high school spiderman (バケツ頭)
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ヒーローの誕生
Web1 蜘蛛男現る


やってしまった。でも創作意欲が湧き上がってつい……


僕の話をする前に貴方はあり得ないことを信じることができるかな?できる?わかった、僕の話をしよう。僕の名前は山口 蓮、駒王学園の一年生。先ず最初に僕の人生が退屈で平凡な人生だって言ってるやつがいれば、そいつは大嘘つきだ。でも安心して、この話にもちゃんと恋愛要素は入っているから。じゃ、本題に入ろうか。先ずは僕の私生活から!

 

 

5月30日午前8時40分駒王学園

 

「晴山くん!」

 

「はい」

 

「馬場さん!」

 

「はーい」

 

「姫島さん!」

 

「はい」

 

何時ものようにこのクラスの担任がクラスの点呼を取る。この学園の殆どの生徒は既に自分のクラスの席に着席している。そう殆どは。

 

「山口くん!」

 

「まだ来ていません」

 

「また遅刻っと」

 

と、担任は出席簿に遅刻と記した。その時、ドアを勢いよく開け息を切らした男子生徒がクラスに入ってきた。その男子生徒は黒髪で眼鏡をかけている。何を隠そうこれが僕さ。

 

「はぁ、はぁ、遅れてすいません!」

 

「もう、今月で10回目よね!家が遠いのは分かるけどもうちょっと早く来れないかな?」

 

「本当にごめんなさい!ちょっと街の方で騒ぎが」

 

「また騒ぎ!?はぁ、次に遅刻したら反省文書いてもらうからね」

 

「はい」

 

見ての通り僕はクラス内では遅刻が多く時間にルーズなオタクと思われている。その方が僕にとって好都合だ。しかし、行きで1時間かかるのはしんどいな。

 

午後13時00分駒王学園屋上

 

屋上では生徒達が体を動かしたりテレビ番組の事を話したり部活の先輩の愚痴をこぼしたりなどをしていた。でも僕は親友の晴山樹と共に昼ご飯を食べていた。樹とは中学からの付き合いで晴山コーポレーションの御曹司でもある。ちなみに晴山コーポレーションはグランドシティ一番の大企業だ。イケメンで金持ちで僕なんかとは月とスッポンだ。なんか悲しくなってきたな。

 

「で、また遅刻したのか?」

 

「まあね、グランドシティは物騒だから」

 

グランドシティでの犯罪率は日本で一番。毎日一つは何かしらの事故や事件が起きる。これじゃ命がいくつあっても足りないよ。

 

「なぁ、後でさ隣の組のグレモリー見に行こうぜ」

 

「僕はいいよ」

 

「あんな美人でナイスバディに興味がないなんてお前それでも男か?」

 

「これは僕の直感だけどお前とグレモリーさんでは釣り合わないよ」

 

「な、な何おう!!」

 

怒った樹は僕の首根っこを捕まえアームロックしてきた。結構痛い。

 

「ま、お前には姫島ちゃんがいるもんな!」

 

「馬鹿っ!!何言ってんだよ!!」

 

姫島朱乃。僕がまだ幼い頃住んでいた家の隣に住んでいた女の子だ。でもある事件をきっかけに音信不通になっていたが高校で数年振りに再会した。そのある事件が僕の人生に大きく影響を与えているのは間違いない。昼食も食べ終わり僕は鞄から愛用している一眼レフカメラを取り出した。

 

「それじゃまた後で」

 

日課である学園の写真を撮る為僕は校庭へと出て行った。とは言っても校庭は撮り飽きたので旧校舎の方へと向かう事にした。誰も使われていない旧校舎、ちょっとおっかないけどいい画が撮れそうだ。僕が写真を撮っていると何やら背後に気配を感じた。振り向くとそこには姫島さんの姿があった。

 

「姫島さん」

 

「あら、もう朱乃とは呼んでくれないの蓮」

 

「いや、別にそういうわけじゃ」

 

久しぶりだしあんまり会わないから馴れ馴れしいかなと思ったんだけど。それにしても彼女はSなのか?僕が慌てているのを楽しんでいるようだ。

 

「ふふっ、所でまた校庭の写真を撮っているの?」

 

「まあね、そうだ。ちょうど人を入れて撮りたかったんだ。良かったら撮らしてくれない?」

 

「勿論いいわよ」

 

彼女は旧校舎の前に立った。そしてその後、数枚の写真を撮り僕達は教室に戻った。

 

 

午後3時45分

 

樹は部活があるので今は1人で帰っている。これが僕、山口蓮の私生活だ。学校へ行き友達と馬鹿やったり女の子の話したり。でも一度グランドシティに入ると僕はもう一つの顔になる。山口蓮じゃない別の何かへと。

 

午後8時37分 グランドシティ イーストタウン

 

グランドシティは夜になると数多くのライトや照明などで照らされ本当に夜かと疑うくらいに明るくなる。しかし、この煌びやかな街とは裏腹に一歩暗い路地裏などに踏み込めばそこはもう犯罪者達のテリトリーだ。そして今日もまた善良な市民が狙われる。

 

「さっきの映画面白かったね」

 

「それにしても家族で出かけるのは久しぶりだな」

 

映画を楽しんで家に帰ろうとしている3人の家族。その家族を追い2人の男が後をつけた。そしてその家族が路地に入った瞬間を付け狙う。路地に入ってからは行動が早かった。最初に父親を殴り飛ばし母親に拳銃を向ける。

 

「きゃぁぁぁぁ!!」

 

「パパ!!」

 

「静かにしろ!!金目のものを出しな!!さもないとあんたの旦那に二、三発ぶちこむことになるぞ!!」

 

「だ、誰か助けてぇ!!」

 

男は母親の頬を引っ叩き母親は地面に倒れこむ。そして銃の引き金に指を置いた。

 

「静かにしろって言ってるのがわからねぇのか!!誰も助けに来やしねぇんだよ!!」

 

「それはどうかな?」

 

その場にいる誰でもない声が響いた瞬間2人の男は凍りついた。母親に拳銃を向けていた男は後ろを向くがそこには誰もいない。

 

「おい、これってまさか最近噂になってる悪魔じゃ」

 

「いや、弓矢を使うやつかもしれないぜ」

 

「足が速いやつかも」

 

「残念だけどハ・ズ・レ」

 

声の主は2人の男に姿を見せた瞬間両手首から糸を発射し男達の拳銃を取り上げ男達の腹部を殴り壁へと追いやる。そして再び両手首から糸を発射し男達を縛り上げた。

 

「お前まさかスパイダ………」

 

男が喋ろうと口を開くもまたも手首から糸を発射し無理やり口を閉じさせた。

 

「強盗するより宝くじでも買ったら?」

 

男達を縛り上げた者が明るみに出るとだんだんその姿が視界に入ってくる。その者は赤と青のコスチュームを身に纏い胸には蜘蛛のシンボルにマスク。その者こそ僕………つまり山口蓮のもう一つの姿。

 

「あなたは?」

 

「………スパイダーマン」

 

そう言い残すとスパイダーマンは蜘蛛糸を飛ばし煌びやかな夜の街に消えていった。

 

 

午後10時49分 山口蓮 自宅

 

ようやく街のパトロールも終わり自宅へと帰ってきた。こんな時間に帰ってきたら親が心配するだろうって思う人もいるかもしれないがそこんとこは大丈夫。僕の両親は僕が赤ん坊の時に他界してるし、親類と言えば僕の兄、山口修二くらいだ。その修兄も今はグランドシティ警察の刑事課で仕事をしている。なので帰りは遅い日が殆ど。これがもう一つの僕の1日だ。それじゃあお休みなさい。

 

 




今回はここまで。とりあえず完結目指して頑張りますのでよろしくお願いします!


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Web2 誕生

数年前 7月29日 午後8時17分 姫島朱乃宅

 

蓮の兄はアルバイトに行っているのでよく隣の姫島家にお邪魔することが多かった。その晩もいつもと変わらない夜となる筈だった。いつものように蓮は姫島朱璃とその娘朱乃と共に夕食を食べていた。

 

「ねぇ母様、父様はいつ帰ってくるの?」

 

「もうすぐ帰ってくるわよ。蓮君、おかわりもあるから沢山食べてね」

 

「ありがとうおばさん!」

 

この頃の蓮は今のようなオタク気質ではなくどちらかと言えば結構やんちゃしている方だった。食欲旺盛な蓮は茶碗の中のご飯を頬張った。しばらくしていると部屋の明かりが消えた。恐らくヒューズが飛んだのだろうと朱璃は確認に向かうが急に顔色を変え蓮達の方に戻ってきた。

 

「2人とも早く隠れてっ!!」

 

朱璃は2人を部屋の隅っこに追いやる。そして玄関の扉からガラガラという音がした。誰かこの家に入ってきたのだ。入ってきた者は白装飾と仮面を見に纏い刀を手に持っていた。

 

「朱璃よ、其方は邪悪なる天使に心を汚されてしまった。いたしかたあるまい。親子仲良く逝くがいい。それとそこにいる少年もな」

 

「子供達には関係ありません!!殺すなら私を!!」

 

男が刀を振りかざし朱璃に斬りかかった。朱璃は2人を押しのけ男の前に立ちはだかった。しかし、その刀が朱璃に触れることはなかった。振りかざした瞬間、部屋の中に突如渦のような物が現れたのだ。それは明らかに部屋にいる者たちには理解しがたい出来事だった。そして次の瞬間黒い物体が渦から現れ白装束の男を一瞬で殺害した。

 

「なんだあれ……………」

 

蓮達はただ驚く事しか出来なかった。その姿を確認しようと試みるが渦によりイマイチ姿が見えず確認できなかった。黒い物体は今度は蓮達に狙いを定めた。一歩、また一歩と近づいてくるのがわかる。そして、蓮に手をふりかざしたその瞬間今度は赤色の物体が渦から飛び出し黒い物体に襲いかかった。赤色の物体は蓮達を守っているように見えた。

 

『グオォォォォ!!!』

 

空想の怪物が吼えているような叫び声が部屋に響き渡る。それがこの部屋で聞いた最後の音だった。次の瞬間、蓮と朱乃は家と数キロ離れた公園にいた。何が起こったのか蓮達には理解できなかった。

 

「ここは……それにこのバッジは」

 

蓮と朱乃の胸にはさっきまでなかった筈のバッジが付いてあった。こんな不思議な事を子供が理解するには時間が掛かるだろう。しかし、今はそんな事どうでもよかった。

 

「………母様!!蓮早く戻ろ!!」

 

「う、うん!」

 

朱乃は蓮の手を取りそのまま家に戻った。家に到着した時、そこには既に亡くなっていた朱璃の姿が。部屋の窓ガラスなどはすべて壊されおり壁には血が飛び散りその惨劇を物語っている。

 

「いや………いやぁぁぁ!!母様!!」

 

 

 

 

 

現在 5月31日 午前6時00分

 

過去の悪夢を見ていたようだね。おはようみんな、山口蓮だ。今日の目覚めは最高とは言い難いね。あの後、朱乃とは音信不通になった。あの事件以来、朱乃と父親であるバラキエルさんの関係は良いものではないらしい。けど、問題はそこじゃない。一体誰が朱璃さんを殺したかだ。僕はあれ以来、体を動かすよりも勉強に励み知識をつけた。あの事件は明らかにありえないものだった。それとバッジだ。僕と朱乃の服に付いてあったバッジ。このバッジの中には回路が仕込まれていたのだが既に壊れた後で今ではゴミ同然だ。

 

「蓮起きてるかー」

 

不意に扉を開ける修兄。僕はまだコスチュームを着ていた。僕はすぐに布団を首元までかぶった。マスクはベッドの下だが明らかにバレない位置にある。それにしても本当にデリカシーのない兄だよ。でも今度から着替えて寝るようにしよう。

 

「ちょっと!!僕まだ服着てないんだけど!?」

 

「良いじゃねぇか兄弟なんだからよ!」

 

「親しき中にも礼儀ありって言葉知らないわけ?」

 

「とにかく早く起きないと遅刻するぞ」

 

「わかったよ!」

 

やっと出で行ってくれた。修兄にはスパイダーマンの事は話していない。話せば絶対に心配するし危険だ。制服に着替え終え僕はリビングに向かった。僕は今マンションに住んでいる。行きは大変だが帰りはとても楽だ。

 

「さてと、昨日は何があったのかなっと」

 

修兄はコーヒーを啜りながら新聞を読んでいる。僕もトーストをかじりながら修兄が読んでいる方とは逆の記事を眺めている。……………昨日もまた銀行が襲われたのか。なになに、犯人は黄色いマスクに緑の服装とな。また変な奴が出たなぁ。

 

「そうそう、最近帰りが遅いみたいだがどっか寄り道でもしてるのか?」

 

「それは……新聞社に売り込む写真を撮りにいってるんだよ」

 

