みんなの笑顔~日ノ丸新太の非日常~ (人生美味礼讚)
しおりを挟む

番外編
お気に入り登録20件達成記念 「楽屋の時間 1」


今回は台本書きでの反省及び各話の説明です
貼ってきた伏線や新太誕生の秘話が紹介されます
この話に限っては作者も登場します
表記は長いので「礼賛」とします
番外編………?
知らんなぁ、わしゃ知りません
登場キャラは新太、磯貝、片岡、前原、岡野、倉橋、速水、不破、中村、岡島、原、杉野、渚です


礼賛「皆さん、いつも『みんなの笑顔~日ノ丸新太の暗殺録~』を読んでいただき、ありがとうございます。さて、今回はお気に入り登録20件達成記念ということで……………駄弁ろう!」

 

前原「いや、何でだよ!!?」

 

片岡「もっとやることあったでしょ!!」

 

礼賛「いや~、番外編とか面倒。3月編が主にそれだし。新太やクラスの女子が恋心芽生えてるとかそんなこともないじゃん?だから、番外編作るようなアイディアがないのよ。」

 

磯貝「それを考えるのが作者じゃ………」

 

礼賛「気にしたら負けだ」

 

速水「その発想に至ってる時点で色々負けてる」

 

礼賛「ぐふぅ!…………確かにそうだけど、反省も必要だろ?………………だから、反省会しよう!」

 

渚(絶対今思いついたやつだ……)

 

岡島「そんならさ、何の反省するんだよ?」

 

新太「ゴマゴンの場合は反省以前に教会に行って懺悔した方がいいんじゃない?」

 

岡島「ゴマゴン!?どこからその名前が出てきたんだよ!?」

 

杉野「教会に行って懺悔するは否定しないんだな」

 

新太「んーとね、頭が卵みたいで黒いゴマみたいなもんついてるからくっつけて…ゴマゴン!」

 

岡島「黒いゴマみたいなもんって…………髪の毛のことか!?」

 

新太「うん、さっさとハゲにすればいいのにね」

 

中村「なかなかブラックなこと言いますなぁー」

 

不破「でも、新太君のネーミングって結構秀逸だと思うんだよね」

 

原「意外と特徴捉えてるからね。良くも悪くも……」

 

前原「なんで俺を見るんだよ!!?」

 

杉野「まあまあ…。新太はどうやって名前決めてんだ?」

 

新太「そうだねー。基本的に特徴とか名前とかからとってるんだよね。でも、たまにマンガのキャラのニックネームとか参考にするよ。例えば、ヅッキーも「ハイ〇ュー」の月山を参考にしたし」

 

不破「やっぱり!?そうじゃないかなって思ったんだよねー!!」

 

新太「やっぱり分かっちゃったか!」

 

岡野「私は……?」

 

礼賛「あれ、裏話でやらなかったっけ?お猿さんみたいにかわいいからモンちゃんって……」

 

岡野「なんでお猿さんみたいってなるのよ!?」

 

新太「え、かわいいと思ったんだけど……………ダメ(うるうる)?」

 

岡野「だ、ダメじゃないけど……」

 

倉橋「えー、かわいいよその名前!」

 

岡野「そ、そうかな……?」

 

前原「俺の名前は絶対にダメだ!」

 

一同「いや、お前はいいだろ」

 

前原「何でだよ!!?」

 

倉橋「まあ、それは置いといて……」

 

速水「全く反省になってない」

 

磯貝「いっぱいあるはずなんだけどなぁ」

 

礼賛「そうだな。まずは、磯貝たちの話かな。この話は前から考えてあったものでもっと岡野と絡ませたかった回です。結果的にあんまり絡ませられなかったけど」

 

新太「終わり方も雑だったしね」

 

岡野「なんで私と?」

 

礼賛「新太から刺激を受けてもらいたかったのが強いかな?本音はこの4人が動かしやすいだけだけど」

 

片岡「やっぱりそういうことね」

 

磯貝「なんとなくそんな気はしてた」

 

前原「あれから続けてもバスケの描写しかないけどな」

 

礼賛「そうなんだよね。バスケの描写も書きたかったけどあのまま進んだら長くなるしバスケ小説になってしまうからそれだけは避けたかったんだよね」

 

新太「意外と考えてるんだね。でも、なんでバスケなの?杉野の親友なら野球でも良かったよね?」

 

礼賛「そうだけど、野球だと杉野の影が薄くなりそうだから。じゃあどうするか考えてたら、原作で理事長の回想シーンでバスケットゴールがあるのをふと思い出して、バスケならE組でもできるかなって感じ」

 

杉野「あ、あぶねぇ……」

 

前原「なるほどな。キャラ被りとかも考えてるんだな」

 

礼賛「そりゃ考えるさ。新太を作った時にまず、逆の発想から考えたんだ」

 

渚「逆の発想…?」

 

礼賛「そう。他の二次創作の主人公に多いのって隙がなく最強でクールで近よりがたい主人公が活躍する作品が多いと思うんだ。だから、逆に多少強くても子どもっぽく親近感のわく主人公にしようって考えたんだ」

 

新太「その結果が僕ってこと?」

 

礼賛「そういうこと。別に最強の主人公の作品を否定するわけじゃない。面白いとも思うし。でも、その逆の作品もあっていいかなって………」

 

中村「へー、低脳作者にしては頑張ったわね」

 

礼賛「おい!!…………まあいい。次はバロンの話だな。この話は主に原作でほとんど絡みのない速水と倉橋を絡まらせたかったために作った話だ」

 

新太「なんで僕は猫を飼うことになったの?」

 

礼賛「僕が単に猫が好きだから。何の伏線もない。」

 

倉橋「新太がひとり暮らしの理由は?」

 

礼賛「単に打ち上げの話を作りやすくしたかったため」

 

速水「要は単にってだけで作られた話ね」

 

礼賛「はい、そういうことです。すみません。」

 

中村「次は私たちの話だよね」

 

礼賛「この話は最初、不破との絡みから中村と岡島のゲスラインとの絡み、原と同じスポーツ系の杉野との絡みを目的とした話」

 

不破「なんでこの5人なわけ?」

 

礼賛「これも後の話で操作しやすいからかな?あとは新太がキレる導火線となるにはゲスの2人が必要だったってところだな」

 

中村「なんかの伏線でしょ?」

 

礼賛「中村さん、よくお分かりで。新太をキレさせたのは後の伏線のためが大きいかな」

 

新太「どんな伏線?」

 

礼賛「それを言ったらダメだろ。まあ、一言言うなれば人格って言葉を出しておこう。ちなみにこれは紹介には載ってない情報だな」

 

原「二重人格?」

 

礼賛「どうかな?……………そんでもってこの話からつながったのは懇親会の話。ここでは、一見気丈にふるまう新太の弱さを出すお話となっている」

 

渚「家族のことだね」

 

礼賛「そうだな。ここでも伏線の回収と貼るということを同時に行っている」

 

杉野「どこかにそんな描写あったか?」

 

新太「たぶん、ひとり暮らしの理由が回収部分かな」

 

片岡「貼ったのは新太君の両親が暗殺されたってところだよね」

 

礼賛「お二方、なかなかに鋭い!その通りです!あと、伏線はA組の話でも貼ってあるんだよね」

 

岡野「結構伏線操作多いね」

 

前原「こんなに伏線作っておいて……」

 

磯貝「全部回収出来るのか?」

 

礼賛「善処します。そして、この話では伏線を気にしすぎてE組同士の絡みが少なかった気がします」

 

倉橋「確かにあんまり話してないよね」

 

速水「空気になってる人がいた」

 

礼賛「ご、ごめんなさい。渚君にはもっと話してもらうつもりだった」

 

新太「でも、なぎくん基本的に心の中での会話が多いもんね」

 

渚(そうかな……?)

 

不破「そういえば、最後に出てきてたACEって探偵はどんな立場?」

 

礼賛「ACEは結構重要な役割を持つオリキャラだね。元ネタは『DEATH NOTE』のLなんだけど大食感だったりとだいぶイメージからかけ離すつもり」

 

磯貝「何時頃から出てくるんだ?」

 

礼賛「自爆テロの後に来させるつもりだから、時系列的には杉野の暗殺の後くらいかな」

 

杉野「俺の話はなしってことか?」

 

礼賛「そうだね。基本的に原作と変わりそうにない話は割愛していこうと思うからね。気分次第ではやるかもだけど」

 

原「なんて気まぐれな……」

 

礼賛「ちなみに彼のカップルは後に募集させていただきます。さて、反省会はこれくらいにしようか」

 

渚(反省会というより、各話の説明のような……)

 

岡野「最新話の説明はやらないの?」

 

礼賛「最新話は単に触りの部分だからなんも言うことないね。だから、裏話もない」

 

速水「単に思いつかなかっただけじゃ…」

 

礼賛「さあ、今回はこれにて「楽屋の時間 1」は終幕とさせていただきます!読んでくださっている皆様、これからもよろしくお願いします!」

 

新太「感想·評価待ってまーす!」




どうでしたか?
なかなかのグダグダにゴチャゴチャでしたね
今回はこのような話を作りましたが次はしっかり番外編作ります
………多分


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

特別編 懺悔の時間

今回は主に謝罪と今後の報告です。
新太のキャラ崩壊が激しいです。
登場キャラは礼賛、新太、天津、渚、茅野、不破、竹林でお送りします。


新太「さて、諸君。お集まり頂いたのはどういう事かお分かりであろう。」

 

渚「あれ?新太君、キャラは…」

 

新太「今はそんなの問題じゃない。今、問題なのは………こいつ(礼賛)が1年以上放棄したことだ!」

 

天津「確かにそれは問題ですね。人として。」

 

新太「さあ、どう落とし前つけてくれようか?」

 

礼賛「ま、待て!落ち着いて聞いてくれ!!」

 

天津「何ですか、命乞いですか?」

 

不破「命乞いってワード、リアルで初めて聞いたよ」

 

竹林「とりあえず、言い分を聞こうじゃないか。」

 

礼賛「まず、現実が忙しかったのはホントだ。実習やら就活やら大変で今も続いてるんだ。」

 

茅野「それは活動報告とかでしばらく休むって言えたのじゃないの?」

 

礼賛「……………………てた」

 

新太「なにぃ、聞こえないぃ!もっかい!」

 

渚「新太君のキャラ崩壊が尋常じゃないね。」

 

茅野「仕方ないよ。それだけのことしたんだから。」

 

不破「ほんの僅かな読者を生殺しにしてたわけだからね。」

 

礼賛「忘れておりました!!」

 

竹林「どうしようもないクズだね。」

 

天津「それでは、読者に一言。」

 

礼賛「1年間以上、放棄して誠にすみませんでした!!!」

 

天津「はい、ちゃんと謝罪出来たのでそのご褒美としておしおきタイムです。」

 

不破「天津君の淡々とした進め方、好きだわー。」

 

礼賛「待って!ちゃんと謝ったじゃん!」

 

新太「謝るだけですむなら警察は要らないよ?」

 

茅野「ホントに珍しくカンカンだね。」

 

天津「というわけで、礼賛のためにスペシャルなおしおきを…」

 

新太「ご用意しました!」

 

礼賛「やめろおおおお!!!」

 

 

《礼賛がクロに決まりました。おしおきを開始します。》

 

礼賛専用おしおき~地獄の焼き土下座~

 

 

不破「…………これ、完全にカイジやん。」

 

礼賛「熱い熱い!これマジで死ぬって!!」

 

新太「ほら〜、喋ってないでおでこしっかり鉄板にくっつけて〜。」

 

天津「まだですね〜、顔面まで行っちゃいましょう。」

 

渚「鬼か、君たちは。」

 

竹林「今回ばかりは奴が悪い。同情する余地もない。」

 

茅野「そこまでしなくても…」

 

天津「ここまでしないとまた同じことしますよ。」

 

新太「そうそう、あくまで抑止力なんだから。……………どうする?上から重りかなんか乗せる?」

 

天津「いや、鉄板に油敷きましょう。」

 

渚「そして、まだペナルティを加えようとするこの畜生ぶり。逆に清々しくなるよ。」

 

新太「そうだ!礼賛はこのままおしおき中だから僕から話を出すね。ヒロインの件についてはハーレムっていうか基本ヒロインを誰にするわけでもなく、あくまで友人としてのやり取りをしていくって感じだってさ。」

 

竹林「あれだけ騒がせといて結局それか。」

 

新太「でも、天津君と誰かはくっつけるみたいなこと話してたよ!もう誰かは決まってるみたいだよ!」

 

天津「私とですか。あまり実感がわきませんね。」

 

新太「それと、もう1人か2人オリキャラ出すみたいだよ!男か女かは別として。」

 

竹林「男の娘って可能性も…」

 

不破「渚君がいるからそれはないと思うけど…」

 

渚「え…」

 

新太「あと、VS天津君の後はカルマパートらしいけどこれは原作よりギャグになりそうだとのこと。」

 

茅野「へぇ、どんなのだろう…。」

 

天津「聞くところ、新太君が暴走するとのこと。」

 

新太「じゃあ、今回は謝罪と報告と予告ってことで!みなさん、これからも『みんなの笑顔~日ノ丸新太の日常~』をよろしくお願いします!」




というわけでこれからも亀更新になると思いますが今後ともよろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

~3月編~
はじまりは元気良く! by雪村あぐり


あらすじにも書いた通りこの物語は雪村あぐりのいる3月からの話です
しばらくは殺せんせー出てきません
視点は基本的に第三者視点で進めていきます
場合によっては個人視点にもなります
そのときは「Side〇〇」と表記します
それでは、拙い文章ですがよろしくお願いします!


