Road to ポケモンマスター ~逆襲のポケモン編~ (鍋奉行Lv5)
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プロローグ~目醒~

レッドやイエローが激戦繰り広げたセキエイ大会…
さらには、グリーンといった実力ある若きトレーナーの活躍により、カントー地方ではポケモンブームに火が付き、至る所でポケモンバトルが見られるようになった。
そして、これまでになかった新感覚のEBが多くのトレーナーを魅了し、上位トレーナーは勿論のこと、駆け出しのトレーナーでさえ使用する者が増えていったのである

そんな平穏なカントー地方に史上最大の危機が迫っていた事など、誰も知るよしもない…。
だが、それは突如として悲劇をもたらし絶望へのカウントダウンを告げた
レッドがマサラタウンを旅立って半年も経たない頃の事である


~ハナダシティ、とある洞窟~

 

オーキド

「間違いなくこの場所にそいつはおるのか!?

もうこれ以上は走りきれんわい。」

 

フジ

「ここ数日の間に強い生態反応が示しておる!これほどの反応を出せるのは、ヤツしか考えられん!」

 

イエロー

「それにしても、かなり奥深くまで来たっていうのに一向に終わりが見えませんよ!?

こっちの手持ちもかなり負傷してしまったし…、長居はできそうにありませんっ!」

 

カスミ

「つべこべ言ってる余力があるなら、バトルでそれを出しなさい!!

オーキド博士とフジさんがやられたら、もとも子もないんだからっ!…でしょ!?」

 

イエロー

「分かってますけど…っ!!

カスミさん後ろ!!」

 

カスミの背後からライチュウやパラセクトといった、進化済みの野生ポケモンが襲いかかってくる

 

イエロー

「ラプラス、【吹雪】っ!!」

 

一瞬にして彼らを氷漬けにし、無事に難を逃れる

そう、僅かな油断が全滅を招いてしまう状況だったのだ

 

そして4人は大きな広間(?)のような場所に出た

冷たい空気だけが漂い、何よりもそこは薄気味悪く、悪魔が嘲笑ってでもいるかのような雰囲気に包まれていた

 

フジ

「紛れもなくこの場所じゃ。

レーダーがここを指しておる。」

 

イエロー

「何もない感じですけど、空気がやけに澱んでいる…。

本当にそのポケモンはいるんですか?」

 

フジ

「長い研究…、自分の過ち、全てを精算する覚悟で来た!

姿を現せぃ、ミュウツーよ!

お主を抹消し、過去を全て消し去る!!」

 

その時、壁が爆発しその奥から何やら1匹のポケモンが静かに歩いてくる

人型の容姿と長い尾…

漆黒のオーラを纏ったそのポケモンは指を大きく開く

 

すると不思議な念でも送ったかの如く、4人は吹き飛ばされてしまう

 

ミュウツー

「何年ブリダロウカ…。

コウシテ起キテハミタモノノ、寝起キハヤハリ動キヅライナ。

…ン?貴様達ダッタノカ、私ノ眠リヲ妨ゲタノハ。

ダガ、ココマデ来タトイウコトハ、私ガ用意シタ兵達ヲ悉ク撃破シテキタヨウダナ。イイダロウ、貴様等ヲ強キ者ト見込ンデ準備運動ガテラ相手シテヤルガ?」

 

イエロー

「これがミュウツー。何て禍々しい気迫なんだっ!!」

 

フジ

「オーキドよ、ワシからの最後の願いじゃ、…付き合ってはくれるか?」

 

オーキド

「老体でどこまでやれるか分からんが、邪悪な芽は摘んどいた方がええからのぉ。

カントー地方に闇があってはならん…!!」

 

フジ

「決まりじゃな!

…ミュウツーよ、お主を造り出してしまった事を後悔しておる。

じゃが、それも今日までっ!

自分で蒔いた種は自分で刈る!!」

 

ミュウツー

「ソウカ…。貴様ガ私ヲ生ミダシタ張本人ナノダナ?

ナラバ聞クガ、子ヲ捨テル親ガイルカ?」

 

イエロー

「遺伝子を改造したことで、本来ポケモンが持つはずのない人工的な知能まで引き起こしてしまったんですね…、こいつは厄介だ。」

 

カスミ

「何だっていいわ!!

この町にあんたみたいなのが居ると、安心して外出もできないんだから!

ポケモン風情が、偉そうに説教垂れてんじゃないわよっ!!」

 

ミュウツー

「ホゥ…。ナラバソノ、ポケモン風情トヤラヲ倒シテミルガイイ。

所詮コノ世ハ弱肉強食ナノダロウ?

弱者ハ強者ニ黙ッテ従順スルノミ、ドチラガ強者カ白黒ツケルトシヨウ。」

 

4人は、エース級のポケモンをミュウツーにぶつける

 

イエロー

「ラプラス、【冷凍ビーム】だよ!!」

 

カスミ

「スターミー、【ハイドロポンプ】であいつの脳天撃ち抜いてやりなさい!!」

 

フジ

「出でよフーディン!【サイコキネシス】じゃぁっ!!!」

 

オーキド

「ギャラドス!最大出力で【破壊光線】っ!!」

 

4つの技が混ざりながらミュウツー向かって放たれた

しかし、妙に落ち着きのある様子のミュウツー…

 

ミュウツー

「マサカ…」

 

ミュウツーに直撃したのだろうか、爆発音が洞窟内を揺らす

 

イエロー

「や、やったんですかね!?」

 

オーキド

「呆気なかったのぅ。

儂は寧ろ全く歯が立たないと思っておったのだが…。」

 

その時、フジが異変に気づく

 

フジ

「2人共、気を抜くでないっ!!

この感じ…、恐らく奴は生きておる!

そう、研究所で暴走した時の事をハッキリ覚えておるが、ミュウツーの脅威というのはこれぐらいじゃ鎮まらん!!」

 

フジの言った通り、硝煙から姿を現したミュウツーの体には傷1つ付いていなかった

 

ミュウツー

「マサカ…、コンナニモ手応エガ無イナンテ、拍子抜ケダ。

ホラ、コレガ貴様達ガ出した力ダ。

我ガ身ヲ以テ味ワウガイイ!!」

 

与えたとばかり思われた技は、全てミュウツーの【リフレクター】に蓄積されており、それは4人目掛けて反射してきた

 

4人と4匹は一切抵抗できないまま、巻き込まれてしまう

はっきりと分かる程の雲泥の差…

その一撃だけで、明白になってしまった

 

ミュウツー

「折角起キタノニモ関ワラズ、コノ程度カ…。

人間ヨ、モット私ヲ楽シマセテクレナイカ?」

 

フジ

「くそ…、ここまでなのか。

奴が目覚めてしまった以上、カントー地方は終わりじゃ。」

 

オーキド

「フジよ…、諦めてはならん!

このカントー地方にはまだ希望が残されておる!

そやつらを呼び集めることさえできればっ!…イエロー!!」

 

イエロー

「分かってます、あの人達以外この状況を打開できる人はいない!

運がいいことに僕はまだ軽傷です、ここから脱出できる体力はあります…!」

 

カスミ

「なら全力疾走よ。

あいつが簡単に逃がしてくれるかは分からないけど、可能性は0じゃないわ!?

数秒だけでもあいつを陽動できればいいっていうなら…、やってやるわよ!!スターミー、【スピードスター】!」

 

イエロー

「カスミさん…。」

 

カスミ

「何ボケッとしてるの!?

早く行きなさい、1秒でも速くっ!!」

 

オーキド

「イエローよ、待っておるからの!ギャラドス、【竜の怒り】じゃっ!!」

 

激しくぶつかる音が背後で鳴る中、イエローは出口に向かって一直線で走る

オーキドや、カスミでさえも紙屑のように扱われる始末…

長い眠りから目を覚ましたミュウツーを倒せるのは、やはり彼等しかいない!

今こそ集結する刻…!!



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ハナダの洞窟~悲報…そして集え、トレーナー達よ!~

人工的に造り出されたポケモン、ミュウツー
他の追随を寄せ付けない圧倒的な力を前に、イエローを始めとする熟練トレーナーはやられてしまう
カントー地方の未来はどうなってしまうのか!?


~マサラタウン~

 

イエローの急報を受け、グリーンと炎児はマサラタウンにてイエローと合流していた

 

グリーン

「ハナダシティの洞窟か…、そういやぁ俺も昔入ったことがあるが、あそこに生息するポケモンは危険すぎるぜ?」

 

炎児

「そこにそのフジって人と、オーキドさん、ジムリーダーのカスミちゃんが取り残されている訳だな?

そんじゃ一刻も早く助けにいかないとっ!!」

 

イエロー

「そうしたいんですが、この3人が助太刀したところで勝てるかどうか…。

僕はこの目で見たんです、ミュウツーの力を侮ってはいけませんっ!!

これだけの戦力を以てしてもやられるでしょう。」

 

グリーン

「くそっっ!どうしたらいいんだ。

こっちも今朝から大事件が起きてるっていうのにっ!」

 

イエロー

「何かあったんですか?」

 

グリーン

「四天王のシバさん、カンナさん、キクコさんの3人が行方不明になったっていう報せがジム本部から届いてな。

調査も難航してるらしいんだ…。」

 

炎児

「あっちでもこっちでも事件が起きやがって!

一体今このカントー地方で何が起きてるってんだ!!」

 

イエロー

「…分かりました、行きましょう、ミュウツーを倒しに。」

 

グリーン

「けど、お前さっき戦力が足りないって…」

 

イエロー

「足りなければ、足すまでです。

炎児さん、ワタルさんに連絡できますか?」

 

炎児

「そうか!四天王の中でもあいつの名前が無かったってことは、ワタルは無事かもしれない。

…いや、もしかしたらニュース見て、既に単独で動いてるかもしれねぇな!?」

 

グリーン

「そうなると、後はアイツだな。炎児さん、レッドは携帯買いましたか?」

 

炎児

「いやぁ~、旅立ちの日まで何も言ってなかったから、持ってないだろうな!

まぁ、レッドは今回宛てにはならないだろう、そういうこともあるっ!!」

 

イエロー

「レッドさんが居ないのは致命的ですが、待ってる時間がありません!

ワタルさんに連絡がついたら、すぐに向かいましょう!!」

 

ワタルへ電話したところ、炎児の予想通り既にジョウト地方を離れ、カントー地方に上陸しているとのことだった

 

グリーン

「これで戦力は最低限整ったってところか?

爺ちゃん、フジさん、カスミさんが心配だ…急ごうっ!」

 

~一方、カントー地方上空~

 

レッド

「おい、今の情報は確かなんだな!?

四天王の3人が行方不明だなんて、どうしたってんだ!?」

 

歌美

「分からないけど…、ネットのトップニュースに挙がってるってことは間違いないと思う。

何だか嫌な感じがするわ!レッド、取り敢えずマサラタウンに急行するわよ!!」

 

レッド

「あったりめぇだぜ、ピジョット超特急で飛ばしてくれ!!」

 

場面は変わり、ハナダシティ洞窟前に到着した3人

そこへワタルも駆けつけ、カントー地方最強のトレーナー達が一同に集結した

 

ワタル

「ここに、そのミュウツーと呼ばれるポケモンがいるんだね?

僕も噂にしか聴いた事がなくて伝説とばかり思っていたが、実在していたなんてね…。」

 

炎児

「へっ、どんなポケモンだろうと危害を与えるような凶暴な奴は懲らしめなきゃいかんな!!

…さぁ、中へ入るぜ!?」

 

4人は次々と襲い来るレベルの高いポケモン達を破竹の勢いで蹴散らしていく

そして、あの場所へと到着する…

現場はかなり荒廃しており、オーキド、フジ、カスミの3人はボロボロの姿で倒れていた

 

グリーン

「爺ちゃんっ!!」

 

倒れたオーキドを抱きかかえ呼び掛けるも、返事はなくぐったりしている

その先には腕を組み、堂々と立ち尽くすポケモンがいた

 

グリーン

「…お前が、ミュウツーか?」

 

ミュウツー

「イカニモ!ホゥ…ソコソコ洗練サレタトレーナー達ヲ呼ビ寄セテ来タカ。

コイツラノ二ノ舞ニナラナイヨウ、セイゼイ足掻イテクレタマエヨ!」

 

ワタル

「オーキド博士や、カスミ君でさえ手も足も出せないなんてね…。

実力を試すまでもない、本気でいかないとねっ!!!

出てこいカイリュー、【高速移動】!」

 

ワタルが指示を出してコンマ数秒の内に、ミュウツーの背を捉えた

 

イエロー

「ワタルさん、ミュウツーに攻撃技は通用しません!

いくら威力のある技でも【リフレクター】で返されてしまいますっ!!」

 

ワタル

「成る程…、その情報だけでもやれる事が一気に増す!!

カイリュー、【電磁波】だっ!」

 

ミュウツー

「!?」

 

あまりの早さに呆気をとられたミュウツーは簡単に麻痺してしまう

それを千載一遇のチャンスと見たワタルと炎児がすぐさま追撃を加える

 

ワタル

「【叩きつける】!!」

 

炎児

「リザードン、【炎の渦】と【爆裂パンチ】をMixっっ!!

"煉獄烈破拳"!!」

 

間に挟まれたミュウツーは呻き声をあげる

 

グリーン

「さすが…、あの連携があれば恐いものなしだっ!!」

 

炎児

「ナイスな立ち回りだったぜ?」

 

ワタル

「炎児さんこそ、完璧なタイミングでした!」

 

ミュウツーは倒れている

そう…こんなにも呆気なく

その時、イエローはフジの言葉を思い返す

 

イエロー

「っ!!違う、これで終わりな筈がない!

ミュウツーがこんなにも簡単にやられる訳ないんです!!

あの時だってそうだった…、僕達は試されていたんだっ!!」

 

ミュウツーの体が発光しだし、みるみる内に治癒されていく

そして何事もなかったかのように立ち上がる

 

ミュウツー

「フム…、痛イトイウヨリカハ痒イトイウベキカナ。

サッキノ3人ト比ベレバ大分腕ガ立ツナ。

ソレデモ所詮ハコノ程度、悲シイカナ今ノ一撃カラ判断スルト、私ノ力ハ貴様等ノ5倍ハアル!」

 

グリーン

「5倍か…、涙が出るほど遠い数字じゃないな。

そんじゃ俺の数値も掛けてみるか!?

カメックス、スペシャルアップと【ハイドロポンプ】をMix!!

"噴錘の巨砲"《シンカーキャノン》っっ!」

 

ミュウツー

「鬱陶シイナ。」

 

カメックスのEBを片手で弾くミュウツー

ニヤリと笑い、【サイコキネシス】で重量感あるカメックスを意図も容易く宙にあげ、吹き飛ばす

 

ミュウツー

「何度モ何度モ…分カラナイノカ?

同ジコトヲ繰リ返シテ、人間ハ知能ガ低イトミエル。」

 

ワタル

「事態は思ったより深刻だ。イエロー君、君は3人を一先ずマサラタウンに連れてってくれないか?

これより先は残酷な戦いになるだろう…、巻き添えを加えたくないからね。」

 

珍しくワタルから笑みが消え、真剣な表情になる

ミュウツーに劣らない威圧感を放っていた

 

イエロー

「ケンタロス、3人を背に乗せてマサラタウンに向かおう!

3人共、気をつけて下さいね…必ず戻って来ますからっ!!」

 

ワタル&炎児&グリーン

「ああっ!!」

 

イエローと負傷者3人が現場から離脱し、ミュウツーと3人が対峙する

 

ミュウツー

「ソンナニ睨ムナ、状況ハコチラガ格段ニ有利デアルコトヲ知ラナイノダロ?

…ココラデ1ツ、ゲームヲシナイカ?」

 

炎児

「ゲームだと?お前の遊びに付き合ってられる程、ゆっくりはしてられねぇんだよ!!

こっちはこっちでやらなきゃならねぇことが他にあるんだ!」

 

ミュウツー

「フフフ…モシカシテ彼等ノ事カナ?」

 

ワタル

「何っ、まさか!?」

 

降りかかる災難…

ミュウツーが口にした彼等とは!?

そして、不吉なゲームが始まろうとしていた!



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ハナダの洞窟~Darkness Game!~

イエローは負傷した3人を連れ、マサラタウンのオーキド博士の研究所に到着したものの、事態は深刻化していくばかりである…


オーキド

「すまなかったな、イエローよ。儂らが不甲斐ないばかりにミュウツーの暴走を止めることができなかった。」

 

イエロー

「そんなこと…。

でも、もう大丈夫ですよ!あの3人なら必ず倒してくれます!!」

 

フジ

「ワシがあの時実験などしていなければ、このような事が起きることはなかった。

全ての原因はワシにある…。謝っても謝りきれん。」

 

イエロー

「それは違いますよ!!」

 

フジ

「!?」

 

イエロー

「これは誰のせいとかじゃないって思うんです。

たまたま研究が上手くいかなかった…、博士の下で働いてるから分かるんですけど、化学者にとって研究ミスの1つや2つ当たり前ですからっ!!」

 

フジ

「イエロー君…ありがとう。」

 

その時、研究所のドアが開く

そこには懐かしい面影が…

 

レッド

「イエロー、これは一体どういう事なんだ!?説明してくれっ!!

どうしてオーキド博士達がベッドで寝込んでだよ…!」

 

イエロー

「レッドさんっ、とにかく冷静になって聞いてください。

いや、それよりも…ついてきてください!!」

 

レッドとイエローはピジョットに跨がりハナダの洞窟を目指す

 

レッド

「そうか…ミュウツーが。

俺もグレン島である程度のことは知っていたけど、どうして今になって。」

 

イエロー

「恐らくは力を蓄えていたんだと思います。どんな強いトレーナーにも屈することのない強大なパワーを…。

現に目の当たりにしましたが、ワタルさんや炎児さん、グリーンさんがまるで子供扱い…全く歯が立たなかった。」

 

レッド

「それなら尚更皆が心配だ!

博士達の事は歌美に任せてあるから、俺達は心置きなく打倒ミュウツーに専念できるっ!!

いくぞ、イエロー!」

 

イエロー

「はいっ!!」

 

その頃、ハナダの洞窟では…

 

グリーン

「俺達とどんな遊びをしようってんだっ!?」

 

ミュウツーはテレパシーの能力で3つのビジョンをグリーン達の脳内に映し出す

そこには行方不明となっているカンナ、シバ、キクコの3人の姿が映し出されていた

 

ワタル

「こ、これは!?」

 

ミュウツー

「彼等カ?ソウダナァ…言ウナレバ私ノ忠実ナ駒カナ。

シカモ、ソンジョソコラノ雑兵ナドトハ比ベ物ニナラナイ優秀ナ手駒サ!」

 

ワタル

「3人が?冗談はよしたまえ、彼等が簡単に君なんかの駒になる筈がない!」

 

ミュウツー

「アァ、苦労シタサ。ドイツモコイツモ最後ノ最後マデ抵抗シ続ケテナ、君モコンナ面倒ナ同業者ト仕事シテテ苦労スルダロウ?」

 

ワタル

「…生憎、同業者と呼ばれる程の短い付き合いはしてないんでねっ!

僕達は毎日しのぎを削り合ってきた戦友さ!!」

 

ミュウツー

「コレデモ戦友ト呼ベルダロウカ。」

 

ミュウツーは【念力】で3人を傀儡のように操り、野生のポケモンを傷つけさせる

 

炎児

「こいつ…!!好き放題やりやがってっっ!!」

 

ミュウツー

「君達ノ声ハ彼等ニハ届カナイ。例エ聞コエタトシテモ、体ガ思ウヨウニ動カセナケレバ意味ナイガナ。」

 

ワタル

「非道だな…待っててくれ皆、今助けるからね!!さぁ、そのゲームの内容を教えてくれよ。」

 

ミュウツー

「デハ、熱クナッテキタトコロデ、ゲームノルールヲ…ト、ドウヤラ参加者ガ増エタヨウダナ?」

 

レッドとイエローが到着する

ミュウツーという初めてのポケモンを凝視するレッド

 

レッド

「お前がミュウツーか、いかにも悪役って感じだな。(あいつの周りだけ空気が濁ってる感じがする…。)

人語を喋れる時点でポケモンの類から外れてる気もするが、お前を見てると確かにゾッとするぜ!

そんならまずは挨拶替わりに…」

 

炎児

「早まるんじゃねぇっ、レッド!!

こいつはここにいる全員が束になっても勝てるかどうか分からねぇ、そんな未知の領域にいる奴だ!

1人突っ走ってやられちまったら、それこそ大事な戦力を失うことになる!!」

 

レッド

「(親父…。)」

 

グリーン

「何を企んでるか不明だが、ゲームをしようってんだ。

勝ち目の無い戦いよりも、ここはあいつの誘いにのるのが無難じゃないかって話してた所だ。」

 

ワタル

「それに今、僕以外の四天王3人は彼の支配下にある…。

下手な反逆は控えた方がいいかもね。」

 

レッド

「カンナさん達がっ!?」

 

イエロー

「成る程、これでもう1つの失踪事件と繋がった訳ですね?」

 

ミュウツー

「ソレデハ、ルールヲ説明シヨウ。

私ノ手元ニハ"阿"ト呼バレル羽ガ3種類アル。

ソシテモウ1ツ、コレラト対トナル"吽"ナル羽ガアル訳ダガ、コレヲ君達ノ中カラ3名取リニ行ッテモライタイ。」

 

イエロー

「僕達の中から、3人…。

でも、どこにその"吽"の羽はあるっていうんだ?」

 

ミュウツー

「ソレハ…私ノ駒デアル四天王3人ダ!!」

 

一同

「!!!」

 

グリーン

「俺達が四天王を相手にしなければならないってのか!?

…そんな事って。」

 

ミュウツー

「ソシテ持ッテキタ羽ヲ照ラシ合ワセ、"阿吽"ノ羽ヲ完成サセル事ガ出来レバ、ソノ者ノ洗脳ヲ解イテヤロウ。

サァ、地獄ヲ見タイ3名ヲ選出シロ!!」

 

全ての事件は1つに繋がった

しかし、四天王を相手にしなければならないという今までになく高いレベルが要求される非情なゲームにレッド達はどう立ち向かうのか!?