僕はよく嘘をつくがこれは本当だ。新聞社に今グランドシティで起こっている怪事件や自警団の写真を持っていくとフリーでも買ってくれると言っている。修兄にら今付き合っている女性がいてそろそろプロポーズしたいと言っていた。そうなれば僕はこのマンションから引っ越し1人で住もうと思っている。その方が………ね。修兄も色々とあるじゃない。

 

「へぇ、じゃあ最近噂になってる自警団気取りの変な野郎の写真も撮れたのか?」

 

「ま、まぁね。見る?」

 

ちょっと傷つくなぁ。僕は修兄に今まで僕が撮った写真を見せた。その大半がスパイダーマンの物だが。高校になって驚いた事は自撮りで稼ぎるってことだ。

 

「スパイダーマンか」

 

「苦い顔してどうしたの?」

 

「いや、ただこんな派手な衣装着てる奴が果たしてまともなのかなぁって。こいつの家族の顔を見てみたいよ」

 

笑いながら僕に言われても貴方なんですがね。おっと、もうこんな時間か。そろそろ行かないと。

 

「じゃあ僕は行くね」

 

「おう、行ってらっしゃい!」

 

午前8時56分 駒王学園

 

あー退屈だ。1時間目は国語の授業なんだけど僕は国語系は苦手なんだ。君達も退屈だろ?そこで!僕がどうやってスパイダーマンになったのか、その経緯を教えよう。

 

あれは今から1年ほど前の話、僕がまだ中学3年の頃だ。

 

5月 8日 グランドシティ グランド大学

 

この日サウス中学校3年生は毎年恒例の大学見学の日だった。僕みたいにこの日を楽しみにしている人は少ないな。いや、はっきり言って僕しないない。

 

「いやー楽しみだなぁ」

 

「あ〜つまんねぇ」

 

「つまらなくなんか無いさ!この大学にある顕微鏡の性能は世界でも一二を争うんだよ!細胞の奥の奥まで見えるんだよ!」

 

「ははっ、話についていけねぇな。」

 

僕らもとい僕は楽しんでいた。何にしろここまで設備が整った場所を未だ見たことが無かったからだ。僕はすかさず鞄からカメラを取り出しレンズに収めていく。

 

「邪魔だ!」

 

後ろから肩をぶつけてくる輩達。僕のクラスにいるいじめっ子だ。おかげでピントがずれたじゃ無いか。

 

「何すんだよ!?」

 

「ぼさっとしてる方が悪いのさ!」

 

ケラケラと笑いながら悪びれる様子も無かった。まあ、こんな奴らは無視に限る。僕は奴等から離れ生物のブースに向かった。生物のブースではカブトムシやサソリや蜂、そして蜘蛛などが飼育されていた。

 

「遺伝子操作した虫達か。でも蜘蛛って蜘蛛目の生き物なんじゃ」

 

僕は気お取り直して飼育ケースに入れられている虫達を撮影していった。そして蜘蛛のケースに行くとある異変に気がついた。ケースの中にいるはずの蜘蛛がいないのだ。ケースの中を捜索するも見つからなかった。

 

「何処へ行ったんだ?………ま、いっか」

 

僕はカメラを机の上に起き鞄から新しいフィルムを取り出した。それと同時にケースの中にいた蜘蛛が蓮のカメラに飛び乗っていた。そんなことを知らずに蓮はカメラを手に取った。その時、飛び乗っていた蜘蛛が蓮の手の甲に飛び移り蓮を噛んだ。

 

「痛っ!?」

 

いきなりの痛さに蓮はおもわずカメラを落としてしまう。その瞬間、蜘蛛は蓮の側を離れ何処かへと去っていった。蓮が手を見ると噛まれた部分が赤く腫れていた。

 

「何なんだ一体」

 

 

午後4時58分 山口家自宅

 

「ただいま」

 

「おかえりー」

 

修兄は珍しく非番で今日は家でゆっくりしていたが僕の青ざめた顔を見て驚いていた。

 

「おい大丈夫か?」

 

「うん大丈夫。それよりも今日はもう寝るよ」

 

「もうまだ5時になってないのに寝るのか?ご飯は一口も食べないの?」

 

「いや一口食べられた」

 

僕はそのまま自分の部屋に行きベッドに倒れるように眠りについた。その晩僕の遺伝子が変異している事も知らずに。

 

5月9日 午前7時00分

 

今日は昨日よりだいぶマシだ。昨日あった頭痛や吐き気なんかも治っている。僕は制服に着替えるため服を脱いだ。しかし服を脱いだ瞬間自分の体を見て驚愕した。何と、ひ弱だった自分の体が筋肉質になっていたのだ。暫く自分の強化された肉体に見惚れていたが時間の事もあり僕は制服を着た。そして眼鏡をかけるとまたもおかしな事が起こった。

 

「なんでだ?」

 

眼鏡をかけると辺りがぼやけて見える。眼鏡をかけなでいる方がよく見えた。

 

「昨日の蜘蛛のせいか」

 

 

午前8時20分 グランドシティ イースト中学校

 

「やばいよ!遅刻だ遅刻!!」

 

朝から奇妙なことばかり起きていてすっかり学校を忘れていた。僕が青信号となった横断歩道を渡ろうとしたその時、僕の頭の中でチクチクとした感覚があった。見るとトラックが猛スピードで此方に向かってきていた。運転手は如何やら意識が無いみたいだ。

 

「やばっ!!」

 

僕は軽くジャンプするとトラックを軽々と飛び越してしまった。そしてトラックの車上へと飛びおちた。

 

「嘘だろ!なんでこんな力が………」

 

そしてまたも頭の中でチクチクした感覚が。前方を見ると壁に激突しそうになっていた。このまま行くと運転手も助からない。僕はトラックの窓ガラスを叩き割り車内に入った。

 

「ちょっと起きてくださいよ!!」

 

僕は運転手の人を揺らすも起きる気配が無かった。ブレーキを踏み込むが間に合わない。壁に激突する瞬間、ドアを開け運転手と共に飛び降りた。大きな轟音と共に壁にめり込んでいくトラック。

 

「な、なんだ事故か!?」

 

「おい!誰か警察か救急車に連絡しろ!」

 

この騒ぎを聞きつけ野次馬たちが集まり始めていた。この場にいてはマズイ。運転手の人の心臓は動いているので心配は要らないはずだ。僕は猛ダッシュでその場を後にした。

 

午前9時12分 グランドシティ イーストタウン

 

さっき学校に連絡し今日は休ませてもらう事にした。そして私服に着替え今は街を歩いている。とりあえず整理してみよう。昨日蜘蛛に噛まれ朝起きてみると筋肉が付いていた。更に、一種の危険察知能力やとてつもないジャンプ力まで備わっている。窓ガラスを簡単に破る力。もしかしたらこれだけじゃないのかも。

 

「蜘蛛か…………」

 

僕の中の蜘蛛のイメージは暗がりにいて糸を吐き壁を這い回るっていう…………這い回る?まさかね。でも試してみようかな。僕は表通りだと目立ちすぎるので路地裏に向かった。

 

「よし」

 

僕は壁に左手と右足をつけた。そして今度は逆の方の手と足。それを数回繰り返した。普通なら登れないはずだが僕はなんと登れていた。調子づいたのか僕は素早く壁をよじ登りあっという間に屋上へと到達した。

 

「スゲェ………凄すぎる!!」

 

これが夢じゃ無かったら現実で普通の人間が驚異の蜘蛛パワーを宿した事になる。アニメや漫画の世界だけかと思っていたのに。実際にあるとは。でも蜘蛛の糸は如何なってんだ。ここまで蜘蛛の力が使えたんだ。蜘蛛糸くらい出せるはずだけど。無造作に体を弄り指を折り曲げる。中指と薬指を折り曲げた瞬間、手首から蜘蛛糸が発射された。

 

「なるほど………中指と薬指か」

 

どうやら長く曲げていると長い糸が出る仕組みのようだ。分かりやすくていいな。僕は向かいのビルの看板に蜘蛛糸を引っ付けた。そして思い切ってビルから飛び降り向こう側に渡ろうとした。

 

「うわぁぁぁぁぁ!?」

 

渡れたのはいいが歯止めが効かずそのまま看板に激突してしまった。

 

「あうっ………」

 

この力があればおばさんを殺した犯人とも渡り合えるかもしれない。

 

「火事だぁぁ!!」

 

「!?」

 

声の方を見るとビルの一角が既に火の海となっていた。一回の扉から次々と出て行く人々。僕はただ唖然とその光景を目にしていた。

 

「お願いします!!あの中にまだ娘が!!」

 

「わ、私に言われても」

 

「お願いです!!誰か、誰かあの娘を!!」

 

必死に叫ぶ母親と目を合わさないようにする市民たち。その時、僕は考えるより先に体が動いていた。僕はフードを被りビルに蜘蛛糸を発射して飛び降りた。そして壁にぶつかる直前に逆のの手首から蜘蛛糸を別のビルに向け発射した。それを交互に繰り返し火事現場のビルに辿り着いた。僕は4階の窓ガラスを足で蹴って割り中へと入った。

 

「どこにいるんだ!?」

 

「ママ………助けて」

 

研ぎ澄まされた聴覚により女の子の居場所を特定した。どうやら5階にいるようだ。僕は崩れ落ちる破片を避けながら5階へ向かった。5階の部屋から女の子の声が聞こえた。僕は扉を蹴破った。するとリビングには毛布に蹲っている女の子の姿が。

 

「もう大丈夫だよ」

 

僕は安心するために抱き寄せ背中をポンポンと優しく叩いた。後ろを振り返り戻ろうとすると既に後ろの足場が無くなっていた。

 

「くそっ!!」

 

幸運に窓が開いており僕は迷わずその窓から飛び降りた。僕らが飛び出した直後部屋は爆発した。正に間一髪だった。そして蜘蛛糸を伝いゆっくりと地面に降り立った。

 

「ゴホゴホ……この子に怪我はありません」

 

「ああ神様…………ありがとうございます!ありがとうございます!」

 

必死にお礼をする母と母親の元に帰り笑顔になる母親を見て僕は微笑みその場を立ち去った。

 

 

午後12時39分 山口蓮自宅

 

今日、火事にあった親子やトラックの運転手を助けて分かった。この力は人々守る為にある事を。しかし一歩間違えば恐ろしい結果を招く事になる。強大な力には責任が伴うということだ。僕はこの街の人々を守ることを誓った。

 

「そうなればコスチュームがいるな」

 

さっき着ていて焼き焦げたフード付きの服を見て呟いた。できたら、体にしっかりフィットして動きやすいものにしよう。それとマスクも。色は赤と青がいいな。後etc

 

 

現在5月31日 午後4時 47分 グランドシティ

 

どうだった?これがスパイダーマンの誕生秘話さ。作者も学校の授業のシーンを書くよりマシだってさ。さてと、僕はこれからパトロールに行くから今日はこの辺で失礼するよ!

 

 

 

 

 




♢山口 蓮/スパイダーマン
駒王学園の一年生。中学三年の時に遺伝子操された蜘蛛に噛まれ驚異的な力を得る。以来、その力を正しく使おうと誓いスパイダーマンとして活動し始めた。幼い頃、姫島 朱乃の家の隣に住んでいてよく2人で遊んでいた。ある日、朱乃の母である朱璃が正体不明の何かに殺害される。それ以来蓮はその正体を突き止めるため独自に捜査している。因みに姫島朱乃に特別な感情を抱いている。堕天使に関しての知識もそれなりにある。

♢山口 修二
グランドシティ警察署の刑事で蓮の兄。幼い弟の学費と生活費を稼ぐため青春を返上してバイトに明け暮れていた。その事から蓮は一刻も早く一人暮らしをしたいと思っている。晴山コーポレーションで働いている彼女がいてプロポーズしようと考えている。スパイダーマンの事をあまりよく思ってはいない様子。


原作開始は当分先になりそうです。それにあまりハイスクールD×D要素は少ないかも……それでもいいという方は次回も見てください!

次回、電撃がスパイダーマンに襲いかかる!?



