絶狼ーBLOOD SOUL- (狼牙竜)
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第1話 ー銀牙ーSILVER FANG

絶狼のシリーズ、これから牙狼と同時に連載することを決めました!

こちらにも感想、評価をよろしくお願いします!


 

 

ゲイムギョウ界。

 

 

地球とは異なる異世界の誰もいない草原。

 

そこを一人の少年が歩いていた。

 

 

「全く、たどり着いて早々に迷子とか、洒落にならんって」

 

 

背中にドリームキャッチャーを模したデザインの描かれた、黒いロングコートを着る少年。

 

いかにも困ったといった顔をして草原を歩く。

 

 

 

『でも良かったじゃない。幸いにも今回の目的地は例のプラネテューヌの近くな訳だし、向こうに着いて教祖に話をつければ何とかなるわよ』

 

 

すると突然、妖艶な女性の声が聞こえる。

 

が、少年は大して驚くようなこともなく『首に掛けているネックレス』に話しかける。

 

「それもそうだな。サンキュ、『シルヴァ』♪」

 

 

そのまま歩き続けている少年だったが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヌラーーーーー!!!」

 

 

 

「な、何だ!?」

 

 

突然奇妙な声が聞こえる。

 

 

『何かあったようね…行ってみましょう、『ゼロ』!」

 

「ああ!」

 

 

 

 

ゼロと呼ばれた少年は声が聞こえた方向へと走っていく。

 

 

 

――――――――――

 

 

一方、現場では…

 

ネプギア、アイエフ、コンパの3人がスライヌ達と戦っていた。

 

「あとはこいつを倒せば、クエスト達成ね」

 

 

アイエフがカタールを構えた瞬間だった。

 

 

 

『ヌウウウウラアアアアアアァァァァ!!!!!』

 

突如スライヌが叫ぶと、周囲からまた大量のスライヌが押し寄せてくる。

 

「うっそ!?まだいたの!?」

 

 

「はわわ…なんか、集まってますよ!?」

 

「合体して、おっきくなっちゃったです~!?」

 

 

ネプギア、アイエフ、コンパは目の前で巨大化していくスライヌに驚きを隠せなかった。

 

気がつくと、スライヌは自分たちの3倍ほどの大きさにまでなっていた。

 

 

 

「嘘…これ、どうしましょう…?」

 

巨大化したスライヌは先ほどまでとは違い妙な迫力がある。

 

 

その迫力に、ネプギアは無意識のうちに下がっていた。

 

 

 

「ネプギア!」

 

 

アイエフが叫ぶが、スライヌはその巨体でネプギアを飲み込もうとする。

 

しかし、ネプギアはその場から一歩も動けない。

 

 

 

 

恐怖のせいなのだろうか。あの時、マジェコンヌ四天王の一人に負けてから、力が出せない。

 

 

(誰か………助けて…)

 

 

 

恐怖で意識を失いそうになる中、ネプギアは心で祈る。

 

 

 

 

決して叶わないと、心の片隅で思いながら…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハアアアァァァ!!!」

 

 

「!?」

 

 

 

突然、見知らぬ叫び声が聞こえた。

 

 

ネプギアは目を開く。

 

 

 

そこには、黒いロングコートを着た、見た目は自分とさほど変わらないような年齢の少年。

 

 

彼が、自分に迫っていたスライヌを持っていた双剣で切り裂いた。

 

「っ!」

 

 

 

少年は双剣をコートの内側に仕舞うと、すばやくネプギアを抱きかかえ、およそ7メートルほどジャンプする。

 

 

「え、ええええ!?」

 

 

 

あまりのことに驚くネプギアだったが、少年は綺麗に着地する。

 

「君、怪我は?」

 

 

「は、はい!大丈夫です…」

 

 

一瞬驚くネプギアだったが、少年はネプギアをそっと地面に下ろす。

 

「色々と聞きたいことがあるけど、まずはこいつを倒してからだね…」

 

 

少年は走りながらコートの袖から直刀・両刃の2本の剣を取り出す。

 

 

「ねえシルヴァ、一応確認したいんだけど、この怪物にホラーの気配は?」

 

『ホラーの気配ってほどじゃないけど…僅かにホラーの邪気が混じってるわね。あの子が威圧で動けなくなったのは、たぶん邪気が原因よ』

 

 

少年…ゼロは剣を構える。

 

 

「なら…『鎧の召還』はしなくてもいいか」

 

ゼロは2本の双剣をクロスするように構え、呟く。

 

 

 

「かかって来な、子犬ちゃん」

 

 

『ヌウウウラアアアア!!!』

 

スライヌが押し潰そうとしてくるが、ゼロはその場から飛び上がってスライヌの攻撃をかわす。

 

 

スライヌの攻撃が命中した樹木がへし折れた。

 

「うっわ。これ当たったら痛そうだな」

 

 

軽口を叩きながら、ゼロはスライヌを上空から斬る。

 

「まだまだ!」

 

 

その斬撃は一回では終わらない。

 

 

 

2回、3回、4回、5回…流れるように巨大スライヌを切り裂いていく。

 

 

上から刃を叩き込み、さらにスライヌの懐に潜り込んで連続で刃を振る。

 

 

 

 

「す…すごい…」

 

驚いているネプギアの横に、アイエフとコンパが走ってくる。

 

 

「何、あいつ…巨大スライヌを切り裂いてる…」

 

「は、速いです~!剣が見えないですよ~!」

 

驚くアイエフ達をよそに、ゼロは細切れになったスライヌの一部を踏み台として再びジャンプする。

 

 

 

「これで…ラスト!」

 

 

 

とどめに、2本の剣を×の字に振って切り裂くと、スライヌは粒子となって消滅した。

 

 

 

 

――――――――――

 

「ふう…」

 

 

持っていた剣…魔戒剣をくるくると回転させながら、ゼロはいつの間にか腰に提げていた鞘に2本の剣を収める。

 

 

「あの…」

 

「ん?」

 

 

話しかけられて振り向くと、そこには先ほどゼロが助けた、薄紫の髪をした美少女が話しかけてくる。

 

「た、助けてくれてありがとうございます!私、ネプギアといいます!」

 

少女…ネプギアは頭を下げるが、ゼロは笑いながら言った。

 

 

「何々、別にいいってことさ。通りすがりに可愛い子が襲われてたら、助けるのが俺の流儀なんだし」

 

 

笑いながら言うゼロ。

 

「まあ、助けてくれたお礼というか…一つだけ頼みがあるんだけど…」

 

 

すると、ネプギアの後ろにいた緑のリボンをつけた女性が話しかける。

 

 

「その前に、貴方はいったい何者なの?」

 

 

警戒する女性。

 

やはり、先ほどのアクロバティック過ぎる動きで警戒されたらしい。

 

警戒の視線を送られて、ゼロは内心「やっぱり警戒するよな…」と考える。

 

 

 

『正直に言いましょう、ゼロ。この先活動するなら、彼女たちを味方につけたほうが良いわ』

 

 

突然聞こえた声にゼロを除く全員が驚く。

 

 

それもそのはず…

 

 

 

「「「ネックレスが喋った(です)!?」」」

 

ネックレス…シルヴァが喋ったからだ。

 

 

「シルヴァ…まあ、仕方ないか」

 

青年は2本の剣をコートの内側に収納する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺の名は轟雷零夜。見ての通りゲイムギョウ界を旅してて…

 

 

 

 

 

 

 

この世界の事実上のトップに立っている犯罪組織マジェコンヌ、その裏にいる奴を潰す為にこっちに来た」

 

 

――――――――――

 

黄金騎士と対になっていた存在。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銀色の体に、2つの剣。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼の者の名は、銀牙騎士

 

 

 

 

 

 

 

絶狼-ZERO-

 

――――――――――

 

次回予告(ナレーション ネプギア)

あの人は一体、何者なんでしょうか?

 

え!?あの怪物が…ホラー?

 

そして…銀色の狼?

 

Next ZERO『-騎士ーKNIGHT』



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第2話 -騎士ーKNIGHT

続けて投稿しました、第2話です!

ストーリー自体は『超次元の騎士』と世界観はつながっていません。

別物のストーリーとして読んでいただければ幸いです。



 

「お疲れ様です、アイエフさん…あら、その方は?」

 

プラネテューヌの教祖、イストワールはクエストに出かけたアイエフ、コンパ、ネプギアの後ろに見慣れない青年が立っているのに気づいた。

 

『あら、この子がプラネテューヌの教祖?見た目はずいぶんと幼いのね』

 

青年の首に掛けてあったネックレス…『シルヴァ』が喋り、イストワールは驚愕するが、青年はシルヴァを窘める。

 

 

「シルヴァ。そういうことはっきり言わないの」

 

『はいはい。分かってるわよ』

 

 

拗ねたように返事をするシルヴァに青年は苦笑いを浮かべると、イストワールに挨拶をする。

 

「初めまして、プラネテューヌの教祖、イストワール様。私の名は、轟雷零夜と申します」

 

この時だけ、零夜はやけに丁寧な挨拶をした。

 

――――――――――

 

「つまり…零夜さんは別の世界から、ゲイムギョウ界に渡った敵を追ってきたということですか?」

 

「まあ、ざっくり言えばそういうことかな?あと、イストワールさんには俺の師匠から連絡が届いてるはずですけど…」

 

 

「え?………あ」

 

イストワールさんは何やらメールボックスのような物を空間に出現させると、どうやらそれらしき物を見つけたようだ。

 

「たしかに見つけました…なるほど、そういうことでしたか」

 

 

 

「そういうこととは…どういう意味ですか?」

 

アイエフがイストワールに質問してくる。

 

「私は、以前から気になっていたことがあります。それは、マジェコンヌを信仰している人々の何人かが消息を絶っているというものでした」

 

 

「信仰…とは?」

 

イストワールが説明する。

「この世界を統べる守護女神は、人々の信仰心がそのまま己の力となります。我々はその力を、『シェアエナジー』と呼んでいます」

 

「シェア…エナジー…」

 

 

「はい。ですが、今のネプギアさん達は力を十分に発揮できません。女神達がマジェコンヌ達犯罪組織に敗れて2年経過してます。その結果がこの世界の現状です…」

 

イストワールは俯いて話す。

 

 

「ゲイムギョウ界のシェアの凡そ80%がマジェコンヌのものになりました。そのせいで、犯罪組織はますます力をつけてしまい、先ほどのような事件も発生するようになってしまいました」

 

 

 

「なるほどね………犯罪組織を信仰することで人々のモラルを低下させ、堕落した人間達の心が陰我を呼び寄せ、ホラーが現れる。例えホラーを1体2体倒しても、犯罪組織が存在する限り同じようなことが繰り返されるってことか…」

 

複雑そうな表情の零夜。

 

 

「確かに、犯罪組織の裏にホラーと通じる奴等がいるって師匠の話に信憑性が増してきたよ。ホラーの力を利用する奴等なら、この状況に関わっていないはずがない」

 

 

『なら、決まりじゃないの?ゼロ』

 

 

シルヴァの声に俺はうなずいた。

 

「もし良ければ、貴女達の旅に同行してもよろしいですか?」

 

 

「「「「え?」」」」

 

ネプギアたちは、零夜の提案に驚く。

 

 

『言っておくけど、ホラーは貴女達では倒せない。ホラーを倒せるのは、ここにいるゼロだけよ』

 

「そ、そうなんですか?」

コンパが質問するが、零夜は頷く。

 

「ああ。ホラーを倒すには、有効な武器を使うしかない。それを使えるのは…この俺だけだ」

 

零夜は双剣…『魔戒剣』を取り出す。

「この剣が、現状この世界でホラーに対処できる唯一の武器だ」

 

「だったら、この剣を調べて複製できれば良いんじゃないの?」

 

 

アイエフが聞いたが、零夜は首を振る。

 

「無理だね。魔戒剣は魔戒騎士にしか扱えない。さらに言えば、剣を操れるのは騎士としての力をつけた男に限定される」

 

 

『魔戒剣の材質、ソウルメタルの特性ね。鎧や剣といった武具に加工した場合、加工されたソウルメタルは女を拒絶するの。尤も、女でも魔戒剣を使う方法はあるにはあるけど、お勧めしないわ。負担が大きいけど大して使いこなせるわけじゃない。ほんの少し振ることができるだけ』

 

シルヴァが淡々と説明する。

 

「ということは…仮に私たちがそのソウルメタルとやらを手に入れても、どうしようもないってこと?」

 

 

「そうだな。それと、ソウルメタルは簡単には採れないぜ。何せあれは…」

 

零夜は魔戒剣を見せながら説明する。

 

 

 

 

「元はホラーの死骸だからな」

 

「「「「えええ!?」」」」

 

 

顔を青くするネプギア、コンパ、アイエフ、イストワール。

 

「と、ということはつまり…」

 

 

「零夜君は、ホラーの力を使っているということですか!?」

 

「そういうこと。後、シルヴァだってそうだぜ?」

 

 

「同じ…ということは、シルヴァさんもホラー…なんですか?」

 

『そうよ。尤も、私はゼロと契約している上に、人を襲う趣味はないわ』

 

「それに、ここに収められているのはシルヴァの魂だけだ。シルヴァは特殊なホラーでな、人との共存を望むホラーで、このネックレスに魂を移して俺のサポートをしてくれる」

 

で、と言葉を切る零夜。

 

「もし今後、犯罪組織がホラーを使ってきたら、奴らは俺が倒す。対ホラーの用心棒としては役不足かな?」

 

 

おどけた様に聞く零夜。

 

「…そうですね。私からお願いしてもよろしいでしょうか?」

 

イストワールが質問する。

 

 

「良いんですか、イストワール様?」

 

アイエフがイストワールに聞く。

 

 

