この死神と呼ばれる魔法使いに祝福を! (zorozoro)
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アクセルの街 ベルディア編
この駄店主に説教を!


初めて書かせていただくので、指摘等お願いします。


「お前は、一体何を考えてんだ!!」

 

俺は目の前で正座しているこの駄店主に向かって怒号を発していた。

 

「待って!お願いだから待って!ソウ君!!」

 

そう言っているこのウィズ魔道具店の店主ウィズがこの俺、ソウガに対して泣きながら怒りを鎮めようとしていた。

 

「何だ、言ってみろ。俺が納得できないような内容だったら消し炭にするからな」

 

「酷い!!」

 

そう言って、この駄店主が声を発した。

 

「うう………、酷いよ………。私は良かれと思ってやったのに………。ソウ君の喜ぶ顔が見たくてやったのに………」

 

「どうやら消し炭になりたいようだな」

 

「待って!本当に待って!この製品は品質に間違いないから、きっとどこかの魔法使いが、この製品に目をつけて大量に買い占めてくれるはず………」

 

「この駆け出ししかいない町でこんなものが売れるわけがないだろうが!!」

 

そう言って俺はこの駄店主に拳骨を落とす。あまりに痛いのかその場で悶えながら転がっている。そもそも何で俺がこんなに怒っているかというと。

 

「何で最高品質のマナタイトを買い占めたのかが理解ができねぇわ!!一つ数千万もするマナタイトを駆け出しの冒険者が買えるわけないだろうが!!」

 

マナタイトとは、一度だけ魔力を肩代わりできる使い捨てアイテムだ。魔法職の冒険者は最低一つは持っている。だが、駆け出しの冒険者しかいないこのアクセルの町では数千万もする最高品質のマナタイトなんか手が出せるわけがない。そもそもそんな金があるなら同じ使い捨てアイテムで使いやすいマジックスクロールを大量に買ったほうがお得だ。

 

「くそ!!くそ!!せっかく俺がモンスターを倒して稼いできても、お前は湯水のごとく金を使いやがる!!お前は呪われてるんじゃねぇのか!!ああ!!」

 

「怒らないで、怒るとかっこいい顔が台無しだよ」

 

「誰のせいで怒ってんだ!!てめぇはああああああ!!!!!」

 

「痛い!!痛い!!頭をぐりぐりしないでぇ!!」

 

そう言って俺はウィズの頭を拳でぐりぐりする。こいつはいつもいつも考えることは一人前だが、やることが全部空回りしてやがる。

 

「まぁいい、やってしまったことはしょうがないから次は気をつけろよ」

 

「うん………、ごめんねソウ君………」

 

そういってウィズはしょんぼりしてうつむいてしまった。俺はウィズの頭をやさしく撫でた。

 

「しょんぼりするな、お前のことは小さい頃から知っているし今に始まったことじゃない。俺たちは寿命というものがない。ゆっくりでいいから二人でこの店を世界一の店にしよう」

 

そうウィズはリッチーと呼ばれるアンデットの王だ。リッチーとは相手に触れるだけで状態異常を起こし、魔力と命を吸収する伝説のモンスター、そして俺は人間でありながら、ウィズの眷属になり不老不死になっている。もう何年も一緒に過ごしている。

 

「だから元気出せ、俺はお前に笑顔でいてほしい」

 

「うん」

 

そう言うとウィズは笑顔になり、微笑む。

 

「さて、じゃあ俺は冒険者ギルドに行くから、店番よろしくな」

 

「うん、いってらっしゃい。ソウ君」

 

そして俺は店を後にして冒険者ギルドに向かう。やれやれ店がつぶれないようにするのと今日の飯代を稼いできますか。

 




すみません。短くなってしまいました。


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この死神にパーティーを!

感想等募集しています。


冒険者ギルド。冒険者への依頼の取次や冒険者カードの発行や飲食のサービスを提供している場所。そこには数多くの冒険者が日々依頼を受けたり飲食を楽しんだりしている。素行が悪い人にもなれるため荒くれ者が多くいるが戦いしかできないおれにとってはありがたい話だ。そう考えていると冒険者ギルドに着いたので扉を開け中に入る。

 

「おい、ソウガが来たぞ………」

 

「今日もソウガは機嫌悪そうだな………」

 

「同じ魔法職だからソウガさんとお近づきになりたいなぁ………」

 

「バカ!!ソウガさんと同じ土俵に立てるわけないでしょ………」

 

「パーティーに入ってほしいけど無理だよなぁ………」

 

はぁ………。俺はギルドに入るとそういうヒソヒソ声が聞こえた、ギルドに来ると毎回こんな感じになっている。その理由はソロでどんなモンスターも必ず死に追いやり、彼の後には無残な死体なったモンスターであふれかえると噂を流されてしまったからである。その噂を流した戦士風のチンピラ冒険者は半殺しにしてやったが噂だけが残ってしまっている。はぁ………。

 

「ソウガさん、おはようございます」

 

「おはよう、ルナ」

 

俺は受付嬢のルナとあいさつをした。ルナは俺が冒険者になった日からお世話になっている人だ。

 

「ソウガさんは、本当に皆さんに人気ですね」

 

「ヒソヒソ声で話しているがな」

 

「ソウガさんと話をするのが恐れ多いと思っているんですよ」

 

そう言って微笑むルナに俺も微笑んだ

 

「すまないルナ、今日も適当に高難易度のクエストを見繕ってくれないか」

 

「分かりました。少々お待ちください」

 

そう言ってルナは俺から離れていった、見繕ってもらっている間に俺は暇なのでパーティー募集の掲示板を見ていた。結構なほどの募集の張り紙があったが、俺は一つの張り紙が気になった。

 

 『急募!アットホームで和気藹々としたパーティーです。美しく気高きアークプリースト、アクア様と旅をしたい冒険者はこちらまで!』

 

 『このパーティーに入ってから毎日がハッピーですよ。宝くじにも当たりました』

 

 『アクア様のパーティーに入ったおかげで病気が治ってモテモテになりました』

 

 『採用条件、上級職に限ります』

 

「う、うさんくせぇ………」

 

掲示板に書かれていたその内容に心の中で思ったことがついつい口に出てしまう。なんだこの内容、うさんくせぇにもほどがある。そもそも何だこのAさんBさんの証言は詐欺の常套手段じゃねぇか。こんなのに誰が加入するんだ。

 

「この張り紙を出したのは。………多分あそこで騒いでいるやつらの一人か」

 

俺はそう言ってある一角を見ていた。そこには三人の人がいた。

一人目は見たことのない緑の服を着た少年だった、体は見た感じあまり鍛えていない感じで多分だが新しく冒険者になったばかりだろう。

二人目はその少年の後ろにいる。青髪の女は………多分この張り紙を書いた張本人だろう雰囲気がある、あと何か知らないが神性な感じがするのは気のせいだろう。

三人目は俺と同じで魔法使いの少女だ、幼いながらも高い魔力をもっている感じだが何故だか分からないがあまり関わりたくない感じをしている。

 

「あまり………関わらないほうがよさそうだ」

 

そう思って離れようと思ったが何故か考えてしまっている。俺は何日か前にウィズと話していたことを思い出していた。

 

◆◆◆

 

「ソウ君はパーティーに入ったりしないの?」

 

「何だ?いきなり」

 

ベッドで俺の隣にいるウィズがそのような事を言ってきた。俺は疑問に思っていた。

 

「だってソウ君の実力なら、どこのパーティも欲しがるはずだよ。それなのにずっと一人でクエストに行ってるからなんでだろうって思って」

 

「一人だとやりやすいからな、報酬の金も全部この店のために使えるしな」

 

「でも一人なんかより楽しいと思うよ」

 

でもなぁと考えているといきなり抱き着いてきた。急にどうしたと思っていたらウィズがこう言ってきた

 

「ソウ君が強い事はわかってるよ。でも、もしもってことがあるかもしれない。そう考えたら怖くなったの。ソウ君までいなくなったら私………」

 

「そうか、心配かけてすまなかったな」

 

「ううん、わたしの方も変な事を言ってごめんね」

 

そういうウィズの頭をなでる。気持ちいいのか目を細めるウィズを見て俺は微笑んだ。

 

「まぁよさそうな所があったら考えてみるよ」

 

「うん、もう夜も遅いし寝よっか」

 

そう言ってウィズは疲れてしまっているのかすぐに眠ってしまった。パーティーか………。

 

◆◆◆

 

その夜の事を思い出して、俺は考えていた。このままでいいのか、うさんくさいが今の自分を変えるためにはいいのかもしれないな。そう考えているうちにクエストを見繕ってくれたルナがやってきた。

 

「ソウガさん、おまたせしました。今ある高難易度のクエストはグリフォン十体の討伐とケルベロスの捕獲クエストの二つになりますが、今すぐに出発しますか?」

 

グリフォン十体とケルベロスの捕獲か、この程度なら半日あれば達成できるが………。

 

「すまないルナ、今日は別の用事を思い出した。明日にしてもらっていいか?」

 

「はい、分かりました」

 

そう言ってルナは受付に戻っていった、そして俺は少しでも自分を変えるために幼なじみのためにその三人のもとに歩を進めていた。

 

◆◆◆

 

「募集の張り紙を見させてもらった」

 

そう言うと三人は俺の方へ向いた。

 

「まだ募集はしているかな?もしよければ俺をパーティーに入れてくれないか?」

 

「それは是h「条件は見てきたんでしょうねッ!?」おい駄女神!話に割り込みな!」

 

「うるさいわね!ヒキニートは黙ってなさいよ!でそこのあなた!!上級職じゃないと、このアクア様のパーティーには入れないわよ!?」

 

後ろの緑の少年がぎゃあぎゃあ言っているが、まあいい。

 

「俺はアークウィザードを生業としているソウガだ。ある程度の魔法は使える」

 

「残念でしたね、アークウィザードは私一人で十分です!!」

 

そう言って魔法使いの少女がマントを翻しながら名乗った。

 

「我が名は、めぐみん!アークウィザードを生業とし、最強の攻撃魔法、爆裂魔法を操る者!」

 

この変わった名前に、赤い瞳はたしか。

 

「紅魔族か」

 

「いかにも!!私は紅魔族随一の魔法の使い手、めぐみん!ゆえにあなたの居場所はありません!!立ち去るがいい!」

 

「おい!なに勝手に決めてんだ!!」

 

後ろにいた緑の少年が、紅魔族の少女、めぐみんの前に出る

 

「すまん!こいつらが騒いでしまって。俺は和真だ。まだ冒険者になったばっかりでしかも最弱職なので仲間になってくれると助かる」

 

そう言って緑の少年、カズマが俺に話しかけてきたのだが、後ろにいるめぐみんが納得していないのか話に入ってくる。

 

「何でですか!!アークウィザードは私だけいればいいじゃないか!!」

 

「仲間は多いにこした方がいいし、アークウィザードが二人もいれば色々応用ができるかもしれないだろ!!」

 

「爆裂魔法が使える私がこの男より劣っていると言うんですか!!」

 

「そうは言ってないだろうが!!」

 

「すみませーん、しゅわしゅわを一つお願いしまーす」

 

「お前は何頼んでんだ!!この駄女神!!!」

 

そう言って騒ぐ三人を見て俺は騒がしい奴らだなと思っていたが、これでは収拾がつかないので、俺は提案をした。

 

「それならクエストに言って俺の実力を見てほしい。期待にそぐわなかったらパーティーに入らないどうだろう?」

 

そう言って三人の方へ意見を求めた、それに対して三人は。

 

「わかった」

 

「いいわよー」

 

「いいでしょう!!私が貴方の力を見定めましょう!!」

 

納得してもらい何よりだ。

 

「じゃあ、さっそく向かおうか。ジャイアント・トードを狩りに」

 

◆◆◆

 

ジャイアント・トードとは、ただの大きなカエルだが、繁殖期になると産卵のための体力をつけるために人里まで降りてきて、人とかヤギとかを丸呑みしていく。その肉は若干固めで焼くと結構いける。今夜の夕飯にぴったりだな、久しぶりの固形物だウィズも喜ぶ。

ジャイアント・トードがいる草原に来ると、そこには十三匹のジャイアント・トードがいた。

 

「爆裂魔法は最強魔法。その分、魔法を使うのに準備時間が結構かかります。準備が調うまで、あのカエルの足止めをお願いします

 

「といっても……カエルは十三体居る。俺たちも三人だけど、正直俺とアクアで一体の足止めが精一杯だ。だから一番遠いカエルを魔法の標的にしてくれ」

 

 

「分かりました」

 

 

「ソウガには悪いんだが、一人でカエルの相手をしてもらいたい」

 

 

「分かった」

 

 

そうカズマに言葉を返す。

指示を出し終えたカズマとアクアが何かを言い合っている間に俺は十一匹のジャイアント・トードに向かっていた。

 

「ゴットレクイエム!!」

 

俺の右斜め前からそんな気合の入った声が届く。視線を向ければ、手に持っている杖から光が出現しそれを伴いながらジャイアント・トードのお腹に向かって攻撃をかまし………食われた。

 

「………放置でいいか」

 

アクアから視線を外すと、今度はめぐみんが詠唱の最終段階に入っていた。そして、

 

「『エクスプロージョン』!」

 

最強の魔法が放たれる。

威力だけは最強の名に恥じないものであり、今回も対象となったジャイアント・トードは跡形もなく消滅していて、地面には溶解した地面だけが残った。ちなみに俺は爆裂魔法をウィズから見せてもらっている。だから爆裂魔法がネタ魔法だって事も知っている。カズマには悪いことしたな、発動した後、めぐみんは倒れた。

 

「コレが魔法か………すごいじゃないか!めぐ………みん?」

 

そして、カズマが魔法の威力を称えようとと振り向いたときに地面に倒れているめぐみんの姿を発見していた。

 

「………えっ?」

 

「ふ………。我が奥義である爆裂魔法は、その絶大な威力ゆえ、消費魔力もまた絶大。………要約すると、限界を超える魔力を使ったので身動き一つ取れません。」

 

「えぇー………」

 

「あっ、カエルが接近する音が聞こえます。………やばいです。食われます。すいません、ちょ、助け………ひぁっ!?」

 

「お前らああああ!!食われてんじゃねえええええ!!」

 

………さて、がんばるか………。

 

早速俺に気付いたカエルが七匹向かってくる、俺は魔法陣をカエルの真上に展開する。

 

「『ブレイドレイン』!」

 

そう言うと魔力で形成されて剣がジャイアント・トードを串刺しにしていく、三匹は何とか避けて逃げようとしていたが、剣が追跡を行い、残りの三匹も串刺しにし、七匹のジャイアント・トードは絶命した。

 

「ふぅ………ん?」

 

辺りを見渡すと四匹のカエルが近くまで接近していた。やれやれ………。

 

「アークウィザードだからって接近戦ができないと思ったら大間違いだ」

 

そう言うと俺は手に魔法陣を展開する。

 

「『ドラゴニックネイル』!」

 

そう言うと腕に魔力で形成したクローが装着される。そして近くまで来ていた。ジャイアント・トードを切り裂く、ジャイアント・トードが舌を伸ばしてソウガを絡めとろうとするがソウガはいち早く察知し、それを避けて、一瞬で近づいてジャイアント・トードを切り裂き、さらに近くまで来ていたもう一匹のジャイアント・トードをついでに切り裂いた。

 

「すげぇ………」

 

ジャイアント・トードに食われた二人を何とか助けたカズマがソウガの戦いを見ていて、思っていたことを口にしていた。

 

「あと一匹は………あそこか」

 

俺が見た先には、かなり遠くまで逃げたジャイアント・トードがいた。

 

「カエル風情が俺から逃げようなんて十年早いんだよ」

 

そう言うと目の前の石ころに魔法陣を展開し。

 

「『ソウルチェンジ』」

 

そう言うとジャイアント・トードと石ころの位置が入れ替わり、そして近くに来たカエルを切り裂いた。

 

「さて、これでクエスト達成だな」

 

そう言うと俺はカズマ達の方へと歩を進めた。

 

◆◆◆

 

「うぐっ………。生臭いよう」

 

「カエルの体内って、臭いけどいい感じに温いんですね」

 

後ろを歩いているアクアとカズマにおんぶしてもらっているめぐみんがそれぞれ言っている。

 

「はぁ………、こいつらと来たら、それに比べソウガはすげぇよ!さすが上級職!」

 

「あれぐらいなら、お前にもできるさ」

 

「いやいや無理だろ」

 

そう言って俺達は笑いあった、その後カズマはめぐみんと話をしているが、なるほどこれがパーティーかウィズの言っていた通り確かに楽しいな。一人でクエストに行った時とは比べほどにならない。

 

「おい放せ!!お前多分ほかのパーティーにも捨てられた口だろ!!というかダンジョンにでも潜った際には、爆裂魔法なんて使えないしいよいよ役立たずだろ!!」

 

「もうどこのパーティーも拾ってくれないのです!!荷物持ちでも何でもします!!お願いです、私を捨てないでください!!」

 

そう考えているとカズマとめぐみんが騒いでいた。おいおい………そんなに騒ぐと。

 

「やだ………。あの男、あの小さい子を捨てようとしてる………」

 

「隣には、なんか粘液まみれの女の子を連れてるわよ」

 

「あんな小さい子を弄んで捨てるなんて、とんだクズね。見て!女の子は二人ともヌルヌルよ?一体どんなプレイしたのよあの変態」

 

三人の女の子にあらぬ誤解をされてしまっている。カズマはなんとか誤解を解こうとしているが、めぐみんが悪い顔をしている。そして口をにやりと歪めて………。

 

「どんなプレイでも大丈夫ですから!先程の、カエルを使ったヌルヌルプレイだって耐えてみせ」

 

「よーし分かった!めぐみん、これからよろしくな!」

 

どうやら、めぐみんのパーティー入りが決定したらしい。

 

◆◆◆

 

ベトベトになった二人を銭湯に送り出した後、男組みである俺達はギルドのほうで仕事完了の報告をして報酬をもらっていた

 

「全部で十五万五千で、山分けで三万八千七百五十ほどか、命を賭けたのに割に合わねー。」

 

「ああ、俺はカエルの肉をもらったから俺の分はなくていい、三人で分けてくれ」

 

「マジで!ありがとうソウガ!」

 

俺は先程ジャイアント・トードの肉を二体分もらっている。帰ったらから揚げにしよう。

 

「本当にソウガはいい奴だな。このパーティーの唯一の良心だよ」

 

「パーティー入りの話題がないから、俺は不合格だと思ったがな」

 

「そんなことない、もちろん合格だよ。これからよろしくなソウガ」

 

「ああ」

 

さて、そろそろ帰るとするかウィズが腹を空かせて俺の帰りを待っているからな。

 

「明日は別のクエストに行っていて朝からいない。昼ぐらいには帰ってくるけど、こういうことが今後もあるかもしれない………。すまないな。」

 

「気にするなソウガ、また明日な」

 

その言葉を聞いた後、俺は席を外した。帰る際に金髪のクルセイダーとカズマが何か話をしていたが、まぁ明日になったらカズマに聞くことにして俺は冒険者ギルドを後にした。




戦闘描写が難しいです。


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この死神と店主に最高の野菜を!

この話でソウガの魔法が何故知られていないかがわかります。


俺は夢を見ていた。夢を夢と認識できる事を明晰夢と言うのは知っていたが、まさか俺自身が見る事になるとは思わなかった。

 

「『ドラゴニックネイル』」

 

夢には小さい頃の俺が魔法を発現して、目の前の木を切り裂いていた。

 

「やった、できた!」

 

俺は笑顔で喜んでいた。魔法の練習をして上手くいったからだろう。すごい、はしゃいでしまっている。少し恥ずかしいな………。

 

「もうドラゴニックネイルまで覚えたんだな、ソウガ」

 

「お父さん!」

 

俺の後ろから自分の黒いコートとは対照的な白いコートに黒いシャツとズボンの服装の俺の父さんが歩いてきて、そう言った。俺は父さんの方へ走っていき抱き着いた。

 

「お前は凄いな、魔法を覚えるスピードが桁違いだ」

 

「お父さんが丁寧に教えてくれたからだよ」

 

「それでも凄いことだ、さすが俺とあいつの息子だ」

 

そう言って父さんは俺の頭をなでる。俺はそれが心地よくて笑っている。

 

「本当に凄い事よ、ソウガ」

 

「お母さん!」

 

俺と父さんの後ろから青い髪に白いワンピースの服装の母さんが歩いてきてそう言った。俺たちの近くまで来たら父さんと母さんが笑顔で話をしていた。

 

「本当に魔法を覚えるのが早いわね、あなたに似たのね」

 

「ソウガほどじゃないさ、それに似たのはおまえの方だと思うぞ」

 

そう言って父さんは母さんの頭を撫でる、母さんは父さんの肩に頭に乗せ心地いいのか微笑んでいた。その二人を見ていた俺も嬉しい気持ちで笑っている。

 

「そういえばソウガ、ウィズちゃんが遊ぼうって来ているわよ」

 

「ウィズちゃんが?」

 

「そういう事は早く伝えてやれ………」

 

「………てへっ」

 

「笑って誤魔化すな」

 

母さんは舌を少し出し笑って誤魔化そうとしていた。父さんはため息交じりにそう言った。

 

「ソウガ、早くウィズちゃんの所に行ってやれ」

 

「うん!お父さん、お母さん。行ってきます!」

 

「行ってらっしゃい」

 

「怪我しないようにな」

 

父さんと母さんに挨拶を済ませて、俺は大切な幼なじみを迎えに走っていった。

 

◆◆◆

 

「眠っていたのか」

 

俺は朝早くにクエストに行き、ケルベロスの捕獲を済まし。グリフォンの討伐を行った後に休憩をしている最中に座ったまま眠ってしまったらしい。目の前にはグリフォン達の死体が転がっていた。

 

「あれからかなりの時間が経ったんだな………」

 

ウィズと一緒に遊んだり、勉強をして、一緒に魔法の練習をしたり、摸擬戦を行ったりしてお互いを高めあった。

 

「楽しいこともあったが、悲しいことも多かったな………」

 

俺は昔、一度冒険者をやめている。どんな強い力や魔法があっても救えない命があった。浄化魔法をもっていても助けられない大切なものがあった。そして何より、大切な幼馴染を悲しませてしまった。

 

「ウィズを泣かせてしまったのは、俺に守る力がなかったからだ」

 

あいつの笑顔一つも守れなかったことに絶望して、冒険者をやめて、俺たちの大切なものを奪った魔王軍に復讐するための殺戮者になった。魔王軍の兵士や幹部を数えきれないほど殺した、もうこの手は血で穢れてしまっていた。でも、そんな俺を救ってくれたのがウィズだった。

 

「あいつがリッチーになってでも叶えたいことがあるなら、俺はそれを守る」

 

ウィズを守るために、俺はあいつの眷属になり、もう一度冒険者になることを決めた。ウィズが皆を救ってくれたように、俺も今度こそ大切なものが守れるように。

 

「だから、安心して帰ってこいよ」

 

俺は俺たちの大切な人たちに対してそう呟いた。

 

◆◆◆

 

「では、グリフォン十体の討伐にケルベロスの捕獲クエストの達成報酬を合わせまして二百万エリスとなります。ご確認くださいソウガさん」

 

「ああ」

 

俺は冒険者ギルドで今回の報酬を受け取った。二百万エリスか………。無駄使いしないようにしないとな。

 

「あの、ソウガさん。よろしければ今晩一緒に食事でもしませんか?」

 

「今日はウィズの手伝いをしようと思っているから無理だ。すまないルナ」

 

「い、いえ!大丈夫です。私の方こそすいませんソウガさん」

 

ルナがそう言った後、俺は受付を離れた。ルナにすまないことをしてしまったな。カウンターの方を向くとアクアとめぐみんがいた。俺は二人の方へ向かった。

 

「何をしているんだ?」

 

「あっ!おかえりなさいソウガ」

 

「今、カズマを待っているのよ」

 

めぐみんとアクアがそれぞれ言った。カズマ?そういえば姿が見えないが。

 

「カズマは今何をしているんだ?」

 

「カズマは盗賊の女の子から盗賊系スキルを教えてもらうために外に行ったんですよ。」

 

なるほど、カズマは盗賊系スキルを覚えることに決めたのか。そう思っているとカズマと昨日の金髪のクルセイダーと盗賊の女の子が帰ってきたが、何故か盗賊の女の子が泣いている。

 

「あっ!カズマ」

 

「やっと戻ってきたわね、って、その人どうしたの?」

 

「えーっと、実は」

 

そうカズマが話そうとしたが、隣の金髪のクルセイダーが先に口を開いた。

 

「うむ。彼女は、カズマにパンツを剥がれた上にあり金全部毟られて落ち込んでいるだけだ」

 

「おいあんた何口走ってんだ!」

 

カズマお前何をやっているんだ………。そう思っていると、後ろの盗賊の女の子も泣きながら口を開いた。

 

「パンツ返すだけじゃだめっだって………。ひぐっ、じゃあ幾らでも払うからパンツを返してって頼んだら………。ぐすっ、自分のパンツの値段は自分で決めろって………」

 

「待てよ、おい待て。間違ってないけど、ほんと待て」

 

「さもないとこのパンツを………。ひぐっ、我が家の家宝として奉られる事になるって………」

 

「おい、待てよ。なんかすでに、他の女性冒険者の目まで冷たいものになってるからほんとに待って」

 

うわぁ………。

 

「ソウガ!?待てソウガ、そんな目で俺を見てないで何か弁明をしてくれ!」

 

「大丈夫ですよ、カズマさん。私は分かっておりますから」

 

「何で敬語!?」

 

冗談はこれぐらいにしておくか。

 

「それで?カズマは、無事にスキルを覚えられたのですか?」

 

「ふふ、まあ見てろよ?いくぜ、『スティール』!」

 

相手のものをランダムに奪う、スティールをめぐみんに使った。カズマの手にはしっかりと黒い布が握られていた。………パンツだ。

 

「………なんですか?レベルが上がってステータスが上がったから、冒険者から変態にジョブチェンジしたんですか?………あの、スースーするのでパンツ返してください………」

 

「………カズマ、あんた………」

 

「あ、あれっ!?おかしーな、奪うものはランダムなはずなのに!」

 

「カズマさん、もう無理です………。自首してください」

 

「だから、敬語をやめてくれって!ソウガ!」

 

そんなやり取りをしていると俺たちの前に金髪のクルセイダーが来て、カズマの方へ向いた。

 

「こんな幼気な少女の下着を公衆の面前で剥ぎ取るなんて、真の鬼畜だ許せない!是非とも私を、このパーティーに入れて欲しい!」

 

「いらない」

 

「んん………!?くっ!」

 

このクルセイダーを見ていてわかった。こいつはただのドMだ。

 

◆◆◆

 

「実はなダクネス。俺とアクアは、こう見えて、ガチで魔王を倒したいと考えている」

 

俺達は机に移動して、金髪のクルセイダー、ダクネスと盗賊の女の子、クリスと俺たちに対してそう言った。

 

この世を支配していて、最強の存在の魔王。俺とウィズはこの魔王を倒すために冒険者になり戦っていた。しかし、まさかカズマがそのような事を言うとは思わなかった。

 

「俺達の冒険は過酷な物になることだろう。特にダクネス、女騎士のお前なんて、魔王に捕まったりしたら、それはもうとんでもない目に遭わされる役どころだ」

 

「ああ、全くその通りだ!昔から、魔王にエロい目に遭わされるのは女騎士の仕事と相場が決まっているからな!それだけでも行く価値がある!」

 

「え!?………あれ!?」

 

「え?………何だ?私は何か、おかしな事を言ったか?」

 

「めぐみんも聞いてくれ。相手は魔王。この世で最強の存在に喧嘩を売ろうってんだよ、俺とアクアは。そんなパーティーに無理して残る必要は………」

 

「我が名はめぐみん!紅魔族随一の魔法の使い手にして爆裂魔法を操りし者!我を差し置き最強を名乗る魔王!そんな存在は我が最強魔法で消し飛ばしてみせましょう!」

 

ダクネスとめぐみんがやる気になっているが、そう簡単な事じゃない。それほどの存在なんだ魔王は………。

 

「二人とも落ち着け、そう簡単な事じゃない魔王を倒すことは」

 

俺がそう言うと全員がこっちを向く、何故かカズマの目が輝いているがまあいい。

 

「何故だ!ソウガは魔王を倒したくないのか!」

 

「そうは言ってない。だが今のこのパーティーの実力では無理だ」

 

「だからこそ私の爆裂魔法で魔王を!」

 

「爆裂魔法一発で倒せる相手なら、とっくの昔に倒されている。最低でも連発で使えるぐらいまでレベルを上げてからじゃなければ魔王を倒すなんて夢のまた夢だ」

 

「うぐっ………」

 

「ダクネスも簡単に魔王を倒すなんて口にするな。お前が死んでしまったらお前の家族や大切な人たちを悲しませることになるんだぞ」

 

「くっ………」

 

そう言うと二人は黙ってしまったが、俺は話を続けた。

 

「そもそも魔王を倒す前に、魔王の幹部を倒すための方法を考えろ。奴らは魔王ほどではないが一体一体がとても強い今のお前たちでは絶対に勝てない」

 

魔王軍幹部は魔王が選抜した戦士たちだ、一体一体が強敵だ。今のこいつらではまだ勝てない。前の幹部たちは俺が始末したが、今の幹部はどうなっているかがわからない。それに今の幹部は一体はあの仮面悪魔と俺の幼馴染のウィズだ。俺が魔王軍を殺しまわっていた時に久しぶりにウィズと再会し、その時にウィズが魔王軍の幹部になっている事を知った。その後、一悶着あったが今はお互い落ち着いた。そもそもウィズは結界の維持だけ任されているなんちゃって幹部だ。

 

「とにかく、まずはレベルを上げることに集中しろ、魔王を倒すことはその後だ」

 

そう言うと、二人はうつむいてしまった。少し言いすぎてしまったな。そう思っていると今まで黙っていたクリスが口を開いた。

 

「そうなんだ。この町最強の冒険者が言うんならそうなんだね。そうだよ二人とも魔王を倒すなんて簡単な事じゃないんだから」

 

「俺は別に最強なんかじゃない」

 

「謙遜しなくていいって、君の噂は聞いている。見たことのない魔法を使用してどんな依頼も完璧にこなす、この町にいる最強の冒険者だって」

 

「見たことがない?どういう事だ?」

 

俺とクリスの会話を聞いていたカズマが疑問に思って聞いてきた。

 

「誰も見たことがないんだ。彼が使っている魔法は」

 

「でも駆け出しの冒険者だから知らないだけで上級職のめぐみんなら知ってるだろ」

 

「知りません。ソウガが使用する魔法は学校でも教えてもらえませんでした。そもそも一般的に使われている魔法の中にあんな魔法は存在しません」

 

めぐみんがそう言った後に皆が俺を見ていた。やれやれ面倒な事になったな。

 

「俺が使っている魔法は神滅魔法と呼ばれている。」

 

「神滅魔法?」

 

「ああ、神を滅する魔法と書いて神滅魔法だ」

 

「何!その私にとって迷惑な魔法!?」

 

俺が使っている魔法について教えたら、アクアがなぜか騒いでいる。放置しておこう。

 

「俺の家系は代々この魔法を使用して魔物と戦っている」

 

「つまり、一子相伝の魔法って事か」

 

「そうだ、だから誰も知らない」

 

俺の家系が代々使ってきた神滅魔法のことを知っている人は、このメンバーとウィズを含め数人しかいない。悪用されるのを恐れているからだ。

 

「へー、そうなんだ。君の魔法って凄い魔法だったんだね」

 

そう、クリスが言ってきた。まったくお前が変な事を言い出さなければ………。うん?………クリスにもアクアと同じ神性な雰囲気がある。何故だ?

 

「なぁアクア、お前、クリスと知り合いか?」

 

「えっ?知り合いどころかさっきが初めてだけど何で?」

 

「いや、アクアと雰囲気が似ているから知り合いだと思ったんだが違ったか」

 

「雰囲気?どんな?」

 

「神性な感じがしたんだ。具体例を言うとエリス教の御神体のエリス様の仏像の前に行くと同じ雰囲気がある」

 

俺がそう言うとクリスがビクッとして変な汗をかいている。どうしたんだ?………そういえば似ているな。

 

「クリス。よく見るとお前、何故かエリス様に似ているな」

 

「そ、そんなわけないよ。私がエリス様に似ている?ないない!」

 

「いや、でも………」

 

俺がクリスに追及をしようとした時………。

 

『緊急クエスト!緊急クエスト!街の中にいる冒険者の各員は、至急正門に集まってください!繰り返します。街の中にいる冒険者の各員は、至急正門に集まってください!』

 

「さ、さぁ緊急クエストが発行されたし、くだらない話はこれぐらいにして早く正門に向かおう!」

 

そう言って、クリスは走って正門に向かってしまった、まぁいつか聞けばいいか。この時期の緊急クエストっていえばあれしかないな。

 

◆◆◆

 

「おい、緊急クエストってなんだ?モンスターが街に襲撃に来たのか?」

 

正門で他の冒険者と一緒に待っているとカズマがそんな事を言ってきた。冗談だと思っていたが本当に知らないのか?

 

「言ってなかったっけ。キャベツよキャベツ」

 

そう、キャベツの収穫だ。この時期になると、毎年行うクエストだ。そう思っているとルナが説明を始めた。

 

「皆さん、今年もキャベツの収穫時期がやって参りました!今年のキャベツは出来が良く、一玉の収穫につき一万エリスです。できるだけ多くのキャベツを捕まえ、ここに納めてください!なお、人数が人数、額が額なので、報酬の支払いは後日まとめてとなります!」

 

ほう、一玉、一万エリスかそれに経験値がつまっているとさらに額が上がる………。ふふふふふ。

 

「お、おいソウガ。大丈夫か?顔が怖いぞ」

 

「大丈夫だ」

 

いけないいけない。集中するか。

 

「『レベルサーチ』」

 

俺は経験値が多いキャベツを魔法を使って探した。どうやら経験値が多いキャベツはキャベツの群れの中に隠れているようだ。外側のキャベツと一緒に一掃してしまおう。

 

それを確認したソウガは光速でキャベツのもとへ向かった。何人の冒険者が慌てて自分たちもキャベツのもとへ向かった。ソウガは背中とキャベツの下に魔法陣を展開した。

 

「『ドラゴニックウイング』、『ワープゲート』!」

 

そう唱えるとソウガの背中に魔力で形成した翼が出現する。そしてキャベツの下には檻に繋がっている巨大ゲートが出現する。ソウガは光速でキャベツのもとへ飛び、周りを旋回する。そうすると巨大な竜巻が作られ、何百玉のキャベツが一気にゲートを通り檻に入れられる、周りを飛んでいたキャベツも竜巻に引き寄せられ檻に入れられていく。

 

「ちょっ!ソウガ!!」

 

「反則だろあんなの!」

 

「ソウガさーん!私たちの分も残して!」

 

「早く収穫するぞ!早くしないと全部ソウガに収穫されちまう!!」

 

他の冒険者も急いで収穫を行った。

 

「えぇー………。」

 

そんなソウガの姿を見てカズマは呆れてしまった。神を滅する魔法をたかがキャベツに使用しているという事に、そしてカズマは他の冒険者がキャベツと戦っている光景を見てこう言った。

 

「俺、もう馬小屋に帰って寝てもいいかな」

 

◆◆◆

 

「うん、凄く美味しいね。ソウ君!」

 

俺はキャベツの収穫を終え、家で夕食用に回収したキャベツをウィズと一緒に食していた。確かに美味いな

 

「ソウ君、今日は本当にお疲れさま。大変だったでしょ?」

 

「まぁいろいろあったが、大丈夫だ」

 

確かに大変だった。ダクネスが他の冒険者を守ってキャベツの攻撃を恍惚の表情をしながら受けたり、めぐみんが爆裂魔法を他の冒険者がいるのに放ったり、アクアがキャベツに翻弄されて、転んで泣いていたりしていた。ちなみにカズマはうまくスキルを使用してたくさんのキャベツを捕まえていた。ちなみに経験値がつまっているキャベツだから結構な額になるはずだ。

 

「ソウ君。ありがとうね」

 

「急にどうしたんだ?」

 

ウィズから急に礼を言われた。何かしたか?

 

「いつも私とこのお店を守ってくれて」

 

「そんなことか、別にたいしたことはしていない」

 

「たいしたことあるよ。ソウ君はいつも自分の事を後回しにして私とこのお店の事を考えてくれている。本当なら見捨てられてもいいはずなのに………」

 

そう言ってウィズはうつむいてしまった。やれやれ俺がウィズとこの店を見捨てるわけがないだろう。俺はウィズの隣へ向かいウィズの頭を撫でた。

 

「大丈夫だ。俺はこの店とウィズを、俺の大切な幼馴染を見捨てない。ウィズがこの店を守りたいと思っている限り俺はどこにも行かないさ」

 

「本当?」

 

「本当だ」

 

「本当に本当?」

 

「本当に本当だ」

 

そう言うとウィズは笑顔になる。まったく、こいつの笑顔は小さい頃から変わらないな。

 

「さぁ、食事再開しよう。冷めちまうぞ」

 

「うん、そうだね」

 

そう言って俺達は食事を再開した。そうだあの頃から俺の心は変わらない。俺は俺を命がけで救ってくれた。大切な幼馴染を守る。

 

 

 

 

それだけが、血で穢れてしまった俺にできることだから。




お気に入りしていただきありがとうございます。


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この店主に女神との出会いを!

アニメでカットされた話です。


「そういえば、ウィズ。今日は墓地の浄化に行くんだよな」

 

「うん、行くよ。迷える魂達を天に還してあげなきゃ」

 

朝食の場で俺達はそう話していた。街から外れた丘の上にある共同墓地。そこでアンデットモンスターが大量発生しており、そのために俺達は定期的にそこへ向かい、浄化を行っている。正確にはウィズが浄化を行い、俺はウィズの護衛をするという感じだ。

 

「まぁ………。いいんだけど。ウィズが行くのをやめるという選択肢は………」

 

「ありません」

 

「だよなぁ………。はぁ………」

 

なんで俺がこう言っているのかというと、墓地のアンデットモンスターを浄化しに行くのだがウィズの魔力に反応して、眠っているアンデットモンスターが目覚めてしまっているからだ。ウィズが浄化を行う、アンデットが湧く、浄化、湧くの繰り返しで全然減らない。

 

「俺が浄化してきてもいいんだぞ」

 

「駄目だよ!私はリッチーでもあるんだからアンデットモンスターの事はノーライフキングである。私が解決しないと!」

 

神滅魔法には浄化魔法もあり、俺が浄化してもいいのだが、神滅魔法での浄化は強すぎてウィズが一緒だとウィズも浄化してしまう可能性があるからだ。だからウィズに留守を任せて俺が浄化してこようと思ったんだが、この幼なじみ兼リッチーは許してくれなかった。

 

「分かった。じゃあ、いつも通り夕飯を食べたら墓地に向かう。それでいいか?」

 

「うん、お願いね。ソウ君」

 

今回の墓地の浄化の話を終え、俺は冒険者ギルドに向かう

 

◆◆◆

 

「この、カエルに食われるしか脳の無い、宴会芸しか取り柄のない穀潰しがぁ!!!」

 

「わ、わあああああああーっ!!」

 

冒険者ギルドに着くとカズマがアクアを泣かせていた。はぁ………。今度は何だ。

 

「どうしたんだ?」

 

「わああああーっ!聞いてよソウガ!このヒキニートが、私の事を役に立たない穀潰しって言うのよ!わ、私だって、回復魔法とか回復魔法とか回復魔法とか、一応役に立っているのに!お願いよ、ソウガ!このヒキニートに女神に対して無礼を働いたらどうなるかを分からせてやってよ!」

 

「お、おい!ソウガに頼るのは反則だろ!」

 

この二人の喧嘩は毎回のように行われている。その喧嘩の言葉の中にヒキニートという言葉と女神という言葉があるのだが、ヒキニートという言葉は聞いたことがないし、女神という言葉は冗談だろう。

 

「そういえばカズマ、随分と冒険者らしくなったな」

 

「へへ、まあな。初級とはいえ魔法を覚えてみたので、魔法剣士みたいなスタイルにしてみたんだ」

 

今まで見たことのない緑の服からこの世界のなじみのある服の上から革製の胸当てと金属製の篭手とすねあとを装備している。

 

「で、結局どうしたんだ?」

 

「手頃なクエストを探している時にこいつがごちゃごちゃうるさいからだ」

 

「私は上級職ばかりが集まっているから難易度の高いやつに行こうって言ったのにこのヒキニートが!」

 

なるほど、二人の意見の違いから喧嘩が始まったのか………。

 

「カズマの気持ちはわかるが、別に高難易度のクエストはモンスターの討伐だけではない、採集や浄化などのクエストもあるしアクアの意見も一応入れてみたらどうだ?」

 

「うっ………。そうだなすまん」

 

「そうよ!反省しなさいヒキニート!」

 

「アクアもアクアだ。確かにこのパーティーは上級職ばかりだがまだレベルが低いやつらが多い、その事も考慮してやれ」

 

「うっ………。そうね。ごめんなさい」

 

よし収拾が着いたな。そう思っているとカズマが話してきた。

 

「ソウガはクエスト以外で何かしていたりするのか?」

 

「何かとは?」

 

「えっと、商売とか?」

 

クエスト以外かウィズの所で店員として働いているが、赤字が続いて、家賃すら払うのが危うい状況だから給料なんてもらえるわけがない。まぁ、住まわせてもらっているから問題ないんだが………。

 

「幼馴染の所で店の店員として働いている」

 

「幼馴染?ソウガに幼馴染がいるのか?」

 

「ああ、小さい頃からずっと一緒にいる」

 

俺がそう言うとカズマの顔が一瞬曇るが、すぐに戻る。そして聞いてきた。

 

「じゃあクエストに詰まってきたら商売で稼ぐっていう方法もあるわけか」

 

「ああ、そういう手もある」

 

まぁ、間違ってはいないな。そう思っているとカズマが質問をしてきた。

 

「ちなみにソウガ、お前は回復魔法は使えるか?」

 

「使えるぞ」

 

「………お前の存在価値がなくなってきているな」

 

「わ、わあああああああーっ!!!」

 

せっかく収拾したのに、また始まってしまった。もう知らん。俺はクエストを受けるために掲示板の方へ向かう

 

「と、いう訳で何か、手軽にできて儲かる商売でも考えろ!あと、お前の最後の取り柄の回復魔法をとっとと俺に教えろよ!」

 

「嫌ーっ!回復魔法だけは嫌よおっ!私の存在意義を奪わないでよ!私がいるんだから別に覚えなくてもいいじゃない!嫌!嫌よおおおおおおおおっ!!!!!」

 

後ろでそんな声が聞こえるがほっとくことにした。掲示板の所に行くとめぐみんとダクネスがいた。

 

「何か良さそうなクエストはあるか?」

 

「あっ!ソウガ。いえ、今は探している最中です」

 

「だから、これにしようめぐみん!デスファンゴと呼ばれる。巨大猪の討伐に!こんな巨大な物に突っ込まれたら私はどうなってしまうんだろう。なぁソウガもいいだろ!」

 

「お前には聞いていない。黙ってろ変態」

 

「んんっっ!!!いきなりだなんてソウガもカズマに負けず、いいものを持っている」

 

「もう本当に黙っててくれ。お願いだから」

 

「ところでソウガ、カズマとアクアは何をしているんですか?」

 

そうめぐみんが聞いてきた。見ると、まだ喧嘩しているようだった。………はぁ。

 

「意見の食い違いで喧嘩をしているんだ。すまないが鎮めてきてくれないか?」

 

そう言って二人はカズマ達の元へ向かう。俺はさっきダクネスが持っていた巨大猪のクエストに向かった。………もう、疲れた。

 

◆◆◆

 

「じゃあ、墓地の浄化を始めるね」

 

「ああ」

 

共同墓地で俺達はそう言った。ウィズがその後、魔法陣を作り出し浄化を始める。そして青白い人魂の様な物が集まってきて魔法陣に入ると、そのまま魔法陣の青い光と共に、天へと吸い込まれていく。この調子ならすぐに浄化も終わるだろう。

 

「じゃあ俺は見回りをしてくる」

 

「うん、お願いね。ソウ君」

 

そう言って俺はウィズから離れて見回りを行った。見回りの最中に魂が迷ってしまっているのを誘導したり、途中、狼のモンスターが俺を襲ってくるが、軽く始末して見回りを再開した。もうかなりの時間が経過したからウィズのもとに戻ろうとしたときだった。墓場全体が白い光に包まれた。

 

「何!?」

 

この魔法は浄化魔法のターンアンデットの光だった。しかもかなりの威力であり、光を浴びたゾンビたちが消えていくのが見えた。これほどの威力の浄化魔法が発動したのなら………。

 

「ウィズ!!!!!」

 

俺は急いでウィズのもとに戻った。無事でいてくれ!!

 

◆◆◆

 

「きゃー!か、身体が消えるっ!?止めて止めて、私の身体が無くなっちゃう!!成仏しちゃうっ!」

 

「あはははははは、愚かなるリッチーよ!自然の摂理に反する存在、神の意に背くアンデットよ!さあ、私の力で欠片も残さず消滅するがいいわっ!」

 

ウィズのもとに戻ると、身体が消えつつあるウィズと浄化魔法を発動しているアクアがいた。俺は急いで魔法陣を展開し。

 

「『マジック・デリート』!!」

 

そう唱えて墓場に発動している、全魔法を消した。俺はアクアに怒りの矛先を向けた。

 

「ちょっと!!誰よ!!あと少しで、愚かなるリッチーを消滅できたのに………ってソウガじゃない。何でこんな所っに!!!」

 

俺はアクアの首を右腕で掴み、持ち上げて首を絞めた。こいつ!!!!

 

「ソウガ、おい何やってるんだ!」

 

「お、おいソウガ手を離せ!」

 

「アクアが苦しそうです。お願いですから離してください!」

 

カズマ達も出てきたが、俺は手をさらに絞める。

 

「ソウ君!手を離して!」

 

ウィズからそう言われて、俺は正気に戻り手を離す。しまった………。

 

「げほっ!!ごほっ!!い、いきなり、何、けほっ、するのよ!!」

 

「………すまない」

 

「すまないじゃないわよ!!」

 

「ま、待ってください!」

 

そう言ってウィズが俺の前にきて言葉を繋いだ。

 

「ソウ君は悪くないんです。お願いですからソウ君を許してください!」

 

「クソアンデッドは黙ってなさい!!はっ、分かったわ!!あんたがソウガを操って私を襲うように仕向けたのね!!なんて奴なの、生かしておけないわ!!神の名においてここで息の根を」

 

「おい、やめてやれ」

 

そう言ってカズマはアクアの後頭部を剣の柄でごすっと小突いた。

 

「い、痛いじゃないの!あんたなにしてくれてんのよいきなり!」

 

そしてカズマはウィズに話しかける。

 

「大丈夫か?えっと、リッチーでいいのか?」

 

「えっと、おっしゃる通り、リッチーです。リッチーのウィズと申します」

 

「えっと………。ウィズ、こんな墓場で何しているんだ?魂を天に還すとか言ってたけど、リッチーのあんたがやる事じゃないんじゃないのか?」

 

「ちょっとカズマ!こんな腐ったみかんみたいなのと喋ったら、あんたまでアンデッドが移るわよ!ソウガもそんな奴の近くにいるとあんたもリッチーになるわよ!ちょっとそいつに、ターンアンデッドをかけさせなさい!」

 

アクアがいきり立ち、ウィズに魔法をかけようとする。ウィズが怯えた表情をしながら俺に抱き着く。それを見ていたカズマが聞いてきた。

 

「な、なぁ………ソウガ。ちなみにウィズとはどういう関係なんだ?もしかして………恋人なのか?」

 

「恋人!?」

 

「違うぞ。ギルドで言っていただろうウィズは俺の幼馴染だ」

 

「幼馴染がリッチー!?」

 

カズマがウィズが恋人と聞いてきたので、幼馴染と答えたら驚かれてしまった。幼馴染がリッチーだとは思わなかったのだろう。そう思っているとウィズが独り言を言っていた。

 

「恋人………。私がソウ君の恋人………。えへへ、やっぱりそう見えちゃうんだ。えへへ」

 

「ウィズ………。考え事している所、悪いがカズマの質問に答えてやれ。なんで浄化をしていたかを」

 

「はっ!そ、そうだね、ごめんねソウ君!私は見ての通りのリッチー、ノーライフキングなんてやってます。私には迷える魂たちの話が聞けるんです。この共同墓地の魂の多くはロクに葬式すらしてもらえず、天に還る事なく毎晩墓場を彷徨っています。それで、定期的にここを訪れ、天に還りたがっている子たちを送ってあげているんです」

 

「それは善い行いだと思うんだが………。街のプリーストとかに任せておけばいいんじゃないか?」

 

「それは、その………。」

 

「ここからは俺が話そう。いいかウィズ?」

 

「う、うん。お願いソウ君………」

 

そして俺はカズマに話した。

 

「街のプリーストは主に金儲けが第一で、金がない人は後回しにされることが多い。この共同墓地みたいな所は基本的には寄り付きもしない、まぁ、仕方ないことだ。プリーストたちにも生活があるからな。」

 

ここにいる全員がアクアに視線を向ける。アクアがばつが悪そうに目を逸らす。

 

「それならしょうがない。でもゾンビを呼び起こすのはどうにかならないか?俺たちがここに来たのって、ゾンビメーカーの討伐クエストを受けたからなんだ」

 

「それなんだが、俺達も困っているんだ」

 

「え?」

 

「実は、浄化を行っているとウィズの魔力に反応して目覚めてしまうんだ。だから浄化してもどんどん湧いてキリがない。俺達としては埋葬されている人たちが、迷わず天に還ればここにくる必要もなくなるんだ。まぁ………。いなかったら俺がやるから別に問題ないが」

 

「ソウガって浄化魔法も使えるのか?」

 

「使えるぞ」

 

「………お前って何なの?アークウィザードだろ。何で、プリーストの魔法が使えるんだよ」

 

「そう言われても、困るんだが………」

 

神滅魔法に浄化魔法も入っているからしょうがないだろ。そう思っているとカズマが提案してくる。

 

「だったら、アクアに浄化させる様にする。そうすれば、ここに来る必要もなくなるだろ?」

 

「何で私がこのクソアンデッドの代わりに浄化しに来ないといけないのよ!!このクソアンデッドを始末すればいい話でしょ!!」

 

「じゃあ、お前はソウガを敵に回すって事でいいんだな。俺は嫌だぞ。ソウガが敵になるなんて考えただけでゾッとする」

 

「うぐ………。私も、いやです」

 

「なら決定だな」

 

アクアが今後、墓地の浄化を行う事で話がついた。帰る際にウィズが魔道具店の住所が書いてある紙を渡して、俺達はそれぞれ帰るために歩き始めた。




次はあの紅魔族を出すつもりです


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この死神に新たな出会いを!

あの紅魔族が登場します


「カズマ、見てくれ。キャベツの報酬で鎧を直したんだが、こんなにピカピカになった。………どう思う?」

 

ダクネスが嬉々として修理から返ってきた鎧を俺に見せつけてきた。それは一言で言うと………。

 

「なんか、成金趣味の貴族のボンボンが着けてる鎧みたい」

 

「私だって素直に褒めて貰いたい時もあるのだが………カズマはどんな時でも容赦ないな」

 

そんな嬉しそうに言われても………。

 

「今は構ってやれる余裕はないぞ。お前を超えそうな勢いのそこの変態を何とかしろよ」

 

「ハァ………ハァ………。魔力溢れるマナタイト製の杖のこの色艶………。ハァ………ハァ………」

 

めぐみんが、新調した杖を抱きかかえ頬ずりしていた。

 

アクアがキャベツ狩りで得た報酬は、均等に分けるのではなく、それぞれ自分で捕まえた分をそのままの報酬にしようとキャベツ狩りの前に言ってきた。それぞれ自分の報酬でやりたい事をしているなかその言い出しっぺのアクアはと言うと………。

 

「なんですってええええ!?ちょっとあんたどいう事よ!!」

 

ギルドの受付のお姉さんの胸倉を掴み、いちゃもんをつけている。

 

「そそ、それが」

 

「何よ!」

 

「アクアさんの捕まえてきたのは、ほとんどがレタスでして………」

 

「なんでレタスが交じっているのよー!」

 

「わ、私に言われましてもっ!」

 

そういう会話をしていた。

 

「確かに、レタスの換金率は低いな」

 

「よく分からんが、そうなのか」

 

そう言っているとアクアが笑顔で俺に近づいてきた。嫌だなぁ………。

 

「カーズマさん!今回の、報酬はおいくら万円?」

 

「百万ちょい」

 

「「「ひゃっ!?」」」

 

そう、俺は降って湧いた突発クエストで、いきなり小金持ちになりました。俺の収穫した物には経験値が詰まったものが多かったようだ。これも幸運度の差というやつか。

 

「カズマ様!前から思ったんだけど、あなたってその、そこはかとなくいい感じよね!」

 

「特に褒める所が思い浮かばないなら無理すんな」

 

「カズマさあああああん!!私、クエスト報酬が相当の額になるって踏んで、持ってたお金、全部使っちゃったんですけど!ていうか、大金入ってくるって見込んで、ここの酒場に十万近いツケまであるんですけど!!」

 

「知るか!!そもそも今回の報酬をそれぞれの物にって決めたのは、お前だろ!!と言うかこの金でいい加減、馬小屋生活を脱出するんだよ。お前に貸す金なんかない!!」

 

「そんなああああ!!お願いよ、お金貸して!!ツケ払う分だけでいいから!!そりゃあカズマも男の子だし、馬小屋でたまに夜中ゴソゴソ知ってるから、早くプライベートな空間が欲しいのは分かるけど!!お願いよおおおおお!!」

 

「よし分かった、貸してやるから黙ろうか!」

 

そして、俺はこの駄女神に金を貸すことになった。このやろう!

 

「そういえばソウガがいませんね。まだ来ていないのでしょうか?」

 

そう言われるとこのパーティーの唯一の良心、ソウガの姿がない。報酬受け取りの列にもいなかったしまだ来ていないのかと思っているとソウガが来た。

 

「すまない、待たせたな」

 

「遅かったなソウガ。ほら、早く報酬受け取って来いよ。ソウガは結構狩っていたし結構な額になると思うぞ」

 

「いや、実は朝一に報酬を受け取って、店の金庫に入れてきたんだ。だが戻ってくると凄い混んでいて入るのに時間がかかってしまった。すまない」

 

どうやら、もう受け取っていたらしい。どれぐらい報酬が出たんだろ?聞いてみるか。

 

「ちなみにソウガはどれぐらい報酬をもらったんだ?」

 

「……………一千万」

 

「「「「一千万!?」」」」

 

◆◆◆

 

「「「「一千万!?」」」」

 

今回の報酬の金額を言ったら驚かれた。まぁしょうがないか。

 

「わあああああああーっ!!何で私、あの時報酬はそれぞれって言っちゃたのよおおお!!私のばかあああああ!!!」

 

「アクアの奴、どうしたんだ?」

 

「今回の報酬が五万ちょっとしかもらえなくて、悔しいだけだ。気にしなくていいよ」

 

どうやら今回の報酬が乏しかったみたいだな。まぁしょうがないな。自分が報酬をそれぞれで言ったんだから。

 

「じゃあみんな揃いましたし、早速討伐に行きましょう!それも、沢山の雑魚モンスターがいるヤツです!新調した杖の威力を試すのです!」

 

「いや、一撃が重くて気持ちいい、強いモンスターを!」

 

「いいえ、お金になるクエストをやりましょう!ツケを払ったから今日のご飯代も無いの!」

 

見事にバラバラだった。カズマが呆れているだろ。………はぁ。

 

「俺はカズマが判断して決めたのなら、どのクエストでもいいぞ」

 

「やっぱりお前だけだよ。良心は」

 

「うん?………。何の話だ?」

 

「気にするな。とりあえず、掲示板の依頼を見てから決めようぜ」

 

そして、俺達は掲示板に向かうのだが………。

 

「あれ?何だこれ、依頼が殆ど無いじゃないか」

 

「カズマ!これだ、これにしよう!ブラックファングと呼ばれる巨大熊の討伐を」

 

「却下だ却下!おい、何だよこれ!高難易度のクエストしか残ってないぞ!」

 

何故か高難易度のクエストしか残っていない。おかしい………。いつもは所狭しと依頼の紙が貼られているはずだ。そう思っているとルナが来た。どうしたんだ?

 

「申し訳ございません。最近、魔王の幹部らしき者が、街の近くに住み着きまして………」

 

「え!」

 

「その影響か、この近辺の弱いモンスターは隠れてしまい、仕事が激減しておりまして」

 

「えぇ………」

 

「な、なんでよおおおおおお!?」

 

この近くで魔王軍の幹部が住み着いたか、俺が始末してきてもいいがこの街を危険にさらすわけにはいかない。まずはどんな奴が来たか情報を集めるべきだな。

 

「ルナ、魔王軍の幹部に何か特徴的なものとか何かないか?」

 

「申し訳ございません………。まだ何も」

 

まだどんな奴が来たかわからないか………。じゃあ、しばらくは様子見をするしかないか………。

 

「じゃあ、当分クエストは無理だな。帰るしかないか」

 

「ま、待ってください!せめてどこかで爆裂魔法を!せっかく杖を新調したのに………」

 

「分かった分かった。俺が付き合ってやるからそれで我慢してくれ」

 

「分かりました。約束ですよ」

 

「なんでよおおおおお!なんで!魔王の幹部がよりにもよってこの街の近くに住み着くのよおおおおお!!」

 

「アクア、諦めろ。これは仕方ないさ」

 

「ソウガはどうするんだ?」

 

「俺は高難易度のクエストを請けようと思っている」

 

「そうか、じゃあここで別れよう。ソウガも気を付けろよ」

 

「ああ」

 

そう言って、俺達は別れた。そして、俺は再び掲示板の前に来てさっきの巨大熊の依頼を見ていた。まぁ………。ただ熊鍋が食いたくなっただけなんだが。その巨大熊のクエストを受けようとしたら手が重なってしまった。

 

「ん?」

 

「え?」

 

俺は隣を見てみると、俺と同じ魔法職の女の子がいた。見た目はめぐみんより少し背が高く全体的にスラリと整った体型をしていた。俺達は急いで手を離した。

 

「す、すまない」

 

「い、いえ!私の方こそごめんなさい!」

 

俺達はお互い謝罪を行った。ふと、見るとその女の子は赤い瞳をしていた。まさかと思って聞いてみた。

 

「間違っていたらすまない。お前、ひょっとして紅魔族か?」

 

「………うっ」

 

反応を見る限り、どうやら紅魔族のようだ。けど、何故か困った様子だった。

 

「もしかして、何か悪いことを聞いてしまったか?」

 

「ち、違います。あの………。その………」

 

紅魔族の女の子が押し黙ってしまった。やっぱり何か余計な事をしてしまったのかと考えていると紅魔族の女の子が話してきた。

 

「あの………。笑わないでくださいね?」

 

何を?って思っているとその子がマントをバサッと翻した。

 

「我が名はゆんゆん。アークウィザードにして、中級魔法を操る者。やがては紅魔族の長となる者………!」

 

紅魔族の女の子、ゆんゆんは頬を赤くしながら名乗った。紅魔族はあの名乗り方をするのが当たり前なのだが、この子は何故か恥ずかしそうだった。

 

「えっと、ゆんゆんは紅魔族だよな。何で名乗りを恥ずかしそうにしていたんだ?あの名乗りは紅魔族なら当たり前なんだろ?」

 

「当たり前なんですが、私は恥ずかしいんです………。あれ?私の名前を聞いても笑わないんですか?」

 

「名前が変わっているぐらいなんかで、その人の全てが決まるわけじゃないからな。それに、俺にしてみれば可愛い名前だと思うぞ」

 

「か、可愛い!?あ、ありがとうございます」

 

名前の事を言ったら礼を言われてしまった。しかし、恥ずかしい思いをさせてしまったな。………よし。

 

「なら、俺も紅魔族の名乗り方で名乗ろう」

 

「え?」

 

そして、俺はコートをバサッと翻した。

 

「我が名はソウガ!魔道具店の店員にして、アークウィザードを生業としている冒険者!」

 

こ、これは想像以上に恥ずかしいな!よくめぐみんは平気でできるな。そう思ってゆんゆんの方に向くと笑っていた………。

 

「ふふふ」

 

「笑わないでって言った人が笑っちゃうんですね」

 

「あっ!ご、ごめんなさい!」

 

「気にしなくていい」

 

まぁ、これでお互い恥ずかしい思いをしたし、これでいいだろう。

 

「そういえば、ゆんゆんはこの辺りでは見ない顔だな、最近冒険者になったのか?」

 

「いえ、友人と一緒に冒険者になったんですけど、今は上級魔法を覚えるために修行の旅に出ていまして、少しは上級魔法を覚えたので今日は自分の実力を試すために帰って来たんですよ」

 

なるほど、どおりで見ない顔だと思っているとゆんゆんが聞いてきた。

 

「それよりも、あなたがあのソウガさんなんですね。お会いできて光栄です!」

 

「あのとはどういうことだ?」

 

「ソウガさんは魔法職の間では有名なんですよ。とても強力な魔法を使用し、どんな高難易度のクエストも完璧にこなす。最強のアークウィザードだって!」

 

「俺は別に最強なんかじゃない。それにこれぐらいならゆんゆんでも、できるようになるさ」

 

「そ、そんな事、私なんてまだ実力不足で………」

 

この子はどうも自分を低く見ているな、この子の魔力の感じだと上級魔法を多く習得するのも時間の問題だろう。

 

「じゃあこの巨大熊のクエストはゆんゆんが請けるといい、自分の実力を試す相手にはちょうどいいと思うぞ」

 

「そ、そんな!ソウガさんが請けようとしていたじゃないですか、ソウガさんの方こそこのクエストを!」

 

「いや、ゆんゆんが」

 

「いえ、ソウガさんが」

 

これでは全然話が進まない。仕方ない………。

 

「だったら二人で受けよう。俺が今のゆんゆんの実力を判断しよう」

 

「え………。いいんですか?」

 

「ああ」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

よしこれで話がついた。

 

「じゃあ行くか、ブラックファングの討伐に」

 

「は、はい!」

 

そして俺達はブラックファングの討伐へと向かった




感想を書いていただきありがとうございます。


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この上位悪魔に龍の炎を!

スピンオフのあいつが出てきます。


「そういえば、ゆんゆんは何で上級魔法を習得していないんだ?紅魔族は上級魔法を使うのが当たり前なんだろ?」

 

ブラックファングが生息している森に行く途中で俺はゆんゆんに聞いた。紅魔族は生まれつき高い魔力を持っており、上級魔法を覚えるのが当たり前になっている。それゆえに上級魔法を覚えていないのは半人前扱いだ。そう思っているとゆんゆんは少し考えてから教えてくれた。

 

「実は私の友達が爆裂魔法を習得していまして、最初は反対したんですけど友達は異常なぐらい爆裂魔法を愛していました。なので私は友達の夢を守るために中級魔法を覚えて支えようと思ったんです」

 

なるほど、友人の夢を守るために、中級魔法を覚えたのか立派な事だ。

 

「ですが、ある上級悪魔との戦いで私の力不足がわかりまして、今のままでは友達の邪魔になるって思い上級魔法を習得するための旅に出たんです。それに約束したんです、上級魔法を習得したら今までの勝負の決着をつけようって」

 

なるほど友人との約束がこの子をここまで駆り立てているのか………。

 

「ゆんゆんは凄いな。友達の事を思って強くなろうとしているんだなんてな」

 

「そんな、私なんかよりソウガさんの方が凄いですよ」

 

「そうか、ありがとうな」

 

そうゆんゆんは言ってくれたが、俺はそうは思えなかった。仲間の命や幼馴染の笑顔すら守れなかった俺が凄いわけがない。そう思っていると森が見えてきたので俺達は気を引き締めた。

 

 

 

 

そんなソウガとゆんゆんを見ている影があった。その目はゆんゆんに明らかな殺意をもって見ていた。

 

「見つけたぞ」

 

そう言って影はソウガとゆんゆんが入ろうとしている森に消えていった・・・。

 

◆◆◆

 

「まぁ………。森だから見つけるのは大変だと思ってたんだが」

 

森に入って、まず課題はブラックファングを見つける所だろう。こんな広い森から巨大熊を見つけるのは骨がおれると思っていたんだが………。

 

「まさか、すぐに見つけることができるとは思わなかった」

 

そう言って俺は俺達に向かって威嚇を行っているブラックファングを見ていた。森の中に入って、ゆんゆんに近くに生えている草は怪我とかに聞く薬草だと教えたらゆんゆんは折角だし摘もうとしていたらゆんゆんの目の前にブラックファングの顔が草むらから出てきた。一瞬ゆんゆんは止まっていたが、状況が理解し急いで俺の近くまで悲鳴を上げながら来た。今はお互いが臨戦態勢をとっている。

 

「ゆんゆん。早速だがこいつの相手を一人で行ってくれ。やばいと感じたら助けに入る、それでいいか?」

 

「は、はい!」

 

そう言ってゆんゆんは前に出る。さぁお手並み拝見だ。

 

「『ライトニング』!」

 

ゆんゆんがそう唱えると雷がブラックファングに直撃する。その攻撃に怒ったブラックファングがゆんゆんに突撃してくる。

 

「(やはり、中級魔法ではダメージを与えるしかできないか………。ゆんゆんの魔力が高いおかげか、かなりのダメージを負ったが仕留めるにはまだ足りない。さぁどうする?)」

 

そうソウガは考えていると、ゆんゆんは手を手刀の形にして、

 

「『ブレード・オブ・ウインド』!」

 

そう唱えると手刀をシュッと振った。その手刀から発生した風が刃に変わりブラックファングの前足を切り裂いた。ブラックファングは土煙をあげながら前のめりに倒れこんだ。

 

「(上手い、まず相手の機動力を奪う。ゆんゆんは中級魔法を使いこなしているな)」

 

「『ファイヤボール』!、『ファイヤーボール』!、『ファイヤーボール』!」

 

そしてゆんゆんは火球の魔法を連続で打ち上げた。ブラックファングはだいぶ弱ってきている感じだった。

 

「修行の旅で習得した。この魔法でとどめ!『ライト・オブ・セイバー」!」

 

そう言ってゆんゆんの右腕に光の剣が現れてブラックファングに突撃していく、あと少しでゆんゆんがブラックファングに魔法が届く距離まで近づいた時だった………。

 

「『カースド・ライトニング』」

 

「………え?」

 

「ッ!!ゆんゆん!!」

 

上級魔法の雷がソウガ達を襲った。

 

◆◆◆

 

「一体、何が起こっている」

 

俺はゆんゆんを抱えてそう言った。雷が当たる前にゆんゆんを抱えて回避したが、近くにいたブラックファングは消し炭になった。

 

「あ、あのソウガさん………」

 

「ああ、すまない」

 

そう言ってゆんゆんをおろす。しかし、一体だれがこんな事を………。

 

「へぇ、あんた意外とやるわね。びっくりしたじゃない」

 

そう思っていると背後から声が聞こえた。そこには魔法使いの恰好をした赤髪の女がいた。いや、この感じは………。

 

「悪魔か」

 

「へぇ………。一発でわかっちゃうんだ。やはり、あんた只者じゃないわね」

 

そう言って女はフードを脱ぐ、そして二本の角が出てきた。

 

「それで悪魔が何の用だ」

 

「あ、あなたはアーネス!」

 

そう言ってゆんゆんが叫ぶ。

 

「知っているのか?」

 

「私の友人の飼っている猫をしつこく狙っている上位悪魔です」

 

「………猫泥棒?」

 

「違うわよっ!!それに猫じゃないわ、ウォルバク様よ!!いい加減覚えなさい!!」

 

「それで、猫泥棒の悪魔が何の用だ」

 

「猫泥棒じゃないわよっ!!………まぁ、いいわ。用があるのはそこの紅魔族だからね」

 

そう言ってゆんゆんを指さした。

 

「私に何の用ですか」

 

「決まっているじゃない………。復讐よ!!」

 

「!?」

 

「あんたとあの爆裂魔法の小娘を殺すために蘇ったのよ!!ここまでの力を取り戻すのに苦労させられたからね。あんた達をじわじわと嬲り殺しにしてからウォルバク様を取り戻す!!」

 

「させない!!私の友達には指一本触れさせない!!」

 

「中級魔法しか使えない。役立たずの紅魔族風情がいいきになるなよ」

 

そうへらへら笑ってアーネスは言う。こいつ、今なんて言った。

 

「ゆんゆん………。悪いがこいつの相手は俺がする」

 

「ソウガさん!?」

 

「へぇ、あんたがその役立たずの代わりに私の相手をするっていうの?」

 

「ああ」

 

「面白いじゃない」

 

俺はゆんゆんの前に出て、アーネスを睨み付ける

 

「ソウガさん。何で………」

 

「あいつの存在が不快なだけだ。それに………」

 

俺はゆんゆんに微笑んでこう言った。

 

「俺はゆんゆんとその友達を守りたいだけだ」

 

そう言って、俺はゆんゆんから離れた。

 

◆◆◆

 

「へぇ、かっこいいじゃない。でも、悠長に話をしていてよかったの?」

 

そう言われて見てみるとアーネスが詠唱を完了していた。

 

「『カースド・ライトニング』!」

 

そう唱えると上級魔法の雷がソウガに襲い掛かった

 

「ソウガさん!!」

 

「まだまだこれからよ!『インフェルノ』!、『エナジー・イグニッション』!」

 

そして、連続で上級魔法をソウガに放った、ソウガの体が連続で発火し体を焼き続けていた。

 

「そろそろとどめを刺してあげるわ!恨むなら役立たずの紅魔族を恨みなさい!『カースド・クリスタルプリズン』!」

 

そう唱えるとソウガの周りがソウガごと凍結し、巨大な氷塊となった。上級魔法を連続で受けて、生きているはずがない。

 

「そんな………。ソウガさん」

 

「いい表情をしているわね。さぁ次は、あなたの番よ」

 

そう言って、アーネスはゆんゆんの方へ歩を進めた。それを見たゆんゆんは体が震えなが

らも迎撃の準備をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やれやれ………。この程度で勝ったつもりでいるなんてな」

 

「ッ!?何!?」

 

そして、突然氷塊が砕かれて、その中からソウガが無傷の状態で服に付いた氷を払いながら出てきた。

 

「バカな!!私の魔法は全部、命中していたはずだ!!貴様一体何をした!!」

 

そうアーネスは叫ぶ。ゆんゆんも信じられないものを見ている表情をしていた、ソウガはため息をついた後、答えた。

 

「アンチ・ダメージアーマー、この魔法は自分以下のレベルの相手の攻撃を完全に無効化する補助魔法だ。これを発動しただけだ」

 

「なっ!?………そんなの………。ありえない」

 

自分以下のレベルの相手の攻撃の無効化と言われた。アーネスは驚愕した、ならどんな攻撃もソウガのダメージにすらならない。その事が信じられずにいた。

 

「そんなの………ハッタリだ!『カースド・ライトニング』!」

 

そう言って雷がまたソウガを襲うが、ソウガに当たる寸前にソウガの姿が消えた。

 

「なっ!消えた、だと!一体どこに消え………ッ!?」

 

アーネスがソウガを探していると突然肩に激痛が走る、後ろを見るとソウガがクローでアーネスの肩を貫いていた。

 

「痛いか?」

 

「く、くそっ!」

 

アーネスはソウガに裏拳をしようとするが、また姿を消してアーネスから一メートル前方に姿が現れた。

 

「転移魔法だと!だが、テレポートでは決められた場所でしか転移できないし、ランダムテレポートでは場所は決められない………。その魔法は一体何だ!」

 

「マキシマイズ・テレポーテーション、この魔法は自分の好きな場所に転移できる。戦闘にも応用でき、このように………」

 

そう言ってまた、姿が消える。

 

「相手の後ろに回る事なんて簡単にできる」

 

「くっ!」

 

アーネスの耳元でそう囁く。アーネスが払おうとするがそこにはもう居らず、元の場所に戻っていた。

 

「す、すごい………」

 

そう、ゆんゆんは言った。アーネスは上位悪魔で上級魔法を扱う強敵で二十人の冒険者でも束でかかっても返り討ちしてしまうほどの相手だ。そのアーネスを圧倒しているソウガの強さにゆんゆんはただ驚いていた。

 

「なら、さっさと私を殺せばいいだろう!!なぜ殺さない!!」

 

「勘違いしているようだから言っておくが、この魔法を見せたのはこんな殺し方もあるっていうのを見せただけだ。じゃなければ、お前みたいな雑魚は一瞬で片が付く」

 

「ぐっ………。この化け物がっ!!」

 

「よく言われるよ」

 

上級悪魔を雑魚呼ばわりするソウガに対して化け物とアーネスは言う。ソウガにとってはアーネス程度の相手なら全力を出す必要もない様子だった。そして、ソウガはため息を吐いて、アーネスを見た。

 

「もう終わりにすることにする。あまりゆんゆんを待たせるわけにはいかないからな」

 

「な、何!?」

 

そう言って、ソウガは自分の前に魔法陣を展開する。そしてソウガの胸板から龍の頭が出現して、龍の口に魔力が溜められていく。

 

「くっ!!」

 

「そう言えば、さっきお前は変な事を言っていたな、ゆんゆんが役立たずだと訂正してもらおうか」

 

そうソウガは言うが、アーネスはこう言った

 

「役立たずの紅魔族を役立たずと呼んで何が悪い!」

 

「確かに中級魔法しか覚えていない、紅魔族は半人前だ。けどな」

 

そう言ってソウガは思い出していた。ゆんゆんが中級魔法を覚えた理由を………。

 

「友達の夢を守ろうとした、こいつの覚悟は上級魔法を覚える事なんかより難しい事だ」

 

ゆんゆんがその友達とした約束の事を………。

 

「お前ごときが!!へらへら笑って、簡単に侮辱していい事なんかじゃねぇんだ!!」

 

「ひぃっ!」

 

そうソウガは怒号を発した。その様子を見た、アーネスは悲鳴を上げる

 

「『ドラゴニックフレイムブレイカー』!!」

 

そう言うと龍の口から高魔力の炎が放出され、アーネスごと後ろにあった木々を焼き尽くした。アーネスは断末魔の声すら上げることなく消滅した。それを確認したソウガはゆんゆんのもとに向かった。

 

「大丈夫か?ゆんゆん」

 

「は、はい」

 

そう言って俺は、ゆんゆんに手を差し出した。ゆんゆんはその手をとって起き上がろうとするが、全然起き上がろうとしない。どうした?

 

「こ、腰が抜けてしまって」

 

成程、そう思って俺はゆんゆんを抱えることにした。

 

「ソ、ソウガさん!?」

 

「すまない、嫌だと思うが我慢してくれ」

 

そう言って、俺たちは森を後にした。

 

◆◆◆

 

「あ、あのソウガさん。そろそろ」

 

街が見えてきたところでゆんゆんはそう言ってきた。さすがに街の中では、恥ずかしいかそう思って俺はゆんゆんをおろした。

 

「あ、あの今日はありがとうございました」

 

「別に大したことはしていないから、礼なんていいぞ」

 

「そんな事ないですよ!私だけでは勝てることのできないアーネスを倒してくださったじゃないですか!」

 

「そんな事か、あれぐらいの相手ならそんな苦労もしないから別に問題ない」

 

魔王軍の幹部の力はあれ以上だから、あんな雑魚に苦戦しているようでは幹部を倒すことなんてできないからな。

 

「今回のクエストで私はまだ、実力不足なんだって事がわかりました。明日からまた旅に出ようと思います」

 

「急だな。何日か休息をとっても罰は当たらないだろう?」

 

「でも、早く上級魔法を覚えるぐらいまで強くならないと」

 

今回の事でゆんゆんは焦ってしまっている感じだった。………よし

 

「ゆんゆん」

 

「はい?」

 

「えい」

 

そう言って俺はゆんゆんにデコピンをする。ゆんゆんは涙を浮かべながらデコを押さえていた。そして俺はこう言った。

 

「焦って強くなる必要なんてないんだ。焦っていたら強くなれるのが逆に遅くなる」

 

「でも」

 

「確かに今回の事で実力不足なのがわかった。でも、強くなるなんて一人ではそう簡単にはできない。自分の問題点を見つけ、改善していくことが強くなるために必要な事だ。だから、一人ですべてを背負うな。その為なら俺も協力を行おう」

 

「えっ?ソウガさんが私を鍛えてくれるんですか?」

 

「ああ」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

そう言って、ゆんゆんは俺に礼を言う。これぐらいなら朝飯前だ。

 

「じゃあ、一週間滞在させていただきます」

 

「分かった」

 

一週間か………、クエストでアドバイスをしていくか。そう思っているとゆんゆんが話してきた。

 

「あ、あのソウガさん!もし私が上級魔法を覚えたら私と同じパーティーに入ってくれませんか?」

 

「良い話だと思うがすまない………。俺はもうパーティーに入っているんだ」

 

「そ、そうですか………」

 

そう言うとゆんゆんはしょんぼりしてしまった。………そうだ。

 

「パーティーには入れないが、俺と友達にならないか?」

 

「えっ?」

 

「俺は見ての通り無愛想で友人と呼べる人が少ない。だから俺をゆんゆんの友人の一人にしてもらえると嬉しいのだが、どうだろうか?」

 

「は、はい!こちらこそよろしくお願いします。………えへへ」

 

そう言うとゆんゆんはにへらと笑みを浮かべた。喜んでもらえてよかった。

 

「じゃあ、無理に敬語なんてしなくていいからな。名前も気軽に呼び捨てにしていいからな」

 

「それは無理ですよ!でも………。私、がんばるね。ソウガさんの友達だって胸を張って言えるように!」

 

「ああ、じゃあギルドに向かうか?今回の報酬を受け取らないといけないからな」

 

「うん!行こう、ソウガさん!」

 

そう言って俺達は冒険者ギルドに向かった。

 

◆◆◆

 

「ただいま」

 

「あっ!おかえりソウ君!」

 

そう帰ってきた俺に対してウィズが言ってきた。俺とゆんゆんは冒険者ギルドに言って報酬を受け取り、ゆんゆんが泊まっている宿まで雑談をしながら送っていって、やっと店に戻ってこれた。

 

「今日もお疲れさま。お風呂湧いてるから先に入ってきたら?」

 

「ああ」

 

そう思って風呂に向かおうとしたが、俺は床に山積みになっている物があり、気になって見に行った。

 

「これ、カエル殺しじゃないか何でこんなのがここに………」

 

そうカエル殺しという魔道具が山積みになって置かれていた。カエル殺しはジャイアント・トード用の使い捨てアイテムだ。ジャイアント・トードの前に置くとジャイアント・トードには極上の餌に見えるらしく、ジャイアント・トードがその魔道具を捕食すると炸裂魔法が発動して魔道具ごとジャイアント・トードを木っ端微塵にするというものだ。

 

「確か定価二十万エリスだろ、何でこん………なに………?」

 

そう言って俺は察した。定価二十万エリスの物が山積みになっているが………、じゃあその仕入れた金はどこから調達した?………。ま、まさか、あの女!!

 

「あれ?ソウ君、どうしたの?早くしないとお風呂冷めちゃうよ?」

 

そう言ってこいつは話しかけてきた。俺は怒りを抑えて話した。

 

「なぁ………ウィズ。三つほど質問させてもらっていいか?」

 

「えっ?うん、いいよ」

 

そうして俺はこいつに質問をした。

 

「一つ目の質問だ。金庫の金は朝の時、何万エリスあった?」

 

「えっ?ソウ君、朝に自分で言ってたじゃない。千五百万エリスあるから大事に使おうって、忘れちゃったの?」

 

「二つ目の質問だ。カエル殺しの定価は何エリスだ?」

 

「たしか、二十万エリスだよ」

 

「じゃあ最後の質問だ。………このカエル殺しを仕入れる時の金はどこから調達した」

 

「………勘が鋭くて、凄く優しい、そんなソウ君の事が大好きだよ」

 

そう笑顔で言ってきた。俺はゆっくりと立ち上がり………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「笑って誤魔化そうとしてんじゃねぇぞ!!このクソ野郎がああああああ!!!!!!」

 

「ご、ごめんなさあああああああああああああああああああああああい!!!!!!」

 

いい加減にしろよ。この駄店主があああああ!!




次回はやっと魔王軍の幹部のあいつが出ます。


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この強敵に死神を!

やっと魔王軍の幹部を出せますが、スピンオフのネタが少しですが入ってます。


ゆんゆんと友人となった日からあっという間に一週間が経過した。俺は様々なクエストを受けたり、摸擬戦をしたりしてゆんゆんを鍛えた。そのお陰でゆんゆんは上級魔法のエナジー・イグニッションを習得することができた。俺がゆんゆんとクエストを受けている間、アクアは毎日商店街で働き、ダクネスは実家で体を鍛えている、カズマとめぐみんは爆裂魔法を放つのにちょうどいい所を見つけたらしく毎日そこに出向いているらしい、今日はゆんゆんを隣町まで送るために早めの朝食を俺たちは摂っていた。その事を考えながら俺は朝食の場で血反吐を吐くように呻いた。

 

「…………金が欲しい!」

 

「ど、どうしたの?ソウ君がそんな事を言うなんて珍しいね。確かにこのお店は今は小さく貧乏かもしれない………。でもゆっくりでもいいから店を大きくしていずれは世界一の商会にするために二人で頑張ろう?」

 

そう言って、ウィズは俺の手を両手で包み微笑んできた。………こいつ!!

 

「どうやら、お前は俺が金を欲しがっている理由が分かっていないようだな」

 

「え?」

 

「お前の散財のせいだろうがっ!!」

 

「ピッ!」

 

「お前がくだらないガラクタに俺が折角貯めた金を全額つぎ込んだせいだろうがっ!!千五百万を一瞬でガラクタに変えるってどういうことだ!!お前は昔からそうだよな!!肝心な所でポンコツが発動して皆に迷惑をかけていたよなぁ!!あの仮面悪魔に笑われるのもしょうがないわ!!」

 

「む、昔の事は出さないで………。でもガラクタって言うのは失礼だよ!ジャイアント・トードに苦戦しているどっかの冒険者がこの商品を見つけて、これは素晴らしいものだってまとめて買い占めてくれるかもしれないよ!だから頑張ろう?皆の帰る場所を守るために!」

 

「このポジティブ・リッチー!!略してポテチがっ!!」

 

「ポテチ!?」

 

こいつをどうにかしないと、本当にこの店は潰れてしまう。生き残った仲間にも、死んでしまった仲間にも合わせる顔がない。そう考えている俺はため息を吐いた。もうなりふり構っている場合じゃないな。実験関係のクエストは受けたくないが、神滅魔法の防御魔法もあるから大丈夫だろう。もう俺は………。

 

「………体を売るしかないか」

 

「!?」

 

ウィズが驚いた顔をして俺を見ていた。さっきの呟きを聞かれてしまったか。俺はゆんゆんを送りに行こうと席を立った。

 

「今後、こんな事が無いようにしろよ。じゃあ俺は出かけてくるな、いつ帰ってこれるか分からないから夕飯は無くていい」

 

「だ、駄目………。駄目!」

 

そう言ってウィズは俺の背中に抱き着く。一体どうした?

 

「何しているんだ?離してくれ、出かけられないだろ」

 

「駄目!今日は絶対に外には出さない!」

 

全然離れようとしない。本当にどうした?

 

「いい加減にしろ!人が待っているんだ。離れろ!」

 

「やだやだやだ!絶対にやだぁ!」

 

こいつ!!いい加減にしろ!!

 

「『スペースバインド』!」

 

そう言って、魔法陣がウィズの手足に出現して拘束する。全く………。

 

「こ、これ!神滅魔法の空間拘束魔法。は、離して!」

 

「俺が店から出たら離してやる。じゃあな」

 

「待って、行かないでソウ君!お願いだから行っちゃやだぁ!ソウ君!ソウ君!やだぁ!!やだあああああああああああ!!」

 

そう言って何故か泣いているウィズをほっといて俺は外に出た。

 

「全く、一体どうしたんだ」

 

そう言った後、俺はゆんゆんを送りに向かった

 

◆◆◆

 

「あっ!ソウガさん!」

 

「おはよう、ゆんゆん」

 

そう言って俺は正門で待っていたゆんゆんのもとに向かう。

 

「ソウガさん!おはようってどうしたの?凄く疲れた表情をしているよ?」

 

「何でもない。行こうか」

 

そう言って俺達は正門を出た。

 

「この一週間、本当にありがとう。おかげで上級魔法を新たに覚えることができた」

 

「ゆんゆんなら覚える事が出来ると信じていたからな。それに友達のために何とかしたいって思うのは当たり前だろう?」

 

「友達………。えへへ」

 

そう言ってゆんゆんは笑う。友達という言葉を言うとよく笑うなゆんゆんは………。そう思っているとゆんゆんが聞いてきた。

 

「そういえば、ソウガさんが使っている魔法は何なの?あんなの今まで見たことないよ?」

 

ゆんゆんが魔法の事について聞いてきた。まぁ………。大丈夫だろう。そう思い、俺は話した。

 

「俺の使っている魔法は神滅魔法って呼ばれていて、俺の家系だけが使用している魔法だ」

 

「そんな魔法が存在するんだ………」

 

「ああ、他にもいろいろあるぞ。天候を操ったり、手足が千切れても瞬時に元に戻したり、あとモンスターを操ったりできる」

 

「神滅魔法って何でもできるんだ。凄い!」

 

「何でもはできないさ」

 

そう思って俺は微笑む。ゆんゆんは神滅魔法の事について色々聞いてきた。どうやら神滅魔法に興味を持ったようだな。………よし。

 

「もし、ゆんゆんが成長して、俺が一人前になったと感じたら神滅魔法を教えてやろう」

 

「えっ!?いいの!」

 

「ああ、神滅魔法は実は冒険者カードを使えばすぐ覚えられる。だが威力が半分以下になってしまうデメリットがあるけどな………。それでもいいなら教えよう」

 

「うん!私、神滅魔法が覚えられるようにがんばるね!」

 

どうやら喜んでもらえたみたいだ。そう思っていると隣町が見えてきた、俺達は隣町に向けて歩を早めた。

 

◆◆◆

 

街に着いて、俺はゆんゆんとまた会おうというのと今度はゆんゆんの友達を紹介をしてくれるという約束をして、ゆんゆんと別れた。ゆんゆんの友達か確か爆裂魔法が大好きなやつだという事しかわからなかった。爆裂魔法が大好きなやつがめぐみん以外にもいるなんてなと思っていると、街の人達の会話が聞こえてきた。

 

「なぁ、知っているか。今、アクセルの街が大変なことになっているらしい………」

 

「ああ、何でも魔王軍の幹部が単身攻めて来たらしい………」

 

「おい!それってまずくないか………」

 

どうやら魔王軍の幹部がアクセルの街に単身乗り込んできたらしい。ちょうどいいこの街からはそう遠くない………。ほんの少し時間がかかるが返り討ちにしてやると考えていると、その人達からとんでもないことが聞こえてきた。

 

「おい、どんな奴が来たんだ?知っているか?………」

 

「いや、俺は何も………」

 

「俺はチラッとだけど見たぞ。漆黒の鎧を着たデュラハンだったぞ………」

 

「何!?」

 

漆黒の鎧を着たデュラハンと聞いた。俺はそいつらに詰め寄った。

 

「その話は本当か!!」

 

「な、何だ!あんた急にな」

 

俺は男の胸倉を掴んで。さらに詰め寄った。

 

「いいから答えろ!!漆黒の鎧のデュラハンがアクセルの街に乗り込んで来たんだな!!」

 

「ひいっ!!あ、ああ。そうだよ!」

 

そう言って俺は男の胸倉から手を離した。男たちは急いで離れていったが。そんな事はどうでもよかった。

 

「あいつが最近住み着いた幹部だったのか………」

 

そう俺とそのデュラハンは因縁がある。仮面悪魔にからかわれていた時に俺とウィズとパーティーの皆で他の魔王軍の幹部の討伐に向かった。その時に出会ったのが漆黒の鎧を着たデュラハンだった。その幹部との戦闘は苛烈を極め、相手に大きな深手を負わせたがその時に死の宣告を発動されてしまった。何とかウィズを死の宣告から守る事に成功したが、パーティーの皆が受けてしまった。俺は急いで浄化魔法を発動して呪いを解こうとしたが、あの時の俺は未熟で呪いの解除ができなかった。魔力が尽きるまで浄化魔法を使用し続けたが皆を救う事が出来なかった。俺は自分の無力を呪った。そのあいつが今アクセルの街にいる………。

 

「………ふふふ」

 

俺は何故か笑っていた。これでやっと俺は前に進めることができる………。

 

「『マキシマイズ・テレポーテーション』」

 

そう言って俺は転移した。過去の因縁を終わらせるために………。

 

◆◆◆

 

俺達は魔王軍の幹部のデュラハンと相対していた。めぐみんと一緒に爆裂魔法を打ち込んでいた廃城に住んでいたらしく怒って、この街まで出てきた。今はめぐみんとアクアが前に出ていた。その時、デュラハンがアクアより早くめぐみんに向かって左手の人差し指を突き出し叫んだ。

 

「汝に死の宣告を!お前は一週間後に死ぬだろう!!」

 

そうめぐみんに向かって放つがダクネスが前に出てかばった。

 

「ダクネス!?」

 

俺はダクネスのもとに急いだ。くそっ、やられた、死の宣告か!

 

「ダクネス、大丈夫か!」

 

「なんとも無いようだ」

 

「仲間同士の結束が固い貴様ら冒険者には、むしろこちらの方が応えそうだな。よいか紅魔族の娘よ。そのクルセイダーは一週間後に死ぬ。お前の仲間は、それまで死の恐怖に怯え、苦しむ事となるのだ。そう、貴様のせいでな!これより一週間、仲間の苦しむ様を見て、自らの行いを悔いるがいい。クハハハッ、素直に俺の言うことを聞いておけばよかったのだ!」

 

デュラハンの言葉にめぐみんが青ざめた。そしてデュラハンはめぐみんを指差した。

 

「そして、紅魔族の娘よそこのクルセイダーの呪いを解いて欲しくば、俺の城に来るがいい!俺のもとにたどり着けたらその呪いを解いてやろう。果たして俺の所まで辿り着ける事ができるかな?クハハハハハッ!」

 

デュラハンはそう言って、哄笑している時だった。

 

「そうか………。でも別に今ここでお前を倒しても問題ないだろう?」

 

「ファッ!?」

 

その言葉が聞こえた後デュラハンの体が吹っ飛んだ。

 

◆◆◆

 

「ぐおおおおおおおおおおお!!!」

 

俺の一撃をもろに受けたデュラハンは地面を二度三度とバウンドをして岩にぶつかった。

 

「ソウガ!」

 

「すまない。待たせたな」

 

カズマ達が俺に寄ってくる。少し遅れてしまったな。

 

「カズマ。今の状態を教えてくれ」

 

「ダクネスが死の宣告を受けている状態だ。どうにかできないか?」

 

「なるほど………。なら、あのデュラハンを半殺しにして無理矢理にでも解除させてやる」

 

「できるのか?相手は魔王軍の幹部だぞ」

 

「問題ない。皆を避難させてくれ」

 

「わかった!」

 

そう言ってカズマはアクア達を避難させた。他の冒険者は俺の姿を確認したら何故か騒いでいた。

 

「ソウガ来たあああああ!!」

 

「この街の最強の冒険者が来たんだ。てめぇは終わりだ!首なし野郎!」

 

「ソウガさん!そんな奴ボコボコにしちゃえ!」

 

あまり騒がないでほしいが集中させてもらうか………。

 

「くそっ!!一体誰だ!!この俺が魔王軍の幹部だって知………ッ!!」

 

俺の姿を確認したデュラハンが震え始めた。そして俺を指差して………。

 

「しししししし、死神っ!?」

 

久しぶりに聞いたな死神って。俺が魔王軍を殺しまわっている時に魔王軍に付けられたあだ名が死神だ。かつての仲間には笑われたがな………。そう思っているとデュラハンが瞑想を始めた。何やってんだあいつ?

 

「よーし落ち着こうか俺、最近爆裂魔法を城に打ち込まれ続けてストレスが溜まって幻覚が見えてしまっているんだ。目を閉じて深呼吸をしよう。スーハー、スーハー。よしリラックスできた!そしてゆっくりと目を開けるんだ。ほーら、そこには死神なんてい………るううううううううううううううう!!!」

 

何一人で漫才してるんだ。こいつ?そう思っているとデュラハンが聞いてきた。

 

「なななな、何で!お前がこんな所にいるんだ!!」

 

「ここに住んでいるからな」

 

「は、はあ!?な、何で、こんな駆け出ししかいない街に住んでいるんだ。おかしいだろう!!王都に住め王都に!!お願いだから!!」

 

「お前に指図される筋合いはないぞベルディア。それに俺にはここに住まないといけない理由があるからな」

 

そうこの魔王軍幹部、ベルディアに言った。だがこいつは納得してないようだった。

 

「ななな、何だ!その理由とは!!」

 

「別に言う必要なんてないだろう。それに………」

 

そう言って俺はベルディアを睨み付けた。それにビクッとしているベルディアに向かって言った。

 

「これから死ぬやつに、これ以上言っても無駄だろう」

 

そう言って俺は一瞬で近づき、クローを装備している右腕を振り下ろした。

 

◆◆◆

 

「ちぃっ!!」

 

ソウガの攻撃をベルディアは剣で防いだが、防ぎきれず数メートル後方に吹っ飛んだ。

 

「あああああ、もう!!何で死神と単身戦わないといけないんだ!!ねえ、嫌がらせなの?もう、やだあ………。城に帰りたい!!」

 

「帰る必要なんてないだろ?どうせここで死ぬんだからな」

 

そう言われてソウガの方を見たベルディアだったがそこには魔法陣を展開しているソウガがいた。

 

「『サンダースフィア』!」

 

そう言ってソウガは巨大な雷の塊を作り出し、ベルディアに放った。ベルティアは避けようとしたがあまりに巨大なため避けきれなかった。

 

「ひああああああああああ!!」

 

「まだ終わりじゃないぞ、『ファイヤートルネード』!」

 

そうするとベルティアの所に炎の竜巻が発生しベルディアの体を焼きながら空中に巻き上げた。そしてソウガの近くの地面に叩きつけられた。

 

「ぐっ………。く、くそ」

 

「どうした………。終わりか?」

 

「ッ!!舐めるなあ!!」

 

そう言ってベルディアは剣でソウガを切り裂こうと剣を横に振った。

 

「『バイオボディ』」

 

そうソウガが言った後すぐにソウガの体が一閃された。

 

「ソ、ソウガ!!」

 

その光景を見ていた、カズマが思わず叫んだ。他の冒険者も呆然としていた。

 

「は、はは、クハハハハハッ、やったぞ!!死神を始末してやった!!これでこの街には俺にかなうやつなどいなくなった!!クハハハハハッ!!」

 

そうベルディアが勝ち誇っている時だった。切り裂かれたソウガの体が液体状に変化してベルディアの体に纏わりつきそれが人型になっていき何事もなかったかのようにソウガに戻った。

 

「何かしたか?」

 

「な、何!!か、体の液体化だと!!何だその魔法は!!」

 

その言葉を無視してベルディアの体から離れて瞬時に魔力が込められた拳を叩き込んだ。

 

「ぐふっ!?」

 

「お前に俺のかつての仲間が死の宣告を受けた時から、ずっと思っていた。この拳をお前に叩き込んでやりたいってな!!」

 

そう言ってソウガはベルディアの体に拳のラッシュを叩き込んだ。そして最後の一発の拳でベルディアは五メートルほど吹っ飛んだ。

 

「こ、このままでは………ッ!!」

 

立ち上がろうとしたベルディアはソウガの方を見ると魔法陣が展開されており、魔法を発動しようとしていた。

 

「ちょっ!待」

 

「待つわけないだろ。『ソーラービーム』!」

 

そう言うと熱光線がベルディアに当たり爆発した。そのままベルディアは倒れて、動かなくなった。その光景を見ていた他の冒険者たちが歓声を上げていた。

 

◆◆◆

 

「ソウガ!」

 

そう言ってカズマ達が俺に向かってきていた。やれやれ、まだ呪いを解除していないのにな。そう思っていた時だった………。

 

「………く、くそ!!」

 

「何!?」

 

ベルディアが地面に向かって剣を連続で振り下ろした。辺りが土煙で見えなくなっていた。くそっ!目くらましか!

 

「無理無理無理無理!こんなの無理だって!もう帰る!じゃあな!!」

 

そう言ってベルディアは姿を消した。………くそっ!!

 

「おい、どこ行く気だ」

 

そう声の方に向くとめぐみんが一人でどこかに向かおうとしていた。

 

「ちょっと城まで行って、あのデュラハンに直接爆裂魔法ぶち込んで、ダクネスの呪いを解かせてきます」

 

「俺も行くに決まってるだろ、俺も一緒に行きながら、幹部の城だって気づかなかったマヌケだしな」

 

そう言って二人はベルディアの城に向かおうとしていた。………やれやれ。

 

「俺も行こう、あと少しで倒せるはずだったのに油断した俺にも非があるしな」

 

「………やめろ、私なんかのために」

 

「おいダクネス!呪いは絶対に何とかしてやるからな!だから、安心」

 

「『セイクリッド・ブレイクスペル』!」

 

そう言ってアクアは浄化魔法を発動して死の宣告の効果を消した。………おいこら。

 

「この私にかかれば、デュラハンの呪いの解除なんて楽勝よ!どう、どう?私だって、たまにはプリーストっぽいでしょう?」

 

俺達のやる気を返せ。まぁいい、俺はウィズと皆のために、次こそあいつをベルディアを倒す!




改稿ばっかしてしまい申し訳ございません。


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この冒険者に魔剣使いを!

今回はもう一人の転生者が出ます。


「ウィズ。言い忘れていたが、今ベルディアが街の近くの城に住んでいるぞ」

 

魔王軍の幹部、ベルディアの襲撃から一週間が経過した朝に俺は一緒に朝食をとっていたウィズにそう言った。一応ウィズも魔王軍の幹部だが、俺と同じでベルディアによって仲間を苦しめられた仲だ………。一応報告しておこうと思った。

 

「ベルディアさんが?」

 

「ああ、前にベルディアがこの街に襲撃してきたんだ」

 

「冒険者の皆は大丈夫だった?」

 

「ああ、ダクネスが死の宣告を受けたが、アクアのおかげで呪いが解除された」

 

「そう………。良かった」

 

そう言ってウィズはホッとしたようで胸をなでおろした。そしてウィズが聞いてきた。

 

「それにしても、アクアさんって凄いね。ベルディアさんの死の宣告を解除できるなんて王都のアークプリーストでもできないのに本当に凄い」

 

「ああ、そうだな。少なくともあの時の無能だった俺より凄いな」

 

「そんな事………」

 

「そんな事あるさ、そして思うんだ。あの時にアクアがいたら皆が傷つく事なんて無かったんじゃないかってな………」

 

「ソウ君………」

 

そう言ってウィズが悲しそうな顔をしていた。しまったな、こんな話をするつもりはなかったんだがな………。俺は少しでも空気を軽くしようと話題を変えた。

 

「まぁ、そんな話なんてどうでもいい。俺はベルディアを倒そうと思っている。だが、もしウィズの友人なら倒さないでおこうと思う。どうなんだ?」

 

「ベルディアさんとは仲がいいとか、そんな事も無かったよ」

 

そうか。ならベルディアを倒しても問題ないなと思っていると聞き捨てならない事をウィズが言った。

 

「魔王城で私が歩いてると、よく足元に自分の首を転がしてきて、スカートの中を覗こうとする人だったもん」

 

「………………」

 

「ソ、ソウ君!?怖い怖い!目が死神時代の冷たい目に戻ってる!お願いだから戻ってきて!」

 

今、何て言った!!あいつは俺の仲間に死の宣告をかけて苦しめた挙句に俺の大切な幼馴染に何て事してやがる!!殺す!!あいつ絶対に殺す!!しかも楽には殺さねぇ、自ら死を望むまで苦しめて苦しめて、その後に回復魔法で徐々に回復させながら少しずつ切り刻んでやる!!

 

「ソウ君!!」

 

「はっ!………すまない」

 

「優しいソウ君に戻ってくれてよかった………」

 

そう言ってウィズは安堵した様だった。さてそろそろ冒険者ギルドに向かうか。

 

「じゃあ、そろそろ出かけるな」

 

「うん、行ってらっしゃい」

 

そう言って俺は冒険者ギルドに向かった。

 

◆◆◆

 

「クエストよ!キツくてもいいから、クエストを請けましょう!お金が欲しいの!」

 

ギルドに着いて、椅子に座っていた俺達にアクアが言った。

 

「私は構わないが」

 

「お、お願いよおおおおお!もう商店街のバイトは嫌なの!コロッケが売れ残ると店長が怒るの!頑張るから!今回は、私、全力で頑張るからあああ!!」

 

「しょうがねえな………。良さそうだと思うクエスト見つけて来いよ」

 

「わかったわ!」

 

そう言ってアクアは掲示板に向かう。大丈夫か?

 

「アクア大丈夫でしょうか?とんでもないクエストを持ってきそうですが………」

 

「私は別に、無茶なクエストでもいいが!」

 

「確かに嫌な予感がしてきた。すまんソウガついて来てくれないか?」

 

「分かった」

 

そう言ってクエストが張り出されている掲示板へ行くと、真剣な顔でクエストを選んでいるアクアがいた。そして、一枚の紙を掲示板から剥がし、手に取った。

 

「………よし」

 

「よしじゃねえ!お前何請けようとしてんだ!!マンティコアとグリフォンが縄張り争いしている場所があります。二匹まとめて討伐してください。報酬は五十万エリス………アホか!!」

 

マンティコアとグリフォンの討伐か俺は問題ないが、カズマ達はまだ早い。………しょうがない。

 

「じゃあ、これなんてどうだ?湖の浄化クエスト、アクアに合っていると思うんだが」

 

「えっ?湖の水質が悪くなり、ブルータルアリゲーターが住みつき始めたので水の浄化を依頼したい。湖の浄化ができればモンスターは生息地を他に移すため、討伐はしなくてもいい。報酬は三十万エリス………。私にぴったりのクエストじゃない!」

 

「お前、水の浄化なんてできるのか?」

 

カズマの質問にアクアが鼻で笑いながら答える。

 

「私を誰だと思っているの?名前や外見のイメージで、私が何を司る女神かぐらい分かるでしょう?」

 

「宴会の神様だろ?」

 

「違うわよヒキニート!まったく………、ソウガ言ってやりなさい私の名前と外見で何を浮かぶか」

 

「宴会芸だろ?」

 

「わあああああああああっー!!!私は宴会の神様なんかじゃないわよっ!水を司る女神よっ!この水色の瞳とこの髪が見えないのっ!」

 

アクアが泣いてしまった。冗談はこれぐらいにしておくか。

 

「カズマ、そのクエストなら戦闘をしなくていいから方法はいくらでもある。俺は別行動をしてもいいか?」

 

「えっ?ソウガ何か用事か?」

 

「少し、試しに請けてみたいクエストがあるんだ」

 

「分かった。気を付けろよ」

 

そう言って俺は掲示板で実験関係のクエストを見ていた。実験関係のクエストの中で比較的安全そうなものを選んで、俺はギルドを出た。

 

◆◆◆

 

「クエストを請けた者だが」

 

「よくいらっしゃいました。さぁこちらへ」

 

建物から出てきたのは、俺と同い年ぐらいの女性の人だった。女性に案内してもらい椅子に座った。

「今回はクエストを請けていただきありがとうございます」

 

「いえ、今回は魔法薬の検証実験ですよね。一体どんな薬を?」

 

「はい、今回の薬は傷を回復させるだけでなく魔法の攻撃力を上げる効果の薬を五品ほど用意しましたのでそれを飲んでいただき攻撃魔法を放っていただけるだけでいいです。」

 

「分かりました」

 

「では、こちらの書類に名前をお願いします。私は薬を用意いたしますので」

 

そう言って女性の人は奥に行った。今のうちによく書類を読んでおくか。

 

「比較的内容は普通だな。効果内容も書いてあるし問題ないな、注意点も細かく書いてあるし大丈夫だな。これで確か三百万エリスだろ?これならカズマ達も誘っても良かったな」

 

そう思い、俺は名前を書いて先程の女性を待っていたが、いつまでたっても来なかったから俺は女性が消えていった奥に書類を持って行った。

 

「すまない。書類を書いたので早く………?」

 

奥で女性を発見したのだが、薬を選んでいる最中だったのか声が聞こえてきた。俺はその声を耳を澄まして聞いていた。

 

「まさか最強のアークウィザードが来てくださるなんて私はツイている。じゃあこの赤い薬を飲ませてみよう。この薬を飲んだらどうなるか、ふふふ、楽しみだなぁ。かといってこっちの青い薬も、ふふふ、そしてこの紫の薬は、飲んだらもう凄い事に、ふふふふ。おっと興奮してよだれが、ああっ!早く試したい!あーはっはっはっは!!」

 

「………………」

 

俺は無言で椅子に戻った。えっ!?これ俺死ぬんじゃない?

 

「お待たせいたしました」

 

女性が戻ってきた。いきなり声を掛けられてのでビクッとしてしまった。

 

「ではお願いいたしますね。こちらで飲んでいただいて、外で魔法を放つという形で行いましょう」

 

「あ、ああ」

 

「では、まずはこの紫の薬からお願いいたしますね」

 

そう言って飲んだら凄い事になる紫の薬を渡された。だ、大丈夫だ!注意点も書いてあったから怪しい薬ではない。どんな事も挑戦が必要なんだ!そう思い、俺は紫の薬を飲んだ………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アッ-----------------------!!!!!!」

 

◆◆◆

 

「では、クエストの達成報酬の三百万エリスになります。ご確認を………。あの大丈夫ですか?ソウガさん」

 

「………ああ、大丈夫だ」

 

今回で学んだ事は、今後は実験関係のクエストは受けないようにしよう。割りに合わないからな、うっ………。

 

「でも………。顔色が悪いですよ?」

 

「すまない。心配かけてしまったな」

 

そう言って、俺はルナの頭を撫でた………。

 

「えっ!あ、あのソウガさん!」

 

「はっ!す、すまんルナ!今のは忘れてくれ」

 

そう言って俺は受付を急いで離れた。何をしているんだ俺は!俺はルナの様子を見てみた。

 

「………うふふ」

 

何故かルナが笑っていたが、気にしないで俺は冒険者ギルドを出た。店に戻ろうと歩いているとカズマ達の声が聞こえた。

 

「おい、いい加減その手を放せ。礼儀知らずにもほどがあるだろう」

 

「ちょっと撃ちたくなってきました」

 

「それはやめろ。俺も死ぬ」

 

「君達は、クルセイダーにアークウィザードかなるほど、君はパーティーメンバーには恵まれているんだね。君はこんな優秀そうな人達を馬小屋で寝泊まりさせて、恥ずかしいとは思わないのか?」

 

なんか揉めているらしいな、しかも相手はあいつか………。俺はカズマ達に合流しようと歩を進めた。

 

「そこまでにしろキョウヤ」

 

「なっ!ソウガ!」

 

「どうしてキョウヤと言い争っているんだ。カズマ」

 

「こいつがいきなり絡んできたんだ」

 

「ソウガはそいつと知り合いなのか?」

 

「同じパーティーだ」

 

「何!?」

 

そう言って何故か固まったキョウヤ。キョウヤはここ最近冒険者になったやつだが、初めから高レベルのソードマスターのクラスになった。いわゆる天才ってやつだ、そう思っているとキョウヤが騒ぎだした。

 

「何故だ!僕の誘いは断って何でこんなやつのパーティーに!」

 

「あの頃はパーティーに興味がなかっただけだ、それに俺が入るパーティーは俺が決める。それがお前のパーティーじゃなかっただけだ」

 

そう俺は昔、キョウヤのパーティーに勧誘されている。だが、俺は誘いを断った。その時はパーティーに興味が無かったからな。そう思っているとまるで同情でもするかの様に、カズマ以外の俺達に笑いかけた。何のつもりだ?

