とある科学の青春ラブコメは間違っている (一級狙撃手)
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第一話

はいどうも、一級狙撃手です。神奈川にいる時に思いつきで書き上げました。

クロスオーバーですが、第一話にはとあるキャラしか出て来ません。


「はぁ、はぁ、くそっ、間に合え!」

 

上条当麻は、全力で走っていた。

 

タイムセールに間に合わせるために。

 

今日は卵のタイムセールだったのだが、いつも通り補修を受けていて時間がギリギリになってしまったのだ。

 

「くっそ!はぁ、はぁ、やべぇぇ!!」

 

タイムセールが始まって二分。だが、その二分は上条にとってはかなり大きい。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、な、何とか間に合ったか……。よっしゃ!二つゲット!!危ねー、最後だったか」

 

そう言いながら、何とかギリギリ勝ち取った戦利品をカゴの中に入れる。

 

……と、そこへ聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

「あー、間に合わなかったか」

 

振り返ると、そこには俺と同じレベル0の佐天さんが立っていた。

 

「よう。久しぶり、佐天さん」

 

「あ、先輩。久しぶりです。先輩もセールですか?」

 

「ああ。さっき、間に合わなかった、とか言ってたって事はもしかして卵取ってない?」

 

「あ、はい。来らなくなってて…」

 

「なら、一つあげようか?」

 

そう言いながら俺は、カゴの中から一パック取り出して佐天さんの方へ差し出す。

 

「え、いや、悪いですよ」

 

「でも持ってないんだろ?同じレベル0なんだから生活がきついのは分かってるしさ。レディーファーストって言葉もあるしな」

 

「でも…。……あ、なら、今日は私の家で食べませんか?そうすれば私は卵を一応貰った事になりますし、使う分だけ取って持って帰れば先輩的にも問題無いですよね」

 

「なるほど。でも、いいのか?俺が家に上がっても」

 

「構いませんよ。…って言うか先輩、中学時代にも何回か来た事ありますよね?」

 

そう、俺と佐天さんは中学が同じなのだ。つまり、俺は柵川中学の卒業生なのである。

 

「まあ…な。……分かった。今日は久しぶりにお邪魔させてもらうよ」

 

「はは。邪魔な訳ないじゃないですか。一応先輩以外の男の人連れ込んだ事無いんですよ?」

 

「父親は?」

 

「門前払いです!」

 

「いや、せめて話は聞いてやれよ…。ってかそれ、威張っていいのか?」

 

「大丈夫です!おかげで、支援が切れましたが…」

 

「全然平気じゃねぇじゃんかよ!胸張って言うな!」

 

「まぁ、仕方ないですね。とりあえず我が家にLet's go~!」

 

「発音いいな。佐天さん」

 

「そんなどうでもいい事はおいといて、買うもの買って、支払って、とっとと行きましょう!」

 

こうして俺は、久しぶりに佐天さんの家に行く事になった。

 

 

 

佐天さんの家に着いて、とりあえず荷物を置く。…いや、置こうとした。

 

「佐天さん帰って来たみたい。おかえり~佐天…さ……ん」

 

「な!御坂!?それに白井と初春まで!?」

 

「あら、誰かと思えば上条当麻ではないですか」

 

「上条先輩!?お久しぶりです。生きてたんですね」

 

「いや、初春、いくら先輩が金欠でたまに欠食しててもまだ死ぬ程じゃないよ」

 

「おいちょっと待て佐天さん?まだってなんだまだって」

 

「何?レベル0ってそんなに大変なの?」

 

その御坂の言葉に、若干の苛立ちを覚えたが………覚えたが!そこで忠告をすると言うのが大人だ。

 

「御坂、今の言葉は学園都市中のレベル0を敵にまわすようなもんだぞ」

 

「そうですよ。まぁ、レベル5の御坂さんやレベル4の白井さんじゃ、分からないと思いますけど」

 

「そうだな。その点、俺と佐天さんは近いものがあるよな。同じレベル0同士」

 

「はい。まぁ、あれですね。勉強で言う、頭のいい人が、『こんな簡単な問題が出来ない理由が分からない』って言うのと同じですね」

 

「な、何よそれ」

 

どうやら、天下のレベル5様にはどんなに生活が大変か分からないらしい。

 

「さぁ?私(わたくし)に聞かれましても。先程佐天さんが言ったように私もレベル4ですので」

 

「そうよね。初春さんは?」

 

「私もそこまで多い訳ではないですが、生活には困らない、少しなら贅沢できる程度には貰ってますから」

 

「どうやら、この中で同じ境遇なのはもともとわかっていましたが私と先輩だけみたいですね」

 

「ああ。まぁ、いいや。とりあえず飯作ろうぜ」

 

「そうですね。じゃあ先輩は今日作ろうとしていたものを作って下さい。家にある材料は使っていいですよ?」

 

「分かった。んじゃ台所借りるわ」

 

「はい。私も横でやらせて貰いますね。あ、先輩は自分の分だけでいいですよ」

 

「いいのか?」

 

「もともと無理言って来て貰ったようなものですしね」

 

こうして、俺と佐天さんは料理を始めた。俺も佐天さんもいつも家事をしているため、流石に慣れている。

 

……そして、俺はこの時完璧に忘れていた。家には暴食悪魔がいる事を。

 

 

 

自分の分の夕飯が作り終わると、テーブルに運ぶ。今日の夕飯は久しぶりにチャーハンにした。金欠少年の俺にとってチャーハンは最高の料理だった。

 

「相変わらず上条先輩はチャーハン作るの上手いですね」

 

「アンタ、料理上手いのね」

 

と、初春や御坂が褒めるほどチャーハンは作り慣れているのだ。特に御坂が褒めてくれるのは嬉しい。なにせあのお嬢様学校の生徒が褒めてくれるのだ。あそこの調理実習は凄いと聞いたことがある。そういう事をして来た学校の生徒が褒めてくれるのだ嬉しい限りである。

 

「料理教室とか言ってましたの?」

 

どうやら、白井は俺が料理教室に通っていたから上手くなったのだ、と思ったらしい。

 

「いや、料理教室は行ったことないぞ。…と言うかそんなとこ行ける金がない」

 

「じゃあ、もしかして独学ですの?」

 

「ああ。ネットで作り方調べて、慣れてきたらそれにアレンジを加えて…っていうかんじだな」

 

「先輩の料理はどれも美味しいですからね。…ほい、私のも出来ました」

 

そこに、佐天さんも自分の料理を持ってくる。冬らしく鍋にしたらしい。

 

「おお~、佐天さんは鍋ですか。上条先輩も食べます?」

 

「いや、なんで初春がそれを言うんだよ…。佐天さん、いいのか?」

 

「構いませんよ。先輩も食べてって下さい」

 

「分かった。あ、そうだ。俺のチャーハン食べたい奴いるか?」

 

「いいんですか?なら久しぶりにお願いします」

 

「なら、私も。食べた事ないからね。黒子は?」

 

「私は遠慮しておきますの」

 

「初春と御坂ね。佐天さんは?」

 

「うーん、先輩と一緒に食べるというのは?」

 

「ダメに決まってんだろ。じゃあ三人分追加ね」

 

そして俺は、追加で三人分のチャーハンを作り、テーブルに運ぶ。

 

「先輩のチャーハン冷めちゃいましたね。私のと交換します?」

 

「いや、いいよ。それよりも食おうぜ」

 

「そうですね。それじゃ、頂きます」

 

「「「「頂きます」」」」

 

食卓に並んでいるのは、鍋とおろし大根、それに白井以外はチャーハンというなんとも奇妙な組み合わせだった。

 

俺はとりあえず佐天さんが作った鍋を食べてみる。

 

「やっぱり佐天さんは料理上手いな。なんか秘訣とかあんの?」

 

「ないですねー。軽く親から教えて貰ったのをアレンジしたり、あとは料理教室行ってたんで、そのせいかもしれません」

 

「その話は前にもしてたな」

 

佐天さんが料理教室に通っていたというのは前にきた時に教えてもらった。

 

「でも、先輩もかなり上手いですよね。御坂さんもそう思いません?」

 

と、御坂に話を振る。御坂は、まだ食べていなかったらしく、慌ててスプーンで一口すくって食べる。

 

「うまっ!アンタ、本当に料理上手いのね」

 

「ありがとよ。でもこのくらいなら誰でも作れるけどな」

 

御坂は、そうでもないわよ、と言ってくれた。

 

ふと、初春の方を見る。さっきからずっとキョロキョロしている。何かを探しているようだった。

 

「どうしたんだ?初春。探し物か?」

 

「いや、そういえば佐天さん子供はどこにいるんですか?」

 

「「「えっ!」」」

 

「ほら、この間上条先輩と一緒に抱いてたじゃないですか。……そういえば、あの子誰の子なんですか?」

 

「あれ?初春には言わなかったっけ?あの子は私の子供だよ?」

 

「「「「え!?」」」」

 

「な!?誰との子供なんですの!?」

 

その質問に、佐天さんがこちらを向いて、ニヤッとした。俺はその顔に危険性を覚えて、

 

「あ、俺用があるから帰るわ」

 

「えー、当麻パパ帰っちゃうんですか?子供の世話を私におしつけといて」

 

予感的中。等の本人、佐天さんはニヤニヤしている。…これは、即時戦略的撤退をしなければならない。

 

「えーっと、佐天さん?何を言ってるのでせうか?」

 

「酷い!他人のふりなんて…」

 

「流石は佐天さんだな。だが、俺は負けない」

 

だが、三人は佐天さんの策略にはまってしまったようだった。

 

「アンタ、中学生に手を出すなんて最低ね!!」

 

「ジャッジメントですの!!」

 

「わ、私もジャッジメントです!上条先輩、支部まで同行してください!」

 

「待て待て!!俺はそんな事してなーい!」

 

こうして、佐天さん家で、三人対一人…いや、敵側に佐天さんを加えて四人対一人の大乱闘が始まった。

 

いつも、『その幻想をぶち殺す!』とか言っていたが、今回の幻想はぶち殺せそうになかった。てか、逆に殺されそうなレベル。てか、敵側のコンボがやば過ぎる。

 

「佐天さん、その子は本当にアイツの子なの?」

 

「はい。いきなり先輩が『好きだ!!』って言ってきて……。ね?先輩」

 

「「「殺す!!」」」

 

「待てぇーい!……佐天さん、頼むから待ってく……うおっ!御坂、危ねえよ!」

 

とりあえず佐天さんの家から出て走る。

 

こんな調子では本当に死にかねない。まずは…御坂はなんとかなるから、白井と初春を巻かない限り無理だ。そのためには…

 

プルルル…

 

『どうしたにゃー、カミやん?』

 

「土御門、俺を助けてくれ!…危ねっ!まだ死にたくはない!」

 

『かなり危険な状況らしいな。いいぜ、何をすればいい?』

 

「なんでもいい!ジャッジメントが動くような事件を白井の支部の近くで起こしてくれ!出来るだけ時間をかせいでくれよ!」

 

『ああ。了解したぜカミやん。生き延びろよ…』

 

「こんなところで死ぬ気はねぇ!!」

 

そこで電話を切り、再び走る事に集中する。

 

「電話しながらとはいい度胸ですわね!」

 

走る事既に五分。白井のテレポートをかわし、御坂の電撃を打ち消したり、初春は…ただ走ってきただけだな。まぁ、そんなこんなで、体力の消耗が激しかった。

 

だが、どうやら俺は何とか逃げ切ったらしい。

 

ドォン!

 

空に響く爆発音、それと同時に鳴り出した携帯。この二つが指し示すのは、あの爆発を起こしたのは土御門だということ。まさか、怪我人をだしてはいないと思うが、そこは心配ないだろう。

 

「な、なんですの!?」

 

と、そこで白井と初春の携帯がなる。どうやら呼び出しがきたようだ。

 

「こんな時に…。お姉さま、あとは任せました。私と初春は呼び出しがきてしまいましたのでそちらを処理してきますの。さあ初春、行きますわよ!」

 

と言って、白井と初春はテレポートしてこの場から消えた。

 

「さて、アンタと二人だけになったわね。じゃあそろそろ本気でいきましょうか!!」

 

バチッ!バチバチッ!

 

「御坂相手なら負ける事はねぇ!いくらでも来やがれ!」

 

この後、その周辺は、青白く光り続けた。

 

 

 

 

 

ーー(佐天side)ーー

 

先輩と、御坂さん達が出て行った後、(実は隣の家の人から預かったかなり小さな年の)子供を寝かせてから私も家を出る。

 

「先輩達どこ行ったんだろ?……まあいいや。とりあえずこっちに行こう」

 

そうして、家を出てから一分もしないうちに、

 

ドォン!

 

という爆発音が聞こえて来た。そして、直後に別の場所が青白く光だした。

 

「御坂さん達はあそこか。…でも、さっきの爆発音、何だったんだろ」

 

とりあえず、まだ先輩が死んでない事を祈りながら、私は秘密兵器を持って光っている方へ走り始めた。

 

 

 

 

 

ーー(上条side)ーー

 

バチィッ!

 

パキィィン!

 

「御坂、いい加減落ち着け!俺はやってないって言ってるだろ!」

 

バチバチッ!

 

パキィィン!

 

「中学生に子供産ませといて責任放棄とかふざけてんじゃないわよ!!!!」

 

「本当にしてねぇんだよ!…危ねっ!…第一妊娠してる佐天さん見たことあんのか!」

 

「ないけど!一時期佐天引きこもってたのよ!それってアンタのせいなんでしょうが!(そのせいで私の夢は叶わないものになっちゃったってのに!)」

 

「お前の頭はハッピーセットか!!俺はそんな事知らねーぞ!」

 

「……そう。そんなにしらばっくれるんだ。なら、こっちにも考えがあるわ」

 

そう言いながら、御坂はあきらかにいつもより大きい砂鉄剣を二本作った。

 

ーーこれは、死んだな。

 

アレの切れ味は知っている。舞い落ちる木の葉なんかだったら動かさなくてもさわっただけで切れる。

 

「いい加減、認めな…さい!!」

 

と言いながら、上と横から斬りつけてくる。しかも、俺の、剣とは反対側は壁で横によける事は不可能だ。後ろには逃げる時間がない。

 

ーーこれは、死んだな。

 

本日二度目の死亡宣告である。もうここまでくると未練もなにもそんな事さえどうでも良くなってくる。俺は今、ここで、御坂に殺される。その事実だけが頭をよぎった。

 

数瞬後、俺は殺される。そう確信した。

 

そして、その瞬間は来た。

 

御坂の左手に握られた剣が俺の右手に触れる。するとその剣は霧散した。死ぬ直前になって砂鉄剣も【幻想殺し《イマジンブレイカー》】の適用範疇だったことを知った。

 

だが、今となっては後の祭り。英語で言うならAfter the festival…それじゃ、後の祭りじゃなくて、祭りの後じゃねぇか!…と、自分でボケてつっこむ。我ながら哀しい最後だ。そう思わざるをえなかった。

 

誰かの声が聞こえた気がした。悲鳴じみた、懇願の叫びのような声。その叫びを聞きながら、俺は最後を覚悟した。

 

…だが、いくら待ってもその時がこない。不思議に思って見ると、そこには息を切らした佐天さんが立っていた。

 

「すいません先輩。こんな事しちゃって…」

 

「いいさ。それより御坂は?」

 

「御坂さんならあそこでレアゲコタに目をキラキラさせてます」

 

と言う佐天さんに、状況を呑み込めない俺は、

 

「どう言う事だ?」

 

と聞くと、

 

「御坂さんゲコタ好きなんで、レアグッツ投げたら絶対に取りに行きますから」

 

「なるほど、それなら俺も持ってるぜ。まぁ、俺はこの右手があるから普段は使わないけどな」

 

「やっぱり先輩も持ってるんですね」

 

「ああ、他にも自分で作った少女写真集とかあるぜ。(誰に使うかは読者の想像に任せる)」

 

そうこうしていると、御坂が正気に戻ったらしい。

 

「あれ?私…あっ!アイツは?……いた、佐天さんも?まあいいわ。佐天さん!そこをどいて!そこの馬鹿の首を締めなくっちゃ!」

 

「えっと…御坂さん、あれ、嘘ですよ?」

 

「いいから!…………へ?」

 

「いや、だから、あれ、嘘です。まさか本当に信じちゃうとは思いませんでしたが…」

 

「つ、つまり…何?私は佐天さんの嘘に騙されてた…わけなの?」

 

「まぁ、そうなりますね…」

 

その直後、何かが切れる音がした。

 

「…へぇー、佐天さんって、自殺願望あったんだ。なら、夫婦仲良く死になさい!!」

 

バチバチバチッ!ピカッ!ゴロゴロ…

 

「おい佐天さん…ちょっとやばくないか?」

 

「はい。私も予想外です」

 

「あれの予備は?」

 

「確かここに…あれ?ない」

 

「どうやら本格的にヤバイみたいだな」

 

と、そこへ、白井と初春が戻って来た。

 

「「私達も加勢します(の)!!」」

 

「状況は刻一刻と悪化している。こうなったら残る道は一つ。佐天さん!」

 

「ええ、分かってます!」

 

「「即時戦略的撤退!!」」

 

そう、戦略的撤退。今回は本当にこれ以外の道はない。二人して脇目も振らず全力で走る。

 

「佐天さん!確か初春は伝説のゴールキーパーとか呼ばれてたよな!」

 

「はぁ、はぁ、はい!…あらゆる監視システムをハッキングできます!」

 

「はぁ、はぁ、それに白井のテレポートか…佐天さん!学園都市にいる限り逃げ切るのは無理だ!だから…」

 

「「都市の外に逃げる!」」

 

「そうと決まれば急ぎましょう!はぁ、はぁ、子供の事は平気です!家の前に張り紙をつけておきましたから!」

 

「だいたい一年くらいの長旅になるぞ!はぁ、はぁ、覚悟は!?」

 

「とっくにできてます!それよりも急ぎましょう!ゴールが見えて来ました!はぁ、はぁ」

 

こうして、俺と佐天さんは学園都市を出て長い逃避生活にはいることになった。




えっと、次々回から比企谷君達俺ガイル組が入って来ます。なお、更新速度は、良くて一月に一回かな。

上条当麻×鳴護アリサの方なんですが、ネタがないんで感想欄でいいから書いてください…(Rタグつけてないんで、健全なやつで。グロ系もカットでお願いします)


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第二話

どうも一級狙撃手です。

今回は短い。

次回は俺ガイルsideの話。ようやく準備が終わるよ、パト○ッシュ。


先輩と逃避生活を始めて、今日で三日目になる。私の実家は学園都市の中にあるため、今は先輩の実家に泊まらせて頂いている。

 

先輩のお義母さんもお義父さんも(今はまだだけど、絶対に先輩のことつかまえるって決めたからこう呼んでも構わないよね♪)いい人で、居候の私は、随分楽(ラク)をさせて頂いてる。

 

だが、それにあまえてる訳にもいかない。

 

なぜなら、当然、御坂さん達がここにも来るだろうから。先輩曰く、御坂さん達の味方は一万人近くいるらしい。だが、審査が終わっておらず、まだ学園都市から出てこられないとのことだった。その前にここを出て、どこか違う場所へ向かわなければならない。

 

今、先輩と私はもちろん、刀夜さんも手伝ってくれて、三人で物件を探している。すでに大体目星はついている。

 

詩菜さんは、目星をつけた物件の近くでバイトを探してくださっているので、場所が決まり次第、すぐに移って、そのまま働く事ができるようにしていただいている。

 

学園都市に残してきた荷物は、私の荷物は春上さんが、先輩の荷物は土御門、という人がそれぞれ送ってくれた。また、先輩の住んでいた寮に居たというシスターは、先輩が通っていた学校の担任が引き取ってくれたらしい。私の方も、逃走生活初日に連絡して子供は引き取ってもらった。(というか帰った)もちろん、さっき出てきた人全員に、御坂さん達には何も言わないように言ってあるので多分平気だろう。

 

そんなこんなで、今日。今は刀夜さんと先輩と一緒に駅に向かっている。目的はリサーチした物件を目指すため。何本か乗り継いで千葉県総武市に向かう。

 

総武市に着くと、時間は丁度昼時。少しお腹がすいてくる。……と、目的の物件が見えてきた。

 

三階建てのアパート。各階の部屋は、一階が101〜110、二階が201〜210、三階が301〜310という感じで号数が振ってある。

 

一応、ここ以外にもリサーチした物件はある。ここは、三つ目の物件で、前二つは、一つは断られ、一つは辞退した。そんな感じで、全敗のまま、この物件にきたのだった。しかし、この物件はリサーチした中では最上級で、出来ればだがぜひともここにしたかった。だが、どうなるかは自分達次第だ。とりあえずは大家さんに話をしなくてはならない。

 

大家さんが住んでいるという部屋に行く。インターホンを押して、少し待つと中からいい感じの年上のお姉さんといった感じの人がでてきた。先輩の方を見ると、少し驚いていたがそれでもすぐ元に戻った。

 

大家さんが、私達を中に入れようとしたが、刀夜さんがそれを止め、十分後には、なぜか本人不在で住む事が決まっていた。




はい、とあるsideの準備は完了しました。残りは俺ガイルsideです。


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第三話(俺ガイルside)

