東方携帯獣  ~ポケット・モンスター |幻。夢。|~ (キョウキ)
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0ページ目  始まり、始まり


ドーモ、ドクシャ=サン、キョウキデス。
ほぼ、処女作となっております。(削除しましたが前にも小説を書いてましたが・・・)

お見苦しい所、多々あるでしょうが、読んでいただければ幸いです。

それでは気を取り直してこのまま
「東方携帯獣」をお楽しみください。


シンオウ創世神話  絵。・・・・・ 著。・・・・・ 訳。・・・・・

 

 

むかしむかし、おおむかし。

それはそれはとても美しい神様がいました。

 

その神様は、まだ何もない世界で初めて目を覚ましましたが

周りには自分以外に誰もいなく、神様はひとりぼっちだと思いました。

 

そこで神様は周りに変化を起こしてみようと思い、「時間」を創りました。

ですがただ時が流れるだけで、何も起きませんでした。

神様はがっかりしました。そのとき。

神様を呼びかける声がしました。

 

そこには自分とは別の神様がいました。

別の神様は最初の神様に話しかけてきました。

 

???「やあ、きみもひとりなの?」

さいしょ「そうだよ」

最初の神様は優しくきれいな声で答えました。

 

最初の神様は別の神様に質問してみました。

さいしょ「きみはなにものなんだ?」

じかん「ぼくは『じかん』のかみさまだよ」

さいしょ「へえ」

じかん「きみはなんのかみさまなの?」

さいしょ「わからない」

じかん「そっか」

 

ふたりの神様は親しく話し合いました。

じかん「なにをしてたの?」

さいしょ「じかんをつくってみたの」

じかん「じゃあ、きみはぼくのおとうさん?」

さいしょ「そうかもね」

 

じかん「ほかにもつくってみたら?」

さいしょ「そうしよう、きみもてつだってね」

 

こうして最初の神様と時間の神様は「空間」を創りました。

すると。

 

自分たちがいるところがぐにゃぐにゃ曲がり始めました。

じかん「すごいね」

さいしょ「おもしろいね」

ふたりははしゃぎまわりました。

そこに。

 

???「やあ」

ふたりに声をかけてくる奴がいました。

じかん「だれだい」

時間の神様が声をかけた神様はふたりとはあまり似ていませんでした。

くうかん「ぼくは『くうかん』のかみさまだよ」

さいしょ「ふーん」

 

最初の神様は何かを作るのに夢中になっていました。

さいしょ「ちょっといまね、いろんなものをつくってるんだ」

 

くうかん「それはおもしろそうだね」

じかん「いっしょにてつだおうよ」

くうかん「いいよ」

 

こうして、さんにんの神様はいろんなものを作りました。

 

まず大きな大地と大きな海を創りました。

大きな大地は赤く煮え立っており、大きな海は青く染まっていました。

赤い大地からは大地の神様が。

青い海からは海原の神様が生まれました。

 

次に海よりも広く、大山よりも高い大空を創りました。

赤い大地が青い海原に触って白い雲が立ち上りました。

 

そしてどこから来たのかヨモギ色の大きな神様がその雲を食べちゃいました。

そして、ヨモギ色の神様は空の神様になりました。

 

そのうち、生き物を産むことにした最初の神様は一匹の生き物を産み落としました。

その生き物は桃色でとても愛くるしい姿をしていました。

 

最初の神様は次々、その可愛らしい生き物を産みました。

そのうち、その愛くるしい生き物たちはそれぞれ別の場所で育ち

別の姿へと体を変化させていきました。

 

一匹は足をたくさん生やし。

 

一匹は炎を吐くようになり。

 

もう一匹は雨を降らせました。

 

そのうちに、最初の愛くるしい姿の生き物達は少なくなってしまいました。

そのとき、一匹の新しい生き物が別の生き物にちょっかいを出し初め

ついには喧嘩になってしまいました。

 

そのとき近くの水たまりが黒く濁ったかと思えば、水面に穴が開きました。

その穴から黒い何かが二匹をつかんで穴の中へ消えていきました。

 

さんにんの神様はその穴を「破れた世界」と名付けました。

喧嘩をしたり、争ったり、平和を破るとその世界に連れていかれるのです。

 

それから立って歩く、「ひと」と呼ばれる生物が生き物たちと暮らし始めました。

 

それから少しの時がたち、「ひと」という生物たちも文化を築き始めました。

そのとき、空がカッと光りました。

 

空の神様がなにやら必死に叫んでいます。

「!!・・・!!」

最初の神様が天空から様子を見てみると。

大岩がこの世界を押しつぶそうとしていました。

 

さいしょ「これではまずい」

最初の神様は急いで大岩を止めに行きました。

 

大岩は最初の神様と激突し、粉々に消し飛んでしまいましたが・・・

 

 

最初の神様はとても大きい怪我をしてしまい、周りには18枚の石板が散らばっていました。

 

生き物たちとヒトはとても悲しみました。

そこに、その様子を見ていたヒトの若者が石板を拾い集めました。

生き物達もそれを手伝い、ついに18枚全部が集まりました。

 

18枚の石板は最初の神様の体の中に入っていき、神様はみるみるうちに元気になりました。

 

その後、最初の神様はその青年の願いを聞き入れ、自分の命でもある

18枚の石板の内、5枚を溶かし固めて宝玉を作り上げました。

 

その宝玉の力により、荒れ地は豊かになり、ひび割れた地面からは泉が湧き出ました。

そして、その宝玉をいつか返すという約束をし、永い眠りにつきました。

 

いつしか、その18枚の石板を運んだ生き物たちはそれぞれ

特殊な能力を使うようになりました。

 

その能力は子孫にも受け継がれ、神様たちもそれを使うようになりました。

 

それから、また時が流れ。

約束の日がやってきました。

 

さいしょ「さあ、『いのちのほうぎょく』をかえしてもらうぞ」

 

???「・・・いいだろう。さあ、うけとるがいい!!」

その声と同時に周りの暗がりから生き物たちが電撃を浴びせたり

岩をぶつけたりしてきました。

 

青年は神様に吐き捨てるように言いました。

???「この宝玉を返してしまったら、水は涸れ、木も腐るだろう

    そうはさせたくないからな」

 

最初の神様は怒り狂いました。

 

例え自分の恩人でも、約束を破り、自らの命をも断とうとした青年に

 

 

いや・・・

 

 

 

「人間」に嫌気がさしたのです。

 

最初の神様は審判の光を浴びせました、山は砕かれ、森も焼きました。

最初の神様は疲れ果ててしまいました。

 

その後に残ったのは、土とがれきの山でした。

さいしょ「・・・・・・」

 

最初の神様は人間たちの行いに呆れてしまいました。

それでも、少し許してやろうと思ったのです。

 

人間は全員は殺さず、少しだけ残しました。

最初の神様は、少し反省させる時間をあげたのです。

 

さいしょ「またきたとき、かえさないといいはるのなら、いのちはないぞ」

そう言い残し悲しそうに自分の世界に帰っていきました。

 

人間たちはひどく反省し、生き物達と協力して、がれきの中から宝玉を見つけ出しました。

 

その宝玉は祭壇に飾り、厳重に守り続けました。

 

それから人間たちはどんどん技術を進化させ、生き物達と絆を深めました。

そのとき初めて、人間達は決心しました。

 

 

このようなことが二度とないように、平和な世界を創る、と。

 

こうして世界は創られ、嘘も争いもない平和な世界になったのでした。

 

 

「終」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「・・・ふう・・・結構集中して読んじゃったわ・・・」

 

薄暗い部屋の中、一人の少女が布団にもぐりながら本を読んでいた。

 

???「たまには、こういう創作小説もいいのよね~」

少女は満足そうにため息をつくと、布団の近くにある提灯の火を吹き消し

床に入ると静かな寝息を立てて眠りについた。

 

この満足そうな笑みを浮かべて幸せそうに眠っている少女の名は

 

 

「本居 小鈴」

 

貸本屋、「鈴奈庵」の店主を務めている少し変わった少女だ。

 

そして彼女は、「妖魔本」という珍しい本のコレクターである。

そのせいか彼女の周りでは妙なことが起きるため、神社から目を付けられている。

 

 

実際、妖魔本はこの現代には数えるほどしかなく、そんな珍しい本をこんな普通の少女が持っているのには

ちゃんとした理由がある。

 

それは彼女の住む世界は現代とは「異なった世界」であり

結界で別れたもう一つの世界の人間だからである。

 

 

その異世界の名は「幻想郷」

 

妖怪と人間が共存し、不安定なバランスを保つ世界である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてまた、少女が読んだ小説の「続編」の舞台となる世界である。

 

 

To be continued・・・?




前書きも何もかも長くなっちまった・・・


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本編
1ページ目  八雲の挑戦、迫る異変


はい、ドーモ、ドクシャノミナ=サン。
アホノキョウキデス。

勉強に飽きたので投稿しました。


暗い、暗い闇の中。

それこそ果ても見えない闇の中。

 

しかしその闇は完全な真っ暗闇というわけではなく、少し赤みがさしていた。

獣の腹の中のような赤黒い闇。

その中に、派手な服装を身にまとった女性が立っていた。

 

その女性は、とてつもなく美しかった。

白く透き通るような肌。

長く、整った黄金色の長髪。

 

その派手な色彩と模様で彩られたロングドレスはその女性の醸し出す

雰囲気や怪しい色気、美しい顔立ちに至るまですべてを邪魔しないように

作り出されたとしか思えないほど整い、美しい輝きを放っていた。

 

 

彼女の名前は「八雲 紫」(やくも ゆかり)

東方にあるとされる異世界、「幻想郷」を創った大賢者の一人である。

 

彼女は当然、人間ではない。

外の世界で幻となった存在、いわゆる「妖怪」と言うやつである。

だから、年も取らないし、よっぽどのことが無い限り死ぬこともない。

 

怪しい色気も妖怪故なのである。

 

 

そんな彼女は今、とてつもなく悩んでいた。

 

 

彼女はその場を行ったり来たりうろうろしたかと思えば

急にブツブツつぶやいたりもしていた。

 

そんなことをしていたときだった。

 

???「紫様」

 

背後から急に声をかけられたのは。

 

紫「・・・・・」

彼女は答えなかった。

別に無視しているわけではないが、今は一人で考えに耽りたかったのだ。

 

しかし、紫の背後にいる相手はそんなことはお構いなしにどんどん話しかけてきた。

???「・・・紫様、情報を集めてまいりました」

 

紫「・・・あら、そうだったわね」

今度はちゃんと反応を示した。

そういえば情報を集めてもらったんだっけ、と自分が命じたことを

忘れる程考えに夢中だった彼女は、以前背後にいる従者にねぎらいの言葉をかけた。

紫「ありがとう、藍。助かるわ」

藍「いえ、私は式神ですので、主の命令に従うのが当然ですので」

紫「フフ、そうね。でも、あなたはとても優れた式神と私は思うわよ」

藍「ありがとうございます」

 

彼女の名前は「八雲 藍」(やくも らん)

紫が式神として遣わしている、狐の幼獣。

 

九つの金色に光る尾を持ち、数式にとてつもなく強い。

そして、力も紫が認める程強い。

 

藍「・・・で、紫様。本当にやるんですか?」

紫「愚問ね、やらないんだったら最初からあなたに情報を集めさせてないわ」

 

藍「・・・失礼しました・・・」

紫「なんで謝るのかしら?謝る必要なんかないわよ」

藍「・・・はい」

 

藍がそう返事するのを聞くと、紫は藍が持ってきた資料を手に取った。

 

紫「それで、これが資料ね。

  まさか、幻想郷中探してもたったこれだけとはね」

 

藍が持ってきた資料はたった三冊の本だけであった。

これは藍のミスでも、私の命令の仕方が悪いわけではない。

 

そもそも幻想郷には「外の世界」の本が極端に少ない、だからいくら藍でも

たった三冊しか持ってこれなかったのだ。

 

それも、この三冊の本はただの外の世界の本ではない。

外の世界とはまた別の世界の本。

これを何とか探させたのだ、三冊でも大漁といえる価値はある。

 

 

紫「さて・・・どれどれ?」

紫はその三冊の内の一冊を手に取りパラパラとページを軽く見ただけで

すぐ閉じて、他の二冊も同様に軽く内容を見ただけに見える

短すぎる読書は終わった。

 

別にこれらの資料のことを疑ってるわけでも、読むのがめんどくさいわけではない。

 

あくまでこの三冊は保険のために持ってこさせたといっても過言ではない。

なぜなら、今よりはるか昔から「その世界」に関する情報を集めていたからである。

 

この三冊は今までの情報が間違っていないかの確かめであり、答え合わせだったのだ。

 

紫「そろそろ始めましょうかね」

藍「えっ・・・すぐ・・・ですか?」

紫「当り前じゃない。とにかくあなたは時間を計っていればいいのよ」

 

藍「あ・・・ハイ、分かりました。すぐ始めますね」

紫「よろしく頼むわよ」

藍は紫の声を聞く前に時計の準備を始めた。

その時計は特別なもので、「神」の動く時間を計れるらしい。

 

どういう仕組みなのかは、また今度時間が開いてるときにでも話ましょう。

 

紫「藍・・・あと何秒?」

藍「あと19秒です・・・18・・・17・・・

  16・・・15・・・」

今、藍が時間を数えている間、私が追い求めていたもののことを思い浮かべる。

私が追い求めてきたもの、それは「空間神」。

別に神の力を手に入れようということではない。

 

藍「10・・・9・・・8・・・7」

 

私は、その空間神に協力してもらいたのである。

この幻想郷にその世界の生き物、「ポケモン」と呼ばれる魔獣を呼び寄せるために。

 

藍「3・・・2・・・・・」

その、理由は・・・・・・

 

 

藍「1!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

面白そう。ただそれだけ。

 

 

 

 

藍「0!」

藍が残り秒数を言い終わるか終わらないうちに目の前の空間が少し揺らいだ。

私はその瞬間を見逃さずに素早くその揺らぎに手を突っ込む。

 

空間が手を突っ込んだところからぐにゃりとゆがみ

 

そして・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「・・・で、今そんな状態ってわけ?」

紫「情けないことにね・・・」

 

時と場所は移り、幻想郷の神社。

「博麗神社」

 

私は、空間のゆがみに手を突っ込んだ経緯とその後のことを話した。

 

???「・・・それにしても・・・フー・・・ひどい状態ね・・・」

 

紫「・・・正直言って、何でこうなったかは全然わからないのよ」

今、私の体の状態はこうなっている。

 

 

下半身は上半身と離れ離れになっており、上半身も左肩から斜めに切断されている

といった状態である。

こんな状態でも生きていられるのは妖怪の力のおかげであるが・・・

 

それでも分からないことがある。

 

切断されたはずの左半身、下半身が少しの間を開けて空中に浮かんでいるのである。

 

???「・・・で、私にどうすればいいのよ?」

紫「・・・ちょっと・・・言いにくいことなんだけど・・・」

???「なによ?さっさと言いなさいよ!めんどくさいんだから・・・」

 

紫「・・・分かったわよ」

どうやら観念したようでやっと口を開いた。

しかし、その言葉は小さく、先程の彼女とは思えないほどか細い声だった。

 

 

紫「あのね・・・ちょっと面白半分で空間神に・・・

  えと・・・その・・・ちょっかい?を・・・

出したら・・・怒らせちゃって・・・それで・・・」

 

 

???「・・・はぁ~・・・イヤよ」

紫「まだ何も言ってないのに!?」

 

???「だってあんたが勝手に呼び込んだトラブルでしょぉ~?

    自分のことは自分でやりなさいよ・・・」

 

紫「自分でもどうすることがもできなくなったからあなたを頼っているのよ~・・・

  お願いだから、「霊夢」~・・・私に協力してよ~・・・お酒おごるから・・・」

 

紫が「お酒」というう言葉を放った瞬間、彼女の体がピクリと動き

気だるそうに、しかし嬉しそうに承諾の言葉を言った。

 

霊夢「はぁ~・・・まったくしょうがないわね~・・・

   いいわ、協力してあげる代わりに・・・おごるお酒は三倍ね・・・」

 

紫「う~ありがとぉ~、一生分感謝してもしたりないわ~」

 

霊夢「・・・そこまで言うほど深刻なのかしら?その「異変」は?」

 

紫「そうなのよ、まだ大きく広がってないないけど・・・

  まず初めに出現したのは「妖怪の山」の洞穴。

  次に「霧の湖」。

  そして旧都の「地霊殿」からね」

 

霊夢「結構多いのね・・・こりゃ「魔理沙」にも手伝ってもらおうかしら?」

 

彼女の名は「博麗 霊夢」(はくれい れいむ)

博麗神社の巫女であり、妖怪の味方も人間の味方もする変わった少女だ。

 

紫「とにかく、本格的に活動するのは明日からね。

  私はこの体をちゃんとくっつけなきゃだし・・・」

紫の痛々しい体を見て霊夢は顔をしかめながらも紫の意見に同意し

活動は明日からすることにし、今日は解散した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「妖怪の山・とある洞穴」

 

低級妖怪A「な・・・なんだ?この石像は・・・?」

低級B「気味が悪いな・・・宝も何にもなかったしよ・・・早く帰ろうぜ」

低級A「ああ・・・そうだな・・・帰ろう」

 

 

「文々。新聞」一部より抜粋。

突如として現れた妖怪の山の巨人像。

壁には点字がちりばめられており、そちらの解読も急ぎたいところである。

(中略)

この洞穴にいると、誰かに見られているような不思議な気分も味わえるので

興味のある方はぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか?

 

 

 

To be continued・・・



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2ページ目  出会い

ども、遅れちゃいましたな。
そしてまだまだ遅れちゃいますな。


 

小鳥がどこかの木の上から鳴き声を上げ、獣や人間たちも起きだす時間帯。

「博麗神社」の巫女、「博麗 霊夢」(はくれい れいむ)も例外ではない。

 

彼女は、基本的に一人で暮らしている。

基本的にというのは、友人や知人が泊まることがあるからである。

別に一人でも寂しくはないし、生活面でもなんとかやっていける。

 

しかし、巫女という性分故か、彼女が無意識に引き寄せているのか、彼女のもとには

人が集まる。

 

そしてそのうち、だんだん人が集まってきて宴会と化すこともしばしばある。

そのせいで、今日から異変を解決すべく働くといううのに、昨日飲みすぎたせいで二日酔い

という状態だ。

これではまともに行動することもままならないはずだが、彼女は「巫女」である。

 

酒を飲むことが仕事といっても過言ではないほど酒を飲む機会がある。

だから自然に酒に強くなるのだが・・・

 

昨日は少し鬼の酒を試したらしくこのザマである。

 

 

話を戻すが、彼女は基本毎朝早朝に起きるが今日は二つの理由があったため昼間に起きることになった。

 

 

一つ目は、昨日飲みすぎたからである。

 

二つ目は・・・

 

 

 

何かの気配を感じたからである。

 

 

霊夢「!!」

彼女はとっさに布団から体を起こし、身構える。だが・・・

 

二日酔いで足元はフラフラ、めまいもするし、急に動いたので吐き気もした。

しかし彼女は倒れることもなく、気配がした障子の向こう側を見据える。

すると・・・

 

 

 

ひょこ

 

 

 

障子の向こうで「何かの影」が動いた。恐らく気配の持ち主だろう。

障子の向こうで影だけ見せてひょこひょこ動いたり、時に動物的な鳴き声も上げた。

 

それらの動きを観察していた彼女は安堵と不安を同時に感じる奇妙な感覚を味わっていた。

 

まず、相手が盗人や盗賊の類ではないことに安心し

そうではない動物的な何者かに対しての不安を確かに感じていた。

 

霊夢(いったい、あの生き物(?)はいったい何? 

   どこから来たの?すぐ動くのは危険かしら・・・)

 

彼女は珍しく消極的になっていた。

やはり二日酔いだからであろうか。

 

お酒の力は恐ろしくも偉大である。

 

霊夢(ああもう!なにあんな妙な生き物に私がビクつかなきゃなんないのよ!

   こういう時は、逆に思いっきり障子を開けてビビらせてやるわ!)

 

そう思い立つと体を素早く動かし、障子のもとへ向かい、そして・・・

 

 

バーンッ!

 

 

思いっきり障子を開けた。

 

霊夢「誰よそこにいんのわ!早く姿を現しなさい!」

今できうる限りの大声を腹から出し、相手を威圧しようとしたが・・・

 

???「ぶい?」

帰ってきたのは愛くるしい鳴き声だけだった。

 

霊夢「・・・あら?」

てっきり霊夢は障子を開けたら

 

「かかったなアホがっ!」とか

 

「URYYYYYYYYYYYYY!!」とかいう化け物じみた声だと思っていたが・・・

 

 

???「ぶいぶーい?」

その可愛らしい鳴き声の持ち主はその声によく似合う、可愛らしい姿をしていた。

 

茶色のきれいな毛並み。

ウサギのような大きい耳と、狐のようなこれまた大きな尻尾。

首元には白みがかったベージュ色のふかふかした毛がマフラーのように首を覆っていた。

 

その姿は「愛くるしい」「可愛い」、それらの言葉でしか表せないほど可愛らしかった。

彼女も、その愛くるしい姿に目を奪われてしまい、考えるのを放棄していた。

 

 

霊夢「・・・はっ」

気付いた時にはその愛くるしい生き物を神社の中に連れていき、撫でまわしていた。

 

霊夢「・・・迂闊だった・・・」

まさかこの私が自分からこんな得体の知れない生き物をなでまわしていたと思うと

少し鳥肌が立った。

 

しかし・・・

霊夢「とっとにかく!この子を外に返してあげないと・・・」

私の頭はこの生き物のことを傷つけないようにと命令し、この生き物のことを愛らしくも

感じていた。

 

 

霊夢「・・・飼えたりしないかしら?・・・あら、これは・・・」

その時、その生き物が首から何かを下げていたのに気づく。

 

それはペンダントと円盤を足して2で割ったようなブローチであった。

 

縁は金でできており、中心には色とりどりの石のかけらがはめ込まれていた。

 

一つは炎のように黄色に輝き。

もう一つは水のように冷ややかな輝きを放っていた。

 

他にも、光のような白色の石。

闇のような紫色の石。

草の模様や、雷の模様なんかに見えるものがある石もあった。

 

太陽のように温かいと思える石。

月夜のように冷たい石もあった。

 

色とりどり、形もバラバラな石がうまく組み合わされ、ひとつのブローチに

はめ込まれていた。

 

 

その美しさに惹かれ、手を伸ばしたところ、その生き物に手を軽くたたかれてしまった。

霊夢「・・・触られたくないのね・・・」

 

???「ぶいぶい!!」

その生き物は「当然」、というようにその小さな胸を張った。

 

 

霊夢「・・・あんた、どっから来たの?」

???「?ぶい??」

 

その生き物は困ったような表情をし、困惑の鳴き声を発した。

 

霊夢「よかったら、家に来ない?」

 

???「・・・」

 

その生き物は少し考えるように黙り込み、遥か虚空を見つめた後

 

???「ぶい!」

 

決心したように大きく返事をした。

 

霊夢「そっか、これからよろしくね!・・・えーと・・・

   名前はあるのかしら?・・・・・・ん?」

 

その生き物のブローチの裏側に何か文字が彫られてあった。

 

霊夢「んん?Eevee・・・なんて読むのかしら・・・」

 

そこには確かに名まえらしきものが彫られてあったが

霊夢は英語が全く読めない。

 

 

霊夢「とにかく、名前は後で調べるとして、これからよろしくね!」

 

???「ぶいぶーい!」

 

神社に少し嬉しそうな少女の声と、謎の生き物の愛くるしい鳴き声が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「妖怪の山、洞穴・・・」

 

 

 

 

・・・ここはどこだ?

 

・・・何年眠っていた?

 

・・・・・・・・・・・・・。

 

 

・・・思い出せないが、いいか。

 

 

洞穴には誰もいないはずなのに何者かが声を発するような音が響き渡っていた。

いや、そんなはずはないだろう。

 

だってそこには氷のように冷たく、鋼のように硬い岩石で覆われた巨大な石像しか

置いてないはずなのに・・・・・・・・・・

 

 

 

 

???「・・・ ・・・ズッ ズッ!!」

 

何かを引きずるような重たい鳴き声が洞穴を揺らした・・・・・

 

 

 

 

To be continued・・・



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3ページ目 白狼天狗の災難 その①

初めて感想をもらいました。

感極まるほど嬉しかったです!

そんなこんなで三話目、はじまりはじまり。


突然だが自己紹介をさせてもらおう。

 

私の名は「犬走 椛」、種族は白狼天狗という「妖怪」だ。

特徴としては、人とあまり変わらない姿をしているが頭には一対の白い狼の耳があり

その耳と同じ色の尻尾が・・・どこから生えてるかとかは答えないが、とにかく生えてる。

 

 

種族的な地位でいうと、中の下、程度だ。

だから嫌な仕事を押し付けられたり、手柄を取られたりすることなんて日常茶飯事。

 

 

つまりこき使われてるのである。

 

 

 

特に私の上司にあたる鴉天狗、「射命丸 文」(しゃめいまる あや)については

彼女の「駒」として扱われてるようなものである。

 

・・・たまにお酒をおごってくれたりするので、まだ許せますが・・・

問題なのは彼女の性格や仕事に対する態度。

 

私はどんな仕事でも熱心に向き合い、やり遂げるまで続ける、という他から見たら

「バカ正直」とか「仕事熱心」だとか言われるような性格と自分でも思っている。

 

一方彼女は、自分の興味のある仕事だけちゃんとやり、それ以外は適当にやるという

ていたらくぶりである。

よく言えば「好奇心旺盛」、悪く言えば「ただの自分勝手」である。

 

 

 

 

そんな正直言って不真面目で、つかみどころのない彼女は私に回りくどく命令してきた。

 

射命丸『あー椛、私はこれから仕事に向かわなくちゃだから、あなたもなんか仕事見つけて

それに今日一日励みなさい」

 

要約すると、こうである。

 

射命丸『椛、私はこれからここを留守にするからあなたはここらの見回りと、この

「妖怪の山」の警備に当たりなさい、任せたわよ』

 

椛『・・・ハイ・・・」

正直言ってダルすぎる。

昨日だってまともに寝れてないし、食事も十分にとれなかった。

ダルイ、やりたくないと思うのは当たり前だが・・・・・・

 

私は「白狼天狗」、地位が上の「鴉天狗」から命じられたら従うしかない。

 

射枚丸「ん~?返事が遅いし小さいぞ~?しっかりやりなさいよー」

 

あなただけには言われたくないですよ。

そう言ってやりたかったがあっという間に風の速さで飛び去ってしまった。

 

椛「はあ・・・やるしかないか・・・んっ・・・」

 

私は軽く伸びをし、どこの警備をするか考えるため「能力」を使用する。

 

私の能力は「千里先でも見渡すことができる程度の能力」

いわゆる「千里眼」の能力だ。

 

この「能力」を使用し、頭の中にこの妖怪の山のヴィジョンが浮かんでくる

 

椛「さてと・・・どこか侵入者がいたり警備が薄いところはないかしら・・・・・んん?」

 

私の「能力」によって、妖怪の山全体を見回している最中、私の同僚が仲間たちと

歩いているのを発見した。

 

椛「彼女らは・・・どこへ行く気なのかしら?まだ休憩時間ではないし、見回りとしては

  かなりだらしがないわね・・・ちょっと注意でもいれておこうかしら・・・」

 

 

彼女はそう思い立つと、人にはまねできないような軽快な足取りで山道を駆けていった。

 

 

 

 

 

「妖怪の山・・・洞穴への道」

 

白狼天狗・栄「ねえ?ほんとにいいの?見回りの途中で寄り道なんて・・・」

 

白狼天狗・微意「バカね、見回りに寄り道も何もないでしょ?

        この道だって最近見つけられたわけだし、妖怪の山の範囲内でしょ?」

 

栄「まあ、そうだけど・・・」

 

白狼天狗・椎「あんたは何を恐れているのよ?」

 

栄「だって・・・あそこの洞穴には変な巨像が置いてあったり・・・

  あなたも見たじゃない、あの三本の奇妙な柱・・・・・・・・・・

  あの柱からは視線すら感じられたわ!」

 

微意「もう・・・そんなことにおびえてたら見回りなんか務まらないわよ

   ホラ、ちゃんとしなさい」

 

椎「そうよ、それに第一、ここに他の誰かが来たとしてもここは妖怪の山の範囲内。

  怒られる理由もないし、逆にこんな辺境まで見回りしている

  私たちを褒めるべきよ」

 

栄「それも・・・そうね!」

 

微意「そうよ!ついでにあそこの謎を真っ先に私たちが解いてお宝を根こそぎゲットよ!」

 

椎「がんばりましょう!!」

 

全員「えいえいお(あー失礼?

 

全員「!?」

 

椛「しばらく見ていたが、こういうことだったのか」

 

栄「ッ!・・・き、貴様は犬走 椛!なぜここに?!」

 

微意「まあまあ、慌てない慌てない・・・さて・・・

   とにかく、犬走 椛。あなたが聞いていたということは当然

   お宝が目当てなんでしょう?」

 

椛「いや、私はあなた達が集まって親しく話しているところに注意をしてやろう

  と思っただけよ。邪魔したなら謝罪しよう」

 

微意「いえいえ・・・こちらこそ謝罪しなければなりませんね・・・

   最初からあなたのことを誘っておけばよかったかしら?」

 

椛「?・・・どういうことだ??」

 

微意「つまり、あなたが一緒に私たちと洞穴の謎を解くのなら、お宝の四分の一

   差し上げるけど、いかがかしら?」

 

ここで射命丸が言ってたことを思い出す。

 

射命丸『あんたもなんか仕事を見つけて今日一日励みなさい』

 

・・・つまりこの宝探しもある意味「仕事」。

しかも成功すれば給料が出る。しかも大金の可能性もある。

これはもう・・・・・

 

 

椛「・・・いいわ、やってやろうじゃないの」

 

私に与えられたチャンスとしか思えない。

 

微意「よし、それじゃあすぐに向かいましょう」

 

こうして四人はあの奇妙な洞穴に足を運び入れた。

 

 

 

 

「~妖怪の山~奇妙な洞穴~」

 

椛「うわあ・・・」

 

栄「これは・・・」

 

微意「お宝がありそうね匂いはプンプンするのよ・・・」

 

椎「そういえば、最初にここを見つけた妖怪たち。

  あいつらは宝を見つけられなかったのかしら?」

 

微意「ええ、そうでしょうね。なにより漂っている妖気がそんじょそこらの妖怪とは

   比べ物にならないほどだし」

 

椎「つまり探してる最中にビビって逃げ出したってこと?」

 

微意「そうらしいわ」

 

椛「・・・・・・・・・・」

 

私は彼女たちが話を進めてる間、洞穴内を見回していた。

 

 

中はとてつもなく暗く、埃っぽい。

そして少しづつ目が慣れてくると巨大な石像が闇の中浮かび上がってくる。

 

その次に壁の凹凸、三本の柱と妙な形の文字。

 

それら全てがこの洞窟の謎を解くヒントになるのか、それとも宝を探しに来た者を

ビビらせる演出か、とにかく怪しくも妙に力強く頑強なイメージがついた。

 

 

そう思っていたところ突然隣の方でカチリ、という機械的な音が響いた。

 

椛「今のは・・・なんだ?」

 

栄「ごめん、私が立ってた床がちょうどスイッチみたいになってたわ」

 

微意「脅かさないでよ」

 

椎「まったくもー」

 

そうみんなが話し込んでいるとき突然

 

三本の柱にヒビが入った。

 

全員「!?」

 

そのヒビは瞬く間に柱を破壊し、土煙を上げさせた。

 

 

椛「いったい、なんだ?!これは!?」

 

微意「まさか罠か!?」

 

そううろたえている二人は残りの二人が何やら叫んでいるのに気づきました。

 

栄「あ・・・ああ・・・あれ、は・・・なに?」

 

椎「知らないわよ!あああ、もう!!早く帰りたい!!」

 

その二人は一貫して同じ方向を見据えていた、その視線の向かう先は割れた三本の柱では

なかった。

 

 

その視線の先のものに気付き鳥肌が全身を駆け巡る。

 

その視線の先にあったものは

 

 

 

洞穴を震わさんばかりにうなりを上げる巨人像の姿であった。

 

 

 

???「・・・ズッ ズッ!!」

 

 

To be continued・・・



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4ページ目 白狼天狗の災難 その②

はい、私の大好きなポケモンの一匹が登場します。

ここでどんなポケモンかヒントを出しましょう。

ヒント:マジワロスwwwwww

さあ、誰でしょう?
答えは小説に!


シンオウおとぎ話 「国引きの巨人」  著、・・・;; 絵、::;: 作、・・?」

 

 

むかしむかしあるしまぐにに、とてもわるいおうさまがいました。

 

そのおうさまは、まじゅうたちがだいきらい。

いつもはらいせにまじゅうたちをころしていました。

 

あるひ、おうさまはきたのはてのくにをじぶんのくににしようとおもいって

ころさないでおいたまじゅうたちをひきつれ、きたへ、きたへ

あゆみをすすめました。

 

 

しかし、そのくににもおうさまがいたため、わるいおうさまはそのおうさまを

ころそうとしょうぶをしかけました。

 

でも、わるいおうさまはまけてしまいました。

 

かったおうさまはとてもやさしいこころのもちぬしで、まじゅうたちもやさしいおうさまになつていていましたが

 

わるいおうさまのまじゅうたちはわるいおうさまのことがだいきらいだったため

おうさまのいうことをききませんでした。

 

おうさまはとてもおこり、そのばでまじゅうたちをきりころしてしまいました。

 

やさしいおうさまはとてもおこりました。

 

いいおうさまはいそいでかみさまのしんでんにむかっていのりをささげました。

すると・・・

 

 

そのしんでんからてんをもつかんばかりのきょだいなまじゅうがあらわれました。

 

そのおおきなまじゅうはわるいおうさまをにぎりつぶしてしまうと

そのわるいおうさまのしまぐににむかってたびにたちました。

 

 

そしておおきなまじゅうがたびだって3かめのあさ。

 

いいおうさまはじぶんのしろからうみをみたとき、とてもおどろきました。

 

 

きょだいなまじゅうがみなみからわるいおうさまのしまぐにを、なわでしばって

もってきました。

 

おうさまはそのしまぐににむかい、ころされたまじゅうたちのおはかをつくると

そこでひどいことをさせられていたまじゅうたちをたすけて

 

まじゅうたちとしあわせにくらしました。

 

 

めでたし、めでたし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・ここはどこだろう?

 

 

最後に覚えているのは・・・なんだっけ?

 

・・・なにも覚えていない・・・けど一つだけハッキリしている。

 

 

自分はとても力が強い。

それだけは直感として理解していた。

 

 

でも、この力をどう生かせばいいんだろう?

なにか覚えているのはないか・・・あっ!そうだ!

 

たしか・・・私の主が・・・えーと・・・あっ、そうそう!

 

『いいか、ギガスよ。これよりおまえは旅に出て、悪逆の王の島国を持ってくるのだ。

 何日かかってもいい、一年でも十年でもいいから必ず持ち帰ってくるのだ。

 

 その島国の特徴は・・・

 

 

 まず、巨大な燃える山がある、次に見たこともない植物がある

 そして、ここより遥かに南にあり、とても暖かい国だ。

 

 頼んだぞ」

 

 

そうして、私は旅に出てそして旅から帰って・・・それで・・・あれ?・・・

 

ここは・・・どこだ?

 

そう思っていた彼だがそのとき自分がいるところが見たこともない地であることに

気付いた。

 

 

そしてある結論に至る。

 

 

 

 

 

もしかしたら私はちゃんと目的を達したという夢を見ていたただけであって

本当は目的を達していない!?

 

だとしたらこうしちゃいられない!

 

そう思い立ち上がろうと体を動かしたとき・・・

 

 

ん?妙だな・・・体が・・・動かない!?

 

 

よく見てみると自分の体は氷のように冷たく鋼のように硬い岩の中に

封じ込められ、身動きがとれなくなっていた。

 

 

・・・う、動かん・・・これではまずい・・・でも、打開策が浮かばない・・・

・・・それに眠くなってきたな・・・考えるのはとりあえず眠った後にしよう・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドカァン!!

 

椛「な、何が起きたんだ!?」

 

微意「なんでこんなことになるのよー!!」

 

栄「あ・・・あ、ああ・・・あ」

 

椎「嫌だ・・・私は帰るッ!」

 

 

まったく何が起こったのか理解できなかった。

 

確か、そう。この中の誰かが変な石を踏んで、そしたら巨大な巨像が突然・・・

 

動き出した!!

 

 

椛「これは実は好奇心を利用した罠だったのか!?」

 

微意「知らないけど・・・危ないことには変わりないわね・・・」

 

栄「ねえ、椎?。とりあえず誰か呼んできて・・・って椎?・・・いない!?」

 

 

さきほど帰ると叫んでいた椎は先に逃げ帰ってしまったらしい。

まあ、こんな状態なら致し方ないが・・・

 

椛「・・・栄」

 

栄「ふぇっ?な、なっ、何?」

 

椛「いいから落ち着いて・・・この中で一番足が速かった椎が逃げ出した。

  とすると・・・この中で二番目に足の速いあなたが外に助けを呼びに行って」

 

なるべく冷静になるように努めて栄に言い放った。だが、心の底では

一刻も早く逃げ出したいという思いが海原のように渦巻いていた。

 

一緒に逃げられたらどれほど良いことか。

しかし、一緒に逃げてしまったときこいつ(巨人像)がなにをするか分からない。

 

だったら

なるべくこいつが暴れないようにして、落ち着いて助けを待つのが最上の選択のはず。

 

 

栄「・・・ん、うん!分かったわ、あなた達も早く外に逃げ出したほうがいいわ!」

 

椛「ええ、でも。すぐには逃げられなそうだからなるべく早く、助けを呼んできて」

 

そういうと同時に栄はまるで疾風のように洞穴の外に駆け出した。

 

 

 

 

ゴゴゴゴゴゴ・・・

 

洞穴内の岩肌が振動で揺れる。

それはこの妖怪の山でさえ崩すことができると思わせるほど大きい揺れだった。

 

 

椛(この洞穴が崩れたりはしないだろうか?)

ふとそんな思いが頭に浮かぶが、それはただの思い込みだと振り払い

目の前の「敵」に再度意識を向け、注意深く観察する。

 

 

体は先程まで岩で覆われてたとは思えないほど白く、ところどころに黒色の模様が

腕や体の至る所についていた。

 

足は体と同じく白色で、また体と同じく黒いマークが一対ずつ並んでいた。

しかしそれよりも目を引くのは足元だった。

 

 

足が植物で覆われている。

いや、「生えている」と表現したほうがいいかもしれない。

その足に「生えている」植物は肩にも生えており、青々とした輝きを

暗い洞穴の中で放っていた。

 

白い色の体、黒い模様、緑色の植物

 

そしてもう一つ目を引くものがある。

 

その腕から方の節々につけられた黄色い環である。

腕は太く、手首に黄色い環がつけられ、指は白く力強い印象を付けるほど太かった。

 

まるで何かを握りつぶすためにあるかと思うほどだ。

 

頭部はこれまた黄色く、目の代わりなのか黒い七つの点が規則正しくつけられていた。

そしてその白い体の胸にあたる部分には赤・青・灰色の模様がつけられ

その白い体を彩ってた。

 

 

 

 

 

 

 

 

全体的に表現すると

 

「鮮やかすぎる巨神兵」

そう表現したほうが巨人像より遥かに分かりやすいだろう。

 

 

その鮮やかさと神々しさに観察するのも忘れて見入っていたほどであった。

 

 

巨神兵「・・・ズズッ!・・・ズズズ!」

 

どこに口があるか分からないが巨神兵は引きずるような機械的な声(?)を出した。

 

 

 

椛「・・・さて、こいつをどうしようかしら?」

 

微意「どうするって・・・とりあえず引き続き観察して、攻撃してきたなら応じる。

   なにもしてこないなら観察。これが一番いいんじゃない?」

 

椛「その案には私も賛成ね・・・とにかく、なるべく刺激しないように

  助けを待ちましょう」

 

微意「そうしましょう」

 

 

そう話していたところ強い視線を感じた。

 

 

 

 

 

・・・巨神兵が物珍しそうに私たちを見つめて、こう「言ってきた」。

 

 

巨神兵「・・・コ・・・ココハ・・・ドコッ・・・ダァ・・・」

 

 

カタコトではありながらも、人の言葉を発した。

 

 

 

この状況、何も知らない者が見たらさぞ奇妙な光景になっているだろう。

 

 

色鮮やかな巨神兵が、二人の妖怪に話しかけている。

 

 

この混沌とした状況から、さらなる混沌へと向かっていることは

巨神兵も椛も誰も知ることはなった。

 

 

 

To be continued・・・

 

 

 

 

 



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5ページ目 白狼天狗の災難 その③


私は、初めてやったポケモンシリーズがDPtなので、若干シンオウ組が多く
出ることがありますが、基本的に伝説・幻のポケモンは全て出すつもりでいます。


喋った。

 

確かに今、この巨神兵は人間の言葉を発した。

 

この巨神兵のことを舐めまわすように観察したといううのに、「口」にあたる部分が

見当たらないのだ。

いったいどこかに口や声帯があるのだろうか?

 

そんな疑問が頭の中にポツリと浮かぶ。次々に浮かんでくる。

 

こいつは何者なのか?

いつからここにいるのか?

この洞穴の遺跡は何なのか?

なぜ、誰にも気づかれずこの「妖怪の山」に侵入できたのか?

 

これらの疑問はすぐに解消するだろう。

 

 

 

なぜなら、目の前にいる「当事者」であり「現行犯」であるコイツに直接聞けばいい。

人の言葉を話せるということは、当然人の言語を聞き、理解することもできるだろう。

 

そうと分かったら早速質問である。

 

 

 

椛「ねえ、微意」

 

微意「なにかしら?」

 

椛「あいつは確かに、「ここはどこだ」と人の言葉を使ったわね?」

 

微意「そうね。見た目とは裏腹に知能は高いのかしら」

 

椛「知識があるというのなら、当然人の言葉も理解するはず。だから」

 

そこまで言いかけて微意の顔に目を向ける。

その顔は何かを察したような表情をしていた。

どうやら言いたかったことを理解してくれたらしい。

 

微意「・・・なるほどね。それはいいアイディアね。でもそのまえに

   ちゃんと質問には答えてあげたら?」

 

椛「そうね・・・ちゃんと理解してくれればいいんだけど・・・」

 

そう不安そうに応えると巨神兵の方を向き喉を裂かんばかりの大声で質問に答えた。

 

 

椛「ここは、幻想郷という地の、「妖怪の山」!

  我ら天狗と鬼が古来より積み上げてきた妖怪達の要塞であり社会だ!!

  

  さあ、質問に答えたぞ!今度はこちらから質問させてもらおうか!」

 

 

巨神兵「・・・・・・・・・・・・」

反応はない。だが構わず、さっきよりも声を張り上げて疑問をぶつける。

 

椛「貴様はいつから!この妖怪の山にいるのだ?」

 

巨神兵「・・・・・・・・・・」

反応はない。次の質問に移る。

 

椛「この洞穴と遺跡は何だ?」

 

巨神兵「・・・・・・・・・・」

反応なし。次へ。

 

椛「貴様はいったい何者なんだ!」

 

巨神兵「・・・・・・・・ズッ・・・」

 

ここで初めて反応を示した。

機械的な鳴き声を小さく上げ、その巨大な腕を挙げる。

 

椛「ッ!」

すぐさま警戒し、腰にかけてあった盾と太刀に手をかける。

その動きは目にもとまらぬ速さで、無駄な動きが無い。

 

無論、この動きは全ての白狼天狗ができうる訓練された動きである。

 

横に目を向ければ微意も腰に手をかけ、臨戦態勢を取っている。

特別力が強いわけではないが、こういった状況だと力の強い者が一人で前線に出るより

自分が信頼できる仲間が背中を守ってくれる。

 

それだけで少し安心するし、緊張感で動きが鈍るということも無くなる。

 

今はたった二人だけだが、これが10人、20人にもなると強大な力を持つ

妖怪相手にも互角以上に戦えるのである。

 

 

その二人の戦闘態勢を見た巨神兵はその腕を挙げたことが原因だと察すると

その腕を降ろす前に、洞穴の出口を指さす。

 

 

椛「・・?出口がどうしたんだ?」

 

巨神兵「・・・ズッズッズズ・・・ズズッ」

 

椛「何を伝えたいんだ?話せるだろう。ちゃんと言ったらどうだ?」

 

話せる。確かにある程度話せるが、話せる単語は。

「ここはどこだ?」

「あなたはだれだ?」

「近くに燃える山はないか?」

 

この程度である。基本的に疑問文しか教わってない。

理由は知らないが、まあ何か深い意味があるんだろう。

 

 

だから教わってない言葉は話せないので、仕方なく「ジェスチャー」で伝えるしかない。

 

しかし・・・

 

椛「だからなんなんだ!いい加減自分言葉で伝えるんだな!」

 

 

まったく伝わってない。

 

 

 

そもそも、なんでこんなところにいるんだ?

目の前の人間(?)は何者なんだ?

 

それにさっきからこの人間たち。妙に高圧的だ。

なぜこんなに偉そうなんだ?

 

 

 

ハッ・・・まさか!?

 

 

あの「わるいおうさま」の仲間なのかっ!?

だからこんなに偉そうで高圧的だったのか!!

 

だとしたらとっても許せない!きっと魔獣達もひどい目にあわされてるに違いない!

 

だとしたらやることは一つだけ・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

情け無用、握りつぶす。

 

 

巨神兵「・・・ ・・・ ズッ ズッ!!」

 

椛「ッ!・・・来るか!」

 

微意「まったく・・・栄は何してんのよ~ッ!!」

 

 

突然巨神兵が怒り始めた。

その姿は荒ぶる軍神のようであり、その妄執は祟り神のようでもあった。

 

戦闘が開始する。

そう思ったときに栄が助けを呼んできた。

 

 

栄「椛!微意!大丈夫?ケガはない?」

 

???「あやや~・・・ネタがないから戻ってきてみれば・・・

    とてつもなくいいネタの匂いがプンプンするじゃあないですかッ!!」

 

???「もうすでにこの洞穴は!我々白狼天狗警備団が包囲した!

    逃げ場はないぞ!!」

 

 

その助けにきた物達は、以下の通りである。

 

助けを呼び行った栄と、逃げ出したはずの椎もいる。

白狼天狗団のみんな。そして・・・・・・

 

 

???「うふふふふ・・・あまりのネタのすごさに気持ちの悪い声出しちゃいましたよ」

 

そう浮かれた様子で栄の後に洞穴内に入ってきた人影は、私のよく知る人物・・・

 

 

椛「・・・「文」(あや)さん・・・」

 

そこにいたのは今朝見送ったばかりの胡散臭い上司。

 

「射命丸 文」(しゃめいまる あや)であった。



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6ページ目 新聞記者と虹色の羽

最近になってHGを初めからやり直してます。

昔は技マシンが無限に使えないことを忘れてしまい、つい使いまくっちゃいました。


あ、それと。

あとがきに現時点での状況を軽く書いときます。




朝。それも早朝。

 

まだ日は明けていないが、少しづつ、少しづつ空が白み始めていた。

 

この日、私は最高にツイていた。

運が、最高に。最高潮に。絶好調に。絶頂に。

私の時代が来たといわんばかりの最高の「ツキ」が回ってきた。

 

 

私の名は「射命丸 文」 (しゃめいまる あや)

種族は「鴉天狗」。

 

立場的には・・・「白狼天狗」より上で、「大天狗」様より下ですかね。

 

 

職業は「新聞記者」。

 

「文々。新聞」という新聞を作り、発行するため、日夜ネタを探して幻想郷を西へ東へ

駆け巡っています。

 

 

 

 

兎に角、私は。

とてつもない「ネタ」を見つけた。

 

それは、白狼天狗の栄に助けを求められる1時間前・・・

 

 

 

「1時間前・・・妖怪の山、射命丸の作業小屋前」

 

今日、私は昨日の書類を「鼻高天狗」のやつr・・・方たちに

おしつk・・・手伝わされていた。

 

射命丸「あー椛、私は今から仕事に向かわなくちゃだから、あなたもなんか仕事見つけて

    それに励みなさい」

 

椛「・・・ハイ・・・」

 

射命丸「ん~?返事が遅いし小さいぞ~?しっかりしなさ~い。

    それじゃ、行ってくるわね」

 

椛「」

 

その後、椛がなんて言ったのかは分からないけど、帰って聞けばいっか。

そんなことを思いつつ、飛ぶ速さを加速させる。景色が飛ぶ。

 

風を肌で感じて、スカートが突風でめくれそうになったので、慌てて空中に停止して

スカートの裾を直す。

 

射命丸「フー、早く飛ぶのは気持ちがいいけど、フー、スカートがめくれちゃうし・・・

    フゥ~、何より疲れるのよねー・・・はぁ・・さて」

 

息を整え、仕事の準備もついでにすることにした。

首からヒモで下げている「カメラ」を手に取り準備する。

 

このカメラは、技術にたけている「河童」達に頼んだ代物で、パシャッとフラッシュを

たき、その瞬間の景色を「写真」に閉じ込める。

 

また、弾幕も消すことができるので非常に重宝している。

 

射命丸「さてさて・・・それではネタでも探しに行きますか!」

カメラの準備を終え、さっきより緩やかな速度で空を飛行していく。

 

 

妖怪の山の麓から河童の河をなぞり、霧の湖に出る。

そこからさらに妖怪の山の反対へ、ずーっと行くとそのうち魔法の森が見えてくる。

 

その妖怪だらけの森の近くには、この幻想郷の中でも数少ない人間が住む集落がある。

通称、「人間の里」。

 

人間の里、と呼ばれてはいるが妖怪も当然のようにいるし、私もネタを探して

里に降り立つことがある。

 

また、人間の里の実質的支配者も人間ではなく、妖怪だ。

妖怪たちが最も恐れていることは、いくつかある。

 

 

自分たちの存在が完全に忘却の彼方へと葬られること。

 

人間がこの幻想郷からいなくなること。

 

龍神様が怒り狂うこと。

 

そして、人里から人里を支配しようとする人間が現れること。

 

この幻想郷では人間を支配するのは人外でなくてはならない。

その理由はよく知らない、考えたこともない。

 

兎に角、人間が支配してはだめなのだ。

 

 

 

・・・話を戻しますが、この人里から離れると「迷いの竹林」などがあり、そこには昔

妖怪を狩る人間たちが暮らしていたとされ、その一族の子孫じゃないのかと

噂が立った死なない人間がいる。

 

ま、この話は別のときに。

 

 

 

 

射命丸「んふー・・・全然ネタが見つかんなわねー・・・

    こりゃ、私のジャーナリスト人生の中でもベスト3位に入るほどの

    平和な日ね・・・誰か事件でも起こしなさいよ・・・」

 

そう空を漂いつつあくび交じりにぼやいていたとき、最高のネタが転がり込んできた。

 

 

私の頭の上を、何かが通ったのだ。

 

射命丸「え」

 

 

私は不審に思い、ゆっくりと顔を真上に向ける。

 

 

眩しい。それは全てを焼かんばかりに地上を照らす陽光であった。

だがそのまばゆいばかりに光り輝く遥かなる太陽とは別に、私に顔を照らす

弱い光があった。

 

 

その光は、虹色に光り輝き、私の服や顔を綺麗に染めている。

 

私はその光の正体が気になり、さらに上を見上げ見渡してみた。

視界の端に鮮やかな翼が見える。

 

私の黒くきらめく翼がひどくかすんで見える程の輝き。

 

 

 

 

 

その虹色の光の正体は。

陽光を浴びて神秘的に光る、七色の翼をもつ巨鳥であった。

 

 

 

私はその神々しすぎる姿を何度も何度もカメラに収めた。

何枚も、何十枚も。

 

写真に収め続けた、が。

 

残念なことにその時私は気が動転していたせいか、カメラがブレてしまっていたらしい。

そのことに気付かず私は何度も何度も写真に撮った。

 

 

その結果、綺麗に収められた写真は46枚中13枚という失態を犯していたことに

気付いたのは、仕事を終え妖怪の山に戻る途中であった。

 

 

しかし、私はまだ納得しなかった。

 

「いったいどこに住んでいるのだろうか?」

 

その疑問の答えを知るべくその巨鳥を追うも、結局気づいたら巨鳥を見失い、また同じ

ところに戻ってきていた。

 

 

射命丸「・・・・・・・・・・」

 

私は、このジャーナリスト人生の中で最も平和、と言ったがそれは間違いではない。

平和だが、事件はすでに起きていた。と考えるべきだろう。

 

 

射命丸「あの巨鳥について知ってそうな人物は・・・稗田乃家の阿求さんに聞いて

    みましょうか・・・それとも、気は乗らないですが紫さんにインタビューでも

    しかけましょうかねー」

 

そんなことを思いつつ、今日は早く帰ろうと思い、妖怪の山へと戻ることにした。

 

その途中、白狼天狗の・・・え~と・・・そう栄。栄ちゃんが私を呼びに来て

それで戻るつもりだったしということで、栄ちゃんに連れられてきてみれば・・・

 

 

射命丸「なんですかなんですかー!今日の私バカヅキすぎますよー!

    うふふふふ・・・思わず変な声出ちゃいましたよ・・・」

 

そう最高にハイな気分で椛たちにあいさつ代わりに言って、帰ってきたのは。

 

椛「・・・文さん・・・」

微意「・・・・・・・・・・」

 

冷たい視線と沈黙、そして

 

 

???「・・・ ・・・ ズッズッ!」

 

洞穴を震わす唸り声であった。

 

 

To be continued・・・

 

 




現在の確認されているポケモンとトレーナー

・博麗神社

博麗霊夢/イーブイ

????/カイロス

・魔法の森

?????/ゲンガー

???・???????/ジュペッタ


・その他

レジギガス(Lv、30)

技、
・??????
・はかいこうせん
・かげぶんしん
・ドレインパンチ

ホウオウ(Lv、??)

技、
・???????
・?????
・??????
・にほんばれ


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7ページ目 巨神兵と3000年の旅人

すいません、遅れました。
七話目です。
多分あと少し、ギガス戦は続くと思います。

あと、私はポケモンのプラチナが一番好きです。


心を落ち着かせ、微かな空気の振動で気配を探る。

 

まず、視認できる人数は、1・2・3・4・5・・・

では、洞穴の外はどうだろうか?

 

 

1・・・5・・・15・・・35・・・70・・・100・・・

 

 

多い。多すぎる。これはあまりにも人数が多すぎないか?

それほど、私は警戒され、危険と判断されているのだろうか?

 

 

・・・しかし、そんなことは関係ない。

今、目にし、感じ取っている気配の全ては敵対すべき「相手」であるには違いない。

 

私の主はこう言っていた。

 

『我々は王族。しかし、ギガスよ。王だからと言って魔獣達を殺してはならないし

 悪政を行ってもいけない。必要なものは相手を敬い、感謝することだ。

 ある国では、感謝のしるしとして桃色の花を渡したりもしている。

 敬う行為は、どこの国でも必要であり、感謝という「感情」にも感謝するべきなのだ。

 いかなる相手でも侮辱などしてはならないぞ。それを忘れるな』

 

さっき、奴らはかなり高圧的な態度をとっていた。

それは敬いの態度ではない。侮辱だ。

 

私が知る中では、侮辱をする人間は、わるいおうさまくらいしか知らない。

きっと、奴らは。そのわるいおうさまの意志を継ぐ者達だろう。

 

 

 

 

ならば根絶やしにしなければ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

文さんと白狼天狗団のみんなが助けに来て、そのまま戦闘に入って約20分。

 

戦況は、イイとは言えない。

 

ほとんどの者が傷を負い、対する相手もかなり疲弊している。

 

これ以上の戦闘は不可能。それは分かりきっていることだったが・・・

 

 

椛「こうも暴れまわってしまっては・・・手が付けられない!」

 

巨神兵は文字通り、暴れまわっていた。

 

暴れまくって、約5分は経つ。

暴れている理由はきっと、文さんの弾幕のせいだろう。

 

~5分前~

 

文「いきますよー!   岐符「サルタクロス」!」

高密度の光弾が文さんの団扇から大量に打ち出され、その全ての光弾が巨神兵へと向かう。

巨神兵、その図体の割には意外に素早かったが、これは避けられず、まばゆい光を放つ

光弾に体をもだえる。

 

「あやしいひかり」

 

 

文「おっ、結構効いてますねえ」

 

そう文さんがのんびり呟いている間にも巨神兵はフラフラと立ち尽くし、他のみんなは

その隙を逃さず追撃に回っている。

 

いける。このままいけば生け捕りにし、労働力として扱ってもいいだろう。

その時はそんなことを考えていた。そのせいで行動が一瞬遅れた。

 

巨神兵が腕を素早く振り上げる。

そして・・・・・・

 

 

思いっきり振り下ろす。

 

 

「ギガインパクト」

 

 

一瞬何も見えなくなる、何も聞こえなくなる。

微かに一瞬、衝撃で吹き飛ばされたみんなが見えた気がしたが、そのまま意識はどこかに

吹っ飛んでしまった。

 

 

 

 

目が覚めたのは、意識を失ってそんなに経ってない頃だろう。

あたりには砂煙が立ち込め、深夜のように静まり返っている。

 

そこに、巨大で黒い影が、疲れ切ったように眠っていた。

 

 

 

・・・今しかない・・・

 

文さんほど力はないが、弾幕で追撃すれば倒せるかもしれない。

そうすれば私も・・・

 

そこまで思考を巡らせたところで巨大な影が起き上がる。

その影が起きるとほぼ同時に、みんなもふらふらと立ち上がる。

 

 

もう、戦える力はほとんど残っていない。

文さんは、どこにいるだろうか?

 

気付けばさっきまで上空にいたはずの文さんの姿が見えない。

うまく逃げたとは思うが・・・

 

 

そんなことを思っていると突然。

 

 

巨神兵「ズズズズズズズズズズゥゥッ!!」

 

まるでこの世の全てを呪わんばかりに怒りに燃えた、巨神兵の咆哮が洞穴を揺らす。

 

そうしたかと思ったら、今度は急に自分のことを攻撃し始めた。

かと思うと突然あらぬ方向に拳を打ち出す。

 

 

まるで混乱したかの如く、いや、確実に混乱していた。

 

 

椛「・・・・・」

私はしばらく動けず、巨神兵があらぬ方向に攻撃をする様子を黙ってみていた。

 

 

 

その攻撃パターンをよく見ていると、かなり技が多彩であるということが分かる。

 

 

自らを多数に分裂させたかのように見せる分身術や、繰り出した拳にあたった岩のコケが

その拳に吸い取られるように枯れていくということもあった。

 

 

椛「・・・」

私は、「もうこのまま眠ってしまおうか」、とか、「文さんが何とかしてくれる」

などそんなことを思い、洞穴内で暴れまくる巨神兵のことを眺めていた。

そのときに、突然後ろに気配を感じ、振り向く。

 

 

そこに立っていたのは、巨神兵と同じように疲れ切っていた文さんの姿であった。

 

無事だった!

 

文さんの無事が確認でき心の底から安心している自分に驚く。

いつもだらしが無く、嫌な仕事も押し付けられるのに、なぜだろうか?

 

この状況を何とかしてくれるはずだから?

 

単に文さんのことが好きだったから?

 

安心したことについて深く考えるが、思考を巡らせることが難しくなっていき

目の前が真っ白になっていき

 

私の体は地面に倒れ伏せた。

 

 

 

その様子を無表情で見つめていた射命丸は、椛の頬に手をのせて優しく語りかけた。

 

 

文「椛、お疲れ様。後は私に任せといて」

そう眠ってしまった椛に呟くと、懐から一枚のカードを取り出し、叫ぶ。

 

 

文「 『無双風神』 」

 

 

そう叫ぶと同時に突風が巻き起こり、射命丸自身も突風のごとく飛び廻り、弾幕を

ばらまく。

 

 

その弾幕に打ちひしがれた巨神兵は大きな音を立てて背中から崩れ去った。

巨神兵が地面に倒れ、意識を失ったのを確認して、

 

文「名も知らぬ巨神兵・・・貴様は我々が代々守ってきた「妖怪の山」に無断で

  侵入したことに飽きたらず、私たちの同胞を傷つけたこの報い。

  目が覚めたら思いっきり晴らしてやる、覚悟しておくといい」

 

そう巨神兵に捨て台詞を吐き、意識が戻った白狼天狗団と共に、負傷した仲間の介護に

尽くした。

 

 

 

 

数日後・・・

 

この天狗たちと巨神兵との戦闘は瞬く間に新聞で幻想郷中に広まり

 

巨神兵は眠ったまま山の神や巫女に封じられ。

 

巨神兵の存在をいち早く発見し、的確な行動をした椛たちには、給料アップとしばらくの

休暇をもらい。

 

戦闘に勝利した射命丸に至っては、今まで以上に新聞の購買数が伸び

大天狗様から様々な恩赦を受け取ったという。

 

 

しかし、山の天狗たちが思いがけないボーナスにうかれている間。

人里ではもう一つの事件が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「人間の里・・・大通り」

肉屋、八百屋、酒屋、雑貨屋・・・

 

様々な店が路上に面して客引きを行っているはずの真昼間。

この日の昼間は、とてつもなく騒がしかった。

それは客引きをしている店員の声でもなく、盗賊に荷物を盗まれた被害者の怒号でもない。

 

 

それは、「動揺と恐れの声」と、「焦りと畏怖の声」であった。

なんとか喉から絞り出すような震えた声は、里の住民たちの口から発せられていた。

 

 

 

人間・A「なっ!なんだおまえはぁ!」

人間・B「化け物かっ!?」

 

人間・C「女子供は家の中へ!」

人間・D「でかい・・・本当に、「人間」なのか?!」

 

 

 

人間の里・・・

 

幻想郷の中で最も人間が住む集落のことを指すのだが、人間以外の者達、妖怪も住んでいる

幻想郷の中でも最重要地域の一つに数えられるほど大切な地域であった。

 

 

そこに、ゆうに3Mはある大男がのそり、のそりと通りを歩いていた。

 

 

赤色のニットキャップをかぶり、その帽子の中から白色の長髪が肩まで下がっていた。

服はボロボロで、袖や裾が合わないのか、アームカバーやレッグウォーマーで

継ぎ足されている。そのボロボロの服の胸部には、何の用途に使うのか、妙な「鍵」

がぶら下がっている。

 

 

 

大男の名は「AZ」(エーゼット)

一匹の魔獣のために破壊の神となり、その魔獣を探して3000年も世界を彷徨う

かつての国の国王である。

 

AZ「・・・・・・」

 

人間・A「おい!てめぇに聞いてんだぞ!?」

大男はそう大声で問いかけてくる声に耳も傾けず通りをゆっくり歩いていく。

 

 

AZ「・・・フラエッテ・・・心配するな、私がついている」

 

大男は、愛した魔獣の名を呟き、腰につけていた紅白の球に手を添え、またゆっくりと

大通りを歩きだした。

 

 

 

 

To be continued・・・




ポケモントレーナー、「AZ」のポケモンについて。

・ヌケニン  Lv60

・コータス  Lv60

・ゴルーグ  Lv60

・シンボラー LV60

・フラエッテ LV100





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8ページ目 旅人は空腹を満たしたい その①

シロナさんふつくしいです!
AZさんかっこいいです!
アカギさんもかっこいいです!
ポケモンのチャンピオンや悪の組織のボスはみんなかっこいい&ふつくしい!


ただしサカキ、てめーはだめだ。


午後。昼下がり。

 

射命丸達が妖怪の山にて巨神兵を打倒した後、すぐに射命丸は倒れた巨神兵の写真を撮り

新聞を作り上げた。

その速さはまるで疾風のようで、新聞を配る速さもまさに「風神」のごとしであった。

 

その出来立てほやほやの新聞をさも食い破らんばかりに読み入っている一人の少女がいた。

 

名前は「本居 小鈴」(もとおり こすず)

貸本屋、「鈴奈庵」(すずなあん)を営んでいる「人間」の少女である。

 

しかしこの少女。人間であるにも関わらず、一つの危険な「趣味」を持っている。

それは「妖魔本」という妖怪が書き記された書物のこと。

その変わった本を集める。これが小鈴の趣味である。

 

ではなぜ、この趣味が危険なのか?それを今から説明しましょう。

 

妖魔本とは、主に三つの種類に分けられる。

 

まず、「妖怪が書き記した書物」のこと。

 

二つ目は、「術や魔法がかけられている書物」のこと。

この二つはまだ安全な方である。

 

問題は「三つめ」。

 

 

「妖怪が封印されている書物」。これはたいそう危険なのである。

 

あっという間に封印されていた妖怪が解放され、持ち主を襲いかねないからである。

小鈴自身だって、手紙に憑りついていた幽霊に操られたこともあったし

泥棒扱いされかけたこともあったのである。

 

こんなに危険な目にあったのになぜか彼女は妖魔本集めをやめない。

巫女に注意されたとしてもやめようとしない。

 

 

それは麻薬のようにスリルの中毒性にはまったからなのか、単に反省する気が無いのかは

彼女自身にしかわからないのである。

 

 

さて、この日。この少女は、買い物を頼まれ大通りを歩いていた。

もう春は終わり、夏の日差しのように熱された光線が肌を照り付ける夏日。

 

 

 

小鈴は、偶然出会った友人、「稗田 阿求」(ひえだの あきゅう)と共に

大通りを親しく話しながら歩いていた。

 

 

 

小鈴「ねえ、見た?あの新聞」

 

阿求「ええ、見たわ。なかなか事例の無い異変であったから興味を惹かれたのよね」

 

小鈴「ほんと、驚きだよね。しかも最近に起こったことらしいし」

 

阿求「それにも驚きだけど、私はこの巨神兵。間近で見たくなったわ!」

基本的に、幻想郷の少女たちは好奇心旺盛である。

 

小鈴「私だって見たいけど、」

阿求「分かってる、分かってるって!」

そこまで言いかけたところで阿求が突然口をはさみ、ペラペラと愚痴をこぼしだした。

 

 

阿求「そりゃあ、私だってできればいち早く取材にもいきたい気分なのよ!

   でも現場は「妖怪の山」!!行くには霊夢さんの力が必要になるし

   それに、封印した巨神兵を見せてくださいって言って、『いいですよ』って

   いう訳もない!あーもう!本当に悔しいわー!」

 

小鈴「はは・・・」

悔しさのあまり早口で愚痴をこぼした彼女の様子を見ていた小鈴は、ただただ笑うしかなかった。しかし。その小さな笑いも、ブツブツ流れる愚痴さえもかき消される

ざわめきが鼓膜に響いた。

 

 

阿求「あら?なにかしら?」

阿求はもう愚痴を言いきってスッキリしたらしく、ざわめきの方に興味が引かれたらしい。

その阿求の変わりようを見て小鈴は多少ビクついたが、自分もざわめきに興味がわく。

 

 

ざわめきは、米屋の前で起きているようであった。

ここからではよく聞こえないが、米屋の店員が何かを叫んでいて、ざわめきを作り出していた取り巻きの人間たちも、何かを叫んでいる。

 

阿求「なにかしら?行ってみる?私は行くけど」

そう問いかけたにもかかわらず阿求はどんどん米屋に向かって歩いていく。

小鈴はもう米は買ったのだが、置いてきぼりにされるのが嫌なので、仕方なくついていくことにした。

 

その米屋の前のやじ馬たちの横をすり抜け、やっとのもいでざわめきの中心へとたどり着いた。

 

そこでは、米屋の店主が誰かと言い合いをしていた。

いや、言い合いという言い方はやはりふさわしくないだろう。

 

なぜなら、米屋の方が一方的に相手に向かって怒号を発していたからである。

また、相手は相手で米屋の怒号とは対照的に落ち着き払った声で対処していた。

 

 

米屋「ふ、ふざけんじゃねぇ!こんなものでう、(うち)の米を渡せるかってんだ!」

米屋の震えた怒号が飛ぶ。

 

???「すまない。私は今、これくらいしか持ち合わせていないのだ。

    だが私と、私の「ポケモン」達はかなり飢えているのだ。

    ここはどうか、これと交換してくれ」

外来人が怒りに対処し、交渉を持ちかける。

 

相手はどうやら「外来人」のようで、幻想郷では見ない服装をしていた。

そして、外来人はコメを買う金が無い、ということで「物々交換」を迫っているらしい。

普段ならお金のない外来人になら無料(ただ)で提供してくれるのが情けであり

周知のルールであることは人里に住むものなら誰でも知っているはずである。

 

しかし、この外来人。ただの外来人ではないということは小鈴にも阿求にも、米屋の主人でさえ分かっていた。

 

普通の外来人であったなら、外の世界の通貨を出し、それで買い物をする。

この幻想郷にも外の世界の通貨はある程度回っている(一部コレクションとして)。

 

 

しかしこの外来人は、お金の代わりに「木の実」を差し出している。

それもこの外来人が差し出している木の実はどれも見たことが無い色や形のものばかり。

 

これでは不気味がって交渉を受け入れられないことは分からないでもないが、米屋の店主が

交渉受け入れられない理由はもうひとつあった。

 

 

それは、この外来人の「身長」であった。

 

 

外来人の男はしゃがんでいる。しゃがんでいて、立ち上がっている店主と同じ目線の高さ。

この外来人、「身長」が高すぎる。

 

小鈴や阿求と比べても、圧倒的な差があり、小鈴たちが見上げ、外来人が見下ろす、という

状態になることであろう。

 

その約3mはある大男はその恐ろしい風貌とは裏腹に、非常に冷静で物静かであった。

 

 

米屋「くっ・・・そんなに飯が食いたきゃ他へ当たれ!(うち)は絶対お前には売らん!」

 

大男「・・・そうか、分かった。では他にあたるとしよう」

大男は納得したようで、他に米屋が無いか探しはじめた。

 

 

 

小鈴「なんか、すごい人に会っちゃったね・・」

阿求「行くわよ」

 

 

小鈴「え?」

突然の阿求の誘いに動揺を見せる。

 

そんな小鈴の様子を見て阿求はため息をつきこう言った。

 

阿求「いいかしら、小鈴?私達、稗田家は代々幻想郷の歴史や妖怪のことについて書き記していることは小鈴(あなた)も知っているはずよね?」

その声は少し震えていて、新しいおもちゃをもらった子供のように興奮していた。

 

ああ、またこれだ。阿求は何か面白そうなことが目の前にあるとそのことに夢中になる。

こうなった阿求はもう止められないだろう。

 

阿求「さ、行くわよー!」

阿求は小鈴の静止なぞ気にせず、グングン大男に向かって歩いて行った。

 

小鈴「う、うう~・・・もう、分かったわよッ!」

 

小鈴も小鈴で一人になるのは嫌なので、仕方なくついていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「博麗神社」

 

霊夢「いい?イーブイ。これから弾幕をある程度放つから、できるだけ避けてみてね」

 

イーブイ「ぶいぶい!」

場所は変わって博麗神社。

霊夢は、「イーブイ」と共に訓練を行ったいた。

 

異変解決に向けての行動は、紫がまだ傷の修復が出来ず、行動ができないため

仕方なく訓練をしていたのである。

 

彼女自身は訓練なんかしなくとも、十分に強いのであるが、訓練していたのは

彼女のイーブイの方である。

 

まだ異変解決に向けて行動をするのは、できないので。

出会ったイーブイにも異変解決の手伝いをさせてみようという思い付きから、訓練を

行っていた。

 

 

霊夢「いい?いくわよー」

そう軽く言い、弾幕を放つ。イーブイはそれをかいくぐって避ける。

なかなか上手い。

 

霊夢「すごいじゃない!上出来よ!」

そう霊夢が褒めるとイーブイも「ぶいぶーい!」と嬉しそうに鳴いた。

 

 

霊夢「さあ、もう一回行くわよ!」

イーブイ「ブーイ!」

 

昼下がりの神社に、少女の声と彼女の「ポケモン」の声がこだまする。

 

 

 

To be continued・・・



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9ページ目 旅人は空腹を満たしたい その②

実質的10話目。

しかし表記的には9話目なのである。


腹が減った。

とてつもなく腹が減った。

 

しかし食べ物はあるにある。ただ、持ち合わせているものはこの「木の実」しかないので

これを食べてしまったら、米やパンと交換できなくなる。

それだけは避けたいものである。

 

しかし、どうすればいい。

 

木の実と米を交換してくれる米屋は一人もいなく、料理屋に至っては「怪物」と罵られ

店から追い出されてしまった。

 

 

もうどうしようもない。

腹が減ってしまっては、満足に行動もできない。

 

仕方なく民家の壁に寄り添い、少し休憩をとることにした。

今考えられるのは、空腹のことである。

 

しかし、何も自分だけが空腹を満たそうとしているわけではない。

私には「ポケモン」達がいる。

彼らも腹をすかし、主人が飯を持ってきてくれるのを健気に待ってくれているのである。

 

だが、もうどうしようもない。

私はここで餓死しても、埋葬してくれる人間はいないだろう。

 

だが、ポケモン達だけは、「フラエッテ」だけはなんとしてでも外に逃がして

やらなければ、彼らも自分と同じようにひどい目に合うかもしれない。

それだけは絶対に、なんとしてでも避けなくてはならない。

 

 

腰につけた紅白の球、「モンスターボール」に手を伸ばし、ポケモン達を出そうとした。

だが、その行動は未遂に終わる。

 

気付けば壁に寄り添っている自分を見つめている影が二つ。

少女が。二人の少女が私のことを見つめていた。

 

 

AZ「・・・・・なにか、用かね?」

そう言ってみせると、二人の少女の内一人がにっこりと笑い、こう言ってきた。

 

 

阿求「あなた、おなかがすいているんでしょう?」

その声は、見た目の幼さには似合わない、ひどく落ち着き払った声であった。

 

AZ「・・・そうだ」

違和感を覚えながらも、質問に答えてやる。

いくら空腹で死にそうだからとはいえ、人としての礼儀は忘れてはいない。

 

その質問の答えを聞いた少女はさらに笑い、

阿求「よかったら、私の家に来ないかしら?ご飯、ご馳走してあげるわよ?」

 

 

驚いた。

 

まさかこんな幼い子供に、しかも少女に食事をごちそうしてもらえるとは。

 

AZにとっても、今までにない経験であった。

しかし・・・・・

 

AZ「有り難いが、遠慮しておこう。少女に食事をごちそうしてもらうなど

  失礼極まりない行為だ。気持ちだけ受け取っておこう」

 

そう助けを伸べてくれた少女に礼を言い、立ち去ろうと立ち上がったときに

少女の姿が目に入る。

 

 

それは、振り袖姿の可愛らしい少女であった。

来ている美しい着物、整えられた髪型、そして・・・

 

 

その小さい右手には自分のモンスターボールの一つが握られていた。

 

 

AZ「ぬッ!それはっ!」

私のボールだぞっ!、と言いかけたところで目の前の少女がいやらしい笑みを浮かべ

話しかけてくる。

 

 

阿求「この紅白球。なにか、大切なものなのね?返してほしいかしら?」

 

AZ「ああっそうだ!すぐに返すんだ!」

 

 

 

 

 

 

そう、すぐにでも返してほしいのだ。

なぜなら、あのボールはフラエッテのボール。

 

二度と失いたくない。

二度と離れたくない。

 

その思いが、稲妻のごとく脳を駆け巡り、必死で返してくれと懇願した。

すると少女は、

 

阿求「返してほしいのなら、家まで来てください。いろいろと話したいことがあるので。

   ちゃんと家まで来てくれれば、この紅白球は返してあげますよ」

 

AZ「・・・分かった、すぐに向かおう・・・」

 

フラエッテを返してくれるのならば、どんな拷問や 罰でも受けるつもりだ。

この少女は信用できない。

油断してはならないぞ。

 

自分にそう戒め、少女の後を歩いて行った。

 

 

一方、阿求と共に来たもう一人の少女、小鈴は。

AZの後ろをおどおどしながら歩いていた。

 

なにせ周囲の目が痛いし、お使いの途中に阿求と出会ってしまったので、買い物袋はまだ

腕に下げたままである。

 

小鈴(早く帰りたい・・・)

そんなことを小鈴は思っていた。

 

 

 

 

 

「稗田家~客間」

 

 

 

阿求「さ、ど~ぞー」

阿求が調理が乗った盆を持って来てくれた。

いつもなら彼女の付き人が運んでくれるのだが、阿求が運んできたのには理由がある。

 

まず、こちらのことを信用してほしいということ。

そして、警戒心を薄くすること。

 

この二つが目的であり理由である。

こちらのことを信用し、警戒心も薄くしてくれれば、いろいろなことを容易く聞き出せるからである。

 

そのためにも付き人には頼まず、自らの手で料理を運んできたのだ。

 

その料理は、焼き魚とたくあん、そしてご飯ががついているだけのごく簡単なものであったが、このようなものの方が食べやすいと思ったまでである。

 

AZ「・・・すまない」

大男はそう謝り、慣れない手つきで箸を持ち上げ、食事を始めた。

 

 

 

「~大男食事中~」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

AZ「・・・すまないな、ごちそうしてもらって」

信用できない、油断はしないと自分自身に戒めたはずなのに、料理が目の前に置かれたとき

にはもう、考えることを放棄していた。

ただ飢えを満たすために食事をしてしまった。

 

これではいけないと思い、気を引き締め、何気に目の前に座った少女の目を見据える。

 

阿求「さて、えーと・・・名前をお聞きしてませんでしたね」

 

AZ「・・・まず自分から名乗ってくれないか?」

まずは情報を探る。

ここがどこなのか。聞きたいことはかなりある。

まずは、この少女の名前からである。

 

阿求「あら、失礼。私の名前は「稗田 阿求」(ひえだの あきゅう)と申します」

 

AZ「・・・AZだ」

 

阿求「そうですか。ではエーゼットさん。いくつか質問に答えてもらいますよ」

 

まさかこの少女も、私から情報を聞き出そうとしているとは。

だが、それはそれで好都合。

 

AZ「・・・ならば、私からも質問をさせてもらうが、構わないな?」

と言い、相手の返答を待つ。

 

すると、少し興奮したような声で

阿求「いいですよ、それでは早速質問させてもらいますがいいですか?」

 

私は口の周りを薄汚れたハンカチで拭きながら、「構わない」と言い、相手の質問を待つ。

 

阿求「それでは質問させてもらいます」

 

阿求は、ゆっくり深呼吸をし、質問をぶつける。

 

 

 

 

 

 

 

阿求「その紅白のボールはいったい何ですか?」

 

 

To be continuede・・・

 

 



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10ページ目 見知らぬ土地、腐れ縁の仲

ガンガン遅れてしまってますね・・・

そして、ズンズン遅れていくのです・・・

スイマセン!