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Web3 エレクトロ

6月28日 午前 11時時00分 グランドシティ

 

今日は学校も休みで朝から街のパトロールをしている。ウェブスイングで街を飛び回るのはなかなか楽しい。まるで自分が取りになったみたいだ。

 

「いやっほう!!」

 

数分間街を見回り今はビルの屋上で一休みしていた。一通り見回ったし、警察無線待ちかな。

 

『ノースタウンで緑色の矢を発見、付近の』

 

『サウスタウンで鳥人間が飛行しているとの情報が住民から寄せられています。警ら中のパトカーは至急向かってください』

 

仕方がない、鳥人間とやらを追うとするか。鳥人間を追うためビルから立ち去ろうとした。とその時、僕の第六感とも呼べるスパイダーセンスが反応した。

 

「反応はしてるけど一体何が起ころうって」

 

激しい轟音と共に反対側のビルから煙が。あのビルは確か銀行があったような。轟音に銀行とくれば銀行強盗しかないよな。僕は手に持っていたカメラで犯人の写真を撮り始めた。犯人は緑と黄色のコスチュームを着ておりマスクはつけていない。

 

「しかし、間抜けな強盗だな。マスクも付けずに」

 

犯人の顔をバッチリ写真に収め僕は銀行前に降り立った。降りると犯人の男は既に銀行内に入っており金を巻き上げた後だった。

 

「おーい、強盗君!両手に持っている鞄を地面に置き両手を上げて降参しろ!」

 

「お前最近巷で噂になってるコスプレ野郎か?それに人に物を頼む時はお願いっていうのが礼儀じゃねぇか?」

 

「分かった言い直すよ。その鞄を地面に置いて両手を上げろ………お願い!」

 

「……………嫌だね!!」

 

だろうね。男が右手を僕にかざした瞬間、スパイダーセンスが反応した。その直後男の右手から電撃が放たれた。間一髪電撃を回避し電灯の上に飛んだ。その電撃は僕の背後にあった車に直撃。その車は黒こげとなりその威力を物語っていた。

 

「当たったら痺れるくらいじゃ済まないかな。おいお前一体なんなんだ!?」

 

男は不敵に笑いポケットから黄色いマスクを取り出した。そのマスクは星型のような形をしていた。そしてマスクを被ると僕にこう名乗った。

 

「俺は……-エレクトロだ!!」

 

「エレクトロ?ヒトデマンの方がよくない?」

 

あいつのマスクはどう見てもヒトデだ。エレクトロは尚も電撃を放ってくる。あれに当たれば僕でもタダじゃ済まない。でも、要は当たらなければ問題ないという事だ。僕は奴の電撃を交わしながら近づいていく。そしてクモ糸でマンホールのふたを引っ張りエレクトロにぶつけた。

 

「ぐおっ!?」

 

一瞬怯んだエレクトロだが今度は体を宙に浮かせ僕を狙ってきた。さっきの要領でかわしていく。しかし、一閃の電撃を交わしそびれ右腕に当たってしまった。

 

「痛たたたたた!!」

 

右腕が痺れて感覚がない。それにコスチュームも破けた。あいつめ、このコスチューム縫うの大変なのに。優勢となったエレクトロは今度は逆に僕の方へ徐々に近づいてくる。

 

「ここで止めをさすのもいいが今回は助けておいてやる!俺にはやる事があるんでな!」

 

「どこにも行かせないぞ!」

 

「行けるさ…………善良な一般市民が危険ならな!」

 

エレクトロは何と電光掲示板に電撃を放った。超高圧電流を流し込まれた電光掲示板は火花を散らしながらショートした。そしてその衝撃で電光掲示板は市民がいる道路へと落ちていった。

 

「まずい!!」

 

右手は今は使えないので左手だけでやるしかない。幸運にも電光掲示板はビルとビルの間に落下していってる。僕は左手からクモ糸を発射し十数メートルのクモの巣を作り出し受け網にした。電光掲示板はクモの巣に引っかかり地面にぶつかることは無かった。

 

「あんなのどうやって倒せば…………早く修兄に連絡しないと」

 

 

午後13時1分 グランドシティ警察署

 

「修兄!」

 

「蓮?珍しいなお前がここに来るなんて」

 

「それよりもこれを見てよ」

 

僕は先ほど撮ったエレクトロの写真を見せた。勿論、実際の顔とマスクをつけた姿も。

 

「これは………」

 

「さっきビルの屋上から撮った写真だ。こいつは体から超高圧電流を使って攻撃してくるんだ。だからこいつと会っても絶対に手を出さないで」

 

「お前また危険な真似を…………こいつは!?」

 

「知ってるの?」

 

「ああ、俺が刑事になって初めて捕まえた奴だ。名前は白石純一、元電気技師の男だ」

 

「何の罪で捕まったの?」

 

「ひったくりとすりの常習犯だ。もう出所して真面目にやってると思ってたのに」

 

元電気技師か。あいつの能力と何か関係があるのか?それよりも今はあいつの倒し方だ。普通に肉弾戦となれば勝てるがあいつに近づけばあの電撃を諸に受けることになる。あれほどの電撃をだせる体だ。それを水でショートさせればいけるかも!

 

「次に狙うところは一体どこ何だ?」

 

「そんなの僕が知るわけないじゃん。でも、僕が犯人なら一番大きな銀行を狙うよ」

 

約三ヶ月前 午後10時38分グランドシティ発電所

 

雷が鳴り響いき嵐となったこの日、いつものように白石純一は一人残業を押し付けられていた。前科持ちでの白石を同僚はあまりよく思ってなく白石自身も馴れ合う気はてんで無かった。

 

「くそっ、何で俺がこんな事させられてんだ。あん時ミスらなけりゃ今頃はよ!」

 

白石は淡々とケーブルを確認していた。彼の仕事はこう言った雑用ばかりだ。そして事は起きてしまった。海に面しているグランドシティ発電所は嵐の影響を最も受ける。白石が作業を終え鉄塔から降りようとした次の瞬間雷が白石の体を直撃したのだ。

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぉ!!!」

 

白石の叫び声は悲しくも雷の轟音によって掻き消され感電した。そしてそのまま海に真っ逆さまに落ちていった。白石はまだ体内に電気を宿している。しかし、この雷による感電が作用し白石のDNAを変異させるきっかけとなった。数分の間意識を手放していた白石の目がさめるとそこは海の底だった。慌てて海上へ浮上し陸地へと戻った。この時点で彼は人間発電機となっていた。

 

「何なんだよ一体」

 

その後白石は発電所の仕事を退職。以降、白石の能力は日に日に強くなっていき人を殺せるほどの電撃を出せるまでとなった。白石はこの力を使い自分を馬鹿にした人間を襲っていった。こうして犯罪者エレクトロが誕生したのだ。

 

 

 

現在午後20時8分 グランドシティサウスタウン

 

ようやく8時を回り暗くなって見つけやすいと思ったのに。この街じゃ昼も夜も変わらないくらい明るい。これじゃあピカピカの犯罪者をどうやって見つけ出せばいいのやら。とりあえず、大きな銀行をマークするか。僕はこの街で一番大きな銀行、スーパーバンクに向かった。

 

 

同時刻覆面パトカー内

 

修二は相棒の中田刑事とともにスーパーバンクに張り込んでいた。昼間の弟の話が本当ならばここに来るはずだ。たった数ヶ月前まで拳銃は最強の武器だと思っていたのに最近じゃ体から電気を出したりクモ糸を出したりする奴も出てきた。本当に物騒な世の中になったよ。

 

「付き合わせて悪いな中田」

 

「構わんさ。それにお前の弟は俺達より賢い」

 

修二は先ほど買ってきたコーヒーを啜った。その時だった。目の前のスーパーバンクが突如爆発した。そして煙から出てきたのは黄色と緑色のコスチュームの男、エレクトロだった。またも両手に大金が入った鞄を持ち満足げに歩いていた。

 

「行くぞ中田!」

 

「おう!」

 

二人はハンドガンを手に持ってパトカーから飛び出しエレクトロの目の前に立ちはだかった。

 

「グランドシティ警察だ!白石、お前を逮捕する!」

 

「大人しく投降しろ!」

 

「はっはっはっはっ!!お前ら馬鹿か?俺にそんな物が通用するとでも!?」

 

二人は引き金を引き弾丸を発射した。しかしその弾丸はエレクトロが放った電撃で全て無力化された。ニヤリと笑うエレクトロに修二達は内心恐れていた。こんな化け物相手にどう立ち向かえばいいんだ。そうこう考えている内にエレクトロは手を上げ二人に電撃を放った。

 

「すまん蓮…………許してくれ恵美!」

 

二人が死を覚悟した瞬間、何者かが真後ろに引っ張った。引っ張られたおかげで二人は電撃を喰らわずに済んだ。後ろを振り返るとそこには赤と青のコスチューム姿の男が立っていた。

 

「スパイダーマン?」

 

「無茶しすぎだよ。あいつは僕に任せて!」

 

僕はクモ糸をボール状にし両腕から発射した。セメントの強度を誇るそのボールはエレクトロわ確実に追い込んでいた。しかし、この攻撃も見切られ電撃で分解された。よし、後は奴を給水塔におびき出せば。

 

「おい!そこのマスク付けた間抜け!」

 

「俺のことか!?」

 

「あんた以外誰がいる?言っとくけど僕は間抜けじゃないからね。あんた強盗より電気会社立ち上げた方が儲かると思うけど?」

 

僕は奴を挑発し着々と給水塔におびき寄せていった。給水塔はビルの屋上に設置されている。僕はウェブスイングで屋上まで上がった。エレクトロは何と壁を走って追ってきた。ぼ、僕もこれくらいできるし!

 

「逃げるなよ虫野郎!今日の晩飯が決まったぜ、蜘蛛の丸焼き何てどうだ!?」

 

電撃を必死に当てようとしてくるもスパイダーセンスのおかげで全部交わしている。

 

「蜘蛛の丸焼きなんて冗談でしょ?ゲデモノ好きなわけ?」

 

「そろそろ終わりにしてやる!!」

 

エレクトロは今日一番と言っていいほどの電撃を放った。その威力はとてつもなく当たれば間違いなく即死だ。でもこれは計算通りだ。僕はジャンプして避けると給水塔を支えている柱に当たった。そして給水塔の裏に回りエレクトロの方に蹴り倒した。給水塔の中には大量の水が。その大量の水をエレクトロは諸に被ってしまった。

 

「があぁぁぁぁぁ!!」

 

読み通りエレクトロはショートした。多分死んではいない。気を失っただけだろう。僕はクモ糸で縛り上げ修兄達の元に戻った。

 

「はいこれ犯罪者お持ちしました!」

 

僕は二人に軽く敬礼しその場を立ち去ろうとしたが修兄が引き留めた。

 

「待て!助けてくれたのは感謝するが君は一体誰なんだ!?」

 

「僕は…………貴方は知っている」

 

「知っているだと?」

 

「…………親愛なる友人隣人、スパイダーマンだ!」

 

きょとんとした二人を残し僕は夜の街に消えていった。

 

 

6月30日午前7時47分 山口蓮自宅

 

あの後、エレクトロはボルトと呼ばれる刑務所に入れらる事となった。何でもボルトにはエレクトロみたいなスーパーヴィランを収容できる設備が整っているんだとか。それと今回の事件の写真を新聞社に持って行って数枚買ってもらった。相変わらず値段は安いけどね。変わったこともある。修兄のスパイダーマンの見方が変わった。少なくとも悪い奴とは思わなくなったらしい。さてと休みも終わって今日からまた学校に行かないと。それじゃあまた次回!

 




次回、何でもコピーしてしまうオリジナルヴィランが登場!

ヴィランファイル1エレクトロ/白石純一
電気技師の白石純一はある日、落雷によってDNAが変異し電気人間エレクトロになってしまう。元々犯罪歴がある彼はこの力を悪用し自分を馬鹿にした人間を襲っていき今では銀行強盗も行っている。ルミ子という妹がいる。


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Web4 偽りの顔

6月30日 午後1時47分 駒王学園

 

「Zzzzz………Zzzzz」

 

「であるからしてこの方程式は「Zzzzz………!」またか」

 

昼休みが終わり5時間目の授業。それは学生を束の間の眠りへと誘う時間。そしてここにも大きないびきを立てて眠っている者が一人。この時間担当している教師が彼を起こしにいった。教師は彼を数回揺さぶり起こそうとした。

 

「山口君起きなさい!山口君!」

 

「…………ん……もしかして寝てた?」

 

「もしかしなくても寝てたよ!最近居眠りが増えてるけどアルバイトでもしてるの?」

 

「アルバイト……いえ特に」

 

「それじゃあもっとシャキっとして!」

 

教師は僕を注意し再び授業へと戻った。僕は学校では冴えない高校一年生を装っている。そして、学校を出てグランドシティに戻ると街のヒーロー(自称)スパイダーマンになるんだ。でもその代償は大きかった。友達と遊ぶ時間なんてほとんどないしこうやって勉強にも支障をきたしている。これも仕方のないことだし、今街にはスーパーヴィランが数多く存在している。誰かが街を守らないと。

 

午後3時25分 駒王学園

 

今日の授業もやっと終わりようやく家に帰ることができるよ。さてと今日は久しぶりに朱乃と帰ろうかな。あまり話す機会もなかったし。

 

「……………あのさ今日一緒に帰らな「一緒に帰ろうぜ蓮!!」

 

僕の声は樹の声によって掻き消された。この子タイミング悪すぎ。

 

「い、樹暑いから離れ………あ、朱、乃」

 