「皆さん、はじめまして。E組の担任の雪村あぐりと言います。みんな、よろしくね!」

 

E組…通称エンドのE組と言われ、ここ椚ヶ丘中学の成績不振や素行不良などを理由に隔離されているクラスである

本校舎からはクズ扱いされ、あらゆる面での優先度も低いこの学校の最底辺である

そのE組の担任…雪村あぐりは笑顔で元気良くE組の生徒に語りかけるがほとんどは俯いたままである

数人は「よろしくお願いします…」と小さい声で答える

クラスの雰囲気は暗いままだった

1人だけを除いて…

 

「雪村先生!よろしくお願いします!」

 

雪村あぐりより大きく元気な声がE組のクラスに響いた

クラス全体が彼に視線を向ける

そこにいたのは身長154cmという低身長、飛び級してきたのかと勘違いするような容姿、変声期を迎えていない高い声の持ち主がそこにいた

そんな彼の名前は…

 

「えーと、君は確か…」

 

「日ノ丸新太です!身長154cm、体重45kgと最近の発育の良い現代っ子に比べたら少し小柄な14歳です!」

 

と満面の笑みでツッコミどころ満載の自己紹介を放つ

そして、クラスは暗い雰囲気から異様な雰囲気へと変わった

「お、おう…」や「よ、よろしく…」という戸惑いがクラスを包んでいた

そんな中だが雪村あぐりは…

 

「日ノ丸くん、1年間よろしくね」

 

何事もないかのように笑顔で受け答えをした

その様子を見て、新太は引き続き満面の笑みで…

 

「はい!」

 

先程と同じような元気な声で返事をする

 

「ふん、お利口さんしやがって…」

 

寺坂が嫌味ったらしく愚痴を漏らす

吉田と村松も続くようにして嫌な笑いをする

しかし、新太は笑顔を崩すことがなかった

この一連のやり取りを見たE組のみんなの新太に対する第一印象は…………不思議な奴

そんな不思議な奴がこのE組を変えていくことになるとはこの時誰も知らなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《キャラ紹介》

日ノ丸 新太(ひのまる あらた)

身長:154cm

体重:45kg

誕生日:5月5日(子どもの日)

血液型:AB型

好きな教科:国語

嫌いな教科:数学

趣味·特技:人の笑顔を見ること、動物をかわいがること、バスケ、食い歩き

部活(過去):バスケ部

宝物:両親が買ってくれたリストバンドとヘッドバンド

好きな食べ物:甘いもの全般

弁当or買い食い:弁当

選挙ポスター:みんなの笑顔が、僕の原動力

 

 

絵に書いたような子どもみたいな容姿と高い声の持ち主

姿だけでなく考え方なども子どもっぽい面がある

人や動物と関わること大好きで人の笑顔を見ることや動物とたわむれることを生きがいとしている

子どもみたいな1面を持ちつつ、自分なりの信念や考え方を大切にし、一貫しようとする芯の強さがある

いろんなことへの興味·関心が強く、その探究心や負けず嫌いなところは人一倍強い

本校舎時代はA組に在席していてバスケ部のエースとして活躍していた

とある理由によりE組に落とされる




次回は雪村先生との会話の回です
E組の人とも絡ませていきたい
………出来れば


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

見据えるのは今じゃなくて未来 By磯貝悠馬

今回は磯貝、片岡、岡野、前原との絡みです
視点は第三者視点で書いています


E組が始まった次の日のこと

 

「雪村先生、おはよーございます!!」

 

「日ノ丸くん、おはよう!」

 

隔離校舎に向かう山道の途中

新太は昨日と同じように雪村先生に元気良く挨拶をする

今日も彼は平常運転だ

 

「雪村先生、疲れるから荷物持つよー!」

 

「いや、いいわよ。そこまでしなくても…」

 

「僕が持ちたいのー!」

 

そう言って半ば強引に雪村先生から荷物を奪い取る形で荷物を持って山道を登る

このE組へと向かう山道は坂になっていて登るだけでもしんどいはずではあるが彼はそんなこと関係なしに雪村先生の横でルンルンとスキップしながら登っていく

 

「そういえば、聞いてよ雪村先生!昨日さ、捨て猫拾ったんだけどさ…。その猫人懐っこくてめっちゃかわいいんだよ!ミルクあげたら頬スリスリしてくるんだよ!」

 

「それはかわいいわね!今度見に行ってもいいかしら?」

 

「もちろん!」

 

新太の顔がパアァ…と明るくなる

この後のこの2人の話は猫の話題で持ちきりだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みんなー、おはよー!」

 

新太が教室のドアを開けて大きく挨拶をするが誰も返してはくれなかった

昨日と同じ暗い雰囲気であった

新太はそんなことお構い無しにニコニコ笑顔で自分の席へと座る

そして、鼻歌をしながら『魔人探偵脳噛ネウロ』を読み出した

連載が終わって随分古いマンガだが誰がみても鼻歌を歌いながら楽しそうに読んでいた

 

「こっちに来ても堂々とマンガ鑑賞かよ」

 

「さすが、元A組はデキが違いますなぁ…」

 

吉田と村松の皮肉めいた発言は新太には届かなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は変わって放課後

授業自体は新太が元気良く発言したり雪村先生に抱きついたりとさほど変わったことがないので割愛しよう

磯貝と片岡は学級委員の仕事で他のみんなが帰っていく中帰らずに残っていた

彼らはクラスの推薦により、学級委員に抜擢されたが彼らから目に光を感じられない

彼らもまたE組の劣等感を抱えている人である

 

「全く…。なんで私たちがこんな仕事を…」

 

「仕方ないさ。クラスの推薦なんだから」

 

「ハァ…」とため息つきながら片岡は手を動かす

彼らは今、クラスの時間割表を作成している

これまでに名簿作成、座席表作成、更衣室の整理などいろんな仕事を任され、時間割表作成で最後だ

 

「それにしても、なんで日ノ丸は学級委員に立候補しなかったんだ。あいつが1番やりたがると思ったんだけど」

 

磯貝がふと新太に対して疑問に感じて手を止めた

新太は何でもやりたがる性格だ

それは昨日今日の授業から磯貝は分かっていた

数学の演習の解答、国語の教科書の朗読など自分から進んでやっていた

学級委員も新太が立候補してもおかしくないと思ってたが、学級委員だけはみんなと同じく磯貝と片岡の2人を推薦していた

磯貝は新太が学級委員になぜ立候補しなかったのか疑問に感じていた

 

「さあ……。元A組の考えることなんて分からないわ」

 

片岡はそっけなく答える

磯貝は「そうだな…」と小さく言うと止めていた作業を再開する

それから2人は黙々と時間割表を作っていく

そして、10分後………

 

「ふぅ、やっと出来た」

 

E組の時間割表が完成した

2人は仕事を終えた少しばかりの達成感にひたっていた

 

「さて、職員室に持っていきましょう」

 

片岡はそう言うと立ち上がる

磯貝もすぐに立ち上がる

今日作った名簿、座席表、時間割表等のものを職員室に出しに行かなければならない

2人は必要なものを持つと教室から出て、職員室に向かおうと廊下に出た

そこで2人はあるところに目が止まった

彼らが見ているのは職員室ではなく、その奥…廊下のつきあたりのところである

そこには2人の生徒がいた

前原と岡野である

この2人は学級委員の2人の手伝いをしてくれた者である

先程帰ったと思ったがなぜまだ校舎に…

磯貝と片岡は同じ疑問を持っていた

 

「おーい、前原、岡野。どうしたんだよ?」

 

磯貝は2人の名前を呼びながら片岡とともに駆け寄る

2人の口はあんぐりと開いたままだった

片岡が「どうしたの?」と質問する

 

「あれ、見てみろよ……」

 

ザシュ……

前原の声とともに聞こえてきた謎の音

彼の指を指す方向を見てみるとバスケットゴールがあった

さっきの音はボールがネットをくぐった音なのだと磯貝と片岡は納得する

そのボールを打った人物は……

 

「日ノ丸…?そうか!あいつバスケ部だったな!」

 

磯貝は日ノ丸の姿を見て思い出すようにして言う

新太は磯貝、前原、片岡、岡野の4人に気づくことなく黙々とシュートを打ち続ける

そして、何時もの彼とは違った雰囲気を感じていた

 

「30本目……」

 

岡野がボソッと呟く

そのことに対して片岡が「何が?」と聞く

 

「あいつ、さっきから30本同じアーチ、同じ入り方で入れてる」

 

「え……………」

 

岡野の言葉に磯貝と片岡の2人は目を見開いて驚く

それに続くようにして前原が言葉をつなげる

 

「俺らも最初は面白半分で見てたんだ。けどよ、見てるうちに……なんか…………鳥肌立っちまった。俺はサッカー部だったからさ、なんとなくシュートの入る入らないとか感覚で分かるんだよ。でも、あいつのシュートは…………ボールを指先から離れた瞬間、ボールの軌道が見えるんだよ……。感覚とかそういう問題じゃない。はっきりと見えるんだ、ボールの軌道が。入るか入らないかが打った瞬間分かるんだよ…」

 

前原がそう言っている間にも新太は3本もシュートを決めている

そのフォームも素人目から見ても分かるほどに綺麗かつ洗練されていた

彼のシュートはもはや芸術の域である

4人はそう感じていた

 

「どうしたの……?」

 

「雪村先生………」

 

突然、声をかけられ後ろを振り向くと雪村先生の姿があった

雪村先生は窓の外でシュートを打っている新太の姿を見てニッコリしていた

 

「日ノ丸くん、今日もシュート打ってるのね」

 

「今日も……?」

 

雪村先生の「今日も」という言葉に引っかかった磯貝は聞き返す

 

「日ノ丸くん、昨日もシュート打ってたのよ、500本も。今日は1000本やるって言ってたわね」

 

「1000………!?」

 

その予想外の数に4人は目を見開く

あのシュートを1000本も打つのか

そんなに打つと思うとゾッとした

 

「でも、どうしてそんなに……」

 

「僕には身長っていう才能がないからだよ」

 

今度は窓の外から声がしたのでそこを見るとひょこっと顔を出している新太がいた

 

「バスケはね…、身長のスポーツ、背の高い人が勝つ競技だよ。それでも、僕はバスケが好きなんだ。バッシュから出るスキール音、ボールがネットをくぐる音、観客の歓声……どれも僕は好きなんだ。だから、バスケは好きだし好きなもので負けたくないしその背の高い人に勝つためには身長以外で勝負しなくちゃいけないんだ」

 

新太はバスケに対してそう語る

その雰囲気はいつもの幼い雰囲気ではなく、どこか大人っぽい雰囲気だった

 

「それでも、ここでは部活は禁止なんだよ!こんなことしても……………意味無いでしょ!」

 

岡野が目に涙を浮かばせながらそう叫ぶ

岡野の言葉を聞いて他の3人も暗い雰囲気で俯く

彼女もまた部活に力を入れていた人間で成績不振のため、このE組に来させられたのだ

その悲痛な叫びを聞いて、新太はにっこりと笑って答える

 

「確かに今は意味は無いね。でも、だからって好きなものを辞めたくない。心から好きなものをE組に来たからって、部活できないからって諦めたくない。今は羽ばたけなくても未来の自分が羽ばたければそれでいいと思う。それまでに何百、何千の挫折はするよ。それでも、そのたった1度羽ばたくために僕は頑張りたい。「大器晩成」……………………………それじゃダメかな?」

 

新太はまっすぐ岡野たちを見てそう言った

最後の方は照れくさそうに頬を指でかきながら話していた

それを聞いた岡野たちはさっきの暗い雰囲気とは違って表情に明るみを帯びていた

自分の好きなことに肩書きや世間の意見なんて関係ない

どうやら、4人ともそのことに気づいたようだ

 

「あんたって、元A組でヘラヘラしてるから私は嫌いだった」

 

片岡があからさまに嫌な表情をして話すと新太は「えぇーー!!」と文句言いたげな声をあげる

しかし、片岡はその後「フフッ」と小さく笑い言葉をつけ足す

 

「でも、そんなことなかったわ。むしろ、私たちよりしっかりした考えがあったわ。こんな小さくても頑張ってる子がいるのに私たち、バカみたいね。ごめんね、日ノ丸くん」

 

その言葉を聞いて新太はパアァといつもの満面の笑みになる

 

「ホントだよな。どんなちゃらんぽらんな奴かと思ったけどなぁ」

 

「前原くんに言われたくない」

 

「なんだと!!?」

 

その前原と新太のやりとりを見て、この場にいる6人から笑いが起きる

昨日今日では出ることのなかった心からの笑いである

 

「そうだ!せっかく6人いることだし、3on3やろうよ!」

 

新太の提案に磯貝、前原、片岡、岡野の4人が快く受け入れる

 

「え、でも新太入れて5人じゃない?」

 

「雪村先生も含めたら6人でしょ?」

 

新太のその言葉に雪村先生は「え、私も?」みたいな顔をする

 

「ご、ごめんね。私はちょっ……」

 

「よーし、みんなやろうー!」

 

新太のそのかけ声とともに雪村先生は磯貝たち4人によって連行されていった

この後、雪村先生を含めた6人で夕方まで3on3をしていた

 

 

 

 

 

 

ーー日ノ丸新太は太陽である。

暗い気を晴れやかにしてくれる。ーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《NG集 1》

前原「入るか入らないか打った瞬間分かるんだよ」

 

岡野「え、じゃああれはどう?」

 

前原「あれも入る」

 

ゴンッ

 

磯貝「…………………………………次のはどうだ?」

 

前原「これは………入る」

 

ゴンッ

 

片岡「…………………………………………………………………次は?」

 

前原「………入る」

 

ゴンッ

 

前原「てめ、なんで俺が予想してる時だけ外してんだよ!!!」

 

磯貝「前原落ち着け!今回は見栄張ったお前が悪い!!」

 

前原「そもそも、話につっこんできた岡野も問題だろ!!」

 

岡野「はぁ!?なんで私が悪いのよ!!」

 

片岡「2人とも落ち着いて!これNG集だから!!」

 

新太(なんか、楽しそう……)




なんか、絡みという絡みがなかった気が………
ちなみに毎回、NG集はつけていきます
さて、ヒロイン誰にしよう…………?
誤字脱字、ヒロイン希望、コラボしたいなどありましたら感想の方でお伝えください

新太「露骨なコメント稼ぎー!」

うるさい!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ネコが好きな人に悪い人はいない! by倉橋陽菜乃

今回は速水と倉橋の絡み回にしてみました
視点は第三者と新太視点です
個人視点に挑戦してみました
どっちがいいか感想もらえたら嬉しいです


今日は土曜日

中学生の新太たちにとって休日である

春を迎える3月で少し肌寒さが残るこの時期

新太はある場所を目指して歩いていた

 

「バロン、今日はペットショップに行こうね」

 

そう言ってカバンの中にいる猫…バロンの頭をなでなでする

この猫は以前、捨てられていたところを新太が拾った猫である

まだ 子猫で垂れ耳が特徴的な人懐っこい猫である

新太の今日の目的はバロンを買う上で必要なものの購入とワクチン接種である

そのため、隣町の動物病院まで来ていた

 

「ここだね」

 

新太はようやく動物病院に着くことが出来た

電車には猫を乗せることが出来ないため、歩いてくる必要があった

持ち運びのケージがあればなんとかなったかもしれないが新太は初めて猫を買うので持っているはずもない

というわけで30分歩いて動物病院まで来たのだ

中は清潔感を保ちつつ、明るい感じの院内だった

新太はバロンのワクチン接種の手続きをすぐに済ませる

しかし、今日は予約が混んでいて、夕方までかかるという

そこで、新太はバロンを1度動物病院に預けて病院を出る

次に新太が向かったところはペットショップである

ここでバロンを飼う際に必要なものを購入するつもりだ

中は開放感あふれていて、ペットにとってもお客さんにとっても快適な空間となっていた

新太は購入前に売られている犬や猫、ハムスターなどを見に行く

これが彼の日課である

ペットショップの動物を眺めることが癒しの1つとなっていた

 

 

 

 

 

 

 

Side新太

 

僕が見つめる先にはどこかで見たことのある人がいた

茶髪のセミロング………

あ、速水さんだ!

「速水さんもペット買ってるのかな?」と思いつつ駆け寄ろうとする

でも、そこで見たものは猫に対してめっちゃいい笑顔でなでなでしている速水さん…

最初見たとき、目つきが鋭く怖いけど顔が整っているから美人系の人かなと思ってた

クラスで見ていてもおとなしいというかクールだからクールビューティっていうのかな…

どことなくそう考えてたからそんな人が猫相手にデレデレなのは意外だなぁ

 

「速水さーん!」

 

「ひゃい!?」

 

速水さんに駆け寄って名前を呼ぶと変な声が出てた

ひゃいってなに?

おもしろーい!

 

「あんた………日ノ丸?」

 

「そー!にゃははは!!」

 

速水さんは顔を真っ赤にして僕の方を向く

なんでこんな顔が赤いのかな?

