強くなりたかった少年 (七海一越)
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メインストーリー
強くなりたかった少年


テスト中に思い浮かんだネタをテスト勉強せずに描いてみました。
暗い展開な作品ですので注意してください。

誤字が多すぎたので修正しました。
続編のネタあれば教えてくれると幸いです


 俺は屋上でただ一人フェンスにもたれて座っていた。

 「はあ」

 思わずため息がこぼれる。今は4時間目の授業の時間。だから当然ではあるけどもここにるのは俺一人だけだ。

 俺はボーっと空を見上げながらほんの数ヶ月前のことを思い返していた。

 

 

 

 俺がISを動かしてしまったのはただの”偶然”であった。”たまたま”藍越学園を受験する際に迷ってしまいそこで見かけたISに触ったら”たまたま”動いてしまっただけなのである。ISを動かせると思って触ったわけではないし女の子に囲まれてハーレムを作りたいと思ったからでも無い。

 だが動かしてしまった物はどうにもならない。幸運にも姉がかの有名な織斑千冬だったこともあり、モルモットになることも無くIS学園への入学が決まった。

 

 IS学園に入学すると同じクラスに幼なじみの篠ノ之箒ーーかの篠ノ之束博士の妹ーーがいた。だがそれ以上に喜ばしかったのは自分と同じ立場の人間、つまりは二人目の男性操縦者がいたのだ。

 担任である姉の愛の鞭(出席簿)をくらったり女尊男卑に染まったセシリア・オルコットと揉めたりもしたが......

 それでも同室の箒と一緒に剣道をしたりISについて勉強したりして1週間後のクラス代表決定戦に備えた。その際に俺が専用機を貰えることになったことと二人目が専用機を持っていることが知られちょっとした騒ぎになったのも懐かしい。

 

 1週間後のクラス対抗戦の日。俺のISが届いていないこともあり、先にあいつとオルコットが戦うことになった。そのときのあいつは凄かった。代表候補生であるオルコットに対して圧倒して見せたのだ。それを見た俺は自分もできるのでは無いかと感じて勢いよくアリーナに出た。そこで俺はオルコットと戦い......負けた。いったんは惜しいところまで持ち込めた物の俺は勝つことができなかった。そしてその後にあいつと戦い惨敗した。もう全くといって良いほど手が出なかった。開始と同時に蹂躙され負けた。そんな俺を見てあいつは

 「おまえなんかの力じゃ、何一つ守ることなんかできやしない」

 と言いやがった。当然俺はそんなことは無い。仮に今はあれでもいつかは絶対に。と思ったし言い返した。だがあいつはそんな俺を突っぱねてさっさと出て行ってしまった。

 

 クラス代表はあいつに決まった。当たり前だ。あれだけ強いのだから。

 そんなとき隣のクラスに転校生が来た。それはなんと鈴だった。久々に再開した鈴は強くなっていた。

 それから俺と箒と鈴の三人は良く一緒に食事をするようになった。それぞれ弁当を持ち寄って晴れの日は屋上でだ。あの頃はとても楽しかった。

 

 だがそんな日々はあまり長く続かなかった。鈴との別れ際の約束を俺が勘違いしていたことが原因だった。

 そこからしばらくギスギスした関係が続いた。もちろんそんな関係のままなのは嫌だったからクラス対抗戦が終わってから謝ろうと思った。

 そんな中迎えたクラス代表戦。とは言っても俺は見ているだけだが。1回戦があいつと鈴の勝負だった。だが途中で現れた謎のISによって勝負は流れた。

 だけど俺は鈴に謝りに行った。だが鈴返してきた言葉は許しの言葉でも何でも無かった。

 「今更謝らなくていいわよ!もう二度と話し掛けてこないで!」

 それは明らかな俺に対する拒絶だった。それでも俺はあきらめきれなかったから何度も謝りに行った。でも何度言っても結果は変わらなかった。

 

 そんなことが何日も続いたある日クラスに転校生が二人来た。そのうちの一人デュノアは三人目だった。二人目とは全くもって良い関係を築けなかったから今度こそは。と思っていた。だが問題はもう一人の方ボーデヴィッヒだった。彼女はいきなり

 「貴様が教官の弟などとは認めん!」

 と人格否定ともとられかねない発言をしながら殴ってきた。

 

 転校生が来てからも俺の周りの環境は改善しなかった。むしろボーデヴィッヒのせいで悪化したと言っても良いだろう。明らかに俺に話し掛けてくれる人が減った。

 それに鈴との関係も結局改善できないままだった。

 

 その後は特に大きなもめ事も無く全校生徒でのタッグマッチ戦になった。俺のペアは箒だった。俺たちはお互いに似たような攻撃タイプだし長い間一緒にいるから合わせるのは楽だった。

 1回戦の相手はボーデヴィッヒと他のクラスの子のペアだった。

 ペアの子の方は専用機持ちでも無いから簡単に倒すことができたがボーデヴィッヒの方はそうも行かなかった。さすが軍人というべきか圧倒的な強さで箒を下すとそのまま俺に向かってきた。最も俺もそれまでにかなり訓練していたからこそ回避する事ができた。だが攻撃しようとして近づくと動けなくなり攻撃を食らってしまう。

 遠距離攻撃の手段が無かったせいであっという間にやられてしまった。

 

 その後も試合は前回のようなことも無く進み、決勝戦になった。

 組み合わせはボーデヴィッヒ達のペアとあいつとデュノアのペアだった。

 結果はあいつの独壇場だった。そしてボーデヴィッヒが負けそうになったとき変化が起こった。彼女の機体から泥のような物が出てきたかと思うとそれは形を変え、千冬姉の機体”暮桜”の形になった。

 「VTシステム」

 そんな言葉を誰かが言っていたような気がした。だが俺はあいつが千冬姉の真似をしているのが許せなかった。今すぐにでも飛び出したい気分だった。

 しかし箒の制止もあり飛び出すことはしなかった。

 今思うともしあの時飛び出しても何もできなかっただろうし足手まといにしかならなかっただろう。

 この結果優勝者は無しという形でタッグマッチトーナメントは終了した。

 

 その数日後また新しい転校生が来た。だがそのときに山田先生が口ごもっていたのが少し気になった。そして入ってきたのは......