えっと、どうも、一級狙撃手です。

信じられない事が起きた。



なんとですね、操作ミスで、この小説『とある科学の青春ラブコメは間違っている』の三話まで書いてあった原稿が消えました。詳細は後書きに書きます。





それでは、本編をどうぞ。


冬。一年で一番寒い季節。

 

今日は1月30日。ここ、千葉県総武市にある総武高校へ通っている俺、比企谷八幡は、正月の連休が終わってからも、またいつもと変わらない日常を過ごすのだろうと思っていた。

 

今日は火曜日で、いつもと変わらず学校がある。なので学校に行かなくてはならないのだ。

 

学校に行ってする事は、大きく分けると、勉強をする。戸塚と話す。戸塚と話をする。奉仕部という名の読書部で本を読む。に、分けられる。

 

まぁ、ごたごた言っても始まらないので、取りあえずチャリを走らせる。

 

学校が近くなって来ると、クラスの上位カースト集団…まぁ、THE・葉山&三浦グループが校門近くを歩いていた。相変わらずいつものように、炎の女王様と空気清浄機を中心に、戸部や由比ヶ浜が無意識的に、機嫌を損なわないようにしゃべっている。

 

その横をチャリで颯爽と駆け抜け、チャリ置き場にチャリを停める。そして、下駄箱を目指して歩き始めた。

 

下駄箱に着くと、なんとなく違和感を感じた。

 

慣れた者ほど、そして、よく注意して見る者ほど、そういうものに気づきやすい。俺は、世間一般で言うところのボッチなので、他の奴よりはよく見ている自信はある。なので、違和感の正体もすぐに分かった。

 

「この靴箱使ってんの誰だ?」

 

いつもは使われていない俺の下にある下駄箱。ここの生徒は、一人一つ自分の番号の鍵を持っていて、それが下駄箱の番号とリンクしている。つまり、この学校の下駄箱は扉がついた鍵式なのだ。だが、何年か前の先輩がその鍵を無くしてしまい、スペアに変えてあったその鍵は、他の鍵が、鍵に青のプラスチック板が付いているのに対して、鍵に赤のプラスチック板が付いているのだ。

 

その鍵が無いという事は、誰かが使っているという事だ。

 

「まあいいか。別に俺に害があるわけじゃないし」

 

そうして、俺はその下駄箱を無視して靴を自分の番号の下駄箱に入れて、クラスへと歩みを進めた。

 

 

 

 

HR中。

 

いつも通り平塚先生の事項連絡があった。だが、そこに今日はもう一つ連絡があった。

 

「えー、皆に追加連絡がある。今日から転入生が来る」

 

その話に、クラスがざわめく。……俺はどうか?ふっ、残念だったな。そこらへんのリア充共と違ってボッチにはこういったイベントはめんどくさいだけなんだな。と言うか転入生など来なくていいまである。…だって結局その転入生にすら無視されるんだぜ?しかも、クラスの奴らよりも関係性が薄い……と言うか無いからそもそも存在を認知されないだろ?だから転入生にとっちゃ七不思議なんだよな。何が不思議か?簡単だ。クラスの人数だけ書いた紙があるだろ?それをたまたま転入生が見たとする。そして、なんとなくで数えるんだよ。でもな、数えた数とクラスの人数が何回数えてもあわないっていう事態に陥るんだ。なんでか?……まぁ、普通に考えて原因は俺だろうな。俺が転入生に認知されないからどう頑張っても一人分食い違う訳だ。…………自分で考えてて悲しくなってきた。

 

と、そんな事を一瞬で考える。

 

「その転入生の希望により、今日からこのクラスに入ることになった。残り少ないが仲良くしてやってくれ。ちょっと待っていろ。呼んでこよう」

 

そう言って先生は教室を後にした。

 

当然、教室はざわめき立った。男なのか、女なのか。カッコいいのか、可愛いのか、など。まぁ、まとめれば転入生が気になるのだ。

 

だが、俺にとってはそんな事はどうでもいい。なぜなら、さっきも言った通り、関係が無いから。クラスでも友達が戸塚しかいないのに、転入生なんぞが俺に関わってくるわけが無いし、俺もそれは望まない。注目を集めたくない。ボッチに目立てとか『死ね』って言ってんのと同義だからな。

 

ーーだが、俺の想いも虚しく、結果は真逆だった。

 

「いや、すまんな。連れて来たぞ。入って来い。自己紹介からしてくれ」

 

そして、入って来たのは、俺の知っている、しかし想像もしていない奴だった。

 

「今日から転入します。折本かおりです。前は海浜高校にいました。これからよろしくお願いします」

 

………………は?ちょっと待て。俺の記憶が正しければ折本かおりという名前の奴は一人しかいない。いや、もしかして、同姓同名の奴なのかも。

 

そう思って顔を上げると、そこに立っていたのは、間違いない。正真正銘、俺の知る折本かおりだった。

 

いきなりの事に、

 

「は!?」

 

と、声を上げてしまった。これだけでも十分まずいのだが、(クラスの奴らの視線が俺に集中してて主に精神的にヤバい)折本はさらに追い討ちをかけてきた。……ねぇ、討つって俺、死んじゃうの?打つだよね?追い打ちだよね?追い討ちじゃないよね?

 

「あ、比企谷じゃん。久しぶり」

 

…………これは、詰んだわ。

 

だが、ただでやられる訳にもいかない。せめて理由だけでも聞き出さなければ。

 

「何でお前がここにいる?」

 

「そりゃ、転入して来たから」

 

「そうじゃない。その理由だ」

 

「うーん、しいて上げるなら、一番の目的は比企谷だね。いろんな意味で」

 

Oh…。余計に詰んだわ。だが!

 

「なんだ?またからかいに来たのか?」

 

「違うって。まぁ、後で話すよ」

 

と、ここで平塚先生が話に入って来た。

 

「まあいい。取りあえず折本の席は比企谷のとなり、一番後ろの空いてる席だ」

 

先生はそう言って俺のとなりを指す。折本は、分かりました。と言ってこっちに来た。そして、俺の横に来た時に、

 

「これからよろしくね、比企谷」

 

と言って来たので、

 

「こっちとしちゃ、あまりよろしくしたくないです…」

 

と言っておいた。すると、

 

「そうだ。比企谷、昼休み空いてる?」

 

と聞いて来た。……人の話聞いてましたかね?折本さん。よろしくしたくないですって言ったばかりだよ?

 

「……いや、アレがアレで忙しいな」

 

「暇なんだ。じゃあさ、人気(ひとけ)の無いとこに連れてってくんない?比企谷に話があるから」

 

こうなったらもう言う事に従うしか無い。

 

「……はぁ。昼休みに人気のない場所?………チャリ置き場でいいか?」

 

「分かった」

 

こうして、昼休みにチャリ置き場に集合する事が決まった。ちなみに、折本の席には、休み時間になるたびに折本を囲うように人だかりができていた。

 

 

 

 

昼休み。

 

チャリ置き場に着いた俺は、柱に寄っ掛かって昼飯をたべている。すると、折本がやって来た。

 

「ごめん比企谷。私から言ったのに遅れちゃって」

 

「別に気にしてねぇよ。どうせあれだろ?取り巻きを払うのに時間かかっただけだろ?」

 

「よく分かったね」

 

「そのくらいはな。で?本題はなんだ?」

 

「そ、そうだね。えっ…と、ま、まずは、………ご、ごめんなさい!」

 

「……………は?」

 

もう何度目のこのリアクションだろうか。

 

「えっと、何に対して謝ってる?」

 

「それは…、中学の時のアレだけど…」

 

俺と折本の間で通用する『アレ』と言うと思い当たるものは一つしかない。

 

「いや、気にしてねぇよ。と言うか蒸し返される方が俺としてはキツい」

 

「ご、ごめん。………でさ、こっからが本当の本題なんだけど」

 

「ああ」

 

「あの時の返事。まだしてなかったよね。………随分、遅くなっちゃったけど、……わ、私でよければ、比企谷の気が変わってなければ、私と付き合って下さい」

 

「……………なんのつもりだ?罪滅ぼしか?それともまたからかってるのか?罪滅ぼしなら気にするな。俺はなんとも…「違う!!……比企谷を傷つけちゃった後で勝手だとは思うけど…。でも、今回は本心。私は、比企谷が好き」…そうか。その気持ちはありがたい。……でも、なぜだ?なぜ、あんな事をした…、お前の事を狂わせた相手に告白なんかするんだ?」

 

「……やっぱり、比企谷は優しいね」

 

そう言った彼女の顔は、ほのかに赤みがかかっていたが、笑っていた。

 

「私はバカだった。それだけの事なんだよ。あの時、私のミスにいち早く気がついた比企谷はわざとあのタイミングで私に告白をした。そして、私はその後またミスを犯した。…当時はね、私がミスったのは比企谷のせいだ、って思ってた」

 

「まぁ、実際に俺のせいだからな」

 

「ううん、違う。だって、そもそも私は比企谷が告白する前からミスってたんだから。確かに、二回目のミスは比企谷が悪いのかもしれない。でも、それを起こすきっかけを作ったのは私。だから、悪いのは私のはずなのに…。気づいたら、主犯格の私まで一緒になって比企谷をイジメてた。比企谷の取った行動の本当の意味も考えず、表面だけ捉えて」

 

「お前、深く読み過ぎだ。別にそんなんじゃねぇよ」

 

「違うでしょ?だって、告白ならいつでも出来る。でも比企谷は目立ちたくないからそんな事をしないはず。もししたとしてもあんなタイミングじゃあ絶対にして来ない。だから、アレは嘘の告白だったんでしょ?自分を犠牲にするための」

 

「…………はぁ。なんか随分飾られたな」

 

「どう言う事?」

 

「いい加減俺も認めよう。確かに俺はあの時お前の事を助けた。……まぁ、手段は最悪だが。でもな、何でお前の事を助けたと思う?」

 

「わかんない…けど」

 

「そりゃそうだ。じゃあ本当の事を言うぞ。あの告白はな、一応、本気だ///」

 

「えっ!」

 

「じゃなきゃ損するだけの作戦に誰が行くんだよ。それからな…、その……さっきの答えだが、……俺は、いいぜ」

 

この時、俺はどんな顔をしていただろうか?……まぁ、多分目の前の折本は俺の鏡だろうな。めちゃめちゃ顔が赤い。なんならトマトにでもなれるんじゃねぇ?

 

「じゃ、じゃあ比企谷は…、その…私と付き合ってくれるの?」

 

「そう言ってんだろ。何度も言わせんな、恥ずかしい」

 

 

 

こうして、俺…比企谷八幡と、折本かおりは付き合う事になった。




はい。……もう泣きたいです。

えっとですね、どこから消えてるかと言いますと、折本が転校して来て、クラスに入ったあたりから後ろが全部消えました。

ただですね!ただですよ!なんと!原稿より良いのが書けた!!



これは割とマジです。なんとなく原稿を覚えていて、話の進み方は分かっていたので、それにそう形で書いたら、原稿よりよくなった。



ちなみに、もともとの三話は、話がもっと進んでます。今回は、原稿の方の告白が納得いかなかったのと、台詞忘れたので、納得いくように変えたらこうなりました。ちなみにですね、場所は変わってませんよ。原稿でもチャリ置き場で告白してました。





というわけで、なんと、次回からの原稿が消えたため、更新にちょっと時間がかかります。(ちなみに、先に原稿書いて、それを編集したりして書いてるのはこの小説だけです。他のは思いつきでやってるので、かなりキツい)


ちなみにですね、俺ガイルsideの準備期間をあと一話分もらいます。なので、本格的にクロスオーバーになるのは五話からになります。


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第四話(俺ガイルside)

はいどうも、一級狙撃手です。

更新遅れてすみません。
これにて俺ガイルの準備も終わりました。次回から本格的にクロスします。


それでは、本編をどうぞ。


昼休みの件があり、今はそのまま昼休み。俺たちはとりあえずチャリ置き場をはなれて、自販機へと向かっていた。お互いに恥ずかしくなり、気を紛らわす兼普通に喉が乾いたで、一番近い自販機、校門の外にある自販機に向かっている最中だ。

 

自販機に着くと、お互いに買いたいものを買う。そして、その場で買ったものを飲んでいると、向こうから二人組が歩いてきた。

 

「で?佐天さんはこれからどうするんだ?」

 

「まぁ、今のままが現状一番効率がいいですしね」

 

そんな事を話しながら、黒髪ボサボサの男に佐天と呼ばれた黒髪ロングの女子。二人は話しながらこっちに歩いてくる。

 

そして、俺たちの近くまで来た時に、黒髪ロングの佐天?が、

 

「あ、あのー、この辺で一番安いスーパーってどこだか分かりますか?」

 

と聞いて来たので、とりあえず、

 

「あっちに一軒あるけど…」

 

と答えた。すると、佐天?は頭を下げて黒髪ボサボサの男とその方角へ向かって行った。

 

「……何だったんだろ?」

 

「さぁな。でも、背格好からするに俺らに近い年のやつらだろ?で、こんな時間にうろついてるって事は、相当な理由があるか、不良だな」

 

「ふーん、……まぁいいや。そ、れ、よ、り!比企谷ぁ~!」ダキッ!

 

「うおっ!お、折本!?お、お前っ!離れろよ!?」

 

「そんな……、比企谷は、私の事、嫌いなの?」

 

くそっ!ここで上目遣いは卑怯じゃないですかね折本さん。

 

「あはは、照れてる~」

 

「うぜぇ……」

 

「はいはい。……もう、彼女にウザいとか言わない。いい?」

 

お前がそれを言うか、と思ったが、口には出さず、素直に従う事にして、頷いた。

 

 

そのあと折本は持参の弁当を、俺は購買のパンをそれぞれ食べて教室へ向かった。ちなみに、教室へ着くまで、折本は終始ニヤニヤしながら俺の腕にくっついていた。なので、周りからの……気のせいかもしれない、いや、気のせいであってほしいのだが、特に由比ヶ浜からの視線がキツかった。

 

教室に着き、席に座るため、自然と俺から離れる折本。ちょっと名残惜しそうな顔をしていたのは気のせいだろう。

 

 

 

次の授業は数学だ。つまり、俺にとっては睡眠学習を実行する時間だ。なので、俺の必殺特技、ステルスヒッキーを発動させ……、発動しない…だと。

 

相変わらず俺に注ぎ込まれる好奇の視線。その中でも特にすごいのが二人。由比ヶ浜と川…川……川村さんだ。

 

由比ヶ浜は鬼の形相と言って問題無いほどに顔が歪んでいる。

 

川……川岸さんはなんと言うか、ほんの少しだけおちた雪ノ下みたいな氷の視線を無表情で送ってくる。

 

 

ふぇぇ、怖いよぉ……。

 

 

と、そこに、さらに爆弾……しかも核爆級のものを落としていく折本。しかもその顔は満面の笑み。

 

「あ、そうだ。比企谷、今日家に行ってもいい?」

 

その言葉に、クラスの空気が、クラスの時間が凍りついた。

 

 

ーーあ、これは死んだわ。

 

 

とりあえず脳内で遺書を書き上げる。

 

 

 

 

母さんへ

 

とりあえず死にました。どうやって動こうが詰みです。なので、小町を頼みます。

 

 

 

 

こんなもんでいいだろう。後は、もう死ぬしかない。

 

そして、俺の最悪の一時間が幕を開けた。

 

 

 

 

 

 

最悪の一時間が終わり、現在HR中。

 

折本が、さっきからチラチラとこっちを見ている。

 

「なんだよ」

 

と聞くと、顔を赤くしてそらす。そして、しばらくすると再びチラチラと見てくる。

 

本当になんなんだろうか。マジで気になる。

 

そして、そのまま時は過ぎていき、放課後。俺は、気になっていたことを聞くことにした。

 

「おい折本、お前マジでどうした?大丈夫か?」

 

「え!?あ、うん。ぜ、全然平気!全く問題無し!ノープロブレム」

 

そう言いながら全力で否定する折本は逆にあやしかったが、とりあえず了解しておいた。

 

 

 

 

 

折本の話が終わり、帰りの用意を整えて折本に声かけてクラスを出ようとすると、いきなり由比ヶ浜にどつかれた。

 

「ヒッキー、部活行くよ!」

 

「ちょ、おい!由比ヶ浜。掴むな!」

 

と、そこに折本が乱入。

 

「結衣ちゃん、比企谷嫌がってるから離して」

 

そう言った折本の声は低い。すると、今度は由比ヶ浜が、

 

「香織ちゃんには関係ないよ」

 

と言ったのだが、俺は、これを逃げるチャンスと、折本は多分事実を、それぞれが主張した結果、

 

「折本は俺の彼女だ」

「比企谷は私の彼氏なの」

 

 

見事に重なった。

 

そして、互いに顔を見合って、悶える。そして、

 

「ま、まぁ、そんな訳だし、折本は今日が登校初日だし、他にも色々あって俺、今日休むわ。じゃな」

 

そう言って、返事もまたず一人で抜け去る。そして下駄箱で靴を履き替え、俺は外へ出………られなかった。振り向くと、そこには膨れっ面の折本。

 

「私をおいていかないでよ。彼女でしょ?」

 

そう言う彼女の顔には、微かに不安の色が見え隠れしていた。

 

「ああ、悪かった。次からは気を付けるよ」

 

俺はそう答えて、折本が準備を終えるのを待ち、帰ることにした。

 

チャリ置き場まで来て、思い出す。

 

「そう言えば、折本ってチャリか?」

 

「うん。そうだけど」

 

「ならいいか。とっとと帰ろうぜ」

 

「いいけど……、そうだ!ねぇ比企谷」

 

「ん?どした?」

 

「私を泊めてくんない?比企谷ん家に」

 

俺は、一瞬折本が何を言ってるのか分からなかった。

 

 

 

 

 

結局、あの後色々離した結果、折本はこれから俺の家に泊める事が確定した。

 

理由としては、

 

折本が引っ越す理由にもなった、両親の不在。

 

親戚もいないらしく、唯一の身内の親が海外へ。その時に反対して折本はついていかなかったため、ある程度の金を渡されておしまいだったらしい。ちなみに、その金は家を売った時の金の一部らしい。

 

 

とまぁ、そんな訳で、俺と折本は微妙な心境で帰る事になった。



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第五話

この作品に関しては割と投稿ペースを守っている一級狙撃手です。

今回も短めです。


それでは、本編をどうぞ。


某スーパーにて、

 

サカナ、サカナ、サカナー、サカナーヲタベールト、アタマ、アタマ、アタマ、アタマガヨクナル~…………

 

「お、今日は魚が安いのか。佐天さんは何がいい?」

 

「私ですか?そうですねぇ…………先輩に任せます。できるだけ安いの買って帰りましょう」

 

「分かった。あとは米だな。……どうすっかなー、米高いし、流石に買い続けるのはキツいか」

 

「そうですね、お米は最近高いですし。………あ!」

 

「どうした?佐天さん」

 

「いえ、確か私の小学校時代の友達に米農家の子が一人居た気がして。明日辺りに春上さんに連絡とって私の部屋から昔の連絡網を取ってきてもらいます」

 

「本当か!助かる。これで米が安くてに入る可能性が……」

 

「とりあえず他の食材も買って、それからどうします?」

 

「まぁ、時間余っちゃうよなー。………一緒にこの街でも探索に行くか?」

 

「そうですね、そうしましょう」

 

という事で、とりあえず今日の予定が決まり、俺たちはスーパーをあとにした。

 

 

 

 

帰宅中

 

「そう言えば、ここって高校ですよね?」

 

「まぁ、そうだろうな」

 

と言いながら俺たちが歩いているのは、校門のところの名前から察するに、『総武高校』という名前の高校の前である。

 

「どのくらいのレベルなんだろ?」

 

「それは調べないと分からないけど……。って言うか学校どうする?」

 

「そうですねぇ、私は通いたくはありますけど。………先輩はどうするんです?」

 

「俺か?……俺は長期間休むのは多かったしまぁ、大丈夫なんじゃないか?小萌先生も事情は知ってるし」

 

「根回しが良いんですね、先輩の方は」

 

とまぁ、そんな話をしながら帰宅時間を満喫する俺たちだった訳で。

 

このあと家に帰り、そんでもって昼飯食って市内探索へ行き、いろいろ見てまわって、気づいたら六時位になってて、そこで探索を切り上げ、家に帰り、現在夕飯のカレーを作っているところ。ちなみに、魚は昼飯で美味しくいただきました。

 

「放て!心に刻んだ夢を未来さえ置き去りにして限界など、知らない、意味ない、この能力(チカラ)が光散らすその先に遥かな想いを~~♪」ルンルン

 

「佐天さん機嫌いいな」

 

現在、佐天さんがカレーのルーの面倒を見て、俺はご飯を炊飯ジャーにセットした後、風呂を洗い、今はリビングでくつろいでいる。

 

「いや、なんか先輩と同棲する、って考えたらちょっとテンション上がっちゃって。……目標もありますしね」

 

「目標?」

 

「はい。先輩を振り向かせて私のものにする、っていう目標があるんです」

 

「なっ!」/////

 

「あ、もしかして先輩照れてます?」ニヤニヤ

 

「……あまりからかうなよ」ハァ

 

「別にからかってませんよ。結構本気ですって。なので、覚悟しといて下さい?先輩をゲットして、ついでに料理で先輩の胃袋もゲットしちゃいますから」

 

