ストライカーズ・オーシャン【ジョジョの奇妙な冒険 Part6異聞】 (オレの「自動追尾弾」)
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プロローグ~夢~

炎に包まれた、船の機関室と思われる場所。

 

 

 

そこに、二つの人影があった。

 

 

 

一人は、左肩に「星形のアザ」が見られる大男。

もう一人は、小柄な老人だ。

 

その老人が、一抱えもあるガラスケースを掲げた。

 

 

 

なかには、ガラスケースを満たす液体と、金髪の男の「生首」が入っていた。

 

 

 

ふいに、生首の目がかっと「開かれる」と、ガラスケースは勢いよく破裂する。

生首は切断面から無数の太い「血管」を伸ばし、大男に襲いかかる。

 

 

 

生首は血管の数本を首に巻き付け、数本を突き刺すと、止めと言わんばかりに、男に突進してくる。

 

ズドン、と重い音とともに、機関室の至る所で爆発が起こった。

 

爆発した破片が男の元へ飛んでくると、男はその破片を掴み、突進してくる生首に突き刺した。

 

 

 

瞬間、機関室を大爆発が襲い、船は爆発とともに、ゆっくりと沈没した――

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「―――んぁ?」

 

気が付くと、見知った天井に窓からの陽の光が差し込んでいる。

青い髪を短く切りそろえたボーイッシュな少女―――スバル・ナカジマは上半身を起こすと大きく伸びをして、軽く目をこすった。

 

「うーん………なんだか、変な夢だったなぁ………」

 

妙にはっきりと覚えている夢の内容に、スバルは首を傾げた。しばし不思議に思っていたが、もうすぐ朝の訓練の時間になるので起きて準備をする事にした。

 

(それにしても………)

 

練習着に着替えようと服を脱いだスバルは、姿見に映った下着姿の自分の姿を見た。

 

 

 

 

 

(あの男の人、『()()()()()()』があったなあ………)

 

 

 

 

 

スバルの左肩には、夢にでてきた大男と同じ『星形のアザ』が見えていた――

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

《古代遺物管理部機動六課》

スバル・ナカジマの所属するこの部署は、旧文明の遺物『ロストロギア』を回収することを目的とした部隊である。

ロストロギア『レリック』に関した事件を発端に起こった大規模な事件、通称『JS事件』から約半年、1年間の試験運用期間終了を間近に控えたある日、高町なのは分隊長率いる『スターズ分隊』は、部隊長『八神はやて』に呼ばれ、部隊長室に来ていた。

部隊長室にははやての他にライトニング分隊隊長であるフェイト・T・ハラウオン、そして、部隊長補佐リインフォース(ツヴァイ)がいた。

 

「…捜索任務?」

「第97管理外世界に…ですか?」

 

着いて早々、はやてから告げられた内容を聞き返すスバルと、相棒のティアナ・ランスター。彼女らに告げられたのは、なのはやはやて達の故郷でもある次元、第97管理外世界、またの名を『地球』へのロストロギアの捜索任務であった。

 

「うん。みんなに探してほしいんは…」

 

そう言いながらはやては、コンソールを操作し、全員の前に画面を出す。画面には、古めかしい『石の矢』が映し出されていた。

 

「この『矢』なんやけどね、数日前に『聖王教会』から盗まれたものなんよ。」

「聖王教会から……!」

 

はやての話を聞き、スバル達は驚く。

 

「この矢、かなりの曰くつきでなあ………まあ、ロストロギアなんて大抵は「曰く」が付き物なんやけども………」

「数年前にこの矢を見つけた時、教会の人が2人、矢の「鏃」で手に怪我をしたんだけど、その後、二人は原因不明の病気に感染して死んじゃったんだ…」

 

はやてに次いで話すフェイトの説明に、息をのむ3人。

 

「二人は全身に水泡のような腫瘍ができて、四十八時間以内にトマトソースのようになって死亡したって報告があった。医師団は『矢』でついた傷口から血液に『なにか』が入り、二人にウイルスを感染させたんじゃないかって断定したそうだよ。」

「うげ………」

 

思わず顔をしかめるティアナ。なのはとスバルも、顔をしかめていた。

 

「しかも、二名中一名は、信じられない事に意識のない状態で突然、指先からスタンガンのような火花を放電し、治療する医師の指を焼き切ってしまったって報告も残っている…

この事件から、この『矢』には『人の肉体を変質させる』力があるのではと考えられて、ロストロギアとして認定されているんだ…」

 

フェイトの話を聞き、黙り込む3人。ふと、ティアナはある事に気が付いた。

 

「…ちょっと待って下さい!その矢が盗まれたって事は、盗んだ犯人は…」

「うん、『矢の使い道を知っている』可能性が高いねん!そして、どう言う訳か犯人は、わざわざ足取りを『残しとる』!」

 

はやてはそういうと、再びコンソールを操作し、画面を切り替える。

切り替わった画面には、三つの映像が映し出されていた。

 

一つは顔写真で、網のようなものの付いた帽子をかぶり、顔に奇抜なメイクをした若い男のものだ。

 

後の二つは、多分監視カメラの映像と思われるもので、写真の男が写っていた。

 

「男の名前は『オエコモバ』!爆破テロをいくつもの世界で起こしたテロリストや!何故こいつが矢を盗んだかは本人を捕まえてから聞けばいいとして、やつはわざわざこれを残したうえに、行き先も既に分かっている!しかも!向かった先は管理局にとって重要な場所で、97管理外世界にいくつかある『魔力溜まり』ポイントの一つなんや!」

「魔力溜まり………」

 

はやての言葉に、スバル達は気を引き締める。

 

「あと、あまり公表はされていないが、97世界では2年前、小規模の『次元震』が観測されとる………関連はあるかわからないけれど、念のために頭にいてれおくように。」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

いつの時代も、昼休みの学食とは賑やかなものである。特に女子校ともなれば、尚更の事であろう。

『第97管理外世界』は日本の麻帆良学園では、一棟が大きな学食棟となっており、そこの一席では、2人の女生徒が向かい合って昼食をとっていた。

 

「………ん?」

 

向かい合っていた2人のうち1人は、震えた携帯電話を開くと、受信したメールの内容を見た。もう1人の眼鏡の女生徒は、彼女の表情が変化したことに気づき、聞いてみた。

 

「ん?どうかしたか?」

「いや、なんかオヤジが、近いうちに日本(こっち)来るらしい。」

 

その答えに、眼鏡の女生徒は怪訝な顔になった。

 

「本当かそりゃ?なんでまた………?」

「そこまでは書いてないわ。まったく、来るのはいいけど、いつも突然なのよねぇー、あのオヤジは………」

 

少女はウンザリしたように言う。すると、眼鏡の女生徒は、少し顔を曇らせた。

 

「………それでも、会えるのは今だけなんだから、話せることは話したほうがいいぞ……?」

「あっ………」

 

少女はしまった、と慌て、眼鏡の女生徒に謝る。

 

「ご、ゴメン千雨、アタシ………」

「いや、気にしなくていいぞ?私が余計な気使われるの嫌なの、知ってるだろ?」

「けど………」

 

千雨と呼ばれた眼鏡の女生徒はそういうが、もう一人の少女はだけど、と言いよどむ。すると、彼女の背後から3人の女生徒が近づいてきた。

 

「やっほージョジョ!」

「隣、いいアルカ?」

「あいあい♪」

「うお!?お前ら………」

 

3人の女生徒はそれぞれそう言うと、ドカドカと空いていた席に座り始めた。

 

「ねえジョジョに千雨ちゃん、聞いた?来週、新しい先生が来るんだって!」

「え?そうなのか?確かに高畑先生って、何だか出張が多いし、ちょうどいいとは思うけど、イキナリだな………」

 

千雨はそう言うが、ジョジョと呼ばれた女生徒はムキになり、

 

「おい、ジョジョって呼ぶなって何度言えばわかんだよ!!」

「うぇ!?ご、ゴメン………」

「いい加減、そこは譲ってやれよ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

徐倫(ジョリーン)

 

 

 

 

 

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イギリス メルディア魔法学校

 

 

ここでは、まさに卒業式が行われていた。

そして、卒業した生徒たちは、卒業証書に書かれた修行先で修行を行い、『立派な魔法使い(マギステル・マギ)』を目指すのだ。

 

さて、その内の一人、赤毛でメガネをかけた少年――ネギ・スプリングフィールドの修行内容は…

 

「ええー!? に、『日本で先生をやること』ぉぉおお!?」

であった。

 

 

 

「こ、校長!!いくらなんでも先生なんて!何かの間違いでは!?」

 

ネギが姉と慕う女性――ネカネ・スプリングフィールドは、校長に取り合う。

確かにネギはまだ10歳である。慌てるのも無理はない。

 

が…

 

「…しかし、すでに決まったことじゃ。立派な魔法使い(マギステル・マギ)になるには、頑張って修行してくるしかない…」

 

校長は、そう答えるしかなかった。

 

「ああっ」くらっ

「あっお姉ちゃん!」

 

校長の答えに倒れかかるネカネを心配するネギと、幼なじみのアーニャ。

 

「――まあ、安心せい。修行先の学園長はワシの友人じゃからの。まあ、がんばりなさい。」

 

不安そうなネギに、校長は、優しく励ました。

 

「…はい!」

ネギは決心し、力強く答えた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

スバルは知らない。自分の『星形のアザ』の『因縁』を――

 

徐倫は知らない。自分が巻き込まれる『事件』を――

 

ネギは知らない。『黄金の意志』を持つ者たちとの『出会い』を――

 

そして、「彼女」たちは知らない。『自分たち一族』の『宿命』を――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは、一世紀以上にわたる、ディオとジョースター家の因縁の物語である…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ストライカーズ・オーシャン

【ジョジョの奇妙な冒険 Part6異聞】

 

始まります。




スバルの夢はOVA版のOPが、「矢」の被害を受けた職員は第5部が元ネタです。後、以前とは麻帆良に行くメンバーを変更しました。


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第1章 ぼくの夢は立派な魔法使い(マギステル・マギ)
#01/出席番号11番 空条 徐倫


2007年 2月末

 

第97管理外世界『地球』

 

日本 埼玉県 麻帆良市 麻帆良学園

 

『聖王教会』から『矢』を盗んだオエコモバの足取りが途絶えたこの地は、明治中期に創設され、幼等部から大学部までのあらゆる学術機関が集まってできた都市である。大きな湖の湖畔を臨むヨーロッパ風に統一されたレンガ造りの街並みは美しく、学生向けとは思えない程の充実した施設を完備されている。そのため非常に広大な敷地を有しており、毎年迷子が出るとのこと。

 

しかし、その実態は『魔法使いによって造られた街』であり、東西の『魔法使い』の生徒や教師たちが多く在籍し、街の中心にそびえ立つ魔力溜まりの巨木「神木・蟠桃(しんぼく・ばんとう)」を保護しつつ、日々、魔法の修行や学園の治安維持に従事しているのだ。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

『グリーンドルフィンストリート麻帆良』

 

このマンションの206号室は、今回の任務がどれほどかかるのか不明であるためにスバルたち六課の拠点として、麻帆良学園学園長・近衛 近衛門に提供された部屋だ。2階の角部屋を相場の半額以下の家賃で良いと言われて提供されたので、少し申訳がないとは、なのはの弁だ。

フェイトとティアナ、そして、スターズ分隊副隊長――赤い三つ編みおさげの少女ヴィータと、捜索任務のサポートとして来たリインフォースⅡと眼鏡の女性――シャリオ・フィニーノは、運んできた荷物の整理を行っていた。

 

「……ふう、とりあえず、必要な荷物は運べたかなー」

 

大き目の段ボールを置いたフェイトが、一息ついてそういった。ふと見ると、ティアナが少し不安そうな表情でいる事に気が付き、フェイトは声をかけた。

 

「……やっぱり心配?スバルが」

「……ええ。まあ、年齢的に、スバルが『適任」なんだっていう事は、分かっているんですけれど………」

 

今この場にいない相棒がいるであろう女子校エリアの方を見ながら、ティアナは心配そうに呟くのであった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

長谷川 千雨がルームメイトと共に通学路を歩いていると、そのルームメイトがふと前の方を見て声を上げた。

 

「―――お、ありゃぁ明日菜に木乃香じゃねーか。あんな所で何してんだ?」

 

千雨もそちらを見てみると、確かにそこにはクラスメートの2人が、担任の高畑先生と話しているのが見えた。よく見ると、明日菜はなぜか大荷物を抱えた『10歳くらいの男の子』につかみかかっており、木乃香はそれを止めようとしているようであった。

 

「………徐倫、早く教室に行こうぜ?」

 

それを見た千雨は何かを感じ取ったのか、つかつかと早足になりながら言う。追ってきた徐倫は声をかけた。

 

「どうかしたか、千雨?」

「なーんか知らんが、今あいつ等に関わるとロクな事が起こらない気がするんだよ………朝っぱらからトラブルに巻き込まれるのは、ゴメン被るっつーの………」

 

顔を引きつらせながら、千雨は説明した。徐倫は苦笑しつつも、それに着いていった。

 

「キャーーーッ何よコレーーーーッ!!??」

「………なあ、千雨………」

「気にするな。巻き込まれるの嫌なんだよ、私は。」

 

後ろに明日菜の叫び声が聞こえたが、気にしないようにしながら2人は教室を目指した。

 

 

 

 

 

#01/出席番号11番 空条 徐倫

 

 

 

 

 

 

麻帆良学園女子中等部 学園長室

 

 

今、ここには3人の男女がいた。

 

一人は、人とは思えないくらい後頭部が長い老人、麻帆良学園学園長にして関東魔法協会理事、近衛 近衛門である

そして後の二人は――

 

 

 

「管理局より参りました、高町 なのはです。」

「お、同じくスバル・ナカジマです。よ、よろしくお願いします!」

 

そう、戦技教導官の制服を着たなのはと、麻帆良学園中等部の制服に身を包んだスバルだ。

麻帆良学園都市の最深部に当たるこの「女子校エリア」でオエコモバが目撃された事を受け、スバルはこの麻帆良学園女子中等部に『転入生』として潜入し、オエコモバの捜査と生徒の護衛の任に着くことになったのだ。

 

「大変な任務になるだろうけれど、ワシらもサポートするでのお。さて、スバルくんには『2年A組』に入ってもらうんじゃが、実は今日、『新任の先生』が来るんじゃ。」

「え?」

「新任の…先生?」

 

学園長の発言に、二人は学園長に顔を向ける。

 

「うむ、そろそろ来る頃と思うg」バアァン!

 

学園長が言い終わる前に、ドアが勢いよく開いた。

 

「どう言うことですか学園長ォオーーーーーーー!新任の先生はともかく理由(わけ)を言ってくださいぃぃーーーーー!!」

 

入ってきた少女――ツインテールに、右が緑、左が青のオッドアイ、後何故か制服ではなくジャージ――は、思いっきり叫んだ。彼女の右手には、やたらと荷物が多く、少し困惑した表情の赤毛の少年を『持っている』。

 

「アスナー、少し落ち着きー。おじいちゃん、失礼しまーす………ってあれ?お客さん?」

 

ツインテールの少女の後ろから、おっとりとした黒髪の少女が入って来る。彼女の目の前には、ツインテールの少女に驚いたスバルとなのはがいた。

 

「おお明日菜くん、こちらはわしの知り合いのなのはくんと、今日からこの学園の生徒になるスバルくんじゃ♪」

「は、初めまして、スバル・ナカジマです。」ペコリ

「あ、そうなんだ。『神楽坂 明日菜(かぐらざか あすな)』です。こちらこそよろしく。」ペコリ

 

少女――明日菜は少年を下ろし、スバルと挨拶をする。

 

「はわー、先生と転入生がいっぺんに来たんかー。

初めましてスバルちゃん、ウチは『近衛 木乃香(このえ このか)』や、よろしゅーなー♪」

 

おっとりとした少女――木乃香も、明日菜に続き挨拶する。

 

「あ、よろしく。ってあれ?近衛って…?」

 

ふと、あることに気づくスバル。

 

「うん、このかは、学園長の孫なのよ。」

「そうなんだー………(おじいちゃんに似ないで、よかったね………)」

 

明日菜に説明されて、割と失礼な事を考えるスバルであった。

 

「まあ、二人の紹介はこれ位にして、ネギ君には、まず教育実習という形で『2年A組』の担任になってもらうかのう。今日から3月までじゃ。」

「…はあ。」

「え?担任?しかも2年A組って…?」

 

スバルが、今聞いたことに疑問を持ち、少年を見る。どう見てもエリオくらいの年の子だ。

この子が先生?しかも、先ほど自分が行くことになったクラスの担任??

 

「あ、自己紹介がまだでしたね。この度、この学校で英語の教師をすることになりました、『ネギ・スプリングフィールド』です。」

「えぇーーーーーーーーーー!!?」

 

スバルの叫びが、学園長室にこだました。

 

「まあ、驚くのも無理は無いがのう。では指導教員の『ブルーマリン先生』を紹介しよう。ブルーマリン君。」

「…はい。」

 

学園長が呼ぶと、明日菜が開けて、そのまま開けっ放しのドアから、背の高い男がぬっと入ってきた。よく見ると『爪先立ち』だ。

黒いスーツはボタンを全部はずし、ネクタイはしていない。白い髪は円柱型に盛るようにセットしてあり、角が生えている。…角?

 

「指導教員の『ウェス・ブルーマリン先生』じゃ。分からないことがあったら、彼に聞いてくれ。」

「ウェス・ブルーマリンだ。生徒や親しい者からは『ウェザー』と呼ばれている。」

「は、はい、よろしくお願いします。(あの角はいったい…?)」

「ああ、一応言っておくが、ウェザー先生のそれは帽子じゃよ。」

「「「あ、そうなんだ。」」」

 

安心する三人だった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

十分後

 

麻帆良学園中等部 廊下

 

 

「へえ、スバルさんも魔導士なんですかー。」ひそひそ

「うん、ネギくんも、『こっちの』魔法使いだったんだね。」ひそひそ

「いえ、まだ修行中の身でして…」ひそひそ

 

ウェザー先生に聞かれないように小声で話す二人。

 

あの後、先に教室へ向かった明日菜達と別れた二人は、ウェザー先生に連れられ、自分たちの教室へ向かっていた。

 

「…ここだ」

「えっあ、どうも…」

 

いきなりウェザーに話しかけられて、驚く二人。この人は、基本的に無口らしい。

ネギは、廊下の窓から教室の様子を覗く。

 

(…あれ?)

 

ふと、スバルは気配のような『何かを』感じ取る。教室の方からだ。

スバルは、ネギと一緒に教室を覗いてみた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

2年A組

 

 

「ん?」

 

スバルと同じ『何かを』感じ取った徐倫は、読んでいたライトノベルから目を離し、廊下の方を見た。

 

「…?どうした?」

 

斜め前に座る千雨が徐倫の様子に気づき、声をかける。

 

「……いや、何でもない。(何だ?今のは…?)」

「?」

 

いつの間にか『何か』が消えたため、ライトノベルをまた読み始める事にした。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

(消えた…何だったんだろ?今の?)

 

『何か』が消えたため、スバルは六個くらい疑問符を浮かべ、首を傾げる。

 

「どうしました?スバルさん?」

「あ、ううん、何でもないよ!」

「……?」

 

心配するネギに答えるスバル。エリオ達位の子に心配されては情けない。

 

「じゃ、じゃああけますよ。」

「う、うん。」

「……」

 

ガラガラッ

 

「し、失礼しま――」

 

ネギがドアを開けた。すると、上からチョークの粉たっぷりの黒板消しが――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぱしっ

 

「「「「「「「!!?」」」」」」

(((と、止めた……!?)))

(((できる………!)

 

「…ふう、危ない危ない。大丈夫ネギくん?」

「あれ、スバルさん?」

 

――ネギの頭上に落下する前に、黒板消しをキャッチするスバル。なかなかの反射神経に、何人かの生徒が感心した。

 

が、

 

「すいません、全然気づきませんでじだばっ!?」

ズゴッガボンパスパスパスッゴガガガガッ

 

メメタァ

 

「ドベェーッ!?」

「ネ、ネギくーーん!?」

「「「「「「「あははははは!」」」」」」」

 

黒板消しには気づいても、他にトラップがあるのには気づかなかったらしい…

 

「ってあれ?子ども!?」

「「「「「「「えぇっ!?」」」」」」」

 

そこで、やっとネギが子どもである事に気づく生徒たち。いや、遅いよ。

 

「ごめーん!新任の先生かと思ったから…」

「いや、そいつが新任の先生だ。」

「え?ウェザー先生?」

「全員席に着け!ネギ先生、自己紹介をしてくれ。」

「あ、はい。」

 

全員が席に座ると、ネギはこほんとせきをした。

 

「きょ、今日からみなさんに英語を教えることになった、ネギ・スプリングフィールドです。よ、よろしくお願いします。」

 

緊張でガチガチになりながらも、ネギは自己紹介を終える。

 

「で、こっちが転入生の――」

 

ウェザーはスバルを紹介しようとするが、

 

「「「「「「「かわいいーー!!」」」」」」」

「え?え?」

「お、おいお前ら…」

「うわーー!?」

 

生徒たちの声に遮られてしまった。

 

「ねえ、君頭いいの?」

「どこから来たの?」

「ほんとにもらっていいんですかウェザー先生?」

 

次の瞬間、ネギは生徒たちにもみくちゃにされていた。

 

「あー、おまえ等のじゃないからなー。食うんじゃねーぞー?」

 

一応注意するウェザーだが、生徒たちは九割近く聞いてなかった。

そこに、

 

「いいかげんになさい!」

バン!!

 

「「「「「「「!!?」」」」」」」

 

騒がしいクラスを静めたのは、机を叩く音と、高めの怒声だった。

 

「皆さん、もうおやめになって。先生がお困りになっているでしょう。」

 

声の主――2年A組委員長・雪広 あやかは、クラスメート達に言う。

 

「それに、」

 

言いながら、あやかはスバルに手を向ける。

 

「「新しい」クラスメートの紹介がまだでしょう?」

「「「「「「「あ……」」」」」」」

「えーと、あ、あははー、どうもー………」

「「「「「「「す…すみません」」」」」」」

 

クラスの全員が困惑するスバルに気が付き、一斉に謝るのであった………

 

 

 

「改めて、このたびこのクラスに転入してきた、スバル・ナカジマです。よろしく!」

「「「「「「「よろしくーー!!」」」」」」」

 

ようやくスバルの紹介が済み、クラスにある程度の落ち着きが戻った。

 

「それじゃあ、ナカジマは長谷川の後ろの席に座ってもらおう。ちょうど空いてるしな。」

「あ、はい。」

 

ウェザーがスバルの席を指示する。中央の列の最後尾、そこの廊下側の席だ。

席に着き、ふと、席の隣の生徒を見た。

 

まず、背が高い。座っているが、170cm以上はあるのではないだろうか。

肌は白く、欧米の方の血が混ざっていると思われる。髪は、前髪は金髪で、後は黒。左右で団子にし、前髪の一部を後ろに回し、三つ編みにしている。瞳はブルー系で、スタイルも良い。

個性豊かなクラスでも、結果目立っている部類に入るのではないだろうか。

 

 

「スバルです、よろしく。ええっと…」

 

スバルが挨拶すると、少女はスバルに顔を向け、自己紹介をする。

 

空条 徐倫(くうじょう ジョリーン)よ。よろしくスバル。」

「うん、よろしく。(空条さんか…変わった名前だなぁ。)」

 

 

 

これが、スバル・ナカジマと空条 徐倫の出会いだった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

 

放課後 麻帆良学園女子中等部 校内

 

「どうだ?慣れてきたか?」

「うん。…でも大丈夫かなネギ君…」

「…まあ、自信をなくさなきゃいいけどな…」

 

校内を話しながら歩くスバルと徐倫、そして徐倫のルームメイトの『長谷川 千雨(はせがわ ちさめ)』の3人。

 

あの後、明日菜とあやかがケンカをするわ、他の生徒があおるわで、結局授業らしい授業を出来なかったネギ。初日の授業がこんな調子で、本当に自信をなくさなければいいが…

 

そして放課後、校内を案内してやると徐倫たちに誘われたスバルは、こうして案内してもらっていた。まあ、二人には『別の目的』もあったが。

 

「あ、この先が音楽室で―――」

ガラッ

「やあ徐倫。ん?その子は誰だい?」

 

不意に廊下の窓が開き、長髪にトゲつきの帽子をかぶった男が顔をだす。徐倫はその男の登場に、非常に嫌そうな顔をすると、踵を返してそそくさと歩き出した。

 

「…こっちが第二理科室だ。」

「え?これスルーしちゃうの?」

「ナカジマ、関わらない方がいいぞ…」

「ま、待ってくれよ徐倫(ジョリ)――――――ン!」

 

スルーする徐倫に驚くスバルと、スバルを男から遠ざける千雨。あわてた男は窓から乗り出してくると、初めて男の全身がわかった。

見た感じではスバルたちより3~4歳年上で、背は180位あるだろうか。体格はいい方で、陸上選手のように引き締まっている。網シャツを着込み、下はレザーのズボンだ。

 

徐倫に追いつき、肩を掴む男だが、

 

「オラァ!!」

ドグォ

「ぐぼっ」

 

振り向いた徐倫に殴られ、情けない声を上げながら廊下に倒れる。

 

「『アナスイ』!!てめぇ懲りずにまた堂々と不法侵入しやがって!!『高畑』にでも通報されたいか!?」

 

男――アナスイを怒鳴りつける徐倫。

 

「またって…なんなのあの人?」

「…あいつは麻帆良大学2年の「ナルシソ・アナスイ」ってやつでな、徐倫のストーカーなんだよ…」

 

アナスイについて説明する千雨。大学生が中学生をストーキング…なるほど、変態以外の何でもない…

 

「ち、違うんだ徐倫!実は、これを君に渡してくれって!」

 

そういうとアナスイは、ポケットから手紙を出し、徐倫に渡す。

 

「手紙?誰からだ?」

「ああ、『財団から』だ。中身は知らないがな。」

「財団…!」

「…そう、わかったわ。」

「?」

 

手紙の差出人を聞いた徐倫と千雨は、険しい表情をする。スバルはそんな二人をみて、首を傾げる。

 

「じゃあ徐倫、オレはこれで!今度食事にでも行こうな!」

 

そう言って、アナスイは来たとき同様窓から外に出る。

そしてスバルは、あることに気づく。

 

 

 

 

 

「…あれ?ここ『3階』じゃなかったっけ?」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「ふう、さすがに『3階』からは派手すぎたか?」

 

着地して、そう呟くアナスイ。

徐倫たちがいたのは、『3階の音楽室の近く』だった。そこまで登るのに、彼の『能力』なら可能だ。

使い方を制限されているが、ばれなければ問題ない。そう判断したアナスイは、『能力』を使ったわけだ。

 

 

 

が、

 

 

 

ガシィ

「うおっ!?」

 

ズドォ!

「んがっ」

 

世の中、上手いこといかないものだ。

立ち去ろうとしたアナスイの足を「雲」が掴み、彼は盛大にすっ転んだ。

 

「イッテェ!なんだよ一体…」

「アナスイ、あれほど目立った『使い方』はするなと言ったはずだが…?」

 

転ばせた張本人――ウェザーは、アナスイに話しかける。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

校内 噴水前付近

 

 

「まったく、『財団』からの手紙なら、俺に渡せばいいものを…そんなアプローチしても、空条はお前にたなびかないぞ?」

「うるせぇ!お前に徐倫の何が分かるってんだ!?」

 

注意をするウェザーに反発するアナスイ。

 

「…そのセリフ、お前にそのまま返すぞ…それより、『財団』から連絡が来たってことは…」

「…ああ、恐らくは『矢』についてだな。」

 

ウェザーの言葉に答えるアナスイ。

彼らが言う『矢』とは、スバルたちが探しているものと同一なのだろうか…?

 

「となると厄介だな、少し警戒した方が…ん?」

 

ふと、ウェザーは階段の方を向き、そこにいた者に気づく。

 

「あれは…ネギくんか?」

「あん?知り合いかウェザー?」

「ああ、2年A組の担任だ。」

「………は?」

 

アナスイは疑問を持つ。まあ、仕方ないことだが。

 

「どういうことだよ担任って?まだガキだぞ?」

「まあ、頭はいいらしいからな、問題ないだろ。」

「いや、そうじゃなくt」「きゃぁぁぁあああああ!」

 

アナスイの言葉は、少女の悲鳴によりかき消された。振り向くと、階段から少女と無数の本が落ちていく真っ最中だ!

 

「な、何ぃ!」

「く!間に合うか!?『ウェザー・リポ――――』」

 

『能力』を発現させようとするウェザーだが、

 

 

 

 

 

フワァア

 

「「!!?」」

 

 

 

 

突然、少女の体が「浮いた」!

 

 

 

 

驚く二人だが、すぐさま、『浮いた原因』にたどり着く。

 

ガシィ

ズシャアアア

 

「あたた…だ、大丈夫ですか『宮崎さん』…?」

 

浮いた原因(と思われる)ネギは、少女をキャッチすると、2mほどスライディングして止まる。そして少女――宮崎 のどかは、どうやら気絶してしまったらしい。

 

「ああ、気絶してる!?ど、どうしよう…」

「あ………あんた……」

「!?」

 

声がして、ネギはびくりとする。恐る恐る振り向くと、驚愕の表情の明日菜がいた……。

 

 

 

ぱしっ

「へ?うわぁぁあああ!!?」

 

その場でネギを掴んだ明日菜は、そのままネギをどこかへ連れ去ってしまった……

 

 

 

 

 

「「………」」

 

一部始終を見ていたアナスイとウェザーは、ただ呆然とその場に立っていた。

そして、最初に口を開いたのは、アナスイだった。

 

「あ……あのガキ、まさか!?」

「ああ、多分『手紙の内容』はこれだ。『ネギ・スプリングフィールド』!彼は――――」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

数分前

中等部 3階 女子トイレ

 

 

「つまり、この麻帆良で『矢』が目撃されたっていうんだな?」

『ああ、しかも何人か『射ぬかれている』らしい。』

 

女子トイレの個室で、「糸」を指で摘み話す千雨。相手は徐倫だ。

 

二人は現在、『手紙』の内容を確認するため、スバルと別れ、このトイレにいた。わざわざ『糸』で話しているのは、ほかの者に怪しまれないためだ。

 

 

「…内の一人が『2年A組(うちのクラス)』にいるってぇのが気になるな。だれだ?そいつは?」

『……それが、「宮崎」らしいんだ…』

「な!?」

 

思いもしなかった名前を聞き、千雨は立ち上がる。

宮崎?あいつが射ぬかれた?あいつが『矢』に「選ばれた」??

 

「…それは、マジなのか?徐倫?」

『確証は得られない。だから、今後「確認を」とる!とりあえず、これは決定だな。』

「ああ…で、誰がやるんだ?」

『私かお前のどっちかだな。ウェザー先生は彼女に近すぎるし、アナスイはアレだ…』

ガチャリ

「まあ、確かにな。でも、私はパスだぞ!メンドイし。」

「…まあ、お前はそうだろうな。」

 

それぞれ個室から出て、最終確認をする。

 

ム゛ー、ム゛ー、

 

「っと、どうやら『むこうの準備』が出来たらしい。」

 

携帯のバイブを聞き「準備が」出来たと確認した徐倫は、千雨と共に女子トイレを出る。

 

 

 

 

 

 

 

 

「よお、悪いなスバル、待たせちまって。」

「あ、大丈夫だよ空条さん。長谷川さんも。」

 

外で待っていたスバルと合流する二人。

 

「…あれぇ~~?ごめん二人とも、私『定期入れ』教室に忘れちゃった~~。一緒に取りに行ってくんない?」

「え?別にいいけど…」

 

少しわざとらしく言う千雨と、同意するスバル。徐倫は、千雨の大根役者っぷりを見て、つぶやいた。

 

「…はあ、やれやれだわ。」

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

同時刻

 

校庭

 

 

「う…ううう~」ずーーーーん

「す、すいません……」

 

落ち込む明日菜と、謝るネギ。

あの後、問いただす明日菜に対して『記憶消去魔法』を明日菜に行おうとしたネギだが、何がどうしたのか、記憶を消そうとして明日菜のパンツを消してしまった。

しかも間が悪い事に、そこへ高畑が来てしまい、明日菜は高畑にノー○ンを見られてしまう結果となった。

 

「どーーーしてくれるのよーーーーー!!魔法使いなら今すぐ時間を戻しなさいよーーーーーー!!!」

「あああ、本当にごめんなさい~~~」

 

嘆く明日菜に、ネギは謝るしかなかった。魔法使いといえど、万能ではないのだ。

 

ガシィ

「うひぃ!?」

「――――で、何でそのちびっ子魔法使いが麻帆良(こんな所)まで来て…しかも先生なんてやることになった訳……?」

 

いきなりネギの襟を掴み問いただす明日菜。仕方なく、ネギは語り始めた。

 

 

 

 

曰く、「立派な魔法使い(マギステル・マギ)」になるための修行として、麻帆良(ここ)で先生をする事になったとのこと。

「立派な魔法使い」とは、世のため人のために陰ながら力を使う、魔法界でも尊敬される仕事のひとつだそうだ。

今は仮免期間のようなもので、魔法がバレたら仮免没収の上に本国へ強制送還されるらしい。

 

「だ、だから皆さんには秘密に―――」

「………だったら、私のこと、ちゃんと責任とってよね…!」

「…へ?」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

2年A組 教室前

 

 

「あれ?明日菜にネギ……先生。」

「あ、本当だ。おーい。」

 

教室前で、明日菜たちに気付く徐倫たち。なお、徐倫が呼び捨てにしようとしたことについては流しておく。

 

「あれ?徐倫に千雨ちゃん、それにスバルも…」

「皆さん、どうしたんですか?」

「ん?明日菜も『メール』来たから教室に来たんじゃないのか?」

「『メール』?……あ、そうか!」

「「?」」

 

『メール』と聞いて思い出す明日菜。だが、ネギとスバルには何のことだかわからない。

 

「ま、教室入れば分かるよ。」

「そういうことだ。ネギ先生、ドアを開けてくれ。スバルも。」

「え?あ、はい…?」

 

未だに何か分からない二人だが、言われた通り教室のドアを開けると―――

 

 

 

 

 

 

 

パパパパァーーーン!

「「「「「「「ネギ先生!スバルちゃん!ようこそーーーー♪」」」」」」

「「へ?」」

 

クラッカーの音と、明日菜たち三人以外の生徒たちが二人を出迎えた。

 

「二人の歓迎会をやることになってね。これ買出しね。」

「その間、二人を教室に近づけないように遠ざけてたのよ。」

 

説明する明日菜と徐倫。そう、徐倫と千雨は、スバルを教室に近づけないよう、校内を案内していたのだ。

まあ、予想外の事態はあったが…。

 

「ほらほら、主役は真ん中に!」

「飲み物何飲む~~~?」

「わ、あ、どうも。」

「わ~、ありがとう。コーラある?」

「瓶ので良ければあるよ~。」

 

席に誘導される二人。相変わらずネギはもみくちゃにされているが。

 

「はは、大人気だなネギくんは。」

「見た目可愛いからな。」

「ま、オレの魅力には適わないだろうがな。」

 

そんなネギを見て感想を述べる高畑、ウェザー、アナスイの三人。

 

 

 

 

 

…………アナスイ?

 

 

 

 

 

「って何でお前がいるんだぁぁぁあああ!!!!!」

 

アナスイを見つけた徐倫は、近くにあった瓶のコーラを手に持つと、

 

ドン

「ギャアアアス!!」

 

コーラのふたを『発射して』、アナスイの額に当てた。ふたには手を触れずに。

 

(え?何今の!?魔法!?)

(魔力は全然感じなかったのに!?)

 

驚く明日菜とスバルをよそに、徐倫は手に持ったコーラを豪快にグイっと飲んだ。

 

「…空条、こいつは俺が呼んだんだ。だから、いるのには何の問題もない。」

「な!?正気かよ!?こいつが何するか分かったもんじゃねーぞ!」

「ジョ、徐倫、そんな人を変質者みたいな言い方しなくても…」

「「「「「「「変質者じゃん」」」」」」」

「なっ………」

 

クラス全員に言われ、落ち込むアナスイ。それを見て、全員が笑った。

 

 

 

 

そんな光景を見て、スバルは思った。

 

――――この笑顔を守るためにも、『矢』を見つけなければ――――と

 

 

 

ナルシソ・アナスイ――精神的に再起不能

スバル・ナカジマ―――この後、肉まん83個を完食し、クラスに「大食い」を認識させた。

 

 

←to be continued…




1話です。以前の1話と2話を合わせています。
・サブタイトルの元ネタは、『囚人番号FE40536空条 徐倫』から。サブタイトルの通り、徐倫の出席番号が11番なので、釘宮以降の番号が1個ずつずれます。

・何で2007年が舞台かというと、第六部時の徐倫の歳を逆算したら、ちょうど2007年に徐倫が15歳になるからです。アニメ第二期とかぶったのは、偶然です(笑)

・今回からしばらくは、魔法使いVSスタンド使いの構図が続きます。

では、また次回。


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#02/教師スプリングフィールドの秘密

女子寮 徐倫と千雨の部屋

 

 

「はぁ!?あの子供先生が!?」

「ああ、『ウェザーとアナスイ』が、能力らしきものを使った所を見たらしい。見ただけだと、『風を操る』能力らしい。」

 

歓迎会もお開きになり、帰宅した二人は、ウェザーたちが見たネギの「能力」について話していた。

 

「……つまり、しばらくは先生に『警戒』しろってことか?」

「そうだ。どっちにしろ、ネギが『矢』に関係している可能性がないとは言い切れないからな。『みんな』にも、連絡は入れえてある。まあ、危険な能力じゃなけりゃいいが…」

 

そう言う徐倫。だが、彼女らは知らない。

 

ネギが、自分たちの『想像』を超越した力をもつことに………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

翌日 成田空港

 

 

観光客やビジネスマンで賑わうここに、ある男が降り立った。

 

「…やれやれ、久しぶりの日本だな。」

 

 

 

 

 

#02/教師スプリングフィールドの秘密

 

 

 

 

 

 

同日 2年A組

 

 

「き、起立ー、きおつけー、礼ー」

「「「「「「「おはよーございまーーーす!!」」」」」」」

 

「えー、では1時間目を始めます。教科書の27ページを開いてください。

“Two men look out through the same bars: One sees the mud, and one the stars.”……」

 

(お、今日は頑張ってるね~~。)ヒソヒソ

(昨日失敗続きだったからな。)ヒソヒソ

 

昨日の失敗を挽回すべく、頑張っているネギを見て、小声で話す徐倫とスバル。

 

「―――じゃあ、今のところ、誰かに訳してもらおうかなーー?」

 

そう言うと、クラス中を見渡すネギ。だが、誰一人目を合わせようとしない。

すると―――

 

「じゃあ、アスナさん。」

ズルッ

「な、なんで私なのよ!?」

「え?だってアスナさん『ア行』だし…」

「私は『カ行』よ!」

「それに、感謝の意味とかも兼ねて…」

「どんな感謝よ!?」

 

文句を言う明日菜だが、はたから見たら漫才をしているようだ。周りからくすくす、と笑い声が聞こえる。

 

「―――もうっ!分かったわよ!やるわよ!やればいいんでしょ!?」

 

そう言って、席を立った明日菜は、英文を訳し始めた。

 

「えーっと…『2の男たちが』……『見る』?『外の棒たちを』………?えーーっと?」

「―――アスナさん、英語ダメなんですね。」

 

ネギが言った瞬間、クラス中が爆笑した。

 

「………やれやれだわ。ネギ、そういうのははっきり言わないほうが良いわよ……」

「え?あ、す、すいません…」

 

謝るネギだが、明日菜は震えている。

 

ガシィイ

「ひっ!?」

「こ、こんのガキイィイ!!」

「な!ちょっと明日菜さん!」

 

ネギに掴みかかる明日菜と、止めようとするあやか。

 

だが、

 

「ふ、ふぁ…」

「げ……」

 

掴みかかった事で明日菜の髪がネギの鼻をくすぐり、そして――――――

 

「はっくしょん!!」

ブワアァァァ

「き、きゃぁあああ!」

 

ネギは『くしゃみ』をしてしまう。そして、『くしゃみが』原因で「風の魔法」が暴発してしまい、明日菜は下着姿になっしまう。

 

(((((!!?)))))

「きゃーー!」

「ちょっと、何やってんのアスナ!!?」

 

騒ぐ生徒たちだが、誰も、スバルすらも気付かない。

 

この現象に異変を感じたものが『5人』いたことに………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

商店街 スーパー前

 

 

「えーっと、後買う物はありませんね。」

「うん、じゃあ、帰ろっか。」

 

買出しに出たなのはとティアナは、両手に買った食材や日用品の入った袋を下げ、拠点であるマンションへと向かっていた。

 

「いやー、安く買えてよかったねー。」

「はい……」

「……やっぱり心配?スバルが」

「……ええ。まあ、たった『2日』でバレるなんてドジやらかすとは思えませんが。」

 

そんな風に話していたため、自分の前に『地図を見ながら歩く男』がいるのに、なのはは気づかなかった。

 

「!!なのはさん!前!」

「え?」

ドシィン

「きゃっ」

 

ティアナが注意するも間に合わず、なのはは男と衝突してしまい、買い物袋の中身をぶちまけながら転んでしまう。

 

 

 

 

 

だが!

 

 

 

 

 

ドキュ!ドキュ!

「え!?」

「あ! !?あれぇ~……?」

 

なんとなのはは『立っていた』!袋の中身も『無事』だ!

 

「お、おかしいな…今ぶつかって『転んだ』と思っていたのに…?」

「い…今のは…?」

 

「余所見しててすまなかったな……この町の地図を見ていたんでな。」

 

男に謝られて、2人は男の方を見る。

 

見たところ、30代後半くらいだろうか。190cm以上はある身長にガッシリとした体系ながら、その顔立ちは整っている。

服装は、襟に鎖のようなもののついた黒いコートに、星のマークの入ったシャツ、ズボンは蛇のウロコのような柄だ。そして、もっとも目を引くのが、男のかぶった帽子だ。これにも星のマークが入っており、『左手形』のアクセサリーがついている。それはいい。だが、よく見ると、後ろのほうが、髪と『一体化』しているように見える。どういう原理なのだろう?

以上のように、風貌はワイルドだが、知性と、物静かな態度がある男だった。

 

「い、いえ。こちらこそ、余所見をしてすいませんでした…。」

 

なのはは、男の射抜くような眼差しに一瞬ビクついたが、何とか平常を保ち、男に謝った。

 

「…ま、お互い不注意だったってトコか。ところで、ひとつ尋ねたいんだが…『麻帆良学園』はこの先でいいのか?」

「え?…ええ、そうですが……?」

「…そうか、すまないな。」

 

ティアナに道を教えられた男は、指された方向に歩いていった。

 

「……なんだったんだろう?今の人…」

「………ティアナ、とりあえず帰ろう?ね?」

 

疑問に思うティアナとなのはだが、とりあえず、買ったものをマンションに持って帰ることにした。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

その日の放課後、麻帆良学園都市のある建物の屋上で、双眼鏡を手にした男が学校から出てくる女子中学生を見ていた。

その中で、目的のグループを発見した男は、携帯電話を開いて電話を掛けた。

 

「―――私です。お嬢様、空条 徐倫と長谷川 千雨、それと他2名を確認しました。」

[わかったわ。予定通り、『初音』にあの公園まで誘導させるわ。後はアナタの出番よ、『サルシッチャ』。]

「了解しました。」

 

男、サルシッチャ・アーリオは電話を切ると、この辺の周囲の地図を取り出した。

数拍置いて、サルシッチャの姿は屋上から消えていた………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

校庭 『慈愛の女神像』の前

 

「はあー、またアスナさんにひどいことしちゃった…」

「うーん、こっちの魔法は誰でも使える分、制御が難しいって聞いてたけど…」

[まさかここまでとは思いませんでしたね。]

 

落ち込むネギと、何て言っていいか分からないスバル、そして呆れる彼女の相棒――『マッハキャリバー』。

あの授業中、昨日のように授業が中断するようなことはなかったものの、明日菜が睨み付けてくるため、彼女の視線が痛かったネギ。今は、明日菜以外でネギの事情を知るスバルが、何とか慰めようとしているところであった。

 

[まあ、『我々の魔法』は、プログラムを元に作られた術式を発動しますからね。例えるなら、自動車と自転車くらいの差はあると言えます。]

「……自分の性能の良さ自慢してない?」

[いえ、そんなことは。それより相棒《バディ》。]

「ん?何?」

 

マッハキャリバーの自慢にツッコミを入れるスバルだが、マッハキャリバーが何かに気づいたらしい。

 

[先ほどから誰かが我々のやり取りを聞いておりますが…]

「「え?」」

 

 

「……2人で何話してるのかなぁ〜って思ったら…『そういうこと』だったのね〜」

 

『慈愛の女神像』の陰から、明日菜が出てきた……

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

数十分後、グリーンドルフィンストリート麻帆良

 

この部屋には今、フェイトとスターズ分隊副隊長――赤い三つ編みおさげの少女ヴィータと、リインフォースⅡにシャリオ・フィニーノに加え、ネギと明日菜がいた。

 

今、リビングではスバルとネギは正座をさせられ、2人の前ではヴィータが仁王立ちしている。

 

「まったく!何やってんだお前等は!!」

「「すみません……」」

 

ヴィータに怒鳴られ、縮こまる2人。

 

「…ねえ、あのちっちゃい子の方が偉いの?」

「うん、スバルたちよりは…」

 

明日菜の質問に、苦笑しつつ答えるフェイト。

そこに、リビングのドアが開かれる。

 

「ただいま帰りました。」

「どうかしたのヴィータちゃん?大声何か出して。」

 

入って来たのは、買い出しから戻ってきたなのはとティアナだった。

 

「おう、なのは!このバカ、やらかしたんだよ!」

「…や、やらかしたって、何を…?」

「じ、実は………」

 

スバルは、事の経緯を2人に話した。

 

「……つまりこういうこと?『潜入2日目でいきなり魔法がバレた』?」

「Exactly(そのとおりでございます)……」

 

目の前でネギと共に正座をするスバルに、顔を引きつらせながら聞くティアナ。汗をだらだら垂らしながらスバルが答えると、

 

ドグシャア

「ぎゃあアアァ!」

 

ティアナの跳び蹴りが飛んできた。すぐさま、ティアナは『海老固め』をかける。

 

「この馬鹿!私をナメてんのッ!何たった2日で!バレるようなことしてんのよ!この!ド低脳がァーッ!」

「痛たたた!ギブギブギブゥ〜〜!!」

 

『!』ごとに『海老固め』を強めるティアナと、痛がるスバル。先ほど自分が「やらないだろう」と信じたことを、あっさりと裏切ったのだ。怒るのも無理はない。明日菜やネギは、ただ呆然と2人のコントのようなやり取りを見ていた………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「―――ねえ千雨?私たちさぁー、確か「女子寮」に帰るために、「駅」に向っていたはずよねぇー?」

「………ああ、そうだな………」

「それが、なーんでまた、()()()()()()()()()()()()に来ちゃってるワケぇ~?マジわかんないわぁ~………」

 

一方、徐倫達4人は、いつの間にか麻帆良公園の中央広場にまで来ていた。無意識のうちにここまで誘導されたようであった。すると、徐倫の後ろにいた2人が、口を開いた。

 

「何らかの「攻撃」を受けたって事?」

「無意識の内にこちらを誘導してくるなんて、それ以外考えられないけれど………」

「だとしたら、なにが目的だ?………まあ、心当たりは、指五本で数えられるくらいはあるけど………」

 

4人は話しながら、周囲を警戒する。広場に人影はなく、普段の騒がしさとは裏腹に、不気味なほど静かであった。

背中合わせで固まっていると、次の瞬間、頭上に青いカプセル型のマシンが出現し、4人に迫った!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズパッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[――――――――――!?]

 

瞬間、マシンは左右に斬り裂かれた!別れた半身は徐倫達に落下し迫ってくるが、

 

ドグシャァッ

 

強い力で殴られたのか、装甲に『拳の形をしたヘコミ』を作り、吹っ飛んで行った!哀れ謎の機械は、何が起きたのか理解する間もなく破壊されてしまったのだ。

 

「……やれやれだわ。今の感触、ホンモノの機械のようね………」

「けれど、高いところから落ちてきたって感じじゃねぇーなぁー………まるで瞬間移動のように突然現れたようだ………」

 

背中から『一対の腕』を出した徐倫と千雨が、破壊されて、火花を散らしながら転がる青い機械を見ながら言う。

 

「あ、ありがとう徐倫に千雨ちゃん………私の『グロウン・キッド』じゃあ、今のに反応できなかったよ~……」

「まあ、急に現れたし、それに、グロウン・キッドの性質上、仕方がないよ………」

 

それより、と一点を見る少女。すると、先ほどと同型の機械や、大型の球体型の機械が合わせて20機近く、何の前触れもなく出現した!

 

「さっきのは小手調べってトコみたいだなぁあーーー!」

 

機械は中央のランプを光らせると、そこから光線を発射させた!4人は散開して回避をすると、徐倫と千雨は一気に距離を詰めた!

 

「オラオラオラオラオラオラァアーーーッ!!」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「…つまり、その『矢』を探すために『麻帆良(ここ)』に来たってこと?」

「うん、何人か犠牲者も出ているみたいで…」

 

ティアナがようやく海老固めからスバルを解放し、明日菜はスバルたちが麻帆良に来た理由を聞き出していた。『六課』にも、犠牲者が出ているという情報は入っているようだ。

 

「まあ、こんな派手なカッコしたやつなら、すぐ見つかりそうね!」

 

手元に差し出された『オエコモバ』の写真を見てそういう明日菜。だが、

 

「いや、普段からこんな格好な訳ないでしょ…」

「え?」

 

呆れるティアナと頷くスバルたちに、明日菜は不思議そうな顔をする。なのはたちは苦笑いだ。

 

 

 

そんな時だった。急に、部屋のすみに設置されたアラートが鳴り響いたのは………

 

 

 

 

←to be continued...

 




2話です。
・サブタイトルは『看守ウエストウッドの秘密』から。

・今回ネギが明日菜に訳させた英文は、ジョジョ一巻に書かれていた、フレデリック・ラングブリッジの「不滅の詩」の原文です。中学生には難しかったかな?

・リブートに伴い、暗躍するサルシッチャとスタンド使いVSガジェットの戦闘シーンを追加。サルシッチャはイタリア語でソーセージ、アーリオはニンニクから。苗字は今回が初登場です。

・次回は、魔法使いVSスタンド使い戦になります。

では、また次回!


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#03/グロウン・キッド①

「この先を左だったわね!アスナ!?」

「ええ!それが一番『近道』よ!」

 

先頭を走る明日菜は、ティアナに聞かれて振り返りながら返答をする。彼女は麻帆良(ここ)の地理に詳しくないティアナたちのために、道案内をしていた。ネギは、明日菜いわく『おまけ』みたいなものだ。

 

先ほどのアラートは、「麻帆良公園」に機動兵器――通称『ガジェット』が20機近く現れたというものだった。麻帆良の「魔法使いたち」はガジェットとの『戦い方』を知らない。そのために、スバルたちフォワードが出動した訳である。ヴィータも、上空から向かっている。

 

「いい!?さっきも言ったけど、あんたたちは到着次第、どっかに隠れてんのよ!」

「は、はい!」

「分かってるわよ!相当『危ないん』でしょ!?」

 

ティアナは、確認をとるように、明日菜とネギに言う。

ネギは「魔法使い」とはいえ、ガジェットの『AMF(アンチ・マギリング・フィールド)』の対抗策を知らないし、明日菜は一般人であるためだ。

 

「ほら!この道を左よ!」

「分かった!」

 

明日菜に言われて曲がる4人は、「麻帆良公園」へと駆け抜けていった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

『グリーンドルフィンストリート麻帆良』 206号室

 

 

カーテンを閉め、証明を落としたリビングは、「司令室」と化していた。

中央にはモニター、テーブルにはコンソールが『浮かび』、そこにリインとシャーリーがついている。

なのはとフェイトは、後ろからガジェットの動きをみていた。リインは今、どこかと連絡しているようだが。

 

「フォワードの皆さんと明日菜ちゃんたちは、最短距離で『麻帆良公園』へと向かっています。ガジェットたちは、公園の『中央広場』へと集まっているみたいですが……」

「…そこに、『レリック』級の『ロストロギア』があるってことかな?」

「多分…まさか『矢』がそこに?」

 

憶測を立てる二人。そこに、通信を終えたらしいリインが、なのは達に言う。

 

「なのはさん!『学園側』が、麻帆良公園に『結界設置』を承認してくれたです!」

「ありがとう。シャーリー!スバルたちに連絡を!」

「はい!……え?」

 

振り向き、通信をしようとしたシャーリーは、信じられないものを見た。

 

「そんな……どうして……!?」

 

 

 

 

 

#03/グロウン・キッド ①

 

 

 

 

 

麻帆良公園 中央広場

 

 

「やれやれだわ……何だったのこいつら?」

 

徐倫は、自分たちを襲ってきた機械の『残骸』を見て呟いた。周囲にいた千雨や、中等部の制服を来た「二人」も機械を倒したらしく、徐倫の周りに集まってくる。

 

「はぁ、『矢』のこともあるのに、何かスッゲー面倒なことに巻き込まれたんじゃないか?私ら」

 

かったるそうに、千雨は手に持った『透けている小太刀』を弄びながら愚痴る。

 

「……長谷川、そう言わない方がいいよ。こいつら、『矢』が絡んでいるかもしれないし。」

 

制服の少女のうち、黒髪の少女が千雨に注意する。彼女の両手には、野球のボールほどの大きさの『鉄球』が二つ、『回転』していた。すると、もう一人の少女――髪を左右で留めている――が、左手の平を見て、何か話し始めた。

 

「どうしたの………え!?うん、わかった………徐倫!誰かがこっちに向ってきているって………5人くらい!」

「何………?」

「…『こいつら』のご主人様か?」

 

話を聞いて、機械の残骸をつま先で小突きながら千雨が言う。

 

「どうする?全員で出迎えるか?」

「……いや、『こいつ』で十分だろ。」

 

徐倫は、髪を左右で留めた少女を指しながら言った。

 

「え?私!?」

「ああ、おまえの『グロウン・キッド』なら、「5人」くらい楽に倒せるだろ?一応、ウェザー先生に連絡は入れておくからよぉー」

「………う~~、わかったよ~。」

 

渋々承諾した少女は、鞄から『布』を取り出した。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

この時、徐倫たち4人は気づいていなかったが、彼女らを陰で見ていた者たちがいた。

 

「もしもし、リーダー?」

「聞こえる、リーダー?」

 

黒い服を着た少年と、白い服を着た少女は、1台の携帯電話を2人でもって、交互に話す。

 

[―――聞こえている。]

「「ガジェットは、みーんなやられちゃったよ!」」

 

少年と少女の二人が、同時に言う。完全に息がぴったりだ。

 

[それは確認済みだ。私の『アンダー・ザ・レーダー』の能力を、忘れた訳ではあるまい?]

「それはそうだけどさ、」

「監視をしている私たちも、任務を果たさないといけないからね。」

「「………おや?」」

 

そう話していた2人だが、ふと、少年の右手に握られていた『矢』が、何かに引っ張られるように先端が持ち上がり始めた事に気が付いた。

 

「リーダー、『矢』が反応したよ!」

「リーダー、近くに「才能」を持った人がいるよ!」

[そうか………誰を指すのか、見てくれ。]

「「了解!!」」

 

2人はそういうと、矢の先端が指す方を探す。すると、遠くのほうからこの公園に向けて駆けてくる一団を見つけ、更に、その中の『1人』を指したのを見て、2人は意外そうな顔になった。

 

「………おやおや、これは………」

「………あらあら、これは………」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

司令室

 

 

「フェイトさん…わ…私はち…ちょいと目を離したんです…………あなたもそばにいました。リイン曹長やなのはさんもそばにいました。でも……誰も見ていないんです…」

 

シャーリーは言い終わると、気を落ち着かせようと、ガタガタ震えながらコーヒーを飲もうとする。だが、

 

「飲んどる場合ですかシャーリーッ!」

ガシャン

 

何故かリインに怒鳴られ、カップを落としてしまう。

 

「リ、リイン、落ち着いて、ね?」

「……どうなってるの?」

リインを宥めるフェイトと、シャーリーに聞くなのは。

 

「ほ…ほんの少しの間でした……私が目を離していたのは、たったの数秒だったんです……でも、あそこで何が起こったのか分かりません!信じられません!

ほんの数秒目を離したうちに!『20機近くいた』ガジェットが!1機残らず『破壊されていた』んです!!」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

麻帆良公園 中央広場

 

 

「な……何だよこれ…?」

「誰がこんなに沢山のガジェットを……?」

 

スバルたちの目の前に広がるのは、破壊されたガジェットが『散らばる』中央広場だった。

 

何発も殴られたようなヘコミがあるものや、輪切りや袈裟掛けに斬り裂かれたもの、何か『球体』をぶつけられたものに、強い力で『締め付けられた』ようなもと、様々な壊され方をしていた。

 

「…これだけ『壊され方』が様々なのは、『集団で戦った』ってことでしょうか?」

「多分ね。それも、『魔力を持たない連中の』ね。」

 

推測するネギと、それに付け足すティアナ。そこに、明日菜の疑問が飛ぶ。

 

「え?なんで『魔法使いじゃない』って分かるの?」

 

明日菜の質問に、球状のヘコミのついたガジェットⅢ型の装甲を拾うヴィータが応えた。

 

「…ガジェットには、「AMF」という、魔力を消すフィールドを発生させることができんだ。『こちらの』魔法使いたちは、AMFの環境に慣れていないから、『魔力強化していないただの刃物や拳でこれをやってのけた』ことになる………」

「……ふ、ふ~~ん…?」

「……その様子じゃあ、あんま分かってないわね……」

 

明日菜の反応に、ため息をつくティアナだった。呆れながらもガジェットの残骸を見ていると、ふと、視界の端で動くものを見つけた。

 

「ん………?」

「ティア?どうかしたの?」

「?」

 

スバルが声をかけると、ティアナの視線の先を見た。ヴィータ達もそれに気が付いて、視線を追った。

 

 

 

見つけたものは、『緑色の布』であった。

 

 

 

大きさはおよそ2.5m四方と、意外と大きい。それが、バサバサと音を立てながら、ヴィータたちから少し離れた場所に落ちた。

いきなり現れた布に警戒するスバルたち。一番近い位置にいたネギとヴィータは、ゆっくりと布に近づいて行った。

 

「……何か妙ですね。誰かに見られているような…」

「確かに……だが、周りに隠れるような場所はない!だが…まさかだよな……!」

 

そう言って、ヴィータが布に手をかけて、めくってみる。

 

 

 

布の下には――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何もなかった。

 

「……だよなぁ~~~」

「そんなことありませんってぇ~~~気のせいですよ~~」

 

ヴィータが布をポイッと放ると、ほっとしたのか、笑い出す二人。

 

だが!

 

 

 

「二人とも!後ろ!」

 

ドギャァアン

「え?うわっ」

「なんだ!?」

 

いきなり、二人の間を『パンチ』がすり抜け、思わず避ける二人!そのままパンチは近くのガジェットの残骸に突き刺さる!

 

「こ、これは!?」

「何だよ!この『腕』は……!?」

 

そこにあったのは「緑色の右腕」だった。肩の付け根に穴があいており、中は『空洞』だ。

 

ふいに、肩が『ほどけた』と思うと、みるみるうちに腕は『布』になってしまった。よく見ると、中央にはエジプトの壁画のような「一つ目」が浮き出て、ぎょろりとこちらを睨んできた。

 

その目のあたりがボコッと膨らんだかと思うと、布はまるでてるてる坊主のような形になり、そのまま頭にあたる部分が「右手」になり、そこから下が腕、二の腕、肩と変形していき、布は再び『右腕』になる。

 

「まさか!?さっきの『布だと!?』」

「他のガジェットも、こいつがやったの!?」

 

変形をした布に、驚愕する4人。右腕は器用に指を地面につけて『立って』おり、今にも飛び出しそうだ。

 

 

ふと、スバルの耳に「バサッバサッ」という音が聞こえた。恐る恐る周りを見ると―――――――

 

 

 

 

 

 

 

「………………嘘でしょ?」

 

スバルの声を聞いたティアナたちは、周りを見て、戦慄した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女たちの周りは、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「6枚の緑色の布」に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『囲まれていた』!――――

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

麻帆良公園 入り口付近

 

 

「―――ありゃ~~、バレちったか~~」

「……あれに気づいたのか…やろうと思えば、野生のコウモリにさえ気づかれずに近づける『グロウン・キッド』に対して『妙だ』と思うとはね…」

「勘のいい奴がいるのかもな…」

 

少女が左手の平に浮かんだ『エジプトの壁画のような「一つ目」』を見て言う。『グロウン・キッド』が気づかれたことに感心する徐倫たち。だが、彼女らは冷静だった。

 

「しかし、ネギ君だけじゃなくて、アスナやスバルまでいるなんて………」

「あいつらも『グル』だったのか………?とにかく、連中から遠ざかりながら、目的を聞き出せるようにしておけ。」

「うん、わかったよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「彼女ら」と魔法使いたちの戦いが、ついに始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

能力名―――――グロウン・キッド

 本体―――――不明

 

 

 

←to be continued…

 




3話です。
・メンバー変更に伴い、割と大幅に変更しています。(前はエリキャロもいたけど、六課のメンバーがほとんどいなくなる+あまり絡まなかったからお留守番させてますし(^_^;))

・グロウン・キッドは本体へのダメージがない設定だったのですが、弱点がないのは少しズルいので、左手の平に『本体』を設けました。これで、音声のみですが遠くでの状況を把握できます。

では、次回をお楽しみに!


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#04/グロウン・キッド②

司令室

 

 

「こちらロングアーチ、スターズ、応答願います!」

 

司令室と姿を変えたリビングに、シャーリーの悲痛な声が響く。

ガジェットの反応がなくなってから、スバル達と連絡がとれないでいた。

 

「ダメです!公園内に奇妙な『電磁波』が流れていて、みんなに通信ができません!」

「そんな……!」

「もしかして、妨害電波の類?……だったら、麻帆良の「魔法使い」の方に頼んで、確認を……」

「そ…それが………」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

麻帆良公園から西方100m離れた道

 

 

公園に結界を張るためこの道を走っていた金髪に黒い肌のシスター――シャークティは、目の前に「カエル」が落ちてきたため、急停止をしていた。

 

「な、何でカエルがこんな時期に?もう『冬眠』から目覚めたの?ん……?」

 

カエル嫌いな彼女は、ふと、体の色があざやかなこのカエルを、ずいぶん前に図鑑で見た覚えがあった。

 

「このカエルの体の色は…「ヤドクカエル」じゃあ…?たしか吹き矢に使われ、ひとかすりしただけで致命傷になる猛毒が皮膚のすぐ下にある…」

 

そう思っていると、カエルが2匹、シャークティから少し離れた所に落ちて、彼女はそちらを見る。

だが、そのあたりにはカエルが上れるような場所はない。

 

そう思っていると、次から次へと、カエルが道に落ちてくる。不思議に思って、空を見上げた彼女が見たのは――

 

 

 

「な…………!」

 

空から大量の『ヤドクカエル』が、彼女に向かって『降ってくる』光景だった。

 

 

 

「嫌ァァァあああ!」

 

 

 

さすがのシャークティもこれを見て平常を保てず、回れ右をして、泣きながら『全力疾走』するしかなかった……

 

 

 

 

 

#04/グロウン・キッド ②

 

 

 

 

 

麻帆良公園から南方150m離れた道

 

 

「いや、参ったねー、これは。」

 

応援に駆けつけようとここまで来たタカミチは、困ったようには聞こえない風に電話をかけていた。相手はなのはだ。

 

「公園に誰も近づけないつもりらしいよ…近づくものなら、容赦なくカエルが降り注ぐ。」

 

そういいながら、道を見るタカミチ。

彼の見た先には、大量の『ヤドクカエル』が道でうごめいていた。どうやら、カエルは「公園に近づいたもの」にしか降らないらしい。

 

[……カエルが『降ってくる』んじゃあ、上空からも近づけない…なかなか頭のキレるやつですね…!]

「ああ、多分『天候操作魔法』の応用だね。相当な実力者だよ。こうなったら、もう無事を祈るしかないね……」

[……]

 

公園の方を見ながら、そう言うタカミチだった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

麻帆良公園 中央広場

 

 

6枚の緑色の布と、緑色の右腕に囲まれたスバル達は、動けずにいた。いきなり現れた布に対する『恐怖』もあったし、何よりも、先ほどの右腕のこともある。

そう思っていると、急に「右腕」が『跳んだ』!

腕を足で跳ぶように曲げ伸ばしして、指で地面を勢いよく弾いて、布のいるあたりまで跳躍した!

 

「うぅっ」

「こいつら、何を…」

 

驚いた明日菜とティアナがそう呟いていると、他の布にも動きがあった。

 

布の1枚が『左腕』に変わり、他の2枚がそれぞれ右脚、左脚になり、それが合わさって『下半身』になる。先端が尖り、反り返った靴を履いたような下半身だ。

 

そして、1枚が一番大きい変化を遂げた。

まず浮き上がったのは『頭』だ。口と鼻のないのっぺりとした顔に、目が一つ、口にあたる部分にはくるりと巻かれたどじょうヒゲを生やし、頭にはターバンを巻いている。

次に胴体だ。こちらは、まるで甲冑のようなデザインだ。

 

そして、それら4つの部品が一カ所に集まり、それぞれが合わさると、一つ目にターバンを巻いた『緑色の魔神』の姿になる!

最後に残った2枚が『剣』に変わり両手に収まると、『魔神』は剣を構える。

 

「が、『合体したぁ』!?」

「……向こうは敵意むき出しって感じね。」

「確かに、仲良くはなれそうにないね…」

 

そう感想を述べるティアナとスバル。こちらも、戦闘態勢だ。

 

『……フム、ナカナカイイ構エダナ。イクツモ『修羅場』ヲクグッタ構エダ。』

 

不意に、魔神から声が発せられ、驚くスバル達。

 

「喋った!?」

「………お前、何者だ?」

 

鉄槌――グラーフアイゼンを突きつけて魔神に問いただすヴィータ。相当機嫌が悪い様子だ。

 

『フム、タシカニ名乗らナイノハ失礼ダ。我が名ハ「グロウン・キッド」!見テノ通リ、タダノ『布キレ』ダ。』

「………いや、ただの布きれは喋ったり合体したりしないから……」

 

魔神――グロウン・キッドにつっこむティアナ。だが、当の本人は気にしてない様子だ。

 

『マア、挨拶ハコレ位ニシテ、私ハ君達ニ、聞キタイ事ガアルノダ。』

「何?」

 

グロウン・キッドは右手の剣の切っ先を向けて、5人に聞いた。

 

『フム、キミ達ハ私と『同じヨウナ能力(チカラ)ヲ持ッテイルノカ?』

「あん?」

 

グロウン・キッドの言葉に、眉をひそめるティアナとヴィータ。

 

「………妙な質問だな?アタシらとお前は、まったく『別の力を持っている』とでも言うのか……?」

『……フム、「話シタクナイ」ノカ、ソレトモ「本当ニ何モ知ラナイ」ノカ、マア、戦ッテミレバ分ルコトダ。悪イガ、行カセテモラウゾ!!』

 

言うや否や、ヴィータに襲いかかるグロウン・キッド!

振り下ろされた剣をヴィータがアイゼンで受け止めるが、押されている。

 

「ぐ………っ、こいつ、何てパワーだ……!」

『フム、コノママ一人目を――』

「はああ!」

 

グロウン・キッドがもう一方の剣を下ろす前に、スバルが右手にはめた籠手『リボルバーナックル』のナックルスピナーを回転させて殴りかかる!狙うは頭部!

 

ドガァッ

「手ごたえありッ」

 

拳の感触から、グロウン・キッドに大ダメージを与えたことを確信するスバル。しかし、

 

『アア、確カニ「命中」ダ。』

「はっ」

 

よく見ると、グロウン・キッドの頭が「左手になり」、スバルの右拳を受け止め、掴んでいた!

 

そして、左の剣が『右腕』、左手が『胴体に』に変わり、

 

『タダシッ!!』

ドグシャア

「ぐわっ」

 

スバルは殴られ、吹き飛んでしまう!

 

『「私ノ拳」ガナ!』

「スバル!!」

「あいつ、何でもありなの!?」

 

首の位置から左手を、左腕から胴体と右腕が生えている奇妙な姿をした「グロウン・キッド」を見て、ティアナはそう漏らした。

 

ガギィン

「ぐっ」

『フム、ダガ、今の『一撃』ハナカナカ良カッタゾ。ホメテヤロウ。』

 

ヴィータを払い除け、スバルの一撃を誉めるグロウン・キッド。かなり余裕だ。

 

「くっ、態度が紳士なのが、逆にムカつくわね!でも!」

 

ティアナは、魔法弾の発射準備にかかる。

 

「これならどう!!」

 

発射された魔法弾は、一斉にグロウン・キッドに襲いかかる。

 

が、

 

バララァ

「なっ!!?」

 

なんと、グロウン・キッドは再び部品(パーツ)に分離し、魔法弾を避ける。

 

『フム、危ナイ危ナイ。』

「このお!!」

 

胴体の一部をクモの脚のように変えて着地し、あまり危機感のないように言うG・キッドに、飛び上がったスバルが拳を振り上げる。

 

『オット。』

 

が、ひらりとかわされてしまう。スバルは諦めず追撃しようとするが…

 

「!?……え??」

 

追おうにも、(グロウン)・キッドの姿が『見当たらない』。キョロキョロとあたりを見渡すスバルだが――

 

 

 

 

 

『ドコを見てイル?』

「はっ!」

ガシィ

 

いきなり『地面から』腕が生えて、スバルに掴みかかる!

それがG・キッドだとすぐに気づくが、色が「緑」ではなく、地面と同じ「薄茶色」だった。だが、指先からみるみるうちに緑に戻っていく。

 

「ほ……『保護色!!』カメレオンみたいに体の色を変えて!地面に『なりすましていた』のか!?」

 

ネギが、グロウン・キッドが消えた理由に気づくが、そう言っている間にもG・キッドは再び合体して人型になり、武器――布2枚が合わさってできた『鎌』――をスバルに突きつける。

 

『フム、安心シロ。アル程度ダメージヲアタエル位デ許してヤル。』

 

そう言って鎌を振りかざす。そして―――

 

 

 

 

 

 

 

「ちょいやあああぁぁぁ!!」

バグォオ

『フムォァア!?』

 

明日菜の跳び蹴りを喰らった!

 

胴体と、鎌を持った右腕だけが吹っ飛ばされるG・キッド。先ほど同様に胴体の一部をかぎ爪に変化させて、無理矢理ブレーキをかける。

 

だが!

 

魔法の射手(サギタ・マギカ) 連弾・雷の17矢(セリエス・フルグラーリス)!」

ズババァッ

 

「クロスファイヤー!!シューート!!」

バシュゥウン

 

『ナ!?グァアッ!!』

ドババァッ

 

ネギとティアナの技を喰らい、燃え上がるG・キッド!

 

『……フ…フム、ナルホド………君タチノ力ガコレホドトハナ……驚いたヨ………』

 

体を燃やされながら話すG・キッド。口調は変わらないが、かなり無理をしているようだ。

 

『……ダガ、忘れテ………イナイカ?私ハ…』

 

G・キッドは、最後の言葉を言い終わる前に燃え尽きてしまう……

 

 

 

 

 

 

『………コウイウ事ガデキルノヲ。』

『!!?』

 

声がした方を見る7人。

 

そこは先ほどまでG・キッドがいた場所で、今は、左腕と下半身しかないはず!

だが、下半身が見あたらず、変わりに『頭と胴体』、そして両腕があった!足の変わりには、胴体の一部が変形したものを代用しているため、上半身のみだが…

 

『フム、ダガ戦ッテ分カッタ事ガアルゾ。キミ達ハ私トハ『別系統ノ能力』ヲ持ってイルヨウダ。ソレガ分カッタダケデモ、収穫ダナ。』

「別系統だと………?」

 

グロウン・キッドの言葉に、疑問の声を出すヴィータ。すると、グロウン・キッドはネギ達に質問をした。

 

『最後ニ、聞いてオキタイ………キミ達ハ、『古メカシイ石ノ矢』ニツイテ、何か知ッテイルノカ?』

『!?』

 

「石の矢」と聞いて、ネギ達は息を飲んだ。まさか、この『布の魔神』は、あの『矢』について知っているのか!?

 

「あ、あんた!『矢』の事を知っているの!?一体、何で………!?」

『……フム、ヤハリ『知ッテイタ』カ………ダガ、ソコマデ詳しくハ分ラナイヨウダナ………』

「答えなさい!あなたは、一体何を知っているというの!?」

 

ティアナはグロウン・キッドに詰め寄るが、当の魔神は顎に手をやって考えているようであった。

 

『フム、コレ以上キミ達ニ聞イテモ、情報ハ得ラレソウニナイナ……目的ハ果タセタ事ダシ、今日ハコノ辺デオイトマサセテイタダコウ。』

「待ちなさいよ!まだこっちは………」

『フム、デハ、サラバダ少年タチ!機会ガアッタラ、マタ会おうデハナイカ!!』

 

ティアナが止めるのも聞かずに、グロウン・キッドはまた元の布に戻って、ひらひらと飛んでいった。追おうとするヴィータだが、『空の色』に色を変えられてしまい、見失ってしまった……

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

女子寮 入り口付近

 

 

「―――グロウン・キッドは、もうすぐ戻ってくるよ。」

「分かった。………まさか、スバルが『矢』を狙っているとはな………」

 

女子生徒から報告を聞いた徐倫は、千雨と共に部屋に向いながら考え事をしていた。

 

「向こうは、敵対しようって雰囲気じゃなかったな………どうするよ?」

「取りあえずは、先に『宮崎』と接触するぞ。もしも戦力になるなら、スバル達と敵対する事になっても大丈夫だろうよ。」

 

徐倫は歩きながらそう言って、女子寮に帰っていった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

麻帆良公園から東方150m離れた道

 

 

「いや~、スゴいの見られちゃったな~~♪」

 

赤い髪を後ろで束ねた少女は、手に持ったデジカメの画像を見ながら、ウキウキとしゃべる。

 

「それにしてもあの『布』……やっぱり『私の能力』と似ていたなぁ。……これは記事にしないで、『カエル事件』だけにしよう!」

 

そういうと、彼女は女子寮への帰路についた。

 

 

 

後ろに「腕の生えたカボチャ」を引き連れて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女の名前は『朝倉 和美(あさくら かずみ)

 

 

 

彼女がスバルや徐倫達と関わるのは、まだ先の話である。

 

 

 

 

 

住みよい街づくりをしよう!

 

麻帆良学園都市 名所その① 「カエルが降ってくる道」

場所:麻帆良公園近くの道一帯

 

2月某日、麻帆良公園近くの道一帯で南米原産の『ヤドクガエル』が雨のように降ってくるという事件が発生。

振ってきた原因は不明だが、「公園の『ヌシ』が降らせている」、「突発的な竜巻に飛ばされた」等、多数の意見が出ている。麻帆良公園の近くを歩いている時に、『ケロケロ』とカエルの鳴き声が聞こえたら要注意!

(麻帆良学園新聞部発行『まほら新聞』より抜粋)

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「くそっ!何だったんだあいつは!!」

 

ヴィータは地団太を踏みながら、悪態をつく。相当お怒りのようだ。

 

「……ねえ、あいつから『魔力』を感じた?」

「えっ?そ、そういえば……!」

「全然しませんでした……」

 

ティアナの質問に、スバルとネギは、はっとする。

魔力を持たない未知の存在、『グロウン・キッド』あれは一体何なのだろう………?