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ハナダの洞窟~四天王と伝説の3鳥~

"阿吽"の羽を完成させれば四天王は解放される
しかし、その為には彼等と闘って勝つことが条件であった


炎児

「それなら俺とワタルが行こう!アイツらと互角にやりあえるのは、恐らくカントー地方で俺達ぐらいだからな。

残るは…」

 

レッド

「俺が行く!!」

 

グリーン

「レッド…」

 

レッド

「グリーンやイエローはこれから先、背負っていかなければならない立場がある。

仮にここで一生の傷を負ってでもしてみろ…、折角掴んだ夢を自分の手で壊すことになるんだぞ?」

 

グリーン

「だからってお前が無茶する動機もねぇはずだ!?

ここは…」

 

ミュウツー

「オット、言イ忘レテイタガ、残ッタ2人ニハ私ノ遊ビ相手ニナッテモラウゾ?

私ダケ退屈スルノモ難儀ダカラナァ。」

 

炎児

「何だとっっ!?」

 

ワタル

「完全に僕らを潰しにかかってきてるね。

仕方ない、3人共よく聞いてくれ!

このゲーム…ここにいる全員、各々が死力を尽くさない限り勝機はない。

厳しい言葉をかけるようだけど、1人でも手を抜いたら…終わりだ。」

 

レッド

「任せてください、ここにいるのはそれぞれが修羅場を潜り抜けてきた洗練されたトレーナーです!」

 

イエロー

「傷つけられるのが怖いからって逃げ出すような、臆病者はいませんよ!」

 

グリーン

「次代を担う俺達が、このカントー地方を…、爺ちゃん達が造り上げたこのポケモンの世界を…守るっ!!」

 

炎児

「ヒヨッ子共に言いたい事全部言われちまったな。

異論はねぇ、俺とワタルがミュウツーを食い止める!!お前らはそれぞれ四天王を食い止めろっ!!」

 

一同

「了解っ!」

 

ミュウツー

「西ノチャンピオンロード、南ノ双子島、東ノ無人発電所。

ソコデ待ッテイル、サァ…ゲームスタートダ!!」

 

一目散でハナダの洞窟を走り出て、目的地へと駆けていく3人

レッドは南へ…

グリーンは西へ…

イエローは東へと目指した

 

ミュウツー

「アンナ小僧達ニ託シテヨカッタノカ?

相手ハカントーデ指折リノトレーナーノハズダ、青二才ガ敵ウハズモナカロウ。」

 

ワタル

「青二才…ね。

でも、彼等は日々血の滲むような特訓をすることで、まだまだ成長を遂げ続けている!

君こそ、僕達ポケモントレーナーをあんまり嘗めない方がいいんじゃないかな?」

 

ミュウツー

「強気ナ発言、面白イ…。

ダガ、私ガ今回ノ為ニ用意シタノガ、四天王ダケダト思ウカ?」

 

炎児

「…どういう意味だ?」

 

ミュウツー

「貴様ラモ1度ハ耳ニシタコトガアルダロウ、"伝説ノ3鳥"ノ存在ヲ!!

アノ3人ニハ特別拝マセテヤロウト思ッテナ…、少シバカリソイツ等ノ意識モコントロールサセテモラッタヨ。」

 

ワタル

「ファイヤー、サンダー、フリーザーが目覚めてしまったというのか。

四天王の3人に加えて、伝説の3鳥…ここまで用意周到だと…」

 

炎児

「おい、ワタルっ!!

俺達まで弱気になってどうする!今はあいつらを信じるしかねぇ、俺達は俺達でやらなきゃならねぇ事があるだろ!」

 

~東・無人発電所~

 

イエロー

「ここにいるんですよね?

電力配線が無茶苦茶にされてる…何かが暴れた跡。」

 

発電所の奥から、カツンカツンと杖をつく音が鳴り渡る

四天王の一角…"暗黒の貴婦人キクコ"

 

キクコ

「これはこれは、オーキドのジジイのとこの助手かいな。

あたしはねぇ、身体が思うように動かせれないんじゃ。あの忌まわしきミュウツーの奴め、こんな老婆を弄ぶとは!!」

 

イエロー

「キクコさん、僕があなたを自由にしてみせます!!」

 

~西・チャンピオンロード~

 

カントーに聳える大山、チャンピオンロード

その最奥部で彼は待っていた

"極限を超えた漢シバ"

 

グリーン

「シバさんっ…!!」

 

シバ

「敗者に情けをかけるべからず。

炎児やワタル以外の、ましてやポケモンに敗北するとは…無念っ!

その思い、お前が断ち切ってくれるのか?」

 

グリーン

「へ…頑固なんですから。

全く、俺は純粋にあなたと戦ってみたかったんですよ!!」

 

~南・双子島~

 

カンナ

「そう、あなたが来てしまったのね…。

望むなら、こんな状態で闘いたくない。けれど、ミュウツーの管理下にいる以上、私に回避できる余地はない。

レッド君、ゴメンね…!」

 

レッド

「絶対に救ってみせる!

あなたの優しい心を踏みにじるような邪な気持ちは俺が取っ払ってやります!!」

 

レッドの相手は"氷の美魔女カンナ"

純黒に染まってしまった美麗な氷を、穢れなき透き通るものへと戻すべく、レッドは挑むのであった



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無人発電所~喰うか喰われるか…~

ミュウツーの暴走を止めるべく…
そして、傀儡と化してしまった四天王を救うべく…
今、レッド達のカントーの未来を懸けた戦いが始まる!!


~無人発電所~

 

イエローVSキクコ

 

キクコ

「フンッ、オーキドが育てた愛弟子がどれくらいのものか見てやろうかね…。

まぁどうせ、あたしには敵わないだろうが?」

 

イエロー

「(さすがキクコさん、ただならぬ妖気を満ちている…!

齡70にして未だ実力衰えない現役のトレーナーなだけはあるな。

僕の勝てる確率は限りなく低い…でもっ!!)」

イエローの頭の中に、ミュウツーにやられて寝込んでしまったオーキド博士の姿が浮かぶ

 

イエロー

「僕はやらなくちゃいけないんだっ!!」

 

キクコ

「あんな、ポケモンとほのぼの過ごしてる温厚馬鹿のどこがいいのかねぇ。

ポケモントレーナーたるもの強くなくちゃいけない、そうだろう?

オーキドとは昔から方向性の不一致で親しく交わる事はなかった…犬猿の仲さね。」

 

イエロー

「えぇ、少しばかりは聞いてます。

それでも博士は…」

 

キクコ

「いらん話をし過ぎたようだ。そろそろバトルを始めよう、その為にわざわざ出向いたんだろう?」

 

イエロー

「…っ!!その通りです、あなたを倒して、そして救ってみせます!」

 

キクコ

「それは楽しみだねぇ。

バトルはフルバトル形式だよ。あんた達が言うポケモンの研究っていうのが、強さの前には無意味であることを証明してやるさね!!

行きな、アーボック!!」

 

イエロー

「頼んだよ、バタフリー!【サイケ光線】だっ!!」

 

キクコ

「避けるんだ。」

 

アーボックはスルスルッと体をうねり、簡単に【サイケ光線】の攻撃線上から外れる

 

イエロー

「(速い!!)」

 

キクコ

「【毒針】で攻撃だよ!!」

 

イエロー

「(避けれる数じゃないな!ここは…)【吹き飛ばし】で凪ぎ払うんだ!!」

 

【毒針】の攻撃は凌げたものの、キクコは既に次の指示を送っていた

 

イエロー

「なっ…!!バタフリー、後ろだ!」

 

キクコ

「反応速度が遅いぞ?アーボック、【穴を掘る】からの【毒針】!!」

 

地面から這い上がってきたアーボックに気づかず、バタフリーの背に大量の針が刺さってしまった

しかし、四天王の持つポケモンはイエローの想像を絶した強さであった

 

不敵に笑うキクコ…

 

キクコ

「この子の【毒針】の針には抗体ができない特別な毒を含んでいてね、毒タイプのポケモンと言えどジワジワと効いていく代物なんだよ。」

 

イエロー

「つまりは、長期戦にもちこむのは不利…ってことですか。

(ならば、仕留めるにはやはり相性抜群の【サイケ光線】!まずは、その隙を作り出す!!)

バタフリー、"胡蝶の夢"っ!!」

 

確実にアーボックの動きを止めるべく、バタフリーのEBを繰り出す

そして、イエローの作戦の第一段階は見事に成功した

 

キクコ

「成る程…、これがお前さんが開発したというEB。ユニークな発想とそれを現実のものにできるポケモンとの絆が鍵となる技。」

 

イエロー

「これで直撃ですっ!【サイケ光線】!!」

 

キクコ

「だが、惜しい事にあたしのアーボックはそれ以上の"強さ"を持っている!」

 

バタフリー

「!?」

 

イエロー

「どうしたんだバタフリー!?

【サイケ光線】を撃つんだ!」

 

キクコ

「フフ…撃てないんだよ。

バタフリーの様子を見てみな?完全に怯えちゃってるじゃないか。

あたしのアーボックの【蛇睨み】にね!!」

 

アーボックの独特なお腹の模様のそれが鋭く睨みつけることで、自然とバタフリーの動きを封じたのだ

そう、蝶は気づかぬ内に入ってはならない蛇の巣穴(テリトリー)に入ってしまっていたのだ

 

キクコ

「【溶解液】での毒殺、【巻きつく】での絞殺…どれがお望みかい?

とは言っても、毒の効果で自然死するのも時間の問題だがね?

決めたよ、【噛みつく】で噛み殺してやりな!!」

 

イエロー

「(これが、四天王…。今まで戦ってきた相手の中で一番強い。

けど、どうしてだろう、心の底から燃え上がるような思いが伝わってこない。

それは僕に"強さ"が欠けているから?それとも、彼女の戦い方に抵抗があるから?)」

 

その時、イエローはワタルの言葉を思い出す

 

ワタル

「 このゲーム…ここにいる全員、各々が死力を尽くさない限り勝機はない。

厳しい言葉をかけるようだけど、1人でも手を抜いたら…終わりだ。」

 

イエロー

「(そうだ…ああだこうだと余計な事を考えること自体が僕の本気を妨げていたのかもしれないな…。

そう、ただ勝つことを信じて!)

バタフリー、【念力】で自分の脳内に暗示をかけるんだ、目の前の模様はただの面白い落書きだって!!」

 

キクコ

「そんな幼稚な発想で…」

 

バタフリー

「!!」

 

イエロー

「よし、恐怖を克服すればこっちのもんです!!

向かってくるアーボックを【サイケ光線】で返り討ちだぁっ!!」

 

【噛みつく】で突っ込んできたアーボックを至近距離から放つ【サイケ光線】が吹き飛ばした

…アーボック戦闘不能

 

イエロー

「おっしゃってくれたじゃないですか、ユニークな発想が僕をここまで強くしてくれたんです!」

 

四天王相手にまずは一勝と、幸先いいスタートをきったイエロー

この調子をキープできるか!?



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無人発電所~毒・毒・毒!!~

アーボックを撃破し、序盤の流れを手にしたイエロー
このまま2匹目も倒せ!!


キクコ

「思ったよりやるじゃないか。あたしのアーボックを倒せる奴はそういない…。

けどねぇ、こいつはどうかなっ!?ベトベトン、行ってきなさい!!」

 

イエロー

「(…ヘドロポケモンか。けど、あいつも毒タイプ…、バタフリーでごり押ししたい所だけど…)」

 

バタフリー

「っ!」

 

バタフリーはアーボックの勁烈な毒で確実に体力を減らされていた

 

イエロー

「バタフリー、僕の判断だけでは難しい。どうだい、やれそうか?」

 

バタフリーは苦い表情をしつつも、首を縦に振った

 

イエロー

「君の決意…受け取ったよ!!

二人であのベトベトンを仕留めるぞ、【吹き飛ばし】っ!」

 

キクコ

「それしきの威力の風でベトベトンが吹き飛ぶとでも思ってるのかい?室内には丁度いい風力だがね!」

 

量り知れない汚物が集まりあった構造をしたベトベトンはその重量から【吹き飛ばし】をもろともしなかった

 

キクコ

「【ヘドロ攻撃】だよ!!」

 

イエロー

「避わして【念力】!」

 

バタフリー

「!」

 

非情な事に、バタフリーはアーボックとの戦いで付いた後遺症とも言える毒が全身に回りきっていた為、痛みで怯んでしまった

ベトベトンの攻撃は全弾命中…

 

イエロー

「(バタフリー、やっぱりやせ我慢して…。こうなったら…)

スペシャルアップを使って威力を上げるよ!【サイケ光線】だぁっ!!!」

 

キクコ

「この土壇場でスペシャルアップかい!?」

 

【サイケ光線】はベトベトンの体をあっさり貫通した

 

イエロー

「ふぅ、た…倒した。

何とか間に合…っ!?」

 

倒したはずのベトベトンにポケモンとしての'存在感'を感じなかったイエロー

無惨に飛び散ったヘドロだけが異臭を漂わせる

 

キクコ

「異変に気づいたようだね?

そう、ベトベトンはまだ生きている!!

この部屋のどこかで、ひっそりと反撃のチャンスをうかがっているよ?」

 

イエロー

「(どこに身を潜めてるんだ…?って考えてる余裕もないのにっ!!)

ここは無作為にでも攻撃を当ててやる!

バタフリー、【サイケ光線】に【サイケ光線】を重ねるんだ!"連鎖する不協和音"《ケトゥ・ヴィダー・ハル》!!」

 

放たれた2つの【サイケ光線】が壁で跳ね返りながら部屋中を乱雑に攻撃する

 

キクコ

「隅から隅まで探し当てる気だね?

さぁ…、あんたに見つけれるかな。」

 

イエロー

「ぐっ…、これだけ攻撃の幅を広げたのに一体どこに!?」

 

キクコ

「今だよ!ベトベトン、【のしかかり】!!」

 

突如バタフリーにのしかかる重圧

 

キクコ

「この子の体は全神経を操作する核を倒さなければ戦闘不能にはならないのさっ!

そして、あんたが倒したと誤って認識した直前のベトベトンの【ヘドロ攻撃】…、あの時同時に核をバタフリーの羽に付着させて、様子を伺っていたってことだよ。用心して【小さくなる】を使用させることで、あんた達は全く気づかなかったみたいだがねぇ…。」

 

イエロー

「(ここまで謀られると…っ!!)」

 

バタフリーは脱出することもできず、毒と悪臭の中でついに力尽きてしまった

 

イエロー

「あんなコンボ攻撃初めて体験したよ、それでもよく頑張ってくれたなバタフリー。

(毒タイプの攻撃は、その沼にはまったが最後…、それが底なし沼だったなんてよくある話だ。)

毒には毒をっ!…毒を以て毒を制します、フシギバナ!!」

 

キクコ

「ヒヒヒ…【小さくなる】。」

 

イエロー

「今度は逃がしませんよっ!?【蔓のムチ】で捕まえるんだ!」

 

だが、ムチは虚しくも空を切り、ベトベトンの姿を見失ってしまう

 

イエロー

「フ…次の手は考えてあります、"永久侵犯・毒裁の法!!

(これなら、ベトベトンはこの部屋にいる限り90%以上の確率で引っかかる!)」

 

キクコ

「(この感じ、臭い…アーボックの毒に似た新種のウィルスに近い毒じゃな。

こうなったら仕方ない、体力の半分でもくれてやるわい!!)

ベトベトン、体を戻して【身代わり】!」

 

イエロー

「(【身代わり】になってる間は攻撃を受け付けない!

…が、体力を半分失うことになる。代償を払ってでも勝負に出たと捉えてもいい!)

いいですよ、ならば僕達も…"偽りの陽射"!!」

 

【身代わり】同士が戦いを繰り広げる

先に消えるのは…

正面からの【ソーラービーム】を受けるベトベトン

 

イエロー

「よし、これで本体を…」

 

キクコ

「気を抜いたねっ!?ベトベトン、【のしかかり】!!」

 

背後からベトベトンが襲いかかり、フシギバナの【身代わり】は消えてしまう

 

イエロー

「けれど、この位置と角度、核を含む全体に攻撃を当てることができます!!

フシギバナ、【破壊光線】っ!!」

 

キクコ

「ベトベトン、【大爆発】だ。」

 

爆風で吹き飛ぶ両者

立ち上がれる体力があるはずも無く、戦闘不能

 

キクコ

「げほっ、げほっ…なんちゅう煙じゃ、たくさん吸ってしまったではないか!あ~健康に悪いっ!!」

 

イエロー

「あそこまでしなければ、あのベトベトンは倒せれなかった。

休んでてくれ…フシギバナ。」

 

しかし、次の瞬間イエローが目にしたのは驚愕の光景だった

何と、仕留めたはずのベトベトンが生きているではないか!?

 

キクコ

「相手を欺くってのはこういうことだよ。長生きしてる分、知恵はあんたより豊富だからねぇ…。

【身代わり】は一体しかできない、そんな固定概念を覆すことぐらい余裕なんだよ。」

 

イエロー

「そ、そんな…!あの爆発したベトベトンすらも【身代わり】だったなんて。」

 

キクコが展開する闇の戦略の前に、次第に触れることさえも困難になっていくイエロー…やばいっ!!



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無人発電所~想いを繋ぐ回路~

イエロー

「そう何度も一筋縄に上手くいける訳ないですよね。)

 

キクコ

「あんたみたいな若造にやられてたら四天王としての面目丸潰れだよ!

さぁ、次の遊び相手は誰だぁい?」

 

イエロー

「キングラー、行くよっ!!

【バブル光線】!」

 

キクコ

「避わして【ヘドロ攻撃】だっ!」

 

イエロー

「こっちも回避して"1万馬力の鉄槌"!…核を叩くんだ!!」

 

しかし、キングラーの鋏はベトベトンの厚く覆われたヘドロに弾かれてしまう

 

キクコ

「こっちは【身代わり】を多用したせいで、疲れてるんだ。

ここは回復するのが賢明かね!」

 

キクコは服についたポケットの中から、回復の薬を取り出す

 

イエロー

「(今ここで回復されたら、フシギバナの努力が水の泡だ!

それに、あの厄介なベトベトンをこれ以上相手にするのは不可能…。

またとないチャンスを逃すわけにはいかないっ!!)

キングラー、すぐに体勢を整えるんだ!

集中して…そして回復の薬に向かって【水鉄砲】っ!!」

 

キングラーは目を凝らし、回復の薬一点に目掛けて【水鉄砲】を放つ

 

キクコ

「うわっ、何だい!?回復を邪魔しおって!

あたしゃぁもう怒ったよ!?ベトベトン、【破壊光線】でその蟹をおいしく調理してやりな!!!」

 

イエロー

「キングラー、集中を切らさないで…攻撃する瞬間に核が移動することはないはずだ。

僕達はこの技に賭ける!"地獄の裁断"!!」

 

イエローはヨクアタールを投げ与える

 

【破壊光線】を喰らいつつも、その光線をキングラーの巨大な鋏が切り裂いていく

そして…"ズバッ"という鋭く質感ある音と共にベトベトンの体は何かが抜けたようにドロッと溶けていく

一方のキングラーもまた、強烈な一撃を諸に受けた為、戦闘不能

 

キクコ

「これぞ玉砕覚悟だね!あんたも見かけによらず、肝が据わってるじゃないか!ヒヒヒ!!」

 

イエロー

「ありがとう、キングラー。

4匹目…次はピカチュウ、君だ!!」

 

キクコ

「軽く翻弄してやるさね!

行きな、ゴルバット!【嫌な音】!!」

 

ピカチュウ

「~っ!」

 

耳の奥にまで響く音波はピカチュウの聴覚を狂わせることで、位置を特定しづらくさせる

 

キクコ

「さらに…【黒い霧】!

これで視覚と聴覚の機能を失った。そいつに勝機はないよっ!!

ゴルバット、【噛みつく】でとどめをさしてやりな!!」

 

イエロー

「ピカチュウ、闇雲にでもいい、ここは走り回るんだ!」

 

ピカチュウ

「?」

 

当然、イエローの言葉がピカチュウに通じるはずもなかった…

目で見ることも、【嫌な音】の残響で耳で感じることさえもできない

 

キクコ

「ヒーヒッヒッヒッ!!!

どうすることもできない無様な姿は憐れ、滑稽だねぇ~!

いくら研究を積み重ねようと、結局最後は実力がものを言うのさ!」

 

あっけなくピカチュウはゴルバットに捕まり、腕を噛まれてしまう

 

キクコ

「その程度であたしを救うって!?冗談は程々にしな!!

だいたい、ピカチュウなんかで戦うのが間違ってるんだよ。"高み"を目指すならライチュウに進化して能力を上げるのが筋ってもんだ!」

 

暗闇の中、その言葉にピクッと反応するイエロー

ピカチュウの悲痛な叫び声だけが聴こえる

 

イエロー

「ポケモンは一匹一匹に個性があるんです…。

調べても調べきれない程の力が秘められてるんです…。

だから僕は自分の道を決めた!!」

 

キクコ

「?」

 

イエロー

「博士が切り拓いたポケモンの世界を、僕のこの手でさらに広く、さらに深く!!

誰も知らないデータをいつか多くのトレーナーに流布することをっ!!」

 

キクコ

「…っ!

…口先だけならいくらでも大それた事は言える。

まずは現実を見なっ!ゴルバットの【噛みつく】は1度に300ccもの血を吸い取る、ピカチュウは終わりさ!」

 

ピカチュウの腕は徐々に毒々しく変色していく

 

イエロー

「ピカチュウ、よく耐えてくれたね…よし、反撃の時間だ!」

 

キクコ

「何だって!?」

 

痛覚が全体に行き渡り、最早噛まれた部分は動かすことさえできなかった

…にも関わらず、勝利を確信したかのような笑みがこぼれた

 

ピカチュウ「!!」

 

ピカチュウからの合図のような鳴き声をイエローは待っていた

それは"指示をくれ"と言っているような…

 

イエロー

「よしっ!!痛みなんて消し飛ばすんだ!

再び体に電気(エネルギー)が流れる時、ピカチュウは甦る!【電磁波】!!」

 

接触していたゴルバットは電気を体内に流され、咄嗟に離れる

 

キクコ

「ゴルバット、見事な判断だよ!!

慌てることはない…相手はこっちの姿は見えていないんだから!!

落ち着いて【鎌鼬】で仕留めなっ!」

 

イエロー

「姿は見えなくても位置は確認できるんです。

さっきの【電磁波】…ゴルバットを1度退ける為に使っただけじゃない!