聞いてみようかな…

 

「ねーねー、なんでそんなに顔赤いのー?」

 

「……………バカ」

 

さらに顔を赤くさせてなぜかバカ呼ばわりされた

いきなりバカってなんだよ!?

バカって言ったヤツがバカなんだよ

 

「ダメだよー、凛香ちゃんはツンデレなんだからー」

 

そう聞こえ後ろを振り向くと倉橋さんの姿があった

 

「やっほー、日ノ丸くん、凛香ちゃん」

 

「やっほー、倉橋さん」

 

倉橋さんの挨拶に合わせて僕も挨拶をする

倉橋さんはなんとなく僕と雰囲気が似ている気がする

 

「倉橋さんは何しに来たの?」

 

「うーんとね、今日は猫とか犬とふれあいに来たの。よく来るんだここ。日ノ丸くんは?」

 

「僕は最近拾った猫を飼うために必要なものを買いにきたよ。その猫は今はワクチン接種のために動物病院預けてあるけど」

 

お互いに目的を確認し、僕の目的を話すと倉橋さんは目を輝かせて聞いてきた

 

「へぇー、どんな猫?」

 

「白とオレンジ色の垂れ耳が特徴的な子猫なんだけど人懐っこくてすっごくかわいいんだよ!名前はバロンっていうんだ」

 

「えー、見てみたいなー!」

 

「待ってもらえば見せてあげるよー」

 

「本当!?」

 

倉橋さんの表情からワクワクしているのが見てとれる

倉橋さんも生き物が好きなのかな?

速水さんも猫好きみたいだし、聞いてみるかな

 

「速水さんもどう?」

 

「私は別に…」

 

「あーあ、もったいないなぁ。バロンは人懐っこいからすぐにじゃれついてくるのに…。頬ずりしても嫌がらないしなでなでしたら頬すりすりしてくるのがすっごくかわいいのに…」

 

「し、仕方ないね。そこまで言うなら行ってあげる」

 

速水さんって意外とチョロいんだね……

なんか………意外…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side第三者

 

それから新太、倉橋、速水の3人はペットショップでペットと戯れたりバロンのための必要なものを飼うのを手伝ったり3人でランチを食べたりと楽しい時間を過ごした

3人とも猫が好きなこともあって会話が尽きることはなかった

そして、3人は動物病院へと向かっていた

その3人の姿は弟(新太)、妹(倉橋)を連れているお姉ちゃん(速水)という構図であった

 

「2人とも、今日はありがとう!猫飼うの初めてだから色々分からないことがあったから良かったよ!」

 

「ううん、気にしないでいいよ。バロンにはちゃんとした環境で育ってほしいしさ」

 

「私はほとんど何もしてないけど」

 

速水の発言に新太は「そんなことないよ」とやんわりと言う

 

「でも、意外だなー。元A組って聞いたから傲慢な人かと思ってたけど…」

 

「話しやすいね。意外と」

 

「まあ、僕はA組の中でも異端者扱いだったけどね。デキが良いとか悪いとかそんなことで人を決めたくないし。だから、A組の人たちが言ってることが分からなかったなー」

 

新太の話を聞いて2人は「ふーん…」と小さく言う

 

「じゃあ、あらちゃんがE組来たのってそういうのが嫌だったから?」

 

「ううん、そんなんじゃないよ。そんなんじゃ……」

 

そう話す新太の顔は笑顔ではなく何時もより少し暗くなっていた

さっきまで明るかった場の空気が少し気まずくなった

 

「そ、それより、あらちゃんってなに?」

 

新太は自分が作ってしまった気まずい空気を変えるために話題を変える

その話題に倉橋は笑顔で答える

 

「新太だからあらちゃん。ダメかな?」

 

倉橋は手元をもじもじさせながら上目遣いで聞いてくる

容姿が容姿だけあってその動作はすごくあざとく、普通の男子ならおとせるだろう

しかし、相手はあの新太

そんな素振りや感じることが一切なく……

 

「全然いいよ。じゃあ、僕も倉ちゃんって呼ぶね」

 

「いいよー」

 

新太と倉橋はお互い笑顔で答える

やはり、この2人は雰囲気がどことなく似ている

新太はしばらく置き去りにされていた速水にも話をふる

 

「じゃあ、速水さんは………凛ちゃんでいい?」

 

「却下」

 

「えーなんでー?かわいいよー!」

 

新太の提案を間髪入れずに否定する速水

それに抗議をとなえる倉橋

しかし、新太は昼間のやりとりで速水の扱い方を理解していた

 

「じゃあ、バロン見せないよー?」

 

「…………凛ちゃんでいい」

 

「で?」

 

「凛ちゃんがいい」

 

速水が顔を赤くして言う

新太は速水がどうして顔を赤くしたのか理解していなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は新太の家

動物病院でバロンを回収して戻ってきたのである

 

「そういえば、日ノ丸の親は?」

 

速水が新太の家に誰もいないことが気になって聞いてみる

新太の答えは速水が想像だにしてなかったものだった

 

「僕、ひとり暮らしだから…」

 

そう言う新太の顔は少し寂しそうだった

速水はすぐに「ごめん」と言う

それに対して新太は「別にいいよ」といつもの笑顔で答える

 

「バロン、おうち帰ってきたよー」

 

新太は持ち運びのケージを開く

すると、その中からオレンジ色と白色の垂れ耳の猫が元気良くぴょんと出てくる

バロンは辺りを見回して新太を見るとすぐに新太のところへ来ると足にスリスリしてくる

 

「ホントだー!かわいいー!」

 

倉橋は目を輝かせてバロンを見る

新太はそれを見てバロンを両手で持ち上げる

 

「倉ちゃん、バロン持ってみる?」

 

「え、いいの?ありがとう!」

 

新太は倉橋にバロンを渡す

倉橋は自分の腕の中にバロンを収めると頭を撫でる

バロンは気持ちよさそうに「ミィ」となく

 

「あはは、かわいいー!」

 

倉橋はバロンとひたすらじゃれあっていた

それを速水は羨ましそうに眺めていた

 

「凛香ちゃんもどう?」

 

「………ありがとう」

 

速水は倉橋からバロンを受けとると喉の方を撫ではじめた

すると、バロンは「ミィ」と小さく鳴き穏やかな表情をしていた

 

「……………かわいい」

 

速水は小さく言う

その顔は昼間の時みたいな笑顔ではないものの微笑んでいた

ここでふと新太は疑問に思ったことがある

 

「凛ちゃん、昼間の話でペット買ってないって言ってたけど何しにペットショップにいたの?」

 

その問いに速水は呟くようにして答える

 

「……………よく親と喧嘩するから、癒されによく行く」

 

速水は辛そうにそう話す

倉橋は速水が親との仲が悪いことを知っていたようで「なるほど」と納得していた

新太はそのことを聞いて笑顔で速水に言う

 

「辛くなったら、いつでもここに来ていいよ」

 

「え…?」

 

「僕は数年前に親を亡くしてるし、親と喧嘩したことないから凛ちゃんの気持ちを分かってあげることはできないかもしれない。でも、気持ちを楽にすることならできるよ。ただ愚痴るだけでもいいし、相談してくれてもいい。自分の気持ちを外に出すだけでも随分楽になると思うよ。我慢してても辛いだけ。………それだけは僕が1番理解しているつもりだよ。だからさ、辛いときはいつでも来てよ。バロンも喜ぶし、僕も嬉しいからさ!そうしたら、癒されて気も楽になる……一石二鳥だよ!」

 

新太は満面の笑みで速水に話す

速水は急な展開であたふたしている

しばらくして、考えがまとまったのか落ち着きを取り戻した

 

「………そうしても、いい?」

 

「いいよ!やったー!」

 

速水の返事に新太は目を輝かせて飛び跳ねる

誰からみても嬉しそうだった

 

「私も来ていい?」

 

「もちろん、倉ちゃんもいいよ!」

 

新太の返事に倉橋は先程の新太と同じように飛び跳ねた

バロンが架け橋となって3人は友達になっていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー新太はお人好し。

困っている人、辛そうな人は放っておけないーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《裏話 1》

 

これはランチの時間の話である

 

倉橋「んー、おいしかった!」

 

速水「そうだね」

 

新太「ふー、ふー、ふー…」

 

倉橋「新太くん、食べるの遅くない?」

 

新太「僕、かなりの猫舌なんだよ。鉄板焼きが熱すぎて食べれない」

 

速水「………なんで、鉄板焼き頼んだのよ。さっきから全く進んでないじゃない」

 

 

新太の生態① 極度な猫舌

 

 

それから鉄板焼き食べ終わるまで1時間はかかったという

これから友達と来た時は熱いものは食べないと誓った新太であった

 




次回は不破、中村、原、岡島との絡みを書きましょうかな?
変更になる場合がありますが多分この4人になると思います
岡島は新太にとってのいじられキャラ(オモチャ)決定です
あ、渚も出したいなぁ

追記
今回はNG集ではなく、裏話を入れてみました
どちらが良いですか?
またご意見下さい


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

マンガ…それは人類が生み出した奇跡 by不破優月

登場キャラ多いと空気にならないようにするのはすごく難しい
そう考えると『暗殺教室』ってホントにすごい漫画だと思う今日この頃
今回は新太視点からの第三者視点です


Side新太

 

今日は月曜日

それは週明けといわれ、みんなにとっては夏休み最終日や連休最終日の次に憂鬱となる日

しかし、そんな月曜日だけど僕は日課としていることがある

その日課をこなすためにとある場所に来ていた

 

「いらっしゃいませー!」

 

店員さんの元気の良い挨拶がまだ目覚めきっていない僕の頭へと響く

僕は今、コンビニに来ている

そして、すぐさま雑誌コーナーへと歩いていく

月曜日、コンビニ、雑誌…

この単語でたいていの人はお分かりいただけたであろう

ジャンプを買いに来たのだ

ジャンプを買って登校…

それが僕の日課となっていた

雑誌コーナーには目当てのジャンプが運良く一冊だけ残っていた

 

「ラッキー!」

 

そう言ってジャンプに手を伸ばす

その時、僕と横から出てきた誰かの手が重なった

そろりと横を見ると、僕と同じ椚ヶ丘中の制服に身を包みボブカットが特徴的な女子だった

それは……

 

「不破さん?/日ノ丸くん?」

 

さきほど手が重なったようにして声も重なる

これが週明けの日のちょっとした出来事だ

 

 

 

 

 

 

 

 

Side第三者

「へえー、日ノ丸くんもジャンプ読むんだね。意外だなー」

 

「そりゃあ、僕だってジャンプは読むよ」

 

不破の発言に新太は不満そうに頬を膨らます

あの後新太は結局ジャンプは見せてもらうことを条件として不破に譲ったのだった

 

「いやー、ごめんごめん。A組だったからてっきりこういうものは読まないのかと思った」

 

不破は最後に「てへへ」と付け加える

その発言に新太はさらにプクッと頬を膨らます

 

「A組とか関係ない!!読みたいもんは読みたいんだい!!」

 

新太は不破をポカポカと叩きながら叫ぶ

不破は「ごめんって」と謝る

それでも、新太の機嫌は治らない

そこで、不破は先ほどジャンプと一緒に買ったトッポをカバンから出す

 

「これひとつ上げるから許してよ」

 

不破はウィンクしながら言う

新太は目をキラキラと輝かせてトッポを見つめていた

 

「ありがとー!!」

 

新太はトッポを受け取るとすぐさま袋から1本取り出し口の中に入れる

その直後、「んー!!」と唸る

 

「やっぱりトッポは……」

 

「「最後までチョコたっぷり!!!」」

 

新太と不破は同時にお菓子のキャッチフレーズを叫ぶ

その後、2人はさっきので上がりきったテンションのままで登校するのだった

尾行している彼女に気づかずに……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

所変わって、E組の教室

新太は不破とマンガの話ですっかり意気投合してしまい、仲良く話していた

 

「最近始まった『僕のヒーローアカデミア』なんだけどさ…………」

 

「やっぱりそう思う!?さっすが新太くんだね!」

 

そんな会話をしている最中だった

突然、割り込んできた人がいた

 

「おーおー、仲睦まじいことで」

 

腕を背後に回し2人の肩を組んで割り込んできたのは中村だ

新太は「おはよー!」と元気良く挨拶していた

この子は基本どんな時もブレない

 

「朝からなに?中村さん」

 

「いやー、朝から良いものが手に入りましてなぁ〜」

 

そう言って中村はケータイを見せる

そこには、仲良く会話している不破と新太の写真があった

 

「もしかして、つきあってたりするの?」

 

「ち、違うよ!!」

 

「なんだと……」

 

ニヤニヤしながら聞いてくる中村に手を振って否定する不破

そして、中村の言葉に反応してやってきたのは岡島だった

その手には何故かカメラが握られていた

 

「つきあっているとは………どういうことだ!!!」

 

「だから、つきあってないって!」

 

鬼のような顔で質問する岡島

それに対して違うと言い続ける不破

それでも、ギャーギャーと騒ぎ出した岡島は周りの迷惑お構いなしに不破に問いつめつづけた

それを見ていた新太は……

 

「うるさい。ハゲ野郎」

 

その言葉にE組の全員に戦慄が走った

いつも笑顔ニコニコの新太が、冷たい表情で殺気剥き出しにして話したからだ

いつもとは違う……

………いや、感じたことのない殺気に場が呑まれていた

 

「…………ごめん」

 

岡島はただ一言そう言った

すると、新太は冷徹な様子から一転していつものニコニコ笑顔になっていた

 

「僕はヅッキーとつきあってないけど友達なんだよ!」

 

新太は「えへへ」と付け加える

その様子に周りは驚愕する

先程まで殺気を放っていた様子からいつもの朗らかな雰囲気に一瞬で変わったからだ

まるで先程までとは別人であるかのように…

 

「あ、ごめんね。ちょっと怒りすぎたね!」

 

唖然としているまわりの様子を見て、やっちゃったと言わんばかりに頭をかきながら謝る

しかし、E組には沈黙が続いていた

 

「いやー、凄いなぁ。さすが、バスケ部のエースだな。怒り方も尋常じゃないぜ」

 

沈黙を破ったのは杉野だった

彼は野球部で同じ運動系の部活に入っている

多少ではあるが新太に面識を持つ人物である

 

「でも、ちょっとやりすぎちゃった。ごめんね、杉ちゃん」

 

「あの、その呼び方やめてくんね?芸人じゃないし、俺そんなにワイルドじゃないし……」

 

「でも、野球はワイルドなスポーツでしょ?いいじゃん!」

 

「そうなんだけどさ……」

 

ハァと杉野は頭に手を当ててため息をつく

もう何回も言っているが新太自身は改めるつもりはない

今の会話で少し場の空気が変わり、いつもの朝の雰囲気になっていた

 

「ハァ………びっくりしたわー。全く、急に怒らないでよ」

 

「ごめんごめん。えっとー………」

 

「原よ。よろしくね」

 

「うん、僕は日ノ丸新太!なんかお母さんみたいだからオカンって呼ぶね!」

 

「全然いいわよ。はい、飴ちゃんあげる」

 

原はそう言って新太の頭をなでなでと撫でながら飴をあげる

新太は「えへへ、ありがとう」と言い、喜んでいた

 

「なんか…………ごめんね」

 

「なんで謝るの中村さん?悪いのはあのゴマ卵だよ」

 