阿求「それでは、AZさん。あなたにいくつか質問させてもらいますね」

 

AZ「ああ、構わない」

 

阿求「では質問させてもらいますね!」

 

私は、質問に答えるのには慣れているつもりだ。

なにしろこの身なりでこの背丈。質問されない方がおかしい。

今まで何度かポケモントレーナーやジュンサ―さんに職務を質問されたこともある。

 

ある程度の質問に対してはすぐに答えられるはず。

何を質問されるか分からないが、なるべく答えるようにはしよう。

 

 

阿求「その腰につけている紅白の球はなんですか?」

 

 

困った。

いきなり困った質問が来た。

 

 

「その腰の紅白の球はなんですか?」ごく簡単な質問だ。ごく簡単な質問だが返答に困る質問だ。

 

 

「この紅白の球の正体は『モンスターボール』

正式名称『シルフカンパニー製 ポケットモンスター捕獲用ボールカプセル』

 

これらの名前を縮めて『モンスターボール』と呼ばれる代物だ」

 

 

こう答えてやればいいわけだが、この少女に対する疑問が返答するのを邪魔している。

 

この少女は・・・この少女達は「モンスターボール」のことを知らない?

この疑問について、どう切り出せばいいか・・・

 

阿求「あの、すいません」

 

AZ「!・・・なんだ?」

 

阿求「その紅白のボールは何なのかまだ答えてもらってないんですが」

 

AZ「・・・・・知らないのか?」

やっと口を開き返答する。

阿求「・・・はい、私の記憶にはない道具ですね」

 

AZ「・・・この紅白の球は、『モンスターボール』と言う名の道具だ。

  聞いたこともないのか?」

 

阿求「はい、知りません」

 

AZ「シルフカンパニ―という名も?」

 

阿求「いえ、全く聞いたこともないです」

 

AZ「・・・そうか」

この少女たちの服装。モンスターボールのことを知らない。

ましてや世界的大企業の会社名も知らない。

 

これらのことから私はある結論にたどり着いていた。

 

 

 

AZ「失礼だが、ここは『ランセ地方』、という土地では?」

 

 

 

 

ランセ地方

 

 

 

 

他の地方とはなるべく関わらず、明確な支配者も定まっていない特殊な土地だという。

 

なにせ、ポケモンを出したまま連れ歩くという。

 

少し前、ジョウト地方でも同じようにポケモンを外に出し、連れ歩くという

ことをやっていたようだが、それは言うならばコミュニケーションを深めるための

方法の一つに過ぎないが、ランセ地方では違う。

 

 

 

ランセ地方では、モンスタボールを使わない。

ジョウトではちゃんとモンスターボールを使って、自由に出し入れできるため

外に出したまま連れ歩けるが。

 

ランセではボールを使わずに、トレーナーの「想い」のみでキズナを深めるらしい。

そのため、ボールは必要なく、キズナのみでポケモンを自由に行動させ、操ることもできるらしい。

 

そのため、モンスターボールを知らない=ボールを必要としない=ランセ地方?

と考えたのである。

 

かなり信ぴょう性は高いだろう。

 

しかし。

阿求「らんせ・・・いえ、ここは「幻想郷」という土地です」

 

全く違った。

 

 

・・・本当に、ボールもシルフのことも知らない未開拓の土地があるのだろうか?

 

 

AZ「・・・『ゲンソーキョウ』?ゲンソーキョウ地方?知らない名だが・・・」

 

阿求「やはり、あなたは『外来人』でしたか・・・」

そう言ったこの少女の顔は、まるで太陽のような眩しい笑みを顔に張り付けて

 

「絶対この大男からなんとしてでも情報を聞き出す」

と言ったような決意とヤル気に満ちあふれた眼をしている。

 

 

阿求「ここはですね・・・」

 

 

 

 

~少女説明中~

 

 

 

AZ「ヨーカイに、ケッカイ、か。かなり長く生きているが

  今まで聞いたこともない単語だな」

 

阿求「そうでしょうね、あなたがいた世界では忘れ去られた存在、「幻想」となったものな   ので、あまり信用できないような話でしょうけど・・・」

 

AZ「・・・ふむ・・・いや、これは信じらざるを得ないようだ」

 

阿求「!!、あっさり信じてしまうんですか?」

 

AZ「この世の中には不思議なことがある。

  だいたいはそれで片付くもんだと私は思うがね。

  

  実際、私のような存在もいるわけだしな」

 

 

阿求「あっ・・・そういえばあなたが何者か、という質問をまだしていませんでしたねえ」

そのことに気付いたこの少女はまた私の目を見据えて訪ねてきた。

 

阿求「あなたは、何者なんですか?」

 

 

AZ「・・・私は・・・」

実は一国の王だった、なんてこと軽々しく言えないだろうし、嘘をついていると思われる。

ここはやはり、偽りの身分を語っておくべきか・・・

 

そこまで考えたところ、阿求の隣に座っていた少女が口を開いた。

小鈴「あ、阿求?私・・・そろそろ帰らないとだから・・・」

 

この少し気まずい空気に気圧されたからか、お使いの途中というのを思い出したのか

阿求の友人、小鈴、といっただろうか?

その少女はこの客間をそそくさと出ていこうとしたとき。

 

急いで帰ろうとする小鈴を阿求が呼び止め、

 

阿求「小鈴、もう帰っちゃうの?面白そうな情報が手に入るかもしれないのに?」

そう言った。そう言えば小鈴は間違いなくこの大男に質問の雨をぶつけると考えており、

 

なるべく興味をそそるように、かつここから離れれば次はないと思わせようと思ったのだ。

 

しかし、小鈴は口元をゆがませて面白そうにクスクス笑い、すこし早口で阿求に言った。

小鈴「そんなわけないでしょ?この「荷物」だけ置いてまたすぐここに来るつもりよ。

   また来るまで、話を進めないでおいてよ!」

 

そう言い残し、小鈴はいそいそと廊下を走っていった。

その様子を、私は唖然とした感じで眺めていたのを阿求に気付かれてしまい、

少し阿求の口元が緩む。

阿求「まあ、そんなこんなで、小鈴のわがままに付き合ってもらえないでしょうか?」

 

AZ「いや・・・構わないが」

 

正直、あの少女のおかげで緊張が解けた。

あの少女が帰ってきたら、嘘などつかず全てを語ろう。

 

この二人は信用できる。

 

そう思い始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「博麗神社~境内」

 

 

霊夢「あぁ~、疲れたー」

 

イーブイ「ぶい~」

 

先程、イーブイと共に境内の掃除をし、ついでに弾幕を避ける訓練なども行ったので、二人ともかなり疲れていた。

 

霊夢「明日は来るかしら、紫・・・

   いつまで待たせんのよ、まったく~」

 

そう愚痴を言いつつ縁側で寝そべっているところに

???「お~い、霊夢ー!遊びに来たぞ~」

 

一人の訪問客が。(主にお茶や菓子を喰いにくる)

 

霊夢「あら、『魔理沙』(まりさ)。何しに来たのかしら?」

 

魔理沙「いやー、霊夢に見せたいものがあってな」

 

霊夢のことを「空飛ぶほうき」の上から見ている「魔法使い(?)」のこの少女の名は

「霧雨 魔理沙」(きりさめ まりさ)

 

いかにも「魔法使いです」、とバリバリ主張をしてくる黒白の服と、これまた黒白の

大きなとんがった帽子。

 

普段人間があまり立ち寄らない「魔法の森」に、「霧雨魔法店」という変な店を構えている

霊夢の友人の一人で、古くからの腐れ縁である。

 

 

霊夢「なによ?見せたいものって?」

 

魔理沙「いやな、魔法の森で調合の素材を探していたところ見つけた奴なんだよ。

    お~い、もういいぞ。出てきても」

 

そう魔理沙が木立の方へ声をかけるとそこから濃い紫色をした奇妙な生き物が顔を出す。

 

吊り上がり、赤く染まった悪そうな眼ツキ。

頭や背中には尖った棘のようなものが生えており、腕と足はずんぐりした体に

似合わないくらい短く、太い。

ニヤケている口元から真っ白な歯が濃い紫色の体に映えて映り、より白く見える。

 

 

魔理沙「さっき森であった奴なんだが、名前は『ゲンガー」っていうんだ。

    いや、名付け親は私だがな」

 

その『ゲンガー』と呼ばれた生物は、さっきからイーブイのことをジロジロ見てきており

イーブイはその視線が嫌なのかゲンガーに目を合わせないようにしている。

 

霊夢「私にも、あんたに見せたいものがあるのよ」

魔理沙「ほう!どれどれ?」

 

霊夢「このコよ」

そう言い、縁側で一緒に寝そべっていたイーブイを抱きかかえ魔理沙に見せる。

 

魔理沙「へ~、可愛いじゃないか。もっとも、少し弱そうには見えるが」

その言葉を聞いた瞬間、私の心がざわめきだした。

 

霊夢「弱そう?じゃあ、あんたのゲンガーは「強い」のかしら?」

そう挑発的な態度で言ったら、どうやら魔理沙もすこしイラついたらしく。

強い口調で、自慢をするように、大声で言った。

 

魔理沙「ああ、強いさ!もっとも、お前のその小動物は、弱そうに見えるけどなぁー!」

 

そう言われた瞬間、自分の中の何かが切れた。

 

霊夢「いいわ!この果し合い、スペルカード勝負に則って善悪を付けてやるわ!」

 

そう言い、勝負を始めようとしたとき、魔理沙からこんな提案がった。

 

魔理沙「あー、待て待て。ただのスペカ勝負じゃ恐らく私が負ける可能性が

    ほんのちょっぴり高いな・・・そこで、だ。

    

    少し変わった方法で決着をつけないか?」

 

霊夢「・・・変わった、方法?」

 

魔理沙「そ。そーゆーこと。だから少しルールを決めるから神社に上がらせろ」

 

霊夢「縁側でならいいわよ」

 

魔理沙「縁側かー、まあ、よしとするぜ」

 

 

先程までは、一触即発の危険な空気だったのが、ガラリと変わった。

それは友ゆえか、はたまた好敵手という特別な扱い故か

とにかく、危険な空気が去ったことで、魔理沙のゲンガーも霊夢のイーブイも

心なしか安心しているように見えた。

 

 

To be continued・・・



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11ページ目 八雲の復活、地下に迫る異変

珍しく、霊夢たちの方に視点を置いた話です。
そして改めて、自分の語彙力の無さを実感いたしました。


午後、昼下がり。

もう1、2時間もすれば夕方の煌めく陽光が射し、人々は無意識的に

「もうこんな時間、帰らなきゃ」、と思ってしまうようなうっとりする光が差し込む

約2時間ほど前。

 

彼女たちは、「どっちのペットが可愛く強いか」。

それを決着させるべく新たな「スペルカードルール」を思案していた。

だが・・・・・

 

 

魔理沙「・・・こういうのはどうだ?ゲンガーやお前の・・・えー・・・」

 

霊夢「イーブイよ」

 

魔理沙「そう、イーブイとかも私たちの弾幕の手助けをするなんてのはどうだ?」

 

霊夢「イヤよ。怪我でもしたらどうするのかしら?」

 

魔理沙「む・・・それもそうだな・・・じゃあ霊夢は何か案があるのか?」

 

霊夢「私は強さよりも可愛さを求めたいのよ。

   確かに強さも必要だろうけどやっぱり可愛くなくちゃあねぇ・・・」

 

魔理沙「・・・おい。私のゲンガーが可愛くない、とでも言いたいのか?」

 

霊夢「そう思うんならそうなんじゃないのかしら?」

 

魔理沙「なんだとぉー」

 

霊夢「・・・」

 

さっきからこんな感じである。

魔理沙が提案する。

→霊夢が拒否する。

→魔理沙が霊夢の言い方にイラつきを覚える。

→煽る。

→さらにイラつきを覚える。

→無視。

 

そして・・・

 

魔理沙「ああっ、もういい!弾幕ごっこについての話だ」

 

霊夢「それもそうね。喧嘩してもしなくても・・・」

 

魔理沙「どっちが正しいかハッキリするもんな・・・」

 

霊夢「弾幕でならまず負けないわよ」

 

魔理沙「おいおい、新しいルールを考えるんだからな?」

 

霊夢「元はと言えばあんたが負けたくないから提案してきたんじゃない。

   来る前から考えくらいまとめてきなさいよ・・・」

 

魔理沙「ウッ・・・そ、それも・・・そうだが・・・」

 

霊夢「ホラ、また考えるわよ。なにか案出しなさいよ」

 

魔理沙「・・・じゃあ、こういうのはどうだ?」

 

霊夢「あー無理無理」

 

 

無視

→魔理沙が折れる。

→負けず嫌い(両方)。

→魔理沙がさらに折れる。

→魔理沙が案を出す。

 

そして霊夢が拒否する。

 

さっきからこの繰り返しで一向に話は進まず、イーブイとゲンガーは待つことに飽きて

一緒にじゃれあって遊んでいた。

 

その様子も気にせず魔理沙たちはまた同じような話を繰り返そうとしたところである。

 

 

???「んんん~・・・」

 

どこからか声が聞こえてきたのは。

 

魔理沙「ん?誰だ?どこにいるんだ?」

 

霊夢「はぁ~・・・やっと来たわ・・・」

そう霊夢がため息交じりに呟くと空間が怪しく裂け・・・。

 

 

その空間の溝に白い手が置かれ。

 

魔理沙「あ、ああー・・・あいつか・・・」

 

霊夢「アイツよ」

魔理沙も誰なのか分かったらしく語尾に、「関わりあいたくなかったんだがな」

と言い、疲れ切ったようにため息をついた。

 

???「んんんんん!」

 

その隙間から出てきた白い手の持ち主の声なのか、かなり唸っている。

 

そして。

裂けた空間から声が聞こえなくなり手も引っ込むと・・・。

 

バッ!と人影が飛び出した。

地面に着地し、見るも苦しい恥ずかしいポーズを二人の少女の目前に晒し、

キリッ!とこっちを見据えよく分からない効果音を自分の口から発する。

 

???「どじゃああぁぁ~ん。

    八雲 紫(やくも ゆかり)!ふっかぁーつ!」

 

あの紫色の派手な服装をした大妖怪の少女がハイテンションで空間の隙間から飛び出した。

その様子はなんと奇妙で、なんと面白おかしい光景だったことだろう。

 

だが霊夢たちは、いつもの光景のように冷めた目でその様子を眺めていた。

 

紫「・・・・・」

一方まだ恥ずかしいポーズのまま霊夢たちの目の目でカッコつけているこの大妖怪は

自分の姿を客観的に見ることができないのか、まだポーズをやめようとしない。

 

しかし、流石に恥ずかしくなってきたらしく

顔が少しづつ赤らみ、ポーズをやめ、短くため息を吐き、数回咳ばらいをしてから

霊夢に話しかけてきた。

 

 

紫「さて、霊夢。お取込み中急に乱入してきたことと、散々長く待たせておいたこと。

  本当に申し訳ないと思っているわ・・・ごめんね?」

 

霊夢「・・・で、これから異変解決に向けて動き出すんでしょ?」

 

紫「そうよ!それにこっちから仕掛けたことではあるけど少女の体を四っつに

  バラバラに切り裂いた向こうも向こうよ!謝るついでに殴ってやるわ!」

 

霊夢「やめときなさい」

 

魔理沙「異変?なんだ?なんだ?新しい異変か?」

 

めんどくさそうな霊夢と、ノリノリになっている紫と、興味津々な魔理沙。

この状況、珍しいことではないが面倒くさいのである。

この状況を打開すべく、霊夢は話題を変えようと務めた。

 

霊夢「それで、あんた。傷はもう大丈夫なのかしら?」

 

そう言うと紫は少し神妙な表情になり、

紫「・・・いいえ、まだ治ってないのよ・・・。

  今、治っているように見えているのは魔法の糸と術でなんとかツギハギで

  くっけているようなもんなのよ・・・。

  ほんとーにメーワクなのよねー!早く治してほしいわ・・・」

 

そう文句たらたらで紫が言っているところに魔理沙が、

 

魔理沙「いったいどんな異変なんだよ?教えてくれよー!」

 

そう喚いていたので仕方なく、教えてやろうとしたところ、紫が口をはさみ

結局言うに言えなかったが、

代わりに紫が説明してくれるらしい。

 

紫「この異変。今のところ名称はないけど、恐らくとても大きな問題になりつつあるのよ。

  実施知的被害が出ているのは、そうね・・・例えば妖怪の山の巨神兵の事件。

  あれも異変の影響なのよ。天狗たちがその巨神兵を打倒して、洩矢の神が

  封印したみたいだけど。多分、あの巨神兵。また動き出すわね。

 

  他には、そうね・・・」

 

その後、紫から異変についての話をいろいろ聞いていたところ。

一部気になるところがあった。

 

霊夢「あれ、今なんて?」

 

紫「ん?『今まで見たこともない妖怪とも違う生き物が入り込んでいる』。

  それがどうしたのかしら?」

 

霊夢・魔理沙「・・・それって、アレのことじゃあ?」

 

そう声を合わせ、恐る恐る指でイーブイたちのことを指したとき紫は、

紫「・・・そうね。異変の末端ね。今のところどう対処すればいいか分からないのよ。

  あの『ポケモン』達。」

 

と、かなり困った様子で言葉を発した。

紫がこんなに困ったような表情をするのはとても珍しく、

冥界のお屋敷の主人が「もうおなか一杯・・・」とつぶやくのと同じくらい珍しい。

 

そこで、魔理沙が興味を引いたらしく、

魔理沙「?・・・ぽけもん?なんだそりゃ?」と紫に聞いてきた。

 

すると紫は、少し自嘲気味に笑い、

紫「いいわ。説明してあげる。なんでこんなことになったのかを・・・」

 

ツギハギにしている傷をなでながら辛そうに答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「旧都、地霊殿、地下間欠センター」

 

 

フェアリーゾンビ・A「熱い!熱すぎます!」

B「ひぃぃ!火葬だけはいやだぁぁぁ!」

 

???「くっ、熱い・・・なんとかここで食い止めなければ・・・」

 

???「うにゅうぅ・・・なんで私の能力が効かないのよー!」

 

 

あまりにも熱き、地獄の釜。

魂さえ焦がす灼熱に。

地獄の業火も涼しく感じる。

 

火口の番人がマグマを吐きだす。

 

 

 

???「ごぼぼぼぼぼぼぼぼっ!」

 

その姿、血の蛙と言わずなんと言おうか?

 

 

To be continued・・・



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12ページ目 かつての王と動き出す巫女

最近いいことが起こらなくて若干萎えてますが、まあまあ元気でございまする。

なるべく更新を早くしたいので、一週間につき一つの作品を投稿、というペースで
やっていきたいです。


小鈴「ただいまぁー」

 

阿求「あら、お帰り。案外早かったのね」

 

AZ「・・・・・」

 

今しがた、荷物を置きに行った小鈴が阿求の家に戻ってきた。

よっぽど私から話を聞きたいらしく、かなり早い時間で戻ってきた。

 

阿求「・・・さて、AZさん。あなたについての話と外の世界についていろいろと

   教えてください」

 

小鈴「私にも、教えてください!」

 

この少女たちが、なぜ私のことを知りたがるのか。

それは分からなかったが、この少女たちは私に対する警戒心や敵意が無い

ことは明らかだった。

 

なにより彼女からこの世界のことを親切に教えてくれ、昼食をご馳走してもらった

恩がある。それに応えるという意味と、自己紹介のことも兼ねて自分のことと

『ポケモン』達のことを一切合切説明した。

 

 

AZ「・・・改めて、私の名はAZ(エーゼット)

  先程、私の身分について詳しく明かさなかったのは信じてもらえるか

  心配だったからだ。これから私は突拍子もない正気を疑われるようなことを話すが

  信じてもらえるかね?」

 

阿求「それは話してもらわないと」

 

AZ「そうだな・・・では、まずは私の身分からだ。」

 

小鈴「・・・(うずうず)」

 

 

 

AZ「私は、元・カロス地方初代国王、AZ。

  世界で最も愚かな過ちを犯した王だ」

 

阿求「・・・え・・・?」

 

小鈴「・・・え、えっ、ええ・・・?」

 

二人の口から驚愕と唖然に満ちた吐息のような声が漏れ出る。

無理もない。いきなり自分が元・一国の主と言ったのだから。

 

普通は否定され、疑惑の目で見られるのが普通だが、彼女たちは違っていた。

 

阿求「元・国王・・・ということは、昔は王様だったんですか?」

 

小鈴「しかも、なぜ初代の王様が今の時代まで生きているのかしら?」

 

完全に信じてくれているようだった。

 

AZ「・・・信じてくれるのか?」

 

阿求「え?だって、ここは幻想郷ですよ?どんな不思議なことがあっても全然

   珍しくもないんですよ・・・しかし・・・あなたのような『外来人』や『異変』は

   違うけど」

 

AZ「・・・そうか・・・話を続けるが、いいか?」

 

小鈴「その話の続きでAZさんがなぜ今も生きていられるのかが分かるんですね!」

 

AZ「・・・私は・・・・・ある一匹のポケモンを愛していた。

  愛していたがゆえに、過ちを犯してしまったんだ・・・」

 

 

~元・国王説明中~

 

 

こうして私は、すべてを語った。

フラエッテのこと。私のこと。ポケモン達のこと。

破壊の繭のこと。そして、過ちの機械のことを・・・。

 

 

阿求「・・・AZさんにそんな過去が・・・」

 

小鈴「うう・・・気安く昔のことを聞いたりしてすみませんでした!」

 

AZ「いや、謝らなくていい。さっきも言った通りフラエッテとはもうよりを戻している。

  今は幸せだよ・・・」

 

阿求「それで、さっきからどーしても気になるのですが」

 

AZ「なんだ?」

 

阿求「AZさんのポケモンを、ぜひ私たちに見せてください!」

 

小鈴「私からもお願いします!」

 

この二人は、ポケモンのことを見たことも触ったこともなく、

今日私がここを訪れなければこれから一生知ることもなかったのだろう。

 

私としては、毎日のように見かけ、触れ合っているためポケモンのことを知らない

というのは正直言って理解しがたいが、この少女たちに見せてあげてなにも損はないと

思った。

 

 

AZ「・・・分かった。だが外に行くぞ。ここじゃあ狭すぎる」

 

阿求「ありがとうございます!・・・ただ・・・」

そう阿求は少し気まずい表情で小鈴の方を見る。

 

AZ「ん?」

私も阿求の目が向けられている小鈴の方を見てみる。

 

そして、小鈴は申し訳なさげにおずおずと口を開き、

小鈴「・・・今度こそ本当に帰らなければならなくなりまして・・・」

 

そう言ったのを聞き、腕時計に目を通せば、もう夕方という時間帯になり

人々は無意識的に「もうこんな時間、早く家に帰らないと」と思わせる橙色の

夕日が明かり窓から、この広い客間に向かって差し込んできていた。

 

 

阿求「・・・と、いうことですので本当に申し訳ないと思うのですが

   また小鈴のわがままにつきあってもらえないでしょうか?」

 

AZ「まったく構わないぞ。今日はもう遅いだろう。また明日来るといい」

 

小鈴「うう・・・ありがとうございます!」

 

AZ(しかし、宿はどうするか・・・この身なりでも泊めてもらえる宿があればいいが・・)

そう思いながら昼間の里の人々に恐れられた様子を思い出していた。

 

阿求「そうね、それがいいわ。それにAZさん。あなたは、私の家にしばらく泊まっていく

   といいわ。そのほうが小鈴も来やすいし、宿を探す時間も省けるでしょう?」

 

AZ「!・・・まさか、泊めてくれるというのか?」

 

阿求「だってAZさん?明日また小鈴が来るためにも、AZさんの身のためにも。

   間違いなくここに泊まっていったほうがいいわ。」

 

AZ「・・・なにからなにまでお礼を言いたい。本当にすまない。そして有り難う」

 

阿求「そんな深々とお礼を言わなくてもいいのよ。さ、そろそろお風呂ができているはずだ

   から入っていくといいわ」

 

・・・この少女は、どうやら私のことを泊めていくつもりで家に招いたらしい。

この状況。ある意味捕えられているとも考えられるが・・・

 

AZ「・・・お言葉に甘えさせてもらおう」

下手に宿を探して歩き回るよりも、ここに泊めてもらった方が良策だろうと考えた。

 

小鈴「それじゃあ、また明日。抜け駆けは許さないからね!」

そう玄関先で言うと、いそいそと玄関から飛び出していった。

 

 

ポツ、ポツポツ・・・

 

 

小鈴「あら、雨だわ・・・。でもそんなに強くないし、阿求に傘を借りる程でもないかー」

小鈴は、独り言を呟きながら霧雨の仲を小走りで駆けていった。

 

しかし、雨はすぐに止んだ。

小さい黒雲から滴り落ちるように振っていた霧雨は、風に乗り小鈴の方とは逆の方へと

流されていった。

 

このときは、誰も気づかなかった。

 

この小さな黒雲でさえ、『異変』の末端の一つだったことを。

 

このとき雲の中に風神の化身が居座り、どこで暴れようか考えていたことを。

 

このとき地底で、一つの異変を終わらせるべく巫女と魔法使いと大妖怪が

旧都に到着したことを。

 

 

To be continued・・・



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13ページ目 旧都噴火警報 その①

ヒ―ドラン可愛いよヒ―ドラン。
お尻のところにあるツンとした尻尾なんかもう最高に可愛いよ。

あ~、PT世代のポケモン達が可愛すぎて辛い。




人里で小鈴が帰る約一時間半くらい前。

 

博麗神社では、幻想郷の賢者が、空を飛ぶ巫女とえらく普通な魔法使いに

異変のきっかけと、なぜそんなことをしたのか。

ひどく反省した表情で説明をしていた。

 

 

魔理沙「・・・つまりは、すべておまえの自業自得・・・だよな?」

 

紫「うう・・・」

 

霊夢「もうやめてあげなさい。こうしている間にも異変はどんどん深刻になってきているんだから」

 

魔理沙「・・・けっ!今日はこんくらいで勘弁してやる」

そう魔理沙は不満げに言いながらほうきにまたがった。

 

霊夢「さ、なるべく早く行きましょう。この異変が終わったら、『大宴会』開くって、

   約束したんだから。私は一刻でも早く仕事を終わらせたいのよ」

 

紫「・・・分かったわ。・・・・あら?ちょっと待って・・・お酒をおごるとは言ったけど

  『大宴会』開くなんて約束はしてな(霊夢「ハイハイ、さ、行くわよー」

そう言葉を遮り、霊夢は自分の『空を飛ぶ程度の能力』を発現させ、

二人よりも先に空へと飛び立った。

 

紫「ちょっと!話は最後まで聞きなさいよー!」

一方、紫は怒号を発しながら霊夢の後を追いかけ、

魔理沙「よーし!腕がなるぜ!」

魔理沙はほうきにまたがり、かなりのスピードで霊夢たちを追いかけていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地底。

 

そこは、幻想郷の中でも恐れられ、忌み嫌われた者たちの巣窟でもあり、

幻想郷の一大勢力の一つでもある大事な場所である。

 

また、元々は地獄であったため。

まだ地獄の血の池が残っていたりするかなり危険な地域でもある。

 

そこには、『地霊殿』と呼ばれる大きな屋敷があり。

その屋敷の主、「古明地 さとり」 (こめいじ    )は自分の部屋の中で

思いつめた様に机を指で何回も叩いていた。

 

 

さとり「・・・・・・・」

 

とん、とん、とん、とん。

 

チク、タク、チク、タク。

 

机を指で叩く音と、時計の秒針が動く音以外はこの部屋の中を静寂が支配していた。

 

さとり「・・・遅いわね・・・」

さとりは、考えていた。

なにかあったんじゃないか?と。

 

それは約30分ほど前。

 

ことの始まりは、

地下間欠センター担当のフェアリー・ゾンビが少し困ったような顔をして

部屋を訪れてきたことから始まる。

 

フェアリー・ゾンビA「しつれいします」

 

さとり「・・・なにかしら・・・なるほど・・・・・

    間欠泉になにか異常が?・・・分かったわ。

    いますぐ『お空』と『お燐』に確認させるわ・・・

    これでいいかしら?」

 

A「あ、はい。おねがいします」

 

この状況、他から見ればなにか違和感どころか、異常とまで感じる人もいるだろう。

だが、これが日常風景であり、いつものことなのである。

 

古明地 さとりにはあるとてつもない能力がある。

 

それは、『相手の心を見ることができる程度の能力』である。

 

つまり、相手の考えていることが何もかも理解でできてしまうのである。

それ故、人間ばかりか他の妖怪達からも恐れられ、今現在は地下でひっそりと

暮らしているわけである。

 

さとり「さてと・・・お燐?お空?」

そう部屋の中から自分の「ペット」の名を呼ぶ。

すると、

 

???「はい、なんでしょう?さとり様」

???「なーに?さとり様」

 

「二人」の「ペット」がさとりのもとに現れた。

 

一人は赤い髪に黒を基調としたドレス姿。

赤い髪からのぞく黒い耳とドレスの中から現れる猫のような黒い尻尾が

このペットが人間じゃないことを現している。

こっちが、「火焔猫 燐」(かえんびょう りん)こと「お燐」である。

 

そしてもう一人は、

黒い長髪と白を基本としたドレス姿。

しかしそのドレス姿よりも目を引くものが三つ。

 

一つは胸のあたりにつけられた赤い眼球のようなアクセサリー(!?)。

二つ目は背中から生えているのか、黒く大きな翼が呼吸に合わせて微かに揺れている。

三つめは何に使うのか、右腕にブラスターのような筒がセットされていた。

そしてこちらが、「霊烏路 空」(れいうじ うつほ)こと「お空」である。

 

この二人のペットは主の口から命令が下るのを今か今かと待っていた。

 

そして、

さとり「お燐、お空。いまから地下間欠センターの間欠泉に異常が無いか調べてきて」

そうそっけなくペットたちに命令した。

 

お空とお燐は少し嬉しそうな表情で、

「「了解しました!」」

と声を合わせ、いそいそと部屋から出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして今、30分も部屋に戻ってきてないのである。

普通、間欠泉の異常が無いかの確認に約10分ほど。長くても15分だ。

『30分」は流石に遅すぎないだろうか?

 

だが、

さとり(・・・あの子たちなら大丈夫よ・・・)

 

 

そう自分に言い聞かせながらも、さとりの足は自然と地下への階段へと向かっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どこで生まれたのかも分からない。

目の前の生き物達が敵なのか味方なのかも分からない。

 

分からないけどとりあえず、目の前の生き物たちとじゃれて遊ぶことにした。

でも皆僕から離れていく。

 

なんで?どうして?痛い。なんで攻撃してくるの?分からないよ。

 

 

???「ごぼぼぼぼぼぼぼぉ!」

 

 

 

フェアリーゾンビB「あ、熱・・・焼けて、しまいそう・・・」

C「耐える・・・の。さとり様が・・・燐様と空様を、寄越してくれるって・・・」

 

目の前の生き物たちに話しかけても答えてくれない。

むしろ攻撃が激しくなるばかり。

 

なら、いっそのこと。

じゃれて遊ぶのはやめて。

目の前の生き物たちを・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『燃やして』遊ぼう。

 

To be continued




どうしてもPT世代のポケモンが出てくる・・・。

これは運命か、それともただのうっかりミスか?
(はい、うっかりミスです。許してください。)


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14ページ目 旧都噴火警報 その②

間違えて自分の作品にお気に入り登録をしてしまった\(^o^)/オワタ





シンオウ地方の古代文献より一部抜粋。

 

 

この世界が生まれる際に、神はとてつもない熱エネルギーにより一時目を閉じたという。

 

その時に、生まれた世界を巡る火の玉が生まれたのを、神は見逃さなかった。が。

 

 

その光に神が照らされた際に『影』ができており、そこから新たな何かが生まれたのを

神が知ることは無かった。

 

 

幻想郷、『文々。新聞』より一部抜粋。

 

 

そろそろ夏が近づいてきているこの日頃。いかがお過ごしでしょうか?

(中略)

しかし、いくら暑いからと言って、池や湖に飛び込むのは控えたほうがいいでしょう。

水辺の主以外の「何か」が、潜んでいるかもしれませんので・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お燐とお空が地下間欠泉センターに到着して約5分後。

二人は地下間欠泉センターの心臓。「間欠泉」の扉を開けたが・・・

 

二人は言葉を失った。

 

 

 

そこに広がっていたのは「惨劇」であった。

 

 

 

ところどころに大やけどを負ったフェアリー・ゾンビ達が倒れており

ぐつぐつと音を立てる間欠泉はボコボコと煮えたぎる熱湯と化しており、どんどん

水かさが減っていっていた。

 

蒸発していたのだ。

 

間欠泉の温度を超える超常的な熱さにより水蒸気へと化していっているのだ。

 

その光景を呆然と立ちすくみ眺めていた二人に、まだ怪我が軽いフェアリーゾンビが

二人に状況を報告した、

 

フェアリー・ゾンビF「お燐様、お空様!今、この間欠泉は恐ろしい魔物の巣窟に

          なっており、えーと、あまりにも熱く天さえも呪い殺さんばかりの

          熱気が、えーと、えーと!・・・・・」

 

お燐「落ち着きなさい!まずここで、何が、何をしていたのかを説明しなさい」

 

F・「えーと、ですね・・・みんなで、ここの異常を調べていたら・・・・

  間欠泉に「石」が落ちていて・・・それをどかしたところ・・・ヤツが・・・!」

 

そうフェアリー・ゾンビは恐ろしい記憶を思い出したのか、煮えたぎる間欠泉の方を

震える指で指していた。

 

お燐「?・・・間欠泉がどうしたって・・・!?」

 

お空「お?なんだなんだ?・・・あれは・・・なんなんだ?」

 

二人は指された間欠泉のほうを見やる。

間欠泉は、もうほとんど蒸発して水底50cm位の水しか残っていなかった。

 

 

 

その僅かに残った間欠泉に、足を浸している異形の存在があった。

 

 

赤い褐色の体。ところどころに見えるオレンジ色のヒョウ柄。

灰色に輝く鉄が四本の足やいかつい顔を鎧兜のように覆っているが、熱のせいだろうか?

 

頭部に残った鉄の兜以外はドロドロに溶け、血液のように体を巡りまわっていた。

 

 

分かりやすく言い表すことは決してできない異形の怪物。

 

 

その怪物は、お燐たちに気付いたらしく聞くに堪えない無粋な鳴き声を発した。

 

???「ごぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼおおお!」

 

 

二人はすぐさま戦闘態勢を取り、弾幕を発した。

 

 

お燐の弾幕は見事命中、しかしあまり効いている様子もなく、少しひるんだだけであった。

 

お空の弾幕も、緩やかな軌跡を描き怪物の脇腹や頭部に命中した。が。

 

お空「・・・え?」

 

お空の弾幕は怪物の体に吸い込まれていったのだ。

 

その光景を見たお空は、「あまりの熱のせいで頭がやられたのか」と考えたが

そうではなかった。

 

まさしく『吸い込まれていった』のだ。

お空の弾幕を吸い取った怪物は、ダメージを受けるどころかますます元気になって

いくようだった。

 

 

 

とくせい、「もらいび」。

 

 

 

 

お燐「なんで!?・・・お空?手加減なんかしてないよね!?」

 

お空「してない!本気であいつを倒すつもりで撃ったのに・・・・・」

 

 

二人は困惑しており、目の前の怪物の動きに気付かなかった。

怪物は重そうな頭を少し上に揚げ、大きな口から風を吐き出した。

 

風、といってもあの怪物の吐息である。

その吐息はあまりにも熱く、岩すらも溶けてしまいそうだった。

 

 

 

『ねっぷう』

 

 

 

お燐「っく!」

 

お燐は猫の妖怪としての身体能力を限界まで解放し、上に跳んで避けたが

お空は、自分の弾幕をかき消されたショックにより、避けきれなかった。

 

 

なんとか、翼をはためかせ空へと逃げたが両足を吐息に晒してしまった。

 

お空「ぐううぅっ!ぬっく!」

 

両足を吐息に晒されながらも全力を振り絞り翼を動かし空へと逃げたが、

 

お燐「・・・お空!?」

 

そこで力が尽きてしまい緩やかに地上へと落ちていった。

 

お空「うう・・・ダメ・・・だったか・・・」

お空はその時、すべてを諦めて目を閉じていた。

 

お燐(くっ!間に合えっ!!)

 

お燐は、落ちてゆくお空をギリギリ空中で抱き上げ、地面に着地するや否や

地面を思いっきり蹴り、出口の扉を蹴り飛ばし外の回廊へと逃げ出した。

 

 

その回廊も十分に熱かったが、さっきいた間欠泉よりはマシだった。

 

 

すぐさま間欠泉に通じる扉の回廊をお空を抱いたまま離れていき、途中にあった

部屋にお空を寝かせた。

 

お燐「お空?大丈夫!?」

意識があるか確認するためにできるだけ大声で呼びかける。

 

お空「・・・ぅ・・・く・・・大丈夫、だ・・・よ」

どうやらちゃんと意識はあるらしいが、とても大丈夫なようには見えない。

 

熱風に晒された両足は、赤く焼けており、すぐにでも水で冷やさなければ

大やけどを負ってしまい、二度と足を動かせなくなる。

 

そう瞬時に理解したお燐は、部屋を見渡し、使えるものが無いか探した。

 

すると部屋の隅に茶色の分厚い紙で作られた箱が目についた。

その箱の中を探してみると、「ぺっとぼとる」と呼ばれている透明な筒の中に

水がちゃぷちゃぷと波を起こしていた。しかし・・・

 

お燐(いったい誰がこんなものを?)

 

そんな疑問が頭に浮かんだが、目の前で苦しそうに胸を上下させるお空に対する心配で

その疑問は頭の中から消え去った。

 

お燐は「ぺっとぼとる」の中の水をお空の足に振りかける。

 

お空「う・・・うわあ!・・・ぐぐぐ・・・う・・・ふー」

お空は何度か痛そうに呻いたが、そのうち痛みが引いてきたのか疲れた様に息を吐いた。

 

 

お燐「・・・よし、とりあえず応急処置はこれでOK・・・かな?」

 

しばらくすると、お空の両足の痛々しいやけどは少しづつ引いていき、少しづつ

元の肌の色へと変わっていった。

 

そこに・・・

 

「・・・・・お燐?・・・お空に何があったの?」

 

二人の主であるさとりがお燐の後ろに立っていた。

 

 

お燐「!?さとり様!?」

いつの間に後ろに?と聞こうとしたがそれ以前に驚いたことがあった。

 

さとり様なら私に聞かずとも心を読めばいいのにも関わらず

私に状況を聞いてきたのだ。

 

いや、すでに心は読んでいるのであろう。

ただ、認めたくなかったから、私に確認を取っているのである。

 

そこまで考えていると、動揺と困惑の表情のさとり様は、すべてを理解したのかのような

表情になり、お燐に礼を言った。

 

さとり「・・・・・・・・ありがとう、お燐。お空のことを必死に守ってくれて。

    私は・・・そろそろ行かなければならない」

 

お燐「い・・・一体・・・どこへ?」

 

さとり「どこって・・・」

お燐はさとり様の顔を見たとき、ギョッとした。

そのさとり様の顔は、ただただ無表情であったが、その眼の中に復讐の炎をメラメラと

燃やしていた。

 

さとり「どこって・・・お燐・・・その小汚いゴキブリの化身を地獄に叩き落としに

    行くんですよ・・・私のペットを傷つけたことを、後悔する間もなく

    息の根を止めてやるんですよ!」

 

そう言い、あまりにも速いスピードで部屋を出ていった。

 

お燐「・・・さとり様!待ってください!危険すぎます!」

そう叫んだが、その声がさとりのみみに届くことは無く、ただただむなしくその声が

反響するだけであった。

 

その際、私はただ絶望に心を包まれ、すぐに行動がとれずにいたが

よろりと立ち上がり、

お燐自身も部屋から飛び出し、後を追うとしたところ。

 

お燐「わっ!?」

 

 

 

回廊で、誰かにぶつかった。

 

お燐「・・・?」

 

それは、「人間」であった。

妖怪でも幽霊でもない、紅白の服に身を包んだ巫女、「博麗霊夢」であった。

 

 

 

霊夢「っつつ・・・痛いわねー。・・・あら、あんたはさとりのペットじゃない。

   こんなところで何しているのかしら?」

 

お燐「・・・何をしているは、こっちのセリフですよ!」

 

魔理沙「まあまあ、霊夢。速く目的の現場に行って、異変解決して、宴会を楽しもうぜ!」

 

よく見れば、いつぞやの白黒魔法使いと、「霧雨 魔理沙」と、

 

紫「あらあらごめんなさいね?ペットさん。少しお邪魔させてもらってるわよ」

 

大妖怪の「八雲 紫」が霊夢と並んで歩いていた。

 

 

この三人を見たとき、お燐の頭の中に一つの「希望」が生まれた。

 

お燐(この三人なら・・・きっとさとり様を・・・)

 

霊夢「・・・そういやさとりはどうしたの?全然見かけなかったけど・・・」

 

そう霊夢がそう言ったのと同時に、私は膝を床につき、土下座の姿勢で

助けを求めていた。

 

 

お燐「霊夢さん、魔理沙さん、そして大妖怪 八雲 紫様!

   私とお空はこの下の間欠泉にいる異変の根源に挑みましたが全く歯が立たず

   さとり様は私たちの敵を取るため地下へと向かってしまいました。

 

   お願いします!どうか、さとり様を守ってくれませんか!」

 

 

霊夢「ちょ、ちょっと!いきなり土下座してまでお願いするほどの頼みかしら?

   少し冷静になりなさいよ・・・まったく・・・なんでこう、どいつもこいつも

   余計なことするのかしら・・・いいわ」

 

お燐「・・・え?いいんですか?」

 

霊夢「宴会の場所を提供してくれるのなら」

 

この人間は、どれくらい酒が好きなんだと思ったが、やむを得ないだろう。

 

お燐「分かりました。だからどうか、さとり様のことを・・・」

 

霊夢「あーはいはい。分かった分かった」

 

そうめんどくさそうに言う霊夢たちの後姿をついていくときに、

ふと気づいたことがあった。

 

霊夢と魔理沙の腰辺りに紅白の球がぶら下がっていた。

 

しかし、その球への興味よりも、地下から響いたさとり様の叫び声にそんな疑問は

かき消され、まだ少しの疲労がるものの、霊夢達より真っ先に階段を駆け下り

扉を開いた。

 

 

 

 

そこには、まとわりつく炎から逃げようとする、さとり様の姿があった。

 

 

To be continued




いつもの二倍くらい長くなってしまった・・・・・・・


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15ページ目 旧都噴火警報 その③

すごく長くなっちゃいました\(^o^)/オワタ


さとり「・・・私のペットを傷付けたことを、後悔する間もなく

    息の根を止めてやるんですよ!」

 

お燐「さとり様!」

 

そう言った途端、私は部屋を離れ間欠泉に向かい、相対した。

 

 

私は、気が付いたらむせかえるような熱気の中、目の前の「害虫」のことを

ゴミを見るような眼でにらみつけていた。

 

 

???「ごぼぼぼっ、ごぼぼぼおおお!」

目の前の「害虫」は、想像していた以上に醜く、予想以上に汚らわしかった。

しかし、「強い」ということは分かったし、その「覚悟」もしてきた。

 

さとり「・・・ふん、なんて醜く、なんて愚かで、なんて汚らわしい生物なんでしょう」

私は、鼻で笑いつつ、目の前の害虫のことを罵った。

 

???「ごぼぼぼぼぼぼぼぼぼお!」

私が馬鹿にしたことを理解したかは分からないが、この害虫、いや、怪物は

まるで鉄が溶けるような聞くに堪えない鳴き声を発した。

 

 

さとり「・・・私は、あなたがどこで生まれて、どうやって生きてきて、どーやって

    ここに入り込んだか。そんなことはどーでもいいんですよ・・・

 

    私はおまえに、地獄で罪を償ってほしいだけですから!」

 

そう私は、ほぼ半狂乱状態ともとれる冷静さを失った口調で滅茶苦茶に弾幕を打ち込んだ。

 

???「ぐぉぼおおお!」

さとりの弾幕は、お燐やお空とは比較的にならないほど強力で、お空の弾幕のように

怪物の体に吸い込まれることもなかった。

 

怪物は弾幕を体で受けるのは無意味だと思ったのか、弾幕を避けて反撃を狙う作戦に出た。

 

しかし私も負けてはいない。

右に動くなら右に。左に避けるなら左に。上へと逃れるのなら上方に向けて弾幕を

打ち込んだ。

 

だが怪物にもある程度の知恵はあるらしく、少しづつ弾幕の避け方も上手くなってきた。

 

でも所詮は弾幕ごっこをしたこともない怪物。

私は即座に怪物の行動パターンを『読み』弾幕の雨を浴びせた。

 

 

怪物が弾幕のダメージにもがき苦しむ。

 

その様子を見ていた私は、一つあることを思いついていた。

 

私は、怪物の心の中を読んで見ることにしたのだ。

なぜなら、知りたかったから。

 

なぜ、お燐たちに攻撃を仕掛けたのか。

 

その理由を、私は急に知りたくなった。

 

なんで知りたくなったのか、それは分からないが。

兎に角、私は弾幕に打樋がれる怪物の心を読んでみた。

 

さとり(・・・・・・・・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

痛い

 

苦しい

 

一人、独り

 

なぜみんな僕のことを否定するの?

ただ遊びたかっただけなのに

 

 

ああ、もうゆるさない。許せない。

 

ぼくのことを分かってくれる人も生き物もいないのなら

 

どこでだって否定されるのなら

 

こんな世界も生き物も全部要らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全て、灰と化してしまえ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さとり「・・・ハッ!」

 

私は、怪物の心の中を読むのに夢中だったため、気づけなかった。

怪物は、陽光の色にも似た炎の竜巻を口から発射していた。

 

 

『マグマストーム』

 

 

 

さとり「ッ!?」

 

私は、空気中の水を音を立てながら燃やしていくその炎の渦を横っ飛びでかわす。

怪物が向きを調整し、また当てに来る。

 

今度は完全に避けきれず、左足首を燃やされてしまった。

 

さとり「ううっ!ああああっ!」

足首を焼いた獄炎は、一瞬で靴を焦がし、靴下を溶かしてしまった。

 

さとり「ううっ・・・熱いぃ・・・」

思わずその熱さと火傷の痛みにうめきがもれる。

 

私は、片足の痛みに耐えつつ、怪物と距離を取った。

 

 

さとり「あの炎の渦巻き・・・狙いは大ざっぱだが強力・・・すぎる・・・

    次あの攻撃を受けたら間違いなく・・・」

 

さとり(死ぬ!)

そう直感的に感じ取った。

 

 

さとり(これから来るあいつの攻撃は!一撃たりとも受けてはならない!)

さらに怪物と距離を置く。

 

自分の弾幕の射程範囲ギリギリまで離れ、相手の様子を窺がう。

 

 

???「・・・・・」

怪物は、急に黙り込んでいた。そして、さとりのことを、まるで案ずるかのような

目で見つめていた。

 

さとり「・・・?」

私は、その怪物と目が合ったとき。ふと違和感を感じた。

痛いと感じた。熱いと感じた。

 

いったい、どこが?

 

 

さとり「・・・!?これはっ!」

怪物の攻撃は、すでに『終了』していたのである。

 

 

足首を燃やして消えたはずの炎が、さとりの足首を渦のように取り巻いていた。

 

さとり「・・・う・・・うわああああああああああああああ!」

そのことに気付いたとき、瞬時に足首から神経へ、神経から大脳へと激しい熱さと痛みが

体を貫いてきた。

 

どうやら火傷がまるで炎に応じるように痛み出したのだ。それも、炎のような熱さを

まとって復活していたのだ。

 

さとり「う!うわ!わああああ!」

私は、あまりの暑さと痛みと衝撃に叫び、もがくことしかできなくなっていた。

 

足首の炎が巨大化する。

足首の炎は瞬く間にすねを、ひざを、太ももを、腰を、両足を、そして上半身までもが

炎に包まれた。

 

その炎は、私を中心に、まるで竜巻のごときパワーとスピードで全身を覆った。

 

 

さとり「・・・・・・」

もはや服は燃え尽き、髪も焦げ始めている。

 

さとり(・・・ごめんなさい・・・お燐・・・お空・・・

    私は・・・いい飼い主にはなれなかった・・・わ・・・)

 

私は、体の反応故かとてつもない寒さに襲われ、ゆっくり目を閉じて諦めようとしていた。

 

そのとき、

 

 

 

バ―――ン!

扉を蹴り明ける音。

 

お燐「さとり様っ!」

愛しい飼い猫の声。

 

お空「さとり様ー!」

愛らしい飼い鳥の声。

 

 

霊夢「あつ!、まさかこれほどとは思ってもみなかったわ・・・」

いつか聞いた巫女の声。

 

魔理沙「ヤバいぞ!霊夢!さとりが燃えている!」

どこかで聞いた魔法使いの声。

 

紫「藍!橙(ちぇん)!急いでさとりの体を回収して治療を施しなさい!」

藍「了解しました!橙、行くぞ!」

橙「分かった!」

 

様々な声が入り交じる。様々な心が頭の中に浮かんでくる。

でも、もはやどういった気持ちかは分からない。

 

ただ、一つだけ理解できたことはある。

 

 

『あの怪物は敵じゃない』

 

 

あの怪物は、さっきの私と同じように怒りに任せて攻撃してきた。

そして、あの炎の竜巻を当ててしまったことを後悔していた。

 

 

私は、思いっきり弾幕を当てたことに、みじんも後悔の念を覚えなかったのに・・・。

そんなことを思っていると、怪物の声が聞こえてくる・・・・・・・・・・。

 

 

 

『・・・ごめんなさい・・・・・・』

 

『なんてことを僕はしてしまったんだ・・・』

 

『僕のせいだ・・・僕が遊びたいなんて思ってしまったから・・・・・』

 

『ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・・・』

 

 

あの怪物は、謝ってくれていた。

私が、ペットを傷付けられたときも。あの怪物は謝っていたんだろうか?

 

それはもう分からない。けど・・・。

 

 

 

次起きたときに、生きていたら・・・こちらからも謝らないと・・・。

次の瞬間、私は誰かに抱き上げられ、意識は完全に闇へと吸い込まれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊・「さと・・・助か・・・よね?」

・理沙「ああ・・・藍・・・ひどいやけど・・・ったが・・・今は、回復してるってよ、

    ・・・ん?あ、霊夢!さとりが目を覚ましたぞ!」

 

気が付いたら私は、自分の部屋のベッドに寝かせられていた。

さとり「・・・・・」

 

私の体は、普段ペットたちの寝巻用の青い簡素な和服を着せられ、

腕や首筋、足の先に至るまで白い包帯でぐるぐる巻きにされていた。

 

私は、この状態で体を動かしたらまずいと思い、目だけ動かして状況を確認する。

不意に、頭に氷が載せられていることに気付いた。

また、その氷は、いや、正確に言うと氷が入った革袋が、足にも腕にも

載せられていることに気付き、完全に焦がされていた体に冷気が心地よく流れてくるのを

感じていた。

 

さとり「・・・助かったのね・・・?」

 

私は、ベッドの横で心配そうにこちらを見ていた霊夢に、問いかけてきた。

すると霊夢は、

霊夢「・・・そうね・・・あのやけどで生き延びるなんて・・・本当、妖怪って

   丈夫ねー・・・」

 

絶対私のことを皮肉ってあるだろう言い方。しかし、その言葉の中に安心感が含まれて

いるのを、私は聞き逃さなかった。

 

魔理沙「実はコイツさ~、さとりが起きる前まで、『ああ~起きなかったらどうしよ~

    死んじゃったらど~しようー』なんて、泣いt(霊夢「魔理沙、殺されたいの?」

 

魔理沙「お~怖い怖い。・・・さ、て、と。私は疲れたからちょっとこのソファ

    借りさせてもらうぜ」

 

そう、魔理沙は言うと、私の返答も待たずにソファに倒れこみそのまま寝てしまった。

 

その様子を呆れた顔で見つめる霊夢。

そしてまた、その様子を見てまた少し落ち着きを取り戻していた。

 

そこに、空間を裂いてあの大妖怪が姿を見せる。

 

紫「・・・あら、起きていたのね。・・・それで、どうかしら体調の方は?」

 

さとり「・・・だいぶ回復してきたわ・・・あいにく、私の『第三の目」(サードアイ)

はまだ、回復していないから心は読めないけどね・・・」

 

紫「あらあら。心が読めない。それって新鮮で、むしろ楽しんでいるんじゃない?」

 

さとり「・・・どうかしらね・・・それでだけど、お燐とお空は無事よね?」

 

紫「ええ、今は私の家で、封じ込めた「あの子」についての話し合いがされているわ」

 

さとり「・・・あの子って・・・ああ、あの怪物のこと・・・」

 

紫「そうよん♡。・・・で、あなたに決めてもらわないといけないことがあるのよ」

 

さとり「・・・なにかしら?」

 

紫「あの子、『ヒ―ドラン』のことについてなのよ・・・。

  あの子についてのことなんだけど、私がこのまま封印しておくか、それか殺処分に

  してしまうか・・・。それとも・・・・・・・・・・?」

 

さとり「・・・・・」

私は、あの子のことをどうするのか。それはもうすでに心の中で決まっていた。

でも、なかなか言い出せないでいた。

 

紫「・・・・・・・・・・」

沈黙の時が流れた。

そしてまた、霊夢もこの空気を感じ取ったのか、黙っていた。

 

長い沈黙を破ったのは、紫であった。

 

紫「・・・ま、どうするかはあなたに任せるけど、どうしてもめんどくさいんなら

  私が勝手に殺処分でも(さとり「・・・います・・・」

 

紫「・・・え?」

 

さとり「・・・私、あの子のことをここで飼います!」

 

私は、震える声でそう答えていた。

何しろさっきまで殺されかけ、自分のペットを傷つけた犯人を自分の家で飼う 

と言ったのだ。

怖かった。が。

 

それ以上に助けたいと思った。

あの怪物は、あの子は独りだと言っていた。

 

それは、かつてのお燐やお空と同じ。

そのことを理解した途端、私は絶対、この子を一人にはさせないという決心がついていた。

 

 

 

紫「・・・フフッ・・あなたなら、絶対そう言うと思ったわ~・・・

  いやね、私としても殺したくなかったし、封印もめんどくさかったから

  ありがたいわ~・・・。それじゃ、明日になったらここに届けることにするわ。

  

  ・・・あ、あとこれ」

 

そう言い、紫は一冊の本をさとり見せる。

 

さとり「・・・それは?」

 

紫「『第二番携帯獣:炎の書』っていう本よ。参考までに見ておきなさい」

 

さとり「あ、あの・・・・・」

 

紫「?」

 

さとり「ありがとう、ございます・・・」

 

紫「・・・あなたが素直に謝るなんて・・・明日はどこかで爆発でも起きそうね・・・

   それでは、私はそろそろ向こうへ戻ることにするわ。

  あ、あと、宴会の会場はここで、開始時間は明日ね。

  それじゃ、4649~」

 

そう言って、またこちらに来たように空間の隙間へと消え去っていった。

 

 

さとり「・・・宴会・・・かあ・・・」

私はそう呟き、また目を閉じようとして気が付いた。

 

霊夢も、魔理沙のように寝息を立てて、ベッドに寄り添う形で眠っていたことに。

巻いていたことに。

 

さとり(・・・・・)

私は軽く、霊夢の頭をなで、霊夢たちと同じように深い眠りについた。

 

 

To be continued




どんどん文章は長くなる・・・。
どんどん誤字は多くなる・・・。

Q、これでいいのか?

A、いいんです!

と答えられるような度胸の持ち主になりたい。


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16ページ目 出来事の終わりと始まり

更新ペースで・・・一週間に一回が理想と言ったな・・・。

自分で言ったことだがなかなかきついぜ・・・\(^o^)/オワタ


間欠泉の怪物騒動からきっかり一日後。

地霊殿はお祭り騒ぎであった。

 

 

旧都の店はいつも以上に騒がしく、かつ陽気に客を呼び

また客の方も騒がしく、かつ陽気に買い物とお祭り騒ぎの状態を楽しんでいた。

 

 

その様子を、地霊殿のテラスから椅子に腰かけ眺めている人影があった。

 

そう、古明地 さとりである。

 

 

彼女は今現在行われている地霊殿の大宴会の楽し気な雰囲気とは裏腹に

彼女はとても悩んでいた。

 

さとり「・・・・・」

それは、間欠泉で出会った怪物。「ヒ―ドラン」のことについてであった。

 

悩むのも無理はない。

なぜならその怪物はさとりのペットを傷つけ、さとりにも致命傷を負わせてしまったのだ。

 

その怪物を、さとりはここで「飼う」と言ったのだ。

 

 

今思えば、ただ助けたいと思っていただけで何の準備もしていない。

 

 

ヒ―ドランは何を食べるのか。

どのような生態なのか。

人は襲わないか。

 

 

・・・お燐とお空。それにペット達やフェアリー・ゾンビ達とは仲良くなれるのか。

 

その準備と責任と、そして不安がさとりを押しつぶそうと重くのしかかっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さとり「・・・さて・・・もう一度、読んでおくべきかしら・・・」

私は、昨日の夜に「八雲 紫」からもらった本。

 

「第二版携帯獣:炎の書」を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

炎とは、魂である。

 

炎は、感情で言うと「怒り」。

知恵で言うと「単調」。

意思で言うと「成し遂げる思い」。

 

人がここまで文明を発展させ、寒さをしのげたのも全て炎があったからである。

 

炎は夜闇を照らし、震える冬の寒さも削ることできる。

 

しかし炎とは、時に残酷である。

夜闇を照らす灯りは他を燃やし、初めてつくものである。

その温かさも、時に森を燃やす業火となる。

 

その力の加減を見極め、操ることが出来なければ

全て虚しい灰となり、己をも燃やしかねないだろう。

 

 

 

 

 

さとり「・・・・・」

正直言って、この本があの子を飼うことにあたってあまり役立つとは思えない。

 

なぜならこの本は今のところ炎のもたらす効果しか説明していないからである。

 

それでも私は、「参考までに」読んでおくことにした。

 

 

・・・かつて神がこの世界を押しつぶそうと天から舞い降りた「悪星」を砕いたように

炎には力強さがある。力強さとは生きる力。生きる力とは生命。生命とは命だからである。

 

そして命とは「魂」である。

この世界に豊かさをもたらした神は「土」「水」「草」そして「雷」と「龍」の力を

宝玉にし、その宝玉を「命の宝玉」と呼んだ。

 

だがなぜ「炎」の力がないのにも関わらず命と呼んだのか。

それは、

 

 

 

 

???「なにしてるんだ?」

さとり「!?」

 

ひどく驚いた。

私は声をかけてきた者の姿を見ようと体をひねろうとしたが、

???「おいおい。びっくりさせといてなんだがあまり動くなよ」

 

声の主に制され、仕方なく首だけひねって後ろを見た。

 

 

 

私は、この瞬間。二つ気づいた事があった。

 

一つ目は、声の主は「霧雨 魔理沙」であったこと。

 

そして二つ目は、

さとり「・・・そうだった。まだ完全に治っていないんだったわ・・・」

 

まだ火傷が完治していないということである。

 

魔理沙「そ。だからまだ無茶はしないほうがいいぜ」

 

さとり「・・・そうね。誰かさんに驚かされたおかげで火傷のことを思い出せたものね」

私は皮肉たっぷりの口調で言ったが、気づいていないのか、

 

魔理沙「そうだな。私に感謝するといいぜ」

なんてふざけたことを言ってきた。

 

さとり「・・・まだ、完治はしていないけど。昨日よりはだいぶ回復したわ。

    あなた達人間とはわけが違うんだから」

そう言うと、

 

魔理沙「うひゃー。さっすが妖怪。そこんところは少し憧れるな」

そんな冗談を返してきた。

 

 

さとり「・・・さてと。私も宴会に参加しようかしら」

 

魔理沙「おいおいおいおい、ちょとまて。まだ紫から安静にしてろと言われたばかり

    じゃないか。それに、「騒がしいのはニガテ」ってここに来たのは

    さとり自身じゃないk(さとり「さー行くわよー」

 

魔理沙「話を聞けって!おい!」

 

私は、背後から話しかけて止めようとしてくる白黒の魔法使いの言葉に耳を貸さず

いそいそと宴会の会場に足を運んだ。

 

さとり(・・・今はいろいろと不安が残っているし、これからどうなるのかも分からない。

     だけど今は・・・)

 

さとり「・・・少し、遊びたいかな・・・」

 

魔理沙「ん?なんか言ったか?」

 

さとり「なんでもないわよ。・・・さ、早く行きましょう」

 

魔理沙「ったく・・・無茶はすんなよー・・・」

 

 

~少女移動中~

 

 

私は宴会の会場の扉の前に立ったが、騒がしさが扉を貫いてきていた。

 

さとり「・・・よし」

私は思い切って扉を開けた。

 

そこに広がっていたのは、五月蠅さと騒がしさを混ぜ合わせたようなごちゃごちゃした

光景であったが、今の私からするとその五月蠅さは

ほどよくこれからのことに対する不安を解いてくれるようで心地よかった。

 

 

霊夢「・・・あっ!さとりじゃない!なによー!いつも陰気なあんたが

   宴会に遊びに来るなんて珍しいじゃないのよ!

   あっ!魔理沙!あんたなんかしたんじゃないでしょうね!」

 

さとり「えっ・・・いや・・・私から来たかっただけだし・・・」

 

霊夢「・・・えっ?・・・そうなの・・・?」

 

魔理沙「おう。そうだぜ」

 

霊夢「・・・えと・・・ごめん?」

 

さとり「・・・ふふっ、いいですよ!」

そう少し笑いながら言うと、

 

霊夢「・・・ああ~~もう~~、ほんっとかわいいわねえ~~」

・・・なんか言ってきた。

 

さとり「・・・はい?」

霊夢「さあ!一緒に飲むわよー!全部紫のおごりだからねー!」

 

紫「・・・あらぁ?そのことも今初めて知ったんだけd(霊夢「宴会さいかーい!」

 

霊夢が宴会を再開する号令をかけた途端すこし静まっていた宴会の空気は

あっという間に熱を帯び、どっと波のように押し寄せてきた。

 

 

さとり「・・・なんか、もう・・・どうにもなっちゃえって気分になったわ・・・」

私は苦笑気味に、強引に腕を引っ張る霊夢や困惑する紫の姿を見ながら

引きずられていった。

 

 

宴会はまだまだ続く・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「霧雨 魔理沙の日記:Ω月α日」

 

 

宴会が終了した、少し後。

 

さとりは無事にヒ―ドランを保護したが、その後どうなったかは詳しくは知らない。

 

ただ一つだけ言えることはある。

さとりはきっと上手くやっていけるだろう。

 

 

それよりも、私のゲンガー。

あの時は紫がいたからヒ―ドランをスキマ送りで封印できたが。

 

もし私とゲンガーと、霊夢とイーブイとだけでああゆうやつと戦うことになったら?

・・・そう考えるとぞっとする。

 

私達はもっと強くならなければならない。

そうしなければいつか死んでしまう。

 

・・・まあそのことについては後で考えるとして、今日はもう寝ることにしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

物事には必ず終わりが来るが

終わりは始まりでもある。

 

巨神兵が終わりの大地を始まりの海を渡って引きずったように。

一つの出来事が終わった瞬間にもう一方の出来事が始まるのだ。

 

巨神兵の異変から数日。

幻想の地の三つの洞穴。

 

そこに凹凸の文字を示し。

鋼と岩と氷が動く。

 

盲目の文字に啓示をのせて・・・。

 

 

To be continued・・・




今更ながらキャラ崩壊注意です・・・。


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17ページ目 虹色の羽と巫女 凍り付いた湖

うわあああああああ!やめろぉ!やめてくれディアルガあああ!

これ以上時間を進めないでえええ!

デイアルガ「本当にいいの?」

イイよ!(;・∀・)

ディアルガ「だが断る」

ちくしょおおおおおお(ry


雲が流れる・・・。

 

青く染まった空に、プカプカ浮かぶ雲が風に乗って流れていく。

 

 

 

霊夢「空が・・・青いわね・・・」

 

イーブイ「ぶいー・・・」

 

私は、ついさっき起きたばかりである。

 

もっとも時刻はもうすぐ昼になるであろう時間である。

「おはよう」、という言葉はもらえなくとも「こんにちは」ならもらえるであろう時間帯。

 

 

いつもなら日の出前に起きて、境内の掃除やらなんやらしているはずなのだが

今回ばかりは事情が違う。

 

 

昨日は地霊殿の異変解決を祝う「大宴会」があったため、記憶もなにも吹っ飛んでしまった

のである。

 

霊夢「えーと~・・・確か、昨日は宴会があって・・・いつもと違うお酒を飲んだのよ・・

   そう、「神主殺し」・・・あれか~・・・あれ飲んだ瞬間から記憶が飛んだのよ」

 

霊夢「惜しいことしたわー。私としたことがお酒に飲まれてしまうなんて・・・。

   ああ~!くやしー!せっかく楽しい宴会の記憶が半分飛んでるだなんて・・・」

 

イーブイ「ぶ、ぶ~い・・・」

 

霊夢「・・・あ~・・・空がきれいねー・・・」

 

イーブイ「ぶい!?・・・ぶ、ぶ~い・・・」

 

 

 

とにかく今の私には、縁側で温かい光に包まれながら空を仰ぎ見るくらいしかやることが

無いのである。

 

掃除はさっき終わらせたし、それに毎年の恒例である「夏の大宴会」まではまだまだ

時間がある。

 

今はとにかくボーっと空を見るのが私の仕事だと自分で決めて、今はその仕事を熱心に

やっている途中なのである。誰にも邪魔はされたくないものである、が。

 

そんな思いが伝わらないのが幻想郷のルール(?)であり、そんなことは日常茶飯事

であるため、もう慣れたもんである。

 

 

空から飛来する大きな影が神社の境内に着地する。

 

いつもなら魔理沙が「よう霊夢!遊びに来たぜ」、とか言って勝手に神社に上がってくる

はずなのだが、何か様子が「ヘン」だった。

 

その違和感の理由は三つ。

 

一つ目は、普通なら私が座っている縁側の方に降りてくるはずなのだが、

その影が降りたのは神社の正面側。つまり賽銭箱が置いてある方に降りてきたのである。

 

二つ目は、この影の正体は魔理沙。いや、少なくとも人間ではない。

     かといって幽霊でもないし妖怪でもない。確かに生物としての気配を

     感じているので、生き物であることは間違いない。しかし・・・

 

     あまりにも大きすぎる。時折とても大きい鳥やらなんやらが来ることもあるので

     結界(鴉避け)を張っているのに・・・それすらも無視しては入れる程の

     強さを持つ生物。

 

三つめは・・・

 

 

 

 

 

すでにその影の主が私の前に姿を表せていたからである。

 

 

 

霊夢「っ!!」

イーブイ「ぶ・・・ぶいぶ・・・」

 

その影の主は、鳥だった。

 

いや、「鳥」という言葉で片づけるにはもったいなさすぎる神々しい生物が私の目の前に

降り立っていた。

 

それこそ、今すぐ私の神社の主祭神にしてもいいと思えるほどの美しさと恐ろしさを

兼ね備えている虹色の神鳥。

 

 

イメージを伸べるとするなら、「不死鳥」、「火の鳥」、「鳳凰」といった

ところだろうか。非の打ち所がない。

 

その美しさは一人の巫女としてでもなく人間としてでもなく。

 

 

 

「生物」として。

 

 

 

美しいと感じさせる威圧感がそこにあった。(それこそイーブイも同様であろう)

 

霊夢「・・・・・」

 

ホウオウ「・・・・・」

 

その世にも美しい神鳥は私のことをじっと見ていた。

まるで私を、観察するかのような視線で見てきていた。

 

それから何分。いや、何時間たった頃だろうか?