「実際、アイエフさんはご覧になったのですよね?彼の力を」

 

「ええ。確かに強さだけなら私たちよりも上かもしれません。ですが…」

 

 

どうやら、アイエフはまだ零夜を信用できていないらしい。

 

まあ、いきなり現れた見知らぬ男を信用するなど、簡単な話ではない。

 

 

 

「ま、じっくり考えておくのも大事だよね」

 

零夜は扉に向かって歩き出す。

 

 

 

『お嬢ちゃん達。今夜、プラネテューヌの中央広場に来てみなさい。零夜のことをはっきりと知りたければね』

 

 

「シルヴァ!」

 

いつになく強い声でシルヴァを窘める零夜。

 

 

そのまま、零夜は姿を消した。

 

―――――――――――

 

その夜、ネプギア、コンパ、アイエフはシルヴァの言っていた中央広場に訪れていた。

 

 

「本当に来るんですか?」

 

「多分ね。あいつの言葉が本当なら、ここにホラーとかいうのが現れるはずよ」

 

 

物陰に隠れながら周囲を見回す3人。しかし、ネプギアは違和感を感じていた。

 

 

「アイエフさん。なんか、妙じゃないですか?」

 

「妙…って?」

 

 

ネプギアは周囲を見て呟く。

 

「プラネテューヌって、この時間でも外に人はいましたよね…?」

 

 

その言葉にアイエフは気づく。

 

そう。さっきから人一人見かけない。

 

 

今は夜の11時。

 

確かに人が少なくなる時間だが、ゲイムギョウ界の先進国家であるプラネテューヌにしてはおかしい。

 

 

 

まるで、人が消えたようだ。

 

すると、上空から何かが降ってくる。

 

「あれって………人!?」

落ちてきた人は、広場の樹木をクッションにして落ちる。

 

「ぐ………うああ…」

ボロボロになっていたのは、立派なスーツを着た成人男性。

 

ネプギアは男性の元に駆け寄る。

 

 

「だ、大丈夫ですか!?」

 

「あ、ああ…」

 

ボロボロの男性の容態を確認しようとするネプギア。

 

 

しかし…

 

 

 

 

 

「ちょっとそこ退いてくれない?ネプギアちゃん」

 

昼間に聞いた声。

 

振り返ると、そこに立っていたのは轟雷零夜。

 

 

その手には、二振りの魔戒剣が握られている。

 

 

「れ、零夜さん!?何をしてるんですか!?」

 

慌てるネプギア。

 

 

目の前の零夜の目には殺気が満ちている。

 

 

 

おどけた様な口調でも殺気が隠せていない。

 

 

「見てわかんないかな?ホラー狩りだよ、ホラー狩り」

 

「ホラーって…この人がホラー…?」

 

 

ネプギアは後ろの男を見るが、どう見ても人間にしか見えない。

 

 

「ネプギア!」

 

「ギアちゃん!」

 

アイエフとコンパがネプギアの前に立つ。

 

 

「あんた、何するの!?ホラーを狩るとか言ってたけど、あんたが襲ってるのは人間じゃない!」

 

確かに、ボロボロになっている男と、それを剣を持ちながら迫る零夜。

 

はたから見たら、零夜の方が危険に見える。

 

 

アイエフが叫ぶが、零夜は鋭く睨み、警告する。

 

「早く退け。じゃないと…

 

 

 

 

 

 

 

お前らが殺されるぞ」

 

 

その瞬間、ネプギアは何者かに首を絞められる。

 

首を絞めたのは、先ほどまで後ろにいた男性。

 

 

「な…なん…で…!?」

 

零夜はポケットから銀色のライターを取り出し、青い炎を飛ばす。

 

青い炎は男性の目の前でとまると、男性の目に不思議な模様が浮かび上がる。

 

 

「貴様…魔戒騎士か…」

 

「そ。だからその子を返してくれる?返してくれれば痛みを感じる間もなく送り返してやるから」

 

 

穏やかに話しかけるが、零夜は魔戒剣を構える。

 

「悪いが…そういうわけにはいかないんだよ!」

 

 

男は体を変異させ、異形の怪物となる。

 

 

「ひっ…!?」

 

「何よ…あれ?」

 

コンパは目の前の怪物に怯え、アイエフも驚きを隠せない。

 

 

ネプギアを捕らえていたのは、全身が赤い鱗に包まれ、1本の鋭い角が目立つ怪物。

 

 

『ゼロ。あのホラーはグリムゾーラ。厄介なのはあの巨体よ』

 

「サンキューシルヴァ。後は大丈夫だ」

 

 

零夜はポケットから何かを取り出す。

 

 

「ふっ!」

 

零夜はポケットから取り出した物…小さなナイフを投げつける。

 

「ちっ!」

グリムゾーラは投げつけてきた物が何なのかを察し、とっさにネプギアをつかんだままよける。

 

「きゃっ!?」

 

しかし、グリムゾーラの右腕が切り裂かれる。

 

 

「何だと!?」

 

右腕が切り裂かれ、ネプギアが解放される。

 

「ネプギアちゃん!」

 

 

零夜はネプギアの手をつかみ、引き寄せる。

 

「大丈夫か?」

 

 

「は、はい…」

 

 

零夜はネプギアをゆっくりと地面に降ろす。

 

『安心しなさいゼロ。この子はホラーの血を浴びてないわ』

 

 

「そうか。なら安心だ」

 

アイエフとコンパが走ってきた。

 

「ネプギア!大丈夫!?」

 

「ギアちゃん!」

 

 

二人にネプギアを預け、零夜は一言だけ告げる。

 

 

 

「2人とも、ネプギアちゃんのこと、頼んだよ」

 

零夜はグリムゾーラと向き合う。

 

 

「殺す…魔戒騎士、殺してやる!」

 

 

 

 

 

「………ちょっと黙ってろ」

 

小さく呟いた言葉だが、その威圧感にグリムゾーラだけでなく全員が怯んだ。

 

 

(何…あの威圧感…?)

 

アイエフは先ほどまでとはまるで違う零夜に震えていた。

 

 

零夜は、2本の魔戒剣を取り出すと、頭上に構える。

 

 

「あれは…?」

 

零夜はすばやく2本の剣で頭上に円を描いた。

 

 

すると、零夜に変化が訪れる。

 

描いた円から、青みがかった銀色の装甲が出現し、零夜の周囲を旋回する。

 

 

装甲はやがて、零夜の体に装着され、狼を模したマスクが零夜の顔を覆った。

 

 

「銀色の…狼?」

 

 

零夜の持っていた2本の魔戒剣は大きく変化し、切っ先が曲がった『銀狼剣』へと変化した。

 

「何だ貴様………その鎧はいったい!?」

 

 

鎧を見た瞬間狼狽するグリムゾーラ。

 

 

 

 

 

 

 

「教えてやるよ…『銀牙騎士・絶狼』、参る!」

 

 

 

零夜…絶狼は鎧を装着する前よりも素早く走り、グリムゾーラに剣を振り下ろす。

 

 

「ぐううっ!?」

 

咄嗟にグリムゾーラは受け止めるが、絶狼はグリムゾーラの角を蹴り、ジャンプする。

 

 

空中で絶狼は2本の銀狼剣の持ち手を繋ぎ、ブーメランのような『銀牙銀狼剣』にする。

 

「ハアッ!」

 

 

空中で絶狼は銀牙銀狼剣を振り、グリムゾーラの角を叩き切る。

 

 

 

「グウウウオオオオ!?」

 

角を折られ、悲鳴を上げるグリムゾーラ。

 

 

「これで…」

 

絶狼はグリムゾーラの首に剣を振り下ろした。

 

 

 

 

「終わりだ!」

 

銀牙騎士の剣は、グリムゾーラの首を切り落とした。

 

 

首を切り落とされたグリムゾーラは、ゆっくりと体が朽ちていき、消滅する。

 

 

グリムゾーラの首も、腐るように溶けて消滅した。

 

 

 

―――――――――

 

アイエフ、コンパ、ネプギアの前には鎧を纏った零夜…絶狼が立っていた。

 

しかし、一瞬絶狼の体が輝くと、鎧が光となって消え、零夜の姿に戻っていた。

 

 

「ねえ…あの姿は…?」

 

 

 

「あれは絶狼。俺が師匠から継いだ、魔戒騎士の鎧だ」

 

 

零夜は魔戒剣を回転させながら鞘に戻す。

 

 

「それとわかっただろ?あれがホラーだ」

 

その言葉にネプギア達は俯く。

 

 

もし零夜がいなかったら…自分達はあのホラーに食われていたかもしれない。

 

「ホラーは人に化け、人を食らう。よく分かっただろ」

 

 

人に化ける。そんな怪物がすでにゲイムギョウ界にも存在している。

 

「そしてホラーを倒せるのは…魔戒騎士だけだ」

 

 

零夜はコートの内側に剣を仕舞い、去ろうとする。

 

「ま、待ってください!」

 

ネプギアの言葉に零夜は立ち止まる。

 

 

「さっきは…ありがとうございました!」

 

 

零夜は背を向けたまま、手を振る。

 

いつの間にか、黒いコートの騎士は闇夜へと消えていった。

 

――――――――――

 

翌朝、再び教会を訪れた零夜だったが…

 

「おはよう、『零夜』」

 

旅支度を整えたのか、大きな鞄を持ったアイエフが立っていた。

 

 

「お、おはよう…」

 

「あ、零夜さん!おはようございます!」

 

 

笑顔で挨拶をするコンパ。

 

「これから、よろしくお願いします!」

 

 

と頭を下げるネプギア。

 

「え?これからって、どういうこと?」

 

 

 

「勿論、昨日の返事ですよ!」

 

 

 

 

昨日の……あ。

 

「私達の旅に着いて来てください!」

 

 

どうやら、これからの旅の同行をしてほしいらしい。

 

「本当に良いのか?」

 

「はいです!ギアちゃんもあいちゃんも私も、歓迎しますよ!」

 

 

本当に?という視線をアイエフに向ける。

 

「ええ。確かに私達じゃホラーには勝てないかもしれない。昨日のことでそれがはっきり分かったわ」

 

だけど…と続ける。

 

 

「それでも私はあきらめたくない。私は大事な友達を…ネプギアの姉であるねぷ子を助けたいし、今のゲイムギョウ界を変えたいの。そのためにはあなたの力が必要。だから…力を貸して」

 

キョトンとする零夜だったが、すぐに微笑む。

 

 

「喜んで受けますよ。麗しのレディ達」

 

 

 

 

『全く、照れくさいときにカッコつける癖は治ってないのね』

 

 

「一言余計だよ、シルヴァ!」

 

こうして、女神候補生(ネプギア)、プラネテューヌ諜報員(アイエフ)、新米看護師(コンパ)、魔戒騎士(零夜)という新たなパーティーが完成した。

 

 

 

―――――ZERO―――――

 

次回予告(ナレーション シルヴァ)

 

 

世界を救うために彼女達に力を貸すなんて…ゼロらしいわね。

 

でも、忘れてないわよね?魔戒騎士のタブーを…

 

 

いくら魔戒騎士でも、越えちゃならない一線があるのよ?

 

 

Next ZERO『掟―RULE-』



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第3話 掟―RULE-

お待たせしました、第3話です!
思ったよりも長くなったので今回は前後編で投稿します。

もうすぐ牙狼 DIVINE FLAMEの公開ですね。

自分は近くで公開しないので、見るとしても遠出かもしれません…

見に行きたい…



女神候補生、ナース、諜報員、魔戒騎士と、常識という言葉を魔界に強制送還した様なパーティーが組まれてはや一週間。

 

日課である『プラネテューヌ内15kmのランニング』を終えた轟雷零夜は教会に戻り、アイエフにこれからのことを尋ねる。

 

「で、これから旅の当てはあるの?」

 

「ええ。まずはプラネテューヌに眠る『ゲイムキャラ』を見つけることからね」

「ゲイムキャラ?」

 

 

ゲイムキャラとは、古の女神によって創造された存在。

 

ゲイムギョウ界の行方を左右すると言われるほどの強大な力を持っており、その存在は一般人どころか殆どの存在が知らない。

 

 

その力は古の犯罪神を女神達とともに封印したという伝説が残っている。

 

その伝説が記されている資料をイストワールが発見し、アイエフとコンパはこの1週間調査を続けていた。

 

 

 

ちなみに、零夜はネプギアと共にクエストをこなしている。

 

女神の力を発揮できなくなったネプギアに少しでも自信をつけさせるためのリハビリとしてクエストを行っていたのだが、クエストで出てくる敵が弱いせいか、どうにも自信がついていない。

 

何かが必要だ。

 

 

もっとこう…立ち直らせるような大きい爆弾が…

 

 

――――――――――

 

バーチャフォレストの奥部。

 

この場所にゲイムキャラがいるという情報を手に入れ、零夜達はゲイムキャラの協力を得るために進んでいた。

 

途中でモンスターが出てくるが、割と簡単に対処できた。

 

「よしっと。こんなもんか」

 

師匠の真似をしていたからか、同じように剣を回転させる。

 

「アンタってホント規格外ね…汚染されて強くなったモンスター3体を1人で倒すなんて…」

「こちとら毎回ホラーと命懸けの戦い繰り返してんだぜ?あいつらと比べたら軽い軽い」

 

 

そんな話をする中、零夜は未だに元気のないネプギアを視界に捕らえていた。

 

「…ネプギアちゃん。本当に大丈夫か?」

 

 

「……はい、大丈夫です。ゲイムキャラの力を借りるのに、プラネテューヌの女神候補生の私が行かないわけにはいきません」

 

俯きながら答えるネプギアに、零夜は困ったような表情をする。

「………でも、無理だけはするんじゃないわよ」

 

 

アイエフが助け舟を出してくれて、彼女がパーティーの先頭に立って進んでいった。

 