同時にゴルバットに、こっそり-の電子を送ったんです!!」

 

キクコ

「どういうことだい!?」

 

イエロー

「つまり…後は+の電子を送れば、必然的に電流が生まれる!!

ピカチュウ、【雷】っ!!!」

 

轟音が鳴り響き、ピカチュウの発生させた【雷】は一直線にゴルバットに流れ込み、大ダメージを与え再起不能にした

霧が次第に晴れ、2人のトレーナーとポケモンの姿がぼんやりと映る

 

キクコ

「(あれは…っ!!)」

 

キクコの目には若かりし頃のオーキドの姿がイエローと重なって見えた

 

キクコ

「そうかい、あんたらは正真正銘の師弟だよ!!

何だい、まるであいつと闘ってるみたいさね。

昔の血がたぎってきたよーっ!ヒーッヒッヒッ!!!」

 

厭わしいはずのオーキドの姿がイエローとシンクロした

それを見てキクコは何を思う…!



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無人発電所~これが新技!神秘の守り!!~

カントー地方の東、ひっそりと佇む無人発電所でイエローとキクコの激しい戦いが繰り広げられていた

そして…そこへ、もう1つ影が静かに歩み寄っていた事に2人は全く気づいていなかった


イエロー

「ケンタロス、【破壊光線】!」

 

キクコ

「ゲンガー、【サイコウェーブ】だ!!」

 

大きな衝突に2匹は吹き飛ばされる

 

イエロー

「…よし、これで2対2のイーブンに持ち込んだ。

これなら…」

 

キクコ

「勝てるってかい?

残念だが、これでも四天王の一角を担ってるんだ、嘗めんじゃないよ!!

いくよ、ゲンガー!!!」

 

イエロー

「2匹目のゲンガー!?

(これは想定外だ…。ゲンガーはゴーストタイプの中でも上位クラスのポケモン。

1匹倒すだけでもケンタロスを犠牲にしてしまったというのに…くそっ!!)」

 

キクコ

「どうした?今こそ得意なポケモン研究の成果を発揮する時なんじゃないのかいっ?

それとも…万策尽きたって訳じゃないだろうねぇ?」

 

イエロー

「最後まで残しておきたかったが、ピカチュウもまだ万全じゃないし…仕方ない!行くよ、ラプラスっ!!【冷凍ビーム】!!」

 

キクコ

「避わしなっ!」

 

ゲンガーがいた場所は既に凍化していた

 

キクコ

「(あの威力、他のポケモンとはレベルが違うねぇ。そうかい、そいつがあんたの切り札と言う訳かい!…いくらあたしとは言え、手を抜いてかかると痛い目あっちまいそうだ。)

ゲンガー、【サイコウェーブ】!!」

 

イエロー

「もう1度【冷凍ビーム】で迎え撃つんだ!」

 

互いに一歩も譲らぬ技の応戦

先に均衡を崩したのは…

 

キクコ

「ならば、こいつの得意技にして最大の技をお見舞いしてやろうかね!

ゲンガー、【サイコキネシス】だよ!!」

 

イエロー

「(ゲンガーの【サイコキネシス】は、受けた者が現実か幻か認識できないぐらい強力な攻撃だ…。)

ならば、こっちも幻想の世界を造り出すまでっ!ラプラス、"嫡凍する百蓮華"!!」

 

キクコ&ゲンガー

「!?」

 

辺り一面が白銀の世界…

氷で覆われたフィールドへと変貌していく

 

イエロー

「僕達の方が一枚上手だったよう…っ!?」

 

突如として氷が急激に溶けていき、高熱の…そう、マグマ帯になっていくではないか!

 

キクコ

「耳が遠くて聞こえなかったよ…。

一枚上手だってぇ?そりゃあこっちの台詞だよ!!

あたしのゲンガーが本気で放った【サイコキネシス】の前には、どんな技も通じないのさっ!

まぁ、これも現実ではないがね…ヒヒヒ。」

 

イエロー

「ゲンガーの術中でもがいても状況は悪化するばかり…ラプラス、【歌う】でリラックスするんだ!

寝て回復するのが一番の解決策です!!」

 

キクコ

「逃がしゃあしないよっ!!

【ナイトヘッド】で奴の脳をいじくってやりな!」

 

ラプラス

「~っ!!!」

 

ラプラスはゲンガーに悪夢を見せられてしまい、うなされる

 

イエロー

「(異常攻撃を得意とする上に、EBさえも返してしまう程の威力…。

僕達に残された手は"アレ"しかない。

まだ研究途中で成功するか不安だけど、四の五の言ってられないよねっ!)

ラプラス、君をこれ以上傷つかせる訳にはいかない!!【神秘の守り】だっ!!!」

 

光輝くシールドがラプラスを包み込む

 

キクコ

「ん~?何だいその奇妙な盾は!?

ええい、【怪しい光】で撹乱させるんだ!!」

 

ラプラス

「…。」

 

キクコ

「黙っちまって…、自慢の新技は失敗かい?

ゲンガー、【サイコウェーブ】でとどめをさしなっ!!」

 

イエロー

「技は…成功ですよ!」

 

ラプラスはカッと目を開き、イエローに合図を送る

 

イエロー

「よしっ、"冰龍の沸滾"だ!!」

 

一瞬ではあったが、気の緩んだキクコの判断がゲンガーの【サイコウェーブ】の威力を半減させてしまっていた

故にラプラスのEBがゲンガーを貫く

 

キクコ

「どっ、どうして!?

確かに【怪しい光】は喰らったはずだよ!!」

 

イエロー

「この【神秘の守り】は全ての状態異常を打ち消してくれる魅力的な技です。

まだ、全ての実態が明らかではないので真相究明に勤しんでますが…僕達以外は知りませんよ?

オーキド博士にすら秘密で行ってきた研究なんですから!」

 

キクコ

「またそれかいっ!?

研究…研究…、何が面白いのさ!」

 

イエロー

「確かに失敗すればつまらないし、投げ出したくなる日なんて数えきれません。

でも、失敗のその先に待ってる僕だけの知る答えがあると思うと再び駆り出されるんです!

現に今、僕達を危機から救ってくれたのは、その答えだから…」

 

キクコ

「あー全く、話せば話すほどあいつにそっくりすぎて腹が立つさね!

頭が痛くなりそうだよ、ゲンガー、【サイコキネシス】で葬ってやりな!」

 

ゲンガー

「!?」

 

ゲンガーの体は"冰龍の沸滾"により、既に凍らされていた

 

イエロー

「【ハイドロポンプ】っ!!」

 

ラプラス渾身の一撃がゲンガーを吹き飛ばし、壁に打ちつけた

ゲンガー、戦闘不能

 

キクコ

「はぁ…あたしの相棒もここまでかい。

どうして敵わないんだろうねぇ、嫌いな研究者で、しかもこんな若造に。

こりゃ、引退表明も遠くはないかねぇ…。」

 

イエロー

「弱気なキクコさんなんて、らしくないですよ…。」

 

キクコ

「認めたくないがあんたの勝ちだよ。ま、研究好きは理解できないがね…ヒヒ。

ほれ、これが必要なんだろ?何かの羽のようだが…」

 

イエロー

「え?でもキクコさん後1匹いるんじゃ…?」

 

キクコ

「馬鹿だねぇ、これ以上首は突っ込まない方が…うっ!!」

 

キクコにサイコジャックしたミュウツーが語りかける

 

ミュウツー

「何ヲ勝手ニ終ワラセヨウトシテイル?

私ノ作ッタゲームヲ台無シニシテクレルナヨ。

サァ…、アイツヲ出シテ、イエローヲ完膚無キマデニ叩キノメスノダ!!」

 

キクコ

「すまない、イエロー。

どうやら体が言うことを聞かなくなっちまったみたいだ。

少しでも身の危険を感じたら逃げるのだぞ!トレーナーたる者、時には去るのも肝心だからのぅ。」

 

キクコは黒いモンスターボールを投げる

中から出てきたのは…

断線された筈の発電所内にビリビリッと不吉な音が鳴りだす



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無人発電所~電撃ポケモン・サンダー!~

無人発電所周辺に黒い雲が覆う…

 

イエロー

「(何だ、あのモンスターボールは!?見たことがない…。

それにこのただならぬ雰囲気…、来る!!)」

 

ボールから飛び出したのはカントー地方に噂される伝説の3鳥

その一匹である、サンダー

 

キクコ

「【10万ボルト】っ!!

(ぐっ…指示を勝手に!ミュウツーの奴め!!)」

 

"ピシャッッッ"という音と共に、一線の光がラプラスの前に落ちる

 

イエロー

「っ!?」

 

キクコ

「…ただの威嚇さね。

分かっただろう?お前さんのポケモンじゃ歯がたたないよ!?」

 

イエロー

「ラプラス、【ハイドロポンプ】だ!」

 

キクコ

「【光の壁】!」

 

ラプラスの真骨頂である水攻撃でさえ、軽くあしらわれてしまう

 

キクコ

「聞いてるのかいっ!?

こいつをあたしのポケモンと一緒にしちゃいかん、怒りに触れたら最後…取り返しのつかない事になるぞ!!」

 

そんなキクコの助言に耳を傾けようともせず、イエローは無言で策を練っていた

 

イエロー

「(あれが伝説のポケモン、サンダー…!!

僕のデータにはカントー1の電気タイプであることしか判明していなかったけど、攻撃だけでなく防御技までしっかり兼ね備えてるとはね!)

それでも弱点を狙えば…ラプラス、【冷凍ビーム】!!」

 

キクコ

「単調な攻撃じゃあ当たらん、【高速移動】で避けるんじゃ!」

 

雷の如き流れるような速さで瞬時に避わす

 

イエロー

「ならば逃げ場を無くせばいいだけです、"嫡凍する百蓮華"!!」

 

キクコ

「ラプラスが技を繰り出す隙を与えちゃいけないよ!?

さらに速度を上げて接近、【電気ショック】だ!」

 

ラプラス

「!!」

 

ラプラスが冷気を放とうと蓄えている、その目の前にサンダーは忽然と現れた

 

イエロー

「(…速いっ!)」

 

キクコ

「【雷】!!!」

 

その時、イエローは最悪の状況に立たされている事に改めて気づいた…

ここは発電所、至るところで漏電しており電力が今でも生まれていることを…

つまり…

 

イエロー

「(サンダーに相乗の効果を与えている!!

2倍…3倍…いや、僕が考えている数値を遥かに凌駕しているに違いないっ!)」

 

雷を撃たれ、当然のごとくラプラスは戦闘不能

 

イエロー

「ラプラス、あのサンダー相手に臆せず闘ってくれてありがとう!」

 

キクコ

「さぁ、もうあたしの事は放っておきな…。

あんたの勇姿は偽物(うそ)じゃないってのはハッキリしたから。だから…」

 

イエロー

「…まだ1匹残ってます。

僕は1度決めたら途中で逃げ出すなんて真似したくないんで!

例え結果が悪い方だと薄々判っていても、"もしかしたら"…その僅かな光を信じてみたいんですよっ!!」

 

イエローはピカチュウを出す

既に手傷を負っているピカチュウにイエローは近寄る

 

イエロー

「今の僕が君にしてあげれるのはこんな事ぐらいだけど…一緒に戦ってくれるかい?」

 

回復の薬を飲ませ応急処置を済ませるとイエローは立ち上がりサンダーを見つめる

その横にはしっかりとピカチュウがついてきていた

 

イエロー

「いくよピカチュウ!

"帯電する流星"!!」

 

キクコ

「【リフレクター】で防ぎな!」

 

電気の力を帯びた【スピードスター】は1つもサンダーの体にダメージを与えることができない

 

イエロー

「【電光石火】で近づいて、【叩きつける】を打ち込むんだ!

これだけの多段攻撃ならサンダーの盾も…!!」

 

キクコ

「(…さすがに破られるねっ!)

サンダー、【ドリル嘴】で迎え撃ちな!」

 

威力はサンダーの方が上

だが、幸いな事に飛行タイプの技であった為、両者弾かれることとなった

 

イエロー

「ピカチュウ、まだだよ!!そのまま体勢を立て直して、"帯電する尻尾"で一太刀浴びせるんだぁっ!!!」

 

キクコ

「(使いたくはなかったが、思ってることと行動が噛み合わない…っ!)

ぐっ…サンダー、ここの電力を全て吸収するんだ!

人工の力が絶大なパワーを呼び覚ます…"天地雷鳴"!!」

 

暗雲裂きて雷鳥が急襲する!



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無人発電所~小さき姿に映る憧れ~

サンダーのEBがイエローとピカチュウに放たれる

 

イエロー

「ピ…ピカチュウ…?」

 

イエローも被弾を受けて重傷

そして微かに息をするピカチュウ

 

キクコ

「だから言ったではないか…!

あたしにどう責任とれっていうんだい。」

 

イエロー

「キクコさんが悩むことじゃありません…っ!!

これは紛れもなく僕自身の判断で挑んだ闘い。初めはこのゲームに参加することに不安しかありませんでした。

でも、レッドさんや他の方にいつまでも任せてばかりじゃダメなんです…。

博士の助手になると決めたあの日、レッドさんやグリーンさんを驚かせるような発見をしてみせると誓った!

それを叶えるのに自分が2人の後ろを歩いていては、いつまで経っても到達できない。

誰かがやってくれるのを待つんじゃない、"僕が"やらなくちゃいけないんですっ!!」

 

キクコ

「!!!」

 

~それは、何十年と昔のある日~

 

オーキド・キクコ、共に新人トレーナー

 

キクコ

「あんたもまた腕を上げたみたいじゃないか!」

 

オーキド

「お前にだけは負けないさっ!」

 

キクコ

「それにしても…、そのコイキングってポケモン、ただ跳ねてばかりで手持ちに入れてても足を引っ張るだけじゃないか!」

 

オーキド

「はぁ、見る目がないなぁキクコは。

俺はな、こいつに実はとんでもない潜在力が秘められてるんじゃないかって思うんだ!」

 

キクコ

「ふぅん…私にはただの観賞用の鯉にしか思えないけど!笑」

 

2人が旅をする最中、トレーナーとバトルをすることに

 

オーキド

「(くっ…あのサイドンかなり手強い!!

俺の残りはコイキングただ一匹。)

頼むぞ、コイキング!!」

 

だが、当然のようにコイキングはサイドンの圧倒的な破壊力に跳ねてばかりでどうすることもできない

 

キクコ

「(だからそんなポケモンは役に立たないって言ったのさ。)」

 

オーキド

「まだだ…!!俺はこいつを最後まで見捨てない!

だから…俺にチャンスをくれぇっっ!!」

 

その時、コイキングの体が白光

見る見る内に巨大化していく…そう、これぞ鯉の滝登り!

その言葉を象徴するかのようなポケモンに生まれ変わった

 

キクコ

「何だいその姿はっ!?」

 

オーキド

「俺の読みは外れてなんかいなかった!

…決めた、お前の名前は'ギャラドス'だ!!

いくぞギャラドス、【龍の怒り】だ!!」

 

見事、勝利するオーキド

 

キクコ

「…オーキド、あんた。」

 

オーキド

「なぁ、キクコ、俺は感動したよ。

こんな変化ってまだまだ色んなポケモンにも起こり得るのかなぁっ!?」

 

オーキドの目はキラキラと光っていた

 

キクコ

「し、知らないよそんなの。」

 

オーキド

「決めた!俺、ポケモンを研究する博士になる!

…そんでもって、ポケモンの第一人者になってやる!!

誰かがやってくれるのを待つんじゃなくて、俺のこの手でそれを成し遂げてみたいんだっ!!」

 

キクコ

「そんなのポケモントレーナーとしての腕が鈍るだけだよ!?

