おいでよ カルデアの森 (一火)
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設定
カルデアコレクション(当作品に現段階でいる女性サーヴァント)


本作の注意書きに書いてある所を考慮して、現段階でいる女性サーヴァントをクラス毎に書き記しています。メインでエロ回を一度でもやっていれば、名前の後に○がついています。いわゆる撃墜マークです。
基本的にサンタ系列や、ハロエリ、ブレエリに水着は服を変えただけとさせていますので、このカルデアでは同キャラ扱いで書いています。

設定みたいなもんなので、読まなくても支障はありません。





※真名バレ有りの為、注意。









《剣クラス》

モードレッド(水着含む)○

アルテラ○

沖田総司○

宮本武蔵

セイバー・アルトリア(水着含む)

紅閻魔

「両儀式」

ディオスクロイ

伊吹童子

セイバー・オルタ(サンタ・水着含む)○

セイバー・リリィ○

鈴鹿御前

デオン○

ラーマ○

蘭陵王

ネロ(水着含む)

ラクシュミー

 

《弓クラス》

アルテミス

清少納言

クロエ

織田信長(水着含む)○

織田信勝

アタランテ○

エウリュアレ○

巴御前

浅上藤乃

カラミティ・ジェーン

パリス

 

《槍クラス》

ブリュンヒルデ○

エレシュキガル

エルキドゥ

ブラダマンテ

アルトリア・ペンドラゴン○

アルトリア・ペンドラゴン・オルタ○

ジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィ○

パールヴァティー

メドゥーサ・リリィ○

エリザベート(ハロウィン・勇者含む)○

哪吒

ワルキューレ○

カイニス

秦良玉

長尾景虎

宇津見エリセ

ジャガーマン

ガレス

 

 

《騎クラス》

フランシス・ドレイク○

メイヴ○

司馬懿(ライネス)

ダヴィンチちゃん(ロリ)

ネモ

イシュタル

アン&メアリー(水着含む)○

マルタ(水着含む)○

マリー(水着含む)○

アストルフォ

牛若丸○

ブーディカ○

メドゥーサ○

 

 

《術クラス》

スカサハ・スカディ〇

ダ・ヴィンチちゃん

アナスタシア○

アルトリア・キャスター

イリヤ

マーリン

紫式部

玉藻の前(水着含む)○

シェヘラザード○

玄奘三蔵

美遊

ニトクリス(水着含む)

エレナ(水着含む)○

キルケー○

シバの女王

ナーサリー○

アイリスフィール(当作品においては4元素+黒)○

メディア・リリィ○

メディア

 

 

《殺クラス》

酒呑童子○

カーマ

謎のヒロインX○

ジャック・ザ・リッパー○

クレオパトラ

セミラミス○

刑部姫○

武則天○

スカサハ(水着)○

カーミラ○

ステンノ○

望月千代女

加藤段蔵

グレイ

両儀式

虞美人

アサ子さん(百貌のハサン)○

静謐のハサン○

荊軻○

マタ・ハリ○

シャルロット・コルデー

 

 

《狂クラス》

謎のヒロインXオルタ○

源頼光(水着含む)○

ナイチンゲール○

アタランテ・オルタ○

ペンテシレイア○

茶々

茨木童子○

フラン(水着含む)

タマモキャット

鬼女紅葉

清姫(水着含む)○

バニヤン

サロメ

 

 

《エクストラクラス》

ジャンヌ・ダルク○

ジャンヌ・オルタ○

魔人沖田

シトナイ

ガネーシャ(ジナコ)

謎のヒロインXX

ゴルゴーン○

ケツァル・コアトル(サンタ)

メルトリリス○

パッションリップ○

BB○

キングプロテア

メカエリちゃん

マシュ○

アビゲイル

葛飾北斎

魔王信長

アストライア

スペース・イシュタル

楊貴妃

ボイジャー

卑弥呼

ゴッホ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

《マスターの休日》

 

「おはようございます。先輩」

 

「おはよう、マシュ……今日はレイシフトも戦闘訓練の予定も入っていないオフの日だっけ?」

 

「はい、その代わりシミュレーション……精神と時の部屋での予定がびっしりです」

 

「ふむふむ、で、スケジュールは?」

 

「はい、今日のスケジュールは……。

9:00~10:00――槍のアルトリアさん達と騎乗訓練(1日分)

10:10~11:10――信長さん、沖田さん、茶々さん達と敦盛パーティ(1日分)

11:20~12:20――メイド服ナイト、セーラー服ナイト、今日のご注文はどっち!?(1日分)

12:30~14:30――源氏(頼光&牛若丸)vs鬼組(酒呑童子&茨木童子)vs良妻組(玉藻の前&清姫)、三つ巴の乱。マスターの矛を性するのは誰だ!(2日分)

14:40~15:40――イリヤさん、クロエさん、ジャックさん、ナーサリーさん、ジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィさん、バニヤンさん、アタランテさん達とのお茶会(1日分)

15:50~16:50――女神様主催によるトリプルメドゥーサを弄りまくる回(1日分)

17:00~19:00――ドキッ水着鯖(ネロ、スカサハ、アン、メアリー、マルタ、マリー、エレナ、ニトクリス)だらけのポロリしかない水泳大会(2日分)

19:10~21:10――アルトリア顔のアルトリア顔によるアルトリア顔の為のマスターとの絆UP訓練(2日分)

21:20~22:20――マスターによるこれで耐えれる!優しい拷問・尋問訓練、参加者は静謐のハサンさん、アサ子さん、武則天さん、セイバーリリィさんです(1日分)

22:30~23:30――マタ・ハリさんとブーディカさんによる、甘えて、甘やかされて、新婚模擬訓練(1日分)

23:40~0:40――ナイチンゲールさんの夜の治療(1日分)

1:00~4:00――わた……大事な大事な後輩とのパーソナルレッスン&マッサージ(3日分)そのまま仲良く就寝となっております。

なお、今日、入りきらなかった方達に関しては後日に予定を組まさせて頂いています」

 

「隙の無いスケジュール管理。パーフェクトだ、マシュ」

 

「感謝の極み、です」

 

休日とは一体……とツッコむ者は誰もいない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




式(殺)とかアルテミスは書く予定は今の所ありません。荒れそう以前にまず話が思い付かないからです。
けど、青ペンとか巴はいつか絶対書きます(鋼の意志)。

これからもここのキャラはしれっと更新していますので。




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本編(第一部)
Moosandogs(モードレッド)


モーさんの最終再臨エロすぎないっすかね、脇が性的すぎるんですよ、あんなのR18でしょ、大好きだわ。全く。



 ここは人理継続保障機関カルデア。世界を救う為、今日も林檎を食べながら走り回るただ一人のマスターの姿が見える和やかでアットホームな職場である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 星5はまったく出ないし、ロンドンでは変な奴に小便かけられるし、意気消沈しながらも呼符という名のチリ紙で召喚、召喚。どうせ礼装だろ。おはじきだろ。と思っていたら……。

 

 ──―バチバチバチッ!! 

 

 うぉ眩しっ!! 

 

 

「セイバー、モードレッド推参だ。父上はいるか?」

 

 …………うん、黒い方ならいるけど。

 

 とまあ、初の星5であり、ロンドンではお世話になったのもあり、テンション最高潮で種付けレベルMAX、フォウ、スキル、絆MAXを目指してクエストを毎日連れ回してたら……。

 

「マスター! クエスト行こうぜ! クエストッ!」

 

 なんかめっちゃ懐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 すでにマイルームで自らのベッドで睡眠体勢に入っていた俺は起き上がり、モーさんの方へ体を向ける。

 

「……モーさん、今何時だと思う?」

 

「夜!!」

 

「おう、アバウト。

 というか、もう遅いからマスターさんはお眠したいわけですよ。だから、モーさんもハウス、ハウス」

 

「え──、何でだよ。前はこのぐらいの時間にも普通に連れてってくれたじゃねえか」

 

 召喚当初はそりゃあ、初の星5という事でよくわからないテンションで休み知らずで金腕狩りまくってたからな、あー牙欲しくて竜牙兵も狩りまくってたっけ? さすがにずっとあれを続けるのは死ねるんですよ。俺、マスターとはいえ一般人ですし(大本営発表)。

 

「う──ん、どうしても今行きたい? 明日じゃ、ダメ?」

 

「いや、どうしてもってワケじゃねけどよ……」

 

 そう言うとシュンとしてしまうモーさん…何か犬の耳が見えますねえ。

 何だろう? 召喚した時はこんな性格じゃなかったと思うんだけど。

 クエストだって……。

 

『うはは──! 強え! モーさん強え!』『宝具で雑魚を一掃! 強いぞ──! すごいぞ──!』『型に縛られないケンカ剣術! かっけえ!!』『何でも乗りこなすモーさんのドライビングテクニック、イカすう!!』『俺のモーさんは最強なんだ!』『この戦い、我々の勝利だ!』『最高の騎士だよモーさんはっ! ずっと側にいてくれっ! ハハハっ!』

 とか褒めまくりながら、頭を撫でくりまわし、体を抱き上げクルクル回ったり、頬をスリスリしたぐらいだからな。その度にどつかれるけどまあ、何だかんだでクエスト終わった後もテンションのおかしかった俺にマイルームでずっと一緒にゲームやら、お喋りやら付き合ってくれる当たり、面倒見はいいのかもしれない……。

 

 うん! 懐く理由が思いあたらないネ! (白目)

 

 とまあ、いつまでもシュンとさせたままのは忍びないのでチョイチョイと手招きをする。

 

「何だ? マスター?」

 

 何の疑いもせず、嬉しそうにこっちに近づいてくるモーさん。本当にワンコみたいだな、信頼されてるのは嬉しいけどもうちょっと訝しんでもいいのにねえ。

 

「ほいさっ!!」

 

「え? ちょっ、うにぁあっ?!」

 

 顔をこちらに寄せてきた所を狙い、ベッドへと引きずり込む。え? サーヴァント相手にそんな真似無理じゃねって? マスターレベル120もあれば出来るんじゃないんですか(適当)。

 困惑している内にモーさんを抱きしめながらベッドイン、毛布も掛け直し、完全同衾体制完成。

 

「うえっ?! えっちょっ? おおおまままえ、いいったいにゃにを!?」

 

「俺は眠いし、モーさんも最近がんばり過ぎだから少しは休んだ方がいい。というわけで一緒に寝る。これなら明日起きたときすぐ二人でクエスト行ける。証明終了」

 

「え? ええぇ、け、けどよおぉ…」

 

「大丈夫、大丈夫、仲の良い主従が同衾するのはよくあること。騎士が主を守るために常にそばにいるのはよくあること。証明終了」

 

 証明もクソもない暴論でとりあえずモーさんに説明。こんなんで納得してくれますかねー。

 

「そ、そっか、なら仕方ねえな」

 

 納得したよこの子。チョロすぎるぜえ……ちょっと将来が心配になりましたよ。

 

「いや、けど、お、おれまだシャワー浴びてねえぞ!」

 

「問題無し、明日浴びましょ」

 

 ていうか女扱いすると怒るのに乙女らしいこと気にするのねモーさん、まあ複雑な乙女心という奴ですかね。とりあえず嗅いどきますか、ハスハス。

 

「うひゃあああ!! 脇を嗅ぐなっ! バカっ!」

 

 頭を小突かれる。これぐらいで済むのも絆MAXのおかげ、普通ならクラレントされてもおかしくないわ。

 

「うん、普通にいい匂いだし気にしなくてもいいよ」

 

「そういう問題じゃねえよ! アホっ!」

 

「じゃあ、モーさんも嗅げばよし! それなら公平だっ!」

 

「いやいや、公平とか意味わかんねえよ! お前狂化入ってんじゃねえのか! あっちょっやっ」

 

 問答無用でモーさんをより強く抱きしめ、右手で頭を俺の首元に来るようにする。つーか、モーさんの体まじ柔らけえわ、胸は言わずもがな体全体がムニュッとする。密着してより一層感じる。しかも服が服なんで体温も直に感じるし、肌もスベスベだし、はぁ──気持ちいいわ──―。

 うん、自分からさせておいて何だけど俺の首元ですんごいモーさん、スーハー、スーハーしてるし、マジでワンちゃんだったのかあ……なんかすんごいビクッ、ビクッってしてるし。大丈夫だよね? 逝っちゃったりしないよね? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んっ、あっ、ああっ、すうっ、はあっ、なぁっなんだこれえぇ」

 

 マスターのベッドの中で、マスターに抱きしめられながら、マスターの匂いを嗅いでる。その度に自分の体中を言いようのない感覚が駆け巡る、でも決して嫌じゃなくて、むしろ気持ちよくて……。

 ていうかそもそも何でこうなってんだ。オレは普通にいつも通りマスターとクエストに行こうとして……。

 

 あぁ、そうだ。何だかんだで毎日のように一緒にいたから、時間も特に気にしてなかったんだな。

 マスターはとっくに寝る時間だったってのに…けど仕方ねえよな。こうなったのも全部マスターが悪いんだぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 召喚に応じてすぐに父上の元に向かった。マスターは黒い方とか何とか言ってたけど、父上と会ってその理由がすぐにわかった。うん、オレの知ってる父上より黒かったし、何かスンげえ怖かった。しかもオレを見るやいなや……。

 

「ほう、ついに星5を召喚してしまったのか…奴のテンションがやけに高かった理由がわかったな。やれやれ私が唯一の高レア鯖という不動の地位のもとマスターを独占していたというのに…貴様が泥棒犬かっ……!!」

 

 ──―エクスカリバー・モルガアアァンッッ!!! 

 

 正直死ぬかと思った。いくら、アーサー特攻あるといっても召喚したてのレベル1とレベルMAXじゃ話にならなかったしな。マナプリにされる前に命からがら逃げおおせる事は出来た。

 

 そしてその後父上にリベンジをする為、オレは何故かハイテンションなあいつとクエストを共にした。

 まあ、途中から楽しくなってきてリベンジの事はすっかり頭から抜け落ちちまったんだがな。いや、仕方ねえだろ? あの馬鹿マスター、100%信頼してくるし、やたらと褒めるし、無茶苦茶なノリでも最後まで付き合ってくれるし、オレの事を叛逆の騎士と知っておきながら、ずっと側にいてくれとか言いやがるしよ。やたらとスキンシップが激しかったのはこの際目を瞑るが。何だかんだで気は合ってんだろうなあ。じゃなきゃこのオレが特定の誰かと行動を共にするなんて考えられねえしよ。

 

 結局、オレはマスターなら騎士としての名誉を、忠誠を、全てを、授けられるって考えちまったんだろうな。

 だから、いつでも一緒にいても問題ねえって思っちまったんだ。あぁ、マスターの言うことは間違ってねえ主従関係なら同衾しても何も問題はねえ、オレがこうして匂いを嗅いでイッちまっても仕方ねえことなんだ。

 

 それならよ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 モーさんが途中から急に大人しくなったと思ったらいつの間にか押し倒されていた件。

 まあ一緒に寝てた時点で押し倒すという表現は正確ではないけど、要するに上がモーさんだよ状態。

 

 すんごい目がギラついて、息が荒いモーさんが……。

 

 ありゃりゃ、ワンコはワンコでも狼だったかあ……(しみじみ)。

 

「モーさん、モーさん、すんごい身の危険を感じるだが。ちょっと待てしようか?」

 

「はぁ、はぁ、どうせ明日朝からクエスト行くなら体力だけじゃなくて、魔力も回復しておいた方がいいだろ? だから今から魔力供給するのはおかしくないだろ。証明終了」

 

「全然、証明終了出来てないよ。ひどい暴論だよ」

 

「ま、ますたーが悪いんだぞ! お、おれをその気にさせるからっ、だっ、だから仕方ねえんだっ! 頼むから俺に食われてくれっ! もっ、もう我慢出来ねえんだっ!」

 

 と涙目で顔が真っ赤っかなモーさんが襲いかかってきた。まあ、こうなってしまえばサーヴァント相手に一般人マスターは為すすべ無しと思うじゃろ? 

 

 

 

 

 

 

 

 一体いつから自分が捕食者側だと錯覚していた? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そのカルデア唯一のマスターの部屋からは最初こそは威勢のいい女騎士の声が聞こえたが、しばらくすると「そ、そんな所舐めるなぁ」、「ま、まって、イッてる、いまイッてるからあぁ」、「ちょ、ちょっとまて、まだするのか、イッたばかりで、あ、やぁ」、「むり、もう、むりぃ」、「しんじゃう、しんじゃうからあぁ」、「やぁ、あっ、あっあああああぁぁぁぁ……………」等の声が一晩中聞こえたとか。

 

 彼も一般人とはいえ、型月主人公の素質をしっかりと受け継いでいたのだろう……。

 

 ベッドの上では強いという素質を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ザビ「こっちは全年齢だから!ノーカンだから!」

正義の味方「でもいずれ、ヤるんだろ?」

ザビ「ノーコメント」











FGOの小説増えたけど、こうぐた男と女鯖のイチャイチャ?はまだ少ないなぁと思いながら書いてしまった作品。後悔はないよ。
ちなみに色んなキャラ書きたいけど、作者が持ってないサバは出ません(悲しみ)。
直接的な描写してないからセーフだよね?だよね?


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POCKY EATER OS(セイバー・オルタ)

評価、お気に入り、超あざっす!こんな駄作でも見てもらえるとは、いやはや。






タイトルのOSはオルタ・セイバーの略である。
決して、おっぱい・すきの略でない。イイネ?


黒セイバー様から呼び出しをくらいました。

『私の部屋に来い、今すぐにだ。』と有無を言わさず。

 

……まぁ、呼び出された理由も何となく察してるんですが。

ここ最近あんまりオルタちゃんに構ってなかったしね。

ないがしろにしてるつもりはないんだけど、王様からしてはオコなんだろうなぁ―――。

 

とりあえず、いつまでもここにいても仕方ないんで入りますか。

ノックしてもしも~し。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒を主体としたゴスロリチックな部屋の中心に我が王はいました。

口をめいっぱい膨らまして。

 

あぁ、決して怒って膨らましてるんじゃなくて、ただ単に口の中に食べ物が詰まっているだけみたいだね。

周りにあるハンバーガーらしき包み紙の山がそれを物語っているし、後で掃除しなきゃ……。

 

「(もっきゅもっきゅ)ひょくひたな、(もっきゅもっきゅ)ひやまがほほにふるふぁで(もっきゅもっきゅ)」

 

「とりあえず、口の中のモノを片づけてから喋ろうかオルタさん。

ああもう、ほら口の周りにケチャップもついてるし。いま拭くからちょっと動かないでね」

 

口を拭かれながらも咀嚼をやめないオルタちゃん、最後にごっくんをしておしまいです。よく出来ました。

 

「ふぅ、よく来たな、貴様がここに来るまで私はハンバーガーを50は平らげてしまったぞ。呼び出された理由はわかっているだろうな?マスター」

 

何事もなかったように仕切り直して、ドヤ顔で語る王様。

冬木で会ったときは敵とはいえ、もう少し凛々しかった気もするんですが。

 

 

『グランドオーダー、聖杯を巡る戦いはまだ始まったばかりだという事をな』

とか何とか思わせぶりな事を言って消えたけど、冬木から帰ってきたら、すぐに召喚してしまったし。

 

『…………』

 

あれは何かお互いに気まずかったな。

 

それでも結局冬木からロンドンに至るまでずっと助けられっぱなしだったんだけど。

 

「最初の出会いは敵から始まったとはいえ、我々は一蓮托生でさまざまな困難を乗り越えてきたはずだぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

振り返ってみれば、フランスでは

 

『おい、私のマスターに物騒な視線を向けるな。

自らのルーツすら知らない出来損ないの分際で』

 

『あらあら、なあに?気持ち悪くも黒くなった騎士王様がいっちょまえに主の前で騎士気取り?傑作だわ。それとも女として健気に媚でも売ってるのかしら?

ホントとんだ雌犬ね、それはそれは、黒くもなってしまうわ。クスクス』

 

『下賤な勘繰りだな。あぁ、すまん。一応、貴様は聖処女だったものな。

男を知らない身としては我々の仲は目に毒だったか、これはこれは、気が利かなくてすまなかったな。

しかし、貞操観念だけ肥大化した女ほど、醜いものはないと思わないかマスター?

あの様子だと男と手すらつないだことないと見える』

 

『ばばばかじゃないのっ!手なんてつなげるワケないでしょ!

妊娠したらどうするのよっ!!そういうのはまず交換日記から始めてお互いの距離感を………』

 

『………あー、なんかすまんな』

 

 

 

 

 

ローマでは

 

『ふむ、あの赤いのは敵だな。私に顔そっくりだし。ドッペルゲンガーという奴だろ。

ヤらなければ私自身の存在が脅かされる。とりあえずモルガーンっとくとしよう』

 

『ストップ、まってオルタさん。あの人からサーヴァントの気配しないから。

間違いなくこの世界の人だから。いきなり宝具ぶっぱしようとするのはやめて』

 

『止めてくれるな。私の直感がささやくのだ、あれは近い内に強大な敵になると、主に人気的な意味で』

 

『どこの電波を受け取ってるのかは知らないけど、ハウスッ!』

 

『ひゃあああああっ!ど、どこを触っている貴様っ!ちょ、わ、わかった!わかった!やめるから、せめて、ば、ばしょをかえ……』

 

 

 

 

オケアノスでは

 

『先手必殺!エクスカリバー・モルガーンッッ!!』

 

『■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■!!!』

 

『全力でいったが、8回しか殺せないとは‥‥‥さすが大英雄ヘラクレスだな。

まぁ、残りストックが4つなら他のメンバーで十分であろう。マスター、私は褒美にパンケーキを所望するぞ』

 

『う、うそだ…ヘラクレスだぞ?さ、最強の大英雄だぞ?認めないぃ、こんな展開認めないぃ!!』

 

『うーん、これはアークいらなかったみたいだね。

僕は楽できていいけど』

 

 

 

 

ロンドンでは

 

『何がグランドキャスターだ。どうせ、7章あたりで倒されて「グランドキャスターがやられるとは…‥だが奴はグランドサーヴァントの中でも最弱の存在。人間ごときにやられるとはグランドの面汚しよ、ククク」とかいう展開だろ?わかっているぞ。

そしてグランドセイバーの座は私のものだ』

 

『何の話をしているっ!?貴様っ!』

 

『いくぞ、小便王。小便の貯蔵は十分か』

 

『魔術王だっ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウン、イイオモイデバッカリダネ。

 

「だというのに貴様はここ最近、愚息を筆頭に3色ボールペン使いの褐色娘、病弱系侍やキャップを被った私のパチモンやら…ずいぶんと景気がいいみたいだな?えぇ?」

 

「オルタさん、もしかしなくてもスネてます?」

 

「スネてなどいない。貴様が新入りの小娘共にうつつを抜かして腑抜けになってしまうのを忌避しているだけだ。決して貴様が構ってくれなくてストレスが溜まり、ジャンクフードをやけ食いしているような事はない」

 

「アッハイ」

 

「なんであれ貴様が初心を忘れかけてしまっているのは事実だ。主に私に対する感謝と尊敬と愛情をな」

 

「あ―――、そんなつもりはなかったんだけどなぁ…

うん、そう思わせてしまったのは俺のせいだ。

お詫びに何でもするよ」

 

「何でもと言ったな?」

 

と懐からオルタさんが取り出したのはポッキーの箱。

 

「まさか」

 

「そのまさかだ。今まではアーンで食べさせてもらってたが、それでは物足りないことがわかった。

貴様とて私がこんなことをするのは予想外だったであろう?」

 

と本日2度目のドヤ顔を披露するオルタちゃん。

いえ、いつかはやりそうだな~~と思ってました。

けど俺は空気の読めるマスター。表情には出しません。

 

「ポッキーゲームだ。今日は口を使って食べさせてもらうぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やけに豪華なベッドに腰かけ準備満タンのオルタちゃん(かわいい)。

 

しかし、予想外でなかったとはいえ、いざやるとなると少し照れるなコレ。

今更この程度で何を照れてるんだかというツッコミが入りそうだが……こう、いかにもバカップルみたいなヤツって案外R18的なアレより照れるんスよ。

 

「ちなみに」

 

うん?

 

「目は開けたままだ、瞑るなよ。

そして途中でポッキーを折ったり、口を離したりするのも無しだ。最後まできちんと私の口まで届けろ。

もし破れば、罰ゲームだからな。」

 

「罰ゲームとは?」

 

「破る度に貴様が大事に保管している石を砕く。4つごと」

 

「鬼かっ!!」

 

「王様だ」

 

どうやら、これは負けられない勝負になりそうだ。石を砕かれるワケにはいかない。

あれは俺のライフラインという名の生きがい、全力でイカせてもらおう。

 

「ゲームということは罰ゲームと別に勝敗がつく感じ?条件は?」

 

「そうだな…どちらかが恥ずかしさのあまり降参をしたら負けということにしよう。

私が降参することはありえんがな、フフン」

 

と本日3度目のドヤ顔披露、オルタ嬢。

この勝負に絶対的な自信があるようです。

 

とりあえず、1本目を口にくわえ、初戦開始といきましょうか。

 

「ではっ」

 

「あぁ、来るがいい」

 

んっ、と口をこちらに差し出すオルタちゃん。

互いにポッキーをくわえ、両端からポリポリとどんどん進み二人の距離が近づいていく。

 

うわぁ、もう顔が至近距離まで近づいてきたからわかるけど、オルタちゃん肌きれいだし、白いし、睫毛ながっ!

こうも黄金の瞳でじっと見つめられると少し照れますわ。

最後まで届けるなら、どう考えても口触れ合うよねこれ

キスぐらいでいまさら躊躇するような仲でもないので

口を合わせ、ポッキーを届けようとした瞬間……。

 

ガシッ!!

 

ちょっ!?

 

「んっ……んんっ、ちゅ、ちゅ……んむぅ、むちゅるう……ちゅる、れろっ、んちゅ……」

 

逃げられないように後頭部をつかまれ、口の中に舌を挿しこまれる。

そして自らの舌を吸われ、歯茎の表も裏も丹念に舐められ、困惑している内に蹂躙されていく。

 

「…ぷはぁっ、はぁ、はぁ、ごちそうさまだな。」

 

ポッキーの残骸をカリっと食べ、飲みこむと、口を離し、こちらをニヤッと見つめるオルタ。

今の俺の顔はあちらと同じで真っ赤なのだろう。

 

「ふふっ、ただのポッキーゲームと思ったか?

考えが甘いぞマスター。相手を降参させるにはどんな手でも使わなければな。

それで続行か?」

 

当然と頷く。

「そうこなくてはな」と嬉しそうに笑うオルタ。

確かに俺の考えが甘かった、全力で行くと言っておきながら、ただのポッキーゲームと高を括っていたようだ。

慢心は捨てた、2本目と突入させてもらおう。

 

 

 

 

 

 

 

初戦と同じく、再び二人の距離が近づいていく。

そして今度はこちらから仕掛けさせてもらう。

 

あちらが動き出すより先に左手でオルタの体を抱きしめ、右手で頭を押さえる。

そのまま今度はこちらから舌を入れていった。

 

「…んんぅっ!?んむぅ、んちゅる、ちゅる…れろっ、んあっ、はむっ、ちゅっ、んはぁ、ちゅっ‥‥‥」

 

最初は少し驚いた様子だったが、すぐにこちらの動きに合わせて互いに舌を絡めていった。

二人の口の中をいききしていったポッキーの残骸は小さくなり、もはやそれをおまけと言わんばかりに二人で舌の表面を、裏側を、歯茎の表を、裏を、唇を、頬の裏を、口の上の硬口蓋の部分まで……口の中のあらゆる所を舐め合い、唾液をなすりつけ合っていった……。

舌で敏感な所をつつく度にオルタの華奢な体が小さく震えているのが手に取るようにわかる。

 

やがて、息が苦しくなったのか、自然に口を離していった二人の間には糸がつながり、切れていった。

二人とも呼吸は荒い、オルタは口元の涎を指で拭い、舐め取り、不適に笑った。

 

「はぁ、はぁ…ふふふ、随分と情熱的だったなマスター?

お前も本気というワケか。だがこれぐらいでは私は降参はできんな」

 

「俺も降参するつもりはないよ、オルタ」

 

「よろしい、ならば3本目だ。来るがいい」

 

しかし、お互いに引きそうにないなこれは……。

`罰ゲームが嫌ならキリのいいところで降参すればよくね?降参のペナルティは無いんだから`と言われそうな気もするが……。

 

ただまぁ、この王様はこう見えて結構照れ屋であり、あんまり直接的にイチャつこうとはしないんだよね。

何かとこう回りくどい手法を取ることがある。

このポッキーゲームだってそう、普通に「キスしてくれ」でも良さそうなんだけど、案外そこは乙女なのか、恥ずかしいのかもしれない。

ポッキーゲームのが恥ずかしいだろという異論は聞かない。

 

だから、そんな希望を「降参」の一言で終わらせるのは忍びなさすぎる。

寂しい思いをさせたのは俺だし、だったら最後まで付き合うべきでしょ。

碌に戦いもせず、降参して逃げるマスターをこの王様が認めてくれるとは思えないし。

 

いつの間にか3本目も短くなり、二人の顔が重なる。

 

―――それに。

 

 

 

―――負けるつもりもないし。

 

 

 

唇を重ねた瞬間にオルタの胸に手を伸ばし、その柔らかな乳房を左右どちらも丁寧に揉みこんでいく。

当然キスはしながら。

 

「んんぅっ!?まてっ!ちゅむ、そ、それはずるっ、んちゅ……、やぁ、あぁ、ちゅ…」

 

抗議はスルーでパニくっているオルタの胸をさすり、円を描くように撫でまわしていく。

舌で口内を舐め回すのも忘れずに、丁寧にマッサージするように揉んでいく。

その度にキスをしている口から「あぁ」、「やぁ」など漏れているが気にせず続行。

まぁ体触れちゃダメって言ってないですし?

胸を揉んだら反則なんて言ってないですし?

キスしているときに偶々目の前においしそうな果実があったら、つい手を伸ばしたくなるのが人情というもんですよ(ゲス顔)。

 

そして、胸の中心に突起しているモノがあるのが服の上からでも見てわかる。

っていうかオルタちゃんノーブラだし、服もうっすいなコレっ!

期待していたなこのエロ騎士王め。

 

そして、硬くなったそれを指先でこまかく弾き、こねくり回したらオルタの体が面白いように震えだす。

 

「あっ、あっ!ちゅんむぅぅ……やあぁ、そ、そこ、んぅ…ちゅっ、いじるなぁぁっ、んぅぅ、んっ!んっ!んううぅぅっ!」

 

夜は長いし、オルタも何だかんだで楽しそうだし、続行とイキましょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……はぁ、はぁーはぁ――……今、何本目だ……?マスター」

 

「……はぁ、はぁ、さぁ数えてないや」

 

いつの間にかオルタをベッドの上に押し倒し、お互いの太ももが相手の大事な所を擦りあっていた。

オルタの太ももには硬くなっている俺のモノの感触が、俺の太ももからはこする度に水気の混じった音と小さな嬌声が。

 

「ポッキー、無くなったな……」

 

「そうだね……」

 

横を見ると空になった赤い箱があった。

いつの間にか全部食べ尽くてしまったらしい。

 

「どうする?オルタ?今日は引き分けということにする?」

 

「たわけ、勝負に引き分けなどない。それにまだあるだろう?ポッキーというにはいささか凶悪なサイズのそれが」

 

と嬉しそうに太ももを動かすオルタ。

 

「しっかりと最後まで、余すところなく私に味わわせてくれよ、マスター」

 

どうやら第2ラウンドの開催みたいだ。

 

 

 

 

 

 

 

 




所長「冬木のこと思い返すなら、少しぐらい私の事に触れてくれてもいいんじゃないんかしら?」

ぐだ男「いや、所長が今後どういう登場の仕方するかわからないので下手に触れられないんすよ。早くデミ鯖化してくれないですか?」

所長「どうせデミ鯖化した所で、聖杯の影響とか何とかで黒化してるわよ、絶対」

ぐだ男「オルタ化した所長ですか・・・
オルタマリー・アニムスフィア的な?」

所長「全然うまくないわよ」

小便王「満を持して、ラスボウの風格をまとい登場したにも関わらず、多くの者に小便王やお前の父ちゃんダビデ~と揶揄される私に何か一言」

ぐだ男「うわっ小便だっ!きたねっ!えんがちょっ!」
所長「えんがちょっ!」

小便王「」













気づけば前回のモーさんの話の2倍近くの文字数に
さすが父上は格が違った。
主人公の黒セイバーに対する呼び方は割りとブレブレ、
本人もその場のノリで生きているバーサーカーみたいな奴ですからね。
キャットと気が合いそう(小並感)。
次回は誰書くかは決まってますよ、ハハハ
ちょっとこのエロ、アウトかなと思いながらビクビクして書いてます。


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そだてる!AS子育てナビ(アタランテ)

さすがに今回の話を全年齢で掲載する勇気はなかった。
ギリセーフだのなんだの言って軽々しく、前言撤回してすまない……。
だらしのない作者ですまない……。

というわけで今話からR18に移行させて頂きました。
何卒、よろしく。












タイトルのASはアタランテ・すべすべの略である。
決してアタランテとS〇Xの略ではない、イイネ?


―――――――――昼時、カルデア内おやつタイムの時間。

 

「なぁ、この状況はどういう事なんだ?マスター」

 

目の前の女狩人は俺に問いかける。

 

「なんなんだろうね?」

 

肩をすくめて、俺は返答する。

 

「吾々はさっきまで何をしていた?」

 

「俺が作ったアップルパイを二人で食べていた」

 

本当に君はおいしそうに食べてくれてね、作ったこっちもつい嬉しくなっちゃったよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ、そうだな。なら、何故私の体が小さくなっているんだ?」

 

「薬を盛った」

 

訴状の矢文(ポイボス・カタストロフェ)ィ―――――――!!」

 

ギャ―――――\(^o^)/

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『緊急回避』が無ければ即死だったぜ、まったく危ないなぁアタランテちゃんは。

とりあえず落ち着いて、ほら深呼吸。ヒッヒッフー、ヒッヒッフー。

 

「……ふぅ―――、ふぅ―――、私はまだ妊娠はしておらん。

そもそもっ!薬とはなんだっ!事情を説明されなければ、いくら汝とて納得はせぬぞっ!」

 

ふむ、納得さえすれば何をされてもいいような言い草、とりあえず説明しますか。

 

「いやさね、暇だったんでダヴィンチちゃんになんか小っちゃくなる薬ない?って聞いたら、すぐに『ヨウジョニナール』って頭悪そうな薬を作ってくれたんだ。ダヴィンチちゃんは本当に便利だなぁと僕は思いました。おわり」

 

「だからっ!何故それを私に盛ったのだっ!と聞いているっ!」

 

フシャ――と髪と尻尾を逆立てながら、威嚇するアタランテちゃん。

けど、悲しいかな幼女状態なのでかわいいだけなんですわ、つーか完全に猫だこれ。

 

「ほら、アタランテの夢ってさ、全ての子供が愛される世界だろ?」

 

「それがどうかしたのか?」

 

「けど、アタランテ自身は真っ当な親の愛というのを受けたことはないでしょ、それならまずはアタランテが親からの無償の愛というものを受けなきゃ、ねっ」

 

自らの夢を実現するにはまずはその夢の一端を自分が感じないと。

ともっともっぽい事を考えながらアタランテちゃんを洗脳ゲフンゲフンもとい説得していく。

 

「う、うむ、確かに汝の言うことは一理あると言えばあるが、それが今の状況と何の関係が……」

 

よぉし、もう一押しだな。チョロ甘だぜ、アタランテちゃん。

 

「大いにあるさっ!何事も形から入らなければなるまいてっ!

アタランテちゃんも成人した体のまま甘やかされるのはおかしいと思うだろ?

それなら俺が薬を盛って幼女にさせるのも苦肉の策だったんよ!だってアタランテちゃん正直に言っても『汝の気持ちは嬉しいが、私には必要ないものだ』とか言いそうじゃん!」

 

「ぐ、ぐぅ……」

 

「その薬の効果は残念ながら1日しか持たないので今日は一日、俺が親になります。そんでめちゃくちゃ甘やかします。呼び方はパパ上!もしくはとおさまでも可っ!

ちなみにアタランテちゃんはアタちゃんとしますっ!」

 

なんか赤ちゃんとアタちゃんって語感が似ている。

 

「まっ、待ってくれっ!まさか今日一日マスターが」

 

「マスターではないっ!パパ上と呼びなさいっ!

……わかってくれ、アタちゃん。これもアタランテの夢を実現する為には必要不可欠な事なんだ。

アタランテ自身が子供が愛される世界はこんなにも素晴らしいという事を自ら経験することはっ!」

 

「……っ!そっ、そうか、これも私の夢の為には必要な事なのか、ならば仕方あるまい、私とて英霊だ。もう腹はくくった!好きにするがいい!ぱ、ぱぱうえっ!」

 

「よく言った!ならば共に来るがいい!そーれー、高い高い――!」

 

そういうことで、まぁ今言ったこと半分、面白そうだからという我が欲望が半分の理由の元に構成された俺の計画はここから始まった。

 

「は、ははは―――!、わ、わぁ――い!わぁ―――い!」

 

しかしアタちゃん、ちょっとチョロすぎませんか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪その1:いっしょに遊ぼう≫

 

というわけで、手軽なお外を求めアタちゃん抱えて移動中。

出来るだけ天気がよくて、広い所がいいですね。え?カルデアにそんな所があるのか?って……あるんですよ、そうレイシフトならね。

 

「と、とおさま、わざわざ抱えながら移動する必要はあるのか?」

 

俺の腕にだっこされているアタちゃんが問いかけてくる

やっぱりパパ上は恥ずかしかったみたいなのでとおさまになったらしい。

 

「どうした?あっ、もしかして、ベビーカーの方が良かった?」

 

 

「いや、そうではなくて……こんな風にされるのは少々目立つのではと思ってな…

現にさっきだって……」

 

 

 

赤いワンコ系不良セイバー『ままますた――!?なんだそれっ!こどもっ!?う、嘘だろっ!オレだってまだつくってもらってねえのにっ!!』

 

黒いゴスロリ系王様セイバー『マスター?そのこどもはなんだ?いや、言わなくてもいい、その見た目から全てを理解した。

ふぅ、純潔の狩人を語っておきながら、やる事はしっかりやっていたとはな……あぁ狩人という意味でなら合っているか、さて、この落とし前どうつけてくれようかあの獣娘めぇ……』

 

 

 

 

「大丈夫、大丈夫

あの二人ならそこまで無茶しないよ。後でキチンとフォローするし」

 

「魔力放出した聖剣片手に、血走った眼で私を探しにいったように見えたんだが……まぁ、とおさまがそう言うなら信じよう。しかし、普通に並んで歩けば余計な誤解をされることもなかったのではないのか?」

 

チッチッチッ、考えが甘いなアタちゃん。

 

「言ったろ、今日は甘やかすって。やっぱり親と子供はこう触れ合わないと、この温かさと子供を抱えた腕にかかる少しの重みが愛情を表しているんだよ。

アタちゃんだって、何か安心するでしょ?」

 

「むぅ、そう……だな」

 

と照れくさそうに俺の胸元をギュっと掴むアタちゃん。

しかも3歳児サイズなのですっぽり収まるフィット感。

何だこのかわいい生物、殺す気か、イイゾイイゾもっとやってくれ。

 

「ロマンにはもうレイシフト頼んであるから、敵がいない平和な草原にでも行こうか」

 

おそらく、ダヴィンチちゃんから事情は聞いてたんだろう。

二つ返事でやってくれたDrは間違いなくカルデア内で最も雑用が似合う男に違いない。

褒めてますよ?

 

 

 

 

 

 

 

そんなわけで目的地に到着、天気が良いっすね。

 

「で、何をするのだ?狩りか?」

 

「いや、もう2015年だからね。さすがに子供と一緒に狩りをする時代ではないよ。はい、これ持って」

 

「これはグローブと野球ボールか?」

 

「そう、キャッチボール。子供と親の絆を高まる神器の一つアルよ。

ゲームでも良かったけどアタちゃん外で遊ぶ方が好きでしょ?」

 

「そうだな……しかし、こういった趣向の物は初めてだからいささか戸惑うな……」

 

「はいはい、難しい事は考えない。

今のアタちゃんは子供なんだから感情の赴くままに楽しめばいいの

それじゃあ目いっぱい遊ぶぞ――!来いアタちゃん!」

 

「わ、わかったぞ!とおさまっ!」

 

ノリがいいねアタちゃんは、大好きだぜホント。

っとと、さすがアーチャークラスいいコントロールしてますわ、制球◎ってところですかね、いいピッチャーになるぞう、これは。

カルデア内で野球チームでも作れそうだなー。

 

「おろっ?」

 

としょうもない事、考えていたらボールがすっぽ抜けてしまった。

しかし、さすがは大自然で育った狩人様。何なくキャッチ。

てか今すんごいジャンプしたな、何だこの幼女(驚愕)。

 

「ふふっ、どうした、とおさま?ノーコンという奴か?」

 

と得意気に耳をピコピコさせながらこっちを見るアタちゃん。

ふと俺はある事を思いついてアタちゃんを呼ぶ。

 

「アタちゃん、アタちゃん。ボールは投げないままこっちに来て」

 

「?」

 

と傍まで駆け寄ってくるアタちゃん。

 

「う――ん!さすが俺の子供だっ!ナイスキャッチだぞっ!よ~~しよしよしよしっ!」

 

すかさず抱きしめ、頭を撫で、頬をスリスリする。

 

「ん、んにゃっ!わわっ!?あははっ!くすぐったいぞとおさまっ!?き、急にどうしたのだっ?」

 

「よくできた子供は褒めるのが常識。

何気ないことでも褒めて伸ばす。

よく褒め、うまく叱るのが子育ての基本であるのさ(キリッ」

 

「うむ、そうなのか。

とおさまの子育て論は勉強になるな……」

 

うん、成人していない俺が何をしたり顔で子育て論を語っているのかというツッコミがありそうだが……アタちゃんも嬉しそうだし許して、尻尾がすんごいブンブンしてるんですもの。

まぁこうやって子供とたわむれるのも良い予行演習になるだろうな。

え、なんの予行演習だって?いつか出来る自分の子供に決まってんだろうが言わせんな恥ずかしい。

 

結局、その後「そうら、とってこ―――い!」とボールを投げ、キャッチしてこちらに持ってくるアタちゃんを褒め撫でまわし……また同じことを繰り返してしばらく遊んだ。

 

 

 

途中から、これ親子というより飼い主とペットの関係じゃね?と思ったが、アタちゃん楽しそうだったし気づいてないことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪その2:ミルクをあげよう≫

 

キャッチボールが終わり、マスターの部屋に戻ると今度はご飯の時間になったようだが、私は嫌な確信を持ち問いかけた。

 

「な、なぁ、とおさまが手に持っているのは何だ?」

 

「哺乳瓶でちゅよ」

 

…………あぁ、そうか。涎かけを掛けられたときから何か嫌な予感はしたんだが……私も馬鹿ではない。マスターに抱えられている現状、これから起こる事柄は容易に想像できた。

 

「というわけで哺乳の時間です。いっぱい飲んで大きくなるんでちゅよ~」

 

「ま…まてっ!この体とはいえ授乳はさすがに恥ずか、むむっ!んぐっ!」

 

「細かい事は気にしな~い、気にしな~い。

今のアタちゃんは子供だから、されるがまま何も考えずリラックスしていいんだよ。

おっと、口元からミルクがこぼれてまちゅね~~、はい、フキフキしますよ~~」

 

マスターにされるがまま首元の涎かけで口の周りのミルクを拭かれる。

もうこうなった以上、抵抗は無意味だろうな……一度すると決めたら、絶対に成し遂げるマンだからな、こやつは。

 

「んっ、んっ、むぐっ、んちゅ、ちゅぱ、ちゅぱ……」

 

諦めて、咥えた哺乳瓶からミルクを吸い上げる。

……しかし、体を横抱きにされ、涎かけで拭かれ、哺乳瓶からミルクを飲んでいると

本当に自分が子供になってしまったような気分になるな。

 

マスターは本当に微笑ましそうな顔でこちらを見ている。

わざわざ、ミルクを人肌の温度にして、私の体勢に気をつかっている当たり、本気で親として甘やかすつもりなんだろうな、マメな男だまったく……。

 

 

 

 

―――あぁ、少し安心するな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪その3:お風呂に入ろう≫

 

ただいま浴室の鏡の前にはアタちゃんのつるペタボディ。

そしてその後ろには腰にタオルを巻いた俺の姿が。

鏡にはシャンプーハットを頭につけた、赤い顔のすっぽんぽんのアタちゃんの姿が映っている……。

ふむ、当然毛は生えていないか。

 

「どうした――アタちゃん?さっきから大人しいね?」

 

「いや……もうここまで来たからには為すがままに行こうと思ったが、それでも照れるものは、照れるのでな……」

 

「恥ずかしがる必要はナッシングだよ。

ここにいるのはただの父娘。親子が一緒にお風呂に入るのはよくある風景だよ。なんなら、俺のコレつついて、『わーい、とおさまの象さん、おっき~~い!』ぐらいやってくれてもいいのだよ?」

 

「す、するかっ!」

 

そう?子供は好奇心旺盛で無垢だっていうし、それぐらい問題なさそうだけど……。

 

「それじゃまずは髪を洗いましょうか、ハットがあるから大丈夫だと思うけど、目に入っちゃうと危ないし、目は瞑ってね。アタちゃん」

 

「うむ」

 

水ですすぎ、シャンプーをつけていく。

しっかし髪サラッサラだねアタちゃんは……。

 

「痒いところはない~~?」

 

「…んっ!んっ……、あっあぁ、大丈夫だ…気持ちいいぞ……んっ…とおさま」

 

なんだか時折ビクビクッとするアタちゃん。

まぁ、原因はこの耳だろうなぁ、頭を洗う以上どうしても触れてしまうだろうし。

しかし当然、見逃しませんよ私は。しっかりと耳の隅々まできれいにさせていたただく。

とりあえず、全ての指先を使って優しく揉みこませていこう。

 

「ふぇっ!ま、まってく、んふぅ!と、とおさ、んにゃあ!そこは、あらわなくて、あっあっ、ああぁっ!」

 

よおし、シャンプーが終わったので完璧に泡を洗い流し

お次は体を洗いましょうか、(なんかアタちゃん蕩けた顔してるけどキニシナーイキニシナーイ)。

さてさて、ボディタオルを使ってもいいんだけど……幼児の柔肌は結構敏感なので、泡をつけた素手が洗うのが案外良かったりする筈、多分、メイビー。

 

それじゃあ、細っこい首回りからー、肩へ――、腕にいき――、手の指の間から先まで丹念に泡をぬりこんでいきます。

 

「んっ、んっ、んぅ……ま、まて、いま、敏感になっ、くすぐった、んくぅっ!あっあっ……」

 

お次は脇を上下に滑らせ――、起伏がないお腹のまわり――そして胸の所もモミモミと泡を……おや、ちょっと硬くなっている部分がありますね…………差別はしません。体のあらゆる所はきれいにしますよ―――。

とりあえず、コリコリしっかりと泡をしみ込ませます。

 

「……あっあぁ、やぁ、むねは、あくうぅっ、んひぃっ!にゃぁああ!、んあぁ、コリコリやあぁぁ…」

 

今度は足の指先から――足回り――お尻の表面を揉みこんだら、割れ目にもしっかり手を挿し込み、上下に優しくスライドしていきます。

当然、生えている尻尾を見逃す理由もなく泡のついた手でしっかりと何度もシゴいていきます。

尻尾を握ったときの反応は耳の比ではなかった。尻尾は弱点これ全人類の常識ね。

 

「はぁ、はぁ……、ふわあぁっ!そ、そんなところまで、あぁっ、んっ、あひいぃいいっ!しっ、しっぽはらめっ……あ、あ、あぁんっ!やあっ!…………」

 

最後は股のところもシュッシュッとなんかどう考えても別の水気が混じった音がしますが、 おそらく気のせいでしょう。

 

「……ひぃ、ひあぁ、そこ、いまぁ、ぐしゅぐしゅってえぇぇ、あん、あんぅ、ああああぁぁっ!!……」

 

ウルトラ上手にキレイになりましたっ―――!

 

 

 

 

 

焦点が合っていない瞳のまま、半開きの口から涎を垂らした放心状態のアタちゃんを抱え、お風呂につかります。

やがて意識が復活したアタちゃんはお風呂用おもちゃ(犬かきフォウくん:ネジを回せばいつまでもいつまでも泳ぎ続ける無限の水泳獣、338円)

で遊びながら俺に問いかけた。

 

「……さすがに親子でもあそこまではしないのでは?」

 

「そう?親が小さい子の体を洗ってあげるのはよくあることだと思うけど、というかアタちゃんが敏感過ぎるだけな気が……」

 

「違うっ!とおさまがうますぎるだけだっ!」

 

「さいですか……けど、もう少し大きくなったらいずれ一緒に入らなくなるさ」

 

「反抗期という奴か、とおさまのと一緒に洗濯しないでくれっ!とか言うのか?ふふっ」

 

「結構、心にクるね、それ。昔はあんなに素直だったのに……とか思い出に浸るんだろうなぁ」

 

「アタ、大きくなったら、とおさまと結婚するっ―――!」

 

「はははっ、可愛いこと言うなぁアタは。とうさまは嬉しいぞ」

 

と二人でお馬鹿なノリで親娘の語らいをしばらく続けた…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪その4:一緒に寝よう≫

 

「今日はどうだった?アタちゃん」

 

「あぁ、どっと疲れた。今ならすぐに眠れそうだ」

 

「ならばよしっ」

 

「良いのか?」

 

ベッドに二人で寝転がり、私に添い寝しながらマスターは嬉しそうにあぁと答える。

 

「子供はよく遊び、よく学び、よく食べ、疲れ果てて眠る。そしてその傍らには親が見守ってあげるから、子供も安心して色んな事に挑戦できる。

それにアタちゃん……楽しかったでしょ?」

 

――――あぁ、そうだな、確かに楽しかった。

 

自分が英霊である事を忘れ、本当にただの子供になった気分であった。

滅多に出来ない貴重な経験であった、こういう温かい世界が当たり前にあって欲しいその願いを再確認もできた

マスターには感謝の言葉しかない。

 

「今日はもう、おやすみ……アタちゃんが寝たら、とおさまもここで眠るからさ」

 

と言いながら、私の頭をゆっくりと撫でながら子守歌を口ずさむ。

特別に上手いわけでもないのに、何故か安心して全てを身に任せて良いような気分になってしまう。

温かく、暖かく、ホカホカするのだ……瞼が重くなり、睡魔が襲ってくる……。

 

 

 

明日になれば、アタちゃんは消え、私は英霊アタランテになる。

 

 

 

けど……今は……今だけは。

 

 

良い夢を見てもいいのかもしれないな…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




イイハナシダナー

しかし、話数を重ねるごとに増える文字数。
基本1話完結で4000字以内に抑えるつもりがどうしてこうなった。
筆がノッてしまうのだから仕方ないネッ!

はい、というわけで、うちのカルデアにロリいねーな。
あっそうだ、今いる誰かをロリにすればええやんけ!
というトチ狂った悪魔的発想で生まれた今回の話。

これでも大分ソフトにした方なんですよ……。
「子供が愛される世界?ならっ!お前がっ!子供をっ!産むんだよっ!!」
的な展開にしようかなーと思いましたが自重。

ちなみにアタランテは主人公とは本番を致してません。
その代わり、エッチいイタズラは死ぬほどされています。
だってあんな絆MAXのボイスを聞いたらするしかないでしょう、もぅ…。



猪版バーサーカーアタランテ実装はよ




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荊軻無双(荊軻)

いつの間にか日間ランキング1位と週間ランキング2位に(驚愕、恐怖
やっぱエロの力は偉大だわ。


高レアばっかりだったので、こっちの方にもスポットライト当てないとネ!







今回は実にわかりやすいタイトル。


基本的にカルデアで召喚されたサーヴァントには一人一室、部屋が与えられる。

無茶しない程度には模様替えも許され、そこには各々の個性が表れる。

 

まぁ、この酒瓶とおつまみが散乱している部屋も個性といえば、個性なのかもしれないが……。

 

「どうーしたー?酒が進んでいないぞ――?うーん?あれー、君いつのまに3人に増えたんだー?ほはははははははっ―――!よりどりみどりだな――!ふふふふふふふ、私はどれを相手すればいいんだ―――?困るな―――。別に全部相手にしても構わんのだろう?という奴かこれは――ははははははははは…………」

 

完全に出来上がっているよいどれけーかちゃん。

いつもの落ち着いた年上お姉さん系の威厳はどこへ行ったのやら……。

つーか、笑い過ぎ、飲み過ぎ。

 

「荊軻さん、俺はあいにく一人しかいませんよ。

というよりさっきからペース早すぎですし……もう、着物も崩れているし、ほらほら、ちゃんと着る」

 

さっきから荊軻さんの着物が肌蹴かけてしまって胸の所がチラチラと見えてしまい、太ももの方も限界ギリギリまでさらけ出すという放送コードに引っかかりそうな状態。

なんとか元に戻してあげようとしても……。

 

「きゃ――――!きゃ――――!あるじに襲われる――――!ははははははははははーー!」

 

「暴れるな、ホントに襲うぞ貴様」

 

楽しそうにはしゃぐけーかさんのせいでまともに着させてあげる事ができません。

はいっ、諦めましたっ!俺は知らんっ!もう好きに着崩せばいいんじゃないでしょうか?

全裸になろうが気にしないことにしましたよ。

ていうかこの子なんで下着つけてないの?いや着物ならつけなくて正解なのか……?

 

「……ふぅ、そんな馬鹿みたいに飲んでると、前みたく体壊しちゃいますよ、けーかさん」

 

「ふ――ん、いいんだいいんだ、私が体を壊したって……どうせ、自分の事セイバーだと思い込んでるアルトリア顔や女殺しの吸血おばさんには勝てないし……着物に革ジャンなんて邪道のあいつはなんなんだよっ!直死の魔眼?『生きているなら、神様だって殺してみせる』?私なんて始皇帝すら殺せなかったっていうのにっ!ずるいっ!ずっこい!

ハサン先生は手が伸びるし、アサ子は増えるし、

君は性悪女神と何故か仲良いしっ!

マタハリは君をすんごい甘やかして、可愛がってるしー――!なんだっ!?そんなにおっぱいが好きか!?巨乳が好きか!?

私の良さは一体何なんだっ―――!うっ、うぐっ…うわ―――ん!」

 

おいおいと泣き始めたけーかさん。

笑い上戸の次は泣き上戸みたいっすわ……元気な方だよ

ハサン勢あたりのそれは褒めてるのか微妙だが。

ともあれ自分に魅力が無いような言い方は見過ごせないな。

 

「俺は荊軻さん好きだよ。

現状に満足せず、陰で修行するストイックな所も、飄々としながら実は周りを見ていてフォローしてくれる所も、酔っぱらって普段は見せないような弱みを俺にだけ見せてくれる所も、その艶やかな黒髪も全部が愛おしいよ」

 

「む……むうぅぅ……うそだぁ…………」

 

「嘘じゃないって」

 

「……じゃあ、酒、飲ませてくれ……」

 

「ん?さっきから注いでるじゃない」

 

「ちがう、口移しで飲ませてくれ、じゃないと信じないもんっ」

 

「もんって子供かあんたは……」

 

ともあれネガティブ状態に入っている現状。

下手に断っても悪化する未来しか見えないので言う事聞くとしますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

とりあえず、焼酎と思わしき瓶から酒を口に含む。

やる気になった俺を見て、「おおっ」と嬉しそうに反応するハートブレイクけーかちゃん。

口付けを交わし、酒を少しずつ送り込む。

口の中にある液体は冷たいが、互いに触れている唇は熱く、酔いのせいか、または別の理由か、頬を染めた荊軻さんの顔が視界に広がる。

 

「……んっ、んちゅ、ちゅるっ、じゅるっ…んふぅ…こくっ、ごくっ……」

 

嬉しそうに喉を鳴らし、舌を絡めながら、一滴足らず俺から与えられる液体を飲みこんでいこうとする荊軻さん。

 

「……んぅ、ごくっ、ぷはぁ……まてっ、まだ、はなれるな……」

 

酒も移し終わり、触れ合っていた唇を離すと逃がさんとばかりに頬を両手で挟まれた。

おててがあったかくて、気持ちいいです。

 

「………よくよく考えれば、私達は英霊だしな、完成されてしまっている存在だから、いくら修行をしても限界はある。君はたしかにマスターだが、主な魔力供給はカルデアから送られている筈だ……ふむ、ふむっ!よいことを思いついたぞ―――」

 

ニヤリと笑い、私に良い考えがあるとばかりに何やら要領を得ない話をするけーかさん。

まぁ、何をするつもりかは把握してしまった俺も大分毒されてきてるんだろうな――色んな意味で。

 

「ふふふ―――、君から別の方法で魔力供給してもらえばステータスの一つや二つ上がってもおかしくないだろう……。宝具だって即打ちバンバン出来ちゃうかもしれないな――!

無限の匕首みたいなっ!はははははっ―――!」

 

あぁ、クリスマスのときのへべれけパワーみたいな感じのあったね。

あれは少し驚いた。

うん、けどその方法でステータス上がるなら、ウチの女性サーヴァント皆、軒並み強くなっていてもおかしくなさそうですが。

 

「じゃあ、まずは君の唾液を所望するぞ―――。

ん?なんだその顔は?もしかしていきなり本番をすると思ったか?ふふふ――、えっちぃんだから……私は慎みのあるお姉さんなんでいきなりそんなはしたない事はしないぞ――」

 

慎みのあるお姉さんは年下の男の唾液なんて所望しないと思います。

カモーンとばかりに手を広げるけーかさん。

本日のこの酔っ払いは無敵みたいですね。

 

当然、逃げるつもりもさらさら無いので唾を溜め、再び唇を合わせる。

 

今度は互いに口はそこまで開けず、その小さな通り道から唾液を送り込む。

ふと、ギリギリまでさらけ出している荊軻さんの太ももが目に入る。

彼女の手はさっきから俺の頬から動いてはいない。

なら触り放題という奴ですね、わかります。では少し失礼。

 

白く絹のようなソレをゆったりと撫でまわし、付け根ギリギリの所まで焦らすかのように擦っていく……決して大事な所は触らないように。

時折、着物の下に入れ込んだ手をお尻の方まで持っていき、ふにっ、むにっと丁寧に揉みこんでいく。

 

「んんっ、ん、ちゅ、ちゅる、こくっ、んちゅっ……んふぅっ!こら、むちゅっ、いたずらはぁ、んふうっ、じゅるっ、だめだぁ、あんっ……んくっ、れろぉっ、ごくっ……んはぁ………」

 

抵抗するように言っておきながら、表情は喜色を帯び、小さく腰をふっている。

そして、決して俺の口から唾液を吸い出すのは止めない……どうみても痴女です、ありがとうございます。

 

 

 

口を離し、二人の間には涎のアーチが出来、やがて切れた。

そんなことは気にしないとばかりの荊軻さんは嬉しそうに笑う。

 

「はぁ、はぁ……ふふっ、もう本当に君は手癖が悪い……。さて……私がもらってばかりなのも悪いからな、そら、口をアーンとするがいい」

 

酔いが少し醒めたのか、呂律が回り始めた荊軻さんに言われるがまま口を開け、顔を上げると……上から彼女がタラ――っと涎を垂らしてくる。

それが俺の口の中に入るのを確認するやいなや、キスを交わしてくる。

しかし今度はそれだけではなく、俺のズボンの中にあるギチギチになったそれを服の上から両手で優しく包み込むように擦り始めた。

 

「んむぅ、んちゅ、ふふっ、パンパンだなぁ……ちゅ、れろぉっ、はむぅ、じゅるぅ……」

 

キスの嵐も当然、止む事は無く、舌を使い、自身の唾液をマーキングするかのように口内に塗り込み、そして飲みこませてくる。

 

俺も負けじと入ってくる舌を吸い、自身の舌も唾液も彼女の口に送り込んでいく。

 

手持ち無沙汰になった両手はさっきは触らなかった彼女の性器へと這わせていく。

だがその割れ目には決して指を入れず、そこから溢れている液体を指の腹に擦り付けるようにぐっしゅぐっしゅと前後へ動かしていった。

 

「くんぅ、ちゅぱぁ、はうぅっ!あぁっ……そんなにこすりつけ、やぁあっ……んっ、んっ、だえきぃ、もっと…‥ちゅる、んちゅ、くふぅ……んんっ、ぷはぁ、あぁ、いぃ……んぐっ、ちゅ、ちゅ……ごくっ、んふぅ……」

 

膝立ちだった筈の二人はいつの間にか床に横たわり、互いに自身の大事な所をなすりつけるように距離を縮める。

呼吸を取ることさえ忘れそうになっているキスは…………いや、もはやキスといって言いのかわからないほど、相手の口を貪りあっていた。

唾液を与え、飲み、舌を入れ、舌を吸われ、歯茎を舐められ、舌先で口内を突き、唇を甘く噛み合っていた。

もう、どちらが攻めて、どちらが攻められてるのか、わからなくなる程に。

ぐちゃぐちゃに溶け合って――――――……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やがて、二人は自然に離れ、呼吸を整える。

荊軻さんの着物はもはや服の役割を成しておらず、上半身は完全に肌蹴てしまってる。

かろうじで腰のあたりでまとっているが、立ち上がればズリ落ちるだろう……。

 

そして、決して巨乳とは言えないが形の整った色白の美乳が目に入る。

先端の桜色のそれがぷっくりと自己主張しているのは先程の彼女の興奮の大きさを表している。

じっと見つめていると胸を隠して、「いやん、えっち☆」とウインクしてきやがった。

とりあえず、眉間に軽くデコピンをかましておいた。いや何かイラっときたので。

やっぱ酔い醒めてねーじゃねーか、このへべれけめ。

 

「…イテテ……ふむ、予想外に白熱してしまったが先程までのは前菜だぞ?

そして、これがメインディッシュという奴だ。

やはり魔力はここから送ってもらわなければな……」

 

そう言い、妖艶な笑みを浮かべ俺に跨り、準備満タンとばかりに下半身を見せつけてくる。

邪魔だったのか着物は既に投げ捨ててあり、生まれたままの姿で俺の目の前にいるのは天下の義侠と呼ばれる英雄ではなく……一人の雌だった。

 

「……あぁ、さすがにここでお預けをくらったらどうしようかと思ったよ」

 

「え?他の娘の所へ食べに行くだけでは?」

 

「ちょっと、人聞きの悪い事言うのやめて」

 

「安心しろ、そんな事を私が許す筈がないだろう?

というよりもここで放置でもされた日にはクリスマスの時以上の醜態を晒す自信があるぞ(ドヤァ」

 

今日一日だけでも十分に醜態晒してる気もするんですが、つーか、ドヤ顔やめい。

 

「そういうわけで、今夜はたっぷりと味わっていってくれ。我が主殿ぉ……」

 

そう言って荊軻さんは器用な手付きでズボンの中で苦しんでいた俺のソレを取り出すと、ヒクついている自身の入り口にあてていく。

もはや彼女の頭には当初の目的である魔力供給すらも抜け落ちているのかもしれない。

恍惚とした顔でゆっくりと硬くなった亀頭から挿入していく。

 

「んあぁっ!はぁ……あぁっ、んんっ、あつくてぇ、ああぁ、んぅっ!わたしのが熔けてしまいそうだあぁ、ああっ……」

 

肉棒を包み込む、感触に一種の感動をしながらも一生懸命に奥まで入れようとしている彼女を尻目にされるが儘になるつもりも当然ない俺は上半身だけ起き上がらせ、その華奢な彼女を抱くように相対する。

要するに対面座位という形だ。

 

「これなら、あなたの表情が間近で見られるなっ!」

 

こちらからもと言わんばかりに腰を激しく上下に動かす

散々焦らしたおかげか、グチュグチュになったそれが潤滑液となり、挿し入れが容易になっている。

 

「ああぁぁっ!は、はげひっ、くてっ、へあぁ、おくにぃ、んううぅ!とどいてぇっ、あっ、あっ……はあぁんっ!」

 

抱き合い、激しく交わっていると、ちょうど荊軻さんの首が目に入った……。

そういえば、いつかどこかで話していたとき、喉を触られるのが好きだとか言っていたことを思い出した俺は妙に扇情的な鎖骨から首まで舌を這わせ、そして、その喉仏へと噛みつくかのように吸い付くと……彼女の方も激しく反応が変わっていった。

 

「あひいいぃぃっ!んあっ!あっ!あっ……のどぉ、すわぁ、はあぁっ!たべられてりゅ、んふぅっ……わたし、あるじにぃ、ひあっ!たべられちゃってりゅうううぅぅっ!いいぃっ!いいのぉっ!もっとぉ!……あぁん……」

 

普段からは全く想像できないような彼女の乱れ狂う姿にこちらの興奮もどんどん盛り上がっていき、熱いものがせり上がってきた……。

 

「……けいかっ、そろそろっ」

 

「あぁっ!はうっ、だしてくれぇっ……!

きみのぉっ、まりょくをぉっ、せいしをぉ、こだねをおぉっ!うあぁっ、あっあっ……ああぁっ!だしてえぇぇっ……!」

 

「……くっ!」

 

情欲の赴くままに彼女の膣内へと精液を解き放った。

逃がさんとばかりに足で俺の腰を固定した荊軻はビュッ、ビュッと解き放たれるたびに小さく痙攣している。

今日は随分と乱れてたなーと俺は感慨に耽ていた。

 

「はあぁぁぁっ……すんごい、あぁ、あつくてぇ……んっ、あっ、まだ、でてるなぁ、あうっ、ふふっ、しんでしまいそうだぁ…………あひぅっ、あぅっ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後も何回か、獣のように交わった俺達は布団の上で寝転がっていた。

今はわからんけど、この部屋絶対すんごい匂いするだろうなぁ、汗とか酒とかアレとかの匂いで。

すると、隣にいた荊軻さんが右手を上に挙げた。

 

「今夜は月が綺麗だな」

 

「ここからは月見えないよ、荊軻さん」

 

「……むぅ、ノリが悪いぞ。そこは『死んでもいいな』と答えてくれねば」

 

「生憎と、簡単に死ぬつもりはないんで」

 

「確かに、君が死んだら大変な事になるだろうな……」

 

「世界を救えないという意味で?」

 

「いや、それ以前にこのカルデア内が阿鼻叫喚の地獄絵図になるな、主に女性陣のせいで」

 

あぁ――――――……。

自惚れるつもりはないけど、確かに俺が消えたら色々と危なそうな子が…………あの子と、あの子と、あの人と後……。

うんっ!大体ほとんどじゃねえか!

やだっ……うちの職場、爆弾多すぎ……?

 

「安心しろ、君は死なない。その為に私達がいるのだからな」

 

 

……ふと、隣にいる彼女の手を握ってみた。

 

 

「なら、荊軻さんも遠くへ行ったら駄目だよ」

 

「ん?何の話だ?」

 

「いや、確証があるわけじゃないんだけどさ、荊軻さん、俺の為なら簡単に死を選んでしまいそうな気がしてね」

 

キョトンとこちらを見つめる荊軻さん。

 

「もし、あなたが死地に赴くというなら、泣いて引き止めるつもりもないし、笑って見送るつもりもないよ。俺もついていって、一緒にここに二人で帰ってくるさ」

 

俺を凝視したままだった彼女はぷっと吹き出すと小さく呟き。

 

「くくくっ……やれやれ、あまり、弱みは作りたくなかったんだな……」

 

 

こちらの手を握り返し、微笑むんでこう言った。

 

 

「君は私の主であり、友であり…………そして家族だ。これからも末永くよろしく頼むぞ」

 

 

 

―――あぁ、こちらこそ。

 

 

 

 

 

 




サンソン「マリィー……」
オペラ「クリスティーヌゥ……」
小次郎「アッケナイモノヨ……」
ジキル「飲むしかっ、ないのかっ……」
見事にはぶられたアサシンの会。
許せ、君達はまだ育ててないんじゃ……。








はい、というわけで、けーかさん大勝利~~~♪会でしたね。
まさか初の本番の話がこのキャラになるとは誰が想像したか、私も想像してませんでした。

しかし、エロはスパイス程度のイチャラブを書くつもりががっつり書いてしまったような。
ギャグで終わらしたいのに何故かいい話風で終わってしまう法則!不思議っ!

クリスマスイベのよいどれ姿にキュンッと来て、気に入ってしまったけーかさん。
やっぱりサバの新たな一面が見れる、イベントはこれからも増えるべき、話のネタも増えるし。

今話で大分酔っ払っているように見えますが、これでも大分押さえてる方だったり……前に一緒に飲んだときは悪酔いし過ぎて主人公に嘔吐物をぶちまけて死ぬほど後悔するという苦い思い出が。
けど、その後も何の問題なく飲みに付き合ってあげる主人公まじサバ充の鏡。

さすがに美人でもゲロプレイOKという猛者はいないよネ?





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ノッブの野望(織田信長)

ノッブ「日本鯖勢として礼装ワンチャン、スタんばってました」

おきた「まぁ、当然来ませんでしたね」

ノッブ「諦めんぞっ!わしはっ!
最終日に実は本当の黒幕じゃった第六天魔王モードのわしがレイドボスとして来るかもしれんしっ!待て、しかして」

おきた「夢も希望もないですよ」









1万文字以上ですってよ、奥さん。
ついつい楽しく書いてしまったから是非もないネ!
まぁ、週間ランク1位記念って事で。

今回もまたまたわかりやすいタイトル。


本日は珍しく、暇を持て余していたのでカルデアをぶ~らぶら。

素材が溜まりに溜まっている倉庫整理にでも行こうかしら、なんて考えていると……。

 

 

道中、スポーツカーのボンネットに寝そべり、セクシーポーズを何故かレースクイーン姿でキメているノッブの姿を発見。

てか、こんな車どうやってカルデアに入れてきた。

 

「広報活動なのじゃ!これがうまく行けば、レースクイーン版、ライダー信長(星5)実装っ!セルラン1位も間違い無しじゃっ!

そうなってしまえば、もうあの人斬り吐血娘にデカい顔されずに済むからのう!

つーか、ギャグは血を吐いて全部済ましてしまおうという奴の姿勢が気に食わんっ!

もっとこう、わしのように緻密に計算された、いんてりじぇんすなギャグでお茶の間に笑いを届けるべきだと思うネッ!」

 

いんてりじぇんす(笑)。

何だかよくわからない事をおっしゃる信長様、相変わらず恐れを知らない方だなーー、色んな意味で……。

するとニコニコ顔で近づいてきたノッブがそこそこずっしりとしたカメラを手渡してきた。なんか高そう。

 

「これ、どうしたのさ?」

 

「うむっ!竜殺しの聖人の部屋から拝借した!」

 

「ゲオル先生ぇ……それ窃盗よノッブ」

 

「人聞きの悪い事を言うでない。

確か、世界を救う任を帯びた者は他人の家のタンスを勝手に漁っても罪に問われんという人類共通の法律があるはずじゃぞ」

 

「どこの勇者の話をしてるんだ……あんたはどちらかと言えば倒される側の魔王様だろうに……」

 

そう答えると、「身も蓋もないネ!」と言い、車へ戻り、ポーズを決めるノッブ。

 

まぁ、俺に撮れって事なんだろうけど、面白そうだし、しばらくは付き合うか。

 

「はい、汝は魔王、罪ありき!」

 

「何でじゃ!?そこチーズでいいじゃろっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在進行形でカメラに撮られまくっているノッブの恰好は赤を基調としたヘソ出し、ギリギリハーフパンツ姿なので、普段では見られないような露出の高い姿である。

ついついテンションが上がってしまった俺は……。

 

「よーしっ、ノッブ!

今度は人差し指を咥えて、車の上でM字開脚する感じでっ!」

 

「こ、こうかっ?」

 

「いい!いいよー!すごくイいっ!」

 

――パシャッ!

 

「次はうつ伏せになってお尻を上げて、股に手をあててー、そうそうっ!

目線は色っぽく、媚びるような感じでっ!!」

 

「んっ、んぅ……こ、こんな感じでどうじゃっ?」

 

「素晴らしいっ!今ノッブはエロかっこいいの最先端を突き進んでいるよっ!

さすがは日本で一番有名な偉人だ!日本国民にこの姿を見せらないのが残念でならないっ!」

 

―――パシャッ!パシャパシャッ!!

 

「うはははははは――!当然じゃろう、当然じゃろう、

わしの溢れ出るカリスマなら仕方のない事じゃっ!」

 

「よーしっ!とどめにアヘ顔ダブルピースだっ!!」

 

「ピースッ!!」

 

「COOOOOOOL!!最っ高にCOOLだよ!あんたぁっ!!」

 

―――パシャパシャパシャパシャパシャパシャ………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………何やら色々とスゴいものを撮った気がする、だが後悔はない。

隣でやり遂げたぜみたいな顔でノッブがカメラを覗きこんでいる。

 

「どうじゃ?どうじゃ?結構良いのが撮れたかの?まぁ、あれだけ撮れば素材は十分じゃろっ!

最終再臨どころか礼装実装にも間違いなしじゃな!」

 

あぁ、うん……規制間違い無しの素晴らしい写真がたくさん撮れたよ。

しかし、信長様の笑顔を曇らせるわけにもカメラの電源を落とし、話を変えた。

 

「ノッブ、これから倉庫の方行こうと思うけど、ついて来る?」

 

「かまわんぞっ」

 

二つ返事でOKしてくれるノッブまじ天使。

この写真は信長様の名誉の為にも俺が大事に保管しておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しっかし、随分とごちゃついてるのう。なんじゃ、この黄金の林檎の山は……あの獣娘にでもぶつけるのか、すぺいんリンゴ祭り的な?」

 

「何でそんな残酷な事をしなければいけないんですかねえ……集めるだけ集めた素材、放置しぱなっしだったからさ、ちょっとぐらいは整理しなきゃっとっ」

 

「わしら、一応これ集める為に特異点とやらに行ってる筈じゃろ?何でこんなに雑誌のように乱雑に扱われているのじゃ……」

 

いつもの黒の軍服に着替えたノッブが指す方向は部屋の隅に邪魔だと言わんばかりに寄せられた聖杯の山。

 

「今の所は特に使い道もないしね、ていうか俺も何個回収したのか、よく覚えてないや……9個だっけ?10個だっけ?」

 

「この1個求めて、数多の魔術師が殺し合うのもザラにあるのにぐだぐだじゃのう……」

 

そう言いながら、聖杯の山から二つ抜き取ると片方を俺に投げ渡してきた。

 

「そういえば、あの季節外れのハロウィン娘もこれで随分好き勝手やったと耳にしたが……まぁ、万能の願望機なんてわしは信じてはおらんが、そなたとて人の子……願いの一つや二つ、あるのではないか?」

 

うぅ――ん、願い事ねぇ……特に無いんだがなぁ。

この聖杯じゃあ、世界を救うのは土台無理な話だし。

今の所はノッブのパンティおくれ~~!ぐらいしか思い付かねえわ。

 

「はぁ……考えが漏れておるぞ、おぬし。

別にそんなもんに頼まなくとも、いつも頑張っとる褒美に下着の一つや二つ、いくらでもくれてやるわい」

 

随分と嬉しい事を言ってくれる魔王様。

しかしそういう信長は願いは無いのかと聞き返すと。

 

 

 

「このポンコツに願い事のう…………ふむぅ、‘そなたと夫婦にしてくれ~!‘とかか?

………………おい、何を固まっておる。

冗談じゃ!わ、わしがそんな乙女のような事願う筈無いじゃろっ!第六天魔王ジョークという奴じゃっ!う、うはははは―――!そら笑うがよいっ!こ、こらっ、な、何とかいえっ!」

 

ちょっと今のは不意打ちですわ……反応に困るよ。

アタフタと照れ始めたノッブはテンパっているのか、ごまかす為なのか、手に持っていた聖杯を乾杯するかのようにこちらのものにぶつけてきた。

 

 

―――カァーーンッ!シュイイイイィン………………。

 

あれ?何かこの聖杯震えているような……てか光って、眩しっ!………………

 

「ぬうっ!?これはッ………」

 

 

離れ離れにならないように目の前のノッブの手を握り、俺達はそのまま、聖杯の光に飲み込まれた…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――チュンチュンチュン…………ミーンミン…………

 

 

「のどかじゃのう…………」

 

「のどかだね………」

 

気づけば、和風モダン住宅のような所にいた俺ら二人。

外に出て、少し遠くを確認するとこの家は堀や土塁で周りを囲まれていることがわかった。

季節は少し、爽やかな暑さが出てくる初夏のように感じる。

 

庭のような所までは出れるが、少し歩くと見えない壁のようなものに阻まれている。

どうやら、この家の敷地含めて完全にその壁に囲まれており、一つの空間として完璧に隔離されているようだった。

 

その不可視の壁を興味深そうにコンコンと叩いているノッブに問いかける。

 

「どう?ノッブ」

 

「ダメじゃな、そなたもわしの今の姿を見れば、わかると思うが……さっきからいつもの戦装束の姿に戻ろうとしてもウンともスンともいわん、中々特殊な状況のようじゃぞこれは」

 

困ったように腕をくむ今の信長の姿は黒の軍服ではなく、薄紅の浴衣姿であった。

軍帽もなく、彼女の事を知らない者からすると黒髪が映える只の美少女にしか見えないかもしれない。

‘そんな普段見れないような、深層の令嬢の如く、可憐でなおかつどこかエロティックを醸し出してる彼女の姿にもう辛抱たまらんとばかりに獣のように襲いかかったわしは超絶ギガンティックプリチーな信長様の体をむさぼ‘

「勝手なナレーションを入れないでくれるかな?」

 

 

「あながち間違っておらんじゃろ」と笑いながら、家の縁側に座り、足を子供のようにブラブラさせていた。

 

「業腹ながら、今のわしではその壁を破壊する事は不可能じゃ、そなたと初めて会った時より弱体化してるからのう、星0.5どころか星0……まさにその辺の町娘レベルじゃなっ!フレガチャ実装間違い無しかもネ!」

 

ケラケラと笑う魔王様もとい、自称町娘。

しかし、彼女が言うのなら、この壁を抜ける事は無理なのかもしれない。

まぁ、それでも試せることは試しますか。

 

不可視の壁に前に立ち、拳を構える。

 

 

『相手をぶん殴るのにそう大した技術はいらねえよ、

要するに自分がおっ死ぬ前に

ひたすら、相手が潰れるまで殴り続ければいい話だろ』

 

ベオウルフ兄貴直伝ッ!

まねっこ宝具「ぐれんでる・ばすたー」!!

 

―――ズドドドドドドドドドドドドドドドドオオオォォンンンッッッ!!!

 

 

 

 

……ふぅ、やっぱ無理か。

いくら何でも、マスター如きの腕力じゃ破れんか。

 

後ろを見ると、何故かドン引きした目でアワアワと口を押さえているノッブの姿が。

 

「わしのマスターがバーサーカーじゃった…………何を言っているのかわしにもわからん。

え?え?てか何で拳から煙出してんの?コワイコワイ……」

 

これも訓練の賜物なんだからっ!マスターだからって甘く見ないでよねっ!

だが、この状況はどうしたものか…………。

監獄塔に似てるようようだが、あちらはきちんとゴールが定めらている。

こうも何もアクションが無いとなぁ。

 

「下手な考え休みに何とかじゃぞ、マスター。どう考えても、あの聖杯とやらのせいじゃろこの現状は。

わしはともかく、そなたが消えているとわかったのなら、あちら(カルデア)でアクションを起こしてくれるじゃろ。なら、我らはゆるりと待てばよい」

 

「しかし中々ハイカラな家じゃ……」と呟きながら、室内へと戻ってしまったノッブ。

大分、楽観的な考えな気もするが、彼女が考え無しに発言してるとも当然思わないので、後をついていった。

 

 

 

初めは和装住宅と思ったがキッチンを初めとして、何故かちらほら電化製品が揃っている。

カレンダーまであるし……()()()()()……?何か意味があるのか……?

 

「ふむふむ、良いのう……こういう和洋ごちゃまぜのような家も悪くない、おおっ!露天風呂もついとるとは中々に気が利いとるわし好みの家じゃな……。

これ、そなたもうろちょろするでない、腹が空いたじゃろ?喜べっ!今日はわし自らの手でつくってやろうぞっ!」

 

といつのまにやらエプロンをつけたノッブがキッチンへと向かっていった。

 

「信長様って料理できるの?」

 

「練習し始めたのは召喚されてからだがの。

安心せい、あの音痴竜娘のような劇物はつくらんて、いたって普通の定番の料理じゃ……。そなたは亭主関白の如く、ふんぞり返って待ってればよい」

 

左様ですか、ならお言葉に甘えますかね。

楽しそうに料理をするその後ろ姿は若奥様みたいだな―――と思いながらも、何だかんだで信長の手料理はあの骸骨型のチョコ以外食べてなかったりするので少し、楽しみにしていた。

 

 

 

 

 

目の前にあるのは卵焼きに生姜焼きにサラダにご飯とみそ汁……ご飯のテンプレといったものが二人分、揃っていた。

 

「ふふふ、奇をてらったものが出てくると思ったか?

今日のわしは‘新妻のぶ‘じゃ、旦那様の為の料理にゲテモノを出すわけないじゃろう?ほれ、口をアーンとせい」

 

卵焼きを口に放り込まれる。

うん、俺好みの甘い卵焼きだ。

 

「おいしいか?」

 

「あぁ、おいしいよ」

 

「ホントにおいしいと思ってるのか?じゃあ、どれぐらいおいしい?甘さは?食感は?全体的なバランスは?100点満点ならどれぐらい?今まで食べた中で何番目ぐらいにうまい?つーか、誰と比べておいしいと言っておるのじゃ?人斬りか?ヤンデレ竜娘か?くっころか?ステゴロ聖人か?マシュマロおっぱいか?つーか、カルデアの娘共の中で誰がわしよりおいしくて、誰がわしよりマズいか正確に述…………」

 

「めんどくせぇよっ!この人っ!」

 

とまあ、何だかんだでジャレ付き合いながら、二人で食べさせあいっこしながら、食事の時間は過ぎていった……。

 

 

 

その後は申し訳程度に壁を調べたり、焚火をして煙を出したり、外に見えるようなアクションを起こしたが……事態は特に変化しないまま夜になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああぁぁぁぁ~~~~~~~、良い湯じゃのう~~~~~~~」

 

おっさん臭い声を出す全裸黒髪美少女と混浴中なう。

俺の足の間に座り、寄り掛かっているこの娘はいつも以上にぐだぐだしていた。

 

「ぬぅああああぁあ~~~~しかし、珍しいのう……こう、そなたと一日中ゆっくりするのは」

 

「ウチは何だかんだで大所帯だからね、それも是非もないんじゃないかな?」

 

「くはは、沖田の奴め、わしが主とこんな生活したと知ったらどんな顔するかのう?ここから帰ってきたら死ぬ程、煽っちゃろ」

 

「やめてあげて、というよりあんまり危機感ないね、魔王様は」

 

「わしの後ろでこんなにおっ勃ててるそなたが危機感云々言ってものう……うりうり……」

 

「こらっ!のぶちゃんっ!

お尻グリグリしないっ!我慢してるんだからっ!」

 

「うはははー!なら、続きは寝床でするとするとしようか!ほれっ、しっかりとエスコートするが良い」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……んっ、ちゅっ、ちゅむっ……、んはぁ、れろおっ……」

 

寝所についた途端、キスをせがんできた信長を抱え、彼女が上になるように布団に横になる。

しかし、相変わらず軽いなこの人、ちゃんと食べてるのだろうか……。

 

「……んちゅ、ちゅぱっ、ぷはぁっ……今日は……そうじゃの……いつもと趣向を変えるとするか」

 

「……ん―と、どういう事?」

 

「そなた、毎回わしとするときもう殺す気かっ!てぐらいわしをイかせてくるじゃろ?

まあ、わしも激しいのは好みだし、ぶちゃけ死ぬ程気持ちいいから全然ウェルカムなんじゃが……。

それにぃ?そなたのロリボディにも見境なく大興奮してしまうような情欲を受け止められるのはわしぐらいじゃしぃ?」

 

人を異常性癖者のように言うのは止めていただきたい。

ただ好きになった人を心と体で全身全霊で愛しているだけの話ですぅ。

 

「今日はそうじゃのう……まるで初夜のように初々しい新婚夫婦みたいな感じでいきたいのじゃっ!」

 

スローセックスみたいな感じでイケってことかな?

 

「善処してみるよ。要するにバカップルな感じでイチゃつけばいいって事でしょ?」

 

「ちょっちぃ頭の悪そうな言い方じゃが、概ねそんな感じで問題ないわい。ささっ、ではよろしく頼む、ぞ……?」

 

そう言うと、俺のはち切れんばかりの肉棒をゆっくりと握り、上下へと優しく扱いてくる。

 

そして、人懐っこい猫のように俺の胸板にほほをすり寄せ、跡をつけるかのように乳首、鎖骨へと口付けをしてねっとりと舐めてきた。

 

「ふふふっ、ちゅっ、相変わらず、良い体を、ちゅる……れろぉっ……しとるのお……ちゅむっ…………下の方もぱんぱんじゃあぁ、はぁむ、ちゅぱぁ…………ぺろぉ、れろっ……」

 

片手で器用に棒の方を扱き、もう片方の手で優しく玉袋の方も揉みこんでくる。

 

俺の方もいつのまにか彼女の濡れそぼった穴へと手をのばしていた。

 

「んっくはぁっ……さわりっこ、じゃなあぁ…あぁぁっ、あっ!……んちゅっ、はぁんむぅっ……むちゅっ、んふぅっ……」

 

入り口の方へ指を決して奥まではいかないように挿し入れをする。

時折、小さく膨れてきた陰核にも触れるように意識しながら。

 

いつの間にか俺の目の前で幸せそうに喘いでいる彼女の唇を優しく奪う。

舌は入れず、互いにそこにいる事を確かめるかのような触れ合うだけのキス。

俺も信長も何故だかわからないが、二人して微笑みながら、いたずらするかのように相手の体を触り合い、ひたすらにバードキスをし合っていた。

 

「ちゅっ、んあっ……ふふっ……ちゅむっ、ちゅうっ……なんかぁ、んんっ、よいのおぉっ、こういうのもぉ、あぁっ……ちゅっ、んちゅっ……」

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして、名残惜しそうに俺から離れた信長は布団に仰向けになるとゆっくりと足を開脚させた。

 

「……はぁ、はぁ…………もう互いに十分ほぐれたじゃろ……やさしく……たのむ……ぞ……?」

 

自身の花弁を控えめに開き、こちらを誘う彼女に負担をかけないようにゆっくりとゆっくりと自らの陰茎を侵入させていく。

 

完全に奥まで入っても動きはせず、彼女に覆い被さるようにしばらく抱きあっていた。

 

「んぅ……そなたのがひくついるのぅ……あっ、

なぁ、風呂での話は覚えておるか……?」

 

「危機感云々の話?」

 

「あぁ……そうじゃ、この状況に対して……そなたが不安に思うのも当然じゃ……じゃから……わしを信じて………後二日は我慢してくれぬか……そうすれば……おそらくこの空間は打壊するじゃろぅ……まぁ………それまで、わしらが出来ることはないんじゃが…………だから…………その、のう?」

 

「二人で色々と楽しみたいと?」

 

「う……うむ、そうなるかの。だ………だめ、か……?」

 

「はぁ……そもそも俺はあなたが大丈夫と言っている以上、最初っから危機感は持ってないよ。それぐらいには信頼しているさ」

 

「じゃあ……」

 

「うん、そういう話ならドンと来いっ!俺だって信長と楽しみたいし」

 

その台詞を待っていたとばかりに俺の首元に顔をうずくめる彼女は「うむっ、うむっ……それでこそわしの半身じゃっ……好きじゃ、好きじゃ、愛しておるぞっ……んんっ」と小さく呟いた。

その言葉が引き金となり、互いに体を求めあう。

壊れ物を扱うかのように、優しく、優しく……。

 

「うぅん……くぁ、あふぅ……これぇっ、そんなに吸ってもぉ、あぁっ、あぅっ、乳などぉ、ふふっ……でぬぞぉ……ひぃあぁ、あぁ……」

 

彼女の体を撫でまわしながら、まだ成熟しきってない、胸の中心の蕾に口をつける。

何かを出すかのように、甘えるように吸っていた。

下の方にある、ぷっくりとした蕾にも時折、手を出しながら。

 

「あぁっ、ひぃい……はぁぅ、むねもしたもぉ……あっ、すきほうだいっ、じゃぁなぁっ……うあぁっ、ああっ……そなたのもぉ、ぴくぴくしとるぅ……あっあっ、これぇ、かおをみせておくれぇ、んくふぅっ……あぁんぅ……ちゅうぅ……」

 

激しく動きたくなる情動に少し駆られるが、彼女の要望通り、ゆっくりと奥に押し付けるかのように動く。

幸せそうに笑う彼女は先程と同じように口付けを交わし、甘えてくる。

うーん、いつもがイケイケなだけにすごく新鮮だ今の彼女の姿は

まさか、信長にずっと守り続けたくなるようないじらしさを感じるとは……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大事な所はつながったまま、お互いにもう触れなかった所は無いと思うぐらいにイチャつきあっていた。

まるで信長と一つの体になっているかのような感覚に陥る。

 

しかし、そろそろ自分も限界のようだ。

 

「ちゅはぁっ……あっ、よいぞぉ、あっ…だしたいのじゃろぉ……?あぁっ…わしもぉ、さっきからぁ……うぁぁっ……ちいさくぅ……イキまくっておるからぁああっ……!あんぅ、じひぃをたのむぞぉぉ……ふぅあぁっ…………」

 

そうして今までほとんど動いていなかった下半身を前後へ揺らす。

徐々に、徐々にスピードを上げながら、今まで我慢した甲斐あってか、自身の情欲はすぐに解き放されそうだった。

 

「あぁぁっ!そなたのがぁ、あついぃ……あぁ、んひぃっ!あぁ…はぁぁん!いってしまうぅ……とおくへぇ、ひぃってしまぅ、んあぁっ!どこにぃ、おるぅ…ますたぁぁ……あぁぁ……やあぁぁっ!!」

 

「ここにいるよ、信長」

 

焦点の合ってない目ですでに意識を飛ばしかけている彼女を安心させるように両手を恋人つなぎでつかむ。

俺の手の感触を確かめるように握り返す彼女への愛おしさが高まり、やがて…………。

 

「んあぁぁっ!あぁぁっ、あぁっ、あっ、うぁぁっ!らしてぇっ!わしにぃこだねをぉ……はらましてくれぇぇ……そなたとのこをおぉっ!ひぃあぁっ!あぁっ……すきなんじゃあぁ……すきなんじゃあぁぁっ……くあぁっ、んぅっ………ああぁぁぁっ!!」

 

ビュルビュルッ!!と

彼女の小さい子宮に収まりきらない程の精液が注がれる

 

「……んんぅっ――――!!あぁぁぁ~…………まだぁ、でておるぅ……んふぅっ!……あんっ!あぁぁ……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガッツリ出した後も抜く気になれなかった信長は俺の上に乗っかかったままであった。

もうこのまま掛け布団にでもなるつもりかにゃ?

『のっぶ布団』需要はありそう。

 

「なんじゃか、色々とこっ恥ずかしい事を

口に出してしまった気がするんじゃが……」

 

「色んな意味で今更だねノッブ」

 

「やかましい、しかし出し過ぎじゃろ、そなた。見ろ、入りきらなくてこんなに溢れとるわい」

 

そう言って、白で汚された結合部を見せつけてくる。

 

「だって、あんなに孕ましてーなど、すきすきーって言われるとねぇ、つい期待に答えてしまったのも致し方ない事かと」

 

「あ――、あ―――!何も聞こえんのじゃあ――――!」

 

この魔王様、自分からやる事に関しては羞恥心の欠片もないが、さっきみたいに無意識的な行動はとても恥ずかしがるみたいですねぇ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この不思議空間に来て、初めての朝……寝坊助のこやつを起こすのもまぁ、新妻のわしの役目じゃしぃ?

 

とりあえず、お目覚めのキッスとやらをかますかのぅ……。

 

「あ・な・た♡朝ですよ?」

 

どうじゃ?どうじゃ?骨抜きじゃろ?

 

え?死ぬ程似合わないて?

髑髏になりたいのか、貴様。

 

 

何であれこれから二日間、疑似夫婦生活とやらを堪能するつもりじゃ。

終わりが来ると知っておってもな…………。

 

 

 

―――――二人で談笑しながら、ご飯を作り。

 

 

 

―――――庭で昨日の洗濯物を干す。

 

 

 

まぁ、常に一緒にいるとそういう気分にもなるしの。

 

「んくぅっ……!やあぁぁ!こんな外じゃぁぁぁ……あぁっ、だれかにぃ………みられてぇ……!うぅ………ひあぁぁっ!ああぁんんっ………!」

 

庭にいたわしを家の外壁を支えに立ちバックとやらで犯してくるしのう……。

まぁ、だれかに見られる可能性は皆無じゃが、それでも野外は恥ずかしいっちゃ、恥ずかしいのじゃ。

 

 

 

 

 

―――――夜通しお互いの事を語り合ったり。

 

 

次の日の朝はやはりこちらの方がわしに合っていると思い、こ奴の下処理をしながら起こす事にしたわい。

 

「はぁむぅ……じゅるぅっ……昨夜、あれだけだしたというにぃ……じゅむぅ……ちゅぅ……元気なやつじゃのうぅ…………じゅるるるっ!!」

 

気持ちよさそうなそなたの顔はホントにそそる。

さぁ、わしの口に好きなだけ出すが良い……。

 

 

 

 

 

 

―――――日が差す縁側で膝枕をしてあげたり。

 

「よい雰囲気じゃ………、老後はこういう家で隠居したいものよのぅ……」

 

そういったわしに「おばあさん、ご飯はまだかね」と口に出す。

 

「おじいさん、さっき食べたばかりじゃろ?」

 

こういうノリの良い所もホントに好みなんじゃよなぁ。

 

 

 

 

 

 

この3日間は特筆すべき所もない、平穏で穏やかなモノじゃった、今までのわしには考えられない程にな。

 

 

 

―――そしてこの空間に来て、3回目の夜が来た――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

厠から、居間へと戻る俺。

見た目、昔ながらの和装住宅住宅なのにトイレまでウォシュレット、消音フル装備とは。

新しい物好きのノッブの為の家みたいだなぁと思っていると……。

 

立ちっぱなしで外を眺めたまま動かない彼女の姿が。

いつものボケーッとしているのとは違う様子に感じた。

どうしたの?と問いかけると……。

 

「いや、そろそろかのう……と思ってな……」

 

……?

…………ッッ!!?

 

 

 

―――――気づけば俺達が住んでいた家は炎に囲まれていた。

 

 

どこからか燃えだしたとかそういう話ではなく、どうして今まで気づかなかったのか疑問に思うレベルで完全に炎に取り込まれていた。

 

「……この家はアレとは似ても似つかんかったからのう……少し、気づくのは遅れたが、周りの景色だけは覚えておる。この場所自体は西洞院四条で間違いない……」

 

それは……。

 

「そう、本能寺の変が起きた所、わしの最期の場所じゃ……」

 

申し訳なさそうに彼女はこちらを振り向いた。

 

「黙っていてすまんかった……もし、こんな結末だとわかっていたら、そなたは絶対何とかしようとしておったじゃろ?」

 

当然。

 

「これは誰か黒幕がおるわけじゃなく、場所がここになってしまった以上、わしが織田信長である以上、

どうにもならんものだったんじゃ、特にこれは聖杯が生み出した明晰夢のようなものじゃしの……」

 

「けど、よくピンポイントでタイミングがわかったね」

 

「あぁ、そりゃあ、自分が死んだ日なんて正確には覚えておらんしぃ、覚えたくもないし、じゃがまぁ、6月の頭ぐらいじゃったかなぁと思ってな、後は女の勘じゃ」

 

どうやら、彼女もあのカレンダーを見ていたらしい。

だがそれでも確信を持っていたとは……げに恐ろしきは女の勘か。

 

「直、この夢は覚める。

そなたもわしから離れるがよい。

この炎はわしだけを狙うモノじゃ、痛い思いしながら夢から覚めるのは嫌じゃろう?」

 

確かに痛いのは嫌いだが……。

 

「いつの日か、『わしとそなたは一心同体じゃっ!』と

言ったのはあなたでしょうに……最期までお供しますよ、殿…………」

 

「……………………くはっ、うははははははっ!そうか、そうか!なら好きにするが良いっ!

どれ、もそっと近こう寄れ、少し体が冷えるのじゃ…………」

 

火に囲まれて、体が冷えるわけはないが、俺は素直に彼女の背後に寄り、背中から抱きしめた。

 

自分を抱いている俺の手を握りながら、彼女は呟く

 

「火を見るのは好きじゃ……しかし、火に取り込まれるのは好きになれんのう……」

 

一体、彼女がどんな目でその言葉を吐いたのか俺にはわからない。

やがて炎の光か、はたまた別の光かに飲み込まれた俺達は―――――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気づくと、いつもの倉庫にいた。

どうやら、時間もほとんど経ってはいない。

 

「ふんっ、やはり不良品じゃの、これは、途中までは良き夢じゃったが……終わりがアレではのう。

まぁ、あのBAD ENDもわしらしいと言えばわしらしいかもしれないけどネ!」

 

持っていた聖杯を元の位置に投げ捨てると(いやもう少し丁重に扱って)、腕をんんっ~~~~~~と伸ばす彼女。

 

「そなたも面倒事に巻き込んでしまったの、この埋め合わせはいつかしてやるわいっ」

 

「いいよ、最後を除けば、疑似夫婦生活は結構楽しかったし、ノッブは楽しくなかったの?」

 

「………………そうじゃのう」

 

と何やら考え込むノッブ。

 

「あれじゃな、そなたを連れて、人斬りも黒騎士王もそのドラ息子も盾女も、ここにいる全ての女共の手が届かない場所でずっと二人で暮らして、じゃまする奴は全員髑髏にしてしまおうかと一瞬本気で考えてしまうぐらいには楽しかったぞ」

 

「……ちょっ」

 

「くははは、冗談じゃ、そう怖がるでない。

さて、わしは出しっぱなしにしてた車でも片づけるかの、うるさい連中に見つかる前に」

 

そう言って、『のっぶの‘の‘は~~~野晒しの‘の‘~~~~♪』と歌いながら彼女は倉庫から出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

…………あの一瞬の目の色はとても冗談には見えなかったんだが。

 

……うんっ!俺も焼き討ちされないように日々精進しよう!

 

まずはここの整理から始めるとしますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




≪ノッブの野望≫
魔王であるノッブが攫ってきた姫であり、自身の旦那でもあるぐだ男を守りながら多くの地から群がってくる勇者(雌猫共)を片っ端から焼き討ちし、髑髏にしていく
心温まるハートフルシュミレーションゲーム。
定価:9800円 18歳以上対象
※初回限定版にはノッブのレースクイーン写真が同梱






最初っから最後まで、
ギャグとエロのハートフルラブコメディでしたね。

新妻のっぶと新婚生活を送りたいだけの人生だった。

今回の聖杯の夢はノッブの好きな人と一緒に暮らしたいという女の願望と魔王として生きてきた自分がそんな平穏な生活を送れるのかという懸念が混ざり合ってあんな感じになったという事で。

決して、雑に扱われた聖杯くんの復讐というわけではない、ハイ。




今回のイベは日本中にいる500万のFGO民が寄ってたかって茨木ちゃんをめちゃくちゃにするっていう話だっけ?


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文明のくせになまいきだ。(アルテラ)

「エクステラの発売は、まだか」







今回はエクステラ発売日決定記念という事で、楽しみ、ホント楽しみ。


これこそ、キャラ崩壊の真骨頂っ!


『私はフンヌの戦士、破壊の大王…』

 

 

召喚された当時は冷徹な絶対文明殺すガールだった彼女も……。

 

 

『くっ、私は文明になんて負けないっ!』

 

 

今では立派な……。

 

 

『ガンガンにクーラーを効かした部屋でリクライニングチェアに座り込み、ネットをする生活、なんと甘美な事か……全てアルテラ印の良い文明認定とする。

あっ、マスター、冷蔵庫に入っているコーラを取ってくれ』

 

 

立派な現代っ娘に……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐぬぬ、エクステラはアルテラちゃん大勝利のゲームの筈だ……。赤王と駄狐は引っ込んでいるがいい、やはりローマと妖怪は悪い文明だ。破壊すべし…………。『エ・ッ・ツ・ェ・ル・最・高』っと」

 

ものすごい早さでキーボードを打ち込むアルテラちゃん。

その姿は『文明壊化』と書かれた白い漢字Tシャツにデニムのハーフパンツという非常にラフな格好。

さらにいつもの白いベールは被っておらず、白髪のショートカットが映える完全に誰おま状態。

 

しかし、人類が焼却されている今、彼女は一体どこに書き込んでいるのか……Drだってネットアイドルと日夜、戯れているし、もしかしたら、別次元のどこかにつながっているのかもしれない、ネットの海は広大だと言うしねっ!

 

「はい、アルテラちゃん。コーラよ」

 

「うむ、今わたしは鬼ロリを当てられなかった者共をスクショ付きの書き込みで煽るのに忙しい。後ろから直接飲ませてくれ」

 

何て事してんだてめぇ(血涙)。

仕方なく、彼女の背後から画面の邪魔にならぬよう缶に口をつけさせる。

うん、コクッ、コクッと飲んでいるな。

あぁ~~、かわいいんじゃ~~、って違う違う!

危うく、駄目人間製造機になる所だったわ。

 

コーラを飲まし終えた俺は彼女の口周りをシルクのハンカチで丁寧に拭いてあげる。

あ、こら動かないの。

 

「はぁ、何というか見事に現代人になってしまったね。アルテラちゃんは」

 

現代人というよりは引きニート一歩手前かもしれんが……いや、一晩、説得すれば(意味深)ちゃんと外に出てくれるんだえけどねこの娘。

もう、徒歩すらしなくなったけど。

何故か移動は常にセグウェイだし、不思議と似合っていたが。

 

「ふむ、これも全ては良き文明を私に教えてくれたマスターのおかげだ。お前には感謝しかない」

 

ええ――俺のせいっすか……。

確かに召喚された時は、戦士ではない人生にも興味があるだの何だの言ってから、色々と教えたけど……。

 

 

 

 

 

 

 

不健康そうな飲み物、飲ませたのも……。

 

『これは何だ?こおら?飲み物なのか……?……っっ!?げほっ!ごほっ!まままますた――!?何だこれは!?口の中で爆発したぞ!?』

 

 

 

彼女の部屋に電化製品やら――

 

『マスター、私の部屋に見知らぬ円形状のものが闊歩しているぞ、敵性プログラムか?……何?るんば?そうか、私のために掃除してくれてるのか……ふむ、ならこの文明は見逃してやろう』

 

 

 

家具やら色々ぶち込んだのも――

 

『はあぁぁぁ~~~~~……、この下半身を包み込む温もり、こたつとやらは良い文明だな…マスターも一緒に入るがよい、んんっ……こ、こらっ、足をさわるなぁ……あぁっ……』

 

 

 

ネットやらゲームやら与えたのも――

 

『ゲームは遊びではない!そのアカウントを粉砕するっ!!』

 

 

 

 

 

何だ……全部、俺じゃないか……。

 

だってほら初めての事を教える度に新鮮な反応してくれるからさ、ついつい楽しくなって、色んな物を与えてしまったワケよ。

こうね?真っ白のキャンパスを自分色に染め上げたい気持ちわかるでしょ?

うん、あんまり碌な色じゃなかったのは自覚している。正直すまんかった。

 

「けど、もう俺が教える事はないかもね……アルテラも全ての文明はすでに網羅してしまったと言っても過言ではないんじゃないか?」

 

いや、自分で言っててアレだけど多分過言だわ。

網羅してるのは間違ってる文明ばかりだもの……。

 

「いや、待てマスター、実はまだ私が体感していない文明がある」

 

「ん?そうなの?」

 

 

 

 

 

「あぁ、アダルトグッズだ」

 

……………………

 

「アダルトグッ」

 

「いや聞こえてるから、頼むから2回も言わないで」

 

キーボードを打ち込んでいた手を止め、こちらを振り返り、無垢な瞳でこちらを見つめている彼女。

 

嘘みたいだろ……?さっきの言葉、この娘が言ったんだぜ……?

どうしてこうなった!?どうしてこうなった!?一体誰のせいで……?あ、俺のせいだったか。

 

「どうして、そんな物に手を出そうと思ったんだ……アルテラちゃん……」

 

「最近のそういうグッズは随分と気持ちがいいと評判らしくてな。だが、私としてはそんなモノに与えられる快感より、マスターに抱きしめられながら致す方が断然気持ちいいと思う。

『どうしてあなた方がそんなに冷え切った愛情の欠片も存在しない機械如きでそこまで悦に浸れるのか私には理解できない、私のように好きな男と愛し合った方がよっぽど良い人生を送れると思うのでそちらをお薦めしよう』とネットで書き込んだら、見事に大炎上してな、あれはそこまで責められる事だったのだろうか……?」

 

何してんのキミ!?

その気持ちは十分嬉しいけどさぁ……アルテラちゃんには悪気はなくても、そんな煽るようなコメントあったら炎上しますわ。

嫉妬的な意味合いでも。

 

「確かに私も使わず、頭ごなしに否定するのはよくないと反省してな、実際に使ってみようと思ったんが……」

 

そう言うと、足元にあったA〇azonと書かれたダンボールから何かを取り出した。

 

「私が握ってしまった瞬間に軍神の剣と化してしまってな。これでは本来の用途で使う事が出来ないと困っていたのだ」

 

3色の棒状のモノがヴヴヴヴヴって震えてんのすんごいシュールぅー。

軍神マルスは泣いていいと思いますねこれ。

 

「ゆえにだ。代わりに誰かに使ってもらえば軍神の剣化することもない。ならば、その重要な任はお前に任せようと考えたわけだ」

 

3色バイブをゴミ箱へとぶち込んだ彼女はおそらく新品であろう袋を俺に渡してきた……あぁ、この中全部、アダルトなグッズですわね。

 

「マスターは今日も懲りずに私を外へと連れ出しに来たのだろ?生憎と私はこの城から出るつもりはないが……今回、その文明をマスターが味あわせてくれるというのなら、一緒にクエストに行くのも吝かではない。」

 

パソコンの電源を落とし、ベッドへと向かうアルテラちゃん。

あぁ、これいつものパターンだわ。

毎回、お外へと連れ出そうとする度にこの出不精文明ガールはアレな条件出してくるんですよね、別に交換条件とか全然抜きで役得だから、構いやしないのだが……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「とりあえず、服は私からは脱がんぞ、マスターが脱がしてくれ。そちらの方が情緒があるからな」

 

お互いにベッドへと腰かけたら、そう切り出すアルテラちゃん。

これからする事に情緒の欠片も無いんですが、それは。

そう思いながらも、彼女にバンザイさせて、Tシャツから脱がしていく。

あら?ノーブラなんですか?ブラも脱がしたかったのになぁ――。

 

「私はスキルで『天性の肉体』を持っているからな、ブラをしなくとも、おっぱいの形が崩れる事はない。不健康な生活を続けているにも関わらず、セクシーな体系を維持できるのもこのスキルのおかげなのだ」

 

と剥き出しの胸を張り、そう仰るあるてらちゃん。

一応、不健康という自覚はあったみたいですね。

てか、あのスキルにそんな効果もあるなんてなぁ……つまり、あのスキルを持っているサバは皆ノーブラの可能性が……!?

と思ったけどウチで天性の肉体持ってるのロムルスさんしかいねえわ。『ノーブラもまた、ローマなのである……』何か聞こえたカット、カット。

 

「ふむ、パンツと靴下だけを残すとは……マスターは中々に通のようだ」

 

デニムの下も脱がし、後に残ったのは褐色色の肌によく映える、白のパンツと靴下だけ。

先程、彼女から頂いたピンク色のローターから試そうと、スイッチを入れ、胸の先端部分へとゆっくり当てていく。

 

「……っく、んんっ、すこし、こそばゆいっ、なぁ……あっ」

 

と小さく身じろくアルテラはまだ余裕がありそうだったので同じローターをもう片方の乳首にも使っていく。

 

「……くふぅっ!もう、ふたつもつかってくるとはぁ、あくぅ……やる気があってぇ……んっ、よろしいぃ……ぞぉ、あふぅっ……んんっ!」

 

敏感な部分から与えられる、未知の快感に口元に拳を持ってきて、耐えている彼女の姿を鑑賞していると、ローターから何やら液体が漏れ、彼女の胸を濡らしていた。

 

もしかして不良品か?と思っていると……アルテラの反応が劇的に変化していった。

 

「あくぁっ!?へっ?あぁっ!な、なんでぇ…きゅうにぃ、はぁっ!胸がびんかんにぃ……!あぁっ!はぁっ……これはぁ……なぁん、ひぃあっ……!」

 

これってアレか、しばらくするとローターから媚薬が出てくるタイプってことか?

へぇ――、すごい、人類の技術はそこまで進歩してたのか――始まってんな世界、いや既に終わってるのか……。

 

しかし、これは面白くなってきたと思った俺は袋から、手錠と絆創膏を取り出し(絆創膏はアダルトグッズだったのかぁ……)、貼り付け、硬くなっている彼女の乳首とローターを固定した。

アルテラが気をやっている隙に両手を手錠でベッドの端の柱にそれぞれ繋げ、胸についているモノを外せないようにする。

 

両手を左右に広げ、胸の玩具で痙攣しまくっている彼女の姿は中々に扇情的だった。

 

「ま、ますたぁっ……?あぁ、あっ、ううぅっ!なんでぇ、んんっ……!これぇ、んあぁっ!は、はずしてぇ……ひぃっ、ひぃあぁっ……!!」

 

その申し出をにっこりと微笑みで拒否をすると本日のメインイベントである電動バイブを取り出す。

それを見た彼女はイヤイヤと首を横に振るが、仕方ないよね、俺は頼まれた側だし。

コレらがどういうモノなのか、最後までしっかりと教え込まないと……心は痛むが、これもマスターのつとめなのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

既に、愛液でグショグショになっている下着を脱がす……うわ、すんごいピクピクしてるぅ。

まずはバイブの強さを弱にし、中には入れず、濡れそぼった入り口へと当てる。

小さく膨れあがったクリトリスにも微かに触れるように意識して。

 

「あはぁぁ……!したはぁ、いまはだめだぁっ……んんぅぅっ…!あてるなぁ……やめぇ、ひぃっ!はぁぁ……あっ、ああぁんんっ!!」

 

腰を浮かして、何とか逃れようとするアルテラであったが両手も拘束され、胸からも与えられる快感で満足に逃げる事も出来なかった。

 

焦らすのも止めて、実際にナカで感じさせてあげなければと思い、弱のまま、ズブズブといとも簡単に入ってしまったおもちゃをゆっくりと進ませていく。

途中で強さを中にしてあげながら、膣内を前後へ掻き分けてあげると、嬌声がより大きくなり、小さく潮も噴いていた。

 

「やあぁっ……!ずぼずぼぉって……、するなぁ、あぁぁっ!あっ……んぁぁあっ!ひぃいっ……!なかでぇ、ふるえてるぅ、ああああぁ……!やだぁぁっ……!はあぁっ!」

 

グチュグチュと大きく水気の音を鳴らしながら、秘部を弄んでいると、ついこう加虐心がムクムクと湧いてしまった俺はバイブを完全に奥まで挿し込み、簡単に抜けないように固定した。

 

そろそろ慣れたかなと思い、スイッチの強さも強にしてあげる。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああっぁぁっ!だめぇっ、あぁっ!だめぇぇっ!ぬいでぇぇっ!ますだぁぁ……ぬいてぇぇ……ひぐぅうぅ、あぁぁっっ!!…………」

 

ものすごい勢いで乱れている彼女に今度はアイマスクを装着する。

質は無駄に高そうだったのでこれなら、視界情報を完全にシャットダウン出来るかもしれない。

困惑している彼女に「ちょっと、一人にするけど、我慢してね?」と声をかけて、離れると……小さく、「う、うそ……ま、まって」と微かな懇願が聞こえた気がする。

 

「んぅあ゛あ゛あ゛あぁぁぁっ!!まってぇ、ますたぁ、ひぐぅっ……!!ひとりにしなぁいでぇ、えぁああっ!んうぅっ……ああぁっ!いがないでぇぇ……あ゛ぁぁぁっ!はぁあぁっん……!」

 

当然、部屋から出るつもりはない俺だったが無慈悲に与えられる快感から余裕が無いアルテラはホントに出ていったと思ってるかもしれない。

 

彼女の部屋から見つけたビデオカメラを構えながら、しばらく視姦する事にした。

 

「ひあ゛あ゛ああぁぁっ!……みえないのに゛ぃぃ……あっ、あぁぁっ!快感だけがぁっ、んんぅっ!おわらない゛ぃぃっ…やぁあっ、はぁぁんっ!

どこにぃ、あぐぁっ……、どこにいるのだぁぁ……やぁあぁっ!ああぁんぅっ……!!

ますたああぁぁっ……、まずたあああぁぁ…、まずだぁぁ……!!」

 

…………ごっつうエロいなぁこれぇ。

 

目隠しから零れている涙と神秘を秘めていそうな彼女のその裸体に取り付けられている無機質な機械が何だかひどく、背徳的にも感じてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく、カメラごしに彼女の痴態を鑑賞していたが、さっきから痙攣を続けている彼女の姿を見てそろそろ良いかなと思い……アルテラを凌辱している玩具や拘束具を外してあげた。

胸はもう全体が媚薬まみれだし、アソコは下のシーツに大きくシミを作る程に大惨事だった。

 

「…………あっ、あぁっ……よ、よかったぁ、あぁっ、そこにいたのかぁ、あぁっ……ますたぁ…、あっ…………」

 

目隠しを外し、完全にレイプ目だった彼女であったが……俺の姿を捉え、瞳に光を取り戻すと心底安心したように手に頬ずりをしてきた。

 

…………今更ながら、ほんの少しだけ罪悪感を感じてしまったが、残念、まだ終わりではないのだよ。

限界まで肥大した自身の怒張を外にさらけ出すと彼女は驚愕半分、期待半分でそれを凝視した。

 

「ゆ、夢か……これ……は……」

 

ところがどっこい現実です。

まぁこれで機械の方が良かったと思われるのも癪だし、俺自身も彼女と交わりたい気持ちがさっきから押さえ切れないので最後にしっかりとフィニッシュで終わろうと思う。

 

「あぁ……もう抵抗できる力も…………私には……ないからな……マスターのすきにしてくれ…………この、けだものめぇ……」

 

最後の言葉を否定するつもりもなく(実際事実やし)、ヒクついている性器へと、肉棒を強く挿し込む。

散々、弄られまくっていたので、奥までいくのは実に容易だった。

むしろ、いつも以上に膣壁が放さんとばかりに吸い付いてくるので、気をしっかりと持たないとすぐにイかされてしまうような快感が襲ってくる。

 

「はあ゛あ゛あ゛あああぁぁっっ…………!!

んああ゛っ、ああ゛っ!……おおきくてぇ……あづぅいいぃ……いあぁぁっ……!」

 

彼女が何と比べてそう言っているのか聞くまでもなかったのでストロークを続け、アルテラの腰に何度も強く打ちつけていく。

 

「あああぁっ!さっきのもぉっ……きもちよかったがあぁっ……んあっ!こっちのほうがぁ、んんぅっ……!あたたかくてぇぇっ……くぅぅっ!あんしんするぅぅっ……やあぁぁっ!はああぁぁっ!!あっ、あっああぁっあ゛あっ……!!」

 

人肌恋しさか、俺へと抱き着き、足を腰の後ろへと絡めたアルテラは逃がさんとばかりにしがみ着いてくる。

 

「いくよ、()()()()()

 

彼女の耳元でそう囁き、奥の気持ち良い所に亀頭を何度も叩きつけ、自身の獣欲を高めていく。

 

「ああぁぁっ!いまぁ、その名でぇぇ……ひぃあぁっよばれるとおぉっ……はぁぁ……いってぇ、いってぇ、あああぁっ!

またぁっいってぇるぅ……いくっ、いくぅ……いくぅっ!いくのがぁっ…………止まらなぁぁっ…!やあぁぁっ……いくっ、いっっちゃぁぁ……ひいぃっ!

んあぁぁっ……!」

 

もう自分が何を言ってるのかわからないほど小さい絶頂を繰り返している彼女を楽にさせてあげようとラストスパートをかける。

そしてそのまま………………。

 

 

「あ゛あ゛あ゛あああああぁぁぁっ……!!!!くあぁぁっ―――――――……!!」

 

一滴残さず、彼女の子宮に注ぎ込む勢いで終わりを迎えた。

涙と涎を垂らしながら、その余韻に浸っているのか……ピュー、ピューと出す度に面白いぐらいビクビクッしているエッツェル。

 

あ、失神している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気絶している彼女を寝かせ、後始末も終わったところ……そう言えば、今日は全然クエストに出ていかないこの引きこもりを連れだす為に彼女の部屋に来たのだと思い出し、隣を見て、起こそうと思った。

 

「……うへへ、ますたぁ……ムニャムニャ」

 

そこには幸せそうに俺の裾をつかみながら、寝ているアルテラちゃん。

 

……うん!今日はお互い疲れ切っているし、クエストに行くのはまた明日からにしようっ!

決して甘やかしているワケじゃないんだからねっ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




信じて送り出したアルテラちゃんが文明に毒されて、即堕ちシリーズ。

「その吸収力、スポンジの如しっ!」

「お前が吸わせてんの汚水だけじゃねーかっ!」










文明壊す3色ボールペン褐色娘、現在でも結構謎のヴェールに包まれているので、マジメ要素は一切無し。
今回の話では、最初から最後まで、エロ?ギャグ?で通しました。
エクステラでは真っ当なヒロインとして登場するはずなので実にワクワク。

まぁ、戦士じゃない自分にも興味があるっていうんで生まれたてのひよこの如きこの娘に色々と教え込んで出来上がったのがコチラですというのが今回の発端。
これもそれも大体、主人公のせい。

出不精ではあるが、主人公とクエストに行くのは全然OK。
しかし、自分が引き篭もっているとマスターが構ってくれる事に気づき、このザマに。
多分、見捨てて放置しとけば、泣きながら部屋から出てくると思いますよ(ゲス顔)。

ちなみにアダルトグッズはアルテラに良い文明認定されました、ヨカッタネ。





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ときめきメドゥリアル(メドゥーサ)

メドゥーサさんの最終再臨がその手のお店の写真にしか見えない件。
いくら払えば、ヤれまグアァッ。








サーヴァントととの学園恋愛ADV出せば、売れると思う。
いつか出たりしない?


――――――冬木市

 

それは頼むから余所でやってくれと思わんばかりの英霊がドンパチやりあったり。

集団規模で意識が昏倒したり、聖杯くんの泥がまき散らされたり。

時には、魔法少女が飛び回ったりとか。

その被害は大体ガス会社のせいにされたりとか。

色んな意味で常に不運にまみれている都市だったりする。

 

 

 

 

今、俺はそんなどこか冬木市に似ているようで違うような街中を歩いている。

 

 

 

 

何故か女子高生姿の眼鏡メドゥーサさんと。

 

「ほら、メドゥーサさん、もっと寄り添って歩かないと」

 

控え目に俺の腕を恥ずかしそうに掴んでいるメドゥーサさんの肩を抱き、もっと密着するように促す。

 

「きゃっ!しかし、マスター、これは少々、恥ずかしいというか何というか……私のような可愛げのない大女がこんな学生の格好して、恋人紛いの行動で浮かれているように見える姿は滑稽ではないでしょうか……?

さっきから、視線も突き刺さって……もしかして、笑われているのでは……?」

 

「違いまーす、皆メドゥーサさんが可愛くて目が離せなくなっているだけでーす」

 

後は殺さんとばかりの嫉妬の視線もあるかもしれないが。

 

「可愛くは無いですよ……女にも関わらず、マスターとほとんど身長が変わらない大女なんて……やはり、姉様方の言う通り無理やり着込んだような今の私の姿は……」

 

ええぇい、うるさいっ!

俺が可愛いって言ったら可愛いの!真実はそれ一つだ!

俯いている彼女をお姫様だっこで持ち上げ、辺りをクルクルと踊るように周り始める。

 

「えっ!?あの…ちょっ!」

 

「かわいい!!かわいい!!メドゥーサさんかわいい!!

自分の魅力に気づいていなくて、身長気にしているのかわいい!!

本当はもっとフリフリした物も着たいのに諦めちゃってる所もかわいい!!

本気モードで魔眼をピキーンとする所もかわいい!!

いつもボンテージみたいな戦装束を着ているのもエロくてかわいい!!

一緒に部屋で読書してて、こっちが先に寝ちゃうとさりげなく毛布を掛けてくれる所もかわいい!!

抱きしめてあげると、色んな所が柔らくて、気持ちいい所もかわいい!!

今、こうして褒められまくって真っ赤にして俯いちゃっってるのもかわいい!!」

 

「うぅ……」と赤面でお目目クルクル状態のメドゥーサさんを納得するまで、公衆の面前で褒めまくる。

公開処刑?違います――これも愛なんです――。

まぁ、外野からは「リア充だ」「リア充かよ」「はえーすごい」「ちっ、リア充め」「妬ましい……」「あのお姉さん可愛い」「結婚しよ」「サバ充っすね爆発しろ」「いじめかっ!」等々、聞こえるが特に問題はないネ!

 

うう―――ん?けど、俺ここで何でこんな事してんだろう……?

 

と事の発端を回想する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何?また、お見合い問題?」

 

「はい、以前あなたと恋人のふりをしてデート紛いの事をしたんですが……どうやら姉様方があれだけでは満足しなかった様子で……」

 

まぁ、あの時やった事と言えば腕組んで街を歩いたり、絡んできた時代錯誤のチンピラ紛いを石にしたぐらいしかやってないからねぇ。

 

「しかし、満足かぁ……あぁ、いっその事、あの女神様方の前でメドゥーサさんと一発ヤッた方がいいんじゃない?そしたら色んな意味で納得してくれそうだけど」

 

「……い、いえ、さすがに私もあなたとの情事を姉様方に見せるのはちょっと……というよりも最悪、嬉々として参加して私を弄んでくる予感が……‘あぁ、やめてください、姉様方……ち、ちがうんです、わたしはそんな変態じゃ……やぁ……‘」

 

その最悪の予感を想像してしまったのか、ガクガクと震えるメドゥーサお姉さん。

私は別に一向に構わんのだがっ!

 

「……はっ!と、ともかく、姉様方曰く――

 

『あのデートは少し、退屈で古臭かったと思わない?(エウリュアレ)?』

『そうね、(ステンノ)。場所選びもセンスないし、服もいつもの野暮ったいボンテージもどきだし、本当に駄目ね、あの駄妹(メドゥーサ)は』

『今度は年頃のマスターに合わせたセンスのあるデートプランにしましょうよ、(エウリュアレ)

『制服デートとかいいんじゃないかしら、あの愚妹(メドゥーサ)が女子高生の格好してマスターに甘えるのよ。きっと愉快な、じゃなく素敵な事になるに違いないわ、フフフッ』

 

…………との、事らしく……うぅっ……」

 

落ち込むお姉さんをそっとしておくのも優しさ。

俺は前のデートはそれはそれで楽しかったけどなー。

マシュの目線がずぅっと突き刺さってたのはアレだったけど。

 

「つまり、今度はもっと現代に近い所でその制服デートやらをしろと?」

 

「はい、あなたは察しが良くて助かります。おそらくいつもの如く、お見合いは建前で慌てふためく私の姿を見るのが目的だと思いますが……」

 

「うむっ!それじゃあ、制服とやらに着替えてさっそく行こうかっ!場所の準備はもう出来ているんでしょう?」

 

少々、驚いた顔をしてこちらを見るメドゥーサさん、あれ?何か変な事言った?

 

「………………即決ですね、私はまた姉様方の思い付きにあなたを巻き込んでしまったのに……

もっと渋ったり、抵抗しても問題は無いでしょう……」

 

「ははは、確かにエウリュアレとステンノは面白半分で人を弄ぶこともある。けどやっぱり、それでも妹思いの所はあるしね。だから今回は君に楽しんで欲しいっていう気持ちもあるんじゃないかな?ていうか、俺も滅茶苦茶メドゥーサさんと制服デートしたいし」

 

本人達は間違いなく否定しそうだけど。

それに思い立ったが吉日とも言いますし。

 

「……あぁ、全く本当にあなたという人は……」

 

呆気に取られていた彼女はふっと微笑むと着替えが入っているであろう袋を手渡してきた。

 

「では後程……姉様方が言うには

待ち合わせは『ごめ~ん、待った?』『ううん、今来たトコ』とのやり取りが鉄板らしいので少し時間をずらしましょうか?」

 

あの娘達もあの娘達で少々センスは古臭いと思うんだけどねぇ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とこんな経緯だった気がする。

しかしこの俺も再び学生服なんて着る事になるとは。

薄茶色の学ランっぽいけど、どこの学校の制服なのかなぁ……?

とりあえず、目の前で突っ伏したまま微動だにしていないメドゥーサお姉さんに声をかけますか、ツーンツンと。

 

「どうして、あなたは平然としているのですか……まさか、あそこまで辱めを受ける事になるとは……えぇ、忘れていましたよ……マスターもどちらかと言えば、姉様方寄りのタイプだった事を。あぁ……生まれ変わったら、赤いリボンが似合う薄幸そうな少女に生まれ変わりたいぃ…………」

 

そんなに恥ずかしがるような事ありましたかねぇ?

メドゥーサさんをお姫様抱っこしながら、商店街を凱旋し、小腹が空いたので、とりあえずそのままレストランに入っただけだよね?

何故かウェイトレスちゃんが赤面で困惑してたり、店中の視線が突き刺さってたけど……皆さん、ちゃんと食事する時は食べ物の方を向いて食べなきゃダメっすよ。

 

「お姫様抱っこで飲食店に入ってくる制服カップルなんて前代未聞でしょうに……

絶対に浮かれているバカップルだと思われていますぅ……ふふっ、フフフフフフフフフフ…………」

 

あ、壊れた。

仕方あるまい、注文はこちらで済ませようか。

ウェイター!彼女にコーヒーを!!……じゃなくて、ヘイッ!ウェイトレスさん!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大変、お待たせしました。

こちら、『ツインアイス・ビッグクランチパフェ』がお一つ、そして『カップル限定ラブール・エスポワールジュース』がお一つ、ご注文は以上でよろしかったですか?」

 

はいよろしいでーす。

前で「何てもの頼んでいるのですか、あなたは……」って声が耳に入るがスルーで。

というかいつの間にか復活していたのね、メドゥーサさん。

 

「えぇ、もう色々と諦め…吹っ切れましたので、御見苦しい所を見せてしまいました」

 

「いやぁ、むしろ新鮮な物が見れて、楽しかったよ俺はメドゥーサさん可愛すぎるっ!て事も再確認したし」

 

照れたようにはにかむ彼女はジュースの方に口を付ける。

当然、カップル限定なので二つのストローがハート型を作るように絡まっている。

吹っ切れたというのも事実なのだろう……メドゥーサさんはもう片方のストローで俺にも飲むように目配せをしてきた。

頼んでおいた自分が言うのも何だが、傍から見ると、頭スイーツなカップルにしか見えないよなぁ……こんな事してると。

量はそこそこあるとはいえ、二人で飲んでいるので中身はどんどん減っていく、口は塞がっているので、眼鏡っ娘ライダーさんをガン見しながら存分に愛でるぐらいしかやる事がないな。

あっ、プイッて目逸らされた悲しい。

 

 

 

ジュースを飲み終えた後はメドゥーサさんがパフェからスプーンで掬い、それをこちらに向ける。

あら?もしかしてアーンという奴ですか?

 

「えぇ、あなたにやられっぱなしというのは癪なので、私も少しはやり返させて頂きますよ」

 

成程、成程……ちょっとした復讐という奴ですか。

しかしこのマスター、今更アーン程度で照れるような男ではないっ!

既にその場所は2000年前に通過しているっ!

 

「では、失礼します。マスター」

 

彼女はクリームとチョコが混ざったスプーンの先を口に入れてくる。

……っとと、ちょっとほっぺたについたのですが、メドゥーサさん。

 

「あぁ、申し訳ございません。すぐに拭きますので」

 

そう言って、身を乗り出し、俺のほっぺについたクリームを指で拭い取り、そのまま自分の口へ運んでいった

 

「んちゅっ……れろっ、ちゅぱっ……ふふっ、中々に美味ですね」

 

うわぁ、舐め方がアダルトチックぅ、ぐぬぬ……これは少し意表を突かれたな。

どうしようかね、やり返そうにも同じ事は二番煎じだからねぇ、もう一段階上を行かなければなるまいて。

 

「はい、じゃあ、メドゥーサさんもアーン……」

 

おそらく俺がさっきと同じ事をやると思っているのだろう、余裕のある大人のお姉さん的な表情で口を開けるメドゥーサさん。

くくっ、その顔を歪めてやんぜっ!

 

「あっ、ほっぺについてしまいましたね、ふふっ、取ってくれませんか?マスター」

 

はい、喜んで――身を乗り出し、彼女の口についたクリームを取る。

今度は指ではなく、舌で……。

 

「えっ、ひゃっ!ちょっと、マス……」

 

口元に付いていたそれを舐め取る、だが俺のターンはまだ終わっていない!

美味しい物は互いに分かち合うべき、舐め取った物を口に含め、そのまま今度は彼女の唇へ。

 

「んっ、やっ……まっ……んちゅ、ちゅ……ちゅるぅ……」

 

止めようと彼女が口を開けた隙に自身の舌を捻じ込む。

パフェの甘さか、メドゥーサの元々の口内の甘さか、わからなくなる程に彼女とのディープキスは甘美であった。

逃げようとする舌を追いつめ、絡め、吸い尽くす、まるで自分が蛇にでもなったかのような錯覚に陥ってしまう。

 

「……ちゅぱぁっ……んはぁ、はぁ……ますたぁ……」

 

しばらく口の甘さを楽しみ、解放してあげると、蕩けた顔で目を潤め、こちらを見つめる彼女。

どうやらスイッチが入ってしまったようだ。

さてさて俺も第2ラウンドは大歓迎なのだが場所を変えなくてはならぬ、公共の場でやるような事じゃなかったすわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後、すぐさま残ったパフェを胃に掻き込み、お会計を済ませた。

ちょっと店に迷惑かけたかなーと思ったけど、ウェイトレスさんは「い、いえいえっ!こちらもご馳走様でしたっ!」って逆にお礼言われるし、店の男衆には「ありがとうございましたあぁぁっ!」って頭下げられるし、てかお前等、何で全員前屈みなんじゃ?

 

店から出て、せっかくの制服デートなんで学校でも行きたいねーと言ってみると、あっさりと了承。

どうやら、この服の学生が通っている学校が近くにあると……姉様方の手によって既に人払いは済ましてあるので存分に楽しむがいいとの事。

今まで様々な試練とやらを用意していた所もそうだけど、意外にマメだよね女神様方。

 

 

 

 

そんなこんなであっさりと学校に入れてしまいました。

二人で雑談を交えながら歩いていると、無人の教室に到着。

……ふむ、この無個性ながらもクラス毎に個性がある不思議な感じ……。

 

「懐かしいですか?」

 

メドゥーサさんが机に腰かけている俺にそう声を掛けてきた。

 

「懐かしいと言えば、懐かしいかもしれない。つい最近だった気もするし、もう大昔のように感じる気もするんだよね」

 

この場もレイシフトの技術と女神様方のご厚意で存在する人理とは無関係の別次元の世界ではあるけども、本来の世界が何事もなく存在していれば、こういう学校で通学しているのが当たり前になるのかなーと考えてみたり。

 

「あなたの学生時代……ふふっ、随分と破天荒だったんでしょうね」

 

「いやいや、どこにでもいる平凡な学生Aだったよ。

一般募集でカルデアに来たパンピーに何を期待しているのさ。キング・オブ・ザ・普通と言われたこの俺に」

 

首を傾げながら、「普通?あなたが普通……?普通のゲシュタルトが崩壊してきますね……」と呟くJK系ライダー。

失礼な、俺こそ世界で一番冒頭で『俺はどこにでもいる普通の学生だ』という書き出しが似合うと男と言ってもおかしくないでしょうに……。

 

空気を変えるかのように俺に近づいてくるメドゥーサ。

 

「いつもはマスターとサーヴァントの関係である私達がこんな格好で学校にいるのは少し不思議な気分になりますね……」

 

「そうだね、今は容姿端麗、成績優秀な美人生徒会長さんと特筆すべき所がない普通の副会長って所かな?」

 

「どうあっても普通の部分は譲らないのですね……なら、人気のない教室で男女が二人っきり……あなたはどうします?」

 

やはり、先程のディープキスの熱は冷めていなかったのだろう、蠱惑的な眼差しで俺に問いかける。

 

「そうだね、なら、こういうのはどう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後、夕暮れ時の無人の教室。

私は彼のクラスでもあるそんな所に一人でいた。

彼とは只の生徒会長と副会長の関係、それ以上でもそれ以下でもない。

ここは規律が厳しい学園、生徒会での恋愛スキャンダルなどご法度だろう……ましてや、副会長の方はどこにでもいる平凡な学生、間違ってでもそんな関係になってはいけない

彼に、数多の心無い誹謗中傷や嫉妬が襲いかかってもおかしくないのだから。

 

彼に迷惑が掛からないように、自分の感情は押さえている。

あぁ、なら何故私は今こんな所にいるのだろうか……?

ふらふらと誘蛾灯に誘われるように彼がいつも使っている窓際の机の前へ。

いつも、生徒会の用事で呼びに来ているので席は覚えている。

 

私は生徒会長、彼に触れたい気持ち等、起こしてはいけない……。

それでも昂った自分を静めるようにその机の角の股にこすり付ける……。

 

「んくっ!……くふぅ……」

 

体中を電気が走ったかのような感覚に、いけないこんな事をしては、早く止めなくては……。

そう思う理性と反して、体はより強い感触を、より強い快感をと自身の秘部を擦り続ける。

 

「くぁっ……あっ、あぁっ!……もっと、つよく……んんぅ、してぇっ……」

 

まるで彼に触られているかのような錯覚に陥りながらも必死に腰を前後へと動かす、懇願するような喘ぎも口から漏れてしまう。

 

――夢中になっていると誰かにトントンと肩を叩かれた。

 

「……う、うそ」

 

息を飲み、後ろを振り返ると……この姿を一番見られたくなかった副会長の姿が。

 

血の気が引く、‘いや、違うのです、これは‘、‘誤解です、あなたが思ってるような事は何もありません‘と言い訳の言葉も弁明の言葉もうまく口から出てこない……。

そんな私を見て、彼はいつものように微笑み「そのまま続けて下さいよ」と言った。

 

え?困惑する私を見て、彼は右手で私のお尻を掴み、机の角へと押し付けた。

 

「あぁぁっ!」

 

そのまま耳元で「ここで止めたら、全部言っちゃいますよ。学校一美人の生徒会長が放課後に副会長の机で淫行している変態さんだって事を」と囁かれた私は脅し文句に屈したのか、彼に触れらた事で欲情の熱に思考が犯されてしまったのか、さっきよりも激しく自慰を再開した。

 

「んんぅっ……あっ、ああっ……んっ、やぁ……はあぁっ!」

 

興奮の度合いは先程とは段違いになっている。

つい、もしかして後ろの副会長は私の都合の良い妄想なのではと考えてしまう程に。

 

一人、盛っている私に彼はあろう事か生殖器官とは関係ないもう一つの穴に指を押し付けてきた。

 

「んあぁっ!やめぇ……そんなぁ、おしりのあな、んひぃっ!……あっあっ、やあぁっ……」

 

彼は楽しそうに下着ごしから、そこをいじくり回す。

「生徒会長さんがお尻の穴いじられながら、人の机の角にアソコを押し付けて、グショグショにしているなんて皆知ったらどう思いますかね?好きなだけイッていいですよ、変態さん」と否定の言葉も返せず、彼に嘲笑される度に愛蜜が止まらなくなり、目の前がチカチカする。

そして………。

 

「あぁっ……!だめぇっ、いっちゃぁ……いくぅ……いくぅっ!……はアァぁっ!!」

 

体を思いっきり仰け反らせ、達してしまった。

 

こんな弱みを握られたら、彼に何をされても逆らえないかもしれない。

あぁ……けどもう我慢しなくていい……。

これからはもう好きなだけ…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前で盛大にイッた後、そのまま俺の体にもたれ掛かった彼女は息を整えてた。

 

「どうだった?このシチュエーション?」

 

「……はぁ、はぁ、はぁ……最初はただのごっこ遊びの延長線のようなものかと思いましたが、服装や場所がそうさせるのか普段出来ないようなこのプレイ…………何だかすごくゾクゾクしました」

 

「二人ともノリノリで役になりきってたからね、それで続きはするかい?会長さん?」

 

何なら別のプレイでもいいけど、コンプレックスを抱えている後輩プレイとか女教師と男子生徒の禁断補修プレイとか、わしのプレイは百八式まであるぞ――。

 

「ふふっ……私は弱みを握られてしまいましたからね。あなたの好きなように命じてくれていいんです……よ……」

 

「……そっか、ならまずは、床にしゃがんで胸と口でご奉仕をお願いしようかな」

 

命じられるままにリボンとボタンを外し、器用にブラジャーを外した彼女は大きいながらも形の美しさは一切損なわれていない巨乳を曝け出した。

 

「はぁ、窮屈そう……ですね……」

 

俺のファスナーを下げ、出てきたソレを眺めているうっとりとした表情の彼女は先程零れた自身の愛液を蜜肉から肉棒へと塗りたくっていった。

 

「んっ、あぁ……大きくて……あばれんぼうですね……はぁ、あぁっ」

 

胸に挟み、潤滑液のおかげでスムーズに扱く事が出来ている。

圧倒的なボリュームで視覚的にも感覚的にも二重に襲いかかる快感はつい俺の表情を歪めてしまう。

二つの巨実の中を出たり入ったりしている亀頭も舌でチロチロと舐めながら、時には口に咥え、吸い尽くし、こちらを伺うメドゥーサの恍惚とした顔がこちらの興奮を高めてくる。

 

「んちゅ、ちゅぱぁ……すきなところへぇ、れろぉ……ちゅむぅ……だしてぇ、よいのですよぉ……んじゅ、ちゅう……じゅるるっ!」

 

肉棒全体が味わっている快感に為す術はなく、彼女の口から亀頭を引き抜くと顔に精液をぶちまけた

 

「ちゅぱぁっ!あっ、きゃっ!こんなにたくさんぅ…んちゅる……ぺろぉ……」

 

顔射されても気にすることなく、顔についた白液を指と舌で舐め取っていく。

 

「……ちゅ、はぁ……てっきり口の中に出されると思いましたが……」

 

「いやぁ、せっかく眼鏡っ娘版メドゥーサさんなので、眼鏡ごとその顔を汚したくなった気分になったというか……」

 

何故顔にかけたのと問われれば、そこに眼鏡っ娘がいたからとしか言いようがない。

別に変態じゃないよね?普通に思春期の男の子なら誰だって抱いてもおかしくない感情だと思います。

 

「あなたも変態さんですね……まぁ、どちらも変態でお似合いの生徒会コンビかもしれませんが、ふふっ……」

 

そう冗談めかした彼女は立ち上がり、机に手を乗せるとお尻をこちらへと向け、いつの間にか丸出しになっていた濡れそぼった女性器を見せつけていた。スカートは穿いたままって所がグッジョブ。

 

「私はあなたに逆らえませんから……身も心も好きにしていいのですよ……」

 

制服を着崩して胸とアソコを曝け出しているお姉さんに誘惑されて、我慢できる奴はいるのだろうか、すまぬ、俺は無理だ。

 

あれだけ出しても硬さを失っていない自身の分身をバックから挿し込んでいく。

互いにもう昂ってしまっているので、すぐに激しく求めあうように交わり合った。

 

「はあぁっ!はんっ……こんな獣みたいなぁ……やあぁっ……!はぁっ、あぁっ、あっ……!」

 

背中から覆い被さるように腰を動かし、そして大きく揺れ動いている彼女の胸も放置するのは忍びないので、しっかりと弄らせてもらう。

 

「ふあぁぁっ!いいぃ……むねぇも、あぁっ!いじってぇ……、んあぁぁっ!」

 

手の平では掴みきれない胸を揉み解し、先端のピンク色を抓ることも忘れない。

 

着ていた制服は汗やら他の液やらのせいで酷い事になっていたが二人ともそれを気にする余裕は無かった。

 

ある事を思い付いた俺は繋がりあったまま、机の上にあった彼女の上半身を窓ガラスへと押し付けた。

 

「はえぇ……?ああぁ…やあぁ!そとにぃ……みえてぇ、あっ、おしつけないでぇ……やぁぁ、はあぁぁ……!」

 

人払いは済んでいるから、誰かに見られる事はないがガラスに押しつぶされている巨乳を外界に曝け出しているのは恥ずかしいのかもしれない。

まぁ、口では抵抗しているがこの特異な状況に酔っているせいか、膣内の握り込んでくる力はどんどん強くなってくるんですがね、とりあえず、今度はしっかりと中へ出させて頂きますかっ!

 

「んあぁっ!なかでぇ、またぁおおきくぅ……あっあっやぁぁっ……はああぁぁん!!」

 

 

 

腰の力が抜け、二人で重なりあったまま床に座り込む。

 

あぁ――なんか教室で制服っていう環境が背徳的だったのか、ものすごい量出た気がする。てかまだちょっと出てるし。

 

「あっ、あぁっ、おなかがあつくてぇ……んあっ、まだ出てる……んっ、ふふふ……」

 

チラリと下を見ると、こちらの学ランのボタンを外し、まだまだ続行する気マンマンのメドゥーサさんが。

 

「……はぁ、はぁ…………あなたがこれでもう終わりの筈はないでしょう?……はぁ……せっかく普段出来ないような貴重な体験ですので、もっと二人で……身も心も溶け合いましょう……?」

 

 

 

ははっ、今日は帰るの遅くなっちゃうかな――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




≪ツインアイス・ビッグクランチパフェ≫
金メッキの杯で出来た、上に乗っている巨大なバニラアイスとチョコレートアイスの二つが特徴的なパフェ。昔、色黒の隠れキリシタンがこのパフェを生み出したというが真偽は定かではない。ちなみにカロリーは1637kcal。
税込み:460円

≪ラブール・エスポワールジュース≫
別名、『恋は明日への希望なり』。
メリゴーランドにいそうな二頭のお馬さんがコップの縁を飾る奇抜なデザイン、当然ストローはハートの形を成している。カップル限定と言っているが実は一人でも頼めたりする。時々、「マリィー」と呻きながらこれを一人で飲む処刑人の姿が見られるという噂があるが真偽は定かではない。
税込み:112円







「神聖な学び舎で何をしとるんだコイツらは……」

ちなみにこの後、二人は盛り上がり過ぎて、学校で第5Rぐらいまでヤッた模様、これには覗いてた女神様達もドン引き、バッチリ見られてますよメドゥーサさん。
やはり、姉より優れた妹など存在しねぇ!



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くろっく・たわぁー(ジャンヌ・ダルク・オルタ)

???「遂にFGO人気投票第一位(当社調べ)のあのキャラが堂々と登場!世界よ、これが英霊(ヒーロ)よ!」

ぐだ男(一人で何してんだろう‥‥‥?あの娘)








ノッブ回の文字数を超えてしまった。喜べ、お前がNo.1だ。


薄暗い、監獄のような部屋。

人気も無く、そもそもここに生者が存在するかすら怪しい。

俺はいつものように自分の部屋で就寝した筈だ……どうして、こんな所に。

 

「絶望の島、監獄の塔へようこそ先輩!罪深き者、此処は恩讐の彼方なれば、如何な魂であれ囚われる!」

 

・・・・・・・・・・

 

目の前には不形の亡霊が突然現れて、こちらを睨み付け唸っている、いつ襲いかかってもおかしくはない。

 

「ふふふ、さっそくお出ましのようですね、暖かく脈動するあなたの魂が気に食わないのでしょう。

ずいぶんと苛立っているようにみえ」

 

オラアァッ!!

 

「キシャアァッ!?」

 

――――――シュワァァァァッ………

 

 

「え?」

 

「かつてステゴロ聖女は言いました、『拳と祈りさえあれば、この世に殴れないものは無い』と……ありがとうマルタさん。全てはあなたの教えのおかげです」

 

「ごめん、待って、え?何でゴーストがマスターの拳一発で消滅するの?ここは私が颯爽と登場して、ピンチを救い、あんたが『お前は何者だ!?』って感じのパターンでしょ?違う、違う違う!」

 

「何してんの?邪ンヌ」

 

「あっさりと名前バラすんじゃないわよっ!」

 

部屋の隅で待機してたのであろう邪ンヌが飛び出てくる。

おそらくというか間違いなく、この既視感ましましの監獄ルームも彼女の仕業だろう。

贋作騒動の時といい、ホントにトラブルメーカーなんだから。

 

「あれでしょ?巌窟王がシリアスムードで相棒ポジを確立しつつ、マスターをかっこよく導いちゃったもんだから、同じアヴェンジャーとして羨ましくなっちゃったんだよね?」

 

「は、はぁっ?どどうして、私があんたなんか導かなきゃならないワケ?べ、別にあんたと相棒として一緒に苦難を乗り越えて、感動的なラストで絆を深めちゃったりしたいとか全然思ってないしっ!」

 

語るに落ちる所まで落ちてますよ邪ンヌさん。

顔を赤らめ、手でパタパタと扇ぎながら目線を逸らす彼女、何この復讐者滅茶苦茶かわいい。

 

「ふぅっ……、ともかくっ!あんたはこの監獄塔に囚われているわけ、生きて脱出するには私の力を借りるしかないわよ。

さぁ、どうします人類最後のマスター?あなたはこのアヴェンジャーの手を取りますか?」

 

さっきの醜態は無かった事にして渾身のドヤ顔を披露する邪ンヌちゃん。

ふむ……果たしてそうかな?

 

ここにP先生から頂いたアゾット剣があります。

これをこうします。

 

「アサ次郎直伝、秘剣『燕返し』ィ!!」

 

――――――ザアンッッ!!

 

多重次元屈折現象起こすのは当然無理だけど、空間に亀裂を入れるぐらいはできそうかな。

よぉし、じゃぁもういっちょ………一刀にて証をしめ

 

「待って、お願い、正直に言うからっ!本当はマスターとこの監獄塔を踏破したいんです!こう私もかっこいい所があるって見せたいんです!だから無理矢理出ていこうとしないで!!」

 

さて、冗談と邪ンヌいじりはこれぐらいにしておきますか……剣をしまい、俺の肩を掴む邪ンヌの方に目を向ける。

 

「いくらなんでも、魔術礼装があるからって次元の壁は壊せないよ。俺を何だと思ってるのさ邪ンヌは」

 

「……あんたならマジで出来そうだから、笑えないのよ」

 

憔悴した顔でぼやく彼女。

出来ないと言っておろうに……。

 

まぁ、いいさ。それじゃあ、この「じゃんぬのかんがえたしゃとー・でぃふ」を攻略するとしましょうか!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~1日目、第一の扉:嫉妬の罪

 

 

 

「あなたは誰かを羨んだコトはありますか?」

 

「あるねぇ」

 

「己が持たざって、あんたがあるのっ!?」

 

完全にメンタルリセットシリアス顔だった邪ンヌが驚き、こちらを振り返る。

 

「バベッジさんとテスラさんかなぁ……ああいうマシーン的な魅力に男の子は抗えないからねぇ」

 

え?エジソンさんは?ってさすがの俺でも頭を獅子にするのはちょっと……。

 

「頼めば体の一部ぐらいに機械引っ付けてくれないかな――こう、アイアンマスター的な感じで」

 

「そんな事しようとしたら全力で止めるわよ。全く、これ以上人間やめてどうする気よ……さっ、着いたわよ、ここが第一の扉、待ち構えるは嫉妬の罪」

 

 

 

 

薄暗い通路を抜け、巨大な扉の先の広間に待っていたのは――――。

 

「あぁ、妬ましい妬ましい。マスターに抱かれた全ての女共が妬ましい」

 

「えっ、アタランテ」

 

「いいえ、あれは嫉妬の罪を以てあなたを殺す敵よ」

 

いやいや、若干やさぐれているがどっからどう見てもアタランテじゃろ。

 

「当たり前のようにマスターの隣に立っている汝も妬ましい。

どうせ、私を倒した後はしっぽりムフフというやつなのだろう?

私なんてロリ化させられて幼児プレイぐらいしかやっていないというのに……いや、あれはあれで素晴らしく良かったしまたお願いしたいぐらいだが、やはり大人の女としてマスターに戴かれたいのだ」

 

「しし、しっぽりなんてしないわよっ!い、いやらしいっ!……なんか想像してたのと違うけど……まぁ、いいわ!嫉妬の具現者よ!貴様を打ち砕き我々は先へ進む!我が憤怒の炎を以って!!」

 

「そうか。つまり隣にいる黒魔女を倒せば、私がマスターと一発キメれるというわけだな。

少し待っていろマスター、なあに実は例の薬はキチンと持ってきているからな。

汝が幼女姿の私にしか欲情出来ないというのなら、その性癖もしっかりと受け入れてあげようではないか……ふふふふふふふふふふふふふふふ」

 

「いい加減にしなさい!あんたのどこが純潔よっ!」

 

こうして締まらない感じでちょっと狂化入りかけているアタランテちゃんとアヴェンジャーが激突しました。

 

 

 

 

 

 

 

「……マスター、私といつか子を……」

 

――――――シュウゥゥン……

 

 

ごめん、アタランテちゃんここから帰ったら死ぬ程お詫び(意味深)はするから。

 

「アハハハハハハハハハハハハッ!!これがマスターを有した戦いという……やんっ!」

 

滅茶苦茶高笑いしている邪ンヌのお尻の撫でて正気に戻らす。

 

「なな何すんのよっ!」

 

「こんな所で悦に浸ってないで部屋へ戻るよ、2日目に備えて、休息を取らないと」

 

「何よ…もう少し余韻に浸からせてくれてもいいじゃない……」とブツクサ文句は聞こえるがスルー、明日の英気を養う為にも休憩は大事ですよ(ゲス顔)。

 

 

 

 

 

 

その後、部屋に戻った俺は「私は別の所で寝るからいいのっ!」とか何とか言ってた邪ンヌちゃんを無理矢理寝床に連れ込み、同衾した。

 

とりあえず、次の日まではずぅっとベッドの上で彼女を後ろから抱き締めながら耳に息を吹きかけ、耳たぶをハミハミと噛みながら、時折その中を舌で舐めつくしてあげた。

 

「んぅっ!ふぅ、んふぅっ……あっ、やぁ……かむなぁ……はぁっ!ぐしょぐしょってみみがおかされぇ……やぁっ、あっ、んんぅっ……!」

 

腕の中でピクピクと悶える邪ンヌちゃんは凄くかわいいかったです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~2日目、第二の扉:色欲の罪

 

「主に私は女の子が好きですが、マスターも好きですっ!!」

 

「何て格好してるのよ!あんたはっ!」

 

第2の扉の先に待ち構えていたのはメドゥーサさん。

しかし、何故か格好は本当に大事な所をだけを隠しているマイクロビキニであった。

ちょっとセックスアピール強すぎんよぉ。

 

「い、いえ、私も好きでこのような格好をしてるわけでは……気づけばこんな所でこんな姿でいたのであって、あんまり激しく動くと色々と見えてしまうので私としては早く終わらせてくれるとありがたいのですが……」

 

「邪ンヌ、あのお姉さん可哀想だよ。慰めていい?こう精神的にも肉体的にも」

 

「デュヘられたいの?あんた」

 

アッハイ、大人しくしてます。

さすがに宝具ブッパは勘弁。

 

「ふふふ、心配には及びませんよマスター、ここではなくても後で私の部屋へ来てくれれば、好きなだけこの水着を堪能させてあげますよ」

 

え、マジで?やったあ。

 

吼え立てよ、我が憤怒(ラ・グロンドメント・デュ・ヘイン)!!」

 

あぁ!メドゥーサさんがっ!

 

「あ、これで私の出番は終わりみたいですね、良かったぁ……。

けど、また姉様方にイジられるネタを提供しただけのような気も……」

 

――――――シュウゥゥン……

 

 

「あんたこそ色欲の罪が一番似合いそうね。馬鹿マスター」

 

ジト目でこちらを睨み付けてくる邪ンヌ。

失敬な、年頃の男子ならこれぐらい珍しくないですよ――。

 

 

 

 

 

 

その後、第2の扉を踏破し、前日同様部屋へ戻った俺はまたまた同じように抵抗する邪ンヌをベッドへ連れこんだ。

今度はお互い顔が見えるように向きあい、口付けを交わしていく。

最初は頑なに口を開こうとしなかった彼女だったがしつこいぐらい唇を舐め、甘噛みしていくと……やがて諦めたのかゆっくりと開き、舌を受け入れてくれた。

 

「ん、んっ……んちゅ……やぁ、はむぅ……ちゅ、ちゅるっ……んっ、んはぁ……もうっ…あぁっ…ちゅうぅ……」

 

恥ずかしがって目を瞑る彼女を追い詰めるようにひたすら舌を弄ぶ。

感じる度に開かれる瞳は完全に蕩けており、歯茎の裏をくすぐると大きく反応する。

1日中、呼吸困難になるまで口を貪り合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~3日目、第三の扉:怠惰の罪

 

「ういぃ――――――、あれぇ――、あるじぃー?

なんでこんな所にいるんだ――?あはははははははははははははは」

 

第三の扉の先に待ち構えていたというより、酔い潰れていたのは荊軻お姉さん。

これ怠惰というよりもただのアル中ですね。

 

「ちょっとあんた!飲むなとは言わないけど一応敵なんだからシャキッと待ち構えていなさいよ!つーか酒臭っ!」

 

「う――、だってなぁ、唯一の私の萌え要素と言っても良かった泥酔キャラのお株がどこぞのシールダーに奪われたんだぞ――、なんだあのあざとさは――――、さすがメインヒロイン格が違ったってやつか――、もう私に何も残らないじゃないか――、やってらんないわ――…………う、うわあああああぁぁん!!」

 

確かに酔いどれマシュはホントに可愛かった。つい桜の下でイタズラしてしまう程。

けど完全に面倒くさい方向へ進んでしまっているけーかさん、俺はそんなあなたも大好きです。

 

「…………うぅ――――……というわけでこの哀れな自暴自棄系泥酔年上姐さんをお持ち帰りする権利をあげるぞ――!いざっ!!」

 

酔っ払いとは思えない俊敏さでこちらへ襲い掛かってくる荊軻さん。

 

「そうよっ!動機はまぁ不純まみれだけど、敵サーヴァントがマスターに襲い掛かり、私がそれを庇うかのように前へ出て戦う!こういうのを求めていたのよ!」

 

「邪魔だ!性処女!」

 

「合ってるけど、何か違う気がする!」

 

 

 

 

 

 

 

「酒は……我が人生……ガクッ」

 

――――――シュウゥゥン……

 

 

「はぁ、はぁ、こいつ酔っ払った方が強いんじゃないの?ふっ、まぁ私の独壇場だったわね……ど・く・だ・ん・じょ・うだった、わね!」

 

どこの皇帝様だよ君は。

それでも良い戦いっぷりだったのは事実なので頭を撫で褒め称えてあげる。

 

「……何、気安く触ってんのよ……………………フフッ」

 

憎まれ口を叩きながらも嬉しそうにする彼女はやっぱり褒められるのは好きなんだろうなーと思いながら一緒に帰る。

 

 

 

 

 

 

前日同様ベッドで一緒に休息を取る俺達、邪ンヌももう諦めかけてるのかそこまで抵抗はしなかった。

さすがに胸元の服を肌蹴させたら少し暴れたが無問題、首の鎖が谷間に埋もれる程に実はサイズがある彼女の胸を後ろからひたすら揉み続けた。

目の前にある薄金色の髪を嗅ぎながら、あえて他の場所には手を出さず。

 

「あっ、あぁ……やあぁ、もういつまで揉んでぇ…んあぁ……はぁ、あっ、んひぅっ!そこつねるなぁ……あぁっ、だめぇ……やあぁっ……!」

 

充血している胸の先端を軽く抓ったり、こねくり回すと面白いぐらいに反応する。

4日目がくるまではひたすら彼女の乳房を弄んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~4日目、第4の扉:憤怒の罪

 

「死ねえええええええぇぇ!!」

 

第4の扉を開けると問答無用で赤い何かが襲い掛かってきた、ってモーさんじゃないっすか、チースッ。

 

「って、危なっ!あんたねぇ!やる気満々なのは結構だけど、入っていきなり襲い掛かってくるってのはどういう了見よ!最初にお互い言葉を交わしてから戦闘に入るお約束ってもんがあるでしょう!?」

 

「うるせぇ!何がお約束だ!いきなりワケわかんねぇ役割押し付けられてマスターもいねえと思ったら、イケ好かねぇ黒女と仲良さげに出てくるしよ、オレにケンカ売ってんのか!?このアマ!」

 

もう激おこスティックファイナリアリティプンプンドリームって感じのモーさん。

あぁ、こりゃあ確かに憤怒がピッタリですわ。

 

「さすがはあの色ボケ黒騎士様の息子なだけあるわね、粗暴でホントに空気が読めないんだから」

 

「うっし、オレだけじゃなくて父上にまで暴言とは死刑確定だなてめぇ。良く見とけよマスター!本当にお前に必要な相棒ポジはこんなおぼこじゃなくてこのモードレッドって事をなぁ!」

 

「誰がおぼこよ!この狂犬女!」

 

「オレを女扱いすんじゃねえっ!!」

 

「……くっ!!」

 

うおっ、さすがは最優のセイバークラス。本人の殺る気もマンマンなので邪ンヌちゃん押されてるね、こりゃあ

このままではさすがにマズイので我が計略を以って覆すとしましょうか。

 

「オラオラァ!!」

 

完全に邪ンヌの方に集中しているモーさんの背後に回り、いつも気になっていたそのチューブトップと胸の間に手を差し込む……あぁ柔らかい。

 

「にやあぁぁぁっ!?」

 

今だっ!俺ごとやれ――!

 

「隙ありぃ!!」

 

本当に俺共々は攻撃するつもりはなかった彼女の会心の一撃は見事モーさんを捉えた。

 

 

 

「……へへっ、そういや忘れてたぜ。

うちのマスターは平気で英霊同士の戦いに手出せる奴だって事を……ガハッ……」

 

――――――シュウゥゥン……

 

 

許せ、モーさん。今回は邪ンヌのターンなんだ。

帰ったら好きなだけクエストに付き合ってあげるから……。

 

「腑に落ちない終わり方だったけど……まぁ、これもマスターとサーヴァントとのコンビプレイという奴で納得してあげるわ!ふふん、まぁそうよね。そろそろ折り返し地点だし、これぐらいの絆が深まっててもおかしくないわよねっ」

 

先程の勝利が嬉しかったのか得意げに語る邪ンヌ。

 

「うん、やっぱり邪ンヌはさいつよでさいかわですね」

 

「はっ!当然でしょう!ほらっ、ボサッとしてないで明日の為にさっさと休むわよ」

 

おやおや、自分から部屋に戻るようにしてくれるとは……浮かれてここ最近の日課を忘れてますな。

では今日は邪ンヌちゃんの頑張りのご褒美も込めてしっかりとお礼をせねばならぬか。

 

 

 

 

 

 

もはや説明の必要は無く、いつもの如く同衾体制に入る。密着している彼女が「すっかり忘れてたわ……」と呟いているが今更手遅れだしね。今度は昨日と違いひたすら股間の方を責めてあげる事にした。

 

ちょっと触っただけですぐに水気が溢れてきたので「もしかして期待してた?」と問いかける。

 

「は、はぁ!?期待なんかしてるわ、はあぁっ!やっ、あっ……このぉ……やめぇ!」

 

この娘が素直に答えるわけも無かったので返答の途中で割れ目の中へ指を入れる。

すぐに奥まで弄るという事はせずに中指の第二関節を曲げたところにあたるザラザラした部分、俗に言うGスポットの部分を指腹で延々と擦りあげた。

 

「ひぃ!あっあぁっ、んんぅっ!……そこぉ、やぁっ……んあぁっ!まって、いっちゃぁ……あぁっ!いくぅ、いく……ふぅあぁ……」

 

膨れ上がってきたクリトリスも一緒に撫でてあげながらずっと責めると、何度も小さく潮を吹くのがわかった。

その度に屈辱そうな顔をするがすぐに快感の波に流されていってしまう彼女。

明日が来るまでは女性器の愛撫だけでイカし続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~5日目、第5の扉:暴食の罪

 

「もっきゅもっきゅ、もっきゅもっきゅ、、もっきゅもっきゅ…………」

 

「「…………」」

 

「ごっくんっ、ふぅ、その顔どうやら私が暴食の罪の間にいる事が予想外だったようだな」

 

「予想通り過ぎて呆れてんのよっ!てかその大量のジャンクフードどっから持ってきた!」

 

黒ジャンヌのツッコミはどスルーで周りに散乱している食べ物の山を隅に寄せた黒王様は剣を構え、戦闘態勢に入った。

 

「ふっ、しかしボスキャラだった貴様が味方になった途端、我がマスターと和気あいあいとしてるとはな。

貴様はあれか、敵キャラの時は強敵だったのに味方になった途端にヘタレ化する系の奴か?全く元ボスとしての矜持はどこへやった」

 

「あんたそれ、もろブーメランって気付いてる?」

 

「阿呆が、私はキャラ崩壊等起こさん。サンタになろうが何しようがいつでも素敵なオルタさんだ。

だが後続にどんどんオルタが増えそうな現状は度し難い、オルタは私一人で十分よ。貴様はここで朽ちろ、2号機」

 

「はっ、随分な言いぐさね。私もそろそろあんたの後追いキャラとか思われるのも癪だった頃だわ。元祖オルタの座、明け渡してもらおうかしら」

 

「やめてー、俺の為に争わないでー」

 

「「本当に一言多いな、貴様は!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ……やはりマスターの有無が大きな差となったか……当然の結果といえば当然の結果だろう。フランスの時とは真逆だな、ジャンヌオルタ」

 

「何が言いたいのよ……」

 

互角に見えた戦いもやがて拮抗が崩れ、最終的に邪ンヌちゃんが勝利を収めた。

黒王様はどこか納得したかのような顔で彼女に語りかける。

 

「あの時、私達の前に立ちはだかった貴様がマスターと共に進んでいき、その道を私が塞ぐ。貴様らは見事私を打ち破ったわけだ。ジャンヌ、立ち位置を変えなければ見えない景色もあるだろう?今貴様が抱えている気持ちは大事にしろ。ではな……」

 

――――――シュウゥゥン……

 

 

「…………言われるまでもないわよ」

 

セイバーオルタが消えた場所を見つめ、そう呟く邪ンヌ。

 

「お疲れさま、邪ンヌ」

 

「あんたもね、まぁ今回は中々の采配だったって褒めてあげない事もないわ。今日ぐらいはマスターの無茶に付き合ってあげてもいいわよ」

 

「今日ぐらいっていうか、ここに来てからずっと付き合ってくれてない?」

 

「う、うっさいわね!さっさと帰るわよ!」

 

黒王様に言われた言葉を自分なりに納得させたのか、どこか嬉しそうだった邪ンヌちゃんと一緒に戻っていく。しかし無茶OKですか――そうですか――。

 

 

 

 

 

 

せっかくの監獄版マイルームなので普段できない事をやろうと思い、邪ンヌを裸に引ん剝いて壁に取り付けてあった手枷と鎖で手足を拘束する。

鎖分の余裕はあるとは言え、手足で体を隠す事は出来ないので大事な所はまる見えだった。

彼女の色白の肌と監獄という部屋は中々にマッチしている。

 

「……確かに多少の無茶はOKとは言ったけど、ホントいい度胸してるわアンタっ!」

 

頬を引き攣らせながら、そう叫ぶ彼女。

 

「けど触ってもいないのにお股もう濡れてるよ。案外好きなんでしょ?こういうの」

 

「……っ!ばっ!ぬれてるわけ、ひゃっ……!ちょっどこなめぇ、あっ、やぁぁ……」

 

足の先から舌で太ももを通りどんどん上へ昇っていく、既に準備満タンだった彼女の秘部の中に舌先を入れ、愛液の味を確かめるかのように吸い上げる、味はあんまりしないね。

 

「ひやぁぁ!はぁ……ぐしゅぐしゅってぇ……ああぁ、ふぅあっ……!やだっ、飲むなあぁ、あ……やああぁっ……」

 

 

下半身を舐めつくした後はヘソも舌で突きながら脇の方まで丹念に責め込み胸の方へと到着した。

その二つの乳房を円を描くように唾液をつけ、徐々に乳輪の方まで近づき、物欲しそうにしている先端へ思いっきり吸い付いた。

 

「はああぁんぅ!!すぅ、すうなぁ、あっ、やあぁぁ……なんかでちゃうぅ……ああぁ!んっ、んあっ、あぁぁ……」

 

チュパチュパと胸を吸いながらも、そういや5日目なのに互いにあんまり臭わないなーというかこの監獄塔自体あんまり臭くないというか、まぁ邪ンヌの考えた奴だからもしかしてそこら辺の時間経過はしないようにしてんのかなーと少し安心したような、残念な気持ちに駆られる。

決して匂いフェチというわけではないですよ?

 

目の前にいる鎖の音をジャラジャラと鳴らしながら身じろぐ彼女の姿は見るだけでも大きな興奮材料となる。

今日一日は拘束した邪ンヌの足指を太ももを女陰をへそをお尻を背中を胸を脇を鎖骨を首を舌でもう舐め尽くす所が無くなるまで責め続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~ぐだぐだ本能寺:監獄塔にホトトギスは鳴く

 

「うはははははははは――!この世の茶器も領地もそしてマスターも!全てわしのものよっ!」

 

「あっ、オガワハイムで見ましたそれ」

 

「同じのネタの使い回しとか恥ずかしくないのあんた?」

 

 

 

~6日目、第6の扉:強欲の罪

 

「……別にいいじゃろ、別にいいじゃろ、天丼というものがあるではないか……」

 

体育座り状態でいじけるノッブ。

ひたすら床に‘の‘の字を書き続けるノッブ。

先程の燃え盛った固有結界もどきも既に消えている……拗ねちゃったかな?

 

「それで?あんたが強欲の罪の門番?」

 

「うむっ!その通り!わしこそ、第6の扉の強欲の化身!第六天魔王織田信長じゃっ!」

 

おっ、復活が早い。さすがノッブ。

 

「よくぞここまで来た黒パイ、わしは貴様に敬意さえ抱いている。もし、わしの条件を飲むならここを素通りしても構わんぞ」

 

「なに?私の仲間になれば世界の半分をくれてやろうとかそういう奴?まぁ魔王様にはぴったりかもしれないけど、あと誰が黒パイよ」

 

「マスターを置いていくがいい。そうすれば貴様は見逃してやろう、そしてここから新しくわしと主の『ぐだぐだ・ぷりずんぶれいく』が始まるのじゃ!」

 

「だと思った。何でもかんでも欲しがるのね、このチビッ娘は」

 

「うはははははっ!仕方あるまい!与えらえれた役割とはいえ、わしは強欲じゃからのう!欲しい物は何としてでも手に入れたいのじゃ!例え貴様を骸骨にしてものう!」

 

「さっきは悪かったわね、多分七つの大罪であんたが一番真面目だわ」

 

「おっデレか?わしの前でツンデレとは良い度胸じゃ!」

 

「デレるかっ!」

 

 

 

 

 

 

「神性も騎乗もない相手には分が悪いのう……やはりこの世は相性ゲーじゃったか……だがわしを倒したぐらいで良い気になるなよ……わしが消えた所で第2、第3の織田信長が現れるじゃろう……てか冷静に考えて日ノ本国に織田信長多すぎね?むむっ!これはもしかしてセイバーウォーズならぬ真の織田信長を決める『戦国織田大戦』イベントの予感が!そして遂にそこで真の力を解放したわしは星6超魔人アーチャーとして実装が」

 

「はよ消えろっ!!」

 

 

――――――シュウゥゥン……

 

 

「前言撤回、あいつも真面目じゃないわ」

 

「うん、最後はぐだぐだだったね」

 

何とも言えない空気となり、俺達は部屋へ戻った。

 

 

 

 

 

 

「んぐっ、ちゅうぅ…ほんとにおおきいわねぇ……じゅるぅ……ちゅぱあっ、ぴくぴくして、まったくぅ……れろぉっ、ちぅむぅ……んちゅ……」

 

やられぱなっしは性に合わないという事で今度はこっちから責めるとおっしゃてくれた邪ンヌちゃん。

俺の性器を黒衣に隠れた聖パイを曝け出して、谷間に挟んで扱きながら奉仕してくれてる。

ぶつくさ文句は言っているが一生懸命にフェラをしてくれてるその姿に射精欲がドンドンと込み上げてくる。

 

「じゅるぅ、じゅぽぉ……ほらぁさっさとだしなさいよぉ、むじゅるぅ……ちゅう……じゅるるぅっ……!」

 

胸と頭を一心不乱に前後へ動かし、絞り出そうとする邪ンヌからの快感に耐え切れず、彼女の口の中でそのまま果ててしまった。

 

「むぐぐぐぅっ……!んっ!んぐっ、んぐっ……ごくっ、っぷはぁ!けほっけほっ!どんだけ出してんのよあんた……なぁにその顔?もしかして私が飲むとは思わなかった……?ふふふ……」

 

口の端から白液を零しながらもドヤ顔する彼女は少し抜けているようにも見えたがそれ以上に愛おしかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~7日目、最後の扉:傲慢の罪

 

「私を神のムチムッチと呼んだな」

 

「呼んでないわよっ!」

 

「恥ずかしがらなくてもよい、天性の肉体を持つ私のセクシーフェロモンに惹かれるのは仕方ない事だろう。つらいわー、アルテラちゃんかわいすぎてつらいわー……とりあえず語尾に白髪褐色文明粉砕ガール万歳とつけろ、いいな?」

 

「ちょっとマスターあれどうなってんのよ!アイツあんなキャラだったっけ!?」

 

「あぁ――、自分の部屋で悠々自適引きこもりライフを送ってた所に突然ネットもゲームも無い監獄に連れてこられてしかも7日もいたら、そりゃあ狂化の一つや二つしてもおかしくなさそうでは」

 

うん、けど邪ンヌは接点少ないから知らないかもだけど、最近の彼女は割りと通常状態もあんなんやで。

 

「さてさて、まずは挨拶代わりに120%フォトレぶっぱでもしてやろうか、死に物狂いで耐えるがよい!不敬!!」

 

アルテラちゃん、その台詞軍神の剣ちゃう、乖離剣の方や。

つかマジで全力で打ち込んできそうだな!あの娘!

 

「アルテラちゃん!ここで倒れれば君は自動的に元いた場所に送還されるけどー!」

 

「…………ぐわー、やられたぁー」

 

――――――シュウゥゥン……

 

 

「ちょっと、一応最後の扉の間なんだけど。あんな終わり方でいいの?」

 

「だってあの娘、本気であの剣ぶちかますつもりだったもん。そんな事になればこの監獄塔ごとオジャンだよ、爆発オチなんてサイテー的な結末待ったなしだったし」

 

監獄塔「ぎゃあああああああ………」みたいな?

さっきの彼女の宝具とその結末を想像したのか邪ンヌは嫌な汗をかいている。

 

「ま、まぁいいわ!今更、手段なんて問いませんし。勝ちは勝ちよっ!」

 

「うんその通り!これにてハッピーエンドという事でっ!」

 

「あら?本当にそうかしら?」

 

口元を嫌らしく歪め、こちらを振り返る彼女。

 

「残念ながら、この監獄の塔、幾億の絶望で構築されたここを出られるのは一人のみ。当然私はあなたに譲るつもりなんてありません。あなたの屍を越えて、出ていかせてもらいます」

 

・・・・・・・・・・・

 

「けど、もしもあなたがまだ歩み続けるというのならば!希望を失ってないというならば!(わたし)をころ」

 

はいっ、じゃあ失礼しまーす。

 

「きゃっ!?」

 

演説タイムだった邪ンヌの足を引っ掛け、体が地べたに落ちる前に彼女の体を抱き留め、そのまま床に座り込む。

 

「……ちょっ!?あんたどういうつもりよ!」

 

「いやこの展開も前見たし、俺は邪ンヌ殺すつもりサラサラ無いし。

というかね、君がエドモンの真似する必要もないでしょう、君は彼じゃないんだから。そもそもここに来てからずっと足腰震えてたじゃん、あんな状態で俺と戦えるわけないでしょう」

 

まぁ、彼女がプルプルしてた原因の9割方はここ6日間邪ンヌの体を好き勝手開発してた俺なんだが……アルテラちゃんが大人しく引いてくれなかったらヤバかったかな――?

 

「……じゃあ、どうやってケリをつけるつもりよ」

 

「邪ンヌに負けを認めさせるなら何も戦って痛みつける必要はなし、気持ちよすぎて降参という展開もあると思わない?」

 

顔を白くしたり、赤くしたりと忙しい彼女がある種の確信を持って問いかける。

 

「……ま、まちなさい。あんた……まさか…………」

 

「はいっ、じゃあ脱ぎ脱ぎしましょねー」

 

「やっぱりか!ちょ待ちな、ってはやっ!脱がすのはやっ!どんだけ手慣れてんのよ!」

 

そりゃもちろんプロですから。

けど自分でも不思議、いつの間にかどんな複雑な服だろうが鎧だろうがもたつく事無く手早く脱がせれるようになってしまったのだから。

これって一種のスキルにならない?ならないかぁ……。

 

「ここ7日間ずっと焦らしててごめんね、大丈夫すぐに楽してあげるから」

 

「んっ……な、なんのことよぉ、あぁ!……うぅ、はぁ……やっ……」

 

だって少し体に触っただけでも反応するようになってるもん。

アソコは濡れっぱだし、乳首は固くなってるし、吐息は荒いし。

 

全裸になって自分の膝の上にいる彼女に囁く。

 

「それじゃあ、いくよ。邪ンヌ」

 

「……んっ、すきに、すればいいでしょ……」

 

ではお言葉に甘えて……。

肉棒をそのまま欲しがっているようにしか見えない彼女の肉蜜へ挿し込んでいく。

体勢は相手の一番気持ち良い所を責めやすい対面座位で。

 

「んぐぅっ!あはぁぁっ……!奥までぇ……あぁ!あっ、いきなりぃ……んあぁ、あぁ……」

 

ずっと待ち望んでかのように自分を突き刺す快感を受け入れてる邪ンヌをより強く責め立てる。

 

「あああぁぁ!やぁぁ!……おくぅ、こつこつってぇ!あっ、んあっ……はあぁぁぁっ!のっくしてるぅぅ……やぁ……」

 

人形のように色白の彼女が火照った体でこちらにしがみついてくる。

俺がどこかへ行ってしまわないように。

 

「くっ、ここにいるよ邪ンヌ」

 

「ひあぁぁっ!またいくぅ……あぁ、いくのがとまらなぁ……はあぁ!……あ、んあぁ……どこかへとんじゃうう……やあぁぁ!あっ、あぁあ!……こわいぃ……んくぅ……こわぁぁ、ああぁぁんぅ……!」

 

彼女を安心させるように口を塞ぎ、そのままラストスパートをかける。

 

「んぅっ!?……んっ、んちゅ、ちゅぅ……ちゅぱぁ、すきぃ……んむぅ…ちゅるぅ…すきぃ……じゅるぅ……」

 

口を貪り合ってる最中に漏れる彼女の好意の言葉を聞きながら、精液を解き放つ準備をする。

多分無意識で言ってるんだろうな――と思いつつ。

 

「んむぐぅっ!んんんぅぅっっ――――……!!!」

 

キスはしたまま、彼女の中で一滴残らず射精する……涙を流しながらも気持ち良さそうに目を細める邪ンヌにまた性欲が湧いてきそうだった。

 

「ぷはぁっ!……はあぁ――はあぁ――――んっ、だしすぎよぉ……あっ……で?これでまんぞくぅ……?あぁ……」

 

「まさか、邪ンヌに負けを認めさせればならないんだから、これでも10%ぐらいだよ。というわけでこれからもっと気持ち良くさせるからね」

 

「え?うそっ?ちょっとまって…んあっ!……わかった!私の負けっ!降参するからぁ……ああぁ!やああぁん……またぁ、ひぃぃああっ………」

 

よおし、ここから邪ンヌと一緒に出る為にもお兄さん頑張っちゃうぞー。

 

 

 

 

 




監獄塔「うちはラブホテルじゃねえんだぞ」









そういや、今まで書いたキャラは7体かぁ……7……七つの大罪……あっ何か書けそう。
みたいな感じで生まれた今回の話。
邪ンヌ的にはマスターと共に時にはぶつかり合いながら絆を深め、感動のラストという想定だったのに蓋を開ければ7日間かけて監獄塔で開発されただけだったの巻
どうしてこうなった!どうしてこうなった!

あ、主人公はちゃんと監獄塔を脱出できましたよ。色々な液体でグショグショになって気絶してる邪ンヌと。めでたしめでたし。

何だかんだで邪ンヌが考えたシャトー・ディフもどきに付き合ってくれるあたり、7人とも良い娘。これからは独りぼっちじゃないですよ、よかったよかった。




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アイドルマスターシンデレラメイデン(カーミラ)

知らぬ間に累計ランキング入りしててビックリ。
多くの評価、感想、お気に入り、超あざっす!全てあなた達のおかげでごぜーます。







エリちゃんと思った?今回はこっちなんじゃ。

吸血鬼の気持ちになるですよ。



人は本当に気まずい場面に遭遇した時どうするのだろうか?

 

誰もいないと思ってた道端で一人熱唱している時に限って知り合いと遭遇してしまう場面。

 

自分の家族が普段言わないようなド下ネタを呟いているSNSを見つけってしまった時。

 

息子がR18的な物で一人いたしてるときに部屋を覗いてしまった母親。

 

何が正解なのかはわからないが大体は見て見ぬフリをするのがベターであるのかもしれない。

 

 

 

そして、今。

 

彼女の部屋に入り、目の前に白いフリフリのアイドル衣装を着たカーミラさんが立鏡のような物の前で渾身のポーズを決めている姿を目撃した俺は一体どうするのが正解なのだろう……。

 

カーミラさんは思考停止に陥っているのか真っ赤の顔のまま固まっている。

部屋に流れている軽快なポップミュージックがシュールな空気を醸し出してますねコレ、ここで殆どの人がドアをそっ閉じして部屋から出ていくだろう。

だがそれは本当に正しいのか?

普段の姿からは絶対に想像できないこんな彼女のプリティーな姿を見逃すべきなのか……否ッ!

 

 

 

ここは敢えて、居座るのが正解!

 

「ふむ、続けたまえ」

 

「出ていきなさいッッ!!」

 

この後、滅茶苦茶幻想の鉄処女(ファントム・メイデン)された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いきなり、びっくりするなーもう」

 

「それはこっちの台詞よ、何でもうケロッとしてるのよあなたは……というよりも頑なに出ていこうとしないわね……おかげで着替えられないじゃないの」

 

いやはや、『ガッツ』のスキルが無ければ即死だったぜ。

 

「えー、そんな可愛い格好してるのにもったい無いじゃん、出ていくなんて。本当なら写真撮りまくりたい所だけど、手元にないんでこうして心のフィルムに焼き付けてるんだし」

 

いつもの格好とは違い、仮面を外し、胸元と肩を露出している白を基調としたフリフリのアイドル衣装を着ているカーミラさん、何かシンデレラっぽいね。

 

「馬鹿言いなさい。冷血で残忍な怪物と呼ばれたこのカーミラがこんな姿を晒しているのよ……滑稽でしょう?好きに笑いなさいよ」

 

「滑稽じゃないよ、ウェーブのかかった白髪によく映える可愛らしい衣装がマッチしてるし。うん、うん本当にお姫様みたいで綺麗だ。もし馬鹿にする奴がいたら、令呪で一日中アヘ顔ダブルピースでいろって命じるぐらいに」

 

「……世界一無駄な令呪の使い方ね、もっと大事に使いなさい」

 

「いや、だって寝たら1画戻るし。3画以上補充されるなら俺もあんまり無駄遣いしないんだけどね」

 

こう、手だけじゃなくて体中にどんどん令呪が刻み込まれるのちょっと憧れたりする。

全身刺青的な?

 

「…………まぁいいわ、あなたはこういう所で嘘をつかない人ってわかっていますし。

賛辞は素直に受け取っておくとしましょう。……あ、ありがとうマスター」

 

素直にと言っておきながら、プイッと顔を背けているのはこれいかに。

まぁ、大変可愛らしいのでノープロブレム。

 

「……それで今日は何のようかしら?」

 

「ほら、この間カーミラさんが自分も映るような鏡が欲しいとか何とか、作ってもらったはいいけどちゃんと使えてるかなーって様子見をと」

 

先程、彼女がポーズを決めてた立鏡というよりはモニターを指差す。吸血鬼が鏡に映らないなら、機械でモニターに映せばいいという近未来的思考で作られたのがコチラ。

てかカーミラさんの部屋地味に広いね。

 

「特に問題はないわ、さっきの醜態の通りありがたく使ってるわよ。わざわざこんなものまで用意してくれるなんてね……まぁ、助かってるわマスター」

 

「いやー、俺は何もしてないけどね」

 

うちの技術部が一晩でやってくれました。俺のアバウトなアイディアでも現実にしてくれるからね。いやホント有能、テスラさんとかダ・ヴィンチちゃんとか。

 

「作ってくれた連中にも後で礼は言うわよ。けどきっかけはあなたでしょう?なら大人しく礼は受け取っておきなさい」

 

「……ふむ、ならどういたしまして」

 

「それでいいのよ」と笑い、さっきからBGMを流しているCDレコーダーの電源を止めようとするカーミラさん。

 

「え、止めちゃうの?どうせなら歌ってくれてもいいのに」

 

「は?あなた正気?あっちの私の歌唱力は知ってる筈でしょう」

 

エリちゃんは確かに壊滅的で殺人的で退廃的なセンスの持ち主だけどねぇ。

あれは頑張らないと簡単に意識持ってかれるから、ホントキツイっす。

 

「カーミラさんの歌は聴いた事無かったからさ……どうせならさっきみたく振り付け込みで見たいね。もしあれなら一緒にレッスンでもする?」

 

「……さっきの姿は忘れなさい。そもそもマスターがそっち方面に造形が深いとは思えないのだけど」

 

「失敬な、かつてグランドプロデューサーと呼ばれた俺に任せればSランクアイドルも夢じゃない!エリちゃんと24時間タイマンLIVEをやり遂げた実績もありますし」

 

あれは今までで一番厳しい戦いだった……。

LIVEが終わった後はとりあえずA4用紙10枚分で懇切丁寧に如何に自分が音痴なのか説明してあげたが……。

まぁ、何かショック受けて白目剥いて気絶してたけどエリちゃんなら大丈夫だよねっ!彼女はガッツのあるドラゴン娘!

 

「アレとそんな事してたのは尊敬を通り越して、自殺志願者か何かと思いたくなるけど……ともあれ嫌よ。どうして私がそんな生娘みたいのような真似を……」

 

「仕方ない、この令呪3画を全て使うしかあるまいか」

 

「わかったわよっ!やればいいんでしょっ!ホント碌な令呪の使い方しないわねっあなた!いつか絶対地獄に落ちるわよっ!!」

 

地獄に落ちるかどうかはわからないけど、良い死に方はしないかもしれない……こう、痴情のもつれ的な?やべぇ……想像したらブルッってきたわ。

 

それはともかく、カーミラちゃんとアイドルレッスン頑張るぞー!目指せっ!パーフェクトコミュニケーション!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アイドルは体力が基本っ!全ては横ステップで始まり、横ステップで終わる!胸にぶら下がっている大きい果実が揺れているのを気にしている余裕はないぞっ!」

 

「……くっ、好きでぶら下げてるワケじゃないわ……よっ!はぁ……はぁ……」

 

 

 

 

 

 

「何だその腰の入ってない動きはー!家事をしている家政婦の方がまだ気合入ってるぞー!…………ってかカーミラさん白いドレスに黒いパンツって中々に気合入ってるね、勝負下着?」

 

「ひゃああああああ!!だ、誰の許可得てスカート捲ってるのよ!次やったら串刺しよっ!!」

 

 

 

 

 

「アイドルに大事なのは笑顔と笑顔、そして……笑顔です。はい!ニコッと笑って自己紹介!‘かーみらさんじゅうななさいですっ☆‘」

 

「……か、かーみらじゅうな…なさいで……す、うぅぅ」

 

 

 

 

 

「そこでクルッと回って媚びるように手首を曲げて、‘メルヘ~ン・チェーンジッ!‘」

 

「め、メルヘ~ン・チェーンジッ☆!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「~~~~♪、~~~~♬」

 

一通りハードなレッスンを終わらせ、1曲だけ得意な歌を踊り付きで唄ってもらってる

まぁ、キスとか恋が絡んだ良いアイドルソングだが、これは……。

 

「~~♪……ふぅ、で、どうだったかしら?」

 

「いや驚いた……とても上手だったよ!マリーさんと良い勝負が出来るかもしれないぐらい!」

 

「ふふっ、さすがに言い過ぎよそれは。けど過去の私には勝ってるでしょ?」

 

「そりゃあね、エリちゃんも声質自体はすごく良いのにね――」

 

「あの馬鹿は徹頭徹尾自分の為にしか歌ってないからよ、それが悪い事とは言わないけれど歌は誰かに聴かせる為に歌うものよ。誰かを想いながら唄えれば、もう少しはマシになるかもしれないわね」

 

「じゃあ、カーミラさんは誰かを想いながら唄ってくれたって事?」

 

「…………さぁね、それにしても喉が渇いたわ。戦闘以外でこんなに激しく動いたの初めてよ」

 

体を扇ぎながら、天蓋付きのベッドに腰をかけるカーミラさん。

白い肌は火照り、汗も薄っすらと浮かんでいる。

 

「何か飲み物でも持ってくる?」

 

「………そうねぇ、あなたの血でも戴こうかしら」

 

……おやっ?

思わず、息を整えている彼女を注視するが冗談を言っているようには見えなかった。

 

「何よ、意外?」

 

「うん。何だかんだで男の血は飲まないものだと思ってから」

 

「いつか私に触れる代わりに等価交換であなたの血をもらうって言った筈よ」

 

あぁ――、言ってた気がするかも

てっきり、こっちを怖がらせようとする冗談の一つだと思ってた

 

「…………嫌ならいいわよ」

 

「別に嫌じゃないよ、全然無問題。お好きにどーぞ」

 

「はぁ……、少しぐらい躊躇しなさいよ。死ぬまで吸うかもしれないわよ?」

 

「何だかんだで付き合いは長いんだから、今更そこは疑わないよ。それにカーミラさんが俺の血を欲しがってくれるのは嬉しかったりもするし」

 

「時々、あなたの思考って狂化入ってるのかしらって思わずにいられないわね」

 

酷い(泣)。

自分の好きな女性が血を欲しがってるのなら、1ℓや2ℓぐらいあげるのなんて男の子からしたら普通やない?え、異常?

 

「……いいわ、不本意ながらあなたにもらいっぱなしというのも癪ではありますし」

 

少し考え込んだ後、部屋の隅の方を漁りに行くカーミラさん。

取り出した物を丁寧に洗浄して、こちらへ何かを持ってきた。

 

「あっちの私がハロウィンの時にコスプレグッズだの何だのって置いてったものよ。玩具の一つに過ぎないけど、意外にクオリティは高くてよ」

 

「これは付け牙?」

 

彼女が持ってきたのはドラキュラのコスプレで前歯に付けるような牙が二つほど

 

「そうよ。肩に刺せば当然血は出るし、あなたにはそこから私の血でも啜ってもらおうかしら……あら?あまり気が進まない?」

 

気が進まないというよりはね、ほら俺って性的に苛める事はあってもこう物理的に傷つけるって事はあんまりしないからねー、ちょっと困惑気味というか。

 

「私は英霊よ、蚊に刺された程度の傷なんて気にしはしないわ。ほら、牙付けてあげるからじっとしてなさい」

 

しかしあのカーミラさんが自分の大事な血をくれるというのは一体どういう心境の変化なのか……とりあえず大人しくしておこう。

あっ彼女の指が歯茎に当たってくすぐったい。

 

「はい、ついたわよ」

 

「おぉ――、これで俺もヴァンパイアデビューか、どう?格好いい?」

 

「八重歯が目立って馬鹿っぽいわ」

 

「何おうー!食べちゃうぞー、がおー!」

 

「ふふっ、やる気になってくれるのは良いけれど最初は私のターンよ。さぁ、もっとこっちへ寄って……」

 

言われるがままに彼女のそばへ寄る。こうゴージャスなベッドで牙を生やした二人が抱き合うのはちょっと不思議な気分になってすごくドキドキしますね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こちらへ無防備に曝け出しているマスターの首元に近づく。

提案した私が言うのもアレだけど、ホントこの男はもう少し危機感を持つべきだと思うのよね……自分の目の前にいる英霊が何なのかわかっている筈でしょう?

 

「……そんな純真な瞳でこちらを見つめるじゃないわよ、まったく私が馬鹿みたいじゃない……」

 

「ん?」

 

「何でも無いわよっ」

 

剥き出しの彼の首元に牙をカブッと突き立てる。

その瞬間触れている口からマスターが小さく震えたのがわかった。

 

まぁ、少しチクッとするしね……。

そのまま牙から滲んできた血を音を立てながら啜り飲んでいく。

 

「んちゅ……ちゅ、ちゅるぅ……じゅるぅ……んんぅ……じゅるるるぅっ……」

 

血を吸い上げていく度に小さく吐息を吐いているマスターを安心させるかのように優しく抱きしめる。あんまり強くすると背中に爪が刺さってしまうのを注意しながら……。

 

「……こくっ、こくっ、ちゅうぅぅ……じゅるぅ……」

 

冷静に考えると、この私が男の血を吸うなんて今までからしたら考えられないわね……。

けど何なのでしょうこの不思議な味……少女の血とは決定的に違うモノ、そもそも今は美しくなるという目的で飲んでいるわけでもない。

マスターの吸う度に痛みか快感かで漏らしている声を聞く度に自分も耐え切れない情欲が湧いてくるのを感じる。

 

……あぁ、そういう事。

興奮しているのね私は。いつも我が道を進んでいくマスターが自分の行動で感じてくれてるのを……今日に限ってもそうよ、本来なら私のような反英霊はもっと慎重に相手をするべきなのに……。

一緒にアイドルトレーニングなんてして、時折茶々を入れて、他の奴らと同じようにお馬鹿な事に誘ってくるからついつい私もその空気に毒されてしまうのよ。

でもそんなマスターが嫌じゃなくて……それとも肩にしっかりと自分の証をマーキングをしているのが嬉しいのかしら?

まるで犬畜生ね、フフフッ。

 

「……ごくっ、んはぁっ…………ぺろっ、ちゅぅ……ほら、次はあなたの番よ」

 

あんまり飲み過ぎるとあっちが倒れてしまうかもしれなのでキリの良い所で牙を抜く。

刺した箇所の血が固まるように自身の唾も擦りつけて……そして、今度は自分の首元を差し出す。

結構吸ったつもりだけど、案外余裕そうな顔してるわねマスター。

 

「では失礼して……」

 

「ええ……どうぞ」

 

 

口をつけ、ゆっくりと牙を刺し込んでいくマスター。

そこからじわじわと外へ表出する私の血を啜っている音が聞こえてくる……。

 

「あっ……ああっ……!なぁにぃこれぇ……はあぁっ……」

 

噛みつかれ、血を飲まれているというのにこの身に襲いかかるのは形容しがたい快感だった。

 

「カーミラさん、大丈夫?」

 

「……はぁ、やめなくていいからっ……そのまま……はぁ、続けなさい……」

 

私を気遣い、一度口を離すマスター。それを咎めそのまま続行するように促す。

再び、同じ場所から少しずつ、ジュルルと音がするのがわかる。

 

「ああっ、あっ……はあぁ!いいわぁ……もっとぉ……んぅぅ、ああぁっ……」

 

知らない知らないこんなの知らない血を吸われるのがこんなに気持ち良いなんて!

それとも相手がこの人だから?わからないわからない……。

快感だけじゃなくて、仄かに痛みもある。

けどその痛みが怪物の私を罰しているように感じて……その罰を与えてくれるのがマスターだと不思議と気持ちよくなってしまって……。

 

「あっ、あっ、ああぁ……あんぅぅっ!」

 

より強い快感を求めてマスターの背中を強く抱きしめ、もう片方の手で彼の頭を自分の首元に押し付ける。

吸血鬼の自分が人間に血を吸われ悦に浸っている……それがたまらなく背徳的だった。

 

ふと自分の下腹部に硬い物が当たってるのに気づく、私の嬌声に反応してくれたのだろう。

そろそろ下でも繋がってもいいと思いマスターに声をかける、おそらく私も下着がひどい事になってるだろうし。

 

「ごめんカーミラさん。せっかくの服汚しちゃったね」

 

吸血行為を止め、ベッドへ押し倒した彼が申し訳なさそうに言うので、ふと下を見ると白のドレスが血でほんの少し染められていた。

目立つし、これは少し猟奇的にも見えるわね……。

 

「いいわよ、もうシンデレラの時間は終わり。今ここにいるのは血に溺れた哀れな吸血鬼よ」

 

汚された服を脱ぎ、黒い派手な下着も一緒に脱ぐ。

決してこんな時を期待して用意した勝負下着とかそんな事は絶対に間違っても100%無い。

 

「そんなに見つめなくてもいいでしょうに……やっぱりあなたも男ね、大きい胸がお好きなご様子で」

 

「大きさは関係ないかな、好きになった人の胸は皆好きだし」

 

「あぁ、そう言えばあなた守備範囲は異常に広いわよね……老若男女なんでもござれかしら?」

 

「ストップ、一部は否定させていただく」

 

 

 

軽口を叩きあいながらも、彼の昂ったものを自身の秘部へ誘っていく。

 

「いれないの?」

 

「いや、いくよカーミラ」

 

口に牙を生やしたマスターが挿入していく。

まるで自分がただの生娘で怪物に襲われているのかのような錯覚に陥っているようだった。

 

「……あっ!はぁあっ……うごいてぇ……んんぅ……」

 

大きく揺れ動く巨乳も揉みしだかれながら、犯されていく。

今の性交のせいか、先程の吸血行為のせいか……頭が熱に浮かされ、自分でも何を言ってるのかわからなくなってくる。

 

「はぁっ……やあぁっ!ひとりはいやあぁ……いやなのおぉ……あっ、あぁ……あなたはわたしをぉ……んあぁっ!……つれてってくれるぅ……?ふあぁっ!!」

 

激しく動く彼に要領の得ない事を叫びながらしがみつく。

どこかへ行ってしまわないように強く強く……マスターはキチンとこの叫びにも答えてくれた。

 

「連れてくよ、嫌と言おうが何をしようがあなたを光の下へ……何だかんだでカーミラさんにとっては眩しいものを見る方が堪えるでしょう?」

 

「ああぁぅっ!マスター……ますたぁぁー……」

 

本当に、本当に……この男は鬼畜ね……。

幽閉されるべき怪物の私を陽の光の元へ連れてってくれるなんて……。

吸血鬼がそんな事されたら眩しさのあまり、焼け死んでしまうかもしれないというのに。

 

あぁ。

けどそれでもこの人が隣にいてくれるなら…………そばにいてくれるなら…………それもいいかもしれないわね。

 

感極まってしまった私はさっきと反対の首元へ噛みついた。

マスターも応えるかのように私の方へ牙を突き立ててきてくれる。

 

「んぅっ!……じゅるぅ……ちゅうぅ……んちゅぅ、んふぅっ……!」

 

下で熱く繋がり合い、口元でも繋がり合い……セックスをしながら吸血しあっている。

ここにあるのは男女の営みではなく、二匹の怪物の喰らい合いかもしれない……。

 

やがて限界がきたマスターが私の子宮深くへと子種を解き放とうとする。

血も精子も受け取りながら、私は簡単に絶頂へ達してしまった。

 

「んんぅぅっ――――――……!!」

 

 

 

 

 

 

激しく交じりあった疲れかそれとも血を失ったせいか、倦怠感とある種の心地よさが体を包みこんでくれる。

 

マスターの顔を覗くと優しそうな顔でこちらを見つめていて……安心して、つい彼の頬に手を添えキスをしてしまう。

 

「んっ、ちゅっ……私をひとりっきりにしないでね……ますたぁ、んちゅぅ……」

 

 

 

 

――――――今度はこの(マスター)に手を伸ばしてもいいのかもしれない。

 

 

 

――――――触れ合う唇は血とは違う甘い味がした気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




エリちゃん、ハロエリ、赤王、嫁王「アイドルはやめらんない!」








キャラクエお気に入り勢その1でもあるカーミラさん、こう狂っていてどこか自業自得な面もあるけど可哀想なって感じのキャラは好き。
CCCのエリちゃんの断末魔も少し興奮してしまいました。

普段はおっかいない服着てるから誤解されそうだけど、まともな服着たら絶対美人のお姉さんにしか思えないカーミラさん。
もっとこのキャラの可愛さを愛すべきだと思うんだぜ。

今話で英霊の血を平気で飲んでるコイツ大丈夫なのかなーと思ったけど、この主人公に限ってはいまさら過ぎるので問題はないですね。

ぐだ男「俺は人間をやめるぞーー!!」

カーミラ「もう既にやめているでしょう」



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マシュマロが如く(マシュ) 

酒ネタは二番煎じなので書かないと言ったな、すまんあれは嘘だ。







これぞ、メインヒロインの風格!


京を舞台に繰り広げられた一連の騒動もとりあえずは解決という形に落ち着いた。

酒を彼女達の目の前に置いていった黒幕の存在や憎めない感じでトンズラしていった茨木ちゃんや気になる事はまだあるがそれは置いておくとしよう。

 

 

それよりも今は――――

 

 

 

 

 

 

「シリアス顔で物思いに耽る先輩はグッド。実にグッドです。何を考えてるかも当然わかりますよ、私は先輩のサーヴァントですから……隣にいる後輩系ふわふわマシュマロサーヴァントが気になって仕方ないんですね。

ふふふ……あなたは私のマスター、この体を好きにしてくれてもいいんですよ。こう、マシュっと」

 

絡みついてくるこの酔っ払いシールダーの相手をしなくてはならぬ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日も暮れ夜になる前にレイシフトで帰ろうと思ったが、マシュが俺を相手に晩酌をしたいと言い出したので快く許可。

アルコールは抜けてないのか様子はおかしかったがこんな機会もないだろうし、それにこの娘はどこかでガス抜きをしてもいいのかもしれない。

今回は特に頑張ったしね。

 

ドクターには事情を説明、楽しんでおいてとのありがたいと言葉と共に通信を切ってくれた。

まぁ、これからもしかしなくても大人の時間が始まる可能性もあるのでその気遣いは実にありがたい。

肝心な所でよく通信は切れるが空気は読める男、それがロマン。

 

酒を持ち込み、桜が映える絶好の場所に行き二人で静かには……飲めないだろうけど飲む事にした。

 

 

 

 

 

 

満月が浮かび、桜が舞い散る。

あれだけ騒ぎ立て意気揚々と棒切れでサーヴァントに殴りかかってくる京人も一人として周りにはいない、ここにいるのは俺とマシュの二人だけだった。

 

「お酒だけでは寂しいと思い当然つまみも作ってきましたよ。はいっ、マシュ印のプレミアムおにぎりです!え?どこら辺がプレミアか知りたいのですか?

ふふん、私は先輩の役に立つに為に常にあらゆる知識を蓄えていますからね。

ある界隈では女の子の脇で握ったおにぎりは男性にとってご褒美だと……ええ、ですからこのようにお米を脇に挟んでおむすびの形にしたんですよ、サーヴァントならこれぐらい造作もありません。ささっ、どうぞ先輩」

 

「うん、ありがとうマシュ」

 

この俺が押されるとは……酒の力はやはり偉大やね。

作ったおにぎりを渡しながら、新たなものを脇で器用に握ってくれてるマシュ……つーか、あれでどうやったらこんな綺麗な形になるのかね。

うんっ、塩気が効いてておいしい。

いや普通に食べるよ、美少女が脇で作ってくれたおにぎりとかご褒美以外の何物でもないでしょ、100個でも1000個でも食べますよ。

 

「はい、先輩あーんです。あーーん、マシュの愛がつまったお手製ゴールデンおにぎりですよーー」

 

「はいはい、いただきますよー」

 

愛しき後輩から食べさせてもらいながらも、やっぱりご奉仕されっぱなしなのはアレなのでこっちからもちょっとした悪戯は仕掛けようかしら。

 

「マシュー、バンザーイして」

 

「ばんざあぁ――い」

 

あぁ、やっぱり脇に米粒がついている……全然気にする素振りを見せずに火照った顔でこちらを見つめ続けるマシュ。

ふむ、とりあえず味も見ておこう、ペロッ。

 

「あぁ、やぁっ……急にぃ、そんなところなめてぇ……ふぁあ、あんぅ……」

 

ついてたものを全て頂いた後もせっかくなので念入りに舐め回しておく。

しかし、感じながらも抵抗を一切しない彼女の全幅の信頼が嬉しかったり、心配になったり……。

 

「んあぁ……はぁぅ……もしかしてまだ食べ足りないんですねぇ、ならそこだけではなく胸にあるこの二つのおにぎりも食べていいんですよ……。

いえむしろもうこの体全てを先輩に喰べてもらってもかまいません。

このマシュ・キリエライト、シールダーのサーヴァントですが先輩に対しては年中無休オールシーズンでウェルカムです。ああぁ……先輩に食べてもらいその体の中で生き続けるのもいいのかもしれません…それなら先輩を一生守ることが」

 

「マシュ、ストップ、ストップ」

 

トリップして恐ろしい事を言いだす彼女を一旦静止させる。

てか食べるって本当にそういう意味かよ!カニバリズム趣味はねえぞ俺は。

体を一度離し、空になった杯にお酌を頼む。

 

「おや、もうお酒が無くなっていたことに気づかなかったとは不覚ですっ!ささっ、一献どうぞ先輩」

 

「注いでくれるのは嬉しいけど、さっきから俺が飲んでばかりでマシュは良いの?」

 

「はい、先輩を見てるだけで色んな意味でお腹いっぱいになります。先輩は私の主食にもなりおかずにもなる素晴らしいマスターですっ!」

 

それはどういう意味で言っているんでしょう……?

まぁ、確かに既に酔いどれ状態なのにこれ以上酒を飲ませるのはあまりよろしくないか……うん、さっきから距離がものごっつ近い、吐息はかかってるし、視線は熱いし、体のポヨンとしている所が当たりまくってるし……いやそれは非常に気持ち良いんでよろしいのですが。

常々疑問だったんだが、マシュの戦装束はどういう材質で出来てるんだろうね……?

柔らかいシールダーとはこれ如何に。

 

「むぅ……」

 

「どうしたの?」

 

「いえ、先程から結構な量をお飲みになっているのに中々酔わないなぁ……と」

 

「これでも色んな人と飲んでいるからねぇ……。この程度で酔ってたら荊軻さんとかドレイク船長に付き合えないだろうし」

 

不思議とアルコールに強い性質、もしかしたら酒呑ちゃんと飲み比べとか出来たりするかな――さすがに無理か。

 

「むむっ!ダメですよ先輩!私といるときに他の女性の名前を出すなんてっ!

先輩が酒池肉林をご所望ならそれを全力でサポートさせていただきますが今は私だけを見ててください!」

 

我が頬を両手で挟み、無理矢理顔を自分に向けるおこマシュ。

酒地肉林なんてするつもりはない…………駄目だ!普段の自分を省みるとまるで説得力がねえや!!

 

「酔わない俺はご不満?」

 

「まさか。

しかしこれを機に私しか知らない先輩の姿を見たかったというのも本音でもあります。まぁ、先輩はどんな状態でも私のドストライクなのですが…………うふふ、守りに定評があるシールダーの貞操を打ち抜くとはっ!よっ!先輩の矛は世界一っ!」

 

「うん、下手に否定できない自分に少し絶望してるよ」

 

ずいぶんはっちゃけてるへべれげマシュマロサーヴァント。

シラフに戻って、この時の記憶があったら少しイジッてあげるのもいいのかもしれないと下衆な事を考えたり、忘れてたらそれはそれで少し寂しいが。

 

 

 

 

 

マシュの表情を見る限り、聞く必要は無さそうだがそれでもふと気になってしまった。

 

「今、楽しいかい?マシュ」

 

「はいっ!とっても!人理を救わなければならない役目はありますがそれでもこうして先輩と一緒に様々の所へ行き、他の所では出来ないような経験を共有するのはとても嬉しいです!私は死ぬまでこの景色を絶対に忘れませんよ!」

 

「そっか……」

 

 

 

見つめ合う二人。

先程とは打って変わって静かで和やかな空気が流れる。

桜の木の下、一陣の風が吹き……。

 

 

 

「っ!先輩!伏せて!」

 

「ぐわあぁ!」

 

「………間一髪でした、危うく先輩が桜の花びらに襲われる所でしたが……このマシュ・キリエライトの目が黒い内はそんな事はさせません!先輩の髪の先から爪先、はたまた体内の全てまでこの私がガードしてみせます!」

 

うん、知ってた、シリアスな空気が一瞬で壊れるだろうなぁって事、俺は知ってたよ。

 

俺を押し倒し、上から守るかのように抱き着いてくるマシュマロボディ、ムニュムニュと体全てが柔らかいし、温かいしですごくコマルナー。

 

「盾が無くとも、この体を使えば先輩の体をしっかりと守れます。さぁ、先輩もっとギュっとして下さいギュッと、どこに危険があるかはわかりませんからね。

ギュっとしてくれないんですか……?なら私からしますね。

ぎゅううぅう~~~~~っと……」

 

自身の体の柔らかさを余すことなく感じさせてくれるかのように押し付けてくる彼女、俺の胸元にスリスリと顔をこすりつけてくるのでつい思った事がそのまま口に出てしまう。

 

「まるで猫みたいだ、いやどちらかといえば犬か?」

 

「先輩はペットとして私を飼う事をお望みですか?それなら今すぐ首輪を付けて、人語を忘却し、飼われるのも吝かではないのですが……」

 

「あ――、それはまたの機会で」

 

マシュの顎下をくすぐると「ごろにぁ~ん」と言いながら気持ち良さそうに目を細める。

この後輩マジでペットになれって言ったらホントになりそうで恐ろしい……。

 

「あぁ、先輩の体は暖かくて逞しいですね……はぁむぅ……ちゅむぅ、れろぉ……」

 

顔を撫で続けるているとその指を口で咥え舐め始めるマシュ、ちゅぱちゅぱと味を確かめるように吸い続けてくる。

 

「ちゅぅ、ちゅるぅ……まだ余裕がありそうですね。

ならば今度はお酒だけではなく、私の色気にも酔っていただきましょう!デミサーヴァントッ!一肌脱ぎますっ!」

 

と体を起こし、表現ではなく本当の意味で上半身を脱ぎはじめるマシュ。

いつも黒鎧に包まれている胸が露わになった。

夜桜を背景として発情したかのように俺を見下ろす彼女は普段は絶対に見れないような扇情的で男を簡単に堕としてしまう美しさを持っていた。

 

「ただお飲ませるだけでは酔ってくれないとわかりました。なら、これならどうでしょう?」

 

鬼瓢箪を手に取り、もう片方の腕で胸ぎゅっを寄せると、その谷間に酒を注いでいった。

瓢箪を投げ捨て、両手でその巨乳を抱えこちらへ飲ませるように近付けてくる。

 

「さぁどうぞぉ、先輩……悠長にしていると漏れてしまうのでグイッと味わってください。マシュマロおっぱいで造ったお酒ですよ――、マシュだけにマ酒?ふふふふふっ……」

 

間違いなく笑いの沸点が低くなっているとしか思えない冗句をかましているが本人が楽しそうならそれはそれで良いのだろう……俺としてはこんな事誰から教わったと小一時間問い詰めたい気分になったが……。

せっかくなのでそのマ酒とやらを戴くことにした。

 

「んっ……ふぅ、さぁ……たぁんとお飲みになって下さいねぇ、せんぱぁい……」

 

谷間に溜まったお酒を飲むというよりは音を立てながら吸い上げていく。

飲み干しても胸についている一滴さえ無駄にしないように舌でゆっくりとねぶっていき、目に桜色に膨れ上がった乳首が映ったので当然そちらにも吸い付いた。

 

「んぅ、あっ、はあぁんぅ!……やあぁ、せんぱぁい……んはあぁ!そこを吸ってもぉ………あんぅぅ!おさけはでないですよぉ…………あっ、ああぁん……」

 

知ってるよ。

けど嬌声を聞きながらマシュの乳を吸っていると不思議と酔っ払ってきてるような感覚にもなってしまう、気のせいだと思うが。

 

「あぅん……あぁぁ、はぁ、せんぱいのここももう我慢ならないみたいですねぇ……」

 

俺の腰に上に乗り、乱れていたマシュが気づく。

さっきからズボンの上からでも丸わかりなその膨らみが彼女の秘部に押し付けられていたのだろう、さすがにこの状態で勃たない程、男はやめていない。

 

「ふふっ……先輩もスイッチが入ってきたみたいですねぇ……ああぁっ!もうぅ、んっ……さっきから吸いすぎですよぉ……やぁぁん……どんだけおっぱいすきなんですかぁ……あっ……はあぁぁん……!」

 

むしろ嫌いな奴とかおるのか?

とりあえず胸責めから解放してあげると、手早く残った服も全て脱ぎ捨てた彼女は慣れた手つきで俺のズボンを下ろし、その逸物を解放させた。

 

「はあぁ……やはり先輩のは大きいですねぇ……先輩以外のを見た事もこれからも見るつもりはありませんが、やはりあなたは世界一のマスターと確信を持って言えます!!」

 

「この状況じゃなければもう少し良い言葉に聞こえるのにね」

 

アソコを見られながら世界一と言われてもすごく複雑な気分よ、嬉しいっちゃあ嬉しいけど。

 

押し倒されてから仰向けで寝転がっている俺に今度はお尻をこちらへ向け乗ってくるマシュ、俗に言う69の体勢。

目の前には濡れそぼった彼女の性器が待ち構えていた。

 

「共同作業という奴ですね……ふふっ、わくわくしてきました。では私からいただきますっ、はぁむ……」

 

こちらからは様子が伺いづらいが肉棒を包む感触から胸で扱きながら、先端を口で愛撫してくれているのだろう。

負けじとこちらも彼女の女陰を指と舌で愛してあげることにした。

 

「じゅるぅ、んぅ……ひくひくしへまふねぇ……ちゅっ、ちゅぅ……んじゅっ!ぷはぁっ!……そんなに責められるとぉ……んひぃっ……!舐めれないですよぉ……んじゅるぅ……ンンぅっ!!」

 

陰核をスイッチのようにひねりながら、割れ目を舌でなぶっていくと愛液をまき散らしながら大きく反応してくれる彼女。

それでもパイズリフェラを止めようとしないのは俺に対する本気の奉仕の気持ちが感じ取れて嬉しい。

 

「んじゅぅ……ちゅ…ちゅるぅ……んんぅっ!……ちゅぱぁっ……ああぁっ……!れろぉ…………はぁむぅ……じゅるるるぅ……」

 

肉棒の全体を扱かれている肉の感触、先端を舐め回されている感触を。

自身の蜜肉全体を指で撫でられる感触、その中を舌でほじくり回されいてる感触を。

互いに感じながら、相手より先にイカせてやろうという目論見があるのか自然と責めあいが激しくなっていき……。

 

「んじゅっ!?じゅるぅ……んんんぅっ――――――――…………!!!」

 

マシュは盛大に出された精液をイキながらも一滴残らず飲み干そうとし、俺もアソコを吸い尽くさらながらも吹き荒れている彼女の潮を口内で受け止めてあげた。

 

「んじゅるぅぅ……こくっ、こくっ……ぷはぁぁっ……はぁはぁ……お互い同時に達してしまうとはぁ、やっぱり私達は相性ばつくんですねぇ、はぁ……」

 

吐き出す事もなく全て飲み込んだ彼女は満足そうにこちらを見ると、桜の花びらが広がっているその原っぱに寝転がる。

 

「今度はこちらの相性を知りたいですよ、せんぱい……まだ……イケますよね……?」

 

「あぁ、全然余裕だ」

 

体を起こし、目の前に投げ出されている彼女に答えると「さすがです」と返答が返ってくる。

目下にある生まれたままの姿のマシュは脚を大きく広げ、ヒクついている自身の膣口に手を添える。

 

「ここをせんぱいのでぐしゅぐしゅして、ぱんぱんしてください…………私を孕ませるぐらいの勢いでぇ、してください……」

 

口元をだらしなく緩めながら酒の力か通常状態なら絶対に言わないような卑猥な言葉を口にする彼女の腰に手を添える。

 

「本当に妊娠するぐらいヤッてしまうけど、いいの?」

 

デミサーヴァントの彼女に子供が出来るか微妙なラインだがそう請われると応えてしまいたくなるのが男の性。

 

「はい、先輩との子供なら野球チームが出来るぐらい産みたいです。大家族というのに昔から憧れていましたので……男の子だったらマシュ男、女の子だったらマシュ子と名付けましょう!」

 

「ネーミングセンスッ!」

 

しかし、大家族というのは自分も少し憧れたりはする。

今のカルデアも大家族みたいのようなものだが、自分と血がつながった子供というのはまたそれとは別種のつながりだろう……。

ふとそんな未来も想像しながら、待ちわびている彼女と体を重ね合わせる。

 

 

 

「あっ!はあぁぁ……!入ってきたぁ!!せんぱいのぉ……ふあぁ……!」

 

心から幸せだと表現するように体を震わせるマシュ。

前戯はもはや十分なので手を恋人繋ぎで掴みあい、子宮の入り口をノックさせるように自身のモノを奥まで届かせる。

 

「あっあっあぁぁ!コツコツしてぇ……!やぁ……!もっとぐしゅぐしゅってぇ……いいぃっ!はあぁんっ……!」

 

意思をもったかのように吸い付いてくる膣内の快感を受けながら、せがむように自分も腰を動かすマシュの体にのしかかり激しく口を重ね合わせる。

 

「んちゅう、んんぅ!……好きぃ……せんぱぁい……はぁむぅ、ちゅるぅ……んむぅぅっ……!ぷはぁぁ!だあいすきぃ……ああん!」

 

ストレートな愛の言葉を囁きあいながら、体の熱はどんどん高まっていく。

 

もう少し楽しんでもいいんだが本能が彼女の奥に種付けをしろと叫んでいる。

これまで苦楽を共にしたパートナの顔をしっかりと刻みこみながら、子宮の方へ子種を注いでいった。

 

「んあぁぁぁあぁぁぁ……!!んぅ、あっ、あ、あぁ、あぁっ……いっぱいでてぇ……」

 

「まだいくよマシュ」

 

「え、せんぱい?あぁ!うそぉ……またぁ……にやあぁぁっ!」

 

一回で孕めるわけないでしょ!こういうのは回転数が全てなんだから!

というわけで抜かずにそのまま2回戦へ続行。

敏感になった彼女を追いつめるように激しく竿を前後へ動かす。

 

「あぁっぁ……!またぁ、イッてぇ!あぁ!やぁぁ!……イッてるのにぃ……ひぃあぁっ!だめぇ、だめぇ!とまらなひぃ……はあぁ!いく、いく、いくぅ……あぁ!あぁぁ!やぁぁぁっ……!」

 

涙と涎を零しながらも、今度は全身で抱き着いてきた彼女は既に余裕はないのだろう……だからと言って緩めるつもりもありませんが。

 

柔らかく、女を表現しているその肢体を楽しみながら腰の動きをさらに速める。

 

「あっ!あぁ!はあぁ!またぁおくにぃ……!んはぁあっ!とどいてぇ……あっ!やあぁぁっ!だめ、だめ、だめぇ……ばかになるぅ…にやあぁ!あぁぁ!」

 

結合部から一回目に出した精液が漏れているのを気にする事もなく2発目の彼女の奥底へと解き放った。

 

「ひやあぁぁぁああぁぁぁっ……!はっ、あぁっ、ああぁっ……もう子宮に入りきらなくてぇ……はぁ、はぁ、はぁ…………え?先輩?」

 

「じゃ三回戦目いこうか」

 

「ま、まって、せんぱい、少し休ませて、んひいぃ!ひやぁぁっ!まだこんなに硬くてぇぇ……はあぁ!あぁぁ!しんじゃうぅ、ああぁぁああぁぁぁぁ……」

 

今日はどこまでイケるかな――と彼女の叫び声を肴に月を見上げ楽しむ俺だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日談というかその後。

 

 

結局あの後何回ヤッたのかわからないほど情事を重ね合い、気づけば日が昇り始めてた。

朝帰りになってしまったみたいっすね。

ふぅ……賢者モードで冷静になると野外で何してんだ俺達と頭を抱えそうになったが今更だよネ!と思い開き直ることにした。

これも隣ですっぽんぽんで寝ている後輩が可愛いのが全て悪い!

 

「……ずぅっと一緒ですよぉ、せんぱい」

 

嬉しい寝言を聞きながら、そろそろ起こさなければと声をかける。

昨夜のあれは酒あっての力だからもしかすると覚えてないのかなーと一抹の寂しさを感じつつ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふにゅ?せんぱい?

あぁ……おはようござい……ま……す…………………………あ、あ、あ、あ、やああああぁぁぁ!ち、違うんです!違うんです!昨夜のあれは私じゃなくて…………いえ私なのですが……というよりなんですかマシュ印のプレミアムおにぎりとか!マ酒とか!馬鹿なんですかっ!私馬鹿なんですかっ!?あうぅぅう~~~~しかも、あんなはしたない言葉を先輩のまえで~~~……え?いえ……うそではありません……が……先輩の子が欲しいというのは紛れもない本音って……何を言わせるんですか!先輩最低です!というか私なんて格好で寝てるんですかっ!?先輩も服を早く着てくださいっ!まって、待ってくださいどうしてそんな手をワキワキさせて近づいてくるんですか……?だ、だめだめ、ダメですよ……あんなにしたのにまたされたら私今度こそ死んじゃいますってぇ……あぁっ……だからはなしをぉ……んふぅっ!やあぁんぅ…………」

 

 

 

 

 




結局昼頃にカルデアに帰ったみたいですハハハ、外で何してんだコイツら







羅生門イベの最後の顔はあれどう見ても発情してるでしょう、可愛すぎかよって感じで今回はメインヒロインマシュマロサーヴァントが主役。
つらいわーシールダー可愛すぎてつらいわー。
いやマジで5章ラストで心配なので早く6章を。




おにぎりが本当にマシュの脇で握られてたら、即行食いつくしたユーザー続出間違いなし!


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婦長さんはどこからくるの?(ナイチンゲール)

お気に入り1000突破記念!感謝の10連ガチャ!……………………アァ。









「盲目的にガチャをするあなたは病気です。まずはアプリをアンインストールし、その手を切り落とし二度とガチャを回せなくしましょう」


突然だが今俺は媚薬を仕込まれて既に数時間は経過している状態だ。

 

 

……いやネタとかじゃなくてマジなんですよ。

どうしてこうなったのかというとまぁ半分以上は自業自得以外の何物でもないのだけれどさ。

 

そう、あれは暇を持て余してダヴィンチちゃんの工房へ遊びに行き、ヘンテコグッズを手に二人で遊んでいた時――――――

 

 

 

 

『おや?ダ・ヴィンチちゃん、これは?』

 

『あぁ、それは君がよく仲の良い娘達に使用している媚薬の原液だよ。マスター君に渡してるのはそれを何分の一かに薄めた奴さ』

 

『その節はお世話になっております』

 

『いえいえー』

 

『しかし、サーヴァントすら乱す媚薬とは……』

 

『え?何を興味深そうに見てんの?もしかして飲んでみたいとか言い出さないでよね?いくら人外ゾーンに体半分ぐらい浸かってる君でも原液は無理無理、絶対無理だからっ』

 

『一舐めぐらいならいけるんちゃう?』

 

『いけねえよっ!ほら、いい子だから早くこっちにソレ渡しなさいっ!

駄目だからねっ!絶対駄目だからねっ!フリじゃないからね!』

 

『ペロリ』

 

『うわっ!ホントに舐めやがったよ、この子!

いやぁー!犯されるぅー!この美しすぎるモナ・リザの肢体をもったダ・ヴィンチちゃんが獣と化したマスターに襲われる一部の層が喜びそうな展開になるー!』

 

『…………何ともないけど』

 

『え?マジで?』

 

『マジ』

 

『えぇぇ~、こわぁー、君の体どうなってんの?

うんっ、何だかすごく気になってきた……一度ぐらいちょっと解剖していい?』

 

『いやですぅ』

 

『先っちょ!先っちょだけだから!』

 

『ええい!息を荒げてこっちに迫るな!鬱陶しい!

まぁ、あれだ、一舐めぐらいじゃ効果なかったんじゃないの?』

 

『う~~ん、サーヴァントにすら効果がある原液だよ?そんな事無いと思うけどなー』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局あの後、何事も無く工房からマイルームに戻ったらこの様ですよ。

今やアソコは完全に戦闘状態に入ってるし、体は熱いは息は荒いわで理性がデンジャラスビースト状態。

時間差だったのか、ただ単に俺が鈍感なだけだったのか、まさかここに来て、こんなに薬の効果が出てくるとは思わなんだ、辛い媚薬辛いよ。

 

とりあえずコレで外に出るのも色々とアウト過ぎるので通信機でダ・ヴィンチちゃんにSOS。

 

『もしも~し?』

 

「……ダ・ヴィンチちゃん……いま、ちょっといいか?」

 

『あぁー、媚薬の効果出たんでしょ?いくら君でもやっぱり原液は無理だったみたいだね』

 

「……もしかして、この展開は予想済み?」

 

『半分くらいはね、けどこんなに効果が出るのが遅いのと君がまだ理性を持って会話できてるのは大分驚いているよ』

 

「……何とか助けて欲しいんだが」

 

『ふっふっふっ、このダ・ヴィンチちゃんが助けを請われてから動く無能だと思ったのかい?既に手は打ってあるのさ!』

 

「おおっ!有能っ!」

 

『先程、君が重体だってあるサーヴァントに伝えたからね。すぐに部屋に着くと思うよ』

 

「…………ちなみに誰?」

 

『フローレンス・ナイチンゲール』

 

「無能っ!!」

 

『え――、治療行為において彼女の右に出るものはいないでしょー?我ながら神采配という奴だと思うんだけど』

 

「こんな状態の姿見られたら『ではソレを切断しましょう、大丈夫、痛みは一瞬です』って感じで間違いなくチョン切られるでしょ!」

 

『ほら、病は根元から断たないといけないし』

 

「俺のアソコは病じゃねえよ!」

 

『さすがにあの雑菌消毒切断婦長さんでも君相手にそこまで無茶はしないとぉ……………………思うけど』

 

「間が長いぞオイコラ」

 

『大丈夫!私は君が女の子になっても変わらずに大好きだからねっ!』

 

「聞きたくなかった……そんな告白聞きたくなかった……!」

 

『というわけで後はごゆるりと、サラバダー………プツッ』

 

「ちょっと待て」

 

ホントに切りやがったあの野郎!

いや9割方原因は俺にあるけども!

どうしようどうしよう……まずはこの部屋から出なくては。

 

―――ウィンッ

 

「患者はここですかっ」

 

アッ、もう手遅れみたいですね……。

 

「司令官が重体と聞きつけやってきましたが……成程、顔は赤く、息が荒い、発汗もひどいですね。熱を測るので動かないでください」

 

有無を言わさず、俺の顔を掴み、おでこを合わせる婦長。

 

やばいやばい、やばいってこんな状態で女の人と肉体的に接触したら完全にトドメ刺されるようなもんじゃない。

ただでさえ、彼女の体は性の自己主張が激しいのに主に胸の部分とか!

 

「ふむ、熱は微熱程度……いえ、私が触れてからどんどん熱くなっていますねこれは」

 

「……はぁ、フローレンスさん、ちょっと違うんだ」

 

「あなたは何も心配をする必要はありません、たとえどんなに重い病だろうとも必ず治します。この命を尽くしても……?」

 

視線を下げ、俺のズボンの膨らみに気づくナイチンゲール婦長さん、わあい何だろうこの羞恥プレイ。

 

「この腫れも症状の一つですか……安心して下さい、大きさは少々異常ですが原因はすぐに取り除きましょう」

 

しゃがみ込んで興味深そうに我が相棒をつつくナイチンゲール。

 

「……だから病気じゃなくてっ!媚薬を飲んだからこうなっちゃったの!今は性的に興奮してるから息も荒くなってるし、体も熱くなってるし、アソコも大きくなってるの!」

 

俺、クリミアの天使と呼ばれた方に何をしてるんだろうね?

目の前でアソコをおっ勃てて、自分が発情してるってカミングアウトして……ハハハ、なんか逆に興奮してきた、いやもう既に興奮してたわ。

 

「媚薬……?性的、興奮……?あぁ……成程……」

 

すくっと立ち上がり口元に手を当てブツブツと考え込む婦長さん。

 

「……男性として正常な生理現象なら病気ではないので問題はない筈…………しかし、それが薬によって無理矢理もたされたものなら?現に司令官は苦しそうにしている、ならばそれを癒すのが私の役割……」

 

「あのぉ、フローさん?」

 

「司令官ッ!あなたが飲んだ媚薬を作ったのは?」

 

「ダ・ヴィンチちゃんです」

 

「解毒薬は?」

 

「多分彼女そこら辺ズボラなんで作ってないと思います」

 

「……あの芸術家に今から薬を作らせるのは時間がかかりすぎる、かといって今の状態のマスターを放置し後遺症を残す危険性を見過ごすのは論外。ならばこれからすぐに私が彼の下処理をすれば問題はないでしょう……」

 

再びブツブツと考え込んだと思いきや、いきなり俺の傍に近寄りお姫様抱っこをするナイチンゲール。

体を触れられるだけで理性が激ヤバ状態だが何とか耐えた。

 

「ちょっ!?」

 

「これからあなたの治療を行います。より衛生状況が良い部屋へ……つまりは私の部屋まで連れていきます。行動は迅速に無駄な時間は一切つくるつもりはありませんので」

 

「アッハイ」

 

俺を抱えた状態で部屋を出る婦長、やだっ、すごく男らしい……そしてスピードが早いっ!さすが敏捷B+!ぐわぁぁ………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたは何もする必要はありません、黙って服を脱がされて下さい。もし下手に抵抗しようものなら撃鉄を起こさせていただきますが」

 

「……抵抗する気力もないから銃をこっちに向けないでくれ……」

 

ナイチンゲールの部屋まで拉致られ、現在進行形で洗面所で裸にひん剥かれているマスターがここに一人。

さすが滅菌ガール部屋の綺麗さはカルデア一だなーと出来る限り関係ない事を考えようと努力する。

でないと今すぐにでも目の前の彼女に襲いかかってしまうだろうし。

 

「これから治療にあたってまずはあなたの体を清潔にさせていただきます。いえ、厳密に言えば洗浄と性欲解消を同時進行で行います」

 

「……それって……ってかあなたも何故脱いでいる!?」

 

「着衣したままバスルームに入るなど不衛生極まりないでしょう?私が全裸になるのも当然です。おかしな事を聞く司令官ですね……」

 

色気もへったくれもなくハイスピードで服を脱いでいくナイチンゲール、それでも脱いだもの洗濯カゴにキチンとしまうのを忘れないのは彼女の性格故だろう。

そのまま肩に俺の腕を乗せバスルームへと連行…………前言撤回、色気滅茶苦茶あります、こんな至近距離にボンキュッボンなお姉さんがいるなんて通常時でもどうにかなっちゃいそうなのに……あぁーキツいっす。

 

「……はぁ……別にほっといてくれても問題はないのに……」

 

「そんな苦しそうな顔で何を言っているのですかあなたは。本来なら今すぐに私に襲いかかってもおかしくない状態のように見受けられますがそれを無理矢理理性で抑え込んでいるのでしょう」

 

「……そこまでわかっておきながら」

 

「見捨てるという選択肢はハナからありません。ただでさえ性欲旺盛なあなたが薬で倍増された状態で他の女性に襲ってしまった日には下手をすれば昇天してそのまま座に帰ってしまう危険性もあります。

患者による二次被害を押さえるのも看護師である私の役目です」

 

俺を風呂イスに座らせシャワーで全身をお湯で濡らしてくれながらも語るナイチンゲール。

サーヴァントすら昇天させるってちょっと俺のムスコ凶悪すぎない?

 

「俺が部屋に引き篭もっていればいい話では?」

 

「却下です。

病があり、なんの対策も施さず時間が過ぎ去るのを待つなど愚の骨頂としか言いようがありません。怠惰は病を生み、病は死を生みます」

 

「いや、これぐらいじゃ死なないと」

 

「却下、却下、却下です。

どうにも他の方々はあなたを神聖視ないしは人外視しているようですが、どれだけ人並外れた行動を成し遂げてもあなたは人間です。

血は流れ、病にもなり、いずれ老いる、ただの人間です。もっと自分の体を大事になさって下さい。それとも私を悲しませて楽しんでいるのですか」

 

今度は自身の体をシャワーで流しながら俺をキッと睨み付けるナイチンゲール。

……ふむ、そこまで言われるともうこっちからは何も言えないね。

 

「わかった、わかった、あなたに任せますフローレンス」

 

「最初っから素直にそう言っておけばいいのです。まぁ、あなたの性格からして薬は使っても薬自体に呑まれるのは良しとしないでしょうが」

 

さすがよくわかってらっしゃる。

お互いに体を濡らした後、彼女はボディソープを泡立て自分の体に塗りたくっていた。

 

「あなたをその苦痛からより早く、より完全に解放する為、先程も言ったと思いますが速やかに事を処理させていただきます」

 

「……っ!?」

 

イスに座っている俺に背後から抱き着き、泡にまみれたその上半身を使い俺の背中を磨き始める。

ていうか後ろを振り向く必要すらないデカパイの感触が素晴らしすぎる。

 

しかも、それだけではなくいつもより増し増しに膨れ上がっている肉棒をヌルヌルと扱きだした。

器用に背中を巨乳で責められ、アソコも手で責められ今まで耐えに耐えていた欲望が簡単に放出されそうになる。

 

「……んっ、んっ、おそらく長丁場になると思うので……少々効率を重視させていただきます…………あなたと私の体を同時に洗いながら……んっ、尚且つ異常に勃起したその性器の処理もしますので……」

 

「……っぁ、これは……」

 

「……んっ、我慢する必要はありません、んふっ……そのまま快楽に身を任せなさい。それが一番の治療への近道です」

 

あれぇー、俺いつの間にアレ系のお店に入ったのかなーと思いながらも絶対に口には出さない、だって口に出したら間違いなくぶん殴られるもん。

我慢する必要はないというけど、これに耐える方が土台無理な話ですわ。

 

「……っく!出るっ!」

 

ピュルッ!ピュルルッッッ!!と尋常ではない量の精液がナイチンゲールの手を汚していくが彼女は一切気にする事はなく、自身の柔らかい肢体をスポンジとして俺の体を洗い続けている。

 

「これだけ出ても大きさも硬さも変わらずですか……

いいでしょう背中の洗浄は終わりました。マスター次はこのマットに仰向けになりなさい」

 

言われるがまま風呂マットに寝転がる。

うんビンビンに反り勃ってるアレが目立ってシュールというか恥ずかしいというか、だがやはりどうしても彼女の体と奉仕が目に入り次の快感を期待してしまう。

 

「次は体の前側を洗います、あなたは特に動く必要はありませんが出来るだけ多く素早く射精するように心掛けなさい、治療は患者の治る意思が強ければ強い程効くのですから」

 

中々に無茶を言ってくれる……。

追加の液体石鹸を俺の上半身へ付け、今度はそのまま全身で伸し掛かってきた。

さっきは背中からなので見えなかったが彼女の巨乳が胸元で形をゆがめながら押し付けられ、鋭い眼つきの表情と桃色の髪が目に入る。

 

熱く硬化した肉棒は俺とナイチンゲールの体に挟まれ、彼女が前後へと動くことでどんどん刺激されていく。

乳首もぶつかり合い興奮を、触れ合う彼女の温かさが情欲を高めてくれる。

 

「……んっ、……んっ…………ふっ…………」

 

ナイチンゲールの様子は仕事を淡々とこなすといった感じでムードの欠片もないが、ないが…………。

泡で摩擦が少ない状態で巨乳美女の体全体でアソコを擦られてるのを視覚に収めながら感じてるからね!

只でさえ、薬でもう出来上がっしまってる俺にとっては十分過ぎるほどにエロスを感じてしまうんだよ!

 

「……くっ!」

 

再び多大な白濁液が互いの腹を汚してく。

 

「……ふぅ、良いペースです。その調子でどんどん吐き出しなさい」

 

射精されたものと泡で混ざり合ったものをすぐさまお湯で洗い流し、今度は寝たままの俺の足を持ち上げ股と胸で挟みながら磨いていく。

 

「……んっ、ふっ……んっ……」

 

体を上下に動かし、極上の体で足を扱いていく。

手は本当に丁寧に俺の足の爪先から指の間まで念入りに洗っていきそのくすぐったさと、何よりあの婦長が全裸で俺の体を洗ってくれている事実を目にしている事が快感を感じさせてくれる。

射精したばっかだけど、これは無理。

 

「……おや、実際に弄らなくても出るとはあなたもキチンと治す努力を怠っていないようで何よりです」

 

努力っつーか、これ頭からっぽにしても好きなだけ出そうなんじゃが……いや、マジで婦長さんエロ過ぎるんです。

 

もう片方の足も同様に責め、洗い終わった彼女は俺の股の下にしゃがみ込み……。

 

「ここは念入りに消毒と処理を口の中は既に洗浄済みなのでご心配なく……はむっ」

 

「……!?」

 

たわわに育った胸で肉棒を挟み込み、口で咥えてくる彼女、わかっててやってるのかパイズリフェラ状態で責めてきた。

 

「じゅぼっ!んじゅっ……じゅるっ!……んじゅるるぅ……じゅるるるるっ……!」

 

しかも胸で扱くのも口で吸い付いてくのも熾烈さは凄まじく、簡単に気をやってしまうような快感が襲いかかる。

 

「……っあ、……こんな、知識どこで……?」

 

「っぷはぁっ……生涯独身だった私はこういった知識に関しては乏しいですが何故かあなたの気持ちがる責め方が本能的にわかってしまうようです……。

無駄口を叩きました、続けます……はむじゅぅぅ、れるぅっ、じゅぽっ……」

 

あれか?人体理解(A)の恩恵だったり?どこが弱いのかわかってしまうみたいな?いやまさかあのスキルにそんな効果があるとは……?

けどどう考えても俺の弱い場所を熟知しているような攻め方なんです、がっ!これ……は!

 

「んんんんぐっ……!んじゅるるうるるぅ……んぐぅ…………ごくっ、こくっ……ふぅ…………はぁぁ……何ですその顔は?」

 

射精したらそれを零さず、全て飲み込んでいった。

 

「いやまさか飲んでくれるとは思わなくて」

 

彼女なら「殺菌!!」とか言いながら吐き出しそうだし。

 

「生前ならあり得ないでしょう、不衛生極まりないですし。ですが私はサーヴァントであり、あなたはマスター、今の私にとってあなたの精液は魔力供給以外の何物でもありません、そしてそこで体力を補充するのも良しとしました。

それに私が汚れる事をあなたが気にする必要はありません、体を治す事だけに意識を向けなさい。

さぁ、次は頭を洗うのでまた風呂イスに座ってください」

 

「はいはいっと」

 

髪をすすぎ、シャンプーを手につけるナイチンゲール、体は当然のように密着しており、アソコも依然反り立ったままである。

 

「……ちょっと体近すぎるんじゃ……?ってフローレンスさん!?あなた何をっ……!?」

 

俺の性器と自身の性器の位置を確認するとそのまま、膣口に亀頭を当て、腰をストンと下ろしてきた。

 

「……くっあぁっ」

 

「んっ!…くぅっ!……はぁっ……異常なサイズですね……」

 

「……その一言で終わらせるあなたも十分異常だと思うよ……っぁ」

 

いきなり挿入(いれ)てきたよ。この人……。

けどそれについて言及する余力は今の俺にはない、彼女の膣壁が治療の意思を持っているかのようにうねり俺の竿を刺激してくる。

 

俺の髪を洗いながら腰を器用に動かし快感のポイントを的確に突いてくる。

二つのたわわな球体の感触を楽しみながら彼女を見ると先程と様子は少し変わっていった。

 

「んぁっ、くふぅ……あっ……っん…………はぁ……」

 

顔が火照り確かに少しずつだけれども感じている様子だった。

あぁ、さっき俺の精液をがっつり飲んだからかな?もしかしなくてもその時に媚薬の効果が彼女に移ってしまったのかも……それにしても感じながら、洗う手は一切止まる気配が無いとは……これも奉仕の精神という奴なのでしょうか?

ならば俺もそろそろ仕掛けるとするかマグロに徹するつもりもないし。

 

「んふっ………………ひゃあっ!………くぅっ!邪魔はしないようにと言ったはずですがっ……」

 

空いた両手で形の良いナイチンゲールの尻を掴み揉んでいくと非難するようにこちらを睨みつけられた。

 

「治療をする努力を怠らないように言ったのはあなたですよ。

俺はあなたの嬌声を聞きながら、感じてる様を見ながらの方が治るのがより早くなると考えただけです」

 

「んあっ……くぅ……私に患者を前に快感に流されろと……はぁっ!んっ……言うのですかっ」

 

「そっちの方が早く治るならあなたはそうする人でしょ?」

 

「あっ、くふぅ……わ、かりました……この手の知識はあなたの方が強いでしょう……あぁっ!元々我慢しないように言ったのは私ですからねぇ……すきにうごきなさいっ……はぁあっ!」

 

よし来たとばかりに腰をこちらからも動かす、お尻を揉み解していく手も止めずにパンパンとぶつかりあう音がバスルームに広がる。

 

「あっ、んくぅ!はぁっ、あぁ、ふぅ、あぁっ、ひぅっ、ふあぁぁっ……!」

 

俺の言う通り快感に少しずつ身を任せてくれている。

それでも腰の動きと髪を洗う手を止めないのはさすがと言うべきだろう。

 

「いいお尻の形してるよね、フローレンスさんって安産型と言うべきなのか……」

 

「あぁっ、ふぁ、し、しりませんっ、はぁっ……私に子供を産む時間も余裕など……あんっ!ありませんからぁ……」

 

「良いお母さんになると思うけどねっ……」

 

「あうぁ、あっ、あぁぁ、はあぁ……んくぅ!んあぁ……」

 

喘ぎながらもシャンプーをしっかりとシャワーで洗い流してくれる。

やっとこれでより激しく動けるかな、さっきから泡が飛び散って気になってたし。

 

「あ、あっ、あぁ、あぅ!……はぁ、んっ、んぅぅ……やぁ、はあぁっ!」

 

小さく息を吐きながら感じてくれる彼女に再び子種をビュルビュルと吐き出す。

 

「んくぅ――――――――――――……!!!!あぁ、あっ、あつくっ、はぁ……はぁっ……」

 

ナイチンゲールの膣内の暖かさを感じながら、盛大に出したが未だに硬さが失われる気配もない。

そのまま抜かずに彼女を床へ押し倒す。

 

「……悪いけどもうこれ以上止まるのは無理っぽい」

 

「……はぁ、はぁ、すきに動きなさいと言ったのは私です。たとえ私の体がどれだけ壊れようともあなたの治療が終わるのなら何も問題はありません」

 

そんな事言われると普段なら壊さないように繊細に扱う筈だけど、熱に浮かされ、そして彼女なら俺の全てを受け止めても壊れないだろうとある種の確信がある今……俺はそのまま獣の如く、交わりを再開した。

 

「ああぁぁっ!くうぅ、んぅっ、はあぁぁっ!……あっ、ああぁ!!ふぅあぁ、ああんぅっ…!!」

 

突く度に大きく揺れ動く胸。

何よりあの鋼鉄の乙女が自分の下で乱れているのがひどく興奮を助長させ、動きが激しくなる。

 

抽出を繰り返しながら、彼女の体に伸し掛かり、目の前にある大きく育った巨乳の先端にむしゃぶりつく。

 

「ひあぁぁっ!あぁっ!はあぁ!んあぁっ、あっ……!あぁっ!……はあぁぁ!!」

 

口内で踊るコリコリとした感触を楽しんでいると、そのまま頭をギュッと抱きしめられる。

 

これだよ、どんなに乱れてても絶対に奉仕の精神は忘れないだもんなぁ彼女……現に腰だってあっちも俺をより気持ち良くさせようって動いてくれてるし。

 

フローレンスなら安心して全てを任せられるという甘えを持ちながら、性交を続けた。

 

――――そこから。

 

 

 

 

――――――――深く膣内に出し。

 

「ああああぁぁんあぁぁぁぁ―――――……!!!」

 

 

 

 

――――――――時には体にかけ。

 

「ひっ、あっ、はぁっ、ああぁ、はぁぁっ……ふぅぁぁ……」

 

 

 

 

――――――――理性を放棄するように何度も何度も交じりあった

 

「あぁ、はぁぁぁっっ!やあぁぁっ!あっ!ひあぁっ!んぅぅっ……ふぅぁっ、あ、んんぅっ!……ああぁっ!き、なさい……なんどでもぉ……きなさぁいぃ!うあぁっ、あ、あぁ……はんっ、あああああああぁぁぁ――――――……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこから数えるのが馬鹿らしくなる程の絶頂が終わった。

ようやく俺のアソコも静まり、媚薬の効果も消え去った。

 

「……はぁ――、はぁ……んんっ、後でこのバスルームも滅菌しなくてはいけませんね………はぁ……」

 

……あぁ、てかもうこれ以上はホントに無理、我ながら底なしにも程がある。それに最後まで付き合えたフローレンスもおかしいけど、鋼の看護ってそういう事?違うか。

けどちょっと理解できた……これは他の娘達だったら誇張なしで快楽死させてもおかしくなかったわ。

一部例外はいるけど、あの状態の俺を相手できるのはフローレンス・ナイチンゲールだけだったかもしれない。

 

「はぁ……はぁ……俺何回出したんだ……?」

 

「……はぁ、はぁ―――24回です」

 

「あの状態で数えてたのか……」

 

「当然です」

 

息を整え終わった婦長さんが俺の顔とアソコをしっかりと観察する。

 

「顔色も正常、汗も正常、性器もしっかりと戻っているようですね、具合は?」

 

「うん、すさまじくスッキリしてるよ」

 

「それは何よりです、では治療は終了ですね…………そして」

 

「……っテ!」

 

そう言い彼女は俺の顔を掴み、おでこをぶつけ合う程の距離まで迫ってきた。

 

「これに懲りたら次からはもう少し自身の身を省みるようにっ!

『多分大丈夫だろう』という慢心があなたにとって一番良くありません。

もしまた同じような事があれば、これからは私があなたの食事、運動、洗浄、排泄、睡眠、全てを管理するものだと知りなさいっ、いいですね?」

 

「アッハイ」

 

彼女ならホントにやりそうなのでYES以外の返答は返さないっす。

うん、これからはもう少し自重するよ………………多分。

 

「何であれ、本当に助かったよ。ありがとう、あなたのお蔭だ」

 

「礼は不要です。私は当然のことを……んんっ」

 

良い距離に唇があったので重ねる程度の軽いキスを不意打ちでかます。

 

「これは感謝の印、クリミアの天使様」

 

「………………はぁ――、本当にわかっているのかしらあなたは……。

まぁ、冗談を言える程、回復できたという事にしておきましょう」

 

「冗談じゃないんだけどなぁ」

 

「いいからこっちに来なさい、お互いにまた体が汚れてます。しっかりと完璧に洗い直すので……あなたももう私に襲いかかる元気はないでしょう?」

 

「あぁ、賢者タイムだから、さすがにね」

 

「検者タイム?……まだ何か検査が必要なのですね、わかりましたここから上がったら私が行いましょう。司令官の体調を逐一把握するのも私の役目です」

 

「違う違うそう意味ちゃうよ」

 

 

 

 

 




戦闘ボイスが楽しい勢の一人、「雑菌!」と叫びながらサマーソルトキックをぶちかますバーサーカー。お前のよう看護師がいるかっ!
婦長さん、モーさん、性別ラーマで早くパーティーを組みたい日々。
ラーマくんはやくきてー、はやくきてー。






口に出すときはナイチンゲールではなくフローレンス。基本的にサバを名字で呼ぶ事はないですからこの主人公は。
サーヴァンすら乱す媚薬の原液を飲んでギリ正常なだけやっぱりおかしいわコイツ。
今回の件で少しは自重するのかな?どうなのかな?
まぁ、また無茶してそれがナイチンゲールの耳に入れば間違いなく婦長さんに完全介護される生活が待ってるよ!!これぞHAPPY END!!



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Wii Fit Tarasque(マルタ)

基本的に1話完結にしてるのは仮に更新が空いたとしても前の話を遡る必要なく最新話を読むことができる(邪ンヌ回みたいな特殊な奴はあるけども)という私の優しさからです。
決して、話数またいでストーリーを考えるのが面倒くさいとか、そもそも時系列に話を作ることが出来ないからとかそんな理由ではない。いやホントホント、本当だってば。





綺麗なものほど崩壊させたくなる(確信)。


「……そんな、嘘よ……」

 

マルタは絶望した。

 

信仰を護り、人類を愛し、世界を導かんとする聖女が顔を青ざめ目の前の事実を受け入れられないでいる。

 

「ありえない……、こんなのは……何かの間違いよ…………」

 

衣服を一切纏っていない彼女は眼を瞑り、確固たる数値を否定するかの如く呟く。

 

生前にここまでの衝撃はあったか?

 

いやサーヴァントである今の方がこの真実は受け入れがたい……。

 

どうして、どうして、どうして。

自問自答しても真下にある機器は何も答える筈がない。

 

 

 

「……体重が増えているっ!!」

 

マルタは絶望した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ええー?ほんとにござるかぁ?」

 

「あのエセ侍の真似を今すぐ止めていただけるでしょうかマスター?」

 

ステゴロ聖女ことマルタさんにトレーニングルームに呼び出しをくらいました。

出来れば二人っきりで他の方達は立ち入り禁止にして欲しいと……色気のある話かなーと思いながら着いてみれば、何故かいたのは全身青ジャージで防護されているマルタさんの姿が。

 

「私とて嘘だと思いたいのですが……どんなに量り直しても教えられるのは残酷な真実っ!これも試練だと言うのですかっ!」

 

「てかジャージ姿似合うねマルタさん。深夜のドンキにいそう」

 

「あんたっ私の話ホントに聞いてんのっ!?」

 

悲しみと怒りに塗り潰された瞳でこちらを掴みガクガクと揺らしてくる聖女さん、口調乱れてまっせ。

 

「元を辿ればっ!私を召喚したあんたがっ!全然私を使ってくれないからじゃないのっ!?何よ、あんだけ種付けしておいてっ!レベルMAXにしたらポイッ?こんな都合の良い女扱いなんてマスターはホント鬼畜だわっ!」

 

「人聞きの悪い事は言わないでくれるかね」

 

まぁ確かに、言われてみるとウチの高レアライダー組は激戦区だからなぁ……。

 

ドレイク船長:言わずもがな使いやすさNo1、よっ!提督っ!

サンタさん:全体トップクラスの火力を誇る宝具、ミニスカは良いぞ。

マリー:スキルと回復で沈まない不沈艦、ヴィヴ・ラ・フランス!

アンメア:単体トップクラスの火力を誇る宝具、おっぱいとバニーは良いぞ。

 

これに加えて、高レアじゃない組も食い込んでくるからねー、マルタさんは不憫。

 

「そういや戦闘がない日は普段何してんのマルタさん?」

 

「…………………………起きて、食堂でご飯食べて、ブーディカやマタ・ハリと井戸端会議して、アルテラとチャットしながら昼ごはん食べて、そのままお昼寝して、起きて、食堂で夕食たべて、深夜は荊軻と牛若丸と遅くまで飲んで……」

 

「ニートかな?」

 

「ガフッ!」

 

床へ崩れおちるマルタさん。

自覚はあったのだろう、けどやっぱり俺は腑に落ちない点がある。

 

「普通の人がさっきみたいな生活してたら、当然ぶくぶく太るだろうけど、サーヴァントは成長もしないし、老化もしないんでしょう?なら体重が増える筈ないんじゃ……」

 

「けど現に増えてるんだもん。

体重計が壊れてるのかなって見てもらっても特に変わらなかったもんっ」

 

「もんって」

 

徐々にキャラ崩壊を起こしていくマルタ姉さん。

とりあえずは原因を解明してあげないとならぬか、見てて忍びないし。

 

「もしかして、マルタさんが持ってる『奇蹟』のスキルのせいだったりして……あれって不可能を可能にするみたいな感じの奴でしょ?あまりにマルタさんが非生産的な生活をするからそれがこういう形で現れたんじゃないの?神が与えた罰というか試練みたいな形で」

 

そんなわけねーよなと自分でも思いながら冗談めいて言ってみたが、先程から床にへたり込んでいるマルタさん口を開き、ガクガクと震えていた。

 

「……よ……それよっ!!」

 

確信するように俺を指差す聖女様、え?マジで言ってんの?

 

「世界を救う為に召喚されても私の出番が無いのならそれはそれで良しとしていました。

好戦的な性格でもありませんからね、ですがそれが怠惰な生活を送っていい理由にはなりません。

いつ出番があっても良いのに自身を律するべきだったのですっ!

ええっ、決してここ(カルデア)があまりにも快適だったからだとかご飯がおいし過ぎたからだとかは言い訳にはしませんっ!」

 

好戦的な性格ではない……ほんとにござるかぁ?

何はともあれ道が見えたのなら解決策の一つぐらいは授けてあげねば、原因の一端は俺にあるわけだし。

 

「マルタさんをこれから目一杯クエストに連れていけばいいのかな」

 

「いえ、人理を救わなければならない旅路で悠長な事は言ってられません。

先程はお見苦しい姿を見せましたが、あなたの采配は常に最善です。それを無理に崩す必要はないでしょう」

 

「その采配とやらもあなたのクラスがライダーゆえにだし……なら俺に良い考えがある」

 

「えっ本当っ!?……―――コホンッ…本当ですか?マスター」

 

「クラスチェンジすれば良い話でしょ、マルタさんならボクサー、レスラー、グラップラーのエクストラクラスぐらいには…………ごめんごめん冗談だから無言で首絞めないで、タップタップ」

 

「……はぁ、まずは地道にこの鈍った体を鍛え直さないといけませんね、付き合ってもらいますよマスター」

 

「え?俺?もっとパートナに適した奴は他にもいると思うけど」

 

「他のサーヴァントにこんな醜態を見せれません、あなただから頼んでいるのです。

レオニダス王、クー・フーリン、佐々木小次郎、ベオウルフ、神槍 李書文……これだけの肉体系英霊に師事しておきながら運動が苦手などは言わせませんよ」

 

「師事というよりは遊んでもらってるだけなんだけどなぁ……まぁいいさ、頼りにしてもらえるのは嬉しいし、ビジバシと行かせてもらいますよ!」

 

「ええっ!望む所よっ!この聖女マルタ!必ず痩せてみせるわ!」

 

「まずはその野暮ったいジャージからいつもの服に着替えてもらおうか」

 

「…………へっ?

いやいやいやいや、運動するといったらジャージでしょう?別にわざわざ着替える必要は……」

 

「No!

ダイエットの秘訣はまず自分のたるんだ体を他人に意識してもらう所から始まります!」

 

「た、たるんだって……」

 

「危機感を持つ事が成功への近道、それとも必ず痩せるというのは口だけの誓いですか?」

 

んんぅ?どうなんだ?と視線で訴えると、渋々といつもの戦装束へと変身するマルタさん、サーヴァントってここら辺ホントに便利。

毎度思うんだが聖女と言う割りには格好が性的過ぎるだよねー、谷間とかヘソとか太ももとか。

 

「こ、これで満足ですか?マスター?」

 

腹周りを手で隠されながらそんな事言われても困る、別に自身の性癖のために着替えさせたワケデハナイデスヨ。

ぱっと見太った感じはしないけど、ふむ…実際に触ってみないとわからんか。

 

「はーい、おててが邪魔ですよー、もみもみと……」

 

隠している手を払い除け、服の上から脇腹の肉をつまむように揉んでいく。

 

「はっ!?ちょっ、あぁっ、やめ……だめダメ駄目っ!!放しなさいっ今すぐ放しなさい!!やだやだやだやめてってば!」

 

「うぅーん……あんまりお肉がついてるとは思えないし、そんなに気にする事かなぁー」

 

もみもみもみもみと……うん良い体ですなーと思いながら、マルタさんの抗議をスルーし、俺の手を外そうとする抵抗も意に介さずひたすら腹周りをチェックする。

………………彼女、何というか確実に弱くなってる気がする、いつもなら既に投げ飛ばされてもおかしくないのに……。

 

「むりむりむりっ――!もうやめてってば!やめてってぇ…………うぅ……」

 

「うぅ?」

 

「うえええぇぇぇぇぇぇええんんんっ!!!」

 

泣かせてしまった!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ううぅ、ぐすっ、ぐすっ……すんっ…」

 

「あー、よしよーし、ごめんねー、すぐにやめないでー、お兄ちゃんが悪かったから泣き止んでねー、よしよしー……」

 

あの後号泣してしまったマルタちゃんを抱き締め、頭をポンポンと撫でながら泣き止むまであやすことにした。

体重を気にしている女性のお腹をつまんじゃいけませんってばっちゃが言ってた気がする、正直スマンかった。

 

「……うぐっ……馬鹿、変態、ドスケベ、種馬」

 

「最後は否定させていただく」

 

回復はしたという事でいいのかな?結局どれぐらい太ったのかよくわからんけど彼女がいつもの調子に戻るまで付き合うとしましょう。

 

「……ぐすっ、あんたマジメにやるつもりあるんでしょうね…?」

 

「もちのロンですよ」

 

涙目でこちらを疑ってくる彼女の空気を変えるように拳をあげて宣誓する。

 

「う――し!マルタさんが以前のパーフェクトボディに戻るまでレッツ!ダイエット!!がんばるぞ――!!」

 

「お、お――!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~メニューその1:ランニング~

 

トレーニングルームに設備されているランニングマシンで軽い走り込みをするマルタさん。

マルタさん………………だったのだが。

 

「開始10分でバテバテって早すぎやしないっすか?」

 

スイッチを止め、手すりに寄り掛かり息絶え絶えな聖女様、ハァハァしてて何かいやらしいっす。

 

「……はぁはぁ、はぁ、……私の『奇蹟』スキル……D+から-Dになってるわ」

 

「は?マイナスD?」

 

もしかしなくてもさっき俺を振り払えなかったのはそのせいだったり?

 

「奇蹟のベクトルが嫌な方面に行くって事ね……私の今の体力、本当に町娘程度まで下がってるんですもの……ここまで念入りに試練を与えなくてもいいじゃない、クーリングオフしようかしらこの産廃スキル」

 

「おい聖女」

 

「冗談よ、私がこの程度の逆境でくじけるわけないでしょ!今までのは様子見よ!次から本気を出してあげるわ!」

 

そう言い、マルタさんはプルプルの足で強がりを見せながら再びボタンを押す。

あ、ちょい待ち、そのボタンは世界陸上選手レベルのスピードで……。

 

「あぎゃぁんっ!!」

 

おうふ、頭から行ったよこの人。

 

「……ううぅ、いたぁい……」

 

「はいはい、すぐに応急手当のスキル使うから動かないの」

 

こんな調子で大丈夫なのかね……?

 

 

 

 

 

 

 

 

~メニューその2:腹筋~

 

「ぐぬぬぬぬぬぬっ…………」

 

「ほらーまだ2ケタもいってないぞーやる気あんのかー」

 

彼女の足に自身の足を絡めながら押さえてあげ、筋トレを手伝ってあげる。

手を頭の後ろで組み起き上がろうとしているがいかんせんスピードが遅すぎる、めっちゃ震えてんだもん。

 

「……ぐぎぎ、これぐらい何ともないわ……やあぁんっ!ちょっと!今なんでヘソを突いたのよ!」

 

「あんまり遅いとペナルティが発生します。ほれほれもっと死ぬ気で頑張りなさい」

 

次はおっぱいの方にいくぞー、オラー。

 

「……やってるわよ!さっきから!あぁ!だから……やぁ、ちょ、無言で胸を揉むなぁ……ああぁん……」

 

 

 

 

 

 

 

 

~メニューその3:腕立て伏せ~

 

「あの頃の自分を思い出すんだ!ドラゴンを拳でしばき倒してたあの頃を!群がる悪漢達を泣き叫ぶまで殴るのを止めなかったあの純粋な頃のマルタさんを!」

 

「ふぐぐぐ……そ、そんな事した……お、ぼえないわっ、よ!私、せいじょ、だもんっ……むぐぐっ!というかっ!なんであんたは私の背中に乗ってんのよっ!」

 

気合で自分と俺の体重を支えながら、彼女は叫ぶ。

だって只腕立て伏せするだけなんて面白くないじゃないか。

 

「これぐらいしないと音を置き去りにする拳を放っていたマルタさんには戻れないかなーという俺の優しさからなんだが」

 

『祈りとは心の所作……』みたいな感じで杖を使わないマルタさん見てみたいっ!よっ!

暇なのでいい形をしてるお尻でも撫でまわしておく。

 

「よ、けいなお世話よっ……ひぃやあぁぁんっ……!ふぎやぁっ!」

 

あ、潰れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

~メニューその4:強制ギブス~

 

「マ、マスターこれ本当に強制ギブスなのかしら……?」

 

「うん、ダ・ヴィンチちゃん特製『亀甲縛り型ギブス』という優れもの、‘これを着けるだけで10kg減量間違い無し!‘だってさ」

 

「胡散臭い上にもう亀甲縛りって言ってるじゃない!完全にアレなグッズでしょ!コレ!」

 

確かに強制ギブスと言うには拘束しているモノが些か細く見えるし、前側は胸を強調するようにその周りを縛り、お尻の割れ目と股に深く食い込んでいる。

だが俺は自分の仲間を信じている。ダ・ヴィンチちゃんが強制ギブスといったらそうなのだろう。

 

「動きは強制されてるし、効果はあるんじゃないの?」

 

「強制というよりこれ……は……ふうぅんっ!」

 

歩こうとする度に悶えてしまうマルタさん、どうしたんでしょうか?(すっとぼけ)

 

「はぁ、うぅ……これぇ動くたびにぃ……敏感な所がぁ、あんっ……こすれてぇ……いやあぁ……」

 

内股で小さく一歩踏み出そうとするとギシギシという音と共にギブスが彼女を縛りつける。

それでも進もうとするが機械から与えられる快感に耐え切れなくなったのか床に倒れこんでしまう。

 

「あぅん、ぎしぎしいってぇ……あ、あっ……しめつけないでぇ……んんぅ……」

 

「マルタさーん、大丈夫?」

 

うつ伏せのままビクビクしてる彼女に近づく。

こういう時は一緒についてきた取説でも読むべきだろう。

 

『《ダ・ヴィンチちゃんの一言アドバイス!!》

え?ギブスを着けてる人が倒れ込んでしまった?それは大変だ!今すぐギブスの背中部分についてる紐を引っ張ってあげるんだ!出来るだけ思いっ切りね!』

 

おぉ、見事に対処法が載っている。

さすがは世界トップクラスの芸術家だぜ!

とりあえず取説通りに、背中にある紐をグイッと引っ張ってあげた。

 

「んひいいいぃぃああああぁぁ!!……あぁぁっ……んあっ、はあぁ!」

 

アレーオカシイゾー、何故かマルタさんが仰け反って達してしまったぞ――、これは一体どういう事なのかな――?

 

「あ、あんたぁ……いますぐぅ……くふぅっ!あ、あぁ、それやめなさいぃ……あうぅっ!」

 

「それと言われてもどれの事なのか」

 

紐をグイグイする度にギブスの軋む音と彼女の嬌声が聞こえる。

しかも激しく動けば動くほどさらに自分の体を強く縛る事になるので快感が二重苦で襲いかかってくる。

 

「あぁぁっ……あぐっ……やあぁんぅ!だからぁ、ひっぱるのぉ……んんうぅっ!やめぇっ、ひぐうぅっ……!」

 

体も拘束され、空気を求めるように口をパクつかせながらも頬は紅潮し完全に雌の顔になっている聖女様。

 

「これもある意味では良い運動になるんじゃない?

それにほらマルタさんってちょっとMの気質あったりするし、ちょうどいいでしょ?」

 

「あ、あんたぁ……ふうぅっ……!あとでおぼえときなさいよおぉ……あぁ!やだぁ!はうぅっ!またいっちゃぁ…………んんんっ!!……」

 

イケる所までイッてみましょうよマルタさん、滅茶苦茶痩せるかもしれないじゃないですか。

それグイグイっと――。

 

 

 

 

 

 

 

 

~メニューその5:バランスボール~

 

「ハァ、ハァ、ハァ…………」

 

しばらく楽し……もといトレーニングをし終わった後、ギブスを外してあげ、全身汗でしっとり濡れてぐったりして息切れ状態マルタさん、完全に事後みたい。

聖女がしちゃいけない顔してますよ――。

 

「どう、マルタさん?10kgぐらい痩せた?」

 

「……ハァ……もう、ツッコむ気力もないわ……」

 

そう言いながらもゆっくりと立ち上がる。

力は失っても根性はあるみたいですね素晴らしい。

 

「頑張ってる聖女様に朗報。

次はあなたにとって比較的簡単なメニューを用意しました」

 

「……………………」

 

「そんな疑いの眼で見ないでくださいな、次はちゃんと真面目な奴だから」

 

今までは真面目じゃなかったのかと聞かれるといや大真面目にふざけてましたとしか言い返せないが。

 

「体幹を鍛えれて、お腹周りのダイエットも可能!

その名もバランスボール!どう?これならスーパーポンコツ状態のマルタさんでもいけるんじゃない?」

 

「………………ふっふっふっ、マスター、私のクラスはライダーですよ。

タラスクを初めとして竜種を乗りこなせる私がそんなボール程度に遅れを取ると思いまして?

このような物、眼を閉じてでもお茶の子さいさいですわよ、おほほほほ。あと誰がポンコツよ」

 

フラグをそこら中に田植えしているとしか思えない発言をドヤ顔でかましているが本当に大丈夫なんですか?

あぁ――、そんなに勢いつけて……。

 

「ドラゴンライダーの実力その眼にしかと焼き付けなさい!とうっ!!」

 

高く飛び上がり、バランスボールへ乗っかるマルタさん

 

―――ボヨンッ

 

「きゃっ!」

 

―――ドスッ!ゴスッ!!

 

「ぐはっ!!」

 

うわぁ……頭とケツ同時にいったね。

 

景気よく乗っかったはいいものの勢いをつけ過ぎてボールに弾かれ床に落とされる始末

これはどうしたものか、笑えばいいのか、泣けばいいのか……。

仰向けに倒れてるマルタさんも両手で顔を覆い隠したまま微動だにしないんだもの。

 

「…………………………死にたい」

 

「……マルタさん」

 

「バランスボールにすら乗れないライダーとか聞いた事ある!?

私の騎乗A++は飾りなの!?ボヨンッて何よ!?ボヨンッて!?」

 

あまりの羞恥心のせいか隠している手はそのままで嘆いている。

ほらバランスボールって乗り物なのか微妙だし気にしなくてもいい気がするけど。

 

「そう気を落とさないでマルタさん、今はおかしなスキルのせいで力を失ってるだけなんだから」

 

「無理よ、もう……ランニングは10分も持たず、腕立ても腹筋もロクに出来ず、強制ギブスではイキまくって、バランスボールには乗車拒否されるサーヴァントなんて誰が使うのよ。

あぁ、これからはマスターの慰み者として生きていくしかないんだわ……」

 

「普段あなたが俺の事をどう思ってるかはよくわかったよ。

ともかくちゃんと健康的で運動もする生活して痩せれば、元の力に多分戻るんだろうし、もう少し頑張りましょう。俺も最後まで付き合うからさ」

 

「う、うぅ~……ますたぁー」

 

隣に座ると顔を上げこちらに見事な泣き顔を晒す聖女様

さっきの失敗がよほど堪えたらしい、なんか幼児退行してね?

 

「……だっこ」

 

「はいはい」

 

自ら起き上がる気力すら無いのか両腕をこちらへ広げているので、お姫様抱っこで持ち上げしばらくそのまま機嫌が直るまであやし続ける。

顔はムスッとしてるし大きい子供やこれ。

 

「完全運動音痴状態の私がこれからクソ真面目にトレーニングしても効率が悪いと思うの」

 

「と言うと?」

 

「もっと手っ取り早く痩せれる方法があると思うのよね

……いっそのことアンタとセ○ロスした方が早く痩せれるんじゃないかしら?」

 

「聖女が言ってはイケない台詞を平気で言いやがりましたね」

 

「ハッ!聖女の誓いは時と場合によっては投げ捨てるものよ」

 

やさぐれながら吐き捨てる彼女を見ながら、あぁ月見だんご騒動の時からこういう人だったなーと思い返す。

 

「で本音は?」

 

「……マスターがさっきからちょっかいかけるから昂っちゃってるのよ、慰めなさい」

 

「しょうがないにゃあ」

 

まぁ、空気を入れ替えるにはいいかもしれない。

案外これが解決策に……つながるわけはないだろうけど

これも運動といえば運動だもんね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んぅっ、あっ、あぁ……ひあぁぁ……!はぁ……ふぅぅ、あうぅん……」

 

床にマットを敷き、彼女を押し倒した後は服を完全に脱がすという事はせず、股の方は横にずらして指を挿入して膣内で細かく動かす。

胸の下の方のベルトを2本とも外し、露出させると既に出来上がっていた先端部分が見えたのでそこをコリコリと弄り回す。

上と下を同時に責められる快感に為すがままにされている。

 

「トレーニングの時に焦らした甲斐あってもう前戯の必要もなくグショグショだねマルタさん」

 

「ああぁ!あ、やあぁ……う、うるさいっ、ばかぁ……ああぁっ!ひぃああ!そこやめぇ……やあぁ、あぁっ……いくぅぅっ!」

 

この人は強くした方が感じてくれるのはわかっていたので乳首とクリトリスを強めにひねると簡単に絶頂へイッてしまった。

プシュップシュッと潮も小さく吹いている

これならもう挿入(いれ)ても問題はないかな?

 

「それじゃあパパッと本番の方いくよマルタさん」

 

「あぁ……はあぁ、はぁ……服はこのままでいいの、かしら……?」

 

「全裸でもいいけど着衣は着衣ならでの良さがあるんでこのままでオナシャス」

 

溜息とともに呆れた視線を向けられるがいや別に何でも好きってワケじゃないんすよ。

要するにケースバイケースというだけなんで。

 

「入れるのはいいけど…………して」

 

「?」

 

「ちゅーしながら、して」

 

あらやだ今日のマルタさんいつも以上に可愛く見える。

普段はどっちかと言うと大人のお姉さん的な余裕があるが、ポンコツ化してる今はその余裕もなく子供っぽい。

あー、ギャップ萌えという奴なんですかねこれは。

 

「わかりましたよっと」

 

ご要望通りに、大事な所へ侵入しながら口づけを交わす。

 

「んうっ!!……んちゅっ、ちゅっ……んはぁっ!…はむぅ、れるぅ……んんぅっ!」

 

奥へ奥へと進むごとに触れ合う唇が震え、吐息と声が漏れるがそれでも彼女は俺に唇と舌を啄ばむことを止めようとしなかった。

 

「んんんっ……あぁ!はいったぁぁ…………ちゅむぅ……ちゅるぅ、んん!……んちゅ……」

 

完全に入りきっても動く事はせずひとしきりお互いディープキスを楽しむ。

 

「……はぁっ、そろそろ動くかい?」

 

「……んはぁ、いや、あんたは動かなくていいわ……あっ……私が動かないと運動にならないでしょ?あんっ……」

 

倒されていた体を起こし、俺を押し倒す。

さっきとは立場逆転の体勢になった。

 

「じっとしてて……ねぇ……あうぅっ!」

 

騎乗位の体勢で少しずつ腰を上下に動かす

動くなと言われたので大人しく彼女の痴態を眺めることにする。

 

「あっ、あっ、ああぁ、はあぁっ!……きもちいところついてぇ、あふぅっ……これぇ、いいぃ……んあぁ!」

 

コツを掴めたのかだんだんとスピードを上げていき、自分が気持ち良くなれる所を探っている彼女の姿は胸と髪が激しく暴れ……そしてパンパンと臀部を叩きつける音とこちら絞ろうとする膣内の動きにマルタの心地よい重みがどんどん欲望を増幅させていく。

 

「はぁっ!ああ!……んんぅ、ほらぁ……ふぅぅ!…さっさと出しなさいよぉ……あぁんぅ!あぁっぁっぁぁぁ……」

 

急かすようにピストンを激しくしてくる彼女に言われるまでもなく射精しようとする。

せっかくなので揺れ動いている巨乳の先端も思いっ切りつねりながら出してあげた。

 

「ひいいいぃあぁぁああああああああ―――――……!!あぁぁっ!ああぁ!はぁ!……す、すごいぃ……んふぅ……」

 

引っ張られて形をのばしている胸を気にする事もなく彼女は顔を上げながら自身の体を巡ってる快感と白濁液を堪能してた。。

 

 

 

 

「……ふぅ、う、うごくなっていったのに……」

 

「でも気持ちよかったでしょ?」

 

「……く、癖になっちゃったらどうすんのよぉ、ばかぁ、あぁ……けど、ちょっとたのしくなってきたかもぉ……んあぁっ」

 

恍惚とした表情でつながっている肉棒を抜こうとはせず再び動き始めるマルタさん。

俺も彼女との騎乗位は気持ちよかったし、付き合うのも問題はなかった。

 

「あうんっ……ちゃんと、やせるまでぇ……ふうぁっ!……つきあってもらうわよぉ……ますたぁー……あはぁっ!」

 

てっきりその目的は忘れてるもんだと思いましたよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、彼女が満足するまでひたすら好き勝手に動いてもらった。

たまにはこちらが何もしないというのもオツなもんでした。

 

今はトレーニングルームの後始末をしている。

さすがにこの状態のまま他の人に明け渡せないわ、絶対ブチ切られるもん。

 

ふとマルタさんの様子が気になったので見てみると……。

 

「いよっしやあぁぁぁっ!!」

 

ひぃっ!え?え?急にどうしたのあの人?こわいこわい。

 

「マスター!!」

 

「は、はいっ」

 

「戻ってるのよ!」

 

「な、なにが?」

 

「私のスキルもステータスも元通りに!!」

 

「え?マジで?」

 

聖女様は感極まってその場でシャドーボクシングを始めた模様です。

うん、本当に戻ってるみたい。

だって拳を放つ度にシュパァンッッ!!シュパァンッッ!!って音がこっちまで聞こえるんだもん。

 

「あれかしら?マスターにいっぱい魔力を注いでもらったおかげかしら?それともマスターって実は房中術が使えたり!?

