさ。

 

 って紅茶の口癖でイベント当時に突っ込んだ覚えがあるけれど、それよりも攻略を急がなきゃいけなかったせいでそれ以上考えないことにしていた。

 

 というか、生物学的に女×女で子供ってできるのかよ!!って最初は突っ込みたかったけどアンデルセンさん曰くレズ提督が自分の嫁艦との子供が欲しいあまりにそのための薬をアンデルセンさんに作らせたんだそうだ。

 

 それでまぁ、あとはお察ししてほしいところなんだが、それを酔い止めと勘違いして二人が飲んでからコトに及んだためにモーさん、いや紅孩児が生まれたとかなんとか…。いや、わけわからんわ。

 

 まぁ、そんな風に今でも現実を認識するのを脳が拒否している俺の横で

 

「楽しそうですねー。」

 

「うむ。どれどれ、わしも混ざってこの力を見せつけようかの。」

 

「いえ、やめてください。あなた負けそうになったらダイレクトアタックしてくるじゃないですか。」

 

「わしがルールじゃから問題ない!!」

 

「いや、問題ありますって!ゲホッ!!!興奮したせいか血が!?」

 

「おい!衛生兵を呼べぇーー!!」

 

 漫才みたいな会話をした挙句、吐血して死にかけている沖田さんとノッブがいた。

 

 いやまあ、アンデルセンさんとかに会った時点では沖田さん居たらいいなとは思ってたけど、吐血してたら心配でハラハラが止まらんって!!

 

 まさかの沖田さんはこっちの世界でも病弱スキルもちでした……。ノッブはどっかの版権に引っかかりそうな名前していたこと以外突っ込むとこもないからスルー

 

「わしのことをスルーしたじゃと!!!」

 

 

 スルー……

 

 

「わしを無視しないでおくれぇーーー!!!」

 

 なんか、目が貞子もびっくりの真っ白な通称ちびノッブ状態となったノッブが俺に縋りついてきたけどスルー。

 

 それを無視した結果、なんか泣き出したけどそれすらも俺はスルーして玲奈たちの方に近づいて

 

「俺も混ぜてもらってもいいか?」

 

 と聞いてみたらいいとのことだったから玲奈の横に胡坐をかいて俺は座った。

 

 すると玲奈が

 

「私の位置はこーこ!!」

 

 と言って俺の胡坐の上に座り込んだ。ちょっと変態チックに思われるかもしれないが、玲奈の髪から漂うシャンプーの良い臭いが鼻を刺激して何故か心地よく感じた。

 

 

 

 

 

 その日の深夜。俺は海岸線沿いを一人で考え事をしながら歩いていた。

 

(…………結局は俺が深海棲艦か艦娘に近い存在になることは変えられない現実か……)

 

 そんなことを考えながら俺は海岸線沿いから海のすぐそばへと歩き

 

 靴を脱いで海の上へと歩き出した。

 

 当然足は海水に浸かる。それでも俺は歩き続けた。

 

 そして……

 

 

「ハハハ………結局は俺は今の時点でも人外ってことか…………」

 

 

 ただ苦笑するしかなかった。

 俺は海底から足がつくはずのないほどの深さがある海の上に立っていた。まるで艦娘か深海棲艦であるかのように。

 

 

 無言で空を見上げる。

 近くにある建物が少なく、その上ほとんどの部屋の電気がついてないためか、空には満天の星空が広がっていた。

 

「きれいだ……」

 

 そう空を見上げてただ呟く俺の姿を

 

「………………」

 

 黒い帽子のようなものを被った白い少女が海の底からその大きな手を胸の前で組み合わせて見守っていた。

 

 海中にもかかわらず、その眼の端を光らせながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お兄ちゃんおはよう。」

 

 翌朝、星を見て結局そのまま何もしないで帰って寝た俺が目を覚ますと目と鼻の先に玲奈の顔があった。

 

「玲奈!?」

 

 俺が驚いて後ろの方へ後ずさると

 

「そんな反応されると私悲しいなぁ……」

 

 そう言いながらも蠱惑的な笑みを浮かべ、舌なめずりをしながら玲奈が迫ってきた。

 

 後ろはさっき後ずさったせいで壁。前は玲奈が迫ってきているせいで逃げられない。そんな中で俺は

 

「ムグゥ!?」

 

 口で口をふさがれた。しかし、

 

「こっちにいたぞ!!!今すぐ離れんかこの発情娘!!」

 