私は呼吸をするのを忘れているほどに見とれていたので、急に吸気が恋しくなり

ゆっくりと息を吸い込み、吐き出した。

 

霊夢「」スゥー・・・フー・・・

 

ホウオウ「・・・・・・」

 

目の前の神鳥は私が息を吸い、吐き出したところまで見ると、いきなり翼を広げて

その赤く輝く体と翼を青い空へと広げて飛んで行ってしまった。

 

霊夢「・・・ああ・・・綺麗だったなあ・・・・」

イーブイ「ブイ―・・・」

 

私は基本的に他人が美しいと思うものに関しては全く分からないのだが

こんな感覚は初めてであった。

 

心の底まで満たされる満足感と、喪失感。

こればかりは恐らく他の人間でも生物でも同じ感覚を味わうことになるのだろう。

 

私は、他の人に対して自分がいいと思う、綺麗だと思うものを進めてくる理由が

分かった気がした。

 

霊夢「・・・また、会えるといいなあ・・・今度は正式に神様として迎えてあげたいわね。

   ・・・そうすれば、もっとお賽銭とか増えるかしら?」

 

???『きりゅりりゅしぃぃ!』

 

霊夢「あら?・・・なにか聞こえた?イーブイ」

 

イーブイ「ぶい?」

 

私はその時、確かに何かの音(?)を聞いた気がしたのだが、イーブイには

聞こえていなかったらしい。

 

霊夢「ま。寝起きであんなすさまじいものを見せられたんじゃ、耳鳴りもするかしら」

そう考え、あまり気にしないようにしていた。

 

そこに、スタッと地面に降りてくる白黒のシルエットが見えた。

 

霊夢「あら・・・なんだ、魔理沙か・・・」

 

魔理沙「んん?どうしたんだ霊夢。なにか落ち込んでいるように見えるが?」

 

霊夢「なんでもないわよ。それより、なにか用があって来たんじゃないのかしら?」

 

魔理沙「おお、そうだった。実はさー昨日。紫が異変の話を持ち込む前に私たちは

    新たなスペルカードルールを決めようとしてたよな?」

 

霊夢「そうね。結局中止になったけど」

 

魔理沙「そこでだ!この魔理沙様がじきじきに新しいスペカルールを決めてきたぜ!」

 

霊夢「」ジトー

 

魔理沙「・・・な、なんだよ」

 

霊夢「・・・ふぅ・・・なんでもないわ。速くそのルールについて教えなさい」

 

魔理沙「おいなんだ!その見つめてからのため息は!」

 

霊夢「ほら、そんなどーでもいいことなんか忘れて早く教えなさいよ」

 

魔理沙「ぬぐ・・・まあいい。すぐにお前はそんな失望のため息ではなく

    感動のため息を吐くことになるんだからな!」

 

霊夢「」はぁー・・・

 

魔理沙「・・・私が考えた新・スペカルール・・・その名も!」

 

魔理沙「携帯獣弾幕遊戯!通称ポケモンスペカバトル!」バァーン

 

 

霊夢「・・・はあ・・・」

 

魔理沙「・・・お前の気持ちも分からんでもない。なにせ「アリス」が考えた名前でな」

 

霊夢「・・・あんた。「私が」、なーんて言ってたけど結局アリスと考えたんじゃない」

 

魔理沙「う・・・うるせえ!私ひとりじゃとても考え付かなかったんだ!理解しろ!」

 

霊夢「・・・で?肝心なルール。まだ教えてもらってないんですケド」

 

魔理沙「まあまあ。そう急かすな。まずこの紙にいろいろまとめてきたから」

 

霊夢「どれどれ?・・・へえ。でもこれ、ほとんどアリスが考えたんでしょ?」

 

魔理沙「・・・さ、まず従来の弾幕ルールとの違いはな・・・」

 

霊夢「おーい?ちゃんと答えてくれないとー・・・」

 

 

 

~少女説明中~

 

 

 

 

 

 

霊夢「成程。理解したわ」

 

魔理沙「ドゥー、ユー、アンダスタンド?それじゃ、早速実戦練習だ!」

 

霊夢「そうね・・・・・」

 

 

魔理沙・霊夢「「絶対負けないわ(ぜ)!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「文々。新聞 夏の号外 特別篇」

 

もうすでに夏の日差しが雨の降る雲から除くこの時期。いかがお過ごしでしょうか?

 

(中略)

 

・・・問題は今。人里や魔法の森。妖怪の山にとどまらず地獄や天界にも姿を

表した生き物達。「ポケモン」。

 

私達はこの生き物たちがこの狭い幻想郷内ですでに事件を起こしているのはすでに

私達の新聞で分かっていると思いますが、今日この日。またもや事件が起こりました。

 

(中略)

 

・・・かの悪魔の住む館を支える霧の湖が「凍り付いた」ことについて、館の主、Rさんは

 

R「朝起きたら極端に寒くて、窓から見たら湖全体がコチコチに凍ってたのよ。

 氷が太陽光を鏡みたいに反射してきて私はまともに外に出れない状態なのよ。

 今はパチェに頼んで少しづつ溶かしているけど・・・溶かした途端に凍ってくのよ」

 

と、とてもこの状態については悩んでいると明言した。

 

 

今は梅雨で、湖の冷気で雨が雹にならないか心配ではありますが、完全に夏の熱気が

襲ってきてもまだこの状態なら少し涼みに立ち寄ってみてはいかがでしょうか?

 

 

 

To be continuede・・・

 



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18ページ目 VS! 霧雨 魔理沙  ~月の光~

今回はよりポケモンらしいバトル展開に挑戦だぜ。

すごく心配だぜ。

でもやるっきゃないぜ。

・・・それでは、携帯獣弾幕遊戯。ポケモンスペカバトル。お楽しみあれ・・・


夜。

それも闇夜が支配する深夜。

 

普通なら私も魔理沙もすでに床に就いているであろう時間。

 

 

ざりざりざりざりい、ざりっ、ざざざざ・・・

 

 

今は・・・いや。「今から」私と魔理沙は、携帯獣・・・なんやらかんやらという

「新しいスペルカードルール」を用いた弾幕ごっこを始める準備をしているのである。

 

今、魔理沙はどっかそこらへんから持ってきた木の棒で地面に四角い図を描いていた。

 

一方私はと言うと魔理沙が(アリスと作ったという)ルールが書かれた紙を読んでいた。

 

しかし、今までのルールで勝利を収めてきただけあってそのルールをもっと

よく理解しようと思いこれで「三回目」。三度その説明書に目を通した。

 

 

 

 

~分かりやすい!携帯獣弾幕遊戯(ポケモンスペカバトル)ルール説明書~

著者・霧雨 魔理沙 アリス・マーガトロイド

 

この新しいスペルカードルールは、従来のルールの決まり・常識・勝敗の決め方。

それらをできるだけ残し、かつ新たな発見やポケモンの研究のためこのルールを残す。

 

まずルールその①。

 

ポケモンの主(飼い主)は、相手のポケモンの主に弾幕やスペルカードによる攻撃を

仕掛けてもよい。また、相手のポケモンにも攻撃をすることが可能である。

(その逆もしかり。)

 

その②。

 

ポケモンは、基本的に主の命令に従って行動する。主も、ポケモンに命令をし操る権利が

ある代わりに、戦う際の相手のポケモンとその主の体のことも考えて行動する義務がある。

 

その③。

 

この携帯獣弾幕遊戯はあくまでも「遊び」であるが、ポケモンを使っての犯罪、異変等は

このルールに則って解決する必要がある。

 

その④。

 

ポケモンは誰でも所持し、共に暮らすことができる。ただし共に生活する際にはポケモンの

健康や他の人の安全も考え、「紅白球」に封印・解放をすること。

 

その⑤。

 

戦闘における勝敗の決め方は、二つある。

 

一つは相手のポケモン、又はその主の弾幕の被弾とポケモンの技によるダメージの量が

多い方が敗北することとする。

このルールで戦闘を行う際には、線か他のもので十分に大きい四角いフィールド内で

戦うことにする。(その四角いフィールドからポケモンは出れないが、主は自由に出れる)

 

もう一つはポケモンの美しさを競い、技や弾幕やスペルカードでより華やかに場を

盛り上げたほうが勝ちとするルールである。

 

また、このルールで戦闘を行う際には五つのポケモンの魅力を一回のバトルにつき

一つ、その魅力を引き出して戦うこととする。

 

魅力は以下の通りである。

 

・かっこよさ 

・美しさ 

・可愛さ

・賢さ 

・たくましさ

 

どれを選び、戦闘するかは個人の自由であるが、必ず相手も同じ魅力で戦う必要がある。

(例:自分は「かっこよさ」で戦う際には相手も「かっこよさ」にしなければならない)

 

 

以上を持って、携帯獣弾幕遊戯(ポケモンスペカバトル)の説明とやり方を終える。

 

 

 

 

 

 

 

霊夢「・・・これ、あんたが書いたところってどこよ?」

魔理沙「え?分からないのか?」

霊夢「だって、ほぼほぼアリスの筆跡じゃない。あんた、一体何してたの?」

魔理沙「あー・・・いやぁー・・・ハハハ・・・」

 

魔理沙「さ!気を取り直して早速やっってみようぜ!」

霊夢「・・・ま、いいわ。やるとなったら・・・」

 

霊夢・魔理沙「絶対に負けないわ(ぜ)!」

 

 

 

 

 

魔理沙「今回のルールはシンプルに相手のポケモンとその主の体力が多い方が負けとする

    ルールで行くぜ」

霊夢「分かったわ。さあ、行きなさい!イーブイ!」

 

魔理沙「勝てよゲンガー!」

 

そう言い、お互い腰につけていた紅白球をさっき魔理沙が書いた四角い線の中に投げ入れる

 

そうすると紅白球は地面につくやいなや二つに割れ、中から魔獣が飛び出してくる。

そう、ゲンガーとイーブイである。

 

ゲンガー「げぎゃああん!」

イーブイ「ぶいぶい!」

 

これでもう完全に準備は整った。

 

 

戦闘開始である。

 

 

 

霊夢「・・・相変わらずニヤニヤしてて気味悪いわね・・・」

魔理沙「おいおい・・・そこがこいつの魅力だろ」

霊夢「・・・分からないわ・・・」

魔理沙「そんなことで困惑しているとすぐに負けるぜ!いけっゲンガー!

    『シャドーボール』!」

 

魔理沙の命令がゲンガーの耳(?)に届き、ゲンガーもそれに応じて影の球を作り出す。

 

霊夢「っ!やっばい!イーブイ、かわして!援護するから!」

そう言い、霊夢も魔理沙とゲンガーに向けて弾幕を発射する。

 

魔理沙「ええい!もう遅い!すでに射程範囲内だぜ!」

ゲンガー「ぎゃぎゃぎゃぎゃ!」

 

魔理沙が啖呵を切ると同時にゲンガーの手の中に収縮していた影の球が

一回りも二回りも大きくなりイーブイに向けて発射された。

 

発射されると同時に霊夢が放った陰の弾幕が魔理沙とゲンガーに向け広範囲に迫ってくるが

 

魔理沙「おっと!あぶねえな!」

ゲンガー「ぐぐぐぐっ・・・」

弾幕は魔理沙の服をかすめて飛んでいき、ゲンガーはその弾幕を避けるまでも無く

そこにたちすくみ、笑っていた。

 

霊夢(?・・・なぜ避けないの・・・?)

そんなことを考えているうちに弾幕はゲンガーの眉間、中央に当たって・・・

 

 

 

 

「通り抜けていった」。

 

 

霊夢「・・・ウソ・・・!?」

魔理沙「おお!?当たらなかったのか!?」

 

どうやら魔理沙も知らない事実だったらしく、私と同じように驚いていたが

私はその数秒後、さらに驚くことになった。

 

 

 

ハッとした。

そういえば、弾幕を撃って追撃を防いだはいいものの・・・

 

 

イーブイに向けて撃たれたあの「影の球」は・・・?

 

 

霊夢「!?」

 

私はイーブイの方に顔を向けたが、遅かったのかもしれない・・・。

 

 

その影の球は、イーブイの回避行動もむなしくイーブイの鼻先5cm辺りに迫って

来ていたのだった。

 

霊夢「イーブイッ!」

そう叫んだがイーブイは恐怖で動けないのか、そこから動こうともしない。

それに、諦めているのか目も閉じていた。

 

魔理沙(勝ったな・・・)

ゲンガー(ぐぎぎぎぎwww)

 

 

霊夢(・・・・?)

 

その時、私はある違和感に気付いた。

イーブイは、もしかしたら動けないのではなく・・・

 

霊夢「・・・動かない・・・?」

それにあの目のつぶり方。

普通恐怖で目を閉じるなら、目の近くの筋肉が細かく動くはずなのだが

ピクリとも筋肉が動いていない。

 

何かを確信した目のつぶり方。

一体・・・?(ここまで約0.2秒)

 

 

 

 

シャドーボールがイーブイの鼻先に着弾・・・・・・・・

 

 

・・・することはなく通り抜けていった。

 

 

霊夢「・・・え・・・?」

魔理沙「・・・は・・・?」

ゲンガー「ゲゲッ・・・!?」

 

イーブイ「・・・・・・ブイっ!」

 

魔理沙「え・・・?何で・・・?どうして・・・?」

霊夢「・・・解ったわ・・・」

 

魔理沙「なに?」

 

霊夢「あれは・・・多分「属性」なのよ」

魔理沙「属性って・・・魔法みたいなもんってことか?」

 

霊夢「ええ・・・多分だけど、イーブイの持つ本来の属性とあのシャドーボール・・・

   属性の相性的に相殺しちゃうんじゃないかしら?」

 

魔理沙「あー・・・成程。・・・ってつまりー・・・」

 

霊夢「・・・勝負がつかないってこと・・・ね」

 

魔理沙「え~・・・まじか・・・」

 

ゲンガー「」プルプル・・・

 

魔理沙「ん?ゲンガー?どうした?」

 

ゲンガー「・・・・・グギャああああああ!!」

 

ゲンガーはいきなり叫びだした。その急な雄たけびに魔理沙もビクリと体を動かした。

そして叫びつつ体中に青白い霊力を集め、相手を包み込むように発射した。

 

 

『サイコキネシス』

 

 

イーブイの体がふわりと宙に浮き、締め付けられたように呻きだす。

 

霊夢「えっちょっ・・・魔理沙!すぐに止めさせなさい!」

魔理沙「あっ・・・ああ!ゲンガー、すぐにイーブイを離すんだ!」

 

そう魔理沙が必死に呼ぶが、ゲンガーには聞こえていなかった。

今のゲンガーは自分の十八番(おはこ)の技が効かなかったことにイラつきを

覚えてしまい、ついには爆発してしまったのだ。

 

さらにゲンガーは霊力に力を籠め、イーブイをさらに苦しめる。

 

霊夢「くっ・・・!霊符『夢想封印』!」

魔理沙「やむを得ん!恋符『マスタースパーク』!」

 

スペルカードを掲げ、技名を叫ぼうとしたが、それは未遂に終わった。

 

 

ゲンガー「・・・グギッ!?」

 

 

ピカッとした光が目に入る。

 

サイコキネシスによって囚われていたイーブイの首飾りのブローチが

紫色に輝き、辺りを紫の光が包み込んで何も見えなくなってしまった。

 

とっさに腕を顔の前に掲げ、光から目をガードする。

 

 

数分の沈黙が続く・・・。

 

 

???「・・・ぎゅお~ん」

少し低く、響くように澄んだ鳴き声が辺りに響く。

光が無くなったことを確認し、そっと目を開け、腕を下げる。

 

下げたと同時に辺りに砂煙が上がっていることに気付き、少しむせる。

その煙の中から月の光のような淡い金色の輪が空中に浮かぶ。

 

 

霊夢「イっ・・・イーブイ・・・?

砂煙が晴れる。

 

 

そこには苦しそうに呻くイーブイの姿はなく、

代わりに夜闇のように黒い体毛と、月の光のような黄色の輪状の体毛を体に

称えた凛々しい四足歩行の生物が立っていた。

 

 

???「・・・ぎゅおんっ!」

その生物は、目の前のゲンガーに向けて威嚇の鳴き声を発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~霧の湖~紅魔館付近の氷上~

 

 

???「うっ・・・うう・・・」

 

ビュッビュビュッ

 

キンキン、カキン

 

???「じゃきー!」

 

 

悪魔の潜む魔性の館。

館を守るメイド長。

凍り付いた門番の。

氷塊を背に門を守護する。

 

空を切り裂く銀の刃も。

時をも止める能力も。

その氷塊の前では役にも立たず。

湖の雹は塀すら凍らす。

 

???「じゃきー!じゃじゃききー!」

氷塊は暴れる。

氷塊は喜ぶ。

湖の底に感情の神が眠ることも知らずに。

ただ、踊る・・・。

 

 

残りの封印あと・・・二つ・・・。

 

To be continued・・・




バトルも微妙だったし、無駄に長くなったし、ルールなんかまったく意味をなさなかったし
もう、大変ですよ。(;´Д`)

やっぱりバトルは難しいでござる・・・精進いたします。


それでは、次のお話もお楽しみに・・・。


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19ページ目 特別な日、融けない氷

遅れました。すいません!

20話目です。19ページ目っつーのに20話なんてややこしいったらありゃしない。

とにかく、今回も始まり始まり、っと。


夜。

 

「~人間の里~稗田の家~」

 

その日は、特別な日であった。

通常、この時間帯には使用人も寝静まり、阿求自身も眠い目をこすって本を

読んでいるであろう時間。にも関わらず、明かりがつき、何かと騒がしかった。

 

なぜか。それは今日は特別な日であるからである。

ではどのような特別な日なのか。

 

 

結果から言うと、ただの「お泊り会」である。

無論、泊まりに来ているのは貸本屋の娘。本居 小鈴。

 

明日は鈴奈庵が休みだと言うので、特別に許可をもらって稗田の家に来ているのである。

そして今、この「混沌」とした「現在」に至る。

 

小鈴「行くわよ阿求ッ!喰らいなさい!この小鈴ちゃんの剛速球を!」

阿求「フン!いいわ!来なさい!この稗田の家9代目、阿求に敵おうと言うのならば!」

 

AZ「・・・おい・・・」

 

小鈴「よーしっ!第・・・何球目!行くわよ!」

阿求「WRYYYYYYYYYY!この阿求が倒せるかーッ!」

 

AZ「・・・おい・・・?」

 

小鈴「人間に不可能はない!人間は成長するのだッ!してみせるっ!」

阿求「できないわねぇ!あなたは私の助手になるのだからっ!」

 

AZ「・・・お前たち・・・」

 

小鈴「喰らえい!おらっ!」ビュッ

阿求「ふん!無駄無駄ぁ!」ばしっ

 

AZ「・・・いい加減その「枕投げ」をやめたらどうだ?」

 

そう、彼女たちは絶賛枕投げご堪能中なのである。

すでに二人とAZは寝間着姿で、寝る準備はできているのだが、

小鈴「せっかく泊まりに来たしなんかやりましょう!枕投げとか」

と、小鈴が持ちかけたことがすべての始まりである。

 

その時の私はもう眠く、はやく床に就きたかったのだが彼女たちに押されて

枕投げに強制参加させられたのである。

 

私は不本意ながらも強制的に参加させられ、しかも二人して私のことを狙ってきたので

早速脱落となったわけだが・・・

 

小鈴「くうっ!外にあまり出てない割になかなかやるじゃない!」ビュッ

阿求「ふふん!こう見えても私は取材などで鍛えた脚力を持ち合わせているのよ!

   足首から手首まで私は全身の筋肉を使って投げてるのよ!」ビュッ

 

小鈴「私だって大量の本を運んだ時に培われたこの腕力!テクニックではなく

   パワーで押しつぶす!」ばしっ、ビュッ

 

AZ「・・・」

 

阿求「柔よく剛を制すとは言うけどこれでは剛を抑えきれない!」

小鈴「勝った!東方携帯獣、完!」ビュッ

阿求「うっ、ここまでか!」

 

AZ「いい加減にしてくれ。寝さしてくれ」

ついに私はしびれを切らして小鈴と阿求の襟首をつかんでぶらーんと吊るす。

 

小鈴「うわっ!ちょっとAZさん!なんで止めるんですか!」

AZ「興奮しているのは分かるがこっちは眠いしもうこんな時間だ。

  早く眠るのが得策だと思うんだが?」

 

阿求「そうよ!明日はAZさんのポケモンをようやく見ることができるんだから!」

AZ「お前もお前だ。小鈴の誘いに乗って暴れまわるからだ。速く寝ろ」

 

小鈴・阿求「「え~・・・?」」

AZ「寝ないと明日、ポケモンを見せてやらないぞ」

 

小鈴「~~~~ッ!ずるいですよ!明日絶対見させてくださいね!おやすみなさい!」

阿求「ふん、小鈴もまだ子供ねぇ」

 

AZ「君が言えることではないだろう」

阿求「・・・まあ、いいわ。とにかくおやすみ。明日はよろしくね」

 

AZ「ああ、おやすみ」

AZ(よかった、理解が速くて助かった・・・。

  そういえば、小鈴たちにポケモンを見せたら小鈴たちもポケモンが欲しいと 

  言うかもな・・・。

  もし「森」にポケモン達がいたら捕まえ方を教えてやろうか・・・)

 

そのことについて考えを巡らせていると眠くなってくる・・・。

まるで「あくび」や「さいみんじゅつ」でも使われたように・・・。

私はよほど疲れているのだろうか・・・。

 

そこで私の意識は深い闇へと吸い込まれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「文々。新聞~号外編~、一部抜粋」

 

本格的に夏の季節となり、ひまわりが太陽を追うであろうこの日ごろ

いかがお過ごしでしょうか?

(中略)

本日紹介いたしますはポケモンと言う生物たちについてです。

彼らはすでに妖怪の山、天界、魔界にも姿を現しこの幻想郷の勢力図を完全に塗り替えようとするがごとく、様々な異変を起こしているのは皆さんも周知の通りでしょう。

(中略)

今はとある「玄武の沢」付近にお住いのK・Nさんの協力もありポケモンを捕獲することができる「モンスターボール」と言う物が開発されている途中ということが判明し、それによって人里のみなさんや、ほぼ凍結状態と化した紅魔館の皆さんも少し安心することができる

ことでしょう。

(中略)

今、紅魔館は半壊滅的な状態らしく、そんな状態まで紅魔館を押し込んだポケモンについて

悪魔の妹、Fさんは、

F「なんか夜起きたら寒くて外に出てみたら咲夜が凍っていたのよ。

  で、なんか大きい氷が騒がしかったから「キュッとしてどかーん」したのよ。

  そしたら壊れたけど、湖の氷からまた復活してきたわ。

  もう寒くて嫌になっちゃう。

  え?そいつはどうしたって?知らない。氷の中に隠れちゃったんだもん」

 

と、Fさんが言うようにまだ霧の湖付近にそのポケモンが潜んでいる可能性があるので

まだ油断して近づいていくのは得策だとは思えません。

今はその氷のポケモンが夏日で溶けるか、異変の解決を静かに待ちましょう。

 

 

 




なんということだ・・・。
東方携帯獣と言うタイトルなのに話のほとんどが枕投げで終わっちまった・・・。

もういっそのこと「東方枕投げ」ってタイトルにしてしまおうか?
なんてことを考えさせられました(笑)

それでは次回までお楽しみに。


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20ページ目 魔理沙戦、決着

なんだこれ・・・地霊殿ではヒ―ドランちゃんが手なずけられて。
妖怪の山ではレジギガスさんが封印。

人里ではAZさんと鈴奈庵組がお泊り回やってて。
神社では戦闘。紅魔館は凍結。


これらすべてを解決しなければ次へは進めませんね(苦笑)
ま、一つずつやっていきますぜ。


静かな夜だった。

 

私は、数日前。気が付いたらこの世界にいた。

自分の名前も、年齢も、家族がいたのかも、自らの存在に至るまでの記憶がない。

 

思い出そうにも、そのたび頭痛で押し返される。

 

 

そこで、私は自分探しの旅に出ることにしたが、

その旅は予想外に早く終わることになった。

 

そう、あのみょうちきりんな「ジンジャ」とかいう建物にいた私の主となる

少女に出会ったことで。

 

私は、その少女のことを一目で気に入ってしまった。

気に入った理由は私でも分からないけど、単に「匂いがいい」とか「かわいいから」という

理由ではない気がする。

 

これも、「うんめい」とか言うやつなんだろか?

まあ、とても優しくしてくれるし、遊んでくれるし。

 

素晴らしい個室まで用意してくれた。

私は一層、彼女に懐いた。

 

 

そのうち、彼女は私を鍛えるために練習も行ってくれた。

その時の私は、なぜか本来の自分を現しているかのようで気分がよかった。

 

そして、友達もできた。紫色で、妙にぽっちゃりしていて、目つきが悪いのが特徴の

いけすかない子だったけど、話してみると意外に気さくで面白かった。

 

でも、この子は友達だけど今は敵同士でもある。

やはりこの子は、私と似ているところがある。

 

この子も私と同じで自分の主を慕っており、そのために頑張っていたけど

この子は怒ってしまった。

 

自分の得意な攻撃を外しただけで、あんなにも怒るものなのだろうか?

正直言ってピンと来ないけど、今は敵となってしまったこの子を落ち着かせることに

集中しよう。

 

そう身構えたとき、頭が再び痛くなってきた。

誰かの声が聞こえてくる。

 

『ザザ・・・-ブイ・・・ザザザ・・・の・・・ブローチ・・は・・・ザザッ

 ブローチは・・・ケット団が・・作・・・しかし・・・ザーザ

 

 きっと、おまえの役に立つはずだ』

 

そこで声が途切れた。

その時ブローチが光り、私の体も光る。

 

自分の体が少しづつ塗り替えられていくのを感じながら、頭の中に浮かんだのは

 

『月』の輪のイメージ。

 

そこで私の頭は頭痛から解き放たれ、新しい自分になれた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔理沙「おい、なんだ?何が起きたんだ?霊夢?イーブイに何が起きた?」

霊夢「・・・え?」

魔理沙「だからイーブイに何が起きたんだって!」

霊夢「・・・知らないし、分からないし、分かってたら教えてるわ」

 

魔理沙「・・・じゃあ、なんなんだ?あの姿は?」

 

私が聞きたいくらいよ。そう言おうとしたが未遂に終わる。

 

今まで沈黙を守っていたゲンガーが急に動いて、イーブイのような生き物に向かって

影の球を発射する。

 

???「ぎゅおっ!」

その生き物は、飛ばされた影の球をそのまま体で受け、黒い輪状のエネルギー体を

発射する。

 

「あくのはどう」

 

そのいくつもの輪が重なり合ったようなエネルギー体は、予想以上のスピードで

ゲンガーに向かい、直撃する。

 

ゲンガー「ぐげあああっ!・・・グゥングァア・・・」

ゲンガーは、そのエネルギーを避けることはできずその身に受けてしまい、断末魔を

上げてその場に倒れてしまった。

 

 

私達はその様子を黙って見ることしかできなかった。

ゲンガーが倒れた後でも、その生き物が誇らしげに私の方を向いてきても、

 

しばらくはその様子を見た後の余韻に浸っていた。

???「ぎゅおん」

 

私は、その生き物がこっちを向いて鳴いたことで現実に引き戻された。

 

霊夢「ッ!、魔理沙!」

魔理沙「・・・ん?あ、ああなんだ?」

 

霊夢「いいからゲンガーを球の中に入れてやりなさい」

魔理沙「お、おう!・・・・・って、どうすんだ、これ?」

 

魔理沙がそう困っているとき、いきなり背後から

紫「何かお困りのようね」、と紫が顔を出した。

 

魔理沙「う!うおお!なんだよ紫かよ!」

紫「そうよ、私よ。それで、何か困りごと?」

 

霊夢「魔理沙がゲンガーの入れ方が分からないんだって」

紫「それわねー、こう・・・ゲンガーの方にボタンを向けて、そして押せば・・・ほら」

そう紫が実践してみるとゲンガーは魔理沙の球の中に灯り光になって吸い込まれていった。

 

それを確認したと同時に、黒い生き物が私の足元にすり寄り、「ぎゅおん」と

愛らしく鳴いた。

 

まるでイーブイのように。

 

 

・・・イーブイのように?

 

霊夢「!?・・・もしかして、イーブイ?」

イーブイ(黒)「ぎゅおんっ!」

 

紫「あら、霊夢。イーブイを「進化」させたのね」

霊夢「進化?」

 

紫「まあ、そのことについては後々説明するとして。霊夢、魔理沙」

霊夢「?・・・なにかしら?そんな真剣な顔して」

魔理沙「?・・・なんだ?」

 

そう問うと、紫はさらに険しい顔立ちになり、信じられないことを言った。

 

紫「・・・紅魔館および、霧の湖が凍らされて、ほぼ壊滅状態になってるわ」

霊夢・魔理沙「「!?」」

 

紫「これは由々しき事態よ・・・幻想郷の一大勢力でもある紅魔館が壊滅しそうな状態。

  明らかに・・・幻想郷のバランスが崩つつある・・・」

 

霊夢「それって・・・つまり・・・」

 

紫「ええ・・・」

 

 

 

紫「幻想郷が壊れてしまう可能性があるということね・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「霧の湖~湖の孤島」

 

???「ふんふふ~ん♪ここで寝ているだけで湖が全部凍っちゃうなんて・・・

    あたいったら最強ね!」

 

???「チルノちゃん!これは多分だけどチルノちゃんの力じゃないと思うの。

    なんか嫌な予感がする・・・」

 

チルノ「もう!大ちゃんは怖がりだな!どんな奴が来ても、あたいがババシ―っと

    やっつけt(じゃきー・・・

 

大・チルノ「ひっ!?」「?・・・なんの声だ?」

 

 

???「・・・じゃきー!!」

 

チルノ「!?・・・なんだ?お前は?」

???「じゃききー!」

 

 

 

 

 

To be continued・・・

 

 

 

 

 

 




なんか全体的に急ぎ足でしたかね?


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21ページ目 凍湖異変 その①

すイませェん・・・遅れてしまいました!orz

さらにすいません。次も遅れるかもしれないです・・・。

こんなダメ作者を許しつつ今回もゆっくりしていってください!


「シンオウ昔話~国引きの魔神」作::;= 著・・//! 絵「「」」。。

 

 

むかしむかし、とてもあたたかいくににとてもわるいおうさまがいました。

そのおうさまは、まじゅうたちからもくにのひとたちからもきらわれていました。

 

あるひ、そのわるいおうさまはくにのひとびとにこういいのこしたびにでました。

 

「わたしは、きたのキッサキというくにをしはいするためにたびにでる。

 わたしがいないあいだにはんらんをおこそうというのならいのちはないとおもえ」

 

そのことは、こくみんのこどもからとしよりまでしっていること。

ハードマウンテンにひそむといわれているまじゅうのちからをおそれたからだ。

 

そのまじゅうも、おうさまのことがだいきらい。でも、そのおうさまのいちぞくには

さからえない。おきいしでふだんのこうどうをせいげんされているからだ。

 

そして、わるいおうさまが旅に出て6か。

おおきなまじゅうがわたしたちのくにをみなみからきたへとなわでしばり

ひっぱっていったのです。

 

はなしによると、わるいおうさまはたおされていいおうさまがわたしたちをすくいにきた

ということだったのです。

 

わたしたちはとてもよろこびました。

 

そして、かざんのまじゅうはくにのみんなでさらにげんじゅうにふういんされ

くにをひいたきょだいなまじゅうも、じぶんのくにのしんでんへと

かえっていきましたとさ。

 

 

めでたし、めでたし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・寒い。冷たい。

 

今、私の体はどうなっているの?・・・寒い。

・・・いや。冷たいんでも無く寒いんでも無い・・・これは・・・

 

 

咲夜「!?、熱い!?」

ありえない熱量で体が炙られているのに気づき、目が覚める。

・・・ここはどこだろう?

 

そう彼女、「十六夜 咲夜」(いざよい さくや)は感じた。

普通、いつも通りなら彼女が今まで眠っていたところが紅魔館の門前だということに

気付いただろうが、状況が違う。

 

辺り一面真っ白。

雪ではない、氷が辺りを侵食していたからである。

 

咲夜「えーと、たしか、美鈴が凍ってて・・・それで・・・!?」

彼女はなぜ自分がこんな氷に囲まれて寝ているのかに疑問を持ち、記憶を辿っていく。

そして思い出した。

 

 

・・・自分は、紅魔の館を守ることが出来なかったことを。

 

咲夜「う・・・うわあああああああああああああああああん!!」

 

彼女はいつもなら、クールで感情をあまり表に出すような性格ではないが

今回ばかりは紅魔のメイド長として館を守れなかった責任感。

敵に敗れて気絶していたという恥。

部下を一人負傷させてしまった焦燥感。

 

それらすべてが相まって、大きな叫びとなって爆発した。

今の彼女には、そのどうしようもなかったイラつきと自らの情けなさを叫び、泣くことしか

できなかったのである。

 

 

咲夜「うっ・・・うう・・情けなさ過ぎて・・・うっ・・・言葉も出ない・・・」

彼女だって、この現代社会の人間としての観点から見れば

いたいけないまだ15か16辺りの少女である。

 

いくら悪魔に様々な訓練や仕事を受けていたってどんな人間も妖怪も

どんな時代、状況であっても自分の情けなさを叫びたくなるものである。

 

しかし、彼女だって立派な紅魔館の主戦力。

いつまでもグスグス泣いているわけではない。

 

しばらくして、さっきまで泣いていた彼女もいつもの鉄仮面のような無表情に戻り

顎に手を当てて冷静に状況を判断しようと思考を巡らし、一人の悪魔の顔が浮かぶ。

 

咲夜「・・・レミリアお嬢様!?」

そう、彼女が心の中から信頼し尊敬し忠誠を誓った一人の吸血鬼。

「レミリア・スカーレット」のことが頭の中に浮かんだ。

 

咲夜「・・・それに、あの氷はッ!?」

氷、と言ったのは紅魔館周辺の湖を凍らせ、紅魔館の半分を侵食したまさに

「氷塊」といった感じの・・・いや、氷塊そのものの化け物のことである。

 

今、思い出しても本当に氷塊にしか見えないあの化け物は今もこの

霧の湖、もとい「氷の湖」に潜んでいるのだろうか?

 

・・・だとしたらまた、私の主に危害が及ぶかもしれない。

そこまで考え、私はまだ氷の火傷の痛みがある体をさすりつつ急いで紅魔館の中へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「霧の湖~湖の孤島」

 

そこでは、ある種の混沌が繰り広げられていた。

 

それでは少し、その混沌を作り出している者たちの簡単な説明をしよう。

 

まず、その凍った孤島で楽しげに笑っている一人の妖精。

 

氷の妖精「チルノ」である。

妖精は普通、「森」や「炎」、「陽の光」といった温かいイメージの者に宿ることが多いのだがこの妖精は珍しい「氷」の妖精。

 

さぞかしこの氷まみれの状況を楽しんでいることだろう。

 

 

そして、楽しそうにはしゃいでいるチルノを見ているもうひとりの妖精。

「大妖精」こと大ちゃんである。

 

この妖精の正体を結論から言うと「不明」である。

どういう妖精なのか、はたまたどんな力を秘めているのかも謎に包まれている

数少ない妖精の一人。

 

普段は滅茶苦茶な行動をとる破天荒なチルノと共に行動し、

その行動に振り回されている(不憫)。

 

破天荒なチルノとは対照的におっとりした性格で、妖精の中では比較的・・・いや

「もっとも話が分かる妖精」として少し有名である。

 

そんな大妖精が、今見ているのは「二つ」。

 

嬉しそうに走ったり跳んだりしているチルノと、それを追いかける「氷塊」である。

 

大ちゃん(あの氷塊はなんだろう・・・?)

そのことについてさっきから考えているのだが一向に答えが出ない。が。

 

一つの可能性はすでに浮かんでいる。

それは・・・

 

大ちゃん(あの氷塊の子も最近森に来た「あの子たち」と同じなのかな?)

そう考えていた。

 

「あの子たち」とは無論、森にすみ着いた「ポケモン達」であるのだが

たかだか一妖精の大ちゃんに、そのことが分かるはずもない。

 

大ちゃん(でも・・・)

 

チルノ「あはははは!ここまで来てみろー!」

氷塊「じゃ・・・じゃきー(´・ω・`)」

 

大ちゃん(チルノちゃんとも仲良さそうだし・・・危害は加えてこないし・・・いっか)

そう結論付けた。

やはり話が最も分かると言われていても妖精である。

 

妖精の特徴である、「いたずら好きで好奇心旺盛」のいたずら好きは当てはまらないが

好奇心旺盛なのは他の妖精たちともチルノとも変わらない妖精の本能であった。

 

 

しかし・・・彼女たちは後々知ることになる。

 

愛が悪で遊ぶように、悪が愛で誘うように・・・

 

好奇心が自らを滅ぼすということを・・・。

 

 

 

 

 

霊夢「・・・見えてきたわね」

魔理「うっひゃあ。こりゃひでぇや」

紫「このレベル・・・下手したらそんじょそこらの妖獣や妖怪なんか絶滅するレベルね」

 

彼女らもまた知らない。

 

真実と理想の境界に生まれた悲しき竜の、その悲愴の冷気が

「怒り」に変わって、この秘境を襲うことを。

 

まだこれは始まりで会って、終わりではないことを・・・。

 

To be continued・・・




最近、中二病に目覚めたかもしれない・・・。

まあ、そのことはこの作品内では全く関係ないんですがね(笑)。


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22ページ目 凍湖異変 その②

とても眠い中。四分の一眠りながら書きました。

誤字や脱字がいつにも増して多いかもしれません。(スイマセン・・・)


ま、そんなことは気にせずに。今回もゆっくり見ていってくれたら嬉しいです。


???「・・・咲夜」

 

咲夜「・・・はい。なんでしょう?」

 

???「・・・この「アイスティー」。茶葉を変えたのかしら?」

 

咲夜「はい。先程、買い出しに行ったときに複数、いつもとは違う茶葉を買ったので」

 

???「そう・・・なかなかいいチョイスじゃない」

 

咲夜「ありがとうございます」

???「じゃきー(´・ω`・)エッ?」

 

???「ああ・・・あなたもね。この氷。ちょうどいい冷たさよ」

???「じゃききー(`・ω・´)」

 

咲夜(喜んでいる・・・のかしら?・・・ま、なんにせよ落ち着いてよかった・・・)

 

 

思えば二日前・・・彼(なのかしら?)もこの紅魔館に引き取られた

あの「異変」の当日。

 

あの四人がいなければ、一体どうなっていたか・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「二日前~霧の湖~紅魔館、地下大図書館」

 

 

 

 

 

 

咲夜「申し訳ございませんっ!」

???「・・・・・」

 

時は、私が氷上から目覚めて約五分後。

場所は紅魔館の地下にある大図書館。

 

本当は「ヴワル大図書館」という正式な名前があるが、別に覚えていても特に

得をすることはないので、基本的に「大図書館」と呼ぶ。

 

 

置いてある本は主に魔導書や、その大図書館を管理している

「パチュリー・ノーレッジ」様・・・パチュリー様が記した天体の動きを計算する

観測書や、外の世界の本・・・通称「外来本」が少々。

 

他にもただの絵本や、妖怪が封じられた妖魔本。小説、絵巻物等多岐に渡っています。

 

 

そして、私は今。誰に向かって頭を下げ、謝罪の念を表しているのか・・・それは、

 

???「・・・もういいわよ。頭を上げなさい。あなたが悪いんじゃないわよ」

そう、紅魔館の主にして夜の帝王である「吸血鬼」。

 

「レミリア・スカーレット」様である。

 

水色の短い髪。

整った顔立ち。

背から飛び出た二対の蝙蝠の羽。

白を基本とし、赤い装飾で飾った可愛らしいドレスを着ており

頭にはこれまた白と赤で彩られたシニョンキャップを被っている。

 

しかし、その見た目は恐らく、5~7歳辺りの幼女である。

しかし私は、この完全に私より小さく、可愛らしい幼女の姿をした吸血鬼に忠誠を誓い

昔からずっと尽くしてきている。

 

 

しかし今日。この紅魔館を襲った冷気。それから紅魔の門を守ることができなかったことで

私の処罰が決まるだろうと腹をくくってきたのだが、違ったらしい。

 

 

レミリア「あなたのせいじゃないのよ、咲夜。私が「運命」を「見て」いれば・・・」

レミリアお嬢様にはある特別な能力がある。

 

それは「運命を操る程度の能力」。

 

聞けば、絶対的に強力で、逆らえない能力と思うが少し違うらしい。

私もよくは知らないのだ。

 

まあ、そのことについてはいずれかお嬢様自身が話したくなったときに

話してくれるだろう。

 

 

レミリア「ああ・・・それと、咲夜。霊夢たちが到着したらしいじゃない」

咲夜「えっ?そうなんですか?」

 

レミリア「流石あの巫女ね。どこかで異変があれば絶対に核心を突き止め、

     その上きっちり止めちゃうんだもの」

咲夜「・・・ええ・・・そうですね・・・」

 

レミリア「?」

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は移り。

「霧の湖~湖の孤島」

 

 

霊夢「あれがこの異変を引き起こしたポケモンね・・・」

魔理沙「あのどう見てもかき氷の材料にしかならなさそうなヤツが元凶なのか?」

 

紫「私が見たところによると、絶対間違いないでしょうね」

 

魔理沙「本当かよ?」

紫「あら。疑うのかしら?」

魔理沙「・・・いや・・・だってよぉ・・・なあ?」

 

霊夢「・・・・・」

 

魔理沙「どうしてその元凶とチルノたちが一緒に遊んでいるんだ?」

 

 

 

 

チルノ「あっはっはっはっは!そんな攻撃が私に当たるかー!」

氷塊「じゃきー!!(; ・`д・´)」

 

大ちゃん「チルノちゃん。そろそろ降りて来たらー?」

 

チルノ「ええ~・・・分かった。じゃ、次はあんたが私の弾幕を避ける番よ!」

氷塊「じゃききー!( `ー´)ノ」

 

 

 

魔理沙「こっから見た感じだと全くこの異変を引き起こした奴には見えないんだが・・・」

霊夢「あんたは、見た目で敵かどうか判断するのかしら?」

魔理沙「見た目で私のポケモンのことをとやかく言ったお前に言われたくない」

 

霊夢「そんなことはどうでもいいでしょ?今は、あのポケモンを・・・

 

   捕獲か?撃退か?または・・・殺処分か。

   それを決めるのが先ね」

 

紫「そうね。私としては、面倒だからパパッと殺処分でもいいと考えているんだけど」

魔理沙「できたら捕獲して、私の戦力にしたいぜ」

 

霊夢「それじゃ、間を取って撃退に決まり。さ、行くわよ」

紫「はいはい。サポートは私に任せておいてね。危なくなったらすぐさまスキマ送りに

  するから」

 

霊夢「・・・いや、スキマ送りで解決するならあんたが何とかしなさいよ?」

紫「・・・私は今ね、弱っているのよ。今は何とか傷が見えない程度には

  くっつけているけど、一度はバラバラにされたのよ?

前のヒ―ドランみたいに動揺してたり、油断してたり、弱っていないと

  スキマ送りは正確に使えないの。分かった?」

 

霊夢「ハァ・・・元はと言えば自業自得じゃない。

   能力が使えないのならそれに代わるポケモンでも捕まえて来たら?」

 

紫「ぐうの音も出ないわ・・・」

 

魔理沙「・・・まあ、そーゆうことで今回ばかりは真正面から戦って捕獲するにすぎるぜ」

霊夢「言っておくけど、アレを狙っているのはあなただけじゃないから。

   捕まえられないと判断したら容赦なく撃退するわよ」

 

魔理沙「ああ、分かったよ。それじゃあ・・・」

霊夢「チルノたちには悪いけど、宣戦布告ね」

 

紫「頑張ってねー。「モンスターボール」には限りがあるのを忘れないでねー。

  あ、あと。「作戦」がバレないよう気を付けるのよー」

 

 

霊夢「さて・・・行くわよ。イーブイッ!」

魔理沙「二対一だろうと・・・この霧雨 魔理沙。容赦せんっ!ゲンガー!!」

 

二人同時にボールをポケモンの近くに投げ、地面に着地と同時に中から飛び出す二つの影。

 

 

ゲンガー「ゲギャああああンッ!」

 

影の中で笑う影。ゲンガーと・・・

 

 

本来は闇の中の月の影。イーブイのような生き物・・・ブラッキーが飛び出すはずなのだが

中から出てきたのは・・・

 

 

イーブイ(無)「ぶいぶーいっ!」

 

ブラッキーの進化前であるイーブイが飛び出てきた。

 

 

霊夢「ええっ・・・?」

魔理沙「はっ!?・・・」

 

二人がその通常ならあり得ないであろう出来事に驚いている間に・・・。

 

 

氷塊「じゃきー・・・」

 

チルノ「あれ?・・・霊夢と魔理沙じゃないか。どうしてここに?」

大ちゃん「チ、チルノちゃん。早くその子を連れて逃げようよ!」

 

件のポケモン、「レジアイス」と二匹の妖精がこちらに気付いてしまった。

 

 

これでは紫考案の「どきっ☆いきなり先制攻撃♡」・・・

もとい「奇襲作戦」が完全に意味をなさなくなってしまった。

 

こうなってしまったら、もう「説得」か「ゴリ押し」かの二択となってしまった。

 

いつもの霊夢と魔理沙なら、バレたらバレたでお構いなしに突っ込むだろうが

今回はイーブイの件がある。二人は、あまり表情には出していなかったが内心

とても焦っていた。

 

冷静さを失い、そして少し戦意を失ってしまった二人がとったのは「説得」であった。

 

霊夢「・・・ほ、ほら。そこの妖精が言う通り早く離れなさい・・・」(チラッ・・・

 

そう、先程の驚愕をまだ完全に拭えてはいないがなるべく平静を装い、魔理沙にも

チルノたちをどかすよう言ううようにウィンクで合図を送り、

 

魔理沙「お、おう。ここにいたら少し危険だぞ。速く離れろ。

    ただし、その氷塊は置いていけ」

 

ザワ・・・

 

チルノの中で、何か、嫌な予感が沸き上がった。

 

チルノ(えっ?・・・なんでこの子を置いていかなければいけないんだ・・・?

    ??・・・・・・・・・・・・!)

 

チルノ「・・・分かった」

 

魔理沙「そう、分かったら早くそこをd(チルノ「この子に乱暴する気だな!!」

 

霊夢「・・・そ。その氷はこの湖を凍らせた悪いやつだからやっつけなきゃいけないのよ。

   大丈夫よ。殺したりはしないk(チルノ「いやっ!信じない!」

 

チルノ「だって私や大ちゃんとも仲良く遊んでくれているこの子が悪いやつなわけがない!

    絶対に倒すっていうんなら私を先に倒しなさい!」

 

魔理沙「・・・どうする?」

霊夢「『どうする?』って・・・やるしかないでしょ」

魔理沙「え?」

 

霊夢「あんたもさっき言ってたじゃない。『二対一』だとかなんだとか」

魔理沙「まあ、言ってたが・・・・」

 

霊夢「なら、こうしましょ?あんたとゲンガーが、チルノとあの氷を相手する。

   私はその様子を見学。これで万事おっけーね☆」

 

魔理沙「なんで私が!?」

 

霊夢「私は今イーブイの進化の謎の究明で忙しいから。負けたら交代してやるわ」

 

魔理沙「~~~っクソッ!後で絶対覚えていろよッ!」

霊夢「はいはい。忘れるまでは覚えとくわよ」

 

 

魔理沙「・・・と言う訳で、私たちが負けたらもう別に勝手にしていいが

    勝ったらその氷を渡してもらうぜ」

 

霊夢(勝手にしていいなんて言ってないのに・・・あのバカ。負けたらどうすんのよ・・)

 

チルノ「あんたらなんかに絶っっっっっっっっっ対に負けないから!!」

氷塊「じゃきー‼‼‼」

 

 

凍り付いた湖の孤島で。

 

丁度差し込む熱い月光。

 

色変わりゆく魔獣と巫女。

影の権化と魔法使い。

動く氷像と氷の妖精。

 

それを遠くから見る悪魔とメイド。

 

 

それら全体を見守るは、シンオウの感情神。

 

 

 

この勝負。勝つのは熱い情熱を持つ氷精か?

それとも打倒、氷塊の魔法使いと影か?

 

それは、紅魔の館の塔に立ち、戦いを観戦する。

 

逆襲の人造ポケモンにすら・・・計算することはできない。

 

To be continued・・・

 




この話の中に矛盾や誤字脱字が無いか?

それを探して直すのが最近の日課になっておりまする。


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23ページ目 凍湖異変 その③

遅れまくってしまいました。
誠に申し訳ございません。


そして、こんな作者でも待ってくれた読者の方々に一言。


ありがとうございます。


それではこんかいの物語も始まり―・・・始まり―・・・。


自分は、知っている。

自分が存在する理由を。

 

自分は、知っている。

自分のやるべきことを。

 

自分は、まだ知らない。

「ここ」に来て、何をすればいいのか。

 

だが、自分は知っているはずだ。

自分が後の二人と共に「目覚めさせなければ」いけないことを。

 

 

だけど、まだ自分は「彼女」のことを知らない。

自分と同じような力を使い、自分にはできない「飛行」の能力を持つ「彼女」のことを。

 

彼女は、おそらく人間ではない。

だけど、自分たちのような存在でもない。

 

 

ならば・・・彼女たちは知っているのだろうか?

自分のことも、世界のことも・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まだ日が昇る気配のない深夜。

 

最近、この幻想郷に現れた「彼ら」・・・「ポケモン」の存在により

多くの異変が起き、この世界のパワーバランスは崩されつつあった。

 

だが、それらの異変はこの世界の住人たちにより一つづつ着実に減っていったが

それは「氷山」の一角。

一難去ってまた一難。

 

この異変が終わっても・・・「ポケモン」達が入ってきたという「大異変」は

まだ終わる気配がないのである。

 

 

 

チルノ「喰らえ! 氷符「アイシクルフォール」!!」

レジアイス「じゃきーーー!!」  れいとうビーム

 

魔理沙「ちっ!魔符「スターダストレヴァリエ」!」

ゲンガー「げぎゃあーん‼‼」 シャドーボール

 

どぉん、と小さな爆発音が響いたかと思えば辺り一帯に

ぐわっ、という大きな衝撃波が押し寄せ、砂煙を発生させる。

 

また、その砂煙の中で魔理沙の弾幕とチルノの氷弾が微かな月明かりを

乱反射して辺りを明るく染めていくが、そこにチルノかレジアイスの術により

辺りの野原や湖がさらに凍ってゆく。

 

そして、その氷にも弾幕の光が反射して辺りが虹色に光る。

 

その光景は、一つの戦闘風景とはとても思えない幻想的な光景であった。

 

だが、そのきれいな景色とは裏腹に曇った砂煙の中では、

 

 

チルノ「今日のアタイはいつもとは違うよッ!」

 

魔理沙「うおっ!あぶなっ!くそっ!こんなんじゃらちが明かない!!」

 

ゲンガー「ぎゃあああ~~ん‼‼」 ふいうち

レジアイス「ジャアキィー‼‼‼‼」 でんじほう

 

弾幕が氷弾を溶かし、氷弾が弾幕を壊し

影弾がレーザーで凍らされ、不意打ちを喰らわせて電磁砲を不発させる。

 

外から見れば極楽のような光景だが、実際中では接戦に次ぐ烈戦。

絶え間なく弾幕と「技」の打ち合いが繰り広げられていた。

 

 

一方、砂煙の外では・・・

 

 

 

紫「・・・少し、ここを離れるわ」

霊夢「どこに行くのよ?」

 

紫「紅魔館の責任者に、この異変解決の協力を要請してくるわ。

  その間。相手のスキをついてスキマ送り―・・・といった手助けができなくなってしま  うけど。それでもいいかしら?」

 

霊夢「・・・それを聞くのは私じゃなくて魔理沙だとも思うんだけど?」

紫「イヤよ。あそこの中危ないじゃない。そうゆうことで、また後でねー」

 

霊夢「ちょっ・・・まったく・・・おーい、魔理沙ぁ―!」

 

 

ドォン!パパパパ・・・グォッ・・・

 

霊夢「・・・聞こえてなさそうね・・・あぁ~・・・なんで私が危険な目に合わなくちゃ

   なんないのかしら・・・」

イーブイ「ぶい~・・・」

 

霊夢「・・結局何であんたが元の姿に戻っているのかも分からずしまいだし・・・。

   このところ異変続き。まっっっったく!いい迷惑よ‼‼」

 

そうグチグチ文句を言っている霊夢だったが、その表情は少し嬉しそうで

満足しているように見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チルノ「いい加減!弾幕に!当たって!倒されなさい!」

 

魔理沙「うっ・・・少し疲弊してきたか・・・」

 

 

さっきから、少しづつだが魔理沙の動きが鈍くなってきていた。

それもそうだろう。

 

なにせ、時折不定期に襲ってくる冷凍の光線や超電磁の砲弾。

そして正面から迫るチルノの氷弾。

 

それら全てを避け、続けて弾幕を撃ち続けなければいけないのである。

 

それでも、チルノはいつものように慢心していたり余裕を持っているわけではなく

とてつもない集中力と時折見せるレジアイスとの波状攻撃。

 

その集中力で魔理沙のレーザーや弾幕をかいくぐり、弾幕で少しづつ追いつめて

そこに、レジアイスの電磁砲や冷凍ビームで止めを刺しに来る。

 

それでも魔理沙はチルノにも匹敵する爆発的な集中力とゲンガーのアシストもあり

ここまで弾幕を避けてきた。が、そろそろ「限界」と言うタイムリミットが

顔を見せつつあった。

 

 

チルノ「・・・ねぇ、もう諦めてよ!」

レジアイス「ジャキー‼‼」

 

魔理沙「うう・・・諦めたいけどよぉ・・・異変の解決を手伝うって言っちまったからな・    ・・そこの氷塊をぶっ壊すか・・・捕まえる以外私が諦める道はないな・・・」

ゲンガー「ぐ・・・ぐぎゃん‼‼」

 

 

チルノ「なら・・・魔理沙は友達だけど・・・「親友」を守るためだから・・・

    「冷凍封印」するしかないわね!」

レジアイス「ジャァァぁぁぁぁキぃ‼‼」

 

 

そう大きく宣言したところでチルノの掌に圧倒的な冷気が集まりつつあった。

 

その冷気は、あまりの強大さに周りの空気が曇って見える程の絶冷気。

 

『ぜったいれいど』

 

 

そこにレジアイスが冷気を放出し、その力に拍車をかける。

 

 

その様子を息を上げながら見ていた魔理沙は、

 

魔理沙(こいつ・・・まだこんなに力があったのかよ・・・)

内心「絶望」していた。

 

ゲンガーの影弾や不意打ちでも倒せない圧倒的な耐久度。

そして「火事場の馬鹿力」とも言うべきチルノの集中力と冷気。

 

もはやこの体力では「ほうき」に魔力を流し空を飛ぶことも不可能。

ゲンガーも先程の電磁砲をもろに受けてしまい、体がしびれて動かない状態。

 

圧倒的に不利な状況。

瀕死の相棒。

止めの一撃。

 

魔理沙(・・・まただ・・・)

 

 

チルノ「それじゃあね!もう!二度と!私の「親友」を傷つけられないように

    未来永劫凍り付いていなさい!」

 

そう、半狂乱の状態でチルノが言うと同時に掌をぎゅっと握り、素早く開く。

すると、目に見える形で空気を凍らせ、草木を割っていく冷気弾が

目の前に迫ってきた。

 

 

 

 

 

 

魔理沙(また・・・私は勝てなかった・・・もう・・・弱いままは嫌だ・・・。

    ハッ・・・死んだら意味ないな・・・霊夢、アリス、パチュリー・・・。

   

    死んじまって・・・ごめんな・・・」

 

そう死を受け入れ、目を閉じた。

 

 

目を閉じて、最初に感じた感覚は・・・からだを痛いほどに凍らせる冷気ではなく・・・

 

 

 

 

 

熱?

そして閉じた眼に、赤く強烈な光が目の奥をしびれさせた。

そこに妙な鳴き声が聞こえてくる。

 

???「ぶしゅううっ!」

 

違和感を感じ、目を開けるとそこには・・・

 

 

霊夢「あーもう・・・なにやってんのよ!」

 

「友人」。博麗 霊夢が立っていた。

 

魔理沙「れいむ・・・ッて熱ッ!」

 

 

霊夢の姿を確認し、次に感じたのはさっきから感じていた体を冷やす冷気とは打って変わって汗を大量に発生させる「熱気」。

 

 

魔理沙「霊夢・・・この熱量は、いったい?」

 

霊夢「・・・それは私にもよく理解できていないわ・・・でも・・・」

 

 

 

イーブイ(赤)「・・・ぶしゅうっ!」

 

霊夢「イーブイが私達を再び助けてくれた。・・・今は、それさえ理解できていればいい」

 

 

チルノ「・・・霊夢。あんたもこの子の敵なの?」

 

霊夢「さーねー。どーかしらねー。でもねー。

   ・・・私は今。かなり「キレ」てるわ。

   ただの弾幕ごっこに・・・自分のペットや相棒を付けただけの「遊び」で!

 

 

   なに私の友人を殺そうとしてんのよ‼‼友達を守るため!?

   そのためなら他の友達を殺してもかまわないの!?ねぇ‼‼?」

 

 

チルノ「でも・・・」

 

霊夢「いーや。やっぱいいわ」

 

チルノ「え・・・」

 

 

 

霊夢「とりあえず。私の友達を傷つけたことと、この異変に関わったこと。

   そして、少しの話し合いで解決できたことをこんな大きな出来事まで

   発展させたこと」

 

霊夢「さて・・・その罰を。私、「博麗 霊夢」は。幻想郷のルールと規則に則って

   私個人ではなく「博麗の巫女」として・・・半分私念と半分巫女の仕事として

   えー・・・なんかもうめんどくさいわ。

   とにかく!私とイーブイとで勝負よ!あんたが勝ったら

   その氷塊を好きにしていいわ。

   ただし、負けたら・・・その氷塊は捕獲。そしてあんたはお仕置き。

   いいわね?」

 

 

 

チルノ「ふんっ・・・だから!絶対に!私たちは負けないから!何度言わすのよ・・・!」

レジアイス「じゃきー‼‼」

 

霊夢「・・・了解したってことね。それじゃあ・・・」

 

 

霊夢「遠慮なく行かせてもらうわ‼‼」

イーブイ(赤)「フシュウウウッ‼」

 

 

To be continued・・・

 

 



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24ページ目 長く冷たかった夜

言い忘れていたことが一つ。

私はポケモン廃人と言うほどやりこんでおりません。


あともう一つ。

しばらく投稿が劇的に遅れそうです。


早朝。

 

少しづつ、少しづつ。

東の空と地平線が白み始めるこの頃。

 

凍り付いた霧の湖では。

明け初めの太陽の暖かな白い光とは逆に、大気も凍らすほどの白い冷気が

立ち込めていたのだが・・・

 

それは今や一変。

 

暖かな、を通り越してむしろ「熱い」熱気がもうもうと立ち込めていた

白い霧と氷を溶かし始めている。

 

 

その熱源は幻想のステキなシャーマンの相棒。「ブースター」。

 

そして、相反するは凍湖異変の元凶。「レジアイス」。

 

 

いまだ、この楽園の住人達は彼らの正体も生態も何も知ってはいないが

一つだけ理解していることはあるだろう。

 

それは「どんなことが起きようとこの幻想郷と愛するものを守り抜くということ」である。

 

そう・・・それは、異変に加担した「あの妖精」であっても。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あたいは、ひとりぼっちだった。

 

今は違うけど、そのころのあたいは孤独だった。

 

 

 

 

この幻想郷。その中の「妖精」と言う種族としてあたいは生まれた。

妖精。それ自体がこの幻想郷の中でもかなり浮いた存在なのに。

 

あたいはそれ以上に浮いていた。

 

 

なにせ、陽気を好む妖精なのに冷気を操る妖精として生まれてしまったのだから。

仕方ないと言っちゃえば仕方がないんだけど・・・・・・

 

問題は周りの妖精たちの反応。なによ。「冷たいから嫌い」とか「凍傷になる」とか・・・

 

あなたたちと、あたい。いったい何が違うってのよ。本当に腹が立った。

 

そんなあたいでも、優しくしてくれた妖精が一人いた。

それが今の友達、大ちゃんだ。

 

大ちゃんはあたいなんかよりずっと頭が良くて、優しくて、あと「カリスマ」があった。

その大ちゃんが周りの妖精たちにあたいと仲良くして、って言ったら

 

態度は一変。あたいと一緒に遊んでくれるようになったけど、それでもあたいの中に

くすぶっている黒い何かは冷えていくばかりで消え去りはしなかった。

 

 

一緒に遊んで、一緒に話して、そのあと別れる。その別れる時の顔。

 

あー・・・なんであんなに嬉しそうなのかな・・・。

しかも、さっきまで手を繋いでいた右手を必死にこすってるじゃない。

 

もしかしたら、ただの被害妄想かもと思ったけどやっぱりあたいはイライラしていた。

 

 

 

そして今日。

 

 

あたいを避けるいけすかない生き物が森に入り込んできたけど、その代わりに

あたいと同じ悩みと喜びを共有できる仲間ができた。

 

大ちゃんにも話せなかったあたいの本当の気持ちも何もかも受け止めてくれた。

 

姿はただの氷っぽかったけど、あたいにとっては大ちゃんと並ぶ大切な

友達になってくれた。

 

 

でも・・・今日できたばかりの新しい友達を「連れていく」とあの紅白と白黒は言った。

それは許せなかったし、今のあたいならこの場所と「友達」との力を合わせれば・・・

 

 

今までやられ続けた「仕返し」ができると思った。

 

白黒は、結構苦戦したけどちゃんと倒した。・・・と、思ったけど・・・

 

 

 

え?なにこれ?まだ魔理沙は倒れていない上に、目の前に霊夢と赤い動物が立ちはだかっている。

 

 

その時、あたいは心の中に一つの疑念が生じた。

 

「あたいは・・・もしかして間違っていた・・・??」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊夢「・・・それじゃあ・・・遠慮なく行かせてもらうわ‼‼」

ブースター「フシュウ!」

 

そう啖呵を切り、一気にチルノとの間合いを詰めてお祓い某で薙ぎ払う。

チルノも、少し遅れたがそれをギリギリで躱して氷柱でお祓い某を受け止める。

 

 

ブースターもそれに続き、レジアイスとの間合を詰めていく。

レジアイスも十数センチ空中に浮くと、『冷凍ビーム』で氷の壁を築き

ブースターの動きを遅らせる。

 

 

その間にも、霊夢とチルノは払い棒と氷柱との突っ張りあいが続いていたが

それにしびれを切らしたか、チルノは空中に跳び、弾幕で攻撃するパターンに切り替えてきた。

 

霊夢も、それに順応し弾幕を撃つ。

 

 

 

 

霊夢(弾幕でのパワーなら私の方が上・・・だけども)

  (あの魔理沙との戦いで見せた集中力・・・それをなんとかして塞がなくちゃ!)

 

霊夢は、一気に弾幕を放ち、チルノの弾幕を相殺。上がる粉塵。奪われる視界。

そこに・・・

 

 

ぶわっ!

 

 

その粉塵の中から陰陽球の力によって加速した霊夢がチルノに向かって突っ込んでいった。

 

完全に隙を突いた攻撃。チルノは、この攻撃に対応できずあっけなく倒せた。

かと思っていたが・・・

 

チルノはそれを「読んでいた」らしく、霊夢が突っ込んできた時にはすでに

 

 

 

ー両手を上に上げ、巨大な氷石を創りだしていた。

 

 

 

驚愕により切れる集中力。確信した妖精の笑い。数秒遅れる判断。

 

 

ブースター「‼‼・・・ふしゅう!?」

ブースターも、主人の異変に気付き上を見上げるが。それがまた隙を作る。

 

その隙を見逃さず、狙いを定めてレジアイスが『電磁砲』を当てる。

鈍る動き。追撃の攻撃。

 

ちょっとした隙が連鎖し、なおかつ遅れた判断により勝敗が喫する。

 

 

それが、「弾幕ごっこ」であり。

それが、「ポケモンバトル」である。

 

 

霊夢は、重なる「弾幕ごっこ」での勝利により余裕を持っていたらしい。

彼女自身は、そんな気はなかったのだろうが・・・

 

 

しみついた勝利の感覚は。一瞬の油断と隙を作った。

 

 

 

霊夢(・・・あー、こりゃ。つぶれたら死ぬかなー・・・)

 

彼女は、こんな状況になっても目には光が宿っていた。

そんな絶望的なことを思っているにもかかわらず、彼女は冷静そのものだった。

 

 

それはなぜか?

それは・・・

 

 

霊夢「私は、無駄に「運」が強いからね」

 

そう呟くと同時に巨大なレーザーが氷塊を砕き割る。

 

 

チルノ「えっ!?」

 

チルノも唐突なことに理解が追い付かず、思わず「集中」を霊夢ではなく

レーザーが飛んで来た方向に向ける。

 

 

 

そこには、「ミニ八卦炉」をこちらに向けた息を鳴らす魔理沙がいた。

 

 

魔理沙「チルノ・・・いい加減学習しろよ・・・

    これは遊びであって・・・「殺し合い」じゃないってことをな・・・」

 

チルノ「ッッ‼」

 

その時、魔理沙に対するどす黒い「殺意」が沸いたが実行には移せない。

 

 

理由は二つ。

 

まず、自分の心が完全に乱れていたこと。

 

そしてもう一つ。

 

すでに霊夢に両腕を掴まれ、弾幕が放てなかったこと。

 

 

チルノ「うっ・・・く・・・」

 

霊夢「おとなしくしてなさい。暴れると痛いことするわよ?」

チルノ「・・・・・・」

 

こうなってしまっては、弾幕も氷柱も防御も回避もできない。

 

 

 

 

・・・・・完全に敗北である。

 

 

 

 

 

 

その様子を攻撃の手をやすめ見ていたレジアイスは、ハッと思い出し、ブースターに

意識を向けるが、遅すぎたのかもしれない。

 

 

ブースターは自分の体内の熱量を一気に放出し、自分を縛っていた氷の壁や

氷塊を溶かしていく。

 

当然氷は水となり、その水がブースターにかかって少し嫌な気分になるが

再度、思いっきり間合いを詰めてゆく。

 

その時である。

 

レジアイスは氷の粒子で作った霧に隠れ、その中で自分によく似せた氷の『みがわり』

を構築、しようとするが失敗。

 

 

体が人知れず傷ついていゆく。

 

そのダメージの存在にはすぐ気づいた。

 

 

これは『呪い』である。

 

周りを見渡し、ボロボロに傷つきながらもゲンガーがこちらを見据えて

レジアイスに呪いをかけていた。

 

そのことに気を取られる。そして、すぐさまブースターに向けて『冷凍ビーム』を

放とうとするが、できない。

 

ブースターの姿が見えないのである。

 

 

「・・・フシュッ」

 

そんな鳴き声が自分の足元から聞こえる。

だが、足元を見ることはできなかった。

 

 

至近距離での大の字に燃える強炎が視界を奪っていたからである。

 

『だいもんじ』

 

その威力は絶大であった。ゲンガーの『シャドーボール』ですら難なく受け止めていた

レジアイスを大きく吹き飛ばしたのだから。

 

 

しかし、止めを刺すには至らなかった。

 

 

 

お札でチルノを縛っていた霊夢がブースターとの戦闘に気付き、すぐさまそちらへ向かって飛ぶ。

 

 

それを見ていたレジアイスは、最後の力を振り絞り

 

『だいばくはつ』の準備を進める。

 

 

 

それに気付いたブースターは、すぐさま牙に炎をまとわせ、爆発するであろう瞬間に

牙を氷に砕き入れた。

 

『ほのおのキバ』

 

レジアイスは、そのダメージにより爆発を起こすこともできず、その場に倒れ伏した。

 

 

 

 

 

 

 

 

霊夢「・・・・終ったぁ・・・」

 

霊夢は、倒れたことを確認すると思いっきり氷が解けて間もないビショビショの草原

に身を任せ、ゆっくりと寝息を立て始めた。

 

 

魔理沙「やっとかよ・・・あ~・・・」

 

魔理沙は、霊夢が眠り込んだと同時にその場で共に寝入ってしまった。

 

 

 

 

紫「ただいま~・・・って、寝ちゃってるじゃない」

 

紫は、紅魔の主と話をつけ終わり。今しがた帰ってきたところだったが

先に確認したのは異変が終わったかではなく、寝込んでしまった二人であった。

 

それは、この二人が異変を解決することを確信して信頼していたからであろう。

 

 

紫「あ~あ~・・・霊夢は服がびちょびちょだし、魔理沙はところどころ凍傷になりかけて

  いるし・・・。

  スキマで紅魔館にでも送ってあげましょう」

 

紫「当然。チルノ(あなた)とアレもね」

 

 

チルノ「うう・・・」

レジアイス「・・・・・・・・・・・」

 

 

 

 

紫「さてと・・・これでひと段落つけるかしらね」

 

そう紫は言うと、一人づつ、体の傷が開かない程度に紅魔館の客室へと運び込んでいった。

 

 

 

 

 

確かに。これはひと段落である。

 

しかし、世の中と言う物は不思議なもので。

「二度あることは三度ある」とか「過ちは繰り返す」ということが多々ある。

 

 

 

当然、「ひと段落」あるというのはそれまでの「文章」がなければいけないのである。

 

 

 

 

 

 

・・・彼女たちは、一体何回「ひと段落」つくことになるのだろうか?

 

 

To be continued・・・




私もようやくこれでひと段落・・・。


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25ページ目 朝

はい、お久しぶりですね。

またもや遅れてしまってごめんなさい。orz


今回は、異変終わりの疲れた朝を表現するべくキーを打ち込みました。
あと、携帯獣ってタイトルなのにポケモンが出てきません・・・。

それでは今回も始まり始まり・・・。


ちゅんちゅん・・・ちゅん、ぱたぱた・・・

 

小鳥だろうか?

または「小鳥のような鳴き声のポケモン」だろうか?

 

とにかく私はその小鳥の鳴き声と羽音で目が覚めた。

最初に、私の目に入ってきたのは曇り一つない紅色の天井。

 

その目に痛すぎる色に私は思わずうめき声を漏らしてしまう。

魔理沙「うう・・・」

 

腕をおでこに当てて、目に入る赤色を少し遮る。

それでも、目に入れてしまった紅色は容赦なく目の奥をちりちりと痛ませてくる。

 

魔理沙(くっそぉ・・・なんだってんだ」

思考半分、ぼやき半分で文句を漏らした私は目の痛みに耐えかねて飛び起きるように

上半身を起こした。

 

魔理沙「ああっ・・・う・・・」

いきなり上半身を起こしたものだから頭が揺れ、ちょっとしためまいが起きる。

 

まったく。ここ最近いいことが無さすぎるぜ。

 

そんな文句を頭で流していると、ドアの外でノックと人(?)の声が響く。

???「しつれいします。おきがえをもってまいりました」

 

 

魔理沙(そういえばここは・・・(多分紅魔館だろうが)どこの部屋だ?)