謎は深まるばかりだ。

 

「――ま、とりあえずもう帰っていいわよね?あ〜〜、私汗かいちゃった〜〜。」

「ア、アスナさん……」

「………のんきでいいわよねあんたは…………」

 

明日菜の一言に、ティアナたちは脱力してしまう。まあ、おかげで緊張はほぐれたが。

 

「そうだね〜〜、あ!そうだ!一番近い「206号室(うち)」でシャワー浴びるついでに泊まっていかない!?ネギくんも!」

 

なんかスバルまで明日菜に賛同してしまう。そして、誘われたネギは…

 

「えっ?いや、僕は……その………」

 

いきなりしどろもどろになってしまった。

 

「ん?どうしたの?」

「じ…実は……ごにょごにょ」

「「?」」

 

急にスバルに耳打ちし始めたネギ。ティアナと明日菜は不思議そうに見ている。

 

 

「え?『風呂嫌い』?」

「!!」

プッツーーーン

 

それを聞いた明日菜は、ネギに詰め寄った。

 

「何言ってんのこの子供(ガキ)ィィイイーー!!」

「「「ビクゥ!」」」

「来なさい!うちで全身『丸洗い』よ!!」

「うわーーん!?」ずるずる

「………」

 

明日菜のあまりの気迫に、ヴィータたちは驚き、スバルとティアナは黙ってしまう。

 

二人が去って数秒、ようやくスバルが口を開いた。

 

「…………2人とも、先に帰っているそうです。」

「「そのよう(だな/ね)……」」

 

 

 

 

 

グロウン・キッド――本体不明

――再起可能

ネギ・スプリングフィールド――ただでさえ心身ともに疲れているのに、さらに疲れた。

リインフォースⅡ――何故あそこでシャーリーを怒鳴ってしまったんだろう?と反省。

シスター・シャークティ――今回の事がトラウマになり、しばらくの間外に出られなかった上、『カエル嫌い』から『カエル恐怖症』に昇格(ランクアップ)してしまった。

 

 

 

←to be continued…

 




4話です。

・話の流れは以前とさほど変わっていませんが、互いに『矢』の事でピリピリさせています。

・この後徐倫達はのどかと接触して、スタンド使い陣営に加え、ネギ達を警戒することになります。

では、次回をお楽しみに!


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#05/居残り授業を受けよう!

「---成程、彼がねえ………」

「ミャ~」

 

どこかの、ホテルらしき部屋。

渡された写真を見てその少女は、膝に乗った猫を撫でながらそう呟いた。

 

「どうするの?あのコ、今結構注目浴びているみたいだよ?」

「どうするの?あのコ、矢で射貫くの?」

 

黒と白の双子の兄妹は、その少女に聞いた。そうね、と少女は呟くと、背後に控えた男に写真を渡した。

 

「彼の件は、サルシッチャ、あなたに任せるわ。なるべく人目の少ない時を見計らってちょうだい。」

「了解しました。」

「ソルとルナには、『田中 かなた』の監視をお願いするわ。あの女子、メイドがいつも一緒だから、気を付けて。」

「「分かったよ、お嬢さま♪」」

 

ソルとルナの兄妹はそう返事をすると、仲良く手をつないで退出していった。少女は紅茶を一口飲むと、夜の麻帆良学園都市を見下ろした。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

『グロウン・キッド』との戦いから3日後の金曜日

 

昼休み

麻帆良学園職員室

 

 

「『居残りさんリスト』?」

「ああ、高畑先生は、たまに小テストをやっていてな。あまりにも点数の低い生徒は、放課後に『居残り授業』をさせるんだ。それを、君に引き継いでほしいそうだ。」

 

そう言ってリストを渡すウェザー。リストには、6人の名前と点数が載っていた。その中には……

 

「あ、アスナさんもいる。アスナさん英語ダメだからなぁ。」クスクス

「本人は居残り授業を楽しみにしていたみたいだがな……だが3学期に赤点とる生徒が出るのは、『実習生』として問題だぞ?」

「う……た、確かに。」

 

ウェザーに言われ、反省するネギ。

 

(うーん……でも、アスナさんにはずっと迷惑かけちゃったから、これでお返しが出きるかも……よし!)

 

「分かりました!やらせて下さい!『居残り授業』の引き継ぎ!」

「…よし、分かった。『6人』には、オレから伝えておこう。」

 

そういうとウェザーは、職員室から出ていった。ネギは、早速居残り授業の準備を始めることにした。

 

 

 

 

 

#05/居残り授業を受けよう!

 

 

 

 

 

放課後2年A組

 

「――というわけで……」

 

今、教室内には『7人』の生徒が居残り授業を受けるため、残っていた。

 

 

両サイドを三つ編みにし、後ろは二つに束ねた小柄な少女――綾瀬 夕映(あやせ ゆえ)

 

 

徐倫と同じくらいの身長の、細目の少女――長瀬 楓(ながせ かえで)

 

 

金髪、色黒の中国系の少女――古菲(クーフェイ)

 

 

髪を左右で束ねた少女――佐々木 まき絵。

 

 

そして、明日菜と徐倫、スバルの7人だ。

 

 

「A組の『バカ5人衆(レンジャー)』+αがそろったわけですが…」

「誰がバカ5人衆よ!!」

「てか、私は小テスト当日に熱でブッ倒れたから『再テスト』受けるだけだろうが!!」

 

意義を唱える二人。楓と古菲は気にしてない様子で徐倫に

 

「ジョジョ、そう言わないで欲しいネ。」

「そうでござるよ司令官(コマンダー)ジョジョ。」

「誰が司令官だ!!後ジョジョって呼ぶなっつってんだろ!!」

 

火に油を注いだ。徐倫は、二人に怒鳴り散らすと、ぜーぜーと肩で息をする。ふと、ネギが首を傾げた。

 

「ジョジョ?」

「ああ、徐倫のアダ名よ。ほら、「空“条 徐”倫」で、『条』と『徐』が続いてるでしょ?」

「ナルホド………」

 

明日菜の説明に納得をするネギ。そこで、

 

「………で、何で私まで居残り授業を?」

 

口を開いたのは、今まで座って黙っていたスバルだ。彼女の名前は、リストには載っていないはずだ。なのに、帰りのHRに、急にネギに残るよう言われたのだ。

 

「あ、僕スバルさんの学力がどの位か知らないから、いい機会だし、ついでに知っとこうかな~~って思って。」

「ってそれ要するに、私たちと比べるってこと!?」

「うわ~~ん、ネギくんが先生みたいなこと言うよ~~」

「実際先生だがな……」

 

こうして、居残り授業が始まった。

 

 

 

 

 

「では、これから10点満点の小テストをしますので、『6点以上』取れるまで帰っちゃダメです。」

 

言うと、ネギはテストのプリントを配り始める。

 

「えーっと、全員に行き渡りましたね?じゃあ、始めて下さい。」

 

ネギの号令と共に、全員が一斉に問題を解き始める。

 

 

 

☆そして5分後★

 

 

 

「できましたです……」

「私もーー」

「ほらよ。」

 

夕映、スバル、徐倫が、ネギに解き終わったテストを渡す。

 

「えーっと、綾瀬さん9点、スバルさんが8点、そして空条さんが10点!皆さん、合格です!」

「おっし!」

「まあ、こんなもんよ。」

「……」

 

三者三様でリアクションをする、一抜け組3人。夕映は普段と変わらないが。

 

「綾瀬さん、全然できるじゃないですか?」

「……勉強キライなんです。」

「「へ………?」」

 

リアクションに困るネギとスバルだった。

 

「………夕映、あんたいい加減ちゃんと勉強しなさいよ。」

「嫌です。」

「……やれやれだわ。」

 

徐倫のツッコミも、意味がなかった…

夕映は、待っていたのどかとメガネにアホ毛の少女――早乙女ハルナと共に、教室を後にした。

 

「できたアルよー」

「できたよネギくん♪」

「んー」

 

楓、古菲、まき絵も、終わったらしい。

 

 

 

 

採点結果

  楓――3点

 古菲――4点

まき絵――3点

 

 

 

「「「……」」」

「「「ナハハ………」」」

 

散々な3人だった。

 

「―あれ?アスナさんは?」

「う…」

 

言われて、ぐいっとプリントを出す明日菜

 

 

 

明日菜――2点

 

 

 

「「「………」」」

「あんたたちねえ……」

 

もっと散々な明日菜。3人は黙り込んでしまい、徐倫は呆れてものを言えない。

 

「じゃ、じゃあ、ポイントだけ教えますね!終わったらもう一回やってもらいますから!」

「はーい。」

「がんばれ~~」

 

ネギは、残った4人にテストのポイントを教える。スバルと徐倫は、残って見守るようだ。

 

「えっと、ここがこうなってこうなるから……」

「ふんふん。」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

一時間後

 

 

楓、古菲、まき絵も帰り、残るは明日菜のみだが……

 

 

 

「「「……………」」」

「……もういいわよ…私バカなんだし………」

 

並んだテストの点数――1~4点――に、何て言ったらいいかわからない3人。明日菜はもういじけていた……

 

「おーーい、調子はどうだいネギ君。」

 

そこに、高畑がやってくる。様子を見に来たようだ。

 

「お、例によってアスナ君かーーー。あんまりネギ先生を困らせるんじゃないぞー。」

「た、タカミチ」

「た、高畑先生!!こ、これは……!」

 

明日菜が弁解しようとするも、高畑は「じゃあがんばって」と言い残して、行ってしまった。

 

「…………」

「ア…アスナさん…」

「アスナーー?」

 

ぷるぷると震えている明日菜に、何とか声をかけるネギとスバル。徐倫は黙ったままだ。

 

 

次の瞬間。

 

 

 

「うわあああーーーーーーーーーーーん!」

「ああ!?」

「お、おい!?」

「アスナ!?」

 

いきなり教室を飛び出す明日菜。追おうとする3人だが…

 

ドヒューーーン

「「って速っ!?」」

「アスナさーーーーん!!」

 

本当に人間か!?というスピードで、既に教室2つ分位遠くまで行ってしまった明日菜。ネギは『杖を持って』明日菜を追いかける。スバルも一緒だ。

 

 

 

 

 

「………もう帰っていいわね?」

 

1人教室に残った徐倫はそう呟くと、帰る準備を始めた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

麻帆良学園湖の西側の道

 

 

ジョギングをする人たちのコースにもなっているこの道を、男は歩いていた。

 

特に意味はない。単なる気分転換にだ。

 

『矢』のことでこの街―――麻帆良に来たが、なかなか良い街だと、男は思っていた。自然も豊かで、街の雰囲気もいい。やはり、『娘』をここに入れたのは、正解だったな。

 

男がそう思っていると……

 

 

 

 

 

ドヒューーーーーーン

「!!?」

 

『世界陸上出たら世界新記録出るんじゃね?』というスピードで、目の前を女子中学生が通り過ぎ、

 

シュバーーーーーー

「アスナさーーーーーん!!」

「待ってよアスナーーーーー!!」

 

後を追うように、『杖に乗った少年と女子中学生』が通り過ぎた。

 

「……やれやれだぜ…………」

 

男は誰に言うでもなくそう呟くと、彼らを追うことにした。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

湖湖畔

 

 

「あ…あんた……私の足に追いつくなんて…なかなかやるわね…」

「こ……この『杖』……自動車くらいの速度……出るんですけど…」

「……マジ?」

 

どれだけ足が速いんだこいつは?という目で明日菜を見る2人だが、相当疲れたらしく、明日菜と共にその場に座り込んでしまう。

 

「…あんた、何でそんなにがんばるのよ?」

「え?」

 

ふと、明日菜はネギにそう聞いた。

 

ネギは未だ10歳だ。何でこんな歳の子供がそんなに頑張るのか、明日菜には不思議だった。

 

「……僕、憧れている人がいるんです。」

 

ネギは語り始めた。自分が頑張る理由を…

 

「……ただ、みんなはその人は死んだんだって言います。でも…僕にはあの人が死んだとは思えない!あの人は……千の魔法を使いこなす最強の魔法使い……『千の呪文の男(サウザンド・マスター)』は…この世界を旅しながら、たくさんの不幸な人を救ってるんです…!」

 

ネギはそう言って、自分の……あの日、父から授かった杖を見つめる。

 

「……だから僕は、あの人のような立派な魔法使いになりたいんです!そうすれば、この広い世界のどこかであの人に会えるかも知れないから…!」

 

ネギは、力強くそう答えた。

 

 

スバルは思った。ネギのこの憧れは、自分のなのはに対する憧れに近いものだと。

 

 

明日菜は、力強く答えたネギを見て、言いようのない感情が沸いてきた。そして…

 

 

「あーーーーーーーーーーー!!もう!!分かったわよ!!やればいいんでしょ勉強!!」

「え?」

「アスナさん……」

 

いきなりそう叫ぶ明日菜に驚く2人。明日菜は、何故か持ってきてしまったプリントを解きはじめる。

 

「あんたがそのマギ……何とかになるには、今の先生の仕事をうまくやんなきゃいけないんでしょ?………協力するわよ。」

「ア……アスナさん……」

「アスナ…」

 

ネギとスバルは、明日菜の一言に、涙腺が緩む。なんだか、うれしい気持ちでいっぱいだった。

 

「ありがとうアスナさん!!……あ、もうこんな時間だ!今日の続きは帰ってからに――――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドスゥウ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………え?」

 

 

 

 

 

 

 

何が起こったのか分からなかった。

 

 

 

 

明日菜にも、

 

 

 

 

 

スバルにも、

 

 

 

 

そして、ネギにさえも……

 

 

 

 

「ネ………」

 

 

 

 

ネギが立ち上がった瞬間、

 

 

 

 

 

古めかしい『石の矢』が、

 

 

 

 

 

ネギの胸を『貫いていた』……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ネギィィィイイーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」

 

 

 

明日菜の悲痛な叫びが、湖に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

←to be continued…

 




5話です。

・サブタイトルは「『狩り(ハンティング)』に行こう!」から。

・話自体は原作と大して変わっていませんが、暗躍するお嬢様陣営の様子や、『ジョジョ』のあだ名の解説等を追加しています。

・ネギ『スタンド使い化』。
 二つの勢力に、三人の主人公、片方に二人いたんじゃあバランスが悪いと思い、ネギは中間ですw

では、次回をお楽しみに!


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#06/空条 承太郎!ネギ・スプリングフィールドに会う

麻帆良学園 とあるビル 屋上

 

 

ガチャリ

「……どうだった『サルシッチャ』?『矢』は彼を射抜いた?」

 

屋上のドアから入ってきた少女は、先に来ていたサルシッチャに話しかける。

 

「問題ありません。わが能力、『アンダー・ザ・レーダー』は正確無比!確実に少年の胸を貫きました!」

 

サルシッチャは先ほど少年を射抜いた『矢』を構えながら、自信たっぷりにそう言った。彼の近くには、このあたりの『地図』があり、それを覆うように、彼の能力が立っていた。

 

「そう……彼の能力、私たちの役に立てばいいけど……」

 

そういうと彼女は、少年がいたであろう「湖」の方を見た。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

ネギが射抜かれてから2時間後

 

麻帆良総合病院 集中治療室前

 

 

今、集中治療室の前には、3人の人物がいた。一人は明日菜、もう一人はスバル。そしてもう一人は……

 

 

 

「スバルッ!」

「アスナーー!」

 

ふと、二人を呼ぶ声と、ドタドタと騒がしい足音がした。そちらを見ると、A組のクラスメートたちに加え、ティアナとフェイトが駆けてくる所だった。

 

「ネギ先生が矢に刺されたって、本当なんですのっ!?」

「ネギくん、大丈夫なん!?」

「アスナ!?どうなの!?答えてよォオオオ!!」

 

あやか達に問いただされる二人。全員、ここが病院という事を忘れて、ギャーギャーやかましく話している。

 

そこへ

 

「やかましいッ!!病院内では静かにしやがれッ!!」

 

先ほどからいた男が怒鳴り、やかましいA組の面子がピタリと黙った。

 

ふと、ティアナは気づいた。この男は、先日会った人物だ。

 

「あ、あなたはこの間の……」

「なッ!!何で親父がこんな所にいるんだよ!?」

 

ティアナが言い終わる前に、徐倫が叫んだ。

 

 

 

「「「「「「「ってえぇーーーーッ!?」」」」」」」

 

徐倫の言葉に、明日菜やスバルたちは驚く。

 

「じ、徐倫のお父さんッ!?」

「マジで!?何この偶然!?」

「ていうか、失礼だけどあんまりジョジョに似てないじゃん!?」

 

男の正体を知り、再び騒ぎだす明日菜たち。だが、男がギロリと睨むと、再びピタリと止んだ。

 

「……彼はまだ治療中だ。運び込まれてからまだ1時間だが、そう長くはかからないだろう。」

 

男はそう彼女らに言い聞かせる。それを聞いて、全員つらそうな顔をする。

 

そんな時、『治療中』のランプが消えた。

 

ガチャ

「!!先生!ネギは……!?」

 

医師が出てきて、全員が詰め寄る。全員、不安そうな面もちだ。

 

「……矢は心臓近くを貫いていたみたいですが、一命はとりとめました。回復も早いので、数日中には完治するでしょう。今はまだ目覚めないので、今日は入院したほうがよろしいかと………」

 

それを聞いて、全員に笑顔が戻る。今にもハシャぎそうな勢いだが、徐倫の父にまた怒鳴られそうなので、我慢する……

 

 

 

 

 

#06/空条 承太郎!ネギ・スプリングフィールドに会う

 

 

 

 

 

麻帆良総合病院 待合室

 

 

「……それで、ネギくんを射抜いたのは、あの『矢』だったのね?」

 

みんなが帰った後、フェイトは明日菜とスバルに聞いた。もしもあの『矢』だったら、犯人たちはあれを使った犯罪を、今も続けていることになる。

 

「うん…でも、回収はできなかった。」

「……?」

「いや、回収しようにも、できない状況にあって……あ…ありのまま、起こったことをはなすよ!『私たちが気付いたときには、『矢』はすでに、ネギくんの胸から消えていた』……」

 

スバルの話を聞いて、フェイトは絶句した。

 

「な…何を言っているか分からないと思うけど、私たちにも、何が起こったのか分からなかった。魔法だとか、超スピードだとかそんなチャチなものじゃあ断じてない……もっと恐ろしいものの片鱗を味わったわ……」

 

明日菜も、スバルに続く。どうやら、ネギを射抜いた犯人は、自分たちの魔法に関する常識を超越した『能力(ちから)』を持っているらしい…

 

そこに、トイレに行っていたティアナがやってくる。

 

「フェ………フェイトさん!!」

「どうしたの?そんなにあわてて?」

「い……今トイレの方で、徐倫さんたちが……」

「「「???」」」

 

 

 

ティアナの話では、徐倫とその父、そして、顔は影で見られなかったが、あと『6人』が、『矢』について話していたという。しかも、話の内容から察するに、徐倫たちは矢について詳しく知っている様子だったらしい。

 

「それって……!!?」

「……い、いや、ありえないわよ!!だって、徐倫は、ずっと同じクラスだったのよ!!そんなことするような子じゃあ……!」

 

話を聞いて、信じられないという面持ちの明日菜とスバルだった。

 

「……いずれにしても、彼女たちについて調べる必要があるわね。明日にでも、問いただして見ましょう。」

 

フェイトがそう決定し、明日菜たちは帰宅することになった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

翌日

 

ネギの病室

 

 

「いやー、皆さん、すいません…僕のために色々としてもらって。」

 

ネギは、見舞いに来た明日菜、木乃香、スバル、ティアナたちに、申し訳なさそうに感謝する。

午前中は他のクラスメートたちが見舞いにきたらしいが、ものすごく騒がしくなってしまったため、婦長さんに追い出されることになったらしい……まあ、あの面子なら仕方ないが。

 

「いいのよ。それより、胸のほうは大丈夫なの?」

「はい、回復のスピードがあまりにも速いって、お医者さんが驚いていましたが…」

「そうみたいやな~、月曜日にはもう退院できるんやろ?」

 

花瓶に花を生けながら、木乃香が言う。

矢が胸を貫通するほどの重傷だったにもかかわらず、ネギの回復力は凄まじく、もう月曜日には退院とのことだ。

 

「ええ、アスナさんとスバルさんが、早くに救急車を呼んでくれたおかげですよ。」

「えっ、いや、私たちなんて……ねぇ?」

 

ネギにお礼を言われ、複雑そうな顔をする二人。

 

「…………私たち、あの時、何が何だかわからなくなって……『承太郎さん』があの時来てくれなかったら…………」

「……『ジョータローさん』?」

 

知らない名前に、首を傾げるネギ。その謎は、すぐに解ける事となった。

 

コンコン

「うぃーっす。って…」

「なんだ、神楽坂たちも来ていたのか。」

 

入ってきたのは、徐倫と千雨だ。だが、後ろにはネギの知らない大男がいた。

 

「あ、承太郎さん、ちょうどいい所に。ネギくん、この人がさっき言ってた―――」

「初めましてネギ君、娘が世話になっているみたいだな。俺の名は空条 承太郎(くうじょう じょうたろう)。ま、名前の通り、徐倫の父親だ。」

「えっ?く、空条さんの!?は、初めまして……」

 

意外な人物の登場に驚くネギ。とりあえず、こちらも挨拶する。

スバルの話によると、偶然通りかかった承太郎が、的確な指示をしてくれたらしい。

 

「……それで、胸はもう大丈夫なのか?」

「えっ………ええ、月曜日にはもう退院できて……」

 

承太郎にいきなり言われて慌てるネギ。

何故か明日菜たちも、少し苦手そうな顔だ。承太郎から、無言の圧力(プレッシャー)が掛かってくる。何だか、叱られている気分だ。

徐倫と千雨は平気そうだが……

 

(……あー、全員親父の無言に耐えきれそうにないなぁー。)

(初めてじゃあ仕方ないな。)

 

意外とのんきだ。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

徐倫たちが退室し、木乃香が売店へ行くと、『魔法使い組』は、先ほどの空条親子たちについて話し始めた。

 

「矢について、あまり話しませんでしたね…もっと聞いてくると思ったのに……」

「向こうも警戒しているのかしら?」

「さあ?でも、矢に射抜かれる事が重要だったみたいだよ?」

「……やっぱり、あの『矢』には、何かあるみたいね………」

 

全員がそれに頷く。考えれば考えるほど、『矢』の謎は深まった。

 

 

 

 

 

 

 

チュミィィ〜〜ン

 

 

「ん?」

 

ふと、ネギは何か声のようなものを聞いた気がした。

 

「……?どうしたのネギくん?」

「……今、何か聞こえたんですが………」

「え?……………何も聞こえないけど?」

 

全員耳をすましてみるが、何も聞こえない。だが、

 

 

チュミ……チュミィィ〜〜〜ン

 

 

「ほら、また!!」

「………ここって、『出る』の?」

「いや、そんなこと聞いたことないけど………」

 

引きつった顔のティアナが明日菜に聞くが、明日菜はそんな噂聞いたことなかった。

ふと、スバルは気づいた。ネギの肩に、何かが乗っている!

 

「……!!ネギくん、それは!?」

「えっ?」

 

スバルに言われ、自分の肩を見たネギが見たものは

 

 

 

 

 

『チュミィィ~~~ン』

 

ウサギのような姿の、精霊のようなものだった。

 

全長は15cm前後、色は全体的にピンク色で、体のあちこちに星マークが浮かび、目は困ったような形だ。鼻は尖っていて、先端が額の大きな星マークと糸のようなもので繋がっている。胴体はクリオネのようで、足に当たる部分には、四本の短い触手らしきものが生えている。

 

そんな、一見かわいいようなものが、まるで歯医者のドリルのような、それでいて動物のような鳴き声を発していた。

 

「うわっ!?な、何これ!?」

 

驚いて後ずさるネギ。『精霊のようなもの』は、その場にふよふよと浮きながら、ネギを見ている。

 

「な、何かウサギっぽいけど……」

「さっきまでこんなのいた?」

 

明日菜とスバルは、不思議そうに精霊をまじまじと見る。

そんな三人の様子を見ていたティアナは、少し怪訝そうな顔で尋ねる。

 

「……ねえ、ウサギなんてどこにいるの?」

 

ティアナの一言に、三人はティアナを見る。その顔は、『驚愕』だった。

 

「え?ティア、『これ』が見えないの?」

「……てか、あんた達には何が見えてるの?」

 

ティアナは、三人が何を見ているのかが不思議だったし、三人には、ティアナに精霊が見えないのが不思議だった。

ふと、スバルはあることに気づく。

 

「もしかして、『矢』に射抜かれたのが原因?」

「「「「あッ!?」」」」

 

全員気がはっとする。なるほど、これがあの『矢』の力なのか。

 

「………問題は、あんた達に見えている『精霊(それ)』が何なのかってことよね。」

「そうね……それに、徐倫たちが何でそれを知っているのかもね……」

 

矢の能力は分かったが、新たな謎が生まれたのだった……………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

ネギが退院した日

 

午後6時過ぎ

 

クラスメートの一人、超・鈴音(チャオ・リンシェン)の経営する飲茶屋「超包子(チャオパオズ)」で、クラス全員参加のネギの退院祝いをした後、ネギ、明日菜、スバル、ティアナ達は帰路についていた。

 

「いや〜、本当に盛り上がったねぇ〜♪」

「スバルは食べてばっかだったけどね……本当に、あんたの胃袋どうなってるの…………?」

「まあ、前衛ってカロリー消費激しいらしいし……ん?」

 

スバルの暴飲暴食っぷりを思いだし呆れていると、道の100mほど先に、徐倫と千雨、そして、長い髪をポニーテールにした、背の高い少女――大河内 アキラ、さらには、まき絵と承太郎までが、何か話しながら歩いているところであった。

 

「………徐倫たち、だね………」

「何か話しているみたいだけど………追いかけてみる?」

 

明日菜とスバルが提案をするが、それにネギが反論する。

 

「だ、ダメですよ!クラスメートを疑うなんて………!話せばきっと分かりますって………!」

「それは、そうだけどさぁー………」

 

慌てて言うネギに、少し困ったように返事をする明日菜。眉をしかめながら再度前方の一団の方を見た。

 

「はッ!?」

 

そこに来て、明日菜は気づいた。一団の中に、『千雨がいない』!?

 

「ち、千雨ちゃんは……!?さっきまでいたのに………千雨ちゃんはどこに行ったの………!?」

 

 

 

 

 

「一つ、言わせてもらうが……」

「「「「「「!!!???」」」」」」

 

急に、後ろから声がする。振り向くと、100m先にいたはずの千雨が、彼女らの『後ろ』にいた!!!

 

「そんなお粗末な『追跡』じゃあ、私らは追えないぜ………!」

 

道の方を振り向くと、徐倫たちもこちらに向かって来ていた。後50m位だろうか。

 

「まッ、待って!!私たちは別に……」

 

そんな時、ティアナのもつ『クロスミラージュ』から、通信音がした。ティアナは回線を開くと……

 

[みんな!!今、そっちの方にガジェットが……!!]

「ん?何だよそれ……?」

 

だが、千雨が質問し終わる前に、ガジェットたちが彼女らを囲んでいた。『転移魔法』の反応もなしに、だ。

 

「な!?いきなり現れた!?」

「こいつらは……!」

 

スバル達は戦闘態勢に入ろうとして、躊躇った。

 

(どうする?このまま行く?)

(でも、それじゃあ徐倫たちに……)

 

そうこうしている内に、ガジェットたちが千雨に迫る。だが、千雨は動こうとしない……

 

「はッ長谷川さん!!」

「あんたッ!早く逃げ――」

 

ティアナが言い終わる前に、

 

 

 

 

 

 

 

ガジェットが、一瞬で『輪切り』になった。

 

 

 

 

 

「………………え?」

 

切り刻まれたガジェットが爆発する中、呆けた表情のティアナ。だが、ネギ、明日菜、そしてスバルの三人には、『見えていた』!

 

千雨がいつの間にか握っていた「二本の小太刀」で、ガジェットを『斬り裂いた』のを!!!

 

 

 

 

 

「…………お前等との話は『後』だ。」

 

千雨は、小太刀を構えて言う。左手を逆手に持ち、前方で縦に交差させる、独特の構えだ。

 

「今は!!」

 

瞬間、千雨に迫っていた一機のガジェットを、左で逆胴、右で唐竹割りと、交差するように斬る。

 

「こいつらを全部『ぶった斬る』!!!」

千雨は、十数機いるガジェットに向かって、かけていった。

 

 

 

 

←to be continued...




6話です。

・サブタイトルは「空条承太郎!東方仗助に会う」から。

・ネギのスタンドが「タスク」なのは、今後魔法拳士の道を選んだ際に役立つと思ったからです。カモにスタンドが見えていたら、マスコット枠を争いかねませんがw


では、次回をお楽しみに!


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#07/精霊 その正体!

麻帆良学園近くの大通り

 

 

「ねえ、今千雨ちゃんの近くにいるのって………!」

「ああ、『この間の』ヤツらだ!何故かスバルたちもいるみたいだが、恐らくは『能力者』だろう!」

「そして『ネギ君』!彼がいるということは!恐らく連中は『矢』の関係者!」

「……とにかく、やつらを『ぶちのめす』!聞き出すのは、それからだ!!」

 

徐倫たち4人は、立て続けにそう話しながら、千雨たちの所にかけていった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

同時刻

 

大通り近くのビル

 

「戦闘が開始されました。」

 

自分の能力――『アンダー・ザ・レーダー』で様子を見ていたサルシッチャは、後ろで椅子に座りながら猫の背中を撫でている少女に報告する。

 

「そう……『彼の能力』を知るには、やはり『戦闘』をさせるに限るわ………」

「…………しかし『ルル・ベル様』、もし、彼が能力に目覚めていなかったら……?」

 

ルル・ベルと呼ばれた少女は、少し不機嫌そうな顔をする。猫はそんな彼女を察し、むずがった。

 

「……何を言っているの、サルシッチャ?『矢』が彼を『選んだのなら』、確実に「目覚めている」わ……さっさとガジェットを追加で『転送』しなさい。」

 

ルル・ベルはそういうと、テーブルに置いておいた紅茶を飲む。……が、

 

 

 

「もう温くなってる…はぁ………」

 

 

 

 

 

#07/精霊 その正体!

 

 

 

 

 

「はぁぁぁぁあああああ!!!」

 

叫びながら、千雨はガジェットに斬撃を喰らわせる。その動きは、まさに『目にも留まらない』!

だが、何機か撃ち漏らしてしまい、それが千雨の後ろに回りこむ。が、

 

「おおおおおおおおお!!」

 

それを、『リボルバーナックル』を装備したスバルが『ぶん殴り』破壊する。

 

「!!ナカジマ…なんだよその格好!?」

 

スバルのバリアジャケット姿―――ジーンズの短パンに黒いへそ出しノースリーブでコート裾のような形の長い腰布と、肌着と同じくへそまでの高さの長袖ジャケットで露出が多く、ローラーブレードを履き、右腕には巨大な籠手をはめている―――を見た千雨が、驚いた様子で質問をする。

スバルはニッと千雨に笑みを見せると、

 

「……長谷川さんが『小太刀(それ)』のこと教えてくれたら、私も教えてあげるよ。」

「…………へっ、言うじゃねーか……よっ!!」

 

皮肉っぽくそう言いながら、近くのガジェットを袈裟懸けに斬ると、背後にいるネギと明日菜に怒鳴った。

 

「お前ら!こいつらと戦う術がないんなら、私たちから離れるんじゃねーぞ!」

「え!?う、うん………」

 

そのとき、攻撃が『上から』来た。見上げると、空戦用の『ガジェットⅡ型』が攻めてきていた。さすがの千雨も、上空からでは手が出せない。

 

 

『千雨は』……だが。

 

 

ドグシャァ

「「「「「「!!?」」」」」」

 

いきなりⅠ型が飛んできたと思ったら、Ⅱ型に激突し、両方とも破壊される。Ⅰ型が飛んできた方向を見ると、徐倫と承太郎、空条親子がいた。

 

「じょ、承太郎さんたち!?」

「い、今のはいったい……?」

 

ティアナには、何が起こったのかさっぱりだったが、ネギたちには見えていた。承太郎と徐倫の側に、『誰か立っている』!!

 

 

 

 

 

承太郎の側には、黒い髪を逆立てた、青い肌に筋肉の『鎧』を纏った古代ローマの拳闘士のような男が立ち、

徐倫の方は、水色で、どこか無機質な印象の肌をした、サングラスをかけた亜人だ。

 

「……ネギ君、君には『見えるか』?俺の「スタープラチナ」が…………徐倫の「ストーン・フリー」が……!」

「……ええっと、2人の側に立っている人……?なら見えますが…………?」

「……やれやれだぜ……ま、「これ」については後で話すとして、徐倫!」

「ああ、今は先にこいつらを!」

 

空条親子は、ガジェットに向き直ると、ガジェットに向かって指を刺す。

 

「「全員ぶちのめすっ!!!」」

 

言った瞬間、ガジェットたちが二人に迫る。だが、二人には何の問題もなかった。

 

「「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァアーーーーーーー!!」」

 

彼らの側に立つ『守護霊』のようなものが、ガジェットたちを殴る!

 

殴る!!

 

ぶん殴る!!!

 

まさにそれは拳の(ラッシュ)!殴られたガジェットはそのボディを拳の形に凹ませて、次々に吹っ飛ばされる!!そして、吹っ飛ばされた先にいたⅡ型はその『とばっちり』を受け、次々に破壊されていく!

 

「な……………何よあれ……!?ガ、ガジェットが……独りでに壊れていく……!?」

 

ティアナは呆けた顔をしている。彼らの『守護霊』が見えない者からすれば、「ガジェットたちが空条親子に近づいたら、独りでに凹んで吹っ飛んでいく」ようにしか見えない。

 

だが、そんな時でも、ガジェットは襲ってくる。いち早く復活したティアナがそちらを向くと…

 

ドガァ

「「!!?」」

 

『鉄球』が飛んできて、ガジェットに命中する。鉄球は回転を続けながら、ガジェットにどんどんめり込んでいき、最終的に、ガジェットは機能を停止した。

 

パシィッ

「よそ見は禁物だよ?まあ、あれ見たら仕方ないけど……」

 

バウンドしてきた鉄球をキャッチしたアキラが、ティアナに言った。

 

「い、今のは……?」

「……我が一族伝統の『鉄球の回転』!原理や回し方は門外不出ゆえに、詳しくは話せないけど……はぁっ!!」

 

アキラは照れくさそうに話すと、鉄球を別のガジェットへ投擲する。

 

「そう……なら聞かないわッ!!」

 

ティアナも魔法弾を放った。

 

「な、何なのよ、コレ………?何が、どうなっているのよ………!?」

 

クラスメートとその親が、謎の機械をばったばったとなぎ倒していく様を目の当たりにして、明日菜は呆然と呟いた。ネギは杖を握る両手に力を込めた。

 

(………せめて僕にもガジェットに対抗する力が……)

 

AMFの無効化に対処できない自分の非力に、歯がゆい思いをするネギ。その時、2人の背後からⅡ型が三機、特攻してきた!

 

「!?アスナ!」

「しまった……!こいつらどきやがれ!」

 

気が付いたスバルと千雨だが、彼女たちの行く手をⅠ型とⅢ型が阻む!

 

「クッ!アスナさん!早く逃げて!」

「ネギ!?」

 

ネギは、杖を構えて明日菜の前に立った。そして呪文を詠唱し、防御しようとする。

 

「!?ダメだ!障壁が出な―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『フム、少年ヨ、君のソノ『精神』、私ハ敬意ヲ賞スル!』

 

 

 

 

 

「「え?」」

 

背後から声が聞こえたかと思うと、急に背中を引っ張られて宙に浮かぶネギと明日菜!

ネギ達がいなくなった地点にⅡ型が突っ込んで爆発を起こすのを見て、2人の飛んで行った地点を目で追うと………

 

「なッ……あ、あなたは………!!?」

『フム、ダガ、何ノ対抗策モ無しニ立チ向カウノハ、勇敢トハ言い難いゾ?』

 

自分たちを引っ張ったその人物を見て、ネギが驚愕の表情となる。

 

 

緑色の体、一つ目にどじょうひげ、そして頭に巻いたターバン!

 

 

そう、こいつは!こいつは!!

 

 

「「「「グロウン・キッド!!!!!」」」」

 

『YES,I AM!! チッ♪チッ♪』

 

ネギと明日菜を下し、某炎の魔術師みたいなポーズとセリフで、魔神――『グロウン・キッド』は返事をした。

 

「おーーーい、ネギ君たち大丈夫ーーー?」

 

そこに、リボンを持ったまき絵がやってきた。

 

「あ、ってまきちゃん!?」

「まき絵さんっ、何であなたまで!?」

『……フム、まき絵ヨ、コチラハカタヅイタ。ダイブ数も減ってキタシ、ソロソロ徐倫タチト合流シヨウ。』

「OK!!」

 

グロウン・キッドの提案に、賛同するまき絵。そして、行こうとして、

 

ガシィ

「待ちなさいよ!何であんたがまきちゃんと顔見知りなのよ!!?」

『フム?』

 

明日菜に止められた。まあ、確かにこんな得体の知れないものがクラスメートと顔見知りだったら、疑問に思って正解だが……

 

「あーーーー、そのことなんだがな、神楽坂。」

 

そこへ、同じくガジェットを倒した千雨や徐倫たちが、集まってきた。

 

「G・キッドの『本体』はまき絵だからな。別に何にも不思議じゃあない。」

 

明日菜たちに説明する徐倫。だが、明日菜は首を傾げたままだ。

 

 

 

「………その『本体』について、詳しく説明してもらえるかな?」

 

声が聞こえて振り向くと、なのはとフェイト、そしてヴィータの三人がいた。

 

「結構な数がいたから応援に来たんだけど……いらなかったみたいだね?」

 

少し困ったように、フェイトは言った。周りには、ガジェットだった大量のスクラップが散らばっていた。

 

「……その前に、お前たちは何者なんだ?俺たちのような『能力者』ではないようだが……?」

「……そうですね、あなたたちの前に、私たちから説明させてもらいます。」

 

承太郎に聞かれて、なのはたちは、説明しだした。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

承太郎たちから少し離れた草陰

 

 

「どうやら、あんたを追ってきた魔導師は、あいつらで全員みたいだな。」

「ああ、相手は強敵ぞろいだが、オレとあんたのコンビなら勝てる!!」

「へへっ久しぶりだぜ!あんたみたいなパートナーとめぐり合えたのは!行くぜ!」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「魔法使いだぁ!!?」

 

なのはたちの話を聞き、自分の予想の斜め遥か上をいった内容に、千雨はすっとんきょうな声を上げた。まき絵だけは「すごーい!」と目を輝かせていたが、承太郎は帽子の鍔を直して「やれやれだぜ」と呟き、アキラは困惑した顔になった。

 

「……え、何?アンタ達、マジで自分が『魔法使い』だって言ってるのぉー?飛んでるじゃあーん!マジでクールだわあーーーッ」

 

若干おどけたように言う徐倫。ティアナと明日菜、ヴィータに少し冷めた目で見られている事に気が付くと咳ばらいをした。

 

「……あー、バカにしているように見えたのなら、謝るわ…………イキナリ『魔法使い』なんて言われても、信じられないもの………」

「だが、納得のいく部分もある………俺たちと同じような『能力(ちから)』を持っているとしたら、割と『多彩』な使い方をしていたからな………それこそ、「魔法」としか言いようがない………」

 

承太郎がそういうと、確かに、と納得をする徐倫。困惑していた千雨も少し落ち着いたのか、ネギの方を見た。

 

「……ナルホド、あたしらとは別の、『魔法』という力を持っていたから、先生は『矢』に射抜かれた訳か………」

「じゃあ、やっぱり空条さんたちは『矢』の事を………!」

 

千雨の言葉を聞き、スバルは徐倫達に聞いた。

 

「…ああ、私やまき絵は、あの矢に射抜かれて、この「能力(ちから)」に目覚めたんだからな……2年前の事だ………千雨やオヤジみたいに、ある『キッカケ』で目覚めるやつもいるけれど………」

 

徐倫の言葉に、全員が驚く。承太郎が、話を続けた。

 

「………先に言っておくと、矢は複数ある。そのうち1本は破壊されたらしいがな……あの矢は人を選び、そして、眠っている力を目覚めさせる………これは、生命エネルギーが作り出す、パワーある(ヴィジョン)だ!俺たちはこれを『立ち向かうもの(スタンド)』と、そう呼んでいる!」

立ち向かうもの(スタンド)……」

 

立ち向かうもの(スタンド)……それが、自分たちが探していた矢の秘密…!

恐らく盗んだ「オエコモバ」も、この秘密を知っていたのだろう………

 

「ネギ君が矢に刺されて『生きている』以上、スタンドに目覚めている事は間違いないだろう……まき絵君の『グロウン・キッド』のように、物質に融合したタイプなどは別だが、スタンドは『スタンド使い以外には見えない』………何故スバル君や明日菜君にも、俺の『スタープラチナ』や、徐倫の『ストーン・フリー』が見えているかは不明だが、もしかしたら才能があるのやもしれない………」

「スタープラチナやストーン・フリーって………さっきの守護霊みたいな奴のこと?」

 

承太郎の説明に、明日菜が首を傾げる。その時、ティアナが「あ!」と声を上げた。

 

「ねえ、まさかとは思うけれど………病院でスバルたちが見たのって………」

「ああ!あの時の精霊………!?」

『チュミミ~~~ン………』

 

スバルが声を上げると、あの時と同じ鳴き声がした。見ると、あの時の精霊らしきもの、ネギのスタンドの象が、肩の辺りに乗っていた。

 

「…って、ネギの肩に乗ってる、ソイツの事か?」

「あ、うん、これこれ。」

「あ、何かカワイイ~」

「やはり、スタンドに目覚めていたか………」

「よ、よく分らないけれど………ネギ君も、承太郎さんたちと同じ能力に目覚めているんだね……?」

 

スタンドを視認出来ないなのは達にはさっぱりであるが、自分たちとはまた違う『異能力』の存在を知って驚いていた。

これは、自分たちでは判断しきれないとフェイトが思ったその時、

 

「………む!?」

 

突然、承太郎が弾かれたようにフェイトの方に振り向いた。突然の事で驚くフェイトには見えていないが、承太郎は背後から飛んで来た『スタンドの銃弾』を、『スタープラチナ』の裏拳で弾いたのだ!

 

「じょ、承太郎さん……!?」

「い、今のって………スタンド、ですか……?」

「近くに、敵スタンド使いがいるようだ………しかも、さっきのあの弾丸は………!」

 

弾いた弾丸に心当たりがあるのか、承太郎は周囲に聞こえるように大声を出した。

 

「『ホル・ホース!!』いるのは分かっているんだ!さっさと出てこいッ!!」

 

承太郎が言うと、草陰から男が出てくる。

テンガロンハットをかぶり、口には禁煙パイプ、薄茶色のシャツを着込みブーツには滑車が着いている、カウボーイ風ファッションの40代くらいの男性だ。

 

「よぉ、久しぶりだな承太郎!」

「ホル・ホース…?(確か、承太郎さんや『父さん』と同じ、「大アルカナカード」の暗示の……!?)」

 

聞き覚えのある名前に反応する千雨だが、同時に承太郎は気づく。ホル・ホース(ヤツ)が『一人で掛かってくる訳がない』!!

 

「気をつけろ!どこかにヤツの仲間がいるぞ!!」

 

承太郎の言葉に、全員警戒する。

 

そして、ヴィータは気づいた。なのはの後ろのガジェットの陰から、『腕が伸びている』ことに!!

 

「なのはッ!!」

「!?」

 

なのはは慌てて飛び退く。

陰から出てきたのは、奇抜なメイクに、網の着いた帽子、そして帽子から飛び出た髪の毛――オエコモバだ!

 

「オエコモバ!」

「まさか、自ら出てくるなんて……!」

 

「……ちっ、まあいい。高町 なのはは『始末した!』後はてめぇらだけだ!」

「…?」

 

なのははオエコモバの言葉の意味が分からなかったが、気づいたことがあった。自分の左手に、時計のようなピンが、数個着いている!

 

それがピンッと音をたてて外れると……

 

 

 

 

 

ドグォォオオオン

 

『!?』

 

なのはの左手が『爆発』したッ!!

 

左手の爆発が、体にもダメージを与える!

 

 

「か…………はっ………」

 

 

「なのはッ!?」

「そんなッなのはさん!!」

「なのはぁぁぁああ!?」

 

全身から爆煙と血を吹き出しながら倒れるなのは。

彼女が薄れていく意識の中で聞いたのは、親友と教え子たちの、悲痛な叫びだった…………

 

 

 

 

 

 

 

 

←to be continued...

 




7話です。
・サブタイトルは「悪霊 その正体!」から。

・グロウン・キッドの本体はまき絵でした。まき絵=リボン攻撃=布製のリボンで攻撃=布操作という感じで思いついた能力です。

・魔法使いとスタンド使い、双方の反応やスタンドの詳しい解説を追加。徐倫なら、こんな反応になると思って入れてみました。

・なのはさん退場。一応言っておくと、まだ生きてますのでご安心を(汗

では、次回をお楽しみに!


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#08/遠い世界(くに)から来たテロリスト

薄暗い廊下を、一人の『男』が歩いていた。

 

室内だというのにコートを着込み、顔以外を頭巾で覆い、頭頂部に開いた小さな穴から、髪を一房だけ出した、垂れ目の男だ。

 

彼は、目的の部屋の前に着くと、ノックをして、部屋に入った。部屋には、数人の男女がいた。

本を読むもの、仲間とトランプをする者、『角砂糖』を食べている者など、各々が好きなことをしていた。

 

「すいませェん奥様、オエコモバが勝手な真似をしているようですが…」

 

男に『奥様』と呼ばれた女性は、読んでいた本から男へと目を移した。他の者達も、男を見ている。

 

「全く、しょォがねェなァァっあいつもよォー!」

「何ならオレが始末するが…どうする?」

 

トランプをしていた二人が『奥様』に聞くが、彼女は『右手』をあげて、制止のポーズをとった。

 

「いいえ、『彼』の方が適任よ。送り込んできなさい『ブラックモア』」

 

男――ブラックモアに命ずると、彼は頷き、静かに部屋から出ていった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「あれは………確かオエコモバ!」

 

『アンダー・ザ・レーダー』で様子を見ていたサルシッチャは、出てきた男に驚いた。

 

 

――確かあいつは、『あの人』の配下で、「矢」を盗んだ張本人!それが何でッ!?

 

「……オエコモバは『あの男』といるみたいね?…これは使えるわッ!『ガジェット(おもちゃ)』じゃあ、彼のスタンドはみられなかったし、あいつらを利用するのよ!」

 

ルル・ベルは興奮気味にそう言って立ち上がった。膝から猫が落ちたのも気にせずに……………

 

 

 

 

 

 

#08/遠い世界(くに)から来たテロリスト

 

 

 

 

 

「なのはぁぁぁああーーーッ!!」

 

オエコモバの攻撃を喰らい倒れるなのは。フェイトの悲痛な叫びが響く中、千雨はある事に気づいた。

 

(……あれ?あいつ……………?)

 

 

 

 

 

 

「オエコモバッ!テメェ!」

 

ヴィータが叫びながらオエコモバに向かっていく。だが、振りかぶったアイゼンが、後ろから引っ張られるような感覚を得て『止まった』。見てみると、アイゼンに「糸」が絡みつき、それにより引っ張られていた。

 

「バカッ!むやみに近づくな!!」

「徐倫!?何しやがる!!あいつは、あいつはァ!」

 

糸を持った徐倫が制止しようとするも、ヴィータは頭に血が上って、冷静な判断が出来なくなっていた。

そんな時……

 

 

 

 

『…………フム、モウ少し君ハ「落ち着く」トイウ事ヲ覚えた方ガイイナ。』

 

グロウン・キッドの声だ。なのはの方から聞こえる。

 

見てみると、なのはの体の一部が徐々に「緑色」になっていき、ちょうど腹のあたりからG・キッドが頭を出した。

 

「グロウン・キッド!?」

「な……なのはさんの………『体の色に化けて』……防御したのッ!?」

『フム、イカニモ。オカゲで、胴体ト左腕ガ犠牲ニナッタガナ……』

 

全員が驚き、なのはの近くに行く。グロウンキッドが離れると(所々少し焼け焦げていた)、承太郎がなのはの容態を見る。

 

「……グロウン・キッドのおかげで命に別状はないが、『重傷』には変わりないな。」

「じゃあ、今すぐにここから離れて………」

「させると、思うかい?」

 

ホル・ホースは言うと、右手をスバルたちに向けて伸ばす。すると、右手から奇妙な形状の『拳銃』が姿を現し、ホル・ホースの右手に収まった。

これこそ、ホル・ホースのスタンド!タロット四番目のカードの暗示!

その名は、『皇帝(エンペラー)』!

 

「オレは女は傷つけない主義なんだが、これも仕事でねぇー!」

(……!私には『スタンドは見えない』けど!あの「手の形」!そして「動作」!まさか………!)

 

スタンドが見えないティアナだが、ホル・ホースの「右手」をみて、どんな『スタンド』かを理解した!

 

「やばい!何か撃ち出すスタンドッ!」

 

ティアナが叫んだのと、ホル・ホースが『皇帝』の引き金を引いたのは、ほぼ同時だった。

 

(くっ……弾丸まで『見えない』なんて!でも、手を見れば『軌道を読める』はず!)

 

そう思ったティアナは、弾丸の軌道と思われる所の「正面」に、シールドを張る。だが、

 

「ティア!!」

ボゴォ

「ッ!?」

 

ティアナは、「右側から」足を被弾した!!

 

「そ……………そんな……!ぐうッ!」

「悪いなぁ~~お嬢ちゃん、スタンドってのは、そんなに甘くない訳よォ!『弾丸もスタンド』って事は、「軌道を変えてもおかしくない」って考えなきゃなぁ~~!」

(そ………そうよ……『スタンドはスタンド使いにしか見えない』ってことは、スタンド使い以外は倒せないって意味じゃないッ………!)

 

ホル・ホースの言葉に、ティアナは唇をかむ。初めて、スタンドの恐ろしさを思い知った瞬間だった。

 

「………やつの言うとおり、甘く考えない方がいい。…………このなかで、『こいつが』見えるヤツはいるか?」

 

承太郎は、自分の背後を親指で指しながら聞いた。手を挙げたのは、スバル、明日菜、ヴィータ、そしてネギの4人だ。

 

「よし、今手を挙げたヤツは残れ!後の奴らはまき絵たちと怪我人を運び出せ!」

 

徐倫は、全員に指示をする。

 

「は、はい!」

「くっ……情けないけど、後はあんたらに任せるわ……」

 

ティアナは、悔しそうにそう言う。

まき絵は『グロウン・キッド』のパーツを分解して、布に戻すと、なのはとティアナを乗せる。このまま病院まで運ぶようだ。

 

「逃がしはしねえ!」

 

ホル・ホースは再び弾丸を放つ。今度は三発だ。

 

「ストォオーーン・フリィイイーーー!!」

シュババァ

「何ぃい!?」

 

だが、弾丸は徐倫のスタンド――『ストーン・フリー』が体の一部を「ほどいて」、それを何重にも編み込んだ『防弾チョッキ』ではばかれる。

 

 

 

『糸』――――これが『ストーン・フリー』の能力らしい。

 

 

 

徐倫に逃がされたまき絵たちは、グロウン・キッドの『魔法の絨毯』で戦線から離脱する。護衛に千雨とアキラも着いていった。

 

「ちぃ!逃がしたか!!」

「仕方ねぇ……行くぜホル・ホース!」

 

オエコモバが、杖型デバイスを構えてそう言うと、周りにいくつもの魔法陣が現れ、ガジェットが転送されてきた。中には大型ガジェットのⅢ型が8機もいた。

 

「Ⅲ型まで!?」

「ちぃッ!まずは私が…」

 

ヴィータが向かおうとするが、承太郎が制した。

 

「俺が行く。離れていろ。」

「承太郎さん!?」

 

承太郎にⅢ型が1機迫ってくる。承太郎は背後を親指で指さし、自分のスタンドを『呼んだ』。

 

星の白金(スタープラチナ)!!オラァアッ!!」

 

承太郎の背後から現れた『スタープラチナ』は、Ⅲ型をぶん殴った!だが、

 

ピンッピピンッ

「!!」

ドグオォオン

 

殴った反動で、ガジェットから『部品(ピン)』が飛び出し、爆発した。

 

「承太郎さん!?」

「『ヘルズ・マリア』……ガジェットにピンをつけた!まずは一人!」

 

オエコモバは、勝ち誇ってそう言った。彼の側には、ボロ切れをまとったカラスのようなスタンドが立っていた。

 

「やれやれだわ。あんた、親父のこと、何も知らないみたいね?」

「……?」

 

だが、徐倫が余裕そうなのをみて、疑問が浮かんだ。なぜ、そんなに余裕なのか……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なるほど、てめぇの能力は、『ピンをつけて、外れたら爆発する』って訳か………」

 

不意に、背後から声がして振り向くオエコモバ。彼の後ろには、承太郎が『無傷で立っていた!!』

 

「吉良を思い出す、胸くそ悪い能力だ………やれやれだぜ。ま、無傷ってわけじゃないがな。4万円もするコートが破けちまったぜ。」

 

見ると、確かにコートの袖が一部破けていた。

 

「な……今、何をしたの?」

「!!?アスナさん!」

 

驚く明日菜だが、ネギの叫びに我に返った。彼女の背後から、Ⅲ型が2機、迫っていた。ネギは明日菜を守るように前に立つ。だが、AMFに慣れていないネギには、ガジェットを相手するのは危険だ。

 

しかし、ネギには考えがあった。魔法が使えなくても、勝てるかもしれない考えが。

 

(僕には、奴らを倒す魔法は持ち合わせていない……だけど、君なら!君が、僕の能力なら!………だから頼む!力を貸してくれ!僕の『生徒たちを守る』力を!!)

 

ネギがそう願っている間にも、ガジェットは迫る。ネギは、一か八か、呪文を詠唱する。

 

「魔法の射手!」

 

だが、魔法の射手は出ない。しかし!

 

 

 

 

 

 

スパァ

「「!?」」

 

 

 

ネギが『右手を』上げた瞬間、Ⅲ型のアームが『斬り裂かれた』!!ネギと明日菜だけでなく、徐倫たちも驚いている。

 

 

ふと、ネギは右手からシルシルという音を聞いた。手の『指先』からだ。不思議に思い、手をひっくり返すと………

 

 

 

 

 

爪が『回転』していた。

 

まるで、フリスビーや円ノコのように!指から離れて、回転していた!

 

「ぼ……僕の手………爪が……………何だこれ…………!?爪が回転している!!」

「これは……まさか…………これがネギ君の!」

「スタンドか!!」

 

驚く一同だが、ネギは理解した。これが、あの『精霊』の力だと!

 

ネギは依然と迫るガジェットに向けて、右手を振り下ろすと、回転する爪が、カッターのようにガジェットを斬り裂く!

だが、もう1機も迫る。ネギは、今度は左手を向けて弾丸のように爪を5発『発射』した!着弾した爪は、ガジェットを貫通し、そのまま5m後ろにいたオエコモバにまで迫った。

 

「何ィ!?」

ズドドォ

「グゥウ!」

 

オエコモバは、何発か避けるが、2発腕に喰らった。他のガジェットを差し向けようとしたが………

 

「デヤァアアッ!!」

ゴシャァアッ

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァッ!!」

ドゴッバァアアア

 

ヴィータと承太郎により粉々、あるいはボコボコにされて破壊されていた!

 

「くそっ!」

 

オエコモバはナイフを数本取り出すと、投げる体制に入る。ピンを付けて爆弾に変えようという魂胆だが、

 

ブワワワワワ

「………え?」

ガシィ

 

いきなり周りを『ロープ』が囲い、そのまま近くの木に縛り付けられてしまう。ロープを握っているのは……徐倫!

 

「よし!ジョセフじいちゃん直伝のロープマジック成功!………悪いな、ネギに気をとられているうちに、ロープを張らせてもらった!後は頼むぞ、スバル!」

 

徐倫が言い放ったと同時に、スバルは円を描くような構えを取った。円の中心には、空色の魔力が『溜まる』!

 

「この一撃はッ!なのはさんとティアの分だ!!ディバイィイイーーン!!」

「うわぁああああ……」

 

オエコモバが悲鳴を上げるが、スバルはお構いなしに、解き放つ!!

 

「バスタァァアアアーー!!」

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

徐倫たちから300m離れたあたり

 

 

ドグオォオン

 

「わっ!なにあれ!?」

 

いきなり後方が爆発したため、まき絵は振り向いた。だが、ティアナは呆れたように言った。

 

「あー、多分スバルね……あの様子だと、勝ったみたいだけど………」

「ガジェットも追ってこないし、任務完了かな?」

「後は、この人だな…」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「……スバルよぉ、確かに私は『頼んだ』って言ったわよ……でも………」

 

徐倫は、スバルの『ディバインバスター』の破壊跡を見て、呆れたように言った。

 

「明らかにやりすぎでしょ……」

「い、いやぁ〜………ちょっと気合い入りすぎちゃって………てへっ」

「『てへっ』って何『てへっ』って!?こんだけ破壊しといて『てへっ』ですませちゃったよこの子!?」

「というか、これだけの威力を喰らって大丈夫なのか、あいつは………?」

 

明日菜が叫び、承太郎はオエコモバの安否を気にした。

 

「……まあ、『非殺傷設定』だから大丈夫だろ。つーかこれ、あいつのスタンドの『暴発』が原因なんじゃないか?」

 

ヴィータはオエコモバがナイフを投げようとしていた事から、『ヘルズ・マリア』のピンがスバルの攻撃のはずみで飛んだのでは、と予想する。

 

「さて、後はてめぇだけだぜ!」

 

ヴィータはホル・ホースに向かってそういうが………

 

 

 

 

 

ダッダー

「「「「って逃げてるしッ!?」」」」

 

脇目も振らず、すたこらさっさと逃げていた。ホル・ホースは走りながら振り返り、

 

「悪いなぁーお嬢ちゃんたちッ!ここは出直させてもらうぜ!オレは誰かとコンビを組んで実力を発揮するタイプだからなぁー!『一番よりもNo.2!』これがホル・ホースの人生哲学!文句あっかー!!」

 

言い訳みたいな捨てぜりふを残して逃げていった………

 

「ほっておけ。どうせあいつ一人じゃあかかってこないしな。今はオエコモバってヤツが先だ。あいつには、『矢』をどこに隠したのか聞かにゃあならないからな。」

 

承太郎はやれやれとかぶりを振ってそう言うと、近くの噴水まで飛ばされてピクピクしているオエコモバに近づいていった。

 

「!!」

 

だが、ネギは気づいた。噴水の水面から、『サメの背鰭』が出ていることに!

 

「承太郎さん!スタンドです!噴水に『サメがいます』!」

「「「「「!!」」」」」

 

承太郎たちも気づいたが、一手遅かった。サメは、オエコモバに襲いかかり、のどを喰い破った!!

 

「ぐえッ………」

「な………なんだとぉぉおーー!?」

「くっ!『爪弾』!!」

 

ネギがサメに爪弾を放つが、サメは噴水にすでにおらず、爪は噴水に沈んだだけに終わった。

 

「消えた!?」

「くっ、恐らく『水から水へ移動する』遠隔操作スタンド!オエコモバは『捨て駒』か!」

 

徐倫は理解した。オエコモバなど、単なる下っ端という事に。

承太郎はオエコモバの様子を見るが…

 

「…死んでいる……即死だな。」

 

承太郎の言葉に、全員が戦慄した。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

逃げるため街道を走っていたホル・ホースは、いきなり『ビルの床』に倒れ込んだ。

 

「いったぁあ〜ッ!おいおいサルシッチャさんよぉ〜〜、呼び出すんなら、もう少しタイミングを考えてくれよぉ〜!」

 

ホル・ホースは、自分を『連れてきた』男に目をやる。

 

腰まで伸ばした銀髪に、鋭い青い瞳、藍色のスーツに、黒いコートを着込んだ男――サルシッチャだ。

 

「……ホル・ホース、君が動き回るから我が『アンダー・ザ・レーダー』で捉えにくかったんだ。文句を言うな。」

「……はっ相変わらず冷たいねぇー」

「二人とも、話はすんだ?さっさと行くわよ。」

 

声がした方を見ると、銀髪というよりも、白髪に近い色の髪を縦ロールにした、勝ち気そうな翠色の目の、ゴシックロリータ服を着た14歳位の少女――ルル・ベルがいた。足元には、ロシアンブルー種の猫もいる。

 

「はい、ルル・ベル様。」

「仰せのままに、お嬢様。」

 

三人は、先ほどまでいた部屋から、静かに出ていった。

 

 

 

 

 

オエコモバ――スタンド名:ヘルズ・マリア―――死亡 再起不能

ホル・ホース――スタンド名:皇帝――再起可能

高町 なのは――デバイス名:レイジングハート・エクセリオン――重傷 全治2ヶ月半

ティアナ・ランスター――デバイス名:クロス・ミラージュ――全治2週間

 

 

 

←to be continued...

 




8話です。
・サブタイトルは「遠い国から来たテロリスト」から。読みは一緒なのに違う意味になっています。

・これを『にじファン』で連載していたころはオエコモバのスタンド名は不明だったので、ALI PROJECTの楽曲から取ってあります。今は判明しているけれどオエコモバの名前そのままなので、このままにしてあります。

・今回、爆発が大げさだったので、オエコモバの能力が暴発したことにしましたw自分のスタンドで死ぬ間抜けはいないでしょうけど、割と制御難しそうなので、あのスタンド。

では、次回をお楽しみに!


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#09/学園長からの第一指令;『学年最下位を脱出せよ!』

オエコモバの襲撃から数時間後

 

ミッドチルダ 機動六課隊舎 部隊長室

 

 

「なのはちゃんが重傷でティアナが負傷、おまけにオエコモバは『始末』されて、矢の行方もわからない、か……」

 

フェイトからの通信を受け、八神 はやてはため息をついた。

管理局でも認知していなかった能力――「スタンド」。今回の事件は、このスタンドが関わっているという……

 

[うん……なのはの輸送とその話をするのに、承太郎さんと明日ミッドチルダ(そっち)に向かうことになったよ………]

 

ティアナの傷は幸い浅かったが、なのはは左腕を含む重傷だ。麻帆良では手に負えないらしく、ミッドの病院に輸送されるらしい。

 

「……分かったわ。じゃあ、そん時にな。」

 

そう言って通信を切ると、はやてはさらに山積になった問題に、再びため息をついた……

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

3日後

 

麻帆良学園 学園長室

 

 

「そうか、ネギ君はうまくやっとるのか。」

「はい、生徒とも打ち解けていますし、授業内容も頑張っています。この分なら、指導教員の俺としても、合格点を出してもいいかと……」

 

ネギについて話す学園長とウェザー。どうやら、四月から正式な教員として採用されそうだ。

 

「ご苦労じゃったウェザー君。(例の「スタンド」の件にもくじけないとは、さすがと言うべきかのお)――――ただし、もう一つ……」

「?」

 

 

 

「彼には『課題』をクリアしてもらおうかの。――才能ある『立派な魔法使い』の候補生として……」

 

 

 

 

 

#09/学園長からの第一指令;『学年最下位を脱出せよ!』

 

 

 

 

 

「ネギ君、あんなことあったのに頑張るね~」

「ああ、普通あの歳でアレ見たらトラウマだぞ。」

「実際私はトラウマになったわ……」

「……大丈夫か?」

 

昼休み、食堂でスバル、明日菜、徐倫、千雨の4人は、木乃香が自分の料理を取りに行っている間、この間の話をしていた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

あの後、『魔法先生』たちが事後処理を行い、オエコモバの死体やガジェットは片づけられ、この事件は『無かったこと』になった。

 

「―――さてと、あなた達には、スタンドについて話を聞かせてほしいのだけれど………」

 

予想していた通り、徐倫たちはスタンドについて知っている事を話すようフェイトらに求められた。ここで事情聴取を引き受けたのが、承太郎であった。

 

「俺はこの中で一番スタンドについて詳しい。「矢」の事についてもだ。それに、学生は『学業』を優先させるべきだろう?」

「………そうですね、解かりました。」

 

そして承太郎は、『矢』の調査を、彼らスタンド使いを全面サポートする『スピードワゴン科学医療財団』のエージェントに任せ、フェイトと共に『ミッドチルダ』へと向かったのだ。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「……まあ、『期末』近いから助かったっちゃあ助かったがな。」

「う゛……イヤなこと思い出させないでよ……」

「うへー、この忙しい時に〜?」

「ま、学生だから仕方ないだろ。」

 

そう、来週から『期末試験』なのだ。

 

当然のことながら、それは教員であるネギの耳にも入っていた……

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

同時刻

 

 

ネギは、日直であるまき絵と、その友人――髪を右側でサイドテールにした明石 裕奈(あかしゆうな)と歩いていると、ふと、他のクラスに目が止まる。

 

「何か、他のクラスの皆さん、ピリピリしてますね……?」

「あー、期末テストが近いからね〜。来週の月曜からだし。」

「へー、大変だなぁー………………って!2‐A(うち)もそうなんじゃあ!?」

 

のんきに言う裕奈とまき絵に対し、呆れの入った突っ込みを入れるネギ。当の2人は頭をかきながら、

 

「あー、麻帆良学園女子中等部ってエスカレーター式だから、あんまり関係ないんだよー。」

「特に、うちのクラスはずーっと『学年最下位』だけど大丈夫大丈夫。」

 

笑いながらいうまき絵たちに、ものすごく不安になるネギだった。

ふと、あるクラスに置いてある花のようなトロフィーを見つける。裕奈に聞いたら、期末学年トップに送られるらしい。

 

(うーん、何とかした方がいいのかな…あんなトロフィー欲しいけど、無理かな?……無理だよなぁ………いや、確かそういう時に効く魔法が……)

「ネギ君。」

「わっ、ウェ、ウェザー先生ッ!?」

 

いきなりウェザーに話しかけられて、ネギは驚く。まあ、彼の場合は仕方ないかもしれないが……

 

「これを。学園長からだ。」

「えっ?学園長から?」

 

ウェザーから封筒を受け取るネギ。封筒には、『ネギ教育実習生への最終課題』と書かれていた。

 

「えぇっ!?僕への『最終課題』!?」(こっ、こんなのがあるなんて……最終課題って何をやれば…………?)

 

『最終課題』の文字に驚き、どのような内容なのか予想される内容を頭でぐるぐる渦巻いた。恐る恐る封筒を開けて、中身を見てみると……

 

 

 

 

 

ネギ君へ。

A組が次の期末試験で学年最下位から脱出したら、正式な先生にしてあげる。

                  近衛 近衛右衛門

 

 

 

 

 

「が、…………学年最下位脱出ぅううーー!?…………な、なーんだ!意外と簡単そうだー!」

「!?そ、そうだな……」

 

ネギは簡単そうでホッとするが、一緒に見ていたウェザーは微妙な表情だ。

 

(……言えない!ものすごく難しいなんて言えない!)

 

無邪気に笑うネギと、正式な教員になれる事を知って喜ぶまき絵と裕奈を他所に、不安しかないウェザーは顔を曇らせた………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

HRの時間

 

 

「ええっと、今日のHRは期末試験に向けて大・勉強会にします!今回A組が学年最下位だと、(僕が)とても困ることがあるので皆さん、頑張りましょう!」

 

(どうしたんだろうね、急に……?)

(さあ?)

(学園長に何か言われたんじゃね?)

 

ネギの提案に、何があったのかと話す徐倫たち3人。千雨はあながち間違ってはいないが。

 

「はいはーい!私にいい考えがありまーす!」

「あ、はい、桜子さん。」

 

手を挙げたのは椎名 桜子(しいな さくらこ)。A組屈指の能天気少女だ。

 

「ここは「英単語野球拳」がいいと思いまーす!」

 

「おおー!」「それだー!」

 

「なっ、ちょっと!皆さん!?」

 

桜子のぶっ飛んだ提案に、悪ノリするクラス一同。しかし当のネギは………

 

「(なるほど、『野球』を取り入れた勉強法かな……?何となく面白そうだし、普通に勉強するよりも覚えやすそうだ………)分かりました!やりましょう!」

「こらーー!?」

 

「…………アイツ、『野球拳』って何か知らないでOK出したな……」

「だな………」

「おー、楽しそーー!」

「「お前も悪ノリするな!」」

 

目を輝かせるスバルに突っ込む二人。なんだかんだで仲がいい3人だ。

 

 

 

 

 

結局、勉強らしい事は何一つできなかったそうな……

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

 

放課後 慈愛の女神像付近

 

 

「はぁ、どうしよう……」

 

元気なく、とぼとぼと歩くネギ。どうしたら、学年最下位から脱出できるのだろう……?さっきから、そればかり考えている。

先ほどの光景を見て、この『課題』がどれだけ困難なものか、はっきりと理解した。あそこまで能天気な人たちとは、思っても見なかった。

 

ふと、ネギはあることを思い出す。

 

「………そうだ!3日間だけとても頭の良くなる『禁断の魔法』があったんだ!それをつかえば……!」

 

思い出すと、早速杖を取り出して詠唱にかかる。

 

「副作用で1ヶ月ほど頭が『パー』になるけど……仕方ない!……ラス・テル マ・スキル……」

「「何をやってんだぁぁぁぁああああああああああ!!!」」メメタァ!

 

詠唱しようとしたら、偶然通りかかった明日菜と徐倫に飛び蹴りをお見舞いされた。

 

「あ……二人とも…」

「おめーよー、いい加減魔法に頼るのやめろよな!今までどうだったかはしらないけど…」

「そもそもバレたら即刻帰国なんでしょ!?使いすぎよヘボ魔法使い!!」

「あう……でも、このまま最下位(ビリ)だったら、僕………」

 

二人にぼろくそに言われ、ヘコむネギ。明日菜は、そんなネギに、ぼろぼろのノートを渡す。

中には、小テストの答案が挟まっていた。

 

「あっ…まあまあできてる!まだ悪いけど……」

「こいつだってアレからちょっとはがんばったんだよ。まだ悪いけど……」

「二人してまだ悪いって言うな!!……まったく、マギ……何とかを目指してるのか知らないけどさ、そんな風に中途半端な気持ちで先生やってる奴が担任なんて、教えられる生徒だって迷惑よ!」

「!!!」

 

明日菜が去っていくと、徐倫はショックを受けるネギを見て、

 

「アスナの言うことはよぉー、私も賛同するぜ?生徒の『信頼』は、魔法なんかで得られるもんじゃないだろ?」

 

徐倫はそういうと、明日菜を追いかけて行った。ネギは2人の言葉で、動けないでいた……

 

「……うん、さすがは明日菜さん達だ。安易に魔法に頼ろうなんて、甘い考えだった!…よし!期末テストまで、魔法を封印しよう!」

 

そして、決心をしてそう言うと、ネギは人目につかない場所に移動する。

 

誓約の黒い(トリア・フィーラ・ニグラ・プロミッ)三本の糸よ(シーワ・ミヒ・リーミタチオーネム・)我に三日間の制約を(ペル・トレース・ディエース)!」

 

呪文を詠唱すると、ネギの右腕に黒い三本の黒い線が現れる。それと同時に、ネギは自身の身体から魔力が消えていく事を感じ取った。

 

「よし、これで僕は三日間『ただの人』だ!―――さて、明日の授業の準備を……」

『チュミ?』

 

ふと、声がして振り向くと、自分の『精霊(スタンド)』がいた。どうやらこのスタンドには『自我』のようなものがあるらしく、時々こうして勝手に発現することがよくある。

 

「あ、そうか……魔法が使えないから、今は「スタンド使い」って事になるのかな?」

 

そう言いながら、ネギは寮に向かって歩く。そして思った、この『スタンド』の名前を早く決めなければ、と。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

その日の夜

 

女子寮 大浴場

 

 

「えぇーーっ最下位のクラスは解散〜〜!?」

「うん、あくまで噂なんやけどな…」

 

大浴場で木乃香が話した事は、あくまで噂だが、信じられない事だった。しかも、特に悪かった生徒は『留年』どころか『小学生からやり直し』などの噂も立っていた。

 

「いやっさすがにそれはないでしょーー!?」

(…いや!昼間ネギも言ってたし……『大変な事』ってこれのことじゃあ……?)

 

 

 

「……さすがにそれはないよな?」

「全く、くだらない噂を真に受けやがって……」

 

バカレンジャーから離れた場所で湯船につかりながら、尾びれ背びれのついた噂で盛り上がる彼女らのやり取りを見ていた徐倫と千雨は呆れていた。

 

しばらく聞いていると、『図書館島』にある『読めば頭が良くなる「魔法の本」』なる物を探しに行ってはどうか、という話になっていた。

 

「いや、さすがにそんなのは………あ」

「……実在するんだったな………『魔法』…やれやれ、それで真に受けたのかアスナは…」

 

千雨と徐倫は、明日菜の考えを察した。魔法使いや異世界人がいるため、『魔法の本』とやらも『本当にあってもおかしくない』という推測で判断したのだろう…

 

「………やれやれだわ。そういうバカは―――」

「徐倫………?」

 

徐倫は湯船から出て、明日菜たちに近づく。

 

「放っておけないのよね!」

「徐倫!!」

「ジョジョ!!」

「「司令官(コマンダー)!」」

 

やれやれと、仕方なしげに見下ろす我らが司令官を見て、バカレンジャーは期待の眼差しを向けた。

 

「………やれやれ、メンドー見がいいのか、同じ馬鹿なのか………」

 

千雨は一人、徐倫の行動にあきれるのであった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

午後10時

 

麻帆良学園 図書館島

 

 

今、ここの裏手にある秘密の入り口には、バカレンジャーの5人と司令官・徐倫、図書館探検部の3人、そして、ネギがいた。

 

「これが『図書館島』か……」

「でも、大丈夫かな?下の階は危険なトラップがあるから、中等部部員は立ち入り禁止なんだよ……?」

「なんで図書館にそんなものが……?」

「大丈夫、それは『アテ』があるから。」

「へー?」

 

明日菜のアテ―――ネギは、寝ぼけ眼でついてきていた。明日菜に呼ばれて、ふらふらとネギが歩いていくのを後ろから見ていた徐倫は、こっそりのどかに話しかけた。

 

「宮崎、悪いが頼む。」

「は、はぃ~………」

 

のどかは少し戸惑いながらも、『背中から異形の左腕』を出して、それをネギに向けた。

 

(ほらネギ!いざという時は、魔法で守ってね!)

 

一方、明日菜はネギを頼ってそういう。昼間ネギに行ったことは忘れているらしかった。しかし、当のネギは……

 

「あの……魔法なら僕、『封印』しましたよー?」

『チュミ。』

 

のん気に言うネギと、頷くスタンド。

 

「………えぇーーっ!?」

 

明日菜の悲鳴が、閉じていく扉の中に響いた………

 

 

 

 

 

←to be continued...




9話です。
・サブタイトルは「ボスからの第二指令;「鍵をゲットせよ!」」から。

・承太郎さんミッドへ。これがどう物語に影響するか、お楽しみに。

・今回、原作通りであまり進展はありませんでしたが、承太郎との会話やのどかの行動などを追加しています。

では、次回をお楽しみに!


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#10/ウルトラセキュリティ図書館 ①

麻帆良学園の湖に浮かぶ『図書館島』は、明治の中頃、学園創立と共に建設された、世界でも最大規模の『巨大図書館』!

 

二度の大戦中、戦火を避けるべく世界各地から様々な貴重書が集められたここは、蔵書の増加に伴い、『地下』に向かっての増改築が繰り返され、現在ではその全貌を知るものは誰一人いない!

