22枚の物語 (rinta)
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愚者

モノを考える 鬱になった

 

モノを作る 悲しくなった

 

モノを壊す 腹立たしくなった

 

そんなことを人前でやってのける 死にたくなった

 

後ろを振り返ってみる

 

誰もいない

 

影さえない

 

光もない

 

ただ道があるだけ

 

前を向く

 

何も見えない

 

泣きたくなった

 

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魔術師

ふと外へ出てみたくなった

 

出てみたら日がつよかったのでやめた

 

後日出なおしてみた

 

日はなかったが曇天だったのでやめた

 

また出なおしてみた

 

雪が降っていてさむかったのでやめた

 

次こそ外に出てみた

 

良い天気だったが石が降ったのでやめた

 

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女教皇

筆を持った

 

大きな声で怒られた

 

本を読んだ

 

平手で殴られた

 

字を書いた

 

川へ落とされた

 

お祈りをした

 

褒められた

 

お願いを言った

 

眼をつぶされた

 

苦汁を味わい経験しながら

 

わたしは今日も杖を持つ

 

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女帝

早く夜にならないか

 

いつもそれだけを考える

 

そして夜になると一時の悦楽に身を任す

 

そして朝が来ないことを激しく願う

 

しかし願い虚しく朝が来れば

 

抱いた男の数を数えながら

 

また夜が来ないかとだけを考える

 

たまには侍女も抱いてみる

 

男のような快楽はなければ

 

男にはない優越感を楽しんでみる

 

そんな人生を楽しめば

 

後から来たのはツケの徴収

 

そしていつも考えていることを

 

今夜も必死考える

 

明日にだけはならないで

 

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皇帝

私はなんだ

 

あるものは言った

 

あなたは神だと

 

万物を治めるにふさわしい存在だと

 

あるものは言った

 

あなたは悪魔だと

 

万物を奪い取る不法者だと

 

あるものは言った

 

あなたは人間だと

 

本来あるべきその欲に従い 

 

為したいことを為す姿はまさしく万物の姿だと

 

私は問う

 

私は誰だ

 

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教皇

人について語ろう

 

言葉について語ろう

 

心について語ろう

 

肉体について語ろう

 

魂について語ろう

 

語りつくせないところまで語ろう

 

語れないことまで語ろう

 

昼夜問わず語りつくそう

 

なにもかも

 

どれもこれも

 

あれやこれも

 

人知の尽くす限り口を動かそう

 

そうすればきっと

 

もしかすれば

 

私は分かるかもしれないんだ

 

命について

 

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恋人

明日また会おう

 

彼はそう言った

 

じゃあまたね

 

彼女はそう言った

 

何故離れる?

 

何故何も聞かない

 

何故何も言わない

 

何故言葉を返さない

 

疑問が襲う

 

不安が嘯く

 

疑惑が上がる

 

信用が崩れる

 

赤い糸など迷信だ

 

心が通じるなど世迷言だ

 

きっとそうだ

 

きっとそうなんだ

 

そんなことで彼(彼女)らの心は一つになる

 

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戦車





私は国のために戦おう

 

祖国を守るために敵をなぎ払おう

 

私は友のために進もう

 

ともに戦ったこの荒野を仇のために走り出そう

 

私は家族のために全てを守ろう

 

悲しむ顔を見ないために皆と生き続けよう

 

私は自分のために朽ちよう

 

何かのために動くのは

 

もう疲れた

 

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正義

生きることは素晴らしい!!

 

食べることより 寝ることより

 

着ることより 大切な人とともに過ごすことより

 

何事よりも素晴らしいことだ!!

 

生きること!!

 

それだけで人は正しく在れる!!

 

死すことは愚かだ!!

 

盗むことより 殺すことより

 

犯すことより 襲うことより

 

何事より愚かだ!!

 

だから神よ!!

 

死する私をどうか罰し

 

新たなる生をください!!

 

私は素晴らしく在りたい!!

 

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隠者

知識を手に入れた

 

これを持って隠れた

 

だが周りには人が集まってきた

 

知識なきものは知識を求めることを知った

 

また隠れてみた

 

今度は人に襲われた

 

知識なきものは知識に恐怖を抱くことを知った

 

逆に堂々としてみた

 

次は人にもてはやされた

 

そうやっていて気付いたことがある

 

誰も私を見ていないことを

 

知識を持っていた

 

これを捨てて隠れた

 

だれも辿りつけない場所へ

 

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運命の輪

運命を信じたくない

 

信じたところでどうなる

 

どうもなりはしない

 

ただ言い訳になるだけ

 

もし運命があるのだとすれば

 

覚悟しなければならないのだ

 

その運命に

 

私は覚悟なんてしていない

 

だから運命なんて信じない

 

信じたくない

 

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やつを倒したい

 

やつに勝ちたい

 

やつに負けたくない

 

やつより上回りたい

 

やつを殺したい

 

手に入れるんだ

 

倒すため

 

勝つため

 

負けないため

 

上回るため

 

殺すため

 

何でもいい

 

この手に入れるんだ

 

やつも狙っているかもしれない

 

速く

 

早く

 

はやく

 

手に入れろ

 

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吊された男

男がいた

 

男は怯えていた

 

