空と海と大地と交差する世界線 (駒込てとら)
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打ち砕かれた平穏

「今日もいいお天気ですわね、エイト。」

 

長い黒髪の、白い衣装を見に纏った女性が隣の青年に声をかける。

彼の名は、エイト。ほんの半年くらい前にこの世界を救った事のある、トロデーンの近衛兵。

今は昇格し、ここ、トロデーン城で近衛隊長として活躍している。

 

「そうですね、あれから目立った異変もありませんし。」

「でもここ数日、魔物たちが活発になっているという知らせをよく聞きますわ。」

「確かに、今朝も行商人が襲撃に遭ったと聞きました。出掛けるときは気をつけないといけませんね、ミーティア姫。」

 

バンダナが特徴的な青年、エイトが隣の女性と話している。彼女はミーティア。トロデーンの姫だ。

この世界は、半年前に暗黒神が倒され、平和になったはず。

それなのにどうして今になって魔物達が活発になったのか。

 

「もしかしたら、またこの世界に危機が迫っているのかも知れませんね・・・。」

 

そんなミーティアの声を聞きながら、城の外郭から城の外を眺めていたエイトだったが、窓を鳴らす風と共に視界の向こうに何かを見つけたようで

 

「すみません、姫。少し出掛けてきますね!」

「えっ?あ、待ってエイト!」

 

彼女の制止も聞かず、城の外へと彼は飛び出していった。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

彼が城の外へ飛び出てきたのは、景色を眺めている最中に目についた、ひときわ目立つ青。

瞬きをする間にその青は消えてしまっていたのが、彼は気になったのだ。

 

「やっぱり、見間違いだったのかな・・・?」

 

諦めて引き返そうとしたその時だった。

視界の隅に、その時と同じ青が見えた。

 

その青は、瞬きをしても消えたりする事はなく、今そこに存在すると言う事を示していた。

だが少し、様子がおかしいような。

青年はそっと、その青に近づいてみる。

 

「これは・・・。」

 

彼は思わずそう発していた。それは、この鮮やかな青色をした謎めいた、“ひと”と呼べるのかすらわからない何者かを目の当たりにした事と、

そして、その何者かが魔物に襲われたであろうひどい傷を負って倒れていることの二つの意味を持つかのようだった。

 

「さすがにこのままじゃ放っておけないよね。…ベホマ!」

 

エイトはそっと、この“ひと”の額に手を当て、ベホマを唱える。

瞬く間に傷は塞がったものの、目を覚ます気配はない。

 

ふと周りを見回してみる。幸い、近くに魔物はいないようだ。

 

「・・・これは一度、城に連れて行くしかなさそうだね。」

 

トロデ王と姫になんて言われるだろう、と呟きながら彼はその“ひと”を優しく抱きかかえて城へと戻っていった。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

「しばらく様子を見たほうがよさそうですわね。」

「しかし、エイトもなかなかのお人よしじゃのう。」

 

案の定、トロデにそんな事を言われてしまった。

 

「しかし、わたくし達が旅をしたときはこのような方は見かけなかったのですが・・・。」

「ふーんむ、見る限りわしらの世界の者ではなさそうじゃしの。」

「と言うと、異世界の人、ってことでしょうか・・・。」

 

ベッドの上で眠る彼―顔つきや体格から少年だろうとトロデが判断した―はやはり、いつ見てもこの世界とはかけ離れた雰囲気を放っている。

 

 

◇ ◇ ◇

 

―ポルトリンク周辺。

相方とはぐれてひとり海辺を彷徨っている、闇色の衣装と翼、髪を持つ一人の少年がいた。

 

「ったくあいつはどこほっつき歩いてんだ・・・いつの間にかいなくなってるし」

 

ふとそこで言葉を止め、掌に光球を生み出し、それを弓の形に形成する。

くるりと波打ちぎわに背を向けて、弓を構えた。

 

「こんな訳の分からん奴は敵意むき出しにしてオレに襲いかかって来るしよ!」

 

少年の周りには、群れを成した小さな丸いイカのような生物がわらわらと群がっている。

それもみな、彼に敵意を向けているのである。

 

「チッ!やるしかないってことだな!」

 

目の前のイカの大群に少年は弓では対抗しきれないと踏んだのか、それを分離させて双剣のように構えた。

 

「お前らを片付けてから、ピットのヤツを探しに行くとするか・・・」

 

彼がそう言った直後、水しぶきの音が辺りに響き渡る。

背後の海から来たイカたちの親玉に気づかなかったのだ。

 

「しまっ―!!」

 

そう思ったときにはもう遅かった。巨大な青いイカの触腕に巻きつかれ、身動きができなくなっていたのだ。

 

「油断してたぜ・・・この世界じゃ海からも化け物が出てくるって言うのか・・・!!」

 

ずるすると海に引きずり込まれそうになりながら彼はただ必死にそうはさせまいともがく。

だが、そうすればするほど巻きつく力は強くなり、やがて諦めてしまった。

 

そこに。

 

「ハイドレンジア!!」

「カオススピア!!」

 