それでもって言うなら、勝手にしな!」

 

~~~

 

キクコ

「(それからあいつは本当に有言実行してみせた。

あたしの手の届かない場所にまで…。

そんなあいつをいつしか嫉妬してたのかもしれないねぇ、それをあたしはいつまでも…。)」

 

イエローはゆっくりと立ち上がり、バッグからある物を取り出す

 

キクコ

「(仕方ないじゃろ、ライバルに憧れてたなんて素直に認めれる人間などおらんだろうに。)」

 

イエロー

「キクコさん、確かに僕はトレーナーとして、研究者として未熟で…、先輩方からすればまだまだ実の青い若輩者。

だからっ!いつまでも先輩達に教えられてばかりじゃいられない…!!!

いつか必ずやってくる'世代交代'に備えて僕達はスキルアップしなくちゃならないんです!」

 

キクコ

「世代…交代。」

 

イエロー

「この闘いはそれを証明するための第一歩となる!

いくよ、ピカチュウ!!これが僕の研究成果…"磁石"だぁぁっっ!!」

 

ピカチュウの尾に取りつけられたその道具に、発電所内の膨大な電力がピカチュウに注がれていく

 

キクコ

「それはっ!?」

 

イエロー

「電磁場を発生させ、周囲に存在する目に見えない電力さえも吸収できるよう改造した、特殊な磁石です。

この磁石がピカチュウの技の能力を上昇させる…!突っ込むよ、ピカチュウ…【電光石火】!!」

 

キクコ

「サンダー、お前も充電するんだ!

最大出力の"天地雷鳴"で迎え撃つんだよ!!」

 

イエロー

「ぅおおおおっ!!"帯電する尻尾"っ!!!」

 

若き芽は容易く摘まれないよう根を太く成長させる…

いつか立派に花開くために…



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無人発電所~黒影~

イエローVSキクコ…決着の刻!


黒雲はすっかりと消え、眩しい太陽の光が発電所を照らす

 

イエロー

「…んっ!!僕は気を失っていたのか?

そうだ、キクコさんはっ!?サンダーはどうなったんだっ!?」

 

キクコ

「いぃ天気だねぇ、さっきの悪天候が嘘みたいだよ。

…サンダーは倒れた、お前さんのピカチュウと相討ちにな。」

 

イエロー

「ピカチュウ…最後までありがとう。

よく耐え抜いてくれたね。すぐにポケモンセンターにつれて行ってあげるから!…痛っ!」

 

だが、イエローもキクコも試合に夢中だったのか、気がつけば全身傷だらけでまともに歩ける状態ではなかった

 

キクコ

「で、どうすんだい?折角このあたしを倒したっていうのに羽を届けれなければ意味ないじゃないかい!」

 

イエロー

「ふぅ…まぁまぁ、まずはゆっくり寝ましょう。

無茶は体に毒ですよ?」

 

キクコ

「馬鹿馬鹿しい!!これしき…あ痛たたたたっ!」

 

イエロー

「(参ったなぁ、キクコさんの言う通り、この羽をワタルさん達の下に届けなくちゃいけないのにっ!!)」

 

そこへ2人の様子を伺っていた背丈の大きな影が近寄ってくる

太陽光が邪魔をして、顔をはっきり認識することができなかったが、イエローにはどこか聞き覚えがあるような…頭の角にある記憶を辿って、それはようやくハッキリした

 

イエロー

「ど、どうしてあなたがここにいるんですか…!?」

 

???

「君達には関係ないことだ…。

これは私が招いてしまった誤算…。

ここからは私も参戦しようじゃないか!

フフフ…首を洗って待っているがいいミュウツー!!!」

 

イエロー

「あなたを…信用してもいいんですか?

だってあなたは…」

 

???

「さぁな、そんなの君が決めればいいだけだが…どの道、君はこれ以上戦えないだろう?

さぁ、その羽を渡してくれたまえ。」

 

半信半疑のイエローだったが、以降の戦いに自身は無用であることを静かに悟った

そして、羽は謎の人物の手中に渡ったのであった

 

???

「あぁ…後、いい忘れたが今のバトル、中々見応えあったぞ。」

 

イエローは軽く笑って眠りについた

 

無人発電所の戦い

イエロー勝利→戦線離脱

キクコ敗北

謎の人物→新たにゲーム参戦

 

 

時は遡り、場面はカントー地方西へと移る

チャンピオンロード…グリーンとシバが対峙する

 

グリーン

「(これが四天王の覇気っ!まるで…獣っ!!

身体は微動だにしていないのに、どこから発せられているというんだ!?)」

 

シバ

「俺と闘いたかったって?

冗談はよせ、おめぇがジムリーダーだってのは小耳に挟んだことがある。

…が、俺からすれば可愛いトレーナーだ!」

 

グリーン

「はは、俺が弱いとでも?」

 

シバ

「敵の手の内を見てないだけで判断するのはあんまり好きじゃねぇがよぉ、目が平和すぎるんだよなぁ…!!」

 

グリーン

「目が…平和?」

 

シバ

「俺は俺よりも遥かに強いトレーナーと出逢い、そしてそいつをぶっ倒すことで満足に浸ってきた。

負けたら修行。…限界?そんなもの俺の辞書から消えたさ!!

ある日、己の姿を鏡に映した時気づいた、もう俺の目は'ヒト'のそれじゃねぇ…まるで、血に飢えた野獣と化してたことをなぁっ!!!」

 

グリーン

「(俺が察したのは間違いじゃなかった。

この人は、自ら身を削って進化し続けてきた性格(タイプ)なんだ!!)」

 

シバ

「さぁ来いよ、ミュウツーに負けてイライラしてんだ!!」

 

大きく息を吸い、肺を膨らませるシバ

 

シバ

「ウーー!!ハーーーーーッ!!!」

 

ビリッと山が震えた

それは大声を放ったせいか、それとも…シバは山という大自然さえも脅かしてしまったというのか!?



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チャンピオンロード~Maxima(極限)~

グリーンの相手はカントー地方で最も熱誠こもった漢…シバ!


グリーン

「この半年、強くなったのは何もレッドだけじゃない!!

俺だってポケモン達と心身共に磨きあげてきた!

四天王相手にどこまで通用するのか、いい機会です。行けっ、ガルーラ!!」

 

シバ

「エビワラー、3R過ぎるまでにKO勝ちだっ!

【連続パンチ】のジャブでまずは様子見しようかっ!!」

 

グリーン

「(お手並み拝見…か。スピードは目で追える速さだ。)

ガルーラ、相手の拳をよく視るんだ、お前なら確実に避けれるはずだ!」

 

ガルーラは確実にエビワラーのラッシュを回避していく

 

シバ

「(ほぅ…場馴れしているな?この手の敵にウォーミングアップは無用だな。)

エビワラー、【炎のパンチ】でボディブローっ!!」

 

ガルーラ

「っ!?」

 

うって変わって、緩急あるエビワラーの高速ブローに一発喰らってしまい、よろめくガルーラ

 

グリーン

「耐え抜くんだぁっ!!

歯ぁ食い縛ってくださいよ…、【メガトンパンチ】っ!!」

 

シバ

「その言葉、そっくりそのまま返させてもらうぜ!?

エビワラー、腰をどっしり据えて軸を安定させろ…【メガトンパンチ】でアッパーカット!!!」

 

上から殴りにかかるガルーラ

片や、下から振り上げるエビワラー

吹き飛ばされたのは…

 

ガルーラの重たい体が宙に浮いた

 

シバ

「戦いにおいて防戦一方になっちまったらよぉ、そこから巻き返すのはプロでも難しいんだぜ?

攻撃してる側からすれば、これほどなくアドレナリンが放出されて気持ちいい状態なんだからな。」

 

グリーン

「(ガルーラが一撃も当てることができなかった。でも…)」

 

腕時計を確認するグリーン

時間はすでに10分も経っていた

 

グリーン

「…3Rまでに倒すことはできなかったみたいですけどけね!笑」

 

シバ

「いらん事を覚えているんだなぁ。

だが、本気じゃない相手に俺達も燃えないんだよ。全力でぶつかってこいよぉぉっ!!」

 

グリーン

「ウィンディ、目にもの魅せてやろう!!【高速移動】で助走をつけてからの【突進】だっ!」

 

シバ

「そうそう、それだよっ!!

体と体が正面からぶつかり合って火花散らす…そういう闘いを求めてるんだ!!

エビワラー、【カウンター】!」

 

エビワラーが倍の力で迎撃してくる

それをグリーンは瞬時に察知した…

それは幾多の試合経験から感じた危機回避能力だった

 

グリーン

「だったらこっちは3倍返しだぁっ!!

ウィンディ、【突進】から【捨て身タックル】に威力アップ!」

 

エビワラー

「ーっ!!」

 

【カウンター】を見事破り、エビワラーを岩壁へと打ちつける

 

シバ

「ぐははははっ!やるじゃねぇか、負けじと諸刃の剣を出す辺りがよぉ。

…けど、これぐらいで俺のエビワラーはゴング鳴らされる程、甘い育て方はしてねぇぞ?

シバ流限界突破式育成法…Maxima!

立て、エビワラー!!」

 

体から蒸気のようなものが発せられる

 

グリーン

「(熱ちぃ…、エビワラーから闘気が満ち溢れてやがる。)」

 

シバ

「俺のポケモンはマックスアップにて、体力の境地に達した。

瀕死になりかけたその時こそ真の力を帯びる、【高速移動】!」

 

しなやかなステップでウィンディの懐に潜り込む

 

シバ

「"The Maxima(極限)・炎のパンチ"!!!」

 

グリーンは胸騒ぎがした…次のエビワラーの攻撃を喰らうのはマズイと!

 

グリーン

「(避けれない!?…いや、また俺は避けることばっか。

仮にも防戦一方は負けを暗示するって言われたばかりだろ!!)

…灼噛よ炎を喰え、そして我が源と

なりて再び外気に触れよ。

ウィンディ、【噛みつく】と【大文字】をMix!!"灰牙(かいげ)"!!!」

 

ウィンディのEBがエビワラーの【炎のパンチ】を上回る火力で拳を丸かじりする

 

シバ

「根性だぁっ!!」

 

しかし、エビワラーの拳は堪えきれず火傷してしまう…

バタッと倒れ、ノックダウン

 

シバ

「やれやれ、どうやらここまでだな。

やるじゃねぇか、グリーン。俺のMaximaを超えてくる熱血野郎がいることに関しては嬉しいぜ?

だが、バトルはバトル!敗北は許されない、サワムラー!!」

 

グリーン

「(拳の次は足か…。サワムラーなら俺も持ってるし、多少の癖や弱点なら把握してるつもりだ。

さぁ、どう来るっ!?)」

 

脅威であるシバのMaxima(極限)をグリーン達のEBが打ち砕く!

だが、怒濤の猛攻は止まらない!!



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チャンピオンロード~足VS足!~

シバ

「かかれっ、【廻し蹴り】!!」

 

グリーン

「【吠える】!!」

 

威嚇することでサワムラーを近づけさせない戦法をとったグリーンだったが、シバ達には全く効かなかった

 

シバ

「ハーーーーーッ!!!

それしきの気合いで俺達をビビらせようってか!?浅薄すぎるぜ?」

 

サワムラーのしなやかな足技がウィンディの顔面にクリーンヒットしてしまう

 

グリーン

「まだだ、【火焔放射】!!」

 

シバ

「ジャンプして回避しろ!」

 

高く跳び上がり炎を避けるサワムラー

 

グリーン

「今だ、鳥ポケモンでない以上、空中なら身動きがとりづらい!!

"灰牙"!!」

 

シバ

「とっておきの強い技を連発するのは自分で自分を過信してしまっている証拠…。

そういった奴こそ、意外に単純かつ小さな技を当てれば脆く崩れやすい。

サワムラー、【二度蹴り】!!」

 

初撃でウィンディのEBを巧みにいなし、2撃目で確実に迎撃する

 

グリーン

「ウィンディ!!」

 

シバ

「奥義は最後に使うから格好いいんだぜぇ?

サワムラー、必殺の【メガトンキック】!!」

 

空中から一気に下降しながら降り下ろす斧のような蹴りにウィンディは一撃ダウン

 

グリーン

「(くそっ、分かってたはずだ…。今のシバさんのサワムラーとその動き、これまで俺がサワムラーと一緒にやってきたこととまるっきし同じじゃねぇかよ!!)」

 

シバ

「どうした、何か引っ掛かる事でもあったか?」

 

グリーン

「どうやらあなたのポケモンと闘志に見とれすぎてたようです。

だからこそ、次こそは倒す!サワムラー!!」

 

シバ

「同じポケモン…、俺にそいつを宛ててくるとは挑発してるのか?」

 

グリーン

「まぁ、そう受け取ってもらって結構ですよっ!

サワムラー、【跳び蹴り】!」

 

シバ

「【ヨガのポーズ】で避わしな!

奴の着地点を想定して、【廻し蹴り】だっ!!」

 

グリーン

「(そう、サワムラーの長所は何と言ってもその柔らかい足のバネと、そこから生まれるしなやかな体捌き!)

【廻し蹴り】に対して【カウンター】!!」

 

シバのサワムラーの足の上に跳び乗り、そこから後ろ廻し蹴りを当て、吹き飛ばす

 

シバ

「まだやれるな、サワムラー!?

接近して【メガトンキック】!!」

 

グリーン

「(さっき学んだ事…強力な技にもどこかに必ず欠点がある!)

サワムラー、【二度蹴り】だっ!!」

 

初撃でいなし、2撃目に本体を打ち抜く

それは先程のウィンディがやられた時とまるっきし同じ戦法だった

 

シバ

「(早くも我が物としたか、飲み込みがいいな。ならばこれはどうだ!?)

サワムラー、"The Maxima・メガトンキック"!!」

 

グリーン

「(そう、あれは只者じゃないってこは知っている!シバさんがこの技に賭けてきてるのが伝わってくるっ!

肩の力を抜いて、今回は小細工無しの組手なんだ。そっちがその気なら…)

サワムラー、【廻し蹴り】と【跳び蹴り】をMix!

何処の国より伝来されし格闘技、とくと見よ!"Ⅴ・Ⅳ・零(シェン・フン・ジャオ)!!!」

 

シバのサワムラー…その右足が吼え

グリーンのサワムラー…その左足が呼応する

綺麗なクロスカウンターが決まり、両者戦闘不能

 

シバ

「華麗な足技だったな!

…1つ訂正させてもらおう。

お前は平和ボケしたトレーナーじゃなかったようだ。拳を交えたことで、多くの戦禍を経験してきたのが分かった!」

 

グリーン

「四天王からそう言ってもらえるなんて光栄ですよ!

それでも俺はあなたを倒しますよ?」

 

シバ

「おぅっ!かかってこいや!!!」

 

グリーンが遂に四天王を本気にさせた

凄まじき戦いはまだまだ続く!



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チャンピオンロード~武士は食わねど高楊枝…~

苦戦を強いられるも、エビワラーとサワムラーという2大格闘ポケモンを撃破したグリーン
次なるポケモンは…


シバ

「出てこい、イワークっ!!」

 

グリーン

「(ここで岩タイプのポケモン!?シバさんって格闘タイプのイメージあったけど…意外だなぁ。)

こっちはガラガラ、君に決めた!」

 

シバ

「フフ、俺の代名詞は格闘ポケモン!

だが、こいつだって負けず劣らずの不屈の精神を持った戦士だ!!

いくぞ、【岩落とし】!!」

 

グリーン

「【骨棍棒】で砕き割れ!!」

 

洞窟の中という、イワークには最適な環境

岩の雨がガラガラに向かって降り注ぐ

…が!ガラガラは豪快にそれらを砕いていく

 

グリーン

「よくやった、そのままイワークとの間合いを詰めろ!

【気合い溜め】…からの【骨棍棒】で脳天ぶっ叩けっ!!」

 

シバ

「【硬くなる】!」

 

ガラガラ

「っ!!」

 

ガラガラが攻撃した部分は傷1つ付いていない綺麗なボディのままだった

 

グリーン

「(か…、硬ぇっ!)」

 

シバ

「【締めつける】で奴の動きを封じろ!ちょこまかと動かれると鬱陶しいからな。」

 

ガラガラは拘束されてしまい、脱出しようと必死に足掻くも、強堅なイワークのロックからは骨1つ脱け出すことさえ許されなかった

 

シバ

「【叩きつける】でぶん投げろ!!」

 

グリーン

「受け身をとるんだ!ダメージを最小限に抑えるにはこれしかない!」

 

後転しながら受け身をとるが、ガラガラの上から巨大な影が近づいてくる

 

シバ

「オラオラァーッ!これで終わりだ、【怪力】っ!!!」

 

グリーン

「骨で受け止めろぉーっっ!」

 

何とかイワークの尾を防ぐガラガラだったが、耐える足下に亀裂が生じる

 

グリーン

「一か八か…ガラガラ、【地震】で地面を揺らせ!」

 

【地震】がその場をグラグラと揺らし、イワークもその振動で体勢を崩す

そして、遂にイワークの尾がガラガラから離れたのだ

 

シバ

「うおっと、そんな技も隠し持っていたとは…、気を取り直して【叩きつける】!!…っていないだと!?」

 

既にシバとイワークの視野にガラガラの姿はなかった

そう、彼は…

 

全力でイワーク本体を駆け昇っていた

 

グリーン

「形勢逆転っ!ガラガラ、【骨棍棒】っ!!」

 

ガードをさせる間も無く、頭上からの一閃を浴びせる

巨体は崩れ落ちていった

 

シバ

「戻れイワーク。成程、そういう戦いをするのか…お前のガラガラは。

これで次に備えれる。」

 

グリーン

「?」

 

シバ

「こっちが本丸だ、血湧き肉躍れ…イワーク!!」

 

グリーン

「に…2匹目だとっ!?」

 

シバ

「さっきのイワークはまだ育成途中でな、完璧なスタイルを物にした言わば完成形がこいつだ!

元祖・鉄壁の防御…その真髄を魅せてやる!!【岩雪崩】!!」

 

グリーン

「(【岩落とし】よりも数が多いな!)

ガラガラ、新技いくぞ!【穴を掘る】っ!!」

 

シバ

「下に隠れようが関係ねぇ…むしろ好都合だっ!!

イワーク、【地震】!!」

 

【地震】が地中を揺るがす

ガラガラは堪えきれず咄嗟に地上へと飛び出してしまう

 

グリーン

「まだだ…、【骨ブーメラン】!」

 

シバ

「【硬くなる】で弾き飛ばせ!」

 

ガラガラの骨は鋼鉄なイワークの体に弾かれ、回転しながら宙に舞う

 

グリーン

「ガラガラ、その骨をダイレクトで掴み直せ!そのまま【骨棍棒】で叩けぇっ!!」

 

シバ

「何度も同じ手は喰わん…"The Maxima・硬くなる"!!」

 

イワークの頭はみるみる内に硬化していく

硬く…より硬く!

その硬さの前にガラガラの【骨棍棒】は逆に押され、弾かれてしまう

 

グリーン

「さっきと同等のパワーで打ち込んだ筈なのに…!?」

 

シバ

「さっきのイワークの【硬くなる】は全身硬化。響きとしては聞こえがいいが、能力としてはいまいちだ。

硬化する力を全身に巡らせなければならない為、どうしてもその力が散漫しちまう。

だがっ!こいつの【硬くなる】は部分硬化。好きな部位に力を集めることによって防御力を飛躍的に高める、効率の良いやり方だ!

今のガラガラの攻撃力じゃあ、そいつ自身の骨が砕けちまうぜ?」

 

グリーン

「そんなのは試合が終わるまでは分かりませんよ!?

ガラガラ、もう1度頭に向かって【骨棍棒】!!」

 

シバ

「くどいっ!!!

"The Maxima・硬くなる"!奴の攻撃を真っ向から否定してやるんだ!」

 

グリーン

「…それはどうですかねぇっ!?」

 

ガラガラは突っ込んでいくと見せかけ、スピードの勢いを殺す

 

グリーン

「ガラガラ、狙いをイワークの尻尾に変更だ!

恐らくその部分は硬化できていない!!」

 

シバ

「(…成程、この能力の弱点を狙ってきたか!

グリーンの奴、窮地に陥る度に強く研ぎ澄まされていくな…こりゃあ、侮れなくなってきたぜ。)

イワーク、【叩きつける】で相殺するんだ!!」

 

グリーン

「(何だ?…どうして今、Maxima(限界)を使ってこなかったんだ?

もしかすると、使わなかったんじゃなく、'使えなかった'っ!?

…だとしたら、あの技には数秒だがインターバルが存在する!だとすれば、こっちにだって勝機はある!!)

ガラガラ、一旦距離を置くんだ!

次の一手で決めにいく。」

 

シバ

「何か閃いたか知らねぇが、細けぇ事は気にしねぇっ!イワーク、【捨て身タックル】でぶっ飛ばせ!!!」

 

巨大なシルエットがグリーンとガラガラにどんどん差し迫ってくる

ただ直進してるだけ…なのに、どうすることもできない!

だが、グリーンとガラガラにはその状況をひっくり返す手があった

 

グリーン

「ガラガラ、尻尾に向かってありったけの力で【骨ブーメラン】っ!!」

 

シバ

「正面からではなく、横からついてくるか?

だが…イワーク、"The Maxima・硬くなる"!!その骨をはね除けろ!!」

 

グリーン

「かかった!!」

 

【骨ブーメラン】は尻尾を通過し、ガラガラの元へ戻ってくる

その本体であるガラガラは、迫り来るイワークに臆することなく頭上付近へと飛び出していた

 

グリーン

「そいつの骨は親の形見だ!

折れねぇよ…、武士の魂が刀にあるように、ガラガラの魂はその武器である骨の中にあるんですからっ!!」

 

グリーンはプラスパワーとディフェンダーを投げ入れる

 

グリーン

「ガラガラ、そいつを骨に使ってグレードアップさせるんだ!

アイテムとMixした【骨棍棒】の威力、見せつけろぉっ!!

"岩砕刀・骨一文字"!!!」

 

シバ

「(ぐっ…、"Maxima"が間に合わない…!!)」

 

ガラガラの魂の一撃はイワークの頭を完全に射止めた

"ズシィィィィィン"という音と共に岩蛇ポケモン撃破!

 

ガラガラ

「!」

 

だが、連戦でガラガラは息があがり、精魂尽き果ててしまう

その姿は絶対に倒れないという想いからか、地に沈むことなく立ったままだった

 

グリーン

「ガラガラ…お前って奴は!

ありがとう。ボールの中でゆっくりして、吉報を待っててくれ!」

 

これで残すは2対2

シバの額に汗が一滴こぼれた



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チャンピオンロード~潮騒を喚べっ!~

ガラガラの奮闘もあり、シバに支配権を渡さないグリーン
さぁ…勝利まで後2匹!!


シバ

「俺がここまで追い詰められるとは予想だにしてなかったぜ…。

お前がジムリーダーに就任した当初、俺はその決定に反対だった。

その歳にしては並みのトレーナー以上の実力はあったかもしれねぇが、ジム1つ任せられる程じゃあねぇ。

"軽い"んじゃねぇか…ってな!」

 

グリーン

「俺だって何度も自分に問いかけました…。自分でよかったのか?本当に間違っていなかったのか?って。

でも、挑んでくる後輩達が言ってくれるんです!

グリーンさんみたいなジムリーダーになりたいって!!

その時俺は気づきました…。ただ、傍若無人なジムリーダーになっても、後輩に俺の想いは伝導しない。そう言ってくれるトレーナーがいるなら、俺は俺の個性あるジムを築いてやるって決めたんです!ポケモンとの絆を大切にしたジムリーダーに!!」

 

シバ

「…そうか、見えない所で葛藤してたんだな。

お前の性根、気に入ったぜ!!

俺だって四天王、堂々とお前の前に立ちはだかってやる!俺を超えてみろ、グリーン!!!

出てこい、カイリキー!!」

 

グリーン

「(尋常じゃない傷痕…、きっとすっげぇ特訓してきたんだろうな!!)

でも、俺達だって旅の最初から共にしてきた相棒だ…カメックス!!【水鉄砲】だ!」

 

シバ

「凪ぎ払えっっ!!」

 

カイリキーは放たれた水攻撃を2本の腕で容易く払い除ける

 

グリーン

「攻めるぞ、【ロケット頭突き】!」

 

シバ

「受け止めろ!そして、【空手チョップ】でカメックスをねじ伏せるんだ!!」

 

4本ある腕の内、半分でカメックスの図体を直で受け止め、もう2本の腕で首もとにチョップを入れる

 

カメックス

「ーっ!」

 

グリーン

「(カメックスの攻撃をいとも簡単にあしらうとは…。

こうなったら、大技で突破口を開くしかないな!)

カメックス、【ハイドロポンプ】でカイリキーの土手っ腹に一点放射!!」

 

シバ

「【我慢】で受け止めろ!」

 

かなりの水圧である【ハイドロポンプ】を素手で受け止め、2方向に裂く

 

シバ

「カイリキーは攻守に優れたポケモン、いや…これも過酷な修行をこなしてきた成果の賜物だ!!

【空手チョップ】の連打を喰らわしてやれ!!」

 

グリーン

「(くっ、今のカイリキーの技の威力は2倍にはねあがってる!)

【殻にこもる】で防ぐんだ!」

 

だが、単発の攻撃ではなく4本の鍛えられた腕が次々とカメックスの甲羅に猛攻を加える

 

グリーン

「(こんなにも手数が多いと反撃の隙すら与えさせてくれない…!

こういうピンチな時こそ、ワクワクしてくるぜ!)

防御は最大の攻撃…【殻にこもる】のフォルムから【ロケット頭突き】、さらに【ハイドロポンプ】の発射(ブースト)で加速させ…かっ飛べ、"水纏の弾丸"(トルトゥーガ・ブレッド)!!」

 

シバ

「あんなでっけぇ弾丸味わったことねぇってのによぉ。

…チャンスは一度きり、カイリキー、【地獄車】で捌くんだ!ズバリ巴投げの要領を頭に描け!!」

 

カイリキーは姿勢を低くし、突っ込んでくるカメックスの腹部を足で押し上げ、前方に崩す…

カメックスのEBは失敗し、ゴロゴロっと転がってしまう

 

グリーン

「カメックスの勢いを逆に利用し、手足が器用なカイリキーの柔法でそれを完全に制すとは…1本取られましたよ!!」

 

シバ

「笑ってる場合じゃないぞ?

さぁ、次はどう来るかな?」

 

グリーン

「(俺は気づきましたよ!あなたのカイリキー、自ら攻撃に徹してくることがほとんど無い。

どれも俺の攻撃の後出しばかり、なら…こういうのはいかがですかね!?)

カメックス、地面に向かって放水するんだ!」

 

シバ

「何を始めるつもりだ…。」

 

みるみる内に水が浸透していく

 

シバ

「こっ、これはっ!?」

 

地面が一部崩壊し、大きめの貯水池ができあがる

 

グリーン

「さっきのガラガラ対イワーク戦で脆くなった部分を崩し、築き上げたんですよ。さぁ、カメックスの独壇場でどこまで抵抗できますかねぇ?」

 

カメックスは水中に姿を眩まし、カイリキーは泳ぐので精一杯だった

そう、彼は所謂"カナヅチ"なのだ

 

シバ

「水中の特訓を怠っていたのが仇になったか!!

えぇい、カイリキー、まずは陸に上がるんだ!!」

 

グリーン

「逃さないですよ、"水纏の弾丸"!!」

 

シバ

「ぐっ!さっきよりもスピード上昇してねぇかっ!?」

 

海亀は陸での歩行が時速350mであるのに対し、水中で泳ぐ場合、時速20~30㎞になると云われている

 

シバ

「しょうがねぇっ、お前の全力をぶつけてこいっ!!

"Maxima・地獄車"っ!!!」

 

腕の筋肉を膨らませ、カメックスをがっしり抱える

2匹が向かうのは…岩盤!

 

シバ

「漢らしく最後は華々しく散ろうや…っ!!」

 

重い水圧がかかっているにも関わらず、決してカメックスを離さない

そして、両者頭から激突しプカ~ッと浮いてくる

 

グリーン

「サンキューな、カメックス!