 

「君達、これからはソードマスターの僕と一緒に来るといい。高級な装備品も買い揃えてあげよう。ソウガも、もう一度パーティー入りを考えてみてくれないか?」

 

「ちょっと、ヤバいんですけど。あの人本気で、ひくぐらいヤバいんですけど。ナルシストも入っている系で、怖いんですけど」

 

「どうしよう、あの男は生理的に受けつけない。攻めるより受けるのが好きな私だが、あいつだけは何だか無性に殴りたいのだが」

 

「撃っていいですか?撃っていいですか?」

 

「俺の考えは変わらない。カズマのパーティーから離れるつもりはない」

 

「えーと。俺の仲間は満場一致であなたのパーティーには行きたくないみたいです。では、これで………」

 

そう言ってカズマ達は立ち去ろうとする。俺もカズマに伝えたい事があるからついていく。だがキョウヤが立ち塞がった。しつけぇ………。

 

「どいてくれます?」

 

「悪いが、アクア様を、こんな境遇の中に放ってはおけない。だから勝負しないか?僕が勝ったらアクア様を譲ってくれ。君が勝ったら、何でも一つ、言う事を聞こうじゃないか」

 

「よし乗った!行くぞ!」

 

そう言ってカズマが奇襲を行う。キョウヤは急いで魔剣を抜くが………。

 

「『スティール』!」

 

カズマのスティールが発動して魔剣を奪って、その魔剣でキョウヤの頭を強打した。叩かれたキョウヤは気絶した。本当にカズマはスキルの使い方が上手いな。

 

「卑怯者!卑怯者卑怯者卑怯者っ!」

 

「あんた最低よ!この卑怯者!」

 

キョウヤのパーティーの女の子達がカズマを卑怯者と罵っていた。ソードマスターが最弱職に勝負を挑むのは卑怯じゃないのか?そう思っているとカズマが魔剣を持っていこうとしていたがキョウヤのパーティーの女の子達はカズマの勝ち方を認めていない様だった。そう思っているとカズマが右手をワキワキさせて見せつけた。

 

「真の男女平等主義者な俺は、女の子相手でもドロップキックを食らわせられる男。手加減してもらえると思うなよ?公衆の面前で俺のスティールが炸裂するぞ」

 

そう言ってキョウヤのパーティーの女の子は悲鳴を上げながら逃げていった。これで話ができるな………。

 

「カズマ、少しいいか?アクア達も近くに来てくれ」

 

「どうしたんだ?ソウガ?」

 

「一体どうしたんですか?」

 

カズマとめぐみんが聞いてくる。そして、俺は皆に言った。

 

「俺は明日の朝にデュラハンの討伐に行こうと思う」

 

「えっ!大丈夫なのか?何なら俺達も一緒に行くぞ?」

 

「いや、今回は俺一人で行こうと思う。気持ちは嬉しいがカズマ達はまだレベルが低い。唯一対抗できそうなのはアクアだが、俺がアクアを守り切れる自信がないから俺は一人で討伐に向かう」

 

「なるほど………。分かった。だけど、必ず帰って来いよ」

 

「ああ」

 

そう伝えて俺はカズマ達と別れた。

 

◆◆◆

 

その翌日、俺はウィズが起きないように一人で準備をしていた。準備が終わり、討伐に向かおうとしていた時だった。

 

「ベルディアさんの討伐にいくの?」

 

そう背後から声が聞こえた。後ろを向くと寝間着姿のウィズがいた。起こしてしまったか………。

 

「ああ、俺は今からベルディアを討伐してくる」

 

「一人で行くんだね」

 

「ああ」

 

そう言うと、ウィズが俺に抱き着いてきた。俺はウィズを抱きしめた。

 

「約束して、必ず帰ってくるって………」

 

「約束するさ、俺は必ず帰ってくる。俺の大切な幼馴染のもとにな」

 

俺はウィズの温もりを感じながら必ず帰ってくることを誓った。




もうそろそろ一巻分の話が終わります。


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この因縁に終止符を!

これで一巻分の話は終了です。


「ソウガ、大丈夫かなぁ………」

 

俺達は冒険者ギルドで、ソウガの帰りを待つことにした。途中、ミツルギが絡んで来たが魔剣を売ったというのを伝えたら走って冒険者ギルドから出て行った。その後、アクアが自分の事を女神だと明かしたがめぐみんとダクネスには信じてもらえなかった。その光景を見ながら俺は魔王軍の幹部であるデュラハンの討伐に行ったソウガの心配をしていた。

 

「そうですね………。今頃は戦闘中でしょうか?」

 

「しかも相手は魔王軍の幹部だ。そう簡単には勝てないだろう。心配だ………」

 

「大丈夫よ!」

 

俺達が心配しているとアクアがそう言ってきた。

 

「この私と同じパーティーを組んでいるのよ?あんなアンデッドごときに負けるはずないわ!それに前にあのアンデッドが来た時の事を思い出しなさい。あのアンデッドを圧倒していたじゃない。あの時の事を思い出すたび笑いがこみ上げて、プークスクス!」

 

そう言ってアクアは笑い始めた。そうだよな、ソウガはあのデュラハンを圧倒していた。心配何て無用だよなと思っていると………。

 

『緊急!緊急!全冒険者の皆さんは、直ちに武装し、戦闘態勢で街の正門に集まってください!………特に、冒険者サトウカズマさんとその一行は、大至急でお願いします!』

 

「何だよ……。こっちはソウガを待たないといけないのに」

 

「とりあえず、正門に向かいましょう」

 

俺達は正門前に向かった。その後、軽装の俺を筆頭に、アクアとめぐみんの順にに到着した。ダクネスは重装備のため遅れてしまっていた。しかし、そんな事はどうでも良かった。そこには………。

 

「えっ!何であいつが………。」

 

あの魔王軍の幹部のデュラハンがいた。そしてそのデュラハンは体を震わせながら言った。

 

「なぜ城に来ないのだ、この人でなしどもがああああああ!!」

 

「ええっ!なんで?もう爆裂魔法を打ち込んでもいないのに」

 

「打ち込んでもいないだと!?何を抜かすか白々しい!そこの頭のおかしい紅魔族の娘が、あれからも毎日欠かさず通っておるわ!」

 

俺は隣のめぐみんを見た。めぐみんがふいっと目を逸らした。こいつ!!

 

「お前なあああああああああ!!」

 

「ひたたたた、違うのです、聞いてください!今までなら、何もない荒野に魔法を放つだけで我慢出来ていたのですが、城への魔法攻撃の魅力を覚えて以来、大きくて硬いモノじゃないと我慢できない体に………」

 

「もじもじしながら言うな!大体お前、魔法撃ったら動けなくなるだろうが!てことは、一緒に行った共犯者が………」

 

俺の言葉を聞いたアクアがビクッてした。俺はアクアを見るとふいっと目を逸らす。………。

 

「お前かあああああああああ!!」

 

「ひたたたた!あいつのせいでろくなクエスト請けられないから腹いせがしたかったんだもの!」

 

この駄女神のほっぺたを引っ張っていると、デュラハンが言葉を続けた。

 

「聞け、愚か者ども!我が名はベルディア!俺が真に怒っているのはその件ではない!貴様らには仲間を助けようという気はないのか?これでも昔は真っ当な騎士のつもりだった。その俺から言わせれば、仲間を庇って呪いを受けた、騎士の鏡の様なあのクルセイダーを見捨てるなど………」

 

そうデュラハンがそこまで言い掛けた時だった。ようやくダクネスが重い鎧をガチャガチャいわせ、やって来た。そして俺の隣に立ち照れているダクネスは言った。

 

「その、騎士の鏡などと………」

 

「あ、あれえーーーーーーーーーーー!?」

 

ダクネスを見たデュラハンが素っ頓狂な声を上げた。隣にいるアクアがその光景を見て笑っていた。

 

「なになに?あのデュラハンずっと私達を待ち続けていたの?あっさりと呪い解かれちゃったとも知らずに?プークスクス!うけるんですけど!ちょーうけるんですけど!」

 

そう言ってアクアはデュラハンを指差して笑った。やめろ!煽るな!

 

「まぁ、それならいい。俺は帰らせてもらう」

 

そう言って、デュラハンは帰ろうとする。あれ?

 

「こいつらに怒っているんじゃないのか?」

 

「俺はもう怒ってはいない。流石にそこまで小さい男ではないからな。そこの紅魔族の娘!爆裂魔法を打ち込むなとはもう言わん。だが、せめて毎日はやめろ。修理ができない、その事を伝えに朝早く城から出たのだ。ではさらばだ」

 

そう言っていた。俺はめぐみんとデュラハンに聞こえないぐらいの声で話した。

 

「どういう事だ?」

 

「多分、ソウガがまだこの街にいると勘違いしているんでしょう」

 

「じゃあ、あいつが無事なのって………」

 

「ソウガと入れ違いになったのでしょう。なら、このまま城に戻ってもらいソウガに倒されてもらいましょう」

 

そう俺達は話していたが、アクアが余計なことを言った。

 

「見て見てカズマ!あいつ怖気づいて帰っていくわ!うける!ちょーうけるんですけど!ソウガが今はあいつの城にいるって事も知らずに。プークスクス!」

 

この駄女神!!何言ってんだ!!

 

「おい、そこのアークプリースト。今何と言った?」

 

「やばい!な、何も言ってないよ」

 

「いや、確かに聞こえたぞ!今、死神は俺の城にいると!そうかそうか、俺を討伐するために俺と同じで朝早くから出たのだな!そして入れ違いになったと。くくくく」

 

そう言ってデュラハンは笑い始めた。………マズイ!

 

「さっき俺は怒っていないと言ったな?あれは嘘だ」

 

「うわっ!ソウガがいないとわかったら手の平返しやがった。小さい!なんて小さいんだあいつ!」

 

「う、うるさい!まあいい、ここは一つ、死神を苦しめてやる事に決めたぞ。自分が住む街の住人が皆殺しになっていれば自らの行いがどれだけ愚かだったと気づき絶望するだろう。クハハハハハッ!」

 

そう言ってデュラハンの笑い声が辺りに響いた。

 

◆◆◆

 

「………おかしい」

 

俺はベルディアの城でアンデッドを片っ端から倒していた。だが、雑魚ばっかで肝心のベルディアが出てこない。

 

「ベルディア出て来い!隠れてないで姿を現せ!」

 

そう言っても全然出てくる気配がない。

 

「どういう事だ?これだけ暴れているのに気配すら感じない。どうなっている?」

 

そう言って俺は新たに出て来たアンデッドナイトの群れを始末していった。

 

「仕方ない………。こいつらから聞き出すか」

 

そう言って俺はアンデッドナイトを一体以外すべてを始末して、アンデッドナイト一体を捕獲して。

 

「『マインドコントロール』」

 

洗脳魔法をアンデッドナイトにかけた。これでいいな………。

 

「さぁ、お前が知っている事、全部教えてもらおうか」

 

「はい………。前にベルディア様がアクセルの街に行った後なんですが、さすがにもう爆裂魔法は打ち込まれないと思っていたのですが、あれからも変わらず爆裂魔法を打ち込まれてしまいベルディア様が頭を抱えていました」

 

何をしているんだめぐみん………。そう思っているとアンデッドナイトからとんでもない事を聞いた。

 

「後、ベルディア様が死の宣告を行って城に来るように申し上げたはずなのに誰一人として来ない事にさすがのベルディア様も激怒しまして、今朝早くにアクセルの街に文句を言いに向かいました」

 

「何!?」

 

じゃあ今はアクセルの街にベルディアはいるのか!俺はそのアンデッドナイトを始末して転移しようとした。

 

「『マキシマイズ・テレポー………ッ!!」

 

転移しようとしたが、背後から別のアンデッドが攻撃を仕掛けて来た。俺は何とか躱してそのアンデッドを始末したが周りを見ると何百体のアンデッドが俺を囲んでいた。

 

「俺は急いでいるんだ!!邪魔をするなあああああああ!!」

 

俺はそのアンデッド達を始末していった。皆無事でいてくれ!

 

◆◆◆

 

「ダクネスが!カズマ、ダクネスが!」

 

俺の後ろでめぐみんが悲痛に叫ぶ。俺達はデュラハンと対峙していた。今はベルディアをダクネスが相手をしているがベルディアの攻撃を受け続けていて、いつまで持つかわからない。思い出せ!相手はデュラハンだ、ロールプレイングゲームでは何が弱点だった?………メジャーアンデッドモンスター、ヴァンパイアも苦手とする流れる水。なら、あのデュラハンは?

 

「元騎士として、貴公と手合わせ出来た事に魔王様と邪神に感謝を捧げよう!さらばだ、勇敢で愚かなクルセイダー!」

 

「『クリエイト・ウォーター』!」

 

「!?」

 

俺は水魔法をベルディアに向かって放った。ベルディアは俺の水魔法を避けたやっぱりこいつの弱点は………。俺は大声で叫んだ。

 

「水だあああああああ!!」

 

その言葉を聞いた魔法使い達と俺は水魔法を連続で放った。

 

「『クリエイト・ウォーター』!」

 

「『クリエイト・ウォーター』!」

 

「『クリエイト・ウォーター』!」

 

「くぬっ!おおっ!っとっ!」

 

俺達の水魔法をベルディアはこれでもかと躱す。くそっ!魔力が尽きちまう!

 

「ねぇ、カズマったら何を遊んでいるの?バカなの?」

 

こいつ!!

 

「あいつは水が弱点なんだよ!なんちゃって女神でも水の一つぐらい出せるだろ!」

 

「あんた、そろそろ罰の一つも当てるわよ無礼者!洪水クラスの水だって出せますから!」

 

「出せるのかよ!」

 

「謝って!なんちゃって女神って言った事、ちゃんと謝って!」

 

「後でいくらでも謝ってやるから、とっとと出せよこの駄女神が!」

 

「わああああーっ!今、駄女神って言った!見てなさいよ、女神の本気を見せてやるから!」

 

そう言ってアクアが魔法の準備を行った。

 

「この世に在る我が眷属よ水の女神、アクアが命ず………。」

 

「ッ!!これは!」

 

「我が求め、我が願いに応えその力を世界に示せ………。」

 

「いかん!………ッ!!」

 

ベルディアが逃げようとするが、ダクネスがベルディアの足を掴んだ。

 

「離せ!このド変態騎士があ!!」

 

「何という罵倒………」

 

「『セイクリッド・クリエイト・ウォーター』!」

 

そう唱えると膨大な量の水がベルディアを襲った。………俺らも巻き込んで。

 

◆◆◆

 

「何を考えているのだ貴様………。馬鹿なのか?大馬鹿なのか貴様は!?」

 

水が引いた後には、地面にぐったりと倒れこむ冒険者と一緒に同じく、ぐったりとしていたベルディアがヨロヨロしながら立ちながら言った。

 

「今がチャンスよ、カズマ!」

 

「今度こそお前の武器を奪ってやる!」

 

「弱体化したとは言え、駆け出し冒険者のスティールごときで俺の武器は盗らせわせぬわ」

 

そう言ってベルディアが俺に向かって突進してきた。不味い!以外に速い!

 

「くそっ!『スティー………」

 

「遅い!」

 

そう言ってベルディアが俺に剣を振り下ろす!俺は目を瞑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何とか………。間に合ったな」

 

その言葉を聞いて俺は目を開けた。そこには………。

 

「ソ、ソウガああああ!」

 

「よく頑張ったな、無事で良かった」

 

ソウガがベルディアの攻撃をクローで受け止めていた。ソウガの姿を見たベルディアは焦っていた。

 

「こ、このタイミングで死神が出てくるだと!マズイマズイマズイマズイ!」

 

そして、ソウガはベルディアの方へ向いた。そして肩を震わせながら言った。

 

「………おいてめぇ」

 

「ひいっ!」

 

「俺の仲間に何してんだ!!」

 

そう言ってソウガは剣を弾き、ベルディアに強烈な蹴りをお見舞いした。ベルディアは地面に二度三度バウンドしながら後方に吹っ飛んだ。

 

「カズマ!今だっ!」

 

「分かった!『スティール』!」

 

俺は全魔力を込めたスティールを炸裂させた!俺の両手にずしりとした重さが両手に伝わった。

 

「あ、あの………」

 

ベルディアの声が聞こえた。俺は両手の間をみた。そこにはベルディアの頭があった。………にやり。

 

「おいお前ら、サッカーしよーぜ!サッカーてのはなああああ!手を使わず、足だけでボールを扱う遊びだよおおお!」

 

俺は冒険者達の前に、ベルディアの頭を蹴りこんだ!それを真似して他の冒険者もベルディアの頭を蹴っていた。

 

「おし。アクア、後は頼む」

 

「任されたわ!」

 

そしてアクアは魔法を発動した。

 

「『セイクリッド・ターンアンデッド』!」

 

「ちょ、待っ………!ぎゃあああああああああ!」

 

アクアの魔法を受けたベルディアは浄化された。こうして俺達と魔王軍の幹部との戦いは終わった。

 

◆◆◆

 

「では、魔王軍の幹部討伐の報酬金をお受け取りください。ソウガさん」

 

「ああ」

 

俺はベルディアを討伐した翌日に冒険者ギルドへ行くと、魔王軍の幹部討伐の報酬金を受け取った。今回参加した冒険者全員に配られているようだった。まだカズマは来ていなかったがダクネスは他の人と酒を飲み、めぐみんは料理を食べ、アクアは報酬金を使い、酒を大量に飲んでいた。俺は端で一人飲んでいるとルナが来た。

 

「凄いですね。ソウガさんのパーティーは魔王軍の幹部を討伐してしまうなんて」

 

「凄いのはカズマ達だ。俺は何もしていない」

 

「そんな事ないですよ。カズマさんが斬られそうになった時、助けに入ったじゃないですか。それに幹部の城に単身で突入してアンデッド達を全滅させたそうじゃないですか。あのアンデッド達を放置すると大変な事になるかもしれなかったんですよ?だからソウガさんも凄いんです!」

 

「そうか、ルナにそこまで言われると少し照れるな」

 

「だからソウガさんも楽しみましょう?なので、乾杯しませんか?ソウガさん」

 

「ああ」

 

俺達は微笑みながらジョッキを近づけ。

 

「「乾杯」」

 

二人で乾杯した。………その後別の冒険者が冒険者ギルドに来たのでルナは受付に戻っていった。俺は昨日の事を思い出していた。ベルディアを討伐した後、俺はウィズのもとに向かった。店に入ってウィズに無事だというのを伝えようとしたらいきなり抱き着いてきたので頭を撫でながら抱きしめた。これで俺はベルディアとの因縁に終止符を打つ事ができた。そう思っているとカズマが来たので俺はカズマのもとに向かった。皆がカズマに話しかけているとルナが来た。………どうした?

 

「実は、カズマさんのパーティーには特別報酬が出ています」

 

「え、何で俺達だけが?」

 

「おいおいMVP!お前らがいなきゃ、デュラハンなんて倒せなかったんだからな!」

 

その声にそうだそうだと騒ぎ出す。………良かったな。

 

「おっほん!サトウカズマさんのパーティーには三億エリスを与えます」

 

「「「「「さっ、三億!?」」」」」

 

三億だと!三億があれば今の赤字を解消しても御釣りがくる!そう思っているとカズマが集合をかけた。どうした?

 

「お前らに一つ言っておく事がある!大金が入った以上、俺はのんびりと安全に暮らしていくからな!」

 

「待ってくれ!強敵と戦えなくなるのはとても困るぞ!?」

 

「待ちません!あと、困りません!」

 

「私も困りますよ、私はカズマに付いて行き、魔王を倒して最強の魔法使いの称号を得るのです!」

 

「得ません!」

 

「またヒキニートに戻るつもり!」

 

「戻りません!ニートじゃないから!」

 

「三人とも落ち着け、カズマの意見も尊重してやれ。たまにクエストに連れてってもらう形でいいだろ?」

 

「ソウガだけだ俺の気持ちをわかってくれるのは、そんなソウガにお小遣いをやろう」

 

「えっ!あ、ありがとう」

 

「何、ソウガにお金をあげようとしているのよ!!このヒキニート!!」

 

俺達が話し合っていると、ルナがカズマに一枚の紙を渡した。………請求書?

 

「実は、アクアさんの召喚した大量の水により外壁などに大きな被害が出ていまして………。まあ、魔王軍幹部を倒した功績もあるし、全額弁償とは言わないから、一部だけでも払ってくれ………と………」

 

そう言ってルナは奥に戻ってしまった。………やれやれ。

 

「報酬三億………。そして、弁償金額が三億四千万か。………カズマ。明日は、金になる強敵相手のクエストに行こう」

 

「血で血を洗う魔導の旅は、始まったばかりですね」

 

「借金は等分でいいわよ………」

 

「俺も明日から頑張るから、元気出せカズマ」

 

やれやれ………。このパーティーは問題ばかりで飽きないな。明日から頑張ろうと思い、俺は酒を飲んだ。




次回から二巻の話になります。


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アクセルの街 機動要塞デストロイヤー編
この死神に強敵達を!


今回は魔王軍の幹部が出ます。


「てめえええええええええええええ!!」

 

「ご、ごめんなさあああああああい!」

 

魔王軍幹部ベルディアを討伐してから、季節は冬になった。俺は魔道具店内でこの駄店主に対して叫んでいた。

 

「前のベルディア討伐の報酬金と貯めた金を何でまたマナタイトに使いやがった!!てめぇは学習能力がねぇのか!!ああ!!」

 

「お願い待って!今度の品も品質に間違いないからどこかの魔法使」

 

「前もそんな事言ってたじゃねぇか!!このくそがあああああああああ!!」

 

「痛い!痛い!話の途中でアイアンクローしないで!割れちゃう!私の頭、割れちゃう!」

 

この駄店主に俺はアイアンクローをする。こいつ!!いい加減にしろ!!

 

「貯めた金、全部使いやがって!!どうやって冬を越すんだ!!」

 

「大丈夫!今日私頑張って商品を売って、ソウ君が楽できるようにするから心配しないで!」

 

「赤字続きのこの店の現状から、そんな根拠がどこから出るんだ?たく、このポテチが………。もういい、次こそ気を付けろよ」

 

「本当にごめんね………。ところでソウ君。最近働きづめでしょ?今日ぐらいゆっくりしてもいいんじゃない?」

 

「いや、今日も冒険者ギルドに向かおうと思う。でも、今日は早めに帰ってこようと思っている」

 

「そう、無理はしないでね。………あっ!そうだ」

 

そう言ってウィズは奥に消えていった。どうしたんだ?と思っているとウィズが小さい瓶を持ってきた。………確かこれは。

 

「これ、開けたら爆発するポーションだろ。こんな危ないもの持ってきてどうしたんだ?」

 

「少しでもソウ君の役に立ちたくて持ってきたの………。これをモンスター討伐の時に使って」

 

「いや、使いどころが分からないし………。」

 

「大丈夫!こんな小さい瓶だけど、開けると大きな屋敷を吹き飛ばすほどの威力だもん!モンスターが群れで来ても一撃だよ!」

 

おいこら、そんな危険物を持ってくるな………。まあいい。

 

「わかった、一応持っていくな。じゃあ、行ってくる」

 

「うん、行ってらっしゃい」

 

そう言って俺は、ポーションをコートに入れて冒険者ギルドに向かった。

 

◆◆◆

 

「お前の活躍がそんなに凄いって言うんなら、報酬も手柄も借金も、全部お前の物な!借金一人で返してこい!」

 

「わあああ待って!ごめんなさい、調子に乗ったのは謝るから見捨てないで!」

 

俺は途中でめぐみんとダクネスと会い、一緒に冒険者ギルドに入ると、カズマとアクアが喧嘩していた。………はぁ。俺達はカズマ達のもとに向かった。

 

「朝から何を騒いでいるのだ」

 

「本当にお前達は喧嘩ばっかりだな」

 

「何か、良い仕事はありましたか?」

 

俺達はそれぞれ聞くとカズマは喧嘩をやめて話してくる。

 

「いや、まだ仕事は探してないよ。この状況じゃ………」

 

そう言って俺達はギルド内を見回した。そこでは、まだ朝だというのに冒険者達は飲んだくれていた。先日の魔王の幹部を撃退した報酬が、戦いに参加した冒険者全員に支払われた。それにより、懐が潤った。冒険者達が、わざわざ危険な冬のモンスター狩りに行く理由がない。俺達は掲示板に向かい、クエスト選んでいた。

 

「報酬は良いのばかりだが、本気でロクなクエストが残ってないな………」

 

「カズマ!カズマ!」

 

「カズマです」

 

「これ何かどうだ?白狼の群れの討伐、報酬百万エリス。ケダモノ達に無茶苦茶にされる自分を想像しただけで………」

 

「却下」

 

「カズマ!カズマ!」

 

「カズマだよ」

 

「これ何かどうですか?一撃熊の討伐!ふふ、我が爆裂魔法とどちらが強力な一撃か今こそ思い知らせてやろう!」

 

「そんな物騒なモンスターに関わりたくない、首を撫でられただけで即死しそうだ」

 

こんなんじゃ、いつまで経っても決まらない。俺は廃街のヒュドラ討伐のクエストを取った。

 

「すまんカズマ。俺はこのヒュドラ討伐に行くから別行動を取っていいか?」

 

「ああ、すまないなソウガ。なかなか決まらなくて………」

 

「いや、大丈夫だ。カズマの判断が正しいからな………。じゃあ行ってくる」

 

俺はヒュドラ討伐のためにカズマ達と別れた。

 

◆◆◆

 

「意外とあっけなかったな………」

 

俺は廃街のヒュドラを討伐し、アクセルの街に戻るために廃街を歩いていた。………さて。

 

「そろそろ出てきたらどうだ!俺が廃街に入った所から後をつけていることはわかっている」

 

俺がそう言うと建物の陰からドレスを着た女が出て来た。うん?女か?何か違和感があるな………まあいい。

 

「気配を完全に消していたつもりだったんだけど、やるわね」

 

「気配は消していても、殺気を感じたからな。そんな事はどうでもいい、お前は何者だ?」

 

「ふふふ、アタシは貴方の………死神の敵よ」

 

死神って呼ぶって事はこいつは………。

 

「魔王軍か」

 

「そう!アタシは魔王軍の幹部にして強化モンスター開発局長のグロウキメラのシルビアよ!」

 

そう言って、魔王軍の幹部、グロウキメラのシルビアは名乗った。

 

「魔王軍の幹部の一人が、俺に何の用だ?」

 

「決まっているじゃない、あなたを殺しに来たのよ。アタシ、………いや、アタシ達は」

 

そう言った後、俺の周りが急に暗くなった。俺は上を見ると何やらデカい物が降って来た。俺は転移してそれを避けた。

 

「あれはスライムか………」

 

俺は後方十メートルに転移して、屋敷ぐらいの大きさの黒いスライムを見ていた。見ているとスライムがシルビアに喋りかけた。

 

「おいおいシルビア!ちゃんと引き付けておけよ!避けられちまったじゃねえか!俺の体に触れれば死神だって即死だったのによ!」

 

「貴方のデカい図体のせいでしょう。アタシのせいにしないで。ハンス」

 

「お前の使役しているモンスターか?」

 

「俺がシルビアに使役されているだと、ふざけた事を言うな。俺は魔王軍幹部のハンス!デッドリーポイズンスライムの変異種、ハンスだ!」

 

そう言って新たに現れた魔王軍の幹部、デッドリーポイズンスライムのハンスは名乗った。………やれやれ。

 

「魔王軍の幹部が二人がかりで俺を殺しにきたのか。俺ごときにご苦労なこったな」

 

「ふふ、謙遜しなくていいのよ。魔王様は貴方の存在を恐れているのよ」

 

魔王が俺を恐れている?くだらない。

 

「くだらない事を言うな。最強の存在の魔王が俺を恐れる?そんな事ありえない」

 

「いや、本当だ。お前は俺達が知らない魔法を使用して、数多くの幹部と兵士たちを狩っていった。その事に魔王様は恐れを抱いた」

 

「だからあなたを、最重要討伐対象として十億の懸賞金を懸けた。だけど、それでも討伐できなかった。だから魔法耐性が強いアタシ達が貴方を討伐するために来たの。理解できたかしら?」

 

なるほど神滅魔法を使う俺をここで始末しようって事か。そう思っているとシルビアが腕と足を変形させて俺に言った。

 

「この腕と足は貴方を殺すために用意した特注品よ。だからここで死になさい」

 

「悪いが俺は死ぬわけにはいかない」

 

俺ははっきりとそう言った、自分の命が大切だとは思っていない。だが………。

 

「なら命乞いでもするのか?死神」

 

「勘違いしているようだな。俺は別に自分の命何てどうでもいい。だが、俺のこの命は」

 

俺は目を瞑った。そこには小さな頃からずっと一緒にいる。大切な幼馴染の姿があった………。そして俺は目を開けて言った

 

「俺の大切な幼馴染の夢を守るために使うって決めている」

 

◆◆◆

 

「お前の幼馴染には悪いが………。死ね!」

 

そう言ってハンスは自分の体の一部をソウガに向かって投げつけてきた。ソウガはそれを難なく躱すがソウガの後ろにシルビアが先回りして鉤爪でソウガを切り裂こうとした。ソウガは何とかクローでその攻撃を防いだ。

 

「ッ!!」

 

「死神の名は伊達ではないわね。今の攻撃を防ぐなんて」

 

「その足は何だ。尋常じゃない速さだったぞ」

 

「アタシはグロウキメラ、様々な生物の合成を行い、それを体に組み込んだ。あなたを殺すためにね」

 

「なるほど、お前を殺すにはその足をどうにかするしかないって事か」

 

「やれるものならね」

 

そう言っているシルビアをソウガは魔力を込めた蹴りを叩き込む。シルビアは後方に吹っ飛び、態勢を崩した。ソウガは魔法陣を展開した。

 

「『ブレイドレイン』!」

 

そう唱えるとシルビアに無数の剣が降り注ぐが、ハンスがその剣を飲み込んだ。ハンスの体の中で剣が消えていった。

 

「げほ!、助かったわ、ハンス」

 

「油断しすぎだシルビア。相手はあの死神だぞ、接近戦もできるに決まっている」

 

「なるほど、あのスライムは厄介だな。俺の魔法を飲み込んで無効化し、さらに触れると即死すると。………めんどくさいな」

 

「そうだ!お前の攻撃手段を全て潰した!お前は俺達には絶対に勝てない!」

 

その言葉を聞いたソウガはため息交じりに言った。

 

「お前ら、俺をなめてるだろ」

 

「何!?」

 

「お前ら程度の相手なら昔は多くいた。それに俺の実力がこの程度ならとっくの昔に俺は倒されている」

 

「ハッタリはやめなさい!」

 

「ハッタリ?お前らには俺がハッタリを言っているように聞こえたのか?………もういい、この茶番を終わりにしよう」

 

ソウガがそう言うと、ハンスが体を震わせながら突進してきた。

 

「なめるなああああああああああああ!!」

 

突進してきたハンスにソウガは瓦礫を拾い上げハンスに投げつけた。

 

「そんな物効くかああああああああ!!」

 

その瓦礫を飲み込み、ソウガに突進を続けたが、ソウガは転移してその攻撃を避けた。そしてソウガはシルビアの近くに姿を現した。

 

「くそっ!!逃げるな死神!!」

 

「『ソウルチェンジ』」

 

そう唱えたソウガの隣に瓦礫が出現する。その瓦礫は先程、ハンスが飲み込んだ瓦礫だった。

 

「なっ!その瓦礫は俺がさっき飲み込んだ………ッ!!」

 

そう言った後、ハンスは自分の体を見た。そこには瓦礫の代わりに小さな瓶があった。

 

「な、何だ、この瓶は………。この瓶は何だ!死神!」

 

「その瓶は俺の事を心配して幼なじみが持たせてくれた物だ」

 

「そんな事は聞いていない!この瓶は何だと聞いているんだ!」

 

「開けたら爆発するポーションだ」

 

「何!」

 

ハンスが開けたら爆発するポーションだと知って驚いているが、ソウガはそのまま話を続けた。

 

「それは開けた瞬間に大きな屋敷をも吹き飛ばすほどの威力の爆発をするポーションだ。でも、屋敷を吹き飛ばすなんてイメージが悪くて全く売れなかった………。だから俺は見出しを変えようと思っている。見出しには魔王軍の幹部をも吹き飛ばすポーションって書けば売れると思わないか?」

 

そうソウガは言うと、ハンスは震え始めた。ハンスの体の中にある瓶が徐々に溶け始めていた。そしてソウガはハンスに微笑みながら言った。

 

「だから、実験に付き合ってくれないか?魔王軍の幹部さん」

 

「く、くそおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

その瞬間、ポーションが爆発してハンスの体が吹き飛んだ。廃街のあちこちにハンスの残骸が付いていた。

 

「ハ、ハンス!?」

 

「さて、スライムは吹き飛んだ。次はお前の番だ」

 

そう言ってソウガはシルビアを睨み付けた。シルビアは体を震わせながら突っ込んできた。

 

「し、死神いいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」

 

そう言ってソウガに光速で近づいて攻撃を仕掛けるが、ソウガに避けられてしまった。

 

「遅すぎる」

 

「アタシが遅いですって!」

 

「ああ」

 

「なめるなあああああああ!!」

 

そう言ってシルビアが連続でソウガに攻撃を仕掛けるが、攻撃が当たる気配が、全然無かった。

 

「何故だ!何故、当たらない!」

 

「いくらお前のスピードが速くても、お前の攻撃は全て見切った」

 

そう言ってソウガはシルビアに拳のラッシュの叩き込んだ。そしてシルビアは三メートル程吹っ飛んだが、すぐに態勢を立て直しソウガに迫っていた。ソウガは自分の腰に魔法陣を展開した。

 

「『ドラゴニックテイル』」

 

そう唱えると腰に尻尾が現れる。その尻尾でシルビアに攻撃を弾き、その後にシルビアに連続で尻尾による攻撃を行い、最後の尻尾による叩き付け攻撃をシルビアは受けると十メートル先にある廃屋まで吹っ飛んだ。

 

「………がッ!!」

 

「お前なんか片手で………いや、尻尾で十分だ」

 

その後、シルビアは気を失い、この戦いに決着がついた。

 

◆◆◆

 

「さて、しっかりと止めを刺さないとな」

 

そう言って、俺はシルビアのもとに向かおうとした、その時だった。

 

「させるか!」

 

「何!?」

 

ジャイアント・トード程の大きさとなったハンスが俺に突進してきた。俺は何とかその攻撃を避ける。そしてシルビアのもとに着いたハンスがシルビアを抱えて逃げようとしていた。

 

「生きていたのか」

 

「爆発する瞬間に意識を別の箇所に移したおかげで助かった。死神、今回は俺達の完敗だが次こそはお前を殺す!」

 

「逃がすと思っているのか?俺はそんなに甘くない」

 

「いいや、逃げさせてもらう!」

 

そう言うとハンスの体の一部が俺に襲い掛かって来た。

 

「ッ!!くそっ!!」

 

「じゃあな!死神!」

 

そう言ってハンスはシルビアを抱えて逃げていった。俺は転移を行い、スライムが固まっている事を確認して、魔法陣を展開して胸板の龍の口に魔力を溜めて炎を放出した。

 

「『ドラゴニックフレイムブレイカー』!」

 

高魔力の炎でスライムたちを一掃したが、もうハンスとシルビアの姿は無かった。………やれやれ。

 

「それにしても、あの幹部二人は見たことが無かったな。新しく幹部になった奴らか?………まあいい、帰るか」

 

そう思い、俺はアクセルの街に帰ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

合流したカズマ達に聞いたのだが、カズマが冬将軍に首をはねられて一度死んでしまったらしい。………おいおい。




次回はアニメでカットされてしまった話をやろうと思います。


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この死神と冒険者に新たなパーティーを!

アニメでカットされてしまった話、二つ目です。


魔王軍の幹部、シルビアとハンスに襲撃された数日後の事。

 

「おい、もう一度言ってみろ」

 

カズマが怒りを抑えながら、静まり返るギルド内で男に問い返した。先日、冬将軍によって首を切り落とされてしまったカズマは、数日程休養をとっていた。そして今日、まだ激しい運動を禁止されているカズマは、荷物持ち等の仕事を探していた所でこの男に絡まれた。

 

「何度だって言ってやるよ。荷物持ちの仕事だと?上級職が揃ったパーティーにいながら、もう少しマシな仕事に挑戦できないのかよ?大方お前が足を引っ張っているんだろ?最弱職さんよ?」

 

と言って、同じテーブルにいた他の仲間と笑い合う戦士風の男。………こいつ、前に俺に半殺しにされた事忘れているな。

 

「おいおい、何か言い返せよ最弱職。ったく、いい女を三人も引き連れて、しかも全員上級職ときてやがる。おまけに最強のアークウィザードまでいやがる。さぞかし毎日、こいつらに任せて自分はのほほんとしてるんだろうなぁ?」

 

それを受け、ギルド内に爆笑が巻き起こった。その言葉に顔をしかめ、注意しようとする奴もいた。我慢を続けるカズマに俺達は止めに入った。

 

「カズマ、相手にしてはいけません。私なら、何を言われても気にしませんよ」

 

「そうだカズマ。酔っ払いの言う事など捨て置けばいい」

 

「そうよ。あの男、私達を引き連れているカズマに妬いてんのよ。私は全く気にしないからほっときなさいな」

 

「カズマ、冷静になれ。こんなやつらなんかに構う必要なんてない。ダストもいい加減にしろ。さすがの俺も怒るぞ」

 

そう目の前の男、ダストに睨み付けながら言うと、ダストは一瞬ビクッとし、俺にビビりながら話す。

 

「お、俺はソウガには問題はないんだ。問題は上級職におんぶに抱っこで楽しんでいる最弱職だ。苦労知らずで羨ましいぜ!俺と変わってくれよ兄ちゃんよ?」

 

「大喜びで変わってやるよおおおおおおおおお!!」

 

「………え?」

 

そうダストが、ジョッキを片手にマヌケな声を出す。………はぁ。

 

「代わってやるよって言ったんだ!!おいお前、さっきから黙って聞いてりゃ舐めた事ばっか抜かしやがって!!ああそうだ、確かに俺は最弱職だ!!それは認める。………だがなあ、お前!!その後なんつった!!」

 

「そ、その後?その、いい女三人も引き連れて」

 

「いい女!!おいお前、その顔にくっついてるのは目玉じゃなくてビー玉かなんかなのか?どこにいい女がいるんだよ!!教えてくれよ!!いい女?どこにいるってんだよコラッ!てめーこの俺が羨ましいって言ったな!!ああ!!言ったなおい!!」

 

「カズマ落ち着け、アクア達が困っているから落ち着け」

 

そう俺が言って何とかカズマは落ち着きを取り戻した。その後ダストがカズマに胸倉を掴まれたまま話しかけてくる。

 

「そ、その、ご、ごめん………。俺も酔ってた勢いで言い過ぎた………。で、でもあれだ!お前さんは確かに恵まれている境遇なんだよ!代わってくれるって言ったな?なら一日だけ代わってくれよ冒険者さんよ?おい、お前らもいいか!」

 

そう言ってダストは、テーブルの仲間たちに確認を取る。

 

「俺は別にいいけどよお………。今日のクエストはゴブリン狩りだし」

 

「あたしもいいよ?でもダスト。居心地が良いからもうこっちのパーティーに帰ってこないとか言い出さないでよ?」

 

「俺も構わんぞ。ひよっ子一人増えたってゴブリンぐらいどうにでもなる。その代り良い土産話を期待してるぞ?」

 

そう言ってカズマとダストが一日だけパーティーを代える話が纏まった。まあ俺は、ダストがいようがいつも通りクエストをこなすだけだと思っていると、カズマが言ってきた。

 

「だけど、条件がある。ソウガもこっちのパーティーに入れてくれ」

 

「ソウガもだと?」

 

いきなりどうしたんだ?と思っているとカズマが話を続けた。

 

「そっちは上級職ばっかのパーティーなんだから、一人ぐらい抜けても大丈夫だろ?ソウガが抜けても三人もいるし、女だけだからハーレム状態を楽しめるぞ」

 

「それもそうだな………。一人ぐらい抜けても三人いるんだし問題ないか。それぐらいなら大丈夫だ」

 

「なら決定だな」

 

そう言うとカズマは悪い顔をする。………こ、こいつ、大人気ねえ!

 

◆◆◆

 

俺達はゴブリンが住み着いた山道に向かう途中で装甲鎧を着込んだ男が言ってきた。

 

「俺はテイラー。クルセイダーだ。一応、このパーティーのリーダーだ。リーダーの言う事はちゃんと聞いてもらうぞ」

 

続いて、弓を背負った軽薄そうな男が言ってきた。

 

「俺はキース。アーチャーだ。狙撃には自信がある。ま、よろしく頼むぜ?」

 

最後に青いマントを羽織り、まだどこか幼さを残した女の子が言ってきた。

 

「あたしはリーン。見ての通りのウィザードよ。魔法は中級魔法まで使えるわ。まぁソウガさんほどじゃないけど。あたしが守ってあげるわ、駆け出し君!」

 

ダストのパーティーが全員名乗ったので俺達も名乗る事にした。

 

「まぁ、分かっていると思うが、ソウガだ。アークウィザードを生業としている」

 

「もちろん知っていますよ!最強のアークウィザードで、実力は魔王軍の幹部を圧倒するほどであたし達、魔法使いの憧れの存在!そんな人と一緒にクエストを受けれるなんて光栄です!」

 

「そ、そうか。よろしくな」

 

そう言って俺は興奮しているリーンと握手する。最後はカズマだな。

 

「俺はカズマ。クラスは冒険者。一応前のパーティーではリーダーをやってた」

 

「「「えっ!?」」」

 

カズマがそう言うと三人が驚いていた。

 

「お前がリーダーやってたのか?あの上級職ばかりのパーティーで?冒険者が!?」

 

「そうだよ」

 

「じゃ、じゃあソウガさんもカズマの指示に従ってたの!?」

 

「ああ、カズマは的確なアドバイスをくれるからな。動きやすくて助かっている」

 

「ソウガが良い仕事をしてくれているからだ。ソウガがいなかったらあんなスムーズにはいかないさ」

 

「そうか」

 

そう言って俺達は笑い合うが、まだ三人は信じていなかった。

 

「もしかして、何か弱みでも握っているとか………」

 

「「それはない」」

 

そう俺達が言うと、カズマが何かに気付いたようだった。

 

「どうした?カズマ」

 

「何か山道をこっちに向かって来てるぞ。敵感知に引っかかった。でも一体だけだな」

 

「カズマ、お前敵感知なんてスキル持ってたんだな」

 

「一体?ならゴブリンじゃないな。どうする?」

 

「ここじゃ、隠れてもすぐ見つかるわよ。迎え撃った方が………」

 

「いや、相手がわからない場合はやめておいた方がいい。カズマ、潜伏スキルを使って身を隠そう」

 

「わかった」

 

「カズマ、潜伏スキルも持ってたんだな………」

 

そう言って俺達は茂みに隠れると全身が黒い体毛で覆われていて、大きな二本の牙を生やした猫科の猛獣が現れた。そいつはしばらく山道の匂いを嗅いだ後、街へと向かう道へと消えていった。

 

「………ぷはーっ!ここここ、怖かったあっ!」

 

「な、何アレ………」

 

「ななな何で、こんな所に初心者殺しが………」

 

「なぁ………もしかしてあいつ、ものすごくヤバい?」

 

「初心者殺しは比較的弱いモンスターの周りをうろついて、弱い冒険者を狩るモンスターだ。今のお前達では勝てない。次、初心者殺しが出たら俺が始末する」

 

「た、頼むぜ。ソウガ………」

 

そして、俺達はゴブリンの生息地に向かったが、テイラー達がカズマの実力を認めだしたのかカズマに預けていた荷物を取っていた。

 

◆◆◆

 

初心者殺しが引き返してくる気配も無く、俺達が歩いていると山道を下った先の角を曲がった先にたくさんの反応があるとカズマが言った。ゴブリンは通常十匹ぐらいだが、カズマが言うには数え切れない程の数がいるらしい。俺は警戒するように言ったんだが、キースとテイラーが一気に駆け下りていき、二人はゴブリンがいる角の先を見て言った。

 

「「ちょっ!多っ!」」

 

叫ぶ二人に続き、俺達も角を曲がると三十やそこらはくだらないゴブリンの群れがいた。

 

「言ったじゃん!だから言ったじゃん!あたし、こっそり数を数えた方がいいって言ったじゃん!」

 

「ゴブリンなんて普通は多くても十匹ぐらいだろ!ちくしょう、このまま逃げたって初心者殺しと出くわして、挟み撃ちになる可能性が高い!やるぞ!」

 

ゴブリン達が奇声を上げて向かってきた、俺たちは坂の上に陣取っていたが、ゴブリンが放った矢がテイラーに当たった。

 

「痛えっ!ちくしょう、矢を食らった!弓構えているゴブリンがいるぞ!リーン、風の防御魔法を!」

 

リーンが詠唱をしているが、間に合わない。俺は魔法陣を展開して。

 

「『ブリザードランス』!」

 

空気中の水分を凍らして氷の槍を作り、発射する。飛んできている矢を粉々に粉砕していった。俺が逃した矢はカズマが防いでいた。そんな中リーンの魔法が完成した。

 

「『ウインドカーテン』!」

 

それと同時に俺達の周りに渦巻く風が発生し、矢を防いでいた。そんな中、カズマがクリエイト・ウォーターで、広範囲に水を生成した後、フリーズで凍らせた。ゴブリンたちは簡単に氷に足を取られ、あちこちで盛大に転んでいる。それを俺は氷の槍で貫いていった。

 

「でっ、でかしたカズマ!俺らもやるぞ!ソウガにばかり倒させるな!この状況ならどれだけ数がいたって関係ないぞ、ゴブリンなんてやっちまえ!」

 

「うひゃひゃひゃ、何だこれ、楽勝じゃねーか!蜂の巣にしてやるよ!」

 

「いくよ!強力な魔法、ど真ん中に撃ち込むよ!」

 

やたらと高いテンションで俺達はゴブリンの群れを討伐していった。

 

◆◆◆

 

ゴブリンの群れを討伐した帰り道。

 

「くっくっ、何だよあれ!あんな魔法の使い方、聞いたことねえよ!」

 

「あんな楽なゴブリン討伐、初めてだぜ」

 

「本当!初級魔法なんて取るだけ無駄って教わったのに!」

 

「おい、戦闘終わったんだから荷物よこせよ。最弱職の冒険者は荷物持ちが基本だろ?」

 

「ちょっ、悪かったよカズマ、これからは冒険者だからってバカにしねえ!」

 

「ご、ごめんねカズマ!てか、何で最弱職が一番活躍してるのさ!おかしいよ!」

 

「おいカズマ、MVPなんだから、お前の荷物も持ってやるよ!」

 

そうテイラー達がカズマを称賛していた。………良かったな。そう思っているとテイラーが腕を押さえて顔をしかめていた。俺はテイラーの近くに行った。

 

「大丈夫か?今、回復魔法を使って怪我を治すからな」

 

「え?」

 

そう言って俺は魔法陣を展開した。

 

「『パーフェクトヒーリング』」

 

テイラーの怪我をしている箇所を光で包んで、治癒を行った。怪我はすぐになくなり完治した。その光景を見ていた、リーンとキースが何故かゴクリと喉を鳴らした。………どうした?

 

「ソ、ソウガさん、回復魔法まで使えちゃうんだ………」

 

「回復魔法………。つ、ついに俺達のパーティーにも回復魔法を使えるメンバーが………」

 

「おい止めろ。カズマとソウガには、ちゃんと帰る場所があるんだぞ、最弱職のカズマがリーダーをやっているのとソウガが最強のアークウィザードと言われているのかが、良くわかったよ」

 

テイラーは、そんな事を言いながら俺達に笑いかけた。俺達は山を降り、街へと広がる草原地帯に足を踏み入れた時、キースが凄い勢いで向かってきていると言った。俺達は確認してみるとそいつは初心者殺しだった。俺は四人に逃げろと伝え、迎え撃つことにしたが、何故かカズマは残っていた。

 

「『クリエイト・アース』」

 

そう言ってカズマの手にサラサラの土が形成された。そして、近くに来た初心者殺しに向かって………。

 

「『ウインドブレス』!」

 

そう言って初心者殺しの目に大量の砂が入り地面にうずくまる。俺はクローを装備し、初心者殺しを切り裂いた。………本当に魔法を使うのが上手いな。俺達はテイラー達のもとに戻ったがテイラー達が何故か笑いだしてしまった。

 

「おい、何だよありゃ、何やったんだよっ!ぶははははっ!」

 

「うひゃひゃひゃっ!腹いてえっ!」

 

「生きてるよっ!初心者殺しに出会って、あたし達生きてるよっ!ソウガさんは強い事知ってたけど。カズマ、一体どんな知力してんのさ!冒険者カードちょっと見せてよ!」

 

そう言われ、カズマは冒険者カードを見せた。

 

「あれ………知力も他のステータスも普通ってこの人幸運、超高いっ!」

 

「うおっ、なんじゃこりゃ!」

 

「拝んどけ拝んどけ!ご利益があるかもしれねーぞ」

 

「やめろよお前ら、そんな事よりコーヒーでも飲むか?」

 

カズマに向かって拝み始めたテイラー達の光景を見て、俺は笑みをこぼした。

 

◆◆◆

 

「ぐずっ………。ひっ、ひぐう………。ガ、ガズマあああっ………」

 

ギルドに戻るとアクアが白目をむいて気絶をしたダクネスを背負って泣いていた。………どうした?まぁ、大体わかるが………。そう思っていると、ダストが半泣きの状態でめぐみんを背負っていた。

 

「………えっと何これ。いや、聞かなくても、なんとなく分かるからいい」

 

「おい、聞いてくれよっ!この子が我が力を見せてやろうとか言って何もない草原で、いきなり爆裂魔法をぶっぱなして、そしたら、その轟音で何と初心者殺しがやって来て!この子はぶっ倒れて使いものにならんわ、クルセイダーは嬉々として突っ込んでいくわで、命からがら逃げて来たんだがもう死ぬかと………」

 

「これから、新しいパーティーで頑張ってくれ」

 

「俺が悪かったから!今朝の事は謝るから許してください!」

 

そして、本気で泣き出すダスト。これに懲りたら、人を馬鹿にしたり変な噂流したりするなよ。




指摘等していただきありがとうございます。


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この迷宮の主に女神を!

アニメでカットされてしまった話、三つ目です。


「明日はダンジョンに行きます」

 

「嫌です」

 

「行きます」

 

拒否するめぐみんにカズマが即答した。めぐみんは逃げようとしたがカズマに捕まった。カズマが首を切り落とされてから一週間が経ち、カズマが提案してきたがめぐみんが嫌がっていた。

 

「嫌です嫌です、だってダンジョンなんて私の存在価値皆無じゃないですか!ダンジョンが崩れるから爆裂魔法なんて使えないし、私もう本当に只の一般人!」

 

「そんな事はお前を仲間にする時に俺が言っただろうが!そん時お前、荷物持ちでも何でもするから捨てないでって言ったんだぞ!」

 

「はぁ………。わかりました。でも、本当に荷物持ちぐらいしかできませんよ?」

 

「まあ安心しろよ、ついて来るのはダンジョンの入り口までで良い。ダンジョンへの道中、危険なモンスターと遭遇したらお前の魔法で蹴散らしてくれ」

 

「へっ?入り口まででいいんですか?」

 

めぐみんが不思議そうな表情を浮かべてる時、テーブルの上に突っ伏しているアクアが言った。

 

「何でいきなりダンジョンへ行くなんて言い出したの?ダンジョン行くなら、パーティー内に盗賊は必須よ?最近ギルドで見かけないんだけど、クリスは?」

 

「クリスは急に忙しくなったって言ってたな。昔世話になった先輩が押しつけてきた難題の処理に追われてんだと。だが、ダンジョン探索に必要な罠発見や罠解除のスキルは、すでにクリスに教えてもらって習得済みだ。それにダンジョン内は一年中、生息するモンスターが変わる事がないそうだから、手頃なダンジョンに潜り、あわよくば一獲千金を狙ってみようかと思う」

 

確かにカズマは雪精とゴブリン退治でレベルが三つ上がっているが、ダンジョンに潜るのは………そうだ。

 

「カズマ、俺も一緒にダンジョンに潜っていいか?」

 

「えっ!ソウガも?いや、今回は俺一人でダンジョンに潜るつもりだし………」

 

「いや、実は………」

 

そう言って、俺は魔法陣を展開して。

 

「『マジック・クリエイト』」

 

そう俺が言うと、瞬時に漆黒の全身鎧を纏い、背中に赤い大剣が装備される。それを見ていたカズマ達は驚いていた。

 

「久しぶりに剣での近接戦闘をしようと思っていた所なんだ」

 

「えっ………。何それ」

 

「魔法で作った鎧と剣だ。しかし、この状態だと魔法がほとんど使えないから何処か良い場所を探していたんだ」

 

「………お前、アークウィザードだろ。ソードマスターとクルセイダーの戦い方までできたら、初めから戦力外のダクネスがもっといらなくなるだろ」

 

「!?」

 

そう言われても………。ダクネスを見ると目を潤ませながら頬を染めていた。きっと興奮半分、傷つき半分なのだろう。まぁ………放置しよう。

 

「それで、どうだ?俺もついて行っていいか?」

 

「いや、やっぱり俺一人で行く。すまん」

 

「そうか………。気にするな」

 

そう言われてしまったので俺は魔法を解除する。

 

「確認のために言っとくが、ダンジョンに潜るのは俺一人だ。皆には、ダンジョンに行くまでの道中の警護をして欲しいんだよ」

 

◆◆◆

 

翌日、俺達は出発した。俺達が向かっているダンジョンの名は、キールのダンジョンと呼ばれている。

 

その昔、キールという名の稀代の天才と呼ばれたアークウィザードが、一人の貴族の令嬢に恋をしました。たまたま街の散歩をしていた令嬢に、それまではただ魔法にのみ打ち込み、色恋になど全く興味を示さなかった男は、一目見ただけで恋に落ちた。だが、勿論そんな恋は実るはずはずがない。それをよく理解していた男は、その芽生えた恋心を忘れるかの様に、ひたすら魔法の修行と研究に没頭した。月日は流れ、男はいつしかこの国最高のアークウィザードと呼ばれていた。持てる魔術を惜しみなく使い、国のために貢献した。彼の功績にどんなものでも望みを一つ、叶えようと王が言った。男は言った。この世にたった一つ。どうしても叶わなかった望みがあります。

 

有名なおとぎ話の一つだ。そう思っているとダンジョンに着いたので、カズマが俺達の方へ振り向いた。

 

「よし。それじゃあ、ここから先は俺一人で行ってくるから、お前等はそこの避難所で待っててくれよ」

 

「本当に行くのか?一人でダンジョンに潜るなんて聞いたことがないぞ」

 

「やっぱり考え直しませんか?」

 

「いや、今日は俺一人の方が都合がいいんだ。キースに教えてもらったスキル、千里眼があれば暗視が可能になる。これと敵感知と潜伏を使えば戦闘をしなくても、壁にはりついていればやり過ごすことができる。………と、思う」

 

思うって………。心配だな。

 

「じゃあ行ってくるよ。寒いしモンスターに遭遇するかもしれないから、のんびり待っていてくれ」

 

そう言ってカズマがダンジョンに入っていった。何故かアクアもついて行ったが、気にしないで俺達、三人は避難所に入った。

 

「しかし、待つだけでは暇ですね」

 

「だったら、これでもするか?」

 

そう言って俺は自分の荷物からゲーム盤を取り出す。

 

「ゲーム盤か?」

 

「ああ、暇潰しに持って来たんだ」

 

「いいでしょう!私が相手になります!そろそろどっちが優秀なアークウィザードか決めようじゃないですか!」

 

「ゲーム盤でアークウィザードの優劣が決まるのか?………まぁいいけど」

 

そう言って俺はゲーム盤の上に駒を並べた。

 

「くくく、さぁ、始めましょう!そして今日、ソウガを倒して、私が最強のアークウィザードの称号を得るのです!」

 

「ゲーム盤で最強のアークウィザードが決まるのか?じゃあ、始めるぞ」

 

そう言って俺とめぐみんはゲームを始めた。

 

◆◆◆

 

「この暗く冷たいダンジョンで、さ迷い続ける魂達よ。さあ、安らかに眠りなさい。『ターンアンデッド』!」

 

そう言ってアクアは迷えるゴースト達を光を放って浄化していた。というか、俺はダンジョンを舐めていた。確かに暗視と潜伏のコンボは非常に使える。だが、暗く冷たいダンジョンで長く苦しんだアンデッドには意味がなかったみたいだ。

 

「ご苦労さん。いや助かったよ、俺一人で来てたら危ない所だった」

 

「あら?私の評価がようやく真っ当になってきた?………それにしても、お宝はどこかしら。まあ荒らされ尽くしたダンジョンだし、あんまり期待はしてないけどね」

 

そう言って俺達は前方にある部屋に敵や罠がない事を確認すると。音を立てない様に部屋の中をみたがろくな物が無いようだから別の所に行こうとしたがアクアが何かを見つけた。部屋の隅に行くとそこには………。

 

「ちょっと宝よ宝!やったわカズマ、今回のダンジョン探索は大当たりね!」

 

「おいおい待て待て。お前、こんな何度も探索されたダンジョンに、唐突に宝箱が置いてあるっておかしいとは思わないのか?」

 

「あー………。それじゃあれは、ダンジョンもどきね」

 

そう言うとアクアが空瓶を宝箱の近くに放った。瓶が床に触れると床や壁が瓶を丸呑みにした。

 

「き、気持ち悪っ!何だこれ!」

 

「名前の通りのモンスターよ。体の一部を宝箱やお金に擬態して、上に乗った生き物を捕食するの」

 

そう言って俺達は離れたが、またアンデッドが襲い掛かってきた。アクアが浄化するが、ダンジョンってこんなにアンデッドが湧くのか?アークプリーストがいないと無理だろこんなの………。俺はアクアにそろそろ帰ろうと提案した時だった………。

 

「そこに、プリーストがいるのか?」

 

闇の中、ランプを片手に干乾びた皮が張りついた骸骨が現れた。

 

◆◆◆

 

「待った!その手は待ってください!ソウガ!」

 

「めぐみん………。もう何回目だ?もうさすがに待てないぞ?」

 

「お願いです!これで最後にしますからお願いします!」

 

「はぁ………。わかった」

 

そう言って、まためぐみんは考え始めた。俺はダンジョンに潜っていった。カズマとアクアを心配していた。………大丈夫だといいんだがな。

 

「めぐみん、もう諦めろ。これは詰んでるぞ」

 

「まだです!まだ起死回生の手がきっとあるはずです!」

 

ダンジョンにはアンデッドモンスターがいるから潜伏スキルは効果が薄い、そこらへんはアクアがいるから大丈夫だろう。やっぱりついて行けばよかったかな。

 

「見つけました!起死回生の手を!ここでウィザードを使い、クルセイダーをテレポート!」

 

「はい、終わりな」

 

「あああああああああああああああああああ!!」

 

そう言ってゲームは俺の勝利で終わった。………さて。

 

「ちょっとダンジョンの様子を魔法を使って見てみるな」

 

「そんな事ができるのか?」

 

「ああ、じゃあ始めるな?」

 

そう言って、俺は魔法陣を展開した。

 

「『ダンジョンサーチ』、『レベルサーチ』」

 

そして魔法を発動した。カズマとアクアは結構潜った様だった。近くにかなり魔力が高いのがいるが、戦闘はなさそうだが、心配になった俺はダクネスとめぐみんに言った。

 

「カズマ達の近くにかなり魔力が高いのがいる。戦闘はしてない様だが、心配だから見に行っていいか?」

 

「そうなのか?ああ、いいぞ」

 

「ところで、ソウガは色々と便利な魔法を覚えていますね。ダンジョンの構造の把握なんて普通できませんよ?」

 

そうめぐみんが言ってきた。まぁ、神滅魔法には便利な魔法が多いが………。そう考えているとめぐみんが聞いてきた。

 

「ところでソウガ、神滅魔法に爆裂魔法はありますか?」

 

「一応、あるけど」

 

「教えてください」

 

「嫌です」

 

そうはっきりと断った。そして俺は魔法陣を展開して。

 

「『ナイトヴィジョン』、『マキシマイズ・テレポーテーション』」

 

暗視の魔法をかけて、俺はカズマ達のもとへ転移した。

 

◆◆◆

 

「そいつは、リッチーか?」

 

「うおっ!ソ、ソウガ!驚かすなよ!」

 

転移をした俺が見たのは、ベッドの隣に置かれた椅子に腰かけているリッチーだった。

 

「また、お客さんかな?初めまして。私はキール。このダンジョンを造り、貴族の令嬢を攫って行った、悪い魔法使いさ」

 

「キールって………。あの話の」

 

「あれ?私の事知っているのかい?………まあ良くも悪くも有名にはなってるだろうね」

 

このリッチーはキールと名乗った。まさか、あのおとぎ話のアークウィザードがリッチーになっているなんてなと思っているとカズマが話してきた。

 

「こいつは一目ぼれした令嬢が虐げられている所をいらないなら俺にくれって言って攫っていったんだ。で、その攫った令嬢にプロポーズしたら二つ返事でオッケーを貰って、愛の逃避行をしながら王国軍とドンパチやっていたんだと」

 

なるほど、多分王国軍から令嬢を守るためにリッチーになったんだろうと思っているとキールが話しかけてきた。

 

「で、だ。そこの女性に、ちょっと頼みがあってね」

 

「頼み?」

 

キールはコクリと頷き。

 

「私を浄化してくれないか。彼女は、それができる程の力を持ったプリーストだろう?」

 

浄化してほしいとキールが言った。アクアが魔法の詠唱をしている間に俺はキールに話しかけた。

 

「いいのか?」

 

「今はもう、現世に留まる理由もないしね。………お嬢様は不自由な逃亡生活中、一度も文句を言わず絶えず笑ってたよ。そんな彼女を………私は幸せにできたかな」

 

そう寂しげにキールが言った。………そんなの決まっている。

 

「幸せだったに決まっている」

 

「えっ?」

 

「たとえ王国軍とやり合う事になっても自分を愛してくれて自分を守るために人をやめてでも一緒にいてくれた人が愛情を持って接してくれていたんだ。………そんなの幸せだったに決まっている」

 

俺は皆を救うために人をやめ、殺戮者になった俺の心を救ってくれた。大切な幼馴染の姿を重ねながらそう言った。

 

「そうか………。ありがとう」

 

キールが礼を言うと、アクアの詠唱が終わり、アクアが優しげな表情でキールに向けて笑いかけた。

 

「神の理を捨て、自らリッチーと成ったアークウィザード、キール。水の女神アクアの名において、あなたの罪を許します。………目が覚めると、目の前にはエリスという不自然に胸のふくらんだ女神がいるでしょう。たとえ年が離れていても、それが男女の仲でなく、どんな形でも良いと言うのなら………。彼女に頼みなさい。再びお嬢様に会いたいと。彼女はきっと、その望みを叶えてくれるわ」

 

俺はそのアクアの神々しさに見とれてしまっていた。その言葉の後、キールは光に包まれた部屋の中、深々とアクアに頭を下げた。

 

「『セイクリッド・ターンアンデッド』!」

 

光が消えた時には、キールと何故かお嬢様の骨が消えて無くなっていた。そしてカズマが俺達に静かに告げた。

 

「………帰るか」

 

◆◆◆

 

「………そんな事があったんだ」

 

俺は居間の暖炉の前で一緒にくつろいでいるウィズにダンジョンでの経緯を説明した。帰る途中アクアがアンデッドに集られる体質だと知り、カズマが俺の手を取り潜伏してアクアを泣かせたりしていたがどうでもいい事なので話さなかった。

 

「リッチーになってでも令嬢を守るなんてな。お前にそっくりだ」

 

「そ、そんな事ないよ」

 

「そんな事あるさ、ウィズは皆を助けるためにリッチーになり、俺の心も救ってくれた。凄い事だと俺は思う」

 

そう俺はウィズに伝えた。ウィズは照れていたが、俺はキールと令嬢の事を思い出しながら話した。

 

「キールと令嬢は会う事ができたんだろうか」

 

「大丈夫。きっと会えてるよ」

 

そう言ってウィズは俺の体に寄り添う。俺は外を見て、キールと令嬢が会えている事を心から願った。




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この冒険者に新たなスキルを!

今回はウィズが多く出ます。


俺はアクアを引き連れ、ソウガに案内してもらいながらある所へ向かっていた。ダクネスには、美味しいクエストが出た際にはすぐ確保して貰えるよう、ギルドで待機してもらっている。めぐみんは、朝からどこかへ出掛けて行った。あいつは、たまにちょこちょこいなくなる時があるが何をしているんだろうか。俺達のパーティーはバランスが悪い。というかソウガが優秀すぎて、ソウガがいないと何もできない状態になってしまっている。もう少しこう、メインの武器になるスキルが欲しいところだ。そう思っていると目的地のとある店の前に着いた。

 

「おし、着いたぞ。いいかアクア。今の内に言っとくが、絶対に暴れるなよ。分かったか?」

 

「カズマって私を何だと思ってるの?私、チンピラや無法者じゃないのよ?女神よ?神様なのよ?」

 

そう言っているアクアをよそにソウガが心配している様だった。

 

「なぁ………カズマ。本当に大丈夫か?アクアを連れてきて」

 

「心配するなソウガ。もし、こいつが何かしようとしたら俺が何とかするからさ」

 

「それならいいが………」

 

俺達は文句をたれているアクアを引き連れ、店のドアを開け中に入った。

 

「いらっしゃ………、ああっ!?」

 

「あああっ!?出たわねこのクソアンデッド!あんた、こんな所で店なんて出してたの!?私が馬小屋で寝泊まりしてるってのに、あんたはお店の経営者ってわけ!?リッチーのくせに生意気よ!こんな店、神の名の下に燃やしていだいっ!?」

 

店に入るなり、いきなり俺の注意を忘れて暴れるアクア、ソウガがその光景を見て、ため息を吐いていた。俺はアクアの頭を、ダガーの柄で軽く殴る。そのまま後頭部を押さえてうずくまるアクアをよそに、俺は怯えているソウガの幼馴染の店主に挨拶した。

 

「ようウィズ、久しぶり」

 

◆◆◆

 

「………ふん。お茶も出ないのかしら?このお店は」

 

「あっ、す、すいませんっ!!今すぐ持ってきます!」

 

「ここは魔道具店だ。お茶なんか出るわけないだろ。ウィズも出そうとするな」

 

イビリをするアクアの言う事を、素直に聞くウィズをソウガが止めていた。魔道具店なんて初めてな俺は何気なく小さなポーションの瓶を手に取った。

 

「あっ、それは強い衝撃を与えると爆発しますから気をつけてくださいね」

 

「げっ、マジか」

 

俺は慌てて瓶を戻して、隣の瓶を取った。

 

「あっ、それはフタを開けると爆発するので………」

 

「じゃあ、これは?」

 

「水に触れると爆発します」

 

「こ、これは?」

 

「温めると爆発を………」

 

「この店には爆薬しか置いてねーのかよ!」

 

「ちちち、違いますよ!そこの棚は爆発シリーズが並んでいるだけですよ!」

 

「ちなみに言うと、その隣は毒物シリーズだから気をつけろよ」

 

「危険物しか置いてねーのか!この店は!」

 

「失敬な、ちゃんとした物も置いてある」

 

おっと、そうじゃない。勝手に自分でお茶を淹れてすすっているアクアは置いておき、俺は本題に入る事に。

 

「ウィズ。ポイントに余裕ができたからさ。スキルを何か教えてくれないか?」

 

「ぶっ!」

 

俺の言葉にアクアがお茶を吹き出し、俺にモロにかかった。汚ねえ!

 

「ちょっと、何考えてんのよカズマっ!女神の従者がリッチーのスキルを覚える事を見過ごす訳にはいかないんですけどっ!」

 

「誰が従者だ!誰が!」

 

「いい?リッチーってのはね、薄暗くてジメジメした所が大好きな、いってみればなめくじの親戚みたいな連中なの」

 

「ひ、酷いっ!」

 

「人の幼馴染をなめくじと一緒にするな」

 

「いや、リッチーのスキルなんて普通は覚えられないだろ?そんなスキルを覚えられたら結構な戦力になるんじゃないかと思ってな?」

 

これ以上ソウガだけに任せっぱなしにはさせられないからな。そう考えているとウィズが不安そうな顔で恐る恐る訪ねて来た。

 

「あの………、さっき女神の従者って………」

 

「そういえば、アクアはたまに自分の事を女神って言うな。どういう事なんだ?」

 

あ、ヤバイ。

 

「まあね、私はアクア。そう、アクシズ教団で崇められている女神、アクアよ。控えなさいリッチー!」

 

「………そうか」

 

「ひいっ!!」

 

ソウガは信じていない感じだったが、ウィズがこれ以上にないぐらい怯えた顔でソウガの後ろに隠れた。

 

「おいウィズ、そんなに怯えなくても………」

 

「い、いえその………。アクシズ教団の人は頭のおかしい人が多く、関わり合いにならない方がいいというのが世間の常識なので、アクシズ教団の元締めの女神様と聞いて………」

 

「何ですってぇっ!!」

 

「ごごごご、ごめんなさい!」

 

「………はぁ」

 

「………は、話が進まねぇ………」

 

アクアを引き離した後、アクアはポーションを手に取り、匂いを嗅いだりしていた。

 

「そういえば、ソウ君から聞いたのですが、あのベルディアさんを倒されたそうで。あの方は幹部の中でも剣の腕に関しては相当なものだったはずなのですが、凄いですねえ」

 

「なんかベルディアを知ってたみたいな口ぶりだな」

 

「ああ、私、魔王軍の八人の幹部の中の一人ですから」

 

「ウィズ………。冒険者にその事、話していいのか?」

 

「あっ………」

 

「確保ー!!」

 

アクアが、ウィズに向かって襲い掛かった。その光景を見てソウガがため息を吐いていた。

 

「待って!待ってください!アクア様、お願いします、話を聞いてください!」

 

「やったわねカズマ!これで借金なんてチャラよチャラ!それどころかお釣りがくるわ!」

 

「おいアクア、一応事情は聞いてやれよ。………えっと流石に冒険者な手前、見逃すって訳にも………」

 

「違うんです!魔王城を守る結界の維持の為に、頼まれたんです!勿論今まで人に危害を加えた事は無いですし、私を倒したところで、そもそも賞金も掛かっていませんから!」

 

「………良く分かんないけど、念のために退治しておくわね」

 

「待ってくださいアクア様ーっ!!」

 

魔法の詠唱を始めたアクアに、ソウガが言った。

 

「アクア、事情を話すからウィズを退治しないでくれ。頼む………」

 

「………ソウガには恩があるし、しょうがないわね」

 

そう言ってソウガの言う事を聞くアクア。やけに素直だな………。アクアが退くとウィズが急いで立ち上がりソウガに抱き着いた。

 

「えっと、幹部を全部倒すと魔王の城への道が開かれたとか。そんな感じか?」

 

「そういう事です!魔王さんに頼まれたんです、人里でお店を経営しながらのんびり暮らすのは止めないから、幹部として結界の維持だけ頼めないかって!」

 

「つまり、あんたが生きてるだけで人類は魔王城に攻め込めないってわけね、カズマ、退治しときましょう」

 

「待って!待ってください、せめてもう少しだけ生かしておいてください!私には、まだやるべき事があるんです………」

 

「それに幹部を二、三人ぐらい倒せば、アクアの力なら結界を破れる。別にウィズを倒す必要なんてない。………まぁ、借金は最悪、俺を魔王軍に売り飛ばせばいい。俺には十億の懸賞金が懸けられているらしいからな」

 

「じゅ、十億!?」

 

十億だって!?ソウガ、お前、魔王軍に何をしたんだ!そう思っているとアクアが騒いでいた。

 

「ソウガみたいないい子を私が売り飛ばすわけないじゃない!ソウガは前に私が酒場に二十万の借金をして困っていた時に、何も聞かないで立て替えてくれたじゃない!そんないい子を女神である私がソウガを売り飛ばす事なんてしない!」

 

この駄女神!また酒場に借金を作りやがったのか!そう思っているとウィズがソウガに聞いてきた。

 

「ソウ君、懸賞金の事、誰に聞いたの?私もソウ君に懸賞金が懸かっている事なんて初耳だよ?」

 

「聞いたんだ。魔王軍の幹部から」

 

「えっ!?それってどういう事?」

 

「前にヒュドラ討伐の帰り道に魔王軍の幹部が襲撃してきたんだ。その時に聞いた」

 

俺達が雪精討伐に行っていた時にソウガは魔王軍幹部と戦っていたのか、無事で良かった。それを聞いたウィズが騒いでいた。

 

「ソウ君!!何でその事を教えてくれなかったの!!」

 

「別に教える事でもなかったからな」

 

「だからって!!」

 

「まあ待てって、ソウガもこうして無事だしさ、それに幹部を全員倒さなくてもいいならウィズ以外が倒れるまで気長に待った方がいい。でも、いいのか?ベルディアを倒した俺達に恨みとか」

 

「………ベルディアさんとは、特に仲が良かったとか、そんな事も無かったですからね………。私が歩いていると、よく足元に自分の首を転がしてきて、スカートの中を覗こうとする人でした」

 

「ソ、ソウガ!目が怖いぞっ!気持ちはわかるが落ち着け!」

 

「………すまない」

 

ソウガがヤバい目をしてたがすぐに戻った。安堵した時にウィズは。

 

「それに、心だけは人間のつもりですしね」

 

ちょっとだけ寂しげに笑いながら言った。

 

◆◆◆

 

俺はウィズからドレインタッチというスキルを教えてもらう事にした。ドレインタッチは相手の体力や魔力を吸い取る事や与える事ができるスキルだ。そのスキルを見せてもらうためにアクアに相手役をお願いしたが、抵抗をしたから頭を引っ叩いて協力させた。そして俺は迷わずスキルを習得した。

 

「あ、あの、アクア様?もう大丈夫ですよ、手を放していたただいても………。というか、アクア様に触れていると何だか手がピリピリするので、そろそろ離して欲しいのですが………」

 

「………………」

 

ウィズのその言葉に、アクアが微笑みながらウィズの右手を左手で握りしめ、その上にさらに右手を載せて包み込んだ。

 

「ア、アクア様?あの、手が熱くなってきたのですが………、アクア様、消えちゃう消えちゃう、私、消えちゃいます!」

 

「お前はどさくさに紛れて何してるんだ!」

 

「痛い!」

 

ウィズの手を握り、嫌がらせをしているアクアの頭を引っ叩く。ウィズが何だか薄くなってるのは気のせいだろうか。そう思っていると。

 

「『グラスハート』」

 

ソウガが冷たい目をしながらそう言って魔法を発動していた。ソウガの手に結晶体が現れ、その結晶体の中に心臓みたいなのがあった。その光景を見た、ウィズは顔を青ざめた。

 

「駄目ええええええええええええ!!」

 

そう言ってウィズはソウガに突撃した。ソウガとウィズが床に倒れ込んだ、その影響で発動していた魔法が解除された。

 

「ソウ君、駄目だよ!グラスハートなんて使っちゃ!」

 

「………すまない」

 

そう言ってソウガは謝った。さっきの魔法は何だったんだ?

 

「なぁ、さっきの魔法は何だったんだ?アクアに対して使ったみたいだけど」

 

「グラスハートは神滅魔法の中でも殺傷能力が高い魔法でして、結晶体に相手の心臓の幻影を映し出し握りつぶす事で発動する。即死魔法なんです」

 

「そ、即死魔法!?」

 

そう言われて俺とアクアは顔を青ざめた。即死魔法まであるのか神滅魔法は。………あれ?

 

「だったらベルディアが来た時に使えば一撃だったんじゃ………」

 

「アンデッドには効果が薄いんだ。相当のダメージを与えることはできるが殺す事はできない。だからベルディアの時には使わなかった」

 

「なるほど。とりあえず、お前は謝っといた方がいいな」

 

「ご、ごめんなさい!」

 

アクアがソウガとウィズに謝っている時だった。

 

「ごめんください、ウィズさんはいらっしゃいますか?」

 

言いながら、店先の鐘を鳴らしながら入ってきたのは、中年の男性だった。

 

◆◆◆

 

「「「「悪霊?」」」」

 

そう言って、大家のこの人は俺達に言った。

 

「悪霊を祓っても祓っても、幾らでもあたらしいのが湧いて住み着いてしまうのですよ。それで今は物件を売るどころではなく、物件の除霊をするので精一杯でして」

 

「それはわかるが、何でウィズのもとに相談しに来たんだ?」

 

そうカズマは言った。それに対して男はこう答えた。

 

「ウィズさんは、店を持つ前は高名な魔法使いでしてね。商店街の者は、困った事があるとウィズさんに頼むんですよ。特に、アンデッド絡みの問題に関してはウィズさんはエキスパートみたいなものでして。それでこうして相談に来たわけなんです」

 

ウィズはリッチーだからこの件は簡単だが、今のこの状態では………。

 

「ですがその………。ウィズさんは、今日は何だか具合が悪そうですね。いつも青白い顔をしていらっしゃいますが、今日は特に酷いですよ?何ていうか、その………。今にも消えてしまいそうな………」

 

俺とカズマはアクアを見るとアクアはふいっと目を逸らして居心地が悪そうにソワソワしだした。

 

「この街の悪霊を浄化すればいいのか?だったら俺が代わりに行おう」

 

「ああ、いえ!今回は例の屋敷をどうにかして欲しいと思いまして………」

 

なるほど、あの屋敷か………。

 

「あの屋敷の中に迷い込んだ、悪霊をどうにかすればいいんですね?」

 

ウィズがそう言って立ち上がり、やがて力が抜けた様によろめいた。それを見た俺は急いで体を支えた。

 

「ああっ!ウ、ウィズさん、具合が悪いなら結構です、無理しないでください!」

 

「ウィズ、代わりに俺がやるからお前は休んでろ」

 

「でも………。これ以上ソウ君に迷惑かけるわけにはいかないよ」

 

「………わ、私が、やります………」

 

アクアが、小さな声で呟いた。

 

「えっ!貴方達が?」

 

「この人達は俺のパーティーメンバーです。特に青髪の女性の方は魔王軍の幹部を浄化できる程の実力者です。彼等に任せてみてはどうでしょう?」

 

「なるほど、ソウガさんのパーティーメンバーの方なら安心できそうですね。わかりました。彼等に屋敷の浄化をお願いしましょう」

 

そう言ってカズマ達を案内しようとする。俺はカズマ達に言った。

 

「すまない、今回は俺は手伝えそうにない」

 

「気にするな。ウィズの事、本当にごめんな」

 

そう言ってカズマ達は出て行った。………さて。

 

「ウィズ、ちょっと失礼するな」

 

「えっ?………きゃあ!」

 

そう言って俺はウィズを抱えて、奥へ向かった。

 

◆◆◆

 

俺はウィズを抱えて、寝室に来た。そしてベッドにウィズを下した。

 

「じゃあ、ウィズ。ドレインタッチで消えそうな体を元に戻すぞ」

 

そう言って俺はコートと上着を全部脱いで、上半身裸になる。ドレインタッチは心臓に近い部分からドレインをすると効率がいいからである。そう思っているとウィズがじーっと俺の方を見ていた。

 

「そうまじまじと見られると恥ずかしいんだが………」

 

「あっ!ご、ごめんね。ソウ君!………じゃあ、始めるね」

 

そう言って俺の胸部に触れてドレインタッチを行う。これでウィズの体を元に戻せるな。そう思っているとウィズが話してきた。

 

「そういえば、魔王軍の幹部に襲撃されたって言っていたよね。誰と戦ったの?」

 

「確かグロウキメラのシルビアとデッドリーポイズンスライムのハンスって言っていたぞ」

 

「二人!?しかも、魔法耐性が強い幹部!大丈夫だったの!?」

 

「そうじゃなかったら、今この場にいない」

 

二人の幹部に襲われたと言ったら、ウィズは驚いていた。まぁ、しょうがないか。そう思っているとウィズがうつむきながら聞いてきた。

 

「………ソウ君は死ぬのが怖くないの?」

 

「怖いさ………。でも、それ以上に皆を守れない事の方が怖いんだ」

 

「………ソウ君は、もっと私達を頼ってよ」

 

そう言ってウィズは泣いてしまった。俺はそっと抱きしめた。

 

「一人で抱え込まなくていいんだよ。私やカズマさん達もいるんだよ………。だから、一人で無茶しないで、お願い………」

 

「ああ、ごめんな。ウィズ」

 

俺はそのままウィズの体が元に戻るまでウィズを抱きしめていた。

 

◆◆◆

 

その翌日、俺はクエストを請けるためにギルドに向かっていた。あの後、ウィズの体は元に戻ったが、ウィズが俺を離してくれなかった。今後はちゃんと問題があったら報告しようと誓った。そう考えているとギルドに着いたので中に入るとカズマとアクアがいた。

 

「おはよう。二人とも屋敷の浄化はうまくいったのか?」

 

「ソウガ、おはよう。浄化は無事、終わったぞ」

 

「しかも臨時報酬付きよ!ふふん、この私にかかればチョロいものよ」

 

そうか、なら良かった。そう思っているとカズマがルナに聞いていた。

 

「そういえば、何で悪霊があんなに集まっていたんでしょう?」

 

「実はあの屋敷の近くに共同墓地があるじゃないですか?誰かがイタズラか何かで、巨大な結界を張った様なんです。それで、行き場を無くした霊が街の中やあの屋敷に住み着いたみたいで………」

 

それを聞いたアクアがビクンと震え、動きを止めた。………まさか。

 

「ちょっと失礼」

 

俺達はルナに断り、ギルドの隅に移動した。

 

「おい。心当たりがあるな?言え」

 

「………はい。以前ウィズの代わりに墓地の除霊を引き受けたじゃないですか。でも、しょっちゅう墓地まで行くのってめんどくさいじゃないですか。それで、いっそ墓地に霊の住み場所をなくしてやれば、その内適当に散っていなくなるかなって思い、やりました」

 

………………ブチッ!!

 

「ようするにてめぇの手抜きのせいで霊が湧いたと。しかもてめぇのサボりが原因なのにウィズを消そうとしてたって事か?」

 

「ソ、ソウガっ!?お願い許して、あの事は私も反省しているし、ねっ!」

 

カズマが俺の隣から離れるのを確認した俺は。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふざけんじゃねぇぞ!!てめぇ!!やっぱり今ここで、てめぇをウィズの代わりに消してやるわあああああああああああ!!」

 

「わあああああ待って!謝るから謝るから許してっ!カズマさあああああんお願い助けてっ!カズマ様ああああああああああああ!!」

 

今度という今度は堪忍袋の緒が切れたっ!!絶対に許さねぇ!!




次はあの話ですが出そうか出さないか悩んでいます。


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この最高の食材と美酒に祝福を!

原作とアニメではサキュバスの話ですが、今回、サキュバスの出番はありません。


俺はまた昔の夢を見ていた。夢の中ではまだ学生の俺とウィズが摸擬戦を行っていた。

 

「『ライト・オブ・セイバー』!」

 

「『ドラゴニックネイル』!」

 

俺達は魔法を発動して、接近戦を行っていたが、夢の中の俺が上級魔法の剣を砕いた。

 

「くっ!」

 

「どうした?………今日こそ俺に勝つんじゃないのか?」

 

「まだ、勝負は始まったばかりよ!『カースド・クリスタルプリズン』!」

 

ウィズがそう言って辺り一面を氷結させるが、俺は翼を展開して空中に避けた。

 

「やっぱりウィズの氷結魔法は凄いな」

 

「それをあっさりと避けちゃうソウ君の神滅魔法も凄いよ」

 

「そうか………。ふふ」

 

「………えへへ」

 

そう言って俺達は笑い合っていた。お互い強くなっていくのが嬉しかったからだ。俺は空中から下りて、お互い魔法を準備した。俺の胸板から龍の頭が出現した。

 

「これで終わりだ。ウィズ」

 

「勝つのは私よ!」

 

そしてお互いの魔法が発動した。

 

「『カースド・ライトニング』!」

 

「『ドラゴニックフレイムブレイカー』!」

 

雷と炎がぶつかるが炎が雷を消し去って、ウィズに当たり、爆発した。

 

「きゃああああ!」

 

「俺の勝ちだ」

 

かなり手加減はしたが、ウィズは後方に吹っ飛んだ。俺は急いでウィズのもとに向かった。

 

「大丈夫か?」

 

「………何とかね」

 

そう言って俺はウィズに手を差し出した。ウィズはその手を取り、俺はウィズを引っ張って立ち上がらせた。

 

「私………。いつになったらソウ君に勝てるんだろ」

 

「まぁ………。焦らず修行するしかないな」

 

「前もそんな事言ってたじゃない!このーっ!!」

 

「おいこら、痛っ!、止めろっ!」

 

そう言って俺に殴りかかってくるウィズ。まったく昔のウィズは好戦的で困ったものだ。そう思っていると………。

 

「ソーウーガーせーんーぱーいーっ!」

 

「うおっ!」

 

その言葉が聞こえるといきなり後ろから抱き着かれた。俺は後ろを見ると赤髪のポニーテールでオレンジの瞳の女の子が笑っていた。

 

「はぁ………。何をしているんだ。ティア………」

 

「えへへ、ソウガ先輩の背中、温かいなぁ………」

 

「ティアちゃん!ソウ君が困っているから離れてっ!」

 

「あっ!ウィズ先輩、ちわーっす」

 

そう言って俺から離れて赤髪の女の子、ティアは今度はウィズに抱き着いた。

 

「きゃっ!いきなり抱き着かないでティアちゃん!」

 

「はぁ~、胸当てが無いからウィズ先輩の胸が私の顔に、ウィズ先輩の胸柔らかくて気持ちいい………」

 

「ちょっ………頬ずりしないで………んっ………」

 

ティアがウィズの胸に頬ずりして、ウィズが艶かしい声を出していた。ちなみにウィズはいつもは胸当てを装備しているが、俺が破壊してしまい修理に出していた。俺はティアを止めようと思っていると………。

 

「ソウガ先輩、こんにちは」

 

「うん?ああ、よく来たな。シズク」

 

俺は黒髪のサイドポニーで紫の瞳で木刀を持っている女の子、シズクに言った。

 

「摸擬戦、お疲れ様です」

 

「ああ、どうだシズク。後で俺と摸擬戦でもするか?」

 

「本当ですか?ありがとうございます。………でも、その前に」

 

そう言ってシズクは、ウィズとティアのもとに行き、ティアの後ろに行ったところで木刀を振り上げて………。

 

「やめなさい」

 

「いだっ!!」

 

ティアの頭に振り下ろした。頭を強打されたティアはうずくまっている。

 

「ウィズ先輩、申し訳ございません。大丈夫ですか?」

 

「う、うん………。大丈夫だよ、シズクちゃん」

 

「私にも謝れっ!!黒髪ぱっつん女っ!!」

 

そう言って、ティアが涙目で立ちながら言った。

 

「あなたには謝る必要なんて無いでしょう?野蛮女」

 

「悪い事をしたら謝るのは常識だろうがっ!!」

 

「ウィズ先輩に失礼な事をしてる、あなたが悪いのよ。これだから頭に栄養がいってない獣女は嫌なのよ」

 

「へぇ~。じゃあ、お前は栄養がいっていると言うんだな。でも、私には一部分に栄養がいってない様に見えるけどな貧乳女」

 

これはヤバい………。俺はウィズを避難させた。

 

「どうやら死にたい様ですね」

 

「死ぬのはてめぇだ!!」

 

そう言ってティアの拳とシズクの木刀がぶつかった。ぶつかった瞬間に辺りに衝撃波が発生した。

 

「ミンチにしてやるっ!!貧乳がっ!!」

 

「微塵切りにしてあげましょう。脳筋女」

 

「や、やめなさあああああああい」

 

喧嘩を続ける後輩二人と必死に止めようとしてるウィズの姿を見て俺は呆れていた。

 

◆◆◆

 

「あっ!ソウガ」

 

「カズマ。こんな所で会うなんて奇遇だな」

 

俺はクエストが終わり。ギルドに報告に向かう途中でカズマと会った。カズマは屋敷の浄化を行った後に大家さんに謝罪を行い、あの屋敷に住んでいい事になった。これで冬が越せるなと思っているとカズマが聞いてきた。

 

「クエストの帰り道か?」

 

「ああ」

 

「やっぱり凄いなソウガは冬のモンスターは凶暴なモンスターしか活動してないのに簡単に討伐するなんてな」

 

「カズマもレベルが上がればできるようになるさ」

 

「本当かぁ?………うん?」

 

「どうした?」

 

「あれってキースとダストじゃないか?何しているんだあんな所で」

 

俺はカズマが言っている方向を見てみると不審な動きをしているキースとダストがいた。何をしているんだ?

 

「お前らこんな所でなにやってんの?」

 

「「うおっ!?」」

 

背後から声を掛けられ、キースとダストが飛び跳ねた。

 

「な、なんだよカズマとソウガか、驚かすなよ」

 

「驚きすぎだろ。この奥に何かあるのか?」

 

そうカズマが言うと、キースとダストが俺達の近くに寄り、周りに聞こえない様に静かに言った。

 

「これは男の冒険者達の秘密なんだが、サキュバス達がこっそり経営してる、良い夢を見させてくれる店があるって知ってるか?」

 

「詳しく」

 

カズマはサキュバス達の事について興味があるようだった。………はぁ、くだらない。

 

「じゃあ、俺はいい。カズマだけに教えてやれ」

 

「お、おいっ!別にいいが、この話の事」

 

「安心しろ。他言はしないから心配するな。じゃあな、カズマ」

 

「ああ、じゃあな」

 

そう言って俺は話から抜けて、ギルドに向かった。

 

◆◆◆

 

「ではソウガさん。今回のクエストの達成報酬の百万エリスとなります。ご確認ください」

 

そう言って俺は百万エリスを受け取って帰ろうとしていると………。

 

「ああ、ソウガ。こんな所にいたのか」

 

「うん?どうしたんだ。ダクネス」

 

ダクネスが俺に話しかけてきた。………どうしたんだ?

 

「実は実家の方から私の引っ越し祝いが届いたんだ。多分、魔道具店の方にも、そろそろ届く頃だと思う。だから一言、言っておこうと思ったんだ」

 

なるほど、ダクネスの実家から引っ越し祝いがくるのか。

 

「ちなみに中身は何だったんだ?」

 

「確か上物の霜降り赤ガニと高級酒だったな」

 

「何だとっ!?」

 

霜降り赤ガニと言えばかなりの高級品だぞ!しかも高級な酒付きだと、それは今日の夕飯は楽しみだ。………だが、何でそんな高級品を?ダクネスの実家は金持ちなのか?………まさか。

 

「じゃあ、私はこれにて失礼する」

 

「ああ、じゃあな。ララティーナ」

 

「そっちの名で呼ぶなあっ!!………あっ」

 

「………やっぱり」

 

そう言って俺はダクネスに近づいて周りに聞こえない様に言った。

 

「何でダスティネス家の娘が冒険者なんかやっているんだ?」

 

「お、お願いだっ!ソウガ、この事は内緒にしてくれ。頼む!」

 

ダスティネス家はこの国の懐刀とまで言われている貴族だ。娘の名前はララティーナだと言うのは聞いた事があったが、まさか、ダクネスだったなんてな。その娘が何で冒険者なんかやっているのかが気になったが。………まぁ、いい。ダクネスはダクネスだ。

 

「この事で私を脅して、私の体を好きにしようと考えているだろうが。それぐらいで済むなら私の体をどんなに汚しても構わないっ!だからこの事を内緒に!」

 

「そんな事は思っていないからやめろ。………まぁ、貴族の娘だろうが関係ない。ダクネスはダクネスだ。俺達のパーティーメンバーのな」

 

「す、すまないっ!恩に着る」

 

そう言ったらダクネスは安堵した様だった。

 

「じゃあ、俺は帰るな。明日からまたよろしくなダクネス」

 

「ああ!また明日!」

 

そう言って、俺はダクネスと別れてギルドを出た。

 

◆◆◆

 

「ただいま」

 

「あっ!おかえり、ソウ君。今日の晩御飯は凄いよ!カニだよカニ!さっきダクネスさんの実家の人から、パーティーメンバーの皆様に、普段娘がお世話になっている御礼ですって言って、上物の霜降り赤ガニと高級なお酒を送ってくれたんだよ!」

 

「ああ、ギルドでダクネスから聞いたから知ってるぞ。じゃあ、俺は先に風呂に入るな」

 

「うん!私は先に入ったからカニを調理して待ってるね」

 

そう言って寝間着姿のウィズは調理を始めた。俺は脱衣場に向かい、服を脱いで風呂に入った。風呂に入っている間、何気にカニ料理を楽しみにしていた。風呂から上がり、黒い寝間着に着替えて、リビングに向かった。そこには沢山のカニ料理と高級酒があった。………ゴクリ。

 

「待たせたな」

 

「ううん、大丈夫だよ。」

 

そう言って俺は椅子に座った。そして早速、霜降り赤ガニに手を伸ばした。パキッと割ったカニの脚から取り出し、身に酢をつけて、二人、一緒に頬張る。

 

「「!?」」

 

やべぇ、滅茶苦茶美味い!!ふんわり甘く、濃縮された旨みが口に広がる。

 

「凄く美味しいね!ソウ君!」

 

「やばいなウィズ!これは止まらない!」

 

俺達はカニの美味さに驚愕しながら黙々と食べ続けた。そして俺は高級酒を一口飲んだ。

 

「この酒やばいぞっ!喉越しが良すぎて水のようにスイスイ飲めるぞっ!」

 

「本当?………確かに喉越しが良くて美味しいね!」

 

やばい………。こんなの最高だっ!!俺は高級酒をどんどん飲んでいた。それを見ていたウィズが俺を止めていた。

 

「駄目だよ。そんなに一気に飲んじゃ、まだたくさんあるんだしゆっくり飲もう?」

 

「………そうだな。すまない」

 

「気にしないで、折角だし乾杯しよう?」

 

「ああ、そうだな」

 

そう言って俺達はコップを近づけて。

 

「「乾杯」」

 

乾杯をして、ゆっくり酒を飲んだ。

 

◆◆◆

 

俺達はあの後、黙々とカニと酒を味わった。流石に飲みすぎた………。だが、俺以上にやばいのは………。

 

「ウィズ、もうそこらへんにしておけ………」

 

「大丈夫だよ………私は………まだ」

 

ウィズはもう完全にできあがっていた。俺はウィズに言った。

 

「まだ、カニと酒は沢山あるから、続きは明日でもいいだろ?」

 

「………うん………そうだね」

 

「じゃあ、そろそろ寝るか。立てるか?」

 

「………ソウ君、だっこして?」

 

「はぁ………。しょうがないな」

 

そう言って俺はウィズを抱える。そのまま寝室まで移動して、ベッドにウィズを寝かせる。俺はカニと酒を片付けるために離れようとしたら、ウィズに手を掴まれた。

 

「ウィズ、俺はカニと酒を片付けてくるから手を放してくれ。大丈夫だ。すぐに戻ってくるるるるあああああああああああああーっ!?」

 

俺は何故か悲鳴を上げた。その理由は………。

 

「お、おい、ウィズ!何いきなりドレインタッチしてるんだ!やめろっ!!」

 

いきなりウィズがドレインタッチをしてきたからである。いきなり何するんだっ!!

 

「いい加減にしろっ!!さすがに怒るぞ!!」

 

「まだ………抵抗できるんだね」

 

「お、おい、何言ってるんだっ!!さっさと………うおっ!?」

 

離せと言おうとしたらウィズにベッドに引っ張られ、俺はベッドに倒れ込む、その後、ウィズは俺に覆いかぶさってきた。

 

「おい、ウィズ………。いきなり何だ?あと、ドレインタッチをいい加減止めてくれ」

 

「ねぇ………ソウ君。ソウ君は私の事、どう思っているの?」

 

「何をいきなり………。大切な幼馴染だと思っているぞ」

 

「大切な幼馴染と思ってくれるのは嬉しいよ………。でも」

 

そう言ってウィズは俺の耳元に顔を寄せる。

 

「私はそれ以上の関係になりたい………。はむっ」

 

「っ!?」

 

そういうとウィズは俺の脇腹を左手で撫でながら耳に甘噛みをしてきた。

 

「おいっ………やめっ………」

 

「やだ………はむっ」

 

ウィズが俺の首に口を密着させてきた。その後、口を離して俺の上から微笑んできた。

 

「痕付いちゃったね………キスマークだね」

 

「いい………加減にしろ」

 

「ソウ君、顔がとろけて可愛い………いいんだよ。我慢しなくても」

 

そう言ってウィズは寝間着のボタンを左手で外し始めた。

 

「………私の体を好きにしていいんだよ」

 

そう言ってくるが、さすがにこれ以上はマズイ。俺は急いで魔法陣を展開した。

 

「『スリーピングホーマ』」

 

そう唱えるとウィズは眠り、俺に倒れ込んできた。俺は首に手を当てながら。

 

「明日もクエストに行くのにどうするんだよ………」

 

ため息交じりにそう言った。

 

◆◆◆

 

「ねぇ………ソウ君。あの後何があったの?私途中から覚えてなくて」

 

「何も無かったさ」

 

朝食を終えて、ギルドに向かおうとしてる俺にウィズは言った。流石に言えないから何も無いと言った。

 

「本当?なら、いいけど………。あれ?ソウ君、首に痕が付いてるけど、どうしたの?」

 

お前が付けたキスマークだろうがっ!!

 

「虫に刺されただけだ気にするな」

 

「そうなんだ。なら、良かった」

 

そう言って安堵した様子だった。昨日のあれはストレスでしてしまったのか?そう思った俺はウィズに言った。

 

「今度、二人で何処かに出かけないか?」

 

「えっ!いいの?」

 

「ああ」

 

「うん!約束だよ!」

 

そう言ってウィズは笑顔になる。その笑顔を見た後、ギルドに向かおうとした時だった………。

 

『デストロイヤー警報!デストロイヤー警報!機動要塞デストロイヤーが、現在この街へ接近中です!冒険者の皆様は、装備を整えて冒険者ギルドへ!そして、街の住人の皆様は、直ちに避難してくださーいっ!!』

 

「えっ!?」

 

「デストロイヤーだとっ!?」

 

機動要塞デストロイヤー接近のアナウンスが街中に轟いた。




あと少しで二巻とアニメ一期の内容が終わります。


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この機動要塞に爆裂魔法を!

今回はデストロイヤー戦の前編です。


機動要塞デストロイヤーはそれが通った後にはアクシズ教徒以外、草も残らないとまで言われる、暴走した古代兵器だ。しかも強力な魔力結界が張られており、攻撃が通らない。そのデストロイヤーがこの街に………。商店街の人達が阿鼻叫喚と化し、逃げる準備をしていた。

 

「そんな………デストロイヤーが来たら、このお店が………」

 

そう言ってウィズは泣きそうな声で言った。皆の帰りを待つために開いた魔道具店。それが古代兵器のせいで無くなる?………そんな事させるかっ!!

 

「大丈夫だ。俺がそんな事させない」

 

「ソウ君………」

 

俺はウィズの頭を撫でながらそう言った。

 

「俺はギルドに行ってくる。ウィズは商店街の人達と一緒に避難するんだ」

 

俺はウィズにそう言った後、ギルドに向かおうとした時だった。

 

「待って!私も行く!」

 

「………いや、ウィズはもう冒険者じゃない。だから………」

 

「人手は少しでも多い方がいいよ!」

 

俺は考えてしまっていた。ウィズを危険な事に巻き込むわけにはいかないからだ。そう思っていると、ウィズが言った。

 

「………この街を守りたいの、それにソウ君にだけ危険な事させたくないの………だからお願い………」

 

そう言われて、ウィズも同じ考えだったんだと気づいた。

 

「………分かった。一緒に行こう」

 

「うん!」

 

そして俺達はギルドに急いだ。

 

◆◆◆

 

俺とアクア達はギルドでデストロイヤー対策会議を行っていた。魔法は効かない、接近したら踏まれる、空からの攻撃も撃ち落される。しかも迅速に行われるデストロイヤーに対して何か対策が無いかとあーでもないこーでもないと、会議が難航していた。

 

「おいカズマ。お前さんなら機転が利くだろう。何か良い案は無いか?」

 

俺達のテーブルの傍に座っていたテイラーが、俺に無茶振りをしてきた。………そんな事言われても。そもそも結界で魔法が効かないって時点で………。あっ!

 

「なあアクア。お前なら結界を破れるんじゃないか?」

 

「えっ!………でも、やってみないとわからないわよ?」

 

「破れるんですか!?デストロイヤーの結界を!?」

 

「いや、もしかしたらって事で。確約はできないそうです」

 

「一応、やるだけやっては貰えませんか?それができれば魔法による攻撃が………!あ、いやでも。機動要塞相手には、下手な魔法では効果が無い。駆け出しばかりのこの街の魔法使いでは、火力が足りないでしょうか………」

 

職員が再び悩み出し、また静まり返る中。ある冒険者が、ぽつりと言った。

 

「火力持ちならいるじゃないか、頭のおかしいのが」

 

「そうか、頭のおかしいのが………」

 

「おかしい子がいたな………」

 

「おい待て、それが私の事を言っているなら、その略し方は止めてもらおう。さもなくば、いかに私の頭がおかしいかを今ここで証明する事になる」

 

めぐみんがそう言うと、冒険者達が一斉に目を逸らした。

 

「この街では、爆裂魔法が最大火力だ。どうだ、めぐみん」

 

「うう………わ、我が爆裂魔法でも、流石に一撃では仕留めきれない………と、思われ………」

 

そう、ぼそぼそと告げた。

 

「皆落ち着いて、この街には、まだ彼がいるじゃない」

 

そう、クリスが言った。冒険者達が一斉にクリスを見た。

 

「どんなクエストも完璧にこなし、魔王軍の幹部をも圧倒するほどの冒険者。この街………いや、この国にいる最強のアークウィザードが」

 

そう言った。………そうだ、まだ俺のポンコツパーティーにふさわしくない最強のアークウィザードがいるじゃないか!

 

「そうだ、まだソウガがいる!」

 

「ソウガがいればこの状況も何とかできるかもしれない!」

 

そう冒険者達が騒ぎ出していた。俺は受付のお姉さんに話しかけた。

 

「ちなみにソウガはまだこの街にいますか?クエストに行っていないとかだったら、洒落にならないですよ?」

 

「大丈夫です。ソウガさんはまだギルドには来ていませんのでこの街にいます!これなら何とかできそうです!」

 

よしっ!なら大丈夫だな。………そう思っていると、突然入り口のドアが開けられた。

 

「すまない、遅くなった」

 

「すいません、遅くなりました!ウィズ魔道具店の店主です。一応冒険者の資格を持っているので、私もお手伝いに………」

 

ギルドに入ってきたのは、ソウガとウィズだった。そのウィズを見た冒険者達は………。

 

「店主さんだ!」

 

「貧乏店主さんも来た!」

 

「貧乏夫婦が揃った!」

 

「貧乏夫婦が来た!勝てる!これで勝てる!」

 

と、途端に熱烈な歓声を上げた。この勝てるといった騒ぎは何だ?

 

「なあ、ソウガは分かるが、なんでウィズってこんなに有名なんだ?ていうか、可哀想だから貧乏店主はやめてやれよ。あと夫婦ってどういう事だ?」

 

「知らないのか?彼女はかつて、凄腕アークウィザードとして名を馳せていたんだ。夫婦って呼ばれているのは一緒に暮らしているって事もそうだが、街で腕を組んで歩いていたり、ソウガに膝枕をしてあげているウィズさんの姿を見た人がいたからなんだ」

 

その正体はソウガの幼馴染でアンデッドの王のリッチーだけどな。そう思ってウィズを見ると体をもじもじさせながら独り言を言っていた。

 

「そんな夫婦だなんて………私達はまだそういう関係じゃないのに………えへへ、でも嬉しいなぁ………えへへ」

 

「ウィズ………。考え事はそれぐらいにしておけ」

 

「はっ!そ、そうだね!ごめんね、ソウ君」

 

そう言って、職員に促されるまま、ウィズは周りにぺこぺこと頭を下げながら中央に移動した。その後、ソウガが俺に話しかけた。

 

「すまないな。ウィズが自分も行くって言いだして、来るのが遅れてしまった」

 

「気にするな。二人がいるだけで心強いよ」

 

「そうか………。ありがとうな」

 

そう、ソウガが微笑んできた。………うん?

 

「ソウガ、首どうしたんだ?痕が付いてるぞ?」

 

「虫刺されだ。気にするな」

 

「そうか、なら良かった。でも、俺にはキス」

 

「虫刺されだ」

 

ソウガが俺を睨みながら有無も言わさずそう言った。これ以上言うのはやめよう。

 

「では、ソウガさんと店主さんにお越し頂いた所で、改めて作戦を!………まず、アークプリーストのアクアさんが、デストロイヤーの結界を解除。そして、めぐみんさんが、結界の消えたデストロイヤーに爆裂魔法を打ち込む、という話になっておりました」

 

「………爆裂魔法で、脚を破壊した方が良さそうですね。デストロイヤーの脚は本体の左右に四本ずつ。これを、めぐみんさんと私で、左右に爆裂魔法を打ち込むのは如何でしょう。後はデストロイヤーの速度をどうにかしないと………」

 

「それは俺がやろう。重力魔法でデストロイヤーの速度を落として、アクアが結界を解除して、めぐみんとウィズで爆裂魔法を撃ち込む。これで、どうだ?」

 

ソウガとウィズの提案に職員と冒険者達がコクコクと頷いた。その後ソウガとウィズの提案を元に作戦が組まれた。

 

「それでは皆さん!緊急クエスト開始です!」

 

進行役の受付のお姉さんが、作戦開始の指示を全員に出した。

 

◆◆◆

 

俺達は正門に移動して、デストロイヤーを迎え撃つための準備をしていた。街の前には冒険者だけでなく、街の住人も集まって、突貫作業で即席のバリケードがくみ上げられていた。バリケード前にはクリエイター達が地面に魔法陣を描いていた。俺達は正門の上でデストロイヤーを待っていた。俺の右側にはウィズとアクアが話をしていた。左側ではめぐみんがぶつぶつと独り言を言っていた。カズマは何故かバリケードのさらに前にいるダクネスを説得しに行っている。そう思っているとカズマが帰ってきた。

 

「説得は失敗した。あの頭の固い変態を守るためにも、確実に成功させるぞ」

 

めぐみんの隣で屈み込んだカズマが言った。

 

「そ、そそ、そうですか………や、やらなきゃ!わ、わわ私が、絶対やらなきゃ………」

 

「お、おい落ち着け。いざとなったら、あいつの重い装備を無理やりスティールでひん剥いて、軽くして力ずくでも引っ張ってくから!」

 

どうやらダクネスの説得は失敗した様だった。………必ず成功させないとな。そう思っていると………。

 

「ソウ君」

 

「うん?どうしたんだ。ウィズ」

 

俺の近くにウィズが来た。………どうしたんだ?

 

「もうすぐ作戦開始だね」

 

「ああ、そうだな」

 

「絶対に成功させようね」

 

「ああ」

 

「………それでね」

 

そう言ってウィズは頬を染めながら考え始めてしまった。一体、どうしたんだ?と思っているとウィズが言った。

 

「あのね、成功率を少しでも上げたいから………あれ………しよう?」

 

「あれをするのか?流石に恥ずかしいぞ」

 

「お願い………」

 

そう目を潤ませ、上目遣いをしながら言った………はぁ。

 

「………分かった」

 

「………ありがとう。ソウ君」

 

そう言ってウィズはそっと目を閉じた。それを確認した俺はウィズの前髪を上げて、額にキスをした。この行為は大きな戦いの前の時などに俺とウィズだけがしていた、おまじないみたいなものだ。キスをした後、頬を染め、微笑みながらウィズが言った。

 

「ありがとうね、ソウ君。これで頑張れそう」

 

「そうか、それなら良かった。………お前は俺が守る、だから安心して思いっきりやれ」

 

「うん」

 

そう言って俺達は抱き合った。お互いの温もりを感じた後、ウィズは持ち場に戻った。俺も集中しようとしたら、カズマが騒いでいた。

 

「お前ら、やっぱり恋人同士だろ!」

 

「前にも言ったろ?幼馴染だ」

 

「幼馴染でも額にキスなんかするわけねえだろ!」

 

「………そうなのか?」

 

「………もういい、集中してくれ」

 

そう言ってそっぽを向いてしまった。………どうしたんだ?