ふふふふふっ、何はともあれ復活!復活!マルタさん復活よ!!おほほほほ――――」

 

高笑いをあげ、有頂天気分。

元に戻ったのはいいけれど聖女の面影は感じられない、それでいいのかマルタさん。

 

「まぁ、役に立てれたなら幸いだよ」

 

「ええ!本当にありがとう!

今度からは何か困った事があったらまずはマスターに抱かれることにするわっ!

とりあえず、体重も減ったかどうか自分の部屋で確認してくるわね!!」

 

彼女は「この恩は必ず返すわよー!」と言いながらそのまま部屋から出ていってしまった。

 

「………………発言からはまだちょっとポンコツ臭がするけど、元気になったのは良いことだよねっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふんっ♪、なぁーんだ体重も元に戻ってるじゃない!」

 

体重計を確認し、自らの部屋で一安心している聖女がここにいた。

 

「マスター様様ねぇー……私は彼の事好きだし、抱かれると気持ちいいし、悩みも解決するし、一石三鳥じゃない!」

 

色々とアウトな発言をかましてるが気分がハイになってる彼女は気にする事はないのだろう。

 

「うぅ――ん、肩の荷が下りたこの感じいいわねぇ――……ちょっと掲示板でも漁ろうかしらー」

 

心に余裕が出来た彼女はいつもの日課を行わんとパソコンを立ち上げた。

 

「ふーん♪ふーん♪ふふ――……」

 

 

 

 

 

 

 

 

【カルデア英霊掲示板】 No.121

 

 

1:絶対文明少女

【悲報】トレーニングルームからステゴロ聖女の嬌声と「何か困った事があればマスターに抱かれることにする」発言が聞こえる

とりあえず、どう思うよコイツ

 

 

2:キュアジャルタ

私は最初っからわかってたわよ、あんな破廉恥な格好してるんだもの痴女よ痴女

 

 

3:キャアオルタ

聖女というより性女だな

 

 

4:猛怒裂弩

あぁ、騎乗A++ってそういう……

 

 

5:酔いデレ姐さん女房

主殿のナニに乗るんですかねぇ……

 

 

6:保母さん志望

子供の教育に悪い事はやめていただきたいのだが……

 

 

7:くぎゅ魔王

トレーニングルームってそういうトレーニングする所じゃねえからっ!

 

 

 

 

 

マルタは絶望した。

 

 

 

 

 

 

 




≪Wii Fit Tarasque:非売品≫
荒ぶる悪竜タラスクの回転しまくってる背中に乗って、バランス感覚、運動神経、度胸諸々を鍛えることができる新感覚スリルアクションダイエットゲーム、これで君も今日からドラゴンライダーだ!!
なお、製作陣からの「こんなもん誰が乗れんだ」というド正論の元、販売を断念。




<強化クエストにて>
奇蹟D(回復量300-1500)「おっ、マルタちゃん強化クエスト来るのか!よっしゃ、わいに任しておけ!うぅーーんん」

奇蹟D+(回復量1000-2000)「せいっ!」

<今話にて>
奇蹟D+「マルタちゃん、最近たるんどるなー、よっしゃ、ここはワイが一肌脱いだる!うぅーんん」

奇蹟-D「せいっ!めっちゃ弱体化してあげたでマルタちゃん!」

余計な事しかしねえなコイツ。








聖女ってあれっすかね性的な格好をしなきゃいけない決まりでもあるんでしょうか?
いや全然してくれていいっすよ需要はあるんで。

マルタさんはステゴロイメージが強いですけど結構不憫枠だと思います。
聖女なのにヤンキーネタばっかりでイジられ、強化クエストではスキル追加がされなくて……もう杖捨てるしかないねコレは。
というわけで今回は出来るだけ不憫にしてあげました、不幸な年上の女性はいいと思います。

けど、どうせ落ち込んでもマスターに慰められるんだし(意味深)役得じゃないっすか性女様。




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DRAGON C CLUB(清姫)

気付いてる人もいるかもしれませんがメインタイトルを含め、タイトルは全てゲームのタイトルを少しイジっただけです。
凝ったタイトル考えられないんで、数字だけだと寂しいし……。







ピュアな娘って良いと思うんだ。


このカルデアには人類を救う任を帯びながらも林檎と石をムシャムシャしながら季節ごとのイベントも律儀にこなす頭のネジがほんの少し外れているただ一人のマスターがいる。

 

自称一般人だが英霊、反英霊問わず絆MAXを成し遂げるコミュニケーション力はすさまじく、特にほとんどの女英霊の方々は彼においしく戴かれてしまっている。

 

誤解なきように言っておくとカルデア内の全ての女性がマスターの毒牙にかかっているわけではない。

彼と本番を致してない女性サーヴァントも何人かはいる。

彼曰く、‘別に意図してるわけではなく自然とそういう空気になったときだけヤッてるだけだから、全員喰ってやるぜークハハみたいな鬼畜な事は一切考えてない‘との事、だがそれにしても少々数は多いと思ってしまうのは至極正常な思考である。

 

そしてマスターのお手付きになってない組の一人に意外や意外、あの嘘つき絶対殺すガール清姫がいる。

決して仲が悪いワケではなくむしろ良好過ぎるのだが一体何故なのか……。

それにはまず初期の頃にあった二人の衝突について語らなくてはならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『前々から言おうと思ってたけど、俺は安珍じゃないよ』

 

『ふふふっ、旦那様はおかしな事をおっしゃるのですね

あなた様は間違いなく安珍様の生まれ変わりですわ』

 

『ふむ、俺は前世なんて覚えてないから安珍と言われてもまるでピンと来ないけどさ……それでも俺を通して別の人を見てしまってる君の恋に悪いけど応えるつもりはないんだ』

 

『…………どうして、どうしてそんな事を言うのです?

また……私から逃げるつもりなのですかっ…………』

 

『逃げるつもりはないよ。

けど君は嘘が嫌いだから、正直に言おう。俺は、清姫が、求める安珍ではない』

 

『嘘、嘘、嘘、うそうそうそうそうそうそうそうそ……嘘ッ!!あなたは安珍様です!!私の旦那(安珍)様ですっ!!』

 

また、あの時と同じく拒絶されると思ってしまった清姫は思考を狂化EXの波に預け、竜化しこの男を逃がさないと言わんばかりに襲いかかってしまった。

 

対してこのマスターは

‘人違いで誰かに恋しちゃうのは不憫だし、早めに誤解は解いた方がいいと思ったんだけど……まぁ、12歳の女の子の癇癪みたいなモノだろうし、こっちからは手を出さずに気の済むまでしばらく付き合ってあげようかな!‘

ぐらいにしか考えていないので両者の間でもひどい温度差がある。

 

騒ぎを聞きつけ、駆けつけた他のサーヴァント達も「これ俺達いらねえ奴だわ」と棒立ちになってしまう程……確かにバーサーカーの一撃を平気で受け止め、彼女の火炎すらも「うおっ、熱っ!」程度で済ませてしまってる姿を目撃したら誰だってそう思うだろう。

ロマンが「もう彼一人でいいんじゃないかな」と呟いてしまったのも仕方がない。

 

『……ハァッ!……ハァ、ハァ、ハァ…………』

 

結局、体力の限界がきた清姫が姿を戻しその場でへたり込んだことで戦いは終わった。

 

『よいっしょっと、気は済んだ?』

 

いつの間にか近づかれ自分の脇を持ち上られげ、子供のように抱っこされる彼女は問わずにはいられなかった。

 

何故なら、あれだけの事をしたにも関わらず目の前の人の目には恐怖の欠片もなくただあやすように微笑みながらこちらを見ているだけだったから。

 

『どうして……どうして……そんな顔ができるんですかっ、私はあなたの命を奪ってしまってもおかしくなかったのに……!』

 

『はっはっはっ、伊達にこの大所帯でマスターはやってないさ、あれぐらいのじゃれ合いなら無問題でございますよ』

 

「あれがじゃれ合いと言うべきなのか……」「あいつの中でマスターのハードルはどれだけ高いんだ」「うん、あの程度じゃあ彼の命はまず取れないだろうしねー、確かに気にする必要はないかもしれないけど」と外野の声は漏れているが二人に聞こえることはなかった。

 

『君の安珍様にはなれないけど、俺になんかまた不満があるならいつでもぶつけておいで、逃げも隠れもしないからさ』

 

『……あぁ…………あぁっ……』

 

自身がどんなに攻撃しても決して逃げずに全てを受け止めてくれる器の大きさ、それでもなおこちらを気遣ってくれる優しさ。

 

『……だんな……さまっ……!』

 

要因は色々あるが簡潔に言うと清姫はこのマスターに改めて惚れ直してしまった。

そして彼女は考えた、この人が自分の愛を受けてくれない理由を……。

 

(あぁ、この方は私が安珍様を……昔の男の人を引きずってるのを嫉妬してくださってるのですね。

自分だけを見て欲しいと他の男の事など考えないで欲しいと……。

なんて独占欲に満ちてっ、なんて愛おしい方なのかしらっ!

この人なら私から逃げずにいないでくれるっ……私の愛に応えてくれるっ!)

 

決してそんな理由ではないのだが、自分の都合の良いように考えてしまうのはそこはバーサーカーたる所以。

しかし彼女自身もちゃんとマスターの事を見ようと決心するきっかけにもなったので結果オーライなのかもしれない。

 

『不満など、あるわけがありませんわ……!

どうか、どうか……この私にあなた様に……初めからきちんと恋をさせてください……』

 

『あぁ、俺でよければ』

 

どうせあの娘もパパッと彼に喰われちまうんだろうなーと誰もが思ったが、その数日後マスターはある事実に気づく。

 

 

 

 

「あ、ああの旦那様……よ、よろしければ私に接吻を……んっ」

 

「これでいい?きよ……清姫!?」

 

「…………きゅう」

 

この竜娘、キスで気絶してしまう程とんでもなく初心(ピュア)なことに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アララララ――――イ」

 

ベオの兄貴とスタープラチナごっこをしてたら盛り上がってしまい壁に穴を開け怒られてしまったマスターがここに一人。

そうです私です。

今日はもう部屋で大人しくしておきなさいと言われたのでマイルームに戻ってる所でございます。

 

とりあえず、先程から背後に視線を感じるので声をかける。

 

「どうしたの?きよひー」

 

「……気づいていらしたのですか」

 

「あんだけ熱い視線を向けられるとね」

 

「……旦那様は今、お時間は?」

 

「うん?あるけど」

 

俺の目の前まで駆け寄りスーハーと深呼吸をするきよひー、意を決して俺に伝えたいことがあるようだ。

 

「こ、これからお部屋デートなどはいかがでしょうか!?」

 

「いいよ」

 

「……っ!」

 

ノータイムで返事をする、暇してた所だし、それにそんなに嬉しそうにされるとね……。

 

「で、では私の……お部屋でご案内いたしますわ。お、お手をどうぞ」

 

顔を真っ赤にし、緊張気味でこちらの手を握る清姫。

手をつないだり、ハグまで大丈夫なんだけどキス以上だとあまりの恥ずかしさに気絶しちゃうからなーこの子……そういう所も実に可愛らしくて良いのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

手を引かれ、彼女の部屋に到着した後はベッドに隣り合わせで座りとりとめのない会話をしていると……。

 

「……今日は旦那様にお願いがあります」

 

空気を変え、こちらを向く清姫、お願いとは一体?

 

「あなた様は私の愛に応えて下さるというのに肝心の私は接吻程度で気絶してしまう始末……このままではいけないと、この清姫決心しました」

 

「過激な行動は出来るのに性的な接触は全部アウトだもんね……バレンタインの時もそうだったけど」

 

「あの時はお見苦しい姿を見せてしまいました……」

 

マイルームに戻ったら、全裸リボンで『私を召し上がって下さい』って言われたけど、

素肌に触れただけでもうお目目グルグルで気絶しちゃったからな――。

結局、あの後は服を着させて目が覚めるまで添い寝してあげただけだったし。

 

「あんまり焦る必要もないと思うけど、きよひーのペースで俺はいくらでも待つし」

 

改めて考えてみると、この子はそういった経験が一切無い12歳の女の子だもん。

頭の中ではそういう妄想も出来て、大胆な行動には移せるかもしれないけど……そこから先は彼女にとって未知のゾーンだからね、仕方ないネ。

 

「いえ!いえっ!もはやそんな悠長な事は言ってられないのです!

どんどん他の方々に差をつけられ、未だにハグ程度で満足してしまっている私に足りない物は経験!そして一線を踏み越える勇気です!

それを得られないかぎり私は旦那様の妻として立つことは出来ません!

いつまでたっても『ヘタレアオダイショウ』なんて不名誉な渾名をつけられたままです……」

 

誰がつけたんだ、そんな渾名……エリちゃんか邪ンヌあたりか?

 

 

「ですので私、今日は旦那様に初めてを貰ってもらう覚悟で来ています……マスター……私に令呪で『恥ずかしさで気絶するな』と命じて下さい」

 

「……一応聞くけど、いいの?気絶できない分、余計苦しくなるかもしれないよ?」

 

「はい、『羞恥心を無くせ』という命令であれば、それは自身の心を偽るもの……当然、私には許すことができません。

この命令で意識を失うことなく、旦那様に最後まで愛してもらう喜びをこの身で感じたいのです……それに旦那様に強めの口調で命令されるのもオツなものですし」

 

真剣な面持ちでこちらを見つめる清姫。

彼女の中で納得がいってるのなら俺に断る理由はない……というか令呪をまともに使った記憶がほとんど無い。

ここ最近で言うと、エドモンに『今日一日、否定の言葉を言うときは‘それは違うよ(ネットリボイス)‘を使うこと』ぐらいの命令にしか使ってないしなー。

戦闘で使う必要がないとか、ウチのサーヴァント達は皆優秀ですね。

 

「令呪によって命じる……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、なんだかドキドキしますね」

 

ベッドに腰をかけたままの俺は彼女を膝の上に乗せ、後ろから抱きしめてあげている。

清姫は自身の体の前に組まれている俺の手を握り、そこから感じる小さな震えからは緊張していることが伝わってくる。

 

「……てっきり、すぐにまぐわうものだと思っていましたが」

 

「今日は時間もあるし、ゆっくり焦らずいきましょ。気絶しなくなったとはいえ恥ずかしさは残ったままなんだし、こういうのはお嫌い?」

 

「まさか。好きな人からのあすなろ抱きは全世界の恋する乙女の夢ですわ……はぁ……もっと抱きしめて下さいまし……」

 

彼女のオーダー通りにほんの少しだけ腕に力を入れる。

色っぽい吐息が前から漏れているの感じながらも、不安を和らげるかのようにその小さな手に指を絡めてあげた。

 

「やっぱり、怖い?」

 

「……あぁ、全く不安がないわけではありません……ただ何でしょう、この気持ちは楽しみでドキドキしてるというのが正しいのかもしれません」

 

武者震いという奴でしょうか?いや違うね。

握り返してくれた小さく柔らかい手の感触を楽しむかようにニギニギする。

 

「んっ、ふふふっ」

 

片手だけはとりあえず離し、芳しい香りをしている白髪を梳かすように撫でる。

顔を覗くと気持ち良さそうに目を細めてくれてるので少しは緊張もほぐれてきたのかもしれない。

 

「……はぁ、旦那様の好きな所を思うままに……触れてくださって、いいのですよぉ」

 

ではこの黒い角にタッチさせてもらいますね。

 

「んふっ……最初にそこから触るなんて、不思議な方……」

 

「清姫の体で触りたい所なんて言われると全部になっちゃうからさ」

 

「も、もうっ」

 

照れ顔いただきましたーと歓喜しながら、角をソフトに擦っていく、与えられる快感はそこまで大きくないのだろう……目を瞑り、リラックスするように息を吐いている。

 

しばらく膝に乗せたまま彼女の手や角や髪の感触を楽しんでいると雰囲気も良くなってきたので、背後から優しく彼女の首元に口付けをする。

 

「……あ、あぁ、焦らすおつもりですか……?」

 

「いや、ただ単に唇以外も味わいたくなっただけ」

 

口をつける度に顔を紅潮させ、小さく震える反応を楽しむかのように首、鎖骨、頬とキスの雨を降らしていった。

 

「んっ、んぅ、はぁ……やぁ、だんなさまぁ……」

 

顎をクイッとこちらに向けると蕩けた表情の清姫の姿が。

いつもならここで既に彼女の気は失われていただろう……だが令呪の縛りがある今そうなることはない。

 

「大丈夫、大丈夫だから」

 

安心させるように呟き、彼女と唇を交わす。

舌を入れるようなことはしない、お互いの唇を合わせるだけの初々しい接吻。

 

「……んっ、んぅ」

 

だがそれでも彼女にとってはずっと求めていたゴールでもあり、スタートラインでもある。

もっと味わいたい……けどあまりの喜びに感嘆の声が彼女の口から漏れてしまう。

 

「……はぁ、もっとして……」

 

息を継ぎ、ねだるように再び口づけを交わす。

しっとりと濡れたその小さな唇を時折舐めてあげると、舌を求めるかのように口が開いたので中へと挿し込んでいった。

 

「……んんっ!んちゅ、ちゅ、んはぁっ……ちゅるっ……んんぅ、ちゅっ……」

 

たどたどしいが俺の舌の動きに応えようとしてくれるその健気さが心を打ち、こちらを燃え上がらせてくれる。

 

「……ちゅぱぁ、だんな、さまっ……はぁむぅ……ちゅっ、ちゅっ……」

 

両手は恋人繋ぎでつながりあい、口元も舌と唇でつながりあっていく。

俺も清姫も息がつづく限り、相手の口を貪りあった。

 

「……はぁっ……はぁ、これが大人の……恋人同士のキスなのですね……」

 

口から零れる涎を気にすることもなく彼女は感慨にふけている。

 

「どうだった?」

 

「……今まで本当に勿体ないことをしてきたのですね……私は。

こんなにも気持ちよくて、嬉しくて、心が暖かくなる快感を味わってこなかったなんてっ……」

 

さっきの感触を反芻するように指を俺と自分の唇へ交互に触れていく。

 

「私、いま……すごくドキドキしてます……ほら聞いてください、この胸の高鳴りを……」

 

そう言って俺の手を自身の胸にあてていく。

キスというラインを超えたことが彼女の行動をより大胆にしていったのだろう。

 

手の平からは心臓の鼓動を感じるが、当然だがそこには乳房の感触もある。

巨乳とはいえないがこの年頃の娘にしては十分に成長している大きさを服の上から両手で楽しむことにした。

 

まだ直接は触らず、着物の上から優しく微かな力で揉み込んでいく。

 

「あはぁ……あ、あぁ、ん、んふぅ……」

 

未知の快感と恥ずかしさで悶える彼女は救いを求めるかのように俺の腕に手を添え。

 

「あぁ……だんなさまのてがぁ……ふあぁ…………いぃっ……」

 

しばらく落ち着かせるようにマッサージの如く、胸を責めてあげると、服の上からでもわかるぐらいに先端が膨らんでいたので硬直したそこを指先でいじってあげると電流が走ったかのように体を大きく揺らした。

 

「んああぁ!……あぁっ、そこを、いじられるとぉ……はあぁっ……!」

 

直接触れなくてもこんなに感じてくれるとは……と一種の感動を覚えた俺は一気に刺激を与えることはしないで、変わらないペースのまま揉み続け、乳首をコリコリと弄り続けてあげた。

 

「あ、ああぁ、はぁ、んはあぁ、きもちぃい……あぁっ、あ、あぁ、これぇ、ふうあぁっ!ああぁんぅ……!!」

 

小さく与え続けた快感で達したのを見届け、ひとまず手を止める。

 

「はぁー、はぁ、はぁ……旦那様の手は魔法のようです……はしたない声をあげるのは恥ずかしいのにそれでも胸を触られるとどうしても漏れてしまいます……。

羞恥心はあるのにそれ以上に気持ちよくて……もっと触って欲しくて……私の声を聞いて欲しくて……あぁ……私、どうしてしまったのでしょう……」

 

「我慢する必要はないよ、清姫が思うままに感じてくれるのが一番嬉しい」

 

「隠し事なく、自分の全てを曝け出す……男女の睦みごとはかくも素晴らしい物なのですね、ちゅっ……」

 

成長したのか自分からもキスをする事ができた清姫は唇を離したあと一呼吸入れた。

 

「はぁ―――……体が熱くて、火照って、たまらないのです……。

脱がせてもらってもいいでいしょうか…………?あなた様……」

 

少女が出す色気ではないものを感じながら彼女の着物にゆっくりと手をかける。

こう、帯を見ると引っ張って「よいではないかー」みたいな悪代官ごっこをしたくなるのだがまたの機会という事で、今日のマスターは真面目モードですよー、いやいつだって俺は真面目だったか。

 

 

 

「あっ……」

 

シュルシュルと纏っている服を全て外し、生まれたままの姿である清姫をベッドへ押し倒す。

 

「あぁ……そんなに見ないでください……恥ずかしさで、どうにかなってしまいそうです……」

 

両手で大事な所を隠し、恥ずかしがる彼女だったが……口元が微かに緩んでおり、薄く紅潮した顔と陶磁器のような白い肌がこちらを誘惑しているように感じる。

 

「俺は清姫の全部が見たいな」

 

「んもう、なんて正直なお方」

 

隠してた手をどけ、小さく震えながら全てを曝け出す彼女のいじらしさが愛おしくて仕方なかった。

 

まずは湿っている秘部を十分過ぎるほどにほぐすため、入り口の方を揉み込んであげた。

 

「あぁ!……あ、んふぁ、やだ……もうこんなに濡れてぇ、はぁっ……あんぅ!」

 

「水音もすんごい聞こえるでしょ?」

 

指を中に入れずとも既にビチャビチャと聞こえる音を響かせてあげる。

 

「はぁ、やあぁ……だってぇ、んうぅ!だんなさまを想うと……ここがどんどんあふれてぇ……ひぃあぁ!」

 

指をゆっくりと入れ始めると同時にもう一方の手でツンとそそり立った乳首を指腹でもてあそび、美白の肌を汚すように舌で太ももから上へ上へと辿っていく。

 

「ふあぁぁっ!はぁっ、くすぐったぁいぃ……ふぅっ、あぁぁ、んっ……やあぁぁ……あぁ!」

 

一つに意識を集中させず、多方面を責めることでまずは彼女を性的快楽に慣れさせてあげることにした。

 

「あぁ、あんぅ!……私のからだぜんぶがぁ……はぁっ!だめぇ!…………だんなさまにぃ、やぁぁっ!ふああぁ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ―――……、はぁ―――……はぁ、す、ごい……」

 

あれからどれぐらい経ったかはわからないが十分過ぎるほどに清姫の肢体全てを愛撫してあげた。

膣口はヒクヒクと切なげに動いており、既に受け入れる準備はできているようだ。

 

こちらも服を全部脱ぎ、裸のまま向き合うことにした。

 

「きゃっ、旦那様の……体……雄々しい」

 

驚きながらもある一点から目を離さない彼女に問いかける。

 

「これから君の初めてを奪うよ、覚悟は?」

 

「ふふっ、聞くまでもありませんわ……ずぅっ――とこの時を夢見ていたんですもの……私の純潔を奪ってください、あなた様……」

 

クパァッと自身の入り口を開けて微笑む彼女に応えるべく、熱く滾った肉棒を挿し込んでいく。

痛みを逸らすように胸を撫でながら、舌を絡め合う。

 

「んっ!ちゅんんっ……ちゅっ……んっんっ、んぅ……んふぅっ!」

 

体を進んでいく異物の感覚にむしろ嬉しそうにしながら、彼女はどんどん受け入れていく。

処女を失う痛みすら心地よいと言わんばかりに。

 

そしてやがて、全てが入り切り……、一度唇と手を離してあげ、彼女の様子を伺うと。

 

「……うぅ、うぇぇ……」

 

あれ、泣いてる!?

なんか年端もいかない女の子を全裸で泣かせているってすごい犯罪臭やん、やだー!

 

「ごめんっ、やっぱり痛かったでしょ?」

 

「ちがうんです、違うんですっ……!嬉しくてっ……涙が止まらないんですっ……!

旦那様にあんな事をした私が今こうして一つになって愛してもらって…………ああぁっ……わたしっ……こんなに幸せでいいんでしょうか……!?」

 

涙を流しながら、こちらに問いかける彼女に俺はこう答えるしかない。

 

「誰かに許しをもらってなるものじゃないよ、幸せってのは。

清姫が幸せになりたいなら、なっていいだろうさ、少なくとも今俺は幸せだよ」

 

まぁ、自分の欲望にオープンに生きてる我が人生だからね、不幸せと一番程遠い奴とは俺のことかもしれんなーと慢心してみたり。

 

「ははっ、駄目な娘ですね、私は……こんな祝福されるべき場面なのに、メソメソと泣いて……旦那様……もうあなたの好きに動いて大丈夫です」

 

「いいの?」

 

「はいっ……さっきからアソコが切なくて、疼いて、熱くて、仕方ないのです……この昂りを鎮めてください……私をあなた様だけの清姫にしてください!」

 

さっきから俺の肉棒を包んでいる膣壁が彼女の意思を表すように飲み込むように強く吸い付いてくるあたり、本当に早く動いて欲しいのだろう。

 

俺は決して大きくはない彼女の膣内を前後へ掻き乱した。

 

「ああぁ!あっ!あぅっ、はぁぁ!だんなさまのがぁ……んはぁっ、はぁ、はぁぁっ!……うごいてぇぇっ!」

 

腰を浮かし、快感に髪を振り乱す清姫を落ち着かせるように腰にあてていた手を彼女の手へと恋人繋ぎで絡め合わせる。

 

「だんなさまっ、だんなさまっ、だんなさまぁっ、だんなさまぁぁっ!ああぁっ……あんうぅぅっ!」

 

こちらを強く呼びかける彼女が儚くて、愛おしくて、手を引き、口づけを交わしながら激しく情欲をぶつける。

 

「んぅっ!ちゅぱぁっ……愛してますっ、んちゅっ、あいしてます、ちゅっ……はぁっ、あぁ、あああぁっ!」

 

「……どこにだしてほしいっ」

 

問うまでもないことだったかもしれないが彼女の口から聞きたかった。

 

「なかへっ……なかへらしてくださいっ!はうぅんっ……!」

 

腰を強く押し付け、小柄な少女の子宮へ自身の欲望を一滴残さず出し切る。

 

「はあああぁぁぁぁ――――――……!!あああぁぁっ……んぅぅ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ―――……、はぁ―――……はぁ、はぁ……」

 

何度夢みたでしょう、何度この時を想い描いたでしょう。

 

ずっと待ってたんです……ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと。

 

「私のここがあつくなってます……はぁ…これが旦那様の子種ぇ……あぁ……」

 

気持ち良さそうなあなたの顔を見ると自分が女で良かったと心底思います。

あなたに召喚されて、あなた様に出会って本当に嬉しい。

 

「あぁんっ、すごい……まだあんなにおおきいぃ……」

 

繋がりあってた所を抜かれると寂しさを感じます。

けど、白液と私の初めてを奪った証が付着している旦那様のソレはまだ硬さを失っておらず……。

 

「私も一回では満足できません……何度でも旦那様を私の体に刻み付けてください……」

 

再びまぐあう私達、一回目と違いすんなり奥まで入った旦那様の性器が動く度に獣のように声があがってしまうのです。

 

「ああぁっ!はあぁ!……んあぁっ!あぁっ、ああぁっ、ひあぁぁっ、もっと、もっとぉ……んひあぁぁっ!!」

 

死んでしまいそうになるぐらいの嬉しさと快感のあまりに気づけば四肢全てで旦那様に抱きついていました。

あぁ、淑女がなんてはしたない……。

けど、恋をしている仕方ないんです、愛してるから仕方ないんです……。

 

「あ、あぁ、あぁっ!ふあぁっ、ふぅ、んぅっ、ああぁ!うあぁ!はああぁ!」

 

旦那様……あなたは愛多き人……悔しいですが、私一人で独占するにはあなた様の愛は大きすぎる。

 

まぁ、正妻は当然私ですし……夫が器の大きい所を見せるなら妻も側室におこぼれ程度はあげる寛大さを見せても良いかもしれませんしね。

 

「あああぁ―――!!あうぁっ、あぁっ……まだこんなにいっぱいぃ…んんっ!」

 

旦那様が私と言葉を交わしてくれる。

微笑みかけてくれる。

手を繋いでくれる。

指を絡めてくれる。

抱き締めてくれる。

頭を撫ででくれる。

接吻してくれる。

胸を揉んでくれる。

恥ずかしいところまで弄ってくれる。

体全てを味わってくれる。

欲望を解き放ってくれる。

 

その全てが私にとって特別な事なんです、一つたりとも忘れられない思い出なのです。

旦那様…………私の愛おしい旦那様……。

 

好きなんです、大好きなんです、愛してるんです、あなたにどんな事をされても、滅茶苦茶にされてもいいんです。

 

 

 

愛おしくて、恋しくて、愛おしくて、恋しくて、愛おしくて、愛おしくて、愛おしくて、愛おしくて愛おしくて愛おしくて、愛しくて愛しくて愛しくて愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛―――

だからその愛で私を焼き尽くしてください。

 

 

―――私の旦那様……。

 

 

 

 




純愛ものでしたね。

きよひーといったらまぁヤンデレというイメージですがそれに加えて、初心で純粋っていう所が良いと思うんですよ。
まぁ、ギャグパートでも使いやすいキャラにも関わらず、今話は気づけば最初っから最後?まで甘い話でしたね、ウン。
てか今までのキャラで一番ヒロインしてね?気のせい?
現代の数えで12歳の女の子を手籠めにする主人公…………まぁ、いまさらか!







Q冷静に考えてバーサーカーと生身で戦りあうのはおかしいのでは

ぐだ男「いや召喚されたてでレベルもそんなに高くないならいけますよ、MAXにしてたら少しキツかったかもしれないけど……ちょっとぐらい戦える魔術師って別段珍しくもないでしょ?」


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聖杯の5戦士-アイリスファンタジー外伝(4元素アイリ+α)

前回まともな純愛?書いちゃったからね。
もっとはっちゃけろとガイアが私に囁くのよ。
ごっつええんちゃう?




文字数が少なかった回のサーヴァントをこういう形で小出しにしていくスタイル。


「むぅー」

 

自室でこたつに入り、蜜柑の白い筋を取るのに手間取っているのは俺っ娘叛逆系セイバー、モーさんことモードレッド。

 

「ていうかここ(カルデア)も季節感よくわかんねーよな……あぁ――、暇だー。マスター連れて金腕に蹴りでもいれてくるか……んっ?」

 

ふと足が何かにぶつかった感触が、こたつに入ってるのは自分だけの筈だと疑問に思ったその時……

 

「えっ、ちょっ……うわあぁっ!」

 

そのまま足を何かに掴まれこたつの中へ引き摺り込まれる。

モードレッドは何とか抵抗しながらその下手人の正体を知ることができた。

 

「ぐははー、私の名前はぐだぐだ仮面。

今日からお前は俺のカキタレになるのだー!」

 

「なっ!マスター!?何してっ……あんっ、いやっ……どこ触ってぇ、んぅっ!」

 

ちなみにこのマスター、モーさんを驚かせようと彼女が部屋に来るまで数時間こたつの中でひたすら待機していた。

そんな事をしてる暇があるなら早よ人理を救いにいけ。

 

「ふははー!あきらめろー!」

 

「あっ、まてっ……せめてちゃんとした所で……やあっ!」

 

満更でもない彼女の表情を見る限り、あぁいつも通りに放送コードに引っかかる事が展開されるんだろうなーと誰もが思った――――

 

 

 

「待ちなさいっ!」

 

「何奴っ!?」

 

―――バァンッ!

「火のアイリッ!」

 

―――シュバッ!

「……水のアイリ」

 

―――ババァンッ!

「つ、土のアイリ…」

 

―――シュタッ!

「風のアイリよ~」

 

―――デデンッ!

「黒のアイリだ」

 

「5人揃って!」

「「「「「ファイブスフィール!!」」」」」

 

―――ドドォーーンッッ!!

 

「「…………」」

 

「さっ、今のうちに早く逃げるのよ!」

 

「え?いや、あんたら誰……?」

 

「早く逃げなさい!」

「ここは私達に任せて~」

 

「あの、だからっ」

 

「早くいけ」

「……心配はいらない」

 

突然現れた5人の勢いに呑まれ、そのまま「ここ、オレの部屋だよな……?」と疑問を持ちながらもモーさんは退出していく。

 

 

「さぁっ、かかってきなさい!!」

「本気を出してあげるわ」

「お、おらぁっ」

「負けないわよー」

「来るがいい」

 

「…………」

 

ふぅ――――――と大きく息を吐き、状況を整理するマスター。

 

「とりあえず、お前等どっから入ってきた?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さすがに続きをモーさんの部屋でやるわけにもいかなかったので、マイルームなう。

勝手に入ってきた世紀末戦隊もどきは全員正座中。

 

「あー、まずは改めてもう一度自己紹介でもしてもらおうか、お互い誤解があるといけないからね。はい、じゃあ左から順番に君から」

 

「私は火のアイリスフィール!クラスはバーサーカー!

胸での奉仕には自信があるわ」

「……水のアイリスフィールよ……クラスはセイバー…………

手淫には自信があるわ」

「つ、土のアイリスフィール、クラスはランサー、

こ、口淫が得意よ……」

「私はアイリスフィールの中で一番の小物と言っておきながら、実は一番実力ある雰囲気を醸し出しいる風のアイリスフィールッ!クラスはライダーよ!

腰使いが良いわよ私は!え、どんな風にいいかって?やんっエッチ」

「私は黒のアイリスフィール、クラスはアヴェンジャーだ。

我が肢体は全てが名器と言ってもよいだろう、どれ一つ試してみるか?」

 

「はい、ストップ

なんで君達最後にアダルトチックなプロフィールを付け加えるのかな?」

 

「5人揃って!」

「「「「「ファイブスフィール!!」」」」」

 

「やかましいわ。おいコラ、勝手に人の服を脱がせようとすんな」

 

いつの間にか立ち上がり、こちらに近づいてきたアイリ×5を払い除ける。

風ちゃんは人のファスナー開けようとしないでね。

 

「え?だってマスターに取り入るにはこういう方面でイクのが一番手っ取り早いって……」

 

「うわあひどい、何が酷いってあながち間違いじゃないところが酷いね。てかさ、君達冬木で消えたと思ってたんだけど」

 

特に何でしれっとあの四次聖杯戦争でラスボスでもあった黒アイリさんが混ざってるのかすごくツッコミたい。

 

「うん、確かに私達はあの冬木であなた達に倒されたわ、別にそれ自体は恨んでいないの」

「遊んでくれて楽しかったしね~」

「……少し痛かったけど……ふふふ」

 

「……だが一度生まれ、個性が芽生えた以上それは一つの存在」

「それにあなたこっち(カルデア)に連れてきたアイリスフィールとは別に天の衣を召喚したでしょう?」

 

「うん」

 

エロい格好の方が天の衣さんで何かモコモコしている方が連れてきたアイリスフィールさんってしっかりと覚えてますよ。

 

「ま、要するになんやかんやで私達は完全に消えたわけじゃなくて、実はその召喚された天の衣の中にいたわけなのよ~」

 

「え、なんやかんやって……」

 

「なんやかんやは、なんやかんやなの!!」

 

「お、おう」

 

食い気味で火のアイリさんに怒られたのでここは深く聞かないことにした。

まぁ説明パートは短く済むならそれに越した事はないもんね。

 

「ふっ、一方面しかない者など存在しない、善き面であれ悪しき面であれあらゆる性格が存在する。それは人であろうと、英霊であろうともな……。

光りある所に闇があり、陽ある所に影がある、オリジナルがいる限り我々もまた存在し得る。奴が見たくない性格だろうともな……」

 

「ペルソナかよ」

 

黒アイリがドヤ顔でご高説中。

あー、じゃあアンリマユが天の衣さん、黒アイリさんを指して‘善人版‘、‘悪人版‘って言ったのもあながち間違いじゃないわけか。

ここにいる5人は何はともあれアイリさんの普段表には出ない性格ということなのかね。

 

「……くくくっ、オリジナルは我等が完全に消え去ったと思っているだろうが……ふはははははははっ!!考えが甘いわ戯けが!こうして奴の気が抜く瞬間を虎視眈々と狙い、我等は今こうして一つの個として白いのと袂を分かったわけだ。ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ…………ぎゃんっ!!」

 

「うるさい」

 

近所迷惑なので高笑いしている黒アイリをデコピンで黙らせる。

 

「サーヴァントにダメージを与えるデコピンとは一体」

「一度やられたボスキャラがポンコツ化するのはこの世の摂理ね、ふふふ」

 

床に倒れ伏している黒をツンツンする水と土。

火と風はスルーをし、事の要件だけを話す。

 

「あの黒いのが偉そうに言ってたけど……正直な話、今の私達ここに現界できるのがギリギリな程に微弱なのよね。それこそオリジナルが私達が出てきたのに気づかないぐらい」

「あの時は暴れる事しか考えてなかったけどー、アイリちゃん達としてはせっかくこうして一つの個としてまた生まれたからさー……やっぱり人生を謳歌してみたいな?

私達が人生っていうのもおかしいわね、聖生?霊生?杯生?どれでもいいっか!」

 

「つまり、トンズラはせず俺に接触したのも」

 

「ええ♪正規の手段で召喚されてない私達にあなたからの魔力供給が欲しいの、それはもうたっぷり、こってりと♪」

「今の私達にあなたを無理矢理襲う力もないし、そんなつもりはないわ。あなたのサーヴァントとしてここにいさせて欲しいの。断られたら……今度こそ消えるしかないわ」

 

「ずるい言い方だなぁー」

 

「女というのはずるいものよ……」

「何なら私達をカキタレとして傍にずっと置いてくれるだけでもいいわ……ふふっ、抱かれるだけで勝ち組コース、働かずに喰う飯はうまいはず」

 

「お生憎、引きこもりニートはもう間に合っています」

 

黒アイリ弄りに飽きたのか水と土のアイリもこっちへ寄ってきてた。

4色の瞳がこちらを見つめている、おそらく彼女達は俺がどのような決断をしてもそれを受け入れるだろう……。

 

……まぁ、生まれてしまったならしょうがないよね。

孵りたがっている命なら孵化させてやるのが愛ではないかってどっかの神父様も言ってたし、ここで消えるのを見送るなんて寝覚めが悪すぎる。

 

「断るつもりはないよ、俺に出来る事なら力になるさ。敵だった奴が仲間になるなんて今更すぎるし」

 

「ありがとうっ!」

「ふふっ、やっぱりいい男ねーあなたは♪」

「恩には必ず報いるわ……」

「はぁっ……ほんとによかった」

「……っイテテテ……

ふんっ、勘違いするでないぞ、私は他の者と違って貴様に尽くすつもりなどサラサラ無いわ。貴様は私があの白いのに反逆の狼煙をあげる為の供物に過ぎ…………

す、すまぬ!謝るから無言で指を構えるなっ!!」

 

「で俺はどうすればいい?」

 

「私達はお願いする立場だし、そうね……天井のシミでも数えてもらおうかしら♪」

 

さっきのようなおふざけの雰囲気ではなく、蠱惑的な雰囲気で5人の美女が舌なめずりをしながら俺の服を脱がしていき、自分達も脱衣していった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……はむぅ、じゅるぅ……ちゅぱっ、んじゅっ……大きいわね♪」

「れろっ、ぺろっ…ちゅむぅ……先走りがでてるわぁ、ふふっ……じゅるるっ」

 

ベッドから足を床に垂らし、剥き出しになっている肉棒を二人の美女がお互いの胸で挟め、舐めあっている。

四つの柔らかい果実が形を歪めながら、熱く滾った逸物を包んでいる、双子の姉妹のように見えるが瞳の色とその雰囲気から火と風のアイリだとわかる。

 

「んちゅ、あはっ……ぴくぴくしてるわぁ♪……あぁっ、んふっ……ちゅうぅ、れろぉ……」

「じゅるるぅっ、じゅぱぁっ……ふふっ、どう?んあぁっ……気持ちいいかしら……?」

 

「……あぁっ、すごくいいよ」

 

競うようにフェラをしている二人は時折、口を重ね合わせてしまうが気にせずむしろ自分同士のキスを楽しみながら奉仕していた。

胸でも扱いているため興奮している先端同士がぶつかりあい、その度に小さな喘ぎ声が漏れてしまっている。

そしてそんな二人の姿を見せられながらアソコを責められている俺も口から快感の声があがってしまっていた。

 

「むぅ、一番おいしい所を取られてしまった」

「……なら私達は腕を拝借しましょう」

 

羨ましそうに見ていた土と水のアイリが俺の両手をそれぞれ別々に取ってくる。

 

土のアイリは左手を口で咥え、何かを吸い出すように指フェラを開始する。

「んじゅっ……じゅるっ、じゅぽっ、ちゅうぅ、んじゅるぅぅっ……」

 

水のアイリは右手を自身の胸にあて、昂らせるように懇願してくる。

「揉んでもらっていいかしら……ああっ!……んぅっ……そう……いいわあぁっ!」

 

「ぷぅはぁっ、じゅるゅ、ちゅぅっ……おいしいぃ、ぺろぉ、れろぉ……はぁむぅ、ちゅぅんぅ……」

「あぁ、んぅ、もっとぉつよくぅ……んひぃっ!……ああっ!そこもコリコリってぇ……やぁぁっ!」

 

黄の瞳の彼女は一生懸命に俺の手を涎でマーキングしていく。

青の瞳の彼女は俺が要望通りに揉むと乱れ、物足りないとばかりにもう一方の胸を自身の手で揉みくだしていた。

それぞれが思うように俺の体を使い情欲を高めている。

 

「ふふふ、愉快な光景よな……まるで蜜に群がる蟻のようではないか」

 

今まで傍観に徹していた黒アイリが語りかけてくる……仲間外れにされて寂しかったのかな?

 

「じゅるっ、ああぁっ!ちくびにさっきからあたってぇ……じぽぉっ…………ちゅずゅぅ……じゅるるっ!」

「……じゅぱぁっ!はぁっ……まぁ……確かに同じ顔の美女5人と全裸で交わってるわけだから非現実的な光景よねぇ…」

 

火のアイリは一心不乱にフェラを続けているが風のアイリは一度口を離し、こちらに語りかけてくる。

それでもパイズリだけは止めるつもりはないらしい。

 

「ふふっ♪、私達見た目はオリジナルとそっくりだし、あなたが望むなら人妻不倫プレイでもやってあげようかしら♪」

 

「………………いやそれはほんの僅かな良心が痛むので遠慮しておく」

 

興味はあるっ、興味は……あるぞっ!

 

「……ハッ!

我等はもはやオリジナルとは別の存在となった顔がそっくりの赤の他人と言っても良いのに貴様が奴に気を遣う必要があるか?

貴様と我等が何をしようともあの白いのに関係は一切あるまい」

 

「……もしかして気遣ってくれた?」

 

「………………阿呆が、貴様の心配などしておらんわ。

今宵は我等の再誕の日だ、余計な事を考えず快楽に身を任せろと言ってるだけのことよ」

 

ツンデレ一丁入りましたー!とさすがに茶化すのはアレなので黙っておく。

 

参加する気になったのか黒アイリは俺の上半身に寄り添い、頬に手を添え、お互いの呼吸が聞こえる距離まで顔を近づけてきた。

 

「不思議な瞳よのぉ……この私とて底がどこまであるのか見通せぬとは……数多の英霊共を従えるだけのことはあるということか、ふふふっ、少し貴様の行く先に興味が湧いてきたわ。ほれ、舌を出せい……」

 

言われた通りに舌を出すと、小悪魔のようにいやらしく嗤った彼女は外に出された俺の舌と自身の舌を蛇のように絡め唇で吸い付いてくる。

 

「れろぉっ、れるぅ……はぁむぅ、ちゅるるぅ……んちゅるるっ……ぷはぁっ、じゅるっ…………」

 

おいしそうに俺の舌から涎を吸い尽くしてくる黒アイリはそのまま唇を合わせてくる。

 

「んふぅ、んちゅぅ、じゅるぅ……んはぁっ……ちゅう、はぁぁっ……よい味だっ……ちゅう、ちゅぱぁ……ちゅる、じゅむぅう……」

 

長い舌を俺の口内で自由自在に動き回す、その動きに応えてあげると形を確認するように絡め合い息をする余裕すら無いまま互いに口を貪りあい……酸素を求め、時折漏れる呼吸から興奮の度合いがどんどん大きくなっていくことがわかる。

 

 

 

しばらくすると、二人に好きにさせていた手の感触が変わっていることに気づく。

キスをしながら視線をそちらに向けると水と土のアイリが二人とも俺の指を自身の秘部に入れ、自慰をするように動かしていた。

 

「はぁっ、あぁっっ……指がぁ、あうっ!きもちいいところにぃ……やぁあっ、んはぁあぁっ……あんぅっ!!」

「もっとぉ……ぐしゅぐしゅぅ、あぁ、あ、んあぁっ!……してぇ…!はあぁ、んふうぁぁ……あああぁっ……!」

 

水音を響かせながら快感を貪る二人……どうやら俺も無意識的に彼女達の気持ちいい所を探して指を動かしてたらしい。

自分の性に対する経験値に恐怖していると、肉棒を扱く速度が早くなったのを感じる。

 

どうやら足元にいる二人のアイリも俺の限界が近づいているのを見越してラストスパートをかけてきたらしい。

 

「じゅるぅっ、じゅむぅっ……じゅるるっ!!んじゅうぅ……いいわぁ、いっぱいだしなさいぃ……むじゅううぅっ!!」

「れろぉっ、はぁむじゅるるぅ♪……じゅぱぁぁっ、ああぁっ……胸もきもちよくなってぇ……んじゅるぅ、んっ、あんっ」

 

火のアイリは一生懸命、奉仕するように亀頭に吸い付き。

風のアイリは楽しみながら、竿の方を舐め回し喰いついてくる。

 

二人の涎や我慢汁などのさまざま液体が潤滑液になり、巨乳のサンドがグチュグチュとスムーズに動く。

 

「んちゅうぅ……はぁ、これぇ、こっちもみろぉ……はぁむぅ……じゅるぅ、んじゅうぅ……ちゅうぅ、んむぅ」

 

二人のパイズリに夢中になってたのが気に食わなかったのか、黒アイリのキスはより激しさを増していった。

俺の性感を高めるように鎖骨や乳首もその白い指で刺激してくる。

 

一対一では絶対できないような快感を受け続け、もはやこれ以上堪えることはできない、ついに溜まりに溜まった情欲をそのまま吐き出した。

 

「んぐぐうぅっ……!?んぐっ、んぐぅ、んむじゅるぅぅっ……じゅるるるぅぅ!じゅるぅっ、ちゅるぅぅ……」

「あぁ、ずるぅい……わたしもぉ、はぁむぅ……じゅるぅぅ!……じゅぷぅぅ、れろぉぉ……じゅぷぅむるぅ……」

 

出てきた精液を一滴も無駄にしないと言わんばかりに火と風の二人が同じ出口から精気さえも取られる錯覚をしてしまう程に強く吸い出してくる。

 

「あぁっ!んふぅっ……なんかきちゃうっ!はあぁっ……ああんぅっ!あああぁっ……!」

「はぁっ……あうぅっ!いく、いくっ……いくぅっ!あ、ああぁ……んはああぁぁ!!」

 

俺の指を使っていた土と水の二人もシーツに愛液を零しながら同時に達していた。

 

「んじゅるぅ……ちゅるぅ…………ちゅぱぁ、んむぅ、んっ……んちゅうぅ、じゅるるるぅっ!……っふはぁぁっ……!はぁ―――はぁっ―――どうだったぁ?」

 

イッている瞬間も逃がさんとばかりに俺の後頭部を掴み、口内を蹂躙していた黒アイリがようやく解放してくれて、酸欠気味の状態で問いかけてくる。

そんなになるなら一呼吸ぐらい入れても良かったのに。

 

「はぁ……うん、夢見心地みたいな気分だったよ、口からも下からも色んなモノが吸い尽くされそうになった」

 

「ふふっ、そうか、そうか……だがお前のムスコはまだ元気があり余っているようだがなぁ……」

 

「……んぐっ、んんっ、ごくっ……はあっ、若いっていいわねぇ……」

「ごくっ、ごくっ……んぅっ……ふふっ♪ほんっと濃厚でおいしかったわぁ……ますたぁー」

 

満足気に先程の吐き出された白液を堪能する二人は未だにそそり立っているソレを見て嬉しそうに微笑む。

……俺のムスコというのならもう少し慎みを持って欲しいなと思わずにはいられなかったが5人も相手するのに慎みもクソもないかと開き直ることにした、俺は悪くねぇ!

 

「……異議を申し立てる、次は我々の番」

「そうね、火と風は一番おいしい所をもらったのだから私達に譲るべきよ……」

 

「構わないわよ、元々そのつもりだったし」

「マスター君の様子見る限り、全然余裕そうだし、むしろ先にヤッたあなた達がつぶれちゃうんじゃない?」

 

「……ふふふふ

舐められたものね、元は聖杯の一部であった私達が人間相手にそう簡単にイカされるとでも?」

「さっき指で盛大にイッてしまった私達が何を言ってもフラグにしか聞こえないわね……」

 

余裕を出している土のアイリが下になり、どこか悟った雰囲気を醸し出している水のアイリがその上にうつ伏せで重なる。

ベッドの上には同じ顔した二人の美女が足を開き、上下に恥丘を重ね合わせている

まるでそれが一つの性器のように見えた…………。

 

「こっちの方が効率がいいから……二人一緒に気持ちよくして」

「膣内には均等に出してくれると嬉しいわ……」

 

潤んだ眼でこちらを見てる二人に誘われ、水のアイリのしっとりとした尻に手をあてる。

 

「やっ」

 

そのまま剛直を二人の性器の間に挿し込む。

さっき散々と俺の指で前戯をした甲斐あったのか愛液が良い感じに滑りを良くしてくれるのでこちらも激しく腰を前後へ動かした。

 

「あぁっ、はあぁ!……敏感なところぉ、んぅっ!こすれてぇ……いいっ、ああぁ!」

「んはぁ、あついぃ……ぐしゅぐしゅしてるぅ、ああぅ……んんぁ……はいってないのにぃ、きもちよくてぇ…………ひいあぁ!」

 

濡れそぼった割れ目と敏感になっている陰核を擦る度に二人から嬌声があがり、その声と二つの似た性器に包まれているという未知の快感に俺もどんどん熱が上がっていった。

 

「はあぁ、んあぁ……動きがまたはやくなってぇ……やあぁっ!ふうあぁっ!んんあっ!あぁっ……んんっ、ちゅぅ、んちゅ……んむぅ……!」

「あんぅっ!かたいのぉ……ひぃうぅっ、ふたり一緒におかされてぇ……はあぁんぅ!んちゅっ、ちゅっ……んむぅ!はぁっ……んちゅるぅっ……!」

 

一つの肉棒に同時に犯されている感触を得ている二人は気持ちが盛り上がり、互いに目の前にいる同じ顔した相手とキスを交わし、巨乳を弄りあう。

もっと、もっと快感をと求めるように……。

 

その非現実的ながらもどこか神秘的に見える光景に俺は自身の欲望を解き放とうとする。

 

「……くっ、出る!」

 

「ちゅぱぁっ、ああっっ!らしてぇっ……なかへっ!あぁ、ああっ!……んあああぁっ!」

「んちゅぅっ……ぷはぁっ……ぜんぶぅ……ふうあぁっ…!らしてぇ!はああぁっ……!ああああぁんぅ!」

 

先に土のアイリに肉棒を挿し込み、せり上がった精液を一番奥まで届ける。

 

「んんああああぁぁっ――――――!!ああぁっ、はあああぁっ……おくまでぇ……とどいてぇっ!いいぃっ…………」

 

タイミングを見て、そのまま上にいる水のアイリの膣内に入れ、残りの精液をピストンしながら子宮に送る。

 

「はああああぁああぁ――――――!!ひあぁぁ…ああぁっ!だしながら動いてぇ……!ああぁっ!だめぇっ――!」

 

全てを出し尽くし、自身の性器を抜くと二人は少し疲れたのか抱き合ったまま仲良く気絶していた。

 

「ふんっ、あれだけ大口を叩いておきながらこの様とは情けない奴らよ。

どれ、私がお手本というのも見せてやろうではないか」

 

自信満々に彼女達がいない方向へ俺を押し倒してくる黒アイリを見て、

「見て見て、すんごい綺麗にフラグを立てている娘がいるわ♪何のお手本かしら?即堕ちのお手本?」「しっ――!黙って見守るのも優しさよっ」と風と火の二人がコソコソ話しているのが耳に入る。

うん、俺も同じこと思った、この黒アイリちゃん誰かと同じ匂いがするのよ。

 

「う……んくぅっ!はぁっ……あぁっ!どれぇ貴様のがはいったぞぉ……はあぁ……」

 

淫裂を広げ、そのまま騎乗位の体勢で肉棒を入れ込んできた黒アイリ。

 

俺は愉しげに嗤う彼女を繋がりあったまま持ち上げ、立ちあがり、自分と同じ方向を見るように体勢の向きを変えた。

 

「んんっ!ま、まてっ、急に何を……」

 

立ちバックの体勢にしたら困惑している彼女の両脚を持ち上げM字開脚のような格好へ。

 

「お、おいっ!こんな童が用を足すようなかっこう……はあぁっ!ああっ、まてっ……急にうごくなあぁ……!ああぁぁ…………おもみがそのままぁ、んひぃっ!!やぁっ、やめぇっ……あんぅっ!」

 

軽い体を持ち上げ、抜き……そしてそのまま彼女の体重を利用するように肉棒を奥まで挿し込む。

やっぱりこの人あれだ、邪ンヌと同じタイプだわ。虐められる方が光る感じの娘。

だってさっきから微妙にポンコツ臭がするんだもん。

 

「あらあら~、ずいぶんと恥ずかしい格好ね、黒い私」

「ふふっ♪私達もお手伝いしますわ、マスター♪」

 

「ま、まてぇ、きさまらっ……んぅっ、やあぁっ!はぁあぁっ!やめぇ…‥なめるなぁ!あぁっ……ひああっっ!」

 

ここぞとばかりに近づいてきた二人は火のアイリが胸の方へしゃぶりつき、風のアイリが結合部にあるクリトリスの方を舌で責めたてる。

黒アイリは子供のような格好で自分と同じ顔の女に辱められているのが信じられないのかイヤイヤと首を横に振っていた。

 

「ちゅぱぁっ、ちゅるぅ……ちゅむぅ……んちゅうぅ……」

「ふふっ、こんなにたっちゃってぇ……れろぉっ、んじゅるぅ……はぁむぅ、じゅるるぅ」

 

「ああぁ!くあっっ……こんなはずかしめぇを……はあぁっ!ふあぁっ、ああぁ!んうぅっ!おかしくなるぅっ!ああっ……やああぁっ!」

 

「ほら、顔こっちに向けて」

 

左脚を持ち上げるのを風のアイリに任せて、空いた手で乱れる黒アイリの顎をこちらに向ける。

予想通り、今までのように毅然とした態度はなく蕩けきった雌の顔があった。

堕ちるのがチョロいのも邪ンヌとそっくりね。

 

「ああぁぁ、ああっ!み、みるなぁ……こんなかおをみるぅ……むぐぅぅ、ちゅるぅ…………んちゅぅっ!……はぁっ、んちゅるぅっ……んんっ!!」

 

抵抗しないようにキスで黙らせると眼を細め気持ち良さそうになり、少し大人しくなった…もしかするとキスが結構好きな人なのかもしれない。

それでも与えられる快感が収まるわけでもなく、絶頂が近づいてきてるのか膣がより激しくキュウキュウと締め付けてきた。

 

「んんぅ、んじゅうぅ……!ぷはぁっ……ああ!…はああぁっ!このわたしがぁ……ひいあぁぁっ!ああぁっ、やぁっ……やあぁっ!ああ!くるぅっ……!くるうぅっ!ああああぁっ……」

 

腰を突き上げ、子宮の入り口を突きながら自分の子種を全て注ぎ込む。

 

「ああああああぁぁああぁぁぁああっっ――――――!!ひぃあぁっ……あ、あ、あぁっ……」

 

エクスタシーに達し体を大きく仰け反らせ、激しく痙攣した黒アイリはそのまま体をこちらに預け、気絶してしまった。

ふっ、口ほどにもないわっ!というか何か今日皆、失神し過ぎじゃないですか?

 

「ふむふむ、3人連続KOとは……

さすがは人類最後のマスター、噂に違わぬ性豪っぷりね」

「何だかんだでアイリシリーズと体の相性良かったりしてね。

私達の相手をしている内に他のアイリも眼を覚ますでしょうし……ささっ、夜はまだまだ長いわよっ、マスター♪」

 

今日も今日とて俺の睡眠時間は短くなるね、これは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、カルデアの皆を説得し、4元素+αの5人に安定した魔力供給を行えるようになった。

天の衣(アイリスフィール)さんがものすっごい曖昧な表情で沈黙してた気がするけど…………うんっ!新しい仲間が増えるのは素晴らしい事だと思うネ!

 

とりあえず、力のお披露目も兼ねて5人をクエストに連れてったんだが……。

 

 

 

 

 

 

「今回は貴方達の勝ちね……」

「……まぁ、こんなものね」

「この恨み、忘れないわ……!」

「ふふふ、たとえ私が消えても第一、第二のアイリスフィールが……ってあらやだ、皆ここにいるじゃないー……」

「…おのれぇっ!」

 

「よえぇっ!!」

 

見事にバンッ!スゥ……×5してしまったぞ!

 

「いや、そりゃあマスター、あの5人レベル1のままだし、そもそも元は聖杯の端末の一部だったんだろ、アレら。

しかも本人に気づかれないように出てきたってことは力も殆ど奪えてねえってことじゃねぇか。

星4の奴から奪った小数点レベルのリソースでしかもそれを5分割してるってもう星0に等しいじゃん?

はははっ!なーんかあの姉ちゃん達に親近感湧いてきちゃったよオレ!

こりゃあマスター、前人未踏の星0縛りでもいってみたらどうだい?」

 

隣にいる入れ墨アヴェンジャーが提案してくる、ってかお前も戦わんかい。

ていうか何、星0縛り?は?何それ、滅茶苦茶ワクワクするじゃないですか。

 

「え?まてまてマスター、冗談だぞ?

何で令呪を3画も光らしてるんだ、いやいやいやいやいや、ここは一時撤退してちゃんとした面子で行くべきでしょうよ!仕切り直す必要ねえだろっ!」

 

「令呪3画を生贄に発動!死者蘇生!甦れ!ファイブスフィール!!」

 

「かぁっー!ホントにやりやがったこの馬鹿は!

つーかオレ等が戦わなくても、マスターが出張った方が全然早く終わると思うんだけど!?」

 

「サーヴァントより強いマスターなど存在しねぇっ!!」

 

「いやオレの目の前にいる、存在している…………オッケー、行けばいいんだろ。無言で肩をブンブン回すな、風切り音がこっちまで聞こえてくるわ。

あぁー!ホントに守りがいのあるマスターでサーヴァント冥利に尽きますわぁ!!」

 

 

 

 

 




天の衣「あなた達なんて…‥私じゃないっ!」

ファイブスフィール「「「「「我等は影、真なる我」」」」」


ぐだ男「何遊んでるんだろうあの娘達?」
邪ンヌ「あの黒いの……私と同族の気配がするわ」









天の衣書こうと思ったら気づけばこんな事になってた。
まぁ、同じアイリだしいいっか。
最初の茶番はどれぐらいの人がわかるネタかな?

4元素アイリ欲しい、Zeroイベで敵キャラとして終了は勿体なさすぎるキャラしてるもん。
黒アイリも欲しい……復讐者パーティ作りたい。
つーか皆可愛い、まとめてウチに来て。
アンリみたいなフレガチャ限定でもいいから出ないかなー?

何気に男キャラとまともに絡ませたの初な気がする。


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To Life(セイバー・リリィ)

ちゃんと全部のサーヴァント使っていますか?しばらく倉庫番になったままのもいるんじゃないんですか?






リリィの声、ホント好き。


マスター、マスター、マスター……私の……私の……私の主。

 

世界を救う任を負う人類最後のマスター。

 

召喚された当初は、私と同じで成長途中同士どこか親近感も抱いていました。今思えば、身の程知らずもいい所でしたが……。

確かにマスターは成長途中です、ですがその吸収力と伸びしろは先が見えません。

どんな状況でも自分を見失わない我の強さ、普通の人間でありながら数多の英霊と繋がりを持ちそれを率いる力、無茶を押し通す勇気。

 

半端者の私にとってそれは、とても眩しくて……温かくて……羨ましくて……そして尊敬の念に値するものでした。

 

だからこそ、わからなかったのです。

どうしてマスターが私のような者を使うのか。

ただでさえこのカルデアにはオルタさんやモードレッド、沖田さんやアルテラさん等の有能なセイバーが他にもいるのに……。

セイバークラスに限らず、X師匠をはじめとして一流級のサーヴァントはたくさんいます。

 

いえ、嬉しいのです。

マスターが半人前の私を期待して一緒に戦ってくれるのは、共に強くなるべく私と特訓をしてくれるのは、私の勝利を自分のように喜んでくれるのは。

私もその期待に応えるべく日々の鍛錬に力を入れることが出来ます。

 

 

…………けど怖いんです。

 

いつかマスターが私を使わなくなってしまう日が来るのが、役立たずを見るような眼を向けられるのが、彼がそんな事をする筈はないとわかっていても想像してしまうだけで喉が枯れ、呼吸も碌に出来なくなってしまい……恐怖が焦燥感が私を縛りつけるのです。

 

それを癒すかのごとく、今日もマスターの元へ行くのです。

マスターの温もりを知れば知る程、失った時の絶望はどんどん大きくなるのに悪循環になるとわかっていても、彼の微笑みを……彼に触れられた肌の熱を知ってしまった私は彼の傍へ寄る事を止められないのです。

 

 

どれだけ好きと言えばいいのでしょう?どれだけ想いを囁けばいいのでしょう?どれだけ強くなればいいのでしょう?

どうすれば彼は私を捨てないでくれるのでしょうか?

 

マスター、マスター、マスター、どうか私を見捨てないで下さい……。

何でもします……私に出来る事なら何でもしますから…………お願いですから捨てないで下さい……マスター……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雲一つない青空や歴史と風情を感じさせる街並み、そして穏やか風が俺達を包んでくれる。

平和というのは良い物ものだ、俺達はこの時を守る為に戦ってきたと実感できる。

 

「命は壊しません!その股間を粉砕しますっ!

―――勝利すべき黄金の剣(カリバーン)!!」

 

「「「ギァアアアアアアアアァァ―――!!」」」

 

……汚ねぇBGMだ。

 

どうしてこうなったかというとまぁ特に深い事情があるわけでもなく。リリィの特訓に付き合うべくレイシフトをしたら、盗賊に襲われている街を発見、当然見過ごすわけもなく二人で突撃したらご覧のあり様というわけでございます。

 

「抉り込むようにっ、カリバーン!カリバーンッ!カリバアァーーンッ!!」

 

「「「アアアアアッ―――――――――――!!!」」」

 

これはひどい。

もうだって聖剣の光がアソコに吸い込まれるようにダイレクトアタックしてるんだもん。

オーバキルにもほどがある、ちょっとだけ盗賊の連中には同情するかも。

 

「命までは取りません。どうか傷を癒してください」

 

「……いや傷ってもう癒しようがないほどに……」

「むしろ命より大事なものが……」

「俺達のゴールデンがぁ……」

 

どうやら、粗方片付いたようですね。

うん白ドレスの女の子の前にむさ苦しい野郎の集団がアソコを押さえてうずくまっている図はなんと表現すればいいんだろうか……こっちまでタマヒュンしてきた。

というかリリィの宝具絶対男性特攻とかついてるよね、これ?

 

「……く、くそっ、せめてお前だけでも……」

 

「おろ?」

 

聖剣の余波でこちらまで吹っ飛んでいた残党の一人が武器を持って襲い掛かってくる。

ほう、黙って見ていた俺なら組やすしと読んだか。

よかろう!この拳の錆びとしてくれるわ!貴様は中国武術を嘗めたッッッ!!

 

「貴様ッ……、私のマスターに何をしている……!」

 

「ヒィッ!!」

 

と思ったけどその必要は無かったみたい。

マッハで戻ってきたリリィが盗賊の喉仏に剣を突き立てていました。

口調とキャラ崩壊がエラい事になってますよ……。

 

「リリィ…もう気絶してるよ、その人」

 

まぁ、あんな至近距離で見習い騎士とは思えないレベルの殺気をぶつけられれば誰だって気を失うか

 

「ああぁっ!すみませんマスター!私が未熟なばかりに……どこかお怪我はありませんか!?具合は大丈夫ですか!?マスター……ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんな」

 

「ううん、リリィのおかげで助かったよ、本当にありがとう。だから心配はいらないからね――、ほーらよしよ――し」

 

剣をしまい、泣きそうな顔で俺の体をペタペタと触れ安否を確認する彼女が情緒不安定になりそうだったので、これはいかんと思い、ギュッと抱き締めて頭を撫で回し安心させる。

 

「んん……はぁ…………えへへ、ますたぁー」

 

俺は大丈夫よーとスキンシップで教えてあげると、にへらと頬を緩め、猫のように顔を擦り寄せてくる。いやこの場合犬のようにの方が正しい表現か?

 

しかし……何か特別懐かれるような事をした覚えはないんだけどね。

召喚してからなにかと一生懸命な娘だったもんでついつい世話を焼いただけなんだがなぁ。

一緒にクエスト行く度に褒めたり、抱きしめたり、かいぐりまわしたり……あれ?モーさんの時のデジャヴ?

 

「すんすん……ますたぁーますたぁー、んんっ……」

 

「よしリリィ落ち着いた所でちょっと周りを確認しようか」

 

「ほえ?」と萌えるような声を挙げつつ、辺りを見回すと『あら~』みたいな街の方々の微笑ましい視線が突き刺さる突き刺さる。

ここの人達を助ける為に街中であんな大立ち回りをしたんだから、そりゃあ目立ちますよ。何でしょうねこの羞恥プレイ。

 

「あ、あわわ……私……なんて恥ずかしい真似を、あぅ……」

 

うん?俺?特に恥ずかしさとかはないよ、だってどちらかといえばこういう羞恥プレイを喜んで仕掛ける側ですし、女の子の照れ顔でご飯が進むぜぇ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、助けてもらったお礼にと街一番の宿へ招待してもらう事にどうやら今日は収穫祭らしきものがあるのでそちらも是非参加して欲しいと……盗賊が襲ったのもその食べ物狙いかね?

 

断っても良かったんだがせっかくのご厚意だったし……それにリリィが湯気を出したまま心ここにあらず状態だったので回復する時間も欲しかったので甘える事にしました。

 

「お祭りですか?」

 

「うん、出店とかいっぱいあるだろうし……一緒に食べ歩きでもする?」

 

宿で休んでいる中、ようやくいつもの調子に戻ったリリィを誘う。

 

「賊を蹴散らしてくれたお礼だから、お代はいらないってさ」

 

「むむむ、確かに食べ物には興味はありますが私は見返りが欲しくてこの街を救ったわけでは……」

 

「いいんじゃない?もらえるのはもらっておこう、特に善意から出たものはさ。

街の人達も俺達がもらってくれた方がスッキリするだろうし」

 

もらった恩を返せないってのも案外落ち着かないものだしねー、特にここの人達みたいに人が好いとなおさらだし。

 

「……マスターがそうおっしゃるのなら」

 

渋々という雰囲気でもあるが、食べ歩きには興味があるのだろう、アホ毛もピコピコ動いている。

 

「ってかいつもの特訓ならXもいるのに今日はどうしたの?」

 

「ええ、師匠も誘うと思ったのですが自室の隅で『マスターはセイバーが好き……嫌い……好き、嫌い、好き嫌い好き嫌い好き嫌い……』と花占いをして忙しそうなご様子だったのでそっとしておきました!」

 

あぁ、あっちにも地雷、こっちにも地雷。

Xの方も後でちゃんとフォローせねばなるまいか。

 

「そっかー、ナラシカタナイネ。とりあえずお祭りの方、一緒に行こうかリリィ」

 

「はいっ!お供させていただきますマスター!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぃはぁひ、いいほのへふねー……ほうひっは」

 

「はいはい、慌てなくても食べ物は逃げないから口の中にいっぱい入れない、ああもう口元にケチャップをつけて……ほら動かないの」

 

両手が食べ物で塞がっているリリィの口周りを拭いてあげるとなんか親戚の子供の世話をしている気分だ。

 

「んっ……んぐっ、す、すみませんマスター」

 

謝るならもう少し申し訳なさそうにしてくれ。

そんな嬉しそうな顔されるとこっちもついつい甘やかしてしまうんだから。

 

「しかし、良い物ですね……こういったお祭り事は。楽しんでいる人達の笑顔を見ていると私も戦って良かったという実感が湧いてきます」

 

「お礼もいっぱい言われちゃったもんねー『ラブラブハグの女騎士様』だったっけ?」

 

「も、もうっ……それは言わないでくださいっマスター!うぅ、もぐもぐ……」

 

照れを誤魔化すようにフランクフルトを頬張るリリィ。

うん街の女性陣は微笑ましい感じだったけど、男性陣は一部リリィを見るやいなやアソコを押さえて前屈みになってたからね、いやらしい意味ではなくて恐怖的な意味で「あれが去勢剣の使い手…」とか聞こえてきたし。

まぁ、気持ちはわかる。こんな可愛らしい子が笑顔で敵のゴールデンボールを集中砲火してるんだもん、見てる人はそれはそれは恐ろしいでしょうよ。

 

「えへへ……」

 

リリィの食べ歩きも終わり、手を繋ぎながら歩き回っているとやがて日も暮れ、街の中心でもある広場へ着いてしまった。

 

そこでは多くの人が男女で踊っていた。

フォークダンスみたいなものかな?けど決まったダンスってわけでもなさそうだわ、皆音楽に合わせて思い思いに踊ってるし。

 

「俺らもちょっと踊ってみるかい?」

 

「え、えぇ!私がマスターとですか!?

む、むぅ……同性とのダンスなら大丈夫なのですが殿方とのダンスは少々……マスターにご迷惑をかけてしまうかもしれませんし」

 

「安心したまえ、プロデューサLv300の俺にダンスレッスンなどの朝飯前だ」

 

何ならボイスレッスンとトークレッスンもいけるぞ。

 

「ぷ、ぷろでゅぅさぁ?」

 

「何でもない。違う世界線の話だ」

 

「……はぁ、わかりました。

ではエスコートをお願いしていいですか?マスター」

 

「うむ、お手を拝借。レディ」

 

少々ぎこちないリリィだったがそれでも特に問題なく俺のダンスに合わせてくれた。

麗しい金髪と輝かんばかりの笑顔、他のカップルも思わずこちらに注目してしまう。

どっちも白服コンビだからね、目立つっちゃあ目立つわな。

 

「ははっ!あははっ!楽しいですねマスター!」

 

嬉しそうに笑うリリィ。

 

 

夜空の下で舞う彼女は縋りつくように絶対に離さないと言わんばかりに力を込めて俺の手を握っていた気もした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー、踊った踊った」

 

「…………うっぷ、まさかあんなにグルグル回転させられるとは思いませんでしたよ」

 

だってダンスは回ってなんぼじゃない?

3ケタアクセルぐらいしとかないと、まぁ自重してキリの良い所で宿に戻ることにしたけど。

 

「もう遅いし、今日はご厚意に甘えてここで一泊してからカルデアに帰るとしましょう」

 

「そう、ですね……」

 

二人で同じベッドに座っているとリリィが何やら言い淀んでいる。

いつもの事なんで俺はこの娘が何が言いたいのかもわかる。

 

「……あ、あのマスター?」

 

「ん?」

 

「……今日も可愛がってもらっていいでしょうか?」

 

「いいよ、おいで」

 

毎回、二人で交わるとき彼女は必ず俺に許可を得てから触れてくる。

遠慮しているのか、自分に自信がないのかはわからないが……俺としてはもっとこう『マスターの聖剣(意味深)をよこせぇー!グヘヘー!』ぐらいイケイケで来てくれても全然構わないんだけど……いや今のカット、そういうリリィの姿は全く想像できねえわ。

 

許しをもらい、パァッと花を咲かすように笑顔で俺にキスをしてくるリリィ。

 

「んっ、んっ……ちゅ、んぅ……んちゅっ」

 

いきなり深いディープキスをするという事はせず、俺の唇の形を確かめるように舌先でリップの表面を控えめにつついてくる。

 

「んむぅ、んんっ、んちゅっ…‥んはぁっ……あっ、私、汗かいたままでした、ちょっと拭いてきま、きゃあっ!」

 

口を離したリリィをそのまま抱き締め一緒にベッドへ倒れこむ。

 

「いいよ俺は気にしないから…………ぺろっ」

 

彼女の白いドレスから露出している艶めかしい腋を舌で舐めまわす。

 

「ひぅっ!あぁ、んんぅっ……だ、ダメです、マスターっそんな汚いところぉ……んうぅっ!」

 

「れろぉっ……うん、ちょっとしょっぱいけど嫌いな味じゃない、それに俺だって汗かいてるじゃん」

 

「マ、マスターのは私気にしませんっ!むしろぉ……ああぁっ!だめぇ、すわないでぇっ……やあぁんっ!」

 

汗と元の彼女の匂いが混ざった腋を舐めるだけではなく音を立てて吸い上げる。

すんごい素朴な疑問なんだけど腋って絶対性器と引けを取らないいやらしさを持っていると思うんだ。

にも関わらず、何の規制もかかってないなんてホント世界どうなってんだ!というね。

 

「はぁ、はぁ、あぁ……ますたぁー」

 

息を荒げ、呼吸を乱す彼女の黒リボンをほどき、その白いドレスを脱がしていく

 

目の前にはレースとリボンで彩られたドレスと同じ色の純白の下着。

リリィは脱がされても、それを隠すようなことはしなかった。俺に身を全て任せるように……。

 

ショーツ越しに指を押し込むとグッショリと濡れていることがわかる。

俺はそこを擦りながら彼女に問いかけた。

 

「腋を舐められただけでこんなに濡れちゃったのか、それとも最初っから濡れていたのかな?」

 

「んふぅっ……あんっ!、ごめんなさいぃ……マスターに触れるとココが切なくなってぇ……はうぅっ!」

 

どんどんあふれる愛液を直に楽しむ為、ショーツの中に手を入れ指を膣内の中でグシュグシュと音を響かさせながら暴れさせる。

 

「もしかして、今日一日ずっと濡らしてたんじゃないのか?騎士がこんなに淫乱でいいのかい?」

 

「ああぁ!あぅ!あっ、はぁっ、やあぁっ!ごめ、んなさいっ……えっちな娘でごめんなさいぃっ……ああんっ!ふうぁぁっ!」

 

彼女はこういう情事の際は何故か言葉責めをすると面白いぐらいに感じてくれる。

さっきから掻き回してる蜜肉からもドンドン汁が出てくるし、普通のMっ気とはまた微妙に違う気もするんだよなぁ。

 

ブラジャーの方も外してあげると桜色の先端がぷっくりと膨れていた。

 

「本当にいやらしい娘だ……」

 

「あっ、ああ、ああぁっ!……だ、めぇっ、ひぃ、うぅぁっ……!!ああぁんっ!」

 

空いている片手で乳首をやや強く摘まんであげ、引っ張ってあげる。

リリィは決して巨乳ではないが胸の形は整っており、その美乳が形を歪めているのはある意味とてもいやらしさを感じる。

彼女も口では否定の言葉をあげているが表情は胸を激しく玩ばれる痛みを、性器を滅茶苦茶にされる快感が嬉しくてたまらないという表情をしている。

 

いや、一体誰が汚れを知らない純白の姫騎士をこんなベッドでは乱れてしまう被虐趣味満載の女の子にしちゃったんだろうか。

まったく諸行無常な世の中だぜ。

 

「いっ、ちゃうっ……!はぁっ……ぁぁああぁっ!あああぁぁっっ……!!」

 

――――プシュッ、プシュッと潮を連続で吹きながらリリィは絶頂へ達してしまう。

 

既に様々な液体を吸い取った彼女のショーツを役目は終えたとばかりに脱がす。

「あぁっ……」と小さく歓喜するような声が耳に届いた。

 

「…………私を戴いてもらえるでしょうかぁ?ますたぁー……」

 

普段見せている花のような可憐さとは別の妖艶さを匂わすような色気を振りまきながら彼女は隠すことなく体を開く。

 

「あああぁ!すぶすぶってぇ、んはぁっ!……はいってくるぅ……あっ、あぁ、はああぁんっ!!」

 

亀頭から秘口へ挿れると俺が動く必要がないほどに彼女の膣壁が吸い付いてくるので自然とどんどん奥へ進んでしまう。

 

「んふあぁっ!あぁぅ、ぁぁっ!ますたぁー、ますたぁぁー、ますたあぁっ!」

 

激しく動くと彼女はより喜色に満ちた表情でこっちに熱い眼差しを向けてくる。

まるで今だけは自分だけを視界に映して欲しいと……髪もいつの間にかほどけてしまったリリィはそう懇願しているように見えてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああっ、あんぅ……はあぁっ!もっとぉっ、ああぁっ、やあぁっ……!ひああぁっ!」

 

グシュグシュ、パンパンといやらしい音が部屋中に響き渡る。

マスターの熱く滾った男性器が私の中を蹂躙してくれるその事実と与えられる快感が私をより淫らに狂わしてくれる。

 

「あうぅっ!はぁ……ますたぁー……()()()()してもらってもいいですかぁ、んあっ!」

 

そう言うとマスターは困った顔をしながらも優しく私の首を絞めてくれました。

少し苦しく、けど呼吸は出来るぐらいの絶妙な力加減で。

 

「……かはぁっ……あっ……はぁっ、あっ!はぁっ!ますらぁっ……!!」

 

いつからかはわかりません、一番最初に彼にこれをお願いしたときも……どこかに頭でも打ったのかと心配されました。

それでも毎回これをおねだりすると苦笑しながらも応えてくれるのです。

 

まぁ、マスターに乱暴にされると気持ちよくなってしまうというのが半分くらい、残りの半分はあの心優しいマスターに直接手で生殺与奪の権利を預けているというシチュエーションが堪らない背徳感を私に与えてくれるのです。

 

「……はぁ、はっ、あっ!め、ちゃく、ちゃに……あぁっ、ぁあ……してぇっ、はぁぁっ!!」

 

私にとって何よりも恐ろしいのが見捨てられること、マスターに忘れ去られてしまうこと。

それならいっそ彼の加虐対象として扱ってもらった方が安心感を得られるのです。

 

私はあなたの騎士です。

 

私はあなたの剣です。

 

どれだけ雑に扱ってもかまいません。

 

どんなに乱暴に扱ってもかまいません。

 

どんな使い方をしてもいいんです。

 

だから、捨てないでください、捨てないでください、忘れないでください、見捨てないでください。

 

あなたの傍に置いてくれるだけでいいんです。

 

もしあなたに見捨てられてしまうぐらいなら、いっそ自害を命じて下さい。

 

「あぁっ!あ!はぁ!はっ……き、もち、いい、あはぁっ……!きもちいいで、すぅっ、あっ、ああぁっ……!」

 

だから今こうやってあなたに抱かれている瞬間が一番安心するんです。

マスターの大事な部分が私の体の中に、私の命がマスターの手の中に。

 

あぁっ……射精しそうなんですねマスター……出してください、いくらでも乱暴に私の膣内に出してください。

 

彼は抜かないでしょうがそれでも私の足は自然と離さないとばかりにマスターの腰に絡めてしまいます。

 

私の中がキュウキュウと締めつけることでマスターのモノが大きくなって欲望を注ぎ込もうとするのが手に取るようにわかっていき、やがて――――

 

「あぁっ!あっ!ああっ――――――――――――…………!!!!はぁっ……!あ、あっ……っ……はっあっっ!」

 

ドクドクとマスターの子種が私の子宮の中に入り込んできます。

 

「はっ、えほっ、こほっ!あんっ……はぁっ、ますたぁ……」

 

首から手を離したマスターは安心させるように優しくギュッとし、子供をあやす様に紐の解けた私の金髪を指で梳いてくれる。

こうして抱き締められるのも好きなんです、だって今のマスターの腕の中には私しかいません。

私も全身でマスターの体温を感じることができるこの瞬間は本当に不安を忘れる事ができる。

 

「やっぱり、俺に見捨てられないか不安?」

 

「……えっ」

 

―――――あぁ、やっぱり。

 

「……気づいていたんですね」

 

「うん、リリィはちょっとわかりやすいからね。言葉では出さないけど、態度と雰囲気で」

 

「そうですか……」

 

私を撫で続けてくれる手は依然止まることなく優しいまま。

 

「俺がどれだけ言葉を尽くしてもリリィはやっぱり不安なんだよね」

 

「……はいっ、マスターが私を捨てるような事をする人ではないと知っているんですっ…知っているんですけどっ……カルデアにどんどん新しい英霊が召喚される度に、あなたがどんどん先へ進んでいくのを見る度に、半端者の私はっ……忘れ去られてしまうんじゃないかって!だって、だって……あなたは世界を救う人だからっ!世界を救う為にはっ……!」

 

あぁ、駄目だ。想いが、涙が、もう止まらない。

 

「リリィ」

 

「そして何よりそんな素晴らしいマスターを信じ切れてない自分が一番嫌でっ……!!

いかないでくださいっ、すてないでくださいっ、わすれないでくださいっ……ますたぁ、ますたぁ!

私、私……あなたに見捨てられるくらいならいっそ死んだ方がマシなんです!」

 

泣きじゃくる童のように親を求める子のように彼に縋りつく。

 

「…………うーむぅ、色々と過大評価しすぎじゃねと思うが、まぁ、原因は俺のせいか、これは」

 

そうやって右手の令呪を光らせるマスター。

もしかして、自害でも命じてくれるのでしょうか?

あぁ……それもいいかもしれませんマスターが看取ってくれるなら私は…………。

 

「令呪3画をもって命ずる『これから俺がセイバーリリィを見捨てるような事があれば、俺の命を奪え』と、うっし!こんな感じでいいかな」

 

は?

 

「ま、ますたー……?なにを……」

 

「いやー、ここ最近は令呪をちゃんと使う機会に恵まれていよいよマスターらしくなった気がするよ。あっはっはっはっ」

 

「な、にを、、…………何をしているんですかっ!!あなたは!大事な令呪をそんな使い方に…………いやそれよりも、なんて命令に使ったんですかっ!!」

 

「だってリリィは()()()()()()()()()()()()()()()()()()なんでしょう?

俺だってリリィを()()()()()()()()()()()()()()()()()、うん!これで二人とも同じ土俵に立ったんじゃない?」

 

「同じって……」

 

「言葉を尽くしても君の不安が拭えないなら命を担保にするぐらいしか俺には出来る事ないからね、だからさ」

 

彼は呆気に取られている私の唇を奪い、舌を口内で動き回す。

 

「んっ……!?んんぅ、ちゅるぅ……ちゅっ、んちゅっ……んぅっ、っはあぁ!」

 

「どうか泣き止んでくれ、君が泣いてるままだと俺も悲しくなる。

また不安になったらいつでもおいで、3画使ったとはいえ令呪だって効果は無期限じゃないしね重ね掛けというアフターケアもしっかりしますよ」

 

「………………マスターは馬鹿ですね」

 

「うぐっ……リリィみたいな娘に言われるとすんごい心にクるね。

けどさ、俺とリリィは成長中の似た者同士だからさやっぱり相方を不安のままにはしておけないのよ」

 

そっか、同じ、これで同じ土俵か、マスターと同じ命に……フフフッ…………。

 

「うじうじ悩んでいた私も馬鹿みたいですけどね、最初っからこんなに悩む必要なんて無かったんですから」

 

「吹っ切れた?」

 

「はいっ!……マスターには色んな物をもらってばっかりです、全部返しきれるでしょうか?」

 

「そんなに焦んなくてもいいよ、なんなら王様になった後で返してくれてもいいし」

 

「ふふっ、そうですね。私に出来ることなら何でもしましょう!」

 

従者の関係の私達、私が皆に誇れるよな王様になったら彼を私の騎士にするという夢を見てもいいですよね。

 

「あんまり女の子がそういう台詞を言うべきじゃない気がするけどね」

 

何でしょう今すごく心が軽やかです、あぁ……またアソコが疼いてきてしまいました。

 

「私は成長途中の半人前の騎士です」

 

「俺も成長途中の半人前のマスターだね」

 

「マスターは私の主です」

 

「君は俺の騎士だね」

 

「私はマスターが好きです」

 

「俺もリリィは好きだよ」

 

「私はあなたを愛しています」

 

「俺も君を愛してるよ」

 

「あなたに見捨てられたら私は自らの命を絶ちましょう」

 

「君を見捨てたら喜んでこの命を君に差し出そう」

 

…………同じ、同じ、同じ、マスターと私は同じ、彼と私は繋がっている……ならもう何も心配に思う事はない。

 

「……ふふっ、ふふふふ……あハハハハっ…!」

 

まずはここの女の部分を鎮めてもらいましょう。

 

「マスター……今日だけは優しく愛してもらっていいですか?」

 

「今日だけはって……」

 

「不安は無くなりましたっ!けどそれとは別にマスターに虐められるのは気持ちいいんです!」

 

「そんな輝かんばかりの笑顔でカミングアウトされても困るぅ……まぁいいや、またゆったりと抱いて欲しいならいつでもお願いしていいからね?別に俺はどっちも好きだからさ」

 

「はいっ、んっ……もう私は自分を隠しませんっ……あぁっ、はぁ……」

 

ゆっくりと結合部から大人しい快感が与えられます、彼の顔を見ながらこの贅沢に今は浸るとしましょう。

 

「はぁっ、あぁ、あんぅっ……ますたぁー……んんっ、ふうあぁっ……!」

 

 

私はあなたの騎士で剣です、この命燃え尽きるまであなたと共に……。

 

いえ、もはや勝手に死ぬことさえ私には許されません。

 

死ぬときはあなたの命の下で……どうかそれまではずっとお傍へ私のマスター…………。

 

 

 




≪勝利すべき黄金の去勢剣≫
ランク:A++
種別:対軍宝具
主の役に立ちたい、主を守りたいという願いとXの「競うな!持ち味をイカせッッ!」という教えの元、ある意味攻撃的な進化を遂げた聖剣。
そこから放たれる光は何故か必ず敵の股間に収束するという究極の男殺し宝具、間違いなく男性特攻がついている。
そしてさらに凶悪な所がぶっぱされる光は一つだけではなく一振りで多数の光が放たれるので多くのゴールデンボールを一気に粉砕することが出来るという対集団においてもその真価は発揮されるという点。






事前登録でさぁ、リリィをもらってる人達はSWイベでどうしても一人余っちゃうよね……その6人目はとっておいているのか、それともマナプリにしてしまったのか……。
いや別に今回の話が出来たきっかけってワケではないですよ、ええホントデストモ。

何はともかく今回は可愛いリリィを書けたと思います!やっぱり可憐な姫騎士はいいよね!(白目)

このマスターなら万が一リリィが命を奪いにきても撃退できるんじゃ……というツッコミがありそうですが、そうなった時点で自分に落ち度があると思っているマスターは抵抗はしないと思いますよ。だから彼も死んで、リリィも後を追うように自害してHAPPY END!
まぁそもそもこの女性特攻マスターがリリィを見捨てる事はまず無いのであり得ないifの話ですが。


X師匠「リ、リリィ…色を知る歳か!(恐怖)」
メディアリリィ「彼女とは何故だか仲良く出来そうな気がします」




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ちびマス!(ゴルゴン姉妹)

今話、今までで最多の文字数です。
どうしてこうなったのかは私にもわからない。






途中まで誰回なのか、わからなくしていくスタイル!!


俺は人理継続保障機関『カルデア』所属の最後のマスター!!

特に幼馴染でもないアタランテとダ・ヴィンチちゃんの工房へ遊びに行って……、

変態芸術家の怪しげな製作現場を目撃した!!

薬をつくるのに夢中になっていた彼女は……、

背後からやって来る俺の存在に気づかなかった……。

俺は意気揚々と興味本位からその薬を奪い、飲み、目が覚めたら――

 

体が縮んでしまっていた!!

 

俺がこんな姿になっているとヤツら(一部の女性鯖)にバレたら、性的に襲われ……まわりにも被害が及ぶ……。

 

「どうして君はそう学習能力がないのっ!?」とプンスカ怒っているダ・ヴィンチ博士の助言で正体を隠すことにした俺だったが……

当然すぐにバレて、酔いどれけーかちゃんとマシュマロおっぱいの計二名から逃げる為、現在アタランテちゃんに抱えられながらカルデア内を絶賛逃亡中……。

 

小さくなっても頭脳は同じ!

迷宮なしの名マスター!!

 

真実はいつも――

 

 

「ええいっ!こんな状況でずいぶん余裕があるな!汝は!」

 

俺を抱っこしたまま全力疾走中のアタランテちゃんが叫ぶ。

後ろからはちょっとやばい目した後輩シールダーと泥酔お姉さんが追いかけてくる……荊軻さん、あなたいつも酔っ払ってね?

 

「だってもうこんな状況になったらなすがままですもん、俺の自業自得でもあるし。

けど、さすがにあの二人に問い詰められたとき『この子は私とマスターの子供だっ!』って誤魔化し方したアタランテにも落ち度はあると思います」

 

「くそっ!完璧に隠しきれたと思ったのに!」

 

え?マジで言ってんの?

 

「しかもあの二人、どうして私の脚についてこれるのだっ!?荊軻はともかくとして、マシュの敏捷はそこまでではない筈だろう!?」

 

「これも先輩への愛が為せる技ですっ!ですからアタランテさん!速やかにマスターをこちらへ引き渡して下さい!後の面倒は私がしっかりと見ますから!」

 

「そんなギラついた瞳で息を荒げた者共に預けられるかっ!貴様らっ、こんな子供の姿のマスターに欲情して恥ずかしくないのか!」

 

引き離せないと思ったのかアタランテは立ち止まり、真正面から二人に向かって吠えた。

 

「えー、そんなマスターの愛らしい姿を見たら、年上お姐さんの優しく筆おろしプレイをしてあげたくなるだろー?誰だってそーする、私だってそーする」

 

「この隣にいる可愛い系泥酔キャラの座を見事に私に奪われた哀れな方の発言はスルーして下さい。

私はただ子供の姿になってしまったマスターをおはようからおやすみまで永遠に傍で守り続けたいだけなんです!主に外敵(メス共)からっ!だって私シールダーですから!」

 

「…………マシュの発言に全私が泣いた……グスッ……そもそもアタランテ、君も人の事が言えるのか?未だにロリ化して幼児プレイでお茶を濁しているお主がマスターによからぬ事をしないとどうして言い切れる」

 

「なななな何の事だ?自分もマスターと同じ年齢になって幼馴染の如く、一緒に微笑ましく遊んで『大きくなったらお嫁さんにしてねっ』的なプレイをしようなんて一切考えておらんぞっ!」

 

「ベッタベタだね、アタランテちゃん」

 

語るに堕ちる所まで堕ちてますがな、まぁ、そういう所が可愛らしいんだが。

 

「あくまで白を切るつもりか……ならば力づくで奪わせてもらうとしよう」

 

「ぽっと出のあなた達に任せられません!ショタ先輩のお世話をするのはメインヒロインの私です!」

 

既に臨戦態勢に入っている二人を見て、あわや戦闘パートに突入かと思いきや……。

 

――――――ザザザッッ!!

 

「ふふふっ……嘘つきの獣娘は当然としてその様子を見る限りお二人も淑女としての落ち着きがありません。

やはり旦那様にふさわしい正妻はこの清姫しかいないという事でしょうね」

 

「皆様方の主張は至極どうでもよいのですがマスターに危害が及ぶなら見過ごすわけにはいきません、どうか矛を収めて下さい」

 

わあい、ここでいい感じに病んでるダブルヒロイン、(清姫とセイバーリリィ)の登場だぁー、いよいよ収拾がつかなくなるぞぉ、これはっ。

 

「あぁっ旦那様ぁ……なんて愛らしい姿に!

不安がることはありません、この清姫、他の方々と違いその姿のマスターに情欲をぶつけようとは思っていませんので、私秘蔵の逆光源氏計画でしっかりと育ててあげますわっ!ふふふふふふふふふふふふ…………」

 

それ最終的に戴かれる奴じゃないですかー!やだー!

 

「私としては清姫さん、あなたが一番危険だと思っています。

ですので大人しく引き下がってください。マスターが怖がっています、それ以上の狼藉は騎士として見過ごせません」

 

「そこで『女として』という台詞が出ない時点で底が知れましてよ、リリィさん。

騎士をいい隠れ蓑にしてるんじゃなくて?この大嘘つき」

 

「私とマスターはもはや男と女の関係を超越しています、あなたの小さい尺度で測らないでもらいたい」

 

「……へぇ」

 

空気がヒンヤリするなー。

これはもう眠りの小次郎をするしかないね、目が覚めたら全て終わってる気がする(ええーほんとにござるかぁ?)。

 

「マスター、狸寝入りをしている場合ではないぞ。完全に挟まれたこの状況、どうするのだ?」

 

「大丈夫だよアタ蘭ねーちゃん、テンプレだとここでもう一回ぐらい登場した誰かさんがうまい具合に場を収める筈さ」

 

「希望的観測が過ぎるなそれは……、あぁ後、もう一回ぐらいねーちゃんと呼んでくれまいか?」

 

――――――ドオォンッッ!!

 

それ来なすった!!

 

「 司 令 官 」

 

「ひぃっ」

 

あれぇー、クリミアの天使が見えるよ……。

 

「私は再三に渡ってあなたに忠告した筈ですが……‘もしまた同じ事があれば、あなたの全てを管理する'と、にも関わらず、また不用心におかしな薬を飲んだあげくこんな危険な目にあってるとは」

 

「あばばばばばばばば」

 

「あぁ、駄目ですね。本当に駄目、だめだめだめっ。やはり司令官の病気は私が完全治療をしなければ……ええ、あなたは何も心配する必要はありません、全て私に任せなさい。まともで清潔で健康な大人になるまで……いえ、死ぬまで責任を持って育ててあげますので」

 

「ど、どうしたマスターッ!?そんなに震えて!傍若無人を体現している汝がまさか恐怖しているのか!?」

 

「い、い、いつもの姿ならまだしも……さすがに子供の姿では婦長さんに抵抗できないし……『悔しいっ、でも治療されちゃう!』みたいになっちゃうよぉこれぇ……」

 

はやく、はやく大きくなる薬を…!白乾児とか無いのか!!

 

「いきなり出てきて、随分勝手をおっしゃるのですね、看護師様は。

そもそも生涯独身だったあなたが旦那様をまともに育てられるとは思えないのですが……」

 

「ブーメランという奴ですか、それは?

ええ、確かに私は生前、自らの子は持ちませんでした

しかし理屈は無くとも私ならうまく子を育てられる自信が湧いてくるのです」

 

「何故だかわかりませんが、オキシドールのバケツで顔面をザブザブされている先輩の姿が浮かびました!」

 

助けて……助けてモー孩児……。

 

「彼だけではありません、ここにいるあなた達全員ももれなく病気なので悉く治療対象です」

 

「あらあら、恋の病という事ですか?ならばこの病気を治すつもりは私にはさらさらありませんことよ」

 

「うむ、私は他の3人程、狂ってはいないし、治療の必要はないのでは?」

 

「は?何を言ってるのですか?荊軻さん、あなたは間違いなくアルコール中毒です。

しかも私が何度も酒を叩き割っても懲りる事のない重度の依存症です。酒を断つか、命を断つか、ここで選びなさい」

 

冷や汗をかいて「えぇ、何その究極の選択……」とぼやく荊軻さん。うん、ここで命の方を取らないあなたも大概な気がするよ。

 

「私が病気か正常か等、どちらでも構いません。

あなた達がマスターに害をなすなら、全員まとめてここで聖剣の錆びにします」

 

リリィがハイライトを失った眼で剣を構える。

だんだん君少しX師匠に思考回路が似てきたね、師匠もご満悦ですわ。

 

「ここは引けません!殺意を盾に乗せてっ……」

 

「私はあなた達を治療します……あなた達を殺してでもっ」

 

「いい機会ですわね、この場で誰が正妻なのかわからせてあげましょうっ!」

 

「酒!飲まずにいられないっ!」

 

「くっ、仕方あるまい!

マスター!しがみついていろ!ポイボス……」

 

ちょっと待て!?ここで宝具ぶっぱはアカンって、もうやめて!カルデアのライフはゼロよ!

 

 

女達はわかっていた……この状況、全力を尽くさなければならないと。

ならば当然、よそ見をする余裕などなく意識を前へと集中している。

 

しかしもし……そんな時に横っ腹から完全に意図していなかった奇襲が来たら?

 

騎 兵 の 手 綱(ベルレフォーン)!!」

 

そしてそれは攻撃ではなく、徹頭徹尾マスターを奪還する為だけに使われたら……?

 

「うおっ!?」

 

「しまったっ!!」

 

流星の如き、天馬のスピード、不意を突かれても仕方ないだろう。

 

―――今回のショタマスター奪還戦……漁夫の利でメドゥーサの勝利

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅっ……ご無事で?……あんっ、もうマスター、どこを触っているのですか」

 

「ごめんごめん、しがみつく所がおっぱいぐらいしか無かったからさ。

しかし無茶したねメドゥーサさん、お蔭で助かったけどさ、ありがとね」

 

「いえ……私も姉様方の命令で来ただけですので」

 

完全に彼女達を撒いた事を確認したメドゥーサさんはちっこい俺を抱いたまま天馬から降りる。

 

「女神様方の?」

 

「はい、マスターがそんな姿になっているのをあの二人が見過ごす筈はないので、私が鉄砲玉もとい鉄砲馬としてあなたを奪ってこいと……」

 

「……お勤めご苦労様です」

 

「いえいえ、いつもの事ですから……」

 

悲しみを背負ったライダーお姉さん、もはやその笑顔は悟りの域に達していた。

 

「しかし、随分と可愛らしくなりましたね、マスター。

確かにその愛くるしさなら他の方達が我を失っても仕方ないかと……ふふっ」

 

「顔が近い、近いよメドゥーサさん」

 

そんな蕩けた目で見つめられても困ります。

 

「お姉ちゃんと呼んでください」

 

「メドゥーサお姉ちゃん……?」

 

「はうぅっ!」

 

目を瞑り、何かを噛み締めるように悶えるメドゥーサお姉ちゃん。

ははっ、何だか危険な匂いがしてきたぞ。

 

「………………確かにお姉様方にマスター奪還は頼まれましたがそれが必ず成功する保障はありませんし……。

そうですねあの二人には『努力は尽くしましたが力及ばず……』みたいな感じで誤魔化しておきましょうか、そもそもこの子を助け出せたのも私の手腕によるものですし、馬鹿正直に引き渡す必要はないでしょう」

 

「あのー、メドゥーサさん……?」

 

「こんな機会滅多にないでしょうし、ふふふっ、小さいマスターを大人のお姉さんとしてリードしながら女の体というのをじっくり教えてあげるのもいいかもしれません。

それに子供のマスターを姉様方に預けてしまったらどんな悪影響があるのか想像するだけで恐ろしいです」

 

「あら?一体どういう悪影響があるのかしら?」

「そうね……私達にもわかるように懇切丁寧に教えてもらってもいいかしら愚妹(メドゥーサ)?」

 

「それはもうっ!間違い無く自分は火の粉がかからない所で他人が破滅する様をニヤニヤと観察する性悪に……………………………………い、いつからそこに……?」

 

あちゃー。

 

「あなたが発情してマスターに『お姉ちゃんと呼んでください』と迫っているあたりかしら、ねぇ(ステンノ)?」

 

「えぇ、そうね(エウリュアレ)。本当に悲しいわ、あんなに可愛がっていた妹が私達の事をそんな風に思ってたなんて。挙句の果てには騙そうだなんて……あぁ悲しさのあまりに妹が破滅する様をニヤニヤ観察してしまうかもしれないわ」

 

「あの……慈悲は?」

 

「ステンノ、判決は?」

 

有罪(ギルティ)よ」ニコッ

 

「いやあああああああぁぁ!!」

 

あぁっ!男性限定にしか即死が入らないキング・オブ・スマイルがメドゥーサさんに刺さったぁ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マスター、ほらア~ン」

 

「はい、女神様」

 

「もうっ、女神様じゃなくてお姉ちゃんよ」

 

「はいはい、エウリュアレお姉ちゃん」

 

「‘はい‘は一回よ……こっちのフルーツもおいしいから食べて御覧なさい」

 

「はい、ステンノお姉さん」

 

日差しが燦々と降り注ぐどこかの無人島、両隣にいる女神様がお姉さんぶって果物を食べさせてくれる。

目の前には海が広がる砂浜で二人の少女と一人の少年が仲睦まじくしているのは非常に微笑ましい光景だろう。

 

「んんっ~~~!んんぅ~~~!!」

 

口に猿轡をされてヤシの木に縛り付けられているメドゥーサお姉ちゃんの姿が無ければ。

 

「ふふふ、あのマスターが小さい頃はこんなに可愛らしかったなんて……他の連中が我を失うのも仕方ないかもしれないわね、ステンノ」

 

「そうね、私達にはどこか大きい駄妹がいた気がするけど、気のせいだったわ。実はこういう小さい弟が欲しかったのかもしれないし」

 

「何がおねショタよ!不健全っていうか、もう使い古されているわ!そんなネタ!年が近い、少年少女がイチャコラする方がよっぽど絵として映えるでしょ!」

 

あぁ、マンゴーがうまいなー。

というかここはどこなのだろうか、そしてカルデアは無事なのだろうか。

 

「さすがにあの魑魅魍魎の中であなたを匿うつもりは無かったので、奪還が成功次第、レイシフトでこの島に連れてくる予定でしたのに……」

 

「不安になって様子を確認しに来たら、まさかメドゥーサが裏切ろうとしてたなんてね!あれかしら今の姿のマスターは無自覚に魅了でも振り撒いているのかしら?私達のお株を奪おうなんて生意気よ、マスター」

 

「エウリュアレお姉ちゃん、マンゴーおかわり」

 

「マイペースねぇ、あなた、はいはい少し待ちなさい…………というか女神二人にご奉仕されてるこの状況に思う事が無いわけ?世の男共が泣いて喜ぶ羨ましさだというのに……もっと感激しなさいよ」

 

「わぁい、おねえちゃんたちにあいされてうれしーなー」

 

「心がこもってなーい!そしてちょっと可愛いのが腹立つー!」

 

エウリュアレお姉ちゃんのやわっこい手が俺のほっぺをグニグニと歪めてくる。

 

「いひゃい、いひゃい、」

 

「ふふふ、あなたも他人も惑わすという点ではもしかしたら私達と本質は同じだったりね……。

まぁ、冗談は置いておきますわ。あら口元に果汁がついてましてよマスター……れろっ」

 

ステンノが俺の口の端についていた汁を舌で舐め取ったと思ったら、そのまま唇を重ねていた。

 

「んっ、ちゅぅ……んはぁ……そうね、愚妹(メデューサ)へのお仕置きにはちょうどいいかもしれないわね……ちゅぅ、んんぅっ、ほらぁ……舌を出しなさい」

 

ステンノ姉さんに言われるがまま、舌をあちらの口の中に挿し込むとチロチロと蛇のように舐め回され非常にくすっぐったい。

 

「ふふっ、そうね駄メドゥーサにはそこで生殺しの方が堪えるわよね。はーい、マスター脱ぎ脱ぎするわよ」

 

唇を離したステンノと何故かノリノリのエウリュアレが服を脱がしていく。

俺が今着ている服はいつもの魔術礼装ではなく何故かアタランテが用意してくれた子供服だったので脱衣させるのは容易だった。

 

「きゃっ!?子供ながら凶悪なモノ持ってるわね、あなた」

 

「ふふっ……しかもこんなに大きくしちゃって、お姉さん達に興奮しちゃったの?いけない弟ね……」

 

全裸に剥かれ、さっきまで座っていたレジャーシートに押し倒される。

いやだって女神様方に抱き着かれて、チュウされちゃったら、おっきするでしょうよ普通。

 

「………………ゴクリ」

 

それとメドゥーサさんガン見しすぎ、石になっちゃうよー。

 

「あぁ、けど弟の不始末は姉が何とかしてあげないとね、エウリュアレ……んぅっ」

 

「そうね、お姉ちゃん達がスッキリさせてあげるわ、ちゅるぅ……」

 

二人は小悪魔的な微笑を浮かべ、両サイドに陣取った。

 

「んっ、ちゅ、ちゅるぅ……ふふっ……もっと気持ちよくなっていいのよ……?んちゅ、ちゅっ……じゅるぅ……あぁもう、こんなに愛らしくなってもここは大きいのだからぁ……んぅ……んじゅ、ちゅぅ……乳首もコリコリしてきてるわ……」

 

右側にいるステンノお姉さんが再びキスをしながら、俺の右乳首を指先でくすぐり、空いた左手で大人の時よりは控えめに勃起している逸物をその滑らかな手でシコシコと扱いて来る。

 

「ちゅるぅ……れろっ、はぁむぅ……ちゅぱぁ、ここもパンパンになって……ちゅむぅ、ちゅるっ、じゅるぅ……はぁ……お姉ちゃん達にこんなに欲情しちゃってぇ……いやらしいわぁ……れるぅ、ちゅむぅ……ちゅ、ちゅぅ……」

 

左側にはエウリュアレお姉ちゃんが左乳首に吸い付き、舌先で弄んでくる、左手では俺の太ももをいやらしく擦り、右手でパンパンになっている玉袋を優しく揉み込んでくる

 

子供の体になったせいかいつもより与えられる快感に対して敏感になっている気がする。

全身を二人の女神様の小さな手で愛撫され、生温かい舌で責められ、体がビクついてしまうのが止まらない。

 

「……っぁ……」

 

「ちゅむぅ……ちゅ、れろっ、んんぅ……はぁ、ピクピクしちゃって……んっ……かわいらしいわぁ……マスター、んぅ……ちゅっ、ちゅぅ、ちゅるるぅ……んあぁっ……」

 

「ぴちゃ……ぺろっ……はむぅ、はぁっ……いきたいの?いっちゃいたいの……?いいわぁ、すきなだけ出しなさい……じゅるっ……じゅるるるぅ!じゅちゅぅっ……!」

 

「……っくぁ、で、るっ!」

 

――――――ドピュッ!ピュルルッ!!

 

子供が出したとは思えない量の白液が二人をの純白の手を汚していく。

姉さん達が口を離し、そこからつながっている銀色の糸が余計に厭らしく感じてしまう。

 

「うわっ!?すごい量!子供になってもここは相変わらずなのね…」

 

「ふふっ、まだ元気はありそうですね、マスター。さて……」

 

左手にかかった精液を拭き取ることもせず、紅潮した顔のまま縛られているメドゥーサお姉ちゃんに近づいたステンノお姉さんは猿轡だけを外してあげた。

 

「……はぁっ、上姉様?」

 

「ほら舐めてもいいのよ、メドゥーサ……」

 

そう言い、白濁液で汚れた手を目の前に差し出した。

縛られてる彼女は誘蛾灯におびきよせれるようにゆらゆらと自分の姉の手についている精液を舐め回した。

 

「はぁむぅ、ちゅるぅ……ちゅぱぁ、じゅるぅ……はぁ……れろぉ、れるぅ、ちゅぅ……んんっ……」

 

「んっ、あぁ、みっともないわね…-小さい男の子の精液を……あっ、こんな一生懸命に舐めちゃって……」

 

頃合いを見て、手を引いたステンノお姉さん、メドゥーサお姉ちゃんはまだ物欲しそうな表情をしていた。

 

「あの…上姉様…私も…」

 

「駄目よ。

これはお仕置き、あなたはそこで見ているだけ、参加なんてさせてあげないわ……そして自分で慰めることも許さないから、その縄も解いてあげない」

 

「そんな……」

 

「ステンノお姉さん……メドゥーサお姉ちゃんが可哀想だよ」

 

「うぐっ……そ、そんな目をしても駄目よマスター。まぁ、もう少し反省させたら考えてあげない事もないわ」

 

「しばらくはそのままお預けって事でしょ、ステンノ」

 

「え、ええ、そうね……全く女神を魅了をしようなんて本当に悪い子ね……」

 

濡れ衣です、そんなつもり無いです。

ってか魅了をかけてるのはそっちな気がするよ、さっきから女神様方を姉扱いするのに全然抵抗ないんだもん。

お姉ちゃんプレイも別に嫌いじゃないから全然良いんだけどさ。

 

暑くなってきたのか、服を全て脱ぎ、生まれたままの姿で俺の顔に跨るステンノ。

 

「むぐっ」

 

「悪い弟にはお仕置きよ、ここをしっかりとお掃除しなさい」

 

「じゃあ、私はここをもらうわ……お姉ちゃんの中を味あわせてあげるんだから泣いて喜びなさいよ」

 

姉と同様に服を既に取り払い全裸になったエウリュアレも小さな淫裂の入り口に俺の肉棒をあてがう。

 

「ふふっ、あっ、すんごいピクピクしてるわ……そんなにお姉ちゃんの膣内に入りたいのねぇ……んんんっ!し、かたない、わねぇっ……あぁっ!あぁ、んんふぁっ!!あっつぁ、ぁぁ……!」

 

小さくしっとりとしたナニかを自身の逸物が掻き分けていく感触だけは伝わってくる。

しかし目の前にはもう一人の姉の秘部が広がっているので様子を伺うことは出来ない。

 

「ほらぁっ、んふぅ……あっちばかりに気をとらてないで、あっ……こっちにもしっかり奉仕なさいぃ……んふあぁっ……!あぁ、あっ、はぁんぅ……そう、いいわぁ……あはぁっ!じ、ょうずよぉ……はあぁぁあっ……」

 

両手で上姉様の太ももを押さえて後は湿っている桃色のビラビラをほぐすように舌でマッサージする、プルプルした感触と水気が心地よい。

 

「んんっ!もうっ、あっ、お、きくてぇっ……あぁっ!ひあぁっ!……あうぁぁ、腰ういちゃあぁっ……はっ……やぁっ!あんっ!」

 

肉棒も狭い膣内にグチュグチュと絞られる快感で大きく反応してしまう。

さらにエウリュアレの痴態を見る事は出来ず、喘ぎ声だけしか聞こえないが状況が余計に興奮を煽り立てる。

 

「くぅっ、あぁっ……舌がはいってきてぇっ……ああぁあ!あ、あぁ……はふぅぁあっ……ふぅ、あぁ!……はぁ……そんなに一生懸命飲んでぇ……んはぁぁ!…はしたないんだからぁ、もぉっ……あんぅ!やぁぁ……はあぁんっ……!」

 

自身の唇とお姉さんの女陰を重ね、舌を中へと滑り込ませる。

めいっぱい舌を膣内で暴れさせると愛汁がどんどん溢れてくるのでそれを音を立てながらジュルジュルと飲んであげると大きく反応してくれる、自分の奉仕で気持ちよくなってくれるのが無性に嬉しくなった。

 

「あぁ!だめぇ……!おしおきなのにぃ……はああぁんぅ!こっちが気持ちよくなっちゃうぅ……あぁっ!やぁぁ、やらぁ……ぁあぁっ!きもちいい顔になっちゃあぁ……あっ!あぁ!あぁぁっ…………!」

 

「んんぅっ!んはぁっ……はあぁぁっ!…あぁ!敏感なところぉ……はうぅっ!かむのぉ……や、めなさ、いぃ、あぁぁ!やああぁぁ……!い、くぅ……はぁんぅ……!」

 

熱い逸物が少女の膣壁によって扱かれるスピードがどんどん上がっていき、苦しむかのように震えている。

その快感に合わせて、もう一人の少女の硬く興奮した突起物を唇と歯で甘噛みし、3人一緒に絶頂へと促していく。

 

――――――やがて

 

「はあぁぁああっ―――!!!あぁ!やあぁっ……!でてるっ…弟にナカにいっぱいだされてるぅ!あんぅぅ……!!」

 

「くふぅぅっ…………!!んああぁぁっ!!あ、あぁ…はあぁっ……!はぁ、はぁ、ふぅぁぁ――……いっ、ちゃったわね……あぁんぅ……」

 

普段よりは小さくなっているアソコから放たれた精は十分にエウリュアレの奥まで満たし、そして口淫で盛大にイッたステンノは性器から潮を吹き、俺の顔を汚していった。

 

「ああぁっ……っぁ、もうっ……だしすぎよっ、ばかぁっ……うぅっ…ステンノ……私……ちょっと休憩するぅ……」

 

竿を引き抜き、アソコから白液を零しながら、エウリュアレはメドゥーサさんの方へ近づいていった。

あれ、休憩するんちゃうの?

 

「……はぁ…………下姉様?な……にをぉ……ああぁんっ!」

 

「何を?じゃないわよメドゥーサ。姉と弟の情事を見てこんなに服の上からでもわかるぐらい濡らしちゃって……本当にどうしてこんなにいやらしい妹になっちゃったのかしらね?」

 

抵抗できないメドゥーサさんのアソコを素足で踏みつけ、刺激するエウリュアレ。

それだけで縛り付けられている彼女にとっては十分な快感だったのか……嬌声をあげていた。

 

「あぁっ……だめぇ、ねえさまっ……あっ!そんな所ふまないでぇ!ぁぁっああ……!」

 

「なぁに、もう十分できあがってるじゃない……ふふっ、ご褒美をあげるわ……このままあの子達の痴態を見させてあげる」

 

足の裏をメドゥーサの秘部へ押し付けることを止めないエウリュアレを気にする事なく、ステンノはいつの間にか妹の愛液と精液で汚れたアソコを自身の女陰へ誘っていた……。

 

「んっ、んんっ……あっ、ぬるぬるしてるわね……ふぅあぁっ……!あんぅ!」

 

今度は私の番よと言わんばかりに先程のエウリュアレよりスムーズに中へ挿入させていくステンノ、つながった状態のまま、俺の顔へその耽美な顔へと近づけていく。

 

「あぁっ……私のでよごしてしまったのね……ふふふ……しかたないから……んはぁっ……ふきとってあげるわぁ……あんっ……特別よ……かんしゃしなさいっ……はぁっ…!あうっ!もう、おちつきない子がねぇ……はぁん……!」

 

上へと乗っかり、先程の愛液で濡れている顔をペロペロと舌で舐め回しているステンノの体は俺自身が子供の体になっている為、いつもよりは少し重く感じる。

しかし今はこの重さが無性に愛おしく想え、つい、ぎゅっと抱きしめてしまった。

 

「れろっ、ぺろっ、ちゅ……んあっ……ふふっ、甘えん坊な弟ね……あうっ!ちゅ、れろぉ……ぴちゃ……むちゅぅ、んんうぅ……!」

 

「んっ……ステンノお姉さん」

 

今まで見た事ないような…慈愛ある表情を浮かべた彼女に甘えるのが止められなくなっていく。

ウチの女神様こんなにバブみあったっけ?

 

「んふぁっ……!あっ、あっ……そん、なに……こしうごかしてぇ……はあぁ!ああぁ!ほらっ……もっと……あんっ!……ぎゅっとしても、いいのよぉ……あぁ、んあっ!はあぁぁぁんぅ……!」

 

頭の撫でてくる彼女の安心感と普段のギャップとが相乗して抱き締める力がどんどん大きくなって、肉蜜の中を掻き分ける速度もどんどん上がっていった。

いまは他の二人に見られているという事も頭からすり落ちていた。

 

「ステンノ、何だか母性に目覚めている気がするけど……気のせいよね?どう思うメドゥーサって、聞いてないわね……」

 

「あぁっ!ね、えさまあぁっ!……あしのゆびでぇ……やぁっ、クチュクチュしないでぇ……はぁ!だ、めぇっ……あうぅ!」

 

いつもとは違う顔をした彼女の顔を見つめ続けながら、このストロークも終わりを告げるときがきた。

 

「……あっ、もうっ……」

 

「いいわぁ……あ、あっ、んあぁ!……すきなだけ……だし、なさいっ!ああぁ!はぁっ……いっしょに……ふぁあぁっ!!イッてあげるか、らぁっ……!あぁ、あっ

ぅ、はぁっ……やああぁっ!」

 

3回目になっても衰える気配が無い、射精に我ながら呆れながらもステンノの子宮に入り口から自分の子種を刻み込んだ。

 

「あっああぁぁぁぁああっ―――――――……!!!ふぅあぁっ!あんぅぁ……っ!……お、くまでぇ……いっぱいになってぇ……いくのがぁっ!あうぅ!とまらなぁ…………はああぁっ!!」

 

 

 

しばらくステンノの息が整うのを待ち、互いに体を離した俺達は視線をそちらにやると、少し、呆れた目線のエウリュアレと股から汁が垂れてぐったりしているメドゥーサさんの姿が。

 

「すごく盛り上がってたわね、二人とも。というよりマスター?その小さい姿でもあれなの?精力無尽蔵ってやつなの……?おかげで興奮した駄妹がこの有様よ」

 

「無尽蔵じゃないよ、ショタ状態だといつもより無茶できないから多分、後一回ぐらいが限界」

 

「それでも後一回できるならちょうどいいわね、ほらっ愚妹顔をあげなさい……」

 

ステンノがペチペチとメドゥーサさんの頭を叩くとトロンとした顔があがった、現在発情中って感じっすね。

 

「あなたがちゃんとマスターにおねだりできたら、慈悲をあげるわ。

さっ、どうするかべきかわかるわよね?メドゥーサ?」

 

「あぁ……あっ、ますたぁ……のそれを……わたしのあそこに……」

 

「なに?‘それ‘、‘あそこ‘じゃあわからないわよ。ちゃんと言葉に出してくれないと、ねえ、ステンノ」

 

「そうね、エウリュアレ。素直になれない駄目な妹は放っておいてもう引き上げようかしら……」

 

ニヤニヤといつもの調子で縛られている大きいお姉さんをいじめる少女達。

散々焦らされていたメドゥーサさんはもう我慢がきかなかったのだろう……真っ赤にした顔で懇願した。

 

「んんん~~っっ……ますたぁーのショタちんちんをぉっ……!わたしのおまんこにっ……!ずぼずぼってぇ……グチュグチュってぇ……してぇ…くださぁひぃ!!」

 

「よく言えました、満点よメドゥーサ」

 

「そうね、満足したし、それじゃあ帰りましょうか……って冗談よ、メドゥーサもそんな世界の終わりみたいな顔をしないで……だからマスターもそんな目で見るのやめなさいっ!女神に対して可愛さで訴えかけても……甘やかさないわよ……わたしはっ……」

 

さっきいっぱい甘やかしてくれたと思うんですけど、ステンノお姉さん。

 

「な、に、か、いいたそうな顔ね」

 

「何でもないよステンノお姉様」

 

「あぁもうっ、本当に可愛くない弟ね……さっきのはただの気の迷いよ……えぇ……」

 

ステンノがぶつくさと文句を言っている内にエウリュアレがメドゥーサのボンテージの裾を捲り上げ、下着を引き裂きアソコを露出させたまま待機させていた。

 

「……な、縄は解いて、くれないのですね……」

 

「えぇ、あなたは動いちゃ駄目……あくまでも動くのはマスターの方よ、さっさと腰を浮かせなさい」

 

一応、木に縛られているのは腕とウエストだけで座りこんでいる状態なので縄を解かなくても問題は無いと言えば、無いが。

 

乱暴に胸元の部分もズリ下げられ、巨乳をさらけ出し……股を開き、拘束されているメドゥーサさんの姿はすごくアダルトチックですぐにアソコは臨戦態勢に入った。

 

これ以上焦らすのも可哀想なので、メドゥーサさんの腰を掴み、姉達に開かされている雌孔に逸物をグッと挿入した。

 

「ああああぁっああ!!はああぁっ……!!き、たぁぁっ!」

 

彼女の膣内はこれ以上なく濡れていたので乱暴に腰を動かしても問題はなさそうだった。

むしろ、より大きい快感をと求めている今のメドゥーサさんにはこれぐらいちょうどいいのかもしれない。

 

「ひぃあぁぁっ!いれただけで……イクのがぁっ……!!とまらなひぃぃっ……!!だめぇっ…………!!あああっっ!!はっっ!またぁっ、いってぇるぅ!ああぁっ!!あぁ!んはああぁっ……!!」

 

「あーあ、こんなに駄肉、揺らして悶えちゃうなんて……本当にみっともないわねメドゥーサ」

 

「でも良かった、愛する妹が気持ち良さそうで、私達も手伝ってあげるわ」

 

大きく揺らしている巨大な乳房にエウリュアレが吸い付き、強く揉みしだき、結合部のクリトリスをステンノがスイッチをいじるように捻りだす。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛ああぁぁぁぁっ!!ねえ……さ、まぁがたぁっ……うあぁっ!!そこつよくっ……んんんぅぅっ、いじっちゃぁ……やああぁっ……!!あんっ!!もうおかじぐなるぅ……あ゛あぁぁ!!」

 

「じゅるぅ、じゅるるるぅぅ……!ちゅぅっ……喜んでくれてうれしいわ……もっと噛んであげる」

 

「ええ、どんどん狂いなさいな……あんっ…!?…ちょっ、ますたー……はぁっ…!」

 

隣にいたステンノお姉さんの桜色の先端が良い位置にあったので顔を少し動かし、そちらに吸い付いた。

このコリコリとした感触を舌で遊ばせるのが非常にクセになる。

 

「あぁっ、んんぅ……!も、うっ……私は乳はでませんよっ……はあぁんぅ!ほんとうに……しょうが、ない子ねぇ、あっ……!」

 

口では悪態をつきながらも慈しむように俺の頭を抱え、胸におしつけてくるステンノお姉さん。

 

「……っはぁっ……あれかしら、ステンノの乳に母性でも感じてるのかしら?普通はメドゥーサのデカ乳の方に行くと思うんだけど……っていうか見た目は対して変わらないのにどうしてステンノの方ばっかりに甘えるのかしら!?なんか敗北感を感じるわっ!」

 

「あぁっ……っぁぁあ!!……あぁっ、ますたぁの……はぁんんぅ……ショタちんちんでぇ、ひいあぁぁっ!!おかされてえぇぇ……あああんんぅ!だ、めぇ……っ、はあああぁっ……も、う、だめぇっ!!」

 

木をギシギシと揺らし、限界が来てることを全身で表現しているメドゥーサさんに本日最後の精液を注ぎ込んだ。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁあぁっ―――――――――っっ……!!!はぁぁっ!あ…‥んぅ……!あっっ!!きもちいいぃ、すごくいいで、すぅ……あんぅ……っ……」

 

中だしされながら恍惚に満ちた顔でビクビクッと腰を痙攣させているメドゥーサさんはすごく幸せそうだった。

 

「あっ、もうっ……いつまで……す、ってるのよ、ますたー……あんぅ!」

 

あ、すんごい自然に吸い続けてた。精神年齢も下がっているのかもしれないわ、くはは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふぅっ、あの、そろそろ戻った方がいいのではDrロマンか、ダ・ヴィンチあたりがもう解毒薬を作っててもおかしくないでしょうし」

 

「そうね、妹の言う通りにあんまりマスターを行方知らずのままにしておくとカルデアが火の海になってもおかしなそうだし…いざというときはメドゥーサの騎兵の特攻(ステラフォーン)を使うしかないわね」

 

「あの下姉様?私の宝具は自爆宝具ではないですよ……?」

 

いや、さすがに火の海にはなってないでしょ……いくらあの娘達が少しやんちゃだからといってまさかそんな、ねぇ、フラグじゃないよね?

 

先に進む二人の後を追うと、ぎゅっと後ろから優しく抱き締められる。

 

「ねぇ、マスター」

 

「?」

 

「…………もし、あなたがずぅっとその幼い体のままだったら私達姉妹に混ぜてあげてもいいわ……まぁ島からは当然出してあげるつもりはないけど、って言ったら……本気にする?」

 

「ステンノお姉さん……」

 

「ふふふっ、冗談よ。私が人間を愛するわけないでしょ……ええ、嘘……よ。けど、あなたとの姉弟ごっこは少し楽しかったわ……それは本当……。

さぁ……いくわよ、マスター今日だけは私があなたの手を取ってあげるわ『ステンノお姉さん万歳』って感涙しなさい」

 

体が離れたので後ろを振り返るとそこにはいつも通りの男を手玉に取る女神様の姿しかなかった。

差し出された彼女の手を握る。

 

「すてんのおねえさん、ばんざぁい」

 

「心がこもってないわね、まぁいいわ……それも追々教育してあ、げ、る」

 

「わぁい、それは恐ろしいな」

 

今だけは生意気な弟でいてあげようと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




年上のお姉さんに限らずロリに甘えてもいいんじゃない?巨乳だけが母性の証ってわけじゃないんですよ。
女神様から感じるバブみっ!

今話はエウリュアレお姉ちゃんとステンノお姉さん回、本来はメドゥーサさんはずっと放置の予定でしたがちょっと可哀想になってきたので最後は混ぜてあげました。
他のキャラを差し置いて、再び出番をもぎ取るなんて、メドゥーサさんお姉ちゃん恐ろしい子!

キャラが増えた事で修羅場もすごく書きやすくなったよ!特にバーサーカーとかギャクパートだと使いやすいね!後、リリィとか!

このマスター、ショタ化したことで女性限定魅了スキルとか無自覚にバラ撒いている気がした。




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桃桜鬼~新選組淫乱~(沖田総司)

《ぐだぐだ鬼ヶ島イベ》

むかーし、むかーし……ある所に沖田おばあさんとぐだおじいさんがいました。

ぐだおじいさんは燃え盛る冬木の街に骨狩りへ。

沖田おばあさんは川へ洗濯しに行きました。

すると川から、どんぶらじゃ~どんぶらじゃ~と大きい髑髏が流れてきました。

「ん?ごほっ……!ごほっ!あぁ!またおじいさんの服に血をぶちまけてしまいました!
……ふむ、しかしこれはこれはで柄としてワンチャンありそうですね。
私の血が染み込んだ服を着るおじいさん……いいですね!ロマンスがありますよ!」

しかし、脳内スイーツの沖田おばあさんがそれに気づく事はありませんでした。

結局、二人は特に鬼に生活を脅かされることもなく、最後まで末永く暮らしましたとさ、めでたしめでたし。

≪ぐだぐだ鬼ヶ島イベ~完~≫

「茶番じゃあぁぁあ―――――――――っ!!」










沖田さんはかっこいいんだけど、割とポンコツな所がある感じも良いと思うわけよ。


自室のベッドで苦しそうに臥せているのは日本鯖系人気ランキング暫定1位ことスーパー天才美少女剣士沖田さん。

傍には腐れ縁のノッブが心配そうにこちらを見守っています。

この身を蝕む病、いくら今まで八面六臂の活躍をしてきた沖田さんでも年貢の納め時が来たようです……。

 

「ごほっ、ごほっ……!どうやら……私はここまでのようです……」

 

「何を弱気になっとるんじゃ!お主がこんな所でおっ死ぬタマか!」

 

「……ふぅっ、私が亡き後は……星5期間限定鯖の座はあなたに譲りましょう……」

 

「ええいっ!ふざけた事をぬかすな!どれだけ再臨しても姿が変わらんわしに何を期待しておるんじゃっ!」

 

「どうか……どうかっ、私が果たせなかったセルラン1位の夢をあなたにっ……!本能寺イベ中に現れては当てつけの如くセルラン1位を掻っ攫ったあのおっぱいタイツにどうか天誅をっ!!」

 

「うちのカルデアにはいないじゃろ……まぁ、マスターも死んだ目でぼやいておったがな『回せば、出る?そんなものは幻想だ……無理をした俺には相応しい結末だろう』とか何とか。そもそもアーチャーのわしじゃあ、どう足掻いても返り討ちされる未来しか見えないんじゃが……」

 

「マスターもマスターですよ!私という者がいるのにあんな退魔忍みたいな格好した女に現を抜かしてぇ……やっぱり和服よりタイツなんですかっ!?露出しないエロスなんですか!?夜はあんなに私の太ももに夢中になってくれるのに………ごっはあぁぁっっ!!!!」

 

「人斬りぃ――――――!?、興奮し過ぎじゃ!ギャクパートでなければドン引きするぐらいの血を吐いたぞ、お主!!」

 

「ごふっ!かはっ……!……ふふふっ、私の天命はここで尽きたようです、もし……次があるなら今度こそはちゃんと最後まで戦いたい……そしてマスターと幸せな家庭を築きたい」

 

「どさくさに紛れて、自分の欲望をオープンにしおったな…………諦めるではないわっ!目を開けんかい!」

 

「沖田は死すともマスターへの愛は死せず…………がくっ……」

 

「沖田ぁっ―――――――――!!!」

 

さらばです、皆さん、ノッブ……そして……マスター…………たとえこの肉体が朽ちても、心はあなたと共に――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「沖田が死んだ!この人でなし!」

 

おかゆを作り終え、戻ってきたら何か三文芝居が繰り広げられたでござるの巻。

沖田さんも目を瞑ったまま「うぅ――ん……う――ん……廃棄物(エンズ)漂流物(ドリフターズ)……一体何の話でしょうか?」って唸ってるし、行っちゃいけない世界行きそうになってますがな。

 

沖田に縋り付いてワンワン泣いている演技をかましてたノッブがこっちに気づき振り向いた。

切り替えがはやいねーウチの魔王様は。

 

「へいよーかるでらっくす、じゃな!マスター!」

 

「へいよーかるでらっくす、ノッブ。てか何してんの?」

 

「うむ、人斬りが死にかけておるので茶番で和ませてあげようと思ったんじゃが……まさか本当にくたばってしまうとはこの魔王の目を持ってしても見抜けなかったわ」

 

「…………はぁ、はぁ……勝手に殺さないでくれます?しょうもない芝居のせいで余計が具合が悪くなりましたよ。あ、マスター、すみません、わざわざ私の為に……」

 

目を覚ました沖田さんが上半身を起こす、少々赤い顔でノッブを睨んでいる格好はいつもの和服ではなく、桜色のプリティーなパジャマ。

 

「お主も途中からノリノリじゃったろうが、しかし病弱スキルのせいとはいえ、英霊が普通に風邪引いて寝込むとか大草原じゃぞ」

 

「あなたにはわからないでしょう……聖杯にすら『病弱を治したい?それスキルだから無理だわー、ごめんねーごめんねー』と拒否られた私の気持ちが!

まぁ、こうしてマスターに看病される役得もあるんでいいんですけどね。

確かに風邪引いて寝込む英霊なんて私しかいませんが…………だからこそっ!こうしてマスターに甲斐甲斐しく世話を焼かれるのも私しかいないっ!という事なんです!どうですっ!織田信長!羨ましいでしょ…………ごっふうぅ―――っっ!!」

 

沖田さ―――ん!?何か熱で思考回路が焼き尽くされていませんか!?

 

「テンションがおかしな方向に行っていつも以上にぐだぐだになっとるのぅ……さて、わしはそろそろお(いとま)するかの」

 

「あれ、帰るの、ノッブ?」

 

「は?これからそなたと人斬りが看病とかこつけてイチャイチャするのを隣で見てろって言うのか?馬鹿なの?死ぬの?

どうせ、最後は発情しきったこいつが『マスターのぶっとい注射で沖田さんのここ治療してくださぁい……』とか迫って二人は幸せなセックスをして終了とかいうオチじゃろ?魔王は何でも知ってるぞ」

 

「吐きませんよ!?そんな台詞!」

 

「まっ!わしは出来る女だから余裕を見せるのも一興じゃしのう!マスターと新婚プレイをした魔王様はこれぐらいじゃうろたえないのじゃ!てなわけでぐっばいかるでらっくすじゃ!」

 

ぐっばいかるでらっくす。

そのままノッブは沖田の部屋から出ていてしまった、結局看病は終始俺がやってただけだったな……あの娘ったら徹頭徹尾冷やかしだったし。

 

「とりあえずはご飯を食べんと沖田さん、ほら口開けて」

 

「つーん」

 

えー?なんでほっぺ膨らましてそっぽ向くんですかー?しかも口で‘つーん‘なんて言う娘初めて見ましたよ。

 

「……ずるいです」

 

「え?」

 

「ノッブとばかりイチャコラしてずるいと言っているんですっ、私だってマスターと新婚プレイとかしたいです!裸エプロンとかで!」

 

俺がいなかった間もノッブに散々煽られていたんだろうなぁ。

まぁ、新婚プレイ=裸エプロンってあたり非常に知識が偏っている気がするが。

 

「……おかゆ、食べさせてください…………口移しで」

 

「あい、わかった、ちょっと冷ますね……ってどうしたのさその顔」

 

「……むぅ、いえ……こう、少しぐらい照れを見せてくれるかなーと期待していたんですが」

 

ほんの少し、不満気な沖田さんの表情……いやだって今更口移しぐらいで照れるような性活は送ってないですよ?

あれどこからか「モゲろ」との声が聞こえるな。

 

レンゲにのせたおかゆをフーフーして冷まし、口に含ませ、「もしかして私、二番煎じ……?」とブツブツ呟く沖田さんの唇に顔を寄せる。

 

風邪のせいかいつもより熱さを感じさせる唇を合わせると、あちらも素直に口を開いてくれたので舌を使い、ゆっくりとおかゆを送り込んでいく。

 

「んっ、んちゅ……ちゅるっ、じゅ……じゅるっ……んくっ、こくっ、はぁ……あっ」

 

しっかりと飲み込んだのを確認したら、ちゅぱぁっと厭らしい音を立てながらも一度口を離す。

キスがまだまだ物足りないという表情をしている彼女だったが、俺が再びおかゆを口に入れるとパァッと笑顔を浮かべてくる……うん、非常にわかりやすくて可愛らしい。

 

「あ、あ~ん……」

 

早く早くとばかりに口を開き、舌をべぇっと出している彼女に再び食べさせてあげる。

雛に餌をあげる親鳥の気持ちがほんの少しわかった気がした。

 

「んぅっ……ちゅるっ、んちゅぅ……じゅっ……じゅるぅ……はぁ、んんっ」

 

おかゆの熱さと彼女の熱とキスの熱さでどんどん舌を絡め合う激しさが増していた、おかゆをもらうだけでは満足出来ない沖田さんは舌を俺の口の中にまで挿し込み、歯茎や頬の裏を舐め回し、唾液を自分の舌を使い、送り込んでいるようだ。

 

「んちゅっ……!ちゅぅっ……んはぁっ!もっと……もっとぉ……んむぅ、じゅるっ……じゅるるぅ……!はぁっ、はぁっ……はぁむぅ……」

 

息を荒げながらも、どんどんこちらに体を預けてくる彼女は離さないと言わんばかりに俺の肩を両手で掴んでいた。

一応病人の筈が何というアグレッシブさ……。

 

「ちゅぅ、はぁ……んんぅ……ますたぁ、じゅるぅ……んちゅっ……ちゅぅ……ちゅぱぁっ……!?あぁっ……やぁっ」

 

こちらから唇を離すと捨てられ子犬のような目線で縋り付いて来る沖田さんだったが……俺としてもせっかく作ったおかゆが冷めるのも忍びないと考えていた。

 

「まだ量はあるからさ、これから何回も……焦らず……ね?」

 

「あ、は……はい」

 

照れたように微笑む彼女と再びキスではなく、おかゆを食べさせてあげた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちゅぅ……ちゅるぅ、じゅるぅ……んちゅ…………ちゅぅ……ちゅぱぁっ、はぁっ、はぁっ……全部食べ終わっちゃいましたね……」

 

「あぁ、御馳走様でした」

 

「……えぇ、お粗末様でした」

 

あれからお椀の中身が無くなるまで複数回に分け、何度も彼女に食べさせた。

食べ終わった後も上気している表情の彼女は風邪ではなく間違いなく性的興奮で息を荒げているように見える。

 

「あの、マスター、さっきから暑くて……汗がひどいんです……よろしければ、拭いてもらってもいいでしょうか……?」

 

パジャマのボタンを外し、胸のさらしをシュルシュルと脱ぎ、上半身裸になった彼女はそう頼んできた。

 

「自分で拭く元気はない?」

 

「…………はい、な、ないです」

 

「そっかー、じゃあ仕方ないかー」

 

お互い白々しい会話を挟みながらも傍らに置いていた洗面器にかけていたタオルを少し濡らし、胸を手で隠している沖田さんの背中に近づき、拭いていく。

 

「んふっ……」

 

「っと、大丈夫?」

 

「は、はい……少し冷たくて、驚いただけだったので……そのまま続けて下さい」

 

言われるがまま彼女の背中をタオルで拭っていく、確かに汗は浮かんでいたが、傷一つない火照った美肌が無防備に曝け出されると妙なエロスを感じる、下手に全裸を見せているんじゃなくて、背中だけを見せてるというのが逆に良いのかもしれない。

小出しにしていくエロスタイル!……病人相手に何を言っているんでしょうか俺は……いや、今更か。

 

「それにしても綺麗な背中してるよね、沖田さん」

 

「んっ、あっ、はい……背中の傷は剣士の恥じですから……はぅ……んふぅっ……はぁぁんっ」

 

どこの大剣豪だお前は。

 

腰のあたりからうなじにかけて丁寧に拭いてあげる、特にうなじの所は敏感なのか小さくながらも体が震えているようだった。

 

「はい、じゃあ手上げて」

 

「わ、わかりました……」

 

バンザイをさせて、腕回りもとそして腋の所もしっかりと汗を拭いていく。

何かを噛み締めるように息を深く吐いていく彼女の反応もしっかり堪能しながらも。

 

「はぁー……んはぁ、あぅ……あの……マスター……前の方もお願いしていいでしょうか?」

 

「俺がやってもいいの?」

 

「…………んっ、お願いします……」

 

こっちに振り返り、懇願する彼女の表情はとても病人が出す色気だとは思えなかった。

 

彼女の真正面にまわることなく、そのまま背後から手を回してひとまず、おへそ当たりから拭いてあげることにした。手は当然バンザイさせたままなので俺からは見えないが彼女の表側は何も隠すものはない。

 

「んぅ……はぁ、あっ、あぁ……はぁっ……ふぁぁ……」

 

喘ぎ声なのか、ただの吐息なのかわからないが、沖田さんから漏れる声を耳に入れながら、腹のあたり、鎖骨の部分と意図的にギリギリ胸の部分は触れないように拭いていった。

そしてじれったくなった彼女がこちらに声を掛けるタイミングで……。

 

「はぁ、はぁ、あのぉ……ますたぁー…………ひぃやあぁっ!」

 

布越しからその二つの球体を拭くというよりはむしろ揉んでいるという表現の方が正しいのかもしれない。

直接でなくてもその柔らかさと感触はしっかり伝わってくる。

特にタオルをこすっていると硬い豆のようなものがある事もわかるのでね。

 

あれれー体を拭いてあげているだけなのに興奮しているのかー、いけない娘やわーと自分を棚にあげながら奉仕してあげた。

 

「あんっ!ま、ますたー……そ、んなぁっ、はぁっ!いやらしいさわりかたぁっ……!んんうぅ……あぁぁっ!」

 

ちゃんと余す事なく拭かないとねーと考えた俺はベッドにあがり彼女のパジャマの下の方にも手をかけ、脱がしていった。

 

「んぅ、はぁっ……だ、だめですよぉ……ますたぁ……」

 

嫌よ嫌よも好きのうちというか、だめと言いながらも一切抵抗する気がない沖田さん。

喜色に満ちた表情で言われても反応に困るぜよ。

 

脱がされながらもぴとっと華奢な上半身を俺に預けてくる彼女の温かさに心地よさを覚えながらもズボンの方を脱がせると真っ白ふんどしが現れた。

さっきのさらしといい、可愛いパジャマの下に随分古風な下着だなーとちょっとギャップを感じつつ、そちらはまだ脱がすような事はしないで、足の先からから拭いてあげていく。

 

「うぅ……はずかしいです、よぉ……あうぅ、はぁ……」

 

恥ずかしがっている割には俺の手から目線を外そうとしない沖田さんに苦笑しながらも太ももまで拭い終わったら、彼女をうつ伏せにさせ……。

 

「あうっ……」

 

今度はお尻の方を拭いていく。

うん、お尻だけ見るとふんどしの白い部分が割れ目に食い込んでいるのでちょっとエッチやね、これは……Tバックと変わらないんちゃうか?

 

「あぁ、はっ……んふぅ……あんまりまじまじと見ないでくださいぃ……」

 

「んっと、ごめんごめん、それじゃあ脱がすよ」

 

「え?あのマスター……あっ!」

 

ほら、下着あったら拭きづらいでしょ?

結び目を手際よく解き、あっという間にふんどしを脱ぎ取ると目の前にはありのまま沖田さんのお尻が。

 

「相変わらず、女性の服を脱がすのは本当に早いですね……マスターは……」

 

「訓練の賜物です」

 

「………………何の訓練かは聞かないでおきましょう……私の精神衛生上」

 

沖田さんのジト目に心が痛むのでそれを癒そうと餅のように弾力のある臀部をタオル越しにふにふにと揉んでいく。

おぉー、やわっこい。

 

「はぅっ!あっ、ああんぅ……も、もうマスター……はぁっ!ちゃんとふいてください……んふぅっ!」

 

了解しましたよーと表面の方だけではなく、割れ目の方もきちんと手を差し込みスライドさせるように拭いていく。

タオルを動かす度に腰がビクッビクッと動いていっていますね、隅々まで綺麗にさせていただきますよ。

 

「んくぅっ、はぁっ……しゅっしゅっするの……あんぅ!だ、めぇ……はぁんぅ!」

 

「それじゃあ、股の方も拭くからね、沖田さん」

 

「あっ、えっ……マスター……まって、そこはだめぇっ……やあぁんぅっ!」

 

彼女はベッドへうつ伏せになっているので下に手を挟み込む形で股の間を拭いていく……上下にシュッシュッっと。

 

「困ったね、拭いても拭いても、全然ぬぐえないな……どうしようか」

 

「はぁぅ!あぁっ!こするのを……やめぇ……あぁんぅ!どんどんあふれちゃう……か、らぁ……ああぁんっ……!」

 

やめてと言う割りには自分から腰を動かしてしまっているあたり、彼女も中々にスケベやなーと思いながら他の体は大体拭き終わったので悪戯もここまでにしておく。

 

「んふぅ、あぁんっ……あ、あれ……お、終わりですか……?」

 

「うん、汗は拭き終わったよ、お疲れ様沖田さん」

 

お預けされたような雰囲気の沖田さん、やっぱり最初っから期待してたな、このエロっ娘め。

ならばその期待に応えてあげなければなるまいて。

 

「それじゃあ、次はお薬の時間かな」

 

「……はい、わかりました」

 

「体はそのままでいいよ、いやお尻をこっちに向けてちょっと上げてくれればいいかな」

 

「?」

 

疑問に思いつつも俺に言われるがまま、お尻を高く上げ所謂メス犬ポーズになった彼女は俺が手に持っているものを見ると、途端に顔色が変わった。

 

「あ、あのマスター…………も、もしかして……それは」

 

「座薬です」

 

にっこりと笑顔で答えてあげる、

 

「う、う~んと飲み薬でもいいんじゃないですかねって沖田さん的には思うんですけど……」

 

「座薬の方が効果は早いからね、俺は早く沖田さんに元気になってもらいたいんだ」

 

「そんなイイ笑顔で言われても困りますよ……」

 

「効き目は保障するから」

 

「むむむ……わかりました……で、では出来る限り、パパッと済ませてくれると助かります」

 

覚悟を決め、目を瞑り、受け入れることにした沖田さん。

俺は彼女の菊門の所へそっと指をあてる。

 

「ひうっ!」

 

「力抜いて、沖田さん」

 

普段、情事の時でさえ触らないような場所なので、指で触れただけでも彼女にとっては未知の感触なのだろう。

 

そしてゆっくりと座薬の先端を尻穴から挿れこんでいく。

 

「んんぅっ~~~……!!」

 

座薬の全てが入っても、溶けきって腸に入り込むまでは指を離すと薬が戻って出てきてしまう可能性があるので

それまで俺も指を抜くわけにはいかない。

しかし、あれだね、やっぱりこっちは膣の方とは微妙に違う感触だなー。

 

「んぅ~~~……ふぅー……ふぅー……」

 

ふむ……くいっと。

 

「ひんっ!」

 

ちょいちょっと。

 

「ひゃぁっ!あんぅっ!……ま、ますたー……その……ゆびを」

 

「すまない沖田さん、座薬がちゃんと奥に入り込むまではこの指を抜くわけにはいかないんだ」

 

「な、ならせめて動かすのを……あぅっ!やめてぇぇ!……あうぁっ…!」

 

人差し指を折り曲げる度に楽器のようにビクつきながら喘ぎ声をあげてしまっている彼女を見てしまうとついつい指が動いてしまう、

しかし沖田さん実はこっちも弱かったのかにゃー

 

「あっ!んっ!……ひっ!やぁっ!お、おしりで……はぁっ!いくっ!いっちゃ!……あんぅっ!おあああぁっ!!」

 

最初は1回ずつ適度に曲げてただけだったんが……気づけば彼女の肛門の中で連続で折り曲げていた。

抜こうと思ってもぎゅっと締め付けてくるんでこれは一度イカせた方がいいのかもしれないと考え、一気にペースを速める事にした。

 

「あああああぁぁぁっ!!あっ――――――……!!はっ、はぁっ……おぉ……っぁぁ……」

 

そして沖田さんは性器の方からも潮を吹きながら、達してしまい……俺も締め付ける力が弱まったのを見計らい……指を抜いてあげた。

 

「薬はしっかり入ったよ、よく頑張ったね」

 

「はぁ、あぁ……はぁ、はぁ……病人相手に……座薬プレイとか業が深いですよ……鬼畜マスターとお呼びしてもいいんじゃないんでしょうか」

 

起き上がる気力もないのか彼女は服従ポーズのまま小さく非難した。

いや、一回でやめたから、まだ優しい方な気がしますよ、一応病人相手ですし。

望むならば本当の鬼畜というのも見せてあげようか(ゲス顔)。

 

「沖田さんが色っぽく誘ってこなければ、普通の看病で済んだかもしれないし……まぁお相子って事で」

 

だっておかゆをアーンじゃなく口移しで食べさせてーなんて病人おる?

 

「…………それはつまり、私の色気に我慢できなかったという事でしょうか」

 

何やら嬉しそうな表情をしながら、体を起こし、全裸のままどんどん俺にしなだれかかっていく。

 

「ふふっ……ふふふふふふふふっ…………そうですかー、沖田さんの色気に我慢できませんでしたかー、いや参りましたねー風邪を引いててもマスターを惑わせてしまう自分のふぇろもんが罪深いですねー、どっかのロリ魔王なんて目じゃないですねーこれは――……うふふふふふふふふふ……」

 

ちょっとウザい絡み方であるが俺の胸板に顔を寄せてくる美少女剣士(笑)。

彼女の左手はズボン越しに膨らみをスリスリしているので次に彼女が何を求めてくるのは聞くまでもなかった。

 

「……あはぁっ……私、まだ具合が良くなりそうにないんでマスターのぶっとい注射で沖田さんのここを治療してくだ……」

 

「あっ」

 

さすがは付き合いが長いノッブ、ピンポイントで当たってましたよ。魔王の慧眼は伊達じゃねえや!

 

「り、リテイクでっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局その後、ノッブの予想通りになったことによる自己嫌悪で涙目の沖田さんを慰め、お互いに全裸の状態で向き合っている。

 

「いまさら何言ってんだコイツって思われるかもしれないけど、病人相手に襲いかかっているって俺もいよいよ見境が無くなってきたよね」

 

「本当にいまさらですね、それ。

うぅ~ん、けどほらマスターに抱かれると大概の問題は解決するって巷で評判ですし……悪い事では無いと思いますよ!」

 

「え、何それ初耳なんですけど」

 

ちょっとオーパーツ的な扱いなのかな?万能の願望機『精杯』みたいな?…………自分で言っててもこれはねぇなと思った。

 

「まぁ、そんなのとは関係無しには私はマスターに純粋に今愛して欲しいだけですけどね」

 

「あ、ちょっとキュンとした」

 

「ふふっ、それにこういう機会じゃないと中々マスターと二人っきりになる機会を狙うのは難しいですからね……沖田さんだけが生かせる役得という奴ですよ」

 

ベッドの上で押し倒されている彼女がそう微笑むので俺も掛け布団をかけ、ゆっくりと重なり合うことにした。

 

「布団をかけるのは少し、暑いんじゃないんですか」

 

「もうこうなった以上、一度グチョグチョになるまで汗かいた方がいいと思ったんで」

 

「もしかして激しくされちゃいます?」

 

「いや、今日は滅茶苦茶優しくするよ」

 

「どちらも大歓迎ですよ、マスター」

 

モゾモゾとベッドの中で抱き締め、キスをし合う二人。徐々に腰を近づけ、大事な所を交じあわせていく。

お互いにこういった情事の数はこなしているので、見ないでもすんなりと挿入することが出来た。

 

「んっ、ちゅっ……んんぅ!はぁっ!ますたぁのおおきいっのがぁ……ああぁっ!」

 

「沖田さんのナカ、すんごいヌルヌルだよ」

 

「あぁっ!だってあんなに体を好き勝手されたら……んふぅっ!しかたない……じゃないですかぁ……あぁんぅ……」

 

愛液と膣襞が俺の肉棒に絡みついてくる、これは乱暴に動いてもかまわないかもしれないが、今日はスローセックス風でいくと決めたのでここは我慢する。

 

「あはぁぁっ!お、くまで……はいったぁ……あぁっ……」

 

肉棒の全身が全て入りきったので、動きを止め、彼女の白髪を優しく撫でる。

目を細め、気持ち良さそうにされるがままだった沖田さんもじゃれつくように俺の耳を甘噛みしてきた。

 

「はぁむぅ、ちゅっ……んむぅ……」

 

うーん、アルトリア顔の娘達は皆、ワンコっぽいよなぁ……モーさんしかり、オルタしかり、リリィしかり……。

 

「……かぶっ!」

 

「いたたたたた、」

 

「今、他の女の事考えたでしょう?」

 

何故バレたし、女の勘という奴か?

 

「ごめんって沖田」

 

「ふぅっ……あっ!……やぁっ、もうっ、おっぱいさわって……はぁっ……ごまかそうとしてもだめですからねぇ……ああぁっ!」

 

平均よりは上ではあるが決して大きすぎというわけでもない丁度いいサイズである沖田のおっぱいを手で弄ぶ。

あぁーずっと触っていられますわ、これ。

 

依然として腰は特に動かしていないが彼女の体の気持ちよさでピクピクと逸物が動いてしまっている……その度に彼女が小さく震えているのを見ると、今二人は繋がりあっているんだなぁと実感がこみあげてくる。

 

「あぁっ、ぺろぉ……ちゅっ、んはうぁっ……んむぅ、れろっ……あっ……あんっ」

 

されるがままだった沖田も俺の首あたりをペロペロと舐め始め(やっぱりワンコじゃないか)。

胸板を指で弱く、擦りながら刺激してきた。

 

 

お互いに結合したまま、体を触り合い、イチャつきあっていたが頃合いを見て、俺がゆっくりと腰を動かすことにした。

 

腰を引き、少しずつ抜いていく。

 

「あぁっ、あっ!なかえぐれてぇ……はぁんぅ!」

 

そしてキリの良い所で今度は挿れていく。

 

「はあぁっ!またきたぁっ……ああぁ、あっ……やあぁっ!」

 

奥まで到着したら、再び腰を引き抜いていく。

 

「あんぅっ!……ふぅう、はぁっ!ゆっくりなのにぃ……きもちいい……ああぁ!」

 

そうやって何度も何度も遅いスピードでじっくりと竿の挿し入れを楽しむ事にした。

 

 

 

 

 

 

 

それから数をこなすと、ようやく俺も射精感がこみ上げてきた、まぁ先程から彼女も小さくイキッぱなしだったから丁度良かったのかもしれない。

 

「はぁっ!あぁ!んんぁ!これぇ……いいですぅ……はぁっ!あっ!はぁんぅ……!これぇ……すきですっ……あぁ!あっ!ああぁっ……!」

 

「沖田、そろそろ出すよ」

 

「ああぁ!な、なまえでよんでくださいぃ……んはぁっ……ますたぁっ!はぁっ、あっ……あんぅ!」

 

「総司、中に出すぞ」

 

「ひあぁっ……ああぁっ……はいっ、はいぃっ!すきなだけ……だして、あんぅ!たくさんだしてくださひぃ……ますたぁぁ……ますたぁぁっ!あっ!いくのがぁ……ああぁ!……とまらな……あんぅ!!」

 

名前で呼ぶと膣内がさらにキュッと絞ってきたので、それを皮切りに股間を押し付け、自分の精液を全て総司の子宮の中へ解き放った。

 

「ああああぁぁぁああっっ……!!はあぁうっ!!しきゅうからぁ、あふれちゃうぅ……はぁっ!あっ……!もうだめぇ……」

 

俺にしがみつき、自身の体を駆け巡る興奮を味わっている総司。

散々時間をかけた甲斐あっていつもより多めに射精した気がする。

 

「ん?」

 

体を大きく痙攣させた後、動かなくなった彼女に視線を移すと……。

 

「ぐぅ…………」

 

眠っておるがなこの娘……まぁ、体力の限界がきたみたいだし仕方ないか。

せっかくなんで今日はこのまま一緒に寝ますかな、よい抱き枕もあるし、ふかふかで気持ちいいなー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「沖田さん復活!沖田さん復活!沖田さん復活!ですよっマスター!!」

 

「やかましいわ、少しは静かにせんか人斬り」

 

その翌日、何と我がマイルームで元気ににはしゃぐ沖田さんの姿が。

 

「体はもう大丈夫みたいだね」

 

「はいっ!マスターにそれはもう濃厚な奴をたっぷり戴いたので完全回復しましたよ!」

 

「もしかしてそなたの精液はエリクサー的な万病薬だったりのう……婦長あたりが喜ぶかもしれんな……」

 

やめてくれ、下手に彼女の耳に入って解剖でもされたらどうするんですか。

しかも地味に今、ちょっと体の調子悪いんですから。

 

「そもそも何であなたがいるんですか?マスターの看病は私がするんでさっさとこの部屋からゲラッウトヒアして下さいよ」

 

「マスターに風邪を移した張本人が何をぬかすか」

 

「いや、俺の熱も7度ちょっとの微熱程度だし、そんな大騒ぎするような事でもないと思うんだけど……」

 

「駄目ですよ、マスター!そういう大丈夫だろうという油断が命取りになるんですから!えぇ……病弱のスペシャリストの私が言うのだから間違いありません!」

 

「まぁ、サーヴァントに風邪を移されてその程度で済んでいるお主も末恐ろしいがの……てか沖田、貴様……大方また主から風邪を移させて看病されればええなーとか思っておるんじゃないのか?えぇ?」

 

「は、はぁ?ななな何のことでしょうか?マスターの忠犬たる私がそんな不埒な事を考えているわけななないじゃないですか」

 

えーなに、その無限ループ看病プレイ……終わりのないのが本当の終わりだった?

 

「わかりやす過ぎるんじゃよ、貴様は。というわけでマスターの世話はわしにまかせて脳内ピンクセイバーはカルデアの見回りにでも行ってくるがいいぞ」

 

「あなたこそマスターに何するかわかったもんじゃないでしょう!一部の需要しかないロリ体型はお帰りになってください」

 

「いいもん!この体型でもマスターはすんごい愛してくれるもん!むしろこのカルデアなら貴様なんぞよりロリ体型の方がよっぽど希少価値あるし!」

 

「吐いた唾は飲めませんよ…………ここで決着をつけましょうか」

 

「うははっ……まだわかっておらんようじゃのう。わしと貴様にある絶望的なまでの格差という奴が……主にクラス相性的な意味で。いいじゃろうっ……表に出るがいいわ!」

 

これ以上暴れられても困るんでそろそろ仲裁に入ろうか。

 

「俺は二人に看病してもらいたいなー」

 

「うむ?もしかして3Pを希望か?やれやれ仕方ないのう……」

 

「いやん、マスターったらえっちなんですから、もうっ……」

 

「あ、今回はそういうの無しで普通に看病してください」

 

「…………是非もないネ」

「…………是非もないです」

 

お前等、本当は仲良いだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




<没ネタ>

沖田「パパ……もうすぐ私は死ぬんですね……」

ぐだ男「馬鹿な事を言うんじゃない……」

ノッブ「そうじゃぞ、今日は世界1位の人がお見舞いに来てくれるんじゃぞ」

沖田さん「嘘ですよっ!世界1位の人が来るわけないじゃないですか!」

―――ガラララッ

ヒロインX「いやぁー、今年は危うく3位になりかけましたが、今年も世界1位でしたよ」

沖田さん「本当に世界1位さんだっ!あの握手してもらってもいいですか……?」

ヒロインX「頑張るのだよ(笑)」

沖田さん「握手してくれるんですね」

ヒロインX「リリィ、私は去年は何位でしたか?」

リリィ「1位です」

ヒロインX「今年は何位ですか?」

リリィ「1位です」

ヒロインX「よしんば私が2位だったとしたら?」

リリィ「世界……1位です……」

ヒロインX(どやぁぁっ)

沖田さん「(うぜぇ……)あの、世界1位さん……私も世界1位になれますか……?」

ヒロインX「HAHAHAHAHAHAHA!!!」

沖田さん(イラッ)








FGO実装前はまさかここまでヒロイン力があるとは思ってなかった沖田さん。
最終再臨もエロスを感じます(マイルームボイスも好き)。
今回は病人とは思えないアグレッシブさでマスターとイチャコラしてました。

ちなみに最後は二人とも大人しく看病してましたよ、マスターに‘待て‘と言われた待つよい娘達ですから、うん本当だってば。

それにしれもこの二人はギャグが書きやすいネ、楽しかった(小並感)。

主人公に抱かれるとあらゆる病が治る可能性?なにそれ怖い。





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ドレイクマンション(フランシス・ドレイク)

———富・名声・力。
この世のすべてを手に入れた女、課金王ゴールド・リヨジャー
彼女の死に際に放った一言は、人々をガチャの沼へと駆り立てた。

「私の財宝か?欲しけりゃくれてやる。探せ!この世の全てをそこに置いてきた!」

マスター達はグランドマスターを目指し、夢を追い続ける。

世はまさに、大課金時代!




「ありったけの石を~♪かき集め~♪」

 

探し物があっても聖晶石が無ければ見つからないこの世の無常さを嘆きつつも船に乗ってゆ~らゆら……快晴も快晴、今日はいい天気ですね。

眼前には無限に広がる青い海…海はいいね、荒んだ心も洗われていくさ。

サバ王に俺はなる!

 

「歌まで歌って随分ご機嫌じゃないか、マスター」

 

「海と船は男のロマンだし」

 

船首でドヤ顔をかましているとジョッキを片手にドレイクの姐さんが声をかけてきた。

まぁ、いうても今この船には二人しかいないんすけどね、こんな昼間から飲んどるとは自由でいいねー船長は

 

「その麦わら帽子もロマンってやつかい?」

 

「海賊といったらこれでしょ!どう?似合う?」

 

「いや、似合うけど、あんまり海賊らしくはないね、

どっちかというと釣り人?休みの日の海岸にいそうな」

 

あらそうですか。

とりあえずこの帽子はしまっちゃいましょうかー、海賊オーラがまだ足りなかったか……。

 

「うーん、右腕にサイコガンとかつければ良かったかな?キャプテン・テスラに頼もうかしら……」

 

「アンタの中の海賊像がどうなってんのか気になるけど……、外見なんか気にする必要ないさ、前にも言ったけどアンタは間違いなく海賊の素質がある。このアタシが断言してやるよ!」

 

豪快に笑いながら、肩に手をかけてくるドレイク船長。

OPPAIが顔に当たって苦しい……役得ではあるが。

 

「むぐぐ……っはぁ、ドレイクにそう言われると自信がつくよ」

 

「だってアンタ、カルデア(ウチ)財宝(女共)を根こそぎ奪って好き放題してるじゃないかい、十分悪党の才能はあるよっ!ははは!」

 

「ぐえっ、……それに関しては異議を申し立てたい」

 

「違うのかい?」

 

「合意は得ているのでセーフ!無理矢理じゃないもん!」

 

俺は皆を幸せにしたいだけなんだ!

とどこかで聞いたことあるような台詞を思い浮かべながらも自己弁護をする。

 

「だからこそだよ、数多の英霊共の心を掻っ攫ってんだ。くくっ、海賊としてその手腕は惚れ惚れするよマスター」

 

いや、愛されているのは非常に嬉しいし、男冥利につきますよ?

まぁ狙ってたわけじゃなく、好き勝手やってたらいつの間にかこうなってたみたいな?

うん……改めて考えてみても鬼畜外道ですわ

 

「それにアタシみたいなゲテモノにも手を出すんだからね、本当節操のないマスターだよ」

 

その言い草はよろしくないね。

 

「むっ……俺は好みにはうるさいから何にでも手を出すわけじゃないよ、ドレイクはいい女だし、ゲテモノなんかじゃないし、すごくおいしかったもん」

 

好きなものにしか手は出しませんよ、ただその手の範囲が他の人よりちょっとだけ広いだけで。

 

「ふ、ふ――ん……そうかい、そうかい……アンタがそう言うならそういう事にしておこうかね」

 

ほら、たまーにこうやって照れるのとかめっちゃかわいいやん。

 

「そらっ!無駄話をしている間に島が見えたよ!」

 

話をそらすように声を上げる船長の指先には確かに島が見えた。

 

「前も来たんだよね、あの島には?」

 

「あぁ、いかにもっていう廃墟とお宝の気配がプンプンしたんで入ってみたはいいものの、おかしな扉の前で途方に暮れちまってね。銃をぶっ放しても、大砲をぶっ放してもピクリともしないし、あげくの果てには……

いきなり『独り身には用はなし、自分が最も信頼できる男を連れてこい』だとなんだのワケわかんないこと抜かしてくる……ゆ、幽霊が出てくるわ…………」

 

幽霊の所で声が震えていたので少し気になった。

 

「もしかして怖くて逃げてきちゃった感じ?」

 

「………………」

 

「船長?」

 

「あぁ、そうだよ!悪いかい!?

ゴーストだろうが鉛玉が効くならビビるつもりはないさ!

けどね、あんの野郎……いくら撃ち込んでもすり抜けるわ、何をするわけでもなく、こっちをじっと見続けるわ……あぁっもうっ!今思い出しても気味が悪い!」

 

相変わらず、物理法則が効かない幽霊は苦手みたいっすね。

この間も呪〇とかDVDで見せたら「きゃぁぁぁっ!!」とか生娘みたいな悲鳴あげてテレビが風穴だらけにされたしな……。

うん、今度レオニダス王と一緒にホラー映画視聴会でもやろうかな?

 

「それで今回は俺と二人でリベンジマッチというわけか」

 

「あぁ……どちらにせよ、あの扉は確かにアタシ一人では開かないだろうしね

決して一人だと行く気が起きないわけじゃないよ、いいね?」

 

「イエス、マム」

 

そんなに凄まれるとはいしか言えないです。

やがて島に到着し、錨を下ろし、船を停泊させ、上陸していく。

 

二人で島の奥まで進んでいく。

彼女が言っていた廃墟とやらに着くまではまだ時間がかかりそうなので、もう少し雑談を挟もうか。

 

「ちなみにここに一人で来るのと、エリちゃんのお歌を聴くのどっちが嫌?」

 

ふと気になったので究極の2択ともいえるクエスチョンを投げかける。

 

「じ、地獄のような質問をするね、アンタ……」

 

こっちを振り向いた船長はウゲェーと心底イヤそうな顔をしながらも答えてくれた。

 

「……はぁ、それなら、まだこの島に来るのを選ぶよ……あの竜娘の歌は……いや、アタシはあれを歌とは認めない、認めたら歌そのものの冒涜だからね。

アタシも生前、そりゃあ色んな冒険をしたから大変な目にも当然あってきたさ……けどあいつの(咆哮)を聞いちまったらその全てが大したことないように感じちまったよ

あぁ、多分地獄を見るってのはああいう事を言うんだろうね……」

 

エリちゃん涙目間違い無しの辛辣すぎる評価。

遠い目をして初めてエリちゃんの歌を聞いたことを想い返すドレイク。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あら、あなたが最近この事務所(カルデア)に入ってきたアイドル?』

 

『おかしな言い方をするねぇ、あんた……。

生憎アイドルなんて柄じゃないよ、まぁここ(カルデア)ではあんたの後輩にあたるだろうけどね。しっかし、ここは何でもあるねー、随分と豪勢な舞台じゃないか』

 

『ふふんっ、LIVE会場ってやつよ、子イヌったらカルデアは楽しみが少ないからってここにいる職員共と一緒に娯楽施設つくっちゃうんだから。

今あるものに満足しない、自分のやりたい事に手を伸ばし続けるマスターの姿勢はやっぱりいいいわね。

私も負けてられないから宇宙一のアイドル目指して歌の練習をしてるわけだしっ』

 

『へー、あんた歌えるクチかい。

いいねぇ、なら一曲披露してもらってもいいかい?』

 

『ファンに請われちゃ、仕方ないわね!

いいわ!秘蔵の一曲を披露してあげる!

聴きなさい!!《お願い!死んでレラ》』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エリちゃんからの応答で大至急駆けつけてみれば、泡を吹いて気絶しているドレイク船長とワンワン泣いているエリちゃんの姿というカオスっぷり。

 

『……ぐすっ、プロデューサー!!私やっぱり駄目よ!まるで成長してないわ!

やっぱり、あなたが前に言った通り私の歌は生命への冒涜だったわ!』

 

『エリちゃんっ……!』

 

『あなたに死んじゃうかってぐらいボロクソ言われて、とても特訓したわ!自信もあった!

けど…………その結果がこのザマよ!やっぱり私にアイドルなんて向いてないんだわ!

あぁっ!……アイドルとして大成できない私は地上の光が一切届かない暗い地下牢で閉じ込められて、子イヌに性的に虐められ続ける生活を一生送り続けるんだわっ!何て可哀想なエリザ!』

 

『そこで俺が出てくる事に関しては小一時間問い詰めたいが、それは後にしよう。

エリちゃん、君の歌を聞いたドレイク船長はどうなった?』

 

『……うぅっ、だから、あまりの音痴っぷりに気絶したんでしょ?』

 

『そう!歌にはうるさく、感受性の高いドレイクが君の歌を聞いて()()()()()()()()()()()

自信を持て!エリザ!君は確かに成長しているんだ!』

 

『私……うまくなってるの……?』

 

『あぁ!小さな一歩だが君は前に進んでいるんだ!そして今日、ここの経験を糧に君はまた成長できる!

失敗を恐れるな!エリザ!失敗は恥ではない!それで歩みを止めてしまうことが恥なんだ!

君にも見えるだろう?あのアイドルの星が!』

 

『えぇ、えぇっ!私にも見えるわっプロデューサー!』

 

『エリちゃん!!』ギュッ!

 

『プロデューサー!!』ギュッ!

 

おお、なんと美しい……。

抱き合うプロデューサーとアイドルの二人には言葉に出さなくても通じ合える確かな絆があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へー、アタシがぶっ倒れている横でそんな事してたのかい」

 

俺も良きメモリアルを想い返しているとドレイクの痛い視線が突き刺さる。

 

「いやほら、エリちゃんああ見えて繊細だからさフォローは大事よ。

それに上達してるのは事実だし」

 

「あれでかい!?」

 

「うん、全盛期(意味深)のエリちゃんならドレイク船長がバンッスウゥ……してもおかしくなかったからね」

 

召喚したのに仲間のお歌で座にカムバック!は笑えないじゃん?

 

「俄かには信じがたいけどねぇ……ん?まさかアンタ、あの音痴娘の特訓に今まで付き合ってきたのかい?」

 

今までというよりは現在進行形ですな。

 

「だって聞いてあげないと何が悪いかわからないじゃん?」

 

彼女の何が不幸って、あまりに下手糞過ぎて聴いてくれる人がいなかった点だと思う。

指摘してくれる人もアドバイスしてくれる人もいないんだから上達のしようがないでしょうよ。

 

「その一点だけでもマスターを一生尊敬できるよアタシは」

 

自分、プロデューサーですから。

もっと褒めてもいいのよ?

 

 

とまぁ、雑談を挟みつつ、森を抜けるとドレイクの言っていた通り確かに廃墟があった。

廃墟っていうにはそこまでボロボロって感じじゃなさそうだけど……いわくつきの屋敷って表現がしっくりくるな。

 

「さ、てと、前回は遅れを取ったが今回のアタシは一味違うよ!さぁ、行くよ!マスター!」

 

「俺が先でいいの?」

 

さっきまでは先導していたのにいつの間にか俺の背後にいるドレイクに声をかける。

本当に一味違ってる?大丈夫?前回の焼き直しにならない?

 

「…………こほん、さぁっ!いくよ!マスター!」

 

仕切り直して屋敷へ入っていくゴーストタイプが弱点な船長さん、腰が引けてまっせ

本当に大丈夫でござるかぁ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

屋敷の中へ入り、ドレイクが言っていた前回ビクともしなかった扉の前に到着。

その横には存在感が希薄な人影が……ってかモノホンの幽霊じゃないっすか。

 

『どウヤら、今度は一人で来ナカッタようだな』

 

「ヒッ……はっ!最初っから出てくるってわかってりゃあビビる必要も無いさね……ほれっ!さっさと扉を開けてもらおうかい!

どんな嵐だろうとアタシの航海は止めらんないよ!矢でも鉄砲でも何でも持ってきな!」

 

実に勇ましく、漢らしい啖呵の切り方、惚れ惚れするよ全く。

 

……俺の腕を死ぬ程、抱き締めてなければ、もう少し格好はついたのにね。

本日の2度目のOPPAI、すごく……柔らかいです。

 

『いイダロう……ならばこの扉の先を進ムガイイ、さすれば汝らが求める物が手に入ルダロウ……汝らに祝福アレ』

 

言いたい事は言ったのかそのまま消えた幽霊さん、格好的には裕福そうだったんでもしかするとここの主だったりね。

 

「扉は開いているね……よっし!!それじゃあ進むかい!」

 

お化けさんが消えた途端に息を吹き返したかのように元気になるね君は、まぁ、いつの調子に戻ったようで何より。

 

「……大丈夫?怖くない…?お化けなんかいないーさって歌ってあげるかい?」

 

「……子供(ガキ)じゃないんだから、いらないよ!」

 

さいですか。

 

とりあえず、開いた扉を抜けると長ーい……いかにもっていう廊下と立て札が一つ。

 

「立て札には何て書いてるの?」

 

「‘この廊下を抜けて、次の扉に行くまで恋人繋ぎで進まなければならない、一度でも手を離せば宝は二度と手に入らないものと知れ‘だとよ、何だいこりゃあ?」

 

「……ふむ、さっきの幽霊さんの言う事を聞いたら扉も開いたわけだし、ここは言う事を聞くのが吉だと俺は思うけど、そっちはどう?」

 

「あー、あの腐れ野郎の言う事を聞くのは心底気に食わないけど、私も同意だよ」

 

「根拠は?」

 

「海賊の勘」

 

それなら、OKだ。

彼女の左手を取り、指を絡める。

 

「これが恋人繋ぎって奴かい」

 

興味深そうに俺の指をニギニギするドレイク。

ただ手を繋ぐより幾ばくか照れるもんだけどねこれ。

 

「‘手を離せば‘って言ってんだから要するに離させるようなトラップがこの先わんさかあるって事だろ?

転がる鉄球か、迫りくる天井か、落とし穴か、壁から無数の棘か……わっかりやすいねぇ、上等だよ、アタシ達の相性ってやつを見せつけてやろうじゃないか!」

 

意気揚々と俺の手を引き、進んでいく……やだかっこいい……!

うん、トラップっていう点だけは俺も同意かにゃー。

けど、多分――

 

『…………アアァ』

 

「なんか、言ったかい?」

 

「何も言ってないよ、どうかした」

 

「いや、声が聞こえ」

 

『『『アアアァァァァッァァァッァアァアッァァァアァァァァッッ!!』』』

 

「ひゃああああぁぁぁっぁっ!!!??」

 

――――――ドンッ!ドンッ!ドドンッ!!

 

壁をすり抜けて出てきた無数の幽霊に悲鳴を上げながらも脊髄反射ばりに銃を正確に連射するドレイクはさすがというべきだろうが。

鉛玉は一切効果が無いみたいだけどネ!

 

「あぁ!クソッ!何で!何で当たらないのさぁ!」

 

『『『アアァァァウウウゥウウァゥアウァイゥアァゥァウ!!!』』』

 

「ひうっっ……!死んでからも人様に迷惑かけんじゃないよ!何様だい!アンタらは!クソ!

ああもうっ!来るなっ……来るな!!こっちに来るんじゃないよ!!」

 

迫りくる亡者にトリガーハッピーなドレイクちゃん…こんな狭い所で撃ち続けると跳弾が怖いのでそろそろ止めるかな。

 

「落ち着いてドレイク、こっちから触れられないなら多分あっちからも触れられないだろうし……放っておいても大して害は無いと思うよ」

 

「害は!今!アタシにある!」

 

「気持ちはわかるがここはスルーしようよ、ちょっとしたお化け屋敷と思えばいいんだから」

 

「…………フぅ―――、ふぅ――……あぁ、わかった、頭は冷えたよ。

成程ね、アタシがこういう方面で弱いからこんなやり方で来てるわけね」

 

悲鳴も収まり、落ち着きを見せた彼女の姿を見て、さっきまで呻いていた幽霊達も大人しく引いていった。

一度驚かしたら、ちゃんと退散するって本当にお化け屋敷のスタッフさんみたいだね、いい仕事しましたよ、繋いでいる手からすんごい冷や汗かいてるし、めっちゃ震えてるもん。

この姐さんすごく可愛い。

 

「いいさ……驚かすしか脳が無いならビビッてもあいつら喜ばすだけみたいだしね。

特にこっちに触れられないなら無視すればいい話じゃないか、さっきは一度目だからビビッたけど、前もって出てくるってわかってればもう何されようが一切反応はしないよアタシは!」

 

デジャヴ&フラグ建築乙。

……?あぁ、俺が先に先導しろと。了解、了解。

 

さっきとは正反対に今度は俺が先に進む形で仄暗い廊下を二人で歩いていく。

 

「……ふぅ……マスターなんか歌でも歌って……」

 

『『『アアアアウウウウウウウァァッァッァァァァッァァァ!!!』』』

 

「にゃあああああああっっ!!??」

 

今度は床からいらっしゃいしたようですね、バリエーション豊富で何より。

 

「無理っ!もう無理っ!」

 

こんな所にいれるか!俺は先に行くぜ!といわんばかりに走り出しそうなドレイクの手を強く引き、彼女の顔を胸元で隠すように抱き締める。

 

「手、離しちゃったらお宝は手に入らないでしょ。

怖いなら見なければいいんだから、こうすれば安心じゃない?」

 

「むぐぅ……」

 

よっぽど悔しいのかキッと幽霊の方を睨み付けるが、やっぱり怖いんで俺の胸元に顔をうずめるドレイクさん。

今日の船長は小動物的な可愛さがあるでござる。めんこい、めんこい。

 

「……わかった、あんたに任せる」

 

手は当然、ギュッとしたままで彼女をハグしたまま進んでいく。

非常に歩きづらいがおっぱいの柔らかさが役得過ぎるので特に問題なし。

 

顔は完全に俺の体ガードされているので視界には入ってはいないものの。

幽霊の呻き声が聞こえる度に「ひぅっ!」とビクッとしてるので恐怖は未だに継続中の模様。

万力の如く手がガッツリ握られてるからね……折れそう。

 

「……アンタは何ともないのかい」

 

「そうだね、確かに雰囲気はガチだし、モノホンの幽霊が出てくるのは怖いけど。

こう隣で凄く怖がってる人がいると逆に冷静になる……みたいな?」

 

「……今回の事、誰にも言うんじゃないよ」

 

「もし言ったら?」

 

「鮫の餌にする」

 

「おー怖い、まぁ誰にも言うつもりはないから安心してよ」

 

脳内のメモリアルには一生保存しておくけど。

 

 

 

そんなこんなで出てくる出てくるお化けにビクつくドレイクちゃんをあやしながらも目的地と思われる扉の前まで到着

 

「着いたよ、船長」

 

「…………本当にもう出てこない?」

 

「もういないよ」

 

「本当に本当に?」

 

だから大丈夫だっちゅうの。

胸元を離し、彼女に扉を見せる、心底安心したようで深く息を吐いていた。

 

「はぁ―――……今日は醜態ばっかで厄日だよ全く、で?この扉もどうせ何かしないと開かないんだろ?」

 

「その通りでございます」

 

例によって扉の横には立て札があり、『互いの好きな所を5つ以上述べよ、さすればこの扉は開かれる』

 

「また妙ちきりんな条件つけやがって……さっきと比べれば全然楽でいいけどね。

じゃあ、アタシからいくよ」

 

自分から言う分には恥ずかしがるような性格でもないよね。

 

「アタシの働きにしっかりと報酬を支払ってくれる所、

何も考えてないように見えて、采配はキレキッレな所、

自分の欲望には素直でやりたい事をやってる所、

酒も最後まで付き合ってくれる所、

夜のアレがうまくて、すんげえ気持ちいい所……これでどうよ!」

 

ドヤ顔を見せつけられたので、俺もお返しとばかりに褒め返す。

 

「報酬以上の働きをいつもしてくれる所、

適当に見えて、実は視野が広く色々と考えてくれる所、

何にも囚われる事のない自由な性格な所、

酒で飲み過ぎた時、甘えて膝枕をせがんでくる所、

幽霊が苦手な女の子らしい所、

情事の時は普段想像できないようなあられもない姿を見せてくれる所、

最近、フリフリな下着をつけてくれる所、

実はヤる時はキスからしないと少し機嫌が悪くなる所、

可愛いのにそれを言ってもあんまり本気では受け止めてくれない所、

それを交わりながら囁きつづけると顔を真っ赤にして照れてくれる所、

あぁ、後、胸のさきっぽを……」

 

「お、おいっ!もういいから馬鹿マスター!もう扉開いたから!……そ、それ以上言わなくてもいいから!!」

 

ドアを開け、頬を染めながら乱暴に俺の手を引っ張っていくドレイク。

えぇ、まだまだ褒め足りない……ワシの褒め殺しは百八式まであるぞ!

 

 

 

 

 

扉の先はどうやら寝室のようだった。

廃墟とは思えない程、そこは綺麗で豪華だった……天蓋付きのタブルベッド、もしかするとここの屋敷には夫婦がいたのかもしれない。

 

ドレイクは部屋の奥にあった大きめの宝箱に目をつける。

 

「……やっとここまで辿り着いたよ、さて、と……うん?開かないし、鍵穴も見当たらないね」

 

ふと見るとその宝箱にも今までの扉と同じように魔術的か霊的な封印がかかっているように見えた。

多分、また変な条件をクリアしないといけないパターンじゃないのかこれ?

宝箱に刻まれた文字を読むと……。

 

 

『セックスをすればこの箱の中身を授けよう』

 

 

「直接的過ぎんだろっ!」

 

ストレスが爆発したのか宝箱に向かって発砲するがビクともするわけがなく……成程、だからこの寝室に置いてあったんだろうなー、気配りが利いてるねぇ。

 

「くそっ、中身手に入れたらマジで燃やしてろうかココ……」

 

悪態をついているが、おそらく彼女自身も宝を手に入れるには何をすればいいのかはっきりと理解している筈だ。

 

「どうするドレイク?ここで帰る?」

 

「ここまで来て、何の成果も無しに帰るとか間抜けすぎるよ……はぁ、ったく」

 

珍しく煮え切らない様子なので彼女の手を引き、ベッドまで連れていく。

 

「……ちょっと、マスター……」

 

「外野から言われたからとかそんな理由関係無しで俺は出来れば四六時中……あなたとグチョグチョになるまで交わりたいと思ってる程度にはドレイクに劣情を抱いてるよ。そしてそれでお宝が手に入るなら俺は乗ってもいいと思ってる」

 

「劣情ってアンタねぇ……」

 

「っていうか今さら恥ずかしがるような仲でも無いと思うけど、今日はどうしたのさ」

 

あっ(察し)

もしかして、さっきまで散々に恥ずかしい様子を見られたから調子狂ってるのかな?

 

「あぁっ、素面じゃなけりゃよかったのに……」

 

あなた船で散々飲んでたじゃないですかー、やだー。

ともかく、目線を逸らして照れてるドレイクがいつもと違い、新鮮で非常にキュートだった。

よっしゃ、肩を掴んで言いたい事は言ってやろうじゃないか。

 

「うん、なんか今日のドレイクはいつも以上に可愛い」

 

「……おちょくるんじゃないよ。

あぁ!わかった、わかったよ!さっさと服脱ぐからそんな眼で見るんじゃないよ!

……今日のアタシはとんだピエロだよ……ったく」

 

トンと俺の体を押し、いつものゴテゴテの海賊服を手早く脱いでいく船長。

俺も脱衣しながら、彼女の様子を伺うと既に下着だけの姿になっていた。

 

「俺があげた下着ちゃんと着てくれてるんだね」

 

ピンク色のフリフリなショーツとブラジャー

この間、これをつけてヤリたいですって言ったことを覚えてくれてたみたい。

 

「……もらったもんは使わないと意味ないだろ……あぁもうっ、ニヤニヤすんじゃないよ!」

 

これは失礼。

だって、あんなに普段勇ましいドレイクが服の下にはこんな下着着けてるんですもの、頬が緩むのもしょうがないでしょ。

 

「脱がないで、今日はそれは着けたままでお願いします」

 

「はぁ……しょうがないねぇ」

 

呆れたようにため息をつく彼女をベッドへ押し倒し、事を始めようとする。

 

「ほら……じっと見てないで早く始めておくれ」

 

横たわっている彼女は桃色のブラジャーを張らせる程の巨乳、ショーツをより際立たせるお尻と絶妙なプロポーション、

そして、紅潮した表情に思わず言葉が漏れる。

 

「可愛い、ドレイクさん……マジで可愛い、語彙力が不足してしまうほど可愛い、可愛い」

 

「うぐっ……傷がついた女の顔によくまぁ臆面もなくそんな事を……」

 

「冗談じゃないよ、それも全部含めて可愛いと本気で思ってるんだから」

 

愛おしそうに彼女の顔に斜めに刻まれた傷痕を指先で撫でる。

くすぐったいのか、身をよじるだけで抵抗はしないようだ。

 

「んっ、んぅ……………………あっ」

 

徐々に顔を近づけると、不意に漏れたドレイクの女の声が興奮をより掻き立てる。

 

さっきまで撫でていた傷跡を今度は舌で上から下へとゆっくり舐る、唾液で上書きするかのように。

 

「あっ、んっ……やっ、そんな所舐めて何が楽しいってんだい……んっ、ちゅ」

 

口を開いた隙にそのまま彼女と唇を交わす。

舌を挿し込むといつも通り自然な形で絡めあってくれる。

眼がほんの少しトロンとしてるあたり、ディープなキスは好きなんでしょうね。

 

「んぅ、じゅぅ……ちゅ……ちゅるぅ、んはぁ、あっ……ちゅ、じゅるぅ……じゅるるぅっ!」

 

ドレイクと舌と唇を喰らいあっていると、酒の香りと芳香な女の香りが混ざりあった独特な匂いがする。

 

あぁこの匂いがドレイクのものだ……この匂いがより情交に対する熱をあげてくれる。

 

「んぅ、ちゅっ……じゅるっ……んはぁ……んむぅ、ちゅっ、んんぅ、んっ……ちゅ……ちゅるぅ、んあっ!」

 

唾液が零れるのも気にする事なくキスをし続けたが二人の体の間で潰れているたわわな果実に手を出さないわけにもいかないので、ブラジャー越しから、手に収まり切らない巨乳を楽しむ。

 

「あぁっ、はっ……あん……あんたは本当におっぱいが好きだねぇ……やあぁっ!」

 

「好きな人のおっぱいは皆好きだよ」

 

我ながら最低な事を言っている気がするがドレイクは「素直でよろしい」と笑っているので問題は無かったようだ。

 

ブラジャーを完全に脱がすような事はしないで中心部分を露出させるようにずり下ろす。

 

綺麗に整った乳首と乳輪が出てきた、右胸は手で弄びながら、左胸の方には自己主張している先端を舌でつつく。

 

「んぅ!あぁっ!……先っぽばっかりぃ……やめぇ、あぁ……んん!……あああぁぁっ!」

 

胸を揉み込んでいくのもいいのだが彼女は乳首を責めると面白いぐらいに乱れてくれるのでいつも俺はここを徹底的に虐め抜いていた。

 

指先で何度も弾き。

 

「くふぅ!ふぅああ……!あぁっ……!んっ、はっ……あんぅっ!……ああぁ!」

 

口内で転がしながら、胸の形歪めてしまう程、強く吸い付く。

 

「あぁぁ!……だ、めぇ……いってぇ……あぁ、はぁっ……あん!またぁ……イ、クぅ!ふうぁあっ!!」

 

「んっ!?」

 

小さな絶頂を何度も味わっている彼女の反応を楽しんでいると興奮してガチガチのままドレイクの腹部に押し付けていた肉棒に快感が走った。

どうやらいつの間にか俺も責められていたらしい……。

 

まぁ、彼女がやられぱなっしでいるワケがないか。

こうなれば互いに好きな所を触り合いましょう。

 

「ああぁ、はぁ!……はぁ、ふふこんなにビクつかせてぇ……あん!……こ、これでどうだいぃ、はぁんぅ!」

 

感じながらも、パンパンになった陰嚢を丁寧に揉み込みながら、鈴口から出てきた先走りを擦り付けるように竿を強く扱いてくる。

 

「はぁ!あん!んぅ……そらぁ、きもち良いかいぃ……!あっ……んはあぁっ!」

 

これまで何度も交わってきたのでお互いの気持ち良い所は熟知している。

それでも聞いてくる彼女に俺は肯定を返す。

あなたに手コキされて気持ちよくないワケないじゃないですか。

 

「そ、うかぁ、はぁっ!あっ……ふぅ!おっぱいばっかりぃ……ひゃぁぁあっ!」

 

こっちは気持ち良いか聞く必要は無さそうですね。

すんごく蕩け切った顔してますし。

 

俺もそろそろ達しそうになりこのまま体にかけると思ったが……ギリギリの所で彼女の手が離れた。

 

あれ?と思わず自分も胸を責めるのを止めると、ドレイクが息を荒げながらも呟いた。

 

「……はぁ、一発目は……外じゃなくてぇ……ナカで、だしてぇ……」

 

足を開き、そう誘う彼女にNOと言える人がいるのなら俺は知りたい。

そのまま動きを返答として俺はお預けをくらった逸物の先端をショーツ越しに擦りつける。

 

「あぁ……やぁ……焦らすのかいぃ……あぁぁ……」

 

「いや俺も我慢がきかないので今日はしないよ」

 

せっかく俺があげた下着なのでずらして挿入する事にしましょう、脱がすのも何か寂しいじゃん?

 

露出した彼女のクレパスと割れ目からはむわっと雌の香りがして今かと待ちわびるようにヒクついていた。

 

これ以上待たせるのも可哀想なので、亀頭からそのまま雌孔へと挿し込んだ。

 

「くふああぁっ!!き、たぁぁ……!!」

 

彼女の歓喜の声を聴きながらも膣内を進んでいくというよりは肉棒が吸い込まれていると言った方が的確かもしれない、油断しているとこちらが先に果ててしまう可能性もあるので俺は腰のストロークを開始した。

 

「ああぁっ!はぁ!すごぃ!!……どんどんナカがぁ……きもちよくなってぇ……ああぁっ!あぁ!はぁっ、やああぁっ!」

 

ベッドのシーツをクシャクシャにしながら悶える彼女の両手を廊下を歩いた時と同じ恋人繋ぎで掴む。

 

「んあっっ!……やぁっ……!もっとぉ、もっとぉっ……!はぁぁんぅっ!ああ!ああぅぁぁっ……!!」

 

ギュッと結んだ手と腰を上手く使いながら彼女の秘部へ肉棒をパンパンと音を響かせながら叩きつける。

乱れる長髪とたゆんたゆんと揺れる巨乳が非常に眼福です。

 

「はぁっ…!き、す……キスし、てぇ!あんぅっ……!」

 

快感の波でどうにかなりそうながらも俺にそう懇願してきた彼女の体に覆い被さり、口づけをする。

 

「んんっ!んむぅっ……!んはぁっ!ちゅっ……じゅるぅ!んじゅぅっ!!」

 

お互いの性器は当然交じりあい、胸元も彼女の巨乳の感触に感動しながらも擦り付けあい、激しいディープキスをして溜めに溜めた欲望がせり上がる。

 

「んぅっ!ちゅっ、ちゅぅっ……!んはぁっ……だせっ……だ、してぇっ…!んむぅぅっ!」

 

彼女の要望通り、そして自身の欲望のままにドレイクの子宮へ精液を叩きこんだ。

 

「んんんんんんんぅ~~~~……!!!!んぅっ!んむぅっ……!んちゅっ……んんっ……んはぁっ、はぁ……」

 

射精している間も決してキスを止める事がなかった俺達は呼吸困難になるぐらい口を貪りあいながら同時に達した。

 

やがてちゅぱぁっ……と唾液のいやらしい音を立てながら唇を離すと、

 

 

 

白濁液を出されたアソコの処理を軽く済ませ、着替え始めているドレイクの姿が。

 

「……ふぅっ、何、ボケっとしているんだい……元々宝の中身を手に入れる為にヤッたんだからさっさとお目当ての物をいただくよ」

 

おや、余韻に浸る時間も無しですか……。

俺としてはもう2,3回ぐらいイケたのにぃと思っていると、何やらこちらを伺いながら口ごもっている彼女が――

 

「……………それにアタシは続きはこんな所じゃなくてアンタの部屋でヤりた……いよ……」

 

赤く染まった顔でそんな事言われたらイエスしか言えないじゃないですかー。

今日のウチの姐さんの可愛さは世界一ィ―――――!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~後日談というかその後の話

 

船の甲板で何とも言えない表情をしているドレイク船長。

 

しかし、レイシフトがあるなら行きも帰りも船など使わず、直接あの島から行き帰りすればいいんじゃねという野暮な事は言わない。

だってドレイクは海の女だし、行きも帰りも航海でやりたいでしょうよ。

そんな彼女がどうして船の上であんな表情をしているのか……。

 

「宝箱の中身は気に入らなかった?」

 

「いや、上等なもんだったよ。あれは……ただねぇ、アタシ自身は‘宝の持ち腐れ‘って言葉は嫌いだけど…………それでもねぇ……」

 

―――純白のウエンディングドレス―――

 

しかも間違いなく金と手間がかかっている豪勢なもの…それがあの宝箱の中身だった。

 

あの屋敷の主は実は結婚間近だったのかもしれない。

それが自分かもしくは伴侶も死んで……あのドレスは着られる事なく……眠ったままだった。

宝箱の中身を取った途端に屋敷を包んでいた霊的な結界も全部消えたしね。

もしかしたら、このまま朽ちるぐらいなら相応しい誰かに着てもらうのをずっと待っていたのかもしれない。

うん、あくまで想像の域の話だけど。

 

「財宝は消費してナンボ、しっかし、あれを売るワケにもいかんし」

 

「え?後で俺の部屋で着てくれるんじゃないの?」

 

「…………本気かい?」

 

「本気本気、絶対似合うよ」

 

「はぁっ、仕方ないねぇ……今日一日はずっとアンタに助けてもらいっぱなしだったからねぇ……対価はちゃんと支払うよ」

 

「やった!ドレイク姐さん大好き!」

 

「はいはい、アタシも大好きだよ」

 

ドレイク船長の腰にヒシっと抱き着きながら船は進んでいく。

航海の邪魔だよと邪険にしないあたり、本当に優しいんだから。

 

 

 

 

 

 

 




この後、再び滅茶苦茶セックスした。







EXTRAで初めて見た時は格好いいおっぱいだなーという感想だったんですが、FGOの三章ではあなたが必要だって言うと照れちゃったり、実は物理法則が効かない幽霊の類に生娘みたいな悲鳴をあげたりと……何やこの船長滅茶苦茶可愛いやんけ!という感想になりました。
後、マイルーム絆4ボイスにやられた。

もっとドレイク船長のイラスト増えてもいいのよ……?

あれだね、人理を救った暁にはぐだドレイクの新婚世界一周旅行とかいいんじゃないんすか?
……あぁ駄目だ、それを許さない女鯖が多すぎるわ。
そんな事になれば海は間違いなく大正妻戦争時代に突入するわ



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犬神(牛若丸)

《ぐだぐだ鬼ヶ島イベtaka2》

桃から生まれた、ぐた太郎は大きくなり、鬼ヶ島に鬼退治へ。
馬に乗っていない方の父上ことおじいさんからははきび団子と黒い聖剣を、
殺菌ホリッカー治療天使ことおばあさんからは山ほどの消毒液と絆創膏と包帯と……etc

二人の期待と心配を受け、鬼ヶ島に向かうぐだ太郎。

道中で――

牛若犬「犬です」
マシュ犬「犬です」
きよ犬「犬でございます」
沖犬「犬ですよっ」
モー犬「犬だぜ」
リリ犬「同じく犬です」

6匹の犬が仲間になりたそうな眼でこちらを見ていました。
猿と雉はどうしたという、野暮なツッコミはぐだ太郎空気の読める子なのでしません。

しかし、きび団子は渡される前におじいさんがほとんど食べてしまったので一つしかありません。

その事を知った6匹は当然の如く、バトルロワイヤルを開始しました。
結果は見るも無残、死屍累々という結末でした。

争う事の虚しさを教訓として刻んだぐだ太郎は一人で鬼ヶ島に向かう事にしました。

《続かない》




犬系サーヴァントって多いよね、飼いたいなぁ……飼いたいわぁ。


――――――褒める事は実に大事、相手が人であれ、犬であれ。

 

 

「主どの―――!デーモンの首級(しるし)を取ってきましたぞー!」

 

血まみれスプラッタでデーモンの頭を両脇に抱えるのはぽんぽこライダー牛若丸。

返り血でにぱぁっと満面の笑みを浮かべているのは実にホラー。

 

褒めて褒めてーと言わんばかりに駆け寄ってくる首狩り族。

俺の為に首置いていけをしてくれたのだろう、その気持ちは嬉しいが……。

 

「ふむ、こいつの首は素材には使えないからなー……」

 

蛮神の頭なんて素材はないからね、心臓が欲しいのよ心臓が。

 

「あっ、……そう、ですか……申し訳ありません……不要なものでしたか……」

 

先程の笑顔も曇り、落ち込むように顔を伏せてしまう牛若、幻覚で尻尾がシュンとなっているようにも見える。

 

「だがっ!俺の為に首を挙げようとしたその意気や良し!!」

 

「主殿……?」

 

ペットを褒める時のコツその1:

その子が自分の望まない事をしてあげても、自分の為に何かしてくれたという功績を考慮して頭ごなしに叱るのではなくまずは目一杯褒めてあげましょう。

 

「褒美だ!頭を撫でてやろうぞ!」

 

「あ、あ、あるじどのっ!」

 

感極まった表情で抱えてた首を横にブン投げて、俺に抱き着いてくる。

その首は俺の為に取ってくれたんじゃなかったのかね?扱いが雑すぎない?

 

「~~~♪」

 

「よく頑張ったな、マスターは牛若のような家来を持てて誇らしいぞ」

 

彼女についていた返り血がびちゃあっと俺のホワイトな魔術礼装についてしまうが気にする必要はなし。

血が怖くて女が抱けるかぁ!!

まぁ、服が血に染まる事で箔がついたというか、威圧感が増したというか逆に良かったと考えればいいし

 

「よ~しよしよしよし、愛い奴め~、愛い奴め~」

 

懐に収まるぴったりサイズ。

かいぐり、かいぐりと頭を撫で回す。

幸せそうに目を細め、されるがままの牛若に和んでしまいすわ。

頬に血が飛び散っている?牛若丸の可愛さの前には些細な問題だろう。

 

「はぅわぁぁ~~~……主殿の撫で技巧は三千世界で一等賞です~」

 

「はっはっはっー褒めても何も出ないぞー、それそれそれそれ……」

 

決して激し過ぎず、かといってゆっくり過ぎず……優しさと嬉しさと信頼と愛おしさとスパイスにほんのちょっとのエロスを感じさせるような手付きで頭を撫でくり続ける。

そら~蕩けちまえ~。

 

「あぁ、はふぅ……んんぅ……あ、るじどのぉ……はぁ」

 

「デーモンの頭も頑張って調理すれば食べれない事もないし、燻製にだって出来るかもしれないしね。

けど今度は牛若を見込んでもっと難しい物を頼んじゃおうかなー」

 

ペットを褒めてあげる時のコツその2:

そして一定以上褒めてあげたら今度は自分が何を望んでいるのかしっかりと伝えてあげましょう。

ただ漠然と褒めるだけではその子の為にもなりません。

 

「んあぁ……はいぃ……主殿の為ならこの牛若……ふあぁ……どんな事でもやり遂げましょう……」

 

「よしよし、お兄さん今度はデーモンの心臓が欲しいなー、牛若にしか頼めないなーこんな事はー」

 

撫でる手は止める事はなく、そのまま耳元で囁くように語りかける。

なんか牛若ちゃんビクンビクン震えてるし……傍から見るといたいけな女の子を洗脳してる絵面にも見えかねんなコレ。

 

「あぁ、はいぃ……はいっ!心臓でもなんでもとってきますぅ、ですので、もっと頭をなででくださいぃ……はあぁ……」

 

「ええい!この欲しがりさんめ!ココか!ココがいいのか!」

 

「はうぅっ!……そこぉ!そこがぁ!いいんですっ……!……あぁっ!あるじどのぉ……はあぁっん!」

 

頭を撫でてるだけなんで不健全な事は一切してませんよ?

 

 

 

~~結局その後。

 

「主どのー!彼奴から心臓を取ってきましたぞ――!」

 

刀に見事突き刺さっているのは新鮮獲れたてピチピチの蛮神の心臓が3つも!団子三兄弟みたい!

マジで心臓取ってきたのか!ゲイ・ボルグなんていらんかったんや!(おい

 

「やれば出来るじゃないか!牛若丸!褒めて遣わす!カモン!」

 

両手を広げ、忠犬を歓迎する。

 

「主どのぉ―――!!」

 

うん、だからせっかく獲った心臓を刀ごとブン投げるのは止めようか、危ないしネ!

 

 

 

 

 

 

 

それからの忠犬牛若丸は――

 

 

「主殿が欲しがったていた骨を骸骨兵共から大量にカツアg……コホン徴収してきました!」

 

 

 

「主どの――!!蛇の目玉をこんなに抉り取ってきましたぞ!」

 

 

 

「ほら飛べ、もっと出せるだろう。主殿の為に世界樹の種とやらを出せ……なに?もう無い?

……そうか主殿は狼の毛皮は喜んでくれるだろうか……ん?なんだまだ出せるではないか」

 

 

 

「バイコーンだ!!角置いてけ!なあ!戦馬の幼角だろう!?角を置いてけ貴様!!」

 

 

依然としてブレーキは壊れたままだったが俺が欲しい物を言えばそれをしっかりと持ち帰ってくる有能なワンコに成長しました。

 

その度に頭を撫で回し、褒めまくるが……何だか俺がもらってばかりで申し訳なくなり、何か欲しい物はないか聞いても。

 

「私は主殿に褒めてもらえればそれで十分です」

 

と何ともまぁ欲が少ない事。

しかし、こんなに贈り物(一部血生臭いが)を貰っている身としては出来れば何か形が残るものをあげたい。

 

「俺もこうやって牛若を撫でまくるのは大歓迎なんだけどさ…やっぱりどうしてもプレゼント的なものあげたいという気持ちも湧いてくるわけよ、主として」

 

「…………そうですか」

 

瞼を閉じ、深く考え込む牛若丸。困らせちゃったかね?

 

「あぁ……一つだけ欲しい物がありました、主殿」

 

「いいよ、何でも言ってもごらん」

 

何でもとは言ったけどさすがに主殿の命が欲しいですとか言われちゃうとお兄さん困っちゃうな。

 

 

「首輪が欲しいです、主殿」

 

首輪かあ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さてさて、場面は変わり、マイルームなう。

目の前はキラキラと瞳を輝かせ期待させながら絶賛正座中の牛若丸が。

 

「いや、そんなに固くならなくてもいいのよ?」

 

そこまで畏まられちゃうとさぁ……今からプレゼントするものだってちょっと遊び心も入っちゃってるし。

 

「何を仰いますか!主殿に手ずから頂くのですから、頭の位置は主殿より低く!背筋も自然と張ってしまうのは当然の事です!」

 

「けど、首輪だからね」

 

忠犬ポジを狙っていたのは前々から察したし、鬼ヶ島でそれが確信に変わったけどさ。

嬉々として作り終えてしまった今思うのもアレかもしれないが女の子のプレゼントに首輪なんてどうなんでしょう?……アリ?

 

「私は自他ともにに認める『カルデアNo1主殿の雌犬』の地位を確固たるものにしていました」

 

「うん?雌犬って……」

 

「しかし!ここ最近になってその座を付け狙う輩が増えてきたと私は感じました!」

 

よしっスルーしよう……俺の教育のせいで彼女が歪んでしまったと思いたくないし、聴き間違い聴き間違い。

 

「沖田殿と清姫殿は本当にわかりやすい、主殿に対してあの懐きっぷりや従順な様……同じ日ノ本国生まれとして油断はできません!

モードレッド殿は、本人は自覚が無いようですがあれは天然の犬気質です!ダークホース……いえダークドックになりかません!

私の良きライバルとして切磋琢磨してきたマシュ殿は主殿との距離の近さを生かしていつ私の地位を脅かしてもおかしくないでしょう

……ですが以下にあげた面々よりも私が恐れているのはリリィ殿です!彼女の主殿に対する一種の狂気すら感じさせる忠誠心、そして純白の騎士でありながら主に害なすものは誰であろうとも斬り伏せるとする漆黒の意思……間違いありません、彼女が私にとって最大の障害となるやもしれないのです!」

 

と一息に彼女が述べる。

基本的に周りは見えていない娘だと思っていたが先に挙げた娘達に対する評価はまあ割と適格かもしれんね、ベクトルはちょっとアレだけど。

 

「それで首輪か」

 

「はい!言葉と態度だけではなく、常に首輪をつけて名実ともに私が主殿の犬であるという事を他の方達に釘を刺しておく必要があると判断しました!

しかもそれが主殿みずからの譲渡品ともなれば認めざるを得ないでしょう……。

この牛若、常々自分を天才だと思っていましたが、今回の策はそんな私ですら震えてしまう程の名案でした……あぁ、自分の才能が恐ろしいっ」

 

動機も考え方とポンコツ臭がするというか、間違った方向にアクセル全開というか。

……何であれ、あの牛若が物を欲しがったのは良い兆候だと信じ、俺は包装紙で包まれた箱を渡す。

 

「ではいつも頑張ってくれてる牛若丸に」

 

「ははぁっ――――――!!」

 

よっぽど嬉しいのはわかったから、そんな平伏しながら受け取らなくてもいいからね。

 

「……開けても、よろしいでしょうか?」

 

「開けてくれないとあげた意味がないよ」

 

「うぅ……!で、ではっ!」

 

恐る恐る丁寧に包装紙を外し、中身を取り出す牛若丸。

手作りとはいえ、黒い革に金具がついた一般的な首輪なんですけどね。

スイッチがあってそこを押すと爆発したり、演算能力を補助したりなんておかしな機能も一切ついていません。

耐久性だけに関しては突き詰めましたよ、キメラの素材で作らせて頂きました!

 

「おぉ!これは……!」

 

彼女が宝物のようにじっくりと肌触りを確認すると、カチッと音が鳴り、シュルルルと紐が首輪からリードが出てきた。

これがちょっとした遊び心……使う事は無いだろうけど犬ポジを狙って牛若なら喜んでくれると思ってつけました。

常にリードがついてると邪魔だろうけどこれならボタン一つで収納も簡単やからね。

 

「…………」

 

「牛若くん?」

 

俯いたまま、動かなくなってしまったようです……もしかしてやらかしちゃった?パラケの『よかれと思って現象』起こしちゃったかい!?

 

「……牛若は…………牛若丸は…………果報者です」

 

顔をあげた彼女は静かに涙を流していた。

そこまで感動されると逆に怖いです……喜んでくれたって事でいいのかな?

 

「主殿から首輪を授かるだけで身に余る光栄だというのに……その上私の意を汲んでこのような仕掛けまでつけてくれるとは…………。

答えは得ました。ありがとうございます主殿。私は、これからも頑張っていきます」

 

「まてまてまて!何か光の粒子が出てるよ!消えるんかお前!?」

 

そんな満足気な笑顔をここで見せられても困るよ!

逝くな!牛若丸!帰ってこい!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お見苦しい様を見せてしまいました……」

 

「いや、正気に戻ったならいいよ」

 

俺もさすがに『牛若丸に首輪あげたら座に帰っちゃったよ(テヘペロ)』なんて皆に言えないからね。

 

「あの……さっそく首につけてみてもよろしいでしょうか?」

 

「もちろん。

あ、どうせならこれも一緒につけてもらってもいいかい?」

 

懐に待機させていた物を彼女に差し出す。

 

「おぉ!これは犬耳ですか!」

 

あらあらまぁまぁそんなに嬉しそうにしちゃって。

 

「何事も形から入るのは良き事、というわけでどうせなら犬耳&首輪をつけた忠犬牛若を見てみたくてさ」

 

「ふふっ、さすがは主殿です。

確かに首輪だけだと忠犬として少々手落ちですから、常にこの耳も装着し主の犬としての自覚を持てというわけですね」

 

「いやこの耳に関してはうん、俺と二人っきりの時だけにつけてくれればいいから」

 

さすがに犬耳も常につけちゃうと余計な火種を起こしてしまう可能性があるし。

……具体的に誰々がと言うつもりはないが。

 

「ふむ、そうですか、主殿がそう言うならそうしましょう。ではつけ終えるまで後ろを振り向いてもらっててもよろしいでしょうか?」

 

「いいけど?」

 

ベッドに腰掛けていた俺は彼女を見ないように壁側の方を向く。

もしかして、ちゃんとつけ終えたから見て欲しいのかな?

ふはは、女の子らしい所もあるじゃないですか牛若ちゃん。

 

―――カチャカチャ

 

うん?

 

―――シュルッ、シュルルッ……

 

あれ?

 

―――ファサアァッ…………

 

あれれ――?おかしいぞー?

髪を解く音が聞こえるのはまだいいとしてどうして鎧や布擦れの音が聞こえるのでしょうか?

 

「主殿」

 

「はい……」

 

思わず、畏まった返事をしてしまう。別に何かを期待してるわけではないんだからね!

 

「どうぞ、こちらを振り返って下さい」

 

「……っ」

 

言われるがままに正面を向くと俺の目の前には――

 

全裸で首輪と犬耳つけ、四つん這いになっている美少女の姿が――

 

いつもかぶっている烏帽子もなく、髪は完全に解かれ黒髪ロングになっているのがまたいつもと違う印象を抱かせる。

 

「どうですか、主殿?似合っているでしょうか?」

 

「あぁ、似合ってるよ」

 

てか似合い過ぎてヤバい色んな意味で。

とりあえず、一つだけ気になる事があるので訊いておかなければならない。

 

「何故、全裸?」

 

「ふふふ、おかしな事を訊きますね主殿は、何故も何も、犬に服は必要はないでしょう。まぁご安心なされよ……さすがの私も主殿以外に大事な所を曝け出すつもりは無いので」

 

最近のワンコだって服着るのもいるよ!ってそういうツッコミじゃないよね。

 

「ですが主殿が四六時中この格好でいろと命じるならば私は断るつもりは毛頭ありません。

今すぐ二足歩行から四足歩行へ、人語から犬語へ移行するのも吝かでは……」

 

「いやそこまでしなくも大丈夫です」

 

間髪入れず、ノーサンキューと。

 

だって四六時中はアカンでしょうよ。

仮にOKしたらアレでしょ?クエストには常に全裸の美少女を首輪で繋いで四つん這いで歩かせている鬼畜外道マスターの姿があるわけじゃん?

そんなの世界を救う前に逆に俺が世界平和の為に退治されるハメになるだろうが。

だからなんでちょっと残念そうな顔になるねん、牛若くんよぉ。

 

けどこんな姿を見てしまうとついつい試したくなってしまうな。

 

「牛若丸、お手!」

 

「はいっ」

 

おお良い笑顔。

 

「おすわり!」

 

「はいっ!」

 

おぉ、早い早い。

ではラストだ!

 

「おちんちん」

 

「わん!!」

 

これはひどい!色々と丸見えだ!

ってか悩む素振りすらなく、間髪入れずに従うとはさすが過ぎるぜ牛若丸。

 

お尻を床につけて足を開脚した姿勢のまま微動だにしない牛若ワンコ。

やや興奮してしまっているのか、僅かに息がハァハァと荒い。

 

「はぁ、はぁ、あぁ……なんだか生まれ変わった気分です。主殿から頂いた首輪をつけ、このような格好でいるとだんだん形容しがたい気分に……」

 

いつもの純粋な一種の子供のような笑顔ではなく、女を匂わせてしまう色気を感じさせるような微笑みで彼女は俺にリードを手渡してきた。

 

「……さぁ、牛若丸は主殿の忠実な雌犬です、どんな無茶な命令でも必ずこなして見せますぞ」

 

手渡されたリードでこっちに来るように引っ張ると苦悶の表情ながらも「あんっ……」と雌の声が漏らしてしまう牛若丸、そこは‘わん‘じゃないのか……。

 

あぁ完全にアウトだよコレ、いつもと違う彼女の雰囲気や首輪をつけた全裸の美少女と部屋で二人っきりという特異なシュチュエーションもそうだけど、何より俺自身がこの状況を心底楽しんでしまってるのが完全にアウトだわ。

 

「はぁ、あ、るじどのぉ……」

 

でも仕方ないよね、彼女が犬で俺が主なら是非もないよね、可愛がってもいいんだよね。

 

リードに促され、俺の胸元まできた忠犬の頭をいつものように撫でる。

いつものようにとは言ったものの格好が格好なので彼女の滑らかな裸体がフニフニと俺の体に接触してくる。

特にいつもは露出が多い格好ながらもしっかりと隠されている部分が俺の体に擦り寄せられている。

胸と幼さを感じさせるような恥丘が……。

 

「あ、はぁ……ふぅ……」

 

それでも彼女は羞恥心を覚えるような事もなく、俺が犬耳をついた頭を撫でているとリラックスするように息を吐きながら甘えてくる。

 

しかし、普段は結んであるから気づかなかったけど牛若の黒髪ってホント綺麗だわ。

梳いてると全然指に引っかからないし、世界が嫉妬する髪って奴?

もしかして源氏って皆、髪こんな感じなのかしら?

と他愛のない事を考えつつも空いたもう一方の手で背中を愛情込めて撫で回す。

 

「んぅ、くぅ……あぁ……はぁ、んっ……」

 

只のペットに対するスキンシップですよー疚しい事は何もありませんよー。

しかし、手は何故か自然とお尻の方まで伸びてしまう。いやお尻を撫でるのも何も不思議なことじゃないでしょう……スキンシップ、スキンシップ。

 

「はうっ!はっ……あっ……あるじどのの手がぁ……あふぅっ、きもちよくてぇ……とろけてしまいそうにぃ……あぁっ」

 

小さす過ぎるわけではない、ほど良いサイズ彼女の臀部のしっとりとした感触を楽しむ。

すると牛若丸がいつの間にか俺に顔を近づけ、頬を舌でペロペロと舐め始めた。

 

「ぺろっ……れろっ…………んっ」

 

しかし本物の犬のように満遍なく舐める事はせず、控えめに舌を伸ばし、ピチャピチャと音を立てながらねぶってきた。

その奉仕にくすぐったさを覚えつつも伸ばされた舌先を口元で咥え、吸い上げそのままキスの褒美をあげる。

 

「んぅっ!んんぅ……んちゅ、ちゅ、ちゅるぅ……んはぁっ……うれしいです……んむぅ」

 

撫でる手は止める事なく、唇の感触を確かめ合う。

彼女の口内に入っていく俺の舌は牛若丸が必死に絡めてくる。

その動きが忠犬たろうとする彼女のいじらしさを表してる気がした。

 

「ちゅ、ちゅっ……ちゅぅっ……んはぁっ、あるじどのぉ……はぁむぅ、んじゅぅ……」

 

「っはぁ……次は仰向けになってもらおうかな」

 

「んはぁ……はい」

 

俺に命令されるのが嬉しくて堪らないといった彼女は俺の膝の上で仰向けになり体を隠す事もなかった。

今、目の前にいるのは服従のポーズをとっている一匹の雌犬のみ……しかし、随分と様になっている。

 

「くぅ~んぅ……」

 

「よしよし~、牛若丸は本当に良い娘だな~」

 

大分ノリノリになってきた彼女の腹を円を描くように……マッサージするように撫で回す。

別の手は牛若の首元をくすぐるように刺激してあげる、だんだん本当にペットを相手している気分になってきたな。

 

「んふぅ……はぁ、んくぅ……あぁ……あたまがぁ……んあぁ、ふわあぁってぇ……あぅ……あるじどのぉ」

 

前言撤回、こんないやらしいペットがいるか。

胸の先端だってふっくらと膨らんでるし、アソコだって濡れているのが丸わかりだし、こんな姿を見て微笑ましい穏やかな気持ちでいろというのが土台無理な話だろう。

 

「ここ……硬くなってるけど興奮しちゃったのかな?」

 

手の平で弄ぶには程良いサイズの胸に手を出す。

興奮した乳頭も指でいじくるような事はまだせず、胸も含めて、押しつぶして刺激するように揉み込んでいった。

 

「あぁ!はぁぅっ……申し訳ございぃ、ませんぅっ……いやしい犬で……あうぁっ!もうしわけぇ……んふうあぁっ!」

 

柔らかい果実の感触、コリコリと硬い突起物の感触、その両方を確かに手の平で味わいながら、腹を撫でていた手を徐々に下げていく、期待しているような彼女の目線を感じながら。

今度は膀胱のあたりを刺激するように押し込むように撫でる事にした。

 

「くぅっ、あっ、はぁぁ……はうぅ!やっ、やぁっ……あううぅんっ!!」

 

下の方に意識が逸れているのを確認し、勃起している乳首を引っ張ってあげると反応が劇的に変わっていく。

 

「あぁ!そこぉ……いじられるとぉ、あっ!はぁぁ!だめぇ……!ふぅっ……はうぅんぅっ……!」

 

淫裂からも水気がじわりと出てきたのでそちらの方にも手を這わせる事にした。

多分、だんだん俺の方も気分が乗ってきたのだろう。

 

「ここもこんなに濡らしちゃってイケない()だね、牛若丸は」

 

「ふあぁっ……!ごめっ、んなさいぃ、あんぅ!あるじどのぉ…………いけない犬でぇ、はあぁっ!あぁ!……もうしわけぇ……ひぃあぁっ!」

 

胸の方は乳首をつまんであげるのをメインにしながら揉み、

性器の方は入り口をグシュグシュと音を鳴らしながら擦ってあげ、

舌を出し、涎も零しながら……まるで身も心も本当に犬になってしまったように見える彼女の痴態を見届けてあげる事にした。

 

「はぁぁっ!あぁ、はぅっ…………ああっ!んはぁっ、はぁ、あうっ……んんっ!?…………あ、あるじどのぉ!手をぉ!あっ……一度手を止めてくだあぁ……!!ひうぅっ…!!」

 

「?」

 

今まで従順だった彼女が一体どういう風の吹き回しなのだろう?

何かを耐えるように固く口を結び、快感とは別の震え方をし始めるようになった。

まさか……。

 

「もよおしてきちゃったのかい?」

 

「……っ!」

 

どうやら図星だったみたいだ。

確かに忠犬であろうとする彼女にとって主の前で粗相をなんて出来ないだろう。

だがここで一旦仕切り直しするのも癪だし、かといって彼女に我慢を強いたままなのも可哀想だ。

ならばさっさと楽にしてあげるのが主の務めではないのか?

 

「今の牛若は犬なんだろう?」

 

「は、はい……」

 

「なら、主の前で思わずお漏らししちゃっても仕方ないんじゃないかな?」

 

「そ、そんなっ……あうっ!……い、いくらなんでもそれはぁっ!……んくぅっ!あるじのまえで粗相なんてぇ……はあぁぅ……だめぇ!だ、めぇですっ……やあぁっ……おゆるしをぉ!あんうぅ!」

 

「俺は気にしないから、我慢は体に毒だよ」

 

割れ目から中指と薬指を入れて、尿道口を刺激するように出し入れしていく。

愛液は漏らすがもう一方は漏らすまいと耐えていた牛若だったが、自身の中で暴れている指の快感にだんだん抑えが効かなくなっているのかもしれない。

 

「はぁっ!あぁ!あっ!ふあっ!だめですぅっ……だめ、だめぇ、だめぇっ……らめぇ!あぁ!はあぁうっ!やあぁっ!」

 

目も焦点が合わなくなり、口も半開きになってしまってイヤイヤと顔を左右に振る彼女だったがやがて限界がきてしまった。

自己主張していた陰核もキュッとつまむと……。

 

「はああぁぁううううぅ~~~……!!!!」

 

――――――ジョロジョロジョロ……

 

イッてしまうのと同時に股から生温かい液体が勢いよく俺の手と床を汚していった。

 

「はあぁ……!ああっ……!あぅっ……み、ないでくださいぃ…………と、まらなくてぇ……やらあぁっ……」

 

俺に見られているのもそうだろうがお漏らしをして感じてしまっている自分にも自己嫌悪をしてしまってるのだろう。

 

「うぅ、はぁっ……ご、めんんさい……ごめんなさいぃ、あぁっ……あるじどのぉ……」

 

快感と悲しさでグチャグチャになった顔を今度は俺が犬のように舐めて慰めることにした。

 

「んぅ、あるじどの……?」

 

黄金水の放出も止まり、彼女の手を掴み、俺の大事な所を触らせる。

 

「牛若が恥ずかしいと思ってるなら、お互い様だよ。ほら俺も君の痴態でこんなに興奮しちゃってるし」

 

首輪をつけた全裸の女の子を無理矢理お漏らしさせ、あまつさえ自分のアソコを触らせているというおまわりさんこっちです案件待ったなしだよね、今の俺の姿って。…………うん、バレなきゃええねん!

 

「あぁ、主殿のアソコがこんなに……私の体に興奮してくれたのですね……」

 

愛おしそうに服の上の硬い膨らみをニギニギした牛若はふらふらと熱に浮かれた様子で俺から離れ、ベッドの上で四つん這いになると。

 

「どうか、どうかぁ……主の前で粗相をする卑しい雌犬に……はぁ、お仕置きをぉ……」

 

お尻をフリフリと振りこちらに誘う彼女の姿は様々な液体で濡れそぼった陰門も相まって、犬と女の性質を両方とも全身で表現しているように思えた。

 

お仕置きねぇ……そんな発情した顔で請われるとご褒美になりそうだが、まぁいいか。

彼女も俺も気持ちよくなれるならそれはそれでwin-winの関係だろう。

 

苦しくなっていた逸物を外に出し、彼女の雌孔から一気に奥まで突き刺す。

 

「んあぁっ――――――……!!」

 

膣内全体で準備は出来ていたのだろう、驚くほど簡単に奥まで挿入ってしまった。

 

軽く達した彼女を待つ事なく腰を激しく動かす。

 

「んひぃ!はぁ!あぁ!す、ごいぃ……あるじどののがぁっ……!ずんずんってぇ!こんな交尾みたいにぃ……あんっ!!」

 

目下で犯しされている犬耳をつかた黒髪ロングの彼女には最早いつもの健康的で活発な牛若丸の面影はなく、互いに獣の如く、どんどん欲望を高めていった。

 

「はぁっ!はぁっ!あぁ!はぁんぅ!……あぁっ……おしおきなのにぃ……おしおきなのにぃっ、どんどんきもちよくなってしまう……あああぁっ!!」

 

パンパンと音を肉を叩きつけ合う音を響かせながらリードを引っ張り、牛若を俺と同じ膝立ちの姿勢にさせる。

 

「やぁんっ」

 

胸を掴み、牛若丸の顔をこちらに向けさせキスを交わす、今度は獣同士ではなく人同士のセックス。

 

「んぅ、ちゅぅっ……!んはぁっ、あるじどのぉ……はぁむぅっ……じゅるぅ、んむぅ……はぁっ、んんぅっ……!」

 

性器と手と口の三つで彼女の体を責めていく。

 

「あるじどのぉ……あるじどのぉ、あるじどのぉっ……あ、るじどのぉ……!んっ、んちゅっ……んあぁっ……!お、したいしておりますっ!はぁぁんぅっ!」

 

俺を何度でも呼びかける牛若丸に対する想いが昂り……腰を押し出し、リードを引っ張り……思うがまま彼女の奥に自身の子種を注ぎ込んだ。

 

「ああぁぁぁぁぁぁああああっ!!はぁっ!あっ!あるじどののこだねぇがぁっ……!はぁっ!……う、れしいですぅ……あぁ……」

 

―――ビュルビュルルと彼女の膣の温かさを感じ、最後まで出し抜いた。

 

体がのけ反り、口をだらしなく開いたままの彼女はこちらに寄り掛かり、呼吸を整えていた。

 

「はぁっ―……、主殿……牛若丸の体をもっとお使いになってもいいのですよ……?もっと、もっともっと……好きなだけ……さぁ、あるじどのぉ……」

 

 

愛犬との一夜はまだまだこれからみたいだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぺろ、ぺろぉ、れろぉっ……」

 

下ろした俺の素足を迷いなく舐めているのはリリィ。

 

「……んぅ……ぺ、ろっ…………んっ……れろっ」

 

もう一方の足を躊躇いがちながらたどたどしく舐めているのはモードレッド。

 

二人の姿はいつもの格好ではなく、全裸に犬耳、首輪、そして尻尾という異常な格好であった。

 

いや二人だけではない……この部屋にいる他の娘達も同じような格好をしていた。

 

「ますたぁー」

 

右側で甘えてくる沖田の尻尾をいじる。

この尻尾も本物のワケもなく、菊門に挿入されているおもちゃの類なのでいじくると当然……。

 

「あんぅっ!はぁっ……しっぽはぁ……だめぇ」

 

駄目と言いながらも恍惚とした顔の彼女に呆れながらも左側で熱心に俺の手をしゃぶっているマシュに声をかける。

 

「おいしいかい」

 

「はぁむぅ……じゅるぅ、じゅるるぅ……わんっ」

 

「はい」ではなく「わん」と答えるあたり、犬に身も心も成りきってしまっているのかもしれない。

 

「ご主人様、ご主人様、ご主人様……ぺろっ、れろっ……じゅるぅ……」

 

しかし役に成りきっているという点ではさっきから熱心に俺の首元を舐めている清姫も同じかもしれない、呼び方もいつもの旦那様呼びではない。

 

皆、驚くほどに犬の格好が似合っているが一体どうしてこうなったのだろう?

 

「主殿」

 

声を掛けられた方を向くと、黒い長髪で身長も高く、胸も大きく、スタイル抜群な美女の姿があった。

どことなく頼光さんのような雰囲気を感じる

 

「……あなたは?」

 

「ふふふ、どうやら寝ぼけてしまっているようですね。

あなただけの忠犬……牛若丸ですよ」

 

あぁ、そうだ彼女は牛若丸以外の何者では無かったじゃないか。

 

くすくすと微笑み、他の娘達と同じような格好した牛若丸は俺に囁く。

 

「主殿の一番の忠犬は私一人で十分ですが……あなた程の器なら犬は何匹いても困ることは無いでしょう?

さぁ、どうぞ紐を持って……散歩の時間ですぞ」

 

牛若丸から自身の分を含めたリードを6本持たされ、俺は立ち上がった。

ふむ、ペットなら確かに散歩は必要だ。

 

「……ま、まって、この格好でいくのか……?せめて……服を……」

 

紅潮した顔でモードレッドが小さく懇願するが。

 

「だめですよ、モードレッド……私達はマスターの犬なのですから、そんなものは必要ありません」

 

「うぅ、父上ぇ……」

 

リリィにめっと叱られ、諦めたようにうなだれるモー犬。

 

その様子を満足気に眺めている牛若丸の瞳には一種の狂気すら感じた気がした…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ!……夢か」

 

さすがに非現実的すぎるよな……アレは。

正夢にはならんよなぁ……まさか、まさかねぇ。

 

ベッドから体を起こすと隣で雌犬モードのままでスヤスヤと寝息を立てている牛若丸の姿が。

頬をくすぐるように撫でると目を覚ました。

 

「あぁ、主殿……おはようございますぅ……」

 

はい、おはようございます。

寝ぼけ眼で挨拶をするほのぼのとした彼女を眺めていると、今日は何か良い事ある気がしてくるなー。

 

――――――シュインッ

 

「旦那様ー!朝駆けから、夜這いまで、旦那様のご要望にいつでも応える忠犬待ったなしの清姫でs…………」

 

「清姫さん!あんまり騒がしく、先輩のお部屋に入るのはよろしくないかt…………」

 

そんな事は無かった(白目)。

 

部屋に入ってきた二人はハニワのような顔になり固まっていたが、二人を視界に収めた牛若丸は勝ち誇った顔で立ち上がり――

 

「こらっ、少しは隠しなさい、はしたないでしょ」

 

全裸だったので毛布を手渡す。

 

「ふふっ……どうやら一歩どころか二歩も三歩も出遅れてしまったようですね、清姫殿!」

 

仕切り直しで毛布で体を覆った牛若丸はドヤ顔で挑発する。

 

「まさか、あなたはっ……!」

 

わなわなと震え、牛若の格好で全てを察した様子の清姫。

 

「えぇ……あなたの想像通り、私は主殿の雌犬として見事一番乗りを果たしたのですよ!」

 

「牛若丸、一番乗りィ!!」と叫びかねないご様子の彼女は心底愉快そうであった。

 

「そ、ん、なっ……やっと、やっと、旦那様との情事にも慣れて、ハードな雌犬プレイでも応えてあげられると思ったのに!」

 

「はははっ!残念ですがあなたの頭の中で想定されているプレイとやらは既にこの牛若丸が昨晩、通過しているッッ!!」

 

だから何で君はここぞとばかりに煽るのかね?

あぁもうっ、収拾がつかねぇ!

困ったときのシールダーだよ!助けてマシュえもん!

 

「どうしましょう、先輩!私はアイコンタクトでも意思疎通可能なので全く犬語でも問題は無いのですが、四足歩行だと盾が使えず、先輩を守る事が出来ません!」

 

「お前もかブルーマシュー!」

 

「心配はありません、マシュ殿!口で咥えて使えば万事解決です!」

 

「お前は黙ってろ駄犬がぁ!」

 

「はぁんっ」

 

嬉しそうな顔をするなぁ!

 

「ぐぬぬ、何て羨ましい……」

 

「先輩が飼い主で、私がペット……それはそれで」

 

……………………ふぅ。

 

もう面倒くさくなったので、3匹纏めて躾ければいいかっ!!クハハッ!

 

 

 

 

 

 

 

 




 

ぐだ男「なぁ弁慶、この間牛若丸がボンキュッボンになっている夢を見たんだ」

弁慶「むははは!マスター殿はお疲れのご様子、そんな荒唐無稽で世界が滅んでもあり得んような事を夢に見てしまうとは……どれ、この弁慶が一つお茶を入れましょうぞ」

ぐだ男「悪いね、気遣ってもらって」


~数日後~


ぐだ男「なぁ、ここ最近弁慶を見ないんだが牛若丸は彼を見てないかい?」

牛若丸「申し訳ございません主殿……私もここ最近は見ていませんね」

ぐだ男「そっかぁ」

牛若丸「そう言えば主殿!この間、この500QPが落ちていたので主殿に献上しますぞ!」

ぐだ男「おっ、牛若は良い娘だな~」

牛若丸「えへへっ……」






今回のコンセプトは犬と戯れる微笑ましい日常の1シーン、どうだいほのぼのするだろう?

何だかんだで牛若丸やきよひーが可愛かった鬼ヶ島イベ(表情差分マイルームで見たいっす)。

何やら牛若丸も大きくなってナイスバディになる可能性が微レ存。
けど大きくなったら頼光ママみたいになるのかなー?
あり得ん話ではないぞ、牛若丸も牛若丸でちょっと狂っている可能性もあるし……母と扱ってーの頼光ママ、犬と扱ってーの牛若ワンワン。
ええいっ、源の奴はどいつもこいつも病んでしまうのか?源氏バンザイ!




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Chaルディアットへようこそ!!(マリーアントワネット)

今後の感想欄の書き込みについて、あらすじの注意書きにて載させていただきました。
ご容赦下さい。









気付けば、20話か……随分と遠い所まで来たような。
目標は全女鯖(一部性別不明組)を書く事ですかね、夢は果てしなく遠いが。
けど、歩き続ければいつかはゴールにはいつか辿り着くって偉い人も言ってたしこれからも更新は続けよう。




「メイドは良い文明」


三大欲求ってあるだろう?

食欲、性欲、睡眠欲……まぁ、どれが一番大きいなんてケースバイケースだし、議論をするつもりはないけど。

 

ともかくお前には性欲しか無いんじゃね?と常日頃から言われてそうな私ですが、今、この瞬間は睡眠欲がNO1!

もう起きる時間なのだろうけど、全く以ってベッドから出る気がしない……。

 

けど、偶にはこういう日もあってもいいと思うの。

世界がこうなってしまう前は休日の昼寝とか学校を仮病で休んでの睡眠は無性に気持ちよかった。

 

「……ご主人様」

 

シーツと毛布に包まれているこの柔らかさと温かさが俺をどんどん堕落させていく

限界だっ!寝るね!

 

「……ご主人様、もう起きる時間ですよ」

 

何やら俺をこの(ベッド)から出そうとする悪魔の囁きが聞こえる。

悪魔とはもちろん冗談であり、声質自体はむしろ天使で透き通るような声だが。

しかし俺を‘マスター‘はともかく‘ご主人様‘呼びする人なんて現在のカルデアにいたかしら?

 

「……う~ん、……あと、ちょっと、具体的にはAPが全回復するまで……」

 

「もうっ、それじゃあ10時間以上もかかってしまうわ、ほらっ、起きて下さいな」

 

ゆさゆさと体を揺らされるが乱暴ではなく、丁寧で優しさがある力加減なので余計に睡魔が襲ってくる。そんなんでは我が瞼を開けることはできんぞー。

 

「…………俺はこのベッドちゃんと結婚するから、いいのぉ」

 

起きろと言われる程、目覚めたくなくなる法則。

俺を起こしたくば、山ほどの聖晶石を持ってくるべきだったな!

 

「……仕方ないわね、もう……」

 

おや、諦めたかしら?と思ったら、どうやらベッドの中に入ってくる気配が……そして夢の世界に旅立とうとしている俺の体がギュッと抱きしめられる。

香水の匂いが鼻をくすぐるがキツイ香りではなく、本来の彼女の匂いと混ざり合ったずっと嗅いでいたくなるような香り。

 

なるほど、なるほど。

北風が駄目なら太陽ときましたか……。

しかし!このマスター!ハグされた程度で自分の意志を変える軟弱な男ではないわぁ!

 

「これでも起きないのかしら?困ったご主人様ね……」

 

そう言いながら、おそらく今度は頬に手を添えられたのだろう。

 

「んっ、んんぅ……ちゅっ」

 

「……!」

 

唇に柔らかい感触、先程より強い香りが鼻孔を通っていく。

つい、吃驚し口を開いてしまうと。

 

「んじゅっ……ちゅるぅ……んむぅ、ちゅるるぅっ……じゅむぅんっ、んちゅぅぅっ……」

 

生温かいモノが俺の口の中に入り込み蹂躙していく、自身の舌は絡め獲られ……一緒に遊ぶかのように舐め回され、吸い付かれる、とても情熱的なベーゼ。

 

「んむぅっ、ちゅっ……じゅるぅ……ちゅるるっ…………っぱぁっ……やっと起きましたわね、寝坊助さん」

 

キスには勝てなかったよ……。

俺が目を開き、いやらしく銀の糸を引きながら舌を引き抜き、唇を離した彼女は――

 

「……おはようございます、マリーさん」

 

「えぇ、ボンジュールよ…ご主人様♪」

 

メイドさんの格好をしたマリー王妃だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベッドから上半身だけ起こした俺は尋ねる。

 

「聞きたい事は色々とあるけど……何故メイドさんの格好を?」

 

「あら、似合ってなかったかしら?」

 

フリルのついた長ーいスカートをつかみクルクル回るマリーさん

恐ろしいぐらいに様になってるし、周りになんかキラキラとエフェクトがついてるし、てかそれどうやってんの?

 

「いや、殺人的に似合ってるよ……出来れば一生メイドとして仕えて欲しいぐらい」

 

「ふふっ、そんなに高評価だと照れてしまうわ。ご主人様♪」

 

「ご主人様呼びもその格好だとグッとくるね」

 

彼女はライダー以外にもアイドルとかメイドといったクラス適性があってもいいんじゃないかなと思う程に可憐。さすがは白百合の王妃……ヴィヴ・ラ・フランス!

 

「そう!使用人が着るような物だったから王妃だった私には縁の無い物だと思ってたわ。

けど、やっぱり気になって着てみたら……もう見た目も可愛らしくてとても気に入っちゃったの!

そしてどうせなら外見じゃなくて、中身もメイドに見習おうと思ったわ、特にご主人様(マスター)から教えてもらった日本のメイド文化ってすんごく興味深かったですもの!」

 

あれ?俺どんな事教えたっけ?何か生まれたての雛の如く、俺の言う事を信じて新鮮に反応してくれるマリーさんが面白くて、色々あることないこと吹き込んだような……?

 

「せっかくなので、今日は王妃マリーじゃなくて、メイドのマリーになろうと思ったの。

メイドは自分が仕えるべき主に奉仕をする物なのでしょう?

このカルデアで主といったらあなたしかいないですものね、ご主人様」

 

「それでご主人様呼びか」

 

俺の呟きにその通りと言わんばかりに頷くメイドのマリーちゃん。

 

「何事もまずは形から入るのも大事よ♪

王妃として皆に尽くされていた私だけど、こうしてメイドになって誰かに尽くすのも何とも言えない気分になるものだし……」

 

そう彼女は胸に手を当てて、感慨深く、ほうっ……と溜息を吐いた。

 

どっちかというと尽くしていたのはあなたの方だった気もするけどね…………王妃か、国民か、どっちの方が奉仕してたのかなんて本人が納得していればいい話だろうか。彼女の場合、奉仕じゃなくて愛してただけよって言いそうだけども。

まぁ、それよりも今はちょっと気になる事がある。

 

「あらあら、そんなに熱心に見詰められると照れてしまいますわ……」

 

じいっっと今の彼女の姿を観察する。

白黒を基調とした定番のメイドの格好……。

くるぶしまである長いスカート……。

そして何より二房の髪が伸びている頭にはこれまたメイドの象徴であるヘッドドレス……。

うん、間違いなく美少女であり、美メイドだ。

だが。

 

 

「いつも頭に被っている大きいアレがマリーさんの本体じゃなかったのか……」

 

「ご主人様?」

 

「ひょうだん、ひょうだん、ほっへひっふぁらいないふぇ」

 

いつもと変わらない笑顔で俺の頬を引っ張っていくメイドさん。

だって仕方ないじゃないか、それだけあの被り物は印象的なんだもん。

 

「あなたがフランスで何故私と話す時にいつも目線を上にしていたのか理由がわかったわ」

 

「……実は頭のアレが急に喋ったり、ビーム出したりするのではと密かに期待していました」

 

「もうっ!そんな子供のような眼差しを向けられると期待に応えたくなってしまうでしょ!けど、帽子からビームは少し楽しそうだと思うわっ!

さぁ!お話の続きはベッドから出てからよ、おっきしなさいご主人様!」

 

と俺の下半身を隠していた布団カバーが強引に剥ぎ取られる。

あぁ、せっかく雑談でごまかしていたのに……待って今はちょっと違う所がおっきしてるから。

 

―――ガバッ!

 

「……あらあら」

 

と俺の元気な膨らみを見て感心するような声をあげるメイドさん。

そんな微笑ましいそうな眼で見るものじゃないですよ。

 

「生理現象というものかしら?まぁ、ご主人様も元気な男の子ですものね」

 

「いや、それだけじゃなくてマリーさんが目覚めにあんな強烈なキスをするのも原因だと思います」

 

勃つっきゃないでしょ、朝がけにあんな事された日にはさぁ……。

 

「けど、メイドがご主人様を起こすにはキスが一番だって……現にマスターだって起きたじゃない」

 

「いやそうだけど、そんな知識一体どこで」

 

「マスターがくれた本とか、ゲームとかよ。

メイドさんってすごいのよね!家事全般の仕事だけじゃなく銃器、刀剣の素手での格闘にも長けて……主の健やかな生活を守る為にありとあらゆる道を究めし者、人間の可能性の集大成、それがメイドなるものなのね。主の影にいる者の筈なのにあんなにキラキラ、キラキラ輝いているんですもの!私感動しちゃったわ!ヴィヴ・ラ・メイド♪」

 

あぁ、メイドに関する知識が凄まじく偏っているぅ。

過去の俺よ、純粋なマリー様になんて事を……。

 

「ええっ!ですからご主人様の性欲処理もメイドとしてきちんとこなさないといけないの!だから、少し失礼するわご主人様」

 

グッジョブ、過去の俺。

おそらく面白がってまともなメイドの資料を与えなかったのだろうが……その行いは今ここで実を結んだぞ。

 

微笑みながらも真剣な様子の彼女を邪魔するつもりはない俺は黙ってされるがままになる事にした。

 

「……ゎぉ、やっぱり大きいわね……ではいきますわご主人様……はぁむ」

 

ズボンを下げ、出てきた逸物に少々驚きながらもアイスを咥えるように亀頭から奉仕を始めていくマリー。

 

「んむぅっ、んじゅぅ…‥むぅ、んんぅ……じゅるるぅ……」

 

少しずつ、少しずつ……口をすぼめながら、顔を下げ、肉棒を舐めつくす範囲を増やしていくマリー。

 

「じゅるぅ、んんぅ……じゅぱぁっ……かたくて……すごい匂いよぉ……ちゅるぅ、ちゅっ、ちゅっ……れろぉっ……」

 

愛おしそうに横から竿をキスしていく彼女。

いつもはあんなに底抜けに明るく、汚れを知らなそうなマリーが今はメイドの格好をして、凶悪な形をした性器を熱心にしゃぶっているのがひどく俺の情欲を高めていった。

 

「じゅぼっ、じゅるぅ……んんむぅっ……はっ……れろぉっ……どうぞぉ……んぐぅっ、ちゅるっ……ちゅぱっ……だしていいのよぉ……すきなだけ……だしてください……ご主人様……じゅぽぉっ、じゅるっ、じゅるるるっ……!!」

 

先程のベーゼと同じく情熱的なフェラに腰が浮き、彼女に促されるまま精液が放たれる。

 

――――――ドピュッ!ピュルルッ!

 

「んんんんぐぅっ―――!!んんっ!んぐぅっ!ぐぅっ……ふっ……んぐっ、んぐっ……ごくっ……ごくっ」

 

主から与えられた物は一滴も零さないという彼女のメイド道とやらの考えた方なのか、喉に絡みついてくる筈の精液を嫌そうな顔をせず……そのまま全て飲み干した。

 

「こほっ……んっ、んんっ……っはぁ……さぁ、立ち上がってくださいご主人様…着替えの時間ですよ♪」

 

さっきまで口淫をしていたなんて一切感じさせないキラキラした笑顔でいた。

なるほど……これがメイドたらんとする者の余裕という奴なのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さてさて……食事の時間という事で、当然、メイドさんの彼女が料理を用意してくれました。

 

目の前にあるのはオムライス、しかもケチャップでハートの中にマスターとは……中々にベタな。

 

「メイドの料理といえば、やはりオムライスでケチャップで飾り付けが基本で御座いますよ、ご主人様」

 

と改まった口調で話すメイドのマリーさん。

やっぱり知識がちょいと偏っているにゃあ……メイド喫茶的なアレやもん。

まぁ、オムライス好きだからいいんだけどさ、旗が刺さってるのとか。

 

「それでは、最後はおいしくなるおまじないをかけていただきますわ」

 

あぁ、ここまでベタだと当然それもやるよね。

 

「おいしくな~れ♪ヴィヴ・ラ・メイド♪あーんど、ちぃーす!」

 

「ちぃーす!」

 

「「いぇーい♪」」

 

とまぁ、萌え萌えきゅーん的なハートをかたどった両手をこちらに向けられたので、俺も対抗して両手を突きだし、二人でよくわからない呼応する。

 

……なんだこのノリ、愛おしいほどに楽しいのですが、なるほど、これがメイドと主の正しい関係という奴か(違う)。

 

「さぁ、召し上がれ」

 

ニコニコと笑うメイドさんに促されるままオムライスを口に運ぶ。

……うん、普通においしい、特に卵に砂糖を使っているのが実にグッド。

 

「俺の好みドンピシャでおいしいよ、マリー」

 

「それは良かったわ!……ご主人様って甘い物好きですものね!」

 

「よくご存じで、けど、それを差し引いても店で出せるクオリティだよ。

『メイド喫茶 Chaルディアット』的なの出せそうよね」

 

「まぁ!メイド喫茶!そしてその店名もなんて素敵なのかしら!

ふふっ、カルデアの娘達でやってみるのもいいかもしれないわ、当然私はメイド長よ」

 

いいねソレ、うちの娘達は皆レベル高いだろうし、様になるだろうな。

料金も搾取できそうだし……グヘヘ。

 

「ふふ、マスターがいつかジャンヌとデオンの二人を召喚してくれたら、すぐに着させてあげたいわ!絶対似合うもの!」

 

「ぜ、善処します(震え声)」

 

「がんばれ♪がんばれ♪ご主人様♪」

 

マリーさんに応援されたら頑張るしかないじゃない。

があぁ……搾取されるのは俺の方だったか。

 

 

ともあれメイドさんと楽しい雑談を挟みつつ、御馳走様をして食器を片付けさせてもらった。

 

「お粗末様でした……さぁ、ご主人様、食事の後はゲームの時間でしてよ!」

 

握りこぶしをこちらに向けるマリー。

何?ステゴロでもするの?

さすがの俺でもメイドさんには手を上げたくないんだけど……。

 

「確かマスターの国では食後にメイドと主がジャンケンをするのが習わしって聞いたわ。

そして主側の方が勝ったら、メイドからのご褒美がもらえるって」

 

まぁ、ある意味では間違っちゃいないかもしれんが。

 

「ご褒美とは?」

 

「う~~ん……そうね!もし私が負けたらマスターの言う事を何でも聞いてあげるわ!」

 

ほう、何でもときましたか。

 

「いいのかい?俺はことジャンケンにおいては生涯無敗と言ってもいいんだぜ」

 

「えぇ、マスターの強さは邪ンヌから聞きましたわ、一回も勝てなかったって……確か、野球拳とか何とか」

 

「………………Oh、あの娘とそんな事話すほど仲良かったっけ?」

 

「フランスの件を気にしてたのか、召喚されてから何やらこちらをチラチラ気にする様子があったのだけれど、

お話したいのかしら?と思って近づいてもすぐに逃げてしまうのよ。とても骨が折れたわ……」

 

猫かアイツは。

 

「それでも根気よく続けて、ここ最近では一緒にお酒を嗜めるぐらいには仲は深まったわ。

邪ンヌったらアルコールが回るとどんどん口が軽くなるのよ。やれ、‘マスターは馬鹿だとか非常識だとか、夜は獣だとか‘……」

 

「あぁ、それ以上は言わないでもいいです、主にあの娘の名誉の為に」

 

野球拳で裸にひん剥かれたなんて、普段の邪ンヌなら口が裂けても言わないだろうにね……。

いやだって勝負事なら彼女面白いぐらい釣れるんだもん、俺は悪くない、そして邪ンヌはおいしくいただきました。

 

「生涯無敗と聞いたら、尚のこと引けなくなったわ!相手が強大な程、私のメイド魂が輝き続けるのよ!」

 

「メイドデビューしたの最近でしょ?」

 

「メイド魂に長さは関係ないわ!さぁ、私があなたに初めての敗北をプレゼントしてあげる!咲き誇るの、踊り続けるのよ!いきますわよ、ご主人様!じゃんけ~ん……」

 

何故か、こちらの目が眩んでしまう程にノリノリな彼女、メイド魂とは一体なんぞ?

しかし、()()()が貰えるならこちらも全力でやろうかね。

 

 

「「ポン!!」」

 

 

マリーがグーで、俺がチョキ

 

「やった!私の勝ちよ、ご主人様!」

 

嬉しそうに自分の勝利を確信するマリー。

 

……ふぅ、考えが甘いな。

覚えておけ この世には石をも断ち切る鋏があるということをッッ!!

 

「え?」

 

彼女のグーの形をした小さい拳をチョキを表す俺の二本指が鋏み込む!

 

「いたたたたっ、いたいわ!ご主人様!」

 

マリーは思わず、手を開いてしまう。

 

「はい、俺の勝ち」

 

マリーちゃんがパーで、俺はチョキ。

 

「ほら、な?」

 

「えええぇぇぇ~~~……」

 

言ったやん、生涯無敗って。

勝ち筋はこのパターン以外にもたくさんあるのよ?

邪ンヌの時はジャンケンしてない片手でひたすらセクハラしまくって、集中力を乱しまくっただけだし。

勝てば、ゲスでも官軍じゃあ。

 

「……そう、これが敗北なのね。ただジャンケンをすればいいという私の認識の甘さが導いた結果ね、これは」

 

悟ったような表情をしているメイドさん。

うん、実践した俺が言うのも何だけどジャンケンでこんな手でくる奴なんていると思わんよ普通は。

 

「そもそも、サーヴァントの私がマスターに力負けした時点で言い訳の余地はないわね……では、ご主人様……どうぞこのメイドを好きになさって下さいな、如何様な命令も受け入れてみせますわ……」

 

何と堂々とした姿か、格好はメイドといえ、思わず平伏したくなるような神々しさが今の彼女にあった。

しかし、勝負事の結果を反故にすることは出来ない。

俺は不本意ながらも……彼女に主として命令しなければならないのだ……くっ!

 

「じゃあ、スカートをたくし上げてもらおうか、下着が見えるくらい」

 

迷う事ない、どストレートな俺の命令に少々困惑しながらも言う事を聞いてくれるマリーさん。

 

「…………え、えぇ、わかったわ」

 

彼女が着ているメイド服って絶対領域すら見えない程スカートが長いからさ、その中身を見たくなるのは男の性というものじゃん?

 

「……これでよろしいでしょうか?ご主人様?」

 

彼女は少し頬を染めながらも、長いスカートの裾をつまみ、肩の位置まで持ち上げた。

マリーを象徴する純白のショーツ、同様に白い太ももが眩しい。

 

これは……中々に扇情的だ。

上は未だ変わらずメイドの格好なのに下半身は曝け出されている。

何より、それを彼女が羞恥に染まった表情で行っているのがエロ過ぎる。

 

「これから何があってもその手を降ろしちゃ駄目だよ、マリー」

 

俺は息がかかるぐらいに彼女の股へ顔を近づけた。

 

「あぁ、これが主人からの新人メイドへのいびりというやつなのね……けど、負けては駄目よマリー……私はメイドですもの、ご主人様からされる事は全て受容すべきなのよ……心は毅然として……ヴィヴ・ラ・メイド……」

イド……」

 

何やら、メイドという役に酔ってそうな感じはするが……ふむ、それなら俺も()()()()()()()()()()()という役に徹するかね。

 

指の腹をパンツ越しからちょうど割れ目にあたる部分で上下にスライドさせる。

 

「くふぅっ!はぁ、あぁ……んぅ……」

 

手はそのままで自身の頭を彼女の顔と同じ位置まであげる。

両手は命令通りに塞がっているマリーに抵抗する術はない。

 

「どうした、マリー?メイドなのに主人の手でそんな淫乱な反応してしまっていいのかい」

 

「……はぁっ、お戯れをぉ……ご主人様っ、んふぁっ……淫乱な反応など、してぇ……あぁ!やぁぁ!」

 

「ほら、手が下がってきているぞ、主からの命令を破るつもりかい?」

 

互いに役に成りきりながらも今の状況を楽しんでいる様子だった。

次第に柔らかい恥丘を弄んでいると、だんだん湿ってきたのが下着の上からでもわかった。

 

「主人の手でこんなに濡らしてしまうとは……はしたないメイドだ」

 

「あっ、んふぁっ!……やぁっ……お、許しをぉ、んんぁっ……ご主人様ぁぁ……あんっ…はぁぅ!」

 

恥ずかしさで顔を逸らした彼女だったが……その隙にパンツを膝下までずり下ろすと、目を見開きこちらに振り返った。

しかし、その様子を俺は気にする事はなく、体を屈め、隠すものがない秘部を観察する。

 

「んんぅ……どうして……こんな仕打ちを……あぁ!だめぇっ……いじらないでぇ!はぁっ……!」

 

俺が入り口の淫裂を肉びらのフニフニと撫でながら開いていくと綺麗なピンク色の中身が暴かれていく……既に湿っているので水気で光沢が出ているようにも見えた。

そのおいしそうな膣内に俺が舌を入れていくと……。

 

「あああぁ!そんなぁ……したでぇ、んくぅっ!……や、やぁぁ……だ、めですっ、あんっ!……ごしゅ、じんさまぁっ……なかをかきわけちゃぁっ……はああんうっ!!」

 

膝をガクガクと震わせながらも俺の命令通りにスカートをたくし上げたままなのはメイドとしての矜持なのだろうかと感心する。

自身の舌をまるで性器のように彼女の肉壷の中を挿し入れしていく。

 

「はぁっ、ぁくぅっ!……もうっ、おやめになってくださぁ……ひやあぁっ!あふぁっ……あ、はぁ、あぁ……!じゅるじゅるってぇぇ……んんうううぅ!」

 

クンニをしている内に漏れ出してくる愛液も音を立てながら吸い出していくとどんどん反応が大きくなっていく。

そろそろ彼女も限界かなと思った俺は。

 

「ほら、主からの命令だ……イッていいぞマリー」

 

ピンと膨らんでいるクリトリスに強くキスをする。

 

「っぁぁああああぁっ―――――――――!!!…………やああぁっ!!ひくのがとまらなひぃっ!!んくぅっ……ぁぁっ、はっ……」

 

ぎゅうっとスカートの裾を強く握りしめながら、潮を何度も俺にかけてしまっている彼女はいつもの麗しい様子とはかけ離れていたが、それでも俺に命令された事は忠実に守り、膝すらつかなかったのは称賛に値するだろう。

 

「……ぁぁっ、はぁっ、はっ……」

 

放心状態なのか、小さく呼吸を繰り返す彼女から半脱ぎ状態だった下着を脱がす。

 

「さて、と……マリー、今度は壁際に立ってお尻をこちらに向けてもらえるかな。手は当然そのままで」

 

下半身が完全に丸出しだが、それでも今の自分はメイドだから、主の命令には背くわけにはいかないとばかりに彼女は従順であった。

 

丸いシミ一つない珠のようなお尻をこちらに向けている彼女は……俺がズボンの中で熱くなっていた肉棒を出すのを見て察したようだ。

 

「あぁ……いけませんわ、ご主人様……こんな姿……奥様にでも見られてしまったら……」

 

奥様って誰やねんと思ったが、そういう設定なのだろう、せっかくなので俺もノらせてもらおうか。

 

「安心したまえ、アレはもう寝ている時間だ……メイドの君が気にする事はない」

 

「奥様への酷い裏切りですわ……ご主人様……二人はあんなに愛し合っていたというのに、私のようなメイドに欲情して……」

 

「家内とは今でも愛し合っている、だがそれ以上に君の体が魅力的なんだ。ただそれだけの話だろ?」

 

しかし、演技とはいえ、清廉潔白の代名詞といえる俺がこんな悪どいセリフをぽんぽん出せるとは……もしかして俳優の才能があるのかもしれんな。

 

「それに君のここはこんなに期待しているぞ?」

 

硬く滾ったアソコの先端を濡れそぼった彼女の膣口に焦らすように擦らせていく。

それだけでも、堪らないようにマリーは背筋を震わせる。

 

「あ!……そんなぁことっ、んぅっ!ひやぁ……だめですっ……ご、しゅじんさまぁ……それいじょうはぁっ……」

 

「ここには君と私の二人しかいない。私達が黙っていれば済む話だろう?

そして君はメイドだ、主人の命令には逆らえない……なに、深く考える必要はない。君は与えられる快感をただ享受すればいいだけ、これも主に対する奉仕だよ」

 

さしずめ、今の俺達は主人とメイドの禁断の関係といった所か。

ゆっくりと力を込めて、彼女の膣肉を掻き分けて……奥へ進んでいく。

 

「んくあっっ!あぁっ……はっ!あぁ!お、許しをぉ……おくさまぁっ……わたしはぁっ……あんうっ!はあぁ!」

 

快感に翻弄されつつも、詫びるように涙を流すメイドの姿が目の前にあった。

……うん、ちょっと演技がガチ過ぎるぜ、マリーさん。

 

「口であれだけ言っても、ナカは欲しがるように私のモノを咥え込んでいるぞ」

 

肉棒を包んだ膣壁がギュウギュウとうねっていく。

彼女の華奢な背に覆い被さり……耳元に口を近づけ、呟くとどんどんナカの具合が良くなっていく。

 

「ああ!あっ!あぁっ!やぁっ!言わないでぇ……くださ、いぃ……はぁんぅっ…!」

 

裾をつかんだまま、両手を祈るように重ね合わせる彼女を壁に押し付けるように腰のストロークをどんどん速くする。

 

「んんぅ!んあぁ!……ひいぁっ!やぁっ!いけないのにぃ……ふあぁ!……私、どんどんぅっ……やあっ!奥、ノックしないでぇっ……ああぁっ!」

 

柔らかく小さいマリーの臀部にパンパンと音を響かせながら叩きつける。

快楽で開いた彼女の口に指を入れながら、言葉でもどんどん責めていく。

 

「上の口も下の口も、こんなにだらしなくしてしまって……私はいつからこんな破廉恥なメイドを雇ったんだろうね?さぁ、自らの言葉で今、どのような気分か言うんだ、マリー」

 

「あぁっ!……ひもちいいっ……ひもちいいのぉっ!子宮にキスひゃれちゃうとぉ……ああぁ!はっ……!ぁぁやっ、おかしくなっひゃうのっ……んはあぁっ!」

 

鈴を振るような彼女の声がどんどん嬌声で染められていく、口調もメイドではなく、地のマリーが出るほど今の彼女は与えられる衝撃に余裕が無いのだろう。

 

「はぁっ!ああぁ!やあっっ!いっちゃうわぁっ!あっ、あぁっ……いく、いくぅ、いくぅっ!んんんあぁぁぁっっ……!!!ああぁぁぁっ!はあぁっ!!」

 

中の締まり具合がキツくなり、体を大きく伸ばしている様子を見る限り、達してしまったのだろう。

大分、敏感体質な彼女……残念だがこっちはまだイッてない、当然腰の動きは継続したままにさせていただく。

 

「ひくぅっ!!、ま、まって……イッたばかりでぇぇ……はぁあんぅっ!あ!あぅ!はぁっ!んああぁ!!」

 

「主人より先にイクような堪え性の無いメイドにはおしおきだよ、マリー」

 

「あっ!あぁ!はあっ……!んひぃっ!ごめんなさいぃっ……!はぁ!……だって、気持ちいいからぁぁっ……ああんぅっ!!」

 

どうせならと、俺は全身を痙攣させてる彼女の胸に服の下から手を潜り込ませ……器用にブラジャーの下に到達すると、やや小振りな乳房を手で包み込む。

せっかくのメイドさんだ、脱がせるなんて無粋な事はしない。この姿で犯すからこそ意味があるのじゃ。

 

「んくうぅっ!!やぁっ!そこぉ……つままないでぇっ……はんっ、あぁ!……頭がまっしろにぃ、あぅ……ふうあぁ!!」

 

「乳首もこんなに硬くして、ナカも締め付けて、口からははしたない声が漏れて……これはもう君も言い訳の余地が無いんじゃないかい?」

 

二本指で興奮した乳頭を挟みつつ、手はその柔らかな胸の揉み心地を堪能する。

俺の揶揄するような台詞に彼女の興奮がどんどん高まっている気がした。

 

「ああぁ、はぁうっ、ひぃぁ……!!ちがうわぁっ……こんな反応は私はぁっ……んんうっ!!あぁ、けどぉ……そこイジられるのぉ……あん!好、きなのっ……やあぁぁっ!!」

 

もう自分でも何を言っているのかわからない程に今の彼女は混乱と快楽の極致にあった。

俺はマリーを壁に押し付けるように腰をどんどん突いていく。

 

「さぁ、マリー……どこに出して欲しい?」

 

「ぁぁ、んぁっ!……わ、たしはぁっ!」

 

何かを耐えるような彼女に俺は説得するように、洗脳するかのように、言葉を紡いでいく。

 

「今の君は俺のメイドだ、何も我慢する必要が無い。

主の私が正直に答えて欲しいと命令してるんだ……それに応えるのがメイドとしての正しいあり方だよ。自分の気持ちに素直になってくれ、マリー」

 

「…………へっ」

 

「ん?」

 

「なかへっ……!なかへ出してくださいっ!!……ご主人様の熱いモノを……この卑しいメイドのなかへらしてくださいぃっ!!!」

 

「良い娘だ」

 

その言葉を合図として俺はマリーのお尻を掴みながら自身の滾った欲望を全て注ぎ込んだ。

 

――――――ドピュッ!!ピュルルッ!!

 

「んんんんんぅぅっ――――――!!!ああああぁぁぁぁっ…………!!!

……んぅっ!んはぁっ!……ぁぁ……ご主人様のがドクドクってぇ……私の奥でぇっ……はぁんっ」

 

そして、ついにメイドのマリーは全身の力が抜かれたように膝をついた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私マリーさん、今あなたの隣にいるの」

 

「見ればわかるよ」

 

一日の終わり、ベッドに入り、俺は心地よい疲労感もあり、就寝しようとしていた。

……何故かメイドさんの添い寝というオプション付きで。

 

彼女曰く、おはようからおやすみまで主人の生活を見守ってこそのメイドらしい。

まぁ、こうあやすように彼女に抱きしめられると花のような香りもあって良く眠れそうだが。

 

「あぁ~~……駄目になりそう~メイドのマリーさんに溺れそう~」

 

マスターを駄目にするこのメイドに甘えるように強くハグをする。

 

「あんっ、もう……あんまりだらけ過ぎるといくらメイドの私でもメッしますからね、ご主人様。

でも、ご主人様(マスター)はいつも頑張ってますし、今日ぐらいは駄目になってもいいと思うわ♪」

 

そこまで頑張っているつもりもないし、ALWAYS駄目マスターな気もするが……そう言ってくれるなら御好意には甘えましょうか。

 

「……けど、そうねぇ……」

 

「まぁ、あれだね……」

 

おそらく二人とも先程の交わりを思い出しているのだろう。

 

「「アレはすんごくゾクゾクした(わ)……」」

 

重なり合う感想

 

「うん、イケない事にこそ惹かれてしまう……禁忌にこそ触れてしまう気持ちがわかった気がするわ」

 

「俺達、どっちとも完全に役に成りきってたしね……それにあなたのメイドの格好も絶対プラス作用していたよ」

 

「マスターもメイドを苛めるご主人様役、すごく似合っていたわ……私ったらあんなにはしたない言葉を叫んでたなんて今でも信じられないですもの……くせになっちゃいそう」

 

「「…………」」

 

「ねぇ、マスター?マスターが少し疲れて、休みたいなーと思ったら……またメイドの私が癒しに来てあげるわ」

 

「いいの?」

 

「え、えぇ……だって主に尽すのもサーヴァントの務めじゃない?

決して、メイドの格好でマスターとああいう事がしたいワケじゃないのよ?」

 

「そっかー、じゃあまた休みたいと思ったら頼んじゃおうっかなー」

 

「それがいいわ!あぁ、けどあんまりスパンが短い事とか気にする必要は無いわよ!ま、マスターが私を欲しいと思ったらいつでも頼んでもいいんだから……」

 

楽しそうに何かを期待するような彼女の表情を見ながら

メイドのマリーさんを呼び出すのは次はいつになるかなーと考える俺だった……。

 

 

 

 

 




「邪ンヌ!…あなたの言う通りマスターったらジャンケンがとても強かったわ!」

「はぁ!?私があれだけ忠告したのに挑んだの!?この馬鹿王妃!
……それで、な、何枚脱いだのよ……?」

「?、脱がされたのは1枚だけよ」

「え?何よそれ、まさかアイツ……相手が王妃だから手抜いたってワケ?」

「ご主人様ったらすごいのよ、パンツが無いメイドの格好をした私にスカートをたくし上げるように命令して……言葉でも、あんな所でも激しく責められて……私壊されちゃうと思ったわ……はぅ」

「やっぱりか!あの野郎!
相手が誰であろうとも容赦無しじゃない!
ってか何よその色んな要素てんこ盛りのプレイの内容は!?」








ヴィヴ・ラ・メイド!
通常マリーとメイドマリーって大分印象変わりますよね
そもそもマリー自体の見た目が美少女の権化というか、どんな服を着ても似合いそう。
キャラクエ見る限り、オルタマリーの可能性もありますし。

メイドマリー
オルタマリー
着物マリー
成長した巨乳マリー
マリーの数だけ夢が広がリング、
ヴィヴ・ラ・マリー!!

二人ともノリノリだったね、まぁどっちも演技派だし……役に入り込むのは仕方ないもんね。



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鬼っ娘モンスター(酒呑童子)

『Hello Kids!
 キミはもう、たっぷりサーヴァントつかまえた?
 サーヴァント全部つかまえたキミも、まだまだのキミも、
 《ガチャを回せるかな?》に挑戦だ!
 How's your money rolling today!』

という夢をみた。今回の話とは特に関係はない。







少しずつ増えていくタグ。



誰が相手でも勝負事である以上、手を抜くワケにはいかない……例えそれが仲間だとしても、俺は全力を尽くすだけなんだ!

 

 

「いけ!アタランテ!『おんがえし』!!」

 

「くそあぁっ!!俺のゴールデンが!!」

 

現在カルデアの休憩室にはレザージャケットを着た金髪サングラスの男と白い魔術礼装を着たマスターの姿が。

大の男二人が叫びながら、ピコピコとゲームをしている姿は中々にシュール。

 

「大将、そろそろメガガル以外の奴使ってくんねぇか?俺何回3タテされればいいんだよ……」

 

「金時っちがもう少し、まともなパーティは使えばいい話だろうが、全員電気タイプて何やねん」

 

日々、黒髭と孔明先生の廃人プレイヤーと渡り合っている俺にさすがにそれだとねぇ。

 

「悪いがぁ……そこは譲れねえんだ、ゴールデン的に俺のサンダーパーティはこいつら以外いねぇからな!」

 

「浪漫パ過ぎんよ、俺もネタパにするかね……」

 

けど、やっぱり勝ちたいお年頃だからガチパになっちゃうの。

勝利、この俺が求めるのは勝利……ただそれだけよ。

 

「ってか、さっきのメガガルに『アタランテ』とかは百歩譲って良いとしてもよぉ。ミルタンクに『らいこー』とかアーボックに『きよひめ』ってニックネーム付けるのちょいとデンジャラスじゃねえか?本人達に見られたらどうすんだよ……」

 

「一匹、一匹に愛情込めたニックネームを付けるのはトレーナーの基本だぜ、金時ボーイ。まぁ、頼光ママなら普通にあらあら、まぁまぁで済みそうだし、それにきよひーは知ってるどころかたまに一緒にプレイしてるぞ」

 

「大丈夫なのかよ?それ」

 

「いやぁ――、彼女ってすごいよね……主人公は当然女の子にするのかなーと思ってたら、男の子にして俺の名前付けてさ。

そんで捕まえるの、捕まえるの……みーんな♀なの、そして名前は全員『きよひめ』」

 

「…………」

 

「『あぁ!旦那様が私を捕獲してペットのように扱い、命令してるなんて!いけませんわ!旦那様!こんな外でなんて…あぁっ!ダメ!タッチペンでそんな所突かないでぇっ……』って悶えながらプレイしている様を見てるとさぁ……こう、ゲームの闇を目の当たりにした気分みたいな?」

 

「業が谷底より深いじゃんかよ……あのヒートガールもよぉ、大将に……なんつーか……ま、まぁ()()される前は純情だったんだろ?」

 

()()?セックス?」

 

「ぼかしてたのにどストレートに言いやがったな!アンタ!」

 

これは失敬。

 

「今まで溜めに溜めてた欲望が爆発してる感じだろうねーきよひーは。本人楽しそうだしあれでいいと思うけど」

 

仮に被害があったとしてもそれは大体俺の方にくるわけだし。

 

「懐が広いというか、アルテミィット節操無しと言うべきなのか……まぁ、大将が納得してんならいいさ。それに一つ確認したい事があったしな」

 

「うん?またレイシフト使って、一緒にブッこみツーリングでもしたいの?」

 

峠でも攻めちゃう?バベッジ博士とテスラ博士に作ってもらった俺のモンスターマシンが再び火を噴くぜ?

 

「おぉ!この間の大将との旅はデンジャラスに楽しかっt……その話じゃねえよ。ほら、大将ここ最近、酒呑の奴と結構飲んでんだろ?」

 

「イエス。彼女ってまだここでは新参者だし?相互理解ってのは重要じゃん?」

 

酒呑が出す果実酒ってのも中々おいしいし。

彼女に限らず、美人さんにお酌されるってのはやっぱり乙なもんなのよ。

 

「大将が人の身でありながら強えのは十分承知の上だ……だがそれでも酒呑とサシで酒を飲むのは危な過ぎんぜ……。令呪の縛りがあるとはいえ、そこはもうアイツの土俵なんだからよ」

 

「いつ寝首を掻かれてもおかしくないと?」

 

「マスターであるあんたはあんまりこういう事を思いたくねぇかもしれねぇが……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

確かに酒呑のヤローはあんたをエラく気に入ってんだろうが、それでも……いやだからこそ、テメーで好きなモンを突然壊しちまう。それが鬼って種族なんだよ、前にも言ったかもしんねぇけどな」

 

……ふむ、至極ごもっともな意見だ。

 

「なぁ、金時。ここにいる娘達ってまぁ何だかんだで俺に好意的じゃん?それは男冥利に尽きるし……俺自身も嬉しいから、もちろん不満を言うつもりなんて一切無いよ?」

 

「おう、確かにそうだな。たまに部外者の俺でも胃が痛くなるようなデスクールな修羅場も目撃するが……」

 

 

――――――まぁ、だからさ

 

 

「こう、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ーって」

 

「…………」

 

ドン引きしている空気を感じるが、それでも俺の口は構わず言葉を紡ぐ。

 

「ほら、傍らで身の危険を感じるとさ、自然と心も引き締まるというか、むしろスリルがあってゾクゾクするというか……」

 

なんだろうな言語化するのが難しいね。どうすれば伝わるのやら。

例えるなら……ほのぼの学園アニメだと思ってたらパニックゾンビ物だった。

スローライフまったりゲームなのにタランチュラとか蠍が襲い掛かってきて自宅に強制送還されてしまった感じと言えばわかるかしら?

……日常のちょっとしたスパイス的な?

 

「そういった危険な魅力を持った彼女が隣にいると、俺も楽しいのよ。つい酒が進んでしまう程にさ。うん、日々の生活に新鮮さってのも大事じゃない?」

 

別に死にたいワケじゃないですよ?まだ子供の顔だって見れてないもん。

それに酒呑ちゃんも大丈夫だよ、多分(適当)。

 

「…………っあ―――……そういや、忘れてたわ。大将がそういう奴だって、思考回路がバーサーカー並にクレイジーじゃんよ」

 

冷や汗を流しながら何とも言えぬ表情で口を開く金時。

 

「俺が鬼おっかねぇと思ったのは頼光サマを入れて、あんたで二人目だ」

 

マジで?へへっ、そりゃ照れるなぁ。

 

「いや、手放しで褒めてるワケでもねえんだがな……まっ!大将はいつだって自分のやりたい事にアクセル全開だったか!

羅生門でも鬼ヶ島でもマスターだってのに嬉々として前線に出てきたしなぁ!」

 

「だって後ろで指示出してるだけじゃ、暇なんだもん」

 

俺だってどこかの某スーパーマサラ人みたいにアグレッシブに動きたい気分にもなるのよ。いかんかね?

 

「本当に子供みてえだな、あんたは」

 

呆れながらもどこか納得したように息を吐いた金時を見ながらそんなに子供っぽいかなー……夜に関しては一部の方々から色んな意味で大人だと定評があるのになーとどうしようもない事を考えていると……休憩室のドアが開いた。

 

――――――シュウンッ

 

「あぁ……旦那はん、こんな所におったんか」

 

いつも通りの着物の体を成してない露出度満載の格好の酒呑童子が入ってきた。

 

「げっ」

「ハロー、酒呑さん」

 

「なんや、金髪の小僧も一緒やったんか……もう、旦那はんは酷い人やねー、うちが夜のお誘いするってわかってんのにこんな所でコソコソしとるんやもん。

なんなら、金髪の小僧もこれからうちらと一緒に飲むか?」

 

「酒とてめぇの最悪の組み合わせで首を縦に振ると思ってんのかよ。

それに今の俺は尚更、酒はNGだ!飲酒運転ダメ!絶対!」

 

いつのまにかゲームも懐にしまい……帰る準備満々なライダー金時は、

 

「っつーわけでよ、大将!一応俺の忠告は頭の片隅にでも入れておいてくれよっ!

後、ツーリングの話はまた今度な!!」

 

言いたい事だけ言って、風のように部屋から出ていってしまった。

さすが敏捷B+、動きが速いのう。

 

「忠告ぅ?なんや、二人で何の話しとったん?」

 

ニヤニヤと笑いながら俺の隣にすり寄っていくる彼女。

相変わらず仕草の一つ一つが色っぽいですね。

 

「う~ん……内緒」

 

「男同士の秘密ってか?かははっ、まぁええわ。

こないな所じゃなくて、場所を変えてもっとええ所で呑みましょうや旦那はん」

 

腕と指を絡められながら、耳元で囁かれる。

声もエロさの化身っつーか、何というか……しかしこんな時間になってるのに気付かなかった俺にも落ち度があるし、断る理由もないのでされるがままに。

 

「そもそも大の男二人が小さい玩具でピコピコなんてせえへんで、お外で遊ぶべきだとも思わん?」

 

「まるで頼光さんみたいな事言うn……」

 

――――――ギリギリギリッ!