 

 

 

「―――そこでこれを調査するため、麻帆良大学の提唱で発足したのが、私たち、『麻帆良学園図書館探検部』なのです!」

「中・高・大合同サークルなんよ。」

「「うわーっ!?」」

 

夕映に解説されながら一同がたどり着いた扉を開けると、目の前には本、本、本―――見渡す限りの巨大な本棚と、それに収まった大量の本だった。

 

 

 

 

 

#10/ウルトラセキュリティ図書館①

 

 

 

 

 

「私たちがいるここが地下3階、中学生が入っていいのはここまでです。」

 

夕映が、『抹茶オレンジ』という謎のジュースを飲みながら、説明する。そんなとき、ネギはある本に目が留まる。

 

「わ、見てください!すごく珍しい本が!」

「ん?……「緋色の研究」?……あ、“初版”じゃねーか!こんな所に………」

「あ、先生、ここは「貴重書」狙いの盗掘者を避けるため―――」

 

夕映が言い終わる前に、『バシュッ』という音とともに、『矢が』飛んできた。

 

ガシィッ

「うわッ!?」

「あ、………危ねーーーー!」

「―――罠がたくさん仕掛けられていますから、気をつけてくださいね。」

「え゛え゛え゛え゛ーーーーー!?」

「ウッソーーーーッ!!??」

「いや、死ぬってそれーーー!」

 

間一髪で徐倫が矢を掴んだから良かったが、今度は何が起こるか分からない…………全員の気が引き締まった。

 

 

 

 

 

「えぇ!?読めば頭の良くなる魔法の本!!?」

「そーらしーえー。」

「手伝ってネギくーーーん。」

 

ようやく自分が置かれている状況を聞いたネギは、明日菜と徐倫の元に駆け寄る。

 

(あ、明日菜さん、僕に「魔法に頼るな」ってあんなに言ってたのに……!空条さんも……!)

「「うっ……」」

 

言葉に詰まる二人。明日菜は謝るポーズをとって、

 

「ゴメン……でも、今回は『緊急事態』だし、許してよ……」

「学年最下位だと、大変なことになるらしいしな。」

 

『大変なこと』と聞いて、自分の「最終課題」のことであると気付いたネギは、少しウルッとした。実際は違うのだが…………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「うひゃーー、広っ!?」

「こんなに本あってどうするんだよ…?」

 

ある部屋に着いたネギたちは、無駄に広い部屋に大量の本を見て、そう感想を漏らした。

 

「へー、「本棚の上」を歩くんですかー?」

「何考えて作ったんやろね、ホント。」

「ここ、結構高いよー……落ちたら怪我じゃすまないんじゃ…」

「そこ気をつけてです。」

 

夕映が注意をするのと、

 

バコンッ

 

まき絵のいる「本棚と本棚の間の足場」が開いたのは、ほぼ同時だった………

 

「えっ……キャーーーーーーー!」

「まき絵!!?」

「まき絵さーーーーん?」

 

落ちていくまき絵を見て、驚くネギたちだが………

 

 

 

 

 

 

「えいっ」

シュルルルル…ビンッ

 

まき絵は、袖の下に装備していた「新体操のリボン」を振るうと、リボンはインディー・ジョーンズよろしく、天井の「ハリ」に巻きついた!

 

「あわわわわ~~~~~、びっくりしたーーーー」

 

キリキリとリボンを巻き取り、本棚の上まで上ってくるまき絵。

一同がホッと胸をなでおろす中、ふとネギはあることに気付く。まき絵の持つリボンが緑色なのだ。

 

(あの、空条さん、もしかしてまき絵さんのあの「リボン」って……)

(……ああ、お察しの通り、『グロウン・キッド』が取り付いている………)

 

そう、あのリボンは「布製」だ。それなら、あんな芸当ができてもおかしくはない。有効に使っているのか、無駄な使い方なのか……ネギと、肩の辺りを浮かぶ「スタンド」には分からなかった。

そんな風に考え事をしていると、足元で「カチリ」という不吉な音と、ほんの少し床が下がる感覚が………

 

「え?」

 

一拍置いて、頭上の本棚が倒れて中に詰められていた本と一緒に落ちてくる!

 

「ハイヤァアーッ!!」

ドガァッ

「うわぁあ!?」

 

しかし、倒れかけた本棚は古菲の飛び蹴りで元の位置に戻り、落ちてきた本は楓が素早く受け止めた!

 

「まあ、アタシ達アタマ悪い代わりに、運動神経は良いアルから♪」

「は、はぁ………?」

 

余裕そうに言う古菲と、笑顔で本を下す楓に、ネギは茫然としながらも相槌を打つ。

 

「……ねえ徐倫?本を受け止める時、楓の腕が『4本』あるように見えたんだけど、もしかして………?」

「……ああ、楓もスタンド使いだ。近いうちに紹介するつもりだったんだけどな………」

「マジで…?」

 

後ろで明日菜と徐倫がそう話すが、ネギには聞こえていなかった。

 

 

 

 

 

☆2時間半後★

 

 

 

 

 

魔法の使えないネギをかばいながら、何とか目的地までたどり着いたネギたちバカレンジャー。

 

 

そこは、今まで通って来た道と比べると、『神聖』な場所に思えた。

上座にあたるところは台になっており、左右には3m以上はある「石像」が、中央の『本』を守るようにたっていた。

 

「つきました!ここが『魔法の本の安置室』………!!」

「「「おおーーーーー!」」」

「……なんでこんな場所が学校の地下に………?」

「今は深く考えないでおこうな……」

 

驚きを通り越して呆れている明日菜と徐倫。ネギは、石像が守っている本を見て、それが何かに気づいた。

 

「あっ……あれは!?伝説の『メルキセデクの書』!?何であれがこんな所にっ!!??」

「え?って事は本物!?」

「ええ!!確かにあれなら、ちょっと頭を良くするくらい簡単に!!」

「ネギ君詳しいなぁー。」

 

ネギの言葉に、ハシャギ出すバカレンジャー。そして、我先にと本へ向かい走り出した。

 

「あ、待って下さい!あれだけ貴重な魔法書です!絶対罠があります!」

 

ネギが注意するも、台の前にある橋が左右に開き、5人はそこへ落ちてしまう。

 

ズテーン

「うわっ!?」

「キャアッ!?」

 

だが、橋の下にはまた『足場』があったため、打ち身程度ですんだ。足場には、64個の円と、文字が描かれていた。

そう、これは――――

 

 

 

 

 

「………………ツイスターゲーム?」

 

そう、ツイスターゲームだ。

 

全員が疑問に思っていると、本を守るように立っていた石像が『動き出した』!

 

『ふぉふぉふぉ、この本が欲しくば、わしの質問に答えるのじゃー!』

「うっ、動いたーっ!?」

(ご、『動く石像(ゴーレム)』!?)

(………アレ、何だかスッゲー聞き覚えのある声が………?)

 

石像が動いた上にしゃべり出した事に驚く一同だが、徐倫は石像の声をどこかで聞いた事があるような気がした。

 

『では第一問、“difficult”の日本語訳は?』

「えぇー!?」

「何それぇー!?」

 

ゴーレムの質問、というか問題に文句を言うバカレンジャー一同。だが、ネギが全員に言った。

 

「みなさん、落ち着いて下さい!ちゃんと問題に答えれば、罠は解けるはずです!落ち着いて“difficult”の訳をツイスターゲームの要領で踏むんです!」

「ええーっ!?そんなこと言っても!?」

「デ、『ディフィコロト』って…何だっけ!?」

 

だが、相手は所詮バカレンジャー。英単語訳が簡単にできる訳がなかった………

 

「ええっとだなぁ……」

『乗っていない者が答えを教えたら『失格』じゃぞー。』

「うぇ!?い……“easy”の反対です!」

「ええっと、『簡単じゃない』!!」

 

「そ、そうだ!えーと『む』」

「そうそう!」

「『ず』!」「『い』ね!」

 

『「むずい」……まあ、いいだろう………正解じゃ。』

「ヤッター!」「本ゲットーー!」

 

正解に喜ぶ一同。だが、彼女らは忘れていた。さっきゴーレムは『第一問』と言っていたことに。

 

『第二問“cut”』

「「「「「ってまだあるんかい!?」」」」」

 

 

 

その後も、

 

 

 

『第七問“remember”』

「あ、これわかるよ!『お』…」

「なんかキツいわよこれ…『も』」

 

 

 

バカレンジャーたちは

 

 

 

『第十一問“baseball”』

「うぐぐ…『や』」

「きゅ…『きゅ』〜」

「『う』!」

 

 

 

問題を解き続けた。

 

 

 

『第十九問“massacre”』

「いや、それ中学で習わないだろ!!」

「どこの『灰の塔』!?」

 

 

 

※massacre:皆殺し

高校でも習いませんでした(byオレの「自動追尾弾」)

 

 

 

その結果、ブリッジや右手と左足を上げたりと、めちゃくちゃキツい体制になったが、全員耐えた。

 

(も、問題に『悪意』を感じるです………)

『では最終問題!!“dish”!』

「あ!分かった!『お皿』ね!『お』!」

 

夕映が『お』を踏む。

 

「『さ』!」

 

楓が『さ』を踏む。そして、

 

「「『ら』!」」

 

まき絵と明日菜が『る』を踏んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………『()』?

 

 

 

 

 

「……………おさる?」

 

 

 

 

 

『残念ーー!』

バガァッ

 

 

 

ゴーレムが、手に持ったハンマーを振り下ろし、ツイスターゲームごとネギたちを落とした!

 

「イヤァァァアア」

「アスナのおさるーー!」

「……やれやれ、やはりこうなるのか……」

「何でジョジョは冷静アルかぁあー!?」

 

各々がリアクションを取りながら、下へ、下へと落ちていった………

 

 

 

←to be continued...




10話です。
・サブタイトルは「ウルトラセキュリティ懲罰房」から。

・冒頭のナレーションはジョジョっぽさを意識。大川透さんの声で再生されると幸いですw

・まき絵のスタンド活用術や、楓の能力がチラリと登場。楓のスタンドはもう少しお待ちください。


では、次回をお楽しみに!


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#11/ウルトラセキュリティ図書館 ②

翌朝

〈期末試験まで後2日〉

 

2年A組

 

 

教室に入ってきたスバルは、隣の席に徐倫がいないことに気づいた。

 

「おはよー。……あれ?長谷川さん、空条さんは?」

「それが、昨日『図書館島』行ったきり、帰ってこないんだよ。……まあ、あいつなら大丈夫だろうけど………。」

 

特に心配していない様子の千雨。彼女と、彼女の『ストーン・フリー』を信頼しているからだろうか。

そんな時、雪広 あやかの叫び声が聞こえた。

 

「何ですって!?A組が最下位脱出しないとネギ先生が『クビ』にぃいーー!?どーしてそんな大事なこと言わなかったんですの裕奈さんッ!?」

 

見てみると、あやかが裕奈に掴みかかっていた。ふと、千雨は昨日の事を思い出した。

 

「……なるほど、『大変なこと』ってこれか……」

「ね、ねえ、ネギ君がクビってことは、ネギ君もう………!?」

「………まあ、バカレンジャーがいるとはいえ、学年トップが三人もいるからな、うちのクラス………成績のピンキリが極端すぎだろって毎回思うけど………」

 

大丈夫だろと言いかけた千雨だが、突然ドアが勢い良く開いたため、途中で途切れてしまう。

 

「みんなーーッ大変だよーーーッ!!」

「ね、ネギ先生とバカレンジャー達が「行方不明」に………!!」

 

 

 

 

 

 

 

「……………すまんナカジマ……やっぱダメかもしれない……………」

「えぇ〜〜ッ!?」

 

 

 

 

 

#11/ウルトラセキュリティ図書館 ②

 

 

 

 

 

午後8時40分

 

グリーンドルフィンストリート麻帆良 入口付近

 

 

「ごめんね千雨、アンタにこんな事任せちゃって………」

「いや、こいつの事だから「先生たちを助けに行こう!」って言いだすとは思っていたし………」

 

あははー、と後頭部を掻くスバルを横目に、松葉杖で立つティアナは千雨に謝った。

放課後、スバルは自分と千雨で図書館島のネギ達を助けようと提案してきた。無論、千雨は「徐倫や佐々木を含めてスタンド使いが4人いるから」と難色を示したが、スバルは是が非でも助けに行きたいらしく、下手したら何の対策もなしに1人で行きかねなかったため、千雨は仕方なしに同行することとなった。

 

「でも、本当に2人で大丈夫?やっぱり私も……」

「ティアは安静にしていてよ。足、まだ痛むんでしょ?」

 

ティアナがホル・ホースから受けた傷は浅かったものの、松葉杖が必要であるためしばらくは前線に出られないでいた。

 

「そうだ。それに、徐倫が『予防線』を張っていてくれていたからな。大体の位置はつかめそうだ。」

「『予防線』………?」

「流石に私らだけで図書館島行くのは、水も地図もなく『砂漠』のど真ん中歩くようなもんだからなぁー、手の空いている「スタンド使い」に声をかけておいたよ。」

「!?スタンド使いを……!?」

 

千雨が振り向くと、そこには近づいてくる3人の男女の姿があった。

 

「…………長谷川、その紹介だと、黒いタンクトップで来ないといけなくなるぞ?」

「あ、な、ナカジマさんに長谷川さんー……と、後ろの方はー?」

 

そこにいたのは、ウェザーとのどか、そして…

 

「徐倫がピンチなんだってな!!」

 

サムズアップするアナスイだった。

 

「…………………アイツは呼んでないぞ……頼りになるっちゃあなるが……」

「そ、そう……で、でも、何で二人に……?」

「この二人は――まあ、アナスイもだが――『図書館探検部』な上に、『スタンド使い』だからだ。」

「「!!!?」」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

図書館島 裏手 「秘密の入り口」前

 

「え、…ええっとー、ナカジマさんも、スタンドに近い「能力」を持ってるって聞きましたがー?」

「まあ、ある程度期待はするぞ。」

「あ、うん…」

 

のどかとアナスイにそういわれ、スバルは返事をすると、隣の千雨にアイコンタクトを送った。

 

(二人には『魔法』のこと話してないの?)

(ああ、いきなり話しても、信じないだろうし…)

(そうだよねー………)

 

苦笑するスバルと、やれやれと肩をすかす千雨。魔法の事は、後でゆっくりと話した方が良さそうだ。

 

「よし、ここらで、『捜索手段』を話すぞ。宮崎。」

「はっ、はいー………イッ、『イノセント・スターター』!」

 

千雨に呼ばれたのどかは、自身のスタンドを発現させた。

 

現れたのは、人の女性とウミガメを組み合わせたような、機械的な『蒼い』スタンドだ。

頭にはバイザーのようなものが上げられており、耳に当たる部分はアンテナのように伸びている。

肩には、二の腕までを包むような亀甲型の肩アーマーがつけられ、左手には亀甲型の箱のようなものがあり、先端部分は、まるで換気扇やエアコンの口のようなシャッターになっていた。

 

「こいつの名は『イノセント・スターター』。つい一週間くらい前に『矢』に射抜かれて発現した。能力は、探査機になる『子亀』を発射することだ。」

「探査機?」

 

スバルの疑問に答えたかのように、イノセント・スターターの左手のシャッターが開き、中から何か飛び出した。

見ると、甲羅が片眼鏡(モノクル)のようになった小さな「ウミガメ」だった。

 

「ええっとー、こ、この「子亀」のレンズに映ったものや、聞いた事を、私が見たり聞いたりできるんですー。あ、後、子亀の位置を把握できますー。」

 

少しおどおどしながらも、自分のスタンドの説明をするのどか。

ふと、スバルはあることに気づいた。

 

「もしかして、ネギ君たちにも?」

「は、はいー、空条さんに頼まれて、『子亀』を一匹付けましたー。」

「そうか!!その位置をつかめば救出『可能』って訳だね!」

「ああ、おまけに、探検部の中等部顧問のウェザー先生が『地図』を持ってきてくれたからな。結構「深い」所にいるみたいだし、とっとと助けて試験勉強すんぞ!」

 

千雨の一同は図書館島へ入った。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

数十分後

 

図書館島 地下5階 第78閲覧室

 

 

図書館島内部を歩いていた一同は、ふと、視線を感じていた。

 

(……ねえ、長谷川さん…)

(ああ、私ら以外に誰かいるな……オエコモバの仲間か……?)

 

だが、周りには人影がない。「イノセント・スターター」で探すことも考えたが、スタンド使いだったら警戒されてしまうだろう。

 

(………任せろ。『ウェザー・リポート』!)

 

考えていると、ウェザーの背後に「水蒸気」が集まり、人の形になった。

 

角が生えたような頭に、マスクをかぶったような外見。体のあちこちからは、『雲』のようなものが吹き出していた。

 

「先生のスタンドは『天候を操る』―――ウェザー・リポート!」

 

千雨が言うと同時に、周囲に『雨』が十数秒間降った。

 

「……………急に雨が降ったから、驚いてのぞき込んだな。」

 

見ると、水たまりに『男が』映っていた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

雨に驚いた男が気づくと、追跡対象はすでにいなかった。慌てた男は、対象たちを追うことにした。

 

 

カエルのような体制をとり、ヒタヒタと奇妙な歩き方のため少し遅いが、対象のうちの三人――青い短髪の少女と、眼鏡の少女と、変な帽子の男――に追いついた。

 

 

追いついた男は、青い短髪の少女に、ツバを吐きつけた。

 

 

しかし、角を曲がった際に、再び見失ってしまった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「…………何とか撒いたみたいだな。」

「何だったのあいつ…?変な歩き方だったけど……」

 

千雨たちは、本棚の『上』から、男が立ち去るのを確認して、降りた。

アナスイにエリオ達を任せて二手に分かれた彼女達は、スバルの固有魔法『ウィングロード』を使い、本棚の上に隠れたのだ。

 

「まあ、深追いは禁物だな。奴に立ち向かうのは、アイツの力を探ってからだ。」

「ああ、だが、本来の目的も忘れてはいけない。まずはアナスイと宮崎に―――」

 

そこでウェザーは、スバルの姿がないことに気づいた。

 

「……ナカジマ?」

「まだ降りてきてないのか?」

 

恐らく、本棚の死角にいるだろうと考える千雨。

だが、スバルは今、降りるどころではなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こっ………これはッーー!」

 

 

 

 

 

スバルは『宙に浮いていた』!いや、スバルだけではない。周囲にあった『本』も、一緒に浮いている!

 

スバルが本棚に捕まろうと手を伸ばすも、バランスが取れずに、その場で回ってしまう。

 

「わっ、わぁあ!な!これは……私が触れたものが…どんどん浮き上がって来ている!私自身も!これが、あいつの能力!?」

 

ふと、突然弾丸のようなものが飛んできたため、スバルは防御する。が、防御した反動で、さらに回ってしまう!

 

そして、スバルは気づいた。これは『浮き上がっているんじゃあない』!

 

「わ、私は今!漂っているんだ!上もしたもなくなっている!私の周りから!私の触れるものから『重力がなくなっている』という事ッ!これはッ!『無重力』だ!」

 

ふと、ヒタヒタという足音が聞こえ、そちらを向くと、さっきの男が、こちらまで来ていた。

 

円柱のような奇妙なマスクにゴーグル、ツナギを着て、何故か裸足に足首に靴を縛り付けた男だ。

 

男は、足に力を込めて、スバルまで一直線に『跳びかかった』!!

 

 

 

 

 

←to be continued...

 




11話です。
・のどかのスタンドお披露目。のどかはサポート系ですが、自分でも戦えるなど、若干変則的です。スタンド名は、無印のOPから。デザインイメージは、電王ロッドフォームを女性的にした感じ。

・ラング・ラングラー登場。ラングラーは図書館島だと絵が栄えるなぁと思いまして。


では、次回をお楽しみに!


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#12/ウルトラセキュリティ図書館 ③

図書館島 第62閲覧室 日本の文学エリア

 

 

「さてと、そろそろあいつらと合流するぞ。」

「は、はいー………」

 

アナスイが後ろに着いてくるのどかに言うと、発現した『イノセント・スターター』はバイザーを下げ、『索的モード』に切り替えた。千雨に付けた「子亀」を探知するためだ。

のどかの『前髪』の内側に「レーダー」が映し出され、千雨たちの位置を表示する。今の自分たちから、100mくらい離れているようだ。

 

「ルートは外れてないみたいだな…よし、そっちに向かうぞ!」

「は、はい………えっ?」

「どうした?」

 

のどかが何か感づいたらしく、アナスイは聞いてみた。

 

「あっ、あの……長谷川さんが―――」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「あー宮崎、聞こえるか?いや、私は聞けないから、一方的に話すぞ…」

 

子亀を掴んで、トランシーバーのように話しかける千雨。

 

「しばらく私らに『近づくな』!………ナカジマが、ヤバい状況にあるらしい……」

 

そういう千雨とウェザーの視線の先では、

 

 

 

 

 

天井まで届くような巨大な『本棚』が

 

 

 

 

 

『浮かんでいた』……

 

 

 

 

 

#12/ウルトラセキュリティ図書館 ③

 

 

 

 

 

「くっ、リボルバーシュート!!」

 

カードリッジを一発消費し、飛び掛ってくる男に衝撃波を放つスバル。男はスタンドの腕――筋肉質で、手首に球体が付いている――で防御するが、無重力下のため、後ろに吹っ飛んでしまう。撃ったスバルも同様で、本棚に叩きつけられてしまう。

 

「ちぃ、てめえはもう始末したが、今ので下の二人に気付かれたみたいだな……」

「?」

 

男の言うことが分からないスバルだが、ふと、自分の背後に気配を感じた。振り向くと、いつの間にかウェザーと千雨が『立っていた』。

 

「ふ、二人とも!?いつの間に!!??」

 

だが、二人は答えない。男がスタンドの全身を出したからだ。

 

まるで月面や火星のような無機質な肌に、ロケットのような模様が入った胴体。顔は円柱の一部をカットしたような形で、口に当たる部分に呼吸用の穴が数個あいており、目の部分にはベルトが巻かれている。

そして、先ほどの腕の球体が『回転』していた。

 

「『ジャンピン・ジャック・フラッシュ』!」

 

「二人とも!こいつの能力は「重力」をなくす!重力がない場所でどんな攻撃や動きをしていいか分からない。それに、やつの飛ばすものに触れてはいけない!『無重力に』される!」

「なるほど…『ありがとな(メルスィ・ボークー)』!」

 

小太刀を構え、何故かフランス語で感謝する千雨。

 

「『無重力』……おまえらもスタンド使いなんだろうが、それがどんなことを意味するのか……お前らに見ることができるかな?」

 

男が言い終わると、回転している球体から、何かが「発射」され、ウェザーに迫る!

 

だが!

 

 

 

 

 

 

グオオオオオオオオオ

「「!!?」」

 

ウェザーの周囲に「雲」が発生し、弾丸の軌道を『逸らした』!

 

「飛ばしたのは………ガラクタの部品か……」

「く……空気の層で弾の軌道を……!?」

「ああ、そして、敵の『攻撃手段』が分かった!『遠心力』だ!『重さ』がないというなら、回転する力でどこまでも加速できる!」

 

今のをみて、即座に分析する千雨。

男は、ウェザーに近づき、戦闘体制をとる。そして!

 

 

 

「『ウェザー・リポート』!!」

「『ジャンピン・ジャック・フラッシュ』ッ!!」

 

二人が、同時に拳を振るう!だが、男の腕がウェザーの雲に突っ込んだ瞬間、『炎上した』!!

 

「こ、この炎はッ!?『空気抵抗摩擦』か!マズイ!どんどん燃え移ってくる!『無重力解除』だッ!!」

 

ドグシャア

 

男が周囲の無重力を解除すると、浮かんでいたハードカバーの本が十数冊、一斉にウェザーに降り注いだ!

本の落下のダメージで、ウェザーは倒れ込んでしまう。男は、腕を振り、腕の炎を消すと、ウェザーに狙いを定める。

 

「とどめだッ!!」

 

そして、男は弾丸を放とうとすると――――

 

 

 

 

 

 

 

ドグオォオン

「「「!!??」」」

 

男の両腕が『爆発』した!

だが、爆発の原因はすぐに分かった。男に向かって、『子亀』が飛んできたからだ!!

 

ドガッドガガッ

「何っ!?くそッ!」

 

「あれって、『宮崎さんの』……?」

「ああ、『イノセント・スターター』の『子亀』だ!多分、私に付けた子亀で狙いを定めて!ほかの子亀を「ミサイル」みたいにあいつに当てたんだ!」

 

そう言う千雨の胸では、『子亀』の背中の片眼鏡がキラリと光っている。いつの間にか千雨の背中から移動したようだ。

 

「チィイッ」

 

男は派手に舌打ちすると、弾丸を推進材に上の階に飛んだ。

 

「逃げた!」

「マズいぞ…あいつが今飛び込んだ通路は………!」

 

ジリリリリリリリリ

 

ウェザーが言い終わる前に、非常ベルがけたたましく鳴り響いた。

 

「野郎……!『装甲防火扉』を閉めやがったッ!」

「「何でそんなものが図書館にッ!?」」

 

千雨とスバルがつっこむが、今はそんな場合ではない。

『装甲防火扉』という事は、そう簡単に開くようにはできてないはずだ。スバルの力なら壊せるかもしれないが、今スバルは無重力の支配下にあるため、力を出せない状況だ。

 

どうしようかとスバルが悩んでいると、

 

 

 

ガッシィィ

「!?」

「確か、お前が触れるものは、全て『無重力』にさせられる……だったな。」

 

ウェザーと千雨が、スバルを『掴んだ』。もちろん、二人もあのスタンドの能力の影響を受けて『無重力』になる。

すると、足元に『大気』が発生し、それを『推進材』に、三人は閉じていく装甲防火扉に突っ込んだ!閉じていくギリギリだったため、男がいると思われる部屋へ到着した際、スバルのハチマキが扉に挟まってしまう。

 

 

 

着いたのは、ほかの閲覧室に比べると小さい部屋だった。どちらかと言えば、普通の学校の図書室のような場所で、本棚と机がいくつもあり、壁一面本棚になっている。

入り口は四方の壁に一つずつあるが、どれも堅く閉ざされている。

 

「と…とりあえず、閉じこめられなかったけど…二人も『無重力』の支配を…」

 

ハチマキを外しながら、二人の心配をするスバル。

 

「…まあ、いずれあいつは私らも無重力にするつもりだっただろうよ。」

「それに、ここは非常時のシェルターになるようになっている部屋だ。そう簡単に扉を破ることはできない。逆に閉じこめられたのはあいつの方になる。」

 

ウェザーが説明するが、スバルは『別のこと』が気になった。

 

「一つ………さっきから困ったことがあるの……ギリギリで防火扉を通り抜けて、さっきの敵が今…ここのどこかにいる……こんな状況でちょっと言いにくいんだけど……個人的な事で…でも、結構切羽詰まったことでかなり困ってて……緊急に解決しないと………その……かなりマズくて……」

「「?」」

 

スバルが切羽詰まったように言うので、何事かと見る二人。

 

「私に…なぜ急に起こったかわからないんだけど……えと、その……どこの誰だって起こりうると思う!聖王だって絶対に自分ではコントロールできないはず!」

「いや、さっきから何の話を…………! な、なるほど!分かったぞナカジマ!!私も今『そうなった』!」

 

どうやら、千雨にも同様の問題が発生したらしい……

 

「?…どういう事だ?」

「だからさあ、『大きい方』と『小さい方』があって、「シ」で始まる下半身関係の言葉!もう漏らしちゃうよ!」

「いや、『大きい方』じゃなくて本当良かったって思うよ!きっと無重力と因果関係があるはずだ……すぐに解決しないと別な意味でかなり最悪!」

 

二人の言葉で、ようやくウェザーは言いたいことが分かったようだ。つまり、二人は――――――

 

「『小便』がしたいのか?」

「顔近づけて言うなや…すげーマジなんだよ…ガマンできない……どうしていいか分からない…」

「…その辺でするしかないな。」

「うぅ~相談しなきゃ良かった…」

 

ウェザーに相談した事を後悔する二人…

何というか、デリカシーがかけていた。

 

「オレはもう済ませた。今そこの空中でな。」

「「え?」」

 

ウェザーの爆弾発言に、信じられないという顔の二人。

 

「『無重力』になると、体内の血液は急に頭部にたくさん集まってくる。普段は『重力』があるから体の下のほうにある血液がな。」

 

解説するウェザーがスバルの額を指で触ると、ブヨブヨという触感が伝わった。

 

「触ってみろ…額の皮膚と骨の間が血液でブヨブヨに膨れている……『ムーン・フェイス』ってやつだ。だが、頭部に血液が行き過ぎると『危険だ』というので、君らの体内の腎臓は自動的に血の量を減らそうと活発に働き始める。それで利尿作用が激しく起こってるんだ。小便で塩分を出して、血を薄くさせようとな。確かにどうしようもない。空中へしろ。オレはもうそこの影でした。」

「おい!何でこういうことになったかは分かったが、今どこで何をしたって!!?」

「心配するな……雲が吸い取ってくれるよ。君らがパンツを下げるなら……」

 

千雨の言葉を無視して『雲』を出すウェザー。スバルと千雨は顔を見合わせて、仕方なく『する』ことにした………

 

「うおぉっ!ちょっ、ちょっとぉ!空中に浮いてるこれなにィィイ~~~~~!?」

「こぼれてる!雲からこぼれてるってこれぇぇ~~~~」

「………」

 

後ろから声がするが、見ないようにするウェザー。デリカシーがあるのかないのか…………

 

 

 

シュン!シュン!シュン!

「「……!?」」

 

ふと、二人は見た。空中に浮く「水滴」が、壁の溝に『吸い込まれた』!!?

だが、変化はそれだけではなかった。急に鼻血が出始め、溝に吸い込まれていった!

 

「こ!これは……いったい……!?」

「か……壁がおかしい……溝に…鼻血が吸い込まれていく!」

「オレの……さっきの怪我もだ……血が空中にどんどん吹き出していく…」

「「!!」」

 

見ると、確かに血がどんどん『溝』に吸い込まれている。それに、スバルは感じた。さっきから、なんだか息苦しい!

 

そのとき、スバルたちに向かって、弾丸が飛んできた!スバルはあわてて防御するが、腕にかすってしまう。すると、その『かすり傷』からも、血が吹き出していく!?

 

「き……『気圧』が下がっているッ!」

 

スバルは気付いた。

 

『自分が触ったものは全て無重力になる』……ならば、自分は『何に』触った?扉や床……壁にも触った。そして、さっきから触っているもの……「空気」!!

 

「わ……私、空気にずっと触れ続けている……空気は重力があるから、私の周囲にずっとある……でも、それが無重力になったら……『どこへ行くの』?壁も…床も無重力になっている!『無重力』に囲まれているとしたら……」

 

 

 

 

 

 

「周りの空気は、どこへ行ってしまうの!!?」

 

 

 

 

 

スバルの悲痛な叫びが部屋中にこだまするが、その問いに答えるものはいない。

 

 

 

 

その様子を、男はじっと、影から見ていた………………

 

 

 

 

 

 

←to be continued...

 




12話です。
・今回は基本的に、「サヴェジ・ガーデン作戦」のストーリーを、図書館島に置き換えただけです…

・のどかのサーチモードは、ディアボロやジャイロからの発想。一番見やすいだろうと思いまして。「小亀ミサイル」も結構お気に入り。『小亀』のダメージ=本体へのダメージではないので、そこに注目した攻撃です。

・ムーンフェイスのくだりは、本当はティアナにやらせたかった(笑)

では、次回をお楽しみに!


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#13/ウルトラセキュリティ図書館 ④

千雨の母「長谷川 百香(ももか)」は二十年前、ニューヨークに住む『リサリサ』という女性の元で、「波紋」と呼ばれる力の修行をしていた。

 

1990年のある日、彼女の息子の紹介で、ある「男性」と知り合った。

 

彼と何度か食事をしたり、彼の家へ遊びにいったりしているうちにお互い惹かれ合い、1992年に結婚。翌年には千雨を出産した。

 

だが、千雨は父親と遊んだ記憶などは、ほとんどない。彼はどういう訳か、家をよく空けていたからだ。

 

妻にも訳を言わないため、たまに帰れば口げんかが絶えない。そんな関係が長く続き、千雨が4歳の時、父親は『音信不通』となった。

 

その内、千雨が父親の顔を忘れてしまった頃、2001年の春、イタリアで父親が『変死体』となって見つかった。

 

父は、心臓付近に大きな『穴』を開け、死んでいたそうだ。

 

葬儀は、彼の祖国で、親族と親しい友人のみで行われた。

 

その中には、母の師匠とそのひ孫、

 

そしてその娘もいた。

 

 

 

 

 

これが、長谷川 千雨と空条 徐倫の出会いであった。

 

 

 

 

 

 

 

#13/ウルトラセキュリティ図書館 ④

 

 

 

 

 

 

そして今、千雨に「災難」が降り注いでいた…

 

 

 

 

 

「ふ……ふさがないと!!隙間をッ!目張りしないと!このままでは窒息してしまうッ!」

 

隙間に浮いてきた本やダンボールを当てながら、スバルは叫んだ。

栓を抜いた浴槽の水のように、空気が隙間へと流れていくためだ。

 

「いや、違うぞナカジマ…水の中じゃないんだ…窒息じゃない。」

 

ウェザーは、冷静にスバルへ言う。

 

「心配しないといけないのは、その前に体内の血液が沸騰して死ぬことだ…気圧がどんどん低くなると、室温なのに血液は熱湯のように沸騰する……無重力で真空なら、人間の体は窒息より前に、20秒で血液はカラカラに『干からびて』しまうらしい……」

 

ウェザーが話す中、弾丸が飛んできた。

スバルはシールドで、千雨はスタンドの『小太刀』でそれぞれはじき返すが、はじいた弾丸が、目張りしていた本やダンボールに着弾してしまい、空気が流れる量が増えてしまう!

 

「「うああああっ!!」」

 

 

 

「弾丸を……補給するかな………」

 

男は、持っていた箱からガラクタを腕の球体へ入れた。彼はすでに、勝利を確信していた………

 

 

 

「ナカジマ!扉から離れろ!ねらい撃ちにされる…とにかく、どこかに身を隠すんだ!」

 

千雨が、スバルに向かって叫ぶ。

男の弾丸は正確に自分たちを狙い撃ってくる。扉近くの広い場所では、いい的だ。

 

「でッ…でも!空気を止めないとッ!はー鼻血がこんなにッ!」

「……『ウェザー・リポート』!」

「「!」」

 

ウェザーがスタンド名を静かに言うと同時に、三人の体を『雲』が包み込んだ………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「!!」

 

弾丸を補給して、撃とうとした男だが、三人の姿が見当たらない。

どこかに隠れたのだろうか……?いや、有り得ない。

すでにあの傷だ。持って後1分、いや、30秒で死ぬはずだ。ならば、どうやって、そしてどこに行ったのか………?

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

 

「ハァー、ハァー…」

「あまり大きく呼吸するな…この部屋の残り少ない空気をとりあえず集めて、体の周りだけ『雲』で囲んで気圧を高めただけだ……部屋の中は真空に近く、この「雲」の量しかない……。」

 

近くの本棚の陰に隠れ、千雨とスバルに今の状況を説明するウェザー。

 

今、三人の体は『雲』に囲まれている。しかも、それは「服」の形をしていた。

たとえるならこれは―――

 

 

 

「く……『雲の、う…宇宙服』?これって………!」

「で…でも、どの程度『呼吸』もつんだ?これ?」

 

千雨の質問に、ウェザーは渋い顔をする。

 

「…答えたくない質問だが、2分程度ってところか……ひん死の『雲のスーツ』だ…」

「……その間に敵に近づいてあいつを倒さなきゃ、今度は確実に真空に放り出されるってこと?」

 

スバルは、周りを見るウェザーに聞く。鼻血は止まったようだ。

 

「そういう事だ。だが、くそ…ヤツもさっきの場所にいないぞ…隠れられた……」

「ちっ、探さないと、このままじゃヤツの攻撃は『完成』しちまうな……」

 

千雨とウェザーが話す。

だが、スバルは「ある事」に気づいた。

 

「ねえ、鼻血が止まった今、ひとつ気になる事があるんだけど。」

「……何だ?ヤツを探さなきゃあならないから、手短に話せ。空気ももたない。」

 

スバルは、ある一点を指さす。そこには、『角皮文庫』と書かれたダンボールが『山積み』になっていた。

 

そして、千雨とウェザーも気づいた。

 

 

 

『山積み』?『無重力』下で??

 

 

 

「私はこの部屋の扉と壁と床に触った…それで、部屋中が『無重力』になっていろんな物が浮き上がっている。空気もいすも本もゴミ箱も………でも、何であそこのダンボールは浮き上がらずに床に『ひっついて』いるの?そしてその向こうの本棚の本…ガムが底にひっついてるわけ?

それにあの敵…あいつはどうやってこの真空で『呼吸』をしてた?ヤツの血液だって真空中ではブクブクと沸騰するんじゃあないの?」

「…!そうかッ!あれは『射程距離』だッ!この「無重力」には射程距離がある!部屋全部じゃあないんだ!!」

「そう、私が今触っているこの本棚から20m弱!『無重力』はそこまで!あのダンボール箱の所は今…普通の『重力のある世界』!空気は私の周りからだけどんどん出ていき、無重力エリアの中に入ってくることはない。見えないけれど、囲まれているんだ……半径20mの外!敵も無重力の『外』だから今、呼吸を普通にできている!」

「……あそこまで行けば、真空が終わり、気圧も普通の空気があるという訳か………ならば!」

 

ウェザーが納得すると、千雨に向き直る。

 

「長谷川!お前のスタンドを『全開』にするんだ!お前の能力なら、『雲のスーツ』が飛んでなくなる前にヤツを倒せる!!」

「スタンドを……全開に?」

「……………」

 

ウェザーの言うことが分からないスバル。だが、千雨は『はぁ』とため息をつくと、すくっと立つ仕草をする。

 

「仕方ねぇ、『緊急事態』だからな……どっち道『呼吸』は必要になる………だがなナカジマ!これだけは最初に言っておく!これから見るものは、『誰にも言うな』!いいな!?」

「う……うん………?」

 

スバルに忠告した千雨は、自分のスタンドの『全身』を出す――――

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

シュン

「……?」

 

自分の背後を何かが動いた気がして、男は振り向いたが、何もいない。

 

だが、直ぐに気のせいだと考えた。

 

自分の『ジャンピン・ジャック・フラッシュ』は無敵だ!無重力の外には、自分以外誰もこれない!

 

そう考えた時、

 

 

 

 

 

 

コォォォオオオオオオ

 

「!!??」

 

奇妙な『呼吸音』が、背後から聞こえた!

 

振り向いた男が見たのは―――

 

 

 

 

 

「て…テメェ、何だよそのスタンドはッ!?」

「へっ悪いな、企業秘密だ!」

 

千雨は剣を構えて、壁を蹴る!

 

 

 

 

 

かつて、「柱の男」に敗れた『波紋の一族』の一部が、後に『日本』と呼ばれる地に逃げ延びた。

 

彼らは、チベットやヴェネツィアほどではないが、日本で『波紋』の一派を作り、修行に励んだ。(一説では、この修行僧の姿が天狗伝承の由来になったらしい。)

 

時が経ち室町時代、『波紋』と『剣術』を組み合わせた『仙道剣術』を生み出した者が現れ、徳川に仕えた。

 

後にこの剣術は時代の裏で活躍し続け、幕府に迫る妖怪の類を討伐したという………

 

その内の一つが、裏社会で京都の『神鳴流』と並び、『江戸の隠し刀』と謳われた流派、その名も『双燕天翔流仙道剣術』である。

 

(メッシーナ著「波紋世界史」 民明書房刊 税込み 3,850YEN)

 

 

 

 

 

 

「双燕天翔流仙道剣術、八大奥義が一つッ!」

「!?」

斬ッ

「疾風月華!!」

 

すれ違い様に男を何度も『斬りつけた』千雨は床に着地!同時に 自分の体を「重く」感じ、敵が能力を解除した事を確信した。

 

「ぐ………あっ、ぐ………」

「……と、どうやら無重力も終わりみたいだな………」

 

背後で短く声を上げて気絶したらしい男を見て、千雨はつぶやいた。

その時、

 

 

 

ドガガガァッ

「ん?」

 

 

 

 

「は……長谷川さん………無重力が解除されて助かったけどさぁ………」

「……いきなり解除させないでくれ………」

「ご……………ごめん………」

 

ただでさえダメージがひどいのに、無重力解除で本が降り注ぎ、さらにダメージを負った二人がいた………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「こいつの財布に「免許証」があったぜ。名前は『ラング・ラングラー』……国籍はアメリカか…」

 

財布から男――ラング・ラングラーの身元を暴いたアナスイ。

直ぐ横ではラングラーを千雨が縛り、のどかはスバルたちの手当をしていた。

 

「あ、あのー、長谷川さんとスバルさんは、手当の方は-……?」

「ん?ああ、私は大丈夫!こう見えて、身体は丈夫だからさ!」

「私も、『波紋』の呼吸である程度「治癒」はできるし、先生らを探す分には平気だぞ。」

 

ラングラーを千雨が倒した後、アナスイ達が『装甲防火扉』を開き、どうにか脱出できたスバルたち。今はネギ達を探す前に、ラングラーの処置をどうするかを考えていた。

そこでウェザーは、自分達でラングラーを運び、残りでネギ達を探すことを提案した。

 

「こいつはSPW財団に引き渡して、誰の差し金か吐かせる。こいつらを頼めるか?アナスイ。」

「いいぜ。そっちこそ、任せたぞ。」

 

ラングラーを運ぶのはウェザーとのどか、残りはネギを捜索することになった。

 

「よしっ!早速行くぞッ!!」

 

意気込むアナスイに、手当を終えた二人が続く。

 

 

 

 

 

が、

 

 

 

 

 

カチッ

 

 

 

 

 

「「「…………『カチッ』?」」」

 

 

 

 

 

アナスイの足元から、嫌な音が聞こえ、

 

 

 

バクンッ

 

 

 

床に『穴』が開いた…………

 

 

 

 

「ウソォォォオオオ!!??」

「アナスイテメェェエエエ!!」

 

3人の叫び声は、閉じた穴の蓋により、聞こえなくなった…………

 

「だ……大丈夫ですかね?皆さん……」

「分からん………」

「えぇーー!?」

 

 

 

ラング・ラングラー――スタンド名:ジャンピン・ジャック・フラッシュ――再起不能

 

 

 

←to be continued...

 




13話です。
・千雨の過去をちらりと書いてみました。実は徐倫と千雨は幼馴染のような間柄でした。
 千雨の父親とスタンドは、いずれちゃんと書きます。

・ラング・ラングラー再起不能。ちょっとあっけなかったかな?民明書房ネタは原作でもちょっとあったので入れてみました。
 まあ、ネギま世界観ならあってもおかしくはないと思うけどw

では、次回をお楽しみに!


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#14/ウルトラセキュリティ図書館 ⑤

数時間後

〈期末試験まで後一日〉

 

 

「………………うん……?」

「あ、気が付いた?」

 

千雨が目を覚ますと、目の前にあったのは『女性の顔』だった。

まだ若く、二十代前半位だろうか。金髪のウェーブヘアーにぷっくりとした唇、背は小柄なほうだろうか。

 

「………どうも、えーと……?」

「ああ、私は図書館島の『司書見習い』で、この部屋は私が使わせてもらっている部屋よ。」

 

女性は起き上がった千雨に名乗る。起き上がった時に、乗っていたらしい「白いウサギ」がぴょこんと飛び降りて足元で丸くなった。

ようやく覚醒し始めた頭で回りを見てみると、部屋のソファにスバルが、床に敷かれた布団にアナスイが寝かされていた。

 

この時、千雨は気が付いた。『ラング・ラングラー』との戦闘で、自分とスバルは結構な傷を負ったはずなのだが、その傷が体にはなく、回復をしているのだ。

自分は波紋の呼吸で治癒ができるので治ったのかと思うが、スバルの傷も治っているのは何故だろうか?そう思っているうちにスバルたちも目覚め始めた。

 

彼女の話では、図書館島内を見回りしていた時に倒れていた千雨たちを見つけ、自分が手伝っている司書の人を呼び、自分が使わせてもらっているこの部屋に運んだらしい。

しばらくして軽く食事をもらうと、―――なお、この際スバルは遠慮したのか普段より少ない量を食べた。―――『人を捜している』ことを話した。

すると彼女は、「昨日から、この部屋の先にある図書室が騒がしい」と教えてくれた。

千雨はそらがバカレンジャーだと確信し、彼女に道を教えてもらうとそこへ向かうことにした。彼女に別れを告げ、3人はその図書室を目指す……

 

 

 

 

 

#14/ウルトラセキュリティ図書館 ⑤

 

 

 

 

 

「問題

『CONTRAST』の日本語訳は?

A 対称

B 対象

C 対照

はい、どれ?」

 

まき絵の目の前には、ABCとそれぞれ書かれた三つの箱があり、箱の反対側には、問題を出題した徐倫がいる。

 

「えっと……C…………かな。」

「…………………………………」

 

まき絵は答えるが、徐倫は黙ったままだ……

 

 

 

 

 

「正解!なんだ、結構できるじゃないか!!はい、ゆで卵。」

「わーい♪」

 

Cの箱から出したゆで卵をまき絵に渡す徐倫。

よく見ると、他の三人――古菲、楓、夕映も、ゆで卵をもぐもぐと食べていた。明日菜だけは、手に持った『セッケン(バラの香り)』を見つめていたが……

 

「―――って、何で正解したらゆで卵なんですか!?別に他の食べ物でもいいでしょう!?」

「うまいじゃん、ゆで卵。」パラパラ

「板○英二さんですかあなたはッ!?」

「てか私『セッケン』なんて食べれないわよッ!ていうか、食べたら死ぬからッ!」

 

つっこむネギと明日菜に対して、カラを剥いたゆで卵に塩をかけながら答える徐倫だった。

 

徐倫が提案した、問題に一問正解したら正解の箱の食べ物が食べられる『英単語クイズ』。徐倫によると、この方法で叔父の友人が英語のテストで百点満点を取ったらしいのでやっていたが、明日菜だけはやはりダメだった…………

 

 

 

 

 

今、徐倫たちがいるのは、夕映いわく『幻の地底図書室』という場所で、地底なのにあたたかい光に満ちて、数々の貴重品にあふれた、本好きにとってはまさに『楽園』!だが、ここを見て生きて帰ったものはいないとか……とにかく、今彼女たちは『脱出困難』な状況だった。

 

そんな中、ネギが諦めずに助けを待とうと励まし、期末に向けて勉強しようと言ったのだ。

幸いというか都合がよすぎるというか、テキストや食料があったため、勉強や食事には困らなかったため、ネギたち八人は何とか無事だった。

 

 

 

 

 

そして現在――

 

「よし、次正解したら『チーズ味のペンネ(木乃香作)』が食べれるぞ!がんばれ!

問題

『Hail to you!』の日本語訳は?

A 君に塀を

B 地獄を君に

C 君に幸あれ」

「えっと………B?」

「……………はずれ。正解はCの『君に幸あれ』だ。はい、Bの箱の「英単語カード」だ。」

「食べ物じゃない上にさらに勉強しろとッ!?」

 

 

 

神楽坂 明日菜――連続五問不正解+腹ぺこのため、さすがに可哀想だということで、「仕方なく」と徐倫にゆで卵を五個+塩小さじ一杯もらった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「ん?何しているんだ、ネギ?」

「あ、空条さん。いや、ここの『本棚』の本について、気になって……」

 

休憩時間、「モロヘイヤ天然水」なる飲み物のパック片手に図書室内を散策していた徐倫は、水辺で本を調べていたネギを見つけて声をかけた。

 

「確かに…ずっと水に浸ってたはずなのに、全く本が『痛んでない』な……これも『魔法』なのか?」

「多分………一体誰がこんなモノを……?」

『チュミ~~ン?』

 

そう言いながら歩く徐倫とネギ。傍らには、『精霊(スタンド)』もいた。

 

 

この学園には、魔法先生や魔法生徒なる者がいることは、先日の『オエコモバ』の一件で分かった。となると、この『麻帆良学園都市』そのものも、『魔法使いたち』が作ったと考えれば、今自分たちがいるこの「地底図書室」や、この間のゴーレムにも、納得がいく……

 

 

「……あ〜、難しい事考えるのは後だ。

あ、そういえばネギ、お前の『スタンド』なんだが―――」

 

キャッキャッ♪

 

「「ん?」」

 

話しかけた徐倫だが、ふと、はしゃぐ声が聞こえ、そちらに気が向く。

声をしたほうを見ると―――

 

 

 

「「「ん?」」」

「へ?」

「あ〜……」

『チュミ?』

 

まき絵、古菲、楓の三人が、『裸』で水浴びをしていた……………

 

 

 

「やーん、ネギ君のエッチ〜〜♪」

「うわわ〜、ご、ごめんなさいーーー!」

 

慌てて駆けだそうとするネギだが、楓に捕まれてしまい、じたばたするだけになってしまう。

 

「くすくす、顔真っ赤にしちゃって、カワイ〜♪」

「ネギ坊主、10歳なのに、女の子の裸に興味あるアルか?」

 

三人にいじくられるネギ。だが、

 

「あのっ…僕、お姉ちゃんで見慣れてるしっ……女の人の裸とかには『全然』興味ないですからっ!英国紳士として…」

「「なっ………」」

「「………」」

 

ネギから衝撃の発言に、固まる四人。

 

「うわーん、ヒドいよネギ君ーーー!」

「ワタシたちよりも楓やジョジョみたいな体しか興味ないアルかーーー!」

「え、いや、そういうわけじゃあ…そ、その……………ごめんなさーーーい!」

「あ、おい、ネギ!…ったく、あんまりからかうなよな、お前らッ!」

 

大声で謝り、脱兎のごとく走り去るネギ。徐倫は、まき絵たちに注意して、ネギを追うことにした。

 

「くす、『興味ないですから』だって〜。」

「『英国紳士』アル〜〜♪」

 

まあ、あんまり反省はしてないようだが………

 

 

 

 

 

そんな風にふざけていたからだろうか。

彼女たちは、自分たちの背後に忍び寄る『陰に』気づかなかった…………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

数分後

 

 

「えっ?クラス解散とか、小学生からやり直しとかは?」

「いや、僕がクビになることしか聞いてないですけど……」

「………………やれやれ、やっぱデマだったのね……」

 

明日菜と二人は、『ネギの最終課題』の話になっていた。

まあ、留年はともかく、小学生からやり直しはあり得ないが……

 

「あぁーもうッ!それならこんな謎の図書館なんか来なかったわよッ!」

「えぇっ!?そんなぁ~」

「全く、あんたが来てから踏んだり蹴ったりよ!」

「明日菜、それはないだろ…」

 

なんかヒドいことを言う明日菜につっこむ徐倫。

 

と、

 

 

 

 

「「「ぁぁぁああああああーーー!」」」

「「「ん?」」」

ザッバァアーン

「「「なッ!?」」」

 

上から声が聞こえたと思ったら、近くに水柱が立った。

 

「あうー、変なとこ打った〜〜」

「よし、全員無事らしいな!」

「ッベボガベボベビガボッ!ベビブガババブボゲ!ビギバベビベベッ!(訳:っておまえのせいだろッ!ていうか早くどけ!息ができねえッ!)」

 

落ちてきたのは、スバルとアナスイ、そして2人の下敷きにされて水に沈んだ千雨だった…

 

「なッ!?何でスバル達が降ってくるわけ!?」

「あ、空条さんにネギ君に明日菜ー!みんな無事ー!?」

「ていうか千雨が無事じゃないぞッ!?早くどいてやれよッ!!」

 

 

 

聞けば、バカレンジャーを助けようと図書館島に来たが落とし穴に落ちてしまい、『司書見習い』の女性に介抱してもらって、道を教えてもらったらしい。

だが、『地底図書室(ここ)』まで来るのに、アナスイがまたトラップを発動させて、落ちるはめになり、現在にいたる………

 

「………どんだけ落ちれば気が済むのよ、あんたたち………」

「好きで落ちてんじゃねぇよッ!全部こいつのせいだよッ!!」

 

アナスイを指して叫ぶ、ずぶ濡れの千雨。本当に探検部なのだろうか、この男…?

 

「アスナー!!ってあれ?何でスバルちゃんたちまでおるん?」

 

と、そこへ木乃香がやってきた。

 

「あ、このか、それよりどうしたの?」

「あ、そや、大変なんよ!はよう!」

 

木乃香に連れられて走る一同が見たものは…

 

 

 

 

 

「誰か助けてーーッ!」

『フォフォフォーーー』

「「「「って何あのデカいのーーーッ!?」」」」

「またあいつ!?」

「ゴーレムッ!一緒に落ちてたんだ!」

 

ゴーレムにとらわれたまき絵だった。

だが、ピンチの時こそ冷静になる!それが空条家…いや、ジョースター家!

 

「スバル!(ク―)!ヤツの『脚を狙え』ッ!」

「えっ、う、うん!」

「アイよジョジョ!」

「というか、何故ナカジマさんがここに……?」

 

スバルと古菲に指示を飛ばす徐倫。二人は、ゴーレムの足元に近づく。

 

「アイ〜……ハイッ!」

「ウリィィャアアアッ!」

ドゴォ!

『フォオ!?』

 

左脚に強烈な一撃を喰らい、ゴーレムは倒れる!その衝撃で、まき絵は離され、それを楓がキャッチする。

 

ひゅ〜…ドサっ

「ん?何この本…?」

 

足元に落ちてきた本を拾うスバル。その本は……

 

「あ!そ、それは!」

「メル……何とかの魔法の書!?」

「ゴーレムと一緒に落ちてたんだ!」

「よし!それが手に入れば、こんなとこに用なんてないわ!」

 

メルキセデクの書を手に入れ、全員の志気が高まる。だが!

 

ズズーン

『逃がすと思うてかーーーッ!』

「キャー!」

「って、あいつまだ!?」

「どうすんのよ!?打つ手ないわよ!?」

 

ゴーレムが起き上がり、再びパニックになる一同。だが、徐倫は冷静であった。

 

「みんな!千雨たちがここからの『出口』までの道のりを、「司書見習い」の人から聞いているわ!それに、今のスバルと古の攻撃で、奴の脚はかなりのダメージだ!!おまけにあの『巨体』!!早く動けないはず!そこが『つけめ』だ!!」

 

徐倫の言うとおり、ゴーレムの脚はひび割れて、今にも崩れそうな感じであった。

 

「なるほど、だったら………」

「やるべき手段はたった一つ!」

 

全員顔を合わせて頷いた。いまいち分かっていない様子のスバルとネギは首を傾げ、徐倫に聞いた。

 

「え、ええと……みなさん、一体何を………?」

 

ネギが聞くなか、徐倫はアキレス腱を伸ばして、軽くストレッチをする。

これこそ、ジョースター家伝統の戦法、それは―――

 

 

 

 

 

クル

「逃げるんだよォ!ネギィーーーッ!」

ダッダー

 

「ってえええええええええええええええ!?」

「わあ〜ッ!!なんだこの人ーーーッ」

 

回れ右して走り出す徐倫と、それに続くバカレンジャー。ネギとスバルは徐倫達の行動に叫び、アナスイは某ドイツ軍人みたいな呆れ顔だ。

 

だが、ここで予想外の事態が起こる。ゴーレムが、高く『ジャンプ』したのだ!

 

「なッ!?あいつ、まだあんな力が!?」

「くッ…!」

 

ネギが『爪』をスタンバイするが、ゴーレムの後ろに『人影』があるのに気がついた。アナスイだ!しかも、スタンドを出している!

 

6つの穴が開いた仮面のような頭部にレギュレーターを噛み、酸素ボンベを背負ったダイバーのようなデザインをした銀色のスタンド。その名も!

 

「『ダイバー・ダウン』!!」

ズボォオ

『ふぉ!?』

 

『ダイバー・ダウン』の腕がゴーレムに「めり込む」!いや、『体内に潜入した』と言った方がいいだろうか…?とにかく、ゴーレムにダメージを与えたようだ。

 

(………むっ?これは…………?)

 

だが、ダイバー・ダウンを潜入させて、アナスイは『ある事』に気づいた。それは―――――

 

「アナスイ!」

「徐倫!こいつはオレにまかせて、先に行けッ!」

「わかった。」

ダッダー

「一切の躊躇も無く!?」

 

いつものこととはいえ、かなりショックを受けるアナスイだった。

 

「アナスイ…おまえの事は忘れない!………三分くらい。」

「「「短ッ!?」」」

「おいおい徐倫、三分はないだろ。五分くらいにしとけ!」

「「「それでも分単位なんだ!?」」」

 

何とも不憫な扱いのアナスイだった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「本当に行っちまいやがった………」

『………いやはや、あなたも不憫なお方だ。』

 

去ってしまった徐倫達を遠くに見るアナスイ。不意に、ゴーレムが話しかけてきた。

今までの低い声ではなく、若干高い感じの声であった。

 

「………それで、お前は誰なんだ?『ゴーレムの中の人』さんよぉー?」

『ふふ、話してもいいですけれど、その前にその腕を放してはくれませんかね?』

 

アナスイは『ダイバー・ダウン』を解除すると、ゴーレムの胸部分が開き、中からローブを着た、長髪の男性が現れた。

 

「どうも。図書館島の司書官をしている、『クウネル・サンダース』と申します♪」

「司書官?いるって噂は聞いていたが………」

 

アナスイは、クウネルと名乗った男をまじまじと見る。明らかに、自分と同世代ほどだ。

 

「(思ったより若いんだな………)で、何でその司書官さんが、ゴーレムにのって女子中学生追い回すマネなんかしてたんだ?返答次第ではよぉー、」

「いえ、実は学園長に頼まれて、彼女たちの勉強のお手伝いをしていましてね。」

「何考えてんだよ、あのジジイ………」

 

クウネルの返答に、呆れてため息をつくアナスイ。クウネルは意味深に笑うと、

 

「さて、彼女たちも無事地上に向った事ですし、私の住居でお茶でもどうです?久しぶりに、『外』の人と話もしたいですし。」

「……徐倫の方に行きたい所だが、まあ、少しくらいは良いぜ。」

 

 

 

 

 

バカレンジャー+数名――この後、無事脱出。だが、メルキセデクの書を落としてしまう…

ナルシソ・アナスイ――2時間クウネルと話した後、アパートに帰った。

 

 

 

 

 

←to be continued...

 




14話です。
・冒頭の『司書見習い』の正体は、分かる人には分かる人物です。

・徐倫の飲んでいたジュースの元ネタは、某戦う交通安全からwこれも結構マニアックですw

・クウネル登場。何気に10話の時に徐倫が反応していましたが、実は『承太郎と中の人が同じ』というネタでしたw

では、次回をお楽しみに!


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#15/チートコードなし!期末試験に挑め

翌日

〈期末試験当日〉

 

試験開始まで後5分

 

 

「「「「遅刻!遅刻ゥ!」」」」

 

明日菜たちバカレンジャーと図書館探検部四人に、徐倫と千雨、ネギ、そしてスバルは走っていた。

 

「あ〜ん!一時間で起こしてって言ったのに〜ッ!」

「思いっきり爆睡しちゃったアル〜ッ!」

「ごめーん!私も寝ちゃったぁーーーッ!!」

 

最後の足掻きにギリギリまで徹夜で勉強していた一同。一時間ほど仮眠するつもりが全員爆睡してしまったため、思いっきり遅刻していた………

 

「お…遅れてスミマセン………」

「ああ、君たちか。遅刻組は別教室の方で受けなさい。」

「は…はい、スミマセン…」

 

ちょうど通りかかった、眼鏡をかけた年配の先生――新田先生に連れられ、一同は別教室へ向かう。

寝不足と、昨日までの疲れでフラフラとした足取りの彼女たちを、ネギは後ろから心配そうに見ていた………

 

 

 

 

 

#15/チートコードなし!期末試験に挑め

 

 

 

 

 

[―――では始め。試験時間は50分です。]

 

試験が始まり、教室にはカリカリという書く音以外は聞こえなくなる…

 

普段から真面目に勉強をしているあやかや超などの面々も、今回はかなり真剣な面持ちで試験に挑む。そして、遅刻した明日菜たちは―――

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

別教室で試験を受ける明日菜たちの様子をこっそり見るネギ。

 

「……うう、やっぱ難しい…」

「それに……眠いアル…」

「やっぱり徹夜は失敗だったかなぁ………」

「コラ、私語をしない!」

 

明日菜たちは、三日間の探検と勉強による疲労で、とても集中できていない様子であった。

 

(………よし、ようやく魔法の『封印』も解けたんだし!)

 

そう思うと、ネギは花を取り出し、それを『触媒』に呪文を唱える。

 

「ラス・テル・マ・スキル・マギステル 花の香よ(フラーグランティア・フローリス)仲間に元気を(メイス・アミーキス・ウィゴーレム)活力を(ウィーターテム・)健やかな風を(アウーラム・サルーターレム)

活力全快(レフェクティオー)……」

 

 

 

ふぁあっ………

 

 

 

ネギが『詠唱』をし終えると、花の香りが教室中に漂った……

 

(………ん?)

(あれ……)

(…何か、頭すっきりしてきた♪)

(やる気出てきたアルよ~)

 

呪文の効果で明日菜たちの眠気と疲れが回復し、試験に集中できるようになった。

 

(僕にできるのは『活力全快(これ)』くらいだ………みんな、頑張って!)

 

全員の集中が戻ったのを見ると、ネギは教室から離れた。

 

(………やれやれだわ。ま、今回は目をつむってあげるわ。ありがとね。)

 

唯一気づいていた徐倫は、心でネギにそっと感謝した。

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

数日後

 

六課のマンション

 

「―――では、『ラング・ラングラー』は、依頼者について何も知らなかったのですね?」

[ああ。分かったのは、奴に依頼をしたのが「女」ということだけで、後は何も…」

 

悲痛な表情で、ウェザーと電話をするティアナ。

 

[分かった。手間をかけさせてすまなかったな。後は『SPW(スピードワゴン)財団』に任せて、調査をやり直そう。]

「はい…では。」

 

ウェザーがそうしめて、電話を切る。

 

リビングに戻ると、ヴィータとリィン――シャーリーは、フェイトについていったためいない。――が、モニター前に集まっていた。

 

「って副隊長たち、何見ているんです?」

「あ、ティアさん。ほら、クラス成績の『順位』が、もうすぐ発表なんですよ!」

「……あ。そういえば、そんなこと言っていたわね……『ラングラー』にかまってたせいで、忘れていたわ…」

 

そう、今日は『クラス成績発表日』、つまり、ネギの『最終課題の結果発表の日』でもあるのだ。

 

 

 

しばらくすると、発表が始まった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

麻帆良学園女子中等部

 

昇降口ロビー

 

[えー、次は下から三番目の『22位』――2―Pッ!!70.8点ッ!]

 

「ひいぃッ!」

「ま………マズいよ!次出てこないと、『最下位』決定に………」

 

ロビーで発表を聞いていたバカレンジャーとネギ、そして徐倫とスバルたちは、なかなか出てこないA組の名前に、ハラハラしていた………

 

「………」

「ネギ君…」

「ネギ………」

 

[次は下から二番目、ブービー賞です。]

 

そして、ついにブービー賞の発表が………

 

[えーと………これは………]

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[『2―K』ですね。平均点69.5点。]

 

 

 

 

 

 

 

 

「え……………」

「――――ということは……………」

 

 

 

「「「「「「「「「「最下位確定ィィィィ〜〜〜ッ!?」」」」」」」」」」

「………」

 

一同が『最下位』という結果に呆ける中、ネギは、静かに一同から離れた………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

麻帆良学園中央駅

 

 

(お姉ちゃん…今から故郷(くに)に帰ります。『立派な魔法使い(マギステル・マギ)』になる「夢」はダメだったけど………でも、みんな頑張ってくれて、嬉しかったな……)

 

課題失格を知り、少し悲しげな表情のネギ。まとめた大荷物を持ち、故郷へ帰るつもりだった………

 

『チュミ〜…』

 

傍らにはスタンドが漂い、ネギを心配そうに見ていた。

 

「ネギ!」

「ネギ君!」

 

そんな時、ネギがいないのに気づいたのか、明日菜とスバルが駆け寄ってきた。

 

「ご、ゴメンッ!本当にゴメンッ!私たちのせいで最終課題に落ちちゃって…」

「そ…それに、魔法の本もなくしちゃったし…私も……」

「いえ…そんなことないです…誰のせいでもないですよ。『魔法の本』なんかで受かってもダメですし……結局僕が『教師』として未熟だったんです。」

「ネギ君………」

「クラスのみなさん、特にバカレンジャーのみんなには感謝してます。短い間だったけど、すごく楽しかったし…………さようなら!」

タッ

「「あっ!」」

 

二人に背を向け、ネギは電車に向かい駆け出す。

 

「もうッ!」

バッ

「ってアスナ!?」

 

ガッシィイ

「ひゃ…!?」

 

いきなり、自動改札を飛び越え、ネギを捕まえる明日菜。いきなりの行動に、捕まえられたネギと見ていたスバルは、驚いていた。

 

「バカっ!行っちゃダメって言ってるでしょおぉー!…そりゃ、最初はガキでバカなことするから怒ったけど……私なんかよりちゃんと目的もって頑張ってるから感心してたんだよ!なのに………」

「ア…アスナさん…」

「アスナ……」

 

明日菜が思いをネギにぶつけ、ネギとスバルが驚いていると…

 

「ネギくーーんッ!」

「ネギ坊主ーッ」

「ネギーーッ待てェェェ!」

 

まき絵たちバカレンジャーや徐倫が走ってきた。心なしか、その顔は笑顔だった。

 

「ネギくーーんッ!私たち『最下位じゃない』よーッ!」

「むしろ『学年一位』だッ!!だから帰るなッ!!」

「「「………………えッ!?」」」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

学園長室

 

 

慌てて学園長室へ来たネギたち。学園長の話によると、バカレンジャーたち『遅刻組』の採点を学園長が行い、うっかり『2―A全体の合計』と合わせるのを忘れてしまったらしい。

そして、遅刻組の点数と合計すると、平均点が0.2点の差でA組が『学年一位』になった。

 

「え………でも、「魔法の本」がないのに、一体どうやって…!?」

「あ〜、これのことかの?」ひょいっ

「アァッ!?」

 

学園長が、『魔法の本』を取り出した。だが、本がここにあるということは…

 

「こんなもので簡単に頭が良くなったら苦労はせんて。今回のことはな、ぜ~んぶみんなの『実力』じゃよ。」

「え…じゃあ、『図書館島』でのことは全部……?」

「うむ。最終課題では、子供のネギ君が『今後も先生としてやっていけるか』を見たかったのじゃ。図書館島の数々のトラップにもめげずに、よう頑張ったのぉ。」

「めげずにって………結構キケンなのもあった気がしたんだけど……?」

「……うん、まあ、ちょっとやりすぎた感はあるがのぉ………(やっぱ、その辺を『アヤツ』に任せるべきではなかったかなぁー……)」

 

学園長は笑ってごまかすが、明日菜とスバルは冷ややかな目で見るのであった。

 

「ま、まあともかく、合格じゃよネギ君!これからは、さらに精進じゃな。」

「あ……はいッ!」

 

学園長から『合格』を言い渡され、力強く返事をするネギ。これで、正式に『先生』としてやっていけそうだ。

 

「ははっ、良かったねネギ君!」

「ま、とりあえず、新学期からよろしくね。」

「は、はいっ…よろしくお願いします!」

 

スバルと明日菜に言われ、すこし照れたように言うネギ。

 

そこへ……

 

 

 

バァンッ!!

「アスナーーーッ!」

「大変アルッ!じょ、ジョジョが……!」

「えっ…?」

 

扉が勢いよく開いたかと思うと、まき絵と古菲が入ってくる。かなり必死な表情だ。

 

「お、話終わった?」

「じょ、徐倫?」

 

と、彼女らに続いて、徐倫が入ってくる。が、何故かジャージに竹刀という装備に、明日菜は何やらいやな予感がした…

 

「…と、その前に………学園長先生、ネギは最終試験を『合格(パス)』したって事でいいんですよねぇ~?」

「う、うむ………モチロンじゃとも………」

 

徐倫の気迫に若干圧されながらも、学園長は肯定した。徐倫は学園長にありがとうと返事をすると、ネギに振り返った。

 

「―――『言は初めに神と共にあった。

すべてのものは、これによってできた。(ヨハネによる福音書 第1章2―3節)』」

「えっ?」

 

いきなり『聖書』の一節を口に出した徐倫に呆気に取られていると、徐倫はニッ、と笑顔を見せた。

 

「合格おめでとうネギ。正式に「先生」になったお祝いに、アナタのその『スタンド』に「名前」をプレゼントするわ。」

 

徐倫はネギと、いつの間にかその肩に乗るスタンドを見て言う。

 

「そうね………ネギのその『爪』は、もはや『爪』を超えている…………『爪を超越し、「牙」となった爪』………これからは『(タスク)』と、そう呼ぶといい!」

「『タスク』………はいッ!ありがとうございます!」

「タスク、ねえ………(カワイイ見た目の割に、何かカッコいい名前ね………)」

 

スタンド―――『タスク』を見つめ、徐倫に感謝するネギ。

 

「気に入ってくれたようで嬉しいわ。さて『明日菜』……お前たちバカレンジャーにも、私からプレゼントがあるわ。ちなみに『拒否権』はない!」

「え………?」

「「ひぃぃ〜〜〜ッ!」」

 

いきなり話しかけられて、一瞬ビクつく明日菜。まき絵たちが完全に怯えているのを見て、嫌な予感がした。

 

「今から、『勉強道具』をもって、私の部屋に集合だッ!!これより、『大・勉強会』を行うッ!!!」

「はあッ!!?」

「そもそも今回は、おまえら五人の日頃の成績が良かったら、こんなにハラハラしなくてすんだんだ!よって!反省会を含めた『勉強会』だッ!!全員できるまで帰れると思うんじゃぁねえぞ!!」

「「「ひぃぃ〜〜〜」」」ズルズル

 

器用にも片手で明日菜たちを引きずって退出していく徐倫。3人の悲鳴がドップラー効果で遠ざかっていく中、ネギたちはポカンと見ていることしか出来なかった………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

午後7時17分

六課の部屋

 

 

「――というわけで、私邪魔らしいから、しばらく厄介になるぞ。おかわり。」

「ってどういう訳よ!?後これご飯『三杯目』よ!」ポフポフ

「以外とご飯進むんだよ、この野菜炒め。」

 

文句を言いながらも、千雨の分のご飯をしゃもじでよそうティアナだった。

 

 

 

 

 

ネギ・スプリングフィールド――2007年4月2日付けで、A組の担任として正式に採用!「立派な魔法使い」としての第一歩を踏みしめる。

バカレンジャー――ヤバい「SWITCH」が「IN」!した徐倫により8日間缶詰めにされ、終了式も欠席した。

長谷川 千雨――結局、一週間スバルたちの部屋に泊まった。

 

 

 

 

 

←to be continued

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「………そうですか……わざわざありがとうございます。…はい、それは、僕の部下にやらせますから。はい、では。」

 

電話を切った男は席を立つと、待ち合わせのレストランへ行くため、部屋を出た。

 

おそらく、あの「二人」はもう来ているだろう。ひょっとしたら、もう食べ始めているかもしれない。

 

そう思いながら店へ入ると、案の定、二人はもう食べ始めていた。

 

「お………遅かったじゃねーか?先に食べてたぞ。」

「すみません、ちょっと『電話』が入ってしまったものですから…」

 

二人のうちの一人――室内にも関わらず、『矢印』のついたニット帽をかぶった男に言われ、簡単に謝る。

 

「電話……?何かあったのか?」

 

金髪に、穴だらけのスーツを着たもう一人が言う。すでに料理は半分くらい食べたようだ。

 

「………『サルシッチャ』たち三人の居場所がつかめたようです。」

「「………!」」

 

「サルシッチャ」の名前を聞いた途端、二人の手が止まる。

 

「サルシッチャだと………ッ!?マジなのか『ボス』!?」

「ええ、何でもサルシッチャは『日本が好きなギャングランキング』第一位らしいから、日本を調べたようです。」

「どんな調べる理由だよ……?」

「ていうか、どんな情報?」

「そしたら、日本の『マホラ』という場所で目撃されたそうです。」

 

二人のつっこみを無視して、『ボス』と呼ばれた男は話を進める。

 

「どうやら、矢を使って『スタンド使い』を目覚めさせている様子らしい……そこで、何人か日本へ向かわせたいのですが………」

「………分かった。『サーレー』と『ズッケェロ』のコンビを調査に向かわせる。やばそうだったら、俺たちで向かわせてもらうぜ!」

「ええ、頼みましたよ『ミスタ』、『フーゴ』。」

「ああ、俺たちがいないからって、無理すんなよ、『ジョルノ』!」

 

その男、『ジョルノ・ジョバァーナ』は、2人に笑顔で返した。

 

 

 

 

 

←to be continued...




15話です。
・サブタイトルは「フライトコードなし!ボスの過去をあばけ」から。リメイク前とは少し変えています。

・ネギ、正式にA組の担任として任命。まあ、バカレンジャーもよく頑張ったけど、本当の地獄はここから……(笑)

・「(タスク)」命名シーンはグェスのオマージュ。タスクってカワイイ外見の割に名前はカッコいいんですよね。

・パッショーネ始動。情報元については、イタリア繋がりってことで(笑)

では、次回をお楽しみに!


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#16/長谷川 千雨は静かに暮らしたい ①

終了式の翌日

 

学園長室

 

 

「―――なるほど………確かにこの生徒が『スタンド使い』である可能性は、大いにあるのぉー………」

 

学園長は、1枚の資料を手に呟いた。前に立つ女生徒は黙って彼の判断を待った。

 

「よかろう『刹那』くん。今回の調査の件、君に任せよう。空条君にお願いすると良いな。………ただし、あくまで『秘密裏』に頼むぞ。」

「はい、ありがとうございます………」

 

女生徒、桜咲 刹那(さくらざき せつな)は一礼すると、学園長室を退出していった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

翌日 昼過ぎ

 

女子寮入口

 

 

「新任の先生?」

「はい。なんでも新田先生の紹介だそうで。明日挨拶に見えるから僕も来るようにって。」

 

徐倫とネギは、並んで歩きながら話していた。

 

あの後、バカレンジャーに大・勉強会をさせた徐倫。

8日後、バカレンジャーたちは一人残らず真っ白になり、しばらく機能停止状態に陥ったという。

実際、明日菜やまき絵などは、いまだに復活仕切れていない状態だった………

 

「そういえば、空条さんは今日どちらに………?」

「ああ、実はうちのクラスの桜咲が、来てほしいって電話が入ってな……私、アイツと全然話した事ないんだけどなぁー………」

「なんでしょうね…?」

 

2人が首を傾げていると、前からスバルとティアナが歩いてくるのが見えた。

 

「あ、空条さんにネギくーん!」

「あ、こんにちは、スバルさん、ティアナさんも。」

「どうしたんだ2人とも?わざわざ寮まで来て…」

「うん、千雨が忘れ物してたから、届けにね。」

 

徐倫にティアナが説明をすると、徐倫はそうかと頷いた。

 

「千雨なら部屋にいるぞ。鍵は閉めてないと思うから、勝手に入っちゃって。」

「うん、ありがと。」

 

そう言って、4人は分かれた。

 

だが、分かれた後に徐倫は気づいた。

 

「……………あ、あいつ『アレ』の最中だったか…………?」

 

 

 

 

 

#16/長谷川 千雨は静かに暮らしたい ①

 

 

 

 

 

女子寮

 

徐倫と千雨の部屋

 

 

「ふ…ふふふふふ………徐倫が『一週間』も部屋を占領していたからな………すっかり「ストレス」が溜まりに溜まったったらありゃしない………!」

 

鏡の前で、不気味に笑う千雨。端から見たら、完全にアブナいひとだ……

 

「特に最近は、『矢』のことや、『魔法』やらで、めちゃくちゃな日々が続いたからなァァァ…か〜〜な〜〜り派手にいかせてもらうぜッ!!」

 

そう宣言するとメイクと衣装をキメて、眼鏡を外す。そして…………

 

 

 

 

 

「おっけ〜♪今日も『ちう』は、綺麗だっぴょ〜〜ん♪」

 

『カワイい衣装』に身を包み、完全にスイッチが入れ替わった千雨………否、『ちう』の姿が、そこにいた………

 

『ちう』は早速パソコンのスイッチを入れて自分のホームページを開くと、チャットのページへとアクセスした。

 

「おハロー(・▽・)qみんなお久しぶりー!