「シャルロット・デュノアです。改めてよろしくお願いします」

 女子の制服を着たデュノアだった。

 後から知った話だとあいつはデュノアの正体をすぐに知り色々と手助けをしたらしい。

 それと後日俺の白式のデータが流出していたことが分かり反省文を数百枚描かされる羽目になった。

 

 この頃からあいつから俺に対するいじめが始まった。それも訓練と偽って行ったり裏でこっそり行ったりと悪質な物だった。

 それだから俺が誰かに話してもむしろ俺があいつを陥れようとしている様にしかとられなかった。

 この頃から俺は人間不信となり箒ともあまり話さなくなった。

 

 定期考査が終わると臨海学校が行われた。この時箒が専用機を貰いうれしそうにしていたのを良く覚えている。

 そんなときにアメリカとイスラエルが共同開発した銀の福音が暴走したという連絡があった。

 束さんの提案で俺と箒が落としに行くことになった。俺は凄く不安であった。今までまともに勝ったことが無いのにいきなり軍用機に勝つのはとてもプレッシャーのかかることだったからだ。

 だがそんな俺を察してか箒が俺をはげましてくれた。おまえならできる。と。

 

 出撃し福音と接触した俺たちだったがやはりあいては強く苦戦を強いられた。そんなとき俺は福音の照準の先に漁船を見かけた。迷わず俺は福音の射線に飛び込み落とされた。

 気がつく。という言い方が正しいのかは分からないが、気がつくと俺は砂浜に立っていた。そこには真っ白な服を着た少女がいた。

 俺が混乱していると彼女は

 「あなたが求める力とは何か」と聞いてきた。

 その問いに迷わず答えた。他人を守ることのできる力だと。

 その答えを聞いた少女はどこかうれしそうにまたいつか会おうと言ってきた。

 

 

 だが俺がその少女と会うことは二度と無かった。

 今だからこそ分かるあの少女は白式のコア人格だったのだろう、と。

 

 目が覚めた俺は箒達が福音を落としに行ったと知り後を追いかけた。そのときに白式の形が変わっていたが二次移行していたのだろう。

 そして福音との戦いの場につくとそこには福音を落としたあいつとその周りに五人の専用機持ちがいた。

 そして俺は箒にきられ......気を失った。

 

 

 次に目が覚めたのは旅館の布団だった。俺は千冬姉にあったことを話した。箒に切られたことを含めて。

 だが信じて貰えることは無かった。そこで気がつく。白式が無いことに。

 

 どうやら白式はコアを破壊されたらしい。その結果俺は夏休みの間ずっと補習を受けることになった。

 

 

 夏休みに入ると俺は専用機の代わりとして学園の打鉄を借りた。そして簪の助けを受けながらカスタマイズをし生徒会長の楯無先輩に鍛えて貰った。

 この時はまるで四月のように楽しい時間だった。

 

 夏休みが明けてからも二人と過ごす日々は続いた。もうこの頃になると俺はクラスで完全に孤立していたから二人と過ごす時間が心の安らぎだった。

 そんな中文化祭の時期になった。この時楯無さんから外部から来た人には気をつけるようにと言われた。

 

 そして文化祭当日......俺は亡国企業という組織に襲われた。どうやら俺の白式を奪いに来たらしい。

 だが俺の元に白式はもう無い。それを知ったあいつらの中の一人”M”と呼ばれた女性が俺を殺そうとして

 

 俺は楯無さんに助けられた。他の襲撃者はあいつや他の専用気持ちの人たちが倒したらしい。

 結局俺は鍛えて貰ったにもかかわらず守るどころか守られるだけだった。

 

 そんな自分が嫌で嫌でどうしようも無かった。

 

 

 

 キーンコーンカーンコーン

 

 チャイムが鳴った。この音で俺は我に返る。ずいぶんと懐かしい物を思い出した。

 最もまだ数日しかたっていないが。

 

 このままでは食事をしにこの屋上まで来てしまう。

 

 その前にどうにかしないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は靴を脱ぎ揃えておく。そしてその上に待機状態の打鉄をおいた。

 手紙は寮の机の上に残したから大丈夫だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺はフェンスを上り上に腰を下ろすと重心を後ろに移動し......

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 手を離した




ここまでで読んでくださりありがとうございます。
無駄に長いのでアレだったと思いますが感謝です

感想や意見、批評があれば是非!

とまあ堅苦しいのはここまででテスト勉強しないで書きました!明日の教科は多分落とした!

ではまた、別の作品で!まあ続編書きますけどね


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メインストーリーの後日談
後日談 その1


要望が多かったので描きました後日談の一つ目です。
本編とは人称が違ったりしますのでその点はご注意ください


 「嘘でしょ!?」

 地球のどこにあるのか。

 それを知るものは二人しかいないラボ。

 その中で一人の女性は驚きの声をあげる。

 

 彼女の名前は篠ノ之束。ISを作り上げ、今の世界を作り上げた張本人。

 世界は彼女の思い通りに進んでいたと行っても良いだろう。二人目(イレギュラー)が現れそして... ...

「いっくんが自殺するなんて... ...」

 織斑一夏がIS学園の屋上から飛び降りるまでは。

 

 「ッ!まだ生体反応がある!この束さんのところでならいっくんを助けられるかも!クーちゃん!」

 「はい。すでに受け入れの準備はできてます」

 「さすがくーちゃん!じゃあ束さんは行ってくるね!」

 彼女は普段の自分のキャラをも忘れ一夏を回収するためにIS学園へと向かった。

 

 

 そのころIS学園では彼を保健室に搬送した後でこの事は他言無用とし、もし広めた場合は最悪謹慎処分になるなどのかなり厳重な対処がなされた。

 保健室は一部を除き立ち入り禁止となり、許可されたのは保険医の他は織斑千冬と更識姉妹のみとなった。

 

 

 「ちーちゃん!!いっくんはどこ?!」

 まあそれでも気にせずどこからとも現れるウサギもいるわけだが... ...

 「うるさいぞ束!一夏は... ...」

 「うん。状況は分かってるよちーちゃん。だから私はいっくんを引き取りに来た。おそらく束さんの技術じゃ無いといっくんを直せないから」

 「だがしかしそれは... ...」

 千冬は束の言うことが信じられなかった。ISが出来てから医療技術は格段に向上している。確かに一夏の傷は大きいがそれでも治ると思っているのだろう。

 「ためらってる場合じゃ無いよ“千冬ちゃん”本当にいっくんを助けたいならこの束さんに任せて。更識のお二人さんもそれでいいね?」

 「ええ、一夏君が助かるならかまわないわ。良いでしょ?簪ちゃん」

 「うん。それで一夏が助かるなら私もかまわない。束さん、一夏をお願い」

 束の言葉にすぐに返事をする楯無と簪。どうやら二人は一夏がまた元気になることが一番大事なようだ。だがそれをよしとしない人もいるわけで… …

「だがそれでも一夏を渡すわけには… …」

頑なに一夏を渡そうとしない千冬。いくら今まで色々とあったとは言えたった一人の家族。そばにいたいのだろう。だが今は一夏の生死がかかっている訳でそうもいっていられない。

 「さっきからいっくんの様態がどんどん悪化している。早くしないと手遅れになっちゃう。いっくんを連れて行くけどいいよね?保険医さん」

 「ええ、かまわないわ。それに彼には休養が必要だと思ってたところだししっかりと休ませてあげて」

 保険医からの許可もすぐに下りる。彼女自身最近いつも保健室に来る一夏のことをかなり心配していた。我からこそ今世界で1番技術を持っており彼のことを気にかけている束の元に行った方が良いと判断したのだろう。

 「もちろんだよ。束さんにまかせて。それじゃあさようなら“織斑千冬”」

 「ッ!まて束!」

 千冬は束を止めようとする。だが彼女に“別れの言葉”を告げた束はにんじん形のロケットに一夏を乗せると自分も飛び乗りどこかにあるラボに向けて飛んでいった。

 余談だがこの後千冬の元に束から連絡が来ることは無かったらしい。

 

 

 

 