朱乃の机を見るがそこにはいなかった。はぁ、またの機会って事で。僕は渋々鞄を持ち樹と共に教室を出た。

 

「何だ?姫島ちゃんと帰る予定だったわけ?隅に置けないねぇ」

 

「どっかの誰かさんのせいで帰れなかったけどね」

 

思いっきり皮肉を込めて言ってやった。僕らが階段を降りようとした時樹の背中をポンポンと叩く女子生徒がいた。見たところどうやら外国の人だ。

 

「お前のところも終わったのかテア!」

 

「ええ、久しぶりに一緒に帰ろうと思って」

 

「蓮紹介するよ、留学生のテア・クイーンだ」

 

「よろしくね」

 

「僕は山口蓮だ。ところでもしかしてクイーンてあの」

 

「そうよ、オリバー・クイーンは私の兄なの」

 

オリバー・クイーンと言えば海外のスターシティにある大企業クイーン産業のCEOだ。何で樹の周りには金持ちばかり集まるんだ。ちなみにスターシティにはクライムファイターが大勢いる。一人こっちに助っ人としてこないかな。

 

「彼女とはパーティーで知り合ったんだ…………あの蓮……ちょっと」

 

樹が必死にアイコンタクトを取ってくる。樹はこの女の子にほの字と見た。人の事は邪魔するくせに自分勝手な。ま、中学からの付き合いだしここは一肌脱いでやるか。

 

「おっともうこんな時間だ。悪いけど今から行くところがあって。じゃあまた明日ね二人とも」

 

僕は二人を残しそのままグランドシティに戻った。いつもこんな事ばっかりだ。いい加減嫌になってくるよ。

 

 

午後9時49分 グランドシティ グランド博物館

 

ここ、グランド博物館では数々の貴重な展示品が展示されている。その中でも目玉の展示品がルパン一世が使ったとされるステッキが展示されている。そんな中、警備員の坂田は今日も博物館の警備をしようと懐中電灯を持ち向かおうとした。その坂田の行く手を松葉杖をついた同僚の松田が止めに入った。

 

「坂田………」

 

「何だ松田か。今日は非番じゃないのか?」

 

「展示品をゆっくり見たくてね。今日の見回りは俺がやるよ、お前は仮眠でも取りな」

 

「お前なんか変だぞ?」

 

「そうか?仕事中に焼酎2本開けるやつに言われてもな」

 

「ありゃ、これは一本取られたな!」

 

松田は警備室の中に転がっている瓶を見ながら言った。坂田は仕事中にも酒を飲む癖がありその事を知っているのは松田だけで坂田は頭が上がらないのだ。

 

「わーった、わーった!それじゃあお前さんに任せよう、それじゃあおやすみ!」

 

「ああ………おやすみ」

 

坂田は面倒な見回りをせずにすみ有頂天だった。しかし坂田は気づかなかった。人のいい松田が浮かべるはずのない不敵な笑みを。

 

 

松葉杖をつく音が博物館の中に響き渡る。松田はルパン一世のステッキの前で止まった。そして、ポケットから鍵を取り出しケースを開けステッキを取り出した。それも束の間、警報が慌ただしく博物館に鳴り響いた。

 

「仕事を始めるか」

 

松田は集中し始めた。すると右手に持っていた松葉杖が変化し始めた。どんどんと形を変えていく松葉杖は何とルパン一世のステッキと瓜二つになった。そして今度はステッキを松葉杖へと変えた。何食わぬ顔で本当は松葉杖のステッキをケースに入れケースを閉めた。

 

「おい松田!警報がなったが何かあったのか!?」

 

「…………いや、ただの誤作動だ。それよりも今日は帰らせてもらう。体調がすぐれないんでな」

 

「お、おう」

 

呆気にとられている坂田を置き去りにし松田は帰っていった。今の一連の動きが監視カメラで撮られていたので松田は一刻も早くこの場を離れる必要があった。しかしこの光景を見ていたのは監視カメラだけではなかった。天窓からグランドシティの親愛なる隣人スパイダーマンも今の行動を目の当たりにしていた。

 

「物の姿を変えることができるのか」

 

松田は裏口から出て路地に入った。僕はクモ糸を伝い松田の後ろに回った。そして足で肩を2度叩き顔を僕の方へ向かした。

 

「松葉杖をつかないで持って歩くってどうなの?松葉杖マニアとか?」

 

「ち、蜘蛛野郎か!?」

 

松田は走って逃げようとしたが僕は松田の行く道に蜘蛛の巣を張り巡らせ通せんぼした。慌てた松田は表通りへと向かった。逃げられるわけないのに往生際が悪いよ。表通りには多くの人が歩いていた。そんな中松田は一人の女性の肩をポンと叩いた。次の瞬間、僕は驚くべき光景を目の当たりにする。何と松田が触った女性と瓜二つの姿になったのだ。

 

「なっ!?」

 

「フッ!」

 

松田?は僕を馬鹿にしたような目で見ていた。そしてその場から走り去り角を曲がった。僕は慌てて追うも既に松田?は人ごみに紛れ込み見つけることが出来なかった。僕とした事が油断するなんて。でも、見た目まで変えるとは予想外だ。

 

「やっちゃった…………今日はもう帰ろう」

 

僕はビルに蜘蛛糸を飛ばしそのまま家に帰った。しかしその姿をビルの屋上から見ている女がいた。その女は赤いフードを被り目元には黒いマスクをつけていた。そして手に持っている弓がトレードマークといっても過言ではなかった。

 

「スパイダーマンも大したことないわね」

 

7月1日 午前7時56分

 

この日の新聞にはあの日の事件が大きく取り上げられていた。

 

『ルパン一世のステッキ盗まれる!犯人は姿を自由自在に変える超人か!?』

 

「蓮新聞なんか読んでんのか?」

 

「まあね、この新聞社に写真売ってるからよく新聞をくれるんだよ」

 

今日は珍しくバスで樹と一緒に学校に行っていた。今日は朝から何の事件もなく久しぶりにゆっくりした朝だよ。でも、あんまりゆっくりはしてられないかな。あの姿が変わる男…………シェイプシフター…………シェイプシフターか!いいニックネームが決まった。後で編集長に送っておこう。ああいうタイプの犯罪者は何度も盗みをやるタイプだ。次も絶対に狙ってくる。その時が勝負だ。

 

午後8時47分グランドシティ ノースタウン

 

僕はコスチュームに着替えビルの屋上でスマホを弄りながら事件が起きるのを待っていた。おっ、10コンボ達成と。ゲームをして優越感に浸っていると近くのダイヤ店から警報が鳴った。下の方を見るとスーツを着込んだ男がナップサックを手に慌ただしく店から出てきた。僕は蜘蛛糸をシェイプシフターに飛ばし手繰り寄せた。

 

「うおっ!?」

 

「おとなしくしろよな!」

 

「くっ、こうなったら!!」

 

シェイプシフターはスーツ姿の男からミニスカートの女性へと変わり叫び始めた。

 

「た、助けてぇ!!スパイダーマンに襲われてる!!」

 

「えっ!?いやっちょっと!」

 

「おいやめろよ!!」

 

「親愛なる隣人が聞いてあきれるぜ!!」

 

近くにいた市民に責め立てられ僕はおもわず蜘蛛糸を話してしまう。その隙をついてシェイプシフターは蜘蛛糸を外し路地に逃げ込んだ。怒りくるう市民を飛んで避け僕はシェイプシフターを追った。路地に行くとシェイプシフターの姿はなく泣きじゃくる小さな少女しかいなかった。

 

「君!今ここに変な女の人が通らなかったかい?」

 

「ひっぐ…………知らないわ………パパとママはどこお?」

 

まいったな。シェイプシフターを追わなきゃいけないのに。でも女の子優先だな。僕はこの子の両親を探すため路地を出ようとした。その少女がナイフで狙っているとも知らずに。少女がナイフでスパイダーマンを狙った時スパイダーセンスが反応した。ソルと同時に緑色の矢が何処からともなく飛んできて女の子のナイフを持った手に突き刺さった。

 

「きやぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

女の子はあまりの痛さにナイフを落としのたうち回った。僕は慌てて女の子の方に駆け寄る。

 

『近寄らないほうがいいわよ』

 

「誰だ!?」

 

暗闇から出てきた声の主は赤いフードのマスク女だった。その姿からロビンフッドを連想させた。そして彼女は明らかに変声機を使っていた。自分の正体を徹底的に隠してるわけか。

 

「君、誰?」

 

フードの女は弓を構え矢をこちらに向かって放った。スパイダーセンスが反応していない事を見ると僕を狙ったわけじゃない。となると、女の子か!?その矢は女の子の足を貫き女の子は地面に倒れた。

 

「おいなんてことするんだ!?」

 

『よく見てみなよ』

 

女の子の姿が徐々に変わっていき最後には顔にタオルを巻きつけサングラスをかけた男の姿になった。シェイプシフターがばけていたのか。シェイプシフターはあまりの痛さに気絶していた。

 

「シェイプシフター!?」

 

『シェイプシフター?そのまんまじゃない?』

 

「何で元の姿に」

 

『こいつは集中力が切れると元の姿に戻るの。だから、矢で射抜いた方が早く片付くわけ』

 

「それはわかったけどきみは一体誰?見たところグリーンアローに似てるけど」

 

『私はスピーディよ。この街に来た時からずっとこいつをマークしてたの。それと、はいこれ』

 

スピーディは大きな袋を僕に投げてきた。袋の中には盗まれたステッキとダイヤが入ってあった。

 

『シェイプシフターのアジトで見つけたの。これも警察に返しといてね』

 

スピーディはグラップルアローを筒から取り出しビルの最上階に向け放った。僕は立ち去ろうとするスピーディを引き止めた。

 

「ねぇちょっと待ってよ!言っとくけどもうちょっと手加減してやったら?それと、君のこともう少し知りたいんだけど?」

 

『悪いけどこの街に来たばかりで加減が分からないのよ。それにもう少し口説き方が上手くなったら話してあげてもいいわよ』

 

スピーディはそう言い残しビルの闇に消えていった。で、この後始末は僕か。気絶したシェイプシフターと盗まれていた物を持ち僕は警察署へと向かった。本当に彼女は何なんだ。

 

 

午後11時50分グランドシティ 某マンション559号室

 

一仕事終え帰ってきたスピーディは筒と弓を置きベッドに倒れこんだ。スピーディはマスクを外し素顔となった。そして彼女はある所に電話をかけた。

 

「もしもしオリー?私よ…………ええ、元気にしてるわ。こっちにも悪党は大勢いるから…………勉強もちゃんとしてるって…………ありがとう、お兄ちゃんも気おつけて…………じゃあね、愛してる」

 

彼女は電話を切り鏡の前に立った。ヒーローと学生の二足のわらじを履いて生活しているのは蓮だけではない。テア・クイーンも学校に追われ悪党を追う者なのだ。




ヴィランファイル2シェイプシフター/武
自分の名前は下の名前しか覚えておらず生まれた時から姿や身の回りの物を変えることができた。両親はその能力を恐れ孤児院に預けた。孤児院に預けられるも同年代の子供は怖がり拒絶された。やがて心を病み犯罪に手を出し始めた。他人に変わりすぎたせいで、今では自分の顔を思い出すことができずタオルを取ればのっぺらぼうだ。


ヒーローファイル1スピーディ/テア・クイーン
スターシティから来た留学生でオリバー・クイーン/グリーンアローの妹。勉強、スポーツ共に万能である彼女がこの街に来た理由は不明だ。

次回、過去の後悔


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Web5 過去の後悔

シビルウォー見ました!アイアンマンにも正義がありキャプテンにも別の正義がある。本当に面白かったです!