ごめんね~、今まで顔出せなくて~(><)i

ちょっと用事があって、お家を離れてたんだぁ~(-.-;)」

 

しゃべりながらキーボードを打つという、ちょっとイタい感じを醸し出しながら書き込む『ちう』。彼女が打ち終わって数秒後、チャットルームに書き込みがされる。

 

ちうファンHIRO>気にしないでちうたん!待ってたよ!

通りすがり士>いや〜、一日千秋の思いでまっておりましたぞ!

無敵要塞>気にしないで!僕らはいつでも君を待っていたから!

 

「わー!ありがとみんなー(≧▽≦)/

今日はお礼に、ニューコスチュームお披露目するよ♪」

 

そう言って、自分を撮影し始める千雨。

 

 

 

これこそ、普段目立たぬように過ごす『千雨』が、『スタンド使い』以外に隠していた裏の素顔!

インターネット界を牛耳るスーパーハッカーにして、No.1ネットアイドル!『ちう』である!!

デジカメで『自己撮影』!フォトショップで『肌』を修正し!!FTPで写真を『アップロード』ッ!!!

己の『美貌』を画面の向こうの男どもに見せつける!これこそ、千雨の『至福の時』!

 

「よしッ!キタキタキタキタ北ァァァー!『ネットアイドルランキング』でも、ぶっちぎりの一位ッ!!ヒャホホホォォーッ!私は『女王』なのよッ!いずれはNET界のNo.1カリスマとなって!全ての男たちが!私の前に跪くのよォォォーーーッ!!!」

 

気分がノリに乗って、叫び出す千雨。彼女の今の気分は、最高に「ハイ!」ってやつだ。

 

だが、千雨の『至福の時』は、「ノックの音」で終了を告げた………

 

 

 

 

 

コンコン

「ノックしてもしもお〜〜〜し。ごめん、鍵あいてたから勝手に入っちゃったんだけどさぁ〜…」

 

いきなり『自分以外の声』がして、ビクリと停止する千雨。まるで油の切れたロボットのようにギギギと後ろを向くと………

 

「………あんた、普段そんなことしてるの…………?」

 

『なんて声をかけたらいいか分からない』顔のスバルと、呆れ顔のティアナがいた………

 

 

 

 

 

おっぱァアアーーッ

 

 

 

 

 

「ん?今なんか聞こえへんかった?」

「あー、多分、(x+1)(y−1)が室町時代で、二酸化アルミニウムな倒置法なんじゃない?」

「………アスナー、まだ寝ときー。今お粥さんできるからなー。」

 

 

 

 

 

「いっ………いいいいいいつからいたんだよッ!?」

「ええっと………『か〜〜な〜〜り派手にいかせてもらうぜッ!』のあたりから?」

「結構最初の方じゃねぇかァアアーーッ!」

 

顔を真っ赤にして叫ぶ千雨。自分のこの趣味を知っているのは、ルームメイトの徐倫だけだ。それ以外にバレる=自分も変人集団(2-A)の仲間入り!それだけは、絶対に避けたかった。

 

「うわー、何かすごいねこれ……」

「普段はこんなことするようには見えないのに、この趣味を隠して生活してたのね………」

「何でわざわざ隠してんの?」

「こんな趣味、人に話せるわけないでしょ……で、あんたはその『にんじん』で私たちに何をする気?」

 

スバルが振り向くと、大きなにんじんのクッションを持ち上げた千雨がいた。

見つかってぎくりと固まった千雨が、わなわなと震えたかと思うと…………

 

 

 

ガシィッ

「ひっ!?」「なっ!?」

「はなすなよッ!?絶対に誰にもはなすなよッ!?」

ブンブン

「わっ、分かったから!そんなに振るんじゃ………」

「あばばばばば………」

 

二人につかみかかり、ブンブンと振りだした。

 

10秒後、千雨が「はなすなよ」を13回いったあと、ようやく二人は離してもらった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

寮の近くの道

 

 

千雨は、二人が話さない代わりに、二人に昼食を奢ることになった。千雨は先ほどまで『話さない』ことに安心をしたが、今はスバルの暴食っぷりが不安だった……

 

「ほら〜、早く早くぅ〜♪」

「お前…あんまり食うんじゃないぞ……って、聞いてないな………」

「………こういう時は、諦めが肝心よ……」

 

さっさと先に行ってしまうスバルにうなだれる千雨を、一応は励ますティアナ。

 

「それにしても、あんたにあんな趣味があったとはねぇー………見かけによらないというか、何というか………」

 

ティアナは千雨にそう言う。徐倫の話ではフランス人とのハーフだと聞いていたが、中学生にしてはスタイルは良いようではあるし、中学生離れした面々の多いA組の中でも顔立ちはきれいな方だろう。眼鏡がなければ、軟派な男の2人3人や芸能プロダクションなんかは声をかけてくるに違いないと思う。

そう思っていると、うつむいていた千雨が半笑いでこちらを見てきた。正直コワイ。

 

「………生まれつきスタンド能力なんて持ってるとねぇ~………嫌でも『隠ぺい』がうまくなっちまうんですよぉ~………」

「え………?」

「自分の能力(チカラ)が「他の人には見えない」って分かってからは、特にひた隠しにしていたよ………ただでさえ父親がいない事、気にしていたのに………おまけに、小4まではひたすら『修行』させられていたせいで、『自分は他人と違う』って思い込みが激しくってよぉーーー………実家から逃げるように麻帆良(こっち)に来たら来たで、おかしな状況とお気楽な同級生(クラスメート)にイラつく始末よぉ………」

「あ、あの………?」

 

ここに来てティアナは、自分が千雨の地雷を踏んでしまった事に気づいた。相当溜まっているものがあったのか、ついに千雨は叫びだした。

 

「大体、ウチのクラスからしておかしいだろ!異様に『留学生』が多いし!中学生離れしたのとか!身長やスタイルの大小が『極端』すぎだろあれ!大体何で「ロボ」が中学通ってんだ!?何で誰も突っ込まないんだよ!?トドメにあの子供先生って!!いや、後で理由聞いたけど………それでも10歳(ガキ)が教師って無茶にも程があるだろぉがああああああああああああああああッ!!」

「お、落ち着きなさいよ………」

 

うがーっと叫ぶ千雨をなだめるティアナ。ひとしきり叫ぶと、千雨は荒く深呼吸をした。

 

「………フーーー、スッとしたぜ。悪いな、変な所みせちゃって………」スッキリ

「い、いやぁ、ヘンな事聞いた私も悪いし………」

 

スッキリした表情の千雨に苦笑いのティアナ。おそらくは異常な事に対して敏感であったが為に、麻帆良学園の異常性とそれに疑問を持たない周囲にストレスが溜まっていたのだろう。相談できる人物もいなかったようだし、ああやって発散していたのだと、ティアナには予想できた。

 

「………ん?」

 

ふとティアナは、草むらに何か、『棒のようなもの』が落ちているのに気がついた。

 

「何これ?」

「どーした、ランスター?」

 

拾ってみると、それは鞘に納まった「刀」だった。結構重く、『本物』ではないかというリアリティだ。

 

「ん?なんだそれ?『演劇部』の落とし物か?」

「多分……でも、それにしては結構リアルね………まるで本物みたいな重みよこれ…」

 

不思議に思ったティアナは、刀を抜いてみると、まるで冷たい水に濡れているような美しい刀身が現れた。

 

「!おいおい、こりゃあ本物だぞッ!!何でこんなとこにマジものの刀があるんだッ!?」

「わッ………私に聞かないで………よ…………」

「………?ランスター?」

 

ティアナの様子がおかしいことに気づいた千雨。何か、ぼーっとした感じだ。

 

「おーい、二人ともどうしたのーー!?」

 

そこへ、スバルが駆け寄ってくる。

 

その時ッ!

 

 

 

 

 

ドシュゥーーッ

「「!!?」」

 

刀を持ったティアナが、千雨に『斬りかかってきた』!!

千雨は何とか「スタンドの小太刀」で防ぎ、バックステップで下がる。

 

「ランスター!テメェ、何を………!」

 

ティアナに怒鳴る千雨だが、こちらを睨み付けるティアナの、射抜くような目つきを見て『ヤバい事』に気がついた。

 

「は、長谷川さん!一体……!」

「ヤベェぞ…………ランスターのやつ、『操られてやがる』!恐らく、原因はあの『刀』だッ!!」

 

千雨が仮説をたてると、ティアナは感心したようなそぶりをみせる。

 

「………ほう、初見でわたしの正体に気づくとは………貴様、できるなっ!」

「お前………『スタンド』か?」

「いかにもっ!!我こそは『エジプト9栄神』が一人ッ!冥府の神!墓地の守護神を暗示するカード!『アヌビス神』ッ!!」

「!!『アヌビス神』だとッ!?」

 

刀を構えて名乗るティアナ、いや、『アヌビス神』の名前を聞いて、驚愕する千雨。一瞬、ティアナの背後に『黒いジャッカル』の幻影を見たような気がした。

 

「知ってるの雷で…………長谷川さんッ!?」

「雷○って呼ぼうとした!?今明らかに○電って言いかけたよなッ!?……………『アヌビス神』って言えば、承太郎さんや『父さん』が戦って、再起不能(リタイア)したって聞いたが……」

「ん?貴様の『父』だと?」

 

千雨の話を聞き、疑問に思う『アヌビス神』。彼女の父親と自分が戦った………?

 

「……………お前は、『一度戦った相手は憶える』らしいな…………………なら、憶えているはずだ。」

 

千雨は、アヌビス神を見据えて、話した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『(ジャン)(ピエール)・ポルナレフ』だ!」

「!!ポ……『ポルナレフ』だとぉー!?」

 

ポルナレフの名前に驚くアヌビス神。

確かに自分は、『銀の戦車(シルバー・チャリオッツ)』のポルナレフと戦った。だが、今自分の目の前にいる少女が、そのポルナレフの「娘」だと……?

 

「……ふっ、面白いッ!貴様がポルナレフの娘というならばッ!!相手にとって不足なしッ!!」

 

アヌビス神は不敵に笑う。これから戦う相手に『悦び』を感じていた。

 

「このアヌビス神、絶対に、絶対に、絶〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜……」

 

『絶対』という言葉を、溜めに溜めるアヌビス神。そして……

 

「………〜〜〜〜〜対に!負けなァァァーいッ!!」

 

言い切ると同時に、千雨に襲いかかるッ!!

 

 

 

 

 

←to be continued...

 




16話です。
・サブタイトルは言わずもがな、「吉良吉影は静かに暮らしたい」から。

・冒頭で話し合うせっちゃんと、それに呼ばれる徐倫。誰がスタンド使いかはお楽しみに。

・千雨のネットアイドル活動。リメイク前に、千雨の心の叫びを追加しています。

・アヌビス神登場。今後の展開を考えて、ティアに憑かせました。

・今作の千雨はポルナレフの娘です。スタンドは彼から受け継ぎました。

では、次回をお楽しみに!


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#17/長谷川 千雨は静かに暮らしたい ②

「しっかしよぉー、随分と広い街だなぁーここは。」

 

その男は、地図を片手に住宅地を歩いていた。引越しもひと段落着いたので、明日の挨拶を前に周囲を散策しようと思ったのだ。

 

「『杜王町』と違ってヨーロッパ調でキレイだけど、下手したら迷子になっちまうぜ………えーと、この先は学生寮エリアか………?」

 

周囲と地図を見渡して自分の位置を確認していると、ふと、高いマンションの方を見上げた。

 

「――――!!!」

 

『あるもの』を見つけて、目を疑った。

慌て目をこすり、再度さっきの場所を見る。

だが、『あるもの』は実在していたため、見間違いではなさそうだ。

 

「………こりゃぁ、着任早々に厄介ごとに巻き込まれるのかぁー……?」

 

誰に言う出なくつぶやいた男は、さっきの見えたあたりまで走り出した。

 

 

 

 

 

#17/長谷川 千雨は静かに暮らしたい ②

 

 

 

 

 

時間は前後して5分ほど前。

 

 

「絶~~~~~~~~~~~対に!負けなぁぁあい!」

 

ティアナに取り憑き、千雨に『唐竹割り』を繰り出す『アヌビス神』。千雨はそれを受け流し、高く飛び上がると、空中で『前転』をしながら斬りかかる!

 

「双燕天翔流!弧牙車(こがぐるま)!!」

ガキィィン

「!!」

 

いきなり頭上からの攻撃に驚いたが、何とか防いだアヌビス神。そのまま千雨をはじき返すと、今度は横なぎに斬りかかってくる!

 

カィイイイン

「くっ!」

「なかなか面白い技を使うな………だが、今のは、もう『憶えた』ぞ!」

 

鍔迫り合いになるも、千雨が明らかに押されていた。

 

(ぐ…強い………さすが承太郎さんや父さんとやり合っただけのことはある………)「だがッ!!」

ドゴォッ

「!?」

 

無理矢理蹴りを入れて、アヌビス神から離れる千雨。すぐさま、左から突きを繰り出し、同時に右から袈裟掛けで斬りかかった!

 

「だからって負けられるかっ!」

 

慌てて防ぐアヌビス神だが、千雨の攻撃は止まらない!

左から逆袈裟、逆風、右切り上げ、右からは左薙、唐竹、突き、……ものすごいスピードで、連続で様々な方向からの斬撃を繰り出す!

 

ザシュウウ

「ぐううッ!」

 

そして、右からの袈裟掛けを喰らってしまうアヌビス神!たまらず後ろに下がった!

 

「双燕天翔流八大奥義!戦嵐月華!!」

 

構えを解かずに言い放つ千雨。

アヌビス神は、千雨の連続攻撃に驚いたものの、すぐに冷静な顔になる。

 

「なるほど…………目にも留まらぬ速さで連続攻撃を、しかも様々な方向から繰り出す技か………初見で見切るのは難しいが、確かに『憶えた』!」

「ちっ………今ので見切ったか……………!」

 

自分の渾身の技を初見で見極められて舌打ちをする千雨。恐らく、もう『戦嵐月華』は通用しないだろう………

 

「ならばッ!」

「!?」

 

すかさず後ろの木に飛び乗り、一気に蹴る!

そう、『図書館島』で『ラング・ラングラー』を倒した―――

 

「疾風月華!!」

 

すれ違い様に連続斬りを放つ!!

 

だが!

 

ガギギギギギィィィン

「何ッ!?」

ザシュウウ

「ぐわっ!」

 

全ての斬撃を受け止められてしまい、逆に一撃喰らってしまった!

 

「長谷川さん!」

「千雨と言ったな…………貴様のスピードと太刀筋は、さっきの技で『憶えた』!もう、貴様の技とスピードは、わたしには通用せんぞ!!」

 

スバルが千雨に駆け寄る中、アヌビス神はそう言い放つ。しかし、『冥府の神』の取り憑いた妖刀は、内心昂っていた。

 

(くくく………しかし、これは中々の実力者だぞ………ポルナレフの娘だけの事はある………これは、『ものをすり抜ける』我が能力を使っては『失礼』になるな………)

 

刀のスタンド故なのだろうか、強い者との闘いに、アヌビス神は血が滾っていた。刀の身体を持つ『スタンド』の『血が滾る』とは、何ともおかしい話なのだが。

 

「くっそ………純粋な『剣術』じゃあ、流石にかなわないか………」

 

流石は承太郎を本気で苦戦させただけの事はある。策や術を使わない『正統派スタンド』にして剣の達人であるアヌビス神は、かなりの強敵だ。

千雨が悩んでいると、ふと、スバルは『ある事』を思いつく。

 

「ねえ、長谷川さん、『アレ』を使えばいいんじゃあ………」

「!!」

「『アレ』?千雨、貴様何か『奥の手』でももっているのか?」

 

スバルの一言で、少し躊躇する千雨。

確かに『アレ』ならば、アヌビス神を倒せるかもしれない。だが、やつに『アレ』を憶えられたらヤバい!そういう考えが、千雨の頭を巡る。

 

しかし、

 

「大丈夫!長谷川さんならできるって!!」

 

『どこにそんな根拠があるんだ?』と聞きたくなってしまうような、スバルの真っ直ぐすぎる一言と、『明るい未来』しか見えないような輝く目で、千雨に言うスバル…

そんなスバルにため息を一つつくと、千雨は立ち上がる。

 

「お前みたいな生き方だと、気楽でいいかもな………おい、アヌビス神!」

 

小太刀の切っ先をアヌビス神に向け、言い放つ千雨。

 

「お前の言うとおり、私には『奥の手』がある。今からそれを拝ませてやるから、しかと見ろ!!」

 

言うと、深く踏み込む千雨。そして―――

 

 

 

 

 

ドンッ

 

 

 

 

 

「な!!にゃに~~!?」

 

跳んだ!

だが、『高さ』がおかしい。明らかに『10m以上』は跳んでいる!!

 

「ばっバカな!何だあの『跳躍』はッ!?」

 

アヌビス神が驚くのも無理はない。

 

『波紋』で身体能力を強化しているとはいえ、人間が『10m以上』も跳ぶのは不可能だ。

スタンドを使えばできるだろうが、千雨のスタンドは『小太刀』の(ヴィジョン)だ。承太郎の『スタープラチナ』のような『人型』なら可能かもしれないが、刀のような『道具型』では不可能なはず!

ならば、どうやって………!?

 

その謎は、すぐに解けた。高く跳んだ千雨が、『旋回』してこちらに向かってきたからだ!

その時、千雨の姿を見たアヌビス神は、全てを理解した!

 

「あ、あの『姿』はッ!!くっ!」

ガキィィン

「………ちっ、防いだか!」

 

突進してくると同時に一太刀喰らわせた千雨だが、刀身で防がれてしまい弾かれた。そのまま木にぶつかりそうになるが、手前で『急上昇』して回避、速度を緩めて降りてきた千雨を見たアヌビス神は、舌打ちをして睨み付けた。

 

「くっ………なるほど、今のは『()()()』のではなく、『()()()()()()()()()……!貴様………今までスタンドの一部だけを出して戦っていたな!」

「ああ、これが私のスタンド―――」

 

千雨は甲冑を、白金と金色に輝く「甲冑」を『身にまとっていた』!!

女性的なフォルムで、『騎士』というよりは『戦乙女(ヴァルキリー)』と言えよう。肩には『鍵穴』型の肩当てをつけ、肘当てや籠手、腰のバックルには、『蒼く輝く燕』―――双燕天翔流の紋である『卍燕』の装飾がある。頭には猛禽類のくちばしのような型をした水色のバイザーのついた兜を装着している。そして、その背中には白金に輝く『鋼鉄の翼』が生えていた。

これこそ千雨のスタンドの『真の姿』!その名を――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『アニバーサリー・オブ・エンゼル』だ!」

 

 

 

 

 

甲冑(スタンド)―――『アニバーサリー・オブ・エンゼル』を身にまとい、高らかに千雨は叫んだ。

 

 

 

 

 

本体名―長谷川 千雨

スタンド名(命名:J・P・ポルナレフ)―アニバーサリー・オブ・エンゼル

 

 

 

←to be continued...

 




16話です。
・千雨の使う『双燕天翔流』の技名は、奥義は『風』や『雨』などの天候、それ以外は『数の単位』からとってます。『弧牙車』は『恒河沙(10の52乗)』から。

・千雨のスタンド『アニバーサリー・オブ・エンゼル』。名前はALI PROJECTの楽曲『Anniversary of Angel』から。『白アリ』の中では、特に気に入ってます。 デザインは、ポルナレフの『銀の戦車』を女性的にしたイメージです。

では、次回をお楽しみに!


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#18/長谷川 千雨は静かに暮らしたい ③

さかのぼること18年前―――

 

1989年

エジプト ナイル川の川岸

 

午前2時

 

 

ある川岸で、『奇妙』な出来事が起きた。

 

川岸に『カニ』が数匹上がってきたのだ。

いや、これはおかしな出来事ではない。川岸にカニがいるのはおかしくない。

奇妙なのは、そのカニたちが、『折れて、刀身のみになった刀』を運んできた事である………

 

(クッ、おのれ承太郎……!貴様のせいで、オレはナイル川の川底に沈む羽目になったのだぞ…………!!この恨み!必ず晴らしてみせるッ!!)

 

刀―――『アヌビス神』は、承太郎への恨みで、闘志をメラメラと燃やしていた。自分の不運で川底へ沈んだことを忘れて………

 

(……とりあえず、川底でサビる事は避けられたが、このままでは何もできない………誰かが拾ってくれるのを待つしかないか…………)

 

そう思い、誰かを待つ事にしたアヌビス神。そんな時、川岸に一人の少女が現れる。

 

マントを頭からかぶっているので表情は分からないが、肌は黒く、服装は薄手のワンピースを着ており、地元の者ではない事がわかる。恐らくは旅行者だ。

 

(むっ!こんな時間に女が………?いや、そんなことより、こいつを操って、承太郎に復讐だッ!!)

 

だが、彼女が『左手』でアヌビス神を拾ったとき、信じられない事が起きた。

 

(にゃ!!ニャニィ〜〜!?あ、『操れない!』この女を操ることができないィイーーッ!?)

「………残念ねアヌビス神………私の『左手』で触れたスタンド能力は、全て『無効化』される………これが私の『スタンド能力』。」

 

少女は静かに告げると、右手でアヌビス神に布を巻き始めた。

ふと、アヌビス神は自分の置かれている状況がおかしいことに気づいた。

 

(………あれ?オレは『左手』でこの女に持たれているのか?だが、これは明らかに『右手』だぞ?………!?まさか!こいつは『左手』が―――)

 

「だが、私のこの『無効化』の能力のみでは、ジョースターどもには勝てない…………集めなければ…………私の復讐のための軍団を…………」

 

ぶつぶつと呟くように言いながら、彼女はその場を立ち去った。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

 

現在

 

 

「あの時、アヌビス神を拾い、優秀な刀鍛冶に直させたのは正解だったわ。」

 

紅茶に砂糖を入れながら、妙齢となったあの時の少女は言った。

彼女の目の前のモニターには、アヌビス神と戦う千雨が映し出されていた。

 

「おかげでお兄様を殺した男………ポルナレフの娘にたどり着いたんですもの………帰ってきたら、磨いてあげようかしら…………」

 

そう言うと、彼女は紅茶を手元に持ってくる。

 

 

 

だが、彼女の手をみると、おかしいことに気づく。彼女の左手の『親指』は、手の甲を外に向けているのに、『下側』にあった。

 

 

 

そう、よく見なければ、誰も気づかない。

 

 

 

彼女の『左手』が、『右手』であることに………………

 

 

 

 

 

#18/長谷川 千雨は静かに暮らしたい ③

 

 

 

 

 

(こ………この『アヌビス神』!…………今まで様々なスタンド使いと戦ってきたが…………「スタンドを身にまとう」………こんなタイプ、初めて見るぞ!)

「さあ、決着をつけようか!アヌビス神ッ!!」

 

言うと同時に、高く飛び立つ千雨。そのまま木に飛び乗ると、アヌビス神に向かって飛びかかる!

 

「疾風月華・隼ッ!!」

「バカめッ!その技はすでに―――」

ズババァッ

「なッ!?」

 

見切っていると言う前に、全ての斬撃を喰らうアヌビス神。体のあちこちに斬り傷を負い、斬り裂かれたミニスカートから太ももと下着が見えているが、その顔は驚愕だ。

 

「バッ、バカな!………スピードが……………増しただと………………!?」

「…………『疾風月華・隼』は、私が『勝手に』作った、『疾風月華』の派生技だ。私のスタンド、『アニバーサリー・オブ・エンゼル』での戦闘を想定してな!」

 

説明しながら、『エンゼル』の翼をパタパタと動かす千雨。その時、アヌビス神は気づいた。

 

「!そうか……踏み出すと同時に『飛行する』ことで、先ほどよりもスピードが増したというわけか!!」

「ああ。『疾風月華』みたいな突進技は、『エンゼル』の『飛行能力』で加速できるからな。だが、もうお前に『憶えられた』…………次で決めるッ!私の最も得意とする奥義で!!」

 

そう言うと、両腕を後ろへ持っていき、飛び出すような構えをとる。

 

「………面白いッ!」

 

アヌビス神も、両手持ちの構えをとり、千雨の出方をみる。

 

 

 

 

 

緊迫した空気が辺りを包み込み、両者は全く動かない―――

 

 

 

二人の間に木の葉が、ひらり、ひらりと、何の前触れもなく舞い落ちてくる―――

 

 

 

だれが決めたでもない―――

 

 

 

二人が決めたでもない―――

 

 

 

だが、それが地面に落ちるのが、二人の合図となった!

 

 

 

ドン!

「ア!ホッ」

ビュオ!

 

かけ声とともに、千雨に斬りかかるアヌビス神!!

 

「双燕天翔流八大奥義!!時雨月華ッ!!!」

シバババババ

 

一方の千雨も、両手からの連続突き―――「時雨月華」を放つ!!

 

 

 

そして――――

 

 

 

 

 

 

 

ガギギィィィ……………ン

 

 

 

 

 

 

辺りに、刀と刀がぶつかり合う音が響く。

 

両者は、すれ違った形で動かない。

 

勝ったのは――――

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………フッ、なるほどな…………貴様は剣術とスタンドを併用して……………戦うタイプか………………確かに………………憶えた………ぞ……………」

 

途切れ途切れに言いながら、アヌビス神は倒れていった……

 

「……ふう、ギリギリだったな…………」

「長谷川さんッ!」

 

『アニバーサリー・オブ・エンゼル』を解除し、アヌビス神に斬られた右わき腹を押さえながら言う千雨。そんなに深くはないようだ。アヌビス神に操られていたティアナの方は、傷だらけだが………

 

「長谷川さん、て、ティアは…………?」

「ああ、急所は外しておいたから大丈夫だろ。問題は、『アヌビス神』だな……」

 

そう言ってティアナの方を向くと―――

 

 

 

 

 

茶色い『ダイバースーツ』のようなものを着た男が、『アヌビス神』を握っていた。

 

「「!?」」

「千雨よ…………今回は引いてやる。だが、次に会うときは絶〜〜〜〜〜〜〜………対に負けないッ!!」

 

言うと、まるで水泳選手のように地面へと飛び込む。男が地面に接すると、地面は『泥化』して、そのまま潜っていった。

 

「な………今のは……?」

「ちっ!逃げたか………!(『エンゼル』を憶えられたのは厄介だな…………今度やり合うときは『アレ』を使う羽目になるかもしれないな…………)」

「と、とにかく、今は二人を病院に―――」

 

アヌビス神に逃げられ、ティアナと千雨を病院へつれていこうとするスバル。

 

その時だ

 

 

 

「『天使』が見えたと思ったらよおーー」

「「!!!」」

 

いきなり、背後から男の声が聞こえ、振り向く二人。

 

「すっげー戦いが見られたぜぇー。『達人同士の戦いは一瞬で決まる』ってよく聞くが、いやはや、見事な戦いだったぜー。」

 

木の陰から、やたらとデカい男が現れた。軽く190cmはありそうだ。

黒いスーツを着ているが、スーツの襟に『ピースマーク』のアクセサリーをつけている。ネクタイにも、ピースマークやハートの模様が入っている。

だが、男の身なりで最も目を引くのは、その『髪型』だ。まるで宇宙船や軍艦を彷彿とさせるリーゼントが、ビシッと決まっていた。

 

「…!あ、あんたは…………」

「よお千雨!久しぶりだなぁーおい!何年ぶりだ?」

「え?長谷川さんの知り合いなの?」

 

驚く千雨と、千雨に対してフレンドリーに話しかける男を見て、スバルは疑問を持つ。

 

「とりあえず、お前とそいつの「傷」、見してみろよ。」

「あ……ああ。」

 

男に言われ、千雨はティアナと自分の傷をみせる。すると―――

 

ズギャァアーーン

「!え!?え?!」

 

男から『腕』が伸びて、二人に触れたかと思うと、二人の傷が一瞬で『治った』!!

まるで、『最初から傷なんてなかった』かのようだ!

 

「……あれ?………私………??」

「ティア!!」

「よお、痛みはないか?」

 

ティアナが目を覚まし、駆け寄るスバル。ティアナはいつの間にかいる男に警戒するが、男に言われて、自分の体に異変がないか調べる。

 

「………痛みはないけど………私どうしてたの?刀を抜いたあたりから、記憶がないんだけど………」

「あの刀、スタンドだったんだよ。で、操られて私と戦っていたんだ。」

「えっ?」

 

千雨に事情を説明されて、驚きを隠せないティアナ。

 

「で、この人に傷を『治してもらった』所だ。」

「え?え?ていうか、誰この人!?」

「ああ、悪ぃーな。遅ればせながら、自己紹介させてもらうぜ。」

 

言うと、男は三人に向き直る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この度、『麻帆良学園女子中等部』で『数学』を担当することになった、『東方 仗助(ひがしかた じょうすけ)』ッス!以後、お見知りおきを!!」

 

 

 

 

 

アヌビス神――逃亡 再起可能

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

同時刻

 

麻帆良学園女子中等部 文芸部部室

 

 

通常の教室の半分ほどのこの部室には、長机2台にパイプ椅子が数個、大き目の本棚2つには純文学やライトノベルが詰め込まれ、棚にはお茶のセットや、あと何故かドラ○ン○ーザーの玩具が並べられていた。

 

「すいません空条さん、わざわざ文芸部の部室を貸していただいて………」

「気にしないでいいわ。どうせ春休み中は部活やらないし、部員も私含めて「3人」だけだしねぇー。しかも1人は春休み中、川崎の実家に帰ってるし。」

 

徐倫と刹那は、向かい合って話していた。刹那が「誰にも聞かれない場所で話がしたい」と言ってきたので、徐倫は自身が所属する文芸部の部室を提案したのだ。

 

「それで、話ってなんだ?」

「はい、実は、スタンド使いである空条さんに、お願いがあるんです………」

 

徐倫は驚いた。自分をスタンド使いと呼んだという事は、刹那は

 

「………お前、『魔法使いなのか』?」

「……はい。正確に言えば、『神鳴流』という、『気』を扱う『剣士』ですけれど、魔法使いサイドにいます。」

「……その辺の分類はわからないが………それで、お願いってのは?」

 

刹那は、胸ポケットから1枚の写真を取り出して、徐倫に見せた。写真には、アッシュグレーの髪の女子生徒が映っていた。

 

「お願いというのは、この人の事を調べてほしいのです………」

「ん~~~………?こいつ、見た事があるなぁー……誰だ?」

「………2年C組『田中 かなた』―――この生徒が、「スタンド使い」であるか否か、調べてほしいのです………」

 

 

 

 

 

←to be continued…

 




18話です。
・今回の黒幕、『左手が右手の女性』がちらりと登場。ルル・ベルとの関係などは、後々判明します。

・『アニバーサリー・オブ・エンゼル』は、シンプルに『飛行能力』を持つスタンド。後は、『銀の戦車』とあまり変わらないですね。
 千雨は『剣術』で戦うので、これくらいシンプルなのが丁度いいと考えての能力です。まだまだ隠し玉はあるようですが…

・仗助参戦。木乃香が覚醒するまでの間、『治療担当』が必要でしたので、出番は四部での承太郎くらいになるかもですが…

・ラストは徐倫と刹那の会話。次回は#05で名前が出てきた田中さんに関する『新作』になります。

では、次回をお楽しみに!


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#19/田中 かなた(ハイ・ステッパー) ①

グリーンドルフィンストリート・麻帆良

206号室

 

 

「「えぇーーーーーッ!!く、空条さんの『親戚』ぃいいーーーーーーーッ!?」」

 

部屋中に、スバルとネギの声が響いた。近くにいたリィンとティアナは、あまりの声の大きさに耳を押さえる。

 

「………あ…ああ。私のひいじいさんの『ジョセフ・ジョースター』が浮気して産まれたのが仗助おじさんだ。」

「複雑なのね、あんたの家族………」

(ジョセフ・ジョースター………聞いたことがあるぞ。結構有名なニューヨークの不動産王だ………)

 

ジョースター家の複雑な家系に哀れむティアナたち。ネギは、ジョセフの名前に聞き覚えがあるようだ。

 

あの後、仗助の事を簡単に紹介した千雨はその後、スバルやネギたち(ようやく復活した明日菜たち含む)に、『スタンド使い』としての仗助を紹介するため、ここへ集まっていた。

 

「ま、オレの紹介はこれくらいにしてよォ、次はそこのオレンジのやつ―――ティアっつったか?―――そいつの『後遺症』についてだな………」

「「後遺症」?」

「うん、実は、『アヌビス神』に操られたのが原因だと思うんだけど………」

「私、『スタンド』が見えるんです…………」

「「「「「えぇッ!?」」」」」

 

そう、ティアナには、「スタンド」が見えるようになっていた。

原因はアヌビス神だと、仗助たちは推測しているが、これには訳があった。

 

「―――『アヌビス神』の本体は、600年前に死んだ刀鍛冶『キャラバン・サライ』ということが判明していますわ。つまり、『スタンドのみが生きていて、刀を抜いた人物を本体にする』ということになりますわ。」

「つまり、ティアは一時的とはいえ、『スタンド使い』になったって事だ。だから、スタンドが見えるようになったって、オレたちは考えている。」

「なるほどーー。………って、ちょっと待って!!」

 

仗助たちの説明を聞いていた明日菜は、ある疑問が浮かんだ。ネギやスバルたちもだ。

それは―――

 

「何で『いいんちょ』が話に参加してるのよッ!?」

 

そう、仗助や徐倫の座る席には、『いいんちょ』こと、『雪広 あやか』も同席していたのだ。

 

「あ、そういえば、言っていませんでしたわね。」

「あやかのとこの「雪広財閥」は、「スピードワゴン財団」と深い関わりを持っていてな。有事にはあやかをエージェントとして派遣してくれるんだ。」

「「「「「「えぇーーッ!?」」」」」」

 

衝撃の事実に、スタンド使い側以外の全員が驚く。ふと、ヴィータはあることを思い出す。

 

「そういえば、財団のエージェントが『矢』について調べてるって聞いたけど………」

「ええ、わたくしの指揮下で働いている方々がおりますの。わたくし、スタンド使いではありませんが、みなさまのお力にはなりますわよーー。」

 

ホホホと優雅に笑いながら言うあやか。

そんな様子を、全員がぽかんと見ながら、全員同じことを考えていた。

 

『こいつが財団のエージェントをあごで使っているのか………』

 

 

 

 

 

#19/田中 かなた(ハイ・ステッパー) ①

 

 

 

 

 

翌日 午前13時35分

 

麻帆良学園女子中等部 職員室

 

 

「―――と言う訳で、来年度からお世話になります、東方 仗助です。まだまだ未熟者で至らぬ自分ではございますが、なにとぞご教導を賜りますようお願い申し上るッス!」

 

仗助が一礼すると、まばらに拍手が起こる。

広域指導員であり、絵にかいたような堅物教師の新田先生が紹介したと聞いていたのだが、いざ出てきたのが、絵にかいたような「昭和の不良」のような髪型の仗助であったため、かなり困惑しているのだ。

 

「いやー、よく来てくれたね、仗助君!」

「ういッス!新田先生も、お元気そうで!」

「よろしくお願いします、仗助さん!」

 

呼んだ本人である新田先生や、前日に会っているネギなどは別であるのだが……

仗助の隣に立つ学園長がワザとらしく咳払いをすると、教員全員が静かになった。

 

「さて、東方先生には、ネギ先生の受け持つA組の副担任を任せようと思っておるのじゃが、どうだろう?」

 

学園長の言葉に、真っ先に仗助が反論した。

 

「え?ちょっと、いいンすか?聞いた話じゃあ、ネギは今年から先生になったばかりらしいし………オレも去年教員になったばかりッスよ?センセーの「タマゴ」と「ヒヨコ」にひとクラス任せるって………」

「一応、ウェザー君が補佐してくれるでの。」

 

学園長に言われて一応は「はあ……」と返事を返したがいまいち納得していない様子の仗助であった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

13時50分

 

挨拶も終わり、仗助はネギに校舎を案内されていた。廊下を歩く中、ふとネギは、気になっていたことを聞いてみる事にした。

 

「所で、仗助さんは新田先生とどういうご関係なんですか?」

「ああ、オレのおふくろが、新田先生の元教え子でよォ、その『ツテ』で紹介されたんだよ。」

 

右手で後頭部を掻きながら説明する仗助に、ネギは納得したように頷いた。

 

「前の学校、生徒と校長をボコボコにしたせいで解雇(クビ)になって困ってたらよぉー、ちょうど空きがあるからって紹介されたんだよ。」

「………え?」

 

しかし、仗助が詳しい経緯を話すと、目が点になった。見た目は不良っぽいけれど、話してみて優しそうな人だなー、と思っていただけに、結構な衝撃だ。

どうしてそんな事を?と聞きたそうな顔をネギがしていたからだろうか、仗助は「だってよぉー、」と、自慢のリーゼントヘアーをビシッと指さした。

 

「アイツら、オレのこの髪に『ケチ』つけるんだぜー?髪型けなすヤローは、誰だろーと許せねぇータチなんだよ、オレ。」

「そ、そうなんですか…!で、でも!個性的でカッコいいと思いますよ僕は!はい!」

 

慌ててネギが褒めると、そーかぁ?と機嫌がよくなった様子の仗助。ネギは今の話を聞いて、仗助の髪型には触れないでおこうと、心に誓った。

ふと見ると、前の階段から3人の女子生徒が上がってくるのが見えた。

内2人は仗助の大姪である空条徐倫と学園長の孫である近衛木乃香、もう一人は、仗助の知らない生徒であった。

 

身長は徐倫と頭半分ほど低く、肩まであるアッシュグレーのくせっ毛の右側3か所を短い三つ編みにした個性的なヘアースタイルをした、中性的な顔立ちの生徒であった。

 

「お、ネギに、仗助おじさん。」

「ネギくん♪それと東方先生やね。おじいちゃんから聞いとるよー」

「コンニチハ、ネギ先生。」

「あ、空条さんに田中さん。」

 

ネギが「田中」と呼んだ女子生徒は、やや高めの声であいさつをした。

 

「ああ、仗助さん、こちら、2年C組の「田中かなた」さんです。田中さん、こちら4月から数学を教える東方仗助先生です。」

「どうもッス………と?」

「こんちにはぁ~」

 

挨拶をする仗助は、かなたの後ろに控えるメイドが挨拶をした。見たところ20代後半だろうか、黒いワンピースに白いエプロンとヘッドドレスというメイドの記号ともいえる服装に黒いショートボブに丸眼鏡をかけたメイドが、仗助たちに微笑んで挨拶をした。

 

「ああ、田中さんの付き人の、神矢 美佳(かみや みか)さんです。」

「よろしくお願いしますねぇ~」

 

美佳と呼ばれたメイドは、おっとりと間延びをした口調でお辞儀をした。

 

「じゃあうちら、新入生向けの部活紹介の打合せがあるんでー」

「文芸部と占い研究会は、部員少ないんですよ~」

「はい、気を付けて。」

 

徐倫たちはそう言って2人の後方に歩いていくのを見届けると、仗助はネギに聞いた。

 

「なあネギよォー、なんであの生徒、メイドさんなんて連れてるんだ?」

「なんでも、田中さんのお父さんが身の回りのお世話のために雇ったそうですよ。僕も最初は驚いたけど、特に授業等には干渉しないようなので。」

「ふぅ~ん………『田中』なんてヘーボンな苗字と思ったが、結構なお嬢さまなのかぁ?………本職(マジモン)のメイドさんなんて初めて見たぜぇ………」

 

メイド喫茶なんて行くの間田くらいだけど、と呟いた仗助は、3人の方を振り返った。

 

「………」

「?」

 

その時、丁度同じようにこちらを見るかなたと目が合った。しかし彼方は、こちらを睨むように目を細めていた。徐倫と木乃香に呼ばれて慌てて合流するかなたを見て、仗助は首を傾げた。

 

「………?」

「どうしたんですか仗助さん?」

『チュミ~』

 

後ろでネギが声をかけてきた。仗助は不思議に思いながらも、彼に着いていった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

14時15分 学園長室

 

 

「君たちも本当に忙しいのぉ………」

「はい、………私たちも、まさかこんな事態になるなんて………」

 

書類に目を通した学園長は、目の前のフェイトと承太郎を見た。承太郎は普段通りに無表情であるが、フェイトは少し申し訳ないような顔であった。

 

「今回の件、『矢』の調査と並行して「SPW財団」も調査を行う。あながち無関係とも言い切れんからな。」

「すまんのぉ……所で、「彼女たち」は……?」

「今は、スバルたちと一緒にいます……まだ、少し困惑しているようでしたが………」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

14時55分

 

「結構話したなー、どっかでお茶のまへんー?」

「そうですねー、じゃあ、STARBOOKSCAFEにでも………」

 

打ち合わせをしていた徐倫たちは、内容を一通り終えたらちょうど15時前であったので、今日はこれで解散にすることにした。

 

(………今のところ、目立ったことはしてないな………桜咲の話が本当なら、能力(スタンド)を隠すのは普通だろうけれど………)

 

目の前で木乃香や美佳と話すかなたを見ながら、徐倫は考えていた。

今回の「打合せ」はいわば口実であり、(部員増やしたいのは本当だけど)実際はかなたの動向を探り、スタンド使いかどうかを調べるためであった。

今のところは怪しい動きはなく、木乃香と仲良く話している。

 

(もうしばらく様子を見るか………ん?)

 

ふと、階段の前を通りかかったとき、上の方が騒がしい事に気が付いた。木乃香たちも気づいたらしく、上の方を見上げると………

 

「うおおおお!?」

「待てコラぁアッ!!」

「「「な!?」」」

 

赤い短髪の少女が、リーゼントヘアーの大男に追いかけられていた。少女は踊り場から階段を飛び降りるが、着地しようとした時になって目の前に人がいる事に気が付いて驚きの顔になっていた。しかし、空中では軌道修正ができず、そのまま3人に突っ込んでくる!

 

「えっ」「あ!」

ドンガラガッシャァアーーン

 

少女は驚くかなたとぶつかってしまい、そのまま階段の向かいにあった空き教室に転がり込んでしまった。

 

「かなたさまーーー!?」

「え、えええええ!?ちょ、かなたちゃん、だいじょうぶー!?」

 

転がっていったかなたの心配をして、教室に駆け込んでいく美佳と木乃香。徐倫も突然の事に言葉を失っていたが、慌てて駆け寄った。

 

「いてて………」

「うーん………ん!?」

 

が、徐倫たちはその光景を目の当たりにして絶句した。尻もちをついたかなたのスカートの『中に』、「赤毛の少女が顔を突っ込んでいた」のだから。

 

「どんな状況!?」

 

あり得ない状況に、思わず叫ぶ徐倫。

 

 

 

同じころ、ハルナが「ラブコメの波動を感じる」と言って夕映を呆れさせたとかなんとか………

 

 

 

「うわわ!?」

「わーーー!?ご、ごめんなさい………!」

 

状況を認識したかなたは飛びのいて赤毛の少女の後ろに回り、少女は振り返ってかなたに謝った。

 

「………あ、あの………もしかしてその、み、『見ちゃいました』か………?」

「え、ええと………(て言うか今のって……こいつの『スカートの下』……)」

 

かなたの質問に少女がどもっている。しかし、

 

 

 

 

 

「はっ!?」

 

かなたの背後に立つ影を見て、驚愕した。かなたの後ろには、巨大な影が立っていたのだ!

 

頭巾をかぶったかのような頭部に丸いレンズ型の一つ目を持ち、巨大な左右の腕の指先が真っすぐに伸びていた。

 

「何!?(コイツ、す、スタンド使い……!!)」

 

そこで少女は初めて気が付いたのだが、その影の指先は『銃口』になっており、少女を狙っていた!

次の瞬間、スタンドの指先から『ミサイル』が1発、発射された!

 

 

 

 

 

 

 

 

ズドォオオオンッ

 

 

 

 

 

「!?」

「え?」

 

発射されたミサイルは教室の隅に着弾し、爆発を起こした。てっきり自分が狙われていると思っていた少女は何が起こったのか分らず、かなたも不思議そうにしていた。

 

 

 

 

 

「―――グレート!テメエ、スタンド使いだったのか………」

「―――やれやれだわ、いきなりミサイルなんて使う、普通?」

 

その疑問は、直ぐに解決した。リーゼントヘアーの大男・東方仗助と、空条徐倫が、スタンドの腕を押さえつけ、狙いをそらしていたからだ。

 

「『バッド・カンパニー』と違って威力はないようだがよォー!テメエ、教室でミサイルぶっ放すたぁーどーゆー了見だぁーーー!?」

 

ここでかなたは振り返り、少女も立ち上がって彼女の背後を見た。そして、スタンドの全体像が明らかとなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『()()()()()()()ーーーー!」

「「!?」」

 

 

 

 

 

そこには、頭巾のような兜をかぶり、両腕に巨大な機械の籠手のスタンドを装備した、メイド―――神矢 美佳の姿があった………

 

 

 

「………あらあら、バレてしまいましたわね~………」

 

 

 

 

 

←to be continued…

 




19話です。
・いつまでも戦力外なのは可哀想なので、ティアナにスタンドが見えるようにしました。ちなみに見えるようになる過程は『シャーマンキング』の木刀の竜が元ネタ。

・『財団』のエージェント『いいんちょ』。雪広財閥くらいでかかったら、SPW財団と繋がってても何の不思議もないはず…と思ったのがきっかけ。

・オリジナルキャラのかなたと美佳さん。かなたがスタンド使い、と見せかけて実はメイドさんの方が、というオチ。美佳さんは最初もっとクールなメイドの予定でしたが、天然っぽい人の方がいいかなー、と思って変更しました。

では、次回をお楽しみに!


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#20/田中 かなた(ハイ・ステッパー) ②

長らくお待たせしてすいませんでした。


時間は少し戻って、14時50分

 

一通り、自分たちがよく使うであろう場所を紹介し終えたネギは、仗助と話しをしながら廊下を歩いていた。

 

「仗助さん、これから予定ありますか?僕この後、アスナさんたちに街を案内してもらいに行くんですけれど、仗助さんも一緒にどうですか?」

「うーん、今後の話もあるし、同席するべきなのかなぁー?」

 

ネギに誘われて、少し悩む仗助。ネギとは違い、なんとなく女子中学生と一緒に歩くことには抵抗があった。

 

「ネギならまだ大丈夫だろうがよぉー、オレみたいなのが一緒で肩身狭くなんないかなぁ………ん?」

 

ふと、仗助は何か『不思議な感覚』を、丁度『左肩の付け根辺り』に覚えた。まるで、すぐそこに何かがあるような感覚であった。

 

(何だ、この感覚………?今までにないような…?)

「あ、仗助さん!」

「え?」

 

仗助が不思議な感覚に首を傾げていたためか、目の前の小さな人影に気が付かずドンッ、とぶつかってしまった。

 

「うわッ!?」

「おっと?」ドギュンッ

 

ぶつかった小さな少女は衝撃で倒れそうになるが、咄嗟に仗助が『スタンドの腕』で引き寄せて、自身の腕で抱えたため事なきを得た。

 

「大丈夫か?悪かったな、考え事しててよぉー」

「え、………あ、ああ………」

 

仗助は抱きかかえた少女に聞くと、少女はきょとんとしていた。

見たところネギと同い年くらいだろうか。腰まである銀髪に金色の目を持ち、右目に黒い眼帯をつけていた。シャツの上から袖なしのパーカーを着て、下はスカートにニーソックスという服装であった。

 

「見た所、小学生くらいか?今日は中等部の見学か何かか?」

「いや、私は………」

 

仗助に聞かれた少女はむっと不機嫌な顔になった。ネギが不思議そうにしていると、

 

「あ、テメェ!『チンク姉』に何してんだッ!!」

 

いきなり背後から怒鳴り声がしたかと思うと、赤い短髪に同じく金色の吊り上がった目をして、黄色く太めのゴシック体で「6251」とプリントされた赤いTシャツにハーフジーンズの少女が、ズカズカと歩いてきていた。

 

(あれ、この人どこかで………?)

「悪りぃなぁ、ちょいとよそ見してて……ん?チンク()だと?」

「ノーヴェ、私は大丈夫だぞ。」

 

チンクと呼ばれた少女は仗助の手を離れると、ノーヴェと言うらしい赤毛の少女の元にトコトコと速足で行く。仗助は、明日菜たちくらいの少女が小さい少女を『姉』と呼ぶことに違和感を覚え、聞いてみた。

 

「あの~、失礼とは思うけどよぉー、そのちっこいのって、お前のねーちゃんなワケか?」

「あ?姉だと悪いのかよッ!」

「こら、ノーヴェ!すまない、妹は少し短気な所があってな………」

 

ケンカ腰に仗助に食って掛かるノーヴェをチンクがなだめる。仗助とネギは、顔を見合わせた。

 

「グレート………ま、アネキが知らない男に支えられてりゃ、警戒もするわなぁ~………変わった姉妹もいるもんだ………」

「確かに………けれど、そういうこともありますよ。」

 

ネギと仗助がそういうと、ノーヴェはむっと顔をしかめた。

 

 

 

この時、ノーヴェが仗助の事を知っていたら、この後起こった事にはならなかっただろう。

 

だが、起こってしまった事を後悔しても、仕方がない事だろう。

 

 

 

「何だよ!変わってるのは、アンタの頭も一緒だろうが!何だよその髪型!」

「ノーヴェ!」

「えッ」

 

チンクはノーヴェに注意をするが、ネギは今の一言に仗助の先ほどの会話を思い出し、嫌な予感がした。恐る恐る仗助の方を見ると―――

 

 

 

プッツーーーーーン

 

 

 

普段の温厚で人懐っこい雰囲気がなくなり、まるで封印を解かれた大魔神のごとく怒りを露わにした仗助が、そこにいた!

 

「じょ、仗助さん………!?」

「おいてめぇッ………今、オレのこの髪の事、なんつったゴラァッ!!」

「え!?」「何………!?」

 

仗助のただならぬ怒りにネギは完全に怯え、チンクとノーヴェは目を白黒させた。

瞬間、仗助の背後から『スタンドの腕』が出現、ノーヴェに向けて拳を打ち出した!

 

「!?」

 

ノーヴェとチンクは咄嗟にバックステップでそれ避けると、仗助は意外そうな顔になった。

 

「コイツ………スタンド使いだったのか……!」

「ほぉーう、てめぇスタンド使いかぁー?だが関係ねーぜ……オレのこの髪を『けなして』ムカつかせたヤローは、誰だろうと許さねぇーぜぇー………!」

 

なんかヤバい。ノーヴェが警戒をしていると、仗助の身体からスタンドの全身が飛び出した。

力強い印象を持つ筋肉質な身体にメタリックブルーのプロテクターを身につけたようなデザインで、兜の頭頂部や肩などのいたるところにハートマークがデザインされ、首から肩にかけて『動力パイプ』らしきものが六本つながっているスタンドだ!

 

「『クレイジー・ダイヤモンド』ォオッ!!」

ドギャンッ

「うおおおお!!??」

 

クレイジー・ダイヤモンドの拳が連続でノーヴェに迫った!ノーヴェはぎりぎりで避けると両の拳は壁をぶち抜いた!

 

「クッソ!」

 

仗助との距離を取ったノーヴェは悪態をつきながら懐を探る、しかし、すぐにあっ、と声を出した。

 

(そー言えば、『ジェットエッジ』はギンガに預けたままだった………ヤッベー!)

 

自身の『得物』がないことに気が付き、仗助の『クレイジー・ダイヤモンド』に対抗できうる手段がない事に焦りを覚える。目の前には、怒りの形相の仗助が迫っていた。

 

「クッ………『逃げる!』」ダッ

「あ、コラ待ちやがれッ!!」

 

仕方なく、踵を返して逃げ出すノーヴェと、それを追いかける仗助。

 

「てめぇ!『学校の廊下は走らない』って教わらなかったのか!!」

「アンタだって走ってるじゃないか!?」

「オメーは『おもひでぽろぽろ』を観たことがねぇのかぁーーーッ!!」

 

2人はそんなやりとりをしながら、その場を走り去ってしまった。

 

「「………」」

 

取り残されたネギとチンクは、数秒唖然としていたが、はっと気づいて追いかける事にした。

 

「………あれ?ノーヴェとチンク姉、こっちにきたッスよね?」

「そのはずだけど………」

「どこ行っちゃったんだろう……ノーヴェはともかくチンク姉まで……?」

 

 

 

 

 

#20/田中 かなた(ハイ・ステッパー) ②

 

 

 

 

 

(―――なんて事があって校内を逃げ回っていたら、さっきの奴にぶつかってスタンド使いに襲われて、現在に至るわけなんだが………)

 

そして現在、14時59分

赤い髪の少女・ノーヴェは、今に至るまでを回想しながら、現状を再確認した。

 

現在、鎧のようなスタンドを身にまとったメイドを仗助と徐倫が押さえつけ、教室の入り口で木乃香と、追いついたらしいネギとチンクが何事かと覗き込んで驚いており、ノーヴェは困惑するかなたの後ろで尻餅をついていた。

メイド、美佳はスタンドを解除すると高くジャンプをして仗助たちから離れ、教室に並ぶ机の上に着地をした。

 

「なんて跳躍力!ただのお付のメイドとは思えない身体能力だ!」

 

徐倫が美佳の身体能力に舌を巻いていると、美佳は仗助たちを睨む。先ほどまでのおっとりした雰囲気は微塵もない、鋭い眼光だ。

 

「………『スタンド使いはぁ~』」

「?」

 

不意に、美佳が腰に左手を当てたポーズで口を開いた。

 

「『スタンド使いと、無意識のうちに引かれあう』………って、聞いたこと、ありますかぁ~?最近、麻帆良で『矢』を使ってスタンド使いを増やしている人がいるみたいでぇ~、私も仕事がしづらくて困りますぅ~………」

「そのしゃべり方よぉー、()でやってんのか?それとも演技か?この際どっちでもいいがよぉー………」

「何か、演技っぽくはないな………やれやれだわ……「田中かなた」()()()()()、メイドの方がスタンド使いだったとは………」

 

少し間延びした話し方をする美佳に対して、少しあきれ気味に言う仗助と徐倫。

 

(メイドさんが、スタンド使い………!?)

(ノーヴェを狙ったというのか?しかし、何故………!?)

「え?なにー?何がおこっとるのー………?」

 

一方、ネギとチンクは美佳に警戒とノーヴェを襲った事に疑問を抱き、木乃香は何が起きているのか分らない様子で、キョロキョロと美佳や仗助たちを見ていた。すると、同じように困惑していたかなたが、口を開いた。

 

「な、何が起こっているの………!?美佳さんや空条さんから()()()()()()()()()………!?」

「!?」「……え?」

 

突然の言葉に、木乃香以外の全員が反応を示した。

 

「何!?お前も………!?」

「かなた様……?いつの間にスタンド使いに……?」

「まさか………スタンド使いは()()()()………!?」

「え?え?」

 

戸惑うかなたに、各々が声を出す。すると、美佳はストン、と床に降りた。

 

「驚きましたねぇ~………今まで()()()()使()()()()()()()()はずなのにぃ~……まあいいです………」

 

そういうと、美佳はスタンドを発現させた。先ほどは突然の事でよく見えなかったが、今度は細部のデザインを見ることができた。

いぶし銀色の鉄板を(リベット)で留めた、本体の頭部を覆い隠す頭巾のような兜には1つ目を思わせる青いレンズがついており、美佳の顔がそこから覗いていた。肩から先を武骨な甲冑で覆い(よく見ると肩に『EotU』という赤いエンブレムらしき物が見える)肘から先は地面に着く程巨大な腕になっている。手の甲はサーフボードのような形の『盾』になっており、指は筒形の銃身だ。

 

「ひい、ふう、みい………7人とかなり多いいですがぁ~、我がスタンド、『エッジ・オブ・ジ・アンノウン』で()()()()()()()、何の問題もないですからぁ~~」

「おいおいおいおいおいおい、何か物騒な事言ってやがるぜぇー、このお方はよぉー…!」

 

相変わらずおっとりとした口調で、物騒な事を口にする美佳。

 

「7人って……『このかさんも』入っているじゃないですか!?み、………美佳さん………!?」

「お前ら、こっちに集まれ……武器がミサイルってのは厄介だなぁ~~……物が破壊されていない所を見るに、人体にのみ作用があるのか?仗助おじさんよォー、この状況どう切り抜けるよ……?」

 

徐倫が、戸惑うネギやかなた達を自分たちの元に集める。仗助は徐倫の言葉に対して、不敵な笑みを浮かべた。

 

「『切り抜ける』?切り抜けるってぇのは、ちょっと違うぜぇー?」

「「「?」」」

 

すると、仗助は『クレイジー・ダイヤモンド』の拳を振り上げ、

 

「ドララララァアーーーッ!!」

ドガァアンッ

「え!?」

 

拳の連打(ラッシュ)で床をぶち抜いて大穴を開けると、そのままネギたちを連れて下の階に降りて、というか『落ちていった!』

 

()()()()()()()……!」

「「「わーーーッ!?」」」

「だと思った………」

 

突然のことで悲鳴を上げるネギたちに対し、徐倫はやれやれと呆れ気味であった。困惑する木乃香やかなたを引き寄せて着地をすると、頭上で走る足音が聞こえた。美佳が追いかけてきたのだ。

 

「逃がしませんよぉ~!」

「駄目だ!追ってくる!!」

 

美佳が仗助の開けた大穴に飛び込もうとしている事を察知して、かなたが声を上げた。しかし、仗助は冷静であった。

 

「……いや、()()()()()()()()()()()()()ぜ………『遠回り』になるからよぉー……今のうちに逃げるぞ。」

「え?!」「?」

 

仗助がそう言った瞬間、美佳が大穴に飛び込んでくる。しかしその時、ネギ達にとって信じられない出来事が起こった!

 

ドシュッ

「!?」

ドシュドシュッ

「何!?」

 

なんと、クレイジー・ダイヤモンドによって破壊された床の残骸が次々に宙に浮かび、大穴の所に戻っていくではないか!そして、まるでビデオの巻き戻しの如く元の場所にくっついていき、美佳はそれの戻る力に押し返された!

 

「こ………これは………!! ??」

 

押し返された美佳は驚きの声を上げるうちに、仗助によって開けられた穴は、()()()()()()()()()()

 

「ゆ、床が!まるで『()()()()()()()()()()()()()()()()()………』直った……!?これが、あの人のスタンド能力………!!」

 

「オレの『クレイジー・ダイヤモンド』はよぉー、『破壊されたものを直す』能力なんだぜぇー!」

「は、破壊した床を()()()、……逃走ルートを作るとは………」

 

一方、下の階に逃げた仗助は、ネギたちを連れて廊下に出た。穴が開いていない以上美佳は遠回りしなければいけないので、今の内に校舎から出ようという考えであった。

 

美佳は短く舌打ちをすると、校舎を出ると予想して駆けだした。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

15時05分

 

「………なあかなたちゃん………これ、一体なにがおこっとるのー…?」

「ぼ、ボクにも何がなんだか………」

「今は説明できません………とにかく、今は逃げる事が最優先です………!」

 

昇降口に向って走りながら、このかとかなたにそう答えるネギ。一方の仗助は、逃げながら美佳の目的について思考していた。

 

(ノーヴェが田中に『ソソウ』したから………ってぇのは、たぶん違うな……それなら、オレ達や田中自身を襲う理由にはならないもんなぁー………)

 

ちらりと、後ろを走るかなたを見る。

 

(あのメイド……一体何が目的だ……?)

「あ!ノーヴェとチンク姉、こんな所にいたッス!」

「もー、探したよ2人ともー!」

 

下駄箱の前まで来たとき、目の前に赤い髪を束ねた少女と水色のショートカットの少女が、ノーヴェの姿を見て声を上げた。

 

「ウ、ウェンディに、セイン……!?」

「もー勝手に行っちゃだめッスよー!!」

「フェイトさんも心配していたし、早く戻ろうよー!」

「すまん、今それどころじゃあ………」

 

ウェンディとセインと言うらしい2人にチンクがそう言うが、その時、昇降口の方で着地音が聞こえた。見れば、『エッジ・オブ・ジ・アンノウン』を纏った美佳が、静かに近づいてきていた。

 

「あいつ……もう………!?」

「あれ、あの人………?」

 

仗助たちが息を呑み、ウェンディたち2人がきょとんとしていると、美佳は『エッジ・オブ・ジ・アンノウン』の指先を向け、ミサイルを発射した!

 

「!?」

「マズイ……!?」

 

ノーヴェはミサイルを避けようとしたが、背後の木乃香たちに気づいた。このまま避けてしまっては彼女たちに直撃してしまう!そう思うと動くわけにもいかず、その場に固まってしまうノーヴェ。瞬間―――

 

 

 

 

 

「危ないッスノーヴェ!!」

ドンッ

「え!?」

 

ノーヴェはウェンディに突き飛ばされ、横に吹き飛ばされる。

 

ズドォオオオンッ

「ぅおッ………」

「ウェンディ!!」

 

瞬間、ウェンディの身体にミサイルが着弾して爆発、ウェンディは大きく吹き飛んでしまった!

 

「ヤロオ~~~!」

「向って来るんですかぁ~?まあ、私としてはぁ、大助かりですけれども~~~」

「こ、コイツ………!」

 

セインが気絶したウェンディに駆け寄り、怒りの声を上げるノーヴェに対し、美佳は何て事ないように返事をする。何処と無く天然っぽい喋り方だというのに、その言動は危機感を与えた。

 

(何で?なんでこんな事になっているの………?)

 

向かって行こうとするノーヴェをチンクが止める中、かなたは混乱する頭で何とか状況を理解しようとしていた。いきなり赤毛の少女にぶつかったかと思えば、メイドの美佳や徐倫が奇妙な幽霊のようなもので戦い始めた。これだけわけの分からない状況では、混乱しない方がおかしい。

 

「………大体、そもそもの原因は母さんじゃないか………ボクはこんな学校に通いたかった訳じゃないのに………もうヤダ………なんなの、この訳の分からない状況………」

「かなたちゃん………?」

 

俯いてぶつぶつとつぶやき始めるかなたに、木乃香は少し心配になり肩に手を置いた。

 

この時、スタンド使いではない木乃香は気づいていなかったが、美佳はちらりと見えたそれに気づいていた。かなたの両足に、『赤いオーラのようなもの』が集まり始めていたのだ。

 

「(かなた様のスタンドが目覚めようとしている……?ここでスタンドに目覚められては、少し厄介ですねぇ~………)今すぐ消させていただきますぅ~!」

 

美佳はそう言うと、10本の指先を伸ばして狙いを付けた。指先からはミサイルの先端(ご丁寧にサメの顔付き)が装填された。

 

「!?やばい……!」

「こんなの………こんな所………!」

 

ノーヴェが危機感を覚える中、かなたはこの状況に混乱し、涙目になって顔を上げて、叫んだ。

 

 

 

 

 

「もう逃げ出してやりたいィイイイイイイイイイイイイッ!!」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「それにしても承太郎さん、いつの間に帰ってきたんだろうねー?」

「さあなー?」

「元々、徐倫にもあまり話さない人でござるからなー………」

 

15時07分、昇降口に向かう階段を上るまき絵と千雨、楓は、話していた。承太郎から急に、学園長室に来るように呼ばれたのだ。

 

「徐倫は部活の話し合いあるって言ってたから、来れないとは言ってあるけど………」

 

千雨がそう呟いたその時、

 

 

 

 

 

ドォオオンッ

 

「「「!?」」」

 

突然、昇降口が大きく()()()!千雨たちが驚いていると、もうもうと立ち込める煙の中から1つの影が飛び出してきた!

 

「う、お、お、お、お、おおおおおおおおお!!??」

「きゃぁあああああああああああああ!?」

 

千雨たちの目の前に転がり込んできたのは、仗助と赤毛の少女・ノーヴェ、そして、C組の田中かなたであった。

 

「痛っててて………いきなり後ろから強い衝撃受けて、そのまま吹っ飛んじまったぜ………」

「仗助さん!?」

「いったい何が………む?」

 

その時、千雨はかなたの両脚に『まとわれているもの』を見た。かなたの両脚には、『赤いロングブーツ』のようなデザインのスタンドが、まとわれていたのだ!

 

丸みを帯びた赤い装甲で覆われており、ところどころに銀色の部品も見える。膝には楯のような形状の膝当てが付き、そして脹脛のあたりには、大きめのリボルバーのシリンダーと撃鉄(ハンマー)らしきパーツが見えていた。

 

「こいつ……スタンド使いか!?」

「え………?何これ………!?」

 

千雨に指摘されて、かなたは自身の脚に装着された、時折透ける赤いブーツに気づいた。

 

「透けている………何だ、このブーツのようなものは……!?」

「その様子だと、最近スタンドに目覚めた()()か………」

「仗助さーん!」

 

自身の両足のスタンドにかなたが困惑していると、煙の中から杖にまたがったネギが飛び出してきた。よく見ると、後ろに木乃香とチンクを抱えた徐倫もいた。

 

「あ、ネギ君に徐倫!」

「ネギ!さっきの2人は……?」

 

そばに着地したネギに聞く仗助。ネギが言いよどんでいると、木乃香が困惑と興奮の混ざったような様子で答えた。

 

「あ、あんなー、かなたちゃんが吹っ飛んで驚いとったら、水色の髪の人が、赤い髪の娘持って、床に()()()()()()………!」

「沈んだ……?」

「セインの『固有能力(インヒューレント・スキル)』だ。無機物に潜って移動できる……」

 

仗助が首をかしげていると、ノーヴェが説明した。いまだに何が起こっているのか分かっていない木乃香が徐倫やネギを問いただそうとしたが、その時、煙が晴れてガラスが割れて戸が破損した昇降口から、美佳が歩いてきた。

 

「けほっ、も~、びっくりしましたぁ~……かなた様ったら、いきなり跳び出していってしまうんですもの~………」

「美佳さん……!」

 

スタンド『エッジ・オブ・ジ・アンノウン』をまとった美佳に警戒する千雨たち。美佳が再び指先にミサイルを装填した時、仗助はかなたを立ち上がらせた。

 

「おい、お前のスタンド、さっきみたく跳べないのか!?」

「え!?でも、これって一体、何なのか………!?」

「そこからか……仕方ねえ、『LESSON1』だ!こいつの名称()は『スタンド』!お前の具現化した生命エネルギーの(ヴィジョン)だ!つまり、お前自身の意思で動かすんだ!」

 

『クレイジー・ダイヤモンド』を出した仗助が説明をしたその時、美佳は『エッジ・オブ・ジ・アンノウン』のミサイルを発射!仗助たちに迫った!

 

()()()()()()()()!!ドラララララララァアッ!!」

 

仗助は地面の石畳を『クレイジー・ダイヤモンド』で砕くと、それを『直して』ミサイルを防御!ミサイルは石畳の『防壁』に阻まれて爆発した!

 

「い、石畳を直して防御を!?」

「やはり、厄介ですねぇ~、あなたの能力(スタンド)は………」

 

美佳はそういうと、今度は接近戦に持ち込もうと一気に駆け出す!

 

「ボク自身が……動かす………」

 

一方のかなたは、仗助に言われたことを復唱し、自身の脚に装備されたブーツに意識を集中させた。すると、ふくらはぎの撃鉄がカチン、と起き上がった。

 

「ん?撃鉄が……(そういえば、あのデバイスのカードリッジみてーなパーツ……それに、さっきの跳躍力………もしかして………!?)」

 

撃鉄が起き上がったことに気が付いたノーヴェは、先ほどのかなたの跳躍力を思い出して、その能力に気が付いた。咄嗟にかなたの腕に捕まった時、撃鉄が作動した。

 

 

 

ドンッ

 

 

 

『!?』

 

瞬間、耳をつんざくような爆発音と共に、かなたとノーヴェは『跳び上がった』!!跳び上がった際に地面は少し陥没しており、その威力を物語っていた。

 

「かなたさまーーー!?」

 

跳んで行ったかなたに驚いて、思わず美佳が叫ぶ。

 

「うわ!?わ?わわわ!?」

 

一方、空中のかなた自身も、その跳躍力に驚き、慌てていた。腕を掴むノーヴェも離さないようにしながら、その能力を理解した。

 

「ま、間違いない………こいつのスタンド………爆発的な瞬発力を生み出して、驚異的なジャンプ力を………!」

「そ、それはいいんだけど………これからどうしよう………?」

「………それが問題だな………」

 

とりあえず美佳から離れることはできたが、空を飛ぶことのできない2人が重力に逆らう術を持つ訳もなく、直ぐに自由落下が始まった。そして、着地が予測される地点には教会があった………

 

 

 

 

 

←to be continued…

 




20話です。
・ナンバーズ、リメイク前より早く登場。今回はノーヴェとチンクがメインですが、後から他の娘も出番があります。

・元からスタンド使いだった美佳さんと、最近スタンド使いになったかなた。『エッジ・オブ・ジ・アンノウン』は名前の響きがお気に入り。

・かなたのスタンドはシンプルに脚力強化。爆発力を付加して威力を上げる感じです。

では、次回をお楽しみに!


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#21/田中 かなた(ハイ・ステッパー) ③

今回が、たぶん年内最後の投稿になります。


15時10分

 

「おい美空(みそら)!ココネと遊んでねーでさっさと掃除終わらせろ!」

 

礼拝堂を掃除していた、赤毛を肩で切りそろえた修道女(シスター)は、同じく赤毛をショートカットにしたシスター・春日 美空に怒鳴る。後ろでは、黒い肌に大きな目の少女ココネが「怒らレタ……」と呟いていた。

 

「へーい。まったく、パンツ姐さんは口調キツイのにお堅いんだから………」

「誰がパンツ姐さんだ!苗字で呼ぶなっつったろ!」

 

気のない返事をする美空に、パンツ姐さんこと『ホット・パンツ』は再び怒鳴った。名前の事で言われることが多いらしく、なんでこんな変な苗字を名乗るようになったのか、先祖に小一時間問い詰めたいとは彼女の弁である。

 

「別にそんなに怒鳴んなくても………」

「シャークティが留守の間は、オレがお前ら見てろって言われてんだよ。ったく、『プッチ神父様』いた時は、そこまでフマジメじゃなかったろお前………」

「いやー、プッチ神父って何考えてるか分かんなくてコワイ人だったし………解放されたってゆーか………」

「……神父サマ、どこいっちゃったんダロ………」

 

ココネのつぶやきに、2人ははっとした。プッチ神父は2年前までこの教会に務めていたのだが、ある日突然、行方不明となってしまっていた。

 

「あー、ココネは神父に妙に懐いていたッスからねー………」

「あの人なら大丈夫だろ。ちょっと故郷に里帰りするって言ってたし、きっと帰ってくるって。」

「………ウン。」

 

ホット・パンツに諭されたココネは、小さく頷いた。その時だ。

 

 

 

グワッシャァアンッ

 

 

 

「うえぇ!?」

「何だ!?」

 

突然、礼拝堂の大きなステンドグラスが割れて、2人の少女が飛び込んできた!3人のシスターが唖然とする中、赤い髪の少女がうーんと唸った。

 

「………あー、すんません、懺悔したい事あるんですけど………懺悔室ってどっちですか?」

「まずはオレたちに謝れ。」

 

赤毛の少女・ノーヴェに、ホット・パンツがツッコミを入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

#21/田中 かなた(ハイ・ステッパー)③

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

15時11分

 

「結構飛んでいきましたねぇ~………30m位は行ったんじゃぁないですか~?」

 

跳んで行ったかなたたちが教会のステンドグラスを突き破ったのを見た美佳は、感心したように呟いた。仕方なく、かなたは後回しにして仗助たちの方から『消す』ことにしようと振り返ったが、

 

「………あれ?」

 

いつの間にか、仗助や千雨たちの姿がなかった。慌てて周囲を見渡すと、宙を飛ぶ仗助と徐倫、そして杖で飛ぶネギ、チンク、木乃香の姿があった。

 

「くっ………ダメですね~、既にミサイルの射程距離外です………」

 

美佳は『エッジ・オブ・ジ・アンノウン』の指先を構えるが、仗助たちとの距離が遠く、ミサイルが届かないことを知った。仕方なくスタンドを戻すと、かなたたちのいる教会まで走り出した。

 

 

 

 

 

「………行ったか?」

『フム、モウ大丈夫ダロウ。』

 

美佳が去って数秒後、石畳の一部が盛り上がったかと思うと『緑色に変わっていき』、その下から千雨たち3人が出てきた。『グロウン・キッド』の能力で隠れていたようであった。

 

「咄嗟に隠れちゃったけど、徐倫たちは大丈夫かなぁー?」

「まあ、大丈夫だろ。」

『フム、シカシ、毎度ノコト思うノダガ、私ト楓ノ『能力』ハ、相性ガ良イナ。』

 

やれやれと肩を下す千雨に対し、布と一体化していた『グロウン・キッド』が感心したように言った。

 

「一応、承太郎殿に伝えるべきでござろう。学園長室へ向かおう。」

「だな。」

 

3人は、学園長室へと歩き始めた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

15時12分

 

「おーい、ノーヴェー!」

「あ、チンク姉たち………」

「げ、ネギ先生………」

 

ノーヴェが振り返ると、割れたステンドグラスの向こうから仗助たちがこちらに向かってくるのが見えた。仗助とネギが着地をして杖から降りると、仗助はクレイジー・ダイヤモンドでステンドグラスを修復した。

 

「!?ス、ステンドグラスが………!?」

「あんたたち、杖に乗ってなかったみたいだけど、どうやって………?」

 

ホット・パンツがステンドグラスが直った事に驚く中、ノーヴェが疑問に思ったことを聞いた。すると徐倫が、ノーヴェのジーンズから伸びる2mほどのロープを指さした。

 

「あれ、このロープ、いつの間に………?」

「こんな事もあろうかと、アンタのジーンズにロープの切れ端を結び付けておいたのよ。切れ端はクレイジー・ダイヤモンドで直すことができるわ………見失っても、追いつけるようにね。」

 

成程、と納得をするノーヴェ。

 

「あのー、このかサン?一体全体なにがどーなってんスかこれ?」

「う、うんー、それが、うちにもさっぱり………?」

 

何が起きているのか理解できない美空と木乃香がひそひそと話す。後ろでココネが「魔力は感じナカッタ………」と小さく呟いたが、だれも聞こえていない。その時、携帯電話の着信音が鳴った。徐倫が懐から携帯電話を取り出してみると、相手はスバルからであった。

 

「もしもし、スバル?」

[あ、空条さん?セインから聞いたんだけど、そっちにチンクとノーヴェいる!?]