二人の声と共に、黒き翼の少年に巻き付いていた巨大イカの触腕の力が抜ける。

巻きつかれていたその痛みのせいか、彼は無防備のまま倒れ込みそうになった。

そこに、小さな黒い誰かが抱え上げる。

 

「無事か?」

「まぁな・・・。」

 

そっと立ち上がり、助けに来た二人を少年は交互に見る。

どちらも、見た事のない姿、格好をしていた。

 

「間一髪、と言ったところだな。」

 

紅色の衣装を身にまとった無造作な髪型の眼鏡の少年が、外見に反する声で呟く。

いつの間にか、周りにいた丸いイカたちはいなくなっていた。

 

そして、その大群を一人で片付けたかのように、小さな黒い彼が視界の奥に立っていた。

その手には大きな、緑色の宝石。

 

「フン、他愛もない。」

「・・・まさかとは思うが、あのイカの大群、全部お前が」

「この程度なら、僕一人でも十分だ。」

 

どうやら本当に彼一人で片付けてしまったらしい。

 

「ところで、君の名前を聞こうか。」

「・・・ブラックピットだ。ブラピでいい。」

 

すっかりそのあだ名には慣れてしまったのか、自らそう呼ぶように黒い翼の少年、ブラピは言った。

 

「僕はシャドウ。シャドウ・ザ・ヘッジホッグ。」

「・・・私の名はとうの昔に忘れてしまった。何とでも呼ぶがいい。」

 

紅色の衣装を纏った彼はのちに、「クルークと言う人間の子供の身体を借りているから、元の世界の人間からは“あやしいクルーク”だのと呼ばれているがな。」と付け足した。

 

「そうか。じゃあシャドウ、それから・・・」

 

見掛けは少年の彼を見下ろして、ブラピはそっと呼んでみた。

 

「赤いの。」

「その呼び方だけはやめてもらいたかったのだが・・・まあ、いいだろう。」

 

呆れた様子のあやしいクルーク。もとい、あやクル。その隣でシャドウが後ろを向いて俯いていた。その姿は、声を殺して笑っているようにも見えた。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

―トラペッタ周辺。

スライムを不思議そうに見つめ、弄んでいる一人の少年がいる。

 

「ぴ、ぴきー・・・」

 

無言でスライムを弄り続けているが、その表情はどこか楽しげでもあった。

後頭部に生えた2本の水色のアンテナが、ピコピコと揺れている。

 

一見普通の外見だが、どこか異様な雰囲気を放っているのは、大きな赤い左手と、紅い左目のせいか。

その少年の背後に、誰かが立つ。

 

「何してるんだ?」

 

その声で少年は振り向き、スライムを抱えたまま立ち上がる。

が、目線の高さには何も見えない。ただ、視界の下の方に、白い何かがちらつくのだけが見えていた。

 

「よいしょっと・・・これで分かるだろ?」

 

ふと、目の前に立っていたであろう小さな人物は、ふわりと浮かび上がり、彼の目線の高さまで飛び上がった。

 

「おー」

「見た限り、お前も別の世界から来たのか?」

 

少し近未来的な雰囲気の彼は、見るからにこの世界の者ではないようだった。

その質問を聞き、水色の少年もうなずく。

 

「やっぱりオレは別の世界に飛ばされてたって訳だな。となると・・・。」

 

彼は浮遊しながら考える仕草をし、一人ごとを呟いている。

そして、少年の瞳を真っ直ぐに見つめ、こう尋ねた。

 

「お前も別の世界から来たってことは、もしかしてお前の知り合いもここに・・・?」

「いなくも、ないかも。」

 

彼の質問に、少年はそう答える。

その返答を待っていたかのように、彼はさらにこう提案した。

 

「なぁ、お前の知り合いを探すついでに、オレの知り合いも探すの手伝ってくれないか?」

「うーん」

 

少しの沈黙の後、少年から出た答えは「ついてく」だった。

銀色の毛並みの彼がそれを聞くなり、少し嬉しそうな声のトーンで名前を名乗る。

 

「オレの名はシルバー。あんたは?」

「シグ。」

「よろしくな、シグ!」

 

シルバーはそう言うと、浮遊をやめて地面に降り立つ。そして、そっと手を差し伸べた。

 

「さ、行こうぜ!」

「うん」

 

シグが右手でその手を握ると、シルバーは彼を抱えるように両手で支え、空へと舞い上がった。



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青き風

彼が目を覚ますと、見えたのは綺麗な白煉瓦の壁と天井だった。

首だけを動かして、辺りを見回してみる。ここにいるのは自分だけのようだが、

かすかに人々の声が聞こえてくる。他の部屋には誰かいるようだ。

 

「ここはどこだ・・・?確か、見たこともない場所に飛ばされて、そこから・・・。」

 

ベッドの上で上体を起こし、現状を整理してみようとする青い彼。

 

「ま、考えていても仕方がないか。」

 

が、すぐに投げ出した。

彼がすぐさま布団から飛び出してここから出ようと思い立ったとき、目の前の扉がゆっくりと開く。

 

「気がついたみたいだね。」

 

扉が開く音と同時に入ってきたのは、赤いバンダナが特徴的な青年、エイトだった。

上体を起こしたまま、彼はエイトに尋ねてみる。

 