「………まぁ、佐天さんだったらいいかもな」ボソッ

 

「えっ!?」カァァァァ

 

「あれ?もしかして佐天さん照れてる?あれあれ?」ニヤニヤ

 

「先輩」

 

「ごめんなさいすみません許して下さい。ってかそんな冷たい目で見ないで」

 

「はぁ、まったく先輩は。……乙女の心はからかうものじゃないですよ?」

 

「悪かったって。あ、そだ、ちょっと外出てくるわ」

 

「どうかしたんですか?」

 

「いや、なんとなく夜風で涼みたいなー、と思ってな。階段の踊り場にいるから」

 

「なるほど。じゃあ出来上がったら呼びますね」

 

「ああ、よろしく頼む」

 

そう言って俺は玄関へ行き、ドアを開けて踊り場へと向かう。踊り場につき、備え付けのベンチに腰を降ろし、夜風を体に浴びる。

 

そうして、黄昏ていると、下の方から話し声が聞こえて来た。

 

「へぇー、ここが比企谷ん家なんだー」

 

「ああ」

 

「小町ちゃんとかとは久しぶりに会うなあ」

 

「あ、そっか。折本には言ってなかったわ。ここに小町はいないぞ。と言うか俺以外誰もいないな」

 

「え!?そうなの?じゃあ何?比企谷は今一人暮らし状態なの?」

 

「ああ、そうなるな」

 

「ってことはつまり……………///」カァァァァ

 

「ど、どうした?大丈夫か、折本」

 

「う、うん/////」

 

と、そこまで聞こえたところで、姿が見えた。それは、昼間の高校生二人だった。

 

「あ、昼間の」

 

と、俺が言うと、二人組の女の方が、

 

「え?あぁー、思い出した。スーパーの場所を聞いてきた人」

 

「その件はどうも。あいにく引っ越してまだ五日も経ってないんで全然この辺の事を知らんのですよ。……っと、自己紹介が遅れたな。俺は上条当麻だ。よろしくな」

 

「比企谷八幡だ」

 

「コレの彼女の折本かおりです。よろしくお願いします」

 

「おまっ、コレ呼ばわりはないだろ」

 

「ごめん、つい」

 

「あのなぁ……」

 

「ところで、上条さんは何号室なんですか?」

 

「俺は204号室に住み始めたところ」

 

「お、マジか。ってことはお隣さんな訳だ」

 

「そっちは何号室なんだ?」

 

「俺は205号室にちょうど一ヶ月くらい前から住み始めた」

 

と、そこに、上から佐天さんがやって来た。

 

「先輩、晩御飯出来ましたー、って、………浮気ですか?」

 

「待て待て、なぜそうなる!?しかもその前に俺たち付き合ってないよね!?」

 

「そっちの方は……って、昼間のもう一人の方だったか?」

 

と、比企谷がそう言い、俺は佐天さんに軽く事情を説明し、そして、

 

「私は佐天涙子って言います。涙子は、涙に子供の子で涙子です。先輩とは、今は何の関係もないですけど、いずれ作っていくつもりです」

 

と、大分恥ずかしい事を言いふらした後、比企谷と折本さんがそれぞれ自己紹介をして、そのあと、

 

「お近づきの印に晩御飯食べて行きません?隣ですしご近所さん付き合いと言うことで。どうです?」

 

という佐天さんの提案により、二人が家で夜飯を食べていく事になった。




次回は六月後半から七月全般のどこかで更新です。


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第六話

はいどうも、一級狙撃手です。

今回は本来の一話分を三つに切って投稿するので、そのうちの最初です。

それでも六千文字はありますけど。


今回は切った関係上、クロスはしてないです。


学園都市。東京にある大きなそれは、科学sideの総本山であり、科学sideの総本山であるからしてもちろん科学力も現代のそれを遥かに上回る。

 

そして、学園都市の存在意義でもある、学園都市を学園都市たらしめる存在が、【能力開発】である。

 

 

そして、その能力開発でLevel1と判定され、本人の努力によってLevel5にまで駆け上った茶髪の電撃使い、御坂美琴は、ようやく外出許可を得て、妹達、白井黒子、初春飾利と一緒に本格的に上条当麻捜索を開始した。

 

 

(絶っっ対にアイツを見つけてやる!!)

 

 

そもそも、なぜこんなに彼女が怒っているのか。それは、本人すら気づいていない上条当麻への好意、そして、その好意からくる心配、そして、佐天涙子への友達としての心配、さらに、その上条当麻と佐天涙子が特別な関係になるのを未然に防ぎたい。といういろんな思いが重なって現在の状況が出来上がっている。……なにせ、それは初恋の相手が友達に取られるようなものなのだから。

 

現在、学園都市に残っていた十数人の妹達は、他の日本内にいる健康体の妹達と連絡を取りつつそれぞれ東西南北、縦横無尽に拡散していた。なので、いまここにいるのは美琴、黒子、初春の三人になる。

 

初春のハッキング力をもってすれば、人一人(ひとひとり)くらいなら簡単に探し出せるのだが、さすがに犯罪を犯してまで探さないといけない(美琴的には探さないといけないのだが、)訳ではないので、そんな事はしない。

 

とりあえず、わかりやすいところから探す事にする。

 

「それでお姉様、まずはどこから捜索いたしますの?」

 

黒子が聞いてくる。

 

ーーーーー

ーー

この作戦に白井が参加しているのは、友達として佐天涙子を心配しているから、という思い。……そして、何よりも、その心配と同じくらいに、美琴の顔に笑顔が早く戻って欲しいから。……最近の、あの二人がいなくなってからの美琴は、怒るか、悲しむか、笑っても愛想笑い。そして、夜になると二、三日に一回のペースで後悔の声を漏らしたり、たまに泣いたりしていた。そんな美琴に、早く笑顔が戻って欲しいから、白井黒子はこの作戦に参加していた。

ーー

ーーーーー

 

「まずはアイツの家から当たりましょうか。……っていっても流石に二週間近く経ってるからいないだろうけど。行くわよ」

 

「行くわよ。って、お姉様、場所は知っていますの?」

 

「うん。前に教えて貰ったんだ。なんの時だったか忘れちゃったけどね。………なんの時だったかな~」

 

と、しれっと言った美琴に対して、黒子は、

 

「お、お姉様。も、もしかして一度行った事がある、なんて事は……」

 

と、信じられないものを見るような目で、オロオロと聞いた。

 

「ん?まだ無いけど。……それがどうかしたの?」

 

と、答えた美琴に、今度は初春まで混ざって二人で聞いてくる。

 

「……お、お姉様、黒子の聞き間違いだといいのですが、……い、今、『まだ』と言いましたか?」

 

「御坂さん、上条さんの家に行く気満々なんですね……」

 

二人が同時にそう言う。それに対し、美琴は自分の誤ちに気づいたらしく、

 

「ち、違っ!そ、そう言う意味じゃなくて!!……む、無意識!無意識だから!!」

 

だが、この反論が逆に美琴を追い込む事になった。

 

「ほうほう、つまり御坂さんは『無意識』で叫ぶ程行きたい、と」

 

この初春の反撃に、顔を赤くして悶えながら、美琴と、………なぜか黒子までがしゃがみ込んだ。

 

「……私が………アイツの事…………。ッツ~~~///」

 

「……お姉様が、お姉様が、………そんな訳ありませんのぉぉぉぉぉっっ!!!」

 

「ちょっ!白井さん!ここ、東京の街中ですから!路上でしゃがみ込むのも危険なのに騒がないで下さい!御坂さんも!……って言うかまだ学園都市が見えてるんですよ!?どれだけ動いてないんですか!!」

 

 

 

 

 

ーーという事があったが、その後なんとかまず、最初の目的地である上条当麻の実家へと辿り着いた。

 

「ここが、アイツの家……」

 

確かに、今、三人が立っている目の前の家にはちゃんと『上条』と、書いてある表札がある。………のだが、実際、そこはどうでも良かった。

 

問題なのは、家のある『場所』だった。

 

なぜ場所が問題なのか。

 

周りを見渡せば普通に家が規則正しく建ち並ぶ、どこにでもあるような住宅街。

 

だが、この三人の中のある一人には、物凄く思い出深い場所だった。

 

「……ウソ…………ですの」

 

白井黒子。

 

そう、彼女にとってはここは物凄く思い出深い場所。なぜなら、

 

「……いや、まさか、そんな筈ありませんの!」

 

急に叫び出した黒子に、初春と美琴は少し心配になり、

 

「大丈夫?黒子」

 

「どうかしたんですか?白井さん」

 

と、それぞれ声をかけて見るも、変化どころか、返答もなかった。そして、

 

「ッ…………」

 

何かを信じられないような感じ、何かを認めたくないような感じの顔をしながら、その場から全力で駆け出す黒子。

 

その急な行動に、二人は一瞬止まったものの、すぐに美琴が動き出す。

 

「初春さん!そこの家の人にインタビューお願い!私は黒子を追いかけるから!終わったら近くの店にでも入ってて!私から連絡する!」

 

と、言い終わるやいなや、脚に電気を纏い、一瞬で消えて行く美琴。

 

初春は、返事すらできずに、その場に取り残された。

 

「……さすがLevel5ですね。……よしっ!私は私の仕事をやりますか!」

 

と、気分転換をして、初春はその家の玄関へと歩いて向かった。

 

 

 

 

 

 

ーー(美琴side)ーー

 

美琴の本気の能力を使った走りの前には、いくら速いとはいえ、生身の脚では限界があった。

 

すぐに追いつかれ、黒子は美琴に肩を掴まれる。

 

「……どうしたのよ、黒子があんなに取り乱すなんて」

 

「いえ、なんでもありませんの……」

 

口ではそう言っているが、相変わらず、顔は変わっておらず、目は、今ここにないものをみているような感じの黒子に、痺れを切らした美琴は、

 

「あぁーもう!……なんでも無いわけないでしょうが!……一体何があったの?………それとも、私にも言えない?……まぁ、無理に言えとは言わないけど、こっちも黒子の事心配してんのよ?」

 

そう言う美琴の声は、最初こそ怒鳴っていたものの、すぐに優しいものに変わり、そして、黒子の事を抱きしめていた。

 

そんな美琴に、黒子は、

 

「ありがとう……ございます、お姉様。………でも、これは私情ですわ。私の事ですの。……一つだけ言うならば、………今、上条さんにはお会いしたくありませんわ」

 

「……それはアイツに、って事?」

 

「いえ、上条さんの家の人に、ですわ」

 

「…………そう。分かったわ。じゃあ近くの店にでも入って初春さんを待ちましょう」

 

「え……でも、そしたらあの人の家は……」

 

「……黒子、本当にどうしたのよ、こんなに取り乱すなんて。いい、さっき私は『店にでも入って初春さんを待ちましょう』と言ったの。この意味、分かるでしょ?……この程度の事も言わないと気づかないなんて相当ね。……本当、大丈夫なの?」

 

「大……丈夫ですの。問題無いですわ」

 

「……まぁ、自分の事は本人が一番知ってるでしょうから何も言わないけど、……さっきの言葉、信じるわよ。………そうと決まれば、さっさと行きましょうか」

 

「……でしたら、こちらにいいカフェがありますわ」

 

そうして、美琴と黒子は少し離れたところにあるカフェに入る事になった。

 

 

 

 

 

ーー(初春side)ーー

御坂さんが白井さんを追いかけて消えた後、残された私はとりあえず仕事をこなす事にした。

 

「さて、行くとしますか。……確か、お母さんの名前は詩奈、でしたっけ。だったら……」

 

そして、玄関前まで来た私は、インターホンを押し、

 

「すみません、上条詩奈さんのお宅はこちらでしょうか、お届けものがあって来ました」

 

と、宅配業者に扮して玄関の戸が開くのを待った。

 

 

しばらくして、空いたドアから出てきたのは、物凄く久しぶりに見る詩奈さんの顔だった。おそらく最後に見たのは中学生の、一昨年の授業参観ではないだろうか。

 

「はいはい、今でます………。あら、飾利ちゃん、どうしたの?」

 

「詩奈さん、お久しぶりです」

 

「どうしたの?珍しい。もしかして当麻が何かやった?」

 

「ま、まぁ、そうなんですが。家に、上条先輩は居ますか?」

 

「いないわよ?ほら、靴も無いでしょ?……それより、当麻は何をやったの?」

 

と言って、玄関を見せる詩奈さん。

 

「……本当に無いですね。……実は、上条先輩が中学生を連れて学園都市から脱走してですね……」

 

と、簡単に説明をする。

 

そして、説明が終わると、詩奈さんは、何やってんだか、という顔をしていた。そして、とりあえず上がって行って、と、言って下さったので、お邪魔する事になった。

 

 

ーーだが、私はこの時、詩奈さんは相当な演技家である事を忘れていた。

 

 

家に上がり、確認のために上条先輩の部屋を見せてもらう事になったのだが、確かに生活反応は出なかった。

 

そして、戻って来て再びリビングに来た後、少し詩奈さんと話したりしながら軽く捜索するも、手がかりになりそうなこれといったものは見当たらず、結局無駄足になってしまった。

 

仕方ないので、ネットで近くの店を探していると、カフェが出てきたので、そこに行く事にする。

 

そして、歩き出そうとしたその時、急にポケットの中の携帯が鳴り響き、携帯がメールを受信した事を知らせる。

 

ディスプレイをみると、そこには『御坂美琴』の文字が。

 

画面をワンタッチし、中身を開く。すると、丁度これから行こうとしていた店の名前が書いてあり、そこに来い、との事だったので、とりあえず『了解しました』と、送って、それから白井さんがどうなったのか気になったが、とりあえず行けば分かるので、カフェへ急ぐ事にして、携帯(スマホ)をポケットにしまい直し、さっき頭に叩き込んだ地図を元に、そのカフェを目指す事にした。

 

 

 

 

 

ーー(黒子&美琴side)ーー

 

時間は少し巻き戻って、初春が上条家に入って部屋を探索し始めた頃。

 

「……ここですわ、お姉様」

 

そう言って、黒子が指したのは全体的に黒で覆われた建物に、グリーンカーテンなどのツタ系の植物がいい感じに緑を出している雰囲気のいい店だった。

 

中に入るとそれなりに客もいて、割と繁盛している事が分かる。

 

「ここのオススメはランチの時間帯だけに出るサンドウィッチですの。かなり美味しいんですのよ」

 

黒子はそう言いながら、私にメニューを見せる。

 

「私は……、どうしようかしら」

 

「何だったらお姉様もこのサンドウィッチにします?」

 

「そうね、黒子のオススメだし。私もそうするわ」

 

と、私がそう言うと、黒子は、分かりましたわ、と言って店員を呼び、注文を済ませた。

 

……いつもの黒子ならさっきのところで飛びかかってくるのだが、まだ、本調子じゃないらしい。

 

と、考えていたら、唐突に黒子が、

 

「お姉様、……少し、昔話をしてもいいですか?」

 

と言って来た。私は、とりあえず頷き、黒子が話し出すのを待った。

 

「……昔話をする前に、一つ。……お姉様、今日、私の事で気になった事はありませんでしたか?」

 

「気になった事?……そりゃ、気になった事はあるけど、おそらくその事じゃないわよね。……つまり、今日の黒子の態度とはあまり関係ない感じなのか…」

 

「いえ、関係はありますわ。……………分かりませんの?」

 

「……残念だけどね、分かんないわ」

 

「今日の私の言動をよく思い出して欲しいんですの」

 

と、言われて、思い出してみる。

 

この住宅街にくる前……は、普通の黒子だったわよね。その後、追いかけた後は?

 

『ありがとう……ございます、お姉様。………でも、これは私情ですわ。私の事ですの。……一つだけ言うならば、………今、上条さんにはお会いしたくありませんわ』

 

ここは特に問題無いわね。……その後は、黒子の提案でこのカフェに来て…………ん?

 

黒子は、ここに来る時なんと言ってた?

 

『……でしたら、こちらにいいカフェがありますわ』

 

……つまり、黒子はこの店を知っていた?確か、ここに着いた時も……

 

『ここのオススメはランチの時間帯だけに出るサンドウィッチですの。かなり美味しいんですのよ』

 

「……もしかして、黒子は前にこの店に来た事がある?」

 

私がそう言うと、黒子は無言で頷き、そして、続ける。

 

「お姉様の推理通り、私は前にこの店に来た事がありますの。それも一度や二度じゃ無いですわ」

 

「……黒子ってそんなに学園都市を抜けてたっけ?」

 

「いえ、ここに来ていたのは、私が都市へ行く前ですわ」

 

そう切り出し、そして、一拍おいてから、

 

「私は、以前この近くに住んでいました。……いや、正確にいえばこの近くに引っ越して来たんですの……」

 

「……え?」

 

いきなりの告白に、ちょっと着いていけなくなる。だけど、黒子は続ける。

 

「……そして、その後、学園都市に引っ越したんですの。……でも、お姉様に会ってからこそ引っ越して良かった、と思っていますが、それ以前、つまり、小学校の頃ですわね。……その頃は、引っ越しが決まってから、お姉様に会うまでずっと、引っ越しには反対でしたの」

 

「……そうなの?」

 

「はい。お姉様に会ってから引っ越しに賛成になったのは、……私がここに住んでいた頃にいた年上のある殿方の面影がお姉様と重なったからなんですの」

 

「…………」

 

「その殿方も、もちろんお姉様も、私の事を助けて下さって、私によくして下さいました。そして、お姉様に会ってからは、極力昔の事は表に出さないようにして来ましたわ」

 

「……それは、なんで?」

 

「お姉様に失礼だと思ったのです。……確かに、その殿方にはよくしていただきましたし、恩返しもしたいですの。でも、先程も言いましたけれど、私は、引っ越しには反対でしたの。そして、その後、お姉様に会って、また助けてもらった。でも、お姉様に助けてもらったのに、いつまでも昔の事を引きずって暗い顔をしていてはいけないと思いましたの。だから、昔の事は胸にしまって、表に出さないようにして、お姉様に恩を返す事に努力して来ましたわ」

 

「黒子……」

 

「でも、流石に現場に来てしまうと、隠し切れませんでしたの。……もう分かっているとは思いますけど、その殿方の名字、何だと思います?」

 

そう言って私に質問して来る黒子。その顔は懐かしいものを思い浮かべていて、さっきよりも明らかに体調も回復していた。

 

「……もしかして、『上条』なの?」

 

「……はい」

 

「じゃあ、今日黒子が取り乱したのは……」

 

「……はい、いつもお姉様について回っているあの類じ……殿方が、私の記憶の中にいるその殿方と名前、姿ともに一致したからですの」

 

「…………な、なんか、すごい偶然ね。じゃ、じゃあ、黒子はこれからどうするの?」

 

「……そうですわね。先程は取り乱してしまいましたが、もう吹っ切れましたので、久しぶりに当麻(、、、)の家に行こうと思います。……いいですか?」

 

「な!?……ちょっ!黒子!その呼び方……」

 

「なんですの?昔の呼び方で呼んだまでですわ。……もしかして羨ましいんですの?」

 

「そ、そんなわけないでしょ!?……とりあえず大丈夫そうね。あ、初春さんも呼ばないと」

 

「……心配かけて、ごめんなさいですの」

 

「いいって、別に」

 

ーーこの後、集合した初春とともにサンドウィッチを食べた三人は、再び上条家に来ていた。

 

「私が行きますわ」

 

そう言って、自分からインターホンを押しに行く黒子に、疑問を感じた初春が美琴に、

 

「大丈夫なんですか?」

 

と、聞いたのだが、美琴は、色々あってね、と、答えを濁した。

 

 

 

ーー(黒子side)ーー

インターホンを押し、しばらくすると、実に、引っ越し以来の対面となる詩奈さんが出てくる。

 

そして、

 

「お久しぶりですの、詩奈さん」

 

と、挨拶したのだが、詩奈は、

 

「すいませんが、どちら様?」

 

と、返答して来た。……まぁ、それも無理はない。引っ越しが小学校四年の頃、現在中学二年生。実に五年間音信不通だ。

 

だが、黒子は名乗らずに、

 

「こうすれば分かりますか?」

 

と言って、ツインテールをほどき、ポニーテールに結び直す。すると、

 

「……もしかして黒子ちゃん?」

 

「!…はい!そうです、白井黒子です」

 

どうやら思い出して貰えたようだった。と、ここで美琴と初春が会話に入ってくる。

 

「黒子って昔はポニテだったのね」

 

「似合ってますよ。……って言うか、二人は知り合いなんですか?」

 

と、それぞれ思った事を口にしたのだが、とりあえず家に入ろう、という詩奈の提案により、初春は本日二度目になる上条家に上がった。

 

 

 

家に上がると、黒子が開口一番に、

 

「……懐かしいですわ」

 

と、言った。その台詞に、詩奈と美琴は頷き、初春は、?を頭に浮かべていた。

 

そして、

 

「ちなみに、髪型を変えたのも昔の事を思い出さないようにするためなんですのよ?」

 

と、言った。これに頷けたのは美琴だけで、他二人は首を捻っていたため、先程のカフェで美琴に話した話を二人にすると、それぞれ驚いて、美琴は照れていた。




もしかしたら上条涙子ではなく、上条黒子の可能性が出てきた。

今回は、全面的に黒子を推した話です。頭の中にこれが浮かんだので、つい。



その辺の事は、アンケートを取るので、私の活動報告の、【科学の投票箱】に、投票して下さい。

投票内容は、とある側のヒロインのルートです。と言っても、まだまだ本編が続くので、もう少し後になりますがね。

では、この以下より選んで下さい。

①、佐天涙子

②、白井黒子

以上です。

数字か、ヒロインの名前、又は名字で書いて下さい。投票は一人一回です。二票目、投票内容以外の投票は無効票となります。


黒子も佐天さんも可愛いですよね。


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第七話

はいどうも。一級狙撃手です。

最近この作品を書くのが楽しくて仕方ありません。……で、一ヶ月も待てない!と言う事で投稿します。次回は、出来れば本来のペースに戻したいので、八月半ばくらい…かな?