まあ、ドアの外でノックをしている奴に聞けば分かるだろう。

 

???「あの~」

魔理沙「あ。ああ、すまん。入っていいぜ」

 

妖精メイド・A「しつれいします。まりささま。おきがえを・・・」

魔理沙「ああ、分かってるよ。着替えを持って来てくれたんだな。ありがとう」

 

メイド・A「いえいえ」

そう言って少し恥じ入るように顔を赤めらせる。

 

メイド・A「では、おきがえはここにおいていきますので。

      なにかあったらよんでください」

 

と、言うことは「何かある」可能性があるのか。

 

そう言いそうになったが、珍しくちゃんと仕事をしている妖精メイドを見たのと

この仕事をしているメイドの機嫌を悪くするのはめんどくさいと思ったから

言わずに置いておこう。

 

メイド・A「あの・・・どうかしましたか?」

魔理沙「ん?いや、少し考え事だよ。もういいよ、戻ってくれて」

 

メイド・A「あ、はい」

そう言って、メイドはこの部屋から出ていった。

 

 

魔理沙「・・・咲夜も、やっと仕事をちゃんとこなせる妖精メイドを雇ったみたいだな」

紫「そうみたいね」

 

魔理沙「・・・・・」

紫「・・・・・・・」

 

魔理沙「ああ・・・もうほんと止めてくれ、紫」

紫「あら?なんのことかしら?私はただこの部屋に顔を出しに来ただけよ」

 

魔理沙「驚きすぎて声さえ出せなかったんだぜ?それに

    寝起き相手にやることじゃないだろ?」

 

紫「『寝起き』だったらやめてたわ。あなたはもう起きてからかなり時間が

  立っているはずなんだけど」

 

魔理沙「・・・はあ・・・私の様子を見に来たってことは・・・なんだ?

    っつーことはお前が私達をこの紅魔館に運んだのか?」

紫「当然ね。それに治療も手伝ってあげたのよ」

 

魔理沙「おまえが?」

紫「わたしが、よ」

 

魔理沙「・・・霊夢!・・・そうだ、霊夢は・・・」

紫「ああ、霊夢ならまだ寝ているわよ。ちょうどあなたのこの部屋から

  向かいの部屋にね」

 

魔理沙「・・・そうか」

紫「無事かどうか確認したかったのかしら?」

魔理沙「・・・ま、まあ・・・そう・・・なるな・・・」

 

紫「あらあらどうしたのかしら~?少し頬が赤く染まってるわよ~?」

魔理沙「う、うっさい!早く出てけ!」

 

紫「んもう。運んであげた恩人に言うセリフかしら」

そう面白そうな口調でそんなことを言った紫は、空間に出現した「スキマ」から

どこかへと消えていった。

 

魔理沙「・・・まったくもって・・・先が読めない上に気味が悪い奴だぜ」

紫「それはちょっとひどくないかしら?」

魔理沙「はよどっか行け」

紫「はいはい」

 

魔理沙「・・・今度こそ・・・来ないよな?」

そう言ってもいきなり声がしたりとか、そういうことも無いので私はやっと

ベッドから降りて立ち上がった。

 

魔理沙「・・・げっ、私。こんな病人みたいな格好してたのか・・・」

見れば白い浴衣姿である。

かなり質素だが、肌触りがよく思わず頬ずりしてみたくなるほどだ。

 

魔理沙「さすが紅魔館。用意している着物も浴衣もいい出来だぜ・・・」

そのことについて考えながら着替えをしていると。

 

魔理沙「‼‼」

ちょっとした悪い考えが浮かんだ。

 

魔理沙「・・・ミニ八卦炉は・・・ある。

    ゲンガーのモンスターボールもあるし・・・回復までしてくれてるな」

そのことを確認すると、その悪い考えはさらに広がって

一種の「わるだくみ」になる。

 

 

魔理沙「・・・にしし・・・いーこと思いついたな~、私っ!」

そう鼻歌交じりに行った私は部屋から出て向かいのドアをそっと開ける。

 

そこにはまだ寝息を立てている霊夢の姿があった。

魔理沙(よしよし・・・そのまま寝て起きないでくれよ~・・・)

 

霊夢がまだ心地よい眠りの中にいることを確認すると私はドアをそっと閉めて

前に行ったことのあるルートを通って地下へと向かう。

 

その先にあるのは「ヴワル大図書館」。

着物や浴衣にまで高級思想が染み渡る紅魔館。

と。いうことは、である。

 

魔理沙(もしかしたらゲンガーや私のために役立つグリモワールや妖魔本が

    あったりして~^^)

そんなこすずるい希望を胸に、私は図書館へと足を踏み入れていった。

 

 

 

「紅魔館・・・大広間」

そこには長テーブルと椅子が並べられており、そこで

八雲 紫と、紅魔館の主。「レミリア・スカーレット」が談義していた。

 

 

紫「・・・さて。この子をどうしようかしら?」

レミリア「う~ん・・・何かに使えそうな気がするんだけど・・・」

 

その談義のテーマは「氷塊のその後を考えて」。である。

当然、この談義会には例にもれず紫の策が貼ってある。

 

紫「あら?あの子をここで飼うってのかしら?

  それはまた、ちょっとしたデジャヴを覚えますわね」

 

レミリア「なんのことかしら?」

紫「何でもないわよ・・・それで、あなたはあの子をどうしたいのかしら?」

 

レミリア「うー・・・・・・・・ん!」

紫「?」

 

レミリア「そういえばちょうどアイスティーの氷が少なくなってきているのよ。

     たしかそいつは・・・氷を作れるんだっけ?」

 

ちなみに、その氷が無くなるように盗んでいたのは当然私である。

 

紫「そうね。作れもするし凍らすこともできるわよ」

レミリア「なら家にちょうだいよ。あなたは多分こういうことに興味なさそうだし」

 

紫「ん~・・・そう、ね。なら預かってもらおうかしら」

レミリア「よし。これで、吸血鬼と契約完了よ」

 

紫「これは「契約」なのかしら?」

レミリア「そうやって言った方がカリスマが出そうじゃない」

 

紫「・・・そうね。私もそう思うわ(どうでもいいけど)」

レミリア「あっ・・・あと」

 

紫「?」

レミリア「霊夢と魔理沙に伝えておいてくれるかしら。

     『夜になったら話がある』って」

 

紫「・・・ええ、気が向いたらね」

レミリア「カリスマっぽく言ってもらえればもっといいんだけど」

紫「はいはい。気が向いたらね」

 

そう言い残し、私はゆっくりスキマの中に姿を消した。

 

そして、私はあの七面倒くさい氷塊を預からせたこと。

その作戦が成功したことに少しうれしくなり

 

顔を新世界の神っぽくゆがませてこう言ったわ。

 

紫「計 画 通 り」(ドヤァ・・・

 

 

To be continued・・・

 

 

 

 

 




デスノート面白いっすねー^^(東方かポケモン読め)


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26ページ目 図書館での勉強会 

どうも、お久しぶりです。

勉強と宿題のレポートに追い回されているせいで小説が遅れてしまいました。


はい、いい訳ですね。すみません。


それでは今回も始まり×2。


・・・・・・

 

やはり、この本を読んでいる間は押し黙ってしまうように喋れなくなる。

それはなぜなのかはわからない。

 

けど、それは多分「いい意味」ではないと思っている。

仮にいい意味だったら、胸が締め付けられるような寂しさも

息苦しくなるほどの集中も得られないはず。

 

「やぶれた世界」

 

そう黒い革で覆われた分厚い本に金の文字で刻まれていた。

その内容は、

 

創造神から生まれた神があまりにも他の生物や神を殺すというので

その肉体を「半分」焼き、もう半分に残された魂を焼け残った肉体と共に闇の世界へと

送った、と言う物である。

 

その送るまでの経緯、その後の神の後悔と怒り。

闇の世界の中の絶望。

 

それらが余りにも強烈に、そして大胆に、かつ憂いの感情を含んでいる表現。文法。

黒く彩られた挿絵の悲壮的な神の姿。

 

 

ここまで「完成」された、そして「圧巻」された本を読んだのはこれが初めてだった。

 

 

・・・あの氷塊がこの紅魔館に現れてまだ数時間しか経っていない。

だが、その数時間は私にとって彼らの正体を調べるに十分な時間だ。

 

でも、一つ疑問がある。

私はこの図書館にあるすべてのジャンル、置いてあるところ、巻数、タイトル。

それら全てを暗記しているはずなのにいつの間にかこのような本が増えている。

 

いや、増えているというよりも「出現」していると表現したほうがいいかもしれない。

それ程のスピードであの氷塊と同じであろう生物たち・・・ポケモンに関する

本が増えてきた。

 

「やぶれた世界」の本の他にも、

 

「第二版携帯獣:超の書」

「ポケモン生物工学」

「ゲノセクト育成レポート」

「ゴーストタイプを生物と認めるか否か」

「ビーダル:私を支えてくれた125日」

「電気タイプの理化学研究」

 

小説や論文、レポートや教科書といった様々な本が現れている。

 

・・・その中に出てくるポケモンを見たこともない私にとっては

あまりピンとこないけど・・・

 

それらの本は私を久しぶりに沸き立たせてくれた。

いつも通りの研究書や魔導書で研究というのも少し疲れてきた。

 

これはちょうどいい。

ここに贅沢な研究対象がある。研究の休憩代わりにこちらを研究してみよう。

 

 

 

ガタっ・・・ばさばさ、ドサッ

 

 

・・・でも、その前にここに来た「泥棒」を対峙しないと。

 

魔理沙「お~い!パチュリー?いるんだろー?いなくても構わないが―!」

 

仕方ない。研究は後回しにして泥棒を追い払うとしよう。

 

パチュリー「ここにいるわよ。で、何の用よ?」

 

魔理沙「ああ、そのことなんだが。ま、簡単に言っちまうと本を借りに来た」

 

パチュリー「・・・あなたの「借り」はまるで「狩り」ね。

      ガサツなあなたのことだから今まで私が貸した本達もきっと

      酷い仕打ちを受けているんでしょうね」

 

魔理沙「い、いや?ちゃんと大事に扱っているぜ?」

 

パチュリー「・・・あなたも少し良心的になったか、それとも頭の動きが鈍くなったか

      知らないけど・・・さっさと本を奪いに来ないところを見ると

      私から聞きたいことでもあるのかしら?」

 

そう言ってやると魔理沙は少し驚いたような顔をして、

魔理沙「へえ、よく分かったなぁ。まあ、なんだ、あれだ。

    あのポケモンに関する本がないか少し立ち寄ってみただけだ。

    ついでに貴重な魔導書(グリモワール)も貰いにな」

 

まったくもって罪悪の表情・感情もなく言ってくる。

いつも通りだ。

 

パチュリー「・・・ええ、確かに今。ポケモンとかいう生き物の本があるわよ」

 

魔理沙「よしよし。やはりあったか。それじゃあ早速それらの本をいくつか

    借りさせてもらうかな」

 

パチュリー「本当にいつも通りだけど、そのいつも通りの日常に

      終止符を打つ時が来たようね」

 

魔理沙「お?()るのか?」

 

パチュリー「・・・と、思ったけどやっぱりやめとくわ。

      だって、あなたのポケモンや八卦炉は動いてもあなた自身はまだ

      ボロボロじゃない」

 

魔理沙「まあ・・・そうだが・・・」

 

パチュリー「この図書館内でなら別に読んでも構わないわよ。

      ただ、無断で持っていこうというのなら話は別だけどね」

 

そう警告めいた口調で言うと当の魔理沙は、

魔理沙「どうしたんだ?お前が図書館内の本を好きに読んでもいいっていうなんてな」

 

パチュリー「緊急事態みたいだしね。あ、それと」

魔理沙「ん?どうしたんだ?」

 

 

パチュリー「あなたのポケモンに本を持ち出させようという考えはすでにお見通しよ」

 

 

魔理沙「あ、あはは・・・な、なんのことやら~・・・」

    (なぜだ!?なぜバレた!?)

 

パチュリー「あなたの考えるこすずるい考えなんて大方予想がつくのよ」

 

私の言葉を聞いて、魔理沙は諦めたのかモンスターボールのボタンを押して

ゲンガーを戻した。

 

パチュリー(本当はあてずっぽうで疑ってみただけだけど)

目の前の魔理沙の反応や行動から実際にそう考えていたのだろうということは理解した。

 

魔理沙「・・・ああー・・・図書館内でおとなしく読むしかないのか・・・」

パチュリー「そうしなさい」

魔理沙「うう・・・」

 

魔理沙は残念そうにうなだれた。そこに・・・

 

紫「たっだいま~。まりちゃ~ん、愛しの霊夢が起きたわよ~」

魔理沙「あああああああああ・・・・・」

 

そこに紫が現れた瞬間に、魔理沙は地面に沈みこもうとするくらいの勢いでうなだれた。

 

紫「そろそろ霊夢はレミリア、咲夜と一緒にここに来るはずよ」

 

パチュリー「あらそうなの。こあ。紅茶を6人分用意してくれるかしら」

そうパチュリーは自らの使い魔「小悪魔 こあ」に命じ、こあも

 

こあ「はーい!すぐに淹れてまいります~」

と、合点招致にそそくさと図書館から出ていった。

 

魔理沙「ああ・・・ほんとに最近いいことがなさすぎる・・・」

パチュリー「運気を上げる魔法なんてこの世にはないわ」

魔理沙「そんなことを言ってるんじゃないぜ・・・」

 

紫「図書館でみんな集合って、なんだかお勉強会みたいね」

パチュリー「ああ、こあ。悪いけど紅茶の他にケーキも用意して」

 

パチュリーは、そう戻ってきたこあに言うと、こあは、

こあ「そういうと思っていましたので、途中で会った咲夜さんに頼んで

   作ってもらいました」

 

気付けばこあの横にはケーキをのせたお盆を持っている咲夜が立っていた。

 

咲夜「もうすぐレミリアお嬢様も霊夢と一緒にここに来るはずです」

 

そのことを言っている間に、図書館に入る出入り口が大きく開き、

レミリア「待たせちゃったかしら?」

霊夢「ああー・・・頭が痛いわー」

 

カリスマを意識して出そうとしているレミリアと、頭痛に頭を抱える霊夢が入ってきた。

 

紫「全員集まったわね。それでは」

 

 

紫「『お勉強会』という名の会議を始めましょうか」

 

 

 

To be continued・・・

 

 




なんか・・・最近ポケモン要素が減ってきている気がする・・・


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27ページ目 ポケット・モンスターと天狗少女

スイマせぇん・・・

遅れること・・・何日くらいでしょうか?(忘)

まあ、言い訳するとしたら、ちょっとした断食に挑戦していて、その間。
何も考えられなかったからです。はい、訳わかりません。


今回も、また始まるのです。


朝。天気のいい日。気温は20℃といったところか?

夏にしてはなかなか過ごしやすい。

 

AZ「う~む・・・」

 

そのようなことを考えていると、ついついまた眠ってしまいそうになる。

しかしそうもいかない。

 

今日は小鈴と阿求にポケモン達を見せてやる約束だ。

先に起きていろいろと準備をしなければ。

 

AZ「うぬぬ・・・少し、寝すぎてしまったか?・・・」

まだ寝起きでダルイ体を上半身だけ起こし、周りの布団に入っている

二人の少女を見てみる。

 

小鈴「スー・・・スー・・・」

阿求「クー・・・ク―・・・」

 

二人ともまだ心地の良い夢の中である。

 

AZ「幸せそうな顔をしているな」

私には、孫がいない。それどころか子供もいない。

だからなのか、彼女たちが幸せそうに寝ている姿を見ていると、まるで自分の孫の寝姿を

見ているような気分になった。

 

そしてすぐさま、その考えを否定し。

「客」として、「主人達」の眠りを妨げないようにゆっくりと戸を開けて、廊下に出る。

 

まだ使用人たちも眠っているようで、辺りはしんとしていた。

AZ(一番先に起きたのは、私の様だな)

そのことを確認し、少し安堵する。

 

仮にここで使用人に会っても、驚かれてすこしガッカリするだけだ。

 

私は、なるべく足音を立てないように歩き、昨夜に夕食を頂いた広間の縁側に通じる戸を

開け放った。

 

サァァァ・・・・

 

心地の良い、夏の朝特有の妙に涼しい風が私の長髪を揺らした。

思えば、この世界に来てまだほんの数日しか経っていない。

 

彼女らは、私のことを受け入れてくれた。そのことを問いただしたとき、彼女らは

 

 

 

 

 

阿求「何でと言われてもですね、『すべてを受け入れる』。それが幻想郷のルールの一つ

   のようなものですし」

小鈴「それに、AZさんが近くにいても私たちは全然迷惑じゃないですもん」

 

二人とも、年相応の少女らしくはにかみながら答えてくれた。

 

AZ「ここは、風景や空気だけでなく、人の心まで美しいところの様だな・・・」

そう考え目を閉じると。

 

 

がりがりがりがりがりがりがりがり。

 

異音がした。

AZ「?」

 

私は、確かにこの音に聞き覚えがあった。

あれは確か、ジョウト地方に渡った時。「やけたとう」で聞いた、あの耳障りな音。

 

何かを「かじる」ような音。

その正体を、私は見つけた。

 

 

AZ「『コラッタ』・・・・・・」

 

コラッタ「キー‼」がさがさっ・・・

 

 

 

そう、私もよく知っている。ネズミの姿をしているポケモン。

紫色の体毛と、長い前歯が特徴の、民家にも住み着くことがあるとされる

かなり身近なポケモンだ。

 

そのポケモンが、私を見た途端どこかへと走り去ってしまった。

 

AZ「うん?」

成程、理解した。コラッタは、「あれ」をしていたからここに来て、そして逃げた。

 

AZ「・・・柱がかなりかじられているな・・・阿求になんて説明すればいいか・・・」

その柱は、見れば柱の下の方が中の白い繊維やらなんやらが表に飛び出してしまっている。

 

この惨状。ポケモンを見たこともない阿求に「コラッタにやられた」

と言うだけでは情報不足過ぎるし、説明不足だろう。どうしたものか・・・

 

私はしばらく思案に暮れていたが、頭上の方でバサバサと羽音が聞こえた時には

首をグンと上に上げ、空を見ていた。

 

 

 

 

AZ「あれは・・・『マメパト』に・・・『オニスズメ』・・・『ムックル』もいるぞ。

  『ヒノヤコマ』、『エモンガ』・・・なんだこれは!?」

 

私は、巨大な影に包まれていた。

いや、正確には「おびただしい数の影」に包まれていた。

 

 

空にはそれぞれの地方を代表する鳥ポケモンや、飛行ポケモン達が悠々と

集団飛行を楽しんでいた。

 

そして、それを追う・・・人間?いや、羽が生えているということは、天狗か?

 

なにやらカメラを持って叫んでいるが、すぐに群れが四方八方に散っていき

その天狗少女も、どの群れを追うか考えているうちに群れ見失ってしまったらしい。

 

AZ「ふむ・・・あれが、「天狗」と言う者なのだろうか?

  こうやって見ていると、大して人間と変わらんな」

 

その様子を腕を組んでみていたことに気付かれたのか、天狗が首をグルリと回して

こちらを見ていた。

 

 

 

マズイ。襲われるか?妖怪の中には、「人っ!殺さずにはいられない!」という

危険な奴もいるらしい。あの天狗だって例にもれずこちらを殺しに来るかもしれない。

 

 

 

私は、すぐさま家の中に避難しようとしたが遅い。遅すぎた。

いや、彼女が「速すぎた」。追いつかれ、袖をつかまれる。

 

 

私は、素早く腰のモンスターボールを取り出し天狗に向かって投げつける。

 

射命丸「いや~、すいまsっとぉ!?何するんですか!?」

かわされた。だが、かわされたとしてもいい。

 

AZ「シンボラー‼」

すでにボールは開き、私のポケモンがすでに天狗の背後を捕らえた。

 

シンボラー「ボラーー‼‼」

シンボラーが天狗に威嚇の鳴き声を上げる。

 

AZ「お前は何者なんだ?なぜ私の袖を掴んだ?天狗だな?話は聞いているぞ」

とりあえず、少し威圧感を声に加えて質問をしてみる。

 

 

何個か質問を重ねて問うことで、相手に緊張感や罪悪感を与える効果がるとされる。

だが、それは「人間」にだけらしい。

 

 

射命丸「う~ん・・・まず、私は「射命丸 文」。あなたの言う通り天狗です。

    あなたの袖を掴んだのは、あなたが逃げようとしたからです。

    あっ、別に捕って喰おうなんて考えてませんよ。

    さて、質問には答えましたよ。人間さん?」

 

 

迂闊だった。もっと慎重に行けばよかったかもしれないが、後の祭りだ。

それに、先の質問でこの天狗(射命丸と言ったか?)は私に敵意・殺意は持っていない

らしい。

 

そして、さっき言った質問にすべて的確に答えてきている。

人間より頭が冴える者もいるという情報は、嘘偽りのない真実だったのか。

 

AZ「・・・そうか・・・」

私は、そうとしか言えなかった。

 

射命丸「あの~、とりあえず名前だけでもお聞きしてもいいでしょうか?」

 

AZ「・・・名前?」

この天狗。私の名前を知ってどうする気なのだろうか?そのことがひどく気になった。

 

AZ「名前は教えてやるが、まず何のためだ?」

 

サァァァァァ・・・

また風が吹いた。今度は少し強い。だが爽やかな風であることには変わりなかった。

 

 

その風で、今度は私の髪だけでなく彼女の羽もゆらゆら揺れている。

 

射命丸「あっ、これは失礼しました」

たははっ、といたずらっぽく笑う射命丸は、なんだか、私よりも人間らしい気がしてきた。

 

射命丸「おほんっ。私は、再度名乗らせていただきますが「射命丸 文」と申します。

    新聞記者で、「文々。新聞」という新聞を発行させていただいてます」

 

 

AZ「・・・その新聞記者が、私に何の用だ?」

シンボラー「ぼらー?」

シンボラーも、私の疑問と同調したように鳴き声を発する。

 

その声を聞いた射命丸は、「フヒヒヒッ」と気味悪く笑った。

 

射命丸「嫌ですねぇ、至極簡単で単純(シンプル)なことですよ」

 

ふっふっふっふっ・・・また気味悪く笑った。

 

 

 

 

射命丸「あなたのことを、取材させてもらおうと思いまして」

 

AZ「取材?」シンボラー「ボラ?」

 

 

To be continued・・・

 

 

 




携帯獣図解伝記:三つの封印



                        
 ● ●       ●      ● ●     
● ● ●  +  ●●●●●  +  ●●●  =  
 ● ●       ●      ● ●     
                         
                        

解読)氷と鋼と岩石より創られし兵は、創造神の代理王を護り続けるという。
解説)四つ目の十字型と思われる文様は、あまりにも掠れていて復元が不可能であった。


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28ページ目 感情神の霞み影

映画見ました!

何の映画かって?
「時間神VS空間神VSダークライ」っすよ!

注:今回のお話に時間神も空間神もダークライもでてきません。


気温が少し上がってきたか。

ほんの少しだが、汗が額に浮き出てきている。

 

だが、その汗も。うだるような暑さも。

夏特有の爽やかな風によって消え去ってしまう。

プラス、そこに木陰が加わり避暑において完全に隙が無くなっていた。

 

 

私・・・AZは。阿求、小鈴、射命丸と共に

「魔法の森」を歩いていた。

 

 

 

阿求「この森に入ることは、もうないと思っていたけど・・・」

小鈴「うう~・・・薄暗い、怖い・・・ヒャア!?なんか動きましたよ!?」

 

AZ「落ち着け。小鈴。恐らくポケモンか、動物だろう」

射命丸「いや~『妖怪』って選択肢もあるんですけどね~・・・」2828

小鈴「ヒ~~‼‼」

 

私は、今までの旅の中で「森」と言う物は数えきれないほどに通ってきた。

 

「ハクタイの森」「トキワの森」「ヒワダの森」「ハクダンの森」・・・・・

名称がある森だけを言うのなら簡単だが、名称の無い。

 

いわゆる「名無しの森」なんかは何十・何百と通ってきた。

 

 

 

 

だからだろうか。

この「森」の空気。

入ってみただけで分かる。

 

ここは、何やら澱んだ、穢れた、死骸の溜まる湖の底のように濁った力が

渦巻いていた。

 

 

射命丸「阿求さんはご存知だと思いますが、ここには様々な毒性を持つ

    魔法のキノコが群生しているところなンですよ。

    あ、あと下級妖怪もそれ相応に出てくるので御用心を」

 

小鈴「うう・・・いくら里の人達に見せないほうがいいとは言っても・・・

   こんな森の奥深くにまで行くなんて・・・お父さんになんて説明しよう・・・」

 

 

ふふふ・・・

 

またあの天狗の笑い声だ。

 

射命丸「ご安心ください!小鈴さんも阿求さんもAZさんも!皆さんまとめて

    私が守ってあげます!」

 

そう言ってはいるが、さっきの気味悪い笑いのせいで少し信用できない。

 

阿求たちと射命丸。

人間と妖怪。

 

種族の違いか、それか性格の違いか。

 

 

 

・・・なんだかんだ言って、私が射命丸を信用できないのは

恐らく人間にとって命を脅かす「妖怪」だからだろう。

 

この幻想郷では、人間と妖怪が共存関係にある・・・と、言っている者がいるらしいが。

(八雲 紫・・・と、言う者だっただろうか?)

 

私個人の考えでは、共存とは言っても人間は常に妖怪のことを恐れている。

酒屋や店では夜に妖怪と人間が酒を飲みかわし、協力している。

 

だが、妖怪側では恐らく。どんなに仲良くなろうと捕食対象であることに

変わりはない。

 

人間側からしてみれば、こちらには妖怪を退治できる「博麗の巫女」がいる。

それだけで安心しているわけではないだろう。

 

第一、阿求の話によると「人間の味方も妖怪の味方」もするあやふやな存在。

それだけでは、妖怪の恐怖を心からぬぐうなんてことはできないはずだ。

 

 

それに、この前の「私」に対する人々の反応。

 

 

「化け物め‼‼」

「女子供は中へ‼」

「なんだろうと(ウチ)の米はやらねえ‼‼」

 

 

「妖怪」と完璧な共存関係であり。かつ博麗の巫女への信頼もあれば

あのような反応は無いだろう。

 

 

 

・・・この世界は・・・本当に・・・「平和」なのだろうか?

 

 

 

 

射命丸「・・・もうそろそろ着きますよ!」

AZ「!」

 

思案に暮れ、足は動いていたが目の前は見ていなかった。

 

長い時間。頭を下に向けていたため、首が痛い。

 

その痛みを確かに感じつつ、ゆっくりと顔を上げた。

 

 

AZ「・・・ここは・・・随分と「霧」が深いみたいだが・・・」

小鈴「わあ・・・話には聞いていたけど・・・こうゆうところだったんだ・・・」

阿求「ここに来ることも、また随分と久しぶりね」

AZ「確か、新聞にも載っていたな」

 

射命丸「ハイ!ここはこの幻想郷数少ない湖の一つ。

    「霧の湖」です」

 

辺り一帯霧の中。

その視界の不鮮明度にはちょっとした恐怖を感じずにはいられない。

 

しかし、完全に目の前が見えないというわけではなかった。

ぼんやりとだが、遠くの物の影も見える。

 

湖を見れば、濁った霧と湖に反射する太陽の光が美しい景色を称えている。

(いささか、氷がそこら辺に浮いてるのが気になるが)

しかし、湖の上の孤島の上に建物があるのが少し気になる。

 

AZ「あの建物は何なんだ、阿求?」

射命丸「あの孤島ですか?」

 

私は確かに、阿求、と名指ししたのだが。

まあいい。説明できるというのならもういっそこの妖怪でもいい。

 

射命丸「あの建物は、幻想郷の中でかなり有名な建物ですよ。

    名前は「紅魔館」。名前の通り趣味の悪い紅で統一された

    毒々しい館ですよ」

 

AZ「そうか・・・では、あの孤島は?」

今度は紅魔館が立っている孤島ではなく、それよりも小さい島を指して聞く。

今度は阿求が答えてくれた。

 

阿求「あの島は、何の変哲もないただの島ですよ。

   特徴を言うなら、ちょっとした「氷の花畑」があるくらいかしら」

射命丸「おお!さすが阿求さん。そのような名所ポイントも知っているとは!

    いや~恐縮です」

 

小鈴「・・・ううーん?」

どうしたのだろうか?

 

小鈴が湖の方を凝視して唸っている。

AZ「どうした?」

私は気になって聞くことにした。

 

小鈴「いやですねぇ・・・あそこだけやけに霧が濃いんですよ」

阿求「あら?そんなところがあるのかしら?」

射命丸「・・・あ!確かにあそこだけやけに霧が深いですねぇ」

 

AZ「何なのだろうか・・・」

 

 

私も霧の方を見つめてみる。

成程。

 

紅魔館寄りで、花畑の孤島よりは離れているところ。

「そこだけ」やけに霧が濃い。

 

射命丸「飛んで見てみましょうか?それとも風で霧を払ってやりましょうk・・」

阿求「あっ!待って!あそこ!」

小鈴「?・・・」

AZ「どうしたのだ?・・・・・・!?」

 

 

私は・・・聞いたことがある。

たしか、シンオウ地方の伝承だったか。

 

 

三つの湖。

そこには、三匹の神が宿るらしい。

 

一匹は「感情」の神。

もう一匹は「意志」の神。

最後の一匹は「知恵」の神。

 

それぞれまるで妖精のような姿をしており、その姿を明確に見たものは少ないとされる。

 

 

その伝承が真実ならば。私たちは今。

 

『神の影』を目撃したことになる。

 

 

AZ「今・・・見たか?」

阿求「・・・・・・・・」

小鈴「見、見ました・・・」

射命丸「(無言のシャッター連打)」

 

深い深い森の中の、深い深い霧の中。

その霧の中で透明の者が確かに動いた。

 

そこだけ、周りの霧が濃い分明確に見えたのだ。

 

姿かたちの輪郭はハッキリとしていなかったが。

間違いない。私が伝承に聞き、本で読んだ姿そのもの。

 

もっと見ていたかったが、その影は音もしぶきもなく湖の中に潜り

見えなくなってしまった。

 

普通なら、この幻想的な光景が頭に焼き付いて離れず、何も考えられなくなるのだろうが

 

今の私は、ただただ疑問でいっぱいだった。

 

AZ(何故だ・・・本来はシンオウにいるはずの神のポケモンがなぜ幻想郷に?)

 

阿求「なんだったのかしら・・・?今のは・・・」

小鈴「妖精のイタズラにしては手が込みすぎだし、霧を操る妖精なんて・・・」

射命丸「う~む・・・これは予想以上の収穫・・・AZさんのことをメインにするか・・・

    あの不可思議な影をメインにするか・・・うーむ・・・・・・

    幸せすぎる悩みですわぁ・・・」

 

皆それぞれが、悩み、疑問、考察に暮れ、私の疑問に勘づく者はいない様だった。

 

 

AZ「・・・さて、取材とポケモンの披露会の前にいいものを見ることができたな」

とりあえず、このままでは話が進まない。

 

私が本来の目的を話すと三人は、

阿求「あっ。そうでした」

小鈴「あ~・・・忘れてた・・・」

射命丸「私は別に忘れてはいなかったんですがね」

 

と、ちゃんと二人は目的を思い出してくれたようだった。

 

 

AZ「さてと、少し下がっているんだ・・・それじゃあ、出てこい!」

阿求たちを少し、今の場所から大股五歩くらいのところまで下がらせ

私は腰につけている五つのモンスターボールの内四つを空中に投げた。

 

 

その様子を見ている三人の瞳がそれぞれの色を持って輝く。

 

 

四つのボールから伸びる四本の光も輝く。

 

それぞれが形を創りだしてゆく。

 

 

 

その様子はまるで、一つのおとぎ話の一ページのようであった。

 

 

 

To be continuedo・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 




うろ覚えキャラクタープロフィール:八雲 紫

能力:境界を操る程度の能力
式神:八雲 藍(橙は藍の式神のため除外)

現状:下半身、上半身を左斜め下に向けて切断されている。
   そのため、能力を使う際、能力が不安定になってしまう。
   スキマは、全盛期ならヒ―ドランだろうとレジアイスだろうと
   一瞬で閉じ込めることができたが、今はそれほど大きなスキマも使えない上に
   使う程体力と妖力を消費してしまう。
   今は相手に隙があった時か、衰弱している時のみに相手を閉じ込めることが可能。
   レジアイス戦の時に霊夢たちをスキマで運んだのはなかなかスゴイこと。
   境界を操ることは全盛期の50%以下くらいしか使えない。
   何気にこの異変の元凶でもある(黒幕ではない)。


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29ページ目 ポケモン披露会

ぶっちゃけると。

ポケモンの鳴き声は伝説以外適当です。


さて・・・この光景を目にするのはいったい何百回目だろうか?

 

腰からモンスターボールを投げ、中からポケモンが出てくるこの光景。

 

私は幾度となく見てきた日常風景の一コマ。

しかし、この光景を見るのが初めてな者達もいる。

 

それは、幻想郷というポケモンのいない箱庭に閉じ込められた住人達。

あるものは怯え、あるものは友好関係を築き、あるものは戦うだろう。

 

その中からこの少女たちの反応を選ぶとするなら、友好関係にあるのだろう。

 

しかし・・・

 

 

 

小鈴「・・・」

阿求「・・・」

射命丸「ほうほう・・・これはまた、私が考えていたものを超えてきましたねぇ・・・」

 

 

小鈴たちの反応は、少し微妙であった。

 

 

恐らく、彼女たちが想像していたのは

とてもカッコイイorカワイイポケモンだろう。

 

しかし、現実は違う。

 

私が出して見せたポケモンは

 

・ゴルーグ

・コータス

・シンボラー

・ヌケニン

の四体である。

 

フラエッテを見せなかったのは・・・なぜかは分からない。

きっと、モンスターボールを投げたときに、中から何も出ないことを恐れているのだろう。

 

しかし、そんなことはない。フラエッテは、今もこの小さなボールの中にいるというのに。

 

 

小鈴「あのー、AZさん?」

AZ「あ、ああ、なんだ?」

 

小鈴「これが、ポケモン達なんですね?」

 

AZ「ああ、これが私のポケモン達だ」

やはり、想像と少し違って落胆しているのだろうか?そう考え、少し恥じる。

 

しかし、いつの時代、どんな場所でも現実は予想を下回るか上回るのどちらかだ。

この場合は、上回ったことでいいのだろう。

 

 

 

小鈴「スゴイですっ!」

AZ「ん?何がだ?」

小鈴「こんなすごい生き物をAZさんは従えてるんですもん!」

 

それは、想像とは完全にかけ離れた感想だった。

見れば、小鈴はすでに私の傍から離れゴルーグの腕に捕まろうとしてしていたり

シンボラーの羽を引っ張ったりして転ばされたりしている。

 

阿求も、見てわかるようにはしゃいで小鈴と共にポケモン達の周りをグルグル

走り回ったりしている。

 

射命丸は、それこそ小鈴たちのようにはしゃぎまわってはないものの

その興奮を抑えられないのかさっきから手帳を食い破らんばかりに見つめ

ガリガリと擬音を出しそうなほどにペンを動かしている。

 

 

これは・・・成功ということでいいんだろうか・・・・?

 

 

小鈴「スゴイ!この巨人なんか触ろうと思っても上手く触れない!」

阿求「これはすごい体験だわ!早く帰ってこのこと全て本として残したい!」

 

射命丸「ふふふぅ~ん 見てなさいよ、はたて!

    あなたの「花果子念報」が、私の「文々。新聞」に敗れ去る瞬間を!」

 

 

AZ(まあ・・・喜んでもらっているんだ。これは成功だな)

 

私は、そう思い、ふと神の影が見えた湖に目を移してみる。

 

今度は均等に濃い白いのもやがかかっており、透明な神の影も怪しいものも

何も見えなかった。

 

AZ「正直言って・・・まだ自分の目を疑ってしまうな」

そのようなことを言って、私は苦笑する。

 

AZ(伝説のポケモンを使って世界を滅ぼそうとした男の考えとは思えんな)

 

 

しかし、やはり思うことは。この少女。

射命丸は自らの新聞にてポケモンの脅威や、ポケモンが現れたという異変が深刻化

していることも新聞に載せており、阿求たちもそれを読んでいるはず。

 

なのに、なんだ?

この少女たちの気の許し具合は。

今、目にして触っている生き物もポケモンだというのに。

 

 

『この幻想郷は、本当に平和なのか』ということをさっき考えたが。

その平和は、この少女や住人たちの気のゆるみ具合で保たれているものなのかもしれない。

 

 

いやしかし、ここまでこの世界の理解を深めようと思ったことはある意味進歩だろう。

だが、刹那的でどうしても次の考えの時には忘れてしまっているような気がする。

 

射命丸のように、日記帳や手帳でも買って記していこうか・・・。

 

 

ガサガサッ・・・

 

ゴルーグ「‼」

AZ「?・・・どうしたんだ?ゴルーグ」

 

何やら草むらの方で音がしたようだが、その音に対するゴルーグの、いや

私のポケモン達全員の反応が異常である。

 

小鈴「どうしたのかしら?巨人さー・・・ヒッ!?」

阿求「あら?みんなどうして、森の方を・・・え・・・」

射命丸「・・・まったく、この異変。ただ強いポケモン達が問題を起こすだけかなと

    思っていたけど・・・こうゆう問題も起こるのね」

 

AZ「‼‼・・・ヌケニン、シンボラー、ゴルーグ!戻れ‼」

私は、その草むらの中の正体を知って、とっさに三対のポケモンを手元に戻した。

 

AZ(来るのは・・・恐らくポケモン・・・。

  二対ではない、一体だ)

 

射命丸「・・・こちらに完全に敵意を向けている気配を感じます。

    どうします?AZさん」

 

射命丸の問いかけに、私はすぐには答えられなかったが・・・

 

AZ「すぐに阿求と小鈴を安全な場所へ。ここは私が様子を見て対処してみよう」

射命丸「分かりました・・・しかし、AZさん」

 

AZ「なんだ?」

射命丸「もし危険だと判断したら、この『札』を破いてください。

    風があなたを乗せて、私の元に来る仕掛けです」

 

AZ「分かった。ありがとう。小鈴たちを任せた」

射命丸「ええ、了解しましたよ」

 

 

さて・・・

 

 

AZ「この世界に来て初のポケモンバトル。

  生憎、バトルは少しニガテなんだが。これもまた経験の一つ・・・」

 

ガサッ!バッ!

 

草むらから勢いよく飛び出してきた巨大な影。

見れば赤紫色の毒々しい体に斑点模様がついている。

 

そこから推測するに毒タイプ。

ムカデのような体をしていることから虫タイプだろうか?

 

そのことから導き出される『ポケモン』の正体。

 

 

AZ「『ペンドラー』か。前は、逃げてばっかりだったからな。

  こう正面から戦ってみたかったものだ。

  しかし、戦うのは私自身ではなく、コータスだがな」

コータス「こふぉーーー」

 

AZ「さてと・・・」

 

ペンドラー「キュイイいいいいいいん‼‼」

 

 

AZ「バトル、開始と行こうか」

 

To be continuedo・・・

 

  

 




うろ覚えキャラクタープロフィール:AZ

能力:寿命が極端に長くなる程度の能力(不老ではないし不死でもない)
ポケモン:・フラエッテ
     ・ゴルーグ  
     ・コータス
     ・シンボラー
     ・ヌケニン
解説:大昔のカロス地方の初代国王。
   自らの愛したポケモンを戦争で失くしてしまい、生き返らせるための装置を製作。
   その後、ポケモンを生き返らせるのに成功したが。
   自分のポケモンを殺めた戦争を憎く思い、装置を兵器にして戦争を終わらせる。
   戦争後、そのポケモンは自分の魂は他のポケモンから貰い受けたものと知ると
   AZの元を離れ、AZ自身もそのポケモンのように装置の光を浴びてしまい
   寿命が極端に伸びてしまった。
   今現在はそのポケモン、フラエッテともよりを戻しているが、戦闘には出したくない
   。幻想郷の、稗田の家に宿泊させてもらっている。
   ポケモン達の食事は、すでに済ましてある。


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30ページ目 向かうは紅魔

ぶっちゃけると。


「東方」は好きです。
しかし「幻想郷」には絶対に行きたくありませんね。


ペンドラー「キュシいいいいいい‼‼」

 

AZ「ゆけ、コータス」

コータス「こふぉーぉ」

 

 

ポケモンバトル。

正直言って、私はバトルが嫌いだ。

 

そのポケモン同士を争わせる様子は、過去の戦争を思い起こさせて気が悪くなるのだから。

 

しかし、それは間違いだったことを、あのトレーナーからバトルを通じて

教えられた。

 

そして、その日に私は誓った。

もっとポケモン達と人との理解を深め、二度とあのような戦争が起こらないようにすると。

 

 

そのためにも、この戦い。

ポケモンと人間との共存と平和のためにやらねばならない。

 

 

AZ「コータス。「ふんえん」!」

コータス「こふぉっ‼」

ペンドラー「!?」

 

私が技を叫んだ途端、コータスの甲羅から黒い煙と共に炎が噴き出てくる。

その煙と炎は、コータスの力によりペンドラーに向けて押し込まれて行く。

 

しかし、速度では向こうの方が上手だった。

 

AZ「‼、むう・・・「ベノムショック」か」

コータス「くふぅ・・・」

 

コータスがペンドラーの発した紫色の粘液を浴びてしまったが

まだ、充分戦えるだろう。毒になった様子もない。

 

それに、すでにコータスの「ふんえん」は、

 

ペンドラー「キュシぃ・・・ぃ」ずずぅぅぅん・・・

やせい の ペンドラー は たおれた ! ▼

 

 

AZ「すでに命中していたようだな・・・どれ」

野生のペンドラーが倒れ、もう襲ってこないことを確認する。

ポケモンの状態で言う「ひんし」の状態。

 

ポケモンの「ひんし」と人間の「瀕死」の意味と状態は違う。

 

このペンドラーも、あと数時間もすれば起き上がって森に帰るだろう。

 

AZ「なかなか強力だったな・・・「ふんえん」が目の前に迫っているというのに

  一矢報いろうとする精神と縄張り意識。

  選択とタイミングを間違えればやらていたかもしれん」

コータス「こふぅ」

 

AZ「ああ、おまえの「ふんえん」も特別強力だったぞ」

コータス「こっふぉ!」

コータスは、そう嬉しそうに鳴き声を上げてボールの中へと戻っていった。

 

 

私はペンドラーがやってきた森の方を見てみるが、もう何かが迫ってくるという

気配や物音はしなかった。

 

 

AZ「終わったか・・・さて、確か「札」を破けばいいらしいが・・・んん?」

 

私は、違和感に気付いた。

ポケットの中に入れていたあの「札」。あの「札」が、

 

AZ「無い?無いだと!?・・・射命丸がこちらのことを心配して来てくれないだろうか」

急に失意と諦めが胸の内を満たすのを感じた私は、湖の方を見る。

 

見れば、なぜか浮いている氷。花畑があるという孤島。

 

 

 

 

 

 

 

 

紅い屋敷が霧の中で揺れる島。

 

AZ「・・・あの屋敷には、確か吸血鬼やらなんやらが住むらしいが・・・」

そう思い出し、阿求が森の中で言った警告の言葉を頭に浮かべる。

 

 

 

 

阿求『いいですか?あの島の館には行っちゃいけませんよ』

AZ『なぜだ?』

 

阿求『あそこには人間がどう足掻こうがたどり着けない次元の妖怪がいるんです』

 

AZ『して、正体は?』

 

阿求『吸血鬼ですよっ!きゅーけつきっ!それこそ若い娘の地なんか吸って

   WRYYYYYYYYYYYY!とか

   最高にハイ!ってやつだああああああアハハハハハハハハ! 

   とかいうさも恐ろしい妖怪が住んでるんです!」

 

AZ『固有名詞は?何人いる?弱点は?』

 

阿求『えーと、まず姉妹なので姉の「レミリア・スカ―レット」。

   妹の「フランドール・スカーレット」の二人ですが

   魔法使い、妖怪の門番、人間ですが『時を止める』メイドがいます。って・・・

   こんなこと聞いてどうするんですか?』

 

AZ『もし、遠出したときに泊めてもらえるかどうか・・・』

阿求『ダメですッ!例えポケモン達がいてもです!』

 

 

 

 

AZ「・・・・・」

気付けば、すでに日が傾きかけていることに今さらになって気付いた。

 

射命丸はまだ来ない。

時間神の心臓は今も尚、時を進めている。

 

日没になるまで待つか?いや、それはできない。

 

またペンドラーのようなポケモンがこちらに向かってくるかもしれん。

そう思えば、案の定。

 

 

がさがさ・・・

 

草むらをかき分けて向かってくる何か。

 

何かは分からないが、少なくとも人間ではない・・・気がする。

 

 

しかし、そのような考えとは裏腹に。出てきたのは緑色の髪をした少女。

怯えた表情をしているが、敵意は持っていない。

 

大妖精「あ、あの・・・(なにこの人!?とても大きい‼‼)」

AZ「私に何か用かね?」

 

大妖精「あ、いえ、そのぉ・・・さっき、そのボールから・・・」

 

AZ「ああ、モンスターボールのことだな?」

AZ(この少女も幻想郷の住人・・・人間ではない可能性が・・・100%。

  見れば背中から虫のような羽が一対生えているな)

 

大妖精「あの、イキナリで申し訳ないんですが・・・

    

    そのボールを一個貸してください!」

AZ「なんだと?」

いきなり頭を下げられた。

 

大妖精「私の友達の、チルノちゃんっていうんですが、私がチルノちゃん達から

    離れたら、変な妖怪に・・・紅魔館まで連れていかれちゃったんです!」

 

AZ「紅魔館に?・・・その友達は妖精か?」

 

大妖精「あ、それは・・・」

大妖精(もし妖精だと言えば、『不死身なんだから大丈夫だろう』と言われて

    ボールを貸してもらえないかもしれない!そしたらチルノちゃんのことを

    助けに行けなくなる!ここは、チルノちゃんのためッ!嘘を言おう!)

 

大妖精「人間の女の子ですッ!青い髪をして、青い服を着ています!」

 

 

AZ「人間の少女!?」

AZ(確か、阿求の話によると。吸血鬼は少女の生き血を好み、血を吸われたものは

  同じ吸血鬼になるかゾンビになるか死ぬか‼吸われたら絶望しか残らない‼

  何とかしなければ!)

 

AZ「分かった、君にはゴルーグのボールを渡しておこう。

  使い方は、この白いボタンを前に向けて押すだけだ」

大妖精「あ、ありがとうございます!では、」

 

AZ「待て」

大妖精「は、はい?」

 

AZ「私も同行しよう。そのボールの持ち主は私でもあるし、私には少女がここで

  血抜きされるのを見ているだけという訳にもいかないからな」

 

大妖精「そ、それでもあなたは!」

 

AZ「人間だから、とか人が勝てる相手じゃない、これと関係するような言葉以外でなら

  言っていいぞ」

 

大妖精「あ、ありがとうございます・・・」

大妖精(どうしよう・・・ただチルノちゃんが心配なだけだったのに・・・

    普通の人間があんな所に行ったら死んじゃうよ~‼

    でも・・・)チラッ

 

AZ「さあ、行こう。まだ陽は出ている。吸血鬼は陽が嫌いなはずだからな」

大妖精(こんな状況になってからじゃ、いまさら嘘だとは言え無い・・)

 

AZ「そうだ、君。名前は?」

大妖精「あっ、えー、大妖精、と言います」

 

AZ「ふむ、ダイヨウセイか。少し変わってはいるが、良い名前だな。

  ところで、君には羽があるが、飛べるか?」

 

大妖精「はい。飛べますよ(もしかしたらこの人は飛べないから諦めてくれるかも!?)」

 

AZ「ならば、私は・・・シンボラー!」

 

シンボラー「ボラーッ」

 

AZ「私を連れて、あそこまで飛んでいけるか?」

シンボラー「ボラっ!」コクリ

 

大妖精「あ、はい、で、では行きましょうか(飛べちゃうの!?)」

 

AZ「声が震えているが、怖いのか?」

 

大妖精「い、いえ?ぜんぜ、ん怖くありません(この人の首が飛ぶの見たくないよー!)」

 

 

AZ「そうか、なら行こう」

大妖精「ハイ・・・・・・」

 

AZ「シンボラー。頼むぞ」

シンボラー「ボラーッ‼」

 

 

今、久しぶりにシンボラーに乗ったが、なかなか早く飛んでゆく。

 

とは言っても、私がシンボラーの足に捕まり、ハングライダーのように滑空するだけだが

なかなか速い。

 

これなら、数分で紅魔館にたどり着くだろう・・・。

 

 

 

 

~数分後~

 

射命丸「よっとと、っとぉ~。お待たせしました。AZさー・・・あれ?」

 

小鈴「どうしたんですか?」

 

射命丸「いやぁ~あのですねぇ。AZさんの姿がどこにも・・・」

 

阿求「何かあったのかしら?・・・もしかして、強力な妖怪かポケモンに襲われたんじゃ」

 

射命丸「う~む、札を使っていないところを見ると・・・

    この数分間の内に、誰かに連れ去られたか・・・」

阿求「速く探しに行きましょう!」

小鈴「お~い!AZさ~ん!」

 

射命丸「お、落ち着いてくださいって!まずは情報収集からです!

    とりあえず、この付近で一番人が多いところは・・・やはり・・・」

 

阿求・小鈴「「ま、まさかぁ・・・」」

 

射命丸「とりあえず、紅魔館まで一緒に行きましょうか!」ニコッ

 

阿求・小鈴「いやああああああああああああああ‼‼」

 

To be continued・・・

 

 

 

 

 




うろ覚えキャラクタープロフィール:霧雨 魔理沙
能力:魔法を使える程度の能力(主に相手を攻撃する魔法を扱う)
道具:魔法のほうき、ミニ八卦炉(これから光線や風、熱などが出せる)、お手製魔導書
ポケモン:・ゲンガー

性格:他人を子馬鹿にするような態度をとったり、思いやりがあるとはいいがたい。
   しかし、垢ぬけたところもあり、一緒に話すと面白い。
   しかし異変が始まってからは、紫にちょっかいを出されたり
   バトルで負け続けだったりといろいろといいことがない。頑張れ魔理沙。
   また、物にはかなりの愛着を持つ。捨てきれない物などもかなりある。
   魔法に関してはめっぽう真面目である。
小話:人里には魔理沙の実家があり、普通に道具屋を営んでいる。
   また、魔理沙が産まれるかなり前に、香霖堂の店主が修行を積んだこともあり
   その店主は魔理沙に対して恋心とはまた違う特別な感情を抱いている。
友人:・博麗 霊夢
   ・アリス・マーガトロイド
   ・パチュリー・ノーレッジ
   ・八雲 紫(紫が一方的に友人(いじめの対象)と思っているだけ)


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31ページ目 『異変』の深刻さ

注意:ほとんどが会話になっております。




時は遡り、AZ達がまだ森を歩いている頃。

紅魔館では『勉強会』が開かれていた。

 

紫「さて、『お勉強会』もとい会議を始めるわけだけど。

  今回のテーマは、ポケモンについてよ」

 

レミリア「ポケモンねぇ・・・」

 

紫「今回の湖が凍る異変もあったわけだけど、今。

  ポケモン達は確実に幻想郷の勢力図を塗り替えようとしている。

  例えば、今朝目撃された集団飛行するポケモン達」

 

霊夢「ポケモン達も普通の動物と同じようなことするのね」

 

紫「あら霊夢。なかなかいい疑問じゃない。そうよ。

  ポケモンという聞きなじみのない名詞を使われてはいるけど

  本質的には他の生物と同じような物。

  普通に呼吸もしているし、木の実なども食べる」

 

レミリア「それなら普通の生き物として扱えはしないのかしら?」

 

紫「それはできないのよ。本質的には同じところがあるとは言ったけど

  本質的に違うところもあるのよ」

 

パチュリー「例えるならそれはどうゆうこと?」

 

紫「まず、普通の生物と違い高い知能を有している。

  次に人間より長生きの個体が多いけど、逆にセミのように短命な者もいる。

  そして何より、妖獣でもないのに不可解な能力と属性を体に持っていること」

 

魔理沙「私のゲンガ―の攻撃がイーブイに当たらなかったことと関係があるんだな」

 

紫「そう。その属性は、魔法の属性とはまた違うもの。

  その属性の数も魔法の属性より多岐に渡っているわ。

  その数は全部で18種類」

 

パチュリー「18!?魔法の属性も7種類あるというのに!?」

魔理沙「落ち着けパチュリー。私は基本的に属性にこだわらないから分からないが

    そんな大それたことではないんだろ?」

 

紫「いいえ、魔理沙。それは違うわ。

  いいかしら?魔法の属性は『火』、『水』、『木』、『金』、『土』の基本に

  天体の力である『日』と『月』の計7種類。

  一方、ポケモンの属性は、今確認できているだけでも

  『ノーマル』、『ゴースト』、『こおり』、『ほのお』、『あく』、『ひこう』の

   計6種類。なのに全18種類あるわけだから?」

 

魔理沙「・・・あと、12種類あるわけか。

    それでも、数が多いからスゴイってことじゃ私は納得できないぜ・・・」

 

紫「あらごめんなさい。まだ説明不足だったわ。

  そこの紫色の魔法使いさんなら分かると思うけど、属性には『相性』

  があることは知っているわね?」

 

パチュリー「ええ。知っているわ。

      火は木を燃やし、木は土を涸れさせる。

      ・・・それってつまり・・・」

 

紫「そう。ポケモンにも属性があり相性がある。

  全部で18種類の属性それぞれ一つずつに弱点があるということ。

  普通に弾幕で勝負をするよりも頭を使い、普通に魔法を使うよりも

  複雑ということよ」

 

魔理沙「成程・・・そりゃあ、スゴイわな・・・。

    私が勘違いしてただけか・・・」

パチュリー(!・・・あの魔理沙が自分の落ち度を認めるなんて・・・)

 

 

紫「そして、その多種多様な属性とそれに伴う千差万別の能力。

  それらを有した生物がこの不安定な幻想郷に入り込んだ。

  この異変の『重大』さがよく分かってもらえたかしら?」

 

レミリア「・・・その異変の重大さがどうだかってのは分かったけど。

     結局あなたが言いたいことは何なのかしら?」

 

紫「・・・つまりは、あなた達にも協力してもらいたいってことよ」

 

レミリア「嫌だ。と言ったら?」

 

紫「さっき行ったレジアイスを引き渡す契約は無し」

 

レミリア「うー・・・む。・・・協力と言っても何すればいいのかしら?」

 

紫「異変の解決に使える人材を派遣してほしいってところかしら」」

 

レミリア「ならうちの咲夜と美鈴を使いなさい。

     私も気が向いたら行ってやるわ」

 

紫「・・・感謝は、異変が終わったからにするわ」

 

レミリア「まったく・・・自分から招いた異変なのに」

 

 

 

霊夢「あー、お取込み中失礼するけど」

 

紫「?」

 

霊夢「私のイーブイが姿形を変えたことについてまだ説明してもらってないんだけど」

 

紫「あ、忘れてたわ。

  でも、そればかりはうまく説明できないわ。

  なにせ私が調べた資料はとても少なかったんだもの・・・」

 

パチュリー「その資料とやらは、今はすごくうちの図書館に増え続けているんだけどね」

 

紫「あ、それなら、少し拝借してもよろしいかしら?」

 

パチュリー「盗まず返すというのなら」

魔理沙「おい待て。こんな胡散臭い妖怪には本を貸して

    同じ魔法使いである私には貸さないってのか?」

 

パチュリー「関係の深さが信頼の深さとは限らないのよ。

      それに、あなたには前科があるじゃない」

 

魔理沙「ぐう・・・」

 

紫「ぐうの音も出ないとはこのことね」

 

魔理沙「出たぜ・・・」

 

霊夢「それより早く私のイーブイの謎を解いてほしいんだけど」

 

 

紫「それもそうだけど・・・今やる問題はもう一つ。

  ほら、出てきなさい」

 

 

 

 

 

 

 

チルノ「・・・何よ・・・」

 

 

 

霊夢「あら。チルノ?」

魔理沙「紫に捕まっていたのか」

 

紫「それで、私がこんなチッコイ氷精を掴まえたのは

  この氷精の処罰と状態について」

 

霊夢「そんなの適当にお説教して、お仕置きして、野生に返す」

魔理沙「適当に弾幕ごっこして、負かして、お説教だろう」

パチュリー「適当に家で飼って、アイスティーの氷生産要員にして、説教」

レミリア「氷生産要員はもう手に入れたも同然だから、とりあえず説教ね」

咲夜「私も説教をして分からせたほうがいいと思います」

 

紫「さ、どれがいいか選びなさい」

 

チルノ「全部結局説教になるじゃない!

    それに・・・うう・・・」

 

霊夢「さっきみたいに自分は悪くないって言い張らないあたり成長したってことかしら」

 

紫「そうね。説教は後でやるとして、問題はこれの妖力の上がり具合」

魔理沙「妖力?」

チルノ「これって・・・」

 

紫「通常の状態より強力になっているわ。

  それに、今はほとんど解けているようだけどほんの少しだけ。

  軽い洗脳をかけられていたらしいわ」

 

霊夢「洗脳?」

 

紫「過剰な友情意識。友人に対する明確な殺意。

  結論、これは何者かが意図してかしてないか洗脳をかけたということ。

  ちなみに、洗脳のソースは『怒り』と『悲観』」

 

魔理沙「怒りに悲観、か」

 

パチュリー「怒りに悲観・・・そういえば最近読んだ本に

      そんな単語が書いてあったような・・・」

 

紫「それはどの本かしら?」

 

パチュリー「ええと、確か「やぶれたせか((バァン‼

 

 

レミリア「・・・・・本当に分かりやすい侵入者ね。

     正門を思いっきり開けてくるなんて。美鈴は何していたのかしら」

咲夜「お嬢様」

 

レミリア「すぐに向かいなさい。そして、殺さずにつれてきなさい。

     紅魔館にたてついたらどうなるか、分からせてやろうじゃない・・・」

 

咲夜「かしこまりました」

 

 

 

霊夢「何?侵入者?門番はどうしたの?」

 

レミリア「知らないわよ。でも、美鈴を負かしたとしたらなかなかよ」

 

魔理沙「弾幕に関してはそうでもないけどな」

 

パチュリー「とりあえず、図書館に防御結界でも張っておこうかしら」

レミリア「頼んだわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

AZ「・・・・・やっと倒せたか・・・」

 

???「・・・Zzzz・・・」

 

大妖精「AZさん!」

AZ「私はいい。早く中に入って友達を連れ戻すぞ」

 

大妖精「は、はい!」

 

 

 

 

 

咲夜「美鈴・・・眠らされたっていうのかしら。

   いつも寝てるのに・・・眠くなるようなもんかしら。

   それでも、やられたことには変わりないし、早く起こして

   侵入者を連れていくとしますか」

 

To be continued・・・・

 



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32ページ目 対峙、そして戦闘へ

レギュラー:霊夢、魔理沙、紫
準レギュラー:AZ、阿求、小鈴、射命丸

レギュラー候補:伝説のポケモンのどれか
        悪のボスの誰か、またはチャンピオンの誰か
        東方キャラの誰か、または東方・旧作の誰か


誰を出すべきか、迷ってます。


ー紅魔館。正門前。

時は紫たちがまだ勉強会を行っている頃。

???「やあっ!せやっ!」

 

AZ「ヌケニン。「シザークロス」!」

ヌケニン「・・・・・」

 

何故。こうなってしまったのか。

相手の彼女は自らの拳でこちらに殴りかかってくる。

一方こちらは自らのポケモンの技で迎え撃つ。

 

普通ならば、ポケモンで人を攻撃しようとするこちらが悪いのだろうが

今回ばかりはやむを得ない。

それに、相手の心配など無意味。

 

ガキィン!

 

彼女の素手の拳と、霊虫の爪がぶつかり合い、鍔迫り合う。

 

そう。「普通」ならば素の拳の方が骨ごと砕かれるはずなのだが

こうして競り合っていても相手の拳には傷が少しついてるだけでダメージがない。

 

???「陣脚!そりゃあ!」

 

相手は、このままでは分が悪いと思ったか、拳を放ったまま蹴りを繰り出す。

しかし、その蹴りは虚しく霊虫の体を通り抜け当たらない。

 

AZ「ヌケニン、離れろ」

ヌケニン「・・・・・」

 

私はヌケニンを引かせ、相手もそれより後に引く。

 

???「あーもう!なんなんですかあなた達は!」

 

AZ「ただの客人だが」

 

???「ただの客人が空を飛んで侵入してこようとするもんですか!」

 

AZ「それは諸事情があってだな」

 

???「そもそもあなた達のような客人が参るなんて私、聞いてないんですけど!」

 

AZ「ただ聞いてなかっただけだろう。さあ、私達を中へと通してくれないか?」

 

???「そんなこと許せませんよ!この華人小娘、『紅 美鈴』。

    門番として全力で侵入を防がせてもらいます!」

 

AZ「やはり和解はできぬか・・・」

大妖精「あ、あの・・・AZさん?あまり無理は・・・」

 

AZ「罪のない命が惨たらしく奪われると聞いて助けぬは人間の恥。

  それに、無理をさせてしまうのは私ではなくポケモン達なのだ」

 

美鈴「罪のない命だとか、人間の恥だとか、ぽけもんだとか!

   なに意味の分からないことを言ってるんですか!

   私達は何もしていませんよ!(紅い霧のことは除いて)」

 

AZ「ならば私達を通して、それが誠か確かめさせてくれ」

 

美鈴「だー!もー!会話が成立しなーい‼もう、やけくそです!」

 

彼女は、ここの門番であるらしかった。

門番であるにも関わらず、鎧も盾も何も持っていない。

 

いや、必要ないのだろう。

その肉体そのものが『鎧』。

 

拳は『矛』となり、また『盾』にもなる。

そのような芸当ができるのは当然人間ではない。

妖怪、とされるものだろう。彼女も。

 

美鈴「そちらから来ないのならば、こっちから行きます!」

 

AZ「ヌケニン。「かげうち」」

ヌケニン「・・・・・」

 

ヌケニンの背の穴から黒い何かが漏れ出て、地面を蛇のように張っていく。

彼女は気づかない。

 

美鈴「これで終いにしましょう!どりゃあ!」

大きく飛翔し、膝をこちらに向けている。

いわゆるニードロップ、または「とびひざげり」か。

 

だがヌケニンの攻撃は彼女の攻撃を防ぎ、貫く。

 

空中の彼女が作り出した影に、黒い何かが到達し、膝の影を思いっきり

彼女の顔に向けて曲げる。

 

『かげうち』

 

美鈴「えっ。え!えぇ!?ちょっまっ、ぐはぁ‼‼」

動かされた影と連動して彼女の肉体も勝手に動き、自らの膝蹴りを自らの顔で受けることになった。

 

そのまま、勢いよく落下し、ぐったりと動かなくなる。

しかし、まだ体が微かに動いているところを見ると、生きているようだ。

 

陽は傾いて西へ沈もうとしている。時間がない。時間神の心臓は待ってはくれない。

 

AZ「さあ、終いにしようか」

さっき彼女が言ったセリフをそのまま引用し、ヌケニンに命じる」

 

AZ「ヌケニン。「さいみんじゅつ」

ヌケニン「・・・・・」

 

ヌケニンは、鳴き声も発さずぼんやりとした虹色の波動を発する。

その波動はまともに動けなくなった彼女に直撃し、とどめを刺した。

 

別に殺してはいない。

ただ深い深い眠りにいざなわれただけである。

 

美鈴「・・・Zzzzzzz・・・」

 

AZ「やっと、倒せたか・・・」

 

そこでは一つの問題が起きていた。

 

 

大妖精「AZさん!」

 

AZ「私の心配などいい。先に行っているんだ」

大妖精「あっ・・・はい!」

 

彼女はそう言うと、翼をはためかせて敷地内へと入っていった。

 

私は、先程まで善戦してくれていたヌケニンをなでて労い、ボールに入れた。

 

AZ「さて、私も行こう。ぼやぼやしていられない」

そう独り言を言い、門に向けて足を踏み出してー・・・

 

私の首元にはシルバーブレードが置かれ、気づいたらどこかの門前へと

連れてこられていた。

 

AZ「なっ・・・」

咲夜「おとなしくしていてください」

 

後ろから声が聞こえる。女性の声だ。おとなしく知的だが、逆に冷たい。女性の声だ。

 

私は門・・・もとい扉の方を向きながら、視線だけ動かして後ろを見やる。

 

銀髪の整った顔立ちの少女・・・だが小鈴たちより年上の様だ。

その少女が少し浮遊して、私の首にナイフを置いている。

 

咲夜「そのまま進んでください。あなたもです」

 

あなた?と疑問を抱き辺りを目だけ動かし探ってみる。

見れば大妖精が襟を片手で掴まれて泣き顔になっている。

すでに捕まってしまっていたようだ。

 

咲夜「・・・お嬢様。連れて参りました」

そう言って、扉を大きく開く。ノックは必要ないのだろうか?

 

扉の先は、少しかび臭い空気が漂う薄暗い図書館であった。

 

レミリア「・・・随分風変わりな来訪者ね」

咲夜「そのようです。あと、この妖精もグルだったようです」

大妖精「うぅ・・・」

 

レミリア「ふぅん・・・いいわ、こっちに連れて来て見せて」

咲夜「かしこまりました」

 

そうかの書が言った瞬間、また景色がパッと変わる。

長テーブルの前に私と大妖精は、立たされていた。

 

レミリア「えぇ・・・思ったよりデカいのね・・・3mちょいってとこかしら?」

恐らくこの館の主(?)、は私が思ったより小さかった。

大体1m60・・・と言ったところか。

 

兎に角、思ったよりこの少女は幼かった。

まあ、もうこの手のことには慣れてしまったから驚けはしないが。

 

レミリア「さて・・・あなたは、その風体から外来人だってことは分かっているわけだけど

     なぜ、この紅魔館に襲撃をかけてきたのかしら。

     それもかなり派手な方法で」

 

AZ「派手?」

 

レミリア「うちの玄関が大きく破損されたのよ。ドカァン・・・って」

 

AZ「・・・襲撃をかけたのは事実だが、その破壊に関しては知らない」

大妖精「あ、あの、AZ、さん?それ・・・私がやっちゃったんです・・・」

AZ「君が?どうやって?」

 

大妖精「AZさんから預かったポケモンを使って、こじ開けようとしたんですけど・・・。

    予想以上に大きくて・・・それで、すぐにボールに戻したんですけど・・・」

 

成程。と思った。そして後悔した。

もっと詳しく教えてあげればよかったのだ。

そうすれば大妖精だけでも、助けに行けたかもしれなかったのだが・・・。

 

レミリア「さてと・・・それであなたの処罰に関してだけど。

     別に死刑にはしないわよ。安心しなさい。

     ただ一つ。私のゲームに手伝ってくれないかしら」

 

AZ「ゲームだと・・・?」

 

レミリア「そ。あなたにも私にも利があるWin-Winな取引よ。

     簡単に説明するとね・・・あそこに紅白と白黒がいるじゃない?」

 

 

霊夢「紅白って・・・」

魔理沙「白黒か・・・」

 

レミリア「あいつらもあなたと同じようなボールを持ってるのよ。

     それ、ポケモンボールでしょう?

     その中にいるポケモンであいつらと連戦して頂戴」

 

AZ「・・・・・・」

要するに、この少女はポケモンバトルが見たいらしい。

だがそれだけでは私に利はない。

 

AZ「私の利は?」

 

レミリア「あなたが見事連戦連勝したら、あなたの望みを一つ。

     叶えてあげるわ」

 

・・・願いを、叶える?

 

AZ「・・・どんなことでもか?」

レミリア「どんなことでも、なんでもよ」

 

AZ「ならば先に言わせてもらうが、ここに一人。青い髪をした人間の少女がいるのだろう。

  その娘を開放してやってくれ」

大妖精「AZさん・・・?」

 

レミリア(青い髪の人間の少女?そんなのいたかしら・・・いや、いないわね。

     多分だけど。この妖精になんか言われたのかしら・・・。

     だとしたら、哀れ。そして愚か。愚の骨頂。

     妖精には注意しろと学校で教わっていないのかしら・・・)

 

レミリア「・・・・・紫」

 

紫「なにかしら?」

 

レミリア「この緑の妖精の妖力も調べてあげて。あと、話も聞いてあげなさい」

 

紫「何で私が」

 

レミリア「この借りは数倍にして返すから。それに」

 

紫「それに?」

 

レミリア「今の私達は利害関係にあるでしょう?それに」

 

紫「それにぃ?」

 

レミリア「あの大男のことも気になるでしょう?」

 

紫「そー・・・ね。まあいいわよ。承諾してあげる」

 

レミリア「・・・お礼は、また今度」

 

紫「素直になりなさいよ」

 

 

AZ「話は終わったか?」

 

レミリア「ええ、終わったわよ」

 

 

霊夢「おーい。チビ吸血鬼。私たちの承諾はないの?」

魔理沙「そうだぞ」

 

レミリア「別にいいじゃない。文献探しや話し合いにも飽きてきた頃でしょう?

     頭だけじゃなく体も鍛えないと」

 

霊夢「・・・まだ凍傷やらなんやら治ってないんだけど。   

   暇つぶしにはちょうどいいかもね」

 

魔理沙「・・・いつかボコボコにするってことで、この願いを聞き入れてやる」

 

レミリア「ありがと」

 

 

 

レミリア「そんじゃ。三人とも表に出るわよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

射命丸「よっと・・・ふぃー、二人抱えて飛ぶと流石に遅いわね」

 

阿求「うう・・・吐くかと思った・・・」

小鈴「(気絶)」

 

射命丸「あやや?美鈴さん。また眠ってますねぇ・・・。

    まあ、この門番の許可は取らなくてもいいか☆」

阿求「うぅん・・・いいのかしらそれで・・・?」

 

小鈴「う”う”・・・(気絶寸前)」

 

 

射命丸「兎に角、中へと入ってみましょう」

 

阿求「うう・・・嫌だなぁ・・・」

小鈴「あー・・・気持ちわ”る”い”・・・」フラフラ

 

 

To be continued・・・

 




うろ覚えキャラクタプロフィール:十六夜 咲夜
能力:時を止める程度の能力(制限は自分の体力が持つ限り)
性格:常に冷静沈着で合理主義。
   鉄仮面のように余り表情を崩すようなことはない。
   しかし自らの能力に関しては絶大な自信があり、その自身の根底にあるのは
   自らの主人に対する忠誠心である。故にそれが崩れるともろい。
   紅魔館の唯一の人間、およびメイド長として仕事をこなしている。
   その仕事の様は完璧で、まさに瀟洒である。
名前:本名は不明である。十六夜 咲夜という名前は主人の吸血鬼より
   名付けられたという。
ナイフ:吸血鬼に仕えているにも拘らず吸血鬼の弱点である「銀」のナイフを
    使っている。本当に何故なのか不明。
生い立ち:不明。一説には、外の世界で赤子の頃から紅魔館に捨てられた。
     また一説には吸血鬼のハンターとも。
     ただただ謎である。


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33ページ目 VS! AZ その①

遅れて申し訳ありません。



何というか、忙しかったんです。ハイ。すいません。
そのせいで3週間?2週間ばかり遅れてしまいました。

で、もう年末も近いんでまた遅れるかもしれません。
ご了承ください。



レミリア「さて・・・全員、外へ出たわね?」

 

時はすでに夜。

 

空には黄金色に輝く月と大きく横たわる天の川が荘厳な景色を称えている。

季節は夏。まだ夏なのである。

 

紫「今年の夏は忙しくなるわ。もちろん、忙しくても「夏の大宴会」は開くけど」

 

と、紫は言っていた。

 

確かに、この夏は忙しい。

多分、私が直面した異変の中でも最も危険で最も深刻な異変。

 

ーまだ名称はないけどーこのポケモンと呼ばれる生き物が幻想郷に入り込む『異変』。

 

まあ、普通なら「もうだめだ・・・おしまいだぁ・・・」と言ったりして落胆するんでしょうけど。

この館の『普通』じゃないチビ吸血鬼はこの異変を合理的に楽しもうとしている。

 

やっぱり妖怪とは言っても多少の違いはあるのね。

 

 

魔理沙「おーい。霊夢。早く準備しておけよー」

 

霊夢「分かっているわよ」

 

 

で、今から何が始まるのか?

 

正直言って私にも理解なんてできていない。

 

最近は理解できないことが起きすぎるから脳が勝手にフリーズしちゃっていたみたい。

 

 

まあ、よく分かっていないけど分かることはある。

 

 

 

それは、かなり向こうにいるのに圧倒的な存在感を放つ『大男』。

名前は確か・・・・「エー・ゼット」?「エーゼ・ット」?

