ヘルサレムズロットの古物商 (半生)
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混沌の街の古物商

どうも、やってしまった人間はんなまです。
始めましての人は始めまして。生きとったんかワレェと人はごめんなさいまだ待って下さい。

さて、挨拶はコレくらいにして第一話ご覧ください。


『マイクありゃなんだ!?』

『知らねぇよ、俺に聞かれても!!化け物ってことくらいだ、俺が分かるのは』

『だとしてもよぉお!?あんなもんがなんでこんな街のど真ん中にいるんだよぉ!?』

『だ・か・ら!しらねぇよんなことは!!』

『ドゴォーン!ギャーン!』

 

 

とある古物商店《アンティークショップ》の奥にあるTVから声が聞こえてくる

 

「いやぁ、昔のDVDを暇つぶしに引っ張って来たけど……やっぱり面白いなぁこの作品、このB級感が堪らないわ」

 

その古物商店の奥に座る青年がTVをそう見ながらつぶやく。

時刻は黄昏時。彼の仕事が始まる時間だった。

 

「さてと……さすがにそろそろお店開く準備でもするかなぁ」

 

彼はそう言って、TVの電源を消し座っている椅子から立ち上がった。

その直後――――――

 

ドゴォォォォオオオオオオン!!

キャアアアアアアア

ウワァアアアアアア

 

――――――外から巨大な音が聞こえてきた。

 

普通、このような音や声が聞こえてきたら飛び出して確認してしまうのが人間というものだろう。しかし、そんなバカでかい音が鳴っているにも拘らず青年は特に何もなかったかのように、

 

「あー、そろそろ表向きのここも掃除しないといけないなぁ。運よくここに来れた一般客が適当に動かすから位置もめちゃくちゃだし。まったく、興味ないなら手にとって詳しく見んな」

 

と言ってのけた。外の人も当事者以外は普通に平然としていたりする。むしろ、これ位の事普通といわんばかりに行動している。それどころか、「面白そうだ」「ちょっと、野次馬に行ってくる」という輩がいるありさまだ。

 

これは、普通ではありえないことだ。

 

しかし、この街ではこの位の事日常茶飯事だ。むしろ、この街に長い間住んでいるものならば「なんだ、このくらいか」と言ってのけるだろう。これがこの街……この都市では普通なのだ。

 

 

 

この街の名は……ヘルサレムズロット、元紐育《ニューヨーク》のあったところにできた異界と人界が交わる場所だ。

 

 

*********************

 

ここはヘルサレムズロットのとある大通り。そこに佇んでいる、古物商店「ウェズ・アンティーク」。三階建てのビル丸々一つ使われた最近ないような古物商店である。

その古物商店の奥、一人店の番をしている青年がいる。彼の名前はウェズ。本名をウェズ・E・ブルーファルトという。

この古物商店の店主である。

 

この古物商店はヘルサレムズロットでも比較的死亡率が低い場所に面している。そういうところには、観光などできた|人間≪ヒューマー≫がよく通る。

 

「あー、今日も客来ないなぁ」

 

だというのに、この古物商店はいつも閑散としている。その上、店の前には誰も通ろうとしない。大通りに面しているにも拘らずだ。しかし、これはこの店が全く売れていないというわけではない。

 

「あー、いっそ人避けの術式外しちまうか?……いやダメだ。そんなことしたらこの店のうわさを聞いて来た馬鹿どもが集まってくるに決まってる。やめとこう」

 

この店の入り口のところに目を向ければ特殊な文字が刻まれている。

実はこの店は大通りに面してはいるが、少々特殊な古物商店なのだ。人、人外双方の目に触れても別段問題のない物が置いてあるように見えるが実は違う。

 

「しっかし、こう、客が来ないのもあれだな……とは言ったもののやることあんまりないしなぁ。……下の整理でもするかねぇ……」

 

この店の地下には知覚できるものにはわかる曰く付の物や魔導書といったものが置いてある。彼が世界中を回り集めに集めたものだ。それらの品を買いに来る客もいるくらいにはそれらの所蔵は多い。それらが全て悪用されれば世界崩壊に一直線に向かってしまうだろう。そのため、基本的にこの店には人避けの術式が張られている。そのため、人は全く入ってこれない。魔法に精通している人外であろうとも、この結界を見破ることはそうそうできないであろう。