「ああ、ちょいと厄介な事に巻き込まれてな………さっきの2人、大丈夫か?」

 

心配そうなスバルに答える徐倫。すると、電話口から不思議そうなスバルの声がした。

 

[セインもウェンディもケガとかはないけど………何か変なんだ………]

「変?」

[うん………セインの話だと、『スタンド使いに襲われた』らしいんだけど―――]

 

 

 

「………何だと………ッ!?」

 

スバルからの電話を聞いた徐倫は、思わず聞き返した。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

15時14分

 

()()()()()()()()………?」

 

麻帆良学園の学園長室でウェンディを診ていたセインとフェイトは、目覚めたウェンディの言った事に耳を疑った。

 

「ほ、本当に、何も覚えていないの………!?」

「うん、セインと一緒にいなくなったノーヴェとチンク姉を探してて、気づいたらここで寝てたッス。メイドさんなんて、()()()()()()()………?」

 

きょとんとして、フェイトたちに答えるウェンディ。フェイトとセインは、顔を見合わせて首を傾げていた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

15時16分

 

「何だと………!?」

 

電話を切った徐倫が、ウェンディが何も覚えていないことを知らせると、仗助とチンクが息を呑んだ。かなたが声を出す。

 

「も、もしかして……さっき倒れた時に、頭を打ったせいなんじゃあ……?」

「いや、()()()()はそんな『ヤワ』なつくりはしてねえ………ウェンディはアホな奴だけど、あんな目にあってそんな冗談を言うようなバカじゃあねー………いったい何があったんだ……?」

「何気にヒドイ言いようですね?」

 

なかなかヒドイ事を言うノーヴェにネギがツッコミを入れる。

 

「まさか………そういう事なのか………?」

 

その時、少し考えていた徐倫がある仮説を立てた。

 

「そのウェンディってヤツの状況と、私の知っている『情報』を合わせると………あのメイドのスタンド能力に、見当がついた………」

「何だと?」

 

全員の視線が、徐倫に集まった。

 

「あのスタンドのミサイルは、最初に思った通り、『人体にのみ』作用するんだ………ただし、()()()()()()()()()()()()()()………『記憶』だ………『記憶を()()()()()スタンド』なんだ………!」

「!」

「き、記憶を………!?」

「吹き飛ばす………!?」

 

息を呑むネギとかなた、そしてノーヴェ。しかし、仗助は納得したように頷いた。

 

「………なるほどな、あのメイドが「消す」って言っていたのは、オレたちの記憶を消すって意味だったのか………自分がスタンド使いだって知られたくなかったって事か………」

 

ネギやチンクは仗助の推測を聞いて、なんとなく納得をした。すると、今まで何のことか分かっていなかった木乃香が、おずおずと手を挙げた。

 

「あのー、さっきから、スタンドとかなんとかよー分らんのやけど………さっき徐倫ちゃん、『かなたちゃんじゃなくてメイドさんの方がスタンド使いだった』って言うてなかった?」

「え?」

 

木乃香の指摘に、全員が「あ!」と声を上げた。

 

「もしかして徐倫ちゃん、かなたちゃんがスタンド使いやって、知っとったん?」

「………まあな。実は、かなたがスタンド使いかどうか、調べてほしいと頼まれてな………」

 

徐倫の告白に、かなたはえ、と戸惑った。

 

「も、もしかして空条さん………『あの事』も知ってるの………?」

「……ああ。がっつり聞いている………」

「あぅう………」

 

ひきつった顔の徐倫に肯定されて、かなたは涙目でうつむいた。何故か、隣のノーヴェも、顔を赤くしている。

 

「あの事?」

「あの事って、どの事?」

 

聞いてくるネギと木乃香に対し、徐倫は話そうかどうか迷い、かなたと目を合わせた。かなたが小さく頷いたのをみて、徐倫は「やれやれ」とため息をついた。

 

「ま、木乃香も無関係ってわけじゃないし、こんだけ巻き込んじゃったからね………いいわ、話してあげる………」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

15時20分

 

「かなた様………直ぐに記憶を消してあげますからね~………」

 

教会が目視できる距離となり、美佳は走る速度を速めた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

15時20分

 

「………なん、だと………!?」

 

礼拝堂は、静まり返っていた。ネギや木乃香は目が点になり、チンクと仗助は訳が分からないとばかりにわなわなと困惑する。告げた徐倫はやれやれと呆れ気味でかなたは耳まで真っ赤になり、ノーヴェも微妙な表情だ。

 

「お、おいネギ!今の聞いたかよ!?スタンドも月までブッ飛ぶこの衝撃…!今、オレの大姪っ子が、とんでもねー事を言ったぞ!?」

「い、言いましたね……とんでもない事を言いました……!」

 

混乱しながら話す2人。おずおずと美空が手を挙げた。

 

「あのー、徐倫サン?よく聞こえなかったんスけどもう1回言ってもらっていいっスか?」

 

美空に賛同するように木乃香とチンクがうんうんと頷く。徐倫はふう、とため息を付いた。

 

「………やれやれだわ。良いわ。何度も言ってあげる………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「田中かなた、コイツは『()』だって言ったのよ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『………………えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!??!?!?』

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「『竹取物語』……って、ありますよね?」

 

徐倫と対面した刹那は、そう切り出した。

 

「竹取物語です。あの話で、かぐや姫は自分に求婚してきた5人の男性に、自分の言った品物を持ってこれた人と結婚すると、条件を出しました………」

 

その話は徐倫も知っていた。中学1年生の『国語』で習った内容だ。

品物はそれぞれ「仏の御石の鉢」、「蓬莱の玉の枝」、「火鼠の裘」、「龍の首の珠」、「燕の産んだ子安貝」、だったはずだ。

 

「ある者は偽物をつかまされ、ある者はわざわざ偽物を作り、またある者は大けがを負いました。かぐや姫は5人の誰とも結婚したくないので、無理難題を押し付けたのでしょうね………」

「………あー、そうだな。その気がないのに、その気にさせる『悪女』………って感じだよなぁ~~~………つーか、」

 

何故かイキナリ「竹取物語」の話をし始めた刹那に、徐倫が待ったをかけ、見せられた『田中かなた』の写真を突き付けた。

 

「私は!「何でこいつが女装して女子校通ってんだ?」って聞いてんのよ!かぐや姫の話なんか、この際どーでもいいのよ!」

「いえ、ですから………この生徒も「無理難題を押し付けられた男性」、という事なんです………」

「………何?」

 

刹那がそう言うと、徐倫は怪訝な顔になった。

 

「実は彼、木乃香お嬢様の「婚約者候補」の1人でして………本名は『篤緒 奏汰(あつお そうた)』さんというのですが………それなりに名の知れた魔法使いの家系の人でして………」

「婚約者って………そーいやーこのかのヤツ、学園長がお見合いを無理やり進めてくるーって、よく愚痴ってたなぁ………」

 

明日菜やのどか達に話しているのを聞いたのを思い出して、徐倫が言った。

 

「他にも何人か魔法使いの家系の人が自分の息子を、と申し込んできたので、学園長はある『条件』を突き付けたのです。」

「条件?」

「それは………」

 

 

 

 

 

「『女装して3年間女子中等部に通い、『男』とバレなかったら結婚していいよ』、と………」

「何考えてんだ、あのジジイ………」

 

思わず突っ込む徐倫。刹那も、遠い目をしていた。

 

「案の定、大半の立候補者は辞退をしたのですが、」

「コイツの親はその条件をのんだ、って訳か………けど、普通スグにバレちまうもんじゃねーのか?」

「そうなんですよ。学園長は「魔法の使用は禁止」と条件したにも関わらず、彼は2年間もの間、誰にもバレずに学園生活を送っているんです………何度か魔法を使っていないかの調査も行われたのですが、魔法の使用は確認されていません………」

 

そこまで聞いた徐倫は、刹那が何故、奏汰がスタンド使いであるかを疑った理由を察した。

 

「なるほどね、魔法を使っていないのなら、スタンド能力の可能性が高い、って言いたい訳ね……」

「はい。残念ながら、魔法先生や生徒の中にスタンド使いはいませんので………」

 

少し申し訳ない様子の刹那。徐倫は田中かなたこと篤緒奏汰の写真を持ってひらひらとさせた。

 

「………やれやれ、わかったわ、調べてあげる。」

「ありがとうございます。あ、あくまで今回の事は、秘密裏にお願いします。」

 

はいはい、と徐倫は返事をして部屋を後にした。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

15時25分

 

「―――とまあ、そんな訳だ。」

『………』

「お前も苦労してんだな………」

 

徐倫の話を聞いて、ぽかんとする一同。仗助はかなた、もとい奏汰に同情した。

 

「あー、………とりあえず、学園長(おじいちゃん)には後でローキック入れるとして………」

「ローキック!?」

「結構アグレッシブだなお前………」

「その事とあのメイドさんが追ってくるのとで、何で記憶を消す能力やて、分かったん?」

 

木乃香が徐倫に聞くと、徐倫は答えた。

 

「考えてもみて?たとえ男だってバレたとしてもよー、『()()()()()()()()()()()()()()()()()()』なのよ?」

「「「あ!」」」

「なるほど………それであいつは、オレたちの記憶を消そうと躍起になってる訳か………」

 

説明を受けて納得をする一同。すると、奏汰はある事に気が付いた。

 

「………え?ちょっと待って………という事は………ボク何回も男ってバレたのに、忘れさせられていたっていう事ーーーーーーーーーー!?」

 

奏汰の叫びに、言われてみれば、と全員が気づいた。そうでなければ、2年間も女装して女子校になんて通えないだろう。

ついに奏汰は、おいおいと泣き崩れてしまった。

 

「もうヤダよ………母さんが無理やり決めちゃうし………父さんは父さんで婿養子だからそこまでの権限ないから謝るだけだし………この2年間でどれだけ心が折れそうになったか………」

「あーもー、そんなに泣くなって………」

 

泣き出した奏汰を慰める仗助。ふと、木乃香はノーヴェに聞きたいことがあった。

 

「ほんで、ノーヴェちゃん、やったっけ?えーと、かなたちゃん、いや、奏汰くん?が、その、男の子やって知ったのって、やっぱりさっきスカートの下、見たときなん………?」

 

木乃香に聞かれたノーヴェは、微妙な表情となり、

 

「いや、見たって言うか………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「顔面に、こう、『むにゅ』っと………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神よ(ジーザス)………

 

涙目になったノーヴェをチンクと木乃香が慰める中、ホット・パンツは天を仰いだ………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

15時30分

 

教会の前にたどり着いた美佳は、『エッジ・オブ・ジ・アンノウン』を装備した。

 

「さーてと、さっさと記憶を消さないとぉ………お給料、減っちゃいますからねぇ~………」

 

 

 

 

 

←to be continued…




21話です。
・ホット・パンツ登場。宗教繋がりで美空たちと絡めたいなーって思っていました。SBRの終盤では女らしくなってたけど、今作では初登場時からの男っぽい性格です。

・『エッジ・オブ・ジ・アンノウン』は、記憶を消し飛ばすスタンド。最初思いついた時には、かなり凶悪な能力だなぁ、と思いましたね。

・かなたは男の娘でした、というオチ。竹取物語の話しはじめる刹那は、ジョジョリオンの絵柄なイメージw

では、次回をお楽しみに!


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#22/田中 かなた(ハイ・ステッパー) ④

あけましておめでとうございます!

新年1発目にして、田中 かなた編ラストです!


15時31分

 

校舎の見取り図を片手に校舎の屋上に立っていたサルシッチャは、田中かなたが慌しく逃げている事を察知していた。

 

(……田中 かなたを探っていた『ソルとルナ』が、何度も標的(ターゲット)を見失ったので妙だと思い来てみたが………あの双子が、見失うなどあり得ない話なのだが………何やら厄介な事態のようだな………)

 

見取り図に展開させたスタンド『アンダー・ザ・レーダー』には、逃げるかなたや仗助たちの姿が映っていた。八角形の板にそれより一回り小さい透明の球体がはめ込まれており、コンパスの針のような足が四本生えた、機械的なデザインのスタンドだ。

 

(今ならば、我がスタンドの『地図上のものを自在に転移させることができる』能力で彼らを助ける事も出来るが………今は見ているだけだ。非情かもしれないが、まだ正体を晒す時ではないための判断だ………)

 

既に、『時空管理局』が動き、自分たち『スタンド使いを増やす者』の存在に気づかれている以上、派手な行動はできなかった。同時に、田中 かなたのスタンド能力を探るのに丁度いいと思っていた。

 

(しかしあのメイド、どこかで見たような気が……?)

「おい貴様………どうやってこの場所にいる……?」

 

不意に、サルシッチャは背後から声をかけられた。振り返ると、金髪を腰まで伸ばした小柄な女子中学生が、鋭い目つきでこちらを睨んでいた。

 

「そこは私お気に入りの『サボりスポット』だ……何者であろうと、そこに無断で居座ることは許さん………」

「微妙にカッコ悪いぞ…?」

 

サルシッチャの鋭い突っ込みに少女はぐ、とたじろぐが、すぐに立ち直った。

 

「安心しろ、言われずともすぐに立ち去る。無断で入って申し訳が」

「待て。」

 

サルシッチャはすぐに去ろうとしたが、少女の放つ冷たい殺気が突き刺さり、その場に凍り付いた。

 

「ッ………!?(なんだ、この殺気は……!?ケツの穴にツララを突っ込まれた気分だ……!!)」

「ただで返してもらえると思ったか侵入者?昼間で力が弱まっているとはいえ、貴様をとっ捕まえるなど、たやすいのだぞ………?」

 

少女は静かにそう言う。内心『冷や汗』ビッショリのサルシッチャは、この少女からただならぬ雰囲気に危機を感じ取り、直ぐにその場から転移した!

 

「!?………魔力も氣も無しに転移するとは………スタンド能力か………」

 

少女は消えたサルシッチャの気配をたどるが、既に校内から出ているようであった。

 

「まったく、スタンド使いの相手までしなければいけないとは………「ナギ」も、厄介な呪いをかけてくれたモノだ………」

 

少女はけだるげにそういうと、その場を立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

#22/田中 かなた(ハイ・ステッパー) ④

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

15時35分

 

ピリリリ、と、携帯電話の着信音が鳴り響いた。奏汰のものであった。

画面を見てみると、『美佳さん』と、発信者の名前と番号が表示されていた。

 

「メイドからか?」

「は、はい………」

「貸せ。」

 

仗助は奏汰から携帯電話を受け取ると、通話ボタンを押して電話に出る。

 

「メイドか? 」

[あら~?かなた様の携帯にかけたはずなんですけど~………さっきのリーゼントの人ですかぁ~………?]

「お前の能力と目的は割れているぜ………今どこだ?」

[皆さんのいる、教会の前ですぅ~………私は別に熱心な信者じゃないんですけどぉ、出来れば教会を傷つけるのは気が引けるのでぇ、さっさと出てきてくださ~い。]

 

美佳がそう言うと、仗助は少し考えて口を開いた。

 

「………オメーがそうやって記憶を消そうと迫ってくるってことはよぉー、オメーが消せる記憶には『限界』があるってことだよなぁー?」

[!?]

「『限界』………?」

 

電話口の美佳が言葉に詰まった所で、ネギが聞き返した。

 

「口調から少し焦っているようだしよぉー、急がないと、『一番消したい記憶』が消せなくなっちまうんじゃぁねーかぁー?」

[………]

「沈黙は、『肯定』とみなすぜぇー?つまりよぉー、」

 

ここで仗助は言葉を切って、奏汰とノーヴェを見た。

 

「オレたちが奏汰とノーヴェを守り切れれば、オメーの『負け』って事になるよなぁー!?」

[………勝ち負けはともかくぅ、私が任務(おしごと)を失敗しちゃうことにはなりますねぇ………]

「だったら、話は早い。」

 

仗助は口角を上げて、こう言った。

 

「教会の外に出てやるぜぇ?『ノーヴェと奏汰を置いて』なぁー………『ここを通りたければ、オレを倒すことだな!』ってやつだぜ………?」

「仗助さん!?」

[………結構な自信で………]

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

15時38分

 

仗助は教会の外に出て、美佳と距離を置いて立ち止まった。その様子を、ネギや徐倫たちは教会の窓から覗いていた。

 

「大丈夫かなぁ、仗助さんだけで………?」

「何か策があるみたいだったけど………」

 

仗助を心配するネギと奏汰であったが、徐倫は心配そうにしながらも励ました。

 

「安心しろ、本気の『クレイジー・ダイヤモンド』は、オヤジの『スタープラチナ』のガードを破るくらい強いんだ。あのメイドの腕は丈夫そうだがよぉー、おじさんが簡単に負けるとは思えないわ………」

 

徐倫はそう言いながら、窓の外の仗助を見た。

 

仗助はスタンドを出さないまま立ち、『エッジ・オブ・ジ・アンノウン』を装着した美佳と対峙していた。

 

「………あなたはぁ~、」

「ん?」

 

すると、美佳が不意に口を開いた。

 

「先ほど、私の記憶を消せるのには「限界がある」と言っていましたねぇ………正確に説明するとぉ、指先から発射されるミサイルが『1発』当たるとぉ、当たった地点から『1分』分の記憶が『消し飛ぶ』んですがぁ、1時間以上の記憶を消し飛ばすとぉ、何も覚えていない『廃人』になる可能性があるんですぅ~………」

「1発で1分の記憶が吹き飛ぶのか………1発でも当たればアウトだな………けど、何でわざわざ教えてくれんだ?」

 

表情を変えないまま、仗助はそう聞いた。

 

「どうせ『忘れてしまう』からですよ~………それとぉ~、」

「ん?」

「ついでに教えますけれどぉ~、実は私もかなた様と同様に偽名を名乗っていましてぇ~………本名は『レプラ・ハーパー』と申しますぅ~………裏稼業で『後始末屋』としてぇ、稼がせてもらっていますぅ~」

 

美佳、いや、レプラは相変わらずおっとりと間延びした口調で話す。

 

「スタンド………『エッジ・オブ・ジ・アンノウン』………!!あなたに1発当てればぁ、一連の事に関する記憶を消すのに十分なミサイルを連続で着弾させることができるでしょう………」

「………」

 

仗助とレプラはにらみ合い、じりじりと距離を近づけ―――

 

 

 

「『エッジ・オブ・ジ・アンノウン』ッ!!」

「『クレイジー・ダイヤモンド』ッ!!」

 

レプラは飛び上がると、眼下の仗助に向けてミサイルを発射!仗助は素早く石畳を破壊して修復、防御壁にしてミサイルを防いだ!

 

「はっ!?」

 

しかし、レプラはスタンドの右こぶしを振りかざし、仗助に向けて振り下ろさんとしていた!

 

「ドラァッ!」

ガギッ

「!?」

 

だが、仗助は『クレイジー・ダイヤモンド』で腕を弾くと、スタンドの巨大な腕は地面に激突した。

 

「ドラララララララァアッ!!」

ドガガガガッ

「ぐふっ………!」

 

そのまま仗助はスタンドの両拳で胴体を殴る!兜の固い感触があったもののいくつかの『ヘコミ』をつくり、レプラは後方に吹き飛んだ!

 

「良し!」

「やはり腕がデカい分、動きが大ぶりだな………あのミサイルに気を付ければ、近接パワー型の『クレイジー・ダイヤモンド』で負けはしない!」

 

教会で様子を見ていた徐倫が、吹っ飛んだレプラを見て言う。スタンドを視認できない木乃香たちも、仗助が優勢であることは分かった。

吹き飛んだレプラは地面に倒れていたが、仗助が追撃してくるのを見て、再度指先を伸ばそうとした。

 

「!?ぐっ…………」

 

しかし、いつの間にか『エッジ・オブ・ジ・アンノウン』の両手首に『ヒモ』が結ばれており、それはレプラの首に巻き付いていた!

 

「さ、さっきのラッシュの間にヒモを…!?か、構えたら首が絞まる………!!」

「よかったなー、自分で自分の首を絞めないでよぉー!!」

 

仗助はクレイジー・ダイヤモンドを出したまま走り、レプラにトドメを誘うとする!

 

「ま、マズい!負ける――――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――――なんていうと、思いましたかぁ~?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レプラが不敵な笑みを浮かべると、『エッジ・オブ・ジ・アンノウン』の両手甲が左右にガシュン、とスライドし、ビール缶を思わせる形状の大型ミサイルが左右5発ずつ、計10発発射された!

 

「何!?」

ズドドォオオオン

『!?』

 

不意を突かれた仗助は10発全てをその身に喰らってしまい、吹き飛んで倒れてしまった………!

 

「じょ、仗助さん………!」

 

ネギが悲痛な声を上げる中、レプラはスタンドを解除して巻かれたヒモを切り、教会に向けて歩き出す。

 

「大型のミサイルはぁ、1発で『5分間』の記憶を吹き飛ばす………つまりぃ、10発で「50分」分………記憶が消えていますぅ………追撃はぁ、もうできません………」

「くっ………」

 

徐倫は教会の外に出て、代わりに攻撃せんと構えた。レプラがスタンドを構えると同時に戦闘は始まるだろうと、すでに察していた。

 

「ん?50分………?」

 

ふと、ネギはレプラの言った『50分』という言葉が気になった。何か、50分前に何かあったような気がする………そう思って時計を確認しようとした、その時である。

 

「………」

「はっ!」

「あらぁ?」

 

仗助が立ち上がっていた。しかし、その目つきは鋭く、ただならぬ空気を発していた。

 

「お、おじさ―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドグシャァッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ブギャ!! ??」

「!?」

「え………?」

 

 

 

 

 

徐倫が声をかけるよりも早く、仗助はレプラの顔面に『クレイジー・ダイヤモンド』の拳を叩き込んだ!

レプラは訳が分からないまま、破壊されたメガネの破片も刺さった顔から血を吹き出したが、仗助の攻撃は止まらない!

 

「ドラララララララァアーーーッ!!」

ドゴドゴドゴバキドガッ

「ぶぎっ!?ぎ、ぐぎゃ………!?」

 

そのままラッシュを叩き込まれ、レプラは衝撃で吹き飛んでしまう!

 

「うおっ!?………っとお………」

「あーれーーー!?」

ドグシャァッ

 

ちょうど教会のドアの方に飛んできてしまったため、徐倫がレプラを避けると、レプラは教会の椅子につっこんで破壊した。

 

「ど………どうなって、るんですぅ………!?た、確かに、記憶を、消した、のにぃい………!? ?!」

 

レプラは顔面がぼこぼこになり、よろけながら起き上がると、疑問の声を出す。だが、教会の外の仗助は、まだ止まっていなかった。

 

ドガァッ

「きゃぁあ!?」

「どこ行きやがったァーーーッ!出てきやがれガキコラァーーーッ!!」

 

叫びながらドアを蹴破り、手当たり次第に周囲の家具を破壊し始める仗助。

 

「が、ガキ?いったい………、何の事だ…?」

「隠れてんじゃぁねーぞぉーッ!!」

 

その様子をみたホット・パンツは、首を傾げた。暴れまわる仗助に木乃香と美空が怯えているその時、時計を見たネギが、声を上げた。

 

「ああ!」

「どうしたん、ネギ君……?」

「い、今の時間は………『15時40分』過ぎ………つまり………その50分前は、『14時50分』………!」

「?それが一体どうした……?」

「「あ………」」

 

ネギの言っている事がわからない徐倫たちであったが、意味が分かった者が『2人いた』。ノーヴェとチンクだ。

 

()()()()()()()()()()()~~~()()()()()()()()()()()()()()()ッ!」

 

「ちょ、ちょうどその時間………ノーヴェさんが、仗助さんの髪形を『けなして』しまい……仗助さんが、激怒してしまったんです………」

『え?』

「………あー、そーいうこと………」

 

あっけにとられる一同であったが、徐倫には理解ができた。あのリーゼントヘアーに『誇り』を持っている仗助は、髪形をけなされると烈火のごとく怒り出すのだ。

 

「つまり、ちょうどその時の『ブチ切れ状態』のおじさんの時間にまで記憶が戻っちまったから、怒りのままに暴れている訳か………」

「何………ですってぇ………!?」

「ドララァアッ!!」

ドガァーンッ

 

それを聞いたレプラは、まさかの事態に信じられないという声を上げると、そのまま倒れた。

 

「だ……ダメですぅ………起き上がれそうに、ありません………あの人が起きた時にぃ、誤魔化せるようにと、『エッジ・オブ・ジ・アンノウン』を解除していたのが、『アダ』となりましたかぁ………」

 

力なく倒れたレプラを見て、奏汰とノーヴェはほっ、と安心をした。

 

「とりあえず、これで一件落着ですね………」

「せやなー………」

「あー、教会の備品どーしよコレ………」

「も、もとはといえば、ボクたちの責任ですし、後で家に言ってみますね………」

 

仗助により破壊されていく教会の家具に嘆く美空に、奏汰が言う。すると、徐倫が口を開いた。

 

「………いや、まだ終わってねぇ……」

「え?」

 

徐倫は、ノーヴェの肩をたたいた。

 

「ノーヴェ、お前のおかげで助かったけど、おじさんの髪をけなしたのはお前なんだから、ケジメはちゃんとつけろよ?」

「へ?」

「そこにいやがったなあ!!」

 

ノーヴェが気づいた時には、仗助は拳を振りかざしてこちらにまっすぐ走ってきていた!

 

「とっととブチのめされやがれぇーッ!!」

「きゃぁあーーー!?」

「悪いがノーヴェ、今回はお前の責任だ……」

「まあ、せいぜい逃げ切れるように祈ってるから!」

 

ノーヴェを置いて退散したチンクと徐倫がそういうと、ノーヴェは悲鳴を上げて仗助から逃げる。教会内を駆け回るため、さらに家具が破壊され、懺悔室のボックスも粉みじんだ!

 

「何でこんな目にーーー!?」

「さてと、学園長に報告しに行くか。」

「あ、じゃあうちも行くわー」

「ひとでなしーーー!?」

「あの………誰か、救急車を………」

 

 

 

 

 

ノーヴェ―――10分後、駆け付けた承太郎に仗助が取り押さえられるまで走り回った。

神矢 美佳(本名:レプラ・ハーパー)―――全治1ヶ月

田中 かなた(本名:篤緒 奏汰)―――徐倫の報告から素直に退学届を提出。女装生活から解放されて喜ぶ。

近衛 木乃香―――宣言通り、学園長にローキックを入れた。

         スタンドの事はバレたが、魔法の事はまだ知らない。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

その日の夜

 

「………ねえ、ホット・パンツに美空?うちの教会の家具って、こんなに『前衛的』だったかしら?」

「「えーと………」」

 

グネグネと曲がって絡み合ったり、棘が生えたようだったり、融合したような椅子やテーブルを見て呆然とするシャークティに、美空とホット・パンツは説明に困ったのであった。

 

 

 

 

 

←to be continued…




22話です。
・冒頭はサルシッチャVSエヴァンジェリン。直ぐに逃げちゃいましたけど、エヴァ相手では割と分が悪いかと………

・美佳さんの本名は『レプラ・ハーパー』。元ネタは荒木先生のデビュー作「武装ポーカー」のマイク・ハーパーから。

・ブチ切れた状態の仗助がレプラを撃破。実は今回、このオチのために各場面で時間が表示されていました。ノーヴェはちょっと災難だったけど、ドタバタした締めは結構好き(笑)

では、次回をお楽しみに!


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#23/ミッドチルダのジョジョ

承【しょう(じょう)】

①きき入れる、うけたまわる②うける、受けつぐ、伝える

 

仗【じょう】

①刀や鉾などの武器②たよりにする③まもる、護衛する

 

徐【じょ】

①ゆっくりと、しずかに

 

倫【りん】

①人の守るべき道②なかま

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

奏汰とレプラの騒動の翌日

 

昨日はゴタゴタがあった為に話し合いができなかったため、今日、改めて話し合いが行われる事となった。

 

ノーヴェたちがマンションの廊下を歩いていると、ちょうどエレベーターが開いた。

 

「あ。」

「ん?………あ………」

 

ふと見ると、そこには篤緒 奏汰の姿があった。

 

「え?誰…?」

「ほら、昨日ノーヴェとチンク姉が巻き込まれた………」

「ああ、女装の………」

 

ノーヴェの後ろでは、茶色い長髪を後ろで結わいた少女にスバルが説明し、気づいたらしいウェンディが口を開いた。

 

「………き、昨日は、どうも………」

「あ、うん………こちらこそ………(ま、まさかの『同じマンションーーー!?』)」

 

目が合ってしまった2人は少し気まずい感じとなったが、チンクが助け舟を出した。

 

「それで、篤緒殿、これから、どうするのだ?」

「あ、はい………とりあえず、『京都』にある実家に帰ります。しばらくは向こうで暮らす事になるかと………」

「そ、そうか………(言っちゃ悪いが、しばらくは顔合わせたくなかったし、ちょうどいい、のか………?)」

 

ノーヴェはそう考えていると、ある事に気が付いた。

 

「ところで、お前何で女物着ているんだ?」

「え?………あ!しまった!もう着なくていいのに!」

「無意識かよ………」

(全然違和感ないから、始末におえんな………)

 

指摘されて気づいたらしい奏汰。彼は今、白いブラウスに黒のスカートという服装であった。

2年間の女装生活がまだ抜けきっていない様子に、ノーヴェは肩を落とすのであった………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「“取引”だ、レプラ・ハーパー。」

 

病院のとある病室、包帯だらけベッドに横たわるレプラ・ハーパーに対して、東方 仗助を連れた空条 承太郎は、そう切り出した。

 

「徐倫やネギ君から聞いたのだが、お前は『この麻帆良でスタンド使いを増やしている者がいる』と言ったそうだな?そいつの情報を教えてくれ。」

「………それを教えてぇ、私に何の『メリット』があるんですぅ………?」

 

レプラは、腫れあがった顔で訝しそうに聞いた。自分をこんな目に合わせた仗助がいるせいか、若干不機嫌だ。すると、仗助が口を開いた。

 

「お前の傷を『治す』ぜぇ?」

「何ですって?」

「オレの『クレイジー・ダイヤモンド』ならよぉー、お前のその傷を治せるって言ってるんだ………全治1ヶ月だとよぉー、次の『職』探すのにも、一苦労なんじゃねーかぁー…?」

 

仗助がそう言うと、レプラは少し悩む。しばらく考えた彼女は、口を開いた。

 

「………正直ぃ、私ではお役に立てませんよぉ……?私はぁ、『矢』を持っている人を『見かけた』程度ですしぃ………」

「取引には応じると受け取るぞ?」

「ええ、どうぞ。顔は見ていませんけれどぉ、2人組の男の人とぉ、『変な双子』でしたよぉ……」

 

レプラがそう答えると、仗助は『クレイジー・ダイヤモンド』でレプラの傷を治し始めた。数秒もしない内に、レプラの傷は『完治』してしまった。

 

「!?本当に、一瞬でしたねぇ………」

「この程度の傷、どうって事ねぇーぜ。で、そいつらの特徴は?」

「………1人はぁ、やたらと長い『銀髪』の男の人ですぅ………もう1人はぁ、金髪のカウボーイ風の男………顔も見なくても分かりますぅ………『ホル・ホース』のバカですよぉ………」

 

包帯を解きながらうんざりした顔になるレプラ。着替えを取り出すと、ベッドのカーテンを閉めて着替え始めた。

 

「奴と知り合いか?」

「ええ、何度か一緒に仕事を………まあ、『()()()()()()』とは思いますけれどぉ………」

「………覚えていない?ホル・ホース(あいつ)が?()()()()()()()?」

「………言われてみれば………双子の方はぁ、何故かかなた様、いえ、奏汰様をつけていたのでぇ、記憶を消して『撒いて』おきましたけどぉ………今思えばぁ、奏汰様を()()()()のが理由なんでしょうねぇ………」

 

レプラは話しながら素早く着替えを済ませてカーテンを開くと、メイド服に身を包んだ姿を2人の前にあらわした。

 

「……そのメイド服、普段から着てんのか?」

「ええ、使用人としての方が、標的(ターゲット)に近づきやすいのでぇ。」

 

レプラは荷物をまとめると、さっさと病室を出ようとした。

 

「私の知っている情報はぁ、これだけなんですよぉ………お役に立てなくてぇ、すみませぇん………けれどぉ、」

「ん?」

「『スタンド使いはぁ、スタンド使いとひかれあう』………いずれ、あなた方の前に現れるかも、知れませんねぇ………」

 

レプラはそう言い残すと、病室を後にした………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

#23/ミッドチルダのジョジョ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間は少しさかのぼり―――

 

 

ネギが「最終試練」の通知を受け取った頃―――

 

 

 

 

 

☆スタンドとは★

 

・スタンドとは、生命エネルギーが具現化したものである

 

・スタンドは、スタンド使いにしか見えない。(例外として、物質と融合したものは、スタンド使い以外にも見える。)

 

・スタンドが傷つけば、本体も傷つく。

 

・スタンドが消滅したら、本体も死ぬ。

 

・逆に本体が死ねば、スタンドも消滅する。(ただし、『アヌビス神』のような例外もある。)

 

・スタンドには、射程距離がある。(ただし、スタンドのもたらす効果はこの限りではない。)

 

・スタンドのパワーは、その距離に反比例する。本体から近ければ、パワーは強く、正確性もスピードもあるが、二つの距離が遠ければ遠くなるほど、動きのスピードも遅く、大雑把な動きになっていく。

 

・スタンドは、一人につき一能力である。

 

・スタンドの由来は、二つある

①『そばに立つ』ように現れることから(STAND BY ME)

②運命や困難に『立ち向かう』力(STAND UP TO)

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「―――以上が、空条 承太郎氏より提供された異能力『スタンド』の情報になります。」

 

はやてが報告をし終えると、会議室は若干ざわついた。

 

ここは、ミッドチルダの地上本部内の会議室。現在、はやてとフェイト、承太郎による、今回の『スタンド使い』事件の報告会議が行われていた。

手元のモニターには、先日の戦闘データが映し出されており、『ガジェットドローン』が破壊された際に魔力が確認されていない事を数値が示していた。

 

「まさか………このような異能力が存在しようとは………」

「魔力を持たないで、これほどの力だとは………」

「現地の『SPW財団』は、長年この能力を研究しているそうだが………」

 

やはりというか、管理局の認知していなかった『スタンド』の存在を信じられない様子の局員たち。こうなるとだいたい予想をしていた承太郎はやれやれ、とため息をついた時、一番上座の席についていた男が口を開いた。

 

「―――まあ、『魔力溜り』があるとはいえ、管理外世界の異能力です。時空管理局(われわれ)が認知できなかったことも、頷けるでしょう。」

 

左右の前髪をひと房ずつ垂らした眼鏡の若い男がそう言うと、一同は少し腑に落ちない感はするものの静かになる。承太郎は、はやてに小声で聞いた。

 

「………誰だ?」

「『クルト・ゲーテル』代行………『レジアス少将』亡き後、地上本部再建の為に本部から派遣された、若き少将です………」

 

承太郎はゲーテルの方をちらりと見た。ゲーテルは気に留めず口の端を上げると、話を切り出した。

 

「しかし………今回のスタンド使いの事件を聞いて、私は『ある仮説』に行き着きました………例の『戦闘機人』に関してです………」

 

『戦闘機人』

 

その単語が出た瞬間、会議室は張り詰めた空気となった。

 

「ああ、知らない空条氏に説明をしますと、戦闘機人というのは、人造の人間に肉体の一部を機械化し後天的に高い戦闘能力を付与した、人体兵器の事です。」

「………人体兵器、ねぇ?そいつはまた、『倫理的』に考えてヤバそうだな。」

 

訝しむ承太郎に対し、ゲーテルは端末を操作してある資料を呼び出した。空中に浮かぶモニターには、誰かの『日誌』らしきものが映されていた。

 

「戦闘機人に関するデータに、ある事が書いてありましてね?目を通したときに一体何の事なのだろうと思いましたが、今回の事でつながりましたよ。」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

 

40年前のある日、私は()()()()()()()『ブランドー』という男とその部下――『ヌケサク』と呼ばれていた――と出会い、仲良くなった。彼によると、部下を自分と同じような能力に目覚めさせたら、急に光に照らされて、気づいたら『ミッド(ここ)』にいたらしい。

彼に管理局の話をすると、部下の能力は『時空を超える』能力だと、彼は考えた。恐らく、能力が暴走したためだと、彼は言っていた。

彼は数週間ミッドに滞在し、部下の能力で帰っていった。

 

私は彼らの『能力』に憧れた。

そして、戦闘機人計画に、彼らの能力を再現した力――『インヒューレント・スキル』を取り入れた。

 

そして数週間前、偶然彼の『娘』の遺伝子を手に入れた私は、それを元に『戦闘機人』のプロトタイプを作り上げた―――

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「………(『ブランドー』………だと?)」

 

一瞬、承太郎は顔を強張らせた。『時を止められる』『ブランドー』という男など、たとえ異世界であっても()()()()()()()()()()()………

 

「この『時を止められる男』が何者か?それは置いておいて、この日誌の事が本当であるならば、『スタンド』は『インヒューレント・スキル』と密接な関係にあると考えられます。」

 

ゲーテルは続けた。

 

「恐らく、スタンド使いは今後も麻帆良学園で『生み出される』でしょうね………いったい誰が、何の目的で生み出しているのか?それも知る必要があるでしょうねぇ~………」

 

ゲーテルは少し芝居がかった風に言うと、はやてに向き直った。

 

「その調査のためであれば、現在この事件を受け持っている機動六課の運用期間の『延長』も視野に入れていますが、どうでしょうか、八神部隊長?」

「え?ええ、まあ………それはありがたいですけれど………」

 

はやては少し戸惑ったものの、ゲーテルの提案を受け入れた。ゲーテルは満足そうに頷くと、今後の予定などを簡単に話し合い、会議は終了となった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「………妙やな。」

 

機動六課の隊舎に戻ったはやてが、部隊長室の椅子に座って一番に呟いた。机の向かいに置かれた応接用のソファーに腰かけた承太郎は、フェイトに淹れてもらったコーヒーのカップを片手にちらりとはやての方を見た。

 

「お前もそう思うか?」

「承太郎さんも?」

「まあな。いくら担当している部隊とはいえ、ちょいと『優遇』されている気がしてな………半年ほど前に起きたっていう事件の『功績者』であることを考慮してもな………」

 

承太郎はカップを置くと、先ほどの資料に目をやった。

 

「あのゲーテルって少将、なんか企んでるな………」

「一応、私達の知り合いに『そういう事』を調べるのが得意な人がいますので………後で頼んでみますね………」

「しかし、この『ブランドー』っちゅう人の娘って、何者なんやろか………?」

 

はやてが何気なくそう言った時、承太郎がぴく、と反応をした。

 

「………見分ける方法はある。」

「え?」

 

どういう事だろう?はやてがそう聞こうとした時、承太郎は服の襟をずらして左肩を見せた。

 

「そいつの娘の遺伝子を受け継いでいるのであれば、これと同じ『星形のアザ』があるはずだ………『ディオ・ブランドー』の遺伝子を受け継いでいるのであればな……」

「ディオ………?」

 

承太郎の首の付け根には、言う通り『星形に見えるアザ』があった。しかし、フェイトとはやては、承太郎の言った『ディオ・ブランドー』という名前が気になった。日誌には、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「承太郎さん………もしかしてこの『時を止められる男』の事、知っとるんですか……?」

「………ああ、よおく知っているとも………こいつは()()()()()のだからな………」

「えっ………!?」

 

承太郎は語り始めた―――

 

自身の体験と、祖父や曾祖母に聞いた話を織り交ぜながら、―――

 

 

 

ディオ・ブランドーが100年以上前、『柱の男』と呼ばれる『究極生物』が作り出した『石仮面』をかぶり、『吸血鬼』になったこと―――

 

 

 

世界征服の野望を果たさんと、生きた人間や死体を『死屍人(ゾンビ)』に変え、軍団を作ったこと―――

 

 

 

承太郎の先祖であるジョナサン・ジョースターが、『波紋』と呼ばれる力でディオを倒したこと―――

 

 

 

だが、ディオは頭部のみで生き延び、海上でジョナサンの肉体を乗っ取り、100年間海底で眠っていたこと―――

 

 

 

そして22年前、トレジャーハンターにより、ディオの『棺桶』が引き上げられ、ディオが復活したこと―――

 

 

 

4年後、ディオの影響でスタンドに目覚めた承太郎と彼の母ホリィ。だが、ホリィはスタンドの影響に耐えられず、命の危機に陥ってしまったこと―――

 

 

 

母を助けるために、ディオのいるエジプトへ、仲間と共に旅に出たこと―――

 

 

 

エジプトへ着いたものの、ディオの配下のスタンド使いたちや、ディオのスタンド、『世界(ザ・ワールド)』の前に、仲間が次々に命を落としていったことを―――

 

 

 

「―――オレが奴と同じ能力に目覚め、奴を殺していなかったら、今頃奴は世界を支配していただろうよ。」

「!じゃあ、承太郎さんも時を……」

「ああ、『止められる』。最近止めてないから、2秒が限界だがな。」

「そんな体を動かす感覚で止められるものなの………?」

「ていうか、『時が止まっている』のに「2秒」……?」

 

二人の疑問は、的を射ていた……

 

「まあ、『人間の感覚で二秒くらい』って意味だ。しかし、あのヌケサクがこんなとんでもないスタンドを持っていたとはな………」

 

DIOの館で出会った吸血鬼の事を思い出して、承太郎はやれやれと呟いた。ふと、何か思い出したらしいフェイトが「あ」と声を出した。

 

「さっきの星形のアザ………どこかで見たと思ったら………スバルも、それと同じアザが………」

「何………?」

 

フェイトの言葉に、承太郎は麻帆良で出会ったスバルの顔を思い出した。あの、元気な少女にアザがあったということは……?

 

「あの子が……戦闘機人だと、いうのか………?」

「………ええ……『JS事件』での主戦力であった『ナンバーズ』のもとになった、初期型の戦闘機人………『タイプゼロ』………」

 

フェイトの説明を聞いて、押し黙る3人。承太郎が、その沈黙を破った。

 

「…………オレがあの子に会ったのは、ネギ君が『矢』に射抜かれて、気を失った時だった………」

「え?」

「その時、彼女はネギ君を救いたい一心で、自分にできることをしようと必死だった………あいつの目には、間違いなく『黄金の意思』があった………オレたちと同じ、『ジョースター』の意思を受け継いでいると言えるだろう………!」

「承太郎さん………」

 

承太郎の言葉を聞いて、ほっと胸をなでおろす2人。

その時、はやてに通信が入った。

 

ピッ

「はい…」

[八神司令!緊急事態ですッ!!]

 

モニターに映ったのは、青い髪をロングにした、18歳くらいの少女だった。

 

「ギンガ、どないしたんや?」

 

少女―――ギンガの慌て様に、少したじろぐはやて。彼女がこんなに慌てるとは、ただ事ではないことは確かだ。

 

[か、海上隔離施設からナンバーズ………ディードが、何者かに『誘拐』されました………!]

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

←to be continued…




23話です。
・サブタイトルは『ニューヨークのジョジョ』から。

・冒頭はレプラの事後処理。レプラと奏汰は、いずれまた出したいと思っています。

・ミッドでの承太郎の動向。ここでクルト出しましたが、彼はミッドサイドで結構えらい位置で出したいと思っていました。

・今作でのISは『疑似的なスタンド』という設定。『SBR』で解説された、「波紋」や「鉄球」と同じく「スタンドに近づくための技術」という立ち位置です。

・クイントさんはDIOの娘、つまり、スバルたちはジョースター家の血縁者になります。どちらかといえば、ジョナサン寄りですね。


では、次回をお楽しみに!


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#24/星のアザを持つ少女

1時間ほど前―――

 

 

 

ミッドチルダ 海上隔離施設

 

ここでは、数ヶ月前に起きた『JS事件』で保護された戦闘機人『ナンバーズ』の内、管理局に協力的な七人に加え、『レリックウエポン』とされた少女、ルーテシア・アルピーノと、『ユニゾンデバイス』アギトが、『更生プログラム』を受けていた。

現在は昼休み。ナンバーズとスバルの姉ギンガは、昼食をとっていた。

 

 

 

「そうか、スバルは今97管理外世界にいるのか。」

「うん………なのはさんが負傷したって聞いているし………心配で食事ものどを通らなくて…………」

「………いや、そんだけ食べられれば十分だと思うけど…………」

 

ギンガと同席する三人は、冗談のように山盛りになったナポリタンスパゲティを見て、そう呟くしかなかった………

 

「しかし、管理局も認知していなかった能力、『スタンド』か……」

 

銀髪の長い髪に、右目につけた眼帯が特徴のチンクが言う。

10歳ほどにしか見えないが、(チンク)という名前の示すとおり、更生プログラムを受ける七人の中では一番()()なのだ。

 

「私たちのインヒューレント・スキルは、スタンドを目指して生まれたっていうから、ドクターは知ってたのかな?」

「さあ………?今、フェイトさんたちが調べてるみたいだけど…………」

 

隣に座る、長い茶髪を後ろで止めた少女『ディエチ』に、少し曖昧な答えをするギンガ。

 

「まあ、知っていたにしろ、ドクターの場合は―――」

 

水色の髪のセインが言おうとするが――――――

 

 

 

ズドオオォォォン

「「「!!?」」」

 

突然発生した爆発により、遮られた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

#24/星のアザを持つ少女

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

爆発の40秒前―――

 

三階 女子トイレ

 

 

ガチャ

「う〜〜ん………」

「ん?ノーヴェ、便秘ッスか?」

「ちげーよッ!!いや、なんか今朝変な夢見てさ〜……それがなーんか気になるんだよ…………」

 

トイレの個室から出たノーヴェは、今朝見た夢が気になっていた。

 

 

 

なお、後日談になるが、このことをスバルに話したところ、スバルが以前見た夢と同じ内容であることが判明した……

 

 

 

「夢ですか?」

「ああ…………なんか不気味でグロい夢だったんだが、全部覚えてんだよ………いやな夢なのに…………」

 

洗面台にいた短く切りそろえた茶髪のオットーと、オットーの髪を伸ばして、胸を大きくしたようなディード―――2人は『双子』なのだ―――にも話すノーヴェ。側には、赤い髪を後ろで束ねたウェンディもいる。

 

「で、どんな夢だったんスか?」

「出来れば食事の後に話させてくれ………思い出しただけで吐きそうだ…………」

 

ノーヴェが気持ち悪そうな顔をしていると、トイレのドアが開いた。

入ってきたのは、薄い紫色の髪をした、10歳位の少女だ。前髪を左右で止めており、額にはなにやら紋章のようなものが描かれている。表情は乏しく、見ただけでは感情を読みとることができない。

 

ルーテシア・アルピーノ

 

それが少女の名前だった。

 

「あ、お嬢様。アギトは?」

「先に食堂に行った。」

 

淡々と言い、ルーテシアが個室に入ろうとした時――――――

 

 

 

 

 

 

ズドオオォォォン

 

 

「「なああああッ!?」」

「「「!!?」」」

 

便器が爆発した!それも、全部の個室の便器がだ!

ノーヴェたちは咄嗟に身をかがめて難を逃れ、爆発から身を守った。

 

「……くっ、お前ら!無事かッ!?」

「だ………大丈夫ッス……」

 

爆発であたりに蔓延していた煙が窓から逃げていき、床一面水浸しになったトイレで、ノーヴェが全員の安否を確かめる。

 

「ディード、平気……?」

「うん…………お嬢様はッ!?」

 

ディードが気付き、全員がルーテシアのいたほうを見ると―――――――

 

 

 

 

 

 

「……………」

「「ってどういう事ォ!!?」」

 

便器が頭にすっぽりと『ハマった』ルーテシアがいた………

 

 

 

「いきなり爆発したと思ったら………うまい具合にトイレが飛んできて………そのままガポっと…………」

「あーー、言わなくていいッスよ……」

 

便器で顔が見えないが、心なしか涙声のルーテシアをなだめるウェンディ。ノーヴェは何とか便器を引き抜こうとするが、うまい具合にはまっているらしく、なかなか抜けない。

 

「だめだ、抜けねぇ……こりゃギンガを待ったほうがよさそうだな……」

「私………一生このままなの………?」

「いや、そんなことないから………ギンガなら一発で粉々にできるから……」

 

本来ならノーヴェがやったほうがいいのだが、施設内での『力の使用』は禁じられているため、現在施設内で破壊できるギンガを待つことにした。

 

ノーヴェがそう決定したときだった…………

 

「ん………?」

 

オットーは、水浸しの床に、何かを見つけた。それは、まるで『鮫の背ビレ』のようなものであり、その背ビレには、小さい『人間』らしきものが『掴まっている』が見える…………

 

「………?」

 

オットーが何だろうと思ったとき―――――

 

 

 

 

 

ガブゥッ

 

 

 

 

 

「「「「!!!?」」」」

 

鮫が飛び出して、ディードに『食らい付いた』!!

 

「が………こ………これは……………?」

「ディードッ!!」

 

オットーがディードを掴もうとするが……

 

ザブゥン

 

鮫に引きずり込まれて、ディードは水に『沈んでいった』!引き上げようと手を伸ばすオットーだったが、今度は鮫ごとディードが消えてしまい、救出が不可能となってしまった!

 

「そんな………こんな………『1mm』あるかないかの水に………?」

「ディード………ディードォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」

 

ギンガたちが駆けつけたのは、オットーの叫びが、狭いトイレにこだましたときだった…………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

その後、はやてに通信をしたギンガは、ちょうど同席していた承太郎により、外観と能力から『オエコモバ』を始末した『スタンド』と同一である事が判明した。この事から、現在麻帆良で起きている『矢』の事件と関連していると考えられた。

 

そこで、六課にディードの捜索を依頼しようとしたのだが、ここで問題が起きた。『ナンバーズ』たちが、自分たちに捜索させてほしいと願い出たのだ。

 

「『妹』であるディードが連れ去られて黙ってはいれない」とは、ノーヴェの談だ。特にディードとは『双子』であるオットーは、自分の目の前で妹が連れ去られてしまった事が悔しいのか、その目には無表情ながら『怒り』が籠っていた。

 

はやてが上層部(うえ)に申請したところ、人手不足だからか、『更正プログラムの一環としての『奉仕活動』』という名目で許可が下りた。

 

こうして、ナンバーズ6名にルーテシアとアギト、そして『見張り役』を加えた計9名が、承太郎、フェイト、ギンガとともに、麻帆良に降り立った。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

現在

麻帆良学園 学園長室

 

 

「まあ、そんなわけだ。こいつらの妹探しに協力してやってくれ。」

 

承太郎がそういってしめた。周りにはナンバーズや六課、そしてスタンド使い組やネギ、明日菜、あやかと、かなりの大人数だ。

普通ならガヤガヤとうるさいものだが、なにやら全員静かだ。特に普段からやかましいウェンディやセインは、借りてきたネコよりもおとなしい。

というのも―――

 

(え?あんたたちも承太郎さんに?)

(ああ…………うっおとしいって怒鳴られた…………)

(…………『うっおとしい』?)

 

まあ、承太郎が原因な訳で…………

 

「現在、麻帆良学園内外の魔法使いに加えて、スピードワゴン財団も動いている………ディードが発見出来次第、連絡が来るだろう。」

「よろしくお願いします………」

「で、『見張り役』ってのが―――」

 

千雨がそちらを向くと、ネギや明日菜もそちらを見る。

視線の先には―――

 

「………犬?」

 

そう、犬だ。

オレンジの毛並みで、額には宝石のようなものが着いている。大きさは子犬ほどで、床にべったりと寝そべっている。

その犬が、千雨たちに顔を向けたかと思うと、

 

「『狼』だよ!」

「あ、そうなの?ごめんね。…………………って!」

 

 

 

 

 

「「「「「喋ったァァァアアアアアッ!!?」」」」」

 

いきなり犬、いや、本人曰く狼が喋ったため、スタンド使い組+明日菜は、驚愕の声を上げた。

 

「あ、紹介がまだだったね。私の使い魔のアルフ。今回は見張り役ってことで、来てもらったんだ。」

「え?所●ョージ?」

「そっちじゃないよッ!!私メル○ック星人じゃないからッ!!」

「あ、アルフ、落ち着いて………」

 

明日菜のボケに律儀につっこむアルフ。

ふと、仗助はソファーに腰かけて俯くオットーが目に入った。

 

「……………妹、『ディード』っつったか?そいつのことが心配か?」

「………………………はい」

 

仗助はオットーの隣に座り話しかけると、小さく頷いた。

 

「………ま、SPW財団が動いてるんだ。すぐに見つかるぜ!」

バシィッ

「うっ………は…はい…………」

 

仗助はオットーの背中をたたき励ます。強すぎたのか、オットーは痛そうな顔をしているが………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「しっかし、なんだか賑やかになったわねー?」

 

帰りの道中、明日菜とネギは、スバルと話していた。

 

「せいたいへーき、って言われたときはびっくりしたけれど、みんな普通の人と変わりないじゃないのよー」

「そう、だね………」

 

ネギは昨日、奏汰との騒動にノーヴェやチンクと出会っていたが、聞かされるまでそのような事情があるとは知らなかった。スバルは少し困ったように笑ったが、ネギたちは気づかないでいた。

ふとネギは周囲を見渡して、寮へ向かうメンバーの中に徐倫の姿がない事に気が付いた。

 

「……あれ?空条さんは……?」

「ああ、何か、承太郎さんに呼ばれて、どこかに行ったみたいだけど………」

 

千雨が答えると、スバルと明日菜はふーん、と受け流す。答えた千雨も、少し不思議そうにしていた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「なんだって………!?」

 

一方、承太郎に呼び出された徐倫は、愕然としていた。承太郎から告げられた真実に混乱していた。

 

「スバルが、戦闘機人で………DIOの血が、流れているって………どーいう事だオヤジぃいいいいいいい!!」

「………言ったとおりだ。彼女とその姉ギンガの母、クイント・ナカジマは、ジョナサンの肉体を乗っ取ったDIOの娘である可能性が高い………」

 

冷静に告げる承太郎に対し、徐倫は困惑していた。脳裏に、2年前の『DIOの息子たち』とプッチの顔が浮かび上がる。

 

 

 

―――オレは『アポロ11号』なんだァーーーッ!

 

―――オレはこんなところで終わらない!オレだって幸せになる権利はあるんだッ!

 

―――「どこへ行かれるのですか(ドミネ・クォ・ヴァディス)?」おまえは磔刑だーッ!!

 

 

 

「………あたしはこの1ヵ月、スバルとクラスで過ごしてきた………あいつが、()()()()()であるとは考えたくない………」

「それは俺も同じだ………彼女たちには、少し『注意をしてほしい』という事を伝えたかった………彼女たちに、DIOのような「邪悪な精神」が宿らぬよう………」

「………」

 

承太郎の言葉に徐倫は頷くと、踵を返して寮に向かって歩き出した………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

退院手続きをしたレプラ・ハーパーは、駅に向かって歩いていた。今回の顛末の報告と『報酬』を受け取るために、京都の『篤緒家』へ行くのだ。

 

「………ん?」

 

ふと、自分の行く手の気にもたれかかる1人の男に気づいた。短く切りそろえた髪に、ワッフルや碁盤の目を思わせる剃り込みを入れた髪型とアゴヒゲをしており、白い丸に黒い丸を組み合わせた上着を着た男だ。

 

「レプラ・ハーパーだな…?」

「………どなた、ですかぁ~?私を、知っているなんてぇ………」

 

男にそう聞くレプラだが、男は答えない。レプラは攻撃しようと思い、『エッジ・オブ・ジ・アンノウン』を出す体制を取るが、

 

「おっと、妙な動きはしないでくれよぉ?」

「!?」

 

背後から声がして、何かを突き付けられている事が分かった。レプラは、その声に聞き覚えがあった。

 

「よぉレプラ。久しぶりだなぁー?」

「………覚えていたんですね、ホル・ホース………私の存在は、『消し飛ばした』と思っていたのにぃ………」

「俺は女の顔は忘れない『タチ』なんだよ………美人の顔は、特になぁー」

 

ホル・ホースに苦い顔で言うレプラ。男はレプラに本題を話し始めた。

 

「君のおかげで『田中かなた』………いや、『篤緒奏汰』のスタンド能力を調べるのに、時間がかかってしまった………それを責める訳ではないのだが、君には我々に力を貸してほしい。これは、我々の「主」からの、正式な『依頼』でもある………」

「『依頼』………ですかぁ~?」

 

訝しむレプラに対し、男は1枚の封筒を差し出した。

 

「依頼の正式な内容と、成功報酬が書いてある……受けるかどうかは自由だ………連絡を待っている………」

 

レプラは封筒を受け取ると、男はすれ違うように立ち去った。レプラが振り返ると、ホル・ホースは『皇帝(エンペラー)』をしまい、帽子を深くかぶりなおしていた。

 

「『ウェカピポ』の旦那はああ言っていたが、俺としちゃぁまたお前さんと仕事がしたいって思っているぜぇー?」

「………まったく、調子のいい事を………」

 

ホル・ホースがウェカピポと去っていくのを、レプラは呆れながら見届けていた。

 

 

 

 

 

←to be continued…




24話です。
・サブタイトルは『星のアザを持つ男』から。

・ディード誘拐。それを探すためにナンバーズ(更生組)、麻帆良上陸。アルフ付き。

・スバルたちがDIOの血縁者であることを知る徐倫。プッチたちのセリフは印象的な物を選んだけれど、リキエルはやっぱりアレしかありませんでした(笑)

・ウェカピポ&ホル・ホースと会うレプラ。彼女があちらの陣営に入るかどうかは、今後の動向によります。

・今回で、第1章は終了となります。次回からはエヴァ編になりますので、お楽しみに。

では、次回をお楽しみに!


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STANDS ①

第1章に登場したオリジナルスタンドの解説になります。


スタンド名―グロウン・キッド

本体―佐々木 まき絵

破壊力―A スピード―C 射程距離―A

持続力―A 精密動作性―C 成長性―D

 

能力―◎布に取り付いて、実体化しているスタンド。

   ○佐々木まき絵の左手にスタンドの本体があり、布にスタンプのように押し付けることで発現する。

   ○完全な人型になるには、5枚の布が必要だが、分離して操作することも可能。部品(パーツ)がひとつやられても他の布で補える。

   ○自在に強度や形、さらには色を変えることができる。

   ○自動追跡パワー型スタンドに近い射程距離とパワーを持つが、本体と完全に離れている訳ではなく左手の本体を通じて状況を把握できる。

 

・コメント

 今作のオリジナルスタンド第1号。発想の原点は第2部に出てきたドノヴァン(初登場時のシーンも、ドノヴァンのオマージュ)、デザインのコンセプトは「ランプの魔人」。

自我を持っていて変幻自在で応用が利きますが、これはまき絵の性格から考えてサポートが出来るキャラにしたいと思ったからです。

 リメイク後は、まき絵の左手にスタンドの本体があるという設定にしました。元々「ベイビィ・フェイス」のイメージがあったので、それに近い感じです。

名前はSOUL’d OUTの楽曲「GROWN KIDZ」から。イメージ声優は江原 正士さん。

 

 

 

スタンド名―ヘルズ・マリア

本体―オエコモバ

破壊力―B スピード―C 射程距離―C

持続力―B 精密動作性―E 成長性―C

 

能力―触れた物に『部品(ピン)』を付ける。ピンが外れると、爆発する。

 

・コメント

 ぶっちゃけ、原作のオエコモバのスタンドに名前を付けただけです。スペックは「ジョジョベラー」のものを参考に再設定。

 名前はALI PROJECTの楽曲から。名前のダークなカッコよさに加え、ヴィジョンがカラスみたいだから「マリア・カラス」とかかっているのかも(笑)

 

 

 

スタンド名―イノセント・スターター

本体―宮崎 のどか

〈親亀〉

破壊力―B スピード―B 射程距離―C

持続力―C 精密動作性―C 成長性―B

〈子亀〉

破壊力―E スピード―A 射程距離―A

持続力―A 精密動作性―E 成長性―C

 

能力―スタンド本体である「親亀」の左手から、偵察機の「子亀」を発射する。

「子亀」の背中のレンズが見たものや聞いた音を、本体が見たり聞いたりできる。また、「子亀」の位置を把握することもできるため、探知機としても使える。

子亀のダメージ=本体へのダメージではない。

 

・コメント

 コンセプトは「母艦と偵察機」という、近接パワー型と遠隔操作型の各特性を併せ持つスタンド。この事からサポートタイプののどかのスタンドとなりました。たぶん、『勇者王ガオガイガーFINAL』の「ピア・ケデム」が元ネタだと思います。探査モードの前髪に映るレーダーは、ディアボロの『エピタフ』やジャイロの『スキャン』描写から着想したものです。

 亀がモチーフですが、デザインイメージは電王ロッドフォームです。名前は水樹 奈々さんの楽曲「Innocent Starter」から。

 

 

 

スタンド名―アニバーサリー・オブ・エンゼル

本体―長谷川 千雨

破壊力―B スピード―A 射程距離―C

持続力―A 精密動作性―C 成長性―B

 

能力―本体である長谷川 千雨が身に纏っている、甲冑のようなスタンド。背中に『翼』が生えており、空を飛ぶなどの機動力に優れている。また、翼や甲冑の一部を脱ぎ捨てることにより、防御力は低下するが、より素早い動きが可能になる。

 

・コメント

 千雨のスタンド。珍しい身に纏うタイプですが、当初の予定から千雨は戦闘に参加させる事にしていたので、このようなスタンドになりました。

 能力及びデザインは『銀の戦車』を女性的にして、翼を足した感じ。『ネギま!』のファンタジーな世界観に合わせて戦乙女(ヴァルキリー)的な見た目だけど、武器は日本刀(小太刀)というミスマッチ(笑)

 スタンド名はALI PROJECTの楽曲「Anniversary of Angel」から。リメイク時にポルナレフの命名と判明しましたが、娘のスタンドに天使(エンゼル)と名付けるあたりに彼の娘への愛が伝わります。

 

 

 

スタンド名―エッジ・オブ・ジ・アンノウン

   本体―神矢美佳(本名:レプラ・ハーパー)

破壊力―C スピード―C 射程距離―B

持続力―B 精密動作性―D 成長性―E

 

能力―本体であるレプラが装備している、巨大な籠手と兜のスタンド。籠手の指先が銃口になっており、そこからミサイルを発射する。仮面はターゲットスコープの役割を果たし、複数の標的をロックオンできる。

ミサイルに殺傷能力はないが、1発につき1分間の『記憶』を消し飛ばす。消し飛ぶ範囲は着弾した時間から1分間に限られるが、60発、つまり1時間以上消し飛ばすと、何も覚えていない廃人と化してしまう恐れがある。なお、腕の部分には5分分の大型ミサイルが5発ずつ隠されている。

籠手そのものも非常に丈夫であり、打撃や防御に適している。

 

・コメント

 最初に、「ゴツイアームを装備したメイドさん」というイメージがわいて、そこから組み立てた感じ。カワイイ女の子がゴツイ武器持っているの好きなんですよ(笑)兜は頭巾と一つ目で不気味な感じ。たぶん、「コスモス」のワロガや第4部の『ラット』のイメージがあるのだと思います。リベットはメカゴジラ(初代)、指先ミサイルはドラゴンシーザーからのイメージですね。

 スタンド名は堀江由衣さんのアルバム「ワールドエンドの庭」収録の「プロローグ ~edge of the unknown~」から。

 

 

 

スタンド名―ハイ・ステッパー

   本体―田中かなた(本名:篤緒 奏汰(あつお そうた))

破壊力―B スピード―A 射程距離―C

持続力―E 精密動作性―D 成長性―B

 

能力―本体である篤緒奏太の両足に装着された、機械製のロングブーツのようなスタンド。ふくらはぎに拳銃のシリンダーと撃鉄のようなパーツがついており、これを起動させることにより『爆発的な瞬発力』を発揮させる。

その力を数値化させると、ジャンプ力はひと跳び30m、キック力だと15tにもなる。

 

・コメント

 ぶっちゃけると、レプラの能力に合わせて考えたキャラなので、スタンド自体は割とシンプルに「身体強化」。奏汰が「男の娘」と決まったので「この現状から逃げ出したい」という気持ちが能力の元なんだと思います。

 スタンド名は水樹奈々さんの楽曲から、ジャンプ力とキック力のスペックはアギトグランドフォームを参照。

 

 

 

スタンド名―アンダー・ザ・レーダー

本体―サルシッチャ

破壊力―なし スピード―なし(転送するスピードはA) 射程距離―地図上ならどこでも

持続力―A 精密動作性―A 成長性―D

 

能力―地図上にあるものを自分の所に持ってきたり、逆に自分の所から地図上の好きな所に転移させたりできる。

ただし、本体が地図上にいないと発現しない。また、世界地図のような、範囲の広い地図では使えない(最低でも、1:500,000の地図でないと無理)

 

・コメント

 スタンド名はダニエル・パウターのアルバム名から。ぶっちゃけ、アルバム名聞いて思いついた能力ですが、魔法使いがわんさかいる麻帆良で「誰にもバレずにスタンド使いを増やす」には便利な能力だと思います。

 結構自由度が高い能力なので、若干の規制はかけましたが、サポートとして仲間になった場合は心強い事間違いないです。でも、『W』に出てきた「ゾーン・ドーパント」や「SBR」の『チョコレート・ディスコ』が似たような能力でちょっと凹んでいたりして………

 デザインが八角形なのは、地図上に展開するから八卦や遁甲盤のイメージがあったのだと思います。

 

 

 

スタンド名―コズミック・トラベル

    本体―ヌケサク(本名不明)

破壊力―C スピード―A 射程距離―C

持続力―C 精密動作性―E 成長性―E

 

能力―超高速で移動するスタンド。

詳しいヴィジョンなどは不明であるが、周囲の人物と一緒に移動できる。そして加速していった先には『別の次元』へと突き抜ける。ただし、別の次元世界まで行くとスタンドエネルギーを激しく消耗してしまう上に、何処に到達するのかはわからない(元いた世界への道のりはわかるらしい)。

非常に厄介な能力であるため、帰還後にDIOはプッチ神父の手を借りてこのスタンドをDISCにする事で封印した。

 

・コメント

 「ヌケサクって明らかに三下なのに、何でDIOは手元に置いておいたのだろう?」って考えた末に、「実はスタンド使いだったけれど、スタンドが危険だから封印されてその記憶もない。」と思いついた設定。ついでに、ナカジマ家の3人の「DIOの血縁」設定の裏付けにも活用しました。スタンド名はSOUL'd OUTの楽曲から。

 



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PRIVILEGE CARD ①

第1章に登場したオリジナルキャラの解説になります。


【出席番号11番】

空条 徐倫

 

1992年4月7日生まれ

血液型:B型

好きな物:ガトー・ショコラ、ライトノベル、ロープマジック

嫌いな物:親父、アナスイ

所属:文芸部

学年順位:21位タイ

スタンド名:ストーン・フリー

 

・コメント

 徐倫の生年月日は、何となく4月生まれっぽいからです(笑)好きなものがガトー・ショコラなのは、「私、地球が滅亡するとしたら、最後に食べたいものは絶対チョコレートケーキって決めてんのよねー」という徐倫のセリフから(『ストーン・オーシャン』12(75)巻より)

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

田中 かなた(篤緒 奏汰)

 

1992年12月25日

血液型:A型

好きな物:乳酸菌飲料、平穏

嫌いな物:女装

所属:占い研究部

スタンド名:ハイ・ステッパー

 

備考:麻帆良学園女子中東部2年C組所属。この1ヶ月以内に何者かに『矢』で射抜かれてスタンド使いになった。

実は近衛 木乃香の婚約者候補の『男子』。篤緒家は関西の呪術師の家計であり、『式神』の使い手として有名であった。一人息子の彼自身は魔法の才能が薄かったため一族からはあまり期待されていなかったため、彼の母はこれ幸いにと今回の学園長の提案に乗ってしまった。

この2年間の女装生活のストレスで若干やさぐれ気味。

 

・コメント

 ルル・ベル勢以外では初のオリキャラ。実は、にじファン時代に京都編の後に出そうと思っていたんですけど、ナンバーズと仗助の絡みをやりたいと思って、今回序盤に出しました。

 今の所、不運続きなままフェードアウトした彼ですが、京都編でまた出したいな、と思っています。

 偽名はまんま回文になっていますが、奏汰の名前もローマ字にすると回文になっています(Atuo Souta)。

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

レプラ・ハーパー(Repra Harper)

 

年齢:25歳

星座:おうし座

血液型:O型

出身:アメリカ

性格:おっとりと間延びした口調だが、仕事は着実にこなす冷静な人物。

備考:裏稼業で『後始末屋』をしており、能力を駆使して暗殺者等の目撃者の記憶を消していた。

今回は、その職業を聞いた篤緒家からの依頼で『神矢美佳』として奏汰に同行し、奏汰を『男子』だと知った者の記憶を消していた(篤緒家は、スタンドの事を知らなかった)。メイド服は趣味で着ており、使用人としてなら簡単に近づけるのが理由らしい。

 

・コメント

美佳さん、もといレプラさんは最初、クールなメイドさんを予定していましたが、おっとりしたキャラの方がやばい感じが出ていいかなって思ってこういうキャラになりました。

奏汰と同様に、本名は「武装ポーカー」のマイク・ハーパーの苗字から、回文になるように命名。



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#EX/竜と烈火の騎士

承太郎のミッドチルダでの活動を書いた番外編です。


#EX/竜と烈火の騎士

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは、空条 承太郎が地上本部で報告会議を行う数日前の出来事―――

 

 

 

 

 

「キュクルー」

「ん?」

 

カフェテリアでコーヒーを飲みながら書類を見ていた承太郎は、自分の足元で聞いたことのない動物の鳴き声を聞いた。見下ろしてみれば、白く小さなトカゲのようであるが、翼を持った生物がいた。

気づいてもらえてうれしかったのか、その生物はパタパタと羽ばたいてテーブルの上に乗ってきた。

 

「キュ~」

「………」

 

本職が『海洋学者』であるためか、目の前の未知の生物に興味を持った承太郎。試しにと思い、人差し指でのどの辺りを撫でてやった。

 

「キュゥ……グッグゥウ~~~!」

「む!?」

 

すると、生物は少し嫌がってか唸り声を上げて首を振った。承太郎は少し驚き、首を傾げた。

 

「フリード!」

 

すると、こちらにピンク色の髪の少女と赤毛の少年が駆けてきた。フリードというらしい生物はパタパタと少女の元に飛んでいった。

 

「す、すいません!うちのフリードリヒが………」

「……いや、俺の方こそ、嫌がることをしちまったようで、悪かったな………」

 

フリードリヒを抱く少女に承太郎も自分に非があると謝る。

 

「あ、ええと、初めまして、ですよね………機動六課ライトニング分隊の『エリオ・モンディアル』です。」

「同じく、『キャロ・ル・ルシエ』です……この子は、私の竜の、フリードリヒです。」

「キュク~」

 

承太郎に自己紹介をするエリオとキャロ。だが、承太郎は目の前の生物が『竜』と説明されて、内心驚いていた。

 

(『魔法の世界』とは程遠い『近未来』な街並みだったから、魔法(ファンタジー)要素との初めての出会いだな………やれやれだぜ………)

「それにしても、フリードがあんな風に唸るなんて、珍しいなぁ………」

 

キャロが不思議そうに首を傾げる。フリードの喉を撫でてやった承太郎はある事を思い出した。

 

「もしかしたら、『逆鱗』ってやつに触れちまったのかもしれないな……」

「ゲキ、リン………ですか………?」

「なんですか、それ?」

 

エリオとキャロは、承太郎に質問をする。

 

「………中国の伝承によれば、竜には81枚のウロコがあって、その内あごの下の1枚は他とは逆さまに生えているらしい。これを『逆鱗』と呼ぶのだが、竜はコイツに触られると激昂し、触れた者を即座に殺すと言われているんだ………『逆鱗にふれる』という慣用句は、この伝承がもととなっている。」

「へぇ~、そうなんですか………」

 

承太郎の説明を聞いて、キャロに抱かれるフリードを見るエリオ。

 

「見たところ、フリードリヒは西洋の『ワイヴァーン』って種類に似ているが、まさか西洋の竜にも、逆鱗があるとは思わなかったぜ………」

「でも、97管理外世界の伝承なんですよね?

「というか、フリードってそもそもウロコがあるように見えないんだけど……」

 

「「「………………」」」

 

 

 

 

 

「あ、もしかしてこれかな………?」

「どれだ?」

「ほら、ここの所の………」

「いや、違うような………」

(3人とも、何やっているんだろう………?)

 

数分後、承太郎を呼びに来たフェイトが見たものは、フリードの首の下あたりをのぞき込む承太郎、エリオ、キャロの姿であった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

その日の正午

機動六課 食堂

 

 

「ここ、座っても大丈夫か?」

 

昼食をとっていた承太郎の向かいの席から、女性の声がした。承太郎がそちらを見ると、何回かすれ違った女性だった。

 

ピンクの髪をポニーテールにし、『美人』とも言える整った顔立ちにつり上がった翠の目、そして、男が十人いたら十人の視線を集めるような巨乳の女性だ。

 

「………………別に構わんぞ。」

「ありがとう。」

 

だが、既婚者で子持ちな上に日本的な女性が好みの承太郎には、彼女のスタイルなど興味がなかった……

 

「そういえば、何回かすれ違っただけで、自己紹介をしていなかったな。ライトニング分隊副隊長の『シグナム』だ。」

「ああ、はやてから聞いている。」

 

女性―――シグナムに話しかけられても、相手にしないような態度で返す承太郎。

元々感情を表に出さないタイプなために、周りの隊士たちに圧力(プレッシャー)を与えていたが、そこは歴戦の騎士シグナム、ものともしていなかった。

 

「で、お前は『そんな話』をしに来たのか?」

「……ふふっ、さすがだな。」

「当たり前だ。目をそんなに輝かせていたら、誰だって分かる。まどろっこしいのは嫌いな『タチ』なんだ、さっさと用件を言え。」

 

先ほどよりも、いっそう強いプレッシャーを放つ承太郎。周りの隊士たちは、圧倒的なプレッシャーに耐えられず、承太郎たちからさらに離れていく。

 

「では、単刀直入に言おう。私と『手合わせ』してほしい。」

「…………手合わせ?」

「ああ。聞けば、お前は相当強いスタンド使いらしいではないか。いずれ私もスタンド使い達と戦う事になる可能性が高い。その時に備えて、特に強いお前と手合わせをしたいのだ。」

 

承太郎に説明するシグナム。だが、そんなものは建前であり、実際はただ単に承太郎と戦いたいだけである………

 

「別に構わんが………そういえば、お前はスタンドが見えるのか?」

「まあな………我ら『守護騎士』は、少々特殊な生まれなのだ………おそらくは、スタンドとの『波長』が合ったのかもしれないな。」

「………波長、ね………」

 

そういえば、『岸辺 露伴』はスタンドに目覚めた当初、自分と波長の合う人間の心を読んでいたと聞く。特殊な生まれゆえに、その『波長』が偶然合致したのだろうか………

 

「では、食べ終わって一時間ほどしたら、『訓練場』に来てくれ。」

 

手合わせの約束を済まし、二人は黙々と昼食を食べ始めた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

一時間半後

 

訓練場

 

 

今、六課隊舎の外、海上に浮かぶ訓練場は、『砂漠』と化していた。周りには大きめの岩が点々とあり、サボテンまで生えていた。

そして、中央には―――

 

 

 

「………『ピラミッド』………か…………」

 

あまり表情が変わらないため見分けがつかないが、承太郎をよく知る者が見たら、彼が『浮かない顔』をしているのに気づくだろう。

彼は砂漠、とりわけエジプトには、いい思い出がなかった。

 

 

 

『一晩中』照りつける『太陽』に襲われたこともあった。

 

砂に潜む『水』や『蜃気楼』、『電車』にも襲われた。

 

そして、『友』を失ったのも、砂漠だった…………

 

 

 

「さて、始めようか………」

「…………ああ、そうだな。」

 

ピラミッドの中腹にまで登り、騎士服に身を包んだシグナムが切り出した。

 

「改めて自己紹介させてもらおう。守護騎士(ヴォルケンリッター) “烈火の将”シグナム。そして――」

 

シグナムは、手に持った剣を鞘から抜き、承太郎に向けた。

 

「わが魂、『レヴァンティン』だ。」

[どうぞよろしく。]

 

シグナムの紹介に、レヴァンティンも挨拶する。

 

「…………海洋学者 空条 承太郎。そして―――」

 

承太郎も、『肉体』という鞘から、己の『(スタンド)』を抜く。

 

「タロット大アルカナカードの17番目、『星』のカードの暗示を持つスタンド!『星の白金(スタープラチナ)』!!」

 

スタンド―――『スタープラチナ』は、発現と同時に戦闘態勢をとる。

 

「『星』のカードか……確か意味は『希望と未来』、だったか?」

「ああ、オレのスタンドは、今までいくつもの『未来』を切り開いてきた。」

「ふふっ、それは楽しみだ。」

 

心底愉しそうな笑みを浮かべるシグナム。

承太郎の言う通り、彼の『スタープラチナ』は、多くの道を切り開いてきた。『運命の車輪(ホイール・オブ・フォーチュン)」の時とかね。

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

訓練場から少し離れた辺り

 

 

「あちゃー、シグナムめっちゃ楽しそうやなぁ。」

「完全にさっきの建前だったみたいだね……」

「2人ともがんばれー!」

 

二人の『手合わせ』を観戦しようと来たフェイトとはやて、は、ものすごく楽しそうなシグナムを見て呆れが半分、シグナムらしいなが半分の苦笑いを浮かべていた。

2人と一緒に、エリオとキャロも応援wしていた。

 

 

 

両者は、しばらくにらみ合っていたが、ピラミッドから瓦礫が落ちてきたのを『合図』に、お互い飛び出す!