 

◆◆◆

 

『冒険者の皆さん、そろそろ機動要塞デストロイヤーが見えてきます!戦闘準備をお願いします!』

 

そう言って遠く離れた丘の向こうから、機動要塞デストロイヤーの頭が出て来た。………いよいよか。

 

「何あれでけえ………」

 

確かにデカいが俺には関係ない。俺の大切なものを奪おうとするなら誰だろうと潰すだけだ。

 

「ガラクタ風情が………。塵にしてやる」

 

そう俺はデストロイヤーを睨みながら言った。

 

「「『クリエイト・アースゴーレム』!」」

 

クリエイターの人達が地面の土でゴーレムを作り出し、ダクネスの背後へと、つき従う様に整列した。

 

「ちょっとウィズ!大丈夫なんでしょうね!大丈夫なんでしょうね!?」

 

「大丈夫です、任せてくださいアクア様。これでも最上位のアンデッドなのですから。………もし失敗したら、皆で仲良く土に還りましょう」

 

「冗談じゃ無いわよ!冗談じゃ無いわよ!!」

 

「おい、ちょっと落ち着け」

 

「だだだ、だいじょうび。私は強い私は強い。わわわ我が爆裂魔法で、消し、消し飛ばしてくれるわっ!」

 

「ちょっ!まだ早い!まだ早い!」

 

うわぁ………心配だ………。

 

「来るぞー!戦闘準備ー!!」

 

よし、行くか!俺はデストロイヤーに魔法陣を展開した。

 

「『グラビトンコントロール』!」

 

俺の重力魔法がデストロイヤーに発動するが、デストロイヤーの結界が俺の魔法を防ごうとしていた。

 

「ガラクタ風情が神滅魔法を防げると思うなああああああああ!!」

 

俺は発動している重力魔法の威力を上げ、デストロイヤーを本来なら結界ごと押し潰せる威力まで上げたがさすがに破壊まではいかずデストロイヤーは移動を再開したが、当初の目的の速度を落とす事には成功した。

 

『アクア!今だ、やれっ!』

 

拡声器を使い、カズマがアクアに指示を出した。アクアの周囲に魔法陣が浮かび上がった。

 

「『セイクリッド・スペルブレイク』!」

 

そう言うと光の玉がデストロイヤーに向かって撃ち出した。撃ち出された光の玉がデストロイヤーに触れると同時に、結界が抵抗をしたがすぐに粉々に弾け飛んだ。

 

「めぐみんさん!同時発射です!………えっ!」

 

俺達はめぐみんを見るが緊張で震えている様だった。その時だった。

 

「砲撃がくるぞー!!」

 

俺達はデストロイヤーを見ると魔法陣を展開して、魔法による砲撃を行おうとしていた。ウィズが爆裂魔法の準備をしていたが・・・。

 

「駄目っ!間に合わない!」

 

たくっ………しょうがないな。俺は魔法陣を展開し、詠唱を始めた。

 

「集え光よ、希望を抱いた者達の魂を一振りの剣へと姿を変え、たとえそれが幻想に終わるとしても、その思いを剣に込め、今、輝ける命の奔流を見よ!」

 

そう詠唱をすると光が集まり金色の剣へと姿を変える。その時、デストロイヤーの砲撃が発射された。俺は光の剣を手に取り、デストロイヤーに向かって振り下ろした。

 

「『イマージュカリバーン』!!」

 

光の斬撃が放たれ、デストロイヤーの砲撃とぶつかるが、斬撃はその砲撃をも飲み込みデストロイヤーに迫るが、先程の砲撃のせいで位置がずれてしまったようで左上部を吹き飛ばした。

 

「おおっ!すげえっ!」

 

そうカズマが言っているが、俺は少し体がよろめいたが何とか態勢を立て直した。

 

「………やっぱり、イマージュカリバーンは結構な魔力を持っていくな」

 

先程の魔法、イマージュカリバーンは高い威力を持ってはいるが高燃費な魔法で使いどころを間違えるとすぐ魔力切れを起こしてしまうほどの魔法だ。今日はまだ重力魔法しか使ってないから問題ないが………。

 

「ソウ君!」

 

「俺に構ってないで、お前はさっさと爆裂魔法の準備をしろ!」

 

「う、うん!」

 

そう言ってウィズは爆裂魔法の準備を再開した。後はめぐみんをどうするか………。そう思っているとカズマがめぐみんに言った。

 

「おい、お前の爆裂魔法への愛は本物なのか?いつも爆裂爆裂言ってるやつが、ウィズに負けたらみっともないぞ?お前の爆裂魔法はアレも壊せないへなちょこ魔法か?」

 

「な、なにおうっ!?我が名をコケにするよりも、一番言ってはいけない事を口にしましたね!!」

 

そう言ってめぐみんが朗々と、力強く詠唱を始めた。そして、二人の最強の攻撃魔法が古代兵器に放たれた。

 

「「『エクスプロージョン』!!」」

 

全く同じタイミングで放たれ、デストロイヤーの足を残らず粉砕し、地響きと轟音と共に地を滑り、ダクネスの前で動きを止めた。

 

「ふぅ………。やったぞ。めぐみん」

 

そうカズマが言った後、めぐみんは倒れた。

 

「ぐぬぬ………。流石はリッチー、私をはるかに上回るレベル………く、悔しいです………」

 

悔しがっているめぐみんをよそに他の冒険者が勝ち誇っていた。まぁ、これで安心だな。

 

「さあ、帰って乾杯よ!報酬は一体お幾らかしらね!」

 

「このバカッ、なんでお前はそうお約束が好きなんだよ!」

 

アクアがそう言うと何故か、カズマは怒っていた。一体どうしたんだ?っと思っていると突然地響きが起こった。まさかと思い俺はデストロイヤーを見た。

 

『被害甚大につき、自爆機能を作動します。乗組員は直ちに避難してください。乗組員は直ちに避難してください』

 

「何っ!!」

 

どうやら、この古代兵器は俺達を休ませてはくれないらしい。

 




あと一話でアニメと二巻の内容は終わると思います。


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この機動要塞に終焔を!

これでアニメと二巻の話は終わりです。


『自爆機能を作動します。自爆機能を作動します。乗組員は直ちに避難してください』

 

「………無理だ」

 

「こんなの無理だって!」

 

「逃げろおおおおお!」

 

そう言い、冒険者達は逃げようとしていた。………くそっ!!

 

「み、店が………このまま街が被害にあったら、お、お店が、お店が無くなっちゃう………」

 

泣きそうな声でウィズが言った。俺はまた大切な幼なじみの笑顔を守る事ができないのか………。いや、まだ方法がある。

 

「ウィズ。まだ方法はあるぞ」

 

「えっ!?本当、ソウ君!」

 

俺はデストロイヤーを見つめて言った。

 

「デストロイヤーが自爆する前にあいつの動力源をどうにかすればいい。そうすれば自爆も止められる」

 

「………なるほど、確かにそれなら止められるかもしれないね」

 

「………それに、どうやら他の冒険者達はやる気みたいだぞ」

 

「えっ?」

 

俺達はデストロイヤーの方を見ると、ダクネスが一人で突っ込んだ。近くにめぐみんを背負ったカズマがいた。そのダクネスの姿を見て他の冒険者達もデストロイヤーに乗り込んで行った。

 

「全く、あいつらは本当にこの街が好きな様だな」

 

「それはソウ君もでしょ?」

 

「バレバレだったか?」

 

「バレバレだよ」

 

そう言うと、俺とウィズは微笑んだ。そして俺は魔法陣を展開した。

 

「『ドラゴニックウイング』」

 

俺は翼を展開して、ウィズの所まで飛んだ。

 

「行こう、ウィズ。この街と俺達の店を守るために」

 

「うん!」

 

そう言って俺はウィズを抱えた。だが………。

 

「う、うわあ………。あそこに交ざるの怖いんですけど………。もう任せといても大丈夫よね?帰ってもいいよね?帰ろう」

 

アクアが帰ろうとしていた。………こいつ!!

 

「『ヘブンズチェイン』」

 

「えっ?………きゃあ!」

 

俺は複数の魔法陣を展開して、魔法陣から鎖を発射してアクアを捕まえた。

 

「ちょっと!身動き一つ取れない!何よ、この鎖!」

 

「神性属性が高いほど効果が出る鎖だ。何故かアクアは神性な感じがするからな。じゃあ行くぞ」

 

「ちょっと、待って!嫌あああ私は行きたくないの!嫌あああああああ!」

 

俺はアクアを鎖で拘束して無理やり連れて、めぐみんを下ろそうとしているカズマの所まで飛んだ。

 

「カズマ!」

 

「ソウガ!すまない、何か方法はないか?他の冒険者達は考え無しに乗り込んでいってるみたいだ」

 

「ソウ君が言っていたのですが、もしかしたら動力源をどうにかできれば自爆を止められるかもしれません」

 

「ダクネスのやつ、絶対にそんな事、考えないで突っ込んでいったよな」

 

「ねえ………そろそろ鎖、外してほしいんですけど」

 

おっと忘れてた。俺はアクアの鎖を外してどんどん乗り込んで行く冒険者達を見た。

 

「この分だと任せといても大丈夫よ………。帰ろう?帰って、また明日頑張りましょう?」

 

「行くぞ!駄女神!」

 

「い、嫌ああああああああ!!!」

 

再び逃げ出そうとしているアクアの手を取り、カズマが無理やり連れて行った。中に入ると小型ゴーレムや戦闘用のゴーレムが数えきれないほどいた。

 

「何だ!あの数、先の冒険者達は破壊したドアにどんどん入っていっているけど後から来た冒険者達が苦戦していて全然進めねえ」

 

仕方ないか。俺は翼を展開して飛び、ゴーレムが湧いている所を確認すると魔法陣を展開した。

 

「『ライトニングボルテックス』!」

 

そう唱えると高魔力の雷がゴーレム達に当たり、一体残らず消し去った。

 

「「「「おおおおおおおおおー!!!」」」」

 

他の冒険者達が歓声を上げた。そしてどんどんドアに入っていき内部に侵入していった。だがゴーレム達はどんどん湧いて、一向に数が減らずいつか内部まで侵入される勢いだった。

 

「カズマ!ウィズの事お前に任せる!」

 

「えっ!ソウガはどうするんだ?」

 

「俺は湧いてくるゴーレム達を相手する。行け!」

 

「わかった!」

 

そう言ってカズマ達は先にドアに入っていった。その時、入ろうとしていたウィズが俺の方へ向き。

 

「ソウ君、気をつけてね」

 

「ああ、任せろ」

 

俺がそう言うとウィズもドアに入っていった。俺はゴーレム達を見た。

 

「悪いな、ここから先は通行止めだ」

 

そう言って俺はゴーレムの大群に突っ込んだ。

 

◆◆◆

 

「けほっ!もう帰りたいーっ!」

 

そう駄女神は言っているが無視していると、ウィズが止まって後ろを心配そうに見ていた。

 

「ソウ君………」

 

「ソウガだったら心配ないさ、この街の最強のアークウィザードがあんなゴーレムごときに後れは取られないさ。そんな事は幼なじみのウィズが一番わかってるだろ?」

 

「………そうですよね。ありがとうございます。カズマさん」

 

そう話しているとある部屋の前で人だかりができていた。

 

「………おっ、カズマ。良い所に来たな。………見ろよこれを」

 

そう言ってテイラーは指差した。その先には白骨化した人の骨があった。この機動要塞を乗っ取った研究者は、ゴーレムに囲まれたこの要塞内で、寂しげに部屋の中央の椅子に腰かけていた。俺達は骨の近く行くとアクアが言った。

 

「すでに成仏してるわね。アンデッド化どころか、未練の欠片もないぐらいにそれはもうスッキリと」

 

「いや未練ぐらいあるだろ。これ、どう考えても一人寂しく死んでった、みたいな………」

 

そんな時、アクアが一冊の手記を見つけた。アクアはそれを読み上げる。

 

「―国のお偉いさんが無茶言い出した。こんな予算で機動兵器を作れと言う。無茶だ」

 

「………こいつの日記なのか?」

 

そう言ったが、アクアは読み続けた。

 

「―バカになったフリをしてパンツ一枚で走り回ってみたが、女研究者に早くそれも脱げよと言われた。この国はもう駄目かもしれない」

 

「―突然紙の上に俺の嫌いなクモが出た。悲鳴を上げながら、手近にあった物で叩き潰した。叩き潰してしまった。用紙の上に。知るか。もうこのまま出しちまえ」

 

「―あの設計図が予想外に好評だ。それクモ叩いた汁ですけど、そんな物よく触れますねなんて絶対に言えない」

 

「―動力源をどうこう言われたけど知るか。伝説のコロナタイトでも持って来いと言ってやった」

 

「―本当に持ってきちゃったよ。どうしよう。これで動かなかったら死刑じゃないの?動いてください、お願いします!」

 

「―終わった。現在只今暴走中。このまま引きずり降ろされて死刑だろうか。畜生、国のお偉いさんも国王も、俺のパンツを脱がして鼻で笑った女研究者もみんなみんなクソッタレだ!こんな国滅んじゃえばいいのに」

 

「―国滅んだ。やべぇ、滅んじゃったよ!やべええええ!でも、何かスカッとした!満足だ。よし決めた。もうここで余生を暮らすとしよう。だって降りられないしな。止められないしな。これ作ったやつ絶対馬鹿だろ。………おっとこれ作った責任者、俺でした」

 

………………。

 

「………終わり」

 

「「「なめんな!!」」」

 

アクアとウィズ以外が見事にハモった。

 

◆◆◆

 

その後、俺達は機動要塞の中枢部に来ていた。大人数で行ってもしょうがないと、皆に任され、俺とアクアとウィズの三人で入った部屋の中だった。部屋の中央にはコロナタイトの姿がある。

 

「ダスト達は先に逃がしたけど………どうすんだこれ」

 

「コロナタイト、暴走してますね………」

 

「おいアクア、お前これを封印とかってできないか?良くあるだろ、、女神が悪しき力を封印するとか何とか!」

 

「何その身勝手な妄想!ちょっとウィズ、あんた何とかできないの!?」

 

自称何とかは無理難題をウィズに押しつけた。だが無理ですと言うかと思ったウィズは………。

 

「できない事はないですが………。それには魔力が足りません。あの、カズマさん、お願いが!」

 

「な、何でしょう?」

 

ウィズは俺の頬を両の手の平で挟んで、言ってきた。

 

「吸わせてもらえませんか?」

 

「喜んで」

 

何を、なんて野暮は言わない。俺はここで動揺したりする様な鈍感系じゃない。

 

「ありがとうございます!」

 

「こちらこそ」

 

「では参ります!」

 

お父さん、お母さん。俺、異世界で大人になり………ま………?

 

「すいません!ドレインタッチー!」

 

「ああああああああ!」

 

「ちょ、ちょっと!カズマさんが干物になっちゃう!」

 

アクアが慌てて止める中、俺が意識を失う前に、ウィズがその手を離してくれた。何という期待外れ。

 

「これで、テレポートの魔法が使えます!………でも問題は、どこに送るかなのですが………」

 

そう言っているとコロナタイトが白く輝きだした。

 

「おいヤバいぞ!何か赤を通り越して白く輝きだしてきたんだけど!」

 

「ランダムテレポートならすぐに飛ばせるのですが………。下手をすれば人が密集している場所に送られる事も………」

 

「世の中ってのは広いんだ!大丈夫、全責任は俺が取る!こう見えて、俺は運が良いらしいぞ!」

 

「………分かりました。カズマさん。お願いします」

 

そしてウィズは、声高に魔法を唱えた。

 

「『テレポート』!」

 

◆◆◆

 

俺達はコロナタイトを飛ばした後、部屋から出ると、そこにはダクネスがいた。

 

「ここにいたのか、ダクネス」

 

俺がそう言うと、ダクネスが呟いた。

 

「まだだ。私の、強敵を嗅ぎつける嗅覚が、香ばしい危険の香りを嗅ぎとっている。………まだ、終わってないぞ」

 

ダクネスの言葉に反応するかの様に、機動要塞そのものが、振動と共に震え出した。俺達は急いで脱出して、機動要塞を見上げた。

 

「おいおい、コロナタイトは取り除いたはずだろうが!」

 

「これは………。内部に溜まっていた熱が、吹き出そうとしているのでは?………このままでは街が火の海になってしまいます!」

 

「コロナタイト飛ばした意味ねえ!もう一度爆裂魔法を!」

 

「もう………魔力がありません」

 

万事休すかっ!!………うん?

 

「よく考えたら、私達の借金はこの街のギルドが立て替えているんだし、ここでボンッてなっちゃえば………」

 

「おい、自称何とか」

 

俺は、そう考えているアクアの手を取った。

 

「ちょっと何すんのよ。今カズマに構ってあげてる暇は無いの。いっそこのままままあああああああああああああーっ!!」

 

俺の不意打ちのドレインタッチに、アクアが抵抗する間もなく悲鳴を上げた。

 

「ちょっとヒキニート、この非常事態に何すんのよ!」

 

「非常事態だからだよ!今からお前の魔力をウィズに分けて、爆裂魔法を使う!」

 

「待って、私の神聖な魔力を大量注入したら、この子、消えちゃうわよ!」

 

ウィズがコクコクと頷いた。………マジか。

 

「じゃあソウガは!ソウガのあの光の斬撃なら、消し去れるはずだ!」

 

「………そのソウガって、今どこにいるの?」

 

・・・そういえばソウガはどこにいるんだ?辺りを見渡したが、いるのは他の冒険者達だけだ。

 

「ね、ねえ………。ソウガってゴーレム達を相手にしていたじゃない?もしかしてだけど………重傷を負って動けないんじゃ………」

 

「………ソウ君!」

 

アクアが不吉な事を言ったせいで、ウィズが再びデストロイヤーに乗り込もうとした。それをアクアが取り押さえた。

 

「離して、離してくださいアクア様!お願いですからっ!」

 

「もう諦めなさい!ソウガの犠牲を無駄にしないでっ!」

 

「やだぁ!お願い離して!ソウ君がまだいるかもしれないの!やだやだやだぁ!ソウ君、死なないでえ!」

 

「………人を勝手に殺さないでくれないか?」

 

「ソウガ!」

 

そうウィズが泣き叫んでいる時に後ろから声が聞こえた。後ろを向くとソウガがいた。しかもその背中には………。

 

「真打登場」

 

めぐみんがやる気を出しながら杖を上に掲げた。

 

◆◆◆

 

「ねえわかってる!?吸い過ぎないでね?吸い過ぎないでね!?」

 

「わかってるわかってる、宴会芸の神様の前振りなんだろ?」

 

「違うわよ!芸人みたいなノリで言ってるんじゃないわよ!」

 

カズマとアクアがそう言っているが、時間が無いから早くしてほしい。そう思っていると俺の腕を組んで離さない様にしているウィズが言った。

 

「ドレインタッチは皮膚が薄く、心臓に近い部分から吸収するのが効率が良いですよ!」

 

「くくく、日に二回も爆裂魔法が撃てわひゃあああああああ!」

 

ウィズがそう言った後、カズマはめぐみんの背中に手を入れた。………はぁ。

 

「いきなり何するんですか!心臓止まるかと思いましたよ!何ですか?セクハラですか?この非常事態にセクハラですか!?」

 

「バカ、そうじゃない!効率を考えてのドレインタッチだ!あっ、ちょっ、お前まで!前に手を突っ込まないだけ有り難いと思え!」

 

………………ブチッ!!

 

「いいからさっさとしろやあああああ!!てめえら、俺に八つ裂きにされたくなかったら早く始めろやああああああ!!」

 

「「「は、はい!!」」」

 

そしてカズマはアクアとめぐみんの首根っこを掴んでドレインタッチを行った。………全く。

 

「おおっ!来てます来てます。これは過去最大級の爆裂魔法が放てそうです!」

 

「ねえめぐみん、まだかしら!もう、結構な量を吸われていると思うんだけど………」

 

「もうちょい!もうちょいいけます!あっ、ヤバいかもヤバいです………」

 

めぐみんがそう言った後、眼帯を外し、杖を構えて詠唱を始めた。

 

「他はともかく、爆裂魔法に関しては!私は誰にも負けたくないのです!行きます!我が究極の破壊魔法!」

 

紅い瞳を輝かせながら、魔法を唱えた。

 

「『エクスプロージョン』ッ!!」

 

◆◆◆

 

機動要塞デストロイヤー迎撃戦から、数日が経過した。俺とウィズはギルドに入ると冒険者ギルド内は異様な熱気に包まれていた。………まぁ、気持ちはわかるが。

 

「そういえば、ダクネスは今回、立ってただけねー。私は頑張ったわよ!結界破ったし、めぐみんに魔力を分けてあげたり!」

 

「私はもちろん、日に二発も爆裂魔法を撃って大活躍でしたからね」

 

その声の方向を見ると、カズマ達がいた。アクアとめぐみんの言葉にダクネスは身を震わせていた。俺達は近くに行くとウィズが言った。

 

「そう言えば、カズマさんこそ大活躍だったじゃないですか!見事な指揮を執り、私に魔力を供給してくれて………」

 

「ウィズなんて、爆裂魔法を始め、挙句の果てには爆発しそうなコロナタイトをテレポート………。ソウガなんかデストロイヤーの動きを遅くし、光の斬撃でダメージを与えたり、湧いてくるゴーレム達を一掃………。MVPはソウガとウィズだろ?」

 

そう言われると照れくさいな。俺はダクネスを見ると、両手で顔を覆い小さく震えていた。

 

「で、お前の活躍は?」

 

「こっ、こんなっ!こんな感覚はっ!………わあああああーっ!!」

 

ダクネスは頬を染め、顔を覆いながらしゃがみこんでしまった。その時、ギルド内のざわめきが止んだ。見ると、二人の騎士を従えた、黒髪の女性がいた。………確かあいつは………。そう思っていると厳しい眼差しをしながら女性はカズマに言った。

 

「冒険者、サトウカズマ!貴様には現在、国家転覆罪の容疑が掛けられている!自分と共に来てもらおうか!」

 

どうやらまた問題を抱えてしまった様だ。………はぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

ここは魔王軍が建設した軍事施設がある場所だ。そこには高レベルのモンスター達が配備されており、うかつに手を出せないような造りになっているが………。その場所は今、火の海になっており、モンスターの死骸が数え切れない程転がっていた。

 

「な、何故だ!何でこんな事をする!お前もモンスターだろっ!」

 

そう魔王軍の兵士は目の前の奴に言った。

 

「ああ?別に理由なんてねえよ、俺は俺のやりたいように暴れているだけだ」

 

そう言って、全身赤い毛に覆われ、尖った金色の肩に、顔に両翼を広げた火の鳥を意図したモンスターが大剣を兵士に向けて言い放った。

 

「わかったら………。くたばれ」

 

そう言って大剣に炎を纏い、兵士を切り裂いた。

 

「はぁ………。つまらねえな。魔王軍でもこの程度か………」

 

そう言うと剣は炎に変わり消えた。その後、近くにあった死体を蹴飛ばした。

 

「………そう言えば、殺した魔王軍の兵士の一人がおかしな事を言っていたな。確か最後に見たのはアクセルの街の近くの廃街って言っていたな?………行ってみるか」

 

そう言い、そのモンスターは空を見ながら言った。

 

「お前は俺を楽しませてくれるか?………死神」

 

そう言った後、軍事施設から火の鳥が飛び立った。

 




次は3巻の話ですがオリキャラを入れていきたいと思います。


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アクセルの街 バニル編
この死神に看病を!


今回は死神時代のソウガが少し出ます。


「冒険者、サトウカズマ!貴様には現在、国家転覆罪の容疑が掛けられている自分と共に来てもらおうか!」

 

「………ええっと、どちら様?ていうか、国家転覆罪って何?俺、賞金を受け取りに来ただけなんだけど」

 

険しい表情をした目の前の女に、カズマはオズオズと尋ねた。

 

「自分は、王国検察官のセナ。国家転覆罪とはその名の通り、国家を揺るがす犯罪をしでかした者が問われる罪だ。貴様には現在、テロリストもしくは、魔王の手の者ではないかと疑いが掛けられている」

 

その言葉を聞いて、カズマ達は騒ぎ出してしまった。その騒ぎを見ても眉一つ動かさなかった王国検察官のセナが冷たく言い放つ。

 

「その男の指示で転送された、機動要塞デストロイヤーの核であるコロナタイト。それが、この地を治める領主殿の屋敷を吹き飛ばした」

 

爆発寸前のコロナタイトがテレポートで転移した先は領主の屋敷だったのか。俺はセナに話しかけた。

 

「それで屋敷の人達は?………まさか、巻き添えになったのか?」

 

「いえ、使用人は出払っていた上に、領主殿は地下室におられたとの事で、屋敷は吹き飛んでしまいましたが、怪我人は出ていません。ご安心くださいソウガさん」

 

そう言って、頬を染めながら俺に微笑むセナ。なら安心だなと思っているとウィズと何故かルナがジトーっと俺の方を見ていた。どうしたんだ?そう思っているとカズマが安心した状態で言った。

 

「それじゃあ、今回のデストロイヤー戦での死者はゼロって事か、良かった良かった」

 

「何が良い!貴様、状況が分かっているのか?まあ、詳しい事は署で聞こう」

 

その言葉にギルド内がざわめきだした。

 

「ふ、何かと思えば………。カズマは、デストロイヤー戦においての功労者ですよ。褒められはしても、非難されるいわれはありません」

 

めぐみんの言葉に他の冒険者がそうだそうだと言う声が聞こえた。

 

「ちなみに。国家転覆罪は、主犯以外の者にも適用される場合がある。裁判が終わるまでは、言動に注意した方が良いぞ」

 

そう言うと、ギルドがシンと静まり返った。………おいこら、てめえら。

 

「………確か、あの時カズマはこう言ったはずよね。世の中ってのは広いんだ!大丈夫、全責任は俺が取る!………って」

 

「私は、そもそもデストロイヤーの中には乗り込みませんでしたからね。その場にいなかったものは仕方ありませんね」

 

「アクア、めぐみん。お、お前らまさか………」

 

おい待て、まさかこいつら………。そう思っているとカズマを庇う様にダクネスがセナの前に出る。

 

「待て。主犯は私だ、私が指示した。だから………」

 

「あなた、何の役にも立たなかったそうじゃないですか」

 

「!?」

 

傷口を抉られ、ダクネスは涙目になっているが、放置しよう。そう思っていると俺の隣にいたウィズがオズオズと手を上げた。

 

「あ、あの!テレポートを使ったのは私なので、カズマさんを連れて行くなら私も………」

 

「駄目よウィズ!犠牲が一人で済むのならそれに越した事はないわ!カズマが無事お勤めを終えるまで、私達は待っていてあげましょう?」

 

アクアは何か言っているが無視して、俺はセナに言った。

 

「すまない。全責任は俺が取るからカズマを許してくれないか?」

 

「………ソ、ソウガ………。俺のためにそこまで………」

 

カズマが感動しているが、俺はセナの返答を待っていたがセナがこう言ってきた。

 

「ちなみにソウガさんは今回の事に関係していたとしても免除の方針になっていますので何を言っても無駄ですよ」

 

「………何っ!?」

 

俺だけが免除だとっ!?どういう事だ!!

 

「えっ、ソウガだけが免除ってどういう事だ?」

 

「ソウガさんは我々からたまに発注させさせている特務を請けてもらっています。特務とは接触禁止種の討伐や希少モンスターの捕獲などの最高ランクのクエストです。それなりに報酬も高額ですがとても危険なクエストばかり。その特務をソウガさんは完璧にこなしています。その事に王都の貴族や我々は大変感謝しているのでソウガさんは今回の事は免除になっています」

 

確かに俺は特務を請けているが、だからって………。

 

「まぁ、ソウガとウィズは庇うつもりでいたから良いとして、まだ俺にはギルドの皆がついてるからな!」

 

そうカズマが言いながらギルド内を見回すと、他の冒険者達が視線を合わせない様にそっと目を逸らした。

 

「おいふざけんな!お前ら、もっと頑張れよ!もっと抗議しろよ!」

 

そうカズマが言うと魔法使いの女の子がポツリと言った。

 

「私がカズマさんを始めてみたのは………。このギルドの裏で盗賊の女の子の下着を剥いでいた姿でした」

 

「カズマならいつか大きな犯罪をやらかすとは思ってた………」

 

おいこら………。

 

「お前ら、あっさりと手の平返しやがって!無実を証明した暁にはどうなるか………。どいつもこいつも覚えてろよおおおおおおお!」

 

そう言ってカズマは騎士に連れられ出て行った。………俺は壁際に移動した。

 

「………ソウ君?」

 

「………そが………」

 

「どうしたの?ソウガ?」

 

「くそがああああああああっ!!!」

 

俺は怒りを込めた拳を壁に叩き込んだ。叩き込まれた壁は轟音を発しながら吹っ飛んだ。………俺はパーティーメンバーの一人も救えないのかっ!!くそっ!!

 

「ソ、ソウガ!?」

 

「くそっ!!くそっ!!くそがあああああああっ!!!」

 

「ソウ君!落ち着いて!」

 

何発か殴った後、ギルドの壁に大穴が開いていた。俺はなんとか怒りを鎮めると。

 

「すまないルナ。この壁の修理費はクエストの報酬から天引きしといてくれ」

 

「は、はい………。わかりました」

 

そう言って、俺はクエストを何枚か請け、ギルドを出た。その後をウィズがついて来ていた。俺の隣に来るとウィズが言った。

 

「大丈夫だよ。カズマさんはきっと帰ってくるよ………」

 

「ああ、すまないな。ウィズ」

 

そう言って、俺達は店に戻るために一緒に歩いた。

 

◆◆◆

 

あれから数日後、カズマの裁判の時がやって来た。裁判の前にアクアがカズマを脱走させようという話を持ちかけてきた。俺達は警察署に行き、カズマを脱出させようとするが作戦が悪かった。俺達が騒ぎを起こして、アクアがカズマを助ける手はずだったのだが、最初は針金一本を渡しただけで終わり。二回目は糸ノコギリで窓の格子を切って脱出するというものだったが、カズマの身長より高い所にある窓に届くはずがなかった。

 

「というわけで、今日は裁判の日だ。絶対にカズマを助け出すぞ」

 

俺達はギルドで裁判のための会議をしていた。

 

「ところでソウガ、大丈夫ですか?顔色が悪いですよ」

 

「そうなのか?最近、あまり寝ていないからな」

 

カズマの無罪の証拠を集めるために寝る間も惜しんでいたからしょうがないか・・・。そう思っていると、ダクネスが聞いてきた。

 

「ちなみに、いつ寝たんだ?」

 

「ギルドに来る。少し前ぐらいだな」

 

「全然寝てないじゃないか!?今日はもう休んでろ!」

 

「カズマの裁判があるのに俺だけが寝てるわけにはいかない。まだ、大丈夫だ。心配するな」

 

「それなら、いいが………」

 

ダクネスは渋々そう言った。ちなみにアクアは寝ていて会話に入っていない。

 

「じゃあ、そろそろ行きますか。ほらアクア起きてください」

 

「ふぇ………。どうしたの?めぐみん」

 

「カズマの弁護のために裁判所に向かいますよ」

 

「ああっ!!そうよ、待ってなさいカズマ!」

 

そう言ってやる気まんまんのアクアは放っておいて、俺も………。そう思って立ち上がろうとするが、目眩がしてバランスを崩した。

 

「お、おい!ソウガ、大丈夫か?フラフラだぞ!」

 

「悪………い。少し、目眩………が………」

 

そう言って俺は倒れた。

 

「ソ、ソウガ!?」

 

「ソウガ!?大丈夫ですか!?」

 

アクアとめぐみんが言っているが、俺はそのまま意識を失った。

 

◆◆◆

 

気付くと俺はある光景を見ていた。俺がまだ死神時代の時にウィズに再開した日の光景。そして………。

 

「何故だ!!どうしてお前が罪深い魔王軍の幹部に!!」

 

「そんな事は今はどうでもいい!!」

 

「ウィズ!!」

 

俺がウィズを殺そうとした日の光景だ………。あの時の俺は魔王軍が憎くてしょうがなかった。だから、ウィズが魔王軍の幹部になったと知らされて、ウィズの存在が憎くなってしまった。そう思っているとウィズが光の剣で追撃をするが、俺が新たに発動したクローで防がれてしまった。

 

「くっ!!」

 

ウィズが悔しがると俺は独り言を言っていた。

 

「皆、このままじゃお前達の涙は止められない………。この戦いで俺は、こいつを悔い改めさせてみせる!!」

 

「皆はこんな事望んでなんかいない!!」

 

「罪深い魔王軍の幹部になんかになったお前なんかにはわからない!!」

 

「ソウ君!!」

 

お互いの攻撃で弾き飛ばされたが、かろうじてバランスを保ち、次の魔法を準備した。

 

「私は皆のためにソウ君を止める!!」

 

「あいつらの事をお前ごときが口にするな!!」

 

そう言って俺達は魔法を発動した。

 

「『カースド・ライトニング』!!」

 

「『ドラゴニックフレイムブレイカー』!!」

 

俺達の全力の魔法がぶつかった。

 

◆◆◆

 

俺がゆっくりと目を開けるとそこは俺とウィズの寝室だった。

 

「ソウ君。気が付いたんだね。良かった………」

 

俺は隣を見ると椅子に座っているウィズがいた。俺は起き上がろうとしたが、ウィズが止めた。

 

「駄目だよ!ソウ君、過労で倒れたんだよ。だから、今日は安静にして」

 

「俺はどれぐらい気を失っていたんだ?」

 

「疲れが溜まっていたからかな?もう夕方だよ?」

 

そう聞いて、外を見ると日が落ちようとしていた。………ッ!!しまった!!

 

「裁判はどうなったんだ!!カズマは無事なのか!!」

 

「大丈夫だよ。さっきカズマさんとアクア様が来て、無事だって事を伝えにきたよ」

 

「そ、そうか………。良かった」

 

それからウィズに裁判の結果を聞いた。ダクネスの交渉の結果、カズマに二つの課題を与えられた。一つ目は魔王軍の手の者ではないと証明する事、二つ目は屋敷の弁償だ。そして、屋敷の弁償をするために魔道具店にカズマの考案した品を置くことになった。商品が増えるのはありがたい。明日カズマにお礼を言いに行くかと思っていると、ウィズがお粥を持ってきた。

 

「ソウ君、お粥、持って来たんだけど食べれる?」

 

「ああ、ありがとうなウィズ」

 

「じゃあソウ君。はい、あーん」

 

そう言って俺に食わせようとしてきた。………恥ずかしいんだが。

 

「いや、自分で食べれるから………」

 

「駄目です。ならこのお粥は没収です」

 

空腹の状態で没収は勘弁してくれ………。

 

「わ、分かった」

 

「よろしい。はい、あーん」

 

「あ、あーん」

 

そう言って、俺の口にお粥を入れる。………うん、美味い。

 

「美味しい?」

 

「ああ、美味いぞ」

 

「そう、良かった」

 

そう言って、ウィズは微笑む。だが、俺は夢で見た光景のせいで不安になってしまっていた。

 

「なぁ、ウィズ。今の生活は幸せか?」

 

「急にどうしたの?」

 

「いや………。すまない、忘れてくれ」

 

俺はウィズから、その先の言葉が不安で聞けずにいた。そう思っているとウィズがお粥を置いて、俺の顔を胸元に寄せた。

 

「幸せだよ。こうしてソウ君と一緒にいられて」

 

「俺に殺されそうになってもか?」

 

「それでもだよ。ずっと一緒にいたいって思ってた。だからどんな事があっても、私の気持ちは変わらないよ」

 

「そうか………ありがとうな」

 

その言葉を聞いて俺は安心した。そして、俺は改めてこの命を大切な幼なじみの夢を守るために使うと誓った。




次はやっとあの紅魔族が帰ってきます。


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この死神に友人との再会を!

やっとあの紅魔族を再び出せました。


「伝えるのが遅くなってしまった。商品の件、ありがとうな。あと役に立てなくてすまない」

 

裁判から数日が経った。本当は倒れた翌日にお礼と謝罪に来たかったんだがウィズが許してくれず、何日か休息を取った。しかし、身体が流石に少しなまってしまったので、俺はリハビリもかねて単独でクエストを請けて、やっと本調子に戻ったのでカズマにお礼と裁判の時に役に立てなかった事を謝っていた。

 

「気にしないでくれ。俺のために証拠を集めてくれてたんだよな?少なくともそこの自称何とかよりは役に立っているから」

 

「自称なんかじゃなくて本物の女神よ!あんた、本気で罰当てるわよっ!」

 

アクアがそう言った後、俺のズボンが何かに引っ張られていた。見てみると、そこには魚を持っている黒猫がいた。

 

「なーお」

 

「何だ?この黒猫」

 

「ああ、めぐみんが連れて来た。黒猫なんだ」

 

なるほど。俺はその黒猫を撫でると黒猫が俺の手を舐め始めた。………少しくすぐったい。

 

「ちなみに名前は?」

 

「ちょむすけです」

 

「そうか………。よろしくなちょむすけ」

 

「なーお」

 

まるで返事をするようにちょむすけは鳴いた。

 

「ところで二人とも、先程は一体何を騒いでいたのですが?ダクネスの事なら、もう子供ではないのですし、たまには帰ってこない日もありますよ。ちょっとは落ち着いてください」

 

「うん?二人が騒いでいたのか?」

 

「はい。ダクネスを心配で騒いでいたんだと思います」

 

ダクネスは領主との約束を果たすために、領主の屋敷に言っている。………心配だ。そう思っているとカズマがめぐみんに言った。

 

「………お前、随分と落ち着いてるな。今頃ダクネスがどんな目に遭っているかがわかってんのか?」

 

「仮にも領主という立場の人間が、ダクネスを………。い、いえ、確かにあの領主の良くない噂を数多く聞きますが、ダクネスだって一端の冒険者ですよ?そう易々と手籠めにされるとは思えませんよ」

 

「全く、これだからお子様は!未だにあの変態の事がわかっていないのかよ!『くっ!私の体は自由にできても、心までは自由にできると思うなよ!貴様なんかに絶対に負けないっ!』とか、頬を火照らせながら言うに違いないぞ」

 

「!?」

 

確かにあの変態なら言いそうだなと思っていると、めぐみんが魚をかじっていたちょむすけを抱きかかえた。

 

「ど、どど、どうしましょう!ダクネスが、ダクネスが酷い事に!」

 

「既に一晩以上経っている、もう手遅れだ。いいかお前ら、ダクネスが帰って来たら、普段と変わらず優しくしてやるんだぞ」

 

「わ、分かったわ!何があったのかは聞いちゃいけないって事ね!」

 

「あわわ………!ダクネスが………、ダクネスがあ………」

 

その二人を見ていた俺も、無言で頷いた。………その時だった。

 

「サトウカズマ!サトウカズマはいるかあああ!」

 

その怒声と共に、玄関のドアが開けられた。荒々しくドアを開けたのはセナだった。

 

「お、おいなんだよ、身の潔白を証明する日まで、まだ間があるだろ!?悪いが、今はあんたに構ってる暇はないんだよ、俺の仲間が………」

 

「構っている暇はないだと!?抜かせっ!やはり貴様は、魔王軍の手の者だろう!よくもまたやらかしてくれたな」

 

「や、やらかしたって、何を………?」

 

「カエルだっ!街周辺に、冬眠中だったカエル達が這い出してきている!」

 

ジャイアントトードが這い出したからって、それが俺達の仕業だと?………ふざけるな。

 

「ジャイアントトードが這い出したからって、それが何で俺達の仕業だと言うんだ?それなりの根拠があるんだろうな?」

 

俺はそう言ってセナを睨み付けた。セナは一瞬ビクッてした後、すぐに落ち着いてこう言った。

 

「カエル達は、ギルド職員によると何かに怯える様に地上へと這い出してきたそうです。………怯えるといえば、ここ連日、街のすぐ傍で爆裂魔法を連発して住人を脅かしてくれた人がいたと思いましてね」

 

屋敷の奥に逃げ出そうとしたアクアとめぐみんをカズマが捕まえた。………はぁ。

 

「待ってください、私はアクアに命令されてやっただけなのです!実行犯は確かに私ですが、主犯はアクアです!」

 

「めぐみんズルいわ!話を持ち掛けた時はノリノリだったじゃないの!我が力を見るがいいとか言ってたクセに!」

 

「醜い言い争いしてる場合か!お前らがやらかした後始末をしに行くぞ!」

 

そう言って俺達はジャイアントトードの討伐に向かった。………はぁ。

 

◆◆◆

 

「嫌ー!もう嫌あああ!カエルに食べられるのは、もう嫌あああああっ!!」

 

「………はぁ」

 

雪景色の街の外でカエルに追われているアクアの悲鳴が響き渡った。それを見て俺はため息をついた。

 

「しかし、ここのカエルはこの寒さの中でも動きが鈍くはならないんだなあ。普段と変わらない速さで活動してやがる」

 

「過酷な世界だからこそ、生き物は皆、その時その時を精いっぱいに生きるのです。私達も負けていられませんよ。もっともっと強くなって、過酷なこの世界を生き抜くのです」

 

カズマの呟きに、めぐみんがそう言った。………肩から下をカエルに呑まれた状態で。めぐみんは既に爆裂魔法を放ち、多くのカエルを討伐した後だ。杖がつっかえてなのか、カエルの方もそれ以上吞み込もうとしなかった。

 

「待ってろ、今助けてやるからな」

 

「いえ、アクアを追っているカエルを倒してからでいいですよ、外は寒いですし。カエルの中はぬくいのです」

 

「あ、あなたは、仲間がカエルに呑まれ、更には別の仲間が追いかけられているというのに、随分と冷静ですね」

 

「このパーティーにとってこれはいつもの光景だ。諦めてくれ」

 

俺は呆れているセナにそう言った。カズマは事前に買っておいた弓と矢を取り出した。カズマはアーチャーのキースから弓と狙撃というスキルを教えてもらっていた。これで遠距離攻撃ができると思っていると、カズマが騒ぎ出した。

 

「ソ、ソウガ!カエルが十匹ほど、近くまで来そうなんだ。何とかできないか?流石にあれだけ多いと厳しい」

 

「分かった」

 

その言葉を聞き、俺は遠くを見ると、遠くから確かにカエルが十匹ほど来ていた。俺は魔法陣を展開した。

 

「『タイムストップ』」

 

そう俺が唱えると、時が停止し、俺だけが動けるようになった。俺はクローを装備して一瞬でカエル達に接近して切り裂いて、カズマ達のもとに戻り、魔法を解除すると十匹のカエルが同時に絶命した。

 

「えっ!?ソ、ソウガ?一体何をしたんだ?」

 

「ただ時を止めて切り裂いただけだ」

 

「時を止めた!?そんな魔法も使えるのか!」

 

「ああ、だけど一回の使用に結構な魔力が必要だけどな。………だが、この魔法の凄い所は、ただ時を止めるだけじゃない」

 

「えっ?それってどういう事だ?」

 

「この魔法は自分自身にも発動できるんだ。そうすると体の成長が止まり、年を取らなくなる。つまり殺されたり病気で死なない限り、永遠に生きられる」

 

「もう何でもありだな。神滅魔法」

 

そうタイムストップは不老の魔法でもある。俺は魔王軍を殲滅するために二十歳の時に、この魔法をウィズと再会して眷属になるまで発動し続けていた。一日の魔力回復がタイムストップ分減るが、それでも魔力が十分だったから問題なかった。眷属になって年を取らなくなってからは必要は無くなったけどな。そう思っていると、また遠くから三匹のカエルが来そうだった。

 

「俺は遠くにいるカエルを始末してくる。いいか?カズマ」

 

「ああ、任せた」

 

「セナも気をつけろよ?危なくなったら別に逃げても構わないからな」

 

「分かりました。ソウガさんもお気をつけて」

 

「ああ」

 

俺はそう言うと遠くにいるカエルに向かった。カエルから少し離れた所まで来ると、カエルが舌を伸ばし絡め取ろうとしてきたので、俺は魔法陣を展開した。

 

「『ソニックアクセル』」

 

俺がそう唱えると、俺の動きが超光速になり、カエルの舌がまるで止まっているかのようにゆっくり動いていた。俺はさらに魔法陣を展開した。

 

「『フォトンブレイク』!」

 

俺がそう唱えると一匹のカエルに黒い光の線が当たると円錐状に変わり、エネルギーが回転しながらカエルの動きを制限して飛び蹴りを円錐状のエネルギーと共に叩き込んだ。そうすると円錐状のエネルギーが高速回転してカエルの体を貫通した。俺は残り二匹のカエルにも超光速の状態で同じ動作を行い、三匹のカエルを始末した。

 

「よし、これでいいだろ」

 

俺はそう言って、俺は魔法を解除してカズマの方を向くと、三匹のカエルがカズマ達の近くにいた。カズマ達は焦り騒いでいた。俺は急いでソニックアクセルをもう一度発動しようとすると………。

 

「『ライト・オブ・セイバー』!」

 

そう聞き覚えのある声が響き渡った。それと同時にめぐみんを呑み込んでいたカエルの胴体に光の線が走り、カエルを真っ二つにした。カズマがめぐみんを助け出している中。

 

「『エナジー・イグニッション』!」

 

再び響き澄んだ声が聞こえ、カエルが発火し、青白い業火に包まれた。俺は遠くからその光景を見ていると、黒のローブに身を包んだ一人の少女がいた。………いや、あれは。その後はカズマ達と話をしていた。俺は残りのカエルを始末して、カズマ達に合流しようと歩いていると、アクアを連れた、セナがこっちに向かって歩いてきた。

 

「ソウガさん。少しよろしいでしょうか?」

 

「ああ、別に構わないが」

 

「ちょっと!早くギルドに行きたいんですけど?」

 

「すまない。すぐ終わるから、先に行っててくれ」

 

「しょうがないわね。わかったわ」

 

そう言って、アクアは先にギルドに向かった。………さて。

 

「それで何の用だ?王国検察官さん?今度は俺を連行するのか?」

 

「や、やめてください!意地悪言わないでください!私達の仲じゃないですか!」

 

「知るか………、少なくとも俺のパーティーメンバーをきちんとした証拠もないのに連行するような奴は俺の友人にはいない」

 

「証拠はちゃんとあります!ですが、謝るので許してください」

 

そう、実はセナは俺の数少ない友人の一人だ。昔、特務で知り合い友人関係になった。たまに飲みに誘って愚痴を聞いたりしている。あと、冒険者では手に入りにくい情報を教えてもらったりしてもらっている。

 

「まあいい、ところでどうしたんだ?」

 

「はい、実はまだ冒険者ギルドにはまだ入ってない情報を入手しまして、実は魔王軍の軍事施設の一つが壊滅させられたそうです」

 

「………冒険者がやったのか?」

 

「いいえ。どうやらモンスターの様です。………しかも一体のみだそうです」

 

一体のモンスターに魔王軍の軍事施設が壊滅だと?

 

「………その話が本当なら、そのモンスターは少なくとも魔王軍の幹部並の力を持っている事になるな」

 

「はい、まだ現状どんな姿なのかがわかりませんが、一応、気を付けてくださいね」

 

「ああ、ありがとうな。セナ」

 

そう言ってセナは立ち去った。俺はカズマ達に合流した。俺に気付いたカズマが俺に言った。

 

「任せっぱなしにして悪かったな。ソウガ」

 

「えっ!?」

 

カズマの言葉に少女は驚いた状態で俺の方へ向いた。俺は少女に微笑んで言った。

 

「久しぶりだな。ゆんゆん」

 

「ソウガさん!」

 

そう言うとゆんゆんは俺に抱き着いた。………おいおい。

 

「えへへ、ソウガさん。久しぶり」

 

「ああ、その様子だと上級魔法を習得できたんだな」

 

「はい!これで私もやっと一人前になれました!」

 

「えっと………。ソウガとゆんゆんは知り合いなのか?」

 

「ああ、少しの間だったが、俺がゆんゆんを鍛えた」

 

「ソウガさんは凄いんですよ!私が勝てなかった上位悪魔を圧倒して、しかも特訓も的確なアドバイスをしてくださったおかげで上級魔法の一つを覚える事ができたんです!」

 

「ゆんゆん。少し落ち着け」

 

「あっ、ごめんなさい」

 

そう興奮気味に言うゆんゆんを落ち着かせた。………やれやれ。

 

「そうだ!ソウガさんに紹介するね。私の友人のめぐみんです!」

 

「違います。友人ではありません」

 

「ええっ!?」

 

「いつの間にか私の仲間に出会い、鍛えてもらっている人なんか知りません」

 

「ま、また!?めぐみん機嫌を直してよ!」

 

そう言ってめぐみんの肩を揺らし始めるゆんゆん。………まさか、ゆんゆんの友人がめぐみんだったとはな。

 

「めぐみん。それぐらいにしてやれ」

 

「仕方ないですね………。今回だけですよ。ゆんゆん」

 

「………何で私が悪いみたいになってるの?」

 

そう言ってゆんゆんは呆れてしまっていた。………はぁ。

 

「ゆんゆん………。そんな事より、めぐみんと約束した事があるだろ?」

 

俺のその言葉に、ゆんゆんがハッとした様に顔をあげ、めぐみんとカズマから距離を取った。

 

「そうよ、めぐみんが私を知らないなんてとぼけた事言うからおかしな展開になったけど………。めぐみん、私はあなたと決着をつけに来たのよ!あなたとの約束通り、私は上級魔法を習得したわ。あとはあなたに勝って紅魔族一の座を手に入れる。さあ、めぐみん。この私と勝負なさい!!」

 

「嫌ですよ。もう体も冷えてきて寒いですし」

 

「そっか。じゃあ帰るか」

 

そう言って、カズマとめぐみんは帰ろうとした。………おいおい。

 

「ちょちょちょ、ちょっと待って!ねえ、何で?久しぶりに会ったのに、何故そんなに冷たくするの!?めぐみん、お願いよ、勝負してよー!」

 

そんなカズマ達にゆんゆんが慌ててすがりついてきた。それを見ためぐみんがため息を吐いた。

 

「………しょうがないですね。では、こうしましょう。私は今日はもう魔法が使えません。なので勝負方法はあなたが得意だった、体術でどうですか?武器は無し。勝敗はどちらかが降参するまで。………で、どうですか?」

 

「………いいの?その、学園ではロクに体術の授業に出なかっためぐみんが………。昼休みの時間になるとこれ見よがしに私の前をちょろちょろして、勝負を誘って私からお弁当巻き上げていたあなたが?」

 

「………お前、ロクでもないな」

 

「………私だって死活問題だったんです。家庭の事情で、彼女の弁当が生命線だったのです」

 

「わかった、その勝負方法でいいわ。………そして、こう言うんでしょう?勝負には対価が必要だって!対価はこのマナタイト結晶。かなりの純度の一級品よ!」

 

「よろしい、では、どこからでも掛かってきなさい!」

 

めぐみんが威嚇するように両腕を広げて宣言した。それに対してゆんゆんが、腰を落として拳を構えるが………。

 

「………ねえめぐみん。あなたの体がテラテラしてるんだけれど。それってもしかして………」

 

「そーですよ。これはカエルの粘液です。………さあ、そんな事より掛かってきなさい!近付いた瞬間に、思い切り抱きついてそのまま寝技に持ち込んであげます!」

 

「め、めぐみん?笑えない冗談は止めてね?嘘でしょ?私の戦意を挫いて、降参させようって作戦なのよね?」

 

「私達、友達ですよね。友人というのは、苦難を分かち合うものだと思います」

 

その言葉にゆんゆんは、背を向けて走り出した。それをめぐみんが追いかける。

 

「降参!降参するから!マナタイトならあげるから、こっち来ないで!」

 

「………ソウガ。これって勝負なのか?」

 

「………俺に聞かないでくれ。………はぁ」

 

俺とカズマはそのやり取りを見て、そう言った。




次は新たな敵を出そうと思います。


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この死神に凶敵を!

敵の名前を少しだけ変えています。


「………きょ、今日のところは私の負けにしといてあげるからあああああああっ!!」

 

そう言って、めぐみんによってヌルヌルにされたゆんゆんは泣いて帰っていった。………はぁ。

 

「今日も勝ち」

 

その光景を見てめぐみんがそう言った。………おいおい。

 

「めぐみん………。約束した事ぐらい守ってやれ」

 

「それはそうでしょうが、今日はもう魔法が使えませんので仕方ないのです」

 

まぁ………。確かに仕方ないが。

 

「じゃあ、俺達は帰るけどソウガはどうするんだ?」

 

「俺はクエストを請けようと思っているからギルドに向かう」

 

「そうか、じゃあ、俺達は先に帰るな」

 

「ああ」

 

そう言ってカズマとめぐみんは帰っていった。………やれやれ。

 

「じゃあ、俺も向かうか」

 

俺はそう言い、ギルドに向かった。

 

◆◆◆

 

ギルドに到着した俺は掲示板に向かおうとしたが、テーブルに一人で食事をしている、ゆんゆんを見つけた。風呂に入ってカエルの粘液を落とした後だろうか?俺はゆんゆんの所に向かい声をかけようとしたが………。

 

「………めぐみんのバカ。久しぶりに会ったのにあの態度は何なの?私はあの約束のために必死に上級魔法を習得したのに………」

 

ゆんゆんはそう独り言を言っていた。………はぁ。

 

「ゆんゆん」

 

「あっ………。ソウガさん」

 

俺はゆんゆんに声を掛けた後、ゆんゆんの前の椅子に座った。

 

「すまなかったな。めぐみんの事」

 

「い、いえ!ソウガさんのせいじゃないよ!これは私達の問題だから謝らないで!」

 

「そうか、ありがとうな」

 

そう言って、俺はゆんゆんの頭を撫でた。

 

「えっ!あ、あの」

 

「立派になったな、ゆんゆん」

 

俺はそう言い、ゆんゆんの頭を撫で続けた。

 

「………えへへ」

 

気持ちいいのか、ゆんゆんが笑っていた。でも流石にこれ以上はマズイと思い、俺は撫でるのをやめ、頭から手を離した。

 

「………あっ」

 

ゆんゆんから名残惜しそうな声が聞こえたが、多分気のせいだろう。

 

「さて、俺はこれからクエストに行こうと思うんだが、ゆんゆんも一緒に行かないか?」

 

「気持ちは嬉しいけど、今日は自分の修行の成果を試そうって思ってて、掲示板にパーティーメンバー募集の紙を貼ってから一人で請けてみようかと」

 

「そうか、ちなみにゆんゆんのパーティーメンバー募集の紙を見せてもらっていいか?」

 

「う、うん。どうぞ」

 

俺はゆんゆんにパーティーメンバー募集の紙を見せてもらったが………。

 

『パーティーメンバー募集しています。優しい人、つまらない話でも聞いてくれる人、名前が変わっていても笑わない人。クエストが無い日でも、一緒にいてくれる人。前衛職を求めています。できれば歳が近い方。修行の旅から帰ってきたばかりのアークウィザードで―』

 

………………。

 

「………ゆんゆん。これ、友達や彼氏募集の紙か?」

 

「ち、違うよっ!?やっぱりダメかな?じゃあ、こっちの紙なら良いかな?」

 

そう言って、別の紙を見せてもらった。

 

『パーティーメンバー募集してます。希望としては、会話が続かなくても大丈夫な人、毎日訪ねて行っても引かない人、目を合わせて会話ができなくても怒らない人。職業不問、年齢不問です』

 

………まぁ、さっきの紙よりはマシか。

 

「………これなら、多分大丈夫だと思うぞ」

 

「本当?じゃあ、この紙を貼ってくるね」

 

そう言ってゆんゆんはパーティーメンバー募集の紙を掲示板に貼りに行った。俺はクエストが張り出されている掲示板に移動して、クエストを見ていた所にゆんゆんがやって来た。

 

「良いクエストはありそう?ソウガさん」

 

「いや、まだ見つかっていないぞ」

 

そう言った後、俺達はクエストを見ていたが中々見つからなかった。俺は悩んでいると前にヒュドラを討伐した廃街でグリフォンが暴れているから討伐してほしいというクエストを見つけた。

 

「ゆんゆん。俺はこのグリフォン討伐に行ってくるな」

 

「うん、私もこの大蛇討伐に行くからお互い気をつけようね」

 

「ああ、わかった」

 

そう言って俺はゆんゆんと別れ、グリフォン討伐に向かった。

 

◆◆◆

 

「それじゃあ、探すか」

 

俺は廃街に到着し、グリフォンを探すために魔法陣を展開した。

 

「『レベルサーチ』、『モンスターサーチ』」

 

俺はモンスターの場所を把握して、その中でレベルの高いモンスターを探したが………。

 

「どうやら必要ないみたいだな」

 

俺はそう言うと魔力を足に込め、高く飛んだ。そうすると俺がさっきいた場所にグリフォンが横切り、空中にいる俺に襲い掛かった。

 

「『ドラゴニックウイング』」

 

俺は翼を展開してグリフォンの攻撃を避けた。

 

「お前の得意な空中戦で相手してやる。来い」

 

そう俺が言うとグリフォンが突進を仕掛けてきたが俺はその攻撃を躱して、魔力を込めた蹴りを背中に畳み込んだ。グリフォンは少し吹っ飛ばされたが、すぐに態勢を立て直し俺に向かってきた。俺は魔法陣を展開して。

 

「『マジックブラスター』」

 

俺はそう唱えると、無数の魔法陣が展開してその中を光線が通ると巨大化していき、グリフォンを飲み込んだ。その攻撃を受けたグリフォンは爆散し塵となった。俺は地上に降り、魔法を解除した。

 

「これで終わりだな」

 

そう言って、俺は帰ろうとした時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ようやく、見つけたぜ!」

 

「!?」

 

その声が聞こえた後、目の前に炎の塊が落下してきて、その中から全身赤い毛に覆われ、尖った金色の肩に、顔に両翼を広げた火の鳥を意図したモンスターが現れた。

 

「………何者だ」

 

「俺の名はフィニクスって言うんだ。お前が死神で良いんだよな?」

 

俺の事を死神って呼ぶって事は魔王軍か?

 

「お前は魔王軍か?」

 

「ああ?いや、俺は魔王軍じゃねえよ」

 

魔王軍じゃない?なら何でこいつは俺の事を死神って知っている。俺はフィニクスって言うモンスターに聞いた。

 

「何でお前は俺の事を死神って知っている」

 

「前に暇潰しに魔王軍の軍事施設を襲った時に聞いたんだ。黒い服装で見た事のない魔法を使う化け物並みに強い死神の事をな」

 

「何っ!?」

 

じゃあこいつが魔王軍の軍事施設を襲ったモンスターか!そう思っているとフィニクスは言ってきた。

 

「まぁ………。そんな事はどうでも良いじゃねえかよっ!」

 

そう言って火炎弾を俺に放ってきたが、俺はそれを魔力の込めた右腕で弾き飛ばした。火炎弾は俺の右隣の廃屋に当たり爆発をした。

 

「ほう、良いじょねえか。今の火炎弾は魔王軍の兵士を十体程、吹き飛ばす威力だったのによ。これなら俺を楽しませてくれそうだ」

 

「生憎だが、俺はそんなに暇じゃない」

 

「てめえの都合なんか知った事か。それにてめえが戦わないって言うんならここら辺の街を襲い皆殺しにするだけだ」

 

こいつ、今何て言った?街を襲う?俺の仲間と大切な幼馴染を殺すって言ったか?………ふざけるな。

 

「良い顔する様になったじゃねえか」

 

俺に向かってフィニクスはそう言ったがそんな事はどうでも良い。

 

「気が変わった。相手してやるよ」

 

「おう、楽しませてもらうぜ」

 

そう言ってフィニクスは炎を大剣へと変え、俺に襲い掛かった。

 

◆◆◆

 

「『マジック・クリエイト』」

 

ソウガは魔法で双剣を作り出し、フィニクスの攻撃を防ぐ。

 

「やはり良いな死神、俺の攻撃を簡単に防ぐなんてな」

 

「こんな攻撃なんか攻撃の内に入らない」

 

「言ってくれるじゃねえか!ならこっちも全力で行かせてもらうぜ!」

 

そう言い、さらにフィニクスは攻撃を続けるがソウガはその攻撃を躱した。フィニクスは連続で火炎弾を放つがソウガはその攻撃を弾き飛ばしながら接近していく、辺りで爆発が起こるがソウガは気にせず、フィニクスの横腹と背中を切った。

 

「ぐっ!!」

 

「一気に終わらせる」

 

ソウガはそう言い魔法陣を展開した。

 

「『スペースバインド』、『ブリザードランス』!」

 

そうソウガは唱えるとフィニクスの手足を魔法陣が拘束した。

 

「くそっ!!こんなものでこの俺をっ!!」

 

フィニクスは拘束を外そうとするが、フィニクスの周りの水分が凍りだし全方位に氷の槍が形成されてフィニクスに向かって発射されるが………。

 

「ぐっ!!………うぉおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

そうフィニクスが咆哮すると、フィニクスは発火し、建物事、周りの魔法を吹き飛ばした。

 

「何っ!?」

 

その衝撃でソウガも吹き飛ばされるが、何とか態勢を立て直した。

 

「チッ、なんつう高魔力の炎だ」

 

「これは地獄の業火って言う俺のスキルだ。それでもう終わりか?」

 

「笑わせるな。まだ始まったばかりだろ」

 

「そうだな、俺もまだ全然満足してねえからな!」

 

そう言うとフィニクスとソウガはお互い向かって行った。フィニクスは大剣に炎を纏い斬りかかってくるがソウガはその攻撃を魔力を込めた双剣で受け止めたがその衝撃でお互いの武器が壊れた。お互いの武器が消えるとお互い拳のラッシュを始めた。

 

「「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」

 

お互い攻防一体のラッシュを続けたが、少しづつソウガのラッシュが押してきて、最後の拳がフィニクスの腹部に直撃し、フィニクスを吹っ飛ばした。

 

「は、はは、あはははははっ!!これが死神の力かっ!すげえ良いじゃねえかよ!!」

 

そう言いながらフィニクスは体を発火させ、その炎を右腕に集中させ始めた。ソウガは魔法陣を展開して胸板に龍の頭を出現させて龍の口に魔力を集中させた。

 

「これで終わりだっ!!」

 

フィニクスはそう言うと拳をソウガの方へ向けると炎で形成された鳥が出現しソウガに襲い掛かった。それを見たソウガも魔法を唱えた。

 

「『ドラゴニックフレイムブレイカー』!!」

 

ソウガがそう唱えると龍の口から高魔力の炎が放出し、炎の鳥を飲み込みフィニクスに命中した。フィニクスは何とか耐えようとするが体の一部が消え始めた。

 

「あはははははっ!!この俺を圧倒するかっ!!最高じゃねえか死神!!あははっ、あはははははははっ!!」

 

フィニクスはそう笑いながら言った後、爆散した。ソウガは魔法を解除するが………。

 

「………何であいつは笑っていたんだ?自分が死にそうだって言うのに・・・」

 

ソウガはフィニクスの最後の笑いながら死んだ事に疑問を持っていた。しかし、少し考えた後、ソウガは背を向け歩き始めた。

 

「………帰るか」

 

そう言いソウガは不安を抱えながら帰った。

 

◆◆◆

 

「………あいつ、何で最後に笑って………」

 

そう俺は寝間着姿に着替え寝室でベッドに寝転びながら、そう考えていた。何か不吉な事が起こる予感がしてならなかった。そう思っていると寝室に寝間着姿のウィズが来た。

 

「どうしたの?ソウ君」

 

「いや、何でもないさ」

 

「そう?なら良いんだけど」

 

そう言うとウィズはベッドに入り、俺に寄り添ってきた。

 

「えへへ、ソウ君の体、温かくて凄く安心する」

 

「………そうか」

 

俺はそう言うとウィズの頭を撫でた。何を考える必要なんてある?やる事は変わらないじゃないか。

 

「どんな事があっても、お前を守るからな」

 

「………うん」

 

俺は大切な幼馴染と俺の仲間が住む、この街を守るだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

ソウガとフィニクスが戦った廃街は静けさだけがあった。モンスターも現在はいない状態なので当たり前なのだが、そんな時、地面に火の粉が集まってきてそれが人型になっていき最終的にフィニクスに戻った。

 

「良いじゃねえか死神!この俺を殺すなんてな」

 

そう言いながらフィニクスは空を見た。

 

「絶対に俺がてめえを倒す!この不死鳥のフィニクス様がな!はは、あはははははっ!!あはははははははははっっ!!!」

 

フィニクスの笑い声が廃街に響き渡った。




次の話で新キャラを出そうと思います。


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この死神に鉄拳との再会を!

今回は新キャラを出そうと思います。


謎のモンスターのフィニクスとの戦いがあった日から一日が経過した。俺は昨日のグリフォンの討伐の報告のついでにクエストを請けて今日の朝から出発したが、予想以上に早く終わってしまった。俺は別のクエストを請けようとギルドに向かっていた。

 

「最近、この街の近くに妙なモンスターが出るらしいぜ。何でも、強さ自体はそれほどでもないらしいんだが………」

 

「ああ、俺も聞いたな。変わった姿をしていて、動く物を見かけるとくっついて自爆するってヤツだろ?」

 

「俺も聞いたぞ。変な仮面のモンスターだろ?確かキールのダンジョンの近くで湧いているんだってな」

 

俺は三人組の冒険者の話が耳に入った。キールのダンジョンに仮面を被ったモンスターが湧いている?………そんな事ができるのは一人しかいない。俺は後にキールのダンジョンに向かおうと思ったが………。

 

「………はぁ」

 

俺はため息を吐いた。昔、俺とウィズはそいつに散々からかわれた。ウィズはそいつと友人らしいが俺は、はっきり言って苦手だ。そう思っていると射的の露店の近くにぬいぐるみを抱きかかえているゆんゆんがいた。俺はゆんゆんに一言声を掛けようと思い、ゆんゆんの方へ向かった。

 

「ゆんゆん」

 

「あっ!ソウガさん、こんにちは」

 

「今は露店を回っているのか?」

 

「はい、さっきカズマさんが来てこの冬将軍のぬいぐるみを取ってくれたの」

 

「そうか、良かったな」

 

そう言っていると、ふと思った。ゆんゆんはどうやら一人で露店を回っているみたいだった。………どうせ、早く終わったからいいか。

 

「ゆんゆん、折角だし俺と一緒に露店を回らないか?」

 

「えっ、いいの?」

 

「ああ」

 

「あ、ありがとう!」

 

ゆんゆんがそうお礼を言ってきた。

 

「じゃあ、あっちに人だかりができているので行ってみませんか?」

 

「ああ、行こうか」

 

そう言って俺達は人だかりができている所に向かった。そこには屈強な連中が石に向かってハンマーを振り下ろしていた。しかし、石は無傷のままだった。男は悔しそうにその場を立ち去った。それを見て、露天商が声を張り上げる。

 

「今回のお兄さんも無理でした!さあ、次の賞金は十二万五千エリス!参加費は一万エリスだよ!お客さん一人が失敗する事に、五千エリスが賞金に上乗せされます!これが破壊できる者は、一流冒険者を名乗っても良いと言われるアダマンタイト!さあ、ご自分の腕を試してみたいと思いませんか!?」

 

なるほど、アダマンタイト砕きの露店だったのかと思っているとカズマが俺達の所に来ていた。

 

「………また会ったなゆんゆん」

 

「あっ!さっきはどうもですカズマさん!」

 

そうゆんゆんにカズマが話しかけていた。

 

「よう、ソウガ。クエストの帰りか?」

 

「ああ、早く終わったからゆんゆんと一緒に露店を回る事にしたんだ」

 

「見てください、アレ!アダマンタイト砕きですって!」

 

「ゆんゆんはあれだろ?上級魔法とか使えるんだろ?アレに挑戦してみないのか?」

 

「私では無理ですよ、アダマンタイトなんて………。それこそ高破壊力を持つ、爆発魔法か、せめて炸裂魔法ぐらい使わないと………」

 

ゆんゆんはそう言って、苦笑いをしていた。俺達が話している間に賞金は二十万を超えていた。露天商が盛り上げようと声を張り。

 

「この街の冒険者には、アダマンタイトは荷が重かったのでしょうか!機動要塞デストロイヤーをも倒したと聞き、わざわざこの街にやって来たのですが?さあ、このまま、誰にも破壊できないのでしょうか!さあ、さあ、さあ!挑戦者はいないのかっ!?」

 

露天商がそう言うが、冒険者達がお前が行けよと促していた。そう思っていると人込みからスッと一人の少女が前に出た。いつものローブ姿ではなく、黒いワンピース姿のパーティーメンバーは胸を張り言った。

 

「真打登場」

 

そう言っためぐみんはカズマを含めた冒険者達に取り押さえられた。………はぁ。

 

「おい、まだ何もしていない女の子相手に、この仕打ちはあんまりと言えばあんまりじゃないか」

 

「おいおっちゃん、こいつに見つかった以上、その商売はもう止めとけ!こいつは街で噂の爆裂狂だ。その商売は、こいつの琴線を刺激しすぎる!」

 

カズマがそう言うと、露天商は青い顔で慌てて店仕舞いを始めた。それを見ためぐみんはジタバタともがき出していると………。

 

「なあおっちゃん。最後に私が挑戦してもいいかな?」

 

そう言って露天商に一人の女が交渉をし始めた。そいつは赤い篭手を装備している赤髪で髪型がポニーテールのプリーストだった。………赤髪で髪型がポニーテールのプリースト?まさか………。

 

「い、いや、しかし………」

 

「お願いだよ。この通り!」

 

そう言って女は露天商に頭を下げた。露天商は考えていると………。

 

「待ってください!私なら確実に破壊できます!我が爆裂魔法なら、間違いなく破壊できるのに!」

 

めぐみんがジタバタしながらそう言った。カズマが慌てた様子で露天商に言った。

 

「逃げろ!早く、早く逃げろおっちゃん!」

 

「ひいいいいいっ!」

 

「ああっ!?おっちゃん!!」

 

今の状況を思い出した露天商は急いで店仕舞いをし、慌てて立ち去った。それを残念そうに見ているめぐみんとプリースト。俺は気になる事があり、プリーストに近づき話しかけた。

 

「すまない。少しいいか?」

 

「えっ?………あっ!」

 

俺がそう言うとプリーストが俺の方へ向いた。そのプリーストは俺の顔を見るとわなわなと震え出した。………やはり。

 

「久しぶりだな、ティア。元気だったか?」

 

「はい!会いたかったです!ソウガ先輩!」

 

そう言って赤髪のプリースト、ティアは俺に飛び込んできた。ティアの胸が俺の顔に当たる。………おいこら。

 

「えへへ、ソウガ先輩はやっぱり温かいなぁ………」

 

「えっと、その人はソウガの知り合いか?」

 

そうカズマはめぐみんとゆんゆんを連れ、俺達に対してそう言った。俺はティアを剥がして言った。

 

「こいつは俺とウィズの学生時代の後輩のティアだ」

 

「そうなのか、俺はソウガの冒険仲間のカズマです。よろしくティア」

 

「よろしくなカズマ、私は今朝冒険者になったばかりなんだ。職業はアークプリーストだ。困った事があったら力を貸すからな」

 

「ああ、お願いするよ。でも、アークプリーストは俺達のパーティーにもいるし、第一プリーストには戦闘魔法が無いからなぁ」

 

「悪いが、ティアにはそんな常識、通用しないぞ」

 

俺がそう言うとカズマ達が俺の方を見た。

 

「こいつはアークプリーストだが、格闘戦の達人でさっきのアダマンタイトぐらいなら拳で粉砕できる。あと力だけならはっきり言って俺より上だ」

 

「………マジで?」

 

「ああ」

 

「俺達のパーティーメンバーのアークプリーストと取り換えていいか?」

 

「アクアが泣くから止めろ」

 

ティアは格闘の摸擬戦では俺でも勝てるのがやっとな程だ。ウィズなんか一回も勝てなかった。だが、ティアの力はそれだけでは無い。

 

「あとティアは魔力値が高いからか知らないが、壊れた物を元に戻す事ができる。この能力は無機物・有機物を選ばず、復元するタイミング・範囲・段階まで任意で選べる事ができ、応用すると人を岩と同化させる事もできる」

 

「えっ!?じゃあアクアが壊した外壁も………」

 

「ああ、直せるな」

 

「………アクアと本気で取り換えていい?」

 

「止めろ」

 

そうティアは小さい頃からこの能力が使えていた。学校の窓を割った時や木をへし折った時などにこの能力を使い、怒られる前に直していた。

 

「ところで、後ろの二人は紅魔族か?」

 

そうカズマの後ろにいためぐみんとゆんゆんに向かってティアが言った。そうするとめぐみんがくくくと笑いだし、マントを翻した。

 

「我が名は、めぐみん!アークウィザードを生業とし、最強の攻撃魔法、爆裂魔法を操る者!」

 

「おおーっ!これが紅魔族の名乗り方か!初めて見た!」

 

そうめぐみんの名乗りを感激しながらティアは言った。その後、ティアはゆんゆんの方に視線を向けた。

 

「うう………。わ、我が名はゆんゆん。アークウィザードにして、上級魔法を操る者。やがては紅魔族の長となる者………!」

 

そうゆんゆんは恥ずかしそうに名乗った。それをティアは笑顔でパチパチと拍手していた。その時だった………。

 

「何でカズマとソウガの周りにはあんなに女が集まるんだ?」

 

「そうだよな、ソウガはしかも店主さんと同棲してるしな。羨ましい………」

 

「何であんな目つきが悪い奴ばっかり………」

 

そういう声が聞こえた、まあ目つきが悪いのは生まれつきだからしょうがないと思っているとティアがそう言った冒険者達の方へ向かった。………マズイ。

 

「うん?何か用か?」

 

「………おい、てめえら。今、私の先輩の事を何て言った?」

 

「………へ?」

 

そう冒険者が言うとティアが思い切りその冒険者の顔を殴り飛ばした。その衝撃で冒険者の鼻が折れ、歯が何本も吹っ飛んだ。その後、その冒険者の仲間の方へ吹っ飛び仲間と一緒に倒れた。

 

「は、鼻がぁ、俺の鼻がぁ」

 

「私の先輩の事を悪く言う奴は何者であっても許さねえ!!先輩の顔がジャイアントトードみたいだと!!」

 

「えっ!?そ、そんな事言ってな」

 

「確かに聞いたぞゴラァ!!」

 

そう言ってティアは冒険者の頭を踏みつけた。ティアは俺とウィズの事を悪く言う奴がいると我を忘れ言った奴をボコボコにしていた。流石にこれ以上はマズイな………。

 

「ティア。それぐらいにしておけ」

 

「だけど、こいつらが!!」

 

「ティア!」

 

「………分かりました」

 

そう言った後、ティアは冒険者達の怪我を治した。冒険者達は慌てた感じで逃げて行った。ティアが殴った冒険者の顔が前と違っていたのは多分気のせいだろう。その後、俺達はカズマ達の所に戻った。

 

「おっ、戻ってきたな。いきなり冒険者に殴りかかったから驚いたぞ」

 

「こいつは昔からこうなんだ。自分の事はどうでもいいのに、俺やウィズの事になるとすぐキレて相手をボコボコにするんだ」

 

「ごめんなさい」

 

「気にしなくていいぞ」

 

「ところで折角なので、一緒に街を回りませんか?」

 

「いや、俺はゆんゆんと一緒に回る事にする。ティアはどうする?」

 

「私もソウガ先輩について行こうと思います」

 

じゃあ別行動だなと思っているとゆんゆんが寂しそうにめぐみんを見ていた。

 

「………ゆんゆん、カズマ達と一緒に行ってもいいんだぞ?」

 

「わ、私はめぐみんに勝つためにこの街へ来たのよ!馴れ合いに来たんじゃないです!カズマさん、さっきの射的の事はお礼を言います。どうもありがとうございました!………でも、一緒には行かないわ!」

 

「だそうです。行きましょうカズマ」

 

「お、おう………」

 

カズマ達はそう言うと俺達から離れた。

 

「………はぁ………」

 

やがて、深いため息を吐いてゆんゆんは肩を落とした。それを見たティアが自分の荷物を漁っていた。………どうした?

 

「ゆんゆん」

 

「はい?」

 

「食うかい?」

 

そう言ってティアが荷物からリンゴを取り出して、ゆんゆんに差し出した。ゆんゆんはそのリンゴを疑問に思いながら受け取った。

 

「えっと?何でリンゴ?」

 

「落ち込んだ時は何か美味い物でも食べると、落ち込んでいるのが馬鹿らしくなるからな。そのリンゴを食べて、私達も露店を回ろうぜ」

 

「そうだな。カズマ達に負けないぐらい俺達も楽しもうか」

 

「ソウガさん………、ティアさん………」

 

ゆんゆんがそう言うと笑顔になり、俺達に言った。

 

「そうですね!じゃあ、あっちにイカ焼きの店があるので行きましょう!」

 

「ああ」

 

「おう!」

 

そう言って俺達はイカ焼きの店に行こうと歩いているとゆんゆんはふと後ろを見た。俺達も後ろを見るとクレープを食べているカズマとめぐみんがいた。

 

「………え、えっと。何でついて来るの?」

 

「相変わらずぼっちなゆんゆんが、一緒に露店を回ってくれる人がいるからって凄い喜んでいる状態のマヌケ面を拝もうかと」

 

その言葉に、ゆんゆんがめぐみんへと掴み掛かった。………はぁ。

 

◆◆◆

 

「ゆんゆんは、紅魔族でも自分の名を恥ずかしがる変わり者で通っていまして。学園の中では、大体一人でご飯を食べていました。その寂しそうにご飯食べてるゆんゆんの前をこれ見よがしにウロウロしてやると、それはもう嬉しそうに私に何度も挑戦してきて………」

 

「待ちなさいよ!そ、そこまで酷くは………、なかったと………、思………。ま、まあ、毎日勝負を挑んだ気はするけど、別にぼっちでは無かったわ。友達だっていたもの」

 

俺達五人は、話しながら街の外れへと向かっていた。めぐみんとゆんゆんが勝負する事になったからだ。とゆんゆんの言葉に、めぐみんが足を止めた。

 

「今聞き捨てならない事が………。ゆんゆんに、友達………?」

 

「な、何でそんな反応なの!?いるわよ、私にだって友達ぐらい!めぐみんだって知ってるでしょう?ふにふらさんとか、どどんこさんとかが、私達友達よねって言って、私の奢りで一緒にご飯を食べに行ったり………」

 

「………ソウガ先輩、ゆんゆんって集られているんですか?」

 

「………思っていても言わないでくれ。まぁ、聞こえて無いようだから良いが………」

 

俺達はそう話しているとめぐみんが話を続けた。

 

「で、今日の勝負方法はどうするのですか?爆裂魔法しか使えない私としては、魔法勝負は避けたいところなのですが」

 

「………そうね。ていうか、いい加減他の魔法も覚えなさいよね。あれから少しはスキルポイントだって貯まったはずでしょう?」

 

「貯まりましたよ。もれなく全て、爆裂魔法威力上昇や高速詠唱につぎ込み………」

 

「バカッ!どうしてそんなに爆裂魔法に拘るのよ!」

 

「………ソウガ先輩、めぐみんはネタ魔法しか使えないんですか?アークウィザードなのに?」

 

「………だから言うなって………」

 

俺がティアに対してそう言っているとゆんゆんは悩んでいた。

 

「でも困ったわね………。一体何で勝負を決めようか………」

 

「別に何でも良いですよ?私はもう、勝負事に拘るほどに子供でもないですから」

 

「子供じゃないって?そう言えば昔、私と発育勝負をした事があったわね。子供じゃないって言うなら、またあの勝負をしてもいいわよ?」

 

「いえ、子供じゃないというのは別の意味での子供じゃないって事ですよ。だって、私はもう、ここにいるカズマと一緒にお風呂に入る仲ですから」

 

「!?」

 

「ちょっ!お前、止めろよ、それを人に言うのは!」

 

「!!!?!?」

 

「………ほう」

 

「………あらあら」

 

俺達はそのやり取りを見てそう言った。そして、ゆんゆんは顔を赤くして口をパクパクさせて固まっていると。

 

「………きょ、今日のところは私の負けにしといてあげるからあああああああっ!!」

 

そう言ってゆんゆんは泣きながらどこかへ行ってしまった。そう思っているとめぐみんがメモ帳を取り出して今日の日付と丸を書いた後言った。

 

「今日も勝ち」

 

「お、お前、本当にそれで良いのか………」

 

「………ソウガ先輩、これって勝負だったんですか?」

 

「………俺に聞くな」

 

ティアが俺にそう言ってくるが、もうどうでも良い。………疲れた。




次はあの仮面悪魔を出すつもりです。


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この仮面悪魔に死神を!

仮面悪魔の喋り方が難しいです。


泣いて帰るゆんゆんを見送った後、俺とティアはカズマ達と別れた。俺達はウィズがいる魔道具店に向かう事にした。

 

「しかし、驚きましたよ。ウィズ先輩が冒険者を辞めて魔道具店を開いているなんて」

 

そうティアが言った。俺とウィズは故郷を離れる時に故郷に連絡する時は魔王を倒した時と決めていたため、連絡をしないでいた。だから、ティアはウィズが冒険者を辞めたと言ったら凄い驚いていた。そう思っていると魔道具店に着いた。

 

「着いたぞ」

 

「へぇー、ここがソウガ先輩とウィズ先輩の愛の巣なんですね!」

 

「愛の巣なんかじゃない」

 

「えっ?だってソウガ先輩とウィズ先輩は結婚してるんでしょ?」

 

「してない。変な事言うな」

 

そう言って俺達は魔導店のドアを開け、中に入った。

 

「いらっしゃ………。あっ!おかえりソウ君、誰か連れ………、えっ!?もしかしてティアちゃん?」

 

「はい!お久しぶりですウィズ先輩!」

 

そう言ってウィズはティアの前まで移動した。

 

「本当に久しぶりだね?元気だった?」

 

「はい!この通り元気です!」

 

そう言ってティアはウィズに抱き着いた。………おいおい。

 

「きゃっ!急に抱き着いちゃ駄目!」

 

「はあ~、久しぶりのウィズ先輩の感触、気持ちいい………。特にこの大きな胸の感触が良い………。」

 

「ちょ………んっ………。ちょっと止めてティアちゃん!第一、ティアちゃんも胸大きいじゃない!」

 

そう言ってティアはウィズの体の感触を楽しんでいた。………はぁ。

 

「ティア………。それぐらいにしろ」

 

「あっ、すみません!久しぶりでつい」

 

そう言ってティアはウィズから離れた。

 

「しかし、ウィズ先輩、本当に冒険者を辞めたんですね」

 

「う、うん………。ちょっと色々あってね………」

 

そうウィズは言った。その後、ティアは少し何かを考えている様だった。………どうした?

 

「ウィズ先輩。質問していいですか?」

 

「えっ?う、うん」

 

そう言った後、ティアは言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何でリッチーになっているんですか?」

 

「!?」

 

今、何て言った?

 

「そして、ソウガ先輩。ウィズ先輩の眷属になっていますね」

 

「なっ!?」

 

「やっぱり………」

 

「な、何で分かったの?ティアちゃん?」

 

「私はアークプリーストですよ?そういう気配は何となくですが分かるんです」

 

いや、街のプリーストはは分かってない様だったからティアが特別なだけだろ。だが、まさか俺が眷属になっている事も分かるなんてな。

 

「………それでは、すみませんが説明してくれませんか?先輩方」

 

◆◆◆

 

その後、俺達はティアに事の顛末を語った。魔王軍の幹部にかつての仲間が死の宣告を受けてしまった事、ウィズが皆を救うために禁術を使いリッチーになった事、ウィズが魔王軍の幹部になった事、そして魔王軍が俺の事を死神と呼び恐れている事をティアに話した。

 

「………なるほど、そんな事があったんですね」

 

「………それで、どうする?ウィズを退治するか?まぁ、退治しようとするなら、たとえお前でも殺すつもりだがな」

 

「ソウ君!!」

 

俺は睨みながらティアに言ったが………。

 

「えっ?何で退治しないといけないんですか?」

 

「………えっ?」

 

ティアは俺の顔を見ながら、何を言ってるの?っていう感じの顔で俺を見ていた。

 

「………えっと、だって私は魔王軍の幹部なんだよ?」

 

「そんなの知りません。私はウィズ先輩がたとえリッチーで魔王軍の幹部でも、私の尊敬する先輩に変わりありません。それとも、退治した方が良かったんですか?」

 

「いや、良くないが」

 

「だったら、この話はもう終わりにしましょう」

 

ティアはそう笑いながら言った。

 

「………すまないな。ティア」

 

「いえいえ、気にしないでください」

 

「本当にありがとうね。………ところでティアちゃんは冒険者になったばかりなんだよね?寝泊まりする場所はどうするの?」

 

「最初は、まぁ、馬小屋ですね。お金も無いですし」

 

「まだ外は寒いし、今日は泊まっていったら?」

 

「えっ!良いんですか?」

 

「うん、ソウ君も良いでしょ?」

 

「ああ」

 

「あ、あざーっす!」

 

そう言ってティアは頭を下げた。………さて。

 

「そういえばティア、カズマ達のパーティーメンバーでまだ紹介していない奴がいるから、今からカズマ達の屋敷に一緒に行かないか?」

 

「はい、勿論いいですよ!」

 

「分かった。じゃあウィズ、俺達はカズマ達の屋敷に行ってくる」

 

「うん、行ってらっしゃい」

 

そう言って俺達は魔道具店を出て、カズマの屋敷に向かった。

 

◆◆◆

 

「着いたぞ」

 

「おおっ!中々大きいっすね!」

 

そうティアは言った。俺達は屋敷に入り広間に向かうとカズマ達がいた。

 

「邪魔するぞ」

 

「どうもっす!」

 

「ソウガとティアかよく来たな」

 

「ねぇ、ソウガの近くにいるのは誰?」

 

カズマに挨拶しているとアクアがティアに気付いて、カズマに聞いてきた。

 

「ああ、アクアはいなかったからしょうがないか。彼女の名前はティア、アークプリーストでソウガとウィズの後輩だ。ティア、こいつの名前はアクア。お前と同じアークプリーストだ」

 

「よろしくなアクア」

 

「ええ、よろしく。それにしてもソウガとあの汚らわしいクソアンデットに後輩がいたなんてね」

 

おい、ティアの前でそんな事言うと………。

 

「おい、てめぇ。今、私の先輩の事を何て言った?」

 

「え?」

 

「ア、アクア!早く謝ってください!」

 

「えっ?急にどうしたのめぐみん。ティアが凄い怖い顔してるんだけど・・・」

 

「ティアはソウガとウィズをバカにするような奴がいると、我を忘れてバカにした奴らをボコボコにするんだよ!」

 

「ええっ!?何で教えてくれなかったのよ!ヒキニート!」

 

「言う前にお前がウィズの事をバカにしたんだろうがっ!」

 

そう話している間にティアはアクアに一瞬で近づき、拳を叩き込もうとした。………やれやれ。

 

「ちょ、ちょっと待って!」

 

「落ち着け、ティア」

 

俺はアクアの前に移動してティアを殴り、アクアへの攻撃を阻止した。

 

「アクアのあの発言は愛称みたいなものだ。気にするだけ無駄だ」

 

「………私の自慢の先輩をけなされるとムカッ腹が立つぜ!どうしようもなくな!」

 

「どうやら、完全に我を忘れているようだな」

 

そう言ってティアは再びアクアに攻撃をしようとする。俺はアクアを退かした。ティアは拳のラッシュを始めた。

 

「ドララーッ!!!」

 

「ぐっ!!」

 

ラッシュの攻撃を防御したが、防御しきれず最後の攻撃で壁まで吹っ飛ばされた。………こいつ、昔より力が上がってやがる。

 

「ああっ!?ソウガ!」

 

「これでソウガ先輩の邪魔が無くなり、心置きなくこいつに拳を叩き込めるってわけだな!!」

 

「わああああああーっ!!待ってえええええ!!」

 

そう言った後、ティアはアクアに拳を叩き込もうとした。………こいつ!!

 

「『タイムストップ』!」

 

そう唱えると、時が停止した。俺はアクアをティアの背後に移動し、魔法を解除するとティアの拳が空を切った。

 

「なっ!?ソ、ソウガ先輩!邪魔しないでください!私はこいつを………ぐふっ!?」

 

俺はそう言っているティアの腹に拳を叩き込み、壁まで吹っ飛ばした。

 

「目は覚めたか?クソ後輩」

 

「げほっ!!は、はい、すみません」

 

「じゃあ、とっとと壊した家具を直せ」

 

「は、はい!」

 

そう言ってティアは家具を能力で直した。………まったく。

 

「すまないな。暴れて」

 

「いや悪いのはアクアだし、家具も直してもらったから気にしなくていいぞ」

 

「本当にすまない。………ティアもアクアのクソアンデットは愛称みたいなものだから気にするだけ無駄だ。だからあんな事でキレるな」

 

「………善処します」

 

「ああ?」

 

「は、はい!もう気にしません!」

 

そう言ってティアはアクアに謝っていた。………やれやれ。

 

「ところでダクネスはまだいないんだな」

 

「はい、まだ帰ってきていないんです」

 

「あの、先輩。ダクネスって誰ですか?」

 

「俺達のパーティーメンバーの一人だ。職業はクルセイダーの女だ。今は用事でいないけどな」

 

そう言っているとカズマが何故か機嫌が悪くなっていた。俺達は用が済んだので帰る事にした。

 

「じゃあ、俺達は帰らせてもらうな」

 

「ああ、またな」

 

そう言って俺達は屋敷を出て魔道具店に向かった。

 

◆◆◆

 

その日の夜、俺は夕飯を済ました後に一人でキールのダンジョンに来ていた。そこには膝ぐらいの高さの仮面のモンスターが二足歩行で這い出していた。

 

「………確かに謎のモンスターだな。普通に考えればな」

 

その仮面のモンスターを見ているとモンスターの一体が俺の膝にしがみついた。その後にジリジリと熱くなり、自爆した。

 

「………まぁ、あまりダメージが無いから良いが………。ムカつくな」

 

そう俺は服に付いたススを払いながら言った。………はぁ。

 

「どうせ、この問題を起こした犯人は俺のこの状態を笑っているんだろうけどな。………はぁ」

 

俺はため息を吐いた後、魔法を発動して犯人の場所を把握した。

 

「………できれば、会いたくないが仕方ない」

 

俺はそう言った後、魔法陣を展開した。

 

「『マキシマイズ・テレポーテーション』」

 

そう言って俺は転移した。………転移した後に俺が見たのは、地面の土をこね回し、せっせと人形を作っている。仮面を付けた男がいた。

 

「………やっぱり、お前か、バニル」

 

「………うん?誰かと思えば、天災店主に酔った勢いにキスマークを付けられ、困り果てた死神ではないか」

 

「………余計な事を言うな」

 

こいつの名はバニル。魔王軍の幹部にして、地獄の公爵の悪魔で、ウィズの友人だ。俺とウィズとパーティーメンバーでこいつを討伐しようとしたが、散々からかわれて、大変な目に遭った。ウィズの姿に化けて俺に色仕掛けをして激怒したウィズの攻撃を俺に当てたり、俺にウサミミを生やし、何日か辱めを受けたり、俺の体を乗っ取って服を皆の目の前で脱いだり、色々された。………あれ?

 

「………何か俺ばっかりからかわれたような気がするな」

 

「当然である。天災店主に別のベッドで寝ようと提案したら泣かれた死神よ。汝を集中してからかったのでな」

 

「俺狙いだと!?何でそんな事をした!!」

 

「面白いからである」

 

「………てめぇ、殺してやろうか?」

 

「フハハハハハ!何という悪感情!美味である!美味である!」

 

「やかましいわ!!」

 

くそっ!!やっぱりこいつ嫌いだ!!

 

「ところでショウガよ」

 

「誰が食材にも薬にもなる野菜だ。俺の名前はソウガだ」

 

「すまぬ、噛んでしまった」

 

「違う。わざとだ」

 

「噛みまみた」

 

「わざとじゃない!?」

 

「フハハハハハ!やっぱり汝をからかうと面白い!おおっと汝の悪感情。美味である!美味である!大変美味である!!」

 

こいつ、本当に殺してやろうか?

 

「………ところで、お前は何しに来たんだよ」

 

「うん?まだ我輩はからかい足りないのだが仕方ない。この街には調査とポンコツ店主に会いに来たのだが、主のいないこのダンジョンを見つけたので、これはと思い勝手に住み着いたのだ」

 

調査はどうした?あとウィズに会いに来たんじゃないのか?

 

「あと、我輩は魔王軍の幹部を辞めようと思っている」

 

「辞める?何でだ?」

 

「もう、限りなく永く存在した我輩にはとびきりの破滅願望があるのだ。至高の悪感情を食した後、華々しく滅び去りたいと思い、このダンジョンを利用させてもらっている。本当はポンコツ店主の店で働かせてもらいダンジョンを造ってもらおうと思っていたがな」

 

なるほど、こいつは、俺達の店で金を稼いでダンジョンを造ろうとしていたのか。………あれ?この話を利用すれば、こいつも魔王軍の幹部も辞めれて、カズマの疑いと借金も無くせるんじゃないか?

 

「なあ、バニル。少し俺の話を聞いてみないか?………まぁ、見通す事ができるお前には必要ないか」

 

「天災店主に一緒に風呂に入ろうと提案されて顔を赤くして拒否した死神よ。確かに汝の考えなら我輩は魔王軍の幹部を辞める事ができ、汝のパーティーメンバーの疑いも無くせる事ができる。良いだろう、汝の提案に乗ってやろう!」

 

そう、この見通す悪魔のバニルと俺は明日ある作戦を決行することを決めた。




お気に入り登録500超え、ありがとうございます。これからも皆さんの感想と指摘等お願いします。


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この凶敵に絶対零度の魔法を!

奴との二度目の戦いです。


キールのダンジョンでバニルと会い、ある作戦を計画した日の次の日の朝、俺は早くに目が覚めてしまった。俺の右隣にいるウィズと左隣に何故か一緒に寝る事になった、ティアを起こさない様にベッドから出て、寝間着から私服に着替えた後、俺は朝食を作っていた。

 

「ソウ君、おはよう」

 

「おはよう、ウィズ。今、朝食を作っているから待っててくれ」

 

朝食を作っているとウィズが起きて来た。俺はウィズに朝食ができるまで待っててくれと言ったが、何故かウィズが俺の隣に来た。

 

「一人より二人の方がいいよ。一緒に作ろう、ソウ君」

 

「ああ、わかった。じゃあスープを作ってくれないか?」

 

「うん」

 

そう言って俺達は料理を再開した。あと少しで料理が完成する時にティアも起きて来た。まだ眠いのかボーっとしている。

 

「おはようございます。先輩方………」

 

「ティア、おはよう」

 

「ティアちゃん、おはよう。あと少しで朝食ができるから待ってて」

 

「はぁい………」

 

そう言ってティアは椅子に座った。その後、料理が完成したので俺達はテーブルの上に料理を置いて、俺達も椅子に座り、朝食を食べ始めた。

 

「ソウ君、今日もクエストに行くの?」

 

「ああ、ついでにティアの住む場所も見つけようと思っている」

 

「すみません。私のためにそこまで」

 

「気にするな」

 

ティアが申し訳なさそうに言った後に、俺はそう言った。………さて。

 

「ウィズ、ちょっといいか?」

 

「えっ?どうしたのソウ君?」

 

「実は、今日の夕暮れぐらいにアルバイトの人が来るから、対応しておいてくれ」

 

「えっ!?」

 

俺がそう言うとウィズが驚いていた。………まぁ、当たり前か。

 

「ソウ君、アルバイトを雇ったの?」

 

「ああ」

 

「………でも、この店の現状からアルバイトを雇うお金が………」

 

「大丈夫だ。その事は了承済みだし、何よりウィズの事をよく知っている奴が来るから心配ない」

 

「えっ?それって、どういう事?」

 

「後で分かるさ」

 

そう言って俺は食事を済まして、出かける準備をした。それを見たティアも急いで準備をした。

 

「流石に朝早くから不動産屋は開いてないから、まずはカズマの所に挨拶でも行くか。じゃあウィズ、行ってくるな」

 

「行ってきます!」

 

「うん、二人とも行ってらっしゃい」

 

そう言って俺達はカズマの屋敷に向かった。

 

◆◆◆

 

「これだあああああああああああっ!」

 

「「「ああああああああああっ!?」」」

 

「「!?」」

 

俺達は屋敷に入り、広間の扉を開けようとしているとそんな声が聞こえた。慌てて俺は扉を開けると何かを真っ二つにしているカズマとそれを見ているアクアとめぐみん、そしてドレスを着ているダクネスがいた。

 

「ダクネス、久しぶりだな」

 

「ああ、ソウガ、久しぶりだな………。隣にいるのは誰だ?」

 

「そういえばダクネスはいなかったから紹介してなかったな。こいつはティア、俺とウィズの後輩でアークプリーストだ」

 

「そうなのか、私の名はダクネス。クルセイダーを生業としている者だ、よろしく」

 

「こちらこそよろしく。でも何でドレスを着てるんだ?」

 

ティアのその言葉にハッとなり涙目でカズマを睨んでいた。………どうした?

 

「実は、ダクネスがあのダスティネス家の娘だったんですよ」

 

「ああ、その事なら知っているぞ」

 

「えっ!?知っていたんですか?いつから?」

 

「デストロイヤーが来る前に知った」

 

「そうですか、なら今日の昼にダクネスがお見合いする事も知っていますか?」

 

「それは知らない」

 

なるほど、ダクネスがこんなに帰ってくるのが遅かったのはお見合いの準備があったからか。そう思っていると、めぐみんがカズマに言った。

 

「では、私はゆんゆんとの約束があるので出掛けてきますが。カズマの考えとやらが、凄く嫌な予感しかしないのですが大丈夫ですよね?………ダクネスの事は任せましたよ?」

 

めぐみんは、不安そうに何度もこちらを振り返りながら、後ろ髪を引かれる様な表情で出掛けて行った。

 

「うううう………。折角………。折角、元通りにしたのに………」

 

ソファーでは見合い写真を引き裂かれたアクアがメソメソしていた。その後、アクアとダクネスは涙目でカズマを見ていた。その視線を感じ取ったのかカズマが言った。

 

「ま、まあ落ち着け。これは、今後のためでもあるんだ」

 

「………どういう事だ?」

 

その後、カズマは俺達に説明をした。今後冒険者をやって行くのなら、この際一度見合いをやってみてはと言う事を。今回の話を断ってもダクネスの父親はすぐに別の話を持ってきて、いつか強硬手段に出るのではないか?ならば、一度見合いをしてみて、それをぶち壊してしまってはどうかという提案を持ち出した。そうするとダクネスの親は、次に持ってくる見合いの話は慎重になるという話だった。

 

「そ、それだカズマっ!それで行こう!それが上手く行けば、もう見合い話が持ち上がる度に一々父を張り倒しに行かなくても済む!」

 

おいこら、自分の親は大切にしろ。

 

「なるほど、それは良いわね!私、『手の掛かるのが一人嫁に行ってくれれば、その分新しいメンバー入れて、楽ができるぜヒャッハー!』みたいに考えてたのかと思ったわ!」

 

そのアクアの言葉にカズマがビクリとした。………まさか、お前。

 

「ち、違うよ?ダクネスみたいな優秀なクルセイダーを、今更手放せる訳が無いじゃないか?………や、止めろよお前ら、そんな目で見るなよ、ソウガとティアもそんなゴミを見るような目で見ないでくれ、半分ぐらいは本気だから………」

 

カズマがそう言った後、俺はカズマに言った。

 

「すまないが、俺はこれからクエストとティアの住居探しで一緒に行けそうにない」

 

「ああ、別に構わないぞ」

 

カズマがそう言うと俺はティアの言った。

 

「じゃあ、そろそろクエストに行くか。ティア」

 

「わかりました、ソウガ先輩。またな。アクア、ダクネス、クズマ」

 

「今、さらっとクズマって言ってない!?」

 

ティアが何気にカズマを罵倒した後、俺達は屋敷を出て、ギルドに向かった。

 

◆◆◆

 

カズマの屋敷を出てから結構な時間が経過した。俺達はあれから上級クエストを何個か請けた後、不動産屋に向かい、良い物件が無いかと何件か回った。最終的に俺達の店がある場所の近所の物件に決めた。その物件に決めるのに夕方までかかってしまった。そんな時、街の人の会話が聞こえた。

 

「そう言えば、さっき王国検察官の人が多数の冒険者を引き連れて行ったけど何かあったのか?」

 

「ああ、多分、例の謎のモンスター退治だろ」

 

「その話なんだが、どうやら魔王軍の幹部の仕業だったらしいぜ。しかもカズマのパーティーメンバーのクルセイダーの体を乗っ取って大暴れしているらしい」

 

「それ、凄くマズイんじゃないか?」

 

そう聞こえて来た。………どうやら、上手く事が運んでいる様だな。

 

「ソウガ先輩!今の話が本当ならっ!」

 

「ああ、俺達も向かうぞ」

 

「はい!」

 

そう言って俺達も向かおうとしている時だった………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「元気そうじゃねえか。安心したぜ、死神」

 

「!?」

 

そう近くの建物から声が聞こえた。俺はその建物の屋根部分を見ると、そこには倒したはずのフィニクスがいた。………そんな、バカな。

 

「バカな!お前は確かに倒したはずだ!」

 

「悪いな、俺は何度死んでも蘇る、不死身のモンスター、不死鳥のフィニクスだ!」

 

そう言ってフィニクスは大剣を取り出し、俺に攻撃を仕掛けて来た。

 

「モ、モンスターだっ!!」

 

「逃げろおおおおおっ!!」

 

「ぼ、冒険者を早く呼びに行くんだっ!!」

 

街の人達がそう言いながら逃げて行った。

 

「不死身だとっ!?」

 

「ソウガ先輩!」

 

「ティア!お前は街の人達を安全な場所に避難させろ!」

 

「分かりました!」

 

そう言ってティアは街の人達を安全な場所まで誘導を始めた。

 

「さあ!前の時みたいに戦いを楽しもうぜ!」

 

「悪いが、お前に構っている時間は無い。だから………」

 

そう言って俺はフィニクスを睨み付けながら言った。

 

「速攻で終わらす!」

 

「面白れえ!やってみろ!」

 

そう言いながら俺とフィニクスは戦闘を始めた。

 

◆◆◆

 

「『マジック・クリエイト』!」

 

ソウガはそう唱えると、片手剣を装備した。フィニクスを切ろうとするが大剣で防がれてしまった。

 

「この時をずっと待ってたぜ!てめえを倒すこの時をっ!!」

 

そう言ってフィニクスはソウガの剣を弾き飛ばした。ソウガを切ろうとするが、ソウガに躱された。その直後にソウガは拳を腹に叩き込み、フィニクスを吹っ飛ばした。

 

「がっ!?」

 

「悪いが、俺は倒されるわけにはいかないんだっ!!」

 

そう言ってソウガは魔法陣を展開すると胸板に龍の頭が出現して、魔力を龍の口に溜めた。

 

「『ドラゴニックフレイムブレイカー』!!」

 

そう唱えると、龍の口から高魔力の炎が放出されて、フィニクスに命中するが、フィニクスはそのままソウガの方に歩を進めていた。

 

「何っ!?」

 

「同じ技が二度も効くかよ。俺は死と再生を繰り返す度に強くなる。不死身のフィニクス様だっ!!」

 

そう言うとフィニクスは龍の炎をかき消して、自身の体を発火してソウガを吹き飛ばした。ソウガは倒れ込むとフィニクスはソウガの腹部を踏みつけた。

 

「ぐっ!!」

 

「今度こそお前の息の根を止めて、地獄の底に叩き込んでやるぜ!」

 

そう言ってフィニクスはソウガに大剣を振り下ろそうとしていた。ソウガは魔法陣を展開した。

 

「『ワープゲート』!」

 

そう唱えるとソウガの右側とフィニクスに弾き飛ばされた片手剣のグリップの近くにゲートが出現した。ソウガは右側のゲートに右腕を入れると片手剣のゲートにソウガの右腕が出てきて、片手剣のグリップを掴んで引っ張った。片手剣はゲートを通りソウガの手元に移動してフィニクスの大剣の攻撃を防ぎ、そのまま弾き、フィニクスを切り裂いた。その攻撃でフィニクスはソウガからよろけながら離れた。ソウガはその間に態勢を立て直した。

 

「がっ!?くそっ!!」

 

「悪いが、俺は急ぎの用がある。お前と遊んでる暇は無い」

 

そう言ってソウガは魔法陣を展開した。フィニクスはその光景を見て、雄叫びを上げながら接近してきた。

 

「『アブソリュート・ゼロ』!」

 

そう唱えると魔法陣から強力な冷気が放出され、フィニクスはその冷気に吹き飛ばされそうになるも何とか耐えていたが、その体が徐々に凍り始めていた。

 

「………こんなものに、負けるかよおおおおおおおおおっ!!」

 

そう言いながら、フィニクスは体を発火させて接近を始めた。

 

「いや、これで終わりだ」

 

ソウガはそう言うと、魔法陣を展開した。

 

「『ハイドロカノン』!」

 

そう唱えると魔法陣から超高圧の水が放出し、その水が初めに発動していた冷気の魔法陣を通ると一気に凍り出して、フィニクスを氷結させた。それを見ていたソウガは魔法陣を展開した。

 

「『ドラゴニックテイル』」

 

そう唱えると腰に尻尾が現れ、ソウガはその尻尾を思い切り氷結されているフィニクスに叩き付けると、氷がフィニクスもろとも粉々に粉砕され、辺りに氷の欠片が降り注いだ。

 

◆◆◆

 

「たくっ、疲れさせやがって」

 

俺はそう言うと街の人を安全な場所に避難させたのかティアが来た。

 

「ソウガ先輩!ご無事ですか!!」

 

「ああ」

 

「良かった………。ソウガ先輩に何かあったら、私はウィズ先輩に合わせる顔がありませんよ」

 

「そうか………。すまなかったな」

 

「いえいえ、気にしないでください」

 

そう言ってティアは笑っていた。………さて。

 

「じゃあ、行くか」

 

「はい!」

 

そう言って俺は魔法陣を展開して、ティアと一緒に転移した。………さぁ、作戦開始だ。




あと少しで三巻の内容が終わると思います。


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この魔道具店に仮面悪魔を!

これで三巻の内容は終わりです。


俺達はキールのダンジョンで魔王軍の幹部のバニルに出会い、その時にダクネスの体が乗っ取られてしまった。意識はあるようだったので、セナからもらった封印の札をダクネスに張り付いたバニルの仮面に付け、外に出さない様にしたのは良いが、ダクネスの体を操り襲い掛かってきた。予想以上に手強く、セナが連れて来た冒険者が圧倒されていた。

 

「フハハハハハハハ!年貢の納め時だな我が宿敵よ!貴様の仲間の手で、討ち取られる。これ程幸せな事はあるまいて!」

 

「ね、ねえダクネス!私、信じてるから!悪魔なんかに負けないわよね?だ、大丈夫よね!?ねえダクネス、聞こえてる!?」

 

アクアがジリジリと後退しながら呼び掛けるが、既にダクネスの返事が無い。バニルと冒険者達との間の拮抗していたバランスが崩れた今、後衛のアクアが直接狙われるのも時間の問題だ。

 

「サトウさん、あなたは参戦しないのですか!?あのプリーストも乗っ取られているクルセイダーも、二人ともあなたの仲間でしょう!?助けなくてもいいのですか!?」

 

「いや、俺って知っての通りの冒険者ですよ。俺より強い連中がバタバタ倒されているのに、俺が行ったってどうにかなる訳ないじゃないですか」

 

「あなたって人は!あなたって人は!!」

 

セナが顔を引きつらせドン引いている間にも、次々と冒険者が無力化される。

 

「カ、カズマ―!ねえこれってピンチなんですけど!実は今までで一番ピンチなんですけどー!!」

 

遠くからアクアが半泣きで助けを求め、めぐみんは俺の隣で杖を抱き、不安そうに俺の顔を見上げいる。あのセナまでもが、青ざめた顔で俺を見ていた。………そんな目で見られても、貧弱な俺にはどうしようも………!