 

しかし、そのような式を張っていてもここに来れる存在がいる。ここに来れる存在…それは、正しい入り方を知らずに入り運よくここに来れた存在や、ウェズが気に言った存在、そして……

 

「ごめんくださーい」

 

術式を無視できる人間位である。

 

ウェズが少し考え事をしていると店の入り口から声が聞こえた。

 

「はーい、いらっしゃーい。……って、レオさんか」

 

「……あの、ウェズさん。前も言ったような気もしますけど……さん付けすんのやめてください。なんか年上からさん付けされるとすっごいむず痒いですよ」

 

彼の名はレオナルド・ウォッチ。表の顔は外のフリージャーナリストだ。

だが、裏の顔は世界の均衡を守るために日々暗躍する秘密結社「ライブラ」のメンバーである。ただの少年のように見えるが彼の目は、「神々の義眼」という特殊なものでその義眼に欺ける物は存在しないといわれるほどの物だ。

彼は以前、その特別な目によってこの古物商店を発見しそれ以来時たまその時一緒にいたザップ・レンフロと共にここに来ている。

その肩には、白い色をした音速猿「ソニック」が乗っている。

 

「いやぁ、それだと俺の気が収まらない。俺は、すべてのヴァンパイアハンターに対して敬意を払って生きてるんだから。どんなに若かろうとヴァンパイアハンターに変わりはないだろう?ところで珍しいな、ザップさんがいないなんて」

 

しかし、珍しいことにその日はいつもついてきていたザップはいなかった。

 

「あ、今日はついてきてないですよ、あの人。さっき、ライブラの事務所によってきたんですけどチェインさんにボッコボコにされてましたから」

 

「ふぅん、まあザップさんだしなぁ……ところで、珍しいな?バイト《………》がある日以外全然こないのに」

 

「あ、いや、実は……妹の誕生日で……ちょっと迷ってまして。相談できるところなんていつも行ってるカフェかここぐらいだったんです」

 

「ああ、なるほど。それじゃあ、立ち話もなんだし地下行く?レン姉たちも喜ぶからさ」

 

「いいですよ」

 

「んじゃ、ごあんなーい」

 

そう言ってウェズは扉の看板を「OPEN」を「CLOSE」にした。次に、扉に着けたブラインドを完全に閉じた。すると、店の奥、カウンターの裏の壁がまるで開くかのようにひとりでに動き出し奥からエレベーターが現れた。ウェズは、その現れたエレベーターの横のボタンを押した。すると、ゴウンという音と共にエレベーターが動きだした。

 

「俺もそう言うのには結構疎いからなぁ。昔、レン姉のプレゼントに迷いに迷ってねぇ……結局、行商で来てたおっさんに何がいいか聞いたくらいだからなぁ」

 

「あー、やっぱりそうなんですね。お姉さん、好みが激しいですもんね」

 

「そーなんだよ……はぁ」

 

そう話している二人にチーンッという音が聞こえる。それと同時にエレベーターのドアが開いた。二人はエレベーターに乗り込む。すると、エレベーターのドアが閉じられその階には物言わぬ古めかしいアンティークしか居なくなった。

 

 

 

エレベーターがしばらく動いてから止まる。そして、チーンッという音がしそれと同時にまたドアが開いた。

 

「ただいま――――――」

 

その瞬間――――――

 

「お兄様、御帰りッーーーーーー!」

 

――――――金色の弾丸がエレベーター内に突っ込んできた。

そして、その金色の弾丸は……

 

「ウグホォ!?」

 

ドアの一番近くのところに立っていたレオナルドに突っ込んでいった。

 

「フリィー、それお兄ちゃんじゃないぞー」

 

「ん?……あれ?抱き付いたはずのお兄様がそこにいる?」

 

突っ込んできた金色の弾丸が頭をあげてウェズの方を向く。

彼女の名は、フリィーレ。本名を、フリィーレ・E・ブルーファルトという。金色の毛髪を携えた9歳くらいの女の子である。

 

「うん、フリィー。お前が突っ込んでいったものをよく見てごらん?」

 

「ふぇ…?……あっ!?」

 

いきなり突っ込んできたフリィーレにぶち当たったレオナルドは完全にノックダウンされていた。心なしかその顔は穏やかに見え――――――

 

「レ、レオナルド大丈夫!?」

 

―――てはいなかったがそれでも完全に入ってしまったらしく気絶していた.