「お前がオレをここまで連れてきたのか?」

「見た事のない物が見えて、ちょっと気になってね。それに」

「…what?」

「君みたいな人が城の前に倒れてたんじゃ、心配だからね。」

 

最後の一言が、やけに重く聞こえた。どうやら本気で心配してくれていたらしい。

 

「Thanks!誰だか知らないが、助かったぜ。」

「あのとき僕が見つけてベホマをかけていなかったら、今頃どうなっていたことか・・・」

「えっと・・・なんだって?」

 

聞いた事もない単語を耳にし、困惑する彼。

その様子を察したのか、エイトは彼に説明することにした。

 

呪文にはさまざまな分類があること、効果に違いがあること、そして、これを使うには自らが持つ“魔力”が必要であること。

 

「要するに、その魔力ってものがないと、魔法ってのは使えない事か。」

「まぁ、そんなところかな。」

 

だいたい分かってくれたようで、ほっとするエイト。と同時に、何か忘れている事に気づく。

 

「そう言えば、まだ名乗ってなかったね。僕はエイト。この城の近衛隊長をやってるんだ。」

「オレはソニック、ソニック・ザ・ヘッジホッグさ!」

 

布団から飛び出して、ソニックはエイトと握手を交わす。

 

「そういえば君、やっぱり別の世界から来たんだよね?」

「ああ。まぁ、オレならこの足でどこにでも行けるから、世界なんてどこでもいいもんだけどな。」

 

ただ、と彼は付け足して

 

「エッグマンのやつがちょっとした騒動を起こす前に、帰ったほうがよさそうだ。」

 

そう言った。

 

「じゃあ、トロデ王に言って来るよ、君が元の世界に帰るのを手伝わせて。」

「Thanks.オレがこの世界に飛ばされる前、周りにいた二人も恐らく巻き込まれてこっちに来てる筈なんだ、それも手伝ってくれるか?」

「任せて!」

 

そうして二人は部屋を後にした。そしてエイトは、トロデ王にこの事を伝えに謁見の間へと向かって行った。

 

「・・・さて、ここでエイトを待ってる間、ちょっとばかりこの城を見て回るとするか。」

 

・・・城、か。

彼はそう呟いた。

 

以前来た事のある、ここと似た本の中の世界での旅を思い出してみる。

彼らは今、どうしているのだろうと。

 

「ま、オレが気にする事でもないか。」

 

だが、すぐにすっぱりと切り捨てた。

視線の向こうにエイトの姿を確認すると、笑みを浮かべながら右手を軽く挙げる。

 

「お待たせ!いないからちょっと探しちゃったよ。」

「Sorry.待つのは苦手でね。」

 

エイトも無事にトロデ王から許可を貰い、二人は城の外へと踏み出した。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

城門前へと出てきた二人だったが、そこで彼らが目にしたのは、この世界に存在するはずのないもの。

 

目の前にいるそれは、純白の翼を持ち、同じような色に身を包んだ、天使としか形容できない少年。

その姿を見て、真っ先に口を開いたのは。

 

「What!?なんでお前がこんなところに?」

 

ソニックの方だった。

 

「え?君こそなんでここに!?って言うか、ここどこ!?」

 

目の前の天使は、声を聞いて振り向き彼を見るなり、似た反応を返す。

エイトがその少年に事情を説明すると、その天使は驚きつつもあっさりと受け入れた。

 

「なるほど・・・。ボクはピット、気がついたらここにいたんだけど・・・ってあれ?ブラピは!?」

 

ピットと言うその天使の少年は、そう名乗った後、自分の知り合いがいないことに気がついたらしい。

彼が呼んだその名前に聞き覚えのあるソニックは尋ね返してみる。

 

「もしかして、お前にそっくりな黒い奴もこっちに来てるのか?」

「ここ世界に来る前、一緒にパルテナ様と話をしてたんだけど・・・。」

「気がついたら君だけここにいた、ってことだね。」

 

そこまで話して、ソニックとエイトは顔を見合わせた。

恐らくピットも元の世界に戻りたいはずだと。

 

「Hey,ピット。それならオレたちと来るか?ちょうど知り合いを探そうと思ってたところさ。」

「助かるよ!パルテナ様がいないんじゃ空も飛べないし。」

 

こうして彼らは、この世界のどこかにいる自分たちの知り合いを探しに行く事となった。

 

「そうだ、君たちの仲間の情報を集めるついでにポルトリンクに行かせてくれないかな?少し用事があったんだ。」

「オレは構わないぜ。お前はどうだ?」

「ボクも賛成するよ。この世界のこと、何も知らないからね。」

 

満場一致で、彼らはポルトリンクへと向かうことに決まった。

 

「よし、じゃあ二人とも、離れないでね!」

 

そして彼は、異世界の二人を連れて、ルーラでポルトリンクへと飛び立った。



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類似する3種族

「近くの港町で地図を貰ったのはいいが・・・ここからどうするんだ?」

「まずは僕たちの知る人物を見かけたか、情報を集める必要があるな。」

 

先ほど港町で地図を見ながら3人は道なりに歩いていた。

 

「だが、もし別の大陸にいたならどうする?異世界の者である我らが船とやらに乗れる可能性は低いぞ?」

 

