真実を追い求めし者達 (パンダンス)
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真実への扉

時間のある時に書ければいいなと考えております。
表現面等至らぬところが多いと思いますがどうかよろしくお願いいたします。


0079 11.10 ジオン公国サイド3某所ー

 

今彼らの目の前にある、彼らの研究成果はある実験で最高の結果を示していた。

この結果は彼ら研究者たちが最も望んでいたものであり、

そして、最も恐れていたものでもあった。

 

「嘘だ・・・こんなことがある筈が無い・・・」

 

この結果の前に沈黙していた者たちの一人がようやくそんな言葉を口にした。

 

「・・・そうだ!偶然だ!偶然に違いない!」

 

語気を荒げてこの結果を否定しにかかる。

 

「ねえ、皆さんもそう思うでしょう!」

 

そして周りに同意を求める、しかしその声に答える者はいない。

だが、本心としてはその場にいた他の者たちのほとんどはその声に同意したかった。

願わくばこれが偶然であって欲しい、夢であってほしい、誰もがそう思った。

だが彼らの研究者としての一面がそれを否定し、これは現実であると告げていた。

自分たちの研究は、ついに神の所業にも等しいことを為せるようになったのだと。

 

「・・・嘘だ、こんなこと、こんなことがあってたまるか、これでは人は初めから全てが・・・」

 

そう言ってある決意を目に宿した男は、操作パネルに近づく。

 

「何をするつもりだ!」

「決まっています!これを消去するんですよ!これを知るのは我々だけで十分だ!万が一にもこれが世に出れば・・・」

男が最後まで言い切るより早く一発の銃声が鳴った。一人の生者が一つの屍へと変わる。

やがて、皆一様にある男の方を見た、それは男を撃った者、この計画のリーダーであるマーキンス博士だった。

つい昨日まで共に研究に勤しんだ仲間を射殺した彼は口を開いた。

 

「諸君、我々は恐ろしいものを作り上げてしまったのかもしれない。

 連邦政府・・・いや世界そのものを壊しかねないなにかを。

 彼の言った通りこの実験の結果が世に出れば、恐らく未曾有の大混乱が生じるに違いない。

 だからと言って、言わば我々の子とでも言うべき()()()を消してしまうのはこの世の発展にとてつもない不利益となるだろう。

 そこで、一旦私は()()()の存在を隠しここにいる者のみの秘密にしようと思う。なにか異論のあるものは居るか?」

 

ほとんどが沈黙やうなずきをもって同意を示したが、

研究メンバーの一人であるサーゼルが、異論ではないがと前置きをして、質問をした。

 

「それを総帥府のやつらに気付かれないように行うことが果たして可能でしょうか?

 彼らの鼻は鋭い、決して油断していいようなやつらではありません、

 もしかするとすでにこの会話が聞かれている可能性も。」

 

問われたマーキンスは、この当然警戒すべき事項に対し即座にそれを否定する。

 

「いや、それは断じてないはずだ。」

「どうしてそう言い切れるんですか?」

「これは軍の事情に詳しい友人から聞いた話だが・・・、つい先日オデッサが落ちたらしい。」

「オデッサが!」

 

部屋の中に動揺が広がる。戦争についてよく分からないものでもその戦略的重要性は理解できる程の土地であったからだ。

 

「それでは、ジオンは地球における一大拠点を失ったというわけですか。」

「ああ、今総帥府のみならずどこもかしこもその後処理に追われている。

 そんな中で我々ですら諦めかけていた研究を気にかけるほど暇ではない、というわけだ。

 どうだ、納得できたかね。」

 

サーゼルはしばらく考え込んでいたが、やがて納得したらしく、

 

「分かりました、あなたがそこまで言うならそうなのでしょう。」

「納得してくれて嬉しいよ。それで我々はこれからどうすべきか、何か案はあるかね?我々の中で一番こういったことに詳しいのは元軍人の君だろう。」

「では・・・ここで死人をだしてしまった以上早急に死体を隠すべきでしょう。もちろん、その痕跡も。

 幸いにしてあいつは独り身でしたから上手く振舞えば消えたことには中々気づかれない筈です。

()()()を別の場所に移すのはその後で良いでしょう。」

「分かった、だが痕跡はどうにかするとして、隠すのにいい場所などはあるかね?」

「・・・そうですね。コロニーの無人区画のどこかに隠すのはどうでしょう、あそこならばめったに人も来ません。」

「ふむ、それはいい考えだ、早速取りかかろう。」

 