 

 

「はあああァァーーッ!」

「オラァッ!!」

 

シグナムはレヴァンティンを振り下ろし、承太郎は『スタープラチナ』の右拳の一撃を放つ!

 

ガギィイン

「ぐっ」「むう…」

 

振り下ろされたレヴァンティンの側面を殴り、軌道をずらされた剣が石壁に突き刺さった!

だが、シグナムがレヴァンティンを『両手で持っていた』のに対し、承太郎は『右拳のパンチ』による一撃。

つまり!

 

 

 

 

 

「オラオラオラァーーーッ!」

 

承太郎は『スタープラチナ』の『左拳のパンチ』を放った!

 

「くっ!」

 

レヴァンティンを引き抜き、仕方なくバックステップで下がるシグナム。『スタープラチナ』の左拳はそのままピラミッドの側面へ向かい―――

 

 

バゴォッ

「!!」

 

ピラミッドの壁を『破壊』した!だが、破壊だけでは終わらない!

 

ズドドオ

「ぐうっ、こ、これが狙いかッ」

 

『壁の破片』が勢いよく飛んできて、シグナムを襲う!不意をつかれたため、シグナムは数発食らってしまう。

恐らく承太郎は、シグナムが左のパンチを避けるのを予想していたのだろう。ゆえに、最初から『壁』を狙い、破片を『飛ばした』のだ。

だが、『スタープラチナ』は攻撃の手を休めない!

 

ドン!

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!!」

「くっ……ハアァッ!!」

ドガガガガガガ

 

高く飛び上がり、シグナムに『スタープラチナ』の拳の連打―――『オラオラ』を放つ承太郎!シグナムも負けじと、攻撃を見極めて、レヴァンティンを振るう!

だが、承太郎は『飛行』している訳ではないため、滞空時間は短く、すぐに落下していく。

 

「そこだぁッ!」

[シュランゲバイゼン]

 

電子音とともに、レヴァンティンが蛇のようにうなり、連鎖刀形態『シュランゲフォルム』となる。そして、その刃が承太郎を襲う!

 

「む!?」

「飛竜一閃!!」

 

この時、シグナムは勝利を確信していた。

 

 

観戦していたはやてたちもだ。

 

 

だが!

 

 

 

 

 

ガシィッ

「なっ!ひ…………飛竜一閃を…………」

「『掴んだ』ぁぁああッ!?」

 

『スタープラチナ』が予想斜め上を行く行動を取ったため、「これで決まった」と確信していたシグナムとはやては驚き、フェイトたちにははスタンドが見えないため、空中で止まったレヴァンティンとはやてのセリフで、ようやく状況を理解した。

 

「やれやれだぜ。まさか『連鎖刀』になるとはな………『相手が勝ち誇った時、そいつはすでに敗北している』…………つまりッ!」

グオオン

「!!」

 

言いながら、承太郎はシグナムをシュランゲフォルムのレヴァンティンごと綱引きの如く『引き寄せる』!!

 

「最後まで油断するなって事だ!!」

 

そして、シグナムとの距離が1mまで縮まると、

 

「オラァ!!」

グオオン

「わああああ!?」

ズドオ

 

背負い投げの要領で、シグナムを地面に叩きつけた!

 

「くっ!まさかあんな荒技を…………」

「まあ、お前があれを出さなかったら、分からなかったがな。で、そいつをもとの状態に戻すのに何秒かかる?2秒か?3秒か?」

 

起きあがるシグナムに、着地した承太郎は問いかける。

 

「戻ったと同時にスタープラチナの拳をたたきこむ!かかってきな!決着をつけるぜ!西部劇のガンマン風に言うと、『抜きな!どっちが素早いか試そうぜ』というやつだぜ…………!」

「!!ああ…!」

 

言うと、シグナムはシュランゲフォルムのレヴァンティンを構える。

 

[シュベルトフォルム]

「紫電―――」

「オオオオオ…………」

 

カートリッジをロードし、レヴァンティンに炎を纏わせるシグナム。承太郎も、スタープラチナの右拳に力を溜める。

 

そして――

 

 

 

 

 

 

 

 

「一閃!!!」

「オラァ!!」

 

二人の渾身の一撃が、同時に放たれる!

 

だが、シグナムはある事に気づく。スタープラチナの右拳だ。

 

スタープラチナの右拳は、人差し指と中指をまっすぐに伸ばした形をしている。

 

なぜ、そのような形をとるのか?

 

シグナムがそう考えた時――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この戦いを見ていた八神 はやては、後にこう語る。

 

 

 

「承太郎さんの『勝因』は―――

 

 

 

 

 

シグナムのおっぱいを『突っついた』ことやッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

流星指刺(スターフィンガー)!!」

ドギャン

「なっ!」

ボゴオ

「か…………はッ」

 

勢いよい指が『伸びて』、シグナムの胸を穿ち、シグナムはそのまま吹っ飛び、気絶してしまった…………

 

 

 

 

 

空条 承太郎VSシグナム

 

 

WINNER―空条 承太郎!

 

 

 

←to be continued...




番外編です。
・サブタイトルは「ハトと女の子」から。

・フリードと承太郎。西洋の竜って逆鱗があるのかなぁって考えてのやり取り。フリードって特にツルツルな見た目なので、ウロコあるのかなって思って(笑)

・承太郎VSシグナムはにじファン時代でお気に入りだったけれど、話の流れで今回番外編として掲載。シュランゲフォルムを引っ張るシーンがお気に入り。

・流星指刺は、原作では二回しか出なかった技なので、使っちゃいました。はやての語りは、間違ってはいません(笑)

では、次回からの第二章をお楽しみに!


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第2章 EVAの世界
#25/エヴァンジェリンが来る ①


男が目を覚ますと、そこは液体で満たされた、狭い筒状のガラスだった。

 

 

 

 

 

―――おかしい……オレはあの時死んだはずだ………なのに………なぜ………なぜ生きている………………?

 

 

 

 

 

男がそう思っていると、白衣を着た男と、制服を来た女が歩いてきた。どちらも、にたような紫色の髪をしていた。

 

 

 

 

 

何かを話しているようだが、自分から遠いので、よく聞き取れない。

 

 

 

 

 

だが、近づいてきた時、ある言葉を聞き取ることができた…………

 

 

 

 

 

―――実験は、成功したようだな。

 

 

 

 

 

それを聞いた途端、男は驚愕と同時に、怒りがこみ上げてきた。

 

 

 

―――『実験』だと?

 

 

 

―――まさかこいつらは!自分の「利益」のためにッ!オレを蘇らせたのかッ!!?

 

 

 

―――そんなことのためにッ!死者の眠りを!!魂を冒涜したのかッ!!?

 

 

 

―――許さねえッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

男は自分の『能力』を出して、叫んだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「スティッキィィィイイイ!!フィンガァァァアアアアアズッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

#25/エヴァンジェリンが来る ①

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新学期

『2年A組』改め『3年A組』

 

 

「―――という訳で、今日からこのクラスの副担任になる『東方 仗助』だ!どうぞよろしく!」

「「「「「「「よろしくお願いしまーーーす♪」」」」」」」

 

黒板に名前を書き、自己紹介をすませる仗助。全員が頭に好奇の視線を送るが、口には出さなかった。いや、出せなかった。

 

(副担任ってマジだったんだな………)

(まあ、木乃香やA組のダブルスピーカー(ハルナと和美)に頼んで全員に連絡済みだから、髪型については大丈夫だろ。)

 

既に、仗助の噂はクラスどころか学校中に広まっていた。1度ブチ切れて暴れたおかげで対策はばっちりであった事は、何とも皮肉である。

 

「ん………?」

 

ふと、隣の席の生徒が気になった徐倫。

 

明らかに自分よりも年下に見える容姿と身長。足下まで届くくらい長い、ウェーブのかかった金髪の少女―――『エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル』だ。

 

だが、彼女はあまり教室にいるときがないし、徐倫も話したことは少なかった。

 

その彼女が、何故かネギを強く睨んでいた………

 

 

 

コンコンッ

「ネギ先生、それに東方先生、今日は『身体測定』だ。A組も、すぐに準備をするように。」

「あ、そうでした。ここでですか?」

「わかりました。わざわざありがとッス。」

 

ウェザーが来て、二人に言う。すると、

 

グィイ

「わっ!?」

「聞いたなお前等。オレたちは『外出てるから』さっさと準備しろよ〜〜」

『は、は〜い……』

 

ネギの襟をつかみ、そのまま外へ出ていった仗助。どうやらネギをからかおうとしていたのが数名いたらしく、落胆していた……

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「あれ?今日まきちゃんは?」

「ん?そういえばいないね………?」

「身体測定アルから、サボったとちがうか?」

 

「…前から思ってたけど、スバルって……」

「スタイルいいです………」

「本当………何で毎日あんなに食べて、全然スタイルが崩れないんだろ……?」

 

身体測定が始まり、全員が下着姿となり、雑談をしながら体重計や身長計へ並ぶA組一同。

身長計を頭に強く「コンッ」と当てたり、体重を重くしたりするイタズラをする輩がおり、結構騒がしいことになっていたが………

 

「あれ?スバル、その左肩のアザ………?」

 

ふと明日菜は、スバルの左肩に『星形のアザ』がある事に気がついた。

 

「ああ、コレ?小さいころ、気づいたら付いていたの。」

「そのアザって、確か………」

 

明日菜がちらりと徐倫の方を見る。徐倫の左肩にも、同じ形状のアザがあった。

まあ、偶然似たようなアザが付いたのだろうと自分で完結し、身体検査に戻った。当の徐倫は、「指摘されたらどうしようか」と、内心焦っていたが……

 

(まだ時期じゃねーと思うし………教えるのもメンドーだからなぁ………)

「ねえアスナ、そういえば、最近寮で噂になってるアレ、どう思う?」

「ああ、アレね。」

「なんか胡散臭いよね~。」

 

ウェーブの掛かった長い髪の柿崎 美砂(かきざき みさ)が、桜子や、黒髪を短く切りそろえた釘宮 円(くぎみや まどか)と話すのを、偶然耳にするスバル。

 

「…………アレって?」

「ああ、スバルは寮暮らしじゃないから、知らなかったわね。」

「結構前からウワサになってるんだが、満月の夜に寮の桜並木に、ボロボロのマントを着た吸血鬼が出るらしいんだよ。まあ、よくある怪談だとは思うがな……」

 

スバルの疑問に、徐倫と千雨が答える。

周りでは、吸血鬼の話で盛り上がっているが、何故だか木乃香がチュパカブラの話をし始めていた。

 

「……バカらしい。吸血鬼なんている訳ないじゃない。」

「そうだよねぇ~」

 

明日菜も話に加わり呆れていると、スバルも賛同する。

 

だが、

 

「………いや、いるぞ吸血鬼。」

「「!!?」」

 

いきなり徐倫に言われ、明日菜たち二人は驚く。

 

「私ら『ジョースター家』の宿敵は、吸血鬼だったらしい………実際、親父や『ジョセフじいちゃん』は、戦ったことがあるしな。」

「私の『波紋』も、元々は吸血鬼と戦うための技術だ。まあ、私は戦ったことないけど。」

「「ま……マジっすか?」」

 

衝撃の事実に目が点になる二人。

 

 

 

実際、徐倫の曾祖父のジョセフ・ジョースターや、曾々々祖父にあたるジョナサン・ジョースターは、波紋を使い吸血鬼やゾンビを倒したし、さらには、それをも超える『柱の男』や、それから進化した『究極生命体(アルティミットシイング)』すら退けたという。

 

 

 

「……で、でも、確かに魔法使いや異世界人、超能力者(スタンド使い)までいたんだから、吸血鬼がいてもおかしくないわね……!」

「某世界を大いに盛り上げる団長が泣いて喜ぶような言い方だな………」

 

明日菜に対して、千雨が訳の分からないこと(少なくとも、スバルにはそう聞こえた)を言っていると、

 

「そのとおりだな、神楽坂 明日菜。」

「「「「?」」」」

 

いきなり幼い感じを残した声がした。

振り向くと、そこにはエヴァンジェリンがいた。

 

「ウワサの吸血鬼は、お前らのような元気で『()()』のいい女が好きらしい……十分気をつける事だ………」

「え……?」

「はあ…………?はい………」

(………珍しいな……エヴァンジェリン(こいつ)から話しかけてくるなんて……………)

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

(あれ?何だろう……この感じ………)

「ん?どうした、ネギ?」

 

一方、教室の外で何かを感じ取るネギと、それを気にかける仗助。そんな時――

 

ダダダダダッ

「「ん?」」

「せ、先生ーーッ大変やッ!まき絵が…まき絵がーーッ」

 

保険委員の――髪と目の色素が薄い少女――和泉 亜子(いずみ あこ)がかけてくる。

 

「えーと、…『和泉』、だったか?」

「どうしたんですか和泉さ――」

 

まだ生徒の名前を覚えきれていない仗助が何とか名前を思い出し、ネギが亜子に聞こうとしたが、

 

ガラッ

「何!!?」

「まき絵がどーしたのッ!?」

「わあぁ〜〜!?」

「…………グレート」

 

突然教室のドアと窓が開き、目の前に下着姿のA組一同が現れた…………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

保健室

 

 

ネギと仗助、そして明日菜やスバルたちが保健室へ行くと、ベッドでは少し顔色の悪いまき絵が、すやすやと寝息をたてて眠っていた。

 

「ど……どーしたんですかまき絵さん!?」

「何でも、『桜通り』で寝ているところを見つかったらしいわ……まあ、軽い『貧血』程度で、何の異常もないわ。」

(『桜通り』で……?)

 

保険医の話を聞き、『桜通り』という場所に、先ほどの話を思い出すスバルたち。

ふと、スバルは自分の足に何か『つつかれる』感触がしたので、足下をみる。足下には、「緑色のハンカチ」が落ちていた。それが、角の所でちょんちょんとスバルの足をつついていた。

 

「……あ。」

「………」

 

徐倫や明日菜も気づき、スバルはハンカチを拾うと、ネギたちとアイコンタクトを取って保健室を出た。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

保健室前の廊下

 

 

「で、お前がやられる程の相手だったのか?」

 

徐倫はハンカチ―――否、ハンカチに取り付いた『グロウン・キッド』に話しかける。ハンカチに取り付いたため、手のひらサイズだが。

 

『フム、相手ハ「三人組」デ、一人ハ背ガ低く、ボロボロノマントヲ着テイタガ、後ノ二人ハ顔ガ良く見エナカッタガ、ソノウチ一人ハ『スタンド使い』ダ。近接パワー型デ、手強カッタ。私ハ、ソイツニヤラレタノダ。』

「三人組……それに、ボロボロのマントって、『吸血鬼』のウワサと一致するね………」

「犯人は『スタンド使い』か……」

『フム、能力マデハ分カラナカッタガ、他ノ二人モソウダト考えラレルな……』

「いえ、そうとも言い切れないんです。」

 

ネギの一言に、全員がそちらを向く。

 

「まき絵さんから、ほんの少しですが、確かに『魔法の力』を感じました。多分ですが、『魔法使い』と『スタンド使い』が手を組んで、何か悪いことを企んでいるかと思います……」

「………やれやれだわ。そうなると、かなりヘヴィーな状況ね……」

 

 

 

 

 

一応、ネギと仗助が『桜通り』あたりを見回ることになり、その場は解散となった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

 

夜の闇があたりを包み、街灯や、自販機の明かりのみが、狭い範囲を明るく照らすだけとなる。

 

夜空には月が浮かんでいる。今宵は満月だ。

 

そんな中、宮崎 のどかは、寮までの道を一人で歩いていた。

元々気が弱く、引っ込み思案な彼女は、『桜通りの吸血鬼』のウワサを思い出し、ビクつきながら歩いていた。

 

「こ…こわくない〜〜♪……こわくないです〜〜♪こわくないかも〜〜♪」

 

怖いのか怖くないのか、よく分からない歌を震えた声で口ずさみながら歩くのどか。

その時、

 

「ねえ」

「やひゃあッ!?」

ビクゥッ

 

いきなり背後から声をかけられて、思いっきり驚くのどか。話しかけた本人も、のどかの驚きぶりに、逆に驚いた。

 

「ご……ごめん、脅かすつもりはなかったのよ……?」

 

のどかが振り向くと、知っている女性だった。

期末試験後に、スバルやネギたちから『魔法』について聞いたときに、一緒にいたオレンジの髪をツインテールにした人だ。

 

「あ、りゃ、りゃんすたーしゃんッ!?」

「いや、ごめん。一人で歩いてたから危ないなぁって思って……」

 

まだ動揺しているのか、噛み噛みで話しかけた相手―――ティアナと話すのどか。

 

「な、なんなら寮まで送るわよ?」

「あ、ありがとうございま―――」

 

その時、二人はただならぬ気配を感じ取った。

 

 

 

――!何かいるッ!?

 

 

 

振り向くと、街灯の上にそれはいた。

 

絵本なんかの魔法使いがかぶるようなとんがり帽子に、ボロボロのマント、そしてたなびく長い金髪―――

 

「28番宮崎 のどかか……もう一人は知らないな……まあいい、悪いけど、少しだけその血を分けてもらうよ!」

 

いうと、ソイツは二人に向かって飛び出してきた!

 

「なッ!?」

「キャアアアア!い、『イノセント・スターター』ッ!!」

 

のどかは何とか『イノセント・スターター』を呼び出し、左腕から『子亀』を三匹放つ!

だが、ソイツはひらりと子亀をよけて、さらに近づいてくる!

 

「!?………スタンド使い!?」

「見えずとも、『気配』と『目線』で軌道くらいわかるわ!」

 

ティアナの叫びに答えるかのように、ソイツが叫ぶ。

 

その時!

 

 

 

 

 

「待てぇぇええッ!」

「ん?」

 

突然制止の声がして、踏みとどまる。のどかは完全に気を失い、ティアナがそれを受け止める。

 

「ぼ…僕の生徒に何をするだァーーーーッ(あ、噛んじゃった………)」

(噛んだ……)

(うわぁ、大事なとこで噛んだ………)

 

来たのは、杖で低空飛行するネギ!すでに呪文も唱えている!

 

「ティアナさん!」

「ええ!」

 

ティアナはのどかを連れて下がると―――

 

魔法の射手(サギタ・マギカ)戒めの風矢(アエール・カプトゥーラエ)!!」

 

風の矢を吸血鬼に向かい放つ!

 

 

しかし!

 

 

「もう気づいたか………氷楯(レフレクシオー)……」

バキキキキィイイン

「「!!」」

 

薬品のようなものの入った小さなフラスコを放ると、ネギの放った風の矢が、すべて跳ね返される!

 

「あ、あいつ!」

「やっぱり犯人は………『魔法使い』ッ!?」

 

吸血鬼の正体に驚く二人。

その時、はじいた衝撃で、吸血鬼のとんがり帽子が飛ばされる―――

 

 

 

「こ、子供……?」

「えッ!?き、君はウチのクラスの…エヴァンジェリンさんッ!?」

 

 

帽子の下にいたのは、ウェーブのかかった長い金髪に、幼い容姿の少女―――エヴァンジェリンだ。

 

 

 

 

 

「ふふ…十歳にしてこの『魔力(ちから)』………さすがに『ヤツ』の息子だけはある………」

 

出血した自分の手をなめながら、エヴァンジェリンは怪しく笑う…………

 

 

 

 

 

←to be continued...




25話、そして第二章の始まりです。
・サブタイトルは『ブチャラティが来る』から。元ネタの通り、冒頭で来ましたが………

・手のひらサイズのグロウン・キッドはお気に入り。布ならリボンでもOKなので、ハンカチでも可です。

・「何をするだァーーーーッ!」は、途中で思いつきました(笑)

では、次回をお楽しみに!


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#26/エヴァンジェリンが来る ②

「ふふ…十歳にしてこの『魔力』………さすがに『ヤツ』の息子だけはある………」

(……『ヤツ』……?ネギくんのお父さんのこと?確か『サウザンド・マスター』って…………)

「な……何者なんですかあなたはッ!?僕と同じ魔法使いなのに、なぜこんなことを!?」

 

エヴァンジェリンに向けて杖を突きつけ、問いかけるネギ。ティアナも、待機状態の『クロスミラージュ』を取り出す。

 

「簡単なことだ……この世には……『いい魔法使い』と『悪い魔法使い』がいるんだよ……先生。」

 

言うと、エヴァンジェリンは懐から小さなフラスコと試験管を取り出す。中には、それぞれ違う『薬品』が入っている。

 

氷結(フリーゲランス)武装解除(エクサルマテイオー)ッ!!」

 

それを投げつけ、魔法を発動させる!

 

「うあっ」「きゃあッ!」

パキィィイイイン

 

『武装解除魔法』を何とか防ぐネギだが、服の一部が『凍り付き』そのまま砕けてしまう。ティアナはクロスミラージュを落としてしまい、それどころか―――

 

 

「て、ティアナさん、大丈夫で……ってわあっ!?」

「って!デバイスはともかく、何で服まで脱がす必要があるのよォォォオオ!?」

 

のどか共々、『全裸に』なってしまった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

#26/エヴァンジェリンが来る ②

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜通り近くの道

 

 

「うちのクラスの出席番号26番『エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル』………そいつが『吸血鬼』の正体か!」

 

バイクを脇に止め、またがりながらネギからの電話で吸血鬼の正体を聞いた仗助。どうやら、エヴァンジェリンはこちらに向かって逃走中らしい。後から来た明日菜やスバル、徐倫たちにのどかとティアナを任せて、ネギも追跡しているとの事だ。

 

「分かった、オレもそっちに向かうぜッ!!」

 

そう言って携帯電話を切ると、桜通り方面へバイクを走らせる。

 

しばらく走らせると、歩道橋から『黒マントの少女』が飛び降りたかと思うと、そのまま飛んでいったのを見た。後ろからは、ネギも走ってきている。

 

「ムっ、あれだな!ネギッ!!」

「仗助さん!」

「そのまま杖で『飛べ』!オレも()()()()()()ぜ!!」

 

ネギは躊躇うも、言われた通りに飛んだ。心配になって仗助の方を見ると、彼はスタンド『クレイジー・ダイヤモンド』を出していた。

ネギは最初、仗助が『クレイジー・ダイヤモンド』を出した意味が分からなかったが、すぐに分かった。何故なら―――

 

「ドラァッ!!」ドン!

「ええッ!?」

 

バイクから、ネギの杖まで『跳び』、そしてそのまま杖をスタンドで『掴んだ』!操縦者を失ったバイクは、そのまま壁にぶつかり、大破する。

 

「うわっとと……な!何やっているんですかッ!?」

「ああ、バイクなら気にしなくて平気だぞ。中古だし。」

「ちっがーーうッ!!」

 

バランスを保ちながら、仗助の的違いな返答に思わず叫ぶネギだった。

 

「で、あいつ、エヴァンジェリンが吸血鬼なのか?」

「え、ええ。でも、何かおかしいんです………」

「『おかしい』?」

「はい……スゴ腕の魔法使いにしては、魔法の威力が弱かったんです。それに、さっきから魔法の発動にわざわざ魔法薬を触媒に使っていました……何でか分かりませんが、あの人は魔力が全然弱いんです………」

 

仗助には魔法のことは分からないが、力の弱さを理由に『勝利』を確信しているネギを心配する。ふと見ると、振り返ったエヴァンジェリンが不敵な笑みを浮かべていることに気が付いた。

 

「(こりゃ、何かあるな………)ネギよぉー、『魔力』とやらが『弱い』からって、油断したらケガするぜェ……ドラァッ!!」

ブオンッ

 

言うと、仗助はクレイジー・ダイヤモンドに『何か』を持たせて、それを投げさせた。

何かはヒュンヒュンと音を立てながらブーメランさながらに回転し―――

 

ゴキンッ☆

「タコスッ!?」

 

完全に油断していたエヴァンジェリンの脳天に命中し、エヴァンジェリンそのまま近くの建物の屋根へ落下していった。

 

「油断していると、ああなる………あいつ、何か企んでて、それにお前があっさり引っかかった事で油断してたみてーだ。」

「い、意外と無茶するんですね……」

 

 

 

二人はエヴァンジェリンが落ちた建物まで降りると、エヴァンジェリンは後頭部にできたマンガみたいなタンコブを、涙目で押さえていた。

周りには、割れた瓶やフラスコが散乱し、マントもどこかへ飛んでいってしまっていた。

 

「くっ……東方 仗助かッ!貴様、この私に何てことを………っ!?」

「へっ!不良生徒に『教育的指導』だよ!!『PTA』には内緒だからな?」

「内緒ならやるなよッ!?冗談抜きに痛かったんだぞッ!!」

 

さっきまでのシリアスな雰囲気はどこへやら、涙目で叫ぶエヴァンジェリン。完全に子供にしか見えない。

 

「え、……ええと、もう『マント』も『触媒』もないあなたに勝ち目はありません。教えてもらいますよ……何でこんなことをしたのかを……!」

 

少し入りづらい雰囲気だったが、エヴァンジェリンに再び左手の杖を突きつけるネギ。

だが、エヴァンジェリンは冷静な顔に戻ると――

 

「ふ……『これ』で勝ったつもりなのか?」

「!そうだ……ヤツには二人の仲間が……!」

 

仗助が言うと同時に、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ボンッ

 

 

 

 

 

「「!!」」

 

杖を持ったネギの左手が『切断』された!いや、切断ではない!

良く見ると、断面に『金具』がいくつもついており、その先には『取っ手』らしきものもある。そう、これは―――

 

「じ…………『ジッパー』……?はっ」

 

見ると、建物の屋根にも同様に『ジッパー』がひっついており、そこから腕―――いや、『男』が出てきた。

 

おかっぱに切りそろえた黒髪に、両コメカミにはヘアピンをつけている。顔立ちは整っているが、一目で『日本人』ではないことが分かる。ジッパーがそこら中に付き、オタマジャクシのような水玉柄の白いスーツを素肌に着ている。見たところ、二十代ではないだろうか?

 

「てめぇ…………スタンド使いかッ!」

ドバババ!

 

返答を待たずに、仗助は『クレイジー・ダイヤモンド』の拳を放つ!だが、男もスタンドを出して防御する!

まるで、目元まで帽子をかぶったような頭部に、拳や首、腰や足にまでついたジッパーが印象的なスタンドだ。

 

「ネギッ『(タスク)』だ!タスクで狙い撃て!!」

「は………はい!」

 

ネギは残った右手の爪を回転させて、エヴァンジェリンを狙う。

だが!

 

 

 

ガシィッ

「なっ!?」

 

いきなり後ろから右手を掴まれた。そちらを向くと、緑色の長髪に、機械的な耳飾り(?)をつけた少女がいた。

 

「き…………君はうちのクラスの…………」

「すみませんネギ先生…………『マスター』の命令なので…………」

「く……どういうことだてめぇら………」

 

驚愕する二人に、エヴァンジェリンの『勝ち誇った』声が聞こえた。

 

「ふふ、紹介しよう先生方。私の従者(パートナー)の『絡繰 茶々丸(からくりちゃちゃまる)』とブ」「『ブローノ・ブチャラティ』だ。エヴァたちが世話になってるみたいだな。」

 

エヴァンジェリンの言葉を遮るように、男―――ブチャラティは自己紹介をする。

 

「ってブチャラティ!私を差し置いて自分で言うなッ!!」

「文句を言うんじゃない。こんなことに付き合ってやってんだ。」

「こ………『こんなこと』だと…………?私はこいつの親父、『サウザンド・マスター』に魔力を極限まで封じられたうえに………もーーーーーー『20年』もあのお気楽なクラスでお勉強させられてんだよ!!どーしてくれるんだッ!!!」

「ええっ!?」

「って何でそこでネギに振るんだよ!?」

 

いきなりネギに掴みかかるエヴァンジェリンにつっこむ仗助。だが、これで事情は分かった。

 

「………つまりてめぇは、ネギに親父の尻拭いをしろってのか?」

「…まあ、そんなところだ。このバカバカしい呪いを解くには、『ヤツ』の血縁者の血が必要なんでな。そのために、わざわざ危険を冒してまで血を飲んできた。」

「で、俺はそれにつき合わされてるってわけだ。しかたなくな………」

「大変だな……だがなエヴァンジェリン、こんな言葉を知っているか?」

「?」

 

エヴァンジェリンを見据えて、仗助は言った。

 

 

 

「『相手が勝ち誇ったとき、そいつはすでに敗北している。』!」

「!!」

 

仗助が言い放った瞬間、エヴァンジェリンは『ある男』と仗助がかぶって見えた。そう、減らず口ばかり叩く、気に食わないあの『トッポイ男』と―――

 

 

 

 

 

「!マスターッ!!」

「!?」

 

茶々丸の叫びで我に帰ったエヴァンジェリンは、自分に向かって飛んできた『何か』を避けるも、そのせいでネギから離れてしまう。

飛んできたそれは仗助の元まで行くと、

 

カシィィイン

 

仗助の持っていた『グリップ』と合体して、ようやくそれが何なのかが分かった。

 

「ば………『バイクの』…………」

「『ハンドル』………?」

「ああ……さっきお前に投げたのもこいつだ。オレの『クレイジー・ダイヤモンド』は、『破壊されたものを直す』能力!だがなぁーー、こいつはお前に『攻撃するため』に直したんじゃぁーねーぜぇ~~~」

 

仗助の言うことがいまいち分からないエヴァンジェリンと茶々丸だが、ブチャラティはある仮説を立てた。

 

(『直す』能力?…………『バイクのハンドルを直した』……いや、()()()()()()()………?まさか!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウチの居候に何すんのよォーーーッ!!」

ドグシャァ

「へぶぅッ!?」

「マスター!?」

 

いきなり後頭部(しかもさっきコブができた位置)に跳び蹴りを喰らうエヴァンジェリン。蹴ったのは―――

 

「あ………『アスナさん』!?」

「大丈夫ネギくん…ってその腕!?」

 

来たのは、明日菜にスバル、そして、飛んできた『仗助のバイク』にまたがった徐倫だ。

 

「な、直したのは………「バイクそのもの」か………仲間を連れてくるために!」

「信じてたぜぇ~~徐倫~~!『ハンドルのないぶっ壊れたバイク』を見て!そいつでオレたちのとこに来るってよぉ~~~~~!」

「まあね、振り落とされないように踏ん張ったから大変だったわよ……で、あんたたち、覚悟はいい?」

 

エヴァンジェリンに向けて『ストーン・フリー』の拳を向ける徐倫。完全に、エヴァンジェリン側の旗色が悪かった。

 

「くっ、おのれ神楽坂 明日菜……!今日は引いてやる!!だが、次はないと思えよっ!!」

 

そう言って、ブチャラティが出てきた穴から退散するエヴァンジェリンと茶々丸。だが、ブチャラティは、ネギに近づいてくる。

 

「あ、あんた!ネギに何する気よ!?」

 

明日菜はネギをかばうように身構えるが、ブチャラティは、切断したネギの左手を拾うと、

 

「見せてみろ……今から引っ付けるから。」

「え?」

 

言うと、ネギの左手の切断面同士をくっ付けて、ジッパーを『閉じる』ブチャラティ。「すまなかったな………」とだけ言って、穴へ行くと、同様にジッパーを閉じた。

 

「な………何だったの…あいつ………」

 

誰に言うでもなく呟いた明日菜の声は、夜の闇に消えていった………

 

 

 

 

 

←to be continued...




26話です。
・ブチャラティはエヴァサイド。エヴァに付く理由等は、追々出す予定です。

・バイクに乗って援軍参上!は、「ハイウェイ・スター」を読んで思いついた展開です。結構お気に入りです。

では、次回をお楽しみに!


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#27/オコジョはネギ・スプリングフィールドが好き ①

グリーン・ドルフィン・ストリート麻帆良 206号室

 

 

「今、徐倫からメールがきた。エヴァンジェリンたちと交戦したが、逃げられたらしい………」

 

エヴァンジェリンに『全裸』にされたティアナを送り届けに来た千雨。一応自分の服を着せて玄関前まで来たが………

 

「………あのチビっ子がああああ………次にあったら…………次にあったらぁぁ……」

「…………気持ちは分かるが、とりあえず落ち着け、な?」

 

全裸にされた怒りで、全く聞いてなかった。若干、セインとディエチも引いている様子であった。

 

(しかし『吸血鬼』か……私の『波紋』が通用すればいいんだが…………)

 

千雨は吸血鬼相手の実戦経験がなく、そもそも、エヴァンジェリンが『石仮面』由来の吸血鬼であるかどうかすら怪しい。一抹の不安をかかえた千雨はふと、自分に刺さる視線に気が付いた。見ると、そこには自分を見つめる30cmほどの小さな影があった。

赤い髪を四カ所で止め、妙に露出の多い黒い衣装に蝙蝠のような翼と、長い尻尾らしきものを生やしたその少女は、確か最初の挨拶の時に『アギト』と紹介されたはずだ。(千雨はその名前を聞いて『どこかのラーイダみたいな名前だな。』と思ったものだ。)

 

「………なんだよオチビさん、人をジロジロ見て?」

「んー………いや、何かアンタ、チサメだっけ?「雰囲気が似てるなー」って思って………」

 

アギトは首を傾げるように答えた。

 

「………似てる?誰に?」

「うん、『ルールー』にさ………何となくだけど………」

 

千雨は最初、『ルールー』が誰の事なのかわからなかったが、その名前から今この場にいない1人の少女に行きついた。

 

「……ああ、あの『ルーテシア』って子にか……?けど、何でそー思うんだ…?」

「いや、本当に何となく、だよ………アタシ自身にもそれはわからないよ……」

 

アギトと千雨は、互いに首を傾げあった………

 

 

 

 

 

#27/オコジョはネギ・スプリングフィールドが好き ①

 

 

 

 

 

翌日

 

エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルは現在、屋上で授業を思いっきりサボっていた。

ネギの父親、『千の呪文の男(サウザンド・マスター)』にかけられた『呪い』の影響で学校に来ているものの、正直20年も中学生をしているので飽き飽きしていたため、彼女はサボりの常習犯であった。

ついでに言うと、『吸血鬼』なので昼間は眠たくて仕方がないので(日光は平気らしい。)寝ぼけ中でもあった。

 

「………しかし、今のぼーやの周りは、妙に『強固』だな…」

 

寝ぼけながらも、ネギの『血』を狙うべく考えを巡らせるエヴァ。

改めてネギの周囲の状況を整理してみると、スタンド使い数名に『管理局』の魔導士たちが10人以上いる。その中には()()ジョースターの一族が3人もいるのが厄介だ。

 

()()()()は「侮れない」からな………ブチャラティと茶々丸だけで切り抜けられるか………む?」

 

その時、エヴァンジェリンは「誰か」が入ってきた気配を感じ取った。

サウザンド・マスターにかけられた呪いには『オマケ』が付加されており、関東の魔法使いの総本山といえるこの麻帆良学園都市を狙う者から守る『警備員』の役割を押し付けられているのだ。

この学園都市の周囲には『結界』が張られているのだが、たった今、その結界を破って侵入してきた者の気配を感じ取ったのだ。

 

「誰か、侵入してきたのか………仕方ない、調べるか………まったく、『ナギ』のやつめ………厄介な『呪い』をかけおって………」

 

ぶつくさ文句を言いながら、エヴァンジェリンは屋上から降りて行った。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

その日の昼休み カフェテラス

 

「あのブチャラティってやつ、ここ数年に麻帆良に来たようね。」

 

ドリンクのストローに口をつけながら徐倫と話をする『聖ウルスラ女子高』の制服を着て鳥の足跡模様のヘアバンドを巻いた女子生徒は、徐倫から聞かれた「ブローノ・ブチャラティ」に関する情報を教えていた。

 

「不良に襲われてる所助けてもらったりしてる子がいてさー、何か一部にコアな『ファン』がいるみたいねー………詳しくは知らないけれど、『桜が丘』の方に住んでる事は分かったわ。」

「ん、そんだけ分かればいいわ………ありがとうグェス。」

「また頼ってね♪」

 

グェスはそういうと、コーヒーのプラスチックカップを手に去っていった。

 

エヴァンジェリンの情報を集めるにあたり、『魔法関連』をネギやスバルたちに任せ、徐倫や千雨は『スタンド関連』、つまりブチャラティの情報を集めていた。

朝、グェスに名前と特徴を知らせ「コイツの事、知ってる?」と、何気なしにメールで聞いたところ、あっという間にウルスラ校中を聞きまわったらしく、昼休みにはブチャラティの情報を教えに来たのだ。以外にも、顔が広いらしい。

 

「現時点で、アイツは『スタンド使い』、『ジッパーを引っ付けて、開くことで切断・切開する能力』、『桜が丘に住んでいる』、『エヴァンジェリン側のスタンド使い』………って事は、分かったな………」

「よぉ徐倫。元気か?」

 

徐倫がブチャラティの情報を整理していると、アナスイが話しかけてきた。とたんに、徐倫は不機嫌な顔になった。

 

「この間は情けない姿を見せちまったなぁー………あン時の挽回は、絶対にするから………」

「ああ、期待してるよ。」

 

相変わらず口説いてくるアナスイに棒読みで返す徐倫。スタンド使いとして頼りにしているが、正直人間としては尊敬に値しない。

 

「そうだ、今度、食事でも一緒に………」

「それ以外口を開くなら、オヤジにチクるぞ?」

「あ、すいません………」

 

何度も冷たくあしらわれてもヘコたれないアナスイでも、さすがに承太郎には敵わない。そのまま立ち去る徐倫を見送るしかできなかった。

哀れなり、アナスイ。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

同じ頃、中庭ではネギ、明日菜、スバル、千雨が話し合っていた。

なお、まき絵とアキラは裕奈たち、のどかは夕映とハルナに誘われているため、この場にはいない。

 

「魔法使いの世界の昔話に倣って、魔法使いは通常、サポートするパートナーとして従者(ミニステル・マギ) と契約を結んでいるんです。」

 

サンドイッチを片手に、話し始めるネギ。

 

「あまり戦いになる事はないので、今では恋人づくりの口実になっているみたいですけど………」

「どうやら、『魔法使いと従者(パートナー)』っていうのは、『前衛』と『後衛』の関係性になっているみたいだね。」

 

3個目の超包子特製・特大肉まん(通常の3倍サイズ)を手に、スバルが話し始める。

 

「昨夜はあのブチャラティって人と茶々丸さんに、ネギ君と仗助さんの魔法とスタンドの動きを封じられて、身動きが取れない内にエヴァンジェリンさんに接近されちゃったからね………本来は、従者が動きを封じている間に、魔法使いが呪文を唱えるっていう戦い方だと思うよ。」

「成程………」

 

ネギと千雨は、納得したように頷いた。明日菜だけは、いまいち話についていけている様子ではなかったが………

 

「よーするに、『多勢に無勢で襲ってくるヒキョーモノ』って事ね。」

「アスナさん………」

「うん、アスナはその認識でいいと思うよ………」

「あー、今バカにしたでしょー!」

 

微妙にズレた解釈をする明日菜に呆れる一同。

 

「けれどまあ、神楽坂の意見も、当たらずとも遠からずだな………今までネギ先生の関わってきた戦いは、殆どが『単身』で攻めてきていたからな………コンビネーションで攻めてくるのは、初めてのケースだ………」

 

思えば、『(グロウン)・キッド』も図書館島のゴーレムも、単身で攻めてくる相手ばかりであった。『数』で攻めてきたのはオエコモバくらいだろうが、あの時は承太郎たちもいたので、大した問題にはならなかった。

その時、

 

「ぅアスナさーーーーーーーーーんッ!!」

「わーーー!?」

 

突然、あやかが乗り込んできた。怒鳴りながら明日菜につかみかかると、ぶんぶんと揺さぶり始めた。

 

「ネギ先生が襲われたって聞きましたわよ!?あなたが付いていながら、何をしてますのッ!!」

「お、落ち着いてよいいんちょ………」

 

何とかあやかを落ち着かせる明日菜とスバル。あやかは明日菜から手を放すと髪を手櫛で整えた。

 

「まったく………ネギ先生や宮崎さんを『矢』で射抜いた輩もいるというのに………これ以上、ネギ先生に負担をかけたくはありませんわ………」

「それは私も同じだけど………」

「それで、相手は何者なんですの?」

「それが………」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

その日の夕方 グリーン・ドルフィン・ストリート麻帆良

入り口前

 

「あ、ギン姉!」

 

マンションに徐倫と明日菜と一緒に向かっていたスバルは、マンションの入り口でギンガとノーヴェを見つけ、大声で声をかけた。見たところ、大量の袋を持っているため、買い物の帰りなのだろう。

 

「あらスバル、今帰り?」

「うん。」

「って、あれ、ジョリーンに、アスナ、だっけか?」

 

まだうろ覚えな様子であったが、ノーヴェが2人の名前を呼んだ。

 

「所で、今日はどうしたの?」

「うん、ちょっと作戦会議を………」

 

入り口に入り、ギンガと話し始めるスバル。木乃香をはじめとして『魔法』の事を知らないメンツが寮には多いので、うかつに話ができないために、六課の部屋を使わせてもらおうというのだ。

 

ギャーーーー!?

そっちいったッスよ!

逃がすな!追ええーーーーー!!

 

206号室の前にまで来た時、一同は部屋が騒がしい事に気づいた。

 

「まったく、アイツら何騒いでんだよ………」

「なんか、チンクの声もするね………どうしたんだろう………?」

 

首をかしげながらも、玄関のドアノブに手をかけるスバル。

 

「待て。」

「徐倫?」

 

だが、徐倫がドアを開けるのを止める。どうしたのだろうと思っていると、徐倫は右手人差し指の指先から『糸』を伸ばし、先端を郵便受けから中に侵入させて、自分は親指を耳に当てた。

 

「?何してんの?」

「しっ………小さい『足音』がするな………人間のモノじゃあないわ………アルフのモノにしても小さすぎるし………ネズミかしら………?」

「え!?」

「い、糸から伝わる『音』を、聞いているの……!?」

 

徐倫のスタンド『ストーン・フリー』の応用法に感心する明日菜達。徐倫は素早くドアの付近に蜘蛛の巣のような『糸の結界』を張り巡らせると、スバルに指示を出した。

 

「玄関の方に駆けてきているようだったわ。スバル、とっ捕まえるから、合図を出したらドアを開けて頂戴。」

「う、うん………」

 

徐倫の指示でドアを開ける体制に入るスバル。そして、

 

「今!」

「OK!」

 

合図と共にバン!とドアを全開にする。瞬間、足元を小さく白い影が飛び出してきて、糸の結界に捕まり縛り上げられた!

 

「!?キュー!?」

 

捕まった白い影は、驚きの鳴き声を上げた。その正体は、白い毛並みの、長い胴体を持った『小動物』であった。何だろうと思い、明日菜が手を伸ばしたその時、

 

「わ~~~~~ストップストップ~~~~~!?」

「え?」

 

玄関の方から声がした。振り返るとそこには、こちらに突っ込んでくるティアナとウェンディの姿が………

 

ドガッ

「「「「ギャーーーーース!?」」」」

 

そのまま激突してしまい、小動物と明日菜は2人の下敷きになってしまった。

特に白い小動物の方は、明日菜、ティアナ、ウェンディ3人分の体重をその小さな体に受ける事となってしまい、押しつぶされて苦しそうな声を上げた。

 

「お、おい、大丈夫か………!?」

 

慌ててノーヴェとスバルが駆け寄り、3人を起こした。その時、激突した拍子に糸が緩んでしまったのか、小動物は素早くその場を去ってしまった!

 

「あ!アイツ!」

「意外と丈夫だな………ていうか、何でフェレットが………?」

 

もう見えなくなってしまった白い影に呆然としつつ、ティアナたちに事情を聴く事にした。

 

「ねえ……何があったの………?」

「う、うん………実は………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのフェレットっぽいのに、私たちの下着の大半を盗まれた………」

「まあ、寸前でパンツとかは全部取り返したッスけど………」

『………えッ?』

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「話によると、アルフが『()()()()のない臭い』に気が付いて、辿ってみたらティアナたちの下着を持ち出そうとしているフェレットみたいなのを見つけて、追いかけまわしていたらしいわ………」

「まあ、おかしな事もあるのですわね………」

 

その日の夜、女子寮の廊下を歩きながら、明日菜とあやか、ネギ、徐倫は、廊下を歩きながら話をしていた。

あやかはネギがエヴァンジェリンに狙われている事を知ると、「吸血鬼」関連で何かわかるのではと思い『SPW(スピードワゴン)財団』に連絡を取ると、心配になってネギに着いて回り始めたのだ。

 

(うーん、フェレット………?)

「ん、どーしたのよ、ネギ?」

「いえ、ちょっと………そのフェレットっていうのが気になって………」

 

首をかしげて考えるネギに明日菜が聞くが、ネギはうんうんと考えていた。

 

「あら、あれは………?」

「え?」

 

ふと、明日菜たちの部屋の前まで来た時、あやかはドアの前に何か『小さく白いもの』が落ちている事に気が付いた。見ると、胴体が細長く、毛がフサフサしている。しかも良く見ると、手足や尻尾まであった。

 

「あー!さっきのフェレット!?」

「いえアスナさん………あれは『オコジョ』ですわ………」

「何でそんなのが、寮の廊下に……?」

「え?『オコジョ』……………?」

 

オコジョと聞いて、ネギはそちらを見る。そして気づいた。

全身傷だらけだが、間違いない。あれは………いや、『彼』は!!

 

 

 

 

 

 

 

()()()()ッ!!?」

「ん?『カモ』?だれそれ?」

 

ネギがいきなり叫んで駆け寄ると、オコジョを抱き抱える。3人はネギの呼んだ名前に疑問を浮かべるが、ネギの手の中のオコジョはぐったりとしながら起き上がり、

 

「ネ………ネギの兄貴ッスか?へへっ……情けないったら………ありゃしないが…………これでお別れみたいでさぁ………………がくっ」

「か、カモくゥゥゥウウウんッ!!」

 

一通り喋ると、自分で『がくっ』って言って気絶した。

 

 

 

 

 

……………あれ?

 

 

 

 

 

「「「喋ったァァァアアアアアッ!! !?」」」

 

 

 

 

 

生涯で『2匹目』のしゃべる動物の衝撃に、3人は叫ぶのであった………

 

 

 

 

 

←to be continued…




27話です。
・サブタイトルは「猫は吉良吉影が好き」から。

・千雨とアギトの会話。この会話の意味はいずれ。

・グェス登場。この世界での彼女は高3です。原作でも『ミュー・ミュー』の時に普通の友達として接していたので、仲はそれなりに良好です。

・カモくん登場。今作でも変態紳士な彼ですが、今回は『相手が悪かった』としか言いようがないです………

では、次回をお楽しみに!


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#28/オコジョはネギ・スプリングフィールドが好き ②

5年前―――

 

イギリス ウェールズの山中

 

 

「くっ………『猫の妖精(ケット・シー)』にも並ぶ由緒正しい『オコジョ妖精』の(おとこ)のおれっちが、こんなチンケな罠にかかるなんて……情けねえ!」

 

草むらをのぞくと、誰かが仕掛けた罠に脚を挟まれて動けなくなった子オコジョがいた。そのオコジョは、脚を挟んでいる罠に手をかけると―――

 

「こんな事じゃ『漢の中の漢』にはなれねえべッ!一気に引っこ抜いてやんよぉおお!!」

 

気合を入れて、罠から脚を引っこ抜こうとし始めた。そんな様子を見てられなくなったのか、少年が草むらから出てきた。

 

「あっ!嘘です!ごめんなさいッ食べないでッ!!」

「大丈夫、罠を仕掛けた大人には僕が言い訳しとくからね。」

「………へ?」

 

オコジョは最初、少年が言ったことが分からなかった。少年は『治癒呪文』をかけると、オコジョに「もう引っかかっちゃダメだよ。」と言い、オコジョを逃がした。

 

 

 

 

 

しばらくすると―――

 

 

 

 

 

「コラッネギ!エモノ逃がしただろッ!!」

ポギャッ

「アイテッ」

「………………」

 

大人に叱られる少年―――ネギを遠くから見て、オコジョは思った。

 

 

 

――この人こそ……『漢の中の漢』だ………!

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

現在

グリーン・ドルフィン・ストリート麻帆良 206号室

 

「―――っていうのが、おれっちとネギの兄貴の出会いなんでさぁー。その後も色々とお世話になりやして………」

「………へー?」

「『漢』……………ねえ………?」

 

ネギとの馴初めを話すオコジョこと『アルベール・カモミール』(通称『カモ』)の話を、冷やかな目で聞いていた明日菜と徐倫、ティアナ。

 

「………そんな兄貴の「友人」であるおれっちを()()()()、姐さん方はどうする気なんでさー?」

 

そんなカモは現在、徐倫の糸で縛り上げられて中吊りにされており、その下にはカセットコンロが置かれ、ぐつぐつと湯が煮えたぎる鍋が設置されている。

ネギは徐倫達の後ろで少し不安そうな面持ちであるが、千雨とあやかはネギの肩を掴んで「諦めろ」と言わんばかりに首を横に振る。さらに周囲を囲むように、スバルやチンク以下ナンバーズ一同が睨みつけていた。

 

「……かの大泥棒『石川五右衛門』は、『釜茹で』にされて生涯を閉じたそうだぜ?『下着泥棒』さんよォーーー?」

「ごめんカモ君………泥棒は『罪』だから………」

「ギャーーー!?オ、オコジョ虐待反対ーーーーー!?」

 

ジタバタと逃れようとするカモであったが、結構キツく締まっているらしく逃げ出せないでいた………

 

 

 

 

 

#28/オコジョはネギ・スプリングフィールドが好き ②

 

 

 

 

 

さて、カモ君ことアルベール・カモミールが何故、このような状況になっているのかを説明させていただこう。

 

意外とタフだったのか、翌朝には回復して元気に起き上がったカモ。しかし、前日の下着泥棒の犯人であるために、どこからか徐倫が用意したケージに閉じ込められてしまっていた。

 

トドメとなったのが、ネギが姉と慕うネカネから良すぎるタイミングで届いたエアメールだ。

内容としては、カモがイギリスで『下着泥棒二千枚』の罪で指名手配されているというものであり、ネギの所に来ていないか確認の手紙だったのだ。ご丁寧に、手配書も同封されていた。

 

詰まる所、カモは追手が下手に手を出せない『立派な魔法使い(マギステル・マギ)候補生』のネギの元へ高飛びしてきていたのだ。カワイイ顔して腹黒いオコジョである。

 

かくして、変態オコジョ妖精は吊るし上げられ、断頭台で判決を待つ羽目になってしまったのだ。

 

哀れなり、カモ。

 

 

 

 

 

「あ、兄貴の魔力の痕跡を辿って入った場所にギャルたちがわんさかいたんで……意気揚々と『コト』を起こしたのがいけなかったかぁ………まさか『管理局』がいたとは………」

「逃亡中なのに、下着泥棒するなよ………」

「オトコの悲しい『()()』ってやつでさー………」

 

カモの後悔に呆れる一同。セインや千雨は、「男ってバカなんだなー……」と思ったそうな。

 

「さて、ハラウオン執務官、今回のアルベール・カモミールの処遇、いかがいたしましょうか?私としては、このまま釜茹での後にアルフのおやつってのが妥当かと思いますが………」

「ちょ!?残酷すぎやしませんか姐さん!?」

「アタシも、ソイツ食べるのはちょっと………」

 

助けを乞うカモに対し、徐倫はこの中で責任者であるフェイトに聞く。苦笑しているフェイトもカモの所業は許せないものがあったが、流石にカワイソーだと思い、助け舟を出してあげることにした。

 

「えーと………カモ君は、『こっちの世界』の魔法について、詳しいんじゃかな……?それだったら、ネギ君の助けになるんだと思うけど………」

「!そ、………そうッス!兄貴、まだ従者(パートナー)決めてないんスよね!?なんだか『命』を狙われてるみたいだし、パートナーに関する魔法なら、おれっち専門でっせ!?」

 

フェイトの助け舟にこれ幸いと乗っかるカモ。徐倫とティアナはふむ、と考えた。

 

「どうなんだ、ネギ?」

「は、はい………確かに僕、『戦闘魔法』の類は一通り習っているんですけど………パートナーとかその辺は「まだ早いかなー」って後回しに………」

「だったら、おれっちに任せて下せー!オコジョ妖精のおれっちなら、仮契約を結ぶための儀式を執り行う魔法を扱えるッス!!」

 

成程、それは便利だと考える徐倫とティアナ。一同は顔を合わせると頷きあい、カモを下して糸を解いた。

 

「まあ、確かに知識は豊富みたいね………いいわ、今回だけは、許してあげる。」

「あ、姐さん方………!」

 

じーんと涙を流すカモ。ただし、と、徐倫は睨みつけた。

 

「次やったら、マジに許さねーからな!覚えとけよ!」

「い、イエッサー!」

 

徐倫とティアナの凄みのある目力に身を強張らせながら、カモはピシッ!と敬礼をした。

手が短いので、ちゃんとできてはいなかったが。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「そんじゃーまず、『魔法使いと従者の契約』について、僭越ながらワタクシ、アルベール・カモミールが説明させていただきやす。」

 

鍋とコンロを片付けられたテーブルの上で(せっかく沸かしたお湯を捨てるのはもったいなかったが、カモの毛が入っているといけないので排水溝に捨てて鍋は洗った)、カモが説明をし始めた。

 

「魔法使いと契約して『魔法使いの従者(ミニステル・マギ)』になった者は、魔法使いを守り助けることになるんスけど、代わりに魔法使いから『魔力』を貰って、肉体的にも精神的にも『パワーUP!』さらには、各パートナーごとに潜在能力をさらに引き出すことができる『マジックアイテム』も得られるんでさー。」

「ほほう?」

「けど兄貴みたいな子供だと本契約は出来ないし、『パートナー』を1人選ぶのはなかなか大変なので、『仮契約』を数人として、将来一人を選ぶ形になるッスね。」

「成程なー………」

 

明日菜や徐倫がカモの説明に頷くと、千雨があごに手を当てながら口を開いた。

 

「成程、身体能力向上にマジックアイテムか………となると、現時点で『戦闘力を持たないヤツ』が最適って事か………?」

「という事は………」

 

全員の目が、1点に集中する。明日菜とあやかだ。

 

「あやかは情報収集等がメインで、明日菜は完全に巻き込まれただけだが………」

「そ、そうだけど………」

 

明日菜が少しためらっていると、あやかはおもむろに立ち上がった。

 

「………それでしたら、是非ともこのわたくしをッ!」

「うお!?」

 

そして、いきなりカモに掴みかかると、ブンブンと揺さぶり始めた。

 

「さあッ!わたくしをネギ先生のパートナーにして下さい!さあッ!!」

「あばばばばばばばばばばばばばばば」

「ちょ……落ち着きなさいよ……!」

 

目を血走らせて鼻息を荒くするあやかをなだめる徐倫と明日菜。あやかから逃げ出したカモは、目を回したらしくふらふらとしていた。

 

「か、カモ君、大丈夫?」

「あ、あにき~……あの姐さん、ちょっと怖いっすよ~………」

「あ………」

 

ネギとカモの会話を聞いて、ようやく我に返ったあやかは、コホン、と咳ばらいをした。

 

「ご、ごめんなさい……わたくしったら………」

「まったく、いいんちょはネギの事になると………」

「まあ、乗り気なのはいい事なんで………じゃあ準備するんで、一発『ブチュー』っと仮契約しますか!」

「ええっ!是非ともブチューっと!……()()()()?」

 

全員、『ブチュー』の単語にフリーズする。そして、きっかり十秒後―――

 

 

 

 

 

「ってぇええッ!?ブチューって………き………」

『『キス』ゥゥウウウッ!!?』

「まあ、一番簡単な契約方法なんでさぁ。」

 

『仮契約には『キス』が必要』………それが、雪広 あやかの『恋』という炎に、油どころかガソリンを注いだ!

 

「な……………なぁぁぁんですってぇぇぇぇええええええッ!!!」

ブシュゥウウウ

「興奮のあまり鼻血が噴水のごとくッ!?」

 

後で輸血が必要になりそうなレベルで鼻血を吹き出すあやか。噴出が弱まったのを見計らって、ティッシュを両の鼻の穴に詰め込んだ。

 

「あああッ!ネギ先生とキスができるとはッ!!では――――」

 

そう言うと、手元のラップトップパソコンをチャカカカカッと操作し始めるあやか。そして、操作し終えたのか、モニターをネギの方へ向ける。

 

「では、先生はどれが好みなのか、番号キーを選んで押してください。なんでも、1500年前のインドの『カーマスートラ』という本には、48以上もの『仕方』が載っているそうですが……」

 

見ると、モニターには9種類の『キスの仕方』が表示されていた………

 

「「「って子供に何を聞いてるんだァァァァッ!!!」」」

ドグシャア

「ヒャブッ」

 

何やらアブナい雰囲気のあやかに、明日菜、徐倫、千雨の同時攻撃が決まった!

 

「全く………てか、何でキ……キスなのよ?」

「いや〜、他にもあるんスけど、色々と面倒なんで………」

「あいつ………一晩で手編みのセーター編み上げる勢いだったぞ…………」

「マジで危ないんじゃないッスか…………?」

 

笑顔で気絶するあやかを、とりあえず心配を(いろんな意味で)するノーヴェたちであった。

 

「あー………あやかはちょいと危険だな………」

「…となると、だ、やっぱり明日菜になるわけか?」

「だな。」

「やっぱり………まあ、寮が同じ部屋だから、守れるとしたら私なんだけどさぁー………」

 

不満そうな明日菜に、首を傾げる徐倫とスバル。明日菜は頬を赤く染めて、

 

「この()()()()()()()()、キスしろっていうの?」

『あ。』

 

よく考えたらそうだった。現在この部屋にはナンバーズ7人にスバルたち、徐倫たちと、10人以上がいる。その目の前でキスをするなど、羞恥もいいところだ。

 

「………ま、まあ、無理に今決める必要はねえだろ!」

「そうね!今日は寮に帰って、明日から考えましょう!」

「そうですね!じゃあ、解散!」

『おつかれさまでしたーーー!!』

 

全員が顔を真っ赤にして一目散に退散した。あやかは明日菜が担いでいった。

 

 

 

 

 

「………ネギ、カモ、後で話がある。」

「「え?」」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

翌日 女子寮 徐倫と千雨の部屋

千雨と明日菜が見届ける中、ネギと徐倫はカモの用意した魔法陣の上に立っていた。

 

「ほんじゃま!いっちょ行きますか!仮契約(パクティオー)!!」

ブワアアアアァァァァ

「「うわっ!?」」

 

カモが叫ぶと、『魔法陣』が光り輝く。魔法陣の中に立つネギと徐倫は魔法のエネルギーに驚くが、暖かい光は心地が良かった。

 

「さあさあさあ!一発ブチューっとやっちゃってくだせぇ、お二方!!」

「あうう〜〜〜」「そう急かすなって………」

 

鼻息の荒いカモにせかされ、覚悟を決める二人。

 

 

 

 

 

二人の顔が近づき――――

 

 

 

 

 

唇と唇が重なった―――

 

 

 

 

 

ズキュゥゥウウーーーン

 

 

 

 

 

「え、今のキスした音なの?」

「分からないっすけど………まあとにかく、仮契約成立ッ!!」

 

一層強い光があふれると、カモは魔法陣の範囲に「光」が集まるのをみた。光は薄い長方形の形になり、やがてカードになった。見ると、カードには指を指す徐倫と、背中合わせに立つ『ストーン・フリー』が描かれていた。

 

「ん?何だこれ?」

「あ、こりゃ『パクティオー・カード』ッスね。魔法使いとの仮契約の証ッス。」

「成程………」

 

こー言うのはちょっと良いかも、と思う千雨であった。キスは結構恥ずかしいケド………

 

「……つー訳で、これからよろしくな、ネギ。」

「は、はい!」

 

かくして、ネギ・スプリングフィールドは空条徐倫というパートナーを得たのであった。

 

←to be continued…




28話です。
・今回はネギの仮契約(パクティオー)編。カモは変態の鑑なので、女性陣には『敵』と認識されてもしょうがないです(笑)

・今作のいいんちょは既に魔法の事を知っているので、理性のブレーキが若干壊れ気味です。

・最後は、ネギと徐倫の仮契約。ジョジョでキスといえば、あの擬音は欠かせません(笑)カードの徐倫のポーズは、若干承太郎のジョジョ立ちっぽい感じですね。

では、次回をお楽しみに!


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#29/アルティメット・クライシス ①

茶道部部室前

 

 

「ネギ・スプリングフィールドに『助言者』がついたかも知れん。お前たちを襲ってくる可能性もある。しばらく一人で行動するなよ。」

「はい、マスター。」

「……………」

 

部活を終え、迎えに来たブチャラティと茶々丸に注意を呼びかけるエヴァンジェリン。その時、後ろから声をかけられた。

 

「おーい、エヴァー」

(うっ…………タカミチか……)

 

呼びかけてきたのはタカミチだ。エヴァはウンザリしながらも、振り返って応えた。

 

「…………何か用か?仕事はしてるぞ。」

「学園長がお呼びだ。『一人で来い』だってさ。」

「………………分かった。すぐ行くと伝えろ。茶々丸、すぐに戻る。ブチャラティ、茶々丸を頼んだぞ。後、必ず人目のある所を歩くんだぞ。」

「分かった。」

「お気をつけて、マスター。」

 

そう言うと、エヴァンジェリンはタカミチとともに歩いていった。

 

 

 

 

 

この様子を、一匹の『亀』が見ていたとも知らずに…………

 

 

 

 

 

#29/アルティメット・クライシス ①

 

 

 

 

 

「よし、兄貴、二人がエヴァンジェリンから離れた今がチャンスだ!一気にボコッちまおうッ!!」

「う〜〜〜………ダメだよ〜〜人目につくとマズいよ〜〜、もう少し待って〜〜〜〜」

 

カモに頼まれて、『イノセント・スターター』でエヴァンジェリン達を見張っていたのどかから連絡を受け、茶々丸たち二人に追いついたネギ達。二人の後方の草むらに隠れて、様子をうかがっていた。

なお、メンバーはネギ、明日菜、徐倫、千雨、スバル、仗助、カモに加え―――――

 

「―――で、何でおめーまで付いてきたんだ?『チンク』………」

 

仗助の目の先には、白いゴシックロリータ調のワンピース(ナカジマ姉妹+セインやウェンディがノリノリで選んだもの)を着たチンクがいた。何故か彼女は、仗助たちに同行を申し出たのだ。

 

 

なお、ナンバーズたちはアルフやギンガ、そして六課のメンバーと同行する事を条件に、買い物や見回り、『戦闘』が許可されている。

 

 

「……………少し、気になることがあってな………それに、スタンド使い同士の戦いも、見ておきたいからな………」

「……ふぅん。」

 

少し思いつめたような顔のチンクを見て、仗助はそれ以上追求しない事にした。

 

(話を聞いて『もしや』と思ったが……………やはり―――――――)

 

 

 

 

 

「………何か、『辻斬り』みたいでイヤね……………しかも片方は『クラスメート』だし……………」

「ま、ネギやまき絵の他にも、何人かを襲った奴らだし、どちらにしろ何とかしなくちゃだし…………ん?」

 

徐倫の目線の先では、ブチャラティたち二人の前で、木に風船を引っかけてしまったらしい小学校低学年くらいの女の子が、えんえんと泣いていた。

ブチャラティがしゃがみ込み、女の子に泣き止むよう慰め始めると、茶々丸は―――

 

 

 

 

 

 

 

 

バクンッ

 

ボッ

 

ドドドオォッ

 

 

背中の『ハッチ』を開き、背中と足からの『ジェット噴射』で低空飛行し、風船をとってあげた。とる際に枝に頭を当ててしまうが、そんなに痛みはないようだ。

女の子は、茶々丸にお礼を言うと、何度も振り返り、何度も手を振りながら、帰っていった。

 

 

 

 

 

『…………………………』

 

一部始終を見ていたネギ達は、しばらく口をポカンと開けていた。

 

「そ……そういえば、茶々丸さんって、どんな人なんです…………?」

「えーと…………あれ?」

「あんまり気にしたことなかったな…………」

 

ネギの質問に、うまく答えられない明日菜と徐倫。答えたのは千雨たちだった。

 

「いや、ロボだろ。」

「さすが『日本』だよなーー、ロボが学校通ってるなんてよぅ。」

「まあ、ロボが学校通うのか?って疑問はあるけど…………」

「ええっ!?じゃあ茶々丸さん人間じゃないのッ!!?」

「か、変わった『耳飾り』だとは思ってたけど…………」

「『関節』とか変だなぁって思ったが…………」

「「「「いや、気付よォォォォッ!!?」」」」

「つーか徐倫!何でお前までッ!?」

 

ネギや明日菜ならともかく、徐倫まで気づかないのに納得のいかない千雨だった…………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

 

その後も二人を尾行する一行は、二人の『人間性』を目の当たりにする。

 

歩道橋を上るおばあさんを茶々丸が負ぶったり、

不良に絡まれる女子中学生をブチャラティが助けたり、

ドブ川に流される仔猫を茶々丸が助けたり、

気弱な大学生に絡む当たり屋を、ブチャラティが話しかけただけで退散させたりと、

そして、猫にエサをやっている所も見た。

 

結論

 

 

 

 

 

「「「「―――いい人たちだ………………」」」」

「「っておおおおいッ!?」」

「ネギ、この光景を目に焼き付けとけよォォォォ…………成績表書くときの参考になるから。」

「『教師目線』ッ!?」

 

涙を浮かべるネギ、明日菜、スバル、徐倫につっこむカモと千雨。仗助に関しては、茶々丸の成績表の『校外活動』の欄の参考にしようとしていた。

 

「と、とにかく!人目のない今がチャンスっすよ!心を鬼にして、一丁『ボカーッ』っとお願いしやす!」

「で、でもー………」

「…………やれやれだわ。」

 

かなりやり辛くなったが、二人は仕方なくやることにした。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

 

茶々丸が猫のエサを片づけていると、ブチャラティがある方向を見つめているのに気づいた。

 

「………どうかしましたか、ブチャラティ?」

「誰かが付けてきているとは思っていたが、お前等だとはな…………」

 

見ると、杖を持ったネギと徐倫、そして、バリアジャケットに身を包んだスバルがいた。彼らの後ろでは、仗助たちが見守っていた。

 

「………油断しました。ですが、相手になります。」

「で、『後ろの連中』はかかってこないのか?」

「………後ろのみんなは『付き添い人』だ。私らの戦いを見届けるだけで、手出しはしない…………」

「そうか………(しかし、後ろのあいつ…………どこかで会ったか……………?)」

 

ブチャラティがそう考えていると、ネギの申し訳なさそうな声がした。

 

「あの、お二人とも…………僕を狙うのはやめていただけませんか………?」

「………申し訳ありません、ネギ先生。私にとって、マスターの命令は『絶対』ですので。」

「オレも、あいつには『恩』があるからな…………やりたくはないがな…………すまない。」

「うう…………仕方ないです………」

(く、空条さん、あのブチャラティって人、任せて大丈夫なんだよね?)

(ああ、ジッパーの『対策』は考えてある。私ならまず『負け』はない!)

 

不安ながらも、徐倫のセリフに安心するスバル。

カモが考えた『作戦』は、ブチャラティと茶々丸の二人を徐倫とスバルが攻撃している内に、ネギが魔法の射手を放つという、典型的な魔法使いとパートナーの戦い方だ。

 

「……では」

「はい。」

「………ごめんね。」

「……行きます!契約執行(シス・メア・パルス)10秒(ペル・デケム・セクンダス)!!ネギの従者(ミニストラ・ネギィ)空条 徐倫(クウジョウ・ジョリーン)』!!」

ファァアゴォオオッ

「んうっ………(擬音大げさじゃね?)」

 

何やら奇妙な心地よさを感じ、嬌声を上げてしまう徐倫だが、そのままブチャラティに向かって走り出す!途中でどうでもいいことが頭をよぎったが……

 

ドンッ

(……!何だこれ!?体がまるで『羽根』みたいに軽い………これが『仮契約(パクティオー)』の効果ってことか……!?)

「わっ、空条さん速っ!?」

 

パクティオーの効果―――魔法使いからの魔力供給による『身体能力の向上』により、普段よりもさらにスピードが上がった徐倫。そのままの勢いでブチャラティにオラオラを繰り出す!

 

「オラオラオラオラオラオラァ!!」

「魔法使いと契約をしたか………だが!」

 

だが、ブチャラティもスタンド―――『スティッキィ・フィンガーズ』を出し、『ストーン・フリー』の両腕を殴り、防御と同時にジッパーをひっつけ、腕を切り離す。

 

「動きが直線的すぎるな………馬鹿正直に突っ込んでくるだけじゃあ―――」

ズドオッ

「!?がッ………ぐうっ!?」

 

ブチャラティが言い終わる前に、ストーン・フリーの『手刀』が彼の首筋に叩き込まれ、ブチャラティは膝をつく!

 

「………お前は『バカな、切り離したはずなのに!』と言う。」

「バ、バカな、切り離したはずなのに!………はっ!?」

「お前の敗因は、『私のスタンドを知らなかった』ことだ。」

 

言われて徐倫の腕を見ると、ジッパーで切り離された腕が、糸で『縫い合わされて』いた!

 

「『ストーン・フリー』!糸で切り離された腕を『縫い合わせた』………油断したな………」

「コ、コイツ………(戦いなれてやがる………死と隣り合わせの戦いを、何度も切り抜けているな………!)」

 

「い…『糸』で切り離された腕を………!」

「あんな荒技で………はっ!?」

 

離れて交戦していたスバルと茶々丸も驚いていたが、茶々丸は回り込んでくるネギの存在に気づいた。

 

魔法の射手(サギタ・マギカ)連弾(セリエス)光の11矢(ルーキス)!」

ドババァッ

 

詠唱を終えて、『魔法の射手』を放つネギ!

 

「よしっ!あれで決まったな!」

「ああ、徐倫の姐さんの腕が切り離された時はヒヤヒヤしたが、これで!」

(……ブチャラティ、この程度なのか?)

「さて、あいつらの治療の準備を………ん?」

「あれ……?あのあたりの石畳………?」

 

仗助と明日菜は気づいた。ブチャラティの足元が、『膨らんでいる』?

 

「!!あれはッ!」

 

ネギもそれに気づいた時、膨らんだ部分から『腕』が伸び、ブチャラティをつかもうとしていた!

 

「危ないッ!ま、『曲がれェェエエ』!!」

ギャギャギャアッ

 

「!!」

ズドドドオッ

 

茶々丸たちに向かっていた『魔法の射手』を操作し、ブチャラティに迫っていた『腕』へ全弾当てる!

 

「ネ、ネギくんッ!」

「今の腕は………それにこの『石畳』ッ!」

「こ…………この『柔らかさ』…………この現象はッ!まさかッ!!」

 

『魔法の射手』が着弾して生じた爆発と衝撃に吹き飛んだブチャラティは、石畳の柔らかさに気づいた。こんな現象を起こせる者は、()()()()()()()!!

 

「あぐおああああ………な、………なんて事ヲォォォォ………しやがるんだ!!こ、この………ガキィィィィ!!」

 

ブチャラティたちから少し離れたあたりから、茶色い『ダイバースーツ』のようなものを見にまとった男がでてきた。

スバルと千雨は気づく。この男は―――

 

「あ、あいつは!」

「『アヌビス神』をつれて帰った!あの時の!!」

 

「貴様は…………『地面下を進む』スタンド―――『オアシス』のッ!!」

 

ブチャラティも知っていた。この男は、ローマで戦ったスタンド使い!

 

「うぐぐぅううっ!だが、ブチャラティィィィィーーーっテメェには会いたかったぜェエエエ!」

 

男はブチャラティに向け、恨みのこもった言葉を吐いた。

 

 

 

 

 

本体名――セッコ

スタンド名――オアシス

 

 

←to be continued...




29話です。
・徐倫VSブチャラティ。ストーン・フリーなら、ジッパー喰らっても縫いつけるから無問題だと考えてこうなりました。

・セッコ登場。実はセッコって、第五部ではっきりと死んだ描写がないので、生きていてもおかしくないという妄想から。

では、次回をお楽しみに!