 

痛い、痛い……そんなに握り締めないで下さぁい。

 

「堪忍なぁ。よく聞いとらんかったわぁ、それで、まるで…………なんやって?」

 

「まるで華の如く、可愛らしゅうと思ってた所で御座います」

 

「やんっ、もう……そないに褒めても何もでえへんよ、くくく、ほないきましょか」

 

あー、はいはい一人で歩けるから、そんなに引っ張らないで下さいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宴会に使うような大きい一面畳の一室……すぐ傍の襖は開いており、そこからは今にも落ちてきそうな満月と夜空が見えていた。

俺達はどこか非現実的を感じさせる場所で飲んでいた。

 

「しゅみーれーしょんとか言う奴やったけ?

本物には遠く及ばへんけど、まぁ、狭っ苦しい所で飲むよりは風情があるんとちゃいます?」

 

彼女の言う通り、当然本物ではなく……酒呑童子のお願いでロマニが彼女の要望近くに出来る限り再現したものらしい。

最近なんかパシリ根性が身につき過ぎじゃないっすかね?Drロマン。まぁ似合ってるけどさ。

 

「大江の山でもこんな感じやったなぁ……茨木とたくさんの鬼共と一緒になって好き勝手暴れて……毎日宴会のように呑んどっとわ」

 

胡坐をかいている俺の股の間に定位置とばかりに子供のようにすっぽり入り込んでいる酒呑は懐かしむように呟いていた。

 

「……おや、旦那はん。赤漆の中が空になっとるわ、気が利かなくて堪忍なぁ……ささ、もう一杯」

 

「ありがと、君は飲まないのか?」

 

瓢箪からトクトクと注がれながらも、俺は彼女に問いかける。

 

「旦那はんが飲んどる姿で十分って言いたい所やけど……うぅ~ん、それならあんたはんが呑ましてぇや」

 

「味を占めたな。鬼っ娘め」

 

こちらを見上げて口を開け……ねだるように舌をべぇっと出す彼女に先程、注いでもらったお酒を少し口に含ませ、唇を交わす。

 

「んぅっ……」

 

いつからか、偶に彼女はこうやって口移しで酒を飲ますのを求めてくる。

俺の反応を楽しむ為なのか、からかう為なのかはわからんが……俺自身も別にこの程度なら今更躊躇する理由もないので普通に応えてあげてる。

 

「……んぁ、ちゅぅ……じゅるぅ、こくっ……っれろ……んむぅっ……んくっ、じゅむぅっ……っぷはぁっ……ふふっ甘露、甘露、おいしおすなぁ」

 

舌の通り道をつたっていく酒を嬉しそうに喉を鳴らしながら飲んでいく。

まぁ、酒だけじゃなくて舌とか唇とか歯茎とか色んな所もついでとばかりに舐め尽されるんだけどね。

 

「しっかし、旦那はんはいくら飲んでも酔わへんねぇ……べろんべろんになった姿も見たいわぁ」

 

「酒は飲んでも、呑まれるな。楽しく飲むのが信条なのでね。せっかく隣にこんな美人さんがいるんだ、意識を失ったらもったいないじゃない」

 

「あはは!ほーんまに口が上手いんやからぁ……その手管で何人の女子を堕としてきたん?」

 

「うーんと20、30……ってまてまて、堕とすなんて人聞きの悪い。皆様とは良い関係を続けています!」

 

おっと、口からよろしくない事が漏れそうになった……これも『果実の酒気』のスキルのせいかっ!おのれ!この俺を惑わすとは何て奴だ!え?責任転嫁?何の話です?

 

「うふふ、旦那はんのそういうノリの良い所も好きやよ、どうせならもっと酔って、色々と口を滑らせて欲しい所なんやけど……」

 

「酔わなくても、酒呑が望むなら……別に口を滑らせてもいいんだけどさ、ってかもう俺も色々と話ちゃったと思うよ」

 

酒の席の度に『旦那はんのお話聞きたいわぁ』って言うからさー、もう大体は話ちゃった気もするけど。

 

「そうやねぇ、なら一つ訊きたい事があったわ……旦那はんって何の為に世界を救おうとしてるん?」

 

俺に抱っこされたままの彼女はほんの少しだけ真面目なトーンだった。

 

「おや?それを俺に聞いてしまいますか」

 

「旦那はんって鬼畜やけど、悪党って感じはせえへんし……かといって見ず知らずの世界の皆を救う為に俺は戦うんだーって感じの聖人君子ってワケでもないやん?

そんな人間一人が世界を救うって重荷を何の為に背負ってるんやろぉなぁって、ちょいと気になってな」

 

鬼に鬼畜と言われた(悲しみ)、自分はこんなに優しさに満ち溢れているというのに。

 

しかし、何の為ですか……まぁ答えは決まり切ってるんだが。

 

 

「俺は自分が好きな物、楽しい物、面白い物の為に戦ってるだけだよ。

具体的に言えば、このカルデアの皆と一緒に好き勝手するのが楽しいから。

ぶっちゃけて言えば自分の為」

 

生憎、俺の器は小さいからね、世界なんて入るわけないじゃないですかヤダー。

 

「世界滅びたら、そんな一日も終わっちゃうでしょ?

自分は今日一日楽しんで、明日も何しようかなーってワクワクしている所をさー。

どっかの誰だか知らない黒幕が横から『もぅマジ無理。愛人達とゎかれた。ちょぉ大好きだったのにぁたしのことゎもぅどぉでもぃぃんだって。

どぉせぁたしゎ湧きあがり、否定し、痺れ、瞬き、眠りを妨げる、爬行する鉄の王女。絶えず自壊する泥の人形 。誕生の時きたれり、其は全てを修めるもの ――――アルス・アルマデル・サロモニス』

みたいな感じで世界終了!ってなったらやるせないじゃん?」

 

「……あぁー、うちもさすがにそんな頭スイーツ小娘みたいな世界の終わり方はごめんやわぁ」

 

「そっ、どうせ死ぬなら自分が納得する終わり方がいいからさ」

 

納得は全てにおいて勝るっ!ってどこかの誰かが言ってたもんね。

 

「んぅっ……あの旦那はん?シリアス顔なのはええけど、なんでさっきからうちの脇腹擦っとるんやぁ?……ぁんっ……」

 

いい位置に柔肌があったのでね、フニフニと触ってしまうのは男の性よ、是非も無し。

 

「唐突な自分語りは恥ずかしかったので誤魔化したくなったの、許して?」

 

それでも手の動きは止まらない。

違う!俺の手が悪いんじゃない!酒呑のスベスベな体が悪いんだ!

 

「あんっ……もう、しゃーないなぁ……喋らせたのはうちやしぃ。それに旦那はんなら別にこれぐらい全然問題あらへんよ……んぅっ……そういや、さっき言ってた旦那はんがいうカルデアの皆にはうちも入っとるんか?」

 

「そりゃ、入ってるに決まってるでしょ。逆に何故いないと思ったし」

 

寂しい事、言わんでくれや。

 

「……ほんまかなぁ?なら信じさせてやぁ、さっきからうちのお尻をツンツン挿してくるこの硬くて太っいのでぇ……うちの体に教え込んでくれへん?」

 

それは君がずっと腰をくねらせて刺激してくるからでしょ!

本当に全身セックスアピールみたいな娘なんだから!酒呑童子ちゃんは!

 

さっきまで俺の懐にいた彼女は振り返り、押し倒すと……上気した表情でこちらを見下ろしていた。

 

「酒に酔えへんならぁ、うちの体で好きなだけ酔ってやぁ……身も心もどっちが境目かわからんなるくらい……どろどろにぐちょぐちょに溶け合おうやぁ。なぁ、旦那はん……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「体が火照って仕方ないわぁ……ほれぇ、旦那はんもそんな布っ切れ脱いでしまお?

うちだけに脱がせるん?……いや、ええよもう、やっぱうちが脱がすわ」

 

着物も投げ捨て、いつも大事な所をガードしている黒い鎧らしき物も外していった(それ構造どうなってんの?)。

色気と酒気をムンムンと香らせている裸体を披露した彼女はそのまま素早く俺の服もどんどん脱がしていった。

 

「はい、これでここにおるんは只の男と女だけや。余計な事は考えず……一緒に溺れてしまおうなぁ」

 

互いに全裸になった事に満足した彼女は水浴びするようにトクトクと瓢箪からお酒を自分の体と俺の体にかけていく。

 

「ふふっ、出血大サービスや」

 

ある程度、二人の体が酒で湿っていくのを確認すると、酒呑は残りの酒を手の中に溜めるとそれを自身の秘部へといざなった。

 

「ふぅっ、あぁ……はぁん!……ほれぇ、はやくせえへんとぉ……うちの恥ずかしい所からどんどんお酒が漏れてしまうえぇ……」

 

クチュクチュと音を立て自慰をするようにお酒を自身の膣内に注ぎこんだ彼女は体を回転させ、俺の目の前にその淫部を見せつけるような体勢になった。

 

「うちの体からぎょうさん飲んでおくれやすぅ……酒以外のえっちなお(つゆ)もなぁ……はぁっ……旦那はんの金棒もこんなに興奮してくれてるんやねぇ。うち嬉しいわぁ……」

 

どうして彼女はこう喋る台詞どれもこれもエロスの塊なんだろうなぁとある意味感心しつつ、69の体勢になった俺達は互いの性器を貪り合う事にした。

 

「ぁぁあぁ!ええよぉ……んふぅっ!もっと舌つかってナカまでいじってぇなぁ……はぁんっ!」

 

ジュルジュルと吸いながら、彼女の膣内にある愛液と果実酒が混ざった極上の蜜を一心不乱に飲み干していく。

 

「んゃぁあっ!もうぉっ……そんな一生懸命に吸われるとぉ……はぁうぅっ!……うちおかしくなりそうやわぁ……ぁぁあんっ!」

 

酒が無くなっても俺の口淫が止まる筈もなく、舌と唇が酒呑の雌の部分をどんどん責め立てる。

 

「はぁぁっ、んんぁっ!……ぁあ、堪忍なぁ……うちばっかり気持ち良くなって……旦那はんのも、たーんと気持ち良くさせるやさかい、ぁぁむぅ……」

 

彼女は酒まみれになっている俺の剛直に、舌先で亀頭を舐め回しながら口内全体で扱いていった。

 

「……ぁれろぉ、じゅるぅ、んんんむぅっ……んはぁっ……ほんま美味しいわぁ、はむじゅるぅっ……じゅるるぅっ、んふぅっ!」

 

二人とも自身の目の前にあるモノから愛液をどれだけ絞り出せるのか競うように愛撫が激しくなる。

 

「むじゅるっ!じゅるるゅっ……!……はぁっ……旦那はんのおちんちん……酒とようあいますわぁっ、あんぅ!…………じゅぽ、じゅぽっ……ちゅるぅっ……ちろぉ……れろっ、れろっ……唾液と舌が止まらんよぉっ……はああぁ!」

 

彼女の愛撫は俺の弱点を的確にそして執拗に責めてくる

けど、相手の気持ち良い所がわかってるのはこちらも同じだ。

一緒に喘ぎながらご奉仕といきましょうや。

 

「先走りがぁ……どんどんあふれとるわぁ……ちゅうぅっ、ちゅるるぅっ……もっと濃いのも出してええんよぉっ……んひやぁっ……あぁ、そこ好きやわぁっ……はぁっ、あああぁっ!」

 

自然と二人で同時に達してしまうように力加減を調節しながら、どんどん絶頂への快感を高めていった。

 

「じゅぼっ、じゅぼっ…!……っぁ……はあぁんぅ!……上も下もどっちも気持ちええのぉ…!!……はぁむぅ、むじゅるるぅっ……!じゅるるぅっ!……んむぅぁっ……だしてぇ、旦那はんぅ……やぁっ!」

 

「……っぁ、出る、ぞ!」

 

「んんんんんんぐぅっ~~~!!……んんむぅっ!!んんぅ!!……じゅるぅ、じゅるるぅっ……」

 

―――ピュルルルッ!!

―――プシャァッ!!

 

酒呑は俺から解き放たれた精液を、

俺は酒呑から吹き出してくる潮を。

 

互いに一滴残さず、飲み…体の中へ流し込んでいった。

与えられた快感の余韻に浸っていく。

 

しかし、さすが酒呑さんですわ……全身を震わせながら盛大にイッたっていうのに肉棒からは絶対に口を離さず、達しながらもっととばかりにバキュームを続行してるとは……いやはやこの鬼っ娘の強欲っぷりは凄まじいの一言。

 

「……ごく、ごく、こくぅ……っぱあぁっ……ぁはぁん……ほんまに極上の味やわぁ。旦那はんの精液はぁ……全然飽きもきいへんしなぁ……なんならうちの赤漆に注ぎたいくらいやわぁ……」

 

それはちょっと恥ずかしいっす。何かにの間違いで宝具にでもなったらどうすんのさ。

『精子乱交・淫便鬼毒』みたいな?これはひどい、カットカット。

 

「おいしいもんをぎょうさん呑ませてくれたお礼やす、

どや?今日は何されても抵抗せえへんで……旦那はんのどんな変態的な欲求もぜーんぶうちが受け止めてあげるさかい……」

 

蠱惑的に微笑んだ彼女は隠すものも何もない自身の肢体を俺に差し出す。

しかし、まるで自分がいつも変態的な欲求しているような言い草は解せぬ。

ならば、俺の紳士的な要求を魅せてやろうじゃないか!

 

「じゃあ、せっかくなんで今日は酒呑の全身をペロペロします」

 

「…………ぺろぺろ?ふふふ、やっぱり旦那はんは変態さんやぁ。あぁ、けど鬼の体を骨の髄までしゃぶり尽したいってのはえらい豪気やねぇ。

……ええよ、うちの体、一滴残さず味わってやぁ……お残しは許さんからなぁ」

 

やっぱり変態扱いされる運命。なんでや、好きな娘の体を舐め尽したいという願望は男なら正常じゃないのか。

やりきれない想いをぶつけるか如く、まずは彼女の土踏まずから舌を這わせていった。

 

「……っぁん、足からいくなんて旦那はんはマニアックやなぁ、んんうっ……」

 

女の子の土踏まずは聖域でしょうよ、そこに口を付けれるのは男として最高の誉れだと思います。

 

―――そして、そこから踵、太ももへと辿っていく。道中もねぶる事を忘れずに……。

 

「ふぅっ、あぁん……いやらしい舌がどんどんうちの体を登ってくるぅわぁっ……あふぁっ……」

 

―――秘部は散々弄ったので今はスルー、白桃のようなお尻にマーキングするようにキスをしていく。

 

「あぁっ、お尻そないな吸い付かないでやぁ……ひやぁっ!……痕がついてしまうよぉ……ふうぁっ!」

 

―――背中を舌先でくすぐりながらうなじは念入りに愛撫する。

 

「あっ、はぁっ……んぅ、ふぅ……やっ、もうっ……生娘みたいな声がとまら、んぅっ!あうぁ!」

 

全裸になって火照り、悶えている彼女はもはや全身全てが恥部のような淫らかさを持っている。

舐めているこっちが逆に気持ちよくなってしまう程に彼女の声は心地よい。

 

―――背後を十分に堪能した後は胸の方へ。

 

「はあん……そないに見詰めんといてぇ……色んな女子喰ってきた旦那はんなら、この大きさは物足りないとちゃう?」

 

挑発するように……ほんの少し悔しそうに聞いてくる酒呑童子により一層愛おしさがこみ上げる。

 

「悪い、今は目の前の酒呑の胸の事しか考えられない」

 

大きいおっぱい、小さいおっぱい、そんなの人のかって

ほんとうにいい男なら、すきなこのおっぱいを愛するようにすべき。

 

「そんな事言っても誤魔化されぇ……はああぁ!あぁぁんぅっ……!」

 

かすかな膨らみ、その先端にあるチェリーのような乳首に吸い付く。

 

「ぁぁ!んぁ!はあぁっ!童みたいにちゅぱちゅぱしてぇ……ひあぁっ!旦那はんったらめんこいわぁっ……あうぁっ!……コリコリするのぉ、とてもええよぉ…………んあぁっ、はあぁんぁ!!」

 

この舌先で転がすのにベストなサイズの乳頭が堪らない。

指と口内で乳首をひたすらに弄ぶ、彼女の淫魔の如き嬌声が俺の耳をどんどん蕩かせていく。

 

「んはあぁぁぁっ――!!!はああぁっ!はぁっ……いい、わぁっ……んぅ」

 

絶頂にイキながらも、悦に浸ってまだまだ余裕がありそうな酒呑。

今度は前からイジり倒してみたいと思っていたある部分に目を付ける。

何をされても抵抗しないって言ってたし……いいよね?

 

「はえ?旦那はん……?ど、こを……んひいぃいっ!!あっ!ちょぉ……まちぃいやぁっ!いま角触るのはぁっ……ああうぅぁっ……!!あかん、てぇっ……いいいいぁっ!!」

 

獣っ娘なら耳をドラゴンっ娘なら尻尾を、そして鬼っ娘なら角を触れてしまうのは人間の摂理ではないでしょうか?

 

しかし、手で扱いているだけでこんなに敏感に反応するものなのかね?

う~ん、もしかしたら、普段はそこまでじゃないけど、酒とか性的興奮で感覚が鋭くなってんのかな?

とりあえず、味見もしておこうか。

 

「あぁ!はぁふぁ!ひやあぁっ!!あっ、はぁっ!……口でぇ、はむはむするのぉ堪忍やぁぁっ!!あくぅっ!!うぁっ……!あんっ!いあぁっ……!!」

 

やっぱり角は硬いけど、無機質な感じじゃなくて熱さもちゃんと伴ってるね……彼女の興奮に同調してどんどん紅くなっているように見えるし。

これは中々に楽しい、しばらくは角で遊んでみようかな。

 

「ああぁっ!うちぃ……旦那はんに食べられてしもうとるぅっ…………んはあぁぁっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ―――……はぁっ―――……えらいすきものマスターさんやわぁっ、あぁ……うちの体こんなになってしもたよぉ……」

 

あれから、角ばかりに収まらず、全身のあらゆる所を舐め回された酒呑の今の姿は凌辱の限りを尽くされた如くその美白の全身は唾液以外のさまざまな汁でぐちょぐちょになっていた。

 

「なぁ……旦那はん、うちのおまんこ……もう辛抱たまらんって、疼くのがとまらんのぉ……後生やからぁそのぶっといのでうちを貫いてくれへんかぁ……」

 

酸素を求めるようにひくついていた女陰をその小さな手で開いた彼女は情婦のように俺を誘ってくる。

ここからでも見えるピンクの膣内は彼女が鬼なせいかどこか神秘的にも思えた。

 

俺の肉棒はもう破裂寸前であり、ここで躊躇う理由もない。

 

酒呑の小さい入り口に狙いを定めて……彼女のお望み通り…その肢体を貫いてあげた。

 

「んくぁぁぁあああああぁっ!あんぁっ!旦那はんのぉっ……き、たぁっ!すんごいぃ!狂ってしまいそうやぁあぁっ!!」

 

嬉しい悲鳴ってのは正に今の彼女の姿なのだろうと思いながら、床に横たわっている酒呑に腰を遠慮なしで叩きつけていく。

 

「あん!はぁぁ!あくぁぁ!!ひあぁっ!!……はぁっ…だんなはんっ-…抱っこしてぇやぁ……肌合わせようやぁ、うちさみしいわぁぁっ……んあぁ!」

 

言われるがまま抱き締めた瞬間に凄まじい熱量が彼女の体の中で蠢いているのがわかる程に熱く感じる。

抱き締められた彼女は腕と脚を絶対に離さないとばかりに俺の背にまわし……腰を激しくくねらせる。

 

「はああぁっ!!あぁんぁぁ!!……ええっ、ええのぉっ!……ナカも外も熱くぅてぇ……ひあぁっ!!うち火傷してしまいそうぉっ!!あぁぁっ……はぁっ、ふああぁんぅっ……!!」

 

こちらを激しく求めるように腕と脚だけではなく、膣内もどんどん締め上げてくる。

その動きに応えるように俺も彼女の小さな体を思いっ切り抱き締めた。

 

「くふあぁっ!!はぁっ!うれしいぃっ……うれしいわぁっ!!……こんなに求めてくれるなんてぇっ!!もっとぉ、もっとぉ……ちこうよってやぁっ……あああぁんぅっ!!ほんまに一つになってしまうくらいにぃっ……!んひぁぁっぁああっ!!」

 

本能の赴くままに喰らい合いましよう、鬼のように…………彼女との交わりはふとそんな事を思ってしまう程に激しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ!あんぅ!んあぁっ!!……っぁあぁ!やぁぁんぅ!」

 

あぁ……あかん、さっきから気遣るのが止まらん。

 

旦那はんはほんまにお強い人やわぁ、鬼のうちが全力で交わったら……普通の人間は簡単に壊れてしまうっちゅうのに。

むしろ気持ちよすぎてうちが死んでしまうかもしれへんわぁ……。

くふふっ、二度目の死因が性交死なーんて笑えてしまいそうやぁ。

 

「ぁぁあっ!だんなはんのぉ……おちんぽぉ、びくびくしとるよぉ……ええよぉ……だしてぇやぁ……あんたはんの煮え滾った欲望……うちのおまんこにだしてぇ……おくまでぇ、はぁんぁ!!たぷたぷにしてぇ!」

 

子宮にキスされる度にうちの雌の部分が旦那はんの子種を絞り尽せって訴えてくんのよ。

だからぎょうさん美味しい精液……おくなはれぇ。

 

肉棒を子宮口に押し付けんのを返答として……旦那はんは良い顔でうちの奥まで種付けするように射精をしてくれる。

 

「ひぁぁあぁああああああぁぁっ――――――!!ああああはっ!!はああぁぁっ!!!あぁっ……熱いぃ、濃くてぇ……ドロドロしてるわぁっ……」

 

あんぅっ、えげつないわぁ……うちの中でぴゅるぴゅるって泳いでおるぅ……。

はぁっ、この感覚ぅ……やっぱ好きやわぁ。

 

 

 

召喚されてから、ずうっと思ってたんや。

強くて、ええ男で、エロくて…こんな旦那はんを骨抜きにして酒に溶かして……飲み干したらきっとえらい美味しいやろなぁって。

 

けど。

 

 

―――()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

‘うちみたいな危険な魅力の娘が隣にいてもいい‘かぁ……なぁ、旦那はん、うち実はドアの外でぜーんぶ聞いておったんやで?

 

もう笑いを堪えるのがしんどかったもん、いくら何でも数奇者過ぎるってぇ。

 

金髪の小僧はあんたはんを子供みたいって評しておったけど……生憎、うちは違う意見や。

 

 

―――どちらかと言えば、旦那はんは()()()()()()()()()

 

あるがままに生きて、思うがままに振る舞うその姿……うちとおんなじぃ。

だから、見ててこんなに愉快なんやぁって納得したわぁ。

 

そういや、ここにはあの願いが叶う器がたくさんあるんやろ……なら一個ぐらい使うても、ええよなぁ。

 

『旦那はんを鬼にしておくれ』って願ってみるのもええかもなぁ。

 

鬼なった旦那はんとうちとそんで茨木で好き勝手楽しんで、毎日のように大江の山で宴会してぇ酒呑んで……はぁっ……きっと楽しいわぁ、想像しただけで笑みが零れてしまう。

 

ここ(カルデア)の連中はどーんな顔するんやろ?

悲しむ?激怒するか?それともそんな事は関係ないっていつも通りのままか?

 

特にあの乳臭い丑女はなんて反応してくれるんやろねぇ……。

泣きそうな顔でそれでも鬼だからって切ってしまう?絶望してしまうん?

それとももう一方の顔を出して、旦那はんを自らの物にする為にうちを殺そうとしてしまうんか?

そんな事になったら旦那はんは守ってくれるんやろか?

あぁ、いっその事『旦那はんは鬼なってうちの息子になりました』って挑発かますのも楽しそうやぁ。

 

 

ふふふ、うちが未来を夢想するなんて生前は考えられへんかったなぁ。

旦那はんに毒されてしm……

 

「っはああぁっ!!あんぅっ!!……んくぁぁっ!あんだけ出して……まだ動くんかぁっ……!」

 

うちの膣内で旦那はんの剛直が再び激しく動きだした。

 

「いや、なんかシリアスな空気を感じたのでエロでぶち壊してしまおうかと」

 

「くひいいいっ!!いいぁっ……!……っもぅ、色々と台無しや、わぁっ……!」

 

何が性質が悪いって……旦那はんのアソコが的確にうちの弱い所を突いてくる所やぁ。

ぼちぼち考え事もできへん………。

 

「こんないたいけな女子を手籠めにしようってかぁ……あん!……あんたはんは鬼より鬼畜やわぁっ、あぁぁっ!!はあぁんっ!!」

 

「けど、酒呑の顔はトロトロになってるじゃん。好きなんでしょこういうの?」

 

んもうっ……知っとるくせにぃ。

 

「好、きにぃっ……あっ……決まっとるやぁんぁ……カリで膣内がえぐれるのがぁぁっ……ずっとぉ、ずっとぉしてぇやぁっ……いいぁっ!!あぁっ!はあああぁっ!」

 

 

まぁ、しばらくは人間の旦那はんと一緒におってもええか。

 

だってこんな風に一晩中可愛がられるのも嫌いやないもん……。

 

 

 

 

 

 

 

 




鬼ぐだ男『よくぞここまで鍛え……よくぞここまで造り上げた……
これが俺から贈る…貴様への最大の賛辞だッッ!!』

―――グワアァァッッッ!!

ロマニ『鬼だッ!鬼の顔が出たッッ!!あの構えは……彼はッ……これで終わらせる気なんだッッ!!!』

酒呑童子『あかんッ!逃げなはれぇッッ!茨木ィッッ!!』

茨木ちゃん『母上ェ……』

鬼ぐだ男『邪ッッ!!』


「みたいな感じになるのかね?」
「旦那はん、それ茨木死んどらん?」







連載当初はスナック感覚の軽いエロで書くつもりだったのに話数を重ねるごとにエロ描写が増えている気がする……特に今回は今まで一番多いかもしれぬ。
けど、仕方ないよね?だって酒呑童子だもん。
エロだもん、エロっ娘だもん、エロ鬼だもん、大事な事だから3回言ってしまうわ。

見た目に惹かれ、声に犯られ、性格でトドメを刺された酒呑をこの小説で書けて本当に良かった。最終再臨のボイスとマイルームで他の鬼に嫉妬する感じのボイスは良い物だぞ。

まぁこの主人公も通常運行で安心(だってR18小説だもん)。
エロは世界を救えるッ!!(確信)

万が一酒呑童子ちゃんが快楽死したら、宝具も変わったりするん?





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影牢~ダークサイドアサシン~(アサ子さん)

マイルームの模様替えとかやりたいわぁ……。
こう季節イベが過ぎたら終了とかじゃなくて、家具置いたり、壁紙変えたりみたいな。







シャトーディフ「まーたエロい事目的で使われそうな気がする」
ダ・ヴィンチちゃん「まーたエロい薬を作らされそうな気がする」


薄暗く、日の光の一切を遮断した陰鬱な牢…………。

 

まるでどこかの監獄塔を彷彿とさせる一室でもあった。

 

その牢にはおびただしい程に拷問器具が揃っている。

ここに捕らえられた者はあらゆる手段を以って情報を吐かされる、まさに地獄の尋問室。

 

そして今日もそこに拘束されている哀れな者が一人……。

 

「さて、ようやく俺の周りを嗅ぎまわっていた鼠を捕獲できたワケだが……一応訊いておこうか、一体どこの手の者だ?君も痛い思いは嫌だろう?」

 

尋問官と思われる男は問いかける。

この諜報員、もしくは暗殺者らしき者から情報を吐かせるのが彼の仕事だ。

 

「フンッ、言うワケがなかろう。どんなに痛めつけても無駄だ……私は絶対に情報は吐かん、疾く殺すがいい」

 

気丈にも脅しには屈しないと振る舞うこの暗殺者は上半身はやや筋肉質だが、着ているベールダンス用の衣装のような服、青髪のポニーテール、そして胸の膨らみから女性だという事がわかる。

 

天井から吊らせている鎖に腕は頭の上で下げられないように一括りに拘束され、

足も床に装着されている枷により開脚されたまま動かす事が出来ない。

 

手も足も身動きが取れず、腰を着くことすら許されぬまま立たされている彼女の瞳は微塵も絶望などしていなかった。

 

「……ふむ、確かに君を痛みで吐かせるのは骨が折れそうだ。

だが、痛み以外にも情報を出させる術はあるのだぞ、自らの身が女である事を悔いるがいい」

 

「……っ、この外道がっ」

 

男の発言により、暗殺者は何をされるのか察したのだろう、侮蔑するように吐き捨てる。

 

「何とでも言うがいいさ、こちらも仕事なのでね……ほう、鍛えられている肉体ながら女性の柔らかさも確かにあるな」

 

「……っぁ」

 

品評するように男の指先は女アサシンの腹筋を撫で、そして女性を象徴している膨らみへと手を這わせ……挨拶がわりと言わんばかりに揉み込んでいく。

 

これから起こる物語に希望が満ち溢れる救出劇も痛快な逆転劇は存在しなく、ただ一人の女が凌辱の末に全てを失う絶望の――

 

 

「あんっ……」

 

「はい、ダウト。

感じるなとは言わないけど、期待するような表情しちゃダメでしょアサ子さん。

()()なんだから、せめて嫌そうな顔するとかキッと睨み付けるとか」

 

「も、申し訳御座いませんっ、我が主……」

 

……物語なんて事は一切無くこれから起こるのは所謂、『いつもの』という名の様式美という奴でございます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~時は遡り……。

 

「拷問訓練?」

 

「はい、我が主にお願いをしたく」

 

今日はどうしようかな~アーラシュの兄ちゃんと『マスター飛んだ、弓矢で飛んだ、屋根と一緒に飛んでった』遊びでもしようか考えていた所に百の貌のハサンの中でも貴重な女性人格……通称アサ子さんにある頼み事をされる。

 

「中々に穏やかな話じゃないね」

 

「私を含め、我ら百の貌は皆……主の手足であり、目でもありますゆえ、如何様に使っても構いません。

しかし、億が一にも敵に情報を吐かされる為に捕らえられ、尋問される可能性もあると思慮致しました」

 

「あれ?けど百貌の中には確か拷問、尋問用の何も知らない人格がいたような……」

 

「……?一体何の話でしょうか?」

 

「いや、何でもない忘れて」

 

ちびアサシンだの幼女だの没だの変な電波受け取っただけだから。

 

「といっても俺、拷問とか出来ないよ。趣味じゃないし、エリちゃんとかカーミラさんあたりならスキルで持ってるけど……一体何故、俺に?」

 

「頼みたいのは普通の拷問ではありませぬ。我ら百貌は一流の諜報員……山の翁として誰一人、どんなに痛めつけられても情報を吐かない訓練は完了済みです。

ですが、その中でこの私の性別は女性。痛みはともかく、そこを突かれた方面の耐性はついておりませぬ……故に訓練の必要があると」

 

あぁ、つまり俺に求めてるのは。

 

「はい、数多の女傑を快楽の渦へ叩き堕としたその手腕を持った責めによる性的な尋問をお願いしたいのです。この訓練の適任者はあなた様以外にいないでしょう」

 

すんごい嫌な方面での信頼のされ方ー。

ははっ、まるで18禁凌辱ゲーの主人公みたいな扱い……おかしいな、俺は普通に生きていってるつもりだったのにな。

 

「あなたの快楽責めに耐え切れれば、私も大きな自信をつけることが出来ましょうぞ!」

 

グッと拳を握り、そう確信するアサ子さん。

本当にその自信は誇っていいものなのでしょうか?

 

「うん、アサ子さんの頼みだから全然OKなんだけど、

互いの敗北条件とかあるんじゃないの?訓練なんだから」

 

「そうですな、本来なら私が主の情報を吐いてしまう事が敗北どころか死と同義でしょう。

今回は相手が主殿なので……情報を吐く代わりに私の恥部ともいえる体験を話す事とします。それが私の敗北条件です」

 

降参したら、自分の恥ずかしい過去を話すよって事か。

 

「じゃあ、俺の場合はこれ以上やっても情報を吐かせられないって音を上げたら負けかな」

 

随分と俺に有利だが、

まぁ、古今東西、捕まったスパイってのはその時点で9割方ジ・エンドだから仕方ないっちゃ仕方ないか。

 

「我が訓練に付き合ってくれるのは感謝の極みです……さぁ!ではいきましょうぞっ!我が主!時間は有限です!風のように素早く!」

 

俺の部屋へと向かっていくのは結構なんだけど……滅茶苦茶ノリノリじゃない?

本当に訓練なんだよね?そういうプレイってワケじゃないんだよね!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

回想、終了。

とまぁ、マイルームをシャトーディフ仕様にしてこんな事をしている経緯はわかってもらえただろう。

 

「アサ子さん、演技でもいいんで、こう……お前には屈しないッ!キリッ!!みたいな感じを出さないとこっちも今いちノれないよ?」

 

俺に何をされても嬉しそうな雰囲気を出しちゃってるぜ、もう少し頑張れ。

 

「いえっ!今のは相手が主だったので少々気が緩んでいただけでございます!

……んんっ!はいっ!もう気持ちは切り替わりました!

さぁっ来るがいい!貴様のような男の手でどこを触れられようとも何も感じぬわ!」

 

うんうん、それでよし。

言葉だけでもそう振る舞ってくれると俺も訓練に付き合い甲斐があるからね。

 

「くはは、その強がり一体どこまで続くものか……」

 

役に成りきりながら、俺も再び彼女の胸の責めを開始する。

 

「……くっ」

 

布の上からでもわかるその乳房を丁寧に撫で回す。

 

「……ふっ……んっ」

 

さてさて痛みに耐性があるスパイに対して乱暴にしても何の意味はない。

だから俺は彼女の体を尋問官とは思えないほど丁寧に愛撫していく。

何故なら、案外そういった痛み慣れしている者にかぎって気持ち良い事に弱かったりするのだ。

安心するがいい!このマスターっ……女性を気持ち良くさせることに関しては三千世界で一等賞よ!!

うん、なんか、自分で言ってても最低すぎるわ。

 

「……ん、ふぅ……その、程度かっ……んっ!……大口を叩いた割りには、んぁっ……他愛ない」

 

指と手の平全体をつかい、恋人のように優しく揉み込んでいく。

先端の敏感な場所には意図的に触れないように……円をえがき、焦らすが如く、彼女も吐息は漏れているが挑発するだけの余裕はまだある。

 

「時間はたっぷりあるさ、そう焦らず君も楽しみたまえよ」

 

「……あっ、んくっ……こ、この変態めっ」

 

はい今、「時間はたっぷり」の所で嬉しそうな顔したでしょ。まぁ、すぐに顔を引き締めたのでスルーしてあげるが。

 

 

 

 

~1時間後。

 

 

「んぅっ、あぁ……胸ばか、りっ……んくぅ……はぁっ」

 

ずっと同じペースで直接触れる事はせず、揉み続けていた。

変化はないが長時間与え続けられる緩やかな快感に困惑しているのだろう、嬌声もほんの少しずつ漏れてきている。

 

だが、胸ばっかりに意識を向けているとこうなるぞ。

 

―――れろぉっ。

 

「ひいぅっ!」

 

隙を突くようにうなじに舌を這わせる。

別種の刺激を唐突に受けた彼女は思わず声をあげてしまった。

 

「どうした、随分と可愛らしい声があがったが」

 

「っぅ……だまれっ……ぁぁ……おかしな所を、はぁ……さ、わるなぁっ!んぁっ」

 

OKOK。

まだまだ元気がありそうでこちらも遣り甲斐があるぜ。

 

というわけで今度は脇腹をくすぐるように撫でていく。

彼女の腕は持ち上がったまま拘束されている状態だから触り放題ですし、こう鍛えられた女性の脇腹って非常に良いものだと思うんだ。

 

「はぁっ、ふぁ……くっ…………あっ、んふぅ……」

 

今度はここでもう1時間ぐらい遊ばせてもらおうかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ…………あぁっ、んぁっ……ふぅ、どうしたぁ……はぁ、もう……終わりか?」

 

ひたすら体中を絶妙な力加減で撫で回し、乳首や性器といった敏感な所はまだ触れず、彼女がその愛撫にも少し慣れ始めた所を見計らい、首元やうなじや耳を舌で驚かすように舐めて適度に緩急をつけ、快感の慣れをリセットさせていくような調教を続けた。

 

頃合いを見て、俺が手を離すと……彼女は呼吸を乱しながらも不敵に笑っていた。

 

「あぁ、君の心が十分強いという事はわかった。ならばこちらも全力で行かなければ失礼だろう」

 

ではでは次のパターンにいきましょうか。

 

彼女の身を包んで黒衣を全て引き裂くように脱がしていく。

ビリビリと音を立て、羞恥心を煽るように。

 

「囚人に服など上等な物はいらないだろう?」

 

「っく……はっ、好きにするがいい……裸に剥かれた所で何も思わんわ」

 

良く引き締まった下半身、色素の薄い乳首、そういったのが全て丸見えになり、生まれたままの姿で拘束されている状況になったが……それでもほんの少し頬を染めるだけに留まり、表情を大きく変える事は無かった。

 

「それは良かった。全裸になったぐらいで喚かれていたら、これからする事には耐えられそうにも無かったのでね」

 

そう言った俺は懐から液体の入った瓶と筆を取り出す。

筆を液体に浸し、その筆を彼女の体へ近づけた。

 

「……なんだ、それは?」

 

「ダ・ヴィンチ特s……じゃなかった……まぁ、君のような子を素直にする薬、感度を鋭敏にする薬。

陳腐な言い方をすれば媚薬という奴だ……今からこれを君の全身に塗りたくる」

 

こういう時に登場する薬ってもうデフォっていうかお決まりの奴ですよね?

くっころ展開の神器……気持ちよくなる薬~♪、悔しいッ!でも何とかッ!的な。

 

「ばかめっ!……薬程度で私が堕ちるものかっ」

 

アサ子さんもお決まりというものを熟知しているか如くの台詞とフラグ建築をしてくれるので、俺のやる気もムクムク上がっていきますよ。では失礼して……。

 

「んくぅっ……」

 

筆のこそばゆさと媚薬のヌルヌルとした感触に戸惑いながらも声は出さないように歯を食いしばっているアサ子さん。

いいぞー、簡単に堕ちたらこっちも面白みが無いからね。

 

―――腕、足、太もも、腹、腋、背中、尻と……。

 

彼女の黒肌に何度も液体をつけ直し、余す所なく塗りたくっていく。

そして、後の楽しみにしていた胸の方にも薬を擦りつける為、丸みを沿うように筆を走らせる。

 

「おや、乳首がプックリと膨れあがっているぞ……興奮しているのか?」

 

「はぁっ!あぁ、くぅっ……そんな筈はな、いぃぃぁああぁっ!?」

 

彼女の返答を遮るようにその先端を筆で突くとここ一番の大きい嬌声があがった。

 

「あぁっ!くっ……んっ、んんっ、そこを、くすぐるなぁっ……くぅっ……」

 

それでも声があがったのは意表を突かれた最初のみ……俺が胸の先で筆を遊ばせてもそこまで大きい声は出さなかった。

くくく、さすがの精神力だ。こういう娘こそ堕とし甲斐があるというものッ!!

……っと思考が完全に悪役のそれになってたな、自重自重。

 

「……あっ……っく……まてっ、そこはひらくなぁb…ぁっ」

 

彼女の女の園を見るべく淫裂をくぱぁっと開かせる。

 

「この中は随分ときれいなピンク色だな、それにまだ薬も塗っていないのにもう濡れているぞ……これは一体どういう事だ?」

 

「……っはぁっ、あぁ、知らぬわっ……ぁあ、たわけぇ……」

 

「まぁいい、後はここだけなのでね。ナカもしっかりと塗らせてもらうよ」

 

「……やめろっ、そんなものを私の中にぃ……いあぁっっ!!」

 

媚薬と愛液が混ざりあったいやらしい音を響かせながら彼女の膣内を筆の毛先で弄び、奥までしっかりと残りの媚薬を全て入れ込んだ。

 

用が無くなった筆と瓶をしまい、そろそろ効果が現れるだろうとアサ子さんの様子を伺うと。

 

「あっ……はぁっ、なんだぁっ、これはぁぁっ……ひぃ、あっ、はっ……はぁっ……はぁぁっ」

 

全身が液体によって光沢を出しているように見える彼女の体は縛られている鎖を揺らしながら悶えていた。

 

とりあえず、今の感度はどれくらいかとそそり立っている乳頭に息を吹きかける。

 

―――フゥッ。

 

「んひいあぁっ!!」

 

おお、いい感じですね。

彼女があげた嬌声に満足にしながら、この尋問室風のマイルームに置いていた道具をこっちに持ってくる。

 

「はぁ、はぁっ、はっ……はぁっ……?」

 

アサ子さんが薬で狂わされた自分の体に戸惑っている内にガチャガチャと床に取り付けられている足枷を外し、今度は持ってきた()()()()の方に足を固定する。

ん?何でそんな物を持ってるのか?ってそういうプレイを他の娘としてるからに決まってるでしょ言わせんな恥ずかしい。

具体的には邪ンヌとか邪ンヌとか……あと邪ンヌとか、彼女ってすごいんだぜ?嫌よ嫌よも好きの内を体言しているといってもいい反応してくれるもん、堕ちるタイミングも完璧だし……っと話が逸れたね。

 

「はえっ?……んぐあぁっ!」

 

自分の状況を把握したのだろう、剥き出しの性器が木馬の背と接触される。

足も手も拘束されている現状の中、彼女に抵抗する術は無かった。

 

「本来の三角木馬ほど、痛みは感じないソフトな作りになっているが、代わりに出来る限り、女性を心地よくさせる仕様になっている。

たとえばこんな感じに……」

 

俺が木馬のスイッチを入れると木馬の稜線部分がヴヴヴと振動し始めた。

 

「……っあ゛あ゛あ゛あ゛あぁぁぁっ!!」

 

自らの重み、機械の振動、そして薬の効果で彼女に与えられる快感は想像がつかないものだろう、だがこれだけでは終わらない。

 

無機質な快感に揺れている胸の先端にロータを装着し……。

 

「やあぁっ!!あ゛あ゛あぁぁっ!これぇっ……はずせぇっ……!!んふあぁあぁっ!!」

 

アイマスクで視界を覆い隠す。彼女にはこれから与え続けられる快感だけに集中して欲しいからね!

 

「あ゛あ゛ああああぁっ!はああぁっ!!……おかしくぁなるぅっ!やあ゛あ゛ぁっ!!!」

 

そして最後の仕上げに三角木馬に乗せられ目隠しとローターも取り付けられ、完全にSMプレイの真っ最中状態の彼女の周りに扇風機を囲むように3台置き、風を送ってあげる。

 

「はぁっ!あぁっ!!やめぇっ!いま肌敏感でぇっ!!くあぁっ!!体中が気持ちよくあぁっ!!はあ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁああっ!」

 

もはや、全身が性感帯になったと言っても過言ではない彼女の体を感情の無い機械が快感を送り続ける。

 

「さてと、俺は少し休憩してくるのでしばらく君も休んでいるといい」

 

「はぁあぁっ!?まってぇっ……そ、んなあぁっ!!だめぇっ……さっきからイくのがとまらなくてぇ!あ゛あ゛あぁぁっ!イキっぱなしでぇっ……はああんうっ!!気持ちいいのが止まらなひぃぁあっぁああっ!」

 

絶え間なく訪れる絶頂に襲われている彼女に俺は一応声をかけた。

ほら今の私、一応尋問官ですし?

 

「君が情報を吐いてくれるなら止めても良いが」

 

「……っあっ~~~…………さっさと行ってしまえぇっ!んくあぁっ!!あぁ―――!!…………」

 

そう来なくちゃ、ここで諦めるようなあなたじゃ無いもんね。

とりあえず、もう1~2時間したら戻ってくるかな……。

 

彼女の嬌声と痴態を後にして俺は自分の部屋から出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俵の兄貴と『山手線ゲーム:日本全国のお米の品種』で遊んで時間を潰し終えた俺は再びマイルームのドアの前に戻っていた。

 

「酒米方面で攻められるとさすがに辛いわ。ずっこいぜ、トータの兄貴……」

 

ぶつくさと文句を言いながら、アサ子さんはどうなっているのか部屋へ入ってみると。

 

「ぁぁあ!あぁっ!あぁ!はぁっ!あぁっ!はああっっ!あぁっ!はっ!はぁっ!ああぁっ!んあぁっ!ああぁっ!ひあっっ!ひいあぁっ!」

 

わぉ、息をするようにイキっぱなしになってる。

俺が姿を消した後もずっとこんな感じだったんだな。

木馬の下はお漏らししたのかと誤解される程に水が溜まっているし、口も開いたまま涎が垂れちゃってるしね。

なまじ体力がある分、下手に気絶も出来ないし、なんて惨い事を。

 

三角木馬、ローター、扇風機の全ての電源を切り、外してあげる。

目隠しも取ってあげると彼女の視界に俺が映る。

 

「あぁっん…あぐぅっ……はっ、はっ……はぁっー、あぁっ、あ、るじ……!?んんっ!……き、貴様かっ!」

 

一瞬、心底安心したように頬を緩めたが……すぐに蕩けた顔ながらも眼を細め、こちらを睨み付けた。

まぁ、一応セーフにしておこうか。

 

「お楽しみ最中の所、中断して悪いが……一応聞いておかないといけないのでね。俺に情報を吐く気にはなったかな?」

 

「……ふふっ、断るっ……この……程度で私っ……からっ聞き出せると、はぁっ、思ったか……」

 

ですよね、アサ子さんがこの程度で吐くワケないって事は知ってたさ。

 

「……もうっ、何をしても無駄だとわかった、だろ……?さっさと諦め、むぐぅっ!?……ごくっ……」

 

口を開いたアサ子さんの隙を突き、本日2度目の薬を飲ませる。

体が弛緩していた彼女は思わず、それをゴクリと飲みこんでしまった。

 

「……くっ、一体っ、何を、飲ませた……!」

 

「そう怒るな、さっきのような敏感になる薬ではない。

むしろ逆に鈍感になる薬だ。正確に言えば、ある一定値を超えると感覚を打ち止めにするもの……まぁイケなくなる薬だと思ってくれ」

 

「なっ、なんだとっ……!あぁ……」

 

もう、足腰は力入らなくなってるし、腕だけ拘束しておけばいいよね。

 

ふらふらになりつつも下半身の方は自由になっているアサ子さんの体を抱き締める。

ここからが本番だ。

 

「温かみのない機械の快感を散々与えられただろ?

お詫びに今度は人肌でしっかりと気持ち良くしてあげよう」

 

「ふざけた事をっ…………はあ゛あ゛あ゛あ゛あぁぁぁっっ―――……!!!」

 

充血してるのか、薄いピンクに染まる程に勃起している彼女の左右の乳首を指で摘み、もう片方は口で吸い付く。

そして大洪水になっているアソコには余った手で指を挿しこんでいく。

女の一番敏感な所を3カ所苛め抜く事にした。

 

「……あっあぁ!!はぁっ!!はっ!あっ!んあっ!」

 

「んちゅうっ、はぁ、解毒薬はいつでも飲ませてあげられるので、情報を吐きたくなったら言ってくれたまえ」

 

「くはぁっ!!ひぁっ!だ、だれがいうものかぁっ!んくあっ!!あっ、あっ、ぁっ……?んあぁ!?あ……れぇ?」

 

そろそろ俺が言っていた事を身を持って実感し始めた頃だろう、体は快感を享受している筈なのに一番欲しい瞬間がやってこないと。

 

「……あぁっ、あぅ……はあっ、あああっっ!!……なぜ?なぜだぁっ……気持ちいいのにぃ……こんなに、きもちいいのにぃ……はぁっ、あんぁっ!イケなひぃぁっ……快感がぁっ……とまっているぁっ……!!」

 

彼女に言葉を返すこともなく、俺は雌の部分を引き起こすように責めを続ける。

これからすべき事はアサ子さんが負けを認めるまで彼女の気持ちいい所を全力で弄ってあげるだけ。

 

「はぁっ!あっ!はぁぁあ!!……きもちいいっ、きもちいいのにぃっ……んくあっ!!きもちよくなれなひぃぁぁっ……!!快感がどんどんたまってぇっ!こわれてしまぅぁぁっ……やぁっ!やあぁぁっ!!」

 

さっきは嫌という程にイカされたのに今度は打って変わって俺の手で寸止めをされている彼女の心情は一体どうなってるのだろうか。

腕を拘束している鎖を揺らしながらイヤイヤとポニーテールを振り乱すアサ子さんの姿に興ふn……じゃなかった心が痛むが請われた訓練である以上俺もマスターとして手を抜くわけにはいかないのだ。

 

「はああぁっ!あぁんぁ……イクぅっ!イクいく……いくぁぁっ……ぅぁぁぁぁっ……だめ、だっ、イケないぃっ!……い、けなひぁっ……ふああっ、はぁっ、やぁぁぁっ……こんなの無理だぁっ……!イイ所ばっかりぃ、正確に責められてぇぇ……んあぁ!たえられなひぁぁっ……んはぁっ!!」

 

彼女の口から弱音が零れ始めたのを見計らい、胸から口を離し、彼女に問いかける。

 

「情報を吐いてくれれば、簡単に絶頂にイカせてあげられるが……どうする?」

 

「んんぁっ!んくぅっ!んぐぅっ!!わ、わたしはぁっ……ぐぅっ!!」

 

「絶頂にイカせてあげられる」という言葉に瞳が揺れたがそれでもアサシンとしての矜持なのか……彼女は耐えるようにそれ以上言葉を出さなくなった。

 

……ふむ、もう一押しかな、これは。

 

耳元に近づき口調を変え、囁きかける。

 

「全身を撫で回され、薬も使われて、玩具で長時間絶頂を味あわされたあげく、今度はどんなに頑張ってもイケない…もういいんじゃないかな?俺はアサ子さんに楽になって欲しいよ」

 

「んんぅっ~~……!!」

 

トドメとばかりに彼女の乳首とクリトリスを同時に強く抓る。

 

「ひあ゛あ゛あ゛あぁぁぁぁっ!!」

 

「降参、する?」

 

「……するっ」

 

「もう一回、ちゃんと聞かせて」

 

「…………降参するっ!……負けを認めるっ!……認めますからぁっ!!

もうイかせてくださいっ!!主殿のモノでぇっ……どうか慈悲をぉっ!!!」

 

その言葉を待っていた。

いきり立つ自身のモノを外に出し、解毒薬を口に含ませ……キスをしながら飲ませる。

 

「んんっ、んぐぅ、んぐっ……ごくっ……」

 

そしてしっかりと飲み込んだ事を確認し、ズブズブ……とアサ子さんが待ち望んでいたものを挿入してあげた

ようやくもどかしい快感から解放された彼女に待っていたのは――

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あぁぁぁあああああぁっ―――!!!」

 

連続で訪れる絶頂の嵐。

涙を流すほどの衝撃に彼女はもう自分が敗北した事すらどうでもよくなっているのかもしれない。

 

「はぁあぁっ!!いああぁっ!!……き、たあぁっ!あるじのぉっ!!!ああぁんぁっ―――!!ずっとぉ……これをぉまってたぁっ!ひあぁっ……!!」

 

電流が走っているのかと思ってしまうぐらいにアサ子さんの体は大きく痙攣していた。

今まで行き場のない快感がやっと出口を見つけたのだ……その爽快感は下手をすれば彼女を壊してしまうほどに。

 

「はうぁぁっ!!……きづかいはぁっ、むようですからぁっ!……あんぁっ!!わたしの性器をぉっ……どうぐのようにあぁっ!!ああぁっ!はんっ!ひぁっ!あんぁ!!」

 

それでも彼女はもっと激しくして欲しいのだろう。

鍛えられた体である為か、膣内はしっかりと俺の剛直を締め付け……欲望を絞り出そうとしている。

 

「ですからあぁっ!どうかっ……どうかぁっ……!!んひあぁぁっ!!あるじの子種をぉっ……わらしのなかへぇ!!ああぁんぅっ!!」

 

残りの僅かの体力で自由になった脚を俺の腰に絡めた。

そこにいるのは優秀な暗殺者ではなく、涙を流し、腰をくねらせ、男のモノを求める一人の雌だった。

 

そして俺は決着をつけるように精液をアサ子の女の部分へ全て吐き出した。

 

「……ッァ―――――――――――!!!!」

 

声にならない歓喜の悲鳴をあげた彼女は天井を仰ぎ見ながら全身を硬直させた後……まるで死んだように動かなくなった。

 

…………あれ?もしかしてやり過ぎた?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、意識を取り戻したアサ子さんとピロートーク(?)

 

「主は卑怯です……最後にあなたにあんな優しく囁かれてしまったら堕ちるに決まっていましょう」

 

サーセン、確かにちょっとズルだったかもしれん。

 

「飴と鞭って事で納得して、まぁ、勝ちは勝ちなんでアサ子さんの恥ずかしい過去とやらを聞かせてもらおうか」

 

「うぐっ!覚えておいででしたか……」

 

モチのロンよ、さぁさぁハリー、ハリー。

 

「む、むぅ……この間の事なのですが」

 

うんうん。

 

「……主に御用があって部屋までお呼びしたのですが姿も無く、ベッドの上には脱ぎ捨てられた上着があっただけでした」

 

ほうほう。

 

「そこで、ま、まぁ……何というか、魔が差しまして……主殿の上着の匂いを嗅いでしま、った……のですっ……ぐぅっ…!私は何とはしたない真似を!!」

 

「あぁ、その事か、知ってるよ」

 

「へ?」

 

「だって一応カルデアに一人しかいないマスターの自室だよ、何かあった時にカメラの一つぐらいはついているさ。まぁ、緊急時以外は俺しか見れないようにしてあるんだけどね」

 

プライバシーって大事。

 

「……全部、見られて、いたのですか……」

 

あまりの羞恥で顔を真っ赤に染め、言葉を失うアサ子さんをフォローするように言葉を続ける。

 

「いやいや、アサ子さんぐらいのなら全然可愛い方だよ、他の娘達はもっとエグいから。

例を挙げれば……静謐ちゃんとか俺の下着をアソコに擦り付けて盛り上がって自慰してたからね」

 

俺の部屋、不法侵入されすぎぃ!!

 

「何を、しとるのだっ!あ奴は!」

 

けど、アサ子さんそれぐらい照れるような事でも無いでしょうにさっきまで俺達そんなのと比にならないぐらいどエロい事やってたやん。

……ん?う~~~ん……?もしかして……。

 

「ねぇ、アサ子さん……実はこういうプレイをしたかったんだけど正直に誘うのは恥ずかし過ぎて無理だから、拷問の特訓という建前を使って俺を誘った。なんて事はないよね?」

 

まさか、誇り高いアサシンの彼女がそんなアウトな娘なわけ……。

 

「ははははははははっはは……おおおもしろい冗談を言いますななな、我が主は、ところで今日の夕食は主の好きなハンバーグで御座いますぞ」

 

「おい、目を逸らすな。ってか誤魔化し方下手糞か」

 

 

 

 




《ぐだ男とハサンの愉快な仲間達》

ぐだ男「ハサン先生の妄想心音みたく、俺もこう腕をグワァッって伸ばせないかな?」

呪腕「はっはっはっ!さすがの魔術師殿でも人体の構造を無視する動きは無理でしょう」

ぐだ男「いや、何かいけそう……うぉぉ、ズームパンチ!!」

呪腕「なんとぉっ!?」

関節をッ!はずして腕を伸ばすッ!その激痛は……

ぐだ男「アサ子さんを抱き締めてやわらげるッ!」

アサ子「あんっ……」

静謐(羨ましい)

呪腕「馬鹿な事をしてないで、早く関節を戻しなさい!癖になってしまったらどうするんです!!」





《風評被害》

清姫「旦那様からの苛められ上手として、何かアドバイスを!」

邪ンヌ「はぁっ!?な、何の話よ!?っていうか何でリリィまでいんのよ!」

リリィ「私の時だと、どうしてもマスターに苛められてもどこか気遣われてしまうんです。邪ンヌさんの話を参考にマスターが望む全ての事をこの身で受け入れたいんですっ!」

邪ンヌ「おいコラ、白百合の騎士。
あぁ!ちょうどいい所にいたわ!マシャマロサーヴァント、ちょっとアンタこいつ等のこと止めて………待ちなさい、そのメモ帳は何よ」

マシュ「デミサーヴァントです!
……えぇっと、これはただ単に出来るだけ先輩との接触チャンスを増やす為の貴重な資料にしようというか……私の知的好奇心を満たす為というか……」

邪ンヌ「畜生っ!このカルデアはもう手遅れなのかしら!!」






最初はマスター呼びなのに絆5ボイスで我が主とか言っちゃうアサ子さん可愛いよアサ子さん。
綺麗な貴女は!?って言われて照れるアサ子さん可愛いよアサ子さん。
ハサン勢は皆ぐう聖。






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海賊魂(アン&メアリー)

最近、大人しかったからね……もっとキャラを崩壊させるのですって何かが囁くんだよ。
『本当に申し訳ない』






「「舐めるなよ!海賊を!」」


今や多くの英霊が集う、我がカルデア……その数だけ多種多様な性格が存在する。

 

しかし、中にはダメ人間になってしまったサーヴァントも。

 

ここで大事なのは()()()()()()()()()()()()という事……最初っから性格に難があるサーヴァントはまぁ、別段そこまで珍しくもない。

 

「おお!君はもしかしてアビシャグじゃないかい!?」

 

ネグレクト親父は帰ってどうぞ。

 

つまり、このカルデアに召喚され、文明の利器、美味しい食事、数多の娯楽、そういったものに触れて、当初はまともだった筈なのにいつの間にか堕落してしまったサーヴァントが何人かいるという事。

 

その1:【引きこもり系文明ガール】

「堕落?違うな、これは進化だ。

人間とは奪い、殺し、貪り、そして忘れるもの……おお、まさにスーパーニート!私は人の本来の姿を進んでいるに過ぎない。

うむ?近くにカビゴンがいそうなのでここで失礼するぞ。あぁ、私は出来る女なので徒歩はするが歩きスマホはしないのだ。さすがアルテラちゃん、略してさすテラちゃんとでも呼んでくれ」

 

その2:【お前のどこが聖女だぁ!系ステゴロガール】

「はい?何でしょう?堕落?

ほほほ、私はもう前のような醜態は晒しませんわ。確かにあまり出番が無い事は変わらずですが……聖女の日課もキチンとこなしてますもの。

は?また太ったんじゃないかって?そんな筈ないでしょう!たまにあんたと運動だってしてるんだから……なっ!違うっつーの!()()()()()()の話じゃないわよ!こらっ!ニヤニヤすんな!」

 

 

 

 

 

そして、今俺の目の前にもダメ人間になってしまった一人の……ではなく()()のサーヴァントが。

 

「アンメアと!」

「マスターの!」

「「ぐだぐだオーダー!!」」

 

『いぇーい!!!』

 

ってラジオ番組っぽくタイトルコールしたはいいけど、ぐだぐだおーだとは何ぞ?

 

「特に深い意味はありませんわ、その場のノリというものでスルーしてくださいまし」

「うんうん、ただ単にマスターとお部屋でぐだぐだしたいだけだから気にしなくてもいいよ」

 

とさっきの茶番をなかった事にしながら、現代人としか思えないほどに生活感満載なお部屋で悠々自適に寛いでいるのは大海賊時代にコンビで勇猛果敢に戦い、名を馳せた海賊…………海賊の筈なんだけどなぁー……。

 

「アンー、そっちにあるカントリーマアム取ってー」

 

いつもはロリバニーっぽい格好をしていたメアリー・リードも今や緑色で胸元にQuickと書かれたTシャツに短パンという非常にラフな格好。

 

「はいはい、どうぞ。あら?どうしましたマスター、そんなにこちらを熱心に見つめて……っあ、もう、まだ駄目ですわよ。そういうのはムードが大事なのですから」

 

何かピンクチックな誤解をしている金髪と巨乳が映えるアン・ボニーの姿はメアリーとほとんど同じ格好、相違点はまぁ、服が赤色でBusterと書かれた……ちげぇっ!よく見るとBustって文字だ、コレ!

道理でメアリーがチラチラと羨まし気な視線を向けてると思ったわ!

 

「しっかし、二人そろってそのお揃いのダサTは一体」

 

「マスターだって僕達と同じ格好じゃないか」

 

「えぇ、私達の部屋にご招待する際に着させてあげたでしょう?」

 

あぁ、そう言えばそうでした……と自分が着ている青色ダサTを確認する。

 

「何故、俺はArts?」

 

「NP(意味深)がたくさんチャージできるよ。という意味だと思いますわ」

 

「なるほど」

 

「それで納得しちゃうんだね……」

 

いやもうこういう扱いも慣れました、これからは皆さんのNP(意味深)チャージ係として頑張らせて頂くことにします。

……うん、これからというか、これまで通りでしたか、あははっ。

 

「なんつーか、大分、俗世間に浸りきっちゃったよね君達……最初の頃はあんなに海賊、海賊してたのに」

 

「何をおっしゃいますかマスター。海賊の矜持はもちろん忘れてませんわ。だから今だってこうしてインクの海を泳いで命懸けでナワバリ争いをしているんですもの」マンメンミ!

 

「おう、イカゲーに夢中になっているだけだな」

 

スプラトゥーンやめーや。

 

「僕達って二人一組のサーヴァントとしてキャラ立ちしている筈なのに何故か出番は少ないからね、こうしてネットの海を航海するぐらいは見逃して欲しいよ」カタカタ

 

そうだね、印象が残ると言えば、オガワハイムで今みたいな惨状を晒したぐらいか……まぁ、さすがにもうあの時ほどの汚部屋じゃないのは安心したよ。

それでもね……ここに何度も遊びに来てて今更なんだけど、オガワハイム以上に現代人っぷりに磨きがかかっていると思うわ。

今度は誰の影響よ?アルテラか?まーた、エッツェルの仕業なのか!?

 

「メアリーはまだマシじゃない、戦闘になればカトラス片手にちゃんと戦えるんですから、私なんて後方から賑やかすか、宝具の時にバキューンッするぐらいしかやる事がありませんわよ」

 

明確な出番は『アン、後はお願い!』された時ぐらいだもんね、もっと色々とお願いしてあげて!

 

「もう、名前もこれからは『アン&ほとんどメアリー・リード』で良い気がしてきましたわ」

 

「そんな売れないコンビ芸人みたいな名前、僕はご免だよ、アン」

 

互いに愚痴なのか、益体も無い話をぐだぐだと……あぁ、これがさっき言ってたぐだぐだオーダーなのか(違う)。

 

「ふふんっ、20キル0デス……カンスト勢の私に挑もうなんて10年早いですわよ」

 

イカ共の血潮(インク)を十二分にぶちまけて満足したのかアンはゲームの電源を切った。

相も変わらずのガチ勢ですな。

 

「はぁーあ……やっぱりマスターみたいな男の子は船よりバイクの方が好きなのかなぁ」

 

パソコンを閉じ、ぼやくメアリー。

 

「いや、バイクも船もどっちも好きだよ俺は」

 

ライディングデュエルしたい時もあるし、ウィーア!したい時もある。

そこに優劣など無し。

 

「けど、風の噂でここ最近は金髪の不良男&不良娘の二人と夜な夜危険なレイシングドライブをしていると聞きましたが?」

 

バレてーら。

 

「仕方ないじゃない……盗んだバイクで走りだしたいお年頃なんですよっ!特にあの二人はヤンチャな遊びにノリ良く付き合ってくれるし!」

 

一部の過保護勢にバレたら間違い無く雷だけどさ、まぁ、バレなきゃ犯罪じゃないんですよ、おーけー?

 

「なら、僕達も誘ってよ!」

「ダブルダッシュなら得意ですわよ!」

 

「ゲームの話じゃねえかそれ」

 

甲羅とかパナナとか投げつける遊びじゃねえから。

 

「ぐぬぬ、僕達もライダークラスなのに……」

 

「騎乗スキルないじゃないですか」

 

航海のスキルあるから、船型の車にすれば、ワンチャンあるか?

 

「私ももっと出番が欲しいですわ!

欲を言えば、他の方々と同じくちゃんとした戦闘モーションが欲しいんですの!だってせっかく胸元にこんな揺れるイイ物があるのに……ほんの少ししか出てこないなんて宝の持ち腐れだと思いますわ!」

 

「え?何それ、アン?どんなに戦っても絶対に揺れない僕に対する当てつけ?」

 

ひぇ、メアリーの目がどんどん濁っていってるよぉ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、レイプ目になったメアリーを二人で慰めた。

まぁ、最終的に俺がメアリーに自身の乳の素晴らしさを身を持って体験させてやったら納得してくれたました。

話し合い(性的)って大事。

 

「むぅー、何かメアリーには甘くありませんこと?やっぱり貧乳スキーなのですか、マスターは?」

 

もにゅんと寂しそうに自身の胸を抱えるアン……眼福でございます、ありがとうありがとう。

 

「アンもいつか優遇される日が来るよ。射撃スキルあるんだからアーチャークラスになって今度は君が前線に出てくるって」

 

「本当ですの?」

 

「本当、本当」

 

マスター嘘つかないよ。

 

「ふむ、まぁ確かにあり得ない話でも無いかもしれませんわね、その日を夢見て今は羽を休ませておきましょう。ほらっ、メアリー、蕩けてないでシャキッとして下さいまし」

 

顔が真っ赤で心ここにあらずな、メアリーの頭をポンポン叩くアン。

割と控え目に揉んだのでイッてはいない筈だけど……。

 

「あぁっ……駄目だってマスター、そんな僕の胸にしか欲情出来ない気持ちは嬉しいけど……それじゃあ他の駄肉をぶら下げている娘達が可哀想だよ……」

 

「ちょっと夢を見過ぎですわよ、早くこっちに帰ってきなさい!」

 

アンは顔を少々引き攣らせながらも、メアリーの頭を強めにド突く。

 

「ぐはっ!……ちょっとぐらい夢見たっていいじゃないか、海賊だもの」

 

「そういうのはお布団の中で見て下さいな、今日はマスターと一緒に映画鑑賞をするのでしょう?」

 

「あぁ、それで今日はこの部屋に誘われたのか。けど、映画鑑賞ならこの3人で良くしてる話じゃない?」

 

俺の返答に何故かドヤ顔をかましながら、DVDの準備をするメアリー

 

「ふふっ、今日はいつも見ているモノとはワケが違うよマスター。

僕達のネッ友でもあるあの自称『全ての文明を究めし者』アルテラから推薦してもらった渾身の作品らしいからね」

 

やっぱり アイツ か

 

「そうですわね、彼女曰く『今まで多くの作品を見てきたがここまで鳥肌が立ち、心が抉られたモノは生まれて初めてだ。破壊の大王である私ですら……ある意味敗北を認めてしまう程に』と大絶賛でしたもの。

そういえば私はタイトルをまだ聞いていませんでしたわ」

 

そのレビューを聞いても嫌な予感しかしねぇぞ。

 

「うーんと、確か……そうそう『デビルマン』ってタイトルだったよ」

 

クソァッ!!アイツ(アルテラ)確信犯だろ!!

 

「まぁ!私、その漫画全巻持っていますわ!実写化していらしたのは知りませんでしたが……ふふっ、これは期待が高まりますわね」

「バッドマン、スーパーマン、アイアンマン、然り……シンプルで語尾に‘マン‘がつくタイトルは当たりの傾向があるからね。成程、彼女(アルテラ)が薦めるだけの価値はあるという事かな」

 

あぁ、やめろ、もうやめてくれ。

二人が約束された勝利のゴミ映画に向けて着々とスキップしていっている。

 

「なぁ……その映画の評判とかは一切調べてないのか?」

 

「マスター、僕達は基本的にネットの評判を事前に見るような事はしないんだ」

 

「えぇ、けどそれはアテにならないからという理由ではなく……自分の目で見て、自分で判断したいからですわ」

 

「大多数の意見を参考にする……確かに賢いやり方かもしれない。そうすれば、安全に良作だけ楽しめるかもしれない。けど、それは違うんだよマスター」

「えぇ、いつだって私達は抱えきれない財宝よりも宝の地図を……結果よりも冒険(かてい)を求めているんですの」

 

「「だって僕(私)達、海賊だからっ!!」」

 

……言っている事は凄くカッコいいのに、やる事はしょうもないから素直に感動出来ないこの気持ち。

だが二人の様子を見る限り、俺がここで口を出しても実際に見るまでは止まらないだろう。

 

「……わかったッ、君達がそこまで言うのなら俺も地獄の底まで付き合おうッッ!

俺だってマスターの矜持があるさッ!死なばもろとも、一蓮托生……一緒に逝こうじゃないか」

 

「いや……だから、元から一緒に見てもらう予定だったんだけど」

「どうして、そんな血が滲むほどに唇を噛み締めているんですの?」

 

立ち向かう相手はこの世全ての悪(デビルマン)……またあの吐き気を催す邪悪に挑まなければならない。

あぁ……今まで多くの特異点をまわってきたがここまで恐怖を抱いた事はあっただろうか?

それでも……それでも俺はッ!俺は前に進まなければならない!

彼女達だけをあらゆる絶望を凝縮した肥溜めに向かわせるなんて出来るわけがないだろうがぁ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふっ、やっぱりこの体勢が一番しっくりきますわね」

 

「うんそうだねアン、3人で寝る時もこれだもん。まさに黄金パターン、これで勝つる!という奴だね」

 

室内を暗くして、俺達は大型テレビの前に陣取っていた。

俺の後ろにアンがそして前にメアリーという体勢……。

アンが背中越しにギュッとしてくれることによる柔らかい双実の役得を堪能しながら俺の懐にすっぽり嵌っている小さめアンを今度は俺がギュッと抱いて味わう。

アンメアの二人にサンドされながら座椅子に座り、映画鑑賞する。これが彼女達曰く、黄金パターンらしい。

女海賊の二人に挟まれちゃうなんて、体がどうにかなっちゃうよぉ……(歓喜)。

 

「3人とも似たような服でこう引っ付いていると少し照れくさい物があるけどさ」

 

前からQuick、Arts、そしてBustって何のコマンドかワケわかめですが。

 

「確かに言われてみれば、バカップルみたいですわね」

「3人でバカップルっていうのもちょっと変じゃない?」

 

「ではファミリーにしておきましょうか、私とマスターが夫婦でメアリーが子供」

 

「アン?」

 

「冗談ですわよメアリー、そんなに怒らないで下さいな」

 

 

3人で軽口を叩きあいながら、映画は始まった。

 

はぁ―――……見る物がこんなクソ映画じゃなければ、今の状況も素直に楽しめたというのに、私は悲しい……。

悲しいので、前にいるメアリーの左頬をさわさわと撫でるしかないじゃないですか。

 

「んっ、みゅう……」

 

小動物的な鳴き声を出しながら、彼女は俺が撫でている手の方へだんだんと首を傾けていった。

君はあれかな?俺を萌え死にさせるつもりか?

 

 

 

 

――オレェデーモンニナッチャッタヨォ

――ハッピィバースゥデェ!デビルマン!

 

まだ冒頭部分であるが既にこちらのSAN値をガリガリ削ってきてるこの映像を見ながらどうしたものか考えていると、前にあるメアリーの様子がおかしくなっていた。

 

「んっ……はぁ……マス、ター……だめだってぇ……」

 

いやおかしかったのかは彼女ではなくどうやら俺の方だった。

知らぬ間に左手で頬を撫でるだけには留まらず、彼女の短パンの中へもう一方の手を入れ込んでいたのだから。

 

まさか、ついに俺は無意識的にセクハラをしてしまう領域まで来てしまったというのか!?

 

「んぁっ、ふぅっ……映画に集中できないってばぁっ……」

 

メアリーの股間をパンツ越しに弄りながら、俺はある事を思い付いた。

‘いっそ、もうこのクソ映画に集中できない程にイカせてあげればいいんじゃね?‘と。

自分の悪魔的発想に感動し、そうと決まれば善は急げの如く、今度は意識的に彼女の責めを開始した。

 

「はぁっ、あっ……やぁっ……まって……」

 

「あんまり騒ぐと後ろのアンに気づかれちゃうよ、はいお口にチャック」

 

気づかれた所で特に問題は無いというか、むしろ気づいてくれた方が俺的には大歓迎なのだが、口を塞ぐお手伝いとばかりに彼女の口の中にさっきまで頬を撫でていた指を数本入れてあげると、メアリーは気を逸らすようにそれを甘噛みしていった。

別に思いっ切り噛んでもいいのよ?

 

「んちゅっ……ちゅぅ、んっ、んむぅっ!んふあぁ……」

 

布の上からでもわかる彼女の淫裂のラインに沿って指を緩急つけてスライドさせていく。

メアリーは割りと敏感体質なので直接触らずともイカせる事は余裕のよっちゃんだったりする。

 

体の震えを紛らわそうと指を必死にチュパチュパしているが……限界が近いのはバレバレだ。

いつもならここで焦らして苛めてあげてもいいんだが、今回はさっさとイかせてあげるのが目的なので手を緩める事はしない。

絶頂へ導くように彼女の敏感な部分へ指先を強めに押し付けた。

 

「んぐうぅぅっっ――――――……!!!」

「……っっぁ!?」

 

前にいるメアリーがイクのと同時に後ろにいるアンも大きく反応した気配がした。

 

唾液まみれになった指をメアリーの口から引き抜くと何故か呼吸を乱しているアンが俺の肩へ顎を乗せてきた。

 

「はぁ……はぁ……もうっ、二人で何をイチャイチャしていらっしゃるのかしらぁ……」

 

頬を赤らめ、扇情的な表情になっている彼女の問いかけに何のことやらととぼけてみた。

 

「あなた、確信犯でしょう……私とメアリーが特殊な召喚された弊害か、片方がイッてしまうともう一方も同様にイッてしまうって知っている筈でしょうに……」

 

彼女達は二人一組という異例のサーヴァントだがステータスが存在しない代わりに片方が消えてしまうともう片方も問答無用に消えてしまう。

それの影響か感覚を共有しているわけではないが何故だか性的絶頂だけは共有しているようだ。

つまり、メアリーがイケば、アンもイクということ、まぁ彼女達は『一度で二度おいしいからむしろウェルカム』とポジティブ思考だったが。

 

「文句を言うつもりはありませんわ。私達を気遣って下さったのでしょう?

メアリーは前でアヘアヘされて気付かなかったようですが、この映画、開始10分で腐臭しかしませんでしたもの……言い出しっぺの私達が見るの止めようなんて言いづらかったですし……感謝しますわ」

 

息絶え絶えなメアリーが「アヘアヘなんて……してないし」という抗議しているがアンは華麗にスルー。リモコンを取り、電源を切った。

 

――サタンダカラナッ!プツッ!!……

 

この映画をイチャつく為のダシにしてしまったが罪悪感が微塵も湧いてこないのは是非も無い事だろう。

 

「それにもう、私も完全にスイッチ入ってしまいましたもの……」

 

蕩けるようなボイス囁く彼女は俺を抱きかかえたまま、俺のズボンに手をかけ、メアリーの痴態とアンの巨乳の柔らかい感触に興奮した肉棒を外へと出した。

 

「ふふ、私はこちらを奉仕させてもらいますから、どうぞ……メアリーの体を存分に堪能して下さい」

 

あら、そうですか。

アンからのお許しもあって今度は服の上からではなく直接彼女の胸と性器の方をまさぐることにした。

 

「んふぁっ……またぁ……んにやぁっ!あぅぁ!」

 

イッたばかりで敏感になっている体を追い詰めるように汗と愛液で濡れているメアリーの狭い膣内を指が蠢き、起伏が低い彼女の胸を丹念に揉み込んでいく……おやノーブラですか。

 

「ひぁやっ!イッたばかりでぇっ!体がふわぁっ……ってぇ……きもちいいよぉっ!ますたぁーっ……」

 

「あらあら、あんまりメアリーばっかりにかまけないで下さいね。れろっ……ちゅるぅ……」

 

そのしなやかな手で剛直をリズミカルに扱いているアンはこっちにも意識を向けて欲しいと言わんばかりに俺の耳を舌先で弄り始めた。

 

「はぁむぅ、んちゅっ……あんっ、ちゅっ……んふぅっ、あんっ!もうっ……メアリーがさっきから小さくイッてしまってるからぁっ、私までどんどん気持ちよくぅっ、はぁぅ!…………じゅるぅぅっ」

 

耳たぶを噛み、脳を犯すように耳の中まで舌を伸ばしていく彼女。

当然、肉棒の奉仕も忘れてはいないが、敏感なメアリーがイク度に奉仕している側の彼女の嬌声が至近距離で耳に入ってくる。

何度も喘ぐ二人に挟まれて獣欲もどんどん高まっていった。

 

「はぁぅっ!あ、あぁ、あぅっ、だめ、だめぇ……んひやぁっ……僕ぅっ……はあぁっ!飛んじゃうぅ……またっ、とんじゃうよぉっ……!あうあぁ!!」

「んちゅっ、じゅるぅっ!れろぉっ……んんっ!んはぁっ……いい、ですわよぉっ、3人で一緒にぃ……あぁっ!きもちよくなりましょぉっ……!」

 

俺の指をこれでもかと締め付けるメアリーの膣襞の感触と痙攣が――

肉棒を手淫しているスピードをどんどん上げているアンの喘ぎが――

激しさを増していき、やがて……。

 

「ひやあああぁぁぁっっ!!」

「はああああぁぁぁっっ!!」

 

一つの声に重なるように絶頂を響かせた。

 

「っ……!」

 

そして俺自身も、腕と背中で彼女達の温もりを感じつつ、アンの手に包まれている肉棒から精液を思いっ切りメアリーの背中目がけて吐き出した。

緑色のTシャツが白濁に汚されていく。

 

「あぁっ……はぁっ……マスターのばかぁっ、服がもうグショグショだよ……」

 

「丁度いいんじゃありませんか?私も汗で服がもう酷い事になっているんですもの……これから行う事に衣服は必要ないでしょう。それともマスターは着衣したままの方がお好みかしら?」

 

「いや、今日は二人とも脱いでくれると好ましいかな」

 

俺の返事にメアリーは若干照れながらも脱衣していく。アンはオープンな様子で同様に紅色の派手な下着を披露しながら脱いでいっているが……うむ、しかしやっぱりいつ見てもアンのは大きいなぁ、こうTシャツを脱ぐ瞬間にプルルンって揺れるのがグッジョブ!と……。

 

「ごめん、メアリー……夢中になってたのは認めるから、そんなどっかのうさぎ名探偵の如き目でこっちを見ないでくれ」

 

メア美ちゃん目怖ぁっ!

 

「夢中になってくれるの嬉しいのですけど、見るだけでは寂しいでしょうマスター?」

 

互いに全裸になると、アンは床に俺を押し倒し、まだまだ臨戦態勢な俺の愚息をその豊満な胸で挟み込んだ。

 

「別にいいもん、僕だって胸でマスターを気持ちよくさせる事は出来るんだから……」

 

メアリーはそのロリ体型で俺の胸元にむすっとした表情でのしかかってきた。

 

「なら、よりどっちの方が気持ち良くさせる事が出来るか競争ですわねメアリー」

「望む所だよアン……んちゅ」

 

メアリーがその小さな唇を俺に交わしてきた事を合図に二人はそれぞれ自由に動き始めた。

 

「うふふっ……んっ、こーんなにおっきくして嬉しいですわぁ…マスター、んはぁ、どうぞ私の胸で存分に感じて下さいましぃ……」

 

アンの双実が柔らかく形を変えながら脈立つ性器を扱いている様は感覚的以上に視覚的にも快感を与えてくる。

 

「むちゅぅぅ……!ちゅっ、ちゅはぁっ……駄目だよっ……ますたぁ……僕の方もちゃんとみてっ、あぁっ……んんちゅ」

 

俺の視線がアンの巨乳に釘付けになっているのが気に食わないのかその視界を隠すようにキスの嵐を降らしてくるメアリー。

 

「んはぁっ、あぁっ、ちゅっ……あんぁっ!乳首がこすれてぇっ……いいよぉっ……ますたぁもどんどん気持ちよくなってぇ……あぁっ、んじゅぅ……」

 

舌を口内に挿し込みながらも自身の胸を俺の胸板に上下に擦り付けてくる。

確かにアンと比べてしまうとそりゃ敵わないが……メアリーだって女性らしい柔らかさは当然あり、それに加えて興奮し硬くなった彼女の乳頭が俺の乳首を擦り合うのが快感を走らせてくる。

うん、僕っ娘が全裸で一生懸命な姿も実に良い物だと思います。

 

「んっ、んぅっ、んふぅ……でもやっぱりマスターは大きい方が好みでしょう……?はむぅ、じゅるぅ……じゅるるっ!」

 

挑発するようにパイズリを続けていたアンは今度はピクピクと震えながら豊満な谷間から顔を出している亀頭に吸い付いた。

 

「んちゅっ、ちゅっ……じゅるぅ……はぁっ……ますたぁ、ますたぁっ、ますたぁっ!あぁっ……!僕っ、もうっ!」

「むじゅるぅ……じゅるっ!じゅぷぅ……じゅぽっ……ふはぁっ!あっ、はぁっ、出してくださいましぃっ!」

 

上でも下でも二人の美少女に責められてさっき存分に解放した筈の欲望がまたせり上がっていき……。

 

「ひあぁぁっ!胸だけ、でぇ……イッちゃぁぁっ……ああぁぁっ、んじゅぅぅぅっ!!」

「あふぁっ……!あぁっ……はあぁんぅっ!あむじゅるぅ…じゅるるぅっ!!」

 

イきながら激しいディープキスをしてくるメアリーと共鳴するように達してしまったアンはそれでも俺の鈴口から出てくる精液を一滴も逃さないとばかりに激しく口元をすぼめてきた。

 

メアリーからは唾液を、アンからは精液を……二人から魂まで吸い取られそうな快感を感じていた。やっぱり女海賊は激しいモノなんだね。

 

「あふぁっ、んくぅっ……はぁっ、こってりと美味しいものを頂きましたわ……私の胸でイッていただき何よりです」

「あんぅ、ふぅっ……ぁ……違うよ、アン……マスターは僕の胸と舌技で気持ちよくなってくれたんだよ、顔を間近に見ていた僕が言うんだから間違いないよ……」

 

俺から少し体を離した二人はお互いの主張を譲らないようにも見えたが。

 

「では今回も引き分けでよろしいですわね」

「そうだね」

 

「いつもの事ながら、あっさりだね」

 

二人はこういう情時の時に競い合うが白黒を付ける事はしない。

 

「僕達は別に無理に勝敗を付ける意味があんまり無いからね」

「だって私達、最後には二人まとめてあなたに負けてしまうんですから」

 

含みのある微笑を浮かべ、ベッドに重なりあう海賊コンビ。

 

「マスターにならいくらでも負かされて構わないって思ってるからさ」

「えぇ、ですから私達を存分に味わって下さいな。まだ夜は長いんですから」

 

身を纏う物が一切なく、金髪の美女の上に乗る、白髪の美少女の姿、目の前に財宝の如く転がっている二つの女体を前にした俺にYes以外の返事は無かった。

 

 

「んはぁっ!マスターのふっといのきましたわぁっ……ああぁっ!」

「アンばっかりずるいよぉぉ……ふああぁっ!!」

 

初めは下にいるアンの膣内から挿入を開始した。

それを羨ましそうにするメアリーを放っておくワケもなく、既に多くの前戯で大洪水な彼女の女陰には指を荒々しく挿れていった。

 

「くふぁっっ……!あぁぅ!……ますたぁの指がぁっ!僕のナカでぇ……あばれてぇっ、ひやぁぁっ!!」

 

少々乱暴にしてもそれすら快感に変えてしまう程に今の彼女は性的な刺激に飢えていた。

 

「いじめられるのは嫌いだけどぉっ……んひゃぁっ!ますたぁにいじめられるのは……あぁ、はぁっ、すきぃ!」

「あっ、ああ、はぁぁ!……かわいいですわよ……メアリー……二人でいじめられましょぉっ……あんぁ!!」

 

お互いに自身のナカを突かれる感覚に狂いながら気分が高揚していった二人はより快感を貪る為、目の前にある体を弄りあった。

 

「ちゅっ、んちゅ……んはあぁっ、あぁっ……アン、ああぁっ!!ちくびもだめぇぇっ……!!」

「はむぅっ、じゅるぅ……ちゅるぅっ……はぁっ!そんなに揉まないで下さいましぃっ……あぁっ!」

 

メアリーは目の前に揺れる果実を激しく揉み、

アンはメアリーの充血した胸の先端をこねくり回す。

二人の前後不覚になりながらもディープなキスを交わしている百合百合しい様を見ているとこちらのテンションもどんどん上がってしまう。

 

「だめっ、だめぇ……ますたぁっ!あっ、あっっ、ああぁ!そこ一番よわいところだからぁっ……!いいいぁぁっ!!いっちゃうよぉっ!」

「あん、あんぁっ!どんどん中でぇ……!はぁんぅ!あなたのが大きくなってぇぇ…………あぁ、あっ!奥ぅっ!んはぁぁ!!」

 

自分に犯されながらも、いやらしく混ざり合う女海賊コンビの姿に愛おしさと劣情がこみ上げてくる、メアリーのGスポットを中心に責めたて、愚息はアンの子宮口を削るように突いていく。

 

「あぅ!あぁっ!あぁ!にあぁっ!……んひあぁっ!!」

「はうっ!んうっ!んあぁっ!!はぁんうぁっっ!!」

 

「二人、一緒にイッていいぞっ!」

 

俺がその言葉と共に自身の雄を刻みつけるか如く彼女達の雌の秘奥に叩きつけた。

 

「ああぁぁぁ!!!あぁっ!あぁっ!んあぁぁ――――――……!!!」

「んぁぁあぁぁっっ……!!はぁうぅっ!はぁっっ!あついのがぁっ!……あぁぁ!!」

 

まるで一つの体になるように強く抱き締め合いながら達した彼女達であったが、襲い掛かる絶頂は自身の分だけではなく相方の分もあるので簡単に収まるものではないだろう。

現に今も……。

 

「あんぁ、あっ、あぁぁ!イクのがとまらなひっ……あぁっ!」

「はぁっ!あんぅ!まだ子宮がキュンキュンうずいてますわぁぁっ……んあぁっ!」

 

二人とも自身の性器から潮と白濁液をそれぞれ小刻みに吹き出していた。

涎を垂らして寄り添っている二人は痙攣を繰り返している。絶頂の余韻が引かなく、小さなエクスタシーが連続で体を巡っているように思えた。

 

 

―――さて、と……ではもう一回俺のバトルフェイズって事でいいかな。

 

「…………ぇ、うそ、でしょ、ますたぁ…?」

 

「何言ってんだメアリー、最初にアンが挿入されて羨ましそうにしてたのは君じゃないか」

 

ヒクついているメアリーの陰口に亀頭を当てると彼女は恐怖半分……期待半分でこちらを見ていた。

 

「それでもっ……せめてもう少し休ませぇ、みやぁあぁぁぁっ!!」

 

何の抵抗もない膣内に挿し込んでストロークを開始すると鳴き声のような彼女の悲鳴が響く。

 

「俺に苛められるのは好きって嬉しい事言ってくれたからね、マスターとして期待には応えるよ」

 

「ぁぁぁぁぁああっ……アンッ……たすけぇっ、ひんぅっ!」

 

「ガンバですわよ、メアリー」

 

「我関せずって態度な所申し訳ないけど、アンもさっきのメアリーみたくキチンと気持ちよくさせるからね。だって『一度で二度おいしいからむしろウェルカム』なんだろ?二人まとめて何度もイかせてあげるから安心してくれたまえ」

 

片手で指をパキパキとえぐい音がするほどに鳴らしてアンの方にもその魔の手を伸ばす。

 

「………………メアリー、逝くときは一緒ですわよ」

 

「慰めにならないよぉっ……ああああぁぁぁぁ…………」

 

今日はいくらでも負かしてあげるぜっ!

 

 

 

 




「いや、マスター、確かにあの映画をお薦めしたのは私ではあるが、完全に悪ふざけというワケではないのだぞ?私のレビューだってあながち間違いではないだろう?うん、アルテラちゃん悪くはない。………………すまん、正直100%悪ふざけだった。反省はしている後悔はしていない。航海だけに……そ、そう怖い顔をするな。それになっ、あんな世紀に残る邪作を私達二人だけで堪能するのももったないというか何か悔しいというか…どうせなら道連れを増や……ではなく同志を増やそうとした私の気持ちも汲み取って欲しいというか……え?危うく俺はあんな産業廃棄物を2回見るハメになりそうになった?それは本当にご愁傷さまだと思うから、両手に持っているエグい動きをしている玩具をしまってくれないか?…………待て、話せばわかるっ!無理っ……二つ同時なんて無理だからぁっ……あああああぁぁぁぁぁっ……………………」





《ダメ海賊コンビ事後》
「部屋でゲーム、DVD、ネットサーフィンとぐだぐだしつつ…朝まで死んでしまうぐらいにセックス……」
「これがお部屋デートという奴なのですね。私達はまたリア充へ一歩近づいてしまったという事でしょうか……」

(あれ?もしかして、俺、またダメ人間増やしちゃった?)







もっとアンメアの出番増えてもいいのよ?
マイルーム性能も高い女海賊コンビはいいぞー(絆5ボイスの破壊力よ)。
8月2日はバニーの日だから、この話は昨日あげたっかんだけど……よくよく考えると、今回はアンメア、ダサTの格好だったからバニー要素ないし、まぁいいかと思いました。
メアリーの身長って158なんだね、ドレイク船長と4cmしか変わらんてマジか。
この小説におけるメアリーの身長はイラストの方を想像して下さいな、あっちの方が断然ロリっぽいし。



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大乱闘スマッシュセイバーズX(謎のヒロインX)

《6章、15節NGシーン》

「やはりエジプトか……いつ出発する?私も同行する」
「黒セイバー」

「マスターの護衛はお任せ下さい」
「白セイバー」

「車の運転はオレに任せておけよ」
「叛逆のセイバー」

「群がる雑魚はこの沖田さんが片付けましょう」
「桜セイバー」

「セイバー殺す、セイバー殺す、セイバー殺す……」
「アサシンセイバー」

『行 く ぞ』バーーーン!

「いえ、あの先輩とセイバーさん方……大層な効果音を鳴らして、何故横並びになっているのかわかりませんがダ・ヴィンチちゃんの車は4人乗りなのでそんなに乗れませんよ?」






今までで最多の文字数(何度目の台詞だコレ)
文字数が多いとうことはカオス回という事。
メインがこいつだもん、仕方ないよね。
考えるな、感じろ、頭をカラッポにするんだ。


『何事だっ!』

 

『聖都に侵入者です!賊は2名!真っ直ぐこちらに向かっ……グワアァァァアッ!!』

 

『セイバー死すべし慈悲は無い』

 

ゴウランガ!!何たる事か……。

粛清騎士を蹴散らしながら現れた者は獅子王と同じ顔を持ち、アホ毛が伸びるイカしかキャップ。

手に持つはスーパテクノロジーと不思議パワーと何だかふんわりした物で構成されている聖剣。

たなびくジャージと腕に巻きつくマフラーを身に纏い、眩しい太ももとおへそが映えるスポーティスタイル…………許されざるギャグ時空が生んだ対騎士用決戦兵器セイバースレイヤー!!

 

そして彼女の名はッ――

 

『ドーモ。円卓の皆さん。謎のヒロインXです』

 

『お、王?よ……その格好は一体……』

 

『アイサツを返さんかぁっ!!カリバァーーン!!』

 

困惑し、余裕がないランスロット卿に対し彼女はお構いなしに剣を振るう。

本来なら相手のアイサツをきちんと待たなければならないが……そんな事は知るかとばかりだ、スゴイシツレイ!

 

『なんとおぉぉぉっっ!?』シュゥゥゥン……

 

『借金は踏み倒すものカリバァーーン!!』

 

『日中でもっ、お構いなしですとっ!?』シュゥゥゥン……

 

『セイバーじゃなくとも貴様は余裕でブラックリスト入りじゃあ!カリバァーーン!!』

 

『この結末は……悲しすぎますね……』シュゥゥゥン……

 

ワザマエ!無駄な尺は取らないとばかりにギフトをもらった騎士達を問答無用に片づけるその姿はまるでピクト人のようだ!

ぬしこそが真の蛮族よっ!!

 

『馬鹿な!?円卓の騎士達がこんなあっけなくっ!そもそもなんだ!?そのふざけた聖剣は!?』

 

獅子王の補佐官でもあるアグラヴェインことアッくんの驚愕はごもっとも……しかし、万能エネルギーアルトリウムを限界まで体に摂取した今のセイバースレイヤーに常識は通用しない。

真面目なキャラ程彼女の餌食にかかる、まさに究極のシリアスブレイカー!!

 

『くっ!モードレッド……モードレッドはどうした!!』

 

『モードレッドなら今頃、マスターに(自主規制)されて、(ピーー)されるぐらいに、死ぬ程(〇×△※)されまくってると思いますよ。

何か「ウチにいるモーさんと別物で狂犬成分しか無いから逆に新鮮だわー、たまにはこういう趣向もいいかもしれない。だって容赦する必要ないもんね」ってノリノリでしたから彼女はもう昇天してるんじゃないんですか?

いやホント、今ほどマスターが味方で良かったと思った事はないですね、まじブルってきたぜというやつです』

 

お子様には見せられないよ!如き発禁状態になっている遊撃騎士モードレッドがここにたどり着くことは無いだろう。

サーヴァントがサーヴァントなら、マスターもマスターである。もうやだこの主従コンビ。

 

『貴様は……なんだっ、モルガンのホムンクルスかっ?』

 

『私がパチモンとか喧嘩売ってんのか!?カリバァ――ンッッ!!!』

 

『グハァァァッ!!……王よ、申し訳あ……』シュゥゥゥン……

 

自身の地雷原を見事踏み抜いた彼を片付け、最後の玉座へ。

 

『…………何だ、貴様は?』

 

『会う人、会う人、皆同じ事聞きますよね。普通そこは‘何者だ?‘とかだと思うんですけど、‘何だ‘って何ですか……まるで人を未確認生命体のような扱いをして』

 

サーヴァント界という宇宙から来たのだからエイリアン扱いもある意味間違っていないだろう。

 

『ともかくアルトリア顔だけではなく、その胸にぶら下げている駄肉もプラスでモストギルティです。……ていうか可笑しいでしょう。聖剣を持った方が成長が止まって、聖槍を持った方が大きくなるって!

ランサー優遇ですか!?セイバーは最優クラスなのだから胸も最優になる筈でしょう!

ま、まぁ……マスターは私の胸でも十分愛してくれるので別に羨ましいとかこれっぽちも思ってませんよ!

大層なモノ持ってても愛されなければそれは存在しないと同義ですからね!』

 

鎧で隠れている獅子王の体をアルトリアセンサーで的確に感じ取ったXはヤクザよろしく絡んでくる……ッスゾ!オラー!!

 

『ワケのわからぬ事を……貴様は人理を救うべく私を打ち砕きに来たのだろう?

ならば構えるがいい、勝負になるとは思わぬが』

 

聖槍から放たれる嵐の如き魔力の奔流、その大きさは権能の如し、並のサーヴァントでは立ち向かう事すら許されない。

 

『勝負にならない?同感ですね。

獅子王?魔術王?グランドクラス?へそで茶が沸きますよ。

そもそも私はこの地球に留まらない……宇宙クラス!まさにグランドを超えたセイバーの中のセイバー!

あなたがこの星でバリバリ最強No1を名乗るなら、私は銀河一とびっきりスゲェ奴…つまりっ!

ユニヴァースセイバーと名乗らせてもらいましょうか!!』

 

『なっ!?』

 

獅子王の表情が崩れるのも無理はない。

二つ目の黒い聖剣を出したXの中に満ち溢れるのはアルトリウムだけではない、彼女が掲げた聖剣には宇宙からの莫大なエネルギーが集まっているのだから!

 

『星光の剣よ!マスターの敵を殲滅すべしっ!!

見るがいい!!私のアルトリウム300万パワーと宇宙からのコスモ300万パワーが合わさり!!貴様に放つは300京セイバーパワー!!!』

 

一体どんな愉快な頭ならそんな計算式になるのか、おそらくは喋っている本人でさえよくわかっていないのだろう。

だか扱う彼女の存在はふざけていても…その力の大きさは『馬鹿げてるぜぇ!!』の一言!

二つの聖剣を一つに纏め、Xは自身最強の宝具を放った。

 

『皆にはナイショだよ!約束しなくても勝利しかあり得ない剣(ギャラクティカエックスカリバー)ァァ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「勝った!第6章完っ!…………むにゃむにゃ……」

 

「おい起きろ、たわけ」

 

――ゴスッ!

 

「あいたぁっ!?……あれ?最果てを倒し、(ソラ)の果てとなった私とマスターによる終わりなきアバンチュールは!?」

 

なんですか!また夢オチですか!?

 

「不愉快過ぎる夢の内容だな……寝言は寝ている内に留めておけ、X」

 

私の頭を小突いた憎き黒い女こと黒セイバーは呆れた顔でこちらを眺めていた。

余計なお世話ですよ、全く。

 

「というより、そもそも何であなた達がいるんですか」

 

私は確かマスターから呼び出しをもらい、マスターのお部屋に来たのですが……一向に現れる様子が無かったのでついうたた寝をしてしまったようです。

いつの間にか大所帯になっているじゃないですか。

 

「沖田さんはマスターにお呼び出しをもらっただけですよー」

 

「どうやら皆様方、同様にここへ集められたようです師匠」

 

「父上が一人、父上が二人、父上が三人……」

 

ふむふむ、成程……ここにいる面子はビームを打てないセイバーの面汚しと我が愛弟子とドラ息子、そしてジャンクフード中毒の黒いのと来ましたか。

 

「ふふっ!私のアルトリウムがピピッと反応しましたよ!私達がここに集められたのはマスターに相応しいNo1セイバーを決めろという事でしょう!主に肉体言語で!」

 

リリィだけは手に掛けるのが躊躇われますが……仕方ありません!

古今東西あらゆる世界で師弟はいつかは雌雄を決するものだと相場が決まっていますからね!

 

「それを言ったら、まずあなたはアサシンじゃありませんか?」

 

「あぁ、貴様の言に従うならまずは最初の脱落者はセイバーですらない貴様自身だろう」

 

「はぁぁん!?私のどこがアサシンなんですぅ!?この立派な聖剣が見えないんですかぁ?

闇討ち、騙し討ち、奇襲、死体蹴りからなんでもござれのハイパーソードですよ!」

 

喧嘩ならいくらでも買いますよ!特にあなた方二人は私にとって目の上のたんこぶでしたからね!

 

「し、師匠……落ち着いてください」

 

「そうだぜ!帽子の父上はこう、二つの聖剣を乱暴にブンブン振り回してすんげぇ格好いいぞ!暴虐の化身みてぇに!」

 

「止めるなっ!リリィ!この分からず屋共には物理的な教育が必要なんです!

それと馬鹿息子……あなたのは褒められてる気がしません」

 

あと何ですか、帽子の父上って。

 

―――シュインッ

 

と……私達がやいのやいの騒いでいるとドアが開き、誰かが入ってきた。

 

「へいよーあるてらっくす」

 

・・・・・・・・・

 

「どうした皆の者、だんまりか?挨拶を返さないのは悪い文明だぞ。古事記にもそう書いているから間違いない」

 

そりゃあ……全員何とも言えない顔になりますよ。

 

「引きこもりの貴様が外出しているのも驚きに値するが……それよりもだ。その格好は一体何だ?」

 

黒セイバーが私達の疑問を代弁するように問いかけます。

あの残念系文明ガールがいつものラフな格好ではなく、着ているのはマスターと同じカルデアで支給されている真っ白の魔術礼装……形は女性用にアレンジされているようですが……。

うん、ちょっとどころか大分気に食わないですね、ペアルックのつもりですか?抹殺しましょう。

 

「そうだな。私が俗に言う『ぐだ子ちゃん』スタイルで来たのも理由がある。

何事も形から入るのが肝心だからな、今の私は人理継続保障機関名誉顧問代理副長官という立場だ、アルテラではなく長官と呼ぶがいい」

 

なんですか、その文字をつなげまくって最終的にどんな立場なのかよくわからなくなったふわっとした感じの役職は。

 

「はい!長官殿!」

 

「質問を許そう、リリィ2等兵」

 

私の愛弟子を2等兵扱いとは良い度胸ですね、それとリリィもこのヒッキーにノッてあげなくてもいいんですよ?

 

「もしかして、私達をここに集めたのは……」

 

「察しの通り、私だ。いや、マスターの名を騙ったわけではないぞ?マスターも今回の件に1枚どころか2、3枚噛んでいるからな」

 

むむ、そうですか……もしあなたがマスターを偽り、私達をここに集めたのなら聖剣の錆びにする大義名分が出来たのですが。

 

「ならば、さっさと要件を言え」

 

「うむ、確かにそうだな。本題にはテンポ良く入るべきだ。良い事を言ったオルタ軍曹には100良い文明ポイントをあげよう」

 

あ、黒セイバーが青筋を浮かべてますわ、もっと煽ってもいいですよ。

 

「では括目せよ!」

 

ヒキセイバーがそう叫ぶやいなや、壁に取り付けられていたモニターにある文字が――

 

 

・・・・・・・・・

 

 

『絶対にイッてはいけないカルデア24時?』

 

なぁにこれぇ?

 

「はい拍手ー」

 

誰も彼もがぽかーんと口を開けたまま……頭に理解が追いつかない状態でしたが、そんな事は知らんとばかりに彼女は話を進めていく。

 

「今回ここに集められた面子はまぁ、一名違うが、このカルデアで召喚されている最優クラスのセイバーであり、何より……ヒロインの代名詞といってもよいアルトリア顔を持つ者達だ。

あぁ、私は今回は進行役なので除外してもらって結構だ。アルトリア顔として参加してもそれはそれで一興だったが」

 

1名違うのですか、誰でしょうね?

セイバーが最優クラスという点に関しては大いに同意ですが

 

「なんつーか、アレ系のDVDのタイトルみてぇだな……」

 

「私としてはどうして、モードレッドさんがそういう系のタイトルを知っているのか気になりますけどねー」

 

「モードレッド?」

 

「母上、黒い父上っ!ご、誤解しないでくれよ!ただあのバカマスターが一緒に見ようって、さ、誘ってくるから……」

 

「一体何の話でしょうか?師匠?」

 

「リリィはそのままでいてください」

 

うん、あなたは綺麗なままで…………きれい?……いや、リリィもリリィで結構どギツい事をやってませんか?本人に自覚が無いだけですか?むむ、これが天然のいやらしさという奴なのでしょうか。

 

「まぁ、つまり、簡単に『マスターには勝てなかったよ……』とアヘ顔ダブルピースを晒すような真似をせず、騎士でありヒロインでもある自覚をちゃんと持っているのかを確認するのが今回の趣旨であるという事だ。

後、一度でもイッてしまった者はその時点で脱落、ドゥーユーアンダンスタン?」

 

そんな事しなくても、騎士の自覚もヒロインの自覚もちゃんと持ってますよ。

伊達にセイバークラスで『謎のヒロインX』なんて名乗ってませんからね。

 

「理解はしたくないがここに呼び出された理由はわかった。だが我々が参加するメリットがあるか?」

 

黒セイバーの言う事はごもっともですね。

私もあのヒキセイバーの言う通りにする必要があるとは思えませんし。

 

「言った筈だぞ。マスターも噛んでいると。ありきたりだがこの企画で最後まで残った者にはマスターが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……世界中に散らばる7つの玉を集める必要もなく願いが叶うのだから破格の条件だと思うが」

 

なんでも、だと……っ?

 

「クエスト……二人だけで好きなだけクエストに行き放題って、事か?」

 

「世界中ジャンクフード食べ歩きツアー……いや、今度は奴もサンタにしてダブルサンタで世界中の子供達に夢をばらまくというのも……」

 

「婚約指輪……婚姻届け……うん日本人なら白無垢ですよね。ふふ、やっぱり一姫二太郎がいいですかね?」

 

「何でも、なんでも、ナンデモ、ナンデモ、nandemo……」

 

ぐぐっ、他の方々はともかく、この私がそんな、そんな餌に釣られクマーーッ!!

 

「よきかな、よきかな、皆の衆がチョロインで私も実に進行しやすい。では早速始めるとしよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《Case1:お洗濯》

 

「戦えるだけの者などもはや掃いて捨てる程にいるからな。

ヒロインである以上家事の一つや二つ出来て当たり前だのクラッカーという奴だ」

 

場所は変わらずマスターの部屋。

私達の前には衣類の山がてんこ盛り。

 

身構えたわりにはそんなに大したことじゃなかったですね。

ドラ息子や悪食王はともかくとして、洗濯の一つも出来ないと見られていたとは舐められた物です。

ですが……この衣服どこかで見覚えが。

 

「とりあえず、下着と服は分けて……って何をしているんですか桜セイバー?」

 

隣を見やると、何故かこれから洗う筈の寝巻を身に纏っている和風セイバーの姿が……頭大丈夫ですか?

 

「いえ、私も自然と体が勝手に……そもそもこの匂いが…」

 

「一つ言い忘れていたがここにある衣類は全てマスターの使用済みの物だ。

この日の為に溜めてもらったからな……彼の汗とか匂いとか充分に染み込んだ物だからしっかりと洗濯してくれたまえ」

 

畜生!そういう事ですか!マスターの使用済みの寝巻とか……一部のサーヴァントにとっては麻薬に等しい物をここで出してくるとは何と卑劣なっ。

 

「はっはっはっ、思わず着てしまいましたが、タネがわかれば無問題です。少々おしいですが……脱げばいい話でしょう?この沖田さんがこんな序盤で脱落なんてありえませんよ……くんくん……」

 

「いや、けど母上、どんどん襟元に顔をうずめているようにしか見えねぇんだけど」

「フラグ乙だな。もうオチが見えたぞ貴様」

 

彼シャツの如く、体を痙攣させながら深呼吸してマスター成分を摂取している人斬りの姿が。

なんて羨ま…………ではなく、見苦しい真似をっ!

 

「すーはぁー……すーはぁ――……大丈夫です……らいじょうですからっ……んんっ、あとちょっと……ちょっとだけ匂いを嗅ぐだけっ、ですからぁっ…………あんぁっ!」

 

―――デデーン、沖田OUT

 

「……な、なんでですかぁっ!?」

 

「長官たる私の目を誤魔化せれると思ったか。

お前が匂いを嗅ぎながら自身の大事な所に寝巻の袖を擦りつけて達したのはお見通しだぞ。というわけで定番の罰ゲームだ」

 

アナウンスが鳴り響き、部屋入ってきたのは……。

 

「ドーモ、罰ゲーム執行人です」

 

「マスターじゃないですか」

 

何やってんすか、あなた。

格好もいつもの姿ではなく、黒スーツのロイヤルブランド礼装。

そして……その手に持ってるのは一体?

 

「まぁ、例の如くお尻叩きというワケだが、英霊のお前達にただ単にお尻を叩くだけではあまり効果があるとも思えなかったのでな。

私の手によりお尻叩き棒を軍神の剣化させてもらった、その名も『マルスパンキング』!!

この3色棒とマスターの性戯が合わされば、まさに鬼に金棒という奴だろう!」

 

一見柔らかそうに見える3色の棒をノリノリで素振りしているマスター。

どう考えてもマルスの無駄遣いです!ありがとうございます!

軍神様は草葉の陰で泣いてるんじゃないんですかね?

 

「というわけで沖田さん、お尻を出したまえ。

この礼装のスキルのクイック性能超アップ(意味深)、スター集中状態を付与(意味深)、必中状態を付与(意味深)をふんだんに使い、痛気持ち良いの極致を目指したから心配はいらない」

 

イイ笑顔でマスターがどんどん桜セイバーに近づいていきます。

服装も相まって悪党にしか見えないですよ。

 

「あ、あの……マスター?も、もちろん……一発だけですよね?」

 

「No!No!No!」

 

「ま、まさか二発!?」

 

「No!No!No!」

 

「もしかして三段突きですかぁぁ!?」

 

「Yes!Yes!Yes!」

 

―――パァン!パァンッ!パァンッ!!

 

「あひぁぁああああああぁっ!!」

 

小気味よい音が3連続、そして哀れな敗北者の悲鳴が部屋に響き渡った。

 

「な、なぁ黒い父上……いまオレには一振りにしか見えなかったんだけど」

 

「あぁ、だが音が確実に3つ聞こえるのはそういう事だろうな」

 

三段突きというよりは三段叩きって感じです。

いやはや、桜セイバーがアヘェみたいな顔で気絶してしまっているのも惨いですよねコレ、そして……。

 

「何より恐ろしいのがあの一撃をくらってしまったら性癖が歪められて戻ってこれないという事です」

 

いやですよ私は!真っ当なヒロイン枠なのでそんな色モノにはなりたくないですからね!

 

「……ゴクリ」

 

「リリィ、駄目ですよ。わざと罰を受けようなんてしたら師匠オコですからね」

 

「え、えぇ!?な……何のことですか!?私はそんなつもりは……」

 

ゴクリじゃないんですよ、ゴクリじゃあ、我が弟子ながら少し将来が心配になります。

 

「さぁ、早速脱落者が一人出たが……洗濯物はまだ残っているぞハリー、ハリー」

 

「んな事言われてもよ。オレ、洗濯とかあんまりした事が…………ね……ぇ」

 

衣類の山から何かを取り出したモードレッドの動きがピシリと固まってしまった。

ん?一体どうしたんでしょうか?

 

「おぉ、下着ゾーンを引いたか、しかしあの動揺っぷりはもしかするとマスターにお口でご奉仕した際に印象に残ってしまったとかそういう類の物か?甘酸っぱいメモリーは良い文明だぞ」

 

「アルテラちゃん、俺下着まであるなんて聞いてないけど。おい、こっち向け」

 

進行役の言葉が図星なのか……モードレッドはマスターのパンツを手にしたまま顔を紅潮させ動かなくなってしまいました。

 

「い、いけません!モードレッド!嗅覚に優れているあなたがそれの匂いを嗅いでしまった日にはっ」

 

「へ、へへっ……心配いらねぇよ。白い父上……このオレがそ、んなはしたない真似す、る……わけ……」

 

そう言いながらも、震えている腕は下着を離すことが出来ないようですね。

この中でも犬属性がトップクラスに高いモードレッドは誘惑が厳しい状況でしょう。

 

……ふぅ、やれやれ仕方ありませんね、ここは一つ私が力を貸してあげましょうか。

 

「へっ?父上」

 

私が下着を掴んでいるドラ息子の手を止めるように掴むとポカンとした表情で彼女はこちらを見ました。

 

「不甲斐ない様子なので私が手を貸しに来ましたよ」

 

「ちちうえェ……」

 

 

「……おい、長官とやら、あれはアリなのか?」

 

「そうだな、別に助け合ってはいけないなんて決まりはない。まぁ、当然それとは逆に……」

 

―――そして私は。

 

―――感動したようにこちらを見つめるモードレッドの顔に。

 

―――握った手ごと下着を叩きつけた。

 

「むぐぅぅっ!?……ふぁっ!んくっ!……ちょっ、これ……やばぁっ!ぁぁ……はあぁっ!!」

 

―――デデーン、モードレッドOUT

 

「蹴落とし合うのも自由だ」

 

ふはははははは!考えが甘い!カフェラッテのように甘いですっ!

周り全てが敵だといってもよい状況でその敵に心を許すとはっ!

私が助ける筈ないでしょう!このヒロインXにとって過程や方法などどうでもよい!勝てばよかろうなのですからぁ!!

 

「し、師匠?」

 

「よく見ておきなさいリリィ!これが戦うという事!そしてそれを軽視した者の末路というものを!」

 

「ぁっ……あっ……ちちうえの、ばかぁやろぉっ……ぁぁ」

 

腰が砕け、倒れ込んでいる敗者(モードレッド)執行者(マスター)が近づいていく。

 

「ま、まて、ますたー……いまやられたら……」

 

「九頭龍閃!!」

 

「なんで数増え……にやああああああぁぁぁぁっ!!」

 

さっきの3倍に増えた破裂音とモードレッドの叫びがこだまするようでした。

せめてもの情けです、股間のあたりに滲んでいる水溜まりは見て見ぬふりをしてあげましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《Case2:信賞必罰》

 

「よし、皆の衆、洗濯の方が終わって何よりだ。

よく頑張った者には褒美をやらねばなるまい、罰だけでは人は動かんからな、基本飴と鞭が大切だ」

 

私達が様々な誘惑に耐えている中、脱落者を別室に運んでいった自称長官とやらは戻ってきたらそんな事をのたまいやがりました。

 

「そう怖い顔をするな。自身の服を洗濯してくれたのだから、マスターが頭を撫でるくらいはしたいとの事だ、お前達も褒められるのは嫌いではないだろう?

だがまぁ、延々とナデナデされ続けるのも困るからな、一人30秒……しっかりとマスターに頭を撫でてもらうがいい」

 

うん?わざわざ時間制限など設ける必要はあるんですか?

 

「ふっ、そうだな慣れない事をして私は少々疲れた。労わるがいいマスター」

 

余裕綽々といった様子で黒セイバーがマスターに頭を撫でられるみたいです。

冷静に考えれば私もマスターに普段撫でられていますし、確かに心地よい物ですが、さすがにそんな性的絶頂に達してしまう程の物ではないでしょう。

 

「一体いつからあれがマスターの本気だと錯覚していた?」

 

「な、なんですか急に……」

 

私の思考に割り込むように声を掛けてきたアルテラは黒セイバーの方を見るように指を指します。

 

「……んぅ、くぁ……っぁ……はぁっ、あ……なんだぁ、これはっ……」

 

そこには瞼を強く閉じ、手を口元に当て、プルプルと体を震わせる黒セイバーの姿がっ!

頭を撫でてるだけですよね!?

けど、マスターも頭を撫でるというよりは両手を全て使って頭皮をマッサージしているような感じです。

 

「30秒経過だ、さすがは王様よく耐えたな」

 

「はぁっー……はぁっー……やつめ……いままで本気ではなかったということかっ」

 

解放された黒セイバーが息を荒く吐き出しこちらへと戻ってきました。

何だか嫌な予感がしてきましたよ。

 

「では次はMs.Xの番だ」

 

「……ええい!やってやろうじゃあありませんか!」

 

ヒロインは度胸ですよ!何も臆する事はありません!それに私にはガード(帽子)もありますし!

 

覚悟を決め、マスターの元へ、30秒ぐらいなら余裕のよっちゃんです!

マスターの魔の手が私の頭蓋へと伸びていきました。

 

10秒――

 

「んっ、んくっ……はぁっ、ああぁ……」

 

これヤバいです……何がヤバいって帽子というガードが何の意味も為してない所ですよ。

てか撫でるとかマッサージとかそういうレベルじゃないです。

マスター、何か魔力とか気とかそういう類の物を送り込んでません?

あぁぁぁぁ、脳が犯されりゅうー…………。

 

「医療系サーヴァントや武術系サーヴァントに師事している所為かそれとも本人のセンスなのか、人体のツボを的確に突いているかもしれんな、がんばれば秘孔でも突けそうだな。アルテラちゃんびっくりだ」

 

20秒――

 

「あんぁ、ぅく……ぁあっ……はあぁっ……」

 

「師匠!頑張ってください!」

 

セイバーが一人、セイバーが二人、セイバーが三人……また増えたぁ。

 

30秒――

 

「……はぁっ――!……よっしぁぁっ!!」

 

耐えました、何とか耐えましたよ!つい飛び上がる程に喜んでしまいましたが……こんな快楽責めに耐えたのだから自分を褒めてやりたいぐらいです。

 

「ま、まぁ予想以上なのは確かでしたが……後もう1時間ぐらいは余裕でした!」

 

「嘘を憑け、後2秒も耐えれなかっただろうが」

 

「あん?そういうあなたこそ、アヘアヘされそうだったじゃないですか!」

 

「していない全くしていない、そもそも帽子というガードがある貴様にアドバンテージはある筈だろう」

 

いいんですよ、耐えた事は事実なんですから!

後はリリィだけですね、彼女には是非最後まで生き残って私と正々堂々と勝負をして欲しいもの……で、す……。

 

いや、リリィはこれに関してはまずくないですか?ただでさえマスターに褒められるだけではち切れんばかりに尻尾を振ってしまう程のチョロイン性質があるというのに。

 

「リリィ!」

 

愛弟子の方へ視線を向けると。

 

「お客様痒いところはありませんかー?」

 

「あっ、ぁぁ、あぁ、あぁっ、ぁぁ、あっ」

 

イヤー!!リリィの脳がクシュクシュされてるー!!

 

「あぁ、ししょおぉ……これすごいですぅっ……あ、ひぁっ、あぁっ……わたしこんなの知らなくてぇ……」

 

「逝くなリリィ!帰ってこい!!」

 

涙を流しながら、与えられる快楽にされるがまま犯されているリリィ。

 

「はぁっ、ここが全て遠き理想郷(アヴァロン)だったんですねぇ……あ、ああぁぁぁ……」

 

「だめです!その全て遠き理想郷(アヴァロン)は逝ったら帰ってこれない奴です!」

 

「ああぁぁんぅっ!!」

 

―――デデーン、リリィOUT

 

リリィ―――!!

 

「んあぁっ、はぁっ……そうですかっ、私の負け……ですか……そんな悲しそうな顔をしないで下さいマスター……勝敗は兵家の常。今回は私が至らなかったせいです」

 

体に力が入らないのかマスターに寄り掛かったまま語りかけるリリィ。

 

「えぇ、ですから、この私にしっかりと罰をっ……前の二人以上の回数で叩いてくれても構いません!

いっそ、マスターの気が済むまでに私の体を痛み付けていいので!さぁっどうぞ!」

 

お尻をマスターに突き出す純白の騎士がそこにはいた

 

私の知っているリリィは死んだ!もういない!

 

「……奴のどこら辺にリリィ要素があるのだ?オルタ化している私の方がよっぽどまともな気がするのだが」

 

「シャラップ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《Case?:組み手》

 

あれから残る2名となった私達は様々な刺客を乗り越えてきました。

 

振動する玩具を敏感な場所につけたまま料理を配膳する――

 

直接マスターにそれを食べさせる――

 

またまたご褒美と称して今度は肩もみをされる――etc

 

まぁ、色々というかエロエロというか……そんな目にあってきましたがそれでも互いに脱落する事はありませんでした。

 

「はぁ、はぁ……アサシン風情が……随分としぶといな」

 

「はぁー、はぁー……星4の分際で私とここまで渡り合ったのは称賛してあげてもいいでしょう。あと私はセイバーです」

 

息を荒げ、上気した表情で限界が近い私達はそれでも最後の一線は譲らないと睨みあいます。

 

私はっ……私はっ!負けるわけにはいかないんです!これまで脱落したセイバー達の遺志を継ぐ為にもっ!!

 

「いよいよクライマックスというわけだな、これまでの企画はヒロイン力を見る為の物だったが次は原点回帰だ。

ヒロインといえども守ってもらうだけの時代は終わった……最近のムーブはヒロインは戦闘力があってなんぼだからな、というわけで最後のお題は『組み手』だ」

 

「ふっ、成程、確かに最後にふさわしくシンプルで手っ取り早い」

 

「えぇ、要は目の前にいる敵を殲滅すればいい話でしょう?」

 

アンチセイバー兵器と言っても過言ではない私に1対1で挑む愚かさを教えてあげましょう!

 

「殺る気満々の所すまないが、お前達の相手はこっちだ」

 

「何?」

「はい?」

 

出鼻を挫かないで下さいよ。そもそも他に誰と戦うというのですか……。

 

「ばっちこーい」

 

私達の視線の先にはカルデア戦闘服で夜叉の構えを取るマスターの姿が……え、もしかして。

 

「主人公とヒロインのどちらの強さが上かはっきりさせるというのも物語を進行する上で重要なファクターだからな。お前達にはマスターと組み手してもらおう。

あ、それと組み手と言うの当然剣は無し、素手で行ってもらうぞ。マスターでもさすがに剣を持ったお前達の相手は無謀極まりないからな」

 

いえ、マスターなら剣を持った私達相手でも何とかなりそうな雰囲気があるのですが。

 

「ポップコーン片手に観戦している私の事は気にせず、いつでもレディファイッしてもらって構わないからな」

 

あのセイバーはいつか絶対仕留める。

 

しかし、この状況はまずいですね。

もう体がマジでイク5秒前状態の私が下手に組み手をしようものなら即マスターの武術(セクハラ)でGAMEOVERです。

 

ならば黒セイバーを生贄にするのが正解かもしれませんが……それで下手に隙を見せれば、間違い無く彼はそこを突いてきます。

おそらく彼女も同じ事を考えているのでしょう、二人とも下手な動きは出来ません。

 

「…………」

 

ならばどうする?

 

マスターがあちらの方へ行くように願うのか?

 

違う。勝利を掴むのは運などではなく、自身の意志によって生み出される行動力です。

 

隙を突かれたら終わりというのならっ!隙を作ればいいのです!最小限の動きでっ!

 

「セイバー忍法、風遁の術(ストライク・エア)!!」

 

別名、スカートめくりぃ!!

 

「なっ……」

 

途中から私は気づいていたのですよ黒セイバー!

 

あなたがイかないように我慢する中でパンツを駄目にしている事を!

 

そしてっ、既にそれを脱いでしまっている事も!

 

「今のあなたはノーパンですっ!」

 

そして、セイバー忍法によって露わになった秘部という隙をマスターが見逃すワケありません!

 

「ガンドォッ!(性的)」

 

「ひゃああああぁ!!」

 

―――デデーン、セイバーオルタOUT

 

……長く、長く苦しい戦いでした。

 

それでも私はこうして勝利を掴みました……。

 

沖田、モードレッド、リリィ……皆、終わりましたよ……。

 

ぁぁ、けど、私も……そろそろ、からだ……の限界……が…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁぅ、あっ……くすぐったぁっ……もうこれ以上焦らさないでぇ……ますたぁっ、はぁっ!」

 

全身を小さく痙攣させているXの体を服の中から手を入れ、そのしっとりとした太もも、脇腹、へそ周りの上を滑らすように撫で回す。

 

……しかし、まさかXが勝ち残るとは意外だったかもしれん。

この娘は勝利に対しては卑怯上等の貪欲っぷりだけど、肝心な所でおおポカやりそうな雰囲気もあったからなぁ。

 

お笑い番組に影響されたアルテラちゃんが急遽打ち出した企画だけど、何だかんだで楽しかったし結果オーライかな?

そのアルテラちゃんも「本来なら勝者の願いを聞き入れるのが先だが、そやつももう限界であろう。マスターが責任をもって楽にしてやってくれ、アルテラは空気が読めるのでクールに去るぜ」って言いながら、お尻を真っ赤に腫らし気絶している黒王様を抱えて出ていっちゃったし、いやいいんだけどさ。

 

「ひぁっ……ますた、んぅ!?ちゅぅっ……じゅっ、ちゅるぅっ!……じゅるぅ……」

 

酸素を求めるように口をぱくつかせていた彼女の口をキスで塞ぐ、舌で口内をいじくるだけでイッてしまいそうだねこれは。

とりあえず、帽子が邪魔なので取るか。

 

「んはぁっ!あぁっ……ますたぁっ、それ取っちゃあぁ、やあぁっですっ……あんぅっ!」

 

俺の手にある帽子を返してとばかりに手を伸ばすが、散々焦らされて出来上がってしまっている彼女の体が取り返す事は到底無理だった。

うん、帽子を取ったら本当に金髪系正統派美少女だな。あぁ、ポニーテールが眩しいぜ。

 

「Xって、帽子取ると毎回恥ずかしがるよね」

 

「はっ……だってぇ、それはぁっ……私のトレードマークですしぃっ……にぁぁっ!」

 

もしかして、ウチのカルデアがアルトリア顔が多いから、帽子が無くなると自分のアイデンティティが無くなるとでも思ってるのかしら?

 

「Xは馬鹿だなぁ、君みたいなキャラの濃い娘がそれぐらいで埋もれるわけないじゃないか」

 

「それっ……あはぁっ!褒められてる……のでしょうかぁ……あぁんっ、んぅ!はっ……ますたぁっ、もうひと思いにぃっ……」

 

「じゃあXはどこでイキたい?」

 

俺もさっきから、Xの女陰や胸の方など敏感な部分は責めてない。

彼女からすればこれは物足りないのだろう。

ならばどうして欲しいのか彼女の口から聞きたい。

もう早く楽になりたいでしょ。

 

「ますたぁのアレで……」

 

「ん?」

 

背中から抱き締められ、全身を愛撫されているから、自身のお尻にある俺の膨らみが気になって仕方がないのだろう。

 

「……ますたぁの……お、おちんちんでぇ……楽にさせてくださいぃ……うぅぅ」

 

よっぽど恥ずかしかったのだろう、まるで沸騰するかのように赤い顔を伏せながらXはそう懇願してきた。

 

さすがにこれ以上焦らすのは可哀想なので、彼女のをブルマと下着を横にずらし、局部を露出させる。

戦闘時は第3再臨の少しSF染みた格好だが、基本カルデアにいる時の彼女はジャージとえっくすと平仮名で書かれた白い体操服にブルマ。

うん、だからせっかくなのでこの格好を脱がせるなんてもったいない事はしません。

体操服の方も胸が見えるまで、たくし上げ、スポーツブラだけ脱がせます。

 

「はぁっ、あぁ……この格好でするんですねぇ……マスターはマニアックで、す……ああぁぁぁ」

 

マニアックか?体操着を着たままの女の子とシたいと思うのは男なら至極まとまな思考だと思うが。

 

まぁ、彼女も特に嫌がる様子は無いので、ずらした部分から見える雌孔に俺は愚息を徐々に挿れていく。

 

「あああぁっ!!あああぁっ!!やっとぉっ……やっとぉっ……き、たぁっ!!はぁぁ!これが欲しかったぁっ……!」

 

挿入した瞬間に軽く絶頂に達した、感極まった様子で嬌声をあげていく。

 

「X、俺はここで寝転がっているから君の好きに動いてもいいよ」

 

ベッドで仰向けになり、騎乗位の体勢になった彼女は頬を緩ませると貪欲に腰を激しく動かしていった。

 

「あぁぁ!あぁっ!はぁん!ふあっっ!!……ますたぁのがぁっ……あはぁっ!……どこを動かしてもきもちよくなっちゃうぁっ……ひやぁぁ!!」

 

体操服姿の女の子が自分の上で腰を一生懸命動かしている姿は一種の芸術の域までいくんじゃないかとアホな事を考えているが、あんまり、気を抜き過ぎるとすぐに出してしまいそうになるぐらい彼女の腰使いは上手いものだった。

さすがは騎乗EXなだけあるぜ。

 

「ああっっ!!んあぁ!……はっ、やっぱりっ……わたしとますたーはぁっ……ここの相性もばっちりですぅぁっ……んあぁっ!らしてぇっ!らしてぇくださいぃぃっ……!」

 

金髪を揺らし、乳首もいやらしくそそり立たせながら……せがむように体を上下に動かすXに俺も我慢が出来ないとばかりに精を解き放った。

 

「ぁあああああああああああぁぁっ!!!」

 

射精の衝撃に思わず、倒れ込む彼女を今度はこちらが正常位の体勢になって責めたてる。

 

「Xも一回だけじゃあ足りないだろっ!」

 

「あああぁっ……!あっ!はっ!……はいぃっ……もっと……もっとして下さいぁっ!ひやあぁっ!」

 

 

 

膣内でかき混ざる二人の愛液の音、腰がぶつかり合う音、……これでもかとセックスの音を響かせながら二人はまぐわう。

 

「ますたぁ……ますたぁっ……わたしぃ、きょう頑張りましたよっ……」

 

涙を流し、快楽で表情を崩しながらも彼女は言葉にする。

 

「あぁっ!あんぅ!……わたし、ますたぁに相応しい剣にぃ……なれてますかぁぁっ……あぁっ!?」

 

そう問いかける彼女の体を腰を打ち付けながら抱き締める。

 

「うん、Xは自慢の剣だよ、どこまでもっ……どこへ行こうとも俺の剣だ」

 

「うれしいですっ……ぁぁっ……あああぁっ!……けどっ、いまはますたぁが剣ですよぉっ!…………わたしは鞘ですからぁっ……どうぞ好きなだけ使ってくださいぃっ……ああぁぁぅっ!」

 

泣き笑いのような顔のXが言う鞘とやらに自身の剣を激しく振り動かす。

 

「あぁぁ!ますたぁの(おちんちん)が私の(おまんこ)をずぼずぼぉってぇ……はぁっ!はああぁ!もうっ……これ以上ないくらいぴったりにぃはまってますぅぁっ……ああぁっ、すきぃっ……好きなんですぁ……こうやってますたぁに突かれるのがあぁっ!……っはあぁっ!!」

 

もう淫語を言う躊躇いも無くなった彼女の膣内奥へ俺はXを愛している証を送り込んだ。

 

「はああぁぁぁっ――――――……!!!……ぁぁっ…んはぁっ……もう私の中にはいりきらないほどにぃっ……」

 

愛おしそうに自身の下腹部を撫でると彼女は眠るように眼を閉じていった。

 

そういや、勝者でもある彼女のお願いごとをまだ聞いてなかったな……まぁ、後でいいか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~数日後~

 

「~~♪、~~♪」

 

鼻歌を口ずさんでしまう程に今の私はご機嫌のまま廊下を歩いていました。

少しぐらい浮かれてしまってもいいですよね?

だってこの私が自他共に認めるNo1セイバーだと証明されてしまったのですから!

お願いごと?当然しましたよ。

 

 

 

『この人理を救う旅が終わった後でも構いません、マスターは私と一緒に宇宙船でユニヴァースに来て欲しいのです』

 

『確か、サーヴァント界とか言う所だっけ?』

 

『はい、そこではファラオであるにも関わらず何故か延々とロードローラを製造し続ける太陽王がいたり、悪女タマモクイーンが捨て去った8尾がさらに6分割されTMM(タマモノマエ)48なるグループを成立したり、ブーメランパンツを穿いた授かりの英雄が延々とガチャを回し続けたりとそれはそれは平和の所です』

 

『平和?』

 

『ですが興味はあるでしょう?このカオスっぷりの魔境の地をマスターと旅でもしてみたいなーと』

 

『全然、良いよ。なんか楽しそうだし』

 

『しゃあっ!言質は取りましたよ!』

 

 

 

ふっふっふっ、宇宙なら他の泥棒猫共の手も届かないでしょう。

まぁ、リリィだけは特例として連れてっても構いませんが……しかし、最近マスターの周りにアルトリア顔のセイバーが増えて焦っていましたが何の事もありませんでしたね!

これからは『謎のヒロインX』ではなく、『メインヒロインX』とでも名乗ってしまいましょうか!

まぁ、そもそも私自身がもう元祖セイバーみたいなものですし?いくら似たような顔が増えようが恐れるに足りませんでしたね!

それこそあの…………。

 

「あいたっ」

「おっと……」

 

いてて、前方不注意でしたか、誰かにぶつかってしまったようですね。

 

「すみません、考え事に夢中になっていたようです……そちらにおケガは……あ……りま…………」

 

「いえ、こちらもまだ召喚されて日が浅いのでこのカルデアという場所には不慣れでしたので、どうかお気になさらず。

おや?その顔……ふむ、どうやらここには私と似た顔が随分といるようですね。

ですが他の私やモードレッドの様子を見る限り、善きマスターなのでしょう」

 

あ、あぁ……ああああ。

 

「自己紹介が遅れました。

この度、セイバークラスで召喚されたアルトリア・ペンドラゴンと申します

黒い私は青セイバーなどと言っていましたが……まぁ好きに呼んでください。

それであなたは……私の縁者ではないですよね、服も私がいた時代の物とはかけ離れていますし、沖田という者と一緒で他人のそら似でしょうか?」

 

「せ……」

 

「?」

 

「セイバアアアアァァ!?」

 

―――バターンッッ!

 

「ちょっとどうしたのですか!?」

 

謎のヒロインXは目の前が真っ暗になった。

 

 

 

 

 

 

 

 




セイバー増えたぞ、おら喜べよ。






約束しなくても勝利しかあり得ない剣(ギャラクティカエックスカリバー)
ランク:EX
種別:対人理宝具
わたしのかんがえたさいきょうのえくすかりばー。
通常の聖剣と反転した聖剣を一つに合体させ、アルトリアパワーとかコスモパワーとか何だかよくわからない滅茶苦茶なモノを混ぜて、『ギャグだし何でもアリだよね?とりあえず死ねやあぁ!!』の精神でぶっぱするご都合主義の化身とも言える宝具。
当然、Xの妄想の中でしか存在しない。




沖田さん:残念枠。
モーさん:不憫枠。
リリィ:どうしてこうなった!どうしてこうなった!
黒セイバー:ある意味、アルトリア顔の中で一番の常識人、オルタ勢は常識枠?
ヒロインX:通常運行。
アルテラちゃん:大体こいつとマスターの所為。
青セイバー:イカれた職場へようこそ。




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せいひつちゃんといっしょ(静謐のハサン)

イベ前告知:サーヴァントにだって休みはある!プライベートビーチで夏季休暇だ!

イベ開始後告知:レイシフトに失敗し無人島に漂流したマスター!無事脱出できるのか!?

変わっておるぅっ!?








毒のある娘は好きですか?



〇月×日

 

私の朝は早い、目覚めと共に身支度を済ませると自身の部屋を後にした。

 

ある御方の部屋のドアの前まで到着する……気配は一つだけ、今日は珍しくお一人で眠っていらしているようだ

好都合とばかりに息を殺し、起こさないように静かに部屋へ入る。

 

「スゥ、スゥ……」

 

瞼を閉じ、呼吸音も正常……今日も健やかな寝顔。

その顔を間近で眺めているだけで女の部分が熱く疼いてしまう。

 

マスター……私の愛おしい主様。

私がいくら触れても、いくら接吻しようとも、いくら交わろうとも死ぬ事はなく、変わらない微笑みを向けてくれる愛おしい君。

今日も明日も永遠に私はあなたに尽します。

 

「良き一日を……マスター……んっ、ちゅっ……」

 

唇を軽く触れ、舌先で舐める。

本当はもっと深く挿し込み、唾液を入れて吸い尽くし……淫らかに絡ませたいが私の欲望で主様を起こしてはいけないだろう。

 

「ふふっ」

 

キスを軽く済ませ彼の部屋を後にする、これだけで1週間は頑張れそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〇月△日

 

「今日のメンバー編成はどうしようかな――うん、取り敢えず孔明先生は確定で」

 

「先輩そろそろ取り敢えずと言いながら思考停止の精神でエルメロイさんを入れるのは……」

 

「俺、そんなに先生の事連れていってたっけ?」

 

「はい、むしろ居なかった時の方が珍しいかと、イベント、特異点、種火周回……相手がライダークラスだろうとお構いなしだったと思います。

このままではロードが労基署に駆け込むのも時間の問題かと」

 

「マジかー、けど先生いると凄く助かるしなー、最近になって扇で風おこし、八卦炉でビーム、指パッチンで爆発ってスタイリッシュになってるし」

 

「先輩!わたしもモーション変わってますし!スキルも宝具も強くなりましたよ!」

 

「うんうん、マシュはいつでも頼りになる後輩で助かるわー、よしよーし」

 

このカルデアは多くの英霊が存在する……クエストによっての最適解ともいえるメンバーを模索するのもマスターの務めである。

私は会議室で相談している二人の邪魔にならないように気配を消し、彼の姿をひたすらこの瞳に収めていた。

 

……しかし、マスターに撫でられているマシュは――。

 

「羨ましい……」

 

ん?今のは私の声ではない。

一体誰だと周りを見回すと……。

 

「あら?」

 

「清……姫?」

 

すぐ近くに黒い着物を着た女の子の姿が。

私とした事が……マスターに夢中になるあまり、彼女に気付かなかったとは山の翁として恥ずべき失態……。

 

「そういうあなたは静謐さん。何故こんな所にって聞くまでも無いですか」

 

彼女も私と同様マスターをずっと見守っていたのだろう。

その目線は一心に彼に捧げられていた。

 

「おそらく旦那様は私達に気づいています……いえどんな時でも私に気づいてもらえるのは喜ばしい事ですが、こうもバレバレですとカップルの伝家の宝刀後ろから『だ~れだ♪』が出来ません」

 

「マスターは気付いててもノッてくれると思うけど……?」

 

「それではサプライズ要素が薄れてしまいますわ!

どんな熟年夫婦にも日常の刺激というのは必要だと思います!」

 

そう拳を握り締め力説する清姫……なるほどサプライズ要素か。

現状に満足せず、好きな人の為に努力を怠らない彼女の姿勢はとても好ましい。

 

「……そういえばあなたは『気配遮断A+』をお持ちですよね?……そのスキルのコツなどを教えてもらえたりは出来ませんか?」

 

「コツって言われても……私達はそもそもサーヴァントだからスキルを新しく覚えるなんて無理じゃ……」

 

「のーぷろぶれむです!

そもそも私は思い込みで竜になった身。サーヴァントになろうともスキルの一つや二つ習得して見せます!恋する乙女に不可能なんて無いのですからっ!」

 

『恋する乙女には不可能なんて無い』か……なんて素晴らしい言葉だろう。

彼女なら本当に習得してみせるかもしれない、それぐらいの熱量が今の清姫からは感じられた。

だからだろうか、同じ人に恋している身として彼女の力になってあげたくなった。

 

「あなたの想いはわかった。私も出来る限りの事はしてみる……」

 

「本当ですか!?なんでしょう、頼んだ私が言うのも何ですが……そうもあっさり承諾されると複雑な気持ちです。

ふむ……しかしそうですね、あなたのその後ろから影を踏まないような控え目な心構えは私としては非常に好ましいですし……えぇ、わかりましたっ!私もただで教わろうなんて思いません!

ですので私からはストーキ……ではなく『隠密的にすら見える献身的な後方警備』のスキルを代わりに教えてあげます。

今から私達は良き恋のライバルであり、友でもある『後ろから見守り隊』を結成いたしましょう!

えい!えい!おー!」

 

「えい、えい、おぅー……?」

 

結成の証に握手が出来ないのが少々寂しいけど、それでも清姫という得難い友が出来た今日は良い一日だった。

 

 

「う~ん、ストーキングBに気配遮断A+が合わさったらどうなるのかな。楽しみのような、ちょっと怖いような……」

 

「先輩?どうかしたんですか?」

 

楽しみにしていてくださいね、マスター。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〇月□日

 

カルデアの女性陣が何やら浮足立っている

 

どうやら、そろそろプライベートビーチで夏季休暇を取っても良いかもしれないという話らしい。

女性用の広めの更衣室で皆、その為の準備で水着選びに夢中になっている。

カルデアにいると季節感がよくわからくなるがこういった様子を見るともうそういう時期なのかと実感する。

 

「アンー?こんな軽装備で大丈夫なのかなぁ……だって海でしょ?

タコ脚が生えたサメとか、空飛ぶサメとか、実体が無い幽霊サメとか出てきたりしない?」

 

「メアリー、それはフィクションの…映画の中の話ですからどうか安心しなさい。

まぁ、それに近い化け物を退治する予感はしますけど、イベクエですし」

 

「はっ!何が出てこようと海は私達の土俵さね!……けど、ゴーストシャークは勘弁してくれよ!」

 

「あぁ、マスターとあの映画を見たようですわね、足が震えてますわよドレイク船長」

 

 

 

 

「大丈夫大丈夫……私は出来る聖女、もうあの時とは違うわ…………うん、けどまだ腹周りが不安だしジャージ着てもいいんじゃないかしら……あひぁっ!!ちょっとマリー!何すんのよ!」

 

「ウエストに何やら不安の様子でしたので確かめただけでしてよ

ええっ!全然!まるで問題なかったわ!引き締まった良い体でしたわよ!

せっかくの海ですもの、肌を隠したら勿体無いですわよマルタ。あぁ、けど日焼けが気になるのならわかりますわ

私の麦わら帽子でもお貸ししますわよ、それともマスターに日焼けクリームでも塗ってもらった方が良いかしら?」

 

「…………いや、いいわ。あいつに塗られたら日焼けクリームだけで済まなそうだし、別の液を塗りたくられそうよ」

 

「けど満更じゃない?」

 

「うんうんそうそう実は期待して……んんななワケないでしょっ!聖女にノリツッコミさせんなっつーの!」

 

 

 

 

「ぐぬぬぬぬぬぬぬ……」

 

「ちょっと、そろそろそのうっとしい視線をこちらに向けるのをよしてもらえないかしら?」

 

「なんで!同じエリザなのにっ!ここまで差が出るワケっ!?布面積も小さいしっ、ってかそれ良く見るとTバックじゃないのよ!そんな格好で海に出て何するつもりよ!このドスケベボディ!」

 

「やかましい小娘ね……私がどんな格好で海に出ようが、何をしようが勝手でしょうに。まぁ未通女(おぼこ)には刺激が強い事かもしれないわね」

 

「ししし処女ちゃうわ!見てなさいよっ!私のセクシーボディで子イヌなんてすぐにメロメロよ!」

 

「セクシー(笑)」

 

「表出ろや!コラァ!!」

 

「……喧しいぞ汝ら、もう少し静かに試着できぬのか」

 

「あっ、ちょうどいい所に来たじゃない獣耳。ちょっとこの年甲斐も無くはしゃいじゃっている女に一言言ってやんなさいよ」

 

「アイアンメイデンをご所望のようね」

 

「はぁ、だからそういがみ合うな、誰がどんな水着を着ようが自分が楽しめれば何も問題は無いだろう?」

 

「むぅ、それはそうだけど。

まぁ、あんたも中々にシャレオツな水着よね……ん?その片手に持っている布切れは何かしら?」

 

「な、何の事だ?」

 

「そう言えば風の噂でどこかの芸術家から定期的に小さくなる薬を買っている女狩人がいるとか……まさかそれを海で使うサーヴァントなんていないわよね」

 

「ち、違うぞ!私は子供になってスクール水着でマスターに遊んでもらおうなんてこれっぽっちも……」

 

「『誰がどんな水着を着ようが』」

「『自分が楽しめれば何も問題はないだろう』…確かにソノトオリネー」

 

「やめろっ!そ、そんな目で私を見るな!」

 

 

海水浴か……。

 

プライベートビーチと言うぐらいだ、きっと透き通った海に白い砂浜、南国風の植物や動物だっているだろう

私もそこで……皆とマスターと――。

 

あぁ、けど駄目。

 

私が海になんて入ったらまた毒で他の方々に迷惑をかけてしまう。

それだけじゃない海にいる生き物だって死んでしまうだろう。

 

仕方ない、元々私には縁が無かったもの。

これ以上ここで辛気臭い顔を見せても彼女達の雰囲気に水を差すだけ。

 

私は静かに更衣室を出ていった。

 

今日はもう自分の部屋で大人しくしていようと思ったが……。

 

「おや?静謐ちゃん、丁度良かった」

 

「マスター……」

 

どうしてこんな時に限って出くわしてしまうのだろう。

今の私の顔は正直な所みっともないので見られたくない。

 

「どう?このホルターネックの白いビキニ、静謐ちゃんに似合いそうじゃない?」

 

「あのマスター、私は海には……」

 

マスターが私の為に水着を選んでくれた気持ちは震える程に嬉しいがそれでも断らなければならない。

 

「後、そうそう、ビニールプールの柄ってこれで良いと思う?」

 

え?()()()()()()()

 

「ほら、だって静謐ちゃんそう簡単に海に入れる体質じゃないし、遠慮してビーチにすら来なさそうじゃん?

さすがにそれは寂し過ぎるからさ、砂浜にこれ置いて、どこかで時間見つけて二人で一緒に入ろうよ」

 

「……マスター、あなたは」

 

「まぁ、海と比べれば見劣りするかもしれないけど、このプールだってこう見えて膨らませればそこそこ大きくなるんだぜ?

南国のビーチでも眺めながらプールに入って常夏気分と洒落込みましょうや、俺と入る分には何も問題無いでしょ?」

 

あぁっ……本当にあなたという方は……。

私は勝手に諦めて、一人惨めに部屋へ引き篭もる事しか考えてなかったのに……。

マスターはこんな、こんな下っ端とも言える私の事もちゃんと考えていた。

 

自分の情けなさとマスターの気持ちへの嬉しさがこみ上げてきて……。

 

「うぅ、ぐすっ……」

 

「うえぇ!?何で泣いてるの!?もしかして気に食わなかった!?

ほ、ほらっ!イルカ型の浮き輪もあるよ!めっちゃヘコヘコするよこれ!」

 

私が悲しんでいると思って必死にあやしているマスターになんだか笑みが零れてしまう。

 

マスター……私、海がとても楽しみになりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〇月☆日

 

今日は良い夢を見た。

 

私は牢獄の鎖に繋がれて、マスターに口では言えない所を散々に嬲られる夢。

 

いつものように優しいマスターも当然大好きだが、私を口で罵りながら、性的に苛めて下さるマスターも新鮮だった。

 

『ふっ、なんだ?暗殺者の癖に少し弄っただけでもうはしたなく汁をアソコを零しているぞ?この淫乱娘がっ!』

 

『あぁ!違います!私はそんないやらしい娘ではっ!はぁんっ!そんな乱暴になさらないで下さい!やああぁっ!』

 

『本当に止めて欲しいのか、俺の指を離さまいと締め付けている膣をこんなにヒクヒクさせておきながら……恥を知れっ!』

 

―――パシンッ!パシンッ!

 

『はあぁっ!ああっ!……だってぇ……マスターのゆびがぁっ……ひもちよくてぇぇっ!

あんっ!ひやぁっ!!お尻叩きながら……そんあにかきまぜちゃ……ひゃあぁっ!!』

 

はぁっ……マスター……私の愛おしきご主人様……。

この体も、この心も……如何様にお使い下さい。

もっと強く、もっと激しく、責めてぇ…………。

 

 

―――結局、良い所で目が覚めてしまった。夢なのだから最後まで見させて欲しかった。

あぁ、下着が駄目になっている。変えておかないと……マスターは頼めば、あんな風に責めてくれるのだろうか?

 

しかしどうしてあんな夢を……先日マスターに優しくされた反動?

それとも私の深層意識で隷属願望でもあったのだろうかマスターに隷属、イイ……。

 

 

 

そう言えば、百貌様もマスターとあぁいったプレイをしたというので話を伺いに行くと……。

 

『ん?い、いや違うぞ?あれはそういうプレイではなく尋問訓練という奴でな、お前の言うようないかがわしい意味は全く無いぞ。そういう建て前?……ちち違うわい!建て前等ではないわ!』

 

根気よく聞き返すとマスターからされる事なら演技も無く何でも喜んでしまう私なら雰囲気が台無しになってしまう可能性があるとの忠告を。

このカルデアには「くっころ」が上手な黒い聖女がいるらしいので彼女からアドバイスをもらうのが一番らしい。

その「くっころ」とやらは良くわからないがマスターとの情事には必要な物なのかもしれない、メモ帳の準備をしなくては。

 

それと何故だか、マスターの部屋に忍び込み、彼の下着で自慰をする事についてのお叱りを受けてしまった。

どうしてだろう?マスターのご迷惑にならないように洗濯済みの物では無く、脱ぎ終わったカゴに入ってる未洗濯の物を使っているのに……しかもきちんと洗濯してから返している。

「百貌様もどうでしょうか?」と誘ったら、顔を赤らめ少し間を置いた後にまた大きくお叱りを受けてしまった。何故だろう?本当に気持ちいいのに……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〇月※日

 

「は?マスターにうまく苛められる方法が知りたい?後『くっころ』ってどういう意味か?

何でどいつもこいつもそういう話を私に聞きに来るのかしら!?」

 

「ですが、夜の苛められ上手No1inカルデアの座をあなたが持っていると……」

 

「だだ誰よ!そんな噂流した馬鹿はっ!!

ってか私は別にあいつ(マスター)に苛められてないから!むむむしろ私の方が主導権を握ってるわよ!」

 

「………………」

 

「何よ、その微笑ましい物を見るような目は!言いたい事あるならはっきり言いなさいよ!」

 

その後も粘ってみたが何一つ教えてもらう事は出来なかった。

やはりマスターと自身の情事の内容は一つの企業秘密でもあるのでおいそれと詳しく教える事は出来ないのだろう。

菓子折りでも持ってくるべきだったかもしれない。

 

 

その後、意気消沈した自分を慰める為にマスターの部屋へ忍び込み、お目当ての物を求めて洗面所へ。

 

「う~ん、どうしましょう……いきなり下着は沖田さん的にハードルが高いんじゃ……はわぁっ!?」

 

どうやら先客がいたようだ。今のようにバッティングする事も珍しくは無い。

 

「ああああのですね、これはべべ別にただ単にマスターの服を洗濯するつもりで……決してやましい気持ちなど無く」

 

「あなたはまだルーキー……いきなり下着はお薦め出来ません。まずは上着やズボンから慣らしていくのが最適解」

 

新人が下着の匂いを嗅いでしまうと快感のあまり気絶してしまう可能性もある。下手をすれば粗相をしてしまう危険も。

 

「は、はぁ……成程、奥が深い……というか随分と手慣れていますね」

 

あ、今日は下着が2着もあるとはツイてる。

 

「ではマスター、いただきます」

 

手を合わせ、この聖遺物に感謝する。

そして私は片方を自身の秘部へ押し付け、もう一方は顔の方へ……。

 

「ふくぅ!んんぅっ……!!」

 

あぁ!この鼻腔を突き抜ける濃厚なマスターの香りっ!

自然とマスターの下着越しにアソコを擦りつける手の動きがどんどんと激しくなってしまう。

 

「んぅ!はぁっ、んふぅっ!ま、すたぁっ…」

 

「う、うわぁ、いきなりおっ始めましたよ、この娘……けど何か気持ち良さそう……」

 

匂いを嗅ぎながら、マスターの下着で自慰をしていると

まるで本当にマスターに弄られているような錯覚に陥る。

 

「ふぁっ、あっ……はあぁっ……味見はここまで……です」

 

これ以上やると止まらなくなってしまいますので……私は惜しみながら自慰を一旦取りやめます。

続きは自分の部屋でじっくりと楽しむ事にしましょう。

 

「それでは私はここで失礼します」

 

お辞儀をし、貴重な戦利品を手に入れ、ホクホク顔で私は「……世界は広いなー」と後ろにいる彼女の声を耳にしながら部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〇月#日

 

―――ブーーンッ!!ブッブーンッ!!

 

強い風が私の頬をきる、目まぐるしく変わる景色……けど不安は一切無かった。

 

「どうした!モード!今日はゴールデンに気合入ってんじゃねぇか!この間俺に負けた事がよっぽど気に食わなかったみてぇだな!」

 

「うるせぇ!鉞野郎!偉そうに言ってるお前もマスターに負けてんだろうがっ!」

 

バイクに乗るマスターの腰に抱き着き、どこにレイシフトしたかはわからないが整備されているとは言えない峠道を同じくそれぞれの相棒(バイク)に乗ったサーヴァントと一緒に走り込んでいるマスターと同じ景色を見る。

 

ツーリングというものらしいが競い合っている3人を見る限りどちらかというとレースという感想を抱く。

 

「あぁー、そこを突かれるとイヤーが痛えな……ほら、大将が乗ってんのってDrバベッジとキャプテンテスラの合作モンスターマシンだろ?まぁ、それを普通に乗りこなしている大将もベリークレイジーなんだが……」

 

「あぁ?何だよ、言い訳か?男らしくねぇな」

 

「ハハハハ!そう聞こえちまうのも仕方ねえか!ま、ただ単に俺達の大将は色んな意味で誇らしいって事を言いてぇだけなんだがな……そういや大将、今日は随分とスピードが大人しめだな……ゴオオオオルデェェンッ!!?」

 

「何だよ?急に珍妙な声あげやがっ……って誰だお前!?」

 

二人がチラリと後方で走っているマスターの方を振り返ると腰に抱き着いてる私を見て驚くように目を見開いている。

わき見運転は危ないと思います。

 

「え?どうしたの?」

 

「どうしたのじゃねぇよ!?タンデムする予定なら最初っから言ってくれよ大将!」

 

「いや、レイシフトした時から俺の背後にずっといたからてっきり二人とも気づいた上でスルーしてたものかと」

 

「スルーするか!!……うん、ってかお前、ちょっと引っ付き過ぎじゃねぇか?そこまで強くマスターの腰に抱き着かなくてもいいだろう」

 

「けどモーさん、強く腰を掴んでくれないと危ないじゃん?確かに今日の俺はそんな乱暴な運転はしてないけど、それでもスピードは結構出てるし」

 

「ぐぬっ……ほらっ、腰掴んでるっていうか……手の絡め方もなんかいやらしいっつうか……なんでそんな恍惚とした顔してんだよ、オイ頬をスリスリすんな、てめぇ

…………っあああ~~……もう知らねぇ!!マスターの馬鹿!変態!オタンコナス!オレ先行くっ!!」

 

「おー、おー、行っちまったな。女心とオータムスカイって奴か?

まっ!マスターが後ろのガールを連れてきたのも何か意味があるんだろ?なら俺っちも空気を読んで先に失礼するぜ!

後で合流って事で夜露四苦ゥ!!」

 

スピードを上げ、姿が見えなくなった二人。

もしかして私、マスターの邪魔をしてしまった?

 

「いや、大丈夫だよ。あの二人とはまた走れるだろうし、たまにはこういうのも良いかなって思ってさ」

 

私の独白が聞こえたかのようにマスターは答えてくれた。

はっ!これが以心伝心、相思相愛というものなのでしょうか!?

 

「こうやって後ろに誰かを乗せるのも初めてじゃないし、それに静謐ちゃんにとってはこういう経験は貴重じゃない?

いいもんでしょ、こうやって風を感じながら行く当てもわからず流れる景色を見続けるっていうのもさ」

 

確かに、私の性質上こうやって誰かに抱き着いて……相乗りすることなんて事、今まで想像も出来なかった……もうずっと色んな事を諦めてきたから。

 

全身を風が煽り、どんどん置いてかれていく景色。流れる草木の匂い。それに混ざるマスターの匂いと温もりを抱き締めながら……エンジン音が響く。

 

ただひたすらに目的も無く、走り続けているだけ。

けどどうしてだろう……心がとても震えて、暖かくなるのは。

それはきっと傍に……。

 

「そりゃあ人生なんて良い事ばっかじゃないし、悲しい事や辛い事もあるだろうさ。

なら出来るだけ多くの幸せを見つけよう、何でもいい……小さくてもいいからさ。

というわけで今の静謐ちゃんはどう?楽しんでる?」

 

―――答えは決まっています、我がマスター。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今や同じサーヴァントという立場になった私がとやかく叱るのもアレですが、こうして同じ主に仕える事になった以上言うべき事ははっきりと言います。

モードレッド……あなたにはしっかりと騎士としての自覚を持って欲しいものですっ。

こんな時間までマスターを連れ回しているとは一体何事ですかっ!?」

 

「いや、あのな……父上?どっちかというと連れ回されているのはオレ達の方で……そもそも最初に一緒にツーリングしようぜって誘ってきたのもマスターの方だしよ」

 

「サーヴァントの騎乗に張り合える人間がいるはずないでしょう!そんな言い訳が通ると思っているのですか!」

 

「うえぇ、王は人の話を聞かないぃ……」

 

 

 

 

「そういや、あのブルーセイバーはここに来てまだ日が浅えから、大将のクレイジーっぷりを知らねえのか。

まぁ普通はそう思うよな、俺っちも最初はそう思ってたし……」

 

「こら、金時!余所様の家庭事情に目を向けるんじゃありません!あなたは今叱られている自覚があるのですか?

お外で遊ぶのは元気があって大変よろしいですが、夕餉に間に合わず、こんな心配をかけるなんてどういう事ですか?母は悲しんでいるのですよ?

あなたとマスターがそうやってどんどん非行の道を走っていくと思うと……心が張り裂けそうですっ。

最近はどうにもマスターの周りをあの酒臭い虫がチョロチョロとしている気もしますし……」

 

「いや、それに関しては俺の所為じゃねぇつーか、むしろ大将の管轄っつーか……。

え?まだ足崩しちゃ駄目?そろそろ足がスパーキングしそうなんだけどよ……」

 

 

 

 

「うんうん、皆に心配かけた事はちゃんと反省してよね。

君の事だからそんな過保護にならなくてもいいだろっていう人もいるかもしれないけど。

それは君を心配している人がいないっていう意味ではないからね?

あぁー……私もあんまり口うるさく言いたくないよ?

君は何だかんだでどんな無茶しようともヒョコっと帰ってきそうな信頼はあるけどさぁ、それでも心配な物は心配なのっ!次からは遅くなる時はちゃんと連絡するっ!わかった?

それとー、何で君達は叱られているのにイチャついてるのかなー?

はいっ!静謐ちゃん!マスターの背中から離れる!

何で叱られているのに君はそんな嬉しそうな顔なの!?もしかしてそういう趣味の娘!?え?違う?あぁ、それはお姉さん早とちりだったわ、ごめんねー」

 

「ブーディカ姉さんー、そういう趣味ってどういう趣味ですか?僕気になります!」

 

「うっし!反省の色が見えない!まだまだ正座をし続けたいみたいだね!!」

 

 

 

マスターと遊んで、やり過ぎて、こうやって一緒に叱られて……こんな当たり前の日常の中に私がちゃんといるのが嬉しくて、自然と笑みが零れてしまいます。

 

―――マスター……私、ちゃんと楽しんでいます。

 

今日も明日もそしてこれからも……人理を救う辛い旅路ではあるかもしれませんが小さくてもいい……色んな幸せをこれからも見つけていきたいと思います。あなたと一緒に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真夜中、ふとベッドの中で目が覚める。

意識ははっきりとある筈なのに何故か体が重い。

まるで背中に何かが張り付いているようだ。

 

「……ぁぁ、はぁ……」

 

小さい水気の音と呻き声のようなものも聞こえてくる。もしやこれが金縛りという奴なのだろうか?

 

「はぁっ、ますたぁ……ますたぁ……ぁぁっ、んぅ……」

 

…………良かった幽霊じゃなかった。

静謐ちゃんが俺の後ろで一人盛り上がってるだけだったわ。

 

あぁ、そういえば、ブーディカ姉さんに叱られ終わった後……結局そのまま疲れ切ってベッドにダイブしちゃったんだっけ?

背中に静謐ちゃんを引っ付けたまま。

 

ふむ、しかし、すぐ傍に俺がいるのに一人で事を済まそうとするのはいただけませんな。

自慰に耽っている彼女の方へ俺は振り向いた。

……うん、想像通り衣服は纏ってなかったか。好都合っちゃ好都合だけど。

 

「あぁ、ますたぁ……」

 

「俺も手伝ってあげるよ」

 

秘部に当ててある彼女の手を押しのけるように俺は静謐ちゃんの淫裂へ手を当てる。

おぉ……やっぱりもうグショグショか、どんどん指が沈んでいくなぁ。

 

「起こしてしま、いぃぁっ、申し訳……はあぁっんぅ!!」

 

俺の眠りを妨げてしまったと謝罪する彼女をどんどん快楽で押しつぶすかのように指の動きをさらに激しくする。

 

「ああぁんぅ……ふぁぁ!……ぁぁあっ、ひとりでするより……ぜんぜんっ……きもちいいぁっ!!」

 

嬌声をあげるたびにどんどん俺の指を締め付ける彼女の反応と膣内の何とも言えない感触に完全にスイッチの入った俺は手淫を続けたまま静謐の体に舌を這わせた。

 

まずは子宮の上にあたる下腹部から舐め始め――。

 

「んふぁっ!……はぁぁっ……!」

 

ヘソの孔を舌先でくすぐる。

 

「ああぁ!あっ……!そこぉっ……ほじくらなぁっ……いでぇっ!やあぁっ!」

 

やっぱり、褐色肌の女の子の体をねぶるのは実に良いものだな。

静謐ちゃんも最初は……。

 

『はっ……い、けません……マスター……私の体をそんなにぃっ、舐めてはっ……あぁっ、いけませんっ……毒がぁっ……』

 

みたいな感じで常時こちらを心配してる感じだったけど、複数にわたる開発のおかげか……それとも俺が死なない確信を得てくれたのか今や、

 

「んうっ!あぁ!はっ……ふぅぁ…………もっとぉっ、もっと、なめてくださいっ……どこでもぉ……すきなところぉ、あああぁっ!」

 

しっかりと快楽だけを享受してくれるようになってくれました。

やっぱりこういう交わり合いってお互いに気持ち良いことだけを考えて欲しいからね。

 

「はふぅ、あっ……んんぅ!指でもぉ……舌でもぉ……犯されてぇ……もう頭のなかがきもちいいことでぇ、いっぱいにああぁっ!!」

 

彼女の胸の先端までその肢体を唾液で汚しながら登頂した俺は……てっぺんにある褐色肌に映えるサーモンピンクの乳首に吸い付いた。

 

「はあぁっ!!ああぁ!胸いじめられるのぉ……いいぃっ……あんぅっ!!」

 

もっと強い刺激をと言わんばかりに俺の頭をぎゅっと抱きしめる静謐。

性器を責められている音と胸を吸い付いている音。二つ水気の音が重なりあう。

 

「あっ、はっ、ふあぁっ!でちゃうっ……なにかでてしまいますぁっ……ああぁっ!!」

 

腰を浮かし、ピクピクと体を震えさせ限界が近い事を主張する彼女に終わりを告げるように硬く勃起した乳首とクリトリス……それぞれに軽く噛みつき、指先で捻りあげた。

 

「んひあああああぁっ!!!」

 

―――プシュ!プシュ、プシュ!!

 

静謐は歓喜の悲鳴をあげ、盛大に達した。激しく漏れ出る潮は俺の手を汚し、腕は力が抜けゆっくりと下がっていく。

 

「まだいけそう?」

 

返答はわかりきっってたがそれでも俺は彼女に問いかけた。まぁ、これからする事が本番ですし。

 

「は……い、どうか……私のここでたくさん……きもちよくなって、くださいっ……私もあなた様のがっ……欲しいです」

 

弛緩した体で俺を誘う静謐。

それは暗殺者として彼女が振り撒く色気ではなく、普通の少女の愛おしい懇願に見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあぁっ!!ああぁ!!すごいっ!これぇっ!!あんぅ!」

 

私の中を熱く滾った物が優しく時に激しく蠢く……。

目の前には気持ち良さそうにそして情熱的に私を見つめ続けるマスターの瞳があった。

 

「ひぃやあぁっ……あっ……ああぁ!……もうアソコがどろどろになってぇっ!やあぁっ!」

 

暗殺者として猛毒として多くの者の命を終わらせてきた私がただの娘のように一人の男の人の前で悶え狂っている。

逆に私が愛おしいマスターとの性交という毒にどんどん狂わされているような……。

乳首も陰核もはしたなくそそり立ち、結合部からは快楽の蜜が溢れ出してしまう。

 

あぁ……初めは不安だったのです、確かにあなたは私が触れても接吻しても死ななかった。

けどいつか死んでしまうのではないかと、私の毒があなたの耐性をどこかで上回ってしまうのではないかと……また、殺してしまうのではないかと。

 

それでもあなた様はそんな不安を吹き飛ばすように何度でも私と触れ合ってくれました。

 

『もし、俺が君の毒を喰らってしまったら?その時はむしろ毒を裏返して力にしてやろうじゃないか』

 

あの台詞は多分私を元気づける為の冗談だったと思う……。

しかし、マスターの言葉だと本当に信じてしまうような、納得してしまうようなある種の安心感を抱いてしまう。

この人なら大丈夫だという確信が。

 

「ますたぁっ……ますらぁっ……らきしめてぇ、ああぁっ!ぎゅっとしてぇっ……くだひゃいっ、はああぁっ!」

 

蕩かされ、呂律が回らなくなった舌で私は甘えるように懇願する。

既にお互い、生まれたままの姿の二人は獣のように交じり合う。

 

手を強く彼の背中で結び、足も絡める。

私はもっと……もっと……。

あなたと肌を重ね合わせたいのです。

あなたの体温を感じたいのです。

あなたの汗を刻み込みたいのです。

あなたと一つになるまで溶け合いたいのです。

 

「あっ!はぁっ……!!ますたぁっ!ますたぁっ……ますらぁっ……んぅっ!?……んちゅっ」

 

あ、嬉しいっ……こんなに激しいキスを。

言葉にしなくても私の気持ちがわかっているような愛し方……あぁっ。

 

「んちゅぅ……ちゅ、じゅるぅっ……んふっ……じゅぱぁっ、おいひいっ……れろぉ、んああぁっ!」

 

マスターの唾液はこの世のどんな美食よりも勝る代物……甘くて、私の体を疼かせる。

私はいやしくも彼の舌をフェラするように吸い付いた。

 

「んじゅうぅ、じゅるっ!……んはぁっ……れろっ、れろぉっ……ああぁっ!んんぅっ!……んじゅるぅ……」

 

おいしい、おいしい。

マスターもお返しとばかりに私の唾液を吸い尽くしてくれます。

 

隙間もない程に肌を重ね合わせ、性器も口も胸も体全身もいたる所で繋がり合う私達。

このまま一つになってしまいそうな錯覚さえも抱いてしまいます。

 

はぁ……マスターのアソコがどんどん膨れている気がします。

出したいんですね?私の膣内に出していただけるんですね?

 

「んはぁっ……!らしてぇっ!ちゅっ……あぁっ!らしてくださひぃっ!ますたぁっ……!んじゅっ……」

 

私とマスターの情事による独特の匂いが部屋に充満する。

……けど今は二人だけの世界。何も気にする必要はない。

奥に全部出して欲しいから……彼の子種を求めるように腰をもっと前へと突き出す。

 

「ぜんぶっ……一滴残さず君の膣内へ注ぎこむぞっ!」

 

「ちゅぱぁっ……!あぁっ……はいっ、はいっ……!はあぁっ!」

 

そう宣言したマスターの抽送がどんどん激しくなる。

腰が激しくぶつかり合い、愛液が混じり合う音も加速していく。

 

「ひぁぁっっ!!あぁっ……ますたぁっ!あいしていますっ!あいしていますっ……!ああぁ!はぁっ……言葉では……あらわせないほど……あなたのことをっ……ああああぁぁぁぁっ……」

 

果てる瞬間、彼が耳元で愛の言葉を囁き、私はそのまま絶頂へと導かれた。

 

「はあああああああぁぁぁぁっ―――――――!!!!………………」

 

彼の子種が私の子宮の中へどんどん入り込んでいるのを実感する。

この瞬間が自分が女として生まれて、この人と出会えて本当に良かったと感じる瞬間。

 

「ぁぁ――……はぁぁっ―――……」

 

今の私は本当にだらしない顔をしているのだろう、それでもマスターはいつもと変わらない微笑みで私の頭を撫ででくれます。

 

 

 

―――マスター……私、時々こんな夢を見るんです。

 

青い空、どこまでも広がる草花。

白いワンピースを着た少し大人になった私、隣にはマスターが笑っていて、周りには私達の面影があるような男の子と女の子が一人ずつ元気よく走りまわってるんです。

その子達は私達に駆け寄ると「お母さん、お父さん」って甘えて……本当に……ごく普通の家族ような風景を夢見るんです。

 

色んな事を諦めてきた私。

あなたと出会うまではこんな夢、想像すらしなかったかもしれません。

 

けど……あなたが与えてくれた。

こんな普通の女の子が見るような夢を思い描く余裕を。

誰もが持っている…ずっと私が取りこぼしてきた当たり前をあなたが一つずつ拾ってくれた。

当たり前の幸せをあなたが持ってきてくれた……。

 

 

私に未来(あした)をくれたあなたをどうか最後まで愛させて下さい。

愛してます……永久に……マスター……。

 

 

 

 

 

 




前回との温度差ェ。
まるで静謐ちゃんがメインヒロインみたいじゃないか。

初の日記形式(最後は除く)、全話の中で主人公視点が一番短いかつ、登場キャラ数が一番多い、まさか最終回かっ!?

アサ子さん回から、皆この娘の事大好きなんだなーと思いました(私も好き)。
是非幸せになって欲しいサーヴァント筆頭ですよね。




活動報告の方にも詳しく書いていますがそろそろリアルの方が忙しくなってきたので更新がこれからは遅れてしまう可能性があります、出来る限り早めに次の作品は挙げる努力はしたいです。書きたいキャラもたくさんいますし。
感想返しの方も遅くなるかもしれませんがキチンとさせてもらいます(やっぱり感想は嬉しいので)。
まぁ、それでもイイゾイイゾという方はこれからもお付き合い頂けると幸いです。

ではまた次回ッッ。



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アイドルマスターカルデレラガールズ(エリザベート)

昨日か、一昨日に投稿すると言っておきながら遅れてしまいすまない……などと言うつもりはあるっ!!

今回も中々に文字数が多くなっちゃった。

水着鯖は出すとしたらおそらく9月以降となると思います……え?9月はまだ夏でしょ?








「ふーん、あんたが私のプロデューサー(マスター)?」


「はぁ、最近どうにも伸び悩んでいるのよね……私」

 

カルデア備え付けのトレーニングルームでエナドリを飲み、ため息と共にそう呟く彼女。

 

「はぁっ――――――……!!(チラチラ)」

 

これ見よがしに大きく息を吐き、もう隠す気あんのかお前と聞きたくなるぐらいにこちらの様子を伺うのは我らがスーパーアイドルエリちゃんこと、エリザベート・バートリー。

 

「伸び悩むって……身長?それとも胸の話かしら?何事も諦めが肝心よ」

 

俺の隣で彼女に喧嘩を売るような発言をぶちかましているのは大人になったエリちゃんことカーミラさん。

 

「そうそう、実は毎日バストアップ体操をして、牛乳も飲んで…夜9時にはたっぷり睡眠をとっているのに全然大きくならないのよ、いつまでたっても‘かなりまな板よ!コレ!‘状態で困って……ってんなワケないでしょ、ぶっ飛ばすわよ」

 

「見事なノリツッコミだエリちゃん……成長したな」

 

「えぇ、あなたがアイドルたるもの笑いもしっかり取らないと生きていけないって教えてくれたおかげよ。もう、今の私は可愛いだけのスーパーアイ☆ドラじゃないのよ!」

 

自分の担当アイドルの成長を噛み締めた俺はエリちゃんとハイタッチを交わす。

 

「アイ☆ドラって何よ……目でも乾いてるの?」

 

「シャラップ!!」

 

キッと大人になった自身を睨み付けるドラゴンガール。

けど今日カーミラさんを呼んだのはエリちゃんだよね、いきなりカーミラさんの歌と踊りを見たいとは一体どういう風の吹き回しかしら?

まぁ、それでも俺が誠意を込めて頼んだらちゃんと歌ってくれるカーミラ様まじ天使。

 

「それで、結局何が言いたいのかしら?

マスターの頼みじゃなければ、お前のようなドラ娘の前で歌うなんて天地がひっくり返ってもあり得ないのだけれど」

 

先程、カーミラさんのアイドルとしての力量を見たエリちゃんはしばらく百面相したと思ったら、冒頭のように白々しいほどに私悩んでいるわー、辛いわーアピールをしてきたという話です、ハイ。

 

「前々から思ってけど、さっき確信したわ……確かに現段階ではアンタの方がほんの少し、ちょっぴりだけミリ単位程の微々たる差で私よりアイドルとしての力量が上だって事をまぁ……認めてあげないこともないわ」

 

「どうしたら、そこまで上から目線になれるのかしらね、それと私はアイドルなんて目指してないわ」

 

「え?けどこの前、俺とフリフリの衣装でデュエットしてくれたじゃない」

 

「シャラップよ、マスター」

 

うっす、大人しくしてるんで杖をこっちに向けないでね。

 

「なんで同じ『私』なのに差が出てしまったのか考えたわ。最初は年の功かと思ったけど……ほら良く言うじゃない?おばあちゃんの血袋とか何とか」

 

「よし、殺すわ」

 

青筋を浮かべながら、宝具の準備に入るカーミラさん……まてまてちょっと落ち着こうや。

それとエリちゃん、血袋は怖いよ。

 

「ん?なんでそんなに興奮してるのよ、更年期障害?」

 

「マスタァー!!離しなさいっ!!そいつ殺せないっ!!」

 

「気持ちはわかるけど、ちょっとステイ!カーミラちゃん!」

 

完全に戦闘パートに移行したカーミラさんを後ろから羽交い締めする。

くっ!彼女を抑える為にはとりあえず胸を揉んでおくしかないかっ……!!唸れ!我が両手!

 

「んひゃぁっ!」

 

「ふぅ、落ち着いた?」

 

3モミぐらいした所でその場にへたり込んでしまったカーミラさんに声をかける。

うん、冷静になってくれて一安心じゃ。

 

「……あなたねぇ、そのセクハラしておけば万事何とかなるみたいな精神どうにかならないの……」

 

そんな手当たり次第セクハラしているみたいな言い草……けどまぁ、事実、今回も何とかなったじゃん?

 

「そう!それよっ!」

 

ズビシッ!と俺等二人を指差すエリちゃん。

え?それってどれ?セクハラ?

 

「あのフランス王妃もアイドルとして私の前を常に一歩進んでいるわ。

マリー、カーミラ……この二人にあって私に無いもの……それをずっと考えていた私はついに答えを出したわ!」

 

あの二人にあってエリちゃんにないもの……心当たりがあり過ぎて困る。

 

「それでその答えとは?」

 

嫌な予感しかしないが続きを聞かない事には話が進まないだろう。

 

()()()()()()()()()()()()()

 

あぁ!カーミラさんの目が死んで、口から血が流れている!!

 

「冷静に考えれば、ラブソングとか私歌ってるけど……そういう経験が一切無いのよね。

うんうん、そこでも差が出てしまってる感は否めないよの。実体験が無いんだもの!

だから殻を破る為にはここで何か大きなきっかけが必要と思ったワケよ!」

 

その答えが出てる時点でまず冷静には考えてないぜエリちゃん。

殻を破るというより別の物が破れると思うんですがそれは。

もしかして思考に狂化入ってない?

 

「それに風の噂で他の連中もマスターに抱かれて色々万事うまくいったって聞いたし?」

 

 

※感想には個人差があります

 

《人斬りセイバー》

『私は風邪がすっかり治りました!この病弱も煩わしいばかりでしたが……こういった役得があるのなら良いかもしれません!むしろ調子がより良くなりましたし!』

 

 

《ステゴロ聖女》

『私はまぁ……一時期不摂生だったのが治ったというか……痩せたというか……えぇ当然感謝はしてますわよ

拳もちゃんと良い音を響かせれるようになりましたし、(シュッ!シュッ!)』

 

 

《自称メインヒロイン》

『えぇ、マスターに愛された翌日は聖剣のノリが非常に良くて、セイバー狩りが捗るってもんですよ!

メインヒロインですからっ!!やっぱり愛だよね!!』

 

 

《ロリ魔王》

『ふ~む、わしは最近胸がほんの少し大きくなった気がするのじゃ!いや、サーヴァントじゃから成長はあり得ないとわしも思ったぞ!だが現に確かに大きくなっておるからの~……マスターの手には神が宿ってるかもしれんな!』

 

 

……え――、なにその進研ゼミみたいな扱い。

 

ねぇ、カーミラさん。ああいう生ける黒歴史を見るのってどういう気持ちー?

……っていねぇし、余程過去の自分の醜態を見たくなかったと思える。

俺に丸投げしおったな……。

 

 

「みーんな、子イヌと一緒に寝た後は何故か妙にツヤツヤしてるし……美肌効果もバッチリありそうじゃない?

ま、まぁ……もちろん理由もそれだけじゃないのよ?

マスターは私の料理も嫌な顔せずに食べてくれるし?いや、その後毎回延々と酷評されるけど……。

プロデューサーとしてアイドル特訓にも付き合ってくれてるし、ハロウィンの時だって最後までパーティーを楽しんでくれたし……う、うん、ここまで尽くしてくれたあなたならいいかな――って……思ってるんだけど、ちょっと、何とか言いなさいよ」

 

頬を染めながらこちらの様子を伺うエリちゃんは大変可愛らしいのですが俺に抱かれるってのはどういう事か本当にわかってるのかしら?

なんかエリちゃんって口ではそういう事言ってても正しい性知識とか無さそうな感じがするんだもん。

保健体育の授業から始めない?

 

「えーと、エリちゃん……ちゃんと何をされるかわかってて言ってるんだよね?」

 

「む、ちょっと馬鹿にし過ぎじゃない?私だってもう一人前のレディよ、そういう性知識だってしっかりあるんだから」

 

心外とばがりに鼻を鳴らす彼女。

ほう、そこまで言うなら聞かせてもらおうじゃないか。

 

「まず夜まで待つでしょ」

 

「うん」

 

「それで子イヌと一緒のベッドに入るでしょ」

 

「うんうん」

 

「ふふふ……その顔、『どうせここで一緒に朝まで天井のシミを数える』とか言い出すと思ってるでしょ!

ところがどっこい!今日の私は一味どころか七味ぐらい違うわよ!」

 

「なるほど」

 

「正解は『マスターに胸を触れられながら朝を迎える』でしょ!しかも服の上からじゃなくて直接よ!

と、とってもイヤらしいけど……これが情事って奴なら仕方ないものね!

これなら体勢的にも抱かれてるから、『抱く』って意味にもなってるしね?どうよ!?」

 

渾身のドヤ顔でこっちを見てる彼女にはファンファーレが鳴り響いているのだろう。

 

……あぁ――――――、うんエリちゃんにしては頑張った方じゃないかな。

取り敢えず、慈愛に満ちた顔で微笑んでおくとしようか。

 

「なんでそんな顔してんのよ?え、え?もしかして私間違えちゃってる?

そ、そんな筈ないわ……ネット友の‘アイドルは良い文明娘ちゃん‘がこれで間違いないってちゃんと教えてくれたもん……」

 

あの褐色セイバーのお仕置きはまた後日にするとして、困惑中のエリちゃんに近づき、耳元で正解を発表する事にした。

 

「まず抱くってのは……ゴニョゴニョ」

 

「えっ?えぇ?……濡れるって何よ!?どこが!?どうして!?WHY!?」

 

「そして―――――――――」

 

「はははははあぁぁ!?おお大きくなるってなによ!?そんな所大きくしてどうするのよ!?いれる!?いれるって何?」

 

「最後には―――――――――」

 

「んにゃにゃにゃにゃにゃ……!!出すって!!ふぁkbんvzdkんz。d;ねふぇfm!!」

 

あ、オーバーヒートしたみたいですね。

言語機能に障害が発生した彼女は頭から目をグルグルにして煙を出していた。

ふーむ、しかしこの反応……まだピュアだった頃のきよひーを思い出す。

喧嘩する程なんとやら、類は友を呼ぶってやつかね。

 

「そういうわけだからさ、エリザの気持ちは嬉しいけど無理は良くないからまた別の機会ということd……」

 

―――ガシッ

 

「…………ゃないのよ」

 

ぬ?

崩れかけてたエリちゃんが何とか踏ん張り俺の腕を掴んでいた。

彼女は顔を上げ、興奮なのか羞恥なのかどちらとも取れそうな表情で叫んだ。

 

「やってやろうじゃないのよ!!」

 

え?マジで言ってんの?

 

「女は度胸!アイドルは根性!ドラゴンはガッツよ!我がアイドル道に撤退の二文字は無いわ!!」

 

おそらくそのアイドル道とやらはオカシイ方向に向かってると思うがな。

引けに引けなくなったのかしらー?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって、いつもの我がマイルーム……最近もう俺の部屋が完全にそれ専用と化しているような気もするんですが……え?今更?

 

「ささささぁ!かか覚悟は出来てりゅわ!!パパッとすす済ませてひょうだいっ!」

 

ガチガチの状態で言われても説得力が皆無ですぜ。

そんなピュアエリちゃんはいつもの帽子がキュートなピンク色の服ではなく、胸元が大胆に開いている再臨前の姿だった。

あっちの方は戦闘用だったり、LIVE用だったりするからね。

 

「いきなり、本番なんて入ったら絶対痛いよ……まずはリラックスしよう、エリちゃんも痛いのは嫌いでしょ?」

 

落ち着かせる為にまずはハグから入る。

しっかし華奢な体だねーちゃんと食べてる?

 

「…………むぎゅ……うん、痛いのは嫌」

 

赤い髪を梳かすように頭を撫でていく……エリちゃんは良い娘ーエリちゃんは良い娘ー。

 

「ぐぬぬ……なんか子供扱いしてない?」

 

「おろ?一人前のレディって子供扱いされる方が喜ぶって聞いたんだけど……逆にここで拒否るということは自身を子供って認めてるようなも……」

 

「存分に子供扱いしなさい!滅茶苦茶に甘やかしなさい!子イヌ!」

 

チョロ可愛いぞエリちゃん。

お許しを得たのでまずは背中や二の腕をさわさわとくすぐるように撫でていく。

ふむ、しかし初心な割りにはこの衣装は中々にコケティッシュな衣装だなー。

 

「んぅっ……あぁ…………ふぅっ……なんだか変な感じ……あっ……」

 

肩甲骨や顎の下、腋……など肌が露出している所をムードを高めるように性的な触り方をしていく。

焦れったいのか、未知の感覚に戸惑ってるのかエリちゃんは体をピクピクと小さく震わしている。

 

「……あぁ、んふぁっ……だ、だめよ……そんな情熱的な目で見詰めないで……」

 

「大丈夫、全部俺に任せて……何も不安は無いから、ほらこっちを見てエリザ」

 

「はぅっ!……わ、わかったわ……んぅ、ちゅっ……」

 

なんだか少女漫画チックな効果音が鳴りそうな表情でときめいているように見えた彼女だったがキスにはしっかりと応えてくれた。

 

「んっ……んっ……ふぅ……ちゅ…………んぅ」

 

恥ずかしさのあまり目をギュッとつむっているエリちゃんはたどたどしいがそれでも俺の動きに応えようと必死になっている。

その証拠に俺が彼女の唇を舌でノックすると意図を理解したのかゆっくりと唇を開けてくれた。

 

「んんむぅっ!?んんぅ!……んじゅぅ……んふぁっ!んんむぅっ……じゅるぅぅ!」

 

小さい入り口から入った舌は甘い匂いがする彼女の口内を蠢く。

急に自身の口内を蹂躙する生温かいモノに目を見開いた彼女はされるがままだった。

 

「んちゅぅっ、んむむぅっ!……じゅぱぁっ!はぁっ……あぁっ……なによぉ……これぇ……舌がヌルってすんごい動きしてぇ……あぁ、まってぇ!角は駄目ぇ……!!ひぁあぁ!!」

 

舌を引き抜かれ涎を垂らし、心ここにあらずな状態の彼女だったが俺は追い打ちとばかりに彼女の竜の角を咥える。

 

「ひゃぁ!やあぁっ!だめぇ……食べられてるぅっ……私の角ぉ、子イヌにたべりゃれひゃってるぅっ……!!」

 

紅黒く硬い角を口の中で舐め回し、もう一方の角を手で扱くように刺激させていく。

 

「はふぁっ!!あぁっ、んぁぁあ!……つのがぁっ……!ひぃぁあぁっ!!」

 

しかし、鬼っ娘(酒呑ちゃん)といい、獣耳っ娘(アタちゃん)といいどうしてこんな敏感な物を露出させてるのだろうから?

もしかしたら、普段はそこまでじゃないけど、性的興奮で敏感になっていくとか?

同じ竜種でもきよひーとかはそこまで敏感じゃなかった気がするし……彼女の方は思い込みで変化したからまた別なのか。

うーむ、人体の不思議という奴だ。いや、人体ではないか。

 

「あ!あぁ!んはぁっ!!きちゃう!……なんかきちゃうぅ!!はぁっ!たすけてぇっ!こいぬぅっ……!ますたぁぁ!!」

 

可憐な嬌声を響かせ、怖がりこちらにしがみつくエリちゃんに俺は声をかける。

 

「……じゅぱぁっ、そういう時はイクって言うんだよエリザ……そのまま身を任せて……れろぉっ……」

 

再び角への愛撫を開始し、彼女を絶頂へと誘う。

ほれー気持ちよくなーれ。

 

「あふあぁっ!……い、くぅ!?……あぁっ……いくっ、イクイク……イクぅぁっ―――!!!」

 

初イキおめでとうございます。

体を激しく揺らしたエリちゃんは焦点が合わない目で放心しているようだった。

 

「はぁっっ……はふぅっ……ぁあぁっ、子イヌ……一瞬私お花畑が見えてたわ……もうどこかに連れてかれてしまったと思ったの……」

 

「これぐらいまだまだ序の口ですよ、これからもっとすんごい事になるんだから……」

 

「こ、れ以上?……もしかして私死んじゃう?命日になっちゃう感じ?」

 

「死なせるつもりはないけど、死ぬ程気持ち良い目には合うかもしれんね」

 

ではでは服を脱ぎ脱ぎしましょうねぇ~。

彼女の上の服を手早く脱がせていく……うん、今更だけどこの胸元も大事な所しか隠していない感じやっぱりえっちいわ。

あ、割と簡単に脱がせれる。

 

「というかエリちゃん、何してんの」

 

そんな両手で顔を覆い隠してさ。

 

「死ぬ程恥ずかしいのよ!察しなさいよ!!ってかあんた手慣れすぎなのよ!プレイボーイって奴なの!?

どうせ私の胸で物足りなく思ってるんでしょ!『そんなに小さくて恥ずかしくないんですか?』って罵ればいいじゃない!」

 

なぜにそんなネガティブ入ってるんですかね――。

 

「確かにカルデアには大きいモノを持っている女性陣の方々もたくさんいらっしゃるけど、エリザは彼女達に負けず劣らず良いモノを持ってるよ。うん、今は目の前の君の胸だけに夢中かな」

 

大きさ云々よりはまず誰の胸なのかって事が大事だと思います。

月並みな言葉だけど、ナンバーワンよりオンリーワン。

 

俺の言葉に信憑性を持たせるように露わになった彼女の胸を中心にさくらんぼのような可愛らしい突起物の周りを円を描くように指先で撫でる。

 

「ふぅっ……あっ、ほ、ほんと?……私の胸にメロメロ?」

 

「あぁ、目が釘付けになってるよ」

 

「はぁっ……ふふっ、うふふふ……そっかそっかー……私ってば罪作りな女ね、マスターをこんなに魅了しちゃうなんて、正に魔性の女エリザ…………にやぁぁぁあああぁっ!!」

 

自信を取り戻してくれた彼女の不意を突くように先端に口をつけ、甘えるように吸い付いた。

うん、もうしっかりと硬くなってるね、エリちゃんってばいやらしい娘!

 

「くふぁっ!んんぅっ……!あぁっ!やあっ、ちょっとぉ!いきなりそんな舐めないでぇっ……あんっ!」

 

「ふぃあ、ふぁっへふぇおふぇおひはっへふはらひはないほ」

 

「ああぁっ!もうっ……!咥えたま喋らないでってばぁっ、はんぅ!くすぐったくてぇ……指でつまむなっつうのぉっ……にやぁあぁぅ!!」

 

いやーだってメロメロになってるから仕方ないじゃない。

これも彼女の魅力が悪い。つらいわーエリちゃんのアイドル力が魔性過ぎてつらいわー。

 

「んはぁっ……!むねもそうだけどぉっ、あぁっ……!アソコもキュンキュンしてぇ……はああぁ!」

 

アソコって言ったらあそこしかないですよね。

さっきから散々責めてるし……そろそろいい感じに出来上がってるかもしれない。

 

「あぁ、ちょ、ばかぁっ……脱がさないでぇ……ふぅぁっ!」

 

 

片手での愛撫は続けたまま、一度口を離した俺は片手でスカートを捲り上げ、彼女のトレードマークでもある縞パンを拝見する。

……おぉ、大分大きなシミが出来てますねー。

 

「あはぁっ……!み、ないでぇ……みないでぇ……ち、ちがうのぉ……これ、は……ぁ、別にもらしたとかじゃなくてぇぇ……んんぅっ!」

 

愛液を十分に吸い取った(パンツ)を脱がすとエリちゃんは弁明するようにそう嘆いた。

おや、もしかして自分が粗相したと思ってるのかな?

 

「ちゃんと教えたでしょ、ここは気持ち良くなったら濡れる所だって……別に漏らしたとかじゃないから安心しなよ」

 

「うぅっー……そ、そうなの?びょうきじゃないぃっ?変じゃない?……きたなくない?」

 

「大丈夫大丈夫。ピンク色でヒクヒクしててお花みたくてすんごく可愛らしいよ」

 

「ふふっ……そう、可愛いのね……よかったぁ……」

 

女性器をまじまじと眺めながらお花みたいって褒めるのもどうかなーと思いましたがエリちゃんは概ね満足な模様。

可愛いって言われただけで頬をにへら~って緩めるエリちゃんは本当にチョロ萌えですね。

 

「じゃあ、ここもしっかりとほぐしておこうか」

 

「え?えっ?……ほ、ほほんとにこんな所に指を入れるの?痛くないのよ、ね……?」

 

「あぁ、‘痛くはしないよ‘……だから力抜いてね」

 

呼吸するようにヒクついている彼女の花弁へ手を這わせる。

まじまじと俺の手の行く末を不安気に眺めているエリちゃんだったがクチュりと水音を鳴らしながら指が秘密の園へ侵入していくと大きく嬌声があがってしまった。

 

「ふうぅっ!あっ……!……んんんぁぁ……子イヌの指がぁぁっ……はいってきてるぅぅっ……」

 

あれだけ濡らしてもやっぱりまだキツキツですね、焦らずいきましょうか。

いきなり奥まで挿れるようなことはしないで入り口付近で慣らすように小刻みに動かし、指を遊ばせる。

 

「ふぁぁっ、あぁっ、はぁっ、んんんぁ!鳴かされてるぅ……わたしぃ……こんな自分でもさわったことないところでぇ……なかされちゃってぇぇ……ああぁんぅ!」

 

少しずつ、少しずつ……バイブのように震わせてる指を奥へ進ませていく。

 

…………ふ――む、しかしさっきから彼女の快感と連動するように激しく動いている尻尾が気になって仕方ないな。

 

うん、どうせならこっちもちゃんと責めておこうか。

せっかくのドラゴン娘だし、あらゆる物を堪能したいじゃん?

捕まえるようにその尾を握るとそのまま上下へ滑らせるように擦らせた。

 

「あっ、んんぅぁ……はえぇっ?ふぁあああぁっ!?ちょっ……そこだめぇっ……んにゃああああぁぁっ!!」

 

おぉ、さっきの角の比じゃないくらいに悶え狂ってるな。

いつも『尻尾はあんまり使わせないで』とか言ってるぐらいだからやっぱり弱点だったのか。

ちょっとアヘりかけてるなぁ……。

 

「しっぽぉっ、しっぽぉぉ……!!はああぁっ!やらぁぁのぉっ……!……だめぇっ、ふぁめぇっ……!ばかになぁぁるぅっ、ひやああぁっ……!!あああぁ!はああぁっ!」

 

 

追撃とばかりに尻尾の二又に分かれている先端をまとめて口に咥え、吸い付いた俺はエリちゃんの濡れそぼった女陰と尻尾を手で扱き、愛撫する。

敏感な場所をひたすら3点責めすることにした。

 

「ふぁふはひくほとひ、はふぇふあしょうえ~」

 

「あふぅっ!らからぁっ!咥えたまま喋らないでってぇぇ……んんふああああぁっ!!」

 

まずは性的快感、イク事に慣れましょうねー。

大丈夫大丈夫。どんなアヘ顔晒しても見てるのは俺しかいないからさ……好きなだけイッちまいなー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ぁぁぁっ……はぁぁっ…………ぁぁ……ぁふぁぁ……」

 

あの後、たっぷりと下半身責め(尻尾を含む)をされたエリちゃんはもれなく下の口が大洪水中。

本人の名誉の為に言うが決して漏らしたわけではない……全部愛液だもん。

 

「とまぁ、エリちゃん。ここまでが本番をするまでの準備運動……いわゆる前戯というものだよ」

 

「……ふえ?…………私がさっきまではしたない声あげて、はしたない汁まき散らして、はしたない顔を晒していたのに……準備運動?前戯?……今までの前菜で…これからメインディッシュって事?なにそれこわい」

 

「怖いならここでもう止めとく?」

 

トラウマになっちゃってもあれだしね。無理矢理する程鬼畜ではないですよ俺は。

え?この時点で大分鬼畜だって?合意の上ならセーフなんやで。

 

「い、今のは言葉の綾よっ!……あまりにエキセントリックな感覚すぎて戸惑っちゃっただけよ!

最初はマッサージみたいなもんだと思ってたのに……いざヤられてみると、もう頭の中がすんごい事になって……なんでアイドルの私が魅了されちゃってるのよ!!子イヌの馬鹿っ!」

 

褒められてるのかな?

エリちゃんがお気に召してくれたなら俺も気兼ねなく次の行為にイけますし、そろそろ俺のアソコも限界だしね。

 

服を手早く脱いでいった俺は男を知らないおぼこな少女の前にはち切れんばかりの愚息を晒した。

 

「え?え??……ちょっと待って……そんなに大きいの?聞いてないわプロデューサー……こんなのスケジュールに入ってないでしょ?」

 

「俺のアソコのサイズが入ってるワケないでしょ」

 

どんなスケジュールだそれは。

 

手で目を覆い隠していたエリちゃんだったが指の隙間からは興味津々に俺の逸物をガン見していた。

そんなにまじまじと見詰められると照れるんですが……。

 

「ふわぁっ、すごっ……なんかピクピクしてるし、血管浮き出てるし……け、けど……私の余りの可愛さにこうなっちゃったのよね?興奮してくれてるワケよね……?なんだか苦しそうだし……そ、それならわわわ私が何とか静めてあげないといけないわよ……ね……うん、うん……大丈夫よエリザ。私は出来る娘、それに子イヌ……マスターの事は大好きでしょ。なら何も問題はないよね……よっし!!」

 

何やらブツブツ呟いていた彼女は気合を入れるように自分の頬を叩くとこれ以上無い程に紅潮した顔でゆっくりと股を開いた。

 

「……それを私のココに入れるのが『抱く』って事なんでしょ?……にゃ、にゃら、外さないようにしにゃさいよ……」

 

噛み噛みながらも、決意を固めた彼女は恐怖と期待が混ざったような表情で本番へと誘ってきた。

 

「……ねぇ、マスター……やさしく、して……ね?」

 

全裸のドラゴン美少女にそう懇願されてしまって気合が入らない男がいるだろうか。

今のエリザはセックスという特異な状況のせいか快活ないつもと違って少しお淑やかに見えた。

 

「わかった。じゃあ、まずは顔を近づけて」

 

「う、うん……んっ、ちゅ……」

 

彼女と再びキスを交わし、ゆっくりと肉棒をエリザの淫花へ挿入していく。

侵入させている異物感だけを気にさせないようにキスをしながら、角や尻尾……胸を弄り、快感を与え紛らわしていく。

 

「んふぁっ!はいってぇ……んんぅぁっ、ちゅっ……んむぅっ、んふぅっ!」

 

優しくしてねと言われたからには挿入のスピードはなめくじのようにこれ以上ないくらいゆっくりのスピードで進んでいく。

 

「んちゅっ、んふぁっ……きもちいい所いじられてぇ……あぁ!アソコもなんだかジンジンしてぇ……ふぁあっ……あぁぁ……」

 

少しずつ、少しずつ……。

何かを貫いた感覚を得ながらも――。

 

「……ちゅっ、はぁっ……あとちょっとだから息吐いてエリザ……」

 

「はぁ―――……うぅっ、あぁ……ふぅ――――――……」

 

 

おっけー、おっけー……。

亀頭がコツっと行き止まりに当たった感触がした俺は腰の動きを一度止めた

 

「これで全部入ったよ、よく頑張ったねエリザ」

 

「ふぅあ?……あぁ、入ったのね?……ふぅ……なんていうかそこまで痛くなかったわね……まぁ、なんか違和感はあるけど……ちょっと拍子抜けだったかしら?」

 

「エリザが優しくしてねって言ったんじゃん」

 

「……あぁ、そうだったわね……ふふっ、ありがとう……マスター……けど……もう、動いてもいいわよ。なんだか私大丈夫な気がしてきたし……」

 

おぉ、ちょっと余裕みたいなのが出てきたね、ある意味一人前のレディになったのかもしれないな。

まぁ、俺自身も彼女の膣内の感触を味わいたいのでそろそろ動かせてもらうとするかね。

 

「あぁっ!……ふぅっ!はあぁっ!」

 

俺が腰を前へと後ろへと動かす度に歌のように彼女の口から喘ぎ声が漏れる。

 

「はああぁっ!あぅ!す、すごいっ……これぇっ……マスターのがぁ……私のナカを動きまわってぇぇっ……!んひぃっ!」

 

彼女の歌声が漏れる度に狭いエリザの雌の部分がこちらの肉棒を締め付けてくる、アイドルとして毎日レッスンをこなしてるだけあって締まりは実に良い物だった。

 

 

下から突き上げられてる小さな衝撃に翻弄されている彼女の体をギュッと抱きしめる。

 

「はうぅっ!あぁっ!ますたぁぁー……ますたぁぁっ!すごいのぉ……これぇっ……!ああぁっ!ふぁっ!……頭の中が真っ白になってぇぇ……ひもちいいことでいっぱいになっへぇぇっ……!!ひああぁっ!!」

 

抱き締め返された事で彼女の爪が俺の背中へ食い込むが今の俺にはそこを気にしている余裕は無い。

今すべきなのは目の前にいる女性を愛する事だけ。

 

「ふああぁっ!!ひもちいいっ……!ひもちいいのぉっ!!ますたぁぁっ……!!ずつうのことなんてなくなっちゃうくらい……ひもちいいのぉっ……あああぁんぅっ!!」

 

激しく乱れているエリザに自身の精を放ちたい気持ちがどんどんこみ上げてくる。

 

「……っ出すぞ、エリザっ!」

 

「いいのぉっ……!!らしていいのぉっ……もうなにしてもいいのぉっ!!あなたなら何されてもいいはらぁっ!!はああぁっ!!あああぁ!!んあぁっ!!……ぎゅっとひてぇ、絶対にはなさないでぇっ、そばにひてぇぇっ……すてないでぇぇっ……んふああぁっ!!」

 

何があっても離れないとばかりに全身を使ってこっちに縋り付いてきた彼女の肌の温もりを感じながら未だ汚れを知らないエリザの子宮へと精を注ぎ込んだ。

 

「ひやああああぁぁぁぁぁっ―――――――――!!!……あああぁっ!しらないぁっ!こんなあつくて心地良いものっ……はぁっ―――……」

 

交わりを知らないエリザの雌を目覚めさせるように自身の欲望をぶつけた俺はゆっくりとため息を吐いた――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……んぅ、ちゅるぅっ……れろっ……ごめん…‥ごめんねっ、んちゅぅっ、ますたー……」

 

情事が終わった後、俺の背中から血が流れていたことに気づいた彼女は自分がやると言って傷を癒すように流れている血を舐めていた。

あんだけ思いっ切り爪立てれば傷ぐらいはつくか……。

 

「うぅ……んじゅるぅ、私ってば……あんなにマスターに気を使ってもらったのに……自分はこんな事にも終わるまで気付かなかったなんて……んちゅぅ……」

 

「別にこれぐらいかすり傷だから大丈夫だよ、それにこういった情事の際に背中に爪痕残してくれるのは嬉しいし」

 

それだけ夢中になってくれたって事でしょ?

背中の傷は男の誇りだ(但し情事に限る)。

 

「……そ、そういうものなのね。奥深いわ……まだまだ勉強不足ね私は……んちゅるるぅっ、おいしぃっ……」

 

エリちゃんは勉強不足ぐらいがちょうどいいと思うけどね、ほらアホの子ほど可愛いって言うやん?

あと、ちょっと血吸いすぎじゃね?いや別にいいけどさ。

 

「それで……今日こんな事しようとした理由のアイドル云々は建て前でしょ?」

 

「……あぁ――、やっぱりバレてた?」

 

そりゃあね、エリちゃんって大分わかりやすい性格してるし。

やっぱりアレかな?寂しかったのかな?放ったらかしにしたつもりは無いんだけどなぁ。

 

「盾娘とかあの病みアオダイショウは当然として……他にも色んな娘達とこういう事してるわけでしょ?

しかもよりにもよって老け…………大人になった私ともこういう事してるらしいじゃない?

うん……なんてゆーか私だけ仲間外れ感があったというか、子イヌは私のプロデューサーなのにさ……。

まぁ、まさかあんな凄い事してるとは思わなかったけど……大人の階段駆け上がった気分だわ……」

 

君はまだシンデレラさって感じ?

 

「それで感想は?」

 

「言わないでもわかってるでしょ馬鹿……世界が変わった気分よ……頭痛なんて綺麗さっぱり忘れちゃうぐらいに頭の中気持ち良い事しか考えられなくなっちゃったわよ。責任取りなさいよね、子イヌ」

 

「ちゃんと最後まで面倒見る(プロデュースする)よ」

 

「ふふん♪ならばよしっ!」

 

あぁ、コラコラ。もう、そんな姿で抱き着かれたまた元気になっちゃうでしょうが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『♪ハートがチクチク 箱入り浪漫

 ♪それは乙女のアイアンメイデン

 ♪愛しいアナタを閉じ込めて

 ♪串刺し血塗れキスの嵐としゃれこむの

 ♪浮気はダメよ、マジ恋ダメよ、

 ♪アタシが傍にいるんだからネ?』

 

「す、すごいです!先輩!……今までの殺人的な音痴が驚く程に解消されています!

というかあれは本当にエリザベートさんなのでしょうか!?実はそっくりさんとかいうオチでは!?」

 

「そう言いたい気持ちもわかりますけどね。私も最初は旦那様にあのトカゲ娘のLIVEに来てくれって誘われた時は心中してくれってという意味で勝手に変換していましたわ……まぁ、旦那様となら一緒に死んで黄泉路で永遠に結ばれても全然ウェルカムなのですが……。

というかアルテラさん、あなたさっきからうずくまってどうしたのですか?認めるのは癪ですが彼女の今の歌は聞けるレベルに達しているでしょう」

 

「……大丈夫だ……問題ない。いわゆる、お仕置き最中というものでぇ……んふぅっ!マスタァー……スイッチ止めてぇぇっ……」ヴヴヴヴヴ……

 

 

カルデア備え付けLIVE会場で自称新生エリちゃんのお歌の初お披露目。

オーディエンスは俺を入れて……マシュ、清姫、アルテラちゃん、カーミラさんの5人。

少ないがこのメンバーも何か理由があるのだろう。

 

「はぁ……あの憑き物が取れた如く晴れ晴れとした表情、マスター……アレ()としたのね」

 

「うん……色々とピュアで新鮮なエリちゃんを戴かせてもらいました、といかあんまり取り乱してないねカーミラさん」

 

「ずっと除け者にして、癇癪起こされても面倒でしょ。しっかりと手綱握りなさいよねマスター。

それはそれとして、アイドルに手を出すプロデューサーってどうなのかしらね?」

 

「知っているのは彼女と俺だけだから大丈夫じゃないかな?」

 

経験(意味深)を超えて彼女はアイドルとしても女性としてもすんごく魅力的になったと思う……それってすんごい素敵な事だと思うんだ……。

 

「地獄へ落ちなさいマスター」

 

「…………手を出した。ピュア……?……もしかしてもしかしてもしかしてもしかしてもしかして旦那様はあのエリマキトカゲと一発したという事でしょうか?しかも……よりにもよって私のお株を奪うか如く純情プレイをしたというのですかぁっ!!?」

 

俺達の会話が聞こえた清姫がグリンッ!と首をこちらに向けるとゆっくりと俺へ密着してきた。

マシュはエリちゃんの歌に夢中になってるし、アルテラちゃんはお仕置きの最中だし。

 

「許せません許せません許せません許せません許せません……正妻は私ですから側室如きがいくら増えようが何も問題視するつもりはありませんが……私とキャラ被りをすることだけは断じてっ!!!」

 

けど……最近のきよひーは慣れたのか割りと自分から積極的に奉仕してくれるよね?ピュア路線からはちょっと外れている感じ?けどイケイケなきよひーも俺は好きなんだけどなー。

このままでは我がアイドルにいつ襲い掛かってもおかしくないからちゃんとフォローはしておかなければ。

 

「あぅ、旦那様……?」

 

「清姫との初めての思い出は俺にとって大切な宝物だよ……。そしてそこから一生懸命少しずつ俺に気持ちよくなってもらおうって奉仕を頑張ってくれてるのも……誰とも比べようがない不可侵の繋がりだと思うんだ。だからそんな怖い顔しないで笑った顔を見せて欲しいな……可愛い清姫」

 

近づいてきた彼女をハグして耳元でそう囁く。

 

「はぁっ!旦那様っ!……なんて誠実なお言葉っ!!」

 

「誠実……?誠実って何かしらね、マスター?」

 

「正直な事だと思います!」

 

隣のカーミラさんの視線がもの凄く痛いよぉ……。

 

「ちょっとちょっと!私のプロデューサーよ!あんまり引っ付き過ぎないように!」

 

俺達の姿を見たエリちゃんが歌を中止し引き剥がしてきた。

 

「は?あなたの旦那様(プロデューサー)じゃありません、その茹った頭、さらに熱くさせてあげましょうか?」

 

「ん?あぁ、そうね……これからは私だけじゃなくて()()のプロデューサーだったわね!」

 

「それは一体どういう意味で……?」

 

マシュの疑問に答えるようにステージへ再び上がったエリちゃんはマイク越しにこう叫んだ。

 

『私達でアイドルグループを作るのよ!!』

 

「え?」

「は?」

「何ですって……?」

「あぁっ、んあぁっ……!んんんぅ!」ヴヴヴヴヴ

 

「いきなり一人でスターダムにのし上がるのはちょっと無理があったかもしれなかったしね。

そこで私はまずはグループ活動で地盤と知名度を上げようと思ったのよ!

5人って人数もちゃんと基本にのっとってるし?そしてプロデューサーとして子イヌもちゃんといるワケよ!ここ重要だからねっ!」

 

放心状態のメンバーから一番早く回復したカーミラさんが質問を投げかける。

 

「……色々とツッコミ所が満載過ぎるけど、このメンバーであのフランス王妃を入れなかったのは意外ね……」

 

「さすが元『私』ね!目の付け所は悪くないわ!確かにマリーはアイドルとしての能力は完璧といっても言いかもしれない。

だからこそ、駄目なのよ!彼女は私にとって超えるべき壁!永遠のライバル!辛いけど、手と手を取り合える事は出来ないのよ!これもトップアイドルの宿命って奴なのね……」

 

「しかし、エリザベートさん。私達には人理を救う義務があります。私のような者をアイドルとして指名してくれた気持ちは大変嬉しいのですが……アイドル業にかまけてる暇など……」

 

「何言ってるのよ!人畜無害盾娘!ほら特異点でも色んな奴が言ってたじゃない?

『星を集めろ』とかなんとか。私達はこれからアイドルという星になるのよ!

歌や踊りは世界だって救えるんだからっ!色んな文献にもちゃんとそう書いてるのよ!

私達アイドルという星の輝きが人理を救う鍵になるのよ!!」

 

私の歌を聴けーー!!って奴かな。あながち間違ってない?

 

「な、成程……彼女等が言っていた星という言葉にまさかそんな意味が……」

 

やだ、うちの後輩が騙されやすくてめっちゃ不安になる。

 

「アイドル、旦那様がずっと私をプロデュース(意味深)……」

 

「ねぇ、マスター、これってもしかして……」

 

「うん、出来るだけ付き合って上げて」

 

それにカーミラさんも少し楽しみになってるでしょ?

何だかんだで元はエリちゃんと同じなわけだし、アイドルには興味津々じゃん?

 

「はぁ……このメンバーなら私とあのデミサーヴァントがストッパー役になりそうね。全く仕方ないわね……フフッ」

 

 

 

「今から私達はユニット名『カルデレラガールズ』よ!!

最ッ高のナンバーでイカせてあげるからちゃんと最後まで私達の舞台を傍で見てなさいよ!プロデューサー(マスター)!!」

 

そう笑う彼女はこっちまで自然と元気が出そうになる花の咲いたような笑顔だった……。

 

 

 

 

 

 

 




《正統派後輩系メガネキュートヒロイン!マシュ!夢が広がるマシュマロボディ!》
「マシュ・キリエライトです!守りには自信があります!!」


《キュート属性と思いきや!……パッション(頭が)系アイドル!エリちゃん!何度も出てきても恥ずかしくないもん!!》
「ふふんっ、可愛い私に夢中になってくれてもいいのよ!」


《止み?……闇?……病み?……束縛系ヤンデレキュートガール!嘘つき殺すべし慈悲はない!絶対に逃しません!きよひー!!》
「ふふ……うふふふ……私とプロデューサーは運命という赤い糸でぎゅっと結ばれてますから……ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ……」


《部屋へ引き篭もれば、文明壊化の音がする!こいつは何をやらかすかわからんぞ!見た目クールのパッション系アイドル!アルテラちゃん!!》
「嫌だ!私は働かないぞ!労働は悪い文明だ!」


《グループ最年長?何やらよくわからないキャラ付けはされているが……これでも実はブレーキ役になれる常識人!クール系アイドルカーミラさんじゅはっさいだぁ!!》
「う、歌って踊れる英霊アイドル目指して、カミラン星からやってきたんですよぉっ!きゃ、キャハッ!!」


「そして緑の服に身を包んだダ・ヴィンチちゃんこと私が多くのファンからお布施を徴収する有能事務員さんだね」

「鬼!悪魔!芸術家!」


なおアイドル全員プロデューサー(マスター)のお手付きの模様。プロデュースって一体何のプロデュースなんでしょうか(白目)。






普段は子犬呼びだけど……親愛度高いとここぞとばかりにマスター呼びになるエリちゃん可愛いよエリちゃん。
竜属性を持ってる女の娘はどれもピュアで可愛いネ!
え?リリィ?彼女もピュアだろうがぁっ!白百合の騎士ナメんな!!



このカルデアではエリちゃんとハロエリは同一人物です(衣装を変えただけ)。
しかし、キャラとしては別枠として扱います(ややこしい)。
つまりハロエリとしていつかもう一度出るという事。
何度も出てきて恥ずか




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さもさんのなつやすみ(水着モードレッド)

 


いつまで経っても夏が終わらない!秋が来ない!春はどこ!冬なんてもっての他!
この永遠の夏とも思える異常気象を引き起こした原因を探るべくユニバースの剣士ヒロインXが宇宙に飛び立つ!
マスターぐだ男のフォースの導きによって遂に黒幕……常夏卿サーフ・ベイダーの元へ辿り着く!そこで明かされる衝撃の真実とは!?

「オレがあなたの息子だ……!」

「Nooooo――――――!!」

君はこの夏、大興奮の宇宙アドベンチャーを目撃する!!
映画『サマー・ウォーズ』絶賛上映中!!








よろしくお願いしまぁぁぁす!!


夏なんでリゾート(無人島)にバカンス(遭難)しに来ました。

 

まぁ……レイシフトでのトラブルなんて今更過ぎて、もう「あーはいはい、いつものですねー」って慣れた感じ。

ふっ、まさにこの状況は俺にとって昼下がりのコーヒーブレイクと変わらないというやつだというべきか。

バカンスというよりは色んな物を作ったり開拓したりとDASH島的な感じはするけどね、YARIOの人達呼ぶー?

 

何はともあれせっかくの海だし、夏は楽しまないとネ!(意味深)

 

現在目の前にいる彼女もいつもと違ってアッパーなテンションですし……やっぱり海は人を狂わせるんだなぁ。

 

「青い空!」

 

「白い砂浜!」

 

「透き通る海!!」

 

「そして立ち向かうはビックウェーブゥ!!波乗りと言えば叛逆!叛逆と言えばこのオレ!

波っ!逆らわずにはいられない!!待ってろよ!最ッ高のチューブライディングを見せてやるぜぇ!!」

 

楽しそうな所申し訳ないがちょっとウェイトだ、サモさん。

 

「ふぎゃっ!?」

 

張り切れんばかりに尻尾を振るように(幻視)海へ飛び込もうとしたモーさんの足を掴む。

おお、砂に顔からいったねー。

 

「ぺっぺっ!……いきなり何すんだっ!?ぶっ飛ばされてぇのかお前!!」

 

「だってモーさん、まだサンオイルも塗ってないじゃん。こんなサンサンな陽の下で素肌をそのまま晒したら、後で絶対後悔するよ」

 

「サンオイルぅ?別にいらねえよ、んなもん。このオレが日焼けの痛さぐらいでどうにかなると思ってんのか、つーかそもそもサーヴァントの俺が日焼けなんてするかよ」

 

いや俺にはがっつり焼ける小麦色肌の水着美少女の姿が見えるぞ……この無人島も無人島でなんかデタラメ臭するし何が起きてもおかしくない気がするのじゃ。

それにモーさんみたいな娘に限って後で真っ赤っ赤な体でヒリヒリしてイラつくだの、眠れないだの泣きつきそうだもん。

 

「肌を大事にして欲しいというのもあるけど……小麦色に焼けた活発系美少女なモーさんを見たいというが一番の本音かな、だってせっかく水着が滅茶苦茶似合ってるんだからさ」

 

いつもの赤い戦装束も中々に露出は多かったが今のビキニも負けず劣らずの露出度。

いやー、いいもんですねー金髪ポニーテールの水着姿というものはそれが俺っ娘だと尚の事グッと来ます。

 

「……へへっ、そっか。コレ似合ってんのか……ぐ、ぐ具体的にはどんな感じにだ?……かかかかわいいとかか?」

 

俺の褒め言葉に照れくさそうにはにかむモーさんはいつもの彼女らしからぬモジモジした様子で聞いてきた。

 

あれぇ――この目の前にいる美少女は誰でしょうか?

いやいつものモーさんも当然魅力的だけどさ、こんなに女の子らしさを前面にプッシュされるのはとても新鮮でござる。

美少女とか言っても全然キレないし。

ま、女性の水着を前にして褒めるのは男の義務……しっかりと凝視させていただこうじゃないか。

 

「うぅ……まじまじと見過ぎだろ……」

 

それゃあキチンと脳内メモリーに保存していますからね。

 

「ふむ、モーさんのトレードマークともいえる赤色を基調としたビキニ…'シンプルではあるがその王道さがモーさんの魅力を十二分に引き出していると言ってもいい。

さらに黒い紐の結び目と下の方から微かに見える鼠蹊部がエロチックを醸し出している。

いつもの格好いいモーさんがこんな可愛い姿を見せているギャップの破壊力は凄まじいの一言。

エロ格好いい?エロ可愛い?あぁ、駄目だ、俺の貧弱な語彙力ではモードレッドの美しさを表現できない。

只、間違いなく言えるのは今のモーさんはまさに夏という季節がどこまでも似合う可愛さがあるという事だね。

……ありがとう。それしか言う言葉が見つからない……」

 

自分の拙い言葉で感想を述べたが、どうだろうモーさんは満足してくれただろうか?

俯いたままプルプルしているけど、大丈夫?

 

「へへっ、うへへへへへへ…………」

 

顔を上げた彼女は顔全てを真っ赤に染めたといってもいい程に緩み切った表情だった。

何とかだらしない表情は見せまいと引締めようと頑張っているがニヤニヤと笑うのが止め切れない様子。

しかし、女の子が緩んだ頬でうへへとニヤケ続けるのはどうなんでしょうか?俺は好き。

 

「ま、まままぁ、と当然だよな!……さささすがにここまで褒められるとは思わなかったけど……。

お、おおれなら水着だろうが何着ようが最強に決まってるもんな!

いや―――……うん!マスターは俺の事を良くわかってるぜ!

これはもうブリテン(いち)水着が似合う騎士と言っても過言じゃねよなぁ!ちちう、アーサー王とか余裕で超えちゃったかな――……くふふふ……うんうん、マスターからの太鼓判ももらってるし、こりゃあ、円卓にいた時もこの姿で波乗り特攻部隊とか編制してみても良かったかもしんねーな……なぁ、マスターもそう思うだろ?」

 

「波に乗ってアーサー王に奇襲を仕掛けるとかある意味最高にイカした水攻めだよね……うん、隣にモーさんがいるとより一層楽しそうだ」

 

 

 

 

 

『オレに合わせろよマスター!』

 

()ッ!』

 

『この辺り?』

『そう、そこだ』

 

『『ここが一番……波を叩き込みやすい角度ッ!』』

 

―――バシャアアアアンンンッッ!!!

 

『馬鹿なっ!?水のないところでこのレベルの波乗りを発動出来るだと!?』

 

 

 

 

 

「だよなぁ!?だよなぁっ!!はははっ!まぁ、そん時の一番槍は当然オレ……じゃなくてもいいな……マスターとなら一番だとか二番だとかどうでもいいかっ!

一緒に特攻すればいいもんな!たとえ死ぬ時になっても一緒だ!あぁ、けどやっぱりマスターには死んで欲しくないな……うん……マスターはオレがどんな事してでも生還させてやるから安心してくれよな!」

 

「俺だってモーさんには死んで欲しくないさ、だから二人一緒で帰ってこようよ、俺達ならそれぐらい余裕だろ?」

 

「……んだよ、やっぱりオレ達同じこと考えてじゃん」

 

「そりゃあ、モーさんの事大好きだからね」

 

「うっせ!オレの方が大好きだし!ばーか、ばーか!はははっ!!」

 

そう言ってお互い笑いながら手を繋ぎながら砂浜をグルグル回り始めた。

このイチャイチャ馬鹿っプルよ……爆発するのか?

まぁ、この妙なノリに付き合った俺が言うのも何だけど、やっぱり今のモーさん、暑さで頭がやられてるんじゃないのかと思うぐらいに可笑しなテンションだね、普段絶対言わないような言葉がポンポン出てくるし……正直すごくきゃわいいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………殺してくれ」

 

さっきの自身のやらかしっぷりを思い返してるのかパラソルの下、うつ伏せのまま顔を伏せて微動だにしないモーさん。

耳が真っ赤なんでどんな顔してるのかは手に取るように想像出来るわ。

 

「……違う、違うんだ……あれはオレじゃない……オレの本心じゃねぇ……さっき言った言葉は全部嘘……無し無し無し……あっ、けどマスターが好きってのは嘘なんかじゃなくて……あうあうあうあうあう……」

 

色んな感情がせめぎ合っているのか、羞恥心のあまり足をバタつかせる金髪っ娘。

やっぱり水着になった事で霊基がちょっと狂ってしまったのかしらー?あんなにデレ成分を前面に押し出されるとは思わなかったし、こら、あんまり暴れないの。

 

「ちなみに俺の言葉は全部本心だからね、モーさんLOVE」

 

嘘なんてつくと鐘の中にしまっちゃうおじょうさんにしまわれちゃうからね、しかもそこからこんがり焼かれるまでセット……おぉ怖い怖い。

 

「んな事言われねぇでもわかってるっつーの!だからお前は性質(タチ)悪いんだよ!……んひゃぁっ!!」

 

彼女も早く遊びたいだろうし、さっさとオイルを塗り始める。しかし相変わらず可愛い声を出すねモーさんは

 

「んんぅ、冷たっ、……マスター、これ普通のオイルだよな?変なモン混ぜたりしてねぇよな?」

 

「うん、残念ながらサーヴァントにも効果があるという以外はいたって普通のオイルだよ。どこかの芸術家印の塗ったら肌が敏感になるとか、発情するとかそんな効果は一切ありません」

 

最近、もうダ・ヴィンチちゃんが只のアレなグッズを作る変態芸術家というイメージがこのカルデアについてしまっている気がする……一体誰のせいなんでしょう?

 

「もしかして、期待した?」

 

「しゅ、しゅるか馬鹿!!…………あっ、んっ…さっきから手付きがいやらしいんだよ、この変態マスター!へへ変なコトすんじゃねぇぞ!」

 

「それはフリという奴ですね」

 

「違ぇっ!」

 

しかし、手付きがいやらしいと言われても今回に関しては本当に真面目に塗っているつもりなんですが、まぁ、それでもモーさんが感じてしまうというのなら俺としてはどうにもならない……マジで普通に塗ってるだけですもの。

 

「……んっ……ふぅ、っぁ……んぅ」

 

いやー、レジャーシートの上でブラジャーの紐を解き、サンオイルを塗りながらこちらに背中を見せつけている女の子の漏れ出る喘ぎ声のようなモノを聞くのはやっぱりクるものがありますねー。

モーさんの肢体がオイルでヌルヌルしてやけにイヤらしいし。

 

「……はぁ、んふぅ……さっきから太もも触りすぎだろぉっ……んひぃ!……あっ、こらっ……そこはちげえだろ!」

 

おっと、つい興が乗ってお尻の方まで指を喰い込ませてしまった。

これもモーさんの体が引き締まって触り心地が良すぎるのが悪い。だってお肌がすんごいスベスベなんだもん。一日中塗ってても飽きないわ

 

「よいしょっと、後ろの方は終わり!じゃあ今度は前の方は塗りましょうか」

 

「……いや、待て待て待て、前の方は自分で塗れるから……ちょっ、おま!?上の方まだ着てなっ……ふわぁっ!」

 

「時は有限だぞモーさん、さっさと済ませますぜ」

 

ブラジャーを着けなおす時間すら与えずうつ伏せだった彼女を起き上がらせ、へそ周り、鎖骨、そして胸の方にもオイル塗りたくる……え?最後の所は塗る必要は無いだろって?

いや、あるよ。モーさんがより気持ち良くなれるという重大な意味があるよ。

最初は俺も真面目に塗ろうと思ったんだけどね、扇情的とも言える彼女の反応を見てるとつい、ね?

 

「んくぅ、はぁっ……馬鹿ますたぁ、んあぁ……胸まるだしじゃねぇかぁぁ……んひぃぁ!」

 

「今、ここにいるのは俺達だけだから気にする必要は無いよ」

 

彼女の体を片手で腕ごと抱き締め、胸を隠させないようにする。

自身の胸がそのまま外に曝け出されているのに羞恥心を感じているモーさんの肢体を愛撫……じゃなかったオイルで余す所なくと塗りたくっていく。

 

「あくぅっ……んんふぁ!……ヌルヌルしてぇぇ……変な気分にぃ……んにやぁぁああぁっ!!……ドコ塗ってぇぇっ!あうぁ!」

 

「ほら外だけじゃなくて、ナカもしっかり塗るべきだと思ってね」

 

オイルまみれになった指を水着の下に滑り込ませるとそのまま秘裂の中へ。

既に塗る前から、まだ海には入っていないというのにもう濡れていらっしゃるじゃないですか――、モーさんのやらしい娘っ!

 

「ソコが日焼けするわけねぇだろぉ…………んくあああぁっ!!はあぁっ!」

 

胸の方のぷっくり張れたお豆をつまみながら、こちらの指を強く締め付けるモードレッドの女の部分をクシュクシュと音を立てながら掻き混ぜていく。

ココも十全に塗っとかないとねー。

 

「はあぁっ!あくぁ!やべぇ……んふあぁ!もうイキそうになっ……っあぁぁ!」

 

水着のせいか砂浜という外でしている所為かいつもより簡単に達してしまいそうになっているモードレッド。

俺も液体の光沢で輝いている肌を見せつけながら艶めかしく乱れている彼女に興奮が高まってくる。

 

「ほら、モーさん舌出して」

 

「……は、はえぇ?……んむぅぅっ!?」

 

快感にトロンとしながらも俺の言う事をしっかりと聞いてくれる忠犬モーさん。

だらしなく出された彼女の舌に思いっ切り吸い付き、激しいディープキスを交わす。

 

「んんぅっ!!むぅっ!ぷはぁっ!……んじゅぅっ!!」

 

取り敢えず、無人島バカンス記念として初イキしておきましょうね。

時間はたっぷりあるだろうし、続きはまた後で(ゲス顔)。

 

「んんんんむぅっ――――――!!!」

 

唾液の味、密着した口から漏れ出る嬌声、抱き締める彼女の絶頂の震えを楽しみながら、俺はこれからの島での生活を楽しみにしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イヤッホオウウウウウウウッ!!!!波乗りいただきィ!!」

 

モーさん(アローラの姿)が存分にサーフィンを楽しんでいる姿を見ていると本格的に夏だなぁって感じます。

特にさっきの痴態を無かったかのように爛漫に振る舞っている様子を見ると切り替えが早いなーって……それとも何も考えてないだけかな?

 

「ほらっ!マスターもぼーっと突っ立ってないで、一緒に波を蹂躙しようぜ!……ってか何で海の上で走ってんだ!?」

 

あっ、ようやくツッコミ入れてくれたか、スルーされているのかと思いましたよ。

 

「ほら、ウチに小太郎君いるじゃない?せっかくなんで水遁の術的なもの教えて欲しいって思ってさ」

 

男の子はいつだって忍者に憧れる生き物なんですよ。最終的に"右足が沈む前に左足を、左足が沈む前に右足を出せばいいんじゃね?"みたいな『問題はない!!15メートルまでなら!!』的な理論に達したけど、小太郎君からも死んだような目で『アッハイ、もうそれでいいです』って免許皆伝もらったしネ!ショッギョ・ムッジョ!

 

「ほえ――、すっげぇなぁマスターは、つい湖の精霊の加護でももらってんのかと思っちまったぜ……。ってかアレあれだろ?NINJAってヤツだろ!それ!今度俺にも教えてくれよな!オレもこう……父上みてぇに水の上をバァ―――って走りてぇし!!

代わりってワケじゃねぇけど、サーフィンを教えてやるからさっ!」

 

我が水遁の術に子供のように大興奮なモーさん。

そんなキラキラした目で見られると断れないな。

とにかく、そろそろ俺もちゃんとサーフボードに乗るとしますかね。

 

「ん?つーか、それ良く見るとマシュの盾じゃねぇかよ」

 

「イエス、良いサーフボード無いかなーって聞いたら快く貸してくれました」

 

 

 

『ならこの盾をお使い下さい先輩。機能性、防御性に関してもモードレッドさんのプリドゥエンに引けは取らないと思います』

 

『いいの?サーフィンするワケだから素足でこれに乗っかるけど』

 

『全然大丈夫です!私だと思って存分にお使い下さい…………素足で私を踏む、先輩……イイ……いやいやいや!私には清姫さんやセイバーリリィさんのような特殊性癖はありません!……あ、ありませんとも……』

 

『マシュ?』

 

 

 

サーフボードには程遠い形をしているけど意外や意外これが結構しっくりくるんですよ。

波に揺られても重心がぶれない安心感、まるで本当にマシュにサポートされているような。

円卓からピクニックのテーブル代わり……そしてサーフボードまで多岐に渡る使用法がある優れもの!

 

「おぉ!今のマスターの姿、何だか冒涜的というか背徳的というか……すんげぇROCKだな。うっし!オレも負けてらんねぇな!叛逆的に!

てなわけで、マスターはサーフィン始めてだろ!?」

 

「そうだね、陸では良く走ってきたけど……ご教示お願いできますかな?」

 

「おうっ!任しておけって!」

 

俺に物を教えるのが楽しみでしょうがないと感じでウズウズしてるのが丸わかりですね。

まぁ、確かにモーさんに何か教わるっていうのは初めての経験かもしれないな。

 

「まずは凪の状態でも自力で大波を引き起こすコツから始めるぞ!マスター!」

 

しょっぱなからレベルが高い!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エロった後は遊び、遊んだ後はエロる……何事もメリハリって大事だと思います。

というわけで海でたっぷり遊んだ後は裏パートの時間じゃあ!

 

「んあぁ、どう、だ……マスター?きもちいいかぁっ……はあぁ、あっ!」

 

島のどこか、川のほとりで一組の男女が絡み合っていた。

全裸になり座り込む俺に跨り腰を前後へ動かすモードレッド。

 

「ふぅっ、あぁ……!いきなり水着脱いで……こんな服着ろって……やっぱりマスターは変態だぁっ……んふあぁ!」

 

その格好は先程とは違い、赤いビキニではなく、セーラー服だけをまとった姿。

当然、その下は何も着ていないノーパン、ノーブラ状態

反り返っている俺の剛直をまだ挿入はせず、入り口の部分を擦り付けるいわゆる素股という形。

モードレッドはこれまで幾度と無く自身のナカをえぐってきた逸物の感触を味わっている。

 

ふむ、見た目はセーラー服を着た美少女、けどその下は何も纏っていない全裸であり、そんな彼女が俺に必死にご奉仕している姿は非常にそそられる。

しかも、日焼けしたスポーティなモーさんというプラス要素もあるし、というか青姦とかにも全く忌避感が湧いてこなくなった私は末期なのでしょうか?今更過ぎるネ!

 

「……はぁ、あぅ……というか……こんなに早く肌って焼けるもんなのか?……んふぁ……」

 

海から上がったらいつの間にか自分がギャル系小麦色肌にジョブチェンジしていたわけだし、そりゃあ驚くか。

信じて送り出したモーさんがマスターの変態趣味によって健康的な水着美少女の姿でアヘアヘされるなんて……うん、何か変な電波受け取ったわ。カットカット。

 

「言ったじゃん、サーヴァントにも効果があるサンオイルだって……即行性はあるからすぐ焼けるけど、日に当たらなくなったら元の色に戻る優れものだよ」

 

今回モーさんに塗ったのはそういう真っ当な物なのです、ダ・ヴィンチちゃんが一晩で作ってくれました。

まぁ……当然真っ当な効果じゃない方も作ってもらってたりはするけど。

 

「……へぇ、便利なもんがあるんだなぁ……んふぅ!なぁ……ますたぁ、もうさっきから焦らされてばっかで……我慢できねぇんだぁ……はあぁっ、もう挿れちまってもいいかぁ?」

 

「堪え性が無いワンちゃんだねモーさんは」

 

「……ぅくぁ、誰がワンちゃんだっつーの、はむぅ……れろっ……じゅるぅ……」

 

いや、こうやって情事の最中にいつも口の前に指を出すと条件反射するかの如く指にしゃぶりついてくる所だよ。

まさにパブロフの犬……ワンちゃんだけに。

 

「じゃあ、どうぞ自分の好きな角度で挿れてごらん」

 

「……へへっ、おう……いただくぜ……」

 

主人からのお許しをもらったモードレッドは喜色に満ちた顔で腰を落とし、肉棒をズブズブと自身の膣内へ沈ませていく。

 

「くぅ―――!あぁ―――!!ハマったぁっ!ぅぁあっ!これが……イイんだよぉっ!気持ちいいぃっ!」

 

いつもの男らしい様子とはかけ離れ、小麦色の肌にセーラー服という姿で雌の表情をしながら、自分を突き刺すペニスの感触に震えていないモードレッドだったが…………。

 

 

――――――ガサッガサッ

 

「……!?」

 

近くの茂みが揺れる音を聞き、動きを止める、もしかして近くに誰かいたようだ。

驚愕で固まったモーさんは声を出さないように両手で口を塞いでいるが……。

 

 

「……今の声はモードレッドさんですよね?」

「フォ、フォーウ」

 

 

どうやら散策しているのはマシュとフォウ君だったか。しかもモーさんだと完全にバレている様子。

だが何をしているかまではまだわかっていないみたいだ、さて……どうしましょうかねー。

 

ちらっとモーさんの様子を伺うと。

 

「(ブルブルッ!!)」

 

首を横に思いっ切り振っていらっしゃいます、どうやら今の姿は死んでも見られたくない模様。

さすがにまだ見られながらするプレイはモーさんにはレベルが高かったかー。

マシュなら別に俺はいいんじゃね?と思うんだけどね。

 

ふむ、ここで俺が取る最適解は……。

 

→ 気にせず続行

  腰を動かす

 いいからセックスだ!

 

碌な選択肢がねぇ!つーかもうコレ一択じゃねぇか!

 

仕方ないか……と世界の意志のような物を感じながら俺はストロークを始める。

 

「っぁ!?バカっ……~~~~~!!!」

 

俺を静止する声を挙げるも奥を突かれる衝撃と快感で声にならない悲鳴をあげるモードレッド。

口元を両手で隠し、涙目で必死に声を押し殺しながら、犯されている彼女の様子が青姦で近くにマシュもいるという要素も合わさり、つい腰の動きが早くなってしまう。

 

「……ひぃっ……っぁ――――――」

 

 

「ふむ、どうやら、また水路のパイプを作っているみたいですね。

この間は恥ずかしい誤解をしてしまいましたが……このマシュ・キリエライト、同じ過ちは繰り返しませんよ。さぁ、フォウさん行きますよー」

「……フォ――ウ……(どう考えてもおっ始めてる声だったと思うがそっとしておこう)」

 

モーさんの祈りが届いたのか離れていく一人と一匹……フォウ君は気付いていそうな感じだったというのに、うちの後輩の方がちょっと抜けすぎて心配にはなったが何とかバレずに済んだみたいですね。

 

「っはあぁっ!!……このっ、馬鹿マスター!にゃに考えてぇっ……ひああぁっ!!」

 

「はいはいモーさん、怒るかトロトロになるかどっちかにしましょうねー」

 

そんな蕩けきった顔で叱られても困るよ。

 

「それにモーさんだって実はマシュが近くにいた時、興奮してたのか俺のモノをキツく絞り込んできたじゃん、スキモノなんだからー」

 

「……ちがっ、はぁっ!あぁっ!にやあぁぁ!……興奮なんてぇぇっ……んあぁっ!オレにそんな趣味はぁっ!!」

 

YOU楽になっちゃいなよーとばかりにラストスパートに入った俺は容赦なくモードレッドを責め立てる。

 

「はぁっ!!あふあぁっっ……!!もうイッちまうぁっ……!!」

 

彼女がイくタイミングを見計らい、その蜜壷から竿を引き抜くと……溜まった欲望が彼女の顔や体全体……そしてセーラー服を白濁液となって汚していった。

 

「ひあぁっ―――!!はぁっ!あぁぁ……!うあぁっ……ますたぁの精子がこんなにかけられぇ……んくぁっ、まだ出てっ……ふぅぁっ!」

 

精液をぶっ掛けられる度に小さくイッているように震えているモードレッドの姿を見ながら、やっぱり褐色肌の女の子には白が良く映えるなぁと俺はどうしようもない事を考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

運動(意味深)の後はお腹が空く、たとえサーヴァントであろうとも心を豊かにする為に食事は必須。

 

てなわけで皆でバーベキューです。

 

「おぉ――!いい感じに焼けてんじゃねぇか!」

 

鉄板の上で焼かれている肉を見ながら涎を垂らすモーさん。

 

「モードレッド、君、少し見ない間に随分と風貌が変わったね……いつの間にそんな健康的に焼けたんだい?それにジャケットだって最初は着てなかっただろうに」

 

キャベツを小動物のように齧り続けているメアリーがさすがに疑問に思ったのか問いかける。

 

「へへっ、オレは波の子、夏の子、元気な子だからな!ちょっとの間で日焼けするぐらい余裕綽々なんだぜ!それとこのジャケットはマスターから貸してもらった!羨ましいだろー、あげねーぞ?」

 

まぁ、さっきのアレでセーラー服は汚れてしまったからね……水着のままでも良かったんだけど代わりになる物が欲しいという事で紫のジャケットを貸してあげました。

それとモーさん、そんな煽るような事言うと。

 

「マスターから……」

「旦那様の……」

「ジャケット……」

「むむむ……」

 

ほれ、一部の方々が反応するじゃないですかー。

 

「旦那様っ!清姫は旦那様の水着を貸して欲しいのです!」

 

「いや、それ俺マッパになるじゃん、本当にアダムってしまう奴じゃん」

 

ってか俺のパンツをもらってどうするの?まさか着たりしないよね?

 

「あらあら、水着だけでいいとは清姫にしては控え目ですわね」

「そうだね、アン。じゃあ、僕達はマスターそのものを戴くとしようか、一番おいしい所を掻っ攫う……海賊の特権だね」

 

「焼きますわよ?」

 

おうチロチロメラメラバチバチと……バーベキュー以外の熱がこっちまで伝わってくるなー。

修羅場の予感……オラ、ワクワクしてきたぞ。

 

「貴様等、各々夏を楽しむのは勝手だが今は大人しくしてろ……食事をする時は誰にも邪魔されず 自由でなんというか救われてなければならんのだ。というわけでこの場で騒ぎを起こした者から容赦なく足ボルグだからな」

 

師匠の釘刺しで大人しくなる面々……さすがはスカサハ姉さん、年長者の威厳というものが、おっと槍が飛んできた。

 

「肉を食ったまましれっとした顔で躱しおって……」

 

 

 

 

「モードレッド、野菜です。野菜を食べなさい野菜を……あなたに肉は必要ありません。

どれ、私が盛ってあげましょう……ピーマン、アスパラ、人参、ナス、玉ねぎ、キャベツ、いも、いも、いも、いも、いも、いも……………」

 

「うおっ!?オレの皿がどんどんベジタブルに!?最後の執拗なまでのマッシュ押しは嫌がらせかよ!

つーか父上ェ……オレも肉食いてぇんだけどぉ、タンパク質欲しいぜ……」

 

どうやら、知らぬ間にそこには親子の語らいが……野菜嫌いの息子(♀)の皿によそってあげるお父さん(♀)……温かい家庭風景でほんわかしますね。

 

「何を言ってるのですか、お肉ばっかり食べて好き嫌いをしていたら大きくなりませんよ」

 

「……そういう父上だってさっきから肉ばっか食べてるんじゃねぇか……あぁ!成程!だから父上は()()()()()()()!実体験込みだったってワケか!さすが父上だぜ!」

 

 

―――ピキッ!!

 

 

はい、家庭崩壊の音が聞こえました。

ゆっくりと箸を置いた、青ペンさんは見た目は菩薩、心は般若のような笑顔でモーさんに語りかける。

 

「…………そうでしょうそうでしょうそうでしょう……えぇ、えぇ、えぇ、せっかくですからモードレッド、今から少し闘技場で稽古(制裁)でもつけてあげましょうか」

 

「え?マジで?父上が稽古つけてくれんのか!?やったぁ!!」

 

「……マスター、少々コレ借りますね?」

 

家族団欒を邪魔するつもりは無い俺は首を縦に振っておく。

 

「へへっ、また後でな、マスター!」

 

モーさんの屈託ない笑顔。これから自分の身に惨劇が降りかかるなんて夢にも思ってないんだろうなぁ……。

そうして二人はそのまま姿を消していった。

 

「モードレッドさんにしては悪気なんて一切無かったんでしょうねぇ……普通にお父さんの言葉説得力あるゥ!ぐらいの尊敬の気持ちだったのでしょうに……まぁ、地雷原の上でタップダンスをしていた事には変わりませんが取り敢えずご冥福を祈っておきましょう。南無南無コンコン……ささっ、マスター、私がしっかりと見張ってあげたお肉ですよ~パラソル狐印のお肉をたーんと召し上がって下さいまし、はい、あーん♪……」

 

「……あーん」

 

『………………』

 

女性陣の目線が突き刺さる突き刺さる……モーさん、こっちもまた一悶着ありそうだから、そっちはそっちで頑張るんだぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今まで培ってきたコミュ力で窮地を脱した俺はモーさんの姿を探す。どうせエロい事をして有耶無耶にしたのではと思われてそうだけど。

何でもかんでもえっちぃ事で解決しようとするのはイケない事だと思います!……うん、盛大なおまいう発言だったね。

 

しかし、モーさんはいずこに……?

コロッセウムは既に戦闘の爪痕しか残ってなかったし。ボコボコに凹まされたモーさんが行きそうな所と言えば……。

 

「まぁ、あそこかなぁ」

 

 

 

 

家なんてどう足掻いても言えないモーさんの要望で作りあげたトゲトゲな厨二要素満載の鉄の要塞に入り、トラップのフルコースを踏破しながらも最上階にたどり着く。

ここだけは特に仕掛けも何もないただの部屋だったりする、一応は俺を守るという名目で建たれたものだし。

 

あぁ、やっぱりいた。

 

サウナの如く、蒸された鉄の一室……その隅っこでボロボロ姿のまま絶賛体育座り中のモーさん。

 

「うぅ……ちくしょう、ちくしょう、父上めぇ……オレが元のセイバーに戻ればケチョンケチョンにしてやるのに」

 

「いや、それはさらにボコボコにされると思うよ、クラス相性的に」

 

「げぇっ!?マスター!?何でここに!?……んだよ、惨めなオレを笑いに来たのか?ふん、好きなだけ笑えばいいだろ……いいんだ、いいんだ、どうせオレはここでずぅっとマスターのジャケットを匂いをクンカクンカし続けてやるからよ……スンスン……」

 

青ペンさんにやられた所為なのか、ここの熱さで頭がやられちまった所為なのか……理性を質に出したような発言をかますモーさん。

 

このまま置いていくワケにもいかないので隣に座り、自分の体に抱き寄せる。

落ち込んだ女性を慰めるのにえっちぃ事は割りと効果的ですよね……うん、さっきまでなんでもかんでもえっちぃ事で解決するのは良くない事だと思いますと言っていたにも関わらず手の平クッルクルですが。

 

「……今のオレ、汗臭いぞ」

 

「それを言うなら俺だってここまで来るのに結構汗かいてきちゃってるよ?」

 

「マスターの匂いはいいんだよ!嫌いじゃねぇし!」

 

「なら、何も問題は無いね。俺もモーさんの匂いは好きだし」

 

照れるように俺の胸元に顔をうずめたモーさんは鼻を鳴らしながら、舌を出し、甘えるようにペロペロと舐め始める。

ふーむ、このペット一生飼ってあげたいなぁ。

 

「ここに来てからのモードレッドは凄く素直だよね、好意を割と前面にプッシュしてくれるというか」

 

「んくぅっ……んちゅ……ぺろっ、夏の時だけだぞ、こんな姿を見せるのは……」

 

「え――、カルデアに戻ったら甘えてくれないの?めっちゃ可愛がるのに……」

 

「た、た、たまになら見せてやん……よ……け、けど二人っきりの時だけだからなっ!」

 

言質は取ったぞ。

俺の体に流れる汗を舐め取っているモードレッドの頭を撫でる。

もう既にに多量の汗を流し、この部屋にはその匂いがこもってるだろう、だが不快感なんてものは一切ない、むしろお互いに目の前にいる者の匂いを楽しむように交じり合う。

 

「マスターがくれたこのジャケット……オレの汗も染み込んで、すんごい匂いしてるぜ。俺とマスターが混ざり合って……へへっ……」

 

あらあら、そんな嬉しそうに嗅いじゃって……別にあげてもいいけど、あんまりアレな事に使い過ぎないようにね?

 

「後でちゃんと洗濯するんだよ?」

 

「えっ……」

 

いや、そんな世界の終わりみたいな顔されても困ります。

モードレッドが匂いフェチなのは良くわかったけど、洗わないままで放置なんてしたら……母ちゃんに滅菌殺菌デストロイされちゃうよ?

 

「うぅ……じゃあ洗い終わったら、またコレ着てマスターの所行く……」

 

「どんだけマーキングしたいだよ、お前は……」

 

まぁ、そこまで求められるのは男冥利に尽きるから嬉しいけどさ。

 

「マスターだって、いっつもオレにマーキングしてんだろ……ナカにぶち込んだり、体にぶっかけまくったりしてんじゃねぇか……お前のココのせいなんだからな……オレがこんなになっちまったのも……」

 

そう言ったモードレッドは興奮状態になった水着の膨らみに撫で、その肉棒を外気に触れさせると……愛おしそうに匂いを嗅ぐ。

 

「はぁっ……これこれ、この匂いがたまんねぇんだよ……クラクラしちまう……マスターのチンポ……くっちまうからなぁ……はぁむぅっ……」

 

鼻を近づけ、その雄臭さを存分に堪能した彼女は迷う事なく、その男根を口に咥えた。

 

「んじゅっ、じゅぽっ……じゅぽぉっ……じゅるぅ、じゅるるっ!」

 

口をすぼめ、アグレッシブに性器を責め立てるモードレッド……水着という格好の所為か、この島に来た所為なのか定かではないがいつも以上に激しいフェラに俺の腰も自然と浮いてしまう。

 

「んちゅぅっ……んむぅっ……はふふぁも……ひもちいいんだなぁ…?ふれしいな……ほっとひもちよふなっへふれよ……じゅるるるるぅっ!!」

 

唇で竿を扱かれ、亀頭はその舌先でくすぐられる。そして何より……俺に気持ち良くなって欲しいというその奉仕精神もしくは忠誠心のような愛情がひしひしと伝わってくる。

快感に表情を歪める俺を見て、心底嬉しいといった表情を見せる彼女に対する想いを止められなくなった俺は

 

「んぐぅぅっ!?」

 

「そのままっ……出すから、なっ!」

 

モードレッドの頭を押さえつけ、欲望を放つ準備をする

彼女からは返答代わりと言わんばかりのより激しい口淫を。

 

そしてそのまま……。

 

―――ピュルルルッ!!ドピュ!ドピュッ!!

 

「んんむむぐぐぐぅっ――――――!!!」

 

その喉奥まで精液を注ぎ込む、多量な精子を発射されても決して陰茎から口を離さなかったモードレッドは体を何度も痙攣させながら、一滴も零す事なく、飲み干していこうとした。

 

「んぐっ、んぐっ……むぐぅっ、ごくっ……ごくぅっ……んくぅ……ふはぁっ!!

は、はは……オレもちょっとイッちまったぜ…………けど、まだ足りねぇ……なぁ、マスター今日はまだコッチに出してくれてねぇよな?」

 

自身の股間を撫でる彼女の言わんとしている事がわからない程、朴念仁を気取っているつもりもなく、では、これから本番とイキましょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……日焼け後がちょっと恥ずかしいな……なぁ、みっともなくねぇか、マスター?」

 

一糸纏わない姿となったモードレッドは焼けていない水着後が恥ずかしいのか……恐る恐るこちらに問いかけてきた。

 

「何言ってんの、日焼けした女の子の小麦色に映えるその白い水着跡がいいんでしょうが」

 

さっきまで俺と一緒に水着を着て遊んでいた女の子が今はそのブラジャーとパンツの白い跡をくっきりと残し……エロチックともいえる格好を目の前に晒しているという事実がどれだけの価値があるのかっ!

 

「そういうもんなのか?……おおっ、確かにまた大きくなってんな……まぁ、マスターが興奮してくれんならそれでいいっか!」

 

細かい事はええねん!とばかりに快活に笑う彼女はより大きく怒張したアソコに愛液を垂らしている女陰をゆっくりと当てていく。

 

「んふぁっ!はぁっ……!俺もマスターに興奮してるし……マスターも俺の姿に興奮してくれてんだろ?なら、なにも問題はねぇや……ああああんぅっ!!?んふあぁぅっ!おれからぁっ……動くつもりだったのにやあぁっ!」

 

「さっきは目一杯ご奉仕してくれたからね、今度は俺の方からたっぷりとお返しをしてあげるよ」

 

騎乗位の体勢で挿入しようとしていたモードレッドに先んじて彼女を押し倒し、一気に奥までペニスを挿し込んだ。

 

腰をリズミカルに動かしながら、日焼けをしていない白い部分……下腹部を手の平で擦り、そして胸の方は舌で舐め……時には跡をつけるように吸い付く。

 

「ふああっっ!!あぁっ、なんか……おかしいっ、ぞ……これぇぇ…

、ああぁっ!!そこのとこ……いつもより感じてぇっ!んひぃっ!」

 

まるで水着の跡が日焼けという防護が無いか如く……敏感に反応してしまうモードレッド。小麦色の肌にはっきりと存在を示している桜色の先端にも俺は喰らい付いた。

 

「はああああぁっ!!あぁっ!そんな吸い付くなぁっ!おっぱい、のびちまぁっ……!やあぁっ……かむんじゃねぇっ!」

 

最近、『もしかしたら、オレ胸の大きさは父上に勝ってるかもなーー』と自信ありげに呟いていたモードレッドの胸をしゃぶり、舌先で弄び、時には甘噛みしながら堪能する。

 

「ひやぁっ!んふぁっ!あぁっ!はぁ!ああんぅ!!」

 

目の前で父親譲りの金髪ポニーテルを振り乱しながら、快感に翻弄されるギャル系美少女にイメチェンしたモードレッドの艶姿を眼福眼福と思いながら、そういや、まだアッチの方は責めてあげてないなーと思い、正常位で責めていた彼女の体を一度持ち上げる。

 

「んふぁ?……あぁっ……まてっ、おおぁぁ!」

 

悲鳴のような嬌声を響かた原因は彼女の菊門の方に入り込んだ指。

実はこっちの穴も責められるのが好きなモードレッドだが……両方同時に責めてあげたことはないなーと思いつつ膣内とは違う肉の感触を指をストロークさせながら楽しむ。

 

「あふぁっ!おぉっ……あぁ!んぐぁぁっ!!あへぁあぁ!!はああぁぁっ!……あくうぁぁっ!!」

 

しかし、沖田さん然り、リリィ然り……アルトリア顔は実はお尻の穴の方が結構弱点なのかなぁっ……と勝手に思ってみたり、モーさんもここ突くと余裕無くなるからなぁ。

 

「あひぃっ!はぁっ……あぐぁぁっ!はぁっ!おなか……くるしいのにぃ……きもちいいのがぁっ……んひあぁぁあぁっ!とまんねぇぇっ!にやぁぁ!」

 

よりキつくなってこちらの男性器を締め付ける肉壁、菊門を責めている指を奥へ奥へと進ませていく度に強くなってくる。

 

「はああぁっ!ああぁ!んんあぁっ!!おおあぁぁ!!」

 

モードレッドもナカだけではなく、手足全身を使って……俺の熱を感じようとしてくる。

 

「ますたぁっ!ますたぁっ!ますたあぁっ!!……あぁっ!あつくてぇ!お前の熱でどうにかなりそうだぁぁっ!!はぁんぅぁ!!もっと、もっと!……オレをくるわひてぇくれぇぇっ!」

 

サウナのように熱がこもる鉄の部屋で性交の熱さも加わり……汗を流し、ドロドロになるまで交じり合う二人。

汗もその匂いも自身の肉体さえも本当に一つになってしまったような錯覚に陥る程……まさに獣のようにお互いを求めあっていた。

 

「……あぁっ!すきぃっ……すきっ……すきぃなんだっ!だいすきなんだぁっ!お前がぁっ……!んはあぁぁ!!」

 

男女の際限ない情欲はこの部屋を異様な匂いで包み込んでいく。

だが俺達にはそんな事を気にする余裕などなく……今すべき事は目の前にいる愛する人を貪るだけ。

 

モードレッドも犬のように俺の体の表面に流れる体液を舐め尽していた。

彼女の生温かい舌の感触がこの熱気が高まる部屋でも確かに感じる。

 

そして、出し惜しみなく、全力で交尾をしている二人には当然、限界も訪れ……。

 

「んあぁっ!!あぁあっぁぁ!……だせっ、だせぇ!ひあぁぁぁ……!おまえのこだねぇっ……おれのしきゅうににぃっ……おねがいらしてぇぇ!!」

 

最後の女らしい声色を持ったおねだりを聞いた俺はアナルに入れている指も使い、挟み込むようにモードレッドの子宮に射精した。

 

「おおおあああぁぁぁっ!!はああぁっ――――!!!あぁっ……!……はぁぁっ……」

 

白濁液に体内を犯される快感に思わず天井を見上げ、そのまま仰向けにに彼女は倒れ――。

 

―――ガシッ!!

 

おろ?

 

「……はぁ、はぁ……へへっ……いつもならここで気絶してたかもしんねぇがな……オレだって成長してんだぜ……お前にヤられまくって経験値つんでんだよ……マスターだってまだイケんだろ?」

 

踏ん張り、俺の腕を掴んだ彼女はそう言って不適に笑った。

もちろん、こちらはまだまだ余力は残してるぜ。

 

「今日はもう、お互いぶっ倒れるまで……グッチョグッチョにドッロドッロになるまでヤりまくるぞマスター、オレ達の夏はまだまだこれから……だろ?」

 

その台詞は打ち切りっぽいんであれだけど確かに年に一度の夏だ……思う存分汗だックスを楽しむとしようじゃないか。俺もモーさんが失神するまで頑張るから!

 

「……あんっ!ったく、再開すんのがぁっ……はえぇってぇ、んにやぁあぁああっ!!……」

 

 

 

 

 




ご愛読ありがとうございました!作者の次回作にご期待下さい!!













というのはもちろん冗談です。
……何はともあれやっと書けたモーさん回、サモさん回とも言う。
1話の時はまだR18で無かったというのもあり、エロ描写もほとんどなく、出番も少なめでした。
まぁ、他の回でちょいちょい出てきたりはしましたが……こういったメイン回で再び出せて本当に良かったです。やったぜ。

第1段階のスタンダードな赤ビキニ。
第2段階の日焼けセーラー服。
第3段階の彼シャツならぬ彼ジャケット。
一人で3粒どころか無限においしいとも思えるキャラクター……それがサモさん(マイルームの破壊力はまさに星6)。


この小説ではゲーム本編と違い、青王のモーさんに対する態度はマイルドですよ。ちゃんと父親らしい所も見せてますしネ!教育的指導(肉体言語)とか!やったね!モーさん!



鉄の要塞「俺はっ!こんな使い方をされる為に建たされたワケじゃない!!」
監獄塔「同志よ、ようこそこのクソったれな職場へ」




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スーパータマモランド(水着玉藻)

リゾート地へバケイションしにいったカルデアの面々……しかし、そこには恐ろしい人食い(鮫)が住み着く、魔王の島だった。
四六時中、性的に狙われ、体を休める時間もない……。
一体鮫の正体は!?なぜぐだ男を狙うのか!?無事この島を脱出出来るのか!?

「ジョーズなだけに床上手……ってやかましいですよ」
「その尻尾……まさかお前は、鮫じゃ、ない!?」

この夏、大スペクタクルのホラーアクション冒険が君を待っている!!
映画『タマモシャーク』絶賛公開中!



井戸から這い出る着物女が映る呪いのビデオ……家でひたすら主人の帰りを待つ剣を持った女の幽霊。

「ヤンデレには、ヤンデレをぶつけるんだよ……!」

二大病んデレが夢の恐演!
同時上映『清子vsリリ子』も公開中!劇場へ急げ!








もう、タイトルからバレバレですけど玉藻回です。
一応、前書きでご注意を。


「はふぅ……」

 

島のどこか、海を一望できる場所に建っている像をパラソル片手に眺めてうっとりとため息を吐く美女。

 

麦わら帽子に胸元の狐マークがみこーんと光る白Tシャツ、そしてその下には一体どんな水着を着ているのか……シャツの生地を伸ばすその胸の膨らみが男共の想像力というか妄想力的な物を高める事間違い無しッ!

桃髪と合わさる絶妙なプロポーションと大人の色気……しかし浮き輪を常に装備するという子供らしいあどけなさも忘れない、隙が無さすぎる女性っていうのも案外敬遠されガチですからねッ!というのは本人談。

とどめには帽子からはみ出る狐耳&思わずモフりたくなるような尻尾といったファンタジー的でビースト的な魅力も備わったあらゆるニーズに応えると言わんばかりのこの巫女狐の正体は――。

 

「はいはーい!いつもサンサンあなたの隣に這い寄る太陽!常夏の無人島でマスターにハニトラの如くチャームを振り撒くタマモちゃんサマー!お呼びとあらば即 参 上!!…………っとと少々淑女らしからぬはしゃぎ方をしてしまいました。んもうっ……ダメですよマスター、いきなりそんなハードル上げ上げな紹介をぶち込んでしまうなんて、あんまり褒められ過ぎるとどうしていいかタマモわからなくなっちゃうぞ☆」

 

どうやら俺には気付いていたご様子、こちらに振り向きキャピルン☆とウィンクを飛ばすサマーフォックス。

困惑してますと言っている割りには尻尾がブンブン、耳がピコピコと満更でもない様子ですし、ってかノリノリだったじゃんとか、平気でモノローグにツッコミを入れてくるねとか色々と言いたい気分にもなったが今は置いておこう。

 

「それでこんな所で何してるの?」

 

「そうですねぇ……マスターが建ててくれたこのタマモちゃん像の出来栄えに感動していた所です。

思わず『はっ!誰だこの女神!?……って私じゃないですかーやだー』とノリツッコミしてしまう程に」

 

「お気に召してくれたなら作った甲斐があるよ」

 

「それはもう!まぁ、欲を言えば建てる像は私だけにして欲しかったという本音もチラチラと出て来たりはしますが……」

 

そう言った玉藻は何とも言えないない表情で島のあちこちに自分以外に建っている数多の像、マシュマロ後輩の像だったり、聖人要素をどこかに置いていったステゴロヤンキーの像だったり、私は子供が好きだ、いや私自身が子供になると言い出しそうな獣狩人の像だったり、マスターの背後を常にセコムするような猛毒っ娘だったり……カルデア女性陣の像がずらりと。

それ以外にもローマを思わせるコロッセウム、サッカー場、大規模な公園、和風満載なお家、雪が似合いそうな西洋風味の城、誰かがついこの間、情事に使ってしまったような雰囲気を漂わせる鉄の要塞、ありとあらゆる家畜でしっかりと区切られている牧場、種類豊富な畑…………etc

とまぁ、この島に造られたあるたくさんの施設を遠目で見ていた。

 

「ここにいる女性陣の像を全て建てるだけではなく、それぞれ提案された案を面倒くせぇ!もう全部やっちまえ!の精神でトンカンと作り上げた様子を見るともう、嫉妬を通り越して、私もある意味感嘆の鳴き声しか出ませんよ、みコーン!?って感じで、えぇ……これら全部の素材はどこから?島のスペース足りるの?ってかこれだけの量の素材を集める時間なんてありましたっけ?キンクリ?等のツッコミすらも明後日の方向へポーイッと」

 

「どの案も甲乙つけ難かったし、それなら全部作った方がいいという結論に至るのも当然っちゃ当然。

……そうだ……俺には何かを切り捨てるなんて選択肢を取る事は出来なかったっ!もし、もしっ……!この手で何か救い取れる物があるのなら……俺は、どうしても手を!伸ばしたかったんだっ!!」

 

「いやいやいやいや、急にシリアス顔でカッコイイ事おっしゃっていますが、やってる事は『うわっ、わたしのマスター、開拓力高すぎ?』という事を自覚して下さいましね?

まぁそれでも……実を言えば、私はマスターグッジョブ!と大 歓 喜!!だったりしますけどね、他の方々なら頼むから自重してくれと釘を刺しそうですが……」

 

あのスカサハ師匠にも『黄金の林檎を咀嚼しながら女共の慰安もこなしつつ不眠不休で働く様子を見ていると一体何が貴様をそこまで駆り立てるのか気になる所でもあるが……うむ……あれだ、少しは休め、この私ですら少しを気を使う程のワーカーホリックぶりだぞ……今日は私の膝で寝る事を許そう……ん?なに?寝るだけじゃ済まないかもだと?ふふ、たわけめ、私が戦闘しか能が無い女だと思ったか、当然、我が深淵の叡智は閨の上でも最強であるぞ。その身で確かめてみるか?』って少し心配されたしなー……そんなヤバイ状態だったのかな?

もしかしたら、いわゆる開拓ハイ状態になってたかもしれないけどさ。

え?師匠とその後どうなったって?それは御想像にお任せします。ハイ。

…………そう言えばさ、いつもは冷静沈着な大人の女性が乱れる姿って実にイイよね。え?別にこの話とは特に関係無いよ。

 

「やっぱり文明人に娯楽は大事です!私もこの何も無い辺鄙な島に遭難した時はどうした物かと思いましたが……それが今やリゾート地と言っても過言ではない場所になったワケですし、やっぱりバケイションはこうあるべきですよね!

明日の食べ物も満足に無い。ひたすらデカい魔猪が襲いかかってくる。そんなTHE・殺伐!なサバイバル生活とか誰得やねんっていう話ですもの、マスターには感謝感激槍あられというやつですよ」

 

「ヨイショしてくれるのは嬉しいけど、別に俺一人の力でやったわけでもないし、皆が手伝ってくれなかったらこんな素晴らしい物を出来なかったしね」

 

いや――……それにしてもゼロから何かを作るって楽しいよね!不便な島を仲間達の手を借りて変えていく喜び、成程、どこぞのアイドルグループも嵌るわけだぜ。

 

「そこで謙虚さを出していくのもマスターらしさですねー、私達サーヴァントが手を貸すのは当然でしょうに……普通に皆さんの案を全部採用したマスターは与えられた選択肢はたとえ分岐点に戻ってでも取り敢えず全て選ぶタイプの人だと見ました!コレクター精神という奴でしょうか?」

 

分岐点て、そんな次元の壁を超えるようなタイプの人間が早々いてたまるか。

 

「あぁ、けど、マスターご注意下さいましね、一見平和そうに見える選択肢でも場合によっては即 DEAD ENDも十分あり得ます。

ヒロインが平気で主人公を殺しにかかるルートなんてそれはもう世にごまんと、まぁ、マスターなら平気でアイルビーバックしそうですが…………。

それでもっ!選択肢でお困りの場合はこの私!タマモちゃんナビゲーターを常に隣に付けておくのをお薦めしておきます!マスターを必ずや輝かしいHAPPY END(タマモちゃん エンド)へお連れ致しますよ~~」

 

「ん?今、なんか変なルビが……」

 

「何のことでしょう、おほほほほほほほ」

 

目を逸らしながら一体どこから出したのか団扇をパタパタと優雅に扇ぐタマモちゃん。

彼女の可笑しな発言は今に始まったことでもないし、スルーしておいてあげようか。

 

「……こほん、余談が過ぎましたがタイミング良くここで会えて良かったです。

ちょうど今日は日々の開拓で疲れ切ったマスターの体を労わろうZEの日と勝手に私が命名した所でしたし。

これから一日このハイソでセレブリティな良妻巫女狐があなた様をたっぷり癒してあげますからね」

 

"マスターの体に疲れが溜まっていると私が思ったから今日はマスター安息記念日 byタマモ"と言わんばかりの彼女の気持ちは非常に嬉しい。

 

「う――ん……けどなぁ、俺は別に疲れ切った感じはあんまりしないんだけどね、開拓だって楽しくてやり続けてたら、ついうっかりと不眠不休になってしまっただけで……」

 

「いけませんよっ、マスター!

確かにあなたは人外ゾーンへ肩までどっぷり浸かっていますがそれでも疲労を感じないワケではないでしょう……ある日、蓄積された疲れでポックリとブラック企業に務める社畜の如く過労死してしまう危険性もミリ単位であってもおかしくないのですっ!そんなBAD ENDを防ぐ為にリラクゼーションさせてあげるのが私の役目!(……まぁ、こう言えばマスターと自然の流れでスキンシップをしたいという私の欲望はうまく隠せてますよねぇ、ぐふふふ……」

 

本音が漏れてるぞ駄狐。

しかし、俺に休息を取って欲しいというのも確かな本音の一つだろう。

これ以上断るのもかえって無礼に当たるか……。

 

「ふふふ、その顔を見る限り私の提案を受けてもらえるみたいですね、ではでは……ここから場所を変えるとしましょうか。はいっ、お手を拝借♪

しっかりとエスコートさせて頂きます。明日にはもうタマモちゃん万歳と語尾に付けてはいられない事間違い無しですよ」

 

上品に差し出した玉藻の手を取り、その柔らかい感触を楽しみながら俺は彼女に手を引かれていく。

コンコンと嬉しそうに笑う彼女の表情を隣で眺めながら……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いつもなら和風がNo1!と言う所ですが、せっかくのリゾートでしかも今の私はエレガントでセレブリチーな水着美女。やっぱり洋風で豪華なお城でアイランドバケイションが一番しっくりきますよね~~どうですマスター?気持ちいいですか?」

 

通称、開拓計画大きな家を建てようB案でもある巨大な城。

そこのある一室でベッドの上でうつ伏せになっていた俺は玉藻にオイルマッサージを受けていた……別にエッチな奴じゃないですよ?

 

「ふむふむ、贅沢と言わんばかりの豪華なお部屋。ベランダを開ければそこからは島どころか海さえ一望出来る眺め……そんな景色を独り占め、ナイスバディな良妻狐からのマッサージも独り占め……いや――最高の夏休みだと思いませんか?マスター☆」

 

今俺達がいる城もこの島で建てた建造物の中では結構の高さがある、そんな部屋から眺める景色は確かに絶景だった。

 

「んっ、んっ……ふぅ……女性フェロモンをぶんぶんに振り撒きながらマスターに『オイル塗って下さいます?』って誘惑するのも良かったのですが、それだと前話のサモさんと被ってしまいますからねー、二番煎じと言われるのも癪ですし?」

 

相変わらず危ない発言をぶちかますピンク狐、メタ発言自重なり。

それでも手付きは真面目でヌルヌルとマッサージオイルを俺の背中からお尻、足まで塗りたくっていく。

 

「すんごい今更だけど……俺、全裸になる必要あったかな?」

 

この島での基本スタイルでもある白Tシャツの玉藻に問いかける、

おわかりになったと思いますが現在この場は俺だけが脱いでいる状況で御座います。

 

「何をおっしゃいますかマスター、あなた様の体から疲れを一寸も余す事なく抜き取るつもりなのですから、衣服なんて邪魔でしかありませんよ……えぇ、恥ずかしがる事はありません、全て私にお任せ下さいな…………あぁ、けどやっぱりいい体してますよねぇマスターってば……ちょっとつまみ食いしてもいいでしょうかねぇ……ジュルリ……」

 

……何でしょう、今の俺の状況ってまな板の上の鯉ならぬベッドの上の家畜?

俺ってば今ここでこの肉食系フォックスにペロッと戴かれてしまうのでしょうか?

 

「ねぇ、もしかして、君、実はオリジナルじゃなくて『幻の十人目(タマモテン)タマモシャーク』とかだったりしない?」

 

「違いますよ!?どっからどう見ても私が120%ご本家ですってば!?後なんですかタマモシャークて!そんなものは一生ミスディレクションさせて下さい!!8人いるだけでも頭が痛いというのにそう簡単に後出しでポンポン増やされて堪るかっつー話ですよ、どこぞのアルトリア顔さんじゃないんですから……。

先程のはあまりにもマスターの肢体が魅力的だったので隠れていた野生がひょこっと顔を出しただけですからね、本当の私はクールビューティーな淑女ですから」

 

心外ですプンプンと頬を膨らました彼女は先程の発言の弁明をする。

いや、どうでしょね、この島に来てからの玉藻はこう何かキャットに通ずる意味不明さもあるような感じたけど。

 

「別に糾弾するつもりは一切ないよ、玉藻になら今ここで戴かれても俺は全然ウェルカムだし」

 

「え?マジで?………………ゴッ、ゴホンッ!駄目ですよ私!今ここでビーストモード解禁したらそれこそ本当に(ケダモノ)じゃないですか、いやある意味、私(けもの)ですけどもね!?」

 

俺にとっては玉藻とそういう事するのも十分癒しの一つだから大歓迎なんだけどね。

それでも彼女自身の中では色々と葛藤があるのか表情が七変化している様だ。

 

「はい、タマモは大丈夫です。この島ではエレガントなマヌカンの感じで行くって決めたじゃありませんか……まだ……まだ我慢は出来ますよ……ハァ、ハァ……」

 

何とか煩悩を消し去る事が出来たのか、先程までワキワキさせていた手を静めた玉藻はマッサージを再開する。

 

 

……うん、前言撤回。このINRAN狐全然煩悩消し去ってないわ。

さっきからマッサージの合間に菊門の辺りや陰嚢、はみ出ている性器といった性的な場所をちょいちょいタッチしてきたり、上半身を乗っけてその柔らかい双方の果実を押し付けてくるし。

 

「ふぅ、んっ……よいしょっと……どうか力を抜いて下さいませマスター……それはもう海に打ち上げられたマグロの如く、あぁけどホントにリアクションがマグロだと傷付くので少しピクっとしたり可愛い反応があると玉藻的には嬉しいなーなんて……」

 

それでもどうやらマッサージの腕前は本物のようで肩、首、背中、腰、太ももをほぐすように刺激してくる。

指、手の平、肘、膝……自身の体全て使うようにツボを的確に押してくる彼女の施術が気持ちよくつい息が漏れてしまう。

 

「ふふっ、どうやらお気に召してくれたようですね。

こういったマッサージは確かに技術的な物も十分必要ですが結局一番大事なのは相手に対する気持ち……いわゆる、お・も・て・な・しの心という奴です。私のマスターに対するお気持ち、十分伝わっていますか?」

 

「うん、やっぱり俺も少し疲れが溜まってたみたい。こうやって玉藻に触られてると体を労わってくれてる君の気持ちが確かに伝わってくるよ」

 

そして、真面目な事を言いながらさっきから俺のお尻を執拗にイヤらしい感じで揉んでくる君の気持ちも十分に伝わってきます。

 

「はい、それではマスター、次は仰向けになって下さい。

今度は体の前面部分をマッサージさせて頂きます。」

 

 

彼女に言われるがまま、体を転がす。

 

言うまでもなく、先程からエッチなタッチを受け続けた事により俺の愚息は屹立していた。

だが彼女はソレに気づいていませんよという風でそのままマッサージを再開する

 

「うふふ……」

 

仰向けになってもやる事は変わらず、俺の体を揉み解し、オイルで滑りのある体を撫で回す。

俺のアソコの状況と彼女が偶然を装い何度も肉棒をつついてきたり、しつこく乳首を責めたりする所に目を瞑れば至って普通のマッサージである。

スルーしなければいけない所多すぎィ!!

 

「あぁっ……ベッドの上でヌルヌルになって私の手でピクピクしている無防備なマスターを見ていると、こう…捕食精神がムクムクと……ふぅ、ふぅ……静まれぇ……私の野生魂……」

 

ちょっとしたスパイス、もしくは悪戯心で性感帯を的確に責められる度に体を震わしている俺の様子を見て……少しずつ目をギラつかせながらもメインであるマッサージを疎かにしない玉藻にも色々と段取りはあるのだろうか。

 

取り敢えず、俺は彼女の邪魔はしないでしばらくマッサージの心地よさと性的なタッチのくすぐったさと快感を大人しく享受する事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ふいぃ――……はい、お疲れ様でしたマスター、これにて天照式マッサージは一応終了で御座います。いかがでしょうか?疲れはお取れになりましたか?」

 

「うん、()()は抜けたよ……」

 

そう言って二人は未だ硬さを失っていない剛直に目をやる

確かに彼女の腕は本物だったよ。疲れは抜けました……疲れはね……。

 

「おやおやおやおや……私とした事がマスターも一人の男性だった事を失念しておりました。

えぇ、タマモちゃん的には徹頭徹尾疚しい気持ちなど一切無く、純粋な気持ちでマッサージをしておりましたが……不慮の事故でマスターのソコが反応してしまったというのなら私の責でしょう………計画通りニヤリみたいな顔なんてしてませんからね」

 

ウソだゾ、絶対確信犯だゾ。

 

わざとらしく反応する彼女はそそり立った肉棒を優しく握りしめると顔を近づけ、耳元でそっと囁いた。

 

「先程も言った通り疲れは一寸も余すことなく抜き取るつもりです。ねぇ、ますたぁ……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

このまま生殺しにされるのも堪った物ではないと思っている俺には首を縦に振る選択肢しか無かった。

 

「ふふ、ではでは再びマッサージ再開という事で……」

 

妖艶に微笑んだ彼女は俺の股間へ上半身を近づけると、Tシャツで隠れた胸を持ち上げ下から飲み込むように逸物を谷間に挟んでいった

 

「……くっ」

 

散々焦らされたお蔭か、肉圧に挟まれた感触で声が漏れてしまう。

 

白いTシャツを着ている彼女の素肌を眺める事は出来ないが……肉棒に伝わる形容しがたい温かさと柔らかさが確かに俺の大事な所と玉藻の巨乳が直に擦れ合っている事を教えてくれる。

 

「んっ、んっ……んぅ……お互いに生まれたままの姿でくんずほぐれつ獣の如くぬっちょぬっちょと交わるのもそれはそれでオツな物ですが……着衣エロというのも中々侮れないものですよマスター?