7月29日 午前11時00分グランドシティ郊外 安らぎ墓地

 

ここは愛する人たちと別れ死者が眠る場所。死とは誰もが逃れることのできないものだ。寿命で死ぬ人もいれば病気で死ぬ人もいる。それは納得できる。しかし、唯一納得出来ないものが他人に殺され死ぬということだ。しかし、これが人間の本性だという人もいる。人間の歴史は血にまみれている。ま、こんな話はやめておこう。今日は朱璃おばさんの命日だから。

 

「すいません、いつものお願いします」

 

僕は墓地の近くの花屋の定員にお供え用の花を注文する。この花屋には月に一回できている。定員から花を受け取り大切な人が眠る墓標へと向かった。その墓標には姫島朱璃と刻まれている。ご察しの通り、数年前謎の物体に殺された朱璃おばさんの墓だ。僕はもう枯れてしまった花と今日買ってきた花を取り替えた。

 

「蓮?」

 

声のする方を見ると朱璃おばさんの娘である朱乃が花を持ち驚いた顔をしてこちらを見ていた。そう言えばここで会うのは初めてかな。

 

「朱乃……」

 

「蓮だったのね。毎年母様のお墓に花を供えてくれていたのは」

 

「これくらい当然さ。母親がいなかった僕にとっておばさんは母親も同然だった」

 

僕は朱乃と共におばさんのお墓の掃除をした。そして線香をあげ両手を合わせた。貴女を殺した犯人はこの僕がかならずつかまえてみせる。

 

「じゃあ行こうか」

 

「えぇ」

 

僕は柄杓をバケツの中にいれ元あった場所に置きに行った。しかし、そこで思わぬ人に出くわした。その人は堕天使の幹部であり朱乃の父親でもあるバラキエルさんが立っていた。朱乃とバラキエルさんの関係が良好でないのは前にも話したよね?だから、この状況は非常にまずいんだ。

 

「久しぶりだ「何しに来たの?」……朱乃」

 

「どうもバラキエルさん」

 

「久しぶりだね蓮君」

 

「前に言ったはずよ、貴方との縁はもう切ったはずと。二度と私の前に現れないで」

 

実の父親にそう言い放ち朱乃はその場を後にした。朱のも分かっているはずだ。本当はバラキエルさんが悪くないことくらい。僕はバラキエルさん二お辞儀し朱乃の後を追った。

 

「ちょっと待ってよ朱乃!…………バラキエルさん失礼します」

 

「あぁ…………またな」

 

バラキエルさんは寂しそうに呟いた。

 

 

「ごめんなさいね蓮…………せっかく来てくれたのに」

 

「いやいいんだ。それよりもいい加減バラキエルさんを許してあげなよ。君も分かってるはずだろ?朱璃おばさんが死んだのはバラキエルさんのせいじゃないって」

 

「いいえあの男のせいよ。あの男がもっと早く帰って来れば母様は生きてたし私も………この話はもやめましょう。それよりも私お腹すいちゃった」

 

「ああ。それじゃあ何処かに食べに行こう、僕が奢るよ!実は最近新聞社にグランドシティにいる犯罪者や自警団の写真を撮って売ってるんだ。遠慮しないで何でもいいよ」

 

「それじゃあお言葉に甘えようかしら」

 

 

午後12時58分 晴山コーポレーション 研究室

 

晴山コーポレーションとはアメリカのスタークインダストリーズと並ぶほどの大企業だ。晴山コーポレーションは携帯や私生活で使う日用品まで幅広い分野で動いている。そして軍事産業にも力を入れているのだ。最近、晴山コーポレーションでは裏で超人兵士製造に着手していた。そんな中、社長である晴山才蔵は製造部顧問の八条博士が話し合っていた。

 

「八条博士…………依然として逃亡した3名の被験者は見つからないのか?」

 

「ええ。捜索隊が今必死に探していますがまだ見つかっておりません」

 

「何としてでも見つけ出せ。あの3名が唯一の成功例だ」

 

「分かっております」

 

「それと例のグライダーとスーツはどうなっている?」

 

「あれらはもう暫く時間がかかるかと」

 

「仕方がない………出来次第すぐに知らせろ、いいな?」

 

「承知致しました社長。ところでお出かけですか?」

 

「あぁ、これから息子と食事だ」

 

そう言い残し晴山才蔵は研究室から出て行った。そして一人残った八条博士は晴山が出て行ったのを見計らい本棚を横へとずらした。その本棚をずらすとそこには空観が広がっていた。博士はゆっくりと階段を降りて行った。そこは八条博士専用のラボだ。博士はコンピュータを起動し逃亡した被験者3名の行方を調べることにした。

 

「晴山の下で働くのはうんざりだが…………もう暫くいるとしよう。これが完成するまでは」

 

八条博士はケースの中に入っている4本のアームを見つめ不敵な笑みを浮かべた。

 

 

午後3時 16分 グランドシティ ノースタウン

 

「ふう、美味しかった」

 

「そうね、たまには外食もいいわね。ねえこれから何処かいかない?」

 

「もち『♪〜♪〜♪〜♪』

 

もちろんいいよ、と言いかけた瞬間携帯の着信音が鳴った。僕のケータイには街で起こった事故や事件の情報がいち早く送られるようにしてある。えーと、グランドシティサウスタウンにてサイの男が大暴れしているだって!?何て日だ全く。

 

「ごめん朱乃、ちょっと急用が出来ちゃってもう行かないと」

 

「そう…………わかったわ」

 

「本当にごめん!この埋め合わせはちゃんとするから!…………そうそう、こんな時に言うのも何でけど」

 

「何?」

 

「君のお母さんを殺した犯人は必ず僕が見つける!だからお父さんと仲直りしてくれ!」

 

「………蓮」

 

朱乃は前に一度この言葉を聞いた事があった。それは数年前の今日…………朱璃が死んだ日の事だった。

 

 

数年前7月29日 姫島宅

 

「嫌あぁぁ!!母様!!」

 

朱璃の亡骸に泣きつく朱乃。そしてその光景を泣きながら見る蓮。今蓮の心は悲しみと怒りでいっぱいだった。数分後、バラキエルが入ってきた。

 

「朱璃、朱乃無事、か…………そんな」

 

「おじさん………」

 

「蓮君何があったんだ」

 

「わからない…………白い服を着た男の人が入ってきたと思ったら今度は渦から別の何かが飛び出してきたんだ…………おばさんはそれに」

 

「…………朱乃」

 

「どうして来てくれなかったの!?父様が来てくれてたら母様は生きてたかもしれないのに!!」

 

「朱乃すまない…………蓮君、悪いが君の記憶消させてもらう」

 

「どうして!?僕はこの事を忘れたくない!!」

 

「この世界に一歩でも入れば君は狙われるぞ。そうなれば君のお兄さんにも危害が」

 

「嫌だ!!朱璃おばさんは僕にとっても母親と同じ存在だったんだ!…………朱乃、約束する。君のお母さんを殺した犯人は必ず僕が見つける!」

 

 

現在 午後3時56分 グランドシティサウスタウン

 

僕はコスチュームに着替え例のサイの怪人を探していた。サイっていうんだからきっと図体もでかいはずだ。でかい奴は特に目立つはず。でもせっかく朱乃とデートできるかと思ったのに。でも、仕方がない。大いなる力には大いなる責任が伴うんだから。

 

「きゃぁぁぁぁ!!」

 

ほうらすぐに見つかった。叫び声がする方に行くとそこには何かが衝突したと思われる破壊後が無数にあった。車は横転しビルは崩れかけている。そしてその中心にはサイの姿をした大男が立っていた。

 

「おい!この惨事はお前の仕業か!?」

 

「だったら何だ!?」

 

「街を破壊しといてその態度?グランドシティの善良な市民と全世界のサイに変わって言う。大人しくその蹄を上げて投降しろ!」

 

「嫌だね!何なら力強くでやってみるか!?」

 

強気だね。見た目通りなら力はとてつもなく強いはずだ。それとあの角だな。あれに刺されたら絶対に跡が残るぞ。そんなことを考えているうちにこちらに向かい走ってきていた。僕はぶつかる瞬間に飛び上がり避けた。大男は勢い余って電柱に激突した。

 

「サバンナの住人のサイくんよ!とっととお家に帰んなサイ!!」

 

「くだらねぇこと…………言ってんじゃねぇ!!それと俺はライノだ!!」

 

怒りを増したライノはもう一度僕に向かってきた。学習能力がないね。僕は先程と同様にライノを交わした。しかし、今度は悪い事に崩れかけのビルにぶつかってしまった。ビルの壁が割れゆっくりと音を立てながら崩れていく。

 

「まずい!!」

 

僕は割れた壁の部分にクモ糸を出し補強していった。僕の出すクモ糸は強靭だ。余程のことがない限り崩れることはない。一通り作業が終わる頃にはライノは消えていた。あいつは何がしたかったんだ?この付近には銀行はないし襲われた連絡もない。何が目的でこんな事を。僕はライノを追跡するためその場を離れた。だが僕は気づいていなかった。今の事が誰かに撮られているという事を。




次回、夏休み中盤!しかし問題は山積み…………姫島朱璃殺害の犯人の捜索にライノの捜索、そしてまた新たな問題が社長とともにやってくる!


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Web6 アイアンマン

今回はタイトル通りアイアンマンが登場します!それと最後にはあのヒーローも!



7月30日 午前10時47分 トゥモロー新聞社

 

昨日はあの後、ライノが壊したビルの補強で手一杯になりまんまとライノに逃げられてしまった。子供の時、散らかしたものは直すように教えられなかったのかな。でも、ライノが姿を消してから後日の今日まで奴が暴れたっていう報告はない。いったい、何処へ消えたって言うんだ。

 

「蓮くん、編集長がお呼びよ」

 

秘書の芹沢真奈美……通称マナさんが僕を社長室に案内してくれた。このトゥモロー新聞社はこの国で一二を争う新聞社だ。それなのにバイト代はあまりにも安いんだよ。これじゃどれだけ頑張っても独り立ちの資金がたまらないよ。

 

「ありがとマナさん」

 

「今日の編集長は御機嫌よ。上手くいけばいつもより貰えるかも」

 

「うれしいね」

 

僕はドアをノックし編集長の部屋に入った。中にはトゥモロー新聞社の編集長がタバコを咥え窓の外を見ていた。

 

「失礼します」

 

「おお、君か。また写真を持ってきたのか?」

 

「はいこれです」

 

編集長にここ最近撮った写真を渡した。ライノの写真やスピーディの写真、勿論この僕の写真も。写真を受け取った編集長は不機嫌そうな顔をしていた。編集長はマスクをつけている奴が嫌いみたいだな。

 

「最近では年がら年中ハロウィンだな。マスクをつけた悪党どもがのさばっている。全く世も末だよ」

 

「あの、お言葉ですがスピーディやスパイダーマンはこの街の犯罪者達を捕まえているんですよ?」

 

「それなら何故マスクを着けてる?」

 

「周りの大切な人を守るためじゃないですか?」

 

「ふんっ、君は連中の弁護士か何かかね?」

 

これだもんね。僕は別に人に褒められたいからスパイダーマンになったわけじゃない。ただ、この力を正しい事に使おうと始めただけなんだ。でもここまで言われると傷つくなあ。

 

「ああ、そうそう。山口君、これから暇かね?」

 

「これからですか?別に予定はないですけど」

 

「それなら、これからノースタウンのグランドタワーに行ってくれ。そこで、今日トニー・スタークが新しい発明を発表するそうだ。その写真を撮ってきてくれ。言い値で買うぞ」

 

トニー・スターク。世界的大企業、スタークインダストリーズの社長にして億万長者。更には世界的なヒーローチーム、アベンジャーズのメンバーだ。

 

「分かりました。でも何で僕なんです?」

 

「君は写真を撮るのが上手いし、それに発表に行く筈のカメラマンが病欠だ。ほら、この許可証を持っていけば通してくれる。グランドタワーで天城が待っているから一緒に行ってくれ」

 

僕は編集長から許可証を貰い部屋を出た。ちなみに天城さんはトゥモロー新聞社の腕利きの記者で彼が書くスパイダーマンの記事は貶す内容どころか褒めてくれているとてもいい人だ。さてと、ライノを探したかったけど後回しだ。僕は会社を出て路地裏に向かいスパイダーマンのスーツに着替えウェブスィングで向かった。地下鉄よりは早い。

 

 

午前11時48分グランドタワー

 

グランドタワーに到着した僕はスーツを脱ぎ私服に戻った。僕はスーツを鞄に直しグランドタワーの扉をくぐった。まさかとは思うが入れないことはないよね。

 

「許可証を拝見しても宜しいでしょうか?」

 

「これです」

 

僕はポケットから許可証を取り出し係員に手渡した。やけに警備が多いな。トニー・スタークを襲うマヌケなんて果たしているのだろうか。

 

「おーい蓮くん!」

 

「あっ、天城さん」

 

声のする方には天城さんの姿が。僕は天城さんの方に小走りで向かった。

 

「どうも天城さん」

 

「もうすぐ会見が始まるから会見室にいこう」

 

僕は天城さんと一緒に会見室に向かった。でも、何を発表するんだ?超巨大豆電球とかかな。何にせよすごいものだろうな。おっと、ここが会見室か。会見室に入るとそこには既に多くの記者やカメラマン達がトニー・スタークが出てくるのを今か今かと待っていた。鞄からカメラを取り出しておこう。

 

「お集まりの皆様、長らくお待たせいたしました!これより会見を始めさせていただきます。まず最初に、スタークインダストリーズCEOのトニー・スターク氏より挨拶をしていただきます!」

 

司会者が呼び込むと拍手と共にトニー・スタークが会見室に入ってきた。身長は僕より少し高いくらいか。それにあの髭なかなかかっこいいな。

 

「ありがとう、皆さん今日は。私がトニー・スタークです!今日皆さんにお集まり頂いたのは他でもない!我がスタークインダストリーズがアークリアクターの技術を用いて作った新開発のリアクターバッテリーをお見せするためです!」

 