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#30/アルティメット・クライシス ②

麻帆良学園 学園長室

 

 

「『密入国者』?」

「ああ、『オエコモバ』について調べたら、彼を麻帆良(こちら)へ手引きした者がいるようでね。」

 

新たに入った情報を、承太郎とフェイトに渡すタカミチとあやか。タカミチが得た魔法使いサイドからと、あやかが得たSPW財団サイドからの情報を照らし会わせた結果、その人物がオエコモバをスタンド使いにした可能性が高いらしい。

 

「それで、管理局の『密入国者リスト』を洗った結果、こやつが麻帆良にいる事がわかったのじゃ。」

 

学園長は言うと、モニターを呼び出す。承太郎はもはや見慣れた光景のため、いや、そうでなくても彼の場合はあまり驚かないが。

モニターには、色黒で紫のドレッドヘアの男が映っていた。男を見た途端、承太郎は目頭を押さえた。

 

「どうかしましたか承太郎さん?」

「…………いや、最近奇抜すぎる髪の色の奴を見すぎているせいか、目がチカチカしてな………………」

 

承太郎の一言に、四人は苦笑するしかなかった。タカミチは、説明を始めた。

 

「………彼は『ランボ・ルギニー』。職業は車の整備士だが、質量兵器―――ああ、この世界で言う拳銃とかのことだよ。そいつの大量所持や開発の罪がかけられている。」

「要するに、『大袈裟な銃刀法違反者』と解釈しても?」

「はい、構いません。」

「なるほど………で、『開発』ってのは?」

「それが―――」

 

「………………」

 

彼が開発しようとしたものを聞いて、承太郎はあきれるしかなかった。

 

 

 

「やれやれだぜ……………」

 

 

 

 

 

#30/アルティメット・クライシス ②

 

 

 

 

 

一方その頃、ネギたちは………

 

「………あの時、自分の能力を自分のノドに喰らって死んだもんだと思ったが………………」

「ああ!お………オレも死んだかと思ったがよぉぉぉ……………あ、ああ………『アイツ』が助けてくれてよぉぉぉ、んで、オメェーが生きてる事教えてくれてなァァァァーーー!」

 

出現したセッコと十分に距離を取ったブチャラティに向かい、独特の口調ではなすセッコ。これは戦っている場合ではなくなったと判断して、茶々丸はブチャラティに聞いた。

 

「ブチャラティ、知り合いですか?」

「……………昔戦った相手だ。コロッセオで倒したと思ったが、見ての通りピンピンしてやがる………」

「『アイツ』ってやつに助けられたらしいな。誰だそれは?」

 

徐倫がセッコに問う。セッコはそちらを向き話しだす。

 

「ん〜〜〜〜〜、アイツか?アイツはよぉぉぉ~~~~~」

「オイオイオイオイオイオイオイオイオイオイセッコさんよぉーーーーー」

 

セッコが言う前に、建物の影から男が出てきた。

 

身長は180cm半ばで、紫の髪のドレッドヘアをオールバックにして、後ろでチョンマゲのようにして止めている、色黒の男だ。薄茶色のツナギを着てその下は黒のタンクトップ、手には軍手をしていた。

 

「エラソーに先陣切った割に、その『ザマ』かよ。かかかッ!」

「んだとォォォォ『ランボ』!!オメェーの能力じゃあ、アイツらに、ダ、ダメージ与えられねぇから、オレが行ったんだろうがァァァァ!!」

 

『ランボ』というらしい男に向かって怒鳴るセッコ。どうやら、彼の仲間らしいが………

 

「あんた、何者だ………?」

「オイオイオイオイオイオイオイオイオイオイ、ガキがおれ様に向かってエラソーに聞いてんじゃねぇーーーz「ああ、コイツは『ランボ・ルギニー』ってんだ。」ってセッコ!!何でオメェーがエラソーに答えてんだよッ!?」

(上手く噛み合ってないな。組んで間もないコンビか……………)

 

二人のやりとりを見て、二人のコンビ歴の浅さを感じ取るチンク。

 

「……………まあいい。おれ様はエラソーな管理局の奴をやる!おれ様の邪魔をした『報い』を、受けてもらわにゃぁなぁあああああああ!」

「お、おおおおお………おう!オレはブチャラティだ!あ、アイツにぃ………利便性………じゃなくて………リベット、は違う………」

 

セッコは何か言おうとするが、ど忘れなのか、言うことができない。ネギたちは、その様子をじっと見ていた。

 

「うぐぐ……………リビングデッドでもなくて………リバイバル………」

「あの、ひょっとして、リベンジですか?」

 

ネギが恐る恐る聞くと、セッコは信じられないという顔をした。

 

「知ってんだよオオォォッ!!国語の教師か、うう…うう…うおおおっおっオメーはよオオオオ」

「いえ、『英語』の教師です…」

「オレ『数学』ね。」

「仗助さん、今それはいいので…………」

 

二人に近づきつつ、どうでもいい事を答える仗助に、やんわりとつっこみをする千雨。すでにこちらも戦闘態勢だ。

 

「…………っと、思い出した………!!ブチャラティ以外に…………『殺る』やつがいたんだ………誰だったけな…………えーと……………」

 

セッコはポケットを探すが、仗助はそんなのを待つほどお人好しではない!クレイジー・ダイヤモンドの拳を叩き込む!

 

「『クレイジー・ダイヤモ…………』」

ボギャァアーーッ

「「「「「「「!!?」」」」」」」

「ぐっうおあっ」

 

だが、クレイジー・ダイヤモンドの拳がセッコに命中する前に、セッコの蹴りが仗助を襲う!

 

「仗助さんッ!」

「東方!」

「い………今のは!!このパワーとスピードは…………!」

「メンドクセーなァァァァ………仕方ねえ………全員殺せば同じだ……!」

 

言うと、セッコは再び仗助に殴りかかる!

そのとき、仗助は気づいた。セッコが『地面に肘を撃ちつけている』のを!

 

(こ……………こいつ!地面を『弾力のあるもの』に変えて…………それの反動でスピードとパワーをあげているのか!)

「『オォォォオオオオアシィィィイイイス』ッ!!!」

ズババババババ

 

セッコのラッシュをクレイジー・(ダイヤモンド)で何とか防ぐも、何発か喰らってしまう仗助!

 

「東方殿ッ!」

「仗助さんッ!!」

 

チンクは懐からナイフ―――『スティンガー』を取り出し、セッコに向けて投げつけ、ネギも『牙』の爪弾を放つ!

 

「!………ふんっ」

 

だが、セッコは余裕な様子で右腕を振るい、はじき返そうとする。チンクが、()()()()()()()()()()()()()()()()………

 

セッコの右腕がスティンガーに触れる瞬間、

 

パチィン!

 

チンクが指を弾く。その瞬間!

 

 

 

 

 

バッグオオオォォォン

「なっ!!?ぐアアッ」

 

スティンガーが『爆発した』!

爆発をモロに受けたセッコは、右腕を負傷し、さらに爪弾も何発か喰らう!

 

「私のインヒューレントスキル名は『ランブルデトネイター』………金属を『爆発』させる能力!石畳は溶かせても、『爆発』は()()()()()!!」

「な……なるほど……………」

「た、助かったぜ、チンク…………爆発で助かったってのが、個人的に複雑ではあるんだが………」

 

チンクの説明にネギは納得し、仗助は『ランブルデトネイター』を『金属に限定されたキラークイーン』と解釈した。

 

「うおおおあおああああ……………」

「今だッ『スティッキィ・フィンガーズ』!」

「ドラララァッ!!」

 

腕のダメージに苦しむセッコに、スティッキィ・フィンガーズとクレイジー・Dのラッシュが迫る!

 

 

 

ガキィンッ

「「!?」」

 

だが、二人の拳は、突如表れたガジェットⅠ型に阻まれてしまう!

 

「オイオイオイオイオイオイオイオイオイオイ!コイツらツエーぜぇー、面倒くせぇが、加勢してやるぜッ!!」

 

ランボが言うと、そこら中からガジェットが表れた。その数、ざっと見ただけで50機!

中には機関銃やミサイルランチャー、ドリルを装備したものが数体いた。さらに、何故か『車』を抱えたⅢ型がいた。車の数は6台だ。

 

「が、ガジェットと………車?」

(あれ?あの車って………?)

「何をする気だッ!?」

 

スバルたちは、突然表れたガジェットに慌てた。明日菜は、ある車に目がいったが。

 

「こうするのさッ!」

 

言うや否や、ランボが一台のオープンカーに乗り込む

 

「『アルティメット・クライシス』ッ!!」

 

それを合図に、ガジェットたちが車に『集結』した。するとガジェットは、まるで『粘土に別の粘土をくっつけて、それを指でならす』ように、一つの固まりになっていく!

 

「ううっ………!?」

「こ、これは………!?」

 

それはある『形』になっていき、他の『部品』と合体する!最後にⅡ型が三機、中央の部品の上に合体すると、それは動き出した!

そう、これは―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()ーーーーーーーッ!!?』

 

そう!『男の浪漫』の結晶!!『巨大ロボット』だ!!

 

全長約12mの青いボディ、両肩は丸く、腕は二の腕よりも太くたくましい。背中にはブースターが付き、小さいながら翼まである。頭部は円柱型の兜をモチーフとしており、両側の頬にはヒゲや角を思わせる大きなアンテナがついていた。

 

「くくくッ………これぞおれ様のスタンド……………名付けて!『アルティメット・クライシス』だぜ!!」

 

ロボット―――『アルティメット・クライシス』の中で、ランボは高らかに叫んだ。

 

「………ってありなの!?こんなのまでありなの、スタンドって!?」

「まき絵のG・キッドと同じ実体化したスタンドだなぁ。スケールは全然違うけど…………」

「車は多分『動力源』だな…………ガジェットだけじゃあ、あの巨体は動かせないんだろうよ。」

 

そびえ立つ巨大ロボットを指さして叫ぶ明日菜に対して、冷静に分析する徐倫と千雨。以前、承太郎から『貨物船』のスタンド『(ストレングス)』を操るオランウータンの話を聞いた事があったが、おそらくは同じほどのスケールだ。

 

「ふんっ!エラソーにおれ様の『アルティメット・クライシス』を語るな!おれ様は、昔からこういうロボットに乗りたかったんだ!記念すべき最初の獲物はてめーらだぜ!!」

 

言うと、『アルティメット・クライシス』の肩がバクンッと開き、ミサイルランチャーが顔を出す。スバルは慌てて広域型のシールドを展開するが……

 

シュウン

「え!?」

 

シールドは霧散してしまう!そして気づく。あのロボットは『何でできているか』に!

 

「!!そうかっガジェットを取り込んで合体してるから………」

「AMFも健在ってことかッ!!」

「気づいたか!だがオセエぜ!『アルティメット・クライシス』!!」

 

『アルティメット・クライシス』の肩から、ミサイルが火を吹いた!

 

「くっ!『アニバーサリー・オブ・エンゼル』ッ!!」

ビュオオッ

 

だが、間一髪でスバルたちを掴み、『アニバーサリー・オブ・エンゼル』で飛び去ることで回避する千雨。徐倫も茶々丸に掴まり、彼女のブースターで離脱した。

 

「は………長谷川さん!」

「それが千雨ちゃんのスタンド………!」

「ちっ………できればまだ見せたくなかったが………」

 

『アルティメット・クライシス』から離れた場所に着地した千雨は、アルティメット・クライシスを睨みながら舌打ちする。

 

「徐倫!」

 

アルティメット・クライシスを挟んで分断された徐倫に、仗助が叫ぶ。ブチャラティは、爆発のダメージから回復しつつあるセッコを見下ろして、ネギに聞いた。

 

「………なあ、今いる中に、さっきみたいな爆発なんかを使えるやつはいるか?」

「い、いえ………後は僕が『光』や『雷』の魔法が使える程度ですが………」

 

ネギが少し困惑しながら答えると、ブチャラティは周りにいる仗助とチンクを見て、巨大ロボの向こうにいる徐倫や茶々丸に大声で話しかけた。

 

「よく聞け!オレ達はこのまま、この泥化の男を相手にする!悪いが茶々丸!そのロボットは任せる!」

「ブチャラティ?」

「お前たちのスタンドは『接近戦向き』だ!こいつの「オアシス」には接近戦はやや不利だ………だが、さっきの『爆発』などは有効となる!」

 

ブチャラティはローマでセッコと戦った際に、車のタイヤのパンク音でセッコの聴覚を破壊している。セッコの格闘技術はかなり驚異的であるが、先ほどのチンクの『ランブルデトネイター』のような「エネルギー系」の攻撃であれば、確実にダメージを与えられる!

 

「ってちょっと待って!?確かにそうだけど………じゃあこのロボットは………」

「よ、よくもやったなぁあああ………チ、チビ、どもがぁああああああああああ!!」

 

明日菜が叫ぶよりも早く、セッコは泥化させた石畳を口に含み、

 

パパウ パウパウ

「何!?」

フヒィーーーン

 

歯と歯の間から高速射出すると、それは薄い円盤状の『カッター』となってチンクに襲いかかる!

 

「クレイジー・ダイヤモンドッ!」

「スティッキィ・フィンガーズ!!」

 

だが、『泥のカッター』はチンクに当たるより前に、仗助とブチャラティによってはじき返されて地面に落ちた。

 

「今の『カッター』の感触!ヤツに振れたら『泥化』するけれど、離れたら再び固くなるという事か!」

「ローマでオレに放った『石の槍』も、ああやっていたのか!」

 

仗助とブチャラティが驚くのもつかの間、セッコは一気に距離を詰めて接近戦を挑んできた!

 

「ネギ!」

「よそ見とはヨユーだな!エラソーに!!」

 

ネギに迫るセッコに明日菜が叫ぶが、ランボが再度『アルティメット・クライシス』のミサイルを放ってきたために近づくこともままならない。

 

「くっ………!」

ズドドドドドドォオッ

「きゃーーーー!?」

 

ミサイルから逃げ惑っている間に、ネギたちとの距離が更に開いてしまう。すでにミサイルは出し尽くしてしまったのか、『アルティメット・クライシス』の肩のカバーが閉じた。

 

「やれやれだわ………今までで一番の『大物』と戦わないといけないなんてね………」

 

ミサイルを回避した徐倫は、『アルティメット・クライシス』の青く光る巨大なボディを見上げてそう呟いた

 

 

 

 

 

←to be continued…




30話です。
・承太郎の目がチカチカするのは、仕方ないと思います(笑)奇抜すぎるもん、ミッドの方々(笑)

・ランボ登場。名前は自動車メーカーのランボルギーニのもじり。ミッド出身+某マフィアマンガで同名のキャラ繋がりって事で(笑)シャマルって最初聞いたとき、真っ先にこっち思い浮かべました(笑)

・巨大ロボットのスタンドは、一度やりたかったネタ。実体化したスタンドの中では、『力』に次いだスケールです。なお、以前とはスタンド名を変えています。

・波紋カッターならぬ泥のカッターを吐き出すセッコ。似たようなこと原作でもやっていたので、出来るだろうな、と思いまして。セッコって歯並び悪い気がしたけど、気にしない気にしない(汗)

では、次回をお楽しみに!


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#31/アルティメット・クライシス ③

麻帆良学園 駐車場

 

 

「―――あれ?私の車が……!」

「僕のもないぞ……!盗まれたか…………!?」

 

話を終え、帰ろうと駐車場に来た一同は、フェイトとタカミチの車がないのに気づく。

 

「…………『学校の駐車場』から車を盗むたぁ、ずいぶん大胆な奴がいたもんだな。」

「私の車は借り物なのに………アリサに何て言えば………」

「僕らのを含めて『6台』も盗んだようだから、まだ遠くまでは―――」

 

タカミチが推測をたてるが、それは珍入者の介入により妨げられた。

 

「た……大変でさぁ!」

「ん?」

「カモ君?」

「お。君はネギ君の言っていた………」

「あ、兄貴たちがスタンド使い二人組にッ………」

「「「!!」」」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「おい、見ろよアレ!ロボットだぜ!カッキェーーー!!」

 

同じころ、木々の向こうに見える全長12mのロボットを見つけた2人組の男の内の1人が、ビデオカメラ片手に興奮して声を上げる。

 

「さすが日本はクールだぜぇー!けどこれ、ボスに見せても、信じてくれないだろーなー!」

「おい、確かにロボットも気になるが、本来の任務を忘れてないだろうな?」

 

もう1人の男は驚きながらも、相方に注意を促す。『妙な事』が起こっているのは確かであるが、だからと言って『任務』を疎かには出来ない。

 

「分かってるがよー、取り合えず、近くに行ってみよーぜー?」

「……ったく、ガキじゃあるめーし………」

 

男は呆れながらも、ロボットのいる方へ歩き始めた。

 

 

 

 

 

#31/アルティメット・クライシス ③

 

 

 

 

 

「くそっ!近づけねぇ!」

 

徐倫は、『アルティメット・クライシス』の頭部から放たれる機関銃の雨を避けながら、悪態をつく。千雨やスバルも何とか避けてはいるが、同じように近づけそうにない。

 

「ううっ………思ったように動けない……………」

[あれには50機分のガジェットが合体しています。その分、AMFの『濃度』も濃いようです。]

「つまり、魔法使うナカジマにはキツい状況って訳か…………用意周到な奴だなおい。」

 

そう分析する千雨。こういうスタンドは、『本体』をたたくのが一番いいのだが、本体であるランボは、アルティメット・クライシス内のコックピットだ。

その時、アルティメット・クライシスの拳が徐倫に向かい振り下ろされる!

 

「徐倫ッ!!」

「くっ!『ストーン・フリー』!!」

 

徐倫はストーン・フリーの糸を近くの『街灯』に結びつけると、そのまま自分を街灯まで引き寄せることで、拳から回避する!

 

「空条さんッ!」

「千雨!今だッ!」

 

徐倫が言う前に、千雨は動いていた。

 

翼刀(よくとう)剣舞―――」

 

両手とも逆手にして「翼」に見立てた構えを取り、アルティメット・クライシスの腕に向かい、振り下ろす!

 

深鷸(ふかしぎ)ッ!!」

ガキンッ

 

横一閃!

 

武竜(ぶりゅう)!!」

ガギギンッ

 

縦一閃!

 

大吸(おおずい)ッ!!」

ガキギィィインッ

 

回転連撃!

 

「ン……こいつ、これだけ斬ったのに………けっこう堅いやつだな………」

 

逆手小太刀二刀流で連続斬り技を放ったのに、アルティメット・クライシスのボディには少し傷が付いた程度で全然ダメージがなかった。だが、『ちょっと傷ついた程度』が、ランボの怒りを買うには十分だった!

 

「こんのガキィッ!よくも傷つけてくれやがったなッ!!」

 

怒れるランボは、巨大ロボットの左腕で千雨を捕まえようとする!

 

「おっと。」

ひょいっ

「ちっ、ちょこまかと……!」

 

だが、アルティメット・クライシスの腕が千雨に迫る前に、千雨は『アニバーサリー・オブ・エンゼル』で飛翔して回避する。ランボはなおも千雨を捕まえようとするが、千雨はひらり、ひらりと避ける。

それを茶々丸に連れられて遠くから見ていた明日菜は気づいた。

 

「あいつ、そんなに素早くないみたい……!」

「あの巨体です。素早い動きや精密な動作には向いていないと思われます。」

 

そう、全長約12mの巨大なスタンド『アルティメット・クライシス』は、その巨体ゆえにどうしても細かい作業は苦手なのだ。

そしてそれには、徐倫たちも気づいた。

 

「―――つーことは、機関銃やミサイルは、それをカバーするための装備ってことか。」

「あれで誘き出して、そこにデカいのをぶち込むってわけだね……」

「気づいたか……………だが、それが分かったからって、エラソーな面すんじゃねえ!」

 

言うと、ランボはアルティメット・クライシスの右腕を徐倫たちに向ける。そして、

 

ドウッ

 

「「『ロケットパンチ』!!?」」

 

右手を『発射する』!ご存知、ロケットパンチだ!

 

「あんなもんまであるの!?」

「あいつの『趣味』が、まんまスタンドに反映されているのかッ!?」

 

アルティメット・クライシスの多機能ぶりにつっこみつつ回避する二人。だが、それがランボの狙いだった!

 

キュィィィィ……

「「!!」」

 

ロケットパンチを回避した徐倫たちが見たのは、胸部が開き、そこから顔を出した『ビームキャノン』がエネルギーをチャージしているアルティメット・クライシスであった!

 

「喰らいやがれッ!『ブレイクバスターキャノン』ッ!!」

「「技名付き!?」」

 

アルティメット・クライシスの武装の多さに驚くが、今はそんな場合ではない!逃げようにも、ビームキャノンは発射寸前で、間に合わない!徐倫があきらめかけたその時―――

 

 

 

 

 

「……やれやれ、いつになく諦めがハエーじゃねえか、徐倫。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドウッ

 

 

 

ビームキャノンが発射された……!

 

「じょ、徐倫ッ!スバルッ!!」

「へっ!エラソーにしてた割には、大したことなかったなぁ、おい!」

 

ビームは辺りの地面をえぐり、徐倫たちは跡形もなく消えていた……

 

もう、彼女たちには会えないのか……

 

呆気ない……

 

あまりにも呆気ない……

 

 

明日菜が絶望に涙したその時―――

 

 

 

 

 

「おいッ!勝手に人の娘を殺してんじゃねえぞ。」

『!?』

 

『アルティメット・クライシス』の『背後』から、声がした。振り向くと―――

 

 

 

「やれやれだぜ……まさか、『こっち』に戻る前に『シグナム』や『シャッハ』にさんざん付き合わされた『模擬戦』が、こんな形で役立つとはな………久々に5秒も『止められた』ぞ………」

 

右肩にスバル、左脇に徐倫をかかえた承太郎がいた。

 

「承太郎さんッ!」

(時を止めたのか………だが、何で承太郎さんが?)

 

「大丈夫かい、アスナ君?」

「茶々丸!」

「た、高畑先生に……エヴァちゃん!?」

「マスター!何故ここに?」

 

承太郎がスバルたちを下していると、そこへ、タカミチとフェイト、エヴァンジェリンが、明日菜達に駆け寄ってくる。

 

「スバルッ!」

「いや〜〜、ギリギリでしたね!」

「フェイトさん!と……カ、カモ君!?」

「お前………見かけないと思ったら、おやじ達を……!」

「ええ、でも………」

 

降りてきたフェイトの肩に乗るカモは、アルティメット・クライシスを見上げる。ただでさえデカいそれは、カモから見たら、さらに大きく見える。

 

「これは予想外ッスよ………」

「だろうな………」

「何だこのオモシロロボットは………?」

「ええいッ!エラソーに援軍かよ!『アルティメット・クライシス』ッ!!」

 

ランボはイライラした様子で叫ぶと、飛んで行ったロケットパンチが承太郎に落ちてくる!

 

「あぶなァーーーい!上から襲って来るッ!」

「スタープラチナッ!」

 

承太郎はスタープラチナを呼び出し、ロケットパンチへ向かわせる!

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!!」

ズガガガッ

「!堅いな………」

 

だが、スタープラチナのパワーでもロケットパンチは破壊出来ず、少しヘコんだ程度のダメージしか与えられない。それでも、ロケットパンチの軌道を変えるには十分だったが。

 

「隙アリ!『スパイラルフィスト』ォオッ!」

 

だが、ロケットパンチを攻撃して隙ができた承太郎に、腕のない右腕からドリルを出したアルティメット・クライシスが襲いかかる!

 

「ああ、確かに隙だらけだ……承太郎さんはな!」

「!」

 

だが、ドリルが承太郎に届く前に、千雨が前にでる!

 

「弧牙車ッ!」

ズガガガッ

「うわっ」「危なッ!?」

 

ドリルに攻撃し、軌道を変える千雨!その軌道上にいたスバルたちは、あわててよける。

 

「……ずいぶんガンジョーな『スタンド』だな………前に会った『シアーハートアタック』に匹敵する堅さだぞ………」

「おやじのスタープラチナでもダメだなんて…………」

「つーか、もう別の世界の存在だろ………もうお前スパ○ボシリーズに出ろ。そしてそのまま帰ってくるな!」

 

ロケットパンチを戻したアルティメット・クライシスに、悪態をつく千雨。

 

(…………!そうだ、『アレ』なら!)

 

そんな時、スバルにある『考え』が浮かんだ。それは―――

 

「おいッナカジマッ!!」

「隙だらけだぜガキィイイイッ!!」

 

だが、スバルが考えている間にも、アルティメット・クライシスのパンチが迫る!

 

だが、スバルは避けようとしない。それどころか、構えをとり、拳に向けてパンチを放とうとしている!

 

「はっ!パンチの『力比べ』か!エラソーに!!」

「スバルッ!!」

 

アルティメット・クライシスはパンチをやめようとせず、逆にさらに力を込める!そして、スバルもパンチを打つ!そして、それが交わった瞬間―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バグオォォォンッ

「「「「!?」」」」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()、『破壊』された!

 

「な…………てめぇ、何しやがったッ!!」

「あれは………」

「スバル……?」

 

その時、徐倫は気づいた。スバルの目の色が―――比喩ではなく、本当に―――『緑』から『金』に『変わっている』!

 

「IS、『振動破砕』………振動波を与え、破壊した!」

「『機人モード』…………確かにあれなら!」

 

スバルは、アルティメット・クライシスに向けて、ラッシュを放つ!

 

「ウリィィィィィィヤアァァァァァッ!!」

ズドドドドドド

「う………うおあああああっ」

 

攻撃を喰らった脚が、肩が、頭が、みるみるうちに破壊され、ランボは悲鳴を上げる。

そして、胸にまで破壊しつくされると、破壊による衝撃で爆発が起こり、ランボは放り出されてしまった!

 

ズシャア

「う………ッ…ぐぅう………はっ」

「ご対面!」

「ヒイッ」

 

投げ出されたランボは痛みに呻くが、徐倫とスバルの接近に気づいた。

 

「(さっきのが、スバルの『戦闘機人』としての力か………)さて、こっちは殺されかけたんだ。覚悟はいいか?」

「う……うわあああああ」

 

徐倫は『ストーン・フリー』でランボの襟を掴んでグイィッ、と立ち上がらせると、

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!!」

「ドベェーーーッ」

 

仮に漫画にしたとしたら1ページ半にも及ぶオラオラを、ランボに叩きつけた!

 

 

 

 

 

「倒したか………」

「………あれ?」

 

吹っ飛んで行ったランボを見届けてふう、と息を吐く承太郎。スタンドが解除されて、周囲に飛び散っていたロボットの破片がガジェットや車の成れの果てへと変わっていくと、フェイトとタカミチが声を上げた。

 

「わ、私の車………!?」

「ボクのも………まだ、ローンが………」

「え?」

「あ………どっかで見た車だと思ったら、高畑先生の………!?」

「………やれやれだぜ………」

 

愕然とする2人をしり目に、ランボに『窃盗』が加わるだろうと、承太郎は呆れるのであった………

 

 

 

 

 

←to be continued…




31話です。
・ロケットパンチにビームキャノン、そしてドリル!すみません、私の趣味全開です(笑)

・今回の千雨の技は、ヨクト(10の-24乗)、無料対数、不可思議から。

・スバルが『振動破砕』を使わなかったのは、ヴェルファイヤーのインパクトが強かったからです。冷静になったら、気づきました。

・オチは、車壊されて呆然とする2人。知らなかったとは言え、スバルも破損の罪があるわけなんですが、どうなんでしょうね、この場合(汗)

では、次回をお楽しみに!


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#32/アルティメット・クライシス ④

「―――向こうは終わったみてえだな………」

「そうですね……………後は」

「こいつだけか……………」

 

明日菜達がいた地点から、少し離れた場所で戦っていた仗助たちは、『アルティメット・クライシス』が見えなくなったのをみて、ランボが倒されたのを確認した。残るは、自分達が相手をしているセッコだけだ。

 

「!仗助さんッ!!」

ズボァア

「!」

 

ネギは、仗助の足元の石畳の異変に気付いて叫ぶが、仗助は泥化した地面に引き込まれてしまう!

 

(こいつ……動きは速い……しかも、奇妙な感覚だが、『クレイジー・D』で触れるこの地面は『硬い』……硬い石畳のままなのに………()()()()()()()()!)

 

 

 

 

 

#32/アルティメット・クライシス ④

 

 

 

 

 

「スティッキィ・フィンガーズッ!!」

 

ブチャラティは『(スティッキィ)・フィンガーズ』で地面にジッパーをひっつけると、まるでカーペットのように地面を『めくった』!

 

「………!」

「そこだ!『(タスク)』ッ!!」

「ランブルデトネイター!!」

ドババッ

 

仗助が素早く脱出をすると、めくった先にいたセッコに向かい、ネギとチンクが攻撃を放つ!

 

「………!」

プワアアアッ!

「「「!?」」」

ガガガッガァーン

 

だが、それをセッコは口にふくんだ『小石』を吐き出して、『はじきとばした』!スティンガーは少し離れた地点で爆発し、爪弾も爆発により破壊される。

 

闇夜切り裂く(ウヌース・フルゴル・)一条の光(コンキデンス・ノクテム)我が手に宿りて(イン・メア・マヌー・エンス・)敵を喰らえ(イニミークム・エダット)!」

「!?」

 

だが、爪弾を放った時から、すでにネギは『詠唱』していた!

 

「『白き雷(フルグラティオー・アルビカンス)』ッ!!」

ズババァアアッ

「うばっあああああ!!」

 

ネギの放った『雷』がセッコを襲い、セッコはたまらず地上に上がる!

 

「グレート!お前ら、結構『連携』とれるじゃねーか!」

「とっさだったがな………」

「ぐうううおああああっ………………ま、またやりやがったなっガキィイイイッ!だが、接近戦なら、お、おおオレに分があるっ!喰らえ!『オアシス』ッ!!」

 

セッコの攻撃が、ネギに迫る!だが!

 

 

 

 

 

ズドドッ

「うげっ!」

「え?」

 

いきなりセッコの背後からスティンガーが刺さった!?セッコが振り向くとそこには―――

 

 

 

 

 

ピシッピシピシッ

「なっナイフがッ」

()()()()()ぅぅうう!?」

ギャーーン

「うおおッ」

 

爆発したはずのスティンガーが、空中で再生してセッコに迫った!セッコはたまらずのけ反りながらスティンガーを捌くが、

 

「ドララララララララァアーーーッ!!」

「ギャッ!?ボガガァーーー!? !?」

 

スティンガーに気を取られている間に、クレイジー・ダイヤモンドの拳を顔面に受けて吹き飛ぶ!

 

「すでに予想してたぜぇー、チンクのナイフに警戒して、てめぇが二人の攻撃を『()()()()()()』ことはよぉおーー………」

 

仗助が倒れるセッコに言い放つ。彼の右手には『爆発したスティンガーの破片』が乗っかっており、次第に他の破片が集まって元のスティンガーに直っていく。

 

「だからネギが詠唱しているうちに、爆発したチンクのナイフの『破片』をオメーに投げつけたんだよ!!」

「ば……爆発したスティンガーを『直した』のか………!」

(クレイジー・ダイヤモンド……………『破壊と再生』が共存しているスタンド………………マジで、何をするかわからないな………………)

 

クレイジー・D=仗助の予測不能な動きに舌を巻く一同。セッコは、仗助を恨めしそうににらむ。

 

「て……………てめぇぇええ!」

「文句ゆーなよ……………さっきの『蹴り』のお返しだ!」

「ちいいっ!仕方ねぇ………………………さっき思い出した……………あのめ、『眼鏡』のヤツッ!あいつを殺して、退くとするぜッ!!」

『!!?』

 

セッコの口から出た『眼鏡のヤツ』と聞いて、4人は目を見開く。

 

「眼鏡って…………『千雨』のことかッ?何で千雨を狙う!?」

「オ……オオ………オレが知るかよぉおーー。とにかくあいつを殺したら、またの機会にテメーら皆殺しだッ!!」

 

そう言うと、セッコは地面に潜ろうとするが、

 

「そうは行きませんよォッ!!」

「赴任して間もないが、千雨はオレたちの生徒だ!みすみす殺されるのは見逃せねーんだよォオッ!!」

「一応エヴァと茶々丸のクラスメートでもあるようだからな………たとえそうでなくても、見過ごすわけにはいかない!」

 

既にネギと仗助、ブチャラティが駆けだしていた!セッコは構わずに逃げようとしたが、仗助が叫んだ。

 

「言ったはずだぜぇ?オレのクレイジー・ダイヤモンドは、『直す』スタンドだってなぁー!!」

 

言うや否や、クレイジー・ダイヤモンドの拳がセッコの周囲の石畳を殴る。瞬間!

 

ボゴゴォッ

「!?」

 

泥化していた石畳が元に戻り、セッコは弾かれて宙に浮いた!

 

「い、石畳を直して………直すパワーがオアシスの泥化を上回るだとぉ!?」

「タスク!!」

スパァアアッ

「!?」

 

セッコが着地するよりも早く、ネギの『爪カッター』がセッコの左腕が『切断された!』

 

「う………………うおあああああっおおおおおおれェェェェェのォォォォォうでェェェェェがァァァァァーーーーーー!?」

「ドラララララララララララララララララァアーーーッ!!」

「アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリィッ!!」

ドガガガガガガガガガガッ

「グオオオオオッ!?」

 

セッコが痛む間もなく、仗助とブチャラティのラッシュをその身に受ける!

 

「アリーヴェデルチ!(さよならだ)」

ドグシャァアッ

「グッギャブ………!?」

 

ブチャラティの最後の言葉と共に吹っ飛び、土煙を上げるセッコ!しかし、土煙が晴れた先にはセッコの姿はなく、泥化して穴の開いた地面だけがあった。

 

「逃げたか………!」

「問題ありませんよ。仗助さん、『()()()()()()()』。」

 

ネギは冷静に言う。その視線の先には―――

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

地中を潜行するセッコは、焦っていた。

『あの女』に頼まれた任務に失敗した上に、左腕を失ってしまった………あいつに何て言おう。

 

そう考えていたその時、

 

 

 

急に左腕が『引っ張られた』ッ!!

 

 

 

 

「なッうわあああっ!?」

ボゴオッ

 

左腕に引っ張られて、セッコは再び地上に出てくる。どうやら、石橋の上らしく、下には川の水がさらさらと流れている。

だが、セッコはそれ所ではなかった。目の前には仗助たちが迫っている上に、切断された『左腕がある』!?

 

「切断した左腕を『()()()』……………奴を『引き上げたのか』………………!」

「こ………こんな真似するなんて………に……逃げッ!……………あれ?」

 

セッコは目の前の仗助たちにビビり、逃げようとした。だが、何かおかしい。左腕が地面に『埋まって』、動けない?

 

「いや、違う!…………お、オオオ……オレの左腕が!『橋と一体化』しているぅぅうう!?」

「さて、うちの生徒を狙った罪は重いぜ…………覚悟しな!」

「仗助さん、後は頼みます。」

「い、いいいいいいったいテメーら……何をする気だぁあああーーーーーッ」

 

 

 

 

 

「ドラララララララララララララララララララララララララララララララァアーーーーーッ!!」

ドガガガガガガガガッ

「うぎゃあああーーッ」

 

クレイジー・ダイヤモンドのラッシュがセッコに、いや、『()()()()()()』に叩き込まれる!

セッコの全身の肉が裂け、骨が砕かれ、石橋も破壊される!そして―――

 

 

 

 

 

「そこで反省してろ…………永遠にな!」

ドリュッドリュッドリュリュゥウウッ

「う……………うがあああああっ」

 

 

 

 

 

セッコはクレイジー・ダイヤモンドの能力により、『石橋と一緒に』治されて、

 

 

 

 

 

完全に一体化してしまった………

 

 

 

 

 

麻帆良学園都市新名所:『うめき橋』

場所:麻帆良学園 聖ヘレンズ教会付近にある石橋

 

元々は、『梅木橋(うめのきばし)』という名前の石橋だが、『夜になると、橋から男のうめき声が聞こえる』という噂が流れたため、本来の名前とかけてこちらの名前が定着した。

怖い噂とは裏腹に、恋人や小学生たちの待ち合わせ場所として付近の住人に親しまれ、また、夏には肝試しのスポットにもなっている。

(麻帆良学園新聞部発行『まほら新聞』より抜粋)

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「いや、これは明らかにやりすぎだろ……………」

 

石橋と一体化したセッコを見下ろしながら、ヴィータは呆れたように言う。

事後処理のために来た彼女は、セッコはどこにいるか聞いたら、この石橋まで連れてこられた。橋に男の顔があったためにビビったが、落ち着いて二人の話を聞いて出たセリフが、これだった……………

 

「い、いやーー、俺も頭に血が上ってたっつーか…なんか一時のテンションに身を任せちまったっつーか………」

「こんなことまでできるなんて………」

「『治す能力』だから便利だなぁって考えてたけど………」

「正に『クレイジー(狂った)』な能力だね……………」

「う……うぎぎ………」

 

仗助が必死にヴィータに言い訳している中、フェイト、明日菜、スバルは、セッコを見下ろし、クレイジー・ダイヤモンドの恐ろしさを知った。

 

「なるほど………つまり、こいつらは、千雨を狙っていたのね?」

「ああ………確かにこいつはそう言っていた。」

「何で私が……………?」

 

一方、徐倫、千雨、承太郎は、ネギとチンクから、セッコたちの狙いが千雨であったことを知らされる。

 

「それで気づいたんですけど、今までの敵たちって、最初から長谷川さんを狙っていたんじゃないでしょうか………?」

「「!?」」

「い………言われてみれば………オエコモバやラング・ラングラー、アヌビス神……全員、千雨がいる時に襲ってきていた!」

「単なる偶然とは思えないな………」

 

ネギの推測に、全員が息をのむ。

 

「……おいおいおいおい、じゃああれか?私は今まで巻き『込まれないよーに巻き込まれないよーに』暮らしてきたけど、実は『()()()()()()()()()()()()()()』ってことか!?」

「まあ、そうなるな………仮に今までのやつらがおまえを狙っていたならの話だが………」

「そんな…………」

 

推測とはいえ、狙われているのは自分という事実にショックを受ける千雨。すると、承太郎はこう切り出した。

 

「千雨が狙われているとはいえ、まだ奴らの『目的』はわからないままだ………千雨、お前が殺されるほど『ヤワな』やつじゃあないことは知っているが、今後は一人で行動するな。」

「………はい」

 

千雨は、彼女にしては珍しく、力なく答えた。

 

 

 

 

 

ランボ・ルギニー――再起可能

フェイトによると、管理局に協力することを条件に、罪は軽くなったらしい。

セッコ――再起不能(リタイア)

ブチャラティと茶々丸――エヴァンジェリンにより、勝負は次の満月までお預けにした。

フェイトとタカミチの車――ローンを残して再起不能。フェイトはこの後、友人のアリサ・バニングスに車を弁償することとなった。

 

 

 

 

 

←to be continued...

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「………マンマミーヤ(なんてこった)!おい『ズッケエロ』、俺は夢でもみてるのかッ!」

「いや、『サーレー』………俺にも見えてるぜ…………ブチャラティだ……………」

 

陰からことの一部始終を見ていた、髪を左右でカニの足のようにセットした男―――サーレーは、隣にいた相棒のズッケエロに訪ねる。

 

『サルシッチャ』たちを探すためにここ『麻帆良』に来たら、いきなり遠くの方で『巨大ロボット』が現れたのを偶然見かけたため、気になってそのあたりまで来てみたら、意外な人物―――ブチャラティが、()()()()()()()()()()ブローノ・ブチャラティが、地中に潜る男と戦っている所だった。

 

「ど、どうするよサーレー!?」

「…………ビデオは撮ってあるな?とにかく、ボスに報告するぞ!」

 

サーレーはズッケエロにそういうと、その場を静かに立ち去った。

 

 

 

 

 

誰が言ったのか、

スタンド使いとスタンド使いは、

まるで、小指が赤い糸で結ばれた恋人同士のように『引かれ合う』―――

 

 

 

 

 

←to be continued...




32話です。
・ブチャラティ、チンク、ネギ、そして仗助の連携はお気に入り。
スティンガーを直すシーンは、形兆兄貴戦で『バッド・カンパニー』のミサイルを直して形兆兄貴にブチ当てたシーンが由来です。

・セッコ再起不能。セッコはこれから、『麻帆良版アンジェロ』として、近隣のみなさまに愛されるでしょう(笑)

・今までの敵は、実は千雨が狙いであったという事実。今後は、千雨を狙う者も現れてくるでしょう。

・サーレーとズッケエロにより、ブチャラティのことがジョルノ達に知らされました。
ラストの通り、スタンド使い同士は引かれ合う運命にあるので、それがさらに複雑に絡み合った一つの運命となります………

では、次回をお楽しみに!


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#33/ほんの少し昔の話

セッコたちの襲撃の翌日

 

グリーン・ドルフィン・ストリート麻帆良 309号室

 

 

六課が拠点として借りているマンションの三階のこの部屋は、偶然にも仗助の部屋だった。

今この部屋には仗助以外に、フェイトやスターズ陣にナンバーズ、そして、ネギや明日菜、徐倫、承太郎、千雨、あやかがいた。というのも―――

 

「ごめんね、今うちの部屋に掃除の会社の人が来ていて…………一応キレイにしてるから、早くには終わると思うから………」

「構わないッスよ。」

「へえ~、意外と片づけてんのねぇ~。」

「越してきたばっかだしな。」

「確かに、ダンボールが多いな………ところで、何で私はこんな『椅子』なんだ………?」

 

奇妙に歪み、椅子としての機能はほとんど失われ、どちらかといえば椅子よりも『オブジェ』に近い椅子に座りながら、チンクは文句を言う。

 

「いやぁ、前にムシャクシャした時に………」

「椅子にあたったのか………」

「まあ、おめーんちの家具だから、おめーが何に当たろうと構わないがな…………」

 

呆れる一同だった……

 

 

 

「……あの、先生…………」

「はい、何ですか長谷川さん?」

「長谷川さん、要件は手短にね。」

「千雨ちゃん、何か察知したの?」

「無駄に窮屈なんすけど…………みんな密着しすぎだから……………」

 

一方、千雨が座る席の左右と後ろには、SPよろしく黒いスーツにサングラスを着用したネギ、スバル、明日菜の三人が囲んでおり、前方ではリィンとカモ、そしてアギトが、同様の格好で仁王立ちしている。

なお、ルーテシアにも一式配られたが、サングラスをかけただけに止まっている。割と気に入ったらしい。

 

「ねえ、あれは何の遊び?」

「いや、スバルが千雨を護衛するって言い出して、それで『まずは形から』ってあの格好を…………」

「それにあいつらがノリノリで便乗した訳ね…………やれやれだわ。」

 

こちらも呆れるしかなかった。

 

 

 

 

 

#33/ほんの少し昔の話

 

 

 

 

 

「―――さて、皆さまに集まっていただいたのは、エヴァンジェリンさんたちに関することで、現時点でSPW財団が突き止めたことについて報告するためですわ。」

 

あやかが席から立ち、皆にいう。何人か、特にネギは真剣だが、他――ノーヴェとか――は、不真面目な態度だ。

 

「まず、エヴァンジェリンさんなのですが、カモさんに協力してもらって調べたのですが、20年前までは魔法界で600万ドルの『賞金首』だったそうです。その後にネギ先生のお父さまに『呪いをかけられた』ようですが……」

「ってなんでそんなのがうちのクラスにいんだよ!?」

「今はその『呪い』とやらで魔力は弱まっているからいいが、解かれたら厄介だな………実際、本人には解けねーようだがなぁー。」

 

あやかの報告に、千雨と仗助はそれぞれリアクションをとる。

 

「さらに調べたのですが、SPW財団の過去の資料の中に、彼女の名前がありましたわ。」

「財団の?」

「はい、それによれば、エヴァンジェリンさんは『柱の男』との戦いに参加していたとか………」

 

『柱の男』と聞いた途端、ジョースター家と千雨の目の色が変わった。

『柱の男』といえば、承太郎の祖父、ジョセフが倒した『究極生命体』だ。

それとの戦いに、エヴァンジェリンが参加していた…………?

 

「そういえば、『師匠』が言っていたな………柱の男との戦いで、魔法使いが協力してくれたって……………」

「それがエヴァンジェリンっていうのか…………?」

「まあ、その辺は本人を問いただしゃー良いだけの話だな。で、後の2人………茶々丸とブチャラティに関しては?」

 

仗助はあやかに聞く。あやかは手元の資料をめくり、話し始めた。

 

「茶々丸さんは、麻帆良大学工学部で開発された女性型アンドロイド(ガイノイド)だそうですわ。開発にはA組の超さんや葉加瀬(はかせ)さんが関わっているとか………」

「いや、マジでどうなってんのよ、あんたらのクラス…………?」

「まあ、あの2人なら何ら不思議はないけど……………」

 

ティアナのつっこみに答える明日菜。超とハカセこと、葉加瀬 聡美(さとみ)は、学園屈指の天才である。

 

「それと、ブチャラティさんなのですが……………」

「?どうしたの?」

 

ブチャラティについて、何故か口ごもるあやか。意を決したように、口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「死んでいるんです。六年も前に……………」

 

 

 

 

 

『!?』

 

あやかの言葉に、全員が息をのむ。いや、一人は冷静だった―――

 

「ちょ、死んでるって!?………でもあいつ、『幽霊』や『屍生人(ゾンビ)』なんかじゃあなくて、ちゃんとした人間だったぞッ」

「いえ………ですが、確かに六年前、イタリアの『コロッセオ』で死体が発見されたと―――」

「『コロッセオ』!?あいつは『()()()()()()()()()』で死んだのか!?」

 

徐倫に次いで、千雨も声を荒げる。

『六年前』の『コロッセオ』………千雨の父、ポルナレフが死んだのも、六年前のコロッセオだった。

あいつは…………ブチャラティは、自分の父となにか関連しているのか………?

 

「……………そろそろ話してくれてもいいんじゃないか、チンク?」

 

仗助の言葉に、全員の視線がチンクへと集まる。一斉に視線が集まったため、チンクは戸惑ったが、すぐに心を落ち着かせる。

 

「―――よく気づいたな……………」

「当たりめーだ。おめーのブチャラティを見たときの反応を見りゃーよぉーー、おめーとヤツが『顔見知り』だってこと位簡単に推測できるぜぇーーー。」

「ふっ、教師よりも、『探偵』とかになった方がよかったんじゃないか?お前は………」

「チンク姉………」

「わかった、話そう。私自身はあまり詳しくなかったが、ドクターやウーノたちの話も交えてだが………」

 

チンクは、静かに話しはじめた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

五年前―――

 

『ジェイル・スカリエッティ』のアジト内

 

実験用プラント

 

 

薄暗く、培養液に満たされたポッドの並ぶこの部屋を、2人の男女が歩いていた。

紫の髪を耳が隠れるくらいまで伸ばした、少し貧弱そうな痩せた科学者風の男、『犯罪者でなければ、歴史に名を残していた』とも言われるこの男こそ、ジェイル・スカリエッティその人である。

 

「例の『彼女』に頼まれた『人造魔導士』、『6体』全ての起動は順調です、ドクター。」

 

隣を歩く、スカリエッティ同様の紫の髪を腰まで伸ばし、どこかの制服のような服を着た女性―――ナンバーズNo.1『ウーノ』は、スカリエッティにそう報告する。

今このプラントには、ある『女性』から依頼された6人の『希少能力(レアスキル)持ち』の魔導士を、『人造魔導士』として蘇らせる実験が行われていた。

 

「ふむ、『以前』よりは内部機関に改良が加えられているし、早くにも実戦導入できるだろうな…………実験は成功だな。」

 

スカリエッティがそう口にした、その瞬間、

 

 

 

 

 

ドバシャァァアアア

「「!?」」

 

後ろから、まるで洪水のように勢いよく液体が流れる音がした。

2人が振り返ると、ポッドの一つに穴があき、そこから――ポッドに入っていたため――全裸の男が這い出てくる所だった。

 

「吐き気をもよおす『邪悪』とは……………なにも知らぬ無知なる者を利用する事だ………!!自分の利益だけのために…………利用する事だ………なにも知らぬ『死人』を!!てめーだけの都合でッ!」

 

男は立ち上がりながら、怒りを露わにして叫ぶ。切りそろえた黒髪が顔に張り付くのも構わず、2人に向かってきていた。

 

「そんな………ポッドの強度は『管理局』のお墨付きで…………AAAクラスの魔法弾にも耐えられる構造なのに………!」

「まさかあれは………それじゃあ『レアスキル』って……………!」

「ゆるさねえッ!あんたらのやったことはッ!死者の魂の『冒涜』でしかないッ!」

 

男は背後に自分の『能力』を出し、2人に迫る!そして―――

 

「ドクター!お逃げになっ―――」

「アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ………」

 

スカリエッティをかばい前に出たウーノに、ラッシュが打ち込まれた!

 

「アリーヴェデルチ(さよならだ)!」

バカァァァ

「がっ………」

 

ウーノの体に『ジッパー』がひっつき、腕、二の腕、足、スネ、股、胴体と頭の九つの部位に『分解』されてしまう!

 

「や………やはりそうか!ISのもとになったという『才能』!『スタンド』!!この目で見る日が来るとは………!」

「こいつはまだ死んではいない………お前も同じ目に遭わせてもいいが、このままではマズいんでな…………まずは!」

シュババババッ

「!!」

「お前の『服』を頂こう。サイズは気にしないでおいてやる。」

 

いつの間にかスカリエッティは、男の能力により『全裸に白衣』の状態にされ、男は今までスカリエッティが白衣の下に着ていた服に袖を通している所だった。

それが男の能力であると気づき、興奮気味に男に近づこうとしたスカリエッティは、男の手刀を喰らい意識を手放した。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

緊急のアラートが鳴り響いた時、チンクは淹れていた紅茶をこぼしそうになった。何事かと飛び出してみれば、1つ上の『姉』の姿があった。

 

「クアットロ、何の騒ぎだ!?」

「あら、チンクちゃん。何でも、例のあの(ひと)、『ヴィオレッタ』に頼まれた『人造魔導士』が1体逃げ出したらしいわぁ。」

 

チンクは、ガジェットを数体引き連れて通りかかった短い三つ編みの茶髪にメガネをかけた『クアットロ』に聞く。

 

「『人造魔導士』が?」

「ええ、トーレ姉さまが実験プラントで、ジッパーで分解されたウーノ姉さまと、素っ裸で気絶したドクターを発見したらしくて………で、聞いたらその人造魔導士、『スタンド使い』だったらしいのよぉ。」

「スタンド?」

「ええ、ISのもとになったという、97管理外世界の才能よ。」

 

クアットロは『スタンド』について、ある程度なら知識があった。そのため、チンクに簡単に説明ができた。

 

「で、今そいつはどこに?」

「う〜〜ん、反応はこの当たりなんだけど…………」

 

クアットロが探知をかけている時―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズババッ

「………はえ?」

 

クアットロの近くにいたガジェットから『パンチ』が飛び出し、クアットロの首を『切り離した』!あまりにも突然の出来事に、クアットロは自分でもびっくりするくらいマヌケな声を上げた。

 

「クアットロ!?」

ドゴォッ

「ぐあっ」

 

チンクがクアットロに近づこうとするが、こんどはそのガジェットから男が出てきて、チンクを蹴り飛ばした。

 

「悪いが、ガキにかまっている暇はないんでな。さて、お前に2、3質問がある。ちゃんと『真実』のみを話せば、命は助けてやる。もしも『嘘』を話したら、その時は―――」

「は、話しますぅう〜〜〜!話しますから、どうか命だけは〜〜〜!」

 

髪を捕まれたクアットロ(頭部のみ)は涙と鼻水を流しながら、男に命乞いをした…………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「……ク!おい、チンク!目を覚ませ!何があった!?」

 

チンクが目を覚ますと、目の前に青い髪が見えた。そして、それが姉であるトーレであると気づくと同時に、完全に覚醒した。起き上がり周りを見ると、ガジェットの残骸と「首のない」クアットロがいた。

 

「トーレ!クアットロが!」

「ああ、クアットロは「頭が」見あたらないが、どういう訳か『脈』は正常だ………ウーノの時と同じ状態だ!」

「……あいつはクアットロにいくつか質問していた。『ここはどこだ?』『何故オレは生きている?』といった質問をして、私が気を失う前には、『転移ポート』まで案内しろと言っていた………」

 

チンクの言葉に、トーレは目を開く。『転移ポート』は、念のためにと設置してある施設だ。もしも『異次元世界』へ逃げられたりなんかしたら、相当厄介だ。

 

「わかった、私はそちらに向かう。お前は他のガジェットを指揮して、アジトの周りを見張るんだ!」

「わかった!」

 

チンクはそう答え、トーレと別れた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

アジト内

転移ポート

 

 

数体のガジェットを連れ転移ポートへ到着したトーレは、周りの機材を操作したが、使われた形跡は見あたらなかった。

 

「……………どうやらまだ到着していないようだな………お前ら、念のために入り口を見張れ!ヤツが来たら、攻撃しろ!」

 

そう命令されたガジェットが外に出ていくと、広い部屋にはトーレだけになった。

 

「さて、来るなら来い!返り討ちにしてくれる!!」

 

自分の固有武器「インパルスブレード」を展開し、強く意気込むトーレ。

彼女は自分のIS「ライドインパルス」に自信があった。相手は強者とはいえ、倒したのは戦闘向きではないウーノとクアットロだ。戦闘向きの自分ならば、勝てるという自信があった。

その時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうか、ならば遠慮なく行かせてもらおう。」

ズパアッ

「!」

 

いきなり声がしたと思ったら、自分の体が上下で『分裂』し、クアットロの頭を持った男が『自分の中から』出てきた!

 

「な……………なんだとぉおおおおお!?」

 

分解されたトーレは、逆さまになった視界から自分の下半身を見つめ、出てきた男を見上げた。

 

「バカな!()()()()()()()()()!!?」

「お前が『チンク』とかいうガキと話している時だ。実はあの時、オレはまだあそこにいたんだ。そして、お前が『転移ポート』に行くと言うから、『連れてきてもらった』んだ。連れてきてくれてありがとう(グラッツェ)……とだけ言っておこうか。さて、『97管理外世界』とやらの座標を教えてもらおうか。」

「は、はいぃ〜〜〜〜〜(トーレ姉さまを手玉に取るなんて……こんなやつ、勝てるわけがないぃぃ〜〜〜〜〜〜)」

 

男に一杯食わされて、トーレは戦慄し、機器の上に()()()()クアットロは戦意を失い、男に従った。

そして男は機材を操作し終えると、転移装置に立つ。

 

「あの変態博士に伝えてくれ…………『クソ食らえ』ってな!」

 

そう言うと、男は97世界へ転移していった…………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「―――私が知るのはここまでだ。」

「ってあいつ、めっちゃ外道じゃん!?」

「でも、『分解』しただけで殺してはいませんでしたよ?」

「私もブチャラティの立場だったら、同じことしたかも……………」

 

ウーノやトーレから聞いた話を踏まえたチンクの話が終えると、全員が感想を述べた。

 

「でも、そんな話ドクターやウーノ姉に聞いたことなかったよ?」

「お前等の中には機動していなかった者もいるし、ドクターは他の5体をその『彼女』に渡した後、その事件のことなどの資料を全て廃棄して、他言無用と言われたからな。」

「どおりで……『JS事件』の後にアジトを調べてもそんなことに関する資料が見あたらないはずだね………」

「そうだ。だが、私は97管理外世界へ転移した所までしか知らない。その吸血鬼の従者(パートナー)になった経緯は知らない………」

 

チンクはそう閉めた。すると、ネギはあることを思い出す。

 

「そういえば、ブチャラティさんはエヴァンジェリンさんに『恩がある』って言っていました。多分、その後に何かあったのかと………」

「なるほど………」

「多分、起動したばかりで『調整』も不十分だったんだね………それをあの吸血鬼に助けられた、と。」

 

ネギの推測にフェイトが補足して、一同は納得する。

 

今後、SPW財団がさらに調査するという事で、今回は解散となった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

翌日

麻帆良学園中央駅前通り

STARBOOKS COFFEE

 

 

「今日も収穫なしか………」

「オットー、そう気を落とすな。」

「そうだよ、向こうもそう簡単に尻尾を出さないよ。」

 

ディードの情報を求めて、麻帆良を回っていたチンク、オットー、スバルは、ネギや千雨、徐倫と合流して一休みしようとここに来ていた。ネギによると、明日菜も別行動のウェンディとティアナの2人と一緒に、後から来るらしい。

なお、千雨がいる理由は、オットーが

 

「ディードをさらった犯人がチサメを狙っているのと『同一犯』なら、千雨といた方がディードに近づける。」

 

と言ったからだ。

 

「おーい。」

「あ、ティア〜〜!」

「あれ?2人は?」

「あっちで席取ってるわ。ジャンケンで負けてね………」

「そう。」

 

ティアナと合流し、頼まれた飲み物を持ってその席へ向かう一同。だが、2人はテーブルに伏せている。

 

「って何短時間で寝てんだよ………」

「アスナさん、こんな所で寝たら風邪引きますよーー」

 

言いながら明日菜を揺するネギ。だが―――

 

 

 

 

 

 

ドサァッ

『!!?』

 

明日菜はウェンディ共々、そのまま地面へ倒れてしまう。

 

「アスナさん!?」

「アスナッ!ウェンディ!!」

 

ネギとチンクが2人の容体をみる。だが

 

「み………()()()()………!?」

「そんな……………!」

 

悲痛な通告が、2人から告げられた…………

 

ヒュオッ

「!!」

パシッ

 

背後から空気を切る音を聞き、振り向きざまに『それ』をつかむ千雨。それは―――

 

「………トランプ?」

 

スペードのAだった。飛んできた方を見ると、投げたと思わしき「女」が、遠くにいた。

その女は、右手で手招きしたあと、クルリと背を向けて歩き始めた。

 

「………誘ってんのか?」

「どうする?明らかに罠だよ?」

「………行きましょう!アスナさんとウェンディさんを助けられるかもしれません!」

 

ネギはそのまま、女を追いはじめ、スバルたちもアスナたちを背負い、同行することにした。

 

 

 

 

 

←to be continued...




33話です。
・サブタイトルは「ほんの少し昔の物語」から。

・冒頭のSPなネギたちはお気に入り。スバルのSP姿は結構様になってるかも(笑)

・ここのエヴァンジェリンは、カーズたちと戦っている設定です。仗助にジョセフの面影をみたのは、そのためです。

・中盤はブチャラティ無双。こういう『知恵比べ』みたいな戦いも、ジョジョの醍醐味のひとつです。

では、次回をお楽しみに!


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#34/ダービー・ザ・リベンジャー ①

麻帆良公園園内

 

 

「ええっと………はじめましてルーテシアちゃん。私…私のどかです。よろしくね?」

「うん、よろしく。」

「のどか、こんな小さい子にまで緊張してどうするですか………」

 

公園でルーテシアとアルフ(こいぬフォーム)偶然会ったのどかと夕映。ちなみにアギトは、ルーテシアの服のポケットに隠れている。

 

「ナカジマさんから、『家にお姉さんと親戚が泊まっている』とは聞いていましたが、あなたがそうでしたか。日本へは、どのような用事で?」

「…………」

【る、ルールー、話合わせて!】

 

元々口数が少ないためか、あるいは突然の質問で困ったのか、ルーテシアは黙ってしまう。

 

「あの……………?」

「お父さんを……」

「え?」

 

夕映とのどかが少し戸惑っていると、ルーテシアが不意に口を開いた。

 

「お父さんが、97管理外世界(こっち)にいるって聞いて。」

「それで、日本(こっち)に探しに来たですか…………」

 

ルーテシアの言ったことに頷く夕映。微妙にかみ合っていないような気もするが………

 

【で……出任せだよねえ?】

【さあ………?ルールーのお父さんなんて、聞いたことも…………】

 

突然のルーテシアの発言に、アルフとアギトは戸惑ってしまう。口から出任せにしては、ルーテシアの目はまっすぐだったからだ。

 

「あれ?」

 

ふと、のどかは公園の外の道を走る一団を見つけた。先頭を走るのはネギだ。その後ろを、千雨やスバルたちが走っている。中でも、スバルと徐倫は明日菜とウェンディをそれぞれ背負っているため、かなり目を引く。

 

「あれはネギ先生たち?何かあったのでしょうか…………?」

【スバル?なんかあったのかい?】

 

夕映たちも気づき、アルフはスバルに念話を飛ばす。

 

【あ、アルフさん?実は今スタンド使いを追っていて…………】

【何ぃッ!?】

 

帰ってきた答えに、アルフは肉声に出しかけるくらい驚く。すぐにフェイトへ連絡しようとしたが…………

 

「のどか、追うですよ!」

グイィッ

「え、ゆ、ゆえぇぇぇ〜〜〜!?」

 

のどかが夕映に引っ張られる形で、去っていった。

 

【ってヤバくないか!?あののどかって子、スタンド使いとはいえあの性格(キャラ)だし、ゆえって子に関しては………!】

「……私たちも行こう!」

 

言うと、ルーテシアとアルフも駆け出した。

 

 

 

 

 

#34/ダービー・ザ・リベンジャー①

 

 

 

 

 

女を追っていたネギたちがたどり着いたのは、とある『ビル』だった。

 

「このビルに入りましたね…………」

「このビル………確かどこにも買い取られないでそのままの『廃ビル』だぞ…………近々取り壊されるとか言ってたっけ………」

 

徐倫はビルを見ながら言う。ネギとティアナが入り口の左右に周り、中の様子をうかがう。

 

「罠の類はなさそうですね…………」

「ええ………行くわよ!」

 

ティアナが先陣を切り、全員がそれに続く。

 

一階は広いホールになっており、取り壊し用の機材などが置かれている。向かい側の壁を見ると、階段があった。その右の壁には―――

 

「…………分かりやすい罠だな…………」

「ここまで親切だと、逆に怪しいね…………」

 

ご丁寧に、赤いペンキで『矢印』と『5Fまで』と描かれていた。ネギたちはあえてそれに乗り、階段を駆け上がる。

 

「もうすぐ5階ですね。」

「このビルは『5階建て』だ。最上階まで呼んで一体―――」

 

徐倫が言い終わる前に、一同は5階へ到着した。

 

 

 

 

 

そこは他の階に比べて、非常に明るい階だった。

床は赤い絨毯が敷かれ、周りにはテーブルやスロットが所狭しと配置されている。テーブルにはルーレットやサイコロが置かれていた。ここはまるで―――

 

「…………『カジノ』?」

「いつの間にこんなものを…………はっ!」

 

千雨が見つけた先で、その女は座りながら、トランプをシャッフルしていた。

 

腰まで届く金髪を、後ろは先端で7カ所、前髪も左右で一カ所ずつ三つ編みにした独特の髪型。顔立ちは整っており、目は青く、その唇には赤と黒の縦縞になるように口紅を塗っている。服装は白いワイシャツに赤いベストを着用して袖にはスペードマークのカフスボタン、首には赤い蝶ネクタイと、まるでカジノのディーラーのようだ。

 

ネギたちは女の座るテーブルを包囲しつつ、女に詰め寄った。最初に口を開いたのはオットーだ。

 

「お前…………ディードをさらった一味か!」

「………私にそれをタダで教えろと?」

「とぼけるな!アスナやウェンディ姉様を襲っておいて!!」

「オットー、落ち着け!」

 

チンクがオットーをなだめる中、女はシャッフルしたトランプを整えた。

 

「あなた、トランプの『マーク』には位があるのをご存知?」

「………何?」

 

女が、トランプを扇状にテーブルへ配置する。

 

「一般的に上からスペード、ハート、クラブ、ダイヤ………ポーカーでも、クラブのフラッシュよりもスペードのフラッシュの方が強いわ。」

「何が言いたい?」

 

オットーがしびれを切らして、女に詰め寄る。すると女は、トランプの中から一枚選び、手元に寄せた。

 

「私の選んだこのカードよりも、あなたがその山から選んだカードの位が高ければ、その『ディード』って子のことを教えてあげるわ。ただし、あなたには『()()()()()()()()()。どう?」

「………わかった。選べばいいんだな」

「グッド!」

「オットー!」

 

チンクが止めるのも聞かず、オットーは女の持ちかけた『賭け』に乗ってしまう。一方、徐倫はあることを思い出しかけていた。

 

(『魂』を賭けるだと………確か前親父に聞いたような…………まさか!)

「オットー!今すぐ『賭け』を降りろ!!」

「空条?」

「もう遅い!すでに賭けは閉じられた!」

 

徐倫が叫ぶも、オットーはすでにカードを選び、開いていた。

選んだカードは『スペードのA』だ。

 

「…………ぼくの勝ちだ。これより『位の高いカード』はない。」

「そうね…………『普通は』。」

 

女もカードを開く。カードは―――

 

「なっ……………『()()()()()()()………!?」

「ふふっ、私の勝ちみたいね。ジョーカーはどこにも属さない『トリックスター』………故に、その強さは全カード中最強!!」

 

女の言葉に、オットーは絶句する。徐倫はすでに遅かったと、青ざめた。

 

「ふふっ『ジョーカーがあるからトランプは面白い』…………あなたもそう思わない?さて、では払ってもらいましょうか!」

「……えっ払う!?何を?」

「『魂』よ。あなたはさっき確かに賭けたわ。『魂』!我が『()()()()()』は代々、『魂を奪うスタンド使い』!賭けというのは、人間の魂を肉体から出やすくする!私のスタンド『ポーカー・フェイス』は、そこを奪い取る!」

『!!』

「ダービーだと……確かそいつは!?」

 

女―――『ダービー』が言うと同時に、オットーの背後にスタンドが現れた!

 

細身のロボットのような腕と下半身に女性的な胸部を持ち、顔には目元のみが開いた白い仮面を付け、両肩と胸、両腰にも同じ仮面がある。頭からはコードが髪のように伸び、それがオットーを捕まえていた!

 

「こ………これは!?う、うわああああああああああああああああ!!!」

「オットー!?」

 

スタンドが、掴んだオットーから『魂』を抜き取る!魂を抜かれたオットーの肉体が床に倒れると、女は不敵に笑った。

 

「私の名は『ルーニー・S・ダービー』。綴りは『L.U.N.Y.S.D’.A.R.B.Y.』。Dの上にダッシュがつく……オットーは賭けに敗北した…したがって、『魂』はいただく!」

 

ダービーはそう名乗ると、『ポーカー・フェイス』はオットーの魂をグニグニと形を変えていき、最後にバーーンと押しつぶす!そして―――

 

 

 

 

 

コローーーン

 

 

 

 

 

その手の中から、1枚の『チップ』がテーブルの上に落ちた。チップには、目を瞑ったオットーの顔がある………

 

「これがオットーの『魂』よ……さっき手に入れた『神楽坂明日菜』と『ウェンディ』を含めて、これで3人を再起不能にしたわ。ふふっ………」

 

ダービーはオットーのチップを拾い見せつけると、懐からチップを二枚出す。チップには、明日菜とウェンディの顔があった。

 

「!アスナさん!ウェンディさん!」

「やはり貴様、二人を………!」

「……………ダービーって聞いてようやく思い出したわ………………あんた、親父と戦った『博打打ち(ギャンブラー)』ダービーの………」

「ふふっ、やっぱり知っていたわね、空条徐倫。ええ、私はあなたの父、空条承太郎に敗れたダニエル・J・ダービーの娘よ!ここにいるのは依頼主と利害が一致したからでもあるし、父の無念を晴らすためでもあるわ!」

「貴様ッ!!」

 

チンクはスティンガーを取り出すが、ダービーは右手で征する。

 

「おっと、私を殺さない方がいいわ。私が死んだら、3人の魂は天へ行き、そのまま戻らない………つまり、『死』を意味する!『魂』を取り戻したければ、私と賭けをするしかないのよ………」

「ぐ……………」

 

ダービーの言葉に、チンクは押し黙る。すると、徐倫がダービーの向かいの席についた。

 

「空条?」

「あんたの狙いは私と千雨でしょう?だったら『ポーカー』で勝負しましょう………」

『!!』

 

徐倫の行動に、全員が驚く。普通は『勇気ある行動』と思われるだろうが、ネギたちは『無謀』と解釈した。

 

「く、空条さん!一体何を考えているんですか!?」

「そうだ!もし負けでもしたら……………」

「大丈夫だ。ポーカーなら私にも勝ち目はあるし、それに、あいつが「イカサマ」しても、私なら見破れる。」

「ふふっ、ずいぶん自信があるのね?面白いわ!」

 

ダービーは新しいトランプの箱を用意する。ふと、徐倫に聞いた。

 

「………そう言えば、例の言葉を聞いていなかったわね?」

 

ダービーに聞かれた徐倫は、やれやれ、と息を吐き、宣言をした。

 

「賭けるわ、私の『魂』を!!」

「グッド!!」

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

徐倫がダービーに勝負を挑んだ頃――

 

廃ビル1階

 

 

「ゆえ〜〜、あ、危ないよ〜〜〜帰ろうよ〜〜〜〜〜…………」

 

夕映に引っ張られる形でビルに入ったのどかは、夕映を必死に説得していた。怖いからというのもあるが、ネギたちが入ったという事は、このビルには『敵スタンド使い』の罠があるに違いない。そんな場所に、魔法もスタンドもない夕映を巻き込む訳にはいかないからだ。

 

「何を今更。最近、あの人たちはよく一緒に行動をしていますし、怪我をして登校するのもしょっちゅうです。おまけに理由を聞いても『階段で転んだ』とか『天井からタライが落ちてきた』とか『ドーナツ作りに失敗した』とかありえない返答が返ってくるですよ!?これは何かあるに違いないです!」

「何ハルナみたいなこと言ってるの〜〜〜〜〜〜〜!?」

 

だが、夕映も引き下がらない。気になってついてきたルーテシアたちも、後ろでため息をつく。

 

【どうするんだい?あの子、かなり強情だよ?】

【ルールー……】

【大丈夫…………いざとなったら『ガリュー』を呼ぶから。】

 

念話で打ち合わせる3人(2人と1匹?)。『召喚魔導士』であるルーテシアの召喚虫『ガリュー』なら、並のスタンド使いに遅れをとることはない。

そのときだった。

 

 

 

 

 

「ウウゥ〜〜〜〜〜」

「ガウゥ〜〜〜〜〜」

 

犬のうなり声がした。

 

「へ?これって…………」

「野良犬のたまり場にでもなっているのでしょうか…………?」

【アルフ…………】

【…………いや、「犬」の臭いはしない………!この『臭い』は―――】

 

ビルの中に放置された鉄骨や材木の影から、何かがいくつも飛び出した。だがそれは、『野良犬』などというかわいらしいものではなく―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウウゥ〜〜〜〜〜」

「ハフッハフッハフッ…………」

 

「ば…………バルーンアートの………」

「犬……………?」

 

もっとかわいらしいものだった。ピンクやオレンジのカラフルなバルーンアートの犬が、うなり声をあげながらフワフワとのどかたちに近づく。

だが、のどかは『かわいらしい』故に『恐怖』を感じ取った!

 

「ダービーに『援軍が来たら厄介だから見張っていてくれ』と頼まれた世界だが、どうやらそれは間違っていなかったようだな。」

 

不意に、階段の方から男の声がして、そちらを向く。

 

「一つ忠告をしておくと、君たちがそれ以上近寄らない世界なら、我がスタンド『チューブラー・ベルズ』のバブル犬は君たちを襲わない世界だ。だが、近づいた途端、バブル犬は君たちを食い殺す世界となるだろう…………私も、できれば子供は殺したくない世界なんだ…………今すぐ立ち去るがいい。」

 

出てきたのは、黒い肌の男だ。

縮れた髪を短く切り、目元には渦巻き模様の入れ墨が施されている。服は茶色いコートを着て、ジーンズにはトゲのようなものがついていた。

 

「な…………何ですかあなたは………………?」

「スタンド使い…………!」

 

のどかは、『イノセント・スターター』を出し、戦闘態勢をとる。ルーテシアも、ブーストデバイス『アスクレピオス』の準備をする。

 

「………なるほど、立ち向かう世界というわけだな……………宮崎のどか………()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、君がそいつを知っている世界なら、色々聞けたのだが………………」

「えっ………?(()()()()()…………?)」

「ゆけッ!!『チューブラー・ベルズ』!!」

 

のどかが迷う暇もなく、男のかけ声と共にバブル犬がのどかたちに向かって飛びかかる!

 

男の名は『マイク・(オー)

スタンド名は『チューブラー・ベルズ』

 

 

 

 

 

←tobecontinued...




33話です。
・サブタイトルは「ダービー・ザ・ギャンブラー」から。

・ルーテシアの父親の正体は、いずれという事で。よく考えたら、何気に桑谷さんキャラが3人っていうすごい状況だ………

・ダービー(娘)登場。前回も言いましたが、ジョジョはこういう頭脳戦も面白さの一つですので、代表格であるダービーを出しました。

・マイク・O登場。同じビル内で『頭脳』と『肉体』の闘いを繰り広げる、という展開にしてみました。

では、次回をお楽しみに!


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#35/ダービー・ザ・リベンジャー ②

ポーカーは、配られた5枚のカードを一度だけ交換して相手よりいい『役(ポーカー・ハンド)』をそろえる、ポピュラーなトランプゲームである。しかし、ゲームに『賭け』の魅力が加わると一変して複雑な心理戦が始まるゲームでもある。

表情が読みにくい『ポーカー・フェイス』とは、このゲームが語源とされている。

 

「……ジョーカーは一枚…カードに異常はない。ごく普通のカードだな。」

「ふふっ、私がカードに細工をすると思った?」

「………いや。ただ、お前のオヤジは『セカンド・ディール』を使うくらいの熟練者だったらしいからな…………やるんなら、お前は技術(わざ)で来るだろう………」

「どうかしらね……ふふっ」

 

徐倫はカードを調べ終えると、カードを集めて(デック)にする。2人の周りには、ダービー側からスバル、ネギとカモ、ティアナ、千雨が囲み、イカサマがないか見張る。チンクは明日菜、ウェンディ、オットーを側のテーブルで寝かせて、3人を介抱していた。

 

「………ナカジマ、先生、もしコイツがなんかやらかすのを見たら、容赦なくぶちのめしていいからな?」

「もちろん、そのつもりです!」

「この子、カワイイ顔してコワい事いうわね……お姉さん、困っちゃうわ~………」

 

千雨とネギのやり取りに、おどける様に笑うダービー。するとダービーは『ポーカー・フェイス』を出し、3人の(チップ)をそれぞれ六つに分けた。

 

「ポーカーには、チップ3枚じゃあ話にならないでしょ?それぞれ6つで一つの魂よ。そして、」

 

ダービーは、何も描かれていない真っ白なチップを六枚、徐倫に差し出す。

 

「その真っ白なチップが、あなたの『魂』よ。私が六枚すべて奪ったら、あなたの魂はなくなるわ。いいわね?」

「………ああ。」

 

徐倫が承諾をし、カードをシャッフルする。適当な位置で2人はカードをめくった。

徐倫はスペードのJ、ダービーはダイヤの5。

 

「ディーラーはあなたからのようね………ふふっ、では、始めましょうか!」

 

ダービーのかけ声で、『魂』を賭けたゲームが始まった!

 

 

 

 

 

#35/ダービー・ザ・リベンジャー ②

 

 

 

 

 

☆第1ゲーム★

徐倫:6―ダービー:18

ディーラー:徐倫

 

 

徐倫がカードを配り、参加料に明日菜を1枚払う。徐倫は手札をみる。カードはダイヤのA、スペードの3、8、J、ハートの6だ。

 

「二枚チェンジだ。」

 

スペードのフラッシュが狙えると思い、ダイヤのAとハートの6を捨て、チップを払う。引いたカードは―――

 

(ハートの3と………ダイヤの8か………)

 

2ペアだが、役はそろった。

ダービーも明日菜をもう1枚払い、三枚チェンジ。

 

「………その顔、いい役でもそろえたのかしらね?様子見で、神楽坂 明日菜をもう1枚賭けるわ。」

「………同じく(コール)。」

(降りなければ、1ゲーム最低3枚必要なのか………)

 

ネギとスバルは、今のゲームから必要なチップの数を再確認する。

いよいよ勝負(コール)

 

「2ペア。3と8。」

「2と6の2ペアよ……運がいいわね。でも、勝負はまだ始まったばかりよ………?」

 

6枚のチップを自陣に運ぶ徐倫に、ダービーは笑いかけた。

 

☆第2ゲーム★

徐倫:9―ダービー:15

ディーラー:ダービー

 

 

互いに明日菜を支払う。徐倫のカードは、ダイヤの4と8に、ハートの4とスペードのJと8。8と4の2ペアができていた。別にイカサマはしてない。

ダービーも二枚チェンジして、とりあえず徐倫は1枚だけをチェンジ。引いたのはダイヤのQだった。

 

「コール。8と4の2ペア。」

「悪いわね………Qの3カードよ!」

「………!」

 

賭けた3枚の明日菜が、ダービーの元に渡る。

 

「………(あーもー!何でトランプなんかで、こんなにハラハラしなきゃならないのー!?)」

 

冷や汗を流しながら、スバルは内心叫びたい気分であった。友達の魂のやり取りというだけでも気分が悪いというのに、それを決めるのがトランプという、文字通り『命を懸けたゲーム』に、気がどうにかなりそうであった。

スバル・ナカジマ。賭け事(ギャンブル)に向かない性格かもしれない。

 

☆第3ゲーム★

徐倫:6―ダービー:18

ディーラー:徐倫

 

カードはAがそろっただけのワンペアだったので、三枚チェンジする。が、思ったようにそろわなかった……

 

「Aのワンペアだ………」

「ふふっ、運がいいわね………Jのワンペア。」

「………ほっ………」

 

明日菜が3枚徐倫の元へと戻り、ほっ、と、安堵するスバルと千雨とネギ。

 

☆第4ゲーム★

徐倫:9―ダービー:15

ディーラー:ダービー

 

 

(今んとこいたちごっこな状態だな………ここいらで勝負に出るか!)