「うう…ギアちゃん…私、どうしたらいいんでしょうか…」

 

 

コンパが半泣きになりながらおろおろして、零夜は頭が痛くなってきた。

 

『ゼロ。本当にこのチーム大丈夫なの?』

 

 

 

呆れたような声のシルヴァ。

 

 

 

 

 

「………大丈夫だよ…たぶん」

 

 

――――――――――

 

進んでいく中、僅かだが妙な音が聞こえた。

 

「何だ…この音は…?」

 

小さいが、確かに聞こえる。

 

 

「何かを…叩いてる音?」

「行ってみましょう」

 

アイエフの言葉にうなずいた俺達は音のする方向へと走る。

 

 

 

そこには、黒いフードにまるでねずみの鼻や耳のようなものが付いている緑色の髪の女性が、手に持っていた刀でディスクのような物を破壊しようとしていた。

 

「くっそ…さっさと壊れやがれ、ゲイムキャラ!」

 

 

女性は、刀を振り下ろしてディスク…ゲイムキャラを壊そうとしていた。

 

 

「ダメえぇぇぇ!」

 

ネプギアはとっさに女を押さえ込む。

 

 

「は!?お前ら、誰だよ!?」

 

「どうして、ゲイムキャラを壊そうとするんですか!?そんなことをしたらゲイムギョウ

界が…!」

 

 

ネプギアは必死に女を止めようとするが、女はネプギアを振りほどくと零夜達に向き直っ

た。

 

「ゲイムギョウ界をマジェコンヌの物にするために、こいつは破壊しなきゃいけねぇンだよ!」

 

その言葉に、全員が警戒する。

 

「…あんた、まさかマジェコンヌの一員なの!?」

 

アイエフはカタールを取り出して聞く。

 

 

「その通り!アタイはこのゲイムギョウ界においてマジパネェ勢いを持っているマジェコンヌのマジパネェ構成員の1人…」

 

 

大げさな動きを混ぜながら女は言葉を続けた。

 

 

 

「リンダ様たぁ、アタイのことさ!」

 

 

その言葉に全員はなんともいえない顔になるが…

 

 

 

 

 

 

「それって要するに…下っ端?」

 

 

「……下っ端よね?」

 

「……下っ端さんですよね」

 

 

 

 

『下っ端も下っ端、ホラーで言えば登場して2秒で斬られる素体ホラーみたいなものね』

 

 

 

上から零夜、アイエフ、コンパ、シルヴァの順である。

 

 

「んな!?誰が下っ端だ!誰が!あと、なんかよく知らねえけど、スゲエ馬鹿にされた気がすんぞ!」

 

 

下っ端と言いたい放題にされたのが頭にきたのか、リンダは刀をアイエフ達に向ける。

 

「どうして…どうしてこんな酷いことができるんですか!?ゲイムキャラを壊したら、ゲイムギョウ界が滅茶苦茶になっちゃうんですよ!」

 

 

下っ端と零夜達の間に入ってきたのはネプギア。

 

彼女は涙を流しながら下っ端を説得しようとする。

しかし…

 

 

「…はっ!何を言うかと思えば…いまさらそんな事言うなんて、笑っちまうぜ!」

 

下っ端は愉快そうに笑い出す。

 

 

「な、何がおかしいんですか!?」

 

 

「もうゲイムギョウ界はお終いなんだよ!これからはマジェコンヌのが支配する新しいゲイムギョウ界が誕生すんだよ!だから、アタイは邪魔になるゲイムキャラをぶっ壊して何が悪い!」

 

下っ端は懐から血のように真っ赤なCDを取り出す。

 

 

「女神のいねえゲイムギョウ界なんて、アタイらマジェコンヌのものなんだよ…だから、そこを退きな、クソチビ!」

 

 

下っ端は獰猛な笑みを浮かべ、ネプギアに刀を振り下ろす。

 

「ネプギア!」

 

 

アイエフが止めようとするが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふっ!」

 

それよりも早く、零夜が『素手』で刀を掴む。

 

 

「な!?」

 

「え…!?」

 

「零夜君!」

 

 

ネプギア達が驚くが、零夜は手に持っていたライターから魔導火を着火し、下っ端の瞳を映す。

 

その瞳に魔戒の文字は浮かび上がらない。

 

 

「こいつ…ホラーじゃないのか!」

 

零夜は下っ端を蹴り飛ばす。

 

 

 

『ゼロ!分かってるとは思うけど…』

 

「ああ!十分承知!」

 

 

零夜は魔戒剣を取り出さずに、ファイティングポーズをとる。

 

「零夜!どうして魔戒剣を使わないの!?」

 

 

アイエフとコンパが横に立つ。

 

 

「あいつは人間だ…あいつを斬るのは、騎士の掟に反する!」

 

「掟!?」

 

 

 

『そう。魔戒騎士には掟が存在するのよ。重要な掟を破ると、最悪寿命を削られたりすることだってあるわ。文字通り、絶対的なルールってものがね』

 

「そうなんですか!?」

 

「そ。だけどこの程度なら、素手でも何とかなる!」

 

 

「なめやがって…よくわからねえがテメェらが邪魔すんなら、全員ぶっ倒してやる!」

 

下っ端は刀を構えて襲ってきた。

 

 

―――――――――

 

 

「オラオラオラ!大したことねえな!4人がかりでその程度か!」

 

 

下っ端との戦い、思ったよりも苦戦している。

 

 

「こいつ、本当に人間か!?」

「くっ!何であいつ、あんなに強いのよ!」

「ううう…強すぎるです……」

 

下っ端は思ったよりも強い。

 

素手とはいえ、魔戒騎士の攻撃にもある程度対抗ができるレベルだ。

 

 

そして…

 

「そこの黒尽くめの色男!テメェにはこいつをプレゼントだ!」

 

 

俺の周囲には雑魚のモンスターが20体出現。

 

 

しかも、同時に汚染状態になった。

 

 

 

「ちっ!鬱陶しい!」

 

俺はコートの袖から魔戒剣を出す。

 

 

「シルヴァ!モンスター相手なら問題ないな!」

 

 

『ええ!思う存分暴れなさい!』

――――――――――

 

「へっ!あの色男は追い払えたし、さっさと叩き潰してやるぜ!」

 

不適に笑う下っ端。

 

 

「どうして…ここまで差ができてるの…?」

 

「決まってんだろ!ゲイムギョウ界のシェアの殆どはもうマジェコンヌのものだ!テメェ

ら女神に味方する連中はこの世界には殆どいねえ!」

 

 

 

下っ端が強い理由。

 

その理由は、ゲイムギョウ界のシェアの殆どがマジェコンヌの物になっていたのが理由だった。

 

特にプラネテューヌのシェアの低下は著しく、女神であるネプテューヌが敗れたこと、候補生のネプギアが女神化できないなどの情報が知れ渡り、シェアが急速に弱まった。

 

そのため、今のネプギアの力は救出された頃よりも低下していた。

 

 

「私のせいだ…私が………女神の力を使えなくなったせいで…」

 

自分が調子を戻せていない。

 

 

それがこの現状につながっていることを理解したネプギアはショックを受けてひざをつく。

 

「ん?そうか、お前がプラネテューヌの女神候補生か」

 

 

下っ端はネプギアの方を向く。

 

「お前が雑魚なお陰で、アタイ達犯罪組織が大手を振っていられるんだ。感謝してるぜ、クソチビ女神」

 

 

 

 

 

 

 

 

すると、下っ端にモンスターが激突し、吹き飛ばされる。

 

 

「うわっ!?」

 

吹き飛ばされた下っ端は飛ばしてきた相手…零夜を睨んだ。

 

「何してんだテメ…!?」

 

 

その先にいたのは、零夜…そして消滅したモンスターの塵だけである。

 

 

「テメェ…まさか汚染されたモンスターを全部倒したのか!?」

 

「………黙ってろ、この下っ端」

 

 

零夜の威圧感に驚く下っ端。

 

 

「零夜!」

 

 

アイエフが零夜に声をかける。

 

「零夜はネプギアをお願い!コンパ、行くわよ!」

「はいです!」

 

 

 

――――――――――

 

ネプギアは目の前の光景を見て、あの時の戦いを思い出した。

 

目の前で戦っている女神達。

しかし、戦っている『二人』の敵には届かない。

 

白い羽が女神達を切り裂く。

 

 

ボロボロになっていく姉。

 

その状況に足が震え、泣き叫ぶことしかできない。

 

 

「私は…何もできない…」

 

あの時と同じ、何もできない役立たず。

 

 

その思いがネプギアの心を支配した。

「なんで…私なんかが…」

 

 

すると、目の前に零夜が立つ。

 

「……ネプギア。君はそこで止まっちゃうの?」

 

 

いつになく冷たい目をする零夜。

 

「…無理ですよ。女神の力を使えない私なんて…あの時、アイエフさん達だって、こんな私を助ける必要なんてなかったんです…」

 

 

泣きながら零夜に話すネプギア。

 

「私なんて…戦いでも足を引っ張るばかりですよ…」

 

 

零夜のコートを掴みながら涙を流す。

 

 

「こんな私なんて…最初からいなければよかったんです…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ネプギア」

名前を呼ばれ、顔を上げるネプギア。

 

目の前には、真面目な顔をした零夜。

 

 

その手がネプギアの涙を拭う。

 

「え?」

 

 

「助ける必要がない…?そんなわけがないだろ」

 

まっすぐにネプギアの目を見つめる。

 

 

「あの日、ネプギアが言ってくれたんだぜ。旅についてきてほしいって。あの時、本当にうれしかった」

 

 

ゆっくりと語る零夜。

 

「師匠としか今まで旅をしてなかったからさ、一緒にこうやって…賑やかな旅をする仲間ができたのは、最高に嬉しいんだ…だからさ」

 

ネプギアに優しく語り掛ける。

 

 

「大事な仲間だからこそ、俺はネプギアに笑顔でいてほしいんだよ」

 

「…どうして…そこまで戦えるんですか?」

 

ネプギアは零夜に聞きたかった。

 

 

何で、こんなにボロボロになった世界を救おうとしてくれるのか。

 

 

彼は本来この世界とは関係のないはず。

 

 

 

 

「決まってるでしょ…」

 

零夜は懐から魔戒剣を取り出す。

 

 

「俺は魔戒騎士。人々を守るための剣である『守りし者』だ。だけど…そんなことは関係ないよ」

 

話しながら魔戒剣を見つめ、言い切る。

 

「俺が戦うのは、この世界が好きだからだ!この皆の幸せを守る力があるのなら、俺はその力を、この剣を振るうだけだ!」

 

零夜はネプギアに手を差し伸べた。

 

「守りたいから守る。その心は、魔戒騎士も、人も、女神も、関係ない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「自分の心に従って前に進む。それが『俺達の掟(ルール)』だ!」

 

 

零夜は走り出す。

 

 

自分の心に従うために…

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――ZERO―――――

 

 

次回予告(ナレーション ネプギア)

 

最初は憧れでした。少しでもあの人に近づきたいから。

 

でも、ようやく思い出しました!

 

何をしたいか、何を守りたいのか!

 

これが私の…!

 

Next ZERO『変身―CHANGE―』

 



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第4話 変身―CHANGE―

お待たせしました、第4話です!

今回はネプギアのターン!

オリジナルの必殺技も登場します!

感想、評価もよろしくお願いします!


零夜が自らの考えをネプギアに話していた頃、アイエフとコンパの二人は、下っ端の攻撃に苦戦していた。

 

「やっぱ大したことねえな!」

 

笑う下っ端だが、後ろから殺気を感じて避ける。

 

 

そこには、拳を振り下ろした零夜がいた。

 

「ちっ!外したか!」

 

 

因みに、殴られた地面は陥没していた。

 

「て、テメェ!今殺す気で殴ってきたろ!」

 

 

「は?馬鹿言うなよ。精々ちょっとデフォルメっぽいタンコブを作ろうとしただけだって」

 

笑っている零夜だが、目は笑ってない。

 

 

「くっそ!なら、テメェはこいつらの相手でもしてろ!」

 

下っ端は赤いCDを取り出し、それを地面に叩きつけて割った。

 

 

 

すると……割られたディスクの破片一つ一つから黒い『闇』が現れ、それはやがて形を成して…

 

 

 

 

 

40体近くの素体ホラーに変化した。

 

「ホラーだと!?」

 

「ホラー?なんだそりゃ?」

下っ端はどうやら、ホラーの存在を知らないようだ。

 

「こいつは犯罪組織が開発した、新種のモンスターを召喚できるディスクだ!」

 

 

「そういうことね…零夜!そいつは任せるわよ!」

 

「ああ、任せとけアイエフ!」

 

 

零夜は袖から魔戒剣を引き抜く。

 

『油断しないで、ゼロ!素体とはいえ、この数よ!』

 

 

 

「わかってるさ…」

 

零夜は魔戒剣を構えて走り出す。

 

――――――――――

 

零夜は悪魔のような怪物…ホラーの群れを切り裂いていく。

 

ふと、ネプギアは昔のことを思い出す。

 

 

彼女が始めて『変身』した日のことを。

 

「さすがネプギア!もう変身できるなんて私の妹だけあるね!」

 

 

 

彼女の姉であるネプテューヌはまるで自分のことのようにネプギアを褒める。

 

「まだまだだよ…だって、十分にコントロールができてるわけじゃないから…」

 

 

自己評価が低いネプギア。

 

彼女を励まそうとしているのか、それとも嬉しいだけか、ネプテューヌは言葉を続ける。

 

 

「十分に凄いって!だって、候補生の中で変身できたのはネプギアが最初なんだよ!やっ

ぱり私の人徳かな~?」

 

 

それはないだろう。

 