あやクルが黒い二人にそう話しかけた。

ブラピから地図を横取りするかのように拝借したシャドウが立ち止まって二人に言う。

 

「可能性はゼロではないな。だが、僕はまずこの大陸で情報を集めるのが先決だと思うが?」

「それもそうだが・・・。」

 

あやクルが言葉を詰まらせた。シャドウの言っている事は間違ってはいない。

 

「そのときはそのときだ。オレならここでやれる事をやるぜ。」

「お前たちがそう言うなら、やむを得ん・・・。」

 

ブラピの言葉に、しぶしぶ同意させられるあやクルだった。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

海から吹く潮風が止み、ずいぶん田舎のような場所へとやってきた三人。

目の前に、村があることを示す大きなアーチがあった。

 

「まずはここで情報を集めてみるか。」

「何も起きなければよいのだが・・・。」

 

あやクルが心配して二人に声をかけたが、届いていなかったのか、聞く耳を持っていなかったのか。

どちらにせよ、二人の黒は何の躊躇いももたずに村の中へと入っていった。

 

 

案の定、三人は村人と思われる少年二人に止められた。

 

「おい、お前たち!この辺じゃ見かけない顔だな?何しにここへ来た?」

 

いきなり大声で突っ掛かられ、思わずブラピとあやクルは一歩後ずさりをする。

が、それに動じなかったシャドウが彼らに口を開いた。

 

「その様子だと、どうやらここで有力な情報は得られそうにないな。」

「なっ、おい!待てって!」

 

それならばここに用はないと告げ、引き返そうと振り返ったシャドウの腕を掴んだ少年は言った。

 

「休憩ぐらいしてけよな、どこから来たかは知らねーけど、どうせ長い事歩いてたんだろ?」

 

そのまま少年に腕を引かれるまま彼について行くシャドウを追うようにブラピとあやクル、そしてもう一人の少年が遠ざかる彼らの背中へと駆けて行く。

 

「あっ、待ってポルクー」

「おい待てって!オレ達を置いてくな!」

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

ポルクと呼ばれた少年に宿屋へと連れて来られると、少年が主人に代金を差し出し、三人を泊めてやってくれと頼んでいた。

彼が連れてきた三人の姿を見ても主人は何の躊躇いもなく笑顔で奥の部屋へと案内する。

・・・とはいえ、身長の関係で視界に入っていなかったシャドウの姿をはっきりと見れば、流石に驚いていたようだったが。

 

「情報集めとやらはいいのか?」

「フン、僕の見た限り、ここで有力な情報は得られそうにないな。」

 

3人はそれぞれのベッドの上に転がり、互いに顔を見合わせながら話をしていた。

そういえば、彼らは出会ったときに軽く名乗りはしたものの、まだ互いの事をよく知らない。

 

そこで、三人は互いに自らのことをある程度打ち明ける事にした。

 

「じゃ、オレから言わせてもらうぜ。」

 

 

フルネームはブラックピット。

 

真実の魔鏡、という鏡から生まれた、いわばピットのコピーである。

当時は自分と同じ姿なのが許せない、という理由で彼と敵対していたが、今はそうでもないようだ。

以前は自らの意思で飛ぶことができたものの、とある一件で飛翔する能力―奇跡を失ってしまったとのこと。

 

今回は、女神パルテナの気まぐれでピットと共にとある軽い任務を行っていたところ、二人揃って

この世界に飛ばされてきた。

 

 

「同じ場所に飛ばされたのならよかったんだがな・・・」

 

ブラピが語り終わると、主にあやクルから幾つか質問が飛んだ。

そして、彼に続いて語るのは、

 

「なら、次は僕が言わせてもらおう。」

 

 

フルネームはシャドウ・ザ・ヘッジホッグ。

 

元の世界で50年前、Pr.ジェラルドによって生み出された、不老不死の身体を持つ究極生命体である。

カオスエメラルドという宝石を用い、客観的に見れば瞬時に任意の場所に移動することができる能力を持っている。

過去に一度記憶を失くしはしたが、様々な人たちの協力もあって、ほとんど思い出したようだ。

 

今回は、他にここに来ているであろう二人の知り合いのうちの一人を元の時代に帰そうと、

カオスエメラルドという宝石を集めているうちに事故でここに飛ばされてきた、とのことである。

 

 

「僕一人では流石に世界を越えるのは不可能だ。」

 

それを聞いていた二人から幾つか質問が飛んだが、それに対してほとんど回答することなくあやクルへと事を進めた。

 

 

「仕方ない・・・なら我も話すとしよう。」

 

 

本来の名前は本人もとうの昔に忘れてしまったらしく、自らが今名乗っている名前は、

この身体の本来の持ち主である少年の名前から取っているようだ。

 

はるか昔に、特に何かした訳でもないのにその恐ろしい外見のせいで村の人々には疎遠され、

人々の間で女神と呼ばれていた少女に恋に落ちるもいたずら半分に封印されてしまった過去を持っている。

 

今回は、分離してしまった自らの本来の身体である少年とぷよ勝負というものをしていると、

いつの間にかこの世界に来てしまっていたという。

 

 