 そう言いながらアンデルセンさんが部屋の中にロケットランチャーで煙幕弾をぶち込んできたのは同時で俺はその煙幕弾の直撃を受けて気を失ったせいで何もわからなくなった。




感想、評価を楽しみにしてます。


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第18話 豪快な相手に対抗するには

大変ながらくお待たせしました。
やっとかけましたので投稿します。他の作品も完成次第順次投稿する予定です。


「「……………」」

 

 アンデルセンの研究所の演習場で己の武器を手ににして向かい合う二つの影。

 

 片方の影を一言で言うならば赤い海賊。

 その姿は海賊船の乗組員のように所々とがった意匠が施されている。

 

 もう片方の影を一言で言うならばマゼンタのバーコード。

 その顔や胸元はまるでバーコードを描いているかの如く10本の線が走っており、基本的には黒いが体中の各所はマゼンダ色に染められている。

 

 この二つの影は最初に一合手を合わせてから勢いよく距離を取り、そのまま硬直状態になっているのが今の現状だった。

 

「「…………」」

 

 同一の距離を保ちながら二つの影は武器を構え、円を描くように移動する。

 

 そして………

 

「フェックショーイ!!!」

 

「ウラァ!」

 

「オラぁ!!」

 

 この二人の戦いを見ていた紅孩児の大きすぎるくしゃみを合図にしたかのように二つの影は同時に再びその間にある距離を急速に埋め、武器をぶつけ合った。

 

 赤い影。人間どころか深海棲艦までもを己のカリスマで魅了する船長であるキャプテンマーベラスが変身したゴーカイレッドはその手に持ったマスケット銃とサーベルを交差して衝撃に耐える。

 その交差した武器に自分が持つライドブッカーを叩き付けているのが俺、こと岡本隼人が変身している仮面ライダーディケイドだった。

 

 始めてこのドライバーを手に入れたときには実際にこんなことになるとは全く考えていなかった戦闘。

 このゴーカイレッドと仮面ライダーディケイドの戦いは、実はなんだかんだで一度ある。

 

 スーパー戦隊シリーズと仮面ライダーのコラボ作品である「スーパーヒーロー大戦」にてそれはあった。

 

 叩き付けた勢いで荷重が通常よりも多くのしかかっているのかゴーカイレッドの足元にひびが入り出す。

 

「チッ!」

 

 それを一瞬確認したゴーカイレッドは交差している武器を少しずらし、俺の体勢を崩すかのように右側にのサーベルを持っている方に俺の体を引きずった。

 

 そうすれば必然的に空中に浮いている俺の体はバランスを崩しレッドから見て右側へと落ちだす。

 

 そのタイミングでレッドが持っているマスケット銃が火を噴いた。

 

 乾いた音が3発連続で鳴り響き、硬いものに跳ね返る音がつんざき、火花が両者の間で激しく飛び散る。

 

「ガハッ!?」

 

 そのまま火花と衝撃で一瞬動けなくなった俺の腹部にレッドの蹴りが入り、俺は後方へと吹き飛ばされる……が。

 

「クッ!?」

 

 煙の中から飛び出した俺の姿は銀色に染まっており、対して煙の中から姿を現したレッドは右足を抑え込んでいた。

 

「やりやがったな。」

 

「こっちも博打だったがな。」

 

 口での応酬。さっきの一瞬の間に何が起こったのか。

 

「まさか、自分の体を鋼鐵化させて全部の攻撃の威力を無かったことにした上に俺にダメージまで与えるとはな。」

 

 レッドは抑えていた足を少し振りながらそう告げる。

 

「タイミング的にはギリギリだったから内心ひやひやもんだったけどな。」

 

 その瞬間、俺の体のメタル化が解除されてドライバーから一枚のカードが飛び出す。

 そのカードに書かれているのは<METAL>の文字。

 

 そう。俺はさっき体勢を崩された瞬間カードを読み込ませていた。丁度発動するかどうか、というタイミングで銃弾が胸部装甲に飛んできたため内心冷や冷やしたが、カードの効力によって俺の体はメタル化。すなわち鋼鐵化し、全ての攻撃の威力を最大限抑えることに成功していた。

 

「それなら小手調べは終わりだ。こっからド派手に行くぜ!!」

 

 レッドはそう言って腰についていたベルトのバックル部の上にあるボタンを叩いてバックル部の表面を回転させ、裏面に取り付けられていた人形を右手に持つ。

 そして人形を鍵状へ変形させ

 

「ゴーカイチェンジ。」

 

 その言葉とともに左手に持っていた携帯へと鍵状に変形させた人形を突き刺し、回転させた。

 

 人形を回転させると形態の上部分が錨のような形に変形し

 

<ゴーオンジャー!!>

 