 

まあ、確かそんな名前。で、外来人。そしてポケモンを持っている。

 

 

まあ、私と魔理沙もポケモンを持っているんだけど。

なぜかチビ吸血鬼の娯楽に半ば無理矢理、半ば承諾して付き合ってやることにした。

 

その娯楽は「ポケモンバトル」。

しょうがないからやらざるを得ない。

 

 

魔理沙「で、どうする?」

 

霊夢「なにが?」

 

魔理沙「何って作戦だよ。どう攻撃するかー・・・とか」

 

霊夢「正面突破。臨機応変。一撃離脱ってとこかしら?」

 

魔理沙「・・・本当にお前は雑だよな・・・」

 

霊夢「じゃあ、あんたが作戦を考えなさいよ」

 

魔理沙「う・・・・・・じゃあもうそれでいいよ。

    なんだっけ?正面突破に、臨機応変だったか?」

 

霊夢「それと一撃離脱ね。相手がどんな攻撃や能力を有しているか

   分らない今。探りを入れるのは大切よ」

 

魔理沙「臨機応変は?」

 

霊夢「相手がよく分からない攻撃をしてきたら、何が何でも避けまくる。

   そして隙を見て攻撃、そして離脱」

 

魔理沙「正面突破は?」

 

霊夢「言っちゃえば策無しの文字通り。

   どうしようもなかったら重い一撃喰らわせて派手にぶっ飛ばすわよ」

 

魔理沙「・・・オマエな・・・慎重なのか投げやりなのか、丁寧なのか雑なのか

    よく分からないぜ・・・」

 

霊夢「私だってあんたのことよく分かんないわよ」

 

魔理沙「えっ?」

 

霊夢「えっ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

AZ「・・・・・」

 

どうするべきか・・・私は悩む。

相手は見たところ一体づつしかポケモンを持っていない。

 

そうすると必然的に「ダブルバトル」の形を取らざるを得なくなる。

 

しかしあのレミリアは言っていた。

「連戦しろ」と。

 

そうなると一人づつ私と戦うことになるのか?

それともいつも通りの「ダブルバトル」か?

 

 

 

・・・いや・・・それとも・・・

 

すでにこの世界における独自のルールが決められているとしよう。

だとしたら非常に厄介だ。

ルールを知らない私はすぐさまルール違反による自滅だってありうるかもしれない。

 

 

・・・だとしても、だ。

私は勝たなくてはならない。

 

二度と虐待による惨劇を起こさないためにも、この戦いは勝たなくては。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レミリア「さて・・・両者。用意はできたかしら?」

 

霊夢「バッチリよ」

魔理沙「OKだぜ」

 

レミリア「そっちは?」

 

AZ「無論。準備はできている」

 

 

 

レミリア「えーコホン。コホン。

     ・・・こういう時ってどうやって始めたらいいか分かんないんだけど・・・

     まっ、いいわ。兎に角始めっ!」

 

 

 

AZ「始まったか・・・」

 

ついに戦いの火ぶたが切られた。

     

 

まずは・・・・・・!?

 

 

なんだこれは。話に聞いていないし、見たこともないぞ。

私は困惑した。

しかし、これでよく分かったこともある。

私は理解した。

 

それは・・・・・

 

 

AZ「空を飛んで、攻撃しようとしているぞ・・・・ 

  成程。これは普通ではない戦いということか・・・」

 

この戦い。まともなルール、常識が通じないというのならば致し方なし。

 

私もこの非常識的な常識に染まらざるを得ないのだろう。

 

 

 

霊夢「イーブイッ!」

魔理沙「行ってこい、ゲンガー!」

 

イーブイ「ぶいぶい!」

ゲンガー「げぎゃあああん‼」

 

二人とも空に浮遊しながらボールを投げる。中から出てくる。

 

AZ(手持ちはゲンガーに、イーブイか・・・。

  あのゲンガー・・・メガストーンを持っていないところを見ると

  メガシンカはしないな・・・・・あのイーブイは・・・

  なんだ?あのブローチは・・・見たことがないな・・・)

 

AZ「・・・行け、シンボラー、コータス」

 

タイプ相性的にはこちらのシンボラーが不利。

しかし、こればかりは「ヌケニン」や「ゴルーグ」を出しても変わらない状況。

 

ズバリ言うと、私のチームはゴーストとの相性が悪い。

 

だが受け入れるしかない。

この戦いを勝って、必ず救い出す。

 

 

 

 

魔理沙「ゲンガー!シャドーボールを食らわせろ!」

 

ゲンガー「ぎゃああ・・・あああん‼‼」

戦いは始まった。

私も覚悟はできた。

 

つっても、別に命を落とすとは・・・思いたくない。

まあ、こっちには自慢の弾幕とゲンガーがいる。

 

とは言っても、相手は弾幕を扱えない外来人。

まともに当てたら危ないからな。

 

ちょっぴり威力と破壊力も抑えている。スペルカードばかりは外せないがな。

 

 

さて、戦いは始まった。のだが・・・

 

 

なぜか霊夢は動こうとしない。

 

魔理沙「どうした?霊夢」

 

霊夢「・・・ヤバイ。今までほとんどの戦いイーブイ任せだったから

   イーブイがどんな技使えるかが分からない・・・」

 

魔理沙「おい・・・マジかよ?ここまで来て?」

 

霊夢「しょうがないじゃない!まだイーブイについて全然わかったもんじゃないん

   だから‼」

 

魔理沙「~~~ッ‼・・・ふぅ、分かったよ。少し下がってろ」

 

霊夢「あ・・・うん。イーブイ。一回ここに・・・って・・・・あ」

 

 

ピカッ‼‼

 

 

 

 

AZ「‼・・・なんだ・・・・「フラッシュ」か?」

 

急な光が辺りを包む。少しばかり紫がかった色の光。

その光と共に砂煙も舞い上がる。

その煙の中からシャドーボールが飛んでくる。

 

 

AZ「ぬっ!シンボラー、「エアスラッシュ」!」

 

シンボラー「ぼらー‼」

 

急な光に、急な攻撃。

どうやら相手はこちらを撹乱するつもりらしい。

 

だが、私だってポケモントレーナーの端くれ。

どんな状況にも対応し、適応し、応えるのみ。

 

 

シンボラーが放った風の刃は影の球を切り裂き、煙を貫き、彼方へと飛んでゆく。

当然、当てて倒すつもりで撃った。

 

あの紅白の少女にもあたるかもしれないが・・・・・そんな心配は無いだろう。

 

・・・この世界に来てから、私は少しばかり冷酷になったかもしれない。

 

 

 

そう考え、苦笑していると、砂煙の向こうから途切れ途切れで声が聞こえてくる。

 

 

霊夢「・・ラッキ―。あ・・の・・・どう‼」

 

 

 

ラッキー?まさかもう一体ポケモンを持っていたのか?

 

いや。途切れ途切れではあったが、彼女は確かに「あくのはどう」と言った。

ラッキーはその技を覚えない。

 

ということは・・・イーブイ⇒・ラッキー⇒あくのはどう⇒ブラッキー?

 

AZ「‼‼、上へ避けろっ!シンボラー‼‼」

 

だが遅い。

 

光に押されて舞い上がった砂煙の中から黒い影が飛び込んでくる。

 

どうやらエアスラッシュは躱されたらしい。

 

「ぎゅおおーん!」

 

 

煙の中から飛び出してきたのはブラッキーだった。

 

そしてブラッキの口から、黒紫色の渦が放たれる。

 

 

「あくのはどう」

 

 

上へ避けろとは言ったが、遅かった。

 

直撃。強力。

 

その攻撃の前にシンボラーは倒れ伏してしまった。

 

 

AZ「くっ・・・しかし・・・何故。

  何故進化を・・・?」

 

すでに進化条件を満たしている状態だったのだろうか・・・

 

いや、にしてもあの尋常じゃない光と砂煙はおかしい。

ただの進化にあれほどのエネルギーが使われるなんて・・・

 

AZ「あれはもはや・・・メガシンカ!」

 

私は仕方なく、倒れ伏したシンボラーをボールに戻し、ヌケニンを繰り出す。

 

 

・・・私は、この戦い。

負けるかもしれないと思い。

 

かなり緊張した。

 

 

 

 

 

 

 

魔理沙「げほげへっ・・・今のは、前にも見たあの・・・」

魔理沙が砂煙にむせつつこちらに聞いてくる。

 

霊夢「魔理沙・・・私、理解したのよ。

   このイーブイの真の力とブローチの意味!」

そう、本当に理解した。

 

魔理沙「ブローチが・・・おほっ・・・なんだって?」

 

霊夢「ま、見てなさい。

   いつも通り、私とイーブイだけでこの戦い勝っちゃうから」

 

魔理沙「ふざけんなよ!最近の私は全く活躍できてないんだ!

    ここで一気に力を上げる!」

 

 

そう粋がる魔理沙を横目に、私は笑っていた。

 

うっすらと微笑を浮かべていた。

 

 

 

・・・私はこの戦いを。

勝てると思って。

 

少し鳥肌が立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

射命丸「おー!なんかやってますねぇ!」

 

阿求「霊夢さんと魔理沙さんもポケモンを持っていたなんて・・・」

 

小鈴「う~ん・・・ここはAZさんに勝ってほしい気もするけど・・・

   霊夢さんと魔理沙さんには異変を解決してくれこともあるし・・・

   う”~ん・・・どっちを応援するべきか・・・・・」

 

 

射命丸「・・・ところで、あなた誰です?」

 

???『・・・気にするな。ただの傍観者だ』

 

射命丸(・・・ボロイローブと、汚れたフード。  

    フードで隠れているから顔は見えないけど、たぶん人間じゃないわね。

    でも、なぜかしら?なぜ阿求さんと小鈴さんはこの異端者に恐怖や

    疑心を抱かないのかしら?)

 

 

夜も紅く染まる悪魔の館。

 

その館の属する時計台。

 

その前に留まる鴉と人間。

 

その人間にすらも認識されず。

吸血鬼の魔眼にも捕まらず。

 

人によって生み出され、人によって傷つけられ、また人によって救われた。

 

『逆襲』の彼は、何を思うのか?

 

 

 

To be continued・・・



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34ページ目 VS! AZ その②

勉強きついよぅ・・・。・゚・(ノД`)・゚・。
(なのになんで俺は小説を書いているのか・・・)


これは、私の過去の記憶。

 

その記憶の中。どこかで見た夢の話。

 

 

私のポケモンが、戦争に駆り出され、命を落とすまでの記憶。

目線。肌で感じる空気。音。

 

すべてが私のポケモン・・・「フラエッテ」と同じになっていた。

 

 

その戦争では、私達の国が勝利を収めた。だが、それには理由があった。

 

 

国の王のポケモンですら戦に駆り出されるほどの戦争。

それほど大きい戦争・・・だが、私達は勝てた。

 

 

その勝因は『物量』。

相手の国は強力なポケモンを多く従えていた。

 

しかし、回復をさせる暇もないほどの連戦。兵の数。

王のポケモンですら『兵』として扱う総力戦。

 

その勝利は、大量の犠牲と敗北とを引き換えに。大量の富と勝利を私達に約束した。

 

 

やがて、戦争が終わり。

また愛らしい鳴き声をかけに私の部屋へやってくる。と私はなかば希望を抱えていた。

 

 

しかし・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

コツ、コツ、カツ、カツ、カツ・・・

 

 

聞こえてきたのは、靴音。

軍靴特有の、柔らかい絨毯の上でさえ硬い音が出せる靴音。

 

 

私の城の、最上階の、廊下の、部屋の、扉の。前で。

 

コツリ・・・・・・・・・・・

 

足音は止まった。

 

私は願った。

頼む。

 

次に聞こえてくるのは、『鳴き声』であってくれと。

 

フラエッテの、可愛らしい声であってくれと。

 

「エイ・ゼット様」

 

聞こえてきたのは一人の人間の声。男だ。

 

私は静かに、男を部屋へ招き入れた。

 

 

「これを・・・エイ様に・・・渡せと・・・」

 

私はその小さい木箱を受け取り、男を部屋から追い出した。

 

 

軽い。

冷たい。

 

私は、日が暮れるまで箱を開けられなかった。

 

そしてついには・・・開けた。

中の「物」を見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーその日から、数日後。ある『機械』が音を立てた。

           ある『機械』が光を放った。

           中心部には木箱があった。

 

廻りの木々は石と化した。

周りの生物は砂と化した。

回りの人々は鉄に変わった。

 

           私は、フラエッテを蘇らせた。

           それによる副作用、蘇ったフラエッテの気持なんか知らずに。

 

フラエッテは、どこかへと飛んだ。

私は手を伸ばした。

 

最後にフラエッテがこちらを向いた。

その表情(かお)には・・・・・・・・・・・・-。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊夢「ブラッキー!行くわよ!」

ブラッキー「ぎゅおん!」

 

魔理沙「おお・・・一匹倒したか・・・」

 

霊夢「・・・まだよ・・・」

魔理沙「あ?まだ?何が?」

 

霊夢「よく見なさい。あのボールの数」

 

そう。私もさっき気付いた。

 

まだ、ボールは・・・つまり『ポケモン』はさっき倒したのも入れて

合計:5体。

 

今のとこ確認が取れたポケモンはー

 

・鳥っぽい変な奴 ✖

・亀っぽいやつ 〇

・???? 〇

・???? 〇

・???? 〇

 

 

魔理沙「ふっひゃあ・・・つーことは、あと五体か?」

 

霊夢「恐らくはね。でも、大丈夫よ。勝てるわ、この戦い」

 

魔理沙「・・・っつーかこの戦い。私達は勝っても負けてもノーリスクじゃないか。

    相手はなにか切羽詰まっているような状況なんだろう?

    勝たせてやってもいいんじゃn(霊夢「あんたは負けたいの?」

 

 

 

 

魔理沙「・・・・・・勝負をするからには、確かに勝ちたい。 

    だが、それとこれとは別だろう?」

 

霊夢「なら、あんたはこの戦い。抜けてもいいのよ?」

 

魔理沙「・・・・・今回ばかりは。私の想いを通させてもらうぜ・・・。

    ・・・なあ、霊夢」

 

霊夢「何かしら?」

 

 

 

 

 

魔理沙「お前。本当、変わっているよな」

 

霊夢「ここには変わっている奴しかいないわよ?」

 

 

魔理沙「・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

AZ「ん?なんだ・・・一人、抜けているようだが・・・。

  トラブルか?」

 

 

レミリア「あら?なんで白黒は抜けているのかしら?

     ちょっと咲夜。どうしてか納得がいくよう話を聞いてきて」

 

昨夜「・・・・・」

 

レミリア「ちょっと咲夜?」

 

昨夜「あ、ああ。すいません。なにやら館の方で気配がしたもので」

 

 

 

レミリア「鴉と人間二人のことは放っておきなさい。

     兎に角。魔理沙から話を聞いてきて」

 

咲夜「あ、ハイ。承知しました」

 

 

レミリア「・・・あと少しで・・・運命に決着がつきつつある・・・」

 

 

 

 

 

 

 

AZ「・・・行け。ゴルーグ。

  戻れ、コータス。」

 

 

ゴルーグ「ずぅううううぅん・・・」

 

 

霊夢「あら?一匹戻したの?」

 

AZ「勝負は、ダブルバトルから、『シングルバトル』へと変わった。

  約束上、ダブルバトルをやらざるを得なかったが。

  そちらも約束を破ったのだ。そして」

 

霊夢「そして?」

 

AZ「ルールとしてはこちらが正しい。

  それに、あのレミリアという吸血鬼。 

  幼女を殺すなどという残虐趣味ではないだろう」

 

霊夢「なんで?そう思ったのかしら?」

 

AZ「殺して楽しむのならば既にやっているはずだ。

  それに、彼女は面倒ごとが嫌いなはず。

  その証拠に、従者に。なぜ君の友人は抜けたのか。

  聞くよう仕向けている」

 

霊夢「成程ね。頭はなかなか切れるようね」

 

AZ「これでも科学者だったこともあったからな」

 

霊夢「ふぅん」

 

 

 

 

AZ「ゴルーグ!メガトンパンチ!」

 

ゴルーグ「ずぅうううん!」

 

霊夢「ブラッキー!悪の波動!」

 

 

拳を振りかざし、近づいてゆくゴルーグ。

黒い波動を口から出し、攻撃を仕掛けるブラッキー。

 

攻撃射程距離の差。ブラッキーの攻撃の方が先に当たった。

 

AZ(こうなったら賭け。賭けの勝負!

  こっちが耐えきるか、向こうの攻撃が勝つか!)

 

霊夢(先に当てた分こちらが有利!だけど、全然止まらない!

   こうなったら正面突破。いえ、玉砕覚悟よ‼)

 

ゴルーグ「ズズッ!ズウウウウ!」

 

ブラッキ「ギュオォォン‼」

 

 

 

 

AZ「ここらが限界かっ!いまだ、振り下ろせ!」

 

霊夢「ブラッキー!あと少しよ!」

  

 

ゴルーグは振り上げた鉄の拳を思いっきり振り下げ、

ブラッキーはさらに近づきそしてー・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズズゥウン‼ブワッ‼

 

 

大きな音と砂煙と共に辺りは真っ白になった。

 

  

 

 

 

 

 

 

その音に驚き、魔理沙は咲夜との会話を中断して首を後ろに向けた。

 

魔理沙「・・・決着・・・か・・・?」

 

咲夜「そのようね。まさかあなたが抜けるなんて思わなかったけど。

   それでも勝負には決着がついたようね」

 

魔理沙「・・・なんかその言い方に嫌味を感じるぜ・・・」

 

咲夜「気のせいよ」

 

 

まだ地面が衝撃に揺れている。

 

砂煙はいつもより少なく薄い。もう少しで晴れてくる。

 

 

サァァァ・・・・・

 

 

まるで『霧雨』が晴れる『霊夢』のように、辺りの様子が分かった。

 

 

巨大な影が・・・地面に倒れ伏している。

 

黒い獣が、その前に立っている。

 

 

 

どうやら勝利は・・・・・

 

 

 

霊夢「・・・ふぅ。勝てた」

 

霊夢とブラッキーの勝利らしい。

 

 

 

パチパチパチパチ・・・

 

レミリア「いやー。実に面白かったわ。常に緊張を解くことができない本気のバトル。

     でも、少し疑問ね。魔理沙が抜けてから霊夢。あなたは相手のポケモンに向けて

     弾幕を放つのをやめたけど。なぜ?」

 

霊夢「あんたはさっきまで。魔理沙が抜けた理由を知りたかったんじゃないの?」

 

レミリア「それは後よ。それより、どうして?」

 

 

霊夢「・・・一度でいいから信じ切ってみたかったってだけ。それだけよ。

   それに一般人に弾幕を当ててケガさせても気分が悪いでしょうに」

 

レミリア「成程。理解、理解。あー、楽しかった」

 

 

霊夢「・・・・まだ。向こうはポケモンを持っているけど?」

 

レミリア「面白かったけど、飽きたのよ。今度は・・・そうねぇ・・・。

     自分のポケモンでも探してみようかしら」

 

 

霊夢「ならご勝手に。もう私達を遊び道具に使うなんてことはしないことね」

 

レミリア「嫌よ。だって楽しいじゃない」

 

 

霊夢「・・・はぁ・・・ま。確かに少し楽しかったけど」

 

 

 

 

 

負けた。

 

敗北した。

 

 

しかし、なぜか私は安堵していた。

 

 

思えば。目先の戦いに目を奪われ。意識を向けられ。

周りがよく見えていなかった。

 

 

見てみれば。

 

あのチルノという少女。

すでに解放されて大妖精と話をしている。

 

どうやら、私は。

 

あの吸血鬼にからかわれていたらしい。

 

 

霊夢「ちょっと」

 

AZ「?」

 

霊夢が話しかけてきた・・・?

 

 

 

霊夢「あんたは、なんで戦うことになったの?」

 

AZ「・・・私は、大妖精という少女に頼まれたのだが・・・」

 

そう言いながら、仲睦まじく話す大妖精たちを見る。

 

霊夢「・・・・・あんた、外来人でしょ?

   『妖精』は悪戯好きだって、教えてもらわなかったの?」

 

妖・・・精・・・?

 

!?

 

AZ「まさか・・・・・・」

 

霊夢「そう。お察し通り」

 

 

 

 

 

私は、どうやら本当に。最初から。

 

AZ「妖精に構掛けられた・・・ということか・・・」

 

霊夢「そう。その通り」

 

 

AZ「・・・よかったじゃないか」

霊夢「え?」

 

AZ「要するにこれは、私という人間が妖精に少し悪戯されたというだけ。

  それで死ぬ少女もいない。よかったじゃないか」

 

霊夢「・・・それでいいのかしらねぇ・・・」

 

 

紫「いいわけがないわ」

 

驚愕した。

 

急に空間を裂いて女が現れた。

 

 

霊夢「あら、紫じゃない。チビ吸血鬼になんか言われて席を外して以来・・・かしら?」

 

紫「そう。少し調べ物を・・・ね」

 

見れば、さっきまで青い少女(チルノと言ったか?)と話していたはずの大妖精が

この紫という女性に捕まっていた。

 

 

紫「実は、この妖精も「洗脳」の影響を受けていたことを、話そうと思ってね」

 

霊夢「また洗脳ォ?それって妖精だけが操られる異変じゃあ・・・」

 

紫「まだ分からないわ。それと・・・あなた」

 

AZ「?・・・なんだ?」

 

紫「・・・近くで見ると本当に大きいのね。2M80?90?いえ、3Mかしら?

  ・・・まあ、兎に角館に戻りましょう。ワガママお嬢様も帰ったようだし。

  館の上にいるあなたのお友達も呼んで見たら?」

 

お友達?

 

疑問に思い、館の上を見てみると。

 

 

射命丸と阿求と小鈴らしき影がこちらに手を振ってなにやら叫んでいる。

 

 

紫「さ、兎に角。館へ戻りましょう。

  夏だからと言っても夜は冷えるわよ?」

 

AZ「・・・教えてくれないか」

 

紫「なにかしら?」

 

AZ「私から何を聞こうと?」

 

紫「そうねぇ・・・知っていたらでいいんだけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『パルキア』、というポケモンについて教えて下さる?」

 

 

To be continuede・・・




うろ覚えキャラクタープロフィール:紅 美鈴

能力:気を使う程度の能力
   『気』というものがなんなのか、それはよく分かっていない。
   本小説では『波動』のようなものという解釈を進めている。
性格:基本的に温和。
   しかし門を無理矢理破ろうとしたり越えようとする者には容赦しない。
   たまに湖の妖精たちと遊んだりしているが、仕事を忘れているわけではない。
睡眠:寝る子は育つ(どこがとは言わないが)。
種族:妖怪。だが何の妖怪かは不明。
   時に戦闘能力の高さから鬼。帽子のマークから龍とも。
戦闘:弾幕で追い詰めつつ、肉弾戦に持ち込んで重い一撃を食らわせるのが基本。
   その肉体の強さは鬼とも渡り合えるほどとさえ言われる。
   しかし弾幕に関してはイマイチ。時に上司である十六夜 咲夜と共に戦う。
   美咲はみんなのジャスティス。


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35ページ目 対話 人里の鋼

疲れたー!
もうやだー!

小説書くの飽きてきたー!(失踪するとは言っていない)


AZ「パルキア?」

紫「そうよ」

 

時刻はもうすでに夜明け前。

時計の針はすでに一周回って「明日」になっていた。

 

ここ、紅魔館では夜遅くに起きているというのは当たり前のことだが。

館の住人ではない霊夢や魔理沙たちはもうすでに瞼が半分閉じていた。

 

私。AZは、この得体の知れない(恐らく妖怪の)少女に突如。

神話に登場する『おとぎ話』のポケモンの名前を聞かされ。

一瞬、意識が凍った。

 

いやしかし。

AZ「なぜ、そのことを?」

紫「私はかなり昔から、そっちの世界のことを調べてきたのよ。

  で・・・えーと・・・この幻想郷にポケモン達が入り込んだのは

  『全部』そのパルキアってやつのせいなのよ!」

 

魔理沙「全部はないぜ」

霊夢「全部はないわ」

紫「よい子は寝る時間よ」

 

成程。

 

どうやらこの少女はなにかしら『パルキア』と因縁があるらしい。

そしてその因縁のせいで、ポケモン達が入り込んだ。

・・・だとしたら、この少女にも非があるのは誰が見ても認めるだろう。

 

AZ「・・・・・」

しかし私は、そのことについては首を突っ込まないことにした。

突っ込むと、また面倒なことになる気がしたからだ。

 

 

ちなみに、霊夢とのバトルが終了してから、阿求と小鈴は人里へ帰ったらしい。

もう夜遅くであるし、吸血鬼の館に泊まることは避けたほうがいいと思ったので

射命丸に頼み二人を人里まで送っていってもらった。

 

阿求は「参考までに泊まりたかったかも」とまんざらでもなさそうに呟き。

小鈴は「明日は休みじゃないので・・・」と言っていたが、その顔は恐怖に歪んでいた。

おそらくよっぽど怖かったのだろう。

 

紫「で?答えてくれるのかしら?」

 

AZ「・・・いいだろう。私が知っている範囲でいいのならば」

兎に角、私も早く帰ろう。

阿求たちを送り届けたら、射命丸に戻るように言っておいたため。

帰路は大丈夫だろう。

 

 

紫「まず・・・パルキア、一体どんな姿をしているの?」

 

AZ「・・・すまないが、実際に見たことがあるわけじゃないので分からないな。

  しかし、私が読んだ「聖書」には、まず・・・・・」

 

こうして私は、「聖書」に書かれていた空間神についてのことを教えた。

 

その①。空間神が呼吸をすることにより、この世の空間は安定するという。

その②。どのような場所にも移動でき、ありとあらゆる空間についての事象を操る。

その③。実在すると言われる。が、誰もその姿を見たものはいない。

その④。空間を切り裂くと言われている。

その⑤。姿は、肩に真珠のような物をはめ込まれた二足歩行のドラゴン。

    体は真珠色に輝き、紫色の線が通っている。

 

そしてその⑥。戦闘方法についてを話そうとしたとき、紫が話を遮ってきた。

 

紫「少し待って下さるかしら?」

 

AZ「?・・・なんだろうか?」

紫「なんか・・・・人里の方角で変な気配がしたような・・・」

 

AZ「!?・・・人里で・・・?」

紫「人里の「方角」でよ。大丈夫、人里にも戦える人はいますから」

 

AZ「・・・・・」

紫「それで?続きは?」

 

 

・・・その⑥。基本的に戦闘は不可能。

いつ、どこで現れるかは予測できず、仮に予測して戦ったとしても

肉体を空間ごとバラバラに切断されると言われている。

しかし、それはあくまで「本気」ではなく手加減をしているためと言われている。

 

紫「ちょっと」

AZ「今度は何だ?」

 

紫「手加減?今、手加減って言ったのかしら?」

AZ「・・・そうだが?」

 

紫「・・・・・」

紫はしばらく、信じられなそうな顔で視線を下に向けていたが

その内視線を上に上げ、形だけ笑って、

紫「ありがとうございました。おかげでいい情報が手に入ったわ」

そう言って、立ち去った。

 

AZ「・・・・」

私は突然、会話が終わりを告げたため少し茫然自失としていたが。

 

咲夜「AZ様。お迎えの鴉天狗が門まで来ています」

そう言われ、思い出した。

 

AZ「そうだった・・・早く帰らなければ・・・」

私はそそくさと図書館を後にし、館を出て合流した。

 

射命丸「なかなか長く話していたみたいですね」

射命丸ははにかみながらそう言ってきた。

 

AZ「別段、どうでもいい話だ。さあ、速く帰ろう」

 

そう言うと、射命丸は苦笑を浮かべ黙ってしまった。

 

AZ「?、どうしたのだ?」

 

射命丸「・・・スルンデスカネ・・・」

 

 

AZ「・・・なんだって?」

 

そう聞くと、射命丸が自嘲気味に笑って。

 

射命丸「AZさん。あなたを運ぶのに、私が背負わないといけないことになりますか?」

そう言ってきた。

 

 

 

人里。

 

昼は活気に包まれ、夜になると居酒屋の周り以外では面白いくらいに静かになる

幻想郷最大の集落。

 

そこの居酒屋で開かれる話は、いつもなら

「人里に潜む食い逃げ犯について」だったり。

「最近、近くの森で妖怪が出たらしいという話」まで様々だが、その日はその噂の全てが

一つの話題にまとめられていた。

 

人間A「なあ、知っているか?最近出るようになった新種の妖怪」

人間B「ああ、知っているさ。あの天狗新聞に堂々と出てりゃあな」

人間C「・・・・・」

 

人間A「おう、C。いつもならがぶがぶ飲んで酔いつぶれるのによ~。

    今日は一滴も飲んでいないじゃないか」

人間B「おうそうだ。飲もうZE☆」

人間C「・・・お」

 

人間A、B「「お?」」

 

人間C「俺は・・・見ちまったんだ・・・その化け物を・・・。

    化け物の親玉を!」

 

人間A「なぁにぃ!?」

人間B「おい!どういうことだ!」

 

人間C「・・・昨日、今日みたいに仕事終わりに一杯やって・・・帰ったんだが・・・。

    その帰り道に・・・『何か』立ってんだよ・・・」

人間A「『何か』?」

 

人間C「あ、ああ・・・その時はあまりの恐ろしさに・・・逃げ帰ったんだが・・・

    今なら鮮明に思い出せる・・・・」

 

人間D「お前ら何の話してんだ?」

人間E「おもしろそうじゃないか」

 

ざわ・・・ざわざわ・・・

 

人間A「それで!どんな姿してたんだ?」

 

???「・・・・・(新しく来た、あのへんな生き物の話か?)」

 

人間C「・・・昨日は、たしかやけに明るい月が辺りを照らしていたからよ・・・

    見えたんだ。

    白く鋼色に輝く姿、全体的に・・・丸くて。

    壺をひっくり返して足をつけたみたいな・・・。

    ちゃんと腕もあったんだが・・・それより驚いたのは奴の目・・・。

    俺は腰を抜かしちまって・・・その時建てた音で気付かれたんだ!」

 

人間B「腰を抜かした状態で逃げれたのか?」

 

人間C「そして・・・あいつは俺の方に不自然に振り返ったんだ。

    頭だけ動かすとかしないで・・・体ごと俺に真正面に向けたんだ。

    ・・・で・・・奴の目なんだが・・・

    「七つ」あったんだ・・・赤く光っていた。

     図形みたいに・・・生き物の顔じゃないみたいに・・・規則正しく・・・

     そして・・・」

 

人間A「・・・・・」

 

 

 

ー昨晩ー

 

人間C「ひぃっ・・・いっ・・・いっ・・・」

 

「・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じ・じ・ぜ・じ・ぞ」

 

 

人間C「うわああああああああ‼・・・うっ」

 

バタリ。

 

人間A「おい・・・おい!・・・気絶している!」

人間B「おい!だれか担架持って来てくれ!」

 

???「いや、必要ない。私が運ぼう」

 

人間A「いやいいですよ、『慧音』先生。

    俺が運びます」

 

慧音「いや、Cさんの話を真っ先に詳しく聞いて、人里の警備を万全にしたい。

   それに、もう『夜』。Cさんが言っていた怪物に会ったら大変なことに

   なってしまう」

 

人間A「・・・でも、慧音先生だって・・・」

 

慧音「いや、心配することはないよ。私は普通の人より強いからな」

 

人間A「・・・分かりました。先生こそ気をつけて」

慧音「お気遣い、感謝するよ」

 

 

 

 

慧音「・・・ついに、この人里にまで・・・」

 

 

 

 

ー紅魔館ー

 

レミリア「・・・あら?霊夢たちまだ帰ってないの?」

 

咲夜「はい・・・ぐっすり眠ってしまったようで・・・」

 

レミリア「・・・・・あっ、確か・・・。

     私、紫に夜になったら霊夢を呼んでって言っていたわね・・・」

 

咲夜「どうされます?どうしても今話したいのなら起こしてみますが・・・」

 

レミリア「う~ん・・・まぁ、いいわ。

     今日限りじゃないし。とりあえず、二人を客室に運んで寝かせてあげなさい」

 

咲夜「はい、分かりました。すぐに手配します」

 

レミリア「・・・頼んだわよ。

     しかし・・・『ポケモン』ねぇ・・・。

     紫は明日、レジアイスのことを届けるって言ったけど・・・。

     どう、しつければいいのかしらね・・・。

     ま、そこのところも霊夢にいろいろ教えてもらいましょう」

 

 

 

 

ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、・・・

 

慧音「しかし、意外に人を負ぶるのは体力使うな・・・ま、「半分」人間だから仕方ない。

   え~と・・・確かCさんの家は・・・」

 

「じ・じ・ぜ・じ・ぞ」

 

慧音「!?・・・なっ、後ろ・・・?」

 

 

淡い記憶の中で確かに存在する。

必ずどこかで使われている。

 

機械、武器、道具。そして血液までも・・・。

 

「鉄」は使われている。

 

今宵・・・空間神が切り裂き、絡めた運命の糸は。

 

 

慧音「お前が・・・ポケモンと言う者達の・・・親玉か?」

 

「・・・・・」

 

また一つ。

 

 

「じ じ ぜ じ ぞ」

 

絡み合った。

 

To be continued・・・




さとり「私達の出番は終わりかしら?」
ヒ―ドラン「ごぼ?」

いえ。まだありますよ。
さとりさんとヒ―ドランちゃんは『岩』と戦ってもらいます

さとり「は?岩?何、殴り壊せと?」

いえ、そうじゃなくて。

さとり「そういえば、何であなたの心は読めないの?」

これが執筆者の能力(ちから)です。

さとり「なんか納得できないわ・・・」


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36ページ目 河童の工房 鋼と歴史

少しPCがトラブりましたが無事投稿。


ギュイー・・・バチバチッ・・・シャー・・・

 

ここは、「妖怪の山」。

その中腹に位置する河川。「玄武の沢」。

 

川の妖怪。「河童」達が独自の社会を築いている、不可侵の場所。

 

 

今はもう深夜。にもかかわらず河童の少女・「河城にとり」は妙な機械を使って

作業を進めていた。

 

にとり「ふぅー・・・ん~・・・ん!よし、できた!」

 

彼女が今、何の作業をしているのかというと「モンスターボール」という道具の生産に

取り掛かっている真っ最中なのである。

 

 

にとり「あー・・・疲れた。もうかれこれ19時間は作業台と向かいっぱなしだよ・・・。

    もうーやだ。働きたくなくなったでござる」

 

紫「頑張りなさい。あなたの技術力が幻想郷を救うカギになってるんだから」

 

にとり「ひゅぃっ!い、いたのかい・・・」

 

紫「さっきからいたわよ。それで、どう?」

 

にとり「ああ。今のところ一日で三つが限界だからね。

    これが今日の分の三つめ」

 

そう完成したばかりの紅白球を指で叩きながらにとりは誇らしく言っていた。

 

紫「そう。完成したばかりなのね。・・・突然だけど質問があるわ」

 

にとり「おう、なんだい藪から棒に」

 

紫「いいから答えて頂戴。

 

  私に敵う存在って、いると思うかしら?」

 

 

にとり「うう~ん・・・まぁいるとは思うね。

    例に挙げるなら鬼・花の妖怪・神・天人・月の民・・・

    あとはポケモンの中にいるとんでもないやつらかね」

 

紫「とんでもないやつら?」

 

にとり「そう。こういう人間の寄り付かないところなのか、それとも別の何かがあるのか

    分からないけれど。ここら辺には他より強いポケモンが寄り付くらしいんだ」

 

紫「・・・例えば?」

 

にとり「うごく鉄塊みたいなやつ。岩の蛇みたいなやつ。

    白い一角獣っぽいやつ。・・・沢山だよ」

 

紫「そんなに多くの強力なポケモンがいても尚、ちゃんと社会を保てているのね」

 

にとり「ああ。私らはその強力なポケモンを捕まえられる道具を持っているからね。

    それで捕まえたポケモンに命じて、寄り付くやつらを追っ払ってもらってるんだ」

 

そう言いながら、にとりは帽子を上げ。帽子の中から紅白球を取り出した。

 

にとり「こん中には・・・ま、「エイパム」って名付けた奴がいるんだが・・・

    小さい割によくやってくれてるよ。ま、監視係みたいなもんだけどね」

 

紫「じゃあ、その腰につけているボールには?」

 

にとり「こいつは、「ゴルダック」って呼んでいる奴なんだが・・・。

    割と強くってね。重宝しているよ」

 

紫「・・・その隠すように持っているボールには?」

 

にとり「ゲゲッ。バレた・・・」

 

紫「中身は?」

 

にとり「・・・言わなきゃダメ?」

 

紫「ダメ」

 

にとり「・・・コイツはぁ・・・山で大暴れしていたんだよ。

    顎のあたりにある斧みたいな牙を振り回して。

    ナワバリを作っていたんだと思う」

 

紫「で?」

 

にとり「そんで、私は不幸にもそいつと出会ってしまってね・・・

    弾幕で攻撃したんだがひるみもしなくて。突っ込んできたんだ。

    それでダメもとでボールを投げて当てたら」

 

紫「捕まえた、と?」

 

にとり「でも、全く言うことを聞いてくれない。

    一応持ってはいるが多分お蔵入りさ・・・」

そう言ったにとりの顔はとても暗いものだった。

 

紫「ふぅーん・・・じゃあ」

 

にとり「譲らないよ?」

 

紫「チッ・・・・・じゃあボールを一つ頂戴」

 

にとり「え?何故?」

 

紫「私のポケモンを捕まえることにしたの。

  今の私は手負いだけれど。逆にこの異変を解決するには異変の元凶であるポケモンを

  利用するしかない、と思ったのよ」

 

にとり「ふぅ~ん・・・じゃあそこらへんに在庫あるから適当に持って行って」

 

紫「ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紫「じゃあこの山で適当に捕まえておこうかしら」

 

 

 

 

慧音「・・・・・」

 

???「・・・・・」

 

 

どうする・・・。

 

私は自らに問う。

 

どう、この状況を切り抜ける?

今できうる限りの選択肢をいくつか頭に浮かべてみる。

 

 

1、逃走。出来る限り遠くへと逃げる。

2、戦闘。打倒し、被害が出ないようにする。

3、会話。和解を求める。

 

できるなら2は回避したい。

一番いいのは1・・・いや、3か?

 

何しろ向こうは何をしてくるか分かったもんではない。

今私が持っている多くの歴史の記憶を辿っても

「鉄のような化け物を倒す方法」なんて浮かんでこない。

 

会話にしても言葉が通じるかどうか・・・

 

なら、できる選択肢は1。

 

逃走。

 

慧音「離脱!」

 

私はその怪物と向かい合ったまま爪先に力を籠めて、後ろに大きく跳ぶ。

 

人間状態とは言っても、それなりに鍛えている。

私は背中にCさんを担いだまま、遠くへ遠くへと逃げ出した。

 

 

 しかし にげられなかった ! ▼

 

何やら後ろの方でゴロゴロ重い音が聞こえてくる。

私は走りつつ後ろをチラッと見た。

 

 レジスチル の ころがる ! ▼

 

ゴロゴロゴロゴロゴロ‼

 

とてつもない速さでさっきの怪物が転がりながら追いかけてきたのである。

 

 

慧音「誰かぁー!助けてくれぇ―‼」

私もいつもの冷静さを失い、大声を出しながら人里を超えて森まで逃げていった。。

 

 

「魔法の森」

 

慧音「くっ・・・うぅ・・・はぁ、はぁ」

 

 

結果から言うと。追いつかれた。

 

いや、森の途中で私を追い越して行って、今はこの森のどこかにいる形となっている。

 

慧音(どうする・・・どうすれば逃げられる・・・)

 

 

私は半パニック状態に陥ってしまい、どうすればいいのか分からなくなってしまっていた。

 

 

それに人をおぶりながら全力疾走してきたので、心臓がオーバーヒートしそうなほど熱い。

慧音「兎に角、ここから離れなければ・・・」

 

 

そう足を踏み出すと、何やら背後で音がする。

 

さっきの怪物かと思えば、そいつは普段顔見知りの妖怪であった。

 

妖怪1「やあ。先生。どうしたんですかこんな時分に」

 

慧音「いや。少し追われていてな。大丈夫だ、すぐに出ていく」

 

妖怪1「いや、センセ?分かっていると思いますがここは人里の範囲外の『魔法の森』です。

   ルールでは人里から出た人間は里の者であっても・・・『食べてもいい』と・・・」

 

慧音「・・・私を食べるつもりか?」

 

妖怪1「まさか。あなたがおぶっている人間を渡してほしいのです」

 

慧音「無理だ。おとなしく手を引け」

 

妖怪1「そう言ってももう遅いんですよ。ねぇ?慧音せんせぇ・・・」

 

慧音「?・・・・・!?」

 

 

しまった。

しかし時すでに遅し。

 

周りを別の妖怪に数匹、囲まれてしまった。

全員私の顔なじみである。

 

妖怪1「ね?分かったでしょう?弾幕を放ったとしてもこの人数。

   二人倒せたとしても後ろから襲い来る者までは対処できますまい・・・」

 

慧音「くぅ・・・卑怯だぞ!」

 

妖怪1「妖怪は卑怯なものですよ。さぁ、速く・・・」

 

そこまで言ったところで目の前で話していた妖怪が吹き飛んでいった。

 

「アイアンヘッド」

 

見ればさっきの怪物が突っ込んできたのである。

 

妖怪2「なっなんだ・・・」

そう言っている妖怪も怪物が放つエネルギーレーザーで吹っ飛ぶ。

 

「ラスターカノン」

 

妖怪3「ひっ・・・ひいいいいいいい‼」

 

三匹目の妖怪に怪物が攻撃の準備をしている途中で妖怪は逃げ出し

それに続いて他の妖怪達も逃げていった。

 

慧音「あっ・・・えっ・・・え?」

???「・・・・・」

 

私には一体何がどうしてこうなったのかは分からないが。

どうやら私は、この怪物に助けられたらしい。

 

何故?

 

何故この怪物は私を助けたのか?

 

この怪物に対する恐怖は疑問の念へと変化し、私の脳を麻痺させていく。

 

???「・・・・・」

 

怪物は何も言わず。ただこちらを七つの目でジッと見つめていた。

この怪物には感情なんてものは無いと思っていたが。

 

よく見ればその赤い瞳からは何かしらの意志と感情と知恵が感じられた。

 

 

慧音「・・・あぁなんだ。言葉が分かるとは思わないが・・・そのぉなんだ・・・

   感謝する。ありがとう」

 

???「じじぜじぞ」

 

まるで私の言葉に答えるように鳴き声を発する怪物を見て私はこう思った。

 

なんだ。意外と意思の疎通はできるんだな。と。

 

 

慧音「・・・さてと。さっさと人里へ帰るとするか」

???「・・・・・」

 

 

やはり。というかやっぱり。

 

私が歩き出したのと同時に怪物・・・いや、この子も歩き出してきた。

この子?いや、いい。

 

兎に角、この子は私に危害を加えるつもりはないことが分かった。

それにさっきのように面倒くさく立ちふさがる奴らも蹴散らしてくれるだろう。

 

彼らとは顔なじみだが、やはり妖怪だったということだ。

今度頭突きの刑に処そうと考えているところに。

 

???「おっ慧音じゃないか。こんな時間に森なんかにいてどうしたんだ?」

 

慧音「おっ、『妹紅』じゃないか」

 

そこに立っていたのは私の友人。「藤原妹紅」であった。

 

妹紅「んで・・・なんだ。妙な奴を連れているな」

 

慧音「まあ・・・いろいろあってな」

 

妹紅「そうか・・・まあ、あまり深掘りはしないぜ」

 

慧音「ありがたい」

 

妹紅「おう。ところで・・・こっち方面にデカい鳥が飛んでこなかったか?」

 

慧音「デカい鳥?」

 

妹紅「ああ。なんでも虹色の羽をもつ巨鳥らしいんだが・・・。

   少し興味があってな。まあ、見てないならいいんだ」

 

慧音「すまない。見てないな。力になれなくてすまない」

 

妹紅「まぁ、見てないならいいんだ。それより、最近すごいもの聞いちまってな」

 

慧音「?」

 

妹紅「永遠亭で聞いた話なんだが、そのうち紅魔館の方へ隕石が落ちてくるんだとか」

 

慧音「それは物騒だな。悪魔の館だから無事だとは思うが」

 

妹紅「私達には関係がないしな」

 

???「じじぜじぞ」

 

妹紅「で、こいつは何なんだ?」

 

慧音「それは、人里についてから話すよ」

 

 

そう話しているときに東の方からピカッと朝日が差し込む。

 

 

それは、これから加速してゆく異変の強大さを全く感じさせないほど

清々しい朝日であった。

 

 

 

「守矢神社・封印の巨像」

 

 

???「いやしかし・・・大きいですね」

???「そうだね」

 

 

???「あら?この人のここの部分・・・」

???「どうした・・・って・・・なんか光ってるね」

 

???「水色と・・・灰色ですねぇ・・・あっ、もう一個光りましたよ!

    これは・・・赤色ですね。何なんでしょう?」

 

???「明日の天気とかじゃない?」

???「あー!人里の龍神像みたいなものですね!きっと赤なので晴れですよ!」

 

???「いや。『早苗』は知らないと思うけど、赤は晴れじゃないんだよ」

早苗「えっ?じゃあなんですか?」

 

???「赤はー・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

異変が起こる前兆なんだよ」

 

To be continued・・・




うろ覚えキャラクタープロフィール。:河城にとり
能力:水を操る程度の能力
人柄:基本的に温厚で、人間のことを『盟友』と言う少し変わった妖怪。
   技術力に長けており、基本的にいろいろ作れる。(設計図があれば)。
   この小説ではモンスターボール開発の第一人者。
   霊夢たちが使っているのもMAID in にとりのボール。
ボール:最初は設計図を見ただけではとても作れないように思えたが
    紫の協力により必要なレアメタルやらなんやらが手に入り、作れるように。
    なお、この設計図は大図書館に置いてあった本から破ったものを
    紫の道具:拡大「複製紙印刷機(コピー機)」によってできたもの。
容姿:ツインテールの青い髪に緑の帽子をかぶった少女。
   河童独自の皿は帽子で隠れているからなのかそもそも失われたのか
   誰も見たものはいない。服装は耐水性抜群の合羽のような物を着ている。
   胸にはなんかの『鍵』がある。
きゅうり:何物にも代えがたいにとりの大好物。


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37ページ目 古代塚の鉄壁は里を守りたい その①

想像してみよう!

上半身裸で、パンツ一丁で、狐のお面をかぶり、そのお面にサングラスをかけ、
手袋をし、マフラーをした男の姿を。

これが今日の私の寝巻(パジャマ)です(キョウキ は こんらん している ! ▼)

あと、こんなふざけたこと言った後であれですが。
遅れて申し訳ありませんでした。


熱い、赤い液体の中より出流した私の身体。

冷たい、青い水より固められた私の魂。

 

自らの肉体は、大地の神と海原の神の恵みにより創られた。

しかし、それはあくまでも「素材」。

造り手は誰だったか。それは忘れたのか、それとも知らないのか。分からない。

 

だが私の役割だけはしっかりと理解している。

 

目覚めさせること。

自らが何かを目覚めさせる鍵のうちの一つだと、理解している。

 

だが自分一人では鍵としての役割を果たせない。

 

それにここがどこなのかさえ不明。

どうしたものか。

 

近くに木造の建築物が立ち並んでいるのは目で見て理解できる。

 

ドサリ

 

後ろで音がしたため、振り返るとそこには人がいた。

尻もちをついて、震えている。

 

どうやら怯えているらしい。

とりあえず、ここがどこなのか尋ねてみる。

 

「じ じ ぜ じ ぞ」

「うわあああああああああ!でたあああああああ‼」

 

どこかへと走り去ってしまった。

どうしたものか。とりあえず、ここはどこかに身を隠し、体を休めるとしよう。

 

 

 

そして、日が開けた。日は、南の空に高く昇って行き、また西の空に沈みゆく。

 

その様子を、ただ眺めて一日が過ぎてしまった。

 

 

もうすでに辺りは暗くなっている。

情報を集めることはできなかったわけだし、これからどうするべきか。

 

 

お?今気が付いたが、目の前に何かがいる。

誰かを担いでいるらしい。

 

取り合えず、「ここがどこか」。声をかける。

 

「じ・じ・ぜ・じ・ぞ」

 

「!?・・・なっ、後ろ・・・?」

 

 

そこには、見たことのない、人ではない「生物」がいた。

人の姿をしているが、それが擬態であることはすぐに分かった。

根拠はなく、本能で。自分でもよく分からないが、分かってしまったのだ。

 

見れば、向こうの人(?)は警戒している。

叫んだり、逃げたりしないところを見ると、もしかしたら話が通じているのかもしれない。

 

こっちに向かってなにやらブツブツ言っていたこいつは、ササッと素早く跳躍した。

 

ああ、せっかく話を聞いてくれそうなやつが・・・。と思い、追いかけようとしたら

足がうまく動かず、地面に突き出ていた石に引っかかり転倒する。

 

しかし、追いかけなければならない、という考えが強く体を起き上げようと

手を置いたらそこにもまた小石が突き出ていて、石より硬い自らの掌は石の上を滑り

変に勢いが付き、転がっていってしまう。

 

 

目が回る。

世界が回ってしまう。

 

「誰かぁー!助けてくれぇ―‼」

 

さっきのやつが何か叫んでいたが理解できず、また転がるのを止めることもできないので

そのまま身を任せることにした。

 

 

 

しばらくして、森に突っ込んだ。

 

そこで少しの間倒れていたが、こんどはちゃんと土に手をつき無事起き上がる。

 

「くぅ・・・卑怯だぞ!」

声がして、その方に体を向けると先程の人(?)がなにか凶悪な生き物に囲まれていた。

 

雰囲気からして、険悪らしい。

そして、あの情報を得やすそうな人(?)が危機にさらされている。

 

ここで瀕死になってもらっては、後々面倒になるかもしれない。

ここで助けておけば、もしかしたら情報をもらえるかもしれない。

 

 

ならば助けておこう。

 

とりあえず、自分から見て一番近い奴に体当たりを食らわせて、吹き飛ばす。

 

次に、エネルギーを両手に収集して放つ。吹き飛んでゆく。

残りのやつらは逃げていった。

 

さて、これで助けたことになるが、この人(?)が情報をくれるかどうかは分からない。

 

 

ただ・・・

 

「・・・あぁなんだ。言葉が分かるとは思わないが・・・

 そのぉなんだ・・・感謝する。ありがとう」

 

その意味の分からない言語を聞いたとき、少し胸の内が沸き立つような気持ちを覚えた。

 

 

 

さて。

 

どうするか。

 

私と妹紅は、この怪物についての謎を解明すべく朝もや立ち込める里に帰ってきた。

今日は休日となっている。寺子屋は休みだ。

 

だからこそこの怪物を隠すのに寺子屋を利用した。

ここならば、休日中の間はこの子(なのか・・・?)を隠せるだろう。

 

妹紅「さて。とりあえず、こいつは何なんだ?

   最近見るようになった新種の妖怪の仲間か?」

 

妹紅が、その子を指でコンコンつつきながらこっちに問いかける。

 

慧音「そうだろうな。ただ、この子はおとなしいよ。

   私のことを妖怪から守ってくれた」

 

妹紅「ほう・・・。お前でも手を焼く妖怪っていんのか?」

 

慧音「あっ、この子が私を守ってくれたことに感心したわけじゃないのか?」

 

妹紅「慧音を襲う不届きな奴がいると聞いちゃ、いてもたってもいられなくなってな。

   ああ、別にそいつに感心していないってわけじゃないよ」

 

慧音「そうか。まぁ、私とは言え四方八方を多数で囲まれたら苦戦を強いられるさ」

 

妹紅「四面楚歌だったってわけか。助けてもらってよかったな」

 

慧音「ああ。一応例は言ったんだがー・・・」

そこで少し放置していたこの子のことをチラリと見てみる。

 

「・・・・・」

反応なし。

 

慧音「正直言って何を考えているのか・・・。言葉が通じているのかどうかも分からない。

   一応何か言ったら相槌を打つように鳴き声・・・なのかな?

   とにかくなにかを言い返してくれるんだが、分からないんだ」

 

妹紅「ふ~ん。そうか。まぁ悪い奴じゃなければいいんだがね。

   あっ、ところであの虹色の巨鳥についてなんだが(ビュオオオオオオ‼

 

ゴッ

 

 

 

突如。寺子屋の窓からありえないほどの風が吹き込んでくる。

それと同時に冷たい何かが体に打ち付けてくる。

 

水。雨の様だ。激しい、豪雨だった。

その豪雨と建物を揺らさんばかりに荒ぶる突風に怖気づき、頭を伏せて床に這いつくばる。

 

チラッと目だけ動かして、あの子を確認してみると微動だにしていない。

やはり体の光沢と言い、重量感と言い、肉体は「鋼鉄」でできているんだろうか。

 

そんなことを考えている間に風と雨は勢いを増してゆく。

 

「ばりゅるるるるるるーっ‼‼」

 

まるで何かを高速でかき混ぜるかのような現実味の無い轟音が辺りに響き渡る。

 

しばらく、そこで身を伏せて、雨風を凌いでいたが、一つの疑念が胸の内にくすぶった。

 

「これはもしや『異変』なのでは?」

 

この突発的な暴風雨。十分異変の可能性はある。

 

妹紅「なあ!この豪雨と突風!もしかして‼」

風の音に負けない音量で妹紅が話しかけてくる。

 

慧音「ああ!もしかしたらだが・・・!異変の可能性は十分にあり得るぞ!」

私も豪雨の音に劣らないほどの声量で返す。

 

妹紅「なら・・・解決するぞ!」

 

慧音「確かにそうしたいが・・・この雨と風では弾幕なんてまともに当たらないぞ!」

 

妹紅「そんなの・・・気合で乗り切ってやるぞ!」

そう咳き込むように言うと、まるで妹紅自身が風になったかのように素早く寺子屋の

扉を蹴り飛ばし外に出てゆく。

 

慧音「そうだな・・・このままどこの馬の骨とも知らない妖怪にずぶ濡れにされるのも

   癪だしな・・・いっちょやってやるか!」

私もそう意気込んで、全力を振り絞り扉から吹き込んでくる風を押しのけて外へと出た。

 

 

ビュオオオオオオオオ‼‼

 

寺子屋の中とは比較にならない圧倒的な風量が私達を襲ったが、立ち止まることは許されない。

 

「じ じ ぜ じ ぞ」

聞いたことがある妙な鳴き声が聞こえ、風でまともに開けられない目を見開いて後ろを見れば、あの子が立っている。

 

そしてそのまま風に屈することなく私と妹紅の前に立ちふさがり、風を遮ってくれた。

 

妹紅「お!助かった!これで完全に風が防げるわけではないが、ありがたい!

   ありがとうな!」

 

「じじぜじぞ」

 

慧音「しかし・・・この風を起こしているのは・・・?」

空を飛んで確認しようと思い。力を放出しようとしたら妹紅に止められた。

 

妹紅「やめとけ!この風と雨の中では飛んだら逆に吹き飛ばされてしまう!

   こいつを壁にしてなんとか原因を探すんだ‼」

 

そうだ。確かにこの中を飛べば、腕と足を風に捉えられ、遠くへと吹き飛ばされてしまう。

 

慧音「・・・そうだな。じゃあ妹紅、左の方を探してくれ。

   私は右だ・・・・・!?」

 

見つけた。

 

まさかこんなにもあっさり見つかるとは思わず、少し驚愕してしまった。

 

 

 

 

白髪のようなトサカのような。妙な飾りを頭につけている。

また紫色の二本角が頭から飛び出している。

表情はひげを蓄えた人間の男性の様だが、何しろ緑色に染まっているので

鬼やゴブリンを彷彿とさせる。

また体は顔と同じ緑色で、所々に勾玉型の紫色模様が散りばめられて、かなり毒々しい。

 

なにより目を引いたのは、腰から下の下半身と尾(?)。

 

あるべき下半身は白い雲のようなもので覆われ見えない。

尾(?)はその雲から突き出している。

 

尾(?)はこれまた角や模様と同じ紫色で、先端は渦を巻き、その尾の途中途中は黄色の渦巻きで彩られている。

 

 

 

その妖怪(ポケモンかもしれないが)を中心に風が吹きだしている。

 

 

妹紅「どうする!?見つけたが・・・相手は空中だ!攻撃が当たるかは分からないぞ!」

 

慧音「お前らしくもないな、妹紅!さっきお前は言っていたじゃないか」

 

妹紅「・・・なんて言ったっけ!?」

 

慧音「だからー!」

 

 

そう、こうなったら。

 

慧音「気合で乗り切るって!」

気合で何とかするしかないのである。

 

 

射命丸「うおっと!風が強いですね!少し能力を使って抑えますよ!」

 

AZ「ああ。頼む」

 

射命丸「それにしても、AZさん。大きい割に体重が軽くて助かりました!」

 

AZ(・・・これでも80キロちょいはあるんだが・・・)

 

射命丸「・・・ん?なんか人里のところだけ異様に曇ってて暗くないですか?」

 

AZ「ん?ああ、確かにそうだが・・・」

 

射命丸「・・・すいません。AZさん。徹夜明けで眠いでしょうがもう少し頑張ってくれませ    んか?阿求さんと小鈴さんのことが心配になって来ました」

 

AZ「私は構わないから、もっとスピードを上げてもいいんだぞ?」

 

射命丸「それならお言葉に甘えて‼」

 

ビュッ

 

一気に視界が狭まり、景色が早送りのように流れる。

 

AZ(・・・阿求。小鈴。無事でいてくれ・・・)

 

その願いを胸に、私は腰のモンスターボールに手をかけ、人里の空を睨んでいた。

 

To be continued・・・

 

 




ちょっとしたアンケートです。(期限は38ページ目投稿まで)

最終決定は私ですが、どうぞ意見をお聞かせください。


Q:出してほしいポケモン。またはポケモンの人物などはいますか?
  よかったら感想で名前を書いたりしてください。
  (いなかったら書かなくてもOKです)


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38ページ目 古代塚の鉄壁は里を守りたい その②

感想アンケートより、決めました。

一世代の作品から一人から二人出すことにします。
ウルトラビーストは・・・まだ要検討になります。

アンケートに参加してくれた方(つっても一人しかいなかったけど)
ありがとうございました。





「イッシュ地方レポート 災害編」 作:イッシュポケモン生態大学院

 

昔からここ、イッシュ地方では暴風雨と雷がまれに発生し、農村や町に被害を

もたらすということが知られてきましたが

それらの原因はポケモン。「トルネロス」と「ボルトロス」と言われます。

 

また、このポケモン達がもたらす被害は約50年以上前からあるとされ、出現する度に

人々は捕獲、討伐を試みましたが全て失敗してきました。

 

「有効手段は?」

現時点では四天王。またはチャンピオンクラスでなければ近づくの困難とされる

凶暴なポケモンとされます。

 

しかし、絶対に止めることはできないわけではないとされます。

「ポケモンに勝るのはポケモン」と昔から言われているように、トルネロス達に

対抗すべくポケモン。「ランドロス」という存在がいます。

 

「ランドロスとは?」

豊穣を司るとされるポケモン。と呼ばれ、災害を撥ね返す力があるとされますが、

仮にランドロスの怒りに触れれば、土砂崩れや地割れを起こすともいわれる

神様のような存在とされます。

 

「ランドロスに助けてもらうには?」

ランドロスは基本的に姿を現すことはなく、トルネロス達が悪さを起こして

初めて姿を現すとされています。

 

こればかりはどうしようもなく、ただ早く問題を解決してもらうよう

祈るしかないとされます。

 

「最後に」

ポケモン達とは、いわば「不可解な存在」とされます。

その生態には謎が多く、我々研究員の好奇心を掻き立てる内容ばかりです。

いつかその全て。その生態。能力。その果ては何にたどり着くのか?

 

私はそれを紐解いていきたいと思います。

 

イッシュポケモン生態大学院。能力チーム チーム長。 アクロマ

 

 

うるさい。うるさいぞ。

 

コ~ン・・・コ~ン・・・

 

俺はあの塔にある鐘の音が嫌いだ。

「タワーオブヘブン」・・・。

 

人間たちがそう言っているのを聞いたことがある。

「魂を鎮める力」があるらしいが・・・それは本当だ。

 

聞いていると心が安らぎ、落ち着いてくる。

 

それが気に食わん‼

 

俺の存在意義は「風を吹かせ」、「大雨を降らせる」ことにある。

落ち着いてしまったらそれが出来なくなってしまう!そんなのごめんだ‼

 

俺はあの塔の鐘も、そんなふざけた塔を建てた人間も気に入らない。

お前らは俺のイタズラを受けて迷惑がればいい。

 

しかし・・・

 

あの塔。

何度も何度も暴風を浴びせたところで倒れない。揺れない。微動だにしない。

 

力不足なのか?

 

 

そう考えていると急に塔の上に雷が落ちた。

恐らく、「あいつ」だろう。

 

俺はあいつのことも嫌いだ。いや、あの塔よりも嫌いだ。

 

俺の特徴をマネしやがってこのパクリ野郎が‼

 

 

だが、戦うことはしない。

戦ったら、「あいつ」が出やすくなってしまう。

 

「あいつ」のことは嫌いを通り越してもう「怖い」という恐怖にまで達している。

 

 

「あいつ」に会うのはごめんだからな・・・・・・。

 

 

 

今。なぜあの鐘のことを思い出していたのだろう。

 

せっかくこのボロイ家の集合体・・・確か村だったか?

これを吹き飛ばしてうやろうと思っていたのに・・・・・・。

 

不思議だな。不可解だな。

 

まぁいい。

とにかくここらを吹き飛ばしてしまえば・・・。

 

 

「ジジゼジジゾゾジゼゾォー‼」

シュゴォ‼

 

慧音「なっ!?なにを!?」

妹紅「おお!すげぇ!」

 

今現在。この体をバラバラにするかの如く吹き付けてくる暴風から

身を守ってくれているこの子・・・名前は・・・分からないが。

 

兎に角、この状況下で私達を暴風から身を守ってくれているこの子が

恐らくこの大雨の原因であろう者に向けてレーザーを放った。

 

:ラスターカノン:

 

鋼色に煌くエネルギー光線は真っ直ぐ。ストレートに空中の者を捉えた。

 

「!」

 

 

なんだこれは!?

『技』だと!?まさかこの世界に俺以外の存在がいるとは・・・

 

「ドルルルゥ!」グワァン‼

 

受けた。あえて、攻撃を受けてやった。ガードはしたが・・・。

かなり強力。防御が成功してこのダメージとなると、なかなか強い。

まぁ俺ほどではないがな。

 

しかし。困った。

さっき受けた技の『感じ』には覚えがある。

 

そう。「試練の室」。確か「コバルオン」と呼ばれているあいつ。

 

俺のことをおちょくった化け狐野郎を森ごと吹っ飛ばしてやろうとしたときに

邪魔をしたアイツだ。アイツと同じ『感じ』を、さっきの技からは感じ取った。

 

見ればアイツとは全く似せても似つかないが、手応え的にあの手の

奴らは俺より強い気がする。

俺ほどではないと言ったのは技の扱い的な意味だったが・・・

 

あの威力の攻撃だって何度も受ければいつか力尽きる。

 

 

ここは引くべきか・・・・・・・・・・!?

 

 

なんだ・・・これは・・・!?

 

俺の・・・「風」が・・・「雨」が・・・

 

 

止まった!?

 

人里~慧音たち地点より西。龍神像上空。

 

文「うっひゃあ・・・なんでこんなっとと・・・なんでこんな風が・・・」

 

AZ「分からんが・・・。ヌゥ・・・こちらとしては風で体が揺れる。

  もしかしたら落ちることもあるかもな・・・・・」

 

文「なら止めましょう」

 

AZ「!・・・止めれるのか?」

 

そう聞くと半ば呆れ、半ば誇らしく射命丸は、

文「AZさん?私は『天狗』ですよ?確かにこの風は手強く、それこそ風神様のような

  暴風ですが・・・・・この『風神少女』。風邪の扱いには手慣れてますよッ‼」

 

そう言うと懐から取り出したダーテングの腕のような団扇と一枚のカードを取り出し

こう呟いた。

 

文「塞符『天孫降臨』!」

AZ「!」

 

射命丸がカードを掲げ、その後に団扇を構え・・・思いっきり振り上げる。

 

ビュォォォォォォ

 

私の長髪がバタバタ揺れ、空に伸びるような形になる。

射命丸はギリギリ私を落とさないように抱えつつ、かなり無理な体制で

団扇を扱っていた。

 

AZ「射命丸。この体制は辛くないか?」

 

文「大丈夫です。問題ありませんよ。天狗以前に妖怪なんでこれくらい無問題です」

 

そう私に言ったっきり、射命丸は黙ってしまった。

 

団扇を振り上げては降ろし、振り上げては降ろしを繰り返している。

 

そしてついに・・・

 

文「・・・よし!」

次の瞬間。体が急に重くなる。

上から何かが降りてくるような・・・何かが降臨するかの如くの大風が

天から降りてきて・・・

 

バッ

 

射命丸が団扇を上に振り上げたことで上から来た風は収まり、周りを囲んでいた

暴風もいつの間にか消え去っていた。

 

文「・・・やっと終わりました・・・」ハァハァ

かなり息を切らした射命丸が、この異変・・・暴風雨の終了を告げた。

 

AZ「射命丸。大丈夫か?

  一度地上に降りて息を整えたほうが・・・!?」

 

ガクリ

 

本当にその擬音通りに体が傾く。

否。私の身体が傾いたのではなかった。

 

射命丸が体勢を崩したのだった。

 

AZ「!?」

 

文「すみません・・・AZ・・・さん。

  すぐに・・・地上に・・・・・・」

 

 

そこまで喋ったところで。射命丸は意識を失った。

それと同時に、何者かに引っ張られるかのような力。

『重力』が私と射命丸に牙をむいた。

 

 

要ははるか上空から落下してしまったのだ。

 

 

「・・・・・」

 

そいつは、私達に気付いていた。

 

遥か上から腕を組み。威厳たっぷりにーしかし明らかに驚愕の色を含んだ表情で

私達のことを睨んでいた。

 

風は止んだ。

雨も止まった。

 

空は遥か彼方まで澄み渡るようないい天気に変わり、さっきまでゲリラ豪雨がこの

人里を襲っていたとは考えられないような爽やかな風が吹いていた。

 

慧音「・・・・・」

妹紅「・・・・・」

「・・・・・」

 

私達もそいつのことを睨み返す。

そいつは微動だにしない。

 

すると・・・・・

 

組んでいた腕を振り上げ、風を纏う。

その風をさらに腕を回しかき混ぜ、つむじ風にする。

さらに腕を回し、竜巻にする。

そしてその風を掌に集め、その手をもう一方の掌を合わせ・・・放つ。

 

;エアカッター;

 

ビュッ

 

その掌から放たれた多重の風の刃は超高速で私達に向けて飛んできた。

 

慧音「!?」

 

狙いは、私だ。

 

しかし当たる事はなかった。

 

放たれたいくつかの刃は急に目の前に飛び出したこの子が体で受け、

それでもこちらに向かって来た刃は妹紅がそのまま受けてくれた。

 

カキン、ズバッ

 

ナイフが鉄に弾かれるような音と共に、布の束を思いっきり引き裂いたかのような

音が聞こえた。

 

その音が、私を守るためにこの二人が受けてくれた音だと気づいたのは

少したってからだった。

 

慧音「!?・・・妹紅!」

 

妹紅「・・・・ぐぅ・・・い、痛い・・・が、大丈夫だよ」

 

見れば胸のあたりの服が斬れているが、その体に傷はない。

 

妹紅の、「死ぬことも老いることもない程度の能力」だ。

 

慧音「ああ・・・そうだったな。傷を受けてもすぐ治るんだったか」

妹紅「治らなきゃ、こんなことできないよ」

「じじぜじぞ」

 

慧音「ああ。またお前には助けられたな。ありがとう」

妹紅「こっちからも礼を言わせてくれ。ありがとうな」

 

「じじ、ぜじぞ」

 

ここで全部終わり・・・かと思ったが。

 

慧音「‼」

「あいつ」のことを忘れていたことに気が付いた。

 

すぐ空に視線を向けるが、そこにはいなかった。

 

どうやら逃げたらしい。

 

 

慧音「逃げたか・・・」チッ

舌打ち交じりにそう言うと、

 

妹紅「気にするのは分かるが。どこに逃げたのかは分からない。

   ひとまず、体を休めたほうがいい」

 

慧音「・・・ああ・・・分かった」

 

「・・・・・」

 

 

 

AZ「・・・・・」

 

闇の中を泳ぐような感覚。

 

薄れる意識の中。かすかに目を開ける。

 

目を開けた先に立っていたのは黒い影。

 

赤いラインと、青い瞳。白い髪のような物が確認できただけの黒い影。

 

 

しかし。それ以上目を開けることはできず。

そのまま意識は暗い闇の穴(ダークホール)に吸い込まれた。

 

To be continued・・・




うろ覚えキャラクタープロフィール:上白沢 慧音
種族:ハクタクの獣人
能力:(人間時)歴史を食べる程度の能力
   (獣時)歴史を創る程度の能力
性格:幻想郷でも有数の常識人にして博識なる人。『最も賢い獣人』とも。
   普段は少し堅いところがあるが、決して悪人ではない。むしろいい人
   しかし挨拶をしない人のことは嫌いらしい。
職業:寺子屋で先生をしている。
   科目は主にそろばん。漢字の読み・書き。歴史。妖怪の多処方等である。
   昼間は人間の子供相手に。夜は妖怪にも。
ハクタク:漢字では「白沢」と読む、国を治める有徳なるものを正しい道へと導く
     妖怪とされる。
     彼女は「満月」を見ると獣人化する。
     また生まれつきではなく、後天性。つまり呪いによるものとのこと。
満月の日:ハクタクに変身することで姿はある程度変わるが、それほど性格に差異はない。
     しかし、その変身による身体能力のUPを利用して溜まった仕事を片付けるので
     気が立っている。(邪魔をしたら↓に角が付いたやつを喰らわされるので注意)
頭突き:主に生徒の「チルノ」によく使う技。
    圧倒的破壊力と威力を誇る。(いりょく70.命中100.30%でひるみ)


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39ページ目 目覚め

祝!(気が付いたら)40話目‼


かつ・・・コツ・・・カツ・・・こつ。

 

暗い。暗い闇の中。

 

それこそ何も見えない黒の中。

 

目の前に広がる圧倒的な闇は静かで冷たく、一切の動きを見せない。

私は、その中を歩いていた。

 

AZ「・・・」

私はどうしてしまったのだろう。

 

最後に覚えているのは。

 

 

気絶した射命丸。

空。

暴風。

雨。

落下。

近づく地面。

 

黒い影。

赤い帯。

青い瞳。

 

 

AZ「むぅ・・・」

よく分からない。分からない余りに言葉が漏れる。

 

確かに私と射命丸は空高くより落下した。それは分かる。

問題は今だ。何故私はこんなところを歩いているのだろうか?

 

今一度辺りを見回してみる。

 

闇。闇。闇。

妙なことに見えるのは自分の身体だけ。それもハッキリと。

 

つまりここは普通の世界ではないらしい。

 

しかし・・・私は何故ここに来た?

まさか私は落下した時点で死に絶え、ここは死後の世界ということなのだろうか?

 

そこまで考え、私はもう一度辺りを見回すことにした。

 

AZ「・・・!?」

 

この闇の世界で初めて。自分以外の色のついた者を見た。

 

AZ「阿求・・・・・どうしてここに?」

 

そう。そこにいたのは今現在。

私に宿として自分の家を貸し出してくれている「稗田阿求」であった。

しかし、様子がおかしい。

 

 

問いに答えず。うつむいて、闇に染まった地面をジッと見つめ動かない。

 

AZ「どうしたんだ?・・・何かあったのか?」

私は心配に思い、阿求の方へと足を進め近づいた。

 

阿求は動かず。こちらに気付いているのかどうかも分からない。

また足を進め、詰め寄る。

 

まだ動く気配はない。

 

 

そしてついに腕を伸ばせば頭が撫でられるほどの距離まで近づき、私はいつも以上に

穏やかな口調で問いかけた。

 

AZ「阿求。どうしたんだ?何故うつむいたままなんだ?」

 

阿求?「・・・・・」

阿求は黙ったままうつむいたままだった顔をゆっくりと動かし、私の顔を見た。

 

AZ「!?」

驚愕した。

 

顔を上げて見せた阿求の表情は、今までに見せた表情とはどれとも似通わないものであったからだ。

 

 

阿求は、残酷に嗤っていた。

 

これまでどの人間にも見たことがないほどに。

冷たく。醜く。悪質に。

 

嗤っていた。

 

 

私は動けなかった。

そのあまりにも道から外れた者しか出せぬ表情を前に固まっていた。

 

そのまましばらくの時間が立ち。

 

阿求の口が動く。声は聞こえない。

 

「私のことを」

確かにそう発音した。

「言いたいのなら」

そう発音したように見えた。

「言葉にするのなら」

・・・

 

 

「     」

 

 

 

バシャア!