天城さんは手帳にスラスラと書き留めている。僕もスクリーンに映し出さた画像やスタークさんの写真を撮っていた。アークリアクターを用いた電池か。少なくとも単三電池以上の電力は賄えそうだ。

 

「スタークさん、その電池で作られる電力はどれくらいですか?」

 

「そうですね…………私の会社の全ての部署の数十年分の電力です。ま、倒産すれば話は別ですがね……………では、早速お見せしましょう!明かりを消してくれ」

 

スタークさんが係員に言うとタワーの電気が全て消えた。それと同時に窓のシャッターも全て閉まり辺りは真っ暗になった。スタークさんがボタンを押すと電気が戻り再び明るくなった。

 

「今、このビルの電力はリアクター電池で賄われています!」

 

凄いけど悪人が欲しがりそうな…………………鬱陶しいスパイダーセンスめ。この瞬間、僕の頭が強く刺激された。

 

『おいスパイディ危険が迫ってるぞ!リンリン!リンリン!』

 

二頭身のスパイダーマンが僕の脳みそを蹴って知らせてくれた。忠告どうもスパイダーセンス…………何?僕の空想だから気にしないで。その時会見室の窓ガラスが破壊され武装した男達がヘリのロープを伝い部屋の中に侵入してきた。

 

「きゃぁぁぁぁ!!」

 

「動くんじゃねぇ!!」

 

アサルトライフルを天井に向け発砲する男。男達は会見室にいた人々を真ん中に集めた。

 

「皆さん落ち着いて!おいお前達、いったい何の用だ!?」

 

スタークさんが男達に聞いた。その答えは集団のリーダーと思わしき男が答えた。男の見た目は骸骨を模した仮面に両腕にはガントレット、胴体にはXのようなものが刻まれていた。

 

「久しぶりだなスターク」

 

「クロスボーンズ?お前はキャップが捕まえて刑務所の筈だろ?」

 

「悪いな、脱獄させてもらった」

 

あいつ外国のニュースで見たことあるぞ。確か秘密結社ヒドラの一員だった男だ。しかしヒドラは既に壊滅し傭兵をやっているんだとか。ネット社会って素晴らしいね。僕は男達に気付かれないようにカメラに収めていった。

 

「今日はスタークインダストリーズご自慢の電池を頂きに来た!大人しく渡せば楽に殺してやるぞ?」

 

「はいどうぞ、と渡すわけにはいかないな」

 

「フッ、スーツのないお前など取るに足りない。しかし、人質がいてはどうかな?」

 

「え、僕!?」

 

「蓮君!!」

 

クロスボーンズは僕のシャツの首根っこを捕まえガントレットを向けた。そしてガントレットから刃を展開し僕の顔にチラつかせた。まじか!早くスーツに着替えないと。上手くいくか分からないけど試してみよう。

 

「ちょっと骸骨のおじさん!そんなに引っ張ったら服が伸びるだろ?それに、人質なんて凄く在り来たりと思わない?」

 

「確かにな…………ならお前に用はない!」

 

「へ?それは極端じゃなーーーーい!?」

 

クロスボーンズは僕を割れた窓ガラスから放り投げた。好都合な展開だ。いやーちょろいね。

 

「よせっ!!」

 

スタークさんの叫びも虚しく僕は落ちていった。ここは高さ200メートル程のタワーだ。僕はヘリの死角に入るとクモ糸を飛ばしビルの裏に入った。

 

「やってくれるね、僕じゃなかったら死んでたぞ!」

 

 

「さてスターク。善良な市民をこれ以上死なせたくなかったら大人しく電池を渡せ!」

 

「くっ」

 

「まだわからないか?なら、次は串刺しにでもするか」

 

クロスボーンズガントレットから伸びる刃が女性記者に当たろうとしたその時、クモ糸が放たれクロスボーンズの動きを止めた。部屋にいた全員が放たれた方向を見た。そこにいたのはこの街のヒーロースパイダーマンだった。

 

「生憎、招待状は持ってないけど参加してもいいよね?」

 

「最近でしゃばってるクモのガキか?本当にいたんだな」

 

「スパイダーマン!さっき俺の知り合いがそこから落ちたんだ!」

 

「彼なら助けたよ。大丈夫、無事だ」

 

男達は一斉に僕に銃口を向けてくる。えーとクロスボーンズを抜いて23人てところか。僕はクモ糸を銃口に向けて発射し弾が出ないようにした。数回から打ちし男達は諦めホルスターからナイフやハンドガンを取り出した。

 

「そんな危ないもの持ってちゃダメだよ!」

 

ナイフで斬りかかってくる男の顔を殴り飛ばし更に後方にいた数人の男達にクモ糸を発射、男達は身動きが取れないでいた。僕のクモ糸の強度は伊達じゃないよ。

 

「やっちまえ!」

 

「懲りないね」

 

僕は流作業のごとく男達を伸していった。僕のパワーとスパイダーセンスを持ってすればこんな奴らイチコロさ。この間、会見室にいる人々は避難し残っているのはスタークさんくらいだ。残る問題はクロスボーンズだけだ。

 

「さてと後はあんただけだ」

 

「ちっ、虫野郎め!」

 

「言っとくけどねクモは虫じゃなくてクモ科の」

 

クロスボーンズばガントレットを起動し僕に殴りかかる。寸分の差でかわし腹部めがけて殴りか返そうとした。しかし、この攻撃は簡単に受け止められた。

 

「…………おっと」

 

「ハァッ!!」

 

「だあっ!?」

 

「気をつけろ!そいつは武術の達人だぞ!」

 

「ご忠告どうも。でも先に言ってよ!」

 

ガントレットの威力は意外にも凄まじく後方の壁まで吹き飛ばされた。すかさずクロスボーンズは再び殴りかかってくる。そして僕の体とガントレットがあたる寸前に刃を展開した。だが、僕のスパイダーセンスはこの攻撃も予測することができた。突き刺さる間際、僕はクロスボーンズを飛び越え両腕からクモ糸を壁に発射した。僕は反動をつけるため数歩後ろに下がり一気に拳を突き出した。

 

「これでもくらえ!」

 

「ぐおおおっ!!」

 

K・O!!

 

クロスボーンズの仮面にヒビが入りそのまま地面に倒れた。ふう、何とかやっつけた。僕はクロスボーンズをクモ糸で釣り上げその場を後にした。発信機をつけられているとも知らずに。

 

「スパイダーマンか」

 

 

 

午後6時46分 山口蓮宅

 

あー疲れた。あの後警察が来て事情聴取やら何やらで今まで残されていたんだ。でもカメラが没収されなかっただけましか。そういえばマンションの前に高級そうな車が停まってたな。誰の車だろう。

 

「ただいま〜修兄。ご飯先食べるから荷物置いてくるね」

 

「あー蓮?お前に……その、お客さんだ」

 

「やあ蓮君」

 

「どうもスタークさん………………スタークさん!?」

 

何と自分の家のソファにトニー・スタークが座っていた。

 

「な、何でスタークさんが僕の家に!?」

 

「君は以前、スタークインダストリーズ主催の科学イベントに君の開発した機械を出しただろう?それが見事、トニー・スターク賞に選ばれたわけさ」

 

スタークさんが必要にアイコンタクトを取ってくる。話を合わせろってことかな。

 

「え………あ、はい。その確かに出しました…………冷却マシンを」

 

「お兄さん、少し蓮君と二人にしてもらっても?」

 

「え、ええどうぞ!」

 

「それじゃあ、君の部屋に行こうか」

 

「は、はい」

 

僕は唖然となっていた修兄を残し自分の部屋に入った。僕は部屋にある警察無線の音量を下げた。部屋に入るとスタークさんは鍵を閉め椅子に座った。部屋の中を見渡し物色していた。

 

「綺麗な部屋だな、それは警察無線か?」

 

「そうですけど…………僕に何の用です?」

 

「確かめたくてね君がスパイダーマンかどうか」

 

「え?いやいやいや、僕がスパイダーマン?そんなわけないでしょ!僕は見ての通りメガネかけてるオタクだよ?」

 

「それは伊達メガネだろ?」

 

うっ、図星だ。ていうか何で正体ばれてるの!?

 

「君の鞄の中を見せてくれ」

 

「え、それは」

 

「何もなかったら見せれるだろう?」

 

僕はスタークさんの気迫に負け鞄を差し出した。僕の鞄の中にはスパイダーマンのスーツが入っている。スタークさんは鞄の中を見てニヤついた。そしてスーツから小型の発信機を取り外した。

 

「君が出て行く時につけておいた発信機だ。悪いね、ただ興味が湧いて。さっきは助かったよスパイダーマン」

 

「…………どういたしまして」

 

「で、何時からその力が?」

 

「説明はめんどくさいからWeb2を見て」

 

「……?」

 

「わかったよ。突然変異したクモに噛まれてこうなった。僕は授かった力でこの街の人々を守る事にした。今から1年前の話さ。でも僕の正体は修兄にも内緒にしてる。だから誰にも言わないで」

 

「分かったよ。ところで君のこれまでの活動内容を調べてみたんだが中々腕はいい。けど、爪が甘いところが多々見られる」

 

ワオ、ここまで調べてたなんて。この人ストーカーか何かか?

 

「俺が鍛えてやればもっと成長するだろう。どうだ、俺と共にニューヨークへ来ないか?」

 

ニューヨークか。多くのスーパーヒーロー達がいる街だ。でもこの街で僕にはやる事が沢山ある。朱璃おばさんの事件も………

 

『パトロール中の前者に次ぐイーストタウンでライノが現れている模様。付近にいる者は直ちに急行せよ!』

 

「またライノか!」

 

修兄がドアを慌ててノックした。

 

「蓮!悪いけど仕事が入ったから先に寝といてくれ!」

 

「うんわかった!」

 

「先に寝るつもりか?」

 

「…………まさか」

 

僕は笑みをこぼしスーツに着替えマスクを持ち窓に登った。

 

「で、あなたも来る?スーツがあればだけど」

 

「勿論行かせてもらう。車にあるんだ、連れていってくれないか?」

 

「オッケー、じゃ僕に捕まって!」

 

マスクを被り僕はスタークさんを抱きスタークさんの車に向かった。降りるとスタークさんはリモコンを操作し車からスーツを取り出した。車から展開される機械によりスタークさんの体は鋼鉄のアーマーに包まれていく。最後に頭部のアーマーが展開され顔を覆った。彼こそ、鋼鉄の男…………アイアンマンだ。

 

「マスクを着けててよかったよ。ヨダレが見られなくて」

 

「いや、ダラダラ出てるぞ」

 

僕は口元を拭いアイアンマンと共にイーストタウンに向かった。

 

 

午後7時26分グランドシティ イーストタウン

 

「きゃー!!」

 

「みんな逃げろ!!」

 

イーストタウンはもはや混乱の渦にのまれていた。ライノが次々と建物や車などを破壊している。現場に駆けつけた警察官達も全く歯が立たずにいた。

 

「くそっ!!電気を操る奴が出たと思ったら次はサイかよ!!」

 

「諦めるな中田!!」

 

「鬱陶しい奴らだ!!」

 

ライノは横転していた車を持ち上げ警察官達の方に投げつけた。車はゆっくりと回転し警察官達の上に降りかかった。警察官達は思わず身を潜めた。だが、その車は巨大なクモの巣に引っかかり警察官達に当たることはなかった。

 

「怪我はない刑事さん?」

 

「来てくれたのかスパイダーマン!」

 

「僕だけじゃないよ!さあ拍手でお迎えください!鋼鉄の男、アイアンマンです!!」

 

アイアンマンはゆっくりと警察官達の前に舞い降りた。すると、警察官達は安堵の表情になった。

 

「すげーアイアンマンだ!!」

 

「本物!?」

 

「あのーサイン貰っても良いですか!?」

 

「中田後にしろ!スタークさん、この場はご協力願います!」

 

「勿論だ。行くぞスパイダーマン!」

 

アイアンマンは掌からリパルサーレイをライノに向けて発射した。僕もクモ糸を弾に変え発射していった。怒ったライノはがむしゃらに突っ込んでくる。人がいてもお構いないしだ。

 

「みんな避けろ!」

 

停まっていたパトカーを次々と払い退け暴れまわっていた。ライノのやつやけに息が荒い。

 

「おいライノ!もうスタミナ切れかい?」

 

「はぁ、はぁ、はぁ」

 

「スタミナ…………そうか!スパイダーマン、この街に広い公園はあるか!?」

 

「センターパークがあるけど」

 

「恐らくライノは体力が長く持たないんだ。なにせこの図体を動かしているんだ。だからスタミナ切れを狙うぞ!」

 

「流石!ところで何かこのあたり臭くない?あ、分かったライノの所為だな!あんたシャワー浴びてないだろ?身だしなみがなってないね」

 

「う、ウォォォォ!!」

 