 ゴーカイレッドは炎神戦隊ゴーオンジャーのレッドであるゴーオンレッドに再変身した。

 

「なら俺は!!!」

 

 それを見て俺もライドブッカーからあるカードを取り出し、ドライバーへと放り込み

 

<KAMENRIDE>

 

<KI・KI・KI・KIVA!!!>

 

 ドライバーの中央部を回転させ仮面ライダーキバへと再変身し、基本体勢である腰をわずかに落としたものへ変える。

 

「フッ!」

 

「ハッ!!」

 

 そして三度激突した。

 

 

「………スゴい……」

 

「ったくなんだよあれ。姿コロコロ変わりすぎだろ。」

 

「キバとゴーオンジャーかー。スピードで押し負けそうだな。」

 

 上から順に玲奈、紅孩児、天龍の言葉だ。

 

 そして、天龍が言うとおりゴーオンレッドはその手足についたタイヤで地面を高速で移動、キバを翻弄していた。

 

「クソッ‼」

 

 キバフォームだとまともに目が追い付かないためにそう叫びながら俺は素早さに重点が置かれているガルルフォームへフォームチェンジしようとした瞬間

 

「ハッ‼」

 

 ゴーオンレッドがその一瞬の隙をついて強攻撃を叩き込んだ。

 

「ウグ…」

 

 それが完全に決まったことで俺は後ろに吹き飛ばされ、持っていたカードを落としてしまう。

 

「これで止めだ」

 

 そう言うとゴーオンレッドはゴーカイレッドへ姿を戻し手に持っていたカギを今度は武器に突き刺した。

 

 〈ファイナルウェーブ!!〉

 

 刀身に光が点る。そして

 

「フンッ‼」

 

 掛け声と共に勢いよく振り抜いた。

 

 俺はそれを見て動かないからだをどうにか動かし

 

「クッ‼」

 

 〈KAMENRIDE〉

 

 ベルトに取り出したカードを装填し

 

 〈De・De・De・Den-O!!〉

 

 再変身する際になぜか出て来ることが判明したデンライナーのオーラで相殺した。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 それでも俺の体はズタボロなのは間違いない。

 だけど、戦うからには勝ちたかった。

 

「行くぜ……」

 

 そう言いながらカードを読み込ませる。

 

 〈AtackRide〉

 

 そしてそのカードの効果が発動する!!

 

<ORE SANJOU!!>

 

「へ……?」

 

 一瞬呆然とする俺を放置して体と口は勝手に動き出す。

 

「って俺、参上!!」

 

 右手の親指を自分の方に向け、体を回しながら両手を開き、そして腰を落とす。そしてポーズをとったということ以外何も起きなかったその一連の流れで、場は一気に冷え切った。

 

「は?」

 

「え?」

 

「何それ?」

 

「…………」

 

 必死に口を押えて顔を真っ赤にし、爆笑するのをこらえている天龍さん以外は。

 

 ヒュルリ~と風と共に落ち葉が舞う。

 

 こんなの参上ではない。ただの惨状である。

 

「………変身」

 

 そんな空気の中で俺は何も言わずに別のカードを取り出して姿を変えた。

 

<KAMENRIDE>

 

<B・B・B・BRADE!!>

 

 そしてそのまま縁が黄色いカードを取り出し

 

「………これで決める。」

 

<FINAL ATTACK RIDE>

 

 ドライバーに読み込ませる

 

<B・B・B・BRADE!!>

 

 そうやって唐突に恥も外聞もなく勝ちに行こうとしている仮面の下ではさっきの痴態による恥ずかしさで半泣きである。

 

「ウェーー!!!!」

 

 完全に無防備な状態のゴーカイレッドの腹部に決まるライトニングソニックを模した必殺技。

 仮面ライダーブレイドが戦ってきた相手に決まれば問答無用で瀕死の状態へする技を無防備な状態の相手にぶつければどうなるか……

 

「ガハッ?!」

 

 こうなる。

 

 必殺技を腹部に受けたゴーカイレッドは勢いよく吹き飛ばされ、そのまま演習場の壁にのめりこむ。

 

「………」

 

 そして埋まった壁から剥がれ落ちるかのように倒れながらゴーカイレッドはマーベラスさんへと姿を戻した。

 

 そうやって俺は勝利を手に入れた………その代わりにとても大事なものを失ったような気もするが…。

 

「お兄ちゃんてもしかして外道?」

 

「ぐふっ!?」

 

 …………勝負に勝ったが、(玲奈)からの言葉の砲撃で俺は轟沈した。




感想、評価を楽しみにしています。

重巡が育ってないから山雲が掘れない先詠む人でした。(なお、鹿島と初月と鬼怒はすぐに掘れた)