これで、あのシバさんを追い詰めることができた!

さぁ、6匹目は何ですか?」

 

シバ

「本当に大した小僧だよ!!

いやぁ…最近のトレーナーにはゆとりが多いから不安だったが、お前を見て安心したぜ!

まだカントーも捨てたもんじゃねぇなっっ!!戻れ、カイリキー!

けど…」

 

シバは急に沈鬱な表情を浮かべ、顔を下に向ける

 

グリーン

「…シバさん?」

 

シバ

「すまねぇ、ここで大人しくしててくれグリーン!!

出でよ…ファイヤー!!!」

 

煌々しい炎をその羽より発し、その秀麗さはグリーンやシバの目を輝かせるほどだった…



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チャンピオンロード~火焔ポケモン・ファイヤー!~

人生の内に1回見ることができたなら、それこそがきっと"奇跡"なのであろう
そう唱われているのが…伝説のポケモン


グリーン

「俺の目の前にいるこいつが、火の鳥伝説のポケモン、ファイヤー!

聖火みたいな炎を灯しやがって…ちくしょう、全てのアートを否定するかのような美しさだぜ!!」

 

シバ

「本音を言うと出したくなかったんだがなぁ…ハハハッ!こいつの炎見たら、俺の闘争心(ハート)が震えてきちまったぜ!!」

 

すると、グリーンのモンスターボールホルダーから1匹のポケモンが飛び出す

 

グリーン

「カメックスっ!?お前、もうやれないだろ…それとも、あいつと闘りたいのか?」

 

歴戦を経験してきたカメックスにとっては、これほど嬉しいことはないのだろう

 

グリーン

「どうやら感化されたのはシバさんだけじゃなかったみたいですよ?

よし、お前の勝負魂に賭ける!!

俺の最後の秘策、回復の薬だ!

さぁ、存分に暴れてやろうぜっ!!」

 

シバ

「準備はできたかぁ?いくぞ、【大文字】っ!!」

 

グリーン

「(カメックスは病み上がりでそんなに動けないはずだ…。

それに【ハイドロポンプ】の使いすぎでエネルギーが足りない!)

カメックス、水中に逃げるんだ!」

 

カメックスは潜水し、ファイヤーの炎から逃げる

しかし、それはしつこくカメックスの後を追ってくる

 

グリーン

「カメックス、【殻にこもる】!」

 

炎も水でやっとの思いでかき消され、カメックスは無傷で回避することができた

 

グリーン

「(今の【大文字】…威力は、レッドのリザードンと同等?いや、それ以上だ。)

…にしても、水の中でも燃え続ける炎は厄介だなぁ。」

 

シバ

「グリーン、こいつの凄ぇ所はなぁ…」

 

グリーン

「何っっ!?」

 

ファイヤーはカメックスが潜む水中に【高速移動】でダイブしていく

 

シバ

「普通のポケモンなら…とくに炎タイプのポケモンには禁断の行為だろう。

だがよ、てめぇの目の前にいるのは普通じゃねぇ…伝説のポケモンって事を忘れんな!

こいつらの前で常識は通じねぇってことは理解しておけっ!!」

 

グリーン

「とんでもねぇポケモンだ。

…が、俺だってポケモン達とだけ修行してきた訳じゃないんです!

俺自身のトレーナーとしての質も磨いてきた!!

カメックス、フィールドに貯水された水を全て砲(キャノン)に吸い込め!!」

 

窪みに溜まってた水が一気に吸い込まれていく

地面が露見し、姿が顕になるカメックスとファイヤー

 

シバ

「(単なるフィールドとしてでなく、時としてカメックスのパワーの根源となるよう構築された闘いを展開しやがる!)

それでもなぁ…焦がし尽くせ、ファイヤー、…【ゴッドバード】!!」

 

グリーン

「射出しろ、【ハイドロポンプ】!」

 

体表を輝かせ、全開の【ハイドロポンプ】に飛行タイプ最大の技がぶつかる

 

グリーン

「お…押されてる!?

(それにゴッドバードだと?…聞いたこともねぇ能力未知数な技まで出してきたか。)

なら尚更敗けられねぇぇ!!!」

 

シバ

「バチバチ熱いものが伝わってくるぜ!

そのお前の火打がさらに俺とファイヤーに引火するんだ!!

ウーー!ハーーーーッッ!!!」

 

カメックスの技を正面から突き破り、そして急所へとダメージを与える

カメックスは吹き飛ばされ、今度こそ戦闘不能

 

グリーン

「…お疲れ様、最後までありがとなっ!

さて、俺の残すはゴルバット…か。

(俺はこいつを信用してない訳じゃない、むしろカメックスの次に仲間になった古参のメンバーだ。

だけど、あのファイヤーの力を目の当たりにしちまったら…こいつじゃあ弱点を突くような技がないんだ。)」

 

シバ

「さぁ、降参か?」

 

そこへ何かが叫んだのをグリーンとシバは察した

それは荒々しい声で、大きな羽音も伴に聴こえる

 

グリーン

「お、お前はっ!!」

 

果たしてグリーンが目にしたのは!?



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チャンピオンロード~I'll be back!!~

怖くなった時…

自信が欠け始めた時…

虚しくも鼓動だけが大きく騒いでやがる

 

だけど、「悦び」が戻って来た時も、鼓動は大きく跳び跳ね回るのさ

 

グリーン

「どうしてお前が…プテラっ!!」

 

やって来たのはかつて別れを告げたはずの仲間・プテラであった

グリーンとプテラは久しぶりの再会に抱き合う

 

シバ

「ほほぉ、なかなかに珍しいポケモンじゃないか。」

 

プテラの翼に紙切れがくくりつけられており、そこには老人からの伝言が綴られていた

 

~少年へ~

ニュースで今のカントー地方に良からぬことが起き始めているのを観た。

プテラは、少年の身にも危ない事が迫っているのではないかと、疼いておったのじゃよ!

ワシはどうする事もできんが、健闘を祈っておるよ。プテラを宜しく頼む。

 

グリーン

「俺の為に来てくれたのか…。

相手は伝説のポケモンだ、それに俺はお前と戦闘のシミュレーションすら1度としてしたことがない。

それでも、お前は俺に勝ちを運んでくれるのか!?」

 

プテラの瞳が揺らぐことはなかった

 

グリーン

「へへっ、俺のとりは…プテラ、君に決めた!!」

 

シバ

「どのポケモンだろうと、勝敗は決まってる!

ファイヤー、【大文字】っ!!」

 

グリーン

「よし、図鑑でお前の技は一通り把握した…、【高速移動】で避わせ!」

 

【大文字】を素早く回避し、すかさずファイヤーに突っ込む

 

シバ

「【炎の渦】で奴を閉じ込めろ!」

 

プテラは渦に閉じ込められてしまう

 

グリーン

「プテラは、岩タイプを含む…炎なんかへっちゃらですよぉっ!!

凪ぎ払い、【翼で打つ】を叩き込めっ!!」

 

シバ

「こっちも【翼で打つ】だっ!!」

 

互いの翼による鍔迫り合い…

どちらも1歩も退かない

 

グリーン

「【噛みつく】で追撃!」

 

プテラの持つ鋭利な牙に、ファイヤーが初めて苦痛の表情を見せた

 

グリーン

「(いける…!プテラとの意思疏通がこんなにも円滑にいくなんて思ってもいなかった!!

よく見りゃ、こいつ…平穏に暮らしてたかと思えば、身体中修行の痕がおびただしく残ってる。)

そんなの、毎日やってなきゃ付かねぇよ!やれ…【破壊光線】だぁっ!!」

 

ほぼゼロ距離で放たれた【破壊光線】により、ファイヤーは地上へと墜ちていく

 

シバ

「おい…"伝説"っつう看板背負っといて、そんなもんで終わらねぇよなぁ?

肩書きっつうのはそう易々と名乗れるもんじゃねぇんだよ!!

色んな奴に認められ、世間に認めてもらえて初めて与えられるんだよっ!!

…だから、"伝説"曝すならそれなりの魂を魅せろよ!!!

いくぞ…"Maxima・ゴッドバード"っっ!!」

 

下降していた体勢から、爆熱を纏い急上昇してプテラに一撃を与える

 

グリーン

「ぐぁっ…!"Maxima"の熱さがファイヤーの炎を後押しして、相乗の効果を生み出してるのかっ!

無事か、プテラ!?」

 

プテラは大ダメージを喰らうも、まだやれるそうだ

 

シバ

「まだ立つか。だが次で決着だ…"Maxima・ゴッドバード"っ!!!」

 

グリーン

「【超音波】でファイヤーの調子を乱すんだ!」

 

しかし、ファイヤーは諸ともせず【超音波】を軽く突破してくる

 

シバ

「ハーーーーーッ!!!!」

 

グリーン

「(シバさんもファイヤーも、もう形振り構わず攻撃してきている!

小細工なんか意味無いんだ。)

プテラ、空(うえ)へ!」

 

プテラはチャンピオンロードの山頂、噴火口へと目指して飛ぶ

それを逃がさんとファイヤーは追う

 

グリーン

「考えろ…、逆転の一手を!

それとも、本当にここまでなのかよ…!!」

 

その時、プテラの翼が金色の光を放つ

 

グリーン

「…っ!!あの感じ、俺には解る。

あいつ、本当に俺に勝ちを運んでくれやがった!!

プテラ、空中で旋回し、ファイヤーにぶつかるぞ!【突進】と【ゴッドバード】をMix…"白亜の両翼"!!!」

 

青空の下、金色の翼と焔色の翼が激突した

この日、チャンピオンリーグの山頂で小さな噴火らしきものを目撃した人が数人いたという…

彼等曰く、噴火したと思ったら、炎は途中で止んでしまったと。

 

ドサッと倒れるファイヤー

それに続いてプテラがサッと降り立ち、翼をとじる

 

シバ

「はぁ…はぁ。燃え…尽きた、ぜ。

こんなにも熱中できたのは炎児やワタルと戦った時以来だ。

懐かしくも、本来の俺が戻った感じがした。

負けは負けだ…ほら、羽だ。」

 

グリーン

「俺、これからもジムリーダーの看板背負って、時には心を鬼にしてでもカントーポケモンリーグを退廃させないようなトレーナーになります!

シバさんとの闘い…マジで熱かったですよ!」

 

そう言うとグリーンはその場を後にした

そして、1人になったのを確認すると、漢は静かに大粒の涙を流したのであった



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双子島~レッドVSカンナ!~

舞台はもう1つの試練、南の双子島へ


相変わらずの天候…

ただ豪々と雪が降り、その場のレッドと四天王・カンナを霞ませる

 

カンナ

「そう…あなたが来てしまったのね。一番やりたくない相手だわ。

ここで初めてあなたと出会い、夢を語り合ったわね…、あの日から私はあなたに一目置くようになった!

稀に見ぬ私と似た馬鹿げた夢物語を口にするようなトレーナーにね!!

だけど、あなたはそれを実現してみせた!それに比べて私は…」

 

レッド

「カンナさん!俺はリーグを制覇しました。だけど、それで終わるような小物に見えますか!?

叶いそうもない夢?そんなのたくさん描きましょうよ!叶う叶わないは二の次にして、互いに腹抱えて笑い合いましょうっ!!」

 

カンナ

「レッド君…(またこの半年で大きくなったわね!)」

 

レッド

「その為には、まずカンナさんを自由の身にすることが最優先!

…って事でいいですよね?」

 

カンナ

「さっきまでの不安なんか忘れてしまったわ!!

レッド君、あなたの本気をぶつけてきて頂戴!来るもの全て凍らせてあげるわっ!!

…じゃ、覚悟はいいかしら?ジュゴン!!」

 

レッド

「初っぱなからあのジュゴンかょ…。なら俺はゲンガーだっ!【サイコキネシス】!!」

 

カンナ

「(ゲンガーは危険な技を持った塊だわ…キクコさんとの戦いで嫌っていうほど身に染みてる!!中距離からの攻撃が無難だわね…)

ジュゴン、海氷に潜りなさいっ、ゲンガーを惑わせるのよ!!」

 

レッド

「ゲンガー、集中しろぉ…どっから来るか分かんねぇぞ?」

 

だが、ゲンガーの性格は直っておらず、集中だの我慢だのジッとしていられなく、緊張感を欠いたままであった

 

カンナ

「あらあら、ポケモンはトレーナーに似るって言うけど、それは…似すぎよ!

ジュゴン、【オーロラビーム】でゲンガーの足を狙いなさいっ!!」

 

ゲンガーは簡単に凍らされてしまう

レッドの反応が遅かった訳ではない…ゲンガーの単なる油断が招いてしまったピンチ

 

ゲンガー

「っ!?」

 

レッド

「足が動けなくたって、ゲンガーは強い!もう1度【サイコキネシス】!!」

 

カンナ

「それも…相手の姿を捉えていればならないことが前提じゃなくって?」

 

ジュゴンは再び海氷に姿を眩まし、ゲンガーの攻撃を避ける

 

カンナ

「さぁ、終わりよ…【オーロラビーム】っ!!」

 

レッド

「迎え撃て、"超念動力型可視光線"!!」

 

どちらも強力な光線だが、ゲンガーの方が威力で優っていた

ジリジリと押し返される【オーロラビーム】…遂にジュゴン本体へとダメージが入った

それと同時にゲンガーの足元の氷が溶け、解放される

 

レッド

「よっしゃあぁっ!!!

ゲンガー、【催眠術】で動きを封じるんだ!」

 

カンナ

「そんな恐ろしいのは御免よ?

ジュゴン、【眠る】!」

 

レッド

「そんな…自ら眠り状態にっ!?」

 

カンナ

「あら、'眠らされる'のと'眠りに入る''のは違うわよ?

後者なら体力回復のおまけ付き♪」

 

ジュゴンは徐々に傷ついた体力を癒していく

 

レッド

「だったら【ナイトヘッド】で…」

 

カンナ

「そうくるのも想定内っ!」

 

カンナは眠気覚ましを使用して、ジュゴンを強制起床させる

パッと目を開き、臨戦体勢に入る

その口内に、青白い冷気が溜まっていく

 

レッド

「(いけないっ!カンナさんにとって【冷凍ビーム】は代名詞…!!)

ゲンガー、【サイコキ…」

 

カンナ

「もう遅いわっ!!

ジュゴン、【冷凍ビーム】っ!!!」

 

ゲンガーの全身を冷却し、戦闘不能

 

レッド

「これが四天王の闘いかよ…、やっべぇっ!めちゃくちゃ楽しいじゃん!!」

 

倒されても尚、レッドはへこたれない

さぁ…巻き返していけ!



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双子島~反則的な防御力!?~

カンナが圧倒的自信を誇る氷技にレッドは興奮を隠せなかった


レッド

「あれがカンナさんとジュゴンが放つ本気の【冷凍ビーム】かぁ…。

くぅ~っ、心酔しちまったぜ!」

 

カンナ

「お、大袈裟すぎない?」

レッド

「まさか!大真面目ですよ!!

やっと四天王と手合わせできるってだけでも最高の気分なんですから…!!」

 

カンナ

「あら、そんなに褒めたって手は緩めないからねっ♪」

 

レッド

「氷の美魔女…二つ名の通り、ドS臭が漂ってくるぜ。

フシギバナ、出番だ!!」

 

カンナ

「(確かにジュゴンへの草タイプ技は軒並みに効くけど、恐れるほどじゃないわっ!)

ジュゴン、【オーロラビーム】よ!!」

 

虹色に発光しながら、強烈な一撃がフシギバナに向かって放たれる

 

カンナ

「二匹目も…さよならね。」

 

レッド

「フシギバナ、"アイギスの盾"っ!!!」

 

【オーロラビーム】は"アイギスの盾"により自然のエネルギーに返還され、全て吸収されてしまう

 

カンナ

「ん…一体その盾は?ただの【リフレクター】じゃないわね。」

 

レッド

「まぁ…ざっくり言うと、これの前で光線等の特異な技は全て無力化されてしまうんですよ。

…それが、どんなに弱点を突くような技でもね!」

 

カンナ

「氷のように物質的な堅さとは異なる柔らかい盾とも言うべきかしら。

それなら、直接に当てるしか方法はないわね!?

ジュゴン、【突進】!」

 

レッド

「(カンナさんが真摯な戦いをする人でよかった…。)

フシギバナ、今度は普通の【リフレクター】だっ!!」

 

盾に頭をぶつけたジュゴンは反動でその場によろめく

 

カンナ

「(柔から剛への変用っ!?

私をそう仕向けさせたっていうのっ!?)」

 

レッド

「【蔓のムチ】で縛り上げたら…【ソーラービーム】で止めだぁっ!!」

 

効果は抜群

ジュゴンはそのまま海氷へと投げ出され戦闘不能となる

 

レッド

「カンナさんがトリッキーな性格だったら、"アイギスの盾"は破られてたかもしれません。

実際の所、編み出した俺自身もこいつの突破方法は未だに直接攻撃の他ありませんから。

だから…今は何だかホッとしてます!」

 

カンナ

「面白い子ね…。

さて、それじゃあ私がその第1号になるのかしら?パルシェン、やるわよっ!!」

 

レッド

「【蔓のムチ】で攻撃っ!」

カンナ

「【殻にこもる】!!」

 

パルシェンのぶ厚い2枚の殻が重なりあい、【蔓のムチ】を跳ね返す

 

レッド

「それなら【眠り粉】で完全に動きを止めるんだ!!」

 

カンナ

「その手も無駄よ…、【殻にこもる】!!」

 

外気との接触をシャットアウトしたパルシェンに粉が届くはずもなかった

 

レッド

「物理的攻撃も、特質攻撃も効かないとは…それならEBでその閉じ籠った本体を外へ引きずり出してみせますっ!

フシギバナ、"ジキタリスの刃"!!!」

 

カンナ

「何をしてこようと、拒絶するのがパルシェンの【殻にこもる】。

この殻はナパーム弾を撃ち込まれようと砕けない…。」

 

弾かれた毒の葉がただ氷だけを溶解していくのを、レッドは歯を噛み締めながら見ていることしかできなかった

 

カンナ

「フフ…、毒つきの【葉っぱカッター】?レッド君、それは穏やかじゃないわね。

全く、見た目に反してえげつない子なんだから…。

それじゃあ次はこちらから行くわよ、パルシェン、【棘キャノン】!!」

 

レッド

「防御ならフシギバナだって負けてないっすよ!?【リフレクター】っ!!」

 

降り注ぐ棘の嵐に【リフレクター】で対抗する

…レッドが断言した通り、全ての棘を寄せ付けなかった

 

カンナ

「やるわね…!

でも、この大雪地帯の真の脅威はここからよっ!【吹雪】!!!」

 

レッド

「(まともに【吹雪】を喰らうのはやばいな…。)

フシギバナ、"アイギスの盾"で防ぐんだ!」

 

フシギバナ

「ーっ!!!」

 

フシギバナが受けたのは、【吹雪】…の中に紛れ、そのエネルギーを纏った【棘キャノン】だった

それは、まさしく氷礫。鋭く尖った切っ先がグサリと突き刺さる

 

レッド

「(EBに似た技の応用か…!しかも【棘キャノン】自体が物質的…。ここは自然エネルギーを吸収する"アイギスの盾"じゃあ分が悪い!!)

フシギバナ、【リフレクター】に変換だ!!」

 

だが、連続で撃たれたことで盾の耐久率は落ち、壊されてしまう

効果抜群のフシギバナは立ち上がることができなかった

 

レッド

「あの殻を抉じ開ける他、パルシェンにダメージを与える方法が無いみたいだな。

俺の手持ち一番の力持ちで相手してみるか!」

 

さぁ、突破口を切り開け!




"アイギスの盾"については、ゲームでいう特殊技を吸収するものだと捉えてください(>_<")


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双子島~呆~っと~

レッド

「ニョロボン、お前の馬鹿力を見せてやれ!!」

 

カンナ

「ふぅん、苦肉の策が格闘タイプね。

それで私のパルシェンが倒せるかしら?【棘キャノン】で串刺しにしてあげなさいっ!!」

 

レッド

「【白い霧】!!」

 

姿を見失ったパルシェンは、攻撃を当てることができない

同時にカンナはこの霧に乗じてレッドが攻撃を仕掛けてくることを予想していた

 

カンナ

「パルシェン、いつ襲ってくるか分からないわ…念の為に【殻にこもる】で備えておきなさい。」

 

レッド

「(さすがに読まれてる…か。)

けど…ニョロボン、パルシェンの殻を掴むんだ!」

 

殻で閉ざしきったパルシェンの正面に堂々と立ち、精神を統一させる

 

レッド

「こじ開けろっっ!!」

 

体内に流れる全エネルギーを腕に集め、一気に開放する

必死に開けまいと抵抗するパルシェンだが、その殻は少しずつ幅を広げていく

 

パルシェン

「っ!」

 

そして本体が露見する

 

レッド

「よっしゃ!【ハイドロポンプ】で撃ち抜け!!」

 

カンナ

「まだよ、即座に【殻にこもる】でニョロボンの攻撃を断ちなさい!!」

 

放水に力を切り換えるわずか1秒のことだった…

【ハイドロポンプ】は殻を濡らすことしかできない

 

カンナ

「反撃の【棘キャノン】っ!」

 

ニョロボンの体に痛々しく棘が刺さっていく

 

レッド

「…掛かりましたね!」

 

カンナ

「!?」

 

やられたニョロボンは煙となって消えていく

そして、2匹のニョロボンが海氷から飛び出す

 

レッド

「それは"三幻身の返し"!

最初の霧の中でこっそりとすり変わっていたんですよ!

さらに…【地球投げ】!!」

 

背後からパルシェンを抱き抱え、一匹を踏み台に高く跳ぶ

総重量130キロ近くもあるずっしりとした身体を持ち上げるのは至難の業だ

 

レッド

「修行の旅で、こいつは毎日欠かさずイシツブテをダンベル代わりに鍛え、筋肉をしっかりつけた!!」

 

【身代わり】のニョロボンの背に乗り、それを踏み台に高く跳び上がる

 

カンナ

「くっ…!!(あの高さからの衝撃に耐えれるかどうか…。)」

 

地面に大きなクレーターを残す程の威力

パルシェンは落とされたその衝動により、脳震盪に…

外傷はほぼ無いものの、ニョロボンが繰り出した【地球投げ】での内へのダメージが相当なものだった

 

カンナ

「筋肉だけの生き物なんてただの単細胞かと思ってたけど、あなたと戦って反省したわ。

ま、どこかの同僚さんに教えてあげたいものだわ。

私の次なるポケモンは、この子よ!!」

 

ボールから出てきたのは、瞬き1つせず、ボーーッと前を眺める何ともやるせないポケモンだった

名をヤドランというらしい

 

ヤドラン

「……。」

 

レッド

「……。」

 

ヤドラン

「……。」

 

レッド

「…って、何か鳴けよ!!」

 

ヤドラン

「…ヴォ。」

 

一声上げてヤドランはまたうつける

 

レッド

「(何だかやる気無いポケモンだなぁ。)

ニョロボン、【のしかかり】!」

 

カンナ

「(レッド君は完全にヤドランのペースに呑まれて、油断しきってるわね。)

ヤドラン、【鳴き声】でニョロボンの戦意を喪失させてやりなさい!!」

 

ヤドランのそのやるせない低い鳴き声に、ニョロボンは力が抜けてしまう

【のしかかり】も大した跳躍ができないまま、失敗に終わる

 

レッド

「どうしたニョロボンっ!?

らしくないじゃないか、早く次の手をうつから気合いを入れ直せ!」

 

カンナ

「させないわよ!【頭突き】で攻撃!!」

 

レッド

「【カウンター】で倍返しだ!!」

 

レッドは最高のタイミングを狙ったつもりだった

しかし、【頭突き】をしてくるはずのヤドランが攻撃を当てにこない

 

レッド

「(ヤドランは何を考えてるんだ!?行動が読めなさすぎて、俺の感覚まで鈍らされる…!!)」

 

カンナ

「ヤドランはこう見えて知能が高いのよ?単調に技を出して反撃の隙を与える程、愚鈍じゃないのよ!

ヤドランは【頭突き】を当てるスピードを落としてニョロボンの様子を伺ってたの…。

そして【カウンター】が来ると分かってるなら、【金縛り】で封じるのみっ!」

 

ニョロボン

「っ!!」

 

指1つ動かせないニョロボンはどうすることもできない

その腹のグルグル模様だけが、まるで射ぬいてほしいといわんばかりの的となる

 

カンナ

「さぁて、改めて【頭突き】を喰らわせてあげる…!」

 

頑丈な頭がニョロボンの腹に強くぶつかる

少しばかりの痛みがあるかと思えば、まるで無表情のヤドラン

急所に当たったニョロボン、戦闘不能

 

レッド

「ヤドラン…あの能面のような表情からは動きが予測できない。

おまけにダメージも受けてんのか受けてないのか、さっぱり判らねぇときた。

(…こいつは、ある意味手強いな!)」

 

ヤドランという迷宮から脱出する術はあるのか!?

カンナの手の中で踊らされるレッド…危うし!



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双子島~誘惑キッス…!~

ヤドランの独特な戦いにペースを狂わされてしまうレッド


レッド

「ここはカブトプスで様子を見てみるか…。」

 

ギラリと不気味に光る鎌を舐め、ヤドランと向かい合う

 

カンナ

「そんなに睨まれちゃ、ヤドランも怯えてしまうじゃない。

それなら、カブトプスにも身も震えるような恐怖を魅せちゃおうかしら…!

ヤドラン戻りなさい…そして、ルージュラ、あなた好みの敵よ!!」

 

レッド

「(ルージュラ…初めて目にするポケモンだな。

何かポケモンにしちゃあ随分人型に近い気もするが、カンナさんが出してくるってことは高確率で氷タイプの技を使ってくるに違いない!)

カブトプス、距離をとって【水鉄砲】!!」

 

カンナ

「こんな豪雪地帯でその程度の水攻撃じゃあ…。」

 

放たれた【水鉄砲】は瞬間的に凝固して凍ってしまう

 

だが、カブトプスはその視界の悪い吹雪の中からルージュラ目掛けて鎌を振り降ろしにかかる

 

レッド

「やれっ、【切り裂く】だっ!!!」

 

カンナ

「じゃ、そんな能動的なカブトプスに1つ良いものあげる…!」

 

カブトプスが鎌を降ろす手前、ルージュラが1歩、2歩と距離を詰め、大胆にもカブトプスへ接吻をする

 

レッド

「なっ…!ななな何だぁっ!?」

 

カンナ

「ふふふ…まだお子様には刺激が強かったかしら?」

 

レッドが愕然としたのはキスという行為…もあるが、それよりもカブトプスが昏睡状態に陥ってしまったことだった

 

カンナ

「あら?積極的な男性は女子受けがいいんだけど、口づけ1つで堕ちちゃう初な子には興醒めよ…。

ルージュラ、【冷凍パンチ】で吹き飛ばしてやりなさい!!」

 

諸にパンチを受けるカブトプス

しかし、深い眠りからはまだ覚めない

 

レッド

「このままじゃルージュラの魅惑に負けちまったみたいで情けない上にだらしねぇ!

この何でも治しで起きろ、カブトプス!」

 

目を擦りながら、いい夢見てたかのようなとろけた顔をしている

 

カンナ

「もう目を覚ましちゃったの?

なら…ルージュラ、【冷凍ビーム】で完全に冷(覚)ましてあげるのよっ!!」

 

ヨロヨロとよろけてまともに立つことができないカブトプスに、レッドは激をとばす

 

レッド

「カブトプスっ!ここは夢ん中じゃねぇぞっ!!いい加減しゃきっとしろ!!!」

 

カブトプスは、ハッと大きく目を開き、正気に戻る

 

レッド

「片手の鎌を盾替わりに防ぐんだ!…今はこうするしかない。」

 

鎌は冷たい音をたてながら凍らされてしまい、刃物としては役にたたなくなってしまった

 

レッド

「(カブトプスの主軸となる武器が機能しないのなら…ここは交替させるのが正解か!?)」

 

カンナ

「自慢の鎌もその状態じゃ価値はないわね!

氷タイプの技の恐ろしさ、世間ももっと評価してほしいものよ。