それでは、本編をどうぞ。


黒子が話を終えると、三人はそれぞれの反応をした。そして、

 

「そうそう、黒子ちゃんわね~……」

 

と言って詩奈が切り出す。

 

「……もう、昔はすごい当麻にべったりだったのよね。……最後の頃なんて当麻の事をなんて呼んでたと思う?」

 

と、詩奈が言った瞬間、恥ずかしくなったのであろう黒子は、顔を耳まで赤くしてその場にしゃがみ込み、次の瞬間、消えた。……おそらく、恥ずかしさに耐え切れなくなり、逃げたしたのだろう。

 

だが、そんな黒子にはお構い無しに、話は進んでいく。

 

「……当麻…君とか?」

 

と、美琴が照れながら言うと、詩奈は、残念、と、小声でいい、そして、答えを言った。

 

「正解は……、『当麻兄さん』でした~」

 

と言う詩奈。予想もしなかったであろう答えに、美琴と初春の二人は目を見開く。そして、詩奈が言うとほぼ同時に、黒子が再び現れ、そして、言った。

 

「………え、ええ。もういっその事認めてしまいますわ。……確かに私は当麻の事を『お兄ちゃん』と呼んでいましたわ。……ですからなんですの?お姉様にでも不都合がありましたか?///」

 

ーーどうやら、逆ギレ気味に開き直ってしまったらしい。……だが、その顔はまだ赤かった。

 

結局、その後開き直ったとは言え恥ずかしかったらしく、再びふさぎこんでしまった黒子のご機嫌とりを美琴がする羽目になり、黒子が機嫌を直した後、いいタイミングで美琴のお腹の虫が鳴き、詩奈さんにご飯をご馳走になる事になった。(流石にサンドウィッチ一つだけはキツかったのよ!)

 

「……物凄く久しぶりに詩奈さんのご飯を食べますわね」

 

黒子がそう言うと、初春もそれに乗る。

 

「あ、白井さんも食べたことあるんですか?……美味しいですよね、詩奈さんのご飯」

 

この二人は、時期が違うとはいえ、それぞれ当麻と関係を持っていたのだ。だから、詩奈の料理も食べた事があるのだ。

 

黒子は小学生の頃は普通に上条家に来ていたし、

 

初春は、当麻と初めて会ったのが学園都市の中で、それぞれ学園都市の生徒になった後だったから、大覇星祭などのイベントのお昼で。

 

だから、この中で食べた事がないのは美琴だけだった。

 

なぜなら、当麻が高校に入ってからは当麻自身が、自分で作るから、と言って拒否したためである。

 

「いいなー、私も食べてみたい」

 

「そんなに焦らなくてももうすぐ食べられますよ」

 

初めて食べる詩奈の料理を早く食べてみたい美琴を、初春が牽制する。黒子は、そんな二人に割ってはいる。

 

 

ーーそんな三人を見ていた詩奈は、少し微笑ましいものを感じながら、一方で自分の息子を問いただしてみたくなる衝動に駆られていた。

 

 

「……はーい、出来たわ。どうぞ、食べてみて?」

 

そういいながら、詩奈が持ってきた料理は、季節が冬、という事もあってか、鍋料理だった。

 

「ごめんね、少し時間かかっちゃって」

 

そういいながら、テーブルの上に鍋を置き、(もちろん下には鍋敷きがテーブルとの間にはいってまっせ)人数分を取り分けてくれる。

 

そして、取り分けたそれを、三人の前に持っていき、その後で詩奈は自分の分もよそって座った。

 

「それじゃ、どんどん食べて」

 

と言う詩奈の合図で全員食べ始める。

 

「「「いただきます」」」

 

ちなみに、今回の鍋は豆乳鍋だった。

 

大覇星祭などのイベントでしか詩奈の料理を食べた事のない初春とは違って、家が近かった事や、当麻と仲が良かった事などから、何度も上条家に来ていた黒子は、当然、詩奈の鍋料理も食べた事があり、(基本的に全部美味しいのだが、)何が美味しいのか、など、そういうところを完璧に熟知していた。

 

その経験をもとに、五年ぶりに詩奈の料理を食べる。

 

最初は白菜からだ。

 

「……この味、……………物凄く久しぶりですわ……」

 

少し感動した感じで、まだポニーテールのままの黒子が言う。

 

その言葉に、詩奈は満足したのか、安心したのか、少しホッとした表情になる。

 

今日初めて食べる美琴や、初春も、その味に驚いたようで、初春なんかは当初の目的を忘れて料理の作り方なんかを詩奈さんに聞いている。

 

そんなこんなで、昼ごはんを詩奈と一緒に食べて、残りの作業を開始する事にした。

 

 

ーー忘れてはならない、今回の本来の目的を。【上条当麻を探し出し、佐天涙子を守る】という目的を。

 

 

 

 

 

 

上条家を出た三人は、結局なんの収穫もないまま、次の場所へ移動する事になった。

 

たが、次の場所、というのは、具体的にココ、と決まっている訳ではない。

 

皆さんお忘れの事と思うが、捜索隊はこの三人だけではない。

 

 

ーー別働隊として、日本全国に散らばった、【MNW(ミサカネットワーク)】の使用者、妹達。

 

学園都市の科学力をもってして、美琴の細胞、能力データ、その他をもとに美琴そっくりに作られた体細胞クローン。……それが、妹達。

 

その妹達もまた、美琴の意見に賛成した者で、MNWを行使して上条当麻捜索に全力を上げている。

 

その捜索方法は、美琴のクローンであるがゆえに授かった、電気系の能力を使うことで、さがしている。

 

その使用方法は、成功率は一律なため、人数の多い場所ほど、見つかりやすい。

 

それは、学園都市の機器でなければ感知できない程の微弱な電気を辺り一面に流し続けることで、学園都市から出るときに埋め込まれたチップのみに反応する環境を作り上げ、反応した者がいれば、そこへ向かい、確認する、というものだった。簡単に言えば、電磁波による、広域空間捜索だ。

 

そんな探索方法をとっている妹達だが、あくまで、美琴のクローンとしてこの世に生を受けてしまった彼女達は、当然その元になったものより生まれ持った素質は低かった訳で。

 

なので、めぼしい場所をその方法で見つけた後、彼女達自身で軽く捜索した後、美琴に引き継ぎ、美琴のLevel5の能力でもって、本格的なその周辺及びその場所の広域探索を一気に行い、それが始まるまでには妹達は別の場所へ行き、それぞれ別の場所を捜索している妹達の中の一人が、めぼしい場所を見つければ、その場所を見つけた妹達がそこを軽く捜索し、美琴に引き継ぐ。というのを繰り返している。

 

今回は、最初に、まぁ、当たり前ではあるが、選ばれたのは東京とその周辺だった。

 

だが、横浜まで含めて全てを同時に行うため、流石に美琴だけでは手が足りず、今回は例外的に妹達も全員集まり、なんとか捜索範囲内に全てを収めることができた。

 

 

そして、前述の通り、電気を流したところ、反応したのは十四人。ただ、今回はいちいちその場に行っている時間がないので、初春のハッキング力を使い、正規ルートと非正規ルートを織り交ぜながら学園都市製の人口衛星のカメラで、該当人物を探した。(今回は、ハッキング先が学園都市のジャッジメント関係のところから侵入し、初春も実際ジャッジメントなので、別に問題にはならない。衛星の方は、使用許可をとった上で使っている。……まぁ、並大抵の人は使用許可などとれはしないのだが)結果、十四人中、十一人が振り落とされた。

 

残るは、店内に入っていた二人と、地下鉄に乗っていた一人。

 

ここまでくれば、後は簡単なので、妹達はどんどんばらけて行き、再び日本全国に散らばって行く。

 

美琴、初春、黒子の三人は、それぞれが一人ずつ担当する事になり、詳細な位置情報は、美琴から携帯で送られて来ていたので、見つけるのにそう時間はかからなかった。

 

 

 

 

 

ーー(初春side)ーー

 

「あれ?春上さん!」

 

 

初春が追い掛けていたのは、どうやら春上らしく、まさか向こうも学園都市の外で初春に会うとは思っていなかったのか、少し焦っていた。

 

「これからどこへ?」

 

と、初春が聞くと、

 

「ゆ、郵便局です……」

 

と、相変わらずちょっと焦り気味な口調でそう言った。

 

その後、少し話してから別れ、とりあえず美琴達との集合場所へ向かう事にした。

 

 

 

 

ーー(美琴side)ーー

 

(反応が近くなって来てる。……間違いないあそこにいる奴だわ。……だけど、アイツじゃない……のかな。………ハズレ、か。他の二人は見つけたのかな……。いや、決めつけるのはまだ早いわね)

 

美琴は、相手との距離を確認しつつ、相手に悟られないように近づき、人混みの間からその人物を探した。

 

たが、そこにいたのは、海原の時、私がアイツに声をかけた時にいた二人の青髪の方だった。

 

(やっぱり、アイツじゃなかった……か。……そもそも私、アイツに会って、佐天さんと離したあと、どうするつもりなんだろ……)

 

そんな事を考えつつ、美琴も、初春と同じく自分が集合場所に指定した店に向かって歩く事にした。

 

 

 

 

 

 

ーー(黒子side)ーー

 

(お姉様も初春も行ってしまいましたし。では、私も行きますか)

 

黒子は、心の中でそう呟いた後、人目につかない位置から、能力を使ってテレポートし、ターゲットがいる近くにあった、路地裏にテレポートする。そして、表通りに出ると、そこに当麻のような髪型の男性や、佐天さんと思われる女性はいなかった。

 

「いない……ですわね」

 

今度は口に出して呟いたが、その声は人混みの喧騒に呑まれて誰にも届くことなく、黒子にさへ届かずに消えて行く。

 

結局、当麻の家、そして今回、ともに敗戦した。

 

黒子は、少し焦りを感じつつも、とりあえず結果を報告するために美琴が指定した集合場所へと向かった。

 

 

 

 

 

ーー(美琴side)ーー

 

美琴がその店に着くと、既に初春がいた。

 

「あ、御坂さーん」

 

「初春さん。もう来てたのね」

 

「もう、と言っても既に一時間弱はかかってますけどね」

 

実は、先程書いたのはほんの一部でしかなく、他にも色々捜索はしていた。が、結果は変わらなかった。

 

「……全く、どこに隠れてんのよ」

 

「本当に、どこに隠れてるんでしょうね……」

 

二人して、軽く溜息をつきながら、黒子が来るまで今後の事を離す事になった。

 

「……まぁ、そもそも、とりあえずは連絡が入るまではこっちも動けないんだけど、どうする?」

 

「そうですね……、私がハッキングしちゃえば一瞬で片がつくんですが、流石にそれは……」

 

「でも、初春さんなら証拠も消せるんじゃ?」

 

「できない事もない、とは思いますけど、失敗した時のリスクが高すぎて……」

 

と、堂々巡りが始まったところで、黒子がやって来る。

 

「遅れてすみませんですの。……収穫はありませんでしたわ。申し訳ございませんの」

 

「大丈夫よ。……いやまぁ、大丈夫じゃないんだけど、私も初春も収穫はなかったし」

 

「そうなんですの?」

 

「……残念ながら」

 

その場に、少し重い空気が漂い始める。

 

ここで、いつもなら佐天さんがあの持ち前の明るさでどうにかしてくれるんだけどな……、なんて事を考える美琴。

 

その考えを知ってか知らずか、初春が、

 

「こ、こんなところで黙ってても見つかりませんし、日も傾いてきましたし、一旦今日は学園都市に帰りましょう。……私たちの場合は、期間が無期限の変わりに最低二日に一回は学園都市に帰らないといけない、っていう制約付きなんですし」

 

「……そうね。よし、そうと決まれば行きましょうか!」

 

「そうですわね」

 

いつもより少し明るめの声で美琴がそう答え、黒子はいつもの口調でそう答えた。

 

 

 

 

店を出ると、夕日が眩しく、上を見上げれば、高層ビルの合間から夕日をうけた緋色の空が広がっている。

 

まだ人は多く、歩くのに時間もかかったが、それでもなんとか駅には辿り着く。

 

「……とりあえず一日目の情報は……」

 

と、美琴が言うと、それに答えるように、初春が、

 

「白井さんが、ターゲットの事を昔『当麻兄さん』と呼んでた事ぐらいですかね?」

 

と言うと、二人の間で寝ていた黒子が、ピクッと動き、次の瞬間、黒子が初春のスカートをめくった。……いつもの佐天さんのように。

 

流石に予想外だったらしく、顔は赤くなり、口は開いた状態で固まっていた。

 

「な……、な……!?///」

 

そんな事をしている二人を、美琴はなだめる羽目になっていた。

 

 

 

 

ーーそんな三人には構わず、列車は進んで行く。

 

ーーその列車が、ある駅を通過した時、その駅のホームには黒髪ボサボサの男子と、黒髪ロングの女子、目がある意味で終わっている男子に、茶髪のゆるふわ系ショートの女子の四人が立っていた。

 

 

 

ーーだが、互いが互いに気付く事もなく、その列車は駅を過ぎて行った。

 

 

当麻達が学園都市から逃げたして丁度二週間が経ったある日の出来事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー(side by 当麻&佐天、八幡&折本)ーー

 

月日は少し戻って、逃避生活八日目。こっちに来てから四日目。

 

正直、ここまであり得ない速度で色々決まった。

 

大体、不動産屋で家をみつけて、住むまでが一週間って……。

 

 

そして、現在に至る。

 

今は、佐天さんの提案で隣に住んでいる比企谷と、その彼女らしい折本さんが家に来て、一緒に晩御飯を食べていく事になった。

 

比企谷は、こういう事に慣れていないのか、ちょっと挙動不審になっていて、見るのが楽しかったが、折本さんの方はそういう事はないらしく、今は佐天さんと仲良く台所で何かやっている。

 

俺は、どう想像しても、この二人が恋人になった経緯がわからず、結局本人に聞く事にした。

 

「……なぁ、比企谷」

 

「ん?(やべ、名前なんつったっけ?)」

 

「お前と折本さんって本当に恋人なのか?」

 

「……………………………そう、らしいな」

 

「めちゃめちゃ間があったのは?」

 

「気にするな……」

 

「……失礼だとは思うが、どういった経緯で?」

 

「……本当に失礼だな……。まぁ、あえて言うなら、『昔のある出来事がきっかけになった』……って事か?」

 

比企谷は、そこまで言うと、これ以上は言わねぇぞ、と言って俺から視線を外した。

 

 

ーー(side by 佐天&折本)ーー

 

「お邪魔しまーす」

 

「どうぞー」

 

そう言いながら、私は台所へと向かって行く。

 

台所へ着くと、出しかけだった皿にご飯とカレーをよそい、(折本さんにも手伝ってもらって)持っていく。

 

そして、再び台所へ戻って、エプロンを壁のハンガーにかけていると、折本さんが、

 

「……涙子……で、いいよね。でさ、涙子と、上条?って付き合ってるの?」

 

「……そうできたらいいんですけどねぇ……。かおりさん……でしたっけ?かおりさんは付き合ってるんですよね」

 

と、私が聞くと、そうだけど、と頷くかおりさん。そして、

 

「どうやって攻略したんですか!?……なんとなくあの二人には同じ『女たらし』のにおいを感じていまして……。もし良かったら攻略法の伝授を!!」

 

と、言いながらかおりさんに言いよると、

 

「と、とりあえずご飯の後に……ね?」

 

……答えを濁されてしまった。

 

 

 

ーー(side by 四人組)ーー

 

「それじゃ、隣人同士の親睦会、第一回パーティーを始めまーす」

 

と言う、折本さんの音頭によって、今回のパーティーがスタートした。……ちなみに、パーティーを二回言ったのは気のせいですよ。

 

現在の席順は、丸テーブルを囲む形で、俺、その右横に佐天さん。俺の向かいが比企谷で、比企谷から見て右横、俺から見て左横に折本さんがいる。

 

パーティーが始まると、早速比企谷が、折本さんのおもちゃにされていた。

 

折本さんは、カレーを一口分すくったスプーンを、比企谷の口の前に持っていき、頑なに口を開かない比企谷に、身体ごと寄せて、無理やりでも食べさせようとしている。……結局は比企谷が折れて、アーン、をしてもらっていた。

 

 

ーー比企谷、お疲れ様。

 

 

俺は、心の中でそう告げると、自分のカレーを食べようとして、……気付いた。

 

「……スプーンが無い……だと!?」

 

そして、思考が繋がり、全てを悟った時には既に、時遅し。

 

満面の笑みで、佐天さんが横からカレーの乗ったスプーンを俺に向けて突き出していた。

 

「はい、先輩。今度は先輩の番ですよ。……ほら、アーン」

 

そう言いながらスプーンを突き出してくる佐天さん。

 

 

ーー皆さんは、『明日は我が身』と言う言葉を知っているだろう。

 

だが、俺は訂正を加えたい。

 

正確には『明日』じゃなくて『数秒後』なんじゃないか!?と。

 

とりあえず、あのいつもの言葉で閉めようと思ったが、念願の『女子からのアーン』が達成できる事を考えると、不幸ではないように感じてきてしまった。

 

 

ーー脳内で試行錯誤しまくった結果、俺も比企谷と同じ運命を辿る事になってしまった。

 

 

 

 

 

ーー兎にも角にも、こうして第一回親睦パーティーは始まってしまった。




次回も投稿が早くならないように気をつけまする。


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第八話(俺ガイルside)

はいどうも、一級狙撃手です。

今回は俺ガイルがメインの話です。
主に折本の話になるのかな?


とりあえず本編をどうぞ。


俺と比企谷のそれぞれにとって地獄な時間(俺は佐天さんに、比企谷は折本さんに互いが見てる前で『アーン』という最悪な時間)が過ぎた後、元気な女子連中はそっちのけで、俺らはコタツに引きこもっていた。

 

「お互い大変だな。比企谷は折本さんに振り回されてそうだ」

 

「お前が言うな、上条。お前もあの子に振り回されてんだろうが」

 

「佐天さんか?」

 

「ああ」

 

「……否定できないのが苦しいな。………っと、そうだ、念のため言っておくが、俺と佐天がここにいる事は誰にも言うなよ?学園都市の奴らから逃げてんだから」

 

「分かった。折本にも言っとくわ」

 

「頼むわ」

 

と、そこで会話が切れ、いいタイミングで佐天さんと折本さんが来る。

 

「ん?どしたん?比企谷。それに上条……『さん』はもうつけなくてもいいよね?」

 

「あ、ああ。俺はいいぞ」

 

と、俺が返答すると、何故か佐天さんが頬を膨らませながら俺の横っ腹に膝をいれてきた。

 

「なっ、なんだよ。俺、何か変な事したか?」

 

「………折本さん、これが先輩です。……どうですか?」

 

「………確かにこれは難敵だわ……」

 

何やら、勝手に女子の間で話が進んでいるのだが、全く持って理解出来ていない俺と、同じく理解できず、折本さんに助言を頼もうとした比企谷がかぶり、

 

「「どういう事だ?」」

 

と、同時に言ったのだが、そんな俺たちに佐天さんと折本さんは一度顔を見合わせた後、あからさまな溜め息を吐いて、何故?といった感じで頭を抱えていた。

 

「いや、もういいよ。うん。比企谷には後で教えてあげるけど、上条は自分で考えなよ?」

 

「何か酷くね!?」

 

俺だけ教えてもらえないらしく、ちょっと扱いがぞんざい過ぎないか?と思い、反論したのだが、またしても佐天さんに睨まれながら、今度は肘が俺の横っ腹に入れられた。

 

「それは先輩が悪いんです」

 

「………」←(いい感じに肋骨の骨と骨の間に入って、痛みで悶絶中)

 

と、痛みで返答できずに悶絶している俺をほっぽって、そのまま会話を進める佐天さん。

 

「……念のためあらかじめ言っておきますが、前にも言ったように、先輩は未来の私の夫なんですよ?その辺を考えて言ってください」

 

 

ーー果たして、いつ、そんな事が決まったのだろうか?