あの事件から3ヶ月と少したった頃。年も明け新しい一年がスタートした頃。

 「束様!彼が目を覚ましました!」

 「本当!」

 一夏が目を覚ましたという報告を受けとんでくる束。その目はうれしさで満ちあふれていた。

 「いっく~ん!」

 「え?ちょ!束さん!?」

 叫びながら一夏に飛びつく束。一夏は驚き飛びつかれる。

 「ここは… …それに何で俺は生きて… …」

 彼は自分の置かれてる状況が理解できていないようだ。それもそのはず。彼はあの日遺書をしたためIS学園の屋上から飛び降りている。つまりは死んでいるはずなのだから。

 「ここは束さんのラボだよいっくん。いっくんが飛び下りた後束さんはいっくんをここに連れてきた。それでナノマシンを注入したり手術をしたりしていっくんはいきてるの。ごめんねいっくん。私がISなんかを作ったばかりにいっくんをこんな目に遭わせちゃって」

 束は一夏の質問に答えそして謝罪した。かつての束では考えられないことだった。

 「本有はISは男でも女でも動かせる物。それに正しい用途は宇宙開発。でもそうはならなかった」

 彼女は今まで知られることの無かった事について話していく。

 曰くISが女しか動かせなのは千冬がそう願ったせい。

 曰く一夏がISを動かせることをきっかけに他の男も動かせるようにする予定だったこと。

 曰く束すらも知らないコアを持った二人目のせいで計画が崩れたこと

 その上で彼女はこういった

 「いっくんの持っていたISのコア。あれは白騎士のコアで他のコアに対する命令権を持っていたの。それを使って制限を解除するだった」

 「でももうあのコアは… …」

 一夏はそうつぶやく。彼は責任を感じてしまっているようだ。

 「気にしないでいっくん。いっくんは悪くない。それに回収できたあのコアの破片からISの自己防衛以外の戦闘行動を禁止するとともに宇宙空間以外では展開くらいしか出来ないようにするウイルスを作ったから。もう戦闘に使われることは無いの。だから安心して」

 「束さんは相変わらずすごいな」

 「そんなこと無いよ。ISを作ってもあの女のために制限をかけて、宇宙開発のために開発したのにミサイルを使ってその力を知らしめる。こんなの間違えだらけだよ」

 話の内容もあってどこかしんみりとした空気になる部屋の中。そんな空気の中そういえばと前置きをして一夏は束を呼びにあった少女について聞く。

 「そういえば紹介してなかったね。彼女は」

 「クロエ・クロニクルです。束様の助手をしてます。以後お見知りおきを」

 彼女がきて少し空気が明るくなる。その後すぐにクロエの過去の話を聞いてまた空気が重くなるのは別の話。

 

 

 

 一夏が目を覚ましてから数日。彼は今までで一番と言えるほど充実した日々を過ごしていた。更識姉妹にはすぐに連絡が行き二人はラボにとんできた。どうやらあの後頻繁に様子を見に来たりしていたらしいそこであの後のことを聞いたり。クロエの料理(生物兵器)を見て料理を教えたり。欠けた心を埋めるには十分な日々だった。

 目を覚ましてすぐは死にたがっていた一夏ももう死にたいとは口にしなくなった。

 

 

 そしてついに来たこの日。ISに対するウイルスを蒔き、男にもISが使えることを、また宇宙空間で無いと使えなくなったことを、戦闘が出来なくなったことを公表する日だ。この日は大きな歴史のターニングポイントとなるだろう。わずか一年の間に歴史は大きなターニングポイントを何回も迎えたのはおそらくこの時くらいだろう。

 

 発表の後世界中は混乱した。だが実際に戦闘行動をとることが出来なくなったし男が動かすことも出来た。おそらく10年以上の時間はかかるだろうがそれでも世界は元に戻るだろう。

 IS学園は新年度から新カリキュラムへと移項することになった。また内部告発とそれに伴う国際警察の強制捜査によりIS学園内部での出来事が明るみになり織斑千冬や二人目、専用機持ちの面々はあえなくお縄となった。またそれ以外の生徒も大勢が退学や停学処分となった。この結果IS学園は日本政府所属から国連の機関の所属となり教師には各分野の教授がつくこととなった。

 

 

 

 その際に一夏の生存も報告された。その後織斑一夏は日本政府の庇護の元、束やクロエとともにようやく通常の生活を送ることが出来た。




読んでくださりありがとうございます。
救済ENDの一つ目です。今のところあと3つ後日談を考えています。
二人目の話も書きますのでお待ちください。

もしこのキャラの話を見たいとかあれば活動報告で教えてください検討させていただきます

二人目は転生者ですのでチートを持っていますがそもそもISで戦闘が出来なくなればもう関係無いのです。それにいくら洗脳もどきが使えても当然上kン等もありますから


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後日談 その2

前回とは全く別の話です。
中心となるキャラだけでなく話の展開も方向性も違います


 “織斑一夏が飛び下りた” 

 この報告がまず行ったのは彼の姉でありIS学園の教師でもある織斑千冬だった。その報告を聞いた祭の驚き用は第二回モンドグロッソの時に一夏が誘拐された事を聞いた祭よりも遥かに大きかった。最も誘拐と自殺では違って当たり前だが… …

 報告を聞き保健室へ駆け込んだ彼女は保険医に話をつけるとそのまますぐに保健室を立ち入り禁止にした。

 「一夏… …なんで自殺なんか… …なんで姉さんに相談してくれなかったんだ… …私はまた家族を失ってしまうのか… …なあ目を開けてくれ一夏… …」

 そうつぶやいても一夏は目を覚まさない。最も彼はまだ生きてはいる。だがかなりの重傷であり集中治療室に担ぎ込まなくてはならないレベルであった。だが学園島にそこまでの大型病院は存在しない。最も学園の保健室はその辺の病院に匹敵するレベルの医療設備があるためそこである程度の治療は出来たが。

 

 

 「ち~ちゃん!いっくんを引き取りに来たよ!」

 立ち入り禁止のはずの保健室の中に響く兎の声。普段ならこれに千冬が突っ込むと言った光景が見られたであろう。だが今は普通な状態では無い。

 「うるさい!黙れ!一夏は誰にもわたさん!」

 「でもち~ちゃん!今の医療技術じゃいっくんを治せるかどうか… …でも束さんのところでなら確実に治すことが出来る。そのための準備ももう整ってる。だからいっくんを」

 二人の意見は完全に割れ端から見ればかなり不毛な口論が続いていた。だがそれも千冬の一言がきっかけで終了する。

 「だいたいおまえがISなんかを作らなければこんなことになることも無かったんだ!」

 「そう… …ごめんねち~ちゃん。」

 「あ、いや… …」

「さようなら“織斑千冬”もう会うことも無いと思うよ」

 こうして千冬のわがままから始まった口論は千冬の一言で終わった。永遠に埋まることの無い溝を残して。

 

 

 その後一夏は日本最大級の大学病院に搬送され治療を受けたが意識が戻ることは無く植物状態となってしまった。だがそうなると抵抗がないのを良いことに誘拐し実験に使おうとする人が現れてしまう事もある為常に護衛がいなければならずかなりの負担となっていた。ちなみに護衛の人は更識の人間であった。

 