 

徐倫はそう思い、カードをめくる。カードはクラブの3、ダイヤの4と8、スペードの5と7と、ストレートが狙える。ダイヤの8をチェンジすると、上手い具合にダイヤの6が来た。

行ける!そう確信し、2枚を上乗せ(レイズ)した。

 

「コール。ストレートだ。」

「……Qの3カードよ……やるわね。」

 

一気に5枚、明日菜3枚とウェンディ2枚をGET!

 

☆第5ゲーム★

徐倫:14―ダービー:10

ディーラー:徐倫

 

 

(ブタか………)

 

今度はうまく札やそろわなかった。三枚チェンジしたら、Qの3カードになった。

 

「コールだ。」

「あら、その役で来ちゃうの?」

『!?』

 

不敵な笑みを浮かべ、ダービーが見透かしたように言う。一瞬居を突かれる一同であったが、徐倫は落ち着いたように言う。

 

「……………何のことだ?」

「ふふっ、とぼけなくていいのよ?私はフルハウスだから。」

「………!」

 

慌てて、ネギたちに目配りをする徐倫。

 

「いえ……今のところ、怪しい動きは………」

「私の方も………」

「手の動きにも注意していたけど、怪しい点はなかったわ。」

「視線や仕草に不審な点は……………」

 

4人は口々に言う。怪しい点はないようだった。

 

(だが、ただのハッタリ(ブラフ)かもしれない…………ここは、まだ様子をみよう………)

 

☆第6ゲーム★

徐倫:11―ダービー:13

ディーラー:ダービー

 

 

(ヤツがイカサマしている証拠はない………それに、ポーカーは相手の「役」が見えたとしても意味はない。自分の役は変えられないからな……………だが、何か引っかかるな……さっきの行動…………)

 

カードはQとAの2ペア、十分に勝てる役であった。

 

「コールだ。」

「ふふっ、『()()()()()()()』ね。」

「!?」

「こいつ…………」

「だが、今のに怪しい点は…………」

 

ダービーも手札を見せる。役はジョーカーを交えたストレート。3枚がダービーの元へ渡ってしまう。

 

(どうなっているんだ…………?ヤツは私の役が見えている上に、ヤツの方が役が上…………?やはり、ヤツはイカサマをしているのか!?だが、方法は?どうやって私の手札を見て、なおかつ自分の役を勝たせている?)

 

 

 

☆第7ゲーム★

徐倫:8―ダービー:16

ディーラー:徐倫

 

 

そう思って迎えた第7ゲーム。ふと、ダービーの手が山札へ延びたとき、徐倫の目に『あるもの』が見えた。

 

(そうか!あれなら、自分の手札を勝たせることができる!だが、どうやって私の手札を…………?それがきがかりだ。)

 

徐倫はダービーのイカサマの糸口を掴んだものの、ゲームに集中できず3枚取られてしまった。

 

「あらあら、手が疎かになっているわよ?ゲームを諦めてしまったのかしら?」

「徐倫………」

 

徐倫が考えていると、ダービーが挑発するように笑う。

ふと、徐倫はダービーの手元にある明日菜とウェンディの『(チップ)』を見た。そして、閃いた。これしか、考えられなかった。

 

 

 

現在7ゲーム終了

徐倫:5―ダービー:19

 

ダービーが優勢。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

廃ビル1階

 

のどか、夕映、ルーテシア、アルフ、アギト VS.マイク・O

 

 

「『イノセント・スターター』ッ!!」

 

のどかは自分たちに迫るバブル犬に向かい、近いほうには拳を、遠い方へは子亀を放つ!だが、バブル犬はふわりとそれを避けて、その内の一匹が夕映に迫り―――

 

ガブゥウッ

「なあっ!?」

「ゆえッ!!」

 

夕映の足に『噛みついた』!だが、噛みついただけには止まらず、噛みついた先から夕映の足から血管へと進入してきた!

 

「こ……これは!わ、私の体内に!?」

「ゆえッ!!」

 

のどかは夕映に近づこうとするも、バブル犬が容赦なくのどかに迫る!

その時!

 

 

 

ドガガガガッ

「え?」

 

黒い影がのどかの前に現れて、バブル犬を蹴散らした!

驚くのどかだが、その影をよく観察した。

 

2m近いカブトムシなどを思わせる体に四つの赤い目、首にはマフラーをつけていて、某特撮ヒーローを思わせる。

 

「えと………あ、ありがとうございます……………」

「…………」

 

それは言葉を発さず、ぺこりと会釈した。

 

「あ…………あれは………?」

 

夕映がいきなり現れた人(?)に驚いたその時―――

 

 

 

バァアンッ

 

 

 

「……………え?」

 

噛みついていたバブル犬が破裂して、夕映の足に太い『釘』が突き刺さっていた……………

 

「あ……あああああああああああああッ!!」

「ゆえーーーーーーー!!」

 

部屋中に夕映の叫び声が木霊する。

 

「我が能力『チューブラー・ベルズ』は、金属を膨らまして『動物』の形にし、相手を追跡する……………そして、体内へ進入して破裂する世界だ。」

 

マイク・Oは、静かに告げる。いつの間にか彼は、鉄骨の近くにまで来ていた。

 

「!ガリュー!アギト!行って!!」

「おう!」

「…………!」

 

ルーテシアは黒いそれ―――人型召喚獣『ガリュー』とアギトに指示する。

ルーテシアのポケットから飛び出たアギトは、火球を形成して鉄骨に投げつけ、ガリューはマイク・Oに迫る!

ガリューの攻撃はバブル犬により阻まれるも、火球は鉄骨を熱し、焼き切った。まだ熱いのか、鉄骨は赤く熱されていた。

 

「……考えたな。熱すれば私は膨らませない世界というわけか…………」

 

マイク・Oが静かに賞するも、今度はガリューの回し蹴りが迫る!

 

「!危ないッ!!」

「!!」

 

が、のどかの声に一歩引く。瞬間!

 

 

 

 

 

ズドォッ

「「「!!」」」

 

ガリューとマイク・Oの間に『鉄板』が降ってきた!!ガリューは足を少し切ってしまうが、後一歩前に出ていたら、片足は切断されていただろう………そう思ったルーテシアは、ぞっとした。

だが、恐怖は去った訳ではない。気がつくと頭上には、白鳥の形をした風船が数体いた。

 

「ふむ………すでに鉄板を『バブル鳥』に変えていた世界だが………気づかれたか……………なかなか勘のいい世界だな。だが、我が『チューブラー・ベルズ』は防御シールドにして、君たちへのギロチン処刑の世界を兼ねたッ!!もう後戻りはできないぞ…………すでに許される世界ではない………後悔する世界は与えないッ!!」

 

マイク・Oは、のどかたちに指を指しながら叫ぶ。

 

(な…………何ですかこれは………………さっきから一体何が起こっているですか…………………!?)

 

夕映は混乱していた。

ネギたちを追ってこの廃ビルに入ったら、変な黒人男性が現れて、風船の犬が自分たちに襲いかかり、虫みたいな生物や手のひらサイズの人が自分たちを助け、自分の足には太い釘が刺さっている…………

これが、混乱しないでいられるだろうか?いや、『できない』。少なくとも、今の夕映には無理だった。

 

「…………あきらめたらどうだ?我が『チューブラー・ベルズ』はすでに君たちを包囲している世界だ………………逃げ場はない!」

 

マイク・Oは、のどかたちに言う。すでに勝利を確信している様子だ。

ふと、夕映は入り口をみる。入り口には特に多くのバブル犬がおり、逃げ出せそうにない。だが、夕映は見た。入り口の影に『誰かいる』………!?

 

「あ…………あなたの他に………誰か『仲間がいる』ですか………?あなた以外に……ここに誰かいるですか!?」

「………?いや、このビルには私と上にいる『ダービー』だけの世界だが…………?」

 

『ダービー』が誰かは知らないが、このビルには彼と後一人が上の階にいるだけらしい。

では、入り口の『アイツ』は……?

 

 

 

 

 

『頭脳』と『体力』、二つの戦いは、決着へと向かっていく―――

 

 

 

 

 

←to be continued...




35話です。
・ひやひやしながらポーカーを見守る一同。スバルもそうだけど、ネギまサイドもリリなのサイドも、賭け事向きじゃない面々が多い気がする。

・VSマイク・O。マイク・Oは、キャラクター、能力ともに好きなキャラですし、のどかたちを足止めするには、彼の『チューブラー・ベルズ』は効果的だと考えました。

では、次回をお楽しみに!


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#36/ダービー・ザ・リベンジャー ③

「……?どうしたの?カードは配り終えたわよ………?」

 

配ったカードを見もしない徐倫に、ダービーは不思議に思う。

 

「まさかとは思うけど、私の父の時のように、ビビらせてゲームから降ろすなんて考えてるんじゃないでしょうね?」

「いや……………ところで、一つ聞きたい。」

「?何かしら…………?」

「もしお前がイカサマをしているとして、私がそれを見つけたら、お前は『負け』を認めるか?」

 

徐倫の質問に、ダービーだけではなく、ネギたちも不思議がる。なぜ徐倫は、このタイミングでそれを聞くのだろうか……?

 

「……ふふっ、何を言い出すかと思えば……………ええ、『認めるわ』。イカサマを見破られるのは、博打打ちにしてみれば恥ずべき事…………素直に負けを認めるわ。ただし、『()()()()()』の話だけど、ね。」

 

ダービーは、自信ありげに答える。徐倫は不敵な笑みを浮かべ、カードを手のひらで扇状に広げた。

 

「………ありがとう、それを聞いて安心したわ………」

 

 

 

 

 

#36/ダービー・ザ・リベンジャー ③

 

 

 

 

 

☆第8ゲーム★

徐倫:5―ダービー:19

ディーラー:ダービー

 

「思ったんだけどさぁー………」

「?」

 

互いにチップを払い、徐倫が2枚捨てながらダービーに話しかけた。

 

「アンタのおじさん………『テレンス』、だっけか?いるじゃん?」

「………ええ、空条承太郎に負けたのを機に引きこもって、今じゃあネトゲに()()()()滅多に外に出てないそうだけど………」

「ソイツも、賭けに負けたやつの魂奪う能力だけど、それ以外に『他人(ひと)の心を読む』能力持ってたそうじゃない?」

「え………?」

 

手札を捨てようとしていたダービーの手が止まる。

 

「もしかしてアンタもさぁ~~~………()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()~~~………?」

「……………」

 

その場に緊張が走り、たらりと、ダービーの頬を一筋の汗がたれる。

 

(べ、別の能力…!?)

(スタンドは『1人一能力』………似通ったものはあるけれど、一人ひとりが違うスタンドを持っている………)

(だとしたら、この人も………)

 

一同が考えを巡らせていると、ふふっ、とダービーが嗤い、カードを2枚捨てた。

 

「何を言い出すかと思えば………『心理的揺さぶり』のつもりぃ~?だとしたら、とんでもなくお粗末さまねぇー………?」

 

そう言って、カードを引こうと(デック)に手を伸ばし―――

 

 

 

 

 

「そこォッ!!」

ガシィッ

「!?」

『!!』

 

しかし、伸ばした手をネギの肩から飛び出したカモに捕まれる!

 

「な……こ、このイタチは………!?」

「オコジョでぃ!姐さん、コイツ自分の引くカードすり替えていたっすよ!」

「喋った!?」

 

カモに驚くダービーであったが、カモはダービーの服の袖を噛み千切った。すると、バラバラとカードが何枚も零れ落ちた。

 

バララララ

「か!カードが『袖の中から』………!」

「『柄の同じカード』を袖の中から出して、自分が有利になれるカードを引いていたのか………」

「け、けど……どうやって徐倫のカードを言い当てて、尚且つ強い役にしていたんだ………!?」

 

千雨の言う通り、ただのすり替えだけならば、徐倫の役を言い当てたりできない。

すると、徐倫がおもむろに立ち上がった。

 

「1つ、分からないことがあってさぁー、ダービーさんよぉー………」

「む?」

「アンタ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ー?」

「うっ……?」

 

徐倫の質問に言葉が詰まるダービー。スバルが、首を傾げた。

 

「い、いつって………私たちがカフェで合流する前に………」

「そう、『合流する前』でしょうね。だけど、それだと『おかしいのよね』ぇー………」

「おかしい……?」

「だってそうでしょ?私達があの席に着くまで、1分もしなかったのよ?いくら明日菜たちでも、その短い時間の間に賭けに負けるなんて、考えられないし、そんなことをしたら、周りの客が騒ぐはずでしょ?」

「た、確かに………」

 

徐倫の説明に頷くネギ。徐倫は続けた。

 

「だったら『カフェに来る前』?でも、これだともう1つおかしい事になるわ……けれど、納得もできるのよねぇー………」

「え………?」

 

そう言うと、徐倫は自分の後ろに立つティアナに向き直り、

 

 

 

 

 

「『()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!」

 

 

 

 

 

『あ!!』

「ッ………!!」

 

ティアナにビシッ!と指をさして言い放った!

 

「ま、まさか………!?」

「ティアナの位置なら私の手札も見えるわ………ティアナが後ろから見たその手札よりも強い役にしていた、ってのがイカサマの真相って事かしらねぇー………」

 

徐倫の説明に、スバルたちも頷く。すると、冷や汗でびっしょりになったティアナが口を開いた。

 

「な、何を言っているのよ!?何で私が………」

「ふ、ふふっ………勝てそうにないからって、仲間を疑うなんてねぇ………別に言い当てたりしたのは、ブラフかもしれないのに………」

「しらばっくれるんならよぉー………」

 

ティアナに次いでダービーも言う。しかし徐倫は『ストーン・フリー』を出して、

 

ドグシャァアッ

「ぐえっ!?」

『!?』

 

ティアナの顔面にストーン・フリーのパンチをお見舞いした!殴られたティアナは、離れた場所のテーブルに激突した!

 

「これではっきりするんじゃねーのぉー?」

「い、いや、むちゃくちゃすぎるんじゃぁ!?」

 

鼻血を出して倒れるティアナに徐倫が言い放つと、ネギが思わずツッコミを入れた。その時であった………

 

シュンッ

「………ん?あれは?」

 

千雨は、ティアナの体から『白い何か』が飛び出たのを見た。素早く『エンゼル』の篭手を装着すると、それを捕まえる。

 

「これは…………ヤツの『スタンド』についていた『仮面』か!」

 

そう、それはダービーの『ポーカー・フェイス』についていたものと同じ、『スタンドの仮面』だった。徐倫に殴られた影響か、表がひび割れたそれの裏を見ると丸いくぼみがあり、そこに『チップ』がはまっていた。

 

「『ランスターの魂のチップ』がはまっているな………成る程、『魂を奪った相手を操る能力』だったワケか………」

「これで言い逃れは出来ないようだなぁー!?」

「う……うぅっ……(まさか………私のイカサマが………)」

 

ダービーは徐倫の推理力に戦慄した。戦慄して、恐怖を覚えた。それはつまり……………

 

 

 

 

 

ボーーーン

「「!!」」「アアッ」

「ああッ!4人の魂が!」

「戻ってくるッ!」

「しまった!うっかり魂を……!」

「やれやれ……魂が解放されたってことは、あんたの「心」が負けを認めたということね…………」

 

チップが元の『魂』に戻り、それぞれの身体へ戻っていく!

 

「大丈夫か?お前ら!?」

「「「う〜〜〜ん………?」」」

「ジョースター家……………まさかこれほどとは………………!」

 

徐倫の洞察力に感服するダービー。父である『ダニエル』や叔父の『テレンス』が、徐倫の父承太郎に敗北した理由が分かった気がした。

 

「…………………『逃げる』ッ!!」

ガタッ

「あっこらッ!」

 

あまりの恐怖に逃げ出すダービー!徐倫たちは追おうとするが……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドグシャア

『!!』

「がっ…………???」

 

突然スタンドが現れ、ダービーを殴り倒した!

 

左半身は青、右半身は赤を基調としたボディに中央に左右を分けるように金のラインが入ったロボットのようなデザインで、目はゴーグルのようになっており、口はなくガスマスクのようだ。頭はまるで花魁の髪型のように大きく、後光が差すように角が生えている。また、頭部や手の甲、腰には大極図が描かれていた。

 

『残念だったねダービー。』

『空条 徐倫をなめてかかるからこうなるのさ。』

 

スタンドから『二つ』の声が発せられた。一つは声変わり前の少年、もうひとつは、少年と同世代くらいの少女のものだ。

 

「あ…………あなた『たち』は……………!」

『『悪いけど、連れて行かせてもらうよ!!色々聞きたいことがあるからね!!』』

 

二つの声が同時に発せられると、スタンドはダービーをつかむ。

 

「おいッお前は一体………」

「その人をどこへ連れていく気ですか!?」

『ああ、君たちにはいずれ、うちの『お嬢様』から直々に話されるよ。』

『今いえるのは、私たちは君たちの敵ではないことくらいだよ。』

『『それまで、気長に待っててね♪』』

 

スタンドはそう言うと、シュッとダービーごと消えてしまった。

 

「消えた!?」

「『オエコモバ』の時と同じだ!何の反応もなく『転移』したぞ!!」

 

ダービーは倒せたものの、新たな謎が生まれた……………

 

 

 

「……で、ブッ、何で私は……鼻を折るほどの怪我をしてるの………?」

「それについては後で説明するから…………」

(あ、操られてる間の記憶はないのね………)

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

廃ビル1階

 

(…………彼女の見た者が何者かは知らない世界だが、敵である可能性が高い世界だな…………)

 

マイク・Oは夕映がみたという人物に警戒しながら、のどかたちを追い込む。

 

「……ガリュー、アギト、2人について!」

「…………」コクリ

「分かった!」

 

ルーテシアの指示で、アギトとガリューはのどかと夕映につく。

 

「お前、私から離れるなよ!」

「あ……あなたたちは一体………?」

「…………それは後で説明する!」

 

手のひらサイズの頼りないながらも、力強く夕映に叫ぶアギト。彼女もスタンド使いと戦うのは初めてだが、非戦闘員である夕映を守る思いがあった。

 

「………上っ!!」

ボウウッ

 

上から来るバブル鳥に火炎弾を放つアギト。バブル鳥は元の鉄板に戻り、半分に焼き切られて落下する。だが、すぐに別のバブル鳥が二人に迫る!

 

「ち………数が多すぎるっ」

「元々ここは改装に使う機材が多いです………それを使っているのでは…………」

 

すでに周りには二十を越えるバブル鳥やバブル犬がのどかたちを囲っていた。それらは今にも飛びかかってくる勢いだ。

 

「これで終わりだ。すでに我が『チューブラー・ベルズ』の処刑準備は完成した世界!一斉に飛びかかられては、ひとたまりもない世界だ!行け!!」

 

マイク・Oが叫ぶと同時に、バブル犬たちがのどかたちに襲いかかる!

もうダメかとのどかは諦め、強く目を瞑る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(………………?)

 

だが、痛みはやってこない。痛みを感じる間もなく死んだかと思い、のどかは目を開ける。

 

「!!えッ!?」

 

目を開けたのどかが見たのは、あれだけいたバブル犬たちが見当たらない、だだっ広いビルの内部だった!

 

「こ………これは!?どこだ!我がバブル犬たちはどこにいった!?!?!?」

 

どうやらマイク・Oにも事態が飲み込めないようだ。では、誰が……………?

 

 

 

 

 

「これを待っていたわ………マイク・O、あなたがこの部屋にある金属をすべて『チューブラー・ベルズ』の配下に置くこの時を!」

 

不意に入り口から声が、まだ幼さの残る少女の声が聞こえた。

そちらを見ると、のどかたちと同い年くらいの少女がいた。

身長は、靴の厚みを考慮しても夕映より少し高いくらいで、白髪に近い銀髪の髪を左右で縦ロールにしており、服装は黒を基調としたゴシックロリータ服で、左手を包み込むように布で隠している。

『お人形さんみたい』―――それが、この少女に対するのどかの第一印象だった。

 

「!ばっ、バカな!?あなたは………!」

「このビルは以前、私が使ったことがあるの。すでに『見取り図』は手に入れていたわ。サルシッチャの『アンダー・ザ・レーダー』は地図上にあるものを手元に寄せたり、逆に地図上に転移させる能力!すでにバブル犬たちは、ビルの4階に転移させてあるわ。」

 

見ると、少女の後ろには長い銀髪の男―――サルシッチャがいた。その手元には地図があり、それを覆うようにスタンドが存在していた。

 

「ル……『ルル・ベル様』!?なぜあなたがここにッ!?」

「マイク・O………彼女、『宮崎 のどか』は私にとって大切なスタンド使いなの………傷つけられては困るわ………」

「えッ?」

 

ルル・ベルと呼ばれた少女に『重要なスタンド使い』と言われて、戸惑う。

 

(わ………私が大切なスタンド使い………!?もしかしてこの人………!?)

「まさか………私たち以外でスタンド使いを生み出しているのは………!?」

「だから、あなたにはそれを命で償ってもらうわ!」

 

言うやいなや、いきなり猛スピードでマイク・Oに近づくルル・ベル!すでにスタンドの両腕が出ており、マイク・Oにラッシュを放った!

 

「オルオルオルオルオルオルオルオルオルオルオル………」

ズドドドドドド

「ぐああっ!?(か……彼女の能力が私に!?)」

「………君たち、目を瞑っていろ!トラウマになりたくなければな……………」

 

サルシッチャに言われて、訳も分からないまま目を瞑るのどかたち。

唯一目を開けていたガリューは、これから起こることをルーテシアが見なくて良かったと、心から思った………

 

 

 

 

 

ルル・ベルのラッシュを喰らったマイク・Oは、徐々に「浮いていく」!それは『ラッシュの反動』ではなく、まるで『空中に吸い寄せられる』かのようだ!

 

「な………………なぜ…………あなたが……………!?」

「あなたは知らなくていいことよ…………永遠にね。」

「う…………ウゴァァァアアアアアア」

 

マイク・Oが断末魔の叫びを上げると―――

 

 

 

 

 

バンッ

 

 

 

 

 

まるで風船のように『破裂した』………………

 

 

 

 

 

「…………マイク・Oの処理は私が。」

「お願い。ああ、もう目を開けてもいいわよ?」

 

ルル・ベルが言うと、のどかたちは目を開ける。すでにマイク・Oの死体はなく、あるのは血の跡だけだった。

 

「な………何なのですか、あなたは……………!?」

「それはまたの機会に。今回は偶然通りかかっただけよ。隠れた場所にある金属をもあいつが配下におくのを待ったから時間がかかったけどね…………」

 

ルル・ベルは「一応」申し訳ないように言う。のどかは、彼女に聞きたいことがあった。

 

「………あなたが私の能力を?何のために?」

「………いずれ分かる事よ………」

 

ルル・ベルはそれだけ言うと踵を返し、音もなく転移していった。

 

 

 

 

 

ルーニー・S・ダービー――スタンド名:ポーカー・フェイス――行方不明 再起不能

マイク・O――スタンド名:チューブラー・ベルズ――死亡 再起不能

ティアナ・ランスター――この後、仗助に鼻を治療してもらう。

 

 

 

 

 

←to be continued...




36話です。
・『イカサマは心理的盲点をつくこと』、かつてダニエル・J・ダービーはそう言いました。今回の盲点は「仲間」です。よく見ると、1人だけセリフが冷静だったりします。

・ダービーをさらったスタンド使いはいずれ、という事で。

・ルル・ベルのスタンドがちらり。マイク・Oの死亡シーンは、原作での死に方とあまり変わりません………かなり残酷ですが………

では、次回をお楽しみに!


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#37/吸血鬼の家にお見舞いに行こう

女子寮

徐倫と千雨の部屋

 

 

「で、どういう訳か説明してもらえますかッ?」

 

テーブルにどっしりとかまえ、スバル達に問う夕映。ネギたちは完全に困っていた。

 

(ど……どーすんですか兄貴!こりゃー説明するまで帰ってくれやせんぜ!)

(で……でも、夕映さんまで巻き込むなんて……………)

(で…でもどうやって納得させるの?)

 

正直に答えれば夕映を戦いに巻き込んでしまうし、かといって、夕映を納得させるような嘘が見つからない……

 

(そこで問題だ!この面子(私、ネギ、徐倫、明日菜、スバル、ティアナ、のどか、カモ)でどうやってあの綾瀬を納得させるか?

3択―ひとつだけ選びなさい

答え①ぷりちーなちうたんは突如納得させるアイデアがひらめく

答え②仲間がきて助けてくれる

答え③この面子じゃ無理。巻き込んでしまう。)

(…………私が真っ先にマルをつけたいのは答え②だけど、期待はできないわね……ゆえちゃんを納得させることができそうな、例えば承太郎さんとかがあと数秒の間に都合良くあらわれて、アメリカンコミック・ヒーローのようにジャジャーンと登場して『まってました!』と間一髪助けてくれるってわけにはいかないわよ………)

(じゃあどうするのよ!?)

 

全員があたふたしている中、動いたのは徐倫だ。

 

「分かった夕映、話そう。」

「徐倫!?」

「悪い千雨、私にも無理だ…………こいつの頑固さは私もよく知ってるしな…………答えは③だ。」

 

徐倫でもダメだったのかと諦める一同。

だが、

 

 

 

 

 

「…………なるほど、つまりあれは、『麻帆良大学工科部』で実験中の警備システムだったのですね。」

「ああ、実験中に何体か持ち出した人がいて、それを回収に来たらしいんだよ。実験中の機体だったから、ケガはそんなに深くなかっただろ?」

「……ええ、傷跡も残っていませんしね。」

 

その考えは覆された。

某スケベ亀顔負けな徐倫の巧みな話術(曾祖父・ジョセフ直伝)で、夕映は徐倫のウソを信じ込み、納得してしまった。実際、麻帆良(ここ)の生徒ならそれくらい作れそうだからあながち間違いではない。

 

(す……すごいですね空条さん………)

(うん、すごいけど………)

(あいつ、私らまで欺くなんて………)

(詐欺師になれるんじゃない?)

 

助かったが、徐倫の手口に呆れる一同だった。

 

 

 

というわけで、答えは①でした。正解者に拍手♪

 

 

 

 

 

 

#37/吸血鬼の家にお見舞いに行こう

 

 

 

 

 

グリーンドルフィンストリート麻帆良

206号室

 

 

「―――で、お前を助けた奴………『ルル・ベル』って言ったか?そいつがお前やネギを矢で射抜いたっていうんだな?」

「は、はいー………本人は、そう言っていました………」

 

夕映と別れ、内緒で206(ここ)に集まった一同。

のどかを助けた『ルル・ベル』という少女………助かったが、謎だらけな少女だ。

 

「それに、おまえ等を襲った「マイク・O」の話と照らし合わせると、『矢』は盗まれた以外に『もう一本』あって、千雨を狙ってる連中とは別の勢力が持っているらしいな………」

「たしか『矢』は、破壊されたものを含めて『6本』あるんですよね?じゃあ、その一本は…………」

 

矢は1986年にエジプトの遺跡から発掘され、その内5本は『エンヤ』という老婆から散り散りに渡っていったという。1本はイタリアのギャングが所持していたが、既に破壊されているらしかった。

 

「……一本、心当たりがある。」

 

承太郎の言葉に、全員が承太郎の方を向く。

 

「『吉良 吉影』のオヤジが所持していた矢だ。」

「!き……『吉良』って確か、………!?」

「た……確かにあの矢は見つからないままッスけど………!」

 

吉良 吉影―――かつて仗助の故郷「杜王町」で15年に渡り48人の女性や、自分を邪魔する者を人知れず殺してきた殺人鬼。仗助たち杜王町の住人が倒した殺人鬼の父親が所持していた『矢』は、吉良を倒した後も見つからないままだった。

 

「ああ、それと一本だけ行方が知らないままの矢がある。それが一本ずつ、それぞれの勢力に渡っているのだろう。」

 

承太郎はそう言うと、適当な紙を持ってきてペンを走らせた。

 

「分かりやすくすると、こんな感じか?」

 

 

 

☆矢の行方★

 

・矢A――虹村 形兆が所持し、音石 明が奪ったもの。1999年に、SPW財団が回収・保管している。

 

・矢B――『吉良 吉廣(写真のオヤジ)』が所持していたもの。1999年から行方不明だが、承太郎は『聖王教会』に保管されていた『矢』はこれでは?と推測している。

 

・矢C――イタリアのギャング『ポルポ』が所持していたもの。2001年に破壊された。

 

・矢D――2001年までポルナレフが所持していたもの。イタリアのギャング『パッショーネ』により保管されている。

 

・矢E――2年前、空条 承太郎がアメリカで発見し、何者かに奪われた後に徐倫へ送られたもの。SPW財団が保管している。(徐倫やまき絵は、この矢でスタンドに目覚めた。)

 

・矢F――不明。『ルル・ベル』が所持している?

 

 

 

「―――確か、吉良のオヤジは『爆発』により天に召されたはずだ。それが原因で『矢』がミッドに転移した可能性がある。」

「なるほど…………管理外世界からミッドに転移するのに一番多いケースに、大規模な爆発に巻き込まれるというのがあります………有り得ないわげではありませんね………!」

 

承太郎の仮説にフェイトも賛同する。

 

「………とにかく、向こうが敵じゃないと言ってはいるけど、警戒した方がいいわね…………そいつらの目的も分からないし………」

 

徐倫がそうしめて、その場は解散となった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

翌朝 月曜日

麻帆良学園女子中等部廊下

 

 

(スタンド使いたちの襲撃も活発化してきている……………この間エヴァンジェリンさんは満月までって言っていたけど、それまでスタンド使いたちが待ってくれる保証はない!)

 

ネギは『果たし状』片手に廊下を歩いていた。これ以上スタンド使いとの戦いが激化する前に、エヴァンジェリンとは決着を付けたい。

 

(逃げずに立ち向かうんだ!そのための『立ち向かうもの(スタンド)』なんだから!)

 

そう意気込んで、ネギは教室のドアを開く。

 

「おはようございますッ!エヴァンジェリンさんいますかッ!?」

「あ、ネギ先生。エヴァンジェリンさんならまだ来てないですが。」

「……あ、そうですか…」

 

意気込んで入ったが、まだ来てなくて気を落とすネギ。そこへ、仗助が入ってくる。

 

「おーネギ、おはよーさん。エヴァンジェリンのやつ、風邪で休むって連絡きたぞ。」

「え?『風邪?』」

(…………魔法使いな上に吸血鬼のアイツが、風邪ひいて寝込む訳ねーよな?)

 

ネギに耳打ちする仗助。一般的に吸血鬼は『不老不死』だ。風邪ひいて寝込むなど、有り得ない。

 

「………仗助さん、HRお願いします!」ダッ

「っておい!ネギ!?」

 

クラスを仗助に頼み、ネギは駆け出した。

 

「ま………間に合っ……ってネギ!?」

「すみませんアスナさん!エヴァンジェリンのお見舞いに行ってきます!!」

「え?ちょ、ちょっとーー!?」

 

明日菜が止めるのも聞かず、ネギは走り去っていった。

 

「………しゃーねーなぁー、おーい席に着けー!HRはじめんぞー?」

『はーい!!』

 

仗助は教卓に立ち、出席簿を開いて出席を取り始めた。

 

「じゃあ、出席とるぞー……“相坂”ー?」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

学園都市内

桜ヶ丘

 

 

麻帆良学園都市内でも特に自然が多い場所を、ネギは歩いていた。

 

「えーと…『クラス名簿』によると、エヴァンジェリンさんは『寮』とは別の所に住んでるのか……『桜ヶ丘4丁目29』…あ、ここかな?」

 

着いたのは、森の中に建つログハウスだった。吸血鬼らしく、墓場に建つ屋敷や古城を想像していたネギには意外だった。

 

「へぇ〜〜案外すてきな家だなぁ…………」

「少なくとも、吸血鬼が住んでる家のイメージじゃねーな………」

「そうですよね承太郎さん。…………承太郎さん!?」

 

いつの間にか、承太郎がネギの隣にいた。

 

「な………何で承太郎さんが!?」

「………あのブチャラティに聞きたいことがあってな。で、君は?」

「あ………実はエヴァンジェリンさんが風邪で休みだそうで………」

「………『吸血鬼』がか?」

 

承太郎は怪訝そうな顔をする。承太郎も吸血鬼である「DIO(ディオ)」と戦った戦士だ。故に、吸血鬼が風邪で休むとは思えなかった。

 

「………まあ、やつは『石仮面』で吸血鬼になったわけではないらしいからな………オレの知る吸血鬼とは勝手が違うやもしれん………」

「ごめんくださーーい、エヴァンジェリンさーーーん、ネギですーーー家庭訪問に来ましたーー」

 

ネギはドア横の呼び鈴を鳴らすが、誰も出てくる気配はない。

 

「は………入りますよーー?」

ガチャッ

「おい、勝手に入っていいのか…………?」

 

家に入るネギとともに承太郎も入る。………

 

「わわっ!?中は結構ファンシーだ!?」

「……こーいったトコはそこら辺のガキと大差ねーな………」

 

中はぬいぐるみや人形などが所狭しと置いてあった。血を1滴残らず吸い尽くされた死体の一つや二つ転がった室内を想像していたネギは、吸血鬼らしさがひとかけらもないこの部屋に驚き、承太郎はエヴァンジェリンが容姿相応の趣味を持っていることを知る。

そこへ―――

 

「どなたですか………?」

「ビクゥッ」

「………なんだ、あんたたちか。」

 

奥から茶々丸とブチャラティが出てきた。

 

「あ…ちゃ茶々丸さんにブチャラティさんですか。あ、えーと、この間はどうもすいませんでした。」ペコペコ

「いえ、こちらこそ。」ペコペコ

「………で、エヴァンジェリンは?」

「あいつなら、風邪こじらせて寝てるぞ。薄着で夜更かししていたせいだろう。」

 

ブチャラティの言葉に、ネギは本日三度目の驚きを見せる。

 

「え?でも不老にして不死である彼女が風邪なんかひくわけないでしょう?」

「―――その通りだ。私は元気だぞ。」

 

いつの間にか、パジャマ姿のエヴァンジェリンが二階から降りてきていた。強がっているようであったが、顔が赤く息も荒い。

 

「………ふっ、空条 承太郎も一緒か………だが、魔力が十分でなくとも、貴様ごときひよっこをくびり殺すことくらい、わけはないのだぞ?」

「マスター、ベッドを出ては………」

「エヴァンジェリンさん!!」

 

エヴァンジェリンを見つけて、ネギは果たし状をエヴァンジェリンに突きつける。

 

「………?何だそれは?」

「は、果たし状です!僕ともう一度勝負してくださいッ!」

「おい、『お見舞い』じゃなかったのか?」

「それに、そいつは次の満月までお預けだって………」

「そ、それにちゃんとサボらないで学校に来てください!このままだと卒業できませんよ!」

 

承太郎とブチャラティのつっこみをよそに、ネギはエヴァンジェリンに言う。

 

「いや、だからそれも『呪い』のせいで出席しても卒業できないんだって。まあいい。じゃあここで決着をつけるか?私はいっこうにかまわないが……」

「………いいですよ。その代わり、僕が勝ったらちゃんと授業に出てくださいね!!」

「おいエヴァ………」

「…………やれやれだぜ。」

 

両者は戦闘態勢をとり、辺りに緊張した空気が立ちこめる………

茶々丸はエヴァンジェリンを心配そうに見る………

 

そして……………

 

 

 

 

 

ぽてっ

「わーーーッ!?」

 

 

 

 

 

エヴァンジェリンがぶっ倒れた………

 

「む………すごい熱じゃないか………風邪って本当だったんだな………」

 

承太郎がエヴァンジェリンの容態をみる。茶々丸とブチャラティがエヴァンジェリンを運ぶ準備をする。

 

「すまない、二階のベッドに寝かせてくれ。」

「あ、はい!」

 

ブチャラティの指示で、ネギは彼とともにエヴァンジェリンを運び出した。

 

「ずいぶん無理をしたみてーだな………」

「マスターは風邪のほかに『花粉症』も患っていますので。」

「………本当に吸血鬼なのか、あいつは?」

 

承太郎はこの時、自分の中の吸血鬼のイメージ(主にDIO的な)が崩れたのであった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「で、オレに話ってのは?」

 

エヴァンジェリンをネギに任せ、ログハウスから出て、承太郎に問うブチャラティ。

承太郎はブチャラティを見据えたまま、コートの内ポケットに手をやる。

 

「………お前は、6年前コロッセオで『死んだ』らしいな。」

「!………エヴァから聞いてはいたが、もうそこまで調べたのか……SPW財団とやらは…………」

「そこで聞きたい。お前は―――」

 

承太郎は、内ポケットから手を出す。手には「写真」があった。

 

「6年前に、同じくコロッセオで死んだこいつを知っているか?名前は『J・P・ポルナレフ』………」

「!!」

 

「ポルナレフ」の名前と写真―――彫りの深い顔に、パンクロッカーのようにたてた銀髪の男―――ブチャラティは目を見開く。

その男のことは知っていた。

 

忘れるわけもない。

 

あの時の―――

 

「…………知っていたら、何だってんだ………………!?」

「やはりな…………やつの死には、不審な点が多い。同じ場所でお前が死んでたんなら、色々知ってそうだったんでな。」

「………………」

 

承太郎が説明するが、ブチャラティは黙ったままだ。

 

「わかった、話そう………」

 

しばらくして、ブチャラティは静かに話し始めた…………

 

 

話は、ブチャラティが所属していた組織の幹部になり、誰もその正体を知らないボスの娘―――トリッシュの護衛任務を彼のチームに与えられた所から始まった。

 

ボスに反感を持つ裏切り者の襲撃を乗り切り、ヴェネツィアにいるボスの元までトリッシュを連れてきたが、ボスは自分の手で、自分の足取りになるトリッシュを殺害するために護衛させたことを知り、トリッシュを守るためにボスに離反したブチャラティは、そこでボスの「時を消し飛ばす」スタンド『キング・クリムゾン』に敗れる。

 

だが、チームの『新入り』の力もあり何とかヴェネツィアを脱出し、トリッシュの記憶をたよりにボスの正体を探ろうとし、その時に、同じくボス―――ディアボロを倒そうと、ディアボロの正体を探す者を探していたポルナレフと知り合ったという。

 

「彼とコロッセオで落ち合う手はずだったんだが、同じくディアボロもポルナレフの存在に気づいていたんだ………それで、ディアボロと交戦になって…………」

「そいつに敗北した………というわけか…………」

「ああ………だが、彼は『希望』を残してくれた………彼が教えてくれた力『レクイエム』を、その新入りが―――」

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()が手に入れて、ディアボロを倒したんだ。」

「!!」

 

『ジョルノ・ジョバァーナ』の名前を聞いて、承太郎は目を見開く。

 

「『ジョルノ』だと…………!?その新入りは、「ジョルノ・ジョバァーナ」というのか………ッ!?」

「あ、ああ…………そうだが………?」

 

承太郎の豹変に、ブチャラティはたじろぐ。いきなり何だというのだろう?ブチャラティがそう思っていると、承太郎は額に汗をかきながら、大きなため息をつく。

 

(…………まさかこの男とジョルノ・ジョバァーナに接点があったとはな……………やれやれだぜ…………)

「おい、あんた、ジョルノのこと何か―――」

 

 

 

ガシャーーン

 

 

 

「何をみた!?どこまでみたんだ貴様ァァァーーーッ」

「べ………別に何も………」

「嘘をつけェエーーーッき、貴様等は親子揃ってぇぇええええええ!!」

 

ブチャラティが承太郎に聞く前に、二階から騒ぎ声が聞こえた。

 

「………エヴァが起きたようだな………」

「やれやれ………オレもこれでおいとましよう…………」

 

言うと、承太郎は立ち去って行った。ブチャラティは、彼の背中を見つめるしかなかった。

 

 

 

 

 

(スタンド使いとスタンド使いは引かれあう………どこでどんな風に引かれるのか、分からないものだな………)

 

 

 

 

 

←to be continued...




37話です。
・サブタイトルは「漫画家の家へ遊びに行こう」から。

・この小説内での『矢』の行方を簡単に表記。吉良の矢は未だ行方知らずなので、聖王教会にあったのはこの矢にしました。

・ネギとエヴァの夢のくだりは、原作通りです。

・ブチャラティとの会話で、承太郎はブチャラティとジョルノの繋がりを知りました………これが物語にどう影響を与えるかは、お楽しみということで。

・次回、エヴァとの決着の始まりです。

では、次回をお楽しみに!


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#38/真祖の吸血鬼(ハイデライト・ウォーカー)の襲撃

1888年

風の騎士たちの町(ウィンドナイツロット)

 

 

「ふん、あの若造―――『ツェペリ』が探していた「石仮面」の力を試してみたが………この程度か…………」

 

金髪の少女――エヴァンジェリンは、目の前で傷つき倒れる男に、がっかりだといわんばかりに言う。

 

「GUUUUU…………こ……このディオが………こんな小娘にィィィィ…………」

「世界の半分も知らぬ()()が、エラそうな口を叩くなよ………同じ『吸血鬼』でも、『年季』が違うのだよ。」

 

傷ついた男―――ディオにそう言うと、エヴァンジェリンは踵を返す。

 

「ン?オイ御主人、トドメササナクテイイノカ?」

「興ざめだ。帰って寝る。」

「!こ………このおれに情けをかけるというのか…………!!」

 

立ち去ろうとするエヴァンジェリンに、ディオは叫ぶ。エヴァンジェリンはディオをまるで養豚所の豚でも見るかのように冷ややかな目で見下ろす。

その冷ややかな目に、ディオは悟った。この小娘は、自分など眼中にないのだと。

 

 

 

 

エヴァンジェリンが立ち去った後も、ディオは悔しそうに地面を見つめるしかできなかった…………

 

 

 

 

 

#38/真祖の吸血鬼(ハイデライト・ウォーカー)の襲撃

 

 

 

 

 

現在

麻帆良学園女子中等部 コンピューター室

 

 

証明を落とした室内にはパソコンのモニターの明かりだけが光源だった。そこには、2人の人影があった。

 

「……どうだ?」

「予想通りです。やはり『サウザンドマスター』のかけた「登校地獄」の他にマスターの魔力を押さえ込んでいる『結界』があります。この結界は学園全体に張り巡らされていて、大量の『電力』を消費しています。」

 

パソコンを使い、学園のデータベースに侵入した茶々丸と、報告を聞くエヴァンジェリン。

 

「ふん、20年も気づけなかったとはな………しかし、『魔法使い』が電気に頼るとはなー………えーと……『ハイテク』ってやつか?」

「私も一応その『ハイテク』ですが…………」

 

長生きしているせいか分からないが、意外と機械が苦手らしいエヴァンジェリン。コンピューター室から出て屋上に来ると、口角を上げた。

 

「まあいい、おかげで今回の『最終作戦』が実行できる訳だ。……………そうだよな?」

「そうです。」

「よし。予定通り「今夜」決行するぞ!ブチャラティにもそう伝えろ。ふふふ………坊やの驚く顔が目に浮かぶわ…………クククク……………アーーッハッハッハッハーーー」

 

あーおかしいと、わざわざ高いところに登って笑うエヴァンジェリン。相当機嫌がいいようだ。だが、茶々丸は少し不安そうだ。

 

「―――ん?どうした茶々丸?何か気になることでもあるのか?」

「い、いえ……あの…その………」

「?」

 

エヴァンジェリンに問われて、くちごもる茶々丸。そして、少し黙った後、

 

「……申し訳ありませんマスター。ネギ先生はすでにパートナーと『仮契約』を結んでいます。」

「何!?それは聞いていないぞ!なぜ黙っていた!?相手はッ!?」

「…相手は『空条 徐倫』です。何故報告しなかったのかは………自分でもわかりません……申し訳ありません………」

「空条………()()()()のひ孫か………!」

 

茶々丸の報告に驚くエヴァンジェリンだが、すぐに冷静になる。

 

「―――ふん、まあいいさ。もはや奴に「パートナー」がいようが、関係ないからな…ぼーやの性格なら、あまり大人数で攻めてくる事もあるまい………作戦開始まで後『5時間』だ。行くぞ茶々丸。」

 

言うとエヴァンジェリンは飛び立とうとする。だが

 

ビッターーーーン

「へぶぅッ」

「マスターッ!?」

 

思いっきりつまずいて転んだ………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「―――まさか、セッコに続き『ダービー』と『マイク・O』がやられるなんてな………」

「おまけに、マイク・Oをやった奴は『正体不明』…………ダービーも行方不明ときた……スタンド使いは、ジョースターとやらの仲間だけではなかったのか………?」

 

暗い室内で、男たちが話す。すると、男の内のひとりが、奥に座る女性に話しかける。

 

「すいませェん奥様、よろしければ私が直々に出向かいますが……?」

「いいえブラックモア………すでに「彼」の部下が『やつ』を援護しに向かったわ…………『やつ』のスタンド―――『スペースマン』が、確実に息の根をとめることでしょう…………フフフ………」

「………信用できるんだろうな?その『スペースマン』ってスタンドは………」

 

女に向かい、ひとりの男が声をかける。

黒い帽子に黒いコートとズボンを着用した黒ずくめの男だ。だが、その目は真っ赤に充血をしており、それが男を印象付けていた。

 

「ええ、数日前に目覚めたとはいえ、強力なスタンド使いよ。安心していいわ、『リゾット』。」

「……………」

 

男―――『リゾット』に向かい、女は余裕の笑みを浮かべて言う………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

学園都市内

購買近く

 

 

「―――で、エヴァンジェリンさんはまた襲ってきそうなの?」

「今の所は何とも………でも、今日は教室に来てましたし、考え直してくれたんじゃないかなぁって思いますが………」

 

放課後、明日菜、徐倫、スバルと話しながら歩くネギ。

 

「あまり安易な考えをするなよ。吸血鬼ってのは、100年以上海の底待つくらい執念深いらしいからな……」

「ま…マジで?」

「それが本当なら、エヴァンジェリンもまだ諦めてないんじゃあ………」

「い、イヤだなぁ空条さん……クラスメートをそんな風に疑ったりしたら〜〜」

 

忠告する徐倫に対して、ネギはあくまで『先生』としてエヴァンジェリンを信じるようだ。

ふと、スバルは購買が賑やかなのに気づいた。見ると、なにやらセールをやっているようだ。スバルは、近くにいたのどかに声をかける。

 

「どーしたの?」

「あ……ナカジマさん………」

「知らないのスバル?今日の夜8時から一斉に『停電』だよー深夜12時まで。」

「学園都市全体の年2回のメンテです。」

「あ………そーいえば……………」

 

隣にいたハルナと夕映に説明されて、スバルは昨日フェイトが話していたのを思い出した。

 

(停電か………何か嫌な『胸騒ぎ』がするな…………)

「じゃあ、僕見回りに行ってきますのでーーー」

「はーい♪」

「がんばんなーー」

「スバル、私らも見回りしたほうがいいかもしれない………」ヒソ

「え?う、うん………?」

 

スバルは徐倫の言ったことが分からなかったが、とりあえず、今夜徐倫や千雨たちと共に見回りに行くことにした。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

午後8時30分

女子寮

 

 

「う〜〜ん、真っ暗な寮ってなかなか怖いねぇーカモ君。」

 

停電で真っ暗になった寮を見回りしていたネギは、肩に乗るカモに話しかける。だが、当のカモは何やら「異様な気配」を察知していた。

 

「?どうしたのカモ君?」

「兄貴!!何か異様な『魔力』を感じねーか!?停電になった瞬間現れやがった!!」

「え?『魔物』でもいるっていうの?」

「分からねえがかなりの『大物』だ………まさか『エヴァンジェリン』の奴じゃ………」

 

カモの推測に、ネギはえっと声を上げる。ネギは、エヴァンジェリンは更正してもう襲ってこないと思っていたためだ。

 

「だから兄貴は甘いんだって!そんな簡単に奴が諦めるハズないだろッ!」

「で…でも…………」

『チュミミィ〜〜ン………』

 

ふと、『タスク』の鳴き声が聞こえた。見ると、どこかを指している様子だ。タスクが指した方を見てみると―――

 

 

 

ひた……ひた……

 

 

 

「ま……まき絵さん〜〜〜〜!?な……ななな………ダメですよ!『ハダカ』で外出しちゃぁあ…」

 

裸のまき絵がいた。それに対してネギは見当違いの注意をするが、そこに『異様性』を感じ取っていた。

 

「―――ネギ・スプリングフィールド………エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルさまが、きさまにたたかいをもうしこむ………10ぷんご、だいよくじょうまでこい………」

「「!!?」」

 

普段とは明らかに雰囲気の違う、あえて言うなら『操られたように』話すまき絵。これは―――

 

「な………これって………」

「!分かったぜ兄貴!あいつエヴァンジェリンに『噛まれたこと』あるだろ!!真祖に噛まれたら「操り人形」だべ!」

「えっ………うそ!?」

 

ネギが驚いている間に、まき絵はリボンを駆使してまるで某蜘蛛超人よろしく建物から建物へ移動していった。

 

「な…す……スタンドが加わっているとはいえ…………」

「ありゃあ『半吸血鬼化』してるぜ……エヴァンジェリンのやつの魔力が封じられてるってのが仇になったんだ!」

 

自分の甘い判断が生徒を危険にあわせてしまった―――ネギの頭の中には、その考えから罪悪感が芽生えた………

 

「―――だから言ったろぉーネギ………」

 

ふいに、背後から声が聞こえた。振り向くと、陰から仗助と徐倫が出てきた。

 

「魔力が弱いからってよぉおおーー、油断したらケガするってなぁあーーー。」

「ふ、2人とも…………!」

「やれやれだわ………ネギ、『作戦』を決行するわ!カモは明日菜のトコに行け!こっからは私らのスタンドで立ち向かうッ!!」

 

徐倫の号令の元、エヴァンジェリン戦の作戦が始まった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

同時刻

桜通り

 

 

「なあ、私らは本当に行かなくていいのか?」

「エヴァンジェリンに『波紋』はあんま効果ないらしいし、私が行ってもあんま戦力にはなんないだろ。」

 

ベンチに腰掛けた千雨は、隣にふよふよ浮いたアギト話す。くじ引きでグループを決めた結果、千雨はルーテシアとアギトの二人と組むことになった。今は、トイレに行ったルーテシアを待っている所だった。

 

「しかし、きれーだなーーこの『花』。ええーと………『サクラ』…………っつったか?」

「ああ。ミッドには桜ないのか?」

「ああ。こんなきれーなの、始めてみたよ…………」

 

アギトが桜に見とれているその時だった。

 

「……!?(こ、これは………!?)」

 

千雨は、ある『異変』に気づいた。周囲が異様に『()()』、ベンチから「手が離れない」!?

 

 

 

 

 

日本(ジャポーネ)の、『花見』ってよォォォォーーー……」

 

ふいに声がして、二人はそちらを向く。そこには、一人の男がいた。

まるで山菜の一種『(ぜんまい)』のようにカールさせた金髪に、縁の厚いメガネをかけた男だ。服装は水色のジャケットに、縦のストライプが入った高そうなズボンをはいていた。

 

「『花』を『見』ながら料理とかを楽しむから『花見』っていうのはわかる。スゲーわかる………」

 

男は、静かに話す。千雨たちが聞いているかどうかはおかまいなしなようだ。

 

「けど、秋に『もみじを見に行く』のを『紅葉狩り』って言うのはどーいうことだァ〜〜〜〜?『見に行く』のに『狩り』って、おかしくねーかァ〜〜〜〜!」

 

いきなり、男が怒りに顔を歪ませた。

 

「キノコを取りに行くから『キノコ狩り』!ブドウを取りに行くから『ブドウ狩り』ッ!!なのに何で『紅葉狩り』は『見に行く』のに『狩り』って言うんだァーー?何で『紅葉見』って言わないんだよォォォォーーーッ……これって納得いくかァ〜〜〜おい?オレはぜーんぜん納得いかねえ………」

 

男は一通りしゃべると、いきなり桜の木を殴り始めた!

 

「くそがぁあーーッオレをナメてんのかァーーッ!!『紅葉見』でいいだろうがッ!!クソックソックソッ!!」

 

男がキレている様子を、二人は見ていることしかできなかった。呆れを通り越して『不気味』と思った。

 

「な………なんだアイツ………?」

「さあな……多分だが、やつは敵スタンド使いだ!さっきから手や尻がベンチから離れないと思ってよく見たら、『凍り付いて』いやがった………」

 

見ると、確かに千雨の周りには『霜』がおりている………!?

 

「アギト………おめー確か、炎扱えたよな…………悪いが、周り溶かしてくれないか?」

 

千雨はのんきそうに言ってはいるが、実際は心底、敵に対して『恐怖』していた………

 

 

 

超低温のスタンド『ホワイト・アルバム』

本体の名はギアッチョ。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

公衆トイレ

ある個室

 

 

「………………」

 

ルーテシアは、すでに用はたしおえたのに便座から立ち上がらなかった。いや、()()()()()()()()()()()()()()。何故なら―――

 

「…………おしりが、離れない……」

 

便座と尻が『凍り付いて』、引きはがそうとするとびったりとくっついている為に痛みを伴うからであった………

 

 

 

 

 

←to be continued...




38話です。
・サブタイトルは「行ける死人(リビング・デッド)の襲撃」から。

・冒頭でディオを打ち負かしたエヴァ。世界なしで気化冷凍法のみじゃあ、エヴァには勝てないだろうと思って。でも、世界があったらディオに軍配があがるでしょう。

・両右手サイドから、ギアッチョの他の『スペースマン』は、次回登場です。ちなみに紅葉狩りは、平安時代あたりに実際に枝を折って『狩り』をしていた名残だそうです。

・千雨とアギト。なかなかない組み合わせですが、個人的にはこれから推していこうと思ってるコンビです。

・ルーテシアの災難再び(笑)用をたしおえたからよかったけど、「最中」だったらどうなっていたか………考えただけでふるえが止まりません………

では、次回をお楽しみに!


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#39/雷&氷(サンダ―・アンド・アイス)! ①

グリーンドルフィンストリート麻帆良

入り口前

 

 

「ノーヴェ!」

「の、ノーヴェさーん!」

「ホンヤ!ティアナ!」

 

マンションの前に集まっていたナンバーズと合流したのどかとティアナ。スバルたちは既に寮へと向かっているらしい。

 

「エヴァンジェリンさんが動いたって聞きましたが………」

「ああ、今ネギや徐倫、それに仗助さんが向かっているらしい。私らは念のために待機だ。」

「まあ、空条や東方みたいな実力者が一緒だし、心配は無用だとは思うが、念のためにな………」

 

チンクがのどかに諭す。先日の『セッコとランボ』との戦闘で、二人の実力―――スタンドという限られた力を上手く使う戦い方を見たチンクだからこそ、説得力があった。

 

「まあ、一応この辺りも見はった方がいいわね。のどか、あなたは『(イノセント)・スターター』の子亀で周りを見張って。ノーヴェやウェンディはいつでも出られるように―――」

 

 

 

 

 

ズンッ

 

 

 

 

 

『………!?』

 

突然、一同を『地響き』が襲った。

 

「い…………今のは…………?」

「!?!あ……………あああ……………………あれは………………!!?」

 

のどかがある一点―――『上の方向』を見つめて恐怖していた……

そちらをみた一同が見たのは―――――

 

 

 

「な………あれは!?!?」

 

 

 

 

 

#39/雷&氷(サンダ―・アンド・アイス)! ①

 

 

 

 

 

麻帆良学園都市内

商店街

 

 

「寮の方で、何かあったらしいな…………」

「そうだな………『スタンド使い』たちがいるとはいえ、心配だし戻るか?」

 

停電の闇に染まった商店街を歩く四つの人影があった。

一人は刹那、もう一人は、中学生には見えない位スタイルが良く、色黒で、修羅場をいくつも潜り抜けたような鋭い目を持った龍宮 真名(たつみや まな)、そして、承太郎とフェイトだ。

 

「………いや、スタンド使いがいるなら、私たちは不要だろう。」

「えらく冷静だな。そんなにやつらに信頼を置いてくれてんのか?」

 

冷静に答える刹那に対して、承太郎が言う。確かに今、麻帆良にいるスタンド使いたちは『杜王町』の面々と比べても実力者揃いだが、相手は『柱の男』ともやり合った吸血鬼だ。心配しない方がおかしい。

 

「いえ………ですが、ネギ先生やナカジマさんもいますし、そんなに心配は―――ん?」

 

ふと、刹那はこちらに誰か駆けてくるのが見えた。人数は多いが、その中に知った顔があった。

 

「宮崎さんに………ランスターさん?」

「あ……………承太郎さんに…桜咲さんたち………」

「どうしたの?そんなに慌てて?」

「!また『消えている』ッ!!」

「フェイトさんッスタンド使いです!周りに……特に『頭上』に気をつけてください!」

 

ティアナがフェイトたちに向かい叫ぶ。4人には何のことだか分からないが、とにかく「ヤバい」状況というのは分かった。その時だ―――

 

「!!」

 

刹那は背後に『殺気』を感じて振り向く。が、なにも見あたらなかった。

 

「………ふう、すいません、気のせいでした………少し神経質になっていました…………」

「…いや刹那………そんなことはないよ……………」

「………やれやれだぜ……………こんなに『近づかれる』まで気づかなかったなんて…………」

「…………?」

 

だが、承太郎やフェイトが『戦慄』の表情をしているのに気づくと、全員が「頭上を見ているのに」気づいた。自分も見上げてみると―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ!!?」

 

頭上に『鎧武者』がいた!それも、身の丈『14m』ほどの!

 

鎧には所々に『SWORD』や『BLADE』と書かれており、兜には左右にバッファローを思わせる角があり、額にあたる部分には大小の『V』を繋げたような角もある。顔には『般若』と『骸骨』を組み合わせたような面をかぶっており、闇夜と相俟って、それの恐怖をかきたてた。

そんなものが、刹那たちを『跨いだ』形で、そこに立っていた。

 

「こ……………こんなのが何で……………私たちに気づかれずに……………!?」

「この間の『アルティメット・クライシス』といい、最近のスタンドはあんな『デカいの』が流行っているの?」

「あ、それは私も思った………」

 

フェイトとノーヴェがどうでもよさそうな会話をする中、鎧武者は拳を振りかざし、パンチを浴びせる。

一同はギリギリでかわし、承太郎とフェイトは攻撃に入る!

 

「プラズマランサー!」

「スタープラチナッ!!」

 

フェイトの『プラズマランサー』とスタープラチナのオラオラが鎧武者に迫る!だが―――

 

 

 

 

 

フッ

 

 

 

 

 

「「「「!?」」」」

 

二人の攻撃が当たる瞬間、鎧武者は忽然と『消えた』!

 

「まただ!また『消えたぞ』!」

「まさか………あんな『巨体』が『消えた』だと!?」

 

全員が鎧武者を探すとき、承太郎はフェイトの後ろに陰が見えた!それはあの鎧武者だ!

 

「!フェイトッ!!」

「!!」

ドグシャアッ

 

承太郎に叫ばれて、フェイトはようやく背後の鎧武者に気づいたがすでに遅く、鎧武者により地面にたたきつけられてしまう!

 

「フェイトさんッ!!」

「一瞬で…………やはりやつは『瞬間移動』の能力…………ッ!!」

 

チンクは、鎧武者が『瞬間移動』のスタンド能力だと気づく。

あの巨体で『瞬間移動』の能力だと、かなり厄介だ。

ただでさえこの間の『アルティメット・クライシス』にてこずったのに、それに『瞬間移動』が加わったら、どこからあんな攻撃がくるか分からないからだ。

 

「全員一カ所に固まって!やつの攻撃を絞るのよッ!!」

 

ティアナが全員に指示を出すが、承太郎は冷静に鎧武者を見ていた。

 

「待てティアナ………まだ『瞬間移動』と決めつけるのは早いぜ………………」

「えっ!?」

 

承太郎の言うことが分からないティアナだったが、それ所ではなくなった。鎧武者が手を挙げたかと思うと、『太刀』がその手に収まっていた!

 

「!!ヤバいッ!!」

 

ドガァアッ

 

鎧武者が太刀を振り下ろす瞬間、ティアナたちはその場を去った。

 

「しゅッ………『瞬間移動』って決めつけるなって……………!?」

「やつの今の『瞬間移動』には、数秒『タイムロス』があった。瞬間移動なら、タイムロスは「()()」はずだぜ?」

「た…………確かに…………」

 

承太郎の説明に、ティアナとのどかは納得する。

瞬間移動、あるいはワープ等は、一般的に「タイムロスなく一瞬で移動する」ことを言う。だが、鎧武者の瞬間移動にはタイムロスが存在した。

 

「こいつは「瞬間移動」かもしれないが、別の何かという可能性もある。『注意深く観察して行動しろ』………だぜ。観察しろというのは……………見るんじゃあなく観ることだ………聞くんじゃあなく聴くことだ……………でないと…………これから死ぬことになるぜ……………!」

 

承太郎の言葉に、二人は気を引き締める。

 

 

 

スタンド名―スペースマン

本体名―夜叉丸

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

女子寮 大浴場

 

 

明かりがなく、暗闇の大浴場に、骨董魔法具(アンティーク)(スバルたち曰わく『原始的なアームドデバイス』)をフル装備したネギと、それに付き添うように来た徐倫とスバルがいた。

 

「きましたよエヴァンジェリンさんッ!!どこですか!?」

 

すると、大浴場の一角にある屋根のあるスペースに、明かりが灯った。

 

「「「!!」」」

「ここだよ坊や。まさか先日と同じ布陣でくるとはな………」

 

そこには、セクシーなボンデージに身を包んだ金髪の『美女』と、メイド服に身を包んだ茶々丸、まき絵、美砂、円、桜子、5人、そしてブチャラティがいた。

 

「!?あなたは…………」

「ふ……」

「「「……………………誰ッ!!?」」」

スッテーン

 

3人のボケに、金髪美女はすっころんだ。そして―――

 

ボンッ☆

「私だ私ィィイイイーーーッ」

「「「あーーー。」」」

 

『幻術』を解き、元の幼い容姿に戻ったエヴァンジェリンに、三人は納得する。ブチャラティは呆れてため息をついた。

 

「ったく、だから『幻術』なんて使わねーでそのままで行けって言ったのに…………」

「うるさいッ!!…………まあいい。『満月』の前で悪いが……今夜ここで決着をつけて、坊やの『血』を存分に吸わせてもらうよ。」

 

余裕の笑みを浮かべるエヴァンジェリン。だが、ネギも負けられなかった。

 

「そうはさせませんよ………僕が勝って、悪いコトするのはやめてもらいます!」

「ネギ、そこは『僕「たち」が』………だろ?」

「そうそう。」

 

2人の訂正に、ネギは苦笑する。2人は自分の生徒だが、2人には適わなかった。

 

「それはどうかな?………やれ。」

 

エヴァンジェリンがパチンッと指を鳴らすと、まき絵たちがネギたちの前に立ちはだかった。

 

「………やはりそう来ましたか…………」

「まき絵を使いに来させたから、茶々丸とブチャラティ以外にもいることは想定していた…………」

「だから、私たちは『作戦』を練ってきた!」

「……………何?」

 

3人の言葉に、エヴァンジェリンは眉をピクリとひそめる。

 

「「「それは――――――」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クルッ

「「「『逃げる』!」」」

ダッターーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「………え?」」

ズコーーーーッ

 

いきなり「逃げ出した」3人に、茶々丸とブチャラティは呆気にとられ、エヴァンジェリンは再びすっころんだ。

 

「………………ッてコラーーッ!!何思いっきり逃げてるんだ!お前らッ早く追えッ!!」

「「「「………あ、はい。」」」」

 

いち早く復活し、呆けていたまき絵たちに指示を飛ばすエヴァンジェリン。

 

「………ま、当然『追ってきますよね』。」

「こいつらは任せたぜ…………『楓』、『おじさん』!!」

 

 

 

 

 

ブワアッ

『………?』

 

徐倫がそう言うと、ローブを着たネギの懐から『布』が二枚、零れ落ちた。まき絵たちは何だろうと思うと―――

 

 

 

 

 

「ドララララララララララァアアアーーーーーーッ」

ズババババッ

 

布の中から、「クレイジー・ダイヤモンド」の拳の連打―――『ドラララ』が『飛び出した』!

まき絵と円は何とかかわすが、美砂と桜子はモロに食らってしまう!

 

「何ィイ!?(ぬ、布の中から……!?)」

「すぐに治したからよぉおー、ちょいと『気絶した』程度にすむぜぇえーーー。これで『2対2』だ!」

「うーむ、なかなか恐ろしい能力でござるなぁー………」

 

エヴァンジェリンたちが驚いているうちに、いつの間にか布のあった場所に仗助と楓がいた。楓は、まるでというか、そのまま『忍者』の格好だ。

 

「ネギ坊主、司令官(コマンダー)、それにナカジマ殿………2人は拙者たちに任せて、お主等は―――」

「ああ、行かせてもらうぜ!」

「エヴァンジェリンさんッ僕はこっちですよッ!!」

「…………そう言うことか。」

「大方、東方 仗助の入れ知恵だろう………だが、」

 

ネギたちの意図を察したエヴァンジェリンとブチャラティ。つまりは、『こちらの戦力を分散させる』のが目的だろう。それを考えて、エヴァンジェリンは『魔法の射手』の発射態勢に入る!

 

「逃がすと思うてかッ!!」

ドッバァアアーーーッ

「うおおッ来た来た来たぁーーーッ」

「『(タスク)ッ』!!」

ガシャアアーーン

 

エヴァンジェリンの『魔法の射手』が迫る中、ネギは大浴場の窓をぶち破り、そこから『逃走』する。徐倫も、スバルの『ウィングロード』の上を走り、そこから抜け出した。

 

「無駄無駄無駄無駄無駄ァァアアアーーーッ逃がさんぞ若造どもがァアアーーーーッ!!」

「マスター、調子に乗りすぎです。」

 

ハイテンションに叫ぶエヴァンジェリンに茶々丸がツッコミを入れながら、3人もそこから外に出て行った。

 

 

 

 

 

「―――さて、やつらも出て行ったし、オレらもおっぱじめるか。」

 

ネギたちが出て行ったのを確認し、仗助がそう切り出した。すると、まき絵の側に『グロウン・キッド』が姿を表した。

 

『フム、スマナイ。まき絵ニハ何度も話しかけたガ、何ノ反応モナクテナ………』

「問題はござらんよ、グロウン・キッド。忘れたわけではあるまいな………」

 

楓はそばに落ちていた布を拾う。布のあった場所には―――

 

 

 

 

 

「我が『夢幻(ムゲン)』の能力を…………」

 

布のあった場所には、大量の刀が突き刺さっていた………

 

 

 

 

長瀬 楓(14)

スタンド名―夢幻

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

桜通り

 

千雨(スタンド名―アニバーサリー・オブ・エンゼル)+アギト(分類―融合機(ユニゾンデバイス)) VS.ギアッチョ(スタンド名―ホワイト・アルバム)

 

 

アギトに氷を溶かしてもらった千雨は、すぐにギアッチョと距離を置いた。ギアッチョのスタンド能力は詳しく分からないが、『氷結系』の能力には違いなかった。とにかく、ここは距離を置いてなるべく近づかないに限る。

 

「ほう………オレと距離を置くか………利口な奴だな。」

「ああ。お前の能力はヤバそうなんでな………」

「へ………分かってんじゃねーか………よッ!!」

 

言うと、ギアッチョが猛スピードで千雨に迫る!

 

ビュオッ

「くっ『武竜』ッ!!」

ガギィンッ

 

パンチを放つギアッチョに対して、千雨はカウンター気味に逆手の突きを放った。そして小太刀が拳と交わったときに気づいた。ギアッチョの体を『氷が覆っている』!?

 

「オレのスタンドは、超低温の世界を作り出す『ホワイト・アルバム』!すでに周りの水分を集めて凍らせた!後、一度だけ親切に教えてやるが、あまり長い時間ふれない方がいいぜぇー?」

ビキキキキ………

「!?ちぃッ」

 

ギアッチョの言うとおり、小太刀の先端が凍り始めていた。慌てて離脱しようとする千雨だが、凍る速度が早い!その結果―――

 

ブツン

「!あああああわ…私の拳がッ!」

 

凍らされて、千雨の右拳が切断され―――

 

 

 

 

 

ニュウー

ピンピンピピン

パッ

「あ……あ……()()ッ!」

ズコーーーーッ

 

―――てはいなかった。一瞬速く、手首を内側にまるめたので助かったようだ。

だが、切断されたと思ったアギトとギアッチョは、思いっきりずっこけた………

 

「ってオイッ!何こんな時に大ボケかましてんだよッ!!」

「いやぁー、ギリギリだったぜ………『春蚕(しゅんご)』を手放したのは痛かったがな…………」

「名前ついてたんだ、あの刀…………」

 

見ると、ギアッチョの手元に小太刀が一振りあった。ちなみに、もう一振りは『麤皮(あらかわ)』というらしい。

 

「まあ、おかげで対策は思いついた。要は『近づかなければいいだけ』だろ?」

「………何?」

 

言うと、千雨は『エンゼル』を身に纏い、素早く離脱する。そして、近くに落ちていた空き缶を拾い―――

 

「秘剣!『降彗宮(ふるすいぐう)』ッ!!」

ゴカァッ

 

まるで野球のノックのように打ち出した!打ち出された空き缶は、猛スピードでギアッチョに迫り、

 

ドグシャアッ

「げあッ!?」

 

氷を突き破り、ギアッチョの鳩尾に命中した!

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

降彗宮(ふるすいぐう)―――

 

戦国時代、鉄砲が伝わる以前には、飛び道具といえば弓矢が主流の時代、弓矢を持たない侍は、遠くから矢を射ってくる敵に対する攻撃手段がなかった。

そこで考案されたのが、刀や槍で落ちている兜や鎧を打ち出す攻撃手段である。

双燕天翔流でもこの攻撃手段が考えられ、唯一成功したのがこの『降彗宮』であり、開祖である長谷川 赤犬齋(はせがわ あかいぬさい)は、三里先(約12km)の敵大将を射抜いたと伝えられている。

ちなみに、野球やゴルフで使われる和製英語「フルスイング」は、この技の威力にあやかってつけられたと言われている。

 

民明書房刊『日本の飛び道具百選』

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「今なんかどーでもいい情報流れなかったか?」

「まあ、原作でも民明書房ネタはあったから気にすんな。」

 

メタ的な会話をする2人だが、油断はならない。ギアッチョは数メートル吹っ飛んだが、転がりながらも纏った水分を『スーツ』のような形にしていく!

それは『鎧』のような形で、ギアッチョの全身を包み込み、足には『刃』が―――スケート靴のような刃がついていた!

それを使い、氷上を『滑るように』千雨に迫ってくる!

 

「チェッ!!まさか俺と同じ『身に纏う』スタンドだとはな……しかし負けねえ……テメエはここで死んでもらうぜ………」

「!あいつ………チサメと同じ…………しかも速いぞ!!」

「ああ………だが!」

 

近づいてきたギアッチョが千雨にふれる前に、千雨はアギトをむんずと掴み、そのまま空へ上がる。

 

「あいにく、スピードなら私の『アニバーサリー・オブ・エンゼル』も自信があるんでな!」

「…………甘いぜ!」

 

千雨はギアッチョの余裕に疑問符を浮かべるが、ようやく気づいた。ギアッチョの近くには―――

 

「み…………『水飲み場』!」

「やっと気づいたか!『ホワイト・アルバム』ッ!!」

ドバシャァァアアア

 

ホワイト・アルバムの能力により、水飲み場の水道管が『破裂』した!

破裂した水飲み場から、水が『噴火』の如く吹き出し、それは上空の千雨までも『濡らす』!

 

「し…………しまっ!」

「チサメッ!!」

「『上空(そら)』なら安全とでも思ったのかぁあーー?そんなこと、オレが何の対策もなく襲うと思ったのかぁあーー?バカめがッ!!」

 

いいながら、ギアッチョは千雨から滴る水を凍らせて、ロープのように千雨の元まで「登ってくる」!

 

「ヤバい!チサメ、早く振り払え!」

「ダメだ!つ、翼が凍って………」

「遅いぜ!ホワイト・アルバムッ!!」

ドグシャァアア

 

ギアッチョの拳が、千雨にたたき込まれた………!

 

 

 

 

 

←to be continued...




39話です。
・サブタイトルは『炎&氷!』から。

・『アルティメット・クライシス』に続く巨大スタンド『スペースマン』。デザインの元ネタは『るろうに剣心』の不二です。能力は『謎』重視で考えています。どんな能力かはまだ秘密。

・承太郎の『観察』のくだりは、ティアナやのどかには必要な言葉と考えて入れました。特にティアナには、心に染みる言葉でしょう。

・VSエヴァンジェリン。戦力分散として楓を入れました。スタンド名は水樹 奈々さんの楽曲からですが、ギアッチョとかけたわけではありません(笑)

・降彗宮は、ぶっちゃけ男塾仕様な技(笑)フルスイングの当て字から思いつきました。

では、次回をお楽しみに!


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#40/雷&氷(サンダー・アンド・アイス)! ②

暗闇に包まれた麻帆良学園都市内を、蒼く光る『道』が張り巡らされ、そこを滑るように走る影―――スバルだ。側には、並行するように飛ぶネギと、杖の後ろに座る徐倫がいた。

 

「どうだスバル!エヴァンジェリンは追ってきているかッ!?」

「うんッ!少し高い高度で飛んできてる!!」

 

スバルは後ろを確認しながら叫ぶ。ブチャラティは見当たらないが、作戦通りエヴァンジェリンたちは追ってきている。

 

「後は『あの場所』に行けば………」

「ああ、だが、少しばかり『ダメージを』与えた方がいいかもな。ネギ!『タスク』で狙えるか!?」

「少し難しいですが、やってみます!!」

 

そう言ってネギは『タスク』を撃ち出そう振り向くが―――

 

 

 

 

 

「ぬぅう~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ」

「「「おあおおあお!」」」

 

そこには、巨大な「氷の塊」を投げようとするエヴァンジェリンの姿があった………

 

「は……………発想のスケールで…………………ま………………まけた……………」

 

 

 

徐倫が呟くのと、

 

 

 

「『氷神の戦槌(マレウス・アクィローニス)』ッ!!」

 

 

 

エヴァンジェリンが「氷の塊」を投げるのは、

 

 

 

ドグシャァアアアッ

 

 

 

ほぼ同時だった…………

 

 

 

 

 

#40/雷&氷(サンダー・アンド・アイス)! ②

 

 

 

 

 

(ぐっ……………ヤロォーー…………)

 

ギアッチョの拳を喰らった千雨は、内心毒づいていた。『アニバーサリー・オブ・エンゼル』のおかげで『打撃』自体は何ともないが、腹部がすでに『凍結』を始めていた。

このままでは、すぐに身体も凍ってしまう―――そう千雨が考えていると、ギアッチョは第二撃の体制に入った!

 

(仕方ねぇッ!こうなったら―――)

 

千雨は、ある「決断」をする。それは―――

 

 

 

 

 

「『ホワイト・アルバムッ』!!」

ドグシャアッ

 

ギアッチョの一撃が千雨を襲うと、千雨は地面に向かい落ちていく!そして―――

 

 

 

 

 

ボッショォーーー

 

「ち………チサメェェエエエッ!!」

 

地面に激突し、氷の煙と共に砕け散った………!

 

「ふんっ、砕け散ったか………低温世界で動ける物質はなにもなくなる……すべてを止められる!オレの『ホワイト・アルバム』が完璧なのはそこなのだ!」

 

水飲み場から伸びた氷の柱を、消防士が鉄棒に捕まって降りる様に滑って着地したギアッチョが、勝ち誇ったように言い放つ。だが、彼が千雨の落下地点を見たとき、その目は『疑問』を抱いた色となる。

落下して砕け散ったなら、『死体』があるはずだ。だが、死体(それ)がどこにもない!?

 

 

 

 

 

パチパチパチパチ

「「!?」」

 

ふと、拍手が聞こえる。『上空』からだ。見上げたアギトとギアッチョが見たのは―――

 

 

 

 

 

「ブラボー!おお……ブラボー!!」

 

『アニバーサリー・オブ・