 

AZ「‼」

 

いきなり水がはじける音と濡れた感覚が体を覆った。

 

風が吹き、体が冷やされる。

それと同時に目が覚め、困惑と倦怠感が頭と体を包んだ。

 

目覚めた視界の中に入ってきたのは、木でできた水の潤い溢れる部屋であった。

 

文「あっ。目が覚めたみたいですね!」

 

目を開ければ、目の前には射命丸が立っていた。

その横には・・・

 

 

阿求?

 

 

AZ「・・・阿求・・・」

 

阿求「え?あ、ハイ。なんですか?」

普通だ。

 

先程のように邪悪な表情を浮かべているでもなく、声が聞こえないこともない。

 

 

普通だ。いつも通りの少女。「稗田阿求」がそこにはいた。

 

AZ「いや・・・なんでもない。それより・・・」

文「申し訳ございません」

 

何だ?

いきなり謝罪をされた。

 

AZ「・・・何故謝る?」

疑問に思い、問いてみる。

 

すると射命丸はひどく申し訳なさそうに続けた。

 

文「・・・AZさんは。時間にして約12時間眠ったままだったんです。

  その原因が、きっと私が落下した際のショックだろうと思いまして、しばらく側にいた  んですが。なかなか目が覚めなくて・・・・・」

 

AZ「12時間!?・・・眠ったままだったというのか? 」

 

文「はい・・・。もうこのままどうしようもなくて・・・とりあえずAZさんをこのまま

  地面に横たわせるわけにはいかないと思いまして・・・・・・」

 

このままだと長くなりそうだ。

兎に角今は。気になることを一つ一つ聞いていくことにしよう。

 

AZ「ここは?」

 

文「あっ。ここはですね、阿求さんのお宅の、浴場です」

 

AZ「浴場・・・。ここは稗田家なんだな?」

 

文「はい。このままAZさんを横にするわけにもいかず、AZさんを担いで飛ぼうとしたので  すが、残念ながら体力不足で・・・」

 

AZ「・・・仕方がないことだ。射命丸はあの風を止めるのに一役買ってくれたからな。

  ・・・それで。稗田家に到着し、私に水をかけた、と・・・」

 

 

阿求「・・・AZさんに水をかけようと言い出したのは私なんです」

 

何だと。

 

阿求「家に来た射命丸さんが抱えていたAZさんを寝室に寝かしていたのですけど 

   全く起きる気配がなかったもので・・・・」

 

AZ「ふむ・・・」

 

阿求「それで射命丸さんがとても心配してしまい、こちらまで心配して来てしまって」

 

AZ「・・・・・」

 

阿求「それで・・・起こすために・・・その・・・」

 

つまりはこういうことらしい。

 

『あまりにも起きないものだから何とか起こすために水をかけてみよう』と。

 

AZ「・・・成程。阿求も射命丸も正しい判断と行動をしたと思う。何より・・・」

助かった。

 

私はそう二人に言った。

 

阿求「助かった・・・?」

文「えと・・・どうしてです?」

 

AZ「・・・少し・・・気味の悪い夢を見てしまってな。

  その中で、ある人物に出会ったのだが、何かを言われたのだ。

  もしその言葉をそのまままともに聞いていたなら・・・危なかったかもしれない。

  それ程のことを思わせるくらいに、気味の悪い夢だった・・・」

 

文「ははあ・・・そりゃお気の毒に。つまり・・・」

 

AZ「あそこで水をかけてくれなければ。何か悪いことが起きたかもしれなかった。

  感謝する。ありがとう。阿求、射命丸」

 

素直に礼を述べ、私はビショビショになった服ごと立ち上がった。

 

阿求「あ。替えの着替え持ってきます」

射命丸「あっそうだ。阿求さん。台所使いますよ」

阿求「どうぞー」

 

AZ「・・・・・」

普通だ。

 

余りにも普通すぎて恐れすら抱く。

 

 

・・・それにしても。

 

阿求は先程の豪雨や風には何の疑問も持たなかったのだろうか?

いや。あの量の雨と風だ。気にしない方がありえない。

 

 

阿求「AZさん。着替え、持ってきましたよ」

 

AZ「・・・なあ。阿求・・・」

 

阿求「なんですか?」

 

AZ「・・・今から12時間くらい前の暴風雨だったが・・・」

 

阿求「暴風雨?それほど雨降ってましたか?風は強かったですが」

 

文「ここはあの風の中心地から遠いところにあるので被害が少なかったんですよ」

 

 

AZ「そうか・・・・・」

良かった。

 

私は心の中で胸をなでおろし、気づかれないようにため息を吐いた。

 

 

AZ「・・・・・」

 

それにしても・・・・・・・・・・

 

 

 

「     」

 

夢の中で、阿求は何と言ったのだろうか?

 

 

カー、クァー・・・

 

暴風後の白昼夢から約12時間後の西の空。

 

鴉とヤミカラスらしき鳥ポケモンが鳴き声を発しながら、夕闇の中を飛んでゆく・・・。

 

 

~地底~地霊殿~

 

 

お燐「あ、ヒ―ドラン。その荷車はこっちに置いて」

 

「ごぼぉ」 がたん

 

お燐「よしよし。賢いね。(足が遅くて少し鈍いけど・・・)。

   十分私やお空の仕事を手伝えるようになってきた」

 

さとり「ああ。お燐」

お燐「あっ。さとり様!もう安静にしてなくて大丈夫なんですか?」

 

さとり「規格外の大火傷だったけど・・・そうね。まだ十分・・・ってわけじゃないけど

    普通に生活できるわ」

「ごぼぉ・・・」

 

さとり「あなたは気にしなくていいのよ。私達が原因なわけだし。

    あなたは、あなたの好きなことをしていればいいのよ」

 

「ごぼぉ!」

 

お燐「あ!そうだ!さとり様。私、今からお使いに行ってきます!」

 

さとり「あら、そう?ならヒ―ドランも連れていくといいわ。

    この子にも、旧都のことをよく教えてあげて」

 

お燐「了解しました!」

 

 

ー旧都ー

 

「地獄」として、日々活発に稼働し続ける施設街・・・だった場所である。

 

今現在、地獄はまた別の場所へと移されており、ここは「旧地獄」と呼ばれる場所。

そこに残された施設や鬼の宿に、地上から逃げてきた妖怪が住み着き、今のように

妖怪だらけの街。

 

外の世界でいう、かつての「江戸」を連想して、誰が言うまでもなくいつの間にか

「旧都」。と呼ばれるようになっていた。

 

また、妖怪の山同様。他より屈強なポケモンが集まりやすく、何度か被害を出しては、

住民らによって倒されては労働力として。または戦闘の練習相手。

または友人として。または従者として扱う者も増えてきた。

 

無論。モンスターボールを使うものは少なく、ほとんどが腕力。能力でねじ伏せた

者が多い。それでも、いつもと変わらないバランスを保っているのだから流石である。

 

さてここに。腕力で岩蛇ポケモン。「イワーク」と鉄鎧ポケモン。「コドラ」の群れを

一掃し、酒を飲みくつろぐ『一本角』の女性が一人。

 

「星熊 勇儀」

 

幻想郷「最強」の腕力の持ち主である。

 

 

しかし、どんなに頑丈な防御力を誇る相手ですら粉砕する怪力乱神の持ち主である彼女

ですら破壊しきれない怪物。「ポケモン」がいる。

 

 

「ざ ざ ざ り ざ 」

 

勇儀「・・・またあんたか。いい加減にしてくれないかい?

   こっちは確かにヒマしてるが、それだけしつこいと流石に頭にくるよ」

 

「ざざ・・・ッ‼」

 

突如として岩肌露出する旧都に現れたその岩石。いや、「岩石のようなポケモン」は

岩でできた腕で地面を叩く。

 

勇儀「よっ・・・と」 ドカァン‼‼

 

怪物が地面を叩いた瞬間。勇儀の居た場所から尖った岩が突き出る。

 

;ストーンエッジ;

 

しかし、勇儀はすでに跳んでそれを避け、拳と蹴り。さらには頭突きの応酬をを一気に

食らわせる。

 

それはまるで、「インファイト」のごとき猛攻だった。が・・・

 

「ざざ ざざ ざざ りり ざざ」 

吹っ飛んだその怪物は何事もなかったかのように起き上がる。

 

勇儀「・・・いい加減しつこいと。嫌われるぞ?

   いいか?ここで嫌われるってことは、それはここでの生活の「終わり」を

   意味するんだ・・・まぁ・・・」

 

そう言いながら勇儀は拳をポキポキ鳴らし、怪物は身構える。

 

勇儀「私はすでにお前のことが「気に入らない」がなッ‼」

 

「ざざざりざッ!」

 

To be continued・・・

 

 




前半の話のポケモン要素がゼロ・・・

40話目なのに・・・


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40ページ目 地底の岩 その①

下の点字を打つのに約20分。
それなりに疲れました。


携帯獣図解伝記:「おふれの石室」点字

 

  。  。  。  。

   。 。。  。 。。   (わたしたちわ)

。 。   。 。  。  。

 

 。  。 。 。  。。

。  。      。。。   (このあなで)

 。 。    。  。

 

。。 。  。  。。 。 。  。。 。

    。 。。 。。 。     。 。。  (くらし せいかつし)

 。     。  。    。 。   。

 

 。 。  。。 。 。  。。 。  。

。。 。。 。。 。 。  。。 。   。  (そして いきてきた)

 。  。 。     。 。   。 。

 

。。  。。 。。 。

。。 。。  。。     (すべては)

 。  。。 。  。。

 

   。 。。  。     。

  。  。  。。  。 。   (ぽけもんの)

 。。。  。 。。 。。 。

 

 。 。   。。  。

。     。。  。 。  (おかげだ)

    。   。  。  

 

 。    。

。 。  。    (だが)

 。     。  

 

   。  。  。  。

    。 。。  。 。。   (わたしたちわ)

。  。   。 。  。  。

 

。   。   。  。。   。

   。   。   。   。。  。  。 (あの ぽけもんを)

   。  。。。   。  。。 。。 。

 

 。  。   。 。。 。

。。 。。。 。  。。  。  (とじこめた)

。    。  。 。。 。

  

 。   。     。   。

。       。   。 。  (こわかったのだ)

 。 。  。    。  。

 

 。    。  。  。。

   。。 。      。  (ゆーき ある)

。。     。

 

 。  。  。  

。。 。   。    (ものよ)

。。 。  。

 

。    。    。

。  。。  。。 。  (きぼーに)

 。  。。    。

 

。  。  。   。  。  。

。。 。。  。 。。 。   。  (みちた ものよ)

。。 。  。  。。 。  。

 

 。  。  。     。  。。   。

。。 。。   。  。    。    。  (とびらを あけよ)

。   。。    。      。  。

 

 。  。 。 。。 。 。。     。

。。 。  。 。  。 。   。 。   (そこに えいえんの)

 。  。 。         。。 。

 

   。 。。  。      。  。  。。

  。  。  。。  。  。   。   。  (ぽけもんが いる)

 。。。  。 。。 。。    。

 

 

 

 

 

お燐「ん~・・・今日の晩御飯はなにがいいかしらー・・・」

「ごぼ?」

 

お燐「う~ん・・・何か食べたいものある?」

「ごぼ」

 

お燐「う~ん・・・」

 

 

私の名は「火焔猫 燐」。

この地下で怨霊や間欠泉の管理をする「地霊殿の」主。「古明地 さとり」様のペットだ。

 

今日はこの子(ヒ―ドラン)に地下の街。「旧都」を見せるのと、晩御飯の材料の買い出し

に来ている途中だった。

 

店番妖怪A「よっ!お燐ちゃん!買い物かい?今日はなんだか珍しいやつを連れてるね」

お燐「はい。晩御飯の材料を買いに来たんですよ。

   この子は「ヒ―ドラン」という子です」

「ごぼぉ!」

 

店番妖怪A「へぇ~。ひーどらん。珍しい名前だけど、一体何の妖怪だ?」

お燐「あっ。この子は妖怪ではなくポケモンっていう生き物らしいです」

 

店番妖怪A「あ~!はいはい!あいつらの仲間か!

      正直言ってあいつらには困ってんだよな」

お燐「え?困っている?」

 

店番妖怪A「最近になって地上に向かう穴の付近でよぉ。

      なにやら変な洞窟を見つけた奴がいてよぉ。

      そいつ、何か変なものに襲われたらしいんだ。

      こちとら怖くて怖くて。近づくこともできねぇ」

そう店番はここよりも暗く、人気が無い方を指さした。

お燐「はぁ。変なもの・・・」

 

店番妖怪A「お燐ちゃんも気をつけなよ・・・。

      あっ、そうだ!今晩のおかず。まだ決めてなかったら家で買っていきなよ!

      野菜も米もどれも新鮮だ!」

お燐「あっ・・・あー。そうですね。

   じゃあ、これと。・・・これ。あと、これもください」

店番妖怪A「あいよ!合わせて、1240円!」

 

お燐「ヒ―ドラン。ちょっとこのバッグ持ってて」

「ごぼ」

 

お燐「えーと。・・・これでいいですか?」

 

店番妖怪A「あいよ。また来てくれよう!」

お燐「あ、はいー。行こうか、ヒ―ドラン」

「ごぼ」

 

 

普通だ。

余りにも普通に受け入れられた。

 

『あいつらには困ってんだよな』。

その一言を聞いた時には少しヒヤリとしたが、それはそれ。これはこれと割り切っているような人だったから良かった。

 

お燐「さて。ヒ―ドラン。次はあなたの行きたいところに行っていいよ」

「ごぼぉ・・・・・ゴボッ!?」

 

ドカァン‼‼‼

 

唐突に爆発音が響き、内臓が持ち上げられるかのような衝撃が体を揺らした。

お燐「おおっ・・・とっとと」

急な音と衝撃に驚いて思わず両腕を伸ばしてバランスを取ろうとする。

そこをヒ―ドラン支えてくれた。

 

お燐「ああっ。ありがとう。ヒ―ドラン・・・。  

   ところで・・・今の爆発は、一体?」

 

周りを見れば、お店の人たちはなにやら騒いでいて。

通行人たちはなにかに手を付けてきょろきょろと辺りを見回している。

 

今でもその衝撃の余波が辺りを揺らしているようだった。

 

「ごぼぉ・・・」

お燐「ヒ―ドラン?」

 

ヒ―ドランが怯えている。

いや・・・「警戒して」いる。

 

その煌めくオレンジ色の視線は、さっき店番の妖怪が指さしたところを睨んでいる。

 

お燐「一体何が・・・って、ちょっと!ヒ―ドラン!?」

私がそちらへと気を取られているうちに、ヒ―ドランは急に駆け出した。

 

いつもの鈍足で鈍い動きではなく、私達と戦った時の素早さだった。

 

 

お燐「ちょ、ちょっとー!待ちなさーい‼」

私も少し遅れて走る。

 

走っている間。私は得体の知れない不安を抱え、ヒ―ドランを追いかけた。

 

 

追いかけている最中。ヒ―ドラン以外のポケモンに会った。

 

蝙蝠のようなポケモンの群れだった。そのポケモン達はどれも一様に恐怖していて、

まるで何かから逃げるかのように私の走る方とは逆へと飛んでいった。

 

他に。私よりも一回りも二回りも大きい蛇のような。岩のようなポケモンがこちらに

迫ってきた。

 

しかし、私には見向きもしないで避けていく。そして、後方へと進んでいき

また見えなくなる。

 

それを、何回か繰り返して、私はやっとヒ―ドランにたどり着いた。

 

お燐「ハァ・・・ハァ・・・ぜぇ・・・ヒ―・・・ドラン?」

 

「・・・・・」

 

ヒ―ドランは、こちらをチラリと見ただけですぐに視線を前に戻した。

 

私も、そちらへ視線を向ける。

お燐「!?」

 

 

そこにあったのは。すり鉢状の大きな穴だった。

その穴の中心に、誰かが倒れ込んでいる。

 

お燐「姐さん!」

 

そこにいたのは、この地下に住む唯一の鬼である人物。

「星熊 勇儀」であった。しかし、様子がおかしい。

 

胸は上下に動き、呼吸をしているのが分かるが、目を閉じてえ死人のように動かない。

服はほぼボロボロになり、所々が焼け焦げている。

 

一体・・・。

 

勇儀「・・・・お燐・・・か?」

お燐「!? 姐さん!しっかり!」

 

目を覚ました。だが、そこから漏れ出る声はもはや風前の灯の如きか細さで、今にも消え入りそうだった。

 

しかし、なぜこんなことに?

 

勇儀「油断・・・した。まさか『あいつ』・・・爆発するとは・・・」

姐さんはそう言いながら、体を起こした。

 

声や見た目とは裏腹に、それなりに元気らしい。

 

お燐「『アイツ』?一体どんな?」

勇儀「あー。ちょっと待ってくれ。駄目だ。瀕死だ。

   すまないが歩けそうにない。情けないが、すぐ酒屋へ」

 

お燐「あ、ハイ。・・・・え?酒屋?」

勇儀「こんな傷やダメージ。酒飲めば治る。

   とにかく、何があったかはそこで飲みながら話そう」

 

お燐「え。いや。その前に。傷を治療・・・」

勇儀「私の誘いを断るってか?」ニコッ

 

そう言って。姐さんは爽やかに笑った。しかし、その笑い怖いものもなく。

お燐「・・・・ハイ。イキマス・・・」

勇儀「よしよし。そうだ。それでいい。

   ところで、そこにいる奴は?」

 

お燐「あー。この子のことも、後で話しましょう」

 

勇儀「そうだな。あ、それと。もう歩ける」

お燐「えぇ!?」

勇儀「かなり体が楽になってきた」

お燐「えっ、それならもう飲まなくてもいいんj(勇儀「気分の転換だ、転換」

 

姐さんは、私の言葉を聞き入れることもなく。ズンズンと進んでいく。

 

私はその様子を。ただただ苦笑いを浮かべて見ることしかできなかった。

 

お燐「・・・?ヒ―ドラン?」

 

さっきまで、まるで石像のようにジッと動かなかったヒ―ドランが、なおも動こうとしないので声をかけた。

 

「ごぼ・・・」

 

名前を呼べば、ちゃんと鳴き声で返した。

しかし、ヒ―ドランはまだ名残惜しそうにすり鉢状の穴を見つめていた。

 

お燐「・・・さ、速く行こう」

「ごぼ」

 

再度言葉を発したら今度はすぐにこちらに来てくれた。

 

ヒードランと一緒に姐さんの後を追いかけている間、私はこう考えていた。

 

お燐(なんでヒ―ドランは急に駆け出したんだろう・・・?

   ヒ―ドランは、姐さんが危ないことに気が付いたのかな?)

 

私の頭の中は、その疑問でいっぱいになり、その「変化」に気付いていなかった。

そして、鬼である姐さんんも気づいていなかった。

 

その場で、その時、その変化に気が付いていたのはただ一匹。

ヒ―ドランだけだったということに、私は後々になって分かったのだった。

 

 

すり鉢状の穴。その中心から砂が舞い上がる。

風も吹いていないのに。その砂は空中で集結。結合し、一つの砂岩を作り上げる。

 

その砂岩には、Hの方に組まれた七つの点が撃ち込まれていた。

 

「ざざ ざり ざ・・・」

 

その岩から、砂を混ぜ合わせるような音が聞こえたような気がした。

 

To be continued・・・

 

 

 




うろ覚えキャラクタープロフィール。「星熊 勇儀」
種族:鬼
能力:怪力乱神を操る程度の能力
性格:無類の酒好きで、姉御肌。この地底でさとりに次ぐリーダー格。
   面倒見がよく豪快で、正直なことが好きで、嘘は嫌いという
   鬼をそのまま体現したかのような人物。
   ただし、急に襲い掛かるかかるような奴は卑怯で嫌いらしい。
腕力と弾幕:弾幕はなかなか強力。流石鬼である。
      しかし、弾幕よりも強力な武器。腕力が彼女には備わっている。
      その腕力。剛力。怪力は幻想郷では並ぶものなしとさえ言われている。
      真正面から殴りあって勝てる奴はほぼいないだろう。
角:長くて鋭い一本角。赤色で、黄色の星マークが一つついている。
  ちなみに本人は何度でも生える。と言うが、折れているところを誰も見たことがない。


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41ページ目 地底の岩 その②

実家に帰省していたので遅れてしまいました。
ごめんなさい。


強い。

堅い。

鋭い。

速い。

賢い。

 

ここの者達は皆そうなのか。

それとも、この者だけがこうなのか。

 

この生物。人間のようで、人間ではない。我々のようで、我々ではない。何か。

 

恐ろしい。

この生物の攻撃力・戦闘意欲は私の力を圧倒的に凌駕する。

 

勇儀「行くぞぉッ!コラァ!」

この生物はなにやら叫ぶ。そして紙を取り出し、また叫ぶ。

 

勇儀「力業『大江山颪』!」

 

この生物・・・。腕力だけが取り柄かと思っていたからこの技には驚いた。

 

壁。山だ。

山のような大きいエネルギー団が大軍を造り迫ってくる。

 

 

勇儀「ホラホラ!避けないと負けるぞ!

   私がここでの振る舞い方と、鬼への接し方を教育(教え)てやるよ‼」

 

「ざざッ」

 

()グワァン‼‼

 

 

被弾した。

 

やはりかなり効く。

まるで拳が形を作って飛んでくるかのような。

 

このままではまずい。

 

しかし。勝つことはできる。

 

 

・・・私も。一度『瀕死』にならざるを得ないが。

勝利することはできる。

 

 

しかし。この弾幕の中。身動きなんて自由にできない。

だが結局。いつかは瀕死になる。

 

 

ならば突っ込んでいこう。

 

 

 

勇儀「!?」

 

急な動き。この弾幕の中。岩山が突っ込んでくるのを勇儀は驚愕の表情で見つめていた。

 

勇儀「突っ込んでくるなんて・・・。

   ・・・ったく。私が律儀に弾幕ごっこをしてるのがバカみたいじゃないか・・・。

  

   そっちがその気なら。こっちも!」

 

そう独り言をこぼした瞬間。勇儀の姿が見えなくなる。

否。見えないほどのスピードで岩山に突っ込んでいったのだった。

右手は拳の形に。左手は開き、掌底の形に。

 

完全な臨戦態勢。いつでも攻撃ができ、防げる構え。

スピードもこちらが上。

 

向こうも奇妙な術を使っては来るが。これが初戦ではない。

何度か向こうから攻めてきていたので。動きは幾分か読みやすい。

 

 

しかし。最後に残していた岩山の「攻撃」だけは避けることも読むこともできなかった。

 

 

あと三歩で間合。

そのところで岩山は跳躍。

 

勇儀の角より上へ、上へと飛び。落ちてくる。

 

:アームハンマー:

 

通常なら地上で使うはずの技だが、空中からの叩きつけ攻撃に利用する。

その今までに見せなかった特殊な攻撃方法には、勇儀も不意を突かれた。

 

その不意が。勇儀を敗北へと導いた。

 

 

ドカン!

 

上から叩きつける剛腕の槌を、こちらもとっさに腕で防ぎ受けるが。

 

勇儀「うぅ・・・‼」

 

ミシミシ。メキメキと嫌な音が腕から聞こえてくる。

この時初めて勇儀は。この生物・・・岩山に「恐怖」を覚えた。

 

 

勇儀(こいつッ!まだこんな攻撃を残していたのかッ!)

腕を思いっきり開いてこいつを吹き飛ばしてやろうか。そう思ったが・・・・・。

 

 

カチリ・・・。

 

勇儀「?・・・」

 

変な音がどこからか鳴った。

 

コチリ・・・。

 

まるで時計の針が動く音のような。

 

カチッ・・・。

 

そして気付いた。その音の正体に。

その音の正体は・・・。

 

ピーッ。

 

 

 

この岩山が、「大爆発」を起こすための起動音だったと。

 

 

 

~旧都~とある酒屋~

 

勇儀「・・・・・・」

お燐「・・・・・・」

 

珍しかった。

酒の席でならよく喋るはずの姐さんが黙ったまま。

 

向かう時は、全く問題ないようにしていたのに。

 

お燐(一体・・・何が?)

 

勇儀「・・・なぁ。お燐?」

そう考えていると急に声をかけられた。

 

お燐「ん?あぁ。はい。なんですか?」

 

勇儀「・・・ただの不安なら良いんだが・・・。

   地上にもさ。そういう・・・あー・・・」

お燐「ヒ―ドランのことですか?」

 

勇儀「そう、それ。

   で、地上にもな。そうゆう奴や、さっき私が戦っていた奴みたいのが

   いたりすんのかな」

 

お燐「はぁ・・・。まぁ。いるらしいですね。現にこうしてここにいるわけですし」

「ごぼ」

 

勇儀「・・・鬼の私があそこまで追い込まれるなんて。

   正直言って、地上のやつらが心配でなんないよ」

 

お燐「はぁ・・・・・」

 

勇儀「・・・・・」

お燐「・・・・・」

 

また沈黙が訪れる。

その沈黙のなかには、いろいろな感情が渦巻いているのを私は確かに感じた。

 

お燐(こんな時、さとり様なら姐さんの心も読めたりするんだろうけどなぁ・・・)

どうしよう。

 

そう考えていたら・・・。

 

勇儀「・・・あ~。なんだ。こんなことにつき合わせちまって悪いね。

   でも、こうしていたら幾分か心が軽くなった気がするよ」

 

お燐「あっ。あー。はい。そうですか。それならよかったです」

 

勇儀「お詫びとしてはなんだが。もう一軒行くか?」

 

お燐「あっ。いえ、私まだお使いの途中なので。遠慮しておきます」

 

勇儀「あぁ。そうかい。そういえばそうだったね。

   まぁ。気をつけることだよ。鬼の私でも、なかなか手こずるくらいだからね。

   見た目は・・・まぁ岩みたいなやつだ。すぐに分かる」

 

お燐「分かりました」

「ごぼぉ」

 

勇儀「そんじゃ。また暇なときあったら一杯付き合ってくれよ!」

 

お燐「分かりましたよー!」

 

 

そう大きく返事をして、私はヒ―ドランと共に酒屋を後にした。

 

 

「ざざりざっ・・・」

 

お燐「?」

 

何か、砂をすりつぶすような音が聞こえたが、周りを見ても少し大きい岩が一つあるだけで

音源になるものは無く、気のせいということにして地霊殿へと戻っていった。

 

 

その時。その瞬間。だれもそのことには気づくことはなかった。

 

お燐が見つけたその岩が、音を立てて地霊殿へと向かったことを・・・。

 

~地霊殿~

 

時は、夕方。

 

しかし、ここは地底なので西の野へと沈みゆく美しい太陽を見ることはできず。

時間を確認するには、時計しか頼りがない。

故に、その時計すら故障してしまうと時間の感覚が狂ってしまう。

 

その事態が、お燐の帰ってきた地霊殿では起きていた。

 

お燐「ただいま帰りましたー」

 

お空「うにゅ。おかえりー。ちょっとお燐もヒ―ドランも手を貸してくんない?」

 

お燐「?・・・どうしたの?」

「ごぼぉ?」

 

帰ってきていきなり。お空に手を貸せと言われた。

周りではフェアリーゾンビ達がせかせかと時計を運んだり、時計を分解したり

時計をハンマーで叩いたりしている。

 

どうやら何かあったらしい。

 

お空「いやね。この地霊殿にある時計が一斉に狂っちゃったらしいんだって」

 

お燐「狂った?一斉に?」

 

お空「そうそう。まったく困るよねー。急にグルグル動いたかと思ったら、

   今度は反対向きに動いたり。普通なら針も何も止まるはずなのに。

   絶えず動き続けているんだよね」

 

お燐「へぇ・・・そりゃ大変だ。時計屋さんは今やってるかな・・・?」

 

お空「そうそう。時計屋さんにも行ってきたんだけど。

   時計屋さんの時計も全部狂ってた」

 

お燐「うっひゃあ・・・。それ本当?てことはこの地底全体の時計が狂ったってこと?

   酒屋では・・・そういえば時計なんて見ていなかった」

 

お空「お燐が帰ってくる少し前に時計屋さんに行って来たけど、時計屋さん家の他は

   どうか分からない」

 

お燐「そっかー・・・。このことはさとり様に報告した?」

 

お空「さとり様から教えてもらったんだよ」

 

お燐「ふ~ん・・・。しかし、困ったねぇ。何が原因だ?

   地上に時を止められる人間がいるとは聞いたことがあるけど・・・」

 

お空「多分、そいつのせいじゃないかな?」

 

お燐「そうなのかなぁ・・・」

 

お空「う~ん・・・・・・・・・・!?。お燐!そこを離れて!」

 

お燐「えっ」   ドカァン‼‼

 

 

急にお空に腕を引っ張られて、上空に連れてこられる。

 

とりあえず屋敷のシャンデリアに捕まって下を見る。

見れば、さっきまで私達が立ち話をしていたところに尖った岩が突きだしている。

 

あそこに立ったままだったら・・・。そう考えると冷や汗が頬を滑った。

 

 

お空「大丈夫?お燐」

 

お燐「ああ。大丈夫だよ。なんともない。それよりも・・・」

 

気付けばフェアリーゾンビ達も臨戦態勢をとっている。

その視線は一様に地霊殿正面玄関へと向けられ、その瞳には恐怖と緊張の色があった。

 

 

バカァッ!

 

その玄関の扉が派手に吹っ飛び、扉を失った玄関口から何かが歩いてくる。

 

 

人?

 

いや、人に見えたが全く違う。

近いものを上げるなら・・・「石像」。それも低クオリティな。

 

ごつごつした岩のような・・・いや、岩の体。

頭に当たる部分には「H」の形の点が散りばめられ、目のようになっている。

 

そして、その中でも目を引いたのは。

 

身体の色。

 

それらはどれも黒ずみ、この地底の岩と同じ色をしている。

 

まるで、そこら辺の岩で体を作り上げたかのような。いびつな石像。

ゴーレムがこの地霊殿に攻め込んできた。

 

「ざ ざ ざ り ざ ・ ・ ・」

 

その点字のような眼がまるで機械のように光り、そこから砂を混ぜるような。

 

お燐「!?・・・まさか・・・!」

 

そう。酒屋帰りに聞いたあの音。

 

勇儀『鬼の私でもなかなか手こずる相手だからね。

   見た目は・・・岩みたいなやつだ。すぐに分かる』

 

勇儀の姐さんから聞いた通りの姿。

 

 

お燐「あいつが・・・」

 

それを理解した途端。体が急に冷えるのを感じた。

 

そして考えた。

 

 

「鬼に勝てるような奴に、私達が敵うだろうか?」

 

その疑問は。戦闘が始まって数分で解けることになった。

 

~紅魔館~夕方~

 

霊夢「帰るわ」

レミリア「待ちなさいよ。

     あなた一日寝てたじゃない。せっかく寝床を提供してあげていたというのに

     礼の一つも無しかしら?」

 

魔理沙「無いな。別に『寝床を提供してくれ』なんて一言も言ってないからな」

レミリア「ぐぬぬ・・・。咲夜!何としてでもこいつらを帰さないで!

     ポケモンの捕まえ方やらなんやら教えてもらわなくちゃ・・・!」

 

咲夜「分かりました」カチッ

 

・・・・・・?

 

レミリア「・・・?咲夜、なにやっているの?」

 

咲夜「あっ、えっ。あ、はい。すぐに」カチッ

 

・・・・・・?

 

魔理沙「どうしたんだ?『時を止めて』私達を捕まえるんじゃないのか?」

 

咲夜「えっ?えっ!?・・・どうして・・・」

 

霊夢「なに?なんかあった?」

 

レミリア「・・・咲夜。あなたまさか・・・」

 

 

咲夜「・・・時間が・・・止められない・・・!?」

 

 

西の野へと沈む陽光と。

東の野から登りゆく月光と。

 

時は進めど時間は止まらず。

 

狂う時計と、狂わずの時間。

 

 

時の咆哮が、何処より響く・・・。

 

To be continued・・・




この小説のロックさんの色はオリジナルになる(のかな?)

イメージで言うと、ロックさんの色違いをもっと黒くしたらこんな感じの色になります。
図鑑説明で「岩くっつけて体直す」と言っていたので地底カラーをイメージしました。

こんなところでオリジナル持って来てしまってごめんなさい。
またやるかもしれねぇです・・・。ご了承ください・・・。


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42ページ目 地底の岩 その③

祝!小説投稿から一周年!


この世には、自分よりも強く。圧倒的な力を備えたものが存在すると、さとり様から

教えられたことがある。

 

なぜ、その言葉を急に思い出したのか。

 

それは、私達の前にいる岩石の姿を目に移し、こう感じたからだった。

 

お燐(鬼に勝てるような奴に、私達が戦って勝てるの・・・?)

それは、疑問であり。焦燥であり。恐怖であり。そして不安でもあった。

 

そしてその疑問は、案外すぐに解ける物であった。

 

 

お空「!、お燐!すぐにシャンデリアから離れて!また何か来るよ!」

 

お燐「く・・・ッ」 ボコォン‼‼

 

まただった。岩石はただ、腕を振り上げて地面に叩きつけているだけ。

ただそれだけで、壁。床。天井。・・・果てはシャンデリアのような家具からも。

 

鋭い岩が飛び出してくる。

 

 

すでに、その攻撃によって逃げ遅れた何匹かのフェアリーゾンビ達は

鋭い岩石に吹き飛ばされ、戦闘不能に陥っていた。

 

 

お空(このままでは・・・まずい‼)

 

そう考えるが、ここは地霊殿一階。玄関ホール。

 

制御・コントロールが難しいお空の能力・・・。

「核融合を操る程度の能力」は、今。ここで使ってしまえばあの岩石は

跡形もなく吹き飛ばして塵に還せるだろう。

 

 

しかし、それと共にお燐やさとり様、果ては無意識状態で見つけることができない

妹様まで吹き飛ばしてしまうことになる。

 

 

そしてお空には、手加減ができる程度のスペルカードを持ち合わせていない。

 

 

この戦いにおいて、お空は既に『戦闘不能』状態にあると言っても

過言ではなかった。

 

 

ならばできることと言ったら・・・。

 

 

お空「お燐。私が陽動を起こして、あいつの注意を引き付ける。

   その間に、あいつにスペルカードとヒ―ドランの技を当ててやって」

 

お燐「!?。そんな・・・」

 

お空「私の能力・スペルカードは共に制御が利かない大技ばっかだからさ。

   使ったらきっと、この屋敷ごと吹っ飛ばしてしまう。

   だから、お燐。今、この状況に置いて。

   貴方は「希望」なの」

 

お燐「お空・・・・・。

   うん。分かった。無理はしないこと。陽動、頼むね‼」

 

 

お空「ああ!任せときなって!」

 

 

「‼」

 

 

お燐(お空が陽動に回ってから・・・・)

 

ドカァン! ズドォン! バキバキッ‼ メキイィ‼‼

 

あの岩石が放つ岩の槍。その攻撃頻度が劇的に落ちた。

 

しかし、それと同時に地上にいるヒ―ドランも攻撃対象に入ってしまい。

なかなか私と一緒に攻撃に回れないでいた。

 

私は、敢えて攻撃はせず。奴が動けなくなるまで隠れつつ移動を続けた。

そうすることによって、奴が私に気付く可能性はグッと下がる。

 

あとはお空の体力と、こいつとの体力との勝負。

 

 

戦闘開始から数分・・・。

 

あの岩石は、間違いなく疲弊していた。

 

 

攻撃の速度は打ち込むたびに、遅くなり。

 

上空からのお空の通常弾幕にかなり打ちひしがれていた。

 

 

お燐(この戦い・・・奴に、勝てるッ‼)

そう思うと、自然と緊張がほどけてきた。

 

そしてついに・・・。

 

「ざざぁ・・・」 ズズウッ・・・

 

奴の体はふらつき、膝を地についた。

そしてついには、死んだかのように動かなくなり、弾幕の雨の中をジッとしていた。

 

その様子に、私は違和感を覚えたが、これはチャンスだった。

 

 

地上のヒ―ドランへの攻撃も止まり、ヒ―ドランは素早く私の方へと

壁を渡って移動をし、私の指示を待った。

 

そして・・・。

 

お燐「行くよ!ヒ―ドラン‼」

 

「ごぼぼぼぼお‼」

 

一気に壁を蹴り、岩石の背後へと回り込む。

 

そして、ポケットからスペルカードを取り出し、名を叫ぼうとする。

ヒ―ドランも技の準備をしている。

 

 

奴は、その段階で攻撃を仕掛けていた。

 

お燐「なっ!?」

 

奴は、動けなくなったのではなく。動かなかったのだろう。

本当は、私の接近に感づいていた。

 

奴は私の上へ、上へと飛び、腕を振り上げて襲い来る。

 

:アームハンマー:

 

お燐「あっ」

 

避ける暇もなかった。

その剛腕は、重力と共に加速され、私の顔近くまで迫った。

 

終わり。終末。人生の終着点。

そのような単語が脳内を一瞬で飛び交い、何もかもが遅く感じた。

 

その遅い感覚の中で確かに見た。

 

 

 

ヒ―ドランが私をかばって、攻撃を受け止めるところを。

 

お燐「え・・・」

 

ヒ―ドランは、岩石の剛腕を防御することなく、ただ私をかばうために動いてくれた。

 

奴の表情は分からない。

しかし、その挙動に動揺があったのは確かに感じ取れた。

 

再びのチャンスだった。

 

 

最初はお空とフェアリーゾンビ達が。

二度目はヒ―ドランが。

 

私に与えてくれた千載一遇のチャンスだった。

 

そして次はない。

 

なぜなら奴の視線と思われる気配が明らかに私の方を向いていたからだった。

 

 

急いで片手に持っていたスペルカードを掲げて、名を言葉にする。

 

 

お燐「贖罪『旧地獄の針山』ァ‼」

 

途端。

 

辺りに細かい針のような弾幕が展開されてゆく。

 

奴は、驚愕の色を表すことはなかった。

 

恐らく勇儀姐さんの弾幕を受けた後だからだろう。

 

 

しかし、この密度。速度。

奴も避けようとするが、避けきれずに被弾する。

 

その度に体から岩が少しづつはがれ、ダメージを受けているのは

誰の目にも明らかだった。

 

 

しかし。次の瞬間気づかされた。

 

 

奴はまだ戦うことを諦めたわけではないということを。

 

 

次の瞬間、突っ込んでくる。

 

お燐「えっ!?」

 

「ごぼぉ!?」

 

お空「え!?動けるの!?」

 

早い。

 

距離的にはさほど離れていないだけに、グングン差を縮められる。

 

ヒ―ドランも動く。若干ヒ―ドランの方が早いが、奴はもう迫ってきている。

 

 

迂闊だった。このスペカで攻撃をする際。動けなくなることをこいつは知っていたのだろうか?

 

そのようなことを考える余裕も、もうなかった。

 

カチリ・・・。

 

ボロボロに崩れゆく奴の体から、何か妙な音がした。

 

コチリ・・・。

 

ヒ―ドランとお空も私へと駆けつけるが、奴の方が近い。

 

カチッ・・・。

 

妙な音が大きく、近くなる。

 

ピー。

 

 

その瞬間。鮮やかな光が奴を削り、戦闘不能へと陥らせた。

 

 

お燐「・・・え?」

 

唖然とした。そして、非常に驚愕した。

 

 

ボロボロに崩れた奴と私の間に、誰かが立っていた。

 

 

その者は私に背を向けていたが、やがて私の方を振り返り。

 

???「危なかったね。お燐」

そう言って、いたずらっぽくはにかんだ。

 

お燐「・・・こいし・・・様」

 

そう。私を助けたのは地霊殿の主。古明地 さとりの実妹。

 

『古明地 こいし』であった。

 

「紅魔館」

夜。

 

その日。時間が止まることはなかった。

如何にどうしようとも、時間は止めることはできず。

ただ時間が流れるだけだった。

 

私。「十六夜 咲夜」はこの紅魔館の自室で、古びた懐中時計を見つめていた。

 

今日は、仕事が無いのである。

 

お嬢様は霊夢と魔理沙が帰宅する際。強引について行ってしまった。

その際。お嬢様は私にこう言い残していた。

 

「咲夜。今日は特別ボーナスの休暇を貴方にあげることにしたわ。

 今日一日。貴方はこの紅魔館のメイドではなく、一人の客人となるの。

 だから、今日一杯は自室で休みなさい」

 

そう言われ、私はこうしておとなしく自室にこもっているのだった。

 

咲夜(・・・とはいってもなぁ・・・)

 

別にやることはなかった。

いつもならまだ仕事をしている時間帯。

 

そして、趣味と言った物もない。

 

咲夜(・・・散歩でもしてこようかしら・・・)

 

お嬢様から自室で休めとは言われたが、これではあまりにも暇すぎる。

 

こんなに暇で退屈なら、休むこともなにもできないだろう。

 

 

咲夜(・・・うん。散歩に行った方が気分が晴れるわ。きっと)

 

そう思い、妖精メイドに見つからない様にコソコソと外へと出た。

 

「紅魔館~庭園」

 

そこに出て、外の空気を一杯肺に入れ、ゆっくりと吐き出す。

しかし、それでも余り気分が晴れることはなかった。

 

『時を止める』。そんな意味不明で常人には理解しがたいことが日常と化している

私にとっては、時が止められないことがこんなにもストレスになるとは思わなかった。

 

咲夜(さて、何をしよう・・・?って、何かするつもりで外へ出たわけじゃないけど)

 

とりあえず、美鈴が丁寧に揃え、庭を彩っている無数の花々を見つめてみる。

しかし、その花は何も言わない。

 

夜はさらに更け、辺りは本格的に暗くなっていた。

 

 

その時。

 

 

ピカッ・・・キラキラッ・・・。

 

咲夜「?・・・何?」何か光った?」

 

一瞬。青色の光が霧の湖の湖岸に映った気がした。

 

しかし、なにが光ったのかは霧で隠され見えなかった。

 

 

咲夜(・・・・・・)

 

私は、その光が気になって仕方が無くなった。

何故か、その光は私が時を止めることができなくなったことと

関連があるような気がしたからだった。

 

 

私は、霊力を対外に放出し、空を飛んで湖岸へと向かった。

 

 

 

 

ドコン・・・ドコン・・・。

 

湖岸についた私は、完全に腰を抜かしてしまった。

 

ドクン・・・ドクン・・・。

 

体中が震えようとしている。しかし、緊張故かダイヤモンドのように体が固まって

動けない。

 

辺りには微かに青色の光が漏れ、「その存在」が現実であることを幻想的に証明していた。

 

ドコン・・・ドコン・・・。

ドクン・・・ドクン・・・。

 

私の耳に、二つの心音が聞こえてくる。

 

一つは私のもの。血液が心臓によって体へ行き渡る音。

 

そしてもう一つは、目の前の存在のもの。

時を刻み、未来永劫途絶えることのない金剛石の心臓。

 

 

その存在は、私のことを見つめていた。

私はただ震えそうになるのをこらえて、ただ恐怖の色を顔に張り付けることしかできなかった。

 

 

その存在・・・。

 

たくましい四本の脚。

群青色の体色と、銀色に輝く装飾らしきもの。

長い尾は、体色と同じ群青色に煌いている。

胸に当たると思われる個所には、また銀色の装飾と藍色の宝石らしきものが埋め込まれている。

 

そして、その長い首にピッタリと会うように備えられた頭部には

赤い瞳が全てを射抜くように、開かれていた。

 

また、その頭部は二対の装飾と共に後方へと伸び、まるで宝石のようなイメージを

醸し出していた。

 

 

その存在が何なのか?

何故、ここに現れたのか?

 

そのようなことは分からないが、一つだけ理解できた。

 

 

この存在には、誰も敵わない。

 

それが恐怖として実感になり、実感は畏れへと変わった。

 

「グギュグバァッ」

 

その鳴き声は、まるで私へと語り掛けるかのようなものであった。

 

To be continued・・・




超・急ぎ足で書いたので。
とてつもなく微妙でしたかね?


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43ページ目 それぞれの動き

結論から言おう。

私は。私達はあの岩山に出し抜かれた。

 

 

私はその瞬間、死を覚悟したが、その死の宣告である攻撃が行われることなく

こいし様がその岩山を打倒した。

 

勝った!勝利だ!戦いは終わったんだ!

 

その喜びと達成感が疲労となって私を襲った。

 

こいし「お燐、大丈夫?」

 

お燐「ああ、はい。大丈夫です」

 

私のその言葉にこいし様は安堵したのか、にこりと目を細めて笑った。

 

しかし、そのひと時の安寧はすぐさま崩れることになった。

 

お空「お燐!後ろォ‼」

 

途端。お空の言葉が後ろから響いた。

 

その声に反応して後ろを向いた瞬間、右頬に鋭い衝撃が走った。

 

お燐「ぐうっ‼」

 

うめき声をあげ、吹き飛ばされる。

一瞬、こいし様がとても驚いた顔をしているのが見えた。

 

 

ボロボロの体になっても動いている岩山の怪物の姿も。

 

その視界を脳で処理しようとした瞬間、背中に強い衝撃が走る。

どうやら吹き飛ばされて壁に激突したらしい。

 

意識が霧がかったように朦朧とし、こいし様の声が聞こえる。

 

お燐(いっ・・・意識が・・・ッ!)

 

目がかすんで、何もかもが薄れて見えてくる。

耳もやられたのか、耳鳴りがしている。

頭を打ったのか、頭痛もする。

 

それでも私は、なんとか意識を手放さないように目を見開いていた。

 

お空がかなりのスピードで飛んでくるのが見えた。

こいし様が私の方へと駆け寄ってくるところも見えた。

 

その霞んだ視界の中で、気のせいだと思いたいものが一瞬見えた。

 

 

岩山が、床へともぐっている所である。

 

:あなをほる:

 

お空が岩山の方へと飛ぶ様と、ヒ―ドランが攻撃を仕掛けるところも見える。

 

こいし「お空!私はお燐を担いでここを離れるから、スペルを使ってもいいよ!」

 

お空「ッ‼、いいんですか・・・?」

 

こいし「ほら、早く!ここは任せたよ!」

 

確かにそうこいし様が言ったのが聞こえた。

次の瞬間。私はこいし様に本当に担がれたらしい。

 

また次の瞬間。

 

お空がカードを取り出して、辺りに警告音を響かせたのを聞いた。

 

お空「爆符『メガフレア』‼」

 

「ゴボボボォ‼」 :マグマストーム:

 

 

体の大半が破損。しかし、まだ完全に破壊されたわけではない。

まだ戦える・・・。

 

だが、ここは撤退するほかないようだ。

 

もうこの体力と距離では「爆発」を起こして道連れにも行かない。

 

ならば最善の策。一時撤退。

 

そもそもここには「戦闘力のデータ収集」に来た訳である。

もうここに長居する必要も無いだろう。

 

しかし、相手も既に逃げようとすることに気が付いている。

 

 

ここに残った、戦闘可能な者は二体。

 

どちらの攻撃も当たったら瀕死は免れないだろう。

何とかして穴を掘り、炎から身を守らねばいかない。

 

そうこうしているうちに穴が開いた。この地底から地上へ出るための穴が。

 

しかし、攻撃はすぐさま発射された。

 

 

爆炎の渦と、火炎の大玉が、岩山に向けて発射される。

 

その瞬間の室内気温は一気に80度を超えたと思われる。

そして刹那。辺りは弾幕と溶岩の渦で地獄のような光景となり、周りに強い光が漏れた。

 

その光は、私もヒ―ドランも岩山も包んで。

最後に。

 

ドウゥゥン・・・。

 

という揺れと高熱と炎を残して辺りは焼野原となった。

 

そこに残されたのは、尖った岩の残骸。焼けたカーペットやシャンデリア。

 

 

 

 

そして、奴が逃げたと思われる穴だけだった。

 

その穴は、私達が存在に気が付いたのを察知したかのよに消え去り。

 

その穴が存在していたところだけ、爆炎や弾幕の影響を受けずに綺麗なままの床を

晒した。

 

まるで穴も、岩山もなかったかのように辺りは消炎し、私とヒ―ドランだけが残された。

 

私達は、あの岩山に逃げられた。

 

 

~人間の里~ 慧音・妹紅サイド。

 

地上は、よく晴れた夜となっていた。

雲は一切無く、瞬く星々と輝かしい月はその光を地上へと注いでいた。

 

夜は人間の里の酒屋等を覗いて、出歩く人間が一気に減る時間帯である。

 

その代わり、人ではない者が出歩く時間となっている。

 

 

その白く輝く月光を、鏡のような鋼の体で反射させて、人里の外へと歩み出る

異形の姿がそこにはあった。

 

その異形・・・激しい暴風から慧音と妹紅の身を護ったその存在は

ゆっくりした足取りで、人里から森へと出ていこうとしていた。

 

その様子を見ていたのは、ただ一人。

人とは言えぬ、青い目と赤い帯。黒い体に白の頭髪のような物を持つ闇だけであった。

 

その方向の先には、高くそびえる妖怪の山が、巨大な化け物のように

天を支えていた。

 

 

~紅魔館~

 

同時刻。灯りが消え去り、代わりに白い月明かりが館を照らしている頃。

 

スーッ、と。滑るように館の玄関から、尖った多角形のような影が飛び出した。

 

その影は、またすーっと滑るように移動して庭を横切っていく。

 

その影の正体は、一人の妖精のパートナーとして巫女と魔法使いと戦い。

現在はこの館の製氷を任せられる異形であった。

 

その異形は、ゆっくりと館の門を開け、湖を凍らせつつ、森の中へと入っていった。

 

また、その様子を見ている存在が一人。

ボロボロの薄汚れたローブを纏う不気味な者。

 

『・・・・・』

その存在は、何も言うことはなかった。

何も言うことはなく、空を飛んで、また何処かへと離れていった。

 

その飛んでいくものとは逆に行く者。その異形は、巨大な影。

 

妖怪の山へと進む。

 

 

迂闊だった。

 

まさかあそこまで強力な者が青の地下にいるとは思わなかった。

 

なんなのだ、あいつは?

 

気が付いた時からいたのか?

分からない。だが、あそこにいた中ではトップクラスに危険だということを認識した。

 

これからは、あの存在を判断基準に戦闘をしていきたい。

だが、あの存在よりも強い者がいたとしたらどうするか?

 

それは、出会ってみなければ分からない。

 

ひとまずは、この身体が再生するまでジッとしていなければ。

 

 

~人間の里~ 阿求・小鈴・AZサイド

 

変な夢を見た。

 

私がAZさんと阿求と一緒に、何処かへと行く夢だった。

それが『夢』と認識できたのは、何故かは分からない。

しかし、これは夢であるという確固たる自覚があった。

 

その行先は、何なのかよく分からない場所。

 

紫色の桜と、地面から所々突き出た小さい岩が印象に残る荒れ地だった。

空は紺色に染まっているが、地面や桜はハッキリ見える。

 

その荒れ地を、AZさんと阿求はどんどんと進んでいく。

 

 

私は、二人に遅れていることに気が付き、スタスタと足を速めてついて行った。

 

途中。

 

ヌチャ、と変な音が地面からした。

それは、底の部分だけぬかるんでいるようだった。

 

そのぬかるみに私は足を取られ、動けなくなってしまう。

 

二人は私を置いて先へと行ってしまう。

 

 

小鈴「AZさ~ん!待ってくださいよぉー!」

 

返事はない。振り返りもしない。隣にいる阿求も同様に。

 

小鈴「お~い!二人とも―‼」

 

返事はない。振り返ることもなく、ただ歩く。

 

 

途端。

 

ドドドドドドド‼‼

 

何かがのたうち回るような音が聞こえてきた。

 

小鈴「?、何の音だろう・・・・・って、ええ!?」

 

この様子を見て、驚かない人がいるだろうか?いや、いないだろう。

きっとあの霊夢さんや、魔理沙さんですら驚愕してしまうはず。

 

 

それは、水だった。

 

それもただの水ではなく、空と同じ紺色に染まった潮。

 

その潮に、先を歩いていた二人が呑まれる。

 

小鈴「‼‼」

 

もう一度言うが、これは夢である。

 

しかし、いくら夢とはいえその恐怖。実感は現実とそう大差はないと思えた。

 

高波が唸るような音を立てて近づいてくる。

 

ぬかるみにはまった足は抜けそうにない。

 

全てが駄目だと思ったその刹那。

 

 

波の中から青色の巨大な何かが飛び出してきた、

 

その青色をした、大海のようなイメージを持つ何かは私にのしかかり・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気が付くと、私は布団から飛び上がって起きていた。

 

小鈴「はあー。はあー。はあー」

私は、起きてすぐ。体に異常が無いか調べた。

 

しかし、それは夢であるため体に何か異変があるわけはなく。

 

無傷。ただし汗でビショビショになった私の体がそこにはあった。

 

小鈴「・・・(なんだったの・・・今の夢は・・・)」

 

私は、何故そのような夢を見たか考えてみたが。

結局は眠気には勝てず。

 

今度はいい夢が見られるように願いながら再び眠りについた。

 

 

翌朝。

 

父親にたたき起こされた。

 

避難するのだという。

 

何故避難するか、父親に聞いたところ。奇妙な回答が返ってきた。

 

「山が動いて人里に迫ってきている。早く避難しなければ」

 

そのようなことが帰ってきた。

 

 

私は、これも夢なのではと思いつつ、父親に手を引かれて外へと出ていった。

 

 

To be continued・・・



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44ページ目 十六夜と無限と異界

うわあああああああ‼
小説二回も落ちて消えたあああああ!

ので三度目の正直です。


咲夜「・・・ッ」

自分の心臓の音がやけに大きく聞こえる。

それだけに、辺りは静まり返っていた。

 

目の前のこの存在・・・この神に恐れをなしたかのように。

水辺の波。風。それに揺れる草木すらも。

 

一切の音を立てていなかった。

 

私は、何とか立ち上がろうとしていたが、瞳にはうっすらと涙を浮かべていた。

 

心の内にくすぶる恐怖心と、その神が発する圧倒的「プレッシャー」をこの身に受けながら

何とか腰を浮かせ、膝に力を入れ、その力を大地へと流すように立ち上がる。

 

呼吸。瞬き。指の動きにすら緊張感がまとわりつく。

 

まるで体の内から食い破るかの如く湧き上がる『熱』。

その熱によって生じる冷汗。それを撫でるかのように掠める風の『冷気』。

 

膝は小刻みに笑い、全身の神経に力と意識が入り込んでくる。

 

今、私はいったいどのような表情をしていたかは分からない。

でも、決して無表情ではないという確信が、脳ではなく表情筋の動きから推測できた。

 

「・・・・・」

 

その神は、私のそんな様子を見ても、何かをしてきたり、何かを語り掛けることはなかった。

 

ただ、静かに見つめていた。

 

何を思って見ていたのかは分からない。

 

ただ、その眼に敵意はなく。しかし、そこには好意もなかった。

 

咲夜「・・・・」カタカタ...

 

全身が震える中、私もその神を見つめた。

 

そして視線が合う。震えがピークに達する。しかし目は逸らさない。

 

永遠とも思われるような、須臾とも感じ取れるような時間(とき)の中。

 

 

途端。

 

ポチャン...。

 

咲夜「・・・・・?」

 

何かが水に投げ入れられるような音がした。

 

しかし、私は目の前の存在に気を取られ、その音がした方を向けないでいた。

 

だが、私は向けないでいたがこの神は反応を示した。

 

私の方から、水辺。湖の方へと顔を逸らした。

 

私も気になり、湖の方へとゆっくり顔を向ける。

 

 

その湖には、一切雲の存在しない夜空に浮かぶ、白い月が映っているだけだったが。

何かがおかしい。

 

その映った月の近くに、小さな波紋が出来ていた。

 

しかしその波紋は周りに広がらず、その大きさのまま静かに揺れていた。

 

咲夜「・・・・・」

 

私は、その波紋に目が惹かれた。恐らくこの神も同じだろう。

 

 

 

そう思っていた次の瞬間にはもう遅かったのかもしれない。

 

 

 

波紋は急に巨大となり、月影も飲み込むほどの巨大な渦となった。

 

その渦の回転は凄まじく、竜巻や、渦潮とは比較にならない『渦』。

 

その渦は、だんだんと水面の下へ下へと渦を巻き。

そこに奇妙な色の穴が開く。

 

その穴から急に、突風が吹き込んできた。

 

咲夜「うっ!?、なっ、あっ!?」

 

とっさに懐中時計を取り出し、時を止めようとするが。

咲夜(!、そうだった・・・‼)

 

今は何故か時が止められないことを思い出し、悲嘆にくれる。

 

「グギュグバァッ!」

 

その鳴き声に私は驚き、その方角へと首を向けると。

 

さっきの神も穴へと引きこもうとする風に纏われていたらしい。

 

そしてついには、体重の差からか先にその穴へと引きずり込まれた私は

落ちていく最中。完全に死を覚悟してお嬢様に感謝の言葉を心の中で捧げていた。

 

 

咲夜「・・・う、ううん・・・」

 

・・・どうやら、私は生きているらしかった。

それは、起き上がるときの目の痛みと頭痛。背中の痛みで理解できた。

 

咲夜「・・・あれ、ここは・・・・・!?」

 

私は、夢でも見ているのかと思った。

もしくは、気が狂ったのかと思った。

 

今、目の前にある景色を、現実と信じたくなかった。

 

 

目前には、湖があり、そこに滝が流れ落ちて・・・いや。

 

滝が湖から『逆さまに流れ落ちていた』。

 

見れば、その湖の上に紅魔館らしき建物が・・・2つ?

二つの紅魔館が上下逆さまに、合体するかのように重なり合って建っていた。

 

私は、これは夢だと信じた。

しかし、今触れている地面の感触。鼓動。呼吸。恐ろしいと思う感覚。

 

それら全ては完全に現実のものであり、それはこの世界が夢ではないと証明する

確かな「証拠」であり「方程式」であった。

 

 

私は、もはや何も感じてはいなかった。

 

脳が可笑しくなったのか、それとも心が崩壊したのか。

 

恐怖感は薄れ、逆に体の内から湧き上がる興奮が体を満たした。

 

 

私は立ちあがり、周りを見てみた。

 

 

そしてすぐに、見なければよかったと後悔を感じた。

 

先が見えない、濃い群青色の空。

普通なら、このような空であるならば辺りは真っ暗で何も見えないことだろう。

 

しかし、辺りは強力な光で照らされたかのようによく見えた。

 

遠くの物も、小さく見えるが霞むことはなく。

目を凝らせば細部までよく見えた。

 

そこで見たものは、想像を・・・常識を崩すものであった。

 

逆さまに流れ落ちる川。真横に生える樹木。浮かぶ孤島。

無数に並ぶ木造家屋はそれぞれが重なり合い、紅魔館のように合体していた。

 

そして、気が付いた。

自分が立っているこの地面も、宙に浮いているということに。

私は、その下の様子を端から見てみた。

 

そこに広がっていたのは「虚空」。

そうとしか言えない、空と同じ色をした空間だった。

 

均一で、一切のムラがない紺色の空。

その景色に恐れおののいた私は、後ずさりをして、何かが背中に当たった。

 

それは、巨大な壁だった。

飛んで越えようと思っても、何故か飛べはしなかった。

 

私は、いつの間にか泣いていた。

そして、表情だけは笑っていた。

 

咲夜「えっ・・・どうしてこんな・・・なんで私、泣いて・・・」

 

その瞬間。

 

 

目の前を何か黒い影が高速で横切った。

その影によって生じた突風で、私の体が浮き飛ばされる。

 

そして私は。

 

 

無事に足を地面へとつけた。

咲夜「・・・え・・・」

 

その私が足をつけた地面・・・もとい足場は。

さっき私が壁と認識をしていた物だった。

 

さっきまでいた足場が、今度は壁となって私の前にそびえたっていた。

 

私はついに、その場にうずくまり、泣いた。

 

どうしようもない状況下。

救いはなく、ただ呆然とするしかない時間。

 

私は泣いた。

 

声は立てず、静かに。

 

 

 

そうして何分・・・何時間が経った頃だろう。

 

ドカアァン‼

 

突如として爆音が鼓膜を震わせた。

そのことに驚き、顔を上げるとさらに。

 

ドドオォン・・・。

 

 

今度は地鳴りが辺りに響き、私は本格的にその音源を探した。

 

そしてすぐに見つけた。その音源は、さっきの神であった。

しかし様子がおかしい。

 

 

何かと戦っているようだ。

 

「・・・ビシャーンッ‼」

その巨大な黒い何かはその神に巻き付いている。

 

そのまま近くの浮遊島に神を叩きつけ、口から青白い炎の球を発して攻撃をした。

 

ドカアァン‼

 

さっきの爆音の正体はこれらしい。

 

すると、神は起き上がり、翼も使わずに空へと浮き上がって逃走する。

黒い何かもそれを追いかける。

 

私は、それをただ見ていた。

何も感じず、その時を過ごしていた。

 

途端。

 

???「おや?お嬢さん?」

突然背後から声をかけられた。

 

この世界に来て以来、初めて聞く人の声。

 

私は、警戒もしないですぐに振り返った。

 

???「なぜこの世界に・・・いや、どうやって来たんだ?」

 

咲夜「・・・え、あ。いや・・・」

 

私は思わずたじろいで、まともに答えられなかった。

 

その様子から察してくれたのか、その人物は。

???「う~むむ・・・もしやギラティナがディアルガを引き込むときに巻き込まれたのか?」

 

咲夜「・・・・・」

 

私は、何も言えず、その人物。その男の姿を見ていた。

 

赤くボロボロになったTシャツをラフに着こなし、焦げ茶色の半ズボンを履いている。

髪はいわゆる茶髪で、髭ともみあげが一体化している。

 

優しく温和そうな人物だった。

 

???「さて・・・君がここにいる原因は多分それだろうが、ここじゃ危険だろう。

    ここよりは安全な場所を知っている。ついてくるといい」

 

そう言って、ゆっくりとした足取りで歩き始めた。

 

咲夜「あっ・・・待っ(ゴオオオオオオ

 

その私の声は、突如鳴ってきた轟音にかき消された。

 

その轟音は、ここより遠いところで発生したらしく、振り返って確認する時間はあった。

 

 

先程の神が、黒い何かに向けて隕石を落としていた。

 

:りゅうせいぐん:

 

その内の一発。一発の流星がこちらに向かってくる音だった。

 

???「タテトプス!『ラスターカノン』!」

 

さっき声をかけてきた人物の声。

見ればいつの間にか奇怪な生物・・・ポケモンが傍らに控えていた。

 

そのポケモンは、鉄色の光線を放ち、流星に当てる。

 

すると、流星は少しづつ削られ、最後には「ボムッ」と塵になって消えた。

 

???「ふー、危なかったなー。怪我はしていないか?」

 

咲夜「あ・・・はい。あの、助けてくれてありがとうございます」

 

???「うん。怪我が無くて何よりだな。

    あ、あと。一応名前だけは教えてくれ」

 

咲夜「あ、えーと。私は十六夜 咲夜 と言います」

 

???「ほお、綺麗な名前だなぁ。そんじゃ、私も」コホン

 

ムゲン「私の名は「ムゲン・グレイスランド」!ポケモンの博士だ!

    さあ!ここは少しばかり危険だ。とりあえず、近くの安全な場所へと行こう! 

    ついてきなさい!」

 

咲夜「あっ・・・はい」

 

私は、この異世界の中で出会った「ムゲン博士」について行くことにした。

 

すぐ背後では、神と化け物が激闘を繰り広げている。

迷う余地も、選択の余裕も無かった。

 

 

同時刻。守谷神社。

 

空は夜だが晴れていた。

一切の雲が無く、静かに空に鎮座する月は、白い光を地上へと注いでいた。

 

その神社に、その像はあった。

その像は約数日前。

 

天狗たちの戦闘により敗北し、洩矢の巫女に封じられていた巨神・・・ポケモンだった。

 

そのポケモンの前に、その三頭はいた。

 

一頭は岩のようにごつごつしており。

もう一頭は丸みを帯びた金属質で。

もう一頭は多角形の氷山だった。

 

その三頭が、像の前に立つ。

 

それだけで、巨像に力が戻ったかのようだった。

 

洩矢の鉄の輪によって縛られた指が、腕が動く。

周りの御柱が傾き、倒れる。

封印は破られた。

 

「ズッ・・・!ズッ・・・!」

 

巨神の唸りが、山を震わせた。

 

To be continued・・・



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45ページ目 日照りの夢 

遅れて申し訳ありませんでした!


暑い・・・。

AZ「うう・・・く・・・」

 

空に浮かぶ陽の球は、いくら今の季節が夏とはいえ

あり得ない熱を地上へと向けて落としている。

 

また、その熱は地面の砂に反射し、容赦なく私をジリジリと焼いた。

 

 

私は、その炎天下の中。人里を歩いていた。

・・・いや、正確には「人里だったところ」を歩いていた。

 

辺りは、人がいなくなった多くの民家が建っているだけで

人も、獣も、ポケモンの気配も無かった。

 

そのことを、最初確認したときは。

暑さ故か、恐怖故か。汗が止まらなかった。

 

しかし、今は汗は一滴も出ない。

この日差しの中、人を探して歩いたせいで体の水分を全て奪われてしまったからだった。

 

AZ「うっ・・・ああぁ・・・」

ガクリ、と膝から力が抜けて立てなくなる。

 

その間も日差しが弱まる気配はなく、水分を失った私の体をゆっくりと焼いていた。

 

そして、ついには倒れた。

 

 

『ぐらぐらるぅぅぅぅ!』

 

どこか彼方から、地震でも起こすのではないかと思うほどの大音声が

体を揺らした。

 

私は、すでに諦めていた。

もうどうしようもない。ここで干からびていくしか道はない。と。

思っていた。

 

その時だったか。

 

じゃり・・・。じゃり・・・。

 

地面を踏みしめて近づいてくる音・・・誰かの足音が聞えた。

 

それは、私から見て正面から歩いてきた。

 

AZ「(あれは・・・阿求・・・?)」

 

その足音の主は、「稗田 阿求」。

しかし、その顔には表情がなかった。

 

眼は虚ろで、焦点が合っていなく。

口は開いて、その端から涎が垂れている。

それでも足取りはしっかりとしており、ゆっくりと私との距離を詰めてきていた。

 

その様子を見た私は思い出した。

AZ「(・・・こいつ・・・阿求ではない。

   いつかの夢で見た、「阿求の姿をした何か」・・・!)」

 

阿求は・・・虚・阿求は私との距離を1mほど置いてしゃがみこんだ。

その視線は真っ直ぐに私を捕えて揺るがなかった。

 

「・・・・・」

 

虚・阿求は何も言わずに、ただジッと見つめてくるだけ。

ただそれだけなのにも関わらず、その気迫・迫力は人外のそれだった。

 

その時。私は見た。

しゃがんだ阿求の背後。その彼方に、黒い影が立っている様子を。

 

その黒い影が何なのか。それは分からなかったが、人ではないことは確かだった。

 

途端。阿求が立ち上がり、私のすぐ横を歩いて去って行く。

 

陽が落ちる気配はない。

 

 

そしてその時、急に風が起こり。

私は、自分の体が塵となって晴天に溶けてゆく感覚を味わった。

 

???「AZさん!起きてください!緊急事態ですよ!」

・・・何者かに体を揺すられ、名前を呼ばれる。

 

私は、まだ目は開けていなくても声の持ち主は分かった。

その正体は「本居 小鈴」。

 

その小鈴が、さっきから体を激しく揺らしていた。

 

AZ「・・・なんだ・・・」

 

私は、腕で目を擦りながら布団から体を起こした。

その時、私の体が汗でビショビショになっているのに気が付いた。

 

小鈴「あ!やっと起きてくれましたか!急いでください!

   今から博麗神社に避難しますよ!」

 

ん?と思った。

いきなり体を揺すられて、緊急事態と言われ、その上避難すると。

 

 

なにが何だか分からない。しかし、ただ事ではないという事は

小鈴の顔を見て理解できた。

 

AZ「・・・小鈴、お前。昨日は帰ったんじゃなかったのか?」

 

小鈴「いえ、帰りましたけど!とにかく時間がありません!

   ホラ、立ってください!寝巻のままでいいですから!」

 

そう言われ、腕を引っ張られ立たされる。

寝室を抜け、廊下を通り、玄関の前へ。

 

そこには、笠を被った見知らぬ男性と『阿求』が立っていた。

 

阿求「・・あっ!AZさん、こっちです!」

阿求が気づき、それに続いて男も気づく。

 

???「・・・あなたが、AZさんですね?

    小鈴から話は聞いています」

そう男は、こちらに頭を下げ挨拶をしてきた。

 

本居(父)「私、貸本屋の鈴奈庵を経営させてもらっている

      『本居 小鈴』の父です。

      以前から、小鈴に対して何かと良くしてくれまして

      ありがとうごいます」

 

AZ「いえ。私は、自分のやりたいことをやっただけですので・・・」

 

私も、それなりに礼儀を通して挨拶をしようとしたところに

阿求が割って入り、

阿求「とりあえず、その挨拶の続きは神社の方で。急ぎましょう」

 

そう言って、扉を開けて出て行ってしまった。

それに続いて、小鈴の父親が。次に私が。

最後に小鈴がという形で、全員が外に出た。

 

外は、まだ陽が出ていない早朝であった。

しかし、辺りは多くの提灯の光で照らされ、明るかった。

 

所々で、提灯を持った者達が周辺の家々を訪ね

住人を連れ出して大通りを歩いている。

 

AZ「一体・・・何が・・・?」

私は不安に思い、阿求に聞いた。しかし、応えたのは小鈴の父親だった。

 

本居(父)「あれでございますよ・・・」

彼は、右手の人刺し指を、人々が行き交う方向とは反対方向を指さした。

 

 

AZ「・・・!?、こ、これは・・・ッ!?

  山が、動いている・・・のか!?」

 

見た通りだった。

まだ早朝の薄闇の中、巨大な影が少しづつではあるが迫ってきていた。

 

本居(父)「原因は分かりませんが、山が動いているのです」

 

阿求「かなりのスピードね。山は止まるのかしら・・・」

 

小鈴「AZさん・・・。私達、どうなるのでしょうか?」

 

AZ「・・・それは・・・逃げてから考えるべきことだろう?」

私は、迫りくる山への恐怖を抑えながら言った。

 

阿求「そうね・・・。とりあえず、神社へ急ぎましょう」

 

阿求が先頭に立ち、皆を率先して神社に率いる間。

私は少しの間立ち止まり、『山をどう止めるか』を考えた。

 

しかし、今のポケモン達の体力。能力ではあのエネルギーを止めることはできないだろうと

考え、苦虫を嚙み潰したかのような酷い気分に襲われながら、人里を後にした。

 

「妖怪の山・・・人里方面」

 

「ズッ・・・ズッ・・・‼」

予想以上に重かった。

 

今まで、何度も主のために立ちふさがる大岩を砕き。

壁を押しのけ、穴をふさぎ、山を切り開いた。

 

しかし、この山は「重い」。

まるで、天を支える支柱のように重い。

 

その重量の・・・もとい重力の正体は、さっきから私の上でフワフワ浮いている

この生物達によるものだった。

 

???「はぁ・・・はぁ・・・チッ!

    私のオンバシラでも、諏訪子の鉄の輪でも止められないとはね・・・」

 

諏訪子「まさか本当に動かされるとはねー・・・正直言ってビックリ」

 

早苗「どどどどど、どうしましょうううう!・・・

   私の弾幕も奇跡も効かないなんて・・・こんなの反則ですよ反則!」

 

さっきから何なのだろうか。

私は、「この山ごと、火山の怪物を生き埋め」にしようとしているだけなのだが。

 

やはり、「わるいおうさま」の末裔。もしくは遺志を継ぐ者達。

 

しかし、どうにもならないだろう。

 

以前は、不完全な状態で復活を遂げたが今回は違う。

 

完全な状態で復活。もうこいつらでは止められないだろう。

 

・・・もうこれ以上。

これ以上、主を。待たせるわけにはいかなかった。

 

数時間前・・・。

 

深夜。

私は、大きな揺れで目が覚めた。

 

地震のような、地割れのような・・・。

大地が傷つくような振動だった。

 

諏訪子「ん・・・どうしたんだい「神奈子」。

    ・・・この揺れは?」

 

背後から、「諏訪子」の声が聞こえてきた。

 

神奈子「いや、何か様子がおかしいような気がしてね・・・・ん?」

    ・・・!?、まずい‼」

 

諏訪子「おい、神奈子―。まったく・・・早苗。

    起きろー、緊急事態だぞー」

 

本当に緊急事態だった。

 

「まさか」とは思っていたが、それが現実になるとは。

 

案の定、石像の封印が解かれていた。

 

四方を囲んだ御柱は、すべて凍らされて折られており。

石像を縛っていた鉄の輪は、巨大な金槌で潰されたかのように変形していた。

 

神奈子「(私と諏訪子の封印をこうも簡単に破るなんて・・・‼)」

 

私は言葉を失い、愕然としたが。

すぐに次の行動、「こんなときのために」。という策を展開させる。

 

神奈子「早苗!すぐに妖怪の山全域の天狗たちに協力を要請しろ!