見せない構図だからこそ、そこには無限の想像力が溢れてくる……『このTシャツの中であの娘の胸は?俺のアソコは一体どうなっているんだ?』と……そんな疑問という名の煩悩が快感をより増幅させるんですよ」

 

白布の中にある膨らみの形を歪ませながらパイズリを始める彼女の言う通りこれはこれで胸を晒しながらする時よりまた別種の……味があるご奉仕だった。

まるでもう一つの別の性器に挿入しているかのような感覚に陥ってしまいそうな……。

 

「んっ……あっ、ほらぁっ……マスターの尻尾も私が動かす度にビクンビクンしてぇ……ふふっ、まるで意思を持っているみたいにぃ、あんっ、おっぱいから零れちゃいそうですっ……はぁむぅ……んちゅぅ、ちゅるぅ、じゅるるぅっ―――……」

 

玉藻が胸を上下に動かす度にシャツの襟から見える谷間から、亀頭が何度も顔を出す。胸だけのご奉仕では物足りなくなったのか……今度はその亀頭に喰らい付いた。

 

「むぅぅ……じゅるぅ……れろっ、ちろぉっ……ちゅるぅぅぅっ……んはぁっ、さぁ、今はどうか頭をからっぽにして……快楽に溺れる事だけを考えて下さいましね……むじゅぅぅぅぅっ!!」

 

必死に竿を扱く巨乳の動きと包み込む熱、カリ首や鈴口を獲物を嬲るように舐め回すその舌使い……。

どちらか片方でも十分ともいえる程の卑猥な快感が俺の腰をかけ巡っていく。

 

「んむぅっ、じゅぅ、じゅるるっ!…………はぁっ……れろぅ、れろっ、れろぉ……はぁぁ、また大きくなってますねぇ……随分と溜まっているご様子で……さぁ、残さずこの口の中にぶちまけて下さいな……はむぅぅっ!んんじゅるるるるぅぅぅっ……!!」

 

乳房が上下に動く度にその動きと合わせて精液がどんどんせり上がっていくような錯覚に陥る。いや実際にそうなのかもしれない……。

そして入り口を彼女が丹念に口淫をし、もはや受け止める準備は万端のようだった。

全方位から責められた愚息はやがて終わりを求めるように疲れ(精液)を吐き出した。

 

「んんんぐぐぐうぅぅぅぅっ―――――――……!!!……んっ、んっ、んぅっ……んふぅっ!……ちゅぅ、ちゅるるぅぅ……」

 

喉奥に相当な量をに吐き出されたにも関わらず、玉藻は口を離す事はしなかった。

 

「ちゅぅぅ、じゅるるぅ……じゅるぅぅぅぅ……」

 

一寸も余す事なく疲れを取ると言った言葉には偽り無しと言わんばかりに残った精液を全て吸い付くすまでバキュームフェラを続ける玉藻。

気を抜くと魂まで吸われてしまいそうになる。あぁ、スキル『呪法 吸精』ってそういう……。

 

「……んんぅっ、んぐ、んぐぅ……ごくっ……ぷはああぁっ!……いやぁ――美味美味、ご馳走様でした。これで後3年は戦えそうです、マスターもタマモちゃんサマーの魅力、存分に味わって頂けた様子で♪これぞwin-winの関係という奴でしょうか?」

 

口の端からほんの少し零れた白液をペロリと蠱惑的に舐め取りながら笑みを浮かべる玉藻は成程、女神と言うだけはあると納得してしまう程に魅力的な様だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ、さぁ、疲れとその他モロモロ(意味深)もしっかり取れたみたいで一安心です、マスター☆」

 

「あぁ、色んな意味でスッキリしたよ、ありがとう玉藻」

 

水着を穿き、この島でのいつもの格好に戻った俺がいる場所はマッサージ(R18)をしていた一室と変わっていない。

 

「ですがまぁ、あの像を建てた事を区切りに後はもう島から脱出する船を作るだけですからねぇ。マスターも今まで程『島の開拓者EX』になる必要もないでしょう」

 

「え?俺としては次は高層ビルに遊園地にスタジアム、カジノに映画館と……まだまだ造りたい物がたくさんあるんだけど…」

 

「みこーん!?まだ造るとおっしゃいますか!?マスターの欲望はどこまでそそり立てば気が済むんですか!?

しかも、今の私にどストライクなベガスっぽい街並み再現なんて……セレブリティな私とマスターで豪遊する欲望の街……イイ…………」

 

天まで届け我が欲望!私が天に立つ!

この島に来てからこれ無理だろと思ってた物も最終的に造れたしネ!

それならどこまでイケるのか気になるのが男の子だもん。

 

「んもうっ!仮にそんな事されたら、私ったらこの島での思い出が忘れられなくてカルデアに戻っても水着姿のままになってしまいますよ!…………あ、けどそれはそれで良いかもしれませんね『霊基イジリ過ぎて元に戻れなくなりましたテヘペロッ☆』って感じでドジっ娘アピール&あっちでも常に水着という強烈なアイデンティティもありますし!!

ですが、私の乙女の直感がそれはどこぞの()()()()()と被るぞと警告しているような……」

 

あっ、マズイ。

 

俺は口で言うよりも速く体を動かし、彼女に飛びかかった。

 

「んにゃあぁっ!?どどどどどうしたんですかマスター急にそんな強引に押し倒して!?いえ、私としてはいつでもバッチコーイですがやっぱりロマンチックなムードも欲しいなぁ、なんて思って見たりも……って槍ィィッ!!?」

 

トリップしたかのように戯言をぶつぶつ言う淫乱狐であったがさっきまで自分が立っていた場所にベランダから飛んできて突き刺さっている数本の朱槍に気づきようやく事態を把握する。

 

「ある不老不死の女王の悪口を言った者にはこの島のどこであろうとも天から魔槍が降り注ぐって聞いた事なかった?」

 

「初耳ですよぉ!?ってかどこのエル・トール(神の裁き)ですかそれ!?まったく、そうやって過剰に反応するからいつまで経っても年増ネタでイジられるんですよ!!」

 

「君もその毒を吐く癖を少しは抑えようね」

 

彼女の場合だと我は神なりっつーよりは神殺すべしってキャラだろうけど。

そぉら、怒りの第二波がやってきたぞぅ。

 

今はご丁寧にベランダから飛んできているが下手をすれば城の天井を粉砕しながらぶっ飛んでくる可能性もあるので玉藻を抱きかかえ城から飛び降りる。

 

「わぁお!これはっ!?女性サーヴァントが意中の殿方にやって欲しい事トップ5入りしている伝説のお姫様抱っこ!」

 

大興奮している駄狐を胸に抱えながら、空から降り注ぐ槍あられを避けてそのまま大逃走。

まぁ、スカサハ姐さんも多分戯れで投げているだけだろうし、俺でも安心して回避できますわ、ケルトっぱいは何だかんだで優しいよね。

 

「立場が逆転してサーヴァントの私がこんな感じで守られてしまうなんて……悔しいッ!でも嬉しいッ!ビクンビクン‼」

 

こんな状況でも玉藻ちゃんはいつもと変わらず何よりです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

晴れ、時々ゲイボルグな天気から逃れた俺達はかいた汗を流す為に露天風呂へ、既に日も沈み……辺りは暗くなっていた。

 

「しょぼーん……」

 

お姫様抱っこの時とは打って変わってお耳もペターンと絶賛凹み中の玉藻は当然のように隣へ。

 

「私とした事が……役得な状況に夢中になるばかりに気づけば本来サーヴァントが守る筈のマスターにここまでずっと助けられてしまうなんて……あぁ、これも守りたくなる系サーヴァント第1位でもある私の魅力のせいなのでしょうか……」

 

落ち込んではいるがそれでもまだ余裕がありそうな彼女を膝の上へ乗せ、お互いに向き合う。

 

「はにゃ!?……もももしかして、マスターを癒すと言っておきながらこの体たらくな私を慰めて下さるのですか……?」

 

お風呂の熱さか照れなのか、既に上気している彼女の顔……。

そして濡れて透け透けになったTシャツから見える青いビキニの姿を見ていると……これは守りたくなるかもしれないキュートさだわーとか勝手に思ってみたり。

 

あ、俺は何も着てませんよ。基本風呂では何も着ないスタイルですので。

 

「お城でのマッサージでは十分癒してもらったし、それにさっきのお姫様抱っこだって俺の方も役得だったよ」

 

元気を取り戻すように徐々に立っていく耳にそっと息を吹きかける。

 

「んひぃうぅっ!……や、あぁ……だめですよ。今日は私が癒す日なんですから……あなたがこんな事しては……」

 

それでも逃げようとはせず、むしろその豊満な体をギュッとこっちに押し付けてくるのはOKだと見るぜ?

 

「こうやって玉藻を愛でるのも俺にとっては癒しだし……君も奉仕しているだけじゃもう物足りないんじゃないの?さっきから我慢してるでしょ?」

 

再び硬さを取り戻した俺の剛直を水着の上から彼女の雌の部分へ押し付ける

 

「あふぁぁっ……あぁ、あっ……で、ですけどぉっ……」

 

「今、ここにいるのは主従じゃなくて一人の男と女だよ、野生の部分……出しちゃってもいいと思うけど」

 

ツンツンと腰を動かし、もう逃げ場はないよと玉藻の敏感な部分を刺激させる。

 

「んぅ~~~~~~っっ…………、わ、かりましたよぉ……もう、ここからはビーストモード解禁でイキますっ!どうなっても知りませんからね!」

 

そう叫んだ彼女のTシャツの下に手を入れ、ブラジャーとパンツの結び目を解き…近くの岩場の上へ置いておく

いままで複雑な鎧だって脱がしてきた俺にとって、こんなビキニはまさにノーガードと言っても過言ではなかった。

次からは触れずに脱がす技とかも習得してみたいなー、こう氣を使うみたいな感じで。

 

「みこっと!?相変わらず、手がお早いですねー……むむ?Tシャツの方はお脱がしにはならないのですか?」

 

「うん、このままでいいよ……濡れ透けは良い文明」

 

彼女が言っていた見せない構図とはまた別だが……温泉で濡れたTシャツがその肢体にビッチリと張り付いている姿、丸い大きな膨らみ、くびれ、先端のピンク、下腹部……薄く服は着ている筈なのに丸見えになっている。だが服を全て脱ぐよりまた別の趣きがあるエロスだった。

 

「んふぅ……マスターが興奮して下さるなら、いいです……それに、お互いに前戯は必要なさそうですよね……私のアソコもその肉棒を早く食べたいってヒクついていますしぃっ……!……もう我慢がぁ、ききませんっ!」

 

布を取っ払ったことで直に触れたお互いの性器をもっと深くへとどんどん腰を沈みこませていく獣耳の美女。

 

「はああぁあぁぁあっっ~~~……!!こ、の……感覚ぅ、私のナカ全部がますたぁのを……感じとれぇってぇ……んひいいいいあぁっ!!!あ、あぁっ……挿れただけで軽くイッてしまいましたぁぁ……私ったらなんて、なんて……はしたない……」

 

恥じるような台詞を吐く玉藻だったが……表情と体の動きはそれに反して本能の赴くままに情欲を貪っていた。

 

「あうぅ、あぁっ!はあぁっ!ふうぅ……!……こ、腰が止まりませんぅぅっ!あぁっ……はあぁんぅっ!!」

 

ジャブジャブと湯を波立てながら、激しく動く玉藻。

俺もこのまま彼女の膣内の心地よさを味わうのもいいのだが……せっかくなので目の前で揺れている美味しそうな果実に喰らい付くことにした。

 

「あひぃっ!!あっ、はあぁっ……!そ、んな激しく…んあぁぁ!!あんぅ!な、んか……おっぱいがぁぁ……こそばゆくて、焦れったくて、いつもと違う感触でぇぇ!あふぅ!先っぽがぁっ……!!」

 

濡れたシャツという薄い防護があるせいか直接触られるのとまた別種の快感を受けている彼女の顔は、たぷたぷと揺れる胸を弄ばれ、そして濡れたシャツの下からでもはっきりと存在を示しているピンクの乳頭を指先でこねくり回され……歯で甘噛みされる度にどんどん蕩けていく。

 

「あくぅっ!ふぅっ!あっ!はぁあぁ!!わたしのおっぱいおいしいですかぁっ……!ますたぁぁっ!?わたしもぉ……ますたぁのおちんちんが、おいしくてぇ……んふあああぁっ!どうにかなっちゃいそう……ですぅっ……ああぁ!」

 

そこには優雅で余裕のある美女の姿は無く、獣の如く性愛に耽る一匹の雌の姿があった。

 

彼女の子宮口がはやくはやくとせがむように俺の亀頭へキスをしてくる為、射精欲がどんどん高まってくる。

 

「はふぅっ!んにぁあっ!はっ、あぁ……はあぁっ!どこに出して欲しいかなんて、言わなくても、いい、ですよ、ねぇっ……んはああぁっ!!」

 

俺の肉棒も彼女の膣内も離れる気などさらさら無い。ならばこの激しい情交の行く着く先など決まり切っている。

 

砕けそうになる快感の中で俺は自身の精を玉藻にぶちまけた。

 

「ああくううぅぁああああああぁっ!!!!……はあぁっ!はっ!んはぁ……はぁ、はあっ……」

 

水飛沫が上がり、屋外だろうと憚ることない彼女の嬌声は満点の星空の下で響き渡った――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後も、完全にスイッチが入った俺達は何度もまぐわう。

 

 

「んにやああぁっ!あっ!はんぅ!そとでぇ……こんな動物みたいな体勢でぇなんてぇ……あぁっ!ましゅたあぁにおかされてぇぇ……あうぅぁぁ!!」

 

時には露天風呂の外周にある、岩に手をつけ、尻を突き出した彼女を後ろから交尾をするように激しく犯す。

感情を表すように揺れ動く耳もマーキングするように噛みつき、湯を十分に吸い取った尻尾も握り弄ぶ。

 

「はぁっ!やああぁっ!ひにぁあっっ!耳もぉ、しっぽもぉっ……!ましゅたにぃぃ、たべりゃれてぇぇっ……!!ああぁんぅぅ!!いい、いいぃ!しゅごくいいですぅぅ!!!おなかいっぱいになってくださひぃぃっ……!!あああっぁぁぁ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んじゅぅ、ちゅううっ!はぁっ!はむぅぅっ……んむぅぅぅ!!ちゅるっ……んちゅるぅっ!ちゅぱぁぁっ…はあぁっ、もうっ……ますたぁったらぁっ……息ができませんよぉぉぉっ……あふうっ!!」

 

いつの間にか彼女も生まれたままの姿となり、互いの背中に腕を回し、足は腰に絡められ、口も性器も隙間が無い程に密着していた。

湯には……何度も交わった証である二人の愛液が浮かんでいる。

あぁ……うん、後でちゃんと掃除しておかないとな。

 

「はああぁっ!!あっ!……ますたあぁにぃ……たくさん種付けされてしまいますぅぅっ!!あっ!はっ!……っぁぁ!孕まされてしまいそうぉ……んくあぁぁっ……!!んにあああぁ!」

 

露天風呂の壁際まで追い詰め、扇情的な体をプレスする。剛直を突き立てられる彼女の膣内は俺の子種を求めるように吸い付いてくる。

 

「ましゅたあぁっ!ましゅたぁぁっ!!……おもいでっ……夏のおもいでぇ、たくさんぅ……たくさんつくりましょうぉぉ……あああぁぁんぅっ!!」

 

君がサーヴァントでなければ思い出どころか別の物も間違い無くデキるよねとつい思ってしまい、互いの野生が落ち着きを見せるまで……水音を響かせながら獣欲を交わす。

 

「あっ!あはっ!はあぁ!んあぁ!ああ!いいあぁっ!!んああぁっ……おあぁっ!!」

 

何度も――何度も――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふかふかでモフモフだぁ……」

 

激しい獣交の後、二人で体を洗い流し、乾かし終わった私達はマスターが私の為に建てて下さった五重の塔の最上階にいました。

 

お布団で横になったマスターは私の尻尾に巻かれています。何だかホンワカしますねぇ……。

 

まぁ、本来の日の本の五重の塔というのは大体は二重目以降はただの木組みだけでこーんな和風ホテルの一室なんてなってるワケないんですけどね。

そこはそれ、私がちょちょーいとアレンジさせて頂きました。え?罰当たり?とんでもねぇ、あたしゃ神様だよ、ここならそうそうお邪魔虫も来ませんしねぇ。

 

「モフモフ、モフモフ……」

 

「あんっ……もう、私の尻尾が気に入って下さったのなら存分にモフッてもいいんですよ?」

 

「……そうしたいのは山々なんだけど……これに包まれていると何だか……お日様の匂いがして……ポカポカして眠くなって、なんだか……安心する………………ぐぅ……」

 

おや?お眠りになってしまいましたか……私の尻尾も抱き枕にしてしまって……ふふっ、随分と可愛らしい寝顔ですねぇ、普段はあんなに荒唐無稽、天衣無縫を地で言っている方ですのに。

こんなに人畜無害な表情を晒されると……。

 

「この塔に、誰の目も触れないようにずぅっと閉じ込めてしまいますよ?ますたぁ……」

 

深い、眠りの中にいるマスターからは当然返答はありません。

 

「…………なんちゃって☆」

 

いけません、いけません、つい気を抜くと暗黒部分が出てしまいますねぇ。自重自重と。

こんな長い物に大事に収めようとするなんて、どこぞの獅子王じゃないんですから……女神度に関して言えば私の方が断然上ですけどねっ!

私はマスターの後ろで控えているミステリアスな良妻狐ですから、欲望に忠実な他のタマモ共とは違うんですよ!

ま、最後に隣に私が立っていればいいですし?おいしい所はしっかりと頂きますよハンター的に

え?タマモナインに片足突っ込んだ?タマモシャーク?……呪うぞ♪

 

子供のようにあどけない顔を見せるマスターの頭を撫でる。

 

「今日は私の我が儘にお付き合い頂きありがとうございます。どうかゆっくりと体を休めて下さいな。良い夢を……」

 

 

 

 




『たまも、お前だったのか。いつも聖晶石をくれたのは』

たまもは、ぐったりと目をつぶったまま、うなづきました。
ぐだ男は、火なわじゅうをばたりと取り落としました。青いけむりが、まだつつ口から細く出ていました


・・・・・・・・・・・


「という夢を見た」
「色々と台無しですよぉ!?」









アバンチュールッ!!(挨拶)
というわけで夏の魔物が目を覚ました玉藻回というよりはタマモちゃんサマー回。
この娘の喋る量……これまでの話の中で一番多いキャラかもしれん。
まぁ、マイルームでもホントに良く喋る奴ですからね
ノッブといい、ヒロインXといい、あるてらちゃんといいギャグキャラは書いてて楽しい。
玉藻の前というより、もはやタマモシャークという別キャラ?
いやーまた登場させたい。淫乱ピンク駄狐は書きやすい。あとエロいし。


余談ですが、ここ最近まで彼女の戦闘不能ボイスが『タマモ、ペットハウスに帰ります~』だとずっと思ってました。自分からペットだと認めるスタイル。




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ケルトの伝説 ゲート・オブ・セイハイ(スカサハ)

キャラ崩壊注意です……ま、いつもの事ですよね。
後半、エクストリーム茶番です……ま、いつもの事ですよね。
投稿遅くなりました……ま、いつもの事にしたら駄目ですね、いや申し訳ない。もっと早く更新したかったんですけどね、すまない……すまない。









「若いし、まだイケルし」


ウェルカム世紀末、ふざけた時代へようこそ。

 

「悪い猪はいねぇが~~!!」

 

「GRRRRRRF!!?」

 

朱槍を片手に今日も元気にお肉に襲い掛かります。

これから毎日、魔猪を槍で刺そうぜ!

 

二つ目の島、目前に広がっていたのは荒れ果てた大地であった……。

だが、どこへ行こうとも俺達のやる事は変わらない。

私はここでもいつも通りマスターとしての仕事を果たすだけです。

やっぱり夏休みは最高だなオイ!

 

「おら!肉とか素材とか置いてけや!剥ぎ取らせろ!調理させろ!

酒で煮込んだものか!鍋にするものか!こいつは迷うッ迷うッ!」

 

「牡丹鍋最高!」

 

「先輩も、アルトリアさんも目の前の魔猪を食料としか見てないようですね……」

 

どうやら、隣の騎士王さんは鍋物をご所望のようです。

いやー……しかし、キング・アーチャーとマシュマロ・シールダーがいると戦闘がすごく楽ですわ。

 

「GAAaaaaaaa!!」

 

当然、目の前のお肉も喰われてなるものかと必死の抵抗を見せる。

 

「よかろう、ならばレオニダス王直伝……‘スパルタ流脳筋でもわかる計算式槍術‘を見せてやるわ!」

 

 

―――『なに?スパルタ市民は2万人しかいなく、奴隷が20万人もいるから反乱を起こされたらひとたまりもないですと?……問題ありませぇんッ!!市民1人が奴隷10人分の強さになればいいのですッッ!2万スパルタ×10=20万!!完璧な計算ですッッ!!』

 

 

―――『総勢10万のペルシャ軍に対してこちらには300人のスパルタ兵士しかいないですと?……問題ありませぇんッ!!一人一人が死ぬ程頑張ればいいのですッッ!300スパルタ×もの凄く頑張る>10万!!完璧な計算ですッッ!!……頑張れ!頑張れ!出来る!出来る!絶対出来る!頑張れ!もっとやれるって! やれる!気持ちの問題だ!頑張れ!頑張れ!そこだ!そこで諦めるな! 絶対に頑張れ!積極的にポジティブに頑張れ!…………もっと熱くなるのですッッ!!!テルモピュライ!エノモタイアアアアア!!』

 

死なぬなら 死ぬまで刺そう ホトトギス

敵がしぶといなら、おっ死ぬまで連撃すればいいだけだしね、簡単な話だぜ。

 

「これが頭の良い闘い方という奴だ!お前は最初から負け猪ムードだったのだ!」

 

「Giaaaaaaaa!!?」

 

「さぁ、彼に続きますよ!マシュ!」

 

「ア、ハイ。アルトリアさんもこの光景にもう慣れたようで何よりです……マスターって何なんでしょうね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――「針串刺しの刑だッ―――!!!」

 

 

 

目にも止まらぬスピードで連撃を繰り出しているマスターが楽しそうで何よりです。

私はお三方が一狩り行こうぜッと言わんばかりにモンスターに襲い掛かっているのを少し離れた位置から眺めながらそんな感想を抱いていました。

 

「なんであいつあんなアグレッシブなんだよ、つーかマスターが使ってんのゲイ・ボルグ、か……?」

 

隣にいたクー・フーリンさんが呆れたようにぼやいています。

 

「あなたのお師匠さんからもらったみたいですよ?何でもトネリコの木から複製ゲイ・ボルグを作った際に使い切れず余ってしまった素材から、さらに数本。MOTTAINAI精神のエコという奴でしょうか?……言うなればレプリカのレプリカ……宝具としての効果は望めませんが十分に戦闘では使用出来る代物だそうですよ」

 

「……まるでゲイ・ボルグのバーゲンセールだな」

 

 

『そんなにあるなら俺にも一本ぐれよ゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!』

 

 

どこかのギャンブラーキャスターの嘆きが聞こえたような気がします。

下手に槍を持つよりキャスタークラスで矢避けスキルを持っている方が十分需要あると思いますけどねー。

 

「てかよ、お前はここで見てていいのかよ?パラソル片手に悠々自適としてるがよ」

 

「まぁ、マシュさんに騎士王さんもいらっしゃいますし?……それに四六時中引っ付けばいいってわけじゃありませんよ。良き淑女というのは余裕を持って愛する人の帰りを待つものですからねー」

 

「は?淑女?誰が?」

 

「潰すぞ☆」

 

私の男性特攻(物理)の威力、見せてあげましょうか?

 

「危ねっ!!?」

 

チッ、避けやがりましたか……これだから回避スキル持ちは厄介ですよ。

 

「口と手を一緒に出しやがって、師匠といいランサー適性のある女は全員おっかねぇな………あぁ、しかし…………ウチの師匠もなんつーかな……」

 

「何です?思わせぶりな台詞を吐いて」

 

「いや、昔から無茶ぶりするのは変わらねーけどよ、どうもここ最近様子がおかしいというかキャラぶれというか……」

 

 

―――『この甲羅を背負い、今から私が魔獣の巣に投げるお前の文字が書かれた石を取ってこい……半日までにな』

 

―――『お前はこれから「できるわけがない」というセリフを4回だけ言っていい』

 

―――『スカサハ師匠の!これで安心魔術王対策!!』

 

―――『これが私の全力全開ッ!ゲイボルグ……ブレイカ――――――ッ!!ふっ、魔法少女とやらもまだまだイケるな……』

 

 

あらら、それはそれは……随分とゆか……ゴホン、不思議な事になってますねぇ。特に最後。

 

「そう言えば、マスターが彼女に色々とご教授していましたねー……なんでも、『随分と長い間生きて、趣味が戦闘と弟子いびりだけではあんまりだから』と現代の娯楽とやら、愉悦やらと……。

カルデアで言われてたりするんですよ。あの染まり具合はもしかするとアルテラちゃんの再来ではないかと……」

 

あのお二人、声もなんか似てますしね。

 

「はぁっ!?オイオイ、じゃあ師匠があの引きこもりセイバーみたくなるってか!?

あの年でそんな事になったらいよいよ要介護認定って奴じゃねえかよ。目も当てられねぇぞ…………って急に離れたどうしたよ?」

 

「いえ、()()()()を喰らいたくないので」

 

「は?なんの話して……んがああああぁぁぁッッ!!?」

 

クー・フーリンさんの後方から真っ赤に輝く死槍の星が降り注ぎます。

しかも私の件で学習したのか回避対策にスキル『真夏のあやまち』までつけて、殺意120%ですね。

真夏のあやまちとは、一体……。

 

「ふぅ、駄目ですよクーさん、女性の年齢について軽率に触れては……」

 

しかし、いい感じにオチがついたので様式美のこの言葉で締めておきましょうか。

 

 

「ランサーが死んだ!」

 

「このイノシシ!」

「獲ったど――!!」

「さすがは先輩と陛下!全力ですね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新しい朝が来た、希望の朝が来た。ふかふかの毛布に包まれながら俺は確かな重みを感じていた。

高層ビルの一室、高級ホテルを彷彿させるような部屋で目を覚ました俺の目の前で……。

 

「おはようだぞ、寝坊助さんめ」

 

スカサハ姐さんがのしかかっていた。

 

何故か裸エプロンで。

 

「あてているのだ」

 

「いやまだ何も言ってないですよ」

 

確かにおっぱいは当たっているけども。

 

「……ふむ、反応が薄いな。古来より半裸のお姉さんが朝から起こしにくれば、男児たるもの慌てふためくものが常だと思ったのだがな。やはり書物から学ぶだけではなく、実践して得るものがあるという事か……こういった所は戦と同じだな」

 

立ち上がった突撃隣の裸エプロンのお姉さんは何か勝手に納得してるし。

 

「まぁ、今更裸エプロンの朝駆けぐらいじゃあ、慌てはしないよ。もちろん照れはするし嬉しいけどさ……」

 

他にももっと過激な娘がたくさんいるし。

 

「それはそれで不満だな……。私のインパクトが薄いと思われるではないか」

 

ある意味インパクトはあったと思いますけどね、あの師匠が裸エプロンでのしかかってきたなんて、俺も一瞬固まったし……。

というかさりげなく生足で俺のアソコ踏まないで!そんな格好で踏まれると変な性癖に目覚めそうになるからっ!

 

「……っというか、本日は一体何の御用で?」

 

「なんだ?用が無ければお主に会いに来てはならんのか?寂しい事を言う。あんなに愛しあったというのに冷たいな…………うぅっ……ぐすんっと、鬱陶しい女の装いをしたい所だが……まぁいい、今日は少々試したい事があってな」

 

そう言ってスカサハが取り出したのは銀色の機械的な杯だった。

 

「聖杯?……ではないね」

 

「あぁ、あのうりぼう共と一緒に作っていただろう『願望実現装置』とかいう胡散臭い物をな」

 

あのオートメーション化しようという計画の元造り上げた、いまいち用途が良くわからない物か。

 

「詳しい経緯は省くがあの作り上げた巨大な方を大聖杯とするならば、私が今持っているのが小聖杯的な物だと思ってくれていい」

 

「いや、けど聖杯って……」

 

「当然、願望実現装置とやらも名前だけだ、聖杯程の力もある筈もない。というよりそうホイホイ聖杯を作られては堪らんだろう、色んな意味で」

 

俺としてはもっと聖杯増えてもいいのよ?という感じなんですが、だって誰かに聖杯転臨使おうものなら妬みと修羅場のカオスエンドになるって想像しやすいからね、それなら平等に皆に使いたいだもん……だから実はまだ一個も使っていません。

小便王――!!早く特異点増やしてくれ――!!今ならお前の親父のブヒブヒプロマイドも付けてやるから!

 

「だがまぁ、何の力も無いわけではない。うりぼう達も言っていただろう?これがあれば一日中ダラダラできると」

 

そう言えばそんな事言ってましたね。

マシーン版エセ聖杯を得意げに指で回しながら、彼女は続ける。

 

「結論を言えば外界との時間の流れを断つものと言えばいいか……これがあれば数分が1日に感じる程に、1年間過ごしても外では1日しか経っていないだろうな。

今私はこのミニ願望実現装置でこの部屋の時間の流れを少々いじくらせてもらった。時の流れが不安定なこの島だからこそ出来る芸当だがな……ふむ、うまくいったようで何よりだ」

 

「それなんて精神と時の部屋」

 

「これから私とお主が何度もフュージョン(意味深)するなら、あながち間違いでもないだろう」

 

はい、しれっと下ネタぶち込まないように。

 

しかし、成程……彼女がうまくいったと言っている事はこの部屋の時間の流れは本当に遅くなっているのだろう。

うりぼうの科学力は世界一ィィィイ!!ってか?こんな代物、怠け者には垂涎物だよなー。

 

「ふふっ、わざわざ私がこのような格好で、時間を本当の意味で取ってきた理由がわからない程、鈍感ではないだろう?

何なら1日と言わず、本当にこの部屋で1年過ごしてみるか?戦闘の修行にはちと狭すぎるが……()()()の修行は捗るだろ?経験値を積んだお主には無用かもしれぬがな」

 

「別にいいよ」

 

「あぁ、わかっている、冗談だ。さすがのマスターも私のような女と1年も部屋で二人っきりは息がつまるだろ…………今、なんと言った…?」

 

肯定の意味で首を縦に振った俺の返答を聞いて、目を見開くスカサハ。

そんな驚かれるような事言ったかね?

 

「だから、OKだよって……あなたのような女性と二人っきりでたかが1年程度で飽きが来るわけないでしょ。

逆に俺が飽きられてしまわないかで不安だし」

 

「………」

 

確かにリアルタイムで1年はそもそも他の皆に迷惑かけてしまうから無理な話だけど。

外では1日しか経たないというのなら、1年ぐらい過ごしても俺にとっては特に問題無い話ですわ。

 

「……そんな真っ直ぐな瞳でお前という奴は……思わず死溢るる魔境への門(ゲート・オブ・スカイ)で影の国へ拉致りそうになるぐらいには濡れてしまったぞ……」

 

「おい女王」

 

戦場ではぶれる事はないのに男女のアレコレになると変な所で少し自信無くしたりするんだから……まぁ、そういう所も好きなんですが。

 

「……ふぅ、お前が乗り気になってくれたのだ。まずは下準備だな、たっぷりと体力と精力をつけてもらうとしよう。幸い、お前達が狩ってきた食料()がふんだんにあるからな。ふふっ……」

 

上機嫌にキッチンへと向かった彼女は丸見えのお尻をこちらに見せつけながら料理を始めた。

 

 

「~~~♪」

 

……

 

―――チラッ、チラッ

 

…………

 

―――フリフリ

 

………………あぁ、ハイハイ、行きますよっと据え膳食わぬは男の恥ですからね。

 

無防備な背中を見せるスカサハの背後に迫り、後ろから抱きつく。

来るのがわかっていたかのように既に包丁を置いていた彼女は困った風にこちらを振り向く

 

「んっ……こ、こらっ……料理中だぞ、危ないであろう……」

 

あんなあからさまにこちらを見ながら、お尻を振って誘ってた人が何を言いだすんでしょうかとツッコミを入れたい気分にもなった。

だが……彼女の裸エプロン姿に釘付けになったのも事実ではあるから気づかないフリをしておきましょうか。

 

「ごめん、スカサハがあまりに魅力的だから我慢できなくて……」

 

「ふふっ……全く、仕方のない奴だ」

 

口では呆れているようだが頬を緩むのを隠しきれていない彼女の胸にエプロンの上から手を這わせていく。

おぉ、柔っこいなあ……。

 

「んあっ……ふぅ、直接触れなくてよいのか……?んぅ……」

 

悩ましげに臀部を押し付けてくるスカサハ。

俺のアソコと彼女のお尻の間にあるものは当然、自分が着ている水着1枚分しかない為、リアルな感触が肉棒に大きく伝わってくる。

戦闘中はあんなに凛々しいのに、情事では一々仕草が色っぽいんだから……あぁ、もう腰くねらせすぎ……。

 

「顔、こっちに向けて」

 

息子を積極的に刺激してくる彼女の美貌を余すことなく味わう為にエプロンの下に手を差し込み……双方の果実を直に掴み、甘い香りがする口内へ舌を挿れていく。

 

「んっ、ちゅっ……んちゅぅ……んはあぁっ!まず先に……朝食の前にぃ、んむぅっ……ちゅぱぁっ……私を食べるつもりか……食いしん坊め……れろぉっ、じゅるぅ……んんんぅ!」

 

これが本当の朝飯前という奴か、当たり前の事だが彼女との情事を簡単に済ませるつもりはない。

 

俺の動きに呼応し舌を出したスカサハは互いの唾液の味見をするかのように舌を絡め合う。

 

扇情的な吐息を間近で感じながら面白いように俺の手の中で形を歪める巨乳を楽しむ。特に興奮し切った先端のしこりを摘まむ度に背中をビクンと震わせるのが非常に官能的だった。

 

「んふぅっ……んちゅぅ、んむぅ!……んぁ!……はぁっ……おっぱいばかりで満足かぁ……こっちの方ももう……我慢がきかないのであろう?あはぁっ……!!」

 

喘ぎながらも流し目でこちらを伺った彼女は後ろから襲われているにもかかわらず器用に俺のパンツを下ろしていった。

勢いよく外へ飛び出た俺の怒張を見ながら彼女は色っぽく自身の唇を舐める。

 

「……んはぁ……さぁ、お前はその欲望をどこにぶちまけたい?胸か……?口か……?顔か……?雌を象徴するこの穴か……?それとも別の所か……?

まぁ、私としてはキッチンを汚されるのは困るのでナカで済ませてくれるとありがたいのだがな……」

 

剛直を彼女の尻の間でパイズリされるかのように擦りつけながら考える。既に濡れている女陰に挿れるのもいいのだが……せっかくなのでと考えた俺は唾液をまぶすように舐めた自身の指をスカサハの菊門へと押し込んでいく……入り口を広げるように……。

 

「おぁっ!……んあぁ……あぁっ、かぁっ……そっちをご所望とは……良い趣味をしておる……まったく、んひぃっ……かはぁっ、ああぁぁっ……!!」

 

指先で入り口を確保した俺は先走りで湿っている亀頭から彼女のアナルへ挿入していく。

腸内に入ってくる異物感からか息を吐き出すように嬌声をあげるスカサハ。

 

別段、アナルセックスが好きってわけじゃないんだけどさ、こう強気な女性だとついこっちを責めたくなってしまう気持ちって出てこない?

 

「んおあっっ!!あぁっ!はぁっ……あくぅぁぁっ、おおぁっ……!」

 

本来、情事の際に入れる筈ではない穴との性交で互いに快感を得ている背徳感かどんどん局部を叩きつける音が激しくなる。

あの影の国の女王を裸エプロンでキッチンという場所で犯しているという現実、振れ乱れる紫髪……しっとりと汗をかいているうなじ……その全てがこちらの情欲をどんどん高めてくる。

 

「あぁ、はぁっ、おぁっ……!布切れ1枚の姿でぇ……こんな場所で好きにされるとはぁ……あくぁっ!新妻なら誰しも通る道だということかぁっ……!んぅ、ほぉ……はあぁんぅっ!!」

 

多分、違うと思う。世の奥様方が皆こんなプレイをしてたらそれはそれで愉快な世界過ぎるだろ。

 

色々と偏った知識を教え過ぎてしまったかしら……と思いつつもスカサハの膣内とまた別種のナカの温かさに包まれた肉棒は溜まった欲望を吐き出そうとする。

 

「んくうぁぁっ……おぁぁっ…!ま、た大きくなって……果てたいのだなぁ?あぁっ……!構わん……お前の雄姿を……私の体に刻みこむがいいっ!!」

 

腸内の奥へ射精する……。

ピュルピュルと厭らしい音を立てながら、背中から覆い被さりながら、性交で熱くなった彼女の肌を直に感じながら。

この解放感はおそらく何度やっても飽きはしないのだろうな。

 

「んはぁあぁぁぁぁぁっぁっっ!!!!はぁ―――――ぁっ……!……んはぁ――――…………」

 

不浄の穴で絶頂へと達してしまったスカサハはシンクに寄り掛かり、息を整えると困ったような笑みを浮かべた。

 

「んはぁ、はぁ……汚すなと言ったのに……めいっぱい吐き出しおって……お前が抜いてしまえば漏れ出てしまうぞ……」

 

「じゃあ、もう少しこのままでいましょうか?」

 

「……たわけ……いつまでたっても朝食が作れぬだろう……んあっ、こらまて、動くなぁ……やぁっ……」

 

少々遅くなって朝食がブランチになっても私は一向に構わんッッ!

今は目の前にある美食を味わう方が大事じゃあ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――『破岩掌!風神脚!』

 

 

結局、その後諸事情で遅くなったご飯を食べ終わった俺達は向かい合ってで携帯ゲームを楽しんでいた。

彼女が作ってくれたのは牡丹鍋で……朝から重いのではと普通なら思うが()()を済ました俺達にとっては案外ちょうどいいものだった。

体力UP!精力UP!愛がUP!

「私のルーン(炎)でしっかりと煮込んだ肉はうまかろう?」とドヤ顔を見せるスカサハちゃんが可愛いと思いました、まる。

 

 

しかし、まぁ、最初は純粋にゲームを楽しんでいた筈なのに……。

 

―――『鉄拳制裁!砲撃連脚!女王乱舞!』

―――『ばたんきゅ~~~……』

 

―――フミフミ……

 

「ふふっ、また私の勝ちだな、どうした?こういった遊戯ならお前の方が得意な筈だが?」

 

―――クチュ、クチュ……

 

「……いや、あのですね」

 

「んぅ―――?はっきり言ってもらわんとわからんな……」

 

艶めかしい足の指でいつの間にかに下着を脱がされた俺はさっきから対戦中の間、ずぅっとムスコを足で軽く踏まれたり、扱かれたりしていた。

 

ただでさえ、スカサハ姐さんは強敵なのでこういった事をやられると集中力が途切れるのも仕方ないでしょ……。いやこんなエッチな悪戯仕掛けられて我慢出来るか。

 

「では私が勝ったので今度も一発程出させてもらうとしよう……」

 

口元を歪めたスカサハは両足を勃起した竿を絶妙な力加減で挟み込み、指で鈴口の所をくすぐってくる。

先程から負ける度にこうやって射精を促されてしまう。そして何故か萎えることのない我が分身……もう少し慎みを覚えてくれてもいいのに。

 

「……っぁ……というか、なんで縦セタに眼鏡……?」

 

今聞く事でもないだろうがアソコの愛撫を受けながらつい気になってしまってので聞いてみる。

一緒ににご飯を食べる時までは裸エプロンのままだったというのに……。

現在の格好はセーターに眼鏡というサーヴァントらしさがあまり無い格好……じゃあさっきの裸エプロンにサーヴァントらしさはあったのかと言われると困るのだがね(キャットとかおるやろ)。

 

「ん?これか?マンネリ化は良くないと思ってな。お前ももう私の水着は見飽きただろう?

ならば様々な衣装を着た私を見て欲しくなってな……縦セタに眼鏡は嫌いか?」

 

「大好きです、こう隣に引っ越してきた女子大生のお姉さんみたいな感じがグッドです」

 

眼鏡も縦セタも女子大生のお姉さんも良い文明だぞ。異論は許さん。

 

「ふっふっふっ……そうか、そうか。マスターのストライクゾーンだったか。なら私も加減は出来ないな……この足はお前の乱暴な槍だって扱ってみせるぞ」

 

女子大生のお姉さんというキーワードがスカサハさん的に嬉しい物だったのだろう。頬を染め、上機嫌に性器への責めを続けていった。

 

絶妙な力加減でこちらの性器を足の裏で上下に扱き、指先で亀頭も撫でられる。ゲームの最中もじわじわと刺激されていた事もあり、射精欲はどんどん膨れ上がる。

 

「んぅ、ふぅ……出したいのか……ほれ、ぴゅーっと出してしまうがいい……何度でも出せ……ここにそれを咎めるものは誰もいはせん……私もお前が果てる様を見るのが好きなのだからな……」

 

「……っ……ぁ!」

 

加虐的な笑みを浮かべる彼女の顔を眺めながら、俺は足で与えられた快感によって果ててしまった。

 

「んぅ!?……っと……数をこなしているというのにまだこんなにも出るのか。眼鏡や、セーターにまでかかってしまったぞ…お前の精力は無尽蔵か?」

 

白濁液で汚された、眼鏡を拭き、再びゲームを手に取るスカサハ。

 

「さて、次こそお前は私から勝利をもぎ取れるか……っぁ?なにをっ……!?」

 

残念だが次は俺のバトルフェイズなんだ、そしてあなたのターンはもう来ない!

それにほら、さっきから俺の方ばっかり気持ち良くしてもらって悪いからね。こっちもしっかりと奉仕しないとさ。

両手は埋まっているので彼女の片足を捕まえた俺はその先を口で咥えた。

 

「ひゃあ、ほうひっはいひゃろうは?」

 

「んふぅ!……ぁっ……咥えたまま喋るでない。くすぐったくてぇっ……こらっ、舐めるにゃあっ……ひぃあっ!」

 

ふむふむ、お師匠さんは足が結構敏感なんですね……あの足で行う繊細な槍使いも神経を研ぎ澄ましているからでしょうか。

そんな憶測をしながらも舌技は止めることはなく、口内にある彼女の足指の間を丹念に舐め回す。

当然、ゲームの方には集中しながら。

 

「ふあぁっ……くぅ、んふっ……はぁっ!……あははっ!……ははぁっ、はあぁ……こそばゆいわ……あふぅっ…!すい、つくなぁっ!」

 

足への口淫を続ける度に集中力が途切れ、ミスを連発してしまうスカサハ。

ここで勝ったな風呂入ってくると慢心するような俺ではない、ねぶられていない方の足で彼女がいつ反撃してもおかしくないのだから。

相手をイカせてやろうと心の中で思ったならッ!その時既に行動は終わっているんだッ!

 

何も足使いが巧いのはあなたに限った話じゃないんだぜ、師匠。

 

今度はこちらの番と言わんばかりに両足の裏で彼女の太ももを挟み…その絹のような肌を滑らせた。

スカサハが散々に俺の肉棒を扱いたときの意趣返しとしてくすぐるように足を上下に擦る。

 

「はふぅっ!?んぅっ……あ、んくぅ……はぁっ……あっ…足癖が悪いやつ、めぇっ!」

 

微弱ながらも確かに性感を昂らせるように舌技と足技にプルプルと震える彼女の目にはもうゲームの画面など映っていないのだろう、それでもまだなんとか操作しようとする意志は感じる。

……ならば、とどめとイキましょうか。

 

俺は彼女の太ももを弄んでいた足を素早く奥へと進ませていった。

そう……セーターの下、見えそうで見えない股の間へ。

 

「あぁっ!?ま、てぇっ……そこはぁっ、んあぁぁ!!」

 

あぁ、やっぱり下は何も穿いてなかったか。裸セーターとは……これもう完全に誘ってるよネ?

彼女の陰口まで足を進ませた俺は最後の抵抗のように俺の足を挟みこんでくる彼女に構わず、電マのように足を振動させて刺激を溢れてくる愛液の水音を立てながら絶えず与え続けた。

 

「はぁ!あっ、はっ、んふあっっ!あしぃっ……とめっ……あっ!んふぁっ!ひあっ!なめ、るのもぁっ……はっ!どっちもぉ、や、めぇっ……あん、あぁっ、あ、ぁぁっ……んはああああああぁぁぁっ―――!!!」

 

―――『おぼえてらっしゃい…』

―――『やったー!』

 

自身の勝利を証明するゲーム画面と足の先っぽから股の間にかけて丹念に快楽を受けた事により……仰け反り、そのまま仰向けに倒れていくスカサハの姿を見て俺は満足気に頷いた。

やはり勝利とやらは良いものだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「冷静に考えてみると確かに最後は一矢報われてしまったが、最終的な勝利回数は私の方が上であったから負けではないだろう。そもそも男女間の色事に勝ちだの負けだの持ち込む方が無粋であると言える。ならば純粋にゲームの結果だけを見ればやっぱり私の勝ちであろう。まぁ、最後のお前の責めは中々に気持ちの良い物であったがそれとこれでは話は別だ。いや……決して誤解しないで欲しいのは私は別にどっちが勝ったのだの大して気にしているわけではないのだ、お前と若いカップルのようにイチャイチャするのは悪くないものだったが……遊びでも勝負事である以上、やはりどっちが勝ったかはっきりさせておかないとこうスッキリしないだろう?互いにな。…そして何度も言うが別に私はどっちの勝ちかなんてものはさして重要視してはいな……」

 

「滅茶苦茶、気にしてんじゃないですか」

 

一人で寝るには少々大きい天蓋付きのベッドに二人で寄り添いながら、俺は負けず嫌いのお師匠さんを宥めていた。

お互いに相手の事を気持ちよくさせる事が出来た。それでいいじゃない。

 

「しかし、今度はネグリジェか……」

 

薄い紫の布が彼女の身を包んでいた。

うん、スカサハが着ているのは特に防御性が低すぎてもう……色々と丸見えなんだけどね、寝間着とは一体……俺の視線に気づいたのか、先っぽもうっすら見えてしまっている胸元を隠されてしまった。

 

「……あんまり、まじまじと見るな……照れるだろう……」

 

「さっき、あんなノリノリで着ておきながら、何言ってんだアンタ」

 

今更、そんな生娘みたいな演技されてもね。いや普通に可愛いけどさ。

 

「風情のない奴だ、お前とて本当は私のようなとうのたった余裕のある戦闘スキーの女よりはこう、まだ夜の秘め事に慣れていない小娘の方が好みではあろう?」

 

それは違うよ!(反論)

 

「スカサハが普段しないような装いで慣れない事をしている姿も。

何か悪どい事を考えて口元を歪めている姿も。

嬉々として戦場へ飛び出す姿も。

水着姿で大人の色気のふんだんに振り撒いている姿も。

自分が他の娘達のような可愛さがないって勝手に思い込んで悩んでいる姿も。

俺が教えた娯楽に興味津々で染まっていく姿も。

閨で荒々しく乱れる姿も、甘える姿も、喘ぐ姿も……全部好きだからさ、だからどんな姿でもそれがあなたの心の内から出たものなら、やっぱり俺は釘づけになってしまうよ」

 

 

「………………はっ、歯の浮くような台詞をベラベラと。そう言えば、私が『好き!抱いて!』とでも言うと思ったのか?残念だが私はそこまでチョロインではないのだぞ」

 

ア、ハイ。なら、途中から俺の頭を抱き締めている力を少しは弱めてもらっていいですか?

お胸で呼吸ががが……、ちょっと死因がおっぱいで窒息死は色々と恥ずかしすぎる。

 

「私は貴様に好意を持っている女共のフラグを全て叩き折って、好感度を最悪にしてやっとルートが開通される。さつばつメモリアルの裏ヒロイン的な存在だと思え。まったくお前という奴は、お前という奴は………………もっと言ってくれ」

 

じゃあ、胸元を激しく擦りつけるてくるのを一旦止めてもらってよろしいでしょうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んっ、ふっ……はぁっ!……これ、息を吹きかけるな…」

 

「ごめんごめん」

 

おっぱいホールドから解放された俺。

そして二人の男女が裸に近い格好でベッドに寄り添っている以上何も起こらないわけがなく。

彼女の下着を脱がせた俺はグチョグチョになるまで性器を指、舌、唇で愛撫していた。

 

「まぁ、俺がするまでもなく既に濡れていた気もしたけど……」

 

「待て、その言い方ではまるで私が痴女みたいではないか」

 

「今日一日の格好を振り返ってみようか、スカサハ姉さん」

 

「うぐっ」

 

「その格好で誘蛾灯のように誘い出されてしまった俺も俺だけどねっと……」

 

開かれた肉の花弁を上から下へ舐めつつ、溢れ出る蜜を掻き出すように指を折り曲げながらどんどん膣口から奥へ入れていく。おぉ、どんどん沈んでいくわ。

 

「あぁっ、はぁ!……ん、うくあっっ!……あぁっ!いいぃ、ぞっ……そこ気持ちよくてぇっ……あ、はぁ!」

 

上目使いで彼女の感じている様を伺う。豪華なベッドで薄いワンピースのような格好で乱れる彼女の姿はもっと気持ち良くさせてあげようとどんどんやる気を増幅させてくれる艶姿だった。

 

「んあぁっ、いあぁっ……!あふれでるのがぁっ……と、まらんぅっ……う、あっ!ひやあぁっ!どんどんお前にぃ……吸い出されてぇぇっ、あんぅ!敏感な所ぉ……い、じくるなぁぁっ!……はうううっぁぁっっ!!」

 

充血した淫芽を指先で弄びながら、止まることがないようにも思えてしまう彼女の淫汁を音を立て、吸い出していった俺はイッてしまったスカサハの痴態を見届けると

今度は自身の愚息をその愛裂へと当てていく。彼女の汁を亀頭に擦り付けるように小さく動かしていった。

 

「あっ、はぁっ――……今度はソレで掻き出してくれるのか?……わたしのはしたない汁を……塞き止めてくれるのか?」

 

今度は別の汁でいっぱいになると思いますけど。

言葉では答えず、その返答の代わりにゆっくりと腰を前へ進ませていく。

 

「うくあっ……!!あぁっ!はああぁっ!やはり……この瞬間がぁっ、たまらぬぅっ……!んあぁ……はぁっ!」

 

彼女の膣が俺のスピードでは待ちきれないとばかりにどんどん剛直を吸い込んでくるような錯覚に陥ってしまう。

ネグリジェという格好で下腹部を幸せそうに撫でるスカサハ。

俺は塞き止めるどころかどんどん愛液を結合部から掻き出すようにストロークを開始した。

 

「はぁぁっ!あぁっ!あくああっっ!……いいっ、動きだっ……わたしを雌として、組み敷きたいのだろぉ……?はうあぁっ!かまわぬぅ……すきにうごくがいいっ……!」

 

パンパンと外界から隔絶されたこの空間ではお互いの情欲をぶつけあう音。お互いを愛し合っている水音。快楽を享受している声。それしか響かない。

 

まさに今この部屋は誰の邪魔も許さない淫交の箱庭なのかもしれない。

 

「はううぅ!!あっ、胸をぉ……おっぱいがぁっ……ナカも突かれてぇっ……ひうぁっ!!敏感な所ばっかりぃ……んはあぁっ!!責められぇっ、あっ、あぁ、あぁあっぁっ……」

 

上下に揺れる巨乳も揉みしだかれ……時折、刺激を待ち望むかのように膨れ上がった乳首やクリトリスを責める事も忘れない。

涎を垂らし……絶対に離さないとばかりにこちらの腰を足に絡め、声を誰に憚ることもなくあげる。そんな普段お目にかかれない麗容な様を見せつけられ、俺の本能が目の前の女性を孕ませろと叫び出す。

 

「はぁっ!あぁっ!……はぁくぅっ!……もっと……もっとぉと……ちかくへ、あぁっ……!来いぃっ……ひいぁあっ!」

 

 

せり上がった欲望は、もう止める事は出来ない、それが行き着く先は――――。

 

 

「はうぅっ!?あぁっ……っんむぅっ!!んふぅっ、んんぅ!んんんぐむむぅぅっ――――――!!!!!」

 

射精するその瞬間、感極まったかのようにスカサハの体を持ち上げ、その肢体を抱き締め…情熱的な口づけを交わす、果てる時に全身で彼女の全てを感じたかったのだろう。

 

子宮の中を存分に満たされた彼女はこちらの頭に手を回し、嬉しそうに目を細めてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、1年も部屋にいる事はなく、数週間程でスカサハと俺の退廃的な精神と時の部屋は終わりを告げた。

切り上げた彼女が言うには……。

 

「そもそも、お前と1年もヤリっぱなしなど私の体が持たぬわ。毎度毎度、この身でありながら孕んでしまうのではと思ってしまう程に出しおって……」

 

サーヴァントの身である以上子を宿す事はないでしょう。

そもそもスカサハって不老不死の身で半ば神霊みたいなものだから、孕むことは間違ってでも無い筈……?それはそれで寂しいけどさ。

 

「……それもそうさな、さすがのお前も神霊を孕ますような事なんて出来るわけがないだろうし…………ふむ……出来ない、よな……?」

 

なんでそこで自信無くして聞いてくるんですか、俺の事なんだと思ってんだよこの人。

 

「……まぁいい、切り上げた理由は別にある。このミニ願望実現装置で()()()()()ことを思い付いたのでな。ふふふふふ……」

 

わぉお、悪い顔してなはる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――女と生まれたからには誰でも一生のうち一度は夢見るものがある……。

 

 

 

 

『神イントロッッ!!!第1次正妻戦争開幕ッッ!!!

というわけでへいよーあるてらっくす!文明を究めし乙女、動かない破壊王、皆大好き褐色系セイバー型アイドルこと、実況のアルテラちゃんだ。

そして、解説には「お前は今まで食べた女の数を覚えているのか?」人外ゾーンをまっしぐら!人類最後の我らがマスター!』

 

『はい、どうも、そしてアルテラちゃんは後で楽屋裏ね』

 

『ひどいことするもりか?エロ同人みたいに!エロ同人みたい……痛い痛い痛い痛い……ごめんなさい真面目にやりますから無言でアームロックしないでくれ』

 

『いつの間にやら、作られたこの地下闘技場、観客のほとんどがうりぼうという獣臭さ…………。

何はともあれ、この大会の趣旨を説明ヨロ、アルテラちゃん』

 

『内容は単純。優勝者のみが万能の願望機である聖杯もとい願望実現装置を手にする事が出来る!その効果はたった数時間が何日でも感じてしまう優れ物!これがあれば好きなだけマスターとアダムでイブれるのも夢ではない!既にその効果は誰かさんが実証済みだ!さぁ、愛があれば奪え!暴力はいいぞ!』

 

『そう言えば、アルテラちゃんは参加しないんだね』

 

『私はマスターの隣でホットドック片手に他の女共がみっともなく争う姿を火の粉がかからない所で眺める方が楽しいからな。ROM専は良い文明』

 

『今、君に向けての殺意の波動をひしひしと感じるよ』

 

『全方位に喧嘩を売っていくスタイル!ただし私に害を為した者は即刻退場だからな!もう、何も怖くない……というわけで全選手入場ッッ!!』

 

 

 

 

―――マスターはオレのもの 邪魔するやつは思いきり殴り思いきり蹴るだけ!!

日焼けで褐色なんて私のパクリだ!悪い文明!モードレッドだ!!

 

「パクリじゃねぇよ!」

 

 

 

―――元祖オルタ!真のオルタこそこの私!

海でサンタ姿も良かったのではと最近、悩み中のセイバー・オルタだ!!

 

「ほっておけ」

 

 

 

―――真の幼児プレイを知らしめたい!!お前のどこが純潔だぁ!!アタランテ!!

 

「汝から仕留めるぞ……」

 

 

 

―――二日酔い対策は完璧だ!ただし吐瀉物プレイは勘弁な!

既に出来上がっているぞ!酔いどれけーかちゃんだ!!

 

「あはははははははは―――刺しがいのある王様系サーヴァントがひい、ふう、みい……」

 

 

―――ロリにもボインにもなれる!マスターの需要に応えるなら儂こそが三千世界で一等賞じゃ!

第六天魔王、織田信長だ!!

 

「あらゆるニーズに対応できる儂!つらいわー、有能でつらいわー」

 

 

 

―――応援席の姉様方の声援という名の冷やかしを背に受けて、

ゴルゴン姉妹の最下層カースト!メドゥーサの登場だ!!

 

「負けたら、負けたで後で小言をネチネチと言われるのでしょうね……」

「聞こえているわよ、駄妹」

 

 

 

―――マスターからの虐められ術はすでに私が完成している!

ジャンヌ・オルタこと邪ンヌだ!!

 

「誤解を招くような事、言わないでもらえる!?」

 

 

 

―――アイドル術に更なる磨きをかけ カミラン星からカーミラが帰ってきたァ!!

 

「カミラン星って何よ!?初耳過ぎるわよ!?」

 

 

 

―――先輩は私が守護らなければ……。

守護系マシュマロサーヴァント!マシュ・キリエライトだ!!

 

「デミサーヴァントです!」

 

 

 

―――看護師の仕事はどーしたッ 鋼鉄の炎 未だ消えずッ!

治すも殺すも思いのまま!! フローレンス・ナイチンゲールだ!!

 

「ふむ、時間を取れるなら……司令官の食事、運動、洗浄、排泄、睡眠全てを指導できますね。えぇ、大丈夫、大丈夫です何も問題はありません。私はあなたを治療します。他の全てを殺してでも……」

 

『ひえ』

 

 

 

―――ルールの無いケンカがしたいから聖女になったのだ!!

プロのステゴロを見せてやる!マルタ!

 

「違うから!関係無いから!ってか何よプロのステゴロって!」

 

 

 

―――旦那様への正妻の座が欲しくてここまで来たッ!

愛ッ、してッ、まーすッ!ストーカー筆頭、清姫だ!!

 

「ストーカーではなく、隠密的にすら見える献身的な後方警備です」

 

 

 

―――5人に勝てるわけがないだろッ!けど、マジでアンリ並に弱いので許してニャン☆

切実に出番が欲しい!4元素+黒いの!ファイブスフィールだ!!

 

「黒いのとはなんだ……Gみたいに言いおって」

 

 

 

―――白い物は染めたくなる!どうしてこうなった!どうしてこうなった!

けど、本人幸せそうだからいいよネ!白百合の姫騎士!セイバーリリィ!!

 

「マスターと……ずっと……密室で一緒……どんな事でも……はふぅ……」

 

 

 

―――人斬りで磨いた実戦剣術!

ビームは出せなくても、血なら口から出せるぞ!沖田総司だ!!

 

「いえ、出しませんから、大丈夫で……ゴフッ……!」

 

 

 

―――幽霊対策は完璧だッ!星の開拓者!

幽霊こわいでマスターの気を引くとは汚い、さすが海賊きたない、ドレイク船長だ!!

 

「別にそんな意図はないよっ!?」

 

 

 

―――マスターの一番の忠犬はこの私!聖杯よりは首を届けたい!

この大会の趣旨をわかっているのか!?ノンブレーキ、イエスクレイジー!狂犬、牛若丸だ!!

 

「主殿――っ!見ておられますか――!!」

 

 

 

―――メイドの土産に聖杯とはよく言ったもの!

フランス王妃の奥義が今 実戦でバクハツする!マリー・アントワネットだ!!

 

「今日は水着よ、ヴィヴ・ラ・フランス♪」

 

 

 

―――ぶっちゃけ露出度は水着になっても大して変わってないよね?

湧き出る色気、酒気、鬼の喧嘩を見せてやる!酒呑童子!!

 

「まぁ、うちとしては本物の方が欲しかった所やけど……これはこれでええか。かははっ……」

 

 

 

―――一人でも戦えるもん!他の同胞の力を借りずに勝利を手に出来るか?

すぐ脱落しないように頑張って欲しい所ッ!アサ子さんだ!!

 

「好き勝手言ってくれるわ……」

 

 

 

―――デカァァァァァいッ説明不要!!チイサァァァァァいッ説明不要!!

巨乳と貧乳が奏でるシンフォニー!アン&メアリーだ!!

 

「アン!放して!あいつコロス!!」

「落ち着きなさいメアリー!退場になりますわよ!?」

 

 

 

―――バーリ・トゥード(なんでもあり)ならこいつが怖い!!

ドーモ・セイバースレイヤーデスッ……謎のヒロインX!!

 

「合法的に他のセイバー+ヒロイン共を処理できると聞きました」

 

 

 

―――ビニールプールでたくさんマスターに遊んでもらった今の私に死角はないッッ!

キスっ娘、毒っ娘ッ静謐のハサンだ!!

 

「私とマスターで幸せ家族計画……ふふっ……」

 

 

 

―――ファンの前でなら私はいつでも全盛期よ!!

燃えるゲロマズ料理!エリザベート・バートリーだ!!

 

「ゲロマズじゃないし!最近は上達してるし!……タブン」

 

 

 

―――一体いつから私の尾が9本だと錯覚していた?

幻の十人目!自称淑女なパラソル狐ッ!スッパシャ!タマモシャーク!!

 

「玉藻の前だっつってんでしょーが、燃やすぞ」

 

 

 

―――若き?王者が帰ってきたッ!

第一回なのにチャンピオンとはこれいかに、願望実現装置使用の第一人者!

誰も君を待っていないッッッ!影の国の女王スカサハだ―――――――――ッ!!

 

「この大会が終われば次は貴様だからな、破壊の大王よ」

 

 

 

―――以上26名の元ッ第1次正妻戦争の開幕を宣言しますッッ!!

 

 

 

『いやー、どうだマスター?この今までにない大規模な聖杯戦争……楽しみであろう?』

 

『そうだね、事後処理が心配になるほど大規模だね』

 

()()だけに?』

 

『やかましいわ』

 

 

 

 

 




―――第惨事正妻戦争勃発

―――愛さなければ勝ち上がれない

『勝ち上がった者共をッッガン首揃えてここへ集めろッッ!
本物の闘争(意味深)というものを見せてやるッッ!!』


アルテラちゃん「(わくわく)」
ぐだ男「いや、そんな目で見られても乱入とかしないから」










スカサハ姉さんとのイチャックスは良い文明。

最後の正妻戦争は一体誰が優勝するのか?もう、最終的に平等に全員戴けばよろしいのではないのでしょうか……?え?枯れる?またまたー。
ちなみに出場選手は今までの話のメイン回となってきた娘達です。あしからず。



スカサハ師匠:サブカルチャーとやらに興味を持っているだけで可愛いもの、まだセーフだと思う。
アルテラちゃん:もう手遅れ。




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リトルビッグマスター(ブーディカ&アタランテ)

最初の方は1万字でも結構書いたなって感じでしたのに…‥ここ最近は平気で1万5千字ぐらいいってしまう法則……まぁ、ボリュームがあるのは良い事だよね。








「こーら、変な所触らないの……」


短めの赤髪を後ろで束ね、臍や胸元と露出度が高い格好をしている女性――。

ブーディカは目の前の光景に困っていた。

 

ただしそれは決して、嫌がっているという意味ではない。

むしろその光景自体は微笑ましくあり、慈しむべきものであろう。

 

ただ、その経緯と原因とそこから起きるかもしれないトラブルに頭を悩まさせているだけである。

 

「よいしょっ!これは、どう?アタランテ?」

 

「あぁ、良い球だぞ、マスター。今度はこちらの番だ」

 

彼女はシュミレーションという名の仮想空間によって作られた一戸建ての家の縁側から楽しそうに庭でキャッチボールをする()()()()を眺めている。

 

結構な頻度で怪しい芸術家のショップから薬を買っているという噂の獣耳の幼女と黒髪の自分達が良く知る人の面影を残す少年……そう、()()()()()()()()()()()()()()()()()()を視界に収める。

 

溜息を吐き、ブーディカは小さく呟いた。

 

どうして、こうなったと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつかの話、ダ・ヴィンチちゃんの作りかけだった薬を興味本位で飲んでしまったマスターは体が小さくなったという話……。女性陣が保護という建前で襲い掛かったのだが、結局、ゴルゴン姉妹による漁夫の利という形でショタマスター奪還戦は終わりを見せた。

 

どこかの島で『お楽しみでしたね』を終え、カルデアに戻ったマスターはいつの間にか元の姿になっていた。

制限時間があったのか、それとも何か別の要因があったのかは定かではないが……いつもの姿に戻ったマスターは自身のショタ化で暴走気味だったサーヴァント達の説得(意味深)に回る事でこの一件は終わったかのように思えた。

 

しかし、その後ダ・ヴィンチちゃんの工房でこのアホ(マスター)がぽろっと零した「けど、サーヴァントはともかく普通の人間の心も幼くするのはダ・ヴィンチちゃんでも無理なのかねー」という言葉がまたひと悶着起こす。

 

天才魂に火が付いた彼女は「お前のどこが普通の人間だァ!ゴラァッ!!」というツッコミを何とかしまいこみ、完成版ショタコンホイホイなる薬を作る為――。

小さくなったマスターがどんな姿なのか興味がある神代の魔術師メディア。

リリィ……?あぁ、知っているよ。狂化って意味でしょ?皆仲良くが信条のメディアリリィ。

マスターが望むなら……と通称よかれと思って錬金術師パラケルスス。

ちょっとガチ過ぎね?と思う程の豪華メンパーの力を借りた。

 

キャスターグループの叡智と結晶を詰め込んだ薬、これならあのマスターでも間違いなく効果はある筈!いや、あるよね?と少々疑心暗鬼になりながらも完成した薬をマスターに渡す。

 

普通ならばこんな怪しさ満点の薬など飲まないが、そこはいつでもエンジン全開あらゆる事に興味津々なお年頃である我等がマスター。

 

「飲んでくれるかな?」

 

「いいとも」

 

そんな二つ返事で躊躇なくゴックンと……。

 

……そして結果は大成功、きょとんとするショタ化したマスターの前でやり遂げたぜとハイタッチをかますキャスター組、すごい一体感を感じる。今までにない何か熱い一体感を。風……なんだろう吹いてきてる確実に、着実に、私たちのほうに……。

 

……だがここでダ・ヴィンチちゃんはふと冷静になった。この幼マスターの面倒は誰が見るのかと。

前回はあくまで体だけが子供になっただけだったが、今回は話が違う。

心まで子供と化したこの純粋無垢なマスターによからぬ事をする輩が出てきてもおかしくない。

 

「マスター!マスター!次はこの服着てみないかしら!」

 

「……もう、なんで、さっきから女の子用ばっかりなんですか……それに、あんまり興奮して近づくとマスターが怖がると思いますよぉ……」

 

「だいじょうぶ」

 

「ふふふ、聞き分けのよい子は好きよ。あっ、こっち見てポーズ取ってもらっていいかしら?」

 

「こう?」

 

「キャー!可愛い!凄く可愛いですよ!マスター!戦場に舞い降りた天使ですか!?」

 

「あんたの方が興奮してるじゃないのよ……」

 

取り敢えず、ダブルメディアによって着せ替え人形にされている様子を見る限り(何故だがフリフリの服はやたらと似合っていた)……子供になったからと言ってカルデアの皆の事を完全に忘れたワケではないらしい。

人は覚えているが、何故ここにいるのかはイマイチ良くわかってなかった様子。

あくまでその精神性だけが幼くなってしまったというべきか……ただ、幼くなってもその懐の広さだけは変わらず。

魔女二人組のおもちゃになっても嫌な顔せず……彼女達の要望になんでも応えてしまっている様子を見てしまうと色々と不安になってしまう。

世の汚さを知らないショタマスターが『お姉さんがいいモノあげるから、ついてきてらっしゃい……』という言葉に何一つ疑いを持たないで付いていってしまう姿を幻視してしまう程に。

 

ダ・ヴィンチちゃんとパラケルススはこの状態のマスターを主に一部のサーヴァントに知られたらヤバくね?と思わず顔を見合わせる。

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

『はぁんぅっ……旦那はんのこどもおちんぽがぁ……うちのナカでピクピクしとるわぁっ……あんぅ……ええわぁっ……その顔すごくそそるわぁっ……もっと、もぅっとぉ……絞り尽したくなるわぁぁっ…………』

 

『あう……もう、むり、だよぉっ……あぁっ…………』

 

『なにいうとるん……まだまだこれからやろぉ……?』

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

『ちゅるぅっ…………んじゅぅっ……んむぅぅっ……』

 

『はぁっ……ぁっ、くぅっ……!』

 

『こらっ、駄妹……ちょっと吸血し過ぎよ!……相手はマスターでも子供なのだから、もう少し手加減しなさいっ』

 

『はえっ?……えぇっと……確か上姉様が私に好きなだけ吸血しなさいと命じたよう……ぎゃふんっ!』

 

『ごめんなさいね……可愛い可愛いマスター……怖かったでしょう……?よしよし…………ほらっ、好きなだけギュッとしてあげるわ…………』

 

『ステンノお姉さん……』

 

『うふふ……そうそう、イイ子よ……』

 

『メドゥーサをけしかけておきながら、自分はひたすら優しくする側に徹して……子供マスターの依存度を高めるとは、何というマッチポンプの使い方……さすが(ステンノ)ね』

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

『ふふふっ……愛しい愛しい、私の子……何も心配する必要はないですよ……あなたは母だけを見て……母だけを愛してくれればいいのですから、母はその愛を何千倍にもして返すだけですからね……あっ、また乳が飲みたいのですか?ええ、いいですとも……好きなだけ吸ってくれていいんですよ……あんっ……!……もう……元気がいいんですから…………ええぇ……離しません……絶対に、何があろうとも、私はあなたを離しませんからねぇ……もし私達親子の絆を裂こうとする輩がいるのなら………………』

 

 

 

 

 

どこぞの平行世界の電波を拾ったのか、冷や汗を掻く芸術家と錬金術師。

ショタマスターの撮影会をおっぱじめている頭お花畑の二人は放置して、事態の深刻さを理解する。

 

「うん、まぁ多分肉体的には大丈夫だと思うんだよ?だって前にショタ化した時もあのゴルゴン姉妹を相手取れたっていうしね……」

 

「問題は精神面ですね……さすがにあの年から既にいつものマスターのような特異な性格をしている事はないと信じたいですが…………」

 

「正直な話、元に戻った際にショタ化した時の記憶が残るかどうかは定かではないよ……

けど、女性陣が無茶をして、その性行為が幼きトラウマとして残ってしまったら…………」

 

「彼が本能的に女性陣を避けてしまう危険性があるという事ですね……?」

 

もし、そんな事になれば……間違い無く人理焼却案件になってもおかしくない、魔術王どうこうの騒ぎでは無くなる。

自害、殺傷沙汰……最終的にカルデア自体が爆発オチなんてサイテーということになってもおかしくないだろう……特にマスターの存在自体が精神安定剤としているサーヴァントだって複数いるわけであり。

 

「……まぁ、仕方ないよね、彼女に預けよっか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……はぁ――……それで、私を呼んだと?」

 

「うん、今のカルデアに母性があって子供の面倒もちゃんと見れて、なおかつ常識がある人と言ったら君ぐらいだし」

 

お呼びだしをくらった、甘えたくなる母性っぱいことブリタニアの若き女王ブーディカは呆れた目線を事情を説明したキャスター組に向けていた。

 

「私を頼ってくれたのは嬉しいけど、どうしてこう悪ふざけをしちゃうのか……いくら自分のサーヴァントだからってそんな得体の知れない薬を飲んだら、自分の身に何が起こるなんてわからないでしょ…………あ―――――、うん……事の発端はあの子からだってのはよくわかっているんだけど、ね…………」

 

「源の母君は当然却下、マタ・ハリもどっちかというとあれは大きい子供を駄目にする母性だしね。

後は……マリー王妃でも良かったんだけど、ふむ、私の天才的な勘が彼女は彼女で子供との背徳的な交わりにコロっと堕ちてしまいそうな可能性を告げていてね」

 

あくまで例えだが……確かに彼女はメイドとご主人様の不倫プレイに溺れてしまいそうなタイプではあるかもしれない……イケない事だから、生前だったら絶対にしないような事だからこそ、背徳感によって快感を得てしまうような………………あくまで例えだが。

 

「彼女に限ってそれはありえないでしょ」

 

「まぁまぁ、万全を期してという事でさ、安心して預けられる人材を選んだのさ。

まさかブリタニアの女王が『くっ……!ショタマスターのアソコで気持ちよくなんてっ……あぁっ!悔しいっ!……けど、感じちゃう!』なんて展開に……痛い痛い痛い痛い!すいません少し調子に乗りましたっ!だから、車輪で殴るのはやめて!ライダークラスの攻撃は私に良く効くから!!」

 

とまぁ……ブーディカはキャスター組の叱責は程々にして、一人ファッションショー状態になっていたマスターをその豊満な胸元で包むように抱きかかえ、工房を離れる事にした。

 

彼を抱える際に『私の子を連れていかないでぇっ……!』と今にも泣き出しそうなメディア組の視線が非常に鬱陶しいかったが……。

ただ確かにこう胸元にいるマスターの顔と仕草を見てしまうとつい可愛がってしまうのも仕方ないのかなーとブーディカは少し納得してたりする。

中性的というか儚さというか……何を考えているのかよくわからない顔しているマスターは無性に母性本能をくすぐってくる雰囲気だった。スキルレベルで魅了を振り撒いているわけではないだろうが……。

 

「ロマンには話を通しておいたから、シュミレーションでマスターを連れていくといい……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……?」

 

最後のダ・ヴィンチちゃんの言葉が少し引っかかったブーディカだか深くは考えず、小さくなった自分の主と面倒事を避ける為に避難する。

 

『後で必ず迎いに行くわぁ―――っ……!』と言わんばかりに必死に届かない手を伸ばしている魔女コンビに対して手を振るショタマスター。

 

「せちがらい世の中だね」

 

「あぁ、うん……その年で良くそんな言葉知ってるね、マスター」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「必殺!はめしゅ・あうぁにむ!」

 

「うむ、ただの大暴投だが……これぐらいキャッチするのはワケないぞっ……ハッ!!」

 

一見すると、庭で小さい子達が楽しそうに戯れている画にしか見えないけど、片方は英霊でもう片方はその英霊を束ねる最後のマスターなんだよね……。

どこで嗅ぎつけたのか知らないけど、途中からしれっとアタランテも付いてきちゃったし……さすが狩人、獲物を見つけるのはお得意だったりするのかな?

 

 

 

 

・・・・・・・・・

 

 

 

 

『大人とずっと二人っきりではマスターも萎縮してしまうだろう?それならば、同年代の者が一緒にいた方が良い筈だ。

アリスだと、まず間違いなく大人しくはしないだろう……子供になったマスターを連れて自由奔放に様々な場所を駆け巡ってしまいそうな危険性があるしな。

それならば私が一番の適任だろう、こういう時の為に常に携帯している小さくなる薬は既に服用済みだ…………あぁ、安心しろマスターが飲んだ物のように心まで幼くはならん、さすがにそこまで汝に迷惑はかけられんからな……あくまで私は子供の体で冷静にサポートに回るだけ、体は子供、頭脳は大人というやつだ。

それとマスター、私がしっかりと男児用の服を用意したから、こっちに着替えるといい、全く……奴らめ、好き勝手しおって……マスターも嫌だったら嫌と言うのだぞ』

 

『いいよ、おれが着替えるだけで、メディアお姉ちゃん達すんごく喜んでくれたし。

おれもその顔見るのなんか好きだったから、すんごく楽しかったよ』

 

『……………………結婚してくれマスター』

 

『はーい、ちょっとストップしようかー、純潔の狩人ちゃん』

 

『何故止める?いつもの姿ならまだしも、今の私の格好は子供であろう?ただの子供同士の微笑ましい戯れだ』

 

『なら、そのギラついた瞳を少しは隠そうとする努力をしようねー』

 

微笑ましい戯れというよりは獲物を前に舌舐めずりしている狩人さんなんだよなぁ。

 

『将来大きくなったらお嫁さんにしてね的な約束を結んだ小さい頃からの幼馴染として結婚を前提とした付き合いをして欲しいマスター』

 

『おい、無視すんな』

 

欲望増し増しだね!?

 

『…………うーーん、女の子がそう簡単にけっこんとか言っちゃダメだと思う。自分の身はだいじにしよう』

 

『(ガーーーンッ!)』

 

そんでフラれてるし!それとマスターもその台詞は色んな意味で君が言っちゃいけない台詞だと思う!

あー、けど……今の彼には何の罪も無いよね、実際に多くの女の子を既にお手付きしちゃってる記憶が残ってる筈もないし……やっぱり子供になったマスターはいつもとは大分性格も変わるんだ……。

 

『だから、これからアタランテとおれは友達からはじめるべき……いっしょにたくさん遊んで……いっぱい過ごして、そして大きくなっても今の気持ちをわすれなかったら……アタランテをお嫁さんにする』

 

『うわーんっ!ますたぁっ……!!』

 

感極まって涙を流しながら、抱きつく獣耳幼女……それを手慣れたようにあやす黒髪の少年。

うん!やっぱりこの子はマスターだねっ!安心した!

 

 

 

 

・・・・・・・・・

 

 

 

 

幼女化した彼女と出くわした時は色々と不安だったけど、楽しそうに庭で遊んでいる姿を見る限りは一安心って所かな……。

それに――――。

 

「そらっ!私に追いついてみせるがいいっ……!あははははっ!!」

 

あんな幸せそうな顔を見て、邪魔なんて出来ないしねー。

 

広がる青い空も風の匂いもシミュレーションで作られた偽物だけど、目の前にあるあの子達の繋がりだけは本物だもん。

うん、まぁ……マスターの悪ふざけとか、アタランテの性癖が歪んできているような不安はあるけどさ。

私は私で彼が元に戻る方法を探るべきかな……?

一応、ダ・ヴィンチからは何かあった時の為にメモみたいなのは渡されてるけどねー、開くべきか……彼女?は彼女で割と愉快犯な所があるからこのメモを見たら碌な事にならない予感が……。

 

「……ん?」

 

気が付くと目の前まで近づき、こちらを見つめるマスターの姿が。

途中で遊びを切り上げられた為なのか、後ろから不思議そうな顔をしているアタランテも。

 

「どうしたのマスター?アタランテと一緒に遊んでこなくていいの?」

 

「ブーディカ姉ちゃんがなんか悩んでるように見えたから、しんぱいになった」

 

こちらを見上げてくる男の子に思わず笑みが零れてしまう、こんなちっちゃ子に心配かけちゃ駄目だよなー。

 

「もしかして、おれをあずかったことによる、家計のあっぱくとかが悩み?」

 

「大丈夫、大丈夫……そんなシビアな悩みは無いよ。君は絶対、私がちゃんと最後まで面倒みてあげるからさっ、もちろん隣のアタランテちゃんも一緒にね!」

 

自分が何故カルデアにいるのかわかっていない不安な状態の筈なのに、こうして私を気にかけてくれるこの子の優しさが嬉しくてついアタランテとまとめて抱き締めてしまう。

 

「ふみゅっ…………」

「わっぷ、私もかっ……」

 

あー、もうっ!本当に可愛いなー!

いつもは私達を振り回してばっかりだけど、こうも小っちゃくなると母性本能にクリティカルヒットだよ、全く!

大きくなるまで私が責任をもって育ててあげたいよ!

 

「…………んっ……ふぅ……ハァ、ハァ……ブーディカ……姉ちゃん」

 

ふふ、顔も真っ赤にして……もしかして照れてるのかしら…………ってあれ……?ちょっと様子がおかしいような……?

 

「おいブーディカ、これは……」

 

「え?待って!……どうしたの!?マスターっ!?」

 

顔を紅らめ……息を荒げるマスターを見て只事ではないと思った私は一旦、彼を抱擁から解放した。

アタランテはどうすればいいのかと彼の周りでオロオロしている。

 

もしかして、薬の副作用とか出たのかと考えた私は頼みの綱としてダ・ヴィンチから託されたメモ用紙を開く。

彼女ならこの展開を予想している筈っ……!

 

 

 

『やぁ、やぁ……このメモを見ているという事は彼の身にやんごとなき何かが起きているという所かな……?

そうだね、まず私達キャスター組は彼の身も心も子供化させる為の薬を作るとして……どこをベースにして作ろうかと考えた。

そういえば、媚薬に関しては彼にもしっかりと効果があったなーと思ってね。まぁ、それもサーヴァントにすら効果がある強力なモノという点を聞く限り彼の規格外っぷりがわかるというか…………とにかく効果があったのは事実さ。

それで、その媚薬をベースにして……エロ方面からアタックすれば人外マスターにも十全の効力が発揮できるだろうと予想したわけだよ……ほら、男の子は皆えっちぃのが好きだろ?

色々とふざけた考え方だったけど結果は知っての通り大成功!

けど……うん、副作用として当然、媚薬の効果が時間差で出てくるんじゃないかなーと思った私は彼の性衝動を大人の余裕で優しく沈めてくれるであろうサーヴァントを探したワケなのさ。だって下手に何も考えず……他の女性サーヴァントに預けちゃうとハァハァしてるショタマスターに理性を保てるとは思えなかったしネ!

んで、これも推測だけど……彼の性欲をちゃんと発散させれば、薬の効果も一緒に無くなるんじゃないかなって踏んでるんだ。

つまりっ!ショタマスターの身は君達の手腕にかかっている!あ、手腕とはいうけど、別に他のトコロも全然使ってあげてもかまわないからね?特に君は母性溢れるいいモノを持っているしね!

さぁっ!レッツ!エンジョイ&エキサイティ……』

 

 

―――――ビリビリッ……!!!

 

 

最後まで読み切らず、紙を引き裂いてしまった私を責めれる者はいるだろうか。

後であの芸術家にはしっかりとお灸を据えておこう、あーー頭イタくなってきた……。

 

アタランテもあの子のスボンの上からでも丸わかりな膨らみで全てを察した様子だし……。

 

まぁ、元はと言えば、私が不用意に抱き締めたりしたのが良くなかったのかもしれないし……責任はしっかりと取らないといけないよね。

…………いや、うん…………実は役得だとか全然思ったりしてないからっ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うむ……要するにマスターの昂ぶりを我らで静めればいいのだろう?」

 

「その通りだけど、君も無理に参加しなくてもいいんだよ?」

 

ただでさえ今は彼女も子供の体だしさ。

 

「何を言うかっ!こんな羨ましい事を汝だけで独り占め……ゴホン……マスターが苦しんでいるというのに私だけがのうのうと見てるだけでいれるわけがないだろう!」

 

「…………本音の隠し方がガバガバすぎるよ……」

 

取り敢えず息を荒げる彼をベッドに上げ、邪魔になる衣服を脱がし、緊張した面持ちでズボンを下げるアタランテ。

子供ながらも中々のサイズが勢いよく飛び出し……思わず二人しておぉ……と感嘆の声を挙げてしまう。

 

「……ハァ……おれ……もしかして……びょうきなのかな……?」

 

それまで私達二人のやり取りを黙って見ていたマスターが心配そうな声を挙げた。

 

「大丈夫、病気なんかじゃないよ、今は辛いだろうけど必ず治してあげるから」

「あぁ……怖いだろうが……我らの事を信じて、身を任せて欲しい」

 

そりゃあ、いきなり脱がされていつもと違う自分の性器なんて見てしまったら不安になるよね。

 

「だいじょうぶ、怖くないよ……二人なら何をされても…………安心だから……」

 

……………………

 

「…………なぁ、ブーディカ……」

 

「待って、言わないで、私もちょっと大人の汚さというか自分の汚れ具合にダメージを受けているから」

 

これからする事は必要とはいえ……結局、彼に性的な欲望をぶつけてしまう事は事実なワケで、しかも私達二人、さっきから発情状態になっている子供マスターを前に興奮を覚えてしまっているのもまた事実…………だって。

すんごく色っぽいだもん!子供に持つ感想じゃないってのはわかってるけどさぁ!

ハァハァしてる今のマスターすんごいカワいらしいだもん!!仕方ないじゃん!

 

「フフッ、そんな状態で眩し過ぎる全幅の信頼を寄せられてしまうと……なんか心が痛いっ!」

 

「私とて同じだが、罪悪感に浸るのは後でよかろう……ではマスター……汝はこれから何もする必要はない…………変に力む必要もない、力を抜いてくれ」

 

こくっと頷いたのを確認した彼女は脈打っている竿に手をかけ、両手で繊細に優しく撫で始めた……。

 

「……ふぅ……んくっ」

 

その微弱な刺激でもしっかりと快感として受け取っているのか彼の体は小さく震え始める。

それに気を良くしたのか、今度はその小さい口で彼の剛直を咥え始める。

 

「んじゅっ……んんぅっ…………じゅる、じゅるるぅっ…………じゅぽぉっ……んむぅっ……」

 

「ふあぁっ!……そこ、きたないよっ……んぅ……ぁっ!」

 

口から溢れそうなる程のサイズを気にする事なく頬張るアタランテ……幼女化した彼女にとっては……いくら子供になったとはいえ勃起状態である彼のアソコを口淫をするのは苦しい筈。

にも関わらず、その顔には苦しさなんてものは微塵も感じられなかった……悶えるマスターの様子を見て、嬉しそうに……もっとと言わんばかりに激しくフェラをする。

 

「じゅっ…………じゅるるぅっ……!んんむぅっ……むじゅぅ…………じゅぽ、……んむあっ……れろぉっ……ぴちゅぅ……あむじゅるるぅ……」

 

陰茎の奉仕を口に任せた彼女は今度はたっぷりと精の素が入っている陰嚢をマッサージし始めた。

マスターは股に広がる今の自分にとっては未知の快感に翻弄され、自然と腰が浮いてしまっている。

 

「彼女にばっかりやらせるのもあれだしね……私もそろそろ参加しようかな。ほら、マスター……お口こっち向けてもらっていいかな?」

 

顎に手を添えられても何も疑問に思わず、言われるがままにしてくれる彼についキュンキュンしてしまったが……それを表情には出さないように口づけを交わす。

 

「……大丈夫だからね、んっ…………」

 

唇を重ねるだけの優しいバードキス。いつもの彼との情事ならここから激しく舌を絡め合う所だが……。

今の私の仕事は子供になった彼に出来るだけリラックスさせた状態で情事に励まさせる事。

正直な話、弾けるぐらいにプリプリなマスターの唇の感触と顔を真っ赤にして目を瞑っているいじらしい様子でこっちの理性が一瞬飛びそうになったけど…………無問題、無問題、私は獣じゃない獣じゃない獣じゃない。

 

「んむぅ……んっ、んぅ……ちゅっ……ちゅっ、んちゅ…………ちゅぱっ……よしよし……いい子、いい子……ちゅっ……」

 

頭を撫でながら……甘やかすようにキスの雨を降らしていく。

 

「むむぅ…………じゅるぅ……じゅうぅっ……!……むちゅるぅぅ……じゅぽぉ……じゅるるるぅっ……!」

 

私に負けじとばかりに吸い込みを激しくしていくアタランテ。

口内全ての唾液を擦り付けんばかりに目いっぱい頬張って奉仕を続けていく。

 

「あぁ…………ぁぁっ……なん、か…………アソコが…………ムズムズし、て……っくぁっ……」

 

私と自身の涎で口の周りを汚されたマスターがか細い声で自分の限界を告げていった

 

「んちゅっ……ちゅぱぁっ…………いいの、そのまま……君が一番気持ち良くなる事していいからさ、我慢なんてしちゃ駄目だからね?ほーら、気持ち良くな~れ、気持ち良くな~れ…………」

 

「はぁっ……ああぁっぁ!!」

 

「んむぐぅっ!?……んぐぅっ……!んんぐぐぅ…………ングッ……ごくぅっ……んくぅ…………ぅくはぁっ……」

 

子供ながらも中々の量を吐き出された彼女はその口を離すことはなく……彼の玉袋を丹念にマッサージしながら……飲み残しがないように喉を鳴らしていった。

 

「結構、頑張るねー……全部飲む必要は無かったと思うけど…………」

 

「構わん……いつものマスターと比べれば大きさも量もまだ許容範囲だからな、ここで私が苦しそうな顔を見せてしまったら逆に不安がらせてしまうだろう?」

 

ちゅぽっと音を立てたアタランテちゃんはドヤ顔を見せつけてきた…………まぁ、口の端から垂れてる精液で色々と台無しだけど。

 

「ふぅ、この一回で収まってくれたらと思ったけど……」

 

「薬の効果か、それとも元々のマスター素質か……」

 

初めてともいえる性的絶頂に心あらずといった様子のマスターだったが、アソコはまだ硬さを失っておらず……そそり立っていた。

 

「やはり、口と手だけでは足りなかったか、仕方あるまい……ブーディカよ、手を貸すがいい」

 

「ちょっと待って!なんで服を脱ぎ始めてるのかな!?」

 

後、仕方ないとかいう表情じゃないよ!鏡見て!大分ノリノリだよ!

 

「これからマスターと交わるからに決まっているだろう。なれば、もはや衣服など無用だ……それと実は言うと私はまだマスターと挿入まではした事が無い。」

 

さっき、あんなに慣れた手付きで愛撫しておきながら、彼女の口から衝撃的発言。

 

「君……もしかして、こんな状態でマスターに初めてを奪ってもらうつもり?」

 

そんな初めて同士で大事故になっても知らないよ。

 

「だから、手解きを頼んでいるのだ。いきなり……汝のような熟れた体に襲われてはマスターの体に負担をかけてもおかしくないだろう。だから、まずは私のような未成熟で年の近い女の子の体で親近感を持ってもらうのが一番だ」

 

「で、本音は?」

 

「こんなおいしいシュチュエーションに出くわすのは二度と無いと思うので見逃して欲しい!マスターに絶対無理はさせん!暴走しそうになったらその場で気絶させても構わないからっ……!!」

 

わーお、切実。

私としてはそもそもあのアタランテが子供であるマスターに無理はさせないってわかってるからいいんだけどさ……。

彼女の親近感云々という話もある意味一理あるっていうか……私みたいなおばさんとするよりは同じぐらいの大きさの彼女とシた方が絵面的にもまだ健全だよね……………………アレ?なんか私麻痺ってきてないかな?

 

「マスター……体の方は大丈夫か……?何か不調があればすぐに言うのだぞ?」

 

「だいじょうぶ…………むしろ、なんか……スンゴく、すっきり……したし……アタランテの……好きにしていいから……」

 

「ますたぁっ……!」

 

凄くプルプルしてる……今必死に理性と本能の狭間で戦ってるんだろうね。

マスターもそんな顔で「好きにしていい」なんて台詞吐いちゃ駄目だよ。女は皆、獣なんだから。

 

「…………ふぅ――……ふぅ――…………ではよろしく頼む……」

 

なんとか理性を勝利させた彼女は全裸になっているマスターの前で股を拡げ……準備を整える。

 

「前戯とかで濡らさなくていいの?いきなり本番?」

 

「安心しろ、マスターのモノを咥えた時から既に私のアソコは大洪水だ」

 

純潔ぇ……。

 

確かに彼女の性器は幼さを見せながらも既に割れ目から愛液を垂らしていた。

これなら大丈夫かなと思った私は彼女の小さい淫裂を拡げ……マスターの亀頭で狙いを定めていく。

 

「………………私、今、なにしてんだろうね……年端もいかない子供達の性交の手解きしてるって……しかも、自分の主と仲間の」

 

「んぅ……くっ…………おい……そこで急に冷静になられて困るぞ……あっ……私とて……深く考えないようにしているのだから……」

 

「……わかってるってば、ちょっと闇堕ちしそうになっただけだよ。それじゃあマスター……強張らなくていいからね……目の前にいるアタランテちゃんだけを気にしてあげればいいから」

 

私の言葉に素直に頷いた彼は目の前にで私に恥部を開からされているアタランテを真剣な眼差しで見つめ続けた。

 

「…………うぅっ、そんなに見つめられると……恥ずかしい、ぞ……」

 

「さっきからアレだけの事しておいて、何を今更いっちょ前に羞恥心を感じてるの。ほら……息吐いて、力抜く……腰、下ろしていくよ」

 

「んふぅっ!……はぁっ……あぁ……!んくうぅぅっ……!!」

 

ズブズブと女陰に飲み込まれ……二人の交わる面積が増える度に互いに甘い声が漏れていく。

 

「はぁっ……これが……マスターのぉっ……んはぁぁっ……!……ずっと……ずぅっと……これが欲しかったぁっ……!!」

「んくぅ……!アタランテっ……」

 

未知の感触が自身の肉棒を包み……その快感に翻弄されながらも彼はアタランテから目を逸らす事はしなかった……それどころか彼女の手を繋ぎ……指を絡め……まるで安心させるような素振りまで見せている。

 

「はぁぅっ……!……ますたぁっ……うれしいっ……うれしいっぞぉっ……ああぁんぅ……!」

 

「ほら、アタランテ……君が動かないと……」

 

「あぁっ……わかって、いるさぁっ…………んぅっ!あぁっ……!はぁっ!っあああ!」

 

ゆっくりと腰をくねらせ、ナカを擦りつけ……痺れるような幸福感に頬を緩ませるアタランテ……彼女の腰の動きに合わせて彼の口からも大きめの喘ぎ声が出てくる。

 

「…………はぁっ、ますたぁっ……!……あぁっ、キス…………いや、ちゅう……してもいいかぁっ……!」

 

涙を流しての懇願にマスターは微笑みながら首肯した。

その返事に歓喜の声を鳴かせながら彼女はマスターと唇を重ねる。

 

「んちゅぅ……ちゅはぁっ……はぁっ……はぁむぅっ……むぅっ……ちゅるぅっ……ちゅぅ……んあぁっ……ますたぁ、ますたぁ、ますたぁ…………んちゅっ……」

 

「んちゅ……ちゅ……アタ、ランテ…………」

 

彼も彼女の口づけに応えるように体を抱き締め……少しずつだが自分からも腰を動かしていた……。やっぱり学習能力は高いのかなー。

 

幼い二人の体が生まれたままの姿で必死に互いの口を貪りながら……腰を振りあっている。

淫靡的で背徳的でどこか神秘的にも思えてしまいそうな光景だった。

 

そして、つい手持ち無沙汰になった私は性的接触に慣れてきたマスターと荒ぶっている彼女の尻尾を見て……こっちからも手伝ってあげようと思い彼に声をかける。

 

「ほら、マスター、この娘の尻尾と耳もキチンと愛してあげるんだよ」

 

捕まえた尻尾を彼に握らせる。彼はさっき自身の陰茎にされた時のように上下に擦り始めた。

空いた手で彼女の緑髪からのぞかせている獣耳を指先でくすぐるように愛撫していく。

 

「ふにゃっ!?やぁっ……はぁっ……まっ、まてぇ……そこは駄目だぁっ……!耳も、尻尾も……やぁぁぁっ!」

 

元々の才能なのか、若返っても体自身にそういった性的技巧が刻みこまれてしまっているせいなのかは定かではないが……彼は的確にアタランテの気持ちいい所を責めていった。

 

「はひぃっ……!んちゅっ……ちゅぱっ…………ひあぁっ……あぁっ……やあっ……やぁぁ!……ひゃぁっ……ひゃめてぇ……きもひいところ多すぎ、てぇんむぅっ……ちゅるぅっ……ちゅぅっ…………あぁんぅっ……あぁ、あああっっ……らめになるぁうっ……ちゅるぅ……んんんぅっ……!」

 

頭、尻尾……性器とあらゆる所から快楽を送り込まれ……やめてと言いながらも……彼女の顔はどんどん恍惚に染まっていった。

性感帯を虐められてもなお……彼女は口づけを止める事はなかった、彼の顔をもっと近くで見たいと言わんばかりに甘え始める……。

 

「ちゅぱぁっ……あぁあっ……ましゅたぁっ……好きだぁっ……あぁんぅ…………んちゅぅ……愛してるっ………………私のアソコをいっぱい……お嫁さんにして……くれぇ……んくぅっ……あぁぁぁぁぁ…………」

 

彼の腰が膣内の深い所までいくように浮かんでいく、アタランテも下腹部にやってきた痺れるような衝撃に堪らないとばかりに体を起こし……そして……

 

「っぁ……!また……出てっ……」

 

「あふぁぁあぁぁああぁっ……!!!ひぅっ……!ひあぁっ……!ああっっ……!すごいっ……私の小さいナカじゃぁっ……おさまらない……ぐらいぃっ……んはあぁぁぁぁ…………!!」

 

子供マスターの素が自身の子宮までたっぷり犯していった陶酔感に浸りながら彼女は仰向けに倒れ、眠るように気絶した。

 

「……ハァ――……ハァ――…………あれ、アタランテ……?」

 

「大丈夫だよ、疲れて眠っちゃっただけだから」

 

倒れたアタランテを心配そうに見つめる彼に声をかける。

結構な量を吐き出したのか……彼の肉棒は最初程の硬さは既に失っているように思えた。

 

「後。一回ぐらい出せば……おさまるかな……」

 

「……?」

 

既に服を脱ぎ始めている私は彼の耳元まで近づき……そっと呟く。

 

「お姉さんにも……気持ちイイこと、シてくれる?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちゅぅ……ちゅぅ……ちゅるぅ…………」

 

「んふぅ‥あっ……んぁっ!……こらぁっ、もう……そんなに吸い付いてぇ……はふぅ……子供、なんだから……ああぁっ……!」

 

最初は膝枕をして、取り敢えず……彼の性器が硬さを取り戻すまで優しくマッサージしてあげようと思ったらいつの間にか彼に授乳をするように体勢に。

いや……全裸で膝枕なんてした段階でどうしても私のおっぱいが彼の顔に当たっちゃうし仕方ないと言えば仕方ないのだが。

…………偶然だから偶然、狙ってなんていないし。

 

「あぁっ、あん……!ふぅっ……んぅ……ふふっ、お姉ちゃんのおっぱい……おいしい……?」

 

こくこくと頷きながら……吸い付きを止めることはない。

歯で甘噛みされ、唇と舌で乳首を音を立てて責められると母性なのか、それとも女としての性なのか……つい笑みと喘ぎを零してしまう。

 

「ふぅっ‥んあぁっ……はぁっ……あん、……そんなに……吸われるとぉ……んふぅっ……ミルク、出ちゃうよっ……あくぅ……!」

 

さっきまで一心不乱に吸い付いていた彼だったが一度、口を離したら今度は吸っていなかった方の胸も寄せるようにして、両方の乳頭を同時に吸引を開始した。

 

「あぁぁぅ!!…………こ、らぁっ!!ひとつじゃ…………物足りなかったのぉっ……んあぁっ……欲張りなんだからぁっ……ひぅっ……!!」

 

チュウチュウと私のおっぱいを口元まで寄せながら、彼はしゃぶりつくすように二つの先端をまとめて咥えている。

 

胸の先から駆け巡る痺れるような刺激につい、彼の性器を扱く手が止まってしまったが……目をやればもう子供らしくない大きさにまで興奮していたので問題はないだろう。

 

「ほらぁっ……んんぅっ……もっとお母さんのおっぱい……吸っていいからねっ……あぁんぅ!」

 

彼の小さな頭を抑え、自身の胸を押し付けるように抱き締める。

母として乳を与えてるのか、女として快楽を享受しているのか……その狭間で揺れ動きながら、私は性的絶頂に達してしまった。

 

「あはぁぁっ……!!あっぁっ……!…………ふぅっ……まいっちゃうなぁ……胸だけで、イっちゃたよ…………もう……」

 

胸を解放してくれた彼の口と自身の乳首から半透明の液体が垂れてるのを見て……あぁ、気持ち良くなりながら母乳を出しちゃうなんて私も大概に淫乱だなーと他人事のように思いつつも彼に声をかける。

 

「ねぇ…………今度は君の、ミルクが欲しいな……」

 

彼は賢い子だ。

さっきとのアタランテとの交わりでもうベッドに倒れこみはしたなく股を拡げている私が何を望んでいるのかわかっているだろう。

 

「挿れ方はもう…………わかってるよね……?」

 

ごくりと唾を飲み込みながら、剛直を近づけて来る彼を見て、幼くなっても私みたいなだらしない体で興奮してくれてるんだなって嬉しい気持ちになってしまった。

 

「っあぁっ……き、たぁっ……」

 

マスターの性器が私の膣内へと入ってくる……アタランテとはまた違う感触に戸惑っているのだろうか……おっかなびっくりといった様子で少しずつ進んでいく。

 

「……ぁあっ……あふぅっ……!……おねーさんはだいじょうぶ……だから…………君の、好きなように動いて……いいんだよ……!」

 

安心させるように彼の頭を谷間に挟まれるように抱き締める……。

私の言葉に余裕を持てたのか、抽送がだんだんと激しくなってくる。

 

彼の剛直が膣襞をえぐってくる感触もそうだが……あのマスターが顔を真っ赤にして健気にも腰を必死に振っている姿が私の下腹部を疼かせてくる。

こういうのをギャップ萌えっていうのかな……?

 

「あん、あぁ……はぁぁあ!……そうっ……上手……上手ぅっ…………がんばってぇ……んあぁっ……!!」

 

私も手伝うと言わんばかりに彼の腰を掴み……自身の膣内をより深くまで挿入出来るように力を加えてあげた。

 

彼はいつの間にか私の胸に再び喰らい付いていた。

やっぱり男の子はいくつになってもおっぱいが好きなんだなーと思いながら好きなようにさせてあげる。

 

「んぅっ、あぁ、はんぅっ!……ふああぁっ……!!……はぁっ……そんなにしたらぁっ……おっぱい伸びちゃうよぉっ……慌てなくても…………くふぅっ!…………お母さんのおっぱい好きなだけ……はぁっ……飲んでいいんだからねぇっ……あふぁっ!」

 

「ちゅぅ…………ちゅるぅ……お母さん……お母さん……んちゅぅ…………」

 

お母さんと連呼しながら、私に甘えてくるマスターに昂ぶりが抑えきれなくなり…………乳首もビンビンに勃起し、母乳もさっきからどんどん溢れ出している気がする。

もっとこの子を甘やかしたい…………もっとこの子を愛してあげたい気持ちが表出していく。

 

下腹部をぶつけあう音、愛液が掻き出され、乳液が吸い尽くされる音…………いやらしい音が私達の周りを包んでくれる。

 

「はぁっ……!お母さんっ……もうっ……!」

 

「……んふぅ!……あぁっ……!!いいっ……!いいよぉっ……いっぱい出してぇっ…………あふぁぅっ!…………お母さんのまんこにぃっ…………君のミルク好きなだけらしてぇっ……!!」

 

彼は射精すると同時に乳首からも激しく吸引してきた。

精液が私の膣内を犯し、母乳が彼の口内を汚していく……まるで二人の体から射出された愛液を交換しているようだった。

 

「んひあああぁぁっ―――!!やぁっ……!!あふぁぁっ……!!あぁっ……す、ごいっ……アソコもおっぱいもすんごくキモチよくらってぇぇ…………!こどものますたぁに……おっぱい吸われながら…………ナカ出しされちゃってるぅっ…………あぁぅ……」

 

言葉に出すとより大きな背徳感を感じる。

けど今の私にはその背徳感するも只の快感の材料でしかなかった。

 

3度目の射精で疲れ切ったのかゆっくりと自身の体の上で瞼を閉じていったマスターを見ながら、私は心地良い疲労感を感じていた……そのまま彼と一緒に寝てしまうぐらいに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日談というか、その後の話。

 

目を覚ますと隣にはいつもの体に戻っていたマスターの姿が……。

どうやらあの芸術家の話は本当だったらしい。

 

まずは……同じく元の体に戻って「マスター!子供同士で愛を育んだ次は私とたっぷりと子作りをっ!!」とかのたまってたアタランテを気絶させておいて……彼にお説教を。

 

 

 

・・・・・・・・

 

 

 

「………………何があったか身に覚えがない君に言うのもアレだけど、得体の知れない薬を飲んだ事ぐらいは覚えてるでしょ?次からはもう少し自重を覚えてね」

 

私としても小さくなった時の記憶が彼にあったら色々とこっ恥ずかしい事になっちゃうからね…………。

っていうか冷静に考えると『お姉さんにも気持ちイイ事してくれる?』とか『君のミルクが欲しいな……』とか馬鹿じゃないの私!?マスターとはいえ、あんな幼い子相手に発情してさ!!あ―――もうっ!黒歴史確定だよ!

 

まぁ……そう考えると彼が覚えていないのは良かったような……寂しいような。

 

「というワケでわかった?マスター」

 

「はいはい、わかってるよ。()()()()……」

 

ぴぃっ!?

 

「まままままマスター……君、もしかして覚えてっ…………」

 

「いや、あの薬を飲んだ後は確かに俺の意識は無かったよ。どうしてシュミレーションなんか使ってるのかも未だに思い出せないし、けど……何故だかアタちゃんとブーディカの交わりだけははっきりと覚えてるんだよね。

なんなんだろう…………もしかしてこと情事に関しては俺は生まれつき忘却できない体なのだ、みたいな感じなのかね。うん、また甘えていいかな……お母さん?」

 

ニヤニヤとこちらを見るマスターに返せる言葉はこれしかなかった。

 

「くぅっ……!!殺してっ!!」

 

 

 

 




「私が小さくなって、マスターに甘やかされてもよし!
小さいマスターを私が甘やかしてもよし!
互いに小さくなってイチャックスでもよし!
何を恥じる事があろうか!!」







はい、というわけでブーディカお母さん回&アタちゃん、はじめてのまじわり回でした。
アタランテがマスターとまだ挿入まで致してなかったのは特に深い理由があるワケでもなく、初期に幼児プレイにはまってしまったので中々真っ当なプレイをするタイミングやら、きっかけが無かっただけですけどね。誰のせいでもない……ただ間が悪かったのだ……。

何はともあれ、マスターと致せたワケだし……おめでとう!アタちゃん!君ももうアルテラやリリィの事言えないぐらいにキャラ崩壊アレだけどネ!(純潔の狩人って何だろう?純潔を奪うって意味の狩人かな?)

ちなみにアタちゃんが途中で合流したのもダ・ヴィンチちゃんが彼女にチクッたから。最初にアタちゃんの幼い体で慣らしていけば、ブーディカの体にも気後れしないで交わえるという思惑があったんでしょうか、さすが万能の天才だぜ!(まぁ、このマスターなら幼くなっても普通にイケそうな気もするが)

さぁ!このカルデアの数少ない常識枠として今日も頑張れ!ブーディカお母さん!!







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マシュマロが如く OF THE BEAST(マシュ)

前書きや後書きやらで便宜上ぐだ男と表記する事はありますが、本編ではこのマスターの名前は徹頭徹尾出さないスタイルでいきます。見た目はデフォのぐだ男ですが








「なんか最近、私が年がら年中、怪しい薬やらエログッズを作っているような扱いされてるんだけど、そろそろ名誉棄損で訴えてもいいレベルだと思わないかい?マスター君」

「モナリザが好き過ぎてTSするような変態に名誉?ハハハ、こやつめ」

「ようしっ!次会う時は法廷だね!」



10月末…ハロウィンの季節が近づき、それに伴いカルデアでも徐々に飾り付けが施されていく

 

ハロウィンといえば、古代ケルト的な収穫祭というか宗教的な意味合いとか色々あるかもしれぬが…正直な所、ここでははただ単に仮装してお菓子をねだったり、隣人たちとの飲み食いのどんちゃん騒ぎというのものになっている

 

人理を救う為の機関とはいえ四六時中その事だけを考えるのも息がつまる……

何事もメリハリが大切であるということで皆、このハロウィンというイベントに向けて浮かれている最中なのだろう

 

当然、変な所で凝り性なマスターも当日に向けて、マイルームに籠もり飾り付けを作り上げている最中である

 

そして、そんなマスターの部屋の前でいつもと全く違うデンジャラスな格好をしている後輩系サーヴァントが一人

 

「…う、うぅ……ハロウィンに向けて先輩に私の格好を見てもらおうと思いましたが…少々冒険し過ぎたような気がします……」

 

マシュ・キリエライト、シールダークラスである彼女の今の格好は防御性などまるでなかった

紫色の毛皮で局部を隠し、ポップなリボン・三角耳や尻尾をつけているその姿は狼娘の仮装なのだろうか

ただし、仮装というには目に毒な程に露出が激しい、ぶっちゃけ下着の方がまだマシなんじゃねぇの?と思ってしまう程に

まぁ、彼女をこんな格好に唆したのは十中八九あの芸術家だろう、最近暗躍し過ぎな気もするが…カエサルと良い勝負かもしれない…

取り敢えず、今回の件に関してはグッジョブと言っておこう

 

「いつまでもこんな格好でいるのもアレですし……早く先輩の部屋に入りましょう……大丈夫、落ち着いて、落ち着いて……」

 

彼女自身もさすがにこの格好ですぐにマスターの部屋へ乗り込むには少々気恥ずかしさがあるようだ、

部屋も隣同士とはいえ、自分の部屋から彼の部屋の前まで立つ事すら結構な時間がかかったのだから

 

「………しかし、冷静に考えてみると、既に先輩にはもっと恥ずかしい姿を色々と見せている気がしますね…」

 

そう思うとマシュはこのドスケベ仮装で先輩の部屋にお邪魔する事に何も恐れる物は無いような気がしてきた

件の先輩とはもう(ピー)な姿で(見せられないよ!!)的な感じで何度も(自主規制)してきたワケであり…今更こんな獣っ娘程度の格好で羞恥心を感じる必要は無いだろうと……

 

喜んで下さい…どこぞのヒトヅマニアお義父さん

あなたのお子さんは大人の階段を3段飛ばしぐらいのペースで駆け上がっています

きっとそれは良い事なのでしょう、多分

 

―――UOOOOOOO!!MASHUUUUUU!!

 

どこかで狂化しているであろう謎の騎士の雄叫びがマシュに聞こえる筈もなく、意を決して彼女はマスターの部屋へ入っていった

 

 

「と、トリック・オア・トリートでしゅよ!先輩!お、お菓子をくれなきゃ食べちゃいますよ!!が、がおー…!」

 

どうせなら少し驚かそうと黒い爪を生やしたゴム製の手袋で猫っぽいポーズを決めながらハロウィンの常套句ともいえる台詞を口に出すマシュ

やはりまだ恥ずかしさが残っているのか、頬を紅潮させ、少し噛んでいる所が抱き締めたくなる程に見る人の愛おしさを増させてくれる様子だった

 

マスターの部屋は既にオレンジとパープルのハロウィンカラーの装飾に染まっていた

そんな部屋の中でデスクで飾り物の裁縫をしていたマスターはマシュのエロビーストな姿を見て当然、固まる

 

(ふふふっ…どうやら、先輩を驚かせる事は成功のようですね、こんな仮装で部屋まで来た甲斐があります)

 

彼の表情を見て、サプライズとしては上々だろうとほくそ笑むマシュ

いつもは色んな意味で驚かされてばっかりなマスターに対しての意趣返しも出来たかもしれないと

 

―――ガシッ

 

「…えっ?」

 

しかしいつの間にやら、傍に駆け寄り、自身の肩を掴んで真剣な眼差しでこちらを見つめるマスターの姿があった

『あぁ、先輩…なんて凛々しい表情……』と今の状況に驚くより先にそんな事を思ってしまうマシュもいよいよこの男に毒されているのだろう

 

「トリックでお願いします」

 

「…へ?…あ、あの……」

 

「いや、違うな…マシュというごちそう(トリート)悪戯(トリック)したいならどちらか片方を選ぶなんて謙虚な真似、俺には出来ない…

ここでの正解はトリック・アンド・トリート…どちらも取るのがマスターとして正しい選択の筈だ。よし、そうと決まればさっそくベッドまで行こうかマシュ。あぁ、ドアもちゃんと閉めないとね、全く…ハロウィン万歳だぜ」

 

「あ、え?…あ、あの…ま…待って下さいっ……せ、先輩…私は……ひゃっ…!あ、ああ…あぁぁぁ………」

 

―――シュインッ

 

無情にも扉は閉まった

 

マシュとしては最初は自分の仮装の感想と先輩を驚かそうぐらいの気持ちしかなかった

しかし、普通に考えてみればこんなドスケベデンジャラスビーストな格好で()()()()()()と密室で会うのは腹を空かした肉食獣の檻に血の滴る肉を放り投げるのと同じ行為であろう

マシュは自身の今の格好の魅力にもっと自覚を持つべきだったのだ

 

ただ一つわかる結末は…‘お前がトリート(意味深)でトリック(意味深)されるんだよっ!‘という事である

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んちゅぅ…ちゅるぅ………んじゅぅ…ちゅぱぁっ…はぁっ、先輩……」

 

ベッドに腰かけた俺の傍らで太ももに頭を乗せているえっちい狼娘

 

「どう?マシュ、おいしい?」

 

「はい……硬くて…甘くて……おいしいです…はぁむぅ……んちゅっ…じゅるるぅ……」

 

マシュは目を細めながら、堪らないとばかりに口をすぼめ目の前のモノにかぶりつく

ちゅぱちゅぱと想像力をかきたてるいやらしい音が部屋に響く

彼女は口に溜まった唾液を潤滑させながら…その硬いモノを咀嚼していった

 

 

 

そう…俺が差し出した()()()()()()()()

 

エロい事してると思った?残念、俺の後輩がお菓子を食べている只の微笑ましい光景だよ

 

ハロウィンなのでマシュが仮装してキャンディをペロペロするのは至って普通

俺が頭を前後させながら時には舌をふんだんに駆使して飴を舐めて欲しいって頼んだのも至って普通

そして俺のお願いに一切疑問を持たず、銀の糸を伸ばし…顔を赤らめ、キャンディをチュパチュパするマシュも至って普通

 

うん、まごうことなき健全な画だ

 

頭を撫でると嬉しいのかこちらを見つめてくれるマシュマロビースト

心なしか尻尾と耳がピコピコと動いているような気がする

 

それ作り物だよね?実は感情と直結して動く優れ物とかじゃないよね?

けど、このカルデアならハロウィンの仮装に技術の無駄使い要素をプラスしてもおかしくないけど

 

何はともあれ、そんな疑問もどうでもよくなる程に彼女の格好は魅力的だった

 

黒い紐によって結ばれた紫のフサフサが胸の中心を隠し、黒いパンツも局部を見せないようにしている

コンセプトとしては狼娘かもしれないが、いかんせん露出が多すぎてむしろこっちが狼になるレベル

何よりあのマシュがこんな淫靡な格好をしているのが俺としては非常にグッとくる

 

「あぁ、マシュ可愛いわぁ…ホント可愛いわ…エロかわだわー…似合い過ぎだろその格好、何だよウチの後輩最強かよ」

 

「っはあぁ……そ、そうですかっ…?えへへっ……」

 

ついポロッ漏れてしまった感想に嬉しそうにはにかむマシュマロビースト、キャンディは既に舐め尽したようだ

っべーわ、この娘可愛すぎるわー、もうゴールしてもいいよね?ってなるぐらいにこちらを悶えさせてくれる

 

「この姿も先輩に好評のようで安心しました……ハロウィンの準備の邪魔をしてしまったのではと不安な気持ちもあったので…」

 

そう言ったマシュはハロウィン一色に染まった部屋を見渡し、カルデアの皆の姿をしたぬいぐるみ達の所で目を止めた

 

「もしかして、これらも先輩が?」

 

「うん、マシュのもあるよ」

 

シールダーverと私服眼鏡verを見せる、これからビーストverも作らなきゃ(使命感)

 

「セイバー・オルタさん、モードレッドさん、アタランテさん、ジャンヌ・オルタさん、清姫さん、エリザベートさん、Mrチャールズ・バベッジ、エルメロイさん、ダ・ヴィンチちゃん…本当に召喚された皆様全員分あるんですね……あ、ドクターとフォウさんのまで」

 

フォウ君のはずいぶん…鍛え直したな…ムキムキ二足歩行verもあるぞ

 

「ヴラドおじさんに裁縫を教えてもらってさ、それでつい興が乗っちゃってね…気づけばこんなに作ってた」

 

ハロウィンが近づくにつれて『――余は、ドスケベでは、ない……ない、のだ……!』って情緒不安定になるおじさんの愚痴とか聞いてあげてたらお詫びに?みたいな感じで

あのおじ様は一体どこの電波を受け取ってしまったのやら…

 

「…興味があるなら、マシュ用に一個欲しい物作ってあげるけど? 」

 

「えぇ!?そ、そんな悪いですよ…」

 

「大丈夫、大丈夫、一個ぐらいならそこまで手間じゃないし、それにイイモノ見せてもらったし。

ほら、ユー、自分に正直になっちゃいなよー」

 

猫を相手するように喉元を撫でる…ほーれ、素直になーれ、素直になーれ

 

「んくぅ…ふぅ…で、でしたら…―――――――が欲しいです…」

 

よく聞こえなかったので気持ち良さそうにゴロゴロと鳴いてたマシュから手を離し、もう一度聞き返す

 

「……先輩の、ぬいぐるみが…欲しい、です……」

 

「…………」

 

「…あ、あの?もしかして、ご迷惑だったでしょ………きゃあぁっ!?」

 

彼女のいじらしさに対する愛おしさとか迸るパトスとかもう様々な物が溢れ出して、ついベッドに押し倒してしまったぞ

これも全部、キュート過ぎるマシュケベが悪い

 

「……本当に…ホントに…マシュはイケナイ娘だなぁ、さっきから俺の欲望にクリティカルばっかりしてくれて…」

 

「せ、先輩……?」

 

俺の表情を見て、これから何をされるのかわからない程、もうマシュも初心ではない…

彼女は期待と欲情が混ざった瞳でこちらの様子を伺う

 

「ぬいぐるみなんてマシュが満足するまでいくらでも作ってあげるさ………けど、その前にお菓子はあげたけど、悪戯はまだしてなかったと思ってね…」

 

「あの先輩、私が思ってるトリック・オア・トリートとは少々違うような……ひゃぅ!」

 

剥き出しになった腹部と鼠径部を指先でくすぐるように撫でるとビクンと震えるマシュ

ハロウィンってあれだろ?女の子にお菓子あげて、愛でて、悪戯するイベントだろ?マスター知ってるよ大丈夫、大丈夫

 

「はい、マシュはそのまま『待て』」

 

「は、はい」

 

ペットにするような俺の指示に迷いなく従い…素肌を愛撫され、感じさせられながらも服従のポーズのまま動きを止める彼女に「やだ、私の後輩…従順すぎ…」と戦慄する

 

「んっ、んくぅ…あっ…あはぁ……ひぅっ…せ、せんぱい、あぁっ…」

 

仮装の構成上、黒い紐で縛られているように見えるマシュのお腹周りを今度は両手の平全体で撫でまわす

時折、へそをほじるように弄ると敏感なのか、大きい反応を返してくれる

 

「はうっぅ…!んっ!あっ、はぁっ…くすぐったぁっ…やぁっ…!」

 

それでもマシュは足を開脚し、手首を曲げて万歳するような降参のポーズを崩す事はなかった

『待て』という命令をしっかり守っているのだろう

今の彼女は狼娘の仮装だが、牛若丸のお株を奪うような忠犬っぷりに俺としてはだんだんペットと戯れている気分になってくる

 

「うん、飼いたい」

 

ポロッとまた本音が漏れ出る…あかん、今日の我がお口ガバガバすぎるわ

 

「あっ、はぁ…く、私も、首輪でもつけ…ますかぁ…牛若丸さんのように……あんぅっ…」

 

「いや、気持ちは嬉しいけど…マシュがつけると無用なトラブルが起こりそうな…」

 

俺があげた首輪を常時つけてるあの娘だけど、‘まぁ、あの牛若丸なら仕方ないよね‘って感じで皆スルーしてるし

それを見て、きよひーや沖田さん…静謐ちゃんだって自分達もつけようかと真剣に悩んでるしさ

特にリリィなんて『いっそのこと首輪ではなく直接、私の首にマスターの名前を彫り込んでしまいましょうか……それなら外す必要も、無くす不安も無くなりますし…』って真剣な表情で呟いていたからね

……さすがにXと一緒になって止めたわ

 

「…そう、ですか…ぁっ…あぁんぅっ…!」

 

何故か少し落ち込んだような表情を見せた彼女を慰める為に今度はメインディッシュともいえる胸に手を出す

 

マシュマロのようなこの肌触り……マシュマロならむしろメインディッシュではなくデザートなのでは?けど、マシュの体はどこもデザートのように甘いしなぁ……

 

「もしかして、また胸大きくなった?」

 

「あふっ…んぅっ!あ、ぁっ……ふぅ…どうでしょうか…?あんっ……」

 

デミサーヴァントの彼女なら成長する可能性が必ずしもゼロってわけでもないし…

何故だか知らんけど…俺と関係を持った普通のサーヴァント達ですら最近少し大きくなってる気もするんだよなぁ……揉みまくる俺の手が悪いのか?

 

おっぱいという神秘について真剣に考えつつも、この手は彼女の巨乳の感触を味わいつくそうとして止まる事はない

 

そして胸の先端を隠ていた紫のフサフサを外し…ぷっくりとした乳首を露わにさせる

 

「まだ、『待て』だからね」

 

「は、はい…」

 

これから何をされるのか想像を膨らませているのか彼女の顔はさらに紅く染まる

 

ズボンを脱ぎ、目の前のペットと化した後輩の喘ぎと痴態で興奮し切った俺の肉棒を見て、マシュの呼吸はどんどん荒くなってくる

 

「あうっ…んんぅっ…」

 

彼女の上半身にのしかかり、二つのマシュマロの間に男根をサンドする

可憐な女の子でもその実はデミサーヴァント、男一人が乗っかったぐらいで苦しそうな表情は微塵も出さなかった

 

両手で胸を寄せ、包み込まれた竿を擦る為に腰を前後へ動かす

 

ある意味グロテスクともいえる剛直がファンシーな格好したマシュの美白な谷間を行き来する視覚的な快感

吸い付き、こちらの射精欲を高めてくるように襲いかかる彼女の柔らかく、そして肉厚な感触

 

「あっ…はぁっ……せんぱいのぉ…んあぁっ…あぁ……」

 

そして当然、パイズリをしている以上、彼女の顔目がけて何度も亀頭が近づいていく

雄臭を匂わせ、先走りを少しずつ垂らしているソレを物欲しそうな顔で眺めるマシュ

しかし、律儀に俺の命令を守っている彼女は体勢を崩すまいと努力していた

 

俺はそんな様子に微笑ましさと愛おしさを覚えながら

胸をさらに中心まで寄せて、今度はそそり立っている左右の乳首をぶつけ合うように乳房を弄ぶ

 

「はんぁぅっ…!!…あぁっ…!やっ、先っぽ……そんなぁ…イジりかたぁっ…あんっ…し、ないでぇっ!」

 

面白いぐらいに形を歪める巨乳に下腹部をぶつける音、ベッドがきしむ音、互いの呼吸と喘ぎだけがこの部屋に響き渡る

 

「しぇ…しぇんぱいぃ…はぁんぅっ……まだ、駄目…です、かぁっ…はふぁっ…!」

 

どんどん情欲が増していったマシュは目の前にちらつかされている肉棒を咥えたくてしょうがない雌の表情へと変わっていった

いや…目を潤ませ、口を半開きにし、舌を覗かせている表情はおあずけをくらった犬のようにも見えた

 

これ以上焦らすのも可哀想だし、そろそろ解禁させてあげようか…

 

「よし、もういいぞマシュ」

 

「…はいっ…!…はむぅっ…んじゅるるぅっ…んちゅうぅっ!…ちゅぱぁっ…!れろぇぉっ…んちゅぅ…」

 

お許しをもらったマシュは飛びつくように肉棒の先端に喰らいついた

俺の腰の動きとタイミングを合わせるように頭を前後へ激しく動かしていく

 

「はふぅっ…先輩のぉ…硬くて……熱くてぇ…おいしっ……んちゅるぅぅっ…じゅぽぉっ…!」

 

散々焦らされたせいか、それともこのエロチックな仮装のせいか、恍惚とした顔でフェラに夢中になるマシュ

いつもの真面目で疑う事を知らない純粋無垢な優等生のような姿とは大きくギャップを感じさせ、それがまた性欲を高める材料となる

 

「んじゅっ……じゅぷっ…っはぁっ…んちゅっ……っろぉっ……っあむぅ……」

 

黒い爪の生えた手は胸を愛撫している俺の手にもっと刺激をと抑え込むように重ね合わせてくる

マシュの乳圧と口膣内、そして亀頭とカリを這う舌の動き…

一つの性器に様々な快楽が襲いかかり、やがて限界が近づいてくる

 

「…っ…マシュっ…このまま出すから、なっ…!」

 

俺の言葉を聞き、乳房の谷間から飛び出してきた肉棒を逃すまいと深く咥え込んだ

 

「んぐううううぅぅっ――――……!!…んぷぅっ…むぐっ…っぷうぅぁっ…!?」

 

亀頭付近に広がる生温かい粘膜の感触、竿を挟み込む乳の肌触りを惜しみながらそのまま精液を出し切った逸物を引き抜く

 

「…ふぅっ……ん?」

 

ふとマシュの顔に目線をやると口に白濁液を含んだまま俺の何かを待っているようだった

 

あぁ、成る程…

 

「いいよ、マシュ。全部飲んで」

 

「…っ!……んぐぅっ、ごぐぅ…ごくっ、ごくぅっ……んくっ…」

 

どうやらさっきまで『待て』とペットのように命令されてしまったせいなのか

口に吐き出された精子も(飼い主)の許しなく、飲んではいけないものだと思ってたらしい

 

特異な仮装をしている影響か、彼女自身の資質かは不明だけど、愛しき後輩がどんどんペットとして違和感なく振る舞ってきてる様とそれに滅茶苦茶興奮している俺自身もいよいよ救いようがねぇなコレ

 

しかしまぁ、こういう情事の際の特殊なプレイなんて今更だよなと思ってしまう、誰かに見られてるわけでもないし

俺も楽しんでる、マシュも楽しんでる…平和な世界じゃないか

 

「っんんぅっ…!…はぁっ…はぁ……」

 

「よしよし、全部飲んだのかー、いいコだなぁ、マシュは」

 

粘りつく愛液を飲み干したマシュを良くできましたとばかりに頭を撫でる

 

「……わ、わんっ…」

 

まだ少し恥ずかしがってるが頬を緩めてされるがままの彼女も結構ノリノリのようですね

この娘、ホントに飼っちゃ駄目かなー?

 

「それじゃあ、気持ちよくしてくれたご褒美をあげないとね」

 

黒地のパンツを脱がそうと、ずり下ろしていく

爪を模した足のカバーに引っ掛からないように

 

ってか布面積、相当ちっちゃいぞコレ

ランスロット卿が見たら発狂しそうだなオイ

 

「あっ…やぁっ、は、ずかしいですっ…」

 

「そうだね、恥ずかしいぐらいにもうビショビショだ」

 

もう彼女の局部を守る物は全て取り払われた

俺の返答に照れたように目線をそらすマシュだが

それでも全面の信頼を寄せるか如くに勃起した乳首も濡れそぼった女陰も手足で隠す事はせず、ノーガードだった

 

「あっ…やんぅっ…」

 

ヒクつく大陰唇からは中の具がチラチラと覗かせている

淫液を垂らす割れ目を指腹でこすりながらマシュに問いかけた

 

「指とコレ、どっちでして欲しい?」

 

再び、最大状態まで硬さを取り戻した肉棒を指す

今のマシュなら迷う事なく後者を選ぶだろうなーと思ってたが

 

「ど、どっちでもして欲しいですっ…んふあぁっ、先輩の体なら…どこでも…キモチよくなっちゃうからっ…あぁっ…」

 

「…このっ、欲しがりめっ!」

 

「んあぁっ!!」

 

両方できましたか

あのマシュが遠慮する事なく素面で自分の欲しいモノを正直に言えるようになった事実に、あぁ…この娘も成長したんだなぁとしみじみ思ってしまう

自分が思った事、今したい事を言う…それは人間の特権だからね

マシュにもマスターである俺に遠慮なんてしないでどんどんして欲しい事を言ってもらえるようになったらそれはとても素敵な事だと思うんだ

 

イイハナシダナー風にしつつも今現在ヤッている事はそのマシュのイケナイ所に指を突っ込んでヒィヒィ鳴かせてる画だがそれはそれ、これはこれという事で

 

「あぁっ!はぁ!んにやぁっ…!!」

 

ならばお望み通りまずは指でイカせてあげる為、指のスピードを徐々に上げていく

マシュは膣口の入口付近とGスポットを責められるのが割と好みなようなので浅く細かく抽送してあげる

 

「はうっ…!んんぅ!あっ…!い、イッてぇ…またイッちゃぁっ……あうぁっ…!いくぅっ…あぁ!イクのがぁっ…と、まらなぁっ…にやぁあぁっ!!」

 

小さな絶頂を繰り返しているマシュの舌はだらしなく出て、胸部の球体も俺の指の動きと合わせてリズム良く揺れ動く、いやー実に眼福眼福

もっと気持ち良くなってもらおうと自己主張しているクリトリスの方ももう一方の指先でこねくり回してあげる

 

「そこもぉっ…あうぅ!ひやぁっ!…しぇ、しぇんぱいっ…あはぁ!…目の前がぁっ……チカチカしてぇ……きちゃうっ…大きいのがきちゃうぅ…んんんぅぅ…!!」

 

股間から何度も訪れる快楽にえびぞりをするように体を反らすマシュ

彼女の震えとベッドが軋む音に喘ぎ声と陰門をまさぐる水音それら全てが比例するように大きくなっていく

 

―――プシャアアアァッ!!

 

「あああぁっくぅぅっ…!!んんあぁぁ!!やああぁっ…!にやああぁっ……!!あ、ああ…ぁぁ………」

 

今日一番の嬌声を響かせると同時に盛大な潮吹きで俺の手を汚したマシュは涎を垂らし満足気な顔をしていた

 

だが、その痴態で俺のアソコはもう収まりがつかない状態になっている

それを察したマシュは未だに小さく愛液を吹き出している淫裂を誘うように開いた

 

「……あぁ…はぁ――…どう、ぞ…()()()()ぁ……今の私は後輩じゃなく……マスターのペットですから…好きなだけ…使って下さい……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁっ……んっ、ふぁっ……そんな、お尻ばっかりぃっ…」

 

今度は姿勢を変えさせ、今の狼娘の格好に相応しい四つん這いの体勢をマシュにさせてた、俺自身も服はもう脱いである

目の前にはむっちりとした桃尻が無防備の状態であった

 

マシュといえば、シールダー姿でも目立つ二つのマシュマロに目が行きがちだが俺としてはこの実は脱いだらスゴい臀部に注目したい

 

手でわし掴みにすれば指の間からプニッと膨らむ程の肉厚

しかしそれは太っているという意味ではなく、こちらをいい塩梅で性欲を刺激してくるエッセンスである……あり過ぎず、無さすぎず…あぁ何と素晴らしい

この肌に吸い付くようなマシュのプリティなお尻は最早第三のおっぱいと言ってしまっても過言ではないのだろう

 

さらに紫の仮装とコントラストが映える眩しいムニッとした太ももも合わされば…

まさにこのデンジャラスビーストは俺を性的に殺しにきた兵器

 

と長々語ってしまったのも今のマシュ・キリエライトの姿がそれだけ魅力的だという事を理解して欲しい

 

「はぁ…んふぅ……ごしゅじんさまぁっ…」

 

いつもの先輩呼びではなく、尻尾を揺らしながらお尻を左右に振り、今か今かと待ちわびるマシュ

臀部を揉みながらも秘所にはまだ挿れず、亀頭を焦らすように擦り付ける

 

彼女としては早く挿入して欲しいのだろうが、飼い主からのお許しはまだ出ていないので必死に我慢し切なそうに鳴く事しか許されていない

 

「んぅぅ、んん…んふぅ…やぁ…あぁ……」

 

もう少しこの絶景を楽しんでもいいのだが、

俺はふと目の前で揺れる尻尾が気になった

 

当然、本物ではなく…腰についている可愛らしいリボンから生えているのだがどうやら取り外しが可能らしい

 

「ん?ってあれ…?こ、れは…」

 

つい気になって尻尾を外してみるとその根元から複数の玉が数珠繋ぎになったものが生えてきた

 

………これ、アナルビーズじゃねえか

 

俺が性玩具と化した尻尾を握っているのに気付いたマシュが補足してくれた

 

「…はぁ………あ、それ、私もよくわからない仕掛けだったんですけど…ダヴィンチちゃんが言うにはせんぱ…ご主人様に見せれば万事OKだからと後…『初めての人でもすんなりイケるように作ったからネ!』とも言ってました」

 

やっぱり奴の差し金か…いや今はそのご厚意に甘える事にしよう

 

マシュとはこっちの穴を使うプレイなんてしたことないから、何に使うのかわからんのも仕方ないよなーと思い

耳元でコレの使い方を囁く、使ってみるかいとも聞き

少し動揺した彼女だったが、その玩具と俺の顔を見やり

 

「……ご、しゅじんさま、が…使いたい…のなら……私は、かまいません……」

 

唾をゴクッと飲み、未知の領域に対する期待を匂わせる表情のマシュ

ふふっ、ウチの後輩はホントにイヤらしいんだからー

 

未だに未開発な菊門に数珠を近づけていくと、アナルビーズ全体が既に潤滑液で濡れている事がわかった

 

外気に触れた瞬間に自動的にビーズからローションを出す仕組みだったみたいっすね…初心者でも安心ってそういう事か…

ダヴィンチちゃん……やはり、万能の天才か

 

「あぁ…あっ!?うぅっ…あぉっ!……ぉっ…!んぐぅっ…!」

 

マシュは肛門に玉が一つ一つ入る度に悲鳴をあげるように鳴き、異物の感触を受け取っている

 

ローションに何らかの効能でもつけてくれたのか…アナルビーズはすんなりと全部入ってくれた

 

―――頭から生えた獣耳

 

―――黒爪が生え、紫モフモフが光る手足

 

―――そしてお尻から直接生えたように見える尻尾

 

ふむ、マシュ・キリエライト、クラス:ドスケベビーストの完成ですね

 

「はふぅっ……何だか、初めての感触でぇ……変な気持ちにぃ……おしりが、ムズムズしてぇ……んうぅ…」

 

「大丈夫、お尻の異物感なんて気にならないぐらいこれから凄い事になるから」

 

目の前にいるほぼ全裸状態の獣っ娘マシュに後ろから狙いを定める

 

もうこれ以上焦らす必要は無いだろう

 

ヌチュヌチュと粘液が混ざり合う音をさせて、マシュの膣内へ侵入していく

 

「んふぅっ――――――…!!んああっ、キたぁっ!あぁぁあ…はぁっ!」

 

奥に進んでいるだけで既に達してしまった風に声を荒げるマシュ

二つの穴にモノを挿れているせいなのか、彼女の膣圧はどんどん肉棒を締め上げてくる

 

「…あぁ!…こ、れ…すごいっ……おなかがいっぱいでぇっ……とんじゃいま、すぅっ…んぐうぅっ…!」

 

動物みたいに四つん這いの体勢のマシュを膝立ちの状態で責め立てる

快楽に合わせて暴れる尻尾も握り、小さく抽送するように動かす

 

「おああぁっ!こんな所でぇ私、気持ちよくなっちゃってぇぇ……はんぐぅっ…!!うぅっ…あぁ、あああぁあ!」

 

アタランテやエリちゃんと違って、作り物である以上彼女は尻尾を握られて感じているワケではない

そこからアナルビーズに伝わる刺激で快感を得ている

肛門と膣内、二つの穴に入っている異物から二重の衝撃がマシュの子宮を揺さぶっていく

 

「んああぁっ!やあぁっ…!ふにゃぁっ…!!ひょんなの知ったらぁ…もう戻へなくなっちゃうぅ…!!んひぃっ!」

 

今までマシュとはどちらかと言えばイチャラブ路線でしか交わった事は無かったので自身が獣がする交尾の如く犯されて蕩かされ…戸惑っているのかもしれない

 

いや、実は特殊なプレイをでもイケそうな雰囲気は前からあったなんて野暮なツッコミはしないよ

 

透き通るようなうなじを見て、もっと全身でマシュの汗や体温、肌触りを感じたいと思い背中から覆い被さり、乳房を下から激しく揉み込んでいく

 

「…はうぅっ…んぅ!ひゃぁぁあっ…!もっとぉっ…!もっろぉ、ぎゅっとしへぐださいぃ……はああぁ!ご、主人しゃまあぁっ…」

 

胸全体もその先端も好き放題に弄られ…二つの雌孔も蹂躙されているマシュは媚びるような表情で俺の方を振り向いた

今度は呂律が回らなくなった口から漏れ出している舌にも手を出す、この場合出すのは手ではないが

 

「れろっ、んろぉっっ…ろあぁっ!…はあぁ…ちゅるぅっ‥!!せんぱぁい、ごしゅじんさまぁぁ…ごしゅじんしゃまぁぁ…しぇんぱぁいぃっ…ぉろぉっ…ちゅろぉ……れろぉぉ…はふぅっ!!」

 

唇を重ね合わせるのではなく、お互いに舌を長く伸ばし…絡め合う

その光景は愛を囁き合うキスというよりは獣欲をぶつけ合う為に唾液を吸い尽くし合っている、涎が零れようが気にする事ない本能の爆発

 

マシュも絶え間なく襲いかかる快楽でもう自分が何を言っているのかもわからなくなっているようだった

 

もっと、もっと、もっと、もっと自分に…ペットとなった自分に欲望をぶつけて下さいと言わんばかりに自分からもはしたなく腰を振る

 

そして言われるまでもなく、俺は彼女に熱く滾った性欲の塊を吐き出す

 

「マシュっ……!!」

 

「んひゃあああああああぁぁあああああっ!!あくぅうぅ!!……ひゃああっ…!お腹いっぱいにぃ…種付けさへてぇぇっ……やあぁぁ――……ぁぁまだ出てる……」

 

トプトプと彼女を満腹にするように出し惜しみせず射精し切る

四つん這いで中出しアクメ顔を晒したマシュは手の力が抜け、うつ伏せに倒れこんだ

 

おっと、そうそう…高く突き出されているお尻から尻尾も引き抜いてあげないとな

 

「あっ、あぁっ、んくぅ、あおぅっ、おぉっ…はあんぅ…んあぁぅ!」

 

菊門から玉が一個出る度に声が漏れ、達してしまったかのように痙攣するマシュ

 

「はぁ…はえぇ…せ、せんぱいぃ……んふぅっ…」

 

どうやらフィニッシュの余韻に浸ってた彼女にはアナルビーズの抜き出しは追い討ちだったようだ

 

未だに潮と白濁液をアソコから吹き出し、焦点が合わない目でピクピクと震えているマシュにちょっとヤり過ぎてしまったかなぁと思ってみたり

後悔?するわけないでしょ、たわけ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふっ、せ~んぱい…えへへっ」

 

私が悪戯という名のご褒美を頂いたその次の日、先輩は約束通りぬいぐるみを作ってくれました

 

頼んだ次の日にもう出来上がっている事実に私はもう今更驚きません、慣れって怖いですね

 

LLサイズの手作り先輩を抱きしめ私はカルデア用の服装に戻りベッドの上でゴロゴロしています

 

ぬいぐるみは出来立てほやほやなのか確かに香る先輩の匂いが先日の情交を思い出させます。

 

―――私、あんなイヤらしい格好で先輩を誘って……そして、お尻にも挿れられて…あんなペットみたいに扱われて…

 

「すぅ――…あぁ、はぁ…んんぅっ…」

 

作り物の先輩の手を自慰するように自分の股へ擦り付けてしまう手が止まりません

 

ごめんなさい、先輩

いやらしい後輩でごめんなさい

えっちいペットでごめんなさい、ご主人様

 

せっかくもらった贈り物を汚してしまってる罪悪感に謝罪を心の中で繰り返すも腰の動きが止まってくれません

 

「せ、んぱぁいぃ…もっとぉ…」

 

まるで発情期に入った獣ですねと自嘲しながら、直接弄ろうと私は下着に手をかけ……

 

―――シュインッ

 

「やっほー!どうだったマシュちゃん?あの耽美的で芸術的な仮装でマスター君を…イチコロに、出来たか……い……?」

 

「…へ?」

 

突然、部屋へ入ってきたダ・ヴィンチちゃんは固まってしまいました、いつもの微笑ではなく苦笑の表情で

 

当然、私自身も固まったままです、今自分がどんな表情をしているのかも想像出来ません

 

こういう時、私はどうすればいいんでしょうか、助けて下さい先輩

 

「………いや、うん。皆まで言わなくても大丈夫だよマシュ…君がこうして無機物相手に寂しく自分を慰めているという事はまだあの格好で誘惑出来ていないんだろう?まったくこんな可愛い後輩を放っておくなんて…マスター君ったらもう…。大丈夫!今から私が彼にガツンと言ってきてあげるからねっ!」

 

「え?えっ…?い、いやあの違うんですっ…!ダ・ヴィンチちゃん…!せ、先輩とはそのっ……」

 

既に十二分に愛してもらいそれを思い出しながら盛ってましたなんて、言えるわけないじゃないですかっ!

 

取り敢えず、今は私が口ごもってる間に先輩の部屋へ向かったダ・ヴィンチちゃんを止めないといけません

 

 

 

…ですが、彼女が私がさっきまで部屋でしていた事を先輩に伝えて…

それで先輩が…ご主人様が…私にもっと凄い事をしてくれるというのなら……止めなくてもいいかもしれない…って少しぐらい思ってしまってもいいですよね?

 

 

 

 




《本編とは全く関係ない番外編:ショタマスター犬を拾う》

ショタぐだ男「お母さん!この子、ウチで飼ってもいいでしょ?」

ブーディカ母「駄目よ、元の所に帰しておいで…その子で7匹目でしょ?ちゃんと面倒見れるの?只でさえご近所さんからは夜遅くになると鳴き声がうるさいって苦情が来てるんだから…」

牛若犬「……」
モー犬「……」
リリィ犬「……」
沖田犬「……」
清姫犬「……」
静謐犬「……」

ショタぐだ男「うーーーん…わかった!じゃあこの子達をおれが連れて自立すればいいんだね!」

ブーディカ母「…え、え?…ごめん待って、待って…お母さんが悪かったから出ていこうとしないで?ね?ね?お願いだからっ」

マシュ犬(夜遅くになると鳴き声がうるさい……?あっ…)


―――続かない




「あんな破廉恥な衣装で主殿とわんわんプレイを楽しむとは汚いさすがマシュケベ殿汚い」
「全裸に犬耳、リード付き首輪の君も大概だと思うよ」










デンジャラスビーストマシュマロペット回、ある意味礼装なのでこの作品の縛りには含まれないという事で一つ
まぁ、マシュは2回目でしたがあれはよいどれ回だったので、ちゃんと正常でメインヒロインオーラを出しているマシュを書きたいなーと思って書かせて頂きました
え?普通の純愛ックスだったろ?性癖歪んじゃってそうって?またまたー
さすがマシュ、メインヒロインの風格と思わざるを得ないでしょうよ

いつもよりエロ増し増しだったのもあんなデンジャラスな格好したマシュのせいです
約束された勝利のマシュケベ回でした







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エリゴンクエスト 導かれし者たち 上の巻(ブレイブエリザベート)

11月だけに累計ランキング11位に入りました。
これもいつも閲覧、お気に入り、誤字報告、感想、評価をして下さる方々のおかげです。ありがとうございます


今回は2万字を余裕で超えてしまったので前編、後編で分けます
あくまで基本1話完結なんでね。偶には例外もあるという事で……イヤ、ホント許して下さい










《本編とはまるで一切関係無い、某ドラクエ5風結婚イベ》


「さてぐだ男よ、フローレンスとマシュのどちらと結婚したいか、よく考えたか?」

ある街の大富豪、ラーマはぐだ男が二人の女性…どちらを選ぶのか見守っていた
ドアの陰からヴィヴ・ラ・メイドも覗いていたが

定番とも言える、幼少時代を共にしている幼馴染、マシュ
自身の娘にしては少々おっかないが父と声はそっくりな、フローラ…ではなくフローレンス

「待ちな!お前、中々骨がある男だな!し、しかたないから、オレが結婚してやってもいいぜ!」

そして何故だか急に2階から降りてきたもう一人の娘、モードレッド
一体この見所ある若者は誰を選ぶのかと

  マシュ
  フローレンス
  モードレッド
 ▶ラーマ


「な、ななんと、この余が好きと申すか!?そ、そそれは駄目だ、考え直すのだっ!」

「先輩?」
「司令官?」
「マスター?」





―――Congratulations!!

 

―――あなたは自身の城を取り戻し、無事にハロウィンも取り仕切る事が出来ました

 

―――『超極☆大かぼちゃ村~そして冒険へ……~』を見事クリアし、エンディングを向かえた暁に新たなモードを実装させて頂きます

 

―――これからもどうか勇者の行く末にささやかな幸あらんことを……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エンディングまで泣くんじゃないわよ!子イヌ!」

 

空は見渡す限りの暗闇で木々生い茂る森の中、今にも化け物やら幽霊やらが飛び出そうな雰囲気だがそこまで恐怖は感じない……これもハロウィンの魔力という奴なのだろうか…

 

そんなシチュエーションで純白のマントにレトロなビキニアーマーを装備した自称勇者エリちゃんが何やら叫んでいた

 

「エンディングまで泣くなって言われても俺達は既にゲームクリアしたじゃない。クレオパトラとカエサルの感動の再会という素晴らしいエンディングで」

 

ある意味泣けるエンディングだったけどさ

 

「ふふん、甘い…甘いわ!子イヌ!いくらハロウィンといえども甘いのはお菓子だけで十分よ!いい?一度クリアしたから全て終わる冒険なんてないのよ?二週目、三週目上等、真エンド、裏ボス、おまけモード、レア武器、隠れヒロイン…むしろゲームをクリアしてからが本番と言っても過言じゃないわ!」

 

ふむ、言いたい事は確かにわかる。

エンディングを向かえてから'実は真の敵は他にいるんですよ'とか'新しいエリアに行けるようになりましたよ'とか'新たなモードを実装しました'とか'続きはDLCで!'とかざらにあるからね

 

「なら今、俺とエリちゃんがここにいるのも…」

 

「『超極☆大かぼちゃ村~そして冒険へ……~ベリーH(ハード)モード』と言ってもいいわね!クリア後の世界でもエリちゃん大暴れ!強くてニューゲームってコトよ!」

 

なるほど、つまりもう一度女王だか魔王だか誰かは知らん奴を倒す為にチェイテ城までちょっくら行ってこいやオラって事か

どこまでも続く冒険、エンドコンテンツ、終わりのないのが本当の終わり…

 

「というかパーティも俺達2人しかいないんだね」

 

以前と違い、あの一歩間違えれば千年パズルっぽいピラミッドもここから見る限りチェイテ城に刺さってないようだし…どうやら新モードとおっしゃるぐらいなのだから待ち構えている敵も一新しているのかもしれないね

 

「ほらっ!RPGの基本ともいえる4人パーティでもいいけど、子イヌと私の気ままな二人旅もオツな物でしょ?それに勇者としてアイドルとして素敵でパーフェクトに完成した私からすれば丁度いいハンデじゃない。どんな敵が来ようが恐れるに足らず!勝ったわ、風呂入ってくるねレベルよ!」

 

そうやってまた自らフラグを建てていくんだからこの娘は……

 

「二人だけなら俺も前衛に出た方いいのかな?」

 

シャドーボクシングをしながらエリちゃんに問いかける

こんな事ならハロウィンっぽい外見だからっていう理由で着てきた魔術協会制服じゃなくてカルデア戦闘服にすれば良かったわ

『ガンドォ!!(物理)悔い改めて☆』って感じで群がる敵の頭蓋骨を粉砕するのも吝かじゃないぞ

 

「い、いや…!子イヌには後ろで私の応援をしてもらうだけで十分よっ!メインは私だしっ!……う、うん…下手に前に出られると私の出番マジで無くなっちゃうし……だから平気!ぜ、全然平気よ!私がどれだけ勇者として成長したか見せつけてあげるんだから!」

 

そこまで言われてしまうと引き下がるしかない

確かに俺はあくまでマスターだし、ほんの少しだけ戦闘能力があるからといって前衛に出過ぎるとかえって足を引っ張る可能性もあるもんね

 

「うん、わかった。なら今回は後ろで大人しくしておくよ…ジョブ的には後衛だから魔法使いって所かな?」

 

「え?(女)遊び人じゃないの?」

 

「お望みなら今この場で全力で遊んであげてもいいんだぜエリちゃん」

 

「じょ、冗談です…ホントごめんなさい、謝るからそのエグい指の動きは止めて頂戴!私に青姦はまだちょっと経験値足りてないからっ!」

 

とまぁ…こんな真夜中の森の中でいつまでも漫才が出来る筈もなく

 

いつの間にか湧き出た魔物共が俺達を囲んでいた

緑色のアニメチックなスライム、非常識なサイズの蝙蝠、火の玉頭蓋骨等々…ここでは初めて見るようなモンスターがわらわらと

 

「ふっふっふっ…引き立て役がよくもまぁここまで集まってきたものね、そこでよく見てなさい子イヌ!ここから始まる勇者エリザベート伝説season2の幕開けを!」

 

引き止める間もなく意気揚々、余裕綽々とモンスターの大軍に突っ込んでいくエリちゃん

そりゃあ先のハロウィンであんだけ戦ってレベルもガッツリ上がってるから、今更あんな雑魚モンスターの群れに手こずる事は普通は無いと俺だって思う

 

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「ぎゃふんっ!!……あ、あれ?何か思った通りに動けないというか……ってキャアアアアアアアア!!?」

 

うわぁ、しかも一撃喰らえば鎧が粉々になる鬼畜仕様、かの苺パンツで走り回るおっさんの鎧の如き紙耐久

お外で全裸になるという貴重な経験に身動きが取れないエリちゃんに当然のようにモンスターの2撃目が降りかかる

 

「えっ…!?あっ、ちょ、タンマ………」

 

ざんねん!えりちゃんのぼうけんはここでおわってしまった!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おぉ勇者よ、死んでしまうとは情けない

 

「ハッ!夢ッ!?」

 

「ところがどっこい夢じゃありません…現実です、これが現実…」

 

目を覚ましたエリちゃんはおぼつかない様子で周りを見回す

 

まぁ、さっきまで森の中にいた筈なのにいきなり宿屋の一室と思わしきベッドで寝てたら困惑するよね普通

 

「もしかして、子イヌが運んでくれたの?」

 

「いや、俺も気づいたらこの部屋にいた」

 

「え?じゃあ…私、あの後どうなったの?確か鎧が砕けて……」

 

「すっぽんぽんになったエリちゃんはモンスターの2撃目によって哀れ皮膚は崩れ落ち骸骨になりました」

 

「グロテスクッッ!!」

 

「というのは冗談で光の粒子になってバンッスウゥしたよ、俺も連帯責任で一緒に召されたけど。

そして気づいたらこのお部屋に、どうやらゲームオーバーになったら最初の街からコンティニューさせられるみたいだね」

 

この宿泊部屋はリスポーン地点って所かな?

ベッドから身を乗り出し窓から外を伺ったエリちゃんもここが自分のよく知る始まりの街だと理解したようです

 

「ぐぬぬ…しかし大見得切ってこのざまなんて…くぅっ!恥ずかしさでお城に帰りたい!ていうか私、本調子じゃなかったし!もしかしなくても弱体化してないかしらっ!?」

 

そのお城に帰る為にこれから頑張らなきゃいけないのですが。

しかし、エリちゃんもやっと自身の状態に気付いてくれたかと安心した俺は何故かご丁寧にこの宿に置いてあったパンフレットもどきに書いてある新モードとやらについて伝えた

 

――曰く、勇者のレベルは1まで下がっていると

 

――曰く、マスターは戦闘に()()手を出してはならない、令呪でのサポートも禁ずると

 

――曰く、勇者がやられたら問答無用でマスターと一緒にこの部屋へ転送され、初めからやり直しだと

 

――曰く、このモードには種火なんてものは存在しないと

 

――曰く、レベルを上げる手段はマスターからの魔力供給(意味深)しかないと

 

――曰く、どんなにレベルを上げても2回ダメージで死ぬ仕様は変わらないので頑張ってくれ……死にゲーは良い文明と

 

・・・・・・

 

「クソゲーか!!」

 

こらこら気持ちはわかるけど女の子がクソなんて言うんじゃありません

 

「おかしくない!?普通こういうのって何かしらのステータスが引き継がれるものでしょ!何よレベル1って!2発死亡確定って!弱くてニューゲームって何事よ!もう少しゆとりにも優しいゲームにしなさいよ!!キィ~~~ッ!!」

 

怒りのあまり枕にヘッドバンキングをぶちかますアイドル

うん、気持ちはわかる。あれだけ苦労して得たステータスがZEROになってるわけだし

しかもいくらレベルを上げても耐久値は変わらずという温室系お嬢様ドラゴンには厳しい仕様

そして俺が彼女とセットでここに転移させられた理由もわかった

 

「このベリーHモードも『ハード』じゃなくて、そのまんま『エッチ』って事よね多分…ハハハ、笑えるわ、ほら笑いなさいよ子イヌ、アーハッハッハッって笑いなさいよ…アーハッハッハッ!!」

 

取り敢えず、今の俺にはテンションがおかしくなったエリちゃんを抱き締める事しか出来ない

 

敵が強くて死んでしまったら、その度にここでしこたまヤってレベルを上げるがいいって事なんでしょう

…なるほど確かに笑えるし、どう考えても年齢制限がかかるモードです、ありがとうございます

 

「で、どうするエリちゃん?」

 

「……当然、リベンジマッチよ。ここまでコケにされて黙ってられないわ」

 

すっぽりと俺の懐におさまっている彼女は小さく呟く

 

「魔力供給だし、俺の血でも飲む?」

 

体液ならなんでもいいだろうしね、性交が一番効率良いんだろうけど…

エリちゃんは情事の始めは未だに緊張しちゃう娘だからなぁ…いつまでも初々しさを持ってるのも俺としては全然キュートだからいいんだけどさ

 

「いや、今の私は勇者だし…吸血とかそういうのはしないわ。だ、だからといっていきなり…しぇ、しぇっくすするのも……はしたないじゃない…?それに最初の雑魚敵ぐらいそこまでレベル上げなくても十分よ。う、うん…なのでまずは唾液からお願いしても…いい…かしら?」

 

頬を染め、ガチガチに固くなりながらもギュッと目を瞑り、餌を求める雛の如く口をあーんとするエリちゃん

これはこれで十分にはしたないという事に彼女は気付いているのでしょうか…?

 

いつまでもこの顔を眺め続けるのもいいが、ヤることはヤらなければならぬので唾を口に溜め込み、唇を重ね合う

 

「んっ…ちゅっ……ちゅるっ、ちゅるぅ……んくっ…」

 

ピクッと肩を揺らしながらも俺の口内から移ってくる唾液を味わいながら飲み込んでいくエリちゃん

 

けど、このまま眈々と唾液を供給し続けるのも面白みが無いので舌を動かし、彼女の口腔内をくすぐってあげる事にした

 

「んむぅ!?……んんっ!…ちゅぱぁっ、こ、子イヌ…なにを…んむぅっ!ちゅぅっ…ちゅるっ、ちゅぅ……っはぁ…ひゃぁ…待って…んんじゅぅっ……!?」

 

舌を絡ませ、こっちからも唾を吸ってあげ…歯茎の裏を蛇のように這わせていく

特にエリちゃんは上の歯茎を舐められるのが好きだったよね

 

「ひゃぁ!……ひゃれぇっ…んじゅぅ…!じゅぷっ…れぁっ…ふぁ!ふぅむんぅ!ちゅうぅ…こくぅ、んぐっ…」

 

口の端から半透明の口液が零れようとも気にする事なく、エリちゃんは縋り付くように俺の両肩を掴んできた

快楽に翻弄されながらも唾液をしっかりと摂取する事は忘れてはいなかった

 

当然、俺も本来の目的でもある魔力供給もを忘れてはいない、体液を注ぎ込み彼女の口内を好き勝手に蹂躙した

 

「んぅっ!んちゅっ!んむぅっ…!…っはぁっ!あむぅぅっ…!!んぐっ、んくっ!こくぅ……んんんぅっ―――――!!!」

 

俺の腕の中で大きく震えたエリちゃんを解放する

唇を離した際に彼女の緩んだ口から伸びる銀のアーチが何とも卑猥だった

 

「……はぁ、はぁ…い、いきなり何をすんのよぉ……」

 

息も絶え絶えで非難がましい目をこちらに向けるエリちゃん

うん、格好も格好なんでいい感じにくっころ感が出てるよ

 

「ほら、エリちゃんも昂った気持ちのままだと戦闘に集中できないでしょ?なら一回イッてスッキリした方がいいと思ってさ」

 

「………こんな事されたら余計興奮しちゃうわよ…ばか…」

 

何はともあれ目的の魔力供給は成されたという事で、いざリベンジへ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふははははは!!無敵!不老不死!勇者パワー!」

 

今にもどこぞの吸血鬼のようにWRYYYYYYYYY―――ッ!!と叫び出しそうな様子で無双するエリちゃん

あくまで今回供給したのは唾液レベルだが最初の雑魚敵程度ならそれぐらいで十分だったようだ

彼女自身も1撃もくらわない立ち回りをするように考えているみたいだし

 

「ふふっ、この調子ならノーコンティニューでクリアも余裕そうね!」

 

一度調子に乗るとこうやってフラグを建てずにいられないのはエリちゃんの様式美

これも彼女の魅力…アホ可愛いってやつ?

 

「というか既に一度もうコンティニューしているのですが、それは」

 

「私、その時まだ仕様知らなかったし!ノーカンよ、ノーカン!エリちゃんルールじゃ適用されないわ!」

 

左様ですか

エリちゃんルールなら仕方ないかーと適当に思いながら彼女の後を追う

 

 

そして、少し進んだ先に次なる敵が立ち塞がった

 

俺達に気付き、空に舞い上がるは尖った頭に紅き身体!蝙蝠のような翼を持つ悪魔の如き風体はっ!

 

「知っているのね、子イヌ!?」

 

「うむ!あれはレッドアリーマー!数多の初心者勇者の骸を積み上げたモンスターよ!」

 

まさか、こんな序盤でこんな強敵に出くわすとはっ…!いや、序盤で出くわすのはある意味あっているのか

 

「なにをビビってるのか知らないけど、こんなの空をパタパタしてるただの蚊トンボじゃない!良い的よ!ていやぁっ!!」

 

羽ばたいている紅き悪魔に剣をぶん投げるエリちゃん

エリちゃんの名剣エイティーンって何回投げてもいつの間にか手元にある謎仕様なんだよね

まぁ、遠距離攻撃し放題だから非常に助かるわけだが…

 

スカッ! Miss!!

スカッ! Miss!!

スカッ! Miss!!

スカッ!スカッ! Miss!!Miss!!

 

「だぁっ―――!!なんで当たんないよ!不細工な見た目の癖にぃっ……ぐえあっ!!」

 

俊敏かつ不規則な動きに惑わされ投擲が全然当たらない

しかもイライラしている隙を突かれてレッドアリーマーが吐き出した光弾をくらってしまう

 

「この際だから2発でゲームオーバーについてはもう文句を言わないわ!ホントは言いたいけど!でもねぇっ、この一発でもくらったら鎧が粉々に砕ける仕様は何とかならないの!?」

 

胸と局部を隠しつつも何とか剣を構え、クレームを叩きつける勇者の姿に涙を禁じ得ない

 

「つーかアンタも降りてきなさいよ!お空をビョンビョン飛び回ることしか能がないわけ!?この妖怪突起紅頭!」

 

何故だかブレイブになってからのエリちゃんはドラゴンの羽を生やす事も出来ない為、空中戦を挑む事も叶わず下から叫ぶ事しか出来ない

……まぁ飛び放題だったらわざわざこんな徒歩じゃなくて普通に城までショートカットできるしなぁ

 

その挑発を受け取ったのか紅アリマさんが'お、じゃあ降りてきてやんよ'と言うかのように急降下でエリちゃんに突進をかましてくる

 

・・・・・・・

 

エリちゃんが死んだ!この人でなし!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「反省会です子イヌ」

 

「アッハイ」

 

というわけで再びリスポーン地点の宿に強制送還されました

ベッドの上で二人とも正座、エリちゃんも真剣な顔つきです

 

「剣での攻撃がダメなら思いっきり叫んで音波攻撃でもぶちかませばいいんじゃないの?竜の咆哮の如く広範囲で」

 

点での攻撃が当たらないなら、面での攻撃にすればええんでねぇの?

 

「私のラブリーボイスをお見舞いするにはまだレベルが足りないみたいです」

 

「……じゃあ、魔力供給ですか」

 

「はい、マスターには幾度となく御迷惑をおかけになってしまう事態になってしまい遺憾の意を示す所存で御座います。どうかこの惨めな落ちぶれポンコツアイドル勇者に慈悲を与えてもらえないでしょうか……」

 

「よし、ちょっと落ち着こうかエリちゃん。慣れない丁寧語まで使ってヤケにならなくても大丈夫だから」

 

「むぎゅぅ……くやちぃ…」

 

目が死んでいる女勇者をまたまた慰めるようにあすなろ抱きをする

 

俺の目の前で良い所を見せようとしたにも関わらず…その後すぐに、しかも序盤の敵に天丼のように2回もやられたのが意外にも心にキてしまったのかもしれない

 

そんな彼女を魔力供給兼メンタルケアするのも俺の役得…じゃなくて役割の一つなんでしょうね

 

 

てなわけで意気消沈中のエリちゃんの背後から胸と股の間に手を這わせていく

サイズ的にもガバガバな鎧なのでその隙間から手を差し込むのは容易だった

というよりもこの鎧ちょっと横とか上から覗けば普通にイケない所が見せそうなんだよな、エリちゃん最近体張りすぎじゃない?

 

「あんっ……んっ、まだ唾液だけで十分よ、子イヌ…そんな所、触らなくて、も……ひんっ!」

 

「ほら、こうやって性的興奮を高めながら供給した方が効率良いかもしれないじゃん?それに義務でこういう事するよりはプライベートな気持ちでエリちゃんを愛でたいし」

 

「ん、もうっ…調子の良い事ばっかり…言ってぇっ…あひぃっ!あ、あぁ…!ソコぉ……コリコリしちゃ、やあぁっ……」

 

防御性が不安な胸当ての下にある可愛らしい乳首を指先でいじめるように何度も弾く

回数が重なる毎にどんどん硬くなっていく蕾と同時にさっきまで淫裂の上に乗せていただけだったもう片方の手も動かす

 

「はぁっ!ふぁっ…!あぁ…恥ずかしい……恥ずかしいのにぃ……それ以上に気持ちよくてぇっ…あ、あっ、んあぁ…!!こ、イヌぅ…こイヌぅっ……」

 

下の淫芽も上の蕾も弄くり回され…成長するかの如く勃起していく

充血したソレらを指で挟み、扱いていく

 

「……はぁ、はぁ…っぁあ、ますたぁっ……んっ」

 

その小さな体をピクピクさせながら、顎を上げていく彼女と目が合う

快楽で絶え間なく漏れる吐息が俺の顔にかかってくる……色っぽくそれでいて女の子らしい良い香りが

 

どちらかはわからない…自然と二人は唇を重ねる

1回目は受け身だったエリザも積極的に舌を絡ませてくる

 

「んじゅぅ……じゅるぅ!れろぁっ…はぁっ…もっとぉ…よこひなさいぃっ…んあっ!はぁむぅっ…んちゅっ…んぐっ」

 

彼女は本来の目的である魔力を舌から吸血するように音を立て飲み干していく

俺自身は掌で撫でる微かな胸の柔らかさ、指先を濡らしてくる蜜壺の感触、口内で混じり合う唾液の甘さを楽しみながら絶頂へと導いていこうとする

 

「はぁ…ちゅぅ、んむぅ!じゅるぅ…っれぁっ、んはぁっ…っあ…!ふぅっ…あっ!やっ、だ、めぇ…イクぅっ…んむぅっ!!じゅるるぅっ…!」

 

快楽で乱された呼吸を整えようと口を離すエリザを逃さすつもりはなく、激しいディープキスで捕らえた後は膣内を掻き回しつつ…桜色の乳首を指で、ドロドロになった舌は咥えるように唇で引っ張り上げた

 

「…あっ、い、くっ!れぁっ……っあへぇあぁぁぁっ―――!!!」

 

チュポンと卑猥な音を立てながら舌を引き抜いた俺はダメ押しと言わんばかりに彼女の角先を咥え、激しく吸い付いた…絶頂の敏感状態でさらなる刺激を頭から送りこまれたエリザは口からは声にならない悲鳴と、雌の部分からは淫液が飛び出す

 

「ッぁ――――――――!!!」

 

上の口だけではなく、下の口からもだらしなく涎を流している彼女を見て、出発するのは少し休んでからにしようと思う俺だった…宿は休む為のものだしね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今夜もお楽しみでしたねと宿屋のお姉さんのから激励をもらい、いざコンティニュー

 

「いけっ!エリちゃん!ハイパーボイスだ!!」

 

「GAOOOOOOooooo――――――!!!」

 

殺人的な音痴は修正されたとはいえ、その肺活量に声量は未だ健在!

我がアイドルポケモン、オシャエリの技でレッドアリーマーは爆発四散!サツバツ!

 

「気に病む事はないわ、あなたが弱かったワケじゃない……私が強かっただけ…ただそれだけの話よ」

 

苦汁を舐めさせられた相手に対しても一度勝ってしまえばこの態度

いや、エリちゃんが元気を取り戻してくれたと考えればいいか

 

「さぁ、次のステージは洞窟!行くわよ子イヌ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱりRPGの定番よね…洞窟の中には数多くのトラップ、立ち塞がる数多の怪物、そしてレアアイテムを前にして最後の門番にドラゴン!私と子イヌは満身創痍になりながらも見事打ち倒して街へ凱旋!…そ、そしてそのまま宿屋に泊まった二人は、二人は…あぁ!なんてラブロマンス!!」

 

「凱旋しなくても、おっ死んちゃえば、すぐに宿屋にいけるよエリちゃん」

 

「そんな物騒な戻り方ごめんよ!もっとボーイミーツガールな冒険をしたいわ!」

 

フシャーと噛みつくエリちゃんの叫びが洞窟内に響き渡る

けっこう歩いているのでそろそろ何かしらの敵が出てきそうだが…はてはて彼女の言う通り本当にドラゴンでも出てくるのかなー?

 

「どうやら、この先ね。さて…鬼が出るか蛇が出るか、たのもーーっ!!勇者見参よ!!」

 

 

「おやおやまぁ、これは随分とめんこい勇者はんやねぇ…」

 

はだけた着物姿にだらけるように体を楽にしている少女がいた

出たのは鬼の方だったね、まぁ、ある意味では竜…龍でもあるけど

 

「って、酒くさっ!アンタどんだけ飲んでんのよ!?」

 

十分な広さを持つスペースで酒呑ちゃんは大量のお菓子をつまみに酒盛りをしていた

 

「だって旦那はん達、中々来てくれへんから暇をもて余して、うちだけで勝手におっぱじめてもしゃーなしやろ?けど、一人寂しく飲むのも終わり。ささっ、こっちに近う寄って一緒に飲みましょ…せっかくの祭りやさかいに」

 

「え、えーと子イヌ?」

 

「あー、多分大丈夫だと思うよ、それにここでひと休みするのも丁度良いと思うし」

 

俺の返答に不安気な様子とうってかわって「子イヌが言うなら大丈夫ね!」と宴の席へ近付くエリちゃん……うむ、彼女から全幅の信頼が重いような、嬉しいような

 

「こんな大量のお菓子どっから持ってきたのよ、まさか略奪!?」

 

「まー、うちも鬼やしぃ?そうするのも悪うなかったやんけど、せっかくのお祭りをぶち壊すような空気の読めへん事はせえへんよ。鬼は祭り好きやからなぁ…ちゃーんとあっちの流儀にのっとって'とりっくおあとりぃと'ってねだったんよ、童の如くなぁ…かはは」

 

お前のような色気ムンムンの子供がおるか

あ、俺はとりっくでお願いします

 

「人間もちと目ぇ離した間にけったいなお菓子作るようなったしのぉ…粉振りかけて混ぜると色が変わるネバネバする奴とか、外見がカツにしか見えへん菓子とか、当たり引いたらもう一個もらえんのもあったねぇ…うちもつい街で当たるまで食うてしもぉたわ。こんな愉快な物に『駄』菓子なんてつけるんやから…ほんま人間はいつまでたっても謙虚やと思わへん旦那はん?あぁ、あんさんが今食べてはるのも……確か、なんて言うたけなぁ?」

 

「いひゃい!?子イヌ!これ口の中で破裂した!バチっって!毒!?」

 

あぁ、わたパチですか

しかし、酒呑ちゃんも俺らの前に立ち塞がる敵という役割ではあるけれども何だかんだでハロウィンを楽しんでくれてるようで何より。

紋次郎いかを咥えながら酒を飲む様もすんごい似合ってますよ

 

「ほれ、勇者はん、つまみだけのうて酒もたーんと飲んでおくれやす。あぁ、それともまだ酒飲むには早い未通女(おぼこ)やったか?」

 

「だだだ誰がおぼこよ!もう私は開通済みの一人前のレディなんだからっ!!」

 

「エリちゃん、淑女(レディ)は自分の事を開通済みとか言わない」

 

「開通させた本人が言う事やろか?」

 

ぐぬっ、まさか酒呑からツッコミが入るとは思わなかった

 

「上等よ!何企んでんのか知らないけど、私は勇者よ!アンタの策謀如き、正面から飲み干してやるんだから!この酒のようにね!!」

 

「ほーれ、いっき♪いっき♪」

「イッキ♪イッキ♪」

 

盃に口をつけ、立ち上がり、腰に手をあて、勢いよく飲み干していくその様はまさに勇者たらんと堂々とした姿であった、彼女ならどんな困難だろうとも打ち破ってくれるそんな確信が………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……私が…トップアイドルよぉ……むにゃむにゃ…」

 

アルコールには勝てなかったよ…

即堕ち2コマの如く、簡単に潰れてしまったな

 

「さーて、お子様はおねんねしてしもうたし…こっからは……大人の時間やねぇ…旦・那・はん…」

 

こちらに這い寄り、息がかかる距離まで顔を近付けてくる酒呑…指先は俺の胸元を優しくなぞっていた

 

「なんやぁ…あんまりあわてへんのなぁ」

 

「何となくこうなる事はわかってたから」

 

まともな状態の勇者エリちゃんだったら普通にバトル展開だったんだろうけど

 

「たった2回触れただけで潰れてまうなら、そら勝敗に関わらずうちが満足できへん戦いにのうてまうやろ…?だ、か、ら…今回はこういう趣向でと思うてなぁ、旦那はんがうちの考えをまるっと見通してくれて嬉しいわぁ」

 

「はて、こういう趣向とは一体…?」

 

「んもう…わかってるくせにぃ、ほんま意地悪な人やねぇ…うちを()()()で打ち倒してくれたら、ここは通してあげるって言うとるんよ…あぁ……」

 

酒呑は辛抱たまらないと俺の体をどんどんまさぐってくる

気づいたら俺は邪魔な衣服を脱がされ、彼女も身に纏う物一切を取り払っていた

剥き出しになった男性器を握りながら提案してくる

 

「成る程、俺の土俵で勝負を挑むとは…その意気やよし!だな」

 

「かははっ!まさか鬼のうちが挑戦者側なんてなぁ……胸を借りる気持ちやわぁ…なーんてぇ、あんっ!もう…せっかちなんや、からぁっ…あぁっ、はんぅ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……うそ…私がレコード大賞…?……むにゃむにゃ…」

 

「エリちゃん、起きて」

 

「…んっ…んんぅー…あ、あれ?私の紅白出場決定は?」

 

「夢オチだよエリちゃん、さて出発しようか」

 

「え?けど、酒呑の奴は…?」

 

「宴に付き合ってくれたお礼にここは通っていいってさ」

 

「そうなの?…じゃあ、あいつなんで素っ裸でピクピクしながら倒れてるの?」

 

「暑くなって着物を脱いじゃったんだろうね、今は疲れて寝てるからそっとしておこう」

 

「……なんか、色んな汁まみれになっているように見えるんだけど…」

 

「ついテンションが上がって酒でも浴びちゃったのかな?うん、後は汗だよ汗。汗に違いない」

 

「………さっきから物凄く幸せそうな顔で『旦那はん…すごぉい…もぉ、しんでまうぅ……』って声がうわ言のように聞こえるんだけど」

 

「よっぽど俺達との飲みが楽しかったんだろうね、いやー良かった良かったーお互いに平和裏に進んでホントヨカッタトオモワナイカイ?」

 

「う、うんそう思うわ!よ、よよよーし!じゃあ洞窟を抜けましょう!」

 

何かを察したように青ざめながら頬を染めるという器用なマネをしたエリちゃんは逃げるように先へ進んでしまった

 

俺は酒呑の着物を毛布代わりに彼女にかけてあげ、大きく息を吐き、その場を後にする

 

……長く、気持ち良…ゴホン…じゃなくて、苦しい戦いだった

一歩間違えれば敗者は自分になっててもおかしくなかった程の激戦だったと言ってもいい

勝利を確かに手にした俺は達成感に満たされながらもどこか悟りを開いたような気持ちになっていた

 

うん、只の賢者モードだこれ

 

 

 




エロと茶番度増し増しの後編は明日投稿させて頂きます。




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エリゴンクエスト 導かれし者たち 下の巻(ブレイブエリザベート&?)

感想にて前回の前書きが何故か反響があった件について

佐々木小次郎「アストルフォ、デオン、ダ・ヴィンチ、ラーマ……結局のところ全部ホモではござらんか…?」

ぐだ男「なんだァ?てめェ……」









前編、後編…3万字超えの2部構成の連日投稿…この話は後編に当たります、ご注意をば

何度も出てきて恥ずかしくないんですか?


「寒い!!」

 

「なんか、デジャビュだね」

 

猛吹雪、凍る大地…洞窟を抜けるとそこは極寒の雪原エリアだった

露出勇者エリちゃんには中々に厳しい環境

 

「子イヌ!上着の中に入れて!」

 

「はいはいどうぞ」

 

耐寒性にも優れた魔術協会礼装

俺の懐に寄ってきたエリちゃんを上着ごと抱き締めるように包み込む

 

「あ―――…これ、いいわぁ…超ぬくい…足の方はまだ寒いけど」

 

俺の胸元から顔だけを出すエリちゃんはご満悦だった

さすがに君の全身を包む程の大きさはないから下半身は我慢してね

 

しかし、上着の中でこう抱き締めているとより一層エリちゃんの温もりとか素肌の柔らかさを意識してしまう……イイ、実にイイ…

 

「寒い所は人肌で暖め合うのが一番よねー、さぁ子イヌ、このまま進むわよ!」

 

「この状態で敵に襲われたらどうすんの」

 

一つの衣服にくるまっている状態なので歩きづらいぞ

 

「こんな激寒の所にいつ来るかわからない勇者を待ち続ける奇特な奴なんているワケないでしょ」

 

あ、またそうやってフラグを建てると…

 

 

――雪景色の向こう側には常夏の美女がいた、え?季節外れ?何をおっしゃいますか!この私がそこに存在する、それだけで年中無休で常夏日和ですよ!

 

「ゲッ、この声は」

 

「あいや!暫く、暫くぅ、暫くぅ!!私が歩けば陽は辺りを照らし、穀物はすくすく育ち、ヤシの実が生え、ゴージャスなリゾート施設とかも建設され、振り返る人々は『ハイソな狐耳巫女万歳!!』と叫ばずにはいられない!まさに太陽、夏、美の化身といえばこのタマモちゃんサマー以外にいるでしょうか…………ってマジで寒いわっ!!何が常夏だ!馬鹿!!」

 

「あ、タマモシャー…じゃなくて玉藻ちゃんじゃないですか」

 

寒さに震える耳と尻尾、見てるこっちが寒くなりそうな肌色の面積の多さ

うん、見事なノリツッコミだ。そしてこの白景色に水着+パラソルというミスマッチッングな様子が哀愁を誘う

 

「アンタ、何してんの?」

 

「それはこちらの台詞ですぅ!私はちゃーんと自分の持ち場を離れずにブルブル震えながら待っていたというのにあなたはなんです?彼シャツならぬ彼礼装、しかもあすなろ抱きという合わせ技で羨まけしからんシチュエーションを味わいながらホクホク顔でノコノコやってくればそれは頭に来るっつーの!尻尾が怒髪天を突く勢いマジ許せねぇ、つーかそこ代われ」

 

「てかアンタ何でそんな時期外れの格好してんのよ、しかも露出多めだし、恥ずかしくないの?」

 

エリちゃん、ブーメランが突き刺さってる

 

「露出度に関して、あなたにとやかく言われたくありません、しかも90年代のそんな古臭い鎧で…センスの時空が止まってるんじゃありません?あぁ、もしかして自分に水着鯖としての出番がなかったからビキニアーマーでお茶を濁したんですか?いやーこれは失敬…数増えようとも所詮は星4。星5の私に憧れてしまうのも無理はありませんよねー、フフフフ……」

 

「ようし、喧嘩なら買うわよ駄狐。構えなさい」

 

タマモちゃんサマーのメタメタしい挑発にてめーは俺を怒らせたとばかりに彼礼装あすなろ抱きから抜け出し、剣を構える勇者エリザベート

やっと戦闘パートかな?

 

「は?構えるワケないでしょ?紙耐久仕様になっているあなたと殺り合えば、そりゃあ私の圧勝でしょうけど、私が勝ってしまうと、それだけあなたとマスターがイチャつく時間が増えるって事じゃないですか。何ゆえ敵に塩を送るような真似をしなければいけないんですか、ここは通してあげますから…さっさと魔王とやらを倒してこの茶番を終わらせて下さいます?」

 

そう言うと玉藻はパラソルを優雅に持ったまま、俺達に道を譲ってくれた

 

「……あ、あれ戦わないの?普通に通してくれんの?」

 

「二度は言いません、そしてきよひーさん程じゃありませんが私も嘘は嫌いですからね」

 

腑に落ちない様子のエリちゃんは警戒しながら彼女の横を通る

しかし、当の本人はパラソルを両手で抱えたまま、その警戒の視線もどこ吹く風

 

自分達が横を完全に通り過ぎても微動だにしない様子を見て、エリちゃんもどうやら本当に通してくれるのだと安心して前を向いたその瞬間……

 

「かかったな!阿呆が!」

 

獣っ娘玉藻にとって手足を動かす必要はない、俺達の方を振り返る必要もない、彼女にはもう一つの手足と言えるものがあるのだから

器用に動かした尻尾をエリちゃんの後ろを歩いていた俺の体に巻き付けてそのまま……

 

「アバンチュールッ!!」

 

――空を飛んだ

 

「…ぎにやあっ!?つ、つめたぁっ…!!って飛んでるぅ!?…ちょ、子イヌ、返しなさい!!」

 

呪符(サマーver)でこの極寒の地で水責めというえげつない攻撃をした玉藻は尻尾で捕らえた俺を腕に抱えると、その衝撃を使い、傘を広げ、空高く舞い上がった

 

「ふははは―――!!日和りましたね、赤トカゲ!私がそんな良い子ちゃんでいると思いましたか?愛とはこれ奪い愛!今のあなたが空を飛べないのは既にリサーチ済み!飛べないトカゲはただのトカゲですよっ!!」

 

いや、そもそもトカゲは飛べないと思うのですが

 

「こんのぉっ…デビルフォックス!!やっぱり騙しやがったわね!!」

 

「人聞きの悪い事を言わないで下さいまし、私嘘はついてませんよ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()…それまでマスターは私が安全な場所で丹念に愛情込めて預ってあげるだけの話ですので、ご安心を」

 

「ふざけっ…」

 

もはや、彼女の声どころか剣での投擲すら届かない高度まで上昇した玉藻はパラソルで浮遊感を得ると尻尾をプロペラのように回転させたっ!!

 

「海ではハイソにタマモシャー…じゃなくてタマモセレブ!陸では情熱的なタマモビースト!そして空では優雅にタマモジェット!水陸空三用、一家に一台必須と言っても過言じゃない万能型決戦良妻巫女、タマモちゃんサマーとは私のことです!!」

 

「か、カッコイイ…!」

 

すげぇ!もうツッコミ所しかないのにタマモちゃんサマーなら仕方ないかって納得してしまう!

そしてふざけた方法で飛行している玉藻をイケテると思ってしまった自分が憎い!

いいなー、俺も独力で空飛びたいなー

 

「いやん☆そんなキラキラした瞳で見つめられちゃうとタマモ照れちゃいますぅー、まぁ…良妻的には可愛いとか美しいとか言ってもらいたかった所ですが、それはこれから十分にその身に教えて差し上げればいい話ですよね♪さぁ、テンション上がってきたのでどんどんスピード上げていきますよぉ!!サラマンダーより、ずっとはやい!!」

 

「おいやめろ」

 

いつもより多めに回しております♪といった感じで尻尾をフル回転のハイスピードで進んでいく彼女は火山と煮えたぎるマグマが印象的な溶岩洞エリアの上を通過する所だった

 

溶岩洞か…前は夜這い3人衆が待ち構えていたけど、今回は一体誰がいたのやら

 

うん?なんか光って……

 

「現在タマモジェットはマスターを乗せて、スーパータマモアイランドへ向かっておりまーす、万年常夏リゾートの理想郷、邪魔者も入らないその場所でそれはもう存分にグッチョグッチョな感じで私を愛で放題…みこおおおぉおおんぅっ―――!?」

 

下を覗いた俺が見たものは地表から一筋に伸びる聖なる光、そして器用にもその光はピンポイントに玉藻だけを飲み込んだ

 

ブッ飛ばされた彼女の『たとえ私が死んでも第2、第3のタマモが――』と不吉過ぎる言葉を耳にしながら、俺の体は重力には逆らえず、そのまま真っ逆さまに落ちていく

 

ふむ、そう言えば地面に激突する瞬間にその地面を思いっ切りぶん殴れば、落下の衝撃を和らげれるとどこかで聞いたような

 

試してみる価値アリかと思った俺だったがどうやらその必要は無かったようだ

 

「ふう…御無事ですか?マスター」

 

相当な高さから落下した俺をその細腕でお姫様抱っこするようになんなく受け止めてくれたのは金髪ポニーテルと純白のドレスが似合うセイバー・リリィだった

 

そっか…君がこの溶岩洞エリアの担当だったのか、納得の配役だぜ

 

「ありがとう、リリィ」

 

「えへへ、当然の事をしただけですよ」

 

 

「……ぜぇっ―――ぜぇっ―――…や、やっと追いついたわっ!子イヌ、マスター!無事!?ペシャンコになってない?」

 

少しすると、肩で激しく息をしたエリちゃんが俺達の元まで到着した、

おそらくその慌てっぷりを見る限り俺が落下したのを見たのだろう

 

そんな彼女は俺を抱えているリリィを見ると剣を構えた

 

「ちっ!次から次へと…今度はアンタが花嫁泥棒ならぬ子イヌ泥棒ってワケね!そいつは返してもらうわよ!!たとえ二撃必死でも私は勇者なんだからっ!」

 

「え?あっ…あの、最初からそちらにお渡しするつもりでしたけど…」

 

リリィの手から優しく下ろされた俺はそのままエリちゃんの隣に立つ

 

「え、こんな…あっさり?わ、罠?」

 

あっさりと俺を返還された事に戸惑いを隠せないエリちゃんは勢い良く啖呵を切った手前、どうしようと困った視線をこちらに寄こす

 

「今回の私の役目は勇者であるあなたの敵として迎え撃つ事です、玉藻さんは少々暴走してしまったようですが……私はマスターに危害を加えるつもりは毛頭ありません。ですが…役目がある以上、ここを簡単に通すワケにもいきません…通りたければ、正々堂々、真正面から私を打ち破って下さい」

 

汚れなき誠実さに満ちた態度で白百合の女騎士リリィは戦闘態勢に入る

エリちゃんも相手のそんな様子を見て、名剣エイティーンを構え直し、不適に笑う

 

「イイ、とてもイイわ…アナタ、あの駄狐と違って話はわかる娘だし、もしこんな出会いじゃなかったらアイドルユニットに誘ってるぐらいよ」

 

「ア、アイドルですか……もしより近くでマスターを守れて、力になれるなら考えておきます」

 

「その話もこの戦いが終わった後ね、それと子イヌを助けてくれて礼を言うわ…アナタみたいな真っ当な剣士とやっと勇者らしいまともなバトルが出来るんだがら…そうよネ!剣士同士の一騎打ちも冒険の定番よね!」

 

リリィって言うだけあってやっぱまともな娘よねーと一安心した様子のエリちゃん

だが基本的に彼女がフラグの如く考える予想は全て覆されるのが世の常と言ってもいいかもしれないのだ

 

「ハイ、私の役目はここであなたの敵となる事。そして勇者エリザ…あなたは今回はマスターの騎士という立ち位置となっています。ならば何があってもマスターを守れるだけの力を持たなければいけません、間違ってもさっきのようにマスターを奪われるような事態、そして半人前の私に負けるような事もあってはいけません…見習い騎士程度の私を倒せるぐらいのレベルにまでなってもらわないと安心して彼の隣を任せる事は出来ません、たとえ剣が折れようとも、盾が割れようとも、鎧が崩れようとも、四肢がもがれようとも、首だけになろうとも、拳で歯で角で仇なす敵を殲滅出来る程の強さを持つべきです。えぇ、えぇ…わかっています、マスターがそこまでボロボロになってまで命を懸けてまで自分の為に戦う事をを良しとしない人だということは…私の命はマスターの許しなく捨てる事は許されていませんから、ですから自身の命を絶対に失わないレベルでそれぐらいに頑張りを見せるべきなのでしょう…大丈夫、大丈夫ですよ、ここではあなたはいくらでもやり直せると聞きました…ですので私も心置きなく全身全霊上限突破の殺意を込めて剣を交える事が出来ます。命は取りません、どうか傷を癒してまた挑んで下さい…」

 

「あれ?なんかすんごく殺意に満ちて…ちょっとというか、滅茶苦茶怖いというか…うん、違うなー…私が想像してたのと違うな――、これ……」

 

「カリバアアアアアアアァンンンッッッ!!!」

 

ワンターンオーバーキルゥ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれのどこがリリィよ!オルタよりも黒々しいじゃないの!」

 

見事に瞬☆殺されてしまい、いつもの宿へ帰ってきてしまった俺達

 

「リリィはただ単にこう忠誠心とか愛情とかその他もろもろの感情が行き過ぎてるだけだから可愛い方だと思うよ」

 

「あれを見て、可愛いと思えるのねアナタは…いや、子イヌの懐の広さは異常だし、ある意味同じ穴の狢よね。はぁ――……ホント死ぬかと思ったわ、いやここにいるって事はある意味一度死んでるワケだけど」

 

「勝算はある?」

 

「ふふっ、無かったらこんなに落ち着いてないわ。確かに今は2発KO確実のクソゲーだけど、私にはスキル『勇者大原則EX』があるわ、短時間だけどこれでリリィの攻撃をほんの少し凌げる筈よ…そして後は宝具をブッパで劇的逆転サヨナラ勝利よ」

 

無敵スキルで耐えて、隙を突いて宝具でかたをつけるか…シンプルだが悪くはないアイディアだ。

だが、問題は……

 

「今のエリちゃんってスキルとか宝具とか使えるの?」

 

「…使えないわよ、レベルも魔力まるで足りてないから……」

 

ふむ、ならばもはや唾液で魔力供給とか言ってる場合じゃないね

一番効率の良い方法で直接ガッツリと種火を注ぎ込む必要がある

 

「勇者って、こう…子供達に夢と希望を与える正義の存在の筈よね、にも関わらずお茶の間に見せられないような方法で強さを得てしまってる私……イヤ、けどこれもある意味ではアリなのかしら?…まぐわった二人は愛の力でパワーアップ!!っていうのも案外悪くないわよね…」

 

ベッドの上で頬を染めながら、にやける勇者は確かにお茶の間には提供できないよね

 

「心の準備は出来た?エリちゃん」

 

「えぇっ、たっぷり頼むわ子イヌ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んっ、ふぅ…子イヌのもう、こんな熱くなって…」

 

ベッドの上で膝立ちになった二人は剥き出しになった性器を互いに弄りあっていた

前のコンティニューの時は触るだけだったので、こうしてはっきりと視覚的に彼女の幼さを感じるを恥丘を眺めながら、自由に触れるのは凄い贅沢だと感じてしまう

 

俺の愚息もすぐに限界状態まで膨らんでしまうし、酒呑の時にあんだけ酷使しても全然余裕そうだなコレ…十二の試練でもついてのんか

 

「あぁっ、んあぁ…もう…子イヌのがさっきから……ペチペチって私のお腹叩いて…落ち着きのないコね…やんっ…」

 

ピクピクと震え自分の下腹部に触れている肉棒をエリザは愛おしそうに手で包んでくれる

 

「ん?その手…」

 

彼女の鋭い爪は赤いゴム手袋のようなものによって隠されていた

 

「えぇ…いつもの長い爪のままだと子イヌに怪我させちゃうでしょ?こうやって撫でてあげる事も出来ないし、だけど、この特製のハンドカバーならアナタを思う存分愛でてあげれるわっ………ちょっと何か言いなさいよ、今も結構恥ずかしいんだから…やぁ!はんぅっ…!」

 

俺に対する気遣いとか照れとか優しさが可愛いらし過ぎて……入口までに留めてた指をついヒクついている膣内まで挿しこんでしまった

愛液を掻き出すように指を何度も折り曲げる、彼女の暖かく濡れたナカの感触が非常に心地よい

 

「あっ、はぁっ…!ア、タシもやられて…ばっかりじゃないわよっ…んんっ…」

 

負けじと俺の男根を扱く動きを再開するエリザ

鈴口とカリを指先でなぞられ、その手袋越しに感じる人肌の温度と何ともいえない肌触りに声が漏れる

 

「んっ、ふぅ…あっ、あぁ、んふあぁ…!…はあぁっ…んぅ、んあっ…!」

 

喘ぎながらも、アソコを愛撫する事を止めないエリザ

だんだんと自身の腹も擦り付け、脈打つ男性器は彼女の手とその下腹部に囲まれてしまった

 

「す、ごいっ…なんかぁ、はぅ…こうしてるだけで……ますたぁの指とおちんちんでぇ……あかちゃんのおへやに……たくさん、刺激がきちゃぁっ…あんぅ!」

 

彼女はその下にある子宮に快感を求めるように勃起した竿を下腹部へ押し付けていた

恍惚とした表情で手と臍下を使って扱く動きを止めないエリザから与えられる快楽でこの色白な細身に射精したい気持ちになったがそこは我慢する

 

「あぁ…ますたぁっ…」

 

手淫だけじゃもう満足出来ない…もっと強い刺激が欲しいと二人とも徐々に動きが変わっていくのは当然の結果だった

 

俺は肉棒を下げていき、エリザは腰を少し浮かしていく

 

亀頭が彼女のピンク色の膣口に狙いを定め、性器がキスをするように触れ合う

 

熱に浮かされた表情でエリザは懇願する

 

「…マスターので剣で……アタシをレベリングして、もっと強くして…そして、そして、そして……いっぱぁい、愛して…くれ、る?」

 

俺は力強く頷くと自身の怒張を小さめの肉壷の中へ侵入させていった

狭い膣内だが、男根が進む度にもっと奥へと誘うように吸い付いてくる

 

「ぁあぁっ!!ひあぁ…!ふわぁっ…!!おっきぃのぉ…き、てるぅっ!!」

 

膝立ちの姿勢を止めた俺はそのままエリザの体を難なく抱え、対面座位の形で彼女と交じり合う

羽のように軽い彼女の体は突く度に面白いぐらい大きく反応する

 

「はぇっ!こ、れだめぇっ…!ズンズンってぇ…おにゃかに響いちゃうんんんぅっ…ああああぁっ!!」

 

肉がぶつかり合う音そして、彼女の部屋に響き渡る嬌声…

宿屋であるので当然、他の宿泊客もいるだろう…その人達に聞こえてしまうのではと思ってしまう程の大きい声だった、まぁ…今のエリザにはそんな事を気にする余裕は無いんだろうけど

 

それに俺ももっと彼女の美声を耳にしたいと思ってるワケだし

追撃の手を緩めないように今度は目の前で上下に動く乳首に吸い付いた

 

「ひんぅ!…ひやぁっ…あぅっ…んあぁっ!…も、ホントに…ますたぁっは…アタシのおっぱい……好きなのねぇっ、やあぁっ!」

 

以前からそうだが、エリザとまぐわう度に彼女の胸を褒めまくって愛でまくった甲斐あったのか…ここ最近の彼女は自分の胸に少し自信を持ってくれるようになった

それでもたまに巨乳の娘を見る度に「くっ」ってなってしまう事もあるけど…

特に大きさにこだわりがあるワケじゃないし…貧乳の娘が思い悩んでいる姿もそれはそれで愛らしいと思ってしまうのは悪い事なのでしょうか?

 

彼女の慎み深い乳を唇、歯、舌、口内の部位を全てを駆使して愛撫する

感度が高い胸部を苛める度に膣道がどんどん狭くなり…こちらを締め付けてくる

 

「はぁんうっ!んああぁっ…!おっぱいっ…のびちゃうっ……はうっ!だめぇっ…!もうぉっ……全身ビリビリしちゃってぇっ…あっ、あぁ…あへあぁっ…!!」

 

紅髪を振り乱し、半開きになった口からは耐え難い情欲にもう限界だとエリザが訴えているかのような雌の鳴き声が漏れる

 

それでも俺は出来る限り…彼女の奥へ多量の精液、魔力を出してやろうと、限界まで溜め込む

 

「ますたぁっ…もうらめぇっ…!体がびりびりするの…とまらなぁくてぇっ…ふぅっ…んああぁっ!飛んじゃう…とんじゃうのぉっ……!らから、もうらしてぇっ…種火ぃ……アタシにいっぱい注ぎこんでえぇっ!!」

 

エリザが足を俺の腰に絡め、彼女の子宮が爆発寸前の亀頭と触れ合うタイミングをついた、その瞬間――

 

「んひやああああああぁっ―――――――――!!!」

 

彼女のナカに収まり切らないと思ってしまう程の熱く滾った魔力の素が注入されていく

愚息から白汁が飛び出す度に俺を強く抱き締めてるエリザは強くなった喜びというよりはセックスによる快楽そのものに震えているようだった

 

「あふぁ、あっ…はぁっ―――……こんなにいっぱい…そそがれてぇっ……やっ…駄目…あふれちゃ…やぁっ…もったいないわぁっ…んはぁ……」

 

ようやく全てを出し切った肉棒を彼女の雌穴から抜き出す…

エリザは白濁液と自身のの愛液で汚された女性器を愛おしそうに撫でている

 

「あぁ……これで…魔力もレベルも十分に補充出来たわよね…?…私…子イヌにふさわしい勇者になるわ…絶対、絶対なってみせる…うん、弱音はもう吐かない。だって今すんごい力が漲ってるもん…体が軽い、こんな幸せな気持ちで戦うなんて初めて……もう何も怖くない…私、一人ぼっちじゃないものね」

 

俺は勇者である強さとアイドルの可愛さ、両方を重ね持つ彼女の眩しいばかりの笑顔に微笑みを返してあげる事しか出来なかった

 

さぁ、逝こうかエリちゃん

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

「一気に決めさせてもらうわよっ!!『鮮血竜巻魔嬢(バートリ・ブレイブ・エルジェーベト)』!!」

 

―――ズドオオオンンンッ!!

 

「…やったわ!」

 

―――……殺定の剣よ、力を……邪悪を断てっ……

 

「……うそ」

 

―――勝利すべき黄金の剣(カリバーン)ッッ!!!

 

「ドラゴンステーキになっちゃうぅうううう!!」

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう駄目よぉ…おしまいよぉ……」

 

本日何度目になるのか、もうお馴染みと化しつつある、リスポーン地点兼今夜はお楽しみでしたね部屋

 

ベッドの上で涙目体育座り状態のエリちゃんはもはや‘心という器は…ひとたび、ひとたび…ひびが入れば、二度とは…二度とは…‘という状態だと言ってもいい

ほんの少し前のもう弱音は吐かないという台詞を忘却してしまうぐらいの敗けっぷりだったからなぁ…

 

まぁ、俺としてはエリちゃんのフラグの匂いがプンプンする最後の台詞で嫌な予感しかしなかったけど

なら止めろって?そんな事したら今こんな風に凹んでいるエリちゃんを見れないじゃないか

 

「エリちゃん、諦めたらそこで勇者終了だよ?」

 

「うぅ…グスッ……けどぉ、あの渾身の一撃を耐えられたら…もう……ふえぇっ…」

 

幼児退行しかけているエリちゃんをハグして、その頭をイイ子ーイイ子ーと撫でて落ち着かせてあげる

 

実はエリちゃんの宝具を使うまでの時間をスキルで耐えてブッパという路線自体は悪くない

リリィが耐えたのも彼女の愛情とか忠誠心とか想いの大きさ的な要素もあるけど、純粋にエリちゃんの火力がもう一押しだったともいえる

 

「ねぇ、エリザ…まだ使ってないスキルがあるでしょ?」

 

「へ?…『魔力放出(勇気)』もちゃんと使ったわよ?」

 

「いや、三つ目のスキルだよ」

 

あの『真紅の勇者伝説EX』とかいうロマンスキルがあるじゃないか

 

「えぇっ!?あの産廃スキ…じゃなくて、パルプンテ技を使えっていうの!?………確かにうまく火力が上がる効果が出れば勝てる可能性はあるかもだけど……あのスキル、滅茶苦茶魔力食うのよ?それこそ宝具が打てなくなるっていう本末転倒な事態になる程に」

 

「どの効果が出るかは勇者エリザの幸運Bに賭けるしかないとして…魔力に関しては俺にいい考えがある」

 

中出しでの魔力摂取だけじゃ足りないなら…もう一方からも供給すればいいじゃない

 

「序盤で君が倒してくれた敵の中に実はアイテムをドロップしてくれた奴がいます」

 

懐から俺が拾っておいたあるドロップアイテムを彼女に見せる

 

「あ、そうなの?まぁ…そういうアイテム管理は全部、子イヌに任せてた、か、ら………それ何?」

 

俺の手の平サイズに収まる粘弾性を持つ緑色の塊を見て、固まってしまったようだが…驚くのはまだ早いぞ

 

「あの緑色スライムから落ちたアイテム通称『グリーンスライムの残骸』で御座います。で、これの凄い所なんだけど…俺がこうやって魔力を注入すると…」

 

シャアアァッ!と気合を込め、その緑不思議物質にどんどん魔力を吸い込ませていく

すると何という事でしょう、このスライムの残骸が大人程の大きさまで成長し、意思を持ったかのようにプルプルし始めました

 

「はい、という事で女勇者を一人捕まえるのなんてワケない程のサイズにまでなりました……これのイイ所って魔力を注いだ人の意志で自由に動かせるという点なんだよね…しかもいつでもどこからでも注入した魔力を放出する事が出来るという優れもの」

 

「こ、子イヌ……ま、まさか…」

 

「論より証拠ということで」

 

「ちょっ…待ち…にやああっ!?」

 

俺が念じるとスライムから触手のようなものが伸びてベッドの上にいるエリザを捕らえる…

そのまま自身のプルプルした体に手足を吸い込ませ、座らせるように拘束した

 

「うぅ…なによぉ…これぇ…なんかブヨブヨして、けど子イヌの温もりも感じるし…変な気分になるぅ……」

 

「一応、今のスライムの中は俺の魔力で構成されてるからね」

 

「あぁ…なる、ほど、…やっ、体がどんどん沈みこんでぇ…んんぅ…からだぁ、くすぐらないでぇ……」

 

とりあえず、これからする事に相応しい体勢をさせるべく、彼女の手足だけではなく、そのまま腰、胴、胸…首から下は全てスライムに飲み込ませた

 

邪魔な胸当てと股間の装備は中を器用に動かして取り外すと体外へ放り出す

ほぼ体全身をスライムに取り込まれているエリザを回転させるように動かし四つん這いの姿勢にさせるのは簡単であった

 

いやー、しかしいいなー、これ、

ホントに自分の手足のように自由に動かせる

欲しいなー、これ…カルデアに持って帰れねーかな

プレイの幅が広がると思うんだよなぁ…クククク

 

………っといけない、いけない、つい暗黒面が出てしまったわ

僕は悪いスライムじゃないよ

俺は裏表ない素敵なマスターです!はい、復唱

 

「……子イヌが、すんごい悪い顔してる……」

 

「失礼な、これからする事はエリザとっても重要な試練だというのに」

 

「う、うん…さすがの私もね?これから何をされるのかだいたい察しはつくわ…凄い間抜けな格好してるとか、何かマスターに全身包まれているような案外悪くない気分になっているとかはこの際置いておくとして……ね、ねぇ?まだそこまで無理しなくてもいいと思うの、そうね、今日は止めておきましょう?明日ぐらいにしましょうよ…」

 

懇願するような彼女の微笑みに俺はこう返答するしかない

 

「エリちゃん!明日って、今さッ!」

 

「やっぱりね!そんな気はしてたけど!まだ…心の準備というものが…あぁ!やっ、なんかうごいてぇ…んひぁっ…!」

 

コポコポォと気泡を立て、スライムが動き出す…いや、動かしているのは俺なのだが

現在、スライムに飲み込まれている彼女の体を守る物は一切ない、要するに触り放題というワケである

 

「ひやぁっ…!あっ!はんぅ…にゃっ…おっぱい…チュッ、チュッてぇ…すわないでぇっ…あふぁっ…」

 

思うがままに変形できるという事はスライム内の一部を吸盤のようにして彼女の乳首に吸い付かせる事だって可能である

半透明の拘束具からはエリザの小さいおっぱいが吸引され、伸び縮みしている様子がよくわかる

 

「んああぅ!あっ、そんな…吸ってもぉ…何も出ないからぁっ………はうううぅっ…!!おまたにぃ…入ってきてぇっ…!!」

 

今度は淫裂からスライムの塊が侵入していく、彼女の言う通り…俺の温もりを感じているのなら肉棒を挿入されている錯覚に陥っているかもしれない

 

「あんぅ!んくぅっ!はあぁっ…!ナカがぁ…こすられてぇ…っ…柔らかいのにぃ…硬くてぇっ…!かんたんにイッちゃああああぁぅ…!」

 

さてさて、頭以外の全てを取り込んでいるという事は当然、エリザの尻尾もスライムの中にある

これを見逃す程…俺は謙虚な性格はしていない。竜ゆえの弱点を責めるべく、次の操作を開始する

 

「ふぇっ…あふっ…あ、ああ…ま、まって…いやっ…そこはだめ…だめぇなのぉっ…いま…そんな所イジられちゃ、オカシくなっちゃっ…やぁぅ!!あひぃぃぃっぅ―――!!!」

 

尻尾全体を粘性の塊で扱かれるだけでは留まらない

その尻尾とお尻の結合部、付根の部分…すなわち彼女曰く、そこを見られたら殺すか結婚しかないという逆鱗にも魔の手は伸びる

 

「やああぁっ…!げきりんはやめぇてぇっ…!…あぁっ!ひくのがとまらなくなっちゃうからあぁっ‥!!あっっ!はふぅっ!んひやああぁっ!!またイッちゃう…あぅっっ!!」

 

エリザを飲み込んでいるスライムは形を歪めながら、彼女の体全体をマッサージするように蠢いている

手と足の指先から…太もも、腹周り、へそ、うなじ、胸、膣内、クリトリス、尻尾、逆鱗、お尻の穴まで顔以外の体のありとあらゆる所を性感帯にするかのような地獄の快楽責めがエリザの身に及んでいるだろう

 

「あふあぁっ…!!あおっ…!かはぁっ…はぁっ!しょんなぁっ…お尻までぇ…いじられてぇっ…!!あはぁっ‥これぇ…もうだめぇっ…!ますたぁに体ぜんぶぅ…食べりゃれてるみたいでぇっ…おかひくなるぅっ…んふあっ!!あったかくてぇっ…ヌルヌルしてぇ、あひぃっ!こんなのぉ…こんにゃのぉ…もう戻れなくなっひゃうぅっ…!!」

 

涙と涎を垂れ流しながら、俺の魔力の塊に凌辱されているとも言っていい彼女は自分がもうどこにいるかもわからなくなる程に乱れ狂っていた

 

そんな彼女の痴態に既に興奮し切った男根を露出させた俺はだらしなく開いた彼女の口に難なく挿入する

 

「んむぐぅっ!?…んむぅっ!…んふぅっ…んぐぅっ、んちゅぅ…んじゅるぅっ!」

 

エリザの角をそれぞれ両手で掴んだ俺はその手と腰をイラマチオするように動かしていく

 

「んじゅぅ!…じゅぽぉっ…!じゅるぅ…!…じゅぱぁっ…はむぅっ…!んぐぅっ!!」

 

完全に蕩け切った彼女は角を掴まれるだけで頭に直接、快楽を送りこまれたかのような敏感な反応を返していた

口内を肉棒で蹂躙されても、抵抗するどころか…むしろ自分から舌を淫らかに動かし、舐め回している感触が良くわかる

 

「んふぅっ!んんむぅっ!じゅむぅっ……!!ふぁひへぇっ…!んじゅるぅぅっ…!!」

 

自分の体の外も中も…もう弄れていない所はないぐらいに誇張表現無く、全身を愛撫されているエリザに欲望を出す準備は既に出来上がっている

 

スライムの方も俺のタイミングで自由に魔力を射精する事が出来るのだから

そして、俺は肉棒を彼女の喉奥まで挿し込み、そのまま……

 

「んんんんぶぅぅぅっ――――!!んむぅっ!!んふぅっ!んんんん―――!!んぐぅっ…んぐっ…」

 

女性器、菊門、口と、三つの穴から魔力の素をぶちまけた

俺の魔力を残す事なく放出したスライムは最初の手の平サイズまで小さくなっていく

 

「んぐっ…んむぅ…ちゅぅ…ちゅるっ…ごくっ、こくっ…んちゅぅっ…」

 

幾度となく襲い掛かった絶頂の余韻に体を痙攣させていたエリザはスライムの拘束が解かれ、体が床に落とされても男性器から口を離す事はなく…心ここにあらずの状態で最後のまで最後絞り尽くそうと口内を卑猥に動かし続ける

 

俺は仕上げのフェラともいえる彼女の口膣内から暖かい快感を感じながら、よく頑張ったねと頭を撫でてあげた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「来ましたか」

 

「えぇ…前回の私とは思わないようにね、もうマジで性癖が戻らないレベルで歪んじゃったと思うぐらいに凄い特訓をしてきたんだからっ!!」

 

自慢になるのかならないのかよくわからない前口上でエリちゃんはリリィの目の前に立つ

 

「覚悟しなさい…確かに今の私の防具は消耗しているわ。だけど侮るんじゃないわよ未来の騎士王、今宵の勇者エリザは完璧でないが故に完璧なのよ」

 

「成程、その身に充溢するマスターの匂い、いつになく濃厚です。どうやら何の勝算もなく私の前に立ったわけでもないようですね」

 

得物を構える紅と白の剣士、結果がどうなろうともこの戦いが決着となるそんな予感があった

 

「いくわよっ!スキル『勇者大原則EX』!!

一つ、勇者は無敵でなくてはならない。

一つ、勇者はハイテンションでなくてはならない。

一つ、勇者はたいていの落し物を自由に使ってよい

一つ……」

 

「エリちゃん!全部言っている時間は無いぞ!」

 

「あぁもう!わかっているわよ!真ん中省略!

ラスト!、勇者は何があっても最後には勝たなくてはならないっ!!」

 

逆転への前振りともいえるスキルが迫りくる光のビームからエリちゃんの身を守る盾となる

 

「さらにスキル『魔力放出(勇気)D』!!

地球の全かぼちゃ達!私に勇気をわけて!」

 

魔力を放出させるエリちゃん…実際に地球のかぼちゃ達から勇気を徴収できるワケはないがあくまで彼女の気分の問題なのだろう

 

「それは前回、見ましたよッ!」

 

「わかってるわよ!そしてこれが最後の切り札ッ!スキル『真紅の勇者伝説EX』!!!

劇場版限定の奥の手をここで見せる事をありがたく思いなさい!もうアナタには負けないわっ!3度目の正直よ!!」

 

二度あることは三度ある場合もあるぞ、エリちゃん

 

「こ、の迸る魔力の奔流はっ…!?」

 

だが、どうやら今回はしっかりと幸運Bが仕事をしてくれたらしい

エリちゃんの身に纏っている…巨大な勇気(オーラ)

博打だったが宝具のバフをかけてくれる効果を引き当てる事が出来たようだ

 

「私のこの剣が真っ赤に燃える!勝利を掴めと轟き叫ぶ!ばああくねつぅ…ゴッドォッ……バートリィィ・ブレイブ・エルジェーベトォオオオオオオオォオオッッッ!!!!」

 

―――こちらまで吹き飛ばしかねない衝撃力と回転力を全身に乗せて、紅き螺旋と化した最後の奥義をぶつけるべく、勇者エリザは突き進んだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見事でした、あなたの勝利です。勇者エリザ」

 

光の粒子となり消えかかっているリリィは勝者に微笑んでいた

 

リリィの背後にあった火山すらも抉り取る程の威力を持つ宝具、成程使い所は非常に限定されるが特別版最終奥義とも言えるのも納得だった

 

「力、運、知恵、逆境を跳ね除ける心の強さを手に入れたあなたなら……マスターの勇者として、かの大魔王にも勝てる筈です」

 

「リリィ、アナタのおかげで私も勇者として二皮ぐらいむけた気がするわ…色んな意味で」

 

「エリザベートさんが諦めて、私がマスターの勇者に成り代わるという展開も良かったんですけどね」

 

「オイコラ」

 

「ふふ、冗談ですよ。そしてマスター、実際に剣を交えたのはエリザベートさんとはいえ…私はあなたの敵として立ち塞がってしまいました……」

 

「そこは気にしなくてもいいんじゃないかな?」

 

「申し訳ございません、私の気持ちの収まりがつかないんです。ですので…マスターがカルデアに帰ってきた際にはエリザベートさんにした事を…いえ、それ以上に厳しくてッ!鬼畜な事をッッ!!私にお仕置きとして行ってくれて構いません!!!ハイ、マスター手ずからの罰なら何でも………」

 

―――シュウウウゥン……

 

最後まで言い切る事なくリリィは消えてしまった

うん、カルデアに帰ったら彼女にしっかりとご褒美をあげないといけないねこれは

 

「そういや、リリィをアイドルユニットに誘う話は?」

 

「保留よ。最初は盾娘と同じタイプだと思ったけど…下手すればあのアオダイショウより闇が深いじゃないのよ…あの娘…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ついに…ついにここまで来たわね、マスター」

 

「あぁ…長かったような短かったような」

 

チェイテ城、玉座の間…その扉の前で俺達二人は立ち止まっていた

前回はクレオパトラが最後のボスだったが…新たなモードとなったこの超極☆大かぼちゃ村ではもちろん変わっている筈だ

こうして、エリちゃんの隣にいると様々な思い出が甦る…

 

――意気揚々と雑魚敵に挑んだ挙句、鎧が砕けて素っ裸になるエリちゃん

 

――キスされまくってトロトロになるエリちゃん

 

――即、酔い潰れて…おねむになるエリちゃん

 

――アソコを突かれて俺の体の上で喘ぎまくるエリちゃん

 

――リリィにボコられて心が折れかけるエリちゃん

 

――スライムと俺に挟まれてアヘアヘになるエリちゃ……

 

「もっとまともな回想しなさいよっ!」

 

「ごめんごめん、リリィ戦で奥義を見せたエリちゃんは格好良かったよ……本当に勇者だった」

 

「ふふん、何を今更!…私は勇者だって最初っから言ってるじゃない!さぁっ、これが正真正銘最後の戦い…行くわよっ!マスター!!」

 

 

魔王が待つ最終ステージ、そこで待ち構える敵とは―――――

 

 

「最大の敵は自分自身ってよくある台詞だと思わない?私…」

 

玉座から立ち上がったその姿はエリちゃんのマントと対をなす漆黒のマント

だが…その色白の肌に纏うは彼女と同じ紅のビキニアーマー…大人の女性らしい凹凸がエリちゃんとの差異を表していた

 

「ようこそ、我がチェイテ城へ。私がこの城の新たな主にして魔王勇者カミランよ」

 

「うわキツ」

 

エリちゃんが大人になった目の前の自分が勇者となった自身と同じ格好なのが心底気に食わないのか吐き捨てるように呟く

 

俺?俺としては非常に眼の保養となるので拝んでおきますね

いつもの仮面や物々しいドレスはつけていないから凄く新鮮な姿

 

「アンタねぇっ…年相応って言葉知ってる?」

 

「フン、そんなサイズが合わないスカスカの鎧で言われても困るわ。見栄を張らなくてもいいのよ、素直に私の体が羨ましいって言えばいいじゃない」

 

「は…はぁっ!?誰がアンタみたいなオバサンの体を羨ましがるっつーのよ!それにこの防具の隙間は私の将来性にかけた希望のスキマなのよ!」

 

「ゼロには何をかけてもゼロよ小娘、諦めなさい」

 

「よっしゃあ!もう戦闘パート行くわよぉ!いざぶち殺す!止めるんじゃないわよマスター!」

 

「それはこっちの台詞よ…お前の出番が増える度に私の黒歴史が増えていく気持ちがわかる?若さ故の過ち……過ちは正さなくてはならないわ」

 

「現在進行形で黒歴史を作ってるアンタに言われたくないわよっ!老い故の過ちこそがこの世の悪よっ!なら、私が今から正してあげるわ!」

 

白と黒のマント

赤と白の髪

ひんぬーときょぬー

エリザと大人エリザ

勇者エリちゃんと魔王勇者カミラン

 

誰かに負けるのはいい。けど、自分には負けられない―――!

そんな思いを込めるかのように同じ紅の鎧を纏った二人の女は激突した

 

これから繰り広げられるのはきっと、眼を離せないような激戦に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんで…なんで、よ……」

 

なんて事には一切ならなかった

鎧が砕け、その豊満な肢体を見せつけるようにカーミラは倒れた

 

あぁ、何となくそんな気はしてた、エリちゃんと同じ鎧だという事は耐久性も同じだっていう可能性は当然あって然るべき

 

そして、リリィ戦で散々レベリング(意味深)をしたエリちゃんが先に一撃を与えれたのも約束された結末だったのかもしれない

 

「…色々言いたい気持ちはあるけど、リリィの方が百倍強かったわよ」

 

最後の敵が拍子抜け過ぎて、何とも言えない表情なエリちゃん

ラスボスより、その前に出てくる敵の方が強敵だったという展開もある意味ではRPGあるあるかもしれない

 

「まぁ…何はともあれ勝ちは勝ち!こうして悪は滅びたわっ!」

 

――魔王を倒した勇者は剣を掲げ、勝利のポーズをとる

 

「エンディングよ!泣きなさい、マスター!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んじゅぅ…じゅぽっ、じゅぱぁっ…れろぉっ……むじゅぅっ…」

「ちゅぅっ…ちゅるぅっ…んんぅ…んちゅっ…んくっ…」

 

もしこの冒険がゲームだったとするのなら今、このシーンはスタッフロールが流れた後のエピローグとも言うべきだろうか…年齢制限は当然つくだろうが

 

チェイテ城の一室にある豪華な寝室のベッドの上で俺は二人の勇者に貪られていた

 

勇者エリザには肉棒を口淫され、

魔王勇者カミランには抱き締められ…柔らかくも巨大な感触の胸を押し付けられながら首から血を吸われていた

 

吸精と吸血を二人の女性から同時にされるという初めての快感につい夢心地になってしまう

 

「んぐぅっ…ご、くぅっ…はぁっ、ちょっと…アンタ…さっきから吸い過ぎじゃないの…?私はまだアンタがここにいるのを許してなんかいないんだからね…」

 

「っぷはぁっ…別にお前の許しなんていらないわよ…私が言う事を聞くのはマスターだけよ…」

 

「あぁ?この垂れパイが」

 

「何かしらナイ乳?」

 

さすがに最後の敵として登場したにも関わらず、瞬殺されてあのまま素っ裸で放置というのも可哀想だしという事で俺が誘いました

しかし、普段ならまだしも、こういう情事の場でもいがみ合うのはあまりよろしくない

あのヒロインXですらアルトリア顔セイバーズとの複数プレイの後は、彼女達に噛み付く頻度は減ったというのに

閨にて一緒に抱かれた女性陣は仲良くなるという我が経験則から、彼女達にも是非、ユウジョウ!を深めて欲しい

実は最終的な目標は酒呑ちゃんと頼光さんの同時プレイなのはお兄さんとの秘密だ、ゴールデンに真顔で止められたしね

 

というワケで本日2度目のスライム君を取り出す俺

 

「…えっ、ま、待って…ごめんマスター!仲良くするっ!仲良くするからっ…それはまって…」

 

今日はもう、色んな所から魔力出しまくって無理している気がするがっ…持ってくれよ俺の体!!3倍界王拳だっ!!!

 

「え?な、なによ…それっ……」

 

魔力を注ぎ込み、巨大なサイズになった我がスライムを見て初見であるカーミラさんが驚くのは当たり前だった

仲良くなる秘訣?喜びも苦しみも至近距離で分かち合う事だと思います

 

「ひゃああっ!またぁっ!?」

「ちょ…一体…なにがっ…」

 

彼女達を互いに正面で抱き合うように拘束したスライム

今度は体全身を飲み込むような事はせず、あくまで動きを拘束したのは手足のみ

 

だがその手足を完全に封じられて、目の前のもう一人の自分自身とサンドするように捕まってしまっている現状では脱出は不可能

 

「…ねぇ…私?もしかして…いつもマスターとこういうプレイをしているのかしら…夜のアレコレまでについてはとやかく言うつもりは無いけど…ちょっと特殊過ぎないかしら……?」

 

「んなワケないでしょ!今日が初めてよ!アンタも余裕ブッこいてられるのも今のウチよ……マジでもう滅茶苦茶になっちゃうんだから!」

 

よしよし、少しずつ相手に対して棘が取れたような態度になっているようで何より

 

「あっ…やっ…だめぇっ…ちょっ動かさないでっ」

「んぅっ…もう…これっ何よっ…マスターの体温が感じるしっ…あんぅ…」

 

緑の粘体に挟まれた二つの女体をスライドさせるように動かす、体の大きさが違う二人の敏感なポイントを擦り合わせるように繊細な操作を意識しながら…

 

「んふぅっ…!あっ…やだっ…おっぱいの先っぽが擦れてぇっ……あっ、だめっ!アソコもじゅくじゅくしちゃ…やあぁっ…!」

「ふぅっ…!こらぁっ…やめなさっ…あんぅ!あっ、はぁっ…!なんでこんなので感じてぇっ…んはあぁっ!」

 

色素の薄い肌に目立つ充血した乳首をぶつけ合い、女性器も貝合わせをするように刺激し合わせる

非現実的なスライムに捕らえられ、忌み嫌っていたもう一人の自分の体によって快楽を得てしまっている…何よりその様を自分というマスターに見られているのが興奮の材料となっているのだろう

 

愛液が混じり合う二つの女性器をそのままにするつもりは無い

 

スライムの操作を継続させたまま、一つの蜜壷と化した彼女達の女性器の間に勃起した竿を挿入した

 

「あひっっ…!あぁああっっ!熱いっ…あついのでこすられてぇっ…ひやあぁっ!」

「んはああぁ!だめぇっ!…敏感なところがぁっ…マスターのでつぶされてぇっ…んんあぁっ!」

 

愚息が挟むのは微妙に違う二つの女陰の感触、喘ぎ声も姿も違う二人だが…反応の仕方は元は同じ存在だというのも納得してしまう程に似てる印象を抱く

密着している二人と交じり合っているとまるで親子を抱いているような気分になる、姉妹でもいいかもしれないが

 

「もうだめぇっ…!ますたぁっのおちんぽにぃ……イカせれちゃふぅっ…!あっ、あぁ…あぁっ―――……」

「こんなあついのでぇっ…いじられたらぁっ…!もう我慢にゃんて出来るわけないじゃなひぃっ…はぁ、はぁっ…あはぁっ―――……」

 

大小女勇者の裸サンドで挟まれた自身の怒張から吐き出した欲望はそのまま……

 

『あはああぁぁぁっっ――――――……!!!』

 

一つに重なり合った絶頂の歌声を耳にしながら…色白の肌をその上から塗りたくるようにさらなる白濁で汚していく

 

精液をかけられながらも、蕩けた瞳でこっちを見つめる二人を前に今日は気絶するまで…犯してあげようと決心した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んっ…んんぅ……ふわぁっ…イタタ、あー、もう腰がいたい…全く無理させちゃって子イヌったら…」

 

口では悪態をつくがその表情はだらしない程に緩み切っていた…散々死ぬ程に出された彼の種火を吐き出した自分のお腹を愛おしそうに撫でながらエリザベートは起き上がる

 

「…あ、あれ?子イヌは…?」

 

匂いや様々な液が染みついたベッドの上には自分とカーミラしかいない

トイレだろうか?不安になったエリザベートはもう一人の自分を起こす

 

「ちょっと、起きなさい…子イヌがいないわ…アンタ知らない?」

 

「んっ…んあっ―……何よ、いきなり…私も今起きたのだから知るわけないでしょう…」

 

激しい性交が終わった後、気絶するように眠ったマスターは確か…私達の間で川の字のように寝ていた筈だ。朧げな意識の中でそれだけは覚えている

 

「ん?何かしらこれ」

 

カーミラがマスターが寝ていた場所に書置きのような物が残されているのに気付く

 

「ちょっと、私にも見せなさいよ」

 

 

【私は大魔王…引きこもりの大魔王である。マスターと結ばれてハッピーエンドめでたしめでたしだと思った?残念、もう少し続くのだ。

というわけでお前達の大事なお姫様は私が攫った。略奪愛は良い文明だぞ。

帰して欲しければ、私が雇った自宅警備員達を倒し…この大魔王の元まで辿り着くがいい…

 

ps. なぁ、今どんな気持ちだ(NDK)なぁ、今どんな気持ちだ(NDK)?大事な大事なマスターを寝てる間に掻っ攫われてどんなき】

 

『あのアマァッ!ぶっコロしてやるわあぁっ!!!』

 

二人は示し合せたかのようにその書置きを破り捨てた

 

昨日の敵は今日の友、アイドル勇者と魔王勇者の心は今一つとなった

 

かつての敵を仲間にして新たな冒険へ…これもファンタジー物の定番かもしれない

 

頑張れ!ダブル勇者!二人の冒険はこれからだっ!!

 

 

 

 

 

 

 




「まさか、俺がお姫様ポジになるとはこのマスターの目を持ってしても見抜けなかったわ」

「マスター、私はポテトチップスなるものを所望だぞ。あいにく今は小さなメダル探しでコントローラーが手放せないので…お前が食べさせてくれ。ポテチでギトギトになるコントローラーは悪い文明だからな」

「はいはい、あーんして」

「うむ、苦しゅうないぞ。しかし、それにしても魔王というのも良い仕事だな。ここでひたすら勇者を待ち続けて、やって来た者共に対してそれっぽい事を言えばいいだけの仕事なのだからな……楽な仕事だ全く、私の天職かもしれんな」

「全世界のちゃんと仕事をしている魔王様達に謝ろうか、あぁ…もう、口の周りに汚れてる…ほらっ、こっち向いて」

「ちょっと、アンタ…コイツの事甘やかし過ぎじゃないの?」

「むぐぐぅっ……何、お前が心配する事は何もない。我が配下には子供英雄王にアレキサンダー大王、そして黒いジャンヌと完璧の布陣だからな……むむっ?黒聖女…何故貴様がここにいる?ちゃんと働かない奴には食う資格は無いのだぞ」

「今世紀最大のおまいうね…別に、暇だから、ちょっとマスt……ここの様子を見に来ただけよ」

「……皆で遊ぶゲームしようかアルテラちゃん」

「ふむ、なら皆で仲良く遊べるボードゲーム希望の邪ンヌにぴったりな『ドカポン』でもやるとしよう」

「何よっ!生暖かい目で見るんじゃないわよ!言いたい事あるならはっきり言いなさいよ!」









《エリゴンクエスト 導かれし者たち:18歳未満購入禁止》

第1章:『超極☆大かぼちゃ村~そして冒険へ……~ベリーHハードモード』
本編参照

第2章:『勇者のくせになまいきだbyアルテラ』
完璧な布陣で勝ち確ムードだったアルテラちゃんだったが……実は捕らえたマスターがスライム片手に良からぬ事を考えていると知る筈もなく……

第3章:『大魔王四天王編』
ジャンクフードの大魔王「ふん、どうやら引きこもりの大魔王がやられたようだな」
影の国の大魔王「だが、奴は我等、大魔王四天王の中でも最弱…」
第六天大魔王「勇者が来る前にやられるとは四天王の恥じ晒しじゃな!つーか、まじで一体誰にやられたんじゃ?」
いつの間にか全裸でいやらしい液体まみれでピクピクしているアルテラ、そしてとばっちりをくらってしまったかのように同じ状態になっている邪ンヌを嘲笑うように新たな大魔王達が現れる……果たして、二人の勇者の運命は?そしてマスターは一体どこに消えたのか!?

第4章:『復活のTMS』
鮫はいつだって帰ってくるッ!今度こそマスターを物にする為、タマモシャークが数を増やして復活した!!
ゴーストタマモシャーク、タマモシャークネード、タマモシャークトパス、ダブルテイルタマモシャーク、メガタマモシャーク、ビーチタマモシャーク……etc
どう考えても仲間内で争っての自滅エンドしか見えないさらなる混沌が勇者達に襲い掛かる!

第5章:『導かれし雌たち』
溶岩の海から泳いて戻ってきた夜這い3人衆、何故か再び降臨したリリィ。
しかも叛逆勇者、盾勇者、看護勇者にステゴロ勇者と海賊勇者…さらには人斬り勇者に犬勇者まで勇者のバーゲンセールとインフレが止まらない群雄割拠の時代へと突入した!
もう収拾つかねぇぞォ!これェ!!

最終章:『エリちゃん、勇者やめるってよ』



くぅ~疲れましたwこれにて勇者エリザ&カミランの冒険は完結です!




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甘情物語(マタ・ハリ)

マタハリの絆礼装の詳細バレ一応ご注意です




今回はやや砂糖多めでお送りします



いつかの話、真夏のリゾートサバイバルという名の開拓をせっせと行った夏休み

その時、ある島で進化を遂げたうりぼう達がふざけた科学力で作り出した『願望実現装置』

それに目をつけたスカサハ師匠がその胡散臭い装置の力を借りて、僅かな間でもマスターとアダムでイブれる時間を作れる事を証明した

 

当然、その装置をカルデアに持って帰れるワケはないのだが…

カルデアの技術班はその話をスカサハから聞いた時、仕組みだけでも『シミュレーションに利用出来るのでは』と考えた

短い時間を長時間に引き伸ばす精神と時の部屋よろしくな物を再現出来るのではと……

 

まぁ、あっちではどういう用途で使ったのかとか……それを求めて始まった大惨事性杯戦争がトーナメントだった筈なのに途中から煽り実況をしていたROM専の大王にも飛び火して最終的にバトルロワイヤルが勃発したり、それを治める為にマスターが物理的&性的に頑張ったという話は今回の話には特に関係ないので割愛

 

何はともあれ、人理を修復するというこの大規模な旅路、

時間を有効活用出来るのなら使える物は何でも使うべきなのだろう…

その割にはイベントとかイベントとかイベントとか余裕ブッこいてね?というツッコミは野暮である、遊び心は良い文明

そして、そんな自分達に出来るだけ時間を与えてくれる代物を作ってみるべきだろうという目的の元に出来上がったのが…

 

 

こちらの『精神と時の部屋INカルデア』

 

時間は最大で1時間を1日に引き延ばすのが限界だったが…それでも多くの暇を持て余しているサーヴァント達にとっては喜ばれる代物だった

サーヴァントである以上…種火で全盛期に戻っていくというシステム以外で成長する事はほとんど無いが…勘を取り戻す、鈍らないようにするという点では修行の場としては最適だった

さらにシュミレーションなのでよっぽどの無茶な要求ではない限り…当人達が望む場やシュチュエーションを用意する事が出来る

 

マスターもこれには大層喜び……

ベオウルフとの『勢ッ勢ッ勢ッーのヨイヨイヨイッッ喧嘩道場』

ゴールデンやモードレッドを初めとする英霊達によって開催される『鯖サバマシン狂レース』

バベッジ博士とキャプテン・テスラに作ってもらった悪ふざけか本気かわからないパワードスーツ『マーク0‘スチームライトニング‘』の試運転

小次郎の『燕百羽斬るまで帰れま10』、レオニダス王の『百スパ計算学習塾』にエドモンとの『ドキドキわくわくプリズンブレイク』やノッブの『猿でもわかる焼き討ち講座』、アルトリア達による『蛮族はこうぶち殺せ講座』等々……時が許す限り、今まで以上に自身の研鑽に励んだようだ

 

 

そして、このシミュレーションはマスターとの夜の営みを望む女性サーヴァント達にも大いに喜ばれた

設定をいじれば自身が望むシュチュエーションで邪魔が入らず彼とイチャックスが出来ると。

 

マスターもこれにはにっこり……

冷静に考えれば自身と懇意になっている女英霊達は二ケタ単位でいるワケなので…もしかしたら誰かに我慢を強いてしまっているのではという懸念はあった、出来る限りそういう事態にはならないように意識はしていたがそれでも自分の体は一つであり、限界はある。

だがその悩みもこの精神と時の部屋もどきにより解消された。

かくなる上は『固有時制御(タイムアルター)二十四重加速(テトライコサプルアクセル)』でも習得してやろうかというトチ狂った考えを改めてくれるきっかけにもなったのは色んな意味で安心したという言葉しかない

 

 

こう女性陣が彼との絆(性)を深める為に嬉々としてシミュレーション24時間シフト表を作っている様子を見て、Drロマンはマスターに「さすがに君でも1日中ずっとは疲れるでしょ?もしアレならキチンと休みを取れるように便宜を図るけど…」と提案した所……

 

「むぅ?彼女達と過ごす事が何で疲れる事になるんだ?」と心底わからない疑問顔で返されてからロマンは曖昧に微笑んでもうこれ以上聞く事をやめた。

 

―――うん!彼も大丈夫だって言ってるし!何も問題ないよね!彼との情事は女性サーヴァント達にとって多大なモチベーションアップに繋がるし、何故かその後の戦闘面でも目に見えるレベルで凄く活躍してくれるし!良い事尽くしじゃないか!

決して、余計な事して彼女達に恨まれるのと、一日に何人の娘達を相手にしてもケロッとしてるマスター君の事が怖くなったとか全然思ってないんだからね!

いやー、あれで『一般人枠』って本当に世の中ふざけてると思うよ僕はっ!!

 

 

 

 

 

『逸般人枠』?やロマンのスルースキルはともかくとして、

この『性神と時の部屋INカルデア』が多くの需要を果たすオーパーツとなった

 

それこそ、女性サーヴァント達がマスターとのプレイはこれが一番だと名乗りを上げるようにいくつもの派閥が出来上がった

イチャイチャ正統プレイ派、新婚プレイ派、制服プレイ派、おねショタ派、幼児プレイ派、年上お兄さんプレイ派、雌犬調教派、監禁尋問プレイ派………etc

カルデアチャンネルなるネット掲示板にて日々議論が交わされている

お前等、人理修復の旅はどうしたというツッコミはしてはいけない……してはいけないのだッ…!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【カルデア英霊掲示板】 マスターとのプレイについて語るスレNo.98

 

 

 

 

497:主殿の犬

結局、主殿は我等を雌犬として愛でて…時には厳しく躾けして下さるのが一番好きなんですよ

それはもうマスターとサーヴァントという関係である以上避けられない運命であり、約束された勝利の結論でしょう

 

 

498:グランドセイバー

ハイハイ、源氏万歳、源氏万歳(呆れ

 

 

499:ジャンクフードキング

その主従の関係を超えられず、本当の男女の関係を目指さないのが貴様の限界だ

 

 

500:黒竜魔女

>>499

碌に料理も出来ず食べてばっかの奴が本当の男女の関係とかww

 

 

501:ジャンクフードキング

>>500

マスターに死ぬ程苛められてアヘるのがお家芸と化してる女が何か言ってるな…

 

 

502:黒竜魔女

は?

 

 

503:ジャンクフードキング

お?

 

 

504:属性テンコ盛り文明系ガール

二人はオルタちゃん!!

 

 

505:ジャンクフードキング

引きこもりは黙ってろ!

 

 

506:黒竜魔女

引きこもりは黙ってろ!

 

 

507:血桜侍

やっぱり仲良しじゃないですか

 

 

508:デミ後輩

私は先輩に普通に触ってもらえれば…それで…

 

 

509:悔い改めて☆

あら、微笑ましい

 

 

510:彼の背中をセコムし隊

知っています…私は508がマスターと紫フサフサの狼娘衣装でわんわんプレイに勤しんでいる事に……

 

 

511:主殿の犬

抜け駆けとはっ!雌犬調教派閥を裏切るのですか!?

 

 

512:デミ後輩

そんな派閥に入った記憶は無いのですが!?

 

 

513:献身的な旦那様のお嫁さん

雌犬と聞いて

 

 

514:白騎士

調教と聞いて

 

 

515:くぎゅ魔王

おい、危ない奴らが湧いてきたんじゃが

 

 

516:ジャンクフードキング

白騎士は498の管轄だろう

 

 

517:グランドセイバー

管轄とか、そういう押し付けはヨクナイトオモイマス

 

 

518:白騎士

あれ?私、何か失礼な事を言ってしまったでしょうか…?

 

 

519:猛怒裂弩

いや…

 

 

520:トップアイドル

うん…

 

 

521:属性テンコ盛り文明系ガール

>>518

特に変わる必要はないという意味だ

これからもお前が自らの思うままに精進するのがマスターにとっても良い事になる筈だからな

 

 

522:白騎士

よくわかりませんが、これからもマスターの期待に応えられるように頑張りますね!

 

 

523:グランドセイバー

>>521

てめ

 

 

524:献身的な旦那様のお嫁さん

まぁ、旦那様に飼われるのもそれはそれで魅力的なのですが、やっぱり新妻として新婚プレイが一番だと思いますよ。特に和風が好みです私は

 

 

525:セレブ的なマスターのお嫁さん

524さんはよくわかっていらっしゃいます

私もロイヤルなホテルでセレブ夫妻的な生活も良いのですが、何だかんだで日本式に落ち着いてしまうんですよね~……白無垢の神前式からの割烹着ラブラブ新婚生活…いやー、趣がある和はいいですよねー

 

 

526:主殿の犬

何故ですか!結婚指輪より首輪を嵌められる方が絶対ドキドキするでしょう!

 

 

527:黒竜魔女

誰かこの狂犬引き取ってくれないかしら

 

 

528:吸血メイデン

保健所はマスターよ

 

 

529:海賊コンビ(騎がメインの方)

僕達はどっちかというと洋式の方が好みだけどね

 

 

530:海賊コンビ(弓がメインの方)

そうですわね、偶然にもある同業の方がウェディングドレスを着ているのを見てしまった身からするとやっぱり憧れてしまいますもの

 

 

531:くぎゅ魔王

和洋折衷じゃアカンのか?

 

 

532:まだまだイケる朱槍美女

どちらかを選ばなければいけないという決まりはないであろう、偶には裸エプロンや裸セーター等でサプライズを仕掛けるのも新婚生活には重要な要素だ

 

 

533:猛怒裂弩

新…?婚……?

 

 

534:トップアイドル

熟年夫婦の間違いじゃないかしら

 

 

535:属性テンコ盛り文明系ガール

年考えろニャ

 

 

536:まだまだイケる朱槍美女

…………貴様ら……画面の向こう側だから安心だとはよもや思ってはおらんよなぁっ…?

 

 

537:くぎゅ魔王

533~535が死んだ!

 

 

538:血桜侍

この人でなし!

 

 

539:踊り娘系非戦闘員

う~ん……けど、朱槍美女の言う通り新婚プレイと一言で言っても色々あると思うの

 

 

540:酔いデレ姐さん女房

>>539

幼児退行甘やかし系ママプレイであろう?

 

 

541:マスターの親であり、子供でもあり、幼馴染でもある獣耳

私だって子供になったマスターをおはようからおやすみまで甘やかしたいぞ!いやむしろ、私が子供になってずっと育ててくれるのもいいし、お互い子供になって同じ時を共に成長するも捨てがたい!!

 

 

542:悔い改めて☆

ちょっと保母さーん、色々と拗らせてる娘が入り込んでるわよー、早く連れて帰りなさいよー

 

 

543:ブリテン圏お母さん

はーい、541ちゃんはお家に帰りましょうねー

 

 

544:セレブ的なマスターのお嫁さん

スイーツ女神様への信仰が足りなかったか

 

 

545:隣の眼帯お姉さん

むしろ信仰が足りた結果、こうなってしまったとも言えるような……

 

 

546:踊り娘系非戦闘員

話を戻すけど、私あんまりマスターと540が言うようなプレイはしてないわよ?

むしろ私が甘やかされる側よ。

 

 

547:酔いデレ姐さん女房

何……だと…?

 

 

548:まだまだイケる朱槍美女

馬鹿な……

 

 

549:海賊コンビ(騎がメインの方)

どういう事だおい

 

 

550:踊り娘系非戦闘員

そうね……細かい所は長くなるから省くけど――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……今日も疲れたわ……」

 

陽は完全に沈み、辺りは夜の帳が下りていた

住宅街をやや外れた郊外に位置する我が家へと足を運ぶスーツ姿の女性…薄茶の長髪が腰まで伸び、雰囲気は正にキャリアウーマンといった感じだ

表情から疲労感は見て取れるが、その顔は一階建ての決して豪勢とは言えない自宅へと近づいていくと徐々に喜色に満ちていった

 

仕事が終わり、家へ帰れるのがそんなに嬉しいのだろうか

 

「ただいま~~……今、帰ったわよ―――……ふぅ~~……」

 

「おかえり、マルガレータ」

 

「うん、ただいま、あなた」

 

いや、玄関を開けて自分を出迎えたエプロン姿の黒髪の男を見て、さっきまでの疲れきった顔を嘘のように消した彼女の眩しい笑顔を見る限り…

()()()()()()()()()()()()()()彼の顔を見れた事が疲れを吹き飛ばした大きな要因となったのだろう

 

「ご飯にする?先にお風呂する?」

 

「そこはそれとも……わ・た・し?って言ってくれないのかしら」

 

「どっちも済ませたら存分にお相手しますよ、我が新妻さんや。後、俺が『わ・た・し?』なんて言ったら気色悪いでしょ」

 

「あら?私は全然ウェルカムなのに……とりあえず、ご飯を戴くわ。もうお腹ペコペコよ……」

 

旦那様に上着をスムーズに脱がされ、それを衣紋掛けにかけられた事でYシャツ姿になったマタ・ハリは食卓につく

スーツ姿の時から確認できた胸の膨らみがより鮮明になり、暑いのかYシャツのボタンを外した事で見える谷間が非常に蠱惑的だ

そんな艶姿にも慣れた様子のマスターは食卓に料理を並べていく

 

「いつもすまないわね――…」

 

「それは言わない約束でしょ」

 

例えどんなに帰ってくるのが遅くなっても料理にラップをかけて待ち続けてくれてる彼に感謝の言葉が出てしまうマタ・ハリ

 

「先に食べててもいいのに……」

 

「こっちは養われてる身だからね、これぐらいの事は苦でもないさ。それに俺も君と一緒にご飯を食べるのは楽しいし」

 

隣に座った彼の優しい返答に申し訳無さ以上に嬉しさがこみ上げてしまう

確かに専業主夫である彼の稼ぎは自分ではあるが、家事は全部任せてしまっている

しかも今この瞬間からもこうして彼に存分に甘えてしまうのだから

 

「それじゃあ、いただきます」

 

「ええ、いただきます………。

はぁ――、ちょっと箸を動かす元気が急にわかなくなってしまったわ――、どうしましょう―――…」

 

自分でもわざとらしいと思う程の棒読みで隣にいる彼の肩に頭を乗せていった

マスターはそんなマタ・ハリを嫌がる素振りを一切見せず、箸で取った唐揚げを彼女の口に近付けていく

 

「それは大変だー、じゃあ俺が食べさせるしかないなー」

 

「ふふふ…そうねー、それしかないわねー」

 

白々しい演技でお互いに笑い合う二人、マタ・ハリの夫でもある彼にとってはこうやって仕事で疲れ切った彼女に夕飯を手ずから食べさせるのはもはや毎日の日課とも言っていいレベルなので驚くことは何もなかった

 

マタ・ハリにとっても日々の家事で疲れている彼にこうやって負担をかけるのは如何なものかと最初は思ったのだが…マスター自身も妻をこうやって甘やかすのは楽しいからじゃんじゃん甘えに来て欲しいと聞いてからはもう自重せず彼にニャンニャンする事にしたようだ

 

―――うん、毎日出来る女として書類の波に呑まれて、職場で張り詰めているんだから…自宅ぐらいではこうしてダラけきってもバチは当たらないわよね…?

 

「はい、あーん」

 

「あ~~~ん」

 

家に帰る前までの出来る女の雰囲気は何処へやら、自身の旦那様へ寄りかかりながら幸せそうに口を開けるキャリアウーマン・マタ・ハリ

口の中に拡がる彼の手作りの味はもちろんの事、それを愛すべき旦那様に食べさせてもらっている事実が咀嚼しながらも頬が緩んでしまう理由になる

彼女にとってはこの夕飯はどんな高級レストランにも勝る贅沢なのだと言ってもいいのかもしれない

 

「…むぐむぐ、あ~もう、おいしいし、旦那様は素敵だし、幸せだし……はむぅ、もぐもぐ、本当にどうしましょうか……ごくっ…」

 

「はいはい、食べながら喋らない。あ――ん…」

 

「あ―――ん、もぎゅ……もぎゅ……」

 

よくわからない悪態をつきながら、ブラックコーヒー必須のイチャラブ空間を堪能するマタ・ハリ

密着する彼の体温の心地良さなどを感じながら、他愛もない話をする

妻は職場に対して溜まった鬱憤を晴らすかのように愚痴を……

夫はこのサラダは自家菜園しているYARIOの人達から譲ってもらった野菜で作った等々の世間話を……

まるで付き合いたてのカップルの如く、夕食をイチャつきながら食べていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ご馳走様でした」

 

「はい、お粗末様でした」

 

時間をたっぷりと取って夕飯を完食すればもういい時間になってしまった

手早く食卓と食器の後始末を終わらせたマスターは彼女に問いかける

 

「お風呂入る?」

 

「入る―――……」

 

ソファでぐでっとしてたマタ・ハリは間延びした声を上げ、起きる

ダラダラしながらもマスターに優しく背中を押され脱衣所に連れてかれる

彼の表情はまるで手間のかかる子供を相手にしているような困った反面愛おしさに満ちた表情だった

 

「はいはい、着きましたよー。マルガレータちゃん、シャワー浴びてスッキリしましょうねー」

 

「う――、脱がしてー…」

 

猫撫で声で旦那様へ甘えるマタ・ハリ

しかし、これもいつもの日課なので彼は特に戸惑う事はない

 

手を広げて為すがままの状態の彼女のYシャツのボタンを一つ一つ外していく、胸元のボタンを外す時に乳房に手が何度か触れてしまい、彼女の口から小さな喘ぎ声が漏れる

 

Yシャツの拘束から解放され揺れるおっぱいは何度も見ているとはいえ、飽きる事がない極上の果実

彼は今ここでかぶりつきたい気持ちにもなったがまずはお風呂に入らせる事を優先すべきだとしてぐっと堪える

 

ベルトを外し、堅苦しいスラックスを下ろすと下着の上からでもはっきりとわかるハリと艶が抜群なお尻が目の前に

片足をそれぞれ上げさせ、大人っぽいストッキングも脱がしていく。「荒々しく破ってもいいのよ?」と冗談めかして言う彼女の頭を軽く小突きつつも…

 

脱衣所の鏡には夫に服を脱がされている下着姿の女が映っていた

甘えにいった自分から言うのもアレだが、少し照れた様子でマタ・ハリは呟いてしまう

 

「至れり尽くせりねぇ…まるでお姫様になった気分よ」

 

「ここにいる時ぐらいはお姫様になってもいいよ、存分に我儘になって下さいな」

 

「もう、本当に奥さんサーヴァントを駄目にするご主人様だこと…」

 

駄目サーヴァント製造機とある界隈では噂の彼は慣れた手つきでブラのホックを外し、下着も全て脱がしていく。

生まれたままの姿となったマタ・ハリを目の前にしても動ずる事なく自身も脱衣し、浴室へ連れていくこの男は性欲が枯れ果てているのではと思ってしまいそうだが…何てことはない、興奮しているに決まっておろう、どうせいつもの如く風呂場でグッチョグッチョになるまで交じり合うのだから、ここで襲うなんて勿体無い事はしないというだけの話

 

空腹は最高のスパイスという言葉は性欲にも当てはまる…焦らして、我慢して、溜め込んでいけばより一層お互いに気持ち良くなれる……エロムードに入る前にイチャラブ固有結界を存分に楽しむのも一興とか考えているのだろうこの男は、爆発すればいいのに

 

 

身に纏う物は何も無い彼等が入った浴室も一般家庭の平均サイズであり、それなりの身長である二人が入ればやや狭く感じてしまう

まぁ、マスターもマタ・ハリもそんな事は気にせず、むしろこれぐらいの狭さの方が互いに触れ合えて丁度良いといった感じかもしれない

 

風呂鏡の前でバスチェアに座ったマタ・ハリは自慢の髪を旦那様にシャワーで濡らしてもらっている

夕飯を済ませた後にこの風呂場に二人が一緒に入り、髪だけではなく体も全部マスターに洗ってもらうのはもう日課となってしまった

 

彼に悪いと思いつつも、遠慮した所で結局マスターに押し切られてしまうワケだし、それにこうやって自分の全てを愛する人に曝け出して世話をしてもらうのは予想以上に心地良過ぎてしまうと考えているマタ・ハリは既に開き直っている

そこには職場での出来る女の姿は無い……愛しの旦那様に好きなだけ少女のように甘える新妻マルガレータの姿しか無かった

 

「それじゃ、泡だてるから目瞑ってねー」

 

「あぁ…んふぅっ………はぁん…あ、あ、あ、あぁ~~~~………」

 

「エロい声出さない」

 

「…んっ、ふぅ…だってあなたにこう……頭をマッサージされながら髪を洗われると……物凄くキモチいいんですもの……脳が犯される感じっていうか…あ―――……そこ、いいわぁっ……」

 

「普通に洗ってるつもりのこっちがだんだん疚しい気持ちになるのですが」

 

「別にガオーって襲ってくれてもいいのよ?」

 

「それはあなたの体全部洗ってから」

 

「どうせ汚れるんだから、先に犯ってくれてもいいのに……」

 

「そしたら、また後で洗ってあげます」

 

「それで洗い終わったらエッチの無限ループね!いやん、うちの旦那様はケダモノね♪」

 

「はいはい、お湯で流しますよ―――、ざばーん」

 

「ざば――ん☆」

 

風呂桶に溜めたお湯でシャンプーを全て洗い流してもらう、マタ・ハリも何が楽しいのか目を閉じたまま大はしゃぎだ

 

今度はボディタオルを使い、彼女の凹凸はっきりとした肢体を洗っていく

マスターは手足の指の間などの狭い所はボディソープをつけた自分の指を挟めて洗うようにしながら泡を満遍なく塗りたくっていく

 

「んっ…ふっ……っく……あ、…はぁ………あんっ」

 

臍、うなじ、腋などにある性感帯や下から上へとボディタオルを滑らせ、大きく揺れ動くたわわな半球に触れる度に性的な吐息がマタ・ハリの口から漏れ出ていく

それでも特に嫌がる事はない彼女はもっとしてと言わんばかりに自身の旦那様へ体を預けていく

 

「あぁ……はんぅっ…んあぁっ……」

 

浴室に響く喘ぎ声、そして胸部を洗っている以上当然気づく…プクリと膨れ上がった彼女の乳首

 

「あふぅっ……!」

 

股の間を洗われる時に女の園の入口に触れられると本気の声がどうしても止められなくなってしまう

マスターはそれでも、洗う以上の事はしてくれないようだが……

 

風呂鏡には泡だらけになって体を好き放題に洗われてしまい、おっぱいの先端ははしたなくそそり立ち、アソコからも水ではない何か垂れてしまっている雌の姿が映っている

そんな様を見れば、もう情事の雰囲気に入っても良さそうだがマスターは気付かないフリをしながら彼女を立たせてお尻の方も入念に洗っていく

まぁ、マタ・ハリの方も完全に勃起している彼のアソコを見て見ぬふりをしているのだからお互い様だろう

 

「おっ…んっ…あぉっ……」

 

こうして、体を洗われるのも慣れたが、未だに尻肉の間や菊門の方も入念に清められると…背筋を震わせながら声を上げるのが止められない……こうやって全部を世話されてしまうといよいよ自分が駄目になってしまっている実感が湧いてくるが…ここにいる時ぐらいは彼に溺れてしまってもいいだろうと思うマタ・ハリ

 

「それじゃあ、次は俺が自分の体を洗うから、先に風呂に浸かっててね」

 

そうして極上の体についた泡もしっかりと流し終わったマスターは彼女に言った

 

「……んぅ、もう、あんなに昂ぶらせておいて……まだお預け?」

 

「うん。俺の奥さんはいい子だから少しぐらい待てるよね?……んっ…」

 

「んぅ…ちゅ……はーい、奥様はいい子だから大人しく風呂の中で待ってまーす」

 

さっきからずっと触られて散々焦らされたのだ、別にあとほんの少し待つのなんてどうって事はない

ここで『じゃあ私もあなたの体を洗ってあげるわ!』なんて言えばもうお互いに我慢は間違い無くきかないし、ここまで焦らされたのだから、一番良いタイミングで情欲を発散したい思っているマタ・ハリは湯船に浸かって待つことにした

決して、チューされたから素直に引き下がったとかそんなチョロい理由では断じて無いのだ

 

「はふぅ~~……あぁ―――、なんかイイわねー…こういうの………」

 

湯の温かさにふやけながら、浴槽に顎を乗せるマタ・ハリ

こうしてお風呂に入りながら、至近距離で愛しの人が体を洗っている様を眺められるのだ。彼女はおそらく今自分がとてつもなく幸せなんだという事を実感しているのだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぃ~~、いい湯だねー」

 

「んぅ――……そうねぇ~」

 

男女二人が入れば、大分狭く感じる浴槽の中

マタ・ハリは体をマスターの足の間に入れ、その胸元に寄りかかり深く息を吐く

互いにお湯の中で素肌は密着し合っている……頬が熱いのは風呂のせいだけだろうか

 

 

「あぁ~~~~……今日一日の疲れが全て抜けていくわあぁ……」

 

「そんなおじさんっぽい声出しちゃってまぁ」

 

「むぅ、そんな事言う子にはこうよっ」

 

触れるだけではっきりわかる程に存在感を主張している怒張を悪戯するように腰を動かしてゆるやかに素股していく

風呂の湯は波立ち、彼女の巨乳もそれに合わせて揺れ動くのが視覚的にも非常にエロティックである

 

「冗談だよ、いつもご苦労様」

 

「…じゃあ……ご褒美頂戴。今日一日分の旦那様成分をたくさん補給させて頂戴」

 

今の今まで散々イチャついておきながら、彼女にとってはまだまだ物足りなかったようだ

まぁ、色々と堪えていたのはマスターも一緒、彼もこれ以上マタ・ハリを焦らすつもりはなかった

 

「んぅ…んちゅぅ……ちゅるぅ……んあっ…!あっ…やん、もう……ほんとにおっぱいが好きなのね……」

 

「ん、ちゅ……、胸だけに限らず、マルガレータの体は全部好きだよ」

 

顎を上げた彼女と唇を交わしながら、背後からその巨峰にも摘み取るように手を出していく

手の平では収まり切らないぐらいのたわわに実ったソレは彼にとっては触るだけでも楽しめる高級食材だった

 

「…ぁあっ…そう、いいわっ…んぁっ!……もっと、つよく……触ってぇ……」

 

マタ・ハリは手を自身の胸を撫で回している彼の手の上に重ねると、マスターの手を使って自慰するように激しく胸を揉み込んでいった

 

二人の重なり合った手によってはしたなく様々な形に歪んでいく自分の乳を見ながら…彼女は徐々に腰のスピードを上げていく

 

「あっ、あぁ、はっ、はんぅっ……あぁっ……!」

 

お湯とは別の更なる熱さがマスターの怒張を包み込んでいく、マタ・ハリは背中も彼の胸板にマーキングするように上下に擦り付けて…まるで胸や陰唇を始めとした性感帯をマスターの体を使ってオナニーしているかの如く体をくねらせていく

波立った浴槽のお湯が外へ漏れ出していくのが二人の動きの激しさを表している

 

「…あなたも……んぅ…気持ちよ、く…なってぇ……あんぅ……んあぁっ!んぅ!」

 

ここでは結婚していながらも職場では仕事が出来る女で堅いイメージを持たれているという設定だが、さすがは数多の男を手玉に取った女スパイ、その腰使いは風呂の中という動きづらい状況でも十全に発揮されていた

割れ目で肉棒を的確に刺激され、溜まった欲望を吐き出したい気持ちになったが……夫婦である以上気持ち良くなる瞬間も共に分かち合いたい、そう思った彼は乳房を愛撫していた両手の内、片方をマタ・ハリを股間へ…正確に言えば腫れ上がっているクリトリスの方に手を出した

 

「はうぅっ!?」

 

そして同時に今までその柔らかさを堪能するだけだった胸の中心の突起も指腹で弄りだす

 

「あぁっ!はんぁっ…!あ、なたぁっ……そんな…きもちイイ所ぉぉ…あっ、あんぅ!んんんぅっ!」

 

上と下についてる固くなった豆を同時に摘ままれ、マタ・ハリは水音を大きく立てて悶える

敏感な所、このマスターの技量……そして何より彼女は彼の()()で自身の恥かしい所を好き放題されるのがたまらなく好きなのである

 

「んひぃっ!あっ…あぁ…!そうやってぇ…指でコリコリするのぉっ……ああぁっ!…あんぅ!好、き…なのぉっ…!」

 

淫奔な声を荒げてもしっかりと彼の竿を刺激する事はやめない

マスターもマタ・ハリも浴槽の中で結婚相手に与えられる快楽に痺れながらも…相手を気持ち良くさせる動きを止める事はない……これが夫婦の思いやりというものなのだろうか

 

「マル、ガレータッ……!」

 

「あ、なたぁ…!!」

 

そして今まで溜めに溜めた性欲が爆発するのはそう遠い話ではなかった

 

「あふぅっ―――――……!!!」

 

マタ・ハリは彼に全体重を預けるように寄りかかり、オルガズムに達する

風呂には彼女が盛大にまき散らした潮とマスターの白濁液が混ざり合うように浮かんでいった

 

「…はぁ――………おふろ、汚しちゃったわね……」

 

「じゃあ、今度は汚れないようにナカで出そうか…よいしょっと」

 

「えっ……?きゃっ!」

 

限られたスペースの中でこちらの方を向くように彼女の体を回転させたマスターは未だおさまりがつかない愚息を猥らにヒクつく赤貝へと侵入させていく

 

「あ、あぁ、あっ、あぁっ……!……んあぁぁぁ―――――――……!!」

 

対面座位の態勢を取り、浴槽の中でザブザブと音を鳴らし、本番へと突入した二人

熱く、鋼鉄のようなマラが自身の膣内を掻き分けて進む度に喜びの声が止められないマタ・ハリ

湯の中で的確に弱点を突くように素股をした彼女もそうだが、彼もこの動きづらい状況で挿入とピストン運動を難なくこなせるぐらいには性技に関しては器用である

 

「はぁっ…!あふっ!やっ…あっ、お、くの方にずんずんってぇっ………子宮がぁっ……押しつぶされちゃうわぁっ……!」

 

ピストン運動で目の前で重力に逆らうかの如く揺れるおっぱいを見てるだけだなんて謙虚な性格をこの男はしていない

腰に添えていた手を一瞬、胸の方に移して真ん中に寄せると、左右の桜色の乳頭に齧り付いた

 

「あくうっぁぁっ!!」

 

腰の抜き差し運動は当然続行中である為、マタ・ハリの乳袋はマスターの口に咥えられたまま上下に動かざるえない……巨乳でなおかつ柔軟性抜群だとこんなにも卑猥な動きになるのかと思うぐらいに彼女の乳は伸び縮みしていた

 

「ひぅっ……!あんっ…!やぁぁぅ…!あっ!はぁんぅっ…!……はぁ…ママのぉ…おっぱい、おいしいのかしらぁっ……やああぁっ……!!」

 

胸と女性器から襲いかかる快感につい、設定を忘れ、いつものような台詞が出てしまったマタ・ハリだったが、もはやそんな事を気にする余裕は無かった

 

愛おしくて、愛おしくて、愛おしくて堪らない目の前のマスターに対する昂ぶりを表すように彼の頭に手を、腰に足を絡め、自分からも腰を動かす

 

マスター(旦那様)マタ・ハリ(奥様)に気持ち良くなってもらうように―――

(マタ・ハリ)(ご主人様)に気持ち良くなってもらうように―――

 

二人の長けている性技……そして、何よりその根底にある相手に対しての好きという感情が相乗効果となって浮遊するかのような快楽へと誘っていく

 

「はぁっ……!あぁっ…!!わたしぃ……わたしぃっ……ああぁっ!こんなぁ……んはぁぁっ…!こんなぁっ……幸せでいいのかしらぁっ……んんむぅっ!?」

 

そんな彼女の台詞に乳房にしゃぶり付くの止めて、キスで答えを返すマスター

『余計な事は考えなくていい、今思ったままの感情を受け止めてくれればいいから』…彼が口を開ける状態だったらそう言っていたかもしれない

 

だが、今は言葉よりも態度で示そう

そんな思いを共有したのか、二人はいつの間にかお互いの指を絡め合わせていた

 

「んじゅうぅ…!じゅるぅっ……んんぅっ…んはぁっ……すきぃ……れろぉっ……あなたっ……好き、なのぉっ……はむぅっ…!んちゅぅっ…!」

 

指だけではない、舌も唇もそして性器も…激しく混じり合わせる度に風呂の湯は外に出てどんどん嵩を減らしていくが、今の二人がそんな事を気にするワケもなく

ただ、お互いの肌をもっと感じ合おうと性交を行っている

 

「んむぅっ…んじゅるぅぅっ……!んぅ、んんちゅぅ……じゅぱぁっ!…んむぅっ…ちゅっ、ちゅぅ……ちゅるぅ!」

 

(はぁっ、はぁっ…!だ、めっ……!指、そんな風に優しく握ったら……もう、抑えきれないわっ……)

 

荒々しい抽送運動とは正反対に壊れ物を扱うようにマスターが絡めている指に力を入れると気持ち良さと愛しさで普段見せないような恥ずかしいまでに蕩けた表情を見せてしまうマタ・ハリ

 

こんな表情、普通なら隠すべきだろう、余裕のある大人の女として振る舞うべきなのだろう、

 

けど、彼ならいい。彼なら隠す必要はない。あるがままの自分を見せて何を恥ずべきことがあろうか

だって、マスターの前でなら……自分は余計な事を考える必要なんて無いんだから

 

やがて、彼女ははそのまま自身の中で渦巻く快楽と感情に素直になったまま――――――

 

「んんんんんんうううぅぅっ―――――――……!!!んぅっ…!んはぁっ……!あっ…はぁ―――……」

 

舌を吸い付かれたまま、蜜壷の奥の奥までたっぷりと旦那様の子種を吐き出され、絶頂へ到達するマタ・ハリ

 

「あぁ―――…はぁっ、はぁ、はぁ……まって……まだ、アソコも抜かないで……手も、握ったままでいてっ……」

 

もう少し余韻に浸りたい彼女は、息を整えながらそう懇願した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう、寝る?」

 

「ちゅぅ……んちゅぅ――……ちゅぱぁっ……んぅ、まだ寝なーい」

 

あの後、汚れた浴槽と体をもう一度洗い直し、ようやくお風呂から上がった二人は似たようなスエットを着て寝室のベッドの上でまったりしていた

 

「……俺の指、おいしい?」

 

「おいしいでちゅよ――……んちゅるぅ……」

 

にへへーと頬を緩めるマタ・ハリは彼の膝枕を堪能しながら、赤ん坊のようにマスターの指に吸い付いていた

この行為に特に何か意味があるわけでもないし、いつもの彼女を考えると立場が逆なのではとツッコミたくなる現状でもあったが、まるで英霊でもない只の女の子に戻ったように見える幸せな表情を見ると細かいことはどうでもよくなるかもしれない

マスターも好きにさせたまま慈愛に満ちた表情で彼女の頭を撫でていく

 

「えへへ………旦那さま、しゅきぃ……ちゅぅ…」

 

このシュミレーションが……この設定という名のプレイが終わってしまえば彼女はまたいつもの男を手玉に取る妖艶な踊り娘に戻るのだろう

ならば、今ここにいる時ぐらいはこの娘が自分の欲望のままに振る舞ってもいいだろう、自分の好きなシチュエーションに浸ってもバチは当たらまい……そんな想いを込めるように彼女の瞼が閉じるまで頭を撫で続けてあげた

 

「おやすみ、マルガレータ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――抱かれる度にきれいなものが増えていく

 

―――口づけする度に価値あるものが増えていく

 

―――生きるために必要なのに、私にはこれっぽっちも必要ないものが、無限に増えていく

 

―――そしてその度に、本当に必要なものが遠ざかっていくのです

 

 

 

生きる為にスパイになった

 

男に翻弄された私が、男を翻弄し続けることになった

 

数多の男を手玉に取ってきた私、けど…生前は男を見る目は無かったのかもしれない

 

目が眩むほどの財宝を並べられても、何故か心には全然響かなかった

 

私が欲しい物……本当に欲しかった物は……きっと……

 

諜報や陰謀や任務とか……そんな余計な事を考えずに済む、当たり前の……愛が欲しかった

 

マスター……私を何も考えなくていいぐらいに甘やかして欲しいの、愛して欲しいの、構って欲しいの、笑いかけて欲しいの、触れて欲しいの、欲しいものはたくさんあるの

 

それでも、あえて一番欲しいものを選ぶなら、特別じゃなくてもいい……どこの家庭にもありふれた当たり前の愛情かしら………

 

だから、あなた……どうか、どうか手を握って――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んっ、んぅ?……んぁ……」

 

「おはよう、もう朝だよ」

 

「あぁ…おはよう………あのまま眠っちゃったのね……私」

 

「うん、朝ごはんはもう作ってあるから」

 

緩やかな睡魔から徐々に解放されると私の目の前にはマスター…いや、今は旦那様かしら

ともかく愛しの彼の顔が目の前に映った

 

昨晩、あのまま眠ってしまった事を少しもったいなく思いつつも体を起こすと自身の右手に違和感を感じた

 

「あら?……もしかして、ずぅっと手を握っててくれたの……?」

 

「厳密に言えばずっとじゃないけどね、一度朝食を作るために離れざるを得なかったんだけど

……その時のマルガレータ、指を外そうとするともの凄く悲しそうな表情するだもん、心が折れる前にマッハで飯作って、すぐに戻ってきたよ」

 

「…………そ、そう…それは…お手数、おかけしました……」

 

何だかもの凄く恥ずかしいわっ!いや、昨晩から駄目さ加減増し増しで甘えまくったけど、こう無意識的なアレは別種の恥ずかしさがあるわ!!起きるまで握っててくれたのはもちろん嬉しいのだけれども!!

 

「ごはん、食べよっか」

 

「…………うん」

 

もう!そんな微笑ましそうな顔で見ないで!

 

 

 

 

結局、嬉しい気持ちと恥ずかしい気持ちがごちゃ混ぜになった私は朝ご飯と身支度(鏡は見た時の私の顔は真っ赤だった)を済ませて、スーツ姿で玄関に立った、

 

「忘れ物は?」

 

「大丈夫よ、子供じゃないんだから……きゃっ!?」

 

今朝の事を思い出し、顔を背けたら、いつの間にか彼にギュッと抱き締められていた

スーツがシワになっちゃうとか仕事に遅れちゃうとか……全て一切の些事を忘れて彼の温もりに溺れてしまいそうになる

 

「帰ってきたら、また目一杯甘やかすからね」

 

「……うん」

 

「いってらっしゃい」

 

「えぇ、いってきます!」

 

 

ただいま、いってきます、おかえり、いってらっしゃい……そんなどこでも聞くような当たり前の言葉を交わせる相手がいることは本当に……本当に幸せで嬉しい事だと思うの

ふふっ、これで今日一日も頑張れるわ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

560:踊り娘系非戦闘

―――みたいな感じで職場で堅いイメージのあるキャリアウーマンが……家では専業主夫の旦那様にダダ甘されて一人の女の子になるような新婚プレイってすんごく素敵だって事に気づいたの

 

 

561:まだまだイケる朱槍美女

ちょっとスーツ買ってくる

 

 

562:献身的な旦那様のお嫁さん

私は履歴書を書いてきますわ

 

 

563:デミ後輩

先輩を養えるように就活してきます!

 

 

564:酔いデレ姐さん女房

そして、誰もいなくなった

 

 

565:セレブ的なマスターのお嫁さん

ぐぬぬぅ……普段、自分が甘やかす立場にいるからこそ出来るギャップ萌え!

そして新婚プレイと言えば、普通は女性が家事をやるという固定観念を見事に打ち砕き、専業主夫甘やかし系旦那様マスターを作り出した所業!!

そして何より、生前を絡めたモノローグによるヒロイン力の高さをここぞとばかりにアピールとかっ!まさに策士!

 

 

566:海賊コンビ(騎がメインの方)

>>565

モノローグとか、一体何の話をしてるんだろう?

 

 

567:海賊コンビ(弓がメインの方)

>>566

またどこかの電波でも受け取ってるのでしょう、そっとしておきなさい

 

 

568:ブリテン圏お母さん

甘やかしかぁ…

 

 

569:マスターの親であり、子供でもあり、幼馴染でもある獣耳

>>568

同志はいつでも歓迎するぞ つスッ薬

 

 

570:悔い改めて☆

>>569

邪教に誘うのはやめなさい

 

 

571:黒竜魔女

結局コイツらあいつにされるなら何んでもいいんじゃないかしら

 

 

572:くぎゅ魔王

ま、是非も無いよネ!

 

 

 




『勢ッ勢ッ勢ッーのヨイヨイヨイッッ喧嘩道場』:せっせっせーのよいよいよいの手を全力で拳にぶつけ合う方に変更しただけ、お互いの耐久力とパンチ力と精神力が問われる、


『鯖サバマシン狂レース』:モードレッドが操る黄色のフォルムに青色のラインが光る水陸両用のプリドゥエンバイクや金時お馴染みのベアー号、掟破りの地元走りよ!と叫ぶマルタが乗るタラスク、メドゥーサのママチャリ別名ペガサス号等々……気になる乗り物は多数あるが一番のダークホースはジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィが跨るトナカイ(マスター)だろう、これが本当のモンスターマシン


『マーク0‘スチームライトニング』:蒸気の力で飛行し!交流の力で攻撃する!そこまでだ、残念だったな!しかし、戦闘力に関してはマスターが生身で戦った方が良い事が判明した為、今後改良の必要ありとされた


『燕百羽斬るまで帰れま10』:タイトルでもう全オチ


『百スパ計算学習塾』:レオニダス王が直々に百人のスパルタ兵を使って、効率の良い計算戦闘術を指南、ただもの凄く暑苦しい


『ドキドキわくわくプリズンブレイク』:ジャンヌサンタ「ロンパですっ!」
エドモン「それは違うよっ!」


『猿でもわかる焼き討ち講座』:モノを燃やす時はのぉ、誰にも邪魔されず自由でなんというか救われてなきゃあダメなんじゃ……独りで静かで豊かで……


『蛮族はこうぶち殺せ講座』
やせいのピクト人があらわれた!きみはどうする?

▶カリバーン
 カリバァァ――ン!
 カアリバアアアアァ――――ンンッ!!!
 君がッ!死ぬまでッ!カリバーンを止めないッ!!