ルージュラ、【冷凍パンチ】!!」

 

レッド

「(…氷って身近にあるし、危険性なんて無いと思ってたけど、時として被害をもたらすんだなぁ…って俺は何感心してんだ!!

でも、それなら凍らされたのが鎌だけなら他に方法はあるはずだ!!そう、例えば氷を新たな属性付与として考えたら相性ピッタリだろ!)

…カブトプス、凍らされてない片方の鎌で氷を研ぐんだっ!イメージは氷柱のように鋭く!!」

 

カンナ

「レッド君のあの諦めずに向かってくる姿勢、体が避けろと語りかけてくる!!

ルージュラ、攻撃を中断してカブトプスを誘惑するようなダンスを魅せてあげなさいっ!」

 

ルージュラは大人の魅力たっぷりのようなダンスで腰をくねらせ、カブトプスの集中力を逸らす

 

レッド

「いくぞ、"古代の剣"に氷タイプを加えた進化型EB…その名も、"古代の剣・氷依結成《アイスメイク》"!!

それとっ、その奇妙なダンスなんか目をつぶっちまえば問題ない!

…いっけぇぇっ!!!」

 

カンナ

「ぐっ…女性に手をあげるなんて、酷い男ねっ!

ルージュラ、【冷凍パンチ】で迎え撃ちなさい!」

 

再び冷気を拳に纏い、攻撃するルージュラ…それに対して逆転の発想から生まれた技を以て斬りかかるカブトプス

果たして軍配があがるのはっ!?



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双子島~海が奏でる旋律~

冷たい一撃がぶつかり合う!


レッド

「…カブトプス!!」

 

カンナ

「(攻撃は同時だった。へたしたら…)」

 

ルージュラは腹を抱えて膝まずく

斬撃によるダメージとその上にEBによる凍傷が重なってしまったのだ

 

カンナ

「これ以上闘わせることはできない、戻りなさいルージュラ!

さぁ…カブトプスはどうかしら?」

 

カブトプスは立ったままピクリとも動かない

そして、グラッとまるで石像が倒れるかのように硬直したまま崩れた

 

レッド

「くっ…、ルージュラから受けた氷のダメージが知らず知らずの間に蓄積されてたのか。

体温が低下しちまって…ごめんな、カブトプス。」

 

カンナ

「ふぅ。(これで倒れなかったら劣勢に立たされてたわ。

…って、私は何を安心してるの!?

仮にこの勝負がチャンピオンリーグのものだとしたら…!!

レッド君は自覚していないみたいだけど、彼は既に私達のステージと同じレベルにまで達している!)

フフフ…。」

 

レッド

「何が可笑しいんですか?

寒すぎて遂に頭がおかしくなっちゃったんです?」

 

カンナ

「そうかもねっ!!

それはともかく、残すは3対2。

この状況をひっくり返せるかしら?」

 

レッド

「今頃、親父やワタルさん、グリーンとイエローも皆死にものぐるいで頑張ってるはずです…。

俺一人だけ怠けていい訳ないですからね!

だから頼む、お前が逆転の道を作ってくれっ、サンダース!!!」

 

ボールから稲妻が走り、サンダースが飛び出す

 

カンナ

「ならばこっちは、ヤドランでいこうかしら!!」

 

レッド

「どっちが先にペース乱されるか、勝負っす!!

サンダース、【電光石火】!」

 

目にも止まらぬ俊足で一気にヤドランとの距離を詰める

 

カンナ

「さすが、リーグを賑わせただけのスピードね!

やるじゃない…けど、【金縛り】で動きを封じなさい!!」

 

レッド

「させないっ…!【砂かけ】で翻弄するんだ!」

 

ヤドランが瞬き一回するその隙にサンダースは背後を取る

 

カンナ

「なっ…!!」

 

レッド

「【雷】!!!」

 

カンナ

「【ド忘れ】!」

 

雷がヤドランの身体を貫く…

微動だにしないヤドランに場は静まり、吹雪く音だけが耳に入ってくる

 

レッド

「(…やったか!?)」

 

カンナ

「【サイコキネシス】っ!!」

 

強い思念で吹き飛ばされるサンダース

 

レッド

「サンダース!!

…どうして?確かに【雷】はヤドランにダメージを与えた筈なのに。

(ただ、疑問に残るのはやられる前にカンナさんが発した技…。この吹雪のせいで聞き取れなかったが。)」

 

カンナ

「不思議そうな顔をしてるから特別にネタばらししてあげる。

答えは【ド忘れ】。尻尾のシェルダーが噛みつくその痛みで、受けたダメージさえも忘れることができるの!」

 

レッド

「そうか思い出した…!似たような技をパープルのカビゴンが使ってたっけ。

ただ、あいつのと異なるのは回復しない点だ。ダメージは絶対に溜まっていく!サンダース、"劈く避雷針"!!」

 

カンナ

「ただの【ミサイル針】っ?

…違うっ!微かに電撃を帯びてるのが見えるわ!!」

 

EBの構造を即座に見抜いたカンナは流石とも言えるが、対策練る暇もなくヤドランに突き刺さる

 

レッド

「これで決める…"雷脚一閃"っ!!!」

 

カンナ

「【ド忘れ】で一時的にでも防ぐのよ!

(けれど、レッド君の言った通り、その場しのぎの痛み止めにしかならない!)」

 

海に投げ出され、沈んでいくヤドラン

既に麻痺状態になり、泳ぐのもままならない

 

カンナ

「次は…」

 

レッド

「カンナさん、次は無いですよ!?

今ヤドランがいるのは水中。あなた達が闘ってるのは電気タイプですよ?」

 

カンナ

「まさかっ!!」

 

レッド

「サンダース、【10万ボルト】を海に撃て!

感電させれば勝ったも同然!!」

 

電撃が迸り、海が荒れる

プカ~ッと浮いてくるヤドラン

 

レッド

「今度は戦闘不能…ですよね?」

 

カンナ

「そうね、やられたわ。

戻りなさい、ヤドラン!

ここまで熱い戦い…君は父親に似て、私と相性最悪だわ?」

 

レッド

「それってどういう事ですか?俺の事嫌いって意味ですかぁぁ!?」

 

カンナ

「深く考えすぎよ!あなた達は大好きよ!笑

さっ、次は私が大事に育ててきた相棒…。ラプラス、炎も凍らしてしまうあなたの美氷をレッド君達に魅せてあげるのよ!!」

 

レッド

「ラプラスか、対峙するのは2度目だな…。

サンダース、"劈く避雷針"で先制攻撃っ!!」

 

カンナ

「 ここは水のフィールド…電気タイプ相手は自ら死ににいくようなもの。

でも、もしこの海が味方についてくれるならこれほど心強いものはない!!

ラプラス、【波乗り】!!」

 

20番水道の大海原がサンダースに向け雪崩れ込んでくる

 

レッド

「で、でかすぎる…!

だけど、海は海!電導すればラプラスも一撃ですよ!?」

 

カンナ

「それは触れればの話…、通さなければいいのよ!!

ラプラス、【リフレクター】!!」

 

海を覆う超巨大な【リフレクター】の前に、サンダースのEBは弾かれる

 

レッド

「この数を防いだのか!?」

 

サンダースはマイナスの世界である海氷に飲み込まれ、流されてしまう

もがけどもがけど海面に辿り着くことができない

こうなれば、ラプラスの独壇場だった

 

カンナ

「【捨て身タックル】!!」

 

身動きとれない上に重たい衝撃を喰らったサンダースはさらに深淵へと下降していく

 

カンナ

「双子島を活動拠点としてる私は常に自然との脅威に直面している…。

豪雪地帯の雪崩は勿論、海だって色んな顔をもってるわ。

皆に癒しを与える綺麗な一面もあれば、誰にも気づいてくれることのない静かな暗闇だってある。

そんな危険な場所で大切なのは'バディ'よ?サンダースはあなたに救いを求めてるはず…!!」

 

レッド

「カンナさん…!

(想いを1つにするんだ…。)

サンダース、このスピーダーを受け取ってくれぇっっ!!」

 

どこにいるのかも分からない大海にレッドはスピーダーを投げ入れる

 

ゆっくりと沈んでいくその先にサンダースはいるのか!?



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双子島~冷凍ポケモン・フリーザー!~

暗い深海に光差し込む…!!


レッド

「届け…届いてくれぇ!」

 

ブクブクと海面に泡が発生したかと思うと、次の瞬間、【高速移動】で勢いよく水上にサンダースが飛び出してきた

 

カンナ

「…敵に塩を送っちゃったかしら?

それでも構わない!今この勝負を心の底から楽しんでる自分がいるなら…っ!!

ラプラス、もう一度【波乗り】で沈めてあげなさい!!」

 

レッド

「鳥肌が立ってくる!これは寒さなんかじゃない…、四天王を前にして、この俺がもしかしたらもしかするとっていう武者震いで高鳴ってるんだ!!

やれる、今なら…。サンダース、電気を1箇所に集めて放つイメージで【10ボルト】だっ!!!」

 

カンナ

「どんなに電撃をぶつけてもこの子の【リフレクター】に死角はない!」

 

レッド

「サンダース、諦めるな!一点をぶち破れ!!」

 

ラプラス

「ーーーっ!!!」

 

激しい一点攻撃により、難攻不落と思われた巨大な要塞に穴が空こうとしている

 

レッド

「でかい壁を…四天王という強大な壁を撃ち砕けぇぇっ!!」

 

そして、僅かながら小さな穴が空き、そこから電気が流れ込んでいく

効果抜群のラプラスは双子島の岸にあげられ、波は水煙を上げてうねる

しかし、その目はまだ死んでなかった

 

カンナ

「これが四天王の意地よっっ!!

ラプラス、【冷凍ビーム】!!」

 

レッド

「避わして"雷脚一閃"!!」

 

外れた【冷凍ビーム】が氷山の一角を虚しく削る

そして、見事レッドはラプラスを撃破

 

カンナ

「本当…あなたは私を飽きさせないわね。」

 

レッド

「カンナさんから直接言われるなんて光栄です!

俺、チャンピオンリーグ辞退した後、打倒・親父を掲げてがむしゃらにカントーを駆け回った。

その間に多くのトレーナーと交えてきたけど、夢に近づくような試合は1つも無かった。…今日、あなたを除いてねっ!!!」

 

カンナ

「…。」

 

レッド

「ラプラスが倒れた今、あなたに残されたポケモンが何なのかは知りませんが、こっちにはエースのリザードンが万全を期してます。」

 

カンナ

「それでも…あなたは勝てないわ。」

 

小声で呟くカンナ

その顔は下を向き、無念さが滲み出ていた

 

レッド

「…カンナさん?」

 

カンナ

「ごめんなさい、レッド君。

あなたの期待を裏切ることになるかもしれない…。

けど、私にはどうすることもできなかった!」

 

レッド

「急に何だって言うんですか!?

裏切るとか、急に謝ったりするなんて…俺にはさっぱり理解できませんよっ!」

 

カンナ

「白空に舞え…フリーザー!」

 

透き通るような羽…

長くた靡く尻尾…

双子島に伝わる伝説、フリーザー

 

レッド

「こっ、こいつがフリーザー!!

今まで見てきたどのポケモンよりも、優美だ!

…って、いやいやいや!どうしてカンナさんがフリーザー持ってるんですか!?

遂にゲットしたんですね!!早く報せてくれればいいのにぃ、カンナさんったらつれない…」

 

事情を全く知らないレッドは能天気に喋る

 

カンナ

「これは、私の実力で捕まえたフリーザーじゃない。ミュウツーが私に託したの…!

あなた達を倒すための手段として!!」

 

レッド

「そんな…!」

 

カンナ

「 私の夢は踏みにじられたも同然。

けれど、私が弱かったがために招いた事態。

悔しい…!悔しい…はずなのに、心の奥底で嬉しかった自分がいる!

初めてフリーザーの入ったボールを手にした瞬間、それを自覚してしまった。

だから、全力で戦うことが今の私にできるフリーザーへの、そして私自身の夢に対しての最大の償い!

レッド君、お願いできるかしら?」

 

レッド

「人の夢を簡単に潰すようなやつは許さねぇ!!

相手が伝説?なら俺はそいつを倒して新たな伝説築いてやるっ!

待ってろミュウツー、カンナさんを救ってお前を倒すっ!

サンダース、【ミサイル針】!!」

 

カンナ

「【鎌鼬】で迎撃よ!」

 

風の刃が針を吹き飛ばし、サンダースに届く

しかし、効果はいまひとつ…サンダースは余裕だった

 

レッド

「(伝説とはいえ、威力が飛び抜けてる訳じゃないのか?)

"雷脚一閃"でフリーザーの背後から攻撃だ!」

 

カンナ

「【白い霧】で姿を眩ましなさい!」

 

レッド

「またこの展開かよぉ…、この吹雪と【白い霧】の相性が良すぎてこっちの技があたらねぇ。

フリーザーの出方を待つしかねぇな。」

 

その時、サンダースの死角から【冷凍ビーム】が放たれる

 

カンナ

「音もなく静かに狩るのがフリーザーの持ち味。

通常の攻撃は並程度だけど、氷タイプの技に関してはカントー地方で肩を並べるポケモンはいない!!

サンダースを見てみなさいっ!」

 

レッド

「サンダースっ、脚が凍傷して立てないのか!?

くっそぉ…動けないなら、【スピードスター】だ!

これなら位置は把握できてなくても…」

 

カンナ

「【吹雪】!!!」

 

全てを無に帰すかのごとく、かき消す

サンダースは寒さに耐えきれず戦闘不能

 

レッド

「視界は最悪、耳も遠くなる…。

カンナさんはこの環境に馴れてる…。

こりゃあ条件的に俺が不利…ってそんな理由で負けましたじゃ済まねぇ!!

俺はリザードンを信じるまでだ!!」

 

カンナ

「お出ましね!」

 

レッド

「ここ一帯の氷を全て溶かしたって構わねぇ、お前の胃袋に溜まってる炎を消化する勢いでいくぞ!【火炎放射】っ!!」

 

リザードンの炎は伝説相手にどこまで燃えることができるのか!?

遂にレッド最後のポケモンが出陣する!



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双子島~哀しみの冷凍ビーム…~

レッドとリザードンが伝説に立ち向かう
双子島の決戦もいよいよ終盤…!!


カンナ

「豪快な炎ね…フリーザー、自然の力を最大に活かしなさい!!

このマイナスに至る冷温を体に馴らすのよっ!」

 

【火炎放射】を諸に受けたにも関わらず、何故か活気に溢れているフリーザー

 

レッド

「こいつの炎を直撃したのにこんなにもピンピンしてるのは、納得いかねぇよなぁ。

リザードン、"爪遺炎"でフリーザーの急所を狙っていけ!!」

 

カンナ

「接近戦で来たわね、それなら【空を飛ぶ】でリザードンの上を取るのよ…そこから【冷凍ビーム】で撃ち抜きなさいっ!!」

 

リザードンは大胆にも空振り、頭上からまるで大量の雪を被ったかような冷たさを痛感する

 

レッド

「すげぇよ…!これが伝説!!

俺達の経験値を嘲笑うかのような強さだぜ、なぁ?リザードン!!!」

 

やられたかに見えたが、タダでは墜ちない

それがレッドとリザードンだった

フリーザーの尻尾を掴み、手繰り寄せる

 

レッド

「一緒に墜ちてもらうぜ…【メガトンパンチ】っ!!」

 

フリーザー

「!!」

 

勢いよく落下し、地面に叩きつけられる2匹

だが、フリーザーはしぶとさも伝説級だった

 

カンナ

「【冷凍ビーム】よ!」

 

地面に落ちた反動で体が思うように動かせないリザードンは凍っていく

 

レッド

「氷が炎を喰っていくなんて、常識外れだ…。」

 

カンナ

「気が抜けない相手だったわ。

でもこれで…」

 

レッド

「…へへっ、俺のリザードンはピンチの時こそ真価を発揮する!

そして、修行の果てに俺はこの現象を[猛火]と名づけた!!

やれ、リザードンっ、【大文字】だぁっっ!!!」

 

紅い焔が氷を溶かし、そのままフリーザーを飲み込む

あまりの高熱に悶え苦しむ鳴き声を発する

 

レッド

「気の毒だけど"紅蓮螺旋拳"、これで俺の勝ちだっっ!!」

 

カンナ

「ゴメン…レッド君、そしてフリーザー!

【吹雪】よっっ!!!」

 

レッド

「…んっ、何だ?目に雪でも入ったか?」

 

瞼を擦ると、レッドの手は黒く汚れていた

よく見るといつの間にか白い銀世界はなく、黒い灰のようなものが舞っているではないか

そう、焼け焦げたフリーザーの羽が散らした雪は既に美しさなど微塵も感じなかった

 

リザードン

「…っ!?」

 

レッド

「フリーザーが黒く染まって…!」

 

灰はリザードンの全身に付着していき、あっというまに覆ってしまった

呼吸できないリザードンの炎は小さくなっていく

リザードンの尾の炎の大きさは生命力の象徴…

 

レッド

「おいっ、動いてくれよ…!

返事を…返事をしてくれよぉぉっ!!!」

 

その時、硬直していたリザードンが灰を払い燃やし、フリーザーを睨みつける

 

カンナ

「こんなになってまで、まだ立ち上がるっていうの!?」

 

レッド

「よく乗り越えたな!帰ったらポケモンフードのフルコースを振る舞ってやるよ!!血沸け…"紅蓮螺旋拳・改"!!」

 

…。

 

 

 

 

リザードンは動くことなく、そのまま倒れる

 

レッド

「そうか、よく…頑張ってくれたな。

後、1歩のとこまで近づけただけで俺は誇らしく思うぜ。」

 

カンナ

「レッド君…。っ痛!!」

 

カンナの脳内にミュウツーが語りかけてくる

 

ミュウツー

「見事ナ戦イダッタゾ。

トコロデ、ソノリザードンハ、マダ完全ニ再起不能ニハナッテイナイヨウダガ?」

 

カンナ

「…一体それがどうしたっていうの!?

勝負は終わったわ!!」

 

ミュウツー

「フ…戦ッタ本人ガ一番解ッテイルダロウ?

ソイツハ今後私ガ創ル世界ニ邪魔ダ。

ココデ生カシテオイタラ、何度モ何度モ歯向カッテクル障害トナル!

ナラバ、イッソノコト今消シテオクベキダロ?」

 

カンナ

「や…めて!体が勝手に…!!

フリーザー、【冷凍…」

 

ミュウツー

「サアッッ!!

息ノ根ヲ止メテヤレェェッッ!!」

 

カンナ

「…ぐっ、これ以上フリーザーを黒く染めないでぇぇっ!

…その技を何も知らないお前が汚すなぁぁぁっっ!!!!」

 

ミュウツー

「命令ニ抗ウトハ…!

コノ女ガ発スル強イ想イガ、私ノ念ヲ狂ワシテイルノカ!?

チッ…仕方ガナイカ。」

 

サイコジャックが解け、その場に倒れるカンナ

 

レッド

「カンナさん!」

 

カンナ

「レッド君、私ったらもう少しであなたのこれまでとこれから、そして自身の夢までさえも毀損してしまう所だったわ。

願わくば公式(フェア)な状態であなたと闘いたかった…!

そして、フリーザーも自分の手で…!!」

 

レッド

「この騒動が収まったらまた手合わせお願いします!

次は敵としてじゃなくて、挑戦者として!」

 

カンナ

「これ、あなたが必要としてた羽よ。任せっぱなしになっちゃうけど、私はもう力を使い果たしちゃったみたいだから…。

私の分もミュウツーに一撃入れてきてよね…!!」

 

レッド

「必ずっ!!」

 

こうして双子島の決戦は意外な形で幕を閉じた

 

カンナ

「(レッド君、あなたは将来、カントー地方の次世代を引っ張っていく存在になると私は願ってる。

だから…どうか勝って!!)」

 

そのまま気を失うカンナ

 

託された羽をぎゅっと握り締め、ハナダの洞窟へ急ぐレッド

さぁ、残すはミュウツーのみ!!




〈読者の皆様へのお詫び〉
この物語を読んでくださってる皆様へ…
短編(after story)が始まって、長期間に渡り四天王との戦いを書いてきました。
内容を考えた当初はすんなりと終える程度に練っていましたが、考えれば考えるほどあれもこれも作品にいれたい欲が湧き、結果として単調なバトルが続くものとなってしまいました…。
ただ、この対四天王編は前作を通してのレッド達の成長を基盤におきたかったのと、ゲーム『赤・緑』をプレーしたことがある方は御存知の通り、四天王は最後の難関とも言えるステージです。
薬を使わずにはいられなかった場面や、高いレベルに苦戦した人も多い筈…笑
それを作品内で描きたかったというエゴにあります!

ここから残り数話ですが、少しでも楽しんで読んでいただけるような要素も盛り込んでいくので、よかったら引き続き閲覧していって下さい!!


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ハナダの洞窟~ミュウツーの絵図~

三者三様、熾烈な激戦を乗り越える
その先に待つのは…


レッドは再会の約束をした地であるハナダの洞窟へ向け急ぐ

 

奥へ奥へまるで終わりのないような暗道を抜けると信じがたい光景が飛び込んできた

それは、 ワタルと炎児の一騎打ち…

2人だけの空間、自分が立ち入りでもしてら目の上の瘤(こぶ)であることは言うまでもないとレッドは悟った

 

ミュウツー

「マタ一人、生還者ガ来タヨウダナ。

今シガタソコデ、コノ余興ヲ傍観シテルガイイ…丁度面白クナッテキタ所ダ!」

 

レッド

「どうして親父とワタルさんが…!?」

 

炎児

「【爆裂パンチ】でそいつの洗脳ぶっ飛ばしてやれぇっ!」

 

もう炎児のリザードンは、半分我を忘れたかのように白眼を剥きながら拳を突き立てる

 

ワタル

「僕の自制心が弱かったが為に、こんな不測の事態になってしまった…!

炎児さん、すみませんっ!!

カイリュー、回避して【電磁波】!」

 

麻痺になったリザードンは磔刑を処されるのをただ待つだけの罪人のように手足が拘束され動けない

 

ワタル

「可能であれば避わしてくださいっ…、【破壊光線】!!」

 

炎児

「…ったく、バァー カ。無理だってぇの。」

 

ワタルのカイリューが放つ【破壊光線】がリザードンを炎児もろとも吹き飛ばす

仲介に入ろうとしたレッドだったが、その足を誰かの手がさせなかった

 

レッド

「親父ぃぃぃっっ!!!

…!?グリーンっ、お前どうしたんだよ!?」

 

その手の正体はグリーンだった

しかも、既にボロボロの姿だった

 

グリーン

「ワタルさんはミュウツーに操られている!

俺は今お前が考えていた事をしたが故にこの様だ。あの人達のレベルは、俺達がのこのこと参入していい程の次元じゃなかったんだよ…。」

 

ミュウツー

「実ニ見甲斐ノアル戦イダッタナ。

デハ、貴様ヲ解放スルトシヨウ。」

 

ワタル

「感情を表に出すのは不本意だけど、今回ばかりは悠長に言ってられない…!

僕の逆鱗に触れてしまった事を悔やめ…そして、人間を弄んだ事を懺悔するんだ、カイリュー、【破壊光線】と【竜の怒り】をMix!!

頂きに君臨する余が汝に裁きを下す時…"王の嗔恚(しんい)"!!!」

 

それはワタルに立ち込める怒りそのものが形となって現れたEB

長い蛇身を彷彿とさせるその光線が、ミュウツーに向かって翔んでいく

 

ミュウツー

「フハハハハ!!タカガ人間ノ分際デ、情ヲコレホドマデ高イ威力ノアル技ニ具現化デキルトハ面白イッ!

…ダガ、非常ニ残念ダ。

ソノ死ニ体デ放ツモノナド所詮、紛イ物ニ過ギナイ。」

 

片腕を軽く振り、【リフレクター】でそっくりそのまま反射されてしまう

 

レッド

「ワタルさぁぁぁんっ!!!!」

 

龍の開く大きな口腔に飲み込まれるワタルとカイリュー

制止したくてもできなかった己の弱さに嘆くレッド

 

ワタル

「うっ…。」

 

レッド

「ワタルさんっ、よかった…まだ息がある。」

 

ミュウツー

「アノ技ヲマトモニ受ケテ無事トハナ…。

相手ニ負ケルト承知ノ上デソコマデ這イ上ガレル貴様ノ勇気ヲ称賛シヨウ!」

 

ワタル

「どうしても君に聞いておかなければならない事がある。」

 

ミュウツー

「私ヲ楽シマセテクレタ礼ダ、遠慮セズ何デモ聞クガイイ!」

 

ワタル

「どうしてこんな真似をするんだ?一体僕らが何をしたっていうんだ!?」

 

ミュウツー

「…愚問ダナ。貴様ラ人間ハ私達ポケモンニ対シテ何ヲシタノカモ分ナッテイナイノカ。」

 

ワタル&レッド

「?」

 

ミュウツー

「復讐ダヨ。私ガ研究ノ試料トシテ遺伝子改造ニヨリ生マレタノハ知ッテイルカ?

私ダケデハナイ…多クノポケモンガ人間ノ興味本意デ、ベルモットトシテ扱ワレテキタノヲ培養カプセルノ中カラ目ノ当タリニシテキタ。

毎日ポケモンノ悲痛ナ鳴キ声ヲ耳ニスルノハ、聴クニ耐エナカッタ!ソレニ反シ、高笑イスル人間…私ハ赦セナイ、イツカコイツラニモ同ジ思イヲサセテヤルトイウ鬱憤ヲ覚エタ…ッ!!」

 

何も言い返す事ができないレッドとワタル

 

ミュウツー

「有リ難クモコレ程ノ力ヲ与エテクレテナァ。

一撃発シタダケデ物怖ジスルヨウナ連中ダゾ?ソシテ私ハ気ヅイタ…、コレハ野望ヲ叶エル事ナド容易ダトナァッッ!!!」

 

ワタル

「謝っても謝りきれないことをしてしまったようだ。」

 

レッド

「けど、あれはロケット団が独断で進めてた研究だろ!?

関係ない人達を巻き込む必要はないはずだ!!」

 

ワタル

「レッド君、それは間違った考えだよ。

この世は人とポケモンの2種類しかいない…、認めたくない部分もあるが、ロケット団も新しい見方から開拓しようとしたパイオニアだと言ってしまえば、彼の言い分を僕達が否定することはできないんじゃないかな。」

 

ミュウツー

「…トイウコトダ。

貴様ラモ、コノ事態ニ偶然足ヲ踏ミ入レテシマッテ気ノ毒ダッタナァ。

サテ、コレカラドウスル?切リ札ダッタトレーナーモ既ニ万策尽キタヨウダガ?」

 

チラッとレッドの方を見るミュウツー

その視線に腰を抜かし、冷や汗が吹き出るレッド

 

レッド

「(めちゃくちゃ逃げ出してぇ…、こんな怨念の塊相手に俺が…敵うはずねぇじゃねぇかよ!

でも…)」

 

倒れている炎児、ワタルを確認し、改めて強く拳を握る

 

レッド

「親父達を見捨てて逃げるなら、いっそ一緒にやられた方がって気楽にお前と戦えるってもんだ!!

…その前に、カンナさんを解放してもらおうか?」

 

羽を出し、ミュウツーに見せる

 

ミュウツー

「御苦労、御苦労!!

コレデ、無事ニ2名ハ晴レテ自由ノ身ダ!

フハハハハハ!!!」

 

レッド

「(イエローがこの場にいないってことは…ぐっ!!)」

 

グリーン

「…レッド、俺はもう戦えるポケモンが残っていねぇ。お前もその服見る限り、ひどく痛手を負ってるな…。

あいつと闘るなら1匹分じゃ足りないかもしれないけど、せめてもの餞別として回復の薬を貰ってくれ!」

 

レッド

「出てこいっ、リザードン!!」

 

渡された薬をリザードンに投与する

 

レッド

「サンキューな、グリーン!

もうこれ以上大切なものは失わせない!!

俺が…終止符を打ってやる!!」

 

ミュウツーの復讐…それは全て人間側に原因があったと知らされる

この忌々しい連鎖をレッドは断ち切ることができるのか!?



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ハナダの洞窟~“R“esurrection!!~

地上最強のポケモンを打ち破るために決起するレッド



ミュウツー

「好キナタイミングデ攻撃シテクルガイイ!

マ…、デキレバノ話ダガナ?」

 

レッド

「(そうだ、ただ技を発すればいいだけなのに…)」

 