    諏訪子!」

 

諏訪子「もう早苗なら行ったよ。後は私達の出番だね」

 

諏訪子も、完全に目が覚めたのか、戦闘態勢に入っている。

 

神奈子「よし・・・。この山の神に喧嘩を売ったこと。

    後悔させてやろうか!」

 

 

しかし、その数時間後。

後悔するのは、私達の方であったと理解することを。

 

この時は誰も考えることはなかった。

 

 

「やぶれた世界」

 

ズズゥ・・・ズン。

 

ムゲン「おお?なんだこの音・・・「こっち」じゃあないな」

 

博士は、背負っていたリュックから取り出したカップにコーヒーを注ぎながら

呟いた。

 

咲夜「(レミリアお嬢様・・・妹様・・・どうかご無事で)」

 

私は、浮かぶシャボンのような物体の中で。

山が激しく揺れる様子を見て、心で願った。

 

To be continued・・・




うろ覚えキャラクタープロフィール:稗田 阿求
種族:人間
能力:「見聞(見聞きした物)を忘れずに覚えておける程度の能力」
性格:好奇心旺盛で、多少勝気。幻想郷住民にしては良識がある方。
   AZに宿として自分の家を貸しているあたり、親切である。
   (その親切心の裏側は見ないのがお約束)
稗田家:初代稗田家当主、「稗田 阿礼」から続く見聞の一族。
    阿求で九代目だが、その類稀なる記憶能力により、幻想郷で起きた物事を
    記す役割と責任を背負ってきた。
    しかし、当の本人はまだ書く時期までは余裕がある為
    遊びまわりたいらしい。
寿命:代々短命である。(せいぜい20代行けて大往生というレベル)。


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46ページ目 VS! レジギガス その①

S・M買ったので、遅れてしまいました。


背中の注連縄に装備した、オンバシラを構え。

 

そして渾身の力を込めて撃ち当てる。

ゴンッ、ドン!

 

巨大な木が金属を受けるかのような打撃音と

「ズッ、ズッ!ズッ!」

鉄塊を引きずる様な音が夜空に響いた。

 

手応え・・・なし。

 

神奈子「チィッ!何なんだ、この耐久力は・・・」

余りの手応えのなさに、軽く眩暈を覚える。

 

そこに、キィン、という軽く耳に心地よい金属音が響き

不意に空中から銀色の輪が形成される。

 

諏訪子「神具『洩矢の鉄の輪』。

    そらそら!避けて見ろー」

 

諏訪子もスペルカードによる妨害と攻撃を行ってくれている。

・・・が。

 

奴は避けない。見向きさえすることがない。

 

鉄の輪は、その巨神の腕・足を縛り。

胴体に至っては、鉄の輪を二重三重に重ねて動きを完全にロックする。

 

さらに、追撃で巨大な鉄の輪をこれでもかとぶつける。

その姿は、かつての祟り神の如く熱烈にして狂気的であった。

 

・・・しかし、止まらない。

 

巨神兵はまるで紐でも千切るかのように鉄の輪を引き裂き

体に縛られた輪も、その巨拳で掴んだだけでひしゃげてしまった。

 

早苗「喰らいなさい巨人!秘術『グレイソーマタージ』!」

 

そこに早苗がスペルを詠唱し、弾幕を発生させる。

 

藍色の五条の星と、それに重なるように生成される朱色の星。

それらが分裂、流動、拡散を繰り返して広範囲に広がってゆく。

 

それらの弾幕は、晴れ空の宵闇に火花を散らしながら巨神の足元へ。

 

早苗が放った弾幕の機銃掃射は、その巨神が足をつけている

地面を大きく抉った。

 

「ズズッ・・・!?」

 

踏み込むはずの地を失った巨神は、その自重故に体のバランスを崩す。

 

神奈子「よくやった早苗!あとは私が!」

 

早苗が作ってくれた隙を逃すまいと、私らしくもなく躍起になって

巨神のすぐ傍へと向かった。

 

と、その時。

 

巨神が山から手を放してこちらに攻撃を向ける。

 

神奈子(攻撃してきたってことは・・・随分と消耗しているということ!

    いくら化け物でも一斉攻撃には耐えられなかったと!)

 

私は、その時完全に『油断』していた。

高ぶる『傲慢』を抑えることが出来ず、つい笑ってしまった。

 

そして気付かされた。

 

 

隙を作られたのは『私』の方であったと。

 

「人里 大通り」

 

私、「犬走 椛」は。この日ほど悔しさを味わったことはなかった。

 

もう一週間以上前になるだろうか。

私と、栄・微意・椎。そして白狼天狗団と文さんの手によって

打倒したはずの巨神兵。

 

その巨神兵が悠々と封印を破って私達の山を荒らしている。

 

なのに、戦いに行くことができない。

そのことに対して、「悔しさ」「憤怒」を確かに感じていた。

 

???「どうしたの?椛。急に立ち止まって」

 

不意に気遣うような声が後方から聞こえ、振り向くと

そこには、文さんのライバル(?)記者。

『姫海道 はたて』が、右手に提灯を持ってこちらを見ていた。

 

はたて「どうしたの?山のこと?」

 

椛「あ・・・ああ、いえ。何でもありません・・・」

図星だった。

 

何でもないわけがなかった。

 

戻りたかった。

しかし、今は目の前にある『任務』をこなさなければならない。

 

はたて「ねぇ椛。あんたは、山の神や風守人をどう見ているかは知らないけど。

    そういう約束・・・もとい『契約』をしたんでしょ?

    だったら、ちゃんとそれに従わないといけないわよ」

 

椛「・・・はい。分かっています」

 

契約。

 

それは、向こうが持ち掛けてきたことであったが。

こちらにとってはいい条件であった。

 

『こちら側から巨神兵を明け渡し、封印をお願いする』

 

あの時、私達はあの巨神を倒す力はあっても封印する力はなかった。

だから、その話に乗った。

 

それで、文句を言うのは筋違いと言うものだろう。

 

いまや、あの巨神は『守谷神社』の管理下。

 

私達に手出しをする権利はないのである。

 

・・・その際。

神社側が提示したもう一つの条件・・・もとい『お願い』。

 

『仮にもし、巨神が封印を破った際に守谷の巫女の指示の元。

 人里の住民を博麗神社へ避難誘導を行うこと』

 

そのことを指示された。

 

そのために、私達は今。

羽を隠し、尾を隠し。耳は伏せ。提灯を持ち。

あくまでも『妖怪』ではなく『人間』として任務を行っていた。

 

それも、提示された指示のうちの一つだった。

 

はたて「・・・あ、遅れてる人たちがいる。

    椛、行くよ」

椛「あ、はい」

 

私は、まだ心の内に蟠りを抱えていたが。

それ振り払うように両手で頬を打って、気合を入れなおしてから

はたてさんの後を追った。

 

 

 

はたて「博麗神社への道はこちらでございます!

    できる限り焦らず、私達の指示のもと行動してください!」

 

提灯を持った多くの人たちが、私達に避難勧告をし。

まだ眠っている者の家の戸を叩き。

提灯やかがり火で夜道を照らしてくれている。

 

AZ「ふむ・・・彼女たちは・・・里の住人だろうか?」

 

ふとそんな疑問が口から洩れる。

 

小鈴「?、なにか言いましたか?」

 

その疑問を伴った独り言を小鈴に効かれそうになる。

 

AZ「・・・いや、あの山にもポケモン達は既に住んでいるはず。

  と、思うとな・・・」

 

小鈴「ああ、そうですね・・・。急に山が動いたことで山の中でも様々な

   異変が起こっているはずです。心配ですね・・・」

 

この少女は時に、驚くほどこちらの気持ちを代弁してくれることがある。

 

さっき言った言葉は、独り言を間明合わすための言葉だったが嘘ではなかった。

 

 

心配で、不安で堪らない。

その負の気持ちが、心を少しずつ黒へと染めていた。

 

その心に光をさしてくれるのが、小鈴や阿求達だ。

 

このようなあまりにも絶望的な状況にも希望は指す。

 

 

それに向かう先は『博麗神社』だ。

恐らく、あの妙な性格をした巫女も。

割と良心的(?)な魔法使いも。

胡散臭い境界妖怪もいることだろう。

 

恐らくであるが、彼女たちならこの事態に

ただ指をくわえてのんびりしていることはないハズだ。

 

 

・・・そこで私は気が付いた。

 

私は既に、彼女たちを信用しているということに。

 

AZ「・・・・・」

 

私は、意識せずに向けていた信頼に驚きを感じつつも

それを表に出さぬよう抑えて、『希望』を持って神社へと向かった。

 

「やぶれた世界」

 

今いる、所々傾いた感じになっているこの家は

恐らく現実世界の「霧雨魔法店」であろう。

 

この異世界においても変わらず乱雑した床や

本棚・テーブルには、もともと何が何だか分からない魔法グッズやキノコが

さらに歪められて、もはや『何か』になっている。

 

ムゲン「しっかし・・・ここはすごい汚れているなぁ・・・」

    ああ、咲夜・・・ちゃん?でいいかな?

    座りにくかったらこのタオルの上に座るといい」

 

そう言って、コーヒーを淹れている片手間に、バッグから一枚の大きな

バスタオルを取り出して床に広げる。

 

咲夜「・・・では、失礼して」

私は博士に一礼して、ゆっくりと。恐る恐る腰を下ろした。

 

その途端、体に何か違和感を感じた。

まるで、自分の体重が軽くなったかのような奇妙な感じだった。

 

ムゲン「・・・ム?ああ、そこは重力が「軽く」なっている。

    言う事を忘れてしまっていたが、大丈夫かね?」

 

驚き、呆れた。

 

まず重力が軽くなっているという非常識に驚き。

そんなことを伝え忘れていたこの男に対して呆れた。

 

いや、それよりも・・・。

 

咲夜「ムゲン博士・・・」

 

ムゲン「ム?何かな?」

 

咲夜「あなたは・・・ここのことを・・・。

   いえ、あの怪物や神のことも。

   一体、どこまで知っているのですか?」

 

ムゲン「どこまで・・・と言うのなら。

    100%中30%・・・程度かな」

 

咲夜「では、知っている限りのことを教えてください」

 

ムゲン「・・・いいが、このことは必要以上に他人に語らないことを

    約束してくれ」

 

咲夜「約束します」

これは、半ば嘘だった。

 

お嬢様には、話しておくべきか。

そう思っていた。

 

しかし、そのことを決して表には出さずに博士のことを見つめた。

 

ムゲン「・・・うん。分かった。

    ぞれじゃあ、コーヒーも沸いたことだし。

    これを飲みながら話すとしよう」

 

そう言って、博士は黒い液体が注がれた白いマグカップを渡し

饒舌にこの世界のことについて語り始めた。

 

~博士説明中~

 

ムゲン「・・・と、こんなとこかね」

 

私は、博士が渡したコーヒーを少しづつ飲みながら

手元に残っていた手帳と、博士から借りたペンを使って

大体のことをメモした。

 

まず、

・この世界は、どの世界の常識も通用しない

・重力は信用できず、所々反転したり、軽くなったりと歪んでいる

・時間・空間の概念も狂っている

・目に見える物体が存在するとは限らず。

 逆に目に見えない物体が存在しているという事がある

・この世界の支配者は『ギラティナ』

・先程の生物は時間神『ディアルガ』

 

これらのことを、時に哲学的に、時によく分からない単語も使って

長々と説明していたため。

充分に要約して短めに書いた。

 

咲夜「時間神・・・」

私は、震えた。

通りで、あの時。時間が止められなかったと思った。

 

それに、この世界でも時間が止められないのは

時間の概念が狂っているという事だからとも知らされた。

 

ムゲン「・・・そういえば、君のことをまだ聞かされてなかったな」

 

満足そうにコーヒーを啜りながらムゲン博士が発した。

 

咲夜「私のこと・・・ですか?」

 

ムゲン「そう。君だ。この世界にいると、代り映えのない異常なこと続きで

    現実味が無くなってきてしまってね。

    ちゃんと、君の話を聞いて現実を実感したいんだ」

 

そう言ってきた。

 

咲夜(・・・まぁ、別に減る物でもないし。いいかな)

 

そう思ったため、この現実味を求める博士に。

幻想郷(こっち)での現実を教えた。

 

~従者説明中~    

 

ムゲン「あーちょっと待ちなさい。

    ・・・もう一回言って?」

 

さっきからこの繰り返しだ。

どんなに丁寧に、説明しても分かってもらえないらしい。

 

だったら、これ以上説明するのは無駄と判断して会話を中断した。

 

ムゲン「・・・う~ん・・・ちょっと理解しがたい・・・

    ・・・君の主に合えば、分かるかもしれんが・・・

    吸血鬼かぁ・・・本当だったら実に興味深いがなあ・・・」

 

そんなことをブツブツと呟いている。

 

と、その時。

 

『ギゴガゴーゴーッ‼』

 

空洞に風が吹き込むような音がした。

 

ムゲン「おお!ギラティナが外へ出ようとしている!

    さては、ディアルガを逃がしたな・・・

    ああ、君は危ないからここにいなさい」

 

咲夜「いえ、私も同行します」

 

ムゲン「・・・だったら、こいつを連れていけ」

 

そう言って渡されたのは、いつか見た紅白球。

 

ムゲン「そいつは『タテトプス』。

    防御力に関してはピカ一だから、君のことを守ってくれるはずだ」

 

そう言って、そそくさと外へ出ていく。

 

咲夜「・・・」

 

私は、手に渡された紅白球を眺め、それをポケットに入れてから

ムゲン博士の後を追った。

 

To be continued・・・




うろ覚えキャラクタープロフィール「ムゲン博士」
年齢:推定40代前半
ポケモン:・タテトプス
     ・ズガイドス
     ・???
性格:適当で抜けているところが多いように見えるが
   正義感と探求心と責任感を持つちゃんとした(?)大人。
   変人ではあるが良識人。
博士:れっきとしたポケモン博士であるが
   長い間「やぶれた世界」で生活しているため
   現実世界での認知度は低い。(と思われる)
リュック:多くの機械が取り付けられている上に
     かなり多くの物が入る。重たいらしい。


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47ページ目 VS!レジギガス その②

遅れた言い訳。

足の小指を骨折しました(´;ω;`)

待ってくださり、ありがとうございます。


「妖怪の山 守谷サイド」

 

早苗、諏訪子が作り出したこの隙を逃すまいと特攻を仕掛ける。

そして、巨神がこちらに手を伸ばしてくるのは想定内。

 

天狗の話によれば、その攻撃パターンは3~4つ。

あの拳による直接攻撃に気をつけておけば、問題はないと言う。

 

その言葉を思い出しながら、伸ばされたその腕を払い落とすべく

スペルカードを詠唱。

 

神奈子「神祭『エクスパンテッド・オンバシラ』‼」

その言葉と同時に、背中の注連縄に備えられた御柱が、弾幕として具現化。

 

それが、避けさせる気も与えないほどの超高速でその腕を滅多打ちにする。

その時、腕にダメージを与えたのか、まっすぐ伸びていた巨神の腕が

下へと垂れ下がるようにして降りた。

 

神奈子(倒せる!・・・山を荒らしたコイツを‼)

完全な勝利への確信。それは、まるで麻薬のように神奈子の心理を満たした。

 

それならば、気づかぬことも無理はなかっただろう。

 

巨神の持つもう一本の巨椀が、神奈子ではなく「早苗」の方へと向けられたことに。

 

早苗「え・・・」

最初に当然、早苗が気づく。

 

諏訪子「おっと!?」

それを察して、諏訪子が焦る。

 

神奈子「早苗!そこを離れ・・・」

そのことに気が付いた私が、避けるように言葉を発する。

 

その言葉は、途中で掻き消えた。

 

何故なら、巨椀が洞筒となり。

発射口とかした掌から巨大なレーザーが轟音と共に早苗を襲ったからである。

 

:はかいこうせん:

 

私は、この時ほど後悔したことはなった。

悔やんだことはなかった。

絶望したことはなかった。

悲しんだことはなかった。

怒りを感じたことはなかった。

 

 

私は、それらの黒い感情が混じり合った声で叫んだ。

神奈子「早苗えええぇぇぇぇぇぇ‼‼」

早苗「え、あ、ハイ?」

 

また・・・。

その時ほど安堵と驚きを感じたことはなかった。

 

背後から確かに早苗の声がし、振り向けばそこに平然として立っていた。

さっきと違うところを上げるとすれば、隣にいつか見た人物が立っていた

ということだけだった。

 

???「ほらー。お嬢ちゃん、危ないよぉー。

    あんなレーザーすぐ察知して避けられないと霊夢には勝てんぞぉ―」

早苗「え、あ・・・ああ、酒臭い!あなたお酒臭いです!」

 

早苗が酒臭いと称したその人物。

 

白のタンクトップにも似た洋服をラフに着こなし

空色のスカートをたなびかせる少女。

しかし、その頭からは桜の枝のように曲がった二本の巨大な角が生え

手首には三角やら球型やらの重りが鎖で繋がれていた。

 

当然、そのような姿・身体をしているからには人間ではない。

妖怪も妖怪。その妖怪の頂点に君臨する最強の種族。

その筆頭。

 

神奈子「『伊吹・・・萃香』・・・・」

 

萃香「うんむ。幻想郷最強妖怪の一人、萃香様だ―」

 

その正体を確認してから、早苗の無事も確認しひとまず安堵。

 

しかし、その安堵と同時に生じる疑問。

「なぜこの鬼は早苗のことを助け出した?」

 

その疑問の答えは、至極簡単な物であった。

 

萃香「元この山の主としてこれを守るのは至極当然。ヒック

   たまたまだよ、彼女が助かったのは。

   私の機嫌が良かったからなんだ」

 

至極簡単な物だけに、さらなる疑問が生じる。

「山が襲われているのに、機嫌が良い?」

 

その疑問の答えは・・・

萃香「私やこの山の妖怪達。

   それら全てを相手にしても顧みない態度とそれに見合った力量。

   それに、山を動かすくらいの腕力!

 

   山を支配したこの能力と、どっちが強いか気になってね。

   機嫌が良くなったんだよ。

   

   こいつが、みじめに私の手によって敗北することに対して・・・

   私は今、とても上機嫌なんだ♬」

 

そうして笑った。

その笑みは、完全に狂人のそれを含んでいたことに私は気づいた。

しかし、その笑みも長く見ることはできなかった。

 

次の瞬間には笑みと共に姿が消えていた。

 

消えて、その巨神を殴り飛ばしていた。

 

萃香「さぁて・・・第二ラウンド・・・始めっ!」

 

「博麗神社 霊夢サイド」

   

普段なら、鳥の鳴き声や虫の音色。木々が奏でる静かな喧騒が包む

霊験あらたかな深々とした神社であるが、この時だけはそれもなかった。

 

神社の境内には、大勢の人間たちが集まり、皆それぞれの不安を表していた。

 

なにせ、この幻想郷ができて以来。

不動にして寡黙を守り続けた妖怪の山が動かされたのだから。

 

里の人々の不安は、それこそ計り知れないほどであろう。

 

霊夢「・・・」

魔理沙「なぁ霊夢・・・行かなくてもいいのか・・・?」

 

魔理沙は、私に向けてかなりの不安とイラつきを含んだ声で聞いてきた。

 

霊夢「大丈夫よ。あの山の異変は、あそこの神達に任せてあるし。

   それに保険として、萃香も向かわせといたから」

 

魔理沙「萃香をか・・・それでも、万が一という事もあるだろう?」

 

霊夢「万が一があった時のために、私はここにいなくてはいけないのよ」

 

私も、少しイラついていたのかもしれない。

いつもより刺々しい声で魔理沙に応えてしまった。

 

霊夢「紫と藍も言っていたでしょう?

   私は、「博麗 霊夢」という「巫女」。

   言葉にするなら、「幻想郷の守護者」。

   その守護者が、里の人間達をここに残して単身山に行ったとなれば・・・

   当然。里の人たちはパニックになる。

   

   万が一・・・そう、万が一。萃香も山の神も倒されてしまったら・・・

   

   誰が、この人達をまとめるって言うのよ?」

 

私は、そう説明した。

この説得においては、魔理沙も特に言い返すことは無いだろうと思ったが。

今度は、

 

魔理沙「お前が行けないのなら、私が行ってきてやる。

    どうしても心配だからな」

 

そう言ったが・・・私は反対の意思を込めて首を横に振った。

 

魔理沙「ああ!?なんでだよ!?」

既に魔理沙はキレ気味である。

 

霊夢「あなたが行く必要はない・・・全部萃香と山の神に任せときなさい。

   それに・・・あんたが行って・・・戻ってこなかったら・・・」

 

私は、自分でも何を言っているのかと思ったが、時すでに遅し。

 

魔理沙が、さっきまでの不機嫌はどこへやら。

ニヤニヤとこちらを見て楽しそうに笑っていた。

 

魔理沙「・・・」ニヤニヤ

霊夢「な・・・何よ・・・」

 

思わず声が裏返り、つっかえる。

それを聞いた魔理沙はさらに楽しそうに、嬉しそうに笑い

 

魔理沙「そうか・・・霊夢がそう言うんじゃーしょうがないかなー。

    いやー・・・霊夢がそんな風に私のことを(霊夢「蹴とばされたいのかしら?」

 

魔理沙「おおう、怖いぜ」ニヤニヤ

 

魔理沙は、さっきまで「怒りを募らせていたことなんてありませんよ」と言うかのように

ご満悦な調子だ。

 

私は、そのことに不満を覚えながらも。

私が現場に行けない理由と、魔理沙に行ってほしくない理由を伝えられたため

それでいいか、と思った。

 

魔理沙「あ、ああ・・・それと霊夢。

    お前、この異変はいつまでに終わると思う?」

 

霊夢「ああ、なんだそんなことね・・・そうね。

   

   大体、朝日が昇るころかしら?」

 

「博麗神社 AZサイド」

 

私は、少しばかり驚いた。

話によれば、異変があったらすぐさま駆けつけるだろうと思っていた巫女が。

まだこの神社にいたという事に多少なりとも驚愕した。

 

AZ「まさかまだ出発していなかったとは・・・」

思わず口に出ししまった。

 

その声を聞いた阿求は、少し納得したような表情で

阿求「霊夢さんは・・・多分ですけど、何か考えを持って

   動かないのだと思いますよ。

   霊夢さんは勘で行動する人ですから」

 

AZ「ならば、魔理沙はどうなのだ?」

 

小鈴「きっと、魔理沙さんにも動けないほどの理由があると思いますよ。

   仮に、そういう理由がなければすぐ動く人ですし・・・」

 

レミリア「それに、この異変は明け方には終わってるわ」

 

小鈴・阿求「「!?」」

AZ「な・・・」

 

 

再び驚いた。

 

いつからだろうか。小鈴の隣にいつの間にか、あの時の吸血鬼が立っていた。

 

AZ「・・・いつからそこにいた?」

 

レミリア「あら?随分と私に対する口の利き方が変わったじゃない?

     それほどまでに偉くなったのかしら?外来人さん」

 

かなり高圧的な言い方。喋り方はあの時から全く変わっていなかった。

しかし、何故この吸血鬼はこの神社にいるのだろうか。

それは当然の疑問であり、それを聞こうとしたが・・・

 

小鈴「な、何故あなたがここに・・・」

 

私よりも先に小鈴が理由を聞いてくれた。

 

レミリア「別に、霊夢に聞きそびれたことを聞こうとやってきたら

     山が動いて、人がたくさん来て。

     霊夢から「あんた姿消したりできる?」って言われたから

     とりあえず陰に隠れたりして姿を消していただけよ」

 

要するに、霊夢から姿を人に見せないよう頼まれたから影に隠れていた。

ということらしい。

 

 

AZ「・・・いや、それよりも。   

  確かこう言ったな。「明け方には異変は終わる」と・・・」

 

私は、胸の内から沸き起こった疑問をストレートにぶつけ

吸血鬼レミリアはそれをキャッチし、カーブにして答えた。

 

レミリア「霊夢が、そう言っていたのと・・・。

     私の運命操作能力・・・それによってこの異変の明暗は

     既に決定してあるのよ。

     それと、さっきそこの稗田の家のお嬢さんが言ったように

     霊夢には当然考えがある。

     あの白黒はどうだか分からないけどね」

 

AZ「ふむ・・・ならば、私達も待たざるを得ないだろう」

 

小鈴「AZさん?」

 

AZ「今の私達は、少しポケモンが扱えるだけの人間だ。

  基本的に妖怪や巫女が大体の法律を決めている以上。

  勝手に動いてもいいことは無いだろう」

 

レミリア「そう、それが正しく賢い判断・・・。

     そのうち、あの山の支配者たちが解決することでしょうよ・・・」

 

そうレミリアは呟き、少し不満そうに微笑んだ。

 

「やぶれた世界」

 

ムゲン「おお!間に合ったか!」

 

博士に連れられて、重力や空間が歪んでいる道を走ってきた私は

その『現場』へとたどり着いた。

 

そこでは、時間神がこの世界から抜け出そうとしているところであった。

 

 

時間神は、胸の水晶体に力を溜め込み、そこから口へと

エネルギーを移動させて、虚空に向け・・・。

 

ムゲン「!、ヤバイ!サクヤちゃん、ボールを投げろ!」

    

 

私は、博士の言葉に従って腰に下げたボールを地面へと叩きつけ

中からさっきのポケモンが出てくる。

 

「コッフォン」

ムゲン「タテトプス!「まもる」!」

 

博士が、そのポケモンに守備命令を発し、博士がこちらへ走り

そのポケモンの後ろで屈む。

 

咲夜「え、えっ、え?守るって、これで!?」

ムゲン「大丈夫だ、いいから伏せていなさい!」

 

次の瞬間、すべてが止まって見えた。

いや、止まったように見えるほど時間が遅くなったのかもしれない。

もしくは、止まったように見える程時間が瞬間的に速くなったか。

 

耳を貫く爆音は、一つの光線となって虚空に穴をあけた。

 

:ときのほうこう」

 

咲夜「うっ・・・うう・・・」

あまりの熱量と光。音に怯み、耳をふさいで目を閉じた。

 

死んだ。絶対!

 

そう思ったが・・・

 

ムゲン「・・・終ったぞ、サクヤちゃん。

    さ、もう大丈夫だ」

そう言って、博士が私の手を取って立たせてくれた。

 

そこで見た光景は、恐ろしいものだった。

 

咲夜「こ、これは・・・」

 

 

辺りは、グネグネと歪み、逆さまに流れていた滝は、少しばかり細くなっていた。

先程の光線・・・いや、咆哮によって崩れた岩石や浮島は

パラパラと、じれったく思える程遅く下へと落ちていた。

 

無事なのは、博士のポケモンが守ってくれた個所だけ。

つまりは、私達がいたところ以外は全て壊されていたという事である。

 

ムゲン「・・・なんということだ・・・」

博士は、かなり落胆したような、恐れたような表情でその光景を見ていた。

 

それを見て、私は思い出した。

 

『この世界は、現実世界と密接にリンクしていると』

 

それがこの被害・・・。

現実世界で、どれほどの影響が出たか計り知れなかった。

 

 

しかし、それもただの杞憂に過ぎなかったのかもしれない。

 

 

先程の主が、辺りを飛行し、崩れた浮島や滝の周りを回った。

すると、みるみるうちにそれらが再生され。

 

先程まで崩壊しかけていたとは思えないほどにまで回復された。

 

咲夜「・・・」

私は、ただただ圧巻された。

 

そして理解した。

 

この世界は、向こうの世界と互いに支え合いの構造になっていると。

 

 

そう思っていると、博士が私の肩を叩いて、私の前へ続く道を指さした。

 

ムゲン「見なさい。ギラティナが再生したお陰で・・・」

 

私は、そこまで聞いて指さす方を見てみた。

そこには、確かに虚空だったはずの場所に、青色に輝く穴が開いていた。

 

ムゲン「あれに入れば、現実世界へと帰れる」

 

それを聞いて、私はとても嬉しく思った。

と、同時に奇妙な寂しさも味わっていることに気が付いた。

 

咲夜「あ、あの・・・いろいろと、ありがとうございました」

私は、その妙な寂寥感を紛わせるために。

今までの感謝を伝えるために頭を下げた。

 

ムゲン「うん。君も、私の話に付き合ってくれてありがとう。

    今度は、この世界に来ないように気をつけることだね」

 

咲夜「あ・・・ハイ!それでは、さようなら」

 

ムゲン「うん。元気でやることだね!」

 

 

私は、その挨拶を背に受けながら穴を目指して走った。

 

その時。

ムゲン「・・・あー!ちょっと待ちなさい!」

 

博士の言葉が耳に届いた。

 

ムゲン「まだ、『タテトプス』のボールを返してもらってない!」

 

私は、その言葉を聞き、腰に手を当ててみれば。

成程、確かに紅白球がついてある。

 

しかし、私は既に穴の中に半身を突っ込んでいた。

 

咲夜「す、すいません!返しますからあぁぁァァァ...」

 

ムゲン「待ちなさいと言っているだろぉぉぉォォォ...」

 

私は、自分の声と博士の声が青色の穴の中で

響き、小さくなっていくのを感じた・・・。

 

To be continued・・・




酷く久しぶりだったので、かなり多くなりました。


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48ページ目 鬼神VSギガインパクト

夢の対決(?)

そして、ちょっと短めです。


萃香「ほらほらほらほらほらぁ!」

ガゴン!ドゴン!ガゴッ!ドゴッ!

 

甘かった。そして見くびっていた。

圧倒的な拳の威力、そして手数。無数のいわなだれのような猛襲。

 

この戦闘方法は、『彼』が地下に行った過程の途中で耳にした。

 

額からそびえる猛々しい朱色の角。

細身で、軽いように思える肉体からは想像がつかないほどの破壊力。

そしてこの好戦的な態度。

 

間違いなく、『彼』が地下で玉砕した者と同じ・・・。

 

素早さで言えば、私と同程度。

拳の威力は、私よりは弱い。

 

だが、その小さな体躯では、こちらの攻撃が当たらない。

 

 

拳を打ち当てて、体力を吸い取ろうとするも躱され。

光線で焼き払おうとしても、発射前に拳を叩き落とされる。

高速で動き、分身を生み出しても、片っ端から光の玉でかき消される。

 

「ズズッ!ズズゥ!」

 

私は、その拳やら蹴りやらを身に受けるたびに呻いた。

 

萃香「ほらっ!ほらぁ!どやぁ!どりゃあ!」

 

攻撃は休まる気配がない。

向こうの体力が減っている様子もない。

 

『このままではジリ貧だろう』

 

そう判断し、思いっきりそこから跳んで場を離れた。

 

萃香「・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

 

向こうは、さっきまでこちらを攻撃していた現場から私を見ていた。

私も、その無尽蔵の体力を誇る怪物を見ていた。

 

萃香「あぁ~・・・これじゃあつまらないねぇ」

「?」

 

 

萃香「やっぱり・・・まぁ、これだけやっておいてなんだけど、さ。

   純粋に『力比べ』をしないかい・・・?」

「ズズゥ・・・」

 

それは、提案・・・もとい、『ちょうはつ』だった。

 

その言葉の中には、「好奇」と「怒り」の『感情』があり。

「打倒」と「勝利」への強固な『意志』があり。

「相手をよく知る」という、何十年も何百年も過ごしてきた『知識』があった。

 

要は、「戦いの仕切り直し」・・・。

 

萃香「さぁ・・・やろうか・・・

   

   最終ラウンドだ!」

 

その言葉をゴングに、こちらへ駆け出してくる。

 

 

ならば、迎え撃つ。

向こうが、こちらの攻撃を真正面から受ける覚悟と意志があるのならそれに応える。

私は、握り固めた拳を天空に掲げ、さらに力を籠める。

 

そうしている間も、怪物は向かってきくる。

すると、怪物はどこからか取り出した一枚の紙・・・カードを右手で包んで握りつぶし

私と同じように天に掲げた。

 

萃香「鬼神『ミッシングパープルパワー』!」

 

呪文を詠唱した直後、その小さな体躯が一回りも二回りも大きくなり

ついには私と同程度に。

 

そのことに驚愕。しながらも、集中は切らさず。

 

自分が今できうる限りの。最大威力の技を・・・・MAXで!

 

 

:ギガインパクト:

 

 

お互いの巨大な拳が迫る。

 

圧倒的な衝撃を纏う巨拳が。

鬼神の妖術によってさらに強化された鉄拳が。

 

ひび割れ、大量の砂塵を発生させる妖怪の山の麓で。

 

幻想郷最強の『拳』を求めて衝突した。

 

 

・・・

 

「妖怪の山 中腹」

 

そこでは、修羅場が巻き起こっていた。

 

にとり「ゴルダック!『ハイドロポンプ』!

    エイパム!『なげつける』!」

 

河童。河城にとりは、自分の持つポケモンを使い、何をしているのだろうか?

彼女がポケモンに技を命じる方向。

 

そこには、鋼色の怪物。蛇のような岩。腕が生えた岩石のようなもの。

つまり『ポケモン』達。

 

唐突に起こり静まることのない大地震に驚き、傷つき、混乱したポケモン達が

互いを傷つけあって暴れていたのだった。

 

それはもはや二次災害。

木々に移った火炎や、地面から突き出る岩石。

 

にとりは、それを止めるべく自らと自らのポケモンを駆使して孤軍奮闘をしていた。

しかし・・・

 

にとり(うう・・・ヤバイかも・・・)

 

その圧倒的な量と、ここの戦闘能力ににとりのポケモン達は押され気味であった。

にとり自身も、弾幕とスペルカードを駆使し押留めていたが、今持っているカードが

『最後の一枚(ラストスペル)』。

 

それを失ってしまったら、打開策がない。

 

にとり(もう・・・『この子』しか・・・!)

 

そう。にとりが隠すように持つモンスターボールの中にいるのはポケモン。

言う事を聞かない、暴走「オノノクス」。

 

下手をすれば、自分もポケモンも攻撃されかねないが、今持っているポケモン達は

既に瀕死寸前。

 

これが、最後の希望であり、賭けだった。

 

にとり「え・・・ええい!ままよ!

    私の言う事を聞けえええい!」

 

もうやけくそとなり、そのモンスターボルを投げる。

 

そのボールは地面に触れた途端に開き、中から刃の如き牙を備えたドラゴンが飛びだした。

 

「・・・・・」

 

にとり「う・・・うう・・・えと・・・言う事を聞いて・・ね?」

 

そう震ええながら話かけるが、無視。

 

すると、「メキメキ・・」と音を立てて、消化しきれなかった炎により

一本の木が音を立てて崩れ落ちた。

 

それにより、少し落ち着いてきたポケモン達も興奮し始めた

それを『水を操る程度の能力』で消火しようとするが、オノノクスが混乱するポケモン達

の前に立ち、息を大きく吸い・・・

 

「ゴガララララララァ!」

:ほえる:

 

竜の声帯から出される大音声で、辺りは一瞬にして静かになった。

まさに「鶴の一声」・・・もとい「龍の一吠え」。

 

吠えたオノノクスは、ゆっくりと燃える木々に近づき。

頭を少し揺らした。

 

にとり「・・・?」

 

私は、急に吠えたオノノクスに怯えながらもその様子を眺めていた。

 

すると、燃えている木々は次々に、綺麗な切断面を晒して地面に崩れた。

それを見ていた私に向かってオノノクスは、何か言いたげにこちらを振り返った。

 

にとり「・・・・・・」

 

私は、向けられた視線に目を合わせ・・・・・・

 

『早く消化したらどうだ・・・?』

 

にとり「!?えっ・・・」

 

急に頭の中に、成人男性のような鋭い声が響いた。

私は、その言葉に命じられるように水の弾幕で、倒れた木々を素早く消化した。

 

すると、オノノクスはさっきよりも小さな声でポケモン達に吠え。

その斧のような牙で木々を切り倒しながら道を作って進んでいった。

 

それを見ていたポケモン達は、何かを察したのか、オノノクスの後を急いでついて行った。

 

にとり「え・・?ええ?ちょっ・・・待って・・・」

 

私は、畳みかけるように起きた事態に困惑しながらも

そのポケモン達の後をついて行った。

 

と、その時・・・・

 

 

ドォン!ドカァン!ガガァン!

 

背後・・・玄武の沢から爆音が響いた。

 

 

見れば・・・「何か」が三体いる。

 

一匹は水色の氷山のようで。

もう一匹は鋼色の壺をひっくり返したようなもの。

もう一匹は、石を適当にくっつけて作った人形のような・・・。

 

そいつらは、玄武の沢付近。妖怪の山の岩壁を滑って降りてきたらしい。

岩壁に、三つの線(うち一本は凍っている)があったからそう判断した。

 

私は、そいつらの正体も何も知らないが。

 

『私が勝てる相手ではない』と直感で判った。

 

 

私は、そいつらが追いかけてこないかを確認しつつ、ポケモン達の後を追って

駆けて行った。

 

To be continued・・・



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49ページ目 決戦、決着

遅れてすんません。
そして気付けば50話目。


「博麗神社」

 

………ォォォォォォオオオン‼

 

それは唐突に届いた。

何か、隕石でも落ちたのではないかと錯覚するほどの轟音。そして振動。

それらが一つの波となり、鼓膜だけではなく全身を震わせる風となり。

私達を大変驚かせた。

 

魔理沙「うわぁっ!?・・・なんだ、今の・・・」

霊夢「・・・~~っ!・・・耳が痛いわ・・・」

AZ「ぬぅ・・・くっ・・・」

小鈴「あぅ、あぅ・・・耳がぁ」

阿求「うぅーん・・・耳だけじゃなく、体も痛いわね・・・」

 

レミリア「・・・どうやら、決したようね・・・」

 

反応はそれぞれ三者三葉で、その殆どが突如現れた大気の振動に動揺していた。

その中でただ一人、動揺の色を見せなかった吸血鬼。レミリアは俯いてそう言った。

 

魔理沙「えっ?決したって・・・この異変がか?」

霊夢「他に何があるってのよ・・・レミリア。どうなったか分かる?」

レミリア「分からないわ・・・でも、立っているのは一人だけ」

 

私はそれを聞いてまず安堵。そしてその後に背筋が凍るような不安が駆け抜けた。

魔理沙「どっちが立っている?」

レミリア「だから分からないと言っているでしょう?

     そんなに気になるなら見に行けばいいじゃない。ねぇ、霊夢?」

 

霊夢は答えない。悩んでるようにも、困ってるようにも見える表情のまま俯いていた。

 

霊夢「・・・なら、あんた達だけで行ってきなさい。

   私はここを動けないんだから」

 

私はそれを、「承諾」の返答として捉えた。

 

魔理沙「・・・吸血鬼と一緒か・・・」

レミリア「あら?嫌そうじゃない。私も嫌だけど」

 

魔理沙「・・・まぁいいや。私は行くぜ」

レミリア「べ、別にあんたが心配だからついて行くんじゃないんだからね!」

魔理沙「本当にそういう訳じゃないんだろう?」

レミリア「御名答」

 

そんな掛け合いをしつつ、私はほうきに跨り、高スピードで上昇して

涼しい夏の夜風を全身で浴びながら妖怪の山へと向かう。

 

レミリアもまた、吸血鬼の威厳の一つである蝙蝠の翼を羽ばたかせて

飛翔する。そのスピードは私よりも早かった。

 

魔理沙「くそぅ・・・やっぱ妖怪には勝てないか」

『妖怪でも勝てないかもしれない』

 

私は、明らかに不安を感じていた。

立っているのが一人、という事実を聞いた時の安堵は消え去り

同時に感じていた不安が大きくなっていた。

 

『妖怪でも勝てないかもしれない』

 

その不安は、一つの幻聴となって。

先程の衝撃とはまた別に私の体を震わせた。

 

『妖怪の山』

 

私は、自慢のスピードで人里から戻っていた。

風に乗り、気流にまたがり、山へ。山へ。

 

それはいきなり来ていた.

 

 

ド‼……ォォォォォォオオオン‼‼

 

 

まずは、大きな振動。巨大な鉄球同士がぶつかり、押し合ったかのような激突音。

続いて、衝撃。それはもはや地震だった。

地面だけでなく、大気。水、炎。樹木。人間も妖怪もポケモンにも。

等しく与えられる、とてつもない風と音。

 

それは、天狗である私にもかなり響いた。

 

射命丸「ぅ・・・イタタ・・・」

余りの衝撃に、空中でバランスを崩しそうになったが持ち直し、また山へ。

 

私は、正直に言ってこれほどまでの・・・『黒い感情』を味わったことはなかった。

 

殺意。憎悪。嫌悪。憤怒。悲哀。焦燥。後悔。

 

それらはもう、私の血と肉を構成するモノになったのではないかと思う程。

私はその感情を全身で浴びていた。

 

しばらく飛んで、見えてくる。

 

妖怪の山よりも巨大になった砂煙。そしてその中で微かに見えるもの。

倒れた樹木。転がり込んできた大岩。抉れた地面。

 

射命丸「・・・・・」

私は・・・1000年近く生きてきた人生の中で、何度か天災を起こす神。

『祟り神』に会ったことがある。

 

この様相はまさにそれだった。

 

とても、一体のポケモンと一人の鬼が起こした事態とは思えない。

勿論、そのポケモンも巨大で強力。その鬼も凶悪で狂暴であることは知っている。

 

しかし、これでは神の仕業。

龍神様や、ミシャグジ様。八咫烏や、須佐之男命等の気性の荒い神の領域。

 

そこで私は気づいた。

ここでは、神が戦っていたことに。

 

巨神VS鬼神

 

 

恐らく、この様子では決着がついたのだろう。

 

射命丸(萃香様・・・どうかご無事で!)

私はそう思い、団扇を扇いで風を起こし、砂煙をかき消す。

 

 

・・・まず、見えてきたのは天を衝く巨体。

次に鮮やかな緑が顔を出し、巨大な剛腕が姿を見せた。

 

そいつ(巨神)は立っていた。

 

射命丸「     」

私はその時、なんて言ったのかは思いだせない。

恐らく・・・私が知っている中で最も汚い言葉を使ったのだと思う。

 

私は、こいつに。溜め込んでいた『黒い感情』を吐き出すべく

ありったけのスペルカードを掲げて叫ぼうとしたとき・・・。

 

「やめろ」

 

射命丸「ッ!?・・・」

 

全身が凍り付いたかと思った。

もうこれは止められないな。と、思うほどに燃え上がった『黒い感情』は

たった一言。静止の命令で瞬く間に冷やされ、凍結した。

 

このトーンの声を聞いたのは何百年ぶりだろうか。

 

萃香「・・・」

 

伊吹萃香。

かの悪名高い大妖怪。『酒呑童子』。

 

常に酒に酔い、はたから見れば気楽な鬼の四天王。

 

しかし、その正体。

外の世界において、数々の村を。都を。町を。京を破壊してきた鬼神。

 

この声のトーンは、『酔いが醒めたときにだけ発する』ものだった。

 

つまり、完全な本気。鬼の本質。枷が外れた状態。

 

 

しかし、肝心なその姿は満身創痍。

服はもう既に所々が破け、煤けていた。

角は右側の先端が少し欠け、右腕に至っては肘から先が存在していなかった。

 

射命丸「萃香様!その腕は・・・」

萃香「そのうち治る。騒ぐな」

 

私はそう言われて怯み、思わず口に手を当ててしまった。

萃香様はその様子を見て少し苦笑し、すぐに巨神の方へと視線を向ける。

私もそれにならい、視線を向けると。

 

ズッ・・・ズゥ・・・

 

鳴き声が聞こえた。

生きている!

 

萃香「・・・これはもう、勝負にならないな。

   お互い満身創痍・・・いや、向こうはまだ少し動けるかな・・・。

   兎にも角にも、私は動けない・・・。射命丸」

射命丸「!、ハイ‼」

 

萃香「後は任せた・・・。私は少し休む・・・」

 

そう言って、萃香様から上がっていた鬼の気は消え去り

瞼は力なく落ちて萃香様は膝から倒れ伏した。

 

射命丸「・・・・・」

私は、奇妙な安らかさを感じていた。

 

確かに、私の内にはまだ『黒い感情』が渦巻いている。

しかし、それは暴走することはなく。

 

私が使うべきカードを選んで、私の手の内に包んでくれた。

 

射命丸「突風『猿田彦の先導』」

 

妖怪の山に、その言葉が静かにこだまし。

山から吹き下ろす寒風は巨神の体を打ちのめして地に伏せた。

 

射命丸(そういえば、山の神達は・・・)

萃香「私が帰らした。今では彼女らがこの山の”表”の支配者だからね。

   仮にあのデカブツに踏みつぶされでもしたら、紫が不機嫌になりそうだからね」

 

萃香様は、私の心を見透かしたように。横たわりながら呟いた。

 

辺りはとても静かだ。

風はなく、蝉の声もない。

遠くから聞こえる川のせせらぎだけが辺りを荘厳に清めている。

 

今、立っているのは私一人だけ。

巨神はもう動かない。

 

 

勝ったのは、私「達」だった。

 

「妖怪の山 玄武の沢」

 

「じゃきー!」

「じじぜじぞ!ぜぜじぞ!」

「ざざざりざりざりざ!」

 

静寂を切り裂くような機械的な生物の声。

 

零度以下の光線や、鋼色のビーム。突き上げそびえる咎岩。

それらが、あたりを凍らし。破壊し。地形を変えていた。

 

しかし、それも全て結界の中。

音はしても漏れることはなく。攻撃も外へと出ることも無く。

 

その三匹の怪物を前に余裕の笑みを見せる者が一人。

妖怪の賢者、「八雲 紫」。

 

彼女は、創りだしたスキマの中から一つの紅白球を取り出して。こう呟く。

 

紫「・・・さ、よい子は寝る時間よ・・・?」

 

To be continued・・・




うろ覚えキャラクタープロフィール。『伊吹 萃香』。
種族:鬼
性格:ひょうひょうとしていて、つかみどころのない。
   常に酔っているため、言動もよく分からないものが多い。
   しかし、決して怒らせてはいけない。絶対に。
能力:疎と密を操る程度の能力。
解説:端的に言えば、密度を操る能力。
   具体的には、人を集めたり(人口密度)。酒を濃くしたりする。
   また、自分に使うこともできる。
   疎にすればその体は細分化し、霧のようにもなる。
   密にすれば、その体は巨大化し、質量・重量も増える。
酒:無類の酒好きで、人生のほとんどを酔って過ごしていると言われる。
  名称はここでは忘れたが、『無限に酒が湧き出るひょうたん』を持つ。
  そこに入っているのは神酒にも劣らない大吟醸。飲んでみたい。


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50ページ目 異変解決

久しぶりすぎて、文章とか設定とかいろいろ変かもしれません。


ああ・・・なんて酷いことを・・・。

 

私は、スキマでここに移動したとき。

真っ先にそう思った。そう思わざるを得なかった。

 

倒れた木々。山から削れた岩。抉れた地面。

そして、混乱した動物。妖怪。・・・ポケモン達。

 

紫「・・・・・」

私は、それらの惨劇に一瞥し、スキマを展開して中へと入る。

 

スキマの中。獣の体内のように赤黒く、無数の目が浮かぶ奇特空間。

私は、その中を歩きながら次の行動を取るべく目を閉じた。

 

 

巨神は鬼神によって下された。

そして、天狗が止めを刺したが死んではいない。瀕死ではあるが、殺せていない。

 

殺せていないのなら、回復をする恐れがある。

それは避けなくてはならない。

 

・・・捕獲。

否、弱ってはいても今の河童の技術では不可能。

殺したいところだが、それも難しい。

 

紫「・・・藍?」

私は、スキマの中。その名を呟く。

すると、赤黒い空に浮かぶ一つの瞳・・・スキマの出入り口から一つの影が出てきた。

 

八雲 藍。

私の式にして、ほぼ雑用を任せてしまっている『最強の妖獣』。

その最強妖獣が、一つの箱を抱えて参じた。

しかし、体中傷だらけだ。頬にも深い傷が刻まれている。切り傷だった。

 

 

藍「お呼びですか?」

紫「お呼びよ。・・・早速だけど、貴女の『成果』を見せてもらえるかしら?」

 

そう言うと、藍は何も言わずに持っていた箱を置き、開ける。

 

紫「あら♥十分!」

 

その箱の中身は、辞典並みに厚い一冊の本。

そして・・・。

 

藍「望み通り、紫様が御所望したポケモン。

  捕獲して参りました」

 

そこにあったのは、二つのモンスターボール。

 

紫「ご苦労さま。もう休んでいいわよ・・・走り回って大変だったでしょう?」

藍「いえいえ・・・これくらいなんてことないですよ」

 

そうは言っているが、息が荒い。それに、箱の中の紅白球を持ってみるとほんのり温かい。

 

恐らくさっきまで、この紅白球の中身・・・ポケモンと戦闘をしていたのだろう。

 

紫「ありがとう藍・・・この本もスゴイ・・・」

そう、藍の仕事はポケモンの捕獲だけではなかった。

 

私の注文・・・「幻想郷分布のポケモン」についてのまとめ。

それを、たった数日間でほぼ完成させてしまった。

 

藍「お褒め頂き恐縮に思います・・・しかし、紫様」

紫「分かってるわよ」

 

そう、「ほぼ」完成しているだけで完全とは言えない。まだ余白がある。

 

紫「なら、私が完成させてあげるわ。貴方の頑張り、私が受け継がないと」

そう言うと、藍は微笑して「かしこまりました」と言ってスキマから姿を消した。

 

紫「さてと・・・このコ達を活躍させてあげなくちゃね・・・それと、巨神」

 

捕獲も不可能。殺し切るにも火力不足。

 

ならば『再封印』をするしかない。

そこで一役買ってもらうのが、あの氷・鋼・岩。

 

あの三体は、守谷が仕掛けた強靭な封印を解いた。

その後は、放浪としているところを見ると巨神との主従関係は薄い。

 

いや、幻想郷に来てから主従関係が薄くなったのかもしれないが・・・。

兎に角、奴らは封印を解く『鍵』の役割をした。

 

ならば、逆に。その封印を再度閉じる『鍵』にもなる。

 

紫「今はぶつけられない、パルキアへの恨み・・・

  奴らにぶつけて遊んでやるわっ!」

 

そう言って、私はスキマの中で走り。目的地へと向かった。

 

 

~玄武の沢~

 

逃げる。兎に角逃げる。

 

名前も知らないポケモン達と一緒に、私はオノノクスが切倒して作る

獣道をさっそうと走った。

 

にとり(・・・あの三体はヤバイ・・・多分だけど、私より断然強い!)

私は、さっきまでの光景・・・。

 

生物感を感じさせない、奇妙なフォルムの化け物三体。

それが、崖を滑り落ちてくる様・・・。

 

それを思い出し、少し震えた。

 

にとり「・・・追ってきて・・・ないよね?(チラッ」

そう思って、少し立ち止まってから後ろを見る。

 

「・・・・・・」

と、巨大な抹茶色の怪物に睨まれてしまった。

 

にとり「ヒィ!あ、進みます進みます!」

 

私は、自分が立ち止まったせいで後ろがつかえていることに気づいて

そそくさと間を埋めるべく、オノノクスの背中を追いかけた。

 

それ故に、その時は気づけなかった。

 

 

スキマからゆっくりと紫色の結界が、点と点を結ぶように作られ

三体の怪物と一人の大賢者の姿が幻想にかき消された様を。

 

~玄武の沢「結界内」~

 

「じゃああああああきぃぃぃぃ‼」

:冷凍ビーム:

「ざざっ、ざりざりざり、ザッッ‼」

:ストーンエッジ:

「じじじじじっ、ぜぜっ、じっ、ぞぞ‼」

:ラスターカノン:

 

尖岩に、冷凍光線。そして高圧力ビーム。

 

紫「随分と熱い歓迎ね・・・」

私は、スキマから出て、足を地につけた瞬間。

怒涛の攻撃が私一人に向けて放たれた。

 

紫「ふふん・・・」

しかし、そんなことで動じる程落ちぶれてはいない。

私は、スキマの中からカードを一枚取り出して詠唱。

 

紫「結界『光と闇の網目』」

途端、周囲に無数のスキマを展開させてそこからレーザーを放つ。

赤、青、赤、青。一つづつ編むように重ねていき、そこからさらに光弾をばら撒く。

 

しかも、これは結界の中でのこと。

弾幕は、結界で反射し。レーザーは、高密度で重なり合う。

 

怪物たちが放った攻撃は。

全て弾幕に消され。レーザーで切られる等されて掻き消えた。

 

「「「!?」」」

 

三体は、それぞれ驚きいたようだった。表情は当然のことながら分からない。

ただ、思わず後ずさりをしているところを見ると、かなりの衝撃を受けたらしい。

 

紫「・・・あっ、うぅ・・」

・・・私は、頭痛がしたため頭を押さえた。

紫(いけない・・・能力を使いすぎた・・・)

 

パルキアの切断攻撃を受けて早数日。

能力も身体も衰弱しているのを忘れているわけではなかったが・・・。

 

紫「ここまで深刻化していたのかしら・・・?」

思わず、そんな独り言を漏らしてしまう。

 

すると、ドンッ、と大きな音がした。

 

 

その音の出所を探してみると、どうやら岩の怪物がこちらに駆け出してきたらしい。

重心を、前に向けて走ってきているからかなかなかに速い。

 

紫「・・・愚かね・・・私がそのことを考えてないはずがないでしょう・・?」

そう言って、頭を押さえながら立つ。怪物との距離は3mちょい。

 

怪物が、大きく拳を振りかぶる。

と、同時に紅白球から青色の影が飛びだして怪物にぶつかった。

 

 

紫「ダゲキ、『かわらわり』」

私は、その青い影・・・ポケモンに技を命じる。

 

道着のような物に身を包んだ、青い鬼。

鋭く開かれた瞳と、その細く強靭な筋肉感じさせる肉体からは

圧倒的な攻撃力と好戦的な性質が垣間見える。

 

技命令を受けたポケモン、「ダゲキ」は。

捉えた怪物に向けて固めた左拳をぶつけた。

 

「ざざっ・・・」

怪物は、地面を擦る様な鳴き声と共にその場に倒れた。

 

紫「うん、上出来ね」

「ダゲッ」

 

怪物は、まだ動こうとするが。それをダゲキが押さえて確保。

そのままスキマを出現させて、スキマの中へと収納した。

 

紫「・・・さてと、あと二体」

私は、その残された二体へと視線を向けると、二体ともこちらへ向かって来た。

 

紫「あら勇敢・・・でも、そんな攻撃で大丈夫かしら?」

 

怪物たちは、ただ向かってくる。私は、何もせず。仁王立ちで彼らを迎えることにした。

 

 

紫「さ、そろそろフィナーレね・・・」

私はそう言って、もう一つ。紅白球を天空に投げる。

 

紫「ダゲキ、氷の方に『インファイト』!」

「ダァゲェッ‼」

 

 

ダゲキは、さっそうと駆け出して氷の怪物と真っ向から対峙。

しかし、相手も相手。近づけまいと、冷凍光線や電磁砲で応戦する。

 

だが、それすらも『見切られ』ダゲキの右拳が直撃。

それから足刀。肘。掌底。手刀。左拳と右拳のラッシュ。

 

目まぐるしく繰り出される打撃技のオンパレードに、その氷の体は

みるみる砕かれ、削られていった。

 

紫「大爆発・・・だっけ?

  ふふ、させる訳が無いでしょう?」

 

ダゲキは、フィナーレに長い脚での上段回し蹴りを決め、怪物は倒れ伏した。

 

 

一方、鋼の怪物はそれを気にせずドスドスと進んでくる。

 

紫「さて、これでラストよ」

コツッ。と軽い音がした。

 

結界の中、限りのある天空に、先程投げた紅白球が当たって開く。

 

「・・・・」

そこから落ちるように出現したのは、紺色をした「怪竜」。

 

 

夜か、深い海を思わせる紺色の肉体。

まず目を引くのは、その両腕。

 

手の部分は、真っ白で鋭利な爪を称え

腕部分からは、刃のようなヒレが大きく突き出している。

 

また、腹部に見られる朱色と黄色のマーク。

背中から突き出た大ヒレ。長く伸びた強靭な尾。

金槌のように歪んだ頭部。肘、太ももらしき個所に見られる白い棘。

 

その眼には、静かな殺意がメラメラと燃えていた。

 

紫「戻ってダゲキ」

私はそう呟き、打撃を紅白球に戻してから、氷の怪物をスキマ送りにする。

 

紫「ガブリアス・・・って言うのね?

  よし、ガブリアス。『地震』」

 

私は、ガブリアスに命じてスキマの中へと逃げる。

 

 

そのすぐ後。

スキマの中にも響くような、巨大な振動が辺りに響き、すぐに収まった。

 

私は、恐る恐る隙間から顔を覗かせると・・・。

 

紫「・・・つっよ・・・」

そこにいたのは、倒れ伏した鋼の怪物と。得意顔のガブリアス。

 

勝負は一瞬にしてついたらしい。

 

紫「・・・強いわね・・・まぁ、強くしているんだけど」

 

 

私は、紅白球を開いてガブリアスを中へと入れる。

その紅白球には、一枚の札が巻き付けられていた。

 

紫「藍の作った、『式神増強』の符・・・予想以上ね。

  流石私の式神」

 

私は、倒れた鋼の怪物をスキマへと送る。

 

その時だった。

紫「!?・・・ッ」

 

 

ドクンッ、と心臓が飛び跳ねたかのように動き、キリキリする胸の痛みが

脳天を貫いた。

 

紫「いっ・・・うっ、くっ・・・・・・・」

変な動きをする、左胸の内臓を抑える。

 

 

すると、創りだした結界がぼやけて消えていく。

目の焦点が合わないのか、ちりちりとした変な感覚が脳に広がるのを感じた。

 

紫「・・・ッッッハァ!・・・はぁ・・はぁ・・・」

暫くして、心臓の動きが通常に戻った。

 

紫(・・ヤバいわね・・やっぱり、ポケモンがいるならそれに頼るべきよね)

 

そう思い、今度は慎重にスキマを創りだして中へと入り、博麗神社へと向かった。

 

 

~博麗神社~

 

紫「やっほーぅ。霊夢」

霊夢「うわ、紫。・・・終ったらしいわね」

紫「終わったわよ。勝者は、妖怪の山連合軍」

霊夢「そう・・・」

 

霊夢は、ただそれだけを言って微笑を浮かべた。

私は、隙間から半身乗り出して神社の境内を見回す。

 

紫「大混乱ねぇ・・・さ、早く異変終了の宣言を出してあげなさいよ」

霊夢「そうね・・・私も、不寝番疲れちゃったし」

 

そう言って、スカートをパンパンと叩いて立ち上がる。

 

霊夢「えぇー・・・皆さん!」

そう言うと、境内でざわざわしていた人里の者達は一瞬で静まる。

さすが、博麗の巫女。と、私は思わずノスタルジィを感じた。

 

紫(あったなぁ、こんなこと・・・)

そう思いながら、思わず笑ってしまう。

 

霊夢「・・・妖怪の山の異変は、無事解決いたしました!」

そう宣言すると、それぞれがそれぞれの反応を見せる。

その大半は、驚きと喜び。

 

また先程とは違う意味でざわめきを起こした。

 

 

その時、東の空が白み、橙色の日の球が青空を連れて顔を出した。

 

霊夢「ああ、やっと夜が明けた・・・。

   そういえば、魔理沙とレミリアはどうしたのかしら?」

紫「さぁ?多分、チビ吸血鬼はどうか知らないけど。

  魔理沙は普通に安堵してるんじゃないかしら?」

霊夢「・・・・・心配だし、ちょっと見てくる」

 

そう言って、飛んで行ってしまった。

 

紫「まったく、友人想いはいいけど・・・

  ここに残された人たちはどうするつもりかしら?」

 

見渡せば、それぞれの人がぞれぞれの表情を光の中で浮かべている。

 

 

異変は無事解決した。

 

巨神は、もう倒れて動けない。

 

死んだり、失踪した人。及び妖怪、ポケモンもいない。

 

 

紫「とりあえず、ハッピーエンドってことでいいのかしらね・・・」

 

私はそう思い、その場に座りこんだ。

 

 

太陽は、ゆっくりと音も無く体を出して幻想郷を照らす。

それは、希望にあふれるもののように見えた。

 

しかし、逆に。

その光の中に不穏な影が見えたのは、気のせいだろうか?

 

To be continued・・・



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51ページ目 封印か、説得か

骨折、治りました。

あと、遅れて申し訳がありません。



私は、神社から飛び立ってすぐ。

最高スピードで妖怪の山へと向かった。

 

遠目に移るのは、まるで巨大な怪物のように聳え立つ山。

しかし、その一部がまるでえぐり取られたかのようになっている。

 

霊夢「・・大丈夫、だとは思うんだけど・・・」

こんな景色を見てしまったからか、先に飛び立った友人のことを

つい心配してしまう。

 

霊夢「・・うん、大丈夫。レミリアもついてるし、萃香だっている」

私は、心の中に出現した不安をかき消し。

朝焼けの中、空を切る風を全身で感じていた。

 

 

魔理沙「これは・・・」

レミリア「また派手にやったわねェ」

 

今、立っているその場所から見える惨状は

ある種の美しささえ覚えるほどだった。

 

その惨状の中、誰かがこちらに向けて飛んでくる。

 

魔理沙「・・・ん?射命丸・・?」

文「あ、ああ。魔理沙さん。それにレミリアさんまで」

 

私は、萃香がこちらに向かって来たのかと思ったが

来たのは鴉天狗。射命丸 文。

 

レミリア「あら?・・・あの鬼は?」

私の疑問を代弁するかのように、レミリアは問う。

いつの間にか、しっかり日光を防ぐための日傘を持って来ている。

 

レミリアは、射命丸に答えを急かすように日傘をクルクル回しながら

射命丸をジッと見つめる。

 

その視線に気づいた射命丸は、

文「あ・・・あれ?・・」

魔理沙「?」

 

何か答えにくい理由があるのだろうか?

そう考えつつ、辺りを見回す。

 

倒木・岩・地面・砂埃・薄霧。そして倒れた巨大なポケモン(?)。

 

魔理沙「あれが、これを・・・」

そう考えて、私はついつい油断してしまった。

 

まず、首筋に生暖かい風を感じたと思ったら、両肩に突如として重みが発生する。

魔理沙「なぁ!?」

レミリア「あらま。随分と仲がいいようね」

文「萃香様・・・」

 

萃香「魔理沙ぁ。疲れた。おぶって」

 

首を捻って、肩を見ると、それはもう恐ろしいほどににこやかな鬼の笑顔。

そして、古木の枝のように湾曲した角が微かに見えた。

 

魔理沙「降りろ。てゆうか、どうやって背後に回った」

萃香「能力で、霞みになってちょちょいのちょい、てな感じでね」

魔理沙「霞になって飛べばいいじゃないか」

萃香「やだ疲れるおんぶしてお願い」

魔理沙「背後に回って抱き着く努力はするのにか?」

萃香「背後に回るのと、こっから神社に帰るのとでは労力が違わい」

 

そう言って、腕を首に回す。

萃香「まぁ、妖怪らしく力づくで聞かせる方法も・・・」

魔理沙「だぁーっ、待て待て!分かった!分かったから!降参だ!」

 

そう言うと、萃香は確かにクスリ、と笑って腕を放して私の背後に着地する。

 

萃香「あっはっは!いやぁ、魔理沙は面白いなぁ!」

そう言って高らかに笑う。本当に、楽しそうに。

 

レミリア「それには同意ね。霊夢はつっけんどんなとこあるから。   

     これだけ分かりやすくリアクションしてくれた方が

     いじりがいがあるわよね」

 

レミリアもそれに同調して、クックッと笑い始める。

 

魔理沙「おいおい・・・心配してきたのに、笑いものかよ・・」

 

そう言って、帽子越しに頭を抱えて空を仰ぎ見る。

そして後悔した。

 

紫「ほんと、愉快だわぁ」

魔理沙「!?」

 

 

想像してほしい。

何気なく、空を仰ぎ見たとき。

そこに、ニヤニヤと笑みを浮かべる妖怪が

スキマからこちらを見つめているという事を。

 

考えただけでも不気味だ。

 

 

その不気味が、私の頭上からゆっくりとスキマごと降りてきた。

 

紫「どジャアァァ~~~ん。ごきげんよう皆の衆」

レミリア「まだ2、3日しか経ってないじゃない。

     何しに来たのかしら?」

 

紫「うーんと。まず一つ目、魔理ちゃんをからかいに来ました♬」

魔理沙「恋符『マスタースp(紫「ごめん、やめて。疲れてるの。避けらんない」

 

とりあえず、私は100歩譲って紫の愚行を許し。

八卦炉を帽子の中にしまった。

 

紫は、何処か痛むのか。右手で胸を押さえて深呼吸を繰り返し。

何度か咳払いをして話を続ける。

 

紫「おほん、うぉっほん。えと、二つ目。これはマジメよ。

  その倒れた巨神、名称「レジギガス」を封印しに来たわ」

 

萃香「ほう。殺しもせず、捕獲もせず。封印・・・とな?」

 

そう萃香が聞くと、紫は余裕の笑みを浮かべ

紫「そ、封印。それも専用の、ね。

  山を動かし、岩を壊すそのパワー。

  山の神々、鬼との連戦でも殺し切れないほどの体力・スタミナ。

  これらを完全に封印するには、生半可なものではいけない。 

 

  だから、えげつないほどに封印と結界をかけて出られなくする」

 

そう言って、レジギガス(?)の方へ向き、

紫「最も、絶対に暴れることをしない。という約束が出来れば

  封印をせずに、この山の復興に手を貸してほしいとこだけど・・・」

 

紫は、そうやってため息をついて射命丸の方へ向く。

 

紫「」チラッ

文「?・・・え、なんです?」

 

紫「」ニコォ

文「えっ?えっ?・・・え、えへへ・・・」

 

紫「・・私が何を言いたいか、分かるかしら?」

文「え・・・まさか、え?本気ですか?」

 

紫「お察しの通り」

文「・・・誰が必要ですか・・?」

 

紫「まず、貴女。それと犬走・・・下の名前は忘れたわ。

  それと、その犬走と最も近くにいた白狼天狗を三匹。

  大至急で」

 

そう言って、射命丸を急かすように手をひらひらと動かす。

それから数秒後、ブワッと巻き上がる風と共に射命丸の姿が消えていた。

 

 

私は、何の話をしていたんだといった感じで、腕を組んで考えていた。

すると、萃香が私の表情を見て察したのか

萃香「どうやら紫は、捕獲の他に『説得』っていう手段を考えてるんだと。

   まぁ、私も戦っていてアイツに理性やらなんやらがあるのは十分分かってるし。

   どうだかねぇ・・・」

 

そう言って、左腕で右腕を痛そうにさする。

 

魔理沙「『右腕』がどうかしたのか?」

萃香「ああ、さっきまで消滅してたのを文字通りの『気合』で

   治したもんだからね。完治はしたけど痛みがまだ・・・」

 

消滅。右腕が消滅。

私は、今までこの萃香がけがをしたというとこを見たところが無い。

それほどまでに、強力な存在。その存在が、体を一部失調したという。

 

それにしても、右腕が無かったというのに平然としている。

やはり、妖怪と人間には決定的な共通伝と相違点があるらしい。

 

そんなことを考えているうちに、射命丸が帰ってきたらしい。

 

着地と同時に、4人の人影がふらつきながら地面に降り立つ。

 

文「連れてきましたよ・・はぁ、ふぅ・・・」

そう言って、紫の前に一人づつ並んで立たせる。

 

紫「そう。それぞれ、名前を教えて頂戴」

 

その言葉を聞いて、真っ先に答えたのは椛だった。

 

椛「犬走 椛と申します」

栄「え、と・・・秋桜 栄と、申します・・・」

微意「えー、秋海堂 微意です・・」

椎「秋明菊 椎と申します」

 

紫「うん、そう。じゃあ確認するけど。

  今から一週間とちょっと前。あそこの巨神と戦闘行為をした。

  それは確かね?」

 

「「「「はい」」」」

 

紫「よし。じゃあ聞くけど。

  この山が荒らされたこと。自分の仲間が危機にさらされたこと。

  自分の命が脅かされたこと。自分たちのプライドを傷つけられたこと。

  ・・・以上、あの巨神との戦闘によって負った傷。

  それらを許すことができますか・・・?」

 

四人は、それぞれが疑問と困惑の感情を露にした。

 

椛「それは・・どういうことでしょうか?

  私達はいまだ、何故に連れてこられたのかを聞いていないのですけど・・・」

そう言って、射命丸を睨みつけるが、当の本人は上の空だった。

 

紫「よし分かった。じゃあ、最初から。じっくりと説明してあげるわ」

 

~賢者説明中~

 

椛「・・・許すことはできません。

  しかし、相手にも理性と知恵がある以上説得の余地はあるでしょう。

  それに、あの時。相手は急に戦闘態勢に入った。

  そのことについての説明も欲しい所ですし」

 

紫「そう・・・そう言ってくれて有り難いわ。

  貴女も、この子と同じ意見。という事でいいわね?」

 

文「はい。『許すことができない』、のところまで同じです」

 

紫「もぅ。プライドが高いんだから・・・兎に角、これで決まりね。

  まず、会話が可能ならば説得。その際は、『ゲスト』が必要になるわね。

  そして、それが不可能と私が判断したら早々に封印に取り掛かる。

  ・・・これで、いいわね?」

 

レミリア「異議なし。私も貴女と同じ立場なら同じ方法を思いついていたわね」

 

萃香「問題ない。それでいーよ」

 

魔理沙「異論無し」

 

紫「さて、じゃあ・・・」

 

紫は、スキマを出現させてその中に声をかける。

 

紫「藍。地霊殿へ行って、さっきの話を主にしてきて。

  そして、最速で連れてくること」

 

そう言ってスキマを閉じ、私達の方へ向き直る。

 

紫「・・うん。霊夢も来たわね」

 

その言葉に全員が反応し、東方の空を見てみれば

太陽をバックに少しづつ近づいてくる紅白の影があった。

 

紫「さて、と。異変の後片付けを始めるわよ」

 

私は、館の中を走っていた。

全力で。全速力で。風よりも、音よりも速く。

 

しかし、時を止めて逃げることができない。

さっきから、懐中時計を何度押しても時が止まることがない。

 

後ろから追ってくるのは、青い瞳を持つ闇だった。

 

黄色の照明。真紅の壁・床・天井。

それすらも次々に飲み込んで行く闇。

 

私は、もう既に走るのが限界だった。

いや、走らなければいけない。

 

じゃないと間に合わない。

 

(「逃げる」のではなく、「間に合わない」?)

 

何に間に合わないの?

それを考えた瞬間、突如として床が抜ける。

 

落ちるっ!

 

そう思ったが、体が空中で勝手に捻られて壁に足がつく。

いや、もしかしたら今まで走っていたのが「壁」なのかもしれない。

 

『・・・・・・ビシャーンッ!!』

 

それでも、闇は追ってくる。今度は巨大な竜に姿を変えて。

(・・・闇なのに、姿が見えている?)

 

いや、そんなことを考えてはいられない。

兎に角、時間が無い。ただ走る。

 

そして、その向こうに。誰かが立っているのが見えた。

 

 

蝙蝠の羽をもつ、小さな影・・・。

 

咲夜「お嬢様っ‼」

 

私は、「ああ、やっと守ってもらえる」と思い、その影に向けて走る。

 

(守るべき存在なのに?)

 

ああ、助かった(守らないの?)!

これで安心だ(勝手な妄想)!

 

早く、助けてほしい(本当にみじめ)!