「ゴマ卵!?それ俺の事!!?」

 

岡島は自分を指さして新太に問う

 

「うん、見た目そんな感じだから。もう煩悩と一緒にそのゴマとってキレイな卵にしたら?」

 

「ゴマって髪の毛のことか!!?それに、俺から煩悩とったら何も残らんぞ!!!」

 

「じゃあ、生ゴミの日に出してあげるから安心してよ」

 

「安心できないんですけど!!?」

 

「ちょっと岡島君、うるさいわよ!」

 

「なんで俺だけなんだよ!!」

 

教室に入ってきた片岡の注意に岡島は不服を申し立てる

片岡の姿を見るなり、新太は片岡の方に走り出す

 

「メグ姉、おはよー!」

 

「おはよう新太くん」

 

「あ、モンちゃんとタラちゃんに磯にいもいる!おはよー!」

 

「新太、おはよう…………ってその名前やめてって言ってるでしょ!!」

 

「タラちゃんって呼び方止めろ!!」

 

「おう、新太。おはよう。今日も元気だな」

 

片岡に続いて入ってきた岡野、前原、磯貝の3人にも挨拶をする

3人は新太の挨拶にそれぞれの反応を見せる

ちなみに、岡野がモンちゃん、前原がタラちゃん、磯貝が磯にいというあだ名を新太はつけている

 

「ほへー、不破ちゃんだけじゃないんだ」

 

不破とつきあってると勘違いした中村は新太の社交性に感心を抱いていた

そう考える中村にトテテテと新太が走ってくる

 

「ところで、中村さん。さっきの写真どこで撮ったの?」

 

新太により急に先程のツーショット写真へと話題が戻される

中村は冷や汗をダラダラ流して話す

 

「あー、さっきのね……。何処だっけなぁー…………」

 

中村はそう言って適当にごまかすと新太は「ふーん……」と言ってトテテテとまたどこかに走り出す

 

「倉ちゃん、凛ちゃん、おはよー!」

 

「おはよー、あらちゃん!」

 

「おはよー…」

 

今度は登校してきた倉橋と速水に声をかける

2人はそれに対ししっかり返事をする

そして、新太はまたトテテテと走り出し、不破のところへ行く

 

「ごめんね、話の途中なのに」

 

新太は両手を合わせて申し訳なさそうに言う

不破はそんな新太に羨望の眼差しを向けていた

 

「すごいね、新太くんは」

 

「なんで?」

 

「すぐにいろんな人と仲良くなっちゃうから。私なんて話題が偏ってるからそんなこと出来なくて…」

 

「きっとA組でも人気者だったんでしょうね」

 

不破の話に原は同意するように頷く

しかし、新太の答えはそんな彼女たちを裏切るものだった

 

「ううん、A組の皆からは嫌われてたよ」

 

その言葉に周りの全員が驚く

新太は子供っぽいが活発で行動力があり、話題の幅も広い

だからこそ、人気があると思っていたがそうではなかった

 

「何でだよ?」

 

杉野は皆の気持ちを代弁するかのようにして新太に聞く

すると、新太は「にしし」と笑い話し出した

 

「知らないけどなんか異端者って言われ続けたよ」

 

その言葉に周りはだいたいどういうことか察していた

新太はいろんなことへの興味や関心が強い

しかし、それがA組の思想とはかけ離れたものへとなり、彼は疎外されたのだと…

場は再び気まずい雰囲気が流れる

 

「だから、嬉しいんだ。E組のみんながこうして話してくれることに、関わりを持ってくれることに。A組は周りとの関係が勉強でしか繋がらないから、趣味の話を出すとバカにされたんだ。僕からしたら、A組は牢獄だったよ。でも、E組のみんなはこうして趣味の話をしたら楽しそうに話してくれるじゃん。そんな毎日がすごく楽しいんだ」

 

それを聞いた周りは新太を元A組のやつではなく、E組の仲間として見るようになった

彼も自分たちと同じ辛いものを抱えて、このE組にいるのだ

そう考えるだけで彼を、新太をすごいと思うようになった

 

「そーだ!今日、僕の家で遊ぼーよ!第1回E組懇親会的なもんで!」

 

この指とーまれと言わんばかりに人差し指を立てて言う

この提案に新太と遊びたい人、新太をさらに知りたい人、単純な興味を持った人が集まった

さて、第1回E組懇親会はどうなることやら………

 

 

 

ーー新太は人に迷惑をかけるのは嫌い。

それは自分であれ、他人であれ関係ないーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《裏話 2》

朝のジャンプを巡っての裏話

 

新太「貴様、E組だな?」

 

不破「お前が日ノ丸だな?よくも俺の仲間を……」

 

新太「ふん、今同じところに送ってやるよ。まさか、俺に勝つつもりじゃないだろうな?下級戦士の貴様とエリートの俺では圧倒的な差がある」

 

不破「どうだろうな……。下級戦士でも必死に努力すればエリートを超えることがあるかもよ」

 

新太「ふん、面白い冗談だ。いいだろう、格の違いを思い知らせてやる…………行くぞ!!!」

 

 

 

不破「……てな感じでジャンケンした」

 

中村「そこまでやって、ジャンケンなの!!?」

 

原「完全に闘う空気だったよ!!」

 

新太「闘ったら、コンビニに迷惑じゃん」

 

中村「そうだけどさ、そのくだりいる?」

 

不破「テンション上げるには不可欠だよね?」

 

新太「やっぱりそうだよね」

 

 

新太の生態② ノリが良い

 

 




次回は新太の過去が少し明らかに!
ヒロイン候補の募集はまだ続いています
ご意見感想お願いします!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

寂しさは孤独から来るもの by片岡メグ

今回で3月編最後です
それなのに空気になりがちなキャラが多いです
そして、最後にオリキャラがもう一人出てきます
視点は3人称です


「ただいまー」

 

新太は食材やらお菓子やらジュースを大量に買い込んで家に帰ってきた

バロンは新太が家に帰ってきたのを感知して玄関でお出迎えしていた

そして、おかえりと言うかのように「ミィ」と小さく鳴く

 

「ただいま、バロン。さみしかったよね。」

 

新太はバロンの顎を指で撫でながら言う

バロンはとても気持ちよさそうにしていた

 

「さてと、みんな来る前に準備しなくちゃ!」

 

そう言うと新太は台所に立ち、料理を作りはじめた

え、新太が料理作れるのかって…?

一応ひとり暮らしだからね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は変わって午後6時頃

そろそろみんなが来る時間だ

新太は「まだ来ないかなー」とワクワクしていた

すると、ピンポーンとインターホンがなる

「来たぁ」と言いながら玄関に駆け寄る

そして、ドアを開けると…

 

「おーっす、新太!」

 

「こんばんは、新太君」

 

「ひのっち、おつかれ!」

 

「おじゃまします」

 

「おー、タラちゃんとモンちゃんにメグ姉、磯にい。いらっしゃーい!」

 

最初に来たのは前原、岡野、片岡、磯貝のいつもの4人組だ

新太はぴょんぴょんとびはねて嬉しさを表現していた

 

「こっちで待っててね!」

 

新太は4人を客間へと案内する

案内すると再びインターホンがなる

新太は再び玄関まで走っていく

 

「おじゃまするよー、新太君」

 

「うわー、意外と広いね…」

 

「こんばんは」

 

「やっほー、あらちゃん!」

 

「…おじゃまします」

 

「よお、新太」

 

「邪魔するぜ」

 

「…………こんばんは」

 

上から中村、不破、原、倉橋、速水、杉野、岡島、渚の8人がやってきた

 

「おー、多いね!みんな、ありがとー!ごめん、こっちで待っててね!」

 

新太は8人を部屋へと案内する

先に来ていた4人と挨拶を交わす

 

「これで全員かな?ちょっと少ないけど……」

 

「まあ、最初だしこんなもんだろ」

 

前原はスマホをいじりながら話す

それを見ていた岡野はひょこっと前原のスマホを覗く

 

「うわ………また他校の女の子と連絡してるよ…」

 

「おま、勝手に覗くんじゃねぇよ!!」

 

岡野の行動を皮切りに2人は口論へと発展した

他のみんなは浮気のバレた夫婦喧嘩ってこんなのだろうなと密かに思っていた

 

「さすがタラちゃんだね!モテモテ〜!」

 

「だから、その名前やめろって!!」

 

2人の口論を微笑ましく見ていた新太の言葉にキレのあるツッコミを繰り出す前原

そのキレはアルゼンチンのメ〇シのドリブル並だった

サッカー部だった前原にそれを期待したいところだがナンパが趣味の彼には無理であろう

 

「あ、天津英樹だ!今度は映画主演だって!」

 

ケータイを見ていた倉橋が突然驚いたように叫ぶ

女子の殆どはその話題に関心を持ち、男子と不破は頭に?マークが出ていた

 

「天津英樹ってなに?」

 

渚の問いに倉橋が答える

 

「天津英樹っていうのはね、アクションも何でもこなす最近有名なイケメン俳優だよ!」

 

倉橋の説明に不破以外の女子が全員でうんうんと頷く

その説明を聞いた岡島は……

 

「イケメン、コロス!!!」

 

「まずい、岡島が暴走したぞ!」

 

「と、止めろ!」

 

暴走した岡島を前原と杉野が止めに行く

磯貝も止めに入ろうとしたが前原に「逆効果だ!」と言われて不思議そうに首をかしげていた

その様子を見た新太はくすくすと笑う

 

「そんじゃま、料理持ってくるからそのまま談笑しててね!」

 

新太はトテテテと台所の方へと走っていく

 

「新太君、私たちも手伝うわ」

 

「みんな、ありがとー!」

 

手伝いに来た磯貝、片岡にお礼を言いながら新太は指示を出す

新太は取り皿と箸、片岡はサラダとパスタ、磯貝はキャットフードをそれぞれ持っていく

 

「新太は猫飼ってるのか?」

 

磯貝の素朴な疑問に「そだよ、あとで紹介するね」と新太は簡潔に答える

3人はみんなの待つリビングへと向かう

岡島はいつもの状態に戻っていた

前原と杉野はなんとか岡島を正気に戻せたようだ

 

「みんな、お待たせー!新太特製のシーザーサラダとミートソースパスタだよー!」

 

新太がテーブルに料理を置くと一同唖然とする

それは酷いからとは逆の理由だった

 

「え、何これ?普通にレストランで出てきそうなものじゃない」

 

「てか、料理作れたんだ…」

 

岡野と速水が料理をまじまじ見ながら言う

この2人を皮切りに「美味しそう」や「すごい」という言葉が場に飛び交う

その様子にご満悦したのか新太はエッヘンと胸をはっていた

 

「でも、これお金とか大丈夫なの?ひとり暮らしなのに…」

 

倉橋が心配そうに新太に話しかける

当の本人は満面の笑みのままで話した

 

「大丈夫だよ。昨日、株式投資で500万の利益が出たからさ♪」

 

「中学生で株式投資って……」

 

「しかも、儲け額が大きい……」

 

新太は自身のサイフの中にある札束を見せる

その中身を見て、片岡と中村は冷や汗をかいていた

この2人だけでなく、一同冷や汗を流していた

 

「待って、ひとり暮らしって親は……?」

 

新太のひとり暮らしに疑問を感じた渚は新太に話しかける

新太はサイフをしまうと神妙な顔つきで話し出した

その変化にみんなの視線は新太に向けていた

 

「……………死んだよ。2年前にね……」

 

その言葉に場の空気が静まり返った

そのまま、新太は話を続けた

 

「僕の父さんは武道の道場を開いていて、母さんはホテルのシェフだった。2人とも、とっても優しくて僕を愛してくれた」

 

「どうして、2人が死んだの?」

 

原が新太の両親の死因について聞いた

それに対して、新太は俯いて話し出した

 

「……僕が学校から帰ってきたら、寝室に身体をバラバラにされていて、部屋が血だらけで……」

 

この話を聞いて、みんなは察した

このテーブルに置かれている料理は新太が母親から教わったものだと…

新太の両親は殺されたのだと…

 

「犯人は見つかったの?」

 

不破は新太に質問するが新太は首を横に振る

 

「犯人は見つかってない……。証拠が全くないんだって…。それから、僕はA組からも疎まれてずっと1人だったんだ…」

 

新太は俯きながらそう話す

静まり返る場に誰も話そうとはしない

すると、突然新太はバッと顔を上げる

 

「食べよっか!ご飯!」

 

ニコニコと新太は自分の席に座るが他の人は誰1人動こうとしなかった

 

「いっただきまーす!」

 

新太は独りでにパスタを食べ始めた

 

「あれ、パスタしょっぱいね!ごめんね、作り直してくる」

 

その場を去ろうとする新太を杉野は肩を掴んで止める

その杉野の顔は俯いていて表情が読み取れなかった

 

「どうしたのスギちゃん?今から……」

 

「もういい。無理するなよ」

 

岡島は新太の行動を制止するかのように言う

岡島は顔に手を当てて彼も表情がわからない

 

「僕は、無理なんかしてな……」

 

「じゃあ、その涙はなに?」

 

片岡が見る新太の顔には涙が流れていた

新太にはどうして涙を流しているのか理解できなかった

しかし、一同からするとつらいものを心の中に押し留めて耐えきれなくなっていることに対するSOSのように見えた

普段は天真爛漫で子供っぽくクラスのムードメーカー的な役割を担っていた

それが新太である

しかし、今ここにいる彼はそんなクラスと同じ様子ではなく、普段流さないような淋しいという感情がつまった涙を流している

 

「な、なんで、泣いてるの……」

 

「もう大丈夫だ。今まで寂しかっただろう、つらかっただろうけど……今は俺たちがいる」

 

前原は新太の肩を組んで笑いながら話す

肩を掴んでいる杉野のも笑顔だ

そして、この場のみんなが笑顔だった

新太は今まで抑えていた涙がボロボロと溢れ出した

 

「…………うん」

 

新太は泣きながら声を絞り出した

その後、大泣きした新太をみんなで慰めるのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところ変わって、どこかのホテルの1室

ここに、2人の男がいた

1人は中年くらいの丸坊主

この男はとある人物と世界を繋ぐ中継点の働きをしていた

とある人物とはこの男の隣にいる人物である

その人物は髪がボサボサで死んだ魚のような目をした中学生くらいである

椅子をギッタンバッタンとしている

 

「最近、やけに事件が少ないですね」

 

「そうですね。あなたが有名になってからというもの犯罪が少なくなっています」

 

「いや、おそらくですが何か起きますよ。この静けさはそれの前兆かもしれません」

 

「それがただの勘………であればいいんですけどね、“ACE"」

 

「そうですね」

 

その人物…ACEは机に置いてあったまんぷく亭の弁当を食べながらそう話す

机にはすでに食べ終わった弁当の残骸が積み重なっている

 

「勘で終わってほしいものです」

 

空になった弁当をまた積んで、次の弁当に手をつけた




さて、次回は4月時点での新太とオリキャラのプロフィールを大公開するよ!
ヒロイン希望まだまだ募集しています!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

~4月編~
キャラ紹介って必要な設定忘れたりして結構大変だよね by人生美味礼賛


オリ主とオリキャラのプロフィールです。
新太のプロフィールは作戦実行適正チャートと先生の評価とクラスの評価をつけ加えただけです。
必要あれば更新していきます。



日ノ丸 新太(ひのまる あらた)

 

身長:155cm(3月より+1cm)

体重:45kg(変化なし)

誕生日:5月5日(子どもの日)

血液型:AB型

好きな教科:国語

嫌いな教科:数学

趣味·特技:人の笑顔を見ること、動物をかわいがること、バスケ、食べ歩き

部活(過去):バスケ部

宝物:両親が買ってくれたリストバンドとヘッドバンド、友達

好きな食べ物:甘いもの全般、期間限定の食べ物

弁当or買い食い:弁当

選挙ポスター:みんなの笑顔が、僕の原動力

 

 

 

 

絵に書いたような子どもみたいな容姿と高い声の持ち主

姿だけでなく考え方なども子どもっぽい面がある

それゆえに、E組からは弟ポジションで定着している

彼自身、人や動物と関わること大好きで人の笑顔を見ることや動物とたわむれることを生きがいとしている

他にも、大の甘党で茅野、不破、倉橋、原と「スイーツ同盟」を結成している

そんな子どもみたいな1面を持ちつつ、自分なりの信念や考え方を大切にし、一貫しようとする芯の強さがある

しかし、何でも心にためこむ癖があり、感情のやり場に困ることもある

怒ると朗らかな雰囲気から一転して凄まじい殺気を放つ

家族構成は新太と猫のバロンのふたり暮らし(?)