「この世界にはぷよは見当たらないようだが・・・。」

 

その過去を聞いて、ブラピは複雑な表情をしたが、シャドウはなおも無表情だった。

だが、かすかに何か思うことがあるのか、彼にしては真剣に話を聞いているようにも見える。

 

 

しばらく会話を続けていると、いつの間にか日が暮れていたようで

太陽はすっかり山に落ち窓から月光が差し込んでいた。

 

「ふむ、少し話しをし過ぎたようだな。そろそろ私も・・・」

 

と、あやクルが隣を向いてブラピに声を掛けようとした。だが、視界にすーすーと心地良さそうに寝息をたてて眠っているブラピの姿が見えたので、そっと布団をかけてやった。

 

突然、前にいたシャドウが立ち上がる。

 

「どうした?」

 

あやクルのその声も届いていない様子で、シャドウは独り宿屋の外へ出て行った。

その不可解な行動に思わずあやクルは眼鏡を外したままその後をそっとつけてみる。

 

そっと扉を開けてみると、前にいた彼の大きな三角の耳がぴくっと動き、こちらを振り向いてきた。

ここはさすがの聴力と言っておくべきか。

 

「なんだ君か。」

「邪魔なら去るが?」

 

あやクルがぼんやりとした視界の中かろうじて声が聞こえる方向へと言葉を飛ばした。

だが、シャドウはその言葉に否定を投げ、こう続ける。

 

「こんなに落ち着いて月を眺めたのは久々だ。」

「月、か。」

 

あやクルがシャドウの横に立ち、古い記憶を探るようにそう呟くのを耳にしたシャドウがこちらを振り向いた。

 

「どうした?」

「いや、気にするな。」

 

わずかな沈黙の後、シャドウが口を開く。

 

「どうやら、僕たちは互いに月に縁があるらしいな。」

「みたいだな。」

「・・・戻るぞ。」

 

そして二人は再び宿屋へと戻り、眠りについた。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

明け方。既に彼らが借りていた三つのベッドのうち二つは綺麗に整頓されている。

未だに寝息をたてて眠っているブラピのそばの壁にもたれ掛かるあやクルの手には、赤地に金色の装飾が派手な本がある。

そこから紫色の何かがひょっこりと顔を出しており、

 

「・・・あのさ、いい加減返してくれないかな?」

「ここでお前に身体を返したところで、お前は他の二人にどう弁解するつもりなんだ?」

「う・・・」

 

どうやら、本の中にいる紫色のなにかは、あやクルが借りている少年の魂であり、どういうわけか代わりに

その中に入ってしまっているようだ。

 

「・・・この世界から出るまでだからな、元の世界に帰ってこられたらすぐに返してもらうぞ!」

「フッ、私もそこまで鬼畜ではあるまい。」

 

ふと、前のベッドがもぞもぞと動いた。

彼はまだ眠そうに声を上げながら目をこすっている。

 

「起きたか。」

「ん、今何時だ?」

 

ブラピはまだ半分寝ているような声で時計を探し、時刻を確認すした。

他の二人が既に起きていることを確認すると、サイドテーブルの上に置かれていた月桂樹を被る。

 

「おはよう、あや。」

「あぁ、おはよう。」

「シャドウの奴は?」

 

周りにシャドウがいないことを不思議に思い、ブラピはふとあやクルに尋ねてみた。

 

「外にいる。一体奴はいつ起きたのだ・・・?」

 

どうやらあやクルが起床したときにも既にシャドウはいなかったらしい。

宿屋の扉を開け、外で待機している彼と合流する。

 

「起きたようだな。」

「あぁ・・・おはよう。」

 

眠そうにあくびをしているブラピをよそに、シャドウはもう出発する気でいるようだった。

村の門へ向かって既に歩き始めている。

 

「もしかして、別の世界から来た人たちってあんたたちのことかしら?」

 

ふと背後から女性の声が聞こえた。

間違いなく自分達に向けられたものだと確信し、三人は声のした方向に振り返る。

 

そこには、美しい茶髪をツインテールにした女性が立っていた。

 

「私はゼシカ。ねぇ、あなたたちって別の世界から来たのよね?」

「ああ、そうだが・・・オレ達に何か用でも?」

 

ブラピのその言葉の最中に、ゼシカと名乗った女性はこちらへと歩み寄ってくる。

 

「もしかしなくても、人探ししてるんでしょ?私、少しだけど知ってるわよ。」

「本当か?」

「ええ。ただし・・・」

 

彼女がそこまで言い、腰に提げていた鞭を取り外して手に持った。

 

「この私に勝てたら、ってことでどうかしら?」

「フッ、面白い・・・。」

 

ゼシカのその提案にあやクルとブラピは戸惑ったが、シャドウだけはまるで見下した態度でそう返した。

 

「へぇ、結構な自信があるのね。」

「当然だ。僕は究極だからな。」

 

あやクルとブラピが彼を制止しようとする中、シャドウはさらにこう続ける。

 

「君一人程度、僕だけで十分だ。」

「なかなか言ってくれるじゃない。」

 