 

そんな疑問が頭をよぎったが、中学生の冗談だ、と決めつけておいて、納得した事にしてとりあえず横っ腹の痛みと再び向き合う事にした。

 

 

 

 

 

ーー(比企谷&折本side)ーー

 

俺は現在、佐天に肘を入れられ、悶絶している上条を見て、『大変なのはなにも自分だけじゃない』と思っていた。

 

いや、そう思わないと切り抜けられない状況に、俺自身がなっていた。

 

原因は言わずともわかっていると思うが、俺の彼女の折本かおりだ。

 

 

ーー思えば、色々あった。

 

中学ではイジメにあい、高校で久しぶりに再開したと思ったらクラス連中の前で死刑宣告(主に俺との会話)。おまけにそんな事があったにもかかわらず、何故か俺の人生初の彼女にまでなってしまっている。

 

 

だが、そんな彼女に、今俺は攻撃……、いや、正確にいえば攻撃されている訳ではないのだが、精神的にはある意味攻撃を受けていると言ってもいいだろう。

 

端的に言えば、

 

 

 

人前であるにもかかわらず、彼女に抱きつかれているのだ。

 

しかも、だ。

 

こいつ、折本かおりはその行動に至った理由が俺にある、と言って来た。あまつさえ、

 

「分からないならいいよ」

 

という最初から最後まで全く持って理解できない行動に、俺は困っていた。

 

 

 

 

「………よし。折本、よく分からんがよく分かった。分かったから退いてくれ」

 

「何が分かったの?」

 

「…………。い、いや、だって俺がいつ何をした!?」

 

「………比企谷っていつか浮気しそう」

 

「何故話がそっちへ向かうんだ?……大体告白して来たのお前からだろうが。しかもまだ一日も経ってねぇぞ」

 

「……だって比企谷割りとモテるし」

 

ーーーーー

ーー

ーーこんな会話をしているが、その態勢はこたつでくつろぐ俺に後ろから折本が抱きついてきているというものだ。……中学生の頃の俺が知ったらどう思うか。

ーー

ーーーーー

 

「俺がモテる?……折本、お前どんな目してんだよ……。こんな性格ひん曲がってて、ぼっちで、周り曰く目が腐ってて、顔は……自分でもそれなりにはいい方だと思ってるが、雰囲気が暗い奴のどこがモテるんだよ」

 

「だって現に比企谷は私と付き合ってるじゃん。それに、比企谷は自分の悪いところばっかり言うけどさ、もっといいところもあるんだしさ、そっちも認めなよ」

 

「……例えば?」

 

俺が折本にそう聞くと、折本は待ってましたと言わんばかりにノータイムで答えてきた。

 

「比企谷は、自分で理解してるか知らないけど、結構優しいんだよ?……私の件の時だってそうだったし、その目の腐り具合からして、既に高校に入ってからも何かやらかしたでしょ?自分を犠牲にして。………今度からはもし人を助けるなら自分を犠牲にする方法以外の方法でその人を助けてよね。……………こっちが不安になるから」

 

そこで一旦切り、更に続ける。

 

「二つ目は………」

 

と、何かを言いかけた時、俺と折本は同時に横からの視線を感じ、そっちを見る。

 

 

ーーするとそこには、寝っ転がっている上条と、こっちを見ながらニヤニヤしている佐天がいた。

 

 

「ナルホドナルホド。折本さんはそうやって比企谷さんを落としたんですね?」

 

「ち、違っ!!」

 

折本が顔を赤くして慌てて反論するが、時既に遅し。佐天は誤解を抱いたまま納得してしまったらしい。

 

「なるほど。そういう迫り方ですかぁ。……私にもできるかな?先輩のいいところ……か」

 

何やら真剣に考えだした。なので、俺たちは『邪魔をしないように』という名目(言い訳)のもと、立ち去る事にした。

 

「な、何か取り込んでるみたいだから先帰るわ。折本、後は頼む」

 

俺はそう言った。

 

ーー果たして、折本は俺の意思に気がつく事ができるのか!?

 

 

そして、そう言った俺に、折本は、

 

「比企谷が帰るなら私も行く。………全く、彼女を他人の家に置き去りにする彼氏って聞いたことないんだけど……」

 

と、期待通りの答えを返してきた。オプションでカモフラージュまでつけて。

 

 

 

ーーという結果に、最初は、なかなかやる。と思っていた時期が俺にもあった。

 

この展開できたならば、皆さんもうお気づきだろう。実際はそんな事無かった訳だ。

 

 

上条家を出て、冬の寒さが身体に直接響くアパートの通路を少し移動している最中。

 

『本当に、私を置いていかないでよね?』

 

『そのカモフラージュはもう終わったからいいっての』

 

『………は?カモフラージュ?……え?』

 

『え?さっきの俺に自然に合わせるためのカモフラージュだったんじゃねぇの?』

 

『だから、何の話?』

 

『さっき上条家から出る時のあの『置いてくぞ』の話だろ?………俺がわざと折本を置いて行くって言った意図に気付いて言ったんじゃねぇの?』

 

『え?そうだったの?』

 

『……気付いて無かったのかよ』

 

『……気付いて無かった』

 

折本がそう言ったので、俺が返事をしようとしたのだが、折本が、でも、と繋げたので、黙った。

 

『……だから、さっきの言葉は本心だよ?』

 

 

 

 

ーーその言葉に、俺の思考回路はオーバーヒートしてしまった。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

ーーーーー

今は折本が俺の家に初めて入ってから十分後くらい。

 

俺の方は、思考回路のオーバーヒートも回復して、普段通り、ただ目の腐ったぼっち(彼女もち)に戻ったのだが、変わりに折本がオーバーヒートしていた。

 

 

ーーこんな調子で、本当に大丈夫なんだろうか?

 

俺は、放心状態のまま鍵を取り出して玄関を開けていたらしく、気付くと身体が家に入るところだった。

 

そして、

 

「適当に上がってくれ」

 

と言って、先に上がったのだが、二分くらいしても折本がこないため、玄関に見にいくと、顔から耳から真っ赤な折本が玄関に突っ立っていた。

 

軽く声をかけると反応して、ようやく動き出したのだが、右足と右手が一緒に出ていた。

 

「……お前、これからここに住むのに大丈夫なのか?」

 

…………今思えば、ここでこの言葉を言った事を後悔している。

 

右足と右手が一緒に出る程緊張している折本に、この俺の言葉がトドメをさしてしまったのだ。

 

折本は、一度目を見開いて驚いてから、アタフタしはじめ、そのまま気を失って、倒れてしまった。………俺の上に被さる形で。

 

流石にマズイと思い、どかそうとしたのだが、どういう態勢で突っ込んだのか、後ろがどうなってるのか分からないが、折本の腕には確かに力が入ってないのに、俺は折本を引き剥がせなかった。

 

しばらく抵抗したが、結局諦め、俺もその場に転がった。

 

 

 

 

ーー(折本side)ーー

気が付くと、身体に密着する形で、暖かいものを感じた。

 

よくよく見ると、少し先に手のようなものがあり、そこまできてようやくどういう状況かを悟った。

 

「……え?………ええっ!?」

 

驚いて、声をあげそうになったが、なんとか堪えて更に状況をよく確認する。

 

比企谷は寝ているので、できるだけ静かに。

 

どうやら私は比企谷の上に乗っかって気を失っていたらしい。

 

そして、そのせいで比企谷は動けなくなって、しばらく待っている内に寝てしまったんだろう。と、おおざっぱな推測をたて、そして比企谷の上から去ろうと、手を抜こうとしたのだが、

 

「んっ!……嘘でしょ?」

 

比企谷の体重に私の体重が重なって、腕が抜けなくなっていた。

 

横に倒れられれば、とも思ったが、それも無理なよう。

 

「比企谷、おーい、比企谷」

 

呼びかけるも、返事はない。

 

そのまま何度も呼びかけたのだが、成果はなかった。

 

 

仕方なく力を抜き、位置的に丁度比企谷の胸板に顔を埋める形で体重を預け、顔を横に向ける。

 

すると、比企谷の心臓の音が聞こえてきた。

 

ゆっくりとした、それでも力強く感じる事のできる音をしばらく聞いていると、何となく比企谷の顔が見たくなり、再び頭を上げる。

 

当然、そこには寝たままの比企谷しかいない。

 

ーー普通の顔で、特に髪を染めるような事もせず、教室(クラス)の端っこで目立たないように生活し、人を助ける時は直接助けず、助けられた本人にも周りにも分かりにくい、自分の功績が隠れるような助け方をして、そしてほぼ必ず自分を犠牲にする。

 

それが、今日私が総武高校に転入して、比企谷に告白するまでに得た情報を整理して導き出した結果。もちろんそこには私の経験も含まれる。

 

これはあくまで私の推測でしかないけど、でも多分当たってるんだと思う。

 

そう言い切れるのは、私自身が助けられたのと、中学生時代の比企谷を知ってるから。

 

高校に入ってからの情報も、たまに入っては来ていた。

 

何も総武高校に行ったのは比企谷だけじゃない。総武に行った人の中に、二、三人くらい、中学時代の私達のグループの奴もいた。だから、情報はそこから得られた。……ストレスの原因や中傷の対象などにして悪口を言うために。

 

私も、高校に入った当初はそいつ等と一緒に比企谷をいじってた。……でも、だんだんと嫌になって来て、そしてある時、こうなった原因は私なんだ。って考えた時、私はあの日の事件を振り返って考え直した。そして、結論が出て、比企谷に謝るって決めて、でもどうやったら連絡とれるかを考え始めた時、親が海外に引っ越す話を持って来た。

 

私は、過去のクラスの連絡網は捨てちゃうタイプだし、基本的には携帯でメアドをクラスで交換するから問題ないのだが、比企谷のメアドだけは持っていなかった。

 

だから、謝るって決めてから実行に移す方法を考える必要があった。

 

流石に、一緒に比企谷をいじってた奴に頼む訳にもいかないし、かと言って何もしない訳にもいかない。

 

そこまで考えた時に、親からの海外への引っ越しの連絡だ。しかも行く事は決まっているらしく、後二ヶ月もしないうちに、とか言い出す。何で通知が遅かったのかを聞けば、私を驚かせたかったそう。二ヶ月もあれば友人への挨拶もできるだろ、との事だった。

 

だから、私は怒った。そして、断固拒否した。結果として、親も怒り、家を売って、その金の一部を私に渡して二人で行ってしまった。

 

だけど、私はこれをチャンスと捉えていた。

 

引っ越しの話を私が知った後、お父さんには話していなかったのだが、お母さんにはこの比企谷の事を話していたため、総武への転入手続きをしてくれていた。

 

そして、あくまでお父さんの側を演じながら、私を応援してくれた。お金を渡すように言ったのもお母さんだったらしい。

 

そして、総武側にも事情を話し、転校の理由も他につけて、納得のいくようにして、そして、高校側の計らいで、引っ越しの全ての作業が完了する日、つまり両親が国を出る日に転校するようにしてくれた。

 

ーーつまり、簡単に言えば、今日。

 

 

本当に今日は色々疲れた。

 

両親が出ていくのを見送った後、新しい制服で新しい学校に行き、そこで目的の人に会い、目的を達成し、そして色々考えていく中で芽生えてしまった自分の気持ちにも整理をつける事ができ、そして現在は彼氏となった比企谷の家に上がって比企谷に抱きつく形で寄り添っている。

 

ーーおそらく、人生でこれだけ濃密な日を送る事はもう一生ないだろう。

 

本当にそう思える一日だ。

 

だから、締めくくりには最高のものを。

 

 

「比企谷……」

 

と、そこでようやく起きた比企谷に、私は、

 

「比企谷」

 

「ん?……何だ?」

 

「眠いなら目を冷まさせてあげる。私しか見えないように。……私をしっかり見れるように、ね」

 

そう言って、私は比企谷にキスをした。

 

 

 

 

ーー(八幡side)ーー

 

『眠いなら目を冷まさせてあげる。私しか見えないように。……私をしっかり見れるように、ね』

 

俺はその後、折本に………。

 

いや、これ以上思い出すのはやめよう。お互いの為に。

 

と、丁度折本が出て来た。

 

その格好に、俺は目をそらす。

 

 

折本が出て来たのは、風呂場の扉からで、要するに彼女は風呂に入っていたのだ。

 

その髪はほどよく濡れていて、服も先ほどまでは制服だったのだが、学校から俺と折本のチャリ籠にそれぞれ入れて持って来た折本の旅行バックの中から取り出した着替えに変わっていて、ラフな格好になっていた。

 

「上がったよ、比企谷ー。………比企谷?」

 

折本は俺に呼びかけてから、俺がそっぽを向いている事が気になったらしい。そして、

 

「どしたの?あらぬ方を向いて。………ははーん、そう言う事。折本姉さんの魅力に目をそらさざるを得なくなってしまったと」

 

この折本の言葉に、俺は折本に意見すべく、そっちを向いたのだが、折本はクイクイッと手招きをしていた。

 

「………何だよ?」

 

俺は、折本が意外に策略家であった事を警戒しつつ、近づくと、

 

「そんな警戒しないでよ。別に変な事はしないよ」

 

「じゃあ何するんだよ」

 

「ハグ?」

 

「いや、アウトだろ!」

 

俺はそう言うと、背を向けて風呂場に向かった。

 

 

 

風呂から上がると、用意した部屋着に着替えて部屋に戻る。

 

そして、いつも通りベッドに座り、スマホでニュースを確認する。

 

「今日も特に変わったニュースは無し、と」

 

と、独り言を呟くと、その独り言に返事があった。

 

「何だ、ニュースを見てたのか。ちぇっ、つまんない」

 

いきなり背後から声をかけられ、驚いて振り向くと、そこには折本。

 

「な!?………なんだ、折本かよ」

 

「なんだとは何よ。彼女をほっぽって携帯何か見る比企谷が悪い。……ね、もうそろそろ12時だしさ、私疲れたから早く寝たいんだけど」

 

「おお、悪ぃ。ちょっと待ってろ。今ベッド開けるから」

 

「え?」

 

なんで?といった反応の折本に構わず、そのまま続ける。

 

「ベッドに折本が寝て、俺は下に敷いた布団に寝るから」

 

俺はそう言うと、ベッドから立ち、押し入れにいれてある臨時用の布団を取りに行け…………なかった。

 

 

 

クイクイ。クイクイ。クイクイ……。

 

「あの、折本さん?どうされました?」

 

「…………………」

 

顔を下に向けて黙り込む折本。その片手は俺の部屋着の裾を引っ張っている。

 

俺がどうしていいか分からず戸惑っていると、折本が小さな声で、

 

[一緒に……寝よ?///]

 

と言った。

 

小さな声で、とは言え何も音のない空間でははっきりと聞こえてしまった。

 

俺は、おそらく顔を赤くして振り絞った声で俺に提案した折本に、肯定の意を示し、結局布団を出す事はせず、折本と一緒にベッドで寝る事にした。

 

 

ーーちなみに、最終的には折本は俺の腕枕で寝ていた。

 

 

 

明日も早いのだ。

 

ただ、明日からと今日まででは違う事がある。

 

 

ーー彼女ができた事。

 

ーー家に一緒に住む人が増えた事。

 

 

他にも探せば出てくるだろう。

 

でも、とりあえずは俺は、明日からは折本を彼女として、折本の彼氏として生活していくのだ。

 

 

その事に嬉しさや恥ずかしさなど色んな気持ちを抱えながら、俺は隣りで寝ている彼女の額の髪を少しずらして顔を見てから、眠りについた。




次回は多分九月の中頃?(その時まで投稿できる状況があれば)

感想、評価等待ってます。


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第九話

はいどうも、一級狙撃手です。

まず一番はじめに、

比企谷八幡君、誕生日おめでとうございます。


今回は俺ガイルにしようと思ったらまさかのとあるへ。

そして、色々動かしたら時間移動が多くなってしまい、わけが分からなくなってしまった…。


なのでもうその辺は諦めました。読みづらいと思いますが本編をどうぞ。


ppppppppppp!

 

という、けたたましくはないが、それなりにはうるさいアラームに俺は起こされた。

 

窓からは朝日が射し込んでいて、起きたばかりで曖昧な意識に猛烈な一撃を見舞う。

 

それによって、完全ではないながらも、一応意識の覚醒を果たし、今日もまた一日、学校生活を始める事になると考えて憂鬱になる身体を引きずって洗面所まで行き、顔を洗う。

 

顔を洗い終えて、タオルで拭くという何ともないいつもの動作を行い、それが終わらない内に、ふと、気付いた事があった。

 

「……そう言えば昨日から折本が泊まってんだった。ってかアイツどこいったんだ?」

 

思い出し、ここからでも見えるベッドの上を確認しても姿はなく、タオルを置いて、リビングの隅までよくみよう、と少し歩いた時、いい匂いが鼻腔をくすぐり、意識がそっちに傾けられる。

 

そっちを向くと、先程の折本の件の答えも、一緒についていた。簡単にいえば、折本が料理をしているのだ。

 

そして、向こうもこっちに気付いたらしく、挨拶をしてくる。

 

「あ、比企谷起きたんだ。おはよっ!」

 

「……ああ。折本は朝から元気だな」

 

折本の挨拶に、こう返事した俺なのだが、

 

「プッ。比企谷テンション低すぎ。ウケるっ」

 

「………お前は何を基準にウケてんだよ」

 

「別に何だっていいよ。比企谷もテンション上げて」

 

そして何故かテンションを上げる事を要求されたが、無視してとりあえず台所へ向かう。

 

「なんか手伝う事はあるか?」

 

「特に無いよ。………あえて言うなら………やっぱ無いわ」

 

「そこであえて言う必要あったのか?」

 

という俺の疑問は軽く無視され、結局何もすることがなかった俺は、仕方なく席に戻った。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

ーーーーー

ーー(上条&佐天side)ーー

 

時刻は戻りに戻り、昨夜のパーティーが気付けば終わっていたという驚愕の事実を佐天さんから知らされたあたり。

 

それまで俺は佐天さんの肘や膝を横っ腹にくらって悶絶していたところ。

 

どうやら彼女の中では俺は既に候補に上がっていて、しかも将来は確定らしい。……性格もそうだが、恐ろしい娘だ。

 

まあ、何はともあれそんな訳で、とりあえず今は俺は風呂に入っている。

 

某人曰く、風呂は生命の洗濯なのだそう。

 

 

なので、俺も疲れを癒してこのちっちゃいバスルームでくつろげるのかは知らないが、とりあえず引っ越し初日のようにはなりたくないな。と、思い返しながら、バスルームの天井を見上げていた。

 

ーーーーーーーーーー

ーーーーー

 

時は更に戻り、千葉に引っ越した初日。正確にいえばその日の夜。

 

引っ越しから最初の夜ご飯を食べ終えた俺と佐天さんは、食後休憩をとっていた。

 

「うわー、やっぱり新しい家って慣れない上に何かわくわくしますね」

 

「ああ。それはわかるわ。……でも今日は色々疲れたから早く寝たい……」

 

「先輩は寝たいんですか?学園都市での寮生活もこのくらいの時間に?」

 

「いや、学園都市にいた頃はもっと不規則な生活だったぜ。インデックスの話はしたろ?あいつは多分俺ん家にいる時間と小萌先生ん家にいる時間は対して変わらないんじゃないか?……俺の不幸体質が災いして家に二日、三日いないのはザラだったしな」

 

「相変わらずですねー、先輩は。流石の不幸体質。先輩はあれですね」

 

流石って言われてもな。とか思いつつ、アレってどれでしょう?などと考える。

 

「不幸自慢なら負けない、……いや、負けられない人ですね。頑張って考えなくても色々出てきちゃう程の数を有してる特殊タイプ」

 

「そんな特殊なタイプはいやだぞ!」

 

「でも先輩はそうならざるを得ない運命です。その右手がある限り」

 

確かにそうだ。と思ったが、かと言ってどうにかなるわけでもないので、諦める。

 

「ま、この話はこのくらいにしましょう。……それよりも、先輩」

 

「ん?」

 

「寝たいんですよね?」

 

そうニヤニヤしながら言う佐天さん。明らかに何かある。もうすでに分かっている事だが、佐天さんは周りを操るのが上手いから気を付けないと何をするか、何をされるかわかったもんじゃない。

 

一応予防線をはっておく。

 

「一緒に寝る、とかいうのはなしだぞ。あらかじめ言うが俺は遠慮……と言うか拒否するからな」

 

「え?でもそしたらどこで寝るんですか?布団は一枚しかないですし、私は先輩とか、お義母さん(おかあさん)お義父さん(おとうさん)に泊めてもらってる身なので、先輩が床で寝るって言うなら、私も床で寝ないといけない事になるんです。だったら、先輩が布団で寝て、私が床で寝る方が……」

 

だが、この時佐天さんは上条当麻がそういう場面を前に経験していた事を知らない。

 

そして、それを既に経験している側の当麻からすれば、どう切り抜ければ正解なのかを知っていた。

 

「……つまり佐天さんは、俺のが身分が高いから俺に布団で寝て、自分は床で寝るから、と言いたい訳か?この寒い時期に床で」

 

この時、当麻は佐天さんの考えの大まかなラインは見切っていた。

 

おそらく、俺を布団に寝かせ、その上で自分は床で寝る。そして、どんどん冷えていく佐天さんを見た当麻は、仕方なく自分の布団に入れ、自分は布団から出る。そこを、どうにかこうにか言って無理矢理止めて、最終的には二人で一緒に寝る、という形をとるのが狙いだろう。

 

だが、

 

次の佐天さんの返答次第ではこの計画は崩れ去る事になるからな。小さい頃に近所だったポニテのアイツで練習しただけはある。……そういや名前思い出せねぇな。顔は何となく覚えてるけど。………アイツもしつこかったな。ああ言えばこう言う。おかげでどう言えば回避できるか学べたけど。結局最終的には泣きまくって挙げ句の果てに親に言われて何故か親は親でアイツの味方するし。大変だったぜ。……っと、話を戻すか。

 

そして、ついに佐天さんの返答が来た。それは、俺の望んだ展開になった。

 

「まあ、端的に言えばそうなりますね」

 

勝った。俺はここで勝ちを確信した。ここで肯定を示せば俺の勝ちだ。

 

「んじゃあさ、その俺が、……佐天さんがさっき認めたように、俺のが身分が高いんだから、俺が佐天さんに布団で寝るように強要したって問題無いよな。んじゃそういう事で。俺は向こう(学園都市)と同じように風呂で寝るわ」

 

と言って、かっこ良く勝ちを決めたはいいが、

 

「………寒い、………硬い、………狭い、……………寝られねえ」

 

三十分後には、歯をガチガチならしながら硬いバスタブの中で震えていた。

 

予備の布団が無いという事は、つまりは掛け布団、その他もないので、仕方なくバスタオルを掛けて寝ていたのだが、寒いし、硬いし、狭いしで、なかなか寝付けず、そんなこんなで三十分経ってしまった。

 

(これは予想外だった。学園都市の風呂は断熱性の高い風呂だったし部屋自体も冷えにくい構造と素材たったからしばらくはあったかかったけど、ここは全然だ。風呂上がってから一時間も経ってないのにここ来たら既に寒かったし)

 

などと考えて、バスタオルの数を増やそうと思い、鍵を開けた時、急に横から抱きつかれた。

 

ビックリして自分でも気持ち悪いと思うような声を短くあげた後、そっちを見ると、佐天さんがくっついていた。

 

そして、

 

「なんだ、佐天さ……」

 

そこまで言った俺は、その先を口にできなかった。

 

なぜなら、

 

ゴンっ!