ともかく、ネプテューヌはハイテンションになって喜んでいる。

 

 

「私は…お姉ちゃんに憧れてたから、お姉ちゃんみたいになってみたいと思ったんだ…」

 

その言葉にネプテューヌはますます喜んでいる。

 

 

「憧れがここまでくるなんて…お姉ちゃんは嬉しすぎるよ!」

 

 

大喜びのネプテューヌだったが…

 

 

 

 

 

「でもね、ネプギア。それだけじゃまだまだだよ」

 

 

「え?」

 

ネプギアが見た姉の表情。

 

 

それはいつものような陽気な顔ではなく、女神化した時のような凛々しく、まっすぐな瞳。

 

「女神の力は…多くの人々を守るための力。皆の命を、明日へ、その先へと繋ぐための力なんだよ」

 

まじめな表情の中、優しい笑みを浮かべる。

 

 

「これから、ネプギアは沢山迷うかもしれない、傷つくかもしれない。だって、ネプギアは真面目で優しいもん…だけど、迷ったときは思い出して」

 

 

ネプテューヌは女神…『パープルハート』の姿に変身し、そっとネプギアの頭を撫でる。

 

「私への憧れでここまで来たのは嬉しい。でも…何年かかってもいい。必ず、貴女だけの

戦う理由を見つけなさい」

 

「戦う…理由?」

 

 

「ええ。貴女なら見つけられるわ」

 

 

そのときの姉の優しい表情を思い出し、、ネプギアの心に一筋の光が差し込んだ。

 

 

「そうだった…思い出した…」

 

 

ネプギアはゆっくりと立ち上がる。

 

 

「最初は…お姉ちゃんへの憧れだった…」

 

 

 

ネプギアは拳を握る。

 

「ようやくわかった…私だけの守る理由、戦う理由!」

 

 

薄っすらと、ネプギアの体が輝き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっそ!多すぎるだろ!」

 

零夜はホラーの群れに苦戦していた。

 

 

『さすがにこの数は厄介ね…ゼロ!』

 

 

長い戦いの中、零夜の集中力が一瞬途切れる。

 

 

すると、後ろから素体ホラーが飛び掛ってきた。

 

「!」

 

 

とっさにガードしようとするが、ホラーの爪が腕に刺さり、痛みから魔戒剣を手放してしまう。

 

「ぐうう!?」

 

 

その隙を見逃すことなく、ホラーが上に乗り、零夜を食らおうと迫ってきた。

 

「ギシャアアアアア!!!」

 

 

「くっ…!」

 

大口を開けて迫るホラー。

 

 

一瞬死を覚悟した零夜だが…

 

「はあああああ!!!」

 

 

紫の刃がホラーを弾き飛ばす。

 

「!」

 

 

零夜は持っていたもう一本の魔戒剣でホラーの首を切り落とす。

 

ホラーが消滅すると、先ほど零夜を助けた人物がわかった。

 

 

「……ネプギアちゃん」

 

「…零夜さん。私、ようやくわかりました」

 

 

ネプギアは目を閉じて話し始める。

 

「私が、この力を使う理由。それは…!」

 

 

 

 

 

「私が大好きなこのゲイムギョウ界を!この世界の人たちを守りたい!他でもない、この私自身の力で!それが、私の戦う理由です!」

 

ネプギアの全身が輝く。

 

 

「だから、見ててください、零夜さん!」

 

ネプギアの体が光に包まれ、晴れると…

 

 

全身が真っ白な衣装となり、その背中には機械的な翼が付いていた。

 

そして、手には万能銃剣『M.P.B.L(マルチプルビームランチャー)』が握れていた。

 

光が収まり、ネプギアは着地すると目の前のホラー、そしてその先にいる下っ端へと水色の瞳をまっすぐに向ける。

 

 

「女神ネプギア、ここに参上です!」

 

 

――――――――――

 

「…ハァ!?聞いてねぇぞ、女神の力が戻るなんて!?」

 

 

ネプギアが女神化したのを見て、余裕を失う下っ端。

 

「…あなたがゲイムギョウ界を破壊するのなら…私は、この世界を守るためにあなたをここで倒します!」

 

MPBLを構え、叫ぶ。

 

 

「へっ!女神候補生とはいえ、こっちにはシェアの力とモンスター共の力があるんだ!?」

 

シェアの力があることを思い出し、余裕の表情を取り戻す下っ端。

 

 

しかし、その考えも虚しく下っ端はネプギアの攻撃を防ぎきれずに吹き飛ばされる。

 

「ハァ!?どういうことだ!?プラネテューヌのシェアなんてもう搾りカス同然のはずだろ!?」

 

ネプギアの予想外の強さを信じられずに下っ端は叫ぶ。

 

 

「……この力は、私だけの力じゃない」

 

 

ネプギアの後ろにはアイエフ、コンパ、零夜の3人がいる。

 

 

「アイエフさん…コンパさん…零夜さん…そして、この世界を救いたいと願っている人たちの力です!」

 

「ちっ!」

 

 

下っ端は舌打ちするとホラーに叫ぶ。

 

「おい!そいつら適当に潰しとけ!」

 

 

そう言って下っ端は姿を消す。

 

「ネプギアちゃん!ここからは俺も参戦するぜ!」

 

 

 

「零夜さん…はい!」

 

 

 

零夜は魔戒剣を同時に掲げ、空中に召還の陣を描いた。

 

 

すると、二つの陣が重なり、中から絶狼の鎧が現れて零夜の体を覆う。

 

 

「さて、始めますか」

 

「はい。女神と騎士の、演舞を!」

 

 

――――――――――

 

迫ってくる素体ホラーの群れ。

 

ネプギアは攻撃をかわしながら時に銃撃で足を潰し、斬撃でダメージを与える。

 

「グギャア!!」

 

悲鳴を上げ、空中で無防備になるホラー。

 

 

それを、銀牙騎士は見逃さない。

 

「ハアアアアアアッ!!!」

 

 

ゼロによって空中で切り刻まれ、封印されるホラー達。

 

 

残すところ、ホラーは残り5体。

 

 

「決めるよ、ネプギアちゃん」

 

 

「はい!」

 

二人は同時に走り出し、鮮やかな連携攻撃をホラーに放つ。

 

 

「音速銀牙剣!ギャラクシーエッジ!」

 

 

 

「ハアッ!テヤアアアアア!!!!」

 

 

 

流れるように素早い斬撃がホラー達にダメージを与え、零夜は銀牙銀狼剣をホラーに投げつける。

 

 

ネプギアのとどめの一撃がホラーを吹き飛ばし、銀牙銀狼剣がホラーをすべて真っ二つにする。

 

二人の合体技によって、肉体を失ったホラー達はすべてゼロの銀牙銀狼剣に封印された。

 

着地すると同時に、ネプギアは変身を、零夜がゼロの鎧を解除する。

 

向き合った二人は互いに微笑む。

 

 

「零夜さん、さっき言いましたよね?」

 

「?」

 

 

 

 

「魔戒騎士は、人々を守るための剣、『守りし者』だって」

 

「…ああ、言ったな」

 

 

 

 

「それって……私も同じように、名乗れるでしょうか?」

 

 

すこし考えた零夜は話す。

 

 

 

 

「………いいんじゃない?人を守る力を持ち、その覚悟もできているなら、ネプギアちゃんだってある意味『守りし者』だと思うぜ?」

 

 

 

 

この日、彼女は今までで一番の笑顔を見せた。

 

 

 

 

 

 

―――――ZERO―――――

 

次回予告(ナレーション アイエフ)

 

 

ゲイムキャラは無事だったし、ネプギアも復活したりといい事が続くわね。

 

って零夜!どこに行くのよ!?

 

 

…え?ラステイションに行くのは明日にしてほしい?

 

 

…ど、どうして心臓が止まってるの!?

 

 

Next ZERO 『契約―CONTRACT―』



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第5話 契約―CONTRACT―

お待たせしました、第5話です!

今回でプラネテューヌのゲイムキャラ編は終わりとなります。


あと、今回は気になっていた『魔導輪との契約』についてのストーリーとなります。


感想、評価を待ってます!


ネプギアが女神としての力を取り戻した。

そのことに喜んでいたのはアイエフとコンパの二人。

 

「やったわね、ネプギア。また『変身』できるようになって」

「かっこよかったです、ギアちゃん!」

 

ネプギアは変身を解除した。

「そんな…私が力を取り戻せたのは、皆さんのおかげです!ありがとうございます!」

ネプギアは、この力をゲイムギョウ界を救うために使っていこうと誓った。

 

 

「それにしても…犯罪組織がホラーを従えてるとは、ずいぶんと厄介なことになったな」

 

零夜のその言葉に表情が暗くなるネプギア達。

 

 

「これから…どうすればいいんでしょうか?」

(………なら、私が力を貸しましょう)

 

突然、どこからか声が聞こえる。

全員が振り返ると、そこには先ほど守りきった『ゲイムキャラのディスク』が光っていた。

 

 

「もしかして、ゲイムキャラさんですか!?」

(その通りです、プラネテューヌの女神候補生…私が、プラネテューヌのゲイムキャラです)

どうやら、ゲイムキャラの意識が表に出てきたらしい。

 

「じ、実は私たち、ゲイムキャラさんにお願いしたいことがあって…」

 

 

ネプギアは慌てて説明しようとするが…

 

(説明には及びません。貴女と、そこの白銀の騎士の戦いを見て、私はゲイムギョウ界の現状を理解しました)

ゲイムキャラは説明を始める。

 

 

(ゲイムギョウ界を支えるために眠りについたはずの私たちが目覚めている。それこそがゲイムギョウ界に大きな危機が訪れいている証なのです)

突然、ネプギアの前に光が集まる。

 

「え!?こ、これって一体!?」

 

 

(大丈夫ですよ)

 

ゲイムキャラが語りかけてくる。

 

 

(私自身はこの場から動くことはできませんが、私の力を貴女へと託します)

 

光は1枚のディスクに変化する。

「これは…?」

 

(それが『パープルディスク』…プラネテューヌに眠る力の結晶です)

 

 

ネプギアはそっとパープルディスクを手に取った。

(これから、ゲイムギョウ界をよろしくお願いします)

 

「はい!必ず、ゲイムギョウ界を救って見せます!」

 

 

ネプギアは強くうなずいた。

 

「やったわねネプギア。これでゲイムギョウ界を救う第一歩を踏み出せたわ!」

「やったです、。ギアちゃん!」

(…ところで、そちらにいる男性は…?普通の人間とは何かが違うようですが…?)

 

 

「…やっぱり、分かるんだ」

 

零夜は黒コートを翻す。

 

 

「俺は轟雷零夜。まあ、俺が探しているのはさっき出てきたモンスター…ホラーって奴らだ」

 

零夜は真剣な表情で尋ねる。

 

 

「ゲイムキャラさん。古のゲイムギョウ界にもホラーがいたって話は無かったか?」

(……いえ、あのようなモンスターは過去のゲイムギョウ界には存在しませんでした)

 

ゲイムキャラの言葉に、零夜は心の中で考える。

 

 

(やっぱりホラーがゲイムギョウ界に来たのはつい最近。やっぱり犯罪組織の裏に指揮をとっている何者かがいるのか…)

 

すると、ゲイムキャラが言葉を続けた。

(私は、再び眠りにつきたいと思います)

「ど、どうしてですか!?」

 

ネプギアは驚く。

何せ、先ほど目覚めたばかりなのに、もう眠りにつくというのだ。

 

 

(パープルディスクに持てる力を全て注ぎ込んだので、今の私には力がもう残ってないのです……なので、再び眠りについて、力を蓄えようと思います)

ゲイムキャラは光を放って消えていく。

 

(では…ゲイムギョウ界をよろしくお願いします)

 

 

そういい残し、ゲイムキャラは姿を消した。

 

「…どうやら、再び眠りについたみたいね」

アイエフは光が消えたことを確認してつぶやく。

 

「…さて、プラネテューヌに帰りましょう」

「そうです!今日はギアちゃんの完全復活のお祝いです!」

「いいね!みんな、今日は特別に奢るけど、ケーキ食べたい人、手ぇ挙げて!」

 

 

「「「じゃあ、よろしく(お願いします)(です)!」」」

 

 

その後、この1週間のクエストで零夜が稼いだお金はスッカラカンになったという…

 

 

 

――――――――――

 

プラネテューヌの教会

 

零夜たちはゲイムキャラの協力を得られたという報告をイストワールにしていた。

 

「そうですか。ゲイムキャラの協力が得られたようでなによりです」

「はい。それだけじゃなくネプギアも女神の力を取り戻しました」

 

 

アイエフが報告を続ける。

 

「それは本当によかったです!ネプギアさんもようやく本調子に戻ったみたいで何よりですよ!」

そして、話は次に訪れる国…ラステイションの話となる。

 

 

「予定では、明日の朝にプラネテューヌを出発する予定です」

 

 

 

 

 

すると、やや小さく手を挙げる男が一人。

 

零夜だ。

 

「どうかしたの、零夜?」

 

 

「あ~、うん。非常に言い辛いんだけど…」

 

零夜はやけに言葉を濁しながら言う。

 

 

 

 

「明日一日、俺動けないんですよ」

 

 

 

「「「「動けない!?」」」」

 

 

――――――――――

 

翌朝、零夜の部屋の前に立ってドアをノックするネプギア。

「零夜さん?」

 

 

ネプギアがノックをするが、返事が返ってこない。

 

「まだ寝てるんですか…?」

本来、零夜はもっと早く起きて朝のランニングをしているはずだ。

 

そっと扉を開けると…

 

「寝てるみたいですね…」

 

ベッドの上で目を閉じている零夜の姿。

「そろそろ起きてください、零夜さ…」

 

ネプギアは零夜の体に触れたとき、嫌な感触がした。

 