皆のママで、お前がママになるんだよっ!という事でマタ・ハリ回でした
今回はママ要素はあえて皆無にさせて頂きました
やっぱりマタ・ハリの絆礼装、バレンタイン礼装、マテリアルを読んでしまうと彼女に甘えるより滅茶苦茶甘やかしたいと思ってしまうの

マタ・ハリも自身の弱さを熟知しているがそれでもマスターの役に立ちたいという気持ちもプラスしてこんな専業主夫と仕事が出来る女による逆新婚プレイ的なまわりくどいシチュエーションを望んだのかもしれませんね
(ただ無条件で甘やかされるのは少し気が引けるみたいな)

後、何故か彼女が指フェチになってしまったような気がする

 


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Jeanne Jeanne Revolution(ジャンヌ・ダルク・オルタ&ジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィ)


今年最後の……投稿…

ク…リスマスプレゼント……で…す…
これが…せい…いっぱい…です
読者の皆…さん 受け取って…ください…

伝わって……… ください……









括弧内を含めると最長のタイトル&いつもより1.5倍増し&最多の文字数。


ジャンヌ・ダルクの本来存在しない側面、贋作とも言うべきジャンヌ・ダルク・オルタ。

そして、そのジャンヌ・ダルク・オルタがいつもの悪巧みで薬を飲んだことにより生まれたジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィ。

ジャンヌ・オルタの中にある僅かな可能性の欠片でしか無かったジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィであったがクリスマスの大冒険を経て自分の中にある小さな願いを見つけた。

さっきからジャンヌ、ジャンヌ言い過ぎてゲシュタルト崩壊しそう。

 

そしてあの小さなサンタさんが邪ンヌに戻った後……確かな願望を得て、自身の骨組みを得て、サーヴァントとして現界出来る可能性を持った彼女と再び会う為に俺は白銀の引換券を握り締めて召喚した。

 

「メリークリスマス!マスター!ジャンヌ・ダルク・オルたしゃんたりゃりゃ………コホン、ジャンヌ・ダルくおりゅたしゃん………。サンタジャンヌ!ここに参上しました!」

 

正式な召喚は初めてからなのか緊張し、テンパった様子で最終的に妥協した彼女との再会に笑みが零れる。

 

何はともあれ、このカルデアに二人のジャンヌ・オルタが存在しているわけだ。

やったね、邪ンヌ!家族が増えるよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しゃんしゃんしゃん♪ しゃんしゃんしゃん♪ トナカイ(マスター)さぁーん♪群がるエネミーぶぅっとばしてぇー♪」

 

現在カルデアの廊下にて俺の頭の上で随分と愉快な歌をかましているのは通称『J・D・A・S・L』ことジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィ、長いので以下ジャンヌ・リリィちゃんで通しますね。

 

「サンタさんは肩車が大分お気に入りになったご様子で」

 

今は肩車だけど、わりとおんぶとかも好きだしねこの娘。

 

「何を言っているのですか、マスターさん!私はサンタで、マスターさんはトナカイさん!ならばサンタである私がトナカイさんに乗るの当たり前でしょう!ふふん、実に論理的思考ですね!さすが私!」

 

成程、ジャンヌ・リリィが俺に乗る(意味深)のは当たり前と……まぁ、彼女が上機嫌だと俺も嬉しいので一向にこのままでも構わないんだけどね、頬を挟んでくるリリィの太ももをプニプニと堪能する事も出来るわけだし、これも論理的思考の元に出した結論です。

 

そんなロリィなジャンヌとの散歩を楽しんでいるとちょうど曲がり角から誰かが出てきた。

 

「おや、こんな所で奇遇ですね。マスターと……似非サンタ」

 

「むむ、成長した私……。あと、似非って何ですか!似非って!私は正真正銘のサンタですよ!」

 

「ふん、どこの世界に肩車されてご満悦になるサンタがいるんでしょうねぇ……」

 

小馬鹿にしたような悪どい笑顔で現れたのはジャンヌ・ダルク・オルタこと邪ンヌちゃん。

まるで少女漫画に出てくる意地悪キャラの如き振舞いだが、俺は知っている……奇遇とか言ってるけど、邪ンヌが俺達がここを通るまでずっとその曲がり角からコチラの様子をチラチラと伺っていたのを知っているッ……

遠目から足とか黒マントとか見えてたし。

ジャンヌ・リリィは気付いて無かったようだが。

 

「邪ンヌも肩車して欲しい?」

 

「ち、違うわよ!馬鹿ッ!誰がこの年で肩車なんて羨ましがるもんですかっ!」

 

この年と言ってもね……邪ンヌは大きさはともかく生まれて間もないという点を考えると肩車をされるのもある意味正しいのでは……?俺はここに『邪ンヌ、実は内面ロリっ娘説』を提唱したい。

 

「ふぅ――……やれやれですね、そういう所で素直にならないから成長した私は駄目駄目なんですよ。マスターさんともっと触れ合いたいってハッキリと言えばいいじゃないですか、ツンデレなんて実に時代錯誤で非論理的ですよ」

 

「は、は、はぁっ―――!?バッカじゃないの!?それを言うならあんただって本当はガキんちょっぽく甘えたい癖にサンタとかトナカイ云々で誤魔化してるじゃないのよ!」

 

「にゃ、にゃ、にゃんのことですか!?子供じゃないです!私はいつだって素直で貞淑なレディですから!」

 

似た者同士というか、同族嫌悪というべきか、やはり自分自身と向き合うとこうしていがみ合ってしまうのはテンプレなんだろうな……エリちゃんとかメディアお姉さん然り……まぁ、セイバー・リリィの場合はその例から漏れるけれども。

 

「はいはい、お二人さん喧嘩しない。邪ンヌももう少し優しくしてあげる。ジャンヌ・リリィは君から生まれたといっても過言じゃない……むしろ俺と邪ンヌの愛の結晶と言ってもいい存在なんだから」

 

「こんな子供産んだ覚えはないわよ!絶対認知しないんだから!」

 

「聞きました?マスターさん!酷い言い草ですよ!母親失格ですよ!子供を大事にしない輩はアタランテさんに蜂の巣にされるべきですよね!?もう、こんなお母さんとはさっさと離婚して私と結婚するべきですっ!!」

 

「子供が父親と結婚出来るワケないでしょ!?つーか、どさくさに紛れて父親に離婚をせまって自分と結婚させようとする子供とか異常過ぎるとアンタ(マスター)は思わないっ!?」

 

「私とマスターさんは血は繋がってないので結婚はでーきーまーすぅ――、はい論破!」

 

「どこも論破してないわよ!血とかそれ以前に年齢がアウトだって自覚はある?」

 

「サーヴァントにそういう年の話なんて無粋もいい所です、それに年齢なら実際あなたも私と大して変わらない筈です!」

 

「少なくとも精神年齢はあんたよりもずっと上だから、私の方がコイツ(マスター)の隣に立つのは相応しいに決まってるでしょ」

 

「なんですかこのロクデナシ!!」

 

「なによこのちんちくりん!!」

 

「がるるぅ!!」

 

「フシャー!!」

 

争いは、同じレベルの者同士でしか発生しない。邪ンヌ……多分精神年齢も対して変わらないと思うぞ、この喧嘩を見る限り。

まぁ、途中から話の論点がズレてしまってるような気もするが……

ともかく、人語を忘れかけてる程に盛り上がっている二人をこのままにしておくとこの廊下でキャットファイトをおっ始めかねないので場所を変えるとしましょうか。

 

「とりあえず、俺の部屋に行こうか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――……え、え?何よ、ま……まさか私とちっこい私を並べて母娘丼もしくは姉妹丼的なアレをしようっていうワケ?ほほほんとに手が早いわね!この変態マスター!

 

俺+マイルーム=R18な用途という思考回路は如何なものだと思いますよ、はい。

120%今までの行動からの自業自得でもありますが……仲直りならぬ膣内直り……いや冗談っすよ。

肩の上で何の話かわからずキョトンとしているジャンヌ・リリィちゃんを伴い、『別に無理についてこなくてもいいよ?』と言った俺の後を焦った様子で追いかける邪ンヌちゃんがチョロかわいいと思いました、まる

 

 

 

「は?ホームビデオ?」

 

マイルームに着くやいなや大型TVの前でDVDの準備をする俺とそれを楽しみと言わんばかりに眺めているジャンヌ・リリィを見て、邪ンヌは呆れた様子で声をあげた。

 

「ジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィの軌跡……言うなれば『じゃんぬりりぃちゃん、はじめてのおつかいinクリスマス』って所かな?彼女のクリスマスの頑張りをこういった形で振り返ってみようと思ってさ……」

 

「はじめてのおつかいって何ですか―!DVDに変なタイトルつけないで下さい!」

 

ぷんすかしていた彼女も映像を再生し始めると定位置です!と主張するようにベッドの端に腰かけた俺の膝の上に陣取った。

 

「はぁ、このちんちくりんの頑張りねぇ……」

 

拍子抜けだといった感じで力を抜いた邪ンヌも定位置よ!と主張するように俺の隣に陣取った。

……ふむ、もしかしてだけど本当にR18的なアレを期待してたのかしら?邪ンヌったらえっちい娘なんだからぁ。

 

俺が思っている事を察したのか、無言で脇腹に肘鉄をかましてくる邪ンヌに一応確認しておく。

 

「っていうか邪ンヌもこれ見て大丈夫なの?」

 

「は?どういう意味よ」

 

「だって今から映るのは小さくなったとはいえ、正真正銘薬を飲んだ君自身だからね」

 

「あ」

 

今ではこうして邪ンヌの目の前にジャンヌ・リリィがいるから似ているけど別人という認識を彼女は抱いているかもしれないけど、これから映るのはなぁ……ある意味邪ンヌの子供時代を放映すると言っても過言じゃないからな――。

しかし、家族間で子供時代のアルバムを見せつけて『君も昔はこうだったんだよ……』というのは微笑ましくも痛々しいテンプレ的な触れ合いだよね!そこから赤面させるまでセットでさ!エリちゃん→カーミラさんとか、メディアリリィ→メディア姉さんとか……セイバー・リリィの場合は何故か、皆こう恥ずかしさとは別種の感情で目線をそらしそうな気がするけど、何でじゃろ?

 

さてさて完全に部屋から出るタイミングを失った邪ンヌのリアクションは如何に!?

 

 

 

―――『褒めてって言ったのは、もっとこうサンタ的に褒めて欲しかったんです!可愛いとかそんなの今は必要ないです!う―――……、ぁりがとぅござぃます……。』

 

「ぐふぅっ……!」

 

Buster Attack!!

 

 

―――『え、背中?おんぶ?だ、ダメです恥ずかしいです。止めてくださーい!!……うー……、ありがとうございます……。』

 

「いやぁっ!やめて――!止めて――!」

 

Critical Hit!!

 

 

―――『だから、えっと、その、クリスマスが終わっても、春が来ても、夏が来ても、秋が来ても……!あなたのそばにいていいですか?』

 

「……ぐわぁぁっ!!違う!違う違う!」

 

Buster BRAVE CHAIN!!からの……

 

 

―――『ありがとうございます!……すきです、だいすきです、トナカイさん(マスター)!』

 

「にやああああぁぁぁぁあっぁ――――……!!!」

 

Extra Attack!!

 

 

奇声を発しながら、両手で顔を隠し隣でゴロゴロと転がる赤面邪ンヌ……しかし、そんなに恥かしがるものなのかな?子供らしく微笑ましいじゃない、俺も嬉しかったしさ。二人っきりでアレコレしてる時の方がもっと恥かしい事言ってる気がするんだけど。

やっぱり、こうして客観的に見ると違うもんなのかね。

 

「……ごふっ!私は消えないっ、消えられるものか……!」

 

今にも光の粒子になりそうな満身創痍な状態で彼女は口から血を流しつつもギリギリの所で羞恥心に耐えていた……けど邪ンヌ、吐血は沖田さんの持ちネタだからね?

 

「ふむふむ、こうしてクリスマスの思い出を振り返るのはいいものですね、マスターさん!こういった復習は来年のクリスマスにも活かせますからね!………というかさっきからうるさいですよ、成長した私」

 

「あ、あ、あ……あん、た……あんなこっ恥ずかしい台詞吐いてなんとも思わないわ、け……?」

 

心底不思議な様子で成長した自分の悶える様子を眺めていたジャンヌ・リリィはその言葉で得心し、手を叩くと、勝ち誇ったような顔で返答した。

 

「ふっふーん、私は自分が思った事はちゃんと素直に言える優等生ですから!マスターさんに対して恥かしがるような事は何もありませんよ!成長した私と違って、大人なんですよ私は!()()()()()()()()()!」

 

渾身のドヤ顔で大事なことだから二回おっしゃったリリィちゃん。

つまりジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィは成長した自身であるジャンヌ・ダルク・オルタよりも大人だということなのかな?むむ、こんがらがってきたぞ。

 

「ふ、ふ、ふふふ………へー、そう……あんたは大人なのよね……?」

 

おや?邪ンヌの様子が?

 

「大人なら、こういう映画見ても全然へっちゃらよね?」

 

ゆっくりと四つん這いでTVの下に近づいていった彼女は『呪怨』と書かれたDVDを取り出した。

今度は自分がホラー映画でこのジャンヌ・リリィの醜態を見て、復讐してやろうという魂胆なのだろう。実にアヴェンジャーらしい行動原理だ。

 

「えっ?……えぇ……ま、まぁ……そうですね……大人な私は、そ、そんな作り物で怖がったりすることなんて、万が一にも億が一にも全然ありませんから。え、え、今から見るんですか……………マスターさん、もっとギュッとしてもらってもいいですか、いえ特に深い意味はありませんよ、ただ何となくです」

 

既に小動物スタイルに入ってしまったジャンヌ・リリィの様子を愉快そうに眺め、その反面俺の懐で抱き締められている様子を不満そうに睨んだ邪ンヌはそのDVDを再生した。

 

 

再生された映像に映ったのは仄暗い牢獄のような部屋……まだ概要ははっきりと映されてなく、時折画面が揺れる事からハンドカメラで撮っているのかもしれない……俺の目の前にいるジャンヌ・リリィはゴクッと唾を飲み込んでいた。邪ンヌは「あれ?この映画にこんなシーンなんてあったかしら?」と首を傾げていたが。

 

 

―――『………ぁあ……』

 

「ぴいっ!?」

 

女の呻き声のような物が聞こえるとジャンヌ・リリィは悲鳴をあげ、その小さな肩を震わせていた。

邪ンヌは「……まさか…」と冷や汗をダラダラと流していた。

 

カメラを三脚か何かに固定したのか、ようやく揺れ動いていた映像が安定して部屋の全貌を映し出す。

俺達の目の前にある大型TVが映し出したその映像とは一体ッ……!?

 

 

―――『あぁっ…!!あっ、やぁっ…!さっきからっ……そこばっかり舐めるなぁっ…!んはあぁ!!舌ぁ……いれないでぇっ……!!あああぁ……』

 

はい、どう見ても()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()姿()です、ありがとうございます。

 

「ぴゃあああああああああああ!!?」

「ピャアアアアアアアアアアア!!?」

 

邪ンヌは当然、悲鳴をあげ。ジャンヌ・リリィも恐怖とは別種の悲鳴をあげていた。

ホラー映画だと思ったら、自分とマスターのハメ撮りだった……何を言っているのかわからねーが状態の彼女はトマトの如く茹った顔をこちらに向けていた。

 

「こ、これはにゃによ!!」

 

「ほら、ね?やっぱり皆との思い出は出来る限り形に残しておきたいじゃん?それにジャンヌ・リリィの台詞じゃないけど、こういった復習は次にもイカせるじゃない?」

 

「それならわかるようにしなさいよ!何よ『呪怨』って!変なカモフラージュしてんじゃないわよ!!」

 

「昔だとエッチいビデオとかを『ドラえもん』とか『アンパンマン』みたいなタイトルで誤魔化すなんてよくある話。まぁ、ぶっちゃけ、邪ンヌがあのDVDを手に取った瞬間こうなると思ってました」

 

「死ね!」

 

「はわわわわわわ…………」

 

湯気が上がりそうな程に顔を上気させてるジャンヌ・リリィは恥ずかしさで顔を隠しているように見えたが、実は指の隙間からバッチリと成長した自分の痴態を映像越しに見ている。

 

「あぁ、もう!さっさとこんなの消して……」

 

はい、ここで私の右手がピカーッと

 

「令呪を持って命ずる『ジャンヌ・ダルク・オルタ、この映像が終わるまでここで大人しく見ていること』」

 

「にゃああっ!?あ、あんた正気!?」

 

「ほら、ジャンヌ・リリィの様子を見てごらん……あんなに熱心に見ているのに邪魔出来ないだろ?俺はね……子供には自主性を持ってすくすくと育って欲しいんだ」

 

「どう考えても教育に悪いでしょーが!後、こんな下らない事で令呪使ってんじゃないわよっ!」

 

いや――、戦闘とかで使った記憶がほとんど無いからなー。けど毎日一画補充されるなら、やっぱりどんな事でも一日一回は使っておきたいのだ、もったいないの精神って大事よ。

 

 

―――『ふぅっ……あぅ!あっ、あぁんぅ……やめぇっ、おっぱい……苛めないでぇっ……先、コリコリやああぁっ……あんっ!!』

 

「う、うわ……す、すごい……マスターさんが、マスターさんが……成長した私の胸を……あんなにして……ふぇえ!?そ、そんな触り方までするんですかぁ!?く、口では嫌がってるように見えても成長した私……すんごく気持ち良さそうに……」

 

映像の中にいる身動きが取れないくっ殺状態の邪ンヌは俺に好き放題に体を弄り回されている。

ジャンヌ・リリィはそんな光景一つ一つに律儀にリアクションを返しつつ、大事な所は絶対に見逃さないようにバッチリと目を見開いていた。

 

「―――――」

 

そして邪ンヌは隣で死んでいた。その有様はまさに愚者の鎖を落してくれる心を失った者の如く。

確かに冷静に考えてみると自身のアブノーマルな情事をリリィ化した自分に現在進行形で見せてしまっているのだ、非常にレベルの高い羞恥プレイとも言えるだろう……なんて惨い。一体誰がこんな事を……。

 

 

 

―――『で、次はどうして欲しいんだい?邪ンヌ?』

 

―――『はぁ―――、あぁ―――……はぁ―――……』

 

「ど、どどどうして欲しいんですか!?ななな何をされるんですか!?成長した私!」

 

どんどん前のめりになり、興奮状態になっているサンタちゃん……しかし、彼女は何だかんだで邪ンヌがどういう性格か知っていたし、邪ンヌの記憶も頭に入っていると思ったが、この様子を見る限りそうではないのかな?

正式に召喚された事でそこら辺が変わったのか、それともガチでプライベートな部分の記憶は知らされないようになっているのか……まぁ、このロリィなジャンヌが既に俺と邪ンヌとのチョメチョメな部分を一から十まで熟知していたらそれはそれで問題、いや逆にアリか?

何はともあれ色んな事に興味がある年頃、勉強熱心なのは良い事だと思いますよ。

 

 

―――『さっきから……一番イイ所で止めんじゃないわよぉ……おっぱいも、アソコも、指とか……舌だけじゃ、足りないのぉ……最後までして、お願い……』

 

―――『具体的に言ってくれないとわからないよ邪ンヌ』

 

「……テーブルの上で縛られてぇ……足もそんなに開かされて……はわぁ、はわぁっ!……色々と丸見えですよぉっ……!」

 

小さなサンタさんも大興奮。

 

 

―――『っ……だ、だから、ま、マスターの……』

 

―――『俺の?』

 

「……ま、マスターさんのっ?」

 

 

―――『あなたのおちんちんで、私のまんこに、ハメて欲しいのぉっ……!ちゃんと最後までズボズボってして下さひぃっ……!!』

 

「ほわあああああああぁっ!………ってにやあああぁ!?マスターしゃん!?何故ここに!?」

 

いつもの邪ンヌなら絶対に言わないような台詞を全裸で拘束され、何より今まで見たことないような淫靡な表情で言った衝撃が幼いジャンヌ・リリィには大き過ぎたのか、彼女は思わず後ろに仰け反り、俺の胸板に寄りかかってしまう。

しかも今度はそれで至近距離に俺がいる事を忘れてしまう程に驚いているし、忙しい娘だね本当に。

え?邪ンヌはどうしたって?

 

 

―――『あくぅっ!ひやああぁっ!そ、んな奥つかれたらぁぁっ!!んあぁぁ!!バカになっちゃうぅっ!!あぁ!あっ!あぁぁっ!!ダメェっ!もう……らめぇっ!!』

 

「あぁ……マスターさんと成長した私のおしっこする所が……繋がって、あんな……あんな……パンパンって……あわわわわ……」

 

「ハッ、ハハハハハハハハ…………私、反骨魔法少女ジャンヌ、今日も元気に復讐するんだニャン……ふふ、フフフフフフフフフフフ……」

 

そっとしておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほえぇ―――………」

 

成長した自分のあられもない映像という教材で保健体育の授業を終えたジャンヌ・リリィは自身に渦巻く未知の感情を吐き出すかの如く、大きく息を吐いていた。

 

「マスターさんと、成長した私は……二人で、いつもあんな、あんな事を……」

 

邪ンヌを見るジャンヌ・リリィの瞳には『破廉恥です!』と責めるような色は無かった、むしろ尊敬を覚えているような視線を向けていた。

 

「ふ、フッフッフッフッフッ……」

 

その一瞬ッ!自分とマスターである俺のくんずほぐれつを子供の自分にガッツリ見られてしまい、あまつさえ尊敬の眼差しを向けられた事によって、上限突破した邪ンヌの羞恥心がとてつもない冒険を産んだ!!

 

「……えぇ、えぇ!そうよ……私はね、このマスターのどんな変態的な欲求にもね、ちゃんと愛して応えてあげる事が出来るのよ。子供のアンタと違って……大人のお付き合いって奴が出来るのよ!()()()()()()()()()()()()

 

意趣返しとばかりにジャンヌ・リリィを煽る邪ンヌ。

恥ずかしさが裏返った彼女が出した結論は開き直ることだった!

転んでもただは起きない女!それがジャンヌ・ダルク・オルタ!!

自分が一人の女としてジャンヌ・リリィとはもう何十歩も先に進んでいるという優位性を示す方向にシフトしたのだ!確かにあらゆる意味で先に進んじゃっているよネ!

 

「ぐぅっ……!」

 

そう、あんな映像を見せられてしまったジャンヌ・リリィは言い返す事は出来なかった。自身でも無意識で認めてしまっていたのかもしれない……『認めましょう……今はあなたの方が強いっ!』と。

 

「せいぜい、アンタは出来た所でお手てを繋いだり、おんぶ抱っこが関の山よね……まぁ、いいんじゃないかしら子供らしくて?」

 

「ぐ、ぐぬぬ……ば、馬鹿にしないで下さい!私は一人前の淑女ですから!マスターさんと、き、き、キシュだって出来ますよ!」

 

「へぇ、じゃあ見せてもらいましょうか」とニヤニヤ顔で挑発する邪ンヌだったが、彼女も彼女で実はいっぱいいっぱいな雰囲気はするんだよな……もう引けに引けなくなった感じ?

 

俺の膝の上にいたジャンヌ・リリィはこちらに振り返り……その小さな唇を可愛らしく、んぅ――と伸ばしながらどんどん顔を近づけてきた。まぁ、頬っぺにチューぐらいなら今まで何回かあったけれども……。

 

「ジャンヌ・リリィ……」

 

「だ、大丈夫ですよ、ぜ、ぜ、全部私に任せて下さぃ……す、すぐに終わりますか、ら……」

 

ロリィな彼女はそんなアダルトチックな台詞を吐きながら、顔を真っ赤にし、緊張した面持ちで口付けを交わした。

 

「んぅ………んっ!」

 

それはただ唇を押し付けるだけの初々しいものだったが、ジャンヌ・リリィの年相応のプルプルとした可憐な唇の感触と一生懸命さが非常に愛おしくなるそんなキスだった。

 

「………ぷはっ!………ど、どどどうですかっ!?私ぐらいになればキスぐらいどうって事はないですよ!」

 

唇を重ねたまま、どうすればいいのかわからなくなった彼女は結局、数秒間そのまま停止した後に口を離す事しか出来なかったようだ。

その様子を邪ンヌはお話にならないと言わんばかりに首を横に振っていた。

 

「はっ!何よ、そのキスは、まるで駄目、全然駄目ね……そんなお子ちゃまなキスじゃおままごともいい所よ。どきなさい私が本当の大人のキスとやらを見せてあげるわ」

 

「なっ……」

 

自信満々で俺の上に跨ってきた邪ンヌは頬に手を添え……口を開けながら、顔を近づけてくる。

ジャンヌ・リリィに対して余裕綽々の態度を取っている彼女も完全に吹っ切れているわけじゃないのだろう、俺の顔を挟んでいる手から恥ずかしさからの震えが伝わってくる。

反骨精神の塊とも言える彼女がこうやって自身を追い込んで自滅道を進んでいくのもテンプレなのかもしれない、ポンコツ可愛いよね。

 

「はむぅっ……んぅ…んちゅるぅ……ちゅ、ちゅるぅ……」

 

「ふえぇ……舌同士でそ、そんな……」

 

赤面しているジャンヌ・リリィを流し目で見て、挑発するように舌を絡め、ディープキスをしてくる邪ンヌ……。

ふむ、せっかく邪ンヌがヤル気になってくれたのだ、俺がされるがままというのも如何なものか……これは手伝ってあげるのが良きマスターとしての務めであろう。

 

「んむぅっ!?んじゅるぅっ……!―――ぁはぁっ、ちょ、まちなさぁっ…んんぅっ!?んじゅるるぅっ…!!んふぅっ……ぇあっ…れろぁっ……はむぅっ……!んじゅるぅっ……!!」

 

逃げられないように彼女の後頭部を押さえつけ、自身の舌で彼女の舌全体を扱くように這いまわせる。

逃れようとしても、歯茎や口蓋をくすぐる事で動きを止めさせる。

お互いの口から赤い蛇が絡み合い、ジュルジュルと卑猥な音を立てながら唾液の交換を続けていった。

 

「はわわわわわわっ………」

 

ジャンヌ・リリィは顔を背けているように見えるがその実は目はバッチリと開けて、見逃しまいとしている。

もうその「私見てませんよ」アピールは意味無いと思うぞ。

 

 

しばらく彼女の口内を十分に蹂躙し尽くして、ようやく解放してあげた……邪ンヌの口まで伸びる銀の糸と蕩けた瞳でありながらな抗議の視線を向ける表情が非常にエロチックだった。

 

「はぁ……はぁっ―――……ど、どう?……アンタにこんな大人なキスが出来るの?」

 

それでもあくまでこれは自分主導だという事を主張するように邪ンヌは息を荒げつつもジャンヌ・リリィに目線を向ける。その顔は自身の勝利を確信している顔だった。

 

「………できますぅ」

 

「は?」

 

だが、邪ンヌは一つ忘れている。

 

「で、きます!……わ、私だってっ、あなたに負けないぐらいマスターさんの事、大好きなんですからぁ!!」

 

ジャンヌ・リリィはオリジナルのジャンヌに負けない程に頑固で、そしてアヴェンジャーである君に劣らない程に反骨精神に満ちているという事に。

 

「え、えぇっと……こうすればいいんですよね?あ、あぁぁーんぅ……」

 

まさかここで引き下がらないとは思ってなかった邪ンヌを押し退けるように俺にのしかかってくるジャンヌ・リリィ。

目をぎゅっと瞑り、先程の邪ンヌのキスを参考にしているのか……口を開けて、顔を近づけてきた。

それを迎えるように俺も口を開き、彼女と唇を交わす。今度は閉じたままでするキスではなく、口内まで混ざり合う大人のキス。

 

「はむぅっ……んっ、んぅ、んんぅ……?ちゅっ、んっ……」

 

しかし、それでもいきなりディープなキスが出来る筈もなく、勝手がわからない為、舌を突くように無造作に動かしていくジャンヌ・リリィ。

これはこれで大変愛らしいのだが、このままにしておくとテンパった彼女が何をするのかわからないのでこっちから優しく教え込むように舌を動かしてあげた。

 

「んふぅっ……!?んちゅ、ちゅるぅ……ぇれぁっ……ふぁっ、んむぅっ……ちゅぅ、じゅるぅぅっ……」

 

落ち着かせるように彼女の頭を撫で、驚かせないように舌を触れ合わせる……さすがに俺と何度も数をこなしている邪ンヌの時のようなハードなキスをぶちかます程、鬼畜でもないからね?

え?ガチロリとディープキスをしている時点で十分鬼畜だって?……無理矢理じゃないからセーフってなりませんか。

 

 

「れるぅっ……ちゅ、ちゅるぅ……んじゅるぅ……じゅるぅ、っぷはぁっ、これぇ、にゃんですかぁ……これぇ…‥きしゅがぁっ、とまらなひぃっ……んぅっ、んちゅるぅ……」

 

それにジャンヌ・リリィは賢い娘だった。

俺の舌や唇の動きを参考にして、真似するように俺の口内に舌を挿しこんでいった。

未知の感触と快感に戸惑う声と吐息が聞こえてくる、それでも彼女は成長した自分に負けじと俺の唾液を飲み込んでいく。

邪ンヌは邪ンヌで、「やだ、子供の私……学習能力高すぎっ……」って戦慄してるし。

なんだろう、こういう無垢なロリっ娘に色々と覚え込ませて自分色に染め上げていくのって何だか背徳感凄まじくて滅茶苦茶興奮するんですけど。

 

「…んむぅっ……っぷはぁっ、はぇっ……はぁっ、はぁっ、何だか……頭がフワフワして、しゅごかったですよ、ますたぁさん………」

 

口を離すとまるで目がハートになったのかのようにうっとりした表情で涎を垂らすジャンヌ・リリィはすっかりディープキスに嵌ってしまった様子を感じる。

 

「ふ、ふぅ――ん、ま、まぁ?キスなんて正直、序の口もいい所よ、ぶっちゃけ出来て当たり前?みたいな感じだし……こ、ここからが本番なんだからっ!」

 

ジャンヌ・リリィのエロロリっぷりに動揺している邪ンヌだったがあくまで余裕のスタンスは崩さなかった。

次なる一手を打つ為、胸元を隠している黒い衣服を取払い、露出させる。

大胆な行動に驚愕している子供の自分は放置して、俺の足元に座り込むとズボンを下着ごとずり下ろした。

 

「ひゃわぁっ!?」

 

はち切れんばかりに興奮している俺の怒張を見て、ジャンヌ・リリィは驚きの声をあげる。さっきまで映像越しでは散々見ても実物はやはりモノが違うのか。

 

「これ、さっきの私のビデオとかキスで反応したのよね?あの、ちんちくりんとのキスで反応したワケじゃないのよね?」

 

「全部です、邪ンヌのハメ撮りでもキスでも、ジャンヌ・リリィとのキスでも反応してしまいました。ふっ、節操無しと罵るがいいさ」

 

「偉そうに言ってんじゃないわよ……ぇれろぉー……」

 

マスターが自分のキスで反応してくれた事に嬉しそうな様子のジャンヌ・リリィにそれが少々不満な邪ンヌ、そんな彼女は美白が眩しいおっぱいで逸物を挟めると滑りをよくするように唾を谷間に垂らしていった。

 

「んっ、ふぅ……ど、うかしらっ?アンタの貧相な胸でこんな事できないでしょ?」

 

彼女の唾液でコーティングされた肉棒がパイズリされる、気持ち良さそうに息を吐く俺に気を良くしたのか、どんどん左右の柔実で押し潰すように刺激してくる。邪ンヌはジャンヌ・リリィが持っていない武器を存分に駆使して実に得意気な……いや、

どちらかと言えば、頼む、これでもう諦めてと語っている様子だった。

 

挑発したのは自身とはいえ、今度は映像ではなく、現在進行形でマスターとの公開情事をおっ始めているのだ。

その彼女の心中や如何に。

それでも自分から引くのは負けを認めるような感じで癪であると考えている邪ンヌはこのまま続行するしかない。

 

「も、も問題ないですよっ!お、おっぱいの一つや二つ……マスターさんになら、み見られても全然だだ大丈夫でしゅよ!」

 

「なっ……!」

 

だが邪ンヌがそう考えているなら、ジャンヌ・リリィも同じ思考に至っている筈だ。元は同じ存在なわけだし。

 

ジャンヌ・リリィは襟のリボンを外し、胸を隠している黒いトップスを外した。

元から胸元が空いている白き衣装のせいか桜色の乳頭が映えるちっぱいが丸出しになっている。

 

前々から思ってたけど、リリィの割には彼女の格好って結構卑猥だと思うの。

 

「さ、さ、さ……さぁ、マスターひゃん……ど、どうぞさっき見たビデオのように、わ、私のおっぱいを………あ、あ、味わってくだしゃぃ……」

 

邪ンヌはジャンヌ・リリィに負けを認めさせるまでより過激なプレイをしていく。

ジャンヌ・リリィは成長した自分に負けてなるものかと追いかけるように邪ンヌと同等のプレイをしてくる。

 

OH……正に終わる事のない泥試合。だが、俺は彼女達の戦いを止めるつもりはない、これは今後二人の関係にとって重要なファクターになるという確信があるからだ。

決して、この二人はどこまで突き進んでくれるのだろうかと愉悦ってるワケではない。イイネ?

 

「んひぃっ!!くすぐ、ったぁっ……!」

 

ハメ撮りの映像を参考にしているジャンヌ・リリィは俺の頭を抱えるようにしてその微かな双丘をどんどん近付けていった……

その膨らみに俺が口を付け、舌を動かすとびっくりしたような声が響く。

 

未だ色事をしらない純白の肢体……その体を汚すように乳輪を舌先でなぞっていく。敏感である先端には時折、唇や歯で触れたり、舌先でほんの少し突く程度でいい。

胸先に痺れるような感覚が襲いかかったジャンヌ・リリィは一体どんなリアクションをしてくれるのだろうか?

 

「は、はぅ……あぁ、あんっ!ふ、ふふっ、私のおっぱい……おいひいですかぁ……んふぅっ!え、遠慮しないでいいですからぁっ……!」

 

なんと彼女は喘ぎつつも、より包み込むように俺の頭を抱き締め、胸を押し付けてきた。

体中を這い回る快感に困惑しても、その表情は慈愛に満ちた母性に目覚めていた。

サンタとして、一人の女として……目の前の男に愛を振り撒くのは当たり前だと、そう語っているようだった。

 

「ひゃん!あふぅっ……!ふぅ―――……んんぅっ!はぁっ!先っぽ、そんな……子供みたひにちゅぱちゅぱぁってぇ……!!ましゅたぁ、さんぅっ……んああぁっ!!」

 

まさかジャンヌ・リリィにバブみを感じる日が来るとは……一種の感動を覚えながら徐々に充血してきた蕾に吸い付いた。

その小さな体を抱き締め返し、雪のような肌をゆっくりと撫で回してあげる。その柔肌に暖かさと一緒に僅かな淫らかさを染み込ませるように。

確かに彼女の胸の膨らみは微かだか、それでも女性らしい柔らかさ、匂い、味、そして俺が愛撫する事で返ってくる声と体の反応が最上の興奮材料となる。

そもそも女性を胸の大きさだけで語る領域なぞ、既に俺は三千年以上前に通過しているのだッ。

 

「……なに、そっちだけで楽しんでるのよっ、はむぅっ……んじゅるるるぅ……!」

 

ジャンヌ・リリィのちっぱいに存分に甘えている俺が気に食わないご様子の邪ンヌは胸で扱くだけではなくフェラも開始した。

 

「ひゃっはふ……ほんわほほへぇ、じゅるぅっ……ひふもふひほうふぁいひへぇ……じゅぽぉっ…んじゅむぅっ……!!」

 

『全く、こんなものでいつも好き放題にしてぇ』って所かな?

今まで散々自分を苛め抜いてきた剛直に恨みとか愛おしさとか性的興奮とか……様々な物が複雑に混じり合った想いを発散するように彼女は胸コキと口淫を激しくしていく。

 

 

「ましゅたぁしゃんぅ!まひゅたぁひゃんぅっ……!んにやぁあっっ……!!らんか……ビリビリってしびれてぇっ……なんかしゅがいのぉ……きひゃうっ!!」

 

「んじゅるぅ!じゅぽぅ、じゅぽぉっ……!!んむじゅるるるるぅっ……!!」

 

ジャンヌ・リリィは迫ってくる初めての性的絶頂に呂律が回らなくなり、邪ンヌはリリィがイクのより先に俺をイカせようと強くフェラを。

 

顔はジャンヌ・リリィの細腕と胸に包まれ、愚息は邪ンヌの口内と胸に包まれている……まさに上下ジャンヌ・ダルク・オルタ尽くし、何だここ、天国か。

 

「あっ、あぁ、あぁっ……ひやぁぁぁっっ――――――……!!!!」

「んむぐっ!!んんんんぅぅっ――――!!……んむぅっ……!じゅるぅぅ……んぐっ、ごくっ」

 

ジャンヌ・リリィの鈴のような嬌声と同時に俺は邪ンヌの口内へ滾った精液を放出した。

 

初めてのオーガズムに俺の頭を抱き締めたまま固まっているジャンヌ・リリィ、一滴も残しはしないと最後までバキュームをし終えた邪ンヌはそんな彼女に語りかけた。

 

「……っぷはぁっ、はぁっ、んぅ、ふぅー……これでわかったでしょう?アンタにはまだ、こういう事は、はや……」

 

「………すごい」

 

「はい?」

 

「……凄かったです、愛を与えて、与えられて……好きな人と愛し合う事がこんなにも素晴らしい物だったなんて。恋人達の為のクリスマス、成程……クリスマスというイベントが世界で一番なのはこういうロジカルだったんですね。ふふふ、世界がイルミネーションみたいに色づいてきました」

 

えへへーとハートマークを飛ばしまくるジャンヌ・リリィに邪ンヌは危機感を覚えたのか、正気に戻すようにその肩を掴み激しく揺らした。

 

「待って、戻ってきなさい。許さないわよ、一応は私のリリィに当たる者があのパンケーキ魔法少女や病み白騎士みたいな色モノになるなんてッ!『あぁ、やっぱりリリィって付く娘は歪んでしまう運命なのかな……』みたいな目で同情されるのは私は御免よっ!」

 

「けど、クリスマスはある意味1年で一番セックスする日とも言われているから、あながちジャンヌ・リリィの言い分も間違いでは無いのでは?」

 

おかあさんが一番出来る日イェア。

 

「そういう事言ってんじゃないわよ!てかアンタも年端もいかない相手なんだからもう少し手加減しなさいよッ!」

 

「いや、そんなに激しくやったつもりは無いんだけど、むしろ心底優しく丁寧に愛撫したつもり」

 

最後の吸い付きだけは少し力を入れてしまったかもしれないが。

 

「それが問題なのよ!見なさいコイツの様子、どっぷり嵌っちゃってるじゃないのよ!本当にチョロいんだからっ!」

 

「ははっ、邪ンヌとそっくりじゃないか」

 

「燃やすぞ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいわ、アンタのその気概だけは認めてあげる……けど、それもここまでよ」

 

一糸纏わない姿になった邪ンヌは俺をベッドの上へ押し倒し、未だ屹立している男根の前でゆっくりと女性器を開いていた……性器を反応させているのは俺だけではなく、彼女もだった、既に濡れそぼった女陰は準備が出来ている。

ジャンヌ・リリィに負けを認めさせるにはもう最後までヤリ切るしかないと、邪ンヌはもう引くことは出来ない決心を持っていた。

 

(だってあそこで開き直ってマスターとおっ始めたのは私からじゃない、ここまで来てやっぱ無しなんて情けない真似出来るもんですかッ!)

 

その熱い決心と共に新たな黒歴史をここで作ってしまっている事に彼女は気付いているのだろうか。

だが、俺はこうやって自ら自爆していく邪ンヌも心から愛しているので見守る事しかしない、こんな愛の形もあるのだから。

 

「成長した私のイケナイ所が……あんなにひ、ひ、開いて………その中にマスターさ、んの……こんな大きいモノが……」

 

「そうよ、アンタの小っちゃいモノでコイツのを挿れるなんて、恐ろしいでしょう?……こっからは正真正銘大人の時間、わかったら負けを認め……」

 

「……いいえ、それぐらいへっちゃらです」

 

「」

 

ジャンヌ・リリィはそんな生々しいアダルトな光景に呑まれる所か、挑むように好戦的な表情を浮かべた。

黒い下着を下ろすと、服の裾を臍の位置まで持ち上げて俺の顔の上に丸出しの幼スジを見せつけるように膝立ちになった。

横になっている俺の上で二人のジャンヌ・ダルク・オルタが向かい合っている。

 

「あのDVDで見たあなたはマスターさんにここを手や口で十分にほぐされてから挿れてました!ならば私も同じ事をすれば無茶ではないという論理的思考です!!」

 

「ぐぅっ!これだから無駄に行動力のある優等生は嫌いなのよ!……アンタそんな格好して、恥ずかしさとか無いわけ!?」

 

「あ、あるに決まってるじゃないですかぁ……!け、けどそれよりも、これから……マスターさんとどんな風になってしまうのかっていうドキドキとうか……好奇心というか……未知への探求心というか……はぅ」

 

表情だけ見れば、年相応の女の子だが……如何せん格好が格好である。

もう邪ンヌはどうにでもなーれという諦めの極致にいってしまいそうな顔だった。

 

「あの……す、すみませんマスターさん、こんなあなたの顔に跨るような真似をしてしまって……」

 

「気にする事はないよ、ジャンヌ・リリィ。だってサンタがトナカイの上に乗るのは当たり前なんだろう?」

 

「マスターさんっ…!」

 

「アンタ達、今すぐ世界中のサンタとトナカイに謝りなさい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅっ!んあぁっ……!あっ、あぁ―――っ…!!」

 

ハメ撮りの映像や俺のモノを咥えていた邪ンヌは既に出来上がっていた。

自身の女の園へそのグロテスクな棒を迎え入れ……快楽に震えている。

 

ジャンヌ・リリィは間近でリアルで成長した自身の淫らな姿に影響されるように腰を下ろしてゆっくりと女性器を俺の顔を近づけていった。

 

侵入を許さないようにピチッと閉じているように見える淫裂も僅かな隙間から愛液が垂れている事がわかる。

 

「少し、濡れているね」

 

「ぬれ……?お、お漏らしなんてしてないですよぉっ!」

 

「そうじゃなくて、気持ち良くなると女の子の大事な所は濡れてくるんだよ」

 

「なるほどっ……んひぃっ!、ひゃ、息、吹きかけないでくだしゃひっ……」

 

感度は相当に敏感、ある意味邪ンヌ譲りなのか……ふぅ――ってする度に彼女の大陰唇がピクピクと震えだす。

その震え出した幼肉を解すように指で撫で、割れ目を舌先で下から上へと緩やかなスピードで舐めていった。

 

「んくぅっ!あぁっ!ひゃふぅ!!、これぇあたたかくてぇっ、なんだか変にぃっ……あぁっ!」

 

自分自身でさえもそんなに触った事の無かった部分を生暖かい舌がべっとりと這っている感触にジャンヌ・リリィは恥ずかしい声を止める事が出来ない。

 

今日まで性の知識なんて殆ど知らなかった彼女の初めてをまるでまっさらな雪に自分だけの足跡を残すように味わい尽くしている錯覚が俺を激しく興奮させていく。

 

緩急をつけて、何度もしつこく舐めていくと……より強い快楽を欲しがるようにマンコが開いていき、肉ビラが露わになった。

幼くても、つまびらかになった女陰はジャンヌ・リリィが一人の女である事をはっきりと教えてくれる。

今度は血流が良くなった小陰唇にも音を立て愛液をすするように口淫を開始した。

 

「はあぁぁっ!あぁっ、じゅるじゅるぅってぇ……!やぁっ、ましゅたぁしゃん、そんなの飲んだら汚ひぃっ…!んふぁあっっ!!」

 

彼女の体で汚い物なんて無い、そう宣言するかの如く、俺は愛撫を続ける。

 

そして邪ンヌの責めも忘れてはいない、ジャンヌ・リリィの蜜肉を貪りながらも、腰のストロークは弱点を的確に責めていた。

 

「あぁっ!あっ!やああぁっ!!も、うぅっ……!さっさと出ひなさいよぉっ……あふぅっ!やぁっ、だめぇっ…!!」

 

邪ンヌは奥の子宮口を突かれるのが一番好きである、深く大きく突かれるよりは浅く多く突かれる方が好みらしい。彼女は認めたがらないが……

 

肉棒を邪ンヌの最深部まで挿入すれば、そこからは小さく細かく腰を動かく。亀頭で彼女の子宮口を連続でキスするように。

 

「ひぃっ!はぁっ!アぁっ!あぁっ!!あんぅっ!そ、んな何度もコツコツするなぁっ…!はひっ!!やぁっ!イキすぎちゃうからぁぁ……!!」

 

俺の精子をいつでも迎え入れるように開いている邪ンヌの赤ちゃん部屋の感触が、竿を擦ってくる肉襞の快感が、彼女と愛し合っているという実感が……肉棒を刺激してくれる。

 

 

「ふぅっ!あくぅっ!まひゅたぁさんの舌がぁっ……わたひの中にどんどん入ってぇっ……んんあっっ!!あひゅぅっ…!!」

「少し、止まっへぇ…!……あんぅっ!!ふあぁ!あ!ふぅあっっ!!イクぅっ……のが止まらなくぅ……あぁっ、またぁ…きちゃうぅっ……!!」

 

俺の上で喘ぎ悶える二人のジャンヌ・オルタは快楽で脳髄を焼かれながらも目の前の女よりは先に倒れてなるものかとギリギリの所で踏ん張っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はああぁあ―――……!!あぁあっ!もう、にゃんかい出せば気が済むのよぉっ……!!んああぁっ!!また出てるりゅうぅぅっ…!!」

 

もう何回目の膣内出しかわからないぐらいに邪ンヌに多量の精液を注ぎ込んでいた……。

結合部からは入り切らなかった白濁液が漏れ出している。

涙と涎を流している邪ンヌは幾度もの射精と剛直の抽送で既に肉欲に溺れてしまっている顔色に染まっていた。

 

「あ、アンタもさっさと……諦めなさひよぉっ……あんぅっ!!」

 

「あくぅっ!……そ、それはコッチの台詞で、すぅっ……はうぅんっ!」

 

もはや二人の争いはどちらが大人の女として上かというものから、どっちが先に気絶するかという勝負になっていた。

だがその争いになると恐らく邪ンヌの方が分が悪い。

クンニと指マンで散々啼かされてしまっているジャンヌ・リリィだがそれでも俺は彼女の性器には優しくしか触れていない……邪ンヌのように何度もイカせてやろうという魂胆は無いのだ。

そして、本気の挿入から与えられる快楽が指や口で責めるより大きくなるのは自明の理。

邪ンヌはとっくのとうに限界は来てたのだ。

 

「あっ、あ、っぁ……!!や、ばっ……もうこれぇ、む、りいぃっ―――……!!!」

 

その叫びを最後にクリーム色の髪をなびかせて邪ンヌは横に倒れた。

雌孔から肉棒を引き抜く音とそこから溢れてくる白淫液がとてもイヤらしい。

 

「……ふぅ――、ふぅ――……や、やっと倒れてくれましたか……同じ自分でありながら強情な人ですよ、全くもう……」

 

ジャンヌ・リリィはお尻を上げて、気絶した邪ンヌから漏れている精液を興味深そうに指で掬い取った。

 

「……これがマスターさんから出た愛の素なんですね。白くてヌルヌルして…………はむっ!」

 

そんな味を見ておこうみたいな軽いノリで口に含める物では無いと思います。

 

「んぅっ!?……んくっ、ぐっ……んむぅっ……んぐっ、けほっ、けほっ!凄く苦いですぅ」

 

しかも、吐き出す事はしないで飲んじゃってるし。

 

「白いからクリームみたいに甘い物だと思ってました。……ですがこの苦味もまた大人の味という奴なのですね。ふふん、私また一つ大人になってしまいました!」

 

「もう十分大人の階段駆け上がってると思うけどね……まぁ、この様子を見る限り、勝者ジャンヌ・リリィ!って所でいいのかな?」

 

「え?何を言っているのですかマスターさん。まだ勝負はついてないですよ?」

 

私のバトルフェイズはまだ終了してないですよと言いたげなジャンヌ・リリィは恥ずかしそうにしながら、邪ンヌに倣うように纏っている衣服を全て脱ぎ生まれたままの姿となった。

 

「だって……私はまだ、マスターさんのソレを入れてもらってないですっ、成長した私と同じぐらいの事をしてもらわないと勝ったなんて到底言えませんよ!」

 

そこまでして邪ンヌに負けたくないのか、いや彼女の表情からは今の台詞が建前のようにも思える。

 

「それに……」

 

ベッドで横になり、あのDVDに映った邪ンヌを参考にしたのか脚をM字開脚で開いて切なさそうな表情で自身の淫裂を指先で誘うように開いていた。

 

「それに、マスターさんが……私のココをいじってくれた時、おっぱい吸った時みたいなビリビリって感覚が来なくて、今凄くもどかしいんですぅ……自分で触っても全然収まりそうにないんですぅっ……!」

 

あぁ……確かに胸を責めた時は最後だけ、思わず激しくヤッちゃった気がするわ。

その快感を教えてしまった後にひたすら性器を優しく嬲られてしまうのは幼き身としては色々と辛かったのかもしれない……決してこの展開を狙ったワケではないと弁明しておこう。

 

ここで「今日はもうおしまいだよ」と放置プレイはいくら何でも可哀想過ぎる。元々の原因は俺が取っておいたDVDから始まったのだから……しっかりと最後まで責任は持つべきだ。

 

「こんなに大きいけど?」

 

「マスターさんのなら怖くありません!」

 

「もしかしたら凄く痛いかもよ?」

 

「へっちゃらです!」

 

「ははっ、全く悪いサンタさんだなぁ」

 

「むむっ、好きな人と愛し合う事に何も悪い事ではありません!よって私は良いサンタです!論破ですっ!」

 

こんな時でもいつもと変わらない調子の彼女を微笑ましく感じつつも、亀頭を秘所へ擦り付ける。

不安と期待と興奮が入り混じったジャンヌ・リリィの表情が俺の瞳に映る。

 

「それじゃあ、いくよ」

 

「…は、はいっ……き、てくだひゃいっ…!んんふァっ―――!!」

 

俺が今まで弄り倒した甲斐あったのか、彼女のヴァギナは拒絶する事なく少しずつ怒張を飲み込んでくれた。

それでもサイズ的にはやはりキツイものがあるのだろう、それを解すように俺自身も肉棒を小さく振動させるように奥へ進ませていく。

 

「はぁっ!あ!あっ、あぁっ!ひぁっ!大っきいぃっ…のがぁっ…にゃんども……えぐれてぇっ!あひっ…!」

 

その振動が彼女の膣壁に初めての性感を教えていく、先程の邪ンヌとの交わりにより付着した精液と愛液が……そしてジャンヌ・リリィ自身の淫液が男根を侵入させていく潤滑液となっていく。

 

「ジャンヌ、ゆっくりと息を吐いて」

 

「はぅ………はぁ――……ふぅ――っ……」

 

時には力を抜かせ。

 

「はむぅっ…ちゅっ、じゅるぅ……じゅぱぁっ、キス…しゅきですぅ……んちゅぅ……」

 

キスをしながら。

 

そしてようやく……。

 

「はぁぁ―――……あぁっ―――……あぁ、マスターさんのがぁっ…入ってますぅ……見て下さひぃ、私のお腹こんなにパンパンになってますよぉっ」

 

膣内が埋まり切った。

ジャンヌ・リリィの下腹部からはっきりとわかる膨らみが俺の勃起具合の大きさを示している。

しかし、彼女はその膨らみをまるで妊娠した母親のように愛おしそうに撫でていた。ここでもバブみ発揮ですか。

 

「……こうしてるだけでも幸せです……けど、マスターさんは動かないと気持ち良くならないんですよね?……あっ、はぁー……あの白くてエッチなのを出さないと……スッキリしないんですよね?」

 

ジャンヌ・リリィは慈しむように両手を広げ俺を抱き締めると耳元でそっと囁く。

 

「だからぁ……いっぱい出してください、子供の私のイケナイ所にたくさんクリスマスプレゼントを注ぎ込んで下さい」

 

今の言葉を無自覚に吐いたのなら、彼女は男を狂わせるレベルのエロロリ娘の素養を持ってるぞこれは。

幼きジャンヌと交じり合う背徳感を感じた状態でこんな事を言われてしまえばもう、これ以上じっとはしていられない……俺の腰は子種を吐き出さんと動き出す。

 

「あうぅっ!!ひやぁっ!これぇっ!すごひいぃっ!今日の中で一番しゅごいぃっですぅっ……!」

 

彼女の小さい腰を掴み、ストロークを開始する。

 

「ひやぁっ!初めて、こんなに初めてがぁっいっぱいでぇ……!知らない事がたくさん来てぇ……!!あぁ…!あふぅっ!」

 

「これがセックスだよジャンヌ・リリィ」

 

「しゅごいっ…!しぇっくしゅぅ……!!せっくすしゅごいですぅっ……はうぁぁっ!ますたぁさぁんぅっ……!!」

 

今日一日で一体彼女はどれだけの初めてを学んだのだろうか、口をだらしなく開いて心地良い嬌声を響かせるジャンヌ・リリィの膣内は奥を軽く突く度にさらに狭くなり……肉棒を絞り込んでくる。

 

「ひやあぁっ!!……あのビリビリするのが……気持ちいいのがぁ止まらにゃあぁっ…!!」

 

「……そういう時はイクって言うんだよッ……」

 

「いくぅっ…?あぁっ!イクぅ!イッちゃいますぅっ…!!はあぁんぅっ!……ましゅたぁしゃんのおちんちんが気持ち良くてぇ……イキ続けちゃいますぅっ……!」

 

この子はガチで天然のエロロリっ娘の可能性を秘めているのかもしれない。

一のエロさを教えると十のエロさが返ってくるこの感じ実に教え甲斐があるではないか。

 

「……随分と盛り上がっているじゃない」

 

今日が初めての情事とは思えない程の乱れっぷりを披露しているジャンヌ・リリィにもう一人のジャンヌが近づく。

先程、アヘぇと倒れていた邪ンヌだった。

 

「復活が早くなったね……」

 

「アンタにこれまで何回犯されたと思ってるのよ、少しぐらい耐性付いてもおかしくないでしょ……」

 

ほう、ではこれからはよりハードなプレイをしてもいいのかなーと俺が悪どい事を考えているとは露知らず、邪ンヌはピストン運動で激しく揺れる未成熟な肢体に手を這わせる。

 

「はぁっ…あぁっ!……ふぇ、ぇ私?な、何をっ……」

 

「もう、コイツ(ジャンヌ・リリィ)がこんなになっている以上、勝負とかどうでもよくなっちゃったわよ。ただ……」

 

そう言って、いつもの彼女らしいサディスティックな笑みを浮かべた邪ンヌは

 

「やられっぱなしというのも趣味じゃないのよ」

 

ジャンヌ・リリィの勃起している乳首と淫芽を指で摘み始めた。

 

「んひやあぁぃっ―――……!!!」

 

その敏感過ぎる性感帯を急に弄られたジャンヌ・リリィの全神経をさらに強い快楽が駆け巡る。

 

「フフッ、気持ち良いのが気に入ったのなら、これから好きなだけ味合わせてあげるわよ」

 

充血している乳頭とクリトリスを同時に掻き、ピンピンと弾くように弄ぶ……まるで自分の体のように邪ンヌはジャンヌ・リリィの卑猥な部分を的確に執拗に付いている。

 

「ハァッ!あぁっ!にやああぁっ!!私ィ……やめぇっ……今、そこばっかりイジられちやぁっ!頭がおかひくなっちゃいましゅからぁっ……!んひぃっ!!」

 

「いいのよ、好きなだけ狂ってしまいなさい。どうせアンタも私もこれからマスターにおかしくされてしまうんだから」

 

自身のリリィであり、正反対の性格である少女がこの手で鳴き悶えている様を邪ンヌは楽しんでいた。まるで自分がこれまでこのマスターに刻み込まれた肉欲をジャンヌ・リリィにも仕込むように。

 

「あひっ!ひゃぁっ!!はあぁっ!!あ、あ、あぁ……これぇしゅごすぎますぅっ……!!体全部がぁっ……!!ビクビクするのがぁっ……あくぅっ!止まらにゃぁいぅっ……!!」

 

邪ンヌが彼女のエッチなお豆を苛める度に蠢く膣襞の感触がとてつもなく心地良い。

俺の凶悪なモノで膣道を擦られまくっているジャンヌ・リリィの目は焦点が合わなくなり、その両手は必死にベッドのシーツを掻きむしっていた。

 

「あらあら、そんなに乱れちゃって……とんだエロサンタね。ほらっ、おまんこ気持ちイイって叫んでみなさいよ……あくぅっ!!?」

 

邪ンヌもする側ばっかりなのは退屈だろうと思った俺は左手で抱き締めるように彼女の膣内へ指を伸ばす。

お望み通りオカしくさせてやろうじゃないか。

 

「あァっ!はぁっぅっ!!待ちなさぁっ……!!まだ敏感になってるからぁぁっ……!!やぁあっ!グシュグシュってするなぁ、ばかぁっ!!んほぁあっっ…!!」

 

どうやら邪ンヌの膣内は完全に回復し切って無いみたいだ。

愛液とまだ残っている精液を掻きまわすように指を前後左右に動かしまくる。

 

淫らにその巨乳を揺らしながら、アヘっている邪ンヌだったがジャンヌ・リリィを愛撫する手を止める事は無かった。

それならと俺はもう一方の手でジャンヌ・リリィの乳首に手を出す。

 

邪ンヌの両手はそれぞれ、リリィの右乳首とクリトリスへ。

俺の両手はそれぞれ、リリィの左乳首と邪ンヌの膣内へ。

そして依然、肉棒はヴァギナへ突き刺さっている。

幼きジャンヌが俺達二人に悦楽を覚え込まされている淫靡な光景。

 

「あえぁっ!!はぁあっぅっ!!……もう、キモチイイ所だらけでぇっ……わけがわからにゃくにゃっへますぅっ…!!はああぁっ!!おっぱいもぉっ……!お、おまんこも……頭もぉっ!お馬鹿になっひゃいまひゅぅ!!」

 

「アぁっ!あっ!もっと……!弄りなさいぃ!!ソイツ(リリィ)に負けないぐらいぃっ……おまんこ、キモチ良くしてぇっ!!あんぅっ!!ひうぅっ!!」

 

ベッドの上で混じり合っている3人はもう与えられる快楽を貪る事しか頭にない。

お互いがお互いの手で気持ち良い所をまるで熟知しているかのように……。

完全な受け身に見えるジャンヌ・リリィもヒクヒク震える媚肉で俺の男根を確かに気持ち良くしてた。

 

 

「ましゅたぁしゃん!まひゅたぁひゃんぅっ!!いっぱいっ、らして下さいぃっ…!!はふぅっ…!!私、良い子にしてまひたからぁっ……!ああぁっ!らからぁっ、クリスマスぷれじぇんとぉっ……私のココにいっぱいらしてくださひぃっ……!!」

「あぁっ!あっ!はぁっ!やっぱり好きなのよぉっ!!アンタにこうやって好き放題されるのぉっ…!!苛めてもいいからぁぁっ…!もっと強くさわぁってぇっ…!ますたぁの証を残してぇっ……!!」

 

二人のジャンヌの色香溢れる懇願に限界は訪れた。

俺はジャンヌ・リリィの膣内にたっぷりと白い精液という名のクリスマスプレゼントを注ぎ込んだ。

それと同時に邪ンヌのナカの一番奥まで指を擦り上げる。

 

「ああぁっ、はあぁっ!ひやあぁっっ!!ああああぁくぁあああああっ―――――――!!!」

「アぁっ!あぁあっ!!はああぁんぅっ―――――――!!!」

 

邪ンヌの膣内から出てきた残りの精液と吹き出した潮がリリィの体を汚していく。

小さなサンタさんは体内でも体外でも淫液で犯しつくされたまま眠るようにそのまま意識を落していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結局、R18な用途になってんじゃないのよ、アンタの部屋」

 

「今日は疲れたからもう寝るわ」という邪ンヌの提案で現在、ジャンヌ・リリィを挟んで俺達はベッドの上で川の字で横になっていた。何だか親子になった気分でほっこりします。

 

「こいつも一回の膣内出しでダウンしているあたり、フッ、まだまだ私には敵わないわね」

 

ジャンヌ・リリィは疲れて絶賛爆睡中。

 

「けど、まぁ……初めての割りには頑張ってた気がするし……その根性だけは認めてあげてもいいわ。全く、幸せそうな寝顔しちゃって……」

 

「うみゅぅ……えへへー……」

 

ジャンヌ・リリィの頬をツンツンと突く邪ンヌの顔には最初の時の刺々しさは無かった。

ちょっとぐらいはこれから気にかけてあげてもいいかなって笑っているようにも見えた。

 

「ふわぁっ――……今更だけど、何で私達こんな事してるんでしょうね?」

 

「さぁ?」

 

「実は廊下で私と会ったのも、それでこの部屋でコイツとDVDを見て、私が羞恥心から対抗心燃やした事で可笑しな方向になったのもまさか全部アンタの狙い通りだったとか言わないわよね?」

 

そんな「当たり前だぜッ!このMASTERは何から何まで計算づくだぜ――ッ!」みたいな疑いをかけられても困るぞ。

 

「ったく、これで小さい私の性癖が歪んだらどうすんのよ……」

 

「俺ともう既に色々なプレイをやらかしてる邪ンヌが言う台詞じゃない気が」

 

「あ、あれはっ、アンタが、ど、どうしてもやりたいって言うから付き合ってあげてるだけでしょ!?」

 

「けど、邪ンヌも最終的にはいつも楽しんでるじゃない」

 

「…………うっさい、馬鹿、変態マスター、性欲魔人、ロリコン、一般人」

 

頬を染めた邪ンヌは顔を隠すようにシーツを被った。

しかし、最後のは罵倒なのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《後日談という名のおまけ》

 

「あ、見つけましたよ!オルタ!」

 

ディスクが入った複数のガラスケースを脇に抱えて、ジャンヌ・リリィが近づいてくる。

 

「ん?なによ」

 

「はい!今度は私にマスターさんからどうすればあんなに上手く苛められるのかコツを教えてもらいに来ました!」

 

「…………なんで、私に聞くのよ」

 

「女性陣の皆様がそういうのは邪ンヌに聞くのがいいって……それにあの映像を見ると説得力もありますし!」

 

「ふぁっく」

 

邪ンヌはリリィに聞こえないボリュームで悪態を吐く。

 

「やっぱり貴方と差別化を図り、なおかつクリスマスらしさを出す為にはプレゼント用のリボンで拘束プレイとかがいいですよね?」

 

キラキラと純朴そうな瞳で語る言葉はどう足掻いてもピンクだった。

 

「ふぅ――…………取り敢えず、私はそんなコツ知らないし、アンタに語るつもりはないわ」

 

「……成程、人に聞くより先にまずは自分で勉強してから来いということですね。オルタも色々と考えているというワケですか」

 

「あぁ、うん。もうそれでいいわ」

 

「では私はこれで一回、勉強してきますね!」

 

大事そうにケースを抱え直し、歩き出すジャンヌ・リリィの肩を掴む邪ンヌ。

 

「一つ聞きたいんだけど、そのディスクは何かしら?」

 

「はい!マスターさんから頂いた邪ンヌメモリー、『拘束プレイ編』と『監禁尋問プレイ編』と『野外プレイ編』と『SMプレイ編』と『制服乙女イチャックス編』のDVDです!」

 

「い ま す ぐ 捨 て な さ い」

 

 

 

 

 

 

 




Q、サーヴァントとの情事が映っているDVDについて。

ぐだ男「何も考えずに本能のままにまぐわうのも良いのですが、やはり新しいプレイを模索する為には過去の情事を見直すのが一番なんですよ。客観的に見れば、こういう所を変えて責めてみようかなんてアイディアも湧きますしね。細かい所を変えてみるだけでもエッチには新鮮さが増します。彼女達と愛し合うのに妥協は許されませんよ。どんな事にも本気でヤる……そういう精神が大事でしょう。
まぁ、魔術師としては評価されない項目ですからね」

邪ンヌ「評価されてたまるか」








《マイルーム3分?クッキング》
用意する材料はジャンヌ・ダルク・オルタとジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィとこちらのマスター。
この3人をマイルームにぶち込んで一晩待ちます。
するとあら不思議……ジャンヌ・エロ・ダルク・アダルト・オルタ・エクスタシー・サンタ・ロリィの出来上がりです。性の字も知らなかった彼女がここまでの逸材になりました。是非ご家庭でお試しを。


今回のあらすじって要するにこういう事でしょ?え?違う?

というわけでWジャンヌ・オルタ回……まぁ、一応メインは初登場のジャンヌ・リリィですが邪ンヌもやっぱりいないとね!
邪ンヌとジャンヌ・リリィの母娘丼!さぁ、おあがりよ!
ガチロリは一応始めてだったのでつい筆が乗ってしまいこんな事に、もしかしたら今までで一番エロシーン長いんじゃないかな?

予定としてはロリジャンヌをマスターが優しく手解きするつもりがいつの間にか性に奔放になってしまったエロロリサンタジャンヌが出来てしまった。これも全部あのマスターが悪い。





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サンタギアソリッド(サンタオルタ)

遅くなりましたがあけましておめでとうございます。
新年一発目の投稿です。姫始めでクリスマスネタとはこれ如何に。
前半から真ん中ぐらいまではいつもより?いつも通り?のギャグ&ネタ増し増しでお送り致します。よしなに。








「年が明けようともそれはそれとしてターキーが食べたい」


なんやかんやで世界も救われた後、英霊達を含むカルデアにいるほとんどの者が寝静まったある夜。

 

マイルームで寝ているこのマスターも今日は珍しく一人……だがそこに忍び寄る影が一つ。

ゆっさゆっさと肩を揺らし、この部屋の主を起こそうとしているようだ。

 

「メリークリスマス&メリーモーニング、お前の大好きなブラックサンタさんだぞ、トナカイ」

 

マスターを起こし、いつものクールな表情のまま横ピースでキメ顔をかましているのは黒いサンタコスを身に纏ってラムレイ2号を乗りこなし……良い子にはプレゼントを、悪い子には極光反転モルガァーンをばら撒く先代サンタこと、サンタオルタちゃんだった。

 

「う……ぁ、れ……?」

 

「む?お前にしては目覚めが悪いな。さすがのトナカイもあの特異点での闘いは堪えたか?」

 

反応が薄いマスターの瞳は未だに寝ぼけまなこだった。

 

「……俺……変な「夢」を見たぜ…

俺…夢の中で暗闇を歩いてるとよぉ――、

光が見えて、死んだバルバトスの兄貴に会ったんだ。「魔神柱」の兄貴さ……。

『どこへ行くんだ、カルデア最後のマスターよ』…って……兄貴が、俺に聞くんだ。

俺は『兄貴を狩りまくるよ』って言った…

だって、バルバトスの兄貴は、いつだって心臓とか頁とかQPとかどっさりくれたし…

兄貴の落す素材には、間違いがねえから安心だからな…

そしたら、兄貴は…『頼むもう勘弁して下さい』って言うんだよ……

『カルデア最後のマスター……お願いだからもう帰ってくれ』ってな…

『あと気持ち100周ぐらいしたいんでそれはちょっと無理』って答えたら、目が醒めたんだ…とてもさびしい夢だったよ」

 

「私は寝起き早々の貴様からそんな話を聞かされてどんな顔をすればいいのだ」

 

「……笑えばいいと思う……」

 

そこからも、「殺したかっただけで死んでほしくはなかった」等とぶつぶつ呟くこの男の目を覚まさせる為にオルタは聖剣で頭をドついた。峰打ちであるし、このバグマスターなら少し小突かれるぐらいなら何も問題は無いだろう。

 

まぁ、あまり自重するタイプでないこの黒王様ですら、

最終決戦で『今日の俺は紳士的だ、運が良かったな』、『もっとだ!もっと素材を落せぇ!』『スキルなんぞ使ってんじゃねえええええええぇ!』『今死ね!すぐ死ねぇ!骨まで砕けろぉ!!』と黄金の林檎を噛み砕きながら、魔神柱共をサンドバッグにするマスターには若干引いたらしい。

ドロ率の良さとは人をここまで狂わせるものなのかと、取り敢えず準備3000年寿命12時間となったバルバトスの兄貴には黙祷しておこう。

 

「というか、サンタオルタさんはどうしてここに?」

 

「ふっ、サンタがここにいる理由など、一つしかあるまい。さぁ、いくぞトナカイ、世界は救われてもまだまだクリスマスシーズンだ。私を待つ子供達にプレゼントをばら撒いてやらんとな」

 

「ははっ、それはお付き合いしないとね……あれ、けどこの前ジャンヌ・リリィちゃんとしたのはク、リスマス……?うむ?けどそれから大分経っている気も……というか今は2016…?いやもう2017年な気も……あれ、あれ?年は明けたのか……?ウゴゴ、頭が……」

 

「やめておけ。それ以上考えると時空の歪みに飲み込まれるぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかし、人理が救われても座に帰ったサーヴァントが一人もいないとはな」

 

消灯されているカルデアの廊下を並んで歩くサンタ黒王様とトナカイの被り物をしている俺、さすがのオルタさんもラムレイ2号で闊歩するのはうるさ過ぎるのでちゃんと徒歩で御座います。

 

「ひと段落はついたけど、どう考えてもまだまだこれから戦いは続くだろコレっていう雰囲気を皆感じ取ったんじゃないのかな?」

 

アンデルセン先生も「見落としている謎?続編?新たな敵?ふん、インフレが続くのは少年誌だけにしておけというのに、まったく……」ってぼやいてたしねー、それでも文句を言いながらちゃんと働いてくれるショタ先生大好きですよ。

 

「成程な、マスターも新たな闘いを予感しているからこそ、最後の特異点から帰ってきた後も聖昌石を噛み砕きながらサーヴァント召喚に勤しんでいたわけか」

 

ソロモンは座から消えたかもしれないけど、今まで人理を救う旅に深く携わってきたDrロマンとして成し遂げた偉業が認めてもらってサーヴァントとして座に刻まれていると思ったんだけどね、浪漫王 ロマニ・アーキマンみたいな感じで。

しかし、中々来てくれない……俺の運命力が足りないのか。

 

けど、それで新たな仲間も何人か迎える事が出来ました。

ただ……この間来た元祖ジャンヌに邪ンヌが「ぷぷっ――!もう、人理救われてるんですけどー!今更どのツラ下げて来たのよー!アンタの出番ねぇから!後ろで一生旗でも振ってろ!」って死ぬ程煽ってたのは色々と問題でした。

ガチで凹んだジャンヌは慰めなあかんかったしなー……邪ンヌの方にはお仕置きしまくったけど。

あ、そういえば……

 

「所長をサルベージしようと思って、カルデアスに腕を突っ込もうとした時もなんか赤髪ポニーテールでパンツ一丁&二頭身の女の子が『宝具演出をSKIPする機能をつけるのだ……でなければ私の専売特許をやるワケにはいかんな……いずれ貴様も気づく筈だ。我々が戦うべき真の黒幕であり、人類悪……その名も運え』とか何とか語りかけてくる幻覚も見えたし、多分俺達がまだ紐解いていない謎はたくさんあるんだろうな」

 

ロマンもサルベージする、所長もサルベージする。「両方」しなくちゃならないってのが「マスター」の辛い所だな、覚悟はいいか?俺はできてる。

 

「………少なくとも、貴様が見たその幻覚については一生謎のままにしておけと私の直感が告げているぞ」

 

「滅茶苦茶汗かいてるけど、どうしたん?オルタさん?」

 

「聞くな、それに雑談をしている間に一人目の子供の部屋にご到着だ」

 

カルデアの英霊住居区画でもあるこの廊下に並んでいる数多の扉の内の一つの前に止まる。

扉の横には「レオニダス」とネームプレートが。

 

「子供?」

 

「サンタの私からすればプレゼントを願えば、誰もが等しく子供だ」

 

あのペルシャ王をダレイオス君Ⅲ歳とか言ってしまうあたり、確かに説得力はあるわ。

 

「まぁ、だからこそ今回私がプレゼントをするのもちゃんとリクエストしている者に限るがな」

 

「そりゃ、そうだね」

 

どう考えてもクリスマスプレゼントとか願う柄じゃない方達もたくさんいますし。

靴下持ったエドモンが「待つ!しかして希望する!」とか言ってワクワクしている絵面とか想像できないっすわ。

 

「あぁ、だが例外もある『マスターの子種』、『マスターとの子供』、『マスター(そのもの)』等のリクエストは当然却下させてもらった」

 

……あの娘とあの人と……心当たりがあり過ぎるな。

 

「そういうのは自らの力で手に入れるべきだろう、甘えるなという話だ。さて部屋に入るぞトナカイ」

 

電気が消えたレオニダスの部屋へ我が物顔で入っていくサンタさんの後に続く。

部屋の主は既に仰向けで熟睡中だった。ヘルム取っていると大分印象変わりますね。

 

サーヴァントに睡眠が必要無いなんて野暮な話は今更いいでしょう。

それに「良き睡眠は良き筋肉を作るのですよぉおお!むぁああすたあぁっ!!」とか言い出しそうな彼が疎かにするとは思えないし。ただイメージとしてはこのスパルタ王、深くは眠るけど睡眠時間はもの凄く短そう。量より質です!的な理論で。

 

「さてレオニダスくんのリクエストは『幽霊に負けない筋肉』だそうだ」

 

「筋肉をプレゼントするの?」

 

「まさか。このスパルタ王が結果だけを求めるワケがなかろう、おそらくニュアンスとしてはそういったホラー物に耐性がつくトレーニング機器を欲しているのだろうさ」

 

そう言いながら、担いできた袋の中を漁るサンタオルタ。

 

「いきなりカルデアのシミュレーターで幽霊が闊歩する状況にぶち込んだとしても、オガワハイムの時の焼き直しになりそうだしな。かといってホラー映画を見せるだけというのは少々パンチが弱かろう、ならばその中間を攻めるような物を………あったな」

 

お目当ての物を見つけたサンタさんが出した物は黒いヘッドセットだった。

 

「今流行りのVRという代物だ。ふむ、寝ているのはちょうど良いな。せっかくだ、今からこれを付けてやるとしよう」

 

おそらく善意100%でやっているサンタオルタは起こさないように慎重に手際よくレオニダスの頭に機器を取り付け、スイッチを入れた。

 

「実はこのVRは特別製でな、仮に怖くなって目を閉じようが直接脳に映像を送り込めるのだ。睡眠学習としても使えるだろう……。ふっ、ただプレゼントを渡すだけでなく、ここまでのサービスをしてしまうとは一流サンタとしてのレベルの違いを見せつけてしまったな」

 

「うわああああああああああああ!!」

 

―――ガシャン!ガシャン!バキッ!!

 

いや……あの、得意げになっている所申し訳ないんだけど、起き上がったレオニダスさんがベッドの脇に置いてあった槍を片手に暴れまわっているのですが……。

 

「うむ、活きの良い暴れっぷりだ。さてここに我等がいても訓練の邪魔になるだろう、疾く退散するぞトナカイ」

 

私、良い事したわーと言わんばかりに満足気な表情のブラックサンタは部屋からさっさと出て行ってしまった。

 

「うおおおおおおおお!ふんぬいいいいい!やめろおおっ!!やめてくれぇええええ!!!」

 

暗い部屋でサイクロップスと化し、上半身裸で槍を振り回して狂乱しているレオニダス王の姿はマシュには見せられんなと思いながら俺は彼の部屋を後にした。

あんだけ暴れてるなら先に機械の方が絶対壊れると思うけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「走れソリよー、風のようにー、特異点をー、パドルパドル~~♪」

 

トナカイモードになっている俺の背に負ぶさり、頭についている作り物の角を握り締めながら上機嫌に歌っているサンタオルタさん。

俺は彼女の足となり、次のプレゼントを待つ子供の部屋へ向かっていた。

 

「言っておくが決して、あの小娘に対抗意識を燃やしたワケでは無いからな」

 

「俺は何も言ってないよ」

 

「そもそもトナカイに乗ったのは私の方が先だ。むしろあっちがパクリであろう」

 

「その乗るって今の状態の事?それともベッド的な意味で?」

 

あ、止めてください。無言で頭をチョップし続けないで下さい。

 

そんなどう考えてもジャンヌ・リリィに対抗心を燃やしているサンタオルタを乗せて、次の部屋に到着した。

部屋のプレートには「ジャック」「アリス」の二つの文字が。

 

「ほう、てっきり3人部屋かと思ったが」

 

「ジャンヌ・リリィはWジャンヌの方で3人部屋だからね」

 

この間から邪ンヌとジャンヌ・リリィは少し仲良くなったみたいで、いつの間にか同じ部屋になってたし……それに白い方のジャンヌも一緒の部屋が良いとねだっていたリリィの言い分を嫌そうにしながらも結果的に聞いてあげた点を見ると邪ンヌも割と彼女の事は甘やかしているのかもしれない。

 

「まぁ、いい……どうせ貴様が聖女3姉妹丼が出来やすくなったというだけの話だ」

 

「酷い言われよう」

 

「これまでの自分の行動を振り返るがいい」

 

そう言われると反論が出来ないので大人しく彼女と一緒に部屋の中に入る事にする。

ファンシーなぬいぐるみにメスとナイフを始めとする刃物が対照的な内装だった。

二人の個性がしっかりと表れたお部屋だこと。

 

「アリスは『マスターの物語が描かれた絵本』、ジャックは『おかあさんの温もり』だ。この二人も中々にわかりやすい」

 

「俺の絵本って……そんな物があるのか」

 

「今までの特異点の記録を味気ないレポートだけで残しておくのもつまらんと思ったあの芸術家がこれまでの人理修復の旅を書き上げたそうだぞ。絵本というよりは漫画に近いがな」

 

『カルデア国物語』と書かれたコミックが数冊、袋の中から出てくる。俺やマシュが表紙になっているのもあるし、その特異点で力になってくれたサーヴァント達が表紙になっているのもある。めっちゃ凝ってるじゃないですかダ・ヴィンチちゃん。

 

「荒唐無稽を具現化したようなマスターの物語はさぞアリスの興味を引いたのだろう。風の噂ではマスターと女性サーヴァント達の情事を赤裸々に描いたR18版とやらも流通しているらしいがな、私はまだ目にした事はないが」

 

「初耳だぞオイ」

 

俺のプライバシーは何処へ?

 

「艶本という奴だろう、希少で数も限られている。まぁ、仮に入手してもこの二人には早いし渡すつもりは無かったが………」

 

ジャンヌ・リリィに手を出したことを知っているサンタさんの視線が痛い……やめてー、「いや、むしろ時間の問題か?」なんて呟かないでー。

 

アリスの枕元に本を重ねて置いたサンタオルタは次のクリスマスプレゼントを用意した。

 

「さてジャックの『おかあさんの温もり』だが……貴様をプレゼントするわけにもいかんだろうし、これで代用するとしよう」

 

彼女が次に出したのはカルデアのマスターに支給される白き魔術礼装だった。

 

「ってか俺が今日一日着てたやつじゃんそれ」

 

もしかして、部屋に忍び込んだ時に強奪でもした?

 

「だから良いのだろう、貴様の温もりと残り香が濃厚に残っているからこそジャックのプレゼントとして相応しい」

 

ベッドの中ですやすや眠っているジャックを優しく持ち上げたサンタオルタはその小さき体を俺のトレードマークとも言える白い服で元からついている黒いベルトも使いながら全身が収まるように上手く包み込んだ。

 

顔だけ出されているからまるで蓑虫のようだ。

 

「……えへへ……おかあさん……うみゅ……」

 

まるで赤ん坊のようなジャックのホクホクとした幸せそうな表情を見ると俺の服なんて100枚ぐらいあげてもいいぜ!という気分になってしまう。

 

「それに見るがいい、こうやって袖を結び、貴様の首にかけてやれば……」

 

おぉ!まるで抱っこ紐のように俺の懐へぴったりと!

これで俺も一児の母か!

 

「――おかあさん……かいたい……」

 

寝言で物騒な言葉を言ってても全然気にならないぐらい可愛い!ウチの子供可愛い!

俺がママにっなるんだよっ!

 

「体を揺らしてあやしている所申し訳ないがジャックとたっぷり戯れるのはまた次の機会にしておけ、プレゼントを待つ子供達はまだまだいるからな」

 

名残惜しくジャックを元の位置に戻す。

ごめんね、おかあさんこれからお仕事なんだ。帰ったらたくさん遊んであげるから。

 

「もういっその事、常にあの抱っこ紐で彼女と一緒に戦ってもいい気がしてきた」

 

「ジャックが霧の結界を張り、その中でマスターが女性サーヴァントを性的に襲うというコンボか。味方ながらえげつないな」

 

「此よりは快楽地獄?いや、冗談だってば」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ではでは次のお部屋にご到着です。

 

部屋の主はロードエルメロイⅡ世こと孔明先生です。彼もプレゼントをリクエストをしているというのは意外っちゃ、意外かな?けど、ゲーム好きな所を見ると案外子供っぽい一面もありますし?

 

「さっさと入るぞトナカイ、既に寝静まっている雰囲気だしな」

 

 

今までと同様に彼女と一緒に先生の部屋に入った瞬間―――

 

「これぞ大軍師の究極陣地、『石兵八陣( かえらずのじん)』!」

 

「なっ……!」

 

宝具解放の声が響いた、確かに部屋の外からは起きている気配は感じなかったのに!

 

「ふっ、さすがは大軍師と宣うだけの事はある。この私を嵌めるとはなっ!」

 

何故か聖剣を構えてノリノリで戦闘態勢に入ったオルタだが、待って欲しい。

声は聞こえたものの、いつまで経っても俺達には特に何も変化はない。

 

「部屋の電気は消えているし、先生は確かに寝ているよ……ただ、少し様子が」

 

二人で恐る恐る彼が寝ているベッドに近づくと……。

 

「鑑識眼」「軍師の忠言」「軍師の指揮」「くだらん」「物理で殴るだけが戦いじゃない……」「軍師の指揮」「軍師の忠言」「軍師の指揮」「計略だ!」「罠だ!」「嘆かわしい。簡単すぎる!」「鑑識眼」「軍師の指揮」「軍師の忠言」「これぞ大軍師の究極陣地、『 石兵八陣( かえらずのじん)』!」「つまんない連中だな、他にやることないの?」「軍師の忠言」「軍師の指揮」「鑑識眼」「一気呵成に滅ぼしてくれよう」「ふむ、ではこうしよう」「鑑識眼」「鑑識眼」「軍師の指揮」「全ては僕の思うまま……ってね」「無駄だ」「軍師の忠言」「鑑識眼」「軍師の忠言」「これぞ大軍師の…………」

 

そこには夢の中で完全にスキルと宝具だけを打つマシーンと化した軍師の姿があった。

眼は閉じているのに口だけが絶えず動き続けているのが怖すぎる。しかもちょいちょいウェイバー君混ざってるし。

 

「オルタさん……彼のリクエストは?」

 

「『休み』だそうだ」

 

「切実ぅ」

 

「最後の特異点でも貴様がこれでもかってぐらいに連れ回しまくった反動が来たのではないのか?」

 

「いやだって、絆MAXである俺と先生の仲ならいいかなって思ったし……」

 

「その絆とやらも社畜、過労死まっしぐらのブラック進軍の果てに得た絆ならどうかと思うがな」

 

そっかぁ……一緒に戦ってた俺が特に問題無かったから先生も大丈夫だろうと思ってたのがよろしくなかったか……反省。

 

「マスターと違ってこやつはまともなキャスターだからな。体力面で比べてやるのは酷だろう」

 

「うん……そうだね、う、うん?いや、そもそも人間とサーヴァントを比べるのは」

 

「さて、休みを与えるならば、諸葛孔明に成り代われるキャスター枠を探さなければなるまい。あぁ……あのアヴァロンに引き篭もっているひとでなし魔術師を引っ張り出せばいいか、全てのキャスターを過去にする等大言を吐いたのだ……存分に働いてもらおうじゃないか」

 

俺の反論をスルーし、悪どい顔を浮かべながら部屋を出ていくサンタオルタ。

え?というかマジでマーリン連れてこれるの?わぁい、さっすがサンタさんだ!やったぜ!

喜べ先生、あなたの休暇届はようやく叶う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後も『酒』『巨人になれる薬』『ゴールデンな熊の一刀彫』『出番』『ぐだぐだイベ』『ボトルシップ』『躾用の鞭』『青セイバーのくっころな写真』『槍』『ビデオカメラ』『新居』等々、様々なプレゼントを捌きながらようやく最後の一人の部屋の前までたどり着いた。

 

「トリを飾るのはやはりこの娘だろう、トナカイ」

 

隣のサンタオルタの問いかけに無言で頷いた俺はプレートに「マシュ・キリエライト」と書かれた部屋へ入っていく。今まで……そしてこれからも苦楽を共にするであろう後輩の部屋へ。

 

「すぅ――……すぅ……」

 

小さいフォウ君が何匹もプリントされた可愛らしいパジャマを着ている我が後輩は大きいぬいぐるみを抱き締めながら深い眠りに落ちていた。

こんな女の子らしい姿を見て、どデカい盾を振り回して前線で戦うような勇ましい様を一体誰が想像出来るだろうか……。

 

「サンタさん……マシュのプレゼントは?」

 

「残念だが、マシュ・キリエライトちゃんへのプレゼントはここに無い。悔しい事にこのプレゼントはサンタである私ですら渡せない物だからな」

 

ニヤッと笑った彼女が見せたクリスマス風のデザインが施されたカードにはマシュのリクエストが書かれていた。

 

 

―――『これからも先輩と一緒に青空を見れますように』

 

「――――――」

 

「ふっ、全く……わざわざサンタに願わなくとも、これから好きなだけ見れるだろうに。それにこれではクリスマスというよりは年明けにする願掛けのようなものだぞ」

 

「他の人がらすれば他愛ない事かもしれないけど、マシュにとってはそれだけ大事で、凄く新鮮な光景なんだろうさ。マシュにはこれからもっと、自分のやりたい事とか好きな事とかたくさん見つけて我儘になって欲しいね」

 

誰かを模したぬいぐるみに顔をうずめているマシュの頭を慈しむように撫でる。

 

「……せーんぱぃ……んぅ、ふふっ」

 

「……もう十分に我儘だと思うぞ」

 

「そう?」

 

「あぁ、少なくとも私は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()は欲望増し増しとしか思えん」

 

若干引き攣った笑顔でサンタさんは彼女の部屋を見回す。

 

マシュが抱き締めているぬいぐるみは確かに俺がハロウィンに作ってあげたものだけど、それ一つだけだしね。

他の色んなサイズの俺や色んなポーズを取っている俺や色んな礼装を着ている俺やらでVerが変わっているたくさんのぬいぐるみについては関与してません。一体誰が作ったのやら。

しかも、半脱ぎの俺がプリントされている抱き枕まであるし、いつ撮ったんだこれ?

 

「けど、あれだ。ここまで好意を示されると何か照れちゃうね」

 

「そんな微笑ましい物か?恋する乙女で笑って済ますレベルではない重さだろうこれは」

 

マシュがいつも俺を部屋に呼ぶ時に若干時間を置いてから入れてくれる理由もこれでわかった。

まぁ、キャビネットが不自然な程にもの凄くパンパンだったから何か隠しているだろうとは思ったけれども。

 

「こんな残念な部屋でなければ私も貴様の話をイイ話だなーと思って聞けたというのに……まぁいい、趣味趣向は人それぞれだ。デミサーヴァントとして戦う術しか知らなかったこの娘が欲望に忠実になったのは良い事の……筈だ、おそらく、多分、メイビー………」

 

サンタオルタの歯切れが悪い言葉を最後に……微妙に締まらない形で俺達のプレゼント大作戦は終了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――私は当然、働いた者には報酬を渡す。後で我が部屋に来るがいいトナカイ。それとその被り物も返してもらうぞ。

 

皆へのクリスマスプレゼントを配り終わった後、言われた通りに俺は時間を置いて彼女の部屋へと訪れた。

 

いつものゴスロリチックな内装とは打って変わってクリスマス風に飾り付けられたサンタオルタルーム。

呼び出されたはいいものの、肝心のオルタさんが部屋にはいなかった。

 

代わりに不自然な程にデカいギフトボックスが中心に鎮座していた。

中に誰か入っている雰囲気しか感じないので、俺としてはこの箱を開ける選択肢しか無い。

 

包装紙を解き、パタパタと平面に崩れていった箱の中から現れたのは……。

 

 

「メリークリスマス、マスター。プレゼントは私だ」

 

生れたままの姿で手足をリボンで縛られた状態かつ、全身をフルーツやらクリームやらスイーツ系で女体盛りされているオルタの姿だった。

 

「……ど、うした?感激のあまり声すら、出んか……」

 

若干恥ずかしさを感じているのか、頬を染めながら問いかけるスイーツオルタちゃん。

 

「いや、その状態でどうやって箱に入ったのかと、手足をそんな上手に縛ったり、女体盛りは一人じゃ無理じゃね?という疑問が湧いて」

 

絶対、第三者の力を借りないとアカンよね?

 

「……白い方の私に頼んだだけだ、貴様がさっきまで着ていたトナカイの被り物をくれてやる事を条件にな」

 

どんどん物々交換されていく我が衣服。セイバー・リリィも俺が使ってたトナカイの被り物なんて何に使うのか……。

 

「リリィの奴め、縛る部分だけに関してはやたらと上手だった気がするが……というか第一声がそれか、貴様ッ?こんな私の姿を見ているのだ、もっと言うべき言葉がある筈だろう!」

 

さらに顔を真っ赤にして吠えるオルタちゃん。

それもそうだった。目の前の楽園についちょっとだけ現実逃避しちゃった。

 

裸体を鮮やかに飾り付けているスイーツを崩さないように慎重に抱きかかえ、彼女をベッドの上まで連れていく。

 

「うん、オルタの綺麗な白い肌に乗せられたクリームやフルーツは本当に美味しそうだよ。思わず食べ物だけじゃなくて、あなたの体全身も余す所なくドロドロになるまで貪ってしまいたくなる程に。最高のプレゼントだよ……ありがとう、オルタ」

 

手は頭の上で縛られ、両足首は交差されて大事な所がちゃんと見えるように膝が開かれ状態で縛っているリリィの親切設計に敬礼。

胸の中心にあるツンとした桜色の乳首の周りを彩るようにホイップクリーム。

胸、へそ、太ももにかけて同様に続く、クリームの道……へそには苺、下腹部と女陰の周辺には一口サイズに切り分けられたキウイやバナナ、オレンジを始めとしたフルーツや、クッキーやポッキーなどのお菓子達もクリームを接着剤のように活用して、その肢体から落ちないように盛られている。

 

うん、オルタの美白な肌もプラスしてマジで眼福なんですが、クリームに囲まれた淫裂とかエロ過ぎんでしょ。

 

「ふふっ、そうかそうか。私が準備したクリスマスプレゼントだ、間違いなどあるまい。それにマスター……しっかりと今の状況を理解しているか?」

 

俺の返答に満足そうに頷いたオルタはこちらを誘惑にするような金色の瞳で見つめる。

 

「ほんの少し前までの私はサンタだったが、お前の目の前にいる今の私はプレゼントだ。そう、ただの贈り物……手足も身動き出来ないように縛られ、食べて下さいとばかりに無防備なご馳走……プレゼントされたお前だけが今の私を好きにしていいのだ……さぁ、マスターは一体どうしたいのだ?」

 

ベッドの上の極上のプレゼントにそんな事を言われてしまえば、もう理性は簡単に崩壊してしまう。

そうだな、せっかく俺へと贈られたプレゼントなんだ……好きにしようじゃないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んっ、……ふぅっ、あっ」

 

まずはお腹の中心、へその上にある苺を口に含むとそのまま、下にあったクリームも舐め取る。

彼女の体を味わい尽くすと決めたのだ、盛られたスイーツだけで満足するつもりはない、オルタの全身も、表面も、ナカも、余す事なく貪る所存なのだから。

 

「あくっ…!あっ、んぅ……ふぅっ、んっ」

 

舌先で小さな窪みをくすぐっていく。クリームの甘さとオルタ自身の体の旨みが混じり合っていくようだ。

 

せっかくなので、俺はさっきの苺を頬に貯めたまま彼女の顔へと迫る。

 

「んっ、どうした…?」

 

「ほらっ、せっかくのデザートだし。二人で食べようと思ってね……オルタも好きでしょ、口移しで食べるの」

 

「お前が、望むなら……好きにするがいいさっ……んむぅっ」

 

まだ完全に素直になっていないオルタと唇を重ね、苺を彼女の口の中へ放り込む。

 

「んっ、ちゅぅ……じゅるぅっ、れぇ……はむっ……んじゅるぅっ!」

 

二人の舌は一つの苺の味を分かち合うようにその表面を絡み合わせ、舐め尽くしていく。

苺の甘酸っぱさがオルタの唾液に溶け合い、脳を蕩かすような蜜へと変わっていき……彼女も俺と同じ感想を抱いてくれてるのか、瞳を潤ませて舌をせわしなく動かしていた。

 

「んむぅ、んんぅ……んぁ、あぁ……んじゅるぅっ、んちゅぅっ……」

 

「ぷはぁっ……ご馳走様でした、噛んでいいよオルタ」

 

舌を引き抜いた俺を確認すると、オルタはそのまま二人の唾液が染み込んだ苺を味わうようにゆっくりと咀嚼していった。口の端から垂れている涎が妙に艶めかしい。

 

「まだまだ、もっと食べたいでしょ?」

 

彼女はコクリと小さく頷いた。

 

そして、そこから俺は彼女の体の随所に盛られているフルーツやお菓子を咥え、口移しする度にオルタと濃厚なディープキスを交わしていくことになる。

 

 

――果汁と一緒に相手の唾液を吸い尽くし

 

「んむぅっ…んちゅぅ、じゅるぅっ……っぷあぁっ……」

 

 

――ポッキーといったある意味思い出深いお菓子も二人で食べ合い、無くなってもしばらく接吻を続け

 

「んっ、んっ……んぅっ、んむぅっ、んぁっ……ちゅぅっ」

 

 

――親鳥にせがむ雛のように口を開けて待っているオルタと何度もキスをし合った

 

「んはぁっ……もっとだ、マスター……はやく、はやくぅ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁっ、はぁっ………」

 

小さく体を震わせながら呼吸を整えるオルタの顔は発情した雌の表情であり、俺の情欲を燃え上がらせてくれる。

もう口移しするだけの食べ物は無くなってしまったが、彼女の素肌にはまだホイップクリームが点在しているし、うん……こっちも綺麗に召し上がる必要があるな。

 

まずはうずまき状のクリームで綺麗に飾られている胸の方に手を出すことにした。

 

「はぁっ、あんぅ……」

 

クリームを吸い取り、甘くなった舌と唇で円を描くように乳房を愛撫する。

巨乳という程のサイズではないが確かに女性らしさを表す膨らみはあり、非常に整った美乳というべきフォルム。

 

「あぁっ……はぁあぁぁぅ……」

 

時折、クリームを調味料に彼女の美乳を甘噛みしながらグルグルと胸の中心を周って舌を這わせていく……徐々に俺の舌が興奮した蕾へと近づいていくとオルタが期待するようにゴクリと喉を鳴らした音が聞こえた。

 

それに応えるように俺はメインディッシュに吸い付いた。

 

「ひうううぅっ!!」

 

ゆっくりと外堀から攻めるような舐め方をして焦らした所為か彼女の反応は一際大きかった。

未だ中にクリームが残っている口でチュウチュウと彼女の乳首を吸うとまるでオルタの胸から甘いミルクが出ているような錯覚を抱く。

 

「あくぅ!…ひゃぁっ、そ、んなに激しく……吸いつく、なぁっ!……私のそれは、食べ物ではないっ……んひぃっ!!」

 

左右のおっぱいをあえて手は使わず、口だけで交互に責め立てる。

微妙なレベルだが、何度もまぐあってきた俺だからこそわかる。左右で変わる彼女の胸の反応の差異、特にオルタが弱いのは心臓の上に位置する乳首。

もう既に十分過ぎるレベルで充血しているが、まずはここで盛大にイッてもらおうか。

オルタの左胸のコリコリとした乳頭を歯で甘噛みしながら、音を激しく立てて吸引する。

 

「あああぁぁあああぁっ!!」

 

俺の唇によって引っ張り上げられた胸から送りこまれる刺激に体を弓のように反らせてしまうオルタ。

 

彼女の胸を解放した俺はまだまだ残っているクリームを追うようにその女体をどんどん舌先でなぞらせていく。

 

「ひぁっ、あぁっ、あっ……ぁっ、ふ、んぅ、くぅっ……はっ、あぅっ……」

 

絶頂の余韻に震えている肌をしゃぶり尽され、縛られた体を何度も痙攣させるその痴態は舌で舐めるスピードをどんどん上げさせてくれる。

くびれ、腰、太もも、ふくらはぎ……俺の口淫はやがて彼女の足の指先まで到着した。

クリスマス用のリボンで脛の所を拘束されたその足を身動きが取れない。

オルタは最初に「今の私はプレゼントだ、好きにするがいい」と言った、ならばご期待に応えなくちゃね。

 

俺は躊躇する事なくその足を指ごと咥えた。

それだけで終わらせるつもりはない、口の中でピクピクと動いている足の指の間を何度も舌でスライドさせる、唇でその爪先まで吸い付くことも忘れず。

 

「はうぅっ!んっ、あぁっ、くすぐったあぁぁ……ふあぁっ!」

 

縛られた身であり、自分が最初に言った台詞を反故にするワケにもいかないオルタは何とか足先から走ってくる快感から逃げないように奮起していた。

 

うむ、しかし……オルタの体は本当に甘いなー、これはもうクリームだけじゃなくて彼女の体そのものが甘いのでは?と思ってしまう程に。女の子の体は砂糖で出来てるって嘘じゃないかもしれんな。

 

「あぁっ、あっ、……そんな舐め方ぁっ、もうっ、ねちっこいぞぉ……ひゃうぅっ!」

 

さてさて、ずっとこのまま足をチュパチュパし続けるワケにもいかんな、クリームはまだ残っているのだ。お残し無く最後まで(意味深)じっくりと食べてあげないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひぁっ………ぁっ…あぁぅ、んぁっ……あ、はぁ―――……」

 

あれから、()()()だけを残し、オルタ女体盛りクリームとその柔肌を舐め尽した俺は唾液で全身をいやらしくコーティングされ、放心状態にある彼女の痴態を眺めていた。

 

「っあ、はぁっ……確かにプレゼントとは言ったが……まさかここまで執拗に責めてくるとは、思わなかったぞ……あぁ、もう体中がドロドロ、だ……」

 

「いやいや、これからもっとドロドロになるんだよ。オルタ」

 

俺はあえて手を付けなかった()()()()()()()()()()()()()()()()()を全て掬い取るとその手をそのまま―――

 

「んっ、なに、を?………んああぁっ!!?」

 

濡れそぼった雌孔へと突っ込んだ。

指についたクリームを彼女の膣内に満遍なく馴染ませるように激しく掻き乱す。

 

「ああぁっ!あっ、つめたぁっ……やぁっ!変な感触がぁっ……んうぅっ……」

 

ベッドをギジギシと軋ませて喘ぐオルタ、いつも強気な黒王様がこんな格好で指を突っ込まれて泣かされているという事実は俺の愚息をさらに興奮させてくれた。

 

味付けは十分だろう。

俺は指を引き抜き、服を脱ぎ捨て、痛い程に勃起した肉棒を曝け出す。

その怒張に目が釘付けになっているオルタにシックスナインの態勢で覆い被さった。

 

「はぁっ、私に……食べろと、いうワケか……?」

 

「うん、こっちはオルタのここを頂くから、食べさせっこという奴かな?」

 

「……全く、お前という奴は……はぁ、はぁ……こんな様の私に、そんなえげつないモノを咥えさせようとは……はぁ――……」

 

オルタの熱が籠った吐息が何度も亀頭にかかる。言葉自体は呆れているが、彼女もこの状況に興奮を覚えてくれているのだろう。

今度はスイーツではなくグロテスクな棒をオルタがフェラしやすい位置まで腰を下げ、俺は上から彼女の陰部に顔を近づける。

 

「……はぁむぅっ、んむぅっ、んじゅるぅっ……」

 

手足を拘束されているオルタは首の動きだけで肉棒を激しく口淫し、俺は白い蜜が垂れ始めている秘所に口を付けた。

 

「んんぅ!んむぅっ!!んぁっ…ぁっ!んちゅぅっ……」

 

俺の舌が蜜壷の中を蠢くと、思わず快感でフェラを中止してしまいそうになるオルタだったが……すぐに負けじと頭を上下に動かす。

 

俺も熱心に舌を這わせているが……オルタの膣内がクリームと愛液が混ざって凄い事になってるぞコレ。

視覚的なエロさもそうなんだけど、なんだろうなこの形容し難い味は。確かに甘いは甘いのだが単純に甘いというワケではなく、ずっと味わい続けたい麻薬的で神秘的な魅力がある、今の彼女のナカの味は。

 

「んじゅぅ……んぐぅ!?……んぼぉ……じゅぽぉっ…!」

 

どんどん甘美な蜜が溢れてくる彼女の膣肉に興奮し、まるでイラマチオするかの如く腰が上下に動いてしまった。

最初は少し驚いたオルタも、その乱暴な動きに適応するように自身の首も激しく動かしていく。

 

『今の自分はプレゼントだから好きにしていい』と言わんばかりの態度、その態度で許しを得たように俺はクンニを激しくする。

クリームと淫液でトッピングされた女性器は極上のデザートだった。ジュルジュルと音を立て、まとめて飲み込んでいく度に彼女の太ももが激しく揺れ動くのが目に入る。

 

「じゅぽぉっ!じゅぼぉっ…!じゅるぅ……んむぅっ!んんぐぅ!!んじゅるぅっ……!!」

 

俺の股からはオルタの激しく這いずり回る生温かい舌の感触と一緒に快楽に痺れるくぐもった声まで届いてくる。

お互いの大事な所を一心不乱に貪り合い、味覚と獣欲へ同時に訴えかけてくるような目の前の性器の味に夢中になっている。

 

相手が最後に吐き出す欲望の塊をさえもこの喉で潤したいと渇望し……。

 

俺はトドメを刺すように勃起した淫芽に吸い付き、腰を深くまで突き出す―――

 

オルタは鈴口を舌先でくすぐりながら喉奥まで咥え込み、バキュームして射精を促す―――

 

「ちゅぱあぁっ……出すぞっ……!」

 

「んんんぐううぅぅ――――!!んぶぅっ!んむぅっ!!んぐぅ、んぐっ、ごくっ……」

 

 

―――プシャアアア!!ドピュッ!ピュルルルゥ!ピュルッ!!

 

俺の顔にかかる潮吹きの音とオルタの口腔内にぶちまけられている精液の音が淫らかに共鳴しているようだった……お互いの秘部から放出される極上の淫液を最後まで飲み干そうと口はしばらく離れる事はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁっ……ふあぁ、はぁ……好きにしろと言ったのは私だが……まさか、こんな風にしてくれるとはな。で、んぅ……次はどんな事をしてくれるのだぁ……?」

 

既にシックスナインの態勢から解放されたオルタは身をくねらせて、こちらを誘惑してくる。

まぁ、このままプレゼント状態で縛られているオルタを延々と苛めてあげてもいいけど、それは邪ンヌの専売特許だし、そろそろ趣向を変えましょうか。

 

「ん?」

 

俺は彼女の手足を縛っているリボンを解き、自由にさせた。

 

「何のマネだ?」

 

「プレゼントとしてのデザート女体盛りオルタちゃんは十分に堪能したから、今度は大好きな一人の女性として抱き締め合いながらセックスしたいと思ってさ」

 

「む、むぅ……そ、うか、そうか、マスターがそう願うなら私に断る権利はない、な……」

 

ストレートな言葉にそっぽを向いて照れるオルタちゃんホントに可愛いです。

 

顔を背けているオルタの体をギュッとハグする。

 

 

「きゃっ…………えぇいっ!そんな顔で見るなっ!今の声は聞かなかった事にしろ!」

 

あぁ、本当にオルタちゃんはかわいいなあ!!!

不覚と言わんばかりに女の子らしい声を挙げてしまったオルタちゃんの照れ顔を愛でつつ、挿入の準備をする。

 

「……抱き締めればいいのだろう?」

 

俺の首に腕を回し、どうやらこちらに全て任せてくれるらしい。さっきの女体盛りの件といい、この黒王様がこうやって受け身になってくれるのは割と珍しい方かもしれない。

 

膨れ上がる怒張はさっきの洪水の余韻が残っている陰部へ飲み込まれていく。

 

「っあぁぁっ……!」

 

散々弄り回したので入るのは容易だが、進んでいけばその膣内はもう離さないとばかりに締め付けてくる。

何度も交わっているのにもかかわらず、彼女の締まりの良さは衰える事を知らない、むしろ数を重ねるごとにどんどんキツくなっている印象も抱いてしまう。

 

「はぁっ、あぁ、あぅ!!……この態勢ぇっ、奥が突かれてぇっ……好きだぁっ……うあぁっ!!」

 

対面座位となり、そのまま連続でオルタの奥をノックしていく。

 

懐で乱れるオルタの体は華奢でとても軽い……いつも黒く染まった聖剣でエクスカリバーをブッパして暴れ回っている方と同一人物とは思えないです。

 

「んくぁっ!ぁぁっ……ああぁ!はあぁっ……肌もぉ……お前のアソコもぉ!全てがぁっ、熱いぃっ……!」

 

陶磁器のような白肌、心配になるぐらい軽やかな体……今のオルタは只の女の子になってしまっている。

手足は甘えるように俺の体に回されていた、俗にいうだいしゅきホールドという奴ですね。

 

「オルタ、もっと顔を見せて」

 

「ひゃあぁっ、やめぇっ、やああぁっ…!!恥ずかしぃっ……!」

 

腰の動きは止めず、彼女の両頬に手を添え、こちらを見るように仕向ける。

イヤイヤと金髪を振り乱している彼女の瞳は蕩け切って、冷酷非情の暴君とは大きく様変わりしていた。

 

「ほら、俺の目の前で喘いで、声を聴かせて。乱れて、何も考えずに果てて。アルトリア……」

 

「ひやあぁ!あっっ……あぁっ、駄目だぁ……だめぇっ……んはぁあっ!……ダメですぅっ…ま、すたぁっ……!そんな目でぇ……そんな事言われてしまったらぁぁっ……あぁっ、ぁぁっ……あああぁ……」

 

最後の方はいつもと違う、他のアルトリアのような口調になって彼女はどんどん嬌声を響かせていった。

玉のような汗が浮かび、触れ合っている肌も肉棒を絞っている膣襞もどんどん熱が増していっているのがよくわかる。

その熱さは彼女の果てが近づいていっている事を教えてくれているようにも感じた。

 

「あふぁっ、あぁぁっ……!見てぇっ、ますたぁっ……!!私が達してしまうのをぉっ……見て下さいぃっ…あぁっ……あぁっ!い、くぅっ……!いく、イクぅ!……いああぁっ………」

 

加速する腰のぶつかり合う音、俺の手はアルトリアの腰に戻し、抱き締め合う力もお互いに強くなっていく。

俺は彼女の悶える様を一挙一動を見逃す事なく、見つめ続ける。

 

「いっくうううあああぁあぁぁぁあっっ――――――……!!」

 

吐き出された精液はオルタの最奥まで蹂躙する。

ギュッと目を瞑り、快楽で口から涎が垂れ流しになっている少女はそのまま女の悦びを俺に見せ付けながら果てていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「とんだ性夜になったなマスター」

 

淫裂から零れ落ちる白濁液を指に絡ませて、自身の腹を妊婦のように撫でるオルタ。

彼女と普段とは違うエロさにギャップ萌えを感じてしまったからね、散々に膣内出ししても是非も無いやん?

 

「ふふっ、いつもとは趣向を変えたプレイ……気に入ってくれましたか?マスター……」

 

いつもの彼女らしからぬ丁寧語で俺にしな垂れかかってくるオルタは非常に上機嫌だった。

 

「うん、物凄く燃え上がってしまいました。改めてプレゼントありがとう」

 

「そうだな、私もこんなに注がれてしまったのだ……これで懐妊でもしたら、ある意味最高のクリスマスプレゼントになると思うのだが」

 

下腹部を撫でるのを繰り返すオルタ。

 

「子供が欲しいの?サーヴァントが妊娠するのはさすがに……」

 

「さて、な。数多の英霊共と縁を結んでいるお前の事だ……もうその体も常識では測れまい。サーヴァントの一人や二人、孕ませた所で私はもう驚かんぞ」

 

「そこは驚こうよ」

 

しかし、俺とたくさんの子供、そして英霊達に囲まれたカルデアという未来図も悪くない、いやむしろ良い。

まぁ、こればっかりは神のみぞ知るとしか言えないので、俺にはもし子供が出来た時にその子を守り、養う為の知力、財力、筋力、包容力を鍛える事しか出来ないのですが。

 

「いつかの為に……この私が良き母になれるように……もっと女の(さが)をこの身に刻みこんでくれるな?マスター……」

 

インターバルを挟み回復したオルタはこちらにのしかかってきた。

もう何ラウンド目かはわからない、この夜の睦合いはまだまだ数を重ねる事になりそうだ。

 

 

 

 




《花の魔術師》
アヴァロンに引き篭もってたら、サンタの格好したアーサー王に引きずり出されたでござるの巻。
これから孔明の代わりとしてカルデアで馬車馬の如く働かされる輝かしい未来が彼を待っている。
大丈夫、僕は君のファンだから(震え声)
余談だが、Prototypeのマーリンは僕っ娘キャラの女性らしい、何故そっちで来なかった(憤怒)


《カルデア国物語》
元ネタは「ナルニア国物語」、なんか語呂が似てるよね。
全7巻(第1部)に及ぶ大作を何とあの童話作家がコミカライズとして挑戦。それ何てメルヒェン・マイネスレーベンス)、マスターの出鱈目っぷりに目を瞑れば極めて全うな冒険譚らしい。
もしいつかこの物語が完結したらマスターが一体どうなるのかは誰にも想像出来ない。


《カルデア国物語(R18版)》
正式名称は「カルデア寝物語」。
上記のカルデア国物語程には厚みはなく(薄い本?)、1冊ごとに基本一人の女性とマスターの情交が描かれている(複数プレイ版もあるっちゃある)。
作画は同じくダ・ヴィンチちゃんだが、原作者は不明。というよりは、マスターとの情事を形として自分の手元に残したいと頼んだ女性の依頼でダ・ヴィンチちゃんが書いているので、あえて原作者が誰かと云えば…その時にマスターに抱かれている女性である。当然、完成した本もその原作者の手にしか渡らない。
だかある界隈で、本当に原作者が不明+ダ・ヴィンチちゃんですら書いた記憶が無いシークレット物がどこかにあるという話も……。


《トリプルジャンヌが同じ部屋になった経緯について》
邪ンヌ「いい?あの聖女様には私とマスターがしている事については一切喋るんじゃないわよ?(あの女と同じ部屋になるなんて気に食わないけど、断ったら絶対リリィは白い方の部屋に行くわ。それで余計な事漏らされるぐらいなら私の目に入る所で釘刺しておいた方が全然マシよ)」

ジャンヌ・リリィ「え――、何でですか?私があなたを尊敬している数少ない所なのに」

邪ンヌ「もっと他に尊敬する所あるでしょ!……あーうん、あれよ。イイ女ってのはそういうのは隠しておく物なのよ」

ジャンヌ・リリィ「なるほどぉ!一人前の女性は黙っててもそういう魅力が出てしまうんですね!?さりげなさが大事なんですね?」

邪ンヌ「もうそれでいいわ」

ジャンヌ「あの二人、仲良さそうですね……何を話しているんでしょうか」









2話以来のオルタメイン回、いぇい。
しかもあの時はまだ本番はやっていないので初のメインエロ回ですね。随分間を空けてしまった気がするが。
サンタオルタとはタイトルには打っているものの、途中からサンタ要素が無くなってしまったような……ま、いいっか。スイーツ女体盛りプレゼントオルタもいいじゃない。
あと、序章とかクリスマスイベでもそうだけど、偶にオルタが丁寧語になる所が好きです(真顔)。





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アリスとジャックの大冒険(ナーサリー・ライム&ジャック)

何かジャンヌ・リリィ回といい、ロリの時だけ文字数多くなっている気がする。
別に私はロリコンってワケではないのにね、不思議ですね。
あ、当カルデアではナーサリー・ライムに対する呼称は「アリス」で統一しています。「ナーサリー」よりこっちの方が個人的にしっくり来るので。









大冒険(意味深)


お花畑に透き通る青空、その空の下で自己主張するように存在する真っ白いテラス。

その中には同じ色のテーブルと椅子がさらには選り取り見取りのお菓子とお茶が並んでいる。疲れて休む用なのか、メルヘンチックなキングサイズのベッドまでも。

出来るだけお外の空気を感じたいという彼女の要望によってシミュレーションで作られた空間だが、それでも中々に幻想的な光景だ。

 

 

――『わかるか魔神王!どこにでもいる平凡な人間にしか過ぎない俺の拳にお前が押される理由が!!

この手には俺が今まで築いてきた絆がっ、記憶がっ、数多の心が全て宿っているっ!これが……これがっ!貴様が無意味だと切り捨てたともの、見ようとしなかったもの……限りある生の中で必死にもがき、ただ生きようとした人類史の重みだと知れぇっ!!』

 

――『えぇい!魔神柱を素手で屠る貴様が平凡な人間でたまるかぁ!どう考えても精神論で語れるレベルの話では無いぞぉっ!!?』

 

――『ここまで言ってもまだわからんのか!!このたわけめぇ!!』

 

――『ぐぼぉあああぁっ!!』

 

――『これは所長の分!そしてはこれはロマンの分!』

 

――オラオラオラオラオラオラオラオラッッ!!!

――ロードキャメロットオォォ‼センパイニバフヲマシュマシュデ、カケテイキマスッ‼

 

 

・・・・・・・・・

 

 

「うふふっ!すごいのだわ!すごいのだわ!まるで怒り狂ったジャバウォックのようね!」

 

「これ『まうんとぽじしょん』っていうやつだよね?わたしたち知ってるよ』

 

その白いテラスの中で二人の少女が姦しく寄り添いながら本を読んでいた。

本を両手に持ち、黒いゴスロリ衣装のフワフワ銀髪童女の名はナーサリー・ライム(アリス)

その隣から覗き込むようにして本の中身を眺めているのは黒紐パンで少々肌の露出が多い白髪幼女のジャック。

 

「ねー、ねー、アリスー、はやく次のページ見たいよー」

 

「駄目よ、本はちゃんとしっかり隅々まで読んで愛しながらページを捲るものよ。かんしゃく持ちのハートの女王みたいなせっかちさで流し読みなんてナンセンスだわジャック」

 

「むー」

 

二人が読んでいる本の表紙には『カルデア国物語』と文字が。

 

アリスとっては絵にコマ割りと吹き出しを存分に使っている漫画という物は新鮮だった。

しかもその内容が大好きなマスターの物語なら尚更興味が惹かれてしまう。

デタラメで自分を色んな所に連れてってくれるパートナー、きっと彼と一緒にいれば最高のハッピーエンドを見続ける事が出来るだろう、そんな確信さえ彼女は抱いている。

『マスターがわたしを読んで、愛してここまで育ててくれたんだもの。ならわたしも素敵なあの人の物語をしっかりと知る必要があるのよ』そんな気持ちを込めてアリスはこの本を大事に読んでいた。

 

隣で一緒に本を読んでいるジャックとしても、急かしているというよりは早くおかあさんのシーンをたくさん見たいというだけなのだろう。

見た目は愛らしい少女だがその正体は生まれる事のなかった子供達の怨念集合体、母の胎へ帰りたいという危険極まりない願いを抱えているが……。

あのマスターにとって爆弾物の一つや二つ抱えているサーヴァントなど今更過ぎるので(というか他にもっとヤバイのがいるんじゃ……)、ジャックを邪険に扱うことはなく一人の子供として存分に甘やかしていた。

簡潔に言えばジャックはそれはもう大層懐いた。数多の地雷女性サーヴァントを何人も抱えるマスターの底が見えない懐の深さにおかあさん要素を感じまくってしまった。『マスター(おかあさん)と一緒にいれば、わたしたちは大丈夫。捨てられる事なんて無く、ずっと、ずっ――と安心出来る』と。

 

「アリスー、まーだ――?」

 

「あぁ、もう!肩を揺らさないでちょうだい!テーブルマナーがなっていないわ、ジャック!」

 

なにはともあれ、今ここにはあるのは年相応にじゃれ合う二人の女の子の姿……そんなに深く考える必要は無い。

いや、本を読んでいるは確かに二人だが……このテラスの中にいるのは二人に加えて実はもう一人いる。

 

「ふふっ……こらこら、アリスにジャックも……レディがそんなにはしゃぐなんてみっともないですよ」

 

アリスとジャックの向こう側に位置する椅子で優雅に足を組み(と本人は思っている)、可憐な様でティーカップを手にして(と本人は思っている)、そして余裕のある大人の視線(と本人は思っている)で二人を微笑ましく見つめているのはスパム……ではなくジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィ。

そんなジャンヌ・リリィのお淑やかで粛然とした指摘(と本人は思っている)に二人は。

 

「……えーと、大丈夫ジャンヌ?意地悪な錬金術師さんにおかしな薬でも飲まされたのかしら?」

「こっけい?」

 

「し、失礼なっ!!私の溢れんばかりの淑女オーラを感じなかったのですか!?」

 

そんな淑女オーラなど言われても二人には何のことだかさっぱりである。

子供が背伸びして大人の真似をしていると言われても仕方ないだろう。

 

「ジャンヌはいっしょに読まなくてもいいの―?今、いちばん盛り上がってるところだよ?」

 

アリスとジャックの二人が読んでいるのは『カルデア国物語』の第7巻、実質第1部最終巻と云われるものだ。

 

ジャンヌ・リリィにとって、それはもう読みたいに決まっているし、二人が盛り上がっている様子をうずうずしながら足を何度も組み変えて気にはしていたが……。

 

()()()()()()()()()()、精神的に大人の女性へと再臨したと思っている彼女はそこをぐっと堪えた。

自分は彼女達より十歩ぐらい先を進んでいるのだ、常に余裕を持って優雅たれ……これからは立派なレディとして振る舞おうとジャンヌ・リリィは日頃から意識していた。

 

まぁ、マスターからしてみれば、いつもの子供らしい天真爛漫なリリィも、男を知ったことで色々と頑張ろうとして空回りしているリリィもどっちも存分に愛でれる物なのだが。

 

「私の事は気にしないでいいですよ、お二人が読み終わった後にゆっくりと読ませていただきます。それにこれから本来の私(ジャンヌ)と戦闘訓練をしてくるので、もうそろそろこのシミュレーターからお暇するつもりでしたし」

 

「いいのかしら?もう少し経ったらマスターがここに遊びに来てくれるのに?」

「いっしょに遊ばないの?」

 

「ぐぅ……それは大変魅力的なお誘いですが……今回はお二人で楽しんで下さい。私は戦闘面でもマスターさんをより支えられるようなスーパーサンタになりたいのです。成長した私(オルタ)は『星を集めて、クリティカルで殴ればいいのよ!回復?なにそれおいしいの?』みたいな脳筋思考ですし……防御とか回復とかも大事に決まってるでしょう!そこは本来の私(ジャンヌ)ならしっかりと教えてくれる筈ですし!」

 

「え……?」

「アリス、このジャンヌ偽物だよ」

 

まさかマスターを餌に出しても、ジャック曰く「ちょろい」と評されるこのジャンヌ・リリィが食い付いてこないと思っていなかった二人は唖然していた。

ジャンヌ・リリィのマスターに対する懐きっぷりは自分達二人に勝るとも劣らない、しかも理由はわからないがここ最近はそのデレデレっぷりに磨きがかかっているような気もしたのに、どうしてここで引き下がるのかと。

 

「私はマスターさんにとって愛されるのに相応しいレディとして日々研鑽しているのですっ!そしてあわよくば『あれ?リリィ、いつもと違ってなんか大人になったような(ドキッ』、『こんなに頼りがいがあるなんて……もう子供扱いできないな、今日は逆に俺をリードして欲しい(キリッ』みたいな感じになっちゃったり!?

ふふっ、お二人には色々と早い話でしたね。まぁ、あれですよ……『会えない時間が二人の愛を育む』みたいな感じだと思って下さい。それではアデューですっ!」

 

一瞬、自分の世界に入りかけながらも言いたい事を言ったジャンヌ・リリィはそのままシミュレーションから姿を消していった。

 

ジャックは彼女の妄想全開の桃色チックな言葉の半分も理解していなかったようだったので、ただ首を横に傾げていただけだったが。

アリスは最後にジャンヌ・リリィが見せた優越感に浸ったような笑顔が少しだけ気に入らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悔しいのだわ!悔しいのだわ!悔しいのだわ!」

 

「なにがくやしいの?」

 

「自分でも何だかよくわからないけど悔しいの!」

 

「図書館ではしぃーだよ、うるさくすると痛いことされちゃうよ、痛いのはいやだよ」

 

マスターが遊びに来てくれるまでまだ時間がある二人はカルデアに作られた図書室にいた。

もう既にこのカルデアにはマスターのノリとそのノリに乗ってくれたサーヴァント達によってジムやらLIVE会場やら温泉やらその他諸々が作られているのだ。今更図書室の一つや二つは驚く内には入らないだろう。

最終的にカルデア自体が‘英霊達にとってのアミューズメントパーク‘にならないように今は願うしかない。

 

「………わかっているわ、これから楽しいお茶会の時間ですもの。お説教に割く余裕なんて持ち合わせていないわ」

 

本棚の横には『図書室ではお静かに。やかましくする悪い子にはサナト・クマラよ!』と円盤に乗り、地上全てを焼き払いながら「Xa(アッ)-xa()-xa()-xa()-xa()-xa()-xa()-xa()!!!」と高笑いするエレナ女史のイラストが載っている貼紙があった。

まぁ、さすがに説教一つでここら一帯が火の海になる事はないが、あんまり騒ぎ過ぎると一応この図書室の責任者でもある彼女に叱られる危険性はある。

 

「ふん!別にいいのだわっ!ジャンヌの分もあたし達が目一杯マスターとイチャイチャして後で悔しがらせてあげるんだから!」

 

「絵本、探す?」

 

元々この二人が図書館に来たのもマスターと遊ぶ時に読んでもらう絵本を選びに来たという微笑ましい理由だった。

探している最中もアリスはジャンヌの勝ち誇ったような顔がどうにも気になって仕方がない。

まるで自分の方がマスターに愛されていると言わんばかりのあの態度。

 

(むぅっ~~~……!あたしだって、マスターとは理想的なカップルの筈よ……なのにどうしてこんな負けたような気分になってしまうのかしら……)

 

本の本能というか、乙女の本能というか、第六感的なものが告げていた。

ジャンヌが最後に見せたあの表情……何かはわからないけど、マスターとの関係においてわたし達より何歩も先へ行ってしまっていると。

 

さすがにジャンヌ・リリィがマスターと男女の(自主規制)な関係になっているとは想像出来ないアリスは理由がわからないからこそ気になって仕方がなかった。

 

「んぅ?」

 

そして、そんな本来の目的が疎かになっているアリスの隣で一生懸命、「おかあさんに読んでもらう本はどれにしようかなー」と探していたジャックは一つの本を見つけた。

 

図書館の隅にある本棚の一番下、その端に。

他の並んでいる本とは随分毛色が違うように感じた。

好奇心旺盛なジャックは普通なら誰も気付かないような地味な場所からその本を抜き取った。

 

「ねぇ、アリスー、この本読んだことある?」

 

「……もういっそマスターと一緒に名無しの森で……ブツブツ、えっ?何かしらジャック?あら、その本?」

 

それは自分達が先程まで一緒に読んでいた『カルデア国物語』と似たような本だった。

だが、厚さはそれ程なく、なにやら雰囲気も微妙に違う。そもそもこのR18というマークは一体如何なる意味があるのか。

 

「『カルデア寝物語:IF番外編』?……偽物ではないわね、あたしにはわかるわ。この本に対する熱意、そしてこの本自体が誰かに読んで欲しいと願っている想いの強さが」

 

「ねものがたり?眠くなっちゃう本は退屈だよ」

 

本の表紙には()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()イラストが載っていた。

 

「IF、番外編……何だか只ならない絶版物の雰囲気を感じるのだわ……決めたわっ!この本を持っていく事にしましょう!」

 

「おー!」

 

二人は当初の目的である絵本の事もすっかり頭から抜け落ち、その本を持って帰る事にした。

エレナ女史が管理するこの図書室の本なら絶対付いている貸出カードもこの本には付いていなかったので、借りるのではなく、強奪するような形で。

それだけでもこの『IF番外編』とやらは本来ここにある筈のない曰くつきのアイテムだということだけははっきりしたが……二人が気にするワケもなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『所長、もういいでしょ?』

 

『や、やめなさい、名門の当主たる私と、一般人のあなたでは釣り合わない事が……わ、わからないのっ?』

 

『そんな物欲しそうな瞳で言われても、説得力がないですよ。そういう台詞はもっと睨み付けるように言わなくちゃ』

 

 

精神と時の部屋という名のシミュレーションに先程の本を持ち帰ったアリスとジャックはマスターを待ち切れず、今度はベッドの上で拡げるようにして読んでいた。

 

その本では所長と呼ばれた女性が自身の自室と思われる部屋でマスターに迫られているシーンだった。

口ではやめなさいと言いながらも顔はマジで喰われる3秒前のようにチョロそうな顔をしている。

 

「何でおかあさんはこのひとに迫っているの?かいたいするの?」

 

「どうしてそんな物騒な思考が出るのかしら……。あたしにはすぐわかったわ、きっとこの本はラブロマンス物なのよ」

 

ジャックはわかっているのか、わかっていないのか「らぶろまんす、なるほどなー」と生返事を返すだけだった。

 

アリスはきっとこの本は自分達が読んでいた『カルデア国物語』で語られなかった恋愛を取扱った本だろうと確信していた。

こんな少女漫画的な展開……普通の子どもが見てもチンプンカンプンだが、自分はそういった恋愛物にも理解はある。伊達にマスターに常日頃アプローチはしていない。

「どうせだからマスターが来る前にこの本を読んで、彼との関係のステップアップの参考にでもしようかしら」とおませな女の子らしくアリスはそう思っていた。

 

まぁ、その考え方も特に悪い所があるわけでもない。

だがそれは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だったらという話が前提である。

 

 

『こ、こんな所……誰かに見られでもしたら……』

 

『ここは所長の部屋でしょ?誰かが来るなんて、それこそ所長の許しが無い限りあり得ないでしょう?あ、それとも誰かに見られた方が燃え上がるタイプですか?』

 

『なっ、人聞きの悪い事を言わないでもらえ……あっ』

 

 

「おぉー」

「な、なんだかドキドキするわ」

 

いつの間にか肩を抱かれて、お互い息がかかる距離まで接近しているマスターと所長の顔、その瞳にはもう目の前の異性の顔しか映っていなかった。

 

アリスもジャックも自分達と遊んでいる時には見せないマスターの強引でイケイケな姿勢に目が離せなくなっていた。

 

 

『それに今、俺自身も所長がOKしてくれなければこの部屋には入れなかった。その意味がわかりますよね?』

 

『それはあなたが……魔術のレッスンを受けたいというから……』

 

『ははっ、こんな遅い時間にまさかそれを本気にしてはいないでしょう?俺がこの部屋に来るってわかった時から期待してたんじゃないんですか?』

 

『ち、ちがっ……私は人理継続保障機関カルデアの所長で、アニムスフィア家の当主で……だから、だから……』

 

『ここには俺とあなた、一組の男女しかいません。今、この瞬間だけは面倒な事を全て忘れて一人の女の子になって下さい、オルガマリー』

 

『ずるいわっ……そんな事言われたら……わ、私、もう……んんぅ!?んっ、ちゅ……』

 

 

「ちゅーしたよ!」

「エンダアァ――!」

 

近づき、やがて一つになるように重なり合う顔、交じり合う唇。

子供とはいえ、女の子でもある二人は目の前のラブシーンに大興奮だった(ジャックは二人がキスをしている意味をちゃんとわかっているか不明だが)。

 

――そう、ここで終わっておけば、少女漫画を仲良く読むおませな女の子達の風景として片付ける事は出来たのだ。

 

ところがどっこい現実は非情である。二人がさらにページを捲った先には……。

 

 

『んぅっ……んむぅっ……んじゅるぅっ……んあぁっ、んちゅぅっ……』

 

『っぷはぁっ……ふふっ、激しい人だ、そんなに欲しかったんですか?』

 

『んぅっ、ふぅっ……はぁっ、うるさいわね……いいから黙ってもっとチューしなさい……んっ』

 

 

重ねた口からお互いに舌を絡め、激しくディープキスする二人の姿があった。

所長も最初の刺々しい態度はどこへいったのか、目はトロンとして、子猫のようにキスをねだっていた。チョロい。

 

「わぁ、なんか舌でペロペロしてるよ」

「ず、ずず、随分と……情熱的なキスなのね」

 

自分達二人はマスターに遊んでもらう際に頬っぺたにチューぐらいはした事ある。

だが、こんな激しく蛇のように絡め合うキスなんて見た事なかった。特にアリスはキスは唇を合わせて終わりだと思っていたので、平静を装いながらも心中は大荒れだった。

 

そして本の中で描かれている二人も行為はどんどんエスカレートしていく。

 

 

『んぅ、ちゅぱぁっ…‥あぁっ、さっきから胸ばっかり触ってもう、ホントに子供なんだから……』

 

『そういうオルガマリーも、さっきから太ももが俺の大事な所を擦りつけてますよ?』

 

『……ふ、服の上からでもわかるぐらいパンパンだから……気になったのよ。ほらっ、さっさと脱ぎなさい』

 

『脱がさせて下さいよ、俺はあなたのを脱がすんで』

 

 

相手の局部を触っても服の上からでは満足出来なかったのか、二人で脱がせ合いながら生まれたままの姿になっていく。

 

「え、え?なんでおかあさん裸になったの?」

 

「ななななななな、何なのだわ!?一体これは何なのだわ――!!?」

 

アリスはここに来て理解してしまった。これは自分達が入っていい領域ではなかったことを。

今すぐにこの本を閉じて、見なかった事にするのが正解なのだろう。だが、だが………。

 

 

『あ、相変わらず大きいわね……』

 

『すみません、あなたがあまりに魅力的だったので』

 

『そう、ふーん、私に興奮してそうなっちゃったのねー、うん、まぁ……私のパーフェクトな高貴さと可愛らしさなら仕方ないことよね!うんうん!ふふっ、ふふふふっ』

 

 

「お、おかあさんの凄く、はれてる……」

 

(閉じないと駄目なのにっ!……どうしてっ、どうして目が離せないのかしらっ!?ぺ、ページを捲る手が止まらないのだわっ!!あぁ、体も何だかどんどん熱くなって……)

 

イケナイ筈なのに、見ては駄目だと理性が訴えているのに、それを上回る本能がどんどんアリスの読む手を進めていってしまっている。息が荒くなり、動悸も激しくなり、これは実は呪われた魔導書なのではと疑ってしまう程に。

 

 

『はぁ、はぁ……ねぇ、もう我慢できないの。お願い、今だけでいいから……その熱いモノで……煩わしい事全部忘れさせてぇ』

 

『はい、一緒に溺れましょう。オルガマリー』

 

 

「「……………ごくり」」

 

 

そういった男女の関係にまるで無頓着だったジャック、知った風でいてまだまだ大人の関係については全く知らなかったアリス。

 

人は自分が知らない物、未知に遭遇した時……目が離せなくなってしまう。例え怖くなってもつい目をそこへ向けてしまう。

この幼き少女達も自分達が知らないマスターの姿に、繰り広げられている行為に釘付けになっていた。

 

もはや、口を動かす余裕もない、必要なのは脳に刻み込む為の目と本を捲る手とありのままを受け入れる心だけ。

ページは最後まで進められる。

こうして無垢なる少女達は新たな世界を知ってまた一つ大人になってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はふぅ……」

「ぁぁ……くるくる、くるくる回るのだわ……」

 

読んでしまった。読み終えてしまった。

本を閉じた後の二人は何とも言えない余韻に浸っていた。

 

「これがアリスが言ってたらぶろまんすなの?」

 

「え、えぇ……そうなる、のかもしれないわ……」

 

「おかあさんのおちんちんがあんな所をズボズボするのも?」

 

「………………」

 

知らなかった。あんな世界があるなんて、あんな関係があるなんて。

アリスは何となく察してしまった。きっとジャンヌ・リリィはあの本と同じような事をマスターとしているのだろう。

 

なるほど確かにそれは勝ち誇ったような顔にもなってしまってもおかしくない。

ジャンヌ・リリィにとってアリスとジャックは誇張無しでおこちゃまだったのだから。

 

アリスは今、自身の体中を疼いている熱さと明瞭し難い感情の昂りに戸惑っていた。

今まで色んな本を読んできたけど、こんな読後感に陥ったのは生まれて初めてだった。

 

「んっ……んくぅ、ふぅ……」

 

そんな気持ちをもて余していると隣から声が聞こえる。

 

「な、な何をしているのかしら……?ジャック――」

 

目を見開いたアリスの先にはジャックが胸と股に自身の手を擦り付けていた。

本人わかっていないだろうがその姿は紛うことなき自慰であった。

 

「……んぅ、なんだか、あの本を読んだあとにおかあさんのことを考えると胸がきゅんとして……ゆびがとまらないよぉ……んぁっ」

 

露出の多い服装も相まって幼子とは思えない程に今のジャックは扇情的であった。

 

(と、止めないと、だめなのだわ……こ、こんなイケナイこと。…はしたないのだわ……)

 

「あぅ……ん……」

 

なのにアリスの手はジャックを真似するように局部誘われてしまう。

マスターのことを想いながら、胸を撫で回す手、無造作に股の間を動かす指、動かせば動かす程、もう手は止まらない………だが。

 

「むぅ、服がじゃまだね、脱いじゃおっか」

 

ちょうど同じ事を考えていたのか、布の上からの刺激だけじゃ満足出来なくなったジャックは迷う事なく脱衣していった。

ほぼ下着のような服だったので全裸になるのは容易だった。

こういう時のジャックの判断の早さを少し羨ましがるアリス。

 

「あれ、アリスは脱がないの?わたしたちが服をバラバラにしてあげよっか?」

 

「じ、自分で脱げるから、結構なのだわっ!」

 

さすがに自慢のゴスロリ衣装をズタズタにされて全裸になるなんてどうあがいても通報案件な事態に自分がなるワケにもいかないので大人しく自ら脱いでいくアリス。

 

もう、彼女も諦めてこの流れに従うことにした。

さっきの本に載っていたようにジャンヌ・リリィも体験したこの『大人の関係』という奴を学べば、自分達はもっとマスターとナカ良くなれるという打算もあったから。

 

「こうして見てみるとあたし達の体って、やっぱり小さいのだわ……」

 

大きいベッドの上で生まれたままの姿になる二人。

アリスもジャックも体型はほとんど似たようなもので未成熟のツルペタロリボディである。

 

あの薄い本に載っていた女性と比べてしまうとやはり自分達の体は凹凸が無いとアリスは無性に敗けた気分になってしまう。

 

「でも、ちっぱいはいい文明だってアルテラが言ってたよ」

 

「それは喜んでいいのかしら……」

 

褐色残念文明っ娘のその台詞は自分に言い聞かせている節もある。

まぁ、確かにマスター自身も女性の胸は大小貴賤無しでメチャクチャに愛してくれるので、その言葉自体も間違いではないのだが……というか一体幼女に何の言葉を教えているのか。

 

何はともあれ、こうして全裸になったのだ。ゆっくりと自身の体を撫でまわす。

一緒にお風呂に入ることはあるが、二人でこんな所で裸になるのは初めての経験なのでイケナイ事をしているような気分になって体がどんどん火照ってきてしまう。

 

「んぅ、んぁ………はぅ…」

「あっ、んっ、んぅ……こう、かしら……」

 

先程の本の内容を思い出しつつ、手探りで自慰に耽る幼女達。

 

「んぅぅ、あぁっ、お股がぬるぬるするよぉ……」

「だめ、なのだわっ……胸の先さわるとびりびりってぇ…やぁ……あん…」

 

おっかなびっくりで指腹を自身の割れ目に擦りながら、幼き膨らみを愛撫するアリスとジャック。

本で銀髪の女性が犯られたような指をナカに入れたり、乳首を摘まみ上げたりする勇気は無いのか、その強さは表面をなぞるような微々たるものだった。

 

「はぅ……なんだか、物足りないね、やっぱり自分だけで触るより触ってもらった方がいいのかな……」

 

「え?ちょっとジャック……な、にを……あぁぅっ!」

 

「ほら、アリスも触って、同じように……」

 

ジャックは世間知らずだが、頭の回転はとても速い娘だった。どんどん性行為への正解を辿っていく。自分で触るより親友に触ってもらった方が気持ちいいと。

 

「はぁ……ジャック、なんだか、うまく、ないかしらぁっ……あぅっ、んんぅ!」

 

「うん、あっ……なんか少しわかってきた、よっ……アリスのおっぱいの先っぽもかたくなってきたぁっ……はぁうぅ………」

 

アリスとジャックは目の前の親友の裸体に手を伸ばして、触りっこしていく。

先程の自慰とは違って、どう触られるのかわからないからこそ、体がさっきよりも快感を享受しているような気がした。

 

しかし、それでもまだ足りない。何かが足りない。

 

「あっ、あぁ……やっ、はぁっ、んぁっ……」

「んふぅっ、んあぁ、あぅっ……ふあぁっ」

 

触られて、擦られて、弄られて、頭の中でマスターに愛されていた女性を自分に置き換えても、何故かもどかしい気持ちが二人の中で渦巻いていた。

 

「…………ぁさんっ」

「…………ァスター」

 

つい切なくなって呼びかけてしまう、年にそぐわないこんな淫らな様をしながら懇願してしまう。

 

「おかあさん、おかあさん、おかあさん、おかあさん……」

「マスター、マスター、マスター、マスター、マスター……」

 

あなたに触って欲しい、あなたに愛して欲しい。

一番大好きな人を何度も言葉に出しながら、二人は愛撫を続けていく。

呼吸も心臓の動悸も激しくなっていくのに心は欠けたピースを求めて叫んでしまう。

 

「はぁっ、はぁ……おかあさんっ!」

「あぁっ、あぁ……マスター!」

 

 

 

「呼んだ?」

 

すぐ側で声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【目の前で幼女達が裸でくんずほぐれつになっている件】

と速攻で釣り乙と言われてしまいそうな事態が現在進行形で繰り広げられていた。

 

二人ともぴたっと手を止めてこちらを見つめている。

ジャックはなんだか頬を染め、蕩けたような瞳なので何を考えているのか微妙にわかりづらい反面、アリスは血の気の引いた顔で固まっていた。わかりやすい。

 

ふむ、なんだろうなこの気持ちは。

まるで思春期真っ盛りの息子のマスターベーション中に部屋に入ってきてしまった母親のような心境だぜ。

 

「い、一体……いつからいたのかしら……?」

 

「ちょうど二人が服を脱ぎ始めたあたりかな」

 

「い、いいいるなら、言って欲しかったのだわ――!」

 

「いや、ほら完全に二人の世界に入ってたし。邪魔するのもあれかなーと思ってさ」

 

いつだって人生は未知の発見と冒険の連続。

たとえどんなに幼さなかろうともそこは同じ、知らないものをどんどん吸収して子供は成長していくのだから。

彼女達が自らの足でアダルディーなゾーンに入ったというのなら、俺にそれを止める権利はありません。

ほら何でも駄目ダメで縛り付けるのも良くないですし?

 

だから、まぁ微笑ましく見守っていようと思ったんだけど……あんなに熱烈に呼びかけられたもんだからつい気配遮断(我流)を解いて、返事をしてしまいました。まだまだ修行が足りないね。

 

「おかあさん……おかあさんだぁ……」

 

にへらと笑みを浮かべたジャックが夢遊病者のように俺の側まで来ると、袖を引っ張ってベッドまで来るように促してきた。

 

「恥ずかしいのだわ!恥ずかしいのだわ!」

 

俺がベッドの上に乗るとアリスは湯気が上がってしまいそうな程に顔を真っ赤にして両手で体を隠していた。

さっきまでもっと凄いモノ見せてたし今更な気もするゾ。

 

「恥ずかしい?アリスは恥ずかしいの?なら、おかあさんも脱いでみんな同じになれば恥ずかしくないよね?」

 

独自の思考回路でトンデモ理論を導き出したジャックは俺の服に手をかけるというか、ナイフで切り裂いていった。

うん、全裸の幼女に身ぐるみを剥がされるとはこれまた中々稀有な経験をしていますね俺。

 

「何をしてるのかしら――!?ジャック!?というかマスターもどうして無抵抗なのかしら!?」

 

「ほら良く見てごらんアリス。乱雑に切り裂かれているように見えて体は一切傷付いてないよ。見事に衣服だけ解体してるんだ。ハハッ、やっぱすげえよジャックは」

 

「笑ってる場合なのかしら!?着るもの無くなってマスターはここからどうやって出るつもりなの!?」

 

「あ、やべ」

 

そこはノープランだった。というか時既に遅し、俺の周りには残骸となった布切れが、下着まで差別を許さずジャックのナイフは俺を二人と同じ格好にさせた。

 

「うん、バラバラになったね。これでおかあさんもわたしたちもアリスもみーんな同じ。これで恥ずかしいことは無くなったもんね」

 

むしろより恥ずかしくなったのですがと言いたげなアリスは目線を俺の裸体と他の場所を行ったり来たりさせていた。

 

満足したジャックは熱に浮かされた表情で俺の上半身にのしかかるように抱き着いてきた。

お互い纏う物はもう無いわけでジャックの体の柔らかさが直に感じてしまう。

 

「えへへ、おかあさんの体、すんごくあったかい。もっと、ぎゅぅっとして……ね?」

 

腰と胸をくねらせて、敏感な部分を擦り付けるジャック。

吐息や喘ぎ声が途切れ途切れで漏れているのがよくわかる。

 

「あっ、んっ、ふぅ、ふぅあ………体が熱くて、なんだかキュンキュンする……ねぇ、おかあさん……わたしたちの体、たくさんなでなでして、じゃないと、わたしたち、わたしたち……んんぅ、お願い……んぅっ、ちゅっ」

 

もはや子供が甘えるレベルではない卑猥な様でジャックは唇を重ねてくる。

拒絶されたら、ここで自害すると言いかねないぐらいの必死さだったので俺は優しくその接吻を受け入れた。

 

「んぅっ、ちゅるぅっ、れろぉ……んじゅるぅぅ」

 

どこで覚えてきたのかジャックのキスは舌を絡め合うディープキスだった。

器用にその小さい舌を俺のモノに巻き付け、唾液を吸い付くすように音を立てていく。

 

「ちゅるぅっ、じゅるるぅ!……むじゅるぅっ…っぷはぁっ……おかあさんのよだれおいしい、もっともっと、欲しいなぁ……」

 

何を参考にしたのか定かではないが、ジャックの舌使いは初めてとは思えない程に熟練されているようにも感じた。

彼女の幼き外見で背徳感もプラスされた俺の興奮度も増していく。

 

「じゅぱぁっ……ぴちゃ、れろぉっ……ほら、アリスも一緒におかあさんのペロペロしよっ……?気持ちがポカポカして、キモチいいよ」

 

「あ、あたしは……」

 

唇を両者の涎で汚しながら、ジャックはアリスを誘惑する。

童女は目線を逸らそうとしても、体は誘蛾灯に誘われるように少しずつ俺達に近付いていった。

 

「はぁー…はぁー……わたしも、触ってみたいのだわ……ジャンヌみたく、マスターに愛して欲しい……キス、してもいいかしら?」

 

「あぁ、おいでアリス」

 

涙目で今にも恥ずかしさで倒れそうな顔で懇願されては断る理由は無い。

彼女達が求めるなら俺はそれを受け入れ、倍にして愛情を返してあげるだけなのだから。

というかジャンヌ・リリィと致していたのもバレてたのか。

 

「んぅっ、ちゅぅっ、ちゅるぅ……ぇあっ、はぁ、マスターの唾液美味しいのだわ……蜂蜜みたく甘くて……じゅるっ……」

「んんっ……二人で、おかあさんのチューを……わけあいっこだね……はむぅっ、ちゅぅっ」

 

小さい為か唇の大きさは二人合わせても、俺へとキスするのには丁度いいサイズだった。

二つの幼き舌はチロチロと俺の舌を舐めてくる。

三人で混ざり合いながら、喉に流れこんでくる唾はアリスの言う通り非常に甘露だった。

 

俺は二人に好きなようにキスさせながら、その未成熟な躰へ手を這わせていく。

触って欲しいと言われたのを忘れる筈もない。彼女達が自分達で弄るだけでは物足りないというのなら、当然、その手伝いはするつもりだ。

 

「んんぅ!マスターっ、だめぇ、んんあぅっ!」

「んふぅ、あはぁ、くすぐったいよぉっ……おかあさん、ああぁ!!」

 

右手でアリスには股の間に指を伸ばして、その淫裂を何度もスライドするように往復させた。

左手でジャックの方は太腿、腹周りを撫で回し、そしてほとんど膨らみはないが、その頂点は充血している乳首をこねくり回してあげた。

 

「あぁ、なにこれぇっ……さっきと全然ちがうのだわぁ!んんあぁ!自分で触るより、ジャックに触られるより、すごく気持ちよくてぇぇっ……あぁ、あぁっ!知らない、こんなのしらないのぉっ……んひやぁっ!」

 

「ひゃあ!あっ、ふぁあ……!おかあさんにおっぱい触られるとぉ……ビリビリしちゃうよぉ!ビリビリするのに痛くないぃ……あんぅっ、ふぅ!もっとビリビリいっぱいしてぇぇ……!!」

 

俺の体の上でよがるアリスとジャックの姿はいつもの年相応の天真爛漫な面影はなく、絶え間なく与えられる快楽を悦んでいる牝の姿を少しずつ出していった。

 

「あっ、んあぁ!……マスター……!もっと、もっとぉ、アリスのイケナイ所を擦ってちょうだいぃ……本だけじゃ学べない事をあたしの体に教えこんでぇ…はあぁ、んあ!あっぅぅぅっ!!」

 

「おかあさんぅ、おかあさんぅっ!な、なんか……きてるぅっ、すごいのぉ、バチバチってするのぉ……来てるよぉ、あぁ!わたしたちの体が浮かんじゃうよぉぉ…あぁ、あああぁっ!おかあさんううぅっっ……!!」

 

初めての絶頂が近付いていく事にキスを続ける余裕が無くなってしまった二人は全身を震わせながら、俺の体へ強く縋りついてきた。

 

「大丈夫、何も怖い事はないから。ずっとこうやって側にいてあげるから」

 

安心させるように二人に語りかけながらも手はそのままオルガズムへと連れていくように刺激し続けていく。

 

「あっ、あっ、あぁぁんぅ!ま、すたぁっ………あくぁあああっ――――!!!」

「ひぃああああっ!!トンじゃうよぉぉ、あぁ、ひああぁぁああ!!」

 

イキ処女を卒業した二人は同時に嬌声を響かせる。

プシュ、プシュッ!!と両者の恥ずかしい所から漏れでる潮が俺の手と太腿を汚していた。

 

女性器を責められたアリスはともかく、乳首を弄られたジャックがここまで盛大にイクとは中々に敏感だなーと思ってみたり。

 

 

「はひっ……はぁっ、はぁ―――……す、すごかったのだわ……まるで異世界に連れてかれたような気分よ、マスター……あっ」

「おかあさんの……本のといっしょで凄く腫れてる……痛くないの?」

 

さすがに相手が相手とはいえ、こんな状態で反応しない程、俺の愚息は謙虚な性格はしていない。本当に幼女とは思えないぐらいエロかったです。ありがとうございます。

けど、そんなキラキラした瞳で興味津々に見つめられるとどう反応すればいいのか困ってしまうよ。

 

というか本とは一体何の話だ?()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……。

 

「んぅっ……よいしょっと。いいこー、いいこー……おかあさんキモチいい?」

 

「ジャックがさっきからとてもアグレッシブなのだわっ……!」

 

そんな疑問を余所にフル勃起している俺の亀頭をペットのように手の平で撫でてくるジャック。プニプニとした感触が確かに心地良かった。

すまん、ジャック……俺のソレはあんまり良い子ではないんだ。むしろ凶悪と言ってもいい。

 

「ほら、アリス……おかあさんの苦しそうだから、さっきみたくペロペロして、楽にしてあげよ?……ぇろぉっ、じゅるっ……んちゅぅ……」

 

「さっきからリードされっぱなしなのだわ……あたしだって負けてられないんだからっ……はむぅっ、じゅぅ……んちゅぅ……」

 

今度は脈打つ剛直を二人の幼女が啄ばむように口淫していった。

それは齧り付くような激しいフェラではなく、キャンディのように表面を舐め、時折唇で小さく噛んでいく控えめなものだった。

 

「はむぅっ、ちゅぅ、れるぅっ……んちゅっ、っあ……熱くて、硬くて、不思議な匂いがするわ……」

「おかあさんのおちんちん、ピクピクしてる、ふふっ、かわいい……んちゅっ、ちゅぱぁ、れるぅ……んじゅぅっ……」

 

だが、全裸のアリスとジャックにグロテスクな肉棒を舐められているという視覚的な快感とそのシチュエーションは射精欲を高めてくれるのに十分に足りえるものだった。

快楽に揺れ出す剛直を逃がさないとばかりに二人は今度は小さな手で扱き出した。

鈴口から先走りが溢れ、舌先で掬われる。

 

「ちゅっ、おかあさんの先っぽからお汁が出てるね……ちゅぅ、じゅるぅぅ……おいひぃ、んじゅぅぅ……」

 

「あ、ずるいのだわ……あたしにも吸わせなさい、んむぅっ、ちゅるぅ……?んっ、んくぁっ…な、何だか苦いのだわ、キスした時はあんなに甘かったのに、何でなのかしら……」

 

「そう?わたしたちはけっこー好きな味だけどね、アリスは甘い方がいいのかな……んちゅぅ、ちゅぱぁっ」

 

「それは、あたしが子供っぽいって言いたいのかしらっ?……いいのだわ、ここで大人の味というのを学んであげるんだから……はむぅっ、ちゅぅ……じゅるぅ、んむぅっ……」

 

年相応に競い合う彼女達に思わず笑みが溢れる。

いやこんな凶悪なモノを舐めさせておいて年相応とかあるかボケという全方位からツッコミはごもっともなのですが。うん、無理矢理じゃないしセーフということで。

 

そんな自己弁護をしていると、ジャックとアリスが太腿をモジモジと擦り合わせて……だんだん切なそうな顔をしていった。

 

「うぅっ、ふぅ……おかあさんのチュッチュッしてると……わたしたちのもなんだか寂しくなってきたよぉ」

 

「そ、そんな事言われても困るわ……自分で触りながら舐めればいいのかしら?」

 

「う―――ん………あっ、そうだ」

 

ジャックが何か思い付いたのかアリスに耳打ちする。

アリスの顔が耳まで真っ赤になった。気にしないとばかりにニコニコ顔のジャック。

それを見て諦めたようにコクりと頷いたアリスはジャックと一緒に体を起こした。

 

一体何をするのかと思えば、二人はお尻を俺の下腹部と太腿の間あたりに乗せると……その可愛らしい恥丘で男根を挟んできた。

 

「んぅ、んあぁ、ふぅ、これで、わたしたちもおかあさんもキモチよくなれるよ……『いっせきにちょう』ってやつだね」

「ぅあ……んあっ……こっちのキノコさんはあたしたちに食べられて大きくなっちゃうのかしら……」

 

ぴっちりと隙間なく両サイドからロリすじにサンドされた愚息を今度は腰を上下に動かして刺激してくる二人。

いわゆる素股というやつなのだが、一体こんなモノをどこで覚えてきたのか……おそらくジャックが口にした本に載ってたものなのだろうが……。

 

「はぁっ、あぁっ、はふぅ、んにやあぁ……!これ、キモチいいよぉぉ!おかあさんのあったかくて、グシュグシュするのとまらないぃ……!」

「んあぁ、あふぅぅ……!マスターのキノコさんが……あたしたちのお股の間でぇ、また大きくなってるのだ、わぁ!ああんぅ!」

 

淫液を垂らす幼いマンコに包まれながら肉棒に襲いかかる快感は中々のモノだった。

技術の拙さを愛情の大きさと初々しささえ感じる一生懸命な動きがカバーしているように。

 

ジャックとアリスは互いに抱き締め合って、プリプリとした蜜肉で剛直を扱いてくる。

 

「あぁ、はぁっ!あぅぅっ!……アリスのおっぱいも擦れてぇ……ひゃあ…!上も下もビリビリするよぉ!!」

「んんぅ!…あぁっ!……ジャックの乳首が何度もあたってしまうのぉ……あっ、これだめぇ……癖になってしまうのだわぁ……!」

 

全身を動かして素股してくれてる為か、二人の興奮した乳頭がぶつかり合っていた。

穢れを知らないピンク色の綺麗な蕾から快楽を得ている彼女達の様は情欲を盛り上げる肴となってくれる。

 

「ひんぅ!あふぅ!はぁっ……はうぅんぅ、おかあさんのとくっつけあうのどんどんキモチよくなってるぅっ!?ひやああうぅ!!ここぉ、ココがキモチいいよぉ!!」

「なに、かしらぁ、これぇっ……あたしのもマスターみたく腫れてぇ……あぁんぅ!だめぇっ、これぇ痺れすぎちゃうわぁっ!あん……!ふぅあああぁ!」

 

熱いペニスに女性器を擦り付けていた二人はついに興奮したクリトリスからも性的悦びを得るようになってしまった。

 

アリスとジャックはお互いの指を絡めさせて繋ぎ、上下の淫芽を興奮させてぶつけ合っている。

その小さな雌孔で抱き締め合っている幼女達が百合百合しく、我が愚息に奉仕している姿に我慢は長く続きそうになかった。

 

「あっ、ぅぁっ!お、かあさんのぉがぁっ……ま、た震えてぇぇっ……」

「はうぅっ!あぁ!キモチいいのがたくさんでぇっ……うあぅぅ!!腰がぁ、と、まらないのだわぁぁっ……」

 

顔を上げて、涙と嬌声を溢していく……女の様へと成長した彼女達の肢体へ俺は白く濁った欲望を吐き出していった。

 

「あ、あぁ…ぁっ――――!!!す、ごいっ、おかあさんから白いのがいっぱいぃ……んんぅっ…」

「ひゃあぁっ…!!あぁ!んんうぅっ!!顔にかかってぇるぅぅ……」

 

噴水のように射精された精液は彼女達の顔まで届き、汚していく。

ジャックは嬉しそうに顔にかかった淫液を舐め取り、アリスもそれに追従するように口に入れていく。

精子を全身に浴びせられ、それをお菓子のように口に入れていく幼女達の姿は肉棒が再び大きさを取り戻すぐらい淫靡な光景だった。

 

「んむぅ……じゅるぅ……おかあさんのネバネバしてるこの味ぃ……好きぃっ、ぇろぉっ……」

「うぅ……やっぱり苦いのだわ……んちゅぅ、けど…ちょっと癖になってきたような……はむぅ……」

 

まだ興奮状態にある愚息に気づいたジャックは精液を舐めるのを一旦止めて、今度は陰部に手を添えながら、クチュクチュとその入り口を開き始めてた。

 

「おかあさんも、まだ満足出来ないんだね……うん、わたしたちのココもおかあさんを中に入れたいって言ってるよ……。おねがい、ジャックの中におかあさんの入れさせてっ、さっきの白くてネバネバしたのをわたしたちのお腹の中でピュッピュッってしてぇ……」

 

本人にはそのつもりは無いんだろうな、今口走っている言葉はどエロいということに。無自覚エロロリというやつか。アリスも隣で「ジャックがどんどんアダルティになっているのだわっ!恐ろしい娘!」って少女漫画風に驚愕してるし。

 

「じゃあ、もっと近くにおいで、ギュッとしてあげるから」

 

「わぁーいっ!」

 

ふふっ、微笑ましい光景だな。お互いに全裸という事ともう色んな液体で体中がドロドロになっている事に目を瞑れば。

 

「よいしょ、力抜いてジャック……んちゅ…」

 

彼女の雌孔に狙いを定め、挿入をし始めるのと同時に口と手で乳首とクリトリスを愛撫していく。

痛みを敏感な部分から与える快感で和らげるように。

 

「あぁっ!お、かあさんぅっ!そこぉ……クリクリされるの好きぃ……ぁ、にゃああああああああああ!!」

 

臨戦体勢である肉棒がジャックの膣肉を掻き分けて進んでいくと一際大きい嬌声が響き渡る。

 

「おぉっ!おぁっ……!痛いぃっ……?キモチいいぃ……!あぁっ、ひゃああ!痛いのにぃキモチいいぃっ!!んあぁっ……なんでぇ、なんでぇっ!?痛いのがキモチよくにゃってるぅぅ!!あぁ!あんぅ!あくうぅ!キモチいいっ!ひもちいいぃよぉ!!ひもちいいので頭がいっぱいににゃってるぅ!!」

 

小刻みに膣襞を刺激させながら、狭い膣道を奥まで進ませていく。

うん、というかジャックなんかエロ過ぎる。

絞ってくる膣の感触もそうなんだけど、声とか反応とかその他全てが。

まさかここまでのポテンシャルを持ってるとは思わなかったぜ。

赤面で固まっているアリスの気持ちがよくわかる。

 

「はひっ……はひぅ、ふぅっ、あっ、あぁ……おかあさんのがわたしたちのお腹の中に入ったんだね……うん、ほらもっと動いていいよ……おかあさんの白いのぉ、わたしたちの中にたくさん帰らせて……」

 

彼女の膣内を完全にいっぱいさせて一度動きを止めたがジャックは次の動きを促してくる。

まるで今の状況は彼女が持っている願望とはあべこべなようにも感じた。俺の大事な部分がジャックのナカにあると。

それでも幸せそうなジャックの表情をもっとトロトロにしようと腰はピストンをし始める。

 

「あくぅっ!んあぁ!はあぁっ……!ひやああぁ!おかあさんの元気いっぱいだ、ねぇっ!ああぉっ!!」

 

懐で小さく跳ねるジャックの体を包み込むように抱き締めた。

頭を撫で、四肢から全身までも手這わせてその無垢な肌に愛を込めるように撫で回す。

 

体をそうやって触れられるのが好きなのかジャックは……撫でる度に、そして膣内を行き来させる度に、その顔をどんどん雌のものへと変化させていった。

 

「はぁっ!もっとなでてぇっ……いいこいいこしてぇ……わたしたちもぉっ、おかあさんのいいこいいこしてあげるからぁっ……!あんぅぅ!!」

 

自分からも腰を動かし始め、初めての性交を貪るジャック。しかしその動きは初めてとは思えない程に色香が満ちていた。

 

「こ、れぇ……すごいぃ!おかあさんの中にいるみたいぃ!!おかあさんはわたしたちの中に入ってるのにぃ、ひゃああぁっ!あっ、もうぅ……だめぇっ!よくわかんにゃいよぉ!!キモチいいことしかぁっ……おかあさんのことしかぁっ……考えりゃれにゃいよぉぉっ……!!」

 

限界近付いているジャックにそっと囁く。

 

「……さっきの白いの、このままジャックの中に出すよ」

 

「うん……うん、うんっ……!らしてぇっ…!おかあしゃんのたくさんぅ……!わたしたちのお腹の中にかえらへてぇぇっ!!タプタプにしてぇっ…!いっぱいにひへぇぇっ……!!あ、あ、あぁ……ぁっ――――」

 

力強く俺へとしがみつくジャック……俺の子種が出てくる入り口とジャックの赤ちゃん部屋の入り口がキスするその瞬間……。

 

――――ピュルピュルピュルゥッ!!

 

「あひやああああぁあああああ――――!!!………おぁぁっ…っあぁっ!っくぁあっ!あっ!お腹の中にでてるのぉっ…!わたしたちがぁ、おかあさんになっひゃうよぉ…‥!!すごいっ!入りきらなひぃっ………!!あっ、あっ、んぁっ………」

 

行く場所を求めた精液が子宮へ注ぎ込まれていく。

その快楽で俺に抱き締められながらその幼い肢体を痙攣させたジャックは安心したような、心底幸せそうな笑みを浮かべて、そのままゆっくりと眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

激しい獣欲を交わした俺とジャックを見ていたアリスは意を決してベッドに仰向けで寝そべっていた。

 

「つ、つつつ次はあたしの番ね、ささ、さぁ、召し上がれなのかしらっ」

 

アリスはさっきのジャックとは正反対で緊張しながらも、ゆっくりと脚を開いて、女性器をこちらに見せつけていた。

まぁ、さっきのジャックみたいな感じになると思ったら、そりゃあ萎縮するよな。

 

「うぅ~~……いざ、こうなると顔から火が出るほど恥かしいわ!あぁもうぅ、マスター、そんなにまじまじと見続けては駄目なのだわっ」

 

「そうは言ってもね、こういう状況で女の子の体から目を逸らすのは逆に失礼なんだよ。せっかく綺麗な体なんだからもっと自信を持って」

 

「なら証明させて欲しいのだわ。あたしの体が魅力的だって、こ、恋人みたくとっても優しく扱って、愛して欲しいのだわっ……」

 

「仰せのままにお姫様……んっ」

 

「んぅっ……むぅっ、ちゅぅぅっ……」

 

アリスの羽のように軽い体を持ち上げ、キスを交わす。

ジャックの時は彼女が思いのほかノリノリだった為、素早く挿入は済ますことは出来たが、こっちはゆっくり時間をかけながら致すことにしよう。

まずは彼女の小さな唇を同じくこちらも唇で甘噛みしていく

 

「んんぅ……んむぅ!んんふぁぅっ……!んじるゅぅぅ!?」

 

ジャックとアリスが同時にキスをしたあの時は出来るだけ、彼女達の好きにさせていたが今度はそうするつもりはない。

唇の愛撫で緩くなった口の中に舌を這わせる。

驚いているアリスの舌を絡めて引っ張り出すと、それを吸い付くようにまた唇で噛んでいく。

 

「ぇあぁっ!……ろぉっ……まひゅたぁっ……あむぅっ!ひゃぅぅっ……!」

 

その間、肉棒は少しずつ、少しずつ、アリスの膣内へ侵入しているが……それを気づかせないように口淫をさらに激しくさせる。

アリスのプリプリで可愛らしいベロをこちらの舌と唇と歯、全てを使って愛し抜く。

 

「ひゃうぅ……んぁっ!ろぉっ……んむぅっ……!ぇらぁっ、ぁっ……ぇろぉぉっ……ぇああぁっ!」

 

目の前の童女の口はだらしなく開き、その端からどんどん涎が垂れている。

目がトロンとしているアリスは自分が何をされているのかわかっていないのだろう、だがそれでいい、今は気持ち良い事だけを考えればいいのだから。

 

「んあぁっ……!?ぁっ、ひぅっ!あひぁっ……んむぅっ!?んじゅぅ、んじゅるるぅっ……!んんぐぅっ…‥!」

 

最奥へ近づいていく挿入の痛みを舌を挿し入れて、アリスの口腔内を蹂躙する快楽で忘却させていく。

唇を舌を歯茎を口蓋を頬裏を口を構成する全てを犯すように唾液が混ざり合う音を響かせながら、口を重ね合わせる。

たっぷりと、じっくりと……時間をかけるように。

 

 

1時間かけて、ディープキスをひたすら楽しみ終えると、既に肉棒はアリスの膣内を埋めていた。

 

「ひぅぅっ……はぁぁ―――あぁっ―――……ふぅ、はぁ……や、優しくしてって言ったのに……」

 

キスの嵐から解放された彼女は息も絶え絶えで非難じみた瞳でこちらを見ていた。

 

「いや、物凄く優しくしたよ。だって痛くはなかったでしょ?」

 

「そ、それでも……もう少し加減して欲しかったのだわ……こんな本番前に、ドロドロにされるなんて思わなかったもの……」

 

ぷいっと口を尖らせて、拗ねるアリスちゃんすごく可愛いです。

まぁ、挿入の痛みを和らげるのには仕方なかったという事で納得して欲しい。

 

「ごめんって、ここからはとても優しくするから」

 

「お願いする、わっ……正直な所、今の状態でももうあたし、あっ、限界なの……ジャックみたく激しくされたらわたし多分、んぅっ、簡単に飛んでしまうわっ……」

 

「りょーかい、じゃあ、手繋ごっか」

 

「えぇ……」

 

恋人繋ぎで指を絡め合った俺達はゆったりと腰を動かす、それは突くというよりは回すような動きで、おそらくアリスの膣内にくる快感は穏やかなものだろう。

 

「はぁっ……あっ、あくぅっ、この動き好きだわっ、あぁ!……ふあぁっ!」

 

目を細め、ウットリとした様のアリスだったが途端に申し訳なさそうな顔になって俺に謝り出した。

 

「ひぃっ!あぁっ!ご、めんない、ますたぁっ!やっぱり、これでももう限界かもぉっ!もう、すぐにでもぉっ……さっきみたいにトンでしまいそうなのだわぁ……あくぅっ!!」

 

「……んっと、別に謝ることはないでしょ、そういう時は我慢しないですぐイッていいんだよ」

 

「い、やなのだわっ!マスターも一緒に気持ち良くならないと駄目なのだわぁっ!はぁっ、あんぅ!!……じゃないと、じゃないと理想的なカップルなんて言えないわぁ……!!」

 

どうしても俺が射精するまでイクつもりはないらしい、こっちも出来るだけ動きはスローにしているがアリスの膣内の動きはそれに反してキュウキュウとペニスを絞ってきている。限界が近いのはどうやら本当のようだ。

アリスの様子を見る限り、確かに後一回でもイッたらジャックと同じく気絶してしまいそうである。彼女としてはそれは避けたい所なのだろう。

 

なら、こっちは出来る限り、射精を早めるようにするしかない。女の子のお願いを聞くのが男の甲斐性だしね。

俺自身もアリスと一緒に気持ち良くなりたいし。

 

「じゃあ、あと少しだけ我慢出来る?」

 

「んぁあっ!らいじょうぶなのだわぁっ!ひやあぁっ!!」

 

呂律が回っていないので少々心配だが、大丈夫と言っているのだ。そこは信用しようじゃないか。

問題ない、焦らしプレイとかで射精を我慢した事はたくさんある。なら逆に早める事だって出来る筈だ。

いや、その発想はおかしいとかいう苦情は受け付けない。

 

「あくぁっ、ああぁっ…!あ!あっっ!ふああぁぁっ!!」

 

目を瞑り、縋るように俺の指を必死に握り締めるアリス。

結合部からは水と肉がぶつかり合う音が聞こえてくる。

 

「ひぃっ!あぁっ!!はあぁっ…!ましゅたあぁっ……!もう、限界なのだわぁぁっ!あ、あぁぁぁっ……」

 

「……んっ、大丈夫……!こっちはいつでもっ……」

 

「あくぅ!!ならもうっ、気をつかわないでいいわぁ……!好きに動いてぇ、アリスの真っ白なページにいぃ……あなたの証を刻み込んでぇっ!!」

 

俺よりもふたまわりぐらい小さいアリスの体が跳ねていく。

青空が広がる幻想的なシミュレーションの中で背徳的な交わりは終わりが見えてきた。

 

「ましゅたああぁっ……んむぅ……!んちゅぅ……んんんんぐぅうぅぅぅ――――――!!!!」

 

精液を放出するその瞬間、恋人のようにアリスとキスをする。

長い長い射精が終わるまで、アリスは俺から離れようとはしなかった。

 

「んぅ!んっ!んむっっ…!んんっ、んふぅっ!んちゅぅぅ……っぷはぁっ、あぁぅ………」

 

絶頂の余韻によるアリスの震えが唇からはっきりと伝わってくる

 

俺が全てを出し切って、ようやく糸が切れた人形のようにアリスは唇を離して、そのまま気絶した。

 

意識を手放す瞬間に「大好きよマスター、これでわたし達は永遠ね」と言葉を残して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マスターからアリス達のシミュレーションまで着替えを持ってきて欲しいと頼まれてやって来たら、彼女達がマスターとの関係を色々と段階をすっ飛ばして急接近していたのですが……ノンロジカルですよ!これはっ!」

 

「『信じて送り出した親友二人がマスターにどハマリしてアヘ顔ピースになるなんて……』という奴でしょうか?」

 

「でしょうか?と言われても知りませんよ!というか、あなた……あ、アルテラさんです、よね……?随分様変わりしていますが、何故ここにいらっしゃるのですか?」

 

「はて、私はアルテラという褐色クールビューティスーパーメインヒロインではないですよ。強いていうなら、そうですね……ロリテラとでも呼んでください」

 

「どう見ても、本人であろう……語るに落ちているぞ汝」

 

「いえ、あのー……あなたも同じ穴の狢ですよアタランテさん。二人して何で小さくなっているんですか……?」

 

「ロリハーレムはいい文明。わるい文明?」

 

「良い文明に決まっておろう!!」

 

「聞いちゃいないですよ!?」

 

 

ジャンヌ・リリィから着替えを持って来てもらい、二人仲良くベッドで寝ているアリスとジャックの隣で着替え終わると(彼女達の周りにはどこにも二人が読んでいたであろうと思われる本の姿は無かった)、いつの間にか幼女化したアルテラちゃんとアタランテちゃんまでやって来てました。

 

「まぁ、私がここにいるのは純潔の狩人的な勘で納得して欲しい。さぁ…とおさま、私も愛情が欲しいのだ。たっぷりと甘やかして欲しい」

 

「勘というか、120%欲望で動いていますよね!いつものアタランテさんは一体どこへ行ってしまったのですか!?」

 

「ふむ、ジャンヌ・リリィよ。汝は確か、早く大人の女性になりたかったのだな?」

 

「そ、そうですけど」

 

「だが、それは子供の時だけに味わえる温かさをっ、愛情をっ、気持ち良さを捨ててるに他ならない愚行である!」

 

「な、何ですと――!!」

 

「私は、汝ともアリスともジャックとも一緒に家族のようになってとおさまに滅茶苦茶に甘やかされたいし、愛されたいし。逆に大人になってマスターと疑似夫婦で汝ら子供達と存分に戯れるのも素晴らしいと思っているのだ!」

 

「わ、わたしは視野が狭かったという事でしょうか……」

 

「一辺倒はよろしくないという事だ。一度何も考えずにとおさまにその身全てを任せてみるといい、凄まじいぞ?」

 

「ゴクリ……」

 

 

 

「ふむ、ジャンヌ・リリィが簡単に取り込まれてしまいましたね。さすがはチョロいと評判の邪ンヌのリリィです。容易い、実に容易いですね」

 

ジャンヌ・リリィとアタちゃんが熱い議論をを交わしている隙にロリテラちゃんが俺の膝の上に乗っていた。

 

「収拾がつかないよね、コレ」

 

「ツッコミ不在の恐怖ですね。むしろ私達は突っ込まれる側なのでその役はマスターに任せます。しかし純潔の狩人もどうしてここまで残念になってしまったのでしょう?キャラ崩壊はいい文明ですか?わるい文明ですか?」

 

おまいう………。

 

「そう言えば、ロリテラちゃんとやら、その口調は一体」

 

「いつまでも私の事を残念引き篭もり文明ガールと思われるのは癪ですので、まずは口調から変えてみようと」

 

「もう手遅れだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




【カルデア寝物語:IF番外編】
サブタイトルは「パーソナル・レッスン」。
今回の諸悪の根源。どこかの平行世界からご都合主義とほんの少しの奇跡と中々スポットライトが当たらない所長の怨念によって当カルデアに紛れ込み、図書室の隅で眠っていた本。まさにシークレット。
全編に渡って、ひたすらチョロい所長がマスターによってエロエロされてしまう王道(?)物。
二人の幼女の目に渡り、性知識を教え込み(あぁ、パーソナル・レッスンってそういう……)、役目を終えたかのようにこの世界線から姿を消した。二人も何かの本を読んだ事は覚えているのだが、最終的には内容の方は一切思い出せなくなるので多分情報抹消のスキル持ち。
ゲームではヘタレだったり、アニメでは凛々しかったりするので、きっとどこかの世界線ではこんな所長もいたのだろう。
つーか、はやく復活させてくれないと、いよいよこのマスターにサルベージさせたくなるんですが。


ジャンヌ・リリィ:邪ンヌのハメ撮りで性知識を学ぶ
アリス&ジャック:薄い本で性知識を学ぶ
(゚∀゚)人(゚∀゚)ナカーマ

オチ要因その1:アタちゃん
    その2:ロリテラ
(゚∀゚)人(゚∀゚)ナカーマ







アリス&ジャックのロリロリ回。そして前回の小ネタを使っていくスタイル。
ジャンヌ・リリィからサンタオルタを挟んでまたロリ……ロリの頻度高くない?

多分、このカルデアでのエロに対するポテンシャル大きさはジャック>ジャンヌ・リリィ≧アリスみたいな感じになってしまいました。
ジャックちゃん中々にアグレッシブになってしまったね。まじでお前がおかあさんになってしまう日もそう遠くないような……(おまわりさんこいつです)




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MOTHER2(源頼光)

ちっぱい続きだったのでたまには巨乳も挟むべきだと思いました……巨乳だけに。






流行に遅れて便乗するスタイル。


「私は我が子(マスター)を愛しています」

 

電気一つ点いていない自室で独白する一人の美女。

 

他の誰も存在していない暗闇の中にいるのはその部屋の主、源頼光しかいない。

戦装束に包まれたおっぱいを揺らしながら、続けて宣言する。

 

「マスターに母として、無償の愛を捧げたいのです。はち切れんばかりの母性で包み込んであげたいのです。親として当たり前の触れ合いをしたいだけなのです……ただ、それだけ、それだけなのです」

 

どう考えても、夜這いを仕掛けたり、性的スキンシップは親として当たり前の触れ合いではないのだが、そこにツッコミをいれる者は今、ここにはいない。

 

そもそも彼女のこの独白も自己完結しているのだ。誰かが否定しようものなら「てんもうかいかい」されるだけの話。

 

しかし、冷静に考えるとおかしな話だ。

狂化EXの頼光がどうしてそんな自身でもわかり切った事を誰もいない場所で吐き出しているのか。

今更、宣誓するような事でもないだろう。

 

 

「……うぅぅ……あの子に叱られて、しまいました」

 

涙ぐむ源のお母さんに何があったのか、少し遡る必要がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

当カルデアでは、それはもう古今東西様々な英霊がわんさかいるわけで……当然、時には衝突する事もある。

 

その中でも一番危険視されているのが……酒呑童子と源頼光のセット。

 

二人が召喚されてから、お互い接触し、殺気をまき散らす事もあったが、殺し合いにまで発展した事は幸運にも1度も無かった、だが……。

 

その日はたまたまお互いの虫の居所が悪かったのか。

その日はたまたま運が悪かったのか。

その日はたまたま間が悪かったのか。

その日はたまたま間にマスターがいないのが悪かったのか。

 

ある日カルデアの通路にて、隠す気もない殺意を剥き出しに対峙している酒呑と頼光の両名がいた。

 

頼光は既に抜刀し、その刀身にバチバチと雷を纏わせていた。

その様子をニヤニヤしながら眺める酒呑もいつでも戦闘態勢に入れるように油断せず大刀に手を置いている。

 

「かはは、おぉ、怖い怖い……一体何をそんな荒ぶっとるん?心当たりがまるで見つからんわぁ」

 

「わかってて言ってるでしょう、アナタ。私の大事なマスター(息子)の周りをブンブンと、今まではあの子の優しさに免じて見逃してあげましたが、私はもう堪忍袋の緒が切れているのですよ」

 

「そのまま目障りな乳袋も切れれば良かったのになぁ……重い女は旦那はんに嫌われるで」

 

「母の愛に限度なんて設ける必要はないでしょう。与えれるなら、それはもうどこまでも、際限無く……。まぁ、そんな貧相な体をしている虫にこんな事を言ってもわかる筈もないですが」

 

「嫌やわぁ、クーリングオフが効かない押し売りなーんて、鬼のうちが引くレベルやで」

 

「潰しますよ羽虫」

 

「やってみいや、牛女」

 

マジでブチ殺し合いする3秒前。二人の雰囲気はどう考えてもじゃれ合いの境界線を越えていた。ここがカルデアだろうと宝具ぶっぱも辞さない展開になってもおかしくない。

 

事の顛末を見守っていた血気盛んなサーヴァント達は二人が戦闘に入ろうとした瞬間にすぐに介入出来るよう構えていた。

そうでない他のサーヴァント達は「はやくきて~はやくきて~」と誰かが駆けつける事を祈っている。

 

祈りは届いたのか、二人がぶつかり合う前にあの男が現れた。

 

きた!マスターきた!これで勝つる!

 

多くの者が安堵、安心したように息を吐く中、最も付き合いが長いあるデミサーヴァントは自身の先輩の顔を見て、「これアカン奴や」と冷や汗を流していた。

 

 

 

 

―――後にマシュ・キリエライトはこう語る。

 

「先輩の顔ですか?そうですね、あの時は能面、いや、あらゆる感情を削げ落とした、もはや無と言っても良いかもしれません」

 

「基本的にあまりサーヴァントを必要以上に縛り付けるのは好きな方ではありませんから。お遊びで令呪は嬉々として使いますが」

 

「『ぶつかり合うのもいい、殺り合うのもいい、喧嘩するのも別に構わない、色んな人いるしね……うん、場合によっては俺の命を狙いに来てもそれはそれで良しとしましょう』ってゆるゆるな方ですから……まぁ、私にとっては最後の所は全然良くないんですけどね。もし先輩の命を狙う者がいるのなら私の盾のシミにしないといけません。こう、上から潰して、えいっ、やぁっ、みたいな感じで」

 

「あぁ、話が逸れましたね。ただそれもあくまでお遊び、模擬戦、ギャクパートの範囲で。先輩の目の届かない所でガチの殺し合い、シリアスパートの殺り合いは御法度という事がカルデアの皆さんが共有していた先輩からのお願い事でした。そもそも『シリアス?なにそれ?おいしいの?』精神で行く方ですから……特に危ないあのお二方にも再三言っていたのではないのでしょうか」

 

「とにかく、先輩はその無の表情で両者を見比べるとまずは頼光さんの方へ足を進めました」

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

「おや、旦那はん」

 

「あぁ、マスター。どうか安心して下さい。今あなたを誑かす悪虫を退治してあげますからね。少しだけ目を瞑ってて下さいな」

 

酒呑童子はともかくとして、バーサーカーである頼光はもう歯止めはきかない状態だった。

内なる丑御前としての狂気か、はたまた母として女としての嫉妬心か、彼女は口ではマスターに語りかけても、その目は彼ではなく、射殺さんとばかりに目の前の鬼に向けられていた。

 

優先順位は頼光の方が高いと思ったのか、マスターは迷う事なく、その視界を覆うように彼女の目の前に立った。

 

「頼光」

 

パシンと乾いた音が響いた。

 

 

 

 

―――後にセイバー・リリィはこう語る。

 

「はい、あれは紛う事無き平手打ちでした。頼光さんも最初は何されたのかわかっていなかったのでしょう。ただただ目を見開き呆然としていました」

 

「しかも一回ではありません。振り切った腕を戻すように今度は手の甲で打ちました、そして再び平手で、次は手の甲で、繰り返して何度も。往復ビンタという物ですね」

 

「?……あぁっ、いえいえ違います。ビンタしたのは頬ではありません、()です()

 

「頼光さんはそれはもうご立派なモノを持っていますから、マスターがぶつ度にブルンブルンッと巨乳が大きく揺れました。自分が何をされたかようやくわかった彼女は止めさせようとしたのですが……」

 

 

――こらっ、いくら我が子といえど、このような仕打ち……あひぃんっ!

 

――……聞いているのですかっ、手を止めなさいとぉ、あくぁぁっ!

 

――…ぁっ、母にっ、手を上げるなどぉっ、んあああぁっ!

 

――わ、わかりましたっ、刀はもうしまいますのでぇっ!おあぁっ!

 

――あぁっ、んひっ!ひやぁっ!もうっ、とめてぇっ、はくぅっ!あぁっ!!

 

パシンッ!パシンッ!パシンッ!パシンッ!パシンッ!………

 

 

「マスターの手から与えられるのはただの痛みじゃないのです。痛みと快感を見事に両立された美しい往復ビンタでした。頼光さんの顔はどんどん紅く染まり、体を震わしていきました。えぇ、それは決して苦痛や怒りではなく、悦楽で女としての性を呼び出された故の反応でした。私もマスターと二人っきりの時にはよくお尻を叩いてもらうのをせがむので彼女の気持ちはよくわかります。マスターの手が私の肢体に触れ、痛みを与えてくれる度に気持ち良さが……そう、痛みと快楽という相反する物が私の体に駆け巡るのです。ですが、いずれその痛みさえも心地良さに変わり、あぁ……マスター……もっと私に、ん?別にそこまでは聞いていない?これは失礼しました」

 

「そして、頼光さんが腰が抜けてへたり込んでしまってもマスターは顔色変えず、そのまま往復ビンタで胸を苛め抜くのを止めませんでした。頼光さんももはや抵抗する気力もなく、焦点の合わない瞳で喘ぐだけ、やっと手を止めたのは彼女が気を失ってからです。隣にいた金時さんが『……ウチの大将、いとクレイジー』と戦慄していましたが」

 

「はぁ……頼光さんが本当に羨ましいです。マスターに迷惑をかけた事は当然褒められる事ではありませんが、彼からあんな情け容赦の無い責めを一身に受けたのですから。私はサイズが無いので、お尻は出来ても、胸をあんな風にされる事は出来ません……私も頼光さんぐらい胸が大きくなれば、マスターもきっと……ん?別にそこまでは聞いていない?これは失礼しました」

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

地に伏した頼光を確認したマスターは今度は心底愉快そうに笑っていた酒呑童子の方に視線を向けた。

 

「ええわぁ、ええなぁ……やっぱ旦那はん最高やわぁ……かははっ!見てみぃ、あの牛女の無様な姿……ひゅいっ!?」

 

一瞬、まばたきしたその時、気付けばそこそこ離れていたマスターが目の前にいた。つい、吃驚して可笑しな声をあげてしまった彼女だが。まだ余裕の笑みは崩さない。

 

「……なんやぁ、うちにもえっちぃお仕置きしてくれるん……あくぅっ!?」

 

その笑みが崩れたのはマスターが酒呑の角を両手でそれぞれ鷲掴みにした時だった。

 

「ハハハ、お仕置きなのに君が喜ぶ事するわけないじゃないか」

 

「いや、ちょぼっと待って……あかんあかん、持ち上げたらあかんてっ、うち……旦那はんにはこう、優しく笑って欲しいわぁ、そんなおっかない顔しないで……」

 

「気を楽にしろ。すぐに終わる」

 

 

 

 

―――後に清姫はこう語る。

 

「えぇ、人の手は、指はあそこまで複雑にかつ素早く動かす事が出来るのだと証明された瞬間だったかもしれません。鬼の酒呑さんと思い込みで竜になった私とでは個人差があるでしょうが、まぁ、角というのは本来敏感な物なのです。しかも旦那様は逃げられないように握った角を持ち上げていらしたので」

 

「はい、そうですよ。身長差もありますので、こう酒呑さんはつま先が床にギリギリつかないような体勢になっていました。そんな身動きが取れない……もはや浮いていると言ってもいい状態で脳に近い角から快楽を……。いえ、あれはもう快楽という名の暴力かもしれません。そんな刺激を送り込まれたら、結末はわかり切っているでしょう?」

 

 

――ちょ、やめぇ!旦那はんぅ……あ、あ、あぁ、ああぁっ、ああぁァァッ―――……!!!

 

 

「旦那様が彼女の角を激しく責め抜いたのは僅か数秒でした……ですが私はその数秒間に多くを感じたのです」

 

「旦那様は有無を言わさず握り締めた手で雄々しく、征服するように扱きながら指腹で撫で、指先で突く。恐ろしいのが5本の指それぞれ意思を持ったかのようにバラバラの動きをしている事です。まさに洗練された無駄のない動き……そんな旦那様の魔手が目にも止まらぬスピードで角の根本から先まで何度も何度も扱かれた彼女の体は雷に打たれたかのように激しく痙攣し、嬌声をあげる口の端からは涎が垂れていました。ですが私は同じ女としてもはしたないと思わなかったのです。あんな脳そのものを犯すような責めを受けて自己を保っている自信なんて持っていなかったのですから」

 

「え?なぜ高々数秒程度でそこまで考えられたか?そうですね、例えば、私が旦那様から接吻を受けたとします。唇の柔らかさ、温かさ、甘い、嬉しい、気持ち良い、香り、コク、目の前に映る旦那様の御尊顔……丁寧に語るなら1日はかかるでしょう。しかし、それは全て一瞬の感覚なのです……とでも言えばわかるでしょうか、え?例えがわかりづらい?……そうですか、なら私が旦那様から挿入されたとしま、ん?もう例えはいいからと?むぅ、仕方ありませんね」

 

「はい、話は逸れましたが、そのまま酒呑さんは糸の切れた人形のように倒れました。私の隣にいたドラ娘がガクブルしながら自分の角を隠していましたが……まぁ、気持ちはわからないでもないです」

 

「ただあれを一つ見て私が残念に思ったのは旦那様の本気をまだこの身で受けてないのだと気づいてしまったこと。……いえ、いえ、旦那様が私を愛してくれた行いには一切の嘘偽りありません、それは断言出来ます。いつも私の角も慈しみを込めて愛撫してくれているのは確かで、それは気持ちの通じ合った男女として正しい行為であると」

 

「その一方でこうも思ってしまうのです、旦那様の恐怖さえ感じてしまうような荒々しい責めを受けたいと……たとえこの身が持ち堪えられなくても、愛する夫からあれ程までの嗜虐を受ける……あぁっ!それも一つの愛の形なのかもしれませんっ……!ならばそれに応えるのが妻としてあるべき姿!ですが、私は進んで旦那様に迷惑をかけるような事は出来ません……しかしその反面、本気のお仕置きを受けたいと思ってしまう感情もあるのです。正直になっても自分の中で対立するこの感情!ジレンマ!まさに男女の中は複雑怪奇、良き妻として私はどうすればっ!あぁっ、旦那様!旦那様、旦那様、旦那様、旦那様旦那様旦那様旦那様………‥」

 

 

・・・・・・・・・・

 

――ガクガクガクッ

――ビクビクビクンッ

 

死屍累々。

 

倒れているのは二人だけであり、この表現は適切ではないが、それでも当てはまるのはこの言葉しかなかった。

 

意識を失った彼女達を両脇に抱えるとマスターは皆の方へ振り返り、いつもと変わらない笑顔で「じゃあ、この二人をそれぞれの部屋に寝かしておくね」とその場を後にした。

 

災害が通った後はこういう気分なのか。

何とも言えない結末を見届けた一同は取り敢えず、酒呑と頼光の股から液体が垂れている事からは見て見ぬふりをしてあげた。

 

 

その事件があってから、酒呑童子と源頼光が仲良くなったのかと聞かれればそんな事は一切無かったが、少なくともあの時のように本気の殺し合いに発展する事は無くなったのだ。

 

偶然、出くわしても「……どうも」、「……あぁ」と一瞥する程度。

まるで喧嘩している所を保護者という第三者によって泣くまで叱られた子供達の翌日のような気まずさがあった。

 

酒呑にしても情事の場ならともかく、あんな衆人環視の元で鬼の威厳も無くヤられっ放しで醜態を晒してしまったのはそこそこ堪えていた。普通に頼光の事を笑えなかった。今だけはこのカルデアに茨木がいなくて良かったと思っていたのかもしれない。

 

またここで殺り合っても抑止力の如くマスターがすっ飛んでくる可能性。

そのまま有無を言わさず、公共の場で女の尊厳を捨て去ったようなアヘ顔を晒される危険性。

そんな未来はもう御免である二人はほんの少しだけ自重を覚えたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とまぁ、そんな事があったせいか。

一度、頼光は自身の事を振り返っていたのだ。バーサーカーが我が身を省みるとはこれ如何に。

 

「確かに、最近の私は少々落ち着きが足りませんでした。私の本来の立ち位置はあらあらうふふと微笑みながら我が子を優しく見守り続けるお母さんポジションなのですから……もう、決して叱られるような……よよよ」

 

我が子の初めて見る表情、そんな顔を目にしながら気絶するまでお仕置きされたのは酒呑以上に心にキていたのかもしれない。

涙ぐむ頼光だったが、それでも切り替えるように拳を握り締める。

 

「そもそも私が、あの二人と『夜這い3人衆』なる名前で一括りにされる事自体おかしいのです。母が我が子の寝床に潜り込む事は当たり前の事でしょう。そこに疚しい気持ちなんて一切無いのですから。確かに何かの間違いで私はバーサーカーのクラスで召喚されていますが」

 

いや、残当であろう。彼女はセイバー適正もあるが、バーサーカーの方がどう考えてもしっくり来る。

逆にセイバーでありながら、なんでバーサーカーじゃねぇの?という白百合の姫騎士もいるが、彼女の場合は後天的な物なのでノーカン。大体マスターのせいである。

 

「そろそろマスターにも今一度、私の母としての暖かさを再確認してもらわねば。そう!此度の私はクラス:マザーとなってマスターを甘やかしてあげるのです!」

 

くわっと目を開いた頼光はマスターの元へ向かう。

まぁ、落ち込んだままよりは前向きになった方が建設的であろう。

たとえ、彼女があの日、マスターに胸を往復ビンタされた日から形容し難い疼きを自身の中で持て余していたとしても……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

他の方から話を聞いた所、どうやら、マスターは召喚サークルの所にいるようですね。

人理を救っても油断せずに戦力補給に勤しむのは結構ですが、やはり私としてはもう少し休んで欲しい所です。

 

母と一緒に過ごすとか!母に甘えるとか!母とお風呂に入るとか!母と一緒に寝るとか!

 

召喚サークルが設置されている部屋まで近づくと開いているドアから声が聞こえてきました。

 

 

――え、触媒召喚?マギ☆マリを用意すればDrロマンを召喚出来るかもしれないって?うん、ごめん何言ってるのかまるで意味がわからないよ。

 

――落ち着きたまえ、いいかい、あれは私がプロデュースした架空のネットアイドルでその存在は幻想なんだ。

 

――なら、私がマギ☆マリの格好をすればいいって?おいおい君は正気かい!?確かに私ぐらいのキャスターならそりゃあ女体化の一つや二つちょちょいのちょいだが……

 

――いやいやいや、待ちたまえっ!確かに私は女の子は好きだが、自分が女の子になるのは御免だぞっ!そういう変態的なキャスターはあの芸術家で十分だと思うよ!…………ちょっと、待て、本気か、いや、やめ………アッ――――――!!……

 

 

どうしましょう、何かお取込み中のようですが入るべきでしょうか。

 

そう思慮していると部屋から光と音が漏れ出しまし、しばらくすると両手で顔を覆いながら走って出てきた女性が出てきましたが、ふむ、見ない方ですね。白髪と同じ色の随分可愛らしい衣装をしていますが、もしかして新しく召喚された方でしょうか?

 

それなら、挨拶の一つでもすれば良かったかもしれません……もう姿は見えなくなってしまいましたが、またの機会にしましょう。

私の御用はこちらにあるのですから。

 

「おや、頼光さん」

 

マナプリズムを両手に抱えたマスターは私に気付くと微笑みかけ、挨拶をしてくれました。

あぁ、良かった……もしこの前の件のせいで無視などされてしまっては母はもう二度と立ち直れなかった所です。

 

「ごきげんようマスター、あの……この後お時間の方は空いていますか?」

 

「そうだね、特にこれといった用事はないけど」

 

緑の立方体をお手玉にしているマスターの返答に私はこれからこの子にしてあげる事に心の昂りが抑えきれませんでした。

どうか、今一度、私があなたの母であるという事をこの身で確かめさせて欲しいのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうでしょう、源膝枕(みなもとのひざまくら)の御加減は如何ですか?」

 

「すこぶる良好です。このまま怠惰の極みに達してしまいそうな」

 

「あらあらまぁまぁ、それは良かったです。是非、心身ともに癒されて下さいね」

 

尊い犠牲を払いながらも日課でもある召喚作業を終え、頼光さんと遭遇した俺はそのまま、彼女の部屋へ連れてこられた。

「着替えますので、少々お待ちになって下さいね」と言葉にし、その後いつもと違う出で立ちで現れた頼光さんの膝枕なう。

頭の裏の感触も極上なのだが、こう目の前の山も眼福であります。

 

「しかし、その服は一体」

 

リブ生地で構成されたそれは脇から背中の部分が大きく露出し、裾を上げるか、下ろすかしてしまえばすぐに大事な所が見えてしまう……まぁ、いわゆる『童貞を殺すセーター』とやらを頼光さんは着ているわけで。

別に文句なんて一切ないんだけどね、太もものスベスベ素肌は堪能できるし、布地の線がおっぱいで伸びるのもジャスティス。あぁ――、殺されちゃうんじゃー。

 

 

「えぇと、子供を甘やかすにはどの服を着ればいいのか悩んでいた所、彼女がこれがいいと……」

 

「彼女とは?」

 

「アルテラさんですよ」

 

ちょっと、暗躍し過ぎじゃないですかね、もうカエサルとかパラケのこと、ハイハイ黒幕黒幕乙とか言えなくなるぞ。

あぁ、頼光さんの後ろでドヤ顔ダブルピースしているアルテラちゃんの姿が見えるぜ。

 

――頼光マッマは(子供)を甘やかす服を欲しがった。私は童(貞)を殺す服を授けた。そこに何の違いもありはしないだろう。

 

違うのだ。

 

「もしかして、お似合いではなかったですか……うぅ……」

 

「まさか、リブ生地と頼光さん自身の柔らかが合わさって子供を甘やかすには最適な暖かみを感じますよ」

 

露出面に目を瞑れば。

 

「あぁ、嬉しい……そう言ってもらえると今日は存分にあなたを甘やかして疲れを取ってもらおうと思った甲斐があります」

 

目尻に浮かんだ涙を拭うとそのまま指で髪を梳くように俺の頭を撫でてくれる頼光ママ。その繊細で優しい力加減は戦闘中の熾烈な姿を忘れさせるほどであった。

 

「なるほど、だから急にこんな膝枕を……。しかし、そんなわかる程、疲労感を表に出してました?」

 

「いえ、あなたはいつもと変わらない元気で愛らしい様ですよ。ただ、疲労というのは表に出ず、溜まっていく物でもあります。あのウルクの王様ですら一度は過労死で簡単に死んでしまったのですから」

 

あれは特殊な例だと思うが。というか忙しいとかそういう次元のレベルを超えていたし。社畜も真っ青。

 

――フハハハハハ!金ピカなのにブラック企業すらブルーとはな!笑うがいい!AUOジョークだ!

 

うむ、また幻聴が聞こえる。そっとしておこう。

 

「もう魔術王いえ、魔神王でしたか。ともかくその脅威は去ったのです。あなたにはもっと羽を伸ばして、自身の好きなようにやっていいのですよ……えぇ、少し前に無駄な苦労を掛けさせた私が言う台詞では無いことは充分承知していますが……」

 

「この前の事はあの時のお胸ペンペンで終わりにしたから、もう気にしなくていいよ。お仕置きってのは後に引きずらせない為のお仕置きなんだから。というかそもそも俺は現在進行形で好き勝手やってますよ」

 

胸を避けるように覗くと頬を染めて、俯く頼光さんの顔が見える。

さすがにおっぱいに往復ビンタはやり過ぎたかな?

けど、顔は女性の命だというし、ならおっぱいに行くしかないじゃん?誰だってそーする。俺だってそーする。

 

「……はい、あれは私の立ち位置を見直す良い教訓になりました。子に教育される駄目な母ですが、今日は……この瞬間は親として甘やかしていいですか?」

 

「うん、こっちが頼みたいぐらいだよ。ママ」

 

「はぅぅっ!」

 

うわ、なんか凄く仰け反ってるけど大丈夫かな?それでも膝枕には一切の衝撃を与えないのはさすがの親心と言うべきか。

 

「はぁ……はぁ……お母さんと呼ばれるのも捨てがたいですが、マスターに『ママ』と呼ばれる破壊力……幼さとあどけなさが私を……私を殺しに来て、駄目よっ頼光!ここで自分を失ってはただの獣と変わりませんっ!今日は余裕のあるお母さんキャラで行くと決めたのですか、らっ……!」

 

ふぅーっ、ふぅーっと血走った眼で深呼吸をした頼光ママは何とか落ち着きを取り戻したようだ。

既に余裕のあるお母さんキャラは崩れかけている気もするが、親のミスを見ないフリしてあげるのも子としての役目だろう。

 

「大丈夫、母は大丈夫ですから……それより、マスター、お腹は空きませんか?」

 

「……うん、少し空いたかも。何か食べさせてくれるの?」

 

「えぇ、育ち盛り子供にはミルクが一番ですからね」

 

そう言って、頼光さんは体の前面部分のセーターを一束にして、谷間に挟めた。

当然、そんな事をすれば、彼女自慢の巨峰が目の前にこぼれ出すわけで。

 

「はい、どうぞ。母のお乳を好きなだけ味わって下さいね」

 

ミルクの下りから何となくこの展開を予想出来た俺はきっと成長しているのだろう。

 

束ねられたセーターの前側は彼女の谷間に埋まっており、先ほどから十分露出していた童貞を殺すセーターは『I』の字と変化し、隠す事なく乳を曝け出していた。

 

ニコニコと微笑む頼光ママは巨乳の頂上を俺の口元に近づけてくる。

 

ふむ、もう乳を吸うような年齢でもないんだけどな。だがここで拒否しようものなら彼女は間違いなく自害しそうだし、ここは羞恥心を押さえて退行するかごとく要望に応えてあげようじゃないか。

 

…………いや、冷静に考えて今更、母乳を飲むぐらいで恥ずかしさとか感じるわけなかったわ。

うん、男はいつだって乳離れ出来ないしね、仕方ないよネ。

 

‘ではいただきます‘と心の中と合掌して、両手でたわわに実った球体に手を添えて、その先端に口をつける。

 

「あんぅっ!」

 

口に咥えたその瞬間、喜びを全身で表現するように体を震わせ、恍惚とした顔になる頼光ママ。

俺は舌を転がし、口の中でキャンディのように乳頭を舐め始めた。

 

「あっ、んっ……んふっ、はぁっ……あんっ……」

 

両手をそれぞれ、俺の後頭部と首元に添えた彼女は慈愛と悦びが混ざり合った表情で完全に授乳体勢に入った。

 

「……ちゅっ、ちゅぅ、んちゅっ……」

 

「ふうあぁ、んっ、あぁっ……私のかわいい子……」

 

ジュルジュルと卑猥な音を立て、固くなった乳首を弄んでいると、徐々に舌先から甘い味が拡がってきた。

母乳が舌から喉へどんどん流れ込んでいくのを感じる。

 

「はぁっ……んっ、んんぁあっ、んふっ……もっと母から乳を出して下さい、もっと、もっと、お腹いっぱいになるまでぇ……あぁ……」

 

優しく後頭部から力を入れた頼光はたくさん吸って欲しいとせがむように俺の顔をよりおっぱいに押し付けていく。

 

沈み込みような柔らかさを顔全体で堪能しつつ、乳をしゃぶり続ける。サラサラと彼女の蕾から溢れる母乳はいくら飲んでも飽きる事がないような中毒性があった。

 

(あぁ、あぁっ!我が子が熱心に私の乳房を吸っている!……これですっ!これこそが私が望んだ、親子としての正しいあり方!この子を抱き、乳をあげ、共に寝て、そして成長をずっと側で見守る。マスターが息子が我が子が私の乳で大きくなっていく……あぁ、なんて甘美な未来なんでしょう。いえ、いえ、未来ではありません、今こうしてここでに現実としてあるのですから……もしかしたら、私の体は血生臭い戦いではなく、こうしてこの子に授乳してあげる為に………はぁ、やっと、自分の役目という物に気づけたかもしれません。あぁっ、愛おしい子、どうかもっともっともっともっと母の愛をそこから吸い出して下さい……母はあなたに全てを捧げたいのですっ!)

 

何とか慈しみを込めて母のように微笑もうとしてるけど、半開きになった口の端から垂れている涎が全てを台無しにしていた。

いや、気持ち良くなってくれてるのなら俺としても大変結構なのだが。

 

一方だけの胸を味わうのも勿体無いので、一度口を離し、左胸にも喰らい付いた。

 

「はうぅっ!んあっ……はい、あなたの好きなの方を……あんぅ!」

 

プルンと吸引から解放された右乳首が外気に触れた感触に悶えながら、俺が今度は違う乳に吸い付いたのを見て嬉しそうに抱き締める頼光。

 

興奮で肥大した乳の先端は舌だけではなく、唇や歯でも十分に扱けるサイズになっていた。

彼女のお望み通り、俺は口淫を激しくしていく。

 

「はぁっ、あぁっ!あんぅっ!……そん、なに、吸いついてぇ……母の胸に夢中になってくれて、嬉しい、嬉しい、うれしいぃあぁっっ!」

 

両方の胸、満遍なく吸い続けていく。右胸、左胸、右胸、左胸……交互に何度も何度も。

激しい吸引から解放された快感、また喰らい付かれる快感、舌で舐め回される快感、唇や歯で甘噛みされる快感、俺の行動一つ一つを見逃しまいと見つめている頼光は母としての喜び、女としての悦び、その両方を感受しているように声を漏らしていった。

 

「あぁっ、あっ!あんぅ!はぁっっ!はふぅっ!ひあぁっ!ふうぅ!!」

 

その悦びの声はどんどん大きくなり、俺の口内を染めていく乳の量もどんどん増えていく。

 

「はっ、はぁっ、はああぁあっっ……!母のおっぱいをじゅるじゅるしてぇ、ちゅぱちゅぱしてぇぇ……あんっ、どんど、んぅっ、乳が止まらなぁぁぁ……」

 

乳房に溜まったミルクを搾り取るように俺は乳輪ごと、歯形をつけるぐらいの強さで彼女の左胸の乳頭に噛みついた。

 

「はひいいいいいっ!!!」

 

その痛みさえも、頼光にとっては快楽でしかなかった。絶頂と共に射精するか如く放出された乳液は俺の喉を潤していった。

子に乳を吸われ、あれ程までに悶える母……どう考えても普通の親子関係のわけがないのだが彼女にとってはこの限りでないのだろう。頼光の親子関係は普通とは違うのだから。

女としての絶頂を刻み込まれた後でさえも、こちらを慈しむように頭を撫でる顔は確かに母としての包容力を感じずにはいられなかった。

 

うん、頭と一緒にズボンの中でパンパンに膨れている股間も撫でられてなければ素直にそう思ってかもしれん。

 

「あぁ……まぁ、こんなに苦しそうにして、ごめんなさい、母のせい、ですよね……今、楽にしてあげますからね」

 

呼吸を整え、ゆっくりと……ゆっくりとベルトをほどき、ズボンとパンツを脱がしていく。まるで幼子を着替えさせる母のように。

 

しかし、とても幼子とは言えない凶悪なモノが頼光の前で荒ぶり出すと、彼女は嬉しそうに破顔した。

 

「まぁ……!母のおっぱいでこんなに大きくなってくれたのですね……あぁ、喜ばしい事です……親の与えた乳で子が成長してくれるのは」

 

脈打つアソコを見て、子の成長を喜ぶ母親の姿。もう手遅れかもわからんねと言われても仕方ない絵面である。

いや、さすがに頼光ママも俺の肉棒がミルクで成長したとは思ってないだろうけど、ん?けど、頼光のおっぱいを吸って興奮してここまでになったのだから、ある意味彼女の乳で俺の愚息は成長したと言ってもいいのか……?

 

「うふふ、大丈夫です。何も心配はいりません、力を抜いて、全て母に任せて下さい」

 

白魚のような指でカリと裏筋をなぞられるとゾクゾクとした快感が走り出す。

 

「あなたは先程と変わらず、母のミルクを飲み続けたままでいいんですよ。私はこっちのミルクをピュッピュッしてあげますからね」

 

そう微笑んだ彼女は今度は右手だけで俺の頭を支え、空いた手で肉棒を包み込むと緩やかに扱いてくれた。

目の前には乳液と唾液で濡れている充血した乳首が今か今かと待ち構えているようだった。

 

俺もまだまだお腹いっぱいとはいかないので、再び彼女の胸を吸引する。さっき噛みついた跡が残っていない右胸の方から。

 

「あふぅっ」

 

最初の時と同様に恍惚とした表情を浮かべる頼光だったが今度は俺の性器も可愛がられている。

どんなにチュウチュウと吸って、体を痺れさせても……彼女は扱く手を止める事はない。

 

「あっ、ふぅっ、はあぁ……すごくピクピクしてぇ……はうぅっ、あっ……先っぽからも薄いミルクが出てき始めましたね」

 

先走りを指に塗り付け、潤滑液代わりに俺の肉棒を上下に行き来する頼光の手淫は激しさは無くても確実に快感を送りつけて来る。

 

授乳手コキの体勢で男根を愛撫されながら、ひたすら頼光のおっぱいを吸っていると……なるほど、バーサーカー故の暴走癖はあるが、それをノーカンにするぐらいの母性が彼女にはある事を再確認した。

端的に言えば、『頼光ママァ――!』と心が叫んでいる。

 

「あんっ、ほらぁっ、がんばれ、がんばれぇ……おっぱいからもっとミルクたくさんチュッチュッしてぇ……おちんちんからもミルクたくさんピュッピュッしましようね――……んぅっ」

 

自身の奉仕によって子のペニスが反応している喜びを表しているかのように、頼光の放乳もどんどん激しさを増していった。

 

ふむ、けどもっとミルク出るんじゃないかな?

 

「あぅっ……?な、にを……あふっぅ!?」

 

さっきまでは口だけで頼光の胸を責めていたが、今度は両手を使い、親指と人差し指で挟み込むように右乳の奥を両サイドから掴みかかった。

 

それで終わりにするわけもなく、その両手を先端まで胸を圧迫させながら滑らせていく……まるで乳搾りをするように。

 

「あぉっ!あぁ……!食欲旺盛で、母もぉっ、う、れしいですぅううぅっ!あぁぁんふぅっ!」

 

ギュウギュウと搾っていくとさすがの頼光さんのバストサイズ、肉厚な手触りは当然ながら、卑猥に歪んでいく形も感嘆しかなかった。

おっぱいの根本から丁寧に両手を動かした甲斐あったのか、彼女の乳首からはまるで水鉄砲のようにミルクが口内へ放出されていく。

 

「んあぁっ、あああぁっ……あぁっ、あっっ……!す、ごい、こんな激しくうぅ!………あな、たの方も、私みたいにもう、出していいんですよぉ……おぁっ、んぁ!」

 

シコシコと動く頼光の手も、どんどん速くなっていく。

愛する我が子がこんなにも自分のミルクを欲しがっているのだ。ならばこちらも射精させてあげなければとでも思ってるのかもしれない。

 

「じゅるぅっ!じゅるじゅるうぅ!!」

 

「ひやぁぁ!!あぁっ、だめぇ!幸せ過ぎてぇ、おっぱいが止まりませんぅ!!あっ、あぁっ……!大丈夫ですぅ、母だけが気持ちよくなるつもりはぁ、ないのでぇ、うふぅ!!……はぁっ、あなたもだしてぇ……たくさんぅ、おちんちんのミルク出してくだひゃいぃっ!!」

 

はしたなく屹立して乳頭から出る乳液、これ以上無いぐらいに勃起している肉棒を汗とカウパー腺液にまみられた手で扱かれる刺激、耳を蕩かす頼光の嬌声。

溜まった精子を解放する材料は十分過ぎる程に揃っていた。

 

左胸だけに歯形の跡が残っているのもバランスが悪いと思った俺はどうせならと、先程と同様に今度は右胸に噛み付く。

 

「ひやあああああぁぁっっ!!」

 

「んむぅっ……!!」

 

頼光がイクのと同時に飛び出した白濁液は彼女の顔まで汚していくほ程の勢いだった。

 

「はぁっ!あぁ……あぁぁっ!あんぅ、こんなにもた、くさんぅ……キモチよくなってくれたのですね……ぇろぉっ……」

 

顔にかかったそれを舐めとり、じっくりと口に含んでいく頼光。

俺の口内には未だ注がれている彼女のミルク。

射乳と射精。

お互いの性欲の爆発の証として放出された淫液は二人にとって極上のご馳走だった。

 

「あら……」

 

だが、それでも萎えることのない我が分身は脈打ち滾ったまま。

 

「あらあら、まぁまぁ……!えぇ、大丈夫ですよ。子供は元気が一番ですからっ、母がもっともっと、イイ所で甘やかしてあげますね、うふ、うふふふ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

膝枕からの授乳手コキの時間は終わり、俺はベッドへ仰向けになっている頼光にのしかかっていた。

 

俺は既に衣服は剥かれ、生まれたままの姿だったが彼女の服装は先程と変わってはいない。

ただまぁ、露出度が露出度なのでほぼ全裸と変わらないと言ってもいいのだが。

 

「さぁ、遠慮せずにもっとギューッとしていいんですよ。あ、それとも母から抱き締めた方がよろしいですか?それっ!恥ずかしがりやさんにギューッ……!」

 

有無を言わさず、抱き締められた俺の頭は頼光の谷間に埋まる。セーターの束と俺の頭がすっぽりと収まるそのサイズは見事としか言えない。

このまま窒息死しても我が生涯に悔いはないッと拳を掲げてしまいそうになる。

 

「あんっ…………ふふっ、今、私の中でピクンッてしましたよ、また白いのピュッピュッてしたいのですか?」

 

挿入はもう済まし、繋がり合った状態……今、この瞬間まで俺は動かずに彼女に抱き締められたままでいた。

やっぱり年上おっぱい枕に甘えるのって最高だと思うの。

 

身長がほとんど変わらない俺を上にしても幼子をあやすが如く好きに甘えさせてくれた頼光は腕だけではなく、今度は脚も腰にまわして、逃がさないようにした。

 

俗に言う'だいしゅきホールド'をされた俺はそろそろ腰のストロークを開始したかった。

その事を察してくれたのか、彼女は朗らかな笑みを浮かべる。

 

「ふふっ、動かしたいんですね……いいですよ、母のおまんこの中でたくさん動いて……いっぱいピューってして下さいねぇ……んくっ、あぁぅ、あぁっあぁ!はああぁんぅ!」

 

お言葉に甘えて、プレスするように腰をぶつけ始める。

竿を擦ってくる膣内の感触も良いが、出し挿れする度にクッションになる巨乳の感触も興奮状態をさらに高めさせてくれる。

 

「あぁっ!ひアぁっ……!一生懸命に、腰をうごかぁしてぇっ……!そんなに母を求めてくれるのですねぇ……あぁ!…ふぁっ、だ、めぇ!おっぱいから、またでちゃうぅ……!」

 

頼光は性的に興奮すると、乳が出てしまう体質なのか、気づいたら先端からはまたミルクが溢れ出していた。

あぁ、このまま垂れ流しなのも勿体無い。俺がちゃんと栓をしてあげなければ。

 

「はむぅっ、んちゅぅっ!」

 

「ひゃうぅぅっ!!」

 

本日何回目になるかわからない飲乳、しかも今度は左右の乳首をまとめて吸い付いた。

前後運動で離さないように唇と歯で両方の十分過ぎるサイズへと勃起している乳頭を咥える。

おぉ、おっぱいが伸びる伸びる。

 

「ひあぁ!あぁ、あぁっ!おっぱいがぁ、と、れちゃうぅんぅ!ひあぁぁ!んぁっ……!!」

 

四肢で抱擁され、母の温もりを感じても、その様は男女の交わり以外の何物でもない。

ベッドを軋ませながら、子宮を突いていく。乳に貪りつき、まるで咀嚼音のような卑猥な音を響かせながら。

 

「あんんぁぁ!まだ、大きくなるぅっ……!あぁっ!あぁ!子に乳を上げながらぁぁっ!犯されてぇっるぅ……んはあぁっ!!」

 

俺をホールドしている彼女は逃がさんとばかりにどんどん力を込めていった。

全身で余す所なくお互いの体温を感じ合っている……まるで一つに溶け合いそうな程に……。

 

「だしてぇぇっ!母のぉ…おへやにぃ……子の精子をぉっ、ああぁっ!あんぁぁっ!あうぁぁ!孕ましてぇぇっ……愛おしいその子種でぇぇ!!」

 

膣内にある肉棒の限界が頼光にもダイレクトに伝わったのだろう。

せがみ、叫ぶ彼女に、口が塞がれている俺は熱い刃を奥まで突き刺す事で返答した。

 

「おぉっ!あぁ!あ!ぁぁあっ!はアぁあああぁっんんぅぅうっ―――!!!」

 

――ピュルルルルルルゥッ!!

 

ご要望通り、頼光の赤ちゃん部屋の入口に到達したその瞬間、ペニスの先から飛び出した射精音と彼女の噴水のような勢いで放出される乳液の音が重なった気がした。

溜まった物を出した解放感と彼女のミルクによって胃を満たされる満腹感……この二つを同時に味わうとは貴重な経験をしたなーと思ってみたり。

 

「はぁ――ぁっ、あっ、あぁ……子に乳を与えながら、その愛する我が子に情欲を子宮に注ぎ込まれる……あぁ、素晴らし過ぎて……癖になってしまい、そ、うで、すぅ………」

 

「おや?」

 

「…………んぅ」

 

夢心地な様子の頼光ママはそのままゆっくりと瞼を閉じた。

あら、そんなに満足してくれたのならマスター、いや……息子冥利に尽きるが、もしかして眠っちゃったのかな?まだアソコも繋がったままだというのに。

 

 

 

 

「……いえ、起きてますよ。だって夜はまだまだこれからですもの、ここで終わるなんて寂し過ぎるでしょう?」

 

俺の独白が聞こえたかのように目を開き、狂気に満ちた瞳を爛々と輝かせ、嗤う頼光、いや……。

 

「おはようございます。()()()

 

「あら、気付くのがお早いこと」

 

「いや、二人の変化は結構わかりやすいよ」

 

俺の返答の何が面白いのか、さらに口を歪ませるは頼光のもう一つの側面、魔性の面、バーサーカーたる彼女の狂気の発端とも言えるかもしれない牛頭天王の化身、その名も『丑御前』。

しかし、こうして表に出たのは久々な気もする。まさかこのタイミングで現れるとは思ってなかったが。

 

「だって頼光(わたし)ばかり楽しんでずるいじゃないですか。私だって牝の園が溶けてしまうほどに我が子と愛し合いたいというのに……」

 

二人の淫液が漏れ出している結合部を愛おしそうに撫でていた丑御前は蠱惑的に眼を細めると、俺を押し倒し、騎乗位の体勢に入った。

さっきとは逆の位置関係、彼女は頼光の時とは異なる笑顔で俺を見下ろしていた。

 

「えぇ、どうやら頼光(わたし)は乳飲み児のようにあなたを甘やかしていたようですが……私はもう少し熾烈に責めさせてもらいますよ。身動きが取れないあなたのココを容赦なく絞り出してあげます……動く必要は無いですから、これも私なりの甘やかしだと思って下さい。あなたはただただ母の蜜壷の感触に震えて啼いてくれるだけでいいのですから」

 

なるほど、どうやら丑御前の方は逆レがお望みのようだ。

まぁ、それはそれで十分役得なのでこのままされるがままなのも悪くないのだが……。

 

「よいしょっと!」

 

「え……?きゃぁっ!?」

 

上に乗っかったぐらいで身動きを封じたと考えるのはさすがに浅慮じゃないかな、丑御前。

俺は腹筋と足に力を入れて、押し返すように跨っていた彼女を払いのけた。

 

まさか抵抗されるとは思ってなかったのか、挿入されていた性器も抜けて、まぬけな感じで頭からベッドにうつ伏せで倒れた丑御前……残念だが考える時間を与えるつもりはない。

セーターの裾部分を膝裏まで拘束するようにずり下げる。

 

胸と同じく抜群のプロポーションを誇る巨尻の前に立った俺はそのまま……。

 

「あなた、一体何を………ま、待ちなさいっ!そこは違う穴……おおぉあぁぁっ!!」

 

菊門の方に剛直を挿し込んだ。中は当然狭いが、頼光の時に散々交わったおかげか、愛液と精液でまぶされている男根の滑りは悪くなかった。

 

「おっ!あぁぉっ!ひあぁぁ!な、何故、こんなことをぉぉっ……!」

 

「うーん、頼光さんの時だったらこんな事はしないかもだけど、あなたはどっちかというとこういう方が好きでしょ?征服されるように責められる方が」

 

多分だけど、この間のお仕置きで胸を叩いて頼光さんが感じてしまったのって丑御前の魔性の面が出てしまったせいだと思うんだ。だって頼光さん自身はさっきみたいなプレイがお気に入りの筈だし。

つまり、丑御前の性癖はM……。そしてその仮説を証明する為に現在俺は検証をしているわけであります。

 

「よ、世迷言をぉっ……おぉ、おほぉぁぁっ!!」

 

「ほら、恥ずかしい声が漏れちゃってるよ。やっぱり好きなんでしょ」

 

ベッドの上で四つん這いになっている丑御前はこちらを振り返り、睨みつけてくるが、俺が腰を動かしアナルを責め立てると目尻を下げ、扇情的な声を上げてしまっている。

 

「こ、こんなぁっ、おぁっ!こんな獣畜生のような恰好でぇ犯されてもぉぉっ!気持ちよくなんてぇっ……んひぃいぃい!」

 

ほう、まだ抵抗しますか。ここはもう少し素直になれるように躾けた方がいいのかな。

右手は臀部を掴んだまま俺は左手で彼女の尻を叩いた。

 

――パシンッ!

 

「おぉぁあっ!!」

 

――パシンッ!パシッパシンッ!

 

「おほぉっ!…おぉあぁっ!やめっ!……私を怒らせたいので、あああぉぉっ!!」

 

彼女の批難を中断させるように何度も何度も叩く、その度に腸道はよりキツくなり俺のペニスを締め上げ、獣のような嬌声が部屋に響き渡る。

 

――パン!パンッ!パシッ!パシンッ!パシンッッ!!……

 

「おぉっ!おあぁあっっ!おほぉ!……あおあぁっ!!おおぉ!!」

 

腰を叩きつける音、お尻をスパンキングする音……。

彼女の尻肉は波立つように揺れ、肌はどんどん紅葉色に染まっていった。

もはや丑御前も抵抗する余裕も無くなり、ただ悦楽の咆哮をあげるだけだった。

 

 

「ほぉっ……あぁ、んおぉ……」

 

お尻を叩くのは一旦中止し、抱きしめるように胸板を彼女の背へピタッっとつける。

今度は後ろから手を伸ばし、その目立つ巨峰を搾るように握った。

 

「ひやアアあぁぁあぁっ!!」

 

指で輪っかを作るように胸を掴んだ俺は頼光の時と同じ……いや、それより激しく乳を引っ張り出させるように搾り込んでいく。

深青の髪を振り乱した丑御前は乳頭からミルクを垂れ流し、シーツを汚していった。

 

「んひぃあぁ!……あぁ!あぁんぅっ!ひぃ、乳がぁ!出るのがぁ!止まらなひぃっ!!……あぁ!なぜ、わたし、こんなにキモチよくなぁってぇぇっ!!」

 

限界がないのか彼女の乳液はどんどん放出されていく。こんなプレイで快楽を得ている事を認めたくないようだったが、躰は限界を表現するようにガクガク震えていた。

俺はそんな丑御前にとどめを刺すように耳元で囁く。

 

「口に出して、認めた方がもっと気持ちよくなるよ」

 

「ほぉっ!あぁぁっ!!……わ、わたしはぁ…鬼で、魔性でぇ、異形でぇっ……」

 

「あぁ、わかっている。けどお母さんでもあるでしょ……。息子の、俺のどんな変態的な欲求も、あなたには受け止めて欲しいな」

 

「あんぅっ!なんてずるい子ぉ!……そ、そんな言い方されては、わ、私はもう受け止めるしかないではありませんかぁぁっ……!」

 

「……うん、ありがとう。お母さん、じゃあ、ナカに出すから」

 

「はいぃ!この、無様に乳を垂れ流す母に好きなだけ注ぎ込みなひゃいぃっ!激しくぅ!苛め抜いてぇ!!……はぁ、はぁっ、私はあなたのすべてをぉっ……!おっ、おぉ……おほぉっ……」

 

肉棒全てを埋め込むように腰を前に突き出す。

全身を密着させた俺は母である丑御前に甘えるように全てを解放した。

 

「んああおおおおぉぉぉあぁっ!!!んんぅ!ほぁっ!んほぉ……!あぁっ……んぉ」

 

俺の射精だけではない、彼女自身も躰を渦巻く情欲全てを解放するように胸からは乳液を、女陰からは潮を……盛大な飛沫としてシーツに大きなシミを作っていた。

 

「……荒々しくも雄々しい子の欲望をこの一身で受ける……はぁ、これほど、母冥利に尽きることもありません……あぁ、愛しい愛しい我が子よ……どうか、また私を…………」

 

最後の最後で幸せそうな笑みを浮かべた丑御前はそのままうつ伏せで眠ってしまった。

きっと次に目を覚ましたら、頼光に戻っているだろう。

それでもまた鬼子である彼女の方と再び出会う事があるのなら俺は何一つ恐れることなく欲望をぶつけようと思う、童のごとく。

一つの体で二つの親子関係があってもそれはそれでアリだろう?

 

 

 

 

 

 

 

 




【カルデア英霊掲示板】 お母さんクラブNo.18




081:母王招来
我が子が乳を吸ってくれた後に自分の胸に歯形がついていると凄くキュンとしませんか?


082:ブリテン圏お母さん
あぁ――……気持ちがわからないでもないかな。こう、子供っぽく自分を求めてくれた証が目に見えて残るのは母性本能を刺激されるよね


083:母王招来
そうなんですよっ!!……ただ、その歯形も少ししたら、無くなってしまうのが非常に残念で……


084:ブリテン圏お母さん
そこは仕方ないんじゃない?だって私達サーヴァントはそれぐらいの跡はすぐ治っちゃうでしょ


085:母王招来
えぇ、ですがあの子ったら、「無くなったらまたつけてあげるよ。何度でも、頼光ママの気が済むまで」って!って!キャアアア――!!


086:ブリテン圏お母さん
アーウン、ゴチソウサマ


087:踊り娘系非戦闘員
あらあら……そういう話を聞くと私も彼に甘やかされてばかりじゃなくて、たまには甘やかしたくなってしまうわ


088:母王招来
いえ、あの子もただ甘やかされてるだけではありません。私の魔性の面が暴走してしまったらキチンと躾けてくれるのですよ。母として、情けない所だとは思っていますが、それでも自己嫌悪に入りかけてしまう私を気遣うように甘えてくれるのです。むしろその甘えに私は救われているのかもしれませんね。


089:踊り娘系非戦闘員
甘やかしているつもりが、彼の甘えに甘えてるって事かしら、ふふっ、あべこべみたいね


090:母王招来
これも一つの親子のあり方でしょう。母が子に甘えてはいけないなんて決まりはないのですから。


088:かいにんするよ
わたしたちもおかあさんにおっぱいちゅーちゅーさせてあげながら、頭なでなでするとすごく気持ちがぽかぽかするよ。これも親子のありかた?


089:母王招来



090:ブリテン圏お母さん
えーと………


091:踊り娘系非戦闘員
バブみというもの、かしら、ね……?





「何故だ!何故、私はこのスレに入れぬのだっ!!」
バン     バンバンバン
バン (∩`・ω・) バンバン
 _/_ミつ/ ̄ ̄ ̄/
   \/___/ ̄ ̄






Q.頼光マッマに童貞を殺すセーターを着させた理由について。
A.とくにりゆうはないです。



Q.丑御前とのプレイについて。
セイバー・リリィ「私のだぞっ!!」







あらゆるサーヴァントのミルクを飲んですくすくと育つ、ハイブリッド健康優良マスター。
節分のシーズンはもう過ぎたので、「鬼はそとー」ではなく容赦なくナカ出しでした。まぁ、ある意味「福はうちー」でもあるのでいいと思います(なにが?)。



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CHAOS;SEX(デオン&マリーアントワネット)

なんとかギリギリ2月中には投稿できた…………。
パッと見酷いタイトルだけど意味があるものだと思って欲しい。







タイトルから察した人もいるかもしれないけど、ふたなり要素アリです。一応ご注意をば。それと今更になって「独自設定」のタグを追加させていただきました。

39話目にして初の性別不明鯖で御座います。



私の名はシャルル・ジュヌヴィエーヴ・デオン・ド・ボーモン。

生前はフランス王家に忠誠を誓い、男として、女として、騎士として、仕えていた。

性別なんて物は君達が都合の良い方に思ってくれて構わないよ。

どちらになろうとも私が白百合の騎士として、フランス王家、マリー王妃、そしてご主人様(マスター)の為に剣を振るう事は揺るぎないのだから。

 

恐らく、私は恵まれている。

こうして、サーヴァントという身になっても生前のようにフランスの為に……ひいては世界の為に戦う事が出来るのだから。

 

かの特異点では自らの意思では無いとはいえ、その忠誠に背いてしまった事もあった。

だが……このカルデアで召喚され、かつての過ちを償う機会もこうして与えられた。敬愛すべきマリー王妃の側でまた共に歩む光栄を許されている……身に余る思いだ。

 

 

「着替え終わったかしら、デオン?」

 

 

あぁ、だがら私は恵まれている。間違いなく恵まれているのだ。

 

 

「トレビアン!やっぱり私の見立ては間違ってなかったわね!じゃあ、一緒にさっき教えた通りのポーズを取るわよ!」

 

「………………はい」

 

「せーの、おいしくな~れ♪ヴィヴ・ラ・メイド♪あーんど、ちぃーす!」

「……お、おいしくなぁれ、ヴィヴ・ラ・メイド、あ、あんど、ちぃすぅ……」

 

たとえ、王妃の自室で着せ替え人形にされようとも、メイドの格好で両手でハートを模った奇妙なポーズを取ろうとも私は恵まれているのだ。

恵まれていると言ったら、恵まれているのだ。泣いてなどいない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう、デオンったら、もっと元気良く笑顔を振りまくようにしないと駄目よ。せっかくお揃いのメイド服ですもの。あ、それとも別の服の方が良かったかしら?」

 

「いえ……貴女から賜ったお召し物です。蔑ろにする事などあり得ませんが……さっきのポーズと媚びるような笑顔は一体如何様な意味が……?」

 

使用人が着るものだろうと軽んじていたが、うむ、私はともかくとして、目の前の王妃が着ているとこうメイドという職業も神聖な物に感じてしまうな。

それでもさっきのポーズに関してはどうかと思うのだが。片足をあげて、ハートマークを作って、ウインクして……後、「あんど、ちぃーす」ってなんだ。

 

「あら、あれはメイドとして必須項目よ。マスターも物凄く喜んでくれたもの、だからデオンも練習して今度二人で、いえジャンヌ達も入れて5人でお披露目してもいいかもしれないわね」

 

「ま、マスターの前でさっきのを……」

 

想像すると恥ずかし過ぎるのだが、いやだが……王妃がこう仰ってマスターもお喜びになったという事はあのポーズもメイドとして何か意味がある物なのだろう、私だけの狭い見識で判断するのは良くないな。

 

「けど、そうね……デオンが他のを着てみたいというのなら、まだまだたくさんあるわよ。あっ、そうだわっ、今度は貴方とも一緒に海に行きたいし、水着でもどうかしら?」

 

「み、水着です、か……」

 

もう既に散々着せ替え人形として振り回され疲弊していたが……うん、大丈夫だ。私はまだ戦える。もう色々と慣れたし、諦めた。どんな服が来ようとも恐れることは無い。なんだって来るがいいさ。

 

それに王妃が望むなら、女性として太陽の下この身を晒すのも吝かではない。

だが、水着かぁ……この間マスターが写真で見せてくれた海辺にいる王妃がワンピースを纏いはしゃいでいる姿は素晴らしい物だった(何故かシークレット物と書かれた袋の中身は見せてもらえなかったが)。

なら、私もその隣にいて恥ずかしくない装いをしなければ……しかし、王妃は一体どんな水着を、を、を…………。

 

「あの、王妃……?それは水着なのでしょうか?どう見ても()にしか見えないのですが」

 

「えぇ、スリングショットという物よ。名前もちゃんとあるわ、確か……『あかいイナズマ』だったかしら?ほんのちょっぴり露出は多いけど、水着でそれはむしろ美徳よ。デオンは綺麗な肌をしているもの、それを隠すなんてもったいないわ!」

 

「いやいやいや!ちょっぴりとかいうレベルではないでしょう!もう局部だけを隠して、何とか服の体を成しているというか……それを着るぐらいならむしろ全裸の方が恥ずかしくないのではと思うのですが!」

 

なんてエグい物を出すのですか、王妃は!?

こう少しでも激しく動いたらアレな物がはみ出してしまいそうだぞ!

というかお尻とかこれもう丸見えではないか!

もしこんな水着を着る奴がいるとしたら、痴女か露出強?の類いであろう!

 

「こらっ、全裸の方がいいなんて、レディにあるまじき発言よ。そんなはしたない事を言うような娘に育てた覚えはないわ、デオン」

 

「あっ、は、はい……申し訳ございません王妃」

 

母のような彼女の物言いについ謝ってしまったが、これは私が悪いのか?というよりもそんな水着を着てしまう方がはしたないような気がするだが……。

 

「ふふっ、わかればいいのよ。じゃあ早速着てみましょうか。コラコラ、逃げちゃ駄目よ」

 

デオンはマリーの部屋からにげだした!

しかし、まわりこまれてしまった!

 

部屋の外へ駆け出そうとした瞬間に腕を掴まれて逃走を阻まれる。

な、何故振りほどけない!?王妃の筋力はDの筈なのに!

 

「さぁ、じっとして頂戴。暴れちゃ駄目よ……フフフッ」

 

いーやーだー!!たすけてぇ!!マスター!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フフッ、ごめんマスター。私の体、穢されてしまったよ……。

 

とまぁ、その後V字型の水着だけではなく、ネグリジェ、セーラー服、ボンテージ、裸エプロン、魔法少女なるコスチューム等々を王妃と共に着せられるハメになった(真っ当な衣服とは思える物がほとんどないのだが)……しかし、王妃があんなに楽しそうにしているという事は現代の流行りなのかもしれない。

何というか……ジェネレーションギャップを感じずにはいられない。私が生きていた時代とはもう異なるという事か。

 

そう考えると、それに順応し、心から楽しんでいるマリー王妃は誰よりも柔軟で自由なのだろう。

うん、それでも私を玩具にするのはほんの少しだけ控えて欲しい所なのだが。

 

「どうかしらデオン?今着ているのはマスターの国の伝統的な衣服らしいのだけれど」

 

「はい、素晴らしくお似合いです。遠くの異国の民族服ですら難なく着こなすとはさすが王妃です」

 

確か、『着物』と言ったか……目の前の王妃が来ている花柄で彩られている赤色の着物。

頭の大きめの花飾りが彼女の可憐さをより引き立てているようだった。

しかし、いつもの服といい、水着の時に頭に乗せていた蟹といい、王妃のトレンドは頭の上に何か赤い物を乗せる事なのだろうか?

 

「もう、違うわよっ、今はあなたの着心地を聞いてるのよ?」

 

「あっ……こ、これは失礼しました。はい、非常に落ち着いた印象を抱き、私達の国ではこういった類いの服は無かった筈なのに何故か少し安心します」

 

私が今着ているのは「良かったわ」と笑う王妃と対照的な水色の着物。

金色の髪もおろし、自分で言うのもあれだが見た目は完全に女性だ。

 

うん、ただまぁ、少なくとも今まで着せられた服の中では一番マシな服だと思う、露出も殆ど無いし。マスターの国の服か……存外に悪くないな。

 

「しかし、随分と手慣れていましたが一体誰に着せ方を教わったので?」

 

「えぇ、清姫さんよ。まぁ、着物を着ている方々は他にもいるから教わるのに不便は無かったわ。ふふっ、今度はもっと違う……着崩すように着てみようかしら?」

 

「それは出来れば遠慮してください……」

 

 

沖田総司――返り血がつきそう。

両儀式――着物に革ジャン?パンク?

玉藻の前――露出多し、却下。

酒呑童子――論外。

 

……こう考えると、確かに教わるのはあの竜の娘が一番かもしれない、中身を一切考慮しなければの話だが。

王妃に悪影響がないことを願おう。

 

「デオン……あなたにはやっぱり可愛らしい衣装がホントに似合うわ。女の子ですもの、お洒落はたくさんしたいわよね?そうね、今度は女の子の夢でもあるウエディングドレスでも着てみましょうか?」

 

「う、ウエディングドレス!?私がですか!?」

 

いや生前確かにドレスは着る機会はあったが……さすがに花嫁衣装はこれまでの物と別種の恥ずかしさがあるというか……。

そんな満面の笑みで押し付けないで下さい王妃!

 

「あら、嫌がっては駄目よデオン。ウエディングドレスは女の子の夢……海賊だろうと、人斬りだろうと、鬼だろうと、聖女だろうと着てしまえばみんーな素敵な奥様になるの。さぁ一緒にヴィヴ・ラ・マリッジ♪」

 

「わ、私はサーヴァントで、騎士ですから!そ、それに生涯独身を誓った身ですし……そういう物とは一切縁が無くても……」

 

「それは勿体無いわ!そんな女性としての人生を半分捨てるような発言を私は認められないもの!サーヴァントとか騎士とか関係ないわ、いえ、むしろサーヴァントとマスターの関係は伴侶のような物じゃない!あなたがこれを着るのに何の問題があって?」

 

「で、ですが……」

 

ズイッ、ズイッと花嫁衣装を抱えたマリー王妃がどんどん私を壁際の方へ追い立ててくる。

 

「それに想像してごらんなさい……ウエディングドレスを着た貴女がマスターの前に立つの」

 

()()()()()を着た、私が、マスターの前に…………?」

 

 

 

 

『……マスター』

 

『とても綺麗だよ、デオン』

 

『……っ!いい、のかな。こんな私が……』

 

『何故そんな悲しそうな顔をしてるんだい?今日は二人にとって祝福される素晴らしい日だろう。今は君に笑って欲しいな』

 

『だけ、どっ……私は、私はっ、男なのか女なのか性別の境目すら曖昧で、王妃には”デオンは本当に名うてのスパイでしたの?もしかして可愛いから敵に見逃されていただけではないかしら?”と言われる程にポンコツで、尻から星を出す仮面変質者からは何故か仲間意識の目線を向けられて、さらには筋力もAで……そんな私が花嫁としてご主人様(マスター)の隣に立って良いのだろうか……っ』

 

『そうだね、ここで俺が何を言ってもデオンは自信の無さを拭い切れないかもしれない……なら、まずは君を花嫁として選んだ俺を信じて欲しいかな。デオンが奥さんとしての自分を好きになれるように俺が隣でずっと頑張るからさ』

 

『あっ、マスター……』

 

 

――ゴーン、ゴーンッ…………

 

――晩鐘は汝らの祝福を指し示した。唇を出せ……告辞の羽――

 

 

『まずはキスから誓いを始めようデオン』

 

『は、い……あなた……』

 

 

 

 

「……………………いい。ハッ!」

 

「その顔を見る限り、もう答えは決まってるようねデオン」

 

わ、私は誇りある白百合の騎士!そんな、そんな……花嫁衣装になんて、ま……負けたりしないッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の名はデオンくんちゃん。

マリー王妃のオモチャで、ご主人様の花嫁だ。

性別?ウエディングドレスなんて着ているんだ!体がどうなろうと雌に決まっているだろ!いい加減にしろ!

 

「りんごーん、りんごーん……フフフ、花嫁衣装には勝てなかったよ……」

 

真っ白なウエディングドレスで真っ白に燃え尽きた私。

 

もう外交官として、スパイとして、剣士としての面影なんてそこには無い……いや、メイド服を着た辺りから無かったねそんなものは、そもそも彼女から贈られるドレスを断るなんて選択肢を私が取れるワケもなかったのだが。

 

マリー王妃?

『今の姿を見るだけなんて勿体無いわ!ちゃんと形にあるものに残さないと!ちょっとゲオルギウス様からカメラを借りてくるわね!』とノリノリで部屋を出て行ったよ。

うむ、せめて扉ぐらいは閉めて行って欲しかったが……。

 

「というか、これは逃げるチャンスだよね……?」

 

王妃には申し訳ないが、今回はもう体調が悪いという事でお暇とさせてもらおう。

これ以上付き合うと自身のアイデンティティとか何か大事なものを失う予感がするし。善は急げ、今すぐこの場から――……。

 

 

「あれ?マリーの部屋なんで開いたままなんだ?というか誰もいないじゃん」

 

 

(はあぁっ――!はあぁっ――!)

 

あ ぶ な か っ た!!

 

廊下から気配がして思わずクローゼットの中に隠れてしまったが……まさかマスターだったとは、いやどうしよう。こんな姿で出るわけにもいかないし、益々この部屋から離れられない状況になってしまったのだが。

 

「むむむ、主がいない部屋に脱ぎ散らかされたアレな衣装……開いたままのドア……事件の匂いがする」

 

焦って隠れたためかクローゼットの扉は完全に閉め切られていなかった。

その隙間から何とか外の様子は窺えるが……ってマズイ!私、他の服達も片づけていなかったじゃないか!

 

「………………」

 

(やめてー!そんな私が脱いだ物をマジマジと見ないでくれマスター!駄目だからね、ソレで何かよからぬ事をしたりとか)

 

「取り敢えず、片づけるか」

 

アッ、ハイ。綺麗に畳んでくれるんですね……。

なんだろう、この安心したようなガッカリしたような気持ちは。いや、うんマスターは信じてたよ。そもそも紳士たるマスターがレディの服に劣情を催すことなんてあるワケないじゃないか……ドキマギして欲しかった気持ちも少しぐらいあったが。

 

 

「あら、マスター何をしてるのかしら?」

 

くっ、王妃が戻ってきてしまった……いよいよ逃げるタイミングを逸してしまったなこれは。

 

「何をしてるのかしらはこっちのセリフだよ。ドアも開けっ放して服もちらかしっぱなし……ちょっと不用心じゃない?せめて一人ぐらい留守番を任せるとかさ」

 

「え?デオンがいなかったかしら?」

 

「いや。俺がここに来た時は誰もいなかったよ。……成程、大方デオンを着せ替え人形で楽しみ過ぎて逃げられた所かな?」

 

マスターの察しが良すぎる。正確に言えば逃げれてはいないのだが……。

あぁ、だが王妃のシュンとした顔を見てしまうと無性に胸が痛い。

 

「ほらほら、そんな落ち込んだ顔しないで、せっかく綺麗な格好してるんだから」

 

「……なら慰めてくれないかしら?そうね、今の姿ならマスターの国にある遊び……『悪代官ごっこ』をしてみたいわ!」

 

先程とは打って変わって目を爛々と輝かせた王妃に「……うーん、遊びというべきなのだろうか、あれは……」と苦笑しながらもマスターは彼女の帯を掴むとそのまま。

 

 

 

「そーれっ!よいではないか~、よいではないか~」

 

「あ~れ~、おやめください~」

 

それをどんどん引っ張り続けた。

マリー王妃がコマのようにグルグルと回転し、腰に巻かれていた帯が完全に外れるのと同時にベッドの上にうまく倒れこんだ。

 

(なっ!?こ、これがマスターの国の遊びなのか?というか王妃!着物が肌蹴ています!殿方の前ですよ!ちゃんと隠して下さい!)

 

そんな私の願いも空しく、王妃は脱げかけている服を直すことはなかった。むしろ目の前のマスターを誘惑するようにどんどん無防備な体勢を取っていった。

 

「ふははー、観念しろ。もう誰も助けになど来ないぞ……お前はここで俺の慰み者になるのだ」

 

「なんて非道な、私はここまで許すつもりなんてなかったのに……」

 

「お前の意思など関係ない、どこまで許すかはこちらが決める事だ」

 

「あぁっ、やめて!触らないで下さい……!」

 

(こ、これは……「そこまでだ!この悪漢!王妃から離れるがいい!」みたいな感じで私が飛び出すべきなのか?だが、マリー王妃もやめてとは口では言いながらも申し訳程度の抵抗しかしていないし、顔も緩みきっているし……これも含めてさっき言ってた『悪代官ごっこ』というやつなのか?)

 

寝具の上で王妃の着物をズリ落とさせていくマスター。

露わになってしまった王妃の上半身を両腕含めて抱きしめ拘束していた。

 

マスターとサーヴァントの力関係を考えれば、彼女はそこから難なく抜け出す事だって出来る筈……それをしないということは王妃にとってもこの状況は望んでいるものなのだろう。

 

「柔らかく、温かいな。ふふっ、揉み込むと心臓の音まで伝わってくるぞ」

 

「あっんぅ……ふぅ、ひぁっ……胸、弄らないでください……」

 

(そ、うだ……これはマスターと王妃の二人の逢瀬だ……なら邪魔するべきではな、い。…………私がすべきことは目を瞑り、ここでじっと事が済むのを待つことだけ……)

 

だが、そんな私の独白とは裏腹に我が瞳は二人の情事に釘付けになったままだった。

マスターと王妃がこのような事をする間柄だったという衝撃を忘れさせる程には私は目の前の光景吸い込まれていたのかもしれない。

 

(あぁ……マスターの大きい手が王妃の胸をあんなに歪ませて……)

 

王妃に誘われて、一緒に浴場へ行く事もあった。

彼女の裸を目にするのは初めてではない。

だが……異性の手で悶え、これでもかというぐらい女の性を見せつけられるのは初めてだった。

 

全盛期程の大きさはないとはいえ、それでも十分過ぎるぐらいに整った美胸から王妃はひたすらに快楽を受け取っていたように見えた。

 

「ひぅ、ふぁっ……あんぁぅ、や、めて……ソコはお願いぃ……あんぅ!」

 

「どんどん蜜が溢れてくるな、この状況でも感じていたのか。この淫乱娘め」

 

「ち、がぁっ……ぁあっっんぅ!!」

 

普段なら許せないような王妃に対する物言いさえも気にかける余裕がなかった私は二人の色事に夢中になっていた。

王妃の真っ赤な和服は未だ腰の辺りで留まっていた為か、下半身はこちらからは見えない。

それでもそこに差し込まれたマスターの腕とこっちにまで聞こえてくる水音が二人が何をしてるのかという想像と興奮を煽っていた気がした。

 

(…………は、はやく目を瞑れ。瞑れデオン!こんな覗きのような下劣な行為許される筈がないだろう!だ、だから早くっ…………)

 

「ゆ、びぃ……指がぁっ……あぁっ!はあぁんぅ!」

 

「ほら、イッてしまえ」

 

(あ、あ、あぁっ…………マリー……)

 

自身に言い聞かせてもやはり、瞼は落ちてくれなかった。

想像してしまうのだ、普段は優雅にほほ笑む王妃の艶姿から…………もし、あそこにいるのが自分だったら、と。

マスターに抱き締められ、乱れ、悶えている自分の姿を、どれだけの悦楽がこの体に駆け巡ってしまうのか……と。

 

「ひぃうううう――――……!」

 

王妃が絶頂する姿をこの目に焼き付け、私は息が漏れないように必死に自身の口を塞いでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(あっ、凄い……。あれがマスターの性器)

 

二人は一糸まとわぬ姿となり、向かい合っていた。

王妃の濡れそぼった女陰とは対照的に暴力的までに膨れ上がっていた男性器に私は心の中で感嘆の息を漏らしていた。

 

別に男性器を見るのが初めてというワケではない。時と場合によって()()()()()()()()()()()()()

だが、それでもマスターのモノは自身のモノとは比べ物にならない程に雄を感じさせてくる。

 

性器を剥き出しにした男女がベッドの上にいる。もうこれから行われる事など一つしかない。

 

 

「駄目……そ、れだけはだめ、よ……お願い、ゆるして…………」

 

「ここまで来たら、もう止まらないさ。これからお前が出来る事はもう何もない……ただ与えられた肉欲に犯されるだけだと思うがいい……」

 

「い、やぁぁっ……!」

 

『悪代官ごっこ』とやらは未だに継続中なのか、為す術がない王妃に交わらんと迫るマスター。

王妃は口では本気と思える程の演技力を魅せていたが、自分から開いている股と喜びを隠し切れていない表情が全てを台無しにしていた。

 

(マスターのが……あぁっ、王妃のナカにどんどん飲み込まれてっ…………)

 

「あふぅぅっ!……んあぁぁぁっ……やぁぁっ!はいってくるぅぅっ!」

 

熱く滾ったその剣は王妃の肉蜜へ収まっていく。

マスターの深く吐いた息とマリー王妃の嬌声が聞こえてきた。

 

「あぁっ……!あぁ!ひあぁぁっ……!は、げしいぃぃっ!」

 

「……んっ、あぁ、凄く気持ち良いな、マリー。お前のナカはっ」

 

「ずんずんぅってぇっ……つかないでぇぇっ!おねがいぃっ……んあぁぁ!」

 

(マスターと王妃がまぐわっている…………わ、たしの目の前で……あんなに激しく、突いて、乱れて、声を荒げて……)

 

組み伏せるように王妃の上に乗っているマスター、口ではやめてやめてと言いながらも四肢は彼を抱き締めているマリー王妃。

手で弄った時とは別次元の猥らかな音が私の耳まで届く。

 

(今まで見た事がなかった……知る事もなかった……あの方達の、獣のように重なり合う姿…………)

 

私は少しずつ、少しずつ前のめりになっていた。

クローゼットの隙間から二人の情事をより視界に収めれるように……そして――。

 

「……ぁぅ」

 

手をいつの間にか自身の股の間に擦り付けていた。

 

(………………は?私は、何をやっているのだ?見るべきではない二人の睦みごとを前に……自慰をしているのか……?)

 

侮蔑するような思いに反して、我が手は止まることなく性器を上下に擦り付けていた。

目の前にある性交が激しくなるのと比例して手の動きも激しさを増していった。

 

(よせ……やめろっ……!……こんな覗きをして、あまつさえ敬愛すべきマスターと王妃の交わりで興奮を覚えて、自分を慰めるなんて……そ、んな、そんな事っ……!)

 

「やぁぁぁっ……!子宮ぅ、何度も突かれたらぁっ、お、かしくなりゅぅぅ……んんんぅっ!!」

 

理性は体を止めるように訴えかけても言う事を聞いてくれなかった。まるで自分の体で無くなってしまったのかのように。

二人の濡れ場を餌にして、私は呼吸を荒げ、クローゼットの中で敏感な場所を探すように全身をまさぐっていた。

 

(はしたない……はしたない……たのむ、もう止まって……騎士である私が……こ、んな不貞行為、ゆるされる筈がない……あぁっ、なぜ、なんで私の手は止まってくれないのだっ……お願いっ止まってっ)

 

心でどんなに懇願しても……マスターの姿に、王妃の姿に、()()()()()()()()()()()浅ましい私の自慰は止まる事は無かった。

 

「ナカにっ、出すぞっ……」

 

「あぁぁっぅ!にゃかはだめぇっ……!あぁぁっ!ゆるしへぇっ!……イっちゃうからぁぁっ……イっちゃうのぉぉおっ!ひうぅぅん!」

 

(んぅっ……んんぅ!わ、たしもイキますっ、マリー……!マスター!)

 

「ああああぁぁァンンゥッッ!!!」

 

「…………ッゥゥッ!」

 

彼女と同時に小さく達した私の体は重心を失い、そのまま寄りかかるように扉の方へ――。

 

 

――バタンッ

 

「あっ」

 

 

卑しくも中に隠れて二人の姿で自慰をしていた私の体が投げ出されてしまった。

 

マスターと王妃の瞳が突き刺さる。

 

喉が渇く。うまく呼吸も出来ない。目の焦点があわない。

 

自身の非を認める事を、さっきまで何をしていたのかを、正直に言うことが出来ない。

 

「わ…………わたし、は……」

 

 

 

「やっと出て来てくれたわね、デオン」

 

「…………え?」

 

「もうっ、私が『あ~れ~』って回っている時に『そこまでだ!この悪漢!』って助けてくれないと……。

いつまで経っても出てくれないから結局、二人だけで楽しんじゃったじゃないの」

 

はい?

 

「も、しかして……気付いていらしたのですか?」

 

「だってクローゼットから裾がはみ出してたもん。デオンってたまーに抜けてる所あるよね」

 

純白のスカートを指さしてマスターが笑う。

……な、なんというまぬけっ!いくら慌てていたとはいえ、スパイにあるまじき迂闊さ!

 

「勇み立ち、飛び出した騎士も結局、力及ばず、助けるつもりだった娘と一緒にマスターにおいしく戴かれてしまうっていうシチュエーションを期待していたのですけど……」

 

「マリーの中の俺が容赦なく非道で泣ける」

 

「ただまぁ、私達が二人でマスターに可愛がられるのもいいけれど、私とマスターでデオンを懇切丁寧に愛でてあげるのもいいと思わなくて?」

 

「それは心の底から同意」

 

うん?なんか話の方向が不穏な方に……待って下さい。何故にじり寄ってくるのです?服をっ、いいから服を着て下さいっ!そんなイイ顔で一体何を企んで…………やーめーてー!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふ、クローゼットから出てきた時からあんな扇情的な表情を見せたあなたが何をしてたのか全部お見通しよ。ほらっ、スカートの裾から手を離しては駄ー目。主の情事で一人遊びに耽る悪い子にはお仕置きが必要ですものね?」

 

「う、うぅ……」

 

マリー王妃の言われた通りにスカートの端を摘んだ私は拡げるようにそれを持ち上げていた。

隠された女物のレースの下着が露わになる。

その目の前にしゃがんだマスターと王妃に見せつけるように……。

 

「こうでもしないと、あなたっていつまでもマスターに遠慮したままだもの。少々強引だけど許してね♪」

 

「少々というレベルではないと思うのですがっ……」

 

そんな抗議など、どこ吹く風。二人は私の局部を興味深そうに眺めている。

また先程のいや……それ以上の疼きが甦ってきた気がした。

 

「花嫁衣装も十分に可愛らしかったけど、それに隠された太ももは勝るとも劣らない程に綺麗で滑らかだ。うん、デオンの肌は気持ちいいや」

 

「ひやぁぁ……ま、ますたー」

 

マスターが私の腿を指先でなぞり、到着点の股間目掛けてそのタッチを進めていった。

私の姿を褒め、直接触れてくれる行為に悦びがある一方で、私はマスターにはこれ以上触って欲しくないという気持ちもあった。

正確に言えば、今の()()()()()()()()()を彼の視界に入れて欲しくなかった。

 

だがここで逃げ出した所で後で間違いなく不審がられるし、そもそもこの動揺の極致でもある状態で二人から逃げられると思えなかった。

私が出来る事は願うことだけ。マスターが私を気味悪がらないことを……。

 

「ん?なんか膨らんでいるような……」

 

「ひうんぅっ……」

 

ショーツの上から私の秘部を撫でていたマスターは疑問に思ったのか、ゆっくりとその布を脱がしていった。

 

「あら?……クリトリスにしては少し大き過ぎる気もするわね」

 

「ふむ、所謂ふたなりというやつか……というかマリーも見るの初めてなんだね」

 

「私は体に関しては女の子の方のデオンしか見たことないわ」

 

「もうし、わけ……ございません……。このような不快な、ものを…………うぅ……」

 

淫裂の上にあたる、本来なら陰核があるであろう位置に私の男性たる象徴がそびえ立っていた。

今の私は両性具有、男でもあり、女でもある非常に中途半端な状態であった。

 

「いつもなら性別は切り替えられたのですが……先程からこの状態のまま元に戻すことが出来なく…………」

 

正確に言えば、二人の情事を見て興奮を覚えた所からどうにも体がいつもの調子に戻らなくなってしまったのだ。

 

「あぁ、そういう事ね」

 

王妃が得心したように手をポンと叩いた。

 

「デオンは()()()()()()()()()()()()()、そして()()()()()()()()()()()()()()()()()。私達二人の交わる様を見て、両方の性別がそれぞれの性欲を高めてしまったのね」

 

「その割にはこう言っちゃなんだけど、男性器の部分が少し小さめのような……?」

 

「ひゃんっ!」

 

マスター!気になるのはわかるが、そんなに突かないでくれるかな!

 

「ふふっ、それはデオンが女性だけではなく男性としての部分でもマスターに愛されたいという気持ちがあるから、これぐらいのキュートなサイズになったのよ。どっちの性別になろうともこの娘は乙女心を失っていないんだわ」

 

「……お待ちを王妃っ!そ、それでは私がまるで変態みたいではないですか……!」

 

女性としてマスターに愛されたいという気持ちならまだしも……それに加えて男性としても愛されたいなど性的倒錯者以外の何者でもないではないか!違う……私は断じてそのような――

 

「けどもう自分でもわかっているんでしょう?そんなに動揺しているのが、何よりの証拠。どうしても否定したいというのなら、ちゃんとマスターの目を見て言ってごらんなさい」

 

立ち上がったマスターがぶれる事なく私を見詰め続けていた。

対する私はあんな性器を見せつけてしまった事と自分の中にある歪んだ性癖を知られてしまった事で頭が真っ白になっていた。

 

「デオン。一つだけ前提として言っておくけど、俺に男色の気はない」

 

「……っ」

 

普通はそうだ。当たり前の事だ。マスターは別に悪くない。だが、私の視線はどんどん下を向いていった。

 

 

「ただ、デオンに関してはそれは例外だと思っている」

 

「え……?それはどういう……」

 

「デオンがどっちの性別だろうとも愛する自信はあるし、男の体になったからポイするなんてあり得ないってこと」

 

うつむいていた顔を上げると不適にマスターが笑っていた。

 

「男だろうが、女だろうが、その両方になろうが……俺は()()()ならという理由だけで愛せるよ」

 

「あっ」

 

マスターは何気なく言ったその台詞が私にとってどれだけの意味を持っているのか……どれだけ心の中に歓喜を生み出してくれたのかわかっているのだろうか。

 

駄目だ。今の私は絶対にだらしない顔をしている。けれど、今のマスターの顔から一時も目を逸らしたくなかった。

 

「なら、これから私達がすることはわかるわよね。マスター?」

 

「あぁ、デオンがまずは自分の性器を醜いなんて二度と言わないように俺達の手で滅茶苦茶に可愛がってやらないと」

 

「えっ?あの……ちょっとまってくだ、ああんうぅっ!」

 

私の股座に顔を近づけた二人がそれぞれの性器に口をつけていった。

マスターは女陰に唇を合わせ、舌を伸ばし……王妃は竿の部分を口に含んでいった。

 

「じゅるぅ、じゅぞっ……んちゅるぅっ……」

「はむぅっ、んむぅ……んはぁ、ふふ、私の口で全部隠れちゃうわ。じゅる、じゅぼぉっ……」

 

「あっ、あぁっ、ひぅぅ!……なにこれぇ……あぁっ!すごっ、すごすぎてぇぇ……あんぅ!ひあぁっ!」

 

駄目だ、駄目だ、こんなの頭がおかしくなるっ!

 

敬愛すべき二人の主に自身の欲望の象徴を口淫してもらっている背徳感、実際に脳髄を駆け巡る性的快感。

 

知らないっ、こんなの知らないっ!さっきの自慰が馬鹿らしくなるほどの刺激……!脳が蕩けてしまうっ!

 

「うふぅ、んむぅっ、じゅぱぁ……どんどんピクピクしてるわね、さきっぽからお汁が止まらなくなってるわぁ……あむぅっ、ちゅるるぅ……」

「じゅるっ、じゅぅっ、れろぁっ……こっちからもエッチな汁が溢れっぱなしだ。どっちの性別も堪え性がないんだな…………んじゅぞぞぉっ……!」

 

「ひあぁぁ!あぁっ!あくぅっ!あっ、あぁ……もどれなくなるぅ、こんなの知ってしまったら……どっちにも戻れなくなっひゃうぅっ!はあぁぁっ!」

 

生温かくザラついたものに舐め回されながら包まれる感触、下腹部の中に侵入して縦横無尽に蠢いてくる感触、マスターと王妃の全く違う責め方を異なる性器で受けている私は口から嬌声を垂れ流しにする事しかできない。

 

スカートを持ち上げていた手はいつの間にか下がっていて、浅ましくももっと快感をと二人の後頭部を彼等の全身を包んでしまったスカート越しから抑えていた。

 

大きめのスカートゆえか、傍から見れば今の私の姿は純白のドレスの下に何者かを潜り込ませて喘いでいる卑猥な花嫁。

 

「あぁっ、あんぁっ、ふぁぁっ!きひゃうぅ、なんかきへしまいますぅぅっ!……お二方っ、口をはなひてっ……あひぃっ!」

 

外へと放出したい欲望と膣内で爆発しそうな欲望が迫っていることからマスターと王妃にそう懇願するが、耳に入ってないのか二人の愛撫はどんどん激しくなっていった。

あまりの快楽に腰が引けて、背中がどんどん曲がってしまう。

 

無理だ。耐えられるわけがない。もう頭の中が馬鹿になってしまってキモチのいいことしか考えられない。

 

「あ、あ、あ、いっちゃう、イっひゃうぅ……イく、イクぅ、イっくぅっ……はああぁんうううぅ!!」

 

雌としての鳴き声を上げた瞬間、二つの愛液を放出した。

白く濁ったものは王妃の口へ、無色で吹き出したものはマスターの顔へかけるように……二人はスカートの中にいる為、想像でしかないが、おそらく合っているだろう。

私は絶頂に達して、主人達の顔を汚していったのだ。にもかかわらず、私の躰は形容しがたい多幸感に包まれていた。

 

「んぐっ……んはぁっ、まだ倒れては駄目よ。今度はマスターがあなたの両方の部分を愛してあげるんだから……」

 

腰が抜けてへたり込んでしまいそうになった肩を王妃が掴む。

もう、この行為に耽る抵抗感はどこかに吹き飛んでしまっている。

今の私には次はどんな凄い事をされてしまうのかという期待感しかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

純白のドレスは脱がされ、二人と同様に生まれたままの姿となった私は後ろには王妃、前にはマスター、と直立した状態で挟まれていた。

 

「ちゃんと見るのよデオン、これからあなたを本当の意味で女の子にしてしまうマスターのモノを……」

 

「……はい」

 

後ろから囁かれた王妃の言う通り、私の下腹部近くにあるマスターの肉棒を目にする。

 

「…………ゴクッ」

 

クローゼットの隙間から覗いていた時よりもはっきりと間近で見えるソレは私についているモノとは別次元の存在感を示していた。

 

剛直の先端が女の部分の入り口を擦り付けてくる。

 

「ちゃんとコッチの部分も弄ってあげるよ。両方でキモチよくなってもらわないと意味が無いからね」

 

「んひぃっ!」

 

女性器の方だけ目が行っていた私の隙を突くようにマスターは私の男の部分も握り始めた。

マスターの手に握られてしまうとそのほとんどが隠れてしまうぐらいのサイズだった、私のモノは。

完全に男の時はもう少し大きいのだが、やっぱり王妃の言う通り私は……あぁ、認めてしまうのはまだ恥ずかしいぞっ!

 

「それじゃあ、いくぞデオン」

 

「うん……どちらの私も……可愛がってくれるかい……」

 

バクバクと震える心臓の音を感じながら、マスターの男根が私の膣内へ入ってくるのを見守る。

 

ただ、マスターも挿れるだけではなかった。腰を前に突き出しながら、先程握った私のモノを扱いてきた。

 

「うぅっ、あぁっ、あぁぁっ……!はっ、マスター……その動かし方、いやらしいぃっ、んふぅっ!」

 

指の付け根部分で亀頭をグリグリと押し付けたと思ったら、包まれた皮を伸ばすように手を上下に動かしてくる。

奥へ侵入してくるマスターのペニスの存在を感じながらも、自身の男たるファクターも弄られている。

宣言した通りに私の両方の性別を愛してくれているマスターに嬉しさと気恥ずかしさを覚えつつ、与えられる快感を享受する。

 

「はいったぁっ…………奥までぇ、入ったぁっ……あぁっ!んぅっ!ソコぉ……まだいじめてぇっ!」

 

完全に挿入して切ってもマスターは私の小さいペニスを苛めるのを止める事はなかった。まるで肥大したクリトリスのような感度でもあった為かもう今すぐにでも射精したい気分になってしまった。

 

だがマスターはそんな私を見て、手淫を緩やかにすると今度は腰を動かし始めた。

 

「あへぇぁっ!?な、なんでぇっ……!……もう少しでぇ、出せそうだったのにぃ……やあぁん!」

 

「決まってるじゃない。男女両方のデオンを愛するんだからイクのも一緒じゃないと。さて、と……私もそろそろ参加させてもらうわね」

 

後ろにいた王妃が私の体を抱きしめ、二つの確かな膨らみを背中へ押し付けられているのを感じた。

滑らかに伸ばされた彼女の左手はその爪先で掻くように私の乳首を弄りだした。

 

「あひっ!ひぅぅんぅ!……くすぐったいですぅ、王妃ぃっ……あんっ!」

 

「う~ん、上半身は細いわよね……やっぱり今のデオンは女の子成分やや多めって感じなのかしら?ふふっ、ならこっちの穴を責めてあげたらどんな反応してくれるのかしら」

 

「……ひっ、あぁっ、まって、まってくださいぃ……マリーっ、そっちの穴はぁっ、おあぁぁっ!!」

 

もう一方の手の指先だろう、細いものが私の菊門から入ってきた衝撃により、情けない声が出てくる。

狭いアナルを拡げるように王妃は指を上下左右へ折り曲げてきた。

 

「おぉっ、おぉ、おあぁっ!あぁんぅ!んんぅっ……んひぃっ!!……狂っちゃうっ、こんなのくるっちゃうぅっ!」

 

「いいんだよ、男女の営みってのはそういうものなんだからさ、気兼ねなく狂ってしまいなデオン」

 

「ひっ、ひあぁぅ……おひっ!んあぁっ!あ、あぁ……わたしのちんぽぉ、またイキそうだったのにぃぃっ……あっ、けどきもひいのがまだ続いてくれるぅぅっ……おほぉっ!」

 

私の男性器の部分が射精しそうになったら、手を緩め、抽送を激しくする。射精欲が静まり出したら再び私の竿を激しく扱き始める。その最中に膣襞を抉られる刺激により私の女の部分はどんどん性的絶頂へ近づいていっている。

 

これでは、まるでマスターは見ているだけで私のオーガズムの波を熟知しているようではないか。翻弄されたままの私には彼にしがみつくことしか出来ない。

 

「ふふっ、マスターったら本当に上手……デオンが羨ましいぐらいよ」

 

「へあぁっ……あっ、んほぉっ!あぁっ!もう、男とかぁ、女とかぁ……どうでもよくなるぐらいにぃぃっ、んひゃぁぁっ!はぁぁっ!体がメスになってしまいますぅっ……どっちの性別になってもメスになっひゃうぅぅっ!」

 

あっ、あぁっ!熱くて硬くて、けど暖かくて柔らかい物に挟まれてっ!凄い!凄過ぎる!自分がどこにいるのかすらもわからなくなってしまいそうになる。なんだコレは?なんなのだコレは?ここが天国なのか?

 

乳首も肛門も、陰茎も女陰も責められてっ、生まれたままの姿のマスターと王妃に挟まれてっ……正気を保てるワケがないっ!体だけではない、もはや脳すらも犯されているっ……。

 

「あはぁっ、んあぁ!あっ、はむぅっ!?んちゅっ、んんむぅっ!んじゅるぅ、じゅるぅっ……」

 

ずるい……ずるいよ、マスター、こんなタイミングでキスなんてされたらもう本当の意味で男に戻れなくなってしまうじゃないか……。どちらの体になっても君の前では心が女の子のままになってしまうじゃないか……。

 

…………けど、良いんだよね。マスターはどっちの私も愛してくれるって……私がシュヴァリエ・デオンである限りどんな性別になろうとも愛してくれるって言った。

 

あぁ、挿入されたまま唇を重ねて舌を絡められている私はきっといやらしい表情を隠すことなく君に見せているんだろうさ。

こんな事されたら体はどうなろうとも、心は完全に雌に堕ちてしまうよ……その責任取ってくれるんだよね?ご主人様。

 

「んふぅっ!んんぅ!んちゅぅ!ちゅぅ……ちゅぱぁっ、だしてぇ……そして、私に出させてぇっ、ますたぁっ……あむぅっ、んちゅるぅっ!」

 

二つのオーガズムがようやく重なってくれたのだろう。確実に私の敏感なポイントを突いてくる手コキと腰のストロークは激しさを増していった。

懇願した私はもう一度キスをして彼の体を抱き締める。チカチカと爆発寸前の私の愛欲はいまここで……。

 

「んんんんぐぐぐうううぅぅっ―――!!!」

 

私のヴァギナを埋め付くしてしまうほどのマスターの精液。彼と私の両者の体を汚すように放出された我が精液。

女性としてのエクスタシー、男性としての解放感。本来は同時には感じることのない衝撃が私の体に襲い掛かる。

 

「んぅっ、んぉっ、れろぁ……あへぁっ、あっ、あっ、あくぅ……おあぁっ、あぁっ……んひぃっ…………」

 

絶頂していた瞬間でさえも容赦なく敏感な所を責め続けていたマリー王妃により……唇を離し、だらしなく舌を垂らしている私の口からは余韻に浸るように声が漏れていた。

マスターに未だ貫かれたままの状態である下腹部を愛おしさを込めて自身の男性器ごと撫でる。

そういえば……私とした事が、まだこの言葉を言っていなかった。

 

「んはぁっ、はぅ……マスター、私は君を愛している……この体の()()を、君に捧げたい……」

 

もたれかかる私に「喜んで」と返してくれる彼にこれ以上ないくらいの安心感を覚える。

マリーの「よかったわねデオン」という言葉に私は深く頷いた。

 

うん……後ろめたいものが何もなく、好きな人を愛し、愛されるのはこんなにも素晴らしい物だったんだ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すべて、すべて、我がメイド道にこそ通ず。『すべては我がメイド道に通ずる(メイド・ウォルイッセ・キャッツ)』!というわけで『Chaルディアット』へようこそなのだ!元ネタ的には18禁だがウチは健全優良店。えっちいなのはよくないからな!ただしご主人に関してはバッチこいなのだ!」

 

「お帰りなさいませご主人様!あーんど、ちぃーす!さぁ、ジャンヌも恥ずかしがらずに一緒にやってみましょうよ!」

 

「ち、ちぃーす……?えーと、マリー?その挨拶はちょっと……」

 

「っていうかメイドとかいう可笑しな格好した聖女様を哂いにきたってのに……なんで私まで着せられているのかしら!?」

 

「はぁ――……、成長した私(オルタ)は本当に意地が悪いですね。いいじゃないですかメイド服、私は気に入りましたよ!」

 

 

カルデアのある一室を改造し、ドアを開けばそこはメイド喫茶だった。

マリーの提案とそれにノリノリだったタマモキャットによって始まったメイド喫茶inカルデア、別名『Chaルディアット』。まぁ、あくまでお遊びの範囲ともいえるのだが(けど料金はしっかりと取るよ!)。

巻き込まれてメイド姿になってしまった娘達もちらほらと……。

 

「私としてはどうして本来のご主人ポジションでもあるマスターがメイド姿なのかを訊きたいのだけれど」

 

金髪をなびかせているメイド服姿のデオンは俺に尋ねてきた。

 

「ほら、デオンだってまだ不特定多数の前でこういう服を着るのは気恥ずかしさがあるだろ?女の子ならまだしもデオンはそこら辺の事情は複雑だって理解しているつもりさ。ならせめてこういう場では俺が同じ姿になって少しでも羞恥心を和らげることが出来たらと思ってね」

 

「ご主人様に対する私の株がストップ高……」

 

うん?なんでそんな耳まで真っ赤にして顔を隠しているの?

 

「しかし、恐ろしいぐらい似合っているな貴様。というかノリノリ過ぎないか?」

 

ゴスロリツンツンメイドのセイバー・オルタが声をかけてきた……そう言われると少し照れるな。

今の俺の姿は定番の白を基調としたメイド服に赤髪ポニーテールの完全な女の子スタイル。

 

ほら、こういう女装もどこかで必要になる時が来るかもしれないだろ?我がマスター道に終わりはないのよ!ひたすら精進あるのみさ!

 

 

「あぁっ!我が歌姫!君はどんな姿になっても変わらず美しい!クリスティーヌ!クリスティーヌ!」

 

「マリー!マリィィッ!家事使用人の服を着ても君の輝きはまるで失われる事がない!僕はいくらでも君の為にお金を落とそう!マリィィァッ!!」

 

「おぉ!ジャンヌ、我が想いより生まれた二人目のジャンヌっ、そしてそこからさらに誕生した無限の可能性を秘めた幼きジャンヌ!3人の聖女があのようなCOOOOLな姿で語らっている様を目に出来るとはぁ!!なんたる僥倖!望外の喜びでありますぞぉっ!」

 

「これはジャンヌファンクラブ会報誌に新たなメイド聖女なるものを掲載する好機!いっそここでカメラにおさめて写真集なるものを、アツゥイッ!?そして目がぁっ……!目がァッ!!」

 

黒聖女の炎に白聖女の目突き、見事なコンビネーションだ。

 

嘘みたいだろ?今の面子の中で誰一人としてバーサーカーがいないんだぜ。

 

「私はぁ……旦那様の為ならどれだけの出費がかさんでも構いません……何度でもこの店に通ってみせますぅ……」

 

「これは無駄遣いではないのです……母から子への……そう、言うなれば仕送りのようなもの」

 

「写真撮影1枚:【10万QP】……握手券:【蛮神の心臓、狂骨、禁断の頁、混沌の爪等のスキル上げ素材】……手作り料理を自らあーん♡(マスター限定):【聖晶石3個】…………、クエストへ、クエストへ、もっとクエストへ行かなくては……」

 

「……………………」カシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャ……

 

夜這い3人衆に加えて、無言で俺の姿をスマホで連写し続ける後輩。

 

 

「う~~んっ、まさにカオスだな!ご主人!」

 

「一番言われたくない君に言われてしまったね」

 

 

 




ぐだ男「次は黒髪ツインテールで行ってみようかな!」

クロエ「それはやめておきなさい」







《マリーの水着姿とは別にあったシークレット物と書かれた袋について》
いつものハメ撮りですね。
つまりバレンタインの黒髭のお返しも彼にとっては……。

「秘密で秘蔵で秘宝アルバムか……、俺にとってはある意味、本物はいつでも見放題、撮り放題、触り放題だからなー……」

「それを口にしたら……戦争だろうがっ……!戦争じゃねぇのかよっ……!」



《デオンのマスターに対する印象》
超最高のマスター。男になっても女になっても一生仕えたい。

まだ、そこまで彼の人外っぷりを目の当たりにしていないので、真っ当な理想のマスターだと思ってるみたいです。敬愛フィルターがかかってやや盲目。
けどもう既に割と毒されているから仮に見たとしても「さすマス」で済ましてしまうかも。



《元祖ジャンヌ、ジャンヌ・オルタの呼び方について》
文面上では「ジャンヌ」、「邪ンヌ」と差別化できているが、呼ぶ時は発音で使い分けている(特にマスターやマリーといった親しい面々は)。
邪ンヌはカルデアでは古株なので、自分が呼ばれた時の「ジャンヌ(邪ンヌ)」という発音は分かっている。
なので白い方が「ジャンヌ(邪ンヌ)」で反応すると、「ぷー、くすくす!今のは私の方なんですけどー!何?自意識過剰の寂しがり屋なのかしら?そんなに出番が欲しいのね!卑しいわ!ほんとに卑しいわ!」と鬼の首を取ったように煽りまくる。当然、やり過ぎということでその後、マスターからお仕置きを(意味深)受けるまでセット。










デオンくんちゃん回。マリーと3Pというよりは二人がかりで苛める感じかな?ふたなり要素嫌いな人はごめんネ。デオン好きはホモじゃねぇからっ。

話を更新していく度に自分の性癖がどんどん増えているような……。




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ジャンヌスーパースターズ(ジャンヌ・ダルク)

お久しぶりです。生きてますよ。

UA100万突破、話も今回で40話目となりました。皆さんの応援のおかげで御座います、ありがとうございます。閲覧・お気に入り・感想・評価本当にいつも感謝です。
誤字報告をして下さる方々にも助かっています。これでも何度も見直しているんですけどね、本当にお目目がフラウロスで申し訳なく思ってます。











さぁ、皆大好き聖処女の時間です。
今回は文字数が多くなったので、前編・後編として分けて投稿させてもらいました。
ジャンヌ回はオルタといい、リリィといい、筆がノってしまうのだ。



―――何も見えない。

 

黒い。暗い。昏い。

 

ひどく深い場所にいるような感覚だけが在った。

 

見えるものは存在していない?