完全にやる気になっている二人が村の外へ出て行くと、その後を追うように

あやクルとブラピも続いて村の外へと出て行った。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

決着は本当にあっさりと着いた。

ゼシカの放った呪文はことごとく回避され、かといって鞭を振るえば背後から奇襲を食らう。

 

「言ったろ?僕は究極だと。」

「どうやら、その肩書きはまんざら嘘でもなさそうね・・・」

 

地面に手をつくゼシカとは正反対に、シャドウはゼシカの前で腕を組んで見下すような視線を送っていた。

 

「さて、僕たちが探している人のことを教えてもらおうか。」

「約束だもの、言われなくても教えてあげるわ。」

 

ゼシカはゆっくりと立ち上がり、衣服の埃を落とす。

 

「昨日、村の外で声がしたから出てみたのだけれど、水色の髪の男の子と、白い身体の・・・ちょうどあなたみたいな姿の人が何か話しているのを見たわ。もしかしなくてもあなたたちの知り合いじゃないかしら?」

 

と、シャドウに視線を向けながらゼシカは淡々と話す。

 

「その後、道なりに歩いて行ってしまったけれど。」

「我が半身か・・・早速情報を手に入れられるとはな。」

「シルバー、か。」

 

あやクルとシャドウは互いに名を口ずさんだ。

ブラピもそのことを聞いて、内心ほっとしていた。もしかすると、ピットも他の人たちに合流しているんじゃないかと。

 

「どの方角だ?」

「向こうね、トラペッタって言う街があるわ。ここを道なりに行けば着くわよ。」

 

ゼシカが指差す方向には確かに道が続いている。あやクルはふと上を見上げてみたが、今は何も見えない。

 

「じゃ、オレたちは行くとするか。」

「また何かあったらここに来てもいいわよ?」

 

彼女のその言葉に一同は頷き、トラペッタへの道を歩み始めた。

 



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超能力と魔導

今、自分たちがどこにいるのかも分からないまま、ただふわりふわりと上空を飛ぶ二人。

 

一方は左腕が紅く大きく、そして、それに対応するかのように同じように赤い左目を持つ少年。

彼自身は全く気にしていないようでもあった。

 

もう一方は、人間と比べれば小さく、銀色の体色をしたハリネズミの少年。

今二人が飛んでいるのも、この少年の能力のおかげである。

 

「随分な時間を飛んでいた気もするが、知り合いはいたか?」

「いないー。」

 

シルバーの質問に青い髪の少年、シグの間の抜けた返事が返ってくる。

 

「そうか、どこにいるんだろうな。オレの知り合いもまだ見つからないし。」

「そうなのか」

 

そこで、二人の会話は途切れてしまう。

しかし、再びシルバーが話題を振った。

 

「なぁ、あんたの世界って、どんなところなんだ?」

 

ぴこっ、っと少年の頭のアンテナが一度揺れる。

 

「楽しいところ。」

「あ、いや・・・もっと具体的に言ってくれないか?」

 

抽象的すぎてさすがに理解し難い。

戸惑ったシルバーにシグが話し始める。

 

「ムシがいっぱいいる。」

 

シルバーは思わず抱えているシグを落としそうになった。

 

「そ、そうか・・・。」

 

彼は苦笑いするしかなかった。だが、おかげでシグは相当なムシ好きだと分かった。

ムシが絡めばきっと今探している知り合いのことも忘れてしまいそうなくらい。

 

正直、あてなどなかった。

先ほど寄った街では姿を見られる度に陰で何かを言われ、子供たちに至っては

その辺に転がっている石を投げつけてくる始末。

 

なんとかシルバーが超能力を使って防いだため当たりはしなかったが、余計に怖がられてしまい、その街にはいられなくなってしまった。

 

おかげで知り合いの情報はなし、この辺りを手当たり次第に飛び回るしかなくなってしまったために今彼らはこうして空を飛んでいるのであった。

 

だが、それも束の間である。

突然、ふらりと身体が揺れた。

 

「悪い、ちょっと休んでいいか・・・?」

 

シルバーの能力が限界に来たらしい。

完全に疲れきった彼の息遣いを聞き、シグはそっと頷く。

 

二人はふわふわとゆっくり木陰へ降りた。

 

「大丈夫か?」

「あ・・・あぁ。」

 

木に身体を預け、ゆっくりと深呼吸をするシルバーに、シグは声をかける。

彼が回復するまでしばらく時間がかかりそうだ。

 

そよ風で木々が揺れる音に癒されながら、自然に瞼が降りてくる。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

ふと気がつけば、すっかり日は落ちてしまっていた。

辺りには巨大なコウモリなどの魔物たちが蔓延っている。

 

一匹こちらに気づいたようで、まだ心地良さそうに眠っているシルバーへとそのコウモリは向かってきた。

シグは初め置かれた状況を理解していなかったようだが、向かってきたそれに敵意があると判断すると、

右手をそのコウモリに向けて指差し、こう叫んだ。

 

「シアン!」

 

指先から淡い青の光がコウモリへと飛ぶ。一瞬ひるみはしたものの、撃退することは叶わなかったようだ。

それは標的をシルバーからシグへ変え、再びこちらに向かってくる。

シグはそれにもひるまず反射的に詠唱を続けた。

 