 

冷たいのだ。体がとても。

 

まるで、命を失ったかのように…

 

 

「れ…零夜さん?」

 

ネプギアは嫌な予感がして彼の心臓に耳を当てるが…

 

 

 

 

 

心臓は止まっていた。

 

 

 

 

「これ…どういうこと?…」

 

 

ネプギアはその場から離れ、コンパとアイエフ、イストワールを呼びに行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「起きてください、零夜さん!」

 

コンパが話しかけるが、零夜の心臓が止まっているまま。

 

 

「これってどういうこと…?」

パニックになりかけているアイエフ達だったが…

 

 

『落ち着きなさい。私から説明するわよ』

 

零夜の首にかかっているシルヴァが話しかけてきた。

 

「シルヴァ?」

『ネプギア。心配しなくてもゼロは明日の朝には目を覚ますわ』

「明日の朝には…?」

 

いつも通りの声色で話すシルヴァに落ち着きを取り戻すネプギア。

 

 

『今日は三日月の夜。私とゼロの間に交わした、魔導輪の契約の日よ』

 

シルヴァの言葉に首をかしげるネプギア達。

 

「契約の日?それってどういうこと?」

アイエフが代表で質問をする。

 

『私達魔導輪は、人間との共存を希望している。それは知ってるわね?』

「ええ。零夜さんが以前話してくれましたから。シルヴァさんは人との共存を望む味方のホラーだって聞きましたです」

 

『そうよ。でも、私は人の命を好むホラー。その性質はどうしても変えようがない。だから、魔導輪を持つ魔戒騎士は、その魔導輪と契約を交わすの』

 

「契約…それって何ですか?」

 

 

『一ヶ月に一日、魔導輪は騎士の命を貰う。その一日分の命が、魔導輪の一か月分の命になるのよ』

 

その言葉に、ネプギアがきょとんとする。

 

 

『要するに、魔戒騎士は一ヶ月に一日、魔導輪に命を捧げる為に仮死状態になる。まあ、実際にゼロは心臓が止まってるけど、明日になれば普通に行動できるはずよ。そして丸一日食べた命が、魔導輪の一か月分の力へと変わる』

 

「なるほど…でも、騎士に払われる対価は?」

 

 

『勿論、魔戒文字の解読やホラーの情報、弱点の察知、あとホラーを探査したりね』

 

大体のことは理解できた3人。

 

 

「なるほどね。だから昨日は動けないって言ってたわけ」

 

 

『そうよ。ゼロを連れて行くなら、今日のうちに色々忘れ物がないか、確認したほうがい

いんじゃない?』

 

 

 

――――――――――

 

その頃、零夜は夢を見ていた。

 

「これは…」

 

 

目の前に映っていた光景は、今は懐かしい『魔戒騎士の道を選んだ頃』の自分の姿。

「でやああああああ!!」

 

 

ソウルメタルでできた二本の魔戒剣で素体ホラーを倒している零夜。

あの頃の彼にはまだ鎧はなかった。

 

「お、なかなかやるねぇ」

 

 

不敵な笑顔を見せてきたのは、今零夜が来ているコートに酷似した魔法衣を着た男。

年は20代後半辺りだろうか?穏やかな表情の中に強さを感じる男だった。

 

 

「師匠…まだまだですよ。兄貴は、もっと大変な目にあっている。俺にできるのは、一刻も早く助けに行くこと…」

 

すると、師匠は零夜にデコピンをしてきた。

 

 

「…!何すんですか!」

「お前なあ、気ぃ張りすぎなんだよ」

 

師匠は呆れた様な声で言うと、魔法衣から何かを渡してくる。

 

「ほれ、ゴンザから差し入れのプリンだ」

 

「ゴンザさんからですか!?」

 

俺たちは並んでプリンを食べている。

 

 

「…俺から見ても、お前の成長速度はすさまじい。鋼牙も言ってたぞ。『僅か2ヶ月でソウルメタルを完全に使いこなせる。それで十分に強い証拠になる』ってな」

 

師匠は立ち上がると、重要な話を始める。

 

「もうすぐ、最後の試練を始める。それがクリアできれば、お前は正式に『銀牙騎士』の系譜を継ぐことになる。ま、『向こうの世界での』だけどな」

 

 

 

その光景を見て、零夜はその後のことを思い出す。

 

 

 

そう。この後に零夜は試練を突破することとなり、今に至るのだ。

 

 

 

すると、目の前に絶狼が現れる。

 

 

『…お前、随分と頑張ってるみたいじゃん』

 

その声には聞き覚えがある。

 

 

「…ええ。貴方のお陰で、俺はここまで来れました」

 

その言葉に絶狼は笑う。

 

 

 

『そっか。ならしっかりと魔戒騎士の名に恥じないように生きろ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………はい。ありがとうございます、『零さん』」

 

 

絶狼…『涼邑零』は零夜に背を向けると、右手を挙げ、姿を消した。

 

 

 

――――――――――

 

翌朝、零夜は目を覚ました。

 

「ん…朝か」

 

 

『おはよう、ゼロ』

 

「おう、おはようさん、シルヴァ」

 

 

いつものように首元にはシルヴァがいる。

零夜は魔法衣に袖を通し、部屋から出た。

 

「あ、おはようございます!零夜さん!」

ネプギアがいつもの見とれるような笑顔で挨拶してくる。

 

 

「おう。確か今日からラステイションに出発するんだっけ?」

 

「はい!もうアイエフさん達も準備はできてるみたいですよ!」

二人は荷物を纏め、空港へと走る。

 

すでに空港にはアイエフとコンパが待っていた。

 

「二人とも早かったわね」

 

「まあ、荷物とかはこれ(魔法衣)に収納できるから」

 

 

「…つくづくあんたが羨ましいと思うわ」

 

 

アイエフもどうやら、魔戒騎士の秘密道具シリーズに慣れてきたようだ。

 

「さて、皆準備はいい?」

 

「はい!」

「もちろんです!」

「問題なし!」

 

ネプギア、コンパ、零夜は返事をする。

 

 

 

 

4人はまだ見ぬ大地…ラステイションへと出発した。

 

 

―――――ZERO―――――

 

次回予告(ナレーション ???)

 

 

私は、強くならなきゃいけない!

 

 

あの頃みたいに、何もできない自分は嫌だから!

 

 

証明する!私だって女神候補生だから!

 

 

Next ZERO 『―弾丸―Bullet』




次回からラステイションへと舞台が変わっていきます。

なお、シルヴァとの契約を三日月の夜にした理由は、ザルバが『新月の日』に契約したということを思い出し、牙狼の雨宮慶太監督が牙狼の前に作っていた特撮『鉄甲機ミカヅキ』に登場するメインのロボットの名前が『ミカヅキ』と『シンゲツ』だったために思いつきました。


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第6話 ―弾丸―Bullet

お待たせしました、今回からラステイション編のスタートです!

そして、ついに零夜のライバル登場…?


感想、評価がモチベーションに直結してます。

是非とも待ってます!


プラネテューヌを出発した俺たちが辿り着いたのは、『重厚なる黒の大地』ことラステイション。

プラネテューヌがどこか未来的な国だとしたら、この国は工業的と言うべきか、機械的な印象を受ける。

 

「ここがラステイション…本当に機械だらけの町なんですね!」

目をキラキラと輝かせるネプギアちゃん…まるで遊園地に来たばかりの子供のようだ。

 

 

「ギアちゃんはラステイションに来るのは初めてですか?」

「はい。お姉ちゃんからの話と、たまにラステイションの機械をお土産に買ってきてくれたりしたんです!」

 

コンパ達から聞いた話によると、ネプギアちゃんは機械弄りが趣味らしい。ちょっと意外。

 

 

「はあ~、楽しそうだな~…色々見て回りたいな~」

「落ち着きなよネプギアちゃん。今の俺達はやることがあるでしょ?」

 

すると、わかり易いくらいショボンと落ち込むネプギアちゃん。

 

 

「そ、そうですね…私達が頑張らなくちゃラステイションも、ゲイムギョウ界もなくなっちゃいますし…よし、今日はガマンしないと…」

といいつつ、ちらちらと外を見るネプギアちゃん。

「…まあ、ちゃんとやること忘れてなきゃいいか」

 

気持ちを切り替え、俺はアイエフに聞く。

「ところでアイエフ。これからの行き先は決まってるのか?」

 

「そうね…まずはギルドかしら。情報収集もできるし、クエストでシェアの回復もしないとね」

 

 

「そうだな。それに俺の財布も回復させないと」

 

その言葉を聞いて、アイエフ、コンパ、ネプギアは目を逸らす。

 

 

どうやら、一昨日俺の財布がすっからかんになった事について多少なりとも罪悪感はあるらしい。

結局、その場で全員が賛成し、俺達はギルドへと向かった。

 

――――――――――

 

 

ギルドに辿り着いた俺達だったが…

 

「受付のおっさんしかいないな…プラネテューヌの時みたいに受付が寝てるなんてことは無いみたいだけど」

 

「それだけこの国もマジェコンヌの支配を受けてるって事ね。なんかいい情報が手に入るといいけど…」

「周りに人がいないんじゃ情報も何も無いだろ」

 

アイエフは少し考える。

 

 

「そうね…私とコンパは受付から情報を集めてみるわ。零夜とネプギアはどうする?」

「なら、私お仕事を探してきます」

「じゃあ、俺も稼げそうなクエスト探してみるよ」

 

 

俺たちは二手に分かれて行動することになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

掲示板の前に立ち、俺たちは仕事を探す。

「う~ん…『危険種モンスター20体の討伐』か…」

 

やはり難易度が高いだけあって、貰える報酬がとんでもない。

 

 

懐を温かくするためにこれにするかと考えていると…

 

 

「零夜さん、何かいいお仕事見つかりましたか?」

 

「いや…この『危険種モンスター20体の討伐』にしようかなって思うんだけど…」

「き、危険種20体ですか!?流石に危ないですよ!」

 

どうやら、無茶苦茶だと思われたらしい。

 

 

「だよね。また今度にするけど、ネプギアちゃんはいい仕事見つけた?」

「は、はい…『リビートリゾートに出現するモンスターの一掃』ってクエストがありまし

たが、これにしますか?」

 

 

『そうね。4人でいくならこれが一番かもしれないわね』

 

シルヴァも賛成し、俺とネプギアちゃんは受付まで以来を持っていき…

 

 

 

 

「「「すみませ、クエストを貰いに来たんですけど」」」

 

 

「あれ?」

 

「ん?」

 

「え?」

 

 

 

俺達以外にも声がかぶる。

 

横を見ると、ネプギアと同じくらいの少女がいた。

黒髪のツインテールで、黒いワンピースのような服を着ており、黒という印象が目立つ少女だ。

 

「アンタ達もクエスト受けに来たの?」

「え?う、うん。そうだけど…」

「ふーん…大丈夫なの?まだ子供なのに」

 

「ええ!?そ、それを言ったら貴女だって子供じゃない!」

 

慌ててネプギアは少女に反論する。

 

 

「まあ、確かに二人とも俺からしたら子供だけどね」

 

 

すると、少女は顔を赤くしながら叫ぶ。

 

「だ、誰が子供よ!?アタシはいいのよ!だって超強いし。それにもっと強くなって、一日も早く追いつかなきゃいけないしね」

 

そう語る少女の目は、どこか俺達に似ていた。

 

俺やネプギアちゃんのように、大事な目標に目指して走る目だ。

 

「追いつく…って?」

 

「な、なんでもないわよ!で、アンタ達はなんでクエストなんて?」

「町の人たちを助けて、少しでも女神のシェアを回復するためだよ」

 

その言葉を聞いて少女は鼻で笑う。

 

 

「うわ、優等生発言。アンタ達って真面目なのね」

思いもしなかった言葉にネプギアは驚く。

「えええ?そ、そんな…真面目で何が悪いの!」

 

むしろ、ネプギアちゃんから真面目さと優しさを取ったらあかんって。

メカオタクしか残らないよ!