両親は2年前に殺されていて、密かに犯人を探している

本校舎時代はA組に在席していてバスケ部のエースとして活躍していた

ポジションはシューティングガードであったらしい

A組からの孤立によりE組に落とされる

暗殺面では持ち前の努力で狙撃は好成績であるがナイフは中の下くらい

新太曰く、「手に馴染まない」らしい

しかし、バスケで培われた相手の真意や才能を見抜く力は実行、サポートどちらにまわっても活きる

たまに独自の必殺技を完成させることもある

自分が発案した武器を烏間先生に頼むことがしょっちゅうである

 

 

 

作戦実行適正チャート:6段階

作戦立案:2

指揮·統率:4

実行力:4

技術力:6

調査·諜報:1

政治·交渉:2

 

 

 

先生からの評価

《烏間先生》

新太君の素晴らしいところは探究心と努力にある。ナイフや狙撃で好成績を残しながら自分だけの技を作り、独自のスタイルを築いている。そのため、予想が困難な動きをする。奴への暗殺に最も近い生徒と言えるだろう。しかし、正直すぎるが故に嘘がつけないのが難点である。

 

《ビッチ先生》

なんか………弟みたいな子ね。それでもって、真剣になったときのギャップが凄いわ。多趣味でもあるし、女子のハートをしっかり掴んでいるわ。本人は意識してないだろうけど……。

 

《殺せんせー》

話は聞いていましたが本当に絵に描いたような子どもみたいな生徒です。彼も甘党のため、よくスイーツの話で盛り上がります。しかし、予想斜め上の行動をしてくるので正直侮れない生徒です。無自覚なのがまた恐ろしいです。

 

 

 

 

 

新太に対するクラスの評価

 

カルマ:弄りづらい。

磯貝:E組で1番前を向いている。

岡島:なかなかに良い奴。ぜひエロの道へ!

岡野:弟みたいでかわいいけど変な呼び方やめて!

奥田:子どもみたいに元気な子。

片岡:弟みたいな存在。

茅野:スイーツ好きの同志。

神崎:子どもっぽくてかわいい。

木村:悩みとか縁遠そう。

倉橋:雰囲気も似ていて、気が合う子。

渚:弟ってこんな感じかな。

菅谷:絵が独特。

杉野:親友であり、尊敬している努力家。

竹林:メイドカフェはまだ早いか。

千葉:元気な奴。

寺坂:見ててイライラする。

中村:弄りにくいけどよく話す。

狭間:復讐の世界へ!

速水:…………友達。

原:子どもって感じがして母性がくすぐられるね。

不破:マンガのノリを理解してくれる。

前原:天然のタラシ。

三村:悪い奴ではない。

村松:いい子ちゃん。

矢田:もう一人の弟みたい。

吉田:お子様。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ACE(えーす)

 

世界を代表する名探偵。

数多くの迷宮入り事件を解決に導き、世界の絶対的エースとも呼ばれている。

彼の発言力は国連でも意見が通り、常任理事国並の発言力を持っている。

しかし、基本的にボイスチェンジャー加工し、中継人を通してしか話さないため、誰もその姿を見たことがない。

現在も多くの事件をかけもちしており、その中でも柳沢という研究者を追っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《裏話 3》

岡野「ねえ、なんで私モンちゃんなの?」

 

前原「俺に至ってはどうしてタラちゃんなんだよ?」

 

新太「んーとね、岡野さんはおサルさんみたいにクリクリしててかわいいから、前原くんはタラシからとってタラちゃん」

 

岡野「え、えーと…………か、かわいいってのはう、嬉しいけど……………なんか複雑…」

 

前原「よりによって、そこからとったのか……」

 

新太「2人ともかわいい名前でしょ?」

 

岡野「そうだけどさ……」

 

前原「俺が「やるですー!」とか気持ち悪いだろうが!!」

 

新太「この小説の場合、「殺るですー!」じゃない?」

 

前原「うまくねーよ!!!」

 

この数週間後、「殺るですー!」が現実となる




次回から4月編スタート!
殺せんせーがクラスにやってきた!
新太の反応は!?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

喧嘩はほどほどに… by潮田渚

今回は自爆テロ前までの話
本格的に暗殺教室がスタートします!
しかし、新太は平常運転!
視点は三人称



「では日直の方、挨拶を」

 

4月に入り、色んな意味で教室はガラリと変わった

教壇に立っているのは雪村先生ではなく、アカデミックドレスを着た3mくらいある黄色いタコ

初めての方は「はい?」とチンプンカンプンであるがそう形容するしかないのだ

そして、「起立」と日直がいうと生徒たちはそのタコに銃を向ける

明らかに普通の教室の光景ではない

今、この教室にあるのはタコを射殺しようとする生徒の光景(口径)である

「礼」とともに一斉に射撃するがタコはそれをいともたやすく避けて、出欠を取り始めた

結局、1発も当たらないまま出欠を取り終わるのだった

 

「今日も1発も当たりませんでしたね~。もう少し工夫を凝らしてください。それと新太くん、初日以降暗殺をしかけてきませんので先生寂しくて仕方ありません」

 

「ん~、まだ思案中だからさ。もうちょっと待ってよ先生。出来そうならすぐに殺りに行くからー!」

 

新太は先程の射撃に参加せず、1人でノートとペンを取り出し何か考えている

タコへの返答もしっかりやりつつ、ペンで机をトントンとたたいて考え事をしていた

 

「ヌルフフフ……それは楽しみですね。期待していますよ。それでは、掃除して授業を始めましょう!」

 

なぜ、このタコがE組の担任をしているか

それは4月に入って起こったある事件と関わっていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~回想~

 

「おはよー!いそ兄、タラちゃん!」

 

「おう、おはよう」

 

「だから、タラちゃんやめろって!」

 

「月が三日月になっちゃったね!」

 

新太は前を歩いている磯貝と前原に挨拶し、前原の発言をスルーして月の話題を出した

4月に入っての事件は月が7割蒸発して三日月になってしまったこと

原因は不明らしい

 

「ああ、世界中その話題で持ちきりらしいな」

 

磯貝は顎に手を当て考えている素振りを見せる

前原は「そうだったな」と短く言う

 

「うん!誰がやったんだろうね、北朝鮮かな?」

 

「いや、北朝鮮にそんな科学力ないだろ」

 

「どこの国でも出来ねえから!!確かに北朝鮮アホみたいにミサイル撃ってるけどさ!!」

 

「じゃあ、誰だろうね?」

 

新太の問いに2人とも「さあ?」としか言えなかった

3人は学校に着くとすでにほとんどのクラスメイトが教室にいた

何やらザワザワしていて、何かあったことを思わせる雰囲気だ

 

「なんだ?やけに騒がしいな…」

 

「おはよー!何かあったの?」

 

新太が中村に声をかけると速水との会話を中断させて振り向く

 

「新太ちゃんおはよー!なんかね、担任が変わるらしいよ!」

 

「え………そんな…………」

 

中村の一言で新太は声のトーンが落ち、顔を俯かせる

誰が見ても落ちこんでいるようにみえる

それも無理はない

新太はE組で雪村先生と1番仲の良かった生徒だ

4月も彼は雪村先生に期待を持って来たのだ

だからこそ、ショックも大きくなってしまった

 

「新太、仕方ないだろ。な?」

 

「…………してない」

 

前原が心配して声をかけるが新太は身体を震わせて何かを言った

 

「まだ雪村先生とデートしてなーーーい!!!」

 

教室中に響く声で叫ぶ

クラスメイト全員ポカーンとなっていた

前原が絞り出すようにして「は?」と口にする

 

「雪村先生、僕とデートしてくれるって……言ってたのに!!ちゃんとお誘いしたのに!!」

 

新太の爆弾発言に今度は磯貝が「へ?」と素っ頓狂な声を上げる

この時、前原は思った

こいつ、俺にタラシって言える立場なのか………と

おそらく、新太としてはデート=お出かけとして成り立っているのだろう

しかし、新太はデートという言葉が他の人には違う印象を与えていることに気がついていない

この時、前原の中で新太は天然タラシチビ野郎として定着するのだった

 

「ま、しょうがないよね。それより、担任ってどんな人?」

 

「切り替え早っ!!!」

 

先程まで頭を抱えて悔しそうにしていた様子から一転して、新太いつもの感じに戻り質問を繰り出す

それにはクラスメイトツッコまざるを得なかった

 

「んー、まだ何の話も聞いてないね〜」

 

中村は椅子の上であぐらをかきながら話す

新太はそれを聞いて「んー」と少し考えてから話す

 

「もしかして、月を蒸発させた人だったりしてー…」

 

新太のその言葉に一瞬シーンと静かになった後にクラス中爆笑が起きる

 

「そんな訳ないじゃん!!」

 

「なんでそんな奴がこんなところに来るんだよ!?」

 

などと笑いながら話すクラスメイトを見て、「そんな訳ないか」と新太は小さく呟く

しかし、これが嘘から出たまこととなるとはこの時はまだ誰も知らなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうも、私が月を蒸発させた犯人です。今日からE組の担任になりますのでよろしくお願いします」

 

(当たっちゃったよ………)

 

朝のホームルームの時間

黄色いタコがそう言った

そして、その時クラスの心が1つとなった

これには予想を的中させた新太自身も驚いていた

 

「防衛省の烏間という者だ。単刀直入に言う。君たちにこいつを殺してもらいたい」

 

この発言にクラス全員の目が飛び出さんばかりに見開く

ただ1人、新太を除いては……

その後も説明という説明ではない話を烏間からされた

このタコは最高速度マッハ20、月を蒸発させた犯人、手入れが好き、来年の3月には地球を破壊するという情報とタコに効くナイフと銃が配布された

しかし、それだけでは疑問が多く残っているのだがこの一言によりかき消された

 

「報酬は100億円」

 

この言葉にクラス全員の目が¥に変わっていた

しかし、新太だけ「へー」と言っていた

そして、この時からタコによる授業が開始されたのだった

 

~回想終了~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでは先生、上海に行ってきます。暗殺希望の方は電話をかけてください」

 

タコはそう言い残すと窓から空に飛び立った

新太は外を見て「おお、すげー!」と言い見送っていた

その直後、クラスでタコの凄いところを列挙していく

それだけ、タコが生徒を大事にしていることは伺える

しかし、彼らの大半は暗い表情だった

 

「どうせ、俺らE組だしな。期待しても無駄だよな」

 

三村が自虐的に笑いながら言う

クラスの大半も同じような表情だった

 

「そうかな?僕はそう思わないけど…」

 

それに異を唱えたのは新太だ

何か思い当たるところがあるようだ

 

「どういうことだよ?」

 

菅谷が半笑いして聞く

新太はニコニコしてそれに答える

 

「僕はE組だからって期待は無駄にならないと思うよ。少なくとも、あの先生は僕たちの可能性を見てる。そんな眼だったよ」

 

「…………けっ、いいよな元A組の奴は、余裕でよ」

 

新太の言葉に否定する形で入ってきたのは寺坂だ

 

「お前はさ、落ちこぼれの気持ちとか分かんねぇだろうがよ。考えてみろよ、何でE組があると思ってんだよ…。落ちこぼれなら落ちこぼれらしくしてろよ。夢なんか持ってんじゃねぇぞ」

 

寺坂は机に足を乗せてのけぞりながら話す

それに反論を入れようとする磯貝だが近くから凄い殺気を感じた

そう、新太だ

 

「寺坂君さ、落ちこぼれ落ちこぼれって言ってるけど…………なんかしてきたのか?頑張ってきてそういうこと言うのならいいけどさ、やってないんだろ?………………よく言えたよね。自分はだっさいプライド守ってしかないのにさ」

 

新太の挑発ともとれる発言に机を強く叩き立ち上がる寺坂

「なんだと」と言いながら新太に近づく

その様は韓国と北朝鮮みたいに一触即発状態だった

 

「てめぇに俺らの気持ち……」

 

「俺ら………じゃなくて、俺のだろ?誰もお前の気持ちなんて分かりたくもない。腐るのは勝手だけどさ、周りを巻き込むのはやめろよ。気に食わないなら来なけりゃいいじゃん」

 

新太の強気な発言に寺坂は「けっ」と吐き捨てツレの吉田と村松、それと渚を連れて教室から出ていく

新太の殺気が収まり、いつもの雰囲気になる

クラスは緊張感がとけてほっとひといきついている

 

「ふー、なんとかなったな。急にキレるなよ、新太」

 

「ごめんごめん!でも、あんなこと言われたら黙ってられないよ!」

 

岡島が新太にそう言うと新太は合掌し、クラスに謝る

 

「でも、またなんであんなに怒ったの?」

 

岡野は新太の怒った理由に対して気になったので聞いてみる

新太は少し真剣な顔で話し出す

 

「今の寺坂の言葉は夢に向かって頑張ってる人に失礼だよ!そんな人の心も踏みにじってる!どんなに高い壁も努力次第では乗り越えられる!……………それを体現した人がいたから」

 

そう告げた新太の顔は最後の一言だけ少し様子が違った

片岡はそのことについて聞いてみたかったが今回はやめることにした

新太の顔が見せたことのない寂しげな表情だったからだ

 




次回は自爆テロ!
新太があのガキ大将にマジギレ!
ヒロイン募集はまだまだやっていますのでご意見お願いします


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

普段怒っている奴より穏やかな奴が怒った方が怖い by前原陽人

今回は渚の自爆テロ回です
最後にオリキャラ2人出ます
以前にも出たことのある2人です


今は5時間目

殺せんせーが帰ってきて、国語の時間である

新太はうーんと唸っていた

あの先生に迫れるようなアイディアが浮かんでこないのだ

先生がきてから色んなことを試した

まずはナイフ

新太の場合、高い身体能力もありナイフという近接武器との相性が良いと思われたがそうでもなかった

なぜかナイフを持つと妙な違和感に襲われるのだ

投げてもあらぬ方向へと飛ぶのだ

この時点でナイフは合わないと判断し、武器から除外していた

銃はバスケで鍛えた距離感や空間把握能力があって、相性は抜群だった

狙ったところにバンバン当たるのだ

これは使える!