 

と、いい音を鳴らして、佐天さんの頭が俺の顎に直撃したのだった。

 

「先輩は馬鹿ですか?そんなに冷えてまで私と寝るのを避けますか」

 

「………そりゃ、……避けないと………マズイ…だろ」

 

「確かにそれはわかりますが、だったら自分の身体を傷めない方法にして下さい。今日はもう何がなんでも来てもらいます。一緒に寝るのがダメって言うなら私が布団を出ますから。もし熱がでたらその時は先輩、看病を頼みます。もしそれが嫌なら私もいれて下さい」

 

 

 

ーー結局、最終的には佐天さんに負けた俺だった。

 

ちなみに、佐天さんはものすごくあったかかったので、冷えはすぐ治った。佐天さんは俺がものすごく冷たかったので、いつものようにおふざけではなく、真剣に考えて俺を温める為に抱きついてきて、そのまま寝ていたのはここだけの話だ。

 

 

ーーーーー

ーーーーーーーーーー

 

という事があった。

 

結局その翌日の内に俺は親に連絡して、布団を一組追加で持って来てもらおうとしたのだが、間に合わないらしく、二日目は佐天さんと一緒に寝る事になった。ちなみに、その翌日には布団は届いていた。

 

 

現在も、先程まで入っていた風呂から出て、着替え、部屋の真ん中に二つ敷いた布団の中に入ってテレビを見ている。ちなみに、佐天さんは現在何かを真剣に考えていて、たまにこっちを見たり、また戻して再び考えこんだり、を繰り返している。

 

俺が心配して呼びかけても慌てて反応して拒否するだけ。

 

本当に理由(わけ)がわからん。

 

女子には秘密がつきものらしいが、こういう事なのだろうか?

 

 

 

とりあえず俺が悩んでも仕方ないので、その話は隅に置いて、今テレビでやっているニュースを見る。

 

ちなみに、できるだけ節約する為に、基本的にテレビで見るのはニュースのみで、それ以外でテレビがついた事は、こっちに引っ越してから今まで一度も無い。

 

そして、一通りのニュースを見終えると、佐天さんに

 

「先に寝るぞ?」

 

と、声をかけてから、俺は自分の布団に入り、静かに眠りについた。

 

 

ーーこんなにのんびりしていられるのはいつ以来だろうか。

 

ふと、そんな事を思った。

 

 

 

ーー(学園都市side)ーー

 

「出欠をとるのですよー」

 

いつもと変わらない声が教室に響き渡る。

 

外見はランドセルを背負えばピッタリなこの女性は、本職は教師だ。

 

この朝の風景も、一部を除けば特に変わったところはない。

 

その『一部』に当たる生徒は、いつも何かしらの事件に巻き込まれ、学校に来ないこと自体はあまりめずらしくもない。なので、クラスメイト達はまた何かに巻き込まれた、くらいにしか思っていないらしい。

 

実際そうではあるのだが、今回のはちょっと事情が違う。

 

詳しくは聞けていないが、かなり長い期間帰って来れないらしいのだ。

 

 

 

出欠を取り終わり、HRが終わると、教室は喧騒にのまれる。

 

その中から、

 

「また上やんはがっこ来てへんのか」

 

「………ま、いつものことにゃー」

 

「せやけど、でもやっぱり同じ趣味を喋れる奴がおらんとなー」

 

「上やんはロリコンじゃないぜい、青ピ」

 

「いや、ロリコンだ」

 

「違うにゃー、上やんはロリじゃなくシスコンにゃー」

 

 

………この会話は心配してるのかけなしてるのかどっちなのだろう。

 

そんな事を考えながらも、私は教室を出て職員室へと向かった。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

ーーーーー

学校での授業やその他が終わり、帰宅する。

 

家に着き、鍵を開けると、一人暮らしの私を迎える声が聞こえる。

 

「おかえりなんだよ、小萌」

 

「小萌先生、おかえりなさい」

 

扉を開けると、インデックスちゃんと、秋沙ちゃんが、私を迎えてくれた。

 

「ただいまなのですよ、インデックスちゃん、秋沙ちゃん。秋沙ちゃんは帰りが早かったのですね」

 

などと他愛ない話をしながら、教師としてではなく同じ家に住む住人としての秋沙ちゃんとの生活に、新たにインデックスちゃんを加えた生活が始まった。

 

 

 

 

 

ーーそんなこんなで、色んなところが同時に動きはじめていた。

 

 

 

ーー逃げる当麻たち。

 

ーー追う美琴たち。

 

ーー巻き込まれた八幡たち。

 

ーー学園都市で待つ当麻の仲間たち。

 

 

 

それぞれがそれぞれの目的の為に、動いていた。




安定の読みづらさでお送りしております。

ほんとすみません。

次回も頑張ります。


後、最近……というか今日知ったんですが、他の方が書いたssに『とある魔術の青春ラブコメは間違っている』というのがあって『!?』ってなりました。

まぁ、向こうのが先に投稿してるんで、こっちがパクッた形になるんですが。

ちょっとした話です。


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第十話

はいどうも、一級狙撃手です。

今回からしばらくは、とあるメインではなく、俺ガイルメインでいきます。

タイトルに俺ガイルsideとは書かないので、頭にいれておいてください。


それでは、本編をどうぞ。


俺らがこっち(千葉)に引っ越して来てから約一週間。事件は突然起こった。

 

もしかしたらこの不幸体質が関係しているのかもしれない。

 

でも、そんな事はどうでもよかった。

 

 

──この事態をどうにかできるなら。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

ーーーーー

周りにいるのは全員同じ顔。

 

その手には一人を除いてライフル銃。

 

その一人はライフル銃の変わりに片手にコイン。

 

そして、もう片方の手には黒い物体。

 

俺は今、どうしようもない状況にいた。

 

 

髪の色は茶色一色。そして、俺の見慣れた制服に身を包み、額からは蒼白い光を放っている。

 

 

 

ここまで確認してしまったからには間違いようがない。

 

「み……さか」

 

まだうまく現実を受け止め切れていない俺に、学園都市の第三位は、

 

「ようやく見つけたわよ、アンタ。………もう、逃げられはしないから」

 

そう言って一歩踏み出した。

 

 

 

 

 

本来なら、俺の隣にはもう一人、女子がいるはずだった。

 

だが、今はいない。

 

御坂と同じ制服に身を包んだLevel4、白井黒子によって既にテレポートさせられた後だった。

 

 

 

 

今、俺がおかれている現状は、降参するしかない状況で。

 

でも、俺自身は、降参する気はない。

 

そもそも、俺が逃げているのは御坂を怒らせてしまったからではなかったか。

 

なら、謝ればいいだろう。

 

そう思う人がほとんどだろう。

 

だが、そんな段階はもうとっくに過ぎている。

 

 

なぜなら、俺は既に御坂に言ってしまったから。

 

『佐天さんと付き合っている』と。

 

後は、御坂がどう出るか、それを見届けるしかなかった。

 

「さあ、私の友達に手を出したって事は、覚悟はできてるのよね?」

 

「いやー、そのー、……別に手を出した訳じゃ……ないんですが」

 

かなり弱腰に反論した俺に、御坂はひときわ低い声で、

 

「問答無用」

 

と言い放った。

 

 

 

 

直後。

 

超電磁砲(Railgun)が放たれたのを合図に、妹 達(シスターズ)からも射撃が開始される。

 

 

一応、当たっても気絶するだけで心配はないらしいが、そんなのは関係無い。

 

結局、当たれば猛烈に痛い訳である。

 

 

 

「ぐっ……がぁぁぁぁぁっっっっ!!?!?!!?」

 

そこで俺の意識は、途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────

─────

「ぐあぁっっ!」

 

「きゃぁぁっ!!?」

 

再び意識が覚醒すると、ベッドの上だった。

 

隣にはもう一人、びっくりしている佐天さんがいた。

 

どうやら夢だったらしい。

 

その事実に、安堵して思わず溜め息が出てしまう。

 

「ふぅ、……ゆ、夢だったか」

 

「何かうなされてましたよ?先輩」

 

「………今日、外に出て大丈夫だよな?」

 

思わず俺は、佐天さんに確認をとる。

 

「どういう意味ですか?意味が全く理解できないんですけど……。ってか先輩、本当に大丈夫ですか?汗ヤバイです」

 

「ああ、大丈夫だ。……実はさっき佐天さんがうなされてたって言ってたけど、見てた夢が御坂に捕まる夢でな。その日付けが今日と同じだったんだ」

 

「今、一番見ちゃいけない夢を何で先輩は見ちゃうんですか………」

 

と、佐天さんに深く呆れられつつも、こうして一日が始まる。

 

 

今日はバイトの日なので、割と急ぎつつ、バイト先へと向かう。

 

 

このバイトも、親父と佐天さんとこのアパートを最初に訪れて大家さんと話したあの日、あの後にそのまま向かったところだった。

 

もちろん、ピックアップしておいてくれたのはお袋だ。

 

 

 

 

 

 

 

何分か歩き、近くのバス停でバスに乗り、高校前を過ぎて、ちょっと行ったところで降りる。『高校前』から三つ目のバス停だ。

 

そこで降りると、少し歩き、見えて来るのはファミレス。

 

そのファミレスの名前を、一度は聞いた事があるだろう。

 

想像がついている方は、もう分かっていると思うが、そう、【サイゼリ○】だ。

 

その【サイゼ◎ヤ】で、俺と佐天さんはバイトしている。

 

基本的な内容は接客がメインである。

 

だが、その辺のバイトは既に学園都市で何回も経験している。……俺も佐天さんも生活がかかってたからな。いや、もちろん今もかかってるけど。

 

なので、基本的な事はほとんどできるし、ある程度の問題ならその店の対処の仕方さえわかれば対処できる。

 

 

加えて、佐天さんはその美貌から、結構佐天さんの為にくる客、というのが存在している事が分かった。

 

なので、俺より少し貰う量が多かったりする。

 

 

 

 

俺は、そんな佐天さんと自分を比べ、不公平だ、と嘆きながらも、バイトを頑張っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー(俺ガイルside)ーー

朝、いつものように折本と家を出て、学校へ向かう。

 

この風景も随分慣れたものだ。

 

一階に降り、チャリ小屋からそれぞれチャリを引っ張り出して、登校する。

 

そして、俺が折本に着いて行く形で俺と折本は毎朝登校する。

 

 

学校に着いても、基本的には教室までは隣で過ごし、教室に入ると、俺とは違って友達が沢山いるし簡単に友達をつくってしまう折本だ。すぐに声をかけられ、そいつのところへ向かう。

 

対して俺はと言えば、以前と変わらず、自分の机で突っ伏している。

 

 

──なので俺は、この時最近由比ヶ浜や川崎からの視線が少し変わっていた事に気づく事が出来なかった。

 

 

 

 

戸塚との朝の時間を無事に終えて、戸塚と一緒に授業を受け、たまに折本に抓られつつも戸塚と一緒に体育をして、昼休みは、折本が作ってくれている弁当を折本と食べ、午後の授業を終えると、待っていたのはHR。

 

特に変わった事は言われなかった。が、HRが終わって、解散直後、

 

「比企谷ー、ちょっとこい」

 

いきなり平塚先生に呼び出され、俺は折本と顔を見合わせた後、「………うす」と小さく返事してから向かった。

 

 

 

──だが、向かった先に待っていたのは地獄だった。

 

 

名前をつけるなら……『独身の悲痛な叫びを聞き続ける地獄』だろうか。

 

名前からするにいやな地獄だ。というかそのまんまだ。

 

 

先生のところまでつくと、いきなり先生が、

 

「比企谷、まさかとは思うが、奉仕部には行ってるんだろうな?……まさかとは思うが、『彼女ができた』なーんて嘘を言い訳にしてるわけじゃああるまいな?」

 

 

……ニコニコとした笑顔に、殺意のようなものが混じったいつもより高めの声で、そう言われた。

 

「い、いや、そのー、最近奉仕部にしゅっしぇきしてないのには理由がありましてでしゅね?」

 

噛みまくったよ……。何だよ『しゅっしぇき』って。

 

ってか、先生も先生でそんな『お前は独身側(こっち側)だろ?』みたいな顔でこっちを見るんですか!

 

「ま、まあ、比企谷に恋人などできる訳がないか。その目もあるし」

 

ちょっとー、教師自らが生徒をいじめちゃう学校なのに進学校ってどうなのー?

 

とか考えつつも、一応折本の為にも反論はする。

 

「い、いやでも、折本の件は本当ですよ?……あいつが、………そのー、……」

 

と、俺がそこまで言うと、急に平塚先生が泣きながら、

 

「この裏切りものー!……何で比企谷に出来て私には現れないんだぁ!!」

 

とか叫びながら廊下の向こうへ消えて行った。

 

 

 

すると、そのタイミングで由比ヶ浜がやって来る。

 

「何か先生の叫び声が聞こえたけど……」

 

「気にすんな。……じゃあな」

 

「うん。じゃあね………じゃないよっ!」

 

一人でボケツッコミまではもう少しだな。将来はピン芸人だ。

 

「ヒッキーは部活でしょ!?」

 

と言うと、問答無用と言った感じで俺の左腕を掴んで引っ張っていく。

 

結局、反論すら出来ずに久しぶりの奉仕部部室にやって来た。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

ーーーーー

部室に着くと、当然、由比ヶ浜に引っ張られてきたため、由比ヶ浜が先に入る。

 

部室には、暖房が入っているらしく、廊下よりはあったかかった。

 

「やっはろー!」

 

相変わらずの馬鹿丸出しの挨拶である。……でも不思議なのは同じ挨拶を小町や陽乃さんがやっても馬鹿には見えないところだ。

 

つまり、結論をいえば、『由比ヶ浜は馬鹿』だ。結論言わなくても分かってたね。うん。

 

っと、つまり、そんな馬鹿丸出しの挨拶に続く形で俺も久しぶりの部室に入る。

 

「………うっす」

 

と、俺ら二人が部室に入ると、先に来ていた雪ノ下が、

 

「あら由比ヶ浜さん、今日は少し早いのね」

 

………………………。

 

……………。

 

……。

 

MU☆SHI

 

見事なまでの無視だ。まるで俺の存在などないかのような振る舞い。

 

しかも由比ヶ浜は由比ヶ浜で普通に雪ノ下と会話始めちゃってるし……。

 

俺は反論すら面倒だったので、とりあえず椅子をいつもの場所におき、読書を……、

 

ピロリン♪

 

っと、何か知らんが急にスマホがメール着信の音声をつげる。

 

確認してみると、

 

『比企谷、今どこにいんの?三十秒後に電話いれるから』

 

という文面。どうやら送り主は俺の彼女様らしい。今頃気付いたが、確かに言ってなかった。

 

とりあえず三十秒後に電話がくるらしいので、脳内で数えつつ時間を待つ。

 

(………11、12、13、……18、19、………24、…26)

 

そして、

 

再び着メロ。ただし今回はさっきのとは違う。

 

俺は、無視されているので、二人には声をかけずに、静かに部室を出て廊下に向かおうとしたのだが、

 

「……部活中にどこへ行こうと言うのかしら?」

 

いきなり雪ノ下に声をかけられた。それも割と寒い感じの凍てつく声で。

 

「………電話が来たから出るだけだよ」

 

俺はそう答えて、扉を開けた。

 

 

ーーーーーーーー

ーーー

廊下に出ると、まだ寒さを感じる。

 

とりあえず部室側の壁に背中を預けて、画面を開き、急ぎ通話ボタンを押す。

 

『……比企谷、出るの遅い』

 

「ちょっと事情があってな。……ってか三十秒後にって言ってたが、二十七秒位だったぞ?」

 

『んなどうでもいい事はいいから、今どこ?』

 

「部室だが……」

 

『まだ時間かかるの?』

 

「何が言いたい?」

 

『いや、………一人で帰ると寒いから……』

 

「なっ!!?」

 

『あっ、引っ掛かった?……比企谷慌て過ぎウケるw』

 

「明らかに電話越しなのに文末に『w』がついてたように聞こえたんだが……」

 

『はいはい、気にしない気にしない。んじゃ今からそっち行くから、じゃね』

 

「あっ、ちょっ、待っ、おい!」

 

ツーッ、ツーッ、ツーッ…………

 

 

 

──まさかの彼女と女王様に板挟みという。

 

俺、死んじゃうの?

 

 

ーーーーーーーー

ーーー

部室に戻ると、雪ノ下と由比ヶ浜から微妙な視線を送られたが、あえて無視した。

 

そして、今度こそ読書を始める。

 

 

パラ……パラ……

 

 

静寂感漂う部室。俺はこの静寂は嫌いじゃない。むしろ好きだ。

 

だが、そんな静寂に耐えられない奴が一人、この部室にいた。

 

「……………」

 

由比ヶ浜。

 

俺はともかく、雪ノ下はその性格ゆえにいつも一人で行動しているため、俺や雪ノ下は沈黙や静寂には割と慣れている。

 

だが、由比ヶ浜だけは違い、いつも煩いあの葉山や三浦のグループに属している。そして、三浦の近くにいる。

 

言い換えれば、それ程三浦に似ている、と言う事でもある。

 

ああいうグループの場合、もちろんヒエラルキー的な話で強い奴、カリスマ性の高い奴が頂点に立つ。そして、そいつの周りには、(三浦は典型的だが、)基本的にボスを喜ばせたり楽しませるなど、そういう事に向いている奴が選ばれる傾向が高い。又は話の合う奴。

 

今回の由比ヶ浜の場合は、(グループにいる時の)由比ヶ浜が、三浦にとってそういう存在であるのに加え、三浦自身の無意識的な庇護欲や、保護欲とも合間って、こういう結果になっていると言えよう。

 

そして、由比ヶ浜自身の明るい性格のお陰もあって、今まで俺のような、(グループの)奴等からしたら『笑い者』や『話のネタ』になるような人種とは関わる可能性が低かった事や、大抵のそういう奴なら味方に引き寄せてしまうその性格ゆえに、こういう静寂を経験した事は少ないし、そもそもとして彼女が苦手とする傾向がある。

 

なぜなら、そもそもの問題として、静寂や沈黙、孤独といったものを気にしなかったり、受け入れられるならば、別にグループに所属したり明るい振る舞いを周りにまで振りまく必要はない訳で。

 

つまり何度も言うが、由比ヶ浜は静寂が苦手だった。

 

「あー、えーと、………ひっ、」

 

しゃっくりでも出たのだろうか?と思っていたら、

 

「ヒッキーはこれからも部活来るんでしょ?」

 

既に質問の内容が明らかにおかしくなっていた。まあ、質問内容が決まる前に手をあげてるようなもんだからな。

 

「……………………ああ」

 

「何か物凄い間があった!?」

 

「気にすんな」

 

本を読みつつ、返事をする。

 

だが、返事が遅れたのには実際、あまり意味はない。考え事をしていて気付かなかっただけだ。

 

(それにしても折本の奴、本当に来る気か?)