 

「カズマさーん!カズマさーん!!」

 

そんな、アクアの助けを求める声を聞きながら。

 

「………しょうがねえなああああああああ!」

 

半ばヤケクソ気味に声を上げ、剣を引き抜きダクネスの方へ駆け出した。

 

「フハハハハハハハ!フハハハハハハハ!さあて、覚悟は良いか我が宿敵よ!よもや、こんな所で貴様を滅ぼせる日が来るとは、流石の我輩も見通せなんだわ!………どうした、この場の冒険者の中で最も貧弱な男よ。………既に汝の性格は見通した上で、見通す悪魔が予言をしてやろう」

 

ダクネスと対峙する俺に、バニルが言った。

 

「安定と平穏を求める汝に告ぐ。余計な事は考えず、このまま見て見ぬ振りが良いだろう。汝の折角の強運は、死神以外の世にも運の無い仲間のせいで、ものの見事に相殺されている。自らの身を守るため、汝、パーティメンバーを変えるが吉。さすれば………ッ」

 

俺はバニルの仮面に向け、無言のまま斬り掛かったが、あっさりと身を躱された。俺はダクネスに向かって言った。

 

「いいかダクネス、よーく聞け。今から俺が仮面に貼られた封印を解く。そうしたらほんの一瞬でいい、バニルから自分の支配権を取り戻せ。そして、仮面を剥がして投げ捨てろ。そうしたら………」

 

「ふむ。まあ悪くない作戦ではあるが、一つ問題があるぞ。果たして貧弱な貴様が、この娘の力を完璧に引き出した我輩を相手に一体どうやって封印を解くというのか。(うむ、今の私を舐めてもらっては困る。今なら誰にも負ける気はしない!)」

 

「こ、このバカ………。お前まで対抗心を燃やしてどうする!」

 

そう俺がダクネスに言った時だった………。

 

「………ですって。どうしますか?」

 

「………よし、ボコろうか」

 

そう背後に声がして振り向くと、ソウガとティアがいた。

 

「ソウガ!ティア!」

 

「すまない。遅くなった」

 

「状況は街で聞いたから、大丈夫!あとは私とソウガ先輩に任せな!」

 

そう言ってソウガとティアが俺の近くまで来た。その光景を見ていたアクアとめぐみん、あとセナが希望に満ちた顔で見ていた。

 

「(あわわわわわわ、ソウガが来てしまった!早く謝らないと!)やかましいわ!静かにしておれ!………ふむ、風呂に入っていたら天災店主が背中を流そうと一緒に入ろうとしてきて慌てて風呂から出た死神と寝ている天災店主の胸を、同じく寝ている死神の腕を押して、胸の形が変わるのを楽しんだ娘ではないか?」

 

「………黙れ、あと何をしているティア」

 

そうソウガがティアを見るとティアはふいっと目を逸らす。

 

「後で説教な」

 

「………はい」

 

そう言ってソウガとティアは戦闘態勢に入った。

 

「ふむ、この状況は我輩にとっては悪い。だが良いのか、この場で最も貧弱な男よ。困った事があったら、すぐ死神に頼るのか?」

 

俺はそう言われてしまった。………確かに、これまで俺はソウガに頼りっぱなしだ。このままじゃ、本当にソウガがいないと何もできなくなってしまう。

 

「カズマ、耳を貸すな」

 

「そうだ!ここで私達がこいつをぶっ飛ばせばいいだけじゃねえか!」

 

そうソウガとティアは言ってくれているが………。

 

「いや、ソウガとティアはアクアを守ってやってくれ」

 

「お、おい!カズマ!」

 

ティアは俺に言ってくれているが。

 

「いいのか?」

 

「ああ、任せろ。バニルを倒すのにソウガとティアの力は借りない。俺達だけで十分だ」

 

「………分かった。アクアの事は任せろ。行くぞティア」

 

「は、はい」

 

そう言ってソウガとティアはアクアの近くに行った。俺はアクアとめぐみんに言った。

 

「アクアとめぐみんは魔法の準備をしておいてくれ」

 

「分かったわ!」

 

「了解です!」

 

俺がそう言うとアクアとめぐみんが魔法の準備を始めた。

 

「フハハハハハハハ!死神の力を借りずに、この我輩をねじ伏せて!(この封印の札を)剥がすとでも(言うのなら!)やれるものなら(やってみるがい)やかましいわ!我輩の決め台詞を持って行くな!」

 

「お前ら二人、最初はあれだけ嫌がっていた封印を、解かれたいのか解かれたくないのかどっちなんだよ」

 

俺は思わずツッコんでしまった。

 

「カズマ、魔法の準備ができたわよ!」

 

「よしきた、後は任せろ!行くぞダクネス!修練場での勝負みたいに、今回も賭けをしようぜ!俺が勝ったなら、約束していた『すんごい要求』に、更にとてつもない事を足させてもらう。お前が勝ったなら好きにしろ!」

 

「(ああっ、こ、この場面でそんな・・・っ!)こ、こらっ、あの男の甘言に惑わされるな!」

 

葛藤し始めたダクネスが、バニルとの連携が成り立たなくなり動きを止めた。そんな中、他の冒険者がバニルが生み出した人形達に追われてダンジョンから出て来た。

 

「それじゃあ、いくぞ!『ティンダ―』!!」

 

俺は着火魔法のティンダ―を使い、バニルの仮面の封印の札を燃やした。これでダクネスとバニルを繋ぎ止めていた物が無くなった。

 

「おいダクネス、根性見せろ!仮面を剥がして放り投げろ!」

 

「(………ッ!外れない!)」

 

ダクネスが仮面に手を掛け、外そうとするがバニルによって、仮面はしぶとく張り付いたままだった。

 

「カズマさーん!どうすればいいの!?もう魔法を撃ってもいいのかしら!?」

 

「いや待て、まだダクネスに張り付いてる!これじゃあ魔法を撃っても、ダクネスの耐性で………」

 

「(構わん。撃て)」

 

ダクネスが俺達に向かって、そう言った。

 

「(アクアの魔法が効かないなら………。構わん。………このまま私もろとも、爆裂魔法を食らわせてやれ)」

 

「このバカ!いくらお前が硬くても、爆裂魔法に耐えられる訳ないだろうが!」

 

「(やってみなければわからん!)よし、早まるな、話をすべきである」

 

ダクネスの言葉に、ずっと余裕だったバニルにも、若干の焦りが見られた。この場にいる全員が身動きが取れないでいた。あのソウガとティアですら動けずにいた。

 

「(………おいバニル。僅かな一時だったが、共にいた時間は悪くはなかった。だから、せめて・・・。選べ。私から離れて浄化されるか、共に爆裂魔法を食らうかの、どちらかを)」

 

ダクネスが、そんな無茶な選択をバニルに迫った。

 

「………我輩は、悪魔である」

 

バニルは、重々しく。

 

「神の敵対者である悪魔である。浄化されるなど真っ平だ。フハハハ………。我輩の破滅願望が、意外な形で叶ったな。ではな、汝への憑依はなかなかに楽しかったぞ」

 

爆裂魔法を選択した。

 

「(さあめぐみん!)」

 

そのダクネスの要求に、めぐみんが小さく首を振って拒否していると、ソウガがめぐみんの近くに寄った。

 

「めぐみん。つらいだろうがダクネスを信じよう。大丈夫だ、あいつは硬い。爆裂魔法にも耐えられるさ」

 

ソウガのその言葉にめぐみんは小さく頷いた。俺は呆然と成り行きを見ていたセナに言った。

 

「もし万が一の事があったなら、俺が指示したって事で、あんたが証人になってくれ。今回も、全責任は俺が取る」

 

俺のその言葉に、セナが青い顔でコクコク頷いた。

 

「めぐみん。やれっ!」

 

その言葉の後。ダンジョンの前に、盛大な爆発音が轟いた。

 

◆◆◆

 

魔王軍の幹部、バニルとの戦いが終わった。爆裂魔法を受けたダクネスは何故か無事だった。俺とティアは魔道具店に向かって歩いていた。

 

「しかし、本当にソウガ先輩の力も借りずに魔王軍の幹部を倒すなんて凄いですね」

 

「あいつらはやる時はやるからな、俺なんかいなくてもあいつらならやれるさ」

 

そうティアの言葉に俺がそう答えると、魔道具店に着いたので俺達は扉を開ける。

 

「フハハハハハ!よくぞ戻ってきたな!うまく事が運んで安心した死神と出番が無くて何気にショックを受けている娘よ!」

 

「えっ………?」

 

そうバニルが店の中で言ってきた。ティアがその光景を見て困惑している様だった。

 

「何で?お前死んだはずじゃ………」

 

「うん?確かに我輩は死んだぞ。ほら、仮面を見て見るがいい」

 

「はっ?Ⅱって書いてあるが?」

 

「爆裂魔法で残機が減ったので、今の我輩は二代目バニルである」

 

「ふざけんな」

 

そうティアがバニルと話していると奥からウィズが出て来た。

 

「あっ!おかえりソウ君、ティアちゃん。ソウ君が言ってたアルバイトってバニルさんの事だったんだね。もうっ!バニルさんが来ているんなら教えてくれても良かったじゃない、ソウ君の意地悪!」

 

「ごめんな、ウィズ」

 

「えっ?ソウガ先輩とウィズ先輩はそいつの知り合いなんですか?」

 

「ああ、こいつはウィズの友人だ。魔王軍の幹部を辞めたがっていたから俺とバニルは一芝居打ったんだ」

 

「………説明してくれませんか?」

 

俺はティアに今回の作戦の事を話した。カズマの疑いと借金をバニルを討伐する事で無くして、バニルをこの店で働かせる事を伝えた。そのためには俺の助けを借りずにバニルを倒す必要があった事を。

 

「俺に協力してもらっていたら、カズマの疑いは完全には消えない。だけどカズマ達だけで倒せば、魔王軍の手先という疑いは完全に消せる」

 

「なるほど、でも、あの時にカズマが私達の助けを借りていたらどうしていたんですか?」

 

「その時は、我輩が死神の体を乗っ取り、汝らと戦うという話だった」

 

「それ、洒落にならないっすよ」

 

「まあまあティアちゃん、こうして成功したんだし、ねっ?」

 

「もう、疲れたからいいっす」

 

ウィズがティアをなだめていると、ティアは諦めた感じでそう言った。………さて。

 

「すまない、俺は少し出掛けてくる」

 

「うん、夕ご飯の準備をして待っているね」

 

「ああ」

 

俺はそう言って店を出て、転移した。転移した後、俺はフィニクスと戦った場所で待っていると火の粉が発生してどんどん人型になっていきフィニクスに戻った。

 

「………どうやら、不死身なのは本当らしいな」

 

「ああ、復活するのに時間がかかるけどな。しかし、また俺を倒すなんてな、すげえじゃねえか。死神」

 

フィニクスは俺にそう言ってきた。俺はフィニクスを睨みながら、片手剣を装備した。

 

「悪いが今回はこれで終わりだ。魔力を回復させないといけないからな。次の手品を楽しみにしているぜ。死神」

 

そう言ってフィニクスは炎を放出した。俺は身を守った後、フィニクスを見たが、姿はもうなかった。俺は装備を解除して。

 

「………帰るか」

 

そう言い、魔道具店に向けて歩き始めた。

 

◆◆◆

 

俺は夕飯を済ませた後、俺は寝室でくつろいでいた。俺は不死身のモンスターフィニクスをどうやって倒すか考えていると………。

 

「………ソウ君」

 

「うん?どうしたウィズ?さっき洗い物するから先に寝室に行」

 

そう言って俺は固まってしまった。そこには下着姿のウィズがいたからである。ウィズはその後、俺に抱き着いた。

 

「お、おいっ!何をしているんだ!服を着ろ!」

 

「ソウ君………、私ね、もう我慢できない………」

 

そう言ってウィズは目を潤ませながら言った。

 

「ソウ君、シよう?」

 

こいつは何を言っているんだ?

 

「バカな事を言うな。いいから服を着ろ!」

 

「私、本気だよ………」

 

そう言ってブラを外そうとしていた。………ちょっ!

 

「おい、バカ!やめろ!」

 

そう言うも、ウィズはブラを脱ぎ捨て………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フハハハハハ!ポンコツ店主だと思ったか?残念、我輩でした!おっと、汝の悪感情。美味である!美味で「がぁあああああああああああああ!!!」ぐふっ!」

 

俺はウィズの姿に化けたバニルを魔力を込めた蹴りで壁まで吹っ飛ばした。

 

「ど、どうしたの!?何の騒ぎ!?」

 

騒ぎを聞きつけ、本物のウィズが来たがそんな事はどうでもいい。俺は身の丈を超える斧剣を装備した。

 

「バニル!!貴様ああああああああああ!!」

 

「ソ、ソウ君!?落ち着いて!?お願いだから落ち着いて!?」

 

「ふむ、さっきのポンコツ店主の姿の我輩の言葉に僅かながら心が動いた死神よ。何を怒っている?汝も少しだけ期待していたではないか。」

 

「■■■■■■■■■■■----!!!!」

 

「ソ、ソウ君!?本当に落ち着いて!?狂戦士みたいになってるよ!?」

 

殺す!!殺す!!殺す!!ぶっ殺す!!!

 

「ふむ、この状況は我輩にとってはマズイである。ではさらばである」

 

そう言ってバニルは窓から逃げた。逃がすかああああああ!!!

 

「■■■■■■■■■■■----!!!!」

 

「ソ、ソウくうううううううううん!!」

 

俺も窓から外に出て、バニルを追いかけた。絶対にぶっ殺してやる!!




この章はあと少しだけ続けようと思います。


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この死神と店主に休日を!

今回はウィズを多めに出しました。


バニルとの作戦があった日から二週間が経過した。一週間前にカズマのスパイ容疑とデストロイヤーとバニル討伐の賞金で借金を返し、カズマに四千万エリスが進呈された。その後、カズマとダクネスが浮かない顔をしていたので魔道具店で作戦の事を明かした。カズマとダクネスは最初、俺の手の平で踊らされていたと落ち込んでいたが、すぐに立ち直っていた。カズマ達は今はクエストに行かないで引きこもっている。それで、俺はと言うと………。

 

「いい加減しろやあああああ!!この駄店主がああああああああ!!」

 

「そこに直れ!!ポンコツ店主!!」

 

「ご、ごめんなさああああああああい!!」

 

バニルと一緒に、この駄店主に怒号を発していた。

 

「何で、てめえは同じ事を何回もやるんだ!!ああ!!」

 

「折角、我輩と死神の二人で金を稼いでも、貴様の散財のせいで無にしているのだぞ!!何故なのだ!!」

 

「えっと………、良かれと思ってやりました………」

 

「良かれと思って………?良かれと思ってだああああああ!!!」

 

 

俺はこの駄店主にアームロックをする。

 

「にゃあああああああ!?痛い!!痛い!!腕もげちゃう!!」

 

「良かれと思って、こんなガラクタに金庫の中身を全部使ったのか!!いい加減にしろやああああああ!!」

 

「反省するのだ!!このポンコツ店主!!」

 

「本当にごめんなさああああああああい!!」

 

そう言ってウィズは、泣きながら俺達に謝っていた。………まったく。

 

「まあいい、次は気を付けろよ」

 

「我輩はまだ怒り足りないが、仕方ないな」

 

「あ、ありがとうございます!バニルさん、ソウ君」

 

「………でっ、これは何なんだ?どんな魔道具なんだ?」

 

そう言って俺は床に山積みになっているポーションと一つの箱を見た。

 

「商人さんに聞いたら、そのポーションは特殊な効果があるポーションらしいの」

 

「そうか………、それで効果は?」

 

「性別を変える効果だって言ってたよ?男性は女性に、女性は男性にするみたい」

 

「………そんなの誰が買うんだ?この箱は?」

 

「あっ!その箱は凄いんだよ!その箱を開けると異世界に行けるみたいなの!」

 

「「………はぁ」」

 

俺とバニルはその言葉を聞いて、ため息を吐いた。

 

「えっ!?意外な反応………、だ、だって異世界だよ!そんな所に行けるのってわくわくするでしょ?」

 

「………どうせ、時間制限と帰って来たら、向こうでの記憶が失うとか、そういう風な事を言われたんだろ?」

 

「う、うん」

 

「………どうやら、ガラクタを買わされたみたいであるな」

 

「ええっ!?違います!この魔道具はガラクタではないです!」

 

「まあいい、ちなみに何処に転移するんだ?」

 

「えっと、確か、二ホンという国に行くらしいの」

 

二ホンか。そんな名前の国は聞いた事がないから、やっぱりガラクタか………。俺はクエストに行こうとするとバニルに止められた。

 

「うん?何だバニル、何か用か?」

 

「すまぬが、今日はこのポンコツ店主を店から出してくれぬか?」

 

「えっ?何でだ?」

 

「このポンコツ店主のせいで全然商品が売れないのでな、今回、我輩は本気で商品を売ろうと思う。だからポンコツ店主を任せてもよいか?死神よ」

 

「………そうだな、分かった」

 

「すまぬな」

 

そう言って俺はバニルから離れて、ウィズに話しかけた。

 

「ウィズ、今日、一緒に出掛けないか?」

 

「えっ?でもっ、私には店番が・・・」

 

「それは我輩に任せておけ、たまには死神とゆっくりするがいい」

 

「いいんですか?バニルさん」

 

「うむ、任せておけ」

 

「あ、ありがとうございます!じゃあ、行こう!ソウ君!」

 

「ああ」

 

そう言って俺達は外に出ると、ウィズが俺の腕にしがみついた。・・・おいおい。

 

「えへへ、ソウ君とお出掛けなんて久しぶりだね」

 

「そうだな。じゃあ、行こうか」

 

俺達はそう言って歩き始めた。

 

◆◆◆

 

俺達は露店がある通りを歩いていると、少し小腹がすいたのでクレープを買った。ウィズはチョコレートとバナナのクレープで俺はフルーツのクレープだ。それを歩きながら食べていた。

 

「美味しいね、ソウ君」

 

「ああ、そうだな」

 

確かに美味い、そう思って食べ続けているとウィズが俺の方を見ていた。

 

「どうした?」

 

「ソウ君。一口分、交換しない?」

 

「ああ、いいぞ」

 

「ありがとう、ソウ君。じゃあ、はい」

 

そう言ってクレープを俺の方へ差し出した。俺はそれを食べる。………うん、美味い。

 

「美味しい?」

 

「ああ、美味いぞ」

 

そう言って俺はウィズにクレープを差し出した。ウィズはそれを食べる。

 

「うん、美味しい」

 

「そうか」

 

そう言って、俺達はクレープをたまに交換しながら食べた。その後、露店を回っているとウィズがある物を見ていた。

 

「どうした?」

 

「えっ、な、何でもないよ!次の店に行こう!」

 

そう言って、俺も見ると、十字架の飾りのペアネックレスだった。………これぐらいなら大丈夫だな。

 

「じゃあ、このネックレスを買うから、少し待っていてくれ」

 

「えっ!?そんなの悪いよ!」

 

「気にするな」

 

俺はそのネックレスを買った後、ウィズが申し訳なさそうに言ってきた。

 

「ソウ君、ありがとうね」

 

「気にするな、折角だし着けてやるよ」

 

「うん」

 

そう言って俺はウィズにそのネックレスを着ける。

 

「ありがとう、ソウ君。大切にするね」

 

「ああ」

 

そう言って俺もそのネックレスを着けて、店を後にした。

 

◆◆◆

 

その後、俺達は露店を回った後に風車が近くまで来ていた。流石に少し疲れたので木の木陰で休もうと提案した。俺は座ろうとしたら、ウィズに止められた。

 

「うん?どうしたんだ?」

 

「えっとね、ちょっと試してみたい事があるの」

 

「試してみたい事?」

 

「うん、まず私が座るね」

 

そう言ってウィズが先に座り、木に寄りかかる。

 

「それで、私の前にソウ君が座って」

 

「ああ、分かった」

 

その言葉の後、俺はウィズを背に前に座る。

 

「それで、この後はどうするんだ?」

 

「こうするの」

 

そう背後からウィズの声が聞こえた後、ウィズに抱き寄せられた。ウィズの胸が俺の後頭部に当たる。………おい。

 

「おい、ウィズ」

 

「えへへ」

 

そう嬉しそうな声が聞こえた。俺は諦めて、そのままウィズに寄りかかった。

 

「当店、自慢のウィズ枕の感触はどうですか?」

 

「ああ、柔らかくて、凄くいいな。他の人に宣伝していいか?ヒット商品になるぞ?」

 

「駄目です。この商品はソウ君限定です」

 

「そうか、それは残念だ。なら、皆の分まで俺が感触を味わうしかないな」

 

「うん、このウィズ枕を思う存分ご堪能下さい」

 

そう言った後、俺達はのんびりとしていると、ウィズが話しかけて来た。

 

「暖かい日が多くなってきたね」

 

「そうだな。色々あったから、時間が長く感じたけどな」

 

「ベルディアさんとの闘い、機動要塞デストロイヤーの襲来、あとバニルさんが来た事、本当に色々あったね」

 

そこに不死身のモンスター、フィニクスとの闘いの事を言ったら、めんどくさい事になりそうだから黙っておくか。

 

「あと、忘れちゃいけないのがソウ君がカズマさん達と出会った事だね」

 

「ああ、そうだな」

 

「いつも、一人でクエストを請けるソウ君がパーティーに入るなんて驚いちゃった」

 

「このままじゃいけないと思ったからな。だが、大変なパーティーに入ってしまった」

 

俺は今までの事を思い出しながら、話した。

 

「宴会芸しか取り柄の無い、自称女神のアークプリーストに一日一発、爆裂魔法を撃ち込んだ後、動けなくなるアークウィザード、すぐモンスターに突撃するドМクルセイダーに女性の下着を剥ぎ取り、鬼畜な言動をするクズ冒険者。癖のある奴ばっかりで本当に大変だ」

 

俺はそこまで言った後、微笑んだ。

 

「………だけど、あいつらと出会えて良かったと思っている」

 

「ソウ君、嬉しそうな顔をしてる」

 

「そうか?」

 

「うん」

 

俺達はそう言った後、笑い合った。その後、のんびりしていると俺は眠気に出てきてしまった。

 

「ソウ君、眠いの?」

 

「ああ、すまない」

 

「気にしないで。眠ってもいいよ」

 

「ありがとうな………、ウィズ」

 

「おやすみなさい、ソウ君」

 

そう言った後、俺は目を瞑り、そのまま眠りについた。

 

◆◆◆

 

俺が起きた後、色々見て回っていると、あっという間に夜になった。俺達は魔道具店に帰るために歩いていた。

 

「流石に夜になると、まだ寒いね」

 

「ああ、そうだな」

 

俺達がそう話していると、ウィズがくしゃみをした。俺は魔法陣を展開した。

 

「『マジック・クリエイト』」

 

そう唱えると長めのマフラーと手袋を魔法で作った。俺はマフラーをウィズに巻く。

 

「あっ、ソウ君」

 

「これで寒さを防げ、ウィズ」

 

「う、うん、ありがとう」

 

ウィズにマフラーを巻いた後、俺は手袋をウィズに差し出した。

 

「ほら、手袋も着けろ」

 

「でも、ソウ君は寒くないの?」

 

「俺は大丈夫だ」

 

「でも、あっ!そうだ!」

 

そう言って、ウィズはマフラーを外して、俺に片側を巻いた後、もう片側を自分に巻いた。手袋は右手側を俺に着け、左手側をウィズが着けた。

 

「うん、これで二人とも温かいね」

 

「そうだな。だが、右手側の手袋を俺に着けてどうするんだ?そのままだと、ウィズの右手は冷えるぞ?」

 

「それは、こうするためだよ」

 

そう言うと、ウィズは恋人つなぎをして、その手を俺のコートのポケットに入れた。

 

「えへへ、これで大丈夫」

 

「確かに温かいが………」

 

「何も心配する事ないよ。じゃあ行こう?ソウ君」

 

気にするだけ無駄か………。

 

「ああ、そうだな」

 

そう言って俺達は歩いていると、雪が降ってきた。

 

「あっ、雪が降ってきた」

 

「そうだな」

 

その雪が街の灯りに照らされ、綺麗に光っていた。

 

「綺麗………」

 

「ああ、神秘的で綺麗だな………」

 

俺はそう言った後、握っているウィズの手を強く握った。

 

「えへへ、ソウ君の温もりを感じる。凄く安心する」

 

「そうか、それは良かった」

 

「………ねえ、ソウ君」

 

そう話した後、ウィズが聞いてきた。

 

「また、休みの日に一緒に何処かに出掛けてくれる?」

 

「ああ、もちろん」

 

「ありがとう、ソウ君」

 

俺達はそう言った後、お互いの温もりを感じながら、ゆっくり魔道具店に帰った。




次の話でソウガに何かが起こります。


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このクソッタレなポーションに死神を!

ソウガに不幸が訪れます。


「ようウィズ、遊びに………って、何しているんだ?」

 

俺はアクア達を連れて魔道具店に来ていた。ドアを開けると何か話していたウィズとティアと何故かニヤニヤしているバニルがいた。

 

「あっ、カズマさん。いらっしゃい」

 

「よう、カズマ」

 

「どうしたんだ?何か話をしていた感じだけど?」

 

「それは部屋に引き籠っている死神に聞いてみるといい」

 

そうバニルが言った。ソウガがどうやらいるらしいけど、何かあったのか?

 

「ええっ!?ソウガがヒキニートになっちゃったの!?ちょっとカズマ、一体何て事してくれたのよ!」

 

「このバカ!何で俺のせいにしてんだ!」

 

「きっとカズマのヒキニート菌が移ったのよ!ほら謝って!私も謝ってあげるから早くソウガに謝って!」

 

「よし、その喧嘩買ってやる。表出ろ」

 

俺がアクアにそう言うと、めぐみんが。

 

「ちょっと待ってください。ソウガに何があったのですか?確かにカズマは借金が無くなってからクエストに行かずゴロゴロしたり、セクハラしたりしていますが、そんなカズマのクズっぷりをソウガが感化されたとは思えません」

 

「よし、お前も表出ろ」

 

「ところでソウガは結局どうしたんだ?病気か?」

 

「いえ、病気ではないんですけど………」

 

俺達が騒いでいると、珍しくダクネスがウィズに聞いていた。

 

「病気じゃないなら、一体どうしたんだ?」

 

「え、えっと、その………」

 

「………カズマ達か?」

 

俺がウィズに聞いていると、店の奥から黒髪ロングでウィズに負けず劣らずの巨乳の持ち主のツリ目の美女が出て来た。

 

「えっ………誰?」

 

「………………」

 

美女は何も言わないが、気になったのは服装がいつもソウガが来ている服装と同じだった。

 

「大丈夫ですか?ソウガ先輩」

 

「フハハハハハ!良い姿ではないか死神!おっと汝の悪感情美味である!」

 

「こいつ………!」

 

「もしかして、これソウガかああああああ!?」

 

そうティアとバニルが言った後、俺は驚いた。この美女がソウガだなんて。

 

「う、嘘!?」

 

「バカな!?」

 

アクアとダクネスも驚いているとめぐみんがソウガに近づいた。

 

「ソウガ、駄目じゃないですか。こんな詰め物しては」

 

そう言った後、めぐみんがソウガの胸を掴んだ。

 

「んっ………」

 

「め、めぐみんさん!?」

 

「ソウガは男じゃないですか。何かの罰ゲームか知りませんが女装しているんですよね?だからって、こんな大きなもの詰め込んだら駄目じゃないですか。こんな………ええい!!さっさと取らないか!!」

 

そう言うと、めぐみんはソウガの胸を捩じり出した。

 

「いだだだだだだ!?めぐみん止めろ!?」

 

「何ですか!声まで女性の声にして!何ですか?いじめですか?私に対してのいじめですか!?」

 

確かに、今のソウガの声は日本にいた頃にやったゲームの中に出てくる紫の女神とこの世、全ての欲を使うラスボスの声と似ているが、何で声を変えているんだ?

 

「めぐみんさん!やめてください、ソウ君の胸が取れちゃいます!」

 

「取れて良いじゃないですか!どうせ、詰め物なんですから!」

 

「詰め物じゃないです!正真正銘のソウ君の胸です!」

 

「はい?」

 

今、何と言いました?

 

「何言ってるんですか?ソウガは男じゃないですか」

 

「性別を変えていますので、今は女性なんです」

 

「何………だと………」

 

ウィズがそう言った後、めぐみんが青い顔をし、ソウガの胸を放し、その場に突っ伏した。

 

「くそっ、めぐみんが捩じるから、胸がいてえ………」

 

「それは大変だな!俺がさすってやろ「死ぬか?」ごめんなさい!許してください!」

 

俺はソウガに土下座して謝った。流石にまた死にたくない。

 

「ところで、何でソウガが女になっているんだ?」

 

「それは我輩が、死神に、この性別を変えるポーションを飲ませたからである。ちなみに効果は三日間続く」

 

「筋トレをしていて喉が渇いた時にこいつがコップを持ってきた時に気付くべきだった。こいつはこういう事をする奴だって知ってたはずなのに………」

 

「フハハハハハ!汝の悪感情美味である!美味である!」

 

「やかましいわ!」

 

どうやら性別を変えるポーションを飲んで、性別が変わったらしい。それにしてもソウガがこんな美女になるなんてな。

 

「くそっ、こんな姿、誰にも見られたくない」

 

「よし、今日は久しぶりにクエストに行こう。行くぞ、ソウガ」

 

「ふざけるな!お前達だけで行け!」

 

「服装と喋り方を変えれば、ソウガだってバレないさ。だから行こうぜ!」

 

「普段は行きたがらないくせに、何でこんな時だけ行きたがるんだ?」

 

そう言った後、ソウガは考えてしまった。よほど女の姿を見られたくないのだろう。その後、ソウガは諦めた感じで言った。

 

「………今日は本当はクエストに行くつもりだったから、いいぞ」

 

「よし、決まりだな。じゃあまず喋り方を変えてみようか」

 

「ああ、こほん、………こんな感じでいいかしら?」

 

「おお!ソウガ先輩、クールな女性な感じでかっこいいです!」

 

「褒められたくないけど、素直に受け取っておくわ。あとは服装ね」

 

ソウガはそう言うと、魔法陣を展開した。

 

「『ドレスチェンジ』」

 

そうソウガが言うと、黒いコートは変わらないが、胸元が開いている白いシャツに黒いミニスカートに黒いニーソという服装になった。………ぶっちゃけた事を言うと胸の谷間が見えてエロいし、絶対領域が素晴らしい!

 

「こんな感じでどうかしら?」

 

「うん、大丈夫だよ。ソウ君」

 

「そう、でも女の体は不便なものね。胸が重くて仕方ないわ」

 

「それは持っているから言えるんですよ!!」

 

そうソウガが言うと、今まで突っ伏していためぐみんが立ち上がり、そう言った。

 

「何ですか!何ですか!私だって大人になったら、きっと大きくなってみせます!だから羨ましくないんですからね!」

 

「そう、ちなみに私の母親は胸が大きかったからその影響かもしれないわね。めぐみんの母親はどうだったの?」

 

そうソウガが言うとめぐみんがふいっと目を逸らした。

 

「………絶望的みたいね」

 

「わ、わあああああああーっ!!」

 

ソウガがそう言うとめぐみんが泣き出してしまった。その光景を見ているソウガが悪い顔をしていた。さっき胸を捩じられた事を根に持っていたんだな………。

 

「それじゃ、行きましょうか。流石にソウガと呼ぶのはマズいから、外に出る時は私の事はソラとでも呼んでちょうだい」

 

「あれ?何か私の事を呼ばれた気がする」

 

「何を言ってるんだ?アクア?」

 

「じゃあ、行ってくるわね。ウィズ」

 

「う、うん。行ってらっしゃい」

 

そう言うと俺達とついてきたティアはギルドに向かった。

 

◆◆◆

 

俺達はギルドに着いて扉を開け、入ると。

 

「おい、カズマと一緒に入ってきた黒髪の女性、凄い美人だな」

 

「ああ、出てる所は出てるし、いいな」

 

「あの人、凄い綺麗………」

 

そう女体化したソウガに対して他の冒険者が言っていた。これ、あのソウガですよって言ってやりたい………。

 

「ごめんなさい、カズマ。ちょっとルナに説明してくるから待っててくれないかしら?」

 

「ああ、いいぞ。ソウ………ソラ」

 

「ありがとう。じゃあ行ってくるわね」

 

そう言ってソウガは受付の方へ行き、受付のお姉さんに説明していた。受付のお姉さんは凄い驚いているのを見ていると。

 

「おい、カズマ!誰だよ、あの美人は!俺にも紹介してくれよ!」

 

「おう、ダスト、久しぶりだな」

 

ダストが俺に詰め寄ってきた。流石に本当の事を言うのは駄目だな。

 

「彼女はソラ、アークウィザードだ。久しぶりにこの街に来て、俺達と一緒にクエストを請けてくれないかと頼まれたんだ」

 

「へえ、そうなのか。しかし、本当に美人だよな。あの人、出てるところも出てるし。あの大きな胸揉んでみてえな」

 

そうダストは言うが、俺は笑うのを堪えていた。やべえ、あれソウガだって超言いてえ………。

 

「ごめんなさい、待たせたわね」

 

「気にするな」

 

「どうも、俺の名前はダストって言うんだ!よろしく」

 

「よろしく、あなたが、あのダストね」

 

「俺の事知っているのか?」

 

「ええ、知っているわ。よくね………」

 

そうソウガが言った後、俺はクエストの掲示板を見ていたダクネス達に合流した。

 

「どうだ、何か良さそうなクエストあったか?」

 

「いえ、まだ見つけていませんよ」

 

「ねえ、やっぱりクエストに行くの止めない?帰ってのんびりした方がいいわ、ねっ!」

 

この駄女神が何か言っているが無視して、俺はクエストを探した。それに今日はソウガがいるし、少し難易度が高いクエストを請けようと思い見ていると。

 

「ある荒野にいるゴーレム退治、報酬三十万エリスか………。ソウガがいるからって流石に「そのクエストを請けるのか!」うおっ!?」

 

そのクエストを請けるか考えているとダクネスが俺の近くで言った。そして嬉しそうにそのクエストの紙を取った。

 

「ああ!この巨体の一撃を受けてしまったら私はどうなってしまうのだろう?想像しただけで武者震いが、早速請けてくる!」

 

「お、おい!ちょっと待」

 

俺は止めようとしたが、すでにダクネスがクエストを請けるために行ってしまった。仕方なく俺はアクアとめぐみんを連れて、ソウガの所に戻ると何故かティアがダストと揉めていた。

 

「いい加減にしろよ!ソウ………ソラ先輩が困っているじゃねえか!あっち行け!」

 

「てめえこそ邪魔なんだよ!赤髪のプリーストがっ!俺はソラさんと今から飯食いに行くんだよ!」

 

「そんな約束していないのだけど………」

 

「ほらみろ!ソラ先輩はそんな約束していないって言っているぞ!妄想もここまでいくとすげえな!飯なら一人で行け!」

 

「てめえには関係ないんだよ!俺はあわよくばその立派なモノを好きにしたいんだよ!」

 

「やっぱりソラ先輩の体目当てかクソ野郎がっ!!」

 

どうやら、ダストがしつこいみたいだ。俺達はティアとソウガの近くに行った。

 

「悪い、遅くなったな。クエストを請けたから行こうか、ダストも今回だけは諦めてくれ、じゃあな」

 

そう俺はダストに言った後に俺達はクエストに向かおうとしたが、まだ諦められないのかダストが立ち塞がった。

 

「カズマには悪いが、俺にも引けないものがあるんだ!」

 

いや、引いとけって!ティアとソウガが怖いから引いとけって!

 

「いい加減にしろ、殺すぞてめえ」

 

「上等じゃねーか!人が下手に出てたらいい気になりやがって!そのでけえ乳揉まれる覚悟はできてんだろーな!」

 

やばい、お互い臨戦態勢の状態だ。このままじゃダストが殺される。そう思っていると。

 

「いい加減にしろ!!てめえ!!」

 

「ソウ………ソラ先輩!?」

 

「ソラさん!?」

 

ソウガが先にキレてしまった。ソウガは怖い顔をしてダストに近づく。

 

「に、逃げろダスト!殺されるぞ!」

 

「に、逃げたくても、何故か足が震えて動けないんだよ!?まるでソウガに殺されそうになったあの日のように動けないんだよ!?」

 

そのソウガだからだよ!あと何をしてんだダスト!

 

「ちょっ、ちょっと待ってくれ!?」

 

そうダストが言うが、ソウガはダストの腕を掴んで。

 

「んっ………!」

 

「えっ?」

 

「ソ、ソラ先輩!?何をしているんですか!?」

 

自分の胸にダストの手を押しつけた。

 

「ほら、これで満足したろ、俺達はクエストに行くから邪魔するな。じゃあな」

 

そう言ってソウガはダストの腕を放して、外に先に行ってしまった。その後、ティアが急いで追いかけて行った。ダストは放心状態で自分の手を見ていた。

 

「………………」

 

「どうだったダスト?感触は?」

 

「………めっちゃ柔らかい!!」

 

ダストがそう大きい声で嬉しそうに言った。正直に言うとめっちゃ羨ましい………。




次回はアニメのOPの戦闘をしてみようと思います。


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このポンコツパーティーに祝福を!

今回はOPの戦闘をアレンジしました。


「そう言えば、聞き忘れていたんだけど、何でソウガは魔王軍から死神って呼ばれているんだ?」

 

ゴーレム退治に向かう途中、俺は隣にいるソウガに言った。どうやら後ろにいるアクア達には聞こえていない様だった。ベルディアもバニルもソウガの事を死神と呼んでいた。ウィズは幼なじみだからそう呼んではいなかったが、気になるので聞いてみた。

 

「………今、その事を聞くんだな」

 

そう、ソウガが言った。ちなみに今は周りに俺達しかいないから喋り方は元に戻している。ソウガは少し考えた後、話してくれた。

 

「俺とまだその頃は冒険者だったウィズは、昔だがパーティーを組んだことがあるんだ」

 

「そうなのか?」

 

「ああ、その時のパーティーは楽しくて、温かくて、まるで家族のようなパーティーだった。途中で魔王軍と戦う事があったが、皆で力を合わせて返り討ちにしていた」

 

「凄いパーティーだったんだな」

 

「ああ、皆、凄い奴らだった。………でも、そんな時間もあまり長く続かなかった」

 

そう言ったソウガが悲しそうな顔をしていた。

 

「俺達はあるダンジョンに入ると、そこにはバニルがいた。バニルと戦闘を行ったが、散々な目にあって、俺達は別の魔王軍の幹部を討伐しに行ったんだ。そこで出会ったのがベルディアだ」

 

「ベルディアが?」

 

「ああ、俺達とベルディアの戦闘は苛烈を極め、ベルディアに深手を与える事ができた。だが、その時に死の宣告を発動されてしまった。俺はウィズを助ける事ができたが他の仲間が受けてしまった。俺は急いで浄化魔法を使って、死の宣告を解除しようとしたが、あの時の俺は未熟で解除する事ができなかった」

 

「ベルディアの死の宣告って、そんなに凄いものだったんだな。アクアは簡単に解除していたけど」

 

「ああ、だから俺も驚いた。そして、思ったんだ。あの時にアクアがいれば皆が傷つく事がなかったんじゃないかってな………」

 

ソウガはそう言った後に、話を戻した。

 

「王都の凄腕のアークプリーストでも死の宣告は解除する事ができなかった。その後、皆は思い残す事が無い様に毎日を過ごしていた。その光景を見て、俺は思ったんだ、何で魔王軍の奴らが平気で生きていて、あいつらが死ななくてはならないんだってな。だから俺はその時に決めたんだ。この世から魔王軍を殲滅してやるってな」

 

「なっ!?」

 

「その日の夜に、俺はウィズと皆に黙って一人で魔王軍を殲滅するために旅に出た。その後、俺は魔法で年を取らない様にして魔王軍を殺し続けた。魔王軍の幹部が襲ってくる事があったが返り討ちにし、たとえ命乞いしても容赦なく殺した。ある時に魔王軍の幹部の一人が涙を流しながら俺の事を死神と言った。そこからだな俺の事を魔王軍が恐怖の対象として、そう呼び始めたのは」

 

仲間を傷つけられたソウガは魔王軍を憎み、殺戮者になった。そして、魔王軍は恐怖の対象としてソウガの事を死神と呼び始めた。

 

「何年か過ぎた頃には、俺の心は完全に壊れていた。もう魔王軍を殺す事しか頭になかった。そんな時だったウィズと再会したのは」

 

魔王軍を殺し続けて心が壊れてしまった時にウィズと再会したのか。

 

「ウィズは一緒に魔道具店で暮らそうと言ってくれたが、俺はそれを断って立ち去ろうとした。その時だ、ウィズが魔王軍の幹部でリッチーだと言ったんだ。そう聞かされた俺はウィズに向かって攻撃を始めた」

 

「えっ!?何でだよ!?」

 

「憎かったんだ。仲間を傷つけた魔王軍になったウィズが………」

 

ソウガの憎しみは、幼馴染のウィズでさえ殺そうとするほどに大きくなってしまったのか。

 

「俺は容赦なくウィズに攻撃を続けた。ウィズはボロボロになりながらも俺に立ち向かい、自分の体が消える寸前まで魔力を使って俺の魔法を潰して、全力を超えた氷結魔法を俺に叩き込み、ウィズは俺を倒した」

 

ソウガとウィズの戦いは、限界まで魔力を使ったウィズの勝利で終わったようだ。

 

「ウィズに倒された俺は生きる意味が無くなり自殺を図ろうとしたがウィズに止められた。俺はウィズに皆を救えない役立たずの俺なんか生きている資格なんて無いといったら思い切りビンタされた。その後、ウィズは言ったんだ。皆は生きているよってな」

 

「えっ、死の宣告はどうしたんだ?」

 

「ウィズはバニルからリッチーになる禁術を教えてもらい、リッチーになった後に結界を切り裂いて、単身で魔王城に乗り込み、襲い掛かってくる魔王軍の幹部を倒して、療養中のベルディアをボコって解かせたらしい」

 

「そ、そうなのか………」

 

魔王城に乗り込んで、ベルディアをボコボコにして死の宣告を解除させたのか。ていうかウィズ、強っ!

 

「そう、聞かされ俺は嬉しかったが、俺のこの手はもう血で穢れてしまった。そんな俺がどんな顔をして皆に会えばいいとウィズと言ったんだ。それを聞いたウィズは俺を抱き寄せて、涙を流しながらこう言ったんだ。もう一人で背負わないで、これからは私も一緒に背負うから、だからソウ君は皆の傍にいていいんだよって、俺はその言葉を聞いて心が救われたんだ。そこから俺は魔道具店でウィズと一緒に暮らし始めたんだ。前の仲間も死んでしまった者もいるが、今もたまに魔道具店に来ている」

 

「そんな過去があったんだな。すまん、余計な事を聞いて」

 

「気にするな、いつか話さないといけないと思っていたから、ちょうど良かった」

 

ソウガはそう言ってくれたが、俺は本当に余計な事を聞いてしまったと後悔をした。

 

◆◆◆

 

荒野に着いた俺達はゴーレムを待っていた。周りに変な岩があり、気になって見ているとソウガが言った。

 

「あれは、爆弾岩だな。岩みたいなモンスターだが近くに何かがいると、爆発する奴だ。早く倒せば別に問題ないから心配するな」

 

「いや、心配しかないんだけど………」

 

そう思っていると、近くの爆弾岩にダクネスが向かっていた。俺はダクネスを羽交い締めにして止めた。

 

「やめろ!!何してんだ、このバカッ!!」

 

「今後の戦闘ではあの岩が邪魔だ。先に倒して戦闘に支障が出ない様にしよう」

 

「………本音は?」

 

「あの岩の爆発がどれほど気持ちいいのか試したい!!」

 

「やっぱりか!?」

 

俺はダクネスを引きずってソウガ達の元に戻り、作戦会議を始めた。

 

「じゃあ、作戦会議だ。ダクネスはゴーレムの攻撃を受け止め、ソウガとティアはダクネスの援護、めぐみんは爆裂魔法の準備をして待機だ。俺とアクアはどうしよう?」

 

「じゃあ、カズマとアクアは爆弾岩の相手をしてくれ。あいつらが近くにいると戦闘に支障が出る」

 

「分かった。ところでソウガ、体が女になっているけど力も変わっていたりするのか?」

 

「そうだな、ちょっと試してみる」

 

そう言ってソウガは俺達の反対側を向いて、正拳突きをした。そうすると突風が発生し、大地を抉りながら爆弾岩を吹っ飛ばした。ちょっ!?

 

「ふむ、大分下がっているな。体が女になっているから当然か・・・」

 

「いやいやいや!?十分凄いんですけど!?」

 

女になっても化け物並みに強いじゃねえか!?そして、本来の力のソウガを倒したウィズも凄すぎだろ!?

 

「どうやら、さっきので気付いたみたいだな」

 

そうソウガが見ている方向を見ると、ゴーレムが向かっているのが見えた。ゴーレムは俺達の近くまで来ると俺達を見下ろしていた。俺は剣を抜いた。

 

「それじゃあ、始めるか」

 

そう言って俺達は作戦を始めた。

 

◆◆◆

 

ゴーレムは右腕を振り下ろしてダクネスに攻撃を仕掛けた。ダクネスはその攻撃を受け止めた。

 

「頑張りなさい!カズマ!」

 

「このこのこのっ!」

 

その後ろでは、カズマが爆弾岩に剣を何回も振り下ろしていたが、全然聞いていない様だった。アクアはカズマのその様子を見て応援していたが、その直後に爆弾岩が爆発した。

 

「「ぎゃあああああああああああっ!!」」

 

「カズマ!アクア!」

 

ゴーレムの攻撃を受け止めていたダクネスは後ろを見ると、アクアは突っ伏していたがカズマが空中に飛ばされていた。ダクネスは空中に飛んでいる岩を足場にしてカズマの腕を掴んだ。

 

「カズマ、無事か!」

 

「ああ、すまないダクネス。ダクネス!ゴーレムがこっちに岩を投げ込もうとしてる!」

 

「何っ!?」

 

カズマとダクネスはゴーレムを見ると、大きな岩をカズマ達に投げ込もうとしていたが………。

 

「悪いが、そんな事はさせねえよ!」

 

「俺の仲間に何をしようとしている」

 

そう言って、ティアが岩を破壊して、ソウガが魔法で弓と剣を作り、作った剣を矢の形状に変化させてゴーレムの両腕に放った。ゴーレムの両腕に何本も刺さる。

 

「『クリエイト・ブレイク』!」

 

そう言うと矢が爆発して、ゴーレムの両腕を粉々に粉砕した。

 

「ソウガ先輩の攻撃に夢中になっている時に悪いが、そこ、危ないぞ」

 

ティアがそう言うと、ティアが破壊した岩が元に戻り、ゴーレムの上に落ちて、ゴーレムを下敷きにした。

 

「よし!」

 

「では、最後は私の番ですね!」

 

「はい?」

 

ティアがそう言うと、高台にいるめぐみんが詠唱を始めた。

 

「ちょっ!?待て待て待て!?まだ私達が近くにいるんだぞ!?」

 

「めぐみん、待ってーっ!?」

 

「めぐみん、止めろ!?」

 

「めぐみん!?」

 

「あぁー………、これは駄目だな」

 

そうカズマ達がめぐみんを止めようとしたが………。

 

「『エクスプロージョン』ッ!!」

 

めぐみんは爆裂魔法を発動した。ゴーレムの近くにいたカズマ達は巻き添えを食らった。威力が強すぎてめぐみんがいる高台まで範囲に入り、めぐみんも巻き添えを食らった。その後、カズマ達は突っ伏していたがすぐに起き上がった。カズマは後ろにいるアクア達に向けて親指を立てた。そして隣ですでに立っていたソウガに話しかけた。

 

「俺達はソウガの前のパーティーみたいに凄い奴らじゃないけどさ、皆で力を合わせてソウガを守れるように強くなっていくな。こんなポンコツパーティーだけど、これからもよろしくな」

 

そうソウガにカズマは言った。

 

「ああ、よろしくな」

 

その言葉を聞いたソウガは微笑んで、そう言った。

 

◆◆◆

 

「ふう………、疲れた」

 

俺達はギルドでクエスト達成の報告をした後、銭湯に入って疲れを取っていた。

 

「疲れが取れるな。カズマ」

 

「そうだな………」

 

そう俺の隣にいるソウガに言った。………えっ?

 

「ソウガッ!?何してんだよ!?」

 

「何って、風呂に入っているが?」

 

「そう言う事じゃない!今のソウガは女の体なんだぞ!?」

 

「ああ、忘れていた」

 

「忘れていたって、更衣室にいた奴らはどうした?」

 

「何故か鼻血を出して倒れていたけど、そう言う事だったのか」

 

「そう言う事って………ッ!?」

 

俺はソウガを呆れながら見ていると、胸が浮いていた。

 

「くそっ、胸が浮いて邪魔だな」

 

「それは大変だな!俺が押さえてやろ「殺すぞ」ごめんなさい!もう言いません!」

 

「たくっ、もういい。俺は先に上がるな」

 

そう言った後、何故かソウガは俺の近くに来ると話しかけてきた。

 

「カズマ、ありがとうな。カズマのあの言葉、嬉しかったぞ」

 

そう言うとソウガは肩を組んで、胸元に俺の顔を寄せて来た。………やばい!超柔らけえ!!

 

「それじゃあ、またな。カズマ」

 

そう言ってソウガは湯船から上がり、風呂場を後にした。俺はその姿をじっと見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、俺はサキュバスの店に向かい、女体化ソウガもといソラの設定にしてもらい、夢を楽しんだ。




次は漫画版の話をしようと思います。


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このパーティーと店主に異世界を!

これで、この章は終わりです。


俺は、今懐かしい光景を見ていた。コンビニに車、電話をしながら歩いている人、どれも懐かしいが………。

 

「カズマっ、あの人………、誰もいないのに誰かに話しかけていますよ!?」

 

「見てくれ、カズマっ!あのドア、勝手に開いた上に喋っているぞ!?ドア型のモンスターなのか!?」

 

その光景を見ていためぐみんとダクネスが言った。まぁしょうがないか。こいつらにとっては非日常の光景だからな。

 

「まさか………、あの魔道具が本物だったなんてな」

 

「凄いっ!凄いよソウ君!本当に異世界に来ちゃった!」

 

あのソウガも目の前の光景を信じられずにいた。隣にいるウィズは興奮気味にソウガに話しかけていた。それを見ていたアクアは得意げに言った。

 

「まーったく、四人とも田舎者ね。私がこの二ホンって国の事、詳しく教えてあげるわよ」

 

そうアクアが言うと、ソウガ達はこっちを向いていた。そう………、俺達は今、故郷の日本に来ている。

 

◆◆◆

 

話は数時間前に遡り………。

 

「じゃんっ!見て下さい皆さん、このアイテム凄いんですよ!」

 

皆でクエストに行った日から数日が経った。俺とアクア達はあの日からクエストに行かずにのんびりしていた。ソウガは元の姿に戻り、ホッとしていた。少し勿体ないと思い、性別を変えるポーションを何個か買い、いつかソウガをまた女体化させようと決めた。俺達は庭の掃除をしていると、ウィズとソウガが来て、ウィズがそう言った。

 

「何だそれ?というか何しに来たんだ?ウィズ」

 

「そ、それは店の赤字を埋めるために商品を売り込みに………。あ、いえ、そうではなくて!」

 

ウィズがどうやら商品を売り込みに来た様だな。俺はソウガを見ると、ため息をついていた。そう思っているとウィズが商品の説明を始めた。

 

「実は、この箱を開けると………、何と!異世界に行けちゃうんですよ!」

 

「あ、そう」

 

「えっ!?意外な反応………。異世界ですよ?そんな所に行けるって凄くないですか?わくわくしませんか?」

 

俺はすでに異世界にお呼ばれされてるし………。

 

「でも、どうせ何かデメリットがあるんだろ?それ」

 

「えっ?あ、あの、実は………、行く異世界というのが名前以外、どういった所かわからなくて………」

 

「はあ?」

 

「あと、異世界に行けるのは十二時間程で………、それに、異世界に行って帰ってくると………、向こうでの記憶は失って………」

 

俺の中の危険アラームが反応している。絶対に関わらない方が良いと………。

 

「悪いけど、他をあたってくれ………」

 

「おおお願いします!買ってください!他は全て断られてしまったのでお願いします!それに………」

 

そう言ってウィズは顔を赤らめて、もじもじしだした。

 

「もし、誰も買ってくれなかったら………。ソウ君に私の体を好きにされちゃいます………」

 

何………だと………!?

 

「誤解される様な言い方するな。絶対に売れると言うから、売れなかったらお仕置きなって言ったんだ」

 

「お仕置きだとっ!?自分の幼馴染に一体どんな変態プレイをするつもりなんだ?ソウガ!?」

 

「………ダクネス、お前は何を言っているんだ?」

 

ソウガにダクネスが興奮気味にそう言って、ソウガが呆れていた。そう思っているとアクアがウィズに近づいていた。

 

「何~?あんた、胡散臭い物でも売りに来たの?」

 

「あっ」

 

アクアがウィズから箱をぱっと奪った。

 

「こんなあからさまな詐欺商品、誰も買わないわよ!クソアンデッド」

 

「い、いえ、そんなんじゃ!」

 

「こんな物にお金払う必要なんて無いわよね!没収よ、没収!」

 

「こ、困ります~、返してください~」

 

そう言ってウィズはアクアから箱を取り戻そうとしていた。

 

「でも、本当だとしても、せめてどんな所かわからないと………」

 

めぐみんの言う通りだと思っていると、ウィズが話した。

 

「うう、確かに………。転移先の世界が二ホンという名前以外何もわかっていませんし………、危険ですよね………」

 

今、何て言った?

 

「しょうがないわね。可哀想だから返してあげるわよ」

 

「「アクア………」」

 

「さて、これで全滅だな。お仕置きは何にしようか………」

 

「うう………、お手柔らかにお願いします………」

 

「買った」

 

「「「「「え?」」」」」

 

俺はそう言うと皆が一斉にこっちを見た。その後、ウィズが嬉しそうな顔をした。

 

「あ、ありがとうございます!お値段は十万エリスになります!」

 

そう言われた俺は十万エリスをウィズに渡して、日本に転移するアイテムを受け取った。

 

「カズマ、本当にいいのか?こんな本当かもわからないアイテムを買って………」

 

「ああ、大丈夫だ。折角だし、皆で行ってみないか?」

 

「ああ、別に構わないが………」

 

俺がそう言うとアクア達が若干乗り気になっていた。

 

「そういえばティアはどうしたんだ?折角だし一緒に行こうと思ったんだけど?」

 

「ティアは今日、ゆんゆんと一緒にクエストに行っていていないぞ。たまに一緒にクエストを請けているらしい」

 

なるほど、ティアは主に一人でクエストを請けているが、たまにゆんゆんと一緒にクエストを請けているのか。

 

「じゃあ、広間に行ってから開けてみるか」

 

俺がそう言うと広間に移動して椅子に座り、机の中央に箱を置いた。

 

「じゃあ、開けるぞ」

 

そう言って、俺は箱を開けると、俺達は光に包まれた。

 

◆◆◆

 

そんな訳で、俺達は日本に来ていた。そう思っているとめぐみん達が騒ぎ始めた。

 

「カズマ!小型のデストロイヤーみたいなやつが、いっぱいいますよ!」

 

「そこかしこにモンスターが駆け回っているが、本当にここがお前の出身地なのか!?」

 

「大丈夫だって、あれはトラックていうモンスターで、普通は人を襲ったりしないの。でも中には気性の荒いのがいて、突っ込んで来たりするからそこは気を付けて」

 

そう話しているのを見ているとソウガとウィズが車を見ていた。

 

「ふむ、あの技術を再現できれば、俺達の店は格段に大きくなるな」

 

「そうだね。どうやって作っているんだろ?」

 

「機動要塞デストロイヤーみたいな感じに作っているんじゃないか?」

 

「じゃあ、動力源はコロナタイトなのかな?」

 

「いや、あれは希少すぎる。もし、コロナタイトならこんなに多くあるのはおかしい。もっと手軽に手に入る物じゃ無ければ不可能だ」

 

「じゃあ、マナタイトかマジックスクロールで動いているのかな?」

 

「多分な、でも車輪も普通の物じゃないな。あんなに早く走ってしまったら車輪が持たない」

 

「う~ん、考えれば考えるほど分からなくなっちゃう」

 

ソウガとウィズは車を冷静に分析して、どうにか再現できないかを考えていた。ちなみにソウガとウィズはずっと恋人つなぎをしている。おそらく、お互いが迷わない様にしているんだろう。………爆発してしまえ。

 

「しかし、本当に帰って来たんだな。元の世界に………。しばらく異世界に居たせいで実感がわかないや」

 

まぁ、十二時間たてば異世界に戻されるけど、これはまたとないチャンスだ。異世界に戻されるまでに俺は実家に帰ってやっとく事がある。だが、家族と顔を合わせたくないから夜まで待つか。それとあいつらの恰好が目立つよな。

 

「うわっ!?空に巨大なモンスターがいるぞ!?」

 

「ふむ、あれぐらいの大きさなら鶏肉が大量に手に入るな。撃ち落すか」

 

「なら、任せてください!我が爆裂魔法で撃ち落して………」

 

「駄目よ。あれはヒコウキと言って、あれに沢山の人が乗っているのよ」

 

「あの、巨大な物に人が乗っているんですか!?アクア様!?」

 

金は死ぬ前に持っていた日本円が少し………。

 

「ようしお前ら、良い所に連れてってやる」

 

◆◆◆

 

その後、俺達は電車に乗って秋葉原に来ていた。電車に乗っている時も騒いで恥ずかしかった。

 

「快適な乗り物だったな。しかし、アクアの羽衣がデンシャの口に挟まったのは肝を冷やしたぞ」

 

「そうね、私も油断してたわ」

 

「エキインという人がデンシャを宥めてくれて助かりましたね。あのクラスのモンスター使いならデストロイヤーも使役できるかもしれませんね」

 

「何なんだ、あれは?この世界の技術力が凄すぎて、どうやって作っているのかが全然分からない」

 

「ソウ君、大丈夫?」

 

後ろでそんな声が聞こえるが無視して、秋葉原の街を歩いていた。

 

「しかし、ここは先程の街より随分と賑やかだな」

 

「街全体がお祭り騒ぎみたいです。私達と似たような服を着てる人もちらほらいます」

 

そうダクネスとめぐみんが話していると、ソウガとウィズが立ち止まった。

 

「うん?どうしたんだ?ソウガ、ウィズ」

 

「いや、何か楽しそうな音楽が聞こえてくる店があるから何だろうと思ってな」

 

「ああ、ゲーセンの事か」

 

「ゲーセン?」

 

「こっちの遊技場みたいなものだ。寄っていくか?」

 

「ああ、いいぞ?」

 

そう話した後、俺達はゲーセンに入った。色々質問をされたので応対しているとめぐみんにカメラを持った人達が話しかけて来た。

 

「あの、すみません。そのコスプレをカメラで撮らせてもらっていいですか?」

 

「カズマ、この人達は何を言っているんですか?」

 

「あれだ、紅魔族最強のアークウィザード様にお近付きになりたいって事だろ」

 

「………そうですか。まさか我が勇名が異世界にまで轟いているとは、いいでしょう、ならばその身に刻め!畏怖せよ!我が名は、めぐみん!アークウィザードを生業とし、最強の攻撃魔法、爆裂魔法を操る者!」

 

「おおーっ!!」

 

「すいません!こちらにも目線下さい!」

 

その後、めぐみんはカメラマンに囲まれてしまったのでソウガ達にお金を渡して、各々別れた。俺は格ゲーをしていると大きな声が聞こえたから行ってみるとダクネスが台を叩いていた。

 

「何故、あと少しの所でボールが落ちない!どれだけメダルを使ったと思っているのだ!」

 

「お、お客さん!台を叩かないで下さい!」

 

「何やっているんだ、やめろ!!」

 

「カズマ、聞いてくれ!このゲームはきっと私をからかって!」

 

俺はダクネスを引きずりながら離れると、アクアが台を叩いていた。どいつもこいつも!

 

「何で、あとちょっとの所で取れないのよおおおおおお!!」

 

「お前も何やっているんだ!!」

 

「カズマ!○○チュウ!この○○チュウのストラップ取って!!」

 

「わかった、このピカ○○○取ってやるから!!大人しくしてろ!!」

 

その後、俺はストラップを取った後、歩いているとコスプレコーナーに赤い弓兵の恰好をしたソウガがいた。

 

「………何しているんだ?ソウガ」

 

「ああ、カズマか。この世界の衣装が色々あるから着てみないかってウィズが言ったから着てみたんだ」

 

いや、それアニメのキャラのコスプレだから。

 

「そういえばウィズは?」

 

「まだ着替えているぞ。そろそろ着替え終わると思うが」

 

そう思っていると、青剣士の恰好のウィズが出て来た。

 

「ソウ君、お待たせ!あっ、カズマさん。ここは色々な服があって凄いですね!剣士の服まであるなんて!」

 

だから、アニメのキャラの服だって………。

 

「でも、胸の所がきついですね」

 

「その服を着ていた剣士は胸が小さかったからな」

 

「そうなのか?まあいい、俺達はまだ色々着てみるから、あれをどうにかしてくれ」

 

「あれ?」

 

ソウガが指差した方向を見ると、アクア達がまた台を叩いていた。

 

「ちょっ!?」

 

「じゃあ、頼んだぞ」

 

そう言って、またソウガ達はコスプレをするためにコスプレコーナーに入っていった。

 

「お前ら、いい加減にしろおおおおおおお!!」

 

◆◆◆

 

あれから、色々楽しんだ後、外は夜になったので俺達は移動していた。………疲れた。

 

「でも、カズマがこんなに文明の発達した世界から来たなんて」

 

「全くだ、帰ったらじっくり話を聞こうじゃないか」

 

「こいつら、戻ったら記憶が失う事、忘れているな」

 

「そうみたい、でも本当に楽しかった」

 

「カズマ、元の世界に帰る時間が近づいてるわよ。それまでどうするの?」

 

「ああ、ちょっと………」

 

そう言った後、俺達はある家の前に来ていた。

 

「………あの家に空き巣に入るの?」

 

「違うわ!あれは俺の家だ。突然お前らの異世界に送られたからな。この世界を離れる前にやっておく事があるんだよ。だから、すまないがちょっと待っててくれ」

 

そう言った後、俺は家の中に侵入して、スキルを活用して自分の部屋に着くとパソコンを起動させて、中のデータを全部消去した。これで、一安心だと思いながら外に出ると、ダクネスが警察と揉めていた。

 

「ふ、ふざけるなっ!!お前達は私が商売女にでも見えると言うのか!?」

 

「でも、こんな所であなたの様な外国の女性がウロウロしてたらね。どこの国の人?ビザは?」

 

「ビザとは何だ!!私をからかってるのか!?」

 

どうやって誤魔化そうかと思っていると、俺達の体が消え始めた。

 

「えっ?」

 

「何だ!?」

 

「なっ!?」

 

「体が………」

 

「なるほど、時間が来たんだな」

 

「そうみたいだね」

 

そう俺達が言った後、意識が途絶えた。

 

◆◆◆

 

俺達は箱を開けたが、何も起こらなかった。

 

「あ、あれ?何だよ、蓋開けても何も起こらねーじゃん」

 

「あら、本当ね。とんだガラクタをつかませてくれたわね!このクソアンデッド!」

 

「そ、そんなはずは!?」

 

「………はぁ」

 

まんまと騙されたと思っているとダクネスが外を見て驚いていた。

 

「あっ、待て!外が暗いぞ!箱を開ける前は昼だったのに!」

 

「なら、異世界には行けたって事か?」

 

「記憶に無いと、どうにも実感がわきませんね」

 

「じゃあ、俺達は先に帰らせてもらうな。行くぞウィズ」

 

「う、うん。じゃあ、お邪魔しました。」

 

そう言ってソウガとウィズは帰って行った。しかし、本当に行けてたならやる事はやってるはず………。やれやれ、心残りが消えたな。

 

「じゃあ、もう遅いし、俺は先に寝るな」

 

そう言った俺は広間のドアを開けて、自分の寝室に向かった。広間から出る際にアクアがピ○チ○ウのストラップを持っていたが、気にせず眠りについた。




Fate/Grand Orderを始めたのですが。二回目の召喚でジャンヌが出るのって凄い事ですかね?


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水と温泉の都アルカンレティア ハンス編
この死神に再び不幸を!


ソウガが罠にはめられます。


カズマ達とクエストに行った日から何日が経ったある日、俺は早く目が覚めてしまった。外を見ると、少し明るくなったばかりだった。あれから、季節は春になった。冬に引き籠っていた冒険者が活動を再開して、モンスター達が活発に動き回り、繁殖期に入る。そう思って隣を見ると、まだ気持ち良さそうにウィズが寝ていた。

 

「相変わらず、気持ち良さそうに寝ているな」

 

そう言って、俺はウィズの髪を撫でた。

 

「また、一緒に春を迎えられたな」

 

俺はそう言って、ウィズの寝顔を髪を撫でながら見ていると、ウィズがゆっくりと目を覚ました。

 

「あっ………、ソウ君」

 

「おはよう、ウィズ」

 

俺は起きたウィズにそう言った。ウィズはまだボーっとしている感じだったが気にせずベッドから出ようとするがウィズに抱き着かれた。

 

「おい、ウィズ」

 

「えへへ、夢の中にまでソウ君が出てくるなんて………。だったら何をしてもいいよね………」

 

こいつ!寝ぼけてやがる!

 

「ねえソウ君?キスしていい?」

 

「駄目に決まってるだろ!?」

 

「答えは聞いてないよ」

 

そう言ってウィズは目を瞑り顔を近づけて来た。俺は手を上にあげて。

 

「起きろ、バカ幼馴染!!」

 

「ふぎゃ!?」

 

頭にチョップを叩き込んだ。あまりに痛いのか頭を押さえている。

 

「痛い!いきなり何をするの!」

 

「お前が変な事をしようとしたからだ」

 

「変な事じゃないよ!?キスしようとしただけだよ!?」

 

「十分に変な事だろうが。………ちょっと待て、寝ぼけていたんじゃないのか?」

 

そう言うと、ウィズはふいっと目を逸らした。俺はウィズの足を掴んで………。

 

「朝からふざけた事すんじゃねえええええええええ!!」

 

「にゃあああああああああああ!!痛い!!痛い!!」

 

足4の字固めをウィズにした後、俺はウィズから離れて私服に着替えた。ウィズはグッタリした状態で話してきた。

 

「うう………、酷いよ………、私はいつも頑張ってくれているソウ君にご褒美をあげようと思っただけなのに………」

 

「そう思うなら、店を繁盛させてくれ。くそっ、喉が渇いたな」

 

そう言って俺はベッドの隣にある。水が入っている容器を手に取り、コップに水を入れて飲んだ。

 

「ッ!?くそっ!?」

 

俺はコップの中身を床に捨てた。

 

「えっ!?ど、どうしたの!?」

 

「くそっ!!バニルの野郎、やりやがったな!!」

 

「えっ?………あっ!」

 

ウィズがそう言った後、俺の体が小さな爆発音とともに、煙に包まれた。そう、俺はこの現象を知っている。そう思っていると煙が消えていき、俺の姿が現れた。そう女の姿の俺が。

 

「あのクソ悪魔があああああああああああああああああ!!」

 

◆◆◆

 

「なるほど、だからソウガがまた女の姿になっているんだな。もう女の姿で過ごせばいいんじゃね?」

 

「ふざけんな」

 

俺はあの後、カズマの屋敷に行ってカズマ達に状況を説明をしていた。

 

「でっ、また三日間そのまんまなのか?」

 

「いや、一口分ぐらいしか飲んでいないから今日の夕暮れぐらいには戻れると思う」

 

「そうか」

 

「あと、こっちも聞いていいか?この状況は一体何なんだ?」

 

カズマは今、こたつという暖房器具から頭だけ出している。その下のマットの両端をめぐみんとダクネスが持っている。

 

「私達は産廃と化したこの引き籠りを捨てに行こうとしただけですよ」

 

「いや、何しているんだよ………」

 

「俺は二人にトイレの前まで運んでと頼んだだけだ」

 

「お前も何しているんだよ………」

 

そう俺は呆れていると………。

 

「サトウさん!いらっしゃいますかサトウさん!」

 

屋敷のドアが、突然激しく叩かれた。やって来たのはセナだった。

 

「サトウさん、大変なんです!街の外にリザードランナー………が………」

 

入って来たセナはこたつの下で首だけ出しているカズマを見て、冷たい表情に変わっていった。

 

「何をなさっているのかお聞きしても?」

 

「見ての通り、今日は寒いので暖を取ってました。あ、寒いのでドア閉めてください」

 

カズマの言葉に、ため息を吐きながらドアを閉めた。

 

「………サトウさん。あなたは、魔王軍の幹部を二人も討伐し、大物賞金首すらも撃破しました。自分は、そんなあなたの事をソウガさんの次に高く評価し尊敬していたのですが………」

 

「この男の事は放っておいていい。それよりも、慌ててやって来たのには理由があるのではないのか?」

 

「あっ、そうでした!実は、リザードランナーと呼ばれるモンスターが大量発生しておりまして、現在街の冒険者が討伐にあたっています。しかし、このリザードランナーは通常はそこまで危険な生物ではないのですが………。どうも、繁殖期に入り、リザードランナー達の女王が生まれた様でして………」

 

リザードランナーは普段であれば特に危険のない、草食性の二足歩行のトカゲだが姫様ランナーと言うメスの個体が生まれるとつがいになるための勝負をするためにとてつもない速さで走り出す。そして勝負の邪魔をするものは容赦なく蹴ってくる。その蹴りは凄まじく、当たり所が悪いと骨折程度では済まない。

 

「そこで、サトウさんのもとにやって来ました!」

 

「そこで、の意味がわからないんですが。ギルドに討伐クエストは発注されてるんでしょう?なぜ俺の所に来たんですか?そんなん、誰かがやってくれますよ」

 

「何を言っているんですか。サトウさんは以前、ダンジョンに魔王の幹部が住み着いた時に言っていたじゃないですか。『モンスターに怯える街の人を守る。これは、冒険者の義務ですから』と」

 

そんな事言っていたのか………。

 

「あと、すみません。ソウガさん見ませんでしたか?ウィズ魔道具店に行ったんですけどこちらに向かったと聞いたのですが」

 

「すぐ近くにいるだろ?ほらそこに」

 

そう言ってカズマは俺を指差した。

 

「えっ?あの、黒髪の女性しかいませんけど?」

 

「その女性がソウガだ」

 

「えっ?………えぇえええええええええええええっー!?」

 

セナが驚きの声をあげた。………まぁ、しょうがないな。

 

「ソウガさん!?ど、どうして!?」

 

わなわなしながらセナが近づいてきた。そして、俺の近くまで来ると俺の胸を鷲掴みにした。………おい。

 

「どうしてこんな事に!?」

 

「人の胸を鷲掴みにして言うな」

 

俺はそう言うがセナはそのまま胸を揉み始めた。………おいこら。

 

「凄い………、こんなに柔らかいなんて………」

 

「んっ………、おい、こら………、あっ………、いい加減にしろ!」

 

俺はさすがにムカついたので、セナの脇をくすぐった。

 

「ちょっ!?あはははははっ!だ、駄目ですっ!くすぐったいです!ちょっ、本当にだめえ!」

 

そう言った後、セナは倒れ込んでしまったので俺は追い打ちをかけた。胸と胸が合わさってしまったがそんな事はどうでもいい。

 

「おら、ここがいいのか?うん?」

 

「ちょっ!?やあっ!だめえ!」

 

「降参するか?」

 

「ごめんなさい!ごめんなさい!あははっ!謝るから許してください!」

 

「仕方ないな」

 

そう言った後、俺はセナから離れる。セナは服が乱れて、グッタリしていた。

 

「はぁ………、はぁ………」

 

「ナイス百合っ!!」

 

「カズマ………、お前は何を言っているんだ?」

 

俺はカズマに呆れているとセナがはっとした後、服の乱れを直して俺に話しかけて来た。

 

「ところで、何でソウガさんは女性になっているんですか?」

 

「罠にはめられて、性別が変わるポーションを飲まされただけだ。気にするな」

 

「元に戻れるんですか?」

 

「今日の夕暮れには元に戻るから大丈夫だ」

 

「そうですか、良かった。なら、ソウガさんもカズマさんを説得してください」

 

「ねえ、そこのこたつニートに何言ったって無駄よ?借金返した上に小金持ちになったカズマは、多分お金が無くなるまで働こうとしないと思うわ」

 

そうセナが俺に話していると、暖炉前にいるアクアがこちらを見ずに言った。

 

「まあ、この中で一番低レベルなカズマだもの。怖じ気づくのは無理もないと思うの」

 

「………おいこら、いつの間に俺がこの中で一番低レベルにされているんだよ。アクアは………。確か、アンデッドを倒しまくってそこそこ高レベルだったな。めぐみんは………」

 

「26です」

 

「………なんでそんなに高いんだ?」

 

「デストロイヤー退治に魔王の幹部バニル退治。他にも、雑魚モンスターに関しては大概私が一掃してますからね。レベルだって上がりますとも」

 

「だったら、俺よりもレベルが低い、ダクネスがいるだろ?攻撃を当てられないダクネスは、一番レベルが上がり難いだろう。リザードランナーだが何だか知らないが、俺が出るまでもない。ダクネス、ちょっとレベル上げがてらに行ってきて………」

 

「ふっ」

 

ダクネスが鼻で笑った後、冒険者カードをカズマの鼻先に突きつけた。

 

「以前、魔王軍の幹部バニルと戦った際、あいつの作った魔導人形をほとんど私が倒しただろう。あれは普通の人間には厄介なだけあって、それなりの経験値が詰まっていた様だな………!」

 

「ぺっ」

 

「ああっ!?」

 

嬉しそうにカードをグリグリと押しつけられたのがムカついたのか、カズマはカードに唾を吐きかけた。ダクネスは悲鳴を上げた後、涙目でカードを拭っていた。その間にカズマはこたつから這い出た後、俺の方を見て言った。

 

「じゃあ、このパーティーの中で一番レベルの高いソウガだけで十分だろ?ソウガ、ちょっと行って来てくれ」

 

「別に構わないが。どっちかと言うと俺もレベルが上がらなくて困っているんだ」

 

「えっ、そうなのか?」

 

「ああ、100からどうやっても上がらないんだ。鍛え方が悪いのか?」

 

「それ、カンストしているんじゃないですかねえ!?」

 

まぁ、死神時代の時に魔王軍の幹部や兵士達を数え切れないほど殺したせいか、久しぶりにレベルの更新をしたらレベルが100になっていた。その後、カズマは自分のカードを見ていた。セナはそれを見ると小首を傾げ。何の疑いもない真っ直ぐな瞳でカズマの顔を見ると・・・。

 

「サトウさんのレベルはいくつなんですか?魔王軍の幹部と渡り合うサトウさんですから、さぞや高レベルなのでしょうが………」

 

「お、おいお前ら、準備を調えたらクエストに行くぞっ!」

 

そうセナの言葉を遮って、ヤケクソ気味にカズマは言った。………やれやれ。

 




次は奴がまた死にます。


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この冒険者に再び死を!

奴がまた死にます。


「嫌ーっ!今日は寒いから行きたくないの!暖かくなってから行くから!」

 

「それでは遅いだろ!諦めて行くぞ!」

 

「嫌ーっ!!」

 

カズマがクエストに行くと言った後、カズマは鍛冶屋に新しい武器を取りに行くためにめぐみんと一緒に出掛けた。俺達はいまだに駄々をこねているアクアを説得するために残った。………まぁ、俺はセナに用事があるから残っただけだが………。

 

「それでは私は失礼しますね」

 

「悪いセナ、少し話したい事があるから待ってくれないか?」

 

「えっ、良いですけど?どうかしたんですか?」

 

「ここでは話し難いから通路で話そう」

 

「分かりました」

 

俺とセナは広間から出て、少し離れた通路で話を始めた。

 

「それで、用件は何ですか?ソウガさん」

 

「ああ、前に教えてくれた。魔王軍の軍事施設を襲ったモンスターが分かったんだ」

 

俺はそう言うと、セナは冷たい表情に変わった。

 

「………詳しく教えてくれませんか?」

 

「奴は不死鳥のフィニクスと名乗っていた」

 

「フィニクス………。特徴は?」

 

「全身赤い毛に覆われ、尖った金色の肩に、顔に両翼を広げた火の鳥を意図したモンスターだ。炎を自在に操る事ができる。だが………、奴の能力はそれだけじゃない」

 

「どんな能力なんですか?」

 

「不死身だと言っていた。しかも死ぬ度に強さが増す」

 

「なっ!?」

 

俺が不死身だと言ったらセナは驚いていた。………まぁ、当たり前か。

 

「そんなモンスターをどうやって倒すんですか!?」

 

「確かに倒してしまうと、奴はどんどん強くなるが………」

 

俺はそう言うと、笑みを浮かべた。

 

「別に無理して倒す必要は無い」

 

「えっ?どういう事ですか?」

 

「倒さなくても、奴を再起不能にする手はあるって事だ」

 

俺はそう言うと、セナに微笑んだ。

 

「だから、この件は俺が処理する。頼りないかもしれないが」

 

「そんな事ないですよ。とても心強いです。………でも、もっとやる気が出る様にしてあげます」

 

そう言って、セナは眼鏡をクイッと直した。

 

「フィニクス討伐を特務で行ってもらいます。もちろん報酬は高額を用意出来る様にします」

 

「そうか、なら絶対に奴を倒さないとな」

 

「お願いしますね。では私はこれで」

 

「ああ、また飲みに行こうな」

 

「その時はソウガさんの奢りでお願いしますね。それでは失礼します」

 

そう言ってセナは帰って行った。それから、しばらくするとカズマ達が帰って来た。カズマが頼んでいたカタナという剣にめぐみんがちゅんちゅん丸と変な銘を刻まれてしまったらしい。これで、あとは出発するだけだが………。

 

「嫌ーっ!今日は行きたくないの!明日!明日暖かかったら行くから!今日は嫌な予感がするの、女神の勘よ!」

 

「また女神だのなんだのとバカな事を!ほら、いつまでもソファーにしがみついていないで………、ああっ、か、髪を引っ張らないでくれ!」

 

アクアがまだ悪あがきをしているので、どうやって説得しようか考えているとカズマが言った。

 

「ダクネス、そんなに嫌がっているんだし、今回はアクアには留守番していてもらおう。俺達四人でも大丈夫だよ」

 

「さすがカズマね!本当にたまにだけど、良い事言うじゃないの!ほらダクネス、カズマさんがああ言ってる事だし、早くこの手を放して頂戴!」

 

「それより三人とも、今日は久しぶりのクエストだ。報酬を得たら、たまには外で食おうか。鍋でもつついて宴会しようぜ」

 

そうカズマが言うと、アクアはピクリと反応した。………ああ、なるほど。

 

「そうですね。冬が明けて、冒険再開の初日ですし。これからの英気を養うためにも、今晩は贅沢しましょうか」

 

「そうだな、今日ぐらいは楽しむか。貴族御用達の良い店があるんだ、そこに予約を入れておこう」

 

「そうだな。ところで、ウィズとティアも誘っていいか?」

 

「ああ、いいぞ」

 

「ありがとうな、カズマ」

 

俺達はそう言うと、ダクネスに解放されたアクアは不安そうに。

 

「………ね、ねえ皆。材料を買ってきて、家で鍋パーティーしても良いのよ?そうだわ、冒険を終えて疲れて帰ってきた皆のために、私が鍋の材料揃えて準備しておいてあげる。だから、ここで宴会すれば良いと思うの」

 

未だソファーの背に張り付いたままのアクアが俺達を見上げて言ってきた。そんなアクアに俺達は。

 

「「「「留守番よろしく」」」」

 

「わああああああ、私が悪かったから置いてかないでよー!」

 

◆◆◆

 

未だちらほらと雪が残る、街の外れの平原に俺達は移動してカズマが木の上で長距離狙撃態勢に入った。

 

「よし、良い位置だ。それじゃ始めるぞ!」

 

「いいわよ、こっちはいつでも大丈夫よ!こうなったら、貧弱なカズマにはとっととレベルを上げてもらって、どんどん強くなって、私のためにとっとと魔王を倒してもらうわ」

 

アクアがカズマが登っている木の下でそう言った。

 

「ん、アクアの支援魔法もかけて貰ったし、これなら何匹でも耐えられる!」

 

「撃ち漏らした時はこの私に任せてください。近づいてきたら、皆まとめて吹き飛ばしてあげますよ」

 

大剣を地面に突き刺し、柄に両手を載せて堂々とするダクネスと不敵に笑っているめぐみんがそれぞれ言った。

 

「皆のサポートは俺がやる。任せろ」

 

「よし、それじゃあ始める!手はず通りいくぞ!まず俺が、王様ランナーと姫様ランナーを狙撃!その二匹さえいなくなればリザードランナーの群れは解散するそうだから、残された雑魚は放っておく。狙撃に失敗してこっちに襲ってきたら、ダクネスが耐えている間に俺が王様と姫様ランナーをもう一度狙撃。それすら失敗したなら、囲まれる前にめぐみんの爆裂魔法でまとめてぶっ飛ばし、撃ち漏らした奴を俺が上から撃破。ソウガとアクアは全体の援護を頼む。………じゃあ、行くぞ!」

 

そう言ってカズマはリザードランナーを千里眼スキルで索敵を始めた。

 

「おいアクア、頭にトサカみたいなツノのあるリザードランナーがいる。こいつが姫様なのは分かったが、王様はどいつなんだ?」

 

「どれが王様かなんて、私には分からないわよ。王様ランナーってんだから、一番偉そうなのが王様なんじゃないの?」

 

「お前に聞いた俺がバカだった。ソウガ、分かるか?」

 

「見た目は他のリザードランナーと変わらないから、姫様ランナーと一番仲の良いリザードランナーを見つけろ。そいつが王様ランナーだ」

 

「なるほど、わかった」

 

俺がそう言うと、カズマは再び索敵を始めた。俺はその様子を見ているとカズマが弓をキリキリと引き始めた。どうやら、見つけた様だと思っていると………。

 

「そうだわ、任せてカズマ、私に考えがあるわ!駆けっこ勝負で一番になったのが王様ランナーなら王様ってのは一番早い訳よ!神聖魔法の一つに、モンスター寄せの魔法があるの!これでランナー達を呼んで、一番にここに着いたのが王様よ!」

 

「おい、お前は何を言っている。女神ってのは火を見ると油を注がなきゃ気が済まない習性でもあるのか?もう王様の目星は付けた。頼むから余計な………」

 

「『フォルスファイア』!」

 

カズマが説く間もなく、アクアは魔法を唱え、アクアの手に青白い炎が灯った。その炎を見たリザードランナーが甲高い奇声を上げ、アクア目がけて駆け出した。

 

「「「速っ!?」」」

 

俺とアクア以外の三人がそう言った。めぐみんは慌てて爆裂魔法の詠唱を始めた。

 

「このクソバカ、毎度毎度何かやらかさないと気が済まないのかお前は!王様と姫様さえコッソリ討ち取れれば無力化できるのに、何でわざわざ呼び寄せるんだ!」

 

「な、何よいきなり!私だって役に立とうとしてやってる事なんだから怒んないでよ!ああ、分かったわよ!どうせこの後の展開なんていつもの事でしょ!?きっとあのランナー達に私が酷い目に遭わされて泣かされるんでしょ!分かってるわよいつもの事よ、さあ、殺すなら殺せー!」

 

「このバカせめて支援と回復ぐらいしろ!そんな所に寝るな、本当に踏まれて死ぬぞ!」

 

アクアはカズマに怒られた事でヤケクソになり、不貞腐れて地面に大の字に寝転がった。カズマは急いで弓を引き、一番前を走っているリザードランナーに目がけて矢を射った。一番前のリザードランナーの眉間に矢が突き立ったが、他のリザードランナーはさらにいきり立っていた。

 

「おいアクア、いつまでもふて寝してんな!王様っぽいのを倒したのに、かえって凶暴になっているんだけど!」

 

「王様を先に倒すと、新しい王様ランナーになれるチャンスができたトカゲ達がはりきりだすわよ。倒すなら、先に姫様ランナーから倒さないと」

 

「そんな大事な事は先に言えよおおお!め、めぐみん!めぐみーん!魔法の用意はいいかっ!?距離は十分だ、連中を一掃してやれ!」

 

「任せてください!わはははは、我が爆裂魔法を食らうが良いっ!『エクスプロージョン」ッッ!」

 

そうめぐみんが唱えたが、何も起こらない。

 

「!?あああっ!魔力が!カズマ、爆裂魔法に必要な魔力が足りません!」

 

「はっ!?何でこんな時に限ってそんな………。ああっ!」

 

カズマの反応から察するに、ドレインタッチでめぐみんの魔力を吸ったな。

 

「ソ、ソウえもんっ!何とかしてくれー!」

 

「誰がソウえもんだ………。まあいいが………」

 

俺は魔法陣を展開した。

 

「『マジック・クリエイト』」

 

俺はそう唱えると、黒い弓と刀身が螺旋状になっている剣を作り、その剣を矢の形状に変化させて弓を引いた。

 

「我が骨は捻じり貫く………!」

 

そう言うと、俺の周囲に風が発生する。

 

「『カラドヴールフ』!」

 

俺はそう唱えた後、矢を射る。その矢は大地を抉りながらリザードランナーの方に飛んでいく、リザードランナーにその矢が近づくとリザードランナーの体を大きく削ってリザードランナーを絶命させていく。ある程度まで飛ぶと爆発しリザードランナーを吹き飛ばした。

 

「おおっ!さすがソウガ!」

 

「いや、どうやら避けられたみたいだ」

 

俺がそう言うと、姫様ランナーと何十匹のリザードランナーが出て来た。俺は双剣を作ると。

 

「カズマ、近接戦闘で奴らを蹴散らす。姫様ランナーをうまく誘導するから対処を頼む」

 

「わかった!頼むっ!」

 

俺はそう言うと、一瞬でリザードランナーの群れに突っ込んだ。何匹かが蹴りを入れて来たが俺はその足を切り落とした後、首を切り裂いた。俺はチラッとカズマ達を見るとめぐみんの前にいるダクネスとアクアがリザードランナーに揉みくちゃにされていた。

 

「ダ、ダクネス、もうちょい耐えてくれ!今、コイツを仕留めるからっ!」

 

「おお、お構いなくっ!あああああ、ゆ、ゆっくりでいいぞあぐうっ!」

 

その光景を見た後、俺の周りのリザードランナーを一掃した後、カズマ達の所に戻ろうとしたが、カズマが姫様ランナーの眉間を矢で打ち抜いた。それを見ていた俺はこれで終わりだなと思っていたが、姫様ランナーが木にぶつかり、その衝撃でカズマが頭から落ちた。めぐみんが何かを言っている感じだった。俺は急いでカズマ達の近くに向かった。

 

「た、大変です!?カズマが死んでしまいました!?」

 

「この人でなしっ!」

 

「変な事を言っている場合か!アクア、カズマを蘇生させてくれ!」

 

「分かったわ!」

 

そう言ってアクアはカズマに蘇生魔法をかけた。その後、アクアはカズマに声を掛けていた。これで一安心だと思っていると………。

 

「あんた何バカ言ってんの!ちょ、ちょっと待ってなさいよ!?」

 

「うん?どうかしたのか?」

 

「カズマが、戻らないって言ってるのよ!?」

 

「「「はあ!?」」」

 

カズマは何を言っているんだ!?

 

「おい、アクア!カズマに早く戻ってこないと顔に落書きするぞって言ってやれ!」

 

お前は子供か!

 

「………?めぐみん何しているの?カズマの服をどうする気………って、えっ、めぐみん!?ちょ、ちょっとめぐみん!?」

 

俺はめぐみんを見ていると、カズマのズボンを下して下腹部に聖剣エクスカリバー↓と書いた。………おおう。その後、カズマが目を覚ましたが、アクア達は恥ずかしいのか言わなかった。俺もカズマのためにも言わないようにした。

 

◆◆◆

 

「今日は疲れた………」

 

あの後、街に戻り、めぐみんはギルドに向かった。カズマ達は先に屋敷に戻って行ったので俺も魔道具店に帰ってきたが、疲れがドッと出た。俺は魔道具店のドアを開けた。

 

「いらっしゃ………。あっ、おかえりソウ君………、どうしたの?何か疲れてるみたいだけど?」

 

「何でもないさ」

 

俺はそう言うと、寝室に向かおうとしたが、ウィズが俺の前に来た。その後、頬を染め、もじもじしながら言った。

 

「ソウ君、本当に大丈夫?おっぱい、揉む?」

 

「………………」

 

「………………」

 

「………ウィズ」

 

「………はい」

 

「正座」

 

「………はい」

 

そう言った後、ウィズは正座した。………さて。

 

「今の発言は何だ?言ってみろ」

 

「あの………、カズマさんが言ってたの。元気が無い人にこう言うと元気が出るって………」

 

よし、明日カズマに説教してやる。

 

「俺だからいいが、他の人には言うなよ」

 

「う、うん………、ごめんなさい」

 

「じゃあ、少し、仮眠するな。夕飯になったら起こしてくれ」

 

「うん、わかった」

 

そうウィズが言った後、俺は寝室に行き、眠りについた。




やっと自分のカルデアにエミヤが来てくれました!

エミヤが出るまでに出たサーヴァント↓

<よろしくね、おかあさん
<真の英雄は眼で殺す
<エルメロイ二世だ。
<頭を垂れなさい!不敬ですよ!
<セイバー。ランスロット、参上致しました。
<戦いは、まだか

運を使い果たした様な気がします。


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この冒険者達と店主に旅行を!

遅くなってしまい申し訳ございません。


カズマが再び死んでから数日が経過した。あの後、俺は元の姿に戻り、安堵した。あと、カズマが聖剣エクスカリバー↓に気付き激怒したが、めぐみんはどこかに逃げていて怒り狂った状態でカズマはめぐみんを探していた。めぐみんが家出している間にバニルがカズマの作った製品を月々百万か三億を支払う話をしてからカズマとアクアはセレブ気取りをしていた。そんな時、カズマが傷を癒したいと言い出したので、俺達とその場に一緒にいたティアと一緒に水と温泉の都、アルカンレティアに行く事になった。アクシズ教団の総本山だから心配だが、少し楽しみにしていた。そして出発の日、俺は自分の準備を終え、ティアを待っていると………。

 

「バニル式殺人光線!!」

 

「きゃあああああああああああああ!!」

 

「!?」

 

そうバニルの声が聞こえた後、ウィズの悲鳴が聞こえた。俺は急いで向かうと、焦げたウィズが転がっていた。………おい。

 

「………バニル。お前は何をしているんだ?さすがに俺も切れるぞ?」

 

「………なら、これを見るがいい」

 

そうバニルが指差した方向を見た。見ると、山積みになっている物があった。近寄って見て見ると、魔法で圧縮された簡易トイレであった。冒険者のトイレ事情を解決してくれる物だが、この魔道具は欠陥品で、消音用の音がデカ過ぎてモンスターを呼び寄せる事と、水を生成する機構が強力過ぎて、辺りが水で大惨事になる。これが、大量にあるって事は………。

 

「………またか?」

 

「………まただ」

 

「なら、仕方ない。俺も殴っておこう」

 

「………ふぎゃっ!?」

 

そう言って俺はウィズの頭を殴った。ウィズから変な声が聞こえるが、無視しているとバニルが魔道具を持って、店頭の方へ移動していった。俺はウィズの近くでティアを待っていると、カズマが来ているみたいだった。俺はカズマに挨拶するために店頭に向かった。

 

「あっ、ソウガ」

 

「よう、カズマ。すまない、あと少しでティアが来ると思うから待っててくれないか?」

 

「別に構わないけど、バニルと相談したんだがウィズも一緒に連れて行かないか?」

 

「ウィズも?」

 

「うむ、このポンコツ店主がいるとおかしな物を勝手に仕入れて散財してしまうのでな」

 

「まぁ、別に構わないが」

 

「じゃあ、ウィズを連れてきてくれないか?」

 

「分かった」

 

そう言って俺は奥に入っていき、ウィズの分の準備をした後に焦げているウィズを背負ってカズマと合流するとティアがやって来た。

 

「すみません!遅くなり………、ウィズ先輩!?どうしたんですか!?」

 

「いつもの事だから気にするな」

 

「あぁー、なるほど。ウィズ先輩の悪い癖っすね」

 

「じゃあ、行くか。ソウガ、ティア」

 

「ああ」

 

「おう!」

 

そう言った後、俺達は魔道具店を出た。馬車の待合所に着くと、そこには既に、アクア達が待っていた。

 

「ちょっと、先に行って席取っておいてって頼んだのに………って、ソウガ?何を背負っているの?」

 

白目を剥いて、気を失っているウィズを背負った俺に対してアクアが聞いてきた。俺の代わりにカズマが皆に説明した。

 

「ふーん?まあいいけど。でもこの子、何だか薄くなってるんですけど」

 

アクアの言葉を聞いて、俺は背負ったウィズを見ると確かに薄くなっていた。

 

「マズいな。カズマ、俺にドレインタッチをしてウィズに生命力を分け与えてくれ」

 

「いや、ソウガには戦闘になってしまった時に対処してもらうから、ここは………」

 

そう言ってカズマはダクネスに近づいた。

 

「街の外へ旅行か………。子供の頃、この国の姫様の誕生祭の折、お父様に王都へと連れられた時以来だな………。………ん、どうしたカズマ、手を取ってええええ!?」

 

ダクネスから生命力を奪ったカズマは、生命力を俺が背負っているウィズへ送ると、ウィズの体が元に戻り、目を覚ました。

 

「あれ………?ソウ君、ここは………?」

 

目覚めたばかりのウィズがキョロキョロしていると、ダクネスがカズマに掴み掛かった。

 

「おおお、お前という奴は!折角、昔の記憶に想いを馳せていたのに、どうしていつもいつも不意打ちばかり………っ!」

 

「あぐぐ、仕方ないだろ、緊急事態だったんだし!大体、この中で一番生命力に溢れているのはお前だからしょうがないじゃん!」

 

「お客さん方―!乗らないのなら置いて行きますよー!」

 

◆◆◆

 

あの後、俺達は料金を払い馬車に乗ろうとしたが、レッドドラゴンの赤ちゃんが乗っており、一人が荷台に行く事になった。じゃんけんをする事になったのだが、カズマがアクアと三回をして一回でもアクアが勝つ事ができたら荷台に行くと言い出した。先に俺達は座って待っているとアクアが文句を言いながら荷台に行った。その後、馬車に揺られ、しばらく経つと、各々、好きな事をしていた。そんな皆の様子を見た後、俺は仮眠をしようと目を瞑るが、カズマが異変に気付いた。

 

「………なあ、何だあれ」

 

そう、カズマが言った方向を見ると、土煙がこちらに向かって来ていた。リザードランナーは前に何とかしたから、あれは………。

 

「………ああ、走り鷹鳶だな」

 

「………何だその、くだらないダジャレみたいな名前のモンスターは」

 

「そんな事は付けた奴に行ってくれ。走り鷹鳶は鳥だが、飛ぶ事ができない代わりに、高速で走り回り、獲物を見つけるとそのままジャンプしてかっ飛んで来る、危険なモンスターだ。だが、今は繁殖の季節で、メスの気を引くためにオス同士で硬い獲物にかっトンで行き、ギリギリで回避して勇敢さを競い合う、チキンレースという求愛行動をする。その為に奴らは本能的に硬い物を探し出すから、その辺の木や石にでも突っ込むだろう」

 

「そうか、なら安心だな」

 

「ちなみに、その肉は脂が乗っていて焼いても良し、揚げても良しの美味いモンスターだ」

 

「美味い!?食べた事があるのか!?」

 

「死神時代の時に、食材に困ってしまい餓死する寸前の時に出会った。『ヒャッハー!飯だあああああ!』という感じで全滅させて焼いて食った。空腹って凄いんだぞ、蜘蛛でも美味しく感じる事ができるからな」

 

「ソウ君………!」

 

俺の言葉にウィズは涙を浮かべ、片手で口を押えて顔を背けた。………どうした?

 

「………でも、近づいてないか?あれ」

 

そうカズマが言った後、カズマは御者の人と話をして、馬の速度を落とした。土煙の正体は俺の予想通り、走り鷹鳶だった。でも、おかしい。走り鷹鳶はアダマンタイトみたいな凄まじい硬度のような物にしか追いかけないはずだが………ッ!?

 

「………そういう事か」

 

「どうしたの?ソウ君?」

 

「何か、分かったんですか?ソウガ先輩」

 

「いや、この馬車にいるだろ?凄まじい硬度を誇る奴が」

 

「「あっ!」」

 

そう言って俺達と御者と話をしていたカズマも気付いたらしく、一斉に視線を同じ方向に向けた。

 

「カズマ!物凄く速い生き物が、真っ直ぐこちらへ向かって来ている!というか………。連中が、私を凝視している気がするぞ!なっ、なんという熱視線!はあ………はあ………!た、大変だ、カズマ、大変だ!このままでは私は、あの高速で突っ込んでくる集団に激しく激突され、蹂躙されてしまうのでは………っ!!」

 

「お前かー!!」

 

「………はぁ」

 

カズマがそう言った後、俺はため息をついた。

 

「お客さんが、馬車を止めますよ!そうすれば、他の馬車に乗っている護衛の冒険者達が、この馬車とお客さんを守ってくれますから!」

 

そう御者の人が言った後、馬車が止まり、カズマとダクネスが馬車から飛び降りる態勢に。

 

「めぐみん、アクア、ソウガ、ティア、出番だぞ!本来俺達は戦わなくてもいいが、今回は俺達が招いた敵みたいだ。自分達の尻拭いは自分でやるぞ!」

 

その言葉の後にカズマとダクネスは馬車から飛び降りた。その後を、アクアとめぐみんが続いた。俺達も降りようと思っていたら。

 

「私もお手伝い致します!」

 

そうウィズが叫んだ後、馬車から飛び降りようとしていた。

 

「俺はバニルから、ウィズの事を任されている!ウィズが強いのは知っているが、今は馬車の中にいてくれ!そして、御者のおっちゃんを守ってやってくれ!」

 

「ですが………!」

 

「ウィズ、大丈夫だ。俺がウィズの代わりに戦うから御者の人を守ってやってくれ」

 

「大丈夫ですよ!私だっていますし、ウィズ先輩は安心して御者のおっちゃんを頼みます!」

 

「ソウ君………、ティアちゃん………」

 

俺のその言葉にウィズは頷いた。俺はウィズの頭を撫でた。

 

「ソウ君………、ティアちゃん………。気をつけてね?」

 

「ああ」

 

「はい!」

 

そうウィズが言った後、俺達は馬車から飛び降りた。その光景を見ていた御者の人が叫んだ。

 

「お客さん!お客さんは護衛を引き受けた訳じゃないんですから!金払って馬車に乗ってるんですから安全なところに隠れてください!」

 

そう御者の人は言うが、俺達は無視していると。

 

「冒険者の先生方!お願いします!」

 

誰かの声を合図にして、馬車の護衛を受けた冒険者達がゾロゾロと、武器を手に馬車から次々と飛び出した。俺は魔法陣を展開した。

 

「『マジック・クリエイト』」

 

俺がそう唱えると、朱槍を装備した。

 

「カズマ、俺は正面の走り鷹鳶の群れを何とかしてくる!」

 

「頼んだ!俺達は横手の奴らを何とかする!」

 

「分かった、無茶するなよ」

 

そう言った後、俺は正面の走り鷹鳶の群れに突っ込んだ。

 

「チンタラしてんなよ。鳥野郎」

 

俺がそう言うと、俺の方へ向くが、俺は槍で貫いた。そして、俺の周りの走り鷹鳶の群れが一斉に襲ってくるが。

 

「遅いっ!!」

 

俺はそう言うと物凄い速さで走り鷹鳶の群れを貫いていく。

 

「何だ!あの冒険者、めちゃくちゃ強え!」

 

「消えたと思ったら、赤い閃光がモンスターを貫いていく!」

 

「凄い!あんな冒険者がいるなんて!」

 

そんな声が聞こえるが、無視しているとダクネスの声が聞こえた。

 

「カズマ、カズマ!来たっ!次が来た!今度こそは、今度こそはもう駄目だ!ああああ、ぶつかるーっ!」

 

声が聞こえた方向を見て見ると、盗賊スキルのバインドを受けたダクネスを走り鷹鳶が高速でスレスレを避けていた。

 

「カズマ!これは焦らしプレイの一環なのだろうか!?このギリギリでのお預け感がまた………!なんて事だ、私の体の上を次々と発情したオス達が通り過ぎていく………!」

 

「よし、人目もあるんだお前はもう黙ってろ!」

 

「………何をやっているんだ?あいつら」

 

俺は呆れた感じでそう言うと、朱槍を解除して俺はカズマ達の所に向かおうと歩き始めたが………。

 

「ソウ君!危ない!」

 

「!?」

 

ウィズの声が聞こえた。俺は後方に飛ぶと、目の前に火の塊が落ちて来た。そして、炎の中から。

 

「面白い事しているな。俺も混ぜてくれよ、死神」

 

「貴様………!」

 

フィニクスが現れ、俺に向かってそう言った。




次の話はなるべく早く投稿できるように頑張ります。


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この凶敵に死神達の乱舞を!

戦闘描写に時間がかかってしまいました。申し訳ございません。


「折角の旅行を邪魔するな」

 

「てめえの都合なんか知った事か、俺はお前と遊びたいだけだ。死神」

 

そう言い、フィニクスは俺に襲い掛かってきた。俺に大剣を振り下ろしてきたが、俺は回避して魔法陣を展開した。

 

「『アブソリュート・ゼロ』!」

 

そう唱え、魔法陣から強力な冷気がフィニクスに向かって発せられる。俺はその隙に片手剣を装備して斬り掛かったが………。

 

「オラァッ!」

 

「何っ!?」

 

フィニクスは炎を纏った大剣で冷気もろとも魔法陣を破壊し、俺に攻撃してきた。俺はその攻撃を防御したが、吹っ飛ばされてしまった。俺は何とか態勢を立て直した。

 

「同じ技は二度も効かないって言っただろ?」

 

「なるほど、なら」

 

次の魔法を準備しようとしたら、他の冒険者が俺の前に立った。

 

「おい、何をしているんだ!」

 

「あんたは護衛を引き受けた訳じゃない。だから、あいつの相手は任せてくれ!」

 

こいつは何を言っているんだ!

 

「いいから、下がってろ!」

 

「大丈夫だ、心配しないでくれ。よし!行くぞお前ら!」

 

「おう!」

 

「はい!」

 

そう言って冒険者達はフィニクスに向かって行った。

 

「やめろ!行くなっ!」

 

「『ライトニング』!」

 

俺のその言葉を聞かず、魔法使いの女は魔法を発動した。その魔法はフィニクスに当たり、フィニクスの周りに土煙が発生する。

 

「よし!俺達も行くぞ!」

 

「ああ!」

 

そう言った二人の冒険者は剣とハンマーを振りかぶったが………。

 

「………うぜえ」

 

その二人の武器を片手でフィニクスは掴んだ。

 

「何っ!?」

 

「こいつ、中級魔法を食らって無傷だと!?」

 

「そんな!?」

 

三人の冒険者は無傷のフィニクスを見て、驚いていた。フィニクスは掴んでいた武器を砕いた。

 

「俺達の武器が!?」

 

「貴様らみたいな雑魚が俺達の戦いを邪魔するんじゃねえ!!」

 

そうフィニクスは言った後、フィニクスは炎で形成された鳥を放ち三人の冒険者を吹っ飛ばした。俺は急いで駆け寄り、回復魔法を発動する。

 

「たくっ、ゴミはゴミらしく這いつくばってろ」

 

「ッ!!貴様!!」

 

フィニクスの言葉を聞いた俺は一瞬で間合いを詰め、フィニクスに片手剣を振り下ろした。フィニクスは地面に刺さっていた大剣を引き抜いて俺の攻撃を防御した。

 

「やっぱり、俺を満足させてくれるのはお前だけの様だな!」

 

そう言うと俺とフィニクスは三度目の戦闘を始めた。

 

◆◆◆

 

「良いねえ!もっと楽しませてくれ!」

 

「ほざいてろ!」

 

ソウガはそう言った後、片手剣でフィニクスを切り裂こうとするが片手で止め、剣を砕いた。

 

「何っ!?」

 

「俺もお前に倒されて強くなっているんだ。その程度の攻撃じゃ、俺には届かない」

 

「だったら!」

 

ソウガはフィニクスに蹴りを入れた後、後方に飛び、双剣を装備した。ソウガはその双剣に魔法陣を展開した。

 

「『クリエイト・オーバーロード』!」

 

ソウガがそう唱えると、双剣が巨大な剣へと変化した。ソウガは巨大な双剣でフィニクスと斬り合いを始めた。

 

「ほう、そんな事も出来るのか。その魔法は一体何なんだ?教えてくれよ、死神」

 

「お前に教える義理は無い」

 

ソウガはそう言った後、片方の剣をフィニクスに投げつけた。フィニクスはその剣を弾き飛ばしたが、ソウガが一瞬で間合いに入りフィニクスの脇腹を切った。

 

「ぐっ!」

 

「悪いが、皆が待っているんだ」

 

ソウガが後方をチラッと見ると、カズマ達が馬車に乗って移動を開始し、その後を走り鷹鳶の群れが追いかけていた。フィニクスの攻撃を受けた冒険者達も他の冒険者に担がれて馬車に乗り移動した。それを見たソウガはフィニクスの方に顔を戻すと。

 

「だから、ここで永遠に大人しくしてもらう!」

 

「何っ!?」

 

ソウガはそう言うと魔力を込めた拳をフィニクスの顔面に叩き込む。フィニクスは後方に吹っ飛び倒れ込んだのを確認した後、ソウガは魔法陣を展開した。

 

「『ヘブンズチェイン』」

 

そう唱えると、立ち上がろうとしているフィニクスの体を鎖で拘束した。フィニクスを拘束したのを確認すると、ソウガは魔法陣を展開した。

 

「『ゴルゴーン・アイ』!」

 

そうソウガは唱えた後、フィニクスを睨み付けた。

 

「ッ!?この重圧は!?」

 

「重圧はおまけだ。自分の体を見て見るんだな」

 

そうソウガに言われ、フィニクスは見ると体が徐々に石化していっていた。

 

「な、何だ!?これは!?」

 

「この魔法は俺の目を石化の魔眼にする魔法だ。悪いが、このまま石像になってもらう」

 

「ふっざけるんじゃねええええええええええええ!!」

 

そう言い、フィニクスは鎖を千切ろうとするが鎖はビクともせず、フィニクスの体の大半が石化していった。

 

「永遠に懺悔するんだな。フィニクス」

 

「し、死神いいいいいいいいいい!!」

 

そうフィニクスは叫んだ後、完全に石化した。それを見ていたソウガは魔眼と鎖を解除した。

 

「ふぅ………、終わったな。だが、念には念を」

 

そう言った後、ソウガは魔法陣を展開した。

 

「『ヘブンズゲート』」

 

そう唱えると、石化したフィニクスの後ろに門が出現し、門が開くとフィニクスを吸い込み門が閉まり消えた。

 

「次元の狭間に閉じ込める封印魔法だ。まぁ、聞いてはいないだろうがな」

 

ソウガがそう言った時、大きな爆発音が発生した。ソウガはその方向を見ると、近くにあった小山の様な洞窟が吹き飛んでいた。

 

「あれは、めぐみんが爆裂魔法を使って、走り鷹鳶の群れを吹き飛ばしたんだな。これで心配ないな、合流するか」

 

そうソウガは言うと、合流しようと歩き始めたが、ソウガの背後でピキっと何かがひび割れる音が聞こえた。ソウガはまさかと思い背後を見ると、空間にひびが入っていた。

 

「ッ!?そんな馬鹿な!?」

 

その後、空間が割れ、高魔力の炎が空間の割れ目から噴き出した。ソウガは吹き飛ばされたが何とか態勢を立て直したが、吹き飛ばされない様に堪えるのがやっとの様だった。そして、空間から炎を発しながらフィニクスが出て来た。

 

「石化と封印か、確かにいい手だったな。昔の俺だったらヤバかった」

 

「くっ!」

 

「俺もそこまで魔力が上がっているって事だ。じゃあ、戦いの続きをしようじゃねえか!」

 

フィニクスはそう言うと、更に炎の出力を上げた。

 

「くそっ!」

 

「ソウ君!」

 

「!?」

 

ソウガは声が聞こえた方向を見ると、ダクネスにしがみついて吹き飛ばされない様にしているカズマと必死に堪えながら近づこうとしているウィズとティアがいた。

 

「来るな!」

 

「よそ見しているんじゃねえ!」

 

「!?」

 

そうフィニクスが言うと、フィニクスが消えた。ソウガはフィニクスが消えた事に驚いていると右隣で拳を振り下ろそうとしているフィニクスがいた。ソウガはその拳を躱し、お互いラッシュを始めた。ラッシュの衝撃で周りに衝撃波が発生し、カズマ達は吹き飛ばされない様にしていた。

 

「「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」

 

「うおっ!?始まった!?」

 

「カズマ、しっかりと捕まっていろ!飛ばされるぞ!」

 

ソウガとフィニクスは攻防一体のラッシュをしていたが………。

 

「ぐっ!」

 

「あははははははっ!」

 

フィニクスのラッシュが徐々に押し始め、ソウガの顔面にフィニクスの拳が当たり吹っ飛ばされた。

 

「………がッ!!」

 

「嘘だろ!?ソウガが力負けするなんて!?」

 

「ソウガ先輩!?」

 

吹っ飛んでいるソウガにフィニクスは一瞬で近づき、ソウガに拳を叩き込む。その攻撃を受け、ソウガは血反吐を吐き、地面に叩き付けられた。

 

「………ガハッ!!」

 

「ソウ君!?」

 

地面に叩き付けられたソウガは立ち上がろうとしていると、ソウガの前にフィニクスは光速で移動した。

 

「どうやら、ようやくお前と互角以上の力を手に入れたらしいな」

 

「くっ!」

 

「こんなに楽しい時間はもう永遠に来ないだろうな。終わりだ!死神!」

 

そう言ってフィニクスは大剣を作り出し、ソウガに斬り掛かった。

 

「………調子に乗るなよ。鳥野郎」

 

ソウガがそう静かに言うと、大剣を片手で止め、へし折った。

 

「何だと!?」

 

フィニクスがそう言った後、ソウガはフィニクスにラッシュを叩き込み、吹っ飛ばした。

 

「………ごふッ!!」

 

フィニクスが吹っ飛んだのを確認すると、ソウガは口元の血を拭った。

 

「ソウ君!大丈夫!」

 

そう言い、ウィズがソウガに近づこうとしたが、ソウガに止められた。

 

「ウィズ、お前は黙って見ていろ」

 

「でもっ!」

 

「頼む」

 

そうソウガに言われ、ウィズは黙って頷いた。

 

「ありがとうな」

 

「………でも、約束して?もう、あまり無茶しないで………」

 

「………ああ、分かった。奴に見せてやるさ、神滅魔法の力を」

 

そう言って、ソウガはフィニクスの方へ向いた。

 

「良いねえ!まだこんな力があるなんてな!」

 

「悪いが、皆を待たせているんでな。そろそろ終わりにするぞ」

 

「面白れえ!やれるものならやってみろ!」

 

「見せてやるよ。神滅魔法の力を!」

 

そうお互いが言った後、再び斬り合いが始まった。何度か斬り合った時にソウガが魔法陣を展開した。

 

「『ディープ・イリュージョン』」

 

そう唱えると、近くに魔法陣が出現して、その魔法陣からもう一人のソウガが現れ、もう一人のソウガが槍でフィニクスに攻撃を仕掛けた。

 

「な、何!?」

 

その事にフィニクスは驚いていたが、二人のソウガの攻撃を何とか切り返していた。

 

「えっ!?どうなっているんだ!?」

 

「ソウガが二人!?」

 

その光景を見ていたカズマとダクネスがそう言って驚いていた。

 

「どんな手品か知らないが!二人になった所で同じ事だ!」

 

「確かに、お前の言う通りだ」

 

「二人になった所で、お前を倒せるとは思っていないさ。………ただし」

 

フィニクスの言葉に二人のソウガがそう答える。その後、二人のソウガはフィニクスから少し離れた。

 

「「二人ならな」」

 

「何っ?………ぐあっ!?」

 

そうソウガ言った後、フィニクスに矢が当たり爆発した。フィニクスとカズマ達が矢が飛んできた方向を見ると三人目のソウガがそこにいた。

 

「「ちょっ!?」」

 

「三人だと!?」

 

その後、三人目のソウガは二人のソウガの近くに行き、三人でフィニクスに攻撃を仕掛けた。一人目のソウガの攻撃をフィニクスは防御したが、二人目が脇腹を切り、三人目が矢でフィニクスを射った。

 

「ガハッ!!くそっ!!三人まとめて吹き飛ばしてやる!!」

 

そう言った後、フィニクスは右腕に炎を集中させた。

 

「三人まとめてか………。だが、もう一人いるかもしれないぞ?」

 

「ッ!?うぉおおおおおお!!」

 

そう叫びながらフィニクスは右腕から巨大な炎の鳥がソウガ達に襲い掛かったが、四人目のソウガが斧で炎の鳥を真っ二つにした。

 

「悪い、待たせた」

 

「いや、良いタイミングだ。なら、終わりにするか」

 

「舐めるんじゃねえええええええ!!」

 

そう言いながらフィニクスはソウガ達に襲い掛かった。フィニクスは大剣で斬り掛かったが、ソウガ達は片手剣で防ぎ、槍で突きをしてよろけたフィニクスに斧を振りかぶった。フィニクスは大剣で防ごうとしたが、大剣を粉々に粉砕された。粉々になったのを確認した弓を持っているソウガがフィニクスを射った。

 

「ぐはっ!そんな、バカな!」

 

そうフィニクスは言っているが、ソウガ達は無視して、武器を地面に捨て魔法陣を展開した。

 

「おし!やるぞ!」

 

「『ドラゴニックテイル』」

 

「『ドラゴニックウイング』」

 

「『ドラゴニックネイル』」

 

ソウガ達は龍の頭、尾、翼、鉤爪の順に発動して攻撃を仕掛けた。龍の口から炎を吐き、その炎をフィニクスは耐えていると、尾の薙ぎ払い攻撃をまともに受け吹っ飛ばれ態勢を崩した。フィニクスは立ち上がろうとするが翼に風を纏いながら高速回転してフィニクスの横腹を抉り、その後に鉤爪の連続攻撃を行った。それをまともに受けたフィニクスは片膝をついた。

 

「おおっ!凄え!!」

 

「四人による超強力の攻撃………。一体、食らったらどれだけの痛みがあるんだろう!はあ………はあ………!」

 

「お前はそればっかだな!」

 

カズマとダクネスはそう会話しているが、ソウガは無視して魔法を解除して、地面に捨ててあった武器を拾った。

 

「「「「終わりだ!」」」」

 

そう言うと、それぞれの武器に魔力を込め、魔力で形成した斬撃と矢を同時に放った。フィニクスはその攻撃をまともに受けると倒れ込み、爆散した。

 

◆◆◆

 

「たくっ、疲れさせるなよ」

 

俺はそう言うと、発動している魔法を全て解除する。解除した後、ウィズが抱き着いてきた。

 

「ソウ君!無事で良かった!」

 

「ウィズ………。ごめんな、心配かけた」

 

俺はそう言い、ウィズの髪を撫でた。

 

「………でもね」

 

ウィズがそう言うと、体をガシッと力強く抱きしめられた。………えっ?