新太はそう思い、初日の一斉射撃にも参加した

しかし、そこで感じたのは…………限界だった

そもそも、マッハ20の生物にエアガンの弾が当たると思うこと自体おかしいのだ

それが一斉射撃によってはっきりしたことだ

つまり、銃での暗殺をするのであれば真っ向からでは不可能だ

何か、変化球的なものが必要だ

だから、新太は初日以外にまともな暗殺をしていない

そして、暗殺のアイディアが出てこなく難航していた

 

「どうしましたか新太君。悩み事ですか?」

 

頭を抱えている新太が気になり先生は歩み寄る

新太はニコニコして「大丈夫だよ!」と答える

 

「そうですか。もし、何かありましたら先生に言ってくださいね」

 

そう言うと先生は教壇へと戻っていった

それを確認すると新太は再び考え出した

しかし、アイディアはポンッとすぐに出てくるものではなく、時間が過ぎていった

この時、新太には教壇へと歩いていく渚が見えていなかった

渚は教壇まで行くと先生にナイフをふる

しかし、それは当たる寸前で先生が止めていた

 

「だからいっているでしょ。もっと考えをひねっ………」

 

先生が言い切る前に渚は先生に抱きついた

そして、その直後のことだ

クラス中に爆発音が響いたのは

 

「…………………ふぇ!!?」

 

長考を続けていた新太には突然の音に驚いて飛び上がっていた

咄嗟に変な声が出た新太だったが、クラスの注目は教壇の方だった

そこへ飛んで喜ぶ寺坂、村松、吉田の3人が教壇へと走った

 

「な、なに!?今の……」

 

新太は状況がのみこめず辺りをキョロキョロしていた

教壇から煙が出ている………

そして、そこで倒れているのは………

 

「なぎくん!!!」

 

新太はすかさず教壇に駆け寄る

渚を持ち上げるとあることに気がつく

渚に膜のような何かが被せられていた

「なんだ、これは?」と一同は考える

 

「実は先生、月に1度脱皮します」

 

上から声がしたので向くとそこには先生がいた

いつもの黄色いマヌケな顔ではなく、真っ黒など怒りの顔が浮かんでいた

すぐさま、教室を出たと思ったら次に戻ったときには手元にクラス全員の家の表札を持っていた

 

「先生は政府との約束で君たちには手を出しません。ですが、今後このような暗殺で来たら君たち以外どうなるか分かりませんよ…」

 

この時、クラス全員が悟った

この先生には逃げても隠れてもムダだ

僕らはこの先生を殺さなくてはいけない………と

先生の威圧に耐えきれずに腰を抜かした寺坂は泣きながら叫び出す

 

「な、なんだよ!?なんなんだよお前は!!?お前みたいな迷惑なやつに迷惑な殺し方して何が悪いんだよ!!!」

 

「迷惑?とんでもない!君たちの暗殺は実に素晴らしかった。特に渚君、君の自然な身体運びは満点でした」

 

先生は顔に赤いマルを作り、柔らかい触手で渚の頭をなでた

しかし、すぐさま紫色のバツを作って命を大事にしなかったことを渚、寺坂、吉田、村松の4人を咎めた

このやりとりを見ていた新太は状況が把握出来ていた

新太は俯きながら寺坂に近づいた

 

「あ………なんだよ……?」

 

その直後、新太は寺坂を殴ったのだ

寺坂は身体が宙に浮き、教壇とは反対側の教室の壁へと激突していた

 

「新太!?」

 

「新太君!?」

 

磯貝と片岡は驚きの声を上げていた

すぐさま、止めようとしたが2人は立ちすくんでいた

2人だけではない

クラス全員が震え上がっていた

新太が今まで見せたことのない怒りの表情に…

 

「新太君、落ち着いて下さい」

 

「邪魔だ、どけよ先生」

 

新太の前に立ちはだかった先生を押し退けて、寺坂を見る

 

「次にこんな自爆テロやってみろよ。先生がどうこうする前にお前を殺してやるからな。覚えとけよな?」

 

そう言って持っていたシャーペンを寺坂に向かって投げる

シャーペンは寺坂の顔の横すれすれに通り、壁に突き刺さっていた

寺坂は「ひ、ひいぃ……」と言いながら気を失った

新太はそれを確認すると先生の方を振り向いて言う

 

「先生、授業の続きしよ!」

 

いつもの、新太らしい、満面の笑みで

先生はそのコロコロと変わった表情をみて冷や汗を流した

何か、得体の知れない恐怖に…

 

「君は何者ですか?」

 

先生が率直な質問を叩きつける

新太はやはりニコニコの笑みで答える

 

「僕は日ノ丸新太!身長2mある普通の中学生だよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暗殺教室で自爆テロのあった夜

とある研究所の跡に2人の男が立っていた

1人は銀髪の中年

身長は190と高身長である

もう1人はダークブルーの髪を持った中学生ほどの少年

その少年は血や汚れ、破れたところのある報告書を読んでいた

 

「やはり、柳沢はこの研究所で反物質の研究をしていたようですね。法の隙間をくぐって罪にならない人間を使って……」

 

「そのようでございます。どうされますか?」

 

少年はほとんど読めない報告書を推測で読むと地面に置き、あんぱんを取り出し食べ出す

 

「その被検体は今、椚ヶ丘中学の先生をしているのでしたね」

 

「左様でございます」

 

少年はモグモグしながら中年の男に言う

 

「ニック、今すぐ転入の手配をお願いします」

 

「まさか、あなたが直接行かれるのですか!?」

 

「こればかりは被検体の近くにいて越したことはないでしょう。いつまで出来ますか?」

 

「1晩でやりましょう」

 

中年の男は深々とお辞儀をする

少年はあんぱんを食べ終わるとクリームパンを食べ出す

 

「ACEの名にかけて、この事件の裏側を暴いてやりましょう」

 

彼の名前はACE

世界一の名探偵である

 

 

 




次回はオリ回です
世界一の名探偵が正体を隠してE組に!?
そんな彼に興味を持った新太はある賭けを持ち出す!
次回、「転校生の弱みは握りたくなる by中村」の予定です

新太「みんなーよろしくねー!」

ちなみに新太のヒロイン募集についてですが今回で締め切らせていただきます
ヒロインはハーレムからの本命ってことでどうでしょう!?
本命はお楽しみってことで現在は未定!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

転校生の弱みは握りたくなる by中村莉桜

中村さん空気なのにタイトルコール……
今回から本格的にオリキャラ1人追加します。
今回は何も起こりません。
ただ、転校してきたよって話。



渚の自爆テロから数日が経った。

あれから暗殺教室では色んなことがあった。

超生物の名前が殺せんせーと決まったこと。

烏間先生が副担任兼体育教師着任したこと。

様々なことが起こるがE組は柔軟に対応していった。

さて、時は早朝の6時。

E組校舎の裏山。

朝早くにも関わらず、乾いた音が鳴り響く。

その音の正体は……

 

「うーん………また外したー。」

 

銃を持った新太の姿があった。

10m先には射撃用の的が建てられていた。

どうやら射撃の訓練をしているようだ。

しかし、うまく当たっていない。

 

「殺せんせーほどの速い相手を仕留めるためには必要だと思ったけどなかなかに難しいや。」

 

新太は頭をポリポリ掻きながら言う。

なぜ、射撃が得意な彼が的に当たらないかというと……

 

「射撃の練習か?」

 

「あ、千葉君だー!」

 

声がした方には千葉がいた。

彼は普段あまり早く学校に来ないが今日はたまたま早く起きて学校へと来たのだ。

その時、エアガンの発砲音が聞こえて来てみると新太がいたということだ。

新太はいつも通り「おはよー!」と大きな声で挨拶をすると千葉は「おはよ」と小さく返す。

 

「にしても、意外だな。元A組だから努力とかしないもんかと思ってた。」

 

「もーーう!だから、A組とかそういうの関係ないから!!」

 

新太はプンプンと効果音がつきそうな怒り方をする。

千葉は「ああ、悪い」と若干引き気味だった。

 

「そういえばお前、射撃得意じゃなかったか?」

 

千葉のその言葉に新太は「待ってました!」と言わんばかりにえっへんと胸を張る。

 

「僕がやってるのは普通の射撃ではないのだ。僕が練習しているのは………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆さん、おはようございます!今日は嬉しいお知らせがあります。なんと、このクラスに転校生が来ます!」

 

いつもの朝のHR。

教室へと入ってきた殺せんせーは開口一番でそう告げた。

その直後、クラスがざわつく。

この暗殺教室に転入してくることもあって期待の声や不審に思う声など様々なものであった。

現在は4月。

時期的にも転校生が入ってきてもおかしくはない。

 

「殺せんせー、どんな人ー!?」

 

新太がピンと手を挙げ、クラスの気持ちを代弁する。

殺せんせーは「ニュルフフ…」と笑った後でこう言った。

 

「なかなかにビックな方ですよ。おそらく、暗殺の強力な手助けとなってくれるでしょう。それでは、入ってきて下さい。」

 

そう言われ入ってきたのはダークブルーの髪で目の下には大きなくまが出来ていた。

背は170くらいだろう。

何より特徴的なのは極端な猫背であること。

 

「どうも、皆さん。私は天津英樹と言います。よろしくお願いします。」

 

その自己紹介にクラスはシーンとなる。

別に格段おかしなことがあったわけではないのだ。

いや、極端な猫背の時点でおかしくはあるが…

クラスが驚いているのは名前である。

 

「もしかして………………あの俳優の天津英樹さん!?」

 

矢田がテンションを上げながら天津に質問する。

その直後、女子からは黄色い声援が飛び交う。

天津英樹とは最近有名なイケメン俳優の名前である。

しかし、そんな有名人がこのE組に来るはずもなく…

 

「いえ、期待させてしまって申しわけないのですが単なる同姓同名です。」

 

天津は謝罪を交えながらに話した。

女子はガクッと肩を落とす。

 

「先生、席はどこですか?」

 

「天津君の席はこの列の1番後ろです。」

 

天津はポリポリと頭を掻きながら質問し、殺せんせーに席を聞くとスタスタと席の方に歩いていく。

猫背のまま歩く姿はクラスの印象に残っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は過ぎて昼休み。

天津は「用事があります。」と言って教室を出ていく。

それを眺める一同。

 

「なんか、少しそっけないよね。」

 

天津が出ていった後に倉橋がさみしそうに話す。

それに同意するかのように矢田が話し出す。

 

「なんかあからさまに壁を作ってるよね。」

 

「どんな奴かと思ったけどつまらなそうな奴だよな。」

 

木村も転校生に期待してた部分もあり、ガッカリとしている。

クラスの殆どはそういった意見だろう。

しかし、1人だけを除いて。

 

「そうかな。僕はいろんな意味で面白い人だと思ったよ。」

 

「な、なんで日ノ丸がいるんだ?」

 

「なんとなく!!」

 

木村の疑問に即座に新太は答える。

いつもは磯貝たちと共に昼休みを過ごしているが今日はなぜか倉橋たちのところに来ていた。

 

「ねえねえ、天津君が面白い人ってどういうこと?」

 

矢田がワクワクした表情で新太に聞く。

新太は頬に人差し指を置き、考えるしぐさをした。

 

「天津君は、たぶんだけど殺せんせーを殺す気ないからかな?」

 

その言葉に驚きの顔を見せる倉橋たち。

すかさず、倉橋が新太に質問する。

 

「え、それどういうこと?」

 

「今日ずっと天津君を観察してたけど、天津君の目から殺意が伝わって来ないもん。何か殺せんせーを観察している感じがするよ。」

 

新太は「ニシシ」と笑いを付け足して言う。

新太はE組の誰よりも子どもである。

だからこそ、人の意思に敏感なところがある。

 

「でも、それはあくまで予想だろ?」

 

「うん。だから、確かめようと思うんだ。」

 

新太たちの会話が進む中、「ガラッ」と教室のドアが開く。

入ってきたのは、今話題になっていた天津である。

それを確認するなり、新太は走っていく。

 

「天津君!!」

 

「君は確か………日ノ丸新太氏でしたね」

 

「凄い!もう名前覚えたの!?でも、僕は新太でいいよ!」

 

「では、新太氏で。」

 

「エヘヘ」とニコニコ笑う新太、ボリボリまいう棒を食べる天津。

 

「それで、何でしょうか?」

 

「天津君はさ、なんで殺せんせーに対して殺る気がないの?」

 

「さあ、何のことでしょうか…?」

 

クラスが先ほどの倉橋たちと同じく驚く。

天津の反応に満足のいかない新太は「ムムム」と頬を膨らます。

一方の天津はボリボリとまいう棒を食べ進めていた。

 

「言う気がないならいいよ。賭けしよっか!」

 

「賭け………ですか。」

 

新太は怒ると思いきや指を差して唐突な提案をする。

天津はまいう棒を食べる手が止まっていた。

 

「どんな賭け事ですか?」

 

「へへへ…………使うのはこれだよ!」

 

そう言って新太が出したのは対殺せんせー用のナイフと銃である。

 

「ここは暗殺教室。だから、模擬暗殺で賭けようよ!ルールは簡単!このナイフか銃を使って相手に攻撃を与えたら勝ち。負けた方は勝った方に頼みごとができる。これでいいよね?」

 

新太は説明を終えると天津の様子を見る。

あまり乗り気ではないかと思ったがそうでもなく、意外とランランと目を輝かせていた。

まるで、獲物を見つけた狼のようであった。

 

「いいのですか?僕はこういう賭けは負けたことないですよ?」

 

「じゃあ、今日が初の敗北記念日になるね!」

 

天津は薄らながらにニヤリと、新太はニコニコよ笑顔を見せていた。

決戦は放課後。

開始のベルが高々と鳴る。




次回はまさかの新太vs天津!?
新太のとっておきが出る……かも。
そして、天津の正体が明らかに!?
……いや、だいたい分かるか……


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

賭け···それは真剣勝負の言いかえ by天津秀樹

かなりお久しぶりです。
リアルが忙しくて放置してました。
また少しずつ再開しますのでよろしくお願いします。
今回は、新太VS天津の前半です。
長くなりそうなので前後半で分けました。
地の文が多めになっています。
それでは、どうぞ!