 

分からない。自分が、目を開いているのかどうかさえ。

 

此処はどこなのだろう。

 

…………。

 

ただ何か既視感を覚える……この流れは。

 

シリアスを望み、結局残念風味になってしまったどこかの黒い復讐者と同じ流れを。

 

ああ、これは、もしかしてとてつもなく愉快な事態なのか。

 

 

「マスター、マスター!ご無事ですかっ……」

 

誰かが俺の手を握ってくれたような感触。鉄のような手触りの中に暖かさと柔らかさを感じる。

未だ瞳は暗闇を映したままだが、この声を間違える筈がない。

 

「大丈夫だよ、ジャンヌ」

 

「あぁっ、良かった……いえ、今の状況を考えれば良いとはいえませんが、それでもこの暗黒の中であなたの傍にいれたのは幸運でした」

 

安堵したような息を吐いたのが聞こえる。ジャンヌも俺と同様に何も見えない状態なのだろう。

それでもこうして俺を必死に見つけてくれたのだ。

感謝を込めて、握られた手に少し力を入れた。

 

「ありがとう」

 

「んっ……お礼を言うのはまだ早いですよ、マスター。まずは現状の打破をしなければなりませんから……」

 

くすぐったそうに声を漏らすジャンヌをかわいいと思いつつ彼女の言うとおりに現状把握に臨む。

 

さて、この突拍子の無さはいつものイベントクエスト……もしくは幕間の物語的なアレでしょうか。

 

 

『フフフ、さすがはマスター……勘が鋭い。そうです、これはお察しの通り幕間の物語という名の強化クエスト、「強化とかいいから石くれよ」なんて苦情は受け付けません!』

 

「っ!何者です!?」

 

ノイズのかかったボイスが響く。周囲に顔を動かしても今の俺達に声の主を目にする事は叶わなかった。

 

『ハッ!なんだかんだと聞かれても答えてあげるほど世の中は情けに満ちてはいないんですよ。そう……これは試練、人が成長を成し遂げるには欠かせない試練……ジャンヌ・ダルクの試練なのです!……あの黒い方にどんどん出番を喰われかけてしまっているあなたが最強ヒロインとして咲き誇る為のね!聖女賛歌を謳わせてください、喉が枯れ果てるほどにッ!』

 

「……いったい、何の話を……」

 

『自分でも気づいているのではないのですか?星5ルーラーとして召喚されてみたはいいものの、”ぶっちゃけ黒い方が強くね?ってか相性的にはどうあがいても勝てないよね”と揶揄され、その当の本人にも日々煽られる毎日。しかもあの突撃隣の爆弾娘はなんか私服とかドレスとか新しい立絵なんてちゃっかりもらっていますし、ってか最後のあれなんです?二人っきりで踊るとか!ヒロインですか?メインヒロイン気取りですか!?贋作イベで満足しておけばいいものの出たがりですか!そんなに出番が欲しいんですか!?何度も出てきて恥ずかしくないんですか!?ちょっとこっちに分けてくださいよ!同じルーラーでもマルタ様の方がなんか強そうだし、水着になったらクラスが調停者って割と意味わかめですけどね。天草はチョコクランチでサンタアイランド仮面だし、”盾役はマシュでよくね?”と言われるのは私はもうこりごりです!”コスト0だから軽いしねー”ってなんですか!私が物理的にも精神的にも重い女とでも言いたいのですか!?いいじゃないですか、無敵、回復、防御アップ!1ターンぐらい動けないぐらい可愛いものでしょうワン!「というか今回の聖杯戦争方式でぶっちゃけ”真名看破”っていらなくね?」とか言う奴は後で屋上裏な』

 

一息に言いたい事を言ったのか『ぜーはーっ……』と呼吸を整えている黒幕(暫定)さん。

ジャンヌは頭が痛くなりそうな相手の電波が混じったメタメタしい叫びを黙って聞くしかなかった……というか俺もうこの声の主、なんとなくだけどわかってしまったかも。

 

「………………あなたは私達に何を望んでいるのですか」

 

空気を入れ替える為にジャンヌが話を進ませてくれる。

 

『あなたを素敵で無敵で不敵な最強ヒロインへ。マスターに常に『ジャンヌさいかわ結婚しよう』と言われるような有能サーヴァントに。もう二度と使えないなんて言わせませんッ!!』

 

「ねぇ」

 

声高に宣言しているが、俺はやっぱり()()の言い分を全て認めるわけにはいかなかった。

 

「俺は一度でもジャンヌを使えないなんて思ったことはないよ。こうしてカルデアにやってきてくれて戦闘でもそれ以外の生活面でも何度でも支えてもらっているし、現に今だってこうやって暗闇の中で彼女に手を握ってもらって傍にいてくれてる事に一体俺がどれだけ救われていると思う?俺は今のジャンヌのままでもいつだって『ジャンヌさいかわ結婚しよう』って言い続けれるよ」

 

「マスター……」

 

『…………やば、ちょっと濡れちゃいました』

 

ん?

 

『……んんっ!ゴホンッ!ゴホンッ!えぇ、えぇ!確かにあなたはそう言ってくれると思っていましたよ!それでもッ!女には引けない時もあるのです!はい、というわけであなた達にはこの暗闇を抜けて、私の所までたどり着いてもらいます、数多の試練を超えたジャンヌは間違いなく十分なヒロイン力を身に着けていることでしょう!』

 

「あなたは私に強くなって欲しいのですか!?それともヒロイン力とやらをつけてほしいんですか!?」

 

ジャンヌのツッコミも尤もである。このままではこの幕間の物語も報酬が石とかになりそうだね。

 

『強さ=ヒロイン力です!異論は聞きませんっ!さぁ、ちゃっちゃと進んで下さい、時間は有限ですからね!』

 

言いたい事は言ったのか、それ以降ノイズのかかった音が聞こえる事はなかった。

いきなりな理不尽な状況、まぁ、こういう騒動の巻き込まれ方は慣れっこです。

 

「……行きましょうか、マスター」

 

きっと顔が見えれば彼女は間違いなく疲れ切った顔をしていただろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

足元さえ見えない暗闇をジャンヌに手を引かれながら進んでいく。

俺の眼は依然として最初と変わらないまま。聖女の声と握ってくれてる手だけが頼りだった。

 

俺を導いてくれているジャンヌは進んでいる。まるでこの闇の中でも行先がわかっているかのように。

 

「ジャンヌも俺と同じで真っ暗の世界しか見えないよね?もしかして啓示のスキル?」

 

「はい、具体的な根拠はありませんが、進む先はこちらで合っています。あの滅茶苦茶な声の主が言っていた試練とやらに付き合うのは考えものですが…………ふふっ」

 

「どうしたの?」

 

急に笑い声を漏らしたジャンヌが気になった俺の質問に彼女はこう答えた。

 

「いえ、あのマスターがこうして私を頼ってくれている現状が嬉しくなってしまい……いつもなら多くのサーヴァントが周りにいますし、ごめんなさい……不謹慎ですよね」

 

「ふむ、ジャンヌって割と独占欲強い?」

 

「なななんでそんな話になるんですか!?」

 

焦ったような声をあげる彼女の顔を見ることが叶わない事を残念に思いながらも手を引かれていく。

 

 

 

 

少しか、それとも大分経ったのか、時間感覚もわからないまま進んでいた俺達はとある場所で足を止めることになった。

 

「扉ですね」

 

「扉だね」

 

今までは延々と暗闇が続いていたというのに不自然なぐらいその扉ははっきりと見えていた。

『A』と書かれた扉……うむ、一見すると怪しいことこの上ないが……。

 

「恐らく、この扉の先を進んでいけということでしょう。どうか心の準備をマスター。もしかしたら戦闘になる可能性もあります」

 

ジャンヌの忠告をしっかりと耳に入れ、扉を開けた俺達は部屋の中へと進んでいく。

 

いままでの道程とは異なり、視界も晴れて部屋の全貌ははっきりと見る事は出来た。

特に飾り気が無いただの部屋……その空間には真ん中にこの場所には不似合いなソファが一つ、ポツンと置いてあっただけ。

 

――バタンッッ

 

「「!?」」

 

それに気を取られている内に俺達が入ってきた扉は閉まってしまった。

 

「……っ開く気配はありません。どうやら閉じ込められてしまったようですね……」

 

「けどジャンヌの啓示はここに入るべきだって訴えていたんでしょ?」

 

「はい……ですが、私のそのスキルはあくまで遠い目標を達成する為の最適の道を選ぶというものなので、その道中に危険がないとは限らないんです」

 

ドアを調べたジャンヌは申し訳なさそうにこちらを振り返った。

 

「大丈夫大丈夫、俺等二人がいれば大抵のことはなんとかなるさ。虎穴に入らずんば虎をボコボコに出来ずって言うじゃん?これがさっきのやつが言っていた試練とやらならきっと必要な事なんでしょ?」

 

というわけでここで足踏みをしていても仕方ないので、俺達が入ってきた方の対になっている出口らしき扉に近づいていく。開いているとは思わないが、何かヒントらしきものはあるかもしれないし。

ジャンヌの「そのような故事でしたでしょうか……?」という呟きはスルー。

 

「ま、当然開くわけもないか……しかし、ここで一体何をさせるつもりなのか……ん、ジャンヌ?」

 

この部屋に入ってからも手は繋いだままだったので、出口らしき扉を調べている最中もジャンヌは傍にいた。

その彼女は何故か、扉の上の方を見たままプルプルと震えていたのだが……。

 

彼女の視線の先を追うとそこには看板があり、文字が書かれていた。

 

 

 

【ラブラブベロちゅーをしないと出られない部屋】

 

……これは使い古されたネタというべきというか……なんというか……。

 

「こんな脳内ピンク色な試練あってたまりますか!!」

 

激おこプンプン丸なジャンヌは空いている手の方で旗を握り、あのノイズ音の主に怒りをぶつけるように扉を殴りつけまくるがビクともしない。

 

「…………うぅ――」

 

気は済んだのか、怒りと恥ずかしさで顔を真っ赤にしている彼女はおぼつかない瞳でこちらの様子を伺っていた。

 

「どうする、ジャンヌ?わざわざこれの言う事を馬鹿正直に聞く必要もないと思うけど」

 

「……………わ、わたしは…………と思います」

 

縋り付くように握った手にさらに力を込められる。ちゃんと聞こえなかった俺はもう一度とジャンヌに聞き返した。

 

「……わたしは、するべきだと思います……」

 

「それは、啓示のスキル?それともジャンヌ自身の願望?」

 

「……ど、どっちもですっ!!」

 

高まり過ぎた羞恥心からか涙目で叫ぶ彼女に『ジャンヌさいかわ結婚しよう』と思う俺だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁー、うぅー、そんなに見ないで下さい……」

 

この時の為に用意していたと言わんばかりに真ん中に置いてあったソファに座り、俺達は向かい合っていた。

肩が触れ合うぐらいの距離で覗き込むと恥ずかしげに目線を逸らしていたジャンヌだったが、決意を固めたのか眼を瞑りこちらにゆっくりと唇を向けていた。

 

「……さ、さぁ、私は逃げも隠れもしませんから、どどどうぞ、お好きにして下さい」

 

こんな金髪美少女ルーラーにそんな事言われた日にはじゃあ喜んでと最後までいってしまいそうになるが、そこは堪える。

 

「いや、ジャンヌ……俺からはしないよ。君からするんだ」

 

「へ?」

 

俺の言葉にパチクリと目を開くジャンヌ、ふふふ……とても困惑しているようだな。

 

「よく考えてみなジャンヌ、あの黒幕はこれはジャンヌ・ダルクの試練だって言ってた。なら仮に君が受け身のまま……俺にされるがままになってもそれは自らの力で試練を突破出来たと言えるかい?」

 

「それは、たしかに……」

 

俺の尤もらしい理屈に納得してしまうジャンヌ。

あの声の主がそんな事を考えているのかどうかは実際の所は不明だが……まぁ、俺がこれを提案したのはただ単に不慣れながらも自分からそういう行為に及ぶジャンヌのあたふたする様を至近距離で見たいというだけなんです。

 

「うん、俺は一切何をされても抵抗しないからさ」

 

「マスターは、私が、何をしても、抵抗しない……」

 

「俺の唇は好き放題触っていいし、ねぶってもいい、今だけは君の物だよ」

 

「マスターの唇を……私が……触っても、舐めても、何をしても自由……ゴクッ」

 

俺の言葉に操られるように眼を細めながら、指先で俺の唇の形を確認してくるジャンヌ。俺のことを考えてくれたのか籠手を外して素手で触れてきた……んっ、少しくすぐったい。

 

「あぁ、マスターの唇……。そうですよね、これは試練なんですよね……私が、わたしが……しないといけないんですよね……わたしがあなたの……」

 

熱に浮かされたように唇を何度も両手の親指で触れてくるジャンヌは顔をどんどん近づけてくる。

彼女の熱くて甘い香りのする吐息が鼻孔をくすぐってきた。

 

「はぁ、はぁっ、はい……わたし、頑張りますね……あなたの期待に応えてみせますから、はぁ、マスター……んっ……」

 

俺の両頬に手を添えたジャンヌと唇が重なる。

その瞬間、彼女の唇が少しだけ震えた気がした。

あのドアには「ベロちゅー」しろと書いていたがまさかいきなり舌を入れてくる事はしなかったようだ。

 

「んぅ……んんっ、ふぅ……はぁ、はぁ……あぁ……」

 

少し湿った柔らかいジャンヌのリップ、ほんの少しの啄ばむようなキスをした彼女は一度唇を離して、呼吸を整えていた。

 

「あの……マスター、苦しくなかったですか……?私のキス……変な所はありませんでしたか?」

 

「全然、苦しくなかったよ。むしろすぐに離れちゃって少し名残惜しくなっちゃったぐらい。君の好きにしていいんだよジャンヌ、俺に遠慮することはないからさ」

 

「”私の好きに”…………はいっ、ではもう一度……失礼します、マスター……」

 

今度は手をそれぞれ俺の後頭部と背中に当てたジャンヌは先程よりはやや積極的に唇を交わしてきた。

 

「はむぅ……んちゅ、ちゅ、んむっ、ちゅぅ……」

 

最初は下唇を甘噛みしてきたジャンヌは顔の向きを縦、横……と何度も変えつつ色んな向きから俺の唇を噛んできた。

調停者として、聖処女として、いつも戦っているジャンヌがこうしてキスに夢中になっているのを間近で眺めていると興奮がどんどん高まってくる。

 

既に最後まで再臨が済んでいる白聖女の姿は二の腕から腋にかけての肌の露出が眩しく、俺の胸板で潰れている聖パイが非常に眼福だった。

 

「んちゅぅ、ちゅ……んっ、あの、マスター……そんなに見られると恥かしいというか、目を閉じて欲しいというか……」

 

「あぁ、ごめんごめん。ジャンヌが頑張っている姿を一コマも見逃したくなくてさ、けどジャンヌも目を閉じた風に見せかけて、薄目で俺のこと見ながらキスしているよね?」

 

「いやっ、それは、その……わ、私はいいんですっ!そもそもあなたが好きにしていいと言ったのですからっ、そ、そんな意地悪を言うマスターには……ここここうしますっ!んちゅっ……!」

 

勢い良くキスをしてきたジャンヌは舌先で俺の唇のをこじ開けると隙間からその舌を捻じ込んできた。

ただまぁ、そこからどうすればいいのかわからなくなって固まっているのが何とも締まらないというべきか……今回は俺からはしないって言っちゃったし、助け舟は出さないよ。ここからジャンヌがどう動き出すのか興味もあるし。

 

「…………んっ、ちゅっ………ちろっ…………」

 

たどたどしく舌を動かし、おっかなびっくりといった様子で俺の舌を突いてくるジャンヌ。

目をぎゅっと閉じたと思ったら、薄く開いて、俺の顔が間近にあるのが恥ずかしいのか、また再び目を閉じるの繰り返し、なんだこの生物。可愛すぎか。

 

頑張ってディープキスをしようとしているジャンヌだったが、やはりまだまだ舌の動きは控えめだった。

 

だが技術は乏しくても熱意はあるのだろう、力が入ったジャンヌはキスをしながらどんどん俺の方へと体重を預けていった。

 

「んむぅ、んちゅ……んふぅ…………」

 

――ギシッ……

 

ソファの上で完全に俺を押し倒した状態になってもこの聖女は止まることはなかった。

覆い被さられ、一見すると逆レイプに見えてしまっているこの現状に気付いているのだろうか……いや気づいてないんだろうなぁ……。

 

「んんぅ、んっ……はむぅ、ちゅっ…………ちゅぅ、ちゅぱぁっ……!はぁっ、はぁ……ますたぁ、私、頑張りますから……んむぅ、ちゅぅ…………」

 

息が苦しくなり、呼吸を整えたジャンヌは再度唇を交わしてくる。

その蕩けた瞳、圧し掛かられた彼女の柔らかさと重み、水音を響かせるキスの感触。

ジャンヌは一生懸命に俺の口を貪っていた。

 

 

――まぁ、実は割と前から扉の鍵が開いた音がしたのだったが、黙っておくことにしよう。

 

こんなに頑張っているジャンヌの努力を止めるのも忍びない。

取り敢えずは彼女がどこで気付くのか楽しみにしながら俺はされるがままでいるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………」

 

「……何も言わないで下さい」

 

「………………」

 

「……何か言って下さい……」

 

どっちやねん。

 

あれからしばらく……割としばらく、彼女は俺とのキスを無我夢中で楽しんでいた。

扉が既に開いていることに気付いた彼女の顔はこう見るだけで種火3杯はいけるぐらいの萌えがあった。

俺が散々キスされた後に「楽しかった?」って聞いた時の彼女の「うわああああああ!」って羞恥の叫びも実に良かったですハイ。

 

とまぁ、そんなこんなで『A』の扉の間を抜けたら、最初と同じように暗闇の通路が続いていた。

俺の手を握って先導してくれるジャンヌの顔は見えないが容易に想像出来た。

 

視覚が封じられてるからこそ、きっと彼女は自分が先程何をしたのかより鮮明に思い出してしまうのだろう。

何となくだが、この真っ暗な通路もそういう用途で造られているんじゃないかとそんな気がしてきた。エロいことしないと出られない部屋、それを頭の中で反芻させる道……うん、これを造ったであろう黒幕さんとは仲良くなれるかもしれない。

 

「次は、どうかまともな試練をお願いしたい所です……」

 

そんな彼女の切実な呟きと共に開けられた『B』と書かれた扉の間に入っていく二人。

 

けど、俺は『A』とか『B』とか書かれた扉といい、今入った部屋の中心に露骨に鎮座しているベッドといい、間違いなくまともな試練なんて来ないと確信していた。

 

さて、次の扉を開ける条件は……。

 

【マスターと同衾し、性的にスッキリさせないと出られない部屋】

 

「ですよね!知ってましたよチクショウ!」

 

キャラ崩壊しかけている彼女は叫んだ後に紅潮した顔を覆い隠して「私、ルーラーなのに……調停者なのに……」とブツブツ呟いていた。

 

黒幕もこの試練で最強ヒロインになれると本気で思っているのだろうか……どう考えてもエロチックなヒロインしか出来ないと思うのじゃが。

 

あからさま過ぎる部屋の脱出条件にどうしたもんかと悩んでいると、いつの間にかジャンヌにベッドの方へ引っ張られている事に気づく。

 

ジャンヌさん……。

 

「……もしかして意外とノリノリだったりするの?」

 

「ご、誤解なさらないでください、これはいち早くこの危険な場所から脱出する為に必要だからしているのであって決して今の状況を私が役得だと思っていることは、な、無いですから。全然ノリノリじゃないですから」

 

「そっか」

 

「……それと一つ確認したいのですが、マスターはさっきと同様に抵抗はしないんですよね?わ、私が好きにささわってもいいんですよね……?」

 

やっぱりノリノリじゃないですかーやだー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふ、こうやって胸元で抱き締めるとまるで子供を相手にしているような気分です。いえ、マスターの年齢を考えると子供という表現はあながち間違ってはいませんが」

 

聖処女様にベッドに連れ込まれた俺はその見事な聖パイに顔を埋めていた。

なんかこうしているだけで性的にスッキリできそうです。ただ胸元の鎖とか籠手とかが少し硬い……。

 

「あっ……鎧、邪魔ですよね……これはもう、私が全部脱ぐべきでしょうか……?」

 

「いや大丈夫、ジャンヌはそのままで動かないでいて」

 

ほい、タッチタッチ。

 

「え?……えっ、えぇぇっ!!?」

 

俺が手際よく鎧の部分だけ触っていくとそこが光の粒子となって消えていった。

うん、これで堅苦しい武装は無くなって存分に柔らかい感触を堪能できますね。

 

「マ、マスター?一体……なにを?」

 

「そうだね、話せば長くなるけど……」

 

 

 

  己の肉体とセクハラ術に限界を感じ悩みぬいた結果、俺がたどり着いた結果は感謝であった

 

 

  自分自身を育ててくれた彼女達との情事へ限りなく大きな恩を自分なりに返そうと思いたったのが

 

 

  一日一万回 感謝の脱衣術!!

 

 

  気を整え 拝み 祈り 構えて 脱がす

 

  一連の動作を一回こなすのに当初は5~6秒

 

  一万着を脱がし終えるまでに初日は18時間以上費やした

 

  脱がし、犯し終われば倒れるように寝る。 起きてまたをそれを繰り返す日々

 

  1年が過ぎたころ異変に気付く

 

  ー万回脱がし終えても日が暮れていない

 

  齢20にも満たない身で完全に羽化する

 

  感謝の脱衣術一万回 一時間切る!!

 

  かわりに 祈る時間が増えた

 

  気付いた時には 俺の手は 脱がすという動作そのものを置き去りにしていた

 

 

 

「ということなんです」

 

「まるで意味がわからないのですが」

 

これ以上ないくらいにわかりやすく説明したのだが、どうやらジャンヌは納得してくれなかったようだった。

 

「しかも、コレのいい所って自分が望む部分だけを脱衣させる事も出来るっていう所ね。ほらっ、よいしょっと」

 

百式官能 壱乃掌!と俺が目にも止まらぬスピードで彼女の胸に触れると見事に()()()()()()()()()が抜け落ちるように消失し、隠す物が何もない魅惑の果実が零れた。

一瞬何が起きたかわからなかったジャンヌの顔は見る見る真っ赤に染まっていく。

 

「ひゃわぁっ!?いきなり何しているんですか!あなたはっ!?」

 

「俺もあまりこの技は使いたくなかったからジャンヌの気持ちはよくわかる。確かにこの技は服を簡単に脱がせるが、これは風情がない。たとえ手間がかかったとしてもまともな方法でちゃんと脱がすべきだ……それが真っ当な男女の関係、そう言いたいんだろ?」

 

「違いますっ!」

 

「とまぁ、あんまり俺から色々やってもあれなので、ここからは一つ目の部屋の時と同様に君の好きにしてちょうだい」

 

そう言った俺はジャンヌのおっぱいを枕にして、背中へ手を回した。あとは全てジャンヌに委ねるのだ。

うわー、スベスベするし柔らかいしあったかいし、なんだこの高級枕、素晴らし過ぎるぞ。言い値で買いたいわ。

 

「え、えぇ……ここで私にバトンタッチするのですか、んん、むむ……ど、どうすればいいのでしょうか、これは……えーと、とりあえず……」

 

体を少しズラしたジャンヌは胸の先端を俺の口元に近づけてきた。

これは咥えろという事なのかしら?

 

「たしか、マリーが『マスターは大小年齢関わらず、おっぱいを飲ませてあげれば万事OKよ』と言っていたので、おそらくこれで大丈夫のはず……んくぅっ!」

 

王妃様は聖女様に何を吹き込んでいるんでしょうね。しかも年齢関わらずとか人聞きの悪いことを…………いや、合ってるわ。だって仕方ないじゃない。男はいくつでもおっぱいに甘えたいものなんですぅ。例え、相手がジャックとかアリスでもっ!!

 

逆らい難い魅力をもったピンク色の点をちゅうちゅう吸うと、ジャンヌは声を漏らして震え出した。

ブーディカママや頼光母さんのように母乳は出ないが、口の中で転がし続けて硬くなっていく彼女の乳首はどれだけ舐っても飽きが来る事はなさそうだった。

 

「んふぅ、ひぁ、くすぐったくてぇ……ピリピリし、てぇ……にゃあぁっ!」

 

本来なら吸っていないもう片方の胸にも手を出していきたい所だったのだが俺があんまりハッスルするとジャンヌから責める余裕も無くなってしまうので大人しくしておく。

ジャンヌはここからどうしてくるのかな?

 

「はぁ、あんぅ……んくっ、よしよし……私のお胸、おいしいですか……?ふふっ、やや児みたいでなんだか可愛らしいですよマスター、んあぁっ」

 

喘ぎながらも、乳を吸われながらも、背中をトントンと叩き甘やかしてくれるジャンヌ。

……さすがは救国の聖女、包容力がハンパねぇぜ。

 

だがこんな美少女と同衾授乳プレイをしている現状で俺のアソコがやや児にはなってくれる筈もなく、ズボンの下からでもわかる程に自己主張激しく彼女の太ももに擦りつけていた。

 

「あっ……そう、ですよね……スッキリさせないとこの部屋からは出られませんから……」

 

その存在に気付いたジャンヌは意を決したようにベルトを外し、俺の愚息を露出させた。

ベッドの中ということもあり、彼女の目には映らないが、その手触りだけでも十分驚いていたようだった。

 

「あっ、凄い……あつくて、ピクピクしてます……えーと、これは握ってあげればいいんでしょうか……」

 

感触を確かめるようにニギニギと掴み、それに反応を返す肉棒に感嘆の声をあげるジャンヌ。

 

「はふぅ、私が触ってあげる度に震えて何だか可愛らしいですね……」

 

実際に現物を目の前にしたら可愛らしいとは言えないサイズなのだが……まぁ、だんだんジャンヌも楽しんでいるようにも見えるし、ここは何も言わずにそっとしておこう。

 

「んんっ?何だかヌルヌルしたものが出てたような……このまま続けてもいいのでしょうか……?」

 

「っぷはぁっ……うん、その汁は俺がキモチよくなっている証だからそのまま続けていいよ、ジャンヌ」

 

「そうですか……私の拙い手でマスターが気持ち良くなってくれて本当に良かった……あ、ごめんなさいっ、口を離させてしまって、私も頑張りますのでマスターも気にせず私の乳に齧り付いてください……ど、どうせなら両方同時でも一向に構いませんから……」

 

お言葉に甘えてと、再び彼女の胸に喰らい付く。

 

嬌声を響かせながら、先走りを潤滑剤にして剛直への奉仕を再開するジャンヌ。

 

さてさて、確かに彼女自身が言うように決して性技に長けているとはいえないジャンヌの手コキで俺は達することは出来るのか?その問いには俺はイエスと返そう。

 

何も性的なテクニックに秀でている事だけがエロの全てではない。

あの巌窟王に人間城塞と言われたジャンヌがベッドの中で俺に抱き締められながら息を漏らし、乳を吸われ、必死に気持ちよくなってもらおうと男根を扱いているこのシチュエーションで抜けない男なんている筈がないだろう。

 

性技の拙さなんて今は大して重要ではない。いやむしろおぼつかない手付きで頑張っている方がある意味では興奮すると言えるかもしれない。

 

というか彼氏面王は「女にしては心身ともに堅すぎる」とか言ってたけど、そんな事全然ないよ。めっちゃ柔らかいよ!超いい匂いするよ!

いや、多分、彼もそういう意味では言ってはいないと思うんだけどさ。

 

「はふぅ、んんっ、あっ、あっ、あぁ!……マスター、ますたぁっ!」

 

胸を口淫されても、彼女の手は止まる事はない。嬌声をあげても、彼女の奉仕は止まる事はない。

むしろ、興奮しているのか、少しずつ扱く手の速度は上がり、握る手も力が入ってきている。

完全にフル勃起状態で硬くなっている肉棒にとってはその力強さも快感のスパイスとなっていた。

 

「ひぅっ、あぁんぅ!わ、たしも胸吸われ過ぎてぇ……どんどん変な気分にぃ、あぁっ、キちゃいますぅ、何か凄いのがきちゃうぅっ、んあぁぁっ!」

 

胸にしゃぶりつく水音、ジャンヌの手と陰茎の摩擦音、軋むベッドにお互いの獣欲滾らせた吐息と声……淫らな試練はようやく終わりを迎えた。

 

「あぁっ!あぁ!あんぅっ!?ひゃぁっ!……熱いナニかが私の手にかかってぇ、んんぅ……ふぁっ、ベトベトしてま、す……あぁ……マスターのキモチ良さそうな顔……コレをたくさん出すのがスッキリするということなんですね……」

 

胸から一度口を離し、ジャンヌの手にフィニッシュをぶちまけた快楽の余韻に耽っている俺の顔を精液がかかっていない方の手で彼女は愛おしさを込めるように撫でていた。

二人の顔の距離は今すぐキスをしてもおかしくないぐらいに近い。

 

何はともあれ、これで部屋の脱出条件は見事クリアしたわけなので後始末してここから出ることにぃっ……?

 

「……あ、のジャンヌさん?」

 

「はぁっ、はぁ……んちゅ、ちゅぱぁっ、白くて、苦いのに……どうしてこんなに惹かれてしまうのでしょうか……あなたのものだからでしょうか?もっと、もっと出して、舐めれば……わかるかもしれません……もう一回、後一回だけ……」

 

手にかかった精液を舐め取ると唾液と射精の残りでドロドロになった手でまた我がペニスを包み込むジャンヌ。

熱に浮かされたその顔はまだまだジャンヌは満足していない事を示していた。

 

…………ウン!ならもう少し彼女の好きにさせてみようかなっ!!ドアはもう開いているだろうけど、すぐに出なきゃいけないってワケでもないしネ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………殺してください」

 

『B』の扉の間を抜け、またまた暗闇の通路を手を引かれ歩く。あっ、当然握っている手は彼女が手コキしていなかった方の手ですよ。

 

しかし、『A』の扉の間を抜けた時の焼き直しというか……今のジャンヌの顔色が見えなくても容易に想像出来るな。

結局、あの後も3回ぐらい射精されちゃったし、その度に手についた精液を確認して「はぁっ、マスターの何度出しても濃いままで、イイ味してます……」って舐め取るジャンヌがどピンクというかえっちぃというか、いやはやさすがは性女ですね。HAHAHAHAHA。

 

「……違うんです違うんです違うんです。あれはそう、ここから激しい戦闘がある危険性を考慮してカルデアからのサポートを望めないこの現状で出来る限り魔力を供給しようと考えた結果なんです。私は決してINRANではありません」

 

認めたくないのかブツブツと呟いているジャンヌのフォローをした方がいいのかもしれない。

こういうサーヴァントのアフターケアをするのもマスターの務めだからね。

 

「何度も舐めるぐらい俺の精液おいしかったみたいだね」

 

「うわああああああああああああん!!」

 

おうバッドコミュニケーション。どうやら俺の選択肢はよろしくなかったようです。

恥ずかしさの極致に達し走り出すジャンヌ、だがここで手を離して俺を見捨てないのはやはり彼女の優しさが表れているのだろう。

まぁ、俺の手を引いている以上……逃げたいのかどうしたいのかわけがわからない状態にもなっているが。

 

「ほら、ジャンヌ!扉が見えたよ!次は『C』って書かれているよ!次はどんな試練なんだろうね!」

 

「うぅっ……なんですか、その露骨な話題の逸らし方は……。後、なんでそんなワクワクしているんですか…‥」

 

「けどジャンヌだって今まで二つも最終的にノリノリだったし、実は楽しみに」

 

「ああああっ!もう!ハイッ!入りますよぉ!さっさと試練を終わらせて、ふざけた黒幕の眼を旗で突きますよマスター!」

 

さぁ、『C』の部屋に入った俺達二人に待ち構えていたものは……。

 

 

 




テッテレテッテテーン♪
ジャンヌは二つの試練を乗り越えて……マスターのアソコを指揮する後天性の才能……カリスマ(性)Cを手に入れた!






ABC続いてしまう、そんなんじゃダメになってしまう後編は明日投稿します。






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ジャンヌアルティメットスターズ(ジャンヌ・ダルク&ジャンヌ・ダルク・オルタ&ジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィ)

前話のジャンヌスーパースターズの続きです。後編で御座います。











『A』『B』と試練を乗り越えた二人がやってきた『C』の間で待ち構えていた者はっ!?
このふざけたR18試練を創り出した黒幕は一体誰なのかっ!?
いやー、まるで予想できませんね。

タイトルがゲシュタルト崩壊しそう。


「フフッ、『A』『B』と続いて、最後は『C』でマスターと二人っきりで結ばれると思いましたか?残念、私がいるんですよ愚かな聖女様」

 

今までの部屋とは打って変わり、そこは一人で寝るには大きすぎるベッド、高級ホテルのような内装でありながらどこか淫靡な雰囲気を匂わせる、っていうか何かラブホにしか見えない部屋だった。

 

そのあからさま過ぎる部屋に渾身のドヤ顔で邪ンヌが立っていた。

しかもいつもの戦装束ではなく、どこかで見た彼女のイメージに合う深紫のドレスを着ている。

 

「貴女はっ……どうしてここに……!?それにその格好は……って私の服も変わっている!?」

 

この部屋に入った瞬間に既に変えられていたのかジャンヌの服も邪ンヌとは対照的な白色のドレス姿になっていた。二人とも差異は色だけともいえるお揃いのドレスを着ているのでこうして比べてみると本当に姉妹のように見える。

 

「ドレスコードですよ。この場には相応しい服装、振る舞いがあります。あんな野暮ったい服でここに入らせるワケないじゃ……」

 

成長した私(オルタ)、見て下さい!このベッド回転しますよっ!一体どんな論理的思考に基づいて作られているのでしょうか?」

 

「……まぁ、本来なら貴女に私と似たドレスを用意するなんて死んでも御免ですが、これは慈悲であり勝者の余裕を見せる為の必要経費という奴だとでも思って下さい。私という贋作が本物を凌駕してしまったという事実を示す為に私はあえて同じ条件を揃えて……」

 

「なんかボトルがあります……飲み物ではないですよね、うわっ!?なんか冷たくてヌルヌルしたものが出てきましたよ!どどどうしましょう!?」

 

「あぁもうっ!さっきから五月蠅いわね!ガキじゃないんだから一々その程度の事で騒ぐんじゃないわよ!」

 

「ガキっ!?貴女だって人のこと言えないでしょう!マスターさんと本来の私(ジャンヌ)が来るまで、『うわっ、風呂デカっ!しかも……なんかたくさんの色でライトアップされて綺麗ね……うん、うん、ここでアイツと一緒に入るのも悪くないわね。ふふ、ムードとかロマンチックとかそういう所も考えれる私は本当に良く出来たサーヴァントね!』とかはしゃいでたじゃないですか!!」

 

「はははははぁっ!?いつ私がそんな事言いましたぁ!?何時何分何秒地球が何周した時ですかぁ!?」

 

「うわぁ、リアルでそんな小学生染みたこと言う人初めて見ましたよ」

 

どうやらジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィちゃんもいたみたいだ。

しかも、邪ンヌといつもの口喧嘩をしている彼女も白と深紫が合わさったドレス……今の白黒ジャンヌの服装を足して均等に割った格好をしていた。

 

「どう、ですかマスターさん?今の私の姿は似合ってますか……?」

 

「あぁ、綺麗だよ。大人になったねリリィ」

 

「えへへ……」

 

「はっ、正直にちびっ子の背伸び乙って言っていいんじゃないかしらマスター?」

 

「もう、どうしてそう貴女は憎まれ口を叩いてしまうんですか……確かに状況は特殊ですが、私はこうしてあなた達とお揃いの服を着れて嬉しいですよ」

 

「鳥肌が立つような事言わないくれるかしら?全く、あのガキんちょといい、ちょっと能天気過ぎるんじゃなくて?私達がこの試練の間にいるという意味がわからないなんて言わせませんよ」

 

口元を歪め、俺とジャンヌを嘲笑うように見やる邪ンヌ。

ま、まさか黒幕は君ダッタノカー?

 

「そう、マスターといけ好かない聖女様をこの空間に取り込んだのは」

 

「あっ、黒幕はオルタではありませんよ。私もオルタも巻き込まれたクチです。この試練の間で()()役割も与えられていますし」

 

「…………」

 

「うん、知ってた」

「はい、私も少なくとも貴女ではないだろうと思っていました。あのノイズの主は何というかもっと理不尽かつ滅茶苦茶加減が凄まじい雰囲気がしたというか……勤勉な貴女とは非なるものでしょう」

 

見栄を張ろうとして即バレした恥ずかしさとジャンヌからの思いの外の高評価にお怒りなのかそれとも別種の感情なのか……邪ンヌはそのまま俯いてしまった。

 

「まぁ、話を聞けばかつてオルタも巌窟王さんのパクリをしてマスターさんとかその他のサーヴァントの方々に迷惑をかけたと聞きましたし因果応報、自業自得ですよね」

 

顔を下に向けている邪ンヌから「……パクリじゃないし、オマージュだし」とブツブツ聞こえる。

あの件も事の発端は邪ンヌだったけども最初から最後までむしろ邪ンヌは被害者ポジだったとも言えなくもないしなー。

え、俺?役得以外の何物でもなかったよ。邪ンヌおいしかったです。

 

「あのリリィ……役割というと、貴女達も今回の試練とやらに一枚噛んでいるという事でしょうか?」

 

「はいっ!では今回の試練を発表させて頂きますっ!」

 

どこからともなく取り出したプラカードを嬉しそうに俺達に見せてくるジャンヌ・リリィ。そこには――。

 

「今回の試練は『マスターと愛し合ってナカよくならないと出られない部屋(トリプルジャンヌによる複数プレイver)』です!ふふっ、私とオルタはこういう事に関しては本来の私より先輩ですからね。いつもは色々と戦闘を教えてくれている貴女の力になれると思いますよ!」

 

「リリィ、何故あなたはそんなにワクワクしているんですか!?え、えぇっ!それよりも、わ、私より先輩……?あのマスター、もしかしてこの二人とは……まさか既にそういう事を……」

 

わなわなと身を震わせてこっちを見るジャンヌに俺は誠意を持って答えてあげた。

 

「邪ンヌもジャンヌ・リリィも大好きだし、愛しています。互いに好き合っている男女がそういう関係になるのは別に不思議な事ではないと思います」

 

「駄目ですよっ!そんなキリッとしたカッコイイ顔で言っても誤魔化されませんからね!」

 

「さっきまで俺に滅茶苦茶激しいディープキスや手で精液を絞り取ろうとしてきたジャンヌもあんまり人の事は言えないと思います」

 

「なあああぁぁっ!!二人の前で何て事言おうとしているのですかっ!!あの事はもう忘れて下さいぃっ!!」

 

「私もマスターさんが好き、オルタもマスターさんが好き、本来の私もマスターさんが好き。マスターさんは3人とも好き。……なら結ばれるのに一体何の問題があるでしょうか、いえ、ありません!」

 

「いえ、あるでしょう!倫理観とか、貞操観念とか、色々と大事なものが!」

 

そんなものを気にしていたら、俺はとっくのとうにお縄ですよ。

 

「けど、『A』と『B』の部屋であんなハッスルしていたアンタが言ってもあまり説得力無いわよね……」

 

復活していた邪ンヌがジャンヌに爆弾発言をぶつける。ピキッと体が固まった白聖女は嘘ですよねと言わんばかりに黒聖女に問いかけた。

 

「………………もしかして今までの全部、見られていたのですか……?」

 

「えぇ、この部屋に備え付けられているモニターに映っていましたよ。さすがは本来の私です。経験値は私達に及ばなくともそのポテンシャルは尊敬の一言です。だからこそ映像を見ていたオルタも負けてなるものかと焦っていたようですし」

 

「ハハハハハハ…………”主よ、この身を委ねます――――”……」

 

やめい、自爆宝具を使おうとするな。気持ちはわかるが。

 

「さぁ、せっかくこんなに大きいベッドが用意されているのです。存分に使いましょう!」

 

元気いっぱいのリリィに引っ張られていく。しかし一つだけ気になることが。

 

「3人の服は立派なドレスなのに、どうして俺だけ格好は何も変わっていないんだ?」

 

「どうせ、アンタはこれから裸に剥かれるんだから、何着ても一緒でしょ」

 

身も蓋もねぇ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んっ、んぅっ……無理をしなくても、いいんじゃないかしら聖女様?実はもう恥ずかしさでいっぱいいっぱいなんでしょ……」

 

「んぁ、んふっ、いえ……私も吹っ切れました。ここからは自重無しでいきます……それに」

 

「それに?」

 

「貴女とリリィが仲睦まじく語り合っていたのはきっとこういった事が原因なのでしょう?……私も仲間外れは寂しかったですから、実は結構嬉しいんです」

 

「私とコイツ(リリィ)が仲良く見えるなんて相変わらず愉快な頭してるわね、全く……んふぅっ、あっ……もう落ち着きがないわねマスターのコレは……」

 

「んはぁっ……私はこんなにも強烈なモノを……触っていたのですね……」

 

「何度も何度も熱心にでしょ?……んっ、んんぅ……」

 

「……んぁ、ふっ、それはもう言わないで下さい……」

 

かつての特異点で生死をかけて争い、戦った二人がこうして平和に語り合っている光景にどれだけの価値があるのか十全に理解出来る人はいるだろうか。

 

……うん……白黒聖女の二人がドレスの胸元部分をずり下ろして、露出した乳房を使い、左右からベッドの上で仰向けになっている俺の逸物を挟んで扱いているという点を除けば、微笑ましく眺める事は出来たのだが。

 

けど仕方ないじゃん?気持ちいいんだもん。むしろこの光景から目を逸らす事が彼女達に失礼に当たると思わないかい?

 

「むむむ、私ももう少し成長すれば、二人と同じようにマスターさんにご奉仕出来るのですが……まぁ、いいです。気持ち良くなれるのは胸だけではないという事を私が教えてあげます……はむぅ、じゅるぅ……」

 

たわわに実った四つの果実に挟まれた肉棒の先端をリリィがその小さくも可愛らしい口で包み込んだ。

 

「じゅっ、じゅるるぅ……んむっ、ちゅぅ……」

「ほーら、キモチいいんでしょ、んっ、そんなにビクンビクンさせちゃって……いつでも出しちゃないなさいよ、ほら……」

「あっ、んぅ……ふぅぁ、胸、擦ってるだけで、なんだか変な気持ちにぃ……あん」

 

いつもと違う麗しいドレス姿に身を包んだ3人のジャンヌ。

白と黒の聖女達の柔肉に男性器は埋もれ、辛うじて顔を覗かせていた亀頭もリリィに吸い付かれている。

 

「……っぁ、なんとも、贅沢な光景だ、よ……」

 

下腹部を覗けば、俺の欲望の象徴に3人のジャンヌ・ダルクが群がっている……まさに非現実的な光景とも思えるかもしれない。

だが、剛直から脳髄まで駆け巡ってくるこの快楽はリアルとしか考えられなかった。

 

「フフッ、胸を使っているだけで気持ち良くなってしまったのかしら聖女様は?……なんてはしたない……ココもみっともなくそそり立たせて、んっ、こうしたら……その顔をもっと歪ませてくれるのかしらぁっ……んぁっ、はぁ……」

 

「あんぅ!?……ひっ、あぁっ!先っぽぉ、ぶつけるのをぉ……やめぇっ、んふぅっ!」

 

お互いに向き合ってパイズリをしている為、邪ンヌが自身の乳首をジャンヌにぶつけるのは容易だった。

自らの手でオリジナルを喘がせている事実に一種の悦びを覚えている邪ンヌは胸を扱き続けながら、ジャンヌの先端を苛め抜いていく。

 

「はんぅ、んっ……いい、わよ、その顔ぉ……今ならアンタの事、ほんの少しだけ好きになれそうだわっ……はぁっ、ほらっ、もっと喘ぎなさ……んひゃあぁ!!……ちょっとリリィ、何のつもりぃ……ああぁんぅ!」

 

手が空いているリリィがその手を差し込み、邪ンヌの乳頭をコリコリと摘まんでいた。

 

「ちゅぷぅ……んはぁっ、マスターさんが『邪ンヌが攻勢に出始めたら、それは苛めて欲しいのサインだから』って言っていたから手を出しました。私は学習したらそれを実践する論理的サーヴァントですから!」

 

「……んくっ!アンタはまた、コイツに余計な事、吹き込んでぇっ、あぅうっ!」

 

だが俺の頭の中の邪ンヌ取扱説明書にはそう書いているのだ。信憑性はある。

トリプル聖女が百合百合しく絡み合いながらも俺に快楽を送り込んでくる。

 

「あっ、あんぅ、んぅ、ふぅっ……頭が沸騰しそうですぅっ……こんな事、わたしぃっ……はぁぁっ!」

「んじゅっ、ちゅぅ、んぐぅ、ぷはぁっ!……それでいいんですよ、本来の私……マスターさんと私達3人でおかしくなっちゃいましょう……はむぅ、じゅるるるぅっ!」

「んくぅ、はっ、あぁ!もう、我慢出来ないんでしょ……?その凶悪なモノから、さっさと白く濁った奴をピューっと出して……私達を汚しなさいよっ……んふぅぁ!んっ、ほらっ、ほらぁっ、ほらぁっ……!」

 

せり上がってくるその欲望を俺には止める術は無かった。

大きく噴火の予兆を見せたペニスからリリィは口を離す。噴水のように湧き出た白濁液は邪ンヌの言う通り3人に降り注いでいった。

 

「んんぅっ!あぁ……はぁっ、すごい……こんなにたくさん、まだ止まらないんですね……あっ、顔にもこんなにかかって……ぺろぉ、れろっ、ちゅむぅ、んじゅぅ……」

 

「……っはぁ、ったくどんだけ出すのよ……この性欲グランドが……というかリリィ、アンタなら全部独占して飲むかと思ったんだけど」

 

「こうして3人の『私』が集まっているのなら、独り占めはよくないと思っただけですよ。メディアさんも『皆ナカ良しが一番ですから』って言ってましたし」

 

何かニュアンスが少し違うように聞こえるのは俺だけでしょうか。

 

「あのパンケーキの悪魔の言う事を間に受けんじゃないわよ……あぁ、もう顔中ベトベト……。ん?何ジロジロ見てんのよ?」

 

「……あの、まだ、貴女の顔にマスターの白い液がついているので……はぁ、はぁ……私が、取ってあげましょうか?」

 

「は?」

 

自身の顔にへばり付いた精液を舐め取ったジャンヌが足りないとばかりに今度は邪ンヌの方に身を寄せていく。

蕩けた表情で開いた口から覗かせている舌がもう一人聖女の顔に迫っていく。

 

「ちょっ……ばか、アンタ頭沸いてんじゃないのっ……んっ、ひぅ!……やめ……ってか馬鹿マスターあんたも便乗しようとしてドレスの裾を捲るんじゃないわよっ……ぅくぅっ、まってどこに顔を入れてぇ……あくぅっ!」

 

「むむむ、仲間外れはよくありませんよ!私も参加させてもらいますからね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ぅうう、はぁ、んぅ……酷い目にあったわ……なんで、私ばっかりいつもこんな展開に……」

 

「様式美って良い言葉だよね」

 

「黙りなさい」

 

俺、白ジャンヌ、ロリジャンヌのジェットペロリームアタックで唾液まみれになった邪ンヌは服もはだけ、扇情的な様でベッドの上で呼吸を整えていた。

 

「……すみません、こう……マスターが出した白液で濡れている貴女の顔を見ていたら、つい我を忘れてしまい……場酔いをしてしまったと言うべきでしょうか……」

 

「さすがは本来の私です!その積極性はとても参考になります!」

 

「オリジナルに関しても、リリィに関しても全てはマスターの教育は悪いということにしましょうか……まぁ、いいです。悪いと思っているのなら誠意を見せられますよね?……まさか聖女様が口だけの謝罪なんてしないでしょう?」

 

「は、はい……私に出来る事なら……」

 

イイ笑顔で何かを思い付いた様子の邪ンヌ、やられっぱなしでは復讐者は終われないのだ。

だが、こうエロチックになってしまったジャンヌとリリィの原因が100%俺にあるような物言いはどうかと思う。

それに自分だけは違いますみたいな顔してるけど、性に対してのアグレッシブさは君も他の二人と大差無いと思うよ。本人に言ったら否定されるだろうけどさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………あぁぁ、少し、はしたな過ぎませんかっ、この格好は……あぁ、だめ、マスター、そんな見ないで下さいぃ……」

 

「あら、私にあれだけ辱めをしておいて、自分は嫌だなんて通りませんわよ。ちゃーんとマスターに見てもらいなさい。今の自分の姿を。余す所なく」

 

胸の部分は先程同様、露出されたまま……半脱ぎ状態ともいえるドレス姿でジャンヌは立ち上がっている竜の魔女に後ろから抱えられるように脚をM字に開かされていた。

 

親が幼子におしっこをさせてあげるような、それなりの年齢であるジャンヌがやると倒錯的で色情を催す今の姿。

 

パンツも剥ぎ取られ、ドレスの裾を上に捲り上げれば、隠す物が何もないジャンヌのありのままの雌の園が目に映る。これを見るなというのが無理な相談であろう。

 

謝罪という名目上、抵抗出来ない彼女は邪ンヌにされるがまま。みっともなく開かれたそれは俺をどんどん誘惑してくる。

 

「さぁ、マスター……今度はその凶悪なモノで淫らな聖女様に慈悲を与えてやりなさい。もちろん私もこうして手伝ってあげるから」

 

「なるほど、先輩として本来の私とマスターの挿入の手解きをしてあげようという考えですか!オルタは、いつもツンツンしながらも、実は妹分として姉が心配だったんですね!全く素直じゃないんですから……」

 

「はぁ!?どんな愉快な思考回路したら、そうなるのかしら!?アンタも『私の為に……』みたいな眼で振り返るんじゃないわよ!こんな恥ずかしい格好してるのよ!もっと憤りなさいよ!嘆きなさいよ!」

 

「けど、相手がマスターなら、私は吝かではありませんし……それにこうやっているのはなんだか共同作業みたいで本当に姉妹になったような気持ちに……」

 

「あぁ、もう!ここには頭お花畑な奴しかいないのかしら!?」

 

「はいはい、ツンデレ乙というやつですね。さぁ、マスターさん。オルタの意を汲む為にも……ここはズバっと本来の私と愛し合いましょう!私も微力ながら手を添えさせてもらいますので」

 

多分、邪ンヌとしてはあの毅然とした聖女様の顔を歪めてやろうという考えしかなかったんだろうけど、二人に絶妙な勘違いをされて普段は悪ぶっている照れ屋なジャンヌ・オルタちゃんという扱いをされてしまっている。

 

うん、邪ンヌはやっぱり振り回されている方が性に合ってるよネ。

 

「ひぅんぅ!あっ、駄目ぇ……息、ふきかけないでぇ、下さいぃ……ああぁ!」

 

いきなり、挿れるなんて事はせず、まずは至近距離でジャンヌの蜜肉を確認する。

 

「ちょっと息を吹きかけただけで、こんなに震えてるよ……ジャンヌの恥ずかしい所、ほら、リリィも触ってごらん」

 

「……は、はい……おぉ、私のと形は似ていますが、やっぱり大きさと雰囲気はどこか違いますね……なんだか興味深いです」

 

リリィと二人で顔を近づけて、ジャンヌの女陰を品評する。

入り口のスジを撫で、感触を確かめるように淫唇を俺達は弄っていった。

 

「あぁ、ふぅ!んぁ、そんな何度も触ってぇ……あぁ、マスターだけじゃなくてぇ……リリィみたいな、小さい子にまで、はあぁうぅ……!」

 

「こんな恥ずかしい格好で自分の性器を好き放題されてるのに何でこんな喜色に満ちた顔をしてるのよ……ちょっと業が深すぎないかしら……?」

 

戦慄している邪ンヌは置いておいて、俺はジャンヌが自身のモノを受け入れられる為の下準備をどんどん進めていく。

 

「あんぅ!……いけませんっ、マスター……そんな所にぃ、ああぁっ!口を付けてはぁっ……あぁんぅ!舌動かしちゃ、やぁぁ……!」

 

膣内を唾液でコーティングするように舐め回す。身動きの取れないジャンヌは雌穴を食べられている感覚に脚を閉じることも許されず、鳴くことしか出来ない。

 

「わぁ……エッチなお汁がどんどん溢れてます……マスターさんがお上手なのか、それとも本来の私が敏感なだけなのか、そこの所どう思いますかオルタ?」

 

「…………ノーコメントよ」

 

「ひんぅ、あっ……飲まないで、下さいぃ……ふあぁ!恥ずかしさで頭がおかしくなりそう……ひやぁぅ!」

 

ピチャピチャとどんどん湧き出る愛液を彼女自身に音を聞かせるように啜っていく。

まぁ、ここに来るまで色んな事してきたから既にジャンヌの秘部が出来上がっていてもおかしくはないだろうさ。

 

さて、前戯はもう十分、これから本番に入らせてもらうとしよう。

 

3人がかりでアソコを責められた時から、既に俺は全裸に剥かれている。

立ち上がった俺とその股にそびえ立つ塔を目にしてジャンヌはこれから自分がされる事を理解している筈だ。

 

「優しく……」

 

『優しくして下さい』か?当然、最初っからそのつもりだったが。

 

「優しく……そして激しくシて下さい……」

 

結構難しいオーダーを寄越しますねこの聖女様は……。

ただ、そんな潤んだ瞳でお願いされたはNoとは言えない。彼女の懇願に頷き、俺は腰を近づけていく。

 

「とんだドスケベ我儘性女様ね……」

 

「えぇ!?だ、駄目ですかぁ!?」

 

「けど、オルタもあんまり人の事は言えないと思います」

 

「私もアンタには言われたくないわね。ジャンヌ・ダルク・ドスケベ・サンタ・ロリィ」

 

「私はただ愛に正直に生きているだけです!不純じゃないですから!その呼称は侮辱罪ですよ!」

 

女三人よれば姦しいとは言うが、こうして見ると只の仲の良い姉妹にしか思えない。

長女:ジャンヌ・ダルク。次女:ジャンヌ・ダルク・オルタ。三女:ジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィと言った所か。実に心が和む。

その仲良し三姉妹の内の一人に卑猥な格好をさせて、竿をブチ込もうとしている俺が言えた台詞でもないが……。

 

「んぅ、ふぅ……あ、リリィ……そんなに開かないで……」

 

俺の挿入をアシストするかのようにリリィはジャンヌの淫花を開いていた。

邪ンヌは変わらず、ジャンヌを開脚のポーズで抱えたままだし、彼女の言う通り、これは姉妹の共同作業とも言ってもあながち間違いではないのかもしれない。

 

「っぁ、っあぁっ……ああぁっ~~~~……!」

 

そんな妹二人の力を借りて、ジャンヌは男根を受け入れ始めた。

痛み、不安、快楽、悦び、興奮、あらゆる感情が混ざり合っている彼女は挿入しながら迫ってくる俺の首に手を回した。

 

「あくぁっ……私のナカが開かされてるぅっ……ひあぁっ!」

 

「マスターさんのモノをパックリ咥えていますね……とてもドキドキする画です……」

 

「何、挿れられただけで満足してるよの。本番はここからでしょっ!」

 

邪ンヌはジャンヌの太腿を掴んでいた手に力を入れると、抱えていた腕を使ってそのままリズムを取るように彼女の体を小刻みに、そして上下に動かし始めた。

 

「あはぁぁ!!?ま、まってぇっくださ……ひぅんぅ!急に、動かしたらぁっ……奥ぅ、奥がぁっ!んんんぅあぁ!!」

 

卑猥な格好で固定されているジャンヌに抵抗は出来ず、自分の股から全身に駆けてやってくる快感に口を開く。

自分が動かずとも、ストロークは行われ、俺のモノを締め付けるジャンヌの膣肉は本人の性格を表すように慈愛に満ちた蠢き方をしているようだった。

 

「私ぃ……あんぅ!!……串刺しにされちゃってますぅ……!マスターのイケナイ所でぇ……ふあぁっ!おっぱいいじらなでぇぇ……」

 

まぐわいでプルンプルン揺れるバストを揉み込んでいく。優しく、緊張をほぐすように……。

触っている自分の手が逆に犯されてしまっているような錯覚に陥ってしまう程に柔らかさ、肌触り共に今のジャンヌの乳房は第二の名器とも言える魅力を持っていた。

 

「ほら、ほらっ……マスターのおちんちんでもっと狂って、みっもない顔を見せなさいよ……はむぅ、んちゅぅ……」

「ちゅ、れろっ……マスターさんと本来の私が繋がってる所、凄く、えっちぃです……んちゅぅ、ちゅぱぁ……」

 

サディスティックな笑みを浮かべている邪ンヌは後ろから耳を甘噛みをして、対照的にリリィは優しそうな笑顔で俺とジャンヌの結合部を舐めていた。

 

体の中、外、どちらからも敏感な場所を責められてジャンヌは悶える事しか出来ない。

 

「はぅ!あぁ、あぁぁんぅ!!……キモチ良すぎてぇ……こわひぃですぅ……はぁっ!ますたぁっ……私が私でいられるようにキス……きしゅしてくださひぃっ……」

 

舌を出し、涙目でそう懇願されては俺には断る理由はない。

『A』の扉の間の時とは逆の立場だが、今度は俺から彼女と唇を重ね合わせる事にした。

 

「んむぅ、んぅ……ちゅぅ、んふぅ、ふぅぁ……あぁ、これ、好きですぅ、キスして、おっぱい揉まれるのぉ……ますたぁ、ましゅたぁ……はむぅ、んじゅんぅ、ちゅぅっ……!」

 

キスをしたのは俺からだが、それでも完全に受け身に回るつもりはないのかジャンヌは息を荒げ、自分からも積極的に唇と舌を動かしていく。

 

「んんぅ、んじゅっ……じゅぱぁっ、あぁ!アソコがジンジンするの、止まらな、ひぃ!……あっ、あっ、あっ、あくぅっんぅ!ますたぁのその腰の動かし方好きぃ、かもですぅ……んあぁあぁ!」

 

後ろにいる邪ンヌと呼吸を合わせるように俺自身もジャンヌの子宮口を程よい力で連続で突いていく。

目の前にいる俺はジャンヌの限界が近い事を何となく悟っていた。

 

「…………もう、出すよ、ジャンヌ」

 

「はいぃ!いいですぅ、出してくださいぃ……!んぅ、ちゅぱっ!私の膣内にぃ……んぷぅ、マスターの魔力をたくしゃんぅぅ……んむぅぅ……」

 

深い深い接吻の合間におねだりする白い聖女と同じ色の欲望を解き放つ。

 

「ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛んぅぅぅうぅぅっ!!!」

 

エクスタシーに達し、小刻みに体が痙攣しているのが重なり合っている唇からよくわかる。

 

股間から来る感触からどうやらリリィが結合部から垂れている俺達の愛液を啜っているようだった……こんなロリ性女に一体誰がしてしまったのだろう。

 

「んむぅ、はぁ、ますたぁの吐き出したモノが……今、私の中にたくさん、あるんですねぇ………‥ちゅっ、んじゅぅ、ちゅむぅ……んむぅ……」

 

子宮いっぱいに射精されてなお、ハマってしまったのか甘えるようにキスをしてくるジャンヌの色っぽさに愚息は即座に元気を取り戻していった。

 

「あっ……マスターの、また硬くなってます、ね……」

 

せっかくジャンヌ・ダルクが3人揃っているのだ。この淫蕩な宴はまだまだ続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぅ、んあぁ!!敏感な所、こすれてぇっ……こんな責め方もあるんですねぇ……あうぅぅんぅ!」

 

「あっ、ふぅ、んぅ!なん、でぇ……私が下なのかしらぁっ……重いったら、ありゃしないわよっ……!」

 

「お、重い!?……体重は私達変わらないはずでは…………んひゃあぁっ!!」

 

「んぅ、じゃあ……アンタが肥えたんじゃないかしらぁ……にゃああぁぁっ!!」

 

ほぼ全裸に近い状態までドレスを荒々しく破られた二人の白黒聖女は口が悪い方を下にしてベッドの上で重なり合っていた。

 

その二つの女貝の狭間をペニスが何度も行き来する。

ダブルジャンヌの女性器は一見すると確かにそっくりだが、俺には仮に目を瞑ったとしても、こうして触れ合っていればどっちが二人のモノか自信を持って答えれる。

こういった個々の違いをちゃんと把握するのも良きマスターの証なのかもしれない。

 

「ひぅんぅ!あぁぅ!!……はぁ、ますたぁさんの指ぃ、とんだ暴れトナカイですぅ……!私のアソコ、そんなにかき混ぜてぇぇ……んにゃぁぁ!」

 

小柄なリリィは腰を動かしている俺の傍らに寄り添っている。

当然、見ているだけなんて勿体無い事はさせず、俺がさっきのご奉仕のお返しとしてしっかりと狭い女陰を弄り回してあげていた。

 

似て非なる彼女達の恥丘は一つとなって俺の性器を受け入れているようにも見えた。

幼女とは思えないリリィの痴態を隣に置きながら、俺は抽送を続ける。

 

上にいるジャンヌの金髪を掻き分けると、うなじから背中まで蠱惑的な汗が浮かんでいる。

それを拭き取るように指をなぞらせると、彼女の反応はさらに大きくなった。

 

「ひやぅんうっ!?あへぁっ、だめ……ますたぁ、背中はだめっ……!なんですっ、私弱くへぇ……んひぃっ!!?あぁ、舌ぁ……舐めちゃ、やあぁっ……!あぁぁっ!!」

 

駄目と言われるとやりたくなるのが人の性というもの。

しかもルーラーの彼女が弱い所があると聞いて黙ってられるマスターではない、これを機に弱点を克服してもらいたい。

 

「あっ!ひぃ!んぅぅ……!あぁ、ぁぁっ!くすぐったぁぁいですぅ、マスタぁぁ……!あっ、あぁ、はふぅぅ……痺れるのが止まらなひぃっ……!!」

 

「はぁ、はぁ……フフッ、いい調子よマスター、あの聖女様がこうして私の上で無様を晒してるなんて…………んんぁぁあ!?ちょっとぉ……急に、あ、んぅ……アソコでクリトリス擦るのはぁ……やめなさいよぉっ…はああんぅぅ!!」

 

「あぅぅ、んぁぁっ!マスターさんぅ、マスターさんぅっ!……もっと、もっとぉ、たくさんぅっ……リリィのイケナイ所、愛してくださいぃ……!あぁぁあっ!!」

 

金髪を振り乱し、真っ白な穢れなき背中からの快楽に悶える白聖女。脚をヒクつかせて敏感な場所をピンポイントに突かれ続ける黒聖女。腕にすがりつき、もっと激しくとお願いする幼聖女。

指、肉棒と3種類のジャンヌの女性器の感触を存分に味わいながら、俺は本日何度目かになる射精をする。

 

「はぅぅうっぅぅ……!!あっ、あぁ……もう、また私の方にかかってるじゃないのよ……………待ちなさい。ちょっと、待ちなさい淫乱聖女、これは自分で拭くから、あんたは大人しくしてなさい……そんなお約束求めていないから……」

 

「……んぅ…………はぁ、はぁぁ――、はぁ……そんなに遠慮しなくてもいいんですよ。私はお姉ちゃんですから、ちゃんと責任を持って綺麗にして、あげますからぁ…………」

 

邪ンヌが下にいる以上、当たり前だが俺が吐き出した白濁液はほとんど彼女の体にかかってしまっている。

汚れてしまった妹の体を綺麗にしてあげようという優しいジャンヌお姉ちゃん。決して邪ンヌの体に付着しているスペルマが羨ましいからなんて理由では断じてない。

 

「百億歩譲ってアンタを姉と仮定しても、間違いなく普通の姉は妹の体についた精液を舐め取ろうとはしないわよっ!……ちょっと待て、そんな息を荒げて、ちかづくな…………あんぅ!……どこ舐めてぇ……」

 

「仲良き事は美しき哉ですね。マスターさん」

 

あぁ、全くだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁぁぁ!……あんぅぅ……ひぅぅっ!!ますたぁさんの暴れん棒が私のお腹の中いっぱいにしてぇぇっ……!しゅきぃ、これだいしゅきですっ……あぁっ、はぁぁっ!!」

 

「はぅ、んぅ……ふぁ……!まったくぅ、私達3人をこうして並べて犯すなんて、本当に良い身分よ、ねぇ……あふぅっ!」

 

「はぁ、はぅ!それ冷たくヌルヌルし、てぇ……!指の動かし方なんだかえっちぃですぅ、あんんぅうぅ!お豆摘ままないでぇっ!!」

 

邪ンヌの言う通り、全裸にさせた3人のジャンヌ・ダルクをベッドの上で犯している様は豪勢としか言えない。

大小白黒ジャンヌ3姉妹丼の美味しさは最上級……現在進行形でそれを戴いている俺は目の前のご馳走に食いつくのを中止する選択肢は無い。

 

リリィを真ん中にして、川の字で横になっているジャンヌ達の痴態がまとめて見える絶景。

今は幼き聖女の膣内をお腹が膨れるぐらいにピストンしている。両隣にいる二人を休ませる理由もなく、二つの雌穴にそれぞれローションで滑りを良くした左右の指を暴れさせて、退屈させないように悦びを絶え間なく与え続ける。

 

肉棒を抜いては別の娘のヴァギナへ挿入していく。抜いた後でも代わりとばかりに手マンで快楽のインターバルを与えない。

 

「あぁっ、ますたぁさん……抜かないでくださ、んんふぁぁあ、あぁっ!指ぃ、いつもと違う感触ですぅ、私のナカ、すべってぇ……ひゃぅうっ!」

 

「……ちょっと待ちなさぁ……アンタどこの穴に入れようして……あウウぅっ!!おぉぁっ!おぉっ……ほぉ……!だ、めぇっ、だめぇっ……お尻はぁぁっ、変になるかりゃあぁっ……!」

 

リリィの時は狭い膣内を子宮口まで埋め尽くしたら、小刻みに振動するように動かし、ピストン運動をした。

邪ンヌの時はローションでコーティングした肉棒であえてアナルの方を責めていく。強く、彼女を少し苛める感じを意識して……。

 

「あぁっ!……太くてぇ、優しいのにぃ……激しいのぉ、んあぁあっっ!こんなの挿れられたらぁ……もう抜きたくなくなりますぅっ、はあぁっ!」

 

そしてジャンヌには、恋人のようにスタンダードな挿入をプレゼントした。

 

挿れては抜き……挿れては抜き……三者三様、それぞれの責め方で代わる代わる男性器と指で異なるジャンヌ・ダルク達と肉交していく。

 

セックスの最中で指を絡め合いながら、物理的にも精神的にも距離が近くなっている聖女達に自身の滾った欲望を俺は何度もぶつけていった。

 

「あぁああぁ――――ッッ!!!あぁっ、あふぅ……今日、初めてのぉ……マスターさんからの膣内出しプレゼントですぅ…‥!私の袋に入り切らないですよぉ……やぁぁんぅ」

 

「あ゛あ゛あ゛んぅぅぅっっ!!おぉぁぁっ!!……おぉっ、ほぉぉ……おほぉっ……!こんなお尻に出されてキモチよくなっちゃ、らめなのにぃ……らんで恥ずかしい声、とまらないのぉぉっ……」

 

「んふぅ――!!んんぅ!んぐぅっ!ちゅぅぅっ、ちゅむぅ……っぱぁっ!……あぁっ、キスされながら、たぷたぷ出されるのぉ……とってもしゅきれすぅ……ちゅぅ、んぅ……っはぁ……癖になっちゃいそうぉ……あんんぅっ……」

 

彼女達の嬌声による重奏曲……耳を蕩かす程に婬奔な演奏会はそれぞれに一度出したぐらいでは終了しない。

ジャンヌ・ダルク達が気絶して、淫靡な音が出なくなるまでしばらく続く事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……では行きましょうか、マスター」

 

「もういいの?」

 

ルーラー故に耐久力に秀でているお蔭か、一番最初に目覚めたジャンヌはいつもの服に戻ると仲良く夢の中にいるオルタとリリィに優しく毛布をかけてあげていた。

さっきまで彼女もこの二人に混ざって眠りについていたのだが……。

 

「はい、少々名残惜しいですが、私達にはまだやる事が残っていますしね。それに今回の事でオルタとは距離を縮められた気もします……やっぱり、裸の付き合い、肌と肌の触れ合いは絆を深める手段としてもってこいかもしれませんね。二人とは色んな意味で家族になれた気がします……」

 

「”色んな意味”、ね……」

 

「そ、そこは突っ込まないで下さい……マスターは本当にえっちぃです」

 

まぁ、そうだね。様々な液で体中ぐっちょぐっちょになるぐらい混じり合ったわけだし、あんな重なり合って喘いでいたら、一種の連帯感的な物も生まれたのかもしれない。あのオルタちゃんですら、最終的にはジャンヌに心を許しているようにも見えたし。

やっぱり複数プレイは平和への最適解だった……!?

 

「ではお手を、マスター……。この先の道も暗闇が続きますが、貴方が隣にいるのなら何も恐れる事はないでしょう」

 

ベッドの上で寝息を立てている二人を後に、俺達は見事『C』の試練の間を突破し、そのラブホっぽい部屋から出る事が出来た。

 

さて、俺達をこのエッチでニッチな世界に取り込んだのは一体どこの誰ナノカ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「主は言いました。『乙女よあざとくあれ。サーヴァントは常識に囚われてはいけない』と……ワン」

 

道を進み、今までとは異なった何も書かれていない扉を潜ると……………そこにはいた。

 

開いた胸元、丈が短いスカートに、惜しげもなく露出されている臍。

あざとく付けた犬耳に全身を黄色の魔法少女コスで包んでいるその少女は――――――どこまでもジャンヌだった。

 

「というわけで、”あなたを犯人です”みたいな感じであなた達をこの『ABCイッちゃう太陽』にご案内した黒幕はピカピカぴかりんジャンけんポン♪キュアピース!こと私、神風魔法少女ジャンヌちゃんでした!ふふーん、予想外過ぎて二の句も継げないみたいですね!ワン!」

 

「…………カハッ」

 

俺の隣にいるジャンヌは精神的ショックで言葉が出なくなってますが……あぁ、白目剥いてらぁ。

 

「むむ、その反応……ルーラージャンヌの方はともかく、マスターはもしかして私の事に気付いていたご様子ですか?」

 

「まぁ、ノイズがかかっていようが、はっちゃけていようが、あの声はジャンヌ以外の何者でもなかったし、間違いようがないよ」

 

「…………どうして、マスターはこう私の母胎にキュンキュンする発言をかましてくれるんですかねぇ……」

 

その露出度増し増しの格好でもじもじするのはやめい、ウチのジャンヌがさらにダメージを負っているから。

 

「なんですか、また増えたのですか。私はアルトリアさんと違ってそんなぽこじゃか増える事はないと思っていましたのに……」

 

「う――ん、厳密に言えば少し違いますかね。今の私は霊基を得て、現界しているわけではありませんから。この不思議空間でしか実体を保てないそれはもう弱々しく保護欲を掻き立てるただの魔法少女ですから。…………あ、ワン」

 

思わせぶりな態度で目の前の魔法少女ジャンヌは話を続ける。

啓示のスキルかジャンヌは嫌な予感を感じ取って、汗をダラダラと流していた。

 

「なるほど、確かに聖女のあなたにフランスを憎む心はありませんから、あなたの側面としてジャンヌ・オルタが生まれる事はない。それは真実でしょう……ですが、それが別の側面も無いという理由にはなりますか?」

 

「……まさ、か」

 

「そう、今あなた自身が恥ずかしいと思っているこの私は!ピチピチマジカルジャンヌは!紛れもないあなたなのですよ!……”はっちゃけたい、ギャグテイストに全振りでいきたい、あわよくばマスターとイチャイチャエロエロしたい”……そんなあなたの奥底にある願望がこうして私という存在を生み出したのです!」

 

「ち、違います。私は……私はそんな事は……」

 

「自分でも気づいていたのでは?『A』『B』『C』と試練を乗り越える度にだんだん自重しなくなっているのを……マスターとそういう事をするのに抵抗が無くなっているのを、むしろノリノリになっているのを!」

 

「それ……はっ……」

 

顔色が変わっていくジャンヌに神風魔法少女がさらなる追い打ちをかけていく。

 

「つまり、この試練を創ったのもあなた自身だと言えるのですよ!ジャンヌ・ダルク!だって”私はあなたなのですから”!!」

 

「ちがい、ますっ……そんなキャラ方向が定まっていない痛々しい姿が私なんて……私なんてっ、認められないっ!”あなたなんて私ではありません”!!」

 

「フフフフ、フフフッ……!!そうですね。あなたがそう言うのならそうなのでしょう。あなたの中ではねぇ!!『我は影……真なる我……』。ここでもう色物ヒロインは卒業します!私があなたに代わって、真のジャンヌ・ダルクになってあげますよ!!」

 

「…………っくぁっ……?」

 

強く拒絶したジャンヌは力が抜けたのか、膝をついてしまっている。その反面、目の前にいる黄色のジャンヌはオーラを増し、完全なサーヴァントと見間違える程に存在感を増しているように見えた。まるで本家ジャンヌからエネルギーを吸収したかのように。

 

「アハハハハッ!なんと素晴らしいパワーだワン!これならっ……これならもう四月莫迦限定という一瞬のキャラで満足する必要もありません……今なら旗をタケコプターのように回してお空だって飛べそうですっ!!」

 

高笑いを響かせる魔法少女は黒幕に相応しい振る舞いをしていた。

彼女は自身の中で渦巻いている本家から頂いた力に酔っている事がよくわかる。

 

だが……そんな露出度が高い服でこの俺を目の前して隙を見せるとは――。

 

「そりゃ、悪手だろ。キュアジャンヌ」

 

 

――――『百式官能 参乃掌』

 

彼女の懐に瞬時に迫り、すれ違いざまに手をかざす。

それだけで全ては終わる……このもう一人のジャンヌは自分が何をされたのかすらもわからないままに。

 

「きゃうぅぅぅんぅぅっ!!?」

 

自慢のコスプレ臭がする衣装も最初から無くなったかのように弾けた。そして、脱がすだけで終わる程に俺の手は謙虚な性格をしていない。この一瞬で多数あるジャンヌの性感帯を正確に突いた。

 

「君がジャンヌ自身というのなら、弱点(性的)も当然本人と同じだろう。三つの試練を超えて、既に俺はジャンヌの敏感な場所は完璧に熟知している。慢心したな、神風魔法少女ジャンヌ」

 

「……んぅ、くぅ、はぁ……ふふっ、敵に見せ場をやる必要無し!と言わんばかりの先手必殺に、変身中の戦隊ヒーローや魔法少女に攻撃するレベルの容赦の無さ……マスターがそちら側にまわっていた時から私の勝ち目は無かったみたい、ですね……ワン」

 

全裸で地に伏せた(元)魔法少女。最後の矜持なのか犬耳だけは残っていたが……。

 

「マスター……」

 

「ジャンヌ……確かにちょっとアレな性格だけど、この娘は間違いなく君自身だよ」

 

「…………」

 

膝をつきながらも顔を上げるジャンヌに俺は近づいていく。

 

「ただまぁ、そこまで気にすることかな?」

 

「え?」

 

「だって、ほら。アルテラちゃんやアタランテの二人に比べると……あれぐらい全然可愛いもんだよ」

 

後ろで「え、今……私の事、可愛いって言いましたよね!?……聞こえてますよ!聞こえましたよ!マスター!」とか何とか言ってるけどガンスルーで。

 

「それに、自分で言うのもなんだけど……マスターである俺自身だって大分はっちゃけてると思うよ。それは一緒にいるジャンヌがよくわかってるでしょ?だからジャンヌは目の前のアレを恥ずかしがる事は何も無いと思う。むしろ俺は嬉しいよ。こうして君の新しい一面が知れて」

 

後ろの「アレ扱いで放置プレイ……あぁ、けど逆にキモチ良くなってきました。なんだか新しい扉が開きそうですぅ……」とか言っている戯言はスルーで。

 

ポカンと呆けていたジャンヌはクスリと笑うとふらつきながらも立ち上がった。

 

「……そうですね、私は今日一日であなたにたくさんの恥ずかしい所を見られちゃいましたし、今更何を拒絶する事があったんでしょうか。確かにマスターもマスターでアレ以上に滅茶苦茶でした。貴方は……あんな残念な一面を持っている私を受け入れてくれますか?」

 

「もちろん。むしろウェルカム」

 

俺の返答に朗らかに顔を輝かせたジャンヌは全裸で倒れ込んでいるシャドウジャンヌの傍へ。

 

「貴女は私なんでしょうね……最初の奇妙な姿や言動から認めたくありませんでしたが、それでもわかります。私の心のどこかにあるのでしょう……貴女の言う通り……恥ずかし気もなく周囲を気にせず風のように自由奔放な振る舞いをしたい私が。マスターとこう…………ぇっちぃ事したい私が。認めます。貴女は私です……!」

 

ジャンヌの言葉により、目の前のシャドウジャンヌの体が透けて、光の粒子となっていく。

どうやら、元のジャンヌに還っていくようだ。

 

「ようやく認める事が出来ましたか……まぁ、まだまだ消化不良ですが、きっとこれで良いのでしょう……あ、それと今回はあなたの体に大人しく戻りますが、もしエイプリルフールイベントとかあって私が実装されたら、その時は遠慮無しで別個体として出てくるんでよろしくお願いしますね!」

 

「ちょっと!?最後に不吉な事言って消えるのやめてもらえませんか!!」

 

影を受け入れる事でシャドウはペルソナへ昇華する。

自分自身と向き合える強い心が、”力”へと変わる……。

 

 

 

ジャンヌはペルソナ『マジカルキュアジャンヌ』を手に入れた!

ペルソナを手に入れたジャンヌは新しいスキル『性人:B』を手に入れた。

 

「ちょちょ、ちょっと待って下さい!?何か可笑しなスキルがついたんですけど!『性人:B』って何ですか!!後この『カリスマ(性):C』とかいうスキル!!私知りませんよっ!マスターのアソコを指揮とか色々とヒド過ぎると思うんですけど!?」

 

周りから空間が崩れる音が聞こえる。シャドウが消えた事により、もうこの試練の間も役目を終えて消えていくのだろう。

巻き込まれたオルタとリリィも無事にカルデアに戻っていく筈だ。最初に何も見えない暗闇に放り込まれた時はどうなるかと思ったがいざ終わりを迎えると少し寂しい気持ちが湧いてくる。

 

「いやいや、それっぽいナレーションで締めようとしないで下さいマスター!確かに彼女を私とは認めましたが、こんなスキルを付けられるなんて聞いていないんですがっ!?」

 

この騒動の後は、おそらくカルデアで目が覚めるだろう。

そこからいつもと変わらないそれでいて退屈しない日常が。

新たな一面(ペルソナ)を得たジャンヌと共に俺はそんな日常を歩んでいきたい。

 

「もしもーし!マスター!聞こえてますよねっ!?マスターってば!」

 

 

 

 

 

 




『魔法少女コスで凌辱プレイとかいいと思うんですけどっ!今度マスターさんに頼んでみましょうよ、私!』

「あぁ、もう私の中で毒電波を発しないで下さい!!私は優しく、情熱的にしてもらうような愛があるプレイの方が好きなんですよっ!」

『いいじゃないですかー……マスター相手ならそういうプレイでも愛はちゃんと芽生えますよ。食わず嫌いはどうかと思いますけどね私は。マスターと新たな世界を開拓をするのに躊躇する必要があります?』

「………………ちょっとだけ、ほんの少しだけ考えておきましょう。考えるだけですけど……」

『(ちょろい)』



我は汝、汝は我……
せっかく見つけたあなたの性癖……
どうかもう、見失わないで。
今日はイイ子ちゃんの自分からの卒業記念日です。


ジャンヌ祭り回。前話の感想で黒幕バレバレだったので意外性もくそもないっすね。
もし、将来的に魔法少女ジャンヌが実装される事になればまた別キャラとして書く可能性が微レ存?このままではジャンヌが色物枠になってしまうんでね(自身の中に魔法少女コスをしたもう一人の自分がいるとかキャラ濃すぎるのじゃ)。
アタランテ「色物枠?」
アルテラちゃん「こっち来いよ」






活動報告にも書きましたが、もしかしたら、4月から社会に放り出され、いつものように執筆時間が取れなくなり、更新頻度が遅くなるかもしれません。
感想も返信の方は遅くなる可能性が大だと思います。それでもやる気の原料としていつもありがたく読ませてもらっています。

ただ、まだまだ書きたいキャラがいるので連載を止める事はありません。それこそFateないしFGOというコンテンツが終了しない限りは。
茨木、タマキャ、エレナ、フラン、メディリリ、青王、乳上、ヒロインXオルタ、クロエ、ゴルゴーン、アナ、ジャガー…………現在持っていないキャラでも書きたい奴はたくさんいますし(数多すぎるネー)。
というわけでこれからもお付き合いをしてもらえると嬉しいです。



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鬼もんスタジアム(茨木童子&酒呑童子)



失踪したと思った?残念、生きてるのじゃ。

リアル生活で色々疲れきって更新が遅れました。いや、社会人って大変だねホント……全ての勤労者に尊敬の念を僕は送りますよ。
ちゃんと皆様の感想は読ませてもらってます。今の私の生きる糧と言っても過言じゃないですのよマジで。更新あいてもちゃんと見てくれてる人がいるのは涙出てきますわ。

それと前話のエイプリルフールネタが予想外に好評過ぎてビビったぞ……感想と評価来すぎィ!!(大歓喜)

まぁ、お待たせした御詫びにエイプリルフールネタの続編は近い内に投稿するんで許してニャン。









「ククク、これはお菓子が欲しいサインだぞ」トントン

「イバラギン」


午前2時過ぎ……魔力が最も高まると言われている時間。

そして「なんか今、回せば引けそうな気がする」というよくわからないシックスセンスが湧いてきたので聖晶石を握り締めた俺はカルデアの召喚ルームへと向かっていた。

 

午前2時教に直感教、このハイブリット宗教を信仰している今の俺に死角はない。この戦い我々の勝利だという奴なのだ。

 

「……おや?旦那はん、こないな時間に何してはるん?」

 

いざ戦の時じゃあ、と廊下を歩いていた途中に酒呑童子と出会った。

相変わらず、服の体をなしてない着物の着方だが。

 

「って何故、角を隠す」

 

「いや、それは自分の胸に手ぇあてて考えてみいな。条件反射になってもしゃあないやろ」

 

「よっぽどの事しない限り、もう皆の前であんなお仕置きはしないから安心していいよ」

 

頼光さんとマジで殺し合う3秒前に入りかけていた時の事を言っているのだろう。まぁ、あの時はいつもの気持ち良くなってもらう愛撫というよりはお仕置きとして優しさのない快楽をただぶつけただけだしなー。

ただ、「ああ、けど……あのお仕置きはおっかないのに、また受けとうなる魅力もあるんよ……」と体をくねらせる彼女を見ると罪悪感が薄れてしまうゾ。

 

ともかく、ここで出会った以上隠し立てするような事でもないか……せっかくだし彼女も連れていくことにしようかね。

 

 

 

「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。祖には我が大師シュバインオーグ。降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」

 

「大仰な呪いやねぇ……いつもうちらみたいのをそれで呼んでおるんか?」

 

召喚サークルを前に、石をブン投げて呪文を唱える俺に酒呑は問いかけていた。

 

「いや、この詠唱も別に必須じゃないよ。気分によってしたりしなかったり、気合入れてる時はしてるかな?まぁ、願掛けの一つみたいなものだと思ってくれればいいよ……えーとどこまで言ったっけ?……閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ……以下割愛、ガチャの輪より来たれ、いい感じの守り手よ!!」

 

「おざなりやなぁ……」

 

稲妻を彷彿させる音と眩しさ、貴重な資源を投資した結果はどうなる?

輪は三つ!しかも金色!キタ!

これは最強のサーヴァントを引いてしまったかもしれないわ!この戦い我々の勝利よ! 

 

凄い勢いで回転する光輪がようやく収まり、その中から現れたのは……。

 

「吾の名は茨木童子。クハハッ! 大江山の鬼の首魁たる吾を呼ぶとは、一体どこの身の程知ら、ず…………のぉっ!?汝はぁっ!?」

 

「イバラギン!イバラギンじゃないか!」

 

金髪、角2本にはだけた着物だけど、酒呑程に色気は感じさせないイバラギンじゃないか!

鬼らしくむつかしい言葉は使うけど、どこかポンコツ臭が拭えないイバラギンじゃないか!

 

「えぇい!馴れ馴れしいぞ!よりにもよって、汝の召喚に応じてしまうとはぁっ!」

 

召喚そうそうフシャー!と猫のようにこちらを威嚇する茨木ちゃんだったが俺としてはどうしてここまで警戒されるのかまるで心当たりがないのだが……。

 

「忘れたとは言わせぬぞ!汝が京の都で『がんど』とか何とか叫びながら奇怪な呪術で何度も何度も吾の体を好き放題にしてくれたことをぉ!!しかも最終的には拳で吾の腹を殴ってくるではないか!!何なのだ、汝は!?後衛で守られている只のか弱き人間かと思えば、平気で前線に出てくるわ……鬼と生身で戦える以上、汝は人間ではないな!?恐らく怪異か化生の類か!?」

 

召喚早々に女の子にディスられて俺のハートはマジでブロークン。

 

だって羅生門のイバラギンは油断しているとこっちがやられてしまうぐらいに強敵だったもん。孔明先生の過労の陣と玉藻の呪術じゃ、封じ切れそうにもなかったからさ、それはマスターたる私が出張ってカバーするしかないじゃない……取り敢えず「ガンドォッ!」って叫んでおけば腹パンでもガンドやろ?

 

「ほぉー、うちが寝ている間にそないなおもろい事してたんやなぁ……」

 

「おぉ!酒呑ではないか!うむ、うむ!この傾奇者に召喚された時はどうした事かと思ったが、酒呑がいるなら何も問題はあるまいて!」

 

酒呑童子がいるとわかって顔を一変させ、輝かせる茨木。

わかる、気持ちはわかるよ。新しい新天地で顔見知りがいるという安心の大きさは。それが生前から親交を深めた仲というのならなおのことだよね。

 

「………むむ、待て待てっ、吾の召喚にこうも居合わせたのは偶然ではないな……。成程成程、さすがは酒呑だ。こ奴が無防備にここに一人でいるのも、計算通りというわけなのだな」

 

ニヤリと鬼らしく好戦的な笑みを浮かべた茨木は得心したように独り言つ。

俺と酒呑としては何のことやらとクエスチョンマークで首を傾げるしかないのだが……。

 

「皆まで言わずともわかっているぞ。大江山の二鬼がこうして揃ったのだ。この男を打破すれば吾々がこのかるであとやらを乗っ取れる……今はその絶好の機会、そう言いたいのだろう酒呑……」

 

ウチの子達が聞けば、即堕ちフルボッコされかねない危ない発言をするね君は。

どうやら茨木は自分が召喚されたのと合わせて酒呑が俺とここにいるのを都合良く解釈していたようだった。

 

……だが、この瞬間、顔を見合わせていた俺と酒呑は言葉を交わさずとも通じ合っていた!

 

――せっかくだし、この愉快な鬼っ娘を少しおちょくってあげようと!

 

「そうやねぇ……なら、ここいらでネタばらししよか。うちはこうして旦那はんに反旗を翻す時期をずっと見計らっていたのよ……茨木が来てくれたこの瞬間が絶好の機会と思わへん?」

 

「オンドゥルルラギッタンディスカー!!」

 

「クハハ!そういう事だ人間!京の都では遅れを取ったが今度はそうはいかぬ!酒呑の手を煩わせるまでもない!吾自ら引導を渡してくれるわぁッ!!」

 

「茨木のイイ所見てみたいわぁ~」

 

酒呑の声援を背に、金髪ロリ鬼娘が俺に襲い掛かる。

彼女が人間ではない事を特に象徴している赤き手は火炎を纏い、その鬼手が今まさに俺の体へと向かってきた。

通常の人間を凌駕しているスピード。ただの一般人に過ぎない俺にとっては抵抗する間もなく、そのまま―――。

 

――ガシッ。

 

「ほえ?」

 

はい、ぽいっと。

 

「ぷぎゃ!?」

 

爪を剥き出しにして来襲した茨木の腕を掴んだ俺はそのまま彼女を放り投げる。

壁に激突したイバラギンはつい情けない悲鳴を漏らしてしまった。

 

やめてよね。召喚されたてのLv1のサーヴァントがLv140のマスターに敵うはずないだろ。

 

「……ふ、ふふふっ。人の身でありながら伊達に戦場は経験しておらんということか……。油断はしたが、次はこうはいかぬぞ。吾が本気になった以上、汝にはもう先程のような絶好の時宜が来ることはないと知れぇ!」

 

ぶつけたおでこを擦りながら、尚も茨木は俺に挑もうとしていた。

あぁ、たかだか一回程度の失敗で諦めず酒呑の期待に応えようとするその姿勢は感動的だな。だが無意味だ。

 

はい、掴んで投げてー。

 

「にやぁっ!?」

 

 

掴んで投げてー。

 

「ぐわぁっ!?」

 

 

また投げてー。

 

「むぎゅっ!?」

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

「うわああああああああん!!!殺してやるうううぅ!!!」

 

何度も投げられまくって無様を晒してしまった茨木はついに童のように泣き出してしまった。うむ、まさに童子。

 

「こら、女の子がそんなはしたない言葉遣いをするんじゃありません」

 

「ふにゃぁっ!?ちょ、ちょっと待て!汝はどこを掴んでおる!?鬼の象徴たる角を掴むとは不敬にも程があろ……ひゃうぅん!?ひぅ、だからまて、変な動かし方をするでは…………あああ、ああぁぅぅうぅっ!!?」

 

まぁ、これ以上暴れられても困るので、俺は冷や汗をかきながらもどこか羨ましそうにも眺めている酒呑を尻目に平和的手腕で茨木に大人しくしてもらう事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ひっく、ひっく、もうやだ……人間怖い、母上に会いたい、お家帰りたい……」

 

「悪ノリし過ぎた。ごめんて茨木ちゃん」

 

やり過ぎて、部屋の隅っこで体育座りでホームシックを拗らせた茨木ちゃん。俺達二人は何とかこっちを向いてもらおうと慰めていた。

いやー、弄り甲斐のある可愛い娘が出てくると俺も酒呑もついハッスルしちゃうんだ。本当に申し訳ない。

 

「堪忍な~、茨木。けど、口で言うても、あんた納得してくれへんやろ?こうして身を持って旦那はんが()()()()()だってわかってもろたほうがええと思ってなぁ」

 

「……ぐすっ……う、うむ、羅生門の時にもその片鱗は見せていたが、この自由奔放さ。傍若無人っぷり確かに我ら鬼にどこか通じるものがある気がする……人の身でありながらな。むしろ鬼以上の得体の知れなさも感じるが…………」

 

え――、なんで現役鬼っ娘コンビにそこまで言われなきゃいけないんすかねー。

なに?背中で鬼の顔でも作ればいいの?エアお味噌汁でもすればいいんですか?

 

「あいわかった!元はといえば、吾が汝に襲い掛かったことから始まった話よ。吾も汝がやった事は水に流すから、そちらも吾の事は許すがよい!これで万事解決!酒呑も認めているその手腕、近くで見定めてもらうぞ、()()()()!」

 

目元を拭い、振り返った茨木はニカッと笑い。今までの空気を入れ替えるようにそう宣言した。

さすがは仕切り直しA。まだちょっと目が赤いのは気になるが……これから色々と仲良く出来ると嬉しいな。

 

「うん、これからよろしく頼むよ茨木童子。とりあえず、お詫びとお近づきの印にこれを贈ろう」

 

女の子といえばスイーツが大好きだからね。俺は秘蔵のクッキーシュークリームを彼女に手ずからあげた。

 

「くく、よろしく頼むかどうかは汝次第だかな!…………むむっ?なんだそれは。クハハッ!この大江の鬼達の首魁たる吾を甘味で懐柔しようというのか!随分と甘い奴よの!甘味だけに!……まぁ、贈られた以上は頂くが、吾の口を満足させるものなど、早々………………うまぁ!あまぁ!何これぇ!外サクサクで中トロトロなんだけどぉ!すごぉーい!……はむっ、もぐっ!この美味さ……一瞬で食べるのはもったいないというのにっ!……ごくっ!口が止まらぬぞ!他の!他のはないのかマスター!吾、対価としてちゃんと働くぞ!」

 

「鬼はちょろー、鬼はちょろーって奴かな?」

 

「あのちょろさで鬼一緒くたにして欲しくないわぁ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お菓子を食べてやる気百倍ギンギンイバラギン状態になった彼女、せっかく殺る気に満ち溢れているようなので自身の育成に必要な素材を一緒に獲りに行こうと狩場へGO。

 

召喚されたての時は残念臭を漂わせていた茨木ちゃんだったが、さすがは数多の鬼を従えた頭目。この俺にきちんと力を示してくれました。

 

「クハハッ!脆い、脆い!その石巌で出来た体は見掛け倒しか!しかも、戦利品も粗雑なものばかりではないか!八連双晶だが、なんだか知らぬが、どうせなら落とすなら”くっきー”とやらをよこさぬか!」

 

―――渾身のヤクザキックでゴーレムを踏み潰すように粉砕し。

 

 

「とろい!鈍い!遅い!いかに強大な力を持っていようと当たらなければ意味がないとはこの事よ!汝には情熱思想理念頭脳気品優雅さ勤勉さ……そしてェなによりもォ――甘味が足りない!その自慢の心臓をマスターがこの間作ってくれた”はぁと型のちょこれいと”にするべきだったな!!」

 

――紅き腕でデーモンの胸を貫き、蛮神の心臓を抜き出す。たまに力が入り過ぎて心臓を握り潰し、報酬のチョコレートを無しにした時は世界の終わりのような顔になったが。

 

 

「黎明の神腕か……かはっ!随分と名前負けをしているではないか!そんな貧相な外形で『神腕』を名乗るとはなぁ!この吾自ら、本当の”腕”というものを見せてやろう!走れ、叢原火!『羅生門大怨起』!」

 

――別に彼等?が名乗ったわけではないが、ノリノリの茨木は容赦なく地面から生え出している腕エネミー達を宝具で狩り取っていく。うむ、オーバキルだ。

 

 

「ふむ、『再臨素材、スキル強化素材一個につき、お菓子を一個。金種火9個につき、お菓子を一個。※報酬がお菓子複数分に至るまでの成果が出たなら、その分をまとめてさらにクオリティが高いお菓子を贈与してもらうことも可』か……ぬぬぬ、量を取るか、質を取るか、実に迷い所……」

 

こうしてイバラギンは全盛期の力を取り戻す道をかけ上がっていく。ぶっちゃけると自身が強くなるよりは色んなお菓子を味わいたいが為に結果的に強くなってる感じがあるが。

 

ともあれ、すくすくと順調に育った茨木は霊基を最終段階まで強化する事となった。

 

「鬼とは貧する者。故に、奪い、喰らう。が、流石にもう満腹……いや待て待て冗談だ。菓子を下げるでない。甘い物は別腹という言葉があるだろう?うむ、実に良い言葉よ、吾の格言にしたいぐらいにな。そういうわけで先程のは言葉の綾よ。ここでお預けになったら何の為に全盛期まで強くなったかまるで意味がわからんではないか……」

 

自分の強さ<スイーツになっているイバラギンのちょろさに微笑ましさを感じつつ、俺はここまで頑張った茨木に甘味を差し出す。

うーん微笑ましさを感じるとか言ったけど……お菓子に釣られて、悪い大人についていかないかちょっとだけ心配だよ。イバラギンってば割とポンコツ臭するし。

絵面的には俺が今まさに悪い大人に見えないこともないが……いやいや、これは正当な報酬を与えているだけで、お菓子に夢中になっている茨木をなでりなでりしまくっている最中に疚しい事考えているとかそんな事は一切ないから。

 

「ぬぬぅ?”どおなっつ”とな?真ん中分が欠けている事により、本来は量的に物足りなさを感じさせるが、その飢餓感がこれに対する味わいを大事にするという気持ちを煽るというわけか!憎い、実に憎い奴め!『ぽんでりんぐ』という獅子の鬣を彷彿とさせた一品とは思えないこの柔らかさ!これがぎゃっぷ萌えというやつか!『ごおるでんちょこれいと』とやらもいけ好かぬ奴を思い出すが、貴様に罪はない、許そうではないか。うむ実はもう食べるまでもなく、美味いとわかっておるわ。っていうか美味くないわけないじゃん!こんなキラキラ輝いている宝石箱食べるのがもったいないもん!けど食べないともっともったいない!ぐぬぅ!この板挟み状態!吾をここまで翻弄するとはなんて奴らよ!」

 

ミスドから持ってきたドーナッツセットに童のように瞳を輝かせる茨木にさらなる追い打ちをかけるべく、俺は巨大なパフェを持ってきた。

 

「『ついんあいす・びっぐくらんちぱふぇ』?金の杯にこれでもかと甘味を乗せるとはっ!なんと冒涜的な!汝は恐れを知らぬのか!?ええいっ!むしろ許せる!白と茶の氷菓が吾の眼を釘付けて離させぬ!周りを彩っている飾りも全て食べれるのか!?正に天上楽土!…………だが、吾は何も考えずにこれに飛びつく程浅はかではない……汝のことだ。この”どおなっつ”と”ぱふぇ”のどちらかしか食べれないという残酷で冷酷無情、鬼の吾ですら涙する事を言い出すつもりだ…………えっ 両方食っていいのか!!」

「ああ……しっかり食え」

 

(もぐ もぐ もぐ)

 

「おかわりもいいぞ!」

(信じられないという茨木の目)

「遠慮するな 今までの分食え……」

「うめ うめ うめ」

 

茨木との絆がMAXになりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「最近、随分と茨木を気に掛けるんやね、旦那はんは。……同じ鬼として、うち寂しいわぁ」

 

「そりゃあ、新しい職場に入りたての子にとっては初めは一番デリケートな時期だからね、大事にしますよ」

 

「いきなり角イキさせたあんたはんが言う台詞?」

 

「信賞必罰は基本ナリ」

 

夜遅く、皆が寝静まった時間。マイルームにてセクシー過ぎる鬼っ娘こと酒呑と酒盛りをしていると、最近頑張っている茨木が話題に出てくる。同郷の身としてはやっぱり気になるのだろうか。まぁ、鬼にしては少々残念臭がするからイバラギンは。

 

そして、噂をすればなんとやら、俺の部屋に新たな客人が。

 

 

「たのもぉ!いるかマスター。いるであろうなマスター。いや吾がわざわざ尋ねてきたのだ、いない筈がない!」

 

元気よく部屋に入ってきた茨木はまさか酒呑もいるとは思っていなかったのか驚きで意気揚々と乗り込んできたその体を硬直させていた。

 

「おやぁ、こないな時間に旦那はんの部屋くるっちゅうことは茨木も夜這いしにきたんかねぇ……」

 

「よよ夜這いぃ!?ち、ちがう!吾は違うぞ!マスターにどうしても確認したい事があって訪れただけであって決してそのような気持ちは……むむ?今酒呑は『も』と言ったか?」

 

「まぁ、うちはもう何度も旦那はんの寝床に足繁く通っている身やしぃ……茨木と3人でも悪うないと思っとたんやけど残念やわぁ」

 

意地悪そうに笑う酒呑を前に、茨木は「……酒呑がそう言っているのなら、わ、吾も床を共にするべきなのか?マスターの奴も人にしておくには勿体無い程に愉快な奴でもあるし、嫌悪感はない……だが吾はそういう作法はまるでわからんぞ……もし粗相をして二人に嫌われてでもしたら……」と悶々としている。

 

「酒呑の言う事は話半分でスルーしておきなさい。それにこんな時間に来たのは何か用事があったんでしょ?」

 

「あぁ、そうであった!うむ、今すぐ問わねばならない……そう、吾にとっては死活問題だったのでな、このような夜更けにやって来たわけよ!」

 

「汝の手を借り、吾はかつての鬼の頭領としての力を取り戻したわけだ。畏怖と畏敬を持たれ、君臨する鬼の力を!」

 

無い胸を張って、自慢げに語る茨木ちゃん。確かに彼女の言う通り、今の茨木は聖杯を使わない限りはこれ以上ないぐらいには強くなった。まぁ、正確に言えば、全盛期の力を取り戻したというべきか。

 

「その過程で汝には鬼である吾に供物を捧げる契約であった、互いに利がある対等の関係よ」

 

「…………強うなってその上、菓子までもろてるなら茨木しか得しておらんと思うんやけど」

 

しっ!余計な事は言わないでいいの酒呑は。

俺も初めて食べたの新たなお菓子への新鮮な反応、グルメリポーターのような感想、子供のような笑顔をする茨木を見るのが嬉しいの。だからこれはwin-winの関係で合っているのさ。

 

「だが、吾は気付いてしまったのだ……」

 

酒呑の呟きが聞こえなかった茨木は話を続けた。深刻そうに。死活問題と言うぐらいだ、きっと大事なのだろう。

 

「ここまで強くなってしまったら、もう甘味はもらえないのではないのかと」

 

「…………」

 

「のう、マスター?吾はどうすればいい?次は何をすれば汝から菓子をもらえる?ぱふぇ、たると、しゅぅくりぃむ、きゃらめる、もんぶらん、どおなっつ、まかろん……。わ、吾も、酒呑のようにマスターの伽をすればよいのか……?」

 

大分切羽詰まっているのか、茨木は真剣な様子だった。どうやら冗談ではないらしい。

見方を変えると、麻薬中毒者が「薬……はやく次の薬を……」とねだっているようにも思えてしまった。

ただ、お菓子を与えて、可愛がりしまくっただけだというのにここまでハマってしまうとは……どうしてこうなった。

 

「いや、さすがにお菓子を対価に体の関係を求める程外道じゃないよ俺は。おい、酒呑。なんだその心底驚いた顔は」

 

人の事、なんだと思っているのだろう。また角イキ地獄の刑をそんなに味わいたいのか。

俺の心中を察して、角を隠すな。期待に満ちた顔をするな。罰を受けたくないのか、受けたいのか、どっちかまるでわからんぞ。

 

「そ、そうか……では吾はこれから何をすれば……」

 

「まぁ、そういう深い事は考えずに、これからカルデアの中で過ごして、一緒にクエスト行ったり、レイシフトしたり、敵と戦ったりすればいくらでもその機会はやってくるさ、茨木が食べてやる気を出すんなら先払いでお菓子をあげてもいいし」

 

「成程、つまり戦場で手柄を上げろというわけか……クハハ!わかりやすく、そして容易いなこの吾にとっては!汝がもう出せないというぐらいに敵を蹂躙凌辱し尽し、甘味を戴くとしよう!」

 

「そして、わからない事があったから、こうして俺の所に聞きに来るのも好印象。茨木ちゃんには褒美にプリンをプレゼントしようではないか」

 

「”ぷりん”!そのまま器の中から頂き、最後に”からめる”を絡めて一気に食すべきか……皿の上に産み落とし、突きながら嗜虐心高めさせるような揺れ動く様を見ながら食すべきか……吾を選択の岐路に立たせる魔性の甘味ではないか!えぇー、どっちにしようかな――」

 

プリンを両手に幼児退行しながらクルクル回る茨木を酒呑は何とも言えない顔で見ていた。

彼女のポンコツっぷりは酒呑とて当然知っている筈だろうけど、まさかここまで駄目になっているとちょっとツッコミを入れたくもなるのかもしれない。

 

「しっかし、こんな時間にお菓子を食べるのはあんまりお勧め出来ないんだけどね。まぁ、ちゃんと歯は磨いているでしょ、茨木ちゃん」

 

「歯磨き……?くはは、これは失笑物だな!この尖鋭な鬼の牙が菌ごときにやられると思ったのか!そもそもサーヴァントに虫歯も何も無いだろうに」

 

「あぁ、けど、旦那はん確か、茨木への菓子は気合入れて……なんやったっけ?前にバレンタインにぎょうさん狩りまくったチョコエネミーも材料に使うてるて聞いたけど……?」

 

うむ、保管庫をいつまでも圧迫させているのもあれなので消費しようと思ってさ。いや、材料としては結構、他の娘達にも好評なのよ?特にえっちゃんとかには『モグモグ……マスターと一緒にいると胸がポカポカして暖かいんです……モグモグ……この気持ちはなんでしょうか?あ、それとおかわりあります?』みたいな感じで、まぁ、そんな胸キュン台詞を食いながら言われても台無し感凄まじいんだけどネ!

 

「茨木ちゃん、残念だけども実際に虫歯になった娘達もいるから。予防はキチンとしないとこうなってしまうよ」

 

まだ色々と納得してない茨木ちゃんに俺が歯磨きをしない不精者達用に作った注意喚起DVDをプロジェクターで再生させる。

 

スクリーンに映し出された映像にはまず、カルデアのあるサーヴァントが二人……一人ずつ現れた。

 

『I have a gun(麻酔)

 

『I have a drill(ガラドボルグ)

 

oh()!!』『sterilization(殺菌!)

 

 

『いやあああああ!!トラウマなのだわ!トラウマなのだわ!』

『うわああああん!!助けてぇ!お母さん!!』

『麻酔とか治療とかそういうレベルじゃないと思うんですけどぉおお!!』

 

そして、そこからはドリルを持った細目の筋骨隆々の男と銃をぶっ放している赤服の婦長に泣き叫びながら延々と追いかけ回されている3人の幼女の画しか無かった。

最後3人が捕まりそうになった瞬間に映像は真っ暗に切り替わり、『歯磨きでしっかりと虫歯を予防しよう!』と可愛らしいテロップが出てきて映像は終了した。

 

「ね?」

 

「…………吾に歯磨きのやり方を教えるがいい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さてさて、日本で歯磨きの習慣が生まれたのはちょうど茨木ちゃんと酒呑の鬼コンビがブイブイいわせていた平安時代からとか一説にはあるが、仮にそれが本当だったとしても鬼の二人が人間の習慣通り行動していたとは思えないし、そもそも昔の食べ物は現代と違って、虫歯になりづらいっていうのもあると思うのじゃ。

 

まぁ、そんな昔ながらの鬼っ娘ちゃんにこれでもかと現代の甘味を味合わせたのは私なんですが。

 

「防腐剤、着色料、保存料……様々な化学物質 身体によかろうハズもない。しかし、だからとて健康にいいものだけを採る。これも健全とは言い難い。甘味も喰らう 栄養も喰らう。両方を共に美味いと感じ血肉に変える度量こそが食には肝要だ。エフッ、エフッ」

 

「おぉ!なんと鬼らしく剛胆な言葉よ!吾の家言にしたいぐらいだ!」

 

「今の茨木はどう見ても偏食やけどなぁ……ちゃんとしたご飯も食べなあかんよ?それと旦那はん、その笑い方はなんなん?」

 

ベッドの上でちょこんと座っている茨木を前に俺は歯ブラシを構えていた。

傍らで酒呑が酒を飲みながら少々呆れながら眺めている。

 

「……ぬぬ、しかし、教えを乞うたのは吾だが、こんな童相手にするような事をしなくても口頭で伝えてくれればいいのでは?」

 

歯磨きの仕方を教授するにあたってまずは俺が実際に茨木ちゃんの歯を磨いてあげる事に彼女は少々疑問を抱いているようだった。

 

「いきなり口で言って即実践という優しさのない教師に俺はなりたくないのさ、まずは見本を実際に体感さえないと意味がないでしょ?百聞は一見に如かず、百見は一触に如かずってね」

 

仮に俺が鬼っ娘の牙を実際に磨いてみたいという欲望が1mmぐらいあったとしてもそれは些細な事でしかないのだ。

 

「まぁよい。これまでの戦いぶりからして汝の采配は何であれ基本的に間違いは無かった。吾も一度を教えを乞うた身、これ以上小言を重ねるのも鬼の名が廃る!汝の好きにするがいいさっ!」

 

ん、いま好きにしていいって言った?

ひゃっはー!言質はとったぜーとばかりに我が右手に輝く歯ブラシは彼女の口の中へと吸い込まれていった。

歯磨き粉は茨木ちゃん用にイチゴ味にしてあげました。

 

「では、失礼」

 

「んぐっ……」

 

歯磨きの基本として、力を入れ過ぎず、細かく動かし、そして満遍なく、時間をかけるのは大事だが、それよりも重視すべきは動かし方。

 

「……んぁっ……」

 

特に歯茎と歯の間は見落としがちなので念入りやるべきなのです。それは八重歯がチャーミングな鬼っ娘でも変わりません。

ブラシの毛先を歯茎の所で小刻みに動かしている俺の磨き方を覚え込もうと頑張っているのか茨木は頬を徐々に染めながら、体を震わしていた。

うん、ここまで熱心だと俺もやる気が出てくる。

 

というわけで今度は忘れがちな裏側の方にも毛先を伸ばしていく。ついつい表側の方だけで満足してしまうかもしれないが、見えない所も気合を入れてゴシゴシしないといけない。

気合を入れると言ってもあまり力を入れ過ぎるとかえって歯茎が傷ついてしまう可能性があるのでそこは繊細な力加減で磨きますよ。

 

「はぇっ……?あぁっ!……ひゃぁぁっ!?」

 

茨木ちゃんの首に歯ブラシを持っていない方の手を添え、支えるように俺は歯磨きプレ……教育を続ける。

ほら、見てごらん、茨木ちゃんの顔を口は半開きで顔が真っ赤で、体もこんなにピクピクしているではないか。

 

「ま、まへぇ、ましゅたぁ……へんら、これ何かへんにぃ……あぁぁっ、にやあぁっ!」

 

「茨木、君は後で自分一人で磨けるようにならないといけないんだから。しっかりと俺の磨き方を覚えないといけないよ」

 

「お、おぼえぇ……はぁっ、わかっらぁっ……はぅっんぅ!」

 

歯ブラシを歯だけではなく頬裏をブラシの毛先でくすぐるように左右へ動かす度に柔らかい茨木ちゃんのほっぺたが形を変える。

 

「ひぁっ、あぁっ……あぁぅ、へあぁぁぅ!」

 

茨木はベッドのシーツをギュッと握り、口内を襲っている衝撃に耐えながらも俺が言った通りに磨き方を覚えようとしているのかもしれない。そんな彼女の素直さ、純朴さに感動しながらも追撃の手を緩める事は無かった。

 

「おぉ、おぉ、茨木の顔、えらい蕩けてもうてるなぁ……旦那はんに歯磨かれているだけやっちゅうのに、こんなトロトロになってしまうもんなん?」

 

彼女の嬌声、痴態を肴に酒を飲んでいる酒呑は不思議そうに問いかける。

 

「偉大な先人はこうおっしゃりました。『人間の体は外側を触られるよりも内側を触られる方が気持ちイイ』のだとそして、『口内という敏感な部分を歯ブラシという柔らかい毛先で、しかも他人の手によって弄られるのだ。快感が生じないわけがない』ともおっしゃりました。多くの娘達で歯磨き道を極めた俺に歯磨き処女を陥落させるなど、造作もない事よ」

 

「鬼に金棒、旦那はんに歯ブラシってか?かはは、もう建前を捨てて、本音を隠さへんのな」

 

失敬な、最初の目的は忘れていないさ。

ただ、義務として歯磨きを教えてもいつかは面倒くさがられるかもしれないだろ?それなら快感と一緒に体に覚え込ませた方がええじゃないかと思っただけ。

 

口内を蹂躙凌辱されている茨木は俺達の会話すら耳に入っていないのだろう。

 

「鬼より鬼畜やわ~、旦那はんは……」

 

酒呑童子の恍惚とした顔を他所に俺は茨木ちゃんの赤く可愛らしい喉奥まで見えそうな口内をイジリ倒していく。

舌の表面、その裏側すらも歯ブラシの毛先を滑らしていく。

 

「ひぁ!ぁあっ、あぁぇぇぅ……あぁぇ!はうぅんぅっ……!」

 

肩をどんなに揺らしても、足を何度組み替えても、どんなに大きい喘ぎ声を漏らそうとも茨木は口を閉じる事は無かった。

それは一度約束した事は反故にしない鬼としての矜持か、それとも俺に対する信頼なのか、彼女は自分から止めようと言い出す事は無かった。

 

「ふぇ、えぇあぁっ……あぅ!……ひゃぁぁ!らぁぁっ……」

 

10分近くは経過したかもしれない、口の端から涎と歯磨き粉が混ざり合った液を垂れ流している茨木の体は限界を訴えるように全身の痙攣を大きくさせていた。

 

既に茨木はベッドに押し倒された状態で俺から歯磨きプレイの施しを受けている。

もう、その瞳はどこを見ているのか定かではない。彼女自身も自分が今どこで何をしているのかすらわからなくなっているのかもしれない。

 

「ぁぁっ、えぁあぁ……はぁぁっ、あぁっ、ひゃっ、あぁっ、あ、あぁ、ふぁぁ、あくぅ、にぁぁ、らぁぁっ」

 

「うわ……ごっつエロ」

 

エロ代表の酒呑童子が言う気持ちもよくわかる。

絹のような金髪が乱れている今の茨木は着物は半脱ぎ以上にはだけ、火照った肌には汗の珠が浮かび、口からは絶え間なく色息が漏れ出している。

そういった方面には本来疎い筈の茨木が無自覚のまま、足を開き、情欲を煽る姿を見せているのだ、確かにエロい。

流れている涎すら、美酒に見間違えてしまう錯覚を抱きつつ、もう磨く所が無くなってしまった俺はそろそろこの歯磨き教室を終わりにしようと思った。

 

彼女の快感の波を読み、口蓋の奥からスライドさせるように歯ブラシを引き抜く。

 

「りゃぁぁっ!!へああぁぅぅっ!!!」

 

大きく絶頂した茨木の体の上からはよがり声、下からは小さく何かが噴き出す水音が聞こえた。

彼女の上下から快楽の音を引き出した俺は一仕事終えたぜとばかりに汗を拭っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぇ――……へぁ、はぁ――……あ、れ、吾は一体……」

 

少しして放心状態から意識を取り戻した彼女は我に返ってくれたようだ。

 

「ほら茨木ぃ……旦那はんから歯磨きの仕方、ちゃんと覚えたんか?」

 

半脱ぎになった着物からツンと勃っている乳首が見え隠れしている今の茨木ちゃんに酒呑は意地悪そうに問いかけた。

あれだけ、快楽に蕩かされていた彼女にその質問は中々に酷だと思う。

 

「歯磨き……あぁ、そうだ、吾はマスターに教えを…………す、すまぬ、まだ覚え切れておらん……途中から記憶が曖昧で……」

 

「いや、大丈夫。一度で駄目だったら何度でも覚えるまで教え込んであげるだけだから」

 

「そ、そうか……何度でもか……」と安心したように息を吐く茨木がどこか嬉しそうにも見えた。ともかく、いつまでも扇情的な格好を晒されるのは俺の理性にもよろしくないのでそろそろ彼女を起き上がらせようと思った矢先――。

 

「ひぅんぅ!?……し、酒呑?な、にをぉぉんぅ!」

 

酒呑が茨木の股、古風な下着――褌の上から、指をグリグリと押し付けていた。

褌に染み込んでいる跡から茨木が濡らしている事がはっきりとわかる。

 

「何をってなぁ……せっかく旦那はんは手ずから、おせてもろたのに、茨木はいやらしくも歯磨きで気ぃやって、なーんにも覚えられなかったんやろ?それで旦那はんの優しさに甘えて、はいおしまいは鬼としてどうなんやろと思てな……」

 

「あぁ、あんぅっ、な、ら……吾は何をすればよいのだぁっ……?」

 

「そんなんわかりきってるやん。うちが今触ってる所も、体もぉ、熱くてしょうがないんやろ?ほなら鬼らしく自分の欲望のまま振る舞わんとなぁ……」

 

「わ、吾の欲望のまま……」

 

「旦那はんにぎょーさん、キモチイイ所触られたいと思わん?うちは何度も天国に連れていってもろたで?今、身体中を駆け巡うとる疼き、治めたいやろ」

 

茨木が歯磨きで乱れてしまった姿で酒呑もスイッチが入ってしまったのか。嗜虐心に満ちた顔でどんどん茨木の逃げ道を塞いでいく。

依然、秘所を酒呑に弄られている茨木は俺に視線を向け、懇願するように言葉を絞り出した。

 

「……はぁ、重ね重ねすまぬマスター……汝に歯磨きをされてから、躰中が切なく、熱いのだ……んぁ、しゅ、酒呑が言うには汝なら吾を楽にしてくれるのだろう……?先程の借りもまとめて、この恩は返す、んぅ……だから頼むっ……わ、吾の躰に触れてくれぬか、さっきのように吾を磨いてく、れぇ……」

 

先程の歯磨き教室も、今の酒呑の言い分も大部分に悪ふざけが入っていて、茨木ちゃんが負い目を感じる必要はないのだが、素直純朴系の鬼っ娘ちゃんは疑うことなく俺達に身を任せようとしている。

やっぱりこの金髪ロリ鬼は悪い大人に騙されやすいという俺の見立ては間違っていなかった。今ここでいう悪い大人は俺と酒呑でしかないが……。

まぁ、俺達以外に騙される事ない為の教育は追々しっかりと行っていけばいいよね。

 

「うん。それじゃあ、歯磨き教室の続きと行こうか」

 

こんな事もあろうかと新しい歯ブラシのストックを出すと、茨木ちゃんの目がそこに注視される。

半脱ぎ状態だった着物はいつの間にか酒呑の手によって完全に脱がされていた。

目の前の茨木は褌以外は何も纏っていない無防備な姿だった。歴戦の鬼であろうともその肌は触らなくとも滑らかだとわかる。赤い紋様もそれを彩る魅力の一つに過ぎない。

 

「ひぃあっ!今度は、そこを磨くぅのかぁっ……あんぅ!!」

 

酒呑と同様、幼さを感じる微かな膨らみ、その頂上にあるピンク色の蕾にブラシの毛先が触れる。

乳首しか責めないと言わんばかりに俺が小刻みに動かすとブラシの動きと連動するように茨木は素直な反応を返してくれる。

 

「あひっ、あぁっあんぅ!……こ、これも覚えないといかぬのかぁっ……!?」

 

律儀に俺が言った事を守ろうとしている茨木はくすぐったさと快楽に身をよじりつつもそんな事を言葉にする。

せっかくなので俺は彼女のいじらしさにノッてあげる事にした。

 

「あぁ、これから俺がする事は一挙手一投足、脳に焼き付けて」

 

「う、うむっ……われからすれば、造作もな、いことよぉっ、あふぅっ!!」

 

はぁ、なんでこんなに良い娘なのだろうか……イバラギンは。もう鬼というかむしろ天使とも呼べる存在かもしれない。

そんな娘を現在進行形で辱しめさせている自分が汚く感じてしまう。あぁ、けど、このイケない事をしている背徳感が良いのかもしれない。むしろタブーとか、倫理観とか、もう俺が言っても今更過ぎるものある。

 

「仲間はずれは寂しいわぁ……旦那はん程やないけど、うちも結構ウマいのよ……はむぅっ、じゅるぅ……」

 

「んにやぁっ!?……しゅ、酒呑ぅ……角はぁっ、なら、んぅっ!あ、頭がとけるっ、とけてしまうぅっ!ひゃああぁっ!」

 

股を愛撫していた酒呑は自身と同様に生えている茨木の赤黒い角を愛おしそうに口で含み、両手で何度も扱き始めた。

新たな快感、未知の快楽が襲い掛かってくる茨木の心情を表すようにブラシで弄られている乳頭はどんどん充血し膨れ上がっていく。

歯磨きと同じでこっちでも妥協はしない、俺は彼女のちっぱいを左右交互入念に歯ブラシで責め続ける。

 

「む、むりだぁっ……ますたぁ、あっ、あひぃっ……!こ、んなのむりだぁ……んやぁっ、こんなの覚え切れぬぅっ、気持ちのよい事しか考えられぬぅ、んふぁっ!!」

 

「諦めたらそこで情事終了だよ?茨木ちゃん」

 

胸先を十分に苛め抜いた俺は次なる標的を決め、茨木の褌を造作も無く脱がす。

白い布に拡がっていたシミから、既に茨木ちゃんのアソコが出来上がっているのはわかっていた。

呼吸を求めるように、新たな刺激を求めるように彼女の陰口はヒクついている。

 

「上の口だけじゃなくて、下の口もちゃんと磨かないとね茨木ちゃん」

 

「……あぇ?…………あくぅんぅ!!?あぁっ!……ひうぅぅんぅっ!!」

 

グシュグシュと音を立てて、膣壁を歯ブラシで磨き始めた時の茨木ちゃんの反応は凄まじかった。

電流を流されたかのように腰を浮かし、体を反らしている。

 

口の中を磨かれただけであれだけ感じたのだから、膣内を同じように責められれば、当然こうなるだろうさ。

そしてベスト歯磨きニストの称号(自称)を手にしている俺はたとえ磨く場所上から下になろうとも、その技に陰りを見せる事はない。むしろ下の口の方が得意分野だし!

 

「あぁっ!あっ、あぁっ!はぁんんぅ!、すごっ、これしゅごいぞぉっ、ますたぁ……はひぃ!吾の体の中が作り変えられているみたいだぁっ……!ふぅんぅぅ!!」

 

ブラシの毛先が歯を磨いた時と同じように膣襞を細かく、そして素早くくすぐる。

すぐに茨木ちゃんのキモチがよいポイントを把握した俺はそこを重点的に磨き抜いてあげた。

 

「あくぅ!あぁっ!はひぃっ!!あっ!はんぁぁっ!……あっ、頭の中がぁっ……爆発するのが止まらぬぅ……あぁっ、覚えぇ、なければならぬのにぃっ……快楽で掻き消されてしまうぅあぁっ!」

 

歯ブラシによって女陰から掻き出されている淫液に加えて、絶え間なく吹き出している潮が茨木の股と俺の手を濡らし続ける。小さい絶頂が何度も訪れている彼女は確かに酒呑の言う通り、天国にイキかけているのかもしれない。

 

「はむぅっ、んじゅ、じゅぼぉっ……っはぁ、茨木ぃ、今、ものごっつぅスケベな顔してなはるよぉ……。かはは、うちの声も届かんぐらいに夢中みたいやねぇ……んちゅぅ……」

 

茨木の角をしゃぶり続ける酒呑も俺と二人で彼女を責め抜くのを心底楽しんでいるのだろう。

ただ、俺としてはやっぱり、茨木と酒呑の二人を同時に可愛がりたいのだ。

 

そんなわけで茨木に寄り添い、この俺を目の前にして、無防備な下半身を晒している酒呑の為にさらに歯ブラシのストックを懐から取り出した。こと情事に関しては準備がいいと巷で評判のマスターはもう片方の手にソレを手にすると茨木の時と同じように酒呑の肉蜜へ触れさせる。

 

「ほぁっ!?……やぁんぅっ、うちの事もぉ、磨いてくれんのぉ……だんなはぁんぅ……んぁっ!」

 

そもそも、俺の部屋に酒盛りしていた時から酒呑の格好は全裸の上に着物というどう足掻いても誘っているとしか思えない姿だったので期待はしていたのだろう、ただこのタイミングで来るのは少し予想外だったみたいだが。

 

さて、茨木の時と同じようにとは言ったものの、せっかくなので酒呑の方は責め方を変えてみるとしよう。

 

「んくぅっ!ひぃあぁっ……はぅう!あぁっ、そないな敏感な所、何度も擦らんといてぇぇっ、やぁんぅ!」

 

膣内に入れることはせず、その入り口――陰門の上を何度も歯ブラシをスライドさせていく。

そして、自己主張している淫芽を円を描くように毛先で撫で回す事を忘れない。

 

「あぁっ!たしかにぃっ……んんぅ!これはぁ、茨木がおかしゅうなるわけやなぁっ……うちもハマってしまいそうぉっ……んあぁ!」

 

両手にそれぞれ歯ブラシを持ち、異なる責め方で異なる鬼達を啼かせていく。

淫蕩な青鬼も純朴な黄鬼も差別なく、発情した様を俺の目の前に晒していた。

 

「あぁ!イってまうぅっ……そないな小道具ではしたなくイッてまうわぁっ……!」

「にぁやあっ!ひぁっ……あんぅ!イクのが止まらぬぅ……止まらぬぅのだぁっ!はよぉ、楽にしてくれぇっ……んくぅっ!ますたぁっ!!」

 

人の手で、人の道具で、快楽の渦に叩き込まれている鬼達は抱き合うように声を荒げる。

 

「「ああああァァァぁあああああっっ!!」」

 

重なり合った二人の鳴き声は痙攣しながら股から愛液を噴出させる姿も相まって俺の耳を犯していっているような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁんぅ……鬼二人一遍なんて、旦那はんは鬼より欲深な人やわぁ……」

 

さすがは酒呑というべきか、彼女はまだまだ余裕がありそうな様子だった。

対照的に隣の茨木は息も絶え絶えだが。まぁ、イバラギンは口に胸に果てには膣内まで責められたのだから、頑張った褒美に何か与えた方がいいかもしれない。

 

ポケットにある一口サイズのキャラメルを自身の口の中に放り込むと仰向けのままベッドの上に放心状態になっている茨木に馬乗りになって顔を近づけていく。

 

「茨木ちゃん、はい、あ――ん、して」

 

「…………はぇ、あ、あ――ん?……んむぅ!?」

 

意識を失いかけても、俺の言葉に素直に従ってくれる茨木ちゃんのチョロさに笑みを零しつつ、唇を重ねた。

 

「んんぅ!?……んぅ?……んくぅ!んぁぁっ……ぇろぉっ、んちゅぅ、んふぅっ……♪」

 

口の中にあったキャラメルを口移しの要領で茨木の口の中に転がしていく、甘味の存在に気付いた茨木は放心状態から回復したのか、瞳を輝かせた。

 

だが、ただの口移しだけで終わらせるつもりもなく、俺はそのキャラメルを溶かし、彼女の口内をコーティングするように舌を蠢かしていく。初めの歯磨きプレイで口内を開発された茨木は甘さと快感の同時攻撃に目尻を下げ、もっと、もっととねだるように俺にしがみついてきた。

やだ……イバラギン、滅茶苦茶可愛いやん……。

 

「んぅっ、んぁあっ、んんぅ、んぅ、おいしぃ、んちゅ……ちゅぅ、ちゅむぅ……っぷはぁっ」

 

完全にキャラメルが溶けきったのを確認して舌を引き抜くとまるで目がハートマークになったかのように茨木は幸せそうな顔をしていた。

 

「っはぁ……ただの特筆すべき事のない普通のキャラメルにも関わらず、今まで食べた甘味の中で一番美味かったかもしれぬ……あぁ……のぉマスター……?今の食べ方でもっと吾にぃ……吾にぃっ……あいてっ!」

 

「はい、そこまでやで茨木ぃ。施しばっか受けとうたら鬼の名が廃るでぇ、うちらを気持ち良くしてもろたお返しに旦那はんもちゃーんと気持ちよくさせなあかんやろ?」

 

堕ちかけて、そして俺の体にすがりかけていた茨木を正気に戻すように彼女の頭をチョップした酒呑。

別にお返しとか気にしなくてもいいんだけどね、今までの彼女達の姿で十分過ぎる対価はもらってるし。

 

「さいごぉは道具やのぉて、体同士でたっぷり繋がり合わんとなぁ……なぁ、茨木?」

 

「う、うむ。酒呑の言う通りだ!借りた恩は返す、吾を気持ち良くした分だけ汝の体も気持ち良くしてやるわっ!クハハッ!…………で、吾は何をすればいいのだ?酒呑?」

 

「茨木はそのままさいぜんと変わらん体勢で構わんで……うちが乗るだけ、やからぁっと」

 

「んぅ……?しゅ、酒呑?」

 

ベッドに横たわる茨木の上に大事な場所を重ねるように伸し掛かる酒呑。

そこには生まれたままの姿である二人の鬼が上下重なり合っている淫靡な光景が拡がっていた。

 

「ほれぇ……大江の山を代表する鬼達の貝合わせやでぇ、こないな姿を見れるのは旦那はんだけ……さぁ、どないしたい?」

 

こちらを流し目で見やる酒呑の挑発に俺が返す行動は一つしかない、彼女達の色艶な様を見て、愚息が大人しくしている筈もないのだから。ズボンをずり下ろし、二つのクレパスの狭間に剛直を侵入させていった。

 

「あぁんぅっ……茨木ぃ、よう見ぃ、うちらの間に旦那はんの凶悪な金棒が……生えとるやろぉ……?んふぅ、しっかりとぉ、目に焼き付けなはれやぁ……」

 

「うぅ、ふぅ、んぅ……熱く、硬く、脈立っておる……こうして触れているだけで火傷してしまいそうに……汝の金棒は猛悪の一言だなぁ……」

 

そこまで俺のアソコ凶暴ですか?と否定したい気持ちが無いわけでもないが、反論しても前科があり過ぎるので執行猶予無しで即有罪で敗訴だろうな……とちょっと悲しくなりながらも、今は目の前の二人を味わい尽くそうと俺は腰を動かし始めた。

 

「お、おあぁっ!吾とぉ、酒呑の間をうごい、てぇ……あぁっ、ついぃ、ひやぁあっ!」

 

「あぁ、こうしてるだけでも、達してしまいそう……や、わぁっ、あんぅ!!」

 

今はまだどちらの膣内にも挿入はしていないが、こうして茨木、酒呑の二人に雌園の入り口で挟まれて、ペニスを前後に動かしているだけでも満足してしまうぐらいに下半身から心地良い感覚が拡がっていく。

 

「ああんぅ!……たまらぬぅ、たまらぬがぁっ……何か物足りなさも感じてしまうぅ……ますたぁ、先程の歯磨きのように、それで吾の膣内を磨いてくれぬ、かぁっ……はぅんぅ!!」

 

茨木の小さい足が俺の腰を絡めてくる。こっちに来てと誘惑するように。

 

「……おやまぁ、まさか茨木がぁ……んふぅ!うちを、差し置いて、おねだりするとはなぁ……」

 

「はぁっ!す、すまぬぅっ……酒呑ぅっ……吾はそういうつもりではぁっ……」

 

「かまへんよぉ……珍しいもん見れたしぃ、あんぅっ、最初は譲ったるわ……旦那はんぅ……この堪え性が無い、破廉恥でチョロチョロな鬼に情けをくれへんかぁ……」

 

鬼っ娘達の肉唇のサンドから肉棒を引き抜いた俺はソレを酒呑の物言いに涙目になりかける茨木の、割れ目に挿し込んでいく。歯ブラシで散々嬲ったとはいえ、まだその入り口は俺のモノを受け入れるには狭くキツイ気もした。

 

「んぎぃっ!?あ、はぁぐぅ…………こいっ!遠慮はするなぁ、吾は鬼ぞっ!……この程度の痛み、物ともせぬわぁっ……!」

 

剛胆に笑う茨木に、ここは気を遣うとかえって失礼になると思い、力を入れて、陰茎を彼女の最奥……ヴァギナ全てを埋め尽くさんと突き進んだ。

 

「……っあああァァっ!!かはぁっ……!んんぐぅぅ~~~!」

 

「……んっ、全部入ったよ、茨木っ……」

 

今の彼女に「大丈夫?」「頑張ってね」等の優しい言葉は不要だろう……ポンコツとかチョロいとか言ってはきたがそれでも俺と今交わっているのは鬼。

ならこれから必要なのは気遣いではなく、互いの情欲を喰らい合う本気のまぐわい。

 

「……く、くはは、心地良い……実に心地良い痛みよぉ……あぁ、これで終わりではないのだろう?……快楽に身を任せるがいい、吾の穴で盛大に果ててみせろぉ……容赦なく、慈悲もなく、文字通り……滾るようになぁっ……!」

 

その言葉を皮切りに、そこから俺達は本気のセックスをした。

 

茨木の上にいる酒呑は茶化すような事は何も言わない。ただ、意味ありげな視線でその乱れ具合を視界に収めるだけだった。

 

「あぁぉっ!おぉっっ!ああぁんぅ……!くぅぁあっ!奥を何度もぉっ突かれるとぉ、先にぃ……吾が果ててしまいそうだぁっ……あくぅんぅ!!」

 

それでも彼女は俺が射精するまで絶対に気を失わないと、歯を食いしばっている。

真面目さ、律義さ、優しさ、適切な表現は浮かばないが俺はその一生懸命な茨木の姿にむくむくと愛おしさがこみ上げてきた。

 

「ほぉっっ……おあぁっ!!また大きくなってぇ……あぁっ!吾の体内全てがぁっ……汝の金棒で磨かれとるぅっ……んひぃっ!!」

 

歯ブラシで弄られ、敏感になっている膣壁を今度は道具ではなく自身の体、その大事な部位で擦り上げている実感が俺の興奮を高めてくれる。

そして余裕が無くなってきた茨木に宣言する。

 

「……もうっ、出していいか、茨木っ……!」

 

「……!……い、よい!良いっ!吾の体でぇ……その中でぇっ……!汝の全てを出し切るがいいっ……あっ、はぁぁんぅ!吾もぉっ、それが望みだぁっ!んあぁぁっ!」

 

俺の腰を絡めていた茨木の足に更なる力が入る。普通の人間ならまず抜け出せないような鬼の絶対的な力が。そもそも最初から抜け出す気もさらさら無かった俺は鬼とは思えないか細い彼女の腰を掴み、陰部を前へ前へと押し付ける。そして、そのまま―――。

 

「んひやあああぁっ――――――!!……あぁんぅ……はぁ――……はぁっ!かはぁっ……!汝の甘味(精液)がぁ……吾の腹にどんどん溜まっていくっ……は、くははぁ、さすがにもう満腹、だ…………」

 

お腹がいっぱいになった童は眠りにつく。たとえ鬼だろうとそこは変わらないのかもしれない。まぁ、ここでいう満腹の意味は変わるが……。結合部から白濁液を漏らしているあられもない姿とは裏腹に穏やかな表情で寝息を立てながら意識を失う茨木に俺はそんな感想を抱くのであった。

 

「……まったく、なんて顔しとるんやろねぇ……ほら旦那はん?まだイケるやろ?次はうちの番やで」

 

呆れたように言う酒呑の声色はどこか優しそうにも聞こえた。

 

膣から精液を零している茨木の前で俺と酒吞は後背座位でセックスをする。酒呑の膣道は出したばかりの肉棒を容赦なく締め付ける。

彼女の控えめな重みと、パンパンとぶつかり合う尻の感触が実に心地良い。

 

「あくぅっ!あぁ……飽きない、いくら犯ってもあきへんよぉっ……旦那はんのこれはぁぁっ……はああぁんぅ!!」

 

背中をこちらに完全に預けて快楽を貪っている酒吞は俺と茨木の両者を見やると心底愉快そうに口の端を吊り上げた……。

 

「ん?どうかした……?」

 

「んぅ……くふふ、いやさね……京の都で大暴れした鬼達が随分たらしこまれてもうたなぁ……と思うてな……。旦那はんと茨木と一緒にどこかの山で家族になるんも悪ぅない気もしてきてなぁ……かはは」

 

「もしかして、プロポーズ?」

 

「どうやろ……うちらが婿に来なはれ言うても、旦那はんが素直に聞く男とも思えんしぃ……あんぅ、んっ!」

 

「そんな聞き分けの良い子だとむしろ酒吞も茨木も退屈じゃない。いっそ『いや俺が嫁にするし』ぐらい言ってあげようか?」

 

「…………かはっ、かははぁっ!そりゃあ、ええわぁ……。まさか鬼のうちらが攫われる側になるなんて……あぁ、そないな事になったら…………せやねぇ、そん時はこの阿呆の子と一緒に結婚する娘御が着るような白無垢でも着させてもらおか?だ、んなはんぅ……あんっ!」

 

「…………んみゅぅ、もう喰えぬ、喰えぬわ……むにゃむにゃ」

 

夜は長い……足の指でお約束過ぎる寝言を漏らしている茨木の頬をぷにぷにと突く酒呑との睦ごとはまだまだ続く。

彼女の言葉が本気かどうかはわからないが少なくとも俺は、二人をそんな姿にする未来がいつか来る気がする……根拠のない確信を酒呑の体と共に抱いていた……。

 

 

 

 

 

 








「あら……」
「かはは……」
「ぬぅっ!?」

ある日のカルデアの廊下、そこで3人の鬼は出会った。
愛する子の匂いをまき散らす二人の鬼に頼光マッマは最初から丑御前モード。
酒呑の隣にいた茨木もその空気を感じ取り、臨戦態勢に入る。

殺気が満ち溢れる空間。幸か不幸か、今、この場にいるのは3人しかいなかった。そう……()()()()()()()()()()()()()()()()()

「その貧相醜悪な体で我が子に取り入ろうとするなんて恥じ知らずもいい所ではなくて?」

「はっきり言うてもええんやで?自分はその下品な乳袋が無いと我が子に愛してもらう自信が無いんやって……」

まさにこの瞬間は二人にとってかつてのお仕置きを合法的に受ける絶好の機会。仇敵であろうとも、今酒呑と頼光ママの心は通じ合っていたのだ。

「…………?、?」

そして置いてけぼりをくらうのがイバラギン。なんせ二人の空気も殺意もどう見ても本気の筈なのに何故かいつまで経っても戦闘に入らない。むしろ、誰か待っているような……。

「……ふぅ、またなの?二人とも」

当然、二人の空気を察して現れるは人類最後の我らがマスター。ちょっとだけ呆れた感じで救世主よろしく彼は姿を見せた。

「止めないで下さい我が子よ!今、目の前の鬼を打ち滅ぼさなければ、あなたの将来に凶事が訪れるのです!……ただ、前のように胸をあんな風に激しく辱められるお仕置きを受けたら、私もこの刀から手を引くかもしれませんがっ!まぁ、あくまで可能性の話ですがっ!」チラッチラッ

「うちは鬼やよ。売られた喧嘩は買う、特に相手がこの牛女ならなぁ……。これはたとえ、旦那はんでも止めれへんからなぁ……あぁ、けど、この前みたいな角をあんな風に強く嬲ってくれたら、うちも今回は大人しくしてもええかもなぁ……まぁ、そないな事ありえん話やけどもぉ……」チラッチラッ

「?、?」

そして、わんちゃんよろしくそんなあからさまな感じでお仕置きを期待しても彼が応える筈もなく。
混乱している茨木に近づき、子供のように抱き上げると……。

「さっすが茨木ちゃんだ!被害が大きくならないように俺が来るまで二人の事を抑えていてくれたんだね!うんうん、そんな良い娘にご褒美を与えなきゃね!君の好きな甘味をいつもの()()()()()でご馳走しようじゃないか、しかもその後は俺が自ら歯磨きでしっかりと綺麗にしてあげるよ!」

「えぇ!何なのだその『ふるこぉす』は!マジでいいのぉ!?わぁい!……何が何だかわからぬがそんな贅沢な褒美がもらえる程の事をしていたのだな!?クハハッ!さすが吾だ!」

そんなわけはなく、面倒事を起こそうとした酒呑と頼光の当て付けだろう。だってこうした方があの二人は間違いなく堪えるだろうし。
ただ、褒美云々自体は茨木にやるだろう。だってこのマスターだし、えっちぃのは良くないと思います!

((……ギリィッッ!))

「……ひぃっ!?の、のぅマスター?あの二人が血涙流して凄い形相で吾の事を見ているのだが?これ、後で殺される奴なのでは!?吾、後で殺される奴なのではぁっ!?」

涙目になりながら、イバラギンはマスターに連れられていった。嫉妬に狂った二人の悪鬼を残して……。

本日の鬼っ娘スタジアム、茨木の無邪気ゆえの勝利。後の彼女の安否はわからぬが。














今回のプレイの参考文献:偽物語。
歯磨きからエロを発想するなんてさすがは神原先生だぜぇ……。
見た目的には茨木ちゃんって金髪ロリ奴隷って呼称がしっくり来る気がする……ぐだだ木さんパないの!

タイトルに茨木、酒呑とは入れたもののどちらかというと茨木メインって感じになったかな?酒呑は添えるだけ……。イバラギンの魅力はエメラルドスプラッシュだから仕方ないネ(意味不)。



2ヶ月ぶりに書くエロは楽しい(確信)。
そして感想返信が全く出来ず本当に申し訳ないです。全てに目は通しているのですが(社畜と化した今の私の栄養源)、中々返す時間と元気が無く……全てに返信してしまうとただでさえ遅い更新速度がさらに遅くなる危険性がががががが、今後も感想返信は出来なくなるかもしれません……まぁ、私が無職になれば全て解決するんですけどネぇ!!






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蛇交の猥談 上の談(ゴルゴーン)

《カルデア昔話【泣いた黄鬼】》


山の中に、一人の黄鬼が住んでいました。黄鬼は、人間どものお菓子をもっと食べたいと考えて、自分の家の前に、 「心のやさしい鬼のうちです。どなたでもおいでください。おいしいお菓子をよこせ。特に西洋あたりの見た事なくてかつ甘いと良し」と書いた立て札を立てました。

けれども、人間は当然の如く、誰一人遊びにきませんでした。黄鬼は悲しみ、お菓子をもらえないことをくやしがり、しまいには腹を立てて、立て札を引き抜いてしまいました。そこへ、友達の青鬼が訪ねて来ました。青鬼は、わけを聞いて、黄鬼のために次のようなことを考えてやりました。

ここにとても強くなれる酒がある。しかも強くなれるだけではない。これを飲めば。人間共が欲しがる素材やら石やらも生み出すらしい。そうすれば、人間たちも、それを求めてたくさんやって来る筈だと。黄鬼がやさしい鬼だということがわかるだろう、きっとお菓子をたくさんくれる筈だと言うのでした。しかし、「それでは吾ボコられるだけなのでは?」としぶる黄鬼を、青鬼は、無理やり引っ張って、羅生門へ出かけて行きました。

計画は成功して、人間たちは、こぞって黄鬼のところへ遊びにくるようになりました。「これぞ大軍師の究極陣地」「王の話をするとしよう」「此よりは地獄」「羅刹王すら屈した不滅の刃」「来たれ我が忠臣。我が手足、我が具足」「これは憎悪によって磨かれた我が魂の咆哮」「裁きの時だ。世界を裂くは我が乖離剣」「スイミングの時間です!」それはもう毎日毎日たくさんの人達が遊びに来ました。しかし、日がたつにつれて、気になってくることがありました。それは、あの日から訪ねて来なくなった、青鬼のことでした。

ある日、黄鬼は、廃人共の猛襲の隙を見つけて、青鬼の家を訪ねてみました。青鬼の家は、戸が、かたく、しまっていました。ふと、気がつくと、戸のわきには、貼り紙がしてありました。そして、それに、何か、字が書かれていました。

「黄鬼くん、人間たちと仲良くして、楽しく遊んで下さい。もし、うちが、このまま君と付き合っていると、君も悪い鬼だと思われるかもしれません。それで、うちは、旅に出るけれども、いつまでも君を忘れません。さようなら、体を大事にしてください。どこまでも君の友達、青鬼。」

黄鬼は、だまって、それを読みました。二度も三度も見間違いだと信じて何度も何度も読みました。戸に手をかけて顔を押し付け、しくしくと、なみだを流して泣きました。 そしてお菓子は結局もらえませんでした。













この小説におけるメドゥーサリリィの名称は便宜上アナとします。7章をまだ未プレイの方にはなんのこっちゃかもしれませんがご了承ください。

それと前書きと今回の話は一切関係がありません。





「由々しき事態だ」

 

基本1人1部屋。……仲の良い者達には1グループ1部屋と複数人で共有する場合もあるが、サーヴァント達に与えられるプライベートルームはその原則に則っている。

そんな私室の主は豊満な胸を抱えるように腕を組みながら、呼び出した二人のサーヴァント……というよりは自分自身達を前に、眉間に皺を寄せておもむろに口を開いた。

 

自分自身を複数人呼び出すという表現は中々に奇妙だが、このカルデアでは別段珍しくもない。無限の可能性を秘めたアルトリア顔&ジャンヌ顔、まだまだ弾はたくさんあるタマモナイン&サクラファイブ。それ以外にもオルタになったりリリィになったりプロトになったりするサーヴァントもいるわけで、英霊というのは「よう俺!」「こんにちは私!」みたいな感じでかくも忙しい身でもある。

 

話を戻すが、ある一室に集まっている彼女達も姿は変われど、()()()()()という元を辿れば同じ存在。

 

「これは、我々の存在異議を揺るがすと言ってもいい由々しき事態だ……」

 

先程の言葉をもう一度絞り出すように口にしているのは、今回他二人をここに集めた張本人、黒くきわどい衣装&蛇の髪がチャームポイントな悪いメドゥーサお姉さんことゴルゴーン。

 

実は現在集まっている彼女の部屋もゴルゴーンが高身長の為、窮屈にしていたのを見かねたマスターが改築した天井、幅、家具を過ごしやすいように広くかつ巨大に劇的ビフォーアフターしてたりする。

その時のゴルゴーンは「……ふん、貴様は私の依代だ。むしろこれぐらいの供物は当然ともいえるだろう、私がこの程度で顔を綻ばせると思ったか?莫迦め……」などと言っていたが、大蛇の尾はワンワンよろしく左右にビタンビタンと揺れていた。尻尾は口ほどに物を言う。

 

「はぁ……」

 

珍しく復讐者の自分が呼び出したのでやって来たが、何やら要領を得ない話をいきなりされて、首を横に傾げているのは黒いフードをすっぽりと被ったちっちゃいメドゥーサお姉さんことアナ。

 

「それは大変ですね」

 

取り敢えず、話を合わせておこうの精神で適当な相槌を打っているのがマスターとの眼鏡+制服プレイにドハマり中の本家メドゥーサお姉さん。服はいつもの黒いボンテージのような服だが、ここ最近は眼鏡をずっとかけっぱなし。その為えっちゃん共々マシュが同じ眼鏡キャラとして危機感を覚え始めているのは余談。

 

さて、そんな3人はさながら会議のように巨大なテーブルを囲んで座っているわけだが。

 

「なんだ、貴様ら。その気のない返事は……」

 

「いえ、何の話かも聞かされずにいきなり『由々しき事態だ』とか言われても、わたしとしてもチンプンカンプンなのですが」

 

「肝心の議題を話してくれませんと私達も反応は返せませんよ」

 

「議題だと?……我らを脅かす者など、このカルデアには此奴しかおらんだろ!」

 

ゴルゴーンが横にあったホワイトボードを勢い良く叩き回転させるとボードの裏側が3人の目に入った。そこには本日の議題になる者の写真がさながら容疑者のごとく貼ってあった。

 

「なぁっ!?」

「ぐはっ…‥!」

 

その容疑者の写真にはまぁ、当然のようにマスターが写っていた。何故か()()()()()()()()()()()()()()()()()()だったが。

いきなりR18な写真を見せられて、アナがフードを下ろすぐらいに食いつき、メドゥーサが思わず吐血しかけるといったリアクションが返ってくる。

 

というか、アングル的にこの写真を撮った(ゴルゴーン)はその瞬間マスターの隣にいるとしか思えない。どう見ても事後です。ありがとうございます。

 

「な、んですか……あれですか?わたし達に惚気たいんですか?幸せムードを自慢したいんですか?さすがは復讐者、やる事が陰湿ですね」

 

アナは喧嘩は買いますと言わんばかりに不死殺しの刃ハルペーを構えた。

呼び出されていきなり他の女が撮ったと思われるマスターとの事後の写真を見せられたのだ、そりゃあ彼を慕っている女性サーヴァントは激怒する。むしろソイツ(その写真)を寄越せとバトルロワイアルになってもおかしくない。

 

だが、そんな殺気もどこと吹く風。というよりもむしろ怒りたいのは私の方だと激昂するようにゴルゴーンはマスターの写真を尾で叩いていた。

 

「そう、私は復讐者で、怪物であり、魔獣の女王であるのだ……!にも関わらず、あの男は私を前にして、こうも無防備で健やかな顔を晒すっ!ましてや私の体を好き勝手蹂躙した際には『可愛い』や『綺麗』など、心にもないような言葉を並べ、まるで愛する女を相手にするかのように私と肌を合わせてくる!恐れなど一切抱かずに!このゴルゴーンに対して耐え難い侮辱だ……!」

 

(…………これは、惚気られているのでしょうか?それとも本気で怒っているのでしょうか)

 

(本人は後者のつもりで言ってると信じたい所ですね。まぁ……私達からすればどう見ても「ご馳走様でした」とかしか思えませんが、まったくどうしてこうアヴェンジャーのクラスは面倒くさい性格をしてるんですかね)

 

目の前の自分のアレっぷりに毒気を抜かれたアナは鎌をしまった。メドゥーサも生暖かい目でゴルゴーンを眺めている。

その二人の様子に自分の怒りが正しく伝わっていないと判断したゴルゴーンは何をトチ狂ったのかとんでもない事を口にした。

 

「……成程。よし、わかった。たしかにただ我武者羅に私が不満を露わにしても貴様らには正しく我が怒りが伝わらんようだ。ならば、私がつまびらかに奴がどれだけ!不敬で!不遜で!恐れ知らずな事をしているか聞かせてやろうではないか!詳細を語らねば、貴様らも共感はしないだろう?」

 

「え?」

「えぇ~~……」

 

これにはロリ&眼鏡メドゥーサも口をあんぐり。まさか、もう一人の自分の口からマスターとの艶話を聞かされる事になるとは思っていなかった。こんな事なら、適当に賛同のポーズでもとっておけばと後悔するも時すでに遅し、逃げる暇もなく女怪と逸般人マスターの濡場トークは始まり出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「重いぞ、降りろ……」

 

「やだぁ」

 

「貴様……」

 

 

 

カルデアの奴らが作り出した時間の概念を狂わせるシミュレーション……確か、何だ『精神と時の部屋』などと言っておったっか?

それを利用した私は魔獣の胎を彷彿とさせる「鮮血神殿」のような巨大な空間にマスターを呼び出した。

 

目的?ふん、決まっていよう。奴の魔力を残さず頂く為だ。あのカルデアのシステムとやらで与えられるしみったれた魔力では私は満足は出来ん……。

 

そして、あの男はそんな事も露知らずのこのことやって来た。これから自分に襲い掛かる災禍も想像出来ずにな!

本物には遠く及ばんが、それでも我が想像で作り出したこの仮初の「鮮血神殿」を前にすれば鈍い奴も察するだろう!自分がどこに来て、何を前にして、そしてこれから何をさせられるのかを!!

 

だが、私はそんなマスターの恐怖に歪む顔を想像したというのにあろう事か奴は目を輝かせながら「おぉ――」と我が神殿を見回しているではないか。

 

おかしいであろう、その反応は!全てを飲み込む怪物の果てであるゴルゴーンと一対一で斯様な場所で相対しているというのに何故そのような顔が出来る!

 

一瞬だけ、あぁ……ほんの一瞬だけだとも。困惑した私はどうやら目の前の男は何を要求されるのか理解していない事に気づいた。

 

……ふん、全く一応は私のマスターでありながら、何と察しの悪い奴よ。そう心の中で嘆息した私は童のように神殿を走り回っている奴に呼び出した用を語った。

 

 

――カルデアから与えられる魔力では満足できないから、今から肌を合わせ、貴様の魔力をたっぷりと最後まで絞り取ると。

 

――ここには私と貴様しかいない、助けを呼んでも無駄だと。

 

――当然、貴様に拒否権はない。むしろこれは我が依代として当然の義務でもあると。

 

 

ここまで言えば、さすがの奴も自覚するだろう。まんまと自分が獣の前に放り出された餌であることに。そして、私という魔物と体を重ね、交わるという恐怖に!!

さぁ、恐れろ!慄け!戦慄し、泣き叫ぶがいい!フハハハハハ!!

 

ん?その後の奴の行動?……………………跳んだ。飛んできたのだ。()()()()()。一切の迷いなく、ノーモーションでな。

 

後は冒頭の通りだ。私は飛んできたマスターを上半身で抱き止めた、細心の注意を払いながらな。大事な依代、怪我があっては困る…………なんだ貴様ら、何か言いたげだな。いいから話を続けろ?言われなくとも続けるわ。

 

「ゴルゴーンの肌、あったかいー……」

 

「んっ、ふぅ……こら、まさぐるなっ、気安いぞ」

 

マスターはまるで母に甘える童のように顔を胸に埋め、手足を自由に動かし、私の肌の感触を楽しんでいた。人間と変わらぬ素肌の部分だけではなく、蛇の鱗の部分もな。愛おしそうに奴は撫でていたよ。

 

「んぅ、あ、あっ……ふっ、くくぅ、そんな醜悪な部分も好みの範囲になるとは人理を救ったマスターは随分と趣味が悪いよう……あくぅんっ!?えぇい!胸に噛みつくな!こそばゆいわ!」

 

「俺の趣味が悪いと言った君が悪い。ゴルゴーンが自分自身の事をどう思っていようが、それは俺が抱いているゴルゴーンへのLOVEには一切影響が無いのだ。だって俺の瞳から見えるゴルゴーンの姿は俺だけの物だもん」

 

「そうか……ならば私の方が今、貴様の事をどう思っているのか、これでもわからんか?」

 

今まで攻勢に出ていたマスターに釘を刺すように私は髪と一体化している複数の蛇頭……『メデュシアナ』を奴へと差し向けた。

牙を剥き、舌を鳴らしている我が蛇髪……少しでも動かせば奴の体に喰い付き、噛み砕き、貪り尽す。ここまですれば奴も自らの思い上がりを戒めるだろうと脅しをかけた。

 

それでも奴は笑っていた。

いつも通りの笑顔で。そのメデュシアナにすら親愛を向けるような朗らかな表情で。

人間と化物の境目なんて自分には一切の問題にならないと語るように。

 

そしてあろうことか、奴はその蛇髪共を撫でてきたのだ。まるで愛玩動物を相手にするような繊細かつ情熱的な手付きで。

 

「よーしよしよし、よーしよしよし!いいこー、いいこ~」

 

「んくぅ……ぁあ!?……んっ、んぅ、んぁぁっ!……よせ、その手付き…………や、めぇ、はぁぅ……!」

 

いけなかったのがその蛇共は私の体の一部故、神経も繋がっていることだった。愛でられている感覚は当然、私の脳髄にまで伝わってきた。

マスターの撫で方は蛇髪共にとっても私にとっても毒であった。あぁ、文字通り骨抜きにされたと言ってもいい。髪だから元々、骨など無いがな。

何か言ったか?小さい私。「ムツゴロウ先生……」?何の話をしている?

 

「ふふ、ゴルゴーンは俺の事をどう思っているのかな……?」

 

「き、きさまぁ……」

 

散々、髪を好き放題に愛撫された私は蛇共々、息も絶え絶えになっていた。

 

「わざわざゴルゴーンから絞り取らなくても、俺の方から好きなだけ魔力を注ぎ込んであげるよ」

 

こんな筈ではなかった。

逃げ場を失ったマスターが私に襲われ、暴力的なまでの恐怖と快楽で顔を歪めながら魔力を存分に吐き出し、私はその様を間近で眺める筈だったのに。

 

これでは立場が逆転しているではないか。胸中に抱いたのはそんな想いだった。

 

だが、奴の本領発揮はそこからだった。

動物のように戯れたせいか、マスターは懐いてしまった蛇髪共に小声で何かを指示した。

 

「んぐぅっ!?……まてっ、貴様ら……一体な、にをぉっ!?」

 

そう、信じられない事だが蛇髪共が拘束具のように我が躰へ巻き付いてきたのだ。

メデュシアナはある程度自我を持っているが私の体の一部でもある故に支配下は私の方にある。

 

にも関わらず、蛇髪共は私の言う事を聞かず、肢体を封じてくる。まるで自分達の中におけるカーストはマスターの方が上だとでも言うかのように。

 

そう、先程の愛撫で同胞達はまんまと奴の魔の手に堕ちてしまったのだ。その時私は真の意味で理解した。他の女英霊共が「マスターの撫で方はもはや魔法の域に達している」という意味を。

 

「あ、ありえん……我が蛇達が、なぜっ……!」

 

「さぁ?ゴルゴーン自身がそうして欲しいって深層意識で願っているからかもしれないよ?」

 

「馬鹿を言えっ……あぅっ!?」

 

マスターの支配下となった蛇髪共によって手首は頭の上で縛られ、自由を失った脚は娼婦のようにはしたなく開かされていた。

胸を強調するように厭らしく胸部、そして胴体にも巻き付かれ、私は完全に身動きが取れない状態となっている。

 

私の上に跨っているマスターは私の顎に手を添え、ゆっくりと顔を近づけてきた。

 

まるで自分がマスターという魔物を前に為す術が無くなっている生贄のような錯覚にも陥った。いや事実、この状況を見る限りそれは間違っていなかった。まさに私の思惑とは全てがあべこべになっていたと言ってもいい。

 

「ふぅっ――……ふぅっ……――」

 

情けないがただの餌と化した私が出来る事は睨み付けることだけだった。

そんな私の態度にも臆することなく、子供をあやすような笑みを浮かべているマスターとの顔の距離は互いの息がかかるほどに迫り、少しでもどちらかが動けば唇が触れ合ってしまう程に近づいていた。

 

「大丈夫……()()()()()()()()()()

 

「んぅっ……」

 

奴の言葉に思わず生娘のように目を閉じてしまった私にやって来た感触は唇を覆う柔らかさ……そして。

 

「んむぅ、んぶぅ、んぐぅっ、ん、んぁっ……!んじゅぅ……じゅるぅぅ……れぇぁっ、はぁっ」

 

口内を蠢く、淫らな舌の動きだった。

一矢報いようと、応戦する私の舌は奴の舌技によって玩具のように捕らえられ、好き放題に弄ばれてしまう。

マスターに伸し掛かられ、全身を自身の髪で縛られ、そして口を吸われ続ける。

 

「んぅ――……んぅ!むじゅぅ……じゅむぅ!じゅ…………じゅぱぁ、あぁ、あふぅ、んんっ!んぐぅ……」

 

この怪物ゴルゴーンが只の人間に為す術なく食物のように貪られている。

だが、その時の私は情けない事に怒りに身を震わしているのではなく、快楽によって躰を震わせてしまっていたのだ。

 

「……んはぁっ――……はぁっ――……あぁっ、はぁ……」

 

「今凄く蕩けて可愛い顔してるよ。ゴルゴーン」

 

普段は封印しているとはいえ、その目に映った者を一瞬で石化する魔眼を恐れる事なく、奴は覗き込む。

……むしろ私の方が眼をそらしてしまった。奴の瞳に映った淫蕩に染まった自身の顔を恥ずかしさで見ていられなかったからかもしれない。

 

「そういえば、魔力を絞り取るとか言ってたよね。……よし、ならお望み通り、こってりと最後まで供給するよ」

 

そう言ったマスターは私の眼前に自らの逸物を曝け出した。巨躯を持つこの私ですら、圧倒されてしまう程に凶悪なモノを。

 

「……ゴルゴーンは何もしなくていいから。力を抜いてされるがままでいいよ……」

 

「なにを……する、つもりだ」

 

威嚇するように言ったつもりだが、声色に期待が含まれてしまっているのが自分でもわかった。

それに気づいているのか、気づいていないのか、マスターは我が局部を隠している黒き衣をいともたやすく剥いでしまった。

元々、露出が高い衣装故に当然と言えば当然なのだが、こうも簡単に生まれたままの姿にさせられ、なおかつ抵抗出来ない格好をさせられてしまうと再び羞恥の感情が昂ってくる。

 

「…………んっ、くっ……髪も絡みついて、これは中々にっ……」

 

奴はその肉棒を我が胸の谷間に埋め込もうとしてきた。

そして私の胸の周りを締め付けていた髪も勝手に動き出し、邪魔にならぬよう奴の性器が通れるだけの道を作ったのだ。

結果的にマスターの男根は我が髪と胸部によって挟み込まれる形となった。生きている髪に局部を巻き付かれるという未知の快感に奴も声を漏らしていた。屈辱的な状況でありながら、その様子に私は少しだけ気を良くした。

 

ん?実はメデュシアナを操作しているのは本当は私なのではと?馬鹿を言うな、何故私がわざわざ自身の髪を使って売女の如くマスターを誘わなければならぬ。悔しくも奴の性技で蛇達は堕とされたと最初に言った通りだ…………私が実は途中から自分で操っていたなどという事はない。絶対に無い。無いったら無い。

 

「髪コキとパイズリのセットって相当な贅沢だよな……」

 

くだらん事を言いながらも、奴は乳房に挟まれたペニスを前後へ動かし始めた。

胸の中で熱く、擦られる感触。眼前まで迫ってくる亀頭。両手足を縛られている私はマスターの言う通り、何もしなかった。いや何も出来なかった。強いていうなら、はしたなく口を開き、息を漏らす事ぐらいしか出来なかった。

 

「あっ、ふぅ……んあぁっ!くぅ、あぁっ、我が胸をぉ……弄ぶなぁぁっ!あんぅ!!」

 

腰を動かしながら奴は私の豊胸に指を沈みこませ、何度も動かし、上下左右前後へと形を歪ませていった。

しかも、マスターの手だけではない。髪が円を描くように私の左右の乳に巻き付き、それぞれ絞り上げてきたのだ。

まさかここまで我が体の一部が反旗を翻る程にマスターの支配下に陥っているとは……と私の驚愕を他所にぎゅう、ぎゅう、と緩急を付けて絡みついてくるその動きは確かに性的快感を与えてくるもの。胸の中心部分も興奮で怒張してしまっていた。

 

「ふふっ、随分とっ……高レベルな自慰だね」

 

「あぁっ!だ……だまれぇっ、貴様がやらせているのだろうがぁっ……!あぁっ……!あふぅ!ひあぁっ、んくぅ!」

 

私の言葉に目を丸くしているマスターの態度のなんと白々しい事か。よっぽど私自らがこの蛇髪共を動かしているという事にしたいらしい。ふん、支配下が私に移れば、すぐにでもこのような拘束を解き、奴に牙を剥くというのに。何やら生温かい目になった奴は「……あぁ、ウン。そういう事にしておくよ」と宣いおった。

 

そういう事ではなく、事実そうなのだ!という私の反論も軽く流し、奴は我が乳房をいじくり続けた。

 

「あうぅ!んんぅ!……くぅんぅ!あぁっ!先をいじるのをぉ……とめぇっ、んはぁっ!その指の動かし方ぁ……やめぇろぉっ!はぅぅっ!!!」

 

何本もの生きた髪の束によって締め上げられている胸……そのの先端を奴は指先で素早く、何度も弾き続けた。痺れるような快楽が私の頭を何度も焼き尽くす。

谷間を行き来する硬い男性器の熱さと、乳首から襲いかかる鋭い快感で、私の胸は完全にマスターの性玩具となっていた。

 

……だが胸だけではなかった。途中からは蛇髪共は私の股の間にも這ってきたのだ。既に剥き出しになっている女の溝のサイズに丁度いい太さになると……そこをを擦り上げ、食い込ませてくる。まさか自分の髪に女陰を陵辱されるという目に合わせてくるとは奴のこと情事に関しての容赦の無さに私は思わず心のどこかで恐怖してしまった。

 

「おやおや、ゴルゴーンも何だかんだ言いながら自分からアソコを弄るなんて、随分と好き者じゃないか」

 

「ち、がうぅっ……あぁ、あんぅぅ!私ではないぃっ……!あっ、んんぅ!!あひぃっ!これは貴様が、きさまがぁっ……あ、あんぅ!あぁっ!あああぁっ!!」

 

よっぽど私を自身の髪で自慰に耽る変態に仕立て上げたいマスターの言葉を認めるわけにはいかない。

必死に否定の声をあげようとしたが、奴の陰茎の擦り上げ、指による乳首責め、そして、蜜肉を締められている衝撃がその声を喘ぎと変えていってしまう。

 

「……さて、と……そろそろ、一発目出すよ……!」

 

胸部に挟まれているマスターの男根がピクピクと大きく震え出した事から、その時が来たと私は察した。

目の前で突き出されてる鈴口から垂れている先走りがどんどん増えている。確かに最初の目的はここから出る魔力を頂く事だったが、ここまでの辱しめを受けた私は反発心から口を閉じ、奴の精液を飲んでなるものかと顔を背けた。…………いや、背けようとしたのだ。その筈だった。

 

「……うっ……くぅ!」

 

「……んんっ!!んむっ…………はむぅっ!んじゅるるぅっ!!んんぐぅぅっ!!……んちゅぅううぅ、じゅるるぅ!……んぁっ……あむぅぅぅ、れろぉぉっ、ちゅるぅぅ……!?」

 

何故、私は自分の谷間から飛び出ている亀頭に必死に貪りついているのか。そこから溢れ出している白濁をはしたなく音を立てて吸い出し続けているのか。気付いた時には手遅れだった……。

 

そう、奴は自身の精液に魅了の魔術をかけていたのだっ……!この冷酷無慈悲な魔獣ゴルゴーンに効く程の魅了をなっ!!でなければ、私が愛おしそうに、かつ慈しみ合う恋人のように奴の性器に口を付けるわけが無い。

 

くくくっ……貴様らもマスターの鬼畜っぷりに言葉もないようだな。しかもそのように頭まで抑えて、恐怖で頭痛でもしたか?いいから話を続けろ?というかもう終わらしてもいい?阿呆。本番はここからだ。こんな所で終わらせては消化不良もいい所だ。なに?実は話すのが楽しくなってないかだと?…………………………楽しくなどなっておらん。全くもって全然なっておらん。この笑みはあれだ。怒りが大き過ぎて一周した事による攻撃的な笑みだ。惚気?何を言っているのかまるで意味がわからん。

 

 

 

「……うっ、必死に吸っちゃて……。けど口からだけじゃ物足りなさそうにも見えるよ」

 

「はむぅ……んむぅ、んちゅ、誰が……んじゅぅ、必死になど……ちゅるっ……これは貴様が私におかしな術をかけたせいだ…………んじゅるぅぅっ…………んんんんぅ!!?んはぁっ!?や、めぇ……どこを開いておるぅっ……!」

 

私の態度に何故奴が微笑ましい顔を向けているのかはわからなかった。まぁ、そもそもその後に私に降りかかった災難が考える余裕を与えなかったわけだが。

 

「……一応言っておくけど、俺は最初の『ゴルゴーンを動けないように縛って』って事以外はこの娘達(メデュシアナ)に何も命じてないよ」

 

未だ拘束されている私は両足は大きく開かれたままだった。だが何を血迷ったのかそこを縛り付けていた蛇髪共は今度は細い毛を何本も伸ばし、私の秘裂を左右から開き出したのだ。

 

「……や、やめぇっ!んはぁっ……あ、あぁ……み、見るなあぁぁっ……」

 

体中に巻き付いているメデュシアナに脚を開脚させられ、そこからさらに髪先を伸ばし、マスターの目の前で秘部を曝け出している状況。

自身の指で陰部を広げるよりも何百倍も羞恥心を煽る格好だった。

 

今の私の姿は自身の髪の毛を操作し、マスターに自らの雌園を好き勝手にして欲しいと誘う痴女以外の何者でもなかった。

そして奴はよっぽど今の姿を私からしたということにさせたいらしい。全くどこまで恥辱の限りを私に受けさせるつもりなのか……。

 

だが、無力にも今の私には無防備な媚肉に迫りくるマスターの肉棒をただ見届ける事しか出来なかった。

怒りのあまり、私は熱い吐息を漏らし、ゴクリと生唾を飲んだ……この屈辱を忘れないようにする為にもマスターの行動を一挙手一投足この目に、奴の体から与えられる快感を余す事なく脳髄に刻み込むと復讐者たる私の矜持がそう決意させる。

 

「んんんぅあああ――――……!!」

 

にちゅりと生々しい音を立て、奴の分身が私の中に侵入してくる。

まだ交わりは始まったばかりだというのにその陰茎が前進する度に私の口からは悦楽の鳴き声が止まらず、縛られながらも全身を痙攣させていた。

 

「くぅっ、はぁあ!……なんて、巨大なぁっ……!この私がぁ……ふぅっ!んんぅぅ!!人間などにぃぁぁあああっ!」

 

怪物たる私の膣内を十分に満たすペニスのサイズは女としての性を満足させてしまう……いや、満足させ過ぎてしまう程のモノ。

だが、マスターの方が奥に届いただけで満足するワケもなく当然、そこから前後へと抽送をするワケであり……。

 

「ああぁあぁぁっ!ああぁんぅ!!駄目だぁっ!……やぁっ!やめてく、れぇぇっ!んひぃっ……!う、ごかないで、くれぇぇっ……!んおぁぁああっ……!くるっひゃうっ!くるっへひまうぅぅっ!!」

 

「……くぅっ……!そんな事言われてもっ、ねっ!この状態だとちょっとそれは……難しいかなっ!」

 

「ああぁえぇっ!?」

 

気付けば、私を縛っていたメデュシアナが今度はまぐわっているマスターと私の二人をまとめて……より近い距離で性交するようにと言わんばかりに巻き付いていたのだ。今度は私の体だけではない、マスターの背中まで髪を這わせて、拘束していた。

 

まるで私が自身の髪を使ってマスターから離れたくないように縋っていると思われかねない姿だった。

 

「あ!あんんぅ!ち、ちがぁっ……!ちがぅうぅっ……!こ、れは、私ではないっ!……私がぁっ、やってるわけじゃなひぃぃっ!」

 

「……もうっ、それはどっちでもいいからっ……今はその綺麗な顔をもっと見せてくれないかな?」

 

「き、()()()?……な、なにをぉっ……言っているぅ?……あ、あぁ!この私がぁっ、化け物の私がきれいだと?は、はぁぁっ!……んんぅっ、あほうか、貴様はぁぁっ……んぐぐぁあっ!」

 

「うん。可愛くて、とっても綺麗だ。月並みな言葉だけどね……ほらっ、その顔をもっと見せて」

 

蛇髪でまとめて縛られている以上、私達の顔は互いの吐息が相手にかかるぐらいに至近距離である。

そんな距離から今の自分の顔を見られるのは恥ずかしさで死んでしまいそうだった。

 

「よ、せっ……や、やめてくれぇっ……今の私の顔をまじまじと見つめないでくれぇぇっ……んんあぁっ!」

 

髪の拘束から何とか手を動かしたマスターはそんな懇願も聞こえないように私の頬を両手で挟み、顔を自分の方へと向けるようにする。

 

「あ、あぁ……あぁ!あぁっ!あああぁぁぁっ!!あくぁあぁああっ!!」

 

挿入された状態で奴の瞳を見た瞬間に私は石になってしまった。

動けない。マスターから目が離せない。目の前の男の口から「綺麗」、「可愛い」、「好き」などの言葉が出る度にどんどん子宮が下りてきてしまいそうだった。

 

マスターの胸板に擦られる乳首、膣襞を幾度も雁首で抉られる感触、耳元で何度も囁かれる普段なら鼻で笑うような甘ったるい言葉……その全てが私を絶頂の崖へと追い詰めてくる。

 

「ちかいっ、ちかいぃっ……!あひぃっ!あァァっ……!顔もぉ!アソコもぉっっ……!ちかすぎるぅぅっ……!んんふぅあぁっ!!イクのもちかくなぁぁってぇ……ああぁぁっ!」

 

最初の魔力を戴くという目的はその時の私の頭からはすでに抜け落ちていた。生娘のように顔を熱くさせて、マスターの顔を凝視しながらその時を待っていたのかもしれない。

 

「……お望みのっ、魔力の元……最奥までだす、よっ!」

 

「あ、あ、ああ、あぁあっっ!はああぁっ!!あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あっ~~~…………!!!」

 

繭のように私達を包んだ蛇髪共はマスターの射精の瞬間に縛り付ける力をさらに入れてきた。

これ以上ない程の近さで奴の欲望を吐き出された私の顔は誰にも見せられないような酷い有様だったに違いない。

 

「おっ、おぉっ……あおぁっ!……んんふぅっ!いったい、いつまで、出す気なのだっ……あふぅっ……」

 

 

長い長い射精。その間、私は一体何度絶頂した事か……自分でもわからぬ。

ただ一つわかったのは、私の胎内に出したマスターの濃密な魔力はこれ以上無いくらいに美味だったということだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや、何が『美味だったということだ』ですか?え、え、お話は終わり?」

 

「あぁ、貴様らにも私がマスターから受けた屈辱と陵辱の限り……そしてその怒りの大きさが伝わっただろう?」

 

困惑気味のアナにドヤ顔で話を締めくくったゴルゴーン。だが当の二人は屈辱とか陵辱とか怒りとかまるで意味がわからなかった。ただの普通にうらやまおいそこ代われ案件である。

 

(わたしには二人は幸せなセックスをして終了オチにしか思えなかったのですが……?)

 

(蛇髪を途中から操作していたのも間違いなく彼女(ゴルゴーン)でしょうね……。それをマスターのせいにしてるのは本気でそう思ってるのか、もしくはそういうプレイの一環なのか。もし後者だとしたら、マスターをその気にさせる相当な策士ですよっ……!)

 

メドゥーサ戦慄ッ……!

ゴルゴーンが最初に語ったマスターが自分に対して不敬云々の話があくまで建前っ……!本当の目的を隠すカモフラージュっ……!

自身とマスターとの情事を私達に語る事による釘刺しっ!あるいは宣戦布告!まずケリをつけるのは自分自身から、故に私達を呼び出したっ!だとしたらっ……!

 

(くっ!この女……なんて強かっ……!蛇……蛇めっ!)

 

「あの後、何度も奴は私に膣内出しを強要してな。髪を撫で、口づけをしながら……まるで人間の恋人にするように何度も何度もな。このゴルゴーンに対してあのような仕打ち!許せぬっ……あぁ、許せぬ!全くもって許せぬわっ!フハハハハハッ!!」

 

「喜ぶのか、怒るのかどっちかにして下さい」

 

だが実際問題アナの言葉に「喜ぶわけがなかろう!!」と笑顔で返しているゴルゴーンはメドゥーサが想像しているような理由で彼女達を呼び出しているワケではない。

全てではないが、怒りの感情も確かにある……だが、大半は喜色の感情。そう、言うなれば今のゴルゴーンは『はぁ~~、仕事辛くて今日2時間しか寝て無くて辛いわ~』『いやー、この間ヤンキーに囲まれてやばくてさー、まぁ、全員ぶっ飛ばしたんだけどこっちも死にかけてさぁ~』的な自身に降りかかった不幸や災難を武勇伝のように聞いてもいないのに周囲に語る者の心情に近い。

 

『かぁ―――!うちのマスター、不敬だわー超不敬だわ――、怪物たる私にあんな事やこんな事するなんて不敬過ぎるわ――、怒りのあまり激おこぷんぷん丸だわ――、うちのマスター不敬過ぎて辛いわぁ――!かぁ――!かぁっ――!』みたいな感じか。

 

外面は憤怒の表情に見えなくもなかったが、情事の詳細を話している最中のゴルゴーンの尾は左右に大きく揺れ動き続けていた。深層意識ではマスターとのプレイを誰かに自慢したくて仕方なかったのだろう。アヴェンジャークラス実にめんどい。

 

「……ふぅ、さて‥‥…私だけが話すのも些か不公平か。どれ、貴様らも私に聞かせるがよい。あるのだろう?マスターに対しての不平不満、あるいは私のよう汚辱の極みが?」

 

「いえ、特にあの人に対して不満はありませんよ?……それに、と……とても良くしてもらってますし」

 

(言葉の表面通りに捉えてはいけません小さい私っ……これは大きい私が私達に対して売った喧嘩、女の勝負です!)

 

(んん?いつからそんな話になったんですか?)

 

(彼女は自分のプレイの内容、そしてそれを話すという行為自体で既に私達に敗北感を与えにきているのです!見なさい……あの大きい私の顔を『ほう。私はマスターとの愛し合いに関して、何も憚る事なく話せたというのに貴様らは話せぬか……貴様らの愛はその程度なのか』とほくそ笑むような表情を!)

 

※あくまで彼女にはそう見えるだけです。

 

(ま、まさか……今日ここに私達を呼び出したのも!)

 

(不敬、怒り云々は隠れ蓑……。自分こそが一番マスターに愛されている『メドゥーサ』だという自負を隠しながら私達に戦争を仕掛けに来たのです!)

 

(くっ、サーヴァントになっても。その本質は変わらず、魔獣らしい卑劣なやり口ですっ……!)

 

(彼女のプレイの内容は中々に高レベル。自身の髪を使った拘束プレイ……!しかもそれを自分からするのではなくあくまでマスターからさせるという所がミソっ!そして口では憎まれ口を叩きながらも、マスターの嗜虐心を高めさせる振る舞い……もしっ、もし仮にこれだけの事を無意識でやっていたとしたら、天然の誘い受け!ジャンヌ・オルタのような強敵へと育つ可能性が大!)

 

(ここで調子づかせてはいけない、出る杭は打つということですね?)

 

小声で話すメドゥーサとアナ。決定的にすれ違っている3人の思惑。ツッコミ不在の恐怖。

色ボケっているメドゥーサとアナはゴルゴーンの挑発(二人が勝手にそう思っているだけ)から逃げるという選択肢は無くなった。

 

(自分より小さい娘に負けるのはいい……けど!自分より大きい女には負けられないっ……!)

 

(やや後ろ向きな決意ですが……熱意だけは伝わります。ここはわたしが先陣を切りましょう。鎌ではなく、言葉で目の前の壁を粉砕してみせますっ!)

 

「そうですね。ではわたしの方から語らせてもらいます……」

 

メドゥーサが女神として近しい姿になったメドゥーサ リリィことアナ。アナという名前は今は何故かこのカルデアでは女になっている変態花の魔術師から送られた名だが、存外気に入っていたりはする。

 

この戦いは絶対に負けられない。目の前で嘲笑うように立ちはだかっているあり得た自分の可能性……。

彼女は小さい体を奮い立たせるように前へ出た。

 

(マスター……姉様達……私に勇気を!)

 

少女は戦いへと挑む。たとえどれだけ敵が強大でも、戦力差が絶望的でも、勝ち目が無かったとしても彼女に……彼女達に引くという選択肢はハナから無い。逃げてはいけない戦い。男だろうが、女だろうが、誰にも等しくやってくる……それが今、この瞬間なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

まぁ、やっている事は猥談以外の何ものでもないのだが。

 

 

 




邪ンヌ「やるわね……」
黒アイリ「出番よこせ」














微笑ましいガールズトーク回(笑)
最近、複数プレイが多かったからたまにはこういうのもいいかなと思いました。アヴェンジャークラスはあれだよ、自分がマスターの事をとやかく言うのはいいけど、他の奴が貶すとキレる系の面倒臭い性格なんだよ。

メドゥーサとアナのターンでもある下の段は今週中、あるいは作者がアガルタをクリアしてから投稿すると思います。




リアルの生活がマシになって今話からまた感想返しをする事が出来そうです(今まで溜まってたものを全て返信するのはちょっと無理そうなのでご勘弁を、許して)。どれくらいマシになったかというとイクラのログインボーナスが銀種火になったぐらいのレベル。




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蛇交の猥談 下の談(メドゥーサ・リリィ&メドゥーサ)

月末残業ラッシュから気合でアガルタをクリアして、やっと投稿出来た。オデノカラダハボドボドダ。








《前回のあらすじ》

セイバーリリィ(自身の髪で拘束プレイ…………)

――バサァッ!!

謎のヒロインX「え、え、何故、無言でポニーテールを解いたのですか?」

セイバーリリィ「くぅっ!長さが……私には長さが足りないっ……!」

謎のヒロインX「最近の弟子が何を考えているのかわからない件」

えっちゃん「Xさん。何だかヴィランより危険な匂いがしますよ、あの娘」






では僭越ながら、今度はわたしの話をさせて頂きます――――。

 

 

 

 

 

 

シミュレーションで再現された陽の光が降り注ぐ森林。

その中にある湖畔に荷物を下ろしたわたしとマスターは湖で泳いでいました。

 

「どう?泳ぎ心地は?」

 

「ん――……悪くないです」

 

限りなく本物に近い状態で再現された水の感触に科学技術というのも侮れないなと思ってみたり……。

 

二人っきりのデート。そこまで本気で泳ぐつもりが無かったわたしは浅瀬で、背の低い自分でも余裕を持って顔を出せる深さの所で泳いでいました。いつも三つ編みで纏めている髪を下ろし、その長髪を水面に漂わせています。

 

普段付けている首輪もさすがにここでは不似合いなので外しています。何故か後でこの話をした時、セイバーリリィさんと牛若丸さんが「それを外すなんてとんでもない!」と驚いていましたが……。

 

マスターに渡された名前の所に「あな」と書かれたスクール水着とやらを着てわたしはすいすいと泳ぎます。この水着もマスターの性癖なのかと最初は色々と考えさせられましたが、どうやらお洒落な水着は今度皆で海に行く時までにとっておこうという目論見だったそうです。

 

わたしがまだいなかった去年はそれはそれは楽しそうなサマーバケーションだったとか。

 

「なんでしょう?確か、テンションが上がり過ぎた皆さんによって島の形が変わったと聞きましたが……」

 

「あぁ、大惨事性杯戦争……」

 

泳いでいたわたしの手を掴み、引いて、体半分を浸かっている水着姿のマスターは浅瀬を進みながら懐かしそうに眼を細めていました。わたしがバタ足で水を弾く音で何を呟いたのかは聞こえませんでしたが……。

 

「結局、俺が出張ってハッスルし過ぎた皆には大人しくしてもらったけどさ。うん。事が済んだ後は実に心地よい疲労感というか、達成感というか……」

 

「英霊相手のトラブルをなんとかするとは、さすがマスターですね」

 

「まぁ、エロエロと…………色々と頑張ったよ」

 

「色々と頑張った」その一言で簡単に終わらせるレベルで済まない大奮闘劇があった筈。照れ臭そうに微笑みながらそう返す彼の謙虚さにこちらも笑みが零れてしまいました。

 

彼に腹ばいになって手を引かれている今の状況も子供扱いされているようで本来なら少しはムっとしてもいい所ですが、湖で二人っきりというシチュエーション。マスターに握られている手の感触。わたしに語りかけながら、レディのようにリードしてくれるマスター……そんなムードに酔ってしまったわたしは文句なんて言えなかった。

ただ……一つ不満があるとすれば――――。

 

「羨ましいです。わたしより先に召喚された方々が……」

 

嫉妬……それこそ子供っぽい我儘が口から漏れてしまった。

召喚は縁であり、時の運でもある。誰がいつ召喚されるかなんて誰にもわからない。

だから、わたしが先に召喚された方達を妬むのはお門違い、それでもさっきの島での海水浴の話といい、わたしよりマスターとの思い出が多いのを羨むのを止めるのは少し難しい。

 

眼鏡と学生服を着て、スキップしながらマスターの部屋に向かう未来のわたし(メドゥーサ)を見た時はちょっとどうかと思いましたが。

 

「なら、これから沢山作ればいいさ。時間だって気合入れて作るし、俺も頑張るよ……()()とね……」

 

ざぶんと――心中を察したマスターがわたしの両脇に手を挟み、持ち上げ、そのまま陸に上がり、水面に足の先だけが浸るように腰掛けました。脇に触れられた瞬間に恥ずかしい声が漏れそうになったのは内緒です。

 

足だけは水に浸かっているマスターの膝の上にわたしは乗せられます。彼の言葉にこれからする事がわからない程、わたしは鈍感ではありません。

 

わたしはずるいサーヴァントです。さっきのような事を言えば……マスターがこうしてくれるってわかってて口にしたのですから。

でもこんなずるいサーヴァントにしたのはマスターなんですよ?わたしは瞳を潤ませながら彼の顔を見上げました。これからする事に心を躍らせて……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んぅっ……んぁっ、あぁ……あんぅっ……」

 

スクール水着……本来は学童が水泳の授業などで着用する子供用の水着。

大きくなるのは嫌、かといって子供扱いをよしとするワケでもない。そんな自分でも面倒くさいと思う性格をしているわたしがマスターに渡されたからとはいえ、どうしてこれを着る事を良しとしているのか。

 

答えは単純。マスターと情事……大人な事を子供用の服を着て、いたしている背徳感が堪らなかったから。

こういう服を着れば、マスターの興味をもっと引けるかもしれないという浅ましさもあったかもしれません。

 

「あぁ、あぁっ!……そこ、キモチいいで、すっ……!もっと、たくさん……触って、くださぁいっ……ひぅっ!」

 

マスターの膝の上で悶え続け、水着の上からあらゆる所を撫で擦られる。

特に彼の手が局部の上あたりに触れた瞬間にわたしは色情に狂ったように懇願してしまいました。

 

ふふ、こんなにえっちな様のわたしの一体どこが『リリィ』なのでしょうね。……同じリリィであるセイバーさんやメディアさん、ジャンヌとは大違いです。

 

「ここがいいのかい?」

 

「はぁぅう!……は、はいぃっ!……そこぉ、お豆の所をぉ、指でグリグリされるのが……いいんですぅぅっ、んあぁぁっ!」

 

「そこってどこだい?はっきり言ってくれないとわからないよ?」みたいな意地悪な事は言わないでマスターは素直にわたしの好きな所を弄ってくれます。

まぁ、そういうSなプレイも嫌いではないのですが、せっかく雰囲気が良い湖畔にいるのならスタンダードなイチャイチャプレイをしたいというのが乙女心です。

あ、大きいわたし、今鼻で笑いましたね……ハルペーしますよ。

 

「……あ、あっ、あんぁ……胸、そんなに一生懸命さわってぇ……んぅ!わたしのなんかいじって楽しいですかっ……はんぅ!」

 

「楽しいよ」

 

即答されたわたしはこれ以上何も言えませんでした。

股の間だけではなく、あるかないかわからない微妙なサイズである胸の上をマスターの手が覆い、指を軽く曲げ、緩急をつけて揉み続けています。

 

成長するのは複雑な気持ちですが、こうした方法で胸が大きくなるのは悪くないかもです。

事実、少しですが大きくなっているサーヴァントの方々もいるみたいですし。女性英霊の胸を大きくさせるマスターの手……神秘ですね。

 

「はっ、はっ、はぁぁっ……ああぁ!んぁぁ……んんぅぁっ」

 

水に濡れた事からぴっちりとわたしの肌に吸い付いているスクール水着の上をマスター手が這い回り続けます。それこそ蛇のように。

着衣している状態でこんなに感じてしまっているのなら、直接触られてしまったら一体どれだけの快感がわたしを襲うのか……そんな期待が頭をよぎった瞬間。

 

「ひぅうぅんんぅ!?」

 

マスターが指先でつ―――っと剥き出しになっているわたしの太腿をなぞりました。

いきなりの不意打ちに体全体をピンと伸ばして情けない声をあげてしまったわたしはマスターに抗議せずにはいられませんでした。

 

「むぅっ――――……!!」

 

「ハハ、ごめんごめんて」

 

笑って謝る彼の頬を指先で何度も突きました。

えっちをするのもいいんですが、こういう些細なやり取りも結構お気に入りです。だってほらカップルみたいじゃないですか?砂糖吐きそう?どうぞ勝手に吐いて下さい。

 

「けど、ほら……そろそろ服の上からだけじゃ、満足出来ないんじゃないかと思ってさ?」

 

「…………ま、満足出来ないのはマスターの方……なのでは?」

 

「うん。俺がアナの体にもっと触れたいんだ」

 

「し、仕方のないマスターです…………」

 

仕方が無いのは一体どちらなのでしょうか。途中からもっと強い刺激を求めていたのはわたしの方だというのに……。ま、まぁ、マスターの方も求めてみたいですし……お互いに同じ事を考えていた結果とも言えるでしょう。フフン、これが相思相愛という奴なのかもしれませんね。

 

マスターがスクール水着の股を覆っている部分を横にずらし、わたしの幼い媚肉を露出させていきました。

水滴を垂らすほどに湿っているのは泳いでいたからか、それとも別の理由か……わたし自身にははっきりとわかっていましたが。

 

「はくぅううっ……!!」

 

マスターの中指と人差し指がずぶずぶとわたしのイケナイ所へ入っていきました。本来自身の体の中に異物が入るのは恐怖すべき事なのですが、マスターの体ならと……歓迎するようにわたしのナカは悦び、蠢き、彼の指を咥えてしまっているのです。

 

「あぁっ、はぁ!……ひやぁっ、ふぅうんぅ!あぁっ!指っ……キモチいい、あなたの手でくしゅくしゅって……されるのす、きぃっ……!」

 

指先で奥を突かれ、その膣壁を指腹で擦られる。マスターの膝の上で抱えられているわたしは大自然の中で淫らな声を響かせてしまう。

特に彼の指が鋏の如く開かれ、膣内を拡張するような動き方をすると、わたしの口からはもはや言語にすらならない悦楽の悲鳴しか零れませんでした。

 

「ひぅぅ!あぁっ、あんぅ!はぁ、へあぁっ……ふぅんぅっ、んくあぁっ!あ、あぁ……んあぁぁっ!………………んみゅぅっ!?」

 

しかし、その時わたしはぶるるっと肩を大きく震わせて、寒気のような物を一瞬感じたのです。明らかに性的な快楽とは何かが違う震え方。

 

まずい。マズいマズいマズい。これは尿意以外の何物でもないと……。長時間泳いでいたせいか、それともマスターが膣口だけではなく尿道口も責めたからかは定かではありませんが、このままでは過去トップクラスになりかねない醜態を晒す事になると予感したわたしはマスターに一時中断を求めようとしました。ですが――――。

 

「はむっ」

 

「んにゃあぁっ!?」

 

わたしの考えをテレパシーでもしたのか、マスターは最高の……いえ、最悪のタイミングでわたしの耳を噛んできたのです。

あむあむと、それはもう唇で優しくあむあむと、美味しそうにあむあむと、何てえっちぃマスターなんでしょうとその時のわたしは関心する余裕すらもありませんでした。

 

「みゃ、まぁすたぁっ!?」

 

ふぃーよ、ふぇんふ、ふぁひひゃいわ(いーよ、全部、出しちゃいな)

 

「ひぁっ!みみ、くわえたまましゃべらないでくだひゃぁっ……!」

 

甘噛みするだけでなく、耳たぶを舌先で揺らすように舐められると抵抗する力がどんどん失われていく感じがしました。

しかも、女性器への愛撫は未だ続行中。わたしのダム決壊はもう秒読みでした。

 

「あぁっ!あっ、あっ!はぁぁっ!だめ、だめだめだめ、だめぇ!だめですぅますたぁっ!……お願い、指を止めてくだしゃぁあっ……!はぅんぅぅっ!!でる!でちゃう、でちゃうぅ……!んくぅっ、んん、ぁぁぁああっ~~…………!!」

 

それでもマスターの指は止まることなく、むしろより膀胱の近くを揺さぶる責め方になりました。完全にわたしはとどめを刺されてしまったのです。

 

「っっぅううっ……!!!」

 

――――あぁ、無理……こんなの耐えられるわけがありません。

 

気付いた時にはジョロジョロ……チャポチャポ……とわたしの小水が湖に滝の如く流れていました。

耳に入ってくるだけでもわかります。なんて情けない音なんでしょうと。

 

「は、は、はぁぁ……あわうぅぁぁぁ…………」

 

ですがわたしは、恥ずかしさとか怒りとかそんな感情は全くと言っていい程になかったのです……不思議な事ですが。

 

尿水で汚れた、股を気にする事なく指で弄り続けているマスターに「せっかくの大自然だから、全部解放した方がキモチいいでしょ?俺はアナの全部を見たいからさ」と耳穴を舐められながら囁かれてしまったわたしは確かに湖という開放的な場所でマスターの目の前で放尿するという快楽を感じていたのです。

 

男達の憧れ、偶像としての女神……。姉様方と近い状態で召喚されたわたしが綺麗な所だけではなく、汚い所も、そして体のあらゆる全てを見せても変わらない笑顔を向けてくれるわたしの主。

 

「……キモチ良かったでしょ」

 

「はいっ……あっ、ふぅぅ……すごく、よかっ、たです……はぁんぅ」

 

これが新たな扉を開くという事なのでしょうか?忌避すべき事、イケない事をマスターと二人っきりで悦しんでいる今の状況にわたしは興奮し、溜まっていた物を吐き出した余韻に浸るように小さい絶頂を繰り返していました。

 

「なら、今度はお漏らししないようにしっかりと栓をしようか……」

 

互いに水着しか着ていない為、わたしのお尻に当たっている硬いモノの感触がほぼダイレクトに伝わっていました。

マスターのモノでわたしの堪え性の無い秘所を塞いでくれるようですが、そんな事したら、さらにもっと色んな液体でわたしのアソコがビショビショになる事がわかり切っているのですが……。

 

「はい……」

 

それでもわたしには抗う術などありませんでした。だって自ら彼のパンツを下ろし、露出したその凶悪な蛇を撫でてしまっているぐらいに淫奔になっているわたしに今更何を取り繕う事があるでしょうか。

 

「はぁ、はぁ……ちゃんと……奥までわたしの穴を塞いでくださいね……」

 

背面座位の体勢になっているわたしとマスター、小さい躰を持ち上げたマスターはパクパクとヒクつき、ねだっている陰唇へ自身の分身をあてがっていました。

 

「んひゅっ……ふぅ!あ……あぁぁ!」

 

そしてそのままゆっくりと、ゆっくりと、わたしの体を下ろし、ずぶずぶと膣肉を掻き分け進んでいきます。

幼い体貌のわたしに不似合いな程に巨大な逸物が浸食していくこの感じ……それでも何故かこれ以上ないくらいに自分の体にハマっていく感覚があります。まぁ、事実ハメられているわけですし。

 

「あぁ…あぁ――……!あぁぁっ~~~……!!」

 

小さな潮を吹きながら徐々に下ろされたわたしの臀部とマスターの陰部が完全に密着した時、頭の中はもう気持ちいい事しか考えられないお馬鹿さんになっていました。

 

弛緩しきっているわたしの体を目覚めさせるように彼のストロークが始まります。

 

小さく儚いわたしの体が魚みたく彼の腰の上で何度も跳ねました。

どこまでも澄んだ青空を見上げながら、熱い杭にナカをドロドロにさせられている私。興奮で湧き出た汗か、さっきまで泳いでいた湖の水か、その両方か……私の体は内外関わらず、様々な液でびしょびしょになっていました。

 

「ひぁうぅ!んんぅ!……ふぅんぅ!あぁっ!先をいじるのをぉ……すきぃっ、んにゃぁっ!その摘まみ方ぁ……もっとぉぉ!はふぅぅっ!!!」

 

パンパンと交わる勢いで少しずつズれてきた水着の肩紐を外したマスターは露になり、はしたなくそそり立っているわたしの乳頭を両方同時に優しくかつねちっこく摘まんできたのです。なんですか未来の私(メドゥーサ)……「乳首を責められた時の反応が大きい私(ゴルゴーン)と似ている」?…………似ていません。全くもって1mmたりとも似ていません。むしろわたしの時の方が淫靡でありながら、どこか神々しさとか気高さがある反応だと思います。

マスターの愛撫はあなた達のような駄肉ではなく、わたしのようなお淑やかなサイズを愛でる方が似合っていると思います。小は大を兼ねるのです。

 

「ほら、リリィ。ちょっと下の方を見てごらん」

 

「……ふぇ、はぇ……?」

 

もう思考する能力も失いかけ、まるでマスターの操り人形と化してしまっているわたしは言われるがまま視線を下におろしました……そう、湖の水面です。そこには――――。

 

――――ひあぁっ!あぁ!あんぅ……!んひぃ!あぁくぅぁっ、あ、あぁ!んみゅぅっ!!

 

涙と涎……それに股から愛液と様々な所から液体を垂れ流し、快楽を貪っている一人の少女……そう、わたしが映っていました。

 

なんて、なんて……えっちぃ姿をしてるんですかわたしは…………。

スクール水着を着て、男の人のモノを難なく受け入れ、乱れている……水面という名の鏡に映っているその様を見て、目の前にいるのは誰だと?思わず考えてしまう程に。

 

「あぁ、ぁぁっ!あっ!あぁぁっ!わ、たしぃ?……こ、れがわたしっ、は、はぁっ!これがわたしなんですかぁぁっ!?」

 

「ほら、ちゃんと思い出作るんでしょ?なら体で感じるだけじゃなくて、自分がどうなっているのか視界の方でもおさめておかないとさ?」

 

思い出。そう思い出です。わたしより先に召喚された方達にも負けないぐらいの思い出をたくさん作らないといけません。

人工的に作られたものとはいえ、自然の物で私達が愛し合っている姿を見せつけてくれるとはマスターは中々にロマンチストです。

 

「おくぅ、すごぉいで、すぅっ!やぁんっ!……あんなに大きいのに、わたしの幼いおまんこぉっ……一番キモチ良くしてぇぇ、あぁっ!あんぅ!すごぃっ、しゅごぉい!……ましゅたぁのおちんちんがっ、はげしくズボズボしてぇぇ……え、ふぅぇっ!そんなに激しくするんですかぁぁっ!……やぁぁんうっぅ!」

 

先程、盛大に粗相をしたわたしにもう卑猥な単語を叫ぶ事による羞恥心なんてありませんでした。湖に映った自身を実況するかのように本能のまま悦楽の言葉を垂れ流します。

実際に犯されているわたし、湖に映っているわたし……まるで二人分の快楽が一身に襲いかかっているような感覚でした。

 

もう「リリィ」なんて名乗れないぐらいに、性に……マスターに溺れてしまっているわたし。

そんな淫蕩なわたしにもマスターは引くことなく、より情熱的に責めてくれます。

 

「んんぁぁっ……!あぁぁぁっ、耳、みみぃ、噛むのぉぁぁっ、あぁっ!みゃた感じるのがぁっ、いっぱいいっぱいひてぇっ……んひぃ!!おかひくにゃってしまひましゅからぁぁっ、ひょんなわたしのしゅきなトコばっかり、イジったらぁぁっ、わたし、わ……たひぃっっ……!!」

 

耳を横から食べられてしまうぐらいにパックリと咥えられたわたしはもう自身の性感帯がこれでもかというぐらいに刺激され、限界がやってきました。

耳、乳首、膣内、そして、犯されている自分を見ている瞳……そんなわたしのキモチいい所をフルコースで攻められたら、わたしは楽になるしかありません。

 

「……アナの中にも()()()たくさん注ぎ込んであげるよっ……!」

 

「あ、あ、あ、あぁ、ぁぁっ、イっ…………!!」

 

『イク』という二文字すら口にする余裕が無かったわたしはそのままマスターの子種をこの小さな体にこれ以上ないくらいに射出されてしまいました。

 

「ッあぁっ――――~~~…………!!!」

 

子供のわたしの体の中を白く染め上げていくマスターの子種…………吐き出されたその精子と一緒にわたしは再び陰門から水を吹き出しました。そしてそれは潮、愛液だけではなく、再び小水の方さえも。

大好きな人の前で全てを曝け出してしまう快楽を知ってしまった私の股は淫液をフルコースで湖へと垂れ流してしまいました。

 

「はぁ――、ぁぁぁ――……んくふぅっ、あぁっ、あぁ――、まだ、出てるぅぅ、と、まりません……あふぅ……」

 

その台詞はマスターの射精かそれとも私の潮吹きと放尿の方か、あるいは両方か。流れ出ている愛汁によって水面に波紋が拡がっていました。

映っていたわたしの姿は当然ぼやけていて、それは快楽でトロトロにされているわたしの姿を暗喩しているようで、このままマスターと水のように溶け合いたいと思ったわたしは彼に背中をしばらく預けたままでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふん、どうですか?わたしとマスターとのイチャイチャっぷりは」

 

 

「スク水プレイ、放尿プレイ……しかも湖の水面という大自然を生かした羞恥プレイ。なんというトリプルアクセル……」

「末恐ろしい……とてもリリィとは思えぬぞっ……!」

 

 

幼き少女から紡ぎ出されたマスターとの艶物語。ゴルゴーンのプレイとも勝るとも劣らないハードっぷり。

何より、こんな小さな体で彼とそんな事を勤しんでたというギャップが二人のメドゥーサを震撼させた。

というかアナは乏しい胸を張って、イチャイチャとか言っているが、ちょっとそのレベルは超えている。

 

ホント、カルデアにいる幼女のエロポテンシャルはパない。

 

「しかし、冷静に考えると我が契約者の陰茎はマルドゥークの斧サイズ……とてもではないが小さい方の私の身では裂けてしまうのではないのか……?」

 

「どこに注目してるんですか。というか誇張が過ぎます。確かに大きかったですけど、わたしにピッタリサイズでしたよマスターのアソコは。心だけでなく体もぴったんこカンカンの相性抜群なのですから」

 

「そう言えば、あくまで噂のレベルですが聞いたことがあります。マスターの男性器の大きさはその時に交わる者の最適なサイズ……つまり相手が一番キモチ良くなる大きさと硬さになると」

 

「スキル:変化(肉棒)か……」

 

「A+ぐらいはありそうですね」

 

女サーヴァント3人が真面目な顔でマスターの下の方の談義をする。これはひどいの感想しか浮かばない。

2連発のハイレベルな猥談で箍が外れてしまっている3人はもはや自重する気もサラサラなかった。

女3人寄れば姦しい……ならば蛇っ娘3人寄ればどうなるのだろうか。

 

「ですが、もしその話が本当なら。ジャックやアリスのような年端のいかない女の子達も容赦なく大人の階段を登らせるのもわけないという事ですか……」

 

「奴のストライクゾーンはゆりかごから墓場までとでも言いたいのか?」

 

「わたしはゆりかごではありませんよ。真ん中からちょっと下なのは認めますが」

 

誰が墓場枠なのかは大いに会議が紛糾……というか赤い槍雨が降ってきそうなので、3人はそれ以上話を深く掘り下げる事はなかった。

 

取り敢えずは『マスター+セックス=すんごいきもちい』の結論で落ち着いたようだった。IQを水平線の彼方に放り投げたようなまとめ方に涙が出る。

ゴルゴーンだけは『べ、べつにマスターのでキモチ良くなってないんだからね!!』みたいなフェイスだったが、もう語るに落ちるというよりは語る前に堕ちてしまっているというべきか。

 

 

 

「では、トリとして私の話で締めとさせて頂きましょうか」

 

「ふん、蛇足にならなければいいがな………………蛇だけに」

 

「うまいこといったつもりですか」

 

この中で最もマスターとの付き合いが長い元祖メドゥーサお姉さん。ボンテージ、マイクロビキニに制服。さらには姉様方に苛められながらの複数プレイもこなす彼女の中々の強者。そんな彼女が語るマスターとのプレイとは…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「次の問題です。『ブリュンヒルデの宝具の特攻に入る者を次の選択肢から全て選びなさい』」

 

一日の授業も終わり、もう殆どの生徒が帰るか、部活動に励んでいる時間帯。窓から夕陽の光が差し込んでいる誰もいない教室。

黒い学ランに黒髪の男子生徒とその一つ上の先輩にあたる胸元の赤いリボンが特徴的な紺色のセーラー服を着ている女子生徒…………そう私達は無人の教室で二人っきりでいました。

 

――――テスト勉強を教えて欲しい。

 

いつも私を支えてくれている副会長の頼みを断るつもりはありませんでした。

むしろ、彼が言い出さなければ自分から誘い込んでいたかもしれません。

 

毎日の授業で自分自身が使っている席に座って熱心に問題を解いている彼の隣に立ち、前屈みになっている私は互いの頬が触れ合ってしまいそうになる程の近さで指導していました。

 

「ぶっぶー。惜しいですが外れです。選択肢にある『ヘラクレス』は引っ掛けですよ。残念ですが正解には入りません。ブリュンヒルデの宝具特攻に入るのは英雄らしい者ではなく、あくまでブリュンヒルデがシグルドっぽいと思う者しか入らないという事も視野に入れるべきでしたね……。ふふっ、というわけで外れたので罰ゲームです」

 

罰ゲーム、私にとってはむしろご褒美ともいえるお仕置きを彼に行います。

視線を横にずらせば、目に入ってくる彼の美味しそうな耳たぶ……私は迷う事なくそれを咥えました。

 

「はむぅっ、んじゅるぅぅっ……」

 

「……んんっ!?」

 

おまけ付きに舌でねぶり、吸い付くのも忘れず。

ビクンと震える彼の反応と漏れ出した声に女の箇所が熱く反応してしまいそうになります。

 

生徒会長の私、副会長の彼、今は私達だけの教室ですが……もし誰かが入ってくれば只事では済みません。

生徒の模範になるべきの生徒会がテスト勉強と銘打って淫行に走っているのだから、私も彼も生徒会をリコールされるだけでは終わらないかもしれません。この学校を去るという危険も……。

 

本来なら、その様なリスクを避けるべく、他の役員も既に帰宅している生徒会室でテスト勉強をした方が良かったかもしれませんが……ただそこは私が少し我儘を言ってしまったのです。

 

「……んはぁ、はい。では、今度は現代文の問題に取り掛かりましょうか……。『二頭身の赤毛の少女は1000回ガチャを回してもお目当てのサーヴァントが出る事はありませんでした。その時の彼女の心情を80字以内で正確に述べなさい』」

 

学年が離れている以上仕方ない事ですが、それでも彼がいつも過ごしている教室で同級生のように時間を共にしたかったという子供のような我儘を。

だって仕方ないじゃないですか、「会長と一緒に卒業したかったな……」ってあんなつぶらな瞳で言われてしまっては!!「留年しよ、結婚しよ」と思った私を責められる人がいますか?さすがに他の役員に止められましたが……。

 

だからこそ、こうして気分だけでも味わいたかったので、誰もいなくなったのを見計らい彼の教室でイチャイチャとテスト勉強に勤しんでいるわけですが。

 

「『運営は滅ぼす。だが、その運営のガチャを嬉々として回す全ての人間達、及び運営を生み出した世界そのものを滅ぼそうと決意する程の怒りと破壊に支配された気持ち』ですか?」

 

「はい正解です。良くできました……優秀な子にはご褒美の方を上げないといけませんね……さぁ、私の体であなたのお好きな所を触れてどうぞ……」

 

副会長が間違えれば、私が彼の好きな所を悪戯する。

副会長が正解すれば、彼が私の体の好きな所を触れる。

 

私にしてみれば、どちらもご褒美なのですが……それは彼にとっても同じ事だったのかもしれません。

 

「あんぅ……ふふっ、やはりそこが気になってしまいますか……?」

 

彼は迷わず、私の胸に手を這わせてきました。制服の上からゆっくりと優しく、その感触を確かめるように……。

まぁ、気になるように仕向けたのは私なのですが。

勉強会を始めてからずっと彼の肩や腕に胸部を潰すように押し付けてきた甲斐がありますね。

 

「あっ、んぅっ、もっと強く触れないのですか……?はぁぁっんぅっ!」

 

私の挑発に乗るように彼の両方の5指が私の乳球をそれぞれ鷲掴みにしてきました。

何か特別な触られ方をされているわけではない。しかも服の上から……。にも関わらず私の体は軽くイッてしまったかのような反応をしてしまいます。

 

「はぁ――……あぁ、あなたの体は本当に不思議です。私をいつだって惹きつけて止まない……」

 

胸を揉まれ続け、熱に浮かされた私は彼の太腿を擦り、徐々に上の方へと登っていきます。

先程からこうやって問題を解いた、外したで、触りっこをし続けたのです。もうお互いに我慢の限界は来ていました。

 

太腿を這い続けた私の手は彼の欲望が拘束されている頂きへ到達しました。

 

「あぁ、もうパンパン……」

 

うっとりとした声を出し、そこを撫でる私。ズボンの中に仕舞っているソレはピクピクと震え続けていました。

迷う事なくファスナーを下ろし、副会長の可愛い顔とギャップを感じさせるペニスを学び舎の一室で露出させます。

 

未だ胸を弄られ続けている私は目線を下へ。あぁ……眼鏡をかけている私の瞳には苦しそうに怒張している彼の息子が良く見えます……。

 

「はぁっ、あんぅ……ふぁあっ、ねぇ、副会長……次は保健体育の勉強をしませんか?」

 

彼は間髪入れず、頷いてくれました。

好き合っている男女がここまで燃え上ってしまった以上、もう他の誰かに見られてしまうかもしれないなんて程度の不安では止まる事は出来ません。

 

名残惜しく、彼の魔手を外した私は彼の机の下へと潜り込みました。

 

「あなたはそのまま、動かないで……あむぅっ、んじゅるるぅっ……」

 

女を駄目にするいやらしい匂い、こんな暴れん坊は会長たる私がしっかりと管理しないといけません。

彼は私に言われた通りに椅子に座ったままで、私のフェラを受けています。

 

「んむぅっ、じゅるぅ、じゅぅ……ちゅ……んんぅ、ちゅぱぁっ……」

 

狭い机の下で夢中になって頭と舌を動かしている私。さっきまでの体勢なら仮に誰かが教室に入ってきてもある程度の誤魔化しはきいたかもしれませんが、さすがに今の状態はどう足掻いても言い訳出来ない状態です。

 

それでも私の口淫は止まりませんでした。会長と副会長である前に私達は男女の関係でもあります。理性やモラルだけでは語れない事も中にあるという事。

 

「……ぁぁっ、会長っ……」

 

口いっぱいに頬張っている肉棒の味と彼の嬌声が私の脳髄を犯してきます。

 

「じゅぅ……じゅぼっ、じゅぼぉ……!ちゅぅ、んちゅぅ、ちゅるぅぅ……んじゅるぅ!」

 

本当はテスト勉強とかじゃなく始めからこういう事をしたかった。

けど、生徒会長という肩書きとちっぽけなプライドが私を素直にさせてくれません。

副会長はそんな私を察して、誘ってくれたのでしょう。本当に私のような可愛げのない女には勿体無いぐらいに出来た後輩です。

 

「会長っ……もう、で、ますっ……!」

 

「ふぁひへぇ、んじゅるぅぅ……ふぁふはん、ふぁひへぇ……じゅぼっ、じゅぼっ、じゅぼぉぉ、じゅぅぅぅっ!」

 

彼の太腿を高速で撫で擦りながら、喉奥までふんだんに使い彼の男根のバキュームを強くします。

いつも私を支えてくれている可愛い可愛い後輩……私が貴方に出来るのはこれぐらいなので……どうかたくさん気持ち良くなって下さい。欲望を私の口に体に吐き出して、それこそ道具のように乱暴に使っても構いませんから…‥。

 

「っくあぁっ……!」

 

「んぶぅぅっ――!んんんんぅぅっ!!んぐぐぅ……んぐっ、ごくっ……ごく……んごくぅ……」

 

射精の瞬間、吐き出した彼と吐き出された私が同時に体を震わせ、机が大きく音を立てました。

彼がいつも勉学に励んでいる机の下で精液を吸い付くしている今のシチュエーションが私を堪らなく興奮させてくれます。

 

「ぷはぁぁっ……あぁ、いつ飲んでも病み付きになる味です…………私の胃袋まで蕩かしてしまいそうに。さぁ、副会長、今度は貴方の番ですよ。私の体を目一杯味わって下さい……」

 

 

 

 

 

 

 

 

口淫の奉仕を終えた私は彼の言われた通りにしていました。

 

「こんな体勢で教卓の上に乗れだなんて、貴方は本当に鬼畜です……」

 

生徒達を一望出来る教室の机、教卓の上に乗った私は黒板の方に顔を向けて、お尻を高く上げる四つん這いの服従のポーズを取らされていました。

結果、私のお尻は彼のクラスメイト達が座っている座席の方に向けられているわけで、しかもそのお尻を高く上げているものだから、スカートの中も見えそうに……。

 

「きゃぁっ!スカートの裾を捲り上げないで下さいっ!」

 

「俺しかいないんだから、そんなに恥ずかしがる事はないでしょう。それにさっきまであんなにエロい事をしておきながら……」

 

「き、気分の問題ですっ!」

 

確かに私達二人しかいませんが、生徒会長たる私が教卓の上でお尻を見せつけているのはさすがに羞恥心を煽られます。

しかも、それをいつもここの生徒達が使っている席の方に向かってなんて……。誰もいない、誰もいませんが、まるで見られているような錯覚を。無人の椅子、机に彼のクラスメイト達の姿を幻視してしまいそうになります。

 

「うわぁ、会長相当攻めてる下着穿いてますね……黒のTバックて、エッチ過ぎません?」

 

「……笑えばいいじゃないですか……昨日、貴方とここでテスト勉強をすると聞いてから期待して丸々一夜かけて下着を吟味して、結果そんなドキツイ下着を選んだ事を笑えばいいじゃないですか……。淫乱Tバック痴女会長って……」

 

「いや、その情報を聞いて、余計嬉しさと興奮が増し増しになりました。ありがとうございます……」

 

「何故、拝むんですか?」

 

「はは、気分の問題ですよ」と笑いながら、私のスカートの裾をつまみ上げ、露になっている私のお尻を凝視し続けていました。彼に自身の秘部をねっとり視姦されている恥ずかしさと悦びが私の動悸を激しくさせます。

 

 

「けどメドゥーサ会長……いくら期待していたとはいえ、さすがにこれは濡れ過ぎだと思いますよ。ほら、ちょっと押しただけでこんなにグショッてますし。まるで水を吸ったスポンジみたくパンツから溢れちゃってますよ……」

 

「……あふぅっ!…………わかってますっ、自分でもわかってますからぁっ……い、いわないで下さいぃ、ひぅんぅ!」

 

尻肉を鷲掴みにしている彼はもう片方の手で薄いショーツの上から淫筋を何度も突いてきました。

直接触って欲しい故に早くその布を取り払って欲しいという欲望と、彼の為に吟味した下着をじっくり眺められている嬉しさが混在して、媚びるように私はお尻を振っていました。

 

「はは、駄目ですよ会長。そんなに欲しがるように振る舞っちゃったら……ここからはもう勉強じゃなくて実践になってしまいますよっ……!」

 

「あひぃっ!?あぁぁっ、お、ぉぁっ!……お、しりの穴ぁぁっ……にゃめぇっ……ふぉぁっ!」

 

生徒会長のプライドを脱ぎ去った私を叱咤するように彼は私の臀部をバシンと平手打ちし、陰部を弄っていた指を菊門の方へと押し付け始めました。

下着の上とはいえ、薄布一枚の上。彼の指が入ってきそうで入ってこないもどかしさに私の蜜は堪えるという言葉を知らないレベルでパンツを濡らし続けていました。

 

「ほら、会長……生徒の規範となる貴女がせっかく教卓の上にいるんだから、ちゃんと自分の体がどうなっているのか皆にわかるように言葉に出して」

 

「み、みんなぁっ……?あふぅんぅ!!……はいぃっ、言います、言いますからぁぁっ。おひりを叩かないで下さいぃっ……!」

 

もちろん、彼は『皆』とは言ったが、今教室にいるのは私達二人だけ。

きっと無人の席に生徒達がいると想像して、私の羞恥心を煽り続けたいのでしょう。

 

さっきまではあんなに私の手で可愛く震えていたのに、一度スイッチが入ると彼は容赦ないドSになります。

しかもタチの悪い事に、ピンポイントで私の弱い所を苛めてくるんですから、もう先輩の威厳とかボロボロに崩されてしまいます。

 

「今ぁ、私は彼にぃ……ひんぅ!……お尻を叩かれながらぁぁっ、あ、ソコを弄られてぇぇっ、あぁっ!あんぅ……!あはぁぁっ!」

 

「会長、『アソコ』じゃどこを指しているのかわからないですよ。それに『私』とか『彼』がどういう人物なのかもちゃんと話さないと。生徒の前でスピーチするには明確な言葉ではっきりと伝える必要があるんですから」

 

「は、はいっっ……生徒会長の私がぁ…‥副会長でもある1つ下の男の子にぃっ……神聖な学び舎の一室でぇ、しかも教卓の上でぇ……あふぅ!……はぁ……犬みたいな格好でお尻を突き上げてぇ……んんぅ!おひりをパンパン、何度も平手打ちされてぇぇ……おぁぁっ!副会長の為に選んだTバックの上からぁ……アナルを指先で、グリグリと重点的にほじられぇ……おほぉぁあぁっ!!」

 

「ほじられて、どうなってるんですか?」

 

意地悪そうに、尻肉と尻穴の陵辱を続けながら問い掛ける彼。

私が使っているのは学年が違う故に厳密には別の教室だが、それでも毎日見慣れた場所でこんな倒錯的で、淫奔で、猥褻な行為をあろうことか生徒会長の私がしている。

しかも、それを生徒の見本を見せるべき生徒の姿を幻視しながら、実況というあるまじき姿。

 

「お……おまんこからぁっ……えっちな愛汁がとまらなくてぇぇ……はぁぁっ、あぁあっっ……おあぁあっっ!!……はっ、はぁぁっ……頭の中が快楽で弾けて……もっともっとってねだるようにお尻を揺らすのがぁっ……あんぅ!!やめられないんですぅぅ…………!」

 

――パシンとパシンと彼の手の平と尻肉が触れ合う度に。

――アナルの入り口を指で拡げられるように撫でられる度に。

 

私の生徒会長としての仮面が剥がされてしまう。

残るのはただのメドゥーサという一人の女としての顔。理性を捨てて、悦びだけを感じている雌の表情。

 

「最後まで、言えましたね……エロい、じゃなくて偉いですよ会長っ……」

 

「あぁっ、あっ、直接触ってくれたぁぁっ……んおっぉああぁああぁっ――!!!」

 

尻の谷間に挟まれている黒い布をずらした彼は、剥き出しになった腸穴に指を挿入した。関節をピクピクと曲げながら進んでいくソレに私は簡単に達してしまいました。

 

「おぉぁっ!……んほぉぁっ!……らめぇ、らめぇっ!副会長ぉぁあっっ……イッてますぅ、わたひぃ、いってましゅからぁぁっ!!もう、おひりの穴、いじるのぉ、とめていいでしゅからぁぁっ!!んおぁぁあぅぅ!!」

 

アクメ顔を晒してる私に彼は容赦なく追撃を叩き込んできました。

今まで下着の上からの感触ですらあれ程、乱れてしまった私が直接アヌスに侵入してくる彼の指に耐え切れるワケがありません。

 

ですが、プシュッ、プシュッと女性器から絶え間なく潮を吹き続けている私にとってはこの苛烈な責めも彼からのご褒美以外の何物でもありません。

 

「おぉあぁっ!ぉっ……あぉあぁっ!……あっ、んはぁんぅ!……いくぅ、いくぅぁ……あっ、あっ、イキしゅぎてぇぇっ、とまらなひぃっ……!んひゅぅ!ほあぁぁっ……!」

 

彼からの愛撫は私が失神するまで続きました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ん、んぅ?……はぇぇ……?」

 

「おはようございます。会長……」

 

「えっ、えぇ……おはよう、ございます。あ、れ私は何をぉ…………あぁぁぅんぅ!!?」

 

意識を取り戻した時、すぐ後ろに副会長の顔があり、照れながらも思わず挨拶を返してしまいました。自分の状況がどうなっているのかもわからず。

しかし、すぐに下腹部を焼くような感触に私の意識は覚醒しました。

 

「あぁっ!はぁ……!私、今ぁっ…‥あへぇっ……どうして……!こんなぁぁっ……あふぅぁっ!!」

 

場所は失神する前と変わらない副会長の教室。

私は何とか思考を巡らせて、自分の状態を確認しようとしました。

 

「はぁっ、あぁんぅ!私、なんて格好をしてぇぇ……!あぁっ、入れられてぇるぅ……!副会長のおちんちんにぃ犯されているのですかぁぁっ……!?」

 

「中々、目を覚まさないから心配しましたよ」

 

一見すればいつもの朗らかな笑みを浮かべている彼ですが……今の私の姿はグショグショに濡れたショーツは脱がされ、隠す物がない媚肉を彼の逸物で貫かれている。

 

しかも、その姿は立っている彼にM字開脚させられるように抱えられて、後ろから挿入されている背面駅弁という体勢。

脱がされているのは下のショーツと上のセーラー服だけだが、彼に股座を開かされて、結合部が丸見えになっているのは目が覚めたばかりの私にとって些か刺激が強い。

 

「うぁっ!ふ……ぅ……んふぅぅ!!あぁっ、奥ぅ、奥ぅぁっ、ずんずんって衝撃がぁぁ……子宮に響いちゃぁ……やぁぁあんぅ!!」

 

今の体位では私は彼にされるがままになるしかない。

しかも、彼が男性器を抜去し、再び刺し込む時、挿入時の彼自身の力に私の体重も合わさって、子宮口へと突かれている快楽の大きさが凄まじい事になってしまって、教室だという事も忘れて、私は喘ぎ声を隠す事なく響かせてしまいます。

 

「はぁ、はぁっ!あぁ……すごぃ、あなたのおちんちんの先っぽがぁ、すんごい激しくキスしてぇぇ……ひぅんぅぅっ!!あぁぁっ、また気絶して、しまいますぅ……んああぁぁ!!」

 

彼に身の全てを預け、手持ち無沙汰になった私は気付けば、Yシャツの上から自身の胸を揉みしだいていました。

今までの交わりで汗を吸込み、その下の黒いブラジャーがうっすらと透けてしまっている胸部をそれはもう恥かし気もなく、揉み続けました。

 

彼から与えられた快楽を少しでも自身の体に馴染ませようと必死になっていたのかもしれません。

 

「会長……中と外、どちらに出して欲しいですか……?いや、今日に限っては聞くまでも無かったですね……」

 

「ふぇ……?」

 

「生徒会室にあるカレンダー、俺じゃなければ、気付かないぐらいに小さな丸が付けられている日……。あれ、実は会長の危険日なんでしょう?」

 

「あぁっ……!!」

 

ちょっとした茶目っ気だった。別に彼に絶対に気付いて欲しいという目論見があったわけでもない。

自分から言い出すつもりもサラサラなかった。ただ、ほんの小さなサインとして、彼の目に入る可能性が高い所に残したら、どうなるのだろうか?という期待と不安が混ざった複雑な気持ちで、今までカレンダーに付けていた。

 

それをまさか、このタイミングでバレるとは思ってなかった。

 

「は、はぁっ……な、なんの事でしょうか……?」

 

「しらばっくれるならそれでもいいんですよ。ただ、会長一つだけ、覚悟して下さいね。今から俺は中以外に出すつもりはありませんよ。貴女が完全に孕むまで幾度も膣内出しをしますから」

 

「ああんぅぅっ!!」

 

その台詞を聞いた瞬間に私の膣が悦びを感じるように彼の竿を思いっ切り締め付け始めました。

いけない、こんな……こんなタイミングで私が、生徒会長の私が妊娠なんてしてしまったら……?

 

「だ、駄目、だめですぅ……あっ!はぁんぅ!!……そんな事はいけません……今日は、今日だけは許して下さいぃ……んああぁっ……!!」

 

ですが私の言葉とは裏腹に膣襞は剛直に絡みつき、子宮は鈴口へより深く接触するように下りてきてしまいます。

だめ、だめ、だめ、だめ……こんなにも興奮した状態で中出しなんてされたら私は確実に子を宿してしまいます。まだ20歳にも満たない身で……。

 

「なら、会長はどうしてあんなサインを送ってたんですか?それに今日のテスト勉強だって日を改める事だって出来た筈ですよ?」

 

「そ、それはぁぁっ……!ひぅぅんぅっ……!あぁぁっ!そんなに激しく動かさないでぇぇっ……!」

 

拒絶しないといけない。けど私の体は彼の胸板に寄りかかるようにどんどん力を失っていっている。

私の中にある彼の亀頭のふくらみをはっきりと感じた。もう射精の瞬間が近いと。

 

もし、もし……妊娠をしてしまったら私だけではなく彼の人生が滅茶苦茶になってしまう。生徒会長を犯して、孕ませた副会長として……。

 

「メドゥーサ、俺はもう覚悟は出来ているから。貴女と家族になりたいって心から思っている。例えこの学校から去る事になったとしても……」

 

「あぁっ!あんぅ!!ひぁぁっ!!いわないでぇ、そんな事ぉ……耳元で囁かないでぇぇっ……!おちちゃう、私、堕ちちゃいますからぁぁっ……!」

 

このタイミングで呼び捨てにされた私の会長としてのモラルは破壊されかけてしまっていました。

パンパンとズチュズチュと卑猥に交わるセックスの音。窓から差し込んでいる夕陽に照らせている結合部からはその光を反射しながら水滴が飛び散っていました。

 

「俺の子を産んで、学生ママになろうメドゥーサ……んっ」

 

「あぁ、はふぅぅあぁっ……!んちゅぅっ、れろぁっ、れちゅぅ……ちゅるぅぅっ、ちゅぱぁっ、んじゅるぅぅぁ」

 

完全に限界でした。

この世界にあるあらゆる道徳が今、彼の手によって破壊されてしまった気がします。

首を回し、後ろにある彼の顔を舌を蛇のように絡ませて、生々しいキスをする私達はもう墜ちる所まで堕ちるしかありませんでした。

 

「ちゅぱぁっ、出してぇ……ちゅ、孕ませてぇ……んちゅ、あなたの子を産まさせてぇぇ……ちゅぅ、ちゅるぅぅっ私をお母さんにして下さいぃ……」

 

足をみっともなく開き続けている私は彼にそう懇願しました。

先程の否定の意がまるで嘘のように。境目が無くなるぐらいの熱いキスを上と下で行っている私達はそのまま――。

 

「んんんんむぅぅぅっ――……!!!んじゅぅ、じゅるぅ……んんふぅ!んんんぅっ、ちゅ、ちゅぅぅっ……!」

 

窒息しそうになるぐらいに強く口を押し付けたまま、私は赤ちゃんの部屋へ盛大に子種を注ぎ込まれました。もったいないですが、収まりきらなかった精液が漏れ出している感触もしました。

 

愛欲に溺れている私の頭の中にはもう、誰かに見られたらどうしようとか、後で教室を掃除しなければなんて事はありませんでした。

学校が閉門するまで後、何回ぐらい中出しされる余裕があるのかという事でいっぱいになっていたのですから……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えーと、官能小説ですか?」

 

「設定を凝り過ぎであろう。少々引くぞ……」

 

「随分な言い草ですね……」

 

気持ち良く語りを終えたというのに、二人からの感想に青筋を浮かべるメドゥーサお姉さん。

確かに自分の世界に入り過ぎてた感もあったので仕方ないといえば仕方ない気もするが。

 

「ですが、シチュエーションを生かし、役に成りきるというプレイ……そういうのもあるのですか」

「契約者との子か……」

 

しかし、アナもゴルゴーンもそれぞれ、メドゥーサのプレイには思う所があったらしい。

各々のガールズトークという名の猥談。そして自分ではない自分のマスターとのプレイはこれからマスターとの情事を行っていく故で良い刺激であり、得る物があった良い会合だったのかもしれない。

 

ともあれ、それぞれのマスターとの濡場を話した3人のメドゥーサはある結論に行き着いた。

 

「どの方々も色んな意味で興味深い話でしたが……それでもマスターと一番イチャイチャしたのは……」

 

「奴の恐ろしさを一番実感したのは……」

 

「彼と一番心を通じ合わせたのは……」

 

 

 

「わたしですね」

「私だな」

「私でしょう」

 

 

「「「………………」」」

 

 

「いやいや、何をおっしゃっているのですか。今までの話を聞けば、どう考えてもマスターに全てを曝け出したわたしが一番だという事はわかり切っているでしょう」

 

「ハッ!ただ、アソコが緩い小娘がお漏らしをしただけの話であろう、それで一番とは良く言えた物だ」

 

「自らの髪で拘束プレイをしておきながら、私じゃないし、マスターがやった事だし、と面倒くさいデレ方する貴女も大概だと思いますが……ここはマスターと一番近い立場、つまり学生というシチュエーションで交わった私が彼の嗜好を一番理解していると何故わからないのですか?」

 

「さすがに未来の私(メドゥーサ)がマスターの一つ上の女子高生役をするのは痛いというか、ちょっキツイというか」

「客観性は大事だぞ」

 

「は?」

「お?」

「やりますか?」

 

 

「「「………………」」」

 

 

「そもそもマスターには貴女達のような大きい体もぶら下がっている駄肉も不必要なのです。懐にすっぽり収まるサイズで彼を癒せる私こそが至高なのです」

 

「ナイチチは黙っておれ……」

 

「ややブチ切れました」

 

「癒されているのは貴女だけだと思いますが。それにマスターには私のような女性としての豊かさの象徴と柔らかさ、そして孕ませたいと思わせる程の魅力……つまり包容力が必要……」

 

「その点であれば、私こそだろう?……いや、奴を癒そうなどはこれっぽっちも思っておらんがな」

 

「ぷっ、包容力(笑)」

 

アナの嘲笑を皮切りに3人の眼つきは細まり、互いに戦闘態勢に入る。

最初は結託していた筈のアナとメドゥーサもとっくのとうに袂を分かっていた。女同士の友情はかくも儚い。

ゴルゴーンの部屋に宿る険吞な空気。

蛇っ娘3人寄ればどうなるか……結論、キャットファイトならぬスネークファイトが始まる。

 

「優しく蹴散らしてあげましょう――――」

 

「その指は鉄、その髪は檻、その囁きは甘き毒。これがわたし!――――」

 

「貴様らの呪いを返してやろう――――」

 

怒り(NP)はMAXゲージならば、後はぶっ放すだけ。

しかし、こんな狭い所で宝具の打ち合いなど、あの男が放置するだろうか……?

ぶつかり合うそのタイミング……その瞬間待ってましたと言わんばかり部屋のドアが開かれた。

 

 

「話は!」

 

「聞かせて!」

 

「も、もらったわ!」

 

『マスター!?姉様方!?』

 

「そう、私こそが謎の不夜山のシュテノパトラよ」

 

「わ、私の名前を覚えていきなさい!『女神の視線(アイ・オブ・ザ・エウリュアレ)』!円卓の太陽を落とした女ってねっ……!」

 

「そして俺がそんな二人と一緒に今までの君達を別室でRECしていた無害系一般人マスター!」

 

急に部屋に入ってきた三人は某SOS団長のEDのように腰に手を当て、斜め上を指差しているステンノ様とその左右を両手を前に広げながら、膝立ちでポーズを決めているマスターとエウリュアレ。この三人実にノリノリである。

 

(下姉様だけは、少し恥ずかしさがあるのか頬を赤らめていますが……少し可愛らしいですね)

 

(聞こえているわよ駄妹(メドゥーサ)……)

 

(直接、脳内にっ!?)

 

さて、まだ何とか余裕のあるメドゥーサはともかくとして。アナとゴルゴーンは完全に固まっていた。この二人は姉様方と接する機会が今までゼロに近いと言っても良かったのだから。

特にゴルゴーンの動揺っぷりは凄まじかった……全身を震わせて「あわわわわわわわわ…………」と壊れたように口を半開きにしているのだから、もう魔獣の女王としての威厳もへったくれもないであろう……いや、それはここで猥談を始めた時から無かったか。

 

「嘆かわしいと思わない(エウリュアレ)?まさか、妹達が部屋でこそこそと姉である私達に隠れてイヤらしい話をしているだなんて……いつからこんな慎みのない子になってしまったのかしら?」

 

「ちょっと遅めの思春期というやつなのかしら(ステンノ)?けど、暴力的な手段で誰が一番だなんて馬鹿らしいと思うわ。もっと良い解決策があるのにね……」

 

「えぇ、性的な問題は性的に解決するべきよ……マスター、準備は整ってらして?」

 

「サー!女神様!既にカタチの無い島のシチュエーションを『精神と時の部屋』に再現済みであります!いつでも準備満タンであります!」

 

「ふふ、仕事の早い子は好きよ。ご褒美に女神様スタンプを押してあげるわ」

 

「わーい!」

 

「さっきまで私達とずっと一緒にいたのに一体いつそんなの作ったのかしら……。いや突っ込むと色々と面倒くさいから止めておくわ。マスターだし仕方ないわよね……」

 

嬉々としてステンノからスタンプカードに判子を押してもらっているマスター。この女神様とマスター、意外にもノリの波長は合うのだ。上姉様がマスターに毒されたのか、それとも元から素質があったのかは定かではないが。

 

「というわけで、シミュレーションの中は軽く24時間で設定してあるから、私達三人の責めに最後まで耐えれた娘を勝ちとしましょうか。マスターの一番を名乗るならそれぐらい余裕よね」

 

(あ、私達死んだ……)

 

ニコッとしたステンノ様の微笑みに三人は自らの死期を悟り、そのままマスターにドナドナされるように連れられていった。

 

 

 

 

結局、その後ドSトリオを相手に24時間も耐えられるわけがなく。数時間でアヘ狂ったメドゥーサ達の脳裏にはさっきまでの争い事はすっかり抜け落ちたのだった。

 

やっぱり世界を平和にするのは愛(セックス)だよね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




姉様方「姉である私達を差し置いて、3回も登場した駄妹がいるらしいわね」

駄妹「ひぇ」





ぐだ男「くぅっ!さすがメドゥーサさん!凄まじい女子高生力!!」

鈴鹿御前「いや、あんなのJK力って認めないしぃ!?」








《謎の不夜山のシュテノパトラ》
輝く金色の殺カード、そこに微笑むは数多の課金者の慟哭を糧にした女神の微笑か……。
本編ではあえて誰も突っ込まなかったが、最後に登場した彼女の格好は髑髏の仮面を頭に乗せ、2刀のエクスカリバー(ビニール玩具)を腰に携え、崩れかかっている着物に、紐でギリギリ胸元を隠し、背後には大蛇がいるというもう混ぜ過ぎてわかんねぇなこれ状態。
決め台詞は「微笑みの鐘は貴方の名を指し示したわ……私以外のセイバー死にはったらよろしおす。私のせいではないわよね、ニパッ☆」というまさにカオス。けど本人楽しんでいるみたいだからきっとこれでいいのだろう。




ゴルゴーン:自身の髪を使った拘束プレイからの別に堕ちてなんかいないんだからね!という捻デレプレイ。
アナ:スク水放尿プレイからの大自然を生かしたイチャイチャ羞恥プレイ
メドゥーサ:年上眼鏡の会長さんはお好きですか?



あらゆるニーズに応えられるメドゥーサトリオに隙は無い。







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SERVANNAD(謎のヒロインX&謎のヒロインXオルタ)

50話近くも書いていると、「う――んこれはマンネリかなー」とか、「しかし、あんまり奇をてらい過ぎるとかえってキャラの魅力が損なわれるのでは?」と思い悩みます。
そして、悩んで悩んで悩んで悩んで――――――――











うるせぇ!!いいからセックスだ!!って結論に落ち着くのが当作品になります。










サバプラス的なゲーム誰か出してくれてもいいのよ……?


「およそ、わたしは万能なのさ」

 

ある日、変態芸術家からお呼び出しがかかったので、彼女の工房へ足を運んだらいきなり渾身のドヤ顔といつもの台詞でお出迎えされました。

 

「はいはい、万能万能」

 

「むぅ、何か反応がおざなりだね。もっと私を崇め奉って欲しい所だよ。こう、『ダ・ヴィンチちゃんマジ完璧万能美少女過ぎるぜ!バンザーイ!』みたいな感じで」

 

「ダ・ヴィンチちゃんマジ完璧万能美少女過ぎるぜ!エログッズを作らせたら右に出る者無し!バンザーイ!」

 

「うんうん!余計な一言がついているけどこれまでの私の行動を考えると否定出来ないのが辛い所だね!」

 

媚薬、イケなくなる薬、ロリ&ショタになる薬、亀甲縛りギブス、デンジャラスビースト、薄い本、etc………ふむ、まさに彼女の叡智の無駄遣いとも言えるな。ある意味では有効活用とも言えるんだけどね……俺もお世話になっているワケだし。

 

「まぁ、いいさ。君の私に対する尊敬の念を改めて確認した所で本題に入ろうか」

 

基本的にダ・ヴィンチちゃんが俺を工房に呼び出すのは大抵彼女が面白グッズを作り上げた時である。

「君の使った所感が知りたくてね」との事らしい。

モニタリングと言うべきか、モルモットと言うべきか……俺自身も実は楽しみにしてるわけなので文句を言う気は一切無いのだが。

過去に待ちきれねぇ!ヒャッハー!とばかりに製作途中の薬を拝借したこともありますし。

 

「こうして召喚されて数多の芸術に触れてきた私だけれども、その中でも特に興味が惹かれた物があってね。ジャパニーズ文化、いわゆるクールジャパンとやらは君も他人事の話じゃないだろ?」

 

「そりゃあ、俺の生まれ育った国だし、ダ・ヴィンチちゃんが作った『カルデア国物語』も照れつつ読ませてもらってますよ。『カルデア寝物語』の方を一緒に読んでと迫ってくる娘達もいるけど」

 

「中々に特殊なプレイだ。自分達がモデルになっている薄い本を共に読むなんて変態国家日本ならではだね!」

 

やめてください。俺の生まれ育った国におかしなイメージを植え付けるのは。

 

 

 

「それで私達は一体何の用があって呼び出されたんですが。私も暇じゃないのですが」

 

「え?見事にセイバーウォーズイベントをスルーされた君が暇じゃない?HAHAHA!いやぁっ、実に面白い!ユニバースジョークというやつかな?」

 

「うっし、このオカマ野郎。まじでぶった斬ります。私が『セイバーとアルトリア顔しか手を出さないと思った?』『甘ぇよ』しても文句はないみたいですね」

 

隣で憮然と話を聞いていたジャージ姿にブルマなヒロインXが剣を出し、臨戦態勢へ。さすが喧嘩っ早さは我がサーヴァント達の中でもトップクラスといえる。

 

「ですが、Xさんの言う通り、私も暇ではありません。マスターさんが最近お熱になっているイエローの鬼ヴィランから甘味を強奪するという重要な任があるので」

 

俺と共に呼び出された二人のサーヴァントが両隣に待機している。

抜きっぱなしのカリバーンを構えているヒロインXに、胡麻団子を頬張り中のマフラー+制服+ジャケットと冬系コーディネートで揃えているえっちゃんことヒロインXオルタ。

ダ・ヴィンチちゃんが俺だけじゃなく、わざわざこの二人も連れて来て欲しいと頼んだのは何か理由があるのだろう。

 

「いつかの話。君達が通っていたという……遠い遠いこの宇宙にはない世界『コスモカルデア学園』なるものを聞いて閃いてしまったのだよ!」

 

胸に右手を当てながら左手を広げ、楽しそうに演説を行うダ・ヴィンチちゃん。

万能の天才である彼女の頭の中にはきっとまたロクでもない(愉快な)アイディアが浮かんでいるのだろう。

 

「学園、制服、修学旅行、学校祭、食堂、屋上、クラスメイト達の語らい、先輩後輩の嬉し素敵な関係、夕暮れに染まった放課後の教室、更衣室でのラッキースケベ、二人っきりの保健室で保健教諭とのメイクラブ…………素晴らしきかなスクールライフ」

 

「後半の方はまっとうな学校生活で起こり得るものとは思えませんが……」

 

「ともかく!人は誰しも、学校生活に憧れ、憧憬し、夢想するものなのだよ!アニメ、漫画、ゲーム、ドラマ、あらゆる媒体で学園物が扱われ続けているのは過ぎ去った青春を皆が求めているのさ!失ってから気付く学生時代の輝き、後悔にね!!」

 

グワっと眼を見開き力説するダ・ヴィンチちゃん……。どうやら今度の芸術家さんは学園物に興味深々らしいです。大分、現世に染まり切ったよなぁ……この人も。

 

「イマイチ反応が薄いマスター君はまだピッチピチの学生に当たる年齢だからピンと来ないか……。まぁ、カルデアライフでの君を見ていると青春というよりはドぎつい桃春って感じだけどね!」

 

「俺のも青春だろうがぁ、こう肉体的に爽やかな感じでパンパンしているのは青春以外の何物でもないだろうがぁ」

 

「私はマスターさんのそういうブレない所、大分好感度が高いですよ」

 

あぁ、えっちゃんは本当に良い娘だ。黒糖大福を贈与しようじゃないか。

 

「隙あらばマスターからのポイント上げ……しかも自分の食欲も満たす一石二鳥。汚いさすが私以外のアルトリア顔汚い」

 

 

「話を戻すけど。人理を救っても私達の戦いは終わらない。特に銭はいくらあっても困らない!ここで学園恋愛ADVで一発当てて大儲けといこうじゃないか!諸君!」

 

つまり、ダ・ヴィンチちゃんはサーヴァントとの学園恋愛ADVゲームを作成したいらしい。

確かに、一部のサーヴァントと制服プレイでハッスルしている俺としては、そういう需要があるのは否定出来ない。むしろ好き。サーヴァントとの学校生活か……きっととんでもなくカオスでそれ以上に楽しい毎日になりそうだ。マシュとか絶対後輩役のポジションでスタンばってるじゃん。

 

「それにそろそろ魔術協会とか聖堂教会あたりがうるさそうなんでね、こういった所で『私達危険な集団じゃないアルよ』、『何も怪しい事企んでないアルよ』ってアピールする必要もあるわけで」

 

「それで学園ADVゲームの販売を考え出すとか、馬鹿の発想ですけどね」

 

「天才と馬鹿は紙一重!故に私は天才!!証明終了!!」

 

Xのドストレートな言葉にもめげない彼女のポジティブさに敬礼。

しかし、魔術協会と聖堂教会かぁ……俺としては敵対するつもりとか何かするつもりも一切無いからほっといて欲しい所だけど、あっちはそうは行かないんだろうねぇ……。万が一にドンパチして勝ってしまったとしてもそれは憎しみの連鎖を産むだけだし。俺も写輪眼を開眼させて「Revolution……」とかしたくないよ。

 

「ふむ、争うぐらいならいっそ皆でどこか別宇宙にお引越しというのも一つの手かなぁ……」

 

「お?私とサーヴァント界へハネムーンといきますか?いつでも歓迎しますよ!」

 

「その時は私のスター・デザートロイヤルにお乗せしましょう」

 

随分と美味しそうな宇宙船の名前やね、えっちゃん。まぁ、未来の事は未来の事……いつまでも不確定な先の事をここで考えても仕方ないかね。『今日をがんばり始めた者にのみ 明日が来るんだよ』ってノーカンおじさんも言ってましたし。

 

「仲良き事は美しき哉……というわけで君達ダブルヒロインXには是非、マスターと一緒にいつものカルデアのシュミレーションで学園ADVのモデルケースになって欲しいんだ。学園生活を体験した事があるサーヴァントなんて稀有だからね」

 

「そうですね。私としてもマスターとのスクールライフは何度も妄想したものですから臨む所です。学園物だろうとも私はマスターにとって一番の剣だという事を証明してみましょう」

 

「甘味ある所に私の姿あり、マスターある所に私の姿あり……つまり甘味がマスターであり。齧ればデリシャス」

 

「俺はいつでもOKだよ。ダ・ヴィンチちゃん」

 

「うむ、色の良い返事、大いに結構!では存分に楽しんでくるといい!ゲームのタイトルはそうだね……『SERVANNAD(サバナド)』とでも名付けようか!」

 

運命であり、人生か……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――(セイント)カルデア学園。

かつて女子校だったそこは時代の変化につれ、共学となった。一部の者が聞けばハーレムじゃないかやっほう!と叫びたくなるかもしれないが、そこに入学するには『超英霊級』という極められた才能を持つ学生が求められる為、超超難関高校と化し、倍率は1000倍を優に超えている。しかし、この学園にはそれだけのネームバリューがあるのだ。一度入学し、卒業さえ、してしまえば、その後の人生は約束されていると言っていい程の教育制度に各企業、教育機関、業界及び政界などのコネクション……。その学園に入学した生徒達は選ばれし者として『超英霊級の高校生』と呼ばれている。聖カルデア学園には英霊四天王と呼ばれる生徒達のトップともいえる存在や……聖剣が刺さった校舎の裏庭で告白し、OKをもらえればその二人は永遠に結ばれるというの伝説のカリバーンなどがあるのは本筋とは関係ないので割愛。

 

――だが優秀な生徒だけでは多様性が無い……もしそんな学園に普通の高校生を一人入れてみたらどうなるか。理事会の試験的なモニタリングのモルモットして選ばれたのが全世界の中学3年生を対象とした抽選に見事選ばれたどこにでもいる平凡な少年である君だった。

取り立てて長所も短所もない君は『超英霊級の一般人』としてこの学園に入学する事となった。新しい生活に期待と不安で胸を躍らせながら――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんですか、この聞いたことあるような設定をごった煮にした仄かな地雷臭するナニカは」

 

『わかっていないねぇ……X君。秀逸な土台で絶賛されてもそれは当たり前。真の天才とはっ!「よくもまぁ……こんなネタでここまで売れたな」と感心されるぐらいの題材から創作する程の力量を魅せる者の事を言うのだよ!!』

 

通信から流れるダ・ヴィンチちゃんの声を耳にしている俺達は丁度その『(セイント)カルデア学園』思しき教室の一室にいた。Xとえっちゃんの外見は変わっていなかったが、俺はクリーム色のブレザーに赤いネクタイ。そして右胸の青いワッペンにはカルデアのロゴマークと中々凝った制服だった。……どこかで見た事あるような気もするが。

 

日は登り、本来ならばまだ授業を行っている時間だろうか?だが、教師はおろか、俺達以外の生徒の姿も無く無駄に作り込まれた教室だけがあった。

 

『まだ人物の方は完全に作り込んでいなくてね……あぁ、けど心配は無用さ。他のシステム面に関してはバッチしと作成済みだよ。今、君達の目の前にマスター君のステータスを映し出すね』

 

通信回線からキーボード音と電子音が聞こえたと思ったら、突如として現れた緑色の画面。そこにはダ・ヴィンチちゃんの言う通りゲーム内における俺のステータスらしきものが映し出されていた。

 

体調――000

文系――000

理系――000

芸術――000

運動――000

容姿――000

度胸――000

優しさ――000

 

H力――999

 

 

「おい、最後」

 

『あっれぇー?おっかしいなぁ?ちゃんとNEW GAMEよろしく全部のパラメータが000になるように調整したんだけどなー?うぅむ、そこのパラメータだけでいじくれないなー、何これ?バグ?それともマスター君の固有技能ってやつなのかな?』

 

意図をしないバグというより、まるで俺のせいでその数値になっている言い方は止して欲しい。冤罪も良い所です。H力999の新入生とか嫌過ぎるわ。

 

『参ったなー。その最後の”H力”はぶっちゃけカンストしちゃったら他のパラメータを一切上げなくてもヒロインを堕とせるぐらいの強ステータスで、他の項目より上昇の難度も格段に高い筈なんだけども……』

 

「マスターさんがここの女子生徒達を手当たり次第コズミックポルノ的な目に合わせていくんですねわかります。さすがは私が認めた悪役(ヴィラン)の中の悪役(ヴィラン)、グランドヴィランマスター……一生ついていきます」

 

「マスターの聖剣がいかんなく発揮される時、そんな事になればこのゲームは間違いなくR18ですが。いや、マスターが主人公の時点でそれは当然の帰結だった……?」

 

「今すぐここで君達をカリバーン(意味深)してもいいんだが」

 

ええい、頬を染めて、満更でもないような顔でこっちを見るな。「「むしろバッチ来いですが」」とかハモるな。仲良しかこのコスモサーヴァントコンビめ。

 

『それも悪くないんだけどね。君達をここに呼んだ一番の目的はそれだし。ただ、既にシチュエーションは私の方で準備してあるから出来れば、それに則って欲しい所かな。個人プレイ・個人プレイからの――複数プレイ……CGコンプリートみたいな!』

 

あぁ、Hシーンのモニタリングという名のHCG回収という奴ですか。案の定Xの言う通り、R18的なゲームの作成になってしまうんですね。っていうかアダルティなゲームで世間の評価を上げるとかちょいと無謀じゃない?

 

『いやいや、この森羅万象あらゆる叡智を司るダ・ヴィンチちゃんが手掛けるんだよ。むしろエロスは必須科目であり芸術!エロなくして、アートは有り得ない!私はそこん所の妥協は一切しないからね!!』

 

「私は構いませんよ。どうせ、見ているのは貴女だけでしょう?ミス・アブノーマル。何度か私とマスターとの『カルデア寝物語』も書いてもらった恩もありますし。今更、貴女に見られても虫か植物ぐらいだと思っておきますよ」

 

『恩とか口にしながら酷い言い草』

 

「『カルデア寝物語』、何やら一部の人達でカルト的な人気を博しているソリッドブックの事ですか……私も作ってもらおうかな……?」

 

「まぁ、止めはしませんよえっちゃん。私も最初は劇画調になっているのではと心配でしたが、現品のクオリティの高さを見て、成程、自ら天才と言うだけの事はあると感心したぐらいですから。私のオーダー通りいや、それ以上のモノを見事に全ページに渡って表現してくれましたからね。高いQPを支払った甲斐があるって所です。クフフ……良いモノです、私がマスターにとってのNo1セイバーである事が証明されている書物が残されるというのは……」

 

Xの怪しい笑みに、えっちゃんもその薄い本が色んな意味で気になってしまっている。これがいわゆる布教的なアレですかね。モデルが自分とサーヴァント達の情事というのは不思議な気分だが。え?止めはしないよ?無造作に増刷されるならともかく、本人達の手にしか渡らないのなら、俺に止める権利は無いし?

あぁ、けど邪ンヌがベッド下に隠していた寝物語を俺が偶然引っ張り出した時の反応はくぁわいかったです。「なぁにこれ?」って知らないフリして執拗に尋問して涙目になる邪ンヌはくぁわいかったです。

 

……で話を戻して。このモニタリングについては二人とも意外と乗り気だったのか。てっきり自分達をモデルにゲーム化なんて真っ平ごめんですとか言って断るもんだと思ってたけど……。

 

「せっかくなのでどちらが先にするか『たたいて、きって、カリバーポン!』で決めますか?えっちゃん」

 

「望む所です。私の刹那無影剣が火を噴きますよ」

 

聖カルデア学園が廃校になるんで止めましょうね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――数多くのセイバー忍法を持つ、ヒロインX。「超英霊級のセイバー殺し」の名を持つ彼女には禁じ手として封印していたセイバー呪術なるものがあった……。アルトリウムという名の自身のアホ毛を使ったおまじないで意中の相手と体育倉庫に閉じ込められるという、封印していた割りにはしょぼいというか使い道が限定され過ぎているという呪術が……。

 

――そんなヒロインXの思惑通り、体育の授業後の片付けをしていた君は、体育倉庫の中、彼女と二人っきりで途方に暮れていた。何故かビクともしない扉の前で。

 

――密室で男女が二人きり……何も起きない筈がなく

 

 

 

そんなこんなで夕暮れ時の体育倉庫。

どこか懐かしさを思い出してしまう程に跳び箱から体操マット、スコアボードにボールカゴ等々が揃った見事なまでの体育倉庫。

ナレーションを終えたダ・ヴィンチちゃんは余計な茶々を入れるつもりは一切無いのか、通信は完全に切った状態のようだ。

 

「ゲームのタイトルといい、しょっぴかれてもいいと思うんですが、あの性別錯誤キャスターは」

 

呆れたように溜息を吐くヒロインXの姿は体育倉庫にピッタリの格好。俺も短パンTシャツの体操着姿だが、そんなものとは比べ物にならない。

いやだって、ジャージにブルマですよ。この鉄格子付きの窓から差し込む夕陽が帽子からはみ出てる金髪ポニテとアホ毛、それにブルマという不可侵の領域から降臨した太ももをキラキラと輝かしてくれてね……。

こんな美少女と密閉した空間、尚且つそれが学校の敷地内というシチュエーションで興奮しない男児とかおるん?というレベルですよ。

 

「で、呪いっていうぐらいならもちろん、その解き方もあるんでしょ」

 

「えぇ。確か、上半身裸になって――」

 

「なって?」

 

()()()()()()()と扉が開く設定らしいですね、このゲーム上の設定では」

 

「本当に愉快な娘だな、ダ・ヴィンチちゃんは」

 

「そうですね、私も間髪入れずに上を脱いでいるマスターの行動の速さに戦慄しています」

 

いや、だって、そうしないと出られないんでしょ?物凄く気は進むけど、うら若き男女がこの密閉した空間でいつまでも二人っきりというのは教育上よろしくないし、あらぬ誤解をかけられる危険性もある。それなら早く解決するのにこした事はないじゃないですか。解決法が不健全?お互いが好き合っているなら健全だろーがバーロ。

 

「さて、マスターの腹筋にドキマギしている私はどうしましょうか……このまま据え膳よろしくただ食べられてもいいのですが、せっかくこんな凝ったシチュエーションでありますし、マスターの性癖にピンポイントで来るような誘い方を考えるのも一興なのでは?……ぐむむ、唸れ、我がアルトリウム……」

 

悶々と俺の目の前で目を瞑りながらウロウロとしているヒロインXは思索に耽ていた。足元に転がっている野球ボールに気付かない程に。

 

「……っと!?わぁっ!!」

 

「X!!」

 

そのボールを片足で踏みつけ、後方へ転倒するXの手を俺は思わず取った。重力に従う彼女の体に引っ張られる……。そのまま二人はまるでスタンばってましたと言わんばかりに配置されていたマットの方に仲良く倒れ込んでしまった。

 

 

「X、大丈夫?」

 

「えぇ、特にケガはありませんが…………んぅっ!」

 

「どうしたの?もしかして、どこかぶつけた?」

 

「い、いえ……これはとんだToLoveるというか……んぁ、っていうかマスター、わかっててやってませんかぁ……あんぅ!」

 

Xを押し倒すようにマットの上で彼女と重なり合ってしまった俺。体重を支えている手と別の我が右手はちょうど、彼女の胸部に添えられており、膝は彼女の股の間、大事な部分に押し付けられていた。

敏感な部分と接触している手と膝、少しでも動かせば、ピクピクと震えるXの唇から色っぽい吐息が漏れる。

 

まさか、一緒に倒れ込んだだけで、偶然にも、こんな状態になるとは……どうやら自分にはラッキースケベの才能でもあったのだろうか?

 

「……こういった事をするのを恥ずかしがる関係でもないというのに。んぅ……あぁ、な、なんでしょうか……この湧き出る恥ずかしさは?」

 

心の準備が出来てないまま押し倒されたヒロインXは視線を横に逸らし、頬を赤らめ、落ち着かなさそうにしていた。

いつもは傍若無人を現したかのようなサーヴァント界のセイバースレイヤーがこんな反応をしている事に自身の中の劣情がムクムクと燃え上がり出す。

 

Xのボーイッシュな格好がそうさせているのか、彼女のジャージ+ブルマon体操マットというシチュエーションが滾らせてきているのか、それともラッキースケベという偶発的現象が興奮させているのかは定かではない。

 

ここで「ご、ごめんっ!!」と言いながら純情主人公よろしく離れてもいいかもしれないが、生憎、俺は自分に嘘をつけない正直な男の子。

というよりも掌と膝に感じているXの柔らかさを逃すなんて事はしたくなかった。

 

「はっ……あんぅ、んぁぁっ……やっ、膝グリグリだめ……ですっ……んふぅ!」

 

強すぎず、弱すぎず……微妙な力加減で彼女の局部へ膝を押し込んでいく。

押し込んだ後は、小さく回すように膝を動かす。ブルマと下着の2枚の布があるというのに、陰部を擦られているXは直接弄られているかのような大きい反応を返してくれた。

 

「あっ、あっ……そんなゆっくり……イヤらしい…‥‥あん……!」

 

Xのイメージカラーともいえる青いジャージのチャックを少しずつ、少しずつ……下ろしていく。彼女に見せつけるように、もちろん膝の動きは継続させたまま。その下はいきなり裸という事は無く、『ひろいん えっくす』と書かれた何の変哲もない白Tシャツなのだが、当の彼女はゆっくりと脱がされるという行為自体に恥心を覚えてしまっているのか、ジャージが開かされる程にその顔をより紅潮させていった。

 

「……Tシャツの下、ノーブラなんだね……授業中に透けたら、どうするつもりだったの?」

 

「べ、別に……いいじゃ、あくぅ!……あぁりませんかぁっ……!このジャージもぉ……んんぅぁ、あぁ、脱ぐつもりはありませんでしたしぃ……あぁ、あんぅ!もまないでぇぁ…‥」

 

お互い、律儀なのか設定を意識した睦言を交わしていく。

興奮でかいていた汗か、元からかいていた汗か、俺の手の中にすっぽり収まってしまう小ぶりな胸を弄べば弄ぶ程、Tシャツがどんどん彼女の素肌に吸い付いていくのが見える。

 

「こんな場所に閉じ込めて、あまつさえ不埒な姿で誘惑して、いつから俺のセイバーはこんないやらしい剣になっちゃったのかな?……ほら、胸の先っぽも透けてきたよ……」

 

「……ひぅぅ、んぁぁ!あっ、あんぅぅ……見ないで、くださぃっ……あっ、やぁぁ!……くすぐったいぃ……」

 

汗で半透明になったシャツから、Xの可愛らしい蕾が自己主張している。

指先でぐりぐりと乳輪の辺りを周回し、時折、先端を突いていく。マットの上で悶える彼女は色情に染まった悲鳴を体育倉庫の中で響かせていく。

 

「んちゅ、ちゅ……じゅる、れろっ……んっ、ちょっとしょっぱいね、Xの味は……」

 

「あっ、!やだ……だめ、だめだめだめっ……です!……ひぅあぁっ!……マスター!舐めたらぁぁっ……!あんぅぅ!……かぐのもぉっ、だめぇっ!!んくぅぁぁっ……!」

 

Xを辱しめるのはまだ終わらない。

彼女の首元へ顔を近づけ、芳しいその匂いを嗅ぎながら舌を這わせ、汗を舐め取っていく。

 

「あぁぁ!あぁぁ……あぁっ!そんなに強く吸い付かないでぇぇっ……!」

 

Xとしては、俺に汗の匂いを嗅がれ、舐められるのは女性として避けたいのか、イヤイヤと首を左右に振るが思いっ切り喉仏の所へキスマークが付くぐらいの強さで吸い付くと嬌声を上げながら、大人しくなってくれる。

ホンット、Xってば情事の時は割としおらしくなる。普段はあまり女性的な事は直接的に匂わしてこない癖に、こういう時はここぞとばかりに俺を魅了してくれる。まぁ、このギャップがヒロインXの魅力の一つなのだが。

 

「ほら、イッちゃっていいよ……膝をイケナイ所に押し付けられながら、透けたTシャツの上からおっぱい弄られながら、首を舐められながらさ……ちゅ……」

 

「ひぅ、あぁぁっ、!あぁぁっ……!い、くぁ、イッちゃっいますぅ……ま、すたぁ……!ますたぁぁっ!あぁぁ…………」

 

仰け反り、その肢体を激しく震えさせる彼女の快感を逃さないように、押さえつけながら女性器、乳房、首元と三つの性感帯を同時に責め立てる。

 

「んんんぅぅぁぁあぁっ……!!!」

 

鎖骨へ何度もキスをしながら、Xが達した声を耳にする。

彼女の華奢な体は上半身に何も纏っていない一人の男に圧し掛かかられたまま、何度も何度も絶頂の悦びをその身で表現していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う、うぅぅ~~~…………鬼畜過ぎやしませんかマスター?どこにでもいる平凡な少年設定は一体どこに行ったんですか……?」

 

「H力999ですから、ごめんね」

 

一回、達しただけで終わると思った?残念、第二ラウンドなのじゃ。

まぁ、Xのおまじないを解くには中出しをする必要があるみたいだし?ここは心を鬼にして俺を閉じ込めたセイバーを追い詰める必要があるという事で一つ。

 

てなわけで、依然と変わらず体操マットの上なわけなのだが……Xの体勢はさっきと変わっており、下半身を包んでいた衣服は全て剥ぎ取られ、恥部を剥き出しにされたまま両脚を頭側の方まで持っていくいわゆるまんぐり返しの格好。

伊達に基本装備が体操着ではないですね、体が実に柔らかい。

 

「あっ、ちょ……もう!近い、顔が近いですってばぁっ!」

 

既に愛液の糸を引いている媚肉に接近していくと、彼女の雌の匂いと汗の匂いが混ざり合った独特の香りがする。

抗議しているXの上半身もTシャツの裾は俺が散々キスマークをつけた場所までたくし上げられている為、興奮で硬直している蕾が露わになっている。

目の前にある、こっちの蕾もはしたなく勃ってしまっているけどね。

 

「はぁぁっ~~……!!!」

 

陰核を含ませるように膣口の上部に口をつける。音を立てながら愛液を啜り出すとXから面白いぐらいに悲鳴が零れた。

彼女の両脚をそれぞれ掴み、恥かしい格好のまま雌園を蹂躙し、唇と舌に感じる柔らかさ、そしてその味を存分に楽しむ。

苦しい体勢で抵抗出来ないまま、Xは敷いてあるマットを軋ませる事しか出来ない。

 

「ずじゅぅぅ……じゅるぅ!」

 

「んひぃっ!ひやぁぁああぁっ……!!あ、あぁぁ!のまないでぇ……!私のえっちな汁をのんじゃ、だめでぇすぅ……あ、あぁぁ……頭、おかしくなり、そぅ……!ますたぁっ!ますたぁぁ!んひぅぅぅ!!」

 

服の上からでもあんなに簡単に達してしまったのだ、陰部を直接貪られてはXが息を付く暇もなく再びアクメを晒してしまうのは自明の理だった。

 

だが、それでも終わらない、2度の絶頂で息絶え絶えになっているXを前に、俺は自身の剣を抜き出す。

そのまま、潮をこれ見よがしに吹き出している彼女の鞘へと標準を合わせる。

 

「……あぁ、はぁ――……ここでさらに追い打ちとか……セイバースレイヤーならぬ、ガールスレイヤーですねマスターは……」

 

「殺しはしないよ、死ぬ程気持ち良くはなるかもしれないけど」

 

「それはそれで、大いに不安でありながら、楽しみという………んんんぅぁぁあっ!!?」

 

彼女の返答を待たずに男根を挿し込んでいく。

現在Xは俺の足元に仰向けの状態で寝そべっている為、一度入ってしまえば後は腰を下ろし、重力に従うだけで彼女の膣内を容易に侵食出来る。

 

「あぁ!太くてぇぇ……ながいぃぃっ……あぁぁっ!届いちゃうぅ!簡単に、私の奥までぇぇ、きちゃう、きちゃう、きちゃう……あ、ああんぅぅぁっ!!」

 

一体、何が来るというのか。肉棒か、それとも再びの性的絶頂か、その両方か。

真下でXは大いに乱れ狂っていた。No.1セイバーを名乗る者が陰部に剣を刺されて、悶えている。

 

「あ、あぁ――……!あ゛んぅぅぁっ!……苦しいのにぃ……!キモチいいんですぅぁっ!苦しいのが、キモチよくなってぇ……あ、だめぇ、だめ、もうキモチいいのばっかりになってる、あ、あ、んんぁあぁあっ!!」

 

深く挿し、抜いては、また思いっ切り挿す、その繰り返し……。体を折り曲げられている状態に近い彼女の体勢は本来は辛いもの筈なのだが、その顔は最終的に快楽のみを感じていると見る者にそう思わせる淫蕩な表情へと変化していった。

 

パチンパチンと臀部がぶつかり合う音が倉庫の中で反響する。

 

「あぁ……ますたぁのが、さらに膨らんでぇぇ……」

 

絶対に逃さないように締め付けてきているXの膣襞一つ一つが俺を絶頂へと急かしているようだった。

当初の目的を果たすように掴んでいた足から手を離し、尻を思いっ切り掴む。スレンダーながらも、彼女の臀部は絶妙な柔らかさを持っている。

 

「ひぅぅ!あぁっ、はげしいぃぃ……ますたぁぁっ、ますたぁ、すきぃ……!すきぃ、あなたの剣がだいすきぃぃ……!」

 

Xの媚びるような声を耳にして、発射の準備を整える。一滴も出し漏れはさせないぐらいの気持ちを込めて、鈴口を子宮口へとキスをさせ、溜めた欲望を解き放つ。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁっ……!!!んあぁぁっ!あぁっ!あつぃ、あ……あぁっ!あついのぉっ、私のお腹、こんなにも満たしてぇぇっ……!あぁっ!はぁあんぅ!!」

 

射精の間にXは絶頂の回数を重ねていく。俺は彼女の子宮全てを満たして上げる為、まだ竿を抜く事はしなかった……。ふむ、せっかくだし、このままもう2回ぐらい中出ししてあげようかしら?

1回でおまじないが解ける保障もないですし?数は多い方が確実だよね!!

 

「……ぇぁ?……あっ、あぁんぅ!?はぁあっっ!!う、うそ、このまま、まだ動くんですかぁ……?はっ、はぁぁぁっ!!あぁ、あぁぁっ、あ、のマスター?扉の方で鍵の開いた音がぁ……!んぅぅぁっ!……ちょっと、きいてぇ、あ、これぇ、だめぇぇっ……!本当にしんじゃうぅぅ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――眼鏡が似合い夕暮れの図書室が絵になる文学系バーサーカーガール。

えっちゃんの愛称でお馴染みの謎のヒロインXオルタにはある秘密があった。

一見すれば只のインドア女子学生にしか見えない彼女の前世はなんと、暗黒の騎士団ダーク・ラウンズの最後の生き残りでもあるペンドラゴン卿だったのだ。

 

――何を言っているのかよくわからねーと思うが、とりあえずどこかの宇宙にいる何かフォース的な力でフォンブォンしてそうな荒ぶる悪役(ヴィラン)の魂が今でも彼女に残っているとでも思ってくれればいい。

 

――そんな気を抜いてしまえば簡単に溢れ出てしまう暗黒面の力を制御する為にとうとう只の甘味だけでは限界が来てしまった謎のヒロインXオルタは自身の中にある魔力転換炉オルトリアクターに最適なエネルギーを発見してしまった。

 

――「超英霊級の文学少女」と「超英霊級のヴィラン」という二つの名を持つえっちゃんはクラスメイトの「超英霊級の一般人」である黒髪の男子生徒の体液が自身の疼きを抑えてくれる事を偶然知ってしまった。

 

――えっちゃんは普通の文学少女として学園生活を過ごす為、暗黒面に堕ちないように自身を繋ぎ止める為、今日も彼の体液を求める。

 

――だが、彼女は気付いているのだろうか……?二人っきりの屋上で必死に彼の体に縋り付いている自分が…………彼の体液を摂取する事自体が、手段そのものが目的になっている事を――。

 

 

 

 

結局、あの後体育倉庫でさらに3、4発ぶち込んだ俺はいつの間にか、次の舞台へと転送されていた。服の体を成してない程に乱れた体操服に、痙攣し続けるXの肢体……もはや色欲しか頭になさそうなぐらいに蕩けた表情……CG回収はあれでOKだったのかな?うん……ヒロインXとは良いハートフルなHシーンを再現する事が出来たと思います。

 

 

そして、今度のステージは学校の屋上。

 

「んぅ、ちゅぅ……じゅうぅ、おいしぃ、れろぉぉ……」

 

備え付けられたベンチに座っている俺の膝の上に抱っこするように乗っかっているえっちゃんは俺のブレザーとYシャツを解き、胸板を露出させるとひたすら、鎖骨の部分をアイスクリームのように舐め続けていた。

 

屋上の入り口であるドアは彼女のフォースの力で溶接されており、誰も入れなくなっていた。

何だかんだで先程のナレーションの設定にノリノリのようにも見えるえっちゃんは俺の体を文字通り貪っているわけで……。

 

まぁ、設定に限らず、彼女が俺の体を舐めたり、齧ったりするのがお気に入りなのはリアルなので、えっちゃんにとっては演技の必要はないみたいです。

 

いや別に俺の体をあむあむするのは特に文句はないんだけども、『マスターさんの体は高級和菓子にも勝るとも劣らない甘味で出来ています。人体の不思議です。それを解き明かすのは邪聖剣の使い手としての私の務め……。というわけでマスターさん、三時のおやつ(セックス)の時間です』なんて台詞を皆がいる食堂とかで吐くのはちょっと控えようね。その後に茨木ちゃんが、『はぁ――!?こ奴はこれから吾と三時のおやつ(口移し)の時間で三時半の歯磨きの時間をするのだ!引っ込んでおれ!異星人!』って便乗し出すし。結局、"食堂で暴れ出す行儀の悪い娘達には僕もう、おかし(意味深)あげたくなくなっちゃうよ……"って言ったら凄く姿勢良くなりましたけど、半泣きのまま。好きな女の子の笑う顔も好きなんだけど、泣き顔も実は嫌いじゃないです。

 

「ちゅぅ……んんじゅぅ……」

 

「っ……」

 

涎の跡をどんどん俺に付けてくるえっちゃんの顔は下へと下がり、赤子のように乳首に吸い付いてくる。

ヌルヌルとした痺れるような舌の感触を堪能しながら、眼鏡から覗かせる彼女の上目遣いにどんどん保護欲が湧いてくる。もっと俺の体を味わって欲しいと。

 

「マスターさん……マスターさん……ちゅぅ、ちゅ、じゅぅ、んむちゅぅ……」

 

制服の上から彼女のか細い腰に手を回し、好きなようにさせる。

舌先で突きながら、唇でしばらく乳首を甘噛みしていたえっちゃんは満足したのか、膝から降りて、俺の太腿に寄りかかるように今度は腹筋の方に舌を這わせていく。俺の肌の表面にはえっちゃんが食した証、涎のレールが出来上がっていた。

 

「かぶぅ、はむぅぅ……あむぅ、じゅ、じゅ、んじゅぅぅ……あむ、あむぅ……じゅるぅ……はぶぅ……」

 

今度は先程より強めでお腹周りに噛みついてくるえっちゃん。彼女が自身の歯を俺の腹筋にぎゅっと押し付けてくる時に訪れる何とも言えない痺れが癖になりそうだった。強すぎない咬合力で涎を含ませながら、俺の体液を色んな場所から摂取しているえっちゃんによって、体にはどんどん彼女の歯型が刻まれていく。

 

「あまぁい、マスターさんのからだぁ、あまくてぇ……おいしぃ、けど、一番おいしいのがぁ……」

 

鎖骨から始まった彼女の食事はどんどん下へ下へと行き、やがて行き着く所まで行き着く。

ズボンの中でパンパンに膨れ上がった我が陰茎は丸わかりの膨らみとなってえっちゃんの目に映っている筈だ。

 

股間の前でじっとしていたえっちゃんは迷う事なく、ファスナーを下ろし、血管浮き出る剛直を取り出した。

どうしようもないぐらい溢れるその雄の匂いを極上のデザートを前にしているかのように彼女は嗅いでいた。

 

「はぁぁ――――…………舐めていいんですよね?食べていいんですよね?マスターさん?」

 

「そんなハートマーク飛ばしそうな程に食い気味で言われたら断れないよ。ダークサイドに堕ちない為には必要なんだろ?」

 

「…………?あぁ、そう言えば、そんな設定がありましたね」

 

忘れてたんかい。ピンクサイドに堕ちてるバーサーカーめ。

 

「では承諾を得た所で……いただきます…………れろぉぉ、ちゅ、ちゅ……ぴちぅぅ……」

 

テラテラと光る亀頭をキャンディのように舐め回す眼鏡っ娘。

雁首、裏筋、お残しは絶対にしませんと念入りに舌を滑らせていくえっちゃん。

 

「はぁ、あぁっ……ちゅぅ、しゅごい……まだ、何も出てないのに……んちゅぅ、んむぅ、れろ、ちろぉっ……何でこんなに美味しいんですかぁ……とまらない、やめられない……マスターさんのうまい棒は麻薬です……れろ、んじゅ、ちぅぅ、ちゅるぅぅ……」

 

フェラの中毒者になってしまったえっちゃんは俺の鈴口から汁を吸い出そうとほじくりまわしてきた。

もじもじとしている彼女の太腿……口淫している今の現状だけでも彼女にとっては十二分に感じてしまうシチュエーションなのだろう。

 

「んんぅ!……あぁっ……!透明な汁がぁ……ちゅむぅ……!でてぇ、んぐぅ、あ、すごいぃ……飲んだだけで、達してしまいそうにぃ………んふぅ!」

 

その証拠に口でのご奉仕を続けながら、彼女の背筋は激しく何度も揺れていた。俺の先走りが媚薬のようにヒロインXオルタを狂わせていく。

 

「あむぅぅ!……んぶぅ、じゅぶぅ……!じゅぼぉ!んんじゅっ!!じゅぞぞぉ……!んんじゅるぅぅ……!」

 

「……ぅお!すごい吸い付き……」

 

更なるスイッチが入ったえっちゃんは根本まで咥える勢いでバキュームフェラを開始した。

パンパンになっている陰嚢を両手の指で何度も揉み込みながら、今度は精液を飲み干そうと頭を上下に揺らす。

 

「じゅぼぉ!じゅるるぅ、んじゅぅ!……んんちぅぅっ……!……じゅぱぁぁっ……はむぅぅっ!じゅるるぅ!」

 

「……っあぁ」

 

眼鏡をかけた一見すれば色事を知らなさそうなインドア系の少女が、ここまでディープなフェラチオをしているギャップ。唇が竿を激しく擦る度に中で這いずり回るえっちゃんの舌。

名器と化したヒロインXオルタの口内は彼女の欲望通り、白濁の汁を競り上げていく。

 

「じゅ!じゅぅぅ……!じゅるるるぅ!じゅぽ、じゅぼぉ……!んんちゅるぅ……!」

 

言葉を発する暇さえ無いと表現するかの如く、息継ぎすら忘れたかのようにヒロインXオルタは頬を窄め、いやらしい音を学校の屋上から空へと響かせていく。散々ヒロインXオルタに揉まれた精巣から精子が飛び出すような感覚を覚え……。

 

「出す、ぞ……!」

 

「……っ!」

 

俺の言葉に瞳を輝かせたえっちゃんは喉奥までがっしりと男根を咥え込んで、そのまま大量の子種を受け止める事になった。

 

「んんんんぶぅぅっ……!んぐぐぅ!……んんぅ!んんぅぅっ!」

 

思わず、空を仰いでしまう程の解放感。すごい勢いで彼女の体内に入っていく大量の精液。

彼女は長い長い、その射精が終わるまでその口を離す事は無かった。

 

「んぐぅ、んぐっ、ぐぐ……ごく、んじゅるぅぅ、ちゅぅぅ、ちゅ、んちゅ、んんぅっ!じゅるるぅ……!ごく、ごくっ……」

 

射精が終わっても、最後の一滴まで残さないように彼女は貪欲に吸引を続ける。

もっと欲しい、もっと欲しいとせがむえっちゃんは満足するまで口腔で男性器を刺激し続けていた。

 

「……んぐぅ、んぐ、ごくぅっ…………っぷはぁぁっ!…………あぁ、至福の瞬間でしたぁ……。この一杯の為に生きていると言っても過言ではありません。量的には一杯で収まるモノではありませんが」

 

あれだけの大量の精液を流し込まれながらも、口の端から一滴も零す事のなかったえっちゃんは恍惚とした表情で自身の腹を撫でていた。

 

「ふふ、わかってますよ。デザートは先に食べるのがオルタ流です。メインディッシュをしっかりと我がオルトリアクターに直接注ぎ込んで下さいね」

 

 

スカートの裾を摘まみ、拡げ、挑発するようにその中身を露わにするヒロインXオルタ。

そこにはもう剥き出しの白桃蜜がポタポタと汁を垂れ落としながら、ナニかを待ち侘びていた。

 

「パンツを穿いていない文学少女……マスターさんは嫌いですか?」

 

「まさか、大好きに決まってるでしょ」

 

ヒロインXはノーブラ、ヒロインXオルタはノーパン。つくづく似てないようで似ている二人。んん?もしかして、オルタ(反転)ってそういう意味なのかな?