 

「えっと………、ウィズ?」

 

「あのモンスターの口ぶりだと、何回か戦っているんだよね?おかしいな~、私、その事、聞いていないんだけど?」

 

あっ、完全に怒ってますわ。これ。

 

「ソウ君?」

 

ウィズが笑顔でこっちを見ているが、俺はふいっと目を逸らしたが顔を押さえられ視線を戻された。

 

「おい、ソウガ」

 

「呼び捨てになってるぞ!?」

 

「えっ、何っ?あれ~?もしかして、ソウ君は幼馴染に呼び捨てにされると嫌なタイプ?」

 

「………そんな事はない」

 

「だよね、そんな権利、ソウガには無いよね」

 

俺はカズマとダクネスに視線を向けるが、ふいっと目を逸らされた。………こいつら!!

 

「あの、ウィズ先輩?ソウガ先輩もこうして無事なんですし、許しても………」

 

「黙ってなさい」

 

「は、はい!?」

 

これ、完全に詰んでますわ。

 

「なので、ソウガには罰を与えます」

 

「えっ?一体、何をおおおおおおおおおおあああああああああああああああーっ!!」

 

そう言ってドレインタッチを行った。ちょっ、今のこの状態はマズイ!?

 

「待て待て待て!?今、ドレインタッチを行ったら、さすがの俺も魔力切れになるぞ!?」

 

「だから何?」

 

「えっ?」

 

「ソウガが魔力切れになっても別に困らないから問題ないよ」

 

「ちょっ!?」

 

「はい、出力上げるよ~」

 

「ああああああああああああーっ!!」

 

こうして、俺は魔力切れで動けなるまでドレインタッチをされた後、ウィズとティアに支えられ馬車に戻った。




次はやっと、街に着きます。


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この死神に温泉を!

やっと街に着きます


「じゃあ、説教を始めましょうか。ソウガ」

 

「………はい」

 

そうウィズは笑顔で、正座している俺に言った。日が暮れ、商隊の人達と共に大きな焚き火を作り、その焚き火を中心に商隊の馬車が円陣に囲む形で止められている。さすがにこの暗闇を走る事は不可能だからしょうがないな。

 

「説教の前に、ソウガ、椅子になりなさい」

 

「何だ?四つん這いにでもなればいいのか?」

 

「そんな事はしなくてもいいよ。普通に座ってくれれば、その上に私が座るから」

 

「………分かった」

 

俺はそう言うと、胡坐をかいた。

 

「よろしい、それじゃあ座るね」

 

そう言ってウィズは俺の上に座るが………。

 

「………おい、ウィズ」

 

「何かな?」

 

「何で、こっちを向いて座った」

 

対面になってるだろうが、近くで見ているカズマ達がびっくりしているだろ。ちなみにアクアは離れた所で他の冒険者に宴会芸をしていた。

 

「えっ?何?ソウガは私の顔なんて見たくないと、向こうを向いていろとそう言いたいの?」

 

「………そんな事はない」

 

「だよね~」

 

「だよ~」

 

お願いだから、早く機嫌を直してくれ………。

 

「すまん。ちょっと近いから、少し離れてくれ」

 

「ええ?全然近くないよ?近いって言うなら、これぐらい近くないと」

 

「当たるから止めろ!?」

 

唇が当たるだろうが!

 

「………あと、すまん。これ意外と重い」

 

「えっ?今、幼馴染に対して重いって言ったの?ふ~ん、そう。ソウガは軽い女が好きなんだね。じゃあ、めぐみんさんでも乗せましょうか?」

 

「私を巻き込まないでくれませんか?」

 

「………あれ?重いと感じたのは俺の勘違いの様だった。それにしても軽いな。体重がそんなに無いんじゃないか?」

 

「真面目に答えると、私は肉付きがいいから軽くないよ」

 

「真面目に答えられた………」

 

もう、どう足掻いても無駄だな。そう思っているとウィズが話してきた。

 

「それじゃあ、教えなさい。あのモンスターは何?」

 

「えっと、奴の名はフィニクス。炎を自在に操る事ができる、死ぬ度に強くなる不死身のモンスターだ」

 

「へえ~、そうなんだ………って不死身のモンスター!?」

 

「はあ!?」

 

「ええ!?」

 

「何だと!?」

 

俺がそう言うと、ウィズとカズマ達が驚いていた。………まぁ、しょうがないな。

 

「何で、そんな重要な事を黙っていたの!!」

 

「えっと、率直に言うとな」

 

「率直に言うと?」

 

「黙っていればバレないと思っていた」

 

「ぽむん!」

 

「………人の頭をグーで殴るな」

 

俺がそう言った後、ウィズは頬を膨らまして怒った。その後、ティアに話しかけた。

 

「もしかして、ティアちゃんも知ってたの?」

 

「………はい、すみません」

 

「ティアちゃんも後で説教ね」

 

「………はい」

 

「それで、話を戻すけど、不死身のモンスターをどうやって倒すの?」

 

「封印と石化が効かないほど強くなったからな、まぁ、別の方法を考えるさ」

 

「まぁ、いいんだけどね………」

 

そう言ってウィズは俺を強く抱きついてきた。

 

「………本当に心配したんだよ?」

 

「………そうか、悪かった」

 

そう言った後、俺はウィズの髪を撫でた。それに安堵したのかウィズは笑顔を見せてくれた。………機嫌を直してくれて良かった。

 

「ちょっと、ウィズ!あんたもこっちに来て私を手伝いなさい!」

 

「は、はい!」

 

アクアに呼ばれたウィズは立ち上がり、アクアの方に向かって行った。俺は立ち上がるとカズマが近くに来た。

 

「まぁ、あんま無茶するなよ」

 

「ああ」

 

「でも、不死身のモンスターなんているんだな」

 

「たまに、化物並に強いモンスターが生まれるんだ。魔王軍の幹部を軽く凌駕する奴らがな………」

 

俺はそう言うと、少し考え事をしていた。フィニクスのような奴が生まれるのは不吉な事の前触れと父さんに聞いた事があったからだ。………まぁ、どのような敵でも倒すだけだがな。

 

「さあ、どうぞどうぞ!良い部分が焼けたので召し上がってください!」

 

◆◆◆

 

「おい、何かいるぞ!全員起きろ!」

 

「………うん?」

 

俺はその声に目が覚めた。他の冒険者もその声で飛び起きていた。

 

「おい、結構な数がいる!姿は人型で動きは鈍い!」

 

「………あぁ、敵か」

 

俺は自分の魔力がある程度、回復している事を確認した後、まだ寝ているめぐみんを起こした。

 

「………おい、起きろ」

 

「………ふぇ、何ですか?」

 

「敵が来たみたいだ、ほら」

 

俺は指差すと、焚き火を持っている冒険者が馬車の外側を照らすと、そこにはゾンビの大群がいた。

 

「「「なああああああああーっ!」」」

 

「ひゃああああああーっ!」

 

「………近くで叫ばないでくれ」

 

「あっ、すみません!」

 

「さすがに爆裂魔法を撃つ訳にはいかないだろ?これを使って身を守れ」

 

俺はそう言うと、めぐみんの身の丈程の盾を作った。それを拾っためぐみんは、その盾を見ながら考え事をしていた。

 

「うん?どうした?」

 

「何か、この盾を使って人類史を守るために戦っていた感じがします」

 

「何を言っているんだ?じゃあ、俺は行くな」

 

「ご武運を!先輩!」

 

「お前の先輩になった覚えはないぞ?」

 

何故か、俺の事を先輩と呼ぶめぐみんにそう言った後、カズマ達の所に行こうとするが………。

 

「私の寝込みを襲撃なんて、やってくれるわねアンデッド!迷える魂達よ、眠りなさい!『ターンアンデッド』ー!」

 

そうアクアの声が聞こえると、広範囲で白い光が浄化していった。あいつ、ウィズがいる事忘れてやがる!!

 

「あのバカがっ!!」

 

「ウィズ先輩いいいいいいいいいいいい!?」

 

「やっぱりか!!くそっ!!」

 

俺はその後、ウィズが消えない様にし、アクアに拳骨をした。

 

◆◆◆

 

「それでは、どうぞごゆっくり。ぜひ、この温泉街を楽しんでいってください!いや、本当に助かりました、ありがとうございました!」

 

そう言って商隊のリーダーが何度も頭を下げ去って行く。あの後、ゾンビ達を浄化し、馬車に揺られた末に水と温泉の都アルカンレティアに辿り着いた。商隊のリーダーの人がお礼にアルカンレティアで一番大きな宿の宿泊券を貰った。そして、彼らは、次の街へと向かって行った。

 

「ああ………。じゃりっぱ………。じゃりっぱが行ってしまいました………」

 

「何だよ、じゃりっぱって何の事だ?」

 

「あのドラゴンの子供の事?そういえば、お金を持ってそうなお客さんの一人に、色々と助けてくれた大魔導士様に、名前を付けてほしい頼まれてたわね」

 

「ドラゴンは一度名前を付けると、二度と他の名で呼んでも反応しなくなると聞いたのだが………」

 

「じゃあ、あいつの名前はじゃりっぱで決定か………」

 

「それは、可哀想に………」

 

「何が、可哀想ですか!!良い名前じゃないですか!!」

 

「お前、何にでもおかしな名前付ける癖は止めろよな。いい加減、お前ら紅魔族のネーミングセンスは変だと自覚しろよ」

 

「カズマに名付けのセンスが無いのはわかりました。折角そんな格好良い名前を持っているのに嘆かわしい。将来カズマに子供が出来たなら、私が名前を付けてあげますよ」

 

「お前にだけは名前を付けさせない………、いやちょっと待て。俺の名前が何だって?カズマって名前、紅魔族的にイケてる部類なの?それ、凄く凹むんだけど」

 

俺達はそう話している時、俺は背負っているウィズを見た。ウィズはまだ目を覚ましていない様だった。

 

「来たわ!水と温泉の都アルカンレティア!」

 

アクアが、大きな声でそう言った。

 

◆◆◆

 

「いらっしゃいませ!旦那様からお話は伺っております!どうか、ごゆるりとおくつろぎください!」

 

俺達は宿泊券に書かれた店に行くと手厚い歓待を受けた。ここに来る前にアクアとめぐみんはアクシズ教団の本部に先に向かった。カズマはこの街がアクシズ教団の総本山と聞いて驚いていた。俺達は部屋まで案内してもらうと、俺はウィズを寝かせた。

 

「それじゃあ、早速観光しに行くか」

 

装備と荷物を置いたカズマがそう言った。

 

「悪いが、俺はウィズを見ているからお前達だけで行ってくれ」

 

「そうか、すまないな。ウィズの事よろしくな」

 

「ああ」

 

「ダクネス。お前はどうする?俺は、折角だし夕飯の時間まで外をうろついてこようかと思うんだが」

 

「む、それなら私も行こう。アクセル以外の街を、あまり知らないのだ」

 

そう話しているカズマ達を見ていると、近くにいるティアがそわそわしていた。

 

「ティア。お前も行って来ていいぞ」

 

「い、いえ!私もウィズ先輩を見ています!」

 

「俺がここにいるから、お前は観光して大丈夫だぞ」

 

「………すみません」

 

「気にするな」

 

俺がそう言うと、ティアもカズマ達と一緒に観光しに行った。それを見送ると俺は部屋でウィズが回復するのを待った。しばらく経った頃、ウィズが目覚めた。

 

「あれ………?ここは………?」

 

「目が覚めたか」

 

「ソウ君?ここ何処?」

 

「俺達が泊まるホテルだ。あの後、アルカンレティアに着いたんだ」

 

「そうなんだ。迷惑かけてごめんね」

 

「気にするな」

 

そう言った後、ウィズは立ち上がり、一緒に外の風景を見ていた。

 

「久しぶりに別の街に来たね」

 

「そうだな。これからどうする?」

 

「折角だし、お風呂に行こっか」

 

「ああ」

 

そう言った後、俺は下着を取りに俺とカズマの部屋に行った。下着を取った後、ウィズと合流して温泉へ向かった。温泉へ着くと入口が三つあった。右から、男湯、混浴、女湯となっていた。

 

「ここ、混浴があるんだね」

 

「そうみたいだな」

 

「折角だし、一緒に入ろ?」

 

「断る」

 

そう言った後、俺は男湯に移動した。服を脱いだ後、体を洗い、温泉に浸かった。

 

「………ふぅ」

 

温泉は良い文明。………何を言っているんだ俺は?

 

「だが、良い湯だな。疲れが取れそうだ。ウィズもゆっくり浸かっているんだろうな」

 

そう言った後、俺はふと混浴の方を見た。今のこの時間は利用客が少なく、男湯でも俺しかいなかった。女湯の方も、今はウィズだけだと考えた。だったら混浴には、今は誰もいないはずだと考えた俺は風呂から上がり、体を拭き、混浴の方へ移動した。服を脱いで、混浴に入ると見た感じ俺しかいない様だった。俺は温泉に浸かった。

 

「………ふぅ、貸し切りみたいで良いな」

 

「………そうだね」

 

「………えっ?」

 

「………どうしたの?ソウ君?」

 

俺は近くを見ると、湯気で隠れていたのかウィズがいた。………ちょっ!?

 

「な、何でお前がここにいる!?」

 

「ソウ君の事だから、私は女湯に入っていると考えて、こっちに移動してくると思って、混浴に先に入っていたの」

 

考えを読まれていたのか!?混浴の方の温泉はどんな感じだと考えていて、誰か入っているのかを確認するのを忘れてしまっていた!?

 

「すまない!すぐに出る!」

 

そう言って、俺は風呂を急いで上がって、出入り口に向かおうとした。

 

「えっ!?ちょっと待ってよ!?ここ混浴だよ!?少しぐらい、入っても………きゃあ!」

 

「ウィズ!」

 

俺はウィズの手を取ったが、一緒に倒れ込んでしまった。見た感じでは俺がウィズを押し倒した風な感じになっている。

 

「………すまない!すぐに退く!」

 

「気にしないで、私はソウ君になら何をされたっていいよ?」

 

「………変な事言うな」

 

退こうとする俺に対して、ウィズはそう言った。………その時だった。

 

「先輩方。ヤッてもいいですが、時と場所を考えてくださいね?」

 

「「!?」」

 

その言葉を聞いた俺達は慌てて離れて、声が聞こえた方向を見ると、一糸纏わぬ姿のティアがいた。………ちょっ!?

 

「バカッ!隠せ!それにカズマ達と観光に行ったんじゃないのか!?」

 

「えっ?ああ、体ですね。別にいいじゃないですか。先輩方しかいないんですよ?あと、カズマ達とは途中で別れたんですよ」

 

「なるほど、分かった。だが、さっさと隠せ!」

 

「ここ風呂ですよ?それに、偉い人の言葉で、こんな言葉があります」

 

そう言った後、ふぅっとティアは息を吐くと………。

 

「パンツじゃないから恥ずかしくないもん!!」

 

「なお、恥ずかしいわ!!」

 

「そんな事言わないでくださいよ。ソウガ先輩~!」

 

そう言うと裸で抱き着いてきた。

 

「裸で抱き着くなっ!!」

 

「ティアちゃんだけズルい!私も!」

 

「お前も抱き着くなっ!!」

 

両腕の凄い柔らかい感触を振り払い、急いで、俺は出入り口に向かった。




最近忙しくて、更新が遅くなってしまい申し訳ございません。


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この魔王軍の幹部に死神を!

今回の話はウィズの語りで進みます。


「もう、あんなに慌てて出る事ないじゃない」

 

「折角ですし、ソウガ先輩の背中を流したかったのに」

 

「お前らが良くても、俺は嫌なんだ」

 

あの後、私とティアちゃんは混浴のお風呂を満喫した後、ソウ君と合流をし、部屋に戻って寛いでいた。

 

「小さい頃はソウ君の家に泊まった時は一緒にお風呂に入っても気にならなかったじゃない。だったら今入っても一緒でしょ?」

 

「ガキの頃と一緒にするな」

 

「でも、13歳まで一緒に入ってたから、別に気にならないんじゃ」

 

「13歳まで一緒に入ってたのは、俺が別々で入ろうと言ったら、お前が泣いたからだろうが」

 

そう言えばそうだった。そんな話をしているとカズマさん達が帰ってきた。

 

「あっ、皆さんお帰りなさい!ご心配お掛けしました、お先にお風呂頂きました。ソウ君とお風呂に行った際に入ったのですが、混浴の方のお風呂、とても広いですよ。人が私達しか居なかったので貸し切りみたいでした」

 

私がそう言うとカズマさんは何故か黙ってしまった。

 

「それで、観光の方はどうでし………。カズマさん?どうかしましたか?」

 

「あわわわ、後十分、せめて五分………いい、いや別に何でも!?………と、というか、どうもこうもなかったよ………。明日は宿から出たくない。この街は色々おかしい」

 

「アクシズ教徒怖いです。紅魔族並に恐れられているというのが良く理解できました」

 

「わ、私は。………明日も観光しようかな………」

 

「お、お前………。まあいい、好きにしてくれ。俺は風呂に入ってくるから」

 

そうカズマさんが言った後、立ち上がり、部屋から出ようとしたが、私達の方に振り返った。

 

「………俺は風呂に入ってくるから」

 

「聞こえましたよ。ゆっくりしてきてくださいね」

 

「私とソウ君とティアちゃんはお先に入らせて頂きましたので、カズマさんも、どうぞごゆっくり」

 

「………………俺は風呂に」

 

「早く行け」

 

「一人で行け」

 

そうダクネスさんとティアちゃんが言った後、カズマさんは部屋から出て行った。

 

「………全く、あの男は………。ところで話は変わるが、凄いなソウガ、神滅魔法があれほどとは想像していなかった」

 

「うん?一体、何の話ですか?」

 

「ああ、めぐみんは実際見ていなかったから知らないか。ソウガは神滅魔法で自分の分身を作り出したのだ」

 

「………神滅魔法って、分身も作り出せるんですか?」

 

「ああ、ディープ・イリュージョンは四人まで分身を作り出す魔法だ。それぞれに意思があり、別々に行動ができる魔法だ。その魔法を使って、魔王軍の幹部を何人も葬った」

 

「とてつもない魔法だな」

 

「でも、あれは神滅魔法の中でも上位の魔法なんですが、あの魔法よりさらに上の魔法が神滅魔法には存在します」

 

「えっ!?」

 

「あれより強力な魔法があるのか!?」

 

私がそう言うとダクネスさんとめぐみんさんが驚いてしまった。私は話を進めた。

 

「神滅魔法には奥義と呼ばれる魔法が存在します。その数八つ、その奥義の魔法は強力過ぎてソウ君は使わない様にしているんです」

 

「まぁ、正確には、使うような相手がいないっていう方が正しいけどな」

 

「………一般的な魔法でも、魔王軍の幹部を圧倒する。神滅魔法は恐ろしい魔法だな」

 

ダクネスさんがそう言っていると、めぐみんさんがこう言った。

 

「………もう、魔王軍はソウガを勧誘した方が良いんじゃないでしょうか?」

 

「………はい?」

 

「だって、一般的な魔法ですら魔王軍は圧倒されてるんですよね?だったら、ソウガを魔王軍に勧誘した方がいいんじゃないかと思いまして」

 

「………そんなの駄目に決まっているだろ!?ソウガが敵になるなんて考えただけでゾッとする!?」

 

「そもそも、俺が魔王軍に入ると思うか?」

 

「ですよね。それじゃあ、私達もお風呂に行きましょうか。どうせ、あの男の事です。混浴に入っているので注意しましょう」

 

「ああ、そうだな。それじゃあ、行ってくるな」

 

「ああ」

 

「お二人とも、どうぞごゆっくり」

 

そう言うと、めぐみんさんとダクネスさんはお風呂の向かった。私はめぐみんさんが話を聞いて思い出していた。過去に一回、ソウ君を魔王軍に向かえようとした事を………。

 

◆◆◆

 

あれはソウ君と暮らし始めて、数か月が経った頃、私は魔王軍の幹部の会議に参加するために歩いていた。

 

「あら、ウィズじゃない。奇遇ね」

 

「あっ、ウォルバクさん。こんにちは」

 

そう言って私は赤髪の女性、ウォルバクさんに挨拶をした。彼女は邪神、ウォルバクさん。封印されていたらしいんですけど、紅魔族の女の子に封印を解いてもらい、今は私と同じ、魔王軍の幹部だ。

 

「しかし、こんな時に会議だなんて、私は本来の力を取り戻すために湯治をしていたのに」

 

「大変ですね。確か半身の力を完全に奪えなかったから湯治をしているんですよね?」

 

「そう、時間をかけて戻さないといけないから大変よ………。そこら辺に私の半身が転がっていれば問題ないんだけど」

 

「あはは………。って、あれ?」

 

「うん?どうしたの?」

 

「あれ、シルビアさんですよね?会議室の前で何をしているんでしょう?」

 

そう言って、私は部屋の前を指差すと、シルビアさんが立ち止まっていた。

 

「シルビアさん、こんにちは。どうしたんですか?」

 

「ああ、ウィズとウォルバクね。ちょっとね………」

 

そう言うと、少しシルビアさんは考え事をしていると、私達に話してきた。

 

「ウィズ、ウォルバク、私の後について来なさい」

 

「うん?」

 

「えっ?は、はい」

 

そう私達は返事すると、シルビアさんが扉を開けて、入ろうとすると………。

 

「おっと!手が滑ったあああああああああああ!!」

 

そう声が聞こえるとシルビアさんのスカートの下に何かが転がってきた。………ベルディアさんの頭だった。でも、確かシルビアさんって………。

 

「うげえええええええええええええええ!!」

 

「人のスカートの中身を見て、気持ち悪そうな声を出さないでくれないかしら?」

 

「うるせえ!!気持ち悪い物を見せやがって、どうしてくれるんだ!!」

 

「知らないわよ」

 

「フハハハハハハハ!ベルディア、汝の悪感情美味である!」

 

「やかましいぞ!仮面悪魔!」

 

「………何してるんだか」

 

そう中に入ると、バニルさんとハンスさんがいた。あと、何でベルディアさんが怒っているかというと、シルビアさんの下半身は男の人のものだからである。その後、私達はそれぞれ席に座った。

 

「あの、他の人達がまだ来ていないのですが………」

 

「どうせ、来ないでしょうし。始めましょうか。死神の対策会議を」

 

そう言って、シルビアさんは対ソウ君の会議を始めたのだが、ハンスさんがため息交じりに言った。

 

「毎回、する度に思うんだが、過去の魔王軍の幹部が倒せなかった死神をどうやって倒すんだよ」

 

「それを、今から考えるのよ」

 

そうシルビアさんが言うと、ウォルバクさんが言った。

 

「じゃあ、得意な地形で戦うとかどうかしら?例えば、水中とか」

 

「前の魔王軍の幹部、魚人のジーロがどうやって倒されたか知ってるの?」

 

「えっ?」

 

「海中から攻撃していたのに、死神は海を割いて、海ごとジーロを凍らせて粉々に粉砕したわ」

 

「………じゃあ、駄目ね」

 

そうウォルバクさんが言った後、ベルディアさんが言った。

 

「やっぱ、数で押し切るしかないだろ!死神と言っても数には勝てないだろう」

 

「死神討伐のために、前の魔王軍の幹部、ハーピーのヘルメス、オーガのゴウキ、蜘蛛人のへクスがどうやって倒されたのか知ってるの?」

 

「………えっ?」

 

「空から死神を探していたヘルメスを地上で見ているゴウキとへクスの目の前で爆殺した後、超高速でゴウキをボコボコにし、何とか速さに対抗できたへクスの攻撃を姿を消して回避した後、光の槍で二人まとめて貫いたわ」

 

「………おおう」

 

そう言うと、皆が黙ってしまった

 

「じゃあ、無理じゃない?」

 

「無理じゃない!そのために死神を確実に倒すための作戦を考えてきた!」

 

「おおっ!」

 

そう言ってシルビアさんはソウ君を倒す作戦を話した。

 

「まず、囮役の幹部をわかりやすい所に配置して、他の幹部は周りに隠れるの。その囮に死神が食いついている時に皆で襲い掛かり倒す!」

 

「なるほど、それで囮は誰がやるんだ?」

 

「えっ、あなただけど?」

 

「ヤダッ!!」

 

シルビアさんがベルディアさんを指差すと、ベルディアさんは拒否した。

 

「何で俺なんだ!!」

 

「何を言っているの?ウィズと一緒のパーティーメンバーを死神として覚醒させてしまった。あなたの責任でしょ?『奴は、ベルディアはどこだああああああ!!!』って聞いた兵士もいるのよ?」

 

「………ぐっ、命の保証はあるんだろうな」

 

「もちろんよ。まず、廃街に誘い込んで周りにトラップを仕掛ける」

 

「そんなの死神には効かないだろうが!」

 

「それも囮よ。罠があるって事はここで仕留めるつもりだろうって思わせる事が目的だから」

 

「………でも、俺が隠れている所がすぐにバレたら」

 

「あなたは隠さない。広場の真ん中にわかりやすくいてもらう」

 

「ええっ!?」

 

「あえて、隠さない事で罠だと思わせる事ができ、死神を一瞬躊躇させる事ができ、隙を作る事ができる」

 

「なるほど、でも、罠だと覚悟して攻撃してきたら………」

 

「言ったでしょう。死神の判断を鈍らせる事が目的って、死神がすぐに攻撃する事はありえない」

 

そう言って、シルビアさんは立ち上がり、ベルディアさんの近くに行き、恐るべき速さでベルディアさんに何かをした。

 

「まず、あなたに向く」

 

そうシルビアさんは言うと、ベルディアさんは亀甲縛りで三角木馬に乗せられていた。………私とウォルバクさんはふいっと目を逸らした。

 

「じゃないだろ!?死神の隙を見つける前に、とんでもない性癖が見つかってんだろうが!?」

 

「これに気を取られている間に死神を倒す。これならあなたが死ぬ事はないでしょう?」

 

「いや、社会的に死んでるだろうが!?」

 

「死なないだけマシでしょう?大義を見失わないで」

 

「大義見失ってんのはお前だ!!こっちは無傷でいたいの!!社会的に死にたくもないの!!」

 

「えっ!?そうなの?それは無理ね。あなたを社会的に無傷にはできないわ。お手上げ~」

 

「どういう意味だゴラァ!!とにかくこんなの却下だ!!」

 

「確かにあなたの言う通りね。だったら死神を広場に近づけさせない様にするしかないわね」

 

「そんな事、できるのか?」

 

「かと言って広場に罠を仕掛ける訳にもいかないし、物理的にではなく、精神的に近づきたくない様にするしかないわね」

 

そう言った後、再びシルビアさんはベルディアさんに何かをした。

 

「となると、こうね」

 

そうシルビアさんは言うと、ベルディアさんは亀甲縛りで吊るされていた。私とウォルバクさんは再びふいっと目を逸らした。

 

「さっきと何も変わってねえだろうが!!」

 

「一歩も近づきたくないよね。お取込み中すみませんって気持ちになるでしょ?」

 

「なるけども!!だったら、どこか建物に隠れて、錠をつけまくった方が良いだろうが!!」

 

「わかったわ」

 

シルビアさんがそう言うと、指を鳴らした。すると、鞭を持ったサキュバスが入ってきて、ベルディアさんの近くに行った。

 

「この豚野郎!!」

 

「痛い!!そっちの嬢じゃねえ!!」

 

「よし!これにて会議は終了!作戦実行の日は後日知らせるわ。解散!」

 

「解散じゃねえ!?縄解け!!何も解決してねぇだろうが!!」

 

「まったく我儘ね」

 

「殺してやろうか!!ゴラァ!!」

 

「フハハハハハハハ!汝の悪感情美味である!大変美味である!」

 

「うるせえ!!」

 

このままじゃ会議は終わらない。店番を任せているソウ君にこれ以上迷惑をかける訳には………。そう思っていると、ウォルバクさんが言った。

 

「だったら仲間にしたら?」

 

「「「「「えっ?」」」」」

 

「だって、どうやっても勝てないし、だったら仲間にした方がいいと思ったんだけど、駄目かしら?」

 

「「「それだっ!!」」」

 

「ええっ!?」

 

ウォルバクさんの提案にシルビアさん、ベルディアさん、ハンスさんはそう言った。私は驚いた。ちなみにバニルさんは腹を抱えて笑っている。

 

「そうね、無理して倒す必要なんて無いわ!」

 

「死神が仲間になれば、これほど頼もしい奴はいない!」

 

「俺も無傷で済むしな!」

 

「えっと?皆さん?ソ………死神は魔王軍、最大の敵なんですよ?恨みとか?」

 

「「「命の方が大事だ!!」」」

 

「で、ですよね~」

 

「よし!なら、どうすれば死神が仲間になるか考えましょうか!」

 

「あの………、すみませんが私は店番がありますので失礼させてもらっても良いですか?」

 

「そうなの?しょうがないわね」

 

「あ、ありがとうございます!では、失礼します!」

 

そう言って私は会議室を出て。

 

「………ソウ君が、魔王軍に入るわけないのに」

 

そう小さく呟いて、その場を後にした。

 

◆◆◆

 

その事を思い出して、私はソウ君に聞いてみた。

 

「ねぇ、ソウ君?」

 

「うん?どうした?ウィズ」

 

「もしかしたらなんだけど、魔王軍が勧誘に来なかった?」

 

「何で、知っているんだ?」

 

「前の会議の時に議題にあったから、誰が来たの?」

 

「それがな………、ベルディアが来たんだ」

 

よりにもよって、ソウ君が一番憎んでいるベルディアさんが来たんだ………。

 

「………ベルディアさんはどうやって勧誘してきたの?」

 

「………それがな、意味が分からなかったんだ」

 

「………えっ?」

 

どうしてと思っていると、ソウ君が言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シニガミ マイ フレンドって言ってきたから、何かムカついて、雷を思いきりぶつけた」

 

「………えぇ………」

 

何、その勧誘方法………?

 

「それは、分からないね」

 

「だろ?」

 

そう話した後、アクア様が帰ってきて、私の胸元で泣き始めたので何とか慰めようとした。




今回は何とか、早く書けました。


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この死神に調査を!

この話でソウガの新しい一面が見れます。


翌朝、俺はふと目を覚ました。隣のベッドにいるカズマを見ると、まだ寝ている様だった。俺は便所へ向かうため部屋を出た。用を足し、着替えを済まして、散歩に出かけようと部屋を出た。すると何故かちょむすけがいた。俺に気付いたちょむすけが俺の方に寄ってきた。

 

「なーお」

 

「どうした?部屋に入れなくなったのか?」

 

俺は跪いてちょむすけを撫でる。ちょむすけは気持ち良さそうに目を細めた。

 

「なーお」

 

「………可愛いな」

 

俺は周りを確認した後、顎回りを撫でた。

 

「ふふっ、可愛い奴だなこいつ」

 

「なーお」

 

気持ち良かったのか、腹を見せて撫でて欲しそうに鳴いた。

 

「ここか?ここが良いのか?」

 

腹周りを撫でると、気持ち良さそうに鳴いた。………可愛い。

 

「ここが、気持ちいいんだな。もっと撫でてやるにゃー!」

 

「なーお!」

 

「にゃはははははは!………ッ!?」

 

俺がそう言った後、視線を感じたので見て見ると、めぐみんがこっちを見ていた。

 

「………………」

 

「………見てたか?」

 

「えっ、何をですか?」

 

そう言ってめぐみんがこちらに近づいてきた。俺はふいっと目を逸らした。

 

「ところで、あなたは私のパーティーメンバーのソウガにそっくりですね。兄弟か何かですか?」

 

「………いや、本人だけど」

 

「えっ!?嘘言わないで下さい!私の知っているソウガは猫を撫でて『にゃはははははは!』なんて言いません!本当の事を言って下さい!」

 

そうニヤニヤしながら言ってきた。………こいつ!!

 

「………………」

 

「………プッ」

 

めぐみんが少し笑った所で俺はめぐみんに目潰しをしようとしたが、防がれた。

 

「ちょっ!?」

 

「見てたな!!見てたんだな!!」

 

「消せませんよ!目は潰せても記憶は消せませんよ!」

 

「忘れろおおおおおおおおおお!!」

 

「私の思い出は消させはしませんんんんんん!!」

 

俺達はそんな攻防をしばらく続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああああああ!!いったい!!目があああああああああ!!」

 

◆◆◆

 

「プックククク!」

 

「ふふふふふ!」

 

「プークスクス!あははははは!」

 

宿の一階の食事処でカズマ達が笑っていた。めぐみんが朝の事をカズマ達にバラしたからである。俺はふいっと目を逸らしたまま、顔を真っ赤にしていた。

 

「いや、面白い事を聞いたな。まさかソウガがなぁ」

 

「猫好きとは、可愛い奴だな」

 

「なになに?じゃあソウガは猫好きなのを隠してちょむすけを撫でていたの?思い切り愛でたいのを我慢して?プークスクス!うけるんですけど!ちょーうけるんですけど!」

 

………………ブチッ!!

 

「うるせえええええええええええええええ!!ああ、そうだよ!!猫大好きだよ!!悪いのか!!なあ、俺が猫好きで悪いのか!!目の前に猫が居たら、たとえ野良猫でも愛でるのは世界の常識だろうが!!」

 

「いや、そんな常識知らないけど………」

 

「ええっ!!?」

 

「驚きすぎだろ」

 

「嘘だろ!?嘘だと言ってくれよ!?」

 

「そこまで!?ああ、猫だなぁって思う事はあるけど、野良猫を愛でようとは思はないな」

 

「ま、まさか………。そんな人間がこの世にいるなんて!?」

 

「だから、そこまでの事なのか?………ちなみに俺の国の楽器に三味線というのがあって、猫の皮を使う物があるんだが」

 

「この腐れ外道がああああああああああ!!」

 

俺はカズマを殴ろうとしたが、ダクネスに羽交い締めされた。

 

「落ち着けソウガ!?店の中だぞ!?」

 

「離せええええええええええ!!この外道をこの世から消さないと、罪の無い猫達が死んでしまう!!てめえ、覚悟しろよ!!絶対にぶっ殺してやるからなああああああああ!!」

 

「俺が作っているわけじゃないから落ち着け!?」

 

何とか落ち着きを取り戻した俺はカズマに謝った後、椅子に座った。………三味線を作っている奴らは絶対に殺す。慈悲はない。

 

「話を変えるけど、この街の、危険が危ないみたいなの」

 

朝食を再開すると、アクアがそんな事を言ってきた。

 

「一晩中泣いてたと思ったら、突然どうしたんだよ。この街にとって、今一番危険なのはお前の特殊な体質だろうに。部屋に付いてる露天風呂以外使うなよ」

 

「ちゃんと聞いて!私だってね、何も好きこのんで温泉を浄化しちゃったわけじゃあないの。まあ、屋敷のお風呂場に置いてあったダクネスの高級入浴剤ですら、アレ全部投入してみたにも拘らず、あっさり浄化されちゃったし。そりゃあ温泉だって浄化しちゃうわよね」

 

「ええっ!?アレ全部使ったのか!?わざわざ王都から取り寄せたばかりなのにっ!」

 

「でも変なの。私がアクシズ教団の秘湯に入ったあの時、温泉浄化するのに凄く時間が掛かったのよ。私の浄化能力はね、それはもう凄いものなの。たとえば・・・」

 

アクアが言葉を止め、カズマが飲もうとしていたコーヒーカップに指を入れると、中に入っていたコーヒーがあっという間に透明なお湯に変わった。

 

「………ね?」

 

「ね?じゃねえ!何すんだバカ、新しいコーヒー持ってこい!」

 

「見ての通り、普通はこんな感じで一瞬なの。それが、あの時だけ時間が掛かったって事は、それだけ汚染されていたって事なのよ。………どうもこの街では、あちこちの温泉の質が突然悪くなっているみたいでね?これはつまり、我がアクシズ教団を危険視した魔王軍が、真っ向勝負では勝てないと踏んで、温泉というアクシズ教団の大切な財源を奪いに来たのよ!」

 

「「そうなんだ。凄いね!」」

 

「信じてよー!」

 

「そもそも、いくつかの温泉の質が悪くなったというだけの話だろう?それが魔王軍だのなんだのといった話になるのだ」

 

「まあ、アクシズ教団が色んなところでドン引きされて疎まれているのは確かですが、そこまで回りくどい事をしますかね?」

 

「まあ、少なくとも調査は必要だな。俺は温泉を回って、本当に汚染されているか調べてみる」

 

「さすがソウガ!この街のために立ち上がってくれるのね!あっ、でも猫がいたからって調査しなかったって言うのはやめてね?」

 

「その話はもういいんだよ!!」

 

俺は机を叩いて、そう言った。

 

「とにかく、私は、この街を守るために立ち上がるわ!という訳で、皆も協力してくれるわよね!?」

 

「俺は街の散歩だとか色々忙しいから無理だな」

 

「私は、アクシズ教団の恐ろしさは昨日で嫌という程知ったので、今日は遠慮しておきます。カズマにくっついて行きます」

 

「何でよー!散歩とかどうでもいいじゃないの!めぐみんも、そんなにウチの子達を嫌わないでよ!じゃ、じゃあダクネスは・・・」

 

「う………、わ、私はその、アレだ………」

 

「お願いよおおおおおおおお!」

 

「わかった付き合うから!付き合うから、私のグレープジュースを浄化しないでくれ!」

 

アクアに泣きつかれて、ダクネスが折れた。それを見ていると、カズマが何かに気がつき、話してきた。

 

「そういや、ウィズとティアはまだ起きてこないのか?ウィズは何だかんだいってお前には甘いから、お前が言えば付き添ってくれると思うし、ティアもウィズが一緒に行くならついて来てくれると思うんだが」

 

「ウィズなら、私が一晩中しがみついて泣きついてたら、朝には私の涙で消えかけてグッタリしてたから今はティアが看病しているわ」

 

「人の幼馴染と後輩に何してるんだ!!」

 

「痛いっ!!」

 

「街より先にウィズを救えよ!お前のせいで、ウィズ、ほとんどこの街で寝てばっかじゃねーか!」

 

俺がアクアに拳骨をした後、カズマがそう言った。

 

◆◆◆

 

「いやー、助かりました。温泉を浄化していただき、ありがとうございます」

 

「また汚染してしまったら、呼んでください。すぐに浄化しますので」

 

朝食の後、カズマ達と別れて温泉の調査を開始した。実際に調べてみるとかなり汚染されていたので浄化をしながら温泉を回っていた。

 

「本当にありがとうございます。あの、これ、つまらないものですが………」

 

「いや、そんなつもりで浄化したわけでは………」

 

そう言ってホテルの店長らしき人はある物を渡してきた。………アクシズ教団の入信書だった………。

 

「えっ?」

 

「いやあ、貴方ほどの実力者がいるなんて、貴方がアクシズ教団に入ってくだされば安泰ですな」

 

そう言って、さらに入信書を渡してきた。………おい。

 

「い、いや、こんなに入信書を頂いても困るんですけど………」

 

「遠慮しないでください」

 

「いや、遠慮じゃなくて………」

 

俺がそう言うと、店長の後ろにいた従業員達が俺を囲んだ。

 

「そんな事、言わずに………」

 

「さあ、さあ」

 

「どうぞ、どうぞ」

 

そう言って、どんどん入信書を渡してくる。………ちょっ!?怖い怖い!?

 

「ちょっ!?マジでやめてください!」

 

「本当に遠慮しないで」

 

何なのこの人達、助けてえ!?

 

「いい加減に………ッ!?」

 

俺が離れろと言おうとした時に、こちらに向かって無数の矢が放たれた。俺は周りの人を離れさせ、魔法陣を展開した。

 

「『マジック・シールド』!」

 

俺はそう唱えると、巨大な魔法陣が現れて矢を防いだ。俺は店長と従業員にホテルの中に避難してもらうと、頭部が骨とムカデをイメージした仮面の人型のモンスター達が現れた。

 

「俺に用か?」

 

「「「「排除する!」」」」

 

「なるほど、そう言う事か」

 

そう言うと、仮面のモンスターが襲い掛かってきた。俺は双剣を作り、戦闘を開始した。モンスターの剣による攻撃を避けて、モンスターを切り裂くと、モンスターが爆発して消えていった。だが、建物の上などから矢を射ってくるモンスターの攻撃を回避すると、魔法陣を展開した。

 

「『ライトニング・ボルテックス』!」

 

そう唱えると高威力の雷を放ち、周りのモンスターを一掃した。

 

「何だったんだ?今の、モンスターは………」

 

俺は倒したモンスターの事を考えていた。今まで、あのようなモンスターは見た事が無いからだ。頭部はモンスターだったが、服装は冒険者が着けている装備などだった。そう思っていると、店から店長達が出て来た。………大量の入信書を持って………。

 

「やはり、貴方は凄い人だ!ぜひ、アクシズ教団に!」

 

………………。

 

「すいません、ウチにはもうアクシズ教団のプリーストがいますので。そのような話はちょっと………」

 

「そうでしたか!すいませんでした同志よ!」

 

「それでは、俺は急いでいますので失礼します」

 

「さようなら同志、あなたに良き一日であらん事を!」

 

店長と従業員が手を振って、俺を見送った。俺は一礼した後、そこから離れた。

 

「………つ、疲れた。帰ってちょむすけを撫でたい………」

 

俺はそう言うと、次の温泉へ移動した。

 

その様子を建物陰から見ている者がいた。その男はソウガの戦闘を見て、笑っていた。

 

「フッフッフ、まさか、死神の実力があれほどとは、驚きましたねえ。あの程度のモンスターでは死神の本気は見れないようだ。なら、次の手を考えましょうかねえ」

 

そう言って、その男はその場を立ち去った。

 

◆◆◆

 

俺は一帯の温泉を浄化した後、歓楽街を歩いていると、中央の方に人だかりができていたので行ってみると、アクアが木箱の上に乗り演説をしていた。隣にいるダクネスは恥ずかしそうだ。その近くを見て見るとカズマ達がいたので、その方へ歩いた。

 

「アクア達は、一体何をしているんだ?」

 

「ああ、ソウガ。アクアが何とかアクシズ教団に温泉に入らない様に言っているだけだよ。それで、調査の方は終わったのか?」

 

「ああ、温泉はかなり汚染されていたから浄化もついでにやっておいた」

 

「そうか、ごめんな。ソウガばかり」

 

「気にするな」

 

そう話していると、ウィズが俺に話しかけて来た。

 

「ソウ君、お疲れ様。何か分かった?」

 

「魔王軍かは分からないが、何かはいる事は分かった」

 

「えっ?どういう事?」

 

「見た事のないモンスターに襲われたんだ」

 

「えっ!?大丈夫だったの!?」

 

「ああ、そんなに強くなかったから、簡単に排除できた」

 

「そう、良かった」

 

ウィズがそう言った後、俺の手を握りながら話してきた。

 

「カズマさんに私達の過去を話したんだね」

 

「ああ、でも何で知っているんだ?」

 

「私が仲間の事を言ったら、カズマさんが話してくれたの」

 

「そうか」

 

「信用しているんだね、カズマさん達の事」

 

「ああ、こんな俺の事を仲間として接してくれて本当にいい奴らだよ」

 

「ソウ君が嬉しそうで、私も嬉しい」

 

「そうか、ありがとうな」

 

「えへへ」

 

そう俺とウィズが話をしている。その時だった………。

 

「ああっ!こんな所にいやがった!ウチの宿の温泉に何しやがった!お湯になってるじゃねーか!」

 

「本当だ、こんな所にいやがった!おい皆、ソイツを捕まえてくれ!ソイツは、街中の温泉をお湯に変えるっていう、タチの悪い嫌がらせをする女だ!」

 

「ああ、アクシズ教団の本拠地である、この温泉街を破綻させるために派遣されてきた、魔王軍の手先かもしれねえ!」

 

おいおい、街を救うために立ち上がったのに、逆に破滅させようとするなよ………。

 

「はぁ、何しているんだあいつは」

 

「どうしましょう?ソウガ先輩?」

 

「ああ、ティアいたのか。一言も喋ってないし、地の分にも書かれていなかったからいないかと思っていた」

 

「メタい事を言わないでください!!」

 

冗談はこれぐらいにして。その様子を見て、ウィズとめぐみんはカズマに話しかけていたが、流石に………。

 

「これは、もう、どうしようもないだろ」

 

「確かに、これはもう………」

 

そう話していると、アクアが声を大にして言った。

 

「ああもう!いいわ、ならこの私の正体を明かします!お集まりの敬虔なるアクシズ教徒よ!私の名はアクア!そう、あなた達が崇める存在、水の女神アクアよ!我が可愛い信者達!あなた達を助けるために、私自らこうしてやって来たの!」

 

アクアがそう言うと、見守っていた聴衆はシンと静まりかえった。

 

「………よし、ティア。ウィズを抱えて行くぞ」

 

「了解しました!」

 

「………よし、行くぞ。急げめぐみん」

 

「………これはいけませんね。先程までならまだ何とかなりましたが、これはダメです。逃げましょう!」

 

「ちょっ、ちょっとカズマさん!?めぐみんさん!きゃあ、ティアちゃん!いきなり抱えて歩き始めないで!アクア様とダクネスさんは………!」

 

俺達がその場を離れる中、突如罵声が響き渡った。

 

「ふざけんなこの不届き者!」

 

「青い髪と青い瞳だからって、アクア様を語るだなんて罰が当たるわよ!」

 

「簀巻きだ!簀巻きにして湖に放り込んじまえ!水の女神のアクア様だってのなら、湖に放り込まれても問題ないだろうよ!」

 

「わあああああ!やめてえ!本当だから!私、本当に神様ですから!」

 

「ああっ!い、石を投げるのは………っ!や、やめ………っ!アクア、私の後ろに!」

 

「「「「………………」」」」

 

「ちょ、ティアちゃん下して!ああっ、アクア様が………!」

 

石を投げつかれるアクアとダクネスを置いて、俺達は走って逃げた。




新しい敵は仮面ライダーWを見ていただけるとわかります。


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この敵に死神と店主を!

今回も新しい敵が出ます。


「わあああああああああーっ!」

 

「ア、アクア様、温かいミルクです、これを飲んで心を落ち着けてください………」

 

俺達が宿に戻ると、既にアクアがいた。今は泣き続けているアクアをウィズが慰めていた。その隣には傷だらけのダクネスが満足そうに紅茶を飲んでいた。

 

「あんまりよおおおお!私、皆のために頑張っているのに!どうして信者の子達に石投げられなきゃいけないの!?わああああああああーっ!」

 

「アクア様、ど、どうか落ち着いて!でないと私、興奮したアクア様の神気に当てられ薄くなっているんですが!」

 

そうウィズがアクアに言っていると、ティアが腕を組みながら言った。

 

「そもそも、アクアが女神を名乗っても無駄だと思うんだよ」

 

「な、何でよ!私は女神なのよ!女神の言う事を無駄だと言うの!」

 

「じゃあ、言ってやるよ。お前が女神を名乗っても無駄な理由を」

 

そうアクアに対して、ティアが言った。………これは長くなるぞ………。

 

「まずお前には本物のアクア様とお前とじゃ、神性な感じが圧倒的に違う。教会のアクア様の像で感じた、とても神性で、まさに女神の像と感じさせる事がお前には皆無に近い、そんな奴が女神を名乗るなんて笑わせる。あと、お前には女神だと感じさせる様なそんな力がお前には無い。アクア様は水の女神と呼ばれていて、水に関してはスペシャリストだ。本物は水を操るのも思いのままのはずだ。温泉をお湯に変えたりする程度の事しかできないお前には女神としての威厳なんて無い。あとお前には全てを包み込む母性が感じられない。女神とは道を間違えてしまった者にきちんとした罰を与えた後、その者を優しく包み込んでやれる程の母性が必要だ。お前には母性どころか世の中を舐めているガキの様な感じしか感じられない、逆に罰を与えられても文句が言えないほどにな。最後に決定的なのは、お前からは女神というより旅芸人のオーラしか感じられない。お前ごときが女神を名乗るより。まだ、クリスが女神を名乗った方が信じる。はっきり言ってやるよ、お前が女神を名乗っても、誰も信じてくれない。お前が女神を名乗る事は女神に対する冒涜だ!恥を知れカスがっ!!」

 

「わ、わああああああああああーっ!!」

 

「ティアちゃん!」

 

「ていうかティアが女神に対して詳しいんだけど!?」

 

「ああ、あいつ、神様マニアなんだ。気にしないでくれ」

 

「神様マニアって何だ!?」

 

ティアは全ての神様を愛する神様マニアだ。あいつの部屋には神や女神に関する書物が山のように積まれている。そして、女神に関して話し出したら長くなる。そのティアの前でアクアが女神を名乗るもんだからティアがキレるのも無理ないな。

 

「わああああああああああーっ!酷いよおおおおおおおおおおおっ!」

 

「アクア様、ホットミルクでも飲んで落ち着いてください」

 

そう言ってウィズはアクアにホットミルクを差し出した。アクアはそれを見て言った。

 

「………お酒がいい」

 

「お前、実はそんなに気にしてないだろ」

 

「だから、お前には女神を名乗るなって言ったんだ」

 

「………はぁ」

 

ウィズはその言葉を聞いた後、階下に酒を貰いに行く中、アクアが泣き腫らした顔を上げた。

 

「何にしても、この街に破壊工作が行われているのは間違いないわ。私が回った温泉のいくつかは、かなり汚染されていたの。アレにお客さんが入っていたら、病気にでもなっていたわよ」

 

「俺も調査してみたが、かなり汚染されていた。しかも、魔王軍かどうかは分からないが、何かはこの街にいるな」

 

「うん?何かあったのか?」

 

「見た事のないモンスターに襲われた」

 

「ええっ!?大丈夫だったのか!?」

 

「ああ、別にそんなに強くなかったから簡単に対処できた」

 

「そうか、なら良かった」

 

「しかし、プリーストとしての腕だけは確かなアクアが、そこまで言うのなら本当なのか?しかし、犯人の特定すらできていない現状ではどうにもならんぞ?」

 

「地道に探すにしても、特徴も何もないから無理だしな」

 

「ですね。一応冒険者ギルドや温泉の管理を行っている教会なんかに報告して、後はお任せするしかないのでは?」

 

ダクネスとめぐみんの言葉にアクアは歯ぎしりをした。

 

「ううー………。でも、このままだと私の可愛い信者達が………!」

 

「明日は俺も協力してやるよ。その代わり、戦闘になるようなのは勘弁だからな?犯人を見つけたら、後は冒険者ギルドに任せる。それでいいか?」

 

カズマがそう言うと、アクアが顔を輝かせた。

 

◆◆◆

 

「では、私達は宿で待機してますね。皆さん、どうかお気を付けて!」

 

「気を付けろよ」

 

翌朝。この街の冒険者ギルドに向かうためカズマ達とティアを見送っていた。俺達は連絡係として残り、何かあったら駆けつけるという事になった。

 

「これから、どうしよっか」

 

「連絡がくるまで暇だからな。風呂にでも入って待つか」

 

「じゃあ、背中流すから混浴に来てね」

 

「断る」

 

そう言って宿に戻ろうとしていたら、前に温泉を浄化したホテルの店長がやって来た。

 

「ソウガさん!」

 

「うん?どうかしましたか?」

 

「実は、また温泉が汚染されて困っているんです。何とかしてくださいませんか」

 

「わかりました。じゃあ、ウィズ。俺は浄化に向かうから、お前は部屋に戻ってな」

 

「待って、部屋に一人でいるのも退屈だし私も行っていい?」

 

「別に構わないが」

 

「ありがとう。ソウ君」

 

そう俺達が話した後、宿に向かった。しばらく歩くと、宿に到着し、俺達は宿の温泉に行ってみると温泉が黒く変色していた。

 

「これは、かなり汚染されているな」

 

「浄化できそう?ソウ君?」

 

「これぐらいなら浄化できる。じゃあウィズ、巻き添えを食らわない様に離れてろ」

 

「うん」

 

ウィズが離れるのを確認すると、俺は魔法陣を展開した。

 

「『オール・カタルシス』」

 

俺がそう唱えると温泉が光り出した。光が消えると汚染されていた温泉は元に戻った。

 

「よし、これでいいだろ」

 

「ソウ君、お疲れ様」

 

そう言ってウィズが俺に近づいてきた。俺もウィズの方に歩き始めたが・・・。

 

「ギャオッ!」

 

「「!?」」

 

その鳴き声と共に物凄い速さで俺達の前を通り過ぎた。俺は店長に避難する様に言った後、俺とウィズは背中を合わせて周りを警戒した。何かが再び物凄い速さで俺達の周りを移動し始めた。

 

「一体、何?速すぎて見えない!」

 

「この匂いは………。獣の匂いだ」

 

「えっ!?」

 

俺達がそう話していると周りを移動していたそいつは姿を現した。そいつは猫型の獣人の姿をしていた。

 

「グルゥアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

「俺達に何か用か?」

 

「グルルルルルルルル!!」

 

俺がそいつに話しかけたが、そいつは両腕を俺達に向けて威嚇を続けた。

 

「どうやら、言葉を話せないみたいだな」

 

「フシャアッ!!」

 

俺達に向かって爪による攻撃を仕掛けて来た。俺達はその攻撃を俺は右に、ウィズは左に避けた。

 

「悪いが、俺は動物とモンスターの区別はしている。猫型だろうが手加減してもらえると思うな」

 

俺がそう言うと、俺とウィズは魔法の準備をした。

 

「『カースド・ライトニング』!」

 

「『ライトニング・ボルテックス』!」

 

俺達が魔法を唱えて、雷を放つが物凄い速さで避けられてしまった。

 

「くそっ」

 

「やっぱり速い!?」

 

俺達がそう言うと、俺に爪による攻撃を仕掛けて来た。俺は腕に魔力を込め防御したが後ろに少し吹っ飛ばされたが態勢を立て直した。

 

「強さは魔王軍の幹部と互角か!」

 

「ソウ君!………ッ!?」

 

ウィズがそう言うと、モンスターが一瞬で移動してウィズに攻撃をしようとしていた。俺も急いで移動して、その攻撃を防いだ。

 

「ソウ君!?」

 

「俺の幼馴染に何しようとしてんだ!!」

 

俺はそう言うと、そのモンスターにラッシュを始めた。

 

「ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

「フギャアアアアアアアアアアアアアアアアア!?」

 

ラッシュをした後、そのモンスターは叫びながら温泉の方に吹っ飛ばされたが、フラフラの状態で立ち上がった。

 

「結構なダメージを与えたはずだが、タフな奴だな」

 

「フ、ギャオ………!」

 

「ああ、一つ言っておくな。お前の高速移動はもう使えないぞ」

 

「ガオ?………ッ!?」

 

俺がそう言うと、その温泉が凍り、モンスターの足が動かせない様になっていた。

 

「何故なら、私が温泉を凍らせたからだよ」

 

「さすがは氷の魔女。温泉を一瞬で凍らせるなんてな」

 

「ありがとう。じゃあ、止めはお願いね。死神さん」

 

「ああ」

 

そう言って俺は魔法陣を展開した。その間にもモンスターは逃げ出そうとしていた。

 

「『マジックブラスター』」

 

俺がそう唱えると光の剣が出現し、目の前に無数の魔法陣が展開してその中を光線が通ると巨大化していき、モンスターを飲み込み、爆散した。

 

「よし、これで終わりだな」

 

俺がそう言って、さっきのモンスターの場所を見ると一匹の猫がいた。

 

「にゃお」

 

「うん?何で猫がいるんだ?」

 

俺達は近くに行き、俺は猫を抱き上げた。すると、ウィズが何かを発見した。

 

「ソウ君。これ、何だろう?」

 

「宝石の欠片みたいだな。一応持って行くか」

 

俺がそう言った後、その欠片をコートのポケットに入れて、俺達はその場を後にした。

 

◆◆◆

 

俺達はあの後、猫を飼ってくれる人を探した後に宿に戻って、くつろいでいるとカズマ達が帰って来た。

 

「お帰りなさい!どうでしたか?」

 

ウィズがそう言った後、カズマ達は経過を報告した。ギルドに手配書を渡して各温泉に配ってもらう事になったらしい。これなら迂闊な事はできないな。

 

「何だかんだで色々働いたな。にしても、魔王軍の企みを事前に食い止められてよかったじゃないか。………おいダクネス。お嬢様なお前は世間知らずだから知らないだろうが、庶民のしきたりでは、一緒に旅行に来た男女は、一度は混浴に入る習わしがあるんだよ。明日には帰るんだし、一緒に入ってノルマを達成させるぞ」

 

「!?そ、そんなしきたり聞いた事ないぞ!?」

 

「だから、庶民のしきたりだって言ってるだろうに。貴族のお前が知る訳ないだろ。庶民の俺達との壁を本当に取り払いたいと思うのなら、ここは習わしに従ってだな」

 

「ほ、本当にそんな習慣が………!?」

 

「ありませんよそんなもん」

 

めぐみんが言うと、ダクネスは顔を真っ赤にしてカズマに殴り掛かった。それを見ていると部屋のドアが慌ただしくノックされた。

 

「はいはーい。どちら様?」

 

アクアがドアを開けると、冒険者ギルドの職員が荒い息をして立っていた。カズマは職員に尋ねた。………悪い予感がするな。

 

「ど、どうしたんだ一体?」

 

「大変です!温泉が………!街中の温泉から、次々と汚染された湯が沸き出して………!」

 

◆◆◆

 

「ここか」

 

その日の夜、ホテルの上でフィニクスが街を見ながら呟いた。

 

「俺が倒された場所から、一番近くて大きい街はこの場所しかない。ここに死神がいるはずだ」

 

そう言うと、フィニクスは右手に炎を集中させた。

 

「街を火の海にして、引きずり出してやるぜ!死神!!」

 

フィニクスは街に向かって炎を放とうとしていたが………。

 

「お止めなさい」

 

「!?」

 

後ろから声が聞こえて、炎を放つのを止め、後ろを振り返った。体色は白が主体。後頭部に髷、肩と首回りにかけて風神の風袋のようなものがあるモンスターがそこにいた。

 

「チッ、何だお前かよ。ヴェッター」

 

フィニクスは舌打ちしながら、後ろにいたモンスター、ヴェッターに話しかけた。

 

「何で、てめえがここにいる」

 

「いえ、少し用があって立ち寄っただけですよ。ところで、最後にあった日からかなり魔力が上がってますねえ。どうされたんですか?」

 

「てめえの事だから知っているだろう。魔王軍の天敵、死神。奴に何回か倒された」

 

「ほう、死神は不死身のあなたを何回か倒すほどの実力なのですか!ますます興味深い」

 

ヴェッターは嬉しそうにそう言っていると、フィニクスはヴェッターに聞いた。

 

「てめえに一応聞くが、この街に死神がいるはずだ。見たか?」

 

「ええ、いますよ。私も死神の実力を知るためにモンスターを送り込んでいるんですが返り討ちにされてましてねえ」

 

「そうか、一つだけ言っておく。奴は俺の獲物だ。手を出すな」

 

フィニクスは大剣を作り出して、ヴェッターに向けた。

 

「おお、怖い怖い。では、どうでしょう?協力するというのは」

 

「協力だと?」

 

「ええ、私は死神の全力が見たい。そのためにモンスターを送り込んでいたんですが、今のモンスターでは全力を引き出せなくて困っていたんですよ」

 

「別に構わないが。どうやって、死神を引きずり出すつもりだ?」

 

「簡単な事ですよ。死神が絶対に戦う様に餌を用意するんですよ」

 

「餌だと?」

 

「ええ」

 

ヴェッターはそう言うと、フィニクスに言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「死神には身を挺して守るほどの大切な女性がいましてねえ。その女性を利用するんですよ」




ソウガとウィズと戦った敵は、スミロドン・ドーパントを参考にさせていただきました。


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この強敵に螺旋剣を!

今回は魔王軍の幹部が出ます。


「源泉が怪しいと思うの」

 

街中の温泉が汚染された、その翌朝。昨日は汚染された温泉を俺とティアとアクアで浄化して回った。浄化した後、汚染された温泉が湧き出したのは一時的な事だったが、この事件の犯人はまるで実験をしている感じだと感じた。朝食を終えた俺達は女性陣が泊まっている部屋に集まっているとアクアが言った。

 

「源泉?それって、アクシズ教団の裏手にある、あの山の中だろ?」

 

アクシズ教団の大教会の裏手には、源泉が湧き出す山がある。だが、あそこは厳重に管理され、簡単には侵入できないはずだが。

 

「確かに、あの短時間で一つ一つの温泉に毒物を混ぜたというのは無理がありますね。手配がなされて業を煮やし、なりふり構わず直接源泉を汚染した。そう考える方が自然です」

 

「でも、問題は管理に厳しい場所にどうやって侵入しているのかという事ですよね………」

 

確かに、厳重に管理されている場所にどうやって侵入したんだ?………まさか。

 

「………擬態しているのかもしれないな」

 

「えっ?」

 

俺の言葉にカズマ達が俺の方を向いた。

 

「どういう事だ?」

 

「関係者に擬態して、侵入しているかもしれない。昔、魔王軍の幹部にドッペルゲンガーという種族の奴がいてな。ドッペルゲンガーは変身能力があり、動物や人間に化ける事ができる。もしかしたら、そのドッペルゲンガーか擬態ができる、別の種族が関係者に化けている可能性がある」

 

「あの、ソウガ先輩?擬態したモンスターは擬態元の人間をどうするんですか?」

 

「その人に成り代わるために始末する。擬態元が生きていたら問題だからな」

 

「なっ!?」

 

俺の言葉にカズマは驚いた。俺は隣にいるウィズを見るとスカートを握りながら肩を震わせていた。俺は手をウィズの手の上に置いた。

 

「ウィズ。まだ、そう決まった訳じゃない。だから、落ち着け」

 

「う、うん。ごめんね、ソウ君」

 

「気にするな」

 

俺達がそう話している中。

 

「カズマ、先程から食べているそれは何だ?どれ、私にも一つ」

 

そう言って、ダクネスはカズマが食べていたピザを一切れ摘まんだ。………こいつ、俺達が真面目に話しているのに。

 

「お前、ここ最近アクアよりバカに見えるぞ」

 

「!?」

 

カズマがそう言うと、ダクネスがピザを口に入れる前にポロリと落とした。その顔は驚愕の表情浮かべたまま、固まっていた。

 

「ちょっと。その言い方だと、普段の私が凄くバカだって聞こえるんですけど」

 

「そう言ってるんですけど。………ああっ、こら止めろ!悪かった、謝るよ、今回はお前は随分と活躍してるし頭も使ってる!謝るからピザ返せよ!」

 

「………はぁ」

 

アクアとカズマがピザを取り合っているのを見て、俺はため息をついていると、ダクネスがガタンと立ち上がり。

 

「………源泉だな。おいカズマ、いつまでも遊んでないでとっとと行くぞ!源泉だ!教団本部の裏手の山に行き、調査する!」

 

やたら高いテンションで、ダクネスはそう宣言している。だが………。

 

「すまない。俺は同行できない」

 

「ええっ!?何でだよ!?」

 

俺がそう言うと、カズマが凄い驚いた表情をしていた。まぁ、しょうがないか。

 

「実は朝に一人で散歩していると、ある一帯の温泉が汚染されたので何とかして下さいとお願いされているんだ。そのホテルの温泉は浄化したが、まだかなりあるから途中で合流する形になる」

 

「ソウガにはできれば一緒に来てもらって、戦闘の時に敵を瞬殺してほしいんだけど………」

 

「大丈夫だ。そっちにはウィズとティアがいる。そいつらがいれば戦闘でも問題ない。ウィズ、ティア、すまないが頼めるか?」

 

「了解です!敵が何体いようが粉砕します!!」

 

「私も大丈夫だよ。ソウ君も気を付けてね」

 

「ああ」

 

「まぁ、ウィズとティアがいてくれるなら大丈夫だな」

 

ウィズとティアがそう言うと、悩んでいたカズマも納得した感じだった。

 

「じゃあ、俺は浄化しに行ってくるな。問題が発生したらすぐに駆け付ける様にする」

 

「じゃあ、任せたぞ。ソウガ」

 

そうカズマが言った後、俺は部屋を出て、温泉の浄化に向かった。

 

◆◆◆

 

「よし、これで全部だな」

 

俺はそう言いながら、アルカンレティアの地図に印を書いた。あの後、ホテルを回り温泉の浄化を始めた。一帯全部の温泉を浄化したら結構な時間が経ってしまった。もう皆は源泉に着いた頃か。

 

「俺も早く行かないとな。………うん?」

 

俺は誰かに見られている様な感じがした。俺はそのまま移動を開始した。結構距離を歩くと、そこには廃教会があった。昔のアクシズ教団の教会だろうか、そう思いながら視線を横に向けると、一人の女がいた。その女から高い魔力と明らかな殺意を感じた。

 

「おい、随分と度胸のある奴だな。不意打ちで襲い掛かってくる奴は多かったが、真正面から戦いを挑む奴は少なかった、まだいるとは思ってもみなかった。名乗りな」

 

そう俺が言うと女は口を開いた。

 

「私の名はウォルバク。魔王軍の幹部、邪神のウォルバクよ。魔王軍の天敵、死神、あなたの命は私が貰い受ける」

 

「ははっ!命貰い受けるか!わかりやすくていいな。見直したぞ」

 

俺はそう言うと、ウォルバクから離れた。

 

「かかってきな。邪神の力、見せて見ろ」

 

そう言った後、俺は双剣を作り出して構える。

 

「少し、聞いてもいいか。温泉を汚染したのはお前か?」

 

「私ではないわ」

 

「他に仲間がいるのか?」

 

「答える義理はないわ」

 

「まぁ、確かに、お前の言う通りだな。お前を始末した後、調べればいい話だ」

 

俺がそう言うと、ウォルバクはフッと笑った。

 

「倒せれたらね。あなたの実力程度なら私で十分よ」

 

「ほう、俺を倒すのは容易いと?小物風情が調子に乗るなよ」

 

「あら?怒ったの?ごめんなさいね。でも、事実よ。私ならあなたを倒せる。それに、この街でならあなたは私にかすり傷さえ負わせられない」

 

「ほう、かすり傷さえと言ったな?なら一撃だけ。それで無理ならお前の事は見逃してやるよ」

 

そう言った後、俺はウォルバクの背後に一瞬で回り込み双剣を振り下ろした。

 

◆◆◆

 

「終わりだ!!」

 

ソウガがウォルバクに対してそう言いながら双剣を振り下ろしたが………。

 

「『テレポート』」

 

「なっ!?」

 

ウォルバクが転移魔法を使い、移動した。ソウガの攻撃は空を切った。

 

「何だ?結局、逃げるだけだったのか?」

 

「そんな訳ないでしょ」

 

「!?」

 

そう声が聞こえて、ソウガは教会の上を見るとウォルバクが魔法を放とうとしていた。

 

「『カースド・ライトニング』!」

 

「くそっ!?」

 

ソウガは上級魔法の雷を両腕で受け止め何とか耐えた。

 

「むう、何とか耐えたわね。今のは良い手だと思ったのだけど」

 

「調子に乗るな!」

 

ソウガはそう言うと、魔法陣を展開した。

 

「『ライトニング・ボルテックス』!」

 

「あら?危ないわね。『テレポート』」

 

「またか!?」

 

ソウガが高魔力の雷を放つが、ウォルバクは転移魔法で移動した。

 

「どうなっている?テレポートは指定した場所しか移動できないはず。………まさか」

 

「『エナジー・イグニッション』!」

 

「ッ!?」

 

ソウガが考えていると、ウォルバクは魔法を唱えると、ソウガの体が燃え始めた。ソウガはその炎をかき消した。

 

「なるほど、チッ、小細工しやがって」

 

ソウガはそう言うと、ウォルバクの方を向いた。

 

「お前、この街のあちこちにテレポートの指定場所を作っているだろ。その指定場所を転移して攻撃を仕掛ける。少し、考えればわかる事だった」

 

「あら、もう見破っちゃったの?やはり、死神は只者じゃないわね。でも見破ったからってどうしようもないわよ?」

 

「それは、どうかな?」

 

「強がらなくていいのよ。それじゃあ、再開しましょうか『テレポート』」

 

そう言ってウォルバクは姿を消した。ソウガは深呼吸をした後、目を瞑った。

 

「『カースド・ライトニング』!」

 

そうウォルバクは魔法を唱えたが、ソウガはそれを片手で掴み、握りつぶした。

 

「なっ!?」

 

「どうした?」

 

「くっ!『テレポート』!」

 

そう言ってウォルバクはまた転移したが、ソウガが背後の方に移動するとウォルバクが現れて、ソウガはウォルバクの顔面に拳を寸止めした。

 

「なっ!?」

 

ウォルバクは驚いた声を出した後、後ずさりした。

 

「ど、どうしてっ!?」

 

「転移する時に僅かな空気の乱れを察知して、転移場所を探った。これで、転移は無駄だとわかったろ。次は当てる」

 

「な、なめるな!!『ライトニング』!」

 

そう言ってウォルバクは地面に雷を放ち、土煙を発生させた。

 

「チッ、目くらましか」

 

「『ボトムレス・スワンプ』!」

 

そうウォルバクの声が聞こえた後、ソウガの下の地面が沼に変わって、ソウガの足が沈んでいった。

 

「『カースド・クリスタルプリズン』!」

 

再びウォルバクの声が聞こえると、ソウガの手足が凍り身動きが取れない状態になった。その後、土煙が消えると、教会の上の方にウォルバクがいた。

 

「この魔法では少しの間しか俺の動きは止められないぞ?」

 

「少しの間で十分よ」

 

「何っ?」

 

「これで終わりにするわ!」

 

そう言ってウォルバクは魔法の準備を始めた。それを見ていたソウガは察した。

 

「これは、爆裂魔法か」

 

「そう、魔王軍の幹部の皆も知らない、私の切り札よ。これであなたを倒す」

 

そう言うとソウガはある方向を見た後、ウォルバクに向けて言った。

 

「………わせ」

 

「うん?どうしたの死神?もしかして、命乞いでもしようと」

 

「バカがっ!!躱せと言ったんだ、邪神!!」

 

ソウガがそう言うと、双剣が回転しながらウォルバクの上から襲い掛かったがウォルバクは何とかそれに気づいて、弾き飛ばすのを見たソウガは魔力を放出して沼と氷を吹き飛ばし、戻って来た双剣を掴んだ。

 

「ッ!!『カースド・ライトニング』!」

 

ウォルバクがそう唱えると雷がソウガに襲い掛かるが、ソウガはその攻撃を避けながら黒い弓と刀身が螺旋状になっている剣を作り、その剣を矢の形状に変化させてウォルバクに向けて弓を引いた。

 

「我が骨は捻じり貫く………!」

 

そう言うと、ソウガの周囲に風が発生する。

 

「『カラドヴールフ』!」

 

ソウガはそう唱えた後、矢を射る。その矢は大地を一部抉った後、ウォルバクの方へ向かった。ウォルバクは上級魔法で止めようとしたが止まらず、ウォルバクの左腕と横腹を一部吹き飛ばした。

 

「きゃああああああああああああ!!」

 

ウォルバクは悲鳴を上げた後、地面落ちた。

 

◆◆◆

 

「はあ………、はあ………」

 

ウォルバクは吹き飛んだ左腕を押さえながら荒い息をしていた。その光景を俺は黙って見ているとウォルバクは話しかけて来た。

 

「どう、して………?」

 

「あぁ?」

 

「どう、して………、止めを、ささない、の………?」

 

「最初に言っただろ?一撃だけだって」

 

「じゃあ………、私を殺す気は、ないの………?」

 

「ああ、それじゃあ話し難いだろ?治してやるよ」

 

「え………?」

 

そう言って俺は魔法陣を展開した。

 

「『パーフェクトヒーリング』」

 

俺がそう唱えるとウォルバクを光で包むとウォルバクの左腕は再生し、横腹も完全に治癒した。

 

「嘘………!?」

 

「痛みは無くなったか?」

 

「え、ええ」

 

「そうか、じゃあ俺は行くぞ」

 

そう言って俺は立ち去ろうとしたが………。

 

「ま、待って!」

 

「あぁ?」

 

ウォルバクに声を掛けられ、俺は再びウォルバクの方へ向いた。ウォルバクは立ち上がると話しかけて来た。

 

「ありがとう。助けてくれて」

 

「気にするな、ただの気まぐれだ」

 

「でも、どうして?私は魔王軍の幹部なのに」

 

「だって、お前戦う気なんて無かったろ?」

 

「えっ?」

 

「殺意はあっても悪意が無かったからなお前には。大方、温泉を楽しむためにこの街に滞在していたのに俺の姿を発見して、決死の覚悟で俺と対峙したんだろ?」

 

「きょ、驚異的洞察力………!?」

 

俺の言葉にウォルバクは驚いていた。まぁ、どうでもいいが。

 

「まぁ、それは置いといて。ふふ、私は死神の事を勘違いしていたのかも知れないわ」

 

「いや、間違って無いと思うぞ。もし、悪意を持っていたら俺はお前を殺すつもりだったし」

 

「そう、それじゃあ噂は本当なのかしら?魔王軍を拷問して苦しむのを見て楽しむとか」

 

「えっ?」

 

「殺した相手の首を集めるのが趣味だとか」

 

「おいこら」

 

「生きたまま魔王軍の兵士や幹部を絞って、その生き血を飲むとか」

 

「そこまで外道じゃねえよ!?」

 

「そうね。ふふ」

 

こ、こいつ、俺をからかっているのか?

 

「でも、助けてくれたお礼をしなくちゃね。じゃあ、今回の犯人について教えてあげるわ」

 

「何っ?」

 

「今回、温泉を汚染した犯人は私と同じ魔王軍の幹部のハンス。デッドリーポイズンスライムの変異種のハンスよ」

 

ハンス?………ああ、あいつか。

 

「そいつは今、何処にいる」

 

「確か、源泉に向かうと言っていたわ」

 

「何っ!?」

 

「どうかしたの?」

 

「今、俺の仲間が源泉の方に向かっている。チッ、俺がいない時ばかりあいつらは魔王軍の幹部と対峙するな」

 

俺がそう言っていると疑問に思ったのかウォルバクは聞いてきた。

 

「助けに行かないの?相手は魔王軍の幹部なのよ」

 

「あっちには俺の幼馴染と後輩がいる。それに………」

 

「うん?どうしたの?」

 

「俺や幼馴染と後輩がいなくても、あいつらなら魔王軍の幹部を倒せるさ」

 

「信頼しているのね」

 

「ああ、悪いが俺は源泉に向かう。お前と話をするのはここまでだ」

 

「そう、それじゃあね死神。あなたとは、また会えるかもしれないわね」

 

俺はウォルバクの話を聞いた後、源泉に向けて歩き始めた。




この章もあと何話で終わりです。


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この犯人に死神を!

今回も魔王軍の幹部が出ます。


朝にソウガと別れた俺達は源泉に向かった。そこには魔王軍の幹部、ハンスが暗躍していた。ハンスは温泉管理のおじいさんを捕食し、擬態して侵入していた。まさか、ソウガの読みが的中してしまうとは………。その事にウィズは激怒して、ハンスを攻撃、ハンスは逃げながら源泉を汚染しようとしたがウィズに下半身を氷漬けにしたがハンスが自分の体の一部を源泉に投げ込もうとした。俺が狙撃を行い、何とか防いでいたが、矢が無くなりハンスの一部が源泉に落ちた。アクアが必死に浄化していた。ウィズがパイプを切ってホッとしていると、ハンスからひび割れた音がすると俺の屋敷程もある巨体に膨れ上がり、辺りの木々を次々飲み込み、体内へと吸収していった。

 

「やべえ、ハンスが本気になった!ウィズ、あいつを何とかしてくれ!さっきの凍るヤツ!あれでちゃちゃっとやっちゃってくれ!」

 

俺達はハンスに吞み込まれまいとひた走る。

 

「先程の魔法では、あの大きさになったハンスさんを丸ごと凍らせるには魔力が足りません!どなたかに魔力を頂かないと………!」

 

ウィズがそう言ってくるが、今この場でウィズに魔力を与えられる者はというと………!

 

「めぐみん!今回はお前が生贄になってくれ!俺の魔力じゃちっとも足りないし、ティアは戦闘後に全部元に戻してもらう予定だから駄目だし、アクアの魔力をウィズが吸うと、食あたりを起こす!」

 

「私ですか!?いいい、嫌ですよ!それなら、私の爆裂魔法であいつを木っ端微塵にしてくれます!」

 

「止めてえ!この山自体が汚染されちゃう!」

 

「ティア!めぐみんが爆裂魔法を使ったら、この山を元に戻してくれ!」

 

「簡単に言うんじゃねえ!山を元に戻すとなると結構な魔力を使うんだぞ!」

 

めぐみんの言葉にアクアが叫んで、俺の言葉にティアが言い、ダクネスが、ガチャガチャと鎧を外し始めた。っておい。

 

「お前は何をやってんの?いきなり何で鎧を外して………」

 

「スライム相手では、鎧を着ていても意味がないからな。どうせ隙間から侵入してくるのならいっそ脱ぐ」

 

こいつ、脳が溶けているんじゃないか?

 

「それに、この鎧は気に入っているのだ。折角お前に直してもらって綺麗になったばかりなのに、溶かされて、また痛めつけられるなんてゴメンだ」

 

ダクネスはそう言うと、大剣すらもポイと捨てた。

 

「おい、そんな格好で何する気だ、逃げるんだよ!」

 

俺がダクネスの手を掴み、引っ張って行こうとすると、無言で源泉のある方を指す。そこには………。

 

「わあああああーっ!カズマさーん!カズマさーん!!」

 

迫り来るハンスを前に、未だ泣きながら源泉に手を突っ込み、逃げようとしないアクアがいた。

 

「このバカ、何やってんだ!もうそんなもんいいからとっとと逃げろ!」

 

「だって!だって!!ここを守らないとウチの信者達が!」

 

火傷をしながらも浄化を続けるアクアを守る様にダクネスとウィズとティアが傍に駆け寄った。

 

「カズマ、どうしますか!?いつもみたいに小狡い事考えて何とかしてくださいよ!」

 

「お、お前………!小狡いとか言うなよこら!わかったよ畜生、何か考えるから、お前はお前にできる事をやっておけ!」

 

「わ、私にできる事?」

 

「お前にできる事と言ったら一つしかないだろうが!ボスに止めを刺すのはお前の仕事だ!魔法を放てる態勢になったなら、あいつらの近くで待っていろ!」

 

俺はそう言った後、めぐみんを残し、ハンスへと駆け出した。ハンスは木々を吞み込んだだけでは飽き足らず、付近の土砂をも取り込んでいる。こんなに大きくなったら制御が効かず、本能に近い状態にでもなっているのだろうか。俺の武器やスキルでは、この巨大なスライムには何もできない。ハンスの注意を引こうにも、矢も尽きた今の状態じゃそれも………と、待てよ?

 

「アクア様、私が全魔力を振り絞っても、巨大化したハンスさんを凍らせる事はできません!ここは引きましょう、アクシズ教団の方達も、アクア様に何かある方が悲しみますから!」

 

「いやああああ!ここで私があの子達を守らないでどうするの!?信者の拠り所も守れないなんて、私の存在意義がなくなっちゃう!それよりもっとフリーズ頂戴!ソウガああああああああああ!お願い、早く来てええええええええええええ!!」

 

ウィズにフリーズを掛けられながら、アクアがそう言った。俺はダクネスの足元にある大量の土産物を見て言った。

 

「ダクネス、お前の足元に転がっているそれ持って、こっち来い!」

 

「?それとは、この土産の事か?」

 

ダクネスはそう言うと、俺のもとへと走ってくる。俺は背負っていた荷物入れから土産を取り出し、それをハンス目掛けて投げつけた。

 

「あっ!何をするんだ勿体ない、罰が当たるぞカズ………マ………」

 

ダクネスが俺の行動を注意するが、ハンスが俺が投げた土産物に食いついているのを見ると、言葉を止めた。俺はダクネスが抱えてきた大量の土産物を抱きかかえると………!

 

「だっ、駄目だカズマ!それは、お父様や執事達に配ろうと思っていた物で………!」

 

ダクネスがそう言うが、俺は無視して、源泉とは逆方向に向けばら撒いた。一瞬だけ悲しい表情を浮かべたダクネスを連れ、皆のもとへと駆け戻る。

 

「ウィズ。ハンスが辺りに飛び散って、体積が少なくなった状態なら、氷漬けにする事はできるか?」

 

「ハンスさんが今の半分ぐらいになれば、ギリギリ魔力が持つかもしれませんが………」

 

「アクア、バラバラに散らばったハンスをウィズが凍らせていくから、お前はそれを浄化できるか?」

 

「で、できるわ!というか、こんな急ぎの緊急事態じゃなければ、私の本気を見せてあげるわよ!」

 

「ティア。汚染された場所や腐敗してしまった所を元に戻せるか?」

 

「山全体じゃなければ、そんなの全然余裕だ!」

 

「私は、飛び散るハンスから皆を守ればいいのだな?」

 

「そういう事だ。頼りにしてるぞ」

 

俺達がそう話している間もハンスはダクネスの土産を貪っていた。すると、めぐみんが。

 

「カズマ、いつでも準備は良いですよ!とびきりのをかましてやれます!!」

 

眼帯を外し、紅い瞳を輝かせながら、そう言った。土産を貪り尽くしたハンスは、新たな獲物を求めてか、俺達の方へと向きを変えた。俺はウィズに手を差し出すと。

 

「俺が合図したら、ウィズは俺の魔力を死なないレベルで持ってってくれ」

 

「えっ!?」

 

「………それじゃめぐみん、任せたぞ。やれっ!」

 

「任されました!いきますよ!『エクスプロージョン』-ッッ!!」

 

めぐみんの爆裂魔法がハンスに刺さり、木っ端微塵に粉砕したのを見届けると、ウィズに急激に魔力を吸われ、気を失った。

 

◆◆◆

 

カズマが気を失った後、ハンスの一部をアクア達が浄化を開始していると、飛んでったハンスの一部が街に落ちた。すると、その一部が人型になっていきハンスに戻った。

 

「………意識を一部分に移していたおかげで、何とか生きられた」

 

そう言った後、ハンスは移動を始めた。

 

「今は早くこの街を出て、体を元に戻さないと………。くそっ、あいつら覚えとけよ!!」

 

そう言いながら歩いていたが、ハンスは何かに気付き、周りを見渡してみた。街の大通りにいるのに街には誰もいなかったからである。ハンスは疑問を抱いていた。

 

「………街に一人も人がいない。俺の姿を確認して避難したとしても早すぎる。一体どうなっているんだ?」

 

「それは、俺が人払いの魔法を使ったからだ。それにしても、やっぱり俺なんか必要なかったな。あいつらならやれると信じていた」

 

「!?」

 

その声を聞いたハンスが、声が聞こえた方向を見るとソウガがハンスの方向に向かって歩いていた。

 

「嘘だろ………、何であいつが………、何で死神がここにいるんだ!?」

 

ソウガの姿を確認したハンスは、恐怖の表情を浮かべ、ガタガタと震え出した。

 

「む、無理だ………、今のこの状態で、あんな化物に勝てるはずがない………」

 

そう言って、ハンスは後ずさりをする。ソウガは立ち止まると、ハンスを睨み付けた。

 

「………そ、そうだ、死神!?魔王軍の幹部にならないか!?」

 

「はぁ?」

 

ハンスは大量の汗をかきながら、ソウガに言った。

 

「俺を見逃してくれたら、俺が魔王様に頼んでお前を魔王軍の幹部にしてもらえる様にしてやる。そうしたら、俺達はこの街とお前が住む街には手を出さない。な、なあ、良い話だろう!?」

 

そう、ハンスが言うと、ソウガはため息を吐いた後、言った。

 

「哀れだな、お前」

 

「えっ………?」

 

ハンスがそう言った後、ソウガは首をコキコキ鳴らした後、ハンスを見た。

 

「本気でそんな事言ってるんなら抱きしめたくなるぐらい哀れだ。確かに、お前の言葉にも一理ある。俺の住む町とこの街の安全が保障されるなら、それも一つの手だな」

 

「だ、だったら………」

 

「………でもな」

 

そうソウガは言うと、再度、ハンスを睨み付けた。ハンスはビクッと体を震わせた。

 

「俺が、魔王軍の幹部になった所で、別にお前を殺さない理由にはならないだろう?」

 

「ッ!?」

 

ソウガはそう言った後、魔法陣を展開した。

 

「『アイスエイジ』」

 

ソウガはそう唱えると、地面が物凄い勢いで凍っていった。ハンスはそれを見ると建物の方へ飛び、壁に張り付いた。しかし、建物も凍っていくのを見たハンスは壁を飛んだ。

 

「な、何なんだ!?この魔法は!?」

 

空中でハンスがそう言っていると、ソウガが翼を展開してハンスに近づき、殴ろうとした。それをハンスは腕で防御しようとするが、腕が凍り、ソウガの拳で粉砕された。

 

「う、うわああああああああああああああああああああっ!?」

 

「悪いが!ここから先は地獄だ!大人しく先に逝って、地獄の奥底で無様に震えながら懺悔しやがれ!!」

 

そう言った後、ソウガはハンスの顔面に拳を叩き込む。そうするとハンスは一瞬で凍り、粉々に粉砕された。その後、ソウガは地上に降りると歩き始めた。

 

「まあ、あいつらなら俺の力なんて必要ないかもしれないが。それでも俺は、あいつらを守るためにこの力を使う事に決めてんだよ」

 

そう言った後、ソウガは来た道を戻って行った。

 

◆◆◆

 

「やったやった!これで可愛い信者達を守る事はできたわ!そして、私の存在意義も守れたわ!」

 

「良かったですね。アクア様」

 

私はアクア様にそう言った。ハンスさんには悪いですが、この街を守る事ができて良かった。

 

「今回はソウガ以外は皆、大活躍でしたね!」

 

「ああ、私達の活躍をソウガに伝えてやりたいな」

 

「ソウガは一体どうしたんだろう?面倒な事に巻き込まれてなけりゃいいが」

 

めぐみんさんとダクネスさんと目を覚ましたカズマさんがそう話していたのを聞いた私はティアちゃんに話しかけた。

 

「ティアちゃん。私はソウ君を探しに行ってくるから、皆さんの事、任していい?」

 

「はい、大丈夫ですよ。ウィズ先輩も気を付けてくださいね」

 

「うん、ありがとう」

 

そう言った後、私はカズマさん達に話しかけた。

 

「すみません。私はソウ君を探しに行ってきます。皆さんは先に宿に戻っていてくれませんか?」

 

「ああ、いいぞ。ソウガの事は任した」

 

「ありがとうございます。では失礼します」

 

そう言って私は、ソウ君を探すためにカズマさん達と別れた。その後、私は色々な場所を探したが、ソウ君を見つける事ができなかった。もしかして先に戻っていると思い、引き返そうとした時だった。

 

「おっ!やっと、見つけたぜ!」

 

「えっ?」

 

私はその声が聞こえた方向を見ると無精髭を生やした派手な服装の青年がいた。………誰?

 

「えっと、すみません。どちら様でしょうか?」

 

「うん?ああ、そうか、この姿の方は知らねえよな」

 

「あの………?」

 

青年がそう言うと、青年の姿が変わっていった。そして、ソウ君と戦いをしたフィニクスの姿になった。

 

「なっ!?あなたは!?」

 

「悪いが、死神を誘き出すための餌になってもらうぞ!」

 

どうやら、狙いはソウ君の様だ。その為に私を捕まえようとしている様だった。フィニクスの姿を確認した住人達は急いで逃げようと慌てていた。

 

「そんな事はさせません!ソウ君には指一本触れさせません!!」

 

「いえ、触れさせてもらわないと困るんですよ」

 

「!?」

 

そう言って私は背後を見ると、体色は白が主体。後頭部に髷、肩と首回りにかけて風神の風袋のようなものがあるモンスターがいた。

 

「てめえは手を出すな。ヴェッター」

 

「私とあなたは協力関係なのですよ?効率的に考えてこの方がいいでしょう?さて、大人しく捕まってもらいましょうか!!」

 

「くっ!」

 

そう言ってフィニクスと後から出てきたモンスター、ヴェッターは私に襲い掛かってきた。




次回は奴との四度目の戦いです。先程、間違って作成途中の物をあげてしまいました。申し訳ございません。


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この死神に炎の翼を!

奴との四度目の戦いです。


「よし、これぐらいでいいだろ」

 

魔王軍の幹部のハンスを始末した後、俺は土産を買うために街を歩いていた。土産を買った後、俺は宿の部屋に戻るとカズマ達がいた。

 

「戻っていたんだな、カズマ」

 

「あっ、ソウガ!無事だったんだな。全然来ないから心配したんだぞ」

 

「そうか、すまなかったな。ところで源泉の方はどうだったんだ?」

 

「ああ、源泉の方に行くとそこには魔王軍の幹部のスライムが源泉を汚染しようとしていたんだ」

 

「でも、私達の活躍でその野望を阻止したわ!ふふん!!」

 

「ソウガ、聞いてください!私の爆裂魔法が魔王軍の幹部の巨大スライムを吹き飛ばしたんですよ!」

 

「ああ、あの時の私達の活躍をソウガに見せてやりたかった!」

 

「そうか、流石だな」

 

さすがにハンスを始末した事は黙っていた方がいいなと思っているとティアが話しかけてきた。

 

「あの、ソウガ先輩?ウィズ先輩と一緒じゃなかったんですか?」

 

「ウィズと?何でだ?」

 

「いえ、ソウガ先輩を探しにウィズ先輩は途中で別れたので一緒だったのかと」

 

「そうか、どうやら入れ違いになった様だな」

 

仕方ないと思い、俺はカズマに話しかけた。

 

「すまない、俺はウィズを探しに出かけてくるから少し待っててくれないか?」

 

「ああ、別に構わないぞ。俺達もこの後、冒険者ギルドに行く予定だし」

 

「冒険者ギルドに行ったら、きっと色々な人から感謝されるに決まっているわ!魔王軍の幹部の野望を阻止し、街を救った英雄なんだから!帰って来たら、その時の話をたっぷり聞かせてあげるわ!」

 

「ああ、楽しみにしてるよ。じゃあ、行ってくるな」

 

そう言って俺はウィズを探しに行くために部屋を出た。

 

◆◆◆

 

アルカンレティアの外れにある廃工場にフィニクスはいた。何かを座って待っているとヴェッターがフィニクスの方に歩いているのを見つけると立ち上がりヴェッターに話しかけた。

 

「………死神は?」

 

「すみませんねえ。中々見つからなくて」

 

「チッ、たく、いつまで待たせんだよ。早くしないとこの街を火の海にして死神を引きずり出すぞ」

 

「まあまあ、そんなに焦らくてもいいじゃないですか。それに餌はこちらにあるんですから」

 

そうヴェッターが言った後、二人はある方向を見ると、そこにはボロボロの状態で鎖に繋がれた状態のウィズが横たわっていた。

 

「その女で本当に死神は来るのか?」

 

「ええ、それは保証しますよ。ですが、私はこの女性にも興味が出てきました」

 

「はぁ?」

 

「あの女性は私達と戦う際にドレインタッチを使用したんですよ?」

 

「だから何だよ?」

 

「分かりませんか?ドレインタッチは本来はリッチーしか使用できません。それを彼女は使用した。ならば答えは一つでしょう?彼女はリッチー、しかも見た目からして彼女は禁術を使用してリッチーになったのでしょう。興味深いですねえ。モンスター専門の医師の私は色々なモンスターを見てきましたが。禁術でリッチーになった人間の体は見た事が無いので見て見たいですねえ」

 

ヴェッターはそう言いながらウィズに近づき、触れようとするとフィニクスが大剣でその間を遮った。

 

「その女は死神を誘き寄せるための餌なんだろう?だったら早く連れて来い。俺が死神を始末した後ならその女はお前にくれてやる」

 

「おお、怖い怖い、そうですねえ。まずは本来の目的の死神の本気を見るためにあなたと戦わせないといけませんねえ。その女性の体を見るのはその後にしましょう」

 

そう言った後、ヴェッターはその場を立ち去り、ソウガを探しに行った。その後、フィニクスはウィズの近くを歩き回っていた。

 

「たくっ、ただ待ってるっていうのも結構疲れるぜ」

 

「………う………ん」

 

「あぁ?」

 

ウィズの方で声が聞こえたのを聞いたフィニクスはウィズを見ると、ウィズが目を覚ました。

 

「ここ………は………?」

 

「よう、目を覚ました様だな」

 

「あなたは………ッ!?」

 

フィニクスの姿を確認したウィズは立ち上がろうとしたが鎖で拘束されているのに気づくと何とか外そうと動いていた。

 

「これを外してください!!私をどうするつもりなんですか!!」

 

「最初に言っただろ?てめえは餌だ。死神を引きずり出すためのな」

 

「………私を捕まえてもソウ君は来ません」

 

「ソウ君?ああ、死神の事か。その時はてめえを殺して、死神にてめえが無様に消えていった事を伝えるだけだ」

 

「………くっ!」

 

フィニクスからそう言われ、ウィズは悔しそうな顔をしているとフィニクスはウィズに言った。

 

「最後に礼だけは言っとくぞ」

 

「えっ?」

 

「てめえのおかげで俺は死神と戦える。ありがとよ」

 

そう言った後、フィニクスは笑いながらウィズから離れた。ウィズは目を瞑って。

 

「………ソウ君、お願い来ないで………」

 

祈る様にそう言った。

 

◆◆◆

 

「………うん?」

 

ソウガは誰かに呼ばれた感じがして、後ろを振り返った。

 

「………気のせいか」

 

後ろを振り返っても誰もおらず、そう言った後、ソウガは前を向いて歩き始めた。

 

「しかし、これだけ探してもいない。一体、何処にいるんだ?ウィズの奴」

 

カズマと別れてからソウガは色々の場所を探したが、ウィズを見つける事ができずにいた。今は人通りの少ない通りを歩いていた。

 

「もしかしたら、入れ違いで戻っているかもしれないな。一旦戻るか」

 

ソウガはそう言うと、一旦宿に戻ろうとしたが………。

 

「何か、探しものですか?」

 

「!?」

 

そう声が聞こえ、ソウガは振り返るとヴェッターがいた。

 

「………お前は何者だ」

 

「自己紹介がまだでしたね。私の名前はヴェッター、グロウキメラのヴェッターです」

 

「グロウキメラ?魔王軍の幹部、シルビアと同じ種族か」

 

「あんな小物と一緒にしないでもらいたいですねえ。私と彼とでは天と地ほどの実力の差がありますから」

 

「確かに、お前の魔力の量はシルビアを軽く凌駕している。それで、俺に何の用だ?」

 

「いえ、少しお話する事がありましてねえ。その前に………」

 

そう言ってヴェッターはソウガに向かって、何かを投げた。ソウガはそれを受け取ると何かが包まれている布だった。

 

「………何だこれは?」

 

「まあ、開いてみてください。それから要件を言います。」

 

「うん?………ッ!?」

 

ヴェッターにそう言われた後、ソウガは布を開くと、そこには前にソウガがウィズにプレゼントしたネックレスが血塗れの状態で包まれていた。

 

「彼女は預かりました。返して欲しければ街の「うぉおおおおおおおおおおお!!」ッ!?」

 

ヴェッターが話そうとしたがソウガが物凄い速さで殴りかかって来た。ヴェッターは何とか回避し離れたが、頬からは血を流していた。

 

「てめえ、ウィズに何かしたのか!!」

 

「まあ、落ち着いてください。彼女は生きていますよ。ですが、早く彼女の所に行かないと命の保証はありませんけどねえ」

 

「てめえ………!!」

 

「彼女は街の外れの廃工場にいますよ。あなたを待っている彼と一緒にねえ」

 

「彼………?」

 

「ええ、私の同胞のフィニクスがねえ」

 

「フィニクスだと!?」

 

ヴェッターからフィニクスの名前を聞いたソウガは驚いていた。それを見ていたヴェッターはフッと笑った後、ソウガに言った。

 

「そんなにのんびりしていて良いんですかねえ?早く行かないとフィニクスが彼女を殺しますよ?」

 

「くっ!『マキシマイズ・テレポーテーション』!」

 

ソウガは転移魔法で転移した後。

 

「さて、これで準備は整った。私も向かいますかねえ」

 

ヴェッターがそう言った後、風を纏い、空を飛んで廃工場に向かった。

 

◆◆◆

 

ソウガは廃工場に転移した後、急いで中に入ると、ボロボロの状態で鎖に繋がれているウィズを見つけた。

 

「ウィズ!」

 

「ソウ、君………」

 

ソウガはウィズの姿を見て、駆け寄ろうと走った。それを見たウィズはソウガに言った。

 

「駄目………、ソウ君!来ちゃ駄目!!」

 

ウィズがそう言った後、ソウガの前にフィニクスが立ち塞がった。

 

「やっと来やがったか………ったく、待ちくたびれたぜ!」

 

「お前………!」

 

「良い顔してるじゃねえか!さあ、いつもみたいに楽しい戦いをしようぜ!」

 

「ウィズ、待ってろ!………今、助ける!!」

 

そう言ってソウガは双剣を作り出すと、フィニクスはソウガに向かって炎で形成された鳥を放ったが、ソウガはそれを真っ二つにしてフィニクスに向かって行った。

 

「ワォ、良いね。………良いね!!良いね!!良いね!!」

 

そう言ってフィニクスはソウガに向かって行き、斬り合いが始まった。ソウガはフィニクスの大剣をいなして、横腹を切った。

 

「ぐっ!!」

 

「ウィズ!!」

 

フィニクスを切った後、ソウガはウィズを助けに行こうとしたが、フィニクスに遮られた。フィニクスの大剣の攻撃をソウガは双剣で受け止めたが、壁まで押し込まれた。

 

「くっ!」

 

「あの女が欲しけりゃ、俺を倒せ!」

 

フィニクスがそう言った後、ソウガは魔力を込めた蹴りを叩き込んでフィニクスを吹っ飛ばすと魔法陣を展開した。

 

「『ライトニング・ボルテックス』!!」

 

ソウガは高魔力の雷を放ったが、フィニクスはその雷を片手で握り潰した。

 

「なっ!?」

 

「その程度の魔法が今の俺に通用するかよ」

 

「だったら!」

 

ソウガはそう言うと、クローを装備すると地面に魔法陣が展開した。

 

「『ドラゴニック・グラビティ・グレネイド』!!」

 

ソウガはそう唱え、クローを合わせて高速旋回しながらフィニクスに突っ込んだ。フィニクスはその攻撃を大剣で受け止めたが、地面にクレーターができた。

 

「この攻撃、重力で自分を重くして威力を上げてやがるのか!」

 

その後、フィニクスは炎を放出すると爆発が起こり、二人は吹っ飛んだがソウガは何とか態勢を立て直した。

 

「まだ、こんな力を隠し持ってやがったのか!」

 

「一気に決める!」

 

態勢を崩しているフィニクスに向かってソウガはそう言うと、ソウガの目の前に光が集まり金色の剣へと姿を変える。ソウガはそれを手に取り、フィニクスに向かって振り下ろした。

 

「『イマージュカリバーン』!!」

 

光の斬撃が放たれるとフィニクスに当たり、当たった際にできた光の柱が廃工場の天井の一部を破壊した。光が消えるとフィニクスは消滅していた。

 

「今のうちにウィズを………!」

 

魔力を多く使ったソウガは少し、ふらつきながらウィズのもとに向かったがソウガの目の前に火の粉が集まっていき爆発した。ソウガは防御をするのが遅れてしまい吹っ飛ばされた。ソウガは爆発があった場所を見るとフィニクスが復活していた。

 

「悪い、待たせたな」

 

「何っ!?」

 

「俺も魔力が上がってんだ。再生するのにそう時間はいらねぇんだよ!」

 

そうフィニクスが言った後、ソウガは立ち上がり魔法陣を展開した。

 

「『グラビトンコントロール』!」

 

ソウガはそう唱えると、フィニクスの上に魔法陣が現れ、フィニクスの周りの重力を重くした。その後、フィニクスを空中に上げ、ソウガはフィニクスを圧縮させようとしたが、フィニクスは炎を放出して魔法を無理やり解除させた。

 

「くっ!」

 

「ははははははは!!」

 

その後、ソウガとフィニクスの斬り合いが再び始まったが、再生して力が増したフィニクスの攻撃をソウガは何とか耐えていたが、肩、横腹と徐々に切られていった。フィニクスは大剣に炎を纏い、振り下ろした。ソウガは双剣で防御しようとしたが防御しきれず吹っ飛ばされた。

 

「………がッ!!」

 

「ソウ君!」

 

吹っ飛ばされたソウガを見たウィズは鎖を解こうと動いていた。フィニクスは吹っ飛ばされたソウガに向けて言った。

 

「さあ、こっからは俺様の番だ。うおおおおおおおおおお!!」

 

フィニクスが咆哮すると翼に炎が纏い、徐々に大きくなっていき。その大きさは工場内部を埋め尽くす程になっていた。

 

「なっ!?」

 

「そんな!?」

 

ソウガとウィズはその光景を見て、驚いていた。そして、フィニクスはその翼をソウガに向かって放ち。

 

「ぐわぁああああああああああああああああああ!!」

 

ソウガの叫び声が工場内に響いた。




お気に入り登録750超え、ありがとうございます。これからもこの作品をよろしくお願いいたします。


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この店主に約束を

あけましておめでとうございます。今年もこの作品をよろしくお願いします。


「ぐわぁああああああああああああああああああ!!」

 

攻撃を受けたソウガの叫び声を上げ、ソウガがいた場所が爆発した。

 

「ソ、ソウ君!?」

 

それを見ていたウィズが大きな声で言った。爆発の後、ソウガは倒れこんでいたが何とか立ち上がった。

 

「はあ………、はあ………」

 

「ははははは!今のを受けて立ち上がるか、やっぱりお前すげえよ!!」

 

そう笑いながら言っているフィニクスに対してソウガは睨みつける。その光景を見ていたウィズはソウガに言った。

 

「ソウ君!私を置いて逃げて、お願い!!」

 

「ふざ、けるな………!お前を置いて、逃げれるか!!」

 

「私はどうなってもいいから!早く!」

 

そう泣きながらウィズは言うが、ソウガは無視してフィニクスを睨み付けていた。

 

「それじゃあ、そろそろ終わりにするか。俺達の因縁に」

 

そう言いながら、フィニクスはソウガに近づいている時だった。

 

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

「何っ!?………ガッ!?」

 

ティアが現れて、思い切りフィニクスの顔を殴り飛ばした。フィニクスは吹っ飛び壁に叩き付けられた。

 

「ティア………!」

 

「ソウガ先輩!こいつは私に任して、今の内にウィズ先輩を!」

 

「すまない、任した!」

 

「邪魔すんじゃねええええええええええええ!!」

 

フィニクスはそう怒号を発しながらティアに襲い掛かった。その隙にソウガはウィズのもとに移動して拘束している鎖を引き千切り、ソウガはウィズを抱きかかえた。

 

「ウィズ、大丈夫か?」

 

「ソウ君、ごめんね、私のせいで………」

 

「話は後だ」

 

ソウガはそう言うと、ウィズに回復魔法を発動しながら翼を展開し、工場から飛び去った。

 

「逃げるなあああああああああああ!!」

 

「てめえも逃げんじゃねえ!」

 

フィニクスは炎の翼を広げ、ソウガ達を追おうとしたが、ティアが千切れた鎖を投げつけた。フィニクスに巻き付いたのを確認するとティアは鎖を直してフィニクスを地面に叩き付けた。

 

「グッ!?」

 

「何時まで待っても先輩達が戻らないから探しに来てみれば………、てめえ、私の大切な先輩達に何しやがった!!」

 

「あぁ?あの女を半殺しにして、死神を釣り、死神を殺そうとしただけだ!それが何だ!!」

 

「………ぶっ殺す!!!」

 

そう言ってティアはフィニクスに物凄いスピードで近づき、フィニクスに殴りかかった。

 

「チッ、今頃は死神を殺せていたのにこいつのせいで台無し………グハッ!?」

 

「ゴチャゴチャとうるせえ!」

 

フィニクスの腹部に拳を叩き込んだ後、連続蹴りを行なった。その攻撃でフィニクスの体が少し浮いたのをティアは見ると、ラッシュを始めた。

 

「ドラァアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

「グッ!ガハッ!調子に、乗るな!!」

 

そうフィニクスは言うと、ティアの顔面を殴り、吹っ飛ばした。

 

「ガッ!」

 

「てめえに付き合っている暇はねえ!!くたばれ!!」

 

「気が合うな、私もお前に付き合っている暇はねえ!!」

 

そう言ってフィニクスは炎の翼を巨大化させ始めた。それを見たティアは両腕に魔力を溜めた。フィニクスは巨大化させた翼をティアに向けて放つとティアは魔力を溜めた両腕をフィニクスに向けながら炎に突っ込む、すると大きな爆発が起こり、工場が吹き飛んだ

 

◆◆◆

 

「………暇だな」

 

俺達はギルドに向かった後、ソウガとウィズを待っていたが、あまりに遅いのでティアが二人を探しに行った。俺達は宿に戻って待っているがまだ三人は帰ってこない。

 

「三人とも何しているんだ?あれから結構な時間が経っているのに全然帰ってこねえ」

 

「三人で土産でも買っているのだろうか?」

 

「でも、ソウガはお土産を買ってからウィズを探しに行ったんですよ?ウィズとティアのお土産を買うのに付き合ってもこんなに時間は掛からないはずです」

 

「だよなあ………、ハッ!」

 

「うん?どうしたんだ?」

 

「もしかして今頃、三人で混浴に入っているんじゃないのか!?ウィズとティアの巨乳でソウガの」

 

「それはない」

 

「真面目に聞いた私がバカでした」

 

「冗談だよ。冗談だから冷たい目で俺を見ないで下さいお願いします」

 

そう俺達は話していた。………ちなみにアクアはと言うと。

 

「うっ………うっ………グス」

 

一人でずっと泣いている。ギルドから帰ってきてからずっとこうだ。

 

「頑張ったのに………、私、頑張ったのに………」

 

「お前が手加減しなかった所為だろ?自業自得だ」

 

「だって!本気でやらないと汚染されちゃうって思ったんだもん!頑張ったのに皆してあんなに怒らなくたっていいじゃない!わあああああああああああっ!!」

 

俺達は冒険者ギルドに報告し、今回の汚染騒ぎの功労者として色々な人達から感謝された。………温泉が、ただのお湯しか出なくなるまでは。その事に皆は激怒し、街一つの主要な産業を壊滅させた俺達の処罰は明日伝えられる事になり、俺達はあと一泊する事になった。………また、借金生活かなあ………。そう思っているとめぐみんが何かに気付いた。

 

「うん?どうしたんだ?めぐみん」

 

「何かがこちらに向かって飛んできているんですが?何でしょうか?」

 

めぐみんがそう言った後、俺は外を見て見るとそれはウィズを抱えたソウガだった。

 

「おっ、ソウガとウィズが帰って来たぞ。ティアはいないみたいだけどな」

 

「………あの、何か様子がおかしくないですか?」

 

「うん?何がだ?」

 

「あのスピードならそろそろ減速しないといけないのに、スピードに変化が見えませんよ?」

 

それもそうだ。どうしたんだと思っているとソウガの背中に生えていた翼が消えて猛スピードで突っ込んできた。………ちょっ!?