カイリューのEBが悉く跳ね返されてしまった光景がフラッシュバックし、息詰まって口が動いてくれない

 

ミュウツー

「折角体ガ暖マッテキテイタトイウノニ…来ナイノナラ、コチラカライコウカ!!」

 

ミュウツーは人指し指をクイッと突き立てる

冷気を帯びた玉のようなものが指先に構成され、それをレッドに向け投げつける

 

レッド

「…!!!」

 

当たってしまうギリギリの所でリザードンが尻尾で凪ぎ払い、軌道を逸らす

しかし、掠めた尾の一部が凍傷している

威力はフリーザーの時と大差がなかった

 

リザードン

「ガオァッ!」

 

野太い叫び声がレッドに正気を戻させた

 

レッド

「す、すまなかった、リザードン。あいつの殺気に心が折れかかってたよ。次からはちゃんと指示する!

(それにしても、あの玉…まるで広範囲に及ぶような【吹雪】を小さく圧縮させた事で、さらに威力を高めてるような気がするな。)」

 

ミュウツー

「本能的ニ危険性ヲ感ジ取ッタノハ誉メテヤロウ。アノ技ノ原理ハ、【吹雪】ニアル。感ノ良サソウナ貴様ナラ、半バ気ヅイテタンジャナイカ?

デハ、コイツノ答エモワカルダロウ!?」

 

続いて中指を突き立て、電気を帯びた玉を生み出す

 

レッド

「(次は電気タイプか…っ!!)

リザードン、【空を飛ぶ】で避けるんだ!」

 

ミュウツー

「単発デ終ワルト…?マダマダァッッ!!」

 

再構築するのに然程の時間を要さないミュウツーの技に苦戦を強いられるも、辛うじて回避している

 

レッド

「今だっ、降下してミュウツーに突っ込め!!"激昂する翼竜"!!」

 

両手で【リフレクター】を張り、受け止めるも、炎を燃料として突撃した為、ミュウツーにかなりの負荷がかかる

そして、遂に…!

 

ミュウツー

「グッ…。」

 

レッド

「盾が剥がれた!!

リザードン、千載一遇のチャンスだ!

今後こんな事が起きないためにも、ありったけの【大文字】で跡形も無く消し去ってくれっ!!」

 

ミュウツー

「タカガ人間ゴトキガワタシヲ葬ロウナド、浅ハカスギルワ!!!

…居ナクナルノハ貴様等ノ方ダ!」

 

三本目の指を上げると、炎の玉が不気味に浮かぶ

それを投げつけると同時に互いの炎がぶつかり、爆発が起きる

 

レッド

「…な、なんつーパワーだよ。

リザードンの【大文字】が引き分けるなんて。」

 

ミュウツー

「勝ッタト思ッタカ?

ダガ、ワタシニ傷ヲ負ワセタダケデモ大シタ功績ダ!

フ…、安ラカニ眠レッ!!」

 

三本の指をくっつけ合わせ紫がかった特大の玉を生成する

 

ミュウツー

「【トライアタック】ノ究極形…、サラバ人類ヨ、ソシテ、ヨウコソワタシノ理想郷!

ワタシコソコノ世ヲ統ベルニ相応シイ存在ナノダッッ!!!

…"天上天下唯我独尊"!!」

 

レッド

「(さすがにあれは防ぎきれねぇわな…。

ここまで長かったなぁ、って言っても俺まだ16だ。人生の'じ'の字も知らない子供がしゃしゃりすぎちまったなぁ。

にしても、長く感じたのは事実だ…。

たくさんのポケモンと出会い、たくさんのトレーナーと競いあったり歪みあったりして、感情を分かち合った。)

いやぁ~、最高の旅だったぜ!!!」

 

覚悟を決めたレッドは目を閉じる

 

???

「【破壊光線】っ!!」

 

レッドの横を強烈な【破壊光線】が通過し、目の前の"天上天下唯我独尊"を相殺させる

 

???

「そんな所で寝てるとは、呑気なものだな?

仮にも私を倒した君が、そんな不様な格好をしてるのを見ると腸痛いぞ。」

 

レッド

「…走馬灯を見てるのか?

いや、俺の目が正しければ、あんたは…サカキっ!?それに、ガルーラまで!!

どうしてここに?それよりもあんたが原因で…」

 

サカキ

「相変わらず五月蝿いな。

それを全部答えている程の余裕はないんじゃないか?

まずは、あの興奮しきったミュウツーを鎮めるのが先だろ?

私の知ってるレッド君は、これしきで倒れる男じゃないはずだが…手を貸してもらうぞ!?」

 

崖っぷちのレッドの前に現れたのは思いもよらない人物だった

果たして、サカキの登場が吉となるか凶となるか!?



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ハナダの洞窟~最恐のタッグ!?~

サカキ

「私に手を貸してくれるのか?それとも、ここで野垂れ死ぬか…。

選択は1つしかないと思うが?」

 

レッド

「あなたに助けられたのは癪としませんが、まずはミュウツーを倒すのが先決ですからね!

…やってやりますよっ!!」

 

ミュウツー

「コイツハ面白イ!

マサカワタシノ因縁トモ呼ベル元凶ガ自ラ出向イテクレルトハナァッ!!

手間ガ省ケタナ…、何人束デカカッテコヨウガ所詮烏合ノ集。

ギャーギャー喚キ騒イデイルノガオ似合イダ!」

 

サカキ

「その減らず口を黙らす必要があるな…、ガルーラ!!」

 

ミュウツーの地面下に【穴を掘る】で潜んでいたガルーラが飛び出し、顎に不意の一撃を喰らわす

 

ミュウツー

「!?」

 

サカキ

「勝ったつもりでいるなよ?

地獄から這い上がってきた私とガルーラに強がりなど一切通用しないのだよ。」

 

レッド

「(あのミュウツーにダメージを与えた!?それに…)サカキ、ガルーラはもう戦えない体だったんじゃないのか!?」

 

サカキ

「七転び八起き…、女医に何と言われようと私はガルーラが戦線復帰できることを信じて、つらいリハビリにも常に付き添い、励ましてきた。

そして、ガルーラは元の肉体を手に入れ、それどころか倍の力を出せる段階にまで到達してみせた!」

 

レッド

「(転んでもただじゃ起き上がらない、悔しいけど流石、元ロケット団ボス!)」

 

サカキ

「せいぜい足を引っ張ってくれるなよ?

ガルーラ、【ピヨピヨパンチ】!!」

 

ミュウツー

「炎玉…"迦具土命(カグツチ)"ッ!!」

 

ガルーラの拳には生々しく火傷の跡がつく

 

サカキ

「ふむ…技の圧搾か。ポケモンにしては凝った演出だな。

ガルーラ、突っ込めっ!」

 

ミュウツーは両手に技を溜める

 

ミュウツー

「雷玉、"建御雷(タケミカヅチ)"!!

横ニ逃ゲ場ナドナイ!一発避ケレド、確実ニ二発目ヲ当テテヤロウ。」

 

サカキ

「ご丁寧に通告してくれて感謝しよう。

横に逃げ場がないなら…【穴を掘る】!」

 

ミュウツー

「ッ!?」

 

サカキ

「これで問題ないが?

それよりも貴様、私ばかり相手にしていていいのかな?

大きな横槍が突き刺さるぞ?」

 

レッド

「リザードン、"紅蓮螺旋拳"っ!!」

 

背後から迫っていたリザードンの攻撃を瞬時に避わし、直ぐ様反撃に転じる

 

ミュウツー

「貴様ナドコレデ充分ダ!

氷玉、"氷霧露(ヒムロ)"!!」

 

拮抗する両者

だが、リザードンの[猛火]が発動し、氷玉を溶かしていく

 

ミュウツー

「私ガ押サレテイル…?

(サカキノ乱入デ、気ノセイカレッド達ノパワーガ上昇シテイル!?)

…!!」

 

リザードンを注視しすぎていた為か、すっかりガルーラの動向を忘れていたミュウツー

らしからぬ油断から足元を掴まれてしまう

 

ミュウツー

「シマッ…」

 

サカキ

「レッド君、しくじるなよ!?

息を合わせて叩き込むぞ!!」

 

レッド

「あなたが協調するなんて、明日は雨が降るかもしれないなぁ!

喰らえっ…」

 

レッド&サカキ

「【メガトンパンチ】!!」

 

2匹の剛拳が唸り、ミュウツーを吹き飛ばす

岩壁に激しく打ち付けられ、ぐったりと俯いたまま動かない

 

レッド

「や、やったか!?」

 

サカキ

「(手応えはあった…が、何だこのやりきれないモヤモヤは。

厭な胸騒ぎがするな。)」

 

ミュウツー

「フフフ…フハハハハハッッ!

タマゲタナァ、“痛ミ“トイウモノヲ感ジタノハ実ニ何年ブリダロウカ!

最後ニ味ワッタノハ、アノ実験以来カナ…?」

 

ギロッとサカキを睨みつける

体をふわっと起き上がらせ、傷ついた箇所が治癒されていく

 

サカキ

「【自己再生】か…。

厄介な技をいくつも覚えたようだな、さすが人工知能を取り入れただけはある。」

 

ミュウツー

「皮肉ニモ貴様ハ、自分デ自分ノ傷ヲ舐メル結果ニナッタナ。

私トイウ脅威ヲ生ンデシマッタ事ヲアノ世デ嘆クガイイ!!」

 

ガルーラは強い念で縛りつけられてしまう

手先には"天上天下唯我独尊"が…

 

ミュウツー

「先ズ面倒ナ貴様カラ消ストシヨウ。

デハ…サラバダ。」

 

レッド

「サカキっ!!ガルーラをボールに戻すんだ!!

そうすれば一時的には凌ぐことができるはずだ!!」

 

サカキ

「心配はいらんさ…、奴は既に私の術中にはまっている。

好きなように転がしてやってるだけだ。

それよりも、私達の決定打を当てるのに僅かな隙が必要なんだが…その陽動を買ってでてくれんか?」

 

レッド

「(あのサカキがこれ程までの自信を…。)

しょうがねぇなぁ、メインはあんたにあげるとするか!

しっかりと決めてくれよっ!!」

 

ミュウツーの技を受けたガルーラの姿は跡形も無くなっていた

しかし、それを見たレッドはサカキの考える作戦の全てを頭の中に描くことができた

 

ミュウツー

「残スハ貴様ダケダ…"建御雷"!!」

 

レッド

「"爪遺炎"で切り裂けぇっ!!」

 

何とか技を凌いだものの、強い衝撃と痺れがリザードンを襲う

 

リザードン

「…っ!!」

 

ミュウツー

「ハァ…ハァ…、何度モ煩ワセテクレタナァ。

大人シクヤラレテイレバイイモノヲ。ソンナニモ死ニ急ギタイナラバ、希望ニ沿エテヤロウ…!」

 

三度、"天上天下唯我独尊"を生成する

それは、対象物を本気で消しにかかる殺意が混じっていた

 

しかし、不意に振り上げたミュウツーの腕がガクッと下がる

何かが重りになっている、それだけではない…同時に痛みも感じた

その腕の先を見ると…

 

ミュウツー

「何ッ!?ドウシテ貴様ガ生キテイルノダ!?」

 

そこには【噛みつく】でぶら下がるガルーラの姿があった

 

サカキ

「肉食動物ってのは狂暴だよなぁ…、目の前の捕食者をアッという間に追いかけて食してしまう。

けどな、案外隙だらけなんだよ。そいつらは前にしか目が付いてないからだ。」

 

ミュウツー

「…?」

 

サカキ

「逆に草食動物ってのは、弱いって識別されがちだが、目が横に付いている分、広範囲の状況を把握できる。

私は彼等の方が賢いと思うんだ…。」

 

ミュウツー

「ダッタラドウシタト言ウンダァァッ!!!

殺ラレテシマエバ元モ子モナイダロウ!!」

 

そう言うと、噛みついているガルーラに【破壊光線】を放ち吹き飛ばす

 

サカキ

「レッド君っ!」

 

レッド

「あぁ!!リザードン、【砂かけ】!」

 

ミュウツー

「クッ…何ヲスル、放セェェッッ!!」

 

視界を奪ったその僅かな時間でミュウツーの背後に回ったリザードン

完全な羽交い締めに手足も動かせず、技を発動できる体勢ではなかった

そこへ、奥からゆっくりガルーラと歩いてくるサカキ

 

サカキ

「…賢さ、知恵、私はこれらがこの世界で勝ち残る最大の武器だと思っている。

今の貴様はただ血に飢えた獣…こんなにも罠にかかりやすい獲物もまた珍しい。」

 

レッド

「(初めにガルーラがやられた時も焦っていなかったのは、【身代わり】発動してたからか…。

それにしても2回も発動できるなんて、スタミナお化けだなぁ…。)」

 

ミュウツー

「ソノガルーラハ何故死ナナイ?

ドウイウトリックヲ使ッタノダ!?」

 

サカキ

「こいつは既に死んでるからだ。」

 

ミュウツー

「何…ダト!?」

 

サカキ

「ふははははっ!!冗談に決まっているだろう!

…が、それぐらい必死になって習得した技、それが【身代わり】。

とは言うものの、貴様が知らないのも当然!【身代わり】は貴様を造り上げた後に私が直々に開発した技だからなぁぁ!!」

 

レッド

「そう…だったのか!?」

 

サカキ

「貴様は全て理解しているかのようで、何も理解していない。

どうして生まれたのか…、何の目的で誰の画策で、どういった経緯で現在に至るのかを…な。」

 

ミュウツー

「ソレヲ知ッタ所デ何カ変ワルトデモ?私ノ人間ニ対スル復讐心ハ消エルコトハナイゾ?」

 

サカキ

「ならば力ずくでも聞いてもらうとするか。

ガルーラ、【連続パンチ】と【怒り】をMixだ!

怖れとは何か…黄泉より輪廻転生せし者の絶望を体験するがいい、"D(ead)o(r)D(ie)ー死あるのみー"!!」

 

レッド

「ガルーラのEB!!」

 

リザードンに掴まれどうすることもできないミュウツーは血潮を噴くぐらいの重撃ラッシュを浴びる

 

サカキ

「…レッド君、残酷か?確かにそうかもしれんが、こいつを黙らせるにはこれぐらいの覚悟がなければならない。

ここに集まったトレーナーは皆、一癖も二癖もある奴ばかりだが、私みたいな心を汚してもいい…そういった覚悟がない優しきトレーナーなのだよ。」

 

レッド

「そうか…俺達は戦う前からその"土俵"にすら立ててなかったのか。」

 

サカキ

「さて、教えてやろう…、貴様の誕生その裏側をな。」

 

味方につけると頼もしき真の悪役!

そしてミュウツー誕生の裏とは!?



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ハナダの洞窟~天より愛を込めて~

今明かされるミュウツーの過去!


ミュウツー

「…。」

 

サカキ

「ようやく、素直になってくれたか。

事の発端は十数年前、私がロケット団をまとめ上げ、組織として活動的になっていた頃だ。

当時の私はボスであると同時に化学部の班長も兼ねていた。ポケモンの生態系についての研究が主で、まだ見ぬ存在…可能性を解き明かそうと必死だった。

そこで働いていた同僚のフジという男から、1つの情報を聞き得た…。

それが、貴様の親である"ミュウ"だ!」

 

レッド

「ミュウ…幻のポケモン。」

 

サカキ

「そう、星の数ほどいるポケモンの中で極めて発見例が少ないとされる幻のポケモンだ。

私達は各地に渡り、躍起になって情報をかき集め、数年をかけてやっとの思いで生息地を割り出すことができた。

最も報告例が多かったギアナ…その奥地で我々ロケット団は念願のミュウ捕獲に成功することができた!!」

 

レッド

「そうまでして手にしたかったミュウに、一体何が隠されてたんだ…。

全てのポケモンの祖だって言われてたのは聞いた覚えがあるけど…」

 

サカキ

「そこが肝心なのだよ!

全ての始まり…つまりそいつを軸として派生していく幾多の進化、成長、発達!!

ミュウを調べることで、何が生まれるのか、その期待に胸が膨らむ一方だった!

…しかし、貴重な母体を無闇やたらにいじる訳にはいかない、それは私だけでなく他の者も同じ考えだった。」

 

ミュウツー

「ダガ、貴様ラハ実行シタ!!

所詮、人間ニ慈悲ナドナイノダヨッ!」

 

サカキ

「それはお前の勝手な思い込みだ。」

 

ミュウツー&レッド

「!?」

 

サカキ

「ある日、研究に行き詰まった我々にミュウはテレパシーを用いて頭の中に語りかけてきた…。」

 

~回想~

 

研究員(A)

「うわぁっ、頭の中から声が聴こえてくるぞっ!?」

 

研究員(B)

「お、俺もだ!何がどうなっているんだ!?」

 

フジ

「これはっ…!サカキ!!」

 

サカキ

「あぁ、間違いない…ミュウの仕業だ。

恐らく、テレパシーによるものだろう。

…で?何の用で話しかけてきた。」

 

ミュウ

「貴方達ノ日頃ノ研究、常ニ見テイマシタ。

私ヲ調ベタイノデショウ?ドウゾオ構イ無ク、遠慮セズトモ結構デスヨ?」

 

サカキ

「随分とまぁあっさりしているなぁ、話が上手く出来すぎている。」

 

ミュウ

「…。」

 

フジ

「ほれ、黙っていては何も伝わらないぞ?

折角こうしてテレパシーを通じて我々と交信できるのだから、遠慮しなくてもいいのはお互い様だ。」

 

ミュウ

「…子供。」

 

小さくか細い声で呟く

 

研究員(C)

「恥ずかしがってないで、俺みたいに大きな声で喋ってみなよ!」

 

サカキ

「貴様は少し喧しい…。」

 

ゲラゲラと笑う一同

その温かい空間に心の蟠りが解けたのか、ミュウは勇気を振り絞って口に出す

 

ミュウ

「…子供ガ欲シイ!

私ダケノ、オリジナルノ子供ガ!!」

 

研究員(A)

「ははっ!ポケモンの交配だって!?そんな喉から手が出るくらいの化学の結晶をましてや幻のポケモンで行うだなんて、夢のまた夢!

…ですよねぇ、サカキさん!?」

 

フジ

「サカキ…何か打つ手はないだろうか?」

 

サカキ

「できなくはない。」

 

一同

「なっ!?」

 

サカキ

「過去例がないならやってみるしかないだろう。それには人為的な遺伝子操作が外せない。

ただ…、現在の化学技術では間違いなく支障が出る。下手をすれば失敗だって考えられる、まさにハイリスクハイリターンとなるが、それでも自ら実験台になる覚悟はあるか?」

 

ミュウ

「私ダケノ子供ヲ産ムコト、ソレガ私ノ願イダカラ!」

 

サカキ

「ふっ…いい度胸だ!

よし、早速このミュウの血液から遺伝子情報及び、適合する受精卵を生成するのだ!!」

 

ーーーーー

 

サカキ

「こうして毎晩遅くまで机に向かう日々が続いた。

試行錯誤、挫折、この時の我々は表の活動を控え、ミュウの研究だけに専念していたな…。

そして2年の月日を費やし、どうにか人工卵を作る事に成功した!」

 

~回想~

 

研究員(C)

「…はぁ、やった。遂にやったぞぉーっ!!

後はこの受精卵をミュウの胎内に入れれば、完成だ!」

 

フジ

「しかし、1つだけ不安な点がある…。

ミュウの体に適合させる為に、遺伝子改造という人の手を加えすぎたこの受精卵がミュウに副作用を起こさなければよいがな。」

 

サカキ

「…本当にいいんだな?止めるなら今の内だが?」

 

ミュウ

「待望ノ子供デスモノ…、多少ノ痛ミナラ耐エテミセル。

ソレガ母親ノ強サデスカラ!!産マレテクル子ニ弱イ姿ハミセラレナイ!」

 

サカキ

「ポケモンながら、尊敬に値する。

では…始めるぞ!」

 

・・・

 

研究員(B)

「産まれました、無事に産まれましたよ!!」

 

サカキ

「すぐに培養カプセルに入れるんだ!

栄養剤、体温調節を怠るなよ…!」

 

フジ

「これがミュウオリジナルの子供…ミュウJr.…、"ミュウツー"だ!!」

 

ミュウ

「ナンテ逞シイ子…。

皆ヲ守ル強イ子ニ育ッテ…ウッ!」

 

研究員(C)

「サカキさん!ミュウの容態が急激に悪化、恐らくは副作用によるものだと思われます!」

 

サカキ

「全て問題なく終わらせてはくれなかったか…!」

 

研究員(C)

「心拍数低下!どんどん落ちていきます…このままだとっっ!」

 

サカキ

「我々だけ喜びをあげて、こいつだけ不幸にだなんて真似…絶対に許さんぞ!

何としてもこのミュウを救うのだ!」

 

研究員(C)

「しかしっ…、打つ手ありません!!」

 

フジ

「どいておれ!!出てこい、マルマイン!【電気ショック】で心臓マッサージするんだ!!」

 

激しくミュウに電気マッサージを与えるが、電気音と小さくなっていく心拍数だけが非情にも虚しく響く

 

ミュウ

「子供(ミュウツー)ヲ…頼ミマス…ネ。」

 

サカキ

「死ぬなぁぁぁっ!!!!

くそぉっ!レアコイルっ、エレブーっ、【電気ショック】だぁっっ!!」

 

ーーーーーーー

 

ミュウツー

「ソウカ、私ノ親ハコイツラ人間ノ欲ニ騙サレタンダナ。

フン、情ケナイナァッ!幻ノポケモンガ聞イテ呆レルワッ!!」

 

サカキ

「…本当に弱いな、貴様は。

親と違って聞き分けが悪く、幼少の頃から自我に溺れ、挙げ句の果てには暴走。

親から受け継いだ能力を振りかざす始末。

貴様の親はなぁ、自らの命を賭してまで貴様という新たな命…ポケモン界での新種を産んだ偉大なポケモンだったのだよ!!

…世間から貴様は、悪魔と罵られているが、実際は人とポケモンが手を結び、協力して誕生させた希望そのもの!架け橋だったのだよ!」

 

ミュウツー

「!!」

 

サカキ

「闇の塊?…違う、貴様は親からたっぷり注がれた愛の塊だった!!」

 

ミュウツーの肩に入っていた力がどっと抜け、どす黒く纏った殺気が浄化されていくかのように洞窟内の空気が澄んでいった



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ハナダの洞窟~人とポケモン~

誤解払拭!
…果たしてミュウツーは!?


ミュウツー

「私ノタダノ思イ違イダッタノカ…?」

 

サカキ

「今考えても誰が正しかったのか、誰が誤っていたのかその真相を断定することはできん。

各々が決断し、各々で導き出した結果だと、私は思う。」

 

ミュウツー

「…ソウミタイダナ。」

 

傷ついた体をゆっくり起こし、サカキとレッドの間を何も言わず歩き通り過ぎていく

 

レッド

「何処に行くんだ?」

 

ミュウツー

「サァナ…ダガ、私ガ戦ウ理由ハ消失シタミタイダカラナ。

正シクハ、元ヨリ無カッタミタイダガ。

…人間トポケモン、両者ガ紡ギ出スソノ先ニ何ガ生マレルノカ、貴様等ニトッテハ明白ナ疑問カモシレナイガ、私カラスレバ難題ダ…。

ソノ答エヲ見ツケニ!!」

 

そう言うとテレポートでレッド達の前から消えてしまった

 

レッド

「ふぅ~。」

 

長時間に及ぶ過酷な戦いで疲労困憊のレッドは岩に腰かけ、大きな溜め息をついた

 

レッド

「サカキ…、あんたもしかしてこうなる事を読んでたのか?

事件の内幕を知ってたならどうしてすぐ来なかった!?

…あんたが来てくれてたら、もっと被害は最小限に抑えれたかもしれなかった。」

 

サカキ

「君は本当に面白い。過去に歪みあった敵を素直に受け入れるとはな。

だが、全員が同じ意見ではないだろう、私を拒絶する者だっているはずだ。

正直、フジが今回の事件に身を乗り出した時点で粗方、騒動の見当はついていた。

そして、全てを話すだろうとばかり思っていたが、奴はあの研究に相当責任を感じてたのか、一人で解決しようと突っ走ってしまい空回り…。」

 

レッド

「確かにフジさんが俺達に話してくれた内容とあんたのとでは所々異なる点がある…。」

 

サカキ

「極秘の研究、その成果を口が滑ってベラベラと喋るような事はしない。フジも研究者としての自覚は忘れてなかったみたいだな。」

 

レッド

「…で?あの話を持ち出す事でミュウツーが改心するだろうって事も想定の範囲内だったのか?」

 

サカキ

「それはあいつ次第だろうなぁ。」

 

レッド

「…っ!!じゃあ仮にミュウツーが心変わりせずにあのまま暴走していたら!」

 

サカキ

「私達人間の負け。GAMEOVERだったろう…。時としてああいう命運を賭けた心理戦も、人生にはあるということを常に念頭に置いておくことだな。

そうすれば、君もさらに殻を破ることができるはずだ。」

 

サカキはその場を去ろうとする

 

レッド

「待て…!最後に教えてくれ!

そんな危ない橋をどうしてあんたが渡る必要あったんだ!?」

 

サカキ

「ふっ、私に全て起因があったから…とでも言って欲しかったか?

そうだなぁ、強いて言うならば奴が私と似ていたから…か。」

 

レッド

「似ていた?」

 

サカキ

「親を亡くし、その怒りの矛先をどこに向ければいいのか分からず独り叫び続けなればならなかったあの頃…。

そして、ミュウツーの乱心を抑制できず、自分の試みが後味悪い結果となり、"次こそは…"という欲求だけが先行してしまった。

そんな私の我が儘の対象がミュウツーに劣らないような…そう、強いポケモンや珍しいポケモンに向いた。

後は君もよく知るロケット団の姿だ。

私はやりきれない想いを抱きながら、これまで過ごしてきた。

奴の生き様が私と酷似してるかのようで、放っておけなかったのかもしれないな、…これ以上誤った道を進まない為にも。」

 

レッド

「あんたも隅に置けない人だ。

そんな人情深いのに消えないマイナスのイメージを背負って生きていく度胸…尊敬するぜ!」

 

サカキ

「それが1つの世代を築くってことだ。偉業を成し遂げるには何かを犠牲にすることも覚悟しなければならない。

私はその最大の岐路を歩み間違えてしまったのかもしれない…。

だが、それでも信念を貫き通した事に悔いは無かった!!

…さ、私談はこれまで。私は宛のない旅の途中だからな、行くとするか。

いい休憩所に停まれた気がしたよ…じゃあな。」

 

跡を去るサカキ

不意に立ち止まり独り言を呟く

 

サカキ

「それに、こんな私にも護るべき者がいる…、父親としてな。」

 

~チャンピオンロードの頂~

 

ポケモンバトルを楽しむ少年達

勝者はポケモンと喜び合い、敗者はポケモンと悔しがる

純粋な気持ちをその目に焼きつけたミュウツーは天を仰ぐ

 

ミュウツー

「暗イ場所デ踞ッテイタ私ニトッテ、外ノ世界ハ眩シスギルグライダナ。

モット楽シマセテクレヨ?…フ。」

 

似た者同士放ってはおけないという志がサカキを突き動かせた

それは、人とポケモン…種の垣根を越えて芽生えたものだった

 

次回、最終話!!



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マサラタウン~Emergency,to the west!!~

全て終わった…

目を覚ました俺達は、マサラタウンに帰還したんだ

 

重傷だった四天王のキクコさん、シバさん、それにイエローは警察の捜索によって無事発見され、病院へと運ばれた…

ただ1人、カンナさんだけは摩可不思議な事に病院の入り口で横たわっていたのを看護士が見つけ、そのまま搬送されたそうだ

 

~病院内~

 

カンナ

「…うっ!」

 

シバ

「ようやく意識が戻ったか。看護士によると、お前は3日間ずっと寝たきりだったみたいだぞ?」

 

カンナ

「どういう経緯で私がここで入院してるの…?」

 

起き上がろうとするカンナだが、痛みが激しく体が言うことをきかない

 

イエロー

「無理しないでください。僕達も何がなんだか…分からないんです。

目が覚めたらこの有り様、思い出そうとしても頭が痛くなるだけで手掛かりすら無いんです。」

 

キクコ

「あ~やだやだ。歳をとって第2の人生これからという時に、腰を壊すなんてとんだ災難だよ、全く!!」

 

その時、カンナは着ていた服に1枚の羽が付着しているのに気づく

その羽は薄水色がかっていて、とても澄んでいた

 

カンナ

「この羽…。」

 

イエロー

「どうかしましたか、カンナさん?」

 

カンナ

「ふふ、分からないけどもしかしたら私達、驚天動地の渦中にいたのかもしれないわね!

この羽が、そう語りかけてる気がするの!!」

 

シバ

「何じゃそりゃ!」

 