 

「ふふ、あれだけ出したマスターさんの暗黒剣ももう復活しています。無限コンティニュー上等、マスターさんの体は私に終わりなき甘味を与えてくれる……」

 

いや、眼鏡っ娘制服ガールの真っ裸の下半身を見せつけられて、臨戦態勢にならないわけがないでしょうが。たとえ、どんなに萎えていたとしても2秒で復活するよ。『戦闘続行』だよ。

 

彼女の唾液を散々まぶされた剛直に腰を下ろしていくえっちゃん。俺はベンチに座ったまま、その様子を眺めるだけ。動かずとも彼女が熾烈にストロークすると表情からもわかり切っていたから。

 

「っはうぅあああああぁっ!!」

 

下したスカートが俺とえっちゃんの結合部を隠す。だが、肉棒を包む感触が見るまでもなく俺達の性器同士の交接を物語っていた。

 

「……あっ!私の襞、一つ一つが……ひぅ!絡みついてぇ……マスターさんのおちんちんを責め立てていますよぉ……あっ、あっ、あぁ……!もうこれだけでお腹いっぱいになってしまいそぉ……!んんあぁっ!」

 

えっちゃんは再び、俺の膝の上に乗り、文系とは思えない腰使いで抽送運動を行っていた。

今現在の格好も露出が少ない冬仕様の姿であるが……彼女の嬌声、上下関係運動で時折、チラリと覗かせる互いの性器、そして太腿のガーターベルト。もうこれだけでも十分に興奮の材料になり得るのだ。

裸にならなくとも人はエロチズムを簡単に覚えれる。

 

「はぁっ!あぁ!マスターさん、マスターさん……あぁっ……!唾、つばぁ……唾液を……体液を、もっとぉ……んちゅぅぅ……」

 

首に手を回され、えっちゃんの顔がどんどん近づいてくる。眼鏡がぶつからないように顔の位置を調節しながら重なり合う唇、色欲に狂ったバーサーカーは上の口からも下の口からも俺の体液を求め続けていた。

 

「ちゅぅぅ!……じゅぅぅ……!んむぅぅ、れあぁ、じゅるぅぅっ、ちゅぱぁ、じゅむぅ……!」

 

神聖な学び舎で鳴り止まない淫靡な音と声。封じられているとはいえ、屋上の扉が開いてしまったら言い逃れ出来ない程に生々しく交わる二人の学生。

わかっていても止めらない、止まる事はない。燃え上った男と女の情は生半可の事で鎮火する事はないのだから。

 

「ちゅ、ちゅぱぁ……んじゅるぅ……んはぁぁっ……!はぁっ!あぁ、んんぁあ!……この痩身の全て……貴方に委ねます………あふっぅぅ……!私を狂わす愛となり、悦びとなってくださいぃ……あぁ、あ゛あ゛あ゛っ……いくぅぅっ……!!」

 

彼女の告白を皮切りに本日何度目かになる吐精を行う。

舌を絡めながら、唾液を交換し合いながら、彼女が言うオルトリアクターという名の子宮に自身の魔力を栓が無い蛇口の如く、止めどなく注入する。

 

「あぁぁぁっ!あああぁっ!……んんぅぅっ!ちゅぅぅ!じゅるぅ……!れあぁぁっ!……私のお腹にたくさん溜まってぇぇ…………だめ、だめぇ……!あふれちゃ、やだぁぁ……!もったいないからぁ……はひぃぃっ……!」

 

一心不乱に俺とのディープキスを愉しんでいたヒロインXオルタは自身の容量以上だった為に漏れ出した精液を股に手を当てて、必死に掬い取ろうとする。だが射精の快感で体が震えてしまう彼女は何度も動きを止めてしまう。

 

そんな性に強欲なえっちゃんの痴態を俺はいつまでも楽しんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――聖カルデア学園の寮ライフを楽しんでいた君の部屋はある時、その自室に夜這いを仕掛けた女子寮の寮監である『元超英霊級の保母さん』に加えて『超英霊級のストーカー』と『超英霊級の毒殺者』がブッキングした後の激しい戦闘で半壊してしまった。

生憎、男子寮はもう空き部屋が無いというご都合主義の設定のおかげで女子寮の中で唯一三人部屋を二人で使っているという同級生のXとえっちゃんの部屋に居候させてもらう事になった君。

 

――年頃の男女が寝食住を共にする。またとないチャンス。二人はこの舞い降りた幸運を存分に利用する事にした。

時間は皆が寝静まった深夜。自身のベッドで横になっている君に二つの影が覆い被さっていた。

 

 

 

「あぁ、はぁっ……マスターさんの剣、凄い暴れん坊で……こんなにも熱い……はぁっ、服の上からでもわかりますぅ……あんぅ!」

 

「んくぅっ……!文系の貧弱学生は引っ込んでいて下さい……マスターの聖剣を一番扱えるのはNo.1セイバーたる私以外にぃぃ……ふぁっ!」

 

 

二人の寮部屋と思しきベッドで仰向けになっている俺に二人の女の子が騎乗なう。

青いジャージのブルマ系アサシンXと黒いジャージのスパッツ系バーサーカーえっちゃん。

 

体操着姿の彼女達は露出した肉棒をブルマとスパッツで左右から挟み込み素股をしていた。

服越しからもわかる彼女達の柔らかい媚肉の感触。それだけじゃなく、ブルマとスパッツに擦られている事実も快楽を増幅させてくれる。

 

「はぁ、はぁ……こうですか……こういう腰の動きがいいんですかぁっ……あっ!あんぅ!……私が抜いてあげますから、ますたぁさん……ふぁぁ……」

 

「あっ……何を世迷言を……マスターの聖剣を最初に抜くのはぁ……元祖セイバーたる、この私の役目で、すぅ……ひぃあぁっ…‥あくぅっ!」

 

両手を支えにして腰を浮かし、様々な動かし方で射精を促す二人のヒロインX。

アルトリア顔の二人が聖剣とか抜くとか言うから、まるで自分のアソコが選定の剣にも思えてきてしまうような……いや、よそう。色んな人に怒られかねない。

そもそも同時に動かしていたら、どっちが先に抜いたのかわからないのでは……?

 

「あっ!はぁっ……ぬけたぁ……マスターさんの精剣がぁ、こんなにぃ……!あぁぁ……」

 

「んんぅっ!んぁぁ……あっ、相変わらず無尽蔵ですね……噴水のように飛び出てますよ……」

 

Xの言う通り、体操着姿の二人に男性器を刺激され続けた俺は我慢する事なく射精をしてしまった。

白く濁った液が二人の顔と服を汚していく。

 

「……さて、この勢いを見る限り間違いなく、私の性技により、マスターが達した事は明白ぅぅっ……っとぉ!?」

 

得意顔を見せていたXが突如えっちゃんに押し倒される。

俺の横で重なり合う二人、押し倒したえっちゃんは理性を失った様子。

 

「マスターさんの精液……マスターさんの精液……甘味、摂取……」

 

「ちょっと待ちなさい!なんですその血走った眼は!私にそっちのケはありませんよ……!それに私の躰にかかったものは私の……もので、すっ!!」

 

「なめてでも……奪い取る!」

 

自身の躰に飛び散った精液を即座に全て指で掬い取り、舐め取ってしまったえっちゃんは物足りなかったのか今度はXの方にかかっている白濁を舐め取ろうと襲い掛かる。うーん、この食欲&性欲旺盛バーサーカー……。

 

あら~な感じでファイトしている二人の無防備なお尻の前へ移動した俺はそれぞれのブルマとスパッツを下着もまとめて膝裏まで脱がし、可愛らしいお尻と今日散々弄んでだ女陰を外気に触れさせた。

この俺を前に、そんなあってないような防具(パンツ)を穿いてきたのが運のツキよ。

 

「……ぁっ」

 

「ちょっ!?……マスター!?」

 

さすがに争いを止め、こちらを伺っている金髪っ娘コンビ。

そして、息がかかる距離で存在する膣口と菊門……どこまでも雌を感じさせる4つの穴があった。

どれから手を出そうかなんてまどろっこしい真似はしない。4つ纏めて責めせてもらう。

 

「ぉっ……!あぁぉぉ!」

 

「ひぐぅっ!!そっちの穴はぁ……あひぃっ……!」

 

親指を尻穴へ、人差し指と中指の二本指は膣内へ……卑猥な水音を鳴らしながら彼女達の鞘を指でほじくり回す。

Xもえっちゃんも都合よく重なり合っていたので、まとめて愛撫するのは容易だった。

 

「んぅっ!んほぉっ……あぁっ!おぉぉっ……!ズボズボされる……のぉ、イイ、で、すぅぅ……あぉぁあっ!」

 

「あっ、おほぉぁっ……!おぉぉっ!あ、あぁ……!やだ、恥かしい声で、ちゃぁ、おぉぁっ……!」

 

何でもかんでも順番順番で競い合うから争いが生まれる。

それなら同時に愛してあげれないいじゃない。

俺の両手は何故二本ある?俺の指は何故十本ある?それは複数の女性を一緒に愛する為だろう。

 

挿入の時も、出来る限りもう一方の娘を寂しくさせるような真似はしたくない。

 

二人の蜜穴が指を締め付け、濡らし、ヒクつく。

まずはえっちゃんの方を責めている指を抜く。

 

「…………ぁぁっ…………あふぅぅ!!?」

 

寂しそうな声をあげる彼女だが、間髪入れず、肉棒を挿入し、再び満たしてあげる。

 

「おぁぁっ……!あくぅ!あぁ!あっ、あっ、おぉ、ほぁっ……!んはぁぁっ!!マスターの指ぃ、また激しくなってぇ……!!」

 

挿入されていないXにも不満に思わせない為に指の動きをハードにし、あらゆる角度に折り曲げ、彼女の気持ちの良い部分を腸道、膣道問わず、的確に擦り上げる。

 

「あぁぁっ、あはぁぁ!あぁっ……!マスターさんの、パックリ食べちゃってますよぉ……んはぁぁ!!……ぇぁ?また違うのが入ってきて…………ふぁああぁ!!」

 

「あっ、あぁぁ!!太いのが挿ってきたぁぁ……!これ、マスターのおちんちんです、よねぇ……んふぅぅぅっ!!」

 

竿を抜き、Xに挿し、頃合いを見て、またえっちゃんに挿す。剛直が刺さっていない方の娘には指で同時二穴責め。彼女達の雌園を指と男根で抜き挿しを繰り返し、何度も何度も犯す。

 

「あぁぁっ!マスターさんのおちんぽも、指も、どっちもすきですぅ……!上手なのも、雄雄しいのも……こんなのどっちかなんて選べなひぃぃっ……あっ、あぁっ、美味しくて、おいひくてぇ……!あひゅぅぅっ!」

 

「もうぉ、今、どっちが挿っているのかもわかりゃないぃ……!あっ!あはぁぁっ……!マスターの温もりしかわかりゃないぃ……頭、おかしくなってマスターのナニかが私のナカにある事しかぁぁ……んんあぁぁっ!!」

 

抜き挿しのタイミングに愛撫と挿入の力加減、それさえ見極めれば、二人ぐらい同時にイカせるのはそこまで難しい事じゃない。経験を積めば誰にでも出来る事である。

 

色違いのジャージを着ている二人は絶え間なく訪れる快楽にお互いの躰を抱き締め合っていた。

せっかくの仲良しさんなのだから、エクスタシーもナカ良く同時に感じるべきだろう。

放出する精液も差別なく平等に与えるように調節しながら、ラストスパートへ――。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛ぁっ……!はぁぁああ!!……すごぉい、マスターさんのが二本あるみたいでぇ……!二人纏めて刺されちゃってますぅ……!あっ、はぁっ……あ゛んんんぅぅっ、いく、イク、いくぅ……イクぅっ……イキまぁすぅ!」

 

「ひぅっ……!ひあぁぁっ!私達の鞘がぁ……マスターの形になっちゃうぅ……!覚え込まされちゃっているぅ……!ますたぁ、ますたぁっ……ますたぁ……!奥までぎゅっとさしこんでえぇ……!!あ、あ、ああぁ……」

 

最後は射精だけに集中する。今日一番ともいえる程の量になったザーメンをそれぞれの胎内に流し込む。

挿入と射精のサイクルを繰り返し、二人同時に絶頂へと導く。

 

『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああぁっっ―――――…………!!!』

 

嬌声は一つか、いや同じ瞬間に達して、なおかつ彼女達の喘ぎがあまりに似ていたから一つに聞こえただけである。媚肉の狭間からドロドロに漏れだしている白いスペルマ、寮の一室に充満する性交の香り。夜の運動で汗だくになった二人のヒロインXは仲良くダウンしていた。

 

さて、俺も隣で幸せそうな彼女達の顔をじっくりと鑑賞して寝るとしますかね。

 

 

……そう言えば、学園生活のモデルケースとか言ってたけど、結局エロい事しかしてねぇな。ま、いいか、これも学園性活。素晴らしき桃色のハイスクールライフってやつだろうさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

意気揚々と今回のモニタリングを参考に他の女性英霊達のルートも作り、『SERVANNAD(サバナド)』を作り上げたダ・ヴィンチちゃんだったが、さすがに商品化とかプライバシーもへったくれもない愚行は許されないと何人かの女性サーヴァント達の手によってバッキバキに破壊されてしまった。

残骸と化したゲームの前でへたり込んだダ・ヴィンチちゃんは泣き叫んだ。

 

 

「これが人間のやることかよォォォォォ!!」

 

「まぁ、サーヴァントですし」

 

「人間ではありませんよね」

 

この結末を最初っから予想していた二人のヒロインXの呟きはダ・ヴィンチちゃんには届いていなかった。

 

 

後にちゃっかりとそのデータを回収していた褐色文明っ娘がそのゲームを個別ヒロイン√へと改造分割させ、それぞれの女性英霊に売りつけて、一儲けしたのはまた別の話。

 

 

 

 

 

 

 




SERVANNAD(サバナド)』現在攻略可能ヒロイン


モードレッド:『超英霊級の暴走族』
盗んだプリドゥエンで走り出す。行く先もわからぬまま……。暴走族グループ『レッドサンダー』の頭。学校では主人公と同じ男子の制服を着ているが、実は……。悪友が「お前、女だったのか!?」みたいなシチュって鉄板だよネ。


セイバー・オルタ:『超英霊級のジャンクフードファイター』
ハンバーガー、ホットドック、スナック菓子、チョコレート…………雑味であり、手軽さこそが至高。高エネルギー、栄養バランスもクソもない食べ物を大量に食しているとは思えない程の美貌を持った色白のゴスロリの少女。実は『超英霊級のブラックサンタ』と同一人物なのでは?という噂があるか真相は闇の中である。……ブラックなだけに。


沖田総司:『超英霊級の人斬り』
剣道家ではない。真剣を扱った実戦剣術の極みに達した故についた異名。だが、実は『誰かに恋をしなければ3年以内に死ぬ』という不治の病に冒されている。一緒に入学したクラスメイトの主人公には当然、この病の事は言っていないが……。


シュヴァリエ・デオン:『超英霊級のスパイ』
何故か当学園に複数在籍している性別不明生徒の一人。可愛いから敵に見逃されていただけではないかしら?みたいな事はない。ちゃんとスパイの才能はあります。たまに受け担当のメイド服ナイトとかになるけど、名うてのスパイなんです。


鈴×××:『超英霊級のギャル』
「周り、全員JKじゃん!アイデンティティの危機だし!」大人気読モとして、全国の女子達のお洒落の見本となっているギャルギャルしい自称『超英霊級のJK』。実は学年トップクラスの学力を誇り、クラス委員長気質もあるが本人はうまく隠しているようだ。


アルテラ:『超英霊級の引きこもり』
不通(かよわず)不働(はたらかず)不出(おもてにでず)」学園の中でもまだその姿を見た者はほとんどいないという謎のベールに隠された女子生徒。登校拒否で今まで散々溜まっていたプリント類を届ける為に、彼女の家らしき場所に向かった主人公がそこで見た光景は……!

セイバー・リリィ:『超英霊級の騎士見習い』
未知数の才能の卵、未だ開花していない期待値を込められてつけられた才能。彼女はこれから何色にも染まる可能性を持った無垢なる魂とも言えるかもしれない。『超英霊級の一般人』である主人公には才能のせいか、親近感を持っている。この邂逅は吉と出るか凶と出るか。


セイバー・×××××:『超英霊級の騎士』
全てのアルトリア顔の原点にして頂点。アルトリア系譜のヒロインを全て攻略するとルートが解放されるらしい。


織田信長:『超英霊級の魔王』
良くも悪くも古いしきたりに囚われない自由な思考を持ち、高校生でありながら既に大財閥「織田家」の当主として、時代に破壊と変革をもたらしている。多くの人間から畏怖を込めて魔王と呼ばれているとか。最近はロックンローラーを目指しているらしい。


アタランテ:『超英霊級の狩人』
本人は『超英霊級の保母さん』が良かったらしいが無理だったみたいですね。狩りで培った眼で自分を子供のように甘やかし、なおかつ子供をつくって、その子供達を一生愛してくれそうな旦那さんを探しているが……。


×××・フォン・×××××××:『超英霊級の魔法戦士』
褐色白髪のキス魔。ぱっと見小学生なのだが、この学園で細かい事を突っ込んではイケナイ。当ゲームにおいて登場するキャラは全て18才以上です。同クラスの『超英霊級の魔法少女』とは姉妹とのこと。


エウリュアレ:『超英霊級の少女』
老いることのない完成された偶像……少女としての姿を持っている。高校には通っているが本当の年齢は不明。散歩中にペットの「あすてりおす」のリードを離してしまい、「あすてりおす」が車に轢かれそうになったのを主人公に助けられる。お礼を言いたいが、元の性格の為、中々素直になれない。


メドゥーサ・リリィ:『超英霊級のスイマー』
スクール水着でオリンピックのあらゆる種目で金メダルを総なめしたスーパーロリ。大きいお友達にも大人気を博している。実は5人姉妹でその末妹にあたる。


ジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィ:『超英霊級のサンタ見習い』
セイバー・リリィと同じく、超英霊級の才能の卵として期待されている。正しく成長すれば、『超英霊級の聖女』になると本人は言っているが、あれ……サンタどこいった?


エリザベート・バートリー:『超英霊級のアイドル』
本当は『超英霊級の音響兵器』。だが、彼女は認めていないし、諦めていない。スーパーアイドルになる為、まずはこの学園で自分のパートナーとなるプロデューサー探しから始めることにした。実は彼女を攻略中にはぐれメタルを5匹倒すと『超英霊級の勇者』ルートに進むとかなんとか。


×××ーマン:『元超英霊級の極道』
聖カルデア学園の卒業生。現在は学園の教諭であり、英語を教えている。英語……?生徒の国籍は皆バラバラ……ウゴゴ、頭が……。いつも虎の被り物をして、おちゃらけてはいるが、その才能に見合った威厳と戦闘力は見せてくれる……ごくまれにだが。やっぱり学園物は美人教諭がNo.1!


×××××・××××××・ランサー:『超英霊級の生徒会長』
円卓の生徒会を統べる獅子王。「この学園にいる全ての生徒に決して穢れず、あらゆる悪にも乱れぬ、永劫無垢なる魂を」と信条とし生徒会を執行しているが、そこは超英霊級しかいない学園。彼女に反発する者も大勢存在する。生徒会の支持率が下がっている事を受けて、自分に何が足りないのか知る為に『超英霊級の一般人』と呼ばれるある生徒を生徒会に勧誘し、一般的な人間というものを知ろうとするが……。


×××××・××××××・××××・オルタ:『超英霊級の風紀委員長』
ラムレイと名付けている馬に乗り、学園の風紀を守る為に今日も闊歩、馬だけにカッポカッポ。当の本人が風紀を乱している感は否めないが、オルタだもん仕方ないよね。他の風紀委員も実はオルタ属性のみで構成されている。本人曰く、本来風紀を乱す側の者達がそれを糺す組織に属するのは皮肉で愉快であろう?との事。


フランシス・ドレイク:『超英霊級の海賊』
世界中の海を股に掛ける。この世で最も自由な冒険家にして、艦長。「BBAがww制服とかwww無理すんなでおじゃるwww」あ、『超英霊級の同人作家』が蜂の巣になっておられますぞ。


アン・ボニー&メアリー・リード:『超英霊級のコンビ』
「私達は二人で一人なので当然、学費も半分ですわよね?」と要求を無理矢理上層部に通した(脅し)。道理は力でこじ開ける。これが海賊の流儀。巨乳金髪と貧乳白髪のコントラストは素晴らしい。


マルタ:『超英霊級のグラップラー』
真の祈りとは拳で相手を鎮める事と見つけたり。お前のような聖女がいるかッッッ!!クラス委員長を努めており、聞き分けのないクラスメイトには飼っている巨大亀をぶつけて聖女らしいお淑やかな殴打を連続で叩き込む。タラスクは死ぬ。


マリー・アントワネット『超英霊級の王妃』
ファンクラブが出来る程の魅力とカリスマ性を持つ。そのファンクラブには『超英霊級の処刑人』、『超英霊級のスパイ』、『超英霊級の音楽家』がいるとか。ヴィヴ・ラ・スクール!


牛若丸:『超英霊級の御曹司』
源家の問題児。才能はあるがブレーキの壊れた忠犬なので厄介払いの為、学園に入学させられる。源家は在学中に牛若丸にリードでもつけて大人しくさせてくれるような奴がいないか期待している。「自分、天才ですから」


メドゥーサ:『超英霊級のロードレーサー』
数多くのロードレースを優勝してきたお姉さん、しかもママチャリで、他の選手涙目。さすが騎乗A+だぜ。お姉さん属性かと思いきや、二人の姉を持ち、妹属性もある。姉達の前ではいつでも弱虫ペダル。


ブーディカ:『元超英霊級の生徒会長』
先代の生徒会長。卒業後は男子寮の寮監として、やんちゃ盛りの生徒達や偶に暴走する女子寮の寮監に頭を悩ませている。現在の生徒会長とは先輩、後輩の関係であり、今は影ながら彼女を応援ないし、心配をしている。


玉藻の前:『超英霊級の呪術師』
自称『超英霊級の良妻』。夏になったらテンション上がってシャークになったり。双子でも姉妹でもないそっくりさんが8人ぐらいいたりと、このゲームにおけるシリアスブレイカー&ギャグ要因。彼女を含むタマモナインを全員攻略すると、ハンパじゃない裏ボスが現れるとの情報があるが。


×××・××ヴァッキー:『元超英霊級の神智学者』
合法ロリ。現在は聖カルデア学園で世界史の講師をしている。油断するとすぐにマハトマの話になるので注意。彼女のテストもとりあえず、「うんうん、それもマハトマだね」みたいな事を書いておけば高得点を狙えるだろう。


ニト×××:『超英霊級の家政婦』
「この私を召使い扱いですか!?不敬な!」「愚かな……この部屋の汚さ、愚かな……」「ホコリとゴミ、出ませい!!」と文句を言いながらも、主人公の部屋を適度な頻度で掃除してくれる世話焼き女房タイプ。ある時、主人公のベッドの下から褐色ファラオ系のえちぃ本を見つけてしまい、そこから二人の関係が……。


××××・リリィ:『超英霊級のケーキ職人』
「皆、仲良し。仲良しが一番です」どんなに争いあっている人達でも彼女が作ったケーキを口にすれば、いがみ合う事は無くなる程の美味しさを持っていると言われている。一番得意なケーキはピンク色の肉々しいパンケーキ。


ナーサリー・ライム:『超英霊級の絵本』
お茶会が大好きな不思議な雰囲気を持つ少女。彼女が持つ才能は本を書く作家ではなく、本そのもの……それは一体どういう事なのか。彼女と仲良くなり、好感度を高め、絆を深めたら語ってくれるかもしれない、ある一人の少女の物語を……。


四元素アイリ+黒アイリ:『超英霊級の理事会』
こんな才能は無いが、10人で構成されている聖カルデア学園の理事会の半分の席を占めている彼女達の権力の高さを考えるとあながち的外れではない。ただ、暗躍しようとしても5人同士で争い、自爆する事もしばしばある残念さ。


酒呑童子:『超英霊級のコレクター』
見た目の雅さ、希少さ、自身のお目に適うかどうかの判断であらゆるお宝を収集するエロJK。制服の着崩し方に風紀委員長からもお咎めは何度も入っているが、「いやぁ、あんたはんみたいな厭らしい駄肉揺らしながら、廊下を馬で走る奴に言われてもなぁ……」と喧嘩を売る。まぁ、確かにごもっともでもある。


謎のヒロインX:『超英霊級のセイバー殺し』
愛機「ドゥ・スタリオンⅡ号」で宇宙飛行にも成功させている。本来は『超英霊級の宇宙飛行士』の才能で入学する予定だったが、本人が『超英霊級のセイバー』でないと入学しませんとのことで。長時間にも及ぶ議論の末、折衷案でこの才能となった。宇宙要素どこ行った。


ジャック・ザ・リッパー:『超英霊級の殺人鬼』
ある街を震撼させた連続殺人鬼の正体。未だ逮捕されていないのは聖カルデア学園は治外法権を持ち、彼女の正体を世間には明かしていない為と言われているが真実は一体……。それはそれとしてどう見ても高校生にはみえn


スカサハ:『元超英霊級の教育者』
学園の卒業生。現在は主人公の担任教師であり、担当科目は体育。生徒の頃から誰かを教える術に長けており、死者が出ると言われる程スパルタだが、彼女に導かれ、才能をより開花させた者も少なくない。年齢の事は禁句だゾ。


カーミラ:『超英霊級のエステティシャン』
女性専門のエステティシャン。彼女のエステを受ければ、見違えるほどに肌が艶とハリを得たと評判になり、しかも高額の金銭ではなく、代金の代わりとして必要なのが少量の血という所が懐にも優しい。おぉ、凄くホワイトですね。


ステンノ:『超英霊級の微笑み』
彼女に微笑まれてしまえば、彼女だけに傅き、彼女だけを称賛し、彼女だけを好きにならざるを得ない。だから、私は女性として一人の男性を好きになるなんて事は絶対にありません。未来永劫ありえません。私が魅了しようがしまいが、微笑もうが、微笑まいが、態度の変わらないあの生意気な黒髪の一般人が気になっている事なんて無いのです。


××天:『超英霊級の女帝』
またまた合法ロリ。傲岸不遜な態度とは裏腹に影ながら誰よりも努力をしている実力主義者。数多の才能を持つ生徒で構成されているこの学園の事を非常に気に入っている。故に何の才能もない『超英霊級の一般人』である主人公の事を最初は面白くないと思ってちょっかいをかけようと近づくが……。


静謐のハサン:『超英霊級の毒殺者』
触れてしまえば自身の意志に関わらず、その相手を殺してしまう程の強力な毒を持っている為、人の温もりを知らずにこれまで生きてきた。朝遅刻しそうになり、パンをくわえながら走っていると曲がり角で主人公と衝突してしまう……そこから彼女の世界はガラリと変わった。


アサ子:『超英霊級の多重人格者(のうちの一人)』
『超英霊級の多重人格者』である百貌のハサンが持つ88の人格の内の一つ。数少ない女性の人格。彼女は願う――多重人格の内の一人でもない、確固たる自己として誰かに認められ、触れ合う事を……それは自身の才能さえも否定してしまう事だとわかっていながら……。


荊軻:『超英霊級の仕事人』
「超英霊級の暗殺者?いやいや、あのような方を差し置いて恥ずかし気もなく自分がそんな才能を名乗れるわけがないだろう?」本人は決して、暗殺が好きなわけではないと言うが、この学園で王様っぽい生徒の背中を見てしまうと何故か短刀がウズウズするとかしないとか。


マタ・ハリ:『超英霊級の女スパイ』
デオンと違い女という性別を使った諜報活動故にただの『スパイ』ではなく、『女スパイ』。
学園に通っているのは普通の女の子のように恋をして、結婚して、家庭を作りたいと思っているから……彼女のマタ・ハリも本当の名ではない。もし彼女が真名を告げる相手がいるとするならそれは将来を誓い合ったパートナーだろう。


フローレンス・ナイチンゲール:『超英霊級の看護師』
学園の保健委員長を務める。過激さでは生徒会長を含める学園の全ての委員長の中でNo1かもしれない。ナイチンゲールが入学してからケガ、風邪になる生徒が激減したらしい。彼女が治しているというよりは彼女に治療されたらやべぇという事で皆が目をつけられないように健康体でいようとした結果である。


源頼光:『元超英霊級の保母さん』
一見するだけでもわかる母性の塊。自身が子だと思った生徒に対する狂気染みた過保護っぷり。まさに保護する母で保母さん。生徒に夜這いはマズイですよ。卒業後は学園の女子寮の寮監になる。


謎のヒロインX・オルタ:『超英霊級の文学少女(超英霊級のヴィラン)』
季節問わず、マフラーとセーラー服の上にジャケットの眼鏡っ娘。もう一つの才能を制御する為に甘味を摂取し続けていたが、それも限界が訪れ、新たなエネルギーを探す事となった彼女は偶然、クラスメイトの黒髪の男子生徒の汗を口に入れてしまい……。


茨木童子:『超英霊級のスイーツマニア』
彼女に絶賛された甘味処は必ず繁盛すると言われる程、スイーツの味に精通した金髪童女。スイーツを食べた時の感想はグルメリポーター顔負けの表現力と的確さを得ている為、世界中の料理人が彼女に自分の作ったデザートを食べて欲しいと殺到しているとか。これには茨木ちゃんもニッコリ。


茶×:『超英霊級の浪費家』
「(財布が)びっくりする程、バーニング!」『超英霊級の魔王』である織田信長の姪。絢爛豪華を好み、超がつく程の浪費家。
彼女の攻略を開始するのなら、まずは圧倒的なまでの財力から必要。宝物庫を死ぬ程、周回するのだ。

ペン×××××:『超英霊級のアマゾン』
遠い地、女部族を統べていたアマゾネスの女王。最初は学生などに興味は無かったが、ギリシャ系の男性も入学するよと聞き、即入学を決意。ギリシャ系の男子生徒は殺す。特に緑頭の韋駄天野郎はミンチにする。今日もスケバン刑事よろしくトゲトゲのヨーヨーを振り回しているぞ!ガンバレ!ペンちゃん!


×××キャット:『超英霊級のメイド』
「メイド道とは無償の奉仕、滅私奉公と見たり!!けど、キャットは報酬に人参は欲しいし、欲望増し増しなフレンズなのである。そもそも滅私のメイドとか、綿がないぬいぐるみのように可愛げがないゾ。個性あってこそのメイド。皆違って皆良いという奴なのだ……ん?それなら滅私のメイドも個性か?まぁ、いいか!アタシはブレブレに忠実なメイド道を目指すワン!」
実は飼育委員長。「お前は飼育される側だろというツッコミはノーサンキューなのだ!」


×××××シュタイン:『超英霊級の人工生命体』
逃亡したヴィクター博士の忘れ形見。彼を追おうとしたが、学園のスカウトによって伴侶を求めて入学。
滅多に言葉を発しないが、話せないのではなく、単語を話すと疲れるからだけらしい。最近はタブレットでプラカードよろしく文字を映し出して会話している。カワイイ。


清姫:『超英霊級のストーカー』
主人公と中学校が同じであり、その頃から彼に好意を持ち、隠密的にすら見える献身的な後方警備をしていた。彼が『超英霊級の一般人』として選ばれたと知るやいなや、急遽自身も志望校を変え、気合と根性で彼と同じ学園に入学。思い込みで蛇になれるんだからこれぐらい余裕余裕。


ポール・××××:『超英霊級の木こり』
少女とは思えない3m近くの身長を持っているが、これも彼女の本当の姿ではない。彼女の大きさは会う度に変わってしまう。度を超えた大きさは人間社会においてどれだけ窮屈で異端とされるか、幼き少女はその意味を理解していないだろう。だが”それでもいい”と言って彼女に寄り添ってくれる人間がいてくれるとするならば……。


ジャンヌ・ダルク:『超英霊級の聖女』
ある国で神の啓示を受け、戦っていたが……突然「JK……JKです……ジャンヌよ……JKになり、ヒロインの座をもぎ取るのです……」と新たな啓示が訪れ、めでたく学園に入学。ちょっとその神様頭大丈夫ですか?


ジャンヌ・ダルク・オルタ:『超英霊級の贋作』
ジャンヌ好きを拗らせ過ぎた『超英霊級の元帥』によって生み出されたもう一人のジャンヌ。聖女に対する対抗意識だけで同じく聖カルデア学園に入学。生まれたばかりの彼女にとっては初めての学園生活は見る物全てが新鮮で眩しかった。多分、多くの在校生の中でこれでもかってぐらいスクールライフを楽しんでいると思います。


ゴルゴーン:『超英霊級の美容師』
自身の髪を操って、髪を切るという新感覚の美容師。身動きをされると切りづらいので魔眼で客の動きを止めて仕事にあたる。完璧な接客対応。一応は「痒い所はないか」と聞いてあげる優しさもある。まぁ、魔眼で動きを封じられて言葉は発せないんですけどね。


××:『元超英霊級のテレビ司会者』
深夜帯でありながら、視聴率30%以上を常にキープしていた「BBチャンネル」の司会者。本当はアドリブに弱いテンパり具合だったり、結構な頻度で覗かせるパンチラだったり、彼女のポンコツっぷり目当てで見ている視聴者がほとんどだが、当の本人は気付いていない。卒業後はテレビ司会者をしながら、養護教諭の職に就いている。


×××リリス:『超英霊級のモデラー』
フィギュアとは思えない最高峰の人形をいくつも世に排出してきた少女。しかし、ある時、事故で両足、そして両手の感覚をほぼ失ってしまう。足は義足を作ってもらったが、鈍感になってしまった手ではもう人形を作る事が出来ないと学園の教会で特に何もする事なく腐っていた彼女の元に主人公が偶々訪れ、二人は出会い、物語は始まる。


パッション×××:『超英霊級の掃除家』
『超英霊級のモデラー』と同じ事故に合い、両手を失うが彼女はそれにつけられた義手によって才能を開花させた。あやゆる物をその凶悪な爪で5センチ四方のキューブにし、胸の中、ブレストバレーに仕舞うというどんなに巨大な物だろうと跡形もなく掃除が出来るという才能を。だが彼女はこんな才能よりも普通に好きな人と普通に触れ合える普通の生活が欲しかった……。こんな姿の自分を誰が好きになってくれようか……。


マシュ・キリエライト:『超英霊級の後輩』
何故か、同じ学年で入学した主人公を先輩と慕う眼鏡の少女。だが、それを指摘する気が起きないのは偏に彼女の才能なのか……。
このゲームにおける、注意事項であるが、彼女とのコミュニケーションを蔑ろにしてしまうと、例えどんなに他のヒロインとのルートがうまくいっていても問答無用でBAD ENDへ直行してしまう。
「ねぇ、先輩。私、ずっと……ずぅっと先輩の後輩だったんです、この学園に入学する前から…………ふふっ、ピンと来ませんか?貴方を独り占めしたいなんて大それた事は思いません、けど、先輩の瞳からいつか私の姿が完全に無くなると思うと…………怖くて、怖くて、怖くて、嫌なんです。嫌なんです。嫌なんです。嫌なんです。…………嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌、先輩、先輩、先輩、先輩、先輩、先輩、先輩、先輩、せんぱい、せんぱい、せんぱい、せんぱい、せんぱい、せんぱい、せんぱい、センパイ、センパイ、センパイ、センパイ、センパイ…………………………………………………………………………………………………………今、貴方の瞳に映る私は何色ですか?」
こうならないように後輩とのコミュニケーションはしっかりと取ろう!



●以上がこのゲームにおける攻略ヒロインとなります。ですが、今後追加パッチでヒロインが増える可能性があります。ご了承ください。





ダ・ヴィンチちゃん「ちくしょう!この大勢いるヒロインを小出しにしてシリーズ物のナンバリングで何度も絞り取っていく計画だったのにぃ!!」

ぐだ男「ゲスいなぁ……」















後書きを9千字近く書く阿呆がいるらしい。












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家族計画(メディア・リリィ)

へへ……夏休みも、お盆休みも無かったけどよ……それでも、どんなに忙しくても、最低でも月2更新ぐらいはしねぇとな…………へへっ。










パンケーキはフレンズじゃない。


 人類最後のマスター……。

 

 数多の英霊と共に進むマスター。

 

 終わりなき旅路の中で幾度も戦うマスター。

 

 あなたはこれまで何度傷ついたのでしょうか。何度立ち上がったのでしょうか。後、何度傷つけばいいのですか、何度戦えばいいのですか。

 

 骸兵の、竜の、ゴーレムの、ゴーストの、オートマタの、キメラの、神獣の、魔獣の、サーヴァントの、魔神柱の…………どんな攻撃を受けても、傷を受けてもあなたは何でもないように笑います。

 

 

「俺はまぁ……あんまり、模範的な()()マスターでは、ないのかもしれない」

 

 

 斬られようが、刺されようが、殴られようが、吹き飛ばされようが、燃やされようが、あなたはなんてことないようにいつの日かそう言いました。

 

 普通のマスターではないのかもしれません。一般的な魔術師ではないのかもしれません。どこか外れてしまった人間なのかもしれません。

 本来の一般的な魔術師であるマスターというものは、サーヴァントに守られて、後衛から指示を出し、時には魔術でサポートする……それが聖杯戦争における正しいマスターとサーヴァントのあり方です。

 前線に飛び出して、サーヴァントと一緒に戦うマスターなんて可笑しいでしょう?

 

 この人理修復の旅でかくあるべきとあなたが変わってしまったのか。元からその素質があって偶々、このカルデアにマスターとして勧誘されたのか。既にそうであったマスターに召喚された私にはわかりませんでした。

 

 どこまでも無邪気で、人が大好きなマスター。子供のように温もりを求めて、大人のように交わりを求めるマスター。皆、あなたという光に惹かれてしまう。元からその性質を好む英雄達も……忌むべきもの、自身には無いものとしておきながら手を伸ばさずにはいられない反英霊達も。

 

 彼には利益も損得も恫喝も裏切りも頭にはありません。王の器があります。

 この事を言ったら、「またまた、御冗談を」と笑われてしまいましたが。

 

 マスターは楽しんで、愉しんで、悦しんで、皆と笑って、泣いて、喜んで……そして、繋がりを求めます。私達への愛を、私達からの愛を。

 喜んで、喜ばせて、そんなお互いに渡し合う真っ当な男女の関係を。人数の多さ? えぇと、どこに問題があるのでしようか……皆、仲良しなのは良い事だと思うのですが。

 

 そんなマスターだからこそ、人理焼却は認められないのでしょう。世界が()()()終わり方を迎えるのは認められないと、かの魔術王……いえ、憐憫の獣と相対するのは必然だったのかもしれません。

 

 ゲーティアから散らばっていったいくつもの魔神柱、どこかで目覚めの兆しを見せてもおかしくない獣、そしてマスターと英霊の皆さん達、カルデアの皆さん達で救った人達……すなわち世界であり、人理そのもの。

 厄介事は、難事は彼にこれからも訪れる筈です。

 

 それでも彼は、戦い続けるのでしょう。進み続けるのでしょう。世界が再び何かの手で終わりの目を迎えそうになったとしても――”ずっと続いていれば、いつの日か世界は終わるとも……。それでも、少なくとも、この終わり方ではない”と言って壊してくれます。玉藻さんが「私が割りと引くレベルでのシリアスブレイカーっぷり」っていうぐらいのハチャメチャさで。

 

 心配も、不安になる必要もないのかもしれません。多くの人はこう言います。「まぁ、マスターだし」と。

 その言葉がある意味真理であり、私如きが憂虞してもいらぬお世話なのでしょう。

 

 

 

 ……でも本音を言えば、やっぱり、私はあなたに傷付いて欲しくありません。戦って欲しくありません。

 もう、十分じゃないですか? もう十分でしょう。人理を救ったあなたに世界はこれ以上何を求めるのですか。マスターはこれ以上戦わなくてもいいんじゃないんですか。私達と一緒に、仲良しの皆さん達と一緒にずっと平和な所で煩わしい物を一切捨てて暮らしてもいいんじゃないんですか。

 

 きっと、こんな事を言えばマスターは本当に困った顔をして、そして笑って、何も言わず私を抱き締めてくれるでしょう。

 

 

 だから、私はこれを彼の前では言葉には出さず……願いに、祈りに留めておきます。

 

 

 ――どうかマスターを傷つけぬ、傷つけられぬ世界でありますように。

 

 

 

 

 ――そして、マスターを傷付けるモノが全て消え去る世界でありますように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……んぅぅ、ふぁ、あぁ――……あくぅぁ、はぁ、はぁ――……」

 

「大丈夫、メディア?」

 

「……はいぃ、大丈夫ですよぉ……」

 

自分でもわかるぐらいに蕩けた声を出して、マスターの上に寄りかかっている私。何も纏わない生まれたままの姿で。

色んな方達が利用している『精神と時の部屋』というシミュレーションの世界の中で私は自身の趣味であるボトルシップと同じ船を再現させてもらいました。

 

そして、時間は夜。満月と星が上下に浮かぶ海と空の世界。静寂と黒々した色を持つ世界にポツンとその船が漂っています。

私達が一緒になっているのは甲板に設置された薄いピンク色のカーテンが付いている天蓋付きのベッド。

そこで二人は重なりあっています。

 

生命の母でもある海……そんな海に輝く月と星を浮かべた風景をバックに船の上で愛を交わす私達。二人の息遣いと嬌声、そして波の音しか聞こえなくてまるで世界に私達しかいないような錯覚を受けます。

 

くぅ~~~~……すんごい、ロマンチックですよね!とてもイイですよね!やっぱりベッドを船内室ではなく、外に設置した私の考えは間違っていませんでした!

 

「しあわせぇ~~…………」

 

ふにゃっと脱力しながら私と同じく服を着ていないマスターの胸板にほんの少し頬擦りをしてしまいます。自分でもわかるぐらい間抜けな声を出しているかもしれませんが、そうなってしまうぐらいに今とっても幸せなんです。恥ずかしがる事はありません、ふんす。

 

そんな昂った感情とは反対に私の躰にはほとんど力が入りませんでした。起き上がる気力もありません。

 

……ふむ、やっぱり、キャスタークラスとはいえ、この体力の無さはネックですね。

数回の絶頂と一回の膣内出しでもう体力がすっからかんになってしまうんですから。

 

マスターはまだまだ元気一杯なのに、自分だけ満足してダウンは良き従者、良きお嫁さんとは言えません!

ですので、無くなった体力は回復すればいいのです!こうやって!!

 

「『享受すべき彼からの愛(テクノブレイカー)』!」

 

私の宝具『修補すべき全ての疵(ペインブレイカー)』をマスターとの情交用に新たなに改良した物。

修補すべき全ての疵(ペインブレイカー)』は傷や呪い、死以外の理不尽を回復する治療宝具。

そして、この『享受すべき彼からの愛(テクノブレイカー)』は性交で疲れた私の体力()()を元に戻すという宝具。

 

つまり、マスターから目いっぱい注がれた(精液)と快楽はちゃんと残したまま、蓄積させたまま、私は再び全快の状態で艶事に励めるのです。しかも宝具の使用に必要な魔力も現在進行形で頂いているので憂いは何もありません。

 

 

1:マスターとイチャラブセックスをする。

 

2:途中で私の体力が無くなってしまう。

 

3:回復する為に『享受すべき彼からの愛(テクノブレイカー)』を使用。

 

4:宝具に必要な魔力は濡れ事の最中に十分に注がれているので心配する必要無し。1に戻る。

 

素晴らしいと思いますよね?この永遠に続く幸福のサイクル。

しかもマスターの魔力ってば本当に濃厚ですから、私の体に出されれば出される程、どんどん調子も良くなって最初より激しいプレイだって出来るようになりますし。

 

私の魔術はこういう使い方もあるんです!伊達にキルケーお姉様やヘカテーお姉様から学んでいませんから!

 

「これで、その宝具7回目だよね?ちょっと頑張り過ぎてない?」

 

「そうですね。マスターの精液を膣内に出されたのが4回、口に出されたのが2回、体にかけられたのが1回、絶頂したのが19回。……けど、まだまだです。時間はたっぷりありますから。私だけ先に気を失ってマスターを満足させらないなんて、そんなの嫌ですもの」

 

「メディアを不満に思った事は一度も無いんだけど」

 

「けど、まだ体力的には余裕ありますよね?」

 

「……それはそうだけども、俺としてはこうやってさっきまで存分に愛し合った女の子をただ抱きしめるだけでも十分といえば十分なんだけどね」

 

「きゃっ……」

 

マスターの男らしくも筋肉質過ぎない両腕に抱き留められしまいます。

彼の心臓の音と私の心臓の音が重なって、あぁ、今私達は一つに……心も体も一つになっているという事を実感してしまいます。

 

「……マスターはもう、私の躰は飽きてしまいましたか?」

 

「世界が滅んでもそれはないよ。四六時中俺の劣情をぶつけたいとさえ思っているし……ただ、無理させてないかなーって少しだけ思ってね」

 

「無 問 題 です!!私だって義務感でマスターと交わるなんてそれこそあり得ません!宝具を使ってまであなたと色事に励んでいるのは私がそうしたいからです!この世界の時間だってまだ半日しか経っていませんし、夜はこれからですよ、マスター……」

 

私が用意した枕の横にある砂時計はちょうど半分落ちている所。

現実の時間で1時間――――つまりこの『精神と時の部屋』ではたっぷり24時間分の時間を私達は頂いています。

まだ半日、いえ、もう半日しかない。私はマスターとの営みをまだまだ楽しみたいのです。

 

「そういえば、この世界、夜は全然明けないよね……」

 

「そういう仕様にさせてもらいましたから。最後の30分でちょうど朝日が昇るように設定させて頂きました。水平線の向こう側から浮かぶ陽の光が二人を照らし……朝日に包まれながら心地よい倦怠感と解放感の中でのピロートーク……!物凄くロマンチックですよね!」

 

「隙のない、情事計画……さすがは神代の魔術師」

 

「えへへ、褒められちゃいました…………あんっ!」

 

体力を取り戻した私の躰を半回転させたマスターは背中から、私の性器へと手を這わせてきました。

今の今まで散々に射精された私の雌穴にマスターの手が伸びます。

 

その手は背中から腰、太腿を蛇のようにいやらしく肌を滑らしていっています。

散々、躰中を愛撫され続けた私もやっぱり彼の手から押し寄せてくるこの甘美な刺激は何度受けても平静を保つのは不可能でした。

 

「あっ、あぁっ……あんぅ!!指、ゆび、はいってき、たぁっ……ひぅぅ!!」

 

マスターの愛液と私の愛液が混ざり合い、元の形がわからない程にグチョグチョになっている秘所へと彼の指が侵入していきます。

左右からくぱぁっと開かされつつ、弄り回されている私の膣内。その中で蠢く何本もの指達はその肉壷に残っているマスターの残滓を膣壁に塗りたくり、染み込ませるような手淫を行ってきました。

 

「ひあぁ……!あぁぁっ、あっ!……ナカへぇ、たくさん、ごりごりってぇ……ふぅっ……!あ、き、もちいいぃっ……!」

 

「ついさっきまであんなに性器で突いたのに、指だけでこんなに乱れちゃって……そういえば口で舐めた時もすんごい喘いでたよね……。本当、節操無しなんだからメディアってば」

 

「あぁっ!はぁっ……!はぅぅっ!ご、ごめんなさぁいぃ……!らって、らっへぇ……マスターのからだなら、私のどこに触れてもびくんびくんってなっちゃうからぁ……選べないでしゅぅ……!指も唇も舌も足もおちんちんもぉ……全部しゅきで、きもちよくなっちゃうんですぅぅ……!ますたぁの、ますたぁのからだがおかしいんですぅ……!」

 

襲い来る悦楽に腰と背筋が暴れるのを止められない。何度も何度も愛液を吹き出し、ベッドのシミがどんどん広がっていく。脱水症状になってもおかしくないぐらい体中から水分を垂れ流している私は犬のように舌をだらしなくのぞかせていました。

 

マスターの体にもたれかかっている私、少し後ろの方に向けば……すぐ近くに彼の顔があります。

獣欲を貪っている、神代の魔術師としての威厳の欠片も無い私が欲しがっているものを言葉に出さなくとも彼はわかってくれました。

 

「はぇ、ふぇ……あぁ……ましゅたぁ……れろぉ、んちゅ、ちゅぱぁ……」

 

徐々に近づくマスターの唇。内にある獣を悟らせない彼の純朴な顔から目を離せないまま、気付けば舌を絡め獲られてしまいました。マスターの瞳に映る私のなんとはしたない表情のことか。

 

手淫をされながら絡み合う舌。

散々、 滴らせた愛液と汗によって失った水分を補充する為に私は彼の唾液を何度も飲み込み、その喉と心を潤していきます。

 

「んむぅ、ちゅ、ちゅ……ちゅるぅ……んぐぅ、んぐっ、むぅ、んあっ……もっとぉ、もっとぉ……ちゅぅっ……んんんふぅっ!!?」

 

キスに夢中になっていた私は股間を弄っていた彼の両手の内の片方が私の胸の中心、興奮の度合いを示しているそのぷっくりとした先端部分に迫っているのに気づきませんでした。

 

「ひ、ひぁ……!おっぱいぃ……コリコリしゃれてぇ……んふぁぁ!あっ、あっ、あぁ!」

 

優しくかつ素早い、速度で乳頭を扱かれている。

責められる場所が増えれば増える程に私の溢れ出る淫汁が増えている気がした。

 

「んんんんぅっ……!!んじゅぅぅ!!」

 

唇を吸い付かれながら、今度は乳首だけではなく、下の方で勃ってしまっている淫芽の方にもマスターの指が伸びます。

充血しているどちらの性感帯も二本の指に挟まれ、こねくり回され、引っ張られ、引っかかれ、押し付けられ……その度に私は悦楽の悲鳴をマスターの口内に響かせています。

 

私の喜びが……悦びが……歓喜が……快楽が……まるで彼に取り込まれてしまっているように。

 

「んぐぅっ!んちゅるぅぅ……んぁっ、あっ、はぁぁあっ!!はっ、はっ、キモチいい所、多すぎて、あんぅぅ!!あたまが回りらないぃ……んひぃ、あぁ、ん、んちゅ、ちゅ……んちゅぅ!」

 

舌、乳首、クリトリス、背後から抱き締められ、敏感な場所の3点責めをされている私は大小関わらずもう何度絶頂を繰り返してしまっているのか。

 

ふと……情欲の奔流に飲み込まれている中、私の股に硬いナニかが擦り付けられている感触がしました。

 

「んんぅ!んぁっ……あっ……あんぅぅ!こすってるだけでぇぇ……!……ちゅぅぅっ……!!」

 

お互いに服を着ていないのだから、マスターの大事な部分がこうして私の割れ目に接しているのは体勢上当然でした。

今まであれだけ射精しても萎える事のない彼の剛直は私の淫裂を前後へ行き来しています。

下に目線をおとすと、ぬっちゅ、ぬっちゅと亀頭が私の下腹部から何度も顔を出している光景が。

 

「んちゅ、ちゅぁ……あひぃ、んむむぅっ!……ちゅ、ちゅるぅ……じゅるぅぅ……!」

 

(あぁ、あっぁっ!!すごい、すごい!やっぱりすごいっ!!ナカに入れられているワケでもないのに、入口をマスターのおちんちんで擦れられているだけでこんなにキモチ良くなれるぅぅ!あぁ……あぁ!腰が自然に浮いちゃうのぉ……!)

 

今度は素股が4つ目の性感帯責めとして参戦してきました。

マスターの熱く、逞しく、脈立っているソレの感触が直に私の雌の部分に触れている事実が、愛されているという悦びと実感を与えてくれます。

 

「ちゅ……んちゅ、んぁっ……?……きゃっ!!」

 

そして、彼の愛撫を全身くまなく受けていた私は今度はベッドへと押し倒されました。

仰向けになった私の目の前には散々、我が陰部を弄っていたマスターの男根……そして、マスターの顔は私の股の間に埋められています。

お互いの性器がお互いの顔の前に……私達は示し合わせたかのように愛する物の大事な部分へと口を付け、舌を蠢かせました。

 

「んぶぅっ、んんぐぅ、んじゅ、じゅぶぅ……じゅるぅ、じぼぉ……」

 

マスターの腰が動き、雄の匂いを私の鼻腔へと漂わせがら、その象徴が喉奥を突いていきます。

苦しい筈なのに、その苦しさが心地よくて、もうこのまま窒息死しても良いと思うぐらいに私は下品な音を立ててしまいます。

涎とマスターの先走りが混ざり合った液が口の端から零れてもお構いなしに自ら頭を前後へ、淫らに激しく動かし続けました。

 

「んぶぅっ!んんむぅ!!んじゅぅぅ!!んんんふぅぅっ!!!んじゅるるぅっ……!!」

 

そして、ピッタリと隙間なく私の陰唇に口をつけているマスターはもう勝手知ったるように、そのナカを縦横無尽に舌で這わせていました。

唇で吸引されながら、膣壁を舌の粘膜がべっとりと接触するとフェラチオを続けながら、私の痩身は激しく痙攣せざるを得ませんでした。それを連続で何度もされるのです。失神してもおかしくない程の刺激は私の躰を駆け巡るのです。

 

「んぐぅっ……!んごぉ、んじゅぅぅ!!じゅっ、ちゅむぅぅ……!んぶぅぅ……!」

 

(こんなの耐えられない!耐えられるわけがありません!口からも、おまんこからも……!上からも、下からも、キモチいいものが、熱いものが、絶え間なく押し寄せて……!あぁ、あぁぁっ!幸せ過ぎて、幸せな気持ちがいっぱいになり過ぎて、破裂しちゃう!意識が飛んじゃう!!)

 

私のフィジカル面を考えると、いくら宝具で回復出来るといってもマスターとの性交の時に余りの快楽で気絶してしまう可能性は絶対に出てきます。

 

……ですが、心配はご無用!当然そこも対策はしています。

そう、気絶しそうになったら強制的に意識を覚醒させるように縛る魔術を自らにかけておけばいいのです。本来は尋問用とか拷問用とかそういう怖い事に使うような魔術ですが、考え方一つでこんなハッピーな使用方法もあるのです!

 

体力が無くなっても宝具で回復させればいいし、気絶しそうになっても事前にかけておいた魔術が強制的に私を目覚めさせてくれるわけで、もう何も憂いはありません。マスターが私の躰に為してくれる全ての行為をこの脳髄に刻み込む事が出来る。時間が許す限りマスターと愛し続ける事が出来る…………あぁ、それはなんて甘美で耽美で素晴らしさに満ちた時間……。

 

絶対に私を裏切らない人とこうも肌を重ね続ける時間は何ものにも代え難い至福の時…………だから、マスター、もっともっともっともっともっともっともっと私に貴方の匂いを、雄を、擦りつけて下さい。何があっても忘れないように私の霊基に……()()に、その精を刻み込んで……。

 

「んんんぶぅぅっ……!!んんぐぐぅっ――――!!」

 

(入ってきたぁ……マスターの精子、たくさん……!)

 

クリトリスを甘噛みされ、舌先で突かれながら、私の口内に飛び込んでくるマスターの素。

気絶無効の魔術をかけていなかったら、これだけでもう5、6回は意識を失ってもおかしくない程の快楽の暴力。

 

「んぐっ、んぐっ、んぐっ、んぐっ、んぐぅっ……じゅっ、ちゅぅ、ちゅるぅぅ、じゅるるるぅ……!」

 

流れ込むマスターの性の奔流。それは乾き切った砂漠の果てに見つけたオアシスのように私の喉を潤してくれました。ドロドロで濃い、本来なら飲みづらい男の人の精液。ですが……不思議な事なのですがマスターのモノだと難なく喉を通り、私の胃を満たしてくれるのです。どんな高価な美酒にも負けない喉ごしで。

 

「…………んんっ、ちゅ、んぶぅ、ぷはぁ……へぇあぁっ、んあぁっ、あっ、あぁ…………」

 

「おーい、生きてる?メディア?」

 

マスターの精液の美味に酔いしれて、緩み切った私の頬をぷにぷにと体勢を戻した彼がその両手で挟んできました。

 

「うへへ……いきてましゅよぉ……」

 

「酔っ払いみたいになってんよ」

 

「……んぅ、マスターの、えっちなおつゆをあんなに飲んでしまったですぅ……ほろ酔い気分になっても仕方ないでしょう?」

 

「俺の精液にアルコール成分は含まれてないんですが」

 

「……う――ん、女性サーヴァントをマスター漬けにする麻薬的成分があると思うんですけどねぇ……」

 

「なにそれ俺のアソコ怖い」

 

なんて、他愛のない会話を挟みながら、二人は向かい合っています。あんなに出したというのにマスターのおちんちんは再び、臨戦態勢へ。

その事を指摘すれば、「いや、普通にそんなドエロく濡れ濡れになっているメディアの全裸見て元気にならないわけないじゃん」と子宮を疼かせてくれるような事を言ってくれます。

 

私だって!全裸どころか!マスターが微笑んでくれる顔を見るだけでお股がビショビショになりますけどっ!…………………………さすがに淑女として少々はしたなかったですね。

 

「今日は何度も交わせてくれるんでしょ、メディア」

 

「……んぁ、えぇ……貴方がそれを望むなら、そして私もそれを望んでいます」

 

幾度、体を重ね合わせようとも、マスターの性の象徴が私の肉壷へ埋まっていく光景、感触、痺れ、疼き、悦楽、温かさ、喜びは色褪せる事はありません。

既に二人の性器はお互いの愛汁で湿りに湿って、すんなりと喰らい合います。

 

「あんぅっ……!あっ、はぁぁっ……!!」

 

それでも私は初物の少女のように新鮮な反応を、あるいは快楽を覚えた雌のような蕩けた反応を、その両方が混じった嬌声を海へと響かせました。

 

「ひぁ、あっ……!ぇあぁっ……!!んふぅぁっ!」

 

コツ、コツと……肉襞を抉ってくるマスターの亀頭が私の赤ちゃんを作る部屋の入り口をノックしてきます。

私の体が揺れているのは、船に乗っているからではなく、マスターからの心地良いストロークから。

リズム良く、飽きさせない抽送運動が私の膣を収縮させるスパイスになります。

 

「ああぁ……ましゅたぁ、ましゅたぁ……ちゅ、ちゅっ、んちゅぅ……もう、こうしてるだけでぇ、幸せぇ……んちゅぅ、ちゅるぅ、ちゅぱぁ……んふぅぅ!!」

 

幼児化したように甘える私をあやすようにマスターは顔にキスの雨を降らしてくれます。

子宮と顔の両方に目いっぱいキスされた私の心はマスターでいっぱい。

サーヴァントになってから、本当の愛を知った私。けど、恋に遅すぎるなんて事はないのです。彼を絶対に離したくないと体で表現するかのように全身を使って彼にしがみつきます。

 

少しでもマスターと私が触れ合っている体の面積を増やす為に。

 

「れぇ、ちゅ……んぁぁっ、あぁっ!んふっぁっ!!……ぃぁあっ!なんども、なんども、おまんこぉ、ちゅっちゅっ、されるのをしゅきぃ……んあぁぁ!あぁぁっ!こ、れだけでぇ……!魔力が溢れちゃいそうですぅぅ……!ああひぃぃっ……!!あ、あ、あぁぁ……」

 

右手でお尻を掴み、背中を左手イヤらしい動きで這わせるマスター。彼が私の体に夢中になってくれている。彼を満足させられている。彼に愛してもらっている。それを言葉だけではなく、性交で証明されているのがたまらなく私の嬌声を大きくさせ、心臓の動悸を激しくさせるのです。

 

「ひぅぅっ!あっ、あんぅぅ!あ、頭がとんじゃぅ、とんじゃぅぅ……!!」

 

比喩表現ではなく、本当の意味で頭が飛びそうになる私。

ですが、嬉しいことに気絶無効の魔術が私の意識を繋ぎ止めてくれます。

意識を手放しそうになる度にかすかな光の粒子が私を包み、覚醒させてくれます。

 

「あっ、あぁぁっ!なんども、なんどもぉ……!いっぱい、たくしゃん、ひあぁっ!!あアァっ……!マスターの体をずっと、感じさせてぇ……!!」

 

「……あぁ、これからずっと数え切れない程の快楽と愛を注ぎこむよ……君が嫌って言っても、もう絶対に逃がさないから、ね」

 

「……い、いうわけぇ、あぁぁっ!ないですぅぅ……!!はぁ、あはァっ……!に、逃げるわけ、ないですぅぅっ……!!あんぅ、あんぅぅ……!マスターは、ますたぁは……わたしとぉ、皆とぉ……家族になるんですからぁぁ……!!」

 

スローペースだったストロークが徐々に早く、情熱的になり、私の膣内をマスターの竿が行き来する回数が段違いになってきました。

二人の下腹部で潰れるクリトリスも、胸板で潰れている乳首も、汗と淫液でべとべとになっている私達の体は甲板の上でどこまでも情欲に溺れた雄と雌の匂いをまき散らしていました。

 

「おあぁぁっ、あぁぁ……!ますたぁのまた大きくなってぇ……わたしの体をぉ……ひうううぅんんんぅ……!」

 

何度も交わった私だからこそわかるマスターが射精する瞬間の予兆。大きかった肉棒がさらに膨らみ、溜まった欲望を吐き出す先触れが文字通り私の体のナカで起きているのが直にわかりました。

 

「……あぁ、またっ、出すぞっ……!」

 

「……はいぃ、はいっ、何度でも、何度でもぉ、……私の体内いっぱいを……あぁぁっ!貴方の命で満たして下さいぃぃっ…………!!」

 

 

――ビュルルルルルゥッ……!!!ドピュッ!ドピュッ!ビュルルゥ……!!

 

本日9回目の射精。それでも勢いは衰えるどころかむしろ、更に強さを増して、私の子宮内へ出されていました。この精液が流れ込んでくる感触だけでも私は何度イキ、何度意識を失いかけてしまったのか。

人は気持ち良すぎると、幸せ過ぎると死んでしまう……マスターとのセックスはまさにそれを体現していると言ってもおかしくはないかもしれません。

 

「あぁぁぁぁぁぁ―――――……!!!!ああぁくぅぅぁあぁっ!!あぁっ!アァァ……!」

 

マスターなら私が仮にセックスの最中に快楽死しても、引き続き狂うような性交で魂を呼び戻してくれるかもしれませんが。

彼の腰の上で体を跳ねさせながら、絶頂の余韻に浸っている私はそんなあってもおかしくなさそうな事を想像していました。

あ……体力の限界が来ました。また宝具を使わなきゃ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――そして、その後も。

 

 

 

「んぅぅっ!んふぅぅっ!!んんんふぅぅっ!んふぅぅ!!」

 

あまりの淫熱を持った快楽の波にベッドの枕にぎゅっと顔を埋めるしかない私をマスターは後ろから交尾するようにパンパンと子作り運動を続けていました。

 

 

――そして、また宝具で回復して。

 

 

 

「へあぁっ、あぁぉ……!おおおぁあっ‥‥‥!!おひりだめぇぇ……!んほぉっ……!んぉぁっ、だ、めぇ……下品な声と音ぉ、出ちゃいますからぁぁっ、あへぇあぁっ!!」

 

もう一つの恥かしい穴をねちっこく苛めるように挿入と抜去の前後運動の往復が3桁に届くまで繰り返して、私の躰を開発して、私に新たな悦楽を教え込み。

 

 

――そして、また宝具で回復して。

 

 

 

「だめぇ、だめぇ……!こんな場所でなんてぇぁぁっ、ああァァっ!!……恥かし過ぎ、ますよぉぉぁっ、ますたぁぁっ……!あひぃ、んあぁぁっ!!」

 

船頭ギリギリの所でM字開脚されたまま、後ろから抱っこされた私は夜の大海原と月を目にしながら、隠すものも何も無く、マスターの男性器によって陰部から愛汁を掻き出され続けました。

 

「ひあああぁっ!あぁっ……あんぅぅぅ!!ふきだしゅのぉ、とまらなぁぁ、私のえっちなおつゆが……うみにかえっていくのぉぉっ……!」

 

こう、船頭で愛し合っていると、まるで映画のワンシーンみたいですね。えっと確かに前にマスターと一緒に見た……タイタニックでしたっけ?

 

 

 

 

 

――何度も、何度も、宝具で回復しました。魔術で気絶すら封じた愛欲に満ちた二人の甘酸っぱい時間。

 

 

…………まぁ、結局、朝日が昇ってもピロートークはせず、時間いっぱいまで二人でドロドロに交じりあっちゃったんですけどね!計画通りに行かないのが男女の関係の醍醐味の一つでもあると思います!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【カルデア英霊掲示板】 リリィの会No.243

 

 

 

072:白騎士

宝具で自身の体力を回復し……半永久的にマスターとまぐあう……考えましたねメディアさん。こんな事なら私もマーリンにもっと魔術を教わっておくべきでした

 

 

073:スーパー・アルティメット・サンタ・リリィ

なるほどぉ、では私も『聖者の贈り物C』をうまく改良出来れば、トナカイさんともっと長くイチャイチャ出来るという事ですか?

 

 

074:アナとスク水のランサー

くっ……!何故、私には回復スキルが無いのですか!せめて、せめて……キャスター適正があればっ!

 

 

075:ナカよしの魔術師さん

宜しければ、私が事前にかけても構いませんが、そんな事をしなくてもマスターに令呪で頼んでもらえばいいかもしれませんよ。「性交中に意識を失うな」みたいな感じで

 

 

076:アナとスク水のランサー

その手がありましたか!

 

 

077:白騎士

私も時々、使わせてもらってますね。マスターの令呪が私という体を縛り、拘束し、締め付けるこの快感。令呪プレイというのは一つの拘束プレイなのだと!!この間は「中出しされるまで絶対にイッてはならない」なんて令呪で散々焦らされて、首も絞められて、お尻も叩かれまくって、溜まりに溜まった快楽の爆発は…………凄まじくて、もう、私は……………………ふぅ

 

 

078:スーパー・アルティメット・サンタ・リリィ

ゴクリ……

 

 

079:アナとスク水のランサー

そこの所の話をくわしく

 

 

080:白騎士

いえ、ここで私が長々と語るよりも貴方達が実際に体感した方が何百倍も理解出来ると思います。ただ、マスターの大事な令呪を使わせてしまうのが悩みの種なのですが……。

 

 

081:スーパー・アルティメット・サンタ・リリィ

いっそずっと効果が残り続ける令呪とかあればいいんですけどね

 

 

082:ナカよしの魔術師さん

そんな貴方達に「淫紋令呪」という代物がありましてね……

 

 

083:アナとスク水のランサー

あ、大きい私達がそんな薄い本を隠し持っていたのをちらっと見た事があります。なんでしょう、下腹部辺りに通常の令呪と違った紋様が刻み込まれ、その令呪の持ち主の手でしか気持ち良くなれない……まさに独占欲の現れとでも言いべきでしょうか。性欲や感度を増幅させる効果もあるとか。

 

 

084:スーパー・アルティメット・サンタ・リリィ

083さん……あなたっ、その本、読みこんでいますねっ!

 

 

085:アナとスク水のランサー

答える必要はありません

 

 

086:白騎士

そんな物を刻まなくとも、マスターに初めてを捧げたあの日から私は既にマスターの物ですよ。彼と体を重ねる回数が増えれば増える程、性欲も感度も上昇している気がしますし。………………ふむ、ですが、マスターの所有物であるというのがわかる場所に証明されるのはいいかもしれません

 

 

「これで、君は一生、俺のモノとなった。リリィ」

 

「あ、あ、あぁ、あぁぁっ……ますたぁっ……こんな令呪を刻まなくとも私は、私は、貴方様を……」

 

「許せリリィ、君を信用していないわけじゃないんだ…………だが、俺の男としての本能が。もう普通の主従の…………男女の関係だけでは満足出来なくなってしまったんだ。君をもっと縛り付けたい。君を二度と俺の元から離れられないようにしたい。そんな醜い男の独占欲の現れだ。失望してくれてもいい……」

 

「そんなこと、そんなこと、失望なんてするワケがありません。嬉しい……嬉しいんです、マスターがそこまで私に拘泥してくれる事が、私がマスターの物で、剣で、女である事を一生証明してくれるモノを刻み込んでくれたのがっ……!」

 

 

087:アナとスク水のランサー

急に妄想を打ち込むのはNG

 

 

088:スーパー・アルティメット・サンタ・リリィ

いっそ、トナカイさんに中出しされた数だけその「淫紋令呪」とやらの画数が増えるのはどうでしょうか?

 

 

089:ナカよしの魔術師さん

採用です

 

 

090:白騎士

「下腹部だけとは言わず、体中にマスターの令呪を刻んで下さい……!尻にも、腰にも、胸にも、腹にも、背中にも、首にも、体の中さえもぉ……」

 

「リリィっ!!」

 

「あぁ、熱い、あつい、あついあついあついっ!……体中にマスターの熱が駆け巡っているのを感じますっ……!もう、令呪だけじゃ足りませんっ!貴方のモノを私のナカにぃ……いれ、てぇ……!」

 

荒れ狂う私の痴態に興奮してくれたマスターの怒張がそのままゆっくりと淫紋が妖しく光る私の雌園へと迫り、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ――、ちょっと休憩です」

 

パソコンから離れ、自室で体をぐぅーっと伸ばします。

やはりリリィの属性である娘達は皆、純真で純朴でついお話が弾んでしまいますね。これからのマスターとのプレイとのインスピレーションにもなります。こういった何気ないガールズトークは掛け替えのない宝物です。

 

「……ふふ」

 

少しの間、ぼぉーっとしていた私の視界に机の上にこんもりと置いてある()()()()()()()()が映りました。どうしてもそれを見てしまうと私は笑みを零してしまいます。

 

 

 

不思議に思わなかったのでしょうか。

 

確かにマスター自ら濃厚な魔力を供給すれば、戦闘力が上がってもおかしくはありません。

ですが、それがずぅっと続くのは不思議ですよね。マスターに与えられた魔力だって無限にあるわけではないのですから。しかも、あまりに調子が上がり過ぎてる気もすると思わなかったのでしょうか。

 

戦闘面の話だけではありません。良く耳に入りますが、マスターと体を重ねた方達で”胸が成長した”とか”体付きが少し女らしくなった気がする”とか……。サーヴァントの、英霊の、肉体が自然と変化するのは成長するのはあり得ない筈です。スキルなどといった何かしらの外的要因が無い限り。

 

何故気付かないのでしょうか……。

 

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マスターの起源は『親愛』。

情を交わし、愛を交わし、体を交わし、心を通わせた異性と共に寄り添い生きていきたいと願う彼の想い。

 

その想いは召喚された私達がいつか座に帰り、カルデアにいた時の記憶を、彼と共にいた時の記憶を失う事を許さない愛を持ちます。

 

彼の精によって受肉しつつある私達は座にいる本体とも違う、生前とも違う、ここでマスターと出会い、共に生き、共に愛し合った一つの個としてこの星に根を下ろす事を許されたのです。

 

サーヴァント、それは座にいる本体のコピーのようなもの。しかし、マスターは私達をコピーとはしませんでした。只の人として、女として、見て、接し、愛してくれたのです。そして、その結果が新たな個を生み出す結果となり…………。

 

「ふふ、フフフフフフフフ……」

 

この事に気付いているのはスカサハさんと玉藻さんぐらいでしょうか。特にスカサハさんの場合はきっと人理修復後に自分の体の状態に気付いたでしょうね。あ、後、アルテラさんあたりもわかっていそうです……何だかんだで抜け目の無い人ですから。

 

まだ完全に受肉している人は今の所いませんが、焦る事はありません。時間の問題ですから。

 

私は先程、視界に入れていた大量のお守り、「道具作成B」で作り上げた子宝のお守りや安産祈願のお守りの内の一つを手に取ります。

 

「受肉した方から、この護符をあげましょう。えぇ……キャスタークラスの叡智を持って作り上げたこのお守りの効果は覿面ですよ」

 

誰に聞かせるわけでもなく、私の独り言は空気に溶けていきます。

私が想い描く未来予想図。それが現実になると考えるだけで、笑みがどんどん深くなってしまいます。

 

 

「皆で、マスターの子を産みましょう。マスターと本当の意味で家族になりましょう。そしてマスターがいつか長い長い戦いの果てに疲れたら、家族皆で平和な所でマイホームを建てて暮らしましょう」

 

邪魔する方達は消し去ります。問答無用で悉くパンケーキにしてあげます。家を、家族を守る妻は強いのです。

 

 

だってそれが私の家族計画なのですから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




『親愛』――「信」じ抜き、「信」じられる愛。「親」しみを持ち、共に人生を歩む愛。それは溺れて、二度と抜け出せない程に「深」い愛。歴史に名を残した彼女達とそんな関係になるのは理から外れた「神」の如き愛を持たねば果たせぬもの。
信愛・親愛・深愛・神愛……それを突き通すために彼は人ならざるナニかを得てしまったのか。









アタランテ「お守りマダー?」

メディア・リリィ「ハウスですよ」








4人目のリリィ。いやぁ、リリィは皆良い子なんですけど、良い子過ぎて、やっぱりちょっとパンチが弱いですよね。まぁ、この純朴さが魅力なのですが。
彼女にが今までちょっとだけ謎だったマスターのあれこれを語らせました。一体何がわかったのかと言われれば私もわかりません。




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DEAD OR ALIVE ECSTASY 1(CCCイベ・本番無し)

ちょっと職場&通院の毎日で、時間が中々取れなかったけど、せめて更新は1月以上は空けたくないというよくわからない自分ルールでの投稿。リアルがしんどい。
出来れば、1話でまとめたかったけど、それをすると更新がもっと遅くなる&文字数がわや多くなるという事で分けて投稿します。基本一話完結だからね、偶には例外もあるって事で。

あ、後カルデアコレクション、ブリュンヒルデ。クレオパトラ、剣ネロ更新しました。







CCCイベが終わってから5ヶ月以上……ずっとこの話を書きたかった。


 ――いつかの話。

 

 カルデアの運営における重要な資金源の一つ海洋油田基地セラフィックス。

 そのセラフィックスとカルデアの定時連絡の時間に事は起きた。

 

 何者か、からの突然のSOS。マリアナ海溝へと沈み、特異点と化したセラフィックス。

 現在のカルデアでは不可能な未来へのレイシフトを行う為に超上級AI、BBと名乗る謎の少女が手を貸す。

 

 彼女が挨拶代わりに始めた『BBチャンネル』が、アルテラにハッキングし返され、『アルテラちゃんねる』に乗っ取られるという珍事もあったが、BBの名誉の為に割愛。

 

 何はともあれ、カルデア唯一のマスターは彼女の力を借り、レイシフトへ。

 突発的な特異点へのレイシフト……いつもの如く彼と行動を共にする為、付いてきてるサーヴァント達も言うまでもない事だがいる……そう、()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「申し訳ございませんが、顔は無害系、中身は人外系のセンパイにはハードすら生温い、ルナティックモードに挑戦して頂きます」

 

「連れ添っているサーヴァント達も全員シャットアウト、カルデアへ強制送還させて頂きました」

 

「電脳の海を彷徨うサーヴァント達も皆、話が通じない狂化系サーヴァント限定です。下手にチョロそうな女の子サーヴァント用意してセンパイに即オチさせられてもアレですし?仲間フラグも木っ端微塵にへし折らせてもらいました」

 

「…………まぁ、それだとさすがに無理ゲーなので、海よりも慈悲深いグレートデビルなBBちゃんは救済措置を哀れなセンパイに施してあげるのでした♪」

 

「………………私と袂を分かった壊れかけの二人の人形。それがセンパイに力を貸してくれるか細い蜘蛛の糸です。それまで、孤独な孤独なSE.RA.PHでのバケイション、どうか楽しんで下さいね」

 

(ここまで徹底するぐらいにはあの性悪発禁女もセンパイを警戒しているのでしょうか?私からすれば、発禁具合はセンパイもあの女もいい勝負な気がしますが)

 

「私がやる事は変わりませんけど、ね。どうか無様に面白おかしく足掻いて下さいセ・ン・パ・イ♡」

 

 

 

 

「ふぅ、……………………というか私の『BBチャンネル』に平気でハックをかましてきたあの褐色白髪Tシャツサーヴァントマジで何者なんですか…………『アルテラちゃん』とか言ってましたけど…………まさか、ですよね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ポツンと一人デジタルチックな世界へレイシフトしたマスター。

 セラフィックスを見たことのない彼は「結構ハイカラなデザインをした油田基地だなー」と見当外れの事を考えながら、辺りを散策していた。

 

 サーヴァントを一人も連れていない彼はSE.RA.PHで行われている聖杯戦争に傾倒している狂化サーヴァント達にとっては格好の餌食だった。

 丸腰のマスター、恐れるに足らず。誰もがそう思うだろう。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

「愛ッ!恩ッ!ッ讐!」

 

 ――グシャアァッ!!

 

 追い打ちの如く、地に伏せたサーヴァントの頭に拳骨を叩き込むマスター。

 透き通った霊子で構成されたガラスのようなSE.RA.PHの地面ごと粉砕させかけている一撃でサーヴァントを塵へと帰させていた。

 

 彼曰く、この武術はエドモン直伝『ファリア神拳・改』なるものらしい。

 復讐者たる巌窟王の恩讐力にスパイスとしてマスターの溢れる愛をプラスした『ファリア神拳・改』。師匠たる巌窟王をリスペクトするように黒いモヤを出して、クハハと笑いながら敵に拳を叩き込み、時折数人に増えたりして戦うマスター。「愛ある拳に防ぐ術なし!」と叫び敵エネミーを屠るマスターはこの武術を授けてくれた巌窟王に感謝していた。

 

『…………共犯者よ、お前にそんな物を授けた記憶は無いぞ…………いや、もう何も言うまい。自身の道を突き進めばいい。お前には全てが許されている……が、その名称だけは承認出来ん』

 

 彼がいればそんなツッコミがされていたかもしれない。

 

 しかし、律儀なツッコミをしてくれる相棒もいなければ、いつも傍らに寄り添ってくれるサーヴァント達、モニター越しに語りかけてくれる変態芸術家に愛しき後輩の姿も無い。

 

「寂しいなぁ……」

 

 そうぼやきながら、彼はどうしたものかと思考を続ける。

 人外系頭おかしいマスター筆頭に名を連ねている彼だが、基本的に寂しがりやなのだ。彼が数多のサーヴァント達と交わって(性的にも)いるのも人一倍その傾向が強いからかもしれない。

 

 彼はもしかしたら、一人であらゆる事を為し得る可能性を持った存在かもしれない。

 だが、彼にとってそんな物は何の意味も持たない事だった。

 

 たった一人で何か出来たとしてにそれに何の意味がある?たった一人で勝利を掴んだとしてそれに何の意味がある?

 一緒に喜びや悲しみを分かち合う仲間が、自分のやる事に反応を返してくれたり、怒ったり、呆れたり、引いてくれたり、嬉しがってくれたり、そんな多彩な表情を見せてくれる仲間の温もりがなければ虚しいだけ。

 

 ともあれ、そんな個人的な感情はカルデアに帰った後で別(性)の方法で発散するとして……いまいちこの特異点におけるゴールが見えないマスターは困っていた。

 このまま狂化サーヴァント達をひたすら屠ってこの特異点が解決するならそうするが、それでは駄目だと直感が囁く。こう大まかでもいいから攻略ルート的なものが欲しい。この現在のセラフィックスの事情に精通している誰かでもいてくれればいいのだが。

 そんな願いに応えてくれるように彼の視界がジャックされ、この特異点に自分を送り込んだ少女のやけにエネルギッシュな声が聞こえた。

 

 

 

『BBチャンネルゥゥッ!!』

 

 

「ふふん、SE.RA.PHのサーヴァント達を拳でボコる傍若無人な脳筋プレイをするセンパイに少々ドン引きしながらもインテリジェンスなアイディアを授けてあげる私のにやあああああああああああぁぁっ!!?」

 

 一人ぼっちで寂しがっていた彼は思わず、目の前の少女のお腹に抱き着いてしまった。

 たとえその相手が自分をこの状況に陥れた張本人だったとしても、カルデアに現れた時にアルテラちゃんに番組を乗っ取られて半ベソをかいていた哀れな少女だろうとも。

 顔見知りが現れた事に寂寥感が爆発してしまった彼は条件反射のように温もりを求め飛び込んでしまったのだ。

 それはもうスリスリと、傍目を気にせずスリスリと。

 

「ちぉおおおっと、待ちなさいってば!!確かにBBちゃんの魅力にメロメロになってしまうのは致し方ありませんが、さすがにそこまで許したつもりはありませんよぉ!ってもおおおお!顔をスリスリしなああぁいいっ!!こらっ!めっ!めっ!ですよ!センパイ!!……だから、なんでさっきから私のスタンが効いてないんですかぁぁ!!ハウス!ハウスッ!ハウスですってばぁ!センパアアアイ!」

 

 人恋しさ120%となってしまったマスターはその後、BBのC.C.C(カースト・キューピッド・クレンザー)でなんとか正気を取り戻した。

 

「…………なんですか?あれですか?普段は人外っぷりをアピールしておきながら、こういう時には弱い所を見せてギャップ萌えでも狙ってるんですか?あざとい、さすがあざといですねセンパイ。いきなりのお触りでBBちゃんもうプンプンですよ!はい駄目!ダメです!そんな捨てられた子犬のような可愛らしい瞳でこっちを見つめてもダメですからね!正座を崩さない!!え?パンツが見えてる?残念!これはレオタードです!パンツじゃないから恥ずかしくありません!『だがそこがいい(キリッ』じゃないです!本当に反省してます?」

 

 BBのガチ宝具を受け、頭にたんこぶを作り、彼女の前で正座するマスター。

 この人の耐久力どうなってるんですかという困惑はひとまず置いておく事にしたBBはさっさと本題に入る事にした。時間を取れば取るほどに彼のペースになってしまう危険性がある故に。

 

「――――というわけで128騎のサーヴァントとマスター達によるかつてないほどの大規模な聖杯戦争が始まっちゃってるわけなんです。しかも全員がバーサクってる対話無用情け無用の即戦闘展開!サーヴァントを連れていないセンパイなんてひとたまりもあり………………………………ま、まぁ、とにかくマスターはサーヴァントを連れていないと話になりませんよね?何故、セラフィックスが電脳化してしまったのか?その謎を解く為にもセンパイにはしっかりとかつ情けなく奔走してもらわないといけません!」

 

 ビッと不良生徒を叱りつける教師のように指示棒をマスターへ指すBB。

 

「某有名RPGでもセーブといえば教会!何度も同じような事を聞き返してくるうっとうしい神父の話をAボタン連打で聞き流し、冒険の書に記録する……センパイにはそんな安息地でもある西洋の礼拝堂を目指してもらいます!BBちゃんマジ神GMって歓喜しちゃって下さいね?」

 

 

 

 

 そう言ってチャンネルを消したBBの指示を疑う事なく十字架が目立つ礼拝堂を目指すマスター。

 当然、道中に出くわすサーヴァント及び攻性プログラムは全てが問答無用で襲いかかってくる。「なかまにしますか」とかそれ以前の問題であった。

 敵エネミーを払い除け、教会へとダイナミックお邪魔しますをしたマスター。

 室内は壁には罅が入り、机、床には埃が被り、長椅子は乱雑に置かれているという荒れ果てた様相だった。

 

 BBが言うような安息地のイメージとは程遠いものだったが、マスターには別段不満は無かった。

 こういう古ぼけた教会も悪くない……見ず知らずの誰かと唐突でありながら運命的な出会いを果たしてしまいそうな雰囲気があると若干テンションが上がったマスターの瞳にあるものが映る。

 

 構内の端、壁に寄りかかっている青紫色の美少女。ステンドグラスから漏れている光に照らされているその少女の姿はまるで絵画のような美しさと儚さを重ね合わせていた。

 

 

 

「…………だれ、ですか……?あなたは…………?」

 

 ――教会にて打ち捨てられていた壊れかけのプリマドンナ……メルトリリス。その日彼女は規格外の運命と出会った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カルデアのマスター……セラフィックスからのSOS……なるほど、事情はわかりました。しかし突発的な出来事とはいえ、たった一人でこの迷宮を歩き回るのは命知らずにもほどがありますよ?運良く礼拝堂にたどり着いたから良かったものの、一歩間違えれば貴方の全てが終わっていたのかもしれないのですよ?」

 

 カツカツと電子の海に響く人ならざる足音。電脳化したセラフィックスの謎を紐解く為にマスターと一人の少女が歩く。

 振る舞いは貞淑であってもその見た目は過激で嗜虐的であった。

 凶悪な棘で出来た鋼鉄の具足。腕をすっぽりと隠している黒色の袖。そして、跳んでしまえばお尻が丸見えになってしまいそうなぐらいに防御力に難がありそうな股間の装備……本当に必要な部分しか隠していない彼女の女の部分に取り付けられている銀色のファウルカップ。

 雰囲気だけではなく、その格好のみでも彼女が普通の存在ではない事がわかる。

 

「……いえ、魔力切れを起こして消滅一歩手前だった私が言う台詞ではありませんでしたね……えぇ、ありがとうございます。私と契約を交わしてくれて…………ですが、どうして私と?今の貴方にサーヴァントが必要だというのは良くわかります。けれど、自分で言うのもなんですが……私の事を怪しく思わなかったのですか?恐ろしいと思わなかったのですか?」

 

「え?」

 

「…………いや、その『何言ってんだ、コイツ?』みたいな顔止めてください。少しイラッとします」

 

「大丈夫、大丈夫。これでもサーヴァントを見る目には自信があるからさ」

 

「普通のサーヴァントじゃないのに?こんな異形な姿でもですか?」

 

「うちのカルデアじゃ、全然平均的だよ。むしろキャラが大人しくて逆に心配になるレベル」

 

「…………ふ、ふふふ、そう、ですか……。そんな話を聞かされては興味が湧いてしまいますよ。貴方の言うカルデアという所に。一度行ってみたいものです」

 

 きっとそれは無理だろうなと、自嘲する気持ちを隠しながらメルトは笑う。

 

「それなら――――」

 

 マスターが言葉を続けようとした瞬間に巨体が二人の前に立ち塞がった。

 3mを超える黒き巨体。体中に文字が浮かんでいる偉丈夫。

 存在感、その佇まいだけでもひれ伏してしまいそうになる程の覇気。

 

「サーヴァントッ!!」

 

「ダレイオスくん!?」

 

「イスカンダルウウウウウゥゥッッ!!!」

 

 BBの言う通り、ここにいるサーヴァント達は皆、等しく狂っている。そしてマスターたる彼がカルデアで契約を結んだサーヴァントはこの聖杯戦争には参加していない。

 話など通じるわけもなく、既に戦闘態勢に入っているバーサーカーを前に、メルトとマスターはたった二人でこの死地を乗り越えなければならない。

 

「マスター!!すぐに私から離れて下さい!…………いえ、離れすぎないように私の目が届く範囲にいて下さい!」

 

 契約を結び、なんとかサーヴァントの体を成した身ではあるが。それでも自身のスペックは現在最低クラスまで落ち切っている。

 この死を象徴したかのような怪物を相手に自分は勝てるのだろうか。

 

(それでも……あの人は、あの人だけは守ってあげないと……!)

 

 ――ついさっき会ったばかりだけど。死にかけていた私と……異形でしかなかった私と契約を結び。何も恐れる事も色眼鏡で見る事もなく、それでも何も知らない私の不安を紛らわしてくれるように暖かく話かけ続けてくれた彼をここで死なせたくない。

 

 教会にて打ち捨てられ、初期化されていたメルトの心にはそれだけがあった。

 あんな優しい人をこんな所で死なせては駄目だと。きっとさっき話してくれたカルデアには彼を待っている人達がたくさんいる。自分なんかより素敵な人がたくさん。

 それは少ししか一緒にしかいなかった自分にもわかる事だと。

 

 焦燥感と不安と決意を心に宿しながら、自慢の脚を構える。

 

「きなさい!バーサーカー!あの人には指一本触れさせないわ!」

 

 戦力差は絶望的、それでも何故かメルトは負ける気がしなかった。一人だったら挫けていたかもしれない。けれど今はマスターという存在が……彼がいる。

 

(ほら、こうして今も私の隣で手を握って……………………)

 

「って何してるんですかああああああぁっ!?」

 

「だって、さっき『私の目が届く範囲にいて下さい』って……」

 

「その前に私から離れて下さいって言ったでしょう!鶏頭ですか貴方は!?」

 

 メルトの驚愕の叫びもどこ吹く風。ダボダボの萌え袖からメルトの手をギュッと握っているマスターには焦りも不安も無かった。

 

「そらっ!奴さんも来てるから話は後!いくよっ!ワン!ツー!」

 

「え、ちょっ!…………きゃっ!?」

 

(あれ……なんか体の調子がいいような?)

 

 手を握ったままマスターと共にバーサーカーの前へと踊り出すメルト。

 そして彼にエスコートされるまま、息ピッタリのタイミングで音を置き去りにする程のハイスピードで繰り出される二人の蹴り。

 

「ォォォッッ……!!!」

 

 それは凶悪な双斧が二人に振り下ろされるよりも先に黒き巨人のどてっ腹へクリーンヒットした。

 マスターとレベル1のサーヴァントによる蹴り。

 ステータスも高水準であるバーサーカーに効くワケもない筈なのだが、敵サーヴァントは苦悶の表情を浮かべ、後退した。

 

(効いてる……?それに、マスターに手を握られてから体が……軽い……)

 

 

 

 このカルデアのマスターは多くの女性サーヴァント達と(性的に)通じている。

 そして、彼と関係を持った彼女達は等しく皆、霊基が強化されたのではと錯覚するぐらいには調子が良くなる。

 特にこってりと体の中に魔力(精)を吐き出されれば吐き出される程にその戦闘力は格段に跳ね上がっていた。もしかしたら、それは将来的に彼女達が新たな宝具を手に入れる可能性を持つほどに未知に満ちたマスターの固有技能のようなものまでに達しているのかもしれない。

 

 そしてアダルトな関係だけではなく、そう、例えば手を触れるだけでもいつもよりも強くなる事が証明されている。

 一番わかりやすいのがマシュ。彼の盾による守りはマスターと一緒に手を握りながら構えた時にその防御力は尋常じゃない堅さを発揮していた。

 

 かの冠位時間神殿における最後の戦い。魔神王ゲーティアが放った『誕生の時きたれり、其は全てを修めるもの(アルス・アルマデル・サロモニス)』人類史を破壊し尽す、対人理宝具……絶望的なまでの熱量をマスターと共に盾を構え、宝具『いまは遙か理想の城(ロード・キャメロット)』を解放したマシュはその身を消滅させる事もなく耐え切ったのだった。

 

『私を貫いていいのは先輩の(自主規制)だけです――――ッッ!!』

 

 その叫びは終局特異点中に響き渡ったそうな…………。

 

 閑話休題。

 

 マスターは考えた。

 ならば彼女達と常に触れながら戦えば、ベスト以上のコンディションで戦闘に臨めるのではないのかと。

 そうして至ったのがこの手をつなぎながら踊るように戦う武術。

 

「俺はこれを『双戦舞(ダブルアーツ)』と呼んでいる」

 

(初期化している私が繰り出したとは思えない程の攻撃……それに指の感覚がほとんど死んでいる私がマスターの手をちゃんと感じられている)

 

「イッスカンダルゥゥゥゥッッ!!!」

 

 さすがに一撃でやられる事はなく、仕切り直しですぐに復帰し、二人を引き裂くように斧を切り下げるバーサーカー。

 

「スイッチ!」

 

「え、えぇ!」

 

 マスターとサーヴァントの契約を結んでいるおかげか、それとも彼に手を握られているせいか……メルトリリスはマスターが次にどう動くのか、何を望んでいるのか手に取るようにわかってしまう。

 

 掛け声と共に二人は一度手を離す。豪撃を回避しつつ、背中を軸にダレイオスの左右を通りながらターンし、バーサーカーの背後でまた手を繋ぎ合流。

 

「ウォォォォォッッ!!」

 

 それでも戦闘面に特化したサーヴァント。下ろした斧を振り向き様に横一閃、自身の背後にいるメルトリリスとマスターを粉殺しようと力の限りを振るう。

 しかし、その攻撃は二人に掠ることなく、通り過ぎた。

 

 そう……しゃがみ込むマスター、その上を跳んでいるメルト。二人の間を通過するだけに終わってしまったのだ。

 斧が通り過ぎたのを見計らい、逆立ちの体勢でマスターの背中に着地するメルト。

 

「冷や冷やするっ……!」

 

 ぶっつけ本番、命がかかった正念場で即席のコンビネーションを披露する事になった故にメルトもさすがに冷や汗が浮かぶ。それでも彼のマスターの体に触れている今の状態なら抜群のコンディションで攻撃を放つ事が出来る。

 マスターの背中の上でカポエラーの要領で体を回転させたメルトは魔剣ジゼルによる斬撃を叩き込んだ。

 

「これで!」

「フィニッシュよ!」

 

「――――――ッッ!!?」

 

 流水の如き怒涛の連撃による致命傷をくらったバーサーカーはゆっくりと倒れながら、光の粒子となって消えていく。

 

 カルデアのマスター。本人曰く、確かに一人で戦えない事もないが、やっぱり皆と一緒に戦うのが一番落ち着くとの事。逸般人、コミュ力、人外、性癖、絶倫……彼の特異な点を挙げればキリがないが、やはり一番目が引くのは特に女性サーヴァントに対しての影響力かもしれない。

 

 レベル1状態だったメルトが高ステータスを持つバーサーカー相手に金星を上げる事が出来たのだから。

 

「…………ハァ、ハァ、ハァ……マスター……貴方、一体何者なのですか?」

 

「ふふん、知りたい?」

 

 戦闘後で気が緩んだのか、腰が抜けてその場に座り込んでしまったメルトに手を差し伸べたマスターはさっきバーサーカーの乱入で中断された言葉を続けた。

 

「それなら―――おいでよ、カルデアにさ。俺はこのまま君と即席の関係でさよならってするつもりはないよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 少し、いやとても不思議なマスター。

 アルターエゴとたった一人の彼による孤独な円舞曲。

 敵はあらゆる所から湧いてきて、数も終わりも見えない死地だった。

 

 あの人を守れないんじゃないかって泣きそうになった。あの人の力になれないんじゃないかって挫けそうになった。

 それでもあの人はそんな私の悩みを吹き飛ばすようにいつだって手を引いてくれた。

 踊るように、舞うように、絶望的な戦場を二人で手を握りながら、駆け出す。

 

『神経障害』を抱えている私が貴方に握られた手を、その暖かさを感じる事が出来るのが嬉しくて嬉しくて、戦いの最中でも笑ってしまった。

 マスターはそんな私を見て、釣られたように笑う。

 

 二人で笑いながら、手を握りながら、この電子の海を踊り続けた。

 

 

『さぁ、センパイ!BBスロットの時間ですよ!乙女コースターレッツゴー!おぉっとバァッドラックゥ!!』

 

「ハレルヤッッ!!」

 

『ストォォップッ!!スロットをブッ叩いて回し直すとか無しですから!!そういうゲームじゃないですから!!』

 

 偶に……いや結構な頻度で奇天烈な行動を取るマスターに驚かされながらも、彼と一緒にいる時間は本当に飽きなくて、泣きそうになるぐらいに楽しかった――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さぁ、さぁ、さぁ!SE.RA.PHの裏側に行くにはBBちゃんによる霊子通販サイトで特別販売しているこのこちょこちょアームが必要です!今まで私に対して扱いがおざなりだったセンパイもさすがに私に頼るしかないでしょう』

 

「道具など無粋。真のマスターは手でイかす!」

 

「その場にしゃがみ込んで、何をするつもりですかマスター?」

 

『ぶっぶー、無理ですよセーンパイ。いくらあなたでも道具を使わないでこのステージを裏返させるなんて、ちゃんと人体の弱点である腹部……フランク・セパレータのエリアまで行ってこのマジックアイテムを使わないと……そんな太もも部分の所を素手でくすぐったって…………』

 

「何故、人体の弱点が腹部だけだと決めつける?俺が触れば、その場所がもう弱点だというのに」

 

『うえええええっ!ちょっと、ちょっと、ちょっと、何ですかこの尋常じゃない揺れは!?』

 

「『私が悦ばす。私がイかす。私が昂らせ、私が啼かせる。我が手を逃れうる者は一人もいない。我が眼の届かぬ者は一人もいない。悶え震えよ。 幼き者、成熟した者、あらゆる女体を私が招く。私に委ね、私に学び、私に従え。―――絶頂は此処に。受肉した私が誓う――――“この魂に快楽を(キリエ・ヘードネー)“』」

 

『うわああああん!なんですかこの存在がR18なセンパイはぁぁ!!本当に素手で無理矢理背中エリアに到達しやがりましたよ!!』

 

「…………もの凄くえげつない指の動きをしてましたよ。マスター…………」

 

 一緒にいる内に彼がどういう人なのかわかってきて、マスターの事を知る度に一喜一憂して、そんな普通の女の子みたいな自分の反応も何だか嬉しく思えて――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっと、元の力まで戻ったわ。ふふ、どうかしたのかしら、マスター?これが本来の私よ。自分がどれだけ危険な存在と共にしていたのかやっと理解出来たよう……キャッ!!?」

 

 アルターエゴとしての本性を見せようが、あの人はお構いなしに距離を詰めてくる。

 私が力を取り戻したのをまるで自分の事のように喜んで、私を抱き締めて、子供のように持ち上げて、その場をクルクル回り始めた。

 

「あぁ、こらっ!もうっ……!ホントに気安いわね!触れる時はもう少し注意を払いなさい!膝の棘が刺さったらどうするんですか!!」

 

 彼をカルデアに帰す為、時間の猶予は許されていない旅路だけど、それでも私はどうかこの時間が少しでも長く続きますようにと不謹慎にも願ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アァ――アアアァァァ―――――!!」

 

『今度こそ、今度こそ……今度こそはっ!私の力が必要でしょう!センパイ!さぁ、センチネルであるリップの心へずばっと乙女コースターが出来るこのコードキャストを購入する時です!えっちい拘束具姿になっているあの娘を解放して上げて下さい!!』

 

「視界に映り、自身の手に映る物なら距離関係なく、圧縮出来る能力か……。ふ、こっちだって似たような事は出来るんだリップ!『百式官能 弐の掌 揉の型』!」

 

『あ、そうですか。ガンスルーですか。いらないですか。はい、いいですよ~。何となくわかってましたもん。もう最初のコンタクトで威厳のへったくれも無くなったBBちゃんにはいじられキャラがお似合いですもんね~~……』

 

 テンションがだだ下がりになり、体育座りへ移行したBBは放っておいて、私は目も止まらぬスピードでリップに迫ったマスターに視線を向けた。

 

「リップ、君の敗因は速さが足りなかった事だ。君がその手を握るまでの間、俺は何百回、君の胸を揉む事が出来ると思う?」

 

「アアアアアア………アンゥッ!?アッ、ンぁぁ……!あぁ!」

 

「何してんのよぉぉ!あなたはぁぁっ!!?」

 

 指を激しく振動させ、リップの豊満過ぎる胸の上を両手で這いずり回わしながら、こちらの方を向くという器用な真似をしているマスターはキョトンとしていた。

 

「いや、だってほら。この娘の拘束具を解放してあげないといけないし……」

 

「BBの話を聞いてなかったの!?センチネルから解放するには心の中に入る必要があるって!」

 

「…………会って間もない女の子の心の中に入り込むなんてそんな恥知らずな真似、俺に出来るわけないじゃないか!」

 

「あなたが今、やっている行為よりは100倍マシよぉぉっ!!!」

 

「あひぃっ……ひぁぁっ……あ、あんぅ!あぁ!あぁぁっ……!」

 

 でも信じられない事にぶら下がった柔肉を存分に歪まされ、喘いでいるリップの叫びは最初の時と違って、感情の色を感じさせていた。しかも彼女を纏っていたKPが剥がれ落ちていく気配まで感じる。

 

 確かに、確かに……これならリップをセンチネルから解放出来るかもしれない。

 けど、もう少し方法は何とかならなかったのかしらっ!?

 

「あぁっ、えぁっ!ひんぅ!あぁ、っあぁ!あんぁぁっ!ふぁぁっ!!あ!あぁ――!」

 

「うわ、凄い揉み方。何よあれ、人間の手ってそんな動き方も出来るの?……待って、待ちなさい。そんな所までつまむの!?ちょっと、だめよだめ。あんなの耐えれるワケないじゃない……あ。あ、あぁ……うわ、うわー、うわー、うわぁっ……」

 

 止めるべきか、止めないべきか。リップの乙女心を思うなら前者。彼女をセンチネルから解放してあげるなら後者。

 結局、決め切れなかった私はただ、自身の顔を両手で隠し、時折、指を開きながら、覗き込む事しか出来なかった。

 

「あ!あぁぁぁっ!あぁぁぁっ!あんんんぅっ!ひあああぁぁっ!!ああああぁ――――――――――!!!」

 

 拘束具が全て剥がれ落ち、いつの間にかマウントポジションでマスターに揉み殺されていたリップの絶嬌が響く。

 その時の顔は幸せそうには見えたけど、乙女としては見せられない顔でもあった。

 

 ―――ペタペタ。

 

 私は無言で自分の胸を触り続けていた。深い意味はない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 終わりが近づいている気がする。確証はないが、このSE.RA.PHでの彼との旅も、戦いも終着に近づきつつあるそんな予感が。

 

 もはや、お馴染みになった礼拝堂の前に私と正気を取り戻したリップの二人がいる。

 マスターの彼は二階の宿泊室で先に休ませてある。人間である彼の方が私達より疲れを感じやすいだろうから。

 …………最近はその必要性も無いような気もしてきたけど。

 

「いいの、メルト?」

 

「何がかしら」

 

「私はマスターさんから助けてもらった…………でも、メルトはまだセンチネルのままでしょ?」

 

「………………」

 

「大丈夫だよ!マスターさんならきっと優しくしてくれると思う!」

 

「……待ちなさい。貴方、彼にどう助けられたのか覚えているのね?」

 

「ぴぅっ」と顔を真っ赤にして声をあげたリップはその巨大な爪で床をモジモジと引っかきながらボソボソと呟いてた。どうやら、マスタ-の魔手で揉まれまくり、センチネルから解放されるという前代未聞の助け方をされたのを覚えているようだった。

 

「…………う、うん。ぼんやりだけど、何か凄い事されたのは覚えてる。あんなの初めてで、気持ちよくなり過ぎて、頭がどうにかなっちゃいそうだったけど。マスターさんが私を助けてくれようとしている一生懸命な気持ちが伝わってきたから怖くはなかったよ」

 

「私もリップぐらいのモノがあれば、良かったのかもしれないわ……ふふ、自分の体に絶対的な自信を持っていた私がこんな台詞を吐くなんてね……」

 

「メルトは綺麗だし、可愛いよ!昔みたく意地悪ばっかり言わなくなったし、私みたいに大きくないし……」

 

「彼は大きい方が好きなんじゃないかしら?」

 

「マスターさんが一度でもそんな事言ったの?手を繋ぎながら戦ったり、戦闘に勝つ度に二人で抱き締め合ってグルグル回ってるぐらいに仲良くなっているのに、メルトってばここぞって時にチキンになるね」

 

「……うぐっ、言うわね。貴方だって私と似たような事されてるじゃない」

 

「う、うん……。あれは本当にビックリした。こっちは潰してしまうんじゃないかって気が気じゃないのに、平気な顔して私の爪を握ってくるんだもん。しかも私の体だって重いのに……無理して持ち上げて、抱き締めて、褒めてくれなくてもいいのに……」

 

 おそらく彼は無理はしていないと思う。「女の子の体なら何キロだろうと軽い軽い」と笑ってリップと勝利の抱擁をしていたあの人は多分、何かの間違いでリップの爪でクラッシュされても平気な顔で笑っていそう。

 付き合いが短い私もあのマスターはそういう人種だって半分諦めるようになったし。

 

 …………何だか、だんだん腹が立ってきたわ。こちとらあの人の行為一つ一つにドキマギしているというのに、当の本人は今も宿泊室でのほほんとしているんでしょ?

 

 私は快楽から生まれたアルターエゴ「S」。嗜虐心の塊よ。やられっぱなしじゃ終われないわ。

 

「…………彼の所へ、行ってくるわ……」

 

「……!やる気になったんだねメルト、頑張って!どんなに声を上げても聞こえないように私は外で待っているから!」

 

「気遣いどうもねっ!!」

 

 リップの激励を受けて、やけくそ気味に返答をした私は礼拝堂の中に入る。これから彼と教会には相応しくない行為をするという決意を胸に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――ギシギシと木製の階段を誰かが上がる音がする。

 

 二人しかいない礼拝堂では音が良く響く。きっと宿泊室にいるマスターにもこの音は耳に入っているだろう。

 二階へ上がったメルトは彼がいる部屋前に立つ。

 

「ふぅ――……はぁ――……すぅ――……はぁ―――……ふぅ――――――――――――…………ふぅ――――――――…………はぁ―――――――――――――――」

 

 長すぎる深呼吸を終え、扉を開く。

 

(やっぱりいた。……全く、平和そうな顔をして)

 

 ベッドの上で座り込んでいたマスターの顔を瞳に映し、微笑を浮かべるメルト。

 この人畜無害フェイスに一体何度騙された事か……今までの戦いの軌跡を思い浮かべ、少し瞳が熱くなった。

 

(今度は私が貴方を驚かせる番よ……愛しのマスター)

 

「あら、驚いた?そうね、今日はもうお休みにしましょうって私が言ったのよね。まさかその張本人が部屋を訪れると思わなかったでしょ?」

 

 ゆっくりと本当にゆっくりとメルトは歩を進めた。

 

「男女が密室にいる。夜……かどうかはわからないけど、寝る前の時間に。その意味がわからない程、貴方も初心じゃないでしょ?」

 

 Sらしく獲物を前に舌なめずりする肉食動物のように嗤う彼女。

 

「喜びなさい。今から貴方に私の体を抱く権利を上げるわ。女神をベースとしている私の体は人間には勿体無い程に完成された美よ。一度味わったら離れられないぐらいの快楽の海に溺れさせてあげるわ。断っても駄目よ…………絶対に逃がしてあげないんだから」

 

(決まったわ……)

 

 ――――マスターが座るベッドの前にいるメルトの顔は真紅に染まり、膝は面白いぐらいにガクガクと笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 




《本編でカットされた一番初めのBBチャンネル》

『BBチャンネ』

『アルテラちゃんねるぅぅぅっっ!!!』

「え、え、何!何ッ!何ですか!誰ですか、貴方!?私の番組ですよ!?っていうか只のサーヴァントがどうやって乗っ取ったんですか!?」

「全部答えるまで帰しま10ッ!!一問外す度にマスターから衣服を一枚剥ぎ取られるアダルト仕様!!」

「人の話聞いてますっ!?っていうか何ですかそのルールは!!?」

「第一問!『当カルデアにおけるアルトリア顔の人数を答えよ』」

「ぐぬぬ、お構いなしですか……まぁ、いいでしょう、その程度の問題、私が答えられないとでも?貴方達有象無象サーヴァントと私の知能の差を見せつけてあげるのも一興でしょう!シンキングタイムすら不要です!答えは『青セイバーさん・黒セイバーさん・白セイバーさん・モードレッドさん・沖田さん・ヒロインXさん・Xオルタさん・乳上さん・乳王さん・ジャンヌさん・ジャンヌオルタさん・ジャンヌ・リリィさん・ネロさんの13人!』サービス問題もいい所ですね!」

「正解はッ――――――……」

「…………ごくっ」

「残念!!ジャンヌの中にある別人格『神風魔法少女ジャンヌ』もカウントするので答えは14人!!」

「私のスカートがぁ―――ッ!!」







双戦舞(ダブルアーツ)
ザクシャインラブ。あ、これは違う方か。
このネタを見てクスッと来た読者は作者と同年代のジャンプ愛好家と見た。
良くも悪くも女性サーヴァントに影響を与えるマスターの性質を生かした戦い方、女性英霊の調子も良くなる。マスターも一緒に戦う。つよい
彼にとっては肉体の接触から既に精神の方にも多大な影響は与えれるわけであり。今回リップをモミモミして助けたのも彼のそういった特質を生(イ)かしたと言える。いきなり心の中に入って、噂されるのも恥かしいし、それなら胸を揉んで終わらせた方が大分健全だと思うの。

手を握りながら戦ってあれだけの戦闘力が出るなら、いっそ頭がふっとうしそうだよぉ的な感じで挿入しながら戦った方がもっと強くなるかもしれないけどね。まぁ、そんな戦い方をしてくれるサーヴァントが…………。

ストーカーEX「……スッ」
牛母「……スッ」
毒娘「……スッ」
酒鬼「……スッ」
狂犬「……スッ」
サイコ魔女「……スッ」

白騎士「マスター、貴方が私の鞘だったので」
謎のヒロインX「やめなさい」







この魂に快楽を(キリエ・ヘードネー)“』
性礼詠唱。只の愛撫。詠唱に特に意味はない。その場のノリ。








メルトのヒロイン力を高めたくて、本番に入るまでに一話分使ってしまった。
CCC編は2話か3話で終わらせます。出来るだけ早く更新するように僕頑張るよ(死に体)。
メルトのたまに出る丁寧口調とかイイよね。











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DEAD OR ALIVE ECSTASY 2(メルトリリス)

感想数の多さがR18の中で3番目になりました!嬉しい、ウレシイ……。
















《前回のあらすじ》
•BBちゃん、アルテラちゃんに番組を乗っ取られる。
•全部答えるまで帰しま10ッ!でBBちゃん、靴下とリボンだけを残してマスターに剥かれる。
•BBちゃん、SE.RA.PHにいるマスターに助言を与えようとすると抱き着かれお腹をスリスリされる。
•礼拝堂でマスターとメルトリリスが出会う。
•マスターとメルト、双戦舞でザクシャインラブしながら、エネミーを屠る。
•メルト、本来のスペックを取り戻す。抱き締められる。ニヨニヨする。
•リップを正気に戻す為、そのおっぱいの呼吸を乱すッ!
•メルト、センチネルから解放される為(建前)、マスターの寝床に忍び込む。




 礼拝堂二階の宿泊室……マスターとメルト、一組の男女しかいない密室。

 刃のハイヒールをガクガクと揺らしながら、マスターの前でメルトは劇場の主役のように堂々たる姿で仁王立ちをしていた(本人の中では)。

 

 さて、色っぽく(本人の中では)大人の魅力を醸しつつ(本人の中では)リードしてあげるような誘い方は出来たと思っているメルトの次の行動は…………。

 

(ど  う  し  よ  う)

 

 まさかのノープラン。

 

 顔は湯気が出るぐらいに真っ赤っか、貞淑な下半身はガクブルと緊張で震えまくっている。

 正直なところ。たった一人でこの部屋まで来て、マスターに同衾を匂わせる誘い文句を噛まずに言えただけでもメルトは物凄く頑張ったといえる。

 

 誘う事しか考えてなくて、結局ショートしてしまった彼女を一体誰が笑う事が出来ようか。

 

「……ふむ」

 

 そして、そんなメルトを見かねてベッドに座り込んでいるマスターが取った行動は。

 

「おいで」

 

 菩薩の如き慈愛に満ちた顔で両手を拡げ、メルトを迎え入れる事だった。

「おいで」そのたった3文字の言葉だが、色んな意味で限界が来ていたメルトにとっては救いの声だった。

 

 ――ガバッ!

 

「……~~~~ッッ!不愉快だわ!心底不愉快だわっ!!まったく!まったくぅ!!」

 

 憎まれ口を叩きつつも彼女は敏捷A+を存分に生かしたスピードでマスターの胸に飛び込んだ。

 彼の上半身をぎゅっと抱き締めているメルトは不愉快と言いながらもその足は嬉しそうにバタつかせていた。膝の棘が彼に刺さらないように注意を払っている辺り、マスターに対する気遣いの細かさが表れている。

 

「何よその顔は……私を子供扱いしてるわけ?本当に身の程を知らないマスターね。私は兵器よ?それもとびっきり凶悪な。私の性能だってもう何度も見ているでしょう?これも只の戯れ、別に貴方に心を許しているとかそういうのじゃないんだから」

 

 顔をマスターの胸板に押し付け、スリスリと左右に動かしながら言っている台詞だと心底、説得力が溶け切ってしまっている。

 

 彼の体温を、感触を、鼓動を、その全てをもっとこの身に刻み込もうとメルトはより力を入れてマスターを抱きしめる。

 二人で手を握りながら、戦っていた時もそう……神経障害を抱えている自分が誰かの温もりをハッキリと感じ取る事がメルトにとっては嬉しくて仕方なかった。それが好意を抱いている男なら、なおさらだ。

 

 メルトがこうして、マスターを感じ取る事が出来るのは彼の起源でもある『親愛』……情を交わした相手とより近い立場で寄り添っていく為にあらゆる障害を打破する性質が関わっているのだが、今のメルトにはその情報はどうでもいい事かもしれない。

 

 彼女にとってはこうして好きな男と普通の女の子のように一緒にいる。その事実だけで十分だったのだから。

 

(あぁ……うるさい。もう、バクバクうるさいわね、私の心臓……止まれ、止まりなさいよ……彼の鼓動が聞こえないじゃない……)

 

「ちょっと顔が苦しそうだよメルト……どうかした?」

 

「べ、べちゅに何でもないよ……」

 

「何でもないでちゅか」

 

「…………………………さっきから胸が死ぬ程、ドキドキして苦しいのよ!ほら、笑いなさいよ!自分から誘っておいてこんな初心な反応をする哀れで滑稽なアルターエゴを笑えばいいじゃない!」

 

「尊い」

 

「微笑ましそうな顔してんじゃないわよ!……もう、こら、頭撫で、撫でる……そのまま撫でなさいよ……ばか……」

 

 情緒不安定だったメルトを可愛がるようにその青紫の髪へ指を通すように撫で続けるマスター。

 噛みついていたメルトもだんだん大人しくなり、目を閉じて、彼にされるがままとなる。飼われた猫の如く、マスターの懐でその心地よさに酔っていた。

 

 

「そのドキドキ、鎮めてあげよっか?」

 

「……ふっ、貴方に出来るのかしら?」

 

 彼女の頭をしばらく撫で続けていたマスターは今度はその頬に両手を添えて、メルトの顔を持ち上げた。

 見上げるメルト、眼前へと迫るマスターの顔。彼女にはこれから何をされるのかはわかり切っていた。

 絶賛沸騰中の顔から、せめてもの意趣返しとメルトはマスターへと提案する。

 

「いいわよ。わ、私に……き、きしゅするならせめて、ムードが出るような……そうね。私をときめかせるような台詞の一つでも吐いてごらんなさいよ」

 

 このままキスするのも全然構わないのだが、むしろバッチこいなのだが……それでもメルトは加虐趣味を持つ自分としてはこのままやられっぱなしではなく、彼の困った顔を見てみたいという想いもあった。彼に似合わない気障ったらしい歯の浮くような台詞の一つでも聞いて笑ってやろうと目論見もあるのかもしれない。

 

「わかった。良いよ」

 

「あぅ」

 

 息が掛かるまでに接近したマスターの唇に釘付けになり、その口から吐かれる台詞をメルトは一字一句聞き逃さないように耳を立てる。

 

「メルトリリス……俺にとってのプリマドンナ。ありがとう、俺と出会ってくれて。俺の話を聞いてくれて。俺の手を握ってくれて。俺を抱き締めてくれて。君は前に俺に助けられたって言ったけど、本当に助けられたのはこっち……。君が一人ぼっちでこの電子の海を彷徨っていた俺のサーヴァントとなってくれた事にどれだけ救われた事か……。メルト、君の健気な姿に恋している。今からその証明を口から出る言葉ではなく、文字通り()()()()()でさせて欲しい」

 

「…………好き」

 

 メルト()陥落。いやもう既に白旗寸前のボロボロの城だったが。

 彼女の間髪入れずに出た堕ち宣言を聞いたマスターは合格をもらったと思い、ついにその唇を重ねた。

 

「……ちょ、まちなさ、今のはちがっ……あっ、んっ、んぅぅっ……ちゅぅ……」

 

 物理的にその口を塞がれたメルト。

 両頬をマスターの手にサンドされて、顔を背ける事が出来ない彼女は、ファーストキスの味を存分に覚え込まされている。

 

(あぁ……あぁっ、ああぁぁっ……何よこれ……手を繋いだ時と比較にならない。たかだかキス程度って馬鹿にしてたけど、だめ……こんなの絶対駄目……。柔らかくて、暖かい……マスターの唇が気持ち良くておかしくなるぅ……あぁ、待ってマスター、今舌なんて入れられたらっ……!)

 

「んふぅっ!……んぅ、んちゅぅ、んじゅるぅ……!?んんぅっ!んぁぁっ……んぷぅっ……じゅるぅっ……!」

 

 かつては……激しく、苛烈な求愛行動による相手の歪んだ顔こそが自分の愛の証だと思っていた。

 そこに相手の心なんて必要ない。自分がただ与えたいだけ与えればいい、貴方からの献身はいらない。自分だけが一方的に注ぐ愛、それでいい。それだけでいい、どうか人形のようにピクリとも動かないでいて。

 

 だが、今のメルトはどうか?自身と口付けを交わしているマスターの顔を見る事なく、恥ずかしさの余り瞳を閉じて口内を蹂躙されているではないか。

 

 神経障害を抱えていた自分が今まで知らなかった未知の世界をメルトはこのディープキスから感じ取っている。

 瞳を閉じても、十分過ぎる程に堪能している。マスターの胸にしがみつきながら震えている痩身、蜜のように漏れ出す唾液、途切れ途切れに吐かれる濃艶な吐息。

 

「んふぅ、んんぅ……ちゅぅ、んぁ……はぁむぅっ……んんぅっ!んぅ、んちゅ、んちゅ……んちゅぅ……」

 

(気持ちいい、気持ちいい、キス、キス、きしゅぅ…………もっと、もっと、もっとぉ……)

 

 好き放題にされるがままだが、与えられるだけの立場に甘んじるつもりは無いメルトはたどたどしくも一生懸命でいじらしく、自分からもマスターの舌の動きに応えていた。

 

「んれぇぁ、れぁ……ちゅるぅ……んちゅぅ、ちゅるぁっ……はむぅ、んむぅ……んふぅ、ん、んちゅ……」

 

 卑猥な水音を立てて、何度も何度も重なる二人の唇。

 唇が離されても、今度は絡み合う舌が架け橋のようになって二人の交わりを断つ事はなかった。

 

「じゅるぅ、じゅぅぅ……んじゅるぅぅ……ぅはぁ……おいしぃ……」

 

 彼の唾液をたっぷりと自身の体内にドレインしたメルトは一旦キスを中断した。

 どこまでも自分を見てくれているマスターの顔が近くにある。それだけでもメルトの心は十二分に満たされていた。

 

「それで、キスのお味はどうでしたかお姫様?」

 

「……ま、まぁ、悪くなくってよ。うん、そうね。厳しめに見て120点って所かしら?」

 

 それは何点満点なのだろうか?メルトの緩みに緩んだ顔を見る限り100点オーバーな可能性は高いが。

 やはりあの恋愛脳(スイーツ)神が霊基に組み込まれているだけの事はある……。これは彼女がマスターの事をダーリンと呼ぶ日もそう遠くはないかもしれない。

 

 ニヨニヨと夢心地なメルトはおへそを何か熱くて硬いモノが押し上げている感触を得た。

 

「……あら?」

 

 男の生理現象。当然、メルトも知ってはいる。

 マスターのズボンの中にあるナニかが巨山を作って自己主張していた。メルトが見ずとも触れただけでその存在を認知してしまうほどに。

 

「……ふふ、ふふふふふ、なぁに?キスだけでこんなになってしまったの?少しは堪え性が無いのかしら?」

 

 自身の股間が大洪水中なのを棚に上げて、メルトはドS心たっぷりでマスターのテントを上下に何度も往復しながら撫でてあげた。

 

「うん。メルトのキスがあまりにも甘美で、その時の顔が俺の男心をくすぐりまくってくれたから、雄の部分が君ともっと深い所まで触れ合いたいって……ねぇ、メルト、脱がしてもらってもいいかな……?」

 

「はい、喜んで(駄目よ。もっと首を垂れるように頼み込まないと、こんな卑猥な物、私が解放するわけないじゃない)」

 

 メルト()二度目の陥落。なんでこの城すぐ堕ちるん?

 もう本心緩々で口に出てしまったメルトはマスターのひたすらに健気で真摯にこっちを想ってくれている言葉と表情を見て、意地悪をする気すら失せてしまった。

 ここで焦らしても自分の方が先に我慢出来なくなってしまうのを本能的に察していたのかもしれない。

 

「んっ、んっ……は、早く、開きなさい……よっ……こ、のっ……!」

 

「メルト……」

 

「黙って。ここだけは譲れない。貴方の助けもいらない。私一人の力で絶対に乗り越えて見せるわ」

 

 指の感覚を失っているメルトにはズボンのファスナーを下げるのも一苦労だった。

 ドキドキで震える指を必死に律しながら、カチャカチャと袖の上からマスターのモノを出そうと試行錯誤していた。

 マスターは手伝う事はしない。この少女が股間の前で自分の大事な部分を取り出そうと一生懸命になっている姿を愛でる事こそ自身に課せられた使命な気がしたから。

 

「……!やった……やったわ!見なさい!ちゃんと、一人でも出来るのよ私は!…………って、あ…………」

 

 数分の激闘を経て、チャックを下ろす事が出来たメルトは喜びの表情を見えたが、その顔はすぐに変化した。

 解放され、飛び出したマスターのご立派な逸物。それがメルトの眼前に露わになったのだから。

 

「…………こ、これがマスターのアソコなわけね…………ふ、ふーん、へ――――、なるほどね…………」

 

 生まれて初めて見る男の性器、しかもそれが自身の顔よりも長い凶悪なモノなのだから、本来なら取り乱してもいい所なのだが、何故かメルトは目を逸らす事が出来なかった。

 

 打たれた鉄のように熱と硬さを感じさせる男根。大きく反り返っているそれは際限ない雄臭と威圧感を彼女に与えていた。

 

「…………本当に硬くて、熱いわ…………袖の上からでもこんなにはっきりわかるなんて、貴方のコレどうなってんのよ…………」

 

(テカテカと自己主張が激しい亀頭……雁首もしっかりと綺麗ね……うん、清潔感があるのはいい事だわ。この浮き出てる血管もグロテスクというイメージじゃなくて、淫靡さ……エロチズムの方を何故か感じるわ。根本から先っぽまで何て無駄のないフォルムなの…………)

 

 人形好きのモデラー魂に火がついてしまったのか、それともマスターの男根がメルトを魅了する程の造形美があったのかは定かではないが……興味深々と袖の上からマスターのペニスをペタペタと触れるメルト。

 

 刺激は控えめだが、萌え袖状態で自身の陰茎を弄っている女の子という視覚情報はマスターに興奮をもたらしていた。

 

「あ……ピクピクしてるわ、ね……ふふ、何よ。こんな大層なフォルムをしておきながら、案外可愛いじゃない…………う―――んと、こうすれば、キモチいいのかしら?」

 

 有り余った袖で隠された両手でマスターの肉棒を包み込んだメルトは慣れない手付きでたどたどしく上下に擦り始めた。

 

「ん……んしょ、んぅ、んしょ…………」

 

 布で擦られながらもその奥には確かにメルトの手の感触もある。

 おっかなびっくりでも目の前の男に気持ち良くなってもらいたい。そんな熱意がメルトの愛撫からマスターは感じた。

 そして、何度も言うがまだそういう性行為に不慣れな女の子が萌え袖で必死にペニスにご奉仕している姿は男なら誰でもくる物がある。

 ここにいるマスターも例外ではなく、メルトの袖コキからしっかりと快楽を受け取っていた。

 

「……んしょ、んぅ、んっ、ふぅ………………ちろっ……」

 

「あっ、メルト……」

 

 袖淫を続け、じっと剛直を見つめ続けていたメルトは何を思ったのか、その先端、亀頭の開かれた部分……鈴口へと舌を小さくほじくり始めた。

 

「…………れろっ、ん、ちゅ……ちろぉっ……そう、これが気持ちいいのね…………いいわ、貴方はそのまま快感に身を委ねて…………私、頑張りますから…………」

 

 初めての性行為、そんな少女が自分からフェラをするのに一体どれ程のハードルがあるのか。

 だが、この少女はそんなハードルを容易く跳び越え、マスターに微笑み、男性器により深く口を付ける。

 

 最初は亀頭部分へ恋人のようなキスを。唇で小さく控えめに吸い付かれる感触にマスターの腰が震える。

 舌先で鈴口をつんつんと突くメルト。自分の行為によって彼が反応を示してくれるのが嬉しくて堪らない彼女は口淫をより積極的に続ける。

 

「あむぅっ……んぅ、んむぅぅ、んぶぅ……んじゅぅ………ちゅ、ぅぅっ……!」

 

 口を目一杯開き、男性器の先端を咥える。

 生まれて初めてのフェラ。だが彼女はマスターに喜んで欲しい……もっと快感で震える様を見せて欲しい、その想いを胸に直感だけで口内を蠢かせていた。

 

(すごい……匂い…………もっと、もっと、もっと……嗅ぎたくて…………駄目、見ないでマスター……私、今凄くはしたない顔しているから…………見ないで、見ないで、見て、もっと見て……私を見て……)

 

「じゅぶぅっ、じゅるぅぅっ……!じゅぼ、じゅぼっ……んじゅぅ、ちゅ、じゅるぅ……!ちゅるぅぅ……!」

 

 マスターの男根に吸い付く事でドレイン能力により性知識を吸収しているのではと思うぐらいにメルトのフェラは積極的になっていった。

 ダボダボの袖で震える竿を包みながら、頬をすぼませてペニスに吸い付く。その奥にある性の素を絞り出す為に。

 

「じゅるぅぅ、ちゅるるぅっ……んじゅるぅっ!ちゅぅ、ちゅぱぁっ……あ、透明な汁が出てきてるわね……カウパー液だったかしら…………いいわ、いいわよ……もっと私にドレインさせなさい……んむぅっ…………」

 

 瞳を潤ませ、髪を揺らしながら、顔をさっきよりも激しく前後させる。

 それに合わせて、口内で止まる事なく這いずり回る続ける舌もメルトがどれだけ自分に悦んで欲しいのか、その想いの強さがマスターにも伝わってきた。

 

 一心不乱に奉仕をしているメルトの透き通る髪を撫でていた。

 あくまで彼女の邪魔はしないように控えめに……。

 

(んぁっ……)

 

 しかし、今のメルトにはそれだけで形容しがたい痺れが駆け巡った。

 もう自分だけが捧げる愛では満足出来なかったメルトは自身の口淫を褒めてくれるように優しく頭を撫でてくれるマスターの温もりと優しさにどんどん溶かされていくのを自覚した。

 

「んぶっ、んじゅぅっ……!ちゅぅぅ!ふぁひてぇ……ふぇいへき……ふぁひふぁはひぃ……!………じゅるるるるうぅぅっ……!ちゅぅぅぅぅっ……!」

 

 やがて、その口淫奉仕も終わりを告げる。

 亀頭の溝から決壊したダムの如く、溢れる白い洪水がメルトの口内に流れ込んでいった。

 

「んぶぅぅぅっ!!?……んじゅぅぅっ!んぐぐぅぅっ!むぐぅ……!!んむぅぅっ……!じゅぅ、じゅるぅぅ……!!」

 

(あぁっ……飲まされているっ……マスターの熱い精液がぁ……たくさん、とまらないっ……!こん、なの……溺れちゃう…………!)

 

 ―――繋いだ口だけは、離さない。

 苦しさに涙目になっても、メルトはマスターの精液を一滴残らず体内に取り込むまではバキュームを中止する事はなかった。

 

「んむぅぅぅっ……んぶぅ、んじゅぅ……んぐ、んぐっ、んぐぅっ……ごくぅ………」

 

 数分間かけて―――時には頬を膨らませて精液を溜め込みながら、それでもマスターからの欲望の証を一切吐き出すなくメルトは喉を鳴らし、吸飲していく。

 ドロドロと濁ったそれは何故かメルトの喉を通れば、通るほどに、彼女をやみつきにさせていった。

 マスターの白濁液によって酩酊感のようなものを得たメルト、男の味を覚え込まされ、酔わされていく初物の少女。

 

「ぷはぁぁっ……!!はぁっ―――……はぁ――…………あぁっ……………………信じられない量ね……私を溺死させるつもり?快楽に溺れさせるのは私の役目だというのに…………それで一つ聞きたいのだけれど……」

 

「とても気持ち良かったよ。メルト」

 

「――った………………そう、それならいいわ。まぁ、聞くまでもない事だったわね。ふふっ……」

 

 何てことは無い……そう振る舞う彼女が小さく「やった」と呟きガッツポーズをしたのをマスターが見逃す筈が無かった。

 もう自分の反応に、返答に一喜一憂してくれるメルトがマジで可愛すぎる。一段と増していく情欲を止めるつもりが無いマスターは彼女を抱き上げ、自身の膝の上へと乗せた。

 

 

「きゃっ……!?なによ……次は貴方が尽くしてくれるの?」

 

「うん。俺も与えられるだけの関係じゃ、満足出来ないからね」

 

「そう…………なら……好きにしなさい」

 

 マスターの上半身を背もたれに、寄りかかって身を預けているメルトにはもう期待はあっても不安は無かった。

 これから自分が何をされるのか……胸の上部分を覆っている黒衣に手をかけられ、ゆっくりと捲られる。

 

 マスターの手によれば、こんな防御性皆無な服は一瞬で裸に剥けるのだが、初めてのメルトに対してそこまで強引なプレイをいきなりする程鬼畜ではない。

 

 そして、それと並行してもう一方の右手で彼女の股間を覆っている銀のファウルカップも外す。

 今まで見えそうで見えなかったメルトの二つの秘部が露わになった。

 

「うぅ…………」

 

「胸の先、びんびんになってる」

 

「口に出さなくていいわよ…………」

 

「アソコもびしょびしょに……」

 

「もうっ!わかってる事口に出さなくていいって言ってるでしょ……ばかぁ…………」

 

 外した貞操帯の裏に溜まってた愛液をメルトの前で垂らしていくマスター、今までのキス、フェラで濡れてきた彼女の淫液が彼女自身のへそを流れ、陰部まで続いていく。

 

「んっ、ふぅ……」

 

 自分がどれだけ淫らなのか……その証明を体にかけられているメルトは背徳感のような物に体を震わす。

 股間のプロテクターを傍に置いたマスターはいよいよ彼女の躰に触れ始める。

 

 メルトは羞恥心で高熱を患っている程に顔を紅に染め上げていたが、マスターの手が自身の陰部に触れる瞬間から目を離す事が出来なかった。

 

 乳頭、女陰……同時に這って行くマスターのそれぞれの魔手。

 目線を忙しく動かすメルトはどちらに注視すればいいのかわからなくなっていた。

 

(あぁ、あぁっ……触れ、ちゃう……マスターの手が私のはしたない所に……隠す所も何もない、ありのままの私が触れられちゃう…………もう、指が……近づいて……)

 

 乳首、クリトリス……その二つの淫芽をマスターは本当に優しく指先で撫で上げた。

 

「ひううううぅっんんぅぅっ!!!」

 

 だが、メルトの反応は凄まじい物だった。

 摘まんだわけでも、激しくこねくり回したわけでもなく、只の一度撫でただけで電流を流されたようにブリッジし、股座から潮を吹き出していた。

 

 神経障害を抱えていたメルトにとって今までの戦いでマスターと手を握った感触、抱き締められた感触、髪を撫でられた感触……それは未知の感覚だった。

 もしかしたら――マスターの性質によって神経障害の壁を壊されたメルトには今までのマスターの触れ合いはある意味、長い長い焦らしプレイのような物の一つだったのかもしれない。

 

 手や、服の上、髪……その程度でのスキンシップに感情を大きく変化させていたメルトが女の象徴を直接淫らなやり方で弄られたらどうなるか?

 

「ひぁっ!あぁ!あっ、あぁっ……!はぁっ!な、によぉ……こ、れぇぇ……!ふひぁっ!!あひぃぃっ……!!」

 

(……やばい、これは思っていた以上にやばいわ……!この人の手だから、神経障害があっても感じない事は無いと思ってたけど……!ま、さか……このレベルなんて思わなかったわ……!!っていうか私でこんなになるならリップとか死んじゃうんじゃないかしらっ!?)

 

 乳輪の辺りを指先でなぞり続け、プクリと膨れ上がっている先端を爪先で優しく掻いてあげる。

 クリトリスはメルトの下腹部、ちょうど子宮の上にあたる場所で上下と動かしているマスターの手……人差し指と中指に挟まれて、そのスライドするような動きに擦られて興奮を得ていた。

 

「にゃ、にゃめぇ……!あぁっ、まってぇ……ますたぁ……!むねのさき、そんなコリコリしないでぇ……!ああぁっ!はふぅんんんぅっ!!下のおまめもだめぇ……!はしゃまないでくださいぃぃっ……!!」

 

 上下から来る凄まじい快楽。最初の頃の口調がつい出てしまうぐらいにはメルトの頭はぐちゃぐちゃになっていた。

 軽い絶頂で大きく揺れるメルトの鋼鉄のハイヒールがつけた床の傷がその激しさを物語っている。

 

「あぁ!あぁぁ――!ふぁぁっ!そんなぁぁっ、両手でおっぱいいじっちやぁぁ……!ひふぅぅ!!作りかえられちゃう、わたしの乳首、開発されちゃうぅぅっ!!あぁっ!あんぅ!んふぅっ!!」

 

 時には、股間にあった手を胸の方へ。

 両手でメルトの控えめな美乳を集中的に弄ぶ。特に充血した乳頭は何度も何度も念入りにこねくり回した。

 指腹で潰し、指先で弾き、挟めて、摘まんで、伸ばす。強弱緩急をつけられた飽きの無い責め方にメルトの嬌声は声高に響く。

 

「はあぁっ!!あぁ……!おっぱいぃ、いじり過ぎよぉっ……ばかぁぁっ!変な形にぃ、んひぅっ!……なったら、どう責任取るのよぉぉっ……あぁんんぅぅ!」

 

「じゃあ、今度は漏れっぱなしの下の方に行こうか」

 

「へぁ…‥!……あぁ……まって、まひなしゃい……!今、触られたらぁぁ…………ああああぁっ!!」

 

 絹のような肌触りのメルトの躰を這って行くマスターの二本の手が次に行き着いたのはメルトの淫唇。

 左の手の平で優しくクリトリスを押し潰したマスターは微量な振動を与える。

 

 さらには開いたファスナーから露出された熱い肉棒がメルトの美尻に触れているその感触がより性的接触を意識させる。

 

「ふぅっ、ソレぇ……お尻の下でぇ……ピクピクさせないでぇ……あぁっ!はひぃっ!!」

 

 もはや相手がマスターに限り神経過敏になってしまったメルトはそれだけで漏れ出す愛液の量をさらに増やしていた。

 そんな絶賛大洪水中な秘部に右手の指が入り込んでいく。

 

「あぁっ!あぁ、あぁ……あああぁ……!マスターのゆびぃ……私のナカにぃぃ……!!」

 

 グチュグチュ……ズブズブ……卑猥な水音を立て、メルトの淫部は面白いぐらい容易にマスターの指……中指と薬指、その二本を飲み込んでいく。

 未だに止まらないメルトの愛液の奔流。それを掻き混ぜ、羞恥と性感をさらに高めさせる為、マスターの指はメルトの膣内の入り口付近で器用に蠢いていた。

 

「あああぁぁっ……!はああああぁ……!!き、ちゃう……!なにかきちゃう……!ますたぁっ……!ますたぁぁっ……!!」

 

 今まで軽い絶頂は繰り返していたものの、これからやってくる大きいエクスタシーを予感したのか。

 縋る物を探していたメルトの両手は後ろで自分の女性器を愛撫しているマスターの首へと伸びる。

 

「あぁぁっ!はああぁぅ!!と、まらないのぉ……!アソコから、お水が溢れるのがああぁ……!!ふひぅぅっ!!今、クリトリスつまんじゃあ、駄目ぇぇ……!!」

 

(……マスターの指の動き方がはっきりとわかる……!私の膣内で、私を女にしようって…‥‥小刻みに動いている……!もっと、もっとこの瞬間を感じていたいのにぃ……もう、私の躰の方が……音を上げて………)

 

 バンザイするように両手をマスターの首の後ろで結んでいるメルトの躰が脳を焼き尽くすような刺激でガクンガクンと揺れ始め……。

 

「ひあぁっ……!はぁっ!あぁぁ!い、くぅ……いくぅっ、イクわぁぁ……!い、クぅぅ、イク、イク、イくぅっ!イぃっ――――…………」

 

 腰を大きく浮かせたメルトの股間から噴水のように潮が上がっていた。

 

「い、くぅああああぁ――――――!!!」

 

 プシャー!と絶頂に相応しい卑音と共にジョロジョロと生温かい音もマスターの耳に入る。

 胸を弄られ、さらには女陰もあれ程好き放題弄られたのだ。そこから出るありとあらゆる液が全て漏れてしまっても仕方ないだろう。

 

「ひぃぁ…………あ、ぁぁ…………はぁ……………………へぇぁ……」

 

 もう半分意識を失いかけているのか、潮、尿、愛液、あらゆる女の水を垂れ流しマスターのズボンを濡らしているメルトの顔は満足気にも見えた。まぁ、おそらく今の自分がどういう状況なのかは理解してはいないのだろう。ただ、言葉にできない解放感と多幸感が今の彼女の身を包んでいる事は確かだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぅ……うぇぇ…………ぐすぅ、ぐすっ…………」

 

「気にする事ないと思うけどなぁ、俺は嬉しかったし。メルトがそこまでキモチよくなってくれて」

 

 メルト、涙を流すッ…………!

 現在のメルトは全裸でベッドの上に仰向けに寝そべっているマスターの上でぐずっていた。

 泣いているメルトも来ている服のようなものはあくまで肩と腕を隠している黒い衣装だけ。露出度は全裸とほぼ変わらない。

 

「変態よ……私は……粗相して、マスターのズボンを濡らしておきながら、それで快感を経て、あまつさえ、満足気な顔をさらして…………!初めてなのよ……!私、初めてなのよ!……もう変態のアルターエゴに改名しようかしら…………フフフフフフ……」

 

「性行為においては人類皆変態みたいなもんだと思うけどね」

 

「フォローになってないぃぃ!……あなたがぁ、あなたがぁ……あんなに私の躰を容赦なく責め立てるからぁぁ……!」

 

「あ、ごめん…………良くなかった…………?」

 

「良かったわよ!凄くキモチ良かったわよ!もう一回お願いしたいぐらいよ!………………って違う、違う違う違うわ。そういう話じゃないわ…………」

 

 マスターの落ち込んだ顔を見てすぐにフォローを入れるまでのメルトの反応……コンマ数秒。

 この娘、もう既にマスターにズブズブとオチ切っている。

 

「……ふぅ――――……理解したわ。こと性行為においては貴方の方が経験値的に分があるという事を。そんな貴方に一方的にされるというのは私の勝ち目が薄い」

 

「なら?」

 

「最初のキスは貴方のターン。次のフェラは私。その次の愛撫はまた貴方のターン……なら今度は私の番って事よ。貴方は動かなくていいわ。そのまま寝そべってなさい。要は貴方に好き勝手させなきゃいい話なんだから」

 

 散々、涙でマスターの胸元を濡らしていたメルトは体を起き上がらせて、いきり立つ剛直の前で股を開いた。

 鋼鉄で凶器的な脚。だけど、その下半身は濡れそぼった割れ目も相まって、淫靡で芸術的な光景だった。

 

「メルト……無理、してない?」

 

「ハッ……するに決まってるんでしょ。一つイイ事を教えてあげるわ。女の子は好きな男の前ではいくらでも強がるし、無理をするの」

 

 膝の棘がベッドに突き刺さる事も気にせず、メルトは腰を下ろし、今か今かと待ち侘びているマスターの肉棒の標準を合わせる。

 

「んっ………けどね、マスター。貴方はあの時、死にかけていた私を。ただの兵器として消えるしか無かった私の手を取ってくれた…………私をただの女の子にしてくれました。そのお返しってわけではありませんけど…………今度は私自ら、『初めて』を手にしたいんです…………あの時、差し伸べられた貴方の手を取る事しか出来なかった私が自分から…………だから、だからマスター…………貴方は」

 

 ただ待つだけの女じゃない、助けられるだけの女でも、与えられるだけの女でもない。守りたいものは、欲しいものは自分自身の手で――――恋する女の子なら当然の事だった。

 メルトは人形になるつもりも人形に恋するつもりもないのだから。

 

「うん、わかった…………頑張って、メルト」

 

「はい……!マスター…………あぁっ……!」

 

 マスターが入れていた指とは格段に違う大きさを持つ亀頭がメルトの淫唇とキスをする。

 触れるだけでは終わらない。そこからズブズブと本当に緩やかに、けれど確かに埋まっていく。

 

「あ……あぁ…………んぐぅ……!ふふっ、結構キツイわ、ね…………まだ入り口な、んてぇ……んぐぅぅ!」

 

 狭い膣内、それを怒張が進んでいく最中でメルトの顔が大きく歪む。

 処女膜、マスターの肉棒の先端がそこまで辿り着いたのだろう…………だが、メルトはそのまま躊躇する事なく、むしろ良いきっかけとして、腰を一気に――――――。

 

「な、めんじゃないわよ……そんな薄い壁でぇっ、私達の邪魔をす、るなぁっ…………っぅぅぅぅぁあああ――――…………!!」

 

 プチプチッと何かを貫いた音を立て、結合部に血が流れる。

 完全に奥まで入り切った瞬間、その血と一緒に透明な愛液まで吹き出した

 背筋を伸ばし、痙攣していたメルトは呼吸を整えると照れたようにマスターへ顔を向けた。

 

「はぁ―――……あぁ、はぁぁ……ふふ、信じられない、わね…………処女膜やぶられた痛みで、イッたわよ、私……ドMだったのかしら、ね……」

 

 自嘲するような呟きだったが、その表情には自己嫌悪など欠片も無かった。

 喜び…………ただ単純に好きな人に自分の初めてを捧げる事が出来た嬉しさ。ありふれていながら、成就させるのが難しい乙女の願いをメルトは自身の力で手にした。

 そんな恋する乙女の顔には今この瞬間が嬉しく溜まらないという誰もが足を止めてしまいそうになる美少女の笑顔があった。

 

 今の顔を見て、この娘が化け物だと、凶器だと、思う者は誰一人としていない。そう確信させるぐらいに眩しい笑顔だった。

 

「マスター……」

 

「メルト…………」

 

「マスター、マスター…………」

 

 お互いに呼び合う。声をかければ、自分の名前が愛しい人の口から漏れる。

 そんな事でも嬉しく堪らないメルトは歓喜の涙を流し、腰をゆったりとなだらかに動かし始める。

 

「あぁっ!はぁ!はぁぁっ……!ますたぁ、ますたぁ!ますたぁっ……!」

 

 未だ膣内にはほのかな痛みがある。けど今はその痛みすらも心地良い。彼の名前を呼びながら、熱に浮かされるように腰を振り続けるメルト。

 マスターの腰を挟むようにベッドにつかれた彼女の膝。そこから出た棘がベッドに突き刺さっている事で挿入されているのも合わさり、マスターの腰を逃がさないように拘束しているような絵が出来上がっている。

 間違ってもこのマスターが愛する人との性行為で逃げ出す事は世界が滅んでも有り得ない。それでも加虐心を持っているメルトは恋人のように交わるのもいいが、こんな風に逃げ場を消して絞り尽くすような体勢も嫌いではなかった。

 

「ああぁぁ……!す、ごいわぁぁっ……!こ、んなに熱くてぇ……大きいのぉ……ひあああぁ!!あぁっ!あんぅ!!奥にコツコツってぇぇ……!」

 

「メ、ルトッ……!」

 

 メルトの騎乗スキル『B』。このスキルは通常の騎乗スキルとは違い、普通に乗り物を使いこなす為のスキルではない。では一体何を乗りこなすスキルなのか、それはご想像にお任せする。

 まぁ、現在進行形でメルトがマスターの気持ちいい所を学習し、腰の振り方を多彩に変えていっているのを見ると容易に察する事は出来るが。

 

(嬉しい……うれしいっ……!マスターが、マスターが、私の体で気持ち良さそうにして、くれてる……興奮して、くれてる…………!)

 

「もっと、もっと、もっとぉ……はぁんぅぅ!!…………はぁ、はあぁっ!……その顔を、私にぃ……見、せてぇ……んああっぁ!」

 

 発情期を迎えた雌と化したメルトは上半身を伏せて、至近距離までマスターの顔に近づく。

 彼の快楽に漏れ出す息遣いを取り込み、気を良くしたメルトはさらにテンポを上げて、腰を打ち付ける。

 

 だが、騎乗スキルBがあっても彼女が相手取る乗り物はある界隈では神秘を抱えた性遺物……またある界隈ではEX宝具と言われるマスターの性器である。

 神獣クラスのソレをいくらマスターから動いていないとはいえ、初夜を迎えたばかりのメルトが完全に乗りこなせるのかと聞かれれば、答えはNOであろう。

 

「ふぅあああぁ!?あぁぁっ……!!はひぃぃっ……!!」

 

(マスターは動いていない……なら、私の膣内の動きに呼応して、この人の男根が震えただけ……少し震えただけで、この快感なんてっ!…………ん?これってあれかしら?もしかして、私とマスターは心だけじゃなくて体の相性も抜群という事かし)

 

「んひぅぅううううっ!!」

 

 スイーツ方面に思考がぶれたメルトを正気に戻すように再び無意識に震えるマスターの陰茎。

 メルトのストロークによって震えているのだから、一度、腰の動きを止めればいい話なのだが……完全にナカに入っているマスターの感触、そして――――。

 

「……頑張れ、メルト。頑張れ」

 

「ましゅたぁ…………しゅきぃ、だいしゅきぃ……あふぅぅんぅっ……!!」

 

 目の前で快感に顔を蕩かせながら、こっちを応援するマスターにメロメロになっているメルトにはその発想すら無い。彼の言葉を受けて、汗だくになりつつもより激しく腰を振り続ける。

 げに恐ろしきは恋は盲目という言葉か。それともこのサバを誑かす事においては右に出る者はいない魔性のマスターか。

 

 パンパン、グチュグチュ……何を行っているのか見なくとも想像出来る淫猥な音が宿泊室で奏でられている。

 自分から腰を動かすつもりは無かったマスターだが……こうして性交をしている時、一つだけしたい事があった。

 

「はぁっ、はぁ……ま、すたぁっ……!?あぁっ、手を…………」

 

 メルトの袖の中に手を通し、その中にある彼女の素手をギュッと握る。

 漆黒の袖の中で指を絡め合っている二人の手。

 

「あぁぁっ……!はううううぅっ……!!はぁっ!あはぁ……!ず、るい人、今、こんな事されたらぁ……あんぅっ!ますます離れられなくなるじゃない、ですかぁ……!貴方の傍にぃ、んあぁ、あぁ!……ずっとぉ、いたくなってしまうじゃない……ですかぁ……!」

 

 まるで袖口という性感帯に挿入されたように全身を悶えさせるメルト。セックスの最中に手を握り合っているだけ。別段珍しい事でもない。

 だが、メルトにとっては手を繋ぐという行為はマスターと初めて会った時からそれぐらい特別な行為だった。

 

(こんな、こんな……簡単な事だったのね。恋した人と一つになるのは……蕩かして、溶かして、自分の中へ取り込む必要も無い。ありふれた男女のように笑い合って、抱き合って、泣いて、怒って、手を繋いで、体を交わせる…………これだけ、これだけで……こんなにも心が満たされる…………)

 

「はああぁっ……!!あぁんぅぅ!んふぁあぁっ!!……私がどこに出して欲しいか……なんて言葉にしなくてもんぁぁっ……わかるわよね……マスター……!」

 

 コクリと首を縦に動かしたマスター。口の端を不敵に吊り上げるメルト。

 心も体も一つになっている二人に言葉は不要。

 マスターの肉棒を包み込んでいるメルトの膣襞全てが、マスターとメルトの二人に最高の瞬間をもたらそうと収縮する。

 

 ペニス全てを撫で上げるメルトの膣内の感触にやがてマスターの子種がせり上がり――――。

 

「く、るぅ……くるっ……くるのねぇ……!あぁぁっ!あひぃぃ!んんふあぁっ……!!いいわ、きなひゃいぃ……!残さず、だ、して……あぁぁんぅぅ!!くだ、さいぃぃっ――――…………!」

 

 腰を一切動かさないマスターは何も力を入れる必要は無い。

 メルトの蜜壷に包まれた快楽に身を任せ、ただ男の種を吐き出すだけ。

 爆発的な勢いで放出された子種は行く先を求めて、メルトの子宮口へと殺到する。

 

「んんんぅぅう――――――――………!!!!」

 

 自身の体内に流れ込むマスターの愛の証。

 精液が膣内を通り、どんどん子宮へ入っていく間にメルトは何回絶頂を迎えたのか自分でもわからなくなっていた。

 ただ――――自分が完全にこの人の女にされた。サーヴァントの枠を超えて、一人の女にさせられてしまった事だけは確信した。

 

「あ、あぁっ、ひんぅっ……ぴゅ――…………ってぇ、ぴゅ――ってぇ…………まだ出続けているぅ……ぅぁあっ…………うれしい、本当にうれしいわ…………もう、こんなにもらったら簡単にレベルマックスになっちゃうわよ…………はぁ――――…………」

 

 白濁と純潔の血が混ざった結合部は未だ離れず。

 手を握ったまま、メルトはマスターの体を枕にして体全てを預ける。

 男女の関係は別に体だけの関係ではない。だが、心と体の二つが繋がればここまで気持ち良いものなのかと。

 マスターとのセックスを味わい尽くしたメルトは余韻に浸る。「メルトの番は終わったから、次は攻守交代。俺の番かな?」とマスターの目が光っている事に気付かず……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《ポートピア・サイエリア:礼拝堂の外》

 

 

 

『あぁぁ……ダメェッ!後ろから、そんなに何度も突かないでぇぇ……!!んほあぁぁっ……!!あひぃぃっ……!蹂躙されちゃうぅぅ…………!ますたぁのおちんぽに、バックからずんずんって、蹂躙されちゃってるぅぅっ!!ああぁぁぁっ――――!!』

 

 ――――パンパンパンパンッ!……パンッ!パンッ……!

 

「うぅ~~~~……外にいても聞こえてるよぉ……メルト……」

 

『いいわぁぁっ……!もっと、もっとぉ、つ、よくしなさい……ふぅんぅぅっ!!あぉぁおぉっ!!……壊れるぐらいに、つよ、くぅっぅっ…………!ああぁぁっ……ますたぁ、ますたぁ、ますたぁ、またぁイッちゃうぅぅ、イッひゃいましゅぅぅっ……!!んひぃ――――…………!!』

 

 こうして、マスターにたっぷり、こってりドロドロの愛を吐き出されたメルトはセンチネルから解放されました。めでたしめでたし…………。さぁ!最終決戦だ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………くっ」

 

 セラフィックスの心臓部、天球シミュレーター室。システム・アニムスフィア。

 アニムスフィア家のかつての闇、セラフィックスの人間でもこの部屋の存在を知っているのはごく僅かしかいない。

 壁に埋め込まれたように並ぶ数多のコフィン。

 そんな科学的な空間に不似合いなモノが陣取っていた。

 

 部屋の中心に生えている大樹の如く、もはや抜け殻にも等しい肉の柱――――。

 そして、それに捕縛されているメルトの姿が。

 

 ある()が操る魔神柱の触手に捕まり、まるでどこかの月の世界のSGのような姿で魔神柱に取り込まれかけているメルトリリス。

 

 下半身と袖の先は肉柱の樹に埋まり、顔と上半身はかろうじで動かせるものの脱出までは届かない。

 悔しさに顔を歪ませ、メルトは目の前の女を睨む。

 

「その格好、お似合いでしてよ……メルトリリス」

 

「死ね」

 

 メルトの殺気もどこ吹く風。

 色っぽく溜息を吐くのは尼装束に身を包む一人の女だった。

 尼姿をしていながら、どこまでも「女」を匂わせ、感じさせる……何気ない仕草一つ一つに性別問わず色香をまき散らし、欲情を煽らせるのは彼女の素質。

 

 きっかけは別であれど、このセラフィックスにおける黒幕となったその女の名は「殺生院キアラ」。

 

「……はっ、最後の最後まで舞台裏に引っ込んでいるとは思ったら、こんなに早く姿を現して、一体どういう風の吹き回しかしら?」

 

「えぇ……そうですね。私も我が事ながら、我慢を覚えるべきだと自省をしているのですが……だってほら、あなた方があまりにも微笑ましく、いじらしいものだからつい――――――この手で摘んでしまいたくなってしまって…………」

 

 あぁ……と艶に塗れた吐息を吐き出し、身震いするキアラ。

 

「わかっています、わかっていますとも、あなた達二人が仲睦まじくやって来るのを期待に濡らしてここで待つべきだったというのは…………けど、それとは同じくらいにもし、もしも……二人の内、どちらかが、私に溺れて、溶かされて、壊されてしまったのをもう一方が見てしまったら、一体どんな顔を浮かべてくれるのかと…………考えただけで、想像するだけで、私はっ……!あっ、はぁぁんぅぅっ…………!」

 

「こ、の!救いようの無い……淫売女!!」

 

「良い目、良い啖呵です。折れたおもちゃを玩んでも何も滾りません。どうか気丈に振る舞ったまま少しでも長く抵抗して下さい」

 

 ある意味どこまでもキアラはわかりやすい。

 身動きの取れないメルトに何をするのかも。

 自身に反旗を翻したこの玩具をどう快楽に堕としていくのかキアラの頭の中には百通り以上の肉欲まみれの調教法が浮かんでいる。

 

 ―――まずは彼女に絡みついているこの魔神柱で遊ぶかと、彼女が決めたその瞬間。

 

 ―――ドゴオオオオンッッ!!!

 

「「……!!」」

 

 破壊と轟音。天体室の扉を突き破って、破片と共にキアラとメルトの間に一人の男が飛び込んできた。

 天体室に拳一つで侵入するという破天荒極まりない行動を取る者は現在のセラフィックスには彼しかいない。

 

「えぇっ……えぇ、えぇっ!わかっています、わかっていましたとも!貴方は絶対に現れると!自分の愛すべき娘が危険に陥っていれば……!絶妙なタイミングで助けに来る!必ず!」

 

 自身の楽しみを邪魔されたにも関わらず、キアラは気を悪くする所か、全身を震わせ、達しながらその男の到着を喜んでいた。もしかすれば、来るだろうと確信もしていたのかもしれない。

 

「待っていましたわよぉ―――!カルデアのマスタァァ―――!!」

 

「お前は後!!」

 

「………………………」

 

 ビッとキアラに指を指したマスターはそのまま迷う事なく、メルトの方へと駆け出す。

 まずはもっとこう自分に色々反応をして欲しかったキアラは先ほど叫んだ口を開いたままで固まっていた。

 

「…………フフッ、つれない人。やはり、私の思い通りにはなってくれないのですね……」

 

「マスター…………ごめん。ヘマした……わ」

 

「全然良いよ。無事で良かった」

 

 デーモンから心臓を、ワイバーンからは竜の牙を、キメラからは角を、エネミーからドロップ素材を無理矢理もぎ取る事を目指し、鍛え上げた彼の握力は、メルトを捕えている魔神柱の拘束を引きちぎり、最高の報酬であるメルトを助け出していた。

 残骸と化した肉柱の中心で抱き合う二人、しかしロマンチックな雰囲気はそう長く続かなかった。

 

「無視は、寂しいですわ…………」

 

「うぉっと、いきなりか!空気が読めないなぁ……!」

 

 新たに生え出す魔神柱、キアラと一体化した哀れな骸達は道具となり、触手となり、二人に襲い掛かる。

 捕縛されていた時に体力をドレインされてしまったのか、動けないメルト抱き上げ、攻撃をかいくぐり、後方に下がったマスターはメルトを置いて、そのまま単身キアラの方へと挑む。

 

「私も、自身の出自とか、どうしてこんな事をしたとか、目的とか、色々話したかった所なのですけれど…………御免なさい。やっぱり我慢が効かないはしたない女のようです。今すぐ貴方と肉体言語で語り合いたくて仕方ないんです……っ!フフフ、フフフフフフ…………!」

 

 気付けば、相対しているキアラの姿も変わっていた。

 尼姿で隠されていた肌は惜しげもなく露出し、性的興奮を増長させる魔性の魅力がさっきとは比べ物にならない程に膨れ上がっていた。

 何より、頭に生えた二本の禍々しい角。もはや彼女が完全に人外のナニかに遂げた証拠。

 

「この世に人は我一人…………それでは皆々様、済度の日取りでございます」

 

 彼女の周りで蠢く、奴隷と化した魔神柱。そしてキアラ自身が今まで取り込み、怨霊と化してしまった多くのサーヴァント・人間達の魂、その集合体ともいえる巨大な髑髏が現れる。

 

 ここまで禍々しい姿を晒しておきながら、なお彼女には救世主、ないし聖母のような雰囲気が消える事はない。数多の生物をたらし込む桃色の蜜。

 

 それは自身の快楽故に全てを破滅に堕とし込む人畜無害。究極的な自己愛の塊。強制絶頂快楽天。

 

 ―――その名はビーストⅢ/R。七つの人類悪の一人、『愛欲』の理を持つ獣である。

 

「貴方が大事にしている後ろの虫に手を出すなんて、つまらない事はしませんわ…………。だって貴方が私に溺れ切った時にオーディエンスがいないと寂しいですもの…………。二人でたっぷり楽しみましょう。ああぁ、けど貴方が散ってしまった時、どんな顔を見せてくれるのでしょうねぇ……後ろのアルターエゴ、そして貴方自身も……」

 

「まぁ陵辱系の薄い本向けの性格をしていらっしゃる。ピュアボーイの俺には些か刺激が強いぜ」

 

「またまた御冗談を」

 

 カードは切られた。

 百式官能像VS魔性菩薩。

 人類史上最低最悪の性杯戦争はいまここで最終局面を向かえる。

 

「『百式官能 九十九の掌』」

 

「あぁっ!そんな……いきなり、たくさんのモノで私を嬲ってくれるなんてぇぇっ……!!あはぁぁんぅっ!もっとぉ!!」

 

 愛の欠片も無い、それは徹頭徹尾敵を排除する為に使われる研ぎ澄まされた快楽の攻撃。

 通常の女サーヴァントなら昇天してもおかしくない愛撫の群れをキアラは全て受け止め、悦ぶ。

 

「与えられるだけでは忍びないです……どうか私の愛も受け取って下さい……『四念回峰行』!!」

 

「『欲情破顔拳』」

 

「あぁんぅ、もうっ……!いけずな人……」

 

 だが、マスターはキアラのその性手をいなし、拒絶し、カウンターを返す。

 まるでお前のはノーサンキューだと、主張するように。

 

「私と貴方なら、体の相性は抜群だというのに……何故、嫌がるのです」

 

「悪いけど、全人類をバイブにしか見ていない人はお断り」

 

「キモチ良いのならどちらも一緒でしょう?」

 

「ち、が、う、の、だっ!」

 

 性質は似ていても、この二人が本当の意味で交わる事はない。

 片や快楽を得る為、全てを自分の為だけに利用する性欲魔神。

 片や他人を気持ちよくさせ、喜ばせ、嬉しくなっている姿から快楽を得る逸般人。

 自己と他者、どこまでも平行線である主義を持つ二人がぶつかり合うのは必然だった。

 

「『三重の達し』!」

 

「んあぁ――ッッ!!そんなぁ、はげしいぃぃっ!!」

 

 マスターの撃撫を避ける事なく、悦ぶ快楽天。

 自分に気に入られようと悦ばせようとするこびへつらうような愛撫は星の数ほど受けたけれども、自身を排除する為の快楽は本当に珍しい。

 

(だからこそ……本当に惜しい)

 

 武術、法術、魔神柱の群れ、使える物全てを駆使してマスターを追い込んでいくキアラは思考する。

 

(こうしてヤり合っていればわかります……私が抱える快楽への渇望、その量と。貴方の内に宿る愛の量。その絶対量は変わらないと)

 

(私はその量をこの星全てに向けて使います…………なのに貴方は溢れんばかりのその愛をたかだか数十の女英霊()共に使うだけで満足してしまっている……そこが本当に惜しい)

 

(羽化の途中とはいえ、この身は人類悪。人間、ましてや知性体では私に勝てる道理はありません)

 

 万色悠滞、獣の権能、ロゴスイーター、これらのスキルをふんだんに駆使していながら未だ自分になびく事のないマスターにキアラは心の底から感心していた。

 

(本当に、本当に、もったいない…………。貴方様が道を間違える事がなければ(踏み外してくれれば)、獣と化した私の片割れになる。そんな未来もあり得たかもしれませんのに…………)

 

「ガフッ……!」

 

「あぁっ……!そん、な!!」

 

 見守っていたメルトの悲痛な声。均衡状態に見えた二人の性戦も唐突に崩れた。

 今まで、あらゆる色撃を捌いていたマスターの腹部にキアラの抜き手が見事に刺さっていた。

 一度、触れてしまえば……もう逆転の目はない。この人外筆頭マスターも快楽天に蕩かされるだけの運命が待っている。キアラは目の前の男との別れに名残惜しさを感じていた。

 

「皮肉も、嘲りもなく、万感の思いを込めて言いましょう。人の身でありながら、よくぞここまで私を相手して持ち堪えました。お礼に愛すべき人の前で私の躰に溺れる悦びを味合わせてあげます」

 

「あぁっ!やだ、やだ……!やめて、やめて、お願い、マスター!!ますたぁぁっ!!」

 

 後方にいるアルターエゴの悲痛な声がキアラの性感帯を刺激する。愛すべき男が自分を見る事もなく、私の肉に夢中になった姿を見れば、どれだけ顔を歪めてくれるのか、それを想像しただけでもキアラは数度達してしまった。一目置いていた男とはいえ、やはりこれが自分の性質。気持ち良くなる為なら、あらゆる物を壊してしまう。

 

 

 

 

 

「……そうか――――」

 

「……?何でしょう。辞世の句を読む猶予ぐらいは与えますが」

 

 自身に貫かれている者の呟きがキアラの耳に入った。

 

(え…………?笑って……)

 

 

 

 

 

「――――――――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「は?」

 

 ―――瞬間、キアラの視界全てを覆う程の量の花びらが舞った。

 

「何です……!何がっ!?……一体何が起きた、というのですっ……!!」

 

 急変する事態に困惑するキアラ、花びらが舞い散ったその奥には先程、自らの手で貫いている男の姿は無かった。

 フワフワとこちらをおちょくるように杖を抱え、浮いている一人の女の姿しか無かった。

 

「良い夢は見れたかい?第三の獣、ラプチャーとやら……。ふふん、マイロードの愛をたっぷりと受け取り、心身ともに強化されかつ雌になってしまったこの私からすれば、獣未満の蛹を騙すなんて実に容易いのさ」

 

 白い癖のある長髪に誰かをリスペクトするようなアホ毛、魔術師らしい装飾が施された白い装束に身を包み、控えめな胸の膨らみを持つ女性。その名は――――。

 

「は――い、というわけで皆の頼りになるマーリンお姉さんの登場だ」

 

「……サーヴァントッ!馬鹿な、あり得ません!!カルデアからのサーヴァントは全て、弾き飛ばした筈……!」

 

「そうだね。では驚愕している君にはこの言葉を授けよう。『一体、いつからカルデアからサーヴァントが来ていないと錯覚していた……?』」

 

「……!最初から、私はずっと幻惑を見せられていた、そう言いたいのですか……!」

 

「君がもし、彼と二人のアルターエゴ君達のヤり取りを覗いていたのなら、『微笑ましく、いじらしい』なんて感想は間違っても出ないから、ね」

 

 杖をクルクルと回し、楽しそうにネタばらしをしていくロクデナシTSキャスターは楽しそうだった。

 マーリンの大規模な誤魔化しの魔術が解かされたが、場所は変わらず天体室である。

 さらにモニターから追い打ちの如く、二つの電影が映し出された。

 

『ちょぉ――っと待ちなさいっ!何自分だけの手柄みたく得意げに語っているんですか、この倒錯的変態キャスター!!貴女達二人を手引きしたのは誰の手腕だと思ってるんですか!!』

 

『全部、全部、アルテラさんのおかげじゃないか……!』

 

『はい!そこの自堕落セイバーは黙っていて下さい!』

 

「BB……成程、完全にこちら側についたとは微塵も思っていませんでしたが……こうもわかりやすくカルデア側に与するとは……」

 

『そこら辺は複雑な事情があるので割愛します!というよりも私達の事より貴女は自身の事をもっと見るべきだと思います。相変わらず、視野が狭いのは治らないんですね、エロ菩薩さん』

 

「…………!私の権能が、霊基が弱っている……!?」

 

 夢の中とはいえ、あの時マスターと戦っていた全能感が半分以上失われていた事にキアラは今更ながら気づく。

 

『私の演算能力、アルテラさんのハッキング力、マーリンさんの幻覚により、貴女がいい気分に浸っている間にセンパイが集めたサクラメントから作成したメルトちゃんデスwhip、化粧落とし、スーパー賢者カプセル、 抗エロス剤、賢者カプセルEX、人理倫理剣その他諸々たくさん注入させて頂きましたからね!ここからは健全、全年齢対象タイムとなります!!』

 

「くっ!幻覚に惑わされ、無抵抗の女に薬を打ち込むなんて…………!なんて素晴ら、卑劣極まりない事を!!恥を知りなさい!」

 

『今世紀最大のおまいうですね』

 

 BBが最初にカルデアに接触し、アルテラに番組を乗っ取られるという茶番……既にその時からアルテラ及びマーリンの二人は秘密裏にBBに近づき、この瞬間までの筋書きを思い描いていた。

 アルテラちゃん、マーリンちゃん、どちらも人をだまくらかし、おちょくるのにはうってつけの人材。

 

「まぁ、マイロードが君とマンツーマンで闘っても負ける事は無いだろうけど……そもそもの話、決着が付かないんだよね。というかまずその前に先にこの星が滅びる。あらゆる快楽を与える矛(マスター)あらゆる快楽を受け止める盾(殺生院キアラ)がぶつかり合ったらどうなると思う?答えは『台無し』だよ」

 

『性交で星が滅びるとか、同情しかありません……』

 

 星を滅ぼしてでもキモチ良い事をしたい女とキモチ良い事は好きだけど星を滅ぼしてまではしたくない男ではヤり合い続け、直接的な決着がつかなくとも結果的にはキアラの一人勝ちになってしまうだろう。

 だからこそ、このビーストに引導を渡すのは別の者でなければならない。

 

 そこで、キアラは気付く。私が貫いたマスターが……悲痛な声を上げていたメルトリリスが……いない。あれが全て幻覚なら、本物の二人はどこにいるのだと。

 マスターは、メルトリリスは、パッションリップは一体どこに――――?

 

 

『合体技は良い文明』

 

 キアラの背後、遠く距離を取った場所に3人はいた。

 メルトとリップは見た目が変わり、白い純白のドレス姿へと再臨していた。一体どんな種火を注がれたのかはまぁ、想像の通りである。

 そして振り返ったキアラの瞳に映ったのは、開かれたリップの巨大な手に乗っているマスターとメルトの姿。

 

 さらにマスターはリップを真似するかのように、メルトを手に乗せ、抱きかかえていた。

 剥き出しの彼女の脚の刃が自身の手を貫いているのを気にする事なく。

 

「マスター……一つ良いかしら、貴方、本当にイカれているわっ!!」

 

「メルトの膜を破っておきながら、手の平に風穴を空くのを怖がってられるかって話!!」

 

「馬鹿!ばかっ!バカッ!おばかさんっ!!」

 

 恥ずかしさと申し訳無さで激昂しているメルトも今この瞬間ですら、その貫いているマスターの手から血と魔力をドレインしていた。

 決着は一瞬、時間を与えれば与える程にあの快楽天が有利になってしまう。

 

「リップ、全力でやっちゃっていいよ!」

 

「はいっ!マスターさんが私の手で潰れないって、壊れないって……マスターさん自身が証明してくれましたから!私を信じてくれる貴方の為に、何も恐れず、全力で行きます!!」

 

 リップの宝具『死が二人を別離とも(ブリュンヒルデ・ロマンシア)』。

 彼女の手を発射台として凄まじい勢いで発射されるメルトとマスター。

 

 光の速度を超えるその衝撃は本来なら霊基がボロボロになってもおかしくないのだが、マスターの白濁によって存分に霊基を強化されたメルトには何の支障も無かった。

 マスター自身は?彼は大丈夫です。問題ありません。マスターですから、他に言う事はありません。

 

「……標的確認、方位角固定……!見様見真似『どぅりんだな』!!」

 

 そして、その速度はさらに加速する。光速で投げ出される極限の状態からメルトに刺された腕を思いっきり振りかぶるマスター。

 アテナの槍そのものと化したメルトがマスターの強肩から放たれ、突き刺していたその手から飛び立つ。

 

 リップ、マスター、二人の二段カタパルトによって時間すらも置き去りに、速さの概念すらも超越した合体宝具。

 一人の男によって、女にされた二人の少女達の宝具。

 

『ノンヴァージンレイザー・パラディオン』

 

 愛と恋と快楽、全てを貪欲に手に入れたメルトの自慢の脚から繰り出される一撃がキアラへと着弾する。

 

「殺生院――――!!!」

 

「ぐううううううっっ!!!!?…………な、んですか、なんですかっ!?このふざけた威力は……!!私の霊基が……!肉体が……!溶けてっ……!!」

 

「そりゃあ、ついさっきまでマイロードとハッスルしていた少女の一撃だからね。彼の愛の素を燃料にフルスロットルだもん。最終決戦前のベッドシーンは負けフラグとか彼にしてみれば『そんな事知ったこっちゃねぇ!いいからセックスだ!』って所だろうし」

 

「……っ!コイツの次は貴方よ!!花の魔術師!」

 

「そんな!そんなああぁっ………!!私が見ていない所で、そんな羨ましい事をおおおおおおおおおおぉ……!!!」

 

 逃げる事も押し返す事も出来ない。抵抗すらも馬鹿馬鹿しいと一蹴されるぐらいに致命的な一撃を受けたキアラにはもはや、口を動かす事しか出来なかった。マスターとメイクラブを楽しんでいたメルトに恨み言のように吐き出す。

 

「どうして、何故、何でっ!私だけが、こんな目にぃ……!…………貴女達のマスターも、私と、そう大差無い存在でしょう……!?なのに、この違いはっ……!?」

 

「マスターと貴女が大差無い?ハッ……。どこまでも節穴な女ね、殺生院キアラ。独りだけで気持ち良くなりたい女と、皆で気持ち良くなりたいマスター、一体どこが同じだというのよ。彼は見てくれているわ私達を……一挙手一投足どこまでも。それに比べて貴女の目が向くのは結局の所、自分自身だけでしょ?」

 

 論ずるに値しないとキアラの慟哭を切り捨てるプリマドンナ。

 星そのものを使った自慰。そんな者で満足している女と自身のマスターを一緒くたにされるなんて片腹痛い。

 メルトにはキアラがありふれた女の幸せすら掴めないから、そんな虚しいオナニーに逃げている哀れな女にしか見えなかった。

 

「そんなものに付き合わされる奴も迷惑よ。乳臭い女……。一人きりの陶酔なんて、ベッド(墓場)の中で貪っていなさい」

 

「ぐぅっ!!…………がぁっ!あ、あ、あ、あぁぁぁぁァァァァァァァッッッ!!!!」

 

 もう意味のある言葉すら吐き出す事も出来ない。全身が砕かれる衝撃を感じて、キアラは叫び声を上げ続ける。

 メルトリリスという女神が化した勝利の槍は、そのままビーストⅢ/Rの核を打ち抜いた。

 

 こうして誰よりも淫乱で、本当の意味で男を知らない女は。誰よりも貞淑で、真の意味で男を知った女に敗れたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………はぁ―――あんなに凄まじい一撃を受けたのに、少しもキモチ良くありません、どう、してか……この身にあるのはどうしようもない敗北感と、痛みだけ……」

 

「まだ喋る元気があるとか、どんだけしぶといのよ貴方」

 

 肉体の7割は既に消え去り、後は完全な消滅を待つだけの愛欲の獣。

 横たわっている彼女は宝具の影響で消耗した体力を癒す為、マスターの膝の上で存分にイチャついているメルトに視線を向ける。

 

「君の敗因は。本気度が足りなかった……ただそれだけだよ。マスター君に対して、一目置いておきながら、それでも自分よりは下であるという慢心を拭いきれなかった。だから、野良の女性サーヴァントを全て排除しておきながら、二人のアルターエゴをお遊びで残すという迂闊さを見せて、この結果になったんだよ」

 

(まぁ、彼そのものに注視し過ぎて、彼の影響力を舐めていた所もあるけど、そこは言わなくてもいいかな)

 

「本気……。真面目では無かった。移り気だったのですね、私は……。カルデアのマスター様……もし、私が一介のサーヴァントとして、貴方の所に召喚されたら、貴方様は他の方達と同じように、私を愛して頂けるのですか…………?」

 

 消える前につい、そんな言葉が口に出る。

 ゼパルと同期し、今までの特異点におけるマスターの戦いを見たキアラは尋ねる。あそこまで守備範囲が広い彼なら私もと……。そこから与えられる快楽は今までと違う物なのかと……。

 

「え―――と、うん…………君はちょっとタイプじゃないから…‥ごめんなさい」

 

「――――――――――――――カハッ。…………あれだけ、年上から幼女まで、ましてや性別も良くわからない者を受け入れていた貴方が、タイプじゃない、タイプじゃない……タイプじゃない……………ぁぁ、これが失恋なの、ですか、ね……‥‥フフフフフフフフフフフフ」

 

 意味深な笑みを浮かべて、キアラは消滅した。

 止めはマスターの一言だったのは間違いない。

 

「どうせなら、ゼパる前の貴女に会ってみたかったよ」

 

「フラグ臭い事言うのは止めなさい。アイツが召喚されるとか冗談じゃないわよ」

 

『このセンパイとキアラさんがいるカルデアとかどんな暗黒魔境ですかね。想像したくもありません』

 

 最後の最後ので締まらなかったが、それでもこの特異点。電子の海と化したセラフィックスの危機を取り除く事は出来た。

 ゼパなんとかさんが余計な事をしたおかげで狂乱の渦にぶち込まれたこの特異点もいずれ修復される。

 人類を滅ぼし得る快楽天も、セラフィックスにいた人達を覆っていた絶望も消え去った。

 

『めでたしめでたしみたいな雰囲気の所、申し訳ありませんが。まだ終わりではありませんよ?私はムーンセルから派遣されたBBですから、当然もう一人リップとメルトのようにサルベージされた『私』がいます。私は超絶優等生で、献身的な後輩ですから貴方達を助けましたけど、そっちはきっと……』

 

『ん、こいつか?』

 

 モニター奥のアルテラちゃんがパンパンと手を叩くとある物体が、マスター達の前に放り出された。

 

「んんんんんんむぅぅっ!!んふぅぅっ!!んぐぅぅっ!!!」

 

 三色の縄で全身を縛られ、リップとそっくりの拘束具で目を隠され、ギャグボールを咥えらさせられているBB/GOの姿が。レオタードをずらした股間の部分には三色バイブが突き刺さっていた。ビクンビクンと震え続けている少女、ブブブブブブブブブと鳴り続ける機械音。どうしようもない空気がその場を包む。

 

『って何してくれてるんですかぁ!?』

 

『いや、人類を管理するとかなんとか勤勉な事を言うから全自宅警備員を代表する私としては野放しにしておけないと思ってな。マルスの力を惜しげもなく使ってしまったな……』

 

『格好、私そっくりなんですから!こっちにもダメージが来るんです!あぁ、もう見てられないんで、さっさとこの霊基を回収しますよ!』

 

『待て待て、しこたまアレな薬も注入したから今の状態でこいつを吸収するとお前も…………』

 

『あひぃぃいいんぅっ!!!』

 

 モニターからBBの姿が消え、艶っぽい声だけが聴こえた。

 

「よしっ!帰ろっか!!」

 

「本当に締まらないわね!私のシリアスな活躍返しなさいよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




マーリン「いやぁ、なんかごめんね。大活躍で?君達は皆、弾き飛ばされてお留守番だったのにさ。まぁ、最高峰のキャスターだし?グランドクラスの力もあるし?サーヴァントとしてこれぐらいはマイロードの為にして当然みたいな?」

アルトリア顔‘s『イラッ……』

セイバー・リリィ「ごめんさい、ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…………マスターの危機に何も出来なかった無能な剣で、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…………」

謎のヒロインX「おいぃ!リリィがカムラっているのですが!?どうしてくれるんですか!」

ヒロインXオルタ「取り敢えず、マスターさんを呼びましょう」









鏡花水月マーリン大勝利ドヤ顔ダブルピース。私が天に立つ……!


最初の『BBチャンネル』が『あるてらちゃんねる』に乗っ取られた時にマーリン・アルテラ・BB結託。あまり大勢で来ると隠蔽が難しくなるので最少かつ最大のこの二人がカルデアからやって来た(この段階でマスターは何も知らない)

後は本編の通り。
キアラにはリップとメルトの二人がマスターとR18な行為をしている部分を隠し、最後のキアラとマスターの一対一は幻覚。他は大体現実と一緒。最低最悪のマンツーマンに関しては今までマスターを千里眼で覗いていたマーリンによる幻覚なので再現率は最後の決着の仕方を除けば、9割9分。限りなく本物のマスターが取る行為に近い。

本編でもマーリンちゃんが語っていた通り、マスターとキアラがぶつかってもマスターが蕩かされる事はないが、先に地球が音を上げて滅びるので、どちらにせよその時点で人理を守る使命を持つマスターの負けとなってしまう。星が滅びる大性交とか、頭おかしいよ。劇物と劇物を混ぜてはいけない。



マスターがマーリンとアルテラの二人が来ていた事を知ったのはメルトを抱いた後。
夢の中で今回の作戦を知らされる。(自分達の情事を覗かれた事を知ったメルトはこの戦いの後でBB、マーリン、アルテラの3人を抹消する事を決意)

その後、リップも抱く。

後はモニター役兼ナビゲーターでもあった超級の演算能力を持つBBとアルテラの二人が作成したアイテムを夢心地なキアラにサーーッ(迫真)と使う。弱体化されたキアラにこれ以上無いタイミングで『ノンヴァージンレイザー・パラディオン』を放つ。

事件解決後、マスターの精液を心・体・霊基に刻み込まれ、存在が固定化されたリップとメルトは特殊的な事件だったとしても、彼を忘れる事なくSE.RA.PHで出会った二人のままカルデアにて召喚される。このマスターが一度でも抱いた女をさよなら、ぽいするわけないじゃないですか。









次回、後日談兼BB、リップ回でCCCイベ編は完結とさせていただきます。
メルトのエロ回が長くなったから、こんな文字数に……(歓喜の悲鳴)






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DEAD OR ALIVE ECSTASY 3(メルトリリス&パッションリップ)


3話完結と言っておきながら、すまない…‥騙してすまない。4話完結、次回で完結だ。







0話にて武蔵、アサシン・パライソ、アーチャー・インフェルノ、刑部姫、更新。



Q:未登場のキャラの増加数に更新速度が追い付いていない件について。

A:俺は諦めねぇ!(ドリカムスマイル)


 

「んくぅぁ……!あぁっ……!あぁ!んひゃぅう!はぁぁんぅ!!!」

 

 さぁてさて、このSE.RA.PHにおけるGAME OVERまでのタイムリミットもそこまで猶予があるわけでもないのに、猿のように盛っているお二人さん。

 あれですか?命がかかっている極限の状態だからこそより燃え上がるという奴ですか?「最後に勝つのは少年少女の恋とエロスだった……」とBBちゃんが〆るべきなのでしょうか?

 

 おぉっと!少し目を離している隙にメルトってばベッドをギシさせて盛大にアンアンしています。

 貞淑の欠片も失った濡れ濡れのアソコにセンパイの魔剣ジゼルがぶっ刺さっています。WEAK!WEAK!EXTRA ATTACK!!

 

「くしゅぐったぁぁっ……!んふぅっ!……はぅぅっ!……おっぱいちゅぅちゅぅ、しちゃぁ……ら、めぇぇ……あぁぁっ……!!」

 

 メルトonベッドの上に腰を下ろした全裸のセンパイ。センパイのピーinメルトのおにゃんこ。

 対面座位の体勢で、絶望的なまでに慎ましいメルトの平原に咲いた蕾にセンパイが吸い付いています!

 さすがは慈愛の塊に満ち満ちているセンパイ、無駄のないフォルム(笑)であるメルトのぺちゃぱいを愛でてあげています。

 私の理想の完璧後輩フォルムを再現したと言ってもいい魅惑の果実とはもう戦力差が悲しい(ポロロン)までにあるそのひんぬーはセンパイのお口の中で転がされたり、舌でペロペロされちゃっています。

 

「あっ!ふぅ!!もう、これで……にゃんかいめ、かしらぁっ……!?はひぃ!!あぁぁ……!ま、たイくぅっ!イっちゃぁぁ……!あ、ああぁ……!!イッてぇ……イってるぅぅっ……!!はぁぁぅぅ!!」

 

 お前、神経障害の設定どこに置いて来たんだと言わんばかりの乱れっぷり。

 もうエロ同人だったらメルトの周りには百個ぐらい♡マークが浮かんでますね。BBちゃんにはわかります。

 

「ほらっ、ほらっ、ほらっ!…………どうかし、らっ……き、もちイイ?キモチいいでしょ?キモチイイ、わよねっ……あんぅぅぅっ!!」

 

 自慢の騎乗スキルBを生かし、パンパンと音を立てながら、腰を動かすメルトは必死にセンパイのおちんぽを扱いています。「イクわよイクわよイクわよイクわよイクわよっ!」という気分かもしれませんね。まぁ、メルトはもうイキまくっているのですが。

 

 最後に危険極まりない鋼鉄の脚でセンパイの腰をだいしゅきホールドしたどスケベなメルトにはお仕置きとしてセンパイのパニッシュミルクが存分に注がれていました。

 

「んひぅぅううううっ――――!!!」

 

 普段のメルトからは想像出来ない可愛らしい悲鳴が上がります。センパイのおちんぽキスで子宮口がBREAKされちゃってますね、これは。中出し!着床!懐妊!おめでたさん!間違い無し!本当に電子の海は広大ですね!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 わかります。私にはわかりますよ――。言わずとも視聴者さん達のドロドロとした欲望が。メルトのマニアックなボデーに興奮出来る人も一定数いる事は認めましょう……人類の業の深さは侮れませんからね。

 

「んふぅ……ふぇ……あぁ、ぁぅぅ、ぁっ、あぁっ!んにゃぁ……ますたぁさん、そんなぁ、優しく撫でまわさないでぇぇ……あふぅぅ―――……!!」

 

 しかぁし!大は小を兼ねる!大きいのは良い事だ。でかあああいッッ!説明不要ッッ!!やはり、需要を求めるのならばこちらになってしまうでしょう!!ベビーフェイスにワガママ過ぎるボディ。全童貞諸君の妄想を再現したような柔らか戦車リップの痴態を見たいんだろぉ!?

 メルトと散々ヤリまくった部屋と同じ場所で今度は二人目のアルターエゴに手を出すセンパイ!彼の毒牙は隠す程、謙虚な性格はしていないんです!

 

「リップが優しくして欲しいって言ったんだろう?神経過敏だから、あんまり激しくし過ぎると壊れちゃうからって、さ?」

 

 壁にその大きな爪をぶっ刺し、子沢山に恵まれそうなお尻を媚びるように向けているリップはその背後から胸についた巨大風船を存分に愛でられていました。

 センチネルと化し、SM調教モノみたいな見た目になっていたリップを解放したセンパイの荒れ狂うセクシャルハンドは一体どこへ?

 手の平では収まり切らないその規格外サイズを揉むのではなく、撫でる!

 さわぁっ……と優しく、リップの巨峰の表面を余す事なく撫で回しているのです!

 

「ひっ……あぁっ、あっ、あぁっ、あぁぁっっ……!はぁ、あぁぁ!あ!あんぅ!あんっ!はぁっ、あぁぁっ……!」

 

 おぉ……ソフトタッチでありながら、女の子を悦ばす事に一切の妥協を許さない、まさに陶芸家のような職人染みた匠の愛撫……。なんという事でしょう……。あんなに「えっちぃ事なんて私、何も知らないんです」みたいな穢れなき天使のような顔が赤く火照り、瞳は潤んであの可愛い口からはイキ声と涎が止まる事を知らない発情アルターエゴへ変貌。まさに性的!ビフォーアフター!

 

「ひゃあああああっっ!!」

 

 激しく揉みしだいているわけでもないのに、リップの乱れっぷりはそれはもう見ているこっちがドキドキするレベルです。

 センパイの手はマッサージもしくは、ツボを突くような手付きで指先を使いリップの乳肉を揺らしているだけなのですが………………うむ、けど、優しくすればっていいもんじゃないですね。

 そんな、緩やかな刺激を『性科百般A+』持ちと恐れられるセンパイの淫手から受けてしまえば、こんなになってしまうのは仕方ないと思います。

 神経過敏もプラスされて、イキ殺しになってますもん、むしろ激しいヤリ方でいっそ楽にしてあげた方がいいのでは?

 

「ひぅんんぅ!!あぁ、っぁ!ま、すたぁぁっ、さ……あんぅ!……先っぽぉ、かするのぉ……あひぃ!!だ、めぇ……!よ、わくてもぉぉ……んひゅぅぅ!!刺激がぁぁ……あうぅぅんんぅ!!」

 

 どんな際どい衣装でもその先端が見えなければ大丈夫です!と言われるまさにエロとセクシーの境界線とは言っても過言ではない女の子の蕾。そこは隠された秘宝であり、ぱらいぞでもあるのです。拝むには、週刊誌から単行本に進化を遂げるぐらいには難易度が高いでしょう!

 全裸でお尻を突き出し、同じく全裸のセンパイから胸をさわさわされて、あへあへしちゃっているリップのそんな乳首も隠すもの無くビンビンになってしまっています。

 

 あれはいけません!あの充血したリッぱいの先端は男ならしゃぶりたくなり、かつ摘まんで引っ張りたくもなる誘惑が放出中です!

 ですが、そこは百寝錬磨のセンパイ、乳首の方に依存する事なく、あくまでリップの乳房をフェザータッチで弄んでる延長で触れるだけに留めています。

 

「んみゅぅ!!あぁっ……はぁ……はぅぅっ!ま、た……マスターさんの指ぃ、ぶつかって……きたぁぁっ……!!うぅ、この感じ、へんになりますぅ……あんんぅっ!!」

 

 しかし、たまったもんじゃないのはリップの方。

 乳肉を微弱な愛撫で焦らされながらも、確実に快楽を蓄積されている中で気を抜いたら、ちょこんとセンパイの指が起立している乳頭に一瞬、触れるのですから……。

 

 リップにとってはその一瞬で十分過ぎる刺激が襲っているでしょう。

 心地良い軽いイキおっぱい愛撫からのハプニングタイムのような乳首との故意的な接触事故。

 緩やかで長い刺激の中にある一瞬で鋭い刺激……緩急をつけてマンネリ化を防ぐ事をちゃ――――んと意識するセンパイのセックスにおける気遣いの気持ちが現れているようです。

 

「あぁ…………あぁっ!ますたぁさんの、アソコがあぁ……わたしのお尻にぃ……ぅっ……ふぅぁぁ!!……あっ、はぁ……は、ずかしいです、よぉ…………」

 

 リップのこんな濡れ濡れでエロエロな姿を見て勃たない男に人権はありません。去勢しか道はないと断言さえ出来ます。

 センパイにはそんな心配は必要なくとっくのとうにご立派なマーラ様を召喚済みです。

 天まで反り返っているそれをリップのお尻の谷間にみちぃっと挟めています。

 

 リップの胸を性的マッサージで人体改造しつつ、臀部にスリスリと、それはもうはしたなくスリスリと尻コキして彼女の羞恥心を煽る高等技術。

 もうおっぱいでいっぱいいっぱいなリップは後ろを振り返って自分のお尻の状態を確認する余裕はありません。

 バストと負けず劣らずの色肉をもったヒップをセンパイのペニスで意図せずご奉仕するしかないのです!壁に押し付けられ、無抵抗な姿で可哀想なリップ!しかぁし、その表情はものすごぉく嬉しそうに見えるぞぉ!?苛められて泣いてしまう弱気な性格はトラッシュしてしまったのか!?

 もう、メルトといい、私から離れたアルターエゴ達が性活をエンジョイし過ぎて、なんだかBBちゃん、ちょっと置いて行かれた気分です…………。

 

「あぁ、あああ……あ!あぁっ!お尻のあいだにぃ……はさんでぇ……あぁ、ぴくぴくしてましゅぅぅ……!ひぅっ!んふぅっ……うごかさないでぇぇ……!!あひんぅ!ち、くびだめぇぇ~~……!」

 

 下から上げるようにスライドし、リップのヒップを素股ならぬ素臀でアソコを扱いていくセンパイ。

 挿入するのではなく、擦る事でリップの菊門を刺激するあたり責め方がマニアックで変態チックです。

 自分でも触った事はないお尻をよりにもよって、センパイのリサールウェポンでしゅっしゅっ、しゅっしゅっされてますからね、しかも……おっぱい責めも進行中ですからリップはもう、どっちに意識を向ければいいのかわけがわからなくなっていると思います。うぅむ、これはリップの頭の中がどピンクでいっぱいになるのも時間の問題ですか?

 

「んひゅぅ!ひゃああっ!あぁぁっ!!はぅぅ!だめぇ…‥!だめ、だめ、だめぇ、だめぇ……っ!!こ、んなの知らない……!いじめられている、みたいなのに……イヤじゃなくてぇ……んふぅぅっ!!あぁ、頭がぽわぽわってなってぇ……!もっと、もっとぉ……続けてほ、しくてぇ…………!」

 

 わーお、既にどピンクになっていました。

 おっぱいの揺れが凄い事になってますよ。もう、どたぷんどたぷんと。震度8強ぐらいはありそうです。

 リップの体を支える為に壁に刺さっている巨大な両手もどんどんめり込んでいってますし…………いやー、メルトとの事後はベッドがズタズタになってましたし、リップとの事後はもう部屋中の壁、穴だらけになるんじゃないんですか?

 他の人がこの部屋の惨状を見たら、とてもじゃありませんが情事でこうなったと信じないでしょうね~~。センパイのセックス激し過ぎィ!!

 

「……っ、じゃあ……!か、けるぞ……リップ!」

 

「ふぇぇ……?か、けるって……な、にをぉ、でしゅかぁぁ……!?」

 

 乳肉と尻肉を嬲られまくっているリップには何の事か察する余裕はありません。

 無知な少女は疑問符を浮かべていますが、暴発一歩手前のセンパイ大砲が止まる事はなく、そこから臀裂をスライドしている剛直、そして腸骨稜から顔を出す亀頭……今、センパイの波動砲が放たれますっ!!

 

「んあぁあ!?あああぁっ!?あうぅぅっ!!なぁっ…………あ、あついぃのが、背中にぃぃ……!!なん、ですかぁ、これぇぇ……私、ナニをかけられているんですかぁぁ……!?」

 

 それはケフィア。いいえ、ザーメンです。

 リップの腰からうなじまで飛び散っているセンパイの白濁液、敏感肌のリップはかけられただけで堪らないものがあるでしょう。

 しかも性剛魔人のセンパイの精液、何かこう特殊な媚薬効果があってもおかしくありませんからね。ぶっかけプレイで、女の子をイキ殺しそうです。現にリップはセンパイのアッツアツなおちんぽ汁が体にかかる度にビクンビクンしてますからね。

 

「んぅ!あぁぁっ!!まだ、かけられてぇ……!あぁぁっ!あぁ!あん!ドロってしてぇ……肌に触れる度にぃ……んひゃぁあ!あっ、キモチいいぃ……あんぅ……たくさんぅぅ……」

 

 うっとりして、背中を精液だらけに染め上げられてしまったリップ。ここまで彼女は何回イッてしまったのか、超級AIのBBちゃんですら、数えるのが億劫になっています。

 

 ガリガリと両手で尋常じゃない爪痕を残しながら、へたり込むリップ。

 

 力の入らないリップをお姫様を抱っこするセンパイ。両手を含めば、およそ1tはあるその体重をものともしていません。女の子に重いは禁句ですからね!そこはたらしのセンパイも重々承知でしょう。

 さて、ある意味フィニッシュしたとも言える空気……。このままピロートークでも良いかもしれません。

 

 しかぁし!このセンパイは実はまだリップのアソコには一切手を出していません。あのセンパイがここでご馳走様をするワケが無かった!メインディッシュは最後にという変態紳士っぷりに感心すればいいのか!?それとも、おっぱいとお尻だけでここまでリップを乱れさせた事に戦慄すればいいのか!?

 

「リップ、その両手を支えにして体を浮かせられる?」

 

「ふぇ……こうですか?」

 

「そうそう、それで足を開いて」

 

「……こ、これでいいんでしょうか……?」

 

 なるほど、さすがにベッドでヤリ合ったら、重さに耐え切れずおじゃんになってしまいますからね。

 しかし、半放心状態で素直過ぎるリップになんて格好をさせているのでしょうかセンパイは。

 自身の躰をその鋼鉄の腕で体操選手のように支えるリップ。センパイに言われるがままに脚を開き、膝裏を指の第二関節、丸っこい安全な部分にのせました。

 

 おぉ、まさにセルフ駅弁体勢。普通の体ではまず出来ないM字開脚……その淫靡さにセンパイの剛直は第二ラウンド開始の体勢に移ります。

 

「わ、わ、わ、わ……マスターさんのアソコまだ、そんなに元気一杯なんですね。え……えーと、私の脚を開かせたって事は……マスターさんの、それを…………私のナカにあわわわわわわ……」

 

 あざとい、実にあざとい……情欲を煽りに煽るその姿で、恥ずかし気に顔を赤らめるリップ。男のツボを天性につく、天然の受け体質。そんな姿を見せられてセンパイの辛抱がきくわけもなく……。

 

 あぁぁ!そうこうしている内に未だ萎える事のないセンパイのお仕置き棒が次なる標的を求めて、リップのおにゃんにゃんに向かっています!

 

「あぁ、入れるよ。心の準備はいい?」

 

「は、はい……大丈夫ですけど……わ、私のナカなんかに入って、マスターさんのソレが変な事にならないかって不安で…………」

 

 大丈夫でしょう。無問題でしょう。杞憂でしょう。だってあのセンパイのおちんちんですよ?まさに性槍抜錨、神槍と謳われたこの槍に一切の矛盾無し、一切穿通の神秘の塊であり、数多の英霊を抱いた幾千の経験によって至った極致。変化A+のソレはリップの初めての部分に相応しい大きさと硬さになっています。

 下手をすれば、リップのブレスト・バレーをくぐり抜けてパイズリも可能かもしれません。やだ……私のセンパイのアソコ、怖すぎ……。

 

「『なんか』じゃないよ。リップのここ、すごく綺麗で魅力的だ。一日中弄ってて飽きないぐらいに」

 

「はぅっ……あっ、開いてぇ……」

 

 さて、頭をナデナデ。もう一方の指でリップの淫裂を開き始めているセンパイ。

 女の子を不安を紛らすと同時にヤルべき事はきっちりと進めるプレイボーイっぷりに感服です。

 

「んあああぁあぁっ…‥!あ、ついぃ……ひぅぅぅっ!あぁっ!だめぇぇ…‥!!これぇ、これぇ……!あぁぁ……私の体、こわれちゃうぅぅ……」

 

 リップの大陰唇、小陰唇が……センパイの陰茎が進む度に蠢ています。それはリップの顔には似合わない程に、グロテスクで、そしてそれ以上にエロチックでした。

 神経過敏のリップが膣壁という最も普段の生活で触る回数が少なく敏感な部分をセンパイの熱い逸物で擦られているのです。その衝撃はまさに脳の回路を焼き尽くす程。

 

「ああああぁぁっ!あぁぁっ!はぅぅぅっ!!んふぅっぁ!!ひぁぁあっ!!あっあっあっあっあっ……!しゅごい、しゅごいですう……ますたぁさん、わたし、こんなのしらなくてぇぇ……あひぃぃぃっ―――!!」

 

 ストローク……前後運動をしているわけでもなく、肉棒はただ前に進んでいるだけ……それだけなのにリップの絶頂は止まりません。

 ミリ単位で男根がリップの膣内を掻き分けていく度に、激しい嬌声と潮吹きが止まりません。

 これは……センパイのアソコが最奥に到達する頃には二ケタ単位でイッてそうですね……リップの体持ちます?

 

 

 

 

「あへぇ……へぁ……ぁぁ、ひぁ……ぁああっ……あっ、あっ、ぁぁぁ――――…………」

 

 うん、知ってました。BBちゃん、この展開は知ってました。

 何とか、リップの子宮口までは到達したはいいものの、既にリップの顔は涙と涎のアヘ顔でぐったりしています。

 この状態で激しい挿入運動をしようものなら、リップは完全にセックスの事しか考えられない淫乱のアルターエゴへとメタモルフォーゼしてしまうかもしれません。さすがにそんな陵辱ゲーENDにするつもりがないセンパイは動く事なく、リップの躰をぎゅっと抱き締め、頭を撫で続けています。爆乳おっぱいが二人の間で潰れてるのはえっちぃですね。

 

「…………あ、あぁ……ご、めん……なさ、い、私、脆くて…………んんぅ、マスター、さんを……満足させてあげる事が…………でき、ませんでした……」

 

「大丈夫、こうして繋がり合っているだけで十分気持ち良いよ。しばらくこうしてよっか」

 

「あ……マスターさん」

 

 全裸で挿入している姿ですが、それでもどこか甘酸っぱい雰囲気が流れます。

 どこまでも自分を気遣ってくれるセンパイにちょろインなリップはこう考えるでしょう。

 

(せめて、せめて、さっきマスターさんが出した白いのを……もう一回ぐらい……。それぐらいは気持ち良くさせないと、だってこのままじゃあ、私ばっかり……)

 

 Mな性格な癖して、恋愛対象への行為はSというかつてのリップからは想像出来ない健気さ……。この成長っぷりにBBちゃんも涙がホロリです。

 しかし、リップも腰を少しでも動かして膣壁を擦られるとセンパイを射精させる前に完全にダウンしてしまうでしょう。

 なら、今のままで、動かないこの状態のままでセンパイを射精まで導けばいい――――。リップは膣を締めるようにぎゅっと力を入れました。

 

「うっ……?リップ……?」

 

「はぁ……はぁ……はぁ……大丈夫で、す……大丈夫ですから、マスターさんは、そのまま、私をぎゅっとしてもらえますか……?」

 

 背中と後頭部に回されていた手にさらに力が入り、リップが嬉しそうにはにかみます。

 ストロベッてます、ストロベッてますね―――、なんかイチャイチャし過ぎて、ちょっとこの空気をぶち壊したくなる気分に駆られましたが……ここは我慢。BBちゃんは自制が出来る娘――。

 

 では気分転換がてら、ここで一つ解説を。

 アルターエゴ「S」であるメルトは、性行為においても言わずもがなSっ気があります。え?センパイとのセックスを見るととてもじゃないけどそうは思えない?…………何事も例外はあるのです。茶々を入れないで下さい。

 ともかくそんな「S」なメルトは騎乗Bを生かした、腰使いで自ら動き、対象のアソコを絞り尽すタイプ。

 自分から行く、生粋の責め気質なのです。

 

 では逆にアルターエゴ「M」であるリップは?あの鈍重な体でメルト程の腰使いは期待出来ないでしょう。

 えぇ、そうです。『神経過敏』『被虐体質』からわかるようにリップは責められてこそ真価を発揮するタイプ。

「M」に相応しい生粋の受け気質。リップは自分から動かなくとも、ただ繋がっているだけで対象のアソコに快感を与える名器を持っています。それはメルトレベルの腰使いに恵まれなかったリップの武器。おっぱいだけじゃなかったのです。

 

 そう、今まさにリップの膣はセンパイのアソコをさらに締め付けるように絡みつき始めたのです。

 膣襞全てを使って肉棒を扱くリップの名器、それは普通なら動きたくて堪らなくなる至高の快楽。

 ですが、センパイは自身の発言を覆す事なく、ただじっとリップの剥き出しの体を抱き締めたまま、その快感を楽しんでいました。

 

「あぁ……あぁっ、うごいてないのにぃっ、こんな感じてぇ……ひあぁぁっ、いま、マスターさんのがビクンってぇぇ……」

 

「いや……さすがに、こんなイイものに包まれてんだから、アソコが反応するぐらいは許して欲しい」

 

「え……わ、たしのここ、そんなにイイんですか……えへ、えへへへへ…………じゃぁ、さっきの白いのピューって出来るように……がん、ばりますねぇ……ちょっと、ずつ、ちょっとずつ………あ、あ、あぁぁぁっ……!」

 

 傍から見れば、ただ繋がり合ったまま動く事の無い二人の男女。

 しかし、リップの嬌声、センパイの荒い息遣い、結合部から垂れだす愛液は留まる事を知りませんでした。

 

「あ、あ、あ、だめ、マスターさんのちょっと……ぴくってする度に……私の体、ふわぁって……はぁぅぅ!あっ、あっ……またぴくってぇ……んふぁぁっ、けど、けど……頑張らないと、さっきの出させてあげないと…………マスターさん、私、頑張りますから、ね……?あんぅ……!」

 

 天井知らずのリップの奉仕精神、自分が膣に力を入れる度に震える肉棒から襲い掛かる快楽。

 ですが、リップはそれを恐れる事なく、むしろ自身の行為が成果として、センパイの悦びになっているのを実感し、精液を出させるゴールまで少しずつですが近づけていきます。

 

 性的に献身的なリップのヴァギナアクション。センパイには年下タイプの筈のリップが母性の塊に見えているかもしれません。現にセンパイの目の前にはボンッ!ボンッ!と二つの母性がありますし。

 

「…………ますたぁ、さん……?わ、たしの胸をじっと見て……ひぅぅぅっっ!!ひゃぁっ!!あぁぁっ…‥だめ、ですってばぁぁ……!」

 

 ―――はむっ。

 

 ―――ちゅぅちゅぅ。

 

 リップのパイオツを間近で用意されて口に含まないとか、そんな恥知らずな真似出来ません。腰は動かさないけど、乳は吸わないって言ってないし?

 ママンに甘える赤ん坊のようにセンパイはその桜蕾を口の中に含ませ、転がしていきます。

 

「だ、めぇ……だめ、だめ、らめ、らめぇ……!ら、めぇ……したぁ、繋がったまま、おっぱいもそんなに優しく舐められたらぁぁ………あんぅぅうぅっ!!あっ!らめぇ……唇で挟むのぉ……ら、めぇっ…………!」

 

 リップ程の爆乳です。本来なら歯で噛みながら……びよんびよん伸ばして玩びたいでしょう。リップの胸はSっ気のある人には格好の玩具ですから。それにある意味、私の夢と欲望が詰まったとも言えるアルターエゴ……どんなに無茶な弄り方をしても形が崩れる事はないので、ご安心を。ほんっとサーヴァントってばエロ方面に便利な体ですよね―――。

 

「あぅぅ……!!んふぅ……!ふふ、あぁ……あったかい、マスターさんのおくちと、おちんちん……こんなにあったかい……あぁ!はぁっ…………好きな人と触れ合うのってこんなに温かくて……気持ちいいんですねぇ………あんぅ、あぁ、あひぃ……!あぁ、はじゅかひい声、止まらないのに……少しもいやじゃないれふぅ…………今、ますたぁーさんにこしぃ、うごかれたら、私、ろうなっちゃうんでしょう……あっあっあっ……あぁ……!」

 

 喘ぎ混じりにそんな事を呟く、リップ。しかし、二人の結合部の交わりは最初の激しさが嘘のように静かに大人しく……。

 密着されているリップは下腹部で淫芽を潰されている事もあって、快楽の声が増えていきました。

 それでも、激しく挿入されるよりは優しい快楽でしょう。

 体のナカに入っているセンパイのペニスを膣運動だけで、愛撫するリップ。

 30分程でしょうか、そうやってスローセックスを楽しんでいた二人にも終わりの時間がやって来ました。

 

「ちゅ、ちゅ……っぱぁ……、リップ……そろそろ……」

 

「あぁ!あっ!あぁんぅ!あぁっ!あっ……は、はいぃ……いいですぅ、らしてください……あひぃ、あっ……!もういっそ、私のからだぁ、んぁぁっ……こわひひゃってもいいれふからぁぁ……!」

 

 ゆっくりと包まれた膣の快感は確かにセンパイの射精欲を時間をかけて限界まで高めていました。

 男は溜まったものを出す、女はそれを受け止める。こと男女の肉体関係においてそれはぶれる事のない理。

 敏感リップも挿入されたまま乳首、クリトリス、そして膣内とずぅっと触れられ続けていたのでもう呂律も回らなくなっていますね。

 

 ここで私の心配事が一つ。体に精子をかけられただけであんなにビクンビクンしていたリップが膣内出しされたら、一体どうなってしまうのか?

 

「リップ……!」

 

「ますたぁさん、ますたぁさん、ますたぁさん……あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ――――――――」

 

 ビュルルルルルっと外にまで届く生々しい音。そしてそれを掻き消す程の―――。

 

「あ、き、たぁぁぁ……!んんあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っっ!!!ひいいいぃあああああぁっ――――!!!なかぁ、なかがぁっ、おにゃかのなかがぁっ……とかざれてぇぇ……あぁぁっ!あ゛あ゛あ゛ぁあっ!!」

 

 嬌声というよりはもはや、絶叫。

 うわぁ、ごっつぅエロいです。腰を突き出して膣奥に精液の波を叩き込まれているリップの痴態、白目を剥きかけ、センパイのなが――――く、ねちっこい射精が終わるまで、いえ、終わった後もしばらくリップの痙攣は止まりませんでした。

 はい!結局、淫乱のアルターエゴENDは変わりませんでしたね!全くえっち過ぎるのはいけないと思いますよ。

 

 むむ?今度はメルトとリップの複数プレイが見たい……?いやぁ、そこからはプレミアム会員専用になってしまいますからね――。

 あぁ、ですけど、今からいう口座に指定の金額を振り込んでくれれば特別にあなたを――――。

 

 

 

 ―――――プツンッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………で、なにかしら、これ?」

 

「『深海電脳楽土~~一人の男に溺れるアルターエゴ達の痴態~~ 副音声:BBちゃんver』だってさ、なんか顔を上手い具合にぼかして全世界販売も考えてらしいんだけど、さすがにそれはアウトなんで俺が取り上げた」

 

 カルデアのマイルームにて、定位置と主張するように俺の膝の上にいたメルトは「ふぅ―――――――――……」と深く溜息を吐き、極めて冷静かつ平静にモニターを消した後に、DVDプレーヤーからDISCを取り出した。てっきりモニターを真っ二つにするぐらいには怒れ狂うとは思ってたけど、案外落ち着いているようだった。

 

「別に、他の人間の手に渡るならまだしも、貴方の手にあるなら特に文句は無いわよ私は。こうやって私達の営みを記録して残すのも悪くないわ。あの心底不愉快なナレーションも後で、私のウィルスで消去すればいいだけだし」

 

 そんな実録AVが収録されているDVDを俺に預けたメルトは膝から下りる、そのままマイルームの出口へと迷う事ない足取りで向かっていった。

 

「まぁ……それはそれとして、あのバカ(BB)は殺すわ」

 

 前言撤回、メルトはクールに殺意を燃やしていた。感情の色を一切感じさせないその言葉を残して、彼女は部屋から出て行った……。

 

 BBちゃん逃げて、超逃げて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ―――……やっと一息つけますね……」

 

 シミュレーションで再現された夕焼け染まる古き良き校舎。私が一応、あの特異点における避難所として用意した物と酷似した空間。

 校舎に用意された保健室の一角にあるベッドで、私は腰を降ろしていた。

 

「なんですかね――あのマシュさんとかいう人。人畜無害、凡俗量産系後輩だと思っていたら。結構なダークを抱えていらっしゃる」

 

 

 

 カルデアに私と二人のアルターエゴが召喚されてから、数日。

 あの二人もここにいるサーヴァント達とそれぞれの交友関係を少しずつ作りながら、カルデアライフに馴染みつつあります。

 私ですか?BBちゃんとしては、まぁ……やっぱり私の良きおもちゃとしてセンパイにちょっかいをかける毎日です。

 特にあのマシュさんの前で後輩アピールを駆使しながら、あの人外性害系なセンパイにスキンシップを図るのは楽しかったですよ。

あの人の二の腕に谷間をぎゅっとして、スリスリーってやりながら「セーンパイ♡」って甘えるとマシュさんってばリスみたく頬をパンパンにするんですもん。

 

 ただ、ある時、「BBさん、今日、私とお茶でもしませんか?え?あぁ、私達だけですよ。はい、場所は私の部屋がいいですよね。えぇ、()()()()()として整理整頓清潔清掃はちゃんとしていますから。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()…………」って盾を片手に彼女が能面のような表情で私を誘った時はあ、これはやべぇと震撼しました。

 マシュさんや、その盾は一体、どこから出したんですか?デミサーヴァントの力を失ったとかいう話はどこに行ったのですか?

 

 なんでしょう、普通ならこの月の支配者ことBBちゃんがちょっとやそっとの危険でたじろぐ事は無いのですが……彼女の誘いに乗った瞬間にこう、道着をきたジャガーとブルマを穿いた魔法少女がいる道場に送られる嫌な予感しかしなかったので、その場は上手い具合に濁して後にしようとしたのですが。

 

『あ、今日は都合が悪かったみたいですね。それなら、明日はどうですか。その次の日でも全然良いですよ。BBさんの空いてる時間で私は構いません。あ、どうせなら、これから数日のBBさんのスケジュールをお教えてもらってもいいでしょうか。BBさんが都合がつく日程で、こっちも調整しますから。ほら、せっかく同じ先輩を持つ後輩仲間ですし、ナカヨクなるべきだと思うんですよ。貴方の言う「先輩」は私の先輩と何かニュアンスが違う気もしますが、そこを含めて、色々と語り合いましょう!何故、会う度会う度いつも先輩のお触りが多いのか、まるで私に見せつけるように体の女性的な部分を先輩に押し付けるのか、えぇ、聞きたい事は山ほどあります。だから、あれ、BBさんどこに行ったんですか――――?』

 

 こわいこわいこわいこわいこわいこわい!何で、そんなグイグイ来るんですか!

 ちょっとからかい過ぎたのが駄目だったんですか!?私とセンパイの前では頬を膨らますぐらいの可愛い反応だったじゃないですか!あれですか?擬態ですか?先輩の前ではいつでも可愛い後輩でいたいとかいう健気さですか?そういう頑張りは私、嫌いじゃないですけど、いくらなんでも豹変し過ぎじゃないですかー!やだー!

 

 というわけで、歩いている筈なのに、何故か全力疾走している私に肉薄するホラーな眼鏡後輩を必死の思いで撒きながら、BBちゃん専用の特別シミュレーションに避難したわけです。

 うぅ……まだ、あの盾の素振り音が耳に残ってますぅ……。センパイったらどんな後輩に慕われているんですか?………………むむ?もしかして、あのセンパイによってここまで歪められてしまった可能性も!?

 おのれ!キアラさんに負けず劣らずの性人め!このカルデアをR18空間にして楽しんでいるわけですね!!

 

「んんぅ…………」

 

 っと、私も実はあんまり冗談を言ってられる状態でもないんですけどね。

 何度も身じろぎをして、体を悶えさせるぐらいの熱を押さえ込もうとしていますが……。

 

 SE.RA.PHでテンぱってた私はアルテラちゃんによってアヘアヘ状態なBB/GOと同期してしまった。その時に一緒に取り込んでしまったBB/GOの中にあった快楽やら性衝動。

 

「…………ったく、んっ、あの引きこもりめ……あっちの私にどんな調教を施したんですかぁ……んくぅ……」

 

 その時から、私の躰は火照り、どこか肉欲を持て余すような状態になってしまった。まぁ、ハイスペックな私ですから、それを表に出す醜態は晒しませんけども。それでも女の子としてこのムラムラがずぅっと続くのはしんどいものがあります。

 あのスペック詐欺のニートセイバーが言うにはBB/GOは散々焦らしに焦らした状態で苛めていたから、その性的欲求さえ解消……つまりは盛大にイけば、今この体に渦巻いているリビドーは無くなるとほざいていましたが…………。

 自分自身で慰めるのも惨めで何かイヤです。だから、せっかくなんでマシュさんをからかいがてら、私の都合の良いおもちゃらしくセンパイにスリスリして解消しようとたんですけど、余計悪化してしまいましたね。いやぁBBちゃんったら本当に、儚げな雰囲気が似合うドジっ子美少女です♪

 

「……ふぅ、あぁ、さ、て……私の予想ならそろそろ来る頃だと思うのですが……」

 

 太ももをすり合わせて、その股の奥を掻き回したい欲求を何とか抑えながら、私は待ち続けていました。

 センパイに解消してもらうのが一番でしょうが、私としてはまぁ、あくまでlike的な範囲で気に入ってはいますがあのセンパイに今の状態で抱かれたらちょっと今までの私でいられるかどうか乙女チックな不安もあるわけなのです。

 

 どうせなら、自分が優位に立ちたい。センパイには私の性的欲求を解消するだけのバイブとなって頂きます。そこに男女の愛情とかありませんからね!あくまでフレンズ的な関係ですから!ツンデレとかじゃありませんよ。私がそんな時代遅れの面倒臭い属性を持っているワケないじゃないですか。全く。

 

 

 

 ―――ザンッ!!

 

「死になさい」

 

「いきなりですね!!」

 

 センパイが私から取り上げたえっちぃ動画を見たメルトがぶち切れてここにやって来るのは予想済みでした。

 扉をぶった切って、室内で斬撃を飛ばすのは勘弁して欲しい所ですが。まぁ、あくまでシミュレーションですからいつでも直せるんですけど。

 

「えっちいのはダメだと思います!」

 

「今の貴女達がそれを言っても説得力は無いですけどね!!っていうかリップ!この狭い空間でロケットパンチを飛ばすのはストップです!」

 

 そして、リップを連れてくるという私の予想も的中。

 この二人も最初の頃からは想像出来ないぐらいには仲良くなりましたからね~~。きっと二人で一緒に私をボコろうと結託したのでしょう。お母さん、二人の成長にニンマリです。

 

「メルトから聞いたもん、私達とマスターさんの…………な映像を撮っていたって。だったらもう私の中にしまっちゃうしかないかなーって」

 

「それ込みで色々と話をしたかったんです!トラッシュ&クラッシュは洒落になりませんよ!!」

 

「ちっ、やっぱりマスターが持ってたのだけじゃないわね」

 

「そりぁあ、当然バックアップは用意しますよ。私を誰だと思ってるんですか」

 

「で、そんな脅しで私達が怯むとでも?」

 

 メルトとリップの濡れ場動画?拡散する気はありませんよ。カルデア内で顔にモザイクをかけて一瞬だけ公共放送とかは少しだけ考えましたが。BBちゃんはそこまで悪魔じゃありません。

 

 私の話せばわかるオーラを感じ取ってくれのか取り敢えずは斬撃とロケットパンチの嵐は止めてくれたお二人さん。

 まぁ、依然として戦闘再開即OKの殺気は収まっていませんが……。

 私も、ちょっと体の限界が来てますから、早々に話を進めておきたいのです。このままだとセンパイに「おちんちんほしいのぉ~~♡」って即オチENDが現実となってしまいますからね。

 一応は後輩であっても女として、センパイの下に付くのはBBちゃんのプライドが許さないのです!!

 

「ほら、貴女達二人もいつも最後はあのエロエロなセンパイにアヘアヘされているわけでしょ?別にそれが悪いとか言うつもりは無いですよ。あのセックス経験値がカンストのセンパイに男を知ったばかりのベビーな貴女達に太刀打ち出来るなんて到底思ってませんから」

 

「事実なだけに腹が立つわね…………」

 

「アヘアヘって……」

 

 あらあらまぁまぁ、二人して乙女な顔しちゃって…………………別に置いてけぼりになったなぁとか思ってませんから!性経験だけで女の格は図れませんよ!!というか仮にも私の分身(エゴ)なんですから、犯られっぱなしにされておきながらそんな満更でもない顔はしないで下さい!

 

「センパイともうずっこばこな関係になっている二人に聞きます。抵抗出来ないセンパイをたくさーん、ぎゅぅっと絞りたいと思いませんか?私達3人の下でビクンビクンになって喘ぐカワイイセンパイを見たいと思いませんか」

 

「マスターさんに意地悪は駄目だよBB!」

 

「はぁ、これだから初心なリップは……」

 

「未通が何を言っているのかしら」

 

 シャラップですメルト。童貞には一銭の価値もありませんが、処女は値千金です。

 

「いいですか。男女のアダルトな関係において、一番恐ろしいのはマンネリ化です。確かにそういう肉体が絡まないプラトニックな関係も美しいでしょう。ですが、マスターとサーヴァントいえどお互いに一応は肉がある身。性的な相性、シチュエーション……つまり夜の営みはお付き合いにおいて切っては離せない重要なファクターなのです!ここを疎かにするとセンパイに飽きが入ってしまう可能性もあるわけです」

 

 倦怠期の原因は90%性交渉のマンネリ化(BBちゃん調べ)

 

「マスターさんは、私達を捨てたりはしないよっ!!」

 

「えぇ、そんな事は言われなくてもわかっています。あのエロ方面には容赦なき鬼畜な癖して、ずば抜けてお人好しというエロゲーの主人公のようなあの人が貴女達を手放す事はないでしょう。で、す、が!センパイの性技によってあひんあひん鳴かされているだけじゃ、このカルデアの平凡サーヴァント達と大差はありません!ただでさえ、新参というハンデをメルトとリップは抱えているのですよ!そこの危機感をちゃんと持つように」

 

 メルトもリップもビジュアル的なインパクトは大きいのでそう簡単に埋没する事は無いと思います、特にリップクラスのバストは中々無いでしょう。ですが、ここは敢えて心を悪魔にして二人を焚きつけます。

 

「それで、一体何を企んでいるのかしら」

 

「フフフ、企みなんて言うほどの大層なものじゃありません。()()()()()()()()()()()()()()()()()と持ち掛けたかったのです」

 

 並のサーヴァントとは一線を画す私達が手を組めば、センパイを手玉に取るなんてそう難しい事じゃないんですから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――あれ、フラグ建てました私?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




「メルト!リップ!行きますよ!センパイにサクラストリームアタックです!!」

ムーンキャンサーと二人のアルターエゴのコンビネーションが性欲魔神マスターに打ち勝つ事を信じて!!









次回『トリプルアヘ顔ダブルピース』













前回はメルトメインだってので、今回はリップに比重を置いたエロ回。
次回のBB、メルト、リップの複数プレイにて完結です。本当だよ?
というかBBちゃんのエロナレーション、予想以上に書いてて楽しかった。色んな意味でBBちゃんはR18系で使いやすいキャラな気がする。
今までの色んなキャラの情事を振り返るセンパイとBBちゃんの副音声オーディオコメンタリー集とかどうよ?



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DEAD OR ALIVE ECSTASY LAST(BB&メルトリリス&パッションリップ)

これにてCCC編完結。そして、今話がいままでで最多の文字数となってしまった。長い……長いぞ。アソコと頭を空っぽにして読むのだ。


0話にて段蔵、メカエリちゃん更新。












『深海電脳楽土~~一人の男に溺れるアルターエゴ達の痴態~~ 副音声:BBちゃんver』― レビュー

★★★☆☆ダウンロード商法は悪い文明
By引き篭もりの大王(アグレッシブ派) - レビューを全て見る
メルトリリスとパッションリップ、それぞれの性格と体型の特徴を正確に捉えられているプレイにカメラワーク……そして、ボロボロな礼拝堂がステージというのも退廃的な雰囲気を醸し出していてグッドスマイルであった。率直に言おう興奮したと。特にメルトリリスのなだらかな胸は非常にシンパシーが湧く。ちっぱいは良い文明。
BBのナレーションも賛否両論はあるかもしれないが、私はエロナレは彼女の性格と非常にマッチングしていると思う。今度の副音声には是非、私も呼んで欲しい。
だが、一番の見所とも言える複数プレイに追加料金を発生させるのは如何なものかと。それさえ、なければ★は5にしても良かった。そこだけが非常に残念である。


カチカチッッ……

「ふむ、こんな所か」

――ピンポーン……

「む?こんな時間に来客か――――貴様、よもやそこま……ガ!?」




 殺意120%なオーラのまま、BBちゃんの所へ向かったであろうメルト。

 自業自得感が否めないとはいえ、やっぱり心配になったので、BBちゃんがいる可能性が高い場所へ向かう。

 カルデアに与えられた部屋にはいなかった。ならば、シミュレーションしかないかなと、俺はノスタルジックな校舎を散策中であった。何故かこの空間に入ると強制的に格好が()()()姿()になるのだが、これもBBちゃんがいじった仕様なのだろう。

 

 屋上、教室、生徒会室、職員室……2階、3階にはいなかったので、1階に降りてすぐの所にある保健室の扉に手をかける。

 引き戸のそこを開け、中へ足を踏み入れると――――。

 

「かくほぉおおおおお!!」

 

「ごめんなさいぃっ!!」

 

「何事っ!?」

 

 黒い触手のような物体が俺を捕え、抵抗の間すら与えず、宙に持ち上げられ、そのまま純白のベッドへと大の字に叩き付ける。

 そして謝りながら、リップが飛ばした巨大な手が広げられていた俺の両腕を拘束具の如く、固定していた。

 あまりにも大きい手なので、ベッドからは半分飛び出し、爪の部分も突き刺さっていたが、それが俺の腕を逃がさないように上手く作用していた。

 

 傷つけないように、だが逃がさないように。そんな器用さを見せるリップの拘束具は鉄で出来た手の平、突き刺した爪、ベッドと俺の腕を抜け出させない包囲網を完成させていた。

 

「ごめんなさい、ごめんなさい……!ケガはしてませんか!?どこか痛くはしてませんか!?」

 

「もう、駄目ですねリップは……。ここは『これで貴方はもう何処まで逃げても掌の中……』ぐらい言わないと」

 

「BB!?これはっ!一体!何の真似だ!!」

 

 てっきりメルトアウトされていると思っていたBBの元気そうな姿も見れて一安心。いやーほんと無事で良かった。

 いつものおしゃまで悪魔でイケイケな後輩っぷりが心地良いでござる。

 

「心の中でそんな事微塵も思ってない癖に、取り敢えずBBの喜びそうなリアクションを返す貴方もマメよね……」

 

「そういう勤勉な所も、私を心配してノコノコとこの保健室にやって来たのと合わせて、高評価ですよセンパイ!BBちゃんポイントを50Pあげましょう!1000P貯めるとイイ事があるかもしれないですし、無いかもしれません」

 

 気付けば、白いシーツの上で拘束されている俺はBB、リップ、メルトと紫三姉妹に囲まれていた。

 やけに3人の視線が熱っぽい。BBはちょっと嬲るようなサディスティックな色にも染まっている気がする。

 ふ、だが……この程度の拘束で俺を捕まえたというのは早計では?リップのか弱い手など、すぐに外して…………むむ、あれ?

 

 ―――グッ、グッ……。

 

 おや?

 

 ―――ググググッ…………。

 

 んんん?

 

「フフフフ…………」

 

 なんだろう、全くもって力が入らない。

 まるでマスターLvが1まで下がった貧弱っぷり、為す術が無い囚われのヒロインになってしまったような感覚。

 

「フフフフフ、フハハハハハ!アハハハハハハハハッ!!ざまぁないですね、センパイッッ!この私のテリトリーにノコノコとやってくるからですよ!あの快楽天ビーストとタメを張れる貴方を嵌めるのに私がノープランだと思いましたか?このシミュレーション……BBちゃんの特別秘密基地『旧校舎』には既にキアラさんに投入した時と同じ……いえ、それよりもさらに念入りにメルトちゃん超デスwhip、スーパー賢者カプセル、抗エロス剤+センパイのLvをどん底まで下げる為にBBちゃん特製ふしぎじゃないアメ等々を使用!気持ち的にはヤクを砕いて散布!この校舎には対センパイの弱体化『センパイ一般人化粒子』が充満し切っているのです!さらにダメ押しでセンパイが馬鹿正直に着てくれたその素敵な学ランもBBちゃんの簡易版『黄金の杯』で作り上げた至高の一品!センパイがここぞという時には発揮する理不尽、無敵っぷりを問答無用で解除してくれます!くふふふふ、自分の容赦無さ、完璧な計画力に台詞が止まりません……このまま百行ぐらい語っててもよい気分です!」

 

 俺が拘束されているベッドに飛び乗り(あ、スカートの中がまた見えてる)、高笑いを続けるBB。よっぽど、今の俺の姿がお気に召しているらしい、超嬉しそう。リップは申し訳なさそうな顔してるし、メルトは呆れた顔をしている。顔は似ているのに三種三様の反応が見れるのがちょっと面白い。

 

「未だ状況について行ってない危機感、理解力共にゼロのセンパイにわかりやすく教えてあげると……つまり!この空間において、センパイはエロに対しての経験値とか人外ゾーンにどっぷり頭の先まで浸かった理不尽さを失った初々しくもか弱いチェリーボーイ!ふふふふ、見えます。私には見えますよ……怯えるセンパイの顔の隣から果てまで伸びるデバフセサリーが!いやここまでしてやっと私達で捕まえられるLvまで下がったという事実にちょっぴりドン引きしていますが、それはそれ!私が作った箱庭ではセンパイはまさしく無力!ここから戻った後の報復が怖いというフューチャーからは目を逸らします!」

 

「で、目的は?」

 

「またまたぁ、本当はわかっているんでしょう?私がわざわざ、この精神と時の部屋もどきを対センパイアンチフィールドに作り変えた理由が……。いやーカルデアの技術力も中々に侮れません。現実世界ではこうもセンパイを手玉には取れませんから、くふふふ……やぁっと一矢むくいた気分です」

 

「何となく察してはいるけど、それでも様式美として聞かないとさ」

 

 現在進行形で俺の股間をグリグリと踏み続けているBBから、予想はついていますが。

 かといって、今の俺には焦るとか、恐怖とかの感情の類は一切無い。まだ、数日であれどこのポンコツデビル系後輩とはそこそこの関係を築いているわけで。今更、俺に害を為すとかはしないだろうという根拠無き信頼は抱いてしまっているのです。

 

 この状況でまだそんな事を思っているのはおかしな話かもしれないが……まぁ、BBちゃんだし?特に心配は必要無いんじゃないんでしょうか?

 身動きが取れない今の俺に出来る事はアソコからBBの足の裏の感触を堪能する事しか無いもん。

 

「様式美……ふむ、確かに大事ですね。ですが私はそれに馬鹿正直に答えるような事はしません。文字通り……これから()()3()()()()で教えてあげます。未だ、私に向ける信頼の瞳が揺らぐ事のないセンパイ……いつまでその強がりが続くのかが楽しみです、ふふふ……」

 

 トレードマークの黒いマントを脱ぎ、捕食するように俺の首元に近づいてくるBB……その瞳はどこまでも妖艶だった――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「れろぉ……ちゅ、ちゅ、むちゅ……あはっ、またピクッてしましたよ。セーンパイ♡ キモチいいんですか? 乳首舐められて、女の子みたいな反応して、フフフ、可愛らしいですよ♪ …ちゅぅ……ちゅぱっ!」

 

 保健室の寝台の上で磔のように拘束されている俺はまず、学ランのボタンを一つ一つ、BBによって外されていった。その下にあるYシャツも言うまでもなく、そして最後のTシャツは保健室に備え付けられているメスによって縦に切り裂かれた。

 両腕をリップの手によって捕縛されている為、上の衣類も完全に脱ぎきる事は出来ず、開かれた3枚の衣類は俺の肩の所で留まっていた。

 露になった俺の上半身を前に、「むぅ、なんだか強姦魔になった気分ですね」とぼやくBB。いや、気分というか文字通りだよ。俺がOKしてるから和姦になっているけれども。

 

 ―――ふふ、センパイったら、私みたいな女の子に服を脱がされて興奮しちゃってるんですかぁ?

 

 ―――それとも、自分だけ脱がされるのは不公平だから、私のも見たいとか思っちゃってます?

 

 ―――本当にセンパイったら身の程知らずなんですから、私の肌をそう簡単に目に入れる事が出来ると思ってるんですか?『BB様、お願いします。この哀れなで虫けらのようなセンパイに慈悲を』ぐらい言ったら、考えてあげても……ちょっとノータイムで答えないで下さい。もっと屈辱に塗れた顔をイメージしていたのに、そんなイケメンフェイスで何て台詞吐いてるんですか…………

 

 ―――あぁ―――はいはい!わかりましたよ!脱いであげます!ちゃんと芸が出来たペットにはご褒美を上げるのが主人の務めですからね!

 

 既に黒いマントを脱いであるBB。胸元の赤いリボンを解き、白のレオタードを首元から腰の部分まで脱ぎ始める。丸見えになる上半身。その脱衣はさながら蛹から羽化した美しい蝶のよう。近い比較対照にリップがいるから、目立ちづらいが、BBの双実も相当の物。巨乳というシンプルな文字が相応しいそれが先端のさくらんぼごと俺の視界に映る。

 

 ―――んぅ―――……そんなに食い入るように見なくてもいいでしょう。盛りの付いたワンちゃんですかセンパイは……はい、メルトも親の仇のような視線で睨み付けないで下さい!『胸だけドレインしてやろうかしら……』とか恐ろしい事口走るのも無しです!

 

 

 

 

 

 

 そして現在……。

 

 お互いに上半身だけ裸になった二人。普通なら保健室にある筈もないローションで滑りを良くしたBBはヌルヌルと柔らかい胸のクッションで俺の胸元を上下し、擦り付けられた事によって既に勃ち始めた俺の乳首を唇で吸い付き、苛め抜いている。

 

 ―――ガリッ……。

 

「んくぅっ」

 

「んじゅぅっ!じゅっ……どうですかーセ・ン・パ・イ。BBちゃんに乳首を口でハムハムされるのは……まぁ、聞くまでもないですよね?齧っただけでこんなに震えているんですから…………ほら、空いてるこっちも指先でこしょこしょーしてあげますねぇ…………」

 

 右乳首には舌の生暖かい感触、唇の吸い付かれる感触、歯で噛まれる鋭い感触。

 そして左の乳首の方はBBが器用にその先端を爪で掻いてくる感触、指で摘ままれる感触。

 あらゆる色の快楽が俺の頭を駆け巡る。胸元を愛撫してくるBBがずぅっとこちらの反応を上目遣いで伺っている視覚的要素も合わさり、呻き声が止まらない。

 

「ちゅ……ちゅぅ……ちゅぱぁっ!はむぅ……じゅぅ……ふふ、イキそうですか?イキそうなんですか?センパイ?乳首クリクリされて、ちゅっちゅっされて、ビクビクして女の子みたいにイッちゃいそうなんですか?ザーメンピュッピュッってしたいんですか?」

 

 BBのエロチックで嗜虐的な言葉は屈辱ではなく、性的興奮材料にしかならない。

 そして、俺がベッドを軋ませる程に体を震えさせているのは何もBBからの愛撫だけではない。

 

「んっ、んぅぅっ、マスターさん、すごく気持ち良さそうです……。良かった、私の胸でもこんな使い方出来るのきっとマスターさんぐらいしかいませんからぁ……ちゅぅ……」

 

 腕はリップの爪、上半身はBBの愛撫、そしてズボンを半脱ぎ状態にさせられた今、下半身は幸せそうに俺の肉棒をパイズリしているリップに封じられている。

 物理的な拘束と、快楽的な拘束で今まさに俺の全身は二重の意味で動きが取れなくなっている。

 拘束を剥がせないが、そもそもの話、この快楽に身を委ねたくなり、抵抗の意が削がれている。

 

 ―――たぷっ、むにゅ、

 

 ―――むにゅ、むにゅ、くちゅ

 

 ―――むにゅん、たぷん

 

 肉厚な乳房に包まれ、上下に擦られている肉棒。

 リップが二の腕を使って、器用に動かしているその巨乳は上に行けば、まるで魂が吸われるような快楽を与え……そして下におろしてたぷんと卑猥な音を立てて下腹部に柔らかな衝撃を与えられると射精したくて堪らなくなる。

 

「んっ、んぅぅ、んっ……マスターさん、とってもえっちな顔して、ます…………私のおっぱいでもっと、もっと……えっちになってください、ね……」

 

 あぁ、これはやばい。BBのお薬の影響かいつも以上にリップの胸が気持ち良く感じる。

 俺の視界にはひたすらこっちの乳首とペニスを弄り倒しているBBとリップの姿が眼に入っている。正直、その視覚情報だけでも簡単にイッてしまいそうなのに、現在進行形で性感帯を責められまくっているのだから顔が緩んでしまうのも許して欲しい。

 

「……普通にリップがマスターのアソコを挟んでるけど、なんで『ブレストバレー』に飲み込まれないのかしら?」

 

 パンパンと自慢の巨峰で剛直をサンドしているリップのパイズリを複雑そうに眺めていただけのメルトは呟いた。

 あぁ、確か、彼女の胸の中は虚数空間で作られたダストボックスで、一度入ったら二度と出る事はないとか……。

 うん、きっとその情報はガセネタだったんだよ……だって、こんなにも気持ち良いリップの谷間がそんなおっかないものなわけないじゃないか。

 

「ちゅぅぅぅぅ……っぱぁっ……おやおや知りたがりですかメルトは。仕方ありませんね、ここは私の秘蔵の『ジャプニカ観察帳』に記された【センパイの肉棒、変化A+】説を披露してあげようじゃありませんか」

 

 解説したがりのBBちゃん。口での責めは止まったが、今度はその巨乳を俺の胸元の上で前後に滑らせながら、言葉を紡ぐ。くっ……やっぱりBBも中々のものをお持ちで……この胸板を擦る衝撃、Eカップ以上はあると見た!

 

「数多の女性サーヴァントさん達といやーんな関係になっているセンパイ。しかぁし、その守備範囲は老若、一部性別不明……にまで手を出す雑食っぷり」

 

「美食家と呼んで欲しい」

 

「はーい、たらしマスターさんはBBちゃんのおっぱいで黙ってましょうね~~」

 

 ムグムグムグ……BBのブレストバレーに挟まれ、口を塞がれた……。ちょっと舐めたりしたら、駄目かな?

 

「んぅっ、あっ…………ま、まぁ、そんなわけで、センパイのおちんちんはぁ……あんぅ、ロリィの膣内から、熟々しい大人の膣内までぇ…………んっ、ペロペロしない、でぇ…………んんぅ、あっ……あらゆる女性、サーヴァント達をキモチよーくさせる為にピッタリ…………んぁ、ちょっと、センパイ、少し大人しくしてもらえますっ……!?…………ふぅ――――あるいは抱いている娘が最も快楽を感じやすい、硬さ、長さ、太さへと『変化』するわけなのです!つまり、センパイのペニスはその女性との情事に最も適した適応変化を遂げます…………はぁ、はぁ、はぁ……」

 

 乱れた呼吸を整えているBB。潤んだ瞳でこっちを睨み付けながら、ほっぺを抓られる。

 しゅいまへん、しゅいまへん……だってすんごいいい香りがする谷間だったんだもん、これは百ペロぐらいしないと失礼かなってさ……。

 

「……で、貴方の荒唐無稽な話を信じるとして、マスターのアソコが無事な理由は?」

 

「あらあら、わからないのですか?パイズリだって『情事』には変わりないですよー?なら、センパイの肉棒がリップがパイズリ出来るように適した変化をするのも自明の理ですよね?確かに、私はセンパイのHレベルを下げに下げましたけど、これは元々の体質みたいなものだったんですね―――いやぁ、好きな人と交わる為ならどんな無茶も通すセンパイの体は人体の不思議展です」

 

「んっ、んっ……ちゅ、ちゅ、れろっ、れちゅ……ふふ……私の谷間から、マスターさんの先っぽが出たり入ったりしてます……ちゅ、ちゅぅぅ……なんかお汁も……出てきました……ふふ、何だか愛着が湧いてきますぅ……ちゅぅぅ、んちゅ」

 

 当事者とも言えるのに我関せずと、ひたすら陰茎を扱き続けるリップが可愛い。

 どんだけBBの話に興味が無いんだ、まぁ、さっきまでBBの胸をペロペロしてたり、リップのパイズリに身を任せていた俺もあんまり人の事言えないが……。

 

「結論を言えば、現在センパイのおちんちんは……リップに挟まれている部分だけ虚数属性になっているのです!!」

 

「なんですってぇ!?」

 

 ムーンキャンサーとアルターエゴ、紫髪の3姉妹(母と子達ともいえる?)。末妹にアソコをパイズリフェラされている俺を挟んで、俺のおちんちん談義をする二人の姉達。なんだこのカオス。

 

「ほ―――んと、この奇想天外、極悪非道な性剣で一体何人の人を泣かせたんでしょうね――。セ・ン・パ・イ」

 

 メルトとの談義を切り上げ、リップの谷間からちょこんと顔を出した亀頭を手の平で興味深そうにグリグリと弄り出すBB。

 先走りがその手を汚すのを嫌がる素振りを見せる事なく、手底を擦り付け続ける。

 

「ほら♡ほら♡ほーら……♡センパイの化け物おちんちんだって、BBちゃんの手にかかれば、こんなにプリチーになっちゃいますよぉ……亀頭ぱんぱぁんに膨らませて、ぷるぷるしちゃって……もう出したいんですかぁ?」

 

 リップの殺人的なまでのボリュームを持つバストに潰され、刺激され続ける竿……精巣からせり上がっていく白濁液はBBの絶妙な亀頭責めで、塞き止められていた。鈴口を突く指先の強さが秀抜過ぎて、射精欲をコントロールされる。

 

「フフフフフ……視線が私とリップのおっぱいに釘付けになっているのバレバレですよ――。ママのおっぱいが欲しいんでちゅか――?」

 

 射精ギリギリの瞬間で、亀頭から手を離したBBは俺の両肩に手を添え、剥き出しになっているたわわを胸板で擦り始める。

 ローションで照らされている魅惑の果実は潰れ、彼女が前後に動く度に悦楽を与えてくれる。

 俺の上でソープ嬢のように動いているBBの吐息も荒くなり、その表情は完全に色欲に染まっているように思えた。

 事実、彼女の乳首はこれ以上無いくらい起立し、俺の乳首とぶつかり合っているのだから。

 

「セーンーパーイの、えっちなおちんちんはリップのおっぱいに。えっちな乳首は、BBちゃんのおっぱいに苛められちゃってますよ――♡どっちのお胸がキモチイイですかぁー?あは♡それとも、もう答えられないぐらいに参っちゃってますぅ?」

 

「………‥そんな駄肉に何を夢中になっているのかしら貴方は……全く。いいわ、本当の快楽、真の美を味あわせてあげる」

 

 BBとリップのおっぱい責めでいいようにされている俺が気に食わなかったのか、今まで見ているだけのメルトがついに参加し始めた。

 上半身、下半身はそれぞれ席が埋まっている。

 俺の体で空いているのはもう頭しかない。メルトは歯を食いしばっている俺の眼前へと蜜が溢れているとはっきりわかる淫裂をさらけ出す。

 

「どこまでも溶かして、あげるわ……」

 

 そのまま腰を下ろしたメルト。

 俺の鼻と口は湿り気たっぷりの女陰で塞がれてしまった。

 

「むぐっ……!」

 

「んぅっ!……ふふ、いいわ、舐めるのも、嗅ぐのも好きに、しなさいっ……あっ……!」

 

 呼吸も封じられた現状。時折、僅かに出来る淫部と口の隙間が息を吸える寸刻の瞬間。それでも苦しい事には違いない。

 なのに、なのに、どうしてだろうか?この息苦しさと心地良さが混ざり合った時間に少しでも長く身を任せたくなるのは。

 

 口内に流れ込むメルトの蜜、鼻孔をくすぐる生々しい雌の匂い……もがくように僅かに動く俺の顔、口、舌……それらの振動がメルトの局部へと伝わっていく。

 

「いいわ……いいわよ……ん、んぁ……溺れないように必死に足掻きなさい……ふぁっ……」

 

「う、わ……マスターさんのココ、震えが、どんどん大きくなって…………先っぽから出る汁もとまらない、ですぅ…………えぇっと、こうやって舐めればいいのかなぁ……?ちゅ、ちゅぅ、れろぉ……」

 

「おやおや……全身をトリプルサクラにセクシャルにロックされてぇ……大ピンチですね――、セーンパイ♡………‥わかります、わかりますよぉ、BBちゃんのおっぱいから、センパイの体がビックンビックンしているのがぁ……あんぅっ」

 

 凄まじい……凄まじ過ぎる。目に映る景色にはチカチカと星が点滅し、俺の体はもう自己の制御が利かないレベルまで達していた。

 酸素を少しずつ奪われているせいか、もしくはあらゆる所から快楽を供給され続けているせいか、俺の頭はもう彼女達の事でいっぱいになっていた。性的な事で完全に頭が馬鹿になっている。これもBBちゃん曰く、俺が弱体化した影響なのか?

 

「ふふ、ははは……私の下で、はぁ……震えている貴方……とても素敵よ……あっ、あぁぁ……偶には、こういう趣向も……んくぅ、わるくない、わね……」

 

 クンニをさせていようともその自慢の騎乗スキルは健在。

 上下前後左右……まるで床オナするようにいやらしく動くメルトの女性器に俺は翻弄されていた。

 時折目に入るそそり立つクリトリス、口に触れ合い食させてくれる媚肉の味、何もかもが交わりの悦びを教え込んでくれる。

 

「あむぅ、ちゅ、ちゅぅ、じゅるぅ……マスターさんの、おちんちんの動き……よくわかりますぅ……私の胸でキモチ良く……もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、キモチ良くなって、ください……じゅるるぅぅぅっ!」

 

 ひたすら俺の肉棒をパイズリで責める事に専念しているリップ。

 その破壊力抜群の巨胸に挟まれているだけでも十分なのに、彼女は少しずつ、俺が好む動きを理解していった。

 二の腕で挟んだバストを亀頭が埋もれる高さまで持ち上げ、降ろす。膀胱へとのしかかるリップの乳房の重さはぱちんというぶつかり合う淫らな音もプラスして、どんどん獣欲を昂らせてくれる。

 谷間から出ている鈴口を舌でほじくるのも忘れない。唇で吸い付かれたら、あらゆるものが持っていかれそうになる。

 メルトの女性器で視界が隠れているというのに、リップの動きが手に取るようにわかってしまう。

 俺がそれだけ、彼女達の情事に貪欲になっているからかもしれないが……。

 

「んふぅ、んんっ……はぁぁ♡どうですかぁ、セーンパイ♡私達、3人に嫐られている感想はぁ……あっ、今は話せる状況じゃないですよねぇ……ふふ、はぁ……性欲ビーストのセンパイがこんなに可愛らしくなって、私今とっても良い気分ですよ―――…………かぷっ」

 

 おっぱいで俺の胸板をマッサージしていたBBの声色は本当に楽しそうで、3人の中で一番発情しているようにも思えた。

 そんなエロいボイスを垂れ流すBBが俺の喉仏に噛み付いたような感触が――――。

 

ふぁかりまふかぁ(わかりますかぁ)ひふぁふぇんぱいは(今、センパイは)、じゅぅっ!かぶぅっ!……あはぁっ♡私達に生殺与奪の権利を握られているんですぅよぉ…………んじゅるるるるぅっ……っぱぁぁっ、れろぉぉっ……………はぁぁっ―――♡悔しいですか?悔しいですよね?けどぉ――――」

 

 ガリッと微かに彼女の歯が皮膚を裂く感触。流れる血を吸血鬼のように舐め取られているのがわかる。

 

「それ以上にキモチ良くて、キモチ良くて、仕方ないですよね?ずぅっとこのままでいたいですよねぇ?」

 

「むっぐぅ…………」

 

 3人の女郎に体のいたる所を貪られている。今の俺は捕食されている餌に過ぎないかもしれない。

 抵抗の言葉すら吐き出す事が出来ない以上、許されているのはただただ快楽にベッドを軋ませる事だけ。

 BBの囁きに思考回路がどんどん蕩かされていく。

 

 あぁ―――確かにずっとこのままでもいいのかもしれない。

 

「BBちゃんが許してあげます……このまま情けなく、おちんぽミルクをビューっビューってしちゃっていいですよ…………ほーら、堕ちちゃえ♡堕ちちゃえ♡」

 

「あっ、あっ……マスターさんの震えてぇ…………きゃっ……!」

 

「はぁっ、あぁぁっ!……わたしも、そろそろ、イけそうだから、一緒にイキま、しょっ…………!」

 

 BBに促されるまま、頭の中が一つの事でいっぱいになる。

 

 ()したい―――。射精()したい―――。開放()したい―――。

 

 彼女達に与えられ続けていた欲情を余る事なく出し切りたい。

 酸欠で朦朧としていた意識の中でもその願いだけははっきりとあった。

 BBの悪魔の誘いに連れていかれるまま、俺は――――。

 

 

 ――――ビュルルルルルルッ――――!

 

「あっ、はぁっ!あついぃ……!わたしのおっぱいにかかって……あっ、まだ止まりませんぅ……こんなに出てぇ…………ひぁやっ!」

 

「んくぅあああぁぁっ!!はぁぁっ……!!あっ、あっ……はぁ―――あら、ごめんあそばせ……私の潮で貴方の顔を汚してしまったわ……ん、んふぅ、けど、貴方の精液も私の所までかかってるし、お互い様よね?」

 

 きっとそれは噴水のような勢いで彼女達に雨のように降り注いだのだろう。

 メルトが俺の顔から退いた後に見えた景色はそう思わざるを得ない程に淫靡な絵だった。

 

 リップは胸、髪、顔。BBは上半身と髪。メルトは背中と髪。

 高レベルの美貌を持つ彼女達を自身のスペルマでここまで汚し切った背徳感が射精後の倦怠感と解放感と一緒にやってくる。いや――もう真っ白ですね。俺も彼女達も。

 

「うわぁ―――……もう、一体どこまで出すんですかぁ、これもあれですか?レベル関係なく元からの体質とか言わないですよね?もう、私達3人にぶっかけプレイとかドン引きです……ちゅ、ちゅぱっ……うぇ、マズイ。マズイです……魔力供給とはいえ、んっ、んちゅぅ……こんなマズイものを……じゅぅぅ……摂取するとかBBちゃんは死んでもごめんです……じゅるるぅぅ……」

 

 言葉と行動が合致していないぞBBちゃん。

 俺を毒づきながら、体にかかった精液を指で掬い取り口に咥えていく彼女。これは狙ってやっているのか、それとも無意識なのか……もし後者なら自分の精液が何か麻薬的な中毒成分を持っている危険性が否めない。

 

「なぁに、スッキリした顔してるんですか?自分だけキモチ良くなって終わりなワケないでしょう?センパイにはもっと屈辱的な展開にあって頂きます」

 

 白濁液にまみれ、発情しきった表情でも……その瞳は未だ俺という獲物を捕らえて放さない。

 BBは、彼女は一体次は何をするつもりなのか…………。

 

 

 

 

「さぁメルト!あの文明っ娘から借り受けた三色拘束ロープでセンパイを縛ってあげなさい!」

 

「はいはーい」

 

「あひんっ!?」

 

 メルトが隠し持っていたアルテラちゃん製『軍神の縄』が意思を持ったかのように体に巻き付く。

 素肌を晒している上半身は胸を強調するようにいやらしく。腕は背中で組むように。足は閉じられないように胸を縛っている縄から伸びて太腿へ巻き付く。その太腿と腋を縛っている縄の長さは非常に短い。必然的に脚は開かされる事になる。

 つまり、縄自身の強度、長さが巧く作用し、はしたないM字開脚縛りの出来上がりである。

 

 

 

 

 ()()()B()B()()()()()()()

 

「………………え、え……えーと。メルトさん?縛る相手間違ってません……?ん、んふぅっ、あぁ……ここでドジっ娘アピールはどうかなぁってBBちゃん思うんですけど……あん」

 

「あの駄目セイバー、大層その縄でBB/GOを苛め抜いたみたいね。私が何もしなくても勝手に貴方の体に絡みついていったわ。同期したBBの体がよっぽど恋しかったみたいね」

 

「ふぁっく!別人とはいえ、私の肢体を縛っていた縄でセンパイを拘束してやろうという私の倒錯感が仇になりましたか!」

 

 ふぅ、じゃあ俺もそろそろリップの腕を外すかな。よいしょっと。

 

「へ?」

 

 ふい―――。腕をグルグル――っと。特に調子は悪くないね。

 

「で、私達の責めの感想は?」

 

「ひじょ――――にキモチえかったです。また頼みたいね」

 

「そう、なら良かったわ」

 

「はい!マスターさんがあんなに気持ち良くなっている顔を見せてくれて私、ドキドキしちゃいました!」

 

「え?え?え?え?」

 

 リップのお手手を外して、柔軟体操をしている俺の姿にベッドの上で間抜けな格好になっているBBの目は点になっていた。俺の感想に満足気にはにかむ二人のアルターエゴとは対照的ですね。

 

「ぇぇえ――と、センパイ?なんで普通に動けていらっしゃるんですか?」

 

「BB、確かに私は自分に責め立てられて快楽に喘ぐ彼を見たいという気持ちはあった……けどね、それ以上に――――」

 

 股間丸出しではあるが、心底愉快そうな表情を浮かべているメルトはネタばらしをする。

 

「私とマスターでいつも生意気なあなたをいたぶってあげたいという気持ちもあるのよ。違法、チート行為は、何も貴方だけの特権ではなくてよBB。この空間にまき散らしてある『センパイ一般人化粒子』とやらも貴方とリップが彼と乳繰り合っている間に私の『メルトウィルス』で中和したわ。これでいつもの彼に元通り。そもそも、私が貴方のプランに素直に従うと思ったのかしら?」

 

 メルトが最初大人しかったのはその為か……BBちゃんの顔が蒼白と真っ赤が混ざり合ったよくわからない色へと化す。

 

「で、ですが……ここで裏切ったら、貴女達の濡れ場動画は行方知らずになってしまいますよ?」

 

「そうね……ここで、快楽責めして吐かせるのもいいけど。そんな手間がかかる事しなくても、お互いに脅迫材料を持っていれば平和の道は開かれそうじゃない」

 

 ニタァッと悪どいメルトが手にしているのはハンディカメラ。

 BBはメルトが何をするつもりなのか察して、逃げ場の無いベッドの上でじりじりと後退する。M字開脚状態で拘束されている以上、ほんの少しの移動でも一苦労だが。

 

「迂闊ッ!BBちゃん、迂闊ッ!センパイに対するメルトの好感度の深さを見くびっていました!せめてセンパイをもっとぐちょぐちょにしてから裏切るだろうと思っていたのに、まさかこんな早い段階で反旗を翻すとはっ!!え、ていうかもしかしなくてもBBちゃん、これ大ピンチ?」

 

「ふっ、いつもの貴方なら私がウィルスで中和していたのもさっさと気付いた筈でしょうに。その身を焦がしているBB/GOから患った淫熱は随分と余裕を奪っているみたいね」

 

「あぁやっぱり、あの締まらないオチからずっとだったんだ」

 

「ぐ、ぐぅ……きづいて、いたんですか、センパイ……」

 

「そりゃあ、色々と持て余したような処女から何かを勘違いした様なバリバリの背伸びをした余裕の無い性的(笑)スキンシップをされて、察するなという方が。むしろいつ自滅するかな――ってちょっと楽しみにもしていました」

 

「悪魔……」

 

 これも一つの愛という事で納得して欲しい。

 では…………あんだけキモチ良くしてくれたんだ。俺だけもらってばっかりというのは申し訳無い。やっぱり、与えてもらったらその分のお返しはしないとね。ヤってヤられて回っていく男女の関係、一方通行で終わりは寂しいだろ?

 

「ちょぉっとっ!待って!待って!待って下さい!待ちなさい!ウェイト!ウェイト!こんな姿の私をギンギラギンギン状態のセンパイの前に放り出すとか正気の沙汰じゃないですよメルトぉ!お約束された勝利のアヘ堕ちダブルピースになっちゃいますって!いや、今の格好でピースは出来ませんけど!いや、ほんとまって、今のBBちゃん、ちょっとこの姿で本調子のセンパイを相手するのは―――……あぁ、だめだめだめですっ!ジリジリにじり寄っちゃぁ……!レイプですか?レイプですね?私をボテ腹キメセックスするつもりですねぇ!?ソリッドブックみたいに!ソリッドブックみたいに!」

 

「BB、うるさいです……」

 

「おっと脚が滑ったわ」

 

 メルトの何気ない斬撃!BBのスカートの中、今は下半身だけを覆っているレオタードをピンポイントにビリビリに引き裂いた!何ということでしょう。残りのレオタードも散った今……全裸スカートM字開脚拘束後輩というニッチなキャラの出来上がりだ。

 

「メルトォッ!!」

 

「ざまぁwwと言いたい所だけど、その前に一つ聞きたい事があったわ」

 

 虚偽は許さないと、メルトもBBへと迫った。

 

「どうして、こんな事を仕出かそうと思ったのかしら?よりにもよって情事という彼のステージで」

 

「そ、そんなの生意気なセンパイを懲らしめるために決まってるじゃないですか……」

 

 ほんの少し、視線が横に逃げたBB、俺もメルト自身もその言葉がなんとなく真実ではない事を察する事は容易だった。

 

「嘘、ね。もしそれが本当なら、わざわざマスターの土俵(ベッドファイト)でなくてもいいでしょ。しかも、BB/GOと同期している以上、身体も昂っているのでしょう?そんな状態でマスターに寝床で勝とうなんて自殺行為にも程があるわ」

 

「……何が言いたいんですか?」

 

 メルトの言葉、一つ一つがBBを追い詰めていく。

 物理的にも精神的にも既に、BBには逃げ場が無い、とぼけたふりでこの場を切り抜けられる程、メルトは甘い相手ではない。

 

「最初は、その性的興奮をマスターを使って鎮める為だと思っていたわ。けど、それなら自分で慰めるだけでもいいじゃない?まぁ、貴女の事だから、『自慰で治すのも惨めでごめんです♡ここはセンパイに玩具らしく役立ってもらいましょう』とかめんどくささしかない捻くれ思考回路で言い訳染みた事思ってそうだけど」

 

「言い訳じゃありません!それが真実です!」

 

「…………あら?ここにアルテラから強奪…………こほん、もらった三色バイブが二本も。今の貴女になら両方によく刺さりそうね」

 

「ぴぃっ!?」

 

「メルト……すんごくイイ顔してる」

 

 あぁ、同意だよリップ。メルトがどSチックにこんなイキイキして、見てるこっちも嬉しくなる。

 ベッドの上ではいつも、乙女で可愛らしい猫ちゃんなのに。

 

「…………わかりました、言いますよ!言えばいいんでしょ!自分と同じ顔の人とレズプレイなんて私はごめんですから!」

 

「私だってごめんよ」

 

 ブブブブブと振動し続けている三色バイブを手に憮然としているメルト。軍神のバイブを持つ女神属性のハイブリッドサーヴァント。これは強い。性的にももう限界が来ているBBちゃんが観念するのも仕方がない事ですね。

 っていうかもう最近のアルテラちゃんが軍神の剣より軍神のアダルトグッズを使っているイメージしか無いのですか。

 

「…………自重させたかったんですよ……」

 

「何を?」

 

 ポツリとBBから言葉が吐き出される。

 それは今までの悪ふざけではなく、心の底から真の意味で絞り出された誠の言葉でもあった。

 

「だぁかぁらぁっ!!その性心技体共に規格外のセンパイを自重させたかったんですぅっ!!サーヴァントの後ろで大人しく指示だけ出している平々凡々なマスターにしたかったんですぅ!!自分の得意分野(性行為)でコテンパンにやられたら、センパイも少しは堪えるでしょう!?そこをきっかけに私の下で管理しようと思っていたのに!!」

 

 一度、箍が外れたら、塞き止められていたBBの叫びはやけくそのように溢れ出す。

 

「冷静に考えておかしいと思いませんか?サーヴァントと戦闘訓練出来るマスター、サーヴァントと普通に戦えるマスター、あまつさえ勝利出来てしまうマスター、碌な休養も取らずに英霊達とコミュニケーションを取り続けるマスター、性的に通じた女性英霊達に肉を少しずつも与えるマスター!おかしいでしょう!規格外、人外、逸般人の単語で片づけて良い話ですか!?」

 

 褒められているのか貶されているのかわからない。なんか途中でポロリと凄い事を言っていた気もするが、今はBBの思いの丈をぶちまけている時間だ。茶々は入れず真剣に聴こう。

 

「ただでさえ、カルデアで唯一生き残っているマスター、そして人理を修復したという成果、その肩書きだけで目を付けられているというのにっ!お前根源に達してねぇ?って誤解されそうなセンパイをありのまま見せたらどうなると思います。魔術協会、他の三大部門だけではなく、国連を始めとした世界中から危険視されてもおかしくないんですよ!?」

 

「文句を言う奴は黙らせればいいでしょ?ここ(カルデア)にはそれだけの力があるわ」

 

「はい、脳筋思考のメルトちゃんアウト。なまじ戦える戦力があるから余計マズイですよ。なんですか?世界相手に大戦争ですか?今度は私達で人理焼却でもするんですか?世界を救った者達で世界征服ですか?まぁ、そんな展開もある意味、BBちゃん好みですね!!」

 

「……BBの考え過ぎじゃ……」

 

 まさかここまで壮大な話をされると思ってなかったリップがポロリと零す。

 

「世界中とはさすがに言い過ぎましね……そこまで人類は愚かじゃないとBBちゃんは学習しました。見所がある人間だっています。ただ、全ての人間がそうではない、世界はそこまで綺麗ではない。それを貴女達はよく知っている筈でしょう?」

 

 BBの問いに口を噤んでしまう二人。

 彼女はそんな二人に畳み掛けるように主張し続ける。

 

「私だってセンパイが本当に無害なただの平凡マスターだったらここまで危機感を持っていませんよ。彼はキアラさんと向かっている方向が正反対なだけでベクトルの性質自体はキアラさんとそう大差ないですからね?あのゼパる前の綺麗なキアラさんですら、身勝手な人間達の集団によってどんどん居場所を失ったんですから。世界はいつだって、それが自分達にとって不利益とわかったら簡単に切り捨てるという残酷な面があると。そしてその矛先がこの人になっても別段不思議な事ではありません。BBちゃん的にはそんな低視聴率確定の結果なんて見たくないんですけどね……………………はい!もう言いたい事は全部言いました!さぁ、煮るなり焼くなり好きにすればいいでしょう!」

 

 メルトもリップも視線を俺へと向けていた。

 この場は俺の言葉で締めないといけないのだろう、自分達の言葉ではBBが納得しないと彼女達もわかっていた……いや、もしかしたらBBの主張にも何かしら思う所がきっとあったのかもしれない。

 

「BB……」

 

 そんな彼女の言葉を今まで黙って聞いていた俺の感想は。

 

「ごめん、正直何言ってるかよくわからないや」

 

「………………………はぁっ!?私のあんなシリアスシーンからの第一声がそれですかぁ!!エアーブレイカーにもほどがあるでしょう!!もっと、こうポエミーな独白を混じえつつ百行ぐらいにも及ぶ返答で私を納得させてみせる所じゃないですかぁ!?」

 

「真剣には聴こうと思ったんだけど、正直BBちゃんの今の姿がエロ過ぎてあんまり頭に入らなかったです」

 

「最低!変態!最低!変態!最低!変態!」

 

「…………ここでもぶれないわね、本当に貴方は……」

 

 いや、だって今のBBってばおっぱいもアソコも丸見えなんだぜ?

 そして、唯一履いているスカート、さらに保健室というシチュエーション……興奮するでしょう普通。

 ともあれ、歯剥き出しで俺に吼えているBBちゃんの頭をポンポンと……。うん、いつもの調子に戻ったようで何よりです。

 やっぱり君はシリアスキャラより、おしゃまで小悪魔でポンコツでいじられキャラな時の方が合っているよ。

 

「……なんですか、乙女の髪を遠慮なくポンポンと。なでポとやらで誤魔化せるほど、BBちゃんはチョロくないですよ」

 

「正直、君が言う未来が訪れるかどうかは俺にはわからない。ただ、月のハイスペック頭脳とやらを誇るBBの言葉ならきっと信用に値するものなのだろうさ。それでも、俺は今のまま変わらず突き進むと思う」

 

 俺が多くの英霊と言葉を交わしたり、遊んだり、師事したり、肉体関係を持ったり……それらが人理を救うという目的の元、義務でやっていた事は一つもない。ただ俺が「好き」でやっていた事だから。その過程で、ほんの少しだけ普通の人間の道から外れてしまっても、俺にとっては些細な問題でしか無かった。前も、今も、これからも、変わらずこんな感じだろうさ、俺は。

 

「それでも、BBが言う未来とやらが訪れるのなら……」

 

 そうさねぇ……もし、そんなどうしようもない事態になったら……。

 

「俺は皆と一緒にこの星からどこかへ逃げるよ。月でも、その向こうの見果てぬ星でも」

 

 うん、肉体関係を持っておきながらポイッて事は死んでもしたくないんで……ちゃんと共に家族として生きていきたいですよ。まぁ、本人達の自由意志も聞きますけど。……嫌だって言われたら泣いちゃうかもしれない。

 

「は?………………と、逃避行、ですか…………てっきり、『いや大丈夫。そんな未来は訪れない。きっとわかってくれる人達もいるよ』とか言うものだと思ってましたが……」

 

「この世界は綺麗事だけじゃないってのはよく知ってるから…………。それでも悪だから、汚いから……そんなものはあってはならない、存在しないだなんて断じるのはナンセンスかな」

 

 ”まぁ、そういうのもあるよね。けど……俺はこう思うよ”ぐらいでのノリで考えた方がこの世界をもっと広い視野で楽しめると思うのよ。

 

「伊達に悪属性の方達を囲っていませんか…………。もし、世界が貴方を不要だと、()()()()()()()()と断じても貴方は特に抵抗する事なく、地球から逃げるというのですね」

 

「俺がいる事でこの星が困るというのなら、死にはしないけど、すたこらさっさと逃げるさ。一人ぼっちだったらこうはいかないけど、一緒に来てくれる皆がいるなら大丈夫。ウサギの如く寂しさで死ぬ事も闇落ちする事もないだろうさ」

 

「貴方がいなくなった事でまた人理が滅ぼされる危険にあったら?」

 

「たった一人がいなくなった所で滅ぼされる程、世界は弱くないさ。今回の人理の旅だってカルデアというものが世界に残っていたから人理を救えたんだろう?なら大丈夫。誰か一人の力だけで救える程、この星は簡単じゃないし、小さくない。色んな所で歯を食いしばって頑張り続けれる人達がいるのなら、この世界は、大丈夫」

 

「……楽観主義という感じでもないですね……土壇場での人類の足掻きは私も否定出来ませんし……」

 

 それでももし、どうしようも無くなった時があるなら、ひょろっとこの星に帰ってくるかもしれないし。

 

「俺がカルデアの制服を着た橙色の髪をした快活なサイドテールの女の子とまた世界を救う旅をする未来とかあるかもだよ?」

 

「…………なんですか、その具体的な未来予想図は……はぁ、もういいです。まさか地球からトンズラするぜ!なんて返答が来るとはBBちゃんも思いませんでした。なまじそれを成し遂げれる技術力があるから厄介です…………」

 

 宇宙飛行経験者もいるからネ!

 

「ふっ、ならその時が来て、センパイが情けなく半ベソかきながら宇宙へ飛び立つ姿をBBちゃんは隣でRECしてあげますよ!ふっふっふっ、楽しみですね……ここで大言を吐いたセンパイの表情が歪む瞬間が!!」

 

 あ、一緒に来てくれるんだ。てっきり「好きにすればいいんじゃないんですか?BBちゃんはそこまでセンパイに付き合う義理はありませんけど」とか言われるもんだと思ってたのに。

 ……ちょーうれしい。

 

「うん、ちゃんとその時は高画質で撮ってよ」

 

「モチのロンです!1億万画素で毛穴までバッチリですよ!!」

 

 あぁ、BBとはやっぱりこうやってシリアスの欠片も無い馬鹿話をしている時が一番楽しい。

 さっきまでの真面目な空気は霧散し、和やかなムードが二人に流れている気がする。

 心地が良い……まるで長年付き合いがある悪友と共にしているようだ。

 俺も、BBも二人で笑っていた。意味もなく、ただ楽しいという笑顔がそこには――――。

 

 

 

 

「で、話はもういいかしら?」

 

 ブブブブブブ……。無慈悲なバイブ音とメルトの言葉がBBの耳に届く。

 

「…………あ、あのメルトさん、ほら、もういい感じの空気になったし、イイハナシダッタナーちゃんちゃんで終わってもいいとBBちゃん的には思うんですけど、だから……そのアダルティなグッズを下ろしてもらっても全然いいんですよ?」

 

「ほら、貴方の本当の目的は結局ご破算という形で終わったけど。もう一つの建前の方も終わらせてあげないとね?BB/GOからもらった快楽の奔流、ここですっきりさせてあげないと辛いでしょ?……礼は良いわ、何だかんだで貴女なりにマスターを想ってくれていた事に対する感謝よ、受け取りなさい」

 

「有り難迷惑って言葉知っています!?」

 

 やっぱり無理だったみたいですね。仕方ないもん。いくらシリアスな空気を出そうが、和やかなムードを出そうがこの部屋の肌色率が高すぎるんです。

 言わずもがなな体勢のBBちゃん。股間丸出しのメルト、おっぱい丸出しのリップ。そして、ほぼ全裸で未だいきり立っているマイサン。さっき出した精液も彼女達の体にかかったままですよ。

 そうだよ、さっきからずぅっとシリアス風な会話してたけど、格好はもう皆してピンク100%だよ。台無しなんだよ。

 

「手を借りるわよ、リップ」

 

「え?う、うん」

 

 飴細工のように伸びるマルス属性の拘束縄、BBを縛っている背中に回された腕からさらに伸びた縄はリップの鋼鉄の巨掌へと巻き付かれる。

 

「ええぇと、マスターの身長と、アソコの長さ。さらに縄の長さに、BBの体勢も考えると……うんそうね。この長さが一番だわ。リップ……そのまま、天井に突き立てる事は出来る?」

 

「うん、いいよ!」

 

「きゃあああっ!?」

 

 リップの手がロケットパンチの如く、噴射し、天井に刺さる。

 BBを拘束している縄の先もリップの巨大な左手を縛っている以上、情けない悲鳴と共にBBの身体も持ち上げられる。

 

「ちょ、ちょぉっと!なんて格好させてるんですかぁ!!」

 

 おぉ、天井に見事に刺さっているリップの手から垂れている三色の縄。

 その先にいるのは宙に浮いているM字開脚+裸率9割のBB。

 背中から吊るされたその姿はさっきまでどSに俺を責め立てていた彼女をどMへと変貌させていた。

 いやぁ、エロい。天晴です。俺との接触でよっぽど興奮してくれたのか、股から垂れている愛液が水たまりを作りそうですよ。

 

「見なさい。マスター……この吊り縛り、ちゃんと貴方のアソコがBBの奥まで浮いていてもしっかりと挿いるように計算された高さよ」

 

 確かに、俺が背伸びする必要なく、BBと下腹部を合わせられる高さ。

 生々しいピンクの色を見せている淫裂に亀頭をキスさせるのは容易だ。

 

「ひぁああっ!!や、やぁ…………」

 

 アソコがスジに触れただけでBBの反応は凄まじかった。

 逃げる場の無い空中で愛液が勢いよく吹き出す。今の自分の醜態を認めたくないのか、それともこれ以上俺のアソコが近づいてくるのを拒否したいのか、涙目で首を横に振る。

 

「わかるわ。初めては誰だって怖いわよね……。私が経験者としてちゃんとフォローしてあげるわ」

 

「……くっ、どうしてこんな事に……!私が一体何をしたのですか!」

 

「私と彼の初夜を盗撮した。貴女の敗因はただそれだけよ、BB」

 

「正直、BBの悪巧みって何だかんだで自爆するとか、自分が酷い目に合う未来しか無いよね」

 

「リップの言葉が辛辣すぎますぅ!!」

 

 メルトはよっぽど、自分達の情事を盗み見ていたBBへ灸を据えたかったようだ。

 だってほら、一番良い角度に映るようにビデオカメラをデスクに置いたメルトは次に何をしたと思う?