 

「危ねえ!皆、窓から離れろ!」

 

俺達は急いで窓から離れるとソウガ達は窓を突き破ってきた。飛んできたソウガとウィズをダクネスが受け止めた。

 

「ソウ君!ソウ君!!」

 

ウィズはソウガの名前を呼んでいるが、ソウガからは返事がなかった。ソウガを見ると所々に怪我をした状態で気を失っていた。

 

「一体何があったんだ!?おいアクア!お前の出番だ!」

 

「わ、分かったわ!」

 

アクアが急いでソウガに回復魔法を使った。その時、部屋の扉が開いた。俺達は見て見るとティアがいた。左腕に酷い火傷を負っており、回復魔法を使用して治そうとしていた。

 

「あークソッ!!あの焼鳥野郎!!」

 

「ティアもどうしたんだ!?火傷が酷いじゃねえか!?早く能力を使って治せよ!?」

 

「そうしたいが、私の能力は自分には使えないんだ。だから、回復魔法を使って治しているんだ」

 

「そうなのか?でも、一体何が………」

 

「私の所為なんです!!私が捕まらなければソウ君とティアちゃんは傷つく事なんかなかったんです!!」

 

そう泣きながらウィズが言っている時、ドアが激しくノックされた。あぁ、もう次から次へと!

 

「はい、どちら様ですか?」

 

そこには冒険者ギルドの職員が荒い息をして立っていた。

 

「大変です………!街が謎のモンスターの攻撃を受けています!」

 

「「「はぁっ!?」」」

 

「クソッ、あの焼鳥野郎。暴れ始めやがったな」

 

「それで、被害は!?」

 

「歓楽街付近は半壊、冒険者の大半は戦闘不能、その内二十名は意識不明の重体です!」

 

「チッ、仕方ない。私が行ってくるから留守番任せるな」

 

「待て、なら私達も行こう」

 

「我が爆裂魔法で吹き飛ばします!」

 

「ソウガ先輩を倒した敵だぞ?お前らが来ても邪魔なだけだ」

 

「「うぐっ」」

 

「それに………」

 

そう言ってティアはウィズとソウガの方を見た。ウィズはまだ泣いている。

 

「………ウィズ先輩を見てやってくれ。何とかして励ましてくれ」

 

「ああ、分かった」

 

「よし!それじゃあ焼鳥野郎を始末しに行くか!!」

 

そう言ってティアは窓から飛び降り、歓楽街に向かった。

 

◆◆◆

 

「死神!!出て来い!!出てこねえなら街ごとぶっ壊すぞ!!」

 

フィニクスはそう言いながら発火すると辺りが爆発していた。その時、冒険者達が到着してフィニクスに向かって行ったが………。

 

「雑魚が俺の前に立つんじゃねえ!!」

 

フィニクスが地面を殴ると火柱が発生して、冒険者達を吹っ飛ばした。

 

「何なんだよあいつ!?強すぎだろ!?」

 

「攻撃が何も通じないあんな奴に勝てる奴なんているのか!?」

 

「怯むな!絶対に勝機はある!それまで持ちこたえろ!」

 

「勝機なんてある訳ないだろ!黙って死んでろ!!」

 

そう言ってフィニクスは炎弾を冒険者達に向けて放つが、駆けつけたティアによってかき消された。

 

「よう、また会ったな。焼鳥野郎」

 

「またてめえか、てめえなんかお呼びじゃねえんだよ」

 

「呼ばれなくても来るところが私の良いところなんだよ」

 

「ふん、興をそがれちまった。死神に伝えろ。明日、あの廃工場跡に一人で来いってな。来なけりゃ、この街を潰すってな。必ず伝えろ」

 

「なっ!?おい待ちやがれ!?焼鳥野郎!?」

 

ティアの言葉を無視してフィニクスは飛び去ってしまった。ティアは瓦礫を蹴飛ばすと。

 

「クソがぁああああああああああああああああああ!!この不完全燃焼な感じどうしてくれんだああああああああああああ!!」

 

ティアの叫び声が木霊していた。

 

◆◆◆

 

「………ん」

 

俺は目を覚ますと、そこは俺達が泊まっているホテルの女性陣の部屋だった。外を見ると徐々に明るくなり始めていた。

 

「クソッ、俺はどれぐらい気を失っていたんだ」

 

俺は起き上がろうとしたがウィズが俺の手を繋いでいた。俺はウィズを起こさない様に手を離して部屋を出ようとするが何かにズボンを引っ張られた。見るとちょむすけが俺のズボンに嚙みついていた。まるで行かないでという感じに。

 

「ちょむすけ。ごめんな」

 

俺はちょむすけに魔法を使って、眠らせると部屋を出た。ホテルを出て、俺はフィニクスを探そうと魔法を使おうとした時だった。

 

「ソウ君!!」

 

「………ウィズか」

 

後ろから声が聞こえて振り返るとウィズがいた。ウィズはそのまま俺に近づいてきた

 

「お願い、行かないで。いくらアクア様が怪我を治してもダメージはまだ残っているんだよ?無理しないで」

 

「悪いが、それはできない。奴を倒さないともっと犠牲者が増える。それだけは絶対に阻止しないといけない。だから」

 

俺がそこまで言うとウィズが泣きながら抱き着いてきた。

 

「何で!?何でソウ君があのモンスターと戦わないといけないの!?ティアちゃんが今日、あのモンスターを倒すって言ってくれたんだよ!無理してソウ君が戦う必要なんかないのに、どうしていつも無茶ばかりするの!?私はソウ君が傷つく姿なんか見たくないのに!!」

 

「ウィズ!!」

 

「ッ!?」

 

「すまない」

 

俺は指でウィズの涙を拭った後、優しく抱き締めながら話しかけた。

 

「ウィズの言っている事も分かるが、これは俺にしかできない事だ。分かってくれ」

 

「でも、ソウ君が一人で戦う必要なんて無いよ。私もティアちゃんも協力するから一緒に………」

 

「いや、今のフィニクスには三人でも勝てる可能性がない。だから俺一人でやる。他の人が巻き込まれる必要がないからな」

 

「ソウ君、もしかして………」

 

「ああ、奥義を使う。あくまで最後の手段だ、それまでに何とかしてみるさ」

 

「………じゃあ、約束して必ず帰ってくるって」

 

「ああ、約束する」

 

「じゃあ、最後に………」

 

そう言ってウィズは俺の左頬にキスをした。………おい。

 

「おい、ウィズ」

 

「えへへ」

 

そう言ってウィズは俺から離れた。

 

「さて、それじゃあフィニクスを探すか」

 

「あっ、それなら確か」

 

「あの廃工場跡にいますよ。ソウガ先輩!」

 

「「!?」」

 

そう言って、近くの木の上からティアが下りてきた。

 

「お前………、いつからいたんだよ」

 

「えっと、ソウガ先輩とウィズ先輩がキスをして、ソウガ先輩の舌がウィズ先輩の舌を口内で絡めて蹂躙し、銀色の糸を垂らしながらウィズ先輩の豊満な乳房に」

 

「官能小説風に言うんじゃねえ!!全然違うし!!」

 

「冗談です。最初からです」

 

「まあいい。それでその話は本当か?」

 

「はい!奴自身がそう言っていたので間違いないです!」

 

「そうか、じゃあ、そろそろ行くか」

 

「あっ!ちょっと待ってください!」

 

「うん?どうしたんだ?」

 

「いえ、ちょっと」

 

そう言ってティアが右の方に移動して右頬にキスをする。………おいこら、お前もか。

 

「は、ははは………、これ、恥ずかしいですね………」

 

「ティアちゃん!?何しているの!?」

 

「えっと、ウィズ先輩が左頬なら私は右頬かなって」

 

「はぁ、もういい。それじゃあ俺は行くな」

 

「うん。気を付けてね」

 

「ご武運を!」

 

そう言って俺は二人と別れて、フィニクスを倒すために歩き始めた。




パソコンが壊れてしまい、更新が遅れてしまいました。すみません。
終局特異点を感動しながらクリアしました。そしてロマンロスが辛い。


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この不死鳥との因縁に決着を!

これでこの章は終わりです。


翌朝、廃工場跡でフィニクスは人間に擬態した状態でソウガを待っていた。フィニクスはソウガと早く戦いたくてうずうずしていた。すると、遠くからソウガが歩いて来たのを確認するとフィニクスは笑みを浮かべた。

 

「………来たか」

 

ソウガはフィニクスから少し離れた所で止まった。フィニクスの姿を見たソウガはフィニクスに言った。

 

「………なるほど、その姿でウィズに近づいたって事か」

 

「ああ、そうだ。もう必要ないけどな」

 

フィニクスはそう言うと、通常の姿に戻る。その後、右肩を回した後ソウガと向かい合った。

 

「今度こそ、心置きなく遊べそうだぜ!」

 

「ああ、そうだな。だが、お前と遊ぶのはこれで最後だ」

 

「ああ?」

 

ソウガはそう言った後、フィニクスを睨み付けた。

 

「ウィズを傷つけたお前を、絶対に許さない」

 

「ハッ!良い面してんじゃねえか!望むところだ」

 

フィニクスはそう言うと、大剣を装備してソウガを睨み付けた。ソウガも双剣を装備する。少しの時間、ソウガとフィニクスは睨み合った後。

 

「「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」

 

お互い物凄いスピードで近づき、剣を振り下ろした。その衝撃で地面にクレーターができる。その後、お互い斬り合いが始まった。ソウガは双剣をフィニクスに振り降ろすがフィニクスはその攻撃を躱した。

 

「ははは、今回は気合入っているな!良いねえ!!」

 

「黙ってろ!!」

 

そうソウガが言った後、何度か斬り合いをした後、ソウガとフィニクスの剣がお互いの肩に当たると二人は思い切り剣を引く。二人の肩から血が噴き出る。

 

「くっ!」

 

「ぐっ!」

 

お互い数歩下がるが、ソウガは双剣を投げつけた後、朱槍を装備する。ソウガは連続で刺突を行う。それをフィニクスはいなしていた。

 

「ほう、槍も使うのか。だが、その程度では俺を倒す事は出来ない」

 

「それはどうかな?」

 

「何?」

 

「この槍は呪いの槍でな。真明を明かした一撃は相手の心臓を必ず穿つ。折角だ試してやるよ」

 

「心臓を穿つか、だが槍の間合いなんてたかが知れてる。当たらなければ意味はない」

 

「そうだな。でも槍はこういう使い方もあるんだぞ」

 

そう言うとソウガは片手を地面に置いた。

 

「行くぞ。この一撃を手向けにして散れ」

 

「ハッ!良いじゃねえか。やってみろ」

 

フィニクスがそう言った後にソウガは物凄いスピードで前に出た後、地面を蹴り高く飛んだ。そして、朱槍に魔力を込めると槍から赤いオーラが発生した。それを見たフィニクスは炎の翼を巨大化させ始めた。

 

「『ゲイ・ボルガ』!!」

 

ソウガはそう唱えると渾身の力で朱槍をフィニクスに向かって投擲した。フィニクスは巨大化した炎の翼を槍に向かって放つと、炎の翼で朱槍を受け止めた。

 

「野郎………!」

 

ソウガは地面に着地した後にそう言っていると、朱槍がフィニクスの炎の翼を貫き始め徐々にフィニクスに迫っていた。

 

「こんなものに負けるかぁあああああああああああああああああああ!!」

 

フィニクスがそう言うと炎の出力を更に上げるが、朱槍が炎の翼を貫通し大きく爆発した。爆発があった場所には両翼と右腕がボロボロの状態のフィニクスがいた。

 

「は、ははは、大した威力だが、俺を殺すには程遠い………ッ!?」

 

フィニクスがソウガに向かってそう言ったが、ソウガの右手に鉛色の石球が浮いた。その石球に稲妻が走ると、石球の一部が剣状に変化した。

 

「まさか、さっきの槍は囮か!?」

 

「ああ、あの槍の一撃をお前は止めると信じていた。おかげでこの魔法の準備する時間ができた」

 

「てめえ!!」

 

「『フラガラッハ』!!」

 

ソウガはそう唱えた後、石球を拳でフィニクスに向かって打ち出すと、超光速でレーザー状の光弾が放たれ、フィニクスの胸を貫いた。その後、フィニクスは倒れた。空中に浮いていた石球は地面に落ちた。その時、フィニクスの体が発火し、発火が収まるとフィニクスは立ち上がった。

 

「………チッ」

 

「はははははは!楽しいぜ!やっぱ戦いはこうでなくっちゃな!!」

 

フィニクスはそう言うと、ソウガに斬り掛かった。ソウガは双剣を装備し、何度か斬り合いを行った。ソウガはフィニクスの体を二回切った後に双剣で突きをしたが、フィニクスの体に受け止められた。

 

「何っ!?」

 

「はははっ!!」

 

フィニクスは笑った後、ソウガの両腕を掴み、ソウガを蹴飛ばした。ソウガは態勢を立て直すと魔法陣を展開した。

 

「『ディープ・イリュージョン』!!」

 

そう唱えた後に再び斬り合いを始めるとフィニクスの右側に魔法陣が出現し、そこから二人目のソウガが出現してフィニクスに斬り掛かった。

 

「増えても無駄だ!!」

 

二人のソウガの攻撃をいなしていると、ソウガの後方に魔法陣が出現し、三人目のソウガが出現して斬り掛かるが、フィニクスはその攻撃を避けて三人目のソウガに大剣を振りかざした。だが、地面に魔法陣が出現して、そこから四人目のソウガが出現して大剣を受け止めた。

 

「ぐっ!」

 

「良いね!良いね!良いね!!もっとやろうぜ、死神!!」

 

そうフィニクスは言うと、四人目のソウガを蹴飛ばした。二人目と三人目のソウガは同時に攻撃を仕掛けたが大剣で受け止め、弾くとフィニクスは二人目、三人目の順にソウガを切った。

 

「ガッ!!」

 

「ぐっ!!」

 

二人目と三人目のソウガは態勢を崩していると、本体のソウガがフィニクスと斬り合いを始めた。その隙に四人目のソウガがフィニクスを後ろから切ろうとしたが、フィニクスに躱された。フィニクスは四人目のソウガの右腕を掴み、前にいる本体のソウガの方に投げつけた。本体のソウガは四人目のソウガを受け止めたが、フィニクスにその隙を突かれ、二人同時に切られた。

 

「「ぐあっ!!」」

 

切られた二人のソウガのもとに二人目と三人目のソウガが合流すると、四人目のソウガが魔法陣を展開した。

 

「『ヘブンズチェイン』!!」

 

四人目のソウガがそう唱えるとフィニクスの周りに魔法陣が展開して、魔法陣から鎖が射出されフィニクスを拘束した。それを見た二人目と三人目のソウガが魔法陣を展開する。

 

「『アブソリュート・ゼロ』!!」

 

「『ライトニング・ボルテックス』!!」

 

二人のソウガが唱えると、二つの魔法陣から高魔力の雷と強力な冷気が放出され、同時にフィニクスに当たるのを確認した本体のソウガが双剣で斬り掛かろうとしたが、フィニクスは魔力を放出して雷と冷気を吹き飛ばした後、双剣の攻撃を受け止め本体のソウガを大剣で吹き飛ばした。

 

「ガッ!!」

 

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

ソウガが三人のソウガのもとまで吹き飛ぶとフィニクスは炎の翼を巨大化させ、四人のソウガに炎の翼を何度も叩き付けた。

 

「「「「ガッ!!ぐあっ!!ぐぁあああああああああああああああああああ!!」」」」

 

最後の炎の翼の攻撃で四人のソウガが吹き飛ばされると、他のソウガ達が消えていった。その後、ソウガは何とか立ち上がった。

 

「手品はこれで終わりか?だったら諦めて、さっさと地獄に行きな!」

 

「俺は諦めが悪くてな」

 

フィニクスがソウガに向かって言うと、ソウガはそう答えた後に背後に魔法陣を展開した。だが、その魔法陣は今までの魔法陣と違い、金色の魔法陣だった。

 

「『パーフェクト・ドラゴニック』ッ!!」

 

ソウガはそう唱えると、体が浮いて魔法陣の中央まで移動すると魔法陣から魔力で形成された龍が四匹出現し、龍達がソウガの体に触れると尻尾、翼、鉤爪と装着していき、最後の龍が触れると胸部に龍の頭が出現し、ソウガの額に龍の角の様な装飾品が出現した。

 

「あぁ?」

 

「全ての龍の力を一つに………。これが神滅魔法の奥義の魔法の一つだ!!うぉおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

そう咆哮しながらフィニクスに向かって行くソウガの様子をヴェッターは見ていると体が武者震いしていた。

 

「何という凄まじい魔力………。さぁ、見せてもらいますよ!あなたの全力を!」

 

ヴェッターが二人の戦いを見ながらそう言っていた。フィニクスは炎の翼を広げ、飛ぶとソウガを切り裂こうとしたが、ソウガは鉤爪で防御をした後にフィニクスに蹴りを入れた。後方に吹っ飛んだフィニクスは炎を何発も打ち出すがソウガが巨大な竜巻を発生させて炎を打ち消しながらフィニクスを空高く舞い上げた。

 

「ぐぉおおおおおおおおおおおお!!」

 

フィニクスがそう叫びながら吹っ飛んでいると、竜巻の周りに巨大な氷の槍が形成されていて、それがフィニクスに向かって射出された。フィニクスは魔力を放出して竜巻と槍を何とか吹き飛ばしたが、ソウガが龍の口から高魔力の炎を放出した。

 

「ぐぅううううううううう!!オラァア!!」

 

フィニクスは龍の炎を大剣で防いだ後、かき消すのと同時に炎を鳥を何発か打ち出した。ソウガはその攻撃を回避していたが最後の一発が当たるが、ソウガは無傷の状態でフィニクスに光速で突っ込むと鉤爪をフィニクスの腹部に刺し、翼を羽ばき竜巻を発生させ、フィニクスの翼の炎をかき消した。

 

「ぐぁああああああああああ!!やる、じゃねえか、だが、気を付けろよ。俺はまた蘇るぜ」

 

フィニクスがソウガに笑いながらそう言ったが………。

 

「お前を倒す気はない」

 

「何っ!?」

 

「不死の体を呪うんだな」

 

ソウガはそう言うと、鉤爪を抜き、尻尾を叩き付けフィニクスを空高く舞い上げた。ソウガは地上に降りると、地面に巨大な金色の魔法陣が出現し、その魔法陣の周りに小さい金色の魔法陣が四つ旋回していた。ソウガはフィニクスを見ると………。

 

「………永遠に死と再生を繰り返せ」

 

そう言った後、飛び上がると地面の魔法陣も空中に浮かぶと、四つの魔法陣から魔力で形成された四匹の龍が出現した。

 

「『ドラゴニック・ストライク・エンド』ッッッ!!!」

 

そう唱えると飛び蹴りの態勢になったソウガの前に巨大の魔法陣が移動するとそこから魔力で形成された巨大な龍の頭が出現した。四匹の龍がフィニクスに当たると四つの金色の魔法陣でフィニクスの体を拘束し、巨大の龍の頭がフィニクスに当たると龍がフィニクスに噛みつき、魔法陣から巨大な龍がフィニクスを咥えながら空高く飛んだ。フィニクスを咥えた龍は大気圏を超え、太陽まで光速で飛び突っ込んだ。フィニクスは太陽の熱で体が消えていった。

 

「バカな………!?この俺が………こんな………ガッ………!?あ………ああ………」

 

太陽の熱でフィニクスは何回も死と再生を繰り返した。そして、地上でソウガは太陽を見ながら。

 

「………お前に、終わりはない」

 

静かにそう言った。

 

◆◆◆

 

「ただまー!」

 

「ただいまぐらいちゃんと言えないのかお前は」

 

フィニクスを撃破した数日後、俺達はアクセルの街に帰ってきていた。宿に戻ると真っ先にウィズに抱き着かれた。その後、アクアに体を治してもらいながら色々、質問に答えた。フィニクスを太陽に叩き込んで撃破した事、たとえ太陽の熱に耐えられるようになっても俺達が生きている内は絶対に戻ってくる事はない事を。その後、アクシズ教団に呼び出され、今回の騒動の元凶を始末した事により、俺は表彰され、アクアが浄化してしまった温泉の賠償金はハンスの懸賞金を弁償に回してもらい許してもらう事になった。今はカズマ達が買った土産を置きにカズマ邸に来ていた。そう思っているとカズマとアクアが喧嘩を始めた。………帰ってきて、いきなりか。

 

「全く、帰って来たばかりなのだからゆっくりできないのか。紅茶でも淹れるから二人とも落ち着け」

 

「ふう。やはりここが一番安心しますね。自分で旅行に誘っておいてなんですが」

 

そう言ってめぐみんがソファーへ身を投げ出していると、アクアが席を譲れと言ってきてめぐみんはボードゲームを取り出し遊び始めた。それを見ているとウィズが話しかけてきた。

 

「今回の旅行は大変だったね。ソウ君」

 

「ああ、まさかパーフェクト・ドラゴニックを使うハメになるとは」

 

「ドラゴニックシリーズの魔法を一つに纏め、大気中にある全ての成分を操る事ができる奥義。それを使う事になる相手が出てくるなんてね」

 

「もう、あんな相手はゴメンだ」

 

「でも、そんな相手そうそういるとは思いませんよ?ソウガ先輩」

 

「ねえめぐみん。そのアークウィザードが超邪魔なんですけど。私のところの、いらない子なクルセイダーをあげるから、駒の交換に応じない?」

 

「クルセイダーは、私の戦略的にもいらない子なので応じられません。ほら、アクアの番ですよ?」

 

「おい、その、なんだ。ゲームの話だとは分かっているのだが、その………」

 

そうダクネスが言っていると………。

 

「めぐみん!ねえ、めぐみんいる!?」

 

そんな切羽詰まった声と共に、ドアがノックされる音が聞こえるとカズマは扉を開けると荒い息で肩を上下させているゆんゆんがいた。

 

「良かった、ソウガさんもいる………」

 

「うん?俺に用なのか?」

 

「う、うん………、あ、あの………、突然こんな事言うのも何なんですけど………!」

 

ゆんゆんが俺の近くに来ると、意を決した様にキュッと唇を引き結ぶ。近くにいるウィズとティアもどうしたんだろうという表情をしていた。

 

「どうしたのですかゆんゆん?私に何か用ですか?」

 

めぐみんが立ち上がるも、ゆんゆんは小さく首を振った。俺に用事か?まあ、ある程度の事には慣れているから大丈夫だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私………!私………!!ソウガさんの子供が欲しいっ!」

 

「………………………はいっ!?」

 

全然、大丈夫じゃなかった………。




このすば2期が始まりましたね。原作にもない展開があって、とても面白いです。
ちょむすけがウィズの胸にパンチしている所は無意識のうちにリピートしてましたw
次章から五巻の話になります。


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紅魔の里 シルビア編
この冒険者達と店主に手紙を!


手紙に振り回されます。


ソウガさんの子供が欲しい。ゆんゆんが放った言葉に俺達は固まってしまった。まぁ、当然だろう。それだけの事をゆんゆんは言ったのだから………。

 

「ねえめぐみん、この手は待ってもらえないかしら。一手やり直させてくれるなら、アルカンレティアの温泉で見つけた、この変わった形の石をあげるわよ」

 

訂正。一人だけ空気が読めておらず、会話も聞いていないバカがいた。我を取り戻した俺はゆんゆんに問いかけた。

 

「えっと………、ごめんな、ゆんゆん、聞き間違いだと思うから、もう一回言ってくれないか?」

 

「ソ、『ソウガさんの子供が欲しい』って言いました!」

 

ゆんゆんが顔を真っ赤にして言い放った。どうやら聞き間違いじゃないらしい。

 

「えっと………、とりあえず冷静になれ」

 

「私は冷静です!とにかく、最初の子は男の子じゃなきゃダメなの!だから、お願い!ソウガさんの子供を作らせてください!!」

 

「いやちょっと待ってください、子供だとか男の子だとか!どうしていきなりそんなところにまで話が進んでいるのですか!というかゆんゆんは、突然何を口走っているのですか!?今自分が何を言っているのか分かっていますか!?」

 

「そ、そうですよ!ゆんゆんさんはどうしてソウ君の子供が欲しいなんて言うんですか!?そんなズル………違う違う!何でそんな話になったのか理由を教えてください!?」

 

「あれっ?ちょっと待って!?そうよ、ここよ!ここでいらない子扱いだったクルセイダーを置けば………!?」

 

めぐみんとウィズが騒ぎ始める中、その騒ぎに気づかず駒を持って悩むアクアを見て、ため息を吐いた。

 

「正気に戻ってください!というかあなたは、たまに突っ走って目の前が見えなくなる時があります!一体何がどうなっているのか、順を追って話してください!」

 

「だ、だってだって!!私とソウガさんが子供を作らないと世界が!魔王が………っ!!」

 

うん?何で俺の子供が欲しい事と魔王が関係するんだ?そう思っているとカズマが俺の肩を叩く。

 

「そうか、世界が………。それなら、しょうがないな。ソウガ、二階に一部屋空いているから使っていいぞ」

 

「お前は何を言っているんだ!?」

 

何を考えてるんだ!?この、クズマが!!

 

「カズマさん!?何を言っているんですか!?そんな事、私は許しません!!」

 

「うるせえぞ、ウィズ!これはソウガとゆんゆんの問題だろうが!今までソウガには色々世話になってんだ!そろそろソウガにも良い事があっても良いじゃねえか!そもそもウィズと同棲してるのにエロい事が今まで起こらない事がオカシイんだよ!その胸で挟んだり擦ったりしてやれよ!ソウガも色々溜まっているだろうし、ここらでスッキリさせた方が良いに決まってんだろうが!」

 

「最低です!?最低ですカズマさん!?」

 

「………おい、お前らいい加減に」

 

「じゃあ、間を取るか?」

 

「「「はぁ?」」」

 

カズマとウィズが言い争いをしている時に、ティアがそう言った。間を取る?

 

「えっと、ティアちゃん?間を取るってどうするの?」

 

「間を取って、私、ウィズ先輩、ゆんゆんでソウガ先輩と4Pをする」

 

「何を言っているの!?」

 

「だって、ウィズ先輩はソウガ先輩とゆんゆんが事に及ぶのは嫌なんですよね?だったら一緒に事に及ぼうと思いまして、言うじゃないですか。皆でヤれば怖くないって!」

 

「本当に何を言っているの!?」

 

「ああ、それだとカズマ達が暇だな。そっちはそっちのメンバーで4Pしてくれ」

 

「何を言ってるんだ!?」

 

「そんな事するわけないじゃないですか!?」

 

「なるほど、それもそうだな。待っている間は暇だし、親睦を深めるためにも良いかもしれないな!」

 

「ふざけるな!?」

 

「こいつ!ダクネス、シメましょう!一度この男をシメときましょう!」

 

「お、落ち着いて!すいません私のせいで、お、落ち着いてください!」

 

………………ブチッ!!

 

「てめえら黙れやあああああああああああああああああ!!全然話が進まねえだろ!!その口を縫われたいのかお前らああああああああああああ!!」

 

「「「「「「ご、ごめんなさい!!」」」」」」

 

「ちょっと!いきなり叫ばないでほしいんですけど!そんな事より次はめぐみんの番よ!見て見て、これは自身の一手よ。ほら、早くこっち来て!」

 

「てめえも黙れや!!エクスプロージョンルール執行!!」

 

「わあああああああああーっ!!」

 

俺はゲーム盤をひっくり返すと、しくしく泣きながら絨毯に散らばった駒をアクアは拾っていた。………さて。

 

「ゆんゆん。さっき魔王の事を言っていたな。俺の子供の事と何か関係があるのか?」

 

「う、うん………。めぐみん、聞いて!紅魔の里が………、紅魔の里が無くなっちゃう!!」

 

◆◆◆

 

「粗茶ですけど」

 

「ど、どうも、ありがとうございます」

 

ソファーに腰かけ、アクアにお茶をもらったゆんゆんは、ようやく落ち着きを取り戻していた。

 

「………で、一体何がどうなっているのですか?里が無くなるとは穏やかではありませんね。事情を話してくれますか?」

 

めぐみんがそう言うと、ゆんゆんは無言で封筒を渡した。それをめぐみんが受け取ると封筒の中から二枚の手紙を見つけると。

 

「………これは、ゆんゆんのお父さん、族長からの手紙ですか。『………この手紙が届く頃には、きっと私はこの世にいないだろう』………?」

 

手紙に目を通しためぐみんの表情が険しいものになっていく。その手紙の内容には紅魔の里の近辺に魔王軍が軍事基地を建設したらしい。そして派遣された魔王軍の幹部は魔法に強い幹部らしく、軍事基地を破壊する事もできない状況らしく、紅魔族の族長は魔王軍の幹部と刺し違えるみせる覚悟が込められていた。そして………。

 

「『族長の座はお前に任せた。………この世で最後の紅魔族として、決してその血を絶やさぬ様に………』ちょっと待ってください、ここにもう一人紅魔族が生き残っているのですが!」

 

「………ソウガ先輩。めぐみんは紅魔族にとっていらない子なんですか?」

 

「………思っている事を口にするな。聞こえて無いようだからいいが………」

 

激昂するめぐみんに対して、ティアが小さな声で俺に話してきた。

 

「そこはいいから先を続けて!もう一枚あるから!」

 

ゆんゆんの言葉に、めぐみんがもう一通の紙を読み上げた。

 

「『―里の占い師が、魔王軍の襲撃による、里の壊滅という絶望の未来を視た日。その占い師は、同時に希望の光も視る事になる。紅魔族唯一の生き残りであるゆんゆんは………』………だから、どうして唯一の生き残りがゆんゆんだけになっているのですか、私の身に一体何が!?」

 

「いいですから、早く先を続けてください!めぐみんさん!」

 

「『………唯一の生き残りであるゆんゆんは、いつの日か魔王を討つ事を胸に秘め、修行に励んだ。そんな彼女は駆け出しの街で、ある男と出会う事になる。魔王軍が恐れ、とてつもない力を持つその男こそが、彼女の伴侶となる相手であった』」

 

そこでカズマ達が俺の顔をジッと見る。

 

「続けますよ?『………やがて月日は流れ。紅魔族の生き残りと、その男の間に生まれた子供はいつしか少年と呼べる年になっていた。その少年は、冒険者だった父の跡を継ぎ、旅に出る事になる。だが、少年は知らない。彼こそが、一族の敵である魔王を倒す者である事を………』」

 

「「「「ッ!?」」」」

 

その言葉に、俺だけではなくウィズとティア、何故かアクアまで息を呑む。

 

「………まぁ、確かに紅魔族の魔力と神滅魔法が合わされば魔王を倒せるほどの魔法使いが生まれるかもな………」

 

「これは、仕方ないですね………」

 

「だ、駄目だよ!占いなんて曖昧なものだし、えっと………、と、とにかく駄目なの!」

 

「ねえ、そんなの困るんですけど!私、そんなの困るんですけど!!魔王はカズマに倒してもらわないと私が帰れないじゃない!!」

 

「紅魔の里には腕利きの占い師がいるんです!つまり、この占いは………!」

 

「これは、困ったな………」

 

「駄目だよ!絶対に駄目だよ!ソウ君!!」

 

ウィズが目尻に涙を浮かべて、抱き着く中、手紙を読み終わっためぐみんが、ポツリと言った。

 

「………こちらの手紙は、最後に『【紅魔族英雄伝 第一章】著者:あるえ』とあるのですが」

 

「「「!?」」」

 

そのめぐみんの言葉に俺とウィズ、ゆんゆんがバッとそちらを振り返る。ティアがひょいと手紙を覗き込んだ。

 

「どれどれ?うん?一枚目の手紙と字が違うな。一枚目はゆんゆんの父親の手紙だな。二枚目は、『追伸 郵便代が高いので族長に頼んで同封させてもらいました。二章ができたらまた送ります』って………」

 

「あああああああああああああああああああーっ!!」

 

ゆんゆんは突然手紙を奪い取ると、丸めて放り投げた。

 

「わあああああああああっ、あんまりよっ!あるえのばかあああああああああああ!!」

 

「………えっと、あるえって何だ?」

 

「あるえというのは、紅魔の里の同級生ですよ。なんというかその作家を目指している変わった子でして………」

 

「じゃ、じゃあ!ただの物語なんですね!良かった………」

 

「一枚目の手紙も物語なのか?」

 

「こっちは本物の内容じゃないですかね。紅魔族は、昔から魔王軍の目の敵にされてましたから、まあいつかは来るだろうなと思ってました」

 

めぐみんが落ち着いた様子でそう言っていた。そのめぐみんの様子を見て疑問に思い、俺はめぐみんに話しかけた。

 

「………めぐみんは、何故そんなに落ち着いているんだ?家族や同級生が心配じゃないのか?」

 

「そ、そうだわ。泣いてる場合じゃない!ねえめぐみん、どうしよう!?里が襲われているのは本当だと思う!私達はどうすればいい!?」

 

俺とゆんゆんの言葉にめぐみんは。

 

「我々は魔王も恐れる紅魔族ですよ?里の皆がそう易々と、ただでやられるとは思いません。それに………。ここに族長の娘であるゆんゆんがいる以上、紅魔の里に何かあっても血が途絶える事だけはありません。なので、こう考えればいいのです。里の皆はいつまでも、私達の心の中に―」

 

「めぐみんの薄情者!どうしてそういつもいつも、ドライな考え方ができるのよ!」

 

涙目のゆんゆんは、ほんのりと赤い顔で俺を見てくると。

 

「あ、あの………。急に変な事を言ってごめんね。何ていうかその、こんな事を頼めるのはソウガさんしかいなかったし………」

 

「気にするな。俺が相手じゃ、ゆんゆんは嫌だろうしな」

 

「い、嫌じゃないよ!私、ソウガさんが相手なら………」

 

「えっ?」

 

「あ、あれっ?な、何を言っているんだろう!?私っ!?」

 

そう言って、ゆんゆんは顔を真っ赤にして顔を逸らしてしまった。あれっ?何か気まずい空気になってるぞ!?甘酸っぱい感じになってるぞっ!?

 

「ソウ君?紅魔の里の一大事の時に何をしているのかな?」

 

「そ、そうだな!ゆんゆんはこれからどうするんだ?故郷のピンチなんだろ?」

 

ゆんゆんは目尻の涙を拭うと。

 

「はい、今から紅魔の里に向かおうかと思います。その、里には、と、とも………だち………も、いるし………」

 

言い切れない仲なのか?

 

「それじゃ、皆さんお騒がせしました!その、めぐみんも。またね………?」

 

そう言って、寂しげにゆんゆんは出ていくゆんゆんを俺達は見送った。………さて。

 

「………ウィズ」

 

「分かってるよ。ソウ君も紅魔の里に行くんでしょ?」

 

「ああ」

 

俺がそう言うとウィズが抱き着いてきたので、俺もそっと抱きしめる。

 

「あまり無茶しないでね?」

 

「ああ、分かった。………めぐみんもゆんゆんが心配ならついて来てもいいぞ?」

 

「私がゆんゆんを心配する訳ないじゃないですか。あの子は私のライバルですよ?私の敵みたいなもんです」

 

「そうか」

 

俺がそう言うとカズマとダクネスがニヤニヤしながら話していると、めぐみんがカズマ達を睨んでいた。

 

「じゃあ、俺は行くな。ティア、ウィズを頼むな」

 

「はい!任せてください!」

 

ティアがそう言うと、俺はウィズから離れて、ゆんゆんを追いかけるために屋敷を出た。




次はあの魔王軍の幹部を再登場させます。


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この死神に再び温泉を!

あの魔王軍の幹部が再登場します。


屋敷を出た後、俺は馬車の待合所に行くとゆんゆんがいた。俺はゆんゆんの近くに行き、話しかけた。

 

「ゆんゆん」

 

「えっ?、ソ、ソウガさん!?」

 

俺に気づいたゆんゆんは凄い驚いていた。………まぁ、しょうがないか。あんな事があったばかりだしな。

 

「ど、どうしたの?私に何か用なの?」

 

「俺も紅魔の里について行こうと思ってな」

 

「えっ!?これは私達の問題だから、ソウガさんは気にしなくても………」

 

「あんな事を聞かされて黙ってる事なんて俺にはできない。それにな………」

 

俺はそう言った後、俺はゆんゆんの頭に手を置き、頭を撫でながら言った。

 

「大切な友達を助けになりたいんだ。それじゃあ駄目か?」

 

「ソウガさん………。じゃあ、お願いして良い?私と一緒に紅魔の里に来てくれる?」

 

「ああ、任せろ」

 

「ありがとう、ソウガさん」

 

そう言った後、俺は撫でるのをやめた。

 

「じゃあ、まずアルカンレティアまで転移して準備をして、明日の朝に出発する事にしよう」

 

「えっ?何で?紅魔の里に転移した方が早いんじゃ」

 

「紅魔の里には魔王軍がいる。どんな能力が持っている奴がいるか分からないから。呪いやらの対策をアルカンレティアで揃えるためだ。もしもって事があるからな」

 

紅魔の里に一気に行くのは簡単だが、魔王軍の幹部がどんな能力を持っているかが分からない今の状態で行くのは危険だ。ゆんゆんに俺と同じ思いをさせたくはない。

 

「………そうだね、対策しておいた方が戦闘の時に役立つもんね。じゃあ、そうしようか」

 

「じゃあ、アルカンレティアに転移するな」

 

「うん、お願いソウガさん」

 

ゆんゆんがそう言った後、俺は魔法陣を展開した。

 

「『マキシマイズ・テレポーテーション』」

 

俺が唱えると一気にアルカンレティアの歓楽街付近に転移した。フィニクスに破壊された街の修繕をしている最中の様だ。

 

「………まぁ、そう簡単には直らないよな」

 

「えっ?何か言った?」

 

「何でもないさ。それより魔道具店に行こうか」

 

「う、うん!」

 

そう言って俺達は魔道具店に向かった

 

◆◆◆

 

「まぁ、これぐらいあれば十分か」

 

そう言って俺達は両手に様々なアイテムが入っている袋を持ちながら今日、泊まるホテルを探すために街を歩いていた。

 

「それにしても色々買ったね。毒耐性に全攻撃耐性に回復アイテム。その中でも呪い解除と呪い耐性のアイテムは数え切れないほど買ったけど、こんなに要らないんじゃ?」

 

「用心に越したことはないだろ?」

 

「………まぁ、そうだけどね」

 

確かに俺は呪いに関しては敏感だ。過去の事をもう二度と繰り返さないために俺は必ず五つは呪いに関してのアイテムを所持する様にしている。それも最高品質の物ばかりな。ここはアクシズ教団の総本山だけあって質の良いものばかりなので助かった。ウィズに内緒で貯めている俺の隠し財産を少し使ったが、まぁ、大丈夫だろ。俺はワープゲートを使ってマジックアイテムをしまった。

 

「さて、俺達が泊まるホテルはここにしようか」

 

「えっ!?こんな大きな宿に泊まるの!?もっと小さい宿にしようよ!」

 

「明日は魔王軍とやり合うんだぞ?疲れを残さないためにも良い所の方が良い」

 

「で、でも!あっ!待ってソウガさん!」

 

そう言って俺はカズマ達と一緒に泊まった宿に入った。それをゆんゆんは急いで追いかけてきた。チェックインを済ました後、今後の事をゆんゆんと話をした。紅魔の里に着いたら他の紅魔族の安否はどうか、魔王軍の幹部の情報を得るなどの事を話した。その後に俺達は風呂に行く事になり、今は三つの入口の前に来ていた。

 

「じゃあ、後でな」

 

「うん、また後で」

 

そう言ってゆんゆんは女湯に、俺は男湯の方に歩いて行った。ゆんゆんが女湯に入った事をチラッと見て確認した後、俺はUターンして混浴の方に移動して、誰もいない事を確認した後に混浴に入った。………同じ失敗は二度としない。

 

「ふう………、誰もいないと広いな。のんびりできていい………」

 

俺はそう言っていると、ガラッと混浴の引き戸が開く音が聞こえ、ビクッと体を震えた。まさか、ゆんゆんがこっちに来たのかと思っていると入って来た奴が俺に話しかけてきた。

 

「あらっ、死神じゃない?こんな所で奇遇ね。また会えて嬉しいわ」

 

この声に、この話し方は………。………はぁ。

 

「………お前の愚行は万死に値するぞ」

 

「どういう事なの!?」

 

「チッ、何でここにいるんだよ。ウォルバク」

 

俺がそう言った後、ウォルバクは俺から少し離れて温泉に浸かった。俺はそっちを見ない様に背を向けた。

 

「別に、私はただ湯治をしているだけよ」

 

「だったら余計に他の所に行けばいいだろ。この街の温泉は浄化されてしまってお湯しか出ないはずだ」

 

「そうなのよね。残念だけど、ここの温泉に入らない理由にはならないわ」

 

「まあいい、勝手にしろ」

 

「あなたの許可がいるの?まあいいわ。あっ、そういえば死神。この街で面白いものを見る事ができたわ」

 

「はぁ?」

 

「確か、パーフェクト・ドラゴニックって言っていたかしら?」

 

「なっ!?」

 

俺はウォルバクの方へ向こうとしたが、ハッとなり再び見ない様にウォルバクに背を向けた。

 

「………チッ、見てやがったのか。悪趣味な奴だな」

 

「別に私の勝手でしょ?あれは凄いわね。あまりに凄まじい魔力に身震いしちゃった」

 

「お前に教える事は何もない」

 

「むう、釣れないわね。じゃあ、少し質問して良い?」

 

「うん?」

 

「どうして、ずっと背を向けてるの?」

 

その言葉に俺はビクッと体を震わせてしまった。

 

「俺の勝手だろ」

 

「………ふーん」

 

俺がそう言うと、ウォルバクがそう言った。ヤバい、気付かれたかと思っていると背中にムニュっと柔らかな感触が当たった。

 

「ところで、死神。魔王軍の幹部にならないかしら?」

 

「俺が、魔王軍の幹部になるわけないだろ。いいから、離れろ」

 

「もし、魔王軍の幹部になってくれたら私は嬉しい。それに自慢ではないけど私は体型に自信があるのよ?魔王軍の幹部になってくれたら色々とイイコトしてあげるわ。今回は前払いでイイコトして………あ………げ………あぅぅ」

 

「はははっ、顔を真っ赤にして言う事じゃないな!ははははははああああああああああああああああああああああっ!?」

 

「やっぱり!あなた女性の扱いが苦手なのね!ほらほら、魔王軍の幹部になるかあなたの情報を教えなさい!さもないと、もっと凄い事するわよ!恥ずかしいけど!!」

 

た、助けてえ!?痴女に襲われるぅうううううううううううう!?

 

◆◆◆

 

「………あれ?」

 

「うん?どうしたのだ?帰ってきてそうそう死神と離れ離れになって寂しいポンコツ店主よ」

 

「私の中のソウ君危機センサーに反応が………」

 

「………頭は大丈夫か?」

 

「本当なんです!なんていうか、誰もいない混浴に入っていたら女の人が入ってきてその女の人に言い寄られてソウ君が助けを呼んでいる感じがするんです!」

 

「………どうやら、疲れている様であるな」

 

「本当なんです!信じてください!場所はアルカンレティアで以前私達が泊まったホテルだと思いますので今からソウ君を助けに行ってきますね!」

 

「何を言っているのだ?店主が店をサボってどうする。今日はこの椅子に座るだけで良いから大人しくしていろ」

 

「『テレポー………」

 

「バニル式殺人光線!」

 

「きゃああああああああああああああ!!」

 

◆◆◆

 

「調子に乗るなよ」

 

「………うぅ」

 

そう俺は頭に大きなたんこぶができているウォルバクに対して俺は言った。

 

「拳骨を思い切りするなんて、私は一応神様なのに………」

 

「神様と豪語する奴はロクな奴がいない事は俺のパーティーメンバーで学習している。だが、一応、礼は言っとくな」

 

「………このムッツリ」

 

「違うわ!?お前のおかげで少し女に対して耐性ができたからバスタオル巻いていれば問題が無くなっただけだ」

 

「本当かしら?私の体を舐めまわすように見て、エロい想像を」

 

ウォルバクがそう言った直後に俺は剣を作り、ウォルバクの顔に向かって投げた。ウォルバクは何とか回避するのを見た後、俺は弓と螺旋状の剣を作った。

 

「もう一度、これを食らいたいらしいな」

 

「やめて!?もうそれは食らいたくないから本当にやめて!?」

 

「たくっ、二度と変な事言うな」

 

そう言った後、俺は魔法を解除して、もう一度風呂に浸かった。

 

「そういえば、話は変わるけど、どうしてアルカンレティアに戻ってきたの?」

 

「紅魔の里の魔王軍の幹部を始末するためだ」

 

「あぁ、なるほどね」

 

「………紅魔の里にいる魔王軍の幹部について何か知っているか?」

 

「あなたの使っている魔法について教えてくれれば教えてあげる」

 

………まぁ、知っていても対処できるものでもないからいいか。今は情報を得る方が重要だ。

 

「俺が使っている魔法は神滅魔法と言って、俺の家系だけが使える魔法だ」

 

「一子相伝の魔法なのね。道理で見た事が無い訳ね。じゃあ、パーフェクト・ドラゴニックは神滅魔法の中でも強い方なの?」

 

「パーフェクト・ドラゴニックは神滅魔法の奥義の一つだ。あれの他に七つ奥義の魔法がある」

 

「あれの他に七つも奥義があるのね。良い事を聞いたわ」

 

「じゃあ、教えろ。紅魔の里にいる魔王軍の幹部について」

 

「そう言われても、私が知っている事は紅魔の里にいる幹部はグロウキメラのシルビアって事だけよ」

 

シルビア?あぁ、ハンスと一緒に襲い掛かって来た奴か。

 

「それだけで十分だ。じゃあ、俺は出るぞ」

 

「あっ!待って、あとこの街で冒険者が行方不明になっている事件が多発しているの」

 

「………冒険者が行方不明?」

 

「ええ、初めに言っておくけど魔王軍はこの事件に関係していない。別の誰かの仕業よ」

 

「そうか、一応気を付けておく。じゃあな」

 

「ええ、またね」

 

「お前とまた会うつもりはない」

 

そう言って俺は風呂を出て入口に向かった。




次回は奴が本格的に動き始めます。


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この紅魔族に新たな凶敵を!

奴が動き始めます。


翌朝、俺達は宿の一階の食事処で朝食を取っていた。前日の夜に魔王軍の幹部と対峙した時の対処法をゆんゆんに教えた。ふと、ゆんゆんの様子を見てみるとある所をジッと見ていた。

 

「うん?どうかしたのか?」

 

「あの人、凄い食べるなって思って………」

 

そう言って俺は見て見ると穏やかで物腰柔らかい印象がある男性が食事をしていたが、その食事量が凄まじく、既に何枚も食事を済ました皿が乗っていた。

 

「確かに凄いが、あまり見てやるな。あの人に悪いだろ?」

 

「あっ、そうだね。ごめんねソウガさん」

 

「気にするな」

 

俺達は再び食事を再開し、今後の事を考えていると。

 

「あれ?ソウガさんじゃないですか?こんな場所で奇遇ですね」

 

そんな声が聞こえた。俺は視線を横に向けると、そこには二人の騎士を連れたセナがいた。

 

「お久しぶりです。ソウガさんはアルカンレティアで何を?旅行ですか?」

 

「いや、少し野暮用でな。だが、良い所であったな」

 

俺はそう言うと、セナに向けて報告書を渡した。

 

「………これは?」

 

「特務達成の報告書だ。後で目を通しておいてくれ」

 

「本当ですか!?やっぱりソウガさんは凄いです!」

 

俺が特務達成の報告書を渡すとセナは俺にそう言った。

 

「あの、特務って何ですか?」

 

「うん?ああ、ゆんゆんは知らないか。特務とは接触禁止種の討伐や希少モンスターの捕獲などの最高ランクのクエストだ。それなりに報酬も高額だがな」

 

「ソウガさんはその特務を完璧に達成されているんです。さすがは最強のアークウィザード!」

 

「俺は別に最強なんかじゃない」

 

「なるほど、それで今回はどんな特務を請けていたの?」

 

「不死身のモンスターの討伐だ」

 

「不死身のモンスター!?そんなモンスターがいるの!?」

 

「ああ、今までで一番大変だったが何とかなった。それで、セナは何でアルカンレティアにいるんだ?」

 

俺がそう言うと、セナは冷たい表情に変わっていった。

 

「実は、ここ最近冒険者が行方不明になる事件が多発してまして」

 

「冒険者が行方不明?」

 

「ああ、その事なら聞いているぞ。何か掴んだのか?」

 

「はい。冒険者が行方不明になる前にある人物が必ずいまして。事件の関係者として手配書を発行して注意をホテル経営者の方達にしていたところ、ここにその人物がいるという情報を掴んだのでやって来ました」

 

「なるほど、手配書を見せてくれないか?」

 

「分かりました」

 

俺とゆんゆんはセナから手配書を見せてもらうと、そこには俺達が先程見た穏やかで物腰柔らかい印象がある男性の姿があった。

 

「あれ!?この人!?」

 

「知っているんですか?」

 

「ああ、ていうかあそこにいる奴だな」

 

俺はそう言った後、さきほど見た場所を見ると男はまだ食事をしており、皿は数十枚に増えていた。

 

「見た感じではそんな事する人には見えないんだけど………」

 

「見た目では人の事なんて分からないさ。ゆんゆんも気を付けろよ?」

 

「では、私達はあの人を確保してきますね」

 

そう言ってセナは男の傍に行くと、男に話しかけた。

 

「少し、いいか?」

 

「うん?どちら様でしょうか?」

 

「自分は王国検察官のセナ。貴殿には冒険者の行方不明事件に関与している疑いがある。自分と一緒に来てもらおうか!」

 

「やれやれ、別に構いませんが。食事をまだしているので待ってくれませんか?」

 

「そんな事している暇は無い。確保しろ!」

 

セナがそう言うと、二人の騎士が男の両腕を掴み立たせた。その後、連行している途中に男が俺達の近くに来ると。

 

「おや、お久しぶりですね。お元気そうで何よりです」

 

「はぁ?」

 

男は俺に話しかけてきた。それを聞いたセナと騎士達は俺達から少し離れた所で止まった。

 

「ソウガさん。この方と知り合いなんですか?」

 

「いや、今日初めて会ったはずだ」

 

「会ったじゃないですが。つい先日に」

 

先日に会った?いや、本当にこんな奴と会った記憶はないはずだ。

 

「いや、誰かと間違えていないか?」

 

「じゃあ、こう言った方が良いですか?」

 

そう男が言った後、笑みを浮かべると。

 

「お久しぶりですね、死神。フィニクスを撃破するとは凄いですねえ」

 

「ッ!?」

 

そう男が言うと、その男から魔力が湧き出るのが分かった。………こいつは、まさか!?

 

「セナ!その男から離れろ!」

 

「ソウガさん?」

 

俺はそう言うと、その男の体が変わり、以前ある通りで話をしたモンスター、グロウキメラのヴェッターの姿になった。その姿を見た他の人達は慌てて逃げだした。

 

「邪魔ですよ」

 

ヴェッターはそう言うと、体から冷気を放出した。俺は急いでセナを庇って何とか守る事ができたが、ヴェッターを拘束していた二人の騎士は氷漬けにされ、ヴェッターに粉々にされた。

 

「そんな!?王都の騎士達を一撃で!?」

 

セナがそう言った後、ヴェッターは冷気を発し、建物を凍らしながら物凄い速さで立ち去って行った。

 

「待ちなさい!」

 

「なっ!?ゆんゆん!」

 

それを見たゆんゆんはヴェッターを追いかけて行った。俺はセナにホテルにいる様に言った後、ゆんゆんを急いで追いかけた。

 

◆◆◆

 

「あ、あれ?何処に行ったの?」

 

ヴェッターを追いかけていたゆんゆんは人通りが少ない通りまで来たところでヴェッターの姿を見失ってしまうが………。

 

「後ろですよ」

 

「ッ!?」

 

後ろから声が聞こえて、ゆんゆんは慌てて後ろを振り向いた直後にヴェッターに掌底を叩き込まれた。

 

「ぐっ!『ライト・オブ・セイバー』!」

 

ゆんゆんの右腕に光の剣が出現し、ヴェッターに攻撃を仕掛けたが、片腕で防がれてしまい腹部を殴られた。

 

「くっ!まだまだ!」

 

ゆんゆんは再び攻撃を始めたが、全部、防がれてしまいヴェッターに右腕を掴まれると腹部を蹴られ後方に吹っ飛ばされた。

 

「ごふっ!?だ、だったら!『エナジー・イグニッション』!」

 

ゆんゆんはそう唱えるとヴェッターが青白い業火に包まれるが、ヴェッターの体から再び冷気が放出して業火がかき消された。

 

「そんな!?上級魔法が全く効かない!?」

 

「あなたでは実力不足だ。出直しなさい」

 

「ふざけないで!『ライトニング』!」

 

ゆんゆんがそう唱えると、ヴェッターの近くの地面に魔法を当て、土煙を発生させた。

 

「なるほど、目くらましですか」

 

ヴェッターがそう言っているとヴェッターの背後の土煙からゆんゆんが現れた。

 

「『ライト・オブ・セイバー』!」

 

「良い手ですねえ………、ですが、一つだけ忠告してあげましょう」

 

ゆんゆんが再び光の剣を右腕に作りヴェッターに振り下ろそうとした時、ヴェッターがそう言っていたがゆんゆんは無視して光の剣を振り下ろしたが………。

 

「………忠告を聞かずに攻撃するのは感心しませんねえ」

 

「えっ………?」

 

ヴェッターに傷一つもついていなかった。いや、攻撃を食らった様子もなかった。すると、ゆんゆんの背後に何かが落ちる音が聞こえた。ヴェッターはゆんゆんの方に体を向けた。

 

「私に接近戦はしない方が良い」

 

ゆんゆんは恐る恐る自分の右腕を見ると、肘から先がなくなっていた。

 

「あぁあああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

ゆんゆんは叫んでいると、ヴェッターがゆんゆんの首を右腕で掴み、持ち上げた。

 

「ぐっ!?」

 

「人の忠告を聞かないからこういう事になるんですよ?何が起こったのかお教えしましょう。かまいたちというのをご存知ですか?竜巻の応用で発生する現象です。それを周囲に張り巡らせば、近づいてきた相手を切り裂く結界を作る事ができるんですよ」

 

「どう、して?あなたの能力は冷気を、操る能力のはず………」

 

「………はぁ。何か勘違いしていませんか?」

 

「えっ………?」

 

ゆんゆんがそう言うと、ヴェッターはため息を吐いた後にそう言った。

 

「あれは、私の能力の一つに過ぎません。竜巻もその一つです。私はあらゆる気象を操る事ができるんですよ」

 

「ッ!?」

 

「そう、例えば………」

 

気象を操るとヴェッターの答えにゆんゆんは驚いていると、ゆんゆんの首を掴んでいたヴェッターの右腕の温度が上がり、ゆんゆんの首を焼き始めた。

 

「こんな風に、灼熱の日照なんてものできるんですよ」

 

そう言った後、右腕の温度が急激に上がり、ゆんゆんの体全体を焼いた。

 

「あああああああああああああああ!!うぁああああああああああああああああああああああ!!」

 

「良い悲鳴ですねえ。そういえば、この魔力の高さとその紅い瞳はあなたは紅魔族ですか?紅魔族の方と今まで出会った事が無いので、実験には丁度良いですねえ」

 

ヴェッターはそう言うと、丸い宝石を取り出した。

 

「さあ、実験開始です。あなたはどんな姿に生まれ変わるか楽しみですねえ」

 

そう言ってヴェッターはゆんゆんに宝石を埋め込もうとすると。

 

「うぉおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

「なっ!?ぐぉおお!?」

 

ソウガが物凄い速さで移動しながらヴェッターを殴り飛ばした。ヴェッターは殴られた衝撃でゆんゆんを離し、吹っ飛ばされた。ソウガはゆんゆんを受け止めた。

 

「ソウ、ガさん………」

 

「すまない、遅くなった。すぐ治すからな」

 

ソウガはそう言うと魔法陣を展開した。

 

「『パーフェクト・ヒーリング』」

 

ソウガがそう唱えると、ゆんゆんが光で包まれゆんゆんの怪我が完治し、切り落とされた右腕も再生した。

 

「ほう、そんな事も出来るんですか。やはり素晴らしい魔法ですねえ」

 

「てめえ、覚悟はできてんだろうな」

 

「悪いですが、あなたと戦うのはまだ早い。また会いましょう」

 

「なっ!?待て!!」

 

ソウガはそう言うが、ヴェッターは霧を発生させて姿を晦ました。ゆんゆんは立ち上がり、ソウガの傍に寄った。

 

「ごめんなさい。私が強かったら………」

 

「自分を責めるな。ホテルに戻るか」

 

「う、うん」

 

そう言ってソウガとゆんゆんはホテルに歩き始めた。

 

◆◆◆

 

「ソウガさん!あ、あのモンスターは………」

 

「すまない。逃げられた」

 

俺達は、ホテルに戻るとセナが俺に話しかけたが、ヴェッターに逃げられたことを伝えた。

 

「そうですか………、王都の騎士達を一撃で倒すほどのモンスターがいるなんて………」

 

「私でも全く歯が立たなかったです。すみません………」

 

「い、いえ!ゆんゆんさんのせいじゃないですよ。しかし、あのモンスターが冒険者行方不明事件の首謀者と考えると野放しにするわけにはいかないですね」

 

セナがそう言った後、少し考えた後に俺の顔を見た。まぁ、大体察しが付くが。

 

「すみません、ソウガさん。連続で悪いですが、特務としてあのモンスターの討伐をお願いしてもよろしいですか?もちろん報酬も高額を用意します。駄目でしょうか?」

 

「………まぁ、あいつを野放しにするわけにはいかないからな別に構わない」

 

「あ、ありがとうございます!フィニクス討伐の報酬もすぐ用意しますのでよろしくお願いします!」

 

セナがそう言った後に俺はゆんゆんは考え事をしていた。どうした?

 

「どうかしたのか?ゆんゆん」

 

「ちょっと、あのモンスターが言っていた事が気になって………」

 

「うん?何か言っていたのか?」

 

「うん。私が紅魔族だって知ると、実験って言って宝石を取り出すと『どんな姿に生まれ変わるか楽しみですねえ』って言ったの」

 

実験?ヴェッターは何の実験をしているんだ?あと、宝石?もしかしてと思い、俺はコートのポケットに入っていた宝石の欠片を取り出した。

 

「セナ、これの調査を頼めるか?もしかしたら、あのモンスターに関連している物かもしれない」

 

「分かりました。調査結果は何処にお届けしましょう?」

 

「紅魔の里の族長宛にしておいてくれ。これから紅魔の里に行く予定なんだ」

 

「分かりました。では、すみませんがよろしくお願いしますね」

 

「ああ」

 

そう言ってセナはホテルを後にした。………さて。

 

「予定が狂ったが俺達も行くか」

 

「は、はい!紅魔の里では活躍できる様に頑張ります!」

 

そう言って俺達はホテルを後にしたが、俺は何か嫌な予感がしてならなかった。

 

◆◆◆

 

「ふふふ、切り落とした腕もすぐに治してしまうとは、やはりあの魔法は素晴らしい」

 

ある建物の上でヴェッターは笑いながらそう言った。

 

「………しかし、あの少女の腕を切り落とした程度では死神は動揺しませんでしたねえ。あの素晴らしい魔法を手に入れるためには死神を倒さなくてはなりませんが、まだ私では実力不足だ。あのフィニクスを倒した魔法を使われたら私に勝ち目は無い。その為には死神の隙を突くしかない。どうしますか………」

 

そう言ってヴェッターは考えた後、魔道具を取り出した。

 

「やはり、この手を使って死神の隙を突くしかありませんねえ。では、先回りしますか」

 

そう言った後、ヴェッターは風を纏い宙に浮くと。

 

「………死神の仲間には死んでいただきましょうか」

 

魔道具に移っていたカズマ、アクア、めぐみん、ダクネスを見た後、魔道具を仕舞い紅魔の里方面に飛んで行った。




アニメのバニルの声が思っていた通りの感じで面白かったです。


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この冒険者達に凶敵を!

カズマ達に奴が襲い掛かります。


何故こんな事になってしまったのだろう?翌朝、俺達はウィズに頼んでアルカンレティアにテレポートをしてもらった。テレポートしてもらう時にウィズから最近、冒険者が行方不明になる事件と謎のモンスターが出るという事を教えてもらってアルカンレティアに転移した後、紅魔の里に向かっていただけなのに………。本物の神様をぞんざいに扱ってるから罰が当たったのか?アクアが大事にしている変な形の石を捨てたから?ゴミだと思って捨てたから?違うんです神様、あいつ、珍しい物を見つけるとすぐ何でも拾ってくるんです。神器の羽衣と俺の下着を一緒に洗ったから?違うんです神様、あいつの神器と一緒に洗うと、浄化作用で汚れが簡単に落ちるんです。心の底から反省しています。ああ………、だから、どうか神様………!

 

「最初は男の子が良いわねえ!オスが六十匹にメスが四十匹!そして海の見える白い家で毎日あたしとイチャイチャするの!」

 

「神様!心の底から謝るので、どうか俺を許してくださいっ!」

 

俺は平原地帯でオーク達に追われて、必死に逃げていた。俺は平原地帯に入る前にモンスター情報を見ると、ヤバそうなモンスターばかりだったので俺が先行して、何かあったら逃げれる様にする事にした。そのモンスター情報の中にオークの名前があった。だが、この世界のオークはメスしかいない事がめぐみんから教えてもらった。今のオーク達は色んな種族と交配して、もはやオークと呼べないモンスターになっていた。オークは優秀な遺伝子を持つオスを欲していて、俺はそのオークを倒してしまい、オーク達に追われる事になってしまった。

 

「俺のパーティーメンバーに俺より強い男がいるので、その男に相手をお願いするので俺は勘弁してください!」

 

「今はあなたしかいないじゃない!諦めてズボンを下ろしな!」

 

畜生!勘弁してくれっ!俺は迷う事なくダガーを前に突き出すが、オークは容易く俺のダガーから身を躱し………!

 

「よおーし!すぐ済むから。すぐ済むからじっとして、目を瞑りな………!」

 

あっさりと握っていたダガーを弾き、俺を地面に押し倒した。この危険地帯で生き抜くオークの力を舐めてました!

 

「話をしよう!話をしようっ!!」

 

「エロトークなら喜んで!さあ、話してごらん?あんたの今までの恥ずかしい性癖をさ!ふーっ、ふーっ!」

 

オークが荒い息を吐きながら、俺の上着を左右に引き千切った。俺はドレインタッチをしようとしたがスイッと躱され手首を掴み、手の平を舐められた。もう本当に許してくださいっっっ!!

 

「やっ、やめてええええええええええ!名前を!そういや俺まだ、あんたの歳も名前も聞いてない!最初は自己紹介からあああ!私は佐藤和真と申します!」

 

「ピチピチの16歳、オークのスワティナーゼと申します!さあ、あんたの下半身にも自己紹介してもらおうか!あんたの自慢の息子も紹介しなよ!」

 

「ウチの息子はシャイなんです!今日のところは、お互いの名前を知ったって事でお開きをおおおおおー!アクア―!アクア―っ!助けてえええっ!」

 

「カ、カズマさーん!」

 

俺が、悲鳴を上げ、アクアが叫んだその時だった。空がいきなり曇り出し、雷がオーク達に落ちた。何匹かのオークはその雷で消滅した。その場からオークは急いで逃げていた。俺に乗っていたオークも後を追いかける様に逃げて行った。俺は急いでアクアの下に這いずった。

 

「うあああああああーっ!!怖かったよおおおおおお!!」

 

「よしよし、安心しなさいカズマ。もうオーク達はいないから。ねっ?」

 

俺の顔を胸元に寄せて優しく頭を撫でてくれる今のアクアは本当の女神だと不覚にも思ってしまった。

 

「ですが、あの雷は一体何だったのでしょう?いきなり曇り出して雷が何回か落ちた後に雲はすぐ消えましたが………」

 

「あれは、私の能力で作った雷雲ですよ」

 

「「「「ッ!?」」」」

 

そう声が聞こえた方向を見ると、体色は白が主体。後頭部に髷、肩と首回りにかけて風神の風袋のようなものがあるモンスターがいた。

 

「初めまして。私はグロウキメラのヴェッターと申します。早速で悪いのですがあなた方には………」

 

「ありがとうございましたああああああああああああ!!」

 

「………はい?」

 

「この度は助けて頂いてありがとうございます!あのままだったら今頃は大変な事に………。うっ、うわあああああああああああ!!」

 

「カズマ!?何、お礼を言っているんですか!?あれはモンスターなんですよ!」

 

「えっと、私は一応医者をやっておりまして、精神安定剤のお薬を差し上げますね」

 

「あっ、ご親切にどうも」

 

「アクアもモンスターから薬を貰わないでください!?」

 

「「「はっ!」」」

 

そう言われて俺とアクアとグロウキメラのヴェッターは急いでお互い距離を取った。俺とアクアの傍にめぐみんとダクネスが来た。

 

「いけないいけない、あなた方の雰囲気に呑まれてしまいました」

 

「それで貴様は何しにここに来た。返答次第によっては………!」

 

「いえいえ、大した用ではありませんよ」

 

ダクネスが剣をヴェッターに向け言うと、ヴェッターはそう言うと。

 

「あなた方には死んで頂こうと思いましてねえ」

 

そうヴェッターは言うと、ダクネスの前に物凄い速さで接近した。

 

◆◆◆

 

「何っ!?ごふっ!?」

 

ダクネスが驚いているとヴェッターはダクネスの腹部を殴り後方に吹っ飛ばした。ダクネスは何とか態勢を立て直し接近してきたヴェッターに攻撃をしたが、全く当たらなかった。

 

「躱した方が危ないですねえ。ふっ!」

 

「ぐわっ!」

 

「ダクネス!くそっ!」

 

ヴェッターがダクネスに掌底をするのを見ていたカズマは背後から切ろうとしたが、躱されてしまい、背中を蹴られてしまった。ダクネスは急いでカズマの所に向かいカズマの手を取り、立たせた。

 

「立てるか、カズマ」

 

「いてて、ああ大丈夫だ」

 

「カズマ、ダクネス!後ろ!」

 

「「ッ!?」」

 

アクアの声を聞いたカズマとダクネスは急いで後ろを向くと、ヴェッターに首を掴まれヴェッターの能力で体を焼かれた後に投げ飛ばされた。アクアとめぐみんは急いでカズマとダクネスの傍に行った。

 

「あちちちちちちちっ!?『フリーズ』、『フリーズ』!」

 

「カズマ、ダクネス!?大丈夫ですか!?」

 

「ああ、問題ない。むしろ、おかわりが欲しいくらいだ!」

 

「熱そうですねえ。ならこちらをどうぞ」

 

ヴェッターがそう言うと、冷気をカズマ達の方へ放出しすると地面を凍らしながらカズマ達に迫っていった。カズマは近くにある岩を見た。

 

「あの岩に隠れるんだ!急げ!」

 

カズマがそう言うと走り出した。その後をアクア達もついて来て皆が岩陰に隠れると冷気は岩のおかげでカズマ達は助かったが、その周囲は凍っていった。

 

「わわわわわわっ!?この後はどうするの!?早く次の手を考えて!早く!!」

 

「うるせえ!今考えてるから黙ってろ!」

 

「考える暇を与えるとでも?」

 

ヴェッターはそう言うと、自身の周囲から何初もの雷を同時に放った。その雷はカズマ達が隠れている岩を少しづつ破壊していった。

 

「これだけの能力を同時に発動するなんて………!」

 

「あわわわわわっ!?どーするの!?ねえ、カズマさん!?どーするの!?」

 

「ああ、もうクソ!!『狙撃』!」

 

カズマがヤケクソ気味に何発か矢を射るが、ヴェッターは片手で払うと竜巻を発生させてカズマ達に放った。竜巻はカズマ達を巻き上げて、それぞれ別方向に飛ばした。

 

「私は人と能力は惹かれ合うと思っています。グロウキメラの能力では満足できない私は多彩な能力が使える、気象を操る能力を手に入れました。………だが、まだ足りない!!」

 

「「「「ッ!?」」」」

 

「実験の末、私は様々なモンスターの能力を取り込む事で進化できるようになりました。そこで、私はある手段を使って進化する方法を見つけました。例えば………」

 

そうヴェッターが言うとカズマの方に手を向け。

 

「『スティール』」

 

そう唱えるとカズマの弓と矢を奪った。ヴェッターは弓と矢を捨てた。

 

「なっ!?」

 

「この様に冒険者のスキルも使える様になりました。あと私はウィザード、プリースト、クルセイダーなどのスキルを手に入れました」

 

「どうなっているんだ?あいつの言う通りならモンスターの能力を取り込んで手に入れたんだろ?でも、そう都合よくスキルを持っているモンスターがいるのか?………ッ!?まさか!?」

 

「やはり、あなたはあの女性達より知力が高いようですねえ、カズマさん?あなたのご明察通り、冒険者をモンスターに変えたんですよ。この宝石を使ってねえ」

 

「「「ッ!?」」」

 

ヴェッターが宝石を取り出して、そう言うとアクア達は息を呑んだ。

 

「動物や適合率が低いと倒された時に放出され、砕けてしまいますが。それも実験の末に解決しました。宝石を埋め込むと、冒険者は命と力を宝石に吸われて死にモンスターに変わる。そして吸い尽くした宝石は私が使用できる様になった後に転移の術式が発動して、私の下に転移する。………私は、それが欲しいだけなんですよ」

 

「ふざけるな!!もうこれ以上お前の好きにはさせない!!」

 

「無理ですよ。あなたの実力ではねえ『ライトニング』」

 

ヴェッターがダクネスに手を向け、唱えると雷がダクネスに当たり、後方に飛ばされた。

 

「ぐわあ!!」

 

「ダクネス!?」

 

「ですが、冒険者の能力だけでは満足できなくなってきた時に私は素晴らしいのを見つけました。死神が使っている魔法です」

 

「なっ!?」

 

「あの魔法は素晴らしい!あの魔法が手に入れる事ができれば、私はさらなる高みに到達する事ができる!ですので、あなた達をモンスターに変え、動揺して隙を作った死神を倒して、死神の力を奪おうと思いましてねえ。一緒に旅をしていた紅魔族を痛めつけても効果が薄かったのでねえ」

 

「なっ!?今なんて言いました!?あなた、ゆんゆんに何かしたんですか!!」

 

ヴェッターの言葉にめぐみんはそう言った。

 

「うん?あなたはもしかして彼女の友人ですか?ええ、彼女と戦いました。でも、彼女も実力不足でしたねえ。だから右腕を簡単に切断されるんですよ」

 

「ッ!?よくも、ゆんゆんを!!」

 

ヴェッターの言葉を聞いためぐみんはそう言うと、爆裂魔法の準備を始めたが、ヴェッターが一瞬で近づき、めぐみんの顔を殴った。めぐみんは地面を何回も跳ねながら吹っ飛ばされた。

 

「めぐみん!?」

 

「………おかしいですねえ。紅魔族なのに他の魔法を使わずにネタ魔法を使おうとするなんて………。まさか、あなたはネタ魔法しか使えないのですか?はは、あははははは!これは傑作だ!魔力が高い紅魔族がネタ魔法しか使えないとはねえ!そんなネタ魔法しか使えない大馬鹿者が私に勝てるはずがない!先にあなたから始末してあげましょう!」

 

そうヴェッターが言うと、雷雲を作り出した。

 

「………あと少し………、あと少しさえ時間があれば爆裂魔法であんな奴………!」

 

そうめぐみんが悔しそうに涙を流しながら言った。それを見ていたカズマは何か少し考えていた。そのカズマの近くにアクアとダクネスが来た。

 

「ど、どうしよう!?カズマさんどうしよう!?」

 

「このままではめぐみんが………!」

 

そうアクアとダクネスが言っている時にカズマが静かに言った。

 

「アクア」

 

「えっ?な、何っ?」

 

「俺に何かあったら回復魔法を頼む」

 

「えっ?………ッ!?」

 

カズマの言葉に、普段、空気を読まないアクアが察し、カズマの右腕を掴んだ。アクアのその行為にダクネスも察し、カズマの左腕を掴んだ。

 

「何、考えてんのカズマさん!?もっと他にも方法があるから考えてよカズマさん!?」

 

「もう、これしか方法が無いんだ!!」

 

「止めろ………、止めてくれカズマ!!」

 

そう言っているアクアとダクネスを振りほどき、カズマはめぐみんの方へ走った。

 

「無駄な抵抗です。この攻撃は防げない!」

 

「めぐみん!爆裂魔法の準備をしろ!」

 

「えっ?カ、カズマ?」

 

「いいから、早く準備しろ!」

 

「りょ、了解です!」

 

めぐみんはカズマに言われた後、再び爆裂魔法の準備を始めたが、雷雲がゴロゴロと鳴り始めた。

 

「もう遅い!終わりだ!!」

 

そうヴェッターが言うと、雷がめぐみんに襲い掛かるがカズマがめぐみんの前に出て雷をその身に受けた。カズマは体が焦げ、めぐみんの近くまで飛ばされた。

 

「何っ!?」

 

「カ、カズマああああああああああああああああ!!」

 

ヴェッターはカズマの行動に驚いていた。めぐみんはカズマの傍に行こうとすると、ボロボロの状態のカズマが言った。

 

「………や、れ………、めぐ、みん………」

 

「ッ!?うぁあああああああああああああああ!!『エクスプロージョン』ッッッッ!!!」

 

カズマの言葉にめぐみんはそう唱えると、ヴェッターに爆裂魔法が直撃した。




次回は新キャラを出そうと思います。


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この凶敵に剣姫を!

今回は新キャラが出ます。


「………は、はは………、ざまあ、み………」

 

めぐみんの爆裂魔法はヴェッターに直撃すると、大爆発を起こした後、めぐみんは倒れるのをカズマは見た後、そう呟いた後に気を失った。

 

「カズマ!?しっかりしてください!アクア、カズマの治療をお願いします!早く!」

 

「任しなさい!それに、たとえ死んでも何度でも蘇らせるわ!」

 

「その度にカズマは死ぬ事になるのか?できれば死なない様に私達が支えるべきでは………」

 

そうアクアとダクネスがカズマを治そうと急いで向かっている時だった………。

 

「………………フフフ」

 

「「「ッ!?」」」

 

ヴェッターがいた場所から笑い声が聞こえ、アクア達はそこを見ると無傷の状態のヴェッターがいた。

 

「倒せてないじゃないっ!?爆裂魔法をまともに受けたのにっ!?」

 

「それどころか、全くの無傷だと!?」

 

「そ、そんな!?」

 

「やはり、この程度ですか。魔王軍の幹部なら十分な威力でしょうが、私を倒すには連発ぐらいしていただけませんかねえ。………しかし、まさか自らを犠牲にするなんてねえ。この男を野放しにすると後々厄介になる。今の内に始末しますか」

 

爆裂魔法を受けて、無傷の状態のヴェッターを見てアクア達は驚いていると、ヴェッターはそう言った後、カズマの方に歩き始めた。

 

「させるか!」

 

「ダクネス!?ってうわあ!?」

 

「ッ!?」

 

ダクネスがヴェッターを止めようと向かっていたが、アクアの声を聞いて急いで後ろを向くとアクアの所にだけ物凄い量の雨が降っていた。

 

「えっ!?どうなっているんですか!?アクアの所にだけ雨が降っています!?」

 

「私がいくら水の女神だからって雨が私の所にだけ降るのはおかしいわね?あっ!ひょっとして私の女神としてのランクが上がったのかしら!」

 

「………あなたがバカだという事が分かりました。それも私の能力の一つです。足元を見てみてください」

 

「えっ?………ッ!?」

 

ヴェッターの言葉を聞いて、アクアは自分の足元を見ると水が物凄い速さで溜まり出しだ。

 

「えっ!?ちょっと待って!?このままじゃ溺れ………ごぼぼ!?」

 

「ア、アクア!?」

 

「アクア!?………貴様!!」

 

「人の心配をしている暇はありませんよ。………フッ!」

 

ヴェッターがそう言うとダクネスの周りに雷雲を発生させた。

 

「あなたは防御力が異常に高い。ですが、この攻撃は耐えられない!」

 

ヴェッターがそう言うと、ダクネスの周りの雷雲から雷が放出された。ダクネスは何とか耐えようとしたが、雷の威力が高過ぎて耐えられずに悲鳴を上げた。

 

「ぐっ!ああっ!あぁあああああああああああああああ!!」

 

「ダクネス!?」

 

「………さて、これで邪魔者はいなくなりましたね」

 

ヴェッターはそう言うと、カズマの近くまで行くと宝石を取り出した。

 

「さて、まずは一人」

 

「ッ!?や、止めてください!?」

 

「あなたは仲間思いのある方ですねえ。安心してください。次はあなたをモンスターに変えてあげますよ。では、カズマさん。我が野望の糧となれ!」

 

「や、止めろおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

ヴェッターが宝石をカズマに埋め込もうとするのを見ていためぐみんが叫んでいる時だった。バシャっと音が聞こえ、ヴェッターが音が聞こえた方を見ると、雨が止んでいてアクアが咳込んでいた。

 

「けほけほっ!もう、どうしてくれるのよ!!水飲んじゃったじゃない!!」

 

「………えっ?」

 

「バカな!?一体どうやって脱出を!?」

 

「知らないわよ。何かチラッと黒いのが見えたら雨が吹き飛んでいたの」

 

「何っ?」

 

アクアがそう言った後、ダクネスを攻撃していた雷の音が止んだ。ヴェッターは急いでダクネスの方を見ると、雷雲が消え、ダクネスが横たわっていた。

 

「はぁ………、はぁ………」

 

「な、何が!?一体、何が起こっている!?」

 

ヴェッターがそう言っていると、カズマが倒れていた場所に黒いのが現れるとヴェッターは急いで視線を戻すが、戻した時には既にカズマとめぐみんが消えていた。

 

「なっ!?」

 

「大丈夫ですか?」

 

「ッ!?」

 

ヴェッターが驚いていると、離れた所からそう声が聞こえ、ヴェッターは声が聞こえた方を見ると黒いコート、シャツ、ショートパンツ、ニーソに背中に片手剣より少し長い黒剣を装備した黒髪のサイドポニーの女性がいた。

 

「あ、あの………」

 

「魔力切れで動けない様ですね。ですが、あなたよりこちらの男性が危ないので少し待っていてください」

 

女性がそう言うと、一瞬姿が消え、現れるとアクアとダクネスを抱えていた。

 

「ッ!?」

 

「えっ!?どうなっているの!?」

 

「そんな事よりアクア!お願いします!カズマとダクネスを治してください!」

 

「わ、分かったわ!」

 

「では、女の子にはこのMP回復のポーションを飲ませてください。では行ってきますね」

 

「行くってどこに?」

 

「あのモンスターを排除します」

 

そう言って女性は消えると、ヴェッターより少し離れたところに現れた。女性は装備していた黒剣を抜いた。

 

「私を排除するか………、いい気にならないで貰えますか?あなたはどうやら瞬間移動ができるみたいですねえ。興味深いですが、あなたは私の楽しみを台無しにした。その報いは」

 

そうヴェッターがそう言っていると、女性が喉元に剣を向けていた。

 

「ッ!?」

 

「………私の楽しみですか。その楽しみとやらがあの人達を傷つける事に関係しているのですか。なら、私はその楽しみとやらを全否定してあげます」

 

そう言って女性は離れると。

 

「それが、私があなたと戦う理由です。それにあなた程度だったら私だけで十分です」

 

「………ク………クククククク………!ほざけぇ!!この様な奇跡は一度だけ、二度目はないぞ小娘!!」

 

剣を向け女性はそう言うと、ヴェッターがそう言い無数の雷を放出したが女性はその攻撃を物凄いスピードで躱して突っ込んだ。ヴェッターは何度も攻撃し続けるがすべて躱された。

 

「(何だっ!?この女の速さは!?私の攻撃が全く当たらない!?)」

 

ヴェッターはそう思っていると、女性が一瞬消えると、ヴェッターの周りに無数の女性の残像が発生した。ヴェッターはそれに驚いていると。

 

「どうしました?ついて来れませんか?まだ速くできるのですが………」

 

「調子に乗るなっ!!」

 

ヴェッターがそう言うと、自分の周りに竜巻を発生させて女性を空中に巻き上げると、女性の周りに雷雲を発生させた。

 

「この攻撃は躱せない!黒焦げになるがいい!!」

 

そう言ってヴェッターは女性の周りの雷雲から雷が同時に放出したが、女性はその攻撃を物凄い速さで全て叩き切った。

 

「バカな!?全ての攻撃を剣一本で!?」

 

その後、女性は消えると。

 

「奇跡は一度でしたよね。では二度目は何ですか?」

 

「ッ!?しまっ!?」

 

ヴェッターの背後に現れて、そう言った。ヴェッターは急いで振り返るが、女性が黒剣でヴェッターの腹部を貫いた。

 

「ゴフッ!?お、おのれ………!」

 

「これで、終わりです」

 

そう言うと、女性は黒剣に魔力を溜めるが………。

 

「うぉおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

「ッ!?」

 

ヴェッターが自分の周りに雷を何発も落とした。女性は黒剣を抜き、離れた。

 

「許さん!!許さんぞ!!いつか必ず、貴様を私の手で塵にしてくれる!!」

 

ヴェッターはそう言うと、霧を発生させた。霧が消えた頃にはヴェッターの姿は消えており、それを見た女性は黒剣を背中に装備した。

 

◆◆◆

 

「いやー、助かったよ。ありがとう」

 

ヴェッターの攻撃を受けた俺はアクアに治してもらって意識を取り戻すと女性がヴェッターと戦っている光景だった。戦いが終わると女性が俺達のところに来たので俺はお礼を言った。

 

「いえいえ、皆さんが無事で良かったです」

 

「それにしても、凄い強いな。えっと………」

 

「ああ、そう言えば名乗っていませんでしたね。私の名前はシズクと言います」

 

「俺の名前はカズマだ。よろしくなシズク。シズクはもしかしてソードマスターなのか?」

 

「いえ、私はまだ冒険者ではありません。今は冒険者になるためにアクセルの街に向かっているんです」

 

「そうなのか」

 

「………抜け駆けをした。獣女を懲らしめるためでもありますが」

 

「えっ?」

 

「いえ、何でもありません」

 

俺がそう言っていると、アクア達がシズクと話を始めた。シズクはスレンダーなんだなと思っていると………。

 

「あ、あれ?めぐみん?何でこんな所にいるの?」

 

「どうやら、間に合った様だな。うん?もしかしてシズクか?」

 

背後から声が聞こえ、振り向くとゆんゆんとソウガがいた。俺は声を掛けようとするが、その前にシズクがソウガに抱き着いた。

 

「お久しぶりです。ソウガ先輩」

 

「ああ、久しぶりだなシズク。元気だったか?」

 

「えっ?ソウガはシズクと知り合いなのか?」

 

「ああ、シズクも俺とウィズの後輩だ」

 

「そうなのか、ティアの他にも後輩がいたんだな」

 

「カズマ。私をあの獣女と一緒にしないでください」

 

その言葉に俺は疑問に思っているとシズクはソウガから離れると言った。

 

「あんな獣女と一緒にされるなんて最大の屈辱です。訂正してください」

 

「お前達は相変わらず仲が悪いのか?」

 

「………仲が悪い訳じゃありません。気に入らないだけです」

 

「それを仲が悪いと言うんだ」

 

「あっ、そう言えばティアさんが『ソウガ先輩とウィズ先輩には私の他にも、もう一人後輩がいるんだ。でも、実力は大した事無かったな!胸も無いしな!あはははははは!』って言っていたんですけど………」

 

「………あの女!!」

 

「まあまあ落ち着け。それにしてもティアは何でも直せる能力でシズクは瞬間移動か………。ソウガの後輩は凄いな」

 

「うん?何を言っているんだ?シズクは瞬間移動なんか使えないぞ?」

 

今、何て言いました?

 

「えっ!?でも、一瞬で移動しましたよ?」

 

「ああ、シズクの戦闘を見たのか、それで勘違いしているんだな。シズクのそれはただスピードが速いだけだ。瞬間移動と間違えるほどにな」

 

「あれが、ただ速いだけ!?」

 

俺達は驚いてしまった。ほとんど一瞬で遠くまで移動していたのがただの速力だって事実に。

 

「シズクの能力はシズクの家系だけが使えるモンスター化だ」

 

「モンスター化?」

 

「ああ、魔力で形成したモンスターの仮面を被り、戦闘能力を数倍に向上させる能力だ。多分だが、仮面を被ったシズクの実力は魔王軍の幹部、数人を圧倒するな」

 

「マジか!?………あっ、でもティアが自分には能力が使えないみたいに何かデメリットがあるのか?」

 

「ああ、時間制限がある。しかも魔力の消耗が激しい」

 

「だから、いざという時の切り札にしているんです」

 

なるほど、強い力にはそれなりのデメリットがあるんだなと思っていると、シズクがソウガに話しかけた。

 

「そういえば、ソウガ先輩はどうしてここに?」

 

「ああ、これから紅魔の里に向かうんだ。魔王軍の幹部を討伐するためにな」

 

「そうですか。よろしければ私もついて行っても良いですか?役に立てれるか分かりませんが」

 

「ああ、俺は別に構わない。カズマはどうだ?」

 

「俺も問題ないぞ。むしろ大歓迎だ」

 

「ありがとうございます。役に立てれる様に頑張りますね」

 

そうシズクが微笑みながら言った後、俺達は紅魔の里に向かうために歩き始めた。




次回はやっと紅魔の里に到着します。


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この魔王軍の兵士に死神を!

やっと紅魔の里に着きます。


「めぐみんは、学校生活時代は魔法学でも魔力量においても、常に一番の成績で………。里の人達もこぞって、天才だ天才だって期待してて………。そんなめぐみんが、爆裂魔法しか使えない欠陥魔法使いに成り下がったなんて知られたらと思うと………」

 

「おい、欠陥魔法使い呼ばわりはよしてもらおうか。一応魔法の威力だけならば、間違いなく紅魔族随一なはず。噓偽りなんて言っていない。我が人生のほぼ全てを捧げている爆裂魔法の悪口はやめてもらおう」

 

俺達は森の中で休憩する時にカズマ達からシズクと出会った経緯を聞いた。ヴェッターに襲われ、殺されそうになった時にシズクに助けられた事を聞いた俺はカズマ達に肝心な時にいなかった事を謝罪し、シズクにカズマ達を助けてくれた事に礼を言った。休憩を終え、里へと向かう道すがらめぐみんとゆんゆんが揉めていた。

 

「爆裂魔法の使いどころなんてどこにあるのよ!ダンジョンでは威力が高すぎて崩落の恐れがあるから使えない!よほどの高レベル魔法使いですら、一撃打てばまず二発目は使えない、非効率な魔力消費!唯一の長所の威力にしたって、どう考えたってオーバーキルでしょ!爆裂魔法なんて、誰も取らない、スキルポイントだけをバカ食いするネタ魔法じゃない!」

 

「………言ってくれましたねゆんゆん。言ってはいけない事を言いましたね。この私の名を馬鹿にするよりも、最も言ってはいけない事を言いましたね!」

 

「な、何よ、やる気?勝負なら受けて立つわよ。もうめぐみんには負けないんだから!」

 

ゆんゆんは警戒しながら、めぐみんから距離を取る。めぐみんは、そんなゆんゆんは一瞥すると………!

 

「ソウガ、カズマ。ゆんゆんの恥ずかしい秘密を教えてあげましょう。実は我々紅魔族には、生まれた時から体のどこかに刺青が入っているのですよ。個人によって入っている場所は違うのですが、ゆんゆんの体に刻まれている刺青の場所は、なんと………」

 

「やめて、ちょっとソウガさんとカズマさんに何を言うの!ていうか、何で刺青の場所を知っているのよ!こんなところじゃ爆裂魔法なんて使えないでしょう!?魔法が使えないめぐみんなんて、取り押さえる事ぐらい簡単にできるんだからね!」

 

半泣きのゆんゆんが突っかかっていくが、それをめぐみんはヒラリと躱し。

 

「アクア、支援魔法をください!この子に痛い目見せてやります!」

 

「ひ、卑怯者!めぐみんはやっぱりズルい!昔からずっとズルいっ!」

 

おいおい、あまり大きな声で喧嘩するな。魔王軍に見つかったらどうするんだ。

 

「おい、こっちだ!やっぱりこっちから、人間の声が聞こえてやがる!!」

 

………どうやら、見つかったみたいだ。………はぁ。

 

「おい二人とも、どうやら敵に聞きつけられた様だぞ!そろそろ静かに!」

 

「短気なゆんゆんが、いつまでも大声を出しているからですよ!」

 

「私よりめぐみんの方が短気じゃない!昔から、後先考えずに無鉄砲な事ばかりやらかしたり!ちょむすけだってさっきから、帽子の中から出てこようとしないじゃないの!」

 

「なにおう!!」

 

「二人ともいい加減にしろっ!おいカズマ、お前も何とか言ってやれ!」

 

「おい、そんな事よりも、ゆんゆんの刺青の場所を詳しく!」

 

「お前という奴は!お前という奴は!」

 

「………これはもう戦闘は避けられませんね」

 

「………ああ、そうだな」

 

「見つけた、ここだ!こんなところに人がいるぞー!!」

 

そう言って、耳が尖り、赤黒い肌をした、スリムな鬼みたいなモンスターの悪魔モドキが出てきた。数は二十を超えていた。

 

「紅魔族を二匹見つけた!子供の紅魔族が二匹もいる!今がチャンスだ、大手柄だ!残りは冒険者風の人………げ………ん………」

 

悪魔モドキの一匹がめぐみん達を見た後に俺と目を合わすと、汗を大量に流しながら固まり。

 

「「「ししししし、死神だああああああああああああああああああああああ!!!???」」」

 

そう叫ぶと、体をガタガタと震えながら怯えていた。………まぁ、しょうがないな。

 

「ひぃいいいいいいいいいいいいいいいいっ!?」

 

「嫌だああああああああああああああ!俺はまだ死にたくないっ!まだやりたい事がたくさんあるのにっ!」

 

そう言って涙を流しながら言っている奴もいれば、恐怖で吐いている奴、泡を吹きながら失神している奴がいた。

 

「おおう、これは凄いな」

 

「ソウガを見ただけでこんな風になってしまうとは。私も見習わないといけませんね」

 

「死神?」

 

「………?」

 

ダクネスとめぐみんはそう言い、ゆんゆんとシズクは何が起こっているのか分からない様だった。すると、カズマとアクアが悪魔モドキの前に出た。

 

「おうおう!俺達が死神のパーティーだと知ってて、あんな強気な態度を取っていやがったのか!あん?」

 

「私達がソウガに頼めば、あんた達みたいな悪魔崩れなんか八つ裂きよ?や・つ・ざ・き!分かっているんですかー?そういえば、何かチャンスって言っていたわね?傷ついたんですけど!どうしてくれるのよ!!」

 

「す、すみません!これで許してください!」

 

そう言って悪魔モドキが金が入っている袋を差し出すと、カズマはそれを乱暴に奪って中身を見た。

 

「………別に結構だよ。お前達の命がこの程度なら」

 

「全然足りないんですけど!!何、あんた達の命はこの程度の額なの?なら、もういいわよ!ねえ、ソウガ!こいつら始末して!!」

 

「ま、待ってください!?お願いします!?」

 

「「「「「………うわぁ」」」」」

 

カズマとアクアが悪魔モドキ達を脅迫しているのを見て、俺達は引いていると、突如何もない空間から黒いローブを着た四人の集団が現れた。その人達の魔力の高さと紅い瞳で紅魔族だという事が分かった。魔王軍の兵士が戸惑っていると。

 

「肉片も残らずに消え去るがいい、我が心の深淵より生まれる、闇の炎によって!」

 

「もう駄目だ、我慢が出来ない!この俺の破壊衝動を鎮めるための贄となれえええーっ!」

 

「さあ、永久に眠るがいい………。我が氷の腕に抱かれて………!」

 

「お逝きなさい。あなた達の事は忘れはしないわ。そう、永遠に刻まれるの………。この私の魂の記憶の中に………!」

 

「ちょ………!待っ………!やめっ………!」

 

魔王軍の兵士が何か言おうとしていたが、既に紅魔族の魔法は完成していた。

 

「『ライト・オブ・セイバー』!」

 

「『ライト・オブ・セイバー』ッ!」

 

「セイバーッ!」

 

「セイバーッッ!」

 

次々と叫ぶと同時に紅魔族達は光の剣で魔王軍の兵士を切り裂いていった。その場には魔王軍の兵士の残骸があるだけになった。

 

「叫び声を聞いて、魔王軍遊撃部隊員と共にこんな場所まで来てみれば………。めぐみんとゆんゆんじゃないか。何でこんなところにいるんだい?」

 

「靴屋のせがれのぶっころりーじゃないですか。お久しぶりです。里のピンチだと聞いて、駆けつけてきたのですよ」

 

めぐみんの言葉にぶっころりーという紅魔族は首を傾げた。その後、それぞれ自己紹介を行った。アクアは紅魔族の名乗りを行った。名乗る際に女神だとまた言ったが、紅魔族の人達は全く信じていなかった。ダクネスも紅魔族の人達に期待した眼差しで見られ、名乗ろうとしたが、恥ずかしいのか徐々に声が小さくなっていった。ちなみに、俺とシズクは普通に自己紹介した。

 

「めぐみん、いい仲間で何よりだね。ここからだと里まではまだ距離がある。さあ、案内するよ外の人。テレポートで送ってあげよう!」

 

ぶっころりーはそう言うと、テレポートの魔法を唱えた。視界内がグニャリと曲がると、辺りの景色が一変する。カズマ達が呆然としていると、ぶっころりーが笑顔を見せた。

 

「紅魔の里へようこそ、外の人達。めぐみんとゆんゆんも、よく帰ってきたね!!」

 

◆◆◆

 

里の中央に位置する大きな家。テーブルを挟んでソファーに座る中年の男が、眉間に皺を寄せていた。族長宅の応接間に通された俺達は、目の前の中年の男性事、ゆんゆんの父親に紅魔の里の状況を聞いていたのだが。

 

「いや、あれはただの、娘に宛てた近況報告の手紙だよ。手紙を書いている間に乗ってきてしまってな。紅魔族の血が、どうしても普通の手紙を書かせてくれなくて………」

 

「ちょっと何を言っているのか分かんないです」

 

「………はぁ」

 

族長に即座にツッコむカズマにポカンと口を開けているゆんゆんを見て、俺はため息をついた。

 

「………えっ?あの、お、お父さん?その、お父さんが無事だったのはとても嬉しいんだけど、もう一度言ってくれない?まず、手紙の最初に書いてあった、『この手紙が届く頃には、きっと私はこの世にいないだろう』っていうのは………」

 

「紅魔族の時候の挨拶じゃないか。学校で習わなかったのか?………ああ、お前とめぐみんは、成績優秀で卒業が早かったからなあ」

 

「………。魔王軍の軍事基地を破壊する事もできない状況だって………」

 

「ああ、あれか?連中は、随分立派な基地を作ってなあ。破壊するか、このまま新しい観光名所として残すかどうかで、皆の意見が割れているんだよ」

 

「なあ、ゆんゆん。お前の親父さんを一発ぶん殴ってもいいか?」

 

「いいですよ」

 

「ゆんゆん!?」

 

俺はその光景を見て、もう一度ため息をついているとゆんゆんの親父さんが真面目な表情になると俺に話しかけた。

 

「ところで、ソウガ君。少しいいかな?」

 

「はい?何でしょうか」

 

「君とゆんゆんはどのような関係なのかな?」

 

「どうと言われましても、友人ですが?」

 

「本当かな?それ以上の関係なんじゃないのかな?」

 

「はい?」

 

「お、お父さん!?何を言っているの!?」

 

「前に送ってくれた手紙を読んで、そういう間柄になっているのだと思ったものでね。その確認のためにね」

 

「………すみません。ゆんゆんの手紙の内容を教えてもらってもいいですか?」

 

「ええ、『アクセルの街で友達ができました!』と書かれており、ソウガ君の事が書かれていてね。その手紙にソウガ君の右腕に抱き着いているゆんゆんの写真が同封されていたんだ」

 

そう言って、ゆんゆんの親父さんが写真を出して、机の上に置いた。写真のゆんゆんは幸せそうな笑顔で俺の右腕に抱き着いていた。………確かに、一緒に写真を撮ったが、これは見た感じ………。

 

「………ゆんゆん。これは恋人紹介の写真ですか?」

 

「ち、違うよ!?何を言っているのめぐみん!?」

 

「………すみません。私もそう思います」

 

「シズクさん!?」

 

「あと、送られてくる手紙には『カフェでお話ししました!その時にあーんしてもらいました』など『一緒にクエストに行きました!褒めてもらった時に頭をなでなでしてくれて、凄い気持ちよかった!』など様々な事が書かれており………」

 

「………すみません。色々勘違いさせてしまい、すみません」

 

俺はゆんゆんの親父さんに頭を下げた。親父さんは笑いながら娘の事をよろしく頼むと言った後、何か考えていたが気にしない事にする。その後、ダクネスが首を傾げていた。………どうした?

 

「………ん?すまない、話を戻すのだが、魔王軍の軍事基地は建設されたと言ったな。なら、魔王軍の幹部が来ているというのは………」

 

「ええ、手紙の通り、魔法に強いのが派遣されてきてますよ。ああ、そろそろ来る頃かな。よかったら見ていきますか?」

 

ゆんゆんの親父さんが、気楽に誘ってきた、その時だった。

 

『魔王軍警報、魔王軍警報。手の空いている者は、里の入り口グリフォン像前に集合。敵の数は千匹程度と見られます」

 

「「せっ!?」」

 

カズマとダクネスが驚いている中、俺とシズクと紅魔族の三人と何故かアクアが落ち着いていた。アクアが何か言っていたが無視していると、シズクが話しかけてきた。

 

「ソウガ先輩。魔王軍は千匹程度に対して紅魔族は三百人程度、数ではこちらが不利です。加勢しますか?」

 

「いや、必要ない。俺達は黙って見ていればいい」

 

「分かりました」

 

俺とシズクが話している中、驚きで中腰状態になっているダクネスに、めぐみんが落ち着いた声音で言った。

 

「慌てなくても大丈夫ですよ。ここは強力な魔法使いの集落、紅魔の里です。皆も見ていきますか?」

 

そうめぐみんに誘われ、俺達は紅魔族と魔王軍の戦闘を見るために里の入り口に向かった。




アニメではやっとウォルバクさんが出ますね。どのような声なのか楽しみです。


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この紅魔族に新たな感情を!

紅魔族の少女がある感情に悩まされます。


「あるえ!あるえいるんでしょう!出てきなさい!!」

 

俺達は族長の家を出て、紅魔族と魔王軍の戦闘を見に行ったのだが、千を超える魔王軍に対して五十人の紅魔族が圧倒していた。魔王軍の中にシルビアがいたが何もできずに撤退した。その後、カズマ達はめぐみんの実家の方に向かい、俺とシズクとゆんゆんは例の手紙を寄越したあるえの家に来ていた。ゆんゆんがドアを叩いているとドアが開き、中から蝙蝠の羽型の髪留めに短めの縦ロールの女の子が出てきた。

 

「誰だい?さっきから人の家のドアを何度も叩いて………ってゆんゆんじゃないか。帰って来たんだね。元気だったかい?」

 

そう女の子が言うと、ゆんゆんは女の子の胸倉を掴み揺らし始めた。………はぁ。

 

「な、何だい!?久しぶりに会ったと思ったら、何でいきなり胸倉を掴むんだい!?」

 

「あるえ!!あなたのせいで恥ずかしい思いしたんだからね!!どうしてくれるの!!」

 

「ま、待って!事情が分からないから説明をしてほしい!あと、頭を揺らすのを止めてくれ!」

 

そう女の子が言うと、ゆんゆんは胸倉を離す。

 

「それで、一体どうしたんだい?私がゆんゆんに恥ずかしい思いをさせた?何の事だか分からないんだが」

 

「あの手紙よ!!お父さんの手紙に同封していた、あの手紙のせいで私、ソウガさんに恥ずかしい事を言っちゃったんだから!!」

 

「ソウガさん?もしかして、後ろにいる男の人かな?ゆんゆん、自己紹介するから待ってくれないかな」

 

そう女の子が言うと、女の子がマントをバサッと翻した。

 

「我が名はあるえ。紅魔族随一の発育にして、やがて作家を目指す者!」

 

「ソウガだ。よろしく」

 

「シズクです。よろしくお願いします」

 

「へえ、外の人達がそんな返しをしてくれるなんてね。普通の人は私達の名乗りを受けると微妙な反応するのにね。良い人達だね、ゆんゆん。それで話を戻すけど私の作品がゆんゆんに恥ずかしい事を言わせた?言いがかりは止めてくれないかな。確かに作品にゆんゆんの子供の事は書いたよ?あの作品を真に受けて『子供が欲しい』と言った訳じゃないだろう?」

 

そうあるえが言うと、ゆんゆんはふいっと目を逸らした。

 

「………………」

 

「………えっ、言ってしまったのかい?」

 

「だってだって!お父さんの手紙と一緒に入ってたし!お父さんの手紙の内容が内容だったからしょうがなかったの!!」

 

「………すまなかったね、ゆんゆん。まあ、いい面白話ができたと思って諦めよう」

 

「その原因のあるえが言うの!?」

 

「………って、ちょっと待ってくれないか?確か、私の作品には『魔王軍が恐れ、とてつもない力を持つ男』と書いていたはず。その内容を読んで彼にお願いしたって事は………。君はとてつもない力を持っているのかな?ソウガ」

 

そう言って、あるえは俺に聞いてきた。めんどくさい事になったな………。

 

「そういえば、ソウガさん。魔王軍がソウガさんを見て、死神って言って怯え始めたんだけど?あれは、何なの?」

 

「死神?ソウガは死神って呼ばれているのかい?」

 

「はい。何故かは知らないんですが、ソウガ先輩は死神と呼ばれているんです。ソウガ先輩、すみません。何故、ソウガ先輩は魔王軍から死神と呼ばれているのか教えてくれませんか?」

 

「ああ、いいぞ。俺が何故、死神と呼ばれているか教えてやるよ」

 

俺はそう言うと。神滅魔法の事、魔王軍を殲滅するために旅をしていた事、その時に魔王軍の幹部から死神と呼ばれ始めた事を話した。さすがにウィズの眷属になっている事は話さなかったが、それを聞いたあるえは目を輝かせながら震えていた。

 

「魔王軍が恐れる存在、死神………、私達紅魔族ですら知らず、一つ一つが強力な魔法の神滅魔法………、何という事だ。最高だ!面白い!私は作家として最高のネタを掴んだぞ、ソウガ!今後のために君の魔法を私に見せて欲しい!頼む!!」

 

そう言って、あるえが俺に頼んできた。そう言われても………。

 

「紅魔の里も平和だし、俺の出番は必要なさそうだから諦めてくれ」

 

「そ、そんな事言わないでくれ!?お願いだよ!?」

 

「私、あるえがこんなに必死になる姿を初めて見るんですけど」

 

「そうなのですか?」

 

ゆんゆんとシズクがそう話している中、あるえが涙目でずっと俺を見ている。………はぁ、仕方ない。

 

「………ゆんゆん。紅魔の里に何処か広い場所はないか?」

 

「えっ?紅魔の里を少し出た場所に渓谷があるけど。それがどうかしたの?」

 

「ゆんゆん、シズク。明日、摸擬戦しないか?今の二人の実力を見てやるよ」

 

「「「!?」」」

 

俺がそう言うと、ゆんゆんとシズクは息を呑んだ。あるえは目を輝かせていた。

 

「あ、ありがとう!恩に着る!」

 

「まぁ、俺も今の二人の実力を見て見たかったからな。それで、二人とも良いか?」

 

「はい、私は大丈夫ですよ。むしろ、望むところです」

 

「は、はい!頑張ります!」

 

どうやら、良いみたいだ。………さて。

 

「じゃあ、俺達もめぐみんの家に向かうか。じゃあな、あるえ」

 

「あっ、ちょっと待ってくれないかい?最後に質問したい事があるんだ」

 

「うん?何だ?」

 

俺達はめぐみんの家に向かおうと歩き始めたらあるえにそう言われ、俺達は振り返る。

 

「ソウガ。君は何のためにその力を使うんだい?」

 

「えっ?ソウガさんは冒険者だよ?やっぱり魔王を倒すためなんじゃ………」

 

「ゆんゆん、君の言う事も正しいと思う。だが、私にはそうは見えないんだ。だから、教えて欲しい」

 

「………はぁ」

 

俺はため息を吐くと、俺はあるえに答えた。

 

「そうだ。俺は魔王を倒す事が目的ではない」

 

「えっ、ソウガ先輩は魔王を倒す事が目標だって昔、言っていたはずじゃ………」

 

「確かに、昔は言っていたさ。今は違う」

 

「じゃあ、今の目標は何だい?教えてくれないかい?」

 

「俺は、皆の笑顔を守るために戦っている」

 

「笑顔?」

 

「ああ、俺は誰かが悲しんでいる姿を見たくない。皆の笑顔を守るためなら闇にだって堕ちるさ。その悲しみの原因が何であろうと叩き潰す。魔王でもな」

 

「つまり、君は魔王はただの通過点に過ぎないと、神滅魔法は皆の笑顔を守るための手段に過ぎないと言うんだね」

 

「ああ、そうだ。俺にとっては、あるえ。お前の笑顔も守りたいと思っている」

 

俺がそう言うと、あるえの顔が赤くなる。それとゆんゆんとシズクがむすっとした表情をしていた。どうした?

 

「………ああ、もう!格好いいな君は!そんな事言われたら、私は求婚するしかないじゃないか!!」

 

「はぁ?」

 

俺が疑問に思っていると、あるえが抱き着いてきた。

 

「ソウガ。私は君に惚れてしまった様だ。だから、私と結婚を前提に付き合ってくれないかい?」

 

「何を言っているんだ?冗談は程々にしとけよ」

 

「冗談じゃないさ。君はまるで物語の中の白馬の王子様みたいだ。まぁ、私にとっては本当に王子様なんだが。君が望むならどんな鬼畜な攻めでも受けきってみせるさ」

 

「おい、本当に何を言っているんだ?」

 

「そうですよ。そもそも、ソウガ先輩にはウィズ先輩という方がいますので諦めてください」

 

「いや、俺はウィズと付き合ってないんだが………」

 

俺がそう言っていると、ゆんゆんが乱暴に俺とあるえを引き剝がした。

 

「じゃあ、あるえ。明日になったら私の家に来て。行こう、ソウガさん、シズクさん」

 

「お、おい!ゆんゆん、そんなに腕を引っ張るな!」

 

そう俺は言うが、ゆんゆんは引っ張るのを止めなかった。あるえは何かむすっとしながら俺達を見送った。しばらく、歩いたがゆんゆんは一向に引っ張っていた。

 

「おいこら!ゆんゆん、いい加減にしろ!」

 

「はっ!ご、ごめんねソウガさん!」

 

ゆんゆんはそう言うと、俺の腕を離した。………全く、一体どうしたんだ。

 

「本当にごめんね。無理矢理引っ張ったりして………」

 

そう言ってゆんゆんは落ち込んでしまった。俺はゆんゆんの頭に手を置き、頭を撫でた。

 

「気にしてないから、そんなに落ち込むな。さっきも言ったが俺は誰かが悲しむのを見たくない。俺はゆんゆんの笑顔も守りたい」

 

「ソウガさん………」

 

俺がそう言うと、ゆんゆんは微笑んでくれた。何故か顔は赤くなっていたが、まぁ、元気になってくれて良かった。その後、俺は頭から手を離した。

 

「さて、それじゃあ、めぐみんの家に向かうか」

 

「そうですね」

 

「あっ、そういえばソウガさんとシズクさんは今日、何処に泊まるの?」

 

「できれば、めぐみんの家に泊めてもらいたいがカズマ達もいるから、どこかの宿に泊まろうかと思っている」

 

「だったら、二人とも紅魔の里にいる間は私の家に泊まらない?」

 

「えっ、いいんですか?」

 

「うん、大丈夫だよ」

 

「それじゃあ、お願いするか」

 

「そうですね。ゆんゆん、お願いします」

 

「うん!じゃあ、私はお父さんにソウガさんとシズクさんが泊まる事を伝えに行くから、ソウガさんとシズクさんはめぐみんの家に行って、用事が終わったら私の家に来てね。それじゃあ、失礼します!」

 

そう言ってゆんゆんは家の方に向かった。俺達はそれを見送るとめぐみんの家に向かって歩き始めた。

 

◆◆◆

 

「めぐみん、ソウガだ。いるか?」

 

俺はめぐみんの家に着くとノックしてそう言った。すると扉が開いて、めぐみんが出てきた。

 

「あっ、ソウガ。よく来ましたね。どうぞ、上がってください」

 

「失礼するな」

 

「お邪魔します」

 

俺とシズクがめぐみんの家に上がると、何か視線を感じたので見て見ると、小さいめぐみんがこちらを見ていた。めぐみんの妹か?

 

「………姉ちゃん。その人は?」

 

「ああ、こめっこ。この人は私の冒険者仲間とその後輩ですよ」

 

めぐみんがそう言っているとくぅーとこめっこから音がした。

 

「姉ちゃん!お腹空いた!」

 

「あなた、さっき饅頭食べてたじゃないですか。夕飯まで我慢しなさい」

 

「あぅ」

 

めぐみんがそう言うと、こめっこがシュンとしてしまった。俺はそれを見るとワープゲートを使い、考え事とかで摘まんでいるチョコレートを取り出して、こめっこに差し出した。

 

「良かったら、食べるか?」

 

「いいの?」

 

「ああ」

 

「ありがとう!お兄ちゃん!」

 

こめっこはそう言うと、チョコレートを袋から取り出し、頬張った。俺はそれを見ると視線を戻そうとしたが、床に転がっているある物がチラッと映り、その方向に視線を向けるとマナタイトがあった。

 

「うん?何で、マナタイトがこんなところにあるんだ?」

 

「それ、おとうさんが作ったの!」

 

「はい?」

 

めぐみんの親父さんがマナタイトを作った?どういう事だ?