「じゃ誘導頼むぞ。向こうで待ってる!」

 

アイアンマンはセンターパークに向かって飛んでいった。

 

「ちょっと!僕は置いてけぼり!?」

 

薄情なスーパーヒーローだな、まあ仕方がない。僕が怒らしたからね。僕はライノを誘導しながらセンターパークに向かった。

 

 

午後7時47分 グランドシティ センターパーク

 

「ライノさんこちら手の鳴る方へ!」

 

「このクモめ!はぁ、踏み潰して、やるぞ!」

 

ずっと走りっぱなしのライノはフラフラで呂律が回らないでいた。ついには膝をついてしまう始末だ。センターパークに到着するとアイアンマンはベンチに座って休んでいた。

 

「何休んでるのさ!」

 

「悪い悪い。暇でね、さてと片付けるか!ジャービス、胸にエネルギーを集中させろ!」

 

『はい、トニー様』

 

「お先にどうぞスパイダーマン」

 

「それじゃあお言葉に甘えて」

 

僕は助走をつけライノの顔を殴り飛ばした。ライノは危ない足取りで

よろめいた。アイアンマンは胸部のアークリアクター部分からユニビームを発射した。ユニビームはライノにとどめを刺すのに十分すぎる威力だった。アイアンマンがユニビームを放ち終えるのを見計らいライノに近づいた。

 

「ふっ」

 

軽く息を吹きかけるとライノはバタンと倒れてしまった。勿論殺してはいない。事が終わると共に警察官達がやってきた。

 

「スパイダーマンライノは!?」

 

「ここで寝てるよ。それとクレーン車が必要ですよ」

 

 

午後8時 23分 グランドシティ グランドタワー屋上

 

ライノを倒した僕らはグランドタワーの屋上で一休みしていた。流石アベンジャーズのアイアンマンだ。あの余裕っぷりは恐れ入るよ。僕なんかまだまだだな。

 

「今日はありがとうスタークさん」

 

「礼はいいよ。それにトニーで構わないぞ?」

 

「分かった、トニーさん」

 

「で、どうする?もっと成長すればきっとアベンジャーズの一員にだってなれるぞ?」

 

「素敵なお誘いだけど………僕はこの街でやらなければいけない事が沢山あるんだ。大いなる力には大いなる責任が伴う、だから僕はこの街にいるよ」

 

「そう言うと思ったよ。まあ、気が変わったらいつでも言ってくれ。それと何か困った事があればまた手伝ってやってもいい」

 

「それって、また僕と組んでくれるって事!?」

 

「そう言う事だ。じゃあなスパイダーマン!」

 

アイアンマンはそう言い残すと飛んで夜のグランドシティに消えていった。やっぱ、かっこいいわぁ。惚れ惚れするよ本当に。

 

 

午後11時 16分 駒王町 廃工場

 

男は何かに追われるように廃工場に逃げ込んでいた。その男の背中には人に非ざる黒い翼が生えていた。彼ははぐれ悪魔と呼ばれているものだ。このはぐれ悪魔は自分の快楽の為に主を殺し、更には人間も十数人手にかけているお尋ね者だった。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、あいつ一体何なんだよ!?」

 

しかし、このはぐれ悪魔は今までにない恐怖を感じていた。廃工場の天窓から満月の光が入り込み中を照らした。しかし、はぐれ悪魔はすぐに異変に気付いた。満月の光で出来た影が人型になっていたのだ。

 

「ひぃぃ!!奴だ!!」

 

「ハッ!」

 

影の主は両手に持っている棍棒を振りかざしはぐれ悪魔を殴りつけた。その攻撃は一方的で反撃するチャンスなどどこにも無かった。影の主の姿は暗がりで見えずにいた。はぐれ悪魔は床に腰を下ろしてしまった。

 

「お前一体誰なんだよ!!」

 

「そんな事はお前が知る必要はない」

 

「何で俺がこんな目に会わなきゃいけないんだよ!?なあ、頼むよ助けてくれよ!!」

 

「これは正義の裁きだ。命乞いなら魔王にでもするんだな」

 

満月光の元に出た影の主の姿。それは赤色を主体とし細部は黒色といったスーツを見に纏い口元を開け更には突起が二つ付いているマスクを被っていた。男は棍棒についているダイヤルを6回回しもう一方の棍棒と繋げた。すると棍棒から槍に早変わりした。

 

男は命乞いをするはぐれ悪魔に耳も傾けず槍を心臓部に突き刺した。槍は深く突き刺さり一瞬で死に至らしめた。

 

「あら、もう終わったの?」

 

男が見た先には赤色の髪の少女と黒色の長髪の少女がいた。二人とも駒王学園の制服を着ている。

 

「リアスに朱乃か。来るのが少し遅かったな、討伐はもう終わりだ」

 

「そう、なら何時ものところに振り込んでおくわね」

 

「頼む………しかし、何時やっても慣れないな…………命を奪う事は」

 

「仕方ありませんわ。あなたがやらなければ被害者がもっと増えていました」

 

「それにしても貴方また力を使わずに戦ったのねマット」

 

「俺にはレーダーセンスとマーシャルアーツがある。それだけで十分さ。それとこの姿の俺はマットじゃないだろ?」

 

「そうだったわね…………デアデビル」

 

デアデビルはビリークラブをしまいその場を去っていった。

 

 

 




ヴィランファイル3 クロスボーンズ/ブラック・ラムロウ
元ヒドラの一員で現在は傭兵をやっている。トニー・スタークのリアクター電池を狙い会見の場を狙った。

ヴィランファイル4 ライノ/鳩羽 才蔵
悪役レスラーとして活躍していたがギャンブルに手を出し金がなくなってはひったくりや強盗などを行っていた。そんな時、晴山コーポレーションの実験体に選ばれサイの怪人ライノになった。ライノは自分の力を周囲に見せつけるため暴れまわった。


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Web7地上最速の男

8月24日 午前11時28分グランドシティ警察署

 

この夏休みは今までになくいろんな事があった。アイアンマンと知り合いになれたしバイト代も上がった。夏休みも残すところ一週間の今日は何をするのかだって?今日は警察署に今まで撮ったヴィランの写真を提供した後、ゆっくりするつもりだ。たまには休まないとね。

 

「はい、写真現像してきました。森田警部」

 

「ありがとう蓮君。君の写真提供にはいつも助かっているよ」

 

この人は森田警部。修兄の上司の人だ。僕は森田警部に写真を手渡し帰ろうとしたが、修兄に呼び止められた。

 

「なぁ蓮今から暇?」

 

「まあ、暇といえば暇だけど」

 

「それは良かった!実は今日から一週間ほど海外のセントラルシティから科学捜査班の人が研修でこの署にきてて俺が案内することになったんだけど、俺は英語が話せないんだよ」

 

「だから僕が通訳しろって?」

 

「そういう事!」

 

この警察署は通訳を雇えるお金もないのか?ま、僕は理科と英語だけは得意なんだ。だからある程度なら英語も話せる。僕は修兄に手を引かれ警察署の待合室に向かった。待合室に入ると二人の男性と一人の女性がいた。二人のうち一人は長髪だ。僕は英語で彼らに話しかけた。(ここからは英語で話していると思ってください)

 

「グランドシティ警察署へようこそ!僕は一週間あなた達の面倒をみる事になった山口刑事の弟の蓮です」

 

「セントラルシティ警察のバリー・アレンです。この二人はシスコ・ラモンとケイトリン・スノウ博士」

 

「よろしくね」

 

「よろしく!で君も警察官?」

 

「いや、僕は高校生でカメラマンのバイトをしてるんだ。生憎と僕の修兄は教養が欠けていてね。僕が通訳をする事になった」

 

「それじゃ早速ここのラボを見させてもらえないかな」

 

「分かった。修兄、鑑識の部署のところに案内してあげて」

 

セントラルシティからか。セントラルシティには地上最速の男がいる事で有名だ。写真でしか見た事がないけどね。いつか彼も是非撮ってみたいな。

 

午後7時47分 グランドシティノースタウン某回転寿司店

 

1日目の研修を終え僕らは修兄の奢りで某回転寿司店に来ていた。話は変わるがシスコは最高だ。映画の話も合うしすごく面白い人だ。バリーの観察力もなかなかのものだったよ。それにしても細身なのによく食うなこの人。もう30皿を超えたぞ。

 

「修兄乙」

 

「ううう、俺の給料が」

 

「遠慮なく食べてって言ってるよ」

 

「ありがとう!」

 

「なぁ蓮、君はどんな写真を撮っているの?」

 

シスコが僕に聞いてきた。僕は鞄からここ最近撮ったヴィランの写真を取り出し手渡した。シェイプシフターやエレクトロ、さらにライノが写っている写真だ。勿論スパイダーマンの写真も。

 

「僕はこの街にいるスーパーヴィランの写真を撮っているんだ」

 

「これは凄いな」

 

「スパイダーマンてカッコいいよな!あの赤と青のコスチューム、たまんないね。もしよかったらこの写真貰ってもいいかな?」

 

「別に構わないよ」

 

「スパイダーマンの写真も撮ってるの?」

 

「まあね。何というか僕は彼の専属カメラマン?みたいな感じだよ。あのさ話は変わるけど『地上最速の男』って見たことがある?」

 

「ほぼ毎日見るわね」

 

「あ、ああ。そうだね」

 

その時、修兄の携帯が鳴った。

 

「はい、山口です!…………はい分かりました!すぐ向かいます!」

 

「どうしたの修兄?」

 

「谷島が脱獄してイーストタウンで暴れてる。一万円札を置いてくから」

 

修兄は財布から一万円札を取り出し慌ただしく店を飛び出していった。

 

「谷島って誰?」

 

「谷島 隆。今から1年ほど前にスパイダーマンが捕まえた犯罪者だよ。マスコミがつけたあだ名はショッカー」

 

ショッカーは両腕のガントレットから出る音波を操るキルト野郎だ。僕がスパイダーマンになって初めて戦ったスーパーヴィランだ。ショッカーがもしフル装備だったら警察じゃ太刀打ちできないな。

 

「悪いけど僕も写真を撮りに行かないと。それじゃまた明日ね!」

 

「ああ、僕もちょっと行かないと寿司を、食べすぎちゃって」

 

バリーはシスコ達にアイコンタクトをとり席を立った。店を出るとバリーは泊まっているホテルに向かい走り出した。

 

 

午後8時03分 イーストタウン

 

「オラァッ!!」

 

ショッカーは目の前のATMにソニックブームを放った。するとATMは簡単に破壊され中からは大量のお札が舞い上がった。

 

「刑務所から出てきたのにATMしか襲わないわけ?」

 

「おお、この忌々しい声は…………会いたかったぜ蜘蛛野郎」

 

「そんなに会いたかったの?僕のサインあげるからおとなしく刑務所に戻ってくれない?」

 

「嫌だね!」

 

「だと思った」

 

ショッカーは右手を僕にかざしガントレットから衝撃波を繰り出した。僕は攻撃を交わしながらショッカーとの距離を縮めていった。そして蜘蛛糸を球場に変えショッカーに発射した。

 

「ぐっ………」

 

僕の蜘蛛糸でバランスを崩したショッカーは地面に思わず倒れこんだ。しかし、その反動でショッカーのガントレットから衝撃波がビルの看板に発射された。僕はショッカーを放置しそこ走り出した。看板の落下地点には何人もの人が歩いていた。僕は走り手を突き出し蜘蛛糸を発射した。だが明らかに間に合わない距離だった。

 

「頼む間に合ってくれ!!」

 

「きゃあぁぁぁぁ!!」

 

看板と人々がぶつかる寸前、突如一つの赤い閃光が看板の下を横切るのが見えた。看板はそのまま砕け散り粉々になった。だがそこに死体はなかった。

 

「あれは…………」

 

数秒後人々が歓喜する声が聞こえた。声の方向を見ると頭を下げある人物にお礼している人々の姿が。その人物は真紅のスーツに胸には稲妻のエンブレム、彼こそ地上最速の男…………セントラルシティの守護神ことTHEFLASHだ。でも変だな、セントラルシティにいるはずの彼が日本のグランドシティにいるなんて。

 

「手助けが必要じゃない?」

 

「ありがとうフラッシュ助かった。でも何でここに?」

 

「仕事でね、君随分と英語が上手なんだね」

 

仕事ね。あの3人みたいだな…………いや、まさかね。

 

「まあね、英語と化学の成績はいいから」

 

「おい!!俺を忘れてねぇだろうな!!」

 

「忘れてたよ」

 

「チッ…………なめやが、って?」

 

ショッカーは再びガントレットを構える。しかし、フラッシュは1秒もかからないうちにガントレットを剥ぎ取り手錠で拘束してしまった。仕事が早いね。

 

「速っ!!いつもこれくらいで片付くの?」

 

「いいや、いつもこれくらいで片付いたらいいんだけど」

 

と、全てが終わった時数台のパトカーが遅れてやってきた。パトカーから修兄が降りてきてこちらに寄ってきた。

 

「スパイダーマンもう終わったのか!?」

 

「刑事さん、終わったよ。ショッカーはまた刑務所暮らしだね」

 

「この借りは返すからな蜘蛛野r」

 

僕は蜘蛛糸で奴の口を塞いだ。うるさいしそれに息が臭い。

 

「口にチャックしてな。そうだフラッシュ、僕の友達が新聞社でカメラマンのバイトしてるんだけど今度撮らしてあげてくれないか?」

 

「別に構わないけど撮るんだったら一週間の間にね」

 

「オッケー…………」

 

確信したよ、あの3人のうちの誰かだ。フラッシュはそう言い残しその場を去った。走り去る時も凄いもので、彼が走るだけで凄い風が巻き起こった。さてと僕も帰るとしよう。

 

「スパイダーマン待ってくれ」

 

「どうかしたの?」

 

「これは俺の電話番号だ。もし、俺に出来ることがあるなら電話してくれ」

 

「…………考えとくよ刑事さん」

 

ま、電話番号なら知ってるんですけどね。僕は電話番号が書かれた紙をしまいその場を後にした。

 

 




ヴィランファイル5 ショッカー /谷島隆
蓮がスパイダーマンとして活動を始めたころ戦った最初の敵。両手のガントレットから出す衝撃波を武器とする。

ヒーローファイル3 THEFLASH/バリー・アレン
海外のセントラルシティで科学捜査班として働いている。数年前、仕事中に落雷を受け更に化学薬品を浴び能力を得た。スピードフォースにアクセスし超高速で動くことができる。


次回、フラッシュととの共闘!!突如グランドシティに現れたヴィランに立ち向かうべくスパイダーマンとフラッシュは手を組むことに!