原因は自らにあるというのに

 

朝日が昇ることに怯えていた

 

もう一人男がいた

 

男は見ていた

 

何かではなく

 

誰かでもなく

 

ただ明後日の方向をじっと見ていた

 

そのうち朝日が昇ってきた

 

男は放棄していた思考を再び動かしこう言った

 

仲間が増える、と

 

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死神

夜になる

 

人々は寝静まっている

 

痩せこけた人々

 

肥え太った人々

 

今日はどの人間か

 

ふと目に留まるのは

 

もはや息も絶え絶えになっている少女

 

身にまとうは服ともいえない布が一枚

 

手に持つ鎌を少女の頭へ

 

碌な人生を歩んでいないことが分かると

 

少女の息遣いの音はなくなった

 

今は夜

 

さて次はどいつだろう

 

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節制

無駄遣いは許せない

 

無駄遣いは許さない

 

今日のご飯はパンとスープ

 

昼にご飯だなんてとんでもない

 

パン一欠片には多くの神様が住んでいるのよ

 

あら 下の弟がご飯になっても食卓に来ない

 

時間の無駄なんて悪い子よ ご飯抜き

 

あら 長男が仕事に行かず部屋から出てこない

 

躾がなってなかったかしら ご飯抜き

 

それより主人がこの頃帰ってこない

 

もう食事の用意もする気にならないわ

 

食いぶちが減って大助かり

 

でもこの頃お金の減りの方が多い

 

また食事の量を減らさなきゃ

 

あら 急にめまいが………



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悪魔

僕は悪魔の世界に生まれた

 

朝起きればギャーギャー騒ぐ小悪魔が

 

食卓に行けば残飯のような朝食を出す女悪魔が

 

それを何の文句もなく食べる偏食悪魔が

 

外に出れば反吐のようなにおいを出す道

 

そこを平然と歩くゾンビ悪魔たち

 

職場に着けば悪臭放ち大声でどなり散らす威張り悪魔が

 

帰れば帰ったで労いの言葉をかけず朝と同じ残飯を出す悪魔が

 

だがその中でも最も恐ろしい悪魔は

 

僕という悪魔だ

 

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門番に問う

 

この先に続くのは何だ

 

門番は答える

 

この先には道がある

 

再び問う

 

ならばその道の先には何がある

 

門番は答える

 

道の先には果てがある

 

三度問う

 

果てにはいったい何がある

 

門番は答える

 

果てしない道があるのだ

 

私はもう何も言わなかった

 

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前回の詩は利用規約に反した他の著者からの原作コピペだったため、
自主削除させていただきました。
あしからず


夜の帳に輝くは

 

弱くも綺麗な空の光

 

光は誰の手にもわたり

 

誰の手にもわたらない

 

誰にも平等のわたり

 

誰もがそれに満足する

 

だけれども

 

人は新しい光を見出し

 

今までの光を捨ててゆく

 

捨てられゆく光たちは

 

それでもなお

 

今まで通り光ってゆく

 

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淡い光が降り注ぐ

 

この光は私のためか

 

光を浴びる全ての者のためか

 

だがしかし

 

平等に与えるものとして

 

この光は美しすぎた

 

私はこれが欲しい

 

そう思うのは傲慢か

 

それとも人間たる必然か

 

一つの救いとして

 

この考えに達したのが

 

私だけではないではないことだ

 

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太陽

強い光だ

 

思わず屈してしまう

 

この光はヒトには大きすぎる

 

きっとだれ一人として

 

この光に立ち向かうこともできないだろう

 

そしてこの光よりも強いものが

 

この先現れることもないだろう

 

だから私たちは

 

崇めるしかないのだ

 

この光を

 

なくさないために

 

失わないために

 

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審判

基準を作ること

 

それは法を作ること

 

それは哲学であり

 

社会学だ

 

善悪の境を作り

 

人間の心に違いという認識を作ることだ

 

基準はだれが作るのか

 

それは神ではなく

 

人間でもなく

 

自然が作るのだ

 

自然の中で

 

偶然に創造され

 

必然に使われる

 

そしてこの基準により

 

人間は

 

裁かれ

 

死に

 

生きてゆく

 

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世界

無だ

 

無からだ

 

無から創り出された

 

総じてそうだ

 

ニワトリが先か

 

タマゴが先か

 

土が先か

 

水が先か

 

神が先か

 

宙が先か

 

そんなこと考えることが

 

無駄なんだ

 

無いことが最初なんだから

 

それを恐れるか

 

それで勇めるか

 

それも無駄なんだ

 

だって「こいつ」は

 

その考えも全て

 

無から創ったんだから

 

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とりあえず完結しました
この作品は他の小説の息抜きとして書いたものなんですが
息抜きに書く作品にまた息詰まるという馬鹿みたいな結果に…(汗
なんとか完結させられたことは読んで下さった読者皆様と
お気に入り登録して下さった某一名様のおかげと受け取っております
本当にありがとうございました
なお、脚注につきましては感想の方にリクエストがありましたら順次投稿する形にしたいと思います
その他に感想、ご意見、ダメ出しなども待っています
長くにわたりましたが、このあとがきを読んでくださっている皆々様、
繰り返しになりますが、本当にありがとうございました


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