 一夏が飛び下りてから数日。学園は新たなトラブルに見舞われていた。

 国際IS委員会への内部告発があったのだ。その中身は主に免許未取得の教師による生徒に対する過度な暴力行為、一部生徒から特定の一個人に対する精神的及び肉体的暴行などその数数十にも及んでいた。さすがにIS委員会も無視できず具体的な処罰の内容を議論していた。そのため学園も処罰に応じて対応をとらなければならないためだ。

 

 だがトラブルはそれだけでは収まらなかった。ISの生みの親である篠ノ之束からISの機能を完全停止すると言う発表があったのだ。これには学園だけで無く世界中が混乱を起こした。その後実際に起動しなくなっているのが確認された。

 

 

 その間保留されていたIS学園の件はそもそもISが無くなった時点で必要が無いため廃校が決定した。そして内部告発された本人達はその身柄を拘束されることとなった。

 

 

 ISに関わる一連の事件が収まってから数ヶ月。一夏は束の力を持ってしても意識が戻ることも無く更識姉妹や束の前で息を引き取った。

 




最後まで見てくださりありがとうございます。
前回は救われたENDでしたが今回は誰も救われてません。

もしこのキャラの話を見たいとかあれば活動報告か目セージで教えてください検討させていただきます。

では次回!


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後日談 その3

今回もまた他の後日談とは違うストーリーです。関連性はありません。


 

 「一夏君が!?」

 生徒会室に響く大声。この部屋の主である更識楯無の声だ。

 彼女はいつも通り一緒に食事をとるために生徒会室で一夏と妹の簪が来るのを持っていた。

 だが部屋に駆け込んできたのは簪一人だけだった。そして部屋に入ってきた簪の第一声。

 「一夏が飛び下りた!」

 この言葉を聞いた楯無は思わず大声を出してしまった。これで冒頭に戻る訳だ。

 

 二人は一目散に彼のいる場所、保健室に走っていた。そして保健室の前に来たとき二人の女性が口論する声が聞こえた。

 保健室には立ち入り禁止の張り紙があったが“生徒会長権限”で中に入る。

 そこにいたのはここの教師であり彼の姉でもある織斑千冬と世界中が血眼になって探している兎、篠ノ之束出会った。二人はもはや二人だけの空間を作り上げて追う論をしている。

 普通であればそこに乱入するのははばかられるだろう。だがそこは更識楯無。平然と声をかける。

 「口論なんかしてる暇があるなら彼の治療をするのが第一じゃない!邪魔なので口論するならよそでやってください!」

 と。普通なら絶対に言えないような言葉である。だが今の彼女にとって一番大切なのは一夏の命。そんなこと気にしてはいられないのである。

 そんな彼女の言葉に二人は全く別の返答を返す。

 千冬は、

 「うるさいぞ更識姉。一夏には姉である私がいるのだから何も問題ない。それにここは立ち入り禁止のはずだ。どうして入ってきた!」

と楯無の言うことに反発するようなことを言う。

 だが束は

 「そうだね。君の言うとおりだ。“織斑千冬”は私が抑えておくからその間にいっくんをそこのロケットに乗せて束さんのラボにつれって行って。乗り込んで起動ボタンを押せば自動でラボまでいけるから。そこでクーちゃんがいっくんの受け入れ準備をして待ってるから。お願い!早く!」

と一夏の事を考え自分のラバに連れて行くように言う。

 もうここで迷う必要は無いだろう。二人は一夏を乗せたストレッチャーを走らせ外のロケットに向かった。後ろから

 「はなせ!一夏をどこに連れて行く気だ!」

などと千冬が叫ぶ声がするが気にしない。そのままロケットに飛び乗り束のラボに向かってとんでいった。

 

 

 ラボにつくとラウラによく似た少女がおり一夏の引き渡しを求めてきた。

 二人は警戒するが彼女が束の助手でクロエ・クロニクルだと名乗ったため二人は一夏を引き渡す。

 クロエがオーバーテクノロジーを駆使して一夏の治療に当たっている間ラボの中に通された二人は最近のことを思い出していた。

 そんなとき簪がふと言葉を漏らす。

 「… … そういえば最近一夏は良く授業休んで保健室に行っていたけどもしかして… …」

 普通であれば聞こえないような声だがしんと静まりかえった部屋で隣に座っていれば聞こえてしまう。

 「ッ!やっぱりそうだったのね。私たちがもっとしっかり気づいていれば… …」

 「でもお姉ちゃんは“二人目”のおかしな行動に対して調べたりしてた。でも私はいつも近くにいたのに気がつけなかった。もし気がつけてれば… …」

 「簪ちゃんだけのせいじゃないわ。これは私たち二人の、いえ学園全体に言えること。それよりも今回の件への“二人目”の関連性をまとめ上げておきましょ。いつでも告発出来るように」

 

 その後束が戻ってくると二人はあるお願いをした。一夏の様態が安定したら更識家で引き取らせてほしいと。束も一夏のために尽くしてくれた二人の願いならばと快諾した。

 それから数日、一夏はまだ意識は戻っていないが更識家に運ばれた。その間二人は束と聴力しながらIS学園内において隠蔽された暴力行為や不正行為などの調査と裏付けをおこなった。そしてそれをIS委員会だけで無くマスコミを通じて全世界に伝えた。そしてそれはこの女尊男卑な世界に対して大きな爆弾となった。国の代表とも言える人たちが様々な暴力沙汰に関与ししかもそれが秘匿されてきたのだからある意味当然と言えば当然である。 

 結果多くの生徒や教師が学園を去ることになった。また特に技術系の教師に関しては男性教員が入るなどのコテ入れも行われた。

 

 そしておよそ一年が経過した文化祭間近のある日、彼は更識家の屋敷内で目を覚ました。

 「ここは… …。それになんで生きて… …」

 ある意味当然とみ言える反応。その1時間後には二人が学校を早退して駆けつけてきた。

 そしてうれしさのあまり抱きついてこういった。

 「「お帰り、一夏。大好きだよ」」

 




今回も最後まで読んでくださりありがとうございます。

簪と楯無さんは私の中でのISでの好きなキャラ1位と2位なので書いていて楽しかったです。

今回はISも無くなってないですし他とは少し違うのかなと。

次で当初予定していた後日談は最後となります。たぶん一番のBAD ENDです。
その後は少し女の子一夏の方を執筆し息抜きがてらにこちらの方を書くと言う形になると思います。

もしこのキャラの話が見たいなどがありましたら活動報告まで。
それと要望の多い千冬さん救済ルートは書こうとは思ってます。どこまで救済出来るかはわかりませんが... ...

それではまた次話で会いましょう!