 

見ると、お嬢様の口が何かを言おうと動いている(可哀相とも思わない)。

 

近づこうとすればするほど、離れていくような感じがする(・・私のことを)。

 

見ると、お嬢様の背後に青い瞳の闇が立つ(言いたいならば)

 

咲夜「!?、お嬢様!早くそこから!(言葉にするのなら)」

 

レミリア「     」

 

~霧の湖~

 

「・・ちゃん。・夜ちゃん!咲夜ちゃん!!」

 

咲夜「・・う・・ハッ!?・・・ここは・・・」

 

私は、ゆっくりと瞼を開けると目の前に見知らぬ男性が・・・。

 

咲夜「!?・・・誰で・・・あ、ムゲン、博士・・・」

ムゲン「ああ、よかった。気が付いて・・・。

    下手したら死んでしまったんじゃないかとヒヤヒヤしたよ・・」

 

そう言って、安堵したようにため息を吐く。

 

咲夜「・・・あれ?私、どうして・・・。

   いや、そう・・確かディアルガが空けた穴に吸いこまれて・・」

ムゲン「それで、モンスターボール返し損ねてたから。

    慌てて取り返そうとしたら、ね」

 

そう言って、いつの間に作ったのか。

ポットから、香ばしい匂いを漂わせる黒色の液体。

珈琲を、白いマグカップに注いで渡してくれる。

 

ムゲン「飲みなさい。落ち着くよ」

そう言って少し微笑む。

 

咲夜「ああ、どうも・・・ここは、霧の湖ですか・・」

そう言って見渡すと、今日は珍しく霧が薄い。

 

ムゲン「霧の湖、ねぇ・・・名前の通り、濃霧溢れる

    ところかと思ってたけど・・・今日はそうでもないのかな?」

 

そう言って、湖を見渡し「送りの泉を思い出すなぁ・・・」とか

呟いていたのを確かに聞いていた。

 

咲夜「えと、とりあえず。館に行きましょうか・・」

ムゲン「うん?ああ、言っていた「吸血鬼が住む館」ね。  

    どこにあって、どうやって行くのか気になるところだけど・・」

 

私は、ダメもとで懐中時計を押してみると。

 

咲夜「!、ああ!止まってる・・・」

 

瞬間、時間がまるで切り取られたかのように静止する。

全てが止まり、動けるものは自分だけとなる。

 

咲夜「・・さて、と・・・。

   向こうの世界ではいろいろとお世話になったし。

   迷惑かけちゃいましたからね・・・。

   精一杯の恩返しをさせていただきましょう」

 

時が止まった世界でそう言い、博士を背負って空を飛び、湖を超える。

 

 

その時、咲夜は気づくことはなかった。当然、ムゲン博士も。

波も止まった湖面の上。

 

そこに、感情の創造神が一つの異変の解決を祝って舞っていたことを。

 

To be continued・・・

 



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52ページ目 説得 その①

お久しぶりです。キョウキでございます。

遅れて申し訳ありません。
あと、今回。アホみたいに話が長いです。すみません。

それでは52ページ目、始まりでございます。



「地霊殿」

 

その日は珍しく、館住人全員がとても慌ただしく動いていた。

それもそのはず。地霊殿に襲撃をかけた岩石の術。

そして、地上で起きたと思われる巨大な地響きと地震で壊れた家具の修理。

それの後片付けがまだ済んでいない。

 

さとり「ほら!早く済ませるわよ!」

そう言って、私は手を鳴らしながらその片づけを監督しつつ手伝っていた。

 

フェアリーゾンビA「さとり様-・・・・」

さとり「・・・そうね。捨てた岩は、ここから少し遠いけど・・・。

    あの岩の爆心地に捨て置きなさい。あそこなら何の問題も無いわ」

 

フェアリーゾンビB「さとり様」

さとり「ああ、終わったのね?ならお燐の方を手伝ってあげて。

    確か、階段の付近にいるわ」

 

フェアリーゾンビC「さと」

さとり「道具はどこかって?それは分からないわ。良く探した?」

 

こいし「さとりさまー!」

さとり「こいし。遊ぶなら外へ行くか、本を読んでいなさい」

 

・・・と、このように数々の指示を出しつつ、私は動き回っていた。

しかし、このように作業を続けて約2時間。

妖怪の体とはいえ、戦闘後の病み上がり。かなり堪えていた。

 

さとり「はぁ・・そろそろ休みたいけど、私だけ休むというのもね・・。

    それに、こういう時に限って新しく仕事が来るのよねー」

そう言ってすぐのことだった。

 

 

 

目の前の空間が立てに裂けたかと思えば、赤黒い空間と無数の目が展開され。

さらにそこから金色の尾を称える妖狐が歩みだしてきた。

 

藍「・・お久しぶりですね。さて、突然で申し訳ないのですが」

さとり「『異変の中心である巨神を捕えたからその翻訳に来てほしい』。

    そういうことね?いいわ、少し待っていなさい」

 

そう言うと、藍は一礼をして「では、外で待っています」。そう言って

スキマを閉じてどこかへと消えて行った。

 

さとり「・・主みたいに、不意打ちのように現れないところに性格の差が出てるわね」

そう呟き、手を二回大きく鳴らす。

 

そうすると、一瞬にして場が静まり。全ての視線が私へ向けられる。

そのことを確認すると

さとり「今、賢者の使者から仕事の依頼が来ました。

    しばらくは、ここを留守にします。その際、現場の監督はお燐に任せるわ」

お燐「あ、はい!任せておいてください!」

お空「私も何とか頑張るよー」

 

 

私は、張り切るペット二匹に微笑みを返し、地霊殿の外へと歩みだした。

 

「地上~妖怪の山~」

 

この日はいつも通りに、騒がしく妖怪達が集まっていた。

しかし、いつも通りでないことが一つ。

 

普段ならば、妖怪が集まる事=宴会なのでそれぞれが酒を持参して

既にわいわいやっている。

 

だが、今日は酒を持って来ている妖怪など一匹もいない。

それどころか、全ての妖怪がかなり重々しい雰囲気で黙りこくっていた。

 

幻想郷創設以来、ここまで妖怪が緊張したことなどあっただろうか。

 

そして、その「中心」。

御柱と鉄の輪で拘束し、結界に寄りかかるようにして何とか立たせた

大陸ポケモン、レジギガスが圧倒的な威圧感と殺気をそのボロボロの巨体で

存分に発し、辺りを飲み込んでいた。

 

その泡を吹き出しそうになるほどの緊張感の中。

彼女らもまた、独特の緊張感を纏いながら「準備」を始めていた。

 

紫「いいかしら?椛・栄・微意・椎。そして文の五人が、さとりを通して説得を試みる。

  それで、説得と交渉が出来たら封印を解いてボールに入れる。

  だけど、説得に失敗したら・・・」

 

霊夢「私と紫、そして魔理沙・早苗でそれぞれ封印をかける。

   あとは、もう。テキトーに神社なり建てて奉って結界を創る。

   これでもう・・・えーと・・・レジ、何とかは動けなくなる」

そう言いつつ、霊夢は大体の治療を済ませ。

先程神社から降りてきた早苗を見やる。

 

早苗「あ、あはは・・・正直言ってあんまり期待してほしくないです・・・」

霊夢「期待なんてしてないわよ。ただ、できるだけ封印にかかる人出が欲しかっただけ」

 

霊夢は、早苗のジトーとした目に気付いていないふりをしつつ、最後の確認を取った。

 

 

霊夢「さてと・・・大体の準備も済んだし。頭数も十分。

   方針は、説得か封印。他に提案も無いわね?」

 

萃香「大丈夫だ、問題ない」ドヤァ

魔理沙「お前は何もしないだろう・・・。

    まぁ、私も問題ないな」

 

レミリア「私は封印魔法は使えないから傍観者に徹するわ。

     まぁ、なんかあったらグングニル程度なら投げてあげるわ」

 

紫「大丈夫よ、問題ないわ」ドヤァ

魔理沙「最近ドヤ顔が流行っているのか?」

 

・・・と、このように全くもって緊張感が無いコントをしているように見えている彼女らだが。

 

紫は持っている扇子の裏に数枚のスペルカードを忍ばせ。

萃香は静かながらも肉体に適度のストレスをかけ万全の戦闘態勢。

レミリアも会話には参加しつつもその視線は常にレジギガスを捕えていた。

 

そして。早苗はもちろん、魔理沙。そして霊夢でさえも隠してはいたが明らかに緊張を持っていた。

 

 

しかし、この場において。

最も緊張をしているのが誰かと聞かれれば・・・。

 

「「「「「・・・・・・・」」」」」

巨神を前に立つ天狗五人。

文、椛、栄、微意、椎。

 

彼女らの内、既に3人は緊張のあまり短い気絶を幾度か繰り返していた。

 

なにせ。もし説得に失敗すれば・・・。

 

手負いとはいえ、初戦とは桁違いの戦闘力を持った巨椀が襲い掛かる事になる・・・かもしれない。

 

あくまで、もしも。たられば。想像の範囲内の話だが・・・。

それが現実になる可能性はゼロではない。彼女らはかろうじて立っていた。

 

椛「・・・上手く、やれるでしょうか・・・」

文「やれるかどうかじゃなく、やるの」

 

栄「でも・・・不安が・・」

微意「こ、ここまで来たんだもの・・・逃げないわよ」

椎「・・・・・・・」

 

不安。責任。恐怖。緊張。

様々な負荷が心にかかる。

 

文はその中。大胆不敵に首を回しながら

文「兎に角、やるの。大丈夫よ。相手は全くもって言葉が通じない怪物じゃない。

  そう考えれば、物理的に倒すよりは全然楽でしょ?

  話して、分かりあって、無事に帰るだけの簡単なお仕事。時給2800円」

椛「生命保険なし。命の保証なし。だけどやりがいだけで成り立ってるような仕事ですね」

栄「時給を十倍にしてください・・・」

微意「エリ・エリ・レマ・サバクタニ・・・」

椎「あんたキリシタンじゃないでしょ・・・・」

 

緊張をほぐそうと、文が始めたジョークを繋ぎ始めたときだった。

 

 

藍「お待たせしました。さとり様です」

 

その言葉と共に欄がスキマから現れ、それと共にさとりが姿を見せた。

 

 

妖怪A(あれが古明地 さとりか・・・初めて見た)

妖怪B(嫌われ者のトップ・・・いけね、心を読むんだったな・・)

妖怪C(心が読めるんだってな。気持ち悪いぜ・・・)

妖怪D(早く地底に返ってくれた方がありがたいねぇ)

妖怪E(あとでサイン貰おう・・・)

妖怪F(そんな能力で大丈夫か?)

 

・・・封印場所に到着した途端。多くの妖怪がこちらに意識を向けてくる。

その妖怪一匹一匹の精神がよく見え、聞こえてくる。

 

そのほとんどが嫌悪と畏怖。若干おかしなモノも混じってるように聞えたが

それは多分、病み上がりによる幻聴だろう。

 

紫「待っていたわ」

さとり「待たせてしまい、申し訳ありません。

    早速取り掛かりますが・・・準備はもう済んでいるようですね」

 

紫「話が早くて助かるわ。じゃあ、お願いね・・・」

 

私は、その言葉を聞いてゆっくりと頷き。

巨神の前、五人の天狗の下へ近づいた。

 

文「あや、貴女が・・・」

さとり「古明地 さとりよ・・・あなたはは射命丸 文ね。

    そして白狼天狗の椛、栄、微意、椎ね。よろしく」

私はそう言って、早速巨神の前に歩み出た。

 

正直言って、皆がそんなに恐怖するほどの印象を受けない。

まぁ、実際に動いている姿を見たわけでもないし。

地底への被害も甚大と言う程ではなかった。

 

しかし、この巨体から発される威圧感は末恐ろしいものを感じさせた。

 

さとり「とりあえず。今、彼?でいいのかしら・・・。

    兎に角、彼がちゃんと会話に応じることができる状態か確認します」

紫「じゃ、お願いね」

 

私は、胸のあたりにぶら下がる第三の目(サードアイ)を彼に向け。

その心の表情と声を読み取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・帰る。早く、帰らねば。

 

こんなところで、こんな者達と戯れる暇はない。

 

ここは、島の奥地?とにかく、私は囚われている。

 

敗北した。人形を使い、情勢や動向を探った。

 

一度は敗れたが、今回は本気で相手をした。

 

しかし、負けた。何故?何故?何故?何故?

 

何故、このような者達に負けるのだ。

 

 

・・・・・・そう言えば、あの「わるいおうさま」・・・。

 

その親族の姿が見えない。どういうことだ・・・?

 

それに・・・波の音が聞こえない?島国だぞ、あり得ない。

 

私は負けた。失敗したのか?あれから何年経った?ここはどこなのだ?

 

こいつらは私を取り囲んで、どうする気なのだ?

 

今一度相手をすればいいのか?

 

この少女は・・・何を見ているのだ・・・?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さとり「・・・少し混乱はしていますが、落ち着いた状態ですね。

    ただ、こちらの数が多いせいで高い警戒状態です。

    ・・・そして、疑問に捕われています」

私は、見たままの彼の心を簡単に説明・解説した。

 

紫「ふぅん・・・もう少し、詳しく教えてくれないかしら?

  意味が分からない単語でも、何でも。聞いたこと全てを答えて頂戴」

 

さとり「分かりました・・・まず・・・」

 

 

~読心妖怪説明中~

 

 

紫「『わるいおうさま』・・・そして、島国の山・・・。

  彼の疑問も気になるけど・・・どこかで見た、のよね・・・藍」

藍「はい。なんでしょうか?」

 

 

紫「今すぐ、私がここ最近読書をした場所を洗いざらい調べてきなさい。

  それと、今ここにいる妖怪達を最低限何処かへどかせておきなさい。

  1時間以内よ。必要なら、私のポケモンを使ってもいいし。

  財力と腕力で、そこら辺の妖怪を手伝わせることも許可するわ」

 

紫がそう言った瞬間、藍は流石に戸惑ったような仕草を見せたが。

場の全員に一礼をして、周りを囲む妖怪たちの下へ歩みだした。

 

 

それから数分後には、妖怪達はほとんど蜘蛛の子を散らすように何処かへ行っていた。

残りの妖怪は、恐怖で動くことができないというような風情だった。

まがいなりにも、最強の妖獣ということだけはあるだろう。

 

それから10分後。藍は戻ってきた。妖怪に手伝わせることも無く。一人で。

藍の手には、1冊の本が握られていた。

 

紫「ひゅぅ・・・本気出したわねー・・・。

  まぁいいわ。当分休んでおいて・・・」

藍「はぁ・・・ですが、仮にこの巨神が暴れたとき。 

  誰が紫様の身を・・・むぐ」

 

藍はそう言った。しかし、その言葉の続きは紫の手で口を抑えられたため出ることはなかった。

 

紫「・・私が負けるはずがないでしょう?」

その言葉だけで十分だった。

 

藍は、それ以上何を言うでもなく。

ただ大きく一礼をして、スキマの闇へと消えて行った。

 

紫「さてさて・・・うん・・・うん・・・」

 

霊夢「何を読んでるのかしら・・・」

魔理沙「小説・・なわけないか・・・」

レミリア「小説なら、『ああ、無情』がおススメよ」

早苗「私は『吾輩は猫である』ですかねー。あ、『羅生門』もいいですよね!」

萃香「何の話じゃい」

 

珍しく萃香がツッコミを入れたところで、その会話はストップした。

 

 

周りの妖怪がいなくなったことと。

説得の希望が見えてきたこと。

そして、「10分」という時間の間。

 

さとりからレジギガスの疑問や気持ちを十分に伝えられたことが。

彼女たちの張り詰めた緊張を少し解いたのだった。

 

そして、それは紫がさとりに密かに頼んでおいたことでもあった。

 

 

さとり(こちらが大きく緊張をしていれば、相手にも何かしらの影響を与えてしまう。

    それを最低限にしたい・・・それはもっともなんだろうけど・・・)

 

霊夢「私、『シャーロックホームズ』が好きだったりするなぁ」

魔理沙「『ゴーストハント』も面白いぜ。幽霊退治の参考になる」

早苗「『舞姫』も面白いんですよ!あ、それとそれと・・・」

レミリア「『罪と罰』もいいわよ。どれだけ人間が愚かか分かるわ」

萃香「もう本の話はやめにしないかえ?・・・さっきから凄い見られているぞ・・・」

 

萃香の言葉で彼女らは「( ゚д゚)ハッ!」としたらしく。

 

封印された彼・・・レジギガスの視線に気づき。

バツが悪そうに少しだけ笑った。

 

そんな時だった。

 

紫「・・・!・・・やっぱり・・・」

 

紫が驚愕とため息が混じった声を漏らして、こちらに近づいてきた。

 

霊夢「何かわかった?」

紫「分かったなんて物じゃないわね、コレ・・・」

 

魔理沙「まさか・・・説得は無理、か?」

紫「いいえ・・・説得はより簡単になったわ・・・。

  ただ・・・さらに厄介なやつを相手にしなくちゃならなくなったかも・・・」

 

そう言って、手に持っている本を見えやすいよう顔の位置に上げた。

 

 

『シンオウ国引き伝説』と書かれた、その本。

紫は、とても信じたくないけど信じるしかないという顔で言った。

 

紫「この本は、いわばリメイク・・・復刻版ね。

  物語を記した前半ページと、後半ページからこの本は成るんだけど・・・。

 

 

  

  この原本が書かれたのは、それこそ大昔。いつかも分からない話ね。

  これが、ただの創作とは思えない。何故なら、ここに。

  その伝説のポケモンは存在してるから。

 

  ここから考えられる可能性は二つ・・・」

 

紫はそこで、息を深く吐き出し、

 

紫「一つ目は、この本が幻想となって入り込んできた。

  でも、それだと物語の怪物がこの世界に入ることは証明できない。

  それに、このレジギガス以外にもポケモンは入りこんでいるから除外」

 

霊夢「あんた・・・何が言いたいの・・?」

 

霊夢がしびれを切らしたように、紫に問いかける。

 

 

紫は少しの間黙り、そして言った。

 

 

紫「つまり、二つ目・・・・。

  

  

  『この本に書いてあるのはすべて真実で、外の世界とは違うところ・・・

   異世界から来たと考えられる。そしてその世界には、二つの神が存在している』

   

   一匹は、空間神パルキア。

   そして、もう一匹が・・・時間神「ディアルガ」。

 

   彼は、古代の王から命を受けた状態でこの遠い世界へ来た。

   

   『空間』を超越し、『時』を超えてやってきたと考えるしかないってワケ・・・」

 

 

その言葉に、場の全員が凍り付いた。

 

 

 

紫「マズイわね・・・どうやら私達は、空間神だけじゃなく。

  時間神ともやり合うことになるらしいわ・・・・」

 

紫のため息とともに、重々しい空気と

夏とは思えないほどの寒風が私達を撫でつけてきた。

 

To be continued・・・

 



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53ページ目 説得 その②

お久しぶりです。一か月ぶりの投稿となります。

今回で、巨神異変完結となります。
次話からは、永遠亭組と徘徊型ポケをメインに書いていきたいな(理想)。



「妖怪の山~中腹」

 

日差しは少しづつ高くなっていき、さんさんとした陽光が降り注いでいるこの場。

夏の山のことである。蝉や鳥の鳴き声がけたたましく鳴り響く蒸し暑い様相を

想像するような状況ではあるが、現実はそれに反していた。

 

普通なら7日間の命を燃やすが如く鳴きまくる蝉も存在せず。

その蝉を狙うような鳥もいない。

それどころか、一切合切の獣及び妖怪、そしてポケモンの気配がそこから消え去り

代わりに鳥肌が立つほどの冷気が漂っていた。

 

まさに『瘴気』。

巫女、魔法使い、風守人、鬼、吸血鬼、天狗、スキマ妖怪・・・。

この場にいる、全ての種族。全ての存在が緊張感を抱えていた。

 

本当に、先程まで新たに判明した『時間神』の脅威について右往左往していたとは

とても考えられないほどの切り替えぶりであった。

 

文(流石、ですね。やはりこれだけの面子が後ろから守ってくれてると

  考えると、緊張感もだいぶ薄まってきますね)

ふぅ~・・・と、ゆっくり息を吐いて心を落ち着かせる。

 

文(フフ・・・椛達に「やる」とか言っておきながら・・・

  私が一番緊張しているじゃありませんか・・・)

そう思いつつ、横に立つ4人の部下達。白狼天狗を見やる。

 

それぞれがそれぞれ、恐怖や緊張や責任などの不可を確かに感じ

それに苦しんでいるかのような表情をしている。

 

しかし、逃げることはできないし逃すこともできない。

時間はなるべく早いほうがいいし、結果はより良いほうがいい。

 

その結果・・・運命がどうなるかは恐らく吸血鬼にしか分からないのだろうけど。

彼女はまだ動く気配を見せない。

それは運命を見たが故か、見えない故か・・・。

 

さとり「・・・そろそろ、始めるわよ」

 

そんなことを考えているうちに、彼女は準備を済ませたらしい。

私達も、背をさらにピンと伸ばし、肩の力をゆっくりと抜いていく。

 

紫「それでは・・・『巨神・レジギガス』の説得を始めるわ」

 

スキマ妖怪のその言葉で、説得の火ぶたが切って落とされた。

 

「・・・ズッ、ズッ・・・・」

さとり「!・・・そう、なるほど・・・・」

 

今まで大いなる沈黙を守ってきた巨神が、説得の開始と共に初めて声を発した。

その声を聞いたさとりは、ただ静かに頷いて私達の方に向き直った。

 

文「今、何と・・・?」

さとり「『ここは島国ではないのか?』と。

    それと、『これはどういう状況なのだ?」とも」

 

・・・これは、もしかしたら説得というよりも『説明』に近いのかもしれない。

相互に誤解と疑問があるから、それを問いて答えてゆく。

 

文「・・・ここは、島国ではありません。

  『幻想郷』という、山奥に存在する秘境です」

「ズッ、ズゥ・・・・」

さとり「・・・『では何故、あの火の魔獣がいたのだ・・・?』

    すみません、火の魔獣とは・・・・・・」

紫「あなたが今管轄しているヒ―ドランのことね・・・。

  よし、次は私が答えてみるわ」

 

そう言って、自らレジギガスの前へ出た。

 

紫「貴方が調べた火の魔獣・ヒ―ドランは、貴方の知る者とはまた別。

  貴方は間違えて、ここの住人や自然に攻撃を仕掛けてしまった。

  だから、今は貴方の誤解を解くために拘束させてもらっているわ」

そう言って、レジギガスを真っ直ぐ見据える。

その視線は、凍てつく様な殺気と燃え上がる様な怒りが込められていた。

 

紫は、その怖気を含んだ瞳を向けながらレジギガスに近づき、その体に触れた。

 

「ズゥッ・・・・」

さとり「・・・かなりショックを受けているわね。

    困惑と後悔と混乱に包まれているわ・・・」

 

確かに、今のレジギガスからはそう言った暗い感情が

心を包んでいるかのような、そんな雰囲気があった。

 

確かに、誤解と見解の違いと、様々なことがあったからこの悲劇は起こった。

それでも・・・許そうと思って許せることでもない。

 

文「・・・何故・・・。

  貴方はあの洞窟で、こちらを攻撃してきたのですか・・・?」

 

そう、恐らく。

全ての原因はあの戦闘にあった。

あの戦闘で、お互いに敵対意識が生まれ。

今回の異変でそれが増殖、肥大化してしまったのだ。

 

「・・・・・・・・」

今度は、一言も発さなかった。

だが、それでも心は読めるため何の問題も無いが・・・。

 

何故か、少し嫌な予感がした。

 

さとり「・・『主に、侮辱は決して許してはいけないと教えられたためだが。

    何故、あの時。あそこまで殺意と敵意を抱いてしまったのか分からない』。

    と、言っていますが・・・・」

そう言って、私の方へと向く。

 

しかし、私もよく分かってはいなかった。

どこかで、侮辱するような行動を起こしてしまったのだろうか・・・?

いや、それもあるが・・・。

 

『何故、あの時。あそこまで殺意と敵意を抱いてしまったか分からない』。

 

私は、何気なくさっきから言葉を発していない四人を見ると。

彼女たちも私と同じ疑問にとらわれているようだった。

 

 

 

 

そこまで考えていたとき、

 

紫「・・・!、もしかして・・・。

  ちょっといいかしら・・・?」

と、私達に説得の一時停止を求めてきた。

 

さとり「何ですか・・・?」

紫「ちょっと、気になる事があってね・・・。

  文、椛。栄、微意、椎。少し体に触れるわよ・・・。動かないでね」

そう言って、こちらの意見も何も聞かずに次々に肩や腕。

手や首筋を本当に「少し」だけ触っていった。

 

最後の椎の手を触って、少し押し黙ってから顔を上げた。

 

紫「・・・やっぱり、ね」

文「あの・・・一体これは何なんですか?・・・」

 

私は、若干の疑心感を抱きつつ説明を求めた。

紫は、チラリ、とレジギガスの方を見つつ、話を始めた。

 

 

紫「今、あなた達の霊力を少し計ったわ。

  そしたら、この中の数人に・・・もしかしたら、

  「裏切者」がいるかもしれないわ」

レミリア「裏切者・・・って、どういうことかしら?」

 

紫「いえ、裏切者じゃ語弊があるわね・・・だって、本人には

  裏切っただとか、悪意があってやったわけではないんだし」

椛「紫様、いったいどういう事ですか・・・?」

 

その場にいる全員に動揺が広がってゆく中、紫は

再びレジギガスの体に触れ、

 

紫「地底、霧の湖、そして今回の巨神騒動。

  今のところ、大きな異変に関わっているポケモンや住民には

  何らかの催眠・・・『洗脳』がかかっていたことが分かっているわ」

霊夢「洗脳って・・・チルノとか、大妖精とかのあの行動のこと?」

 

霊夢の疑問を聞いて、紫は頷く。

 

紫「大体、その洗脳の影響を受けた妖怪は霊力・妖力が上昇し

  感情のコントロール不振。判断不全。独善的。そういった

  妖怪にとっては生命線である『精神』を操作されているわ」

 

その言葉に、また場が凍り付く。

精神操作・・・?いつ、どこで、誰に・・・?

 

疑問と不安が最高潮に達し、火山のように燃え上がっていった。

 

栄「あ、あのっ!・・・この中の、一体だれが・・・?」

その問いを聞いた紫は、少し目を伏せて。言った。

 

 

紫「それは・・・・あなた達よ」

紫はゆっくりと、白の手袋をはめた人差し指をその者達に向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

栄「えっ・・・私・・?」

微意「え、嘘・・・嘘ですよね?」

椎「ま、まさか・・そんなはずは・・・」

 

指を指された者達は、栄と微意と椎の三人だった。

 

文「ま、待ってください!」

私はそのスキマ妖怪に声を大にして待ったをかけた。

 

文「彼女達が、裏切者?一体どういうことですか!?」

紫「待ちなさい。今から説明するわ」

 

そう言って、三人に向き直り

 

紫「そう、あり得ない。

  彼女達は、レジギガスの発見。沈静化に活躍したし協力もした。

  それでも、洗脳の痕・・・一時的な力の上昇が見られたわ。

  影響を受けていたのは確実」

 

早苗「え、でもですよ・・・。

   なんで洗脳をかける必要があったのか・・・」

 

紫「・・・これは、私の予想。考えによるものだけど・・・。

  今回の異変の中心には、このレジギガス。そして山の存在があった。

  恐らく、洗脳をかけた何者かは・・・ポケモンと妖怪とを争わせたかったんだわ」

 

争い・・・。

 

紫「その洗脳をかけた奴は、この幻想郷にダメージを与えたかった。

  と考えるのが妥当。そのために、双方に誤解を生じるよう洗脳をかけた。

  争わせて、疲弊させるために・・・」

 

そこまで言って、レジギガスの方に向き直った。

 

紫「今回の異変は、確実に誰か・・・黒幕がいて操らていた。

  私達は、まんまとその黒幕の掌で無様に踊らされたという事・・・。

  

  理解、してもらえたかしら?」

 

「・・・・・・・・・」

レジギガスは、何も喋らず。なんの声も発さず。

ただただ黙っていた。

 

そして、栄達も黙っていた。

ただこちらの沈黙は、衝撃と混乱によるものだった。

いや、もしかしたら。レジギガス・・・この巨神も操られていた

事に対してショックを受けているから、黙っているのかもしれない。

 

文「・・・兎に角。双方が何者かによって操作されて。

  しなくもいいハズの戦闘及び被害を被ったことは確かってことね・・・」

紫「そういうこと」

 

・・・・・・・。

私は、レジギガスに向き直り。

静かに言った。

 

文「貴方も、私達も。誰かの悪意によって遊ばされた。

  そして・・・その悪意は、貴方の主に対する意思を『侮辱』した。

  確かに私は、貴方が出した山の被害に関しては許すことができない。

 

  でも・・・・・」

 

「・・・・・・・」

 

文「でも、私達も貴方と一緒で『侮辱』は許せない。

  そこで、レジギガスさん・・・・・」

「ズ・・・」

 

文「協力して、貴方の主に対する侮辱を晴らしてやりましょう」

 

そう言って、私は周りが息を呑む気配を感じながら

手を差し出した。握手のつもりだった。

 

 

しかし、向こうは結界で動けないため。ポーズとしての握手になるが・・・。

 

「ズッ・・・ズッ・・・!」

 

その鳴き声に込められた協力の意志は

例え心が読めずとも私にはハッキリと伝わった。

 

 

「妖怪の山~麓」

レジギガスの説得から、早数日。

 

戦闘と山の動きによって甚大な被害を受けた妖怪の山は

全天狗及び河童の復興作業によって、少しづつではあるが

元の景色、様相を取り戻してきていた。

 

その中でも、栄、微意、椎は。

まるで馬車馬のように働き、自分たちが操られていた罪悪感から逃れようとしていたが

最近ではそれも周囲の気遣いあってか、元の性格を取り戻してきていた。

 

また、協力を約束したレジギガスは、

その後。さとり様の通訳を通して、大天狗様と契約。

 

復興作業にも全面協力して、その怪力を生かして作業を飛躍的に

スピードアップさせてくれた。

ちなみに、また山を動かして元の位置に戻そうとするのを止められたのは

御愛嬌であった。

 

 

封印目的で捕らえられた、三匹のポケモン達も。

洗脳を再度かけられていたことが判明したため、その洗脳を解いて

今では各々が、製氷係や留守番役。鬼の戦闘練習相手と

自分の居場所を見つけて、今では問題なく過ごしているという。

 

そう・・・本当に何事も無く・・・。

 

博麗の巫女も、白黒の魔法使いも、緑色の風守も。

最近では、異変だと何だと言った事情に捕らわれることもなく

ゆったりと疲労回復や、人里への説明などをすることができたという。

 

 

 

空はその平和を象徴したかのように高く、そして青く。

このまま平和であれば何の問題も無し、とすることができるのだが。

 

恐らく、黒幕は待ってはくれないだろう。

その正体が、空間神であっても時間神であっても。

 

私達が私達の生活を守るのは変わらず、その良心と意志に従って

助け合っていくのも変わらないハズ。

 

ただ・・・・・・。

 

その意志すらも、催眠による洗脳ではないと言い切ることが難しいのは

酷く辛く、そして腹立たしいことである。

 

一体、これから何処へ向かって。

行きつく先は平和なのか、混沌なのかは。

 

まさに、『神』のみぞ知るという事なのかもしれない。

 

「宇宙」

 

黒く、様々な光の色を見せる漆黒の空間と時間の混合物の中。

ゆっくりに見えるような、高速の動きで「それ」は迫ってきていた。

 

「それ」の軌道上にあるのは、水と大気の星。地球の衛星。月。

 

そこに住む住人達は、既に「それ」の動きに感づいていた。

 

??「珍しいですね・・・。

   私達の結界を破ってまでぶつかろうとする隕石は。

   でも、ここまでです・・・」

 

月面、そこにはあるはずのない悠久の海が静かな波を称えて

揺らぐ傍らに、剣を携え。髪を結んだ一人の女性がいた。

 

綿月 依姫(わたつきの よりひめ)

 

そう呼ばれる、月の有権者の一人であった。

 

彼女は、ゆっくりと、さやから刀身を少しだし・・・。

 

依姫「この程度、能力を使わなくとも十分です」

 

刹那。迫ってきていた「それ」・・・隕石は

見ることすら叶わない須臾の居合切りで細かく裁断され・・・。

 

依姫「・・・?」

 

裁断。されたはずの隕石の欠片から、赤と青の触腕が飛び出て

静止する間もなく飛び散った隕石の欠片をより集めて再形成。

 

そして、何かエンジンでもついてるかのような急加速で

不自然に動き、さっきとは比較にならないほどのスピードで

月からその姿を消した。

 

依姫「・・・今のは、一体・・・・?」

 

彼女は、その胸の内に今まで感じたことが無かった

未知の不安を抱えて、その隕石が向かう星。

 

地球を静かに見つめた。

 

To be continued・・・



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54ページ目 這いよる影

遅れて申し訳ありません!

今回はかなり長めです。



・・・黒しか見えない視界の中を、私は走っていた。

息を切らせながら、足をもつれさせながら、ただひたすらに前へと進んでいた。

 

自分でも、何故走っているのかは分からない。気が付いたら、走っていたとしか言いようがない。

それでも、走る。理由が分からなくても、目の前が黒しか見えない世界でも、走る。

 

小鈴「はぁっ・・はっ・・はあっ・・・」

しかし、所詮は貸本屋で本を運び、接客をし、それ以外では基本的に本を読んでいるだけの

文学少女である私が、そのダッシュによる疲労に耐えられるはずも無く。

 

やがて進むスピードは遅くなり、歩幅は狭まり、ついには動けなくなってしまった。

 

小鈴「ぜぇー・・・ぜぃー・・・う、うぅ・・・」

 

一体どうしてしまったというのだろう。何故私は走っていたのだろう?

私は、頭の中を満たすその疑問を、胸の内を満たす焼けるような苦しみに耐えながら考えた。

 

どうしてって・・・それは・・・。

 

「呼ばれたから、でしょ?」

 

そこまで考えたとき、聞き覚えのある友人の声と共に

下に向けていた視線の先に見覚えのある草履の鼻緒が姿を見せた。

 

小鈴「!?、その声は、阿」

求と続けようと思い、顔を上げたが、そこにいたのは阿求ではなかった。

 

 

そこにいたのは、一人の成人した男だった。

しかし、幻想郷の人間ではないこと。自分が知っている人間ではないことは理解できた。

 

黒色の長いズボンを履き、上はグレーや白、黒を基調とした色のない服で

左胸に、アレンジされた黄色の「G」の文字が入っている。

髪は青色で、顔には血の気が無く、目は鋭く、こちらを見てもいなかった。

 

まるで、私の背後に誰かがいて、その人と話しているような・・・。

 

私は、その男の鋭く感情といったものが無い物のような目と

背後に誰かがいるかもしれないという恐怖のあまり怖気づき、「ヒィ」という悲鳴と共に

下を向いてしまった。

 

青髪の男は、今の自分を見ているのだろうか?

背後に誰かがいるのだろうか?

阿求は何処へと行ってしまったの?

ここは何処なの?

 

恐怖と疑問が頭の中を飛び交い、息を無意識のうちに激しくさせる中

青髪の男と思われる、これまた音のような声が耳に入ってきた。

 

「・・・さて。今まで私のやることにたてついてきたが、それも許そう。

 何しろ、今からすべての『心』が消えるのだから」

 

非常に淡々としていて、冷たい声。

 

「キミから!キミの『ポケモン』から!キミの大事な人達から・・・ ・・・!」

 

声を荒げても、激情といったものが感じられない。

私は、自分が見ている地面がいつの間にか石の煉瓦を組み合わせたかのような

見慣れないモノへ変化していることに気づき、思わず顔を上げた。

 

見れば、辺りの景色も変わっている。

 

もうここは、真っ黒な空間ではなく。

暗雲うず巻き、崩れた柱が立ち並ぶ石造りの建物の荒れ地となっていた。

 

正直に言って、さらなる混乱と恐怖で何も考えられなくなっていたが

奥の方に青色と、桃色をした巨大な「何か」がいることはかろうじて見えた。

 

目の前の男が、感情のない声で叫ぶ。

 

「ようやく・・・私の夢が叶う時がやってきたのだ!」

 

そう叫び、今にも笑いだしそうなほどに、その青白い顔を歪ませるが・・・。

 

 

突如として、辺りが昏くなり、一瞬にして凍り付く。

全身の毛が逆立つような緊張感が場を包み込み、動けなくなる。

 

「なんだ、この気配・・・・・・

 

 何者かが 怒り狂っている?」

 

 

そう青髪の男が呟いた時だった。

 

男の背後から、黒いしみが地面に浮きだし、やがて大きな「穴」になる。

その穴からは、今までに感じたことが無い怖気と共に、静電気が全身を包むような緊迫感

と分かりやすい敵意があふれ出していた。

 

青髪の男も、それに気づいてこちらに背を向け、ゆっくり後ずさる。

 

小鈴「ヒッ!?・・・」

 

私は、この時ほど目を持って生まれたことを後悔したことはなかった。

いっそのこと、盲目であれば。そんなことまで考えてしまった。

 

男の背中越しに、穴からおぞましい何かが這い出てくるのを見てしまった。

 

小鈴「    」

もう私は、息をしていなかった。速く気絶したいと思い、呼吸をやめていた。

しかし、まだまだ意識はハッキリとしていて、倒れようにも倒れることができない。

 

 

「おもしろい」

青髪の男が、若干の好奇心と恐怖を混ぜた声でその何かに呼びかける。

 

「影でしか出てこられない『ポケモン』がいるのか」

 

私は、その言葉に目を見開いた。

 

これが、ポケモン?これがAZさんが見せてくれたものと同じ?

これが山を動かしたという、巨神と同じ?

 

きっと違う。私は自分にもそう言い聞かせる。

 

 

こんなに禍々しく、敵意と邪念を纏った魔物が、ポケモンな訳が無い。

 

 

その禍々しい何かは、私の心からの叫びを肯定するかのように

黒くボロボロで、赤い棘のついた、得体の知れない黒い液体が滴る翼を広げる。

 

男は続ける。

「それにしても愚かな・・・・・・○○○○○と△△△△の2匹の力を操るこの私に・・・」

 

そう言った途端、翼の紅い棘が爪のように変形し、まるで腕のように振り上げられる。

 

 

潰される!

 

小鈴「‼‼‼‼」

私は、何とか叫んで逃げるよう伝えようとしたのだが

畏れによって舌が痺れ、何も言えないまま・・・。

 

「この アカギに

 さからららららららら・・・・・・!!」

 

何も言えないまま、全ては魔物の闇に包まれて最初に戻った。

 

「人里:鈴奈庵:早朝:快晴」

 

小鈴「!、はぁ、はぁ、はぁはぁ、はぁ!」

私は飛び起きるように、布団をはねのけて空中に手を振り回し、そこがいつも通りの

自分がよく知る天井・・・自分の寝室であることを認識する。

 

小鈴「はぁ・・・はぁ・・・あ、朝・・・」

 

私は、窓から差し込む明るい陽光にを確認して自分の胸を撫でおろす。

 

どうやら、ただの夢だったようだ。

 

小鈴「なんだろ・・・なんか、ものすごく嫌な夢を・・・・・‼」

 

その時、私は気づき、ちょっとした眩暈を覚えた。

 

 

小鈴「・・夢の内容を、覚えている・・・」

 

そう。すべて覚えていたのだ。

最初の暗闇から、青髪の男・・・あかぎ、といっただろうか?

その男の言った言葉も一言一句漏らさず覚えていたし、穴から這い出た

ポケモンとは思えない悪魔の姿も・・・。

 

小鈴「うっ・・また・・・」

また、眩暈がした。それに頭痛も。

 

正直言って、最悪な気分だった。

胃がキリキリとして、頭を内側からガンガンと叩かれるような痛みが

頭蓋骨の中を暴れまわっている。

どうやら、夢のことを思い出すとこうなるらしい。

 

小鈴「うぅ・・・うわ、汗でびっしょり・・・水、飲も」

 

私は、ゆっくりと自分のいる2階から一階へ向かい

水桶の蓋を開け、柄杓を使っていっきに喉へ流し込む。

 

小鈴「ぷはぁー・・・生き返る・・・・・・・ん?」

 

ふと、私は水桶の水面に何かを見つけた。

青色のガラス玉のような物と、その下に並ぶ赤い何かが写っているように見えた。

 

小鈴「うん・・・?」

 

私は、寝起きの錯覚かと思い、目を擦る。

すると、水面にはもう何も映っていなかったので

やはり、寝起きの幻覚だったのだろう。

 

小鈴「・・・気のせいか」

 

私は、寝起きの良し悪しは兎も角、早起きしたことをいいことに

まだ読み終えていない本を読むことに決め、自分の寝室へと戻っていった。

 

その時、気づかなかった。

 

木の格子をはめられた窓から差し込む陽光が、自分の影を壁に写す中。

 

 

ゆらりと自分の影が揺れ、一瞬青色の瞳をした異形になったことに

私が気づくことはなかった。

 

気付くことになったのは・・・しばらく経ってのことだ。

 

「人里:稗田家:朝:快晴」

 

阿求「AZさん。朝ですよー」

AZ「ぅ・・・うん・・・」

 

巨神異変からすでに6日目。

夏の光もさらにやる気を出し、地上の全てをジリジリと焼き。

嫌な羽音を出しながら生き血を吸おうと策を練る、忌々しい蚊がはびこる日々。

 

今のところ、異変やポケモン・妖怪による被害は出ておらず。

 

気にすべきものが、夏バテと、蚊と、突然の夕立しかないという

かなり平和な毎日を、私達は送っていた。

 

阿求「朝食はもうできてますから。早めに来てくださいね」

そう言って、AZさんを寝室に残し。私はそそくさと

食事が用意された居間へと足を運んだ。

 

しかし、居間に続く襖を開けた途端。

私は言葉を失い、その場に立ち尽くした。

 

 

何故なら、そこには見覚えがある一人の「妖怪」がいたからである。

 

白いワイシャツに、黒いスカートを着こなした。

有翼の人外にして、幻想郷で1、2を争う人気(?)新聞の

記者にしてカメラマン。

 

文「あやや、お久しぶりですねぇ。お邪魔してますよー」

 

鴉天狗、「射命丸 文」はにこやかに挨拶をし、カメラを構え

用意された朝食を様々な角度から撮っている。

 

阿求「・・・最近の妖怪は、割と礼儀が成っているように思っていたのだけど。

   ここ最近の平和と異変の落差に頭をやられたのかしら?」

 

私はさっきまで、平和だなんだと言っていた自分を

頭の中で真正面から否定し、鴉避けの薬品か道具が必要かと

本気で思った。

 

 

文「あや・・・何とも辛辣ですね・・・。

  いや、無断で侵入したことは申し訳なく思っていますよ?

  ただ、最近挨拶できていないなと思いまして」

 

そう目の前にいる鴉天狗は、全く悪びれる様子も無く、また写真を撮る。

 

阿求「・・・挨拶だけですか?」

文「・・・いえ、どちらかというと挨拶はおまけです。

  本題は、この写真なんですが・・・」

そう言って、ポケットの中から数枚の写真を取り出す。

 

文「これは私の同僚である『はたて』が『念写』をしたものなんですが。

  どうにも、おかしいんですよね。そ・こ・で!

  数百年分の書物の知識を持つ阿求さんと

  外の世界の知識を持つ外来人のAZさんに協力をしていただきたいという事です!」

 

そう言って、またニコリと人が良さそうに笑う。

正直に言って、妖怪の笑顔というのは不吉の象徴とさえ言われている。

 

「来年のことを言うと鬼が笑う」とあるように。

妖の笑顔は、「面倒ごと」を呼び込む合図のような物だ。

 

 

しかし。この天狗には、何度か世話になっている。

ここで断れば、後日の新聞で何を書かれるか分からない・・・。

 

 

私は、気づかれないように小さくため息をつき、

「朝食が済むまで待っていてください。話はそれからです」

 

そう言うと同時に、空いたままの襖を身をかがめて入ってきた

AZさんが射命丸に気付き、目を見開いた後。

 

 

私と同じように小さくため息をついて

AZ「朝食が終わるまで。外で待ってくれはしないか?」

 

そう言い、射命丸はまた輝くような笑顔を貼り付け

さっそうと縁側から外へと出て行った。

 

 

阿求「それで、何の用でしょうか?」

 

朝食を食べ、片づけを済ませた私と阿求は

客間にいつの間にか移動していた射命丸と向き合って

その例の写真とやらを見せてもらった。

 

文「これなんですが・・・あっ、念写についての説明はいりますか?」

AZ「いや。すでに阿求から大体聞いている」

 

それならば話が早い、と射命丸は机の上に

写真の束を並べ、こちらに見やすいようにしてくれた。

 

文「念写は成功している。と、はたては言っていましたが。

  にしてはこれ、『異様』なんですよね」

阿求「これは・・・」

AZ「・・・・・」

 

正直に言って、念写と言うものが普段どういうものなのか

実物を見たことが無いため、すこし反応に困るかと思ったが。

 

確かに。普通の写真だとしてもこれは異質。異様だった。

 

 

写真の枚数は、4枚

その写真すべては、風景だけが写っているものだった。

 

しかし、風景が写っていても、まるでもやがかかっている

かのように何が写っているのか、判断が付きにくい。

 

辛うじて、「折れた柱らしきもの」や「森の中にある社らしきもの」。

「巨大な塔のようなもの」と、「夜のように黒い中、白く線を引く何か」が写っているのは

見て取れた。

 

阿求「・・・分からないわね。

   多分、私が今まで見たことがないものだと思う」

文「ですよねぇ。私も1000年ほど生きてますが、こんな風景も

  景色も見たことがありませんよ。AZさんは、見覚えがありますか?」

AZ「・・・いや。どこかで見たことがあるかもしれないが・・。

  すまない、覚えていない」

 

そう言って、もう一度写真を見る。

 

しかし、その写真の内容に何か関連性があるとは思えないし。

何か規則的な物があるとも思えない。

 

ただ、二人の口ぶりからして幻想郷にある物ではなさそうだ。

ならば、これらは何処を写したものなのだ?

 

文「そうですかぁ・・・予兆か何かとは思うんですけどねェ・・・。

  まぁ、分からないのなら仕方がないです。

  

  それでですね・・・もう一つ。

  写真のことについて聞きたいことと相談したいことがあるんですよ」

 

射命丸がそう言った瞬間、目が途端に険しくなり。

表情に影が濃くなったのを、私は感じた。

 

阿求「聞きたいことと、相談?

   それは・・・私達に何か関係あったりすることなの?」

 

文「はい・・・なにしろ、『小鈴』さんが写っている写真のことなんです」

 

「「!?」」

 

 

小鈴・・・?

 

 

AZ「小鈴が、どう映っているものなんだ?」

 

正直に言って、いい予感がしない。

何か・・・とてつもなく不吉なことが起こるような気がしてならない。

 

射命丸は、ポケットから1枚の写真を取り出しテーブルへ置く。

 

 

阿求「!・・・」

AZ「!?・・・なんだ、これは・・」

文「はい・・何か、ただならぬことが起きてるような予感がします」

 

 

その写真に写っていたのは、確かに小鈴だった。

どうやら、何か桶のような物を覗いてるらしい。

 

さっきの風景写真とは違って、ピントが合い。

細部まではっきりと見える。

 

ただ、ハッキリと見れるが故に

その写真に写ったモノの異質さが際立って見えるのだが。

 

 

それが写っている個所は、小鈴の背後。

小鈴の姿が陽光で照らされ、背後の壁に影がある場所。

 

そこにはあるべき形の、小鈴の影はなく。

代わりにガラスを通したかのように色のついた

青色の球と、赤色の帯が煌めく。

まるで闇のように昏い異形の影が。

助けを求めるかのようにその手を小鈴に向けて伸ばしていた。

 

「紅魔館:時計塔前、屋上:昼前:晴れ」

 

自分は、何者なのだろうか?

 

この世に生まれたときから、この場所に来る前から。

そして、この場所に来てからも。

 

ずっとずっと、何度も何度も。

森の中で、山の中で、水の中で、街の影でも、空の上でも。

 

答えが出ないまま、胸の内にくすぶり続け。

時に大蛇のように暴れだそうとする、怒りや悲しみにも似た疑問を

自らに問いては、それを黙殺する日々を送っていた。

 

『私は・・・私は・・・』

 

そう呟いたまま、次の言葉が出てこない。

おもむろに、人間とは違う灰色の腕と3本の指を見つめてみても

何か、その答えが出る訳も無く。

 

『・・・・・・・』

 

また、前と同じように押し黙る。

 

 

だが、正直に告白すれば、自分が何もなのかはハッキリと分かっている。

 

遺伝子ポケモン。タイプ:エスパー。特性はプレッシャー。

名は、顔も声も知らぬ「親」から一部取った。

 

「M2」・・・『ミュウツー』と呼ばれている。

 

 

だが、これは自分ではない。

自分であって、私ではないのだ。

 

なら、『私』とは何だ?

 

 

『・・・』

答えは出ない。いつになったら出るのだろうか?

 

私は、外していたボロのフードを再び深く被り。

同じくボロボロのローブで全身を隠し、飛び立つ。

 

 

『・・・・・』

 

空を風を切って進む中、眼下に大きくえぐれた山並みに

多くのポケモンや人間が集い、山を治す様子が見て取れた。

 

正直に言って、あの巨大なポケモンが山を動かそうとしたとき

人間達はそのポケモンを殺すだろうと思っていた。

 

しかし、結果はいたって平和的な解決だった。

ポケモンも人間も、どちらも死者を出すことなく。

被害は環境だけに留めた。

 

私はその様子を見て、感嘆した。

 

 

にわかには信じられないが、この世界にはポケモンという存在がいなかった。

完全に、お互いのことを知らぬまま。

 

騒動によって始まったその険悪な関係は、崩れ去るどころか

より強固な結びつきとして、お互いを補強し合うことになった。

 

 

私は、眼下に白い地面を見つけたため、近くに人間がいないことを確認して

その白い地面・・・・・大量のスズランが覆う丘へ向かった

 

 

私は、その鈴蘭を踏まないよう細心の注意を払って着地し。

また、自分の三本指を見つめる。

 

『・・・お互いのことを、全く知らぬ2つの世界が混じり合い。

 ついには融け合い始めている・・・』

 

それが、とてつもなく深刻で重大な問題であることは明白だったが

私はその興味や、好機の念よりも。

心の中に急に落ちてきたかのような、希望的な観測に胸を高鳴らせていた。

 

 

『・・・私の生まれや、私の力を・・・ここの人間達が知らないのならば・・・』

 

 

 

そう、もし知らないのであれば。

 

 

 

 

『私のことを・・・受け入れてくれるのだろうか・・・・』

 

 

それは疑問ではなく、希望として口から流れ。

北から吹いてきた風が揺らす、白いスズランと共に

何処かへと散り、消えていった。

 

「幻想郷:迷いの竹林:昼頃:晴れ」

 

陽の光のほとんどが長く太い竹に阻まれ、奥に届くことが少ない

薄暗い竹林の中。桃色の服を着た少女はタケノコを抱えて

素早く駆けていた。

 

所々、地面に露出している竹の根をジャンプして避ける度に

首から下げた人参のアクセサリーと、黒髪から

突き出た二本の兎耳が揺れる。

 

「因幡 てゐ」。永遠亭に住み着いている

地上の兎を束ねる、幸運を呼び込む妖獣である。

 

そんな兎の統領である彼女が、何故タケノコを抱えて

竹林の中を駆けているのか?

 

 

それは、お使い兼『罰』のためである。

 

いくら兎の統領、元締め、ボス、親分であろうとも

本人は非常にイタズラ好きで、人を騙し、平然と嘘をつく。

 

その本人の行動に、いつも業を煮やしている

永遠亭の者達は、逃げ足の速いてゐを捕まえたとき。

 

なんらかの罰・・・要は課題を出すことにしている。

 

 

それが、因幡の白兎(自称)である彼女が

タケノコを抱えて竹林の中を跳びまわっている理由である。

 

 

しかし、それで彼女が行動を反省するかというと

 

てゐ「あ”-、めんどくさい・・・落とし穴に竹やりを敷き詰めただけで

   こんなことをさせるなんてぇ・・・・」

 

一切、後悔も反省も感じていないのである。

 

 

てゐ「しっかしまぁ・・・あの生き物達はなんなのかねぇ・・・

   まぁ、ここにたどり着く奴なんてほぼいないだろうけど」

 

そんな独り言を言っている時だった。

 

 

着地した地面から、わずかに突き出た石に片足を引っかけてしまい

派手にスッ転ぶ。

 

てゐ「え・・・あ、イダッ・・・いたたた・・・」

 

思いっきり重心を前に傾けていたため、前のめりに

地面を滑っていく。

 

そして、勢いが止まり。少し情けない格好で地面に倒れ伏す。

 

てゐ「あーちくしょー・・・どいつもこいつも全部まるっと

   鈴仙のせいだー・・・・ん?」

 

倒れ伏したまま、視界の隅に何か光る物を見つける。

 

てゐ「んにゃ?なんだ、あれ・・・」

 

 

それは、竹の根もとに半分埋まるようにして存在していた。

光っているように見えたのは、その物体がある場所だけ

竹の隙間から陽光が射しこんでいたからだった。

 

 

てゐ「おー・・・お・・おお!これって、宝石ってやつじゃないか!?」

 

てゐは、その煌めく物体を掘り返すためにタケノコを近くに置き

手が汚れるのも構わずに、その物体・・・宝石らしきものを取り出す。

 

若干、土や砂がついているので軽く擦り。陽光に照らす。

 

 

形は明らかに人工物としか思えないほどに丸く。

光を通すほどに透けていて、紫色をしている。

 

てゐ「へぇ・・・アメジスト、かな?いや、紫水晶?

   ん?中心に何かある・・・」

 

そう。普通の宝石ではなく、その紫の球体に包まれるかのように

S字にくねった、紅色と藍色で構成された何かがあった。

 

大きさは、ビー玉より若干大きいくらいだったが

妙に、ずっしりと乗っかる様な重みを感じられた。

 

てゐ「・・・へへ、こりゃ大国主神様が、私にくれた

   お小遣いだね。ふふ、もらっとこ」

 

彼女はそう言って、その宝石をポケットの中に隠している

もう一つの隠しポケットへ入れ、タケノコを抱えて

また竹林の中を上機嫌に駆けてゆく。

 

 

自分が足を引っかけた石が、骨のような物を

含んでいることに気付かないまま・・・。

 

 

To be continued・・・




うろ覚えキャラクタープロフィール:本居 小鈴
種族:人間 性別:女 
性格:かなりの好奇心と、本に対する愛情を持つ文学少女。
人里の貸本屋、「鈴奈庵」で店員兼店番をすることが多く
長期にわたって外出することは珍しい。
本に対する愛情と思い入れは、妖魔本にも及んでおり
何度かその好奇心と行動力で危険な目に合ったこともある。
それでも、妖魔本を集めることをやめない。ドM?
友人:・稗田 阿求 ・博麗 霊夢 ・霧雨 魔理沙
能力:ありとあらゆる文章を解読することができる程度の能力
解説:様々な文字で書かれた文章であっても。
そこから文字のパターン・意味・読み方を瞬時に解析し、理解することができる。
ただし、単語や文字一つだけだと、読めるのかどうかは不明。
ただ、文章であれば古代の文字であろうと妖怪の文字であろうと英文であろうと
読めてしまうことは確かである。
余談:ちなみに読めるだけ。書くには勉強するっきゃない。


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55ページ目 混乱

どうにも最近、小説を書くのに飽きている自分と
早く次の小説が書きたくて書きたくて仕方がない自分がいる。

そんなこんなで55ページ目です。


「紅魔館:大図書館:昼間:晴れ」

 

巨神異変が終わり、数日が経った。

相変わらず、館の外では文字通り命をかけた戦いを蝉たちが繰り広げ

太陽がうっとおしく思うほどの陽光でこの幻想郷を照らしているのだろう。

 

しかし、この図書館から出ることがまずない私にとっては

そんなことは関係が無かった。

 

図書館。正式名称を、「ヴワル大図書館」。

 

一体いつからこの名が名付けられ、どういう意味を持っているのか?

それは、管理人である私も覚えてはいない。

 

そう考えると、生物の記憶とは儚く虚しいものだと思う。

 

一応、記憶力には自信がある方だし。実際にこの図書館内

にある本棚の位置、何処にどのジャンルの本が置かれているか。

タイトルはどういうものなのか。ほぼすべて暗記している。

 

 

だが、ふとしたことで、大切な人の名や顔を忘れ。

ちょっとしたことで、どうでもいいくだらない考えが浮かび。

覚えている本のタイトルと内容とジャンルがごちゃまぜになる

事が多々ある。

 

しかし、本。これは本自体をなくすことはあっても

その中の記憶・・・記録が勝手に消えたり混ざったりする事はない。

 

一度ペンを持って、文字を書けばいい。簡単なことだ。

そうすれば、その書いたものは、自ら消したりなくさない限り残り続ける。

 

それこそ、大切に保管すれば50年・・・100年・・・。

誰かに渡したり、売ったりすれば50里・・・300里・・・。

 

記録は、その気になれば時間と空間も超越できる。

 

 

だから、私は本が好きなのかもしれない。

 

ただ単に、古い本独特の香りが好き。ページをめくる感触と音が好き。

というのもあるかもしれないが、記録の持つ圧倒的な記憶との差。

 

それを自覚し、記憶を記録へと変換する。

それを蓄え、溜め、周りを囲む。

 

そのなくならない記録を創りだす充実感と

いつでも読み返せば思い出せる安心感が、私をこの大図書館に

縛り付ける理由の一つであり。

 

本が好きであるという答えの一つなのだろう。

 

 

 

真実はきっと一つではない。

 

その証拠に、今手に持っている本。

「ヴワル大図書館創設紀」には、こう書いてある。

 

 

名前の由来

その一:ヴワル→ヴェール→幕

    この図書館を、稀覯本・妖魔本・外来本・自らの著書で

    満たすにあたって、最大の敵は日光とカビと字喰い虫。

    その本を護るための幕として、名付ける。

 

その二:ヴアル。ソロモン72柱の魔神の一体。

    過去・現在・未来を蓄える能力を持つ・・・らしい。

    様々な本を蓄える(予定)のこの大図書館の名にふさわしいと思う。

    

 

ちなみに、この二つの名前の由来は文字の状態からして

同じ日に書いたものだと分かる。

ちなみに著者名は、「パチュリー・ノーレッジ」。

 

やはり、記憶はあてにならない。

 

 

パチュリー「・・・さて、と・・・」

 

私は読んでいたその本を机の端に置き、一冊の黒い表紙の本に

手を伸ばそうとしてやめる。

 

その本は、黒い革表紙に金色の文字でこう綴られている。

「やぶれた世界」。

 

私が知る限り、最も「完成」されており。

その文章力、表現力に「圧巻」された分厚い本。

総ページ600以上の長編小説。

 

数日前まで、創作上の幻想(ファンタジー)小説と思っていたもの。

 

 

変化は、若干頼りない中年の男の姿をして現れた。

 

~数日前~

 

咲夜「パチュリー様。ただいま帰りました」

パチュリー「あら、レミィに外出禁止だとかなんだとか

      言われてなかったっけ?まぁ、兎に角お帰りなさい。  

      ・・・その人は誰?」

 

咲夜の真横に、中年の男性が目を見開き辺りを

キョロキョロと見まわしている。恐らく外来人だ。

 

赤いシャツ。茶色のズボン。やけに大きいリュックサックを背負っている。

 

 

何事だろうか?

 

見る限り、特別危険人物というわけではなさそうだが

着ている服の袖やズボンの裾がボロボロになっているところを見ると

完全に普通の人とはとても思えない。

 

咲夜「この方は、ムゲン・グレイスランド博士です。

   話すと長くなるのですが・・・私を危機から救ってくれました」

ムゲン「やぁ、こんにちは!キミが、パチュリーちゃんだね?

    話は咲夜ちゃんから聞いているよ」

 

パチュリー【ちゃん】。咲夜【ちゃん】。

 

パチュリー(咲夜は兎も角、100歳以上年の離れた初対面の

      男性にちゃん付けで呼ばれるんなんて・・・)

 

パチュリー「・・・ムゲン博士・・・でいいのかしら?

      そう、私はパチュリー。この図書館の管理人にして

      魔法使い・・・。咲夜」

 

咲夜「はい?」

 

パチュリー「長くなろうが、複雑だろうが。話なさいよ。

      貴方がこの人とどう出会い、何処に行っていたのかを」

 

私がそう聞くと。咲夜は困ったように表情を崩す。

どうしても言えない理由があるのか?

それとも言葉で説明するには難しすぎる話だからか?

 

分からないが、咲夜が少し話しづらいという事だけは分かった。。

 

パチュリー「・・・どうしても話せないというのなら

      この人に話してもらうけど・・・」

 

咲夜「いえ、どうしてもという訳ではないのですが・・・・

   そうですね・・・とりあえず、お茶とお菓子を持ってきますね。

   その間、あの、ムゲン博士・・」

ムゲン「言わなくても分かっているよ。待っている間に簡単に

    説明やらなんやらしておくから」

 

そう博士がいい、咲夜はわざと時間停止による瞬間移動を使わず

わざわざ歩いて図書館から出て行った。

 

パチュリー(そういえば・・・咲夜、能力が使えないだとか

      なんだとか言っていたけど・・・)

 

話の流れから察するに、ムゲン博士にだいたいの説明をさせるために

あえて時間をかけて茶を淹れに行っているのだと思うが・・・。

 

パチュリー(そこのところも・・・あとで説明してもらいましょうか)

 

 

パチュリー「・・・とりあえず、適当に座っていいわ。

      ・・・それじゃあ、話してもらいましょうか」

 

ムゲン「そうだな・・・・じゃあ、まず・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ムゲン「やぶれた世界・・・『反転世界』について話そうか」

 

パチュリー「・・・・・・」

その話を聞いて、まず疑い、驚き、そして呆然とした。

 

この世界に、ピッタリと隣り合わせで存在するもう一つの世界。

たった一体の生命体・・・ポケモン()により支配される

純粋と汚濁が混ざりあった、矛盾した世界。

 

その世界を支配する者の名を、『ギラティナ』。

 

 

ムゲン『ギラティナは、この反転世界にただ一匹存在する

    唯一無二にして、絶対的な王者だ。

    影から世界を監視し、「歪み」が現れたときに

    それを修復する能力を持つ』

 

 

同じだ。そう思った。

 

黒い革表紙の、分厚い小説。

そこに金色の文字で書かれているタイトル、「やぶれた世界」も

この人・・・博士の言っている世界の名と一致する。

 

そして、その中に登場する神の使命・・・。

 

 

世界を、元の形に修復する。

それが、ギラティナの能力と一致する。

 

とても偶然とは思えず、その話を聞いた瞬間

その本を渡して見せた。

 

 

ムゲン『この本は・・・なんだい?私は見たことが無い本だが・・。

    でもタイトルに、やぶれた世界・・・。

 

    ・・・・・・・少し、借りてもいいかな?』

 

私は、その本を博士に貸した。

その時、ちょうど咲夜が3人分の湯気が立つティーカップと

チーズケーキを持って来てくれた。

 

 

そこから、咲夜と博士がその世界でどうなったのか聞かされたが

次の話を聞くたびに、好奇心と恐怖と興奮と冷静さが

ジワジワと胸の内を満たしていくのを感じた。

 

 

逆さまに流れる滝。歪んだ幻想郷の姿。

信じない者が聞けば、夢物語かホラ話として相手にしないような

お伽話のような体験談。

 

私は夢中になり、記憶を忘れないようにするために本に

その話と自分の考察を綴り、記録とした。

 

 

 

パチュリー「・・・・・」

私は、博士から返された、やぶれた世界の小説に手を置く。

 

この本が返されるとき、博士は

ムゲン『私が知っている反転世界とはかなり描写が違うけど・・・

    ギラティナ・・・神についての説明や能力に関しては

    こちらと何ら変わりない。この本をどこで手に入れた?』

 

そう言っていた。

 

 

完全に創作という訳ではなく。

事実だけを反映しているとはとても思えない。

著者・出自・年代。全てにおいて不明な小説。

 

そう考えると、今になって恐ろしく思う。

 

パチュリー「・・・ギラティナ・・・そして、ディアルガ。

      反転世界と時間の主・・・・・・」

 

他に、前に紫がAZという男と話していた空間神・パルキア。

 

 

一体一体が、この幻想郷を何度も滅ぼすことができる程の力を持つ

存在が、一度にこの幻想郷で確認された。

 

これはもう、異分子が入り込んだだとか。

幻想郷のバランスが云々と言っている場合ではない。

 

未だ、分からないことや謎の方が圧倒的に多いが。

このまま放っておけば、どこに行きつくのか?

これからどうなるのかだけは明確に分かった。

 

 

このまま行けば・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

パチュリー「幻想郷は、消えて無くなる」

 

「幻想郷:博麗神社:逢魔ヶ時:晴れ」

 

神社とは正反対の方角。

西の空が、茜色に染まり。少しづつ周りが陰り暗くなっていく。

 

夜が降りてくる。

前に、そう紫が表現したのを思いだした。

 

紫「あら♡覚えてくれていたのね」

霊夢「あんたはいつからサトリ妖怪になったのよ」

 

最近はいつもこうだ。

異変が終わってから、毎日。この時刻に私の様子を見に来る。

 

紫「最近どう?イーブイちゃんの様子は?」

霊夢「あんたにちゃん付けで呼ばれる筋合いはないけど・・・。

   まぁ、元気ね。たまに一緒に弾幕避ける練習したり

   進化について独自に調べたり・・・いつも通りよ」

 

そう言うと、紫は大して興味なさそうに「ふぅん」と

適当に呟き、私の隣に座る。

 

紫「・・・平和・・なのかしらね・・・」

 

紫はいきなり、そう呟いた。

何言っているの、と聞こうとしたが。

紫の顔が妙に神妙で、どこか怯えているような表情を

浮かべているから、聞かずに黙っていることにした。

 

紫「・・・ねぇ、霊夢・・・。

  あなたにとっての『平和』って何かしら?」

霊夢「何よ急に?本当にどうしたの?」

紫「いいから答えて頂戴」

 

そう強く言われると、言葉を返しにくい。

仕方なく、少し平和について考え、すぐに思いつく。

 

霊夢「人間妖怪とか、ポケモンだとか、災害だとか、異変だとか。

   そんなことは関係なく、今こうやって平和について語れるっていう

   現状が平和だと思うわ」

 

その言葉に、紫は少しだけ目を見開き

「そうね」と微笑しながら呟いた。

 

紫「さ!暗い話はもうやめにしましょ。

  あ、あと。あなたに渡したいものがあってきたのよ」

霊夢「渡したいもの・・・?」

 

 

そう聞くと、紫は「うふふふ・・・」と気持ちの悪い笑い方をしながら

懐に手を突っ込み・・・。

 

 

紫「じゃーん!最新のモンスターボール!

  携帯獣捕獲紅白球ver2よ!」

 

そう言って、その携帯獣・・・なんちゃらと名付けられた

モンスターボールを眼前に突き付けられる。

 

霊夢「・・・私の持っているのものと、何か微妙に違うわね」

 

 

そう、本当に微妙だが違うのが分かる。

 

赤と白で構成され、真ん中にボタンがついているのは

変わらないが、開閉に使う蝶番の部分がいくらか強化され

シールのような、小さく丸い札が一枚貼られている。

 

霊夢「・・少しごつくなったって感じかしら。

   でも、あまり変わったようには見えないわね」

紫「ふふふ・・・魔理沙やレミリアに見せても

  同じ反応をされて少し悲しいわ・・・でも!

 

  性能は、従来のモンスターボールの1.5倍!

  式符による作用と、構造自体の強化により逃げられ

  にくくすることに成功!実証済みよ♪」

 

霊夢「ふぅん」

私は興味なさそうに深く息を吐きながら

そのボールを手に取り、眺めてみる。

 

霊夢「まぁ、前に貰ったあんたのボールがまだまだ

   余っているから、使うことはあまりないと思うけど」

 

紫「それでも、この幻想郷産のボールの中では今のところ

  トップクラスの性能よ。持っておくだけ損はないわ」

 

言われてみればそうなのだが、あまり私はポケモンを捕まえようという

気が起きない。

 

今のところ、たまに野生のポケモンと戦うことがたまにあったが

その多くはイーブイの突然の進化による粉塵と爆風で

ダメージを負って向こうから逃げ出すか、そもそも戦わないか

のどちらかだ。

 

それに、新たにポケモンを手に入れてもその分食料を

多く仕入れなくてはならない。

 

私は、できる限りなら必要最低限の仕事だけしてのんびり暮らしたい。

 

 

だが・・・・。

 

紫「私はあなたが心配なのよ霊夢。

  万が一あなたが洗脳による影響を受けたら嫌だし

  強力なポケモンに襲われて怪我でもしたら」

 

こんなにいろいろ言っておいて、要は

「もらっとけ」という意志が満々のスキマ妖怪を早々に帰らせるには

貰うしかあるまい。

 

霊夢「分かったわよ、分かった。あんたは私の親かっ。

   いいわ、使わないと思うけど貰ってあげる」

 

紫「そうそう!貰っときなさい。損はないんだし」

 

 

そう言って、立ち上がりスキマを開く。どうやら帰ってくれるらしい。

 

紫「それじゃあね、霊夢。また明日来るから」

 

そう鳥居の先に光る陽光をバックに、紫の姿が消えていった。

 

 

霊夢「・・・まったく、過保護なんだから」

 

紫が、私に対して親のように様々なことを気にかけてくれるのは

今に始まったことではないが、ここ最近の異変でどうも

それが多くなっている。

 

霊夢「まぁ、気にかけてくれるのは別にいいんだけど・・・」

 

 

逆にこっちが向こうを心配してしまう。

 

未だ、空間神に斬られたという傷は治っていないらしいし

時々、バレないようにしてはいるが心臓が痛むかのような仕草を

見せる時がある。

 

霊夢「人の心配より・・・自分の方を優先させなさいよ・・・」

 

 

ぽつりと漏らしたその言葉に答える者は誰もいなく。

鳥居の向こう。地平線の彼方に日が沈み

辺りは夕闇に包まれた。

 

「人里:大通り:夜:晴れ」

 

夕闇染まり、影が濃くなり、闇が降りる妖怪の時間。

しばらくぶりに来た人里は、ほんの数日前には

人っ子一人姿を消し、博麗神社へと避難したとはとても思えぬくらいに

活気を取り戻し、賑わっている。

 

???「うんうん♪人間が畏れを持つのはイイことじゃが

    こうやって活気づいてないとバランスがとれんからのぅ♫」

 

そう誰に向かってでもなく呟き、大通りをのんびりと歩く。

 

その時、見知らぬ誰かと肩がぶつかる。

 

慧音「ああ、すまない」

???「いいや、こちらこそ。よそ見してしまってたわ」

 

そう言って、通り過ぎる。愉快に思う。

 

何故なら、向こうはわしが妖怪であることに気付いていない。

それが、なかなか面白くてわくわくする。

 

いつ気付くか。どこで気付くか。わしの変化を見破る奴はいつ現れる?

 

そういった楽しみが、最近の生きがいになっている。

 

???(最近は、天狗新聞によるとポケモンだとか呼ばれる

    獣共からうちの領域を護ることに従事していたからのう)

 

最近は、どうも皆が慌ただしい。

 

わしがこのようにしているという事は、他の皆もそうなのだろう。

そう思い、目的の店が見えてくる。

 

「鈴奈庵」

 

今日はもう遅いし、ダメもとで来てみたのだが

まだギリギリやっているらしい。看板はまだ下ろされていない。

 

???(しめしめ。今日こそ、稀覯本・妖魔本を買ってやろう♬)

まぁ、葉のお金じゃが(笑)。

 

そう思い、さらに数歩近づいたところで何か音が鳴っていることに気付いた。

 

 

 

竜巻か、渦潮か。

何かが高速で渦巻く、圧倒的な力を感じる。

 

 

 

そう思っていた時、鈴奈庵の閉じられた扉が吹き飛び

黒い渦に押し出された極彩色の何かが大通りに倒れる。

 

???「なっ、なんじゃ・・・?」

 

いきなりの出来事に、悲鳴を上げ逃げ出す者。

何が起きたのか、見物に来る者。

我関せずとそそくさとこの場を離れる者。

 

人・妖怪関係なく、皆がその騒ぎの中心となった

鈴奈庵と大通りに転がる鮮やかな色をしたものに注目を集める。

 

すると、その鮮やかなものー恐らくポケモンーは

赤い色のシルエットへ変化し、吸い込まれるように鈴奈庵の方へ戻っていく。

 

ただごとではない。

 

そう判断し、わしは倒れた扉を踏み、吹き飛ばされた

入り口に体を滑り込ませると、そこはいつもの鈴奈庵ではなかった。

 

 

本は散乱し、床を覆いつくし、ついさっきの渦で破れたか

白いページや紙片が宙を舞い、雪のようにひらひらと落ちている。

壁には傷がつき、天井には何故か大穴が空き2階の床板と

破壊された畳が見える。

 

本棚が倒れ、広くなったスペースに一人の大男と少女がいる。

大男は紅白球を左手に、わしのことなど目もくれずに

ただ一点を見つめている。少女も、その男と同じ場所を見ているようだ。

 

その視線の先には・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すやすやと、場違いにのんきな寝息を立てながら眠る一人の少女。

小鈴の姿があった。

 

 

 

「どうなっておる・・・・」

 

わし・・・「二ツ岩 マミゾウ」は、柄にもなく

呆然として、そう呟いた。

 

To be continued・・・




タイトルいいのが思いつかなかった(´・ω・`)


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