それとTwitter始めました。
こちらからお願いします。

先詠む人 (@sakiyomi_skull)さんをチェックしよう https://twitter.com/sakiyomi_skull?s=09


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俺の道

久々だけど異様に短い。
ごめんな。思いつかんかってん。


「妖精さんの能力ってやっぱりいろいろとおかしいだろ……」

 

 割り当てられた自室にあるベッドでくつろぎながらそうこぼす。

 

 昨日聞いたいろいろなもの。それらすべては男の子のロマンとでも言えるのだろう物ばかり。ぶっちゃけ見たいとものすごく思う。

 

「だけどなぁ……」

 

 そう、だけどなのだ。俺は本来この世界からしたら異物。いてはならないと言っても過言じゃない。

 玲奈とかは多分元々がこちら側から来ていたのだから大丈夫と思う。

 俺がいつまでこの世界に居られるのか、そしてなんでこの世界にいきなり呼ばれたのか。それをまず探さないと色んな意味でマズいよな…」

 

「お兄ちゃん思考がダダ漏れだよ?」

 

「え、マジで?」

 

「うん。」

 

 いつの間にか入ってきていたのか玲奈が俺の顔のすぐそばでそう言って笑った。

 

「天龍さんが『元帥連絡が入ったから来い』って。」

 

「了解っと。」

 

 ベッドに一旦体を沈めてから反動を使って跳ね起きる。

 

「そんじゃ行こうか。」

 

「うん!!」

 

 俺は玲奈と二人手をつないで自室を出た。向かうは天龍さんがいるであろう食堂だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見つかったんですか?」

 

「あぁ。お前の鎮守府が見つかったってさっき刈牛羅元帥さんから連絡が回ってきた。」

 

「やったね!!」

 

 天龍さんが言った言葉に俺は驚き、玲奈はその場で飛び跳ねて喜びを全身で示した。

 

「それでいつ出発になるんですか?」

 

 俺がそう尋ねると、天龍さんは

 

「明日ぐらいに迎えに来るらしい。だけど、最近通る予定海路近辺の海域の深海棲艦の活性化も報告されているから数日はずれるのを見越した方が良いかもしれないってさ。」

 

 と、両の手を胸の前で組みながらそう言った。

 

「なるほど……」

 

 そう呟きながら俺は自分の左頬を掻いた。

 

「さ、飯にしようぜ。そろそろ昼時だしな。」

 

 そう言って天龍さんは食堂の受け取り口の方へと足を向ける。その一方で俺はその場に立ったまま考え事をしていた。

 

(貰ってばかりではいさよならだと俺も気まずいし何か返せることないかな……)

 

 そんな天龍さんが聞いたら『気にしすぎだ!』って笑い飛ばしそうなことを。

 

「お兄ちゃん?」

 

 そんな俺の様子を玲奈は不思議そうな様子で見ながら袖をつまんでいた。

 

 

 

 

 

 

 走る。走る。落ちる。はい出る。走る。すっ転ぶ。立つ。どこぞの変態にボディーブローを入れてからそのまま白い大きな虎が必殺技の時にやっていたように顔面を掴んで引きずり回す。

 

 うんうんと唸りながらただひたすらに返せるものがないか考え続けていてもらちが明かなかったので俺は鎮守府周りを走っていた。

 途中、誰かがいつの間にか作っていた落とし穴に落ちて、はい出れたと思ったらそのまま足がもつれて顔面からすっ転んだ。

 

 痛ぇと漏らしながら立ちあがると、変態行為に及ぼうとして妹を困らせている改造巫女服を着た変態が見えたので

 

「FINAL VENT」

 

 そう呟いて一気に右側から距離を詰めるのと同時に右手を振り抜く。

 その右手は的確に右のわき腹へと入り、変態次女はくの字になりながら宙へと浮いた。その顔面をくの字で宙に浮いている状態から一気に地面にたたきつけるように掴んで引っ張り、そのまま走り去る。

 

「ひぇーーーーー!!!」

 

 右手の方から悲鳴が聞こえるが自らの業が引き起こした悲劇だ。諦めろ。

 

 その状態を保ったまま港の方まで走り抜けるのと同時に俺は勢いよく腕を振り抜く。するとアンダースローで投げつけられたボールのように比叡は空を舞って海へと放物線を描いて落下した。

 

 バシャーン!!と、水音が鳴り響き、大きな水柱が立つ。

 

「悪は去った……」

 

 そう告げてから俺は後ろから聞こえる悲鳴を無視して本館へと戻った。

 

 

 




感想、評価があるとテンションが上がります。


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