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後日談 その4

当初考えていた後日談の最終話です。
割とバッドエンドです。
今後は皆様のリクエストに応えていく形となります


 精神、肉体ともにボロボロだった少年は楽になりたいが為に飛び下りた。

 だが負の連鎖は終わらなかった。

 

 俗に二人目である少年は4限目の授業を終えアリーナの更衣室に向かっていた。

 「クソが。なんで授業にこないんだよ。いたぶれないじゃ無いか」

 そんな言葉がこぼれる。彼は一夏から女を、そのほかのすべてを奪うために一夏を痛めつけていた。一夏が転生者でもある彼にかなうはずも無く株をどんどん落としていった。今、一夏の味方は更識姉妹と他数人だった。

 「だいたい何であいつには未だに味方がいるんだよ。おかしいだろ!」

 彼はその事実が気に入らない。

 「そいつらにはなぜかこの能力も効かないしよ」

 彼は俗に言う神様転生という物を経験している。だからこそ転生特典ー身体能力向上と洗脳ーを持っている。そのためこの学園の生徒や教師のほとんどは彼の物(奴隷)であると言っても過言では無かった。あの箒でさえも時間はかかりはした物の福音戦の祭に洗脳に成功している。

 なのに洗脳出来ず、未だに一夏の味方であり続ける彼女たちが気に入らなかった。

 

 

 そんなとき彼は見つけてしまう。血を流して倒れている一夏を。

 幸いなことに彼はまだ生きていた。普通の人であれば教師に連絡し、保健室に連れて行くなどするだろう。

 だが彼は一夏からすべてを奪いたいと思っている。そして今はその絶好のチャンスである。

 彼はISを展開すると近くのコンクリートに一夏をたたきつけた。

 

 パッと舞う鮮血。そして血とともにまき散らされる脳髄。あたりはとても恐ろしい状態となった。

 そして彼は何食わぬ顔でISをしまい満足そうな顔で立ち去っていった。

 

 

 

 そんな彼を見ている人物に気がつかずに。

 

 

 

 一夏が死んで数日。真相は闇の中にあった。第一ほぼ完全に洗脳化にあるIS学園の中で真相が出てくることはまず無い。完全に独立した機関であるが故の欠点だろう。

 だが状況は思わぬ形で動く。IS学園内からマスコミに匿名でリークされた情報。そして篠ノ之束から寄せられたあのシーンの衛星映像。この二つはどちらも信憑性が高いと判断され国連の指示の元、国連職員からなる調査団が編成され学園内の調査が開始された。また、同時期に複数の第三者機関による調査も行われた。

 

 だが二人目達がそれを黙ってみているはずも無く、調査団の護衛に当たっていた更識楯無他数人を襲撃。意識不明の重体に追い込んだ。

 その後彼は専用機持ちとともに逃走。国際的に指名手配されるに至った。

 

 ところ変わって束のラボ。彼女は状況が状況故に、そしてISを作った事による責任を取るためこの事件が一通り解決するまでは拘束されないことを条件に自ら名乗り出た。そしておそらく世界で1番最先端を行っている彼女のラボは対策本部となり、どの国からも干渉を受けないために太平洋上にあった。

 「どうしていなくなっちゃうの?帰ってきてよ。一夏... ...お姉ちゃん... ...」

 その中の一室で一人の少女が苦しんでいた。彼女の名は更識簪。つい数日前に重傷を負い未だ意識の戻らない更識楯無の妹だった。

 彼女は意中の相手を殺され、そして最近和解したばかりの姉を命こそある物の奪われた。今の彼女にあるのはなんとしても二人目を捕まえるという思いただそれだけだった。

 「復讐は何も生まないのは分かってる。でも... ...」

 彼女はその目的のために楯無を継いだ。だがそれでも復讐は何も生まないと言う思いから悩んでいるのである。

 

 そう悩む彼女を状況は許さなかった。

 けたたましく鳴りひく不協和音。その音が襲撃に備えろと、戦闘配置につけとせかしてくる。彼女は姉の後を継いで楯無となっている。そのため部隊の指揮を執らなければならない。

 「お姉ちゃんもいない今、私がやらなきゃ!」

 そう声に出し更識の部隊のいる場所へと駆けていた。

 

 

 「あ、やっときたね簪ちゃん」

 簪は急に声をかけられる。

 「束さん?どうしてここに」

 「うん。今回の作戦にこの束さんも参加させて貰うのだ~ぶいぶい」

 簪の質問にどこかふざけた口調で答える束。だが目は真剣そのものだった。

 「実はコアを強制停止させるプログラムを作ったの。さすがに二人目のコアには効かないけど他の5人のコアには効く。だからハッキングして動作を停止するまでの時間を稼いでほしいんだ」

 「分かりました。その役承ります」

 「ありがとう簪ちゃん。よろしくね」

 「はい!]

 

 「来たぞ!奴らだ!捜査本部の中に絶対に入れるな」

 「非戦闘員を守れ!」

 戦闘が始まったことによりあたりは騒がしさを増す。簪は束の力を借りて大幅に強化されたマルチロックオンシステムを最大限に活用し敵ISに攻撃をしていく。また本部からは対IS用の機銃が濃厚な弾幕を作り上げている。それはさながら一昔前の航空戦のようでもあった。

 そんな中襲撃者のISが次々と落ちていく。ダメージを受け強制解除となった物や束により強制停止させられた物だ。

 そうして例の5人もISを停止させられ下で待機していた人たちに身柄を拘束された。いくら専用機を持っていても動かなければISを持たないただの歩兵が相手でも勝てるわけが無い。そうこうしているうちに後は二人目だけとなった。

 

 「クソが!なんでこうなるんだよ!せっかくあいつを殺してこれでもっと色々出来ると思ったのに!」

 彼はそんな愚痴をこぼす。彼の周りにはもう誰もいない。今までずっと一緒にいた専用機持ちの5人も逃亡中に出会い洗脳して駒にした亡国企業の連中もみんな捕縛されてしまった。

 「だが俺にはあの千冬さえも超える身体能力チートがある。だから負けるわけ無いんだよ」

 そんなことを口走りながら弾幕の中に飛び込んでいく。だがさすがは神造兵器機銃の弾幕程度では落ちたりしない。

 弾幕をくぐり抜けると千冬に襲いかかった。

 「やるじゃ無いか。だが私に勝てると思うなよ」

 千冬はかつての愛機を改造した暮桜改を展開し攻撃を防ぎそう返す。

 だが二人目は一旦離れると荷電粒子砲を連射し始めた。

 さすがの千冬もそれには少し驚いたような表情をしていたがすぐに気を持ち直し攻めにかかる。

 だがどうしても彼女は攻めきれなかった。高出力の荷電粒子砲による密度の濃い弾幕が原因だった。

 「何が勝てると思うなよ。だ。攻めきれてねえじゃねええかよ」

 いつまでも攻めきれない千冬に対し挑発を続ける二人目。千冬も焦りからか被弾が目立ってきた。

 千冬にも飛び道具があれば話は違ったのかも知れないがあいにく近接ブレードしか積んでいないためいつまでも攻撃が出来ないでいた。

 「ちーちゃん危ない!」

不意に束が叫ぶ。その直度千冬は背中に強い衝撃を受け墜落してしまう。そこにははビット兵器が浮いておりそこから放たれた攻撃だった。

 彼は撃墜した千冬にさらに攻撃を加えていく。そしてそれは彼女のISが解除されても続いた。

 そして千冬が動かなくなったのを見てこう言う。

 「だから言ったろう。俺は主人公なんだ。おまえらなんかに負けるわけが無いんだよ!こんなとこ今すぐつぶしておまえら全員俺の物(奴隷)にしてやるよ!」

 だが彼から攻撃が放たれることは無かった。落ちる直前に千冬が投げたブレードにより二人目のISのエネルギーが大幅に減っていたのである。彼女の剣は雪片。エネルギーを削り取る剣だからこその芸当である。