時は放課後………

グラウンドには天津と新太が向かい合って立っていた。

クラスメイトはその外から様子を傍観していた。

天津はレロレロキャンディーを咥え背伸びをしている。

対する新太は指でクルクルと銃を回していた。

審判の烏間先生は2人の間で佇んでいた。

 

「勝敗はナイフを相手に当てるか、ペイント弾を相手に当てるかのどちらか!勝った方が負けた方に1つ指示ができる!…………2人とも、準備はいいか?」

 

烏間先生の問いに天津は「はい。」と、新太は「OK!」と短く答える。

天津と新太の手にはナイフが握られていた。

 

「手加減なしね!」

 

「当然です。全力で行きます。」

 

2人はナイフを構えて対峙し、お互い睨み合う。

烏間先生はグラウンドの外に出ると手を挙げる。

 

「それでは……………………模擬暗殺開始!!」

 

その合図とともに前に出たのは新太だ。

新太はナイフがさほど得意ではない。

そのため、速攻をしかけて早く終わらせる。

それが新太の狙いだった。

しかし、速攻をしかけた新太だったが天津は後ろにさがることでこれを回避する。

 

「後ろに下がった………?」

 

前原が天津の行動に対して疑問を唱えた。

1対1の勝負でなぜ天津が下がったのか。

前原だけでなく、クラスの殆どが疑問に思った。

 

「いや、あれも正しい対処です。彼はE組以前はバスケ部だったみたいですね。バスケにおいては線の速さより点の速さが求められます。おそらく、点の速さはE組で1番でしょう。今日入ってきた転校生が彼に接近戦はつらいところがあります。引いてるワケにはそれだけではないでしょうけど。」

 

いつの間にか来ていた殺せんせーが今の攻防を解説しはじめた。

その手にはブラジルに行ってきたと象徴するかのように現地のコーヒーが握られていた。

 

「点の速さ……?短距離とは違うのか……?」

 

殺せんせーの言葉が気になった木村が殺せんせーに尋ねる。

木村はE組一の脚の速さだ。

特に短距離走では群を抜いている。

彼からするととても気になる話だろう。

 

「そうですね。点の速さというのは短距離走とは少し異なります。短距離走は主に走る力です。直線をいかに速く走るかを競う力のこと。一方、点の速さは1歩目の速さです。」

 

「1歩目の速さ?」

 

磯貝が殺せんせーのセリフをオウム返しして聞く。

 

「いわゆる瞬発力です。彼はそれに秀でています。近接戦では瞬発力が重要な要素を秘めています。その点でしたら、新太君が俄然有利です。しかし、ナイフの使い方はまだまだですね。」

 

そう殺せんせーは言うものの新太の攻撃は全て天津に避けられていた。

新太はそれに何か違和感を感じていた。

なぜ、さっきから攻めないのか…と。

賭けに意欲的だったわりに1度も攻めてこないのは奇妙であること他ならない。

 

「ねえねえ、なんで攻撃しないの?負けちゃうよ?」

 

新太が避け続けている天津にそう問いかける。

天津は新太の攻撃を避けつつ、話し出した。

 

「心配しなくてももう少しで攻撃していきますよ。自分の心配をした方がいいですよ。」

 

その攻防を見ていたクラスメイトは新太が終始押しているようにみえた。

しかし、烏間先生はあることに気がついていた。

 

(新太君の瞬発力は素晴らしいが、天津がだんだんと避けるのに余裕が出てきている……?)

 

天津の動作に余裕が出てきたことだ。

最初はなんとか避けていた感じだったが今は避けた後に余裕を感じていた。

それは闘っている新太も感じていた。

自分の攻撃に慣れつつあると……。

 

「よーーし!一気に行くよーーー!!」

 

新太は1度後ろに下がり天津と距離をとる。

そして、脚をバネのように縮め力を溜めて地面を蹴る。

真っ直ぐと天津の方に向かっていく。

…………………はずだった。

なんと、新太は途中で止まってしまったのだ。

なぜかは分からない。

しかし、新太は確信していた。

今、行ってたら返されていた…………と。

 

「新太君、なんで止まるの!?」

 

「止まったんじゃない、止めさせられたんですよ。天津君によって。天津君の左手を見てください。」

 

殺せんせーの言葉を聞いて天津の左手に注文が集まる。

何も無いように見えるがよくよく見てみるとそうではない。

彼の袖からはナイフの先端がちらりと見えていた。

 

「始めから狙っていたのでしょう。自分の運動能力は高くないことを自覚して回避に徹しつつカウンターの機会を見ていたのです。」

 

「しかも、それだけではない。」

 

殺せんせーの解説が入り、それに割り込む形で烏間先生が付け加える。

 

「おそらく、天津君には見えているな、新太君の動きが。」

 

クラス全員、今の言葉にしっくりくるものがなく首を傾げる。

その様子を見ていた烏間先生は分かりやすいように補足を行う。

 

「つまり、天津君は新太君の動きの1つひとつを記憶している。避けながら相手の動きを学び、対策を立てている。今の彼には新太君が次に何をしてくるか見えてるはずだ」

 

クラス全員、烏間先生の説明に動揺を隠せない。

しかし、それは烏間先生とて同じだった。

自分で簡単にそう話すものの、その技術は容易でない。

そもそめ、脳は見る、聞く、動かすという動作の中で記憶しようとする。

漢字の暗記も自分で書くという動かす要素、見るという要素があるから暗記ができる。

しかし、人が書いたものを見るだけではなかなか覚えられない。

それは、自分が書くという動かす要素が欠けているから。

つまり、自分でしたこと以外では物事覚えにくいもの。

さらに、今のような激しい動作の中で相手の動きを見て覚えるというのは困難を極める。

天津はその常識を覆すようなことを平然とやってのけているのだ。

そのため、烏間先生も驚いているのだ。

 

「ってことは、長期戦になればなるほど天津が有利になるってことか?」

 

「そういうことですね。そして、この勝負はそう長くならないでしょう」

 

殺せんせーの話を聞き杉野だけでなく、クラスのほとんどは緊張した面持ちになっていた。

それは、新太が突っ込んでカウンターを喰らうか、新太が天津の上を行くか、この二つのどちらかだということを理解したからだ。

そして、その決着はあと少しで着くだろうことからのことだ。

 

(しかし、それほどの暗記が出来るとは……。天津君は何者だ……。)

 

烏間先生の頭に天津に対する疑問が浮かび上がる。

しかし、それを確認する術は今の烏間先生には持ち合わせていなかった。

 

「……………やっぱり見ていたね。」

 

カウンターを回避した新太が話しかける。

仕掛けた本人である天津の表情には変化がなかった。

そもそも、天津は表情が乏しい。

簡単に言えば、喜怒哀楽が薄い。

そのため、表情による心情の読み取りは困難である。

しかし、それでも新太は話を続けた。

 

「勝負の前のあの自信と強気な姿勢は嘘じゃなかった。それなのに、攻めて来ないで回避ばっかりってなったら、何か狙ってるって思うよ。それでも、もう少しで引っかかってたけどね。」

 

今まで表情に変化がなかった天津の顔が少し曇る。

それは自分の手が読まれたからでなく、新太の言葉に焦りを感じないからだ。

むしろ、どこか楽しげな感じに聞こえるのだ。

 

「………分かっていながら、わざと突っ込んで来たのですか?覚えられると知りながら。」

 

「確証はなかったけど、あのカウンターを見て確信したよ。だって、あのカウンターの位置は丁度僕の死角になる場所だったから。あの位置でカウンターを仕掛けるには相手の動きを読まなきゃ無理だから。」

 

「なるほど。私が何を狙ってるかはっきりさせるために……ですね。」

 

この2人の会話の中で天津は思った。

何か仕掛けてくる……と。

いくら、私の狙いを見るためとはいえ、自分の動きを見せるのは新太氏にとってデメリットが大きすぎる。

となれば、新太氏にとって私の狙い(暗記)が重要なものだとするなら、何かするための保険、または確認といったものではないのか。

一方、新太も思った。

おそらく、天津くんが僕の行動の不自然さを見抜いてきている。

こっちが何か仕掛けることは向こうも考えること。

しかし、天津くんのその完璧に近い暗記を超えるには相手の反応を超えなきゃ勝てない。

そして、その反応速度は最初のうちに見せてもらった。

あれなら、問題なくいける!

2人の頭の中は自分が取るべき行動、相手がしてくる行動の両方を考えていた。

 

(新太氏、何を仕掛けてこようが関係ない。暗記した動きから何をするか予想すれば良い…。)

 

(天津くん、暗記した中になければ予想してくるだろう。それでも、その反応を超えれば勝てる…。)

 

(勝つのは…………僕だ!!/私だ!!)

 

決着はもうすぐ。

軍配はどちらに上がるのか。

その行方を知る者はこの場にはいない。




特別編「懺悔の時間」はまた後日上げようと思います。
ヒロインの結論もそこで出したいと思います。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

勝負の行方は誰にも分からない by杉野友人

今回はいつもより長めです。
そのおかげで、新太VS天津が決着します。
みなさん、どちらが勝つと思いますか?
予想しながら読んでいただけると幸いです。
それではどうぞ!


互いの思惑が交錯するこの勝負。

緊張した面持ちで眺めるのは生徒だけでなく、烏間先生もだ。

そんな中、殺せんせーだけはネスカフェコーヒーを飲みながら優雅に観戦していた。

 

「先生、ちょっとくつろぎすぎじゃない?」

 

誰かツッコめよと変な空気が流れる中、渚が指摘する。

殺せんせーは「ニュルフフ…」と短く笑い、コーヒーを啜る。

 

「いやぁ、やはりブラジル本場のコーヒーの方が美味しいですね。皆さん、どう思います?」

 

「いや、知らねぇよ!!!」

 

コーヒーの感想を話す殺せんせーに対してクラスの心が謎の部分で一つになる。

しかし、殺せんせーは「いやいや」と首を横に振る。

 

「コーヒーの話ではありません。新太君と天津君の勝負ですよ。君たちはどちらが勝つと思います?」

 

殺せんせーの問いにクラス全員うーんと首を傾げる。

単純だがそれは非常に難しく予想がつかないものだ。

そのため、意見にばらつきが出るのだった。

 

「新太に勝ってもらいたいけど、有利なのは天津だよね。新太の動きが予想出来る分。」

 

「天津君の暗記も凄いけど、この近距離中心の勝負だと新太の速さが上回ることも…」

 

「それに、新太君には主人公補正がかかってるだろうし…」

 

「不破さん、何言ってるの?」

 

中村は情報面、岡野は速度面、不破は主人公補正という主にこの三つの見解が飛び交う。

主人公補正を気にしてるのは不破だけだが…。

それには原がすかさず指摘している。

 

「その通りです。君たちの見解はどれも正しい。」

 

そう全員の意見の総括をした後で「しかし…」と殺せんせーは話をを続ける。

 

「岡野さん、あなたはどうして近距離中心と判断しましたか?」

 

「え、それは新太君がナイフで攻めてるからで…」

 

「そうか。」

 

声を出したのは普段寡黙である千葉。

目が隠れているため、表情は読み取りにくいが何か分かった模様。

視線は殺せんせーから千葉へと移る。

 

「ずっと疑問に思ってたんだ。この勝負はナイフだけじゃなくて銃も使っていいはずなのに2人はナイフしか使っていない。何で銃を使わないのか考えてたんだ。天津はカウンター狙いのスタイルなら嫌でも近距離主体になるから銃よりナイフの方が適している。でも、日ノ丸は得意の射撃を見せていない。」

 

千葉がそこまで話すと一部の生徒がハッと気づく。

新太の当初の狙っていたものが。

 

「そうか!新太はわざと銃を温存してるのか!相手に銃を攻めの選択肢から外すために。それでいてここぞという時に使うつもりで。」

 

磯貝のその推察に「うんうん」と殺せんせーは頷く。

 

「その通りです。おそらく新太君はそれが狙いであえて苦手なナイフで攻めたのでしょう。しかし、天津君もそれに気がついていますね。そして、気づかれてることを新太君も把握している。」

 

「えー、あの2人そこまで考えてるの!?考えすぎじゃ………」

 

「倉橋さんの言うことも一理あります。しかし、相手がお互いに油断出来ないからこそ2手3手も先を行こうとしてるのです。もはや、これは身体能力などそんなものではなく頭脳戦ですね。より相手の裏をかいた方が勝ちますね。その点に関しては、それが得意でしょう天津君が引きずり込んだ分、有利でしょう。」

 

その話を聞いて周りから新太への不安の声が漏れ出す。

そんな中で「いや」と切り出したのはこれまた千葉だった。

 

「勝つのは日ノ丸だ。俺は、あいつが隠しているものが何なのか分かる。それは、おそらく初見じゃ、いや初見でなくてもかわすのは難しいはず。」

 

その話に「えっ」と周りが驚きの声が上がる。

今まで新太と関わりの薄かった千葉からの発言、それが不利かと思われていた新太の勝利するという予想のためだった。

 

「何で分かるの?」

 

「それは、俺が今朝あいつが裏山でその特訓を見たからだ。何かは俺が説明するより見た方が早いと思う」

 

速水にそう言い返し、前を向く千葉。

彼の心を支配しているのはE組への劣等感ではなく、新太への「頑張れ」という激励だった。

千葉もまた、新太の温かさに触れ、少しずつ心に明かりが戻りつつあった。

 

 

 

一方、新太と天津はお互い一定の距離を保ったまま動けずにいた。

新太は相手のカウンターを警戒して、天津は相手の隠し手を警戒してのことだ。

 

(おそらく、ナイフでの牽制の意味を理解してきている。僕の動きが読めるなら向こうから距離を詰める方がいいのに来ないのはきっと僕の切り札を警戒しているから。銃を取り出し撃つ動作まで見切られたら勝ち目がない。ベストなタイミングで使わないと…)

 

(ぎこちないナイフの扱いから先程までの執拗な近距離戦はそこに意識を向けさせるたでしょう。つまり、本命は銃を使っての何かと考えるのが自然。しかし、銃を使って何をするか分からない以上こちらからは下手に近づけませんね。)

 

先程まで熱い近接戦が繰り広げられていたフィールドとは考えつかないような静寂が支配している。

その静寂はフィールドの熱を徐々に奪い取るかのように冷えていくものを感じさせた。

そんな時だった。

先に動き出したのは…

 

「やはり、そちらから動き出しましたね。」

 

動き出したのは新太だ。

その手には、ナイフではなくハンドガンが握られていた。

ハンドガンで標準を定めながら、天津に走ってきていた。

 

「なるほど、構えた状態で接近しながらの射撃。それが狙いですね。確かにそれならいつ撃ってくるか予想が難しいですね。」

 

予想を武器とする人にとって、ハンドガンなどの銃火器とは相性が良くない。

何故なら、指1本で攻撃の選択が出来るからだ。

ナイフや体術などの近接戦であるなら、下がりながら相手の動きを覚え、情報として扱い、予想を立てやすい。

つまり、情報が多いほどカウンターの質は増していくのだ。

しかし、ハンドガンは構え以外の情報は少なく、下がって避けることができるものでもない。

しかも、今回は身体のどこに弾が当たってもアウトのルール。

普通なら、銃を持ち出した時点でお手上げといってもおかしくはない。

 

「これで終わりだね。」

 

新太も自信満々でトリガーを引こうとする。

しかし、天津も黙ってはいなかった。

次に彼がとった行動は後ろに下がるわけでもなくしゃがむわけでもなく、右ななめに沈み込み新太に突っ込んでいくのだった。

誰かが言った。

「攻撃は最大の防御」と。

後ろでなく前へ。

まさにそれを体現するかのような機転だった。

そして、カウンターが本領発揮する近接戦に持ち込もうとする。

 

(ハンドガンなどの銃の欠点は狙わないと当たらないこと。つまり、1度標準から外れてしまえば狙いを定めるための時間が必要になる。そこに隙が生じる。)

 

天津は銃の弱点もしっかり捉えていた。

銃について、格別詳しいわけでも知ってるはない。

彼が長年培ってきた分析から出た結論だ。

一般的にこの見解は間違っていない。

むしろ、正しいだろう。

しかし、だからこそ彼はここで致命的なミスを犯してしまった。

そのことに天津はまだ気づいていない。

そして、そのミスに誘い込むことこそ新太の真の狙いだった。

新太は標準から天津が外れたことで1度銃を下げる。

 

(銃を下げた?ナイフを取り出すつもりか?)