「ラピスラズリ!」

 

先ほどよりも激しい光がコウモリを包み込み、消える。

シグは思わず地面に座り込み、ため息をついた。

 

どうやら先ほどの光でシルバーも起きたらしい。寝ぼけ眼のままシグの元へそっと四つんばいの状態で近づいてきた。

 

「悪い、助かったぜ。」

 

疲れ切って返事すらしないシグをそっと背負いあげ、シルバーは目の前の道を来た方向へ戻り始める。

背後に人の気配がし、ふと振り返った。だが、そこにはだれもおらず、ただ風が吹きぬけるのみだった。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

翌日、二人は追い返された街の門付近で夜を明かした。

幸い誰の目にも止まらない場所だったため、特に何も騒ぎは起きたりしなかった。

 

「・・・おはよ、シルバー」

「あぁ、起きたのか?」

 

壁にもたれ掛かりながらシルバーは目を覚ましたシグに声をかける。

 

「ここまで戻ってきてしまったが、あの近くに村があった。そこならなんとか話を聞いてもらえそうだ。」

「そうなの?」

 

空を仰ぎながらシルバーはそう話し、

シグはまだ少し眠そうに目をこすりながらそれを聞いていた。

 

「そう言えば昨日のあんたのそれは、何なんだ?」

「・・・これ?」

 

シルバーの唐突な質問にシグはそっとその力を具現させてみた。

彼の指先に小さな淡い、青い光が揺らいでいる。

 

「オレのこの力とは、また別みたいだな。」

 

そう言いながらシルバーもその辺に落ちていた木の枝をそっと持ち上げてみせた。

 

「魔導、って言うんだって」

「魔導?」

「うん。あんまりよくはしらないけど。」

 

そして互いに能力の見せ合いをやめる。

 

「オレたち、少し似てるかもな。」

「そう?」

 

シルバーがそう笑って見せた。よくわからない力を扱っている点では、確かに似ているかも知れない。

 

「さ、行こうぜ!知り合い見つけてとっとと元の世界に帰らないとな!」

「うん。」

 

彼が立ち上がり、景気付けに声を張り上げてそう言ったが

シグは相変わらずの棒読み気味でそう返事を返した。

 

差し伸べられた手を、シグは右手でしっかりと握り締め、

その手をまた、シルバーは強く握り返した。

 



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不穏な空気

心地よい潮風が肌を撫で、人々の賑わう声があちこちで聞こえてくる。

町の人々は見慣れぬ二人の姿を見るなり不思議そうな顔をしたが、積極的に関わろうとはしないようであった。

 

「港町かぁ、そういえば来た事なかったなぁ。」

 

ぐっと伸びをしながらしっかりとその爽やかな空気を吸い込んでいるピットを横目に見ながら、自分の探し人を目で探す。

 

「オレ達は適当に歩いてるから、先行って来な。お前も用があったんだろ?」

「え、あー・・・でも」

「Don't worry.それに、目立つようなヘマはしないさ。」

 

存在が既に目立っているんじゃ、と反論したかったのだが、やめておくエイトであった。

彼らならなんとかやり過ごしてくれるだろうという気持ちがあったからなのだが。。

 

「じゃ、行ってくるよ。」

「気をつけてなー!」

 

ピットはそんな二人をよそに、港町の涼しげな風を満喫していた。

だが、エイトと別れてからすぐ、彼の懸念は現実となった。

 

「・・・やれやれ、すっかり見世物か何かになってるみたいだぜ?」

「みたい、だね・・・。」

 

二人は若者たちに囲まれていた。

 

「さて、あいつには悪いがちょっとばかりずらかるぜ!」

「え、ちょっと何・・・うわぁぁぁぁぁあ!?」

 

ピットの言葉をよそに、ソニックは彼をすぐさま抱きかかえ、あっという間にその場から消え去った。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

「Sorry.驚かせちまったな。でも、ここで色々と厄介なことになりたくないもんでね。」

 

目を回しているピットを芝生に転がし、自分も門の前で寝そべってみる。

確かに、ここに吹く風は心地いい。

 

「あ、ごめんね!やっぱりここにいたんだ。」

「用事は済んだのか?」

「うん、まぁね。あと、君たちの仲間についても大体情報がつかめたよ。」

 

ポルトリンクから出てきたエイトがソニックと話す。

早速エイトが仲間について情報を手に入れたようだ。

 

「昨夜近くの砂浜で見かけたのは三人、一人は翼があって、もう一人は小さく、残る一人はマントを羽織っていた、か。」

「間違いない、ブラピだね。」

「へへ、オレも間違いないな。知り合いもこっちに来てる。」

 

エイトから聞いた情報で、二人は仲間もこちらに飛ばされていることを確信する。

そして、彼はもう一つ、鞄から拳大の宝石を取り出した。

 

「それって・・・」

「カオスエメラルド・・・!なんでここにあるんだ?」

 

エイトはこの宝石をとある人から譲り受けたらしい。

この世界にはもともとなかったものであると、その人は思っていたのだろう。

 

「・・・なるほど。」

 

ソニックはにやりと笑みを浮かべ、エイトの手からその宝石を攫うように手に取る。

 