 

 

 

「あはは、ごめんごめん!同じ位の子と話すのは久しぶりだから、つい口が軽くなっちゃって」

 

「そういえば私も…同じくらいの年の女の子と話すのは久しぶりだったな。よく話するのは零夜さんくらいだったし」

 

「へえ…ねえ、アタシはユニっていうの。あんた達は?」

 

 

「私はネプギアだよ。よろしくね、ユニちゃん」

 

「俺は零夜。轟雷零夜だ」

 

 

「ネプギアに零夜ね。それにしても零夜って…ずいぶんとまた凄い服着てるのね…」

やっぱりというか、このロングコートはそれなりに目立つ代物らしい。

 

「ま、これは俺が師匠から貰ったプレゼントなんだよね。防御も下手な鎧より頑丈だし、気に入ってんだ」

 

「ふーん…まあいいわ。ねえ、折角だし、これから一緒にクエスト行かない?」

「いいのか?」

 

「そ。いっつも一人でクエストしてるからさ。たまには他の誰かと一緒に行くのもいいかなって思って」

「…うん、いいかも!一緒に行こう!」

「そうだな。人数が増えると狩りも楽になるし」

 

 

クエストが楽に終わるに越したことは無い。

 

「じゃあ、決まりね」

「そうだな」

 

ユニがメンバーに加入し、俺はアイエフとコンパを連れてリビートリゾートへと出発した。

 

――――――――――

 

 

ユニちゃんを加えた5人で俺たちはクエストの場所であるリビートリゾートに来た。

ちなみに、俺は少し後ろでシルヴァと会話している。

 

「なあシルヴァ」

『何かしら、ゼロ?』

 

「ユニちゃんのことなんだけど…妙な感じがしないか?」

『…ふうん、分かるのね。あの子からの『気配』が』

 

 

「ああ。ネプギアちゃんからも感じた『気配』…やっぱりユニちゃんが…?」

 

 

そんな話をしていると、目の前にモンスターが出現する。

 

「へえ…やっぱり水辺だけあって水生系のモンスターが出るんだ」

 

 

俺はいつもの様に袖から魔戒剣を取り出し、突撃する。

 

結果、思ったよりも大した事なかった。

ちなみに、ユニちゃんの戦い方も見たが、俺達とはまた異なる、銃をメインとした戦法を取る。

 

銃撃だけでなく、近接戦闘も中々の実力。自分で強いと言い切るだけのことはある。

 

「これで、ラスト!」

 

 

俺は魔戒剣をブーメランのように投げ、魔戒剣がモンスターを切り裂いた。

戻ってきた剣を飛んできた勢いのまま鞘に収める。

 

「中々やるじゃない、零夜」

「まあね」

 

剣を回転させながらコートの内側に収納する。

 

「何か…私達の出番ありませんでしたね」

 

「です…」

 

「ま、仕方ないわね」

 

 

後ろで完全に置いてけぼりなネプギアちゃん達。

 

 

しかし…

 

「おいおい!何ダンジョンのど真ん中でほのぼのしてんじゃねえよ!」

 

 

「「え!?きゃああああ!?」」

 

突然、アイエフとコンパが何者かの攻撃を受けて倒れる。

 

 

「アイエフさん!?コンパさん!?」

ネプギアが急いで二人の元に走る。

 

そして俺達の目の前に現れたのは…

 

 

 

 

「へっへっへ!ザコ共は先に始末したぜ。後はガキんちょと黒服!テメェらだけだ!」

 

『来たようね…下っ端』

「ちょ、ちょっと!誰よアイツ!」

 

ユニが説明を求めてくる。

 

 

「下っ端だよ!犯罪組織マジェコンヌに所属してる下っ端!」

「だーかーらー!下っ端って呼ぶな!」

 

下っ端が叫ぶ。

 

 

「マジェコンヌの手先…ネプギア、零夜。あなた達は下がってて。あんなやつ、アタシが倒して見せる!」

「ううん。私だって戦うよ。アイエフさんとコンパさんを傷つけて…許せないから!」

「同感。俺も混ぜてくれよ」

 

それぞれ、自分の武器を取り出す(俺は魔戒剣を持つが、さすがに鞘からは出さない)。

 

 

「ハッ!テメェらごとき、こいつを使えば叩き潰すことなんて…」

 

 

 

 

 

 

ホラー召喚のディスクを取り出すが、下っ端は声が出なかった。

 

 

 

なぜなら、ネプギアの体が光るだけでなく、ユニも同時に光っていた。

 

「やっぱりか…!」

 

光が収まり、二人の変身は同時に完了した。

 

ネプギアは前回と同じだが、ユニの姿は大きく変化している。

 

 

黒いレオタードと銀髪のツインドリル、緑の瞳と大きく印象が変わっていた。

 

「う、嘘だろ!?女神が二人も!?」

二人の女神が現れたことで、下っ端は混乱していた。

 

――――――――――

 

 

結論。女神候補生二人対下っ端一人。

 

当然というべきか、話にならなかった。

ネプギアの鮮やかな剣技と、ユニの正確無比な射撃に、下っ端は完封負けした。

 

 

 

「くっそ…こうなりゃ!」

 

下っ端はホラーを召喚したディスクを再び取り出す。

 

 

「!まさか、またホラーを!?」

 

 

ネプギアは警戒する。

 

「よっし!こいつらを叩き潰せ!」

 

 

下っ端はディスクを叩きつけ、砕いた。

 

 

 

が……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あれ?」

 

どういうわけか、ディスクの破片からホラーが出現しない。

「な、どうなってんだ!?」

 

 

どうやらあいつは知らないらしい。

ホラーが出現できるのは太陽が出てない場所。

このリビートリゾートは日の光を遮る物が無いのだ。

 

 

『どうやら、これまでのようね』

 

俺は魔戒剣を抜いて歩く。

 

 

「ネプギアちゃん、ユニちゃん。ちょっとこいつと話してもいいかな?」

 

「え?い、いいけど…」

「ど、どうぞ…」

 

 

俺は下っ端の前に立つ。

 

「くっそ!どうなってんだ…」

 

 

俺は下っ端を投げ飛ばし、首筋に魔戒剣を突きつける。

 

「な…!」

 

 

「いいか。質問に答えろ。お前に拒否権は無い」

 

まっすぐで冷たい目を見て、下っ端は固まる。

 

 

「このディスク…どこで手に入れた?製造場所を言え」

 

「わ、わかった!」

 

 

本気で怯えている辺り、嘘はつかないと判断するが…

 

 

 

 

 

 

「困りますね。勝手にベラベラ話されては」

 

突然、紅い光が目の前を横切った。

零夜はその方向を振り向くと…

 

 

 

 

どこか零夜に似た服装だが、全体的に露出の多いデザインの服に、紫髪のポニーテール。

様々なアクセサリーを付けており、手に持っているのは不思議な装飾の施された『筆』。

 

「アマギ…さま…」

 

 

「リンダよ。説明したはずだぞ。そのディスクは光が弱い場所でしか使えぬと」

 

 

アマギと呼ばれた女は筆を下っ端に向ける。

「シェアエナジーをほぼ独占した状態でこの体たらく…役に立たぬ手駒は死ぬか、改善して役に立とうとするかのどちらかだ」

 

「す、すみませんアマギ様!」

 

必死に謝る下っ端だったが、アマギはその筆を零夜に向ける。

 

「その服装…その筆…そうか、お前…!」

零夜は魔戒剣を引き抜く。

 

「れ、零夜さん!どうして魔戒剣を!?」

「ネプギアちゃん、ユニちゃん。悪いけどアイエフ達連れてここから離れろ」

「何言ってるのよ零夜!あんな奴私だけでj「いいから下がってろ!死にたくなければ!」!?」

 

 

ユニの言葉を今まで聞いたことの無いような怒声でかき消す零夜。

 

「ほう…どうやらそれなりに強そうだな」

 

 

「あんたを倒せる自身は無いけどな…あんた、腕利きの『魔戒法師』だろ?それも闇に堕ちた、一番ヤバイやつ」

 

アマギは筆…『魔導筆』を構え、空に紫色の光を放つ。

 

 

すると突然、周囲が夜へと変化した。

 

「結界か…」

 

 

ネプギアとユニは、周囲の光景が変わったことに困惑している。

 

「なに、これ…?」

 

すると、砕かれたディスクから5体の素体ホラーが出現した。

 

 

「な、何あれ!?」

 

「ホラー!」

 

 

アマギは魔導筆を向けると、姿を消す。

 

「またいずれ会いましょう、銀牙騎士」

「まて!…っ!」

 

 

逃げられてしまい、憤る零夜だったが、ホラーはゆっくりとネプギアたちに迫ろうとしている。

 

『ゼロ!』

 

 

シルヴァにうなずき、零夜は魔戒剣を同時に掲げ、2つの円を描く。

召還の陣から出現した絶狼の鎧を装着し、一番近くにいたホラーを銀狼剣で貫いた。

 

「零夜さん!」

 

 

絶狼の姿を見たネプギアはほっとしたように叫ぶが、ユニは突然銀色の鎧を纏った零夜の姿を見て困惑している。

 

 

「悪いが、今更素体に手ぇ焼くほど弱くねえ!」

 

空から4体の素体ホラーが飛んできたが、絶狼はホラー達の前までジャンプし、すれ違い

ざまに2本の剣で交互に切り裂く。

 

 

絶狼が着地した瞬間、ホラー達は消滅。結界も解除され、元の昼間の光景に戻った。

 

 

 

 

――――――――――

 

変身を解くネプギアとユニ、鎧を解除した零夜。

 

周囲には妙な空気が漂っていた。

 

「…ネプギア、アンタ…」

「ユニちゃん…ユニちゃんがラステイションの女神候補生だったんだね!」

 

ネプギアは目を輝かせる。

この旅の目的は、ゲイムキャラの探索だけでなく、各国の女神候補生と仲間になるのも目的のひとつだった。

 

 

「私と一緒に戦ってくれるよね?お姉ちゃんたちを助けて、このゲイムギョウ界を救うた

め…」

 

 

 

 

 

 

「触らないで!」

 

突然の怒声に、ネプギアは驚く。

 

 

「何で…何でアンタが帰ってきたの!?お姉ちゃんじゃなくて、どうしてアンタが!」

「そ…それは…」

 

突然の言葉に、うまく返せなくなるネプギア。

 

 

「3年前…アタシはお姉ちゃんに連れて行ってもらえなかった…アタシが行けば、助けられたかもしれないのに!アンタなんかじゃなくて、アタシだったら!」

 

「ご……ごめんなさい…確かにあの時、私は何もできなかった…けど、今からでもお姉ちゃんを…」

 

「うるさい!話しかけないで…もう、二度と話しかけないで!」

 

ユニはその場から走り去っていった。

 

 

「………っ」

「そ……そんな…」

 

拒絶され、ショックでその場に座り込むネプギア。

彼女の瞳に宿る感情を知り、拳を強く握る零夜。

 

 

 

暖かい日差しが眩しかったが、2人の心には悲しみの吹雪が吹き荒れていた。

 

 

――――――――――

 

次回予告(ナレーション アイエフ)

 

何か、私達が気絶している間にずいぶんと話が進んだみたいね。

 

でも、いつまでも置いてけぼりじゃないわよ!

 

 

教祖との交渉なら、私に任せなさい♪

 

Next ZERO『―蒐集―Collection』

 




お待たせしました、今回から登場した敵、女性魔戒法師のアマギです!

彼女の特徴は、後に零夜達と纏めて投稿する予定ですのでお待ちください。

これからも、よろしくお願いします!


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第7話 ―蒐集―Collection

お待たせしました、第7話です!

今回はラステイションの教会に突入。そしてそこで出会うのは…?

今回は次回に繋げるための話で、いつもより短いです。

引き続き感想、評価を募集してます!

感想が書く気力にも繋がってますので、待ってます!


ユニが抜けてしまい、4人に戻った零夜達は一度ラステイションに戻り、クエストの報酬を受け取った。

 

「はあ…」

ネプギアは、ユニが抜けてからずっとショックで落ち込んだままだ。

 

「ネプギアちゃん」

 

 

零夜は、どこからか取り出した板チョコを差し出す。

よく見ると、彼は疲れた表情をしながらも板チョコを齧っていた。

 

「ほれ。疲れたときは甘いもん食っておかないと。いくらなんでも体が持たないよ?」

「あ…ありがとうございます」

 

おずおずとチョコを受け取るネプギア。

 

「で、これからどうするんだ?」

 

一転して真面目な声でアイエフに聞く零夜。

 

 

 

 

 

………口元がチョコで汚れているため、どうにも締まらないが。

『口元拭きなさいよ、ゼロ』

シルヴァからの的確なツッコミが入る。

 

「そうね…教祖にでも話を聞きましょうか」

「教祖か…そういえばラステイションにもイストワール様のように教祖がいるんだっけ?」

 

 

「ええ………でも、あんまりいい評判聞かないのよね、ここの教祖」

 

「え?そうなんですか?」

コンパの質問にうなずく。

 

何はともあれ、教祖に会わないと話にならない。

零夜達はラステイションの教会へと向かった。

 

 

――――――――――

 

俺達がたどり着いたのは、ラステイションの教会。

 

「…失礼します」

そっと扉を開けるアイエフ達。

 

 

そこに立っていたのは、黒いスーツを着た銀髪の少年?だった。

 

「ようこそ、ラステイションの教会へ。僕がこの国の教祖、神宮寺ケイだ。僕に話があるそうだね、プラネテューヌのアイエフさん、コンパさん」

 

「え?私達の事を知ってるですか?」

 

 

「情報収集はビジネスの基本だからね。あなた達がこの国に来てからの動向は抑えさせてもらっているよ」

 

チラッとこっちを見てくる。

「当然、あなたの事も知ってますよ。轟雷零夜さん…いや、銀牙騎士・絶狼」

 

さらに、俺の首に掛かっているシルヴァを見る。

「もちろん、シルヴァさんのこともね」

 

『へえ…よく知ってるわね。ラステイションでは目立った活動はしてなかったはずだけど?』

 

シルヴァも警戒する。

 

 

「やっぱり噂どおりみたいね」

なるほどね。アイエフも警戒するわけだ。

 

「あの、私達は古のゲイムキャラを探してるんですけど…ケイさんは何かご存じないですか?」

ネプギアの質問に、ケイは少し考える動作をする。

 

「知らなくもないけど…さて、今この時、僕の持つ情報にはどれほどの価値があるのかな?」

 

 

「…何?」

 

価値…だと?