 「しょうが無い。今日のところはこれで勘弁してやる。首を洗ってまってろよ!」

 そう言って彼は去って行く。先ほどの戦いを見たせいか彼をを追う物はいなかった。

 

 

 「すまん束... ...勝つどころか... ...互角に戦うことすら出来なかった... ...世界最強が聞いてあきれるな」

 「ううん、私こそごめん。ちーちゃんの後ろにあったビットに気づけなかった。だからちーちゃんは悪くないよ」

 「そうか... ...ありがとう。更識妹。おまえに聞いてほしいことがある。私はもうダメだ... ...そうするとここの一番の戦力はおまえだ... ...後をたのんだ... ...ぞ」

 「はい!分かりました。だから織斑先生も早く良くなってください」

 「すまないがそれは出来そうに無い... ...一夏が呼んでるんだ... ...」

 「ちーちゃん... ...」

 「すまないな、みんな... ...先に行って待ってるぞ... ...」

 「ちーちゃん!」

 「織斑先生... ...」

 

 今回の戦いでは亡国企業と専用機持ちの5人を捕獲するなど大きな戦果を上げた。だが千冬の死亡は損害が大きすぎた。

 戦闘では勝ったが勝負には負けたのである。

 

 この戦いの後束と簪の二人は二人目のISを停止させるためのプログラム作りにいそしんだ。すべては士気の向上と二人目を捕まえるため。技術面に対して天才的な才能を持つ二人だからこそ出来る芸当だろう。

 その後世界中から集められた技術者の力もありおよそ半年の後にプログラムが完成した。だが問題はそれだけで無かった。ハッキングもとても大変なのだ。だがそれは思いがけない協力者により解決することとなる。アノニマスと呼ばれるハッカー集団。彼らも参加を表明したのだ。

 

 こうして国家、民間問わずその数不明の協力を受け作戦を進めていった。コアネットワークを公開し目的のISを発見する。

 そして目的のISを発見した後絶えず不特定多数によるサイバー攻撃を仕掛ける。と言った内容だ。

 これにより部隊の士気は大きく上がった。そしておよそ一月後コアネットワーク上で説くテインのISを発見連日に及ぶサイバー攻撃が始まった。その結果二人目がどこにいるのかリアルタイムで分かるようにもなった。

 

 「なんでこんなにエラーばっか出るんだよ!」

 二人目はここ最近ずっとこんな感じであった。突然ISが大量にエラーをはき出すようになったのである。内蔵のAIが対処に当たっているがそれ以上のスピードで書き換えられてしまえばどうにもならない。

 そんなときだった。突然彼が襲われたのは。

 

 二人目を襲撃したのは数多の改装を施した打鉄弐式をまとった簪だった。

 「何度来たって無駄だ!今度はおまえを屠ってやる!」

 そう叫んで攻撃を仕掛ける二人目。だがいつもより動きが悪かった。

 それもそのはず。今まではAIの補助を受けてじゃじゃ馬な機体の制御を受けていたが今はそのAIはハッキングに対処しているところだ。

 プログラムは壊すだけなら適当な文字を打ち込むだけだが復旧する側はその中から正しいプログラムを見つけ出さなければならない。二人目に知識があればどうにかなったのかも知れないがあいにく彼はそんな転生特典など貰っていない。

 「なんで言うことを効かないんだよ!」

 何も分からない彼はそんなことを叫びながら簪に攻撃を仕掛ける。だが攻撃に切れがない為簡単に交わされてしまう。

 「そんなことも分からないようじゃ”私達”には勝てないよ!」

 大量に放たれるミサイル。だが持ち前の丈夫さであまりダメージを負わない。

 だからといって何も対策をしていないわけでも無い。簪が取り出したのは夢現。だがもちろんただの夢現では無い。千冬のおかげで分かったことを生かし、太平洋で発見した白式のコアの破片を組み込み雪片同様の効果を出せるようにした物だ。

 

 もちろん使用すれば自身のSEを消費してしまうがここにはかつて箒が駆っていた紅椿に乗る束がいる。

 SEを気にするいつようの無い状況で簪は二人目を何度も切りつける。

 ハッキングと攻撃。一で言えば体の外と中を同時にかき回されているような状況だ。

 「これで決める!」

 不意に簪が叫ぶ。そして夢現で二人目を切りつける。彼のISは強制停止こそしなかった物のAIも乗っ取られもうほとんど何も出来ない状況だった。

 切り裂かれた二人目はISが解除され落ちていった。

 下で待機していた回収要員が彼を捕まえるとISを彼から取り束に預けた。

 

  

 これによって長かったこの事件はひとまずの終わりを迎えた。だが世間に与えた影響は計り知れなかった。熟練のIS乗りやISのコアをたくさん失った。それにIS廃絶運動やIS委員会のあり方を問う声も強まった。だが1番はIS学園についてだろう。すべてが日本の負担であったことや完全に治外法権であったことなど数多くの問題が挙げられた。その結果IS学園は廃校となりその跡地は負の遺産として残されることとなった。

 

 束は約束通り身柄を拘束された。その際彼女たっての願いでISが戦闘行動を行えないよう制限がかけられた。またISのコアの製造方法等を公開し生涯ISに男も乗れるようにするための研究をするようになる。

 

 今回の事件の死亡者及び織斑一夏は大々的に葬儀が執り行われそれぞれの祖国の地に眠る事となった。

 また事件の終結した日は決して忘れることが無いようにと祝日となった。

 

 

 そして更識邸では... ...

「楯無様。病院から電話が来ております」 

 「病院から?」

 「はい」

 「分かったわ。すぐに行く」

 

 楯無を襲名した簪は病院からだと言う電話に出る。

 「え!?お姉ちゃんが目を覚ました?」

 思わず叫んでしまう。あの日から一度も目覚めることの無かった姉が目を覚ましたと言うのだから当然のことだろう。

 

 

 その数日後に姉と再会した簪はうれしさのあまり泣いてしまう。

 彼女の姉の刀奈は後遺症のせいで体に麻痺が残ってしまい前のように楯無を勤めることは出来なくなってしまっていたが今の楯無、簪のために様々な協力をしていくことになる。




今までで1番長い話となってしまいましたが最後まで呼んでくださりありがとうございます。
 
最初にも書いたとおり当初予定していた後日談はこれで終わりです。
今後は時間がかかるとは思いますが皆様のリクエストに応えていきたいと思います。

ところでこの話で死んだ一夏が原作ルートで受験あたりからやり直すことになったらという感じの作品を考えました。
ちなみにその際は連載となります


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後日談? その5

その4の続編ではありません。


え?この前も同じ話上げてなかったかって?
気のせいです。

本当は後半が気に入らなかったので半分以上書き直しただけです。


文化祭も終わり、また落ち着いた日々になりつつある秋の日。

 もう襲撃があった事が生徒達の話題に上ることもほとんどなくなっていた。

 唯一変わったことはあの日以降元から教室に顔を出すことの少なくなっていたある男子生徒が一度も教室に来ていない事だろうか。

 だがそれでも教室はいつもと何ら変わりのない雰囲気であった。

 それももう一人の男子生徒である“二人目”のせいである。彼は誰よりも圧倒的な力を持っておりまた人を引きつけ魅了する不思議な力を持っていた。それ故に男子生徒はクラスに、学年に、学校に居場所を失っていた。もちろん彼の味方をする者も何人かは居たが、人数は少なく、あまりおおっぴらに公言する事ができずにいた。おそらく表立って彼の味方をしていたのはこの学校の生徒会長とその妹。そしてその二人の従者である姉妹の4人だけだろう。