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Web8 スパイダーマンANDフラッシュ

今回登場するヴィランはリユウさんのアイデアを僕のオリ設定を加えさせて頂きました。リユウさんありがとうございました!


8月29日 午後3時 13分 イーストタウン

 

ここ数日フラッシュはこの街の治安を守る為に僕と連携し活動していた。その間に写真も撮らせてもらいその写真を売ったら今までで一番の高額なギャラを貰った、本当フラッシュさまさまだ。

 

「後数日で帰国か」

 

「そうだ!ウェルズ博士やジョー、それにアイリスにお土産を買わないと。この辺りのお土産ショップを知ってる蓮?」

 

「えーと、この先に確か外人向けのお土産ショップがあったはず」

 

蓮が店まで先導しバリー達は目的地を目指した。途中道路の真ん中で何か人だかりが出来ていた。人だかりを抜けらとそこには頭から血を流した男性の死体が横たわっていた。

 

「これは…………」

 

「何があったんですか!?」

 

「分からねぇ!いきなり空から降って来たんだよ!」

 

十数分後警察がやって来た。修兄も現場に来ていた。バリーは鑑識とともに現場を調べていた。

 

「バリー何か分かった?」

 

「体の数カ所にひどいアザがある。恐らく暴行された後どこか高い場所から落とされ即死ってところかな」

 

「でもおかしくないか?ここからビルまでの距離は50メートルだ。一体どうやって道路の真ん中に落ちたんだ?」

 

「仮説は二つある。一つめは成人男性を軽く持ち上げられる腕力を持った人物に投げ飛ばされた。二つ目は空を飛べる超人による犯行か」

 

何にせよこれはまた厄介な事になりそうだ。

 

 

午後8時02分 サウスタウン

 

ここはサウスタウンのビルの屋上、ここでフラッシュと待ち合わせているんだけどね…………彼、来るの遅いよ!ま、人助けしてると思うんだけど。とその時、フラッシュが屋上にやってきた。今日で組むのもおしまいだ。この数日で分かった。彼なら…………正体を明かしても大丈夫だと。その方が捜査も進むはずだ。

 

「遅れてすまない。高速道路で事故があってね、救助してたんだ」

 

「別に構わないさバリー」

 

「え……いや僕はバリーとかそんな名前じゃ」

 

「僕だよ」

 

蓮はマスクを取り素顔を露わにした。

 

「蓮!?……驚いたな君がスパイダーマンだったなんて」

 

『何だって!?』

 

「今の声はシスコ?」

 

フラッシュもマスクを外し素顔を露わにした。蓮の予想通り、バリー・アレンその人だった。ていうか今の声はシスコか?フラッシュのスーツには無線がついてるのか…………羨ましいな〜。

 

「君の正体を知っているのは?」

 

「そうだな……アイアンマンと君だけだから他の人には言わないで」

 

「トニーと僕だけ?」

 

「知り合いなの?」

 

「まあね、ジャスティスリーグとアベンジャーズは何度か共闘したことがあってね」

 

「なるほど、じゃあバリーの正体を知ってるのは?」

 

「ええとリーグ全員とシスコにケイトリンそれとハリソンウェルズ博士とジョーっていうセントラルシティの刑事だ」

 

「結構知ってる人がいるんだね。ともかくこれで話しやすくなったわけだ。昼間起きた事件について修兄にスパイダーマンとして電話して聞いたところ、被害者の名前は中野豊。タランタュラホーク強盗団のリーダー格の男だ」

 

「そのリーダー格の男がなんで殺されたんだ?」

 

「実は強盗団の前のリーダーが刑務所から脱獄してね。中野を殺したのもそいつだ」

 

「殺した理由は?」

 

「警察に奴の居場所を教えたからだ。奴は蜂須賀、又の名をタランタュラホークだ」

 

「今の話」

 

『聞いてたよ、今調べてる………』

 

『出たわよ………イーストタウンの古い鉄工所に入る蜂須賀を確認』

 

『早く終わらせてくれよな、色々と蓮に聞きたいんだ』

 

「蜂須賀がいるのはイーストタウンの古い鉄工所だ」

 

「その早いね………」

 

フラッシュの周囲の人はみんなやることが早いのか?チームフラッシュが羨ましいよ。僕なんか犯人を探すだけで1日が終わるもの。

 

午後8時48分 イーストタウン鉄工所

 

辺りは薄暗かったが脱獄犯が隠れ家にするにはもってこいの場所だ。蓮とバリーは気をつけながら進んだ。

 

「で、そのタランチュラホークって奴はどんな力を?」

 

「えーと、巨漢で超人的スピードに反射神経は抜群。後毒に気をつけろ、毒を食らうと数時間は動かなくな…………嫌だな、スパイダーセンスが反応してる」

 

「スパイダー………なに?」

 

「スパイダーセンス!蜘蛛の第六感だよ、僕は危険を察知することが出来るんだ。だからよけて!!」

 

すると後方から物凄いスピードで巨体が襲いかかって来た。蓮は天井に張り付きバリーは距離をとった。

 

「タランチュラホーク」

 

「会えて嬉しいぞ蜘蛛頭」

 

「こっちは全然嬉しくないんだよ」

 

「刑務所ではお前を倒すことだけを考えてたぜ」

 

「あまり良い刑期の過ごし方をしてないね」

 

蓮は蜘蛛糸で勢いをつけタランチュラホークに飛びかかったが、その巨体には通用せず両腕を掴まれてしまった。

 

「お楽しみの始まりだ、三度目の正直だぜ」

 

「二度あることは三度あるよ!!」

 

蜘蛛糸を目に放ちホークの視覚を奪った。視覚を奪われたタランチュラホークは蜘蛛糸を取るため手を離した。この隙にフラッシュが猛スピードでホークを殴りつけた。その数はわずか数秒で数100発にも及んだ。だがホークはまだ平然としていた。

 

「痒い痒い!!」

 

「うあっ……!!」

 

見切られたフラッシュは思い切り殴られダンボールの山に倒れこんだ。

 

「フラッシュ!」

 

蓮がフラッシュに駆け寄るとフラッシュは蓮に耳打ちした。

 

「少しの間時間を稼いで」

 

そう言い残すとフラッシュは一瞬でこの場から消えた。ってええ!?マジでか、丸投げですか?

 

「お前のお友達は逃げたみたいだな!」

 

「戦略的撤退とも言えるね」

 

明らかに優勢なタランタュラホークは蓮に殴りかかる。スパイダーセンスの反応より速くないけど油断してるとやられる。蓮はひたすら交わしていたがホークを超えようとした瞬間足を不意に掴まれた。そのまま壁に投げつけられた。

 

「どうだ蜘蛛野郎、今回はお前の負けだな」

 

「……は?今の所全勝中なんで」

 

「これでトドメだ!!」

 

タランチュラホークが腕を振り上げだと同時に猛スピードでフラッシュが戻って来た。フラッシュはその猛スピードの勢いを使ったパンチを繰り出した。

 

「ぐほおっ!!」

 

フラッシュのパンチを諸に受けたタランチュラホークはふらふらしていた。

 

「丸投げして悪かった、このパンチを出すには遠くから助走つけないといけないんだ。最後は君が」

 

「そう?じゃあお言葉に甘えて!!」

 

K.O.!!

 

意識が朦朧としているタランチュラホークにトドメの一撃を放ちタランチュラホークは倒れた。蓮は蜘蛛糸で縛り上げお決まりの置き手紙を書き残した。

 

「毎回そんなの書くの」

 

「まあね」

 

「そう、それじゃ今から色々と話を聞かせてもらうよ。シスコとケイトリンも交えてね」

 

 

8月31日午前7時12分 グランドシティ空港

 

長かった研修を終え今日はいよいよバリー達が帰国する日だ。修兄は生憎の風邪で代わりに僕が送りにきていた。昨日はバリーがどうやってフラッシュになった経緯やどういった活動をしているのかどうかヒーローの先輩として話してくれた。本当にためになる話ばかりだったよ。

 

「ねえ、超高速で走ったらセントラルシティまですぐなのにまだ飛行機とか電車を使うの?」

 

「疲れてる時はね」

 

「そうだ、シスコに頼まれた写真現像できてたんだ」

 

僕は鞄から封筒を取り出しシスコに渡した。

 

「頼まれてたスパイダーマンの写真だよ。昨日撮ったのも」

 

写真を確認すると僕がスパイダーマンの姿で蜘蛛糸で逆さ吊りになりサムズダウンしてシスコと共に写っているものだった。

 

「ありがとう!これはお礼と言ってはなんだけど」

 

するとシスコも鞄から僕のコスチュームと同じカラーリングをした細いベルトを取り出した。コスチュームにつけても気にならないほどに薄かった。

 

「バットマンのバットシグナルを元に作ってみたんだ。名付けてスパイダーシグナル!スイッチをつけるとスパイダーマンの顔が浮かび上がる。犯罪者はビビること間違いなし!」

 

まさに感無量だ。だって…………最高すぎる!

 

「ありがとうシスコ!」

 

「蓮色々あったけどありがとう。セントラルシティに来ることがあればいつでも僕らに連絡して」

 

「分かった」

 

その後僕は3人と外抱き合い3人を見送った。さてと長くて短かった夏休みも終わり今日から学校だ。2学期からは遅刻魔のレッテルをなくすぞ。

 

 

午前8時16分 駒王学園

 

「珍しいな蓮がこんなに早く学校に来るなんてよ」

 

「今学期から僕は変わる事にしたんだ。これはその第一歩さ」

 

親友の樹と話しているとスパイダーセンスが突然反応した。後ろを軽く振り返るとハンドボール部の玉がこちらに飛んできていた。恐らく朝練をしていたハンドボール部のものだ。咄嗟に靴紐を結ぶふりをしてしゃがみ回避した。だが僕が避けたことによりボールは僕の前にい生徒に向かった。だが生徒はボールが当たる直前体をそらしボールを回避した。

 

「スイマセーン!!大丈夫ですか!?」

 

「ああ、怪我はないよ」

 

「僕も大丈夫」

 

ボールを回避した彼をみて僕は驚いた。彼はサングラスをかけ杖をついていた。その事から彼が盲目である事は明白であった。盲目の彼は校舎へと入って行った。

 

「ねえ樹、うちの学校盲目の生徒なんていたの?」

 

「アイツは確かグレモリーと同じクラスの……確か悪咲 魔都刃」

 

「悪咲君ていうのか」

 

この時はまだ彼、悪咲魔都刃との出会いが僕の人生を大きく左右することになる人物とは思いもしなかった。

 




ヴィランファイル6 タランチュラホーク/蜂須賀

超人的スピード、反射神経、さらに背部にある毒針は刺した相手を数時間麻痺状態にする。強盗団のボスだったが部下にはめられスパイダーマンに倒され投獄された。しかし、再び脱獄し部下を殺した後スパイダーマンにリベンジを図るが研修に来ていたバリー・アレン/フラッシュとスパイダーマンにより倒された。

次回、

それぞれの正義がぶつかり合う!

恐れ知らずの男VS親愛なる隣人!


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