 

「そう。価値に見合うだけのモノを貰わなければ、ビジネスは成立しない」

 

 

「私達、そんなにお金持ってないですよ?」

 

「ご心配なく。金銭には不自由してないからね。だからあなた達には、労働力を提供してほしいと思っている」

「具体的には?」

 

 

 

「今、この国ではある物の開発中でね。そこに必要な材料を取ってきてほしい。聞いた事はあるだろ?宝玉と血晶と呼ばれるものなんだけど…」

 

俺とシルヴァは知らないが、アイエフは思い当たるようだ。

 

「な!?それって両方とも、超レア素材じゃない!?」

 

 

アイエフが驚くくらいだから、相当珍しいものだろう。

 

「それって、どれくらい珍しいんだ?」

「希少価値が高すぎて、まず市場には出回らない代物よ。どこで採れるかわかったもの

じゃない…いくらなんでも条件がキツすぎるわ!」

 

「そう思うなら、この話は無かった事に。僕が情報の価値を見誤っただけというだけだ」

その言葉と、勝ち誇ったような態度に腹が立った。

 

「く…足元を見て…」

 

 

悔しがるアイエフ。しかし…

 

「分かりました、探してきます。それを持ってくれば、ゲイムキャラのことを教えてくれるんですね?」

 

ネプギアが引き受けると返事をし、ケイが神妙な顔つきになる。

「それともう一つ。三年前…そして最近、ギョウカイ墓場で起こった事を教えてほしい」

 

「私達がギョウカイ墓場へ行ったことまで知ってるんですか!?」

 

「知っていたわけじゃないけど、簡単に分かる。何せギョウカイ墓場での戦いに参加したネプギアさんが今、目の前にいるんだから」

 

アイエフが目を細める。

 

 

「ネプギアの事も最初から全部分かっていたみたいね」

「どうやら、本当にすごいみたいだな。あの情報収集能力は」

 

 

「…で、ノワールは無事なのかい?どうしてネプギアさんだけがこの場に?」

 

ノワール…ラステイションの女神の事か。自国の女神を心配するあたりはイストワールさんとも共通するが…

 

 

「ノワールさんなら、お姉ちゃん達と一緒に…」

 

『ストップよ、ネプギア』

シルヴァがネプギアをさえぎる。

 

「ビジネスの基本はギブ・アンド・テイクよ。あまりこっちの情報を喋るわけにはいかないわ」

 

「そうだな。こっちにだけ情報を提供させようとするってのは、流石にマナー違反じゃないか?」

 

「…これは失礼。それでは先に、二つの材料の調達をお願いしよう。その後に、互いの情報を交換する事で」

 

ケイが頭を下げる。

 

「はい。それじゃあ失礼します」

アイエフ達が下がる中、零夜は立ち止まっている。

 

「あれ?零夜、どうしたの?」

 

 

「…いや、ちょっとケイさんと話がしたくてな。先に外で待っててくれ」

 

――――――――――

 

「………で、なんだい?話しとは」

ケイは零夜と向き合う。

 

「簡単な話、あんたと取引がしたい」

「取引?」

 

零夜はコートから、ある赤い破片を取り出す。

 

「俺の戦っている敵…ホラーに関しての情報を教える。かわりに…これだ」

零夜が出したのは、先日下っ端が使っていた、ホラーを召喚するディスクの破片だった。

 

「これは?」

 

 

「ホラー…俺が追う怪物を召喚するディスクの破片だ。これの材質、及び製造ルートが知りたい。対価は…俺が持つ『魔戒騎士』に関する情報だ」

 

ケイは暫く考えると、ディスクの破片を受け取る。

「分かった。僕も何とかして調べてみよう」

 

「交渉成立…だな」

 

お互いに笑い合う。

 

 

 

 

 

 

………因みに、この直後にケイさんが女性だと知り、俺が固まるのは正直どうでもいい話か

もしれない。

 

 

 

――――――――――

 

零夜が教会から出てきて、4人はこれからの事について話し合う。

「で、これからどうする?」

 

「アイエフさん、何か心当たりはありますか?」

ネプギアが聞いてくる。

 

 

「あったら苦労しないわよ。知ってるのは、どっかのモンスターが落とすって噂くらいよ」

アイエフもお手上げといった表情をする。

 

「じゃあ、手当たりしだいモンスターを倒して回ってみるですか?」

「気が遠くなるような話だけど…それしかないわね」

 

「そうだな…とりあえず町で情報収集もしながら、思い当たる場所に狩りに行ってみようぜ?」

 

「そうね」

 

「わかりました!」

 

「はいです!」

 

 

俺たちは近場のダンジョンへと向かう事となった。

 

…早いところ見つかればいいな…

 

 

 

―――――ZERO―――――

 

次回予告(ナレーション 零夜)

 

二つのレア素材、早いところ見つけないと…

 

って下っ端!?何でここに…

おいおいおい!?どうして鎧が召還できない!?

 

かなりのピンチだけど、突然現れたあの女の子は誰だ…?

 

 

Next ZERO 『―英雄達―Heroes』



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第8話 ―英雄達―Heroes

お待たせしました、最新話です!

現在、活動報告にて重要なアンケートを実施中です。
ぜひとも見ていってください!


感想、評価も引き続きお待ちしてます!


俺達は、ラステイションの近くにあるダンジョン、ゾーンオブエンドレスへと来ていた。

 

「ハアッ!」

魔戒剣で片っ端からモンスターを斬るが、ぜんぜん見つからない。

 

 

「498…499…」

 

暇だったのでずっと数えていたが、ついに500体斬った。

 

 

「500…全然見つかんない!」

 

「まあ、簡単に見つかったらレア素材なんて言われないわよ」

「にしても、500体だぞ!見つからないにもほどがあるだろ!」

 

俺も疲れ果て、座り込んだ。

 

 

すると…

 

 

 

 

「どうしたんだい?随分落ち込んでいるみたいだけど」

 

声をかけてきたのは、赤い髪をショートカットにした、やや露出度が高い服装の女性だった。

 

「えっと…どちらさま?」

 

「ああ、失礼。あたしはファルコム。しがない冒険家さ。ついでに言うと、困ってる人を見るとつい首を突っ込みたくなるお節介でもある」

 

ファルコムと名乗った女性は自己紹介をする。

 

 

「冒険家さんですか…なら、何か知ってるかもしれないです!」

 

コンパは思いついたように言う。

 

「そうね…どうせ、アテもないわけだし、ダメ元で聞きましょう」

アイエフも頷いた。

 

 

「俺たち、宝玉と血晶って素材を探してるんだが、見つからなくてな…」

 

「ふむ……血晶は聞き覚えないけど、宝玉なら心当たりがあるよ」

 

 

ファルコムの言葉に俺達は驚いた。

 

 

「え!?知ってるのか!?」

 

「うん。あれは確か…プラネテューヌのバーチャフォレストに棲むモンスターが落とすは

ずだよ」

 

「本当に知ってた!?」

「出来れば案内したいけど、あいにく旅の目的地が逆方向でさ。申し訳ないけど」

ファルコムは苦笑する。

 

 

「いえ、こんなに良い情報を頂けただけで十分です!」

ネプギアが笑顔で答える。

 

「よかった。じゃああたしはここで失礼するよ。…またどこかで会えると良いね」

 

 

ファルコムはそういい残して去っていった。

 

 

「まさかプラネテューヌにあったとはね」

「急いで行きましょう。だいぶ時間を使いましたし」

俺達はプラネテューヌへと急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その影を見る影が一つ。

 

「そうか…あいつら、プラネテューヌに戻るのか…覚悟しとけよ。マジェコンヌが対女神用に作り上げた秘密兵器…それにあの妙な鎧に対抗した『これ』さえあれば、テメェらなんざ怖くねえ!」

 

 

――――――――――

 

バーチャフォレストの最深部で、俺達は宝玉を落としそうなモンスター…茶色い鱗に包まれた巨大なドラゴンを見つけた。

 

「あいつかな…?」

「あいつね。みんな、準備は良い?」

 

俺達はそれぞれの武器を抜く。

 

「ところで、こいつなんて名前のモンスター?」

「あれはエンシェントドラゴン。危険種のドラゴンでもあるから気をつけて…零夜以外はね」

 

「ちょ!俺以外ってどういうこと!?」

 

 

俺のツッコミはスルーされ、戦闘が始まった。

 

「じゃ、まずは私から!」

 

アイエフがジャンプし、ドラゴンの足をカタールで切りつける。

一瞬怯んだエンシェントドラゴンだが、すぐさま爪で攻撃してくる。

 

「避けろ!」

 

俺の言葉に全員が反応し、攻撃をくらう者はいなかった。

 

 

「どりゃああああああ!!」

エンシェントドラゴンの足を斬りながら回転し、足を切り落とした。

 

「ネプギアちゃん!コンパ!」

「はい!フォーミュラーエッジ!」

 

ネプギアがエンシェントドラゴンを後ろから攻撃、さらに背中にコンパが武器の注射器を刺す。

 

『あれ、痛そうよね』

「ああ。あれはくらいたくないな」

 

シルヴァと話をしながら、俺は魔戒剣を銀狼剣に変化させ、剣を振り下ろす。

 

 

「今だ!」

ネプギアがジャンプして剣を振り下ろした。

 

「ギャアアアアア!!!」

 

悲鳴をあげるドラゴンだが、俺は銀狼剣を合体、銀牙銀狼剣へと変形させ、思いっきり投げつける。

 

 

銀牙銀狼剣は、エンシェントドラゴンの首を切り落とし、ドラゴンはポリゴンのように分解して消滅する。

 

 

「ふう…ちょっと強かったな」

 

俺はドラゴンが消滅した場所を見る。

そこには金色の宝石が落ちていた。

 

「これか?」

「ええ!これが宝玉よ!よかった、やっとひとつ見つかった!」

 

「あとは血晶だけだな。早いところ、見つけよう…」

 

すると、何者かが現れた。

 

 

「そいつは無理だな…なぜならテメェらは、ここで死ぬからだよ!」

自信満々に現れたのは、正直言って会いたくないやつだった。

 

 

――――――――――

 

「また来たか、下っ端」

そう、前回逃げた下っ端である。

 

 

「何回負けても出てくるなんて、下っ端さんは大変なんですね…」

「やっぱりどの仕事でも、下っ端さんは労働条件厳しいんでしょうか…」

『まあ仕方ないわね。下っ端って大抵戦いでの前座か、組織の新兵器の実験台とか多いんだろうし、労働条件が厳しいのは仕方ないわよ』

 

「みんな、何気にえげつないわね…ボロクソに貶してるし…」

 

 

アイエフが哀れみの目で下っ端を見る。

 

「だー!黙れ!同情すんじゃねえ!」

「で、今日はどうしたの?迷子?」

 

零夜はため息をついて質問する。

 

 

「誰が迷子だ!ふざけやがって…今日でテメェらの命も終わりだ!来い、新兵器!」

すると、下っ端の後ろから謎のロボットが5台現れた。

 

「これが切り札、M‐3カスタムだ!」

「へえ、流石に一人じゃ勝てないからホラーだけじゃなくロボットまで連れてきたか」

「時間がもったいないです!女神化して一気に決めましょう!」

 

「オッケー!」

 

 

俺は銀狼剣を天に掲げ、ネプギアも女神化しようとするが…

「バーカ。そう何度も同じ手をくらうかよ!」

 

M-3カスタムが謎の光を放ち、光はネプギアに命中する。

 

「きゃっ!?何…これ?」

「どうしたネプギアちゃん!」

 

 

ネプギアは困惑している。なぜなら…

 

 

「変身…できない!?」

「だから言ったろ!秘密兵器だって。こいつは女神の力を封じるモンスターなんだよ!」

 

零夜は銀狼剣を構えるが、下っ端はそれでも余裕そうな笑顔を見せる。

 

 

「当然、お前の対策もしてある!」

 

 

 

零夜はまさかと思い、召還の陣を描くが、霧散してしまう。

 

 

「当然、お前の対策もしてある!アマギ様の用意した切り札でな!」

 

召還できない鎧。魔戒法師のアマギが用意した切り札。

 

「…結界だな。それも対魔戒騎士用の」

「その通り!テメェには絶対に解けないぜ!」

 

 

 

自信満々に言う下っ端。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結界を構成する札を剥がさない限りな!」

 

……………ご丁寧に弱点まで教えてくれた。

 

「なるほど…札を剥がせば解けるのね」

アイエフが納得するかのように呟いた。

 

「零夜さん!私達が前に出ます!その間に結界を壊してください!」

コンパが注射器を持ち、構える。

「く…すまん!」

 

零夜は札を探そうとしたが…

 

 

 

 

 

 

 

「待てえええい!!」

突然、どこからか叫び声が聞こえた。

 

 

「だ…誰だ!?」

 

 

 

「悪に栄えた例えなし。この世の悪を滅すため、犯罪組織マジェコンヌ、蹴って蹴って蹴り飛ばす!」

 

 

突然、赤いマフラーをして少し長い青髪にゴーグルをつけた少女が現れる。

 

「女神様達の窮地に、颯爽とヒーロー登場!ゲイムギョウ界の正義の味方、日本一が来たからには、もう安心よ!」

 

少女は無い胸を張りながら、某ヒーローの変身ポーズをとるように宣言した。

 

 

「「「「『……』」」」」

 

 

他の全員が唖然としている。

 

「女神様、助太刀いたします!」

日本一はネプギアに声をかけた。

 

「え?あの…あなたは?」

 

 

「話は後!あいつを倒してからです!」

下っ端は敵が増えて警戒していたが、すぐに笑う。

 

「残念だったな!こっちには取っておきがある!」

 

 

下っ端はホラー召喚のディスクを取り出して叩き割る。

 

「また素体か…なら、鎧無しでも十分だ!」

 

 

しかし、出てきたのは素体ホラーではない。

 

 

「残念だが、こいつは特別製だ!出て来い!」

ディスクの破片から『闇』が溢れ、ひとつの形となる。

 

首に枷をはめた恐竜のような姿。

ただし、人面となっている顔が恐怖心を煽る。

「こいつは…」

 

 

 

『気をつけなさい、ゼロ!こいつは、ホラー・メタクリム!この巨体からの攻撃は厄介よ!』

 

シルヴァの忠告を聞いて零夜は距離をとる。

 

「く…名前持ちは鎧を着ないと封印できないのに…」

 

よほど弱いホラーじゃない限り、鎧を着ない限り専用の名前と能力を得たホラーは封印できない。

 

「はっはっは!残念だったな。結界を構成している札がある限り、テメェはあの銀色の鎧を使うことはできねえ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お札?これのこと?」

日本一が取り出したのは、魔戒文字が刻まれたお札…魔界符だった。

 