 

他人同士の友好関係などどうでもいいのだが、今回ばかりはそうはいかない。

 

由比ヶ浜はまあいいとしても雪ノ下は絶対まずい。後で俺が死ぬ。

 

とりあえず何とか防がなくては──。

 

そう思った矢先だった。

 

 

部室のドアに誰かがノックをした。一瞬、背中に冷たいものが流れる。───そして、

 

雪ノ下が返事をするよりも早く、そいつは入って来た。

 

「ヤッホー、ゆいっち!」

 

「かおりちゃん!?…………あ……」

 

俺は、とりあえずこの時だけは神を信じて祈りを捧げていた。

 

俺と折本と由比ヶ浜は同じクラスであるため、其れなりに互いの事を知っているのだが、雪ノ下はそうではないので、「誰かしら?」となるのかと思っていたら、

 

「見慣れない顔ね。もしかしてあなたが転入生の折本さん?」

 

「うん。折本かおり。前は隣の海浜高校にいたんだけど、ちょっとした事情で総武に来たんだ。よろしくねっ、……えーと」

 

「………雪ノ下よ」

 

「よろしくねっ、雪ノ下さん」

 

「ええ。よろしく」

 

これが、折本と雪ノ下の初会話だった。だが、雪ノ下は穏便に終わらせるつもりはなかったらしい。

 

「………ところで、折本さん」

 

急に雪ノ下が折本を呼んだかと思ったら、

 

「あなた、そこのゴミにどんな弱みを握られているの?」

 

「……俺はゴミなのかよ」

 

今の俺と雪ノ下のやり取りで、雪ノ下の言ったゴミが俺だと気付いた折本は、予想外の答えを雪ノ下に言った。

 

「ゴミって……ウケるんだけどっ……。前の比企谷にピッタリじゃん」

 

腹を抑えて体を震わせながら笑いやがった。

 

「うるせーよ」

 

とりあえず俺はそう言ったのだが、

 

「……………」

 

「……………」

 

他の二人は怪訝な顔をしていた。

 

先に口を開いたのは由比ヶ浜だった。

 

「かおりちゃん、『前の』って……」

 

「え?………あ、ああー、えーと、(チラッ)」

 

え?そこで俺を見るの?

 

とりあえず俺は軽く首を振り、否定の意を示した。

 

折本はそれに同意したらしく、視線を戻して、

 

「比企谷とはおな中なだけ。で、だから『前の』比企谷な訳。ねっ?」

 

「あっ、ああ、そうだな。うん」

 

「なーんか変な感じ」

 

「……では、折本さんが比企谷君の彼女、という噂は嘘な訳なのね」

 

いきなりの雪ノ下の言葉に、その前に由比ヶ浜の言葉もあったせいで(由比ヶ浜にはどうにか誤魔化せたと思って安心しかけていたから、)ビクッと反応してしまう。

 

「どうしたのかしら?」

 

と、雪ノ下が言ったところで、全身に寒気が奔る。

 

当の本人、雪ノ下は『?』という顔で首を傾げている。

 

……いやだから、そんな顔で首を傾んなよ。これで質問がこれじゃなければなぁ。

 

 

 

──だがここで、俺と折本に救世主が現れた。……いや、現れた訳じゃないか。

 

『あ、あー、比企谷八幡君、折本かおりさん、至急生徒会室に来てください。繰り返します……』

 

「……めぐり先輩から呼び出しか?」

 

「ヒッキー何かしたの?」

 

由比ヶ浜が聞いて来る。が、俺は思い当たる事がないので首を振る。

 

折本にも視線を向けるが『さぁ?』と言っていた。

 

とにかく、これで話はそらせ………

 

「放送で呼び出しがかかってしまっては仕方がないわね。今日、とりあえずこの後由比ヶ浜さんが他校の生徒さんと会うらしいのだけど、そこに私も呼ばれているのよ。場所は近くのサイ◆リヤよ。終わったら呼ぶから来なさい」

 

──全然話をそらせてなかった。

 

俺は一度折本と目を見合わせてから諦めて従う事にして、部屋を出た。

 

 

 

 

───────────

─────

「ところで、」

 

「んぁ?」

 

部室を出て俺の先導で生徒会室に向かう途中、いきなり折本から声をかけられた。

 

「さっき比企谷が言ってた『めぐり先輩』って誰?名前からして女子だよね?」

 

「ん?ああ。城廻めぐり先輩。今の生徒会長だよ」

 

とりあえず名前と役職だけ説明する。

 

「へぇー、生徒会長何だ。でも何で比企谷が会長と知り合いなの?」

 

「………ご想像にお任せします」

 

何となく正攻法で答えたら面倒になる気がしたので、適当に誤魔化す。

 

そして、そうこうしてるうちに、俺と折本は生徒会室に着いた。

 

生徒会室に着き、扉をノックする。

 

「比企谷八幡です」

 

俺に続いて折本も、

 

「折本かおりです」

 

折本が名前を言い終わる頃、丁度扉が開いた。

 

「あ、来た来た。やっほー、比企谷くん、かおりちゃん。ちょっとそこの席で待っててね?」

 

と言うと、先輩は内線を使ってどこかに連絡し始めた。

 

その後一分もしない内に、生徒会室の扉が開き、平塚先生が入ってくる。

 

「よぉー、比企谷。まさかこんな事態になってるとは知らなかったぞ」

 

「何がですか先生。主語がないのでわかんないっす」

 

「折本の件だ。まさか同棲してたとはなぁ。……これはあれだよな?『ファースト』から『ラスト』まで連続でも問題ないよな」

 

そう言った先生に、俺は体を震わせながら全力で否定した。めぐり先輩は「あはは………」などと言っている。ちなみに、折本は先生の言ったネタを知らなかったらしく、意味がわからないらしい。

 

「はぁ……、まあいい。とりあえず、その辺の状況を教えろ。状況によっては学校側としても指導いれないと出しな」

 

なるほど、今回呼び出されたのはそれか。

 

 

とりあえず俺は、折本と一緒に、現場と至った理由、関係する過去を誰にも言わない約束で、めぐり先輩と先生に話した。

 

 

 

 

 

 

───────────

─────

 

ーー(折本side)ーー

比企谷と私が先生に状況を話した後、帰ろうとして今は自転車小屋。

 

「比企谷ー、帰ろっ」

 

「おう。………………あ」

 

急に比企谷が何かを思い出したようにした。ちょっと気になったので聞いて見る事にした。

 

「どしたん?何かあったん?」

 

「あー、いや、今思い出したが、今日この後サイゼに行かないといけないんじゃなかったか?」

 

「そう言えばそうだったね。行くの?」

 

「……行きたくはないが行かないと殺されるだろうな」

 

「じゃあ行こうよ。比企谷おごりね。とりあえず隣に座るから」

 

いろいろ今のいちに注文して行く事にした。

 

比企谷は少し反論して来たが、結局は折れ、諦めて私に従うらしい。

 

「…………ま、たまにはな。[彼氏っぽいところでも見せますか]」

 

後半、物凄い小さい声だったので、一部聞こえなかったけど、聞いてしまった部分だけでも言いたい事は伝わってしまったので、私は彼にバレないように気をつけながらも、赤くなる顔を抑えられなかった。

 

 

 

 

 

 

サイゼに着くと、店の奥に見た事のある姿が見えた。

 

 

──そこにいたのは、隣の住人の一人、佐天涙子ちゃんだった。

 

 

ーー確か彼女は中学生じゃなかったっけ?

 

 

そんな疑問が頭をよぎったが、気にはせずにとりあえずそのまま比企谷と一緒に店に入る。

 

すると、

 

「いらっしゃいま……何だ、比企谷と折本さんじゃないか。どうしたんだ?」

 

「上条?何でここにいんの?……ってか似合ってなさ過ぎウケる……ククッ」

 

「同じ事を佐天さんにも言われたよ……」

 

と、そんな事を話しつつも待ち合わせの件を上条に伝える。

 

その上条の案内で向かったテーブルからは、既に近寄りたくない雰囲気に、冷たい視線、何となくだが、殺気まで感じてしまった。

 

 

ーー私、ここで死んじゃうのん?

 

 

 

 

ちょっと変になりつつも、隣の比企谷と一緒にガクブルしながら確実に地獄へ向かっている事を確信していた。



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第十一話

はいどうも一級狙撃手です。

今回は折本の話です。


それでは、本編をどうぞ。


ーー(折本side)ーー

 

とりあえず今の状況をどうにかできないか、と思い、比企谷に目線を向けるも、比企谷はこっちに気付いていない。ここで比企谷にアタックしたら更に悪化しそうなのは目に見えているので、私は何もせずに向かう。

 

 

──だけど、そんな状況だけど!

 

 

なんと言うのか、私は身体が無意識的に『ここで退いたら負け』と判断してしまっていたようで、

 

「あら、来たのね、クズ谷君?」

 

「あ、あははー。や、やっはろー」

 

と、言ってきた二人に対して比企谷が、

 

「………おう」

 

と答え、座った直後だった。

 

 

 

──私は、いかにも手慣れた、といった感じの素早い動きで比企谷の顔を両手でつかんで、首を痛めないように気を付けながら振り向かせて、その無防備な口に、キスをカマした。

 

文字通り、と言ったら『どんな?』ってなると思うけど、でも、表現的には『カマした』のだろう。

 

「…………ん!?」

 

比企谷も比企谷で、急にキスをしたからビックリしたらしく、しばらくぼーっとしていた目が急に見開かれ、そのまま肩を掴まれて、無理矢理離されてしまう。離してしまった事と、比企谷が拒否した事に少しムッとしてしまうが、急に襲ったのは私なので我慢する。

 

だが、比企谷は比企谷で──

 

「なっ!?………は!?ちょっ……おまっ!?えっ!?!!?…………何やって、んむっ…!?」

 

驚きのあまり言葉が続かない比企谷をみて焦れったくなり、もう一回キスをする。今度は離さないように頭を抑えつつ長めに。

 

「ん……………、んんっ…………ぷはっ」

 

それだけで比企谷は放心状態になってしまったため、私は、とりあえずベンチに膝立ちの状態からきちんと座り直し、比企谷をベンチの奥にのけてから、雪ノ下さんと結衣っちに、

 

「これが今の私と比企谷の関係。雪ノ下さんが知りたかったのはこれでしょ?………あと、嘘をついたことはごめんね?」

 

そう言って二人に座ったまま頭を下げる。

 

だが、二人は俯いたままだ。

 

私は、少しやり過ぎたかな?と心配になったが、雪ノ下さんが、小さな、絞り出すような声で、

 

[…………一つ、教えて頂戴。あなたと彼の間に中学の時に何があったかは知らないけど、少なくとも………………その、私が………なれる可能性はあったのかしら?]

 

消え入りそうな声でそう言われた。

 

 

 

だが、この質問は予想してもいた事だ。

 

そして、私は放心している比企谷を見ながらこう言った。

 

「わからない。……雪ノ下さんが努力すればなれたかもしれないし、努力してもなれなかったかもしれない。……けど、誰を選ぶかは比企谷次第だし、それに対して私達が口を挟める権利もない。……特に私は」

 

私は、言いながら比企谷の事を真剣に考えて悩みに悩み抜いたあの時を思い出していた。

 

「…………私は、昔……中学の時に比企谷をいじめてたんだよ。比企谷に助けられたんだ、って事にも気付かないでね。……私は……ううん、『私達みたいな人は、群れる事を好んでいてるけど、その意味がわからない』比企谷がそんな感じの事を私の隣で言ったのが私と比企谷の最初の接触。その時は私と比企谷は席が隣同士だったから。その後、『あの事件』があって、比企谷はいじめの対象になった。……原因は私なのに、私が受ける筈の痛みを比企谷が変わって受けてくれた」

 

そこまで言って、佐天さんが大分前に出してくれていたお冷を飲み、続ける。

 

「正直、それに気付いたのは割と最近なの。……と言っても四、五ヶ月位は経ってるけど。そして、多分雪ノ下さんもだと思うけど、比企谷って、周りに対して壁を作っちゃうからさ、情報を掴みづらいんだよね。……その原因も私にあるんだろうけど……。で、そんな少ない情報で、私は私なりに比企谷の事を考えた。……きっかけは忘れちゃったんだけどねー。……で、考えてく内にさ、『比企谷らしくない』と思ってね。それから真剣に考えた。自分が納得いくまで考え直した。結局はただの自己満足なんだけどさ、それでも意味はあると思ったから。そして、考えて考えて考えまくって、ようやく結果がでたと思ったら、最悪の結果で。……だから、最初の頃は、違う、なんて考えてたけど、比企谷の行動原理に当てはめたらはまっちゃった。それで、謝りたくなったんだけど、学校は違うわ、家は家で訳わからないこと始めるわ、友達は友達で未だに比企谷の事をネタにするわでめちゃくちゃだった。……でも、絶対に謝らないといけない。そう思ったから、家の事情もあったし、それで転入する事にした。比企谷に謝る為に」

 

私がそう言うと、結衣っちが、

 

「………そっか、転校日のあの『理由』ってそういう事だったんだ」

 

と、漏らし、私は頷く。

 

そして、今度は雪ノ下さんを見て、

 

「そしてこの間、やっと謝る事が出来た。……そして、考えていく内に出てきちゃった感情にも、蹴りをつける事が出来た。その時、私はまた比企谷に教えてもらっていた事に気付いたんだ。……いや、今回のは違うかもしんないけど、私がそうだと思ってたいだけなんだけどさ。………私は比企谷に真剣に人の事を考える、理解するって事を教えてもらったんだって思った」

 

そして、私は言いたかった事を言った。

 

「つまりさ、まとめちゃうとものすごく簡単なんだよ。『比企谷の事をどれだけ好きで、そして、どれだけ理解出来るか』……これだけなんじゃない?」

 

と、ここまで言うと、雪ノ下さんと結衣っちは、

 

「………………完敗ね。……本当、完敗だわ」

 

「………うん。私も、負けちゃったかも」

 

と、少し意味のわからない事を言った。

 

なので聞いてみると、雪ノ下さんが、

 

「何で比企谷君が貴女を選んだのかがはっきりわかったわ。私に足りてなかったところもね。……本当、比企谷君にはもったいないくらいいい人ね、折本さん」

 

そして、結衣っちも、

 

「かおりちゃんがヒッキーの事が大好きなのも、ヒッキーがかおりちゃんの事が大好きなのも、これだけお互いの事を考えてるからだよね。……なーんか憧れちゃうなー」

 

と言ってきて、私は今まで自分が何を言ったのか自覚して、全力で赤くなってしまう。

 

 

──でもまあ、彼の事を好きでいてくれる、本当の意味で好きでいてくれる人がいるのは少し嬉しい。そして、そんな人の彼女である事が誇らしくもあった。

 

「なーんかさ、」

 

私はこう始めて、

 

「私達………もしかしたら他にもいるかもしれないけどさ、比企谷を好きになった人って、比企谷に振り回されるよねー。……そういう運命なのかも」

 

と、繋げた。

 

そして、その言葉に対して二人が返事を返す。

 

「ええ、私も、比企谷君を好きになった一人だからよくわかるわ」

 

「そうだねっ、私もよくわかるもん」

 

──そう言った二人は、女の私が見ても綺麗だ、と思うくらいの笑みで、そう言っていた。

 

 

 

 

────が、

 

「なっ!?…………………………お、お前ら!!?!?」

 

さっきのあの言葉と、その笑みは、タイミング良く………いや、タイミング悪く起きてしまった比企谷にも見られていて、

 

それがこの四人で共通の情報となった事に気付いてから約五秒後、

 

 

 

 

──既に恥ずかしさで真っ赤だった私の彼氏の顔は、次に起こり得る事態を予想してか、真っ青になっていた。

 

 

 

「……………」(雪ノ下さん)

 

「……………」(結衣っち)

 

「……………」(私)

 

「……………」(比企谷)

 

 

 

 

──全員、無言。

 

これ以上ないくらい気まずい雰囲気がこの集会の場に流れる。

 

そして、

 

「さ、さて、比企谷君?どこから聞いていたのか正直に答えなさい」

 

「………雪ノ下、声、裏返ってるし震えてるぞ」

 

「ちなみに、そう言うあなたの声も震えているのは知っているのかしら?まあ、そんな事はいいわ。……兎に角死にたいらしいわね」

 

 

この後、私の彼氏は精神的に死んだ(気絶した)

 

 

 

 

 

──────────

─────

 

「ところで……」

 

現在は、雪ノ下さんと結衣っちにそれぞれ精神的に攻撃を受けて、死んだ比企谷をベンチに横たわらせて頭を膝に乗せて──簡単に言えば膝枕の状態で──その頭を撫でながら三人で話している。

 

現在は、雪ノ下さんが話している。

 

「その男のここでの事に関する記憶は消すとして、」

 

「消しちゃうんだ………。ヒッキー、大変だね」

 

「そんな事はどうでもいいわ。話を戻すわよ?………折本さん、由比ヶ浜さんから聞いたのだけれど、貴女とその男が同棲しているというのは本当なの?」

 

「あー、その話、私も戸部っちから聞いたんだよねー。何か、海浜のサッカー部の子が、かおりちゃんとヒッキーが一緒にアパートの部屋に入るのを見た、って」

 

雪ノ下さんの疑問に、結衣っちが補足説明をして、私に疑問をぶつける。

 

だけど、答えようとした私を雪ノ下さんが止めた。

 

「ち、ちょっと待って、由比ヶ浜さん、貴女今『アパートの部屋に』と言ったのかしら?『一軒家に』じゃなくて」

 

「うーん、本当かどうかは知らないけどね。後で戸部っちに聞いてみるよ」

 

「そ、そうね。……色々聞いてない情報があり過ぎて頭が痛いわ……。本題に戻りましょう。で?同棲しているというのは本当なの?」

 

「………うん。アパートで比企谷と『二人で』同棲してるんだ」

 

「……いいなぁ~、ヒッキーと同棲か………え?」

 

何かを想像してほんわかしていた結衣っちが、急に変な声を出す。雪ノ下さんは何故か携帯を構えている。

 

「どうかしたの?」

 

私が聞くと、結衣っちが、

 

「かおりちゃん今『二人で』って言った!?しかも当然のように!!?」

 

「結衣っち落ち着いて、他のお客さんいるから」

 

とりあえずなだめると、ごめん、と言って座った。

 

そして、それについての説明も、始める事にした。

 

 

──もう、この二人には何もかも話してしまおう。

 

そう決めて、既に店に入ってから十五分くらい経つのを時計で確認すると、

 

「そろそろ何かたのも?比企谷も、起きなよ」

 

と言って、私は身体を揺すった。

 

 

──────────

─────

 

ーー(比企谷side)ーー

 

 

起きてみると、そこはサイゼだった。

 

頭は上を向いているのだが、上にあるのは影だけだ。

 

その影が少しズレると、ここ最近で見慣れた彼女の顔が。

 

そこまできて、ようやく状況を把握する。

 

「もしかして、俺が寝てる間ずっと?……大丈夫か?」

 

状況を確認した直後、まず俺自身が喜ぶより先に、彼女を心配してしまう。

 

この辺りは、ぼっちの『自分の意見が通る事はないから意見だすのやめよう』精神が変化したものの一種と言えるだろう。

 

ごめん、嘘です。普通に脚が痺れてないか心配になっただけです。

 

「うん、痺れたりはしてないよ」

 

どうやら心配はないらしい。

 

「そうか。……ってか、何で俺らサイゼにいるんだ?……ってうおっ!……お前らもいたのかよ」

 

「あら、まさか毎年毎年365日無視されてる人に存在確認をされるなんてね。……死にたいの?」

 

「何か最後だけ口調が違ったぞ。……ってか、お前の理論だと、俺は四年に一度は回避してる計算になるな。つまりその年の俺は神だ」

 

「あなた、どれだけ前向きなの……。ゴキブリ並みの生命力ね。これからゴキ谷君って呼ぼうかしら。それに、必ずしも四年に一度というわけではないのよ?グレゴリオ暦の計算では、四年に一度の内、百で割り切れて四百で割り切れない数は入らないわ」

 

「そこまでは知らんかったわ。それとゴキ谷やめろ。……流石雪ペディ……ひっ!」

 

俺がそこまで言った時、俺の体感温度はおそらく二十度は下がったんじゃなかろうか。

 

「何か……言ったかしら?」

 

ちなみに───雪ノ下はあくまで笑顔だった。

 

 

 

──────────

─────

 

「ところで、何の話をしてるの?」

 

俺の体感温度が正常に戻った頃、いきなり由比ヶ浜が俺と雪ノ下の会話?に入って来た。

 

と、同時に折本も入ってくる。

 

「あ、それ私も気になったー!……何?グレオ暦(グレ男歴)?」

 

「お前こそ何の話をしてんだ……」

 

と、俺が折本と由比ヶ浜に呆れていると、横から声がかかった。

 

閏年(うるうどし)の話じゃねえのか?」

 

「やっぱりそうですよね?私も閏年だと思ってました」

 

みると、私服に着替えた上条と佐天がテーブルの横に立っていた。

 

「あれ?上条も涙子ももういいの?」

 

「俺らはもうあがったからな」

 

「ええ。なので、私達も混ぜて下さい」

 

と言うと、俺と折本、雪ノ下と由比ヶ浜が同時に動き、それぞれの列に一人分の空きスペースをつくる。そこに、俺らの側に上条。反対側に佐天が座った。

 

「それにしても、」

 

と俺が言い始め、特に由比ヶ浜向けて言葉をはなった。

 

「お前ら、中学生より低い知能って」

 

「別にいいでしょ!?使う訳じゃないし」

 

「ま、それはそうだな」

 

と、俺に対して怒った由比ヶ浜に、上条が賛同する。

 

「ところで……」

 

今度は雪ノ下が、……と、今回はさすがに言いたい事がわかったので、俺が始める。

 