~~~

 

一部を除き、この事件に巻き込まれた人達は皆、記憶が抹消されていたんだ…

失踪事件と題されたニュースもこのことから、収束して民衆も一安心した

 

俺はサカキが語った真実をあの現場にいた関係者に話した

 

フジ

「サカキも私も一人の研究者として、プライドを守りたかった…が、結果君達まで巻き添えにしてしまい本当に申し訳なかった!」

 

ワタル

「もう済んだ事ですし、誰も憎んでなんかいませんよ?

寧ろ、貴重な経験をしたと感謝したいぐらいです!」

 

炎児

「そうそうっ!カントー地方の伝説…そいつを目の当たりにすることができたんだ!」

 

グリーン

「…にしても、サカキには毎度毎度出し抜かれるぜ。

苦労だとか、悵恨だとか、そういったのを顔に出さないポーカーフェイスな部分が冷淡だけどさぁ、内に秘めた心だけは熱いもんな。」

 

オーキド

「全員が全員ではないが、苦い過去を持つ者程、軸がぶれない精神に育ちやすい!

楽をして手に入れる財産ほど価値のないものはないからのぅ。

君達はまだまだ若いっ、たくさんの経験を積むよう精進することじゃな!!」

 

レッド

「…。」

 

炎児

「ん?どうしたレッド、浮かない表情して?

まさかお前ぇ…、さては腹空いたんだろうっ!!!家に帰って母ちゃんのスクランブルエッグ食べようぜ!?」

 

レッド

「まぁ、腹空いてんのは確かなんだけどさぁ、そうじゃなくて…俺、カントーを出ようと思うんだ。」

 

一同

「!?」

 

レッド

「カントー地方っていう小さな枠に留まらず、色んな景色やポケモンを見てみたい!」

 

オーキド

「とは言うものの、行く宛はあるのか?」

 

レッド

「あぁ!ここから何十キロもの海を渡り、西に位置するジョウト地方に行こうと思う!!

親父やワタルさんが挑戦した地を俺も踏破してみたいっ!!」

 

オーキド

「しかし、親の目が届かないそれこそ異境の地で独りでやっていけるのか?」

 

ワタル

「オーキドさん、もう火が点いたレッド君を止めることなんてできないですよ?笑」

 

炎児

「はぁ…遂に怖れていた反抗期に突入してしまったか。

一緒にタマムシデパートに行ったり、サイクリングロードを走ったりするという俺の望みが今消えようとしている~っ!」

 

ワタル

「それは勝手に出てった炎児さんがいけないんですからね!笑」

 

炎児

「ははっ、…ってのはまぁ半分冗談だ!!

可愛い子には旅をさせよってな、お前が決めたことを俺が否定する権利はねぇ!

何より、お前は可愛い部類じゃねぇしな!!」

 

レッド

「俺、今回の騒動である教訓を学んだんだ。

半端な覚悟で夢なんて掴めやしない、何かを犠牲にしてまでトライする勇気が必要だって事を…尊敬してる男が俺に教えてくれた!

だから俺は行く!!…安心してろ、いつかテレビを賑やかすぐらいの伝説作ってやるから!!」

 

グリーン

「さらに進化した熱い男を期待して待ってるぜ!?

何かあったらすぐに俺が駆けつけてやる、それが友達(ライバル)だからよ!」

 

パシッと互いに強く拳を握り合い、別れの挨拶をする

 

レッド

「それに…独りじゃねぇっすよ!

…準備は万端だろうなぁ、歌美っ!?

いざ、ジョウト地方へ!!!」

 

或る者は嘆き…

或る者は憤り…

或る者は大切なものを護る…

そして、或る者は挑戦していく…

 

様々な想いが交錯し、様々な感情が沸く

それは、言葉は違えど人もポケモンも同じこと

 

そして16歳になった少年が決断した旅は、ポケモンと共に過ごした彼の冒険の目次として後世へと語り継がれるだろう

 

ーー完ーー




やっとの事でレッドの物語を完結に至ることができました…笑
し、か、し!『赤・緑』があるということは勿論・・・ご想像にお任せします!
機会があればまた覗いてみてください!!笑
ご愛読してくださってる方、偶然閲覧してくださった方、本当にありがとうございました!!(*´∀`)♪


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