 

「嘘だろ!?」

「何か意味ありげにそこらに貼ってあったから、何かあると思って剥がしておいたけど…剥がされちゃまずいならトラップでも仕掛けておきなさいよ」

 

呆れ顔で日本一が呟く。

「でもサンキュー!後は俺が…!」

 

『全部蹴散らしちゃいなさい!ゼロ!』

 

 

零夜は頭上に銀狼剣を掲げ、同時に円を描く。

二つの円が重なり、絶狼の鎧が召還され、零夜の体を覆った。

 

「な、何あれ!かっこいい!狼の鎧…あれぞヒーローじゃない!正義の味方じゃない!」

「ちょっと落ち着きなさいよ!ほら、巻き込まれたら危ないわよ!」

 

日本一は絶狼の姿を見て大興奮。

 

必死にアイエフが止めている。

 

 

「…ハッ!」

一気に距離を縮め、銀狼剣でM‐3カスタムを両断。

 

「テヤアアアッ!」

 

 

銀牙銀狼剣へと合体させ、素早くM‐3カスタムへと投げる。

 

 

高速回転する銀牙銀狼剣は3体のM‐3カスタムを鉄屑へと変えた。

 

 

「うそだろ!?M‐3カスタムが一瞬で!?」

 

 

下っ端が驚いているが、絶狼はすぐに残っていた1体のM‐3カスタムを殴り飛ばし、一瞬でスクラップへと変えた。

 

『さて、後はメタクリムだけよ、ゼロ』

 

 

絶狼は銀狼剣を交差させて火花を散らせると、走り出す。

すると、メタクリムは炎を放つ。

 

「デヤアアアア!!!!」

 

 

絶狼は炎の中を走りながら、一気に突破した。

 

「ハアアッ!」

銀狼剣でメタクリムの眉間を突き刺し、メタクリムは地面に派手に衝突する。

 

「きゃっ!?」

衝撃でネプギアとコンパがスカートを抑えた。

 

着地した絶狼はメタクリムを睨み、腰を低くして銀狼剣を擦り合わせながら構え…

 

 

「フッ!」

一気に走り出し、銀狼剣を全力で振りぬく。

 

「ウオオオオオ!!」

 

 

メタクリムの右足が切断され、さらに…

 

「ハアッ!」

もう一本の銀狼剣で左足も切り落とした。

 

 

「グウウウ…グアアアア!!!」

 

突然悲鳴を上げるメタクリム。

 

見ると、絶狼が上から銀狼剣を二本同時に刺していた。

「貴様の陰我…俺が断ち切る!」

 

 

横に引き裂くように剣を振り、ジャンプ。

 

 

空中で銀牙銀狼剣へと合体させ、メタクリムの頭を切り落とした。

 

 

 

 

「グ…アアアアア!!」

 

 

 

断末魔の悲鳴を上げながらメタクリムは消滅した。

 

 

――――――――――

 

鎧を解除した零夜は、魔戒剣を下っ端に向ける。

 

「どうする?お前の切り札とやらはこの通り、俺が斬った。まだやるなら…相手するぜ?ここにいる全員が」

 

 

「畜生が…覚えてやがれ!」

 

下っ端は一目散に逃げていった。

 

「ふう…さて、後は帰るだけか」

零夜は魔法衣の内側に魔戒剣を収納する。

 

「お疲れ様です、零夜さん」

ネプギアが話しかけてきて、ポケットから飴玉を渡された。

 

 

「え?俺に?」

「はい。何か零夜さん、疲れてる顔してたので」

 

ネプギアがの笑顔に、つられて笑顔になる零夜。

 

 

「わかってるじゃん」

飴を口に放り込む零夜。

 

「すごかったよ!」

 

 

すると、日本一が話しかけてきた。

 

「さっきの変身、華麗な動き!そして決めゼリフ!鮮やかにモンスター達を倒すその強さ!君こそ伝説のヒーローかもしれないね!よかったら私と一緒に悪を倒すヒーローになってよ!」

 

 

勢いに飲まれそうになるが、

 

「う~ん…気持ちはありがたいんだけど…俺って基本、厳つい顔の鎧だし、ヒーローとは

違うんじゃない?」

 

 

ヒーローなら、兄貴の使う牙狼の方がよっぽどヒーローらしいよな。顔めっちゃ怖いけ

ど。全身金ぴかだけど。

 

 

「それより、一旦外に出ない?鎧召還すると腹減るんだよね…」

 

 

「それもそうね…一旦外に出ましょうか」

俺達は戦いを終え、一度少しの休息へと向かった。

 

 

――――――――――

 

 

次回予告(ナレーション 零夜)

 

宝玉が手に入ったし、早いところ血晶も見つけないとな。

 

え?血晶の在り処を知ってる?

 

ってあんた、もしかして…

 

 

Next ZERO『―狩りの仕事―Hunting』



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第9話 ―狩りの仕事―Hunting

長らくお待たせしました、第9話です!
前回の投稿から2ヶ月も空けて申し訳ございません!

これから、牙狼の方となるべく同じスピードで投稿していきたいと思います!


感想、評価も楽しみに待っています!


 

宝玉を手に入れた俺たちは一度ラステイションへと戻ってきた。

因みに、腹が減った俺達は現在、町の喫茶店にいた。

 

 

「あ、あの、今回はありがとうございます!おかげで私たち、助かりました!」

 

 

「いえいえ、女神様の力になるのは、正義のヒーローとして当然のことです!」

 

 

 

 

「あ、すいませーん!この『DXチョコ&ストロベリーパフェ』ください!」

 

「注文なら後にしなさい!」

 

アイエフがどこからともなくハリセンを取り出し、零夜の頭を叩く。

 

 

「…結局、あなたはどちら様ですか?もしかして、どこかでお会いしたことありました?」

「ううん?初めてだよ!」

 

 

そして、目の前の女性は改めて自己紹介する。

 

「アタシは日本一。ゲイムギョウ界の正義のヒーローよ!」

「そういえば、噂になってたです。女神達が行方不明になってから、マジェコンヌと戦っている人がいるって話。もしかして…」

 

コンパは日本一を見る。

 

「へ~。私のことも噂になってるみたいだね」

日本一は笑っているが、ふと遠い目になる。

 

 

「…でも、最近疲れてきたんだよね…ずっと戦ってきたけど、向こう側がさっきみたいな妙な怪物連れてきてから不利になってきたんだ」

 

 

「妙な怪物って…」

 

 

「お前、よく無事だったな?ホラーに襲われたら、俺らみたいな専門家がいない限り普通は死ぬぞ」

 

まさかと思い、俺は聞いてみることにした。

 

 

「お前、まさか魔戒法師か?」

 

 

「ん?魔戒法師って何?」

 

どうやら、本当に知らないようだ。

 

「いや、何でもない…」

まずは彼女の話を聞いてからでも遅くはないだろう。

 

 

「ですが、悩んでいたときに偶然、ピンチに陥っていた女神様と出会い、今この場にいるのです!」

 

日本一が目を輝かせ、ネプギアに顔を近づけた。

 

 

「女神様だって、悪を倒すために旅をしてるんですよね!」

 

「そ、そうですけど?」

 

 

ネプギアは気圧されながらも答える。

 

「お願いです!私も旅に連れて行ってください!」

「……どうする?」

 

 

アイエフが真顔で俺たちに聞いてくる。

 

 

「俺は…実力はあるみたいだし、歓迎かな」

「私も、お友達が増えるのは嬉しいです!」

 

俺とコンパは了承し、ネプギアは…

 

「…じゃあ、お願いします」

こうして、俺たちのチームに新たな仲間が加わった。

 

 

 

―――――――――

 

「さて、後は血晶だけど…何の手がかりもないわね。日本一、アンタは何か知らないの?」

 

「知らないよ!」

 

堂々と宣言する日本一に俺たちはこけそうになる。

 

「困りましたね…血晶さえ見つかれば、ケイさんたちから情報がもらえるんですが…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すまない。聞こえたんだが…君達は血晶を探してるのかな?」

後ろには見慣れない男が立っていた。

 

「そうですけど…どちらさまですか?」

「私はこの町の防衛隊のものだ。血晶なら、前に仕事で行ったダンジョンで見たことがあるけど…」

 

 

「ほ、本当ですか!?詳しく教えてください!」

 

ネプギアが食いつくが、俺は目の前の男から妙な違和感を感じた。

 

 

「えっと、教えてあげる代わりに、ひとつ頼みたい仕事があるんだけど、どうかな?」

 

その言葉に、この国の教祖の顔が一瞬浮かぶ。

 

 

「やります!何でもやります!」

「よかった、助かるよ。それじゃあ、リビードリゾートってところにいるモンスターを倒してきてもらえないかな?どうにも私たちでは手に負えなくて、困っていたんだ」

 

この男の言葉で、俺はある可能性が頭に浮かんだ。

 

 

「そういうわかりやすい仕事なら任せておいて」

 

 

 

「すぐに退治してきます。帰ってきたら情報、教えてください!」

 

ネプギア達は目的地に向かうが、零夜はその場に立っている。

 

 

「悪い、ちょっと先に行っててくれないか?すぐに要件は済ませるから」

「う、うん…」

 

 

アイエフ達が走っていくのを見て、防衛隊の青年が話しかけてくる。

 

「…君は彼女達のところに行かないのかい?」

 

 

零夜はちらっと青年を見る。

 

「…あんた、ここの教祖サマの遣い…だろ?」

 

 

「!?……何のことかな?」

 

 

一瞬動揺する青年だったが、何事もないかのように普通の表情に戻った。

「…妙にいいタイミングでこの話が出たから疑っただけさ。俺の勘違いならそれでいい」

 

零夜はコートを翻す。

 

 

「用件はそれだけだ。あと…」

 

 

「ん?」

 

 

 

 

 

「サンキューな。あんたの上司に伝えてくれ」

 

零夜は一気に走り、あっという間に姿が見えなくなった。

 

 

――――――――――

 

「あれでよろしかったのですか?」

 

青年は零夜達の姿が見えなくなったのを確認し、いつの間にか後ろにいた人物へと話しかけていた。

 

「うん。やはり彼は鋭かったけど、ほかの人はかなり単純だったね。それだけ、焦ってるのかもしれないけど」

 

 

その人物は、やはり神宮寺ケイだった。

 

「こんな回りくどいことをせずに、素直に教えて差し上げればよろしいのに」

 

 

「一方的な妥協はフェアじゃない。とはいえ材料が無いと困るのは僕らも同じこと…」

 

ケイはあることを思い出し、苦笑する。

 

 

「しいて問題点を挙げるならば…ユニにも同じ情報を渡してしまったことかな」

 

どうやら、今回も一波乱起きそうである…

 

 

 

 

――――――――――

 

零夜達はリビードリゾートへと辿り着き、青年から頼まれたモンスターを探していた。

途中、別のモンスターが何体か襲ってきたが、全て返り討ちにする。

 

「あれだね、おじさんが言ってたモンスターって!」

 

 

「おいおい…あの人、俺より少し年上くらいだったろうが…」

 

日本一の言葉にツッコミを入れる零夜。

 

「はい。早く倒して血晶のことを教えてもらいましょう!」

 

 

見つけたのは、継ぎ接ぎだらけで背中に翼があり、イルカに似た外見のモンスター。

名前はシーハンターという。

 

 

「行くぞ!」

 

コンパ以外のメンバーが一気にモンスターに向かってダッシュ。

 

 

シーハンターは零夜が危険と判断したのか、真っ先に零夜を狙う。

 

「ふっ!」

しかし、零夜は懐から取り出した投げナイフ『破邪の剣』を取り出すと、シーハンターの頭に投げつけた。

 

 

痛みで怯むシーハンターの真横にネプギアがビームソード、アイエフもカタールを取り出して挟み撃ちにする。

 

さらに日本一もレーザーソードで切りつけ、零夜は魔戒剣の片方を取り出し、切り裂く。

 

 

「今だ、コンパ!」

 

「はいです!」

 

さらにコンパが注射器から魔力弾を発射して攻撃する。

「ネプギア!とどめは!」

 

 

「わかりました!」

 

とどめに、ネプギアが上からビームソードを構え…

 

 

「フォーミュラーエッジ!」

 

ネプギアの攻撃によってシーハンターは消滅した。

 

「よーっし!お仕事終了!」

日本一がポーズをとって言う。

 

「さて、報告に行きましょう」

 

 

 

 

 

 

「あ…ちょっと待ってください!」

 

 

コンパが突然走り出すと、その先には大きいネズミが倒れていた。

「ちゅ~………」

 

「うわ、でっかいネズミね…そんなのほっときなさいよ」

 

 

「だめです!怪我してるのに可愛そうですよ…ネズミさん、今治してあげますからね」

 

コンパは治療道具を取り出し、治療を始めた。

 

 

 

それからしばらく、ネズミは目を覚ましたものの、コンパの顔を見ると彼女の名前を聞い

て、どこかへと走り去っていった。

 

 

「…そういえばあのネズミ、喋れんのな…」

 

 

後にあのネズミと自分達が面倒な間柄になるとは、このときは想像もしていなかった。

 

 

 

 

 

 

―――――ZERO―――――

 

 

 

次回予告(ナレーション シルヴァ)

まったく、今回は一言も喋れなかったわね…

まあいいわ。あら…ユニちゃんとの再会ね。

すれ違いだらけだけど、二人の絆はどうなるのかしら?

NEXT ZERO『―決闘―Duel』




魔戒指南
①破邪の剣

原作で零が使う短剣で、当たれば普通の人間を一撃で殺せるという危険な武器。
魔戒騎士の命を奪ったこともあるという危険極まりない武装だが、零夜はこれを牽制武器として使用している。
ちなみに、一撃死の力はモンスターには適用されない模様。


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