マーキンスが考えに同意し残りの者に指示を出し始める。

そして、彼らの会話を外で初めから、秘かに仕掛けた盗聴器で聞いていた者も動き出す。

果たして、その者が向かう先にはジオン公国総帥府があった・・・。

 

 

 

 

 

 

 

0086 5.10

 

地球連邦軍本部ジャブロー

一年戦争時には、本部としての機能だけでなく、その堅固さで何度もジオンの野望を阻んだ要塞でもある

そんな場所のとある部屋に二人の男がいた。

一人はフィリップ中将、若手ではあるが連邦軍内の派閥争いを巧みに利用し現在の地位にまで上り詰めていた。

もう一人はクライド中佐、一年戦争やデラーズ紛争において大小様々な功績をあげ現在の地位にいた。

ほとんど真逆のような生き方をする二人だが、彼らは士官学校時代からの親友であった。

 

「すっかり偉くなったね、お互い。」

「中将までいったお前のほうがよっぽどじゃないか。」

「でもそういう君だって中佐だろう。」

「まあな、本当に偉くなっちまった。でもここまでの地位になると何でも自由に動けないのが辛くてな。

 いつも士官学校時代を思い出しちまう。今よりもっと自分のしたいことが出来た気がしてな。」

「確かに、僕もそう思うよ。それにしても懐かしいなあ、あの頃は本当に楽しかった・・・」

 

少しの間二人は過ぎ去った士官学校時代に思いを寄せる。

頭脳派で世渡りの上手いフィリップと武闘派で要領が悪いクライドというまるで対照的な二人であったが、

なぜか妙に馬が合い、いつもつるんでいた。そしてその関係は今に至るまで続いていたのである。

 

「フィリップ、お前はあの頃から世渡りが上手かったよな、お前が教官に怒られなくて俺だけが怒られたことが何度あったか。

 ほとんどお前が言い出したことだったのに。」

「フフッ、そんなこともあったねぇ、でも代わりに試験前にはいつも勉強教えてあげたじゃないか。」

「それはそうだが・・・」

 

と、クライドが続く言葉を言おうとしたところで、フィリップがわざとらしく咳払いをした。

それに反応して、クライドはすぐに聞く体制に入る。長い付き合いの中でこの友人が真面目な話をしようとしているのが分かったからである。

 

「昔に浸っている場合じゃないんだ、今回君を呼んだのはある任務を引き受けてほしいからなんだ。」

「・・・俺に直々に頼むくらいだ、なにか危険な任務なんだろう?」

 

クライドがそう言うと、フィリップは少し間をおいて、

 

「ああ、下手をすると君にはティターンズとそれに反対するブレックス准将の勢力、そしてジオン残存戦力との四つどもえを演じてもらうかもしれないからね。」

 

と、ごく真面目な顔で言い放った。

これにはある程度の覚悟を決めてきたクライドもしばし絶句した。フィリップが言った三つの勢力、それは実質この世界の有力なほぼ全てであったからだ。

彼にもそのうちのどれかと全面的に対決する位の予想はしていたが、まさかこれほどとは・・・。

 

「驚いた?」

「当たり前だ!これで驚かないやつがいるわけ無いだろう!」

「・・・じゃあ断る?今ならまだ間に合うよ。」

 

この時、クライドにはこの友人がこんな風に質問してきた時にどういう答えを求めているか知っていた。

また、フィリップもまたこの友人がこう質問すればどう返してくれるかを知っていたのである。

 

「まさか、受けるに決まってるだろう。他ならぬお前の頼みだ、それが例え死んで来いという命令だとしても俺は従うよ。」

 

そしてさも当然のごとくクライドはこう返した。

これはクライドの嘘偽りない本心である、この友人のために死んでもいいと本気で思っていた。

最もこれはフィリップにとっても同じであるのだが。

 

「フフ、変わらないね、君は。そう言ってくれて嬉しいよ・・・じゃあさっそく説明に移ろう。まずは何から話そうか?」

「そうだな、とりあえず任務の目的からでも。」

「分かった、これの目的はある報告書を手に入れることだ。」

「ある報告書ねえ。それで一体何で手に入れる必要がある?」

「・・・それはね、」

 

フィリップは一呼吸を置いて、最も現実離れした言葉を最も現実味を帯びて言った、

 

 

 

「世界を滅ぼしうる力があると言われているからさ。」

 

 

 




読んでくださりありがとうございます
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また分かりにくいところ等あればできる限り答えようと思っていますのでお気軽に。


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