 

 そんな彼の数少ない味方である生徒会長更識楯無は4時間目の授業の終了するほんの少し前、教室を抜け出し屋上へと急いでいた。理由はただ一つ。「何か嫌な予感がする」というもの。もちろん根拠があるわけではない。だが特殊な家系で育てられそういった状況もなんども体験している彼女は確信を持ってた。「このままでは彼の身が持たないと」

 

 キーンコーンカーンコーン

 

4時間目の終了の合図であるチャイムが鳴り響く。その音と同時に彼女は屋上の扉を開けた。

 彼女の目に飛び込んできたのはフェンスの上に腰掛けた少年、一夏の姿だった。

 「ちょっと!何をしてるの!」

 思わずそう叫ぶ。少年は少し驚いたような表情をしたが小さな声で

 「さようなら」

 と呟くと重心を後ろに移してその手を離した。

 

 彼の体は重力に引かれ、自由落下を行う。

 「一夏!」

 彼女は少年の名を叫ぶとISを展開する。本来勝手にISを展開することは禁止されているが、今は緊急事態である為そんなことは言っていられない。

 一気に加速すると彼の下に回りその身を抱きかかえた。彼は意識を失っているようだったが、命に別状はないようだった。

 

 一夏を下まで下ろした彼女はすぐに自分の従者と妹に連絡を入れ、自分は「彼」をつれて保健室に行く。

 途中不思議そうに見られたり、敵意をむき出しにした目で見たれたりもしたがそんなことは彼女にとって決して重要なことではない。

 

 保健室につくとすぐに彼を寝かせ手当を保険医に任せると自分はそばのいすに腰掛ける。

 「一夏!」

 彼の名を叫びながら飛び込んできたのは彼の姉である織斑千冬だった。

 彼女は一夏に駆け寄ろうとして保険医に制止される。彼女はしぶしぶと言った形でおとなしくなる。だがその表情は決して納得していなかった。彼女にとって一夏は残されたたった一人の家族だった。だからこそ相談をしてくれなかったことなど腑に落ちないことがあったのだろう。だがもちろん彼女は知らないが一夏は彼女に相談することをいやがったのである。それはこれ以上迷惑をかけたくないと言う思いもあるがそれ以上に相談をしたところで特に解決しないだろうと言う思いがあったからだ。かつて臨海学校でのことを話した際に「そんなわけがない」と取り合って貰えなかったと言う事実があるからだ。この出来事は彼にとって「信頼していた唯一の家族である姉に裏切られた」という思いとして深く心に突き刺さっていたのだ。

 

 夏休みの間一夏から何回も相談を受けていた楯無は千冬の存在が彼にとって負担となっている事を知っていた。故に彼が目を覚ました際に彼女がそばにいる事は望ましくないと判断した。

 

 「織斑先生。しばらく席を外していて貰えるかしら」

 故にそう声をかける。

 「なぜ私が席を外さなければいけないのだ?私は一夏のたった一人の家族なんだぞ」

 「ええ、確かにあなたは一夏君の唯一の家族よ。でも彼にとってあなたは負担になっているのよ。たった一人の家族にすら信じて貰えなかった。って言ってたわよ」

 「そうか… …決してそんなつもりはなかったんだけどな… …そう思われていたのか… …」

 楯無の話を聞き、自分が愛する弟にどう思われていたのかを知り千冬は大きな衝撃を受ける。だがここで何を言ったところで何も変わらない事くらい彼女にも分かっていた。だから今は一夏の事を第一に考えその場を離れることにした。

 「楯無。一夏の事を頼んだ。もし私に合っても大丈夫なようになったら教えてくれ」

 そう言い残して。

 「ええ。もちろんよ。一夏君のことは私達に任せなさい」

 そう呟いた楯無は彼が目を覚ますまで保健室で待つことにした。

 

 それから数時間。時は放課後となり、部活へ向かう生徒やアリーナで訓練をする生徒が現れ始めた頃。意識を失っていた彼は目を覚ました。

 「あら。おはよう。気分はどうかしら?」

 「楯無さん… …何であの時… …」

 目を覚ました一夏はなぜ自分がここにいて目の前に彼女がいるのか理解できなかった。だが直ぐに思い出す。飛び下りようとした直前屋上へとやってきた彼女によって飛び下りた直後に抱きかかえられた事を思い出す。

 「何でってそんなの決まってるでしょ。あなたに死んで欲しくないからよ」

 「でも… …」

 彼は楯無の「死んで欲しくない」という言葉にどこか納得していないようであった。そんな彼に楯無はなぜ自殺を図ったのかを聞いていく。最初は応えるのを渋っていた一夏だったが堪忍したのかぽつぽつと事情を話し始める。

 自分の考えを否定され続けたこと、仲の良かった幼なじみ達も自分から離れていったこと、そういった出来事の中心にはいつも“二人目”がいたこと。

 目に涙を浮かべながら話す一夏を楯無はそっと抱きしめる。親から愛情をほとんど注がれていない一夏にとってこれは母親からのそれに変わる物であり彼の中での楯なしの存在はより大きくなったといえるだろう。

 

 その後一夏の証言を元に更識家による調査が行われ“二人目”は身の自由を奪われた。それに伴いIS学園は一時的に封鎖され、洗脳の解けた生徒達のメンタルケアがはじまった。

 そして数年の後管理体制や教育形態、所属などを大きく変え国連の組織の一つとしてIS学園は新たに発足した。

 

 この一連の出来事の中心人物の一人である織斑一夏は更識家の中で楯無や簪らとともに生活をしながらメンタルケアをおこない、無事社会復帰を果たした。だが彼がIS業界に戻ることはなかったし、マスコミもさすがに彼に配慮し報道制限を行ったため多くの人々の記憶から忘れられもはやただの一般人として生きていくこととなった。

 ちなみにあの事件の後彼の幼なじみであった二人は罪に問われはしなかった物の彼と会う事はなかった。

 千冬とは無事その仲を回復し、今はかつてのようにしているという。

 




ようやく感覚が戻ってきて自分の思い描いた作品が書けた。

やっぱりプロットなしだと訳が分からなくなるな。

2週目の方とかはプロット作成はあらかた終わっているのでいくらか書き溜めしたら投稿します。
他にも書きたい話とかいっぱいあるのでそっちが先になるかもですが。

感想、意見等あれば是非お願いします。
もっとこうした方が良いなどの意見があれば次回以降の参考にさせていただきます。

こんな話が読みたいなどの意見も募集してます。


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後日談その4-2 リメイク

大変お久しぶりです。
最終更新から1年と少し。年内に完結させたいと言っていながらこの体たらくで申し訳ありません。
さて、今回は最後に更新していた作品のリメイク版となっています。
続きも必ず近くに投稿します。今度こそ本当です。