「こいつがここにあるってことは、そういうことだな・・・?」

「それって、どういう・・・?」

 

状況が飲み込めないエイトが率直に尋ねた。

ソニックは彼にこの宝石―カオスエメラルドについて軽く説明してみせる。

 

「このカオスエメラルドはオレ達の世界に7つしかない石なんだ。しかも、ひとつひとつにものすごいパワーが秘められていて、いつも争奪戦に―っと、今はこの辺は関係ないか。」

「確か、七つ集めると奇跡が起こるだとか・・・だったっけ?」

 

ピットが以前の記憶をうっすら呼び覚ましながら自信なさげに補足した。

ソニックはエイトに解説を続ける。

 

「で、その一つがここにあるわけだ。つまり・・・」

「つまり?」

「カオスエメラルドが7つ、この世界に来ちまってるってわけだ。」

 

ソニックは大体こう考えた。

カオスエメラルドを集めていれば、いずれ帰る方法が見つかるのではないかと。

 

「でも、本当にそれで帰れるの?」

 

エイトは心配だった。

いくら奇跡を起こせるとはいえ、世界線を越えることが可能なのかと。

 

「オレ一人の力じゃまず不可能だな。だが・・・」

 

暫定的に、今ここに飛ばされて来ているのは先ほどエイトが聞いてきたあの三人。

そして、ソニックがここに来るまでの記憶を思い起こしてもあと一人。

 

「・・・あいつらの力を借りれば、なんとかできそうだ。」

 

確証はない。だが、やってみる価値は十分にある。

 

「とにかく、一度城に戻ろう。情報は入手できたんだ、このことを王に伝えなくちゃ。」

「O.K.じゃ、一旦戻るとしますか。」

 

そして三人はエイトの呪文で再び城へと戻っていった。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

リーザス村近辺。

二つの組は無事合流することができた。

 

「んじゃ、こっからどうするんだ?」

 

ブラピを除く4人は無事に知り合いと再会でき、会話しているところに彼が割って入った。

当然、後はこちらに飛ばされた残り二人、ピットとソニックを残すまでだったのだが。

 

「どうもあの二人の情報が手に入らんな・・・。」

 

そう、現時点で誰も、彼らの目撃証言を耳にしていないのだ。

シグとあやクルはおろか、シャドウにシルバー、ブラピまでもが、彼らの居所について一切つかめていない。

 

「合流したのはいいが、こうも手がかりなしではな・・・。」

 

ふと、シルバーが上空に浮遊し、塔の向こうに見える水平線を眺めていると。

港の方から、蒼い光が空へ放物線を描いている。

 

それを見逃さなかったシルバーが降りてくるなり、4人に提案を持ちかける。

 

「なあ、一回港に行ってみないか?」

「港と言うと、オレら3人が会ったところの近くだな。」

 

ブラピが港と聞き、その時近くに見えた灯台を思い出しながら独言する。

それだけだったのだが、シルバーが蒼い光の放物線を見たというのが気になり、一行は港町―ポルトリンクへと向かうことにした。

 

したのだったが。

 

案の定シルバーやシャドウ、ブラピの姿を見て人々は物珍しそうに眺入っている。

それでまたかと察したあやクルが単独で港町へと入り、情報をかき集めることになった。

 

案の定、情報はすぐに集まった。

エイトという青年が天使と不思議な生物を連れてトロデーンに飛び去るのを見ていた人がいた。

そして、シャドウが持つ緑の宝石、カオスエメラルドのことも。

 

「・・・つまり、ソニック達を連れて向こうの大陸まですっ飛んだ、ってことで間違いないんだな?」

 

シルバーが簡潔にまとめた。

一同が頷くとシルバーはため息と共に言葉を続ける。

 

「オレとシャドウはともかく、あんたたち3人は飛べないんだよな。」

「ああ。少し前まではオレも飛べたんだがな。」

 

シルバーが浮遊しながら3人に尋ねた。ブラピは振り向いて自らの漆黒の翼を眺めながら肯定し、残りの二人も無言で頷く。

 

あやクルとシグはもともと飛べず、天使のはずのブラピはコピー元であるピットが飛べないがために飛べない。

シャドウはホバーシューズのブースターを起動して浮遊しているものの、そこまで浮力はなさそうだ。

 

「・・・まさかオレひとりに3人運べなんて言わないよな?」

「でも、そうせねば遠い大陸になど届かぬぞ?」

 

あやクルがシルバーに無茶を言った。

そうでもしないと、定期船を使わずに5人全員遠く離れた大陸にたどり着くことなど不可能でもある。

 

「いや無理だって!3人同時に持ち上げることはできるが、自分を浮遊させながらは流石に無理だ!」

「じゃあどうすればよいのだ!」

「お前らちょっと落ち着けって!」

 

いがみ合うシルバーとあやクルを止めにかかるブラピ。何かと苦労人している彼だったが、目の前の場景に気をつかいすぎて、周りで起きた些細なことを、シャドウに言われるまで見落としていた。

 

「いがみ合うのは勝手だが、それより彼は何処へ行った?」

 

シャドウのその言葉で一同ははたと周りを見回すと

 

 

 

・・・シグの姿が消えていた。

 



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