 

「いや、フリィー。お前がやったんだからな?とりあえず、部屋に運ぼう」

 

ウェズはそういいながら、レオナルドを俵担ぎで運び出した。

 

エレベーターの先にあった部屋に入る。

大体6人掛けのできる机と椅子。その向こうにはテレビとさまざまなものが置いてある机にソファが置いてあるある程度の家族で住むにはちょうどいいリビングだった。

 

ウェズがフリィーレと共に部屋に入ると15歳位の赤毛の髪をした少女が座っていた。

 

「あれ?ウェズ、今日は早いわね……ってそれ、レオさん?」

 

「ん?ああ、エリーおはよう。いや、ここに降りて来た時にフリィーに突撃くらっちゃってね」

 

彼女の名はエリーゼ。本名を、エリーゼ・W・クロムベルという。

エリーゼはウェズからそのことを聞くと少しため息を吐きながらフリーレに顔を向けた。

 

「フリィー、なんであなた確認して突撃しなかったの?」

 

「いや、俺としてはまず突撃をやめてほしいんだけども」

 

「だって、お兄様に突撃したいじゃない。エリーだってたまにしてるの私知ってるんだよ」

 

フリィーレはウェズの嘆願を完全にスルーし爆弾を投下した。

 

「えっ!?ちょっとストップフリィー。俺それ聞いたことない」

 

「私はいいのよ。ウェズが寝てる時にこっそりしてるだけなんだから」

 

「よくないよー、全然よくないよー。というかエリー?俺が寝てる間に何をやってるの?」

 

「……っえ……それは…言えないわよ……」

 

それを聞きウェズは、マジで何やってるんだよと思いつつレオナルドを部屋の奥のソファに寝かした。

三人が騒いでいると、奥から目を擦りながらまた一人の少女が現れた。

 

「ふわぁ…う~おはよ~」

 

「あら、レン。おはよう」

 

「うん、おはよう」

 

彼女はレンリア。ウェズとフリィーレの姉である。……が、パッと見ではウェズより年下に見えフリィーレと同い年に見えるくらいの容姿をしている。

 

「フリィーもおはよー」

 

「お姉様、おはよう」

 

「うーん、おはよー」

 

レンリアは眠い目を擦りながら二人に挨拶をしながらウェズに近づいていった。

近づいていき、ウェズにぶつかった。

そして、レンリアはぶつかった物がなにか顔を挙げ確認した。

 

「……あっ、ウェズか。おはよう」

 

「……まだ若干寝ぼけてる?」

 

「寝ぼけてないわよー、私はウェズのお姉ちゃんなのよ…ふわぁ……」

 

「いや、寝ぼけてるって……ちょっと待ってレン姉そこには!?」

 

そう言いながらレンリアは……

 

「フゥグエ!?」

 

ソファの上にあったクッションをレオナルドの顔の上におきそこに座った。

この衝撃によりレオナルドが起きたがレンリアは全く気が付いておらず、

 

「ねぇーエリー、今日の朝ご飯はなにー」

 

寝ぼけた声でエリーゼに今日の朝食のメニューを聞き始めた。

 

「レン姉、寝ぼけてないでレオさんの顔からお尻あげて!!」

 

「私は誰も敷いてないわよー。敷きたいとしたらウェズだけよー」

 

「いや、それを言われて俺はどう反応返せばいいんだよ!それよかレオさん完全に潰されてるから!!」

 

「ッッ!?ッゥァ!!」

 

「……っ!?なんでウェズがここにいるの!?」

 

「ほらやっぱり寝ぼけてた!!!」

 

寝ぼけていたレンリアは完全覚醒し、レオナルドのことを完全にスルーしてなぜか自分の眼の前にいたウェズに驚いていた。

 