 太平洋上での戦闘も佳境を迎えた頃。身柄を拘束されていた専用機乗りの5人は個別に事情聴取を受けていた。結託して嘘の証言をされるのを防ぐのが目的ではあったが、全員がほぼ同様の証言を行っている事からさほど時間はかからないと思われた。

 しかしそうも上手く行かないのがこの世の常。たった一つの出来事がもはや只の作業と化していた取り調べに影響を及ぼした。

『織斑千冬が“二人目”との戦闘で戦死した』

 この、IS委員会側に大きな衝撃をもたらしたそれは、彼女たちにまちまちな反応を起こさせた。

 1番反応が薄かったのはセシリアとシャルロット。二人は織斑千冬とは生徒と教師という関係しか持っていなかった。とは言え彼女らの「それがどうした」と言わんばかりの態度はいささか不自然なものではあったのだが。

 箒と鈴は幼少の頃かつての思い人であった織斑一夏との関係の中で何回も会っており、彼女の強さを含めて良く知っているからこそ彼女の死と言う事に酷く驚いていた。とは言え、その実行犯である“二人目”の行動に対して何ら違和感を覚えてはいなかった。

 だが、ラウラだけは反応が大きく違っていた。

「なぜ教官が彼に殺されねばならないのだ!弟の方ならいざ知らず教官がなぜ……」

 酷く取り乱した彼女は到底聴取を継続出来るように無かった。

 彼女は織斑千冬によって救われており尊敬いや、崇拝していると言っても過言では無い。

——まるで狂信者のように

 故に己の中で大部分を占める人物同士が争い片方が死ぬと言うこの出来事から受けた衝撃は大きすぎた。

 

 これ以上の聴取は不可能。それがラウラに対する共通意見となった。まずは彼女の精神の安定が先決だと委員会側が判断したのだ。彼女にはカウンセリングのスタッフが割り当てられ少しずつ心の余裕を取り戻していった。

 その間も他のメンバーへの事情聴取が進められていたのは言うまでも無い。

 

 

 ラウラへの聴取が中断してから何日が経過しただろうか。落ち着きを取り戻した彼女は衝撃的な言葉を紡いだ。

「私は、“二人目”によって自由意志を奪われていたのかも知れない」

 たったそれだけの言葉。そこには何の確証もない。だがそれは誰もが思いもよらなかった事でもあった。なんせ“二人目”は一般人。そんな彼が軍人らをマインドコントロール出来るとは想定すらされていなかったのだから。

 

 この発言により他の4人も同様に洗脳されている可能性は高まった。故にそれぞれにカウンセラーを割り当て、また、精神科医を何人か招き、彼女たちへの治療が始まった。

 やはりと言うべきか1番最初に確固たる自意識を取り戻したのはラウラだった。

「私は……少なくともタッグマッチトーナメントの時までは確固たる意思で行動していた。教官にドイツ軍に戻って貰うために……。尤もそれがよろしくない内容である事は今なら分かる。だがまあそのときの私は奴のことなど教官の弟より強い男くらいの認識でしか無かった」

 彼女はそう語るとそこで一旦口を止めどこか悔しそうに手を握りしめる。

「VTシステムが起動して、私が意識を失った後。今なら分かる。私はそのときから彼の洗脳下にあった。あの時から私は奴の行う決して許されざる行為に対して嫌悪感を抱かなくなっていた。相手があの織斑一夏だったからかも知れないがそれでも、だ」

「すると君はVTシステムが起動した後から心神喪失状態にあったという事か。これは少しドイツにも問い合わせてみないといけないね」

 今まで聞き手に徹していたカウンセラーがそう呟く。その言葉が聞こえてかどうか、ラウラは一旦言葉を止め数秒の後また独白をはじめた。

「もし、私をVTシステムから救ったのが奴では無く織斑一夏だったなら。私はもっと自由に心の底から笑っていられたのかも知れないな」

 

 この時確かにラウラの洗脳は溶けた。彼女からの情報は非常に有意義であり、他の4人の解放への大きな手がかりとなるだろう。

 今、IS学園内で行われてきた“二人目”の行動が表に出つつあった。

 




最後まで読んで頂きありがとうございます。
あまりにも久しぶりだったせいで思うように書けずお見苦し所もあったかとは思いますが最後までおつきあい下さると幸いです。


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後日談 その4-3

遅くなりましたが続きです。
今回は箒と鈴です。

前回の話で心神喪失の誤字では無いかと言う指摘がありましたがこれで間違って居ません。


 私は、自分の意識が戻ってくるのが怖かった。

 自分のしてきた事が分かってしまったから——

 自分が思い人の心に止めを刺してしまったのだと気がついてしまったから——

 もうその人は何処にも居ないのだと知ってしまったから——

 

 ——私はどうすれば良かったのだろう。

 ——嗚呼。私はどうすれば良いのだろう。

 ——分からない。

 

誰か助けて……

 

或る少女の手記より。

 

 

太平洋上での戦闘から幾日か経過したある日。

「私はどうすれば良いんだ……」

 ラウラの発言をきっかけに、篠ノ之箒と鳳鈴音の2人は次第に己の自意識を取り戻しつつあった。それと共に2人は酷く悩んでいる様だった。

 それも当然の事だろう。なんせ小学生の時からIS学園に入学してもなお好いていた相手、織斑一夏に対して酷い言葉を浴びせ精神的に痛めつけてしまったのだから。

それが自分の意志で無かったとは言え——。

 特に箒の方が悩んでいる様だった。一夏のそばに一番最後まで居たため、完全に一夏の心のよりどころとなっていた彼女。そんな彼女が福音戦の際に“二人目”の指示で一夏を切りつけてしまったと言う事実。それは酷く彼女自身を傷つけていた。

「赦して貰えるとは思えないが……。一夏、本当に済まなかった。」

「一夏……。ほんとにごめん。結局仲直り出来なかったね。せめて私の作った酢豚食べて貰いたかったな……」

 2人はもはやただただ一夏への謝罪の言葉を並べる機械の様だった。

 もはやカウンセラーの言葉すら届いていない。何時壊れてもおかしくない——いや、もうすでに壊れてしまっているような。

「私達はどうしたら良いのかな……」

 どちらとも無く呟かれた言葉。その言葉は何かを動かす事も無く只虚空へと消えていく。

 

 それからいくらか経った頃。

 2人はお互いの傷をなめ合うように、或いは楽しかった過去を思い返すかのように言葉を交わすようになっていた。

「一夏は……苛められていた私の事をかばってくれたんだ。それが嬉しくて、格好良く見えたんだ」

「私の時もそうだったわ。一夏に何度助けられたことか」

「それなのに……私達は何て愚かなんだろうな。あんなに好きだったのに……」

「ほんと。きっと今も好きなんて言う資格無いわよね……」

 今の2人を一夏が見たらどう思っただろうか。もしかしたら悲しんだかも知れない。だが、もう何処にも彼女たちの好きだった人は居ない。

 

 やがて2人は食事を拒否するようになった。点滴が投与されるも生きる事を放棄したその体は回復の兆しを見せない。病院に運ばれたときにはもう手遅れで。心が壊れきった2人はそのまま息を引き取った。

 

 その表情は凄く苦しそうで——

 

 何処か救われた様にも見えた。

 




読んでくださりありがとうございます。
もう少しだけ続きますのでお付き合いくださると幸いです。


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