 

新太の行動を警戒しつつ、自分のカウンター範囲内まで近づく。

新太はナイフを取り出すと、天津に突進していく。

そして、ナイフとナイフがぶつかり合う。

天津は新太のナイフの柄をとらえるとそのまま振り上げた。

しかし、そこに手応えはなく、ただナイフだけが宙を漂っていた。

 

「えっ……」

 

さすがにこれは驚き、さらに振り上げきったことにより大きな隙が出来てしまった。

それと同時だった。

 

パシュッ…

 

小さな発砲音が聞こえたのは。

天津は自分の服を確認すると、ペイント弾がしっかり付着していた。

 

「そこまで!天津君の被弾により、勝者は新太君!」

 

審判の烏間先生がこの勝負の終わりを告げる。

新太は「ふぅ」と小さく息をつき、その場に座り込む。

一方の天津はぽかんとしていた。

発砲音で銃で撃たれたのは分かった。

しかし、なぜナイフを手放したのか、狙いを定める時間が短すぎたことと納得出来ない部分が残っていた。

 

「新太氏、私の負けです。ですが、聞かせてください。最後なぜナイフを手放したのですか?それに、銃で狙う時間がなかったのにどうやって?」

 

天津は素直に自分の負けを認め、頭を下げる。

それと同時に彼の中の疑問を新太に尋ねるのであった。

新太はニコッと笑い、ぴょんと立ち上がるとズボンに付いた砂をはらう。

 

「天津君の唯一の隙をつくためだよ。たぶん、天津君はこう考えてたのじゃないかな。僕の切り札は射撃だって。その通りだったんだけど、それには狙う時間がいるって思ったんじゃない?僕が勝つためにはその事実をひっくり返す必要があったんだよ。」

 

この説明を聞いて、「なるほど」と天津はあごに手を添えて納得する。

まだ数少ない説明ではあるが、天津には新太のしたことが大方理解したようだ。

そして、勝負を傍観していたクラスの皆と殺せんせーはと言うと…

 

「ニュルフフ。見事、千葉君の予想が当たりましたね。」

 

「千葉は知ってたの?あの新太の射撃を。」

 

速水は千葉の方を見て聞くと、「ああ」と小さく言う。

 

「あの射撃は、今朝俺が来た時に日ノ丸が練習してたからな。」

 

千葉は、今朝の新太とのやり取りを思い出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「僕が練習しているのは、クイックショットっていう技だよ!」

 

新太はそう言うと、「どうだ!」と言わんばかりにエッヘンと胸をはる。

それを聞いた千葉は落ち着いて新太に聞き返す。

 

「クイックショットって、スナイパーライフルとかでスコープ通さずに目測だけで撃つ技術のことじゃないのか?」

 

「そう!それをハンドガンでやってみようってことで練習してるんだ!」

 

新太は銃をクルクルと回しながら答える。

そして、右手で銃を持ち、素早く上げると同時に的に向かってパァンと撃つ。

撃った弾はど真ん中とまでいかなかったがほぼ真ん中に当たっていた。

 

「どうして、そんな技を…」

 

「だって、殺せんせーは普通の射撃じゃ倒せないから。殺せんせーは僕たちの銃口見て、予想して動いてるから。」

 

新太は以前殺せんせーの話したことを挙げる。

殺せんせーは「工夫を凝らしてください」と言っていた。

つまり、それは普通の射撃では殺せないということでもあった。

新太はそれを千葉に告げる。

 

「なるほどな。でも、そんな朝早く来てやらなくても…」

 

「放課後はシューティングするから無理だよ。やるなら朝しかないよ。」

 

千葉は疑問に思う。

こいつ、なぜそんなに頑張るのかと…。

A組にいたことから才能がないわけじゃないはず。

そんなにやらなくていいじゃないかと…。

そして、それを素直に口にしてしまう。

 

「どうして…………どうしてそこまでするんだよ…」

 

自分はやらなかったから、E組に落ちた。

だから、今ここにいる。

もっと、やってたら…

今の日ノ丸みたいにやっておけば…

そんな後悔を、思いを滲み出すように話す。

しかし、それを聞いた新太はキョトンとしていた。

 

「そりゃ当たり前だよ。僕にはみんなにある「身長」っていう才能がないからだよ。僕はみんなより背が低い分、それだけで社会からも力関係からもハンデを受けてるような感じなんだ。だから、僕がみんなに認めてもらうには人より努力しないといけないのは当たり前だよ。みんなが羨ましいのはあるけど、そう言ってても始まらないからね。」

 

千葉は新太がどこか羨望の眼差しをして話しているのに気がつく。

千葉はここで気づかされるのだった。

自分にはなかったから後悔するんじゃない。

やってなかった自分を責めて諦めるんじゃない。

ないから、やらなかったから、今どうするのか、どうすべきなのか。

大切なのはそこなんだと。

それが勉強であっても、スポーツであっても、暗殺であっても同じだと。

 

「………日ノ丸は凄いな。俺もそんな風になれたらなぁ…。」

 

そう呟くと、新太はニコニコしながら話す。

 

「なれるよ。だって、千葉ちゃん眼力凄そうだから!」

 

「………何だそれ、訳わかんねぇ。」

 

新太の謎の理由にクスッと笑う千葉であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「朝早く来てやってるのか!?やっぱすげぇよ新太は!」

 

千葉の話を聞いて、前原は新太の凄さを再認識していた。

それは前原に限らず、新太と交流のある人全員に同じことが言えた。

殺せんせーは「ニュルフフ」と小さく笑う。

 

「まさかこんなに早くクイックショットに辿り着くとは。確かに不意をつくにはもってこいの技ですね。しかし、それとともに命中率やブレが大きくなるので相当の鍛錬を必要とする技ですが…。常識に囚われない暗殺者(アサシン)ですね。成長が楽しみになります。」

 

所変わって、勝負が決着したフィールド内。

2人に烏間先生が歩み寄っていく。

 

「さあ、新太君。勝負の賭けだった「頼み事」は?」

 

「あ、そうだった!」と新太はポンと手を叩く。

天津は「何でもどうぞ」と静かに言う。

 

「僕の頼み事はね、天津君への質問!」

 

それを聞いた天津は、ぽかんとしていた。

どんなものが来るかと思えば、ただの質問。

そのために今回闘ったのかと思うと天津にとっては非常に理解し難いものだった。

 

「それでいいのですか?」

 

「うん!その代わり、ちゃんと答えてね!」

 

天津は「分かりました」と小さく頷く。

しかし、天津にとって衝撃的な質問が飛んでくるのだった。

 

「天津君は、世界的名探偵「ACE」なんだよね?」




ちょこっと解説
〇新太がナイフを手放した理由
天津に思い切りナイフを振り上げさせ、大きな隙を作るため。

〇クイックショット
イメージはバイオ6のレオンのアクション。
意表をつくという意味で出しました。

〇E組の頭脳レベル
天津>>>>>カルマ>新太>>>>>中村………
こんな感じです。
新太は意外にも読み合いが強かったのでレベル的に高いように見えるが天津は暗記を含め、総合的に見ると天津の方が頭脳レベルは高いです。




次回予告(嘘)


唐突にもらった平手打ち

そして………

予想外の肘!!

特に理由のない暴力が寺坂を襲う!!!

次回、なんとなく公開!



このパロ1回やってみたかった。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

仲良くなりたいなら勇気を出して! by岡野ひなた

遅くなりまして申し訳ございません。
今回は軽い裏話もご用意しました。
ブランクもあるので大目にお願いします。


「………………すみません、その質問は場所を変えてお願いできませんか?あまり知られたくないことです。」

 

「分かったよ!幸い、みんなにはまだ聞こえてないからね!」

 

天津はクラスの皆に聞かれてなくてホッとしていた。

烏間先生もそのことに無反応だ。

その会話の後、クラスの皆が2人へと走り寄る。

 

「すげぇよ新太!お前、あんな技使えたんだな!」

 

「天津君も凄かったよ、うん!マンガの主人公みたいだったよ!」

 

「2人とも、よくあんな動きできたな!いいもん見せてもらったよ!」

 

飛び交うのはどちらか一方だけでなく、両者への賞賛の言葉。

どちらが勝ってもおかしくない緊迫した闘いだったのは事実で場のテンションはヒートアップしていた。

烏間先生は少し遠くからその様子を見ていた。

 

(まさか、あの「ACE」と頭脳戦を繰り広げ、その正体を見抜くとは…。新太君の行動には驚かされるものがあるな。負けたとは言え、天津君の「ACE」の力も見せてもらった。しかし、新太君の近接戦でのあの動き……)

 

烏間先生が今回の勝負の分析を行っていると、突如風が吹き起こる。

 

「どうしました、烏間先生?」

 

「気安く肩を組むな。」

 

烏間先生のナイフは殺せんせーの頭を狙うが案の定空を切るだけだった。

場のテンションが下がるには、もう少し時間がかかるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんじゃな、新太。」

 

「また明日ね。」

 

「うん!まったねー!」

 

新太は杉野と渚をE組校舎から出ていくのを見送る。

見えなくなったのを確認すると、校舎に誰もいないことを確認して裏山へと向かうのだった。

そこには、天津と銀髪の中年くらいの男性が立っていた。

スーツにグラサンをかけているため、その手の人に見えてしまう。

 

「彼は使用人のニック·エンヴァーです。ヤクザにみえるかもしれませんがご安心を。」

 

銀髪の中年、もといニックはサングラスを外し、新太に一礼する。

そして、すぐにサングラスをかけ直す。

 

「それで、あなたの頼み事は私が「ACE」かどうかでしたね。どうしてそう思ったのですか?」

 

付き添い人の紹介を終えると、天津はすぐさま本題へとはいる。

天津としては自分が「ACE」ということは周りには知られたくない事実。

そのため、E組のみんながいない、2人になれる状況を生み出した。

ハッタリかそうでないにしろ、新太の発言の真意を確認しておく必要がある。

 

「うーん、一言で言えば………………勘。」

 

「…………………はい?」

 

何を言うのか天身構えてたところ、新太から飛んできたのは根拠のない言葉で天津は思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。

 

「天津君見てたら全く殺意感じないし、どちらかと言ったら僕と同じ観察してる感じがあったんだよね。僕のは殺すための観察だけど天津君のは何か違う感覚だったんだ。」

 

「なるほど。しかし、根拠としては薄くないですか?」

 

新太の話した根拠に即座に指摘を入れる天津の言う事はごもっともだ。

本当に新太の勘によるところが大きく根拠らしい根拠ではないのだ。

 

「もちろん、それだけじゃないよ。そもそも、天津君がE組に入ってきたのがおかしいんだ。」

 

その言葉に天津は不可解な表情を顔に出す。

天津とて、E組が椚ヶ丘中学の中でも落ちこぼれが行くクラスなのは知っていた。

入ること自体はどうとでもなるはずでは……と思っていた。

 

「E組ってね、成績不振や素行不良の人が落とされるクラスで、転校生は少なくともD組に入るはずなんだよ。時期として転校生は珍しくないけどE組の特殊性からしたら転校生が来るって充分不自然なんだよね。」

 

新太の話を天津はほうほうと頷いている。

E組の冷遇処置の点から話した新太の話は天津も納得できた。

 

「最初は暗殺者かな…と思ったんだけど」

 

「それなのに殺意もまるでなく、観察している。暗殺以外の目的できているかも……てことですか。」

 

新太の話を遮るようにこの後出るであろう結論を話す天津に「そういうこと」と新太はニコッと笑う。

確かにそれらを考慮したら、ありつく結論は殺せんせーを造った研究者かそれを調査する人。

しかし、殺せんせー自体世には非公開のことでありつける人間は限られてくる。

研究者だと非合法の実験で造られた殺せんせーの存在を知られたくないはずなので真っ先に殺そうとするはず。

しかし、そうでないとするなら後者、調査する人。

世の中にヒントが少ない中、殺せんせーの存在を知るには相当な推理力、調査力が必要。

それに見合う人物がエースではないか。

これが新太の考えだ。

 

「……………でも、流石だね。僕が全部話す前に僕の意図を全部読んじゃったみたいだね。」

 

「いえいえ、私の方こそ感服です。まさか、こんなに早く私の存在に気づく者がいるとは……」

 

「嘘はつかないんだね。」

 

「賭け………ですからね。」

 

天津はまいったというように頭を掻き出す。

黙って聞いていたニックも新太に感心した面持ちをしていた。

新太は「そういえば…」と頬に指をあてがい話す。

 

「もし、天津君が賭けに勝ってたら、どんなことを頼むつもりだったの?」

 

目をキラキラさせながらそう話す。

その表情に天津は言おうかどうか迷っていたが結局は折れてしまい話してしまうのだった。

 

「私が勝ったら…………友達………………になってと頼んでました。」

 

その発言に新太は「へ!?」と声を漏らす。

「失礼」とニックが前に出ると本人に代わってその説明を代弁する。

 

「彼は昔から頭が良く、同学年から疎まれがちでしてね。周りとの関係が閉鎖的で友達が出来たことがございません。そのため、今回ここに転校したのはそういう意味もあったのです。」

 

ニックから簡単な説明を受けると納得した表情の新太。

ふー…と軽く息を漏らす。

 

「天津君って、頭いいけどアホだよね。」

 

新太の言葉に天津もニックも驚きの表情を顔に出す。

なぜ、急にそんなことを…。

2人には到底理解出来なかった。

 

「そんなの賭けの景品って勿体ないよ。言ってくれたらいくらでも友達になるよ。天津君が人を大事にしない人なら話は別だけどそんな人じゃないだろうし。」

 

「でも、どう接すればいいか分からないのです……」

 

「そんなの僕にも分からないよ!人それぞれだから正解なんてないだろうし…。だから、自分らしく振る舞うんだよ!天津君の過去にどんな人から疎まれたか分からないけどここではそんな人はあまりいないよ。少なくとも、僕はそうだし。分からないなら、僕と一緒に天津君の正解を探そうよ!」

 

新太の言葉の真意を天津は心から受け取る。

そうか、これが人の温かさなのか…と。

今まで機械越しでの話が多かった天津にとって初めて触れる人の心だった。

それを感じ取った天津は少し口角を上げて「はい。」と短く答える。

その光景を微笑ましく眺めるニックの目には薄らと光るものが浮かんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《裏話2》

特訓をしている新太とそれを見ていた千葉のやりとり。

 

新太「ニックネームつけていい?友達にはみんな付けてるからさ。」

 

千葉「そうなのか。まあ、いいけど……」

 

新太「じゃあ、これから龍ちゃんって呼ぶね。」

 

千葉「いや、それはやめて。」

 

新太「なら、チーバくんでどう?」

 

千葉「なんか……千葉県から苦情が来そうなんだが…」

 

新太「そんじゃ、ミッキー〇なら大丈夫?」

 

千葉「それ、千葉県から繋げたな!!しかも、それは削除される!!ちゃんと伏せ字にしろ!!」

 

このようなやりとりが30分続いて結局、チーバくんで収まることとなる。

 

新太の弱点②:著作権なんてお構い無し

 

 

 




次回はカルマ登場の回です。
カルマの登場により、E組に事件が!?
登場初日でカルマが命の危機に!?
果たして、カルマの運命は!?

次回、「食べ物の恨みは何より恐ろしい」

をお送りします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。