「まさか、夜這い!?ダメよ、ウェズ。私達は家族なんだから!!」

 

「いや、そんな事微塵もやろうと思ったことないからね!?」

 

「……!?!……!!」

 

レオナルドが暴れるがレンリアはそんなことお構いなしにウェズに対して謎の諭しをし始める。

 

「ちょ、レン落ち着きなさい!レオさんがそろそろやばいわ」

 

「お姉様落ち着いて!!」

 

「………!…………」

 

レンリアを止めようとフリィーレとエリーゼが介入するが全く話を聞かず、レオナルドが危険域に達し始める。

 

そしてついに―――――

 

「あれ?……ってきゃぁ!!レオナルド!?」

 

レンリアがレオナルドに気づく。レンリアがレオナルドの上に乗ってからざっと見積もって10分後くらいの話である。

 

 

 

「どうもっした、ウェズさん」

 

「いいって、お互い様だし。いやそれよりもごめんね家のレン姉が」

 

「あ、いや大丈夫っす。ライブラ入った頃はよくあったっすから」

 

「あー、そうか」

 

「っと、それじゃあまた今度」

 

「おう、気をつけて帰れよ」

 

そういいながらレオナルドはスクーターに乗り込んで去っていった。

 

「さて今は……」

 

レオナルドが去ってすぐにウェズは時間を確認する。そして気づく。

 

「……あら?もう店仕舞いの時間か」

 

そう彼の店の営業時間は開店から3時間程度。

―――つまりもう閉店の時間だったのだ。

 

「あっちゃー、失念してたなぁ。まあいいか、客なんてめったにこねえし」

そう言ってウェズは店仕舞いを始めようとする。

そこに―――

 

「失礼するよ」

 

1人の仮面の男が入ってきた。

 

「っと、いらっしゃいませー……って今度はフェムトさんか。何ようで?」

 

その男は、ヘルサレムズロットの最々々々重要危険人物であり稀代の変人、13王の1人堕落王フェムトであった。

 

フェムトは落ち着き払った様子で口を開いた。

 

「いやね、ちょうどここを通りかけたものでね面白いものがないかと尋ねてみたしだいなんだ」

 

「んー、つってもフェムトさんが喜びそうなものなんてないよ。しいて言うなら……」

 

そういいながらウェズはカウンター裏においてある鑑定済みとかかれた箱から一つボックスを取り出した。

 

「少し古いジャパニーズアニメイションのDVDBOX位かな」

 

と、フェムトのまえにそのDVDBOXを出した。箱には、魔法少女マジカルリリカと書いてある。

フェムトはそれを見た瞬間少し驚愕し

 

「幾らかね!?」

 

声を荒げて聞いてきた。

 

「あー、もう売ってないものの上に最近さらにプレミアついちゃった物ですからね。ネットオークションなんかじゃ500万とかで落札されてますし……」

 

といいながら、彼は机においてあった電卓を弾く。

「こんなもんになりますかね」

 

弾き終わった彼はそういいながらフェムトに対して電卓を見せる。

そこには、ドル換算で140000$。日本円にして大体16000000円を示していた。

しかし、その額を見てもフェムトは動じず

 

「買おう、えーと現金でいいかい?」

 

そういいながら机の上に140000$をポンと置いた。

実はこの古物商店の八割の売り上げは彼によって賄われている。他にも客はいるが、フェムトの娯楽目的の前では足元にも及ばないくらいである。

 

ウェズは机の上に置かれた紙幣を、魔術的、観察的な視点で見ながら枚数を確認した。

 

「うん、OK。ちゃんと14万だ、毎度あり」

 

「うむ、やはり寄り道をしてみるものだね。さてコレで失礼するよ」

 

そう言って彼は少しうれしそうに店から出て行った。

 

 

 

「……さて、それじゃ店仕舞いとしますか」

 

こうして、ウェズの古物商店の一日は終わる。

ウェズは、レオナルドが来たときと同じように行動しエレベーターに乗り込んだ。

 

そしてまた、その階には物言わぬアンティークだけが残った。



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