 

「うん?どうかしたのか?めぐみん、こめっこ」

 

そう思っていると、奥から一人の男が出てきた。俺はその方向を見た後、立ち上がった。

 

「お父さん。こちらも私と一緒のパーティーメンバーのソウガです。後ろにいる女の人はシズク、ソウガの後輩です」

 

「シズクです。よろしくお願いします」

 

「ソウガです。あの、少し尋ねて良いですか?このマナタイトをあなたが作ったと聞いたのですが………」

 

「うん?ああ、そうだ。それは私が作ったものだ。それを仕入れるためにアクセルの街から来る人がいるほどの製品だ」

 

「………そのマナタイトを仕入れた人の特徴を教えてもらってもいいですか?」

 

「ソウガ先輩?」

 

シズクが疑問を浮かべていたが、そんな事、今はどうでもいい。

 

「確か、青白い顔色をしているウェーブのかかった長い茶髪茶色目の美女だったな」

 

完全にウィズだな。という事は、俺達の店が赤字続きなのは………。

 

「あの人は毎回、お金が貯まると業者からマナタイトを買ってくださっている様で助かっているんです。私の所にも来てマナタイトと色々な製品を買ってくださっていますし、本当に良い人ですよ。おっと、そういえば名乗っていませんでしたね。我が名はひょいざぶ」

 

「てめえが諸悪の根源かあああああああああああああああああ!!」

 

「ぐふうううううううううううううううううううう!?」

 

「おとうさああああああああああああああああん!?」

 

「ひょいざぶろおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」

 

俺は思いっきりめぐみんの親父さんを殴り飛ばし、めぐみんとこめっこが叫んだ。

 

◆◆◆

 

「………ふぅ」

 

私はソウガさん達と別れた後、家に戻ってお父さんとお母さんにソウガさんとシズクさんが家にしばらく泊まる事を伝えて、今は自分の部屋で寛いでいた。

 

「………そういえば、何で私、あんなにイライラしていたんだろう」

 

私はソウガさんと出会ってから、ある感情に悩んでいる。ソウガさんと一緒に過ごしていると心が温かい気持ちになったり、ソウガさんが微笑んでくれると胸がドキドキしたり、ソウガさんに会えないと寂しくてソウガさんを思いながら眠りについたりしている。

 

「あるえに悪い事しちゃったな。明日謝ろう」

 

あるえがソウガさん告白した時、私は胸が痛み、見るのが何か嫌だった。だから無理矢理引き剥がしてしまった。あの後、ソウガさんが頭を撫でてくれるとその痛みがなくなり、また温かい気持ちになった。

 

「………この感情は、一体何なんだろう?」




アニメが次で終わりですね。3期があると嬉しいです。


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この死神に剣姫との摸擬戦を!

シズクとの戦闘回です。


「本当に申し訳ございません!」

 

俺はめぐみんの父親のひょいざぶろーさんに土下座をしていた。ひょいざぶろーさんを殴り飛ばした後、カズマ達とめぐみんの母親のゆいゆいさんが急いで駆けつけ、それを見た俺は我に返るとひょいざぶろーさんは気絶しており、ひょいざぶろーさんが先程、目を覚ましたので店の状況を説明した後に土下座をして謝っている。

 

「いやー、あなたが私の製品を仕入れてくれる女の人の幼馴染で店員だとは、いつも感謝しています。ですが、殴るのは感心しませんよ?」

 

「全く、その通りだと思います。申し訳ございません!」

 

「………でも、ソウガの気持ちも分かるんだよなあ」

 

「そうだな。店の赤字続きの原因が目の前に現れたら私でも殴ってしまうかもしれない。父が見合い話を持ち上がる度に殴りに行っている私と同じだ」

 

「ウィズ先輩が冒険者を辞めているなんて………」

 

「色々あったみたいなので、元気出してください」

 

近くでカズマ達がそう話しているが、俺は謝るのに集中する。ちなみにアクアはこめっこに宴会芸を見せていた。その後、俺はワープゲートを使い、ウィズに隠れて酒のつまみとかで食べている、王都から取り寄せた最高級の霜降り赤ガニなどの食材を前に並べ。

 

「気持ちには足りませんが、どうぞお納め下さい」

 

「本当はまだ怒っているが、許そう!母さん、一番良いお茶を!」

 

「家にお茶なんて一種類しかありませんってば!すぐ淹れて参りますので、お待ちくださいね!」

 

ゆいゆいさんがそう言って奥に行くと、お茶を持ってきて俺の前に置いた。俺とシズクは少しの間、めぐみんの家で寛がせてもらった後、そろそろ失礼しようと思い立ち上がった。

 

「カズマ、俺達はゆんゆんの家に泊まらせてもらう。さすがにめぐみんの家に俺達まで泊まらせてもらう訳にもいかないからな」

 

「そうか、じゃあ何かあったらゆんゆんの家に向かうよ」

 

「ああ」

 

「すみませんね、ソウガ」

 

「気にするな、めぐみん。じゃあ、失礼するな。ひょいざぶろーさん、ゆいゆいさん、お邪魔しました。こめっこもまたな」

 

「ばいばい!チョコの人!」

 

さっきお兄ちゃんって言ってたのにチョコの人になってる………。それをあまり気にせずに俺とシズクはめぐみんの家を後にし、歩き始めた。ゆんゆんの家に向かう途中でシズクが話しかけて来た。

 

「ソウガ先輩。少し聞いても良いですか?」

 

「うん?ああ、いいぞ」

 

「ウィズ先輩は何故、冒険者を辞めたんですか?教えてください」

 

「………ああ、いいぞ。俺とウィズに何があったのか教えてやるよ」

 

そう言った後、俺は魔王軍の幹部にかつての仲間が死の宣告を受けてしまった事、ウィズが皆を救うために禁術を使いリッチーになった事、ウィズが魔王軍の幹部になった事を話した。

 

「………なるほど、そんな事があったんですね」

 

「それでお前はウィズがリッチーで魔王軍の幹部だと聞いたが、どうするつもりだ?」

 

「………どうもしませんよ?魔王軍の幹部になっても私の大切な先輩です」

 

「………そうか、ありがとうな」

 

そう言って俺はシズクの頭を撫でるとシズクは気持ちいいのか笑みを浮かべた。ゆんゆんの家に着き、俺はノックするとゆんゆんが迎えてくれ、ゆんゆんの家族と一緒に夕飯をとった。

 

◆◆◆

 

「さて、行くか」

 

「は、はい!」

 

「分かりました」

 

翌日、俺は朝食をとった後にそう言うとゆんゆんとシズクはそう言った。何故かめぐみんもゆんゆんの家にいたが朝食前に家に帰って行った。俺達は家を出ると、あるえが既にいた。

 

「あっ、おはようあるえ。昨日はごめんね」

 

「やあ、おはよう。いや、気にしてないからいいさ。シズクもおはよう」

 

「おはようございます」

 

ゆんゆんが昨日の事を謝ると、微笑みながらあるえはそう言った後、シズクに挨拶した後に俺に抱き着いた。

 

「おはよう、愛しのソウガ。やはり君の温もりは良いな」

 

「………お前、まだそんな事を言っているのか?」

 

「何度でも言えるさ。君の事が好きだ、大好きだ。ふふっ、恋は盲目とはよく言うね。もう、私は君に夢中の様だ」

 

「………はぁ」

 

あるえがそう言うと俺はため息をついた。近くではゆんゆんとシズクがまたむすっとした顔をしている。

 

「それじゃあ行こうか。渓谷の場所まで案内するよ」

 

そう言ってあるえが俺の右腕に抱き着きながらそう言った。俺は諦めて渓谷に向かおうとするが左腕にゆんゆんが抱き着いた。

 

「………ゆんゆん?」

 

「えっ、えっと、他の人が誤解すると思いますので私も抱き着いた方が良いと思ったのでこれで行きましょう!」

 

「いや、女を侍らせてると勘違いされると思うんだが………」

 

「わ、私は何処に抱き着けば………!」

 

「シズク、お前も冷静になれ。まあいい、行くぞ」

 

そう言って俺達は歩き始めた。里を離れ、しばらく歩いていると渓谷に辿り着いた。………これぐらいなら、少し暴れても問題ないな。

 

「さて、渓谷に着いたし誰からやるんだ?」

 

「私からで良いですか?ソウガ先輩」

 

「別に構わないぞ。シズク」

 

「では、これを」

 

そう言ってシズクはコートから魔道具を取り出し、俺に渡した。

 

「懐かしいな。この魔道具」

 

「ソウガさん?そのアイテムは何?見た事が無いんだけど」

 

「このアイテムの名はライフ・サブスティタット。自分の受けたダメージをこれが吸収し、限界が来るとアラームが鳴るアイテムだ。摸擬戦とかで使われる代物だ」

 

「そうなんだ。でもそのアイテム今まで見た事ないよ?王都にあるの?」

 

「いや、このアイテムは俺達の故郷にしか無いアイテムだ」

 

「私達の故郷は独立国家ですからね。私達の故郷にしか無いアイテムもたくさんあるんですよ。ではソウガ先輩、そろそろ」

 

「ああ、じゃあやるか。あるえ、お前が頼んだ事だからきちんと見ろよ?」

 

「ああ、任せてくれ。君の格好いいところはきちんと見届けるよ」

 

「じゃあ、行くか」

 

「はい」

 

そう言って俺達は両足に魔力を込め、渓谷の底に向かってジャンプした。ゆんゆんとあるえは驚いていたが気にしない事にした。俺とシズクは着地するとお互い距離を取り、シズクは黒剣を抜いた。

 

「では、お願いします。ソウガ先輩」

 

「ああ、来い」

 

◆◆◆

 

ソウガがそう言うと、シズクは自分の顔に手を当てると魔力がシズクの顔に集まり、髑髏の様な仮面が出現しシズクの顔を覆った。

 

「いきなりか」

 

「手加減できる相手では無いので」

 

シズクがそう言うと、ソウガに向かって黒い斬撃を飛ばす。ソウガは右手を前に出して魔法陣を展開した。

 

「『シールド・アイアス』」

 

ソウガがそう唱えると七枚の花弁の様な光の盾が展開し、黒い斬撃を防いだ。その後、爆発するとソウガの周りに土煙が発生しソウガの姿が見えなくなったが、土煙の中から三本の矢が射出され、シズクが矢を弾き飛ばすとソウガが近くの空中に現れ双剣を作るとシズクの肩を切った。

 

「ぐっ!このっ!」

 

シズクがソウガを切ろうと剣を振るが、ソウガはその攻撃を後方に飛んで躱した。その後、二人の姿が消えるとお互いの斬り合いが始まった。ソウガは足払いを行ったがシズクに躱され剣で攻撃をされたがソウガはその攻撃を躱し、双剣で攻撃を行ったが双剣が壊れてしまった。シズクはそれを見ると剣を振り下ろすが、ソウガはそれを躱して空中に移動して剣を連続で作り出し、それをシズクに投げつけた。シズクはその攻撃を物凄い速さで避けるが、ソウガに先読みされてしまい移動した先に剣を投げつけられるが何とか弾いた。その後、ソウガは地面に着地すると双剣を再び作った後、魔法陣を展開した。

 

「『クリエイト・オーバーロード』」

 

ソウガがそう唱えると、双剣が巨大な剣へと変化し、再びシズクと斬り合いを始めた。斬り合いを少しの間行うとソウガは飛び上がり双剣を思い切り叩き付け、シズクはそれを受けたが地面はひび割れ土煙が発生した。土煙の中でシズクは黒剣に魔力を込めるのをソウガは感知すると、シズクが黒い斬撃を飛ばすのと同時に双剣を投げつけ、双剣が斬撃に当たると爆発が起こり、近くにいたシズクは煙で見えなくなった。

 

「す、凄い………」

 

「二人とも凄いな。この後のゆんゆんとの摸擬戦も楽しみにしているよ」

 

「わ、私にはあまり期待しないで!?あんな凄い事はできないから!?」

 

「えっ?フリかな?」

 

「違う違う!?フリじゃないから!?フリみたいに聞こえるけどフリじゃないから!?」

 

上でゆんゆんとあるえが話をしていたがソウガは無視して弓と剣を作ると、剣を矢の形状に変化させてシズクがいる方面に弓を引いた。シズクは土煙を剣で払うとソウガが弓を引いてるのを見えて回避しようとするが見ていたソウガは矢を射った。シズクはその矢を顔スレスレのところで避けたが仮面の一部が割れた。

 

「あれが神滅魔法か。武器を次々と魔力で作り上げるなんて凄いな」

 

「あれはまだそんなに強くないらしいよ?あれより強力な魔法が存在するって言っていたし、ソウガさんの後輩にティアさんっていう人がいるんだけど神滅魔法には八つの奥義があるって言っていたよ?」

 

「あれより強力な魔法があるのかい?それは良いネタになるね。次の一撃で決着をつけるみたいだし見れるかな?」

 

「えっ?………あっ!?」

 

あるえの言葉を聞いたゆんゆんがソウガ達の方へ視線を向けるとシズクが黒剣に魔力を込めると黒剣から黒い魔力が放出していた。

 

「久しぶりに見たな。刃先から超高密度の魔力を放出し斬撃を巨大化させて飛ばす技。確か名は黒月だったよな?」

 

「はい、私はソウガ先輩の神滅魔法みたいに色んな技は持っていません。私にできる事は一つの斬撃に全ての魔力を込める事だけです」

 

「………そうか、だったら俺も応えないとな」

 

ソウガはそう言うと、目の前に光が集まり金色の剣へと姿を変える。ソウガはそれを手に取ると二人同時に剣を振り下ろした。

 

「『黒月』ッッ!!」

 

「『イマージュカリバーン』ッッ!!」

 

そう二人が唱えると黒い斬撃と光の斬撃が放たれ、斬撃が衝突するがソウガの光の斬撃が徐々に黒い斬撃を押し始め、光の斬撃がシズクを飲み込みとシズクの仮面が割れシズクがいた場所に光の柱ができた。光が消えるとシズクは倒れており、シズクが持っていた魔道具からアラームが鳴っていた。それを見たソウガはシズクの近くに寄り手を差し伸べた。

 

「無事か?」

 

「はい、大丈夫です」

 

シズクがソウガの手を取ると立ち上がり、服に着いたススを払った。

 

「さすがです、ソウガ先輩。私の完敗です」

 

「シズクも強くなったな。驚いたぞ」

 

ソウガはそう言うとゆんゆん達の方を見た。

 

「どうだ?満足したか?」

 

「凄い凄い!さすがは私のソウガだ!最後のやつは特に凄かった!良いネタになる!」

 

「二人とも凄かったです!」

 

「そうか、それは良かった。じゃあ、次はゆんゆんだな」

 

「は、はい!じゃあロープを使って降りますので待っててください!」

 

そう言ってゆんゆんは持ってきた荷物からロープを取り出そうとしていると、あるえがゆんゆんに話しかけた。

 

「えっ、ゆんゆんもソウガやシズクみたいにジャンプすれば良いんじゃないのかい?」

 

「死んじゃうよ!?何を言っているの!?」

 

「えっ、だってゆんゆんはソウガに鍛えられたんだろう?同じ事ができるんじゃ………?」

 

「できないよ、あんな凄い事………、だから私はロープを使って降りるの」

 

「別に構わないけど、見られるよ?」

 

「えっ?何が?」

 

「………自分の服装を確認しなよ。スカートだからパンツ見られるよ?」

 

「ッ!?」

 

そうあるえに言われ、ゆんゆんは顔を真っ赤にしてスカートを押さえる。ソウガはそれを見るとため息をつき、シズクと一緒に渓谷上に転移すると、ゆんゆんを抱えた。

 

「えっ!?ソウガさん!?」

 

「これで良いだろ?じゃあ、飛ぶからしっかり捕まっていろよ」

 

「えっ!?ちょっ、ちょっと待って!?転移すれば早いでしょ!?」

 

「摸擬戦するから無駄な魔力を使いたくないんだ。じゃあ行くぞ」

 

「ちょっと待って!?心の準備があああああああああああああ!?」

 

「次は私にしてくれ!ゆんゆんだけはズルい!」

 

「何を言っているんですか?諦めてください」

 

ソウガはゆんゆんを抱えたまま底に向かってジャンプするとゆんゆんは涙目で叫んだ。それを見ていたあるえは羨ましそうにそう言うと、シズクにそう言われた。




五月に新刊が出る様なので楽しみです。


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この死神に紅魔族との混浴を!

ソウガがカズマの事をどう思っているのかが分かります。


「見事に瞬殺だったね。ゆんゆん」

 

「分かってるから、それ以上言わないで!ショック受けてるんだから!」

 

あの後、ゆんゆんと摸擬戦を行ったのだが、ゆんゆんは上級魔法を臨機応変に使いながら戦っていたのだが、どれも俺にダメージを与える事は出来ずに摸擬戦は終わった。………まぁ、頑張ったと思うがな。

 

「じゃあ、私は今回のネタを作品に取り入れようと思うから先に帰らせてもらうね。ソウガ、作品が完成したら見てくれるかい?」

 

「ああ、楽しみにしてるぞ」

 

「そ、そうか!じゃあ、失礼する!」

 

そう言ってあるえは家に帰って行った。俺達もゆんゆんの家に帰ろうと思っているとゆんゆんがむすっとしていた。………どうした?

 

「何で不機嫌になっているんだ?ゆんゆん」

 

「別に何でもないです」

 

「シズク。俺はゆんゆんに何かしてしまったのか?」

 

「自分の胸に手を当てて考えた方が良いですよ?」

 

シズクにそう言われ、俺は胸に手を当て考えたが全く分からない。歩きながら考えているとゆんゆんが何かに気づいた。

 

「あれ?」

 

「うん?どうしたんだ、ゆんゆん?」

 

「めぐみんの家の前にカズマさん達が何か話しているみたいで。どうしたんだろう?」

 

そうゆんゆんが言っていたので俺はめぐみんの家を見ると、カズマ達が話をしていた。俺達はカズマ達の方へ向かった。

 

「何を話しているんだ?」

 

「あっ、ソウガ。見かけないと思ったらゆんゆんとシズクと一緒にいたんですね。実は、魔王軍がまた攻めてきたんです」

 

「えっ!?大丈夫だったの、めぐみん!?」

 

「ええ。ダクネスのおかげで何とかなりました」

 

「そうですか、凄いですね。ダクネス」

 

「………あ、ああ。と、当然の事をした………までだ………」

 

嘘だな。こいつの事だ、自分の快楽のために魔王軍と対峙していたのだろう。そう思っているとこめっこが俺のコートを引っ張った。

 

「ねえねえチョコの人!このお姉ちゃん凄いんだよ!弓や魔法を受けてもぴんぴんしてた!」

 

「………そうか。それとな、こめっこ。俺はチョコの人じゃないぞ?俺の名前はソウガだ」

 

「ソーガ?」

 

ちょっと違う感じがするが、まあいいか。

 

「ああ」

 

「わかった!ソーガお兄ちゃん!」

 

良し。何とか、チョコの人からお兄ちゃん呼びに戻したぞ。俺はカズマと話をしようとカズマの近くに寄った。

 

「カズマ。大事な時にいなくて、すまない」

 

「いや、気にしなくていいぞ?他の紅魔族の人達もいたし」

 

「ソウガ、聞いてください。この男、名乗る際に怖くなったのか、土壇場でヘタレてしまってミツルギの名前で名乗ったんですよ」

 

「………はい?」

 

「お、おい!?めぐみん、余計な事言うな!」

 

「事実じゃないですか」

 

………何でヘタレる必要なんかあるんだ?

 

「カズマ。お前はベルディア、バニル、ハンス討伐にデストロイヤーを撃破してるんだぞ?確かに、止めを刺したのはお前じゃないがこれは凄い事なんだぞ?まぁ、バニルは死んでいないが魔王軍の幹部を次々と討伐する事は簡単じゃないんだぞ?なのに何でヘタレる必要なんてあるんだ?肝心な時にいないミツルギなんかよりお前の方が凄いのに何でミツルギの名前で名乗るんだ?お前の指示のおかげで、俺も戦いやすいし、アクア達も魔王軍の幹部と良い勝負してるんだぞ?もっと自信を持っても良いのに何で土壇場でヘタレるんだ?なあ、何でだ?俺には分からないから教えてくれないか?俺は、俺達のパーティーメンバーのリーダーは良い指示を出してくれる凄い奴だって言いたいくらいなのに何でだよ?」

 

「や、止めてくれえ!?今はその信頼が凄く心に刺さる!?」

 

そうカズマは顔を真っ赤にしながら顔を押さえた。………どうした?

 

「それで、この後はどうするんだ?シルビアと戦うのか?」

 

「何言ってんだ、明日には帰るぞ?紅魔族の人達で十分なのに何で無理して戦う必要なんて無いだろ?」

 

「………全く、お前という奴は。じゃあ、俺が今夜にでもシルビアを始末してくる。その方がカズマも良いだろ?」

 

「おおっ!そいつは良い!頼んだソウガ!」

 

「じゃあ、私もお手伝いしますね」

 

そう声が聞こえると、近くにシズクがいた。

 

「何だ?聞いていたのか、シズク」

 

「はい。それで大丈夫でしょうか?」

 

「ああ、いいぞ。じゃあ今夜、グリフォン像前に集合な」

 

「分かりました」

 

「じゃあ、俺達は失礼するな。ゆんゆん行くぞ」

 

「は、はい!」

 

「ソウガ、シズク!任せたぞ!」

 

「ああ」

 

「お任せください」

 

そう俺達は言うとカズマ達と別れて、ゆんゆんの家に向かった。

 

◆◆◆

 

その日の夜、俺達は夕飯を終えた頃、シルビアを討伐に行くまでまだ時間があったのでのんびりしているとゆんゆんの親父さんが来た。

 

「ソウガ君」

 

「はい、どうかしましたか?」

 

「風呂が沸いたので、今から入ってくるといい」

 

「分かりました」

 

俺はゆんゆんの親父さんからそう言われ、俺は脱衣所に向かった。脱衣所に着き、服を脱いで浴場の扉を開けた。

 

「………えっ?」

 

「………はい?」

 

そこには湯船に浸かっているゆんゆんがいた。………ちょっ!?

 

「ソ、ソウガさん!?」

 

「ゆんゆん!?す、すまない!?」

 

ゆんゆんは俺を見ると急いで体を隠し、俺は急いで扉を閉めた。俺達は扉越しに話した。

 

「な、何でゆんゆんがいるんだ!」

 

「わ、私はお父さんからお風呂に入るように言われて入っていたの!」

 

「はぁ!?俺はそのゆんゆんの親父さんに風呂に入るように勧められたんだぞ!?あとゆんゆんの服も無かったぞ!?」

 

「ええっ!?す、すみません!ちょっとお父さんに文句言いますので!」

 

そうゆんゆんが言うと、扉が開き、ゆんゆんがタオルを巻いて出てきた。そのままゆんゆんは脱衣所の扉を開けようとするが………。

 

「『ロック』!」

 

「………えっ?」

 

ゆんゆんの親父さんの声が聞こえ、ゆんゆんが扉を開けようとするが全然、開かなかった。ゆんゆんは扉をドンドンと叩きながら扉越しにゆんゆんの親父さんと話を始めた。

 

「ちょっ、ちょっと!?お父さん、開けて!?何で魔法で開かない様にするの!?」

 

「いや、すまない!間違って魔法を使ってしまった。すまないがソウガ君と一緒に風呂に入ってくれ!」

 

「何を言っているの!?そんな恥ずかしい事できないよ!?いいから早く扉を開けて!」

 

「すまない、魔力切れの様だ!体が指一本動かせない!」

 

「分かりやすい嘘は止めて!?いいから、開けて!」

 

「本当よ、ゆんゆん。お父さんは魔力切れで動けなくなっているわ。私はお父さんを運ぶから、二人でゆっくりしなさい。じゃあ失礼するわね」

 

「お母さん!?もしかして、お母さんもグルなの!?ちょっと、お願いだから開けてえええええええええええええええ!?」

 

ゆんゆんがそう叫ぶが、ゆんゆんの両親からの返事がなかった。おそらく移動したのだろう。

 

「『ライト・オブ………!」

 

「ちょっと待て」

 

ゆんゆんが魔法を使おうとするが、俺は右腕を掴み止めた。

 

「離して!!この扉を破壊して二人に文句言いに行くの!!」

 

「まぁ、待て。気持ちは分かるが、仮に扉を破壊して文句言ったところで無駄だと思う。それどころか、もっと酷い状況になると思う」

 

「もっと酷い状況というと?」

 

「例えば、ゆんゆんを眠らせて俺と一晩過ごさせるとか」

 

「ッ!?」

 

俺がそう言うと、ゆんゆんは顔を真っ赤にして大人しくなる。

 

「じゃ、じゃあどうするの?」

 

「………仕方ないから一緒に入るしかないだろ。タオルを巻いていれば大丈夫だろうし」

 

「………そうだね。恥ずかしいけど我慢します」

 

俺達はそう言った後、お互いため息をついた。

 

「じゃあ、入るか」

 

「はい」

 

そう俺達は言うと、一緒に浴場に入った。俺は自分の体を洗っていると何か視線を感じたので、その方向を見るとゆんゆんがじーっと俺の方を見ていた。

 

「………ゆんゆん。そうまじまじと見られると恥ずかしいんだが………」

 

「あっ!ご、ごめんね!」

 

そう言ってゆんゆんはあまり俺の方を見ない様にしていたが、チラチラと俺の方を見ていた。その後、俺は体を洗った後、湯船に入る。俺とゆんゆんは気まずい状態で向かい合っているとゆんゆんが話しかけて来た。

 

「………あの、私の親のせいでごめんね」

 

「気にするな」

 

そう言うと、また会話が途切れてしまい、また気まずい雰囲気になってしまった。俺はどうしようかと考えているとカズマとの会話を思い出し、ゆんゆんにその事を話した。

 

「ゆんゆん。カズマ達は明日には帰るみたいだから、ゆんゆんも準備しとけよ?」

 

「ええっ!?ま、魔王軍はどうするの!?」

 

「今夜中に俺とシズクが始末するから問題ないさ」

 

「問題あるよ!?だ、だったら私も手伝います!」

 

「気持ちはありがたいが、ゆんゆんにはカズマ達を任したい。魔王軍の残党が紅魔の里を襲いに来る可能性があるからな」

 

「わ、分かりました」

 

「しかし、急に帰る事になるなんてな。あるえに作品を読む約束していたんだがな………」

 

俺がそう言うと、ゆんゆんがまたむすっとしていた。………どうした?

 

「………ソウガさんはあるえの事をどう思っているんですか?」

 

「俺はあるえの事は友人の一人だと思っているさ。俺の事を好きと冗談を言うのはどうかと思うがな」

 

「冗談じゃ無いと思いますよ。あるえがあんなに好意を寄せる事なんて今まで無かったので」

 

「どうだろうな。からかっているだけかもしれないだろ?まぁ、好意を持って接してくれるのは嬉しいがな」

 

「………だ、だったら!」

 

ゆんゆんがそう言うと、俺に抱き着き、上目遣いの状態で言った。

 

「わ、私がソウガさんに好意を持って接したら、ソウガさんは嬉しいですか?」

 

「………はい?」

 

「はっ!わ、私は一体、何を言っているの!?」

 

そう言って、ゆんゆんは顔を真っ赤にして顔を逸らしてしまった。あれっ?また何か気まずい空気になってるぞ!?甘酸っぱい感じになってるぞっ!?

 

「ソウガ先輩!ゆんゆん!大丈夫ですか!」

 

そうシズクの声が聞こえると、扉が破壊され浴場の扉が開いた。

 

「話はゆんゆんの両親から聞きました。二人とも大丈………夫………」

 

シズクが俺達の姿を見ると、一瞬止まった後、ゆんゆんの服を置いた。おそらく取り返してくれたのだろう。

 

「ご、ごめんなさい………。ご、ごゆっくり………」

 

そう言ってシズクは扉を閉めた。

 

「ちょっと待て!?シズク、誤解だああああああああああああ!?」

 

「シズクさん!?」

 

その後、俺達は急いで風呂を出て、シズクの誤解を何とか解いた。




次は魔王軍との戦いです。


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この強敵に魔導兵器を!

魔王軍との戦闘です。


風呂での騒動の後、俺とシズクはグリフォン像の前に集合し、魔王軍の軍事基地に向かった。軍事基地の近くに着くと、森に隠れ、俺達は魔王軍の様子を窺いながら戦力などの調査をしていた。シズクは今は軍事基地の構造を把握するために調べに行っている。

 

「………ざっと、数えて五千ってところか」

 

俺は魔法で敵の戦力を把握すると、シズクが戻って来た。

 

「お待たせしました。ソウガ先輩」

 

「どうだった?シズク」

 

「前方と後方に出入り口があります。おそらく撤退する用の入口でしょう。あと、この軍事基地で武器を作っているみたいですね。まぁ、紅魔族にはあまり通用しないと思いますが………」

 

「まぁ、どうでも良いがな。どうせ、全部破壊するんだからな」

 

俺がそう言うと、遠くで魔王軍の兵士が話をする様子が見えたので俺は魔法で話を聞いた。

 

「おいっ!シルビア様が紅魔族と単身戦っているって本当か!」

 

「ああ、しかも魔導兵器の一つを使って紅魔族を圧倒しているらしい!」

 

「魔導兵器の名前は魔術師殺しというものらしく、何でも魔法使いにとっては天敵らしい!紅魔族の奴らめ、ざまあみろ!!」

 

「魔法使いの天敵ならあの死神も倒せるんじゃねえか?やっとあいつに怯える日々におさらばできるぜ!」

 

その様な会話が聞き、俺は冷静に判断した後にシズクにさっき聞いた事を話をした。

 

「シズク。シルビアが紅魔の里で暴れているらしい。しかも魔術師殺しっていう魔法使いにとって天敵の魔導兵器を使ってな」

 

「なっ!?で、では急いで戻らないと!」

 

「必要ない」

 

「えっ………?」

 

シズクが俺の言葉に疑問を浮かべ、少し考えた後に俺に聞いてきた。

 

「あの、ソウガ先輩?考えてみたのですが、魔術師殺しと名乗るという事は魔法攻撃が効かないと考えられます。紅魔族にとっては脅威ですし、カズマ達の戦力を考えても急いで戻った方が良いのでは?」

 

「確かにそうだな。普通に考えればシルビアに勝つのは不可能に近い。だが、カズマ達は不可能に近い状況を機転で乗り越え、魔王軍の幹部達を返り討ちにしてきた。今回も大丈夫だろう」

 

「ふふっ、信頼しているんですね。カズマ達の事」

 

「まあな。だが、早く終わらせる事にするか。行くぞ」

 

「はい!」

 

俺はそう言うと、軍事基地に結界を張り逃げられない様にすると魔王軍の兵士達が焦り出した。俺達はそれを見た後、軍事基地に乗り込んだ。

 

「なっ、何だ何だ!?軍事基地に結界が張られたぞ!?」

 

「これは、一体………」

 

「あ、ああっ!?これはまさか!?」

 

「何か知っているのか?」

 

「馬鹿野郎!!知らないのか!!これは死神がよく使う手の一つだ。魔王軍を逃がさないために結界を張り、殲滅するためのな!!」

 

「ええっ!?じゃあ、この結界が張られたって事は………」

 

「そういう事だ。察しが良いな」

 

「「「!?」」」

 

そう俺が言うと、魔王軍の兵士達が俺達がいる方向を見た後、体がガタガタと震え出し。

 

「「「ししししし、死神だあああああああああああああああああああ!!!???」」」

 

「よう、邪魔するぜ」

 

「邪魔するなら帰って!」

 

「悪いが帰るわけにはいかないな」

 

「じゃあ、俺達が帰るから結界を解いてくれ!お願いだから!」

 

「駄目だ。お前達は一人も帰さないし、一人も生かさない。ここで死んでもらう」

 

「「「ひいっ!?」」」

 

「そ、そこの女の人!?俺達を殺しても何も得する事なんか無いって死神に言ってくれ!?」

 

「黙ってくれませんか?あなた達と喋る事なんてありません。そもそも見ていて不快なので私の前から消えてください。あと息が臭いので口を閉じてください。そんな存在のあなた達は生きていて恥ずかしくないのですか?馬鹿なんですか?死ぬんですか?ていうか死んでください」

 

「酷いっ!?」

 

「悪いが俺達も暇じゃないんでな」

 

俺はそう言うと、空中に大量の武器を作り。

 

「殺戮してやるから迅速に絶命しろ!!」

 

魔王軍の兵士達に武器を放った。

 

◆◆◆

 

「くそっ!何でこんな事になるんだ!こんな事ならソウガとシズクを行かせなきゃ良かった!!」

 

ソウガ達にシルビアの討伐を頼んだ後、俺はアクア達に色々言われたが全部無視した。その後、めぐみんと良い雰囲気にだったのに魔王軍に邪魔をされてしまい文句を言ってやろうと思い外に出ると、傷だらけのシルビアがいた。色々あって俺は捕まり、地下格納庫に連れ去られた。地下格納庫の封印が何故か小並コマンドで設定されており、俺はあっさりそれを解いてシルビアを閉じ込めたが魔導兵器の一つの魔術師殺しを取り込まれてしまった。その後、魔導兵器と紅魔族を生み出したのがデストロイヤーを作った奴だと分かった。対抗できる兵器のレールガンが服屋で物干し竿になっていると分かり、服屋に向かっていた。あと、何故か格納庫に魔力で動くゲーム機が大量にあり、不思議と思っていたが生み出した研究者が日本出身だと分かると納得した。

 

「返してよ!私のゲームガールを返してよー!この世界じゃもう手に入らないんだからね!弁償して!街に帰ったら貰えるお金で弁償して!もう手に入らない希少価値を考えたなら、三億だって安いものだわ!」

 

「さっきからうるせーぞ!今はそれどころじゃねーんだよ!!そもそもあれは落ちてた物で、お前のじゃねーだろーが!俺より遥かに年上のクセに、子供みたいな事言ってんじゃねーよ!」

 

「あんたとうとうこの私を怒らせたわね、女神は年を取らないって言ってるのに!水の女神を怒らせた事を後悔なさいな!トイレの水が流れなかったり、シャワーのお湯が急に水になる呪いをかけてあげるわ!」

 

そう言っているアクアを無視し、服屋に着いた俺達はレールガンを持って気づかれない様にシルビアの近くまで行くと、大きな岩の上にゆんゆんがシルビアを睨み付けながら立っていた。

 

「ゆんゆんじゃねーか!あの子は一体何やってんだ………!」

 

俺は何故ゆんゆんが一人で対峙しているのか不思議に思っていたが、既にほかの紅魔族が魔力を使い果たしているのを見ていて納得した。俺は遠くにいるゆんゆんに呼びかけようとして、突然脇から引っ張られた。そちらを見ると、いつの間に隣にやって来ていたのか、こめっこの手を握っためぐみんと、何故かションボリしているダクネスがいた。

 

「カズマ、例の兵器とやらは見つかりましたか?私達は、こめっこが避難所にいない事に気がついて、ゆんゆんがああして気をひいてくれている間に、家から救出したのですが………」

 

「助けてきたならそりゃ良かった。こっちも上手い事兵器を見つけられた。ていうか、ダクネスはどうしたんだ?何かあったのか?」

 

「シルビアの注意を引こうとしたのだが………。お前みたいな硬くて攻撃力のない女の相手はしてられないと………」

 

「しょうもない事情だという事はよく分かった。それよりあそこにいるゆんゆんを助けないと………」

 

「いえ、ここで邪魔をしてはいけません!あの子は何かやる気です!大丈夫、岩の周りの踏まれた草を見るに、既に助けは入っています。ここは見守りましょう!」

 

そうめぐみんがワクワクした表情で言ってくる。そんな、里の多くの紅魔族の注目が浴びるゆんゆんは、片足を鶴の様に上げてピタリとバランスを取り。

 

「我が名はゆんゆん!アークウィザードにして、上級魔法を操る者………。紅魔族随一の魔法の使い手にして、やがてこの里の長となる者!」

 

「ああっ!?」

 

そんなゆんゆんの堂々とした宣言に、めぐみんは愕然とした声を上げた。ゆんゆんは恥ずかしがる事なく、バサッとマントを翻し。

 

「魔王軍の幹部、シルビア!紅魔族族長の娘として………!あなたには、紅魔族の族長となる者にしか伝えられていない禁呪を見せてあげるわ!」

 

片手のワンドを高らかに掲げるとゆんゆんのバックに蒼い稲妻が轟音と共に迸った。そんなゆんゆんの姿を見ていた紅魔族の面々が、ハラハラと涙を溢し、称賛していた。

 

「………うっ………うう………っ………!」

 

あろうことか、めぐみんまでもが泣いていた。ゆんゆんを見ていたシルビアは口だけと罵りながら蛇の下半身を弓の様にしならせ、ゆんゆんに襲い掛かるが、ゆんゆんは岩から飛び降り、そのまま駆けた。シルビアは追いかけていたが、突如他の紅魔族が現れ、ゆんゆんが傍に寄ると。

 

「ちょ………!待………!」

 

「『テレポート』!」

 

他の紅魔族と一緒に転移した。………これは酷い。

 

◆◆◆

 

「カズマさん!?こ、この後どーするの!?」

 

「うるせえ!考えてるんだから、黙って走れ!」

 

ゆんゆんが転移した後、俺はレールガンを使ったが全く動かなかった。どうにかしようとしていたらシルビアに見つかり、今はシルビアから急いで、逃げていた。

 

「逃げても無駄よ、サトウカズマ!そして、聞きなさい、紅魔族!今日からアタシがあんた達の天敵よ!世界中のどこに逃げても、必ず探し出して最後の一人にまで根絶やしにしてあげるわ!世界中のどこに集落を作っても必ず潰しに行ってあげる!」

 

このレールガンを渡したら、俺達の事は見逃してくれないかな………。

 

「臆病者の紅魔族!お前達も、そして今後お前達に関わる者も!これからは、いつ襲われるか分からない恐怖に震えながら、怯えて暮らすがいいわ!お前達を根絶やしにした後は、私達の天敵の死神を殺す!今までの借りを何倍にして返してやる!」

 

紅魔族だけでなくソウガに対して、そう挑発した時だった………。

 

「ほう、言ったな?じゃあ、今から戦うか?」

 

「何っ!?ぐふうっ!?」

 

そう声が聞こえた後、シルビアの体が吹っ飛んだ。そして、シルビアがいた場所に。

 

「ソ、ソウガあああああああああ!いつも遅いんだよ!もっと早く来いよ!シズクも!」

 

「悪いな遅くなった」

 

「申し訳ございません」

 

ソウガとシズクがいた。おそらく転移してきたんだろう。ソウガとシズクは俺達の近くまで来ると謝った。………よし、これで勝てる!

 

「なっ、死神!?どうしてここに!?」

 

シルビアが体を起こして、そう言うがソウガは無視していた。

 

「………まぁ、いいわ。どんな理由だろうが関係ない!今の私は魔法使いに対しては無敵に近い状態、死神!お前も例外ではない!今までの借りをここで」

 

「黙れ」

 

ソウガは冷たくそう言うと、胸板に龍の頭部が出現し、その口から炎がシルビアの右腕に向かって放出した。

 

「………えっ………?」

 

シルビアはそう言った後に右腕を見た。攻撃を受けたシルビアの右腕は無くなっていた。

 

「うぁああああああああああああああああああああ!!??」

 

「「「ええっ!?」」」

 

攻撃を受けたシルビアは叫び、その光景を見ていた紅魔族達は驚いていた。

 

「な、何で!?今の私は魔法に対して絶対耐性があるはずなのにっ!?」

 

「絶対耐性?だが、その玩具は一般的に使われている魔法に対して耐性をもっているだけ。つまり俺の家系だけが使っている神滅魔法は無効化できない」

 

魔術師殺しを玩具と言ったソウガがそう言うと、シルビアが驚き、怯え始めた。良いぞ良いぞ!もっとやれ!

 

「じゃあ、めぐみん。後は任せた」

 

「………はい?」

 

「ええっ!?何を言っているんだ!このまま倒した方が良いに決まってんだろ!」

 

「まぁ、俺もそう思うんだが。ただ、言われっぱなしじゃ、ムカつくだろ?」

 

「そうですね。ムカつきます」

 

「それじゃあ、任した。お前の必殺魔法を見せてやれ」

 

そう言うと、めぐみんが俺達の前に出る。俺はレールガンを足元に置き。めぐみんが詠唱を始めたところを見ていた。

 

「臆病者の紅魔族が何をするっていうのよ!ハッタリもいい加減に………!」

 

シルビアはそう言うが、めぐみんは全ての魔力を込めて魔法を唱えた。

 

「『エクスプロージョン』ッッッ!」

 

「ちょっ!?」

 

何の魔法を使われたか理解した、シルビアの顔が恐怖で歪み、めぐみんが放った閃光は一直線にシルビアに。………向かう事なく、レールガンの後部へと吸収された。

 

「「「「「「「えっ」」」」」」」

 

あまりの事に、俺達だけでなくシルビアや紅魔族ですら声を上げる。

 

「ビビらせやがってこのガキが!てめえ、八つ裂きにして殺してやるよ!」

 

「………はぁ。何をしてるんだよ?『ヘブンズチェイン』」

 

ソウガがそう魔法を唱えると、キレたシルビアに鎖が巻き付いた。シルビアは振りほどこうと暴れた。

 

「ちくしょー!このガラクタのせいで最悪な事態に!ソウガ!そいつを始末してくれ!」

 

俺がそう言うと、アクアに抱きかかえられていたこめっこが言った。

 

「ねえ、なんかピコピコしてるよ」

 

それを聞いた俺は地面に転がっているレールガンを見ると、側面に『FULL』文字が点滅していた。咄嗟にそれを拾った俺は、シルビアに標準を合わせた。

 

「魔王軍の幹部、シルビア!俺の名前を覚えとけ!俺の名は『どーん!』」

 

俺が決め台詞を言いながらトリガーを引き絞ろうとした俺の隣から、アクアに抱かれたままのこめっこが引き金を全部引っ張った。レールガンから発射された閃光はシルビアの穴に大穴を開け、そのまま山の一角を吹き飛ばした。シルビアの巨体が重い音と共に大地に沈んだ。俺達は呆然としていると、アクアに抱かれたこめっこが地に下りるとポーズを取った。

 

「我が名はこめっこ。紅魔族随一の魔性の妹!魔王の幹部より強き者!!」

 

ちくしょう!美味しいところ持ってかれた!

 

「………えぇ、何ですか?この終わり方………」

 

「………はぁ」

 

◆◆◆

 

「………まぁ、所詮はこの程度。魔王軍の幹部程度では話になりませんねえ」

 

建物の陰から、ヴェッターが今までの戦闘を見て後に、そう呟いた。

 

「魔術師殺しも大したことありませんねえ。死神の魔法対策にしようと思っていましたが死神の魔法すら防げない、死神の言う通り、ただの玩具でしたねえ」

 

ヴェッターはそう言うと、フフフと笑い始めた。

 

「………ですが、来た甲斐がありました。まさか、ここで長年求めていた力の適合者に出会えるとは、これは運命ですねえ」

 

そう言うと、懐から宝石を取り出すが、その宝石には鱗が彫り込まれており中に牙が埋め込まれていた。それをカズマ達に向けると光り始めた。

 

「絶対に手に入れてみせる。この力を取り込めば死神ですら倒すのは容易い」

 

ヴェッターは懐に宝石を戻し。

 

「私の野望のための生贄になってもらいますよ。確か名はこめっこと言いましたねえ」

 

ポーズを取っているこめっこに対してそう言うと、ヴェッターはその場を立ち去った。




今後は、話に少しずつオリジナルを入れていこうと思います。


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この紅魔族に感情の正体を!

あと少しでこの章は終わりです。


「ゆんゆん、魔王軍との戦いで活躍したらしいな。凄いぞ」

 

「そ、そんな凄い事じゃないよ!えへへ」

 

ソウガはそう言うと、ゆんゆんの頭を優しく撫でる。ゆんゆんは気持ち良くて笑みを浮かべていた。

 

「本当に凄い事だ。これなら神滅魔法を覚えるのも、そう遠くないな」

 

「もっ、もう!そんなに褒めても何もないよ!」

 

ゆんゆんはソウガにそう言うと、ソウガは微笑む。

 

「ゆんゆん。少し真面目な話をしてもいいか?」

 

「えっ?う、うん。いいよ?」

 

真面目な顔をしたソウガに、疑問を浮かべながらゆんゆんはソウガの言葉を待った。ソウガは少し恥ずかしそうにすると。

 

「………俺は、ゆんゆんの事が好きだ」

 

「………えっ?ええっ!?」

 

ソウガに好きと言われ、ゆんゆんは顔を真っ赤にして驚いた。

 

「い、いきなり何を言うの?じょ、冗談は止めてよ!」

 

「冗談なんかじゃないさ。なら、証拠を見せようか?」

 

「しょ、証拠………?」

 

ソウガはゆんゆんの顎をクイッと上げ、顔を寄せながら。

 

「ゆんゆん、好きだ」

 

「ソウガさん………」

 

ソウガがそう言うと、ゆんゆんは目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこでゆんゆんは目を覚ました。ゆんゆんは上半身を起こし、さっきの夢の内容を思い出すと。

 

「わわわわわ、私はなんて夢をおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!???」

 

顔が真っ赤になり、両手で顔を押さえて叫びながら悶絶した。

 

◆◆◆

 

今朝方、俺は一人で紅魔の里を歩いていた。シルビアを倒した後、シルビアの遺体は紅魔族の人達が処理する事になった。里のあちこちで、修復作業を行っている。俺はその光景をチラッと見た後、今朝にセナから送られてきた報告書を見ていた。ヴェッターが持っていた宝石は、埋め込まれた生物の生命力を吸い、生物が絶命したらモンスターに変える効果があり、またモンスター化したら転移する術式が組み込まれている事が分かった。だが、その報告書に気になる事が書かれていた。

 

「その宝石に元々入っているモンスターの術式と適合率が高いと、通常の十倍の力を得た、モンスターが誕生するか………」

 

そう、俺が戦った宝石を使って生まれたモンスターは本来、生み出されるモンスターではなく。そのモンスターを生み出す事ができなかった際に生まれた、いわゆる失敗作だった事だ。失敗作で魔王軍の幹部と同等の力が生み出されているなら、本来生まれるはずのモンスターはそれを軽く凌駕する力を持つ事になる。しかも、適合率次第ではその力が十倍に跳ね上がる事に俺はゾッとした。ヴェッターはどんな化物を生み出そうとしているんだ。そう思っていると何故か落ち込んで歩いているあるえがいた。………どうしたんだ?

 

「どうした?何かあったのか?」

 

「えっ………?ソ、ソウガ?」

 

俺に気づいたあるえが俺に気づくと、俺の胸に飛び込んできた。………本当にどうしたんだ?

 

「本当にどうしたんだ?何か嫌な事でもあったのか?」

 

「うう………。私の一週間の徹夜の結晶を無礼な男に引き裂かれて………。ソウガに見せたかったのに」

 

「結晶?ああ、小説の事か?その男の特徴を教えてくれないか?一言文句言ってやるから」

 

「本当かい?めぐみんと一緒にこの里に来た、あの男だよ!何なんだ、あの無礼な男は!初対面の人間に何であんな酷い事をするんだ!」

 

めぐみんと一緒に来た男?………あぁ、なるほど………。

 

「………その男、俺のパーティーメンバーだ」

 

「ええっ!?」

 

その男がカズマだと察して、俺はそう言うとあるえは驚いた。まぁ、そうなるよな。

 

「あの無礼な男がソウガのパーティーメンバー!?ソウガ、悪い事は言わない。あの男をパーティーから追い出した方が良い」

 

「すまないがそれはできない。カズマには俺が言っておくから許してくれ」

 

「………仕方ない。許しても良い」

 

「本当か?」

 

「………だが、タダという訳にはいかない」

 

あるえがそう言うと俺を上目遣いで見ると。

 

「私をぎゅっとしてくれないか?そうしたら許してあげよう」

 

「………はぁ。分かった」

 

俺はそう言うと、あるえをぎゅっと抱きしめた。しばらく、あるえを抱きしめると。

 

「良し!もういいよ。ソウガにぎゅっとしてもらったおかげで怒りは収まった」

 

「そうか、良かった」

 

「じゃあ、私は引き裂かれた作品をもう一度、書き直さなければならないから。ここで別れよう。失礼するね」

 

そうあるえは言うと、あるえは立ち去った。俺はもう一度ため息をついた後、散歩を再開した。

 

◆◆◆

 

「………んちゅ、ちゅ………はぁ………ソウ、ガさん………」

 

「………はぁ………んっ………ゆんゆん………」

 

ソウガとゆんゆんは濃厚なキスを行っていた。お互いに舌を求める様に絡ませ、唇を離すとそこには銀の糸が垂れ下がる。

 

「………すまない、ゆんゆん。俺はもう我慢が出来ない」

 

ソウガは火照って、目がトロンとしているゆんゆんにそう言うと。

 

「………いい、よ………。ソウガさんなら、私………」

 

ゆんゆんはそう言った。その言葉を聞いた、ソウガはゆんゆんの胸に手を伸ばし………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もぉおおおおおおおおおおおお!?もぉおおおおおおおおおおおおおおお!?だ・か・ら!なんて夢を見てるのよ!私はあああああああああああああああああ!!??」

 

朝、目覚めたゆんゆんは、また顔を真っ赤にして悶絶していた。少しの間、悶えていたが、徐々に落ち着いていった。

 

「はぁ………!はぁ………!私は何で、ここ最近、ソウガさんの夢を見ているんだろう?」

 

ゆんゆんはしばらく、自分は何でソウガの夢を見ているかを考えると。

 

「………ま、まさか」

 

ゆんゆんは自分の胸を押さえ、今までの事を考えた。ソウガと一緒にいると温かい気持ちになっていた時の事、別の女性とソウガが話していると嫌な感じになっていた事を。

 

「………わ、私………!ソウガさんに、恋、をしているの………?」

 

顔が真っ赤になるとゆんゆんはそう言うと、首を横に振った。

 

「………そ、そんなの駄目だよ。私なんかじゃ、ソウガさんの恋人なんてふさわしくないよ」

 

そう言った後、ゆんゆんは静かに言った。

 

「それに………。ソウガさんには店主さんがいるし………」

 

そう言うと、ゆんゆんはソウガとウィズが幸せそうにしているのを考えると、胸がズキッと痛み、自分は一体、どうすればいいのかを一人で考え続けた。

 

◆◆◆

 

あるえと色々あった日から数日後、俺とゆんゆんは散歩をしているとカズマとめぐみんに出会い、今は紅魔の里にある転送屋にアクセルの街に送ってもらう様に手配してもらうために歩いている。………ウィズは元気にしているだろうか。バニルは、どうでも良いか。

 

「あっ、ふにふらさん、どどんこさん!」

 

俺がそんな事を考えていると、めぐみんと同い年くらいの二人の少女達が現れ、ゆんゆんがそう言った。その二人はスッとめぐみんの方を指差すと。

 

「久しぶりね、ゆんゆんとネタ魔法使い!元気してた?」

 

「あははははは!紅魔族一の天才がネタ魔法使いに!あんた、今里の一番の噂になっているわよ!」

 

「おい、久しぶりに会った懐かしの同級生に対して、随分なご挨拶じゃないか!」

 

二人の少女、ふにふらとどどんこにそう言われためぐみんは、二人に向かって飛び掛かった。

 

「ちょ、ちょっとからかっただけじゃない!ごめん!ごめんってば!」

 

「止めてえ、何その握力は!痛い痛い、暴力は止めて!」

 

「おい、めぐみん。それぐらいにしろ」

 

そう言って俺は、めぐみんを二人から引き剥がす。めぐみんをカズマ達に任せて、俺はふにふらとどどんこに話しかけた。

 

「すまないな、大丈夫か?」

 

「「は、はい!大丈夫です」」

 

「そうか、なら良かった。俺はゆんゆんの友人のソウガだ。よろしくな」

 

「「こ、こちらこそ!」」

 

「………あと、一つだけ言うな」

 

俺はそう言うと、二人はビクッとした。多分だが、今の俺の目は魔王軍に向ける冷たい目をしていると思う。ふにふらとどどんこ、この名前は前にゆんゆんから聞いていたからな。

 

「ゆんゆんの優しさにつけ込む行為は止めろよ?二人がゆんゆんを友人と見ているかいないかなんて俺は分からないが、もし、ゆんゆんを悲しませる事をしてみろ。地の果てまで追いかけてでも見つけ出して息の根を止めるからな」

 

「「は、はい!」」

 

「分ければいいんだ。ごめんな?怖い思いさせて」

 

二人から返事を聞いた俺は、二人に向けて微笑んだ後に二人の頭を撫でる。ふにふらとどどんこの顔を赤くなっているが恥ずかしいんだろう。俺は撫でるのを止めるとふにふらとどどんこはゆんゆんに話しかけた。

 

「ちょっと、ゆんゆん!あの、格好いい人と友達なの?」

 

「う、うん。そうだよ」

 

「へえ、送られてくる手紙が怪しかったからふにふらと一緒に遊びに行くって手紙で試したんだけど本当だったんだ。あの時はごめんね?コミュ障に友達作りは無理だと思ってたから」

 

「あの時は本当に辛かったんだよ!?紹介しようと思ってたのにソウガさん達は出掛けてて焦ったんだから!あと、心に刺さるから友達作りが無理なんて言わないでね?」

 

そうゆんゆん達は話していると、ゆんゆんがカズマにふにふらとどどんこを紹介していた。そんな光景を見ていためぐみんが。

 

「おい、普段ちっとも出会いがない上に男がいなくて寂しいのは分かるが、私の男に色目を使うのは止めて貰おう」

 

「「「!?」」」

 

「………ほう」

 

突然、そのような事を言った。その言葉にゆんゆん達は固まっていた。

 

「お、おいお前何言って………!?何だよ、昨日の夜、俺の事が好きだって言ってくれたのは、本気だったって事なのか!?」

 

「「「!!」」」

 

そのカズマの言葉に、さらに三人は驚愕してアワアワと狼狽え始めた。………まさか、めぐみんがカズマに告るとはな。

 

「おおおお、男!?」

 

「オシャレには無頓着だっためぐみんに男!?」

 

「何を驚いているのですか?あなた達と違って大人なので普通の事なのです。私達は一緒にお風呂に入るような仲なので」

 

「「!?」」

 

「まぁ、まだ子供のあなた達には関係のない話でしょうが」

 

「そ、そんな事ない!」

 

めぐみんがそう言うと、ゆんゆんがそう大きな声で言った。

 

「わ、私だって!ソウガさんと一緒にお風呂に入ったもん!」

 

「「!?」」

 

「はあっ!?」

 

「なんとおっ!?」

 

「お、おい!ゆんゆん!」

 

「はっ!私ったら、なんて事を!?でも、本当の事よ!一緒にお風呂に入って、抱き着いたりするような仲だもん!」

 

ゆんゆんの発言でここにいる全員が驚いていた。めぐみんが落ち着きを取り戻した後に言った。

 

「さ、さすがは私の自称、ライバルですね!やるじゃないですか!だが、私達は毎晩同じ布団で寝て布団の中でモゾモゾするような仲ですよ!」

 

「「「!?」」」

 

「「お前ら、いい加減にしろ!俺達が恥ずかしいだろうがあ!!」」

 

俺とカズマがそう大きな声で言った。ふにふらとどどんこは青い顔で後すざると。

 

「………わあああああああああああ!お、男ができたぐらいでなにさああああああああああああ!」

 

「くっ、悔しくないんだからああああああああああああっ!」

 

そう言って、ふにふらとどどんこは駆け出して行った。

 

「ゆんゆん。私、ちょっとカズマと行きたい所があるのです。悪いのですが、代わりに転送屋さんで手配してきては貰えませんか?」

 

「えっ!う、うん、良いけど………」

 

「じゃあ、お願いしますね。行きましょう、カズマ」

 

「あ、ああ」

 

めぐみんがそう言った後、カズマとめぐみんは歩いて行った。俺とゆんゆんはそれを見送った。………ついでだ俺の用事も済ますか。

 

「ゆんゆん、俺もゆんゆんと話したい事があるから場所を移さないか?」

 

「えっ!う、うん」

 

そう言って、俺とゆんゆんは歩き始めた。

 

◆◆◆

 

私はソウガさんに連れられて、邪神の墓まで来ていた。どうしたんだろうと疑問に思い、聞いてみた。

 

「ソウガさん?私に話って何?」

 

「いや、大した事じゃないんだ」

 

ソウガさんがそう言うと、私の方に振り向いて、私の頭を優しく撫でた。

 

「ゆんゆん、魔王軍との戦いで活躍したらしいな。凄いぞ」

 

ソウガさんが微笑みながら、そう言ってくれた。………あれ?この展開って………。

 

「そ、そんな凄い事じゃないよ!えへへ」

 

「いや、本当に凄い事だ」

 

そうソウガさんが言うと私の頭から手を離し、真面目な顔になる。………確か、夢の通りならこの後………。

 

「ゆんゆん。少し話をしていいか?」

 

「う、うん………」

 

夢と同じならこの後………!私は胸をドキドキさせながらソウガさんが話すのを待っていると。

 

「………ゆんゆん。今回の戦いで逃げる事もしないで、諦めずに魔術師殺しと一体化したシルビアに立ち向かったが、戦う事を決めた理由を教えてくれないか?」

 

ソウガさんからそう言われ、私は思わずコケそうになった。………な、なんという期待外れ………。

 

「うん?どうかしたのか?」

 

「う、ううん!何でもないよ!………私はこの里の事が好きだから」

 

「それで自分が死ぬ事になってもか?お前は死ぬのが怖くないのか?」

 

「………怖いよ。でも、私は大切な人が死ぬ事の方がもっと怖い。この里にいる皆の事が大好きだから!」

 

「………そうか、その答えが聞けて良かった。ゆんゆん、強さって何だと思う?」

 

「えっ、やっぱり、力や技じゃないの?」

 

「確かに、その二つも大事だ。だが、本当の強さっていうのは力でもない、技でもない、誰かを守りたいという心が人を強くするんだ」

 

ソウガさんはそう言うと、私に向かい微笑んだ。

 

「だから、大切な人を守るために戦ったゆんゆんは凄い事だと思う。俺はそんなゆんゆんを誇りに思う」

 

ソウガさんはそう言ってくれた。そして、私の気持ちを再確認した。この胸の高鳴り、一緒にいてくれるだけで温かい気持ちになれる………。やっぱり、私は………。

 

ソウガさんの事が好きなんだ………。

 

でも、ソウガさんには店主さんがいるから、私じゃ不釣り合いだとか考えて自分の気持ちを押し殺そうとしていた。恋にそんなの関係ないのに………。

 

「………私は馬鹿だなあ」

 

「ゆんゆん?」

 

ソウガさんはそんな私を心配してくれた。私はソウガさんに微笑むとソウガさんも安心して微笑んでくれた。

 

「………今のゆんゆんになら教えても良さそうだな」

 

「………ソウガさん?」

 

「ゆんゆん。お前に神滅魔法を教えようと思う」

 

「ええっ!?」

 

神滅魔法を教えるという言葉に私は驚いた。

 

「で、でも、私はまだ………!」

 

「さっきの問いはゆんゆんを試したんだ。ゆんゆんに神滅魔法を教えるに値するかどうかをな。そして、ゆんゆんの答えで俺は確信した。ゆんゆんになら教えても問題ないとな」

 

ソウガさんがそう言ってくれると、私は泣きそうになってしまった。そしてソウガさんは微笑むと。

 

「ゆんゆん、神滅魔法を受け取ってくれるか?」

 

「………はい………!」

 

ソウガさんのその言葉に私は嬉しくて涙を流してしまった。ソウガさんはそんな私を優しく抱きしめてくれた。凄く、凄く、嬉しかった。

 

ソウガさん、大好きです………。




次回、ゆんゆんが神滅魔法を習得します。


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この紅魔族に神滅魔法を!

ゆんゆんが神滅魔法を習得します。


「ごはんー!ごはんー!」

 

次の日、こめっこは虫取り網を持って、そう言いながら虫を捕まえていた。袋一杯の虫を見ると。

 

「姉ちゃんに頼んで、からあげにしてもらおう!」

 

そう言ってこめっこはルンルン気分で帰っていると、突然雨が降って来て、こめっこは急いで木の下に隠れた。

 

「うう………。早く止まないかな………」

 

突然、降って来た雨にこめっこは不安そうに雨が止むのを待っていると、雷が鳴り始めた。

 

「きゃあっ!うぅ………、怖いよ、姉ちゃん………」

 

こめっこが震えながらそう言っている時だった………。

 

「どうしましたか?お嬢さん?」

 

「えっ?」

 

そう声が聞こえ、こめっこが声が聞こえた方向を見ると、ヴェッターが雨の中立っていた。

 

「幼いあなたが一人で行動するのは感心しませんよ?まぁ、私にとっては好都合なのですが」

 

「だれ?また悪魔?」

 

「いえいえ、私は悪魔ではありません。いや、ある意味当たっていますか………」

 

「………?」

 

こめっこがその言葉に疑問を覚えていると。

 

「………私はあなたの命を奪いに来たのですからねえ」

 

ヴェッターはそう言うとこめっこの近くに連続で雷を落とした。

 

「きゃああああ!止めてえ!止めてよお!」

 

こめっこが泣きながらそう言うがヴェッターは無視し、雷を落とし続けた。こめっこは走って逃げようとしたがヴェッターが左腕を捕み、左袖を捲るとこめっこの左腕に魔法陣を発現させた。

 

「放して!やだあ!」

 

「まあ、落ち着いてください。今から大切な話をしますので少し待ってください。左腕に魔法陣があるでしょう?」

 

「う、うん………」

 

「これは約束の印です。この魔法陣が完成した時、私はあなたを殺しに来ます」

 

「ッ!?」

 

「定期的にこの魔法陣が成長しているか確認しに来ますので、その時にまた会いましょう」

 

そうヴェッターが言うと、こめっこの左腕を放した。

 

「うわぁああああああああ!姉ちゃああああああああああん!」

 

こめっこは泣きながらヴェッターから逃げた。ヴェッターはこめっこの姿が見えなくなるまで見ているとフフフと笑い始めた。

 

「さあ、後は恐怖の感情を増大させて魔法陣を完成させるだけ。フフフ、楽しみですねえ」

 

ヴェッターはそう言うと、その場を立ち去った。

 

◆◆◆

 

「こめっこの様子がおかしい?」

 

「そうなんです。何日か前に一人で森に行ってから様子が変なんです。何かあったのと聞いても何も教えてくれなくて心配で………」

 

めぐみんと色々あった日にソウガからゆんゆんに神滅魔法を教えるために修行をしたいからあと何日か紅魔の里にいてくれないかと頼まれ、俺達は別に良いぞと言ったがめぐみんがソウガに。

 

「ズルいじゃないですか!ゆんゆんだけ神滅魔法を教えるなんて!なら私にも神滅魔法の爆裂魔法を教えてください。ゆんゆんのついでで良いので」

 

「断る」

 

「………おい、ゆんゆんには教えれるのに私には教えれない、その理由は何故なのか聞こうじゃないか」

 

「お前は絶対に悪用するだろ?」

 

ソウガがそう言うとめぐみんが掴み掛かり、引き剥がすのに時間が掛かった。あの日から数日後の朝にめぐみんがそう言った。

 

「そういえば、ずっとめぐみんにくっついてたな」

 

「ええ、本当に一体何があったんでしょう………」

 

「まぁ、いつか話してくれるさ。………それはそれとして」

 

こめっこの事は心配だが、今のこの状況を確認をしてめぐみんに言った。

 

「そろそろ離れてくれよ」

 

「えーっ、嫌です」

 

今、俺達は布団の中で抱き合っている。正確にはめぐみんが俺を抱きしめているのだが。

 

「もう結構な時間抱きしめているだろ?腹減って来たんだけど………」

 

「まだ良いじゃないですか。女の子に抱きしめて貰えるなんて人によってはお金を払いますよ?」

 

そう言ってめぐみんは俺の胸にスリスリと頭を擦りつけて甘えてきた。何この可愛い生き物。

 

「お前、今のこの状況は誤解される様な状況だぞ?アクア達に見られたら、あらぬ誤解を生むぞ?」

 

「別に構いませんよ」

 

めぐみんがそう言うと、上目遣いで俺を見ると。

 

「それに、好きな人に甘えたいというのは駄目な事でしょうか?」

 

「おおおおお前はだから、なんでもなさ気にそんな事を!お願いですもう一回言えください」

 

「ふふっ、やっぱりカズマの事は嫌いじゃないです」

 

「おいっ、セリフが違うぞ。さっきのセリフをもう一回!」

 

俺がそう言うと、めぐみんが。

 

「それはそれとして、ここまでしても何もしてくれないのですか?二人きりなのに………」

 

またも思わせぶりな事を言ってきた。やれやれ、俺が何回も同じ手に引っかかると思っているならそうはいかないぞ?今度は引っかからないぞ!………おいおい、何で涙目でこっちを見るんだ?や、止めろ………、決意が鈍る。これは、もしかしてめぐみんは本気だったのか?頭スリスリも誘っていたのか?………そうだよ、めぐみんがここまでしてくれているんだ、ここで引いたらめぐみんに失礼だ。やってやる!やってやんよ!!

 

「………さて、冗談はこれぐらいにしましょう。カズマの言う通りお腹も空きましたし、じゃあ先に行きますね?カズマも早く来てくださいね」

 

俺が決意した時にめぐみんがそんな事を言うと立ち上がり、ドアを開けてリビングに一人で向かった。めぐみんの部屋で呆然とした後。

 

「畜生!心を弄ばれた!!」

 

大きな声でそう言った。

 

◆◆◆

 

「ハッ!」

 

「フッ!」

 

俺が見てる中、ゆんゆんとシズクが素手での摸擬戦をしている。あれから数日、ゆんゆんに俺達の戦い方を覚えてもらうために修行をしていた。魔力で身体を強化し攻撃力と防御力を向上させるための戦い方を体の芯まで叩き込んだ。今は最終確認のためにシズクと摸擬戦をしている。これなら腕を切り落とされるような事は無いな。

 

「おっ、やってるな。ゆんゆんの調子はどうだ?」

 

そう声が聞こえた方向を見ると、カズマ達とこめっこが来ていた。俺はカズマ達に挨拶をした後にこめっこにも挨拶をするが元気がなく、何かに怯えてる感じだった。ここ最近、こんな感じだ。どうかしたのか?

 

「良い感じだ。これなら大丈夫だ」

 

「それじゃあ、ゆんゆんに教えるのか?」

 

「ああ、この後に神滅魔法を教える」

 

「じゃあ、その次は私ですね!神滅魔法の爆裂魔法はどんなでしょう?楽しみです!」

 

「何でめぐみんに神滅魔法を教える事になってんだ?教えないからな?」

 

俺達が話をしていると、ゆんゆんとシズクの摸擬戦が終わり、結果を考えているシズクにゆんゆんが不安そうに待っていた。

 

「………合格です。ゆんゆん、強くなりましたね」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

シズクが微笑みながら言うと。ゆんゆんはホッとした様子でそう言った。俺はシズクとゆんゆんの傍に行った。

 

「ゆんゆん、おめでとう」

 

「ソウガさん!えへへ、ありがとう」

 

「ゆんゆんは飲み込みが早くて助かりました。ですが、格闘戦にはまだ不安な部分はあります。接近戦をされたら勝ち目はないでしょう」

 

「そ、そうですか………」

 

「あっ、でも魔法使いは本来、中距離での戦闘が主なので問題はないです。あと、その………」

 

シズクが問題点を言うと、ゆんゆんはシュンとしてしまいシズクはしまったと思ったのかそう言った。

 

「とにかく、これでゆんゆんは修行が完了したわけだな」

 

「は、はい!」

 

「それじゃあ、そろそろ神滅魔法を教えるか。冒険者カードを見せてくれないか?」

 

「うん!ど、どうぞ!」

 

ゆんゆんから冒険者カードに記載されている現在のポイントを確認する。

 

「………この量のポイントなら四つは習得できるな」

 

「四つ!?四つも習得できるの!?」

 

「ああ、冒険者カードで習得すると弱体化するデメリットがあるせいかポイントはそんなに高くないんだ。それで、どういう魔法が覚えたいんだ?」

 

俺は冒険者カードをゆんゆんに返すと、ゆんゆんは少し考えた後に言った。

 

「………さっきシズクさんが指摘してくださった通り、私は接近戦をされると弱い。ヴェッターの様な強敵相手じゃライト・オブ・セイバーだけじゃ歯が立たない。だから接近戦用の魔法が覚えたい。あとそれを補助できる魔法も!」

 

「分かった。ならフォトンシリーズとソニックアクセルが良いな」

 

俺はそう言うと、近くにある岩より少し離れた所に行くと。

 

「じゃあ、まずフォトンシリーズを見せるから、しっかり見てろよ」

 

「は、はい!」

 

「『フォトンブレイク』」

 

そうゆんゆんが言うと、俺はそう唱えると足を岩に向けると黒い光の線が当たると円錐状に変わり、エネルギーが回転している所に飛び蹴りを円錐状のエネルギーと共に叩き込んだ。そうすると円錐状のエネルギーが高速回転して岩をを貫通し、岩が爆発すると岩が灰に変わった。俺はそれを見た後、カズマの近くの大きな岩に視線を移した。

 

「えっ?俺を見てる?」

 

「『フォトンカット』」

 

俺は剣を作った後にそう唱えながら剣を振ると剣から黒いエネルギー波を飛ばした。

 

「危なっ!?」

 

エネルギー波が岩の当たると岩が空中に浮き拘束したのを確認した後、岩を斬ると爆発が起こり、岩がまた灰になる。

 

「おいバカ!!危ないだろう!!」

 

「すまない。良い岩がカズマの近くにあったからつい」

 

「俺に当たったらどうするんだ!」

 

「何言ってんだ。何のためにアクアがいると思ってんだ?」

 

「俺が死ぬ事前提で魔法を使うんじゃねえ!?」

 

俺はそのカズマの言葉を無視して、魔法陣を展開する。

 

「『フォトンインパクト』」

 

そう唱えると拳に黒い光が溜まり、その拳を地面に叩き付けると衝撃で砂埃が発生する。そして、またも爆発が起こり地面の一部が灰になった。

 

「ふう、これがフォトンシリーズの魔法だ。出力を上げると敵を灰化させる事も可能になる。さて次はソニックアクセルだな」

 

そう言うと俺はゆんゆんの近くに寄り、ゆんゆんを抱き上げた。

 

「えっ!?ソ、ソウガさん!?」

 

「すまないなゆんゆん。次の魔法は実際に体験してもらった方が早い。嫌だと思うが我慢してくれ」

 

「そ、そんな………、嫌だなんて、むしろ嬉し………」

 

「うん?」

 

「な、何でもないよ!じゃあ、お願いします!」

 

「ああ、『ソニックアクセル』」

 

そう唱えると俺は超高速で動き、ある程度動いた後にカズマ達の前で魔法を解除した。

 

「うおおうっ!?びっくりした!」

 

「でも、一瞬だったから本当に魔法を使ったのか?」

 

「まぁ、ダクネスの言う通りだな。じゃあ、これを見たら魔法を使ったって信じてもらえるか?」

 

そう言って俺はゆんゆんを下した後にコートからある物を取り出した。

 

「ああっ!?それダスティネス家の紋章のペンダント!か、返してくれ!」

 

そう俺が超高速で動いている間にダクネスからペンダントをくすねておいた。ダクネスが俺に近づいてきたので。

 

「カズマ、パス」

 

「ああっ!?カズマ、それを返せ!」

 

「めぐみんパス」

 

「アクア、お願いします」

 

「ソウガ、パース」

 

「や、止めてくれ!?お願いだから返してえ!」

 

「まぁ、体験した通り。超高速での戦闘が可能になる魔法だ。じゃあ、冒険者カードに記載されていると思うから覚えてくれ」

 

「は、はい!」

 

そう言った後にゆんゆんは冒険者カードを取り出して、神滅魔法が記載されている事を確認すると深呼吸をした後に神滅魔法を習得した。習得した後にゆんゆんは冒険者カードを見て。

 

「私、習得したんだ………。やったやった!私、神滅魔法を習得したんだ!」

 

嬉しそうにそう言った。まぁ、気持ちは分かるがな。

 

「こら、神滅魔法を習得したからって満足するな」

 

「あっ、ごめんなさい」

 

「気にするな。じゃあ、実際に使ってみるか。フォトンシリーズは後にでもできるとして、ソニックアクセルを使ってみるか。というわけでシズク、準備はいいか?」

 

「はい、問題ありません」

 

そう俺は言うと、シズクは色んな大きさの岩を準備していた。中にはとてつもない大きな岩もある。

 

「これを今からゆんゆんに向かって投げますので、避けるか破壊するかしてくださいね」

 

「は、はい!分かりました!」

 

「じゃあ、任したぞシズク。カズマ達は安全な場所に移動しろ」

 

「ああ、分かった」

 

そう言ってカズマ達が移動するのを見届けると。

 

「じゃあ、行きますよ!」

 

シズクが岩を投げ始めた。ゆんゆんはそれを見た後に魔法陣を展開する。

 

「『ソニックアクセル』ッッ!」

 

そう唱えると超高速で動きながら岩を避けて行ったが、避けきれない岩を破壊しようと魔力を腕に込めるが破壊できずにまともに受けてしまった。おそらく、シズクは岩に魔力を込めて投げていたのだろう。

 

「いたた、まともに受けちゃった。でも今のどうすれば………」

 

「戦法を変えるんだ」

 

「えっ?戦法を変える………?」

 

「ああ、ソニックアクセルの強さはその速さだ。敵の攻撃を避けて、相手の懐に飛び込んで攻撃を叩き込むんだ。一発で駄目なら十発、まだ足りなければ百発、相手を粉砕するまでな」

 

「なるほど、分かりました!」

 

「じゃあ、もう一回行きますよ。フッ!」

 

シズクがそう言うと、もう一度、岩を投げ始めた。ゆんゆんはもう一度、ソニックアクセルを使って避け続けていたが、魔法が強制解除された。

 

「えっ!?ど、どうして!?」

 

「ゆんゆん!危ない!」

 

何が起こったのか分からないゆんゆんは驚いていると、シズクが既に大きな岩を投げており、ゆんゆんは気づくのが遅れてしまった。俺は一瞬で移動して岩を破壊した。

 

「今のが実践なら、確実に死んでいたぞ?」

 

「す、すみません。でも一体何が………」

 

「どうやら冒険者カードを使って覚えた時のデメリットの様だな。見た感じ。十秒しかソニックアクセルは使えない」

 

「十秒………、たった十秒しか………」

 

「それは違うぞ。確かに十秒しか使えないが、その間は相手は視認するのも難しい状態だ。その間に相手を倒す事なんて余裕でできる。ソニックアクセルと上級魔法の組み合わせやフォトンシリーズとの組み合わせは強力だ。使い方さえ間違わなければその時間でも十分だ」

 

「そ、そうですよね!じゃあ、次はフォトンシリーズの魔法を使います!それじゃあ、シズクさん。もう一度お願いします!」

 

「分かりました。それじゃあ行きますよ!」

 

そう言ってシズクはまた岩を投げ始めた。それを見ているとカズマが俺を呼んでいたのでカズマ達の近くに行った。

 

「どうかしたのか?」

 

「いや、俺とアクアとダクネスはもう戻ろうかと思っているんだ。ソウガはどうする?」

 

「いや、俺はゆんゆんを見てようと思う。あれ?めぐみんはどうするんだ?」

 

「私も残ろうと思います。それじゃあ、こめっこ。カズマ達と一緒に戻っててください」

 

「やだあ!姉ちゃんも一緒がいい!お願い一緒にいて!」

 

「私もすぐに戻りますから、何か怖い事があっても私達がこめっこを守りますから安心してください」

 

「めぐみんの言う通り!女神の私が必ず守ってあげるわ!」

 

「本当?わたしを守ってくれる?」

 

「ああ、もちろんだ」

 

「………ならがまんする」

 

「良い子ですね。それじゃあ、こめっこをお願いしますね」

 

「ああ、それじゃあ行こうか」

 

「うん。姉ちゃんもはやく来てね!」

 

そう言って俺はカズマ達は帰っていくのをめぐみんと一緒に見届けた。




次回は奴の目的が分かります。


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この冒険者達に外道の目的を!

奴が再び襲い掛かります。


「ねえねえ、こめっこちゃん。最近、何かに怯えている様だけど何かあったの?」

 

俺達はソウガ達と別れた後、しばらく歩いているとアクアがこめっこにそう聞いていた。確かに気になるな。ここ最近のこめっこの怯え様は異常だからな。

 

「………わたし、ころされちゃう!お願いたすけて!」

 

「「「ッ!?」」」

 

いきなりこめっこが物騒な事を言いだして、俺達は驚いた。

 

「えっ!?どういう事!?どういう事なの!?」

 

「おおお落ち着け、ここは冷静にだなななな」

 

「二人とも落ち着け!それでこめっこちゃん。いきなり殺されるなんて言い出したけど何かあったのか説明してくれないか?」

 

俺とアクアがあまりの事で動揺しているとダクネスがこめっこに聞くと、こめっこは左袖を捲ると魔法陣があった。その後、こめっこが説明してくれた。森で虫を取っていた時にモンスターに魔法陣を発現されてしまい、そのモンスターが怖くてずっとめぐみんにくっついていた事を教えてくれた。

 

「なるほど、そんな事があったのか………」

 

「じゃあ、魔法陣をどうにかしないとな。アクア、浄化魔法で解除できないか試してくれ」

 

「任されたわ!」

 

そう言ってアクアがこめっこの左腕にある魔法陣に浄化魔法を使おうとした時、いきなり雨が降り始めた。

 

「えっ?何でいきなり雨が降り始めるんだ?」

 

「や、やだ………、やだあ!!」

 

俺達が突然、雨が降り始めた事に不思議に思っていると、こめっこが大きな声で叫んだ後に怯え始めた。

 

「どうしたの、こめっこちゃん!?」

 

「怖いよ………、姉ちゃん助けて………!」

 

「落ち着け、一体どうしたんだ?」

 

「………余計な事をしないでもらえませか?」

 

「「「!?」」」

 

俺達が声が聞こえた方向を見ると、ヴェッターがこちらの方向に歩いて来ていた。ヴェッターの姿を見たこめっこが怯えながら言った。

 

「あ、あの時のモンスター………」

 

「約束通り、会いに来ましたよ」

 

◆◆◆

 

「貴様の仕業だったのか!ヴェッター!!」

 

「ええ、そうですよ。それはそれとして、邪魔はしないでいただけませんか?私の野望の邪魔は」

 

「そんな野望など関係ない!この子には触れさせない!」

 

ダクネスがそう言うと、ヴェッターに斬り掛かったが軽くいなされてしまい、ヴェッターに首を掴まれ、地面に叩き付けられた。

 

「いい加減目障りなんですよ。他人の命を守ろうという小さな事に拘っていると身を滅ぼすぞ?」

 

ヴェッターはダクネスを起き上がらせると、腹部を殴り後方に吹っ飛ばした。

 

「ガッ!い、言うなあ!!」

 

ダクネスが再び斬り掛かったが避けられ、裏拳を顔面に叩き込また後によろけながら後ろに下がった。それを見たヴェッターは石ころを拾った。

 

「今から面白いものを見せてあげましょう。雷というのはこういう使い道もあるんですよ?この石ころに非常に大きな電流を流し続け、前方に磁力線を伸ばしておき、電流を流して電磁石にした石ころをあなたの方に弾いたらどうなると思いますか?」

 

「ッ!?ダクネス避けろ!!」

 

「えっ………?」

 

疑問に思っているダクネスにヴェッターは持っている石を弾いた。その瞬間、石は物凄いスピードでダクネスの方に飛び、地面を抉り、木々を薙ぎ倒した。砂煙が消え、カズマとアクアがダクネスの方を見ると。

 

「がはっ!?」

 

ダクネスの腹部の一部が大きく抉られており、大量の血を吐いて倒れた。

 

「ダ、ダクネス!!」

 

「だから言ったでしょう?身を滅ぼすと」

 

「くそおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

「目障りです」

 

カズマがヴェッターに斬り掛かろうと走るが降っている雨をカズマに集中させた。

 

「うおっ!?」

 

「これっ!私にやった奴だわ!カズマ早く脱出して!」

 

「そんな生易しいものではありませんよ?降っている雨に冷気を放出して凍らせる事によって雹に変わります。その雹を風を使い削る事によって氷の刃に変えました。さあ!切り刻まれるがいい!!」

 

ヴェッターがそう言うと氷の刃がカズマに襲い掛かった。カズマの体が切り刻まれ血が出始めた。

 

「うわあああああああああああああ!!」

 

「カズマ!」

 

「さて、これで戦力になりそうな人はいなくなりましたね」

 

そう言うとヴェッターはこめっこの方に歩き始めた。アクアはこめっこの前に立って守ろうとしたが首を掴まれ、後方に投げ飛ばされた。

 

「きゃあ!」

 

「邪魔ですよ。さて………」

 

「や、やだあ………、来ないで!」

 

こめっこは逃げようとするがヴェッターに捕まり左袖を捲られ、魔法陣を見て笑い始めると宝石を取り出した。

 

「良い感じだ。君の恐怖の感情が高まれば高まるほど魔法陣は早く成長するんだ。あぁ、早くこの宝石を君に入れたい。だが、死神がこの里にいる状態で悠長な事はしてられない。もっと早く成長させる方法はありませんかね………」

 

「放して!助けて姉ちゃん!」

 

「姉ちゃん………?フフフッ、そうか。あの小娘がお前の心の支えか!」

 

ヴェッターがそう言ってる時、ヴェッターが何者かに殴られ吹っ飛ばされた。その時にこめっこの腕を離し、持っていた宝石を落とした。

 

「ぐおおおおおおおおおおおっ!?誰だ!!」

 

「胸騒ぎがして来てみれば、てめえ!俺の仲間に何しやがる!!」

 

「なっ!?死神だと!?」

 

「ソーガお兄ちゃん………」

 

ソウガが来た事にヴェッターは驚いているとソウガはカズマに降っていた雹をかき消した後、ダクネスとカズマに回復魔法を使った。それを見たソウガはこめっこの頭を優しく撫で。

 

「安心しろ。俺が必ず守る」

 

「………うん」

 

微笑みながらそう言うと、こめっこはそう言った。それ見た後、ソウガは魔法陣を展開した。

 

「『ディープ・イリュージョン』!」

 

ソウガが唱えると、三人のソウガが出現し、それぞれ龍の頭、尾、翼、鉤爪を装備した。

 

「マズイッ!?」

 

ヴェッターはその光景を見た後、落ちている宝石を拾った。それを見ていたソウガはいつもと違う宝石に気づいた。

 

「(何だ?宝石がいつもと違うぞ?それに中に牙が埋め込まれているぞ?魔法を使って解析してみるか)」

 

ソウガはそう思い、魔法で宝石の中に埋め込まれている牙を解析を開始した。そしてその牙が何の生物の牙だと知ると驚いていた。

 

「なっ!?てめえ、その牙を何処で手に入れた!?」

 

「ほう、調べたのですか。この生物の存在を知って、何とか探し出したんですよ」

 

「………まさか、こめっこはそいつの適合者か!?」

 

「ほう、適合者の事も調べていたのですか。なおさらここで倒されるわけにはいかない!」

 

ヴェッターはそう言うと霧を発生させ始めた。ソウガ達はそれを見て同時に魔法を発動させ攻撃をしたが逃げられてしまった。ソウガは魔法を解除すると。

 

「くそっ!このままヴェッターの思い通りになったら大変な事になる!」

 

近くの木を殴ると、大きな声でそう言った。

 

◆◆◆

 

俺はヴェッターとの戦闘の後にめぐみんとゆんゆん以外のメンバーを族長の家に集めた。ひょいざぶろーさんとゆいゆいさんにこめっこがモンスターに狙われている事を伝え、自称自警団の人達と一緒にこめっこを守ってもらっている。

 

「すまないソウガ、私達がいながらこめっこに怖い思いをさせてしまった………」

 

「気にするな。今回は相手が悪いからな」

 

「ねえ、めぐみんとゆんゆんは?」

 

「めぐみんとゆんゆんにはあえて教えない。こめっこがヴェッターに狙われている事を知ったらめぐみんとゆんゆんは黙っていないだろうからな」

 

「なるほど、確かにベルディアの時も一人で行こうとしたし、そんなめぐみんをゆんゆんはほっとかないだろうしな。それで、ヴェッターの狙いが分かったのか?」

 

カズマの言葉に、俺はため息をついた後に言った。

 

「………ヴェッターはこめっこを暴君龍にするつもりだ」

 

「!?」

 

「暴君龍?何だそれ、アクア知ってるか?」

 

「知るわけないじゃない、馬鹿ね。わああああああああ!調子に乗った事は謝るから私の羽衣返して!」

 

「お前ら!今は大事な話をしているんだぞ!」

 

俺がそう言うと、カズマとアクアは大人しくなった。その後、ダクネスが二人に説明を始めた。

 

「暴君龍………、そいつは人間を好んで襲う巨大な翼竜だ。そいつは一日で大きな国を三つ滅ぼして、その国の人達を一人残らず捕食した」

 

「「!?」」

 

「今はもう絶滅しているが、そいつは爆裂魔法ですら耐える事ができ、熱線を口、背中、尻尾から出す事ができる。そいつは気に入らないものがいると、たとえ同族でも容赦なく襲い掛かる。まさに暴君と名乗るに相応しい獰猛な龍だ」

 

「………その龍の適合者がこめっこって事か」

 

「ああ、紅魔の里に来る前にヴェッターがカズマ達に話した通りだとすると、こめっこにその宝石を埋め込んでこめっこの命を奪って自分が使用できる様にするためにな、だが今までと違うのは、こめっこにまだ宝石を埋め込んでいない。その理由は………」

 

「………魔法陣が完成するのを待っているって事か」

 

「ああ、恐怖の感情が魔法陣の成長を促進する。しかも、こめっこは幼い。そんな子に恐怖の感情を与える事なんか簡単にできる。おそらくヴェッターは魔法陣が完成するまでこめっこに恐怖を与え続けるだろう」

 

「あの外道がっ!!」

 

ダクネスがそう言うと壁を思いきり殴った。その後、アクアが何かに気づき、俺達に話した。

 

「あっ!じゃあ、私の浄化魔法で魔法陣を消してみるってのはどう?そうすれば、あのモンスターの野望を打ち砕けるわ!」

 

「いや、それは駄目だ」

 

「ええっ!?何でっ!?」

 

「こめっこに頼んで、あの魔法陣を解析したんだ。あの魔法陣を解除しようとしたら解除しようとした相手の命を奪う仕組みになってた」

 

「えっ?じゃあ、私が解除しようとしたら………」

 

「………アクアは天に召されて、こめっこにさらに恐怖を与えただろうな」

 

「ええっ!?ちょっと!私に何させようとしてたのよ!このヒキニート!」

 

「知らなかったからしょうがないだろ!」

 

「とにかく、解除する事はできない。ヴェッターを倒すか、宝石をヴェッターから奪って破壊するしかないんだ」

 

「じゃあ、今日はずっとこめっこの傍に居た方が良い。いつヴェッターが襲ってくるか分からない」

 

「ああ、そうだな。じゃあ、めぐみんの家に向かうとするか、お前らも喧嘩はそれぐらいにして行くぞ」

 

そう俺は言うとカズマとアクアは喧嘩を止め、俺達はめぐみんの家に向かった。




次回はヴェッター戦です。


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この外道に紅魔族の神滅魔法を!

ヴェッターとの戦闘回です。


ソウガが族長の家でヴェッターの目的について話を行う数分前、めぐみんとゆんゆんは一緒に歩いていた。

 

「うーん………、一通り神滅魔法を使ってみたけどソニックアクセルだけ上手く使えないな。十秒間のうちに敵を倒せる様な方法を考えないと………」

 

「教えて貰えるだけいいじゃないですか。この前の名乗りと言い、どれだけ人気者になるつもりなんですか?『雷鳴轟く者』」

 

「だ、だから!私にそんな変な通り名は止めてってば!」

 

めぐみんがそう言うと、ゆんゆんは顔を真っ赤にして否定する。

 

「それにしても、冒険者カードで神滅魔法を習得すると弱体化するんですね。じゃあ、ソウガが使っている神滅魔法は弱体化しているのでしょうか?」

 

「ソウガさんは神滅魔法が記されている魔導書から直接覚えたって言っていたよ?だけど、文字がこの世界に存在しない文字で読めなかったから絵を見てソウガさんの家系は神滅魔法を覚えてるって言っていたし」

 

「………絵を見て、それがどんな魔法でどうやったら発動できるかが分かるなんて、ソウガの家系の人達はチートですね」

 

「………そういえば、シズクさんに片付けを任して良かったのかな?」

 

「良いんじゃないですか?『次は激しめの特訓をしますので息抜きでもして来てください』って言ってましたし。それはそれとして家に一度、戻っても良いですか?こめっこの様子を見たいので」

 

「そういえば元気がなかったもんね。うん、いいよ」

 

そう言うと二人は一緒にめぐみんの家に向かった。めぐみんの家が見え始めるとゆんゆんが何かに気付いた。

 

「め、めぐみん!?めぐみんの家の前に人が倒れてる!?」

 

「えっ!?あ、あれは自警団の人達じゃないですか!?」

 

そう言って二人はめぐみんの家に急いで行くと、ぶっころりーを含めた自警団の人達がボロボロの状態で倒れており、めぐみんの家は半壊していた。

 

「しっかりしてください!………良かった、どうやら気を失っているだけみたい。めぐみん………?」

 

「こ、こめっこ………、こめっこ!」

 

めぐみんはそう言うと、慌てて家に入った。ゆんゆんも後に続くと、めぐみんとゆんゆんは別々にこめっこを探しているとゆんゆんがリビングでボロボロの状態で倒れているひょいざぶろーとゆいゆいを見つけた。

 

「ひょいざぶろーさん!ゆいゆいさん!」

 

ゆんゆんが二人の傍に駆け寄り、二人も気を失っている事が分かると安堵した。その後、ゆんゆんが別の部屋を探していると寝室にめぐみんがいた。ゆんゆんが寝室に向かうと壁に大穴が開いており、めぐみんは震えていた。

 

「………大丈夫です、我が妹は実は必殺魔法の使い手。本気を出せば………」

 

「めぐみん!しっかりしてっ!」

 

「っ!すみません………」

 

何とかめぐみんを落ち着かせ、これからどうするかを考えていると近くに見慣れない魔道具が置いてあった。

 

「ねえ、めぐみん?あれ、何かな?」

 

「何かの魔道具みたいですね。でも、こんな魔道具なんて家にはなかったはず………」

 

そう言ってめぐみんは疑問に思いながら魔道具に触れると、突然、光り出した。二人は慌てて離れると魔道具から映像が流れた。

 

『どうやら、魔道具に気がついた様ですねえ。ネタ魔法使い』

 

「なっ!?こいつは!?」

 

「ヴェッター!?」

 

映像にヴェッターが映し出され、二人は驚いているとヴェッターが少し横に移動すると、そこには柱に拘束されているこめっこの姿があった。

 

「こ、こめっこっ!?」

 

『彼女は預かりました。返して欲しければ一人で邪神の墓に来てください。早く来ないと、あなたは大切な妹を失う事になる。では、待っていますよ』

 

映像が終わると、めぐみんは歩き始めようとしたがゆんゆんに止められた。

 

「………退いてください。今からあのモンスターに爆裂魔法を撃って、こめっこを助けてきますので」

 

「駄目っ!ヴェッターに爆裂魔法を撃ったけど無傷だったんでしょ?わざわざ死にに行く様なものじゃない!」

 

「じゃあ、こめっこを見捨てろって言うんですか!!」

 

「そんな事は言ってないでしょ!めぐみんではヴェッターに勝てない。なら、私が行ってこめっこちゃんを助ける!」

 

「なっ!?何を言っているのですか!?まだ神滅魔法も完璧に使いこなせていないじゃないですか!そんなの」

 

「『スリープ』」

 

めぐみんがそこまで言った時、ゆんゆんがめぐみんを魔法で眠らせた。眠っているめぐみんに。

 

「………ごめんね、めぐみん」

 

そう一言、謝るとゆんゆんはめぐみんの家を後にした。

 

◆◆◆

 

俺達はめぐみんの家に向かっている途中、カズマが話しかけて来た。

 

「なぁ、ソウガ。こめっこを族長の家に避難させた後はどうするつもりなんだ?」

 

「避難させた後は俺がヴェッターを探し出して倒すか、逃げられる前に宝石を破壊する。カズマ達はシズクと一緒にこめっこを見ていてくれ」

 

「分かった。シズクと一緒なら何とかできそうな気がするよ」

 

そう話している内にめぐみんの家の近くに来たが、そこには自称自警団の人達が倒れていた。

 

「なっ!?これは一体!?」

 

「アクア!お前の出番だぞ!」

 

「わ、分かったわ!」

 

「これは………、まさか!?」

 

俺達は察してめぐみんの家の中に入るとリビングにひょいざぶろーさんとゆいゆいさんが倒れていた。俺は回復魔法で治療している時に………。

 

「えっ、めぐみん!?大丈夫!?」

 

「なっ!?」

 

そうアクアの声が聞こえ、寝室の方に行くとアクアに体を揺らされているめぐみんがいた。何回か体を揺らされためぐみんは目を覚ました。

 

「………んぅ。あれ、私は………」

 

「よ、良かった………、大丈夫みたいね」

 

「倒れているからびっくりしたぞ」

 

「えっ?カズマ達が何で家に?」

 

「こめっこを迎えに来たら、めぐみんの家が半壊していたから心配したんだ。ところでこめっこは何処にいるんだ?」

 

「ッ!?いけない!」

 

めぐみんがそう言うと、慌てて起き上がった。………まさか。

 

「おいっ!めぐみんどうしたんだ!」

 

「こめっこがヴェッターに捕まっているんです!それを知ったゆんゆんが一人で助けに!」

 

「何っ!?」

 

そうか、だからめぐみんは怪我も無く気を失っていたのか。

 

「早く行こう!こめっことゆんゆんを助けに!」

 

ダクネスがそう言うと、俺達はめぐみんの家を出て、邪神の墓に向かった。

 

◆◆◆

 

「放して!放してよお!」

 

邪神の墓で柱に拘束されているこめっこはそう言うと、ヴェッターはこめっこの近くに行った。

 

「まあ、そんなに騒がないで。もうすぐ、あなたのお姉さんがここに来ますよ」

 

「………姉ちゃんが?」

 

「ええ、今からあなたのお姉さんを命を奪います。もし、それで魔法陣が完成しなかったら、あなたの大切な人達を皆殺しにする予定です」

 

「ッ!?止めて!止めてよお!」

 

そうこめっこが泣きながら言うとヴェッターはフフフと笑いながら、こめっこから離れた。

 

「さて、あとはネタ魔法使いが来たら、彼女の目の前で血祭りにあげるだけ………」

 

「残念だけど、めぐみんは来ないわ」

 

「何っ!?」

 

ヴェッターは声が聞こえた方向を見ると、ゆんゆんが歩いて来てるのが見えた。ゆんゆんはヴェッターより少し離れた場所で止まった。

 

「馬鹿なっ!?何故お前が!」

 

ヴェッターはゆんゆんに対して言うが、ゆんゆんは無視をしてこめっこに大きな声で言った。

 

「少し待っててね、こめっこちゃん!今から助けるから!」

 

「まあいい、どちらにしてもあのネタ魔法使いを殺す事に変わりない。ですが、良いんですか?そんな約束をして、僅かな可能性も勝ち目がないというのに」

 

ヴェッターはそう言うと、ゆんゆんの上空に雷雲は発生させ、雷を落とした。ゆんゆんは雷を避けヴェッターの方に走りながら。

 

「『ライト・オブ・セイバー』!」

 

光の剣を出現させた。そのままゆんゆんは雷を避けながらヴェッターに近づいていき、ヴェッターの近くまで行くとゆんゆんは光の剣で切ろうとしたが、ヴェッターに避けられてしまったが再びヴェッターに接近しようとした。

 

「前に戦った時から学習していませんね。私に接近戦は効かないんですよ!」

 

ヴェッターはそう言うとかまいたちの結界を発生させた。ゆんゆんは体全体に魔力を込め、結界に突っ込んだ。ゆんゆんの体のあちこちに切り傷ができたが、そのまま、結界を越え、左腕に魔力を込めた。

 

「な、何っ!?ぐおおっ!?」

 

ヴェッターは驚いていると、ゆんゆんは魔力の込めた左腕でヴェッターの顔面を殴った。殴られたヴェッターは後方に大きく吹っ飛び態勢を崩した。

 

「少しはスカッとしたかな、その顔を思いきり殴りたかったからね」

 

「調子に乗るなあ!!」

 

そうヴェッターは言うと、大きな火球を作り出し、ゆんゆんのいる方向に放つと大きな爆発が起こった。砂煙が消えるとゆんゆんの姿が無くなっていた。

 

「フンッ!バラバラに吹き飛んだか!」

 

ヴェッターがそう言った時だった、ゆんゆんが背後に現れ、魔力を込めた蹴りを行おうとしていた。

 

「なっ!?何時の間に後ろに!?ぐふっ!?」

 

蹴られたヴェッターは大きく吹っ飛ぶが何とか態勢を立て直すと何が起こったのか考えていた。

 

「何だ、あの高速移動は。前まではあんなのは使っていなかったはず………、上級魔法の中にも高速移動できる魔法なんて無いはず………。まさか、死神と同じ魔法を使える様になったのか!今の私にはあんな高速移動はできないが………!」

 

ヴェッターはそう言うとゆんゆんの周りに雷雲を発生させた。それをこめっこは不安そうに見ていた。

 

「いくら強力な魔法が使える様になっても。所詮、使い手が虫けらでは意味がない!」

 

そう言うと、周りの雷雲から雷をゆんゆんに目掛けて放つが、ゆんゆんはその攻撃を全て避け、雷雲を抜けた。

 

「何っ!?」

 

「見せてあげる!神滅魔法の力を!」

 

ゆんゆんがそう言っていると………。

 

「駄目ですよ!ゆんゆん!」

 

「えっ!?めぐみん!?」

 

「まだ、あなたは神滅魔法を完璧には使いこなせてないじゃないですか!」

 

めぐみんが来た事に一瞬、ゆんゆんは戸惑ったがすぐにヴェッターの方を見た。カズマ達はゆんゆんの下に行こうとするがソウガに止められた。

 

「なっ!?ソウガ!何故止めるのですか!」

 

「このままじゃ、ゆんゆんが危ない!そこを退け!」

 

「ソウガ!邪魔するならあんたも容赦しないわよ!!」

 

めぐみん達がソウガにそう言うと、ソウガが三人に言った。

 

「いや、今のゆんゆんなら大丈夫だ」

 

「「「えっ………?」」」

 

ソウガの言葉に三人は疑問を浮かべていた。その時、ゆんゆんは深呼吸をした後。

 

「『ソニックアクセル』ッッッ!!」

 

そう唱え、高速移動で移動を始めた。ヴェッターはそれを見ると、ゆんゆんのいた方向に多くの攻撃を行うが、ゆんゆんに全て避けられた。ゆんゆんがヴェッターの近くまで移動した時、光の剣で何度もヴェッターを斬り続けた。

 

「ガッ!ぐっ!このままではマズイッ!?」

 

ヴェッターは何とかゆんゆんのいる方向に殴り掛かったがゆんゆんの姿が消え、上空に紅い円錐状のエネルギーが何個も出現した。

 

「な、何っ!?」

 

「『フォトンブレイク』ッッッ!!」

 

ゆんゆんがそう唱えると高速移動の状態で、複数の円錐状のエネルギーをヴェッターに叩き込んだ後にヴェッターより少し前のところでソニックアクセルが強制解除され、ゆんゆんが姿を現した後。

 

「あなたのくだらない野望もこれで終わりよ!」

 

「ぐぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

ゆんゆんがそう言うと、ヴェッターが爆発した後に仰向けに倒れた。ヴェッターの体から青い炎が出ており、徐々に灰化しているのを見た後にゆんゆんは近くに宝石が落ちているのをみると、そこまで移動し宝石を拾うと。

 

「………皆が、私の大切な人達が心の中で支えてくれたから、ここまで強くなれた」

 

そう言った後に腕に魔力を込め、宝石を砕いた。その瞬間、こめっこの左腕の魔法陣は消滅した。その後にこめっこはダクネスに拘束を解いてもらうと。

 

「姉ちゃん!」

 

「こめっこ!」

 

めぐみんの方に走り、思いきり抱きついた。それを見ていたゆんゆんは魔力の使い過ぎの所為か倒れそうになるがソウガに支えられた。

 

「ソウ、ガさん」

 

「よくやったなゆんゆん。凄かったぞ」

 

そうソウガに言われ安心している時だった………。

 

「………愚かな、奴らだ」

 

「「「「「「「ッ!?」」」」」」」

 

そう声が聞こえ、ソウガ達は聞こえた方向を見るとヴェッターが体から青い炎を出しながら上半身を少し起き上がらせてこっちを見ていた。

 

「なっ!?お前、まだ生きて………!」

 

「………お前達は、滅びる運命だ、とも知らずに暢気なも、のだ」

 

「お前、何を言っている」

 

「私とフィニクスの敗、北は始まりに過ぎない。もう運命の針を止、める事はできないぞ。もう、我々の野望は止められない!」

 

「………我々………だと………!」

 

「先に地、獄に行って待って………いる………ぞ………」

 

ヴェッターはそう言うと完全に灰化し消滅した。それを見ていたソウガ達は呆然とヴェッターのいたところを見ていた。

 

「外道らしい最期だったな………」

 

「それにしても何だったんだ?一体………」

 

「そうですね。………何か不吉です」

 

「どうせ、負け惜しみよ!そんな事より帰って乾杯しましょ!今日は朝まで飲むわよー!」

 

「負け惜しみだといいがな………」

 

ソウガ達はその場を後にしたが、アクアとこめっこ以外の全員がヴェッターの言葉に不安を抱いていた。




原作最新刊を読んだのですが、衝撃のラストで笑いました。


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この死神に店主との抱擁を!

これでこの章は終わりです。


「皆さん、また来てくださいね。めぐみん、早く孫を作ってね」

 

「別れ際に何を言っているんですか!」

 

ヴェッターの戦いから数日後の今日、俺達はアクセルの街に帰る事になった。ゆいゆいさんがめぐみんに対してそう言ったので俺はため息をついた。

 

「じゃあ、そろそろ行こうか」

 

「はい、こめっこもまた会いましょう」

 

「うん!姉ちゃん!」

 

そう言って俺達はめぐみんの家から出ようとすると、めぐみんの家のドアがノックされた、めぐみんがドアを開けると、ふにふらとどどんこ、あるえがいた。俺達は外に出ると、めぐみんが言った。

 

「ぷりくらとどどんぱとあるえじゃないですか。どうしたのですか?」

 

「ふにふらよ!あんたいい加減、私達の名前覚えなさいよ!」

 

「どどんぱじゃなくてどどんこよ!あるえは間違えないで、何で私達は間違えるのよ!」

 

「だって、目立たないモブじゃないですか」

 

「「よし、分かった。その喧嘩買おう!」」

 

そう言って、ふにふらとどどんこがめぐみんに詰め寄るのを見ていると、あるえが俺の傍に来た。

 

「今日でしばらくお別れだね」

 

「ああ、そうだな。そうだ、これ渡しておくな」

 

俺はそう言うと、魔道具店の住所が書かれた紙を渡した。

 

「これは?」

 

「俺が住んでいる場所の住所だ。これならいつでも遊びに来れるだろ?」

 

「ッ!?あ、ありがとう!絶対に遊びに行くよ!あっ、これ良かったら」

 

そう言ってあるえは何か丸めた布みたいな物を俺に渡した。何だろうと思い、布を広げた。………パンツだったのであるえの顔に投げつけた。

 

「わぶっ!」

 

「何てもの渡してんだ!」

 

「大丈夫、私の私物だから安心してくれ。それをオカズにしてくれると私は嬉しい」

 

「お前は何言ってんだ!?」

 

「物足りないのかい?じゃあ、今からブラを外すから待っていてくれ」

 

「そういう問題じゃねえわ!」

 

「ソ、ソウガ………、俺達が知らない間に、あるえとそんな関係に………」

 

「ソウガさん………」

 

「ち、違う!?俺とあるえはカズマとゆんゆんが考えている関係じゃない!」

 

俺がカズマとゆんゆんにそう言っていると、ズボンをクイクイと引っ張られたので何だと思って見て見ると、こめっこがズボンを掴みながら俺を見ていた。

 

「うん?どうしたんだ?」

 

「ソーガお兄ちゃん!あの時、モンスターから助けてくれてありがとう!」

 

あの時?………あぁ、ヴェッターがこめっこの腕を掴んでいた時の事か………。

 

「どういたしまして。また怖いモンスターがこめっこを泣かせようとしたら、すぐに駆け付けるからな」

 

「うん、ありがとう!………ソーガお兄ちゃん。ちょっとしゃがんで!」

 

「ああ、分かった」

 

そうこめっこに言われ、しゃがむとこめっこが俺の頬にキスをした。それを見ていたひょいざぶろーさんは凄く驚いていたが、気にしない事にする。

 

「えっと………、こめっこ?」

 

「ソーガお兄ちゃん、凄く優しいからわたしが大きくなったら、ソーガお兄ちゃんのおよめさんになってあげる!」

 

こめっこが笑顔でそう言ってきた。おそらく、娘が父親のお嫁さんになるという感じの事だろう。俺はこめっこに微笑みながら頭を撫でると。

 

「こめっこが大きくなって、俺の事がまだ好きならな」

 

「うん!わたし、がんばって大きくなる!」

 

俺はそう、こめっこに言った時だった。ひょいざぶろーさんが俺の胸倉を掴んで立たせ、揺らしてきた。

 

「きききき貴様あああああああああああああああああああ!!よくも、こめっこをおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

「こここ子供の言う事を、真に受けないでください!?」

 

「こめっこが嘘を言っていると貴様は言うのかああああああああああああああああああああああ!!」

 

「ああ、もうめんどくせえ!」

 

「駄目だよ。ソウガは私のなんだから」

 

「まけないもん!」

 

そうあるえとこめっこの会話を聞いたひょいざぶろーさんがさらに激しく俺を揺らし始めた。………やばい、気持ち悪くなってきた。うっ………。

 

「あるえとこめっこちゃんは何を言っているの!?ひょいざぶろーさんも落ち着いてください!ああ、もう!皆、落ち着いてえええええええええええ!!」

 

「すみません、遅くなりました!………って、何ですか?このカオスな状況………」

 

◆◆◆

 

あの後、何とか騒動を治め、テレポート屋にに頼んでアクセルの街に帰って来た。今は魔道具店に向かうためにゆんゆんとシズクと一緒に歩いている。しばらく歩いていると魔導具店に着いた。

 

「着いたぞ、シズク。ここがウィズが経営している魔道具店だ」

 

「そして、ソウガ先輩とウィズ先輩の愛の巣なんですね」

 

「………お前、ティアと同じ事を言ってるぞ?」

 

「あの獣女と同じ事を言ったのは屈辱ですが、事実なのでしょうがないです」

 

「事実じゃないからな?まあいい、今からウィズに会ってきて色々話すから少し待ってろ。ゆんゆんもすまないがシズクと一緒に待っていてくれ」

 

「うん、分かった」

 

「分かりました」

 

そう言った後、俺は魔道具店に入ると。

 

「へいらっしゃい!紅魔の里で多くの紅魔族を惚れさせた死神よ!神滅魔法を教えた紅魔族との混浴は楽しかったか?」

 

「………よう、バニル。久しぶりだな」

 

バニルがそんな事を言ってきてイラッとしたが我慢した。店内にはバニルしかおらず、ウィズの姿が無かった。奥で何かしているのか?