「そういえばまだやってなかったな。……雪ノ下、由比ヶ浜、この二人は、俺と折本の部屋の隣の住民だ」

 

「どうもー。隣の住民一号です。不幸体質です」

 

「どうもー。隣の住民二号です。中学生妻です」

 

「……佐天さん、嘘はやめて下さい。もうすでに酷い目にあってます」

 

「あー、そうでした。……では改めて。私は、佐天涙子です」

 

「上条当麻だ。訳あってここに引っ越して来た。俺らの事はここだけの秘密にして欲しい」

 

そうして、俺と折本以外の奴らの自己紹介か始まった。

 

 

 

 

──────────

─────

 

そんな自己紹介はすっ飛ばして。

 

そこから三十分程進んで、みんなでいろいろ食べつつ話し始めている頃。

 

雪ノ下が、思い出したように言った。

 

「そう言えば折本さん。貴女、ご飯を頼む前の続き、言ってないわよね?」

 

「あ、そういえばまだだったかも」

 

いきなり意味のわからん事を言い出した雪ノ下とそれに同意した折本。その行動の意味がつかめないまま、折本の地獄の説明は開始された。

 

俺は、内容がわかった瞬間からイヤホンをつけて、目を閉じたので、どんな話をしたのかは知らない。知りたくもない。

 

今後、雪ノ下に弄られるような内容でなければいいか、なんて思いつつも、

 

 

 

──余計な事を言うなよ、折本。

 

本当に、こればっかりは切に願った。

 

 

 

 

 

 

ちなみに、その後の話をすると、

 

 

──とりあえず穴があったら入りたい。いや、マジで。

 

 

こんな気持ちにさせられた。

 

 

 

 

 

──────────

─────

 

ーー(折本side)ーー

 

「えっと、どこまで話したんだっけ?」

 

「確か、比企谷君と二人でアパートに住んでいる、というところは聞いたわ」

 

「あー、思い出した。その理由からなんだっけ。んじゃあ、そこからで。……比企谷はもう一度聞く事になっちゃうけどいいよね?」

 

「ああ。俺は問題無いが……、折本はいいのか?」

 

「うん。私は」

 

と、私は心配してくれた比企谷に短く答え、そして話始めた。

 

「さっき言ったけど、中学生の時、私は比企谷の事をいじめてた。それは事実。……でも、そうなった理由自体は私にある……て言っても、その時は本当に、比企谷が何かした、なんて夢にも思ってなかったし。……その方法も比企谷らしくてウケるけどね」

 

「待て待て待て、今ここでその話をするのか!?」

 

「え?……あれ?言ってなかったっけ?」

 

「言ってねぇし聞いてねぇよ!!」

 

比企谷はそう言うと、急いでイヤホンをつけて、テーブルに突っ伏した。

 

「……………まあいいや。話の続きなんだけど、比企谷がその時とった行動ってのが、『私への告白』なわけ。んで、じゃあそれがどういう効果があった、って言えば、『言い訳の対象』になる、って事。……結衣っちにわかるように説明すると、もし私が失敗しても、『比企谷に告白されて調子が狂った』って言えば悪いのは比企谷になるでしょ?……比企谷がやったのはそう言う事。でも、そのおかげでこうして一緒にいられるんだから、時々さ、運命かも、なんて思ったりしちゃうんだよねー。んで………」

 

 

この後も、ここにいるみんな、と言っても比企谷以外は、全員この話を真剣に聞いてくれた。雪ノ下さんや、結衣っちは、途中、何回か比企谷を見て、哀しそうな顔までしてくれていた。……それだけ、比企谷の事が好きなんだ、と思って、私はまた少しだけ誇らしくなりつつも、ちょっと申し訳ない気持ちにもなる。

 

そんな私の隣で、堂々と寝ている(いつのまにか寝てた。寝顔可愛い)比企谷には、後で雪ノ下さんから弄られる刑が待っているので、今回は放置する。

 

「…………という事があって、今になるの。本当、ウケない話だよ」

 

でも、私は比企谷に助けられた事は絶対に忘れないで、その代わり、と言っちゃアレだけど、絶対比企谷を幸せにするって誓ったからね。ふふっ。今から楽しみになってる。

 

 

 

 

 

 

とにかく、まだ私と比企谷は始まったばかり。

 

なら、幾らでも道はある。

 

 

その中にどれだけ幸せになれる道があるのか知らないけど、

 

 

もしそうじゃなくても絶対に幸せにするって誓った。

 

誓ったからにはやり遂げないとね。

 

 

 

 

 

──これから、どんな未来が待ってるんだろう。

 

 

今からそれが気になっている私と、

 

 

──もっと比企谷に好かれたい。

 

 

って、考えてる私と。

 

 

──ずっと、比企谷を好きでいたい。

 

 

そう考えてる私と。

 

 

 

 

こんな気持ちが集まって、今の私があるなら、絶対に忘れたくない。

 

なんて、ちょっと私らしくない事も考えたりしていた。

 

 

 

 

 

 

──────────

─────

 

「じゃあねー!」

 

「また明日」

 

サイゼを出ると、そう言って、結衣っちと雪ノ下さんは私達と別れて帰って行った。

 

「んじゃ、俺達も帰るか」

 

「そうだね。……上条と涙子は?」

 

部屋が隣同士なので、聞いてみると、

 

「私と先輩はバスなんですよ」

 

との事。

 

なので、私はまた比企谷と二人で帰る事になった。

 

 

 

 

 

 

──────────

─────

 

ーー(比企谷side)ーー

 

気付けば寝ていた俺を、折本が起こしてくれてからサイゼの出入り口でそれぞれ別れて、現在はチャリで帰宅途中。

 

と、そこに、一本の電話がかかってきた。

 

仕方なく、折本に合図して、路肩にとめる。

 

「もしもし」

 

と答えると、二週間位久しぶりに聞く声が、機器の中からした。

 

『あ、お兄ちゃん?』

 

「小町か!?……どっ、どうした?」

 

『………切るよ?』

 

「すみませんでした」

 

『ノータイムだね……。まあそんな事はいいの。でさ、お兄ちゃん。折本さんと一緒に今日久しぶりに家に来ない?』

 

「……………なして?」

 

『えーと、パパとママが、折本さんに挨拶したいらしいよ。……ほら、あの時はお兄ちゃんがパパと話してたから、折本さんとも話したいんだって』

 

俺は、記憶を探って、確かに、と、納得した後、

 

「折本に聞いてみる」

 

と言って、そのまま、

 

「折本、小町が今日家に来ないか、って言ってるんだが。……親父が話をしたいらしい」

 

「えっ!?……比企谷のお父さんが?///」

 

と、折本は急に顔を赤らめ始めた。

 

俺はそこで意味を察し、

 

 

「あー、聞いた感じそんな感じの話じゃないっぽいから安心してくれ。俺も同席するから」

 

と言うと、折本は赤面のまま、小声で、わかった、と言って肯定した。

 

「んじゃ小町、今から折本と二人で向かうわ。……親父との話なんだが、俺の同席は絶対条件で」

 

こうして、俺は折本と一緒に久しぶりに実家に帰る事になった。




という事で、次回はまさかの実家編です。

小町、初登場!?(前に登場させましたっけ?)



あと、話は変わりますが、(本当に変わるけど)シンゴシラみました!



楽しかったです。

読者様の中に既に見た、って方はいますかね?


エヴァネタ満載だったー。


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第十二話

はいどうも、以下略。


今回の投稿は割りと早い方でしたね。

それでは、本編以下略。


「着いたぞ」

 

俺はそう言いながら、とりあえずまだ持ってていいと言われた鍵を使って久しぶりに実家の玄関を開ける。

 

すると、中から小町が飛び出して来た。

 

「おー兄ちゃーん!!」

 

そしてそのまま俺にダイブ。その瞬間、背後から感じる熱が消え、奉仕部の雪ノ下よろしく体感温度が下がる。

 

「あ、あー、折本さん、……コンニチハデス」

 

危険を察知した小町が片言になりながらも対応するが、時遅し。

 

「そうだ!後で小町ちゃんに話があるんだー!」

 

 

──つとめて明るく言われたその言葉に、裏があるのは明白だった。

 

 

 

──────────

─────

 

とりあえず玄関でこんな事をやっていても仕方ないのでリビングに入ってからそろそろ三十分。

 

「できたわよー」

 

そう言いながらこっちにくる我が母親の両手には久しぶりにみる特製料理。そして、小町が持って来たのは四人分の取り分け皿。

 

もうここまで言えばわかると思うけど……、

 

 

結論だけ言おう。

 

 

 

結論:親父が帰って来ない。→話が進まない。

 

 

という事。

 

これはどうやって方程式を解くのが正解なんだろうか?

 

いや、親父が帰って来られない時点で解きようがないね、うん。

 

「親父は?残業か?」

 

取り敢えず一番可能性の高い解を導き出し、聞くと、

 

 

「それがね……実は長期海外出張らしいのよ。アンタ、家出てたし興味なさそうだから伝えなかったんだけどね。今日はその準備らしいわよ?」

 

「マジでか?……せめて話くらいはしてくれよ。ってか小町、お前これどういうことだよ」

 

「い、いやー、そのー、何ですかね?……たっ、たまには、お兄ちゃんに会いたいなー、なんて思ったりもしたりたりしなかったり……」

 

俺が小町を問い詰めると、先程の事もあってか、折本にビクビクしながらそう言った。……これはあれか?この後自分の気持ちに気付いてくれなかった小町が俺を殺して、俺を殺した小町を恨んだ折本が小町を殺……、これ以上の妄想はよそうな。うん。

 

まぁ、小町が俺を好きでないのでこんな未来は起こり得ない。あ、でも空鍋くらいはやりそうです。主に折本が。

 

と、まぁ、そんな訳で小町の嘘はあっさり暴かれて、小町には暗い未来が待っている事が確定したのだが、それにしたって俺たちはどうするか。

 

「折本、俺たちはどうする?親父いないんじゃいても意味ないし帰るか?」

 

「私は帰ってもいいけど、でもせっかく彼氏……と言うか将来の夫の実家に来たのに何もせず、っていうのはなんか勿体無い気がする」

 

……その言葉、絶対に【 独 神 】(平塚先生)の前では言うなよ?という言葉を飲み込み、

 

「……分かった。んじゃ今日は久しぶりに実家で過ごすか」

 

「私は初めてだけどね?」

 

──と言うことで、俺は折本と実家に泊まる事になった。

 

 

 

──────────

─────

 

ーー(とある上条side)ーー

 

「「ただいまー(でーす)」」

 

俺と佐天さんが部屋に帰って来ると、取り合えず荷物を床に放り出してそのままベッドにダイブする。

 

 

──が、

 

 

身体を休めるはずのその行動は、意味を為さなかった。

 

 

 

なぜなら──

 

 

──ボフッ!

 

「ぐえっ!」

 

ベッドにダイブした俺の上にダイブしてきた。

 

「疲れたので寝ます…ね………」

 

「いや待て!力尽きるな!佐天さぁぁぁぁんんんん!?!?」

 

そのまま俺は、身動きがとれなくなってしまった。

 

「すぅ……、ん……」

 

ついさっきの事なのに、もう寝息が聞こえる。余程疲れていたんだろう。

 

今日の客は、至って平凡な人達だけだったので、俺はあんまり疲れていないが、まあでも、俺を信用してくれていると考えればこれもいいかな。と考え直して、風呂は明日の朝にまわして俺も寝る事にした。

 

今日は、この時間帯にも関わらずお隣さんが静かなのが気にはなったが、どうこうする前に、急に襲ってきた睡魔に負け、ベッドに突っ伏した。

 

 

 

──────────

─────

 

ーー(俺ガイル八幡side)ーー

 

折本が泊まる事が決まり、それからしばらくしてから風呂に入って、現在は炬燵でポケーッとしているところ。

 

折本は今、小町と一緒に風呂だ。

 

なので、今ここにいるのは俺とカマクラと母親だけだ。

 

「……ところで八幡、アンタ上手くやれてんの?金銭関係も、かおりちゃんの事も、学校の事も」

 

どうやら心配してくれたらしい。

 

「金銭関係は今のところは変化なしだな。仕送り分は少しずつ貯めてる。折本の事は………今のところは俺からは何もしてない。本人もまだいろいろ片付いてないだろうしな。……今できるのはせいぜいが支えになってやれるくらいだ。学校も問題無い」

 

取り合えず、現状をそのまま話す。

 

すると、我が母親は、超意外そうな顔をしたあと、今度は感心したようにうんうんと頷き始めた。……一人で勝手に驚いて勝手に終結させて勝手に納得されても困るんだが………。

 

「そ。まぁ、アンタなりに考えてんならいいのよ。……それと……」

 

そこまで言った母親はこっちに来て耳打ちするように、

 

[ちゃんと守ってあげなさいよ]

 

そして、俺の肩をぽんぽんと叩いて、そのままキッチンへ向かって行った。

 

俺は、その言葉に感謝して、取り合えず折本が風呂から出てくるのを待つ間適当なテレビを見つつ久しぶりにカマクラをいじる事にして、時間を潰した。

 

 

 

──────────

─────

 

ーー(小町・折本side)ーー

 

お兄ちゃんが風呂から出て来たので、折本さんを誘って一緒に入る事になった。

 

ただやっぱり、家の風呂じゃ高校生一人と中学生一人じゃあ狭い。

 

取り合えずは、片方が先に洗ってバスタブに入り、そのあと、身体を洗わないと無理だろう。

 

と言うことで、折本さんに先を譲って、私はその間待つのもなんなので、折本さんの背中を洗ってあげる(洗いたいだけです)事にして、現在に至る。

 

「いやー、それにしてもかおりお義姉ちゃん、スタイルいいですねー!」

 

小町の中では、お兄ちゃんがかおりさんと同居を始めた時からかおりさんはお義姉ちゃんになる!と決めていたので、すんなりと出てきてしまったのだが、勿論かおりさんに向かって『お義姉ちゃん』と言うのは初めてなので、言った瞬間に、かおりさんの身体がビクぅっ!と跳ねた。

 

「こっ、ここ、小町しゃん!?」

 

「大丈夫ですか、お義姉ちゃん」

 

びっくりし過ぎて噛んでいたけど、取り合えずお義姉ちゃんといい続けてみる。

 

すると、お義姉ちゃんは後ろからでもわかるほど耳を赤くして、疼くまってしまう。

 

「……あはは」

 

ちょっとからかい過ぎたかな?なんて考えつつも、お義姉ちゃん(確定)の背中を洗い始める。

 

「しっかし、中学の頃も思ってましたけど、やっぱりスタイルいいですね、お義姉ちゃん」

 

と、言ってから(またお義姉ちゃんと言ってしまったー!)と脳内で後悔が始まる。

 

「………う、ううっ……」

 

軽く泣き出して?しまったかおりさんを、慰める。……原因が自分なのに自分で慰めるっていうね。

 

「……小町ちゃん、ちょっと怖い」

 

グサァッ!!

 

な、なに今の破壊力!?………ちょっと二重の意味でグサっと来た!!

 

 

いや、勿論傷ついた意味でのグサっ、もそうだけど、それよりさっきの表情(かお)!!

 

サバサバ系でいかにも『お姉ちゃん』って感じの人だと思ってたのに!あんなに乙女な可愛い表情もできるとは…….。ちょっと可愛(かわ)い過ぎてグサって来ちゃった。

 

っと、一旦それはさておき、本題にそろそろ入らないとね。なんの為に一緒に入ったのかわかんなくなっちゃうよ。

 

「かおりさん」

 

取り合えず普通に呼び掛けて、そのまま続けてみる。

 

「どうして……兄のところへ?真壁先輩とか、あの中学から総武へ行ったのは兄だけじゃないですし、そもそも総武以外の選択肢もあったんじゃないですか?」

 

そう。

 

小町がずっと気になっているのはここ。

 

お兄ちゃんから付き合っていることと、かおりさんが引っ越してきた経緯は聞いた。

 

でも、それだけじゃ分からなかったのが、この部分。

 

「言い方悪くなっちゃいますけど、かおりさんって確か中学の時の『あの件』の………」

 

と、そこまで言った時に、かおりさんが小町に被せる。

 

「うん。小町の言う通りなんだけどさ。……綺麗事を言ってるのはわかってるんだけど、高校に入ってからなんだ。中学の時の友達と遊んでたら、だんだん考えが変わって、謝らないといけない、って思って、それでアイツの事を考えることが増えたんだけど、周りが慌ただしいというかなんというかで、全然答えに辿り着けなくて。……しかも、友達はたまにまだ比企谷の事をネタにするしでいろいろあってさ。……で、チャンスが来たから謝ったんだけどね…………」

 

「………兄の事を考えていたら自分を守ってくれた事に気付いて好きになっちゃた、と。………どこの少女漫画ですか?それ」

 

かおりさん(頭 文 字(イニシャル)Dじゃないよ)の話の最後にくっつけるように小町が言って、そのまま二人してクスッと笑う。

 

「流石兄ですね~」

 

「本当にね~」

 

「でも、兄の事ですから他にもいるんじゃないですか?」

 

「雪ノ下さんと結衣っちのこと?」

 

「ああ、いえいえ、その二人以外にも、という意味です」

 

「……まだ他にもいるの?」

 

「小町が知ってるのは、同じクラスの川崎さんだけですね」

 

「『だけ』か。よし、後で比企谷を問い詰めよう♪」

 

「お、お手柔らかにしてくださいね?」

 

……お兄ちゃん、大丈夫だろうか。

 

 

 

──────────

─────

 

ーー(八幡side)ーー

 

ゾワッ──

 

「うぃっ!?」

 

急に背中に寒気が走って、某ゲーム機の名前を伸ばさずに短く切ったような声をあげる。

 

俺がびっくりした事で、あぐらで床に座って、その上に乗って寝ていたカマクラが(びっくりして膝を閉じたから)跳ね上がった膝から打ち上げられ、そのまま着地に成功……してなかった。転がってたビニール袋の上に着地したおかげで滑って転んだ。……正確に言えば、滑ったせいで体勢を立て直そうとして高速で脚を動かしたらビニールが絡まってコケた。ゴメンよ、カマクラ。

 

 

それにしてもさっきの感覚はなんだろうか。いや、なんかマジで怖いんだが。

 

「お兄ちゃん、出たよー」

 

どうやら小町と折本が風呂から出て来たらしい。

 

俺は振り返って──

 

「おう、もうあがったの………か」

 

 

 

──この世の終焉の欠片を見た。

 

 

「……小町よ、一体何をした」

 

小町の隣には、溢れ出る殺意の波動によって、本人がどんな顔なのかわからない程周囲が黒くなっている人ほどの背丈の物体?がある。

 

いや、もう予想はついてる。

 

「あのー、折本さん?」

 

 

とてもヤバい状況ですねー。

 

もしかしたらふざけた風に言えばなんとかなるかもしれない。

 

 

《返事がない。ただの死神のようだ》

 

 

………。

 

……………。

 

 

 

TSU☆N☆DA

 

 

うん、もう事実確認にしかならないというね。

 

 

 

──────────

─────

 

※この後、俺と折本がどうなったかは読者様の想像にお任せしよう。べ、別に話を書くのが面倒くさかった訳じゃないんだからね!読者様の折本像を壊さないための緊急措置なんだからねっ!!

 

─────

──────────

 

ーー翌日ーー

 

「今日も一日頑張るZOY(ぞい)!」

 

マジでつい最近のネタをどうでもいいところで披露しつつ、俺は部屋の出口を目指す。……これ、俺じゃなくて小町のが似合うよな。絶対に。

 

ちなみに、俺は今、全身のあちこちが痛い。

 

肩。

 

両腕。

 

首。

 

頭。

 

その他もろもろ。

 

 

なぜ痛いのかは……知らなくてもいいよな。

 

現在時刻は朝の七時。

 

まあ、いつもの起床時間とさして変わらない。

 

俺は伸びをしながらあくびをしてベットから降りる。

 

あと二日学校に行けば土日か、なんて休みを恋しく思いつつ隣の小町の部屋の扉を叩く。

 

 

「小町ー、折本ー、朝だぞー」

 

すると中から、今行くー、と言う声。折本のものだ。小町はもう起きているらしい。

 

「おっ待ったせい!」

 

「朝から元気だな……」

 

「アタシから元気とったら何が残るのさ」

 

「……俺の、彼女?」

 

「……………」

 

「……………」

 

「///」

 

やっちまったー!朝から何やってんの!?『……俺の、彼女?』とかバカじゃねぇの!!おかげで折本は照れてるし本当何やってんの!?

 

 

………ふぅ。一旦落ち着くか。クールダウンクールダウン。

 

 

「茶番は終わった?お兄ちゃん」

 

 

「こっ、小町!?……聞いてたのか?」

 

「いやまあ、そりゃあねぇ?……しっかし、お兄ちゃんも言うようになったねぇ」

 

 

 

もう死にたい……。

 

 

 

 

朝から、大変な一日になる予感がした。




今回のネタ:スクールデイズ・シャッフル・イニD・NEWGAMEなどなど。

おそらくシャッフルが一番古いかな?最新はもちろんNEWGAME。

今期はこの美が一番良かった。



ちなみに、途中で出てきた『真壁先輩』は名前だけのオリジナルモブキャラですので。そこのところの説明はこれで終了。


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