 

「ところでウィズはどうしたんだ?姿が見えないけど」

 

「ああ、あのポンコツ店主ならしばらく休みを与えた」

 

「はあっ!?俺がいない間に何があった!?」

 

「お主が紅魔の里に行って、少し落ち込んでいた状態で仕事を行っていたのだが、五日後に何とか落ち着きを取り戻そうと、赤髪のアークプリーストに死神の服を着せて抱きしめてもらったが心が満たされずにさらに落ち込んで使い物にならなくなったのだ。だから死神が帰ってくるまで休みを与えた」

 

「………ま、まぁ、アルカンレティアで色々あった後だからしょうがないか。じゃあ、ウィズに会いに行ってくる」

 

「うむ、死神よ。ポンコツ店主と久しぶりの再会であるが、なるべく早く戻ってくるが吉である」

 

そうバニルの言葉を聞いた後、俺はリビングに入ると窓から外を見ているウィズがいた。ウィズは視線に気づいたのか後ろを振り返った。俺は微笑んだ後。

 

「ウィズ、ただいま」

 

「………ソウ、君………ソウ君!」

 

ウィズはそう言うと、俺の方へ急いで来て抱き着いてきた。

 

「ソウ君、おかえり!怪我とかしてない?」

 

「ああ、大丈夫だ。元気にしてたか?」

 

「うん、元気にしてたよ。でも………」

 

そうウィズが言うと腕に力が入るのが分かり、俺はそっとウィズを抱きしめた。

 

「………寂しかったよお」

 

「そうか、ごめんな。思ったより長引いた」

 

「そんなに謝らなくてもいいよ。それより、もっと強く抱きしめて………」

 

「ああ」

 

俺は強くウィズを抱きしめ、お互いの温もりを感じていた。俺は今日は少しだけ自分の心に素直になろうと思い、俺は自分の額にウィズの額をくっつけ。

 

「こんな不愛想な俺と一緒にいてくれてありがとうな。俺はウィズのそういうところ好きだぞ」

 

「!?」

 

そうウィズに言った。その後、俺は離れるとウィズが何故か顔が真っ赤にした状態で聞いてきた。

 

「ソウ君、い、今………!」

 

「さて、そろそろ戻るか。バニルも早く戻ってきた方が良いっていたからな。ウィズも来てくれ、会わせたい奴がいるから」

 

「ちょっ、ちょっと待って、もう一回!もう一回言って!」

 

ウィズがそんな事を言っている時だった………。

 

「ああっ!?お前はぱっつん女!?何でこんなところにいやぎゃああああああああああああああああああああああああっ!?」

 

「「!?」」

 

俺達はティアの悲鳴を聞いて、急いで外に出るとティアが焦げた状態でうずくまっており、近くにシズクが立っていた。ゆんゆんはブルブルと震えていた。

 

「ティアちゃん!?どうしたのって、あれっ?もしかしてシズクちゃん?」

 

「お久しぶりです。ウィズ先輩」

 

ウィズがシズクに気付くと、シズクはそう言ってお辞儀をした。その後、焦げた状態のティアが立ち上がった。

 

「いてえなクソ野郎!!何でいきなり攻撃するんだ!!」

 

「何故かですか、分からないのですか本当に?」

 

ティアがそう言うとシズクが凄い睨んでいた。………ティアが何かしたのか?

 

「………私とした約束を覚えていますか?」

 

「や、約束………?」

 

「あなたは言いましたよね?『ソウガ先輩とウィズ先輩の迷惑にならない様に満足できるぐらいまで強くなったら一緒に先輩達に会いに行こう!』って約束しましたよね?それで、お互い満足できるぐらい強くなったのに、数日間、姿が見えなかったので病気かなと思ってお見舞いにいったら、もう国を出たってあなたの親から聞いた時の私の気持ちが分かりますか?」

 

「ティア………」

 

「ティアさん………」

 

「ティアちゃん………、それはティアちゃんが悪いよ」

 

「あ、あはははっ、ごめんつい………」

 

「つい、忘れる様な約束だったんですね。全く、これだから馬鹿は………」

 

「あぁん?」

 

シズクがそう言うと、ティアは怒気を含んだ声でそう言った。

 

「………私が馬鹿なのと約束破った事は関係ないだろ」

 

「関係あります」

 

「何だ、言ってみろよ!!」

 

「馬鹿だから忘れたんですよ!!」

 

「忘れる事ぐらい誰にだってあるだろうが!!心が狭い奴だな!!」

 

「あなたは昔からそうです!!学校の課題を写させてって言って貸したのに当日、忘れて私が怒られたり、私が楽しみにしていたケーキを勝手に食べたりしていましたよね!!それもどうせ忘れたんですよね!!馬鹿だから!!」

 

これはマズイぞ………。このままヒートアップしたら大変な事になる。俺は二人の喧嘩を止めようとしたが。

 

「………うるせえぞ貧乳。てめえのまな板の上で調理するぞ」

 

「………………」

 

「………………」

 

ティアの爆弾発言のせいで止める事ができなかった。二人はお互いを睨み合った後。

 

「真っ二つにしてあげますよ!!この獣女!!」

 

「上等だこの野郎!!その微妙な膨らみを凹ましてやるよ絶壁がっ!!」

 

そう言った後に拳と剣がぶつかり、衝撃波が発生して地面が割れた。………ちょっ!?

 

「まな板じゃ遊べねえんだよ!!」

 

「あなたはまな板の凄さが分かっていない!!」

 

「二人共、落ち着いてください!?」

 

「や、止めなさああああああああああああああい!」

 

「………はぁ」

 

二人の喧嘩が本格的に始まり、ゆんゆんとウィズがそう言う姿を見て俺はため息をついた。




次は六巻の内容になりますが、オリジナルの話も入れていきます。


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王都 魔王軍の幹部ソウリュウ編
この冒険者達に死神の話を!


この話でソウガの家族の事が少し分かります。


紅魔の里から帰ってきた俺達は平和な日常を過ごしていた。まぁ、今までが異常なだけかもしれないが。この街に帰って来た次の日にシズクが冒険者ギルドで登録を行い、上級職のソードマスターになり、上級クエストを毎日、複数請けたおかげでティアのレベルに追いついた。それを聞いてティアは凄い悔しがっておりティアも追い抜かれない様に毎日、クエストを請けている。俺は今日は休みという事でカズマの屋敷で調べ物をしていると、カズマが変な事を言い始めた。

 

「妹が欲しい」

 

カズマが放った一言に一瞬その場が静まり返った。………こいつ、いきなりどうしたんだ?

 

「ねえダクネス、順番は守らなきゃ駄目よ?次は私の番だからね?最後のボスを倒すのはこの私なんだから」

 

「いや待て、アクアやめぐみんは普段から実際にボスを倒しているじゃないですか。せめてゲームぐらい、私に締めさせてくれ」

 

「いいえ、紅魔族として締めや止めに関しては譲れません。すぐ敵に突っ込んでいくダクネスでは、また何度もコンティニューしないと倒せません」

 

カズマの話を三人は無視して、きゃいきゃい言いながらゲーム機という物の順番を巡り争っていた。紅魔の里の魔術師殺しが封印されていた格納庫からアクアが持ってきたものだ。ちなみに、ゆんゆんの修行中に俺も気になり、カズマに頼んで格納庫を開けてもらい、いくつかゲーム機を頂いた。今は暇な時にウィズと一緒に遊んでいる。ちなみに、俺達が今、遊んでいるゲームはバ○オハザードというゲームだ。迷える魂達を武器を使い天に還すゲームでウィズはリッチーとしてやるべきだと言っていたが………。

 

「さあ、館に入ったがどうするんだ?」

 

「ひとまず探索しよっか。あれ?何か映像が始まって………、きゃあああああああああああっ!?」

 

「ほら、ゾンビが出てきたぞ。早く天に還せ」

 

「ちょっと待って!?何で、あんな怖い演出にするの!?痛い痛いっ!?ソウ君助けてっ!?これどうやって攻撃するの!?」

 

「俺が知るわけないだろ」

 

「ちょっと止めてっ!?死んじゃうから止めて!?だ、誰かプリーストの人を呼んで!このままじゃ………あっ」

 

「………死んだな」

 

「………うん」

 

という感じでゲームを始めた。最初は苦戦していたが、コツを掴み何とか進めていたのだが………。

 

「大分、このゲームに慣れたな」

 

「うん、もうゾンビ達には負けないよ!」

 

「その言葉、フラグだぞ?」

 

「大丈夫だよ。そんなフラグなんてへし折ってみせるから」

 

「そうか………。うん?ここから先は水の中を歩くんだな」

 

「そうだね。うーん、水中だと動きが遅くなっちゃう」

 

「………うん?あれ何だ?」

 

「えっ?………サ、サメ!?えっ、サメまでゾンビになるの!?」

 

「ひとまず、逃げ………あっ」

 

「………食べられちゃった」

 

何故かサメのゾンビまで出てきたところで止まっている。今夜、続きをするつもりなので今度こそ攻略しないとな。そう思っているとカズマがプルプルと震え出し………。

 

「聞けよおおおおおおおおおお!」

 

「待て」

 

アクア達に詰め寄ろうとしてたので、俺はカズマを取り押さえた。

 

「いたたたたたっ!?ソウガっ!?ギブギブギブッ!?」

 

「お前は何をしようとしているんだ。アクア達もくだらない話だと思うが聞いてやってくれ」

 

「………じゃあ、ラスボスを倒すから少しだけ待ってて」

 

そう言ってゲームを再び始めた。俺はカズマを自由にすると。

 

「カズマ、お前はそれなりに活躍しているが、日頃の行いが悪いせいでカスマだのクズマだの言われるんだ。そこんところをちゃんと考えろよ?」

 

「うっ………、わ、分かったよ」

 

「よろしい。じゃあ俺も片付けるから少しだけ待ってろ」

 

そう言って俺は机の上に置いてある本などを片付けているとカズマが聞いてきた。

 

「そういえばソウガ、さっきから色々な本を読んで紙に何かを書いていた様だけど何をしていたんだ?」

 

「うん?ああ、これの解読をしていたんだ」

 

俺はそう言うと、ある一冊の本をカズマに見せた。

 

「うん?何だその本?」

 

「この本には、神滅魔法が何故、誕生したかが記されているんだ」

 

「ええっ!?」

 

俺がそう言うと、カズマは驚いていた。………まぁ、当たり前か。俺も初めて聞いた時は驚いたしな。

 

「その本に誕生の秘密が記されているのか!?」

 

「ああ、そうだ。だけど、文字がこの世界のものではないから色々な資料を見ながら解読しているんだ。何で神滅魔法が誕生したのか、俺はそれが知りたい」

 

「へえ、そうなのか。解読できるといいな」

 

「やったあああああああああ!最後のボスを倒したわ!」

 

「ああ、皆で努力したかいがあったな!」

 

俺達が話していると、アクア達が嬉しそうにそう言っていた。その後、アクア達はゲーム機を消すとめぐみんがさっきの事を聞いてきた。

 

「それでカズマは、いきなりどうしたのですか?妹が欲しいなら私達に相談するより、ご両親にお願いした方が良いと思いますよ?」

 

「親には、昔から何度も妹が欲しいと訴えたさ。それも義理の妹が欲しいから、離婚して子連れの親と再婚してくれってな」

 

「おいこら。自分を育ててくれた親に対して何を言っているんだ」

 

「俺の親の事はどうでもいいんだよ!それよりも!年上の癒し系お姉さんウィズ、活発系の元気娘クリス、クール系お姉さんセナ、幸薄いゆんゆん、体育系お姉さんティアに大和撫子系お姉さんシズク!それこそ王道派ヒロインのエリス様に至るまで、俺には様々な美女や美少女との出会いがあった」

 

「カズマさんカズマさん、私は?」

 

「お前は色物枠かペット枠だな。こ、こらっ、今大事なとこなんだ、言いたい事があるなら後にしろ!」

 

そう言ってカズマはアクアを振りほどくと。

 

「………俺は大事な事に気がついた。まだ、足りない系統があるじゃないか、と。………ここまで言ったら分かるだろう?」

 

「………全く、しょうがないですね。つまりこう言いたいのですか?私に妹代わりになれと」

 

「何言ってんだ、めぐみんはロリ枠だろ」

 

「あれっ!?」

 

「そ、その、私は何系の女になるのだろうか………」

 

「お前はもちろんエロ担当」

 

「エロ担当!?」

 

カズマ達がそう話しているのを聞いて、男の俺には関係ないなと思っていると。

 

「ああ、ちなみにソウガ改めソラは妖艶系お姉さんな」

 

「はあっ!?俺も入っているのかよ!?」

 

「当たり前だろ?まあ、この話はこれぐらいにして。ほら、こないだ紅魔の里に行った時。めぐみんの妹がいたろ?そこであらためて思った訳だ。ああ、やっぱ妹が欲しいな、って。………これで俺が言いたい事は分かったか?」

 

「ちっとも分かりません」

 

「ぐっ………、ソ、ソウガは同じ男として分かってくれるだろ?」

 

カズマが俺に理解を求めてきたが、そんな事を言われても………。

 

「実際に妹がいるが、カズマみたいに思った事は無かったな」

 

「やっぱりか………、ってちょっと待て。今なんて言った?」

 

「思った事は無かったなって言ったぞ?」

 

「違う!その前だ!!」

 

「実際に妹がいるがって言ったぞ?」

 

俺がそう言うと、カズマが何故か固まった。………どうしたんだ?

 

「ソ、ソウガ!?い、妹がいるのか!?」

 

「ああ、そうだけど」

 

「ど、どんな妹なんだ!?」

 

「昔の事だから今はどうか分からないが、凄い甘えん坊だったな。俺の後について来て、将来は俺のお嫁さんになるって言っていたな」

 

「最高じゃねえかクソ野郎がっ!!」

 

「何で俺が怒られるんだよ!?」

 

「そういえば私達はソウガの事、何も知らないな」

 

「そうですね、神滅魔法とさっきの妹の事しか知りませんしね」

 

そういえば、俺は自分の事をあまり話していなかったな。………良い機会だから話すか。

 

「じゃあ、今から俺の家族について話すけど良いか?」

 

俺がそう言うと、カズマ達は少し考えた後に頷いた。

 

「じゃあ、話すな。俺の父さんの名前はコウガ。昔、冒険者の間で知らないものはいないと言われるほどの冒険者でついた通り名は龍帝と呼ばれていたらしい。今はもう冒険者を辞めて、騎士をしている。さっき話した妹の名前はフウカだ。俺と同じ黒髪でいつも人形を持っていたな」

 

「そうなのか、じゃあ、ソウガの母親の事について教えてくれ」

 

「ああ、母さんも父さんと同じ元冒険者で氷結魔法が得意だったな。父さんと同じパーティーメンバーで一緒に過ごしている内に恋心が抱き、結婚したって言っていたな」

 

「へえ、何か良いですね。それで名前は何て言うんですか?」

 

「俺の母さんの名前はイクスだ」

 

「!?」

 

「へえ、それにしても氷結魔法が得意か。ウィズと同じだな」

 

「当たり前だ。俺の母さんがウィズを鍛えたんだからな」

 

「マジかっ!?」

 

「ああ、実はウィズも神滅魔法を覚えようとした時があったんだが、神滅魔法は一つ覚えるのに凄い時間が掛かるんだ。結果的に一つも覚える事ができずに落ち込んでいる時に母さんが自分の得意な氷結魔法を教えて、ウィズを鍛えたんだ。そのおかげでウィズは氷の魔女と呼ばれるほどの魔法使いになったんだ」

 

「へえ、凄い家族なんだな。………って、どうしたアクア!?尋常じゃないぐらい汗が出ているぞ!?」

 

俺が母さんの話をしたら、アクアが青い顔をして尋常じゃない量の汗をかいていた。どうかしたのかと思っているとアクアが聞いてきた。

 

「………ね、ねえ、ソウガ?その人って青い髪と青い瞳をしていなかった?私の髪の色より濃い色の………」

 

「うん?ああ、そういえばそうだな。何処かで母さんに会った事があるのか?」

 

「ううん!?会った事が無いから気にしないでっ!?………そうよ………こんな偶然ありえないわ………」

 

アクアはブツブツと何かを言っていた様だが気にしない事にする。これで俺の家族の話は終わりだが何か話題はないか。………ああ、そういえば聞きたい事があったから聞いてみるか。

 

「俺の家族の話はこれで終わりだから話題を変えるが、アイリス様に晩餐会を誘われたんだろ凄いな」

 

俺がそう言うと、ダクネスがハッとして表情をした後に言った。

 

「………なあカズマ。今からでも遅くはない、この話は断ろう!な?相手は国のトップなのだぞ?会食といっても、お前が期待している様なものではない。きっと堅苦しいものになる!な?皆もこの話は気にしないでおこう!」

 

「………お前、俺達が王女様に、何か無礼を働くとか思ってるだろ」

 

ダクネスはビクッと身を震わせた。そして視線を泳がせながら。

 

「そ、そんな事ない………ですよ?」

 

「おい、ちゃんと目を見ながら言え。俺達が何かやらかして、ダスティネス家の名に泥を塗るとか、そんな心配しているんだろ」

 

「そうなの!?ダクネス酷い!」

 

「全く心外です!私達は仲間でしょう!もっと信頼してください!」

 

「うう………。お前達の事をこれ以上ないぐらいに理解しているからこそ、不安になっているのだが………」

 

「大変そうだな。じゃあ、俺は帰るな」

 

俺がそう言って立ち去ろうとするが、ダクネスに腕を掴まれた。………チッ、バレたか。

 

「何、他人事の様に言っているんだ!お前も私達のパーティーメンバーなんだからお前も参加する事になっているんだぞ!」

 

「俺はパスで」

 

「ふざけるな!だったら、ソウガもカズマ達を説得しろ!」

 

そう言われ、俺はカズマ達を見ると。

 

「おっと、タキシードを買っておかないとな。お前らもドレスなんて持ってないだろ?一緒に仕立てて貰おうぜ」

 

「良いわね!私もたまには羽衣以外を着てウロウロしたいわ!でも仕立てるのに間に合うかしら」

 

「私はもちろん黒のドレスですかね。大人な雰囲気溢れるヤツを仕立てて貰いましょうか」

 

カズマ達を見たところ、辞退する気ない様だ。俺はため息をついた後、ダクネスの腕を思いきり払った。

 

「ああっ!?こらっ!」

 

「『マキシマイズ・テレポーテーション』」

 

「いくら逃げても、当日の食事会からは逃げられないぞ!」

 

そうダクネスが言った後、俺は屋敷から逃げる様に転移した。




次回はウィズ魔道具店の話です


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この魔道具店に新商品を!

新商品を売り出します。


「………はぁ」

 

屋敷で色々あった次の日、俺は冒険者ギルドでため息をついていた。あと、数日でアイリス様との晩餐会があるからである。はっきり言って参加したくない。でも、参加しなくてはならないので、俺はもう一度ため息をつく。

 

「………はぁ」

 

「どうしたんですか?そんなにため息をついて」

 

「うん?ああ、ルナか」

 

そんな俺を心配してなのかルナが俺に話しかけて来た。その後、ルナは俺の前に座り聞いてきた。

 

「ここのところ元気ないですよ?どうかしたのですか?」

 

「実はな………、アイリス様との晩餐会に誘われてな………」

 

「えっ!?凄いじゃないですか!」

 

「ああ、でも、俺は参加したくないんだ」

 

「えっ、どうしてですか?」

 

俺がそう言うと、ルナが疑問を浮かべていたので俺は答えた。

 

「………実はな、アイリス様とは特務で会った事があるんだ。特務が終わった後、側近の騎士達が俺を勧誘してきて、『王都にはあなたの様な実力者が必要です!お願いします!この王都直属の冒険者になってください!』って言ってな。もちろん断ったがな」

 

「良い話だと思うんですが、何が不満だったんですか?」

 

「俺はなこの街が好きなんだ。だから、この街から離れたくない」

 

俺は昔からこの街が好きだった。皆が幸せそうに暮らしているこの街が………、昔のパーティーメンバーも好きだったからな。そう思っているとルナが微笑みながら話してきた。

 

「………ふふっ、ソウガさんは本当にこの街が好きなんですね」

 

「ああ、そうだな」

 

「でも、アイリス様からのお誘いなんですからきちんと参加してくださいね?嫌な思いをする事がありましたら、愚痴でも聞いてあげますから」

 

「そうか、ありがとうな。ルナ」

 

「いえいえ、どういたしまして」

 

ルナは微笑みながらそう言った。………さてと。

 

「じゃあ、俺は用事があるから行くな」

 

「ええ、分かりました」

 

「………ああ、そういえば一つだけ言い忘れていた」

 

「はい?どうかしたのですか?」

 

俺はそう言うと、ルナは疑問を浮かべながら聞いてきた。俺はルナの方へ振り返ると。

 

「今日は魔道具店で新商品を売り出す予定だ。良かったら来てみてくれ」

 

◆◆◆

 

「ただいま」

 

「あっ、おかえりソウ君!今、カズマさん考案の魔道具が搬入されたの!」

 

俺は魔道具店に帰ると、ウィズがそう微笑みながら言っていた。既に魔道具店に搬入されている魔道具をまじまじと眺めているめぐみんとティアとシズク、あと何故か茶菓子を与えられ大人しくしているアクアがいた。

 

「これは今まで見た事が無い魔道具ですね。どうやって使うのでしょう?」

 

「凄いですね。私達が集めた素材を使い、このような魔道具ができるなんて………」

 

「ああ、苦労した甲斐があるな。この魔道具は私達の故郷にも無かったからどのような物なのか楽しみだ!」

 

めぐみん達がそう話していると、魔道具店の扉が開いた。俺達は扉の方を見るとゆんゆんが来ていた。

 

「お、お邪魔します!今日はカズマさんが考案した魔道具を売り出す日と聞いて、素材集めに協力した一人として是非、来てくれとソウガさんに頼まれてきたのですが、あの、本当に私も立ち会って良いんでしょうか………」

 

「もちろんですよ、ゆんゆんさん。ゆんゆんさんが協力してくださったおかげでカズマさんはこの魔道具を作る事ができたんですよ?私も感謝していますので是非、立ち会ってください」

 

「は、はい!ありがとうございます!あっ、これ良かったらどうぞ!」

 

そう言ってゆんゆんは手土産をウィズに渡すと、ゆんゆんも魔道具を見ていた。それから少し待っているとカズマ達が来た。

 

「よう、邪魔するぞー」

 

「あっ、カズマさんいらっしゃいませ!丁度、カズマさん考案の着火具が搬入されたとこですよ!」

 

「カズマカズマ、早く見せてください、この魔道具の力を!」

 

「魔道具じゃなく、俺の国の便利アイテムだって言ってるだろ?まあ見とけ」

 

カズマはそう言うと、蓋を片手で動かすとカズマが火を付けた。

 

「「「「「おおっ!?」」」」」

 

カズマが灯した火に、めぐみん、ダクネス、ティア、シズク、ウィズが驚いた。声には出していないが俺もゆんゆんも驚いている。………これは、凄いな。

 

「こ、これは凄く便利ですね!本当に、まんまティンダ―の魔法じゃないですか!カズマさん、これは売れますよ!」

 

「簡単な構造なのによくできていますね。しかもこれ、大事に使えば凄く長く使えそうですし」

 

「これは凄いです………、これを使えばいつでも火を付ける事ができますね」

 

「しかも簡単にな、本当にすげえよ!」

 

「これは私も一つ欲しいな。火打石は湿気った場所では使い辛かったり、火を起こすのに時間がかかったり。他にも、火種となる燃え易い物を、濡らさない様に持ち歩く必要もあり面倒だ。これならそれらの問題が一発で解決する。ウィズ、カズマ、一つくれ。幾らだ?」

 

「お金なんていりませんよ。これはカズマさんが考案した物を私達が作らせて戴いた物ですし。お好きな物を持っていってください」

 

ウィズの言葉に、俺達は嬉々として魔道具を選んでいると、茶菓子を貪っていたアクアが。

 

「もう、未開人なんだから。ライター一つで何を喜んでいるのかしら。こんな物、本当に簡単な作りなのよ?全く、これだから文明が遅れている人達は、全く………」

 

そう小馬鹿にした様に言いながら、鼻で笑った。それに俺はカチンとしてしまった。俺とティアとシズクはアクアの近くに行くと、アクアは俺達が近くに行くと戸惑っていた。

 

「………な、何………?何で、そんな怖い目で私を見るの?」

 

「………じゃあ、お前帰れよ。あと茶菓子もタダじゃないから金を払え」

 

「は、はあっ!?何でそんな事言うの!」

 

「カズマが、ソウガ先輩とウィズ先輩の魔道具店のために魔道具を作ってくださったんですよ?なのに、何でそんな事が言えるんですか?何で、何もしていないあなたにそんな事を言われなければならないのですか?見ていて目障りなので消えてください」

 

「な、何よ………ぐすっ、別に何を言っても良いじゃない」

 

「お前はいい加減学習しろよ。お前の無責任な言葉のせいで傷つく奴らがいるんだぞ?さっきの言葉で私も堪忍袋の緒が切れた。魔道具店のポーションを浄化して迷惑をかけているのに今まで私が何もしなかったのは、ウィズ先輩がお前を許しているからなんだぞ?はっきり言うとな、ウィズ先輩が許していなかったらお前みたいな女神を語るクソ野郎は出会ってすぐに半殺しにしているぞ?とにかく邪魔だから帰れよ」

 

「ひっく………何、よ………、ぐすっ………そこまで、言わなくても、良いじゃない………」

 

アクアが泣き出しているが、俺達は言うのを止めずにいるとウィズとゆんゆんが止めようとしてきた。

 

「ソ、ソウ君!?さすがに言い過ぎだよ!」

 

「ティアさんとシズクさんも落ち着いてください!」

 

「うるせえ!!黙ってろ!!」

 

「「はっ、はい!」」

 

止めようとした二人を俺が一喝すると、二人はそう返事して黙った。その後、ティアとシズクはアクアを外に追い出し鍵を掛けた。アクアが外でドアを叩いているが知るか。

 

「わああああああああああっ!?ごめんなさい!謝るから、謝るから許して!」

 

「お前はこの店の出入りを禁止する。次に店に入って来たらセナに連絡して逮捕してもらうからな。じゃあ早く消えろ、邪魔だ」

 

「お願い許してください!何でもするから許して!」

 

「………じゃあ、外で客引きでもしろ。そうしたら許してやる」

 

俺がそう言って鍵を開けるとアクアが泣きながら入ってきた後、ダクネスに抱き着いた。

 

◆◆◆

 

今、魔道具店の前には凄まじい人だかりができていた。今までこの通りでこんなに人が殺到するのは初めてだ。バニルが街でビラを撒いているおかげだと思うが………。

 

「ソ、ソウガさん!?お、落ち着いてください!?」

 

「気持ちは分かりますが怒りを鎮めてください!?」

 

「ああ、もう!何で問題ばかり起こすんだ!あの馬鹿が!!」

 

だが、俺はキレそうになっており、ゆんゆん、シズク、ティアが何か言っているがほとんど聞いていない。何故かというと………。

 

「さあ続いては、取り出したるこの何の変哲もないハンカチから!なんとビックリ、鳩が出ますよ!」

 

「「「「うおおおおおおおおおおっ!?」」」」

 

全力で芸を披露しているアクアが、店の客まで取っているからである。こ、こいつは言われた事もできないのか。

 

「………なあ、今からあいつを血祭りにしていいか?水色の髪を真っ赤に染めてもいいか?」

 

「「「落ち着いてください!?」」」

 

俺がそう言うと、三人がそう言った。それを見ているとバニルが帰って来た。

 

「な、何だこの有様は………」

 

バニルはそう言うとアクアを止めようとしに行くが、俺が止めた。

 

「何をする死神!!貴様、この店の未来を賭けた、新商品売り出しの日だぞ!!何故、止め………ッ!?」

 

「「「「「「「「ひいっ!?」」」」」」」

 

バニルが驚愕し、カズマ達が悲鳴を上げているが、何をそんなに驚いているんだ?ちゃんと怒りを抑えて微笑みながら止めたというのに。………まぁ、そんな事はどうでも良い。

 

「バニル、ちょっと手伝え。あの馬鹿にピッタリな良い罰を思いついた」

 

「う、うむ………、分かった」

 

俺はそう言った後にバニルを引き連れてアクアの前に出ると、大きな声で言った。

 

「皆さん!今日はようこそおいで下さいました。まもなく新商品の販売を開始したいと思います!ですが、最後に私も一つ、芸をしようと思います。ここにいるアクアには足元にも及びませんが、どうぞお楽しみください!」

 

俺がそう言うと、来ていた客の人達は拍手する。そして、俺は大きな布を魔法で作るとバニルと一緒に持ち。

 

「では、今からここにいるアクアを消したいと思います!」

 

「えっ!?ソ、ソウガ?私、そんなの聞いてないんだけど?」

 

アクアがそう言っているが無視をし、アクアを布で隠すと。

 

「では行きますよ。………三!」

 

俺はそう言うと、右足を布で見えない様にして。

 

「二!」

 

アクアの後ろにワープゲートを作り出した。

 

「えっ?ねえ、ソウガ?これって………」

 

「一!」

 

一のカウントで俺は右足でアクアの腹部を思いきり蹴り、ワープゲートにアクアが入るのを見た後、ワープゲートを閉じた。

 

「「「「「「「ええっ!?」」」」」」」

 

「はい!どうでしょうか!見事に消えております!」

 

「「「「うおおおおおおおおおおおっ!?」」」」

 

「ありがとうございます!では、新商品を販売したいと思います!皆さん、順番にお並びください!」

 

俺がそう言うと状況を察してかウィズが店内に入っていった。すると肩にポンとバニルが手を置いた。

 

「クハハハハハハハ!死神よ貴様もやるではないか!あんな方法であの憎き宿敵を排除するとは!」

 

「俺もかなりムカついていたからな、当然の報いだ。じゃあ、俺達も手伝うか」

 

俺がそう言うとバニルも店内に入る、俺も入ろうとするとカズマ達に止められた。

 

「な、なあ………、アクアを何処にやったんだ………?」

 

カズマがそう聞き、めぐみん達も不安そうな顔をしていたので俺は微笑むと。

 

「さーて、ウィズの手伝いをするかな!」

 

「ちょっと待て!?本当にアクアを何処にやったああああああああああああ!?」

 

そうカズマが叫ぶが、俺は聞こえなかった事にして店の中に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日、アクアがカエルの粘液まみれになりながら、泣いて帰って来た。まぁ、当然か。ジャイアントトードの巣に放り込んだからな。




次はオリジナルの話で、あの盗賊娘が出ます。


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この死神と盗賊に神器を!

クリスに不幸が訪れます。


あれから何日が経過したが、魔道具店は繁盛し続けている。本当にカズマには感謝しないとな。ちなみに、カズマ達はタキシードやドレスを仕立てているらしい。俺もタキシードなんてしばらく着ていないからクエスト帰りに仕立てていくか。そう思いながら冒険者ギルドで軽めの食事を取っていると。

 

「やあ、ソウガ」

 

「うん?ああ、クリスか」

 

クリスが俺に話しかけて来たので、クリスは俺の前に座る。

 

「聞いたよ、凄い繁盛しているね魔道具店。毎日、長蛇の列で忙しそうだね」

 

「ああ、そうだな。仕事が終わるとウィズが疲れているから今は、家事は俺がやっているしな、相当忙しいと思う。あと、あの商品を作ったのはカズマだ。だから凄い繁盛しているのはカズマのおかげだ」

 

「あはは、そうだね。カズマに感謝しないとね」

 

「ところで、お前から話しかけてくるなんて珍しいな。何か俺に用か?」

 

俺がそう言うと、クリスが真面目な顔になると。

 

「うん、実は君に折り入って頼みがあるんだ。………君は神器っていうのを知っているかな?」

 

「神器?」

 

「神器っていうのは強力な力を持った魔道具の事を言うの、種類は様々存在するけど、いずれも強大な力を秘めている。ちなみにミツルギが持っている、魔剣グラムも神器の一つなの」

 

「なるほど、だからあいつはあんなに強いのか。それで、その神器を手に入れる事が俺への頼みか?」

 

「話が早いね!そう、君への頼み事は神器の回収を手伝ってほしいんだ!実はダンジョンに神器が隠されていてね。ねっ、お願い。協力して!」

 

俺にそう頼み込んでくる。………何で俺に頼むんだ?

 

「盗賊のスキルを使えば一人で十分だろ?アークウィザードの俺が行ったところで足手まといになるだけだ」

 

「いやいや、何を謙遜しているの?最強のアークウィザードの君の強さは理解しているし新聞にもほら、王都の冒険者ランキング一位にもなっているし!」

 

「はあっ!?何でだ!そのランキングは王都の冒険者だけのはずだろ!」

 

俺はクリスから新聞を取ると、確かに俺が冒険者ランキング一位になっている。ちなみにミツルギは五位だ。俺に書いてある説明文を読むと。

 

「『今はまだ王都の冒険者ではないが彼は全てにおいて他の冒険者を凌駕し、最強の冒険者を名乗るに相応しい実力を持っている。私達は彼が王都の冒険者になる事を心待ちにしている』って何だこれ!?」

 

「ねっ?凄いでしょ!ちなみに王都では君は有名人だよ?ファンクラブまであるみたいだし。だからお願い!私を助けて、最強のアークウィザード!」

 

「分かったから最強のアークウィザードって言うのを止めろ。俺は別に最強じゃない!」

 

「本当?ありがとう!じゃあ、色々と準備をしてくるから待ってて!」

 

そう言ってクリスは何処かに行き、俺はしばらく待っているとクリスが帰って来た。

 

「お待たせ!じゃあ、行こうか!」

 

クリスがそう言うと俺は立ち上がり、ダンジョンの方に向かった。

 

◆◆◆

 

俺達はしばらく歩いていると、ダンジョンの入り口に辿り着いた。前にカズマ達と行ったキールのダンジョンより、古そうなダンジョンみたいだ。そう思っているとクリスが言った。

 

「このダンジョンは神器の所有者が作ったものだね。神器の能力は察するにダンジョンを作り上げる能力ってとこかな?神器は所有者が死んでも効果を発揮し続けるものがあるからトラップには気を付けないとね」

 

「………お前、何でそんなに神器について詳しい」

 

「えっ!?わ、私は盗賊だからね!そういう情報が手に入りやすいんだよ!」

 

「盗賊でも手に入る情報には限度があるだろ?お前は一体、何処からその情報を手に入れているんだ?」

 

「さ、さあ、そろそろ行こうか!早く神器を回収しないとね!」

 

そう言ってダンジョンの中にクリスが入っていく、俺はその後に続いて行くがトラップやモンスターを盗賊スキルで回避しており、俺の出番は無かった。

 

「………これなら、俺は必要なかったんじゃないか?」

 

「ここまでならね、目的の所の少し前に二人でじゃないと入れないところがあって、そこに何があるか分からないから君に頼んだの」

 

「なるほど、そういう事か」

 

そう話していると、クリスが聞いてきた。

 

「そういえば、何日か前にアクアが泣いて帰ってきてたけど何かしたの?」

 

「あまりにムカついたからジャイアントトードの巣に放り込んだ」

 

「………あ、あはは、駄目だよ?そんな事をしたら」

 

「あいつが営業妨害したのが悪い。それに、俺のそういうところは母親譲りだから仕方ないんだ」

 

「ソウガのお母さん?どんなお母さんなの?」

 

「普段は淑やかで優しく穏やかな性格だけど、怒ると口調が荒くなり、俺がキレた時と同じような口調になる。氷結魔法が得意だけど接近戦をする時は肉弾戦闘を主にやっていたな」

 

俺がそう言うとクリスの顔が青くなっていた。どうしたんだと思っているとクリスが聞いてきた。

 

「………ね、ねえソウガ?君のお母さんの名前を教えてくれないかな?」

 

「何だ急に?………俺の母さんの名前はイクスだ」

 

「!?」

 

「どうした?顔がさらに青くなったぞ?それに汗が凄い出ているし、体調が悪いなら今日は止めていた方が………」

 

「ううん!?ただ、この通路が暑いだけだから気にしないで!いやー、それにしても暑い暑い!」

 

クリスはそう言うと、どんどん先に行ってしまった。しばらく歩いていると、クリスが立ち止まった。

 

「ここが二人でしか入れない扉だよ。両端に右手を当てないと開かない作りになってるの」

 

クリスが言った後に俺は見て見ると、手形が両端にあった。俺達は右手を当てると扉が作動して開いた。

 

「よしっ!この扉を少し歩くと、そこに神器があるから行こうか」

 

「ああ」

 

俺達はそう言うと、再び歩き始めた。余裕だなと思っているとクリスが話しかけて来た。

 

「ごめんね?こんな事を頼んで」

 

「気にするな。俺も神器に少しだけ興味が出てたしな」

 

俺達がそう話している時だった。クリスの体に何かが巻きつき、右にあった小さな部屋にクリスが連れてかれた。

 

「へっ!?きゃあっ!?」

 

「クリス!?」

 

俺は右の小さな部屋に入ると、触手が両腕にある黄色いモンスターに捕まって、粘液まみれのクリスがいた。

 

「なにこのモンスター!気持ち悪い!」

 

「うふふ、久しぶりの侵入者ね。歓迎するわ!」

 

「確か、このモンスターは触手男だな。好みの相手に巻き付き、弄ぶモンスターだったな」

 

「そんな事言ってないで助けてっ!?」

 

「もう釣れないわね。私達は私達で楽しみましょう?あなたはイケメン過ぎるからダーメ!そこで見てなさい!」

 

「えっ?やっ!?止めっ、何処を触ってっ!んっ!」

 

触手男はクリスの体をまさぐり始めたのを見た俺は急いで武器を作り、触手男に向かったのだが………。

 

「………何よ、女じゃない!良い美少年かと思ったのに期待させないで!」

 

そう言うと、クリスを床に叩き付けた後。俺の横を通り過ぎ、部屋の出入り口に行くと………。

 

「………ぺっ!」

 

唾を吐き捨てて、その場を後にした。粘液まみれになったクリスは立ち上がると。

 

「きー!!」

 

「落ち着け」

 

ダガーを抜き、触手男の後を追いかけようとするクリスの右腕を掴んだ。………ヌルヌルしてて気持ち悪い。

 

「お願い放して!こ、こんな屈辱初めてだよ!あのモンスターを殺して、私も死ぬ!」

 

「あのモンスターの言う事を真に受けんな。あと少しなんだろ?さっさと行くぞ」

 

俺はそうクリスを引っ張りながら言った。少し歩くと、一つの小さな部屋に辿り着いた。その部屋には宝の山と白骨化した人が椅子に座っていた。俺はその骨を調べると。

 

「………アンデッド化しそうだな。面倒事になる前に成仏させるか」

 

「うん、お願いできるかな。おそらく神器を使ってダンジョンを造ったのは良いけど出られなくなってしまったんだね」

 

クリスがそう言うと俺は浄化魔法を発動させようとすると、クリスがそっと骨の手に手を置き。

 

「………申し訳ございません。本来、あなたはこのような場所で死ぬべき人ではありません。私が至らなかったせいであなたを死なせてしまった。あなたが幸せになれるような人生にしてみせます」

 

俺はそんなクリスを見て、あまりの神々しさに目を奪わられてしまった。そして、俺はクリスの神性な雰囲気、この神々しさを見て理解した。その後、俺は浄化魔法を使って骨を浄化する。骨は無くなり神器だけになるとクリスはそれを拾い。

 

「………それじゃあ、帰ろうか」

 

それはまるで女神の様な微笑みをしてクリスは言った。

 

◆◆◆

 

「今日はありがとうね。お願いを聞いてくれて」

 

「気にするな。俺も神器に興味があったしな」

 

俺達はダンジョンを出ると、クリスがそう言ったので俺はそう答えた。俺はクリスが手に持っている神器に目を移すと。

 

「その神器、どうするつもりだ?」

 

「この神器は封印して何処かに隠すよ。誰かに悪用されても困るしね」

 

「………盗賊のお前がそんな事できるのか?」

 

「えっ!?ま、魔道具を使って封印するの!盗賊の私にはそうしないと封印なんて、とても無理だから!」

 

「そうか、でも神器は見たところ強大な魔力を持っているけど、神器を封印できるほどの魔道具をお前は何で持っているんだ?」

 

「じ、実は私の家系は神器を封印をする事を主な仕事をしているの!君の神滅魔法と一緒で一子相伝でね!」

 

そうクリスが若干、慌てた様子でそう言った。俺はクリスのその姿を見て俺はため息をついた後に。

 

「………もうバレているんですよ。いい加減、分かりやすい嘘は止めてください。エリス様」

 

「ッ!!?」

 

俺がそうクリス………、いやエリス様にそう言うと、エリス様がしばらく固まっていると。

 

「えっと………、いきなり何を言うの?私がエリス様?もしかして、前に私がエリス様に似ているって言った事を本気にしているの?もし、そうだとしたら笑っちゃうよ。あははっ」

 

そう言った後にエリス様は笑って誤魔化した。………あくまでシラを切るつもりか。なら、証拠を出してやろう。

 

「まず、一つ目にお前は容姿と神性な雰囲気がエリス様の銅像に似ている事だ。容姿は女神なら変えられるとしても雰囲気までは変えられない。これは人でもモンスターでも言える事で、変化が得意なモンスターでもそれだけは無理だ。二つ目はお前が神器について詳しすぎる事だ。神器は見たところとても珍しい魔道具のはずなのにお前はダンジョンに入る前に神器がどういう能力を持っているのかを言い当てた。神器を見てなら分かるが、見る前から知っているのはおかしい。おそらく、女神は選んだ相手に神器を渡す仕事か何かをしていると考えた。そして、決定的なのは………」

 

「け、決定的なのは………?」

 

エリス様が俺がそう言ったのをおそるおそる聞いてきたので、俺は言った。

 

「………エリス様、嘘下手過ぎですよ。嘘をつく時に鼻がピクピク動いているんですよ」

 

「ええっ!?嘘でしょ!?」

 

そう言ってエリス様が鼻を隠した。………にやり。

 

「ええ、嘘ですよ?でも、これで決定的ですね」

 

「あっ!?」

 

俺がそう言うと、エリス様は鼻を隠したまま驚き、黙っていると。

 

「………ふふ、さすがですねソウガさん。まさか、私の正体に気付くなんて。そう、あなたの予想通りです。ある時は冒険者。またある時は、ダクネスの友人の一人………。しかして、その正「そういうのはいいです」ちょっと待ってくれても良いじゃないですか!もうっ!」

 

そう言うと、クリスは光に包まれる。光が消えると、クリスは長い白銀の髪にゆったりとした白い羽衣に身を包んでいた。そう、その姿は教会で見たあの姿であった。

 

「これが、私の本来の姿です。ですが、私の正体に気付くなんて凄いですね。初めてあなたと出会った日に、あなたに私の正体を見破られそうになった時は何とか誤魔化す事ができましたが、バレるのも時間の問題かと思ってあなたとできるだけ関わらない様にしていたのですが………」

 

「まぁ、あれだけ共通点があればいつかはバレますよ。ところで、エリス様は地上に降りて何をしているんですか?女神は普通、天界にいるのでは?」

 

「本来はそうなのですが。さきほど、ソウガさんがおっしゃった通り神器を渡すお仕事をしているのですが、所有者がいなくなった神器の回収をしているんです。あと………」

 

「うん?あと、何ですか?」

 

「………仲間が欲しいと願ったお嬢様と、友達になるためですね………」

 

そう言って、エリス様は恥ずかしそうに小さく笑いながら頬を掻いた。………あぁ、本当にこの方は。

 

「………やはり、あなたは凄い女神ですね」

 

「も、もう!そんな事を急に言わないでください!ところで、私はあなたにお願いがあります。今後、悪用されないためにも神器回収を手伝ってほしいのです。もちろん、何か報酬を差し上げますのでお願いします!」

 

そう言って、エリス様が俺に頭を下げる。女神様に頭を下げさせるなんて凄い罪悪感なんだが………。

 

「………分かりました。確かに、放置すると悪用される可能性もありますしね」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

そう言って、エリス様は俺の手を取り、微笑んだ。その後、俺の手を離してエリス様が真面目な顔をした。

 

「ソウガさん」

 

「は、はい」

 

「この事は、内緒ですよ?」

 

そう悪戯っぽく片目を瞑り、囁くエリス様の姿に俺は少しドキッとした。

 

「じゃあ、私はこれを封印してきますのでここで別れましょう」

 

「分かりました。あっ、すみません。一つ聞いても良いですか?」

 

「はい、大丈夫ですよ」

 

俺がそう言うと、エリス様を微笑んでそう言ってくれたので俺は疑問に思っている事を聞いた。

 

「エリス様ってパッドなんですか?」

 

「天罰、当てますよ?」

 

「申し訳ございません!」

 

エリス様が微笑みながらそう言ったので俺は土下座をした。め、女神様を敵に回すとか洒落にならない!?

 

「全く、そのような事を聞いたら駄目ですよ?」

 

「おっしゃる通りです!反省します!」

 

「よろしい。では顔を上げてください」

 

エリス様に許しをもらい、俺は顔を上げる。

 

「では、私は今度こそ失礼しますね。ソウガさん、あなたは色々と苦労をしていますが私はあなたの事をちゃんと見ていますからね」

 

そうエリス様が言うと、エリス様は魔法陣を発動して天界に帰って行った。俺はそれを見送り、ダンジョンを後にした。………ちなみに後日、またダンジョンに入ってみるとダンジョン内にいた触手男がいなくなっていた。まぁ、どうでも良い事だが。




次回は、あのお嬢様が登場です。


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この王女に冒険者達を!

あの王女様の登場です。


「さて、お前ら。分かってるな?」

 

エリス様と一緒にダンジョンに行った日から数日が経過し、今日はアイリス様との会食日にダクネスがいない広間にカズマが俺達に言った。おそらく、ダクネスに恥をかかせないために言ったのだろう。そう思っているとアクアが言った。

 

「もちろん分かっているわ。こんな機会めったにないもの。とっておきの宴会芸で盛り上げてみせるわ。そう、ダクネスが恥をかかせない様にね!………ところでカズマ、帽子から虎が出る芸をしようと思ったんだけれど、そもそも虎がいないのよ。この際虎っぽい初心者殺しで我慢するから、捕まえるのを手伝ってくれない?」

 

「私も紅魔族流の派手な登場で、お姫様を驚かせてみせましょう。カズマ、派手に煙を焚く物と花火が必要なのですが、そういった物はどこで買えば良いのでしょうか?」

 

「………お前ら、そんな事をしたらその場で斬られるぞ」

 

俺がそう言った後、二人は黙ると俺達はダスティネス家に向かった。ダスティネス邸に着くと、使用人の人達の凄い緊張しているのが見ていて分かった。それもその筈。第一王女のアイリス様が先日からこの屋敷に泊まっているからだ。もし、アイリス様の身に何かあれば、ダスティネス家の名に泥を塗る行為になる。それだけは避けないといけないから緊張しているのだろう。そんなダスティネス邸の玄関に純白のドレスに身を包み、長い金髪を鎖骨当たりで三つ編みにしているダクネスがいた。………見た目は貴族の令嬢なんだがな………。

 

「サトウカズマ様、並びに皆様方。当屋敷にご足労いただき感謝いたします。本日はわたくし、ダスティネス・フォード・ララティーナがホステスを務めさせて頂きます。どうかご自分の家だと思い、ごゆるりとおくつろぎくださいませ」

 

「ほ、本日はごまねき………」

 

ダクネスがかしこまった挨拶をした後、カズマも挨拶をしようと言おうとしたが噛んでしまった。それを聞いたダクネスは顔を赤くして顔を俯かせながら肩を震わせている。おそらく笑いを堪えているのだろう。

 

「おいダクネス、笑ってないで案内してくれ。この服、窮屈で辛いんだよ」

 

カズマが笑っているダクネスにそう言った。カズマは今、黒スーツの恰好をしている。おそらく貸し衣装屋で借りたのだろう。そういう俺も貸し衣装屋で借りた黒のタキシードを着ているがこういう感じの服は苦手だ。カズマが俺の恰好を見ると、マフィアみたいだなと言われたがマフィアって何だ………?

 

「それでは皆様方、どうぞこちらへ」

 

そう思っているとダクネスは俺達を屋敷に招き入れた。俺達は使用人に通され、応接間のソファーに座って待っているとダクネスが別の使用人を連れドレスを持って入ってくると、俺達に一礼した後、アクアとめぐみんと一緒に隣の部屋に入っていくのを見た俺は立ち上がった。

 

「うん?どうしたんだソウガ?」

 

「悪い、便所に行ってくる。少し待っていてくれ」

 

「ああ、分かった」

 

そう言って俺は応接間を出た。便所を済ませると俺は窓から外を眺めていると前から黒いドレスを身に纏い、手にその格好を無視したゴテゴテした指輪をつけている女性が前から歩いてきた。その女性は俺の姿を見ると、話しかけてきた。

 

「ソウガ殿?もしかしてソウガ殿ですか!お久しぶりです!」

 

「ああ、久しぶりだなレイン」

 

俺は話しかけて来た女性のレインにそう返事した。レインはアイリス様の付き人の一人の魔法使いだ。………前に会った時より魔力が上がっているな。

 

「サトウカズマ殿のパーティーにソウガ殿がいると聞いた時は驚きましたが、また会えて嬉しいです!」

 

「ああ、俺も会えて嬉しいよ。じゃあ、俺はカズマ達のところに戻るからまた後でな」

 

「はい。では、失礼します」

 

そう、レインは言った後、歩いていった。俺はそれを見届けた後に応接間に戻ると。

 

「ほらみたことか!めぐみん、何だこれは!このモンスター避けの煙玉と、開けると爆発するポーション!これは何に使うつもりだ!不自然に胸元が大きいから気になっていたのだ!」

 

「やりますねダクネス、しかし私には第二第三の派手な演出手段が………!」

 

「………はぁ」

 

ダクネスがめぐみんと何か揉めている姿を見て、俺はため息をついた。

 

◆◆◆

 

「………では行くぞ。いいか、アイリス様の相手は主に私がするから、お前達は飯でも食いながら頷いてくれればいい。私がその程度説明する」

 

そう言いながらダクネスが扉を開けると、大きなテーブルの奥に純白なドレスを着た少女が座っており、その両隣には白いスーツを着用した短髪の女とさっき会ったレインがいた。俺達はゆっくりと歩いて行き。

 

「お待たせしましたアイリス様。こちらが我が友人であり冒険仲間でもあります。サトウカズマとその一行です。さあ、四人とも。こちらのお方がこの国の第一王女、アイリス様です。失礼のないご挨拶を」

 

「アークプリーストを務めております、アクアと申します。どうかお見知り置きを。………では、挨拶代わりの一芸披露を………」

 

「ちょ、ちょっと失礼アイリス様。仲間に話がありますので………」

 

そんな事を言いながらダクネスはアクアの手を掴むとアクアが抵抗していると、めぐみんがスカートの中に手を入れた。そして黒いコートを取り出し、バッと広げて肩に掛け、自己紹介をしようとしたところでダクネスに手を掴まれた。その光景を見ていた少女、アイリス様が白スーツの女性に耳打ちをした。

 

「下賤の者、王族をあまりその様な目で不躾に見るものではありません。本来ならば身分の違いから同じテーブルで食事をする事も、直接姿を見る事も叶わないのです。頭を低く下げ、目線を合わさずに。それよりも、早く挨拶と冒険譚を。………こう仰せだ」

 

「チェンジ」

 

「アイリス様、少々お待ちくださいませ!仲間達が緊張の余り興奮しております、ちょっと話をしてまいりますので………っ!」

 

ダクネスがカズマの腕を掴んで、俺達は広間の隅に行くと。

 

「貴様という奴は、貴様と言う奴は!チェンジとはどういう事だっ!何のために私が恥ずかしい目に遭いながらもご奉仕したと思っている!これでは話が違うではないかっ!」

 

「お前、どういう事だも話が違うもこっちのセリフだ!お姫様とか期待させやがって、何だありゃ!?もうちょっとこう………。『わたくし外の世界に憧れておりますの!勇敢な冒険者様、是非ともあなた様の冒険譚を聞かせてくださいまし!』みたいなのを期待してたのに、あれで何が会食したいだ、人を馬鹿にしてんのか!」

 

「カズマの気持ちは分からないでもないが、王族に夢を見ない方がいいぞ。それはそれとして、アクアが何かしているが放っておいても良いのか?」

 

俺がそう言うとダクネスとカズマが指した方向を見た。指す先では、アクアが一枚の紙の上に指でなぞる様にノリを付け、上から砂を振っている。そしてあっという間に砂絵が完成した。

 

「王女様にお近付きの印として、まずはこれを。口の端にだらしなく付いてるソースまで、きっちり再現された一品で………」

 

「アイリス様、今この無礼者どもを叩き出しますので少々お待ちをっ!!」

 

「………はぁ」

 

ダクネスがそう言うと、ドレスの裾を両手で鷲掴みにして駆け出した。俺はため息をついているとアイリス様が、隣の白スーツの女に耳打ちする。

 

「寡黙で冷静なララティーナが、その様に慌てる珍しい姿を見られたので良しとします。冒険者は多少なりとも無礼なもの。それより早く冒険譚を、と仰せだ」

 

そう白スーツの女が言った後、アイリス様がアクアとダクネスに微笑んだ。それを見ていた俺はアイリス様の近くまで行き、一礼し。

 

「アイリス様、お久しぶりです。私の仲間が色々と失礼な事をしてしまい申し訳ございません。私の顔に免じて許してもらえませんか?」

 

俺がそう言うと、アイリス様が白スーツの女に耳打ちする。

 

「いえ、大丈夫ですよ。数々の功績をあげ、この国のために力を振るってくださる貴方の頼みなら仕方ありませんね。許しましょう、と仰せだ」

 

俺に向かってアイリス様が微笑んだ。それを見た俺はアイリス様に言った。

 

「あと、申し訳ございません。この後に重要な任務がありまして、私は先に失礼させていただいてもよろしいでしょうか」

 

「アイリス様、申し訳ございません!少々お待ちをっ!」

 

俺はダクネスに腕を掴まれ、部屋の隅に行く。

 

「お前もいきなり何を言っているのだっ!カズマにも言ったが、これでは私がご奉仕した意味がないだろっ!あと、重要な任務とは何だ?」

 

「家に帰って、ウィズと一緒に食事を取るという大変重要な任務だ。だから、俺は帰らなければならない」

 

「そんな理由で帰ろうとするなっ!絶対に残ってもら………、いたたっ!?お、お前も髪を引っ張るんじゃない!」

 

俺がダクネスの髪を引っ張っているとアイリス様が白スーツの女に耳打ちする。

 

「そうですか、あなたの冒険譚も聞きたかったのですが重要な任務なら仕方ないですね。次の機会にあなたの冒険譚も聞かせてくださいね、と仰せだ」

 

そうアイリス様が言うと、俺はダクネスの方に顔を向いてにやりとするとダクネスがぐぬぬと悔しそうな顔をした。俺はアイリス様の近くに行き一礼した後。

 

「本当に申し訳ございません。では、私は先に失礼します」

 

そして、俺はそうアイリス様に言った後に部屋を出て、屋敷の外に出てネクタイを緩めると。

 

「………さて、帰るか。ウィズになんて言おうか」

 

俺はそう言った後に屋敷を後にした。………魔道具店に帰ってウィズと一緒にくつろいでいる時にアイリス様がカズマを王都に連れ去ってしまった事をアクアとめぐみんから聞いて、凄く驚いた。




遅くなってしまい申し訳ございません。
今後、またこういう時があると思いますがよろしくお願いいたします。
いつの間にかマイリストが1000を超えていたのでビックリしました。
次回はオリジナルの話でソウガとあの受付嬢の出会いの話をやります。


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この受付嬢に死神との出会いを!

受付嬢との出会いの話です。


カズマがアイリス様によって拉致された。アクア達がそう言い、カズマを助けに王都に行こうと言っていたが俺はアイリス様ならカズマに酷い事はしないだろうし安心だろうと言ったが、アクア達は俺の言う事を無視して王都に向かった。何かあったら連絡しろとは言ったから大丈夫だろう。

 

「冒険者、ソウガ殿!貴殿は不死身のモンスター、フィニクスの討伐に成功し、この国の平和に貢献した事により、王室から感謝状を贈ります」

 

数日が経過した頃、俺はフィニクス討伐の件で冒険者ギルドに呼ばれていた。他の冒険者が拍手し、喝采が起こっている。それを聞きながら俺は隣に視線を移すと、緊張しているゆんゆんを見ていると。

 

「そしてゆんゆん殿!貴殿の素晴らしい活躍によって、冒険者行方不明事件の黒幕、ヴェッターは討伐されました。よって王室から感状を贈ります」

 

「あっ、ありがとうございます!」

 

セナがそう言うと、ゆんゆんは返事をして感謝状を受け取った。それを見ていた他の冒険者達が拍手をしながらゆんゆんを褒めていた。

 

「さすが、『雷鳴轟く者』ゆんゆん!すげえじゃねえか!」

 

「さすが紅魔族だな!『雷鳴轟く者』ゆんゆん!」

 

「や、止めてえ!その名で呼ばないで!ていうか何で知っているんですか!?」

 

「シズクから紅魔の里で起こった事を教えてもらったから、私が広めておいたぞ」

 

「ティアさん!?」

 

何故か紅魔の里で広まっていたゆんゆんの通り名が広まっていると思ったら、ティアが広めていたのか、隣にいるシズクが申し訳なさそうな顔をしているなと思っていると、他の冒険者はまだゆんゆんを褒めていた。

 

「流石『雷鳴轟く者』だ!」

 

「『雷鳴轟く者』よくやった!」

 

「『雷鳴轟く者』格好いいよ『雷鳴轟く者』!」

 

「『雷鳴轟く者』!」

 

「『雷鳴轟く者』!」

 

「やっ、止めてえ!お願いだから止めてよお………うぅ………」

 

おいこら、いじめになっているから止めろ。

 

「では続いて!ゆんゆん殿、ソウガ殿への賞金授与に移ります!」

 

セナが言葉を続けると、ざわついていたギルド内が静かになる。

 

「冒険者、ゆんゆん殿!冒険者行方不明事件の犯人、グロウキメラのヴェッター討伐はあなたの活躍なくば成しえませんでした。よってここに、金、三億エリスを進呈し、ここにその功績を称えます!」

 

セナがゆんゆんにずっしりと重い袋を渡すとギルド内に激しい喝采が巻き起こると。

 

「『雷鳴轟く者』奢ってくれよ!」

 

「『雷鳴轟く者』奢って奢って!」

 

「『雷鳴轟く者』!」

 

「『雷鳴轟く者』!」

 

「わ、分かりましたから!お願いだから止めてください!」

 

「やったぜ!今日は『雷鳴轟く者』の奢りで宴会だああああああああああああ!!」

 

「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」」」

 

「お願いですから!止めてくださいってばあああああああああああっ!?」

 

ゆんゆんが半泣きの状態でそう言うとギルド内に再び喝采が巻き起こった。………まぁ、ここにいる奴らに奢った程度では三億を使い切る事は無いだろう。

 

「静粛に!では続いて、冒険者、ソウガ殿!特務での高難度クエストの達成における多大な貢献に続き、不死身のモンスター、フィニクス討伐はあなたの活躍なくば成しえませんでした。よってここに、金、十億エリスを進呈し、ここにその功績を称えます!」

 

「じゅ、十億!?」

 

十億だとっ!?そんなにあったら今の赤字を解消しても御釣りがくる!そんな俺にずっしりと重い袋を渡してきたセナの顔を見ると右目をウインクした。………ありがとうなセナ。そう思っているとドアが勢いよく開けられ、俺達はドアの方を見るとバニルとウィズがいた。

 

「「「うわぁっ!?出たっ!?」」」

 

「フハハハハハ!良い悪感情ありがとう!そんな貴様達にはバニル仮面をくれてやろう!それより、十億と聞いて駆けつけたんだが」

 

「ああ、ほら持ってけ」

 

「じゃあ、私が受け取るね」

 

そう言ってウィズが俺に近づいて来て袋を受け取ろうとしたが、俺はウィズを無視してバニルに袋を渡した。

 

「………ええっと、ソウ君?何で、私をスルーしてバニルさんに袋を渡したの?」

 

「………お前に渡すと、金がガラクタに変わる」

 

「酷いっ!?」

 

ウィズがそう言っているが、俺は無視しているとセナと騎士達がギルドから出て行った。………今度、飯でも奢るか。

 

「ソウ君、何でそんな酷い事を言うの!私は店をもっと繁盛させたいだけだよ!」

 

「えっ………?」

 

「その反応が一番酷いっ!?」

 

「お前が俺が稼いだ金をすぐにガラクタに変えるせいで、いまだに店が貧乏のままだからな。繁盛させるのを諦めたのかと思ってな」

 

「そんな訳ないじゃない!もうっ、ソウ君の馬鹿!」

 

そう言って、ウィズは俺の胸を叩き始めた。微妙に腕に魔力を込めて殴ってきていて痛いんだが………。

 

「怒っている店主さんもいいな」

 

「ソウガの奴、羨ましい………」

 

「俺も店主さんに胸を叩かれたい………」

 

………そんなに羨ましいなら、代わってやろうか?魔力を込めてないと肋骨が折れるけどな。

 

「俺が悪かったからそろそろ止めてくれ。地味に痛いんだ」

 

「………じゃあ、頭を撫でてくれたら許してあげる」

 

そう言ってウィズは頭を俺に差し出してきたので俺はウィズの頭を撫でる。他の冒険者の視線が痛かったが無視した。そう思っているとウィズが満足したのか笑いながら言った。

 

「えへへ、もういいよ。ソウ君はいつも私達の店のために頑張ってくれている事は知っているから。だから、私もソウ君の頭を撫でてあげるね」

 

ウィズがそう言うと、軽く背伸びして俺の頭を撫で始めた。………おい。

 

「………おい、ウィズ」

 

「いつもありがとう。ソウ君」

 

ウィズは俺にお礼を言った後も俺の頭を撫で続けた。すると、他の冒険者達がヒソヒソと話し始めた。

 

「羨ましい………」

 

「俺も店主さんにナデナデされたい………」

 

「くそっ、何であんな「ああぁん?」ヒッ!何でもないから拳を下ろしてくれティア………!」

 

そう話している声が聞こえたがウィズはいまだに俺を撫で続けている。何故かゆんゆんとルナがジーッと見ていたがどうしたんだ?………流石に恥ずかしくなってきた。

 

「………ウィズ、そろそろ止めてくれ。さすがに恥ずかしい」

 

「あっ、ごめんねソウ君」

 

そう言うとウィズは俺の頭から手を離した。俺の頭から手を離した後、ウィズは微笑みながら話しかけてきた。

 

「ソウ君、今日はこの後はどうするの?賞金貰ったし、これから一緒にお出掛けしない?」

 

「ポンコツ店主よ。貴様は店の主としての自覚を少しを持て、貴様は店番だ」

 

「………そこをなんとかお願いします」

 

「駄目だ」

 

「………デートしたいんです」

 

「駄目だ」

 

「一緒に出掛けるだけだろ?それが何でデートになるんだ?」

 

「「「店主さんとデートしたい」」」

 

「「「ソウガさんとデートしたい」」」

 

何かややこしい事になりそうな感じがしてきた。俺は少し考え、ウィズに言った。

 

「ウィズ、すまないな。これからクエストを請けるから出掛けるのは今度にしてくれ」

 

「えっ………、う、うん………」

 

「おいおいソウガ!店主さんとデートできるとか羨ましい事を何で断るんだよ!!」

 

「てめえ、ふざけんなよ!!」

 

「………金がある内に貯めておきたいんだよ。それに、一緒に出かける事なんていつでもできる」

 

「てめえ、余裕のつもりか!!」

 

「この幸せ者がっ!!」

 

そう他の冒険者から何故か罵倒されたが無視して適当にクエストを請け、俺はウィズの近くに行くと。

 

「本当にごめんな」

 

「ううん、気にしないで。今度、一緒にお出掛けしよう」

 

「ああ、約束だ」

 

そう言った後に俺はもう一度、ウィズの頭を撫でて冒険者ギルドを出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ふぅ」

 

ソウガさんがクエストに向かった後、店主さんとバニルさんが帰っていき、他の皆さんで宴会を始めた。私はその様子を受付の椅子に座って見ていた。時々、冒険者の人が誘ってきたが、適当に断った。

 

「ソウガさん、明るくなったな………」

 

私は先程のソウガさんの様子を思い出して、私は呟いた。ソウガさんとは私が冒険者ギルドで働き始めた頃からの付き合いだ。でも、昔のソウガさんはとても冷たい目をしていて、パーティーに入る事はしないと言っていたのを覚えている。だから、サトウカズマさんのパーティーに入った時は凄く驚いた。店主さんと暮らし続けて少しづつだが、明るくなっていたのがカズマさんのパーティーに入って、微笑む事が多くなったように感じた。

 

「………うふふ」

 

そう考えたら、私は笑みを浮かべた。ソウガさんが明るくなってきたことは素直に嬉しい。そして、私は昔を思い出していた。ソウガさんと出会った時の事を………。

 

◆◆◆

 

「今日から一緒に働く事になったルナさんです。仲良くしてあげてくださいね」

 

「きょ、今日から働かせていただきます!ルナと言います!皆さんよろしくお願いします!」

 

そう私が緊張しながら言うと、皆さんから拍手をもらった。その後、先輩に教育してもらいながら受付の仕事を行ったのだが………。

 

「うおっ!?胸でけえっ!?」

 

「あの胸、メロンかよ!?」

 

冒険者の人達から胸の事ばっかり言われたのを覚えている。先輩は気にしなくていいから言われたのだが、新人だった頃の私には辛かった。そんな時、ギルドの扉が開くと黒い服装の男の人が入って来た。その男の人はとても冷たい目をしながら受付の方に歩きだしたので焦っていると、その男の人の前に冒険者の男の人が左足を前に出した。

 

「………………」

 

「フフッ」

 

冒険者の男の人が、その男の人の顔を見て笑っていると男の人が右足を動かすとバキッと音が聞こえた。

 

「………………えっ?」

 

冒険者の男の人が自分の足を見ると、左足があらぬ方向に曲がっていた。

 

「ぎゃああああああああああああああああああ!!?足がっ、俺の足がああああああああああああああああああああ!!」

 

冒険者の男の人が叫ぶと、男の人は無視して受付の方へと歩き始めたが仲間の冒険者が男の人を止めた。

 

「おいっ!てめえ、いきなり何してんだ!!」

 

「………何だ、小枝じゃなかったのか」

 

「こ、小枝だとっ!?確かにこいつも悪いとは思うが足を折る必要なんて無かっただろ!?」

 

「別に俺は気に食わなかったからへし折ったんじゃない。前に進むためにその小枝が邪魔だっただけだ」

 

「「!?」」

 

その言葉を聞いて、私は寒気がした。つまり、あの人は何も感じないまま冒険者の足を折ったという事に。足が折れた冒険者は仲間の人達に連れられてギルドを出た。そして、その人が私の受付の前に来た。私はプルプルと怖くて震えていると。

 

「その、ごめんな」

 

「えっ………?」

 

男の人が謝った。私は訳が分からないでいると男の人が言った。

 

「俺は長い間、モンスターを狩る旅に出ていて久しぶりに戻って来たんだ。まだ、その時の感覚がとれていないんだ。怖がらせてすまない」

 

「い、いえ!私も気にしていませんから謝らないでください!」

 

「そうか、なら良かった。じゃあカードの更新を頼む、あいつらにも後で謝らないとな」

 

そう呟いているのを聞いて、この人はそんなに悪い人じゃないんだと思った。目はまだ冷たいままなのは元々、そういう目なのかなと思いながら、カードを更新すると。

 

「………えっ!?レベル100!?」

 

その人のレベルが100でステータスもほぼカンストしていた事に驚いた。そんな冒険者が何で駆け出しの街にいるのと思っていると男の人が言った。

 

「そういえば、お前は初めて見る顔だな。新人か?」

 

「は、はい!今日から働かせてもらう事になりました!ルナと言います!」

 

「そうか、俺はソウガ。アークウィザードのソウガだ」

 

そう言った後に男の人、ソウガさんは微笑み、私はドキッとした。これが私とソウガさんとの出会いだった。

 




まさか、1ヶ月以上も更新が止まってしまうとは思いませんでした。また、こういう時があるかもしれませんがよろしくお願いします。


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この死神に感謝を!

久々の更新なってしまいました。


私とソウガさんが出会った日から数日が経過した。ソウガさんは最初は周りに冷たい態度をしていたが、次第に周りの人と仲良くなっていった。そんなソウガさんを見て何故か私も嬉しく感じる様になっていった。そう思っているとソウガさんが冒険者ギルドにやって来たので私は挨拶しようとソウガさんの方に向かった。

 

「おはようございます。ソウガさん」

 

「ああ、おはよう。ルナ」

 

あれからソウガさんとはよく話すようになった。ソウガさんはあちこちを旅をしていたので色々な話をしてくれて楽しい。だけどソウガさんは冷たい目のままだ。………何か辛い事でもあったのだろうか?

 

「あっ、ソウガ!悪いが一緒にこのクエストを手伝ってくれないか!」

 

「ソウガさん。もっと強くなりたいので特訓に付き合ってください!」

 

そう思っていると他の冒険者がソウガさんに話しかけて来た。ソウガさんは見た感じ怖い印象があるせいで他の冒険者が近づき辛い雰囲気があるが、ソウガさんは本当は優しい性格で他の冒険者の手伝いをしてくれる。一緒にクエストに行ったり、魔法の特訓をしてくれるので皆がソウガさんを慕っていた。

 

「おい、俺がソウガを先に誘ったんだ。後からしゃしゃり出るな」

 

「あんた、前にもソウガさんにクエスト手伝ってもらってたでしょ。今回ぐらい私に譲りなさいよ。たまには自分の力だけで何とかしなさいよ」

 

「あぁん?」

 

「何よ。やる気?」

 

こんな風に口論になる事もたまに起こっている。ソウガさんはため息をつくと………。

 

「はぁ………、順番で良いだろ。それ以上言い争うならどっちも無しだ」

 

「うぐ………、分かった」

 

「………私もごめんなさい」

 

「分かってくれたら良いんだ。じゃあ、クエストに行こうか」

 

二人の冒険者の口論を止めるとソウガさんはそう言った時だった。

 

「おうおうおう!ソウガはいるかあ!!」

 

「うん?」

 

扉が勢いよく開かれ、冒険者のダストさんが大きな声で言った。ソウガさんの姿を見つけたダストさんはソウガさんに詰め寄った。

 

「見つけたぞソウガ!!てめえ、そういう事だ!説明しろやあ!!」

 

「説明するのは構わないが、何に対して怒っているのかが分からないんだが?」

 

「店主さんだよ!お前、店主さんとどういう関係だよ!!」

 

そうダストさんが言った。店主さんとはウィズ魔道具店の店主、ウィズさんの事だ。ウィズさんは元、凄腕の冒険者でこの街でも有名な人だ。その人とソウガさんは知り合いなんでしょうか?

 

「うん?ウィズがどうかしたのか?」

 

「呼び捨て!?朝、たまたま魔道具店の近くを歩いていたらお前が魔道具店から出てくるのを見たんだよ!!」

 

「当たり前だろ。一緒に住んでんだから」

 

「「「ええっ!!?」」」

 

ソウガさんがさらっと凄い事を言った。店主さんと一緒に暮らしている?それってつまり同棲してるって事じゃ!?

 

「それじゃあ、ソウガは店主さんと同棲してるのか!?」

 

「そうだけど、それが何だよ?」

 

「じゃあ、店主さんはソウガと………、うああああああああああああっ!そんなあああああああああ!?」

 

「嘘だと言ってくれえええええ!?」

 

「お、俺、良い夢を見せてくれる時には絶対、相手は店主さんにしているのにっ!!」

 

「な、何だ?他の奴らどうしたんだ?」

 

「気にしなくていいですよ。モテない奴らが騒いでいるだけなんで」

 

「そ、そうか………、最初に約束していた奴も騒いでいるから先に特訓をするか、少しだけ準備するから待っててくれないか?」

 

「分かりました!」

 

魔法使いの冒険者が返事をすると、ソウガさんは冒険者ギルドを出た。出て行った後に魔法使いの冒険者の近くにクルセイダーの女の子が近くに寄ると。

 

「ねえ、あんたは驚かないの?確か、ソウガさんを狙ってたんじゃないの?」

 

「狙っているよ?確かに店主さんと同棲している事には驚いたけど、付き合っているとは限らないでしょ?たとえ付き合っていたとしても寝取っちゃえば問題ないかなあって思って」

 

「おいおい」

 

そんな物騒な事を話していた。その後に魔法使いの女の子とソウガさんは特訓に向かった。数時間後、ソウガさん達は戻って来たのだが、魔法使いの女の子はボロボロの状態でソウガさんに背負われた状態で気を失っていた。ソウガさんはその後、色々なクエストをこなした後に帰って行ったが、何故か私は気になってしまい、ソウガさんの後を追いかけてた。ウィズ魔道具店の近くまで来ると、私は近くに隠れて様子を見ていると、ちょうど外の掃除をしていた店主さんがソウガさんに気付くと。

 

「あっ、ソウ君!おかえりなさい!」

 

そう言って店主さんはソウガさんに抱き着いた。………えっ!?

 

「今日もお疲れ様。大変だったでしょ?」

 

「そんな事は無いさ。旅に出ていた時に比べれば楽な方だ」

 

「良かった。それじゃあ、夕食食べよっか。お粥しかないけど………」

 

「またか………、明日はジャイアントトードのクエストに行ってカエル肉を持って帰るようにするか」

 

そう言った後、ソウガさんと店主さんは魔道具店の中に入っていった。それを見た私は何故か胸が締め付けられる様な痛みがあった。あのソウガさんと初めて会って私に微笑んでくれた時の胸の高鳴り、そして店主さんとソウガさんのこの痛みの感覚はもしかして。

 

「私は、ソウガさんに恋をしているの………?」

 

自覚をしてしまうと、ソウガさんが頭から離れなかった。顔が熱くなってくるのが分かった。だが、相手はあの店主さんだ。勝ち目はほとんど無い。

 

「でも、諦めたくもない!自覚したんです、ソウガさんが好きだって!だから、相手が誰だろうと関係ありません!ソウガさんを絶対、恋人にします!」

 

私はそう決意した後、冒険者ギルドに戻った。

 

 

 

 

 

ちなみに、その後にソウガさんの変な噂が広まり、ソウガさんに話しかける冒険者の人達がかなり減った。そして、その噂を広めたダストさんが骨を何本も折られ、血塗れの状態でエリス協会の十字架に磔にされている状態で見つかった。………いくら何でもやりすぎですよ。ソウガさん………。

 

◆◆◆

 

あれから、数年経過した。私にも後輩ができ、ソウガさんも冷たい目をする事がなくなった。少しづつだが変わってきているんだなと感じたが唯一、変わっていないのは………。

 

「あれから、ソウガさんとの関係が変わっていない事ですよ!」

 

どういう事ですか?私ってここまでヘタレだったんですか?一目惚れして、絶対にソウガさんを恋人にしようって決めたはずなのにこのザマは何ですか?私も色々、したんですよ!食事に誘ったり、デートに誘ったりしたんですよ!ですが、一向に進展しませんでした!何も成果を得られませんでした!店主さん強すぎます。魔王クラスに強いです。もう、既成事実を作るしか………。

 

「ルナ?どうかしたのか?」

 

「い、いえ!?何でもないです!」

 

「そうか、なら良かった。クエストを達成したから確認を頼む」

 

「は、はい!分かりました!」

 

そう言って私はソウガさんのクエスト達成の報告書を確認する。ソウガさんは高難易度のクエストを複数行うので冒険者ギルドとしては助かります。クエスト達成の報酬をソウガさんに渡していると。

 

「君が、ソウガかい?」

 

「うん?」

 

ソウガさんに一人の青年が話しかけた。確か、あの人は………。

 

「………そうだが、お前は誰だ?」

 

「ああ、すまないね。僕はミツルギ・キョウヤ、職業はソードマスターだ。単刀直入に言わせてもらう。ソウガ、僕のパーティーに入ってくれないか?」

 

「入らない。じゃあな」

 

「即答!?待ってくれ!せめて、話だけでも………!」

 

「聞かない。失せろ」

 

ソードマスターで魔剣グラムを持つ、ミツルギ・キョウヤさんがソウガさんをパーティーメンバーに加えようと勧誘したが、ソウガさんは断った。確か、ソウガさんはこの街にいないといけない理由があるって言っていた。ソウガさんの実力なら王都でも十分に活躍できるのに、この街にいないといけない理由って何だろう?そう考えているとミツルギさんの仲間の冒険者の女の子が騒ぎ出した。

 

「ちょっとあんた!キョウヤが折角、誘っているのに何よその態度!」

 

「最強のアークウィザードだからって調子に乗るんじゃないわよ!あんたなんかキョウヤにかかれば瞬殺なんだから!」

 

「俺は別に最強なんかじゃない。俺はこの街にいないといけない理由がある。それに噂のミツルギなら俺なんか誘わなくても別に大丈夫だろう?じゃあ、俺は行くな」

 

そう言ってソウガさんは冒険者ギルドから出ようとするがミツルギさんが立ち塞がった。あっ、ソウガさんが冷たい目に戻ってる。

 

「悪いが、そう簡単にあきらめる訳にはいかない!」

 

「しつけえな。じゃあ、どうするんだよ」

 

「勝負しないか?」

 

「はあ?」

 

ミツルギさんが言った言葉にソウガさんはそう言うと、ミツルギさんが話を続けた。

 

「僕が勝ったらパーティーに入ってもらう。君が勝ったら、何でも一つだけ言う事を聞こうじゃないか」

 

「………ほう。何でも言う事を聞くんだな?」

 

何でも言う事を聞くと、ソウガさんは悪そうな顔で笑った。あ、あんな顔もできるんですね。

 

「ああ、それでどうする?」

 

「良いぞ。勝負してやる」

 

「じゃあ、外に行こうか」

 

「ああ」

 

そう言うと、ミツルギさんとソウガさんは扉を開けて、外に出る。すると、すぐに何か大きい音がした後、ソウガさんが入って来た。私はソウガさんに何があったのかを聞きに行った。

 

「ソウガさん。さっき大きい音がしたのですが一体………?」

 

「ああ、外を見れば分かると思うぞ」

 

そうソウガさんに言われ、私は窓から外を見て見ると………。

 

「「キョ、キョウヤあああああああああああああああ!!?」」

 

ミツルギさんの上半身が地面に埋まっていて、下半身しか見えない状態になっていた。

 

「「「これは酷い」」」

 

他の冒険者さんがそう言うのが聞こえた。これは私もそう思ってしまった。ちなみにソウガさんはミツルギさんに魔道具店の全商品三年分を買う様に要求し、ミツルギさんはそれで借金を背負った。店主さんは泣くほど喜んでいた。

 

◆◆◆

 

あれから数ヶ月、ソウガさんはサトウカズマさんのパーティーに入り、色々なクエストを請けながら、魔王軍の幹部を何体も倒している。ソウガさんはカズマさん達と一緒にいる時に笑う事が多くなった。昔のソウガさんを知っている私には、それがとても嬉しかった。そう思いながら今日の仕事の後片付けをしようとすると、扉が開き、ソウガさんが慌てて入ってきた。

 

「す、すまない!まだ受付はできるか?」

 

「は、はい!大丈夫ですよ!珍しいですね。ソウガさんがこんなギリギリにクエストが終わるなんて」

 

「少しだけ寝てしまったんだ。起きた時には周りが暗くなっていて焦ったっておいこら、笑うんじゃねえよ」

 

「うふふ、ソウガさんでも焦る事なんてあるんだなあって思いまして」

 

「お前は俺の事を何だと思っているんだよ?」

 

「えっ?人の形をした魔物?」

 

「おいこら!誰が魔物だ誰が!」

 

「冗談ですよ。では、受付をしますのでどうぞ」

 

私がそう言うと、ソウガさんは受付に報告書出した。私は報酬をソウガさんに渡したのだが、昔の事を思い出しソウガさんに話しかけた。

 

「そういえばソウガさん。昔に比べて明るくなりましたね」

 

「そうか?そんな感じは無かったんだが?」

 

「そうですよ。昔は冷たい目をしていましたよ?写真がありますので見てみますか?」

 

「えっ?何処にあるんだ?」

 

「受付の壁の横にありますよ。前のめりにしたら見えますよ」

 

「そうか。………何処にも無いぞ?何処にあ」

 

ソウガさんがそう言った時に私はソウガさんのほっぺにキスをした。キスをした瞬間、ソウガさんは一瞬で前のめりを止めた。あっ、顔が赤くなってる可愛い。

 

「な、なななな………!」

 

「ソウガさん。いつもありがとうございます。これからもよろしくお願いします」

 

私がそう言うと、一気にソウガさんの顔が赤くなり。

 

「じゃ、じゃあ俺は帰るな!ま、また明日な!それじゃあ!」

 

そう言いながら、ソウガさんは慌てて帰っていった。それを見て私は思わず笑ってしまった。本当にソウガさんは変わった。昔のソウガさんも好きだったけど、今のソウガさんの方がもっと好きになった。

 

「待っていてください。私は諦めの悪い女なのでそう簡単には諦めませんよ」

 




次回は原作の話に戻ります。


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この魔王軍に爆裂魔法を!

あけましておめでとうございます!今回は魔王軍との戦闘回です。


「ソウ君。最近、何かあったの?」

 

「………ああ」

 

「やっぱり、何かボーっとしてるからどうしたのかなって思って………ソウ君?」

 

「………ああ」

 

「………ソウ君、大好き」

 

「………ああ」

 

「これは重傷だ。本当にどうしたの?」

 

リビングのソファでソウ君とくつろいでる時に私が話しかけてもソウ君はこんな感じだ。最近、ソウ君の様子がおかしい。表彰された日に顔を真っ赤にして帰ってきた日から何故かボーっとする事が多い。どうしたのだろうか。

 

「ソウ君?本当にどうしたの?しっかりして」

 

「………ああ」

 

「むっ、いい加減にしっかりしないとキスしちゃうよ?」

 

「………ああ」

 

「良いんだね?じゃあ、しちゃうから………」

 

そう言って私はソウ君にキスをしようと顔を近づけていく。………避ける動作もしない。こんな形でする事になるなんてと思ったが、仕方ないよね。

 

「フハハハハハ!昨日、受付嬢の女にキスされた死神よ!貴様に配達である!」

 

「えっ!?」

 

「はっ!お前、いきなり爆弾発言すんじゃねえ!!」

 

「フハハハハハ!汝の悪感情、美味である!」

 

「うるせえわ!!」

 

「………ねえ、ソウ君。キスされたってどういう事?」

 

「ッ!?」

 

私がソウ君にそう言うと、ソウ君は大量の汗をかきながら私の方を向いた。

 

「ち、違うぞ!?お前が考えている事では決してないからな!」

 

「………」

 

「罠にはめられたんだ!まぁ、油断していた俺も悪いがな!」

 

「………ソウ君」

 

「………はい」

 

「言い訳は見苦しいよ?」

 

「………ごめんなさい。右の頬をキスされました」

 

右の頬をキスされたとソウ君は素直に白状した。………もう、ソウ君は隠し事が好きなんだから。

 

「もう、素直に言ってくれればいいのに」

 

「素直に言ったらどうなるんだ?」

 

「少し、怒る程度で済んだのに」

 

「結局、怒るんじゃねえか………」

 

「当たり前でしょ?あと私は今、凄い怒っている」

 

「!?」

 

ソウ君は私がそう言った後に青い顔になる。私は自分自身、どんな顔をしているかが分かった。バニルさんを退出させようと思い、バニルさんがいた場所を見るとバニルさんはいつの間にかいなくなっていた。

 

「ソウ君。右の頬をこっちに向けて」

 

「えっ?何でだ?」

 

「いいから、黙って向けなさい!」

 

「は、はい!」

 

そう言ってソウ君は私に右の頬を私の方に向けた。私はソウ君の右の頬を見た後………。

 

「………んっ」

 

「ッ!?」

 

私はソウ君の頬にキスをした。ソウ君が逃げようとするが掴んで離れない様にしてキスどころか舐めたりした。数分後、満足した私はソウ君から離れた。

 

「頬がベタベタする………」

 

「ふぅ、これに懲りたら隠し事はしないでね?」

 

「はい………」

 

「よろしい」

 

私はソウ君から離れ、飲み物でも用意しようとすると机に手紙が置かれていた。おそらく、バニルさんが言っていた配達ってこれの事だろう。私は手紙を持ち、ソウ君のもとに向かった。

 

「ソウ君、バニルさんが言ってた配達の手紙だよ」

 

「色んな事で忘れてたけどな。ありがとな」

 

そう言ってソウ君は手紙を読み始めると、ため息をついた。

 

「はぁ………、何をやっているんだよ………」

 

「どうしたの?」

 

「ダクネスからアイリス様に気に入られ、カズマが全然、帰ろうとしないからソウガも説得してくれだと。全く、何しているんだか」

 

「そうなんだ。それで、どうするの?」

 

私がそう言うと、ソウ君は立ち上がり言った。

 

「王都に行って、カズマを迎えに行ってくる。多分、数日は戻ってこれないと思う。じゃあ、行ってくるな」

 

「うん、気を付けてね。ソウ君」

 

「ああ」

 

そう言ってソウ君は微笑んだ後、魔道具店を出た。私はそれを見送った後。

 

「無事に帰ってきてね。ソウ君」

 

小さく、そう呟いた。

 

◆◆◆

 

「それで、来てみれば何でこんなことになっているんだ?」

 

「貴方が最強のアークウィザードのソウガさんですね!私は王都の冒険者でアークウィザードをしています!どうしたら、あなたの様になれるか教えてください!」

 

「お前が最強のアークウィザードのソウガか!我がパーティーには君の様な人材を求めていた!是非、俺達のパーティーに!」

 

「失礼する!貴様が最強のアークウィザードのソウガか!貴殿の様に実力のある者は冒険者は相応しくない!騎士になって王都のために一緒に戦ってくれ!」

 

「話は聞かせてもらった!最強のアークウィザードのソウガ。私の直属の冒険者になる気はないか?もちろん、金は出す!君が良ければだが、私の娘の夫に!」

 

「失礼するな!話を聞くな!散れ!俺は別に最強じゃねえ!!」

 

「「「「またまた、ご冗談をー」」」」

 

「何、この一体感!?練習したのかお前ら!?」

 

王都に転移して、カズマのもとに向かおうとしたらこいつらに絡まれてしまった。しつこい!ウザい!誰か助けてくれ!

 

『魔王軍襲撃警報、魔王軍襲撃警報!現在、魔王軍と見られる集団が王都近辺の平原に展開中!騎士団は出撃準備。今回は魔王軍の規模が大きいため、王都内の冒険者各位にも参戦をお願い致します!高レベル冒険者の皆様は、至急王都前へ集まってください!』

 

そう王都全体にアナウンスが響いた。そうすると俺に絡んでいた冒険者や騎士は王都前に向かい、貴族達は去っていった。カズマは低レベルだし、今回の戦いには参加しないだろうと思い、カズマ達が泊っている宿に向かおうとしたがガシッと両手を掴まれた。

 

「………えっ?」

 

「ソウガさんは最強のアークウィザードなんですから今回の戦いで必要な存在です!私が案内しますから一緒に行きましょう!」

 

「さあ、最強のアークウィザードよ!王都のために共に戦おうではないか!」

 

「ちょっ、ちょっと待て!?俺はパーティーメンバーを連れ戻すために来ただけだ!これ以上は関わる気はない!ていうか俺は最強じゃねえって言ってるだろうがああああああああああああ!!?」

 

冒険者と騎士に連れられ、俺は何故か城の前に連れてこられた。………何で、こんな事になっているんだ?俺はただ、カズマを連れ戻しに来ただけなのに………。

 

「あの、すみません。冒険者カードを掲示してもらっても………。あなたは最強のアークウィザードのソウガさん!?」

 

「何回も言うが……。俺は別に最強じゃない………」

 

「凄い!あなたほどの冒険者が戦いに参加してくださるんですね!この戦い、勝ちましたね!」

 

「まだ決まったわけじゃないだろ………」

 

「いいえ!最強のアークウィザードが戦いに加わるんですよ?もう、我らの勝利は確定しました!さあ、どうぞこちらへ!」

 

案内されて、俺は他の冒険者と一緒に待っていた。………つかれた、おうちかえりたい。

 

「あれ?ソウガ?お前、何でこんな所にいるんだよ?」

 

そんな声が聞こえて、後ろを振り向くとカズマ達が何故かいた。

 

「私が手紙を出したのだ。カズマを説得するために………ってソウガどうした!?凄い疲れた顔をしているぞ!?」

 

「カズマさん………、おうちかえろう………」

 

「ソウガどうした!?いつものお前らしくないぞ!?」

 

「どうしたのソウガ?回復魔法をかけてあげましょうか?」

 

「いらない………」

 

「仕方ないですね。何故かちょむすけがついてしまったので抱かせてあげます」

 

「なーお」

 

俺はめぐみんにちょむすけを抱かせてもらった。

 

「ちょむすけ………、かわいい………、いやされる………」

 

「ねえ、今からでも遅くないからアクセルの街に帰らない?ソウガもこんな感じだし」

 

「駄目に決まっているだろ。諦めろ」

 

カズマ達がそう話していると、前に屋敷でアイリス様の隣にいた白スーツの女、クレアが号令を下そうとしたので俺はちょむすけを頭の上に乗せる。

 

「………魔王軍討伐隊、出陣せよ!」

 

◆◆◆

 

「ほーらちょむすけ、ボールだぞ。ほれ」

 

「なーお!」

 

俺はちょむすけに向かって魔法で作ったボールを転がすとちょむすけが前足でボールを転がして遊んでいる。

 

「癒されるな。やっぱり、猫は良い」

 

「なーお?」

 

「何でもないぞ。よしよし」

 

「なーお」

 

俺はちょむすけを撫でると、ちょむすけは気持ち良さそうに鳴いた。こうやってのんびりするのも良いなと思った。ただ、問題があるとすれば………。

 

「ソウガさん、そっちにワイバーンが一匹行きました!」

 

「ギャオオオオオオオオオオオ!」

 

「邪魔」

 

向かって来たワイバーンを魔法で作った剣で真っ二つにする。ここが戦場だって事だけである。俺の周りにはモンスターの死骸が転がっていて、あらかた片付いたのでちょむすけと遊んでいた。俺は頭の上にちょむすけを置いた。

 

「しかし、流石は王都の冒険者か。魔王軍と良い勝負をしているな」

 

「なーお」

 

「ソウガさん!敵の援軍です!」

 

「そうか、でもこれぐらいなら何とかなりそうだな」

 

「あの………、ソウガさん言い難いのですが………」

 

「うん?どうかしたのか?」

 

「………貴方のパーティーメンバーのカズマさんがコボルトに袋叩きにされています………」

 

「はあっ!?」

 

俺はそう言って、辺りを見回すとコボルトが集中している所があったので俺は急いで双剣を作り、コボルトの急いで、向かった。

 

「俺達のリーダーに何してんだああああああ!」

 

俺は猛スピードでコボルトの群れに突っ込み一掃する。ちょむすけは俺の頭にしっかりと捕まり、落ちないで済んだ。俺は倒れているカズマを揺する。

 

「おい、しっかりしろ!カズマ、返事しろ!………駄目だ、死んでる」

 

カズマが死亡している事を確認した後、カズマの死体を運んでちょむすけと遊んでいた場所に置いた。俺は近くにいた騎士に話しかけた。

 

「あの、すみません。少し、いいですか?」

 

「はい、何でしょうか?ソウガさん」

 

「他の騎士と冒険者を少しの間だけ下げてもらうように騎士団長に伝えてもらっても良いですか」

 

「良いですが、何故でしょうか?」

 

「敵を一掃しますので、お願いします」

 

「了解しました!」

 

そう言うと、騎士は何処かに行った。俺は冒険者達の様子を見ているとめぐみんが近くに来た。

 

「ソウガ、こんな所にいたんですか。大丈夫でしたか………ってカズマ!?どうしたんですか!返事をしてください!」

 

「無駄だぞ、死んでるからな」

 

「えっ!?」

 

「そんな事より、めぐみん。爆裂魔法の準備しておけ、俺が魔王軍に魔法を使った後にすぐに必要になるからな」

 

「わ、分かりました。ところでソウガはどんな魔法を魔王軍に使うんですか?」

 

「爆裂魔法」

 

「えっ!?も、もう一回、言ってください!」

 

「だから、爆裂魔法を使う」

 

「ほ、本当ですかあ!ついに神滅魔法の爆裂魔法を使って下さるんですね!」

 

「ああ、俺が爆裂魔法を使った後にめぐみんが止めを刺す。分かったら準備しておけ」

 

「了解です!ああ、楽しみです!神滅魔法の爆裂魔法はどのようなもの何でしょう!」

 

俺は興奮しているめぐみんを見た後、魔王軍の様子を見ていると騎士の一人がこちらに来た。

 

「ソウガ殿。騎士団長に他の者達を下がらせるように伝えました」

 

「ありがとうございます。ではそこの私の仲間の死体をすみませんが運んで行ってくれませんか?仲間に頼んで蘇生させたいので」

 

「了解しました!」

 

そう言って騎士がカズマを担いで、離れるのを確認した後。

 

「じゃあ、やるぞ。めぐみん」

 

「はい!あっ、できれば詠唱ありでお願いします!」

 

俺とめぐみんは魔法を放つ準備をしようとしてる時に、そう言ってきた。………しょうがないな。

 

「天の怒りに触れし者共に裁きの時が来たれり、星々の光に飲まれ、消え去るがいい。さあ、審判の時だ!」

 

俺はそう詠唱を唱えると上空に巨大な魔方陣が出現する。

 

「『スーパーノヴァ』!

 

そう唱えると、空に光球が現れる。光球は光りがどんどん増していき、爆発して光の柱が発生する。その光の柱が消えると戦場に大きな穴が開いていた。

 

「凄い!凄い威力です!」

 

「興奮するのは別に構わないが。魔王軍が撤退を始めたから頼むな」

 

「分かりました!」

 

そう言うと、めぐみんは詠唱を唱え始めた。そして、魔王軍に向かって魔法を放った。

 

「『エクスプロージョン』!」

 

放った魔法は撤退をしていた魔王軍に当たり、魔王軍のほとんどは吹き飛んだ。俺はその様子を見ていると、めぐみんは倒れた。

 

「くうっ、神滅魔法の爆裂魔法に比べるとまだまだ威力不足、もっと精進しなければ………!」

 

「そうか」

 

「それじゃあ、戻りましょうか。ソウガ、私を運んでください」

 

「ああ。あと、神滅魔法の爆裂魔法を使ったが、俺はお前には教えないからな」

 

「えっ、ええ、分かっていますよ!」

 

うん?こいつ、やけに大人しくなったな。神滅魔法の爆裂魔法を使ったのに教えてくださいと一言も言わないなんておかしい。………まさか。

 

「おい、お前。何か隠しているだろ」

 

「な、何も隠していませんよ?」

 

「ふーん」

 

………………。

 

「………めぐみん。ちょっと冒険者カードを見せろ」

 

「ッ!?な、何でですか!?」

 

「少し、確認したい事があるだけだ。どうせ、動けない様だし借りる事にする」

 

そう言って俺はめぐみんの方向に歩き始めるとめぐみんが焦り出した。

 

「な、何をしようというのですか!大声を出しますよ!近くには他の冒険者や騎士達もいます。あ、あとウィズにもソウガに悪戯されたって告げ口します!や、止めてください………、止めろお!」

 

「ただ、借りるだけだって言ってるだろうが!?すぐに返すから人聞き悪い事を叫ぶな!」

 

「だ、誰か、助けてください!最強のアークウィザードに悪戯されます!誰かあ!」

 

………………ブチッ!!

 

「うるせえって言ってるだろうがああああああああああ!!このペドがっ!!お前みたいなガキに興味なんかねえんだよ!!黙ってろやあああああああああ!!」

 

「なっ!?誰がペドですか!!私が幼女だって言いたいんですか!!」

 

「ああ、そうだよ!!お前の貧相な体はこめっこと変わらねえだろうが!!そんな、平面みたいな胸に誰が欲情するか!!少なくとも、ゆんゆんと同じサイズになってから言いやがれ!!」

 

「言ってはいけない事を言いましたね!!絶対に告げ口してやります!!」

 

「うるせえって言ってるだろ!!服を剥いてでも奪うからな!!」

 

俺は動けないめぐみんから冒険者カードを奪うと、スーパーノヴァがスキル欄に書いてあった。どうやら、めぐみんは一度、見ただけで魔法を覚えられるみたいだった。俺はめぐみんの冒険者カードからスーパーノヴァを消した。その時にめぐみんが叫んだせいで俺にロリコン疑惑が出てしまい、誤解を解くのに時間がかかった。

 




次回はソウガが暴れます。


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この冒険者達に魔王軍の幹部を!

遅くなってしまい、申し訳ございません。


魔王軍の戦いから数日が経過した。俺はカズマを何とか連れ戻そうとしたが、効果は全く無かった。そんな時、ある事件が発生した、アイリス様とカズマが入れ替わるというものだ。まぁ、すぐに解決したから問題は無かったが。カズマは色々な人から怒られ、さすがに懲りて明日にはアクセルの街に戻ることになった。それで今日は城では晩餐会が開かれているが、俺は王都の食事処で飯を食っていた。

 

「………ねぇ、ソウガ。今日は晩餐会の日なんでしょ?何で、私の店で食事をしているのよ。まぁ、売り上げに貢献してくれるのは嬉しいけどさ」

 

「晩餐会みたいな堅苦しいのは食った気にならない。それにお前の飯、普通に美味いしな」

 

「普通ってなんだ普通って。出禁にされたいのかコラ」

 

「冗談だ」

 

この食事処の主人のエルフの女が俺に話しかけてくる。俺は冗談交じりに話していた。店内を見回して、他の客が笑いながら飯を食っているのと店員のエルフ達も楽しそうに接客していた。

 

「………この店も大分、繁盛するようになったな」

 

「ソウガのおかげよ。ソウガが色々してくれたおかげで、今の私達があるんだから」

 

「本当に変わったよな。この店の女主人が元魔王軍の幹部、女帝と恐れられたエルフのシルフィだと分からないぐらいにな」

 

「本当にね。魔王軍の天敵である死神が元魔王軍の幹部の店の常連と知ったら、魔王様や他の幹部達は凄く驚くでしょうね」

 

そう、ここの女主人のエルフ、シルフィは元魔王軍の幹部である。俺がウィズに負けてから出会った魔王軍の幹部で剣の達人だ。はっきり言って、今まで戦った魔王軍の幹部の中でもトップクラスの強さだった。何とか倒した時にシルフィと話をしたのだがシルフィと他のエルフ達は住んでいた村を焼かれ、居場所が無くなってしまい仕方なく魔王軍に入っていたと言った。だから、俺は王都にシルフィ達が住める様に家と店を与えた。その交換条件として王都で手に入る情報を教えてもらっている。

 

「そういえば、今回は何か情報は無いか?何でも良いんだ」

 

「一つだけならある。西にある小さな村が消えたのよ」

 

「………村が消えた?どういう事だ?」

 

「言葉の通り、消えたのよ。一晩のうちに人も家畜も家も何もかもが消えた。あったのは大量の灰だけ、これが、誰かの仕業だったらそいつは化物よ」

 

「お前ほどの実力者が化物ってはっきり言うんだな」

 

「皆殺しにするにも痕跡は残るものなのよ?それが全く無いのが異常なのよ。人ではまず無理、モンスターだったとしても今までのモンスターとは格が違う。想像しただけでも寒気がする」

 

シルフィの言葉を聞いて、俺はそのモンスターはフィニクスやヴェッターの仲間かもしれないと感じた。俺はそう考えながら料理の代金を払った。

 

「情報、ありがとうな。じゃあ、俺は城に戻る」

 

「ええ、何かあったら言いなさい。少しでも、貴方に恩を返したいからね」

 

「気にするな。じゃあ、またな」

 

俺はそう言って、店を出て城に向かった。城に戻ると、俺はカズマを探す事に決めた。カズマは戦いでも役に立つ事ができず、入れ替わり事件のせいで肩身の狭い思いをしていると思っているとクレアと話をしているカズマを見つけた。俺はカズマに声をかけようとするが………。

 

「今宵の主賓である、ダスティネス卿や他の方には城に泊まって頂くが、貴様はもう帰っていいぞ」

 

というクレアの言葉を聞いて、俺は声をかけるのを止めた。俺は隠れて話を聞いているとクレアはアクア達をミツルギのパーティーに入れて、カズマはアクセルの街で一人で暮らせ、悔しかったら成果を上げてみろと言ってきた。俺はその言葉を聞いて、今すぐにでもクレアを半殺しにしてやろうと思ったが問題を起こしてしまったら俺だけの責任じゃなくなってしまうと考え、必死に我慢した。その言葉を聞いたカズマは走り去ってしまった。

 

「カズマ………!」

 

俺は走り去ってしまったカズマを追いかけようとしたが、他の冒険者に発見されてしまい、追うのが遅れてしまった。他の冒険者の誘いを断り、追いかけて街に来たが完全に見失ってしまった。俺は魔法を使ってカズマを探そうとしているとエリス様がクリスの姿で現れた。

 

「どうかしたの?ソウガ」

 

「…………エリス様」

 

「エリス様って言うの止めてくれないかな。地上では隠しているし、冒険者クリスの姿も好きだから」

 

「分かりました。じゃあ、クリス。今は話に付き合っている暇は無いから後にしてくれないか?」

 

「そうしてあげたいんだけど、王女様に危機が迫っているから君の力を借りたいんだ」

 

「…………詳しく聞かせろ」

 

俺がそう言うとクリスは説明を始めた。あの魔道具は入れ替わるだけのものじゃなく、入れ替わった後に相手を殺せばその体を乗っ取れるやばい代物だった。元々、貴族に買われた物なのに何故か王女様の手元にある理由は一つしかない。俺はそう考えるとゾッとした。

 

「だから私はその魔道具を盗みに行こうと思っているの。だから君の力を借りに来たんだ。あとカズマにも手伝ってもらって、3人で王女様を助けに行かない?」

 

なるほど、それで俺を誘ってきたのか。確かにカズマと組めば良い指示をして簡単に魔道具を盗めると考えたが………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや、その必要はない。俺がその魔道具を盗んでこよう」

 

「えっ!?」

 

俺はその誘いを断り、一人で行くと言った。驚いているクリスに俺は続けて言った。

 

「俺一人の方がやりやすいし、王都の騎士や冒険者達と戦闘になった場合に二人を守れる自信が無い。クリスはカズマを誘って飯でも食べててくれ。良い店を知っているからそこで落ち合おう」

 

「………ねえ、ソウガ。もしかして怒ってる?」

 

「いや、怒ってないぞ。むしろ好都合だと思っただけだ。それじゃあ、この住所の場所の店でカズマを誘って食事でもしていてくれ」

 

「ね、ねえソウガ?何をしようとしているの?お、穏便にお願いしますね?」

 

「………………………」

 

クリスが何故かエリス様の口調で俺にそう言うが、俺は黙って聞いた後に城に向かって走った。

 

「ソウガさん!?何で返事してくれないんですか!?面倒ごとはしないでくださいね!お願いですからあああああああああああああ!!」

 

俺は大分走った後、後ろを確認してクリスが追いかけてきていないのを確認した後に俺は魔法で禍々しい竜の形の鎧を作った。正直、クリスの話を聞いた時は丁度良い思った。何故なら………。

 

「………クレアの発言でイライラしていたところだ。王都の冒険者と騎士達には俺のストレス発散のために付き合ってもらうとするか」

 

正直、完全にキレていたところだからな。

 

◆◆◆

 

「………静かだなあ」

 

深夜、城の明かりが完全に消え、皆が完全に寝静まった頃に城の門を警備している兵士の一人がそう言った。

 

「おい!ちゃんと警備を行え!」

 

「だけどよお。今、城内には王都の冒険者が大勢いる状態で侵入する奴なんて大馬鹿だぜ」

 

「気持ちは分かるが魔王軍が攻めてきている状態だ。その冒険者もほとんどが酔い潰れている状態だと聞いている」

 

「じゃあ、今、魔王軍に攻められたら大変な事になるな」

 

「おい、冗談はそれぐら「ほう、それは良い事を聞いた」ッ!?」

 

兵士達が話をしていると突然、前から声が聞こえた。兵士達は声が聞こえた方向を見ると禍々しい鎧の男が立っていた。

 

「誰だ!!そこを動」

 

兵士達が動くなと言おうとした瞬間、男が右手を振り上げるとまるで大きな生物に爪で切り裂かれたかのように城門が切り裂かれ、兵士達もその余波で吹き飛ばされた。

 

「………魔法がほとんど使えない状態なのに意外にいけるな」

 

男はそう言っていると城内から冒険者や騎士達が出てきた。それを見た男は歩き出し、冒険者達の前で立ち止まった。

 

「貴様、一体何者だ!」

 

「貴様らに名乗る必要は無い………っと思っていたが冥土の土産に教えてやるか」

 

男はそう言うと冒険者達を見て。

 

「我が名はソウリュウ。魔王軍の幹部の一人のソウリュウだ。魔王様に頼まれ、貴様達を始末するために来た」

 

「「「魔王軍の幹部だと!?」」」

 

ソウリュウが自らの名を名乗ると、王都の冒険者と騎士達が騒ぎ始めた。それを見てソウリュウは………。

 

「(自分で名乗っておいて、恥ずかしくなってきたな。早く用を済まして、アクセルの街に帰るか)」

 

鎧の下で顔を紅くしていた。さっきの発言でソウリュウことソウガは恥ずかしくなってきたが我慢した。

 

「魔王軍の幹部がとうとう攻めてきたのか!」

 

「いや奴は一人だ。そして、数はこちらが圧倒的に有利な状態だ!」

 

「ここであいつを倒せば、魔王軍に大打撃を与えられる!ならやるしかねえ!!うおおおおおおおおおおっ!!」

 

「あっ!?おい!」

 

一人の冒険者がソウリュウに向かって走りだした。ソウリュウはそれを見て接近して冒険者に見えない速度で何かをした。

 

「………へっ?今、何かされ、ぐぁああああああああああああああ!!?」

 

「「「!?」」」

 

接近してきた冒険者は何をされたか分からなかったが、次の瞬間に来ていた鎧が砕かれ、城壁まで吹っ飛ばされた。それを見ていた冒険者と騎士達は驚いていた。

 

「………敵の力の把握をしないで突っ込んでくんじゃねえよ馬鹿が。何で魔王様が俺をたった一人で攻め込ませたと思っている?答えは簡単だ。お前らが束になってかかってきても俺一人で王都を潰せると判断したからだよ」

 

「「「なっ!?」」」

 

そうソウリュウは行った後、黒い棍棒のような形状の武器を作り出し。

 

「俺が来た時点でお前らの死刑は確定してんだ。殺戮してやるから迅速に死亡しろ!」

 

ソウリュウがそう言うと、冒険者達と騎士達は一斉に襲い掛かるがソウリュウは襲い掛かってくる冒険者と騎士達の攻撃をいなしがら考えていた。

 

「(マジック・クリエイトで完全武装した場合、攻撃魔法やドラゴニックネイルのような武装する魔法は使えないが………)」

 

そう考えていると騎士の一人が襲い掛かってくるが、棍棒で武器を破壊して騎士の腹部を殴った後に上から振り下ろされ地面にヒビが入る。

 

「ガッ!!」

 

「(自分の体の一部を武器化させる魔法や武器から行う攻撃魔法は使用可能!)」

 

「くっ!『ライトニング』!」

 

魔法使いがソウリュウに向かって魔法を放ったが、ソウリュウは近くの騎士の女性を盾にして防いだ。

 

「きゃあああああああっ!!」

 

「なっ!?卑怯よ!」

 

「近くにいた、こいつが悪い。時間がもったいねえ。さっさと片付けさせてもらう!」

 

そう言った後に棍棒を冒険者達の方向に向けると棍棒の先から魔法による砲撃が放たれ、3分の1の冒険者と騎士が倒された。

 

「何っ!?」

 

「次は貴様らだ!」

 

そう言うとソウリュウは棍棒から光刃を放ち、大半の冒険者達を倒した。

 

「何なのあいつ!?圧倒的すぎる!」

 

「あんな奴に勝てるのかよ!?」

 

「真面目にやれ。つまらんぞ」

 

「そこまでだ!!」

 

そう声が聞こえた方向をソウリュウは見ると、ミツルギ・キョウヤが剣を振り下ろしたがソウリュウの棍棒に防がれた。防いだ瞬間、風圧が発生した。数秒、鍔迫り合いをした後に二人は大きく離れた。

 

「ほう、魔剣使いのミツルギ・キョウヤか」

 

「これ以上、貴様の好きにはさせない!」

 

「キョウヤ、がんばって!」

 

「そんな奴、さっさとやっつけちゃえ!!」

 

「ああ、任せてくれ。だから君達は離れ」

 

キョウヤがそう言った瞬間だった。二つの光弾がキョウヤを通り過ぎ、後ろで爆発した。キョウヤは後ろを見ると、キョウヤの仲間の冒険者が倒れていた。

 

「なっ!?貴様、よくも!!」

 

そう言って前を見た瞬間、ソウリュウはキョウヤの頭を掴んで地面に思い切り叩きつけた。大きな音と同時にキョウヤの上半身が地面に埋まり、下半身しか見えなくなった。

 

「実力差があるのに、チームなんか組んでんじゃねえよ」

 

「そ、そんなミツルギさんが負けた………」

 

「無茶苦茶だ。こんなの………」

 

キョウヤが敗北した事に他の冒険者と騎士は絶望していた。ソウリュウはそんな冒険者達を無視して、落ちていた魔剣グラムを手に取る。

 

「こんな凄い剣を持っていて、普通負けるか?使い手が悪かったんだな。俺が有効活用してやるよ」

 

「な、何を言っている!魔剣グラムはミツルギさんしか使えない!」

 

「確かに、魔剣グラムはミツルギ専用の武器だ」

 

そう言うとソウリュウは冒険者達を見て。

 

「だったら、俺専用に変えればいい」

 

「………はっ?」

 

「『リベリオン・ハンド』」

 

ソウリュウがそう言うと魔法を唱えた。魔剣グラムが黒く変色し、禍々しいオーラを放った。ソウリュウはそれを見た後、剣を振ると同時に城壁が切り裂かれた。

 

「なっ!?」

 

「これで魔剣グラムは俺専用の武器だ。折角だお前達で試し切りをしてやろう」

 

「に、逃げろっ!!?」

 

黒い光が魔剣グラムに集まり始めたのを見た冒険者達は逃げようとしたが、ソウリュウがグラムを振り下ろすのと同時に黒い光が辺りを包んだ。




次回、決着です。


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