 

 手にしていた三色バイブを膝の棘に装着したんだぜ?

 あぁ、そういう使い方も出来るんですね。まぁ、一応は軍神化してるから耐久力は心配無さそうだね。

 そして、俺とは正反対の位置。BBの背後へと迫る。

 

「マスターが貴方の淫濡の穴に快楽を教え込み、私が不浄の穴を足蹴にする…………今の状況の貴女がそんな事されたら、一体どうなってしまうのかしら?…………放送事故確定の痴態になるわよね。もう、BBチャンネルとかは言ってられなくなるわよ……」

 

「なんですか、膝バイブって!マニアックにも程があるでしょう!せめてペニスバンドとかじゃなんですかここは!」

 

「擬似でも、貴方に私のココを捧げるのは死んでもごめんよ。もうこの貞淑な私の股間はずぅっと彼の予約席なの。さぁマスター、共同作業と洒落込みましょう……そうね、せっかくだからあの電子の海で戦った時のように手を繋ぎましょうか」

 

「私を挟んで、イチャイチャしながら、私を犯す……狂ってますぅ!このシチュエーション狂いに狂ってますよぉ…………!あっ、ちょちょちょ、ホントにまって、まってまって、まって下さい……だめ、だめだめだめ、だめですってばぁ……今の状態で、二穴同時とかBBちゃん戻れなくなっちゃいます…………あ、あ、あぁぁぁぁ―――せ、ンパイぃ……」

 

 BBの前後にいる俺とメルトは彼女を囲むように手を繋ぐ。

 双戦舞(ダブルアーツ)発動。メルトの膝三色バイブはお尻の穴だろうと、BBを悶え狂わせるテクニックを見せてくれる筈だ。

 言葉を交わさなくとも互いの動きを理解し合っている俺達。

 身体を捻らせて、無意味な抵抗を続けるBBの二つの穴へと肉の棒と神工の棒。

 その卑猥な雌の入り口へと先っちょから侵入していく……。

 

「ぁぁぁあっ……ひぃあああああ……」

 

 まださわりの部分しか接触していないというのに、この反応。

 表情を絶対崩してなるものかと決意していたBBの顔をいとも簡単に蕩けさせていく。

 俺とメルトはこのまま、じっくり、ゆっくりと……肉棒とバイブを根本まで挿入するつもりだったが…………。

 

 

「むむむ、仲間外れは寂しいです。私もマスターさんを手伝いますっ!……えいっ!」

 

「あっ、ちょっ、リップ!」

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ひぃぃっっ……!!!」

 

 なんとリップがどたぷーんと自らの放漫な肉体を俺の背中へ押し付けてきた。いつの間に下まで脱いだのだろうか?

 背後からリップの重みという意表を突かれた俺の竿はBBの最奥まで勢い良く挿り込んだ。

 熱く硬く生きた男のモノ、それを急にぶち込まれた彼女の口からは他人を小馬鹿にするような言葉は出ず、ただ肉欲に溺れ切った雌の叫びが溢れている。

 

「……ひぃあ、あぁぁ、ぁっ、センパイので……串刺しにされてぇ……びくんびくんってぇぇ……こんなプレイ……BBちゃんのキャラじゃぁ……ありません……」

 

「いーえ、自分はS側だと勘違いしているみたいだけど、最後の最後でコテンパンに苛められるのが貴女にピッタリよBB。今からそれをわからせてあげる」

 

「……ちょ……まってくださいぃっ……!今の状態で、お尻にも刺されたらぁ、乙女らしからぬ声が出てしまぁ……おっほぉぉっ……!!」

 

 まだ軽口を叩ける余裕はあるようだ。しかし、それすらも奪う無慈悲なメルトの膝バイブがBBの後ろの処女を奪う。

 宙に吊るされているBBの体勢はきっと苦しかっただろう。そんな彼女を支える為に刺された二つの剛直。

 前後から、貫かれているBBは自身の口を塞ぐ事も出来ない為、恥かしい声が零れてしまっている。

 

「……リップも手伝ってくれるかな?」

 

「はいっ!」

 

「あぁっ!……おっ、あぁ……!んぉぁ……!だめ、だめぇ……こんなの衝撃がぁ、しゅごすぎてぇ……あんぅっ!あ゛ひぃっ……んほぉ、おほぁ……!ば、ばかになっちゃますぅぅ……!」

 

 リップの柔実の感触を背に二人分の力が、BBの膣内を犯すのに使われていく。

 メルトの膝使いで後ろの穴も問答無用でグリグリされているBBの瞳は彼女のトレードマークともいえるハートに染まっていた。

 

「ほら、BBの恥ずかしい顔、カメラにバッチリ映っちゃってるよ。後で誰かのナレーションもつけられて編集されちゃうよ」

 

「おほぉぁっ♡あぁんぅぅ♡……やぁあっ、だめぇ……!うつさないでぇ……!あひぃぃ♡こんな顔のBBちゃんうつさないでぇくださぁいぃ……盗撮したのは、あやまりますぅ、あやまりますからぁぁっ……!ごめんにぁやあぁぁっ……!んおぉぉぁっ♡」

 

「やっぱりパニッシュされている時が一番輝いているわよBB。今の貴女なら少しだけ、好きになれそうだわ」

 

「うっ、ふぅぁ……あっ、マスターさんの背中、私の乳首、こ、すれてぇ……あっぅぅ、こっちまでキモチよくなってきましたぁぁっ……あふぅっ!」

 

 メルトの嗜虐的な声、後ろからのリップの喘ぎ声に柔らかい爆乳の感触の中にあるコリコリとした乳首の触感、そして目の前で犯され、蕩かされ、狂わされ続けているBBの痴態。

 

 背後にはリップ、そしてBBを恋人繋ぎで囲っている俺とメルト。

 密着し合っている4人は学び舎の保健室で淫蕩の宴に興じていた。

 

「くりゅぅ……くるっちゃうぅぅ♡はぁっ……あふぅっ!!あぁ……センパァイのおちんぽなんかぁ……入れられてもぉ、おほぉぁ……!あぁっ、大したことないですよぉって、馬鹿にぃするつもりだったのにぃぃ……あひぃ♡なんでぇ……なんでぇ、私のおまんこぉ、こんな咥え込んじゃってるぅんですかぁぁ……あんぅ!んおぁぁ♡んにゃあぁ♡」

 

 今度は喘ぎ過ぎて、酸素を求めるようにだらしなく出しているBBの舌と触れ合う。

 彼女の良い香りがする吐息と美味たる唾液の味が脳髄に届く。

 

「ちゅぅ……じゅるぅぅ……♡んぅ、ちゅぱぁあっ……♡やぁぁっ……♡なんでこのBBちゃんが、センパイなんかと、こんな恋人みたいなぁ……んちゅぅ……♡きしゅをしないとぉ……んんぅぅっ!!んあぁっ……!じゅるぅぅぅっ……!」

 

 悪態をつくBBだが俺はあくまで舌を触れるように垂らしているだけ。

 全身を縛られている彼女が動かせる数少ないものの一つである口。

 自身でも気づいていないのか……。巧みな舌使いで自分から媚びるように舌を絡め、歯茎まで舐め回している事を。

 

「うぇ♡まずぃ……まずぃですぅ♡……んじゅるるるるぅ……♡センパイの涎、どうしてこんなにマズイんですかぁぁ………んちゅぅ、ちゅ、ちゅ♡ちゅぱぁぁっ……♡まずすぎてぇ……舌がとまりませぇんぅぅ……♡」

 

 言葉と行動が合致していない、天邪鬼というレベルすら超えているぐらいに支離滅裂な言動を繰り返すBBのキスが心地良い。腰の動きに熱が入ってしまうほどに。

 

「んおぉっ!!あぁっ!ひぐぅぅっ!あふぁっ……!あ、あぁっ、ごめんなさいぃぃ……♡生意気いってごめんなさいぃぃ……♡だからぁぁ……、アソコずんずんってぇ……突かないでくださぁいいぃっ♡センパイのおちんぽから離れられなくなっちゃいますからぁぁ♡んにゃぁぁっ!!」

 

「いい感じに染まってきてるわね。いいわ、とてもイイわ、今日のこの快楽を二度と忘れられないようにラストスパートとイクわよ、マスター!」

 

 俺だけではなく、メルトの膝使いも激しくなる。

 二穴同時挿入。軍神のバイブと、俺の肉棒。

 性に余裕がある大人の色気キャラを気取っていたBBに来るこの性の衝撃はどれほどのものか。

 

「んおぉっ……おほぉあぁ♡お腹がぁ……えぐれるぅぅ♡えぐれちゃうぅぅ……♡おひりも、おまんこももぉ……ふるえがとまんにゃいぃぃっ!!あんぅぅぅっ♡」

 

「ほら、ほらっ……!どうかしら、BB……バイブとマスターのアソコ、どっちがキモチいいのかしらぁ!?」

 

「ふぅえぇ……?しょ、しょんなのぉ、言えるわけぇぇ……あ゛あ゛んんんぅぅぅっ!!」

 

「さっさと口にした方が楽になるわよ」

 

「あ♡あはぁ♡あ゛あ゛゛あ゛あ゛♡……言いますぅぅ、いいますからぁぁっ……。はっ、んおぉぉっ……おちんちん、センパイのおちんちんの方がキモチいいですぅぅ……!バイブの震えもいいけど、この生の感触がぁぁっすごくてぇぇ……♡センパイのおちんちんの肌が触れるだけで膣内がぁぁっ、もうダメになっちゃうんですぅぅ♡あんぁぁっ……!!」

 

「それでいいのよ。ほら、マスター、素直になった後輩に先輩からご褒美をくれてあげなさい」

 

「んおぉ♡あぁぁっ……まっ、まちなさいぃぃ、んんぐぅぁぁっ……♡今はだめ、だめですぅぅ……♡今、射精されたらぁぁぁ……せめて、せめて、もう少し休ませてからぁぁっ♡」

 

 メルトのラストスパートと言った言葉に従うように溜めに溜めにこんだ精液の濁流が行く先を求めて、溢れ出そうとしているのを感じる。

 BBの胎の中でストロークを続けている俺の肉棒はBBの積極的な膣内の動きだけではなく、お尻を蹂躙しているメルトのバイブの振動によってもどんどん刺激されていく。

 

「マスターさん、マスターさんぅ、ますたーさん、ますたぁさんぅっ、あっ、あっあっ、んぁぁ、おっぱい、おっぱいきもちいい、もっともっと、私のおっぱい感じて下さいぃ……んぅぅ……」

 

 興奮の材料は後ろからも、リップの巨峰を擦り付けられる感触と喘ぎ声。

 BBの艶麗な姿も相まって二人の巨乳にサンドされている俺はもう射精を我慢するつもりはなかった。

 柔らかく淫靡な女体に挟まれて、一番キモチが良い瞬間に欲望を解放する―――。

 

「イカせてあげるわぁっ!無様に快楽の叫びをあげなさい!」

 

「あんぅっ!!んんんんぅっぁ♡おぅっほぉっ……!!」

 

 蜜壷を満タンにするように流れ込んだ大量の精液。

 射精の瞬間、せめて情けない声は出さないというBBの最後の抵抗か俺に強烈なキスをかましてきた。

 

「んんんんんぶぶぅ―――――――♡んんんふぅっ!んむぅぅっ!!んんんぅ♡」

 

 それでも俺の口内に響くBBの嬌声は隠す事は出来ない。

 むしろ俺はBBの一番エロい姿をこんな至近距離でなおかつ唇の感触を堪能しながら拝見出来るんだから役得でしかない。

 

「んんむぅっ!んんぅ、んんんっ……♡んじゅぅぅ……♡」

 

 彼女にとっては喘ぎ声を漏らさない為に、俺の口を使って自らの口を塞いでいるつもりかもしれないが傍から見ると射精後に甘えるようにディープキスに溺れている一人の女にしか見えない。

 このやる事、なす事裏面に出るのがBBちゃんクオリティ。

 

「長い…………さっさと離れなさい」

 

「あんぅ♡」

 

 いつまで経っても唇から離れないBBに痺れを切らしたメルトが無理矢理引き剥がす。

 胎内に性液を叩き込まれた彼女はBB/GOからの淫熱から解放されたというよりは悪化しているような気もする。

 だってもう言葉になってない呻き声しか出てないんだもん。アソコから漏れ出る精液の滝がむごい……一体誰がこんなひどい事を……。

 

「まだ、BB/GOの影響は残っているみたいね。なら第二ラウンド……いえ第三ラウンドと行きましょうかマスター、ふふこの際だから、とことんBBを調教していきましょう」

 

 

 

「そうだね。けどまだまだ縄の使い方が甘いかな、メルト」

 

「は?どういう意味よ…………きゃああぁっ!」

 

「え、何ですかぁっ……!?」

 

 一番アルテラ印の縄を使い込んでいるのはこの俺だからね。え、何でって?察せよ。

 ほら、この通り。指をパッチンとすれば意思を持ったかのように動いてくれる。

 メルトは良い線いっていたけど、軍神の縄使い検定7段の俺には及ばない。

 

 天井を固定していたリップの手を縛っていた縄……まずはそれを外す。

 どこまでも伸び続ける三色の縄。今度はBBだけではなく、リップとメルトの肢体も拘束する。

 

「んやぁっ、ちょっぅと……どこ縛ってぇ……」

 

「わわぁっ…‥目の前が見えませんぅ」

 

 三人を一纏めにして縛る。

 さらに目隠しをするように拘束し、それぞれの胸の先っぽの上も結い付ける 。

 物理法則を完全に無視した不思議素材で出来ている軍神の縄だからこそ出来る所業。

 

 これぞ匠の技。それぞれ向かい合うように3人を同じで縄で縛り上げる。

 目隠し拘束一括り紫髪の三点女体盛りである。

 彼女達の陰部同士にちゃんと俺の性器が通れる空間を作るのがミソ。

 

 ベットへ寝かせ、無防備に曝け出される3人の下半身。まぁ、この後どうなるかはわかるよね?

 

「何の真似かしら……って。ふ、聞くまでも無かったわね……」

 

「あっ、真っ暗で……いつもより体が敏感にぃぃ……んぁっ」

 

「ひぁっ……んあぁっ……♡ま、まだ終わらないんですかぁ♡」

 

 キモチ良くしてもらったらその分のお返しをするというのは何もBBだけに限った話じゃないんだぜ?

 メルトもリップもそれぞれ自慢の武器を使って奉仕をしてくれたのだから、俺も自慢の武器でその礼を返さないといけない。

 

「ふ、ふふ……結局はこうなる運命。最後は私達が貴方に食されるお約束なのかしらね……」

 

「え、何メルト……私達、何をされるの……んひああああああぁっ!?」

 

 視覚を封じられている以上、いつもよりもさらに触覚が鋭敏になるリップの反応は大きかった。

 BB、メルト、リップの女性器で作られた輪っか。素股するようにその穴に入る剛直。

 全方位を囲む彼女達の淫裂の感触は普通の素股では感じられない極上の贅沢。

 

「んっ、くぅぅ……BBの穴から漏れてる精液が滑ってぇ……これ、あぁんぅぅ!や、ばいわぁぁっ……」

 

「はぁっ!あんぅぅ!!これぇ……ますたぁさんのおちんちんですかぁぁっ!?あぁ、アソコがヌルヌルってぇぇ……!んあぁあっ!」

 

「んあぁ♡、あ、あはぁぁっ……BBちゃん、さっきイッたばっかりなのにぃぃ……♡インターバルも無いんですねぇ……あひぃ♡センパイのおちんちんで……あんぅぅ♡オチたりなんてしな……あんぅ♡しませぇ……んふぅああ……♡しないぁ……んひぃ♡あ、これ、だめぇぇ……私のオマンコ、センパイの覚え込んじゃってるぅぅ♡」

 

 膣の入り口を擦っているだけでこの反応。

 アルテラの縄で視界と全身と敏感な部分を縛っている影響もあるかもしれない。

 

 まぁ、俺も3人の満悦な姿だけでなく、媚肉にアソコを扱かれて、膣内とはまた一味違った快楽も愉しんでいるのだが。

 

 やっぱりさっきあれだけ、開発した甲斐あったのかBBの反応はとてもいいな。

 

「んふぅ、ちょっと……この縄……蠢いてないかしらぁっ……あっ!やぁっ乳首だめぇ……」

 

「んひぃ!あぁっ!アソコもおっぱいもキモチ良い、キモチ良いですぅぅ……もっと、もっと変にしてくださぁいいぃっ」

 

「あ、はぁ♡見えなくも、わかりますぅ……♡センパァイのおちんちんが興奮してるのがぁ……んひぃあぁ♡やぁっぱり、BBちゃんのオマンコが一番イイんですかぁぁ……あおぉぉっ♡ごめ、んなさぃ……調子に乗らないですからぁぁ……クリトリス中心に擦るのはらめぇぇ……♡」

 

 実はバイブの様に微弱な振動効果もある軍神のエロ縄。

 3つの色肉の性感を高めるように震え続ける。

 敏感体質、開発済みのリップとBBへの効果は大きい。

 

 そしてまだ余裕があるメルトには―――

 

「んおあぁっ!?あ、なた何をぉ……んひぃぃっ!!あぁぁ……おひりだめぇぇ……!!」

 

 せっかくなのでさっきまでBBちゃんに使っていたバイブをメルトのお尻へ、あれだけBBに使って愉しんでいたのだから今度は自らの身でその所感を味わって欲しい。

 

「ひぃああぁっ……!あっ、こんなの……無理ィ……おちんちんからくる快感とバイブからの快感がぶつかり合ってぇぇ……!!こ、われるぅぅ……!んおぁぁ、んほぉ、こわへひゃぅぅぅ……!」

 

「あっ!あっ!あっ!あっ!キモチ良い、キモチ良い、ひもひいいですぅ……中に入らなくても、擦られてだけでぇ……マスターさんのおちんちんなら、それだけで、イクのがとまらなぁぁあっ……あんんんぅ!!!」

 

「これ、いまぁ……雁首がお豆にあたるのぉ……すごく好きですぅ♡……けど、亀頭でツンツンされるのもよくてぇぇ……♡あっ、あっ、竿の部分も擦られるのもいいですぅ♡……ひゃああぁっ!あんぅ♡観念しますぅ、もう全部すきですぅぅ……あ、あぁぁっ♡センパイのおちんちんに体が改心しちゃいますぅぅ♡」

 

 真っ白のシーツの上で悶え、乱れ、狂う彼女達を自分の欲望で染め上げたい感情がこみ上げる。

 本日、3度目の射精。一つの性器と化した3人の膣口のリングからズボズボとピストン運動を続けていた愚息の蛇口の栓が緩む。

 

「あぁっ……!そう、これぇ…これ、よぉ……この匂い、この味ぃ……んぁああっ、はぁうぅ、もうどこまでも溺れてしまいそうぉ……んほあぁぁっ……」

「んひゃあああああ――――!!!あぁぁぁあっ!!!あっ、イクぅぅっ……!!イっちゃますぅぅ……!」

「あんぅぅ!!んんあぁ……!あついぃ♡あつくて、ドロドロして……ああ、もう今日だけで、センパイの精液の匂い、体に覚え込まされちゃいましたよぉぉ……♡あへぇあぁ……♡あんぅぅっ……♡」

 

 外出しで3人の美体を汚す瞬間……目隠しだけを解く。

 3度目の射精でありながらより勢いを増した精液の洪水は彼女達の体の全面に流れ込む。

 BB、メルト、リップ、露わになったその3人の表情はまだまだ俺の陰茎を元気にさせるアヘ顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『カルデア寝物語』ですかぁ……なるほどなるほど。ジャパニーズソリッドブックのクオリティは確かに目を見張るものがありますからねぇ……ですが、私はここで2次元の絵ではなく、3次元への進出もセンパイに進言しますっ!」

 

「というと?」

 

「センパイと他の雌達の情事を実録したAVを私とセンパイで面白おかしくHにナレーション、名付けて『HBチャンネル』!まずは既にセンパイが保有しているという邪ンヌさんとのハメ撮りから編集を始めましょうっ!」

 

「乗った!」

 

「乗ったじゃないわよ!止めなさいよ馬鹿マスター!燃やすわよ!!」

 

 はーいどーも、皆の一生届かないアイドルBBちゃんでーす。BB/GOのいやらしい病気からも解放されて完・全・復・活!!カルデアのレクリエーションルームなうです。

 あれ?結構平気そう?あれだけ犯されて?

 ぷっぷー、もしかして、BBちゃんが他の方達と同じようにお目目ハートのセンパイLOVE勢になると思っていました?

 

 ざぁんねぇん、グレートデビルなBBちゃんはそこまでチョロくないのです。体は堕ちても、心までは堕ちません!

 まぁ、あれからセンパイとは致す事もゼロというわけでもありませんが、別段期待するような甘い関係なんて無いですよ?むしろスポーツ感覚というか。

 センパイとはLOVEではなく、LIKE。フレンズな清い関係なのです。

 

 というか私は常々思ったのです。恋は盲目と言いますが、このカルデアの女の子達は先輩を神格化し過ぎると。

 そんな期待された状態ではセンパイも疲れてしまうでしょう。

 

 ここはセンパイと一緒に悪ふざけが出来て、同じ目線に立てて、なおかつ何度お仕置きされようとも懲りずに彼をおちょくり、センパイがやらかしても小馬鹿にしつつ絶対に最後まで見捨てない悪友&理解者的なポジションが必要だと!

 

 ふっふっふっ、センパイは幸せ者ですね。きっとこれから多くの女性英霊との性活の中でふと気づくでしょう。

 妻とのしんどい家庭生活の中、昔の友人との馬鹿騒ぎが恋しくなる夫の如くBBちゃんの居心地に!

 いやぁ―――、来て間もなく既にオンリーなポジションを確立してしまった私の後輩力にはスカウターもぶっ壊れること間違い無しです!

 

「こういう番組はどうですか、カルデアの記憶を全て失ったセンパイという設定で、他の方達がどういう反応をするか英霊観察モニタリング!!みたいな」

 

「それ、嘘がNGなきよひーがいる時点でアウトじゃない?」

 

「それならもう実際に記憶を失ってもらうしか」

 

「今のコイツに効く薬とかあんの?」

 

「なら、なら、センパイの好感度が最低になる薬をセンパイの事が大好きな英霊達に飲ませて、薬の効果が切れた後にそれぞれの反応を見るという定番の奴とかは!?う――――ん、これはワインが進みそうです!」

 

「死人が出るから止めよう」

 

「わーお、センパイのおふざけ無しの真顔とか初めて見ました」

 

「好感度が最低?フッ、なら私は問題無いわね。最初っからコイツに対する好感度はマイナスよ」

 

「「………………」」

 

「ちょ、なんで二人して無言で頭を撫でるのよ!?おい、こらっ、微笑ましそうな顔すんな!!」

 

 何だかんだで、センパイの隣は飽きませんねぇ。

 まぁ、大分注ぎ込まれて私の霊基も肉付けされてしまいました、どちらにせよ帰る所が無いのなら貴方の隣でどこまでも面白可笑しいイタズラをし続けてあげましょう。よっ!センパイってばこんな可愛らしい後輩に想われてる幸せ者!

 世界が貴方を憎んでも私は変わらず隣でずぅっとせんぱいを小馬鹿にしてあげますよ。ふふっ。

 あくまでフレンズ的な意味ですけどね!あくまでフレンズ的ですけね!………………………………フレンズ的な意味ですけどね!永遠の友よ!という奴ですよ!

 

 

 

(拗らせ過ぎて、面倒臭い性格にさらに磨きがかかってる。捻くれ過ぎててツンデレとはまた別種の属性になってしまったね。うむ、マイロードには同情……いや、彼ならこんな性格の彼女でも楽しむか。懐パないからね。というかBB君とやら、あんだけヤッてる最中にハートマークをまき散らしながらLIKEは無理ないかとマーリンお姉さんは思うのであった)

 

 

 なんだか、不愉快な電波が頭をよぎった気がします。

 

 

 

 

 

 




「んひゃああぁ!あんぅぅ!!んああぁっ!!あぁぁっ、いくぅ、イクぅ、またイッちゃいますぅ……ごめんなさいぃぃ……私ばっかりイッてぇますたぁさんのおちんちんでイッてぇごめんなさいぃぃっ……!!」

「音を立てて吸うんじゃないわよぉ……あぁぁっ!もうぉ……舌の動きぃ……いやらし過ぎるのよぉ……んんぅぅぅっ!!あああぁぁっ!!」

「あへぁあっ♡これぇ、センパイの中指と人差し指ですねぇぇ……んふぅっっ!!あぁっ♡見なくてもわかりますよぉぉ…………んう、んあぁっ……あぁんぅ♡今度は薬指ですねぇぇ…‥BBちゃんのおまんこの中おもちゃみたいにぃ使ってぇ……♡あ、今度は小指もぉぉ……あっ、あひぃ♡」

パッションリップのだらしない肢体をペニスで犯し、メルトリリスのスマートなフォルムを口で犯し、色欲に染まり切ったBBを指で犯す。
三者三様、それぞれの体の部位を使い、同時に3者を犯しているマスター。
彼女達を同時に別の方法でイかせ続けるのは至難の業かもしれない。
だが常日頃から性技に余念が無いマスター。まるで脳が三つあるかの如く、BB、メルト、リップを妥協なく、差別なく犯し続ける。

いまだ痴態を晒し続ける3人の淫女達は、今か今かと肉棒を挿入される順番を旧校舎にその喘ぎ声を響かせながら待っていた。








「ふーむ……」

カチカチッッ……

『夕暮れの旧校舎、保健室で始まる淫らな白桜達の宴』― レビュー

★★★★☆マルスは泣いていいと思う
By引き篭もりの姫(パッシブ派) - レビューを全て見る
前回の反省を生かしたのか、ダウンロード商法は無くして、最初っから複数プレイをおっぱじめたのは高得点。
そしてユーザーが求めているであろう生意気なBBをぐちょぐちょに堕とすのもしっかりとやっていて◎。
女王系貧乳。小動物系爆乳。小悪魔系巨乳。3人との4Pの魅力をもうこっちがドン引きする程生々しく、ねちっこく、イヤらしくし続けるエロに対しての熱意は感服。
ただ、私個人としてはもう少し、最初のマーちゃんの気持ちイイ様子とかイキ顔とかを映して欲しかったかな――……ほら、普段マーちゃんとする時は私、最後でヘタれちゃって目、閉じちゃうからこういう映像なら割り切って問題なく見れるし、目に焼き付いておきたかったなーなんて…………いや、何でもないです。自分語り自重。
















普段はハートマークとか喘ぎ声でつけない派なんですけど、BBに関してはどうしてもその禁を破ってしまった。だって似合うだもん、BBにハートマークがめちゃくそエロかったんだもん。実は色々と心配症で全てが空回りするBBクオリティいいぞぉ。このめんどくささがたまらんのだ。


ふぅ、やっと4話分でCCC編完結です。一ヶ月以上、7万字以上かかったぞコラァっ!!けどまぁ、それだけ彼女達には思入れがあったということで。お付き合い頂いた読者の皆様には多大な感謝を、いつも感想、評価、閲覧、誤字報告、ありがとねっ!!

トリプルピースは出来なかったので次回予告詐欺ですね(だが満足)



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幻想牛乱伝①(ランサー・アルトリア・オルタ前編)

1ヶ月以上ぶりのエロ本編。メンテ間の時間潰しにしてくれれば幸いです。
評価付きのコメント、ありがとうございます。いつも見た瞬間、バジリスクタイムで喜んでいます。自己満足で書いているこの作品ですが、感想、評価あってこそのモチベーションもあるので誠にありがたいでございます。

0話にて、哪吒、アビゲイル、ミドラーシュのキャスター更新。

今回の話は星の三蔵ちゃんイベをプレイしているとより楽しめるかもしれません。










最新話が特別編の方にいってしまうという事で投稿し直しました。


「やめて!センパイとキアラさんの大乱交セクシャルブラザーズとか地球がテクノブレイクしちゃいますよ!!」

 

「いきなり、何をワケのわからぬ事をほざいている」

 

「マスター……彼女の呼び出しに応じて良かったのでしょうか?」

 

「大丈夫、大丈夫。偶に電波受信して、アレな事を口走ったり、悪どい(本人の中では)計画目論んだりするけど、大体がポンコツで穴だらけだし、根は良い娘だから」

 

 

 

 

 場所は我らがよく使用しているシミュレーションルーム(性)。

 戦闘訓練で使用している通常のシミュレーションルームもあるが、こちらは別室で用意した精神と時の部屋ver、スカサハ師匠が願望実現装置で作った話を元に作り上げられた素晴らしきヤリ部……コホン、サーヴァント達と絆を深める愛の巣。

 

 

 そんなえっちぃシミュレーションルームに俺はBBちゃんからお呼び出しを受けていた。

 

 訂正、俺だけではなく、二人の金髪美女を加えて。

 

 黒い鎧の一部から露出されているハイレグがこれでもかと女性の象徴を表している黒い槍トリアこと乳上。

 

 同様に白い鎧の拘束から解放されて青いインナーでまたまた、たわわな果実を自己主張させている白い槍トリアこと乳王。

 

 うむむ、右を見てもおっぱい。左を見てもおっぱい。これで聖槍抜錨とかえっち過ぎません?

 

 

「センパイの私に対する評論に一言申したい所ですが、ここは出来る後輩BBちゃん……優先順位は間違えません。私がセンパイとダブル槍トリアさん達をお呼びしたのには理由があります」

 

 

 自身満々に胸を張る小悪魔後輩に、何やら新しい発明品をお披露目したダ・ヴィンチちゃんと同じ空気を感じる。

 ろくでもなく、そして愉快な予感が。

 

「センパイとサーヴァント達が日々ずっこんばっこんしているこのシミュレーションルーム『精神と時の部屋』仕様という時間にも優しく、なおかつあらゆるシチュエーションに応えるイメクラクオリティ……で、す、が!私から言わせてもらえば、まだまだ甘い!ごっこ遊びの領域を抜けていないのです!!」

 

 ごっこ遊びという言葉に両隣にいた二人がピクッと反応する。

 

「学生同士の青春、新婚プレイ、メイドプレイ、尋問SMプレイ……それぞれの役に沿った情事。構いません、そのエロスに対する飽くなき探究心は是としましょう……ですが、やはりそれもまだごっこ遊びにしか過ぎないのです。貴方達が()()()()()()()()()()()という主従の関係に嵌っている限りは」

 

「何が言いたい……」

 

「つまり、ガワだけ作っても意味がないのです!!真のなりきりプレイとは!心もなりきってこそ!!お二人は妄想した事はありませんか?もし、センパイとマスター、サーヴァントの関係ではない、別の関係になれたらと!!」

 

「「……!!」」

 

 BBの言葉に大きく反応する二人、どうやら思い当たるふしがあるようだ……。しかし、心もなりきってのHプレイと来ましたか――。さすがは月の超級AI、昂らせてくれるような事を提案してくれるじゃない。

 

「そこで、私が既存のシミュレーションルーム(性)をさらに改良し、その中に入ったセンパイとサーヴァントの……まぁ、厳密に言えばセンパイは何でもバッチこいの人ですから、『五停心観』によって後者の方だけの深層意識から最適な役、シチュエーションを抜粋し、ご用意。そして、お二方には心すらもその役になり切って頂きます。当然、好感度はいつもと変わらずですよ」

 

 まぁ、確かにシチュエーションプレイも、人によっては向きも不向きもあるからね。演じるのが苦手な娘もいるし。

 

「リアリティこそが作品に生命を吹き込むエネルギーであり、リアリティこそがエンターテイメントなのです!!当然、シミュレーションの中でのプレイ中はサーヴァントとマスターという自覚はありませんが、そこから帰ってきたら、二人の心と躰にはそのプレイの内容がえっちく刻み込まれています。思い出はプライスレス!!」

 

 もし、サーヴァントとマスターの関係じゃなかった俺たちかぁ……。将来的には夫婦になって家庭を築きたいと思っているけど、別段、今の関係を不満に思っている事はないかな。ただ、ifの世界という事で楽しむのなら全然問題無いです。エロは終わりなき探究心の道だから。

 

 

「真のエロとはシチュエーションにあり!!そんなこんなで前置きが長くなりましたが、センパイと貴女達にはこの新たに生まれ変わったシミュレーションルーム。名付けて『HBチャンネル』を是非是非、堪能して欲しいという事で今回お呼びしたわけです」

 

 ネーミングセンスはあれだが、中々に興味が湧くプレゼンテーションだった。

 問題は二人がそれに応じてくれるか、どうかだが……。

 

 

「くだらない……。そんな卑猥な事で私を呼んだのですか?ならば、もう帰らせてもらいます」

 

「フッ、いいだろう。ならば早速その玩具をマスターと共に使わせてもらおうではないか」

 

 白と黒で別々の答えが出た。

 踵を返した白いアルトリアと、俺の手を取り、BBが用意した機器に近づく、黒いアルトリアは正反対の方向へ。

 

「なっ!正気ですか黒い私!?この得体の知れない女が用意した物にマスターを連れ込むと!?」

 

「危険があれば、蹴散らせばよい。その為のサーヴァントであろう。そして、私とマスターの情事をより楽しませる物であれば良し、拍子抜けの物だったのなら、ここに戻ってきた際に鼻で笑ってやればいいだけの話だ。未知を進んでこそ、王の度量であろう?」

 

「貴方一人で行くのなら、止めるつもりはありません。ですがマスターを巻き込むのは……」

 

「大丈夫だよアルトリア。怪しさしか無いやらかし系後輩の発明品だけど、危険は無いと思うよ。君は来ないの?」

 

「やらかしません――。BBちゃん、これまでやらかした事なんて一度でもないです――」

 

「わ、私は……」

 

 目線をチラチラと俺の方に向ける白いアルトリア。

 さっきは一蹴したものの、俺と黒いアルトリアがノリ気なのを見て、戸惑っている所を見るあたり、実は少しは興味はあったのかもしれない。

 王として、または女神としての身故か、こういった色事に耽るのは本人はあまりノリ気じゃないのかな……?うーん、けどさぁ。

 

「そもそも、マスターを性的に甲斐甲斐しく世話をしている貴様が卑猥だのなんだの言っても説得力がない」

 

「にゃっ!?」

 

「あれか?女神の性質故、周りから疎外感を感じていた所をマスターにこれでもかと距離を詰められて、絆されてコロリか?ふっ、もう一人の自分でありながら何とチョロい事よ……貴様、一体、マスターの聖槍で何度最果てに至った?」

 

「な、な、な、なぁっ……!?」

 

「ちょっと、セクハラし過ぎじゃない?」

 

「お前に言われたくないぞ。それにこのすまし顔で『マスターとは清い関係です』っていつまでもバレていない風装っている奴の顔を崩したくてな。いつも体中からマスターの匂いをまき散らし、雌の表情でこ奴を見詰めておきながら、気付かないとでも思ったのか…………」

 

 黒の槍トリアの口撃に真っ赤な顔で口をパクパクとさせるしかない白い槍トリア。

 うん……うちの女神様の可愛さはパないの。

 

「ま、ますたぁ~~……」

 

「よしよし、大丈夫大丈夫。えっちなのは悪い事じゃないよ――バレても全然無問題よ――」

 

「えぇい、マスターに縋り付くな駄女神。それ、BBとやらさっさと用意をしろ」

 

 もはやへたり込み、俺の腰に抱きついて幼児退行するしか無くなった白い槍トリアは無情にも黒い槍トリアから引き剥がされる。

 この腰に来る柔らかな感触は間違っても幼児ではないが……。

 

「乳王さんはまだ行ける精神状態ではないので、まずは黒いアルトリアさんこと乳上さんとセンパイからご招待~~♪ではでは二名様、目眩く快楽の旅へとレッツゴ~~存分にスッキリして下さいね♡」

 

 

 開かれたBB特製の桜色のコフィンの中に黒の槍トリアと共に入り、俺の視界は光に包まれ……そのまま――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 玉面公主が住む、積雲山摩雲洞から離れ、我が家たる翠雲山芭蕉洞への帰路に着く一人の大王がいた。

 辟水金睛獣(ラムレイ)に跨り、千里以上の大地を駆けているのはランサー・アルトリア…………ではなく、平天大聖にして大力王、九首牛魔羅王の『牛魔王』。

 

 身につける黒き装束――――頭から生えた牛を象徴する角、魔に相応しい程に禍々しく高貴に満ちた衣装、そして王たる称号を象徴するかのような外套を流れる金髪と共にたなびかせ、愛する家族が待つ家に帰っている途中で、牛魔王はある物を見つけた。

 

 

「行き倒れか……」

 

 みすぼらしい白い着物を着た少年が倒れていた。

 妖怪、山賊、あらゆる魔が跋扈する時代だ、別段珍しい事も無い。特に思う事もなく、素通りするつもりだったのだが、何故か牛魔王は辟水金睛獣(ラムレイ)の歩を進める事が出来なかった。

 

 理由は無い、なのに、倒れている少年の元へ無性に駆け寄り、顔を見たくて堪らない気持ちに駆られる。

 下馬し、伏している少年の所に近づく牛魔王。

 

 ――ムクッ。

 

「……!生きて、いたのか……!」

 

 体をのそっと起き上がらせて、こちらに視線を向ける黒髪の少年を目にした時、まず驚きではなく、安堵がこみ上げていた。この天下の大妖魔たる牛魔王がどこにでもいそうな一般的な顔立ちをしている一人の少年の生き死にここまで心を乱されている。一体、何故……。

 

「……おねーさん、だれ?」

 

 

 だが、それを不信に思うよりも目の前の少年の吸い込まれる大空のような碧眼と心地良い声色に夢中になっていた。もっと、もっと、浸っていたいと。

 

 

 

 その日、牛魔王は一人の少年を芭蕉洞へと連れ帰った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど、隠し子ですか。マイハニー」

 

 ――バンッ、バンッ、バンッ!!

 

 お帰りなさい、あ・な・た。ご飯にするお風呂にする?それとも銃・弾?

 久々に我が家に帰ってきた牛魔王を待っていたのは、伴侶たるナイチンゲール……ではなく、鉄扇公主、羅刹女の愛情たっぷりの銃弾の雨だった。

 右眼を包帯で隠している赤い着物を纏った隻眼の美女たる彼女こそ、牛魔王の妻。

 そんな美女からの帰宅早々、熱烈なスキンシップ。仕方ないといえば仕方ない、家にも碌に帰らない亭主が久々に帰ってきたと思ったら見覚えの無い少年を連れて来ていたのだから。羅刹女でなくてもキれる。さすがに撃鉄は起こさないが。

 

 そんな必死にDVから逃れる牛魔王を追い立てる羅刹女を怖がる事なく名も無き少年はボーっと見ていた。

 

 

「違う、誤解だ!!行き倒れていたのを拾っただけだ!!よく見ろ、余の面影もないだろ!!」

 

「それも、そうですね。魔王様の面影も、匂いもしませんし……。それにしても貴方が子供とはいえ、行き倒れを拾ってくるとは……一体、どういう狂風の吹き回しで?」

 

「う、そ、それは……」

 

 問われると牛魔王も納得の行く答えが出てこなかった。ただ……彼をあのまま放っておく選択肢だけは存在しなかったとしか答えれない。

 

「まぁ、いいでしょう。弟が出来れば、あのやんちゃが過ぎる紅孩児の情操教育にも良いかもしれません。本音を言えば、魔王様がさっさと二人目を仕込んでくれればいい話でもあるのですが、全く種無しの夫を持つと妻は苦労します…………」

 

「ガハッ」

 

 辛辣な羅刹女の言葉に膝を着く、牛魔王。外で見せる大王たる威厳は微塵も感じなかった。

 ん?女なのだから、種無しなのも当然だろう?細かいツッコミは野暮である。カット。

 

「ところで、このろくでなしに拉致られてしまった貴方の名は?」

 

「…………わからない、名前も、住んでいた場所も、どうして、あんな所にいたのかも、何もかも……」

 

 あんな場所で一人倒れていたのだから、自身のルーツたる全てを無くしても仕方ないだろう。

 それなのに何も悲壮感を感じさせない少年は淡々と羅刹女の問いに答えた。

 少年の瞳を逸らす事なく、見続けていた羅刹女は思案し終わったのか、牛魔王にこう提案する。

 

「わざわざ、私達の家に連れ帰ったのです。初めから魔王様も家族として息子として受け入れるつもりなのでしょう。そうですね。名が無いというのも不便です…………白い着物から白孩……『白孩児』と名付けましょう。まずはその雑菌まみれの体の洗浄から始めます……さぁ、来なさい」

 

「ま、ま、待て!」

 

「なにか?」

 

 有無を言わさず、羅刹女に連れていかれそうになる白孩児を見て、止めに入る牛魔王。

 このまま見過ごしたら、オキシドール漬けの水責めの拷問を彼が受ける羽目になる。ただでさえ、さっきまで行き倒れで弱っていた身…………この殺菌至上主義の伴侶と風呂に入った日には間違いなく衰弱死してしまうと考えた彼女は。

 

「いや、余がこ奴の身なりを整える。元々拾ってきたのは余だ。夫といえど、そこを無責任に妻に投げ出すつもりはない」

 

「……………………」

 

(……無理があったか?)

 

 それらしい、理屈はこねたが牛魔王自身も気づいていなかった心の奥底にあるもう一つの欲望があった。

 本人さえ、自覚していない望み、この少年の世話を他の者に譲りたくないという願望が。

 

「いいでしょう。では彼の洗浄は貴方に任せます。くれぐれも中途半端な殺菌はしないように。洗い残しがあった場合はオキシドールの浴槽に頭のてっぺんまで1000秒浸からせますからね、マイハニー」

 

「わ、わかっている」

 

 相変わらず、冗談ではない恐ろしい事を口に出す彼女だが、まさか譲ってくれるとは思わなかった牛魔王。

 

「家庭を頻繁に空け、ふらふらする魔王様も一人の息子を自らの手で育てれば、親としての自覚も持ってくれると思っただけです。紅孩児の方は私がかかりっきりでしたから……。魔王様もこれを機に子育ての苦労を学んでくれれば、ほつき歩いたと思ったら数ヶ月も家に帰らないなんて事は控えてくれると信じていますよ」

 

 羅刹女の左眼から有無を言わさない威圧感を背に受け、牛魔王は白孩児と共に浴場へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「広いお風呂……」

 

「消毒液臭いのが難点だがな……羅刹女め、限度を知らぬのか」

 

 湯気がたちこめる、装飾が施された大理石広がる豪華な大浴場。

 それを贅沢にも二人で使っている親子がいた。

 

 洗い場の前で牛魔王は白孩児の後ろに座り、背に洗浄液を塗りたくっていた。

 元々羅刹女の方針により、浴場にはタオルは持ち込まないという事で生まれたままの姿で二人はいた。

 

「全く、この牛魔王たる余に体を洗わせる恐れ知らずなど、我が伴侶ぐらいだぞ」

 

「牛……?」

 

「貴様、どこを見て言っている……。ええい!後ろを向くな、前を向け!洗いづらい!」

 

 隠すものがない、ありのままの乳房を見られて生娘のように顔を赤らめてしまう。言われた通りに前を向いた白孩児に何故か寂しさも感じてしまう。

 

(余はどうしたというのだ……。こ奴と会ってから調子が狂いっぱなしだ)

 

「素手で、洗うの……?」

 

「あ、あ……あぁ、羅刹女が言うにはこの方が効率が良く、肌に傷付ける事なく洗えるらしいからな。力加減はどうだ?」

 

「うん、大丈夫……」

 

 泡立つ自身の手が白孩児の体を滑らす度に、何故か下腹部が疼いてしまう。

 確かに全裸で二人っきりだが、別段疚しい事をしているわけでもない。

 だが、綺麗にするという目的以外の何かが、自身の手が彼の体を這いずり回らせているそんな気が牛魔王はしていた。

 

 背中、腋、腕、胴、尻、太ももと、自らの指と腕を器用に使い、擦り続けていく。

 時折、漏れる「んっ」、「あっ」という彼の艶めかしい声が牛魔王の脳髄を蕩かしていくようだった。

 

「ふふ、くすぐったいよ。牛魔王さん」

 

「そんな他人行儀でなくても良い。もはや家族となったのだ。余の事は遠慮なく父と呼ぶがいい」

 

「乳……?」

 

「だから、どこを見て言っている!!」

 

「あはは、ごめんごめん、()()()()

 

「……っ」

 

 その『お父さん』という響きをもっと聴きたくて、快活にこちらを振り返り笑う彼の顔がもっと見たくて、泡塗れになっている彼の背中を後ろから抱き締めた。

 

 余が自ら、子として世話をすると決めたのだ。

 故に、これはただの家族同士の戯れに過ぎん。何も可笑しい事はない。

 

 自身にそう言い訳をしている牛魔王の胸部は家族のスキンシップを超えたレベルで淫らに上下に動いていた。

 

「お父さんの体、あったかいね……」

 

「はぁ、んぅ……あぁ……そうだ。これからお前の家族になる父の体だ……んはぁ……何があっても忘れぬように、その身に刻み込め。そら、前を洗うぞ」

 

 後ろは十分に洗い終わったと、白孩児をこちらに振り向かせた牛魔王の眼に映ったのは……。

 

「貴様、よもや洗身で興奮したのか?」

 

「ごめん、お父さんの体、凄く気持ち良くてさ……」

 

(くっ、またそのような顔を……)

 

 大王たる自分でさえも、身構えてしまう怒張。天までそそり立つような存在感がある白孩児の肉棒は彼の純朴そうな顔とは不釣り合いとも思えるのに、何故か違和感を持たせない。

 さらに照れくさそうに笑う白孩児の顔に牛魔王の中にある親が子に向けるべきではないナニかが燃え上がる。

 

「はぁ……はぁ……こんな体のまま、風呂から上がったら羅刹女に何を言われたかわかったものではないぞ。世話のかかる息子だ。余が鎮めてやる……これも父親の責務だ、股を開け」

 

「あっ」

 

 ソープでヌルヌルになっている素手で優しく彼の男根を握る。その時の彼の喘ぎが牛魔王の理性を一枚一枚剥ぎ取っていくようだった。

 ニチャニチャと洗浄液以外の液も混ざりながら、上から下まで距離のある竿の道を何度も往復し、扱き続ける。

 

「ふぅ、ふぅぁ……あぁっ……んくぅ……」

 

 股を開いて、自身に体を委ねている白孩児の痴態に牛魔王の息はどんどん荒くなっていく。まるで美女を前にした獣のように。

 気付けば、牛魔王の手は自身の恥部に伸びていた。彼のアソコを扱いていない方の手、その手で淫裂を擦り続けていた。

 

(これは、自分の体も一緒に洗っているだけだ……。時間はないからな。悠長にしていると羅刹女の奴が飛び込んでくるかもしれぬ……)

 

 誰に聞かせるのでもなく、自らに弁明している牛魔王にはいつもの一家の大黒柱としての威厳は無くなりつつあった。

 風呂イスに座っている義理の息子となった男の性器を四つん這いとなって必死に扱いている。

 空いた手で自らの局部を慰めている牛魔王は、まさしく卑しい雌牛の姿と化していた。

 

 

「ねぇ、お父さん……。胸も使って欲しいな」

 

「んあぁ、あはぁ……そ、うだな。その方が二人の体を効率的に洗えるから、な……んふぅぁ……」

 

 ふざけるなと本来なら一蹴するような頼み事にも、牛魔王は迷うこと無く食いついた。

 角よりもそこが牛魔王の所以では?と思われても仕方ない肉乳を使って、先走りと泡塗れになっている陰茎を挟む。

 彼女の胸も結構なボリュームだが、なお収まりきらない彼のサイズ。それにゴクリと唾を飲み込んだ牛魔王はもう妖術でもかけられたのではと言わんばかりに、白孩児の体に釘付けになっていた。

 

「ふぅ……あ、はぁ……どうだ、息子よ……気持ちよいか……?」

 

「うん……すごくイイよ。もっと動かして…………」

 

「あぁ、んぅ、んふぅ、わかっ……た」

 

 特盛のバストに埋まった剛直。熱く滾ったソレが牛魔王の胸の中を切なそうにビクビクと蠢く度に、彼女の庇護欲が増していく。

 二人の親子しかいない大浴場。しかし、やっている事はもう洗浄の域を超えていた。お互いの性衝動を処理する為に父と息子は生々しい音を響かせ続ける。

 

(はぁ……なんと芳香な香り……。よせ、そんなそそらせるような顔を見せられたら……余は……余は……)

 

 豊満な胸を持ち上げ、下ろす度に顔を出す息子の亀頭。その鈴口から匂う子供らしからぬ雄が牛魔王の情欲を掻き立てる。

 それでもまだ牛魔王は自己弁護をし続ける。これは息子の性処理と自身の洗浄を効率的に行っているだけ、何も変ではない、普通の事だと。子の性処理を父が行っている時点で常識とはかけ離れているが、今の牛魔王にはそんな当たり前の事も忘れかけるぐらい、白孩児との逢瀬に夢中になっていた。

 

「お、父さん……もう……」

 

「あぁ、んはぁ……いい、ぞぉ……遠慮はするな……好きに出せ……んふぅ……父たる余が全てを受け止めてやる……」

 

 精を吐き出す事を懇願した子の表情を上目遣いで伺う、その様子はもう盛りついた牛魔王の肉欲を爆発させるのに十分過ぎる材料であった。

 

(あぁ、白孩児の精液で浴場を汚したら、羅刹女に何を言われるかわかったものではないな、何か吐き出す桶のようなものを………………そうか、余の口で受け止めればいいではないか)

 

 たとえ、汚れても後でお湯で流せばいい話なのだが、牛魔王はより濃厚に彼と交わる為の言い訳作りを行う。

 それは本能で理解していたのかもしれない。見せかけでも、牛魔王として、親としての威厳をなんとか保っていなければ、もう二度と戻れないどこかにイッてしまう予感があったから。

 

「んじゅぅぅ、じゅるぅぅぅっ……!」

 

「あぁ、おとう、さん……そんなに吸い付いた、ら……」

 

「いいほぉ……ふぁへぇ……ふえんぶぅ……んちゅうぅ……ちゅぱぁぁ……ふひにぃ……ふぁへぇ……じゅぼぉ、んじゅぅぅ……!!」

 

 服従の姿勢で胸と口で子の性器に喰らい付く浅ましい雌牛の姿がそこにはあった。誰にも、もしかしたら、妻でもある羅刹女にすら見せた事のない性に溺れる牛魔王の痴態。

 

 唇で亀頭を舐め回し、唇と乳房で竿を愛撫し続ける。元々、彼の鈴口か漏れ出るカウパー液が元々付いていた洗浄液の量を上回ってしまうぐらいに、この凶悪な愚息は淫液塗れになっている。それを吸い出す牛魔王の口淫は激しく――――。

 

(出せっ、出せっっ、出せっっ!…………余の口に出してぇ……!!)

 

「んあぁ……!!」

 

「んぶぅぅぅっ!?んんんむむぅぅぅっ―――!!」

 

(まだ、出るか……!あぁ、あぁぁ……喉が犯されて……それに、なんだこの味は……不老長寿の桃などよりも、濃厚で……あぁ、体中の神経が昂ってしまう…………もっともっと欲している、この精液に溺れたいと…………)

 

「んじゅぅぅ、ちゅ、ちゅ……ちゅるぅぅ……ちゅぱぁ……はむぅぅぅっ…………じゅ、じゅぅ、じゅぽぉぉ……んぐんぐ、んぐぅぅぅっ……ごくっ、ごくっ……ごくぅぅっ……あ、はぁぁ……」

 

 息子の射精を零す事なく受け止め、喉を精液の滝で潤し、満足気に口を開く、牛魔王の口内は白孩児の性の塊、その名に相応しく、白の証がいやらしくも残っていた。

 

 にちゃにちゃと指を口に含み、残った精液を丁寧に味わい尽くす牛魔王。息子の股座の下で未だ淫交の名残に耽っている彼女は自身の姿をきちんと自覚しているのだろうか……。

 

「はむぅ……んちゅぅぅ……全て、受け止めるとは言ったが、よもやここまで遠慮なしにするとはな……これは教育しがいのある息子だぁぁ……ふぅあああぁ!?」

 

 気付けば、泡だらけの手で自身の乳房を鷲掴みにしている息子に押し倒されている牛魔王。

 未だ、萎える事のない肉棒を露わにしたまま、彼はいつもと変わらない朗らか顔で笑っていた。

 

「き、貴様、にゃにをぉぉぉあぁぁ……」

 

「ほら、お父さんだけに洗ってばかりじゃ、悪いと思ってね。お礼に今度は俺が体の前も後ろも、残さず洗い尽くしてあげるよ」

 

「いい!……自分の体が自分で、あっ、まって……そこ、だめぇ…………」

 

 微笑ましい、親子の束の間の休息はまだ終わる事はなかった――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「というわけで、今日から私達の新しい家族になる白孩児です。紅孩児、貴方の弟になるのですから、兄としてきちんと見本となるように」

 

「まじか!オレに弟いたのかよ!全然知らなかったぜ!……そっか――オレが兄ちゃんか――」

 

「よろしく、お兄ちゃん」

 

「ウッ……。わ、わんもあプリーズ」

 

「お兄ちゃん」

 

「もう一回!」

 

「お・に・い・ちゃん」

 

「あ、やべ――。なんかいいなー、兄弟いいな――。『お兄ちゃん』『お兄ちゃん』。うへへへへへ」

 

「早速兄としての威厳の欠片も無いだらしない顔を晒してますね。今すぐ洗浄してあげますか?」

 

「うへー!オキシドールで顔面ザブザブは勘弁!」

 

 

 夕食の時、牛魔王一家に新たな家族を迎えて、4人は席に付いていた。

 牛魔王の隣に白孩児。その二人に向かい合うように羅刹女とモーではなく、紅孩児がテーブルで団欒を楽しんでいる。

 並んでいる食事は羅刹女手作りによる高クオリティなのだが、食器から漂う消毒液臭さが全てを台無しにしていた。

 

「少々、湯浴みの時間が長くも感じましたが、二人とも洗浄出来ているようで何よりです。始めは貴方が子供の面倒を見るなど言い出した時は心配でもありましたが、杞憂だったようですね」

 

「…………」

 

「牛魔王様?」

 

「……んっ?あ、何だ……?」

 

 風呂から上がった牛魔王は頬を紅潮させたままずっと心ここにあらずといった状態であった。

 

「ん――顔が赤いぞ父上。もしかして風邪か?いや、心配なんて微塵もしてねーけどな!」

 

「風邪?」

 

「いや、二人ともちょっとお風呂ではしゃいじゃって長湯しちゃっただけ。ね、お父さん?」

 

「あ、あぁ……そうだな」

 

 何故か風邪と聞いて、腰の銃に手を添える羅刹女を制するように白孩児が子供らしく答える。

 

「雑菌処理に時間をかけるのは大変結構ですが、やり過ぎはよくありません。何事も程度が大事ですよ」

 

「おまいう」

 

「何か言いましたか、紅孩児?」

 

「何でもないぜ!…………けど、ふ―――ん、父上とお風呂か――、ふ――ん、別に羨ましいとか微塵も思ってねぇ――し……」

 

 微笑ましくも夕食の席で語り合う牛魔王一家。

 そんな一家に新たな家族として受け入れられた名も無き少年だった白孩児。

 息子となった少年はそんな光景を見て、にこやかに微笑む。

 

「また、一緒にお風呂に入ろうね。お父さん……」

 

「んっ、ぁぁ……かまわんぞ……ん」

 

 隣にいる牛魔王に語りかける()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 彼女の脳裏に浮かぶのは風呂での挙行。決して、親子のやり取りとは思えない婬猥な洗浄。

 

 なのに、父である彼女は今、目の前の二人に気づかれないように伸びている手を払いのける事も、息子の誘いを断る事もしなかった。今、自分に向けられているこの子の顔を一層我が物にしたくて――――。

 

 小さく、本当に小さく喘ぎ声を漏らす牛魔王。

 妖魔の大王として、一家の大黒柱たる父として、羅刹女の伴侶たる夫として、そんなあらゆる皮が今、一人の少年に乱されて、狂わされ、剥がされてしまっている。

 

 向けられている笑みは一見少年らしい物だが、それは彼女の奥底を見透かす魔性の魅力も携えていた。

 

 

 

 父と息子、はたして支配しているのはどっち――――?

 

 

 

 




母光「牛……親子要素…………。ですが、こっちは母で、あちらは父、ふむ、かぶりとはなりませんね。ギリセーフとしましょう」

純潔(笑)狩人「ほぉ……小悪魔的な子供マスターに乱される親……そういうプレイもあるのか!」

勝利の女王「息子(♂)に乱される父(♀)って字面だけ見ると、もうわけがわからないよ状態なんだけど」









三蔵ちゃんイベ未プレイ人の為の人物紹介。

牛魔王:ランサー・アルトリア・オルタ。外見は概念礼装『九首牛魔羅王』参照。

羅刹女:牛魔王の妻。ナイチンゲール。外見は概念礼装『風雲仙姫』参照。

紅孩児:牛魔王の息子。モードレッド。外見は概念礼装『三味真火』参照。

白孩児:マスター。名前はオリです。外見はマスターの見た目を4-5歳幼しくした感じ、ショタまではいないけど、いつもよりさらに子供らしい風貌。まぁ、色々と白く(意味深)しちゃうし、名前的にはピッタリだと思うの。








自らの家で拾った義理の息子に性的に翻弄され続ける牛魔王。妻には妻には言わないでくれ……な本番回でもある後篇に続く。
親子プレイなのか、不倫プレイなのか……。





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幻想牛乱伝②(ランサー・アルトリア・オルタ後編)

0話にて、エレシュキガル更新。今まで一番、手こずったぞ……。

















「フォッ、フォッ、フォッ、引きこもりじゃぞ。というわけで早めのクリスマスプレゼント&今年最後の投稿だ。楽しんでもらえると嬉しい。というよりそもそも貰う側の私が何故、サンタなどという無償奉仕もいい所のブラックに努めなければならないのだ…………にゃああああぁっ!!……んっ、わかった・!わかった!働く、ちゃんと働くから……!スイッチから手を離してくれ……。サンタ衣装にバイブとローターを仕込むなんて、マスターは鬼畜トナカイだ。あれか?股間の角で性なる夜、メリークリ……んおぉぉあぁっ!うむ、うむぅ……はぁ、はぁ、はぁ―――……軽口はここまでにして次のプレゼントを届けるとしよう、しかし子供サーヴァントはともかく、いい歳した英霊共がプレゼントを欲しがるのはどうかと思うのだが……え、私?私は大きい子供という奴だから問題ない、いざという時はロリテラ化するからな。ピーターパン症候群は良い文…………あひぃぃぃっぁああああっ!!」



「すぅ、すぅ……」

 

「はぁ、大魔王たる余が童に添い寝とは、一体、何をしているのか……」

 

 誰に聞かせる事なく、呟きは寝室の静寂に飲まれる。

 深呼吸し、隆起する胸。自身のその谷間に白孩児の顔がすっぽりと挟まっていた。

 

 夕餉後、王としての軽い執務も終わらせた余は寝室へと向かった。

 浴場にて不思議な時間を……普通の親子関係ではなにナニかを深め合った義理の息子と共に。

 

 

 

 

 

 

『白孩児も一緒に寝るのですか?』

 

『あ、あぁ、こ奴はまだ、親も住処も失ったばかりの孤児よ。一人で寝かせるには不安だ。せめて落ち着くまでは余が寝を共にしてやろうと思ってな』

 

『フフフ……』

 

『何故、笑う?』

 

『いえ、かの大魔王様が随分とお優しくなったと微笑ましく思っただけです。よっぽど、その子の事が気に入ったみたいですね。えぇ、構いませんよ。白孩児も貴方に懐いているようですし』

 

『お前はどうする?』

 

『共にしますと言いたい所ですが、紅孩児が私に隠れて夜食を取っていた件についてO・H・A・N・A・S・H・Iがあるので、今日は別々で構いません。恐らく遅くなるので』

 

『うわぁ――ん!勘弁母ちゃん!もう、コーラとポテチで宴なんてしないから許して――!!』

 

『夕食後の不摂生はあれ程、禁じた筈です。言ってわからないのなら、体に教え込むのが私の教育方針です。さぁ、カム・ヒア』

 

『嫌だぁっ!消毒液まみれのドリルで歯を削られるのは嫌だ――!!』

 

 

 

 

 

 首ねっこを掴まれ、除菌室に連行される息子に黙祷を捧げ、余はこ奴と寝室に向かったわけだが……。

 

 

 そんな余が頭によぎるは浴場にての戯れ。

 

 

 体を洗うだけのつもりだったが、いつの間にか余は手、胸、口を使い、白孩児の性処理を行っていた。

 冷静になった今なら思える。義理の息子として迎えた少年とのあってはならない情事。なのにあの時の余はそれを疑問に思う事なく、弁明にすらならない言い訳で嬉々として触れ合っていた。

 

 

 そう、余が白孩児の体を洗った後も…………。

 

 

 ―――『ほら、暴れないでお父さん。綺麗に洗えないからさ』

 

 

 逃れようとする余の体を巧みに押さえつけた奴は、洗浄液でヌルヌルになった手を肢体へ伸ばす。

 伴侶以外に許した事のない性的な接触。叱咤の声を上げようと開いた口から出るは情けない嬌声だけだった。

 

 

 ―――『ただでさえ、胸とかお尻とか大きくて、時間がかかるんだから、大人しくして』

 

 ―――『んひぃっ!あっ、やっ、やめぇ……!そこ絞るなぁ……!んぁぁ!』

 

 

 膂力はきっと余の方が上回る筈なのに、我が乳房に伸びたその幼き手を払う事は出来ず、胸全体に円を描くようにねちっこく這う手、そして、乳端からナニかを出させようとする捏ねくり回す指の動き。

 床に押し倒されたまま、まるで生娘のように恥ずかしい声を上げ続ける事しか出来なかった。

 

 

 ―――『ほら、お尻も出して、洗い残しがあるとお母さんに怒られちゃんでしょ?』

 

 体を転がされ、うつ伏せになった余は無防備なお尻を息子の前へと差し出していた。

 抵抗しなければならないのに、息子といえど、大王たる牛魔王にこのような屈辱許せる筈もない。

 だが、その反抗の気勢も素肌に触れただけで溶かされてしまう。妖術に誑かされてしまったのか、体は全く言う事を聞いてくれなかった。

 

 

 ―――『ひぃあぁっ!おぁぁ……んぉ、んああぁ!!やめ、下はぁ……ほぉぁっ!!そっちの穴はしにゃくてぇよいぃ……んふぅああ!』

 

 一切の遠慮なく、下半身の秘部にまで、魔の手は迫った。滑りのある指で淫裂の奥底まで掻き回されるだけに終わらず、排泄を行う穴まで穿られてしまった。なのに声からは気持ちと表現する鳴き声ばかりが出る。

 

 申し訳程度の抵抗も、白孩児の手をより進める助けにしかならない。

 

 ―――『あぁ!おぁ!あっ、あっんひぃぃ!おっ、おぁ……んぉぉあっ!!』

 

 そうだ。結局が余が洗った時よりも倍以上の時間をかけて、入念に洗われてしまった。誇張表現なく体中の至る所を。楽しそうに体を撫で回す白孩児の手に余は熱を帯びた悲鳴を浴室に響かせる事しか無かった。

 

 

 

 

 

「ふぅ――――…………」

 

 今、こうしてその熱からも覚めて冷静になると、もしかしたら、あの交わりは夢だったのではと思う。

 あぁ、そうだ。有り得ない。あってはならない。ありとあらゆる妖魔共が恐れと畏敬を持つべき牛魔王がたかだか一人の小童に売女のように乱されたなど……。

 

 だから、さっきのは悪い夢だ。子の体を洗うという慣れぬ事をした疲れが余に見せた幻覚のようなものだ。

 夕餉の席で、太ももに悪戯していた白孩児の顔に胸の高鳴りを感じたのも、気のせい以外の何物でもない。

 義理とはいえ、息子に性的興奮を覚えるなど…………フッ、馬鹿馬鹿しい。それに見ろ、今、白孩児はこうして、我が胸に包まれて子供らしくすやすやと――――。

 

 

「ひゃうんぅ!?」

 

 

 こや、つ……!

 

 

「んちゅ、ちゅぅ――……」

 

「ひぅんぅ!」

 

 寝ておらぬ……!

 

 同じ……だ。浴場での戯れと同じ痺れが、余の脳髄を蕩かしていく。

 

 絹で作られた薄い寝巻をはだけさせ、下着も無い剥き出しの余の乳房の中心に吸い付いていた。

 ちゅぱとちゅぱと唇と唾で奏でられた生々しい音、それは一見、子が母に授乳を求めている微笑ましい様子でもあったが、白孩児の舌、歯、唇、そして胸を揉み込んでいる手はおおよそ、無垢なる子供とはかけ離れた淫らな動き、落ち着いたはずの情欲を再び燃え上がらせる性の演奏だった。

 

「ひ、あぁ……いい加減にし、ろ……大人しく、寝ておられぬのか……あんっ!」

 

「んぱぁっ……!はは、ちょっと親の温もりが恋しくなっちゃってね……うん、子供だから許して、あむぅ……」

 

 よく言うっ!そんな余を滾らせ、惑わすような笑みを浮かべる子供がおるか……!

 あっ、やぁ……また吸い付かれて……。

 

「ちゅ、ちゅ、……ちゅぅ……じゅるぅぅぅっ!」

 

「あっ、あっ、あぁぁっ……んはぁっ!」

 

 緩急をつけて、こちらを飽きさせない吸引。浴場にて余を弄んだ素手の感触とは違う。口内という体の中、さらに生々しく、温かい感触が乳房を捕食していた。

 

 右乳、左乳、交互に、時には寄せて、一気に両方と、淫らな授乳行為を続けていく。

 また浴場での焼き直しになってしまうと奴の体を離そうとするが、余の力が弱まっているのか、それとも白孩児の吸い付く力が強靭な為か、びくともしない。

 離すつもりでかけた余の手はいつの間にか白孩児の体を抱き締め、本当にややこに授乳をさせる親のような体勢になってしまった。

 

「んふぅぁ……はぁ、あぁ、あっ、そんなに吸い付いて、も……乳は出ぬぞぉ……ふぅあぁっ!」

 

「おひゃならでるんひゃないのぉ?」

 

「愚か者めぇ……余は父だ……!んぁんんぅ!!……そ、ういうのは羅刹女の方にでも、たのめぇ……んあぁ!」

 

 そもそもその父たる余が息子に性的に乱されているのが問題なのだが、その思考も痺れるような快楽の信号で掻き消されてしまう。

 執拗に続く、乳首への口撃。余の言葉など喘ぎ声以外、耳に入らないというのか息子は一心不乱に胸への責めを続ける。

 熱くなる乳房、無い筈の母性本能と性的欲求がどんどん呼び起こされ、本当に乳が出てしまうのではと錯覚してしまう。

 

 

 

 

 それから、一体どれだけ息子に乳を舐られ続けたのか…………。

 

 

 

 ―――ギィッ……。

 

「……!!」

 

「むぐぅっ!?」

 

 寝室の扉が開く音。こちらまで漂う消毒液の匂いに誰が来たかわかってしまった余は反射的に懐にいる息子の頭をさらに強く抱き締めた。今、入ってきた人物にこの惨状が見られないようにする為。

 

「紅孩児の再教育に、時間がかかってしまいました……」

 

 二人の体は掛け布団の下。出ているのは、余の顔と白孩児の頭のてっぺんだけ。幸い、決定的な所は隠れてある。

 羅刹女が私も一緒に寝ますと中に入るか、布団を捲らなければ、バレる事はないが……。

 

「もう、寝てしまっているようですね……」

 

 はやく……はやく、行ってくれ!

 

 寝室に入り、余達が寝ている寝具の傍まで来た羅刹女に動悸がドクドクと加速する。

 薄氷の上の如く、余達のあってはならない禁忌の交わりは、我が妻のこれからの行動次第で簡単にバレてしまう。だというのに……だというのに……!!

 

 

 何故、貴様は未だ、吸い付くのを止めぬ!?

 

 なんだ、なんだ? その乳にかける執念の熱は! そんなに父の乳が気に入ったのか!? バレたら、余共々、お前も只では済まぬぞ!

 

 水音がバレぬように窒息する程、渾身の力で胸元に顔を押し付けているのにも関わらず、奴の口の動きは止まる事は無い。余の背後には伴侶がいるというのに。

 

「あら、そんなに抱き締めあって……ふふ、最初はこの人が子育てなんて不安でしたが、この様子を見る限り杞憂でしたね。こんなにもぴったりくっついて……むしろ私が少し嫉妬してしまうぐらい仲良くなったようで……」

 

 

 ……たのむ!羅刹女!はやく、はやく……いって!

 

 

 一番隠すのが困難なのは、余の嬌声。唇から血が出てしまいそうになる勢いで口を締めているが、さっきあれだけ喘いでいた様子からわかるようにこ奴の肉体の性的な所を的確に突く力は尋常ではない。もう全身から嫌な汗が吹き出て、頭の中が何度もスパークしている。いつ部屋中に響いてもおかしくない絶頂の悲鳴を精神力だけで押さえつける。

 

「私も一緒に床に就こうと思いましたが、邪魔をしてしまう気がしますね。今日は別室で紅孩児と寝させて頂きます。おやすみなさいませ、魔王様、白孩児」

 

 自分を滅菌折檻した女と寝るのはどういう気分なのか、一瞬紅孩児に同情しかけたが、羅刹女の気配が離れていくのを感じ、安堵する。

 

 もう、余の体も色々と限界だし…………。

 

 

「んぁぁ~~~~~~~……………!!!」

 

 

 バタンと扉が完全に閉まり切った音を確認して数十秒後。

 口からやっと言葉にならない嬌声の悲鳴が解放された。プシュ、プシュと股からよろしくない音と湿り気を感じたが、むしろここまで頑張った余を褒めて欲しいぐらいだ。

 

 とりあえず、布団に出来た盛大なシミは、白孩児がお漏らししてしまった事にするしかないと思う余なのであった………………余は悪くないもん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪後日執務室にて≫

 

 起床後、朝餉前に涎と汗まみれになった体を洗い流す為に浴場へ向かい、何故か着いてきた白孩児に再び熱心に体を洗わさた(意味深)後の午後、午前中は家事の手伝いをするという事で、羅刹女と時間を共にしていた。我が妻も親孝行の息子で良かったと喜んでいたが……騙されるなっ! と言いたい気持ちはぐっと飲み込んだ。

 昼過ぎからは紅孩児と遊戯に励んでいるようだが…………ふ、ふん、別に寂しくともなんともない。むしろ散々、振り回されて少し、疲れ切っていたぐらいだ。やはり、慣れぬ事はするべきではないな。

 うむ、一人万歳だ!息子に散々あへぇってされていたお父さんなどいなかった! それが真実だ!

 

 

 と誰に聞かせるわけでもない弁解を心の中でしていたのだが……。

 

「何をしている白孩児……」

 

「し――――っ」

 

 執務室の机、余が面白くともなんともない書類を片付けていたその下に白孩児が入り込んでいた。丁度、余の股座に入り込む形で。

 

 

「ちょっと紅孩児と隠れんぼしててね、負けた方がお母さんの前で泥んこまみれでタップダンスをするという罰ゲーム付きで」

 

「自殺志願者か?……はぁ、ともかく大人しくしていろ、父は仕事中だからにゃあぁっ!?」

 

 またかこ奴は! いや、むしろ余の学習能力が無いというべきか。

 机の下に隠れている白孩児は剥き出しになった余の太腿を撫で回していた。

 王としての公務中とはいえ、他に誰もいない公の場ではない為、余の服装は簡素な黒い着物のようなもの。防御力は当然、低い。

 今の白孩児のように下から覗き込まれてしまえば、履いてる下着さえ見られてしまう。

 

「ほら、またお漏らしして、俺のせいにされても困るからさ……今度は粗相をしないようにちゃんとお父さんのココをお世話しようと思ってさ」

 

 ぐぬぬ、根に持っていたか。いやそもそもの話、貴様が余の胸を淫撫しなければこうはならなかったわけで!

 

「下着も黒……着物といい、鎧といい、お父さん、黒好きだよね。まぁ、今は格好良いというかエロいっていう感想しかわかないけど」

 

「んふぅぁ……あっ!……おい、度が過ぎるぞ……むす、こよ……ひぁあ!」

 

 下履きの上から指でグニグニと押し込まれると叱責の声も途端に萎んでしまう。あぁ、これだ白孩児に体を触れられてしまうと、もう余の怒りの声が拒絶の声が形だけの張りぼてになってしまう。

 

 だが、だが……! 浴場で貴様に秘部も好き放題洗われた!そろそろ余にも耐性が!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひあぁっ!あっ!んぁっぁあ!あっ、!や、やめ……!舌ぁ、やめぇぇ!い、くぅっぁ!!」

 

 ついてるわけがなかった。机に突っ伏して無残にも痙攣し続ける大王。そう余だよ。

 下着も脱ぎ捨てられ、指と舌で淫裂の開発を続けられる。

 

 指と違い、舌というのは本来、膣の中を弄るのには向いていない筈なのだが、子供の舌とは思えない長さで淫靡に繊細に、白孩児の舌は余の中に入り込んで膣肉の中を蠢いていた。

 

「んんんぅぅぅぅっ!!!」

 

 ちゅぽんと、一度、膣外に出たと思えば、その舌先で淫芽を突かれる。

 中を穿られる時とは違う一瞬であるが鋭い衝撃、陰核を優しく舐め上げられるだけで、机の下にある余の股座は既に大洪水になっていた。

 

「ちゅ、ちゅぱぁぁ……緩いねぇ、お父さんのココ、ちゃんと栓をしないとまた色々と漏れちゃうよ?」

 

「ひぃ、ぃあんぅ!、もれしゃせてるのはきさまがぁ……はひぃぃっ!!」

 

 指で肉壷の中に蓋をされても、そんなにもかき乱されては愛液が漏れ出るのは必然。下腹部で暴れ続ける幼き子の二本指は余の艶声を演奏させる奏者となっていた。

 舐められ、穿られる、弄られる。机にあごを乗せ、涎を垂らしたままの余はもうこのまま気をやり続けてもいいかもしれない……と堕ちかけたその時。

 

 

「……!!」

 

 ―――バタンッ!!

 

 デジャブと言うべきか何者かがこの部屋に近づく気配を感じた余はこれまで生きてきた中で一番の力を振り絞り、体を起き上がらせ、執務を行う姿勢へと直した。

 どうして、こういう時に限って邪魔者……ではなく! 第三者が入ってくる!!

 

「おっかしいな……ここにもいねぇかって……父上ぇ!?」

 

「んっ、ふぅ…………騒がしいな、紅孩児。そんなにも余がいるのかおかしいか、この執務室に?」

 

「いや、そんな事ねぇけど……。あ、そうだ、父上。ここに白孩児の奴が入ってこなかったか?」

 

「んっ……!いや、見ていない……がぁっ」

 

「そっか――、オレの勘が鈍ったか……匂い的にもここにいそうだと思ったんだけどな……」

 

 匂いってなんだ! 犬か貴様は!

 ジロジロと疑い深く余の部屋を見回す紅孩児を他所に、余は未だ止む事のない白孩児の口淫を受けている反応を表に出すまいと毅然に振る舞っていた。

 羅刹女が来た時と同様に、水音を聞かれまいと太腿で挟み、白孩児の頭を股間にさらに押さえつける。おかげで訪れる快楽はさらに強くなってしまったが。

 

「……用が済んだのなら、出て行くがいい……んんっ……!今は子供の遊びに付き合ってやる余裕はない……」

 

「遊びじゃねぇし!負けたら今度は全身オキシでザブザブの刑が確定なんだぜ!?…………つーか父上、なんか隠してねぇ?」

 

「……んっ、んんぅ……何も、隠してはおらん」

 

「いや、けど、様子がおかしいというか、顔も真っ赤で咳払いも多いし……昨日も思ったけど、やっぱ風邪か?なんなら母ちゃん呼びに行くけど」

 

「何もないと……言っているだろう……!ん、いいから行けっ!!」

 

「うっ……!んだよ、こっちは心配してやってんのに、いやしてねーけどさ。じゃあいいよ!父上のバーカ!乳デカホルスタイン父上!!もう来ねぇし!」

 

 余の怒声に怯んだ紅孩児は涙目になりながら、割と心に刺さる捨て台詞を吐いて、執務室を出て行った。

 すまぬ……これ以上、お前がいたら、父の威厳の欠片も無い姿を見せる事に――――。

 

「んおぉぁああっ!!?」

 

 紅孩児がいなくなった事を皮切りに、我が陰門を貪っていた息子の責めがさらに激しくなっていた。今までのはまるで遊戯と言わんばかりの激しい淫撫。

 既に膨れ上がった淫芽に吸い付かれ、舌で何度も転がされる。既に雌の匂いと汁を垂れ流している淫裂は容易に開かされ、多数の指で膣壁を擽られる。

 

「ひいぃぁぁあ!……あああぁぁっ!!の、むなぁぁあっ……!だ、めぇぇ……!!」

 

 じゅるじゅる、ごくごく……耳にまで届く、愛液を啜る音は余の羞恥心を増大させていく。

 再び、上半身を机の上に倒れさせ、来るべき絶頂を待ち構えている余の体はもう、この子が与えてくれる刺激に夢中になってしまっていた。

 

 風呂場、夕餉の席、寝室……今までのはあくまで私人としての余、牛魔王だった。そこで乱されてしまったのは百歩譲って許してもいい。

 だが、ここは執務室。王としての余が公事に励む場でもある筈なのに無様にもそんな所で息子に犯されてしまっている。

 私としての余ではない、公としての余もが、この子に崩され、溶かされ、蕩かされ、一人の雌とされているようで。

 

 

「あぁ――!んああぁんぅ!!いっくぅぅ!いく、いくぅ、イクぅぅ!!いぐぅっぅ……むすこよぉぉぉ……イッてしまぅぅあああぁぁああっ!!」

 

 

 恥も外聞もない白痴のようなイキ姿を晒したその瞬間から、余の決定的なナニかが壊されてしまった気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから、一週間。

 寝室で、浴場で、食事の席で、執務室で、玉座で、遠乗りをする際の外でさえ、余は白孩児に性的に悪戯をされ続けた。

 妻やもう一人の息子がいようとも関係なしに、だが決してバレる事がないギリギリの境界を見極めて、余の肢体のあらゆる所を弄り続けた。

 

 二人っきりになれば、その愛撫はより激しさを増し、余を何度も絶頂へと導く。

 既に普通の親子関係の枠は壊れていた…………だが、だが、それでも、それでも()()()()()()()()()()()()()()()()事は無かった。

 そこを越えるのはお父さんの方からだよ、と言わんばかりの魔性の笑みを浮かべて。

 

 

 

 

 

 そんな体を燻られ続けて、一週間後の夜……いつもの寝室にて、余は寝具の上で白孩児を押し倒していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん――、どうしたのお父さん?」

 

 白々しくも、そう尋ねる息子に怒りの感情さえも今は湧かない。

 既に余の体はもう限界が来ていたのだ。押し倒した息子の下半身には子供とは思えない雄雄しい塔が立っている。

 何度も見た、何度も触れた、何度も舐め、何度も咥えた。

 

 だが、白孩児はそれを余のナカへと入れる素振りは一切見せなかった。

 

「どうしたの……かよく言えたものだ。堪え性がないソレで余の体を貫きたいと思わぬのか……息子よ……」

 

「駄目だよお父さん、だって俺達は親子だよ?貴方には奥さんがいるし、拾ってもらった恩もある……。それを仇で返すような真似は出来ないよ」

 

「よくもまぁ、ぬけぬけと」

 

 鼻息も荒く、呼吸も乱れている。父親とは思えない浅ましい雌の姿。息子を押し倒している体勢ではあるが、実の所、追い詰められているのはこちらである。

 

()()()()絶対にその境界は越えないよ、お父さん」

 

 でも、貴方から来たら抵抗は出来ないね。そんな幻聴が聴こえた気がした。

 寝巻を脱ぎ去り、生まれたままの姿を惜しみなく晒し、自分に跨っている余の姿を白孩児は楽しそうに、愉しそうに笑う。

 今日の今日まで、その殆どが白孩児の方から手を出したというのに、この決定的な交わりは余から越えさせようとする。

 

 …………なるほど、あいわかった。

 

 これは決して、自身の中で持て余している色情に敗北したとかそういうわけではない、未だこちらを舐めている息子を折檻するという意味で、今一度どちらが上の立場なのか教え込む教育という意味で、余はこ奴と交わる。

 

「…………そうか、ならもうこちらの好きにさせてもらう……今更止めてと言ってももう余は止まらぬから、な……」

 

 蜜穴を開き、息子の怒張に狙いを定める。引っ掛かる事なく、一発で最奥まで届くようにしっかりと姿勢を整える。

 股を開き、亀頭と入り口が接する。準備は万端。後はもう腰を下ろすだけ。

 そうだ、拾ってきた子とはいえ、今から父たる余は息子としたこの子と交尾をする……。

 自分がこれからする事を自覚した瞬間に燃え上がる背徳感と罪悪感……その全てが興奮となって余の腰を下ろす助勢となり……。

 

 

「今から、貴様の初めてを…………奪ってやろう……」

 

「……めてじゃないんだけどね」……何か、息子は呟いた気がしたが、もう耳に入らぬ。

 ずぶずぶと余の膣肉は白孩児の肉棒をぉぉぉ――――――。

 

 

「んんんぉおおおおぅ~~~~~~……………!!」

 

 嬌声というよりはそれは雌叫び、股をゴリゴリと削る怒張の感触が余の全身を打ち響かせる……。

 最奥へ、最奥へと進ませる気持ちを呼び起こし、擦るだけで余の理性を殺す男根と戦いながら、腰を下ろし続ける。

 

「んんふふぅぅあぁっ!あぁぁっ!!んくぅぅあ~~~~…………!!」

 

 なんという、なんというブツを持っているのだ、コイツは……!

 いや、何度も目にした時から只モノではないと思っていたが、こうして一番大事な所に挿入ってくるとより感じる……! 動いているのはあくまで余だけ、白孩児は何もしていない……。

 にも関わらず、この性器で膣を一直線に擦られるだけで、何度気を失いかけたのかわからない。

 これが、名器という奴か、人を性的に乱す魔具ともいえるか……!

 

 最初の余が大人としてリードしてやろう、絞り取ってやろうという気が削がれていく。

 何より、息子の性器の暖かさが余の膣内にあるという感触が親とは別の面を心底から掘り起こす。

 

 最奥には、子宮口までには何とかたどり着いたが……もう、この時点で色々といっぱいいっぱいなのだが……!

 

「ふぅおあぁっ……!あ゛あ゛あ゛ぁぁぁ…………!!!」

 

「んっ、気持ちいいよ……お父さん、もっと頑張って欲しいな……」

 

 下にいる息子の媚びるような声に気力が回復していく気がした。いや上手く乗せられているともいうべきか?それでも今の余には関係ない。

 

「こう、かぁぁ……これがいいのかああぁぁっ……あんぅぅぅああああ!!!」

 

「ん、ぁぁっ……うん、イイ感じ……ほら、腰もっとうごかして……」

 

 喘ぎも反応も、余の方が間違いなく大きく激しい。オイタをする息子に教育し、絞り取り、親としての威厳を見せるという目的にどんどん霞がかかっていく。

 

「わかったぁぁ……!ああぁっ!はぁっ!あんぅぅ!!!んくぅぁああ!!」

 

 それだけじゃない、乞われるがまま、腰を上下に動かし続ける余の頭からどんどん消えていく、王としての責務も、妻に対する裏切りの罪悪感も、親としての威厳も何もかも。

 今はこの息子の肉を味わう事だけ、この子の悦ぶ反応を見たくて、肉棒を締め上げ続ける。

 

 パチンパチンと臀部がぶつかり、余の体重が何度も真下にいる白孩児にかけられる。しかし、まるで苦しさを感じていない息子は気持ちイイと綺麗だと余を乗らせてくれる台詞を吐き続けてくれる。

 

 あぁ、なんと良い息子だろうか。教育だとか、絞り取るとか烏滸がましいのは余であった。

 倒れている所を拾い、家へ連れ帰ったあの日からこんな関係になるのはもはや運命であったのかもしれぬ。

 

「あぁ!はぁんぅぅ!!しゅごぉ……しゅごぉい……息子のちんぽぉ……あひぃぃぃ!しごぉいい……!!」

 

「ねぇ、お父さん。ちょっとキスして欲しいな」

 

「あぁ、あぁっ……!しゅるぅ……しゅるからぁぁっ……んっ、んちゅ……ちゅぱぁぁっ、もっと、おまえの温もりをぉぉ……んじゅぅぅ……」

 

 接吻をせがむ子に覆い被さり、舌を絡め合う。

 完全に我が子を性的に捕食している鬼親の絵面だが、実の所は逆、翻弄されているのは余。食べられてしまっているのも余。

 

 余の重みをものともせず、恋人にするような淫らで優しい舌に唾液を吸い取られていく。唇・歯茎・頬裏、蛇のような舌が至る所を這いずり回り、余の中にある雌を表層化させていく。

 

「んぶぶっぅうううっ……!?」

 

 深く唇を重なり合ったまま、子宮に来る大きな衝撃に失神しかける。

 

 そうか、お前からも動いてくれるのか。余だけの動きでは得られない予想もつかない快楽の波がさらに理性を剥ぎ取っていく。

 もう、親とか、子とかの関係は越えてしまった。ここにあるのは雌と化した余が(息子)にあるがままの姿で犯される原初の交わり。

 

 だがいい、これでいい。今はこの子への愛おしさだけで体が満たされている。他にはもう何も求めない。

 

「ちゅぅ……んじゅぅ……ちゅぱぁぁ……あっ、あぁぁっ!あひぃぃぁあっ!!」

 

「ねぇ、お父さん、どこに出して欲しい?」

 

「ふぇ……?あぁぁっ……あぁぁぁ――――…………」

 

 突かれ、哭かされ、目の前にある息子の甘美なる表情に答えはもう決まっていた。

 欲しい、この子の子種が欲しい、息子として拾ってきたこの子の精液を一切合切、この身に収めたい。父たる体に欲望のまま吐き出して欲しい。

 

「にゃかに……らして…………」

 

「了解っ……!」

 

 呂律の回っていない微かな呟きに、息子の種付け運動が加速する。

 

「あぁっ!あぁぁ!!あぁぁぁっ!!んあぁぁ!んぉぉぉおっ!!!」

 

 子宮の扉をノックし続けるそのストロークは余の体を仰け反らせ、膣の全てを犯し続ける。

 膣襞の全てが、えぐられ、擦られ、息子のナニの形へと順応していく。もう戻れない、いままでの王として、父としての自分には。

 

「ほらっ、出すよっ……!お父さん、イッて、イッちゃえ!!」

 

 軋ませる寝具の音、余の嬌声、愛液を漏らし続ける陰部への抽送運動による生々しい音。

 上下に激しく揺れ続ける胸の動きを抑えるように息子の手がそこへと伸びる。

 

「あああぁっ!!はんぅぅぅ!!おっぱいもぉぉ……!そんなはげしくぅぅしちゃああ……!!はうぅぁあああぁっ!!」

 

 1週間かけて開発された我が躰はもう、白孩児の手であったら何をされても悦んでしまう淫猥な様へと変貌していた。暴れる乳房は息子の手に踊らされ、猛々しい剛直がさらに膨れ上がるのを感じ取った余は来るべき時を感じ取っていた。

 

 愛しき我が子よ、その穢れなき欲望を、余の子宮へと解き放って――――。

 

「お、とうさん……!」

 

「んんんおおおおあああああっぁっ…………!!!ああああぁぁっ…………!!」

 

 ――――ビュルルルルルルッッッ!!。

 

「あああぁっ!!はああぁああああんうぅぅ!!」

 

 凄い……! 凄い……! こんなの知らない……! 嵐のよう膣内出し……!! 子宮の全てがこの子の精液に蹂躙されている……! なのに痛みもなく……!いつまでも浸っていたい心地よさしかしない……!

 

「あっっ!いくぅ!!イッてるぅぅ!!んおあぁああっ!!イキ死んでしまぅぅ!!」

 

 いけない、これは麻薬だ……。こんな味を膣に、子宮に覚え込まされては、もう他の情事では満足できない躰になってしまう……。胎内から響く射精音が余の耳まで犯してしまいそうだ……。済まぬ、羅刹女よ……余はもう――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何をしているのですか」

 

 

 え?

 

 夢心地に蕩けきった表情でかつての伴侶に形だけの謝罪をした時、その伴侶の言葉が現実へと引き戻した。

 

 我らの情事を前にして表情を一切崩す事なく仁王立ちしている妻の姿があった。

 

 あぁ、それはそうか。あれだけ盛大に艶声を響かせていたのだ。バレるに決まっている。余が夢中になり過ぎていたせいもあるが……。

 終わった……。これで全てが終わったな……。

 

「あ……あぁ…………………」

 

「何をしているのですかと聞いているのです」

 

 未だ絶頂の余韻を引きずっているせいか。羅刹女の表情から感情が読み取れない。極めて義務的に機械的に自分達が何をしているのか問うているようだが。

 ふっ、問うも何もこの惨状が全ての答えだ。

 余は妻を裏切り、息子との淫行に耽ていた夫失格の雌である。それ以外の何物でもないであろう。

 これはいよいよ、離婚、放逐か?あぁ、だがそうだな、この子と、当ての無い旅をするというのも随分と心が踊る…………。

 

 

 

「何故、貴方が白孩児の性処理をしているのですか?()()()()()()()()()()()

 

 

 ………………………………………………はい?

 

 

「呆れました。あれだけ出したというのにまだ足りないなんて。そうですね、私の治療行為が甘かったという事でしょう。息子の下の処理も母である私の役目です。さぁ、来なさい白孩児……」

 

「まてまてまてまて!!どういう事だ!羅刹女、お前、こ奴と何をしていたのだ!」

 

 白孩児と繋がりあったままである余を払い除けようとする妻を問い詰める。

 

「何を……この子の性衝動が人様に迷惑をかけないように鎮めるのは母たる私の責務です」

 

「一体、いつからだ…………?」

 

「貴方がこの子を連れてきた次の日からですが?」

 

 嫁が拾ってきた息子に光の速さで寝取られていた件について。

 いや! そもそも手が早すぎるだろう! 余が言えた立場でもないが!!

 というか何だその顔は羅刹女、紅潮した頬に手を添え、色っぽく溜息など……余にすら見せた事表情なのだが……!

 

 

 

 

 

「う、嘘だろ……なにしてんだろ……母ちゃん、父上……」

 

「っ!紅孩児……」

 

 入り口の所であわあわと指を口にかけ、信じられないという表情で固まっているもう一人の息子がいた。

 この状況はまずいな、未だ性的に繋がり合っている余と息子、そしてそれを離そうと余の体を掴む羅刹女。

 まだ未成熟である紅孩児には刺激が強すぎる……。

 

 

 

「なんでだよ……!白孩児!そういう事してくれるのはオレだけじゃなかったのかよ!なんでオレも呼んでくれなかったんだよ!」

 

 紅孩児! お前もか!

 

 酷い……酷すぎる……家族全員が義理の息子の毒牙にかかっているじゃないか。

 

「紅孩児……子どもはもう寝る時間です。牛魔王様、その子を連れて、別室へ戻って下さいな。白孩児の世話は私が行いますので」

 

「……それは承諾しかねる。お前に任せたら、この子が消毒液に興奮するおかしな性癖を持ちかねん」

 

「へぇ……受け身のまま、犯され続けていたヘタレの貴方が白孩児の精力を受け止め切れるとは思えませんが……」

 

「逆にお前はガツガツと行き過ぎているのだ。肉食獣如き様を見せられては息子も気後れするであろう。もう少し貞淑さを覚えろ」

 

 一度、息子の肉棒を抜き去り、寝具から降りる。そこから漏れ出る大量の精液を見せつけ、挑発するようにお互い対する。

 我が手には最果てに輝く槍(ロンゴミニアド)、妻の手にはエクスカリ芭蕉扇。一触即発の気配、まさか息子を巡って夫婦喧嘩をする事になるとはな……。

 

 

 

「へっへっへっ……。漁夫の利~漁夫の利~♪」

 

「んっ、ちょっ、くすぐったいよ紅孩児……」

 

「いいじゃねぇか、まだまだお前のココも元気そうだし……。あぁぁっ――――!この匂い、溜まんねぇ……お馬鹿二人が戦り合ってる最中に場所移そうぜ……な、な、な?」

 

 

 

 

「「……………………」」

 

 

「そうか我らを馬鹿というか……」

 

「盗人のような真似をする子に育てた記憶はありませんよ」

 

「えっ、ちょっま、なんでオレに武器向けて」

 

 白孩児の体にのしかかり、嗅ぎ回す紅孩児に夫婦の心が一つになった。まずはお前からだと。

 だが、そんな様子を見ていた白孩児の――――。

 

 

 

 

「ちまちま犯すのもアレだな。三人まとめて頂くか」

 

 この台詞を最後に余の記憶は途絶えている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の夜、牛魔王一家が住むと言われている城から3人の艶めかし過ぎる嬌声が響き渡っていた。朝日が昇っても、それは途絶える事は無かった。

 その淫らな狂騒は外まで届いていたが、誰も城に近づこうとは思わなかった。

 好奇心、猫を殺すどころか竜を殺す勢いで、邪魔をすれば只では済まないと誰もが予感したのかもしれない。

 

 風の噂では牛魔王一家には新たな家族、いや新たな主が増えたとか。既に牛魔王が主だというのに、それはそれは可笑しな話なのだが――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちゃん、ちゃん……めでたしめでたしというわけで、サークルクラッシャーならぬ、ファミリークラッシャーなENDでしたね。ちちおやの ほうそくが 乱れる!!みたいなプレイでしたが」

 

 

 ふぅ―――帰ってきた俺の心は充実した満足感と解放感が支配していた。淫靡なる日々、別に家族全員頂いてしまっても構わんのだろう?と言わんばかりに久々にハッスルしてしまいました。

 ていうか、一週間ぐらいいた気がするけど、こっちの時間は大丈夫なのかしら?

 

「言った筈ですよ――センパイ。私が改良したって。時間の流れもそっちでどれだけ流れようが1時間以内で抑えれます……時は金なり!時間のコストパフォーマンスもよくしないといけない時代ですから!その人のシチュエーション内容によっては月単位のもあるかもしれませんからね―――。月の頭脳を甘く見ないで下さいって話です!どやっ!」

 

「何故、何故……こいつらがいる……」

 

 顔を紅潮させながらも、どこか焦燥し切っているランサー・オルタが指を指した先にはホクホク顔のモードレッドとナイチンゲールがいた。

 

「センパイと乳上さんが入った数分の段階である程度のシチュエーションと舞台、役柄は決められます。それでまぁ、丁度良い配役もいたので、せっかくだし暇していたお二人さんも途中参加させようかなーなんて、配役に無理がなければ、今回みたいな複数プレイも出来る仕様です!本気になった絶倫ビーストのセンパイを一人で相手するのも結構しんどいと思うんですよ?BBちゃんの御優しさと思っていただけえば」

 

「オレは、ただ、黒い馬の父上がマスターと楽しそうな事してるって聞いたから邪魔してやろうかなーって……うん、本当にそれだけし」

 

「シミュレーション……なるほど、要は擬似訓練の一環ですね。理解しました。私も未婚のまま、子も作らず、生涯を終えた身。正しい家族関係、家庭医療を学ぶいい機会でした」

 

 正しい家族関係……?うん、そうだね!

 

「しかし、これが貴方の深層意識から出たマスターとの情事ですか……。倒錯っぷりが凄まじいですね」

 

「まぁ、まぁ、そう言ってあげないで下さいよ乳王さん!なんせ嵐の王!聖剣ではなく、聖槍を持ち、そこからさらに派生した黒きアーサー王!全ての民は我が暴威で庇護すべき存在であると豪語する王様!センパイもそれに外れる事なく、私が守り抜く……そう考えていた乳上さんでした。だからこそ、少し幼くなったセンパイになっていたんでしょうね……」

 

 白い槍トリアさんの言葉に反抗する事なく、打ちひしがれる黒い槍トリア。

 そんな彼女に追い打ちの如く、解説を続けるBBちゃん。

 

「だけど、どこかに自分以上の嵐で滅茶苦茶にして欲しいという被虐願望もあった筈です。それが今回の牛魔王一家という形で現れたのかもしれませんね。敵を屠る殺戮機械、国を統べる暴君、それら全てをまとめて台無しにして欲しい、庇護すべき、愛すべき者にまとめて蹂躙して欲しいという一欠けらぽっちの願望があったのでしょう。それを幼きマスター……下にあるべき存在に犯されれば尚よしぃ!と言った所ですか?」

 

「ぐふぅぅっ」

 

 もうやめてあげてよぉ!!槍トリアが虫の息だよぉ!!

 

「……もん。余は悪くないもん……」

 

 キャラ崩壊の最期の言葉を残し、乳上はゆっくりと倒れ伏した。

 うん、後で俺が責任を持って部屋に連れて帰ります。けど、その前に――――。

 

「はぁい♡次は乳王さんの番で行きましょう!」

 

「え、私もやるのですか?」

 

「そうですよ――。あ、それとも、乳上さん以上の醜態を見せてしまう可能性があるから怖くて入れません?いえ、別にいいですよ――誰しも歪んだ性癖は見られたくありませんよね――。いくら白くなったアルトリアさんだって周りがドン引きしてしまう劣情の一つや二つはありますからぁ……。それをわざわざ暴き立てるような真似はしたくありませんね――。うん仕方ありません。白槍のアルトリアさんの円卓の皆様に見せたら全員卒倒してしまいそうな欲望は隠しておく事にしましょう!!」

 

「BBとやら、準備をしなさい。今すぐです」

 

「おや、いいんですか?」

 

「私にはマスターに向ける歪んだ劣情も。隠し立てる欲望もありません。あなたの玩具に入っても出てくるのはいつも通りの変わらぬ関係です」

 

 こいつちょろいわ。とBBと隠れながら、親指を立て合う。

 

「さぁ、行きましょう。マスター……」

 

 

 というわけで、俺は休憩無しに第2Rへ向かうのであった。

 さてさて次はどんなプレイかな――。

 

 

 

 

 

 




『んっ、ふぅぁぁ……これだけ出しても、まだ尽きる事が無いとは……あんぅぅっ……!治療のし甲斐があります……んああぁぁっ!あなたのソコにある病、その全てを私のナカで治療してみせますぅぅ、あっ、あんんぁあ!ああぁぁっ!そうです!もっとぉ、動きなさいぃぃあぁ…………あんぅ!母たる私があなたの性器を教育してあげますっ……』

「ふむふむ、羅刹女さんこと、ナイチンゲールさんはお風呂で治療教育プレイですか。これは大方予想通りというか、泡だらけになった体で対面座位でずっこばっこと……衛生的なのか、不衛生なのかわかりませんね」






『んぉぉあぁぁっ!おっ、おほぉぁっ!!すげぇ……!す、げぇぇ……!んあぁっ!こんにゃ、こんにゃあそびしりゃにゃかったぁぁぁ……んおあぁぁっ!!外でこんな、んひぃぃ!お尻にぃ……ちんぽがぁぁあっ……んおおおおぁあっっ!!』

「こっちは激しいですね――。青姦、獣プレイですか。紅孩児さんこと、モーさんの菊門にセンパイの肉棒がズボズボと、後ろから交尾の如きバックセックス……うーん。ハードです。わんちゃんっぽいモードレッドさんにはぴったりですが」




モニターに映っている情事の嵐にBBはメモを取り続ける。
食い入るように彼女達が乱れている様を眺めている白き槍王は気づかない。


(そうですよねー。そうなりますよねー。そりゃあ皆さん女の子ですし、隠れた欲望でシチュエーションで自分だけの王子様に抱いて欲しいですよねー。ま、いいんじゃないですか?センパイは何でもカモンの人ですから、どんな倒錯的な劣情でも受け止めてしまうでしょう。けど、似たり寄ったりのプレイだといつか飽きが来てしまうと思いません。え?センパイならそんな事はない、まぁ、それは事実なのでしょうね。性癖ビーストなあの人が飽きてポイは有り得ないでしょう。そんな事は言われるまでもなくわかっています)

この情事も映像として残るというのに、BBは必要なテクニック、言葉、息遣い、彼が悦ぶ傾向を学ぼうとメモを取り続ける。

(ですけど、それに甘えて、女の成長を止めてしまうのはBBちゃんちょっと頂けないかなーって。英霊だからこれ以上の進化は望めないってちゃんちゃら可笑しい話です。言い訳にもなりません。ま、私にとっては都合が良いですけどね。皆さんが自分の魅力(笑)に胡坐をかいてくれるのは、その間に勤勉なBBちゃんはどんどんLvUPしていくのであった!やっぱりデータは多い方がいいですからね、これからも皆様のプレイは影ながら拝見させて頂きますよ)

にたぁっとその口は三日月に歪む。月の超級AIはその頭脳をフル活用し、流れてくる情事を吸収していく。

(センパイの隣にいるのなら、ありとあらゆるプレイとかシチュぐらい網羅しておくべきっていう話です。ふっふっふっ――。いつか絶対にこの私が手玉に取ってみせますからね!たかだか百回ぐらいアヘられた所でBBちゃんは諦めません!何度でも懲りないのがBBちゃんクオリティなのです……!ふふっ、フフフフフフフフフフフフフ)













父(♀)、夫(♀)型月世界ではよくある事。
皆も家族は大事にしようね(お目目グルグル)。良いお年を!!





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Arpendogs①(アルトリア・ランサー前編)



グダオピピック(邪ンヌ編)

「えいえい、イッた?」

「……イッ、てないわ……」

「えいえい、イッた?」

「い、いっへにゃいわ……」

「えいえいえいえいえいえいえいえいえいえいえいえいえいえいえいえいえいえいえいえい」

「イッてるぅ、イッてるぅ……!イッてますぅ!……もうイッてるからぁっ、やめぇ……アッ、あぁっ……!あぁっ、アァァっ!あっ……あ――っ!」


※ナニをしてるかはご想像にお任せします。後、本編とは一切関係ありません。











「はいはい、こんちゃーす。どうもバーチャルサーヴァントのBBちゃんでーす。今回の話はおっぱいプルルンの方の白いアルトリアさんの深層意識から醸し出したシチュエーションプレイになっています。登場する人物・団体・名称等は一部を除いて架空であり、実在の円卓物語とは関係ありません。というわけで、白い方の槍王さんの痴態を存分に愉しんで下さいな♡」


 未だ神秘が色濃く残る時代……卑王ヴォーティガーンを始め、竜種・幻想種……あらゆる魔がブリテン島を跋扈していた。

 暴虐・災害・飢餓・貧窮、絶え間なく襲来する絶望に誰しもが救いの手を、希望の光を求めていた。

 

 その声に応えるか如く現れたのが、ブリテンを治め、王として君臨したアーサー王。

 清廉潔白、滅私奉公を貫く騎士の中の騎士、誰もが崇敬と讃仰の眼で見る事を止められなった。

 

 全身を包む白銀の鎧。獅子を彷彿させるマント、王の輝きを象徴する美しき金髪。

 聖槍ロンゴミニアドを手に、ドゥン・スタリオンに騎乗して、円卓の騎士達を従える姿には誰もが「王の元に円卓の騎士あり」と称えざるを得ない。

 

 聖剣ではなく、聖槍を手にしたアーサー・ペンドラゴン。またの名を「獅子王」。

 

 

 

 

 

 

「本日はここまででいいだろう」

 

 丸型の席。

 ブリテンの行く末を定める最高意思決定機関「円卓」。

 実力的にも立場的にもトップとして立つ騎士達が王を含め、十三席。

「すべての席は王と対等あれ」その思想が守れているかどうかはさておき、今日もこうして王の言葉によって会議は終わりを告げた。

 

 

「連日、連夜の会議に蛮族、魔獣達への奮戦、ご苦労であった。今日ぐらいは各々、英気を養うがいい」

 

 そう言って、円卓を後にする王によって張り詰めていた空気が少しだけ弛緩する。

 王らしく騎士達の労いの言葉をかけ、すぐさま席を立つ。悪い見方をすれば、会議が終わった以上、私事に自らの時間を費やす事はないとする冷たい印象を受けるが……。

 しかし、それは仕方のない事かもしれない、ここにいる殆どの者が、王としての彼女しか見た事がないのだから。

 

 

 

「悲しい、私は悲しい……かの王の言葉は正しい。一を捨て、十を救うその在り方、この国を救う王としては正しい……ですが、私にはその在り方が酷く悲しく見える」

 

 竪琴を弾き、王が出て行った円卓の間でそう呟く細目長髪の男はトリスタン卿。

 

「今更、王の決定に異を唱えるというのか?」

 

「おぉ、そうおっかない瞳で見ないで欲しい、アグラヴェイン卿。既に円卓の議は終わりを告げている……ここからはプライベート、只の優男のポエムな感傷です」

 

 ポロロンと何を考えているのかわからない表情で、鋼鉄のような男の睨みを受け流す。

 続いて、円卓の騎士達がそれぞれ言葉を開く。陽の下で圧倒的な力を誇る「太陽の騎士」ガヴェイン卿。円卓最強の力を誇るランスロット卿。

 

「連日連夜働きづめだったのは王も一緒でしょう。私はこうして、やっと王が休養を取ってくれて安心しましたよ」

 

「私はかの王が、休みを楽しむイメージが想像しづらいのだが……」

 

「当然だ。貴様らに少しの暇を与えようとも王にそのつもりはない。場所が円卓の席であろうと、私室であろうと、いついかなる時でも王の頭にあるのはブリテンの未来……それだけだ」

 

 王の秘書としての立場にいるアグラヴェイン卿の言葉に誰も否定しない。

 ブリテンを救う王……いやまるで一つの装置のような王の在り方。星の燐光、最果ての輝き……あらゆる絶望を吹き飛ばす王として自らの道を定めた獅子王。そこにかつての「人」の心はまだ、存在するのだろうか――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ログレスの都にあるキャメロット城、その純白の城の最上階にて、アーサー王は自室に戻っていた。

 王の私室、許可無く入るのは何人たりとも許されない(ロクでなし花の魔術師は除く)アーサー王の秘められた部屋。円卓の間から出た彼女は早足で私室に戻るまで毅然とした表情を崩す事が無かった。

 

 キョロ、キョロ。

 

 辺りを入念に見回し、部屋の扉を開ける。自身の私室に入るだけなのに、一体何をそこまで警戒する事があるのか、その理由は――。

 

 ――ガチャ……

 

「帰りましたよ。アル」

 

「お帰りなさい、ご主人様」

 

 部屋へ帰ったアーサー王を迎える『アル』と呼ばれた()()()()()()()()がいた。「ご主人様」と彼女の帰宅を尻尾を振るように顔を輝かせ喜ぶ黒髪の彼の服は白く質素な物だった。とても王の私室にいるような身分とは思えない。

 

 頬を緩ませ、騎士達、民衆の前、仕事中には絶対に見せない柔らかく女性らしい顔を浮かべる。

 

 

 

 

 仕事に疲れた独身ウン十歳アーサー王、ついにペットを飼うの巻。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いい子にしていましたか、アル」

 

 数日前、珍しく政務の暇が空き、プライベートで騎士も供にせず、ひっそりと遠乗りをした日。

 湖の畔で、横たわるこの少年をアーサー王は見つけた。最初は妖魔の類かと思い、警戒していたが……気付けば誰にもバレないように自室に持ち帰り、首輪を付けて飼っていた。

 

 新手のスタンド攻撃か何かかと困惑した時はもう遅い、キャメロット城を彷彿とさせる純白の首輪を無意識に彼に付けさせ、さらには王になる前の自身の真名「アルトリア」の一部を取り、『アル』と名付け、散々に撫で回し、抱き締め、寝食を共にした時、王は陥落した。

 王の仕事として少しずつ積み重なってくるストレス、それを癒してくれるペット(アル)に骨抜きにされた今の彼女にアーサー王の面影は無い。

 

 

 まぁ、独り身だろうと、仕事に励んでいる社会人()がペットを飼う事ぐらい、別に問題は無いだろう。

 ただ、いい歳をした女が年齢差ある少年に首輪を付けて、「ご主人様」呼びをさせるのは如何なものかと。そして、この状況を何も慌てる事なく平然と受け入れているアルと呼ばれた少年も中々にキチってる。

 

「こっちへ」

 

 鎧とマントを脱ぎ、青のインナー姿となって両手でペットを迎える。

 ベッドに腰かけた彼女の懐に言われるがまま飛び込む黒髪の少年……アルを背中から優しく、自らの乳房を彼の背中に押し付ける形でギュッと抱き締める。

 

「もっと良い服を与えても構わなかったのに……寒くはないのですか?」

 

「あんまり豪華なのは俺には似合わないからさ、それにこうするとあったかいからこれでいいの」

 

 自身のペットにはお洒落をさせたいという親バカな飼い主心を発揮するが、当の本人はこれでいいのだと笑う。隣に脱ぎ捨ててあった純白のマントに手を伸ばし、二人ごと包んで「こうした方がご主人様をもっと感じられるから」と。

 

「はぁ……しあわせ」

 

 ぽわぁっと尊い感情を爆発させて一つのマントの中で、アルの感触を堪能する獅子王。

 

「あぁ、今日も疲れました……」

 

「お疲れ様、ご主人様」

 

「トリスタン卿は相変わらず、起きているのか起きていないのかわからないし、ガヴェイン卿の食事当番の時は飯が不味過ぎるし、ランスロット卿は私を神聖視過ぎているきらいがあるし、マーリンはどクズだし、アグラヴェイン卿は働き過ぎだし」

 

 その様子はさながら社畜としてクタクタのまま自宅に帰ってきて、延々とペットに話しかけるくたびれたOL。アルの首元に顔を埋め、くんかくんかしているアーサー王はひたすら愚痴を零し続けた。されるがままのアルはうんうんと頷き、吐き出させ続けた。

 

「すぅ……はぁ……んぅ、あぁ……癒されます、ね……」

 

 マントに包まれたままゴロンとベッドに転がるアーサー王。

 だらしのない顔でペットの肌触りを堪能し続ける。

 

「アール、あーるぅ、アール、あーるぅ、アール、あーるぅ」

 

 ゴロゴロ、マントに包まったまま最愛のペット(首輪を付けた住所不定の少年)と一緒にキングサイズの寝台の上を転がり続けるブリテンの王様。実に幸せそうである。

 

「はぁ、アル……貴方の体はどうしてこんなに気持ち良いのでしょうか」

 

「んっ、くすぐったいよ……」

 

「そしてその声も、私をこんなにも惹きつけて止まない……んぅ、はむっ、んちゅぅ……」

 

「あ、駄目だよ。ご主人様」

 

「ちゅぷぅ、んちゅぅ……ちゅぱぁ、何が駄目なものですか。私をこんなに誘惑して本当に悪いペットです」

 

 アルの耳を噛み、その中を艶めかしく舐め始めた彼女。その眼に映るのはペットに向ける親愛の色ではなく、情欲の色が少しずつ浮かんでいた。

 アルが零す喘ぎ声に、アルトリアが王となっていてから死んでいた女の部分が燃え上がっていく。

 

「ちゅ、はむぅ……ちゅ、ふふ、こんなにおっきして……主に欲情したのですか?本当にイケない子……」

 

「あっ」

 

 アーサー王の豊かな躰に抱きすくめられたままマントの中でまさぐられ続けたアルの怒張は既に腫れ上がっていた。そこを彼女は心を込めて愛玩する。服は質素、手を入れるのも容易く、素手の中でピクピクと震え続ける肉棒の感触はアーサー王の心を乱し続ける。

 

「さぁ、いつもの時間です。たくさん出しましょう?」

 

「ん、あっ」

 

 マントの中でこの国の王に大事な逸物を扱かれる絵。それはペットとのコミュニケーションと言うにはあまりにも淫猥。熱く吐息を漏らすアルの顔が王の方へと振り向かれた。

 

「いいですよ。私の唇、好きなように舐めなさい」

 

「は、い……ちゅ、ちゅぅぅ……ちゅるぅぅ、れろぉ……」

 

「んぶぅっ……んふぅ!んくぅ!じゅるぅぅ……」

 

 主に向ける愛情表現にしては熱く、アルの舌は彼女の唇の中へ吸い込まれていく。

 お互いに溢れ出す涎が淫靡に混ざり合い、口元から厭らしい音を奏でるのを止めない。

 

(あぁ……やっぱり、この子本当に上手い……私の口の中、全部味わい尽くしてやろうって、こんな熱心に動いて……気を抜いたら、私の魂が持ってかれてしまいます……!)

 

 ペロペロと自身の唇、口内を舐め続けるペットの舌技に翻弄され続ける彼女。

 それでも、アルのペニスを扱き続ける事は忘れない。上下の口から淫らな水音が止まない。

 気付けば腰も彼の尻に押し付ける形で動いていた……これではまるでこっちが盛った雌犬のようにも思えてくる。

 

「んちゅ、ちゅぅ……ちゅ、ある、アル……私のこと、好きですか?」

 

 こんなにもお互いに愛撫し合っているのに、まだ不安なアーサー王はアルに問い掛ける。王らしからぬ、少女のような揺れた瞳。

 だが、アルは迷うことなくその問いに答える。

 

「ん、ちゅぅ、うん……大好きだよ。ご主人様、アルトリアご主人様が大好き……」

 

 アルトリアが抱えている不安を全て払拭するような無垢なる笑顔を浮かべる。やっている事は無垢とは程遠いが。

 

「あぁっ!ちゅ、んちゅぅぅ!……んはぁっ……!ある、アル、アル、アルゥ……!」

 

 それでも未だ浮いた話の一つも無かったウン十歳の王はチョロコロッと堕ちてしまう。雷に打たれたかの如く。

 箍が外れた獅子王は熱に浮かされたように、ペットの名前を連呼して、唇に吸い付き、男根を愛撫するスピードを加速させる。

 

「すきぃ……ちゅ、ちゅぅぅ……すき、すき、私もす、きですぅ……」

 

「ちゅ、ちゅぅぅ……ご主人様、ご主人様……」

 

 お互いに陶酔したかのように呼びかけ、唾液を交換し合う。

 王の象徴たる外套の中で行われるあってはならない情交、だがそれを止める者は一人もいない。

 獅子王の手淫でせり上がる精子、深く絡み合うディープキスで眠っていた女の欲望を起こされ、その解放はもう――。

 

「じゅるぅ、じゅるぅぅぅっ……!!んむぅぅぅぅ!んんんんんぅぅぅ!!」

 

 ペットの舌で散々蕩かされ、アルの腰でオナり続けた彼女は、瞳に歓喜の涙を浮かべ、唇を離す事なく絶頂に至る。

 そして、それと同時にアルの鈴口からも熱い欲望の奔流が吐き出され続ける。白いドロドロのザーメンは獅子王の神聖なる象徴とも言えるそのマントの裏を汚し続ける。だが今の彼女がそれを気にする事はない。

 

「んぅぅぅ!んっ!ちゅぅぅ!ちゅぷるぅぅぅ……んふっぅぅ!!」

 

 キスで達した彼女は見なくてもわかるペットの濃い白濁の感触と匂いに酔いしれていた。

 その余韻をもっととねだるように、未だアルの唇とペニスから離れる事はない。

 

 ブリテンの民達、騎士達、誰もが憧れるアーサー王、一体誰が想像出来るだろうか、キャメロット城の最上階、私室にてその王が――。

 

「ぷはぁぁっ……!はぁ――、はぁ――……もう、こんなにもいっぱい出して……今日はこのまま寝ちゃいましょうか……?」

 

 ――こんなにも雌の表情を浮かべているなんて……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《ある日のキャメロット城の廊下、ブリテンの騎士達の会話》

 

「しかし、毎日毎日、悩みの種は尽きないな」

 

「あぁ……食糧事情は当然として、懲りずに攻めてくる蛮族共に魔獣共……さすがにここまで来るとちょっと疲れがな」

 

「泣き言を言うな。一番疲れているのは間違いなくアーサー王だろう。俺達の何倍働いていると思っているんだ」

 

「確かに王は凄いな。特にここ最近見るアーサー王の顔は疲れの色が全く見えない。心なしか肌のツヤが出ているような……」

 

「余暇の時間など、極稀にしかなく。俺達なんかよりよっぽど少ない筈なのになぁ……」

 

「一体、あの体力はどこから出てくるんだろうな」

 

「よっぽど上手く息抜きしているんだろうさ」

 

「王の息抜きか、想像出来んな……」

 

(あっ、おい噂をすれば、王だ姿勢を崩すな!)

 

(わかってるよっ)

 

 

 直立した二人の兵士を横切るアーサー王。確かにこの二人が語っていたようにその顔からは微塵も疲れを感じさせていなかった。

 その佇まいは王として完璧で在ろうとするが故に、民衆や部下に不安を与えるような疲労を見せる顔を浮かべる事は無いのだろう。

 まさに王の中の王、無駄口を開かず、黙然と歩き続けるアーサー王の頭の中には今日もブリテンの未来の事が描かれているに違いない。

 

 

(アルの精子を飲み込んでから、とても体の調子がいいです。ふふっ、これで今日もお仕事頑張れそうですね)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………」

 

「どうしたのご主人様?」

 

 アルという愛玩動物を飼って、数週間。私室に戻った時の唯一つの癒しとして存分に愛で(性的に)、アルの精を飲み、仕事にも精を出していたアーサー王だったが、今日は様子が違った。

 

 部屋に帰るなり、無言でアルの手を取ると、いつもの鎧を解いた姿で彼を抱き締めたまま床に座り込み、何をするのでもなく、動かなくなってしまったのだ。

 

 疑問に思ったアルの言葉にアーサー王はポツリと言葉を返す。

 

「………………私には人の心が分からないのでしょうか……」

 

 本日、円卓の席を去ったトリスタン卿の言葉、「王は人の心がわからない」。その言葉が彼女に棘として残っていた。

 今日までブリテンを救う為、国を救う為に一心不乱に進み続けた。だが、自分は「人」を救った事があるのだろうか。そこに住む民達の心を慮った事はあるのだろうか。

 

 アーサー王の奥底に沈んでいた不安が浮上する。

 今日まで自身を癒してくれていたこの「アル」の心すらもキチンと理解しているのか?

 

(いや、そもそもの話、わけもわからず拉致られて。部屋に監禁されて、王と名乗る女に首輪を付けられて、飼われて、毎日のように体をまさぐられて、精液を吐き出されて、それを舐め取られて……冷静に考えずともヤバイ奴でしょう!!)

 

 アーサー王、ここに来てやっと自分を客観視する。

 ただまぁ、彼女を擁護するのなら、連れてこられたこの黒髪の少年が怯えを一切見せず、アーサー王に全幅の親愛の情を見せ、懐きに懐いてしまったのも問題だと言える。

 

 だが、自己嫌悪中の彼女にはその甘い日々で見せた彼の顔も王である私の気を損ねない為の処世術だったのではと……疑惑の種が芽吹いていた。

 

 それでも彼を離せず、今もこうして抱きしめているのはよっぽど自分は末期なのか。

 何が騎士の中の騎士、アーサー王か……その正体は身元が分からない少年を自室に閉じ込め、自身を慰める愛玩動物のように扱う淫女じゃないか。

 

 人の心が分からない……それどころか自身の心すら分からなくなってしまった王は負のループへと陥っていた。

 しかし、そんな彼女を叱咤するように頬を包み込む両手が――。

 

「ふぇ」

 

「あ、やっとこっちを見てくれた」

 

 頬を挟まれた、若干間抜けな顔で視線を上げると、そこにはいつもと変わらず快活な笑みを浮かべる愛しき少年の顔があった。

 

「今、俺の顔がどんな風に見える?辛そうに見える?悲しそうに見える?怒って見える?早くここから逃げたいって思ってる顔してる?」

 

「う……」

 

「どう、してる?」

 

「……し、していない、嬉しそうな顔をしている……けど、なんで…………?」

 

 ずいっと顔を寄せ、どこか凄みを感じさせるアルの表情には獅子王に対する嫌悪感も、恐怖も一切感じられなかった。

 取り繕った物ではない、本心から作り出された本物の表情だと……そういった心の機微に疎い王ですらわかる笑顔と瞳だった。

 

 でもだからこそ、彼女には分からなかった。何故、彼がここまで自分に深い愛情を示してくれているのか……。

 行き場も出自もわからない彼をまるで都合の良い存在として、この部屋に閉じ込め、自身のストレスの捌け口として使っていたのに、アルもその事は分かっていた筈なのに……。

 

「好きだからに決まってるじゃん」

 

「はえ?」

 

「いつも難しそうな顔したまま帰ってくるけど、俺を見た瞬間に顔を綻ばせてくれるご主人様が、温もりを求める子供のようにこの部屋にいる短い時間の間中ずぅっとスキンシップを求めるご主人様が、俺の反応に一喜一憂を返してくれるご主人様が全部好き」

 

「あぅ」

 

「俺は貴女のアーサー王としての顔は見た事が無い。俺が知っているのはちょっとだけポンコツなアルトリアご主人様。目覚めてから、拾われた俺の世界はこの部屋とご主人様しか無かった。貴女の帰りを一人で待つ時間は退屈だけど、それでもご主人様のペットとして貴女の嬉しがる表情を見るのは本当に愉しいんだよ?」

 

「あ、あの……アル、顔がちか……」

 

「ふふ、いつもいつもあんなに恥ずかしい真似して、俺が吐き出した物も舐め取っておきながら恥ずかしがるの?ご主人は本当に可愛いなぁ」

 

 立場逆転。

 いつの間にかアーサー王はペットであるアルに押し倒されている。

 照れる主の顔を恍惚とした様子で愛でる下僕。

 

「ひぅっ!」

 

 逃げようとするアーサー王の体の周りを両手足で囲む。

 鎖骨の辺りをぬらぁっと舐め上げると官能の悲鳴が聞こえる。

 

「ここにいる間はアーサー王じゃなくて、俺の主、アルトリアご主人様でしょ?ほら、ペットとして俺に役割を命じてよ」

 

「ひぁ、あっ……んぅぅ」

 

 インナーから露出している肌の上を嗜虐の舌が走る。

 唾液を塗りたくられる度に、火照っていく王の肢体。

 

「この部屋にいる間は、俺と一緒にいる時ぐらいは全てを忘れてもいいんだよ?さぁ、愛玩動物の俺に何をして欲しいの?」

 

「私を―――」

 

「私を?」

 

「慰めて、たくさんたくさん、慰めなさい……何もかも忘れてしまうぐらい、いっぱいに」

 

「……かしこまりました。ご主人様」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 沈む極上の躰。王として君臨していた時にはまずお目にかかる事は出来なかった鎧の下に隠された色香を醸し出す女体。

 出る所は出て、くびれている所はくびれている。結われていた金髪の髪も下ろされ、生まれたままの姿……そしてベッドの上で、その身を曝け出していた。ペットである「アル」の前で。

 

「……うぅ……」

 

「自分が受け身になると途端に恥ずかしがるんだね、ご主人様は」

 

 全裸とはいえ、内股になり、胸の中心部と股間と大事な部分をそれぞれの手で隠しているアルトリア。

 だが、その姿は非常に逆効果。より男の情欲を燃え上がらせる結果にしかならない。恥じらいは情交において、最高のスパイスになるのだから。

 

「さ――て、慰めるとは言ったものの、俺はペットだからね。ペットの慰め方って言ったらやっぱりこれしか無いよね……それじゃ、いただきます」

 

 ――つぅ――ぺろっ。

 

「ひゃぅ、うふぅ……ふっ、ふははぁ、あんぅぅ、ちょ……!どこをなめ、て……ひぅぁ、くすぐったぁ……」

 

「どこって土踏まず?ペットらしく足から舐めさせて頂いているのですよ……れろぉ……ぴちゅ……」

 

「はひぃ!あぁっ……足のゆびぃ、くわえないでぇ……!んふぁぁ!」

 

 汚れも埃も一切無い、美白な指を一本一本丁寧にしゃぶっていくアル。ご主人様の嬌声をBGMに十本あった指が一つずつ唾液でテカっていく光景の何と淫靡な事か。

 主の躰を慰めているその舌は次の目的地を求めて登っていく。

 太ももの所に今度は唇で跡を付けるように、吸い付いていく。

 

「あっ、こらぁ……!あとが、のこったらぁ……ひぃぅ……どうするのですかぁ……んぁ!」

 

「いつもの鎧でここが見られる事はないでしょ?うん、せっかくだから、愛しのご主人様にたくさん下僕のマーキングしておかないと」

 

「あっ!やぁっ……!」

 

 ゴロンとあっけなくうつ伏せにひっくり返された王様。

 前だけを隠す事に注視していたので、丸出しになった美尻が露になる。

 少し、肉が付いた臀部。安産型というべきか……決して太すぎるということはなく色っぽさを損なわないムチムチのお尻。

 

「この尻で王様は無理でしょ。あぁ……けど、鎧の下にあるこの桃を食べれるのは俺だけなのかな?そこんとこ、どうなのご主人様?」

 

「し、知りませ、んふううううぅぅぅっ!?」

 

 強情な主様を素直にさせる強烈なキス。太ももだけでは飽き足らず、アルは臀部にも歯と唇で入念に吸い付き、自分の印を何個もアルトリアの下半身に残していく。

 

「ふぅ、ふぁ、あ、あっ、あぅ……あっ……あんぅぅっ!!」

 

 枕に顔を押し付け、尻をペットに何度も甘噛みされる快楽に耐える彼女。だが、その瞳に浮かんでいる色は喜色に染まりつつある。

 足と同様、プルプルと震え続ける尻も涎と赤く充血したキスマークだらけになっていた。

 

 アルの獣舌はまだまだ進み続ける。今度は中にある脊髄すらも溶かすようの背中を舌先が登っていく。髪を掻き分け、うなじに再び甘噛み……舌のこそばい感触。噛まれる鋭い刺激。緩急付けられた口淫にアルトリアは王がしてはいけない顔に変貌していく。

 

「あっ……ひぃ、あぁっ……躰中、舐められて……あ、わたしぃ、ひあぁっ……!」

 

「ちゅ、んぶぅっ、はむぅぅ……じゅるるぅぅ……ほら、もうおっぱいもまる見えになっちゃってるよ……ご主人様の乳首も咥えて欲しいってカチカチになってる」

 

 また仰向けへと戻されたアルトリア、背中をしゃぶり尽されていた隙を突かれて、両手を抑え込まれていた。

 はしたなく起立している乳頭、蜜を漏らしている陰部、ペットに舐められて盛っている浅ましき雌の姿がここにはあった。

 

「ご主人様、何を恥ずかしがることがあるの?」

 

「だ、だって……私は王で……」

 

「この部屋にいる間は……俺と一緒にいる時はご主人様でしょ?今だけは、この瞬間だけは王である事は忘れていいんだよ……ほら、おっぱいも、ちゅ、ちゅ……んちゅ、こんなにおいしくなって……」

 

「あっ、あっ……や、やめてっぇ……あんぅぅっ……んあぁぁっ!!」

 

「嘘、ホントは止めて欲しいって思ってないのに」

 

 バター犬よろしく、アルは彼女の躰を口でしか責めていなかった。唾液をまぶし、咀嚼する音。アルトリアの巨峰はその整った丸みを歪ませる。止めて、止めてという彼女の顔はそれに反して喜色に満ちていた。そもそもペットのアルが舐め始めた時から、彼女の心には期待しか無かった。

 

 全裸で、ペットに舐められ、咥えられ、噛まれ、痕を残される。

 さらにはそれに快楽を覚え、悶え、悦びの声を上げ、寝台の上で汗を流し、必死に自分の肌に奉仕してくれる男の姿を目に焼き付けていた。

 一体、私のどこが王なのだろうか――――。

 

 自嘲する気持ちも到来する悦楽の波ですぐに掻き消される。

 アルは言ってくれた。この部屋にいる間は忘れてもいいと。

 そうだ……そもそもこの子を拾ってきたのは自分だ。こうして部屋で禁断の主従関係を結び始めたのも自分だ。

 なら、いい。今だけは……この瞬くひと時だけは忘れて、彼に溺れてもいいのだろう。

 部下達も影ながら言っていたではないか、「王には体を休める事も覚えて欲しい」と。

 ……心配はいらない。私は今、十分に休んでいる。癒されています。

 

 落ち込み、自身を客観視して、今まで何をやっていたのか自覚してさらに落ち込み、慰められ、今は……性的に慰められている王の心はズブズブとアルに嵌まっていく。

 

「あぁぁっ、いいぃ……いいのぉっ!ひぃあああぁっ!あっ、あっ……おへそも、グリグリしてぇ……あんぅぅ!あは、あはぁっ……はぁっ!こんな、こんなよろこび知らなかったぁ……っ!」

 

 おっぱいを存分に頂いた後はその口内奉仕は徐々に下へと下がっていく。垢もない、お腹の窪みにぬめった舌が侵入していく。

 アルは顔面に触れる彼女の色肉の心地よさに気を良くしながら、さらに下へと進んでいく――――開かれた陰部……王の秘められた城門がその淫舌の入城を今か今かと待ち構えていた。

 

「にゃあああぁぁっ!!」

 

 ペロっと一舐めしただけでこの反応。

 王の願い通り、アルはペットらしく主を慰めていた。何もかも忘れてしまうぐらいに……その願いは叶えられている。

 

 むせ返る程の雌臭、だがアルは気にする事なくその秘貝に深く口付けをする。

 大好きなご主人様に聞かせるほどの水音。アルトリアの秘部から氾濫している性水をご褒美とばかりに吸い続ける。

 

「じゅるるるるるるるるるぅぅぅぅっ」

 

「んふぅぅっっ!!んにぁぁあっ……!はぁっ、あぁっっ!!アル、アル、ある!ある!あるぅぅっ!!……気持ちイイ、きもちいいのですぅぅ……くるってしまうぐらいにぃぁぁぁあああっ!!」

 

 狂乱したかのように、彼の頭をもっとと強く股間に押し付けるアルトリア。窒息してしまうぐらいにかかっている力をアルは気にする事なくクンニを続けた。

 彼にとって息をする事より、アルトリアの性器を舐め続ける事の方が重要なのだから。

 

「ひぃ!あぁぁぁっ!!あああぁァァっ!!クリトリスもっぉぉ……!ふぅああアァっ……!!アルは、頑張り屋さん、過ぎますぅぅっ……!!」

 

 上唇で肥大化したクリトリスをピンピンと弾かれると一際大きい喘ぎが聴こえる。

 もう既にこの王は何度も達している。だが、ペットである彼は……より大きい絶頂を求めて舌先をGスポットの所まで器用に伸ばす。

 王の責務、ブリテンの未来でいっぱいの彼女の頭の中を犯し、蕩かす為に。

 

「んおあぁあああああっ……!!い、いくぅ、イくぅ………‥――――!!ごめん、なさいぃぃっ……ごめんなさいぃぃっ!!」

 

 彼女は一体、何に謝っているのか。Gスポットを舐められたアルトリアは盛大に潮をアルの顔面にぶちまけた。

 

「あぁっ!!んあああぁぁっ……!!はぁっ……!!ペットにペロペロされて……イッちゃってるぅぅ!私、イッてしまってますぅぅっ……!あぁっけど、だめぇ……!頭の中がキモチイイ事でいっぱいでぇぇ……!!んひぃぃああぁっ!」

 

 プシュプシュと暫くの間、続いた潮の間歇。緩みに緩んだ獅子王の顔を見ると、きっと良い息抜きになったのだろう。年下の首輪を付けた男の子に全裸で舐められてこの国の王様は存分に癒されたに違いない。

 

 

 

 ――――願わくば、この生活がずっと続くようにアルトリアはそう願った。

 

 その願いが叶う筈がないと自覚しながらも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「うーわぁ」」

 

 モニター中だったBBとオルタランサーの呟きが重なった。

 

「『あなたの玩具に入っても出てくるのはいつも通りの変わらぬ関係です』か……確かに主従関係という点では変わらぬが……あいつめ、よくもまぁ、私の事を倒錯していると言えたものだ。まだ私の方が可愛い方だろう」

 

「ナニやってんだよ……白い馬の父上ェ……」

 

「何ですか、あのガヴェイン卿が作っている栄養バランスが滅茶苦茶になっている芋料理は。あんなものを食べてたら、免疫力もつきません。兵士達が疫病にかかっても仕方ないでしょう。衛生・健康に気を使えない国の重鎮の首はそうひっかえしないといけませんね」

 

 死んだ眼でモニターから流れる情事を見るモードレッドと見当違いだがいつも通りブレない方向で思考を巡らせるナイチンゲール。

 

「BBちゃんの『HBチャンネル』は本人すら自覚していない無意識の性癖を掘り起こす禁断のマッスィーン……まさかあの小奇麗な槍王さんの円卓卒倒確実な欲望をこうも露にしてしまうとは……自分の才能が恐ろしいです……。ていうか、黒い槍王さんといい……始まり方がほとんど変わらないのどうなんです?どんだけセンパイの事、拾いたいんですか?」

 

「貴様……マスターが道端で『拾って下さい』と書かれた段ボールに入っていたらどうする?拾う一択しかないだろ!」

 

「ぐぬぬ、実にわかりみしかありません。確かにそんなセンパイを見つけたら0.000000000001秒で私が用意したゴージャス&リゾートな犬空間で一生可愛がってあげちゃうかもしれません」

 

「当然拾います。司令官の汚れた全身を洗い流し、栄養が行き届いた暖かいスープを手ずから食べさせ、寝付くまで添い寝をし、生涯管理する事を誓います。彼を捨てた者に然るべき治療行為を行います」

 

「なにこの人たちこわい……ってうぉ!」

 

 マスター&センパイ捨て犬談議で花を咲かせている淑女達にどん引きしていたモードレッドの足元に黒い電子の触手が絡みついていた。当然、大元はBBから伸びている。

 

「テメぇ、何すん……」

 

「ほら、せっかく円卓モドキがあるのですから。寂しがり屋のモーさんも入れてあげた方が面白くなるかなーというBBちゃんの意気な計らいです」

 

「余計なお世話だぁぁああああぁああああ――――――――…………」

 

「一名様ぁ、ごあんなーい♡」

 

 シェイプシフターによって『HBチェンネル』のコフィンの中へと引きずり込まれるモードレッドの間抜けな悲鳴が響いた――。

 

 

 

 

 





「聖槍を持った私……やはり、貴方とは分かり合えない……」

「ふっ、そうですか。マスターを飼いたいという私の悲願……理解は出来ないですか――」

「分かってたまりますか。マスターは我が飼い主、我らこそが首輪を付けられるべき。それを、それを……貴方はッ!!」

「首輪を付けたマスターに全身を舐めさせ、奉仕させる。その悦びこそが私の求めたアヴァロンなのですよ。王になる前の私」

「貴様ぁ!!騎士としての、人しての矜持すら捨てたかぁ!!」

「もはや言葉は不要……主を飼い、首輪を付け、肌を愛撫し、秘部を舐められた。何の、為に……。聖槍よ、果てを語れ!」

「従属の首輪よ!力を!邪悪を断て!」


「『最果てにて輝ける槍(ロンゴミニアド)』!!」
「『勝利すべき黄金の剣 (カリバーン)』!!」



結論:どっちもどっち。













乳王のいじらしい可愛さを表現出来たと思います。
次回で乳王とワンちゃんのほんわかほのぼのライフも完結です。今月中に更新出来るといいな。

総合評価が1万を超えました…………読者の皆様に最高の感謝を。



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Arpendogs②(アルトリア・ランサー後編)


前回の円卓モドキ官能伝説からやたらと評価が来て、ここの読者様達には王スキーが多いんだなーとしみじみ思いました。
お陰様で累計3位になりました。もう上がらんでしょ。





というわけで、今回で乳王様とペットのほのぼの今日のバターわんこ編は完結です。最初っから最後まで和みを目標にしているので是非、ほんわかして下さい。

ちょっとインフェルノさんと狩りゲー(百重の塔イベをMHWしながら進める)するので次回の更新は遅れるかもしれません。




0話にてダ・ヴィンチちゃん更新。





「ギネヴィア様か、確かに彼女なら王の妃として相応しいだろう」

 

「アーサー王がいつまでも独り身なのは外聞が悪い……」

 

「ブリテンの未来を支える獅子王の妻にはそれ相応の品格が求められる……さてさて、あの女にはそれがあるかどうか……」

 

「ここ最近は国も疲弊している、豪族共もうるさい。祭事で民衆共の眼を眩ませるのもいいだろう」

 

「王もきっと気に入って下さる筈だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結婚か……」

 

 夜も更けた頃、今日も今日とて遅くに自室へと戻ってきたアーサー王。

 自身の太ももを枕にして横になるペットの頭を無心で撫で続け、一体どれぐらいの時が経ったのだろうか? 

 

「別段珍しい事ではない。来るべき時が来た......只それだけの話」

 

「?」

 

 王が生涯のパートナー、すなわち伴侶を持つ事、それを意味する事を当然、彼女もわかっていた。

 

 

 王ではない自分を癒し、突然拉致してこの部屋に監禁した人でなしを愛してくれた最愛のペットでもある『アル』との別れ。この蜜月の時間も終わりを迎える時が来た。

 この生活がずっと続くように……そんな願いを持つ事自体、私には許されなかったという事……。自嘲気味に笑う獅子王。

 

 ――――ギュゥゥゥゥ

 

「んぐぅ、ご主人様?」

 

 膝元にいたアルを抱き起こし、いつもの体勢で背中から愛おしい程に強く抱き締める。うなじから漂うお日様のような香りを堪能し、彼女は一つの決意をする。

 

「アル、お願いがあります」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここでいいの? ご主人様」

 

「あっ、はい……そこ、その位置がベストです」

 

 彼の性器も散々可愛がった。彼の肌も撫で回した。彼の唇も卑猥な程に舐め尽した。彼の迸る精液も何度も喉に流し込んだ。自身の躰も彼にこれでもかという程に愛撫をされた。

 

 だが、最後の一線だけは何故か越えなかった。

 それは私の直感故だろうか、彼と本当の意味で結ばれた時、王としての自分に戻れる自信が無かったのかもしれない。

 

 彼と過ごす夜は今日で最後。もうそんな臆病な事は言ってられない。

 これは最後の思い出、私がずぅっと頑張っていけるような熱いナニかをアルに作ってもらいたいという一人の女の願い。

 

 ベッドの上で四つん這いになり、腰を高く上げるという間抜けな格好をしている私……鎧は脱いでいるが、髪は解いていない……王冠も外さず、頭だけは公の場で見せる王としての私の格好。

 

 性行為に邪魔な鎧だけ外し、その下の青いインナーの股部分を下着ごと、ずらし女陰を露出させる。

 

 背後にいるアルは生まれたままの姿、その事実に胸を躍らせながらも、私はこれからする事に期待をします。

 

「この格好で良いんだね?」

 

「はい……この格好で犯される事に意味があります。それにアルにはそれこそ犬のように雄々しく腰を振って欲しいので」

 

 優しい彼の瞳の奥にある獣性がギラリと光ったのを私は見逃さなかった。

 あぁ、いい。これでいい。王として姿のまま、自身の下僕に交尾をさせられるように種付けされる。アルとの最後の思い出としては相応しい。

 

 だから、私は獅子のマントも脱がずにそのままでしている。

 ブリテンを治める獅子王が名も無きペットにこれから犯される……想像だけで、私の股座は湿っていた。

 

「さぁ、アル。主である私の願い、しかと受け止めて下さいね」

 

「うん。これから王様の格好をしているご主人様に挿入する」

 

 結婚の事も、一緒にいられるのもこれで最後だという事は彼には言っていない。

 自惚れるつもりはないが、きっと嫌がって駄々をこねると思うから……そんな可愛らしい姿を見せられたら私の決意も鈍ってしまう。

 

「いれて……アル」

 

「わかった……」

 

 ――ヌプっ……ヌププププププッ……

 

「んぅぅっ~~~~……!!」

 

(あ、ついぃ!なぁに、これぇ……!?初めてなのに、初めてな筈なのに、まるで彼と何度もまぐわって私のアソコがアルの肉棒に最適な狭さになっているように……!)

 

「うっ、あぁ……すご、く、キモちいいよっ、ご主人様」

 

「あぁっ、はいっ、はぃ……それは、良かったぁ……んああああぁっ!!」

 

 膣壁が抉れる度に甲高く上がる私の声。彼の性器を何度も弄んだ時から妄想していた、これをナカで貫かれたら一体どうなってしまうんだろうって。

 キモチ良くないなんて事は有り得ないってわかっていた。

 けど、けど――。

 

「ひぁぁっ!!あっ、アァっ!!あ゛ァァっ!ある、アルぅぅっ!」

 

 ここまで気持ちいいとは思わなかった。

 まるで彼と会う前からずっと、この槍で開発されているかのように、私の膣は剛直を握り締める。

 

「ご主人様の……おしりっ……すんごくもっちりして、触れ合う度に、ぱちんって……」

 

「んあぁっ!あくぅぅっ!……そんな、そんな恥ずかしい事、いわないでぇ……んひぃぃ!!」

 

 彼の言葉通り、アルの腰が叩きつけられる度に私の臀部がはしたない音を鳴らしている事がわかる。

 膣を行き来するストロークだけじゃない、接合面で彼とぶつかり合う感触も私をどんどん淫欲の渦に飲み込ませていく。

 

「んぅっ!ふぅぅっ!!んむぅっ!!んんんっ!!」

 

 アルったら……犬のように腰を振って欲しいとは言ったけど、こんなに激しくされたら私の躰が持たないですよ……!

 あまりの快楽の暴力に枕に顔を埋め、くぐもった顔をあげる。ビチャビチャと私の穴から出入れしている棒が愛液を掻き出しているのは見なくてもわかる。

 

「ほら、もっとご主人様の声、聞かせて欲しいなぁ……!」

 

「んんぅぅっ!!?んぎぃぃ!あんぅぅっ!!こらぁっ!!」

 

 背中に抱き着いたまま、インナーをずらし、胸を露出させる。この間、吸い付かれた胸……まだキスマークがたくさん残っている乳房の先端を摘ままれ、私の上半身は仰け反り、隠れていた嬌声を暴かれる。

 

「あんぅぅっ!!ふぅっ!!んんふぁああっ!!はぁっ!!」

 

 首輪を付けた最愛のペットに獣のようにバックから突かれている私……。王冠もある、獅子のマントもある。だが女の象徴たる局部も全て露わになっている。

 

 彼のストロークによって踊り狂う胸を丁寧に熱く揉み込んでいく。

 突かれる度に、膣を抉られる度に、子宮口にキスをされる度に私の中の王の自分が殺されていく……そんな気がした。

 

 ここに来て、やっと自分がなんでアーサー王としての姿で彼に犯される事を望んだのか少しわかった気がします。

 ご主人様としての自分、王としての自分、どちらも揺らぐ事のない私なのです……。

 

 だから、彼には両方を犯して欲しかった。ご主人様だけではなく、アーサー王としての自分を。

 

 プライベートではない公の場で見せる姿で、アーサー王の姿で生娘のように為す術なく犯される。それは何て、背徳感のある行為なのか。

 

「あっ、アァっ!!とけちゃう……!とけちゃいますぅ!アルのおちんぽが私のおまんこにずぼずぼする度に、王としての私が……アーサー王が蕩けちゃうぅぅっ……!ひゃあああっ!」

 

 部下の前では、円卓の騎士達の前では絶対に出さないような卑猥な言葉を叫べば叫ぶ程、色情が燃え盛るのを感じる。彼と出会うまでは、こんな性交の事なんて考えた事もなかったけど、私という人間は案外、色魔だったのかもしれない。

 

 マントが皺になるのを気にする事なく、アルは腰を振り続けます。飼い主である私の役目は彼の好きにさせる事、彼の証をこの身に満遍なく刻む事。

 

 これからギネヴィアを娶れば、このキャメロットに女としての私が存在する場は無くなる。だから、その前に最後にこの子に私を女にして欲しかった。

 

「ご主人様……!だす、よっ……ご主人様の奥に種付けするよっ……!」

 

「はいっ……ひゃいっ……たくさん、らしなさいぃ……我慢せずに、好きなだけぇ……私は貴方の飼い主なんですはらぁっ……あっ、あっ、アァァ……あぁぁぁ――――……」

 

 亀頭が膨らんでいるのが、わかる。ご主人様を女にしようとするアルの必死な感情が白濁液になって私の赤ちゃん部屋へと侵入していく。

 

(あぁ、あぁ、あぁ……くる、くる、くるぅ……!この子の美味しい精液が私の子宮に……!)

 

「あ、イく、イク、いくいくいくいくっ……ア、ルぅ……あぁぁっ!はああああんんんぅぅうっっ!!!」

 

 子宮だけではない、膣全てを埋め尽くす多量のスペルマ。男根の抽送とはまた違った液体の陵辱に私の頭の中は、今この時だけはアルの事でいっぱいになった。

 

 だが、まだ終わりではない。この淫蕩の宴はまだ終わらなかった。

 

「ふぅ――……あぁ――はぁぁっ……んあぁっ、あえぇ?あるぅ……?」

 

「まだだよ。これじゃあ足りない。王様なご主人様をもっともっと恥ずかしい格好で汚してあげないと」

 

「あぁ……ひんぅ、こんな丸見えの体勢……」

 

 絶頂の多幸感に包まれていた私を仰向けにし、まんぐり返しにする。

 白のゼリーで溢れているであろう女性器とお尻の穴がアルに丸見えになってしまっている。

 

 今更ですけど、この姿はさすがに恥ずかしいというか……いや、アルが私を本気で辱しめようとしてくれるのは嬉しいですし、ペットの粗相を受け止めるのは主の務めですが……。うん?というかアル、私、その美味しそうな肉棒を今度はどこに挿入れるつもりで――――。

 

「んおぉぉあぁぁぁっ……!!?あ、アルぅっ!!?」

 

「どっちも犯すよ。ご主人様の躰で知らない部分は無いっていうぐらいにマーキングしてあげるから」

 

「あおぉぉおっ……!あぁっ、んぉ、おぉっ……にゃ、にゃんでぇ……ここ、初めてにゃのにぃ……すっぽり入って、しゅごくヨくなってぇ……んほあぁぁっ!!」

 

「うん。まるで今まで何度もここで俺と交わったみたいに嵌まってるよ、ご主人様のアナル。まさかここまで躰の相性が抜群だとは思わなかった……さぁて、どっちも白色に染め上げるよ」

 

 本来、性行為には使用しない不浄の穴もアルの怒張をすんなりと受け入れた。

 彼の言う通り、初めての筈なのにこんなにもしっくりと来る。まるで鞘のように私のアナルは彼の槍を飲み込んでいた。

 

「おぉっ……!あぁぉっ……!!んおおおぁっ!!」

 

 膣内を行き来した時はまた違う感触、腸壁を擦られる特異な感覚。なのに私の躰はまた悦びを全身で表現してしまっている。ペットに犯されて獣のような声を上げてしまっている。あべこべのような状況……それでも私はアーサー王を組伏して、一切合切の容赦なく愛を込めて犯してくれているアルに愛おしさしか湧いていない。

 体の相性、心の相性……共にばっちり。私が彼を拾ったのは一つの運命だったのかもしれません。

 

「あぁぁっ……!!おおぁぁっ!!ほぉっ……んほぉぉ……!わ、たし……王さま、なのに、ブリテンを統べる、理想のおうさまなのにぃ……股を開いて、はぁっ、はああぁんぅぅっ!!よがってますぅぅっ……!!」

 

 金色の冠も純白のマントもここまで来ると私の威厳を示すにはもはや意味を成していない。

 はりぼての王、腸奥を突かれて、性的興奮を得ている浅ましい雌。けど、そんな雌にアルは親愛の情を向け続けてくれています。

 

 腰に響く彼の挿入の衝撃の何と心地良い事か。

 

 最初に沢山出された精液がアナルセックスの反動で淫裂から漏れ出し、垂れてきています。

 

「ちゅ、んちゅ、れろぉぉっ……」

 

「ひぅぅっ……あぁぁっ!!んあああぁっ……!!足の裏ぁ、舐めちゃ、やぁぁっ……」

 

 口元が寂しかったのか、腰の動きはそのままで支えていた私の足の片方へと舌を伸ばすアル。半透明の涎の線が足の裏まで伸び、指をねぶられます。

 犬のようにペロペロと私の足を舐め続ける生温かい感触につい夢見心地になってしまいます。

 くすぐったいのに避ける気が起きない、もっと私の神経を昂らせてと、女の本能が叫びます。

 

「ちゅ、ちゅ……すごい、よ。ご主人様の躰、おっぱいもあしも、お尻も、アナルも、膣も……全部がエロいよ……!!のこ、すから……ね。俺の子種、王様の姿に残していくから、ね……!」

 

「はい、はいっ……!のこして、ドロドロの濃い奴、ご主人様の私にも、王様の私にもどっちもぉ……はぁ、あぁあっ……んああぁっ!!お、おほぉっ……!おまんこにも、おひりにも壊れるぐらいに吐き出してぇぇっ……!!」

 

「クリトリスも、すごく、腫れてぇ……本当にドスケベなご主人様だっ」

 

「ひぐぅぅっ!!あぁっ!!んおぁあっ!!だめぇぇ!!おひりバコバコしながた、クリいじっちゃぁ……!!ああああぁっ……!!戻れなくなっちゃうぅ、王様の私がこわれちゃうぅぅっ……!あるぅ、アルぅぅっ……おぁぁぁっ!!」

 

 淫芽をおもちゃのように楽しそうに弄り続けるアル。

 王の外套を下敷きにするというあるまじき行為で淫交に耽る私は彼にぎゅっと抱きしめて欲しいとねだります。

 

 さっきは出来ませんでしたが、射精の瞬間は彼の体温をこの身全てで感じたいのです。

 

「ある、アルぅ……すき、すきぃなんです。大好きなんです、ずっと、ずぅぅっーと一緒にいたいんです……」

 

「俺もだよ。アルトリアご主人様と一緒にずぅっとこのまま」

 

 その言葉が、狂おしいほどのこの想いが叶う事は無いとわかっていながら私は奇跡が起きるのならと……すがるように彼と交わり続けます。

 アルは女性にしてはやや高身長な私の躰を難なくまんぐり返しから対面座位という形にし、ラストスパートへ。彼も本日の2度目の射精を吐き出そうと剛直をより大きく膨らませます。

 

 彼の形になった、私のお尻の鞘の準備はもう出来ています。

 抱き締め合い、原初の交わりを激しく行う男女。今まで邪魔だとしか思わなかった私の乳房は両者の胸の間で潰れ、乳首をこすれ合っています。

 

 アルと触れ合う体の全てが気持ち良くて仕方ない。こんな悦びを知らなかったなんて、今までの私の世界はなんて狭かったのだろう。

 そんな私の世界を壊してくれるアルの精子が今――。

 

「おおぅぅうっ……!!んんんっ!!おんんんぅぅ!!あぁぁっ!!んふっぅぅあぁっ!!」

 

「ご主人様のだらしない……穴に、出すからっ……!」

 

「はいっ……!らしてぇ、らしてぇぇっ……!らして下さい……!ペットチンポでよがり続けている、情けないご主人のおひりに、ザーメンをたくしゃんぅぅっ……おぉほぉっ……!!」

 

 ――ビュルルルウウウウウウッ!!

 

 爆発したその精液の滝は私の腸道を巡っていく。

 

「んんおぉああああああぁっ――――!!!おぉぉっ!……んほぉぉあぁっ!!ひゅぅぅっっ!!もう、だめぇぇ……マンコも、アナルも……アルの形しか受け入れなくなっちゃってるぅぅっ!あ、アァァッ、あぁぁっ!」

 

 射精した後も、潤滑液代わりに動き続ける彼の竿に私の理性は全て持ってかれてしまいました。

 信じられないくらい口から出てくる卑猥な言葉も、秘部から吹き出る潮と彼の欲望の名残も、最後の思い出としては相応しい景色だった。

 

「あぁ……はぁ――……アルぅ、大丈夫です。私の『アルトリア』の心はずぅっと、貴方の元に……ちゅぅっ」

 

 

 ありがとう、本当にありがとうアル……貴方と出逢って今日この瞬間までの思い出だけで、私はやっていけます。

 もう十分に貴方からはたくさんを貰いました。

 だから、ここでさよならです。

 

 口付けを……私を愛してくれた大好きな子の唇の味を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼の身柄を預けると決めた時、まず円卓の騎士達は選択肢から外れた。

 アルの身の安全を保障出来て、なおかつこのキャメロットにそこまで縛られない者がいい。

 

「おっけー。彼をこの地から遠い所に連れていけばいいんだね?あぁ、大丈夫だとも衣食住色もちゃんと用意するさ」

 

 結局、苦渋の選択としてマーリンに預ける事となった。奴にしては随分と聞き分けが良かったが……。また良からぬ事でも企んでいるのか?

 もし彼に何かしたら、この星のどこにいようとも聖槍で肉片すら残さないぞと釘は刺してあるから大丈夫と信じたいが……。

 そもそも、何故、奴は()の姿をしているのだ?

 

 

 

 

 

 

 

 マーリンがアルを連れて、誰も居なくなったこの部屋を見てから私の眼に映る景色は随分と色褪せてしまった。

 彼と戯れて、英気を養う事も出来なくなった故の不調も出て来るかもしれない。まぁ、それを周りに気取らせるような無様は見せないが。

 

 そして、王妃との結婚。

 

 当然、女として私。王の王妃に相応しく、気高く貞淑であれと部品として組み込まれたギネヴィア。そんな二人の生活が世間一般で言う夫婦生活を送れる筈もなかった。

 

 

「王!!……こ、これはっ……!」

 

 自身の伴侶と信頼する騎士との逢引を偶然見かけても私には怒りが微塵も湧いてこなかった。

 勝手に拾った少年と隠れて淫行に耽ていた私に彼等を罰する資格など無いのだから。

 

 むしろギネヴィアとランスロット卿が羨ましかった。

 二人は王妃と騎士という立場よりもそこにある愛を取ったのだから、散々アルに「愛している」等と囁いておきながら、結局国を取った私とは……自分を慰める道具のように扱っておきながら、自分の都合が悪くなったら自室から放逐する人でなしとは、違う。

 

 あぁ、だが王妃と国を代表する最強の騎士のスキャンダル。このままにしてはいずれ、私の失墜を企む何者かによって暴かれるだろう。

 

 アル……貴方ならどうしますか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 キャメロットから離れた地、一面花畑の非現実的な土地で白髪の女魔術師と王の元ペットがいた。

 何を考えているかわからないボケーとした顔でどこか遠くを見ている「アル」。

 そんな少年を膝の上に乗せて、何故か愉しそうに微笑む「マーリン」。

 

「全く、君も律儀だねぇ。心もなり切る『HBチャンネル』とか何とか言ってたけど、その気になればそんな設定も壊せる筈なのにさ」

 

「?」

 

「まぁ、そのノリの良さが、マイロードがマイロードたる所以であるとも言えるんだけど」

 

 BBが何か面白そうな事をしている事を嗅ぎ取り、幻術でふわぁっとバレないように侵入していた花の魔術師。

 まさか、槍のアルトリアの妄想シチュがこんな円卓の騎士達には見せられないような背徳感で満ちている物だとは思わなかったが。

 

「ねぇ、マス……いやアルくん、君は一体どうしたい?」

 

「俺は、ご主人様の願いを叶えてあげたい」

 

「そうだね。所詮は夢の一つだとしても。こうして私が目にしてるんだから、やっぱりハッピーエンドにしたい。うん、私もそう思うよ。だから君を預かった身だけど、アルくん……君はさ、『好き』にしていいんだよ」

 

「…………うん。わかった俺の『好き』にする」

 

 マーリンの膝の上から立ち上がったアルは歩き出す…………と思ったら振り返り、地面に座り込んでいた彼女に顔を近づけた。

 

「ありがとう、キレーなおねーさん」

 

 ――ちゅっ

 

「んっ!?」

 

 不意打ち気味に唇に軽く感謝のキスをして、彼はその花畑から飛び出した。向かう場所は言うまでもないだろう。

 少し驚き、頬をやや染めて、嬉しそうに唇を押さえるマーリンは誰に聞かせる事なく呟く。

 

「ふふっ、どんな役になっても愛しのマイロードは私を悦ばすツボを突いてくれるね……本当ならここで何発かぶち込んで欲しかった所だけど、今回は女神となった彼女のターンだ。師の余裕を見せながら、譲るとしようじゃないか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「王よ!火急の件でご報告が!!」

 

「……何があった」

 

「王妃様が……ギネヴィア様が……!」

 

 ッ……!そうか……隠し通せる物ではないとわかっていたが、ギネヴィアとランスロット卿の不定行為がついに――。

 

「正体不明の物の怪に攫われました!」

 

「………………」

 

 は?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ったくあの性悪女、わざとだな……クソが……」

 

 キャメロット城の回廊を歩くモードレッドは自分をこの世界にブチ込んだBBに恨み言を吐いていた。

 黒いアルトリア・ランサーの時は自分は確かにマスターへの好感度はそのままに、紅孩児になり切っていた。当然、その時はカルデアのサーヴァントである事、モードレッドである事は忘れ去っていた。

 

 だが、今この世界の『モードレッド』としている自分はカルデアの事も、マスターの事も、全部覚えている。

 

「同じモードレッドだから、役になり切る必要はねぇからそのままブチ込んだってか?雑だなぁ、オイ」

 

 その理論で言えば、ついさっきまでマスターとハッスルしていたであろう白い槍の父上にも同じ事は言えるのかもしれない。彼女だってアーサー王には違いないのだから。

 

「あぁ、けど厳密に言えば……あの父上はまた本来の父上とは別扱いって事になるのか?それなら忘れててもおかしくねぇか。つーか父上が多すぎんだよ」

 

 取り敢えず、モードレッドはどうするべきか悩んでいた。このまま引っかき回すのもBBの思惑通りに動いている気がして、癪に障る。白い槍の父上があんなにも楽しんでいたのなら、せめてこの世界にいる時ぐらいは大人しくした方がいいんじゃないのかと。

 

「ここでカムランの焼き直しをするなんてごめんだ」

 

 このシミュレーションの中でどういう立ち振る舞いをすべきか思い悩んでいた彼女の前に突然、それは現れた。

 

「え、ますたぁ……?つーか脇に抱えてんのギネヴィアの奴じゃあ……」

 

 高貴なドレスを纏った女性を脇に抱えた少年『アル』は困惑しているモードレッドの前に現れた。

 モードレッドが疑問符を付けたのも仕方ない。

 

「何でモニターで見た時と姿が変わってんだ?」

 

 背中半分まで伸びた髪、両手首まで伸びている令呪の紋様。

 そしてチラッと自分と目が合ったその瞬間、モードレッドは確信した。

 

「ごめんね。もうこうするしかないって思ってさ。ご主人様のお嫁さんを拉致るのは胸が痛いけど、うん……やっぱり俺は『悪』になる事にしたよ」

 

「まてまてまてまてまてまて、マスター、そのヤバイ感じの顔でこっちに来るんじゃねぇ」

 

「君とは何故か初対面の気がしないし、愛おしさしか湧いてこない……うん、だから――」

 

「ちょ、タンマ」

 

「優しくタオしてあげるよ」

 

(あ、これ……数秒後オレ、めっちゃアヘってるやつだ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――ひぐぅぅっ!!あぁっ、アァッ!!ま、まって!鎧着たままなんて!!んひぅぅぅうう!!

 

 ――んおぉぁっ!!おぉぁっ!!だ、めぇ……止めてぇぇ……!二つの穴同時なんて、おかひくなりっぅぅぅぅ!!

 

 ――アァッ!い、クうっ……いくいくいくイッ!!ま、まっへぇ……イッてるぅ!もうイッてるからぁぁっ!!

 

 

 一つ幸運だったのは既にこの回廊にいる騎士達は全員、地に伏せていたのでモードレッドの艶声が誰かに聞かれる事は無かったという点。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドゥン・スタリオンに乗り、騎士達を伴い、大地を駆ける王の耳には数多の情報が入ってきていた。

 

 

 ――王妃の護衛をしていた騎士達は全員、ソレを止める事は能わなかったと。

 

 ――キャメロット城にて、ガレス、モルガン、モードレッド氏が全身を痙攣させて倒れている姿が発見されたと、幸い命に別状は無かったが、何をされたかは不明。魔術の可能性もありと、宮廷魔術師に協力を仰いでいる。

 

 ――王妃が誘拐された際、勇敢にも戦いを挑んだランスロット卿も男の急所に一撃を叩き込まれて、再起不能になったと。円卓最強の騎士の敗北に兵士達の間に大きな動揺有り。

 

 ――そして、宮廷魔術師の報告により、ブリテンの各地で人の腕を引き延ばしたような白光の魔手が無数に確認されていると。

 

 ――対応に向かった騎士達や民達には何故か手を出さなかったが、サクソン人、ピクト人、魔猪、ドラゴンと、長らくブリテンを悩ませていた蛮族や竜種・魔獣達を徹底的に叩き潰していた。

 

 ――叩き潰し、握り潰し、取り込み、ブリテンを蝕んでいた魔達がどんどん消滅していく様はまるで終末のようだと。ギネヴィアを攫った者との関係性は現在調査中。

 

 

 

 激震すべき、報告が部下からされてもアルトリアは頭まで入ってこなかった。

 ただ、ギネヴィアを攫ったという少年の事だけを考えていた。

 どこぞの快楽天・魔性菩薩と対をなすような白い魔手が多数生えている光景も目に入らなかった。

 

(アル、アル……!どうして、どうして、こんな事を――?)

 

 わかっている。目的はわかる。

 王妃と湖の騎士による不倫。そんなものが公になれば、只でさえ、厳しい状況であるこの国が傾いてしまってもおかしくない。

 だから部外者が……全くの第三者が王妃を攫う。ランスロット卿の不貞が暴かれる危険性をより大きな大事で掻き消す。

 

 討たれるのは王妃をかどわかした名も無き少年、只一人だけ。

 

 円卓の騎士達が何人も倒されている異常事態でもある……救助されたギネヴィアも、その者によって心を消耗させられた等といくらでも理由を付けて、王またはブリテンという国から離れさせる事も出来るだろう。

 ブリテンという国にとっては不貞行為が公になり、ランスロット卿と王妃に処罰が下るよりは百倍マシな結果となる。

 

(私は……私は……!貴方にこんな事をして欲しくて、離れ離れの道を選んだのではありません!)

 

 

 ようやくその件の者がいる場所へとたどり着いた。

 

 魔獣、竜種、蛮族……その死骸の山の上で彼は座っていた。

 

 最後に別れた時とは随分と風変わりした姿だけれども、今も変わらず付けてある純白の首輪……アルトリアにはすぐにあそこにいるのはアルだとわかった。

 

「やぁ、遠路はるばるご苦労様。歓迎出来る物が何もなくてごめんね?」

 

「怪物め!王妃をどこへやった!!」

 

「あー、ここは危ないからね。安全な所に避難させてるよ。うん()()事は何もしてないから安心して」

 

 部下達の訊問に飄々と応える。

 自分達が手を焼かせていた敵の死骸の山をいとも簡単に作り出した張本人に飲み込まれないのように必死に自身を鼓舞させていたのかもしれない。

 

「どうも初めまして、俺が貴方達の()()()()を誑かした許されざる『悪』です」

 

「潔いですが、まさか許されるとは思ってはいないでしょう」

 

 アルトリアにはわかった…‥騎士達はギネヴィアの事だと思っているが、アルが言う『大事な人』は自身の事を指していると。

 

(誑かした……?許されざる悪……?違う、違います。アル……私です。私こそがその悪なのです。だから、貴方が私の為にここまでする必要は――)

 

「やっぱり、自分が好きになった人には笑って欲しいからね。泣くようなENDを向かえて欲しくないんだよ。その為には俺は喜んで『――悪』になろう」

 

「要領の得ない事を――……総員、構え!!」

 

 ガヴェイン卿が聖剣を抜く、騎士達がそれに倣い剣を構え、弓兵が弓をつがえる。

 

(やめて――)

 

「対象を『白光の悪魔』と呼称!敵の出す魔手は未だ正体不明、触れずに距離を取りながら大元に近づき、叩け!」

 

(やめてください――)

 

 弓が剣が魔術が……あらゆる暴力と殺意がアルに向けて一心に飛んでいく。彼は何もする事なく無抵抗のまま、穏やかな顔でその様子を見ていた。

 

「や、めろぉぉぉぉぉぉっ――――!!」

 

 ――王の手にあった聖槍から膨大な光が溢れ出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後の事はよく覚えていない。

 

 気付けば、私は気が遠くなるような階段、遥か彼方にある天井を持つ高い建造物の中にいた。気配からすぐにこの塔がロンゴミニアドだという事がわかった。

 この塔が建っているのも最後に私が叫んだあの地であろう。

 

「どうしたのご主人様?」

 

「いえ、何でもありませんよ。んっ、あっ……ふふ、あんなに出したのにまた大きくなって」

 

 あぁ、けど一番大事な事は私とアルがここに二人っきりでいる事ですね。

 この()の中にいるのは私達だけ、誰の邪魔をされる事なく、干渉を受ける事もなく、私達の世界には文字通り二人しかいません。それさえわかれば、何も不安に思う事はないでしょう。だって今の私はこんなにも幸せなのですから。彼を愛し、彼と交わり、彼と言葉を交わし、好きと言い合う。子を作ってもいいかもしれません。ペットの子を孕む事を咎める人間はこの世界に存在しないのですから。

 

 ずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっとずぅっと――――。

 

 ずぅっと一緒……。あぁ、奇跡は起きるものなんですね。

 

「さぁ、アルもっとぎゅっとして下さい。もっと私の肌を舐めて、貴方の体温をもっと感じさせて……あァァっ……」

 

 彼の首輪をそっと撫で、一つしか無い玉座で私達は交じり合います。いつまでも、いつまでも――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――『白光の悪魔』、あまりにも強大な力の前に王は自らの身を犠牲にその悪魔を槍の中に封印する事にした。

 

 真実は違うが紛う事無き美談。民衆は聞こえのよい、自分達にとって都合のよい言葉を真実とする。

 ブリテンを脅かしていた敵もその悪魔が出す腕によって悉く食いつくされていった……外敵に怯える必要が無い平穏な日々が久しぶりにやってきたのだ。そこに水を差すような真実など誰も求めていないだろう。

 

 ましてや誰が信じるのか、アーサー王がその悪魔と槍の中で延々とイチャラブをしている等と。

 

 王妃は心を痛めたという名目で療養中、彼女がアルに何をされたかは誰にもわからない。……ただ、ある日、王妃が熱がこもった瞳で塔を見つめていたという報告が上がっている。「きっと王の事を今も想っているのだろう」と、報告した騎士はその所感を述べた。

 

 何人かの騎士達は王を救助すべく躍起になっているが、『白光の悪魔』が出した魔手が現れた土地から本来なら有り得ない程の栄養を持った作物がじゃんじゃん育つようになったという報告を受けてからはそれどころではない。

 ブリテンの食料事情は切羽詰まっている以上、優先すべき事項は決まっている。

 

 そして王の跡を継ぐとされたのは粗暴でコミュニケーション不足だったなりは潜め、人が変わったように騎士達を指示していったモードレッドが暫定的にその立場についた。

 

 モルガンとしても歓喜すべき事だったのだが、彼女もギネヴィア王妃と同じく、『白光の悪魔』が現れた時からぼぉっーとその塔を見つめていた。

 

 ・・・・・・・・・・・・

 

 獅子王がかつていた玉座の間で二人は語る。

 

「まぁ、サーヴァントを受肉させかけるエネルギーを持ってるからね、獣の蛹となりかけたマスターは神秘が濃いブリテンの不毛な土地に活力と精力を与えたって所かな?規格外な存在から注入された生命力は最高の肥料となって大地に恵みをもたらしたとさ……チャンチャン♪」

 

「楽しそうだな、クソ魔術師。忍び込んでいるとは思わなかったぜ。まさかテメェがマスターをけしかけたわけじゃねぇだろうな」

 

「それは有り得ない。私が何をしなくても、彼は同じ行為をしていた。そもそも彼はアルトリアの『ずぅっとこの生活が続くように』という願いを叶える為だけにここまでの事をしでかしただけだからね」

 

「ったく、とんだ貧乏くじだぜ」

 

「えぇ――あんなにアヘって幸せそうだったのにぃ?」

 

「死ね」

 

 ――ザシュ!

 

「残念、それは幻術だ。っていうか真面目な話、君はあの塔に行かなくていいのかい?きっとアルトリアと一緒にマスターとイチャパコ出来ると思うけど」

 

「いや、いい。所詮は偽物の世界だけどな、あの人がせっかくここまで頑張ったんだ。ならこの世界が終わるまで少しぐらいは父上にイイ思いさせてあげねーとな。長期休暇だ。面倒な仕事はこっちで全部片付けてやるよ。まぁ、悩みの種は全部マスターが片付けちまったんだが……アイツ、マジで何者なんだ?」

 

「おぉ、お父さん想いのイイ子になったねぇ」

 

 

 よよよと泣き真似をするこのTS魔術師の首を斬り落としてやろうかと悩んでいたモードレッドの元に部下が飛んできた。

 

 

「失礼致します、王よ。ご報告が」

 

「オレは王じゃねぇ、モードレッドでいい」

 

「ハッ!ではモードレッド様……。えーと、その……ギネヴィア様、ガレス様、モルガン様が前王が建てた塔へと夢遊病のように向かわれているのですが、いかがしましょうか?」

 

「今すぐ、止めろバカっ!!」

 

 

 

 

 





「いつもと変わらない主従関係でしたね……(震え声)」

「どこがだぁ! 家族ごと堕ちた私とレベルが違うぞ……。もう国ごと傾いているではないか」

「まさに傾国のビーストですね♡ まぁ、着地点は本来の歴史より良かったかもしれませんが……良かったのですかね」

HBチャンネルから出て来た白のアルトリアはもう見てられないぐらいに全身を震わせて真っ赤であった。本人も自分の中からまさかこんな地雷が出て来るとは思わなかったのだろう。そして厄介な事にさっきのシチュエーションがたまらなくドストライクだった事が彼女により動揺を与えていた。

「なるほど、司令官の精液には病原菌に対する免疫及び、作物を豊かにする栄養があるのですね。これは研究の必要があります」

「婦長様! 困ります! 俺のベルトに万力の如く手をかけては! あ――っ! あ――!あ――っ! せめて場所を変えましょう婦長様! あ――! 困ります! 婦長様! 困ります!」


「き、気にすんなよ。白い馬の父上……ふつーだよ。あれぐらいふつーだよ。他にもっとやべーやついるって……」

「まぁ、まさかBBの煽り文句そのままに円卓卒倒確実&どん引き確定な歪みに歪んだ性癖が出て来るとは思わなかったけどね、うん……これは辛い。歪んだ劣情も。隠し立てる欲望も無いか……よくあそこまで自信満々に言えたね。フラグってわかるかいアルトリア?」

「ぐぅぅっ……!!」

王、羞恥心が極限に達し、ドゥン・スタリオンで脱兎の如く逃亡。

「マーリン、てめぇ!!」

「ほら、シミュレーションとはいえ、マイロードを独占してイイ思いしてたんだから、その後はちょっとぐらい悪い思いをしないと、バランスが取れないだろ?」

「マーリン、しばらく俺の夢に出てくるの禁止ね」

「ぇ」

(まだ吹っ切れていないだけ、セイバーリリィさんよりは大分マシだと思いますけど。さ、て、と意図せずにビーストの蛹化したセンパイの情報も集めれましたし、今回のお披露目は上々って所、さぁーて次は誰を巻き込んであげましょうか♡)











ザ・ハッピーエンドってね。
槍の中で性的に延々とお疲れ様でしたってね。





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キル☆ケー☆白書(キルケー)

いつも、感想、評価、誤字報告、お気に入り、閲覧ありがとうございます。感謝の言葉は逐一表現しないとね。私達、作者はそれを食糧に生きているわけですから。


0話にて、浅上藤乃更新。








キルケー絆礼装、キルケーバレンタイン礼装、キルケー怪文書リスペクト作品。




 《改めまして、初めまして》

 

 

 やぁ、もう君を寂しくはさせない。この魔女キルケーを招いたのだからね!ふふ。

 なぁ~んちゃって、まぁ、確かに私を初めに召喚したのはあのダ・ヴィンチとかいう芸術家だったが、こうしてカルデアに招かれたのだから、キチンとマスターには挨拶はしないとね。あぁ、そうだともここでは君が私のマスターだ。大魔女だって、そこらへんの礼儀はしっかりしてるよ?

 

 それにセイレムであんなに誘惑した私に手を出さなかった癖に、最後の最後でカルデアに来て欲しいなんて捨てられた子犬のような目線で縋れてしまったらね……答えないわけにはいかないじゃないか。

 確かに叡智溢れる出来るリケ女系な私の魅力につい気おくれしてしまった気持ちもわからないでもないけどね。けど、ちょっとばっかし草食系過ぎやしないかいマスター?確かに今のムーブメントはそういう大人しい男の子なのかもしれないが、そんなに消極的だと、麦粥作りが得意で、鷹羽が生えていて、神話クラスの魔術が行使出来て、髪がピンク色の女の子ぐらいしか捕まらないぞ?ふふ、そうだとも君が私を招いたんだ。君のハジメテは私が奪う事になるかもしれないね――、フフフフフ。

 

 おや?メディアいたのかい。あぁ、確かに君と勝手に入れ替わってセイレムに向かったのは悪かったよ。……うん?どうしたんだい?額を抑えてさ、「無知、あまりにも無知……」「叔母様は既にもう弄ばれている……」?一体、何の話をしているのさ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《幼女との微笑ましい一時》

 

 

 さぁさぁ、マスター!キュケオーンタイムだよ!具体的にはこのキュケオーンをマスターの膝の上に乗った私がひたすらアーンして君が食べる時間さ!君はお腹がいっぱいになる!いっぱい美味しそうに食べる君の笑顔で私のお腹がいっぱいになる!まさにwin winの関係だ!

 

 おや?なんだいもう先客がいたのか……。むむぅっ?アビー、君今姿が……?いんや私の見間違いだろうさ……私がマスターの部屋に入った瞬間に触手らしきものがビタンビタンしていたのもきっと幻視だろうさ。セイレムで見せた姿がよほど印象的に残っていたのかもしれない。

 セイレムで魔神柱と相対した時……あぁ、そうだね。君は降臨者として異界の門を繋げる鍵としてあの姿になったけど、結局マスターと戦う事はしなかったね。それどころか一緒に魔神柱をボコボコにしてたよね――。

 

『だから、だから……貴様をこのセイレムに招きたくなかったのだ……!カルデアのマスター!!』『とんだ劇物だ!』『よくも、よくも私の姪を誑かしてくれたなぁあああああああ!』あの断末魔はこっちが気の毒になるぐらい真に迫っていたよ。

 

 そう言えば、アビー……君さぁ、『ありがとう叔父様、貴方が本物じゃなくても私を座長さん達と巡り会わせてくれた事には感謝するわ』『けどね…………女の子はいつかは親元から離れるの、それは例えば恋人が出来た時かもしれないわね?』『女の子はいつまでも親元にはいないの。でもいいんでしょ?だってこれで私は貴方の目論見通りセイレムから開放されるんだから。こういう時はあれかしら?”私達、幸せになります”って言うべきなのかしら』なんて台詞吐いてたけど……。いやいや、ただ単に私は微笑ましいなーって思ってるだけさ。幼げな女の子が『恋人が出来た、私達、幸せになります』なんて背伸びした言葉を出していたのをね。君がマスターとそういう関係のスタートラインに立てるのは後、十年ぐらいは必要なんじゃないのかな?けど、それぐらい経つともうマスターもいい歳だろうし、さすがに今の幼さ故の親愛も無くなってるんじゃないか?

 

 っていうかアビー、さっきから頬も紅いし、息も荒いし大丈夫かい君?風邪ならマスターの膝の上から離れるべきだと思うのだけれど……え?離れられない?精神的にも物理的にも?そうかい、そうかい。まぁ、マスターの膝の上はロリっ娘達には大人気だからね。きっと呪術的な何かにかかって、アビーは離れられなくなっているのかもしれないね。もちろん冗談だとも。じゃぁ、私は帰るとするよ。さすがに幼子のスキンシップに嫉妬して邪魔するなんて大人げない真似はしないさ。それぐらいの微笑ましいやり取りは目溢しするとも、なんたって私は大魔女だからね!じゃ、マスター!また後でね!

 

 ………………。

 

 

 ずずっ、むぐっ……ごくっ。うんやっぱり私が作るキュケオーンはおいしいなぁ…………。そう言えば、さっきマスターの部屋に入ってから、やけに生々しい水音がずぅっと聞こえた気もするけど……あれはマスター部屋のBGMなのかな?もうちょっとマシな奴はなかったのかな――?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《ギャップ萌えで撃ち抜かれるぜ、姐御》

 

 

 やぁ、メディア。今、ちょっといいかい?何、時間はとらせないさ。君のガレージキットやらを邪魔するつもりはないよ。うん、まぁいいんじゃないかな?誰かを呪い殺そうとするよりは万倍健全な趣味だろうさ。あぁ、ちょっと待ったルールブレイカーを構えるのは止めるんだ。全く……敬意の欠片も無い妹弟子だよ……。

 

 あぁ、そうだね。話だ、話をしに来たんだとも。マスターにもそろそろ私の乙女らしさをわからせてやろうと思ってね、この間ホラー映画を借りて一緒に見ようとしたわけさ。こう怖がり、しがみつく普段は大人っぽく神秘さに満ち満ちている私の実は女の子っぽい所に彼はキュンッと来るわけさ。何だいその眼は。当然だが、ここで私の作戦は終わりじゃないよ?伊達に月と愛を司っていないさ。

 

 何せ、セイレムであれだけアプローチをかけても全く私になびかなかったマスターさ、私とホラー映画を二人っきりで見るなんて緊張しちゃうだろ?そこでこう乙女っぽさからかけ離れた人物をもう一人呼ぼうと思ったわけだ。複数人で見るならマスターも異性と二人っきりって事を意識せずに済むだろうしね。そうだな、女性なら尚良しだ。ん?何でかって?当然、怖がらないその子と怖がる(フリ)私が対比されて、より私の乙女指数がギュンギュン急上昇してしまうからに決まってるだろ。ふふ、アイアイエー島No1策士と呼ばれた私の智謀に妹弟子といえども声が出ないみたいだね。

 

 うん?で呼んだ人はって?もちろん星の開拓者、男よりも男らしい漢気溢れた大海賊『フランシス・ドレイク』さ。彼女なら作り物のホラーなんかで怖がる事は万に一つにも無いだろう。当て馬にするのは申し訳無いけど、それはそれ。女の世界は無情なのだよ。

 私が見せた『仄暗い水の底から』の映画タイトルのパッケージにも全然臆する事なく、「ふふふふふふふふふ~~ん、なななななあああるほどねぇ、ここここのあらゆる海を股にかけたフランシス・どどどどどドレイクに水方面で勝負を挑むとはいい度胸じゃないかぁぁっ!仄暗い?生憎、その程度の暗さで怖がるような船乗りはここここここここここここにはいないよ!!!」ってこっちの耳が痛くなるぐらいに大きな声で笑い飛ばしていたからね。私の人選には間違いはなかったと確信したよ!まぁ、テレビの前で3人掛けのソファにかけた時、マスターと彼女が妙に距離が近いのは気になったけれども、元々異性の壁とか男女の機微とかそういう細かな物を気にするタイプにも見えなかったからね。むしろ好都合だったとも、ガサツな女が隣にいてくれれば、より私の可憐さが際立ってしまうのだからさ!

 

 でまぁ、私がマスターにも親しみを持ちやすい為に敢えてジャパニーズホラーをチョイスしたわけだけれども。そうだね、所詮は作り物だと馬鹿にしていた点があるのは認めよう、成程、こうどうしたら他人が怖がるのか静かな恐怖というのかな?そういうのをしっかりと研究している良い作品だったと思うよ。ただ、まぁ主人公が娘の親権を争うにちまちまと裁判をしていたのはね、ちょっとまどろこっしいなぁとだけ……。自分を捨てた男なんて、煮るか、焼くか、呪い殺すしか無いだろうに。おっと話しが逸れたね。

 

 映画は佳境に入った。私はずぅっと見極めていたよ、一体どのタイミングでマスターに「きゃーこわい!」って抱き着くのかを……。画面を凝視し、一コマ一コマ見逃さないようにね。え?マスターがいる隣の方は見ていなかったのかって?馬鹿を言え、そんな余裕があるわけないだろう!?これはもはや女にとっては戦争だぞ!一度タイミングを間違えるだけで、私の怖がりが演技とバレ、マスターに白い眼で見られるリスクがあるんだぞ!万全を期すとも!

 

 そして、水の中から娘を引き込もうとする出てきた霊の手……。ここだ!と私は思って、「きゃー、マスター、こわぁぃいっ!」ってバッ!と隣にいる彼にしがみつこうとしたのさ。

 

 

 …………それにしても、ホラーというジャンルだったけれども、泣かせる作品だったよあの映画は。我が子を救う為に霊と共にする運命を選んだ母の愛というべきなのかな?うむ、私の時代には無かった娯楽だったが、現代の創作物というのも中々に侮れないよ。

 

 …………え?しがみつこうとした話の続き?知らないよ。私はずぅっと映画を見ていただけさ、隣でその豊満な体でマスターに「ほら出た!また出たよ!」「いる!いるってアソコに!後ろ!うしろ――!」「いやぁあああまた出たぁっ!!」「ひぐっ、んぐぅっ、もうやぁ、水やだぁ……」って半泣きで抱き着いている大海賊なんて視界にすら入れてないよ。慈愛に満ちた顔でドレイクの背をポンポンとあやし続けていたマスターを見て、羨ましいなんてこれっぽっちも思ってないからね!

 違うさ、この涙はあの映画を思い出した感動の涙だよ。止めてくれないかなメディア!無言でハンカチを差し出すのは!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《もう手遅れの模様》

 

 

 んっ、んぅ……あっ、あれここは?私の部屋……。

 メディア?私はどうしてここに……。

 廊下で気絶していた……?あ――、そうだ。思い出したよ。カルデアの廊下を歩いていたら見かけないサーヴァントがいてね。あぁ、年端もいかない女の子だったよ。私もこのカルデアでは新参者だからね、まだ見知らぬサーヴァントがいてもおかしくないさ。せっかくだからその娘にも挨拶をと思ってね。

 

 ただ、見た目はどこか既視感があるなーと思ったらその子なんと言ったと思う?「私はマスターとの子だ」ってさ!あぁ、そうだよ、あの緑色の髪に獣耳、間違いないさ。私が感じた面影はアルゴノーツの純潔の狩人、アタランテだってすぐに気付いたよ。

 

 いつの間にマスターとそんな関係に?子供が出来たというのはもう私が召喚される前から?でもなんでマスターとサーヴァントの間に子供が?私のこの想いはどうすればいいんだって?グルグルグルグル思考をフル回転した後に意識を失ったってわけさ。

 

 ふふ、鷹の魔女がとんだ醜態を見せたね。しかし、非常に残念だよ。アタランテとは気が合うとは思ってたんだけどね。彼女のかけっこに負けた男を射ち殺す陰湿さは私好みだったのに……。女の友情は愛の前ではかくも儚く散ってしまうのか……。けど、そうだね。まずはあの女の子に謝らないといけないね。いきなり気絶して倒れるなんて驚かせてしまっただろうし……。それにマスターとの子というのなら、実質的に私の子とも言うべきだと思うんだ。大事にしてあげないと。何だい、メディア泣いてないよ、私はうぅ、うぇぇ……ぐすっ、泣いてなんか……。

 

 ……ん、あの子はマスターとの子じゃないって?拗らせすぎて、脳まで幼児化してしまった悲しき純潔(笑)の狩人だから大丈夫だって?よくわからないけど、そうなのか――、マスターには子供はいないのか――そっか――。………………よかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《魔女集会で会いましょう》

 

 

 ふっふ――ん。いやぁ、いいねぇ。これはいい。

 あぁ、すまない幼きマスター、今ほら巷で流行っているというじゃないか。

 魔女が拾った男の子が成長して、魔女より大きくなって、拾ってくれた魔女を全力で愛して守る男になるとかいう話。うんうん、実に私好みだ。むしろ私の為にあるシチュエーションと言っても過言じゃないと思うよ。

 

 しかし、私の毒は効かなかったくせに若返りの薬は効くのかい。うん、自分に害の無い薬の関しては自発的に受け入れるように出来るって?何でもかんでも無効化していたらおいしい目に遭えない?ふふ、薬でも美味しさを気にするなんてまだまだ、お子ちゃまなんだねマスターは。おっと見た目は今は子供だったか。

 

 あぁ、だがそうだね。今の幼きマスターの抱き心地は最高だ。逆光源氏だろとちょっと馬鹿にしていた私をぶん殴りたい気分だ。

 駄目だよ、ダメ、だめだってば、そんな無垢な瞳で私を見つめちゃいけないよ。その姿で「大きくなって、キルケーを守るような男になるよ」なんて健気な台詞を吐かないでおくれ、今こう鼻から出そうになっている愛情を魔術で抑えているんだから。おっかしーな?男の子に守られるのは嫌いな筈だったのにな――。

 

 襲う?襲うわけないだろう。今の君は精神はそのままでも体は子供なんだから、そんな少年に欲情して本気で襲いかかったという倒錯女というイメージを君に植え付けるわけにはいかないんだ。なら、精神も子供のままになればいいの?より駄目に決まっているだろう!っていうか、心も体も幼くなった君に性行為をしようとするサーヴァントなんているもんかい!そもそも、そんな恥知らずの変態英霊が座に登録されるわけないだろう?

 

 あ、ブーディカじゃないか。そうか、幼くなったマスターの様子を見に来てくれたのかい。うん?どうしたんだい?胸に手を当てて苦しそうな顔になって「恥知らずの変態英霊……」。あぁ、そうだね、マスターの教育にはあまり良い言葉じゃなかったかもね。おいおい、何で泣いてるんだい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《円卓吐血案件》

 

 

 んっ、あっ……んぅぅ、ふぅ……。君は羽づくろいが上手いね……気持ち良すぎてついつい変な声が出てしまうのが玉に瑕だけども、あぁ――そこ、そこそこぉっ……いい感じだぁ……んぁっ。

 

 私の羽を好き放題出来る名誉なんて、そうそう無いんだよ?マスターだけだからね。

 

 そう言えば、この間円卓の騎士王とやら二人、真剣な面持ちで私の元にやって来てね、仕方ないだろ……。あそこはまだ似たような顔が多いんだ、円卓系列だけと思ったら、ローマの方だったり、極東の島国だったり、宇宙だったり、どうなってるんだいアルトリア顔とやらは。

 

 あ――うん、どっちも白色だったよ。黒いリボンのポニーテールに白いドレスの女の子が「貴女はマスターに飼われたい派閥ですか?それともマスターを飼いたい派閥ですか?」って聞くもんだ。

 鼻で笑ったさ。大魔女たる私の答えは決まっているよ。もちろん飼いたい派閥さ。当然だろ?君をどこにも行かないようにずっとずっと傍にいるように鳥かごの中で縛り続けるのさ。どこにも行かせない、永遠に一緒だよってね。

 

 そう答えたら、ポニーテールの子が「この異教徒が」って唾を吐いてどこかに行ってしまったんだよ。

 

 その後に、何故か馬に乗っている白い巨乳の方に「貴女はよくわかっている」と満面の笑みで手を握られてね。まぁ、けどよくよく改めて考えてみると、マスターに飼われるのも案外悪いものじゃないかなと思い立ってね。私は思慮深い魔女だからね、一つの結論を出してお終いにはしないさ。君に首輪を付けられて、縛られて、飼われる。それも見ようによっては君を縛り付けているとも言えるし、ずっと傍で死ぬまで可愛がってくれるって事だろ?熟考してみると、そっちも案外悪くないんじゃないかなって。

 

 そう伝えたら、「このどっちつかずの尻軽女が」って唾を吐いてどこかに行ってしまったんだよ。

 

 なぁ……私はもしかして二人の気に障るような事を言ってしまったのかな?

 いや、通常運行だから特に気にする必要はない?そうか、君がそう言うのなら気にしない事にするよ。

 

 それに今の私には飼うだの飼われるだのよりは、こうして君に羽づくろいをされているだけで十分なのさ。後はそうだね……頭を撫でてくれると嬉しいな……。

 

 んっ、んぅ…………ふふっ、ありがと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《どっちもどっちだと思うbyマスター》

 

 

 あぁ、見つけたよ。君がBBだろ?確か電子の海の魔女とやらの。え、違う?月の世界のグレートデビル&No1最かわの後輩だって?ふふ、悪魔とは随分と大きな口を叩くんだね。だが、それだけ自信があるのなら期待出来るよ。

 

 ほ、ほら……あるのだろうその君が持っている『HBチャンネル』とやら。え、あぁ、あの破壊の大王、そうアルテラから聞いたんだよ。しかし、彼女は随分と現世に馴染んでいるねぇ。一応は王なのだろう?けど、あの適応力は見習うべきなのかな、私もパーカーやらTシャツの方がいいのかなぁ、こんな服着ててもしかしてマスターに古臭いって思われているかもしれないし……。あ、あぁ……わかったわかってるとも、要件を言うよ。

 

 その『HBチャンネル』とやらはあれだろ?そこに入った人の隠されたせ、性癖を露わにするものなんだろ?アルテラは一人専用だとか言っていたが。理由!?い、言わないと駄目かい?

 

 ほら、私ってば自分で言うのも何だが、生前的にも結構面倒くさい性格をしてるだろ?しかも神話に名高い大魔女だし……自覚が無くてもきっとマスターがドン引きしてしまうような性癖の一つや二つ持っててもおかしくないんだ。もし、それが、まままままマスターとそういう関係になってふとした瞬間に出てしまったら…………あぁ!考えただけでも恐ろしい!やだ、やだよぉ……マスター嫌わないでおくれ……!いかないでぇ……。

 

 ………………うん、ごめん、もう落ち着いたよ。だから敵を知り己を知れば、何とやらと言うだろ?

 私もその『HBチャンネル』で見たくない己と戦う時が来たんだ!だから…………おい、なんだその白けた顔は私はいたって大真面目だぞ。「どうせ、原っぱで、延々とイチャコラしている面白味の欠片も無い砂糖を吐き出しそうになる画しか撮れなさそうなんで結構です♡」?

 おいおい、どこに行くんだ。なんだよ、その呆れた溜息は!「これだから恋愛雑魚種は……」ってどういう意味だ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《ユウ♂ジョウ♀!》

 

 

 ○月×日、11時00分:李書文、宝蔵院、クー・フーリンとシミュレーションルームで槍ロワイヤルで鍛錬。

 

 同日、11時15分:小次郎、柳生、武蔵、沖田、鈴鹿御前、牛若丸、源頼光で疑似英霊剣豪七番勝負で鍛錬。

 

 同日、11時30分:ベオウルフ、マルタ、燕青でシミュレーションルームでスパーリング。

 

 同日、11時55分:ロビン、キッド、巴御前、エミヤオルタ、エミヤ(アサシン)でリアルFPS訓練。昼餉まで。

 

 

 ……わわ、メディアかい。驚かせないでくれるかな。これかい、あぁ、昨日のマスターの動向を辿った日記さ。おいおい引かないでもいいだろ、別にストーカーってわけじゃないさ。ちょっとマスターの頑張りっぷりにここ最近思う所があってね。

 カルデアに造られた時間の流れをいじる機械があるだろ?あれは確かに便利な代物だ。ほら、午前中だけでこの密度だ。けどね、私は心配に思うんだ。マスターがその重荷に潰れてしまうんじゃないかって。

 

 そりゃあ、シミュレーションルームで相手しているサーヴァント達も本気でマスターと訓練する事はしないだろうさ、加減を見極めるだろう。それでもこんな過度な鍛錬をしてしまうとどこかで倒れてしまうんじゃないかって心配になるんだよ……。マスターには時には誰も邪魔されない島でこう桃髪と鷹の羽根が似合う大魔女系乙女と延々にキュケオーンをあーんしてもらった方がいいんじゃないかなって。ちょっとぐらい休んだってバチは当たらないだろ?

 

 え、シミュレーションルームに一緒に入ってマスターがどんな訓練をしているのか見なかったのかって?……男の子がせっかく格好つけてるんだ、それをみっともなく追っかけて邪魔するなんて真似はしないよ。「成長したのね……叔母様」って何だい。

 そりゃあね、私だって置いてかれるのは死ぬほど嫌だよ……。けど確信があるんだ。マスターは嘘をついて、私の前からいなくなるなんて真似は絶対にしないって。絶対に、絶対に私の元に帰ってきてくれるんだって確信がさ。ふふ、こんな根拠も無く信じられるなんてね、ちょっと惚気ちゃったかな――?

 

 結局、その日はどうしたんだって?あぁ、マスターも疲れ切っているだろうから、トレーニングが終わった後に私のお手製キュケオーンプリュレをご馳走しようと彼の元に向かおうとしたよ。

 そしたらさ、マスターがデオンとアストルフォにラーマと哪吒を連れてまたシミュレーションルームに向かっていくのが見えてね。さすがの私もちょっと頑張り過ぎだろって呆れたよ。

 まぁ、私のキュケオーンプリュレは保存も効く優れものだから、彼が帰ってくるのを待ってたよ。

 

 15分ぐらいで戻ってきたけどね、あっちの部屋の時間で換算するともう少し長いのかな?あぁ、戻ってきたのは彼一人だったよ。他の4人はきっとまだ鍛錬に夢中なんだろうさ、全く仕方ない連中だよ。

 

 私のキュケオーンプリュレも勿論食べてくれたさ。「甘くて美味しい、ありがとうキルケー、また作って欲しいな」ってね。もうその言葉だけで私は一週間生きていけるよって伝えたかったよ…………言えなかったさ。

 

 だってまさか上半身裸で出てくるとは思わなかったんだもん!汗もかいてるし、妙に色っぽかったし、ドキマギしちゃって、ガチガチになって料理を渡すのが精一杯だったから仕方ないだろ?彼から出る匂いで私の股からキュケオーンが出そうになったよ!

 

 ……え、他の4人とナニをしてたかって?いや、聞いてないけど、まぁ、鍛錬なんじゃないか?あぁ、けどなんかあんまり共通点が無い面子だったな。時代も国もバラバラだったし。後で哪吒に聞いても、「絶対!黙秘!返答、拒否!」って教えてくれなかったし……サーヴァントがそんな腰がガクガクになるぐらいに訓練を頑張る必要ないと思うんだけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《いじめ、よくない》

 

 

 うわあああああああんっ!!ますたぁぁぁぁっ!!ひどいんだ!色々とひど過ぎるんだ!!

 

 ひぐぅっ……うぇぇぇっ、ぐすっ、ぐずぅっ……。

 ごめんよぉぉぉ。困惑するよねぇ……けど今は君の胸で愚痴を吐かせておくれ。

 

 ついこの間の事さ。いるだろ、あの妙に通る声をしている少年作家が、そうさアンデルセンだよ!偶々、「牛の駄肉っぷりよりは断然、鳥の無駄の無いフォルムこそが愛されるべきだろう」って熱く語っていたのが聞こえてね。いやはや、さすがは世界に名を轟かせている作家だ、よくわかっている、やはり豊満さよりもスラッとしたクールビューティーな体からのテクニックを時代は求めているんだよと思ってね、賞賛の言葉を送ろうと思ったら。

 

「馬鹿め、その安っぽくとってつけたような鳥の羽根で何をほざいている。いいか、俺が言ったのは『無駄の無い』だ。『貧相』と一緒くたにするな。この脳内ピンクピグレットのコスプレ詐欺が」だぜ!?いくらなんでも、あんまりだろ!

 

 同席してた劇作家も「詐欺は言い過ぎでしょう、アンデルセン君。かの海神に言い寄り拒絶されたから、恋敵を化け物に変える。これ程わかりやすく感情を行動に移す女性が他に……いや、神話の時代は結構いますな。どれもこれも、子供の癇癪よりも酷く、感情の赴くままに大災害を起こしていましたね……」とか!

 

 偶々、通りかかった施しの英霊にも「そして海神の後に島に訪れた英雄に捨てられた過去が。マスターに生前のように強気に迫る事が出来ないお前のトラウマになっているのだろう。……結ばれるか、袖にされるか、どっちつかずの曖昧な関係のままでも……悪くないと思っているのか。しかし、鷹の魔女よ、ぬるい湯は冷めるのは早いぞ」とか!

 

 いつからいたのかわからない道化のキャスターにも「ちょっと――、英霊の皆さん!いじめはよくありませんよぉぉぉ!このキルちゃん、泣いてしまってるじゃないですかぁぁあああっ!ほら、こう見えても彼女、ちゃんと一歩踏み出そうとしてるんですから、いつもマスターに食べさせているキュケオーンに実はちょっとずつ、ちょっとずつ惚れ薬を混ぜているんですよ。マスターが自分に害意のある薬は受け入れないという体質を聞いてから、『なら、私に好意を持ってくれるのもマスターには害になるのかな?』っておっかなびっくりで微量に惚れ薬をキュケオーンに入れる様!!自分の毒を受け付けないマスターにキュンッとしてしまうハート!けど、本当は自分の魅力で落としたいけど、そんなやり方もう忘れてしまったよ……と自己嫌悪して葛藤する様!!あぁ、何たるロマンチック乙女チック!!」とか!

 

 

 ひぐっ、ひぐっ……ぐすっ……ん、んん?あ、あれ、もしかして私、今何か余計な事言ってなかったかい?大丈夫?こう致命的な乙女の秘部をポロっと零してしまってないかい?

 

 ぐずっている泣き声しか聞こえなかった?そうか、それならいいんだ。いや良くはないんだけど、ごめんよ。こういう時はメディアを頼るべきなんだろうけど……最近、精神的にまいってしまうと君の所に駆け寄りたくてしょうがなくなるんだ。ごめんよぉぉぉぉ……面倒くさいサーヴァントでぇ。え、いつも世話になってるから、胸ぐらいはいくらでも貸してくれるって?………………………………………………………………………………あぁ、君ってやつはもう本当に。

 

 

 

 うん、私ももう少し、勇気を出す事にするよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《サイコな魔女からの贈り物》

 

 

 ふむ、しかしこうして顔を会わすと時の流れは残酷と感じるよ。まぁ、どっちが幸せなんて私が言うべきではないだろうけど。それにしても急に私を呼び出してどうしたんだい若かりし日の妹弟子よ。

 

 この私にプレゼントぉぉ?いやいや、そりゃあ、ちょっとぐらい警戒はするさ、むしろ成長したメディアよりも問題児だからね君は。しかも当の本人に悪意が無いってのがさらに悪質だ。大丈夫だよね?触れた瞬間に「このそうびはのろわれているのではずすことができません」とか出ないだろうね?

 

 安産祈願……?安産祈願て!!子だくさんのお守りって!!あのねぇ!私とマスターはまだそういう関係じゃないんだよ!!いくらなんでも段階を吹っ飛ばし過ぎやしないかい!?

 何だい……その鷹がルールブレイカーをくらったみたいな顔は。「遅すぎて、びっくりです……」じゃないよ!喧嘩を売ってるのかい?

 

 私はね、女性慣れしていないマスターの為に焦らず彼のペースに合わせて距離を縮めているんだよ。それをいきなり、しゅ、出産て…………。そもそも私達サーヴァントじゃ、身ごもる事もないだろ?そこの心配はいらない?やけに自信を持ってるな……。

 

 マスターは獣?それは夜は、という意味かい?え、違う?「彼を繋ぎ止める枷は多ければ、多いほどいいですから……私達の傍にいる事が一番ですから……それは、世界にとっても……」。君は昔から電波な発言が多いよね。勝手に自己完結しないでもらえるかい?

 

 まぁ、いいよ。一応そのお守りは貰っておくとするよ。せっかくの妹弟子からの贈り物だからね。

 

「あと、自分とマスターの子供の名前を延々と妄想してノートに書くぐらいならさっさと行動を起こした方がいいと思います」?余計なお世話だよ馬鹿!!師匠の部屋に勝手に入るんじゃないよこのサイコ妹弟子が!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《ガバガバ策士(ただしあそこはキツk)、エロトラップに嵌る》

 

 

 お邪魔するわね、マスター。

 あぁ、そこにある霊薬……。ええ、言わずともわかってるわ。叔母様が置いていった媚薬でしょう。ご丁寧に近くに鷹の羽根を落としてアピールしてるしね。

 

 それで当の本人は一体どこに消えたのかしら?気づけばここに置いてあったからわからない?

 

 そう……本当に馬鹿な人……。マスターにはそういった害意ある薬の類は効かないってセイレムで懲りなかったのかしら。

 けど、聡明なマスター……貴方なら、叔母様がその媚薬を置いていった理由がわかるでしょう?

 効かないとわかっている薬をそれでも貴方に飲ませようとした彼女からのサインが。

 

 媚薬の効果が出て欲しい。いや出て欲しくない。

 自分を好きになって欲しい。いや毒なんかじゃなく、純粋な気持ちで自分に惚れて欲しい。

 愛されたい、傍にいて欲しい、どんな手段を使おうとも。いや、こんな物を使わなくとも私は――。

 神話の時代だろうが、いつだろうが、乙女心は複雑で面倒くさいものなのよ、我が師ながら、呆れるわ。

 

『その面倒くささが堪らない』?………………ふふ、全く言うようになったわねマスター。なら、貴方が次にすべき事はわかるわよね。

 

 そうよ。あの叔母様を追いかける事。今ならきっと部屋に戻っているだろうから。あぁ、けど今すぐは止めた方がいいわ、きっと後悔で気が昂ってる可能性もあるだろうし。少しは時間を置いた方がいいかもしれないわ。そうね……今から部屋を出て叔母様の様子を見に行くから、私が出ていってから30分ぐらいが丁度いいわ。

 

『随分具体的な数字だな』って?そ、それは、曲がりなりにも私はあの人の妹弟子ですから、師匠の事は分単位で把握して当然でしょう。というかさっきから何で貴方、口を開かないのかしら?あまりにもスムーズにルーン文字で会話してくるからスルーしてしまったけど。

 

 え?『媚薬を今、全部口に含んでいるから』?何をしているんだい、のよ!きみ、貴方は!確かに貴方の体質なら問題は無いかもしれないけど、もし万が一にも効果があったら、今目の前にいる私が貴方の毒牙にかかるのよ!?

 

 ほら、今すぐペッしなさい!……ちょっ、ちょっと、まっ……まちなさ、私はメディアだ、なのよ……ちか、近いって……『仮にメディアだとしても問題ないさ、君が自分の事をメディアと言い張って、姿を変えないのなら、俺は君をメディアとして扱うよ』って……い、一体なんの話をしているの、さ……あっ、唇……んっ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《えんだああああああああ》

 

 

 んむぅっ……ちゅ、んぅぁ、んんぅ、んぁっ……んぐっ、んぐっ、んはぁっ、にゃ、にゃんて事をしてくれたんだい。いいかい、君があの妹弟子とそういう関係にあったのは驚きだけれども、今キスしたのはメディアじゃなくて、私……なんだぞ!え?最初っから気付いてた?うわわわわ、ていうか変身も解けているじゃないか!

 

 じゃ、何だい?私とわかってて、こんな熱烈なキスを……あ、待って駄目だって、こら……んぅ。

 

 ちゅ、ちゅぅ……んじゅっ、じゅるぅぅ、んぁ、舌ぁ……んむぅ、れぁっ……ひぅっ……!んぁっ……あぁ、もう、媚薬も全部、口移ししてくれちゃって……。あむぅっ……んぁ、きしゅ、ああっ、よだれも……んふぅっ……ちゅぅ。

 

 ちゅぱぁぁっ……は――、はぁ――……おかしい、おかしいよ。自分で作った薬が私に効果なんてある筈ないのに……。

 

 太ももから結構な量が滴ってる……?あぁあぁぁぁぁぁぁっ!!やだ、見ないでくれ!見ないで……こんな、こんな、キスだけでこんな濡らしてしまったなんてぇっ!違う、違うよ……私はそんな淫乱じゃない。きゃっ……。

 

 ……いいのかい?ベッドに押し倒したって事は合意と思っていいんだよね?私は察しが良い女だからここまでされて勘違いはしないぞ。

 

 そうだね……。こんな事なら変に遠回しじゃなくて、ちゃんと自分の姿で真っ向勝負をするべきだったよ。

 あんっ、こら、勝手に胸をいじるな……。女の子の体はデリケートなんだぞ?……ひぅ、あっん、んぁっ!そんな、熱心にこねくり回してぇぇ……んふぅっ、楽しいかい……?男の子はボリュームがある方が好きだと思ってけど……ふふ、なんだい、なんだい、嬉しい事言ってくれるじゃないか。けど、そんなに私に夢中になってくれるなら、セイレムでも私の想いに応えてくれても良かったじゃないか……。

 

 え?あの時は焦らした方がいいと本能が告げていた?そんな理由で私はお預けをくらっていたのかい!?

 

 あんまりだ!あんまりだよ……!!私は君の前ではいつもドキマギしていたというのに……ひゃうううぅんぅう!!あぁっ、その先っぽのくすぐり方だめぇ……。ちくび、勃っちゃうからぁ……。お詫びにウンと気持ち良くしてあげるって…………。あぁ、待ってくれたまえ、私にも威厳というものが……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《そんな弱点を俺の前に披露して、無事で済むと思ったのか》

 

 

 あぁぁっ!!!んにゃぁっ!!はっ、はぁんんぅ!もう、羽の付け根をシコシコするのぉ、やめてぇぇ……!あっ、あぁぁっ、羽づくろいしてくれた時と、違う……全然ちがうぅっ……!だめだめだめだめだめだめ、だめぇっ……今、絶対、変な顔してるからぁっ……!!

 

 ひああぁっ!!あぁっ、指とアソコでそんな所でグリグリしないでぇぇ……もう、イッてる……羽だけでイキ狂っちゃうからぁぁ……。

 ひぅ、あっ、あっ、もう、自慢の羽根が君の精液でドロドロじゃないか……。うん……だけど嫌いじゃないな……君の物だってマーキングされているみたいで。

 

 あぁ、夢中になる匂いだ。もう少し、その立派なブツを私の方に近づけてくれないか?

 すんすん……すぅ――――はぁ――――……これはいけない、いけないよマスター。君に好意を抱いている娘達にとっては麻薬みたいなものだ。私がしっかりと管理しないと、そら、もっと良く見せて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《テクニックには自信があるんだbyキルケー》

 

 

 んぶぅ、んちゅ、んじゅぅぅ……じゅるぅぅぅ、じゅぽぉ、じゅぽぉ……んはぁぁ、しゃぶり甲斐がある良いサイズだよ。あむぅ……んぅ、れろぉぉ、どうだい……私の口淫は?ちゅ、ちろぉ……鈴口を舌先でくすぐられるのは?はむぅ、んじゅるぅ……ちゅぱっ、陰嚢を口に含まれるのは?それともやっぱり激しくバキュームフェラがお好みかい?

 

 仕方ないだろ……君の好みはどれも逐一把握しておきたいんだ。……キルケーが一生懸命になりやすいヤリ方でいいって?……君の逸物を触って弄ってるだけで一日をつぶせる私からすると困る返答だな……。今日は何が食べたい?って言って何でもいいって答えられる奥さんの心境だよ。

 

 うん、わかった。やっぱりシンプルにフェラチオをしている時が一番だ。君の鼓動を口の中で感じるのは女としての悦びを感じさせてくれるし。

 

 あむぅぅ、ちゅ、んじゅるるるぅ……んぶぅ、んじゅぅ、んぐっ、んぁ……はぁ、ふふ、好きだよ。こうやって君のおちんちんをしゃぶりながら、頭を撫でられるの。何だか愛されてるなーって感じがしてさ。うん、そのまま続けて……私も続けるから、さ。

 

 んじゅ、んじょ、んむぅぅ、んぁ……いいぞぉ……。カウパーも出てきた、どんどんキモチ良くなっておくれ……はむぅ、じゅるぅぅぅ……ちゅ、じゅぽ、じゅぽぉっ……!!

 

 

 

 

 んんんんぶぅぅぅっ……!!んぐぅぅ!んぐぅ、んぐっ……んぇえあぁっ……。…………ごっくん、ふふっ――ん~~どうだい、こうして、私の口の中に残った君の証を見せつけられる様は?あぁ、答えなくともいいさ。こうしてまた臨戦態勢に入った君の息子を見ればね、アソコは口ほどに物を言うってね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《キュケオーン(隠語)》

 

 

 ……あっ、そうそう。その位置が一番良い。君の顔が良く見える。

 何だか照れくさいな、初夜の乙女じゃあるまいし……。こうしてベッドの上で無防備な体を晒しているとね……。

 

 なぁ、私の体、何か変な所は無いよな?匂いとかも大丈夫だろう?これでもマスターと会う時はいつナニがあってもいいように万全のエチケットはしているんだ。サーヴァントだろうが、そこは関係ないよ。

 

 もし、君がもっと豊満な方が好みだというのなら、今からでも変化の魔術で体を――。っいてて、ごめんよ、冗談さ。うん、嬉しいよ。君がありのままの私を愛してくれるって言葉を偽りなく表してくれているのは。

 

 よくないね、大魔女がこうも自信なさげになっているのは……。うん!ナイーブな時間は終わり!さぁ、そのぶっといので遠慮なく私を貫いてくれ!こう百人ぐらい孕ますぐらいの勢いで君のキュケオーンを私に食べさせておくれ!

 

 

 ……あぁっ、んぅ、入り口に触れただけで、こんなにぃ……あっ、あっ――――――――。

 

 

 んぁぁ~~~~~~~~~~…………っ!!

 

 

 んっ、ふぅっ……ぇあぁっ~~……!あっごめんよぉ……涎が……あっもうはずかしいなぁ……もっとリードさせてあげる筈だったのにぃぃぃあああぁっ!?んほぁあっ!!

 

 んふぇあぁっ!!あっ、あぁっ!!そこぉ、そこぉらめぇぇっ……!!上の所ぉ、ゴリゴリってぇぇ……!あっ、あぁぁっ……ひぐぅぅっ!!んあぁぁっ……!!

 

 

 あんぅうっっ!!はぁっ、んはぁぁっ……!!溶けるぅ、とけるぅぅ……魔術回路が溶けるぅぅぅっ……あっ、あっ……アソコからキュケオーンがとまらにゃいよぉぉ……ひぅ、ひぁ、あんぅ、あっ……あああぁぁっ……!!

 

 んあ゛っ……!!あひぃっ!!はぁぁっ……!腰のビクンビクンってのがとまらなくてぇぇっ……!!はぁっ、なんだいこれぇ……!オデュッセウスの時は、こんな風になんてならなかったのにぃ……ぁぁ、ごめんっ!ごめぇんぅ……ごめんよぉ……前の男の事なんて口にして……何でもするから許し……え?昔の男よりイイって台詞は割とゾクゾクするから別に構わないって。

 

 うん……うんっ、キモチいいっ……あんな嘘つきの男よりも百倍イイんだぁっ、熱くて、大きくて、動き方もぉ……。んほぉぁあああっ!!あぅぅうんんっ!!

 

 君は私の過去を気にしたりはしないんだね……。えっ、過去に何があろうとも、過去に誰を愛していようとも、最後に俺の横にいればいいって?んんんんんんっ~~~~。もうっ、そうやってキュンキュンさせる台詞を吐くから、アソコがもっと締まっちゃうだろぉ……ばかぁっ!

 

 離れないさ!離れるわけないだろっ!むしろ私の方が捨てられるかもしれないって不安があるのに。ならその不安を忘れるぐらい、イカせてあげるって……あっまっ、んあああああああっ……!!あんぅぅっ……!あっ、このタイミングでえっちなお豆をグリグリするのはぁっ……ひぅやうぅぅっ!ず、るいよぉぉっ……!!あ、あ、イクイクイクっ……!

 

 んはあああああぁぁあっっ!!あっ、すきぃ、しゅきぃ……そうやって恋人繋ぎしながら、セックスしているのしゅきぃ……。あっ、んあぁぁ、君の一生懸命の顔が見えてさ、あぁ……愛されてんだなぁって実感が止まらないんだ。

 

 あぁ、出すの?出してくれるのかい?私の胎の中にドロドロのエロ汁を出してくれるんだね?

 いいよ、出して……いっぱいいっぱい君の麦粥で私を満たしてくれ……。

 

 んんんぅ……。嬉しい、嬉しいなぁ……全身でのしかかってくれて……本気の膣内出しをしてくれるんだね……。

 んふぅぁっ、はぅ……そうだ……一つお願いがあるんだ……。そう、そう、耳元でいっぱい「孕めキルケー」って言って。

 

 うんうん、君とならいくらでも子供を産むさ。あぁ、絶対に幸せな家庭になるとも。

 ひゃあああっ……!あっ、マスターに全体重で種付けプレスされながら、孕め孕めって耳元で囁かれるの堪らないよぉぉ……っ。あぁぁっ、マスター、マスター、ますたぁぁぁっ……!んんぅっ!

 

 

 んんんんんんンンンぅっ――――!!んむぅぅぅっ!!んふぅぅっ!!んぅっ、んぁぁっ、ぷはあぁっ~~……ぁっ、あっ……はぁ――――、んはぁ――――…………もうわかってるなぁ君はぁ。あぁ、そうだとも、種付けプレスをしながら、だいしゅきホールドをしてベロチューしながら膣内出しフィニッシュ。うんうん、女のロマンだとも。

 

 あぁ、抜かないでくれ、もう少し余韻に浸りたいんだ……この幸せにさ。ほら見てくれ、私の下腹部。君のおちんちんの部分でぽっこりしてるだろう。ふふ、まだまだ元気いっぱいじゃないか、さて、マスター……君は果たしてこの神話に名高き魔女を満足させる事は出来るかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《禁断なる性宴(テクノ・ピグレッツ)

 

 

 んぉっっ!!あぁぁんぅぅっ!!ほぉぁっ……!!あひぃぃぃっ!!あんぅうっっ!!アッあっ……!!もう、もう……何回出されたのかなぁっ……?私もぉぉぉっ!?んひゃああっ!!30回目からは数えるのを止めたんだけど……見誤ってたよぉ……君の絶倫っぷりをぉ……これは、確かにリリィが獣って言うワケだぁ……!私、一人で相手するのはちょっと無理かにゃぁあああっ!?

 

 あっあっあぁぁっ!そんなバックから交尾みたいに突かれて……ひぐぅぅっ!!まるで私がピグレットみたいじゃないかぁぁ……!あっ、あっ、だってだって今、君に膣内出しされる事しか頭に無いし……。

 

 んにゃあああああっ!?らめぇ!それはだめだよぉ、ますたぁっ!!羽を掴みながら、腰を振られたらぁぁっ……!!あっ、あっ、あっ、しゅごぉい、しゅごぉいのぉぉっ……!もうだめぇ……マスターのおちんちんで頭が一杯になる、魔術を極めし、私の頭の中がえっちぃ事しか考えられなくなってるぅぅぅ……!あっ、あっ……んぁっ……!

 ま、た出されてるぅ…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《ドーナドナ♪》

 

 

 やぁ、メディア。唐突で済まないけど、ちょっとベッドで休ませてもらってもいいかい?

 いや、マスターの部屋からだと、私の部屋より君の部屋の方が近いんだ。

 生まれたての小鹿の如く、プルプルしてるのも今は目を瞑っておくれ。

 

 ふぃ――――、全く、とんだ目にあったよ。まさかマスターがあそこまで底なしだとは思わなかった……。ふへへ。

 してないよ、ニヤケ顔なんて。あぁ、もう鏡なんて持ってこなくていいから!赤飯もいらないよ!誰が気持ち悪いって!?

 

 

 …………もう一人の君が……リリィが言っていた言葉の意味がやっとわかったよ。マスターを誰か一人だけで繋ぎ止めるのは無理だ。そりゃあ、私だっていっぱしの女だ。抱かれた男の事ぐらい理解するとも。

 

 獣、そうだね……。私はちょっとゾッとするよ。もし彼の周りにカルデアのサーヴァントが誰一人としていなかったら、この人は私達がいなかったらどうなってしまうんだろう……この人は独りだとどうなってしまうんだろう……って。そんなイフを妄想してしまうぐらいには眼を離せないんだ。

 

 リリィが言っていた枷って言ってたのは私達の事か……。それとも鎖かな?まぁ、何であれ、彼がどこにも行かないように、ちゃんと私達の元に帰ってくるようにする為に英霊達の愛と性と家族で縛り付ける……。きっとそれは何よりも彼が望んでいるのかもしれないね……。

 

 セイレムで幼女に先を越された師匠のシリアス顔は似合わないって馬鹿にしてるのかい!!

 あぁ、そうだ思い出したぞ。一つ聞きたい事があったんだ……君、まさかとは思うがマスターと肉体関係は結んでいないよね?

 

 あっても別に男女の関係とか無いから安心して欲しい。ただ一魔術師として彼から出される精液に興味があっただけだぁ!?

 ハッ、ならどうして、私から露骨に眼を逸らすのかなぁ……。おい、こっち向けよ。今更、妹弟子に先を越された事を根に持つような度量が狭い師匠に見えるかい。こらっ!耳が真っ赤になってるのバレバレなんだよ!

 

 やーい、やーい!お前の元カレ、イ――アソン!

 

 あ、ごめん。ちょっと言い過ぎた。待って待って、ルルブレは勘弁して、私今ちょっと抵抗出来るようなコンディションじゃないからさ。

 

 

 おぉ、いい所に来た!リリィ!この凶行に走ろうとしている妹弟子を止めてくれないかい?

 え、まぁ、お祝いの言葉は素直に頂くけど。え、え、もう一回マスターの所に?念の為にもう十発ぐらい仕込まれた方が色々と安心でしょうって……。

 

 いやいやいやいやいやいや、まてまてまて、せめてもう少しインターバルを挟むべきだろう。おい、メディア。このサイコな妹弟子を止めてくれないかって、何で二人して私の腕を抱えているんだい?

 

 うへぇ――!冗談だろう!?今からマスターに犯されたら、私もう色んな意味で戻れなくなるぞ!大魔女の威厳もへったくれもない雌奴隷になってもおかしくないぞ!!

 

 持ち上げるな、師匠の扱いが雑過ぎるぞお前達!性的に弱り切った叔母様がちょっと見たくなった?あぁ、メディアはそういうナチュラルSだったな。私は叔母様の事を思ってですよ?じゃないよ、リリィ、お前は善意からの行動が全てナチュラルにパスってるんだよ。

 

 あぁ、ちょっと連れてかないで……誰かぁ――!たすけて――!ますたぁ……!

 

 

 

 

 

 




この後、滅茶苦茶4Pした。










偶には変化球な回を書いてもいいと思ったんだ。
私は書いてて楽しかった。反響があったらもう一回書いてもいいなって思うぐらいには。
このポンコツ叔母ちゃん可愛すぎるでしょ。

お前が!ピグレットに!なるんだよ!キュケオーン食えよぉぉぉぉぉおおお!!




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マハトマキャンドル(エレナ・ブラヴァツキー)

第二部が楽しみ過ぎて、アソコがドキドキワクワクします。










《マスターに聞いてみた》

Q:いや……その、参考までに聞きたいんだが、ちょっとした個人的な好奇心なんだが、今のあんたは視界に入ったヤツを一撫でするだけでイかせる事が出来るぐらいのセクハラ術を持っている。前戯なんてしなくても、その化け物染みた肉棒を突っ込んでしまえば、事はすぐに済むんじゃないのか?なのに、あんたは語らいだったり、色んなプレイをする……。あんたはどう思って……そんな苦労をしょい込んでいるんだ?


A:そうだな……俺は『結果』だけを求めてはいない。『結果』だけを求めていると、人は近道をしたがるものだ……。近道した時『真実(エロ)』を見失うかもしれない。やる気もしだいに失せていく。大切なのは『真実(エロ)に向かおうとする意志』だと思っている。
向かおうとする意志さえあれば、たとえ本番までイかなかったとしても、いつかはイかせる事が出来るだろう? 向かっているわけだからな……違うかい? そして一つ訂正を、俺は彼女とのあらゆる交わりで苦労だと思った事は一つも無いよ。




「ニャーフ!(挨拶)」

 

 紺色のブーツに帽子。コケティッシュな服装から眩しい程に艶やかな脇と太腿。

 見た目はロリなのに夫人。なおかつ母性もあるという最強合法ロリママ、あぁ、ママトマをじゃなく……マハトマを感じずにはいられない。

 

 彼女の名はエレナ・ブラヴァツキー。未知を探求する魔術少女である。

 

 そんな彼女が何故、カルデアの廊下で奇声を発していたのかというと……まぁ、彼女なりに気合いを入れていたのだろう。

 

 エレナ・ブラヴァツキーは人知れず思案していた。

 

 彼女の頭の中にあるのは一人の少年の姿。

 

「もうここにいる皆は普通に受け入れてしまってるけど、冷静に考えればおかしいわ。サーヴァントに匹敵する程の戦闘力。四六時中、色んな方達とコミュニケーションをし続けるバイタリティーと…………。そして、なによりこの私自身が何故かあの子にマハトマを感じずにはいられないの!」

 

 エレナ夫人の視線の先にその気合いを入れた答えがいた。

 

 その熱視線はシェイクスピア・アンデルセンの作家コンビと談笑しながらトランプをするマスターの姿に向けられている。

 

「気になる……。気になる、気になる、気になる気になる気になる気になるわっ!あの子は確か、一般枠で入った魔術の才能もからっきしのマスター候補生としてカルデアに連れて来られたって聞いてたけど、私の中のサナト・クマラが囁いてるの!そんなワケがないって……!」

 

 にじり……にじり……と挙動不審な様子で廊下の壁に擦り寄り、開いたドアからレクリエーションにいるマスターをチラチラ見る神智学の祖。

 本当ならいますぐ駆け寄り、『貴方の体に凄くマハトマを感じるの!お願い、隅から隅までじっくりねっとりと調べさせて欲しいの!先っちょ!先っちょだけでいいから!』と迫りたい気持ちをエレナは必死に抑えていた。

 

 さすがに可愛がっている愛弟子にそんな威厳の欠片も無いはしたない真似は見せたくなかった。

 ただまぁ、あのマスターなら「いいよぉ(ねっとりボイス)」で即OKすると思うが。

 

 何にせよエレナ夫人が出した答えは取りあえず、遠くから観察するという逃げの一手だった。

 普段は彼女が一方的に喋り続けているマハトマ談義でマスターとは交流しているが、こうやって一定の距離を保ってバレないように見詰め続けるというアプローチはエレナにとっては新鮮だった。

 

 まぁ、こういう行為を巷ではストーカー(きよひめる)と言うのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、あの頭マハトマを何とかしたらどうだ。エロゲ主人公。10のダブルだ」

 

「いやぁ、あんなに一生懸命になってるんだから邪魔しちゃ悪いでしょう。もう少し様子を見ておきたいなぁ……ほい、クイーンのダブル。」

 

「その最後の言葉には(面白そうだから)と振らないといけませんぞマスター。まぁ、困った時には『うんうん、それもマハトマだね』の魔法の言葉で何とかなるでしょう。あ、吾輩はパスで」

 

 ハスキーボイスショタ童話作家。愉快なネタが大好物劇作家。ビーストミーツガールのマスターの3人は大富豪にいそしみながらも、当然こちらをジロジロと見ているエレナ嬢の存在には気付いていた。

 

 それでも三人が出した選択肢は放置だったが。アンデルセンは関わるのが死ぬほど面倒くさいから。シェイクスピアは面白そうだから。マスターは悶々としているエレナが可愛くて仕方ないから。この3人、どこまでいってもブレない。

 

(楽しそうにしているわね……一体、何を話しているのかしら?)

 

「よくもまぁ、こうも事故物件を面白い程引っ掛けてくるなお前は。吸引力が変わらない只一つのダイソンか。そらお前の番だぞ」

 

「いやいや、誰一人欠ける事なく優良物件だよ。俺には勿体無いぐらい。じゃあ、7四枚の革命で」

 

「そうですな。エレナ女史は他のイッちまってる方々に比べれば、まだ可愛げがある方だと思いますが。あ、吾輩パスで」

 

「ハッ。可愛げだと。死してなおこうして生者の従者になっているサーヴァントなど碌なもんではないぞ!俺達を含めてな。どいつもこいつも書くのが億劫になるほどに腹の中にナニかを溜め込んでいる。でなければ、英霊なんぞになるものか。特に女共なんてその煩わしさの最たる例だろうさ。というよりもお前、毎回ノルマの如く、革命を起こすのをナンとかならんのか?」

 

「こうしないと勝てない雑魚手札なんでね。じゃ、俺の番って事で4」

 

「吾輩としては見ていて飽きない良きマスターなのですがね。では3」

 

(うぅぅぅーん……。やっぱりもう少し近くで観察したいわ……。ここは私も混ぜて――って言った方がいいのかしら?あぁ、けど男の子同士でせっかく楽しそうにしている空気に水を差しかねないし……)

 

「あれだけの女英霊を抱えて、上手くいっているのが異常だろう。少なくとも善良かつ普通の人間ではまず不可能な所業だ。おいハーレム主人公。人の道を外れていくお前はこのままだと碌な結末を迎えんぞ。パスだ」

 

「でも先生が幸福な結末に連れてってくれるんじゃないの?ジョーカー。8流し!5のトリプル!はい、上り!」

 

「そうですとも。その為にあなたは最近頂いた電子タブレットで『カルデア 国物語』なる本を執筆し続けているのでしょう?吾輩はアンデルセン君のような王道と違って、マスターに恋い焦がれる娘達の人情喜劇だったり修羅場を面白おかしく書くだけですからなぁ……気が楽ですぞ。6のダブル、4のダブル、8流し。はい上りでございます」

 

「『カルデア 業物語』……だったか?何ともタイトルに捻りが無いな。そもそも毒舌しか取り柄の無い三流作家に機械仕掛けの神様(デウス・エクス・マキナ)を期待するのか?幸せになるかどうかはお前の選択次第だ。俺に出来る事は精々、そこに茶々を入れてやるぐらいだ。……っておい、どこが雑魚手札だ!はい、クソー、二度とやるかこんなクソゲーだな!」

 

(もし、私が混ざろうとして、あの子が少しでも嫌そうな顔をしたら死ねる……マジで、死ねる……。いや、しないけど!あの子はそんな反応しないって信じてるけど!それでも男の子の遊びにおばさんが入るのはやっぱり無いわよね……)

 

「そう言いながらも、ちゃんとシャッフルして次のゲームの準備をしてくれる先生、いっぱいちゅき♡」

 

「これが最近、廃れてしまっている『別にアンタの為に(はいはい)書いてるんじゃないんだからね!(、ツンデレ乙)』というヤツですか」

 

「気色悪い事言うな。こんな脳内ドピンクの鬼畜凌辱主人公とフラグを建ててたまるか」

 

「酷い言われよう。俺には男色の気は無いというのに」

 

 はははコヤツめ。という生温かい笑いが二人の作家から漏れる。

 

「アストルフォは?」

 

「性別:アストルフォ」

 

「デオン殿は?」

 

「デオンきゅんのアソコは裏表ある素敵な女の子です!」

 

「ラーマは?」

 

「もう友情とか愛とか一言で語れない性別の垣根を超えたオンリーワンの関係かな?」

 

「哪吒太子殿は?」

 

「精神は男の子、体は女の子で葛藤する娘とか大好物や!」

 

「グランドクソ魔術師は?」

 

「え、今は女の子でしょ?」

 

「「…………」」

 

「ほら、俺はノーマル」

 

「やっぱ、コイツ真性の馬鹿だな!!」

 

「ふーむ。ブレない在り方。そこに痺れる憧れはしない」

 

「なぜぇ?」

 

(ニャーフ(否定の意)!なんで、私、一々あの子の反応を気にしているのかしら!?そもそも私は彼から感じるマハトマズムを知りたくて観察しているわけで、別にあの子の好感度とか全然気にしていないし……。そ、そりゃあ、一応は従者の関係ではあるから良好な関係であるのに越したことはないけど。う、う、うぅ――、何でこんなに意識しないといけないのかしら……。いつもみたいに私のマハトマ談義に付き合わせればいいだけなのに……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《シミュレーションルーム、カルデア技術組サーヴァント達のラボにて》

 

「あばばばばばばばばばばばば」

 

「このすっとんきょうがぁ!だから貴様はアホなのだぁ!マスターのシナプス信号の反応速度をより加速させる為にはこの『神速のイスパルス』君で彼の神経に直流を流し込めば……おぉ、見えるぞ獅子の如き、電話回線よりも早く駆けるマスターの姿が!!」

 

「ただの拷問椅子にしか見えんわ!この凡骨が!えぇい貴様の処刑具発明に、マスターを毒させるわけにはいかん!さっさと外せ!そして我が発明し、人類の最先端を行くパワードスーツ『マーク47フルメタルライトニング』を装備するのだぁ!フハハハハハハ!!」

 

「アウトだ貴様!著作権の概念を知らんのか!?」

 

「レディ・マシュにはキャプテン・シールダーを」

 

「もう口を開くな!!貴様は一生、ハトに餌でもやっていろ!」

 

「まったくこれだから凡人はピーピーと声だけは喧しい。権利、権利と……まぁ、確かに貴様が私に技術面で勝てない以上縋るべき最後の砦だからな。それも致し方無いか」

 

「やるか生涯独身」

 

「やってみろ、育児しくじり先生」

 

 ――ドコドコッ!バキバキッ!!ボカッ!スコッ!

 

「おぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼ」

 

 エジソンが発明した鋼鉄の電気イスに拘束され、奇声を発しながら、10万Vの直流電流を流され続けるマスター。その隣でどこかで見たことあるようなアイアンのスーツを傍らにエジソンと殴り合いをするニコラ・テスラ。

 まさにライトニングカオスな状況が作られていた。

 

 あのマスターの事を知らない人からすれば、マッドなサーヴァント達にモルモットにされている哀れな少年にしか見えないが、このイカれた実験もいつもの事だし、基本的に彼はダ・ヴィンチちゃんを始めとして、サーヴァント達のぶっ飛んだ発明品には興味津々なのだ。

 

 ダ・ヴィンチちゃん特性媚薬原液を飲んで悶々として、婦長にスッキリさせてもらった初々しい頃のマスターが懐かしい。

 

 だが、国民的電気鼠に同じくらいの電撃をくらってピンピンとしているマサラ人もいるのだからもしかしたら10万Vって大したことないのかもしれないネ!

 

「プレジデントパァンチ!!……むむっ?あっ!お、おい……テスラ」

 

「ニコラガァードォ!!……なんだ、凡骨?ぬぅ、あれはまさか……」

 

 そしていつもの喧嘩をし続けていた二人は気付く。

 ラボの入り口にて、ちょこんと頭を出し、隠れながら(本人はそのつもり)こちらの様子を窺っているエレナ夫人に。

 

(むむむ、また何だか楽しそうな事をしてるわ……。けど、ここからだと距離があっていまいち見づらいわ。あの子がやたらと光り輝いてるのはわかるんだけど……)

 

 ぎゅぅっと目を細め、何とかマスターの姿をはっきりと視界に収めようとするエレナ。

 

「こちらを睨んでいるように見えるのだが……」

 

「冷静に考えれば、絵面だけ見ると我々がマスターを拷問している以外の何物でもないからな」

 

「冷静に語っとる場合かぁぁああ!どう考えてもマズいだろぉがぁ!特にエレナ君は少なからずマスターを好ましく思ってる筈だ!これは間違いなく大目玉だぞ!」

 

(もう、あの二人また喧嘩してるの?あ、けど……これはいいきっかけになるのでは?あの二人の仲裁をする流れで、「こらーだめよ、ふたりとも喧嘩は!あら!貴方もここにいるなんて気付かなかったわ!ねぇ、よろしければ、今から私と一緒にマハトマらない?」……。うん完璧よ!不自然さが一切無い完璧の誘い文句だわ!よ、よし……そうと決まれば、い、い、行くわよ私……1、2のニャーフ!で……せ、せーの)

 

「いや、これ貴様の発明だし。私関係無いし。むしろ止めようとしたし」

 

「ここで何を無関係を装うとしとるんじゃ貴様は!きたない、さすが交流きたない!」

 

「いくらでも吠えろ。続きは法廷だ。無論、貴様は聖剣串刺し、腹切り切腹、毒浴びからの蒸し焼きの刑確定だがな」

 

「処刑人が多過ぎる!弁護人を呼ばせてくれ!」

 

 ――バキッ、ガキッ!

 

「おぉ――、あぁ――、ふぃ――……ん――、よっこらしょっと……あ、何かいつもより調子良くなったかも。ちょっと強めのマッサージみたいで何だか刺激的だったよ。リフレッシュ!」

 

 暴れるゴーレムさえ縛り付けると言われる電気イスの拘束具から普通に抜け出したマスターはマッサージチェアから立ち上がったおっさんのような声を上げて、肩をグルグル回していた。

 

「来た、我が弁護人!これで勝つる!」

 

「何の話?」

 

「このライオンもどきの妄言は聞き流しておくがいい。それよりもマスター。あそこにエレナ君が……むぅ?」

 

「マスターと目線が会った途端、脱兎の如く逃げ去ってしまったぞ。顔は茹蛸のように真っ赤だったが。あのような女史は初めて見るな」

 

 いつの間にやら彼等の視線の先はエレナの姿は無かった。

 何故逃げてしまったのか。当の本人ですらわかっていなかった。いつものように彼と接する事が出来ない。逃げだしたエレナは頬を抑えながら、原因不明の熱に悩まされるのであった。

 

 そして、マスターはそんな彼女の逃げ去った跡を心から愛おしそうに眺めていた。とても少年とは思えない蠱惑的な表情で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……私は何をしているのかしら……。いつものようにあの子に話しかければいいじゃない。らしくない。本当にらしくないわ」

 

 ラボから逃げ出したエレナはカルデアの廊下を肩を落とし、トボトボと歩き続けていた。

 我が道を行く天才らしく振舞えばいい。この眼に適った人を逃さず、引っ張っていくのが好奇心旺盛な彼女の性格の筈だった。

 

 なのにどうにも調子が乗らない。ここ最近はいつものようにマスターの顔すら直視出来ていない。これもきっと彼から感じるマハトマのせいだわ……とエレナは自分に言い聞かせているが、客観的に見れば只の恋する乙女にしか見えない。

 

 立場的には彼の師匠として魔術を教えていた私自身がこの体たらく……。エレナの視線には今の情緒不安定な自分と違って自信に満ち溢れ楽しそうに他の者達から魔術を学ぶマスターの姿があった。

 

「コンパクトフルオープン! 鏡界回廊最大展開!Der Spiegelform wird fertig zum Transport――!完璧白濁魔法少女(?)カレイドマスター!ここに見参!!」

 

「うぅ……何で私もこんな恥ずかしい決めポーズしないといけないの~~……マスターさんもノリノリだし~~……」

 

『うっひょ――!!いいですっ!実にイイですよぉ!!グランドマスター!!股に立派な象さんが付いてるとは思えない程の美少女っぷり!むしろ最近のニーズに応えているとも言えるかもしれません!魔法少女なのに男?バッカ、逆にソコがいいんだろうがぁ!!と吼える大きなお友達が大興奮間違いなしです!そう!時代が求めているのです!!ついていない美少女よりもついている男の娘を!!』

 

「この惨状、無性にリンに見せたくなったわ……。人の業って深いわ……」

 

「ちょっとクロったら!何、私は部外者みたいなスタンスをしてるの!混ざりなさいよ~~!」

 

「ほら、私は姿的にもあんまり魔法少女っぽくないからパス。ガキんちょなイリヤと違って子供向けよりもアダルトな路線だし」

 

「へぇ~~、じゃあ、その路線でイッてみるかいクロちゃん♡」

 

「うぇ……?ぇ、え、え、ちょ、ちょ……ま、待って……何でこっちに迫って……?じ、冗談よね?マスターのマジキスって死ぬほど、えげつないから………あ、や、まっ……んんんむぅぅぅっ~~~~……!!」

 

「あわわわわわわわ…………えぐい水音が」

 

『み な ぎ っ て き たぁ~~!!いつも小悪魔的な余裕を持った憎たらしい褐色ロリを大黒髪ツインテールの先輩魔法少女が大人のキスで黙らせる!!百合路線!!ビバ!魔力供給!!いいゾ~これ~!!シャッターを切る音が止まらねぇぜ!!』

 

「ふけい――……。最初は真面目な魔術教室だったのにどうしてこうなってしまったのでしょうか……」

 

「あら、いいじゃない、古代エジプトの女王様。可憐な女の子達が絡み合う様はあらゆる事柄よりも優先されるべきエデンよ」

 

「一人、男なのですがね……。いや、似合ってますけど。あの金星の女神と見間違えるぐらいには女装似合ってますけども……。あ、あなたももう撮影態勢に完全移行しているのですね、メディア……」

 

 

 どういう原理かはわからないがカメラを持ち、興奮気味でシャッターを切る喋る魔法のステッキにあら~と同じく写真を撮り続けるメディア。その様子を若干引きながら見守るニトクリス。

 

 古代の魔術。神代の魔術。そして現代?の様変わりした魔術を楽しそうに学んでいるマスターの姿がエレナの前にあった。

 

 壁を背にし、今までと同じく気付かれないように部屋の様子を見守るエレナ。

 

 ――んぁ、あぁむぅ、んちゅ、ちゅむぅ……んんうっ、やぁっ……もう頭おかしくなぁ、んんむぅぅぅっ!!

 

(あれが魔法少女式魔力供給……。絡み合う唾液と魔力……凄くマハトマを感じるわ……。あぁ、なんてえげつない舌使い…………)

 

「次にお前は『羨ましい……』と言う」

 

「羨ましい……ハッ!だ、誰ッ!?」

 

 エレナがバッと慌てた様子で背後に振り返れば、そこには腕をクロスさせ、スペシウム光線体勢でスタんばっていた自堕落文明っ娘の姿があった。

 

「貴女はマハトママン!」

 

「違う。アルテラマンだ。二度と間違えるな。そして恥辱にまみれた抱き枕が似合いそうな少女よ。何をここで足踏みをしている?あそこに混じりたいのなら、遠慮なく入ればいいものを」

 

「うっ……ち、ちょっとタイミングを見計らっているだけだわ。これから入ろうとしていた所だもの……」

 

 この引きこもり。面白そうな匂いを感知したら、割と表に出てくる。

 そんなアルテラもそわそわと乙女フェイスで髪先をいじるエレナに愉悦ポイントを察知したのだろう。

 

 

「マスターからマハトマをびんびんと感じる?」

 

「えぇ、だから。別にアルテラが思っているような下世話な事は何もないの。これは、た……ただの学術的探求心だから!」

 

「ほうほう、なるほどなるほど(確かにマスターのアソコは根源と接続されているのではと思うぐらいには摩訶不思議だからな)」

 

 だが、あるゆる文明からラブコメの波動を学びに学んだアルテラは嗅ぎ取った。

 エレナから充満するラブコメ臭を!

 

 確かにエレナがマスターからマハトマを感じ、知りたいという面もゼロではないのだろう。

 だが、彼女は間違いなく恋をしている。それを無意識的に前者の理由で誤魔化しているのだろう。生前は結婚はしていたが、すぐに出奔。未知、高次の存在といたものに没頭していたエレナは初めての感情を持て余してこんな彼女らしからぬ行動に逸らせてしまったのかもしれない。

 

 アルテラの中の自称IQ200の5色の脳細胞がすぐに答えを出した。これからどうすれば面白くなるかを。

 

「マスターが信用ならないか」

 

「そんな事はないわっ!!」

 

『信用ならない』『嘘つき』『インチキ』それはエレナにとっての地雷ワード。アルテラが具体的に何のことを刺しているのかはわからなかったが、彼女は脊髄反射で否定した。

 生きていた頃、散々心無いその言葉で自分がどれだけ傷つけられたのか痛感しているから。

 

「だが、今のお前の様子はそう取られてもおかしくないのでは?お前が知っているマスターならエレナ・ブラヴァツキーのどんな突拍子も無い無茶ぶりにも付き合ってくれるぞ」

 

「そんな事、あの子が私のマハトマ談義に嫌な顔を一つせず、四六時中付き合ってくれている事から知っているわ……」

 

「ならば行け。エレナ・ブラヴァツキー夫人。このままではお前は邪悪なロリに私と子作りさせられる百合路線を走らされる事になるぞ」

 

「な、なにかしら……その具体的でどこか否定出来ない恐ろしい未来は……」

 

 きっとマスターのスタンド(リヨグ○子)の世界線の話だろう。

 

「不安に思う事は無い。お前はマスターを部屋に誘い、この言葉を告げればいいだけだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺がどういう時にマハトマを感じるかって?」

 

 ――貴方ってどんな時にマハトマを感じるの?

 

 エレナがマスターを自分の部屋に呼び出した第一声がそれだった。

 今はデスクを挟んで二人とも椅子に掛けながら話していた。

 

「マハトマかぁ……。根源に到った先達、あるいは高次の生命体、いつもエレナに何かしらのメッセージを与えてくれる存在。要するに何か凄くて、ピカーッと光って、頭がふわぁっとするものの事だよね」

 

「そうね、言語化がちょっと難しい所もあるかもしれないから貴方のわかりやすい言葉で落とし込んで構わないわ。私が貴方からどうしようもないマハトマを感じる答えがきっとそこにあるから」

 

 うぅ――んと首を捻って真剣に悩むマスター。

 そのマハトマを正確に理解していない者がいきなりマハトマって何?と聞かれても答える事は出来ないだろう。

 

 だがこのマスターはエレナが言わんとしている事は何となくわかっていた。そして彼女が求める物も。

 

「そうだね……。エレナの中ではマハトマを感じるって時ってある意味一番幸せな時とも言えるよね」

 

「えぇ。私のライフワークとも言えるから。そういう捉え方も出来るわ」

 

「エレナは俺の中のマハトマを知りたいの?」

 

「えぇ」

 

「じゃあ、俺の答えはこれかな」

 

「ひゃわいっ!?」

 

 テーブルの向こうから手を伸ばし、エレナのか細い手を取るマスター。

 指を重ねて、こっちを真剣に見詰めるマスターの様子に奇声が出てしまうエレナ。

 

「な、なにを……」

 

「だから俺がこうしてる時かな。エレナの言うマハトマを感じる時は。こうやって好きな人と言葉を交わして、体を触れ合っている瞬間」

 

「すすすす好きって……ま、待ちなさい。それはあれよね?LIKE的な意味でしょ?もちろん私も貴方の事は」

 

「LOVEの意味に決まってるじゃん。好きな人と心と体で通じ合った時、俺は一番マハトマを感じるよ。さぁ、俺は貴女の求めていた答えを示したよ?エレナはどうしたい?」

 

「ど、どどどどどどうしたいって?」

 

 くすぐるように手の甲をなぞってくるマスターの指にどうしようもない痺れを感じながら、エレナの思考回路はパンクしていた。

 

(あ、あ、あ、あ、あれ?何でこんな事になっているの?わ、私はただ彼から感じているマハトマを知りたくて……。あぁ、けど一応答えは示してもらったのよね……。あ、やだ、顔ちかい……)

 

「エレナはただ単にマハトマを知りたいの?それとも俺と一緒に俺が感じているマハトマを知りたいの?」

 

 身を乗り出し、恋人繋ぎのように指を絡めながら、上気しているエレナの顔へと近づいていくマスター。まるで百戦錬磨のホストに本気で迫られた生娘のようにエレナはテンぱっていた。

 

「れ、れむりあぁ……」

 

 もうエレナは自分が何を言っているのかすらもわからなかった。

 空いている片方の手で顎をくいっと持ち上げられて、お互いの吐息が混ざり合う距離まで接近する二人の顔。

 

「俺はエレナと一緒にマハトマを感じたいな」

 

 自身の半分も生きていない男の子に手玉に取られるこの状況。だが、エレナに悔しさも憤りも一切無かった。

 ずっとずっとここ最近、逃げ続けていた男の子とこんな近い距離で触れ合える事が恥ずかし過ぎて、それ以上に嬉しかった。

 

 彼に(マハトマ)を感じていたエレナの答えは決まっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この格好はどうかと思うわ。変態的よ……」

 

 自身のベッドの上でエレナは寝ころんでいた。

 リボンで後ろ髪を結い、先程の恰好とは異なり、胸元に「えれな」と文字がプリントされたスクール水着を着て、横にさせられていた。

 恥ずかし気に頬を赤らめ、抗議するような視線を受け流すマスター。

 

「いいんだよ、変態的で。ある意味……そういう性癖を露わにするってのは相手に対する信頼とも言えるしね。この人なら俺の想いを絶対に受け入れてくれるだろうっていう信頼がさ」

 

「むぅ、そういう言い方はズルいわ……」

 

「それに俺の国じゃ、この古き良きデザインのスクール水着も廃止されるっていう方向になってるんだ。遠い未来……もしかしたら、もう見れる事も無くなるアーティファクトになるかもしれないからさ。エレナみたいなミステリアスな大人の女性に着て欲しかったんだ……。駄目かな?」

 

「もうっ、しょうがないわねぇ」

 

 子犬のように保護欲そそられる瞳で縋られてしまったらエレナも断る事は出来なかった。

 スクール水着がアーティファクトとか、大人の女性に着て欲しいとか、このマスター……本心だろうがこうもまぁ、女を誑かす台詞がポンポン出てくるわけだ。それにノせられてしまっている彼女も彼女だが。

 

「それで、ここから私はどうすればいいわけ?」

 

「とりわけ、今すぐに何かして欲しいって事はないかな?言ったでしょ?好きな人と体を触れ合う時にマハトマを感じるって」

 

「んひぅっ……あっ」

 

 隣に腰かけているマスターの指が剥きだしになったエレナの太腿の上を滑っていく。くすぐったいのに不快じゃなく、どこか心地良いような未知の感覚に翻弄されながらもエレナはされるがままにあった。

 マスターはぷにぷにと柔らかくシミ一つない肌の感触を楽しみ続ける。

 

 子供向けの水着に身を包み、外見は子供だろうともその中身は年齢不詳の夫人。

 ベッドの上でマスターに太腿を撫でられながら、息を漏らし続ける姿は非常にインモラルだった。

 

「あっ!む、ねぇ……」

 

 太腿を触れていた手は「えれな」の文字がプリントされた部分……胸の方へと伸びる。ピッチリと肌にくっつくスクール水着の上から隆起の無い胸部をマスターの手が両手でゆっくりと擦る。

 

「どう、マハトマを感じる?」

 

「わ、わかんないわ……あっ、ふぅ、んぅ」

 

 ここまで来るともうマハトマが隠語にしか思えないのだが、二人は至って大真面目。

 マスターに胸を愛撫され続けるエレナは頭にやってくる痺れるような刺激を必死に分析しようとしている……好きな人と触れ合うと感じるもの……これがマスターの感じていたマハトマなのかと。

 

「こうするともっと感じると思うんだよね」

 

「ひぅっ!あっ!あぁっ!なにこれぇ……!そこぉ!!体がビクンってえぇ……!!」

 

 脱がさなくともこの男は正確にエレナの乳首を探り当てる。

 彼女の胸の先端をマスターの指先が擽り続ける。強く押し付け過ぎない絶妙な力加減で両方の乳頭を人差し指でスイッチのように細かく上下に弄られ続ける。

 

「んぅっ!あぁっ!あっ……まって、頭、何も考えられなくなっちゃうわ……指止めてぇ……!かりかりするのぉ、とめてぇ……!あひぃっ!」

 

「考えるんじゃなくて、感じるだよエレナ。拒絶するんじゃなくて受け入れるんだよ全てを。ほら、頭の中が光でいっぱいになってるんじゃない?」

 

「う……うんぅ……なってる、なってる、チカチカって……点滅してぇ……これがあなたの……あぅんぅっ……!マハトマなのぉっ……?ひゃぅうっ!!」

 

 打ち上げられた魚のようにベッドの上で痙攣し続けるエレナ。その様子を愛でるようにひたすら胸を愛撫するマスター。触れば触るほど、喘ぎながらも健気にもマスターのマハトマとやらを探ろうとするエレナは極上の楽器だった。

 

 マスターの淫靡な指に奏でられるスクール水着の夫人。下腹部から不自然な程の熱を感じていた。

 

 彼はエレナの左胸を愛撫していた手を股間の方へと移す。脱がす事も直接触れる事も今はしない。服の上からでも十分に悶えてくれるなら、スクール水着のまま絶頂させてあげないとこの服を着せた意味がない。

 

 未成熟な体、子供の服。成熟した精神、アダルトな反応。そのアンバランスこそが興奮を高まる最高の調味料になるのだから。

 

「んにゃああ!そ、こも触れるのぉ……!?」

 

「あぁ、そうだよエレナ。俺のマハトマを知りたいのなら、俺の全てを全身で感じてもらわないと駄目だよ。エレナの体で触れてない所は無いってぐらいに」

 

「ちょ、ちょっと恥ずかしいわ……あふぅぅんっ!!」

 

 上下の淫部を責められ、ブリッジのように体を仰け反らせるエレナ……。もう既に限界は近いようだった。

 逃れようとしても逃れられない。まな板の上の魚のように。彼女はただマスターにひたすら未知の快感という名の課外授業を腰を激しく上下させながら受講していた。

 焦点の合わない瞳、酸素を求めるように空いた口からはいやらしい吐息と嬌声しか出てこない。

 

「あっ、あっ――、あっ――……!い、いっ……イッくぅ……」

 

 グングンと全身に拡がっていくような信号がエレナの体の中を駆け巡っていた。これが彼の言っていたマハトマのなのか?知識としては、あるいは偶に慰めていた時に感じた性的絶頂とは次元の違うナニかが彼女の中で解放されようとした瞬間――――。

 

「はい、一旦中断」

 

「はぇ?………にゃ、にゃんで……?」

 

 ポスンと浮いてた腰がベッドの上に落ちる。荒く呼吸をしていたエレナの体は艶っぽいことこの上無かった。

 突如として至福の時間を与えてくれていた手が止まった事にエレナは泣きそうな顔で疑問を投げかける。まさかこんなギリギリで生殺しのような真似をさせられるとは思ってもいなかったから。

 

「エレナがさ、本気で俺のマハトマを知りたいと思ってるなら。こんな所でイカさせたら勿体無いなって思ってさ」

 

「……ふぇ……?」

 

 涎を垂らし、全身を弛緩させている彼女はいまいちマスターが何を言いたいのか理解していなかった。

 

「限界まで、高めに高めて、焦らしに焦らしてそして最高の瞬間に解放しようと思わない?俺とグチョグチョに全身で絡み合ってどうしようもないくらいに昂ったその瞬間に俺のマハトマをエレナの中にさ……」

 

 ツンツンとエレナの下腹部を突くマスターの提案に、エレナの選択肢は一つしかなかった。

 

 さてさて今の彼女の頭の中にある欲望はマスターのマハトマを知りたい事なのか……それとも……。

 答えは獣欲に染まったエレナの瞳だけが知っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んひゅぅ……あっ、あっ……ヌルヌルするぅ。ひゃうぅぅ……ねぇ、これは何なのかしら?」

 

 非現実的な光景だった。まるでR18なRPGゲームにありがちなCG絵のように。

 

 服装もスクール水着から黒のマイクロビキニにチェンジしたエレナの全身を白いスライム状の物体が包み込んでいた。気泡を出し、そのスライムがエレナの体を軽くまさぐる度に色っぽい声が彼女の口から漏れる。

 

「前に勇者エリちゃんと長い長い導かれし冒険をした時に拾った物でね。まぁ、その後も俺の魔力を流し込みまくったこれを使ってエリちゃんを始めとして色んな娘達と楽しんでいたら、いつの間にか緑の定番なスライム色から白色になってんだよ。不思議な事もあるもんだ」

 

 かつてマスターの性的おもちゃ(エリゴンクエスト 導かれし者たち 下の巻参照)として猛威を振るったグリーンスライムの残骸はまるでこの性欲魔人を象徴するかのような白色のスライムへと変貌を遂げていた。……白……『白のビースト』……ウッ、頭が。

 

「んっんっ、なるほど、通りで貴方の温もりを感じると思ったわ。……あっ、はぁ……このスライムは貴方の魔力で構成されているというのなら…………んふぅっ、この色も貴方自身の属性を象徴するとも言えるのかしら……あん!こらっ……人が喋ってるんだから、おいたは駄目よ……」

 

 ファンタジーな世界で敵モンスターに捕らえられた美少女キャラの如くエレナの今の姿は非常に卑猥だった。

 顔だけは出して、それ以外の全身は手先から足先まで全てスライムに飲み込まれ、四つん這いの体勢をされてしまっている。

 

 エレナの頭の高さはマスターの腰とほぼ同じ位置。彼女の顔の前で立っているマスターはゆっくりとズボンを下ろした。

 

「わぁおぉ……」

 

 身動きの取れないエレナは自身の眼前に現れたソレに思わず感嘆の声を上げてしまった。もし、拘束が無かったら好奇心の赴くままに触りまくっていたかもしれない。しかし、四肢をスライムに飲み込まれているエレナが今にも顔に触れる距離で迫っている剛直を調べる方法は一つしかなかった。

 

「これを……舐めろっていうの?」

 

「うん。エレナが俺のマハトマを知りたいっていうなら必要な事だから」

 

「ふ、ふふ……あんまり大人をからかう物じゃないわよ。こんな恥ずかしい体勢で貴方のそこを舐めるなんて……れろっ、ちゅっ、ちゅっ」

 

「っ……とそう言いながらも既に舌でチロチロしてくれてるのはどういう事なのかな?」

 

「はいあらきっ(驚愕の意)!?わ、私は何を!?」

 

 無意識に亀頭を舌先で舐め、我に返ったエレナだったがその目線は未だ脈立つマスターの剛直に釘付けだった。餌を前にした犬を彷彿とさせるように口はだらしなく開き、いつでも凶悪なホットドッグを迎え入れる準備が出来ていた。

 

「ほら、エレナそのままあーんして。知りたい物があるのなら外聞とか気恥ずかしさとか捨てないと。あぁ、けどこうやって羞恥心に悶えてるエレナも凄く魅力的だからこのまま焦らし続けてもいいかな?」

 

「ば、馬鹿にして――あひぅっ!ま、待って……!これっ、ちょっとどこに吸い付いてぇ、んにゃぁっ!!」

 

 マスターのもう一つの体のように彼の意志に従って、白いスライムが本格的に蠢き始めた。黒い面積の少ないトップ部分をずらし、先程はスクール水着の下で弄られ続けていた桜色のエレナらしい蕾が露わになる。

 

 半透明色のスライムからは彼女の乳首の屹立具合が見て取れる。そして流体状のスライム吸盤のような形を造りエレナの可愛らしい乳頭に吸い付いていた。マスター温もりを感じるスライムで全身を包まれながら、敏感な場所を非日常的なモノに吸われる快感の未知数は計り知れない。

 

「へぇあっ!あっ、あっあっ……!!そんなおっぱいぃ……ちゅうちゅう、吸わないでぇぇ……とれちゃうぅ、とれちゃうからぁ……ひうぅぁあっ……!」

 

 そして胸だけでは終わらない。守りが薄いエレナの全身を手の指、足の指、その先、間まで余す所なく撫でまわす。マスターの温もりを持ちながらもヌルヌルとした普通の人間には出せない感触。飲み込まれたスライムに全身愛撫をされたエレナは抵抗も出来ずに喘ぎ続ける。

 

「ひぅぁぁあっ……!あぁっ!あはぁっ……!!くすぐったいぃ……ははっ!!だめだってばっ……んひゃああぁっ……あっ、んふぁあっ、むり、むりぃ……こんなの耐えれないってばぁ……あっ、あっ、まるで全身をマスターに咥えられているみたいでぇ……」

 

 スライムからの脱出も叶わない。エレナ嬢は文字通りマスターにその肢体を食されているのだ。

 ゴボゴボと音を立て、形を歪め、色んな方向からエレナの体を凌辱するマスター・スライム。その気になれば絶頂に誘う事は容易なのだが、それはまだしない。

 

「あっ、やぁっ……!水着脱がさないでぇぇ……ひぅぅぅ!!あぁぁんぅぅ!!だめぇ、恥ずかしい所、ぐちゅぐちゅってぇ擦らないでぇぇ……」

 

 十分にビキニ姿のエレナの痴態は楽しんだとして、上下の水着を脱がせ、ペッと外に吐き出したスライムは本格的に剥きだしになったクレパスの上を解すように愛撫する。中に入る事はせず、あくまで表面を撫でるだけに留まっていた。エレナの初めてを奪うのは今彼女の目の前にある肉棒でなければならないのだから。

 

「ほら、俺のマハトマを知りたいんでしょ?休んでる暇はないよエレナ」

 

「はむぅっ!んむぅっ……んんふぅっっ!!」

 

 だらしなく開いていた口の中に剛直を突っ込まれる。熱く硬く生々しい程に男の匂いを感じさせる陰茎はエレナの口を問答無用で犯していた。

 

(あっ、あぁぁっ……。口の中にペニスを突っ込まれて、体中はこの子の魔力で構成されたスライムに触られ続けて…………あぁ、頭の中が多幸感がいっぱいになって…………すごい、すごいわ、これが貴方が感じていたマハトマなの?)

 

「んぶぅっ……んちゅぅ、んんぅぅっ、んぶぅっ、じゅぅ、じゅぽ、じゅぽぉぉっ」

 

 学術的興味かそれとも女としての本能か……唯一自由がきく口内を必死に動かしていた。マスターの肉棒の肌質、温度、匂い、味、動き方、その全てを脳髄に刻み込もうとするが、すぐにやってくる快楽の波が掻き消してしまう。

 

(だめ、だめぇ……。もっともっと彼の全部を覚えないとぉ……。この子のマハトマが何なのかわかんなくなっちゃうぅぅ……あぁぁ、またキモちいいので消えちゃってぇぇ――……)

 

「余計な事は考えないでいいよエレナ。さっきも言ったでしょ?考えるじゃなくて感じるんだって。今だけは頭を空っぽにしてさ、与えられる快楽と目の前にいる俺だけの事を感じて。そしたらきっと俺と同じ景色が見えるからさ」

 

「んじゅ!んじゅぅ!!んんぶぅっ!じゅぼっ、じゅぼぉっ!!んむむぅぅっ!!んぐぅっ!!」

 

 マスターの言葉に体で応えようと、エレナのちっちゃい口は必死に動く。舌と唇で少しでもこの男性器と深く混ざり合おうと卑猥で熱心なフェラを続けていた。

 

 涙目で自身の逸物を激しくフェラをするエレナの姿は普段のギャップも相まってマスターの性的興奮をより高めてくれる。

 

 エレナの頭はマスターに抑えられ、彼の腰の動きと呼応するようにエレナの体全体を動かすスライムによってイラマチオをさせられている彼女の表情はどんどんいつもの知的な表情から快楽に溺れるはしたない雌の顔へと変貌していく。

 

 吸われ、痛くない程度に伸びる乳房。ゲル状の物質に撫でられ続ける肌。そして愛汁を潤滑液に擦られ続ける淫裂。マスターのスライムの中で全身を愛されているエレナの体をどんどん卑猥に作り変えられていく。

 

(全身を彼の温もりで包まれて、雄の匂いも嗅がされて、味わされて……もう、体の表面も中も恥ずかしい所も全部、この子に知られちゃって……。あぁ、あぁ、何もかも頭も体も彼の事でいっぱいになって彼の事しか考えられなくなって……マハトマ……マハトマ?これがマハトマなの?私の知っているマハトマとは違う……でもこっちの方が今は……)

 

 昂りに昂った性感。そしてマスター自身も欲望を吐き出そうとした瞬間、唐突にその淫靡な交わりは中断された。

 

「んばぁっ……!!やぁぁっ……!いやぁ……どう、してぇ……!」

 

 抜かれてしまい、自身の口から遠く離れてしまう魅惑の性器。手は伸ばせない。首を伸ばしてももう届かない。玩具を取り上げられた幼児のようにエレナは泣きそうな顔をした。いやしくもマスターのマハトマ(チンポ)へと舌を伸ばしながら。

 

「言ったでしょ。限界まで高めに高めて、焦らしに焦らしてそして最高の瞬間に解放するって。次のメインディッシュで嫌って言う程味合わせてあげるからさ。俺のマハトマをね」

 

「あんぅっ!」

 

 全裸のまま、謎の粘液で全身をグチョグチョにさせてベッドの上に吐き出されるエレナ。

 マスターの言葉に未知の大陸を見つけた時と同じようにあるいはそれ以上に瞳を輝かせてベッドの上で股を開いていた。下腹部の中で燃え上がっている疼きを早く鎮めて欲しいとねだるようにいやらしく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結われた髪も解かれて、いつもの短髪のままどこもまでも淫らな表情を浮かべていた。

 スライムの粘液と自身の汗と愛液で全身を濡らしているエレナの満身はマスターの指先がツンと触れる度にまるで電流が走ったかのように激しく痙攣する。

 

 だが足りない。彼女が求めているマハトマはこの程度の快感ではまるで足りない。

 

「ねぇ……はや、くぅ……」

 

「違うよエレナ。俺から挿れるんじゃない。貴女から受け入れるんだ」

 

「え?きゃっ」

 

 寝転がっていた軽い彼女の体を起き上がらせて、膝立ちにさせる。

 エレナの膝の間には座りこんだマスターの足と彼女との性交の瞬間を待ち侘びている剛直があった。

 

「いつだってエレナは自分の足で、自分の意志であらゆる未知に飛び込んできた。なら今回も貴女からその一歩を踏み出すべきだ」

 

「私から……貴方を受け入れる……」

 

「そう。受け入れる事だよエレナ。『安心を』『語らいを』『温もりを』『接吻を』『愛撫を』『手淫を』『口淫を』『前戯を』『フェラを』『視姦を』『自慰を』『姦淫を』『性交を』『羞恥を』『興奮を』『情欲を』『昂りを』『快感を』『悦楽を』『絶頂を』『倒錯感を』『愛情を』『膣液を』『肉棒を』『俺の精液を』そうすればきっと俺みたいに白く輝くマハトマを感じる事が出来るよ」

 

 マスターの言葉にエレナの呼吸はどんどん激しくなる。

 欲しくて堪らない。少し膝を落とせば、自身の一番大事な入ってくるであろう彼のそそり立つ逸物が欲しくて仕方がなかった。

 

「だから改めてもう一回聞こうかなエレナ。貴女はただ単にマハトマを知りたいのか。それとも俺と一緒にマハトマを感じたいのか。貴女の口から直接……」

 

「ず、ずるいわ。散々生殺しにして、こんな極限の状態でそんな質問……」

 

「うん。俺はずるいよ。だってここまで追い詰めないとまたエレナってばさっきみたいに逃げちゃうでしょ?」

 

 ぷにっと細身の脇腹を掴まれるだけで激しい声が漏れるぐらいにはもうエレナは出来上がっていた。

 心の奥底ではもう決まっていた。只、それを言葉に出すのが気恥ずかしかっただけ。いい年でありながらまるで生娘のように。

 

「わかったわ……」

 

 ここまで来たのなら恥ずかしがる方が無粋。心の赴くままに知識欲を性欲をそして……彼に対する愛情を貪ろうではないか。

 

「……もう、自分の気持ちを誤魔化すのは止めるわ。そうやって自分を偽るのは私が一番嫌いだもの……。正直に言うわ。マハトマじゃないの。貴方のドロドロと溶け合って、獣のように叫んで、一緒に貴方の知るマハトマを感じたいの。そこに貴方がいないと駄目なの……マハトマだけじゃ駄目なの…………。だから挿れるわ。ただ貴方とセックスしたいっていう私の本能に従って」

 

「ようこそ。この素晴らしき快楽空間へ」

 

 まずは1回。熱く滾る亀頭とエレナの雌の入り口が触れた瞬間。

 

「アあっっ――――!」

 

 そして狭く最高の締まりを持つ膣道を通って最奥にたどり着くまで2回。

 

「んあ゛ぁぁあ゛っ……!!!」

 

 そして最後に子宮口と肉棒がキスをした瞬間に4回。

 

「んぃぅんぅっ!!ああぁぁあっっ!!ンひゃああああぁっ――――……!!」

 

 焦らしに焦らされ、既にマスターに開発されていたエレナはこの一瞬の挿入動作の中で計7回達した。

 想いを通じ合わせた男の人とのセックス。エレナの脳内にはドーパミンがドバドバと溢れ続けていた。それこそ、未知の世界、彼女が普段通じているというマハトマとやらに匹敵する程……いや、もしかしたらそれ以上の未知たる光景が拡がっていた。

 

「もっと、もっと、もっとぉ……感じさせて、私の頭の中をあなたでいっぱいにぃ……んふぅぁ!!」

 

 対面座位で向かい合うエレナはか細い手をマスターの背に回し、貪欲に腰を動かし始めた。

 ぬちゅる、パンパンと卑猥な水音を立てるエレナの脳も視界もマスターの事でいっぱいになっていた。

 

「すごぉい、すごぉいわぁっ、あっ、あっ……はぁうんんぅ!これがあなたのマハトマ……すご過ぎぃよぉ!……あっ、はぁんうぅ!!体中で爆発しちゃってぇ……ひぅぅぅぅんぅっ!また、おっぱいぃぃぃ……!」

 

 はしたなく勃っていた乳首はマスターにしゃぶられ、エレナの声は一際大きくなる。コリコリとその極上のおしゃぶりを楽しみながら、快感を与えれば与える程、さらに激しく腰を動かし続ける彼女の表情は喜色に満ちていた。

 もうこの性交の最中に何回エレナは達しているのか考えるのも馬鹿らしくなっていく。

 

「やぁぁっ!ひゅぅっ……!舐め方ぁ……スライムよりもねちっこくてぇ……はぁっ……あぁぁっ!!生温かくてぇ……あなたの舌に感じすぎちゃう……んふぅっ!!……」

 

 舌先で突かれ、蛇の捕らわれた獲物のように絡められる。繊細かつ淫靡な舐め方にまるで乳首の先から潮を吹いてしまうのでは?と思うぐらいの凄まじい快楽を感じていた。

 

(これが貴方の言っていたマハトマ……。好きな人と心と体で通じ合った時に見える景色……。今、貴方と一緒にマハトマを感じているのね……)

 

「あんぅ、はぁ、はぁっ……!ねぇ……あなたも、感じているの……?いま、んぅぁ……どんな景色が見えているのぉ……?」

 

「ちゅっぽっ…………勿論、エレナの全部だよ。一喜一憂、一挙手一投足、膣の動きから匂いまで、ありとあらゆる全てがエレナ一色で染まっているよ」

 

「えぇ……えぇっ。私も、私もよぉっ……!あっ……んふぁぁっ!はうぅぅん!!……嬉しい、嬉しいわぁっ……!今、私達の世界は一つになって混ざり合ってるのぉ……!もう、私も貴方の事しか、考えれないのぉ……イってぇ……イキ過ぎてぇ……」

 

 四肢でマスターの全身に縋りつき、途方もない愛と快楽を送られて、エレナの頭はパンク寸前だった。

 1分しか交わってないような気がするし、もう3日ぐらい交わっているような気もする。細かいエクスタシーを入れるともうエレナは自分が何回イッたのか正確に把握はしていないだろう。

 

 今の彼女は。マスターと誰に憚る事なく愛し合い、犯され、未知の世界を見せられ続けているエレナの頭は彼の事で――――。

 

()()()()の事でいっぱいなのぉ……!!」

 

 本来の彼女なら、マハトマこそがマスターの存在に当たるとしているエレナなら言わない台詞。

 だが、今の彼女は高次元とも言える愛と快楽を彼に塗り込まれている。挿入し、自身の肢体を余す事なく喰らっている彼こそが、先程から光り輝く世界を見せ続けてくれる彼こそがマスター(マハトマ)なのではと。

 

 事の真偽がどうなのかは当人同士でしかわからない。ただこの二人の性の交わりにおいてはっきりとしているのはもう目の前の異性の事しか頭に無い。

 

「ほら、エレナ……舌出して、もっと、もっとグチョグチョにならないとマハトマを感じられないよ?」

 

「うん、うんぅぅっ……んあぁっ、はぁぅうんん……する、するぅ……キスぅ…………きしゅするぅ……んむぅ、ちゅぅ、ちゅぅ……」

 

 興奮が高まり、混ざり合う全身の汗。性器の抜去動作で垂れ流れる愛液。淫らに交換し合う唾液。ありとあらゆる汁でエレナとマスターはグチョグチョに溶け合っていた。

 

「んふぅっ!んんっ、んん、んちゅぅ、んむぅっ、んあああぁっ……あんんむぅ……!!」

 

 エレナは決して自身の体が女性的な魅力があるとは思っていなかった。

 他の豊満でくびれある魅惑的なスタイルも無い、中身と比例していない未成熟な体。

 

 だが目の前にいるマスターは本気で自身の体に溺れてくれている。疑う余地も無く。

 キスの最中、エレナ、エレナと自分を呼びかける声が口内にこだまするのが堪らない。まるで言霊となってイキ続けている自身を気絶しないように力をくれているようだった。

 

「んぁ、ますたぁ……ちゅ、ちゅんぅ……んむ、んちゅ……ますたぁ…………んぇあぁっ……あ゛あ゛゛……!!」

 

 愛しい人の名を呼び続ける。

 彼のカリが肉襞を抉り、そして鈴口から先走りが子宮口を濡らしているのがはっきりとわかった。

 

 一際エレナの反応が大きくなる。

 彼女のスキル「魔力同調:C」……。汗と唾液、そしてカウパー液といった体液という形でマスターの魔力を接種し、その魔力を意図してなのか……賦活させてしまったエレナの乱れっぷりはさらに加速する。

 

「あっ!あっぁっ!!はぁっんんぅぅあぁっ!幸せ過ぎてぇぇ……駄目に、なるんんんぅぅぁっ、んむぅ、ちゅぅ、ちゅむぅぅ……れろぉぉ……マスターのマハトマちんぽが素敵すぎてぇぇ……こんなにイイならもっと早く知っておけばよかったわぁ……あああぁ゛んぅぅっぁっ!!」

 

 イキ狂い。

 完全にマスターのマハトマ(隠語)に夢中になったエレナは腰を上下だけではなく左右前後に動かし、あらゆる角度から彼の肉棒の感触を愉しんでいた。

 

「ひぐぅっ!!あひぅっ!!ああぁっ……あふぅんぅぅぅっ!!しんじゃうぅっ!しんじゃうぅぅぅぅ!!あぁ、んぁぁっ!!あ゛あ゛ぅぅぅっ!!」

 

 そして、このレベルの体液でよがっているエレナがもし本命の……マスターの白く濁ったスペルマをぶちまけられたらどうなってしまうのか。

 

「別の世界に……イかせてあげるよ……エレナッ……!」

 

「うん、イク、イク、イクイクイクイクいくいくいく……イっ――――……!!」

 

 膨らむ肉棒、最奥まで突き刺さる剛直。隙間なく触れ合う二人の下腹部と唇。汗でベトベトになった素肌を密接させ、今まで溜めた最高のマハトマをエレナの膣奥に放つ。

 

 魔力同調によって活性化した規格外の精液を注ぎ込まれた彼女の瞳には心震わすの新大陸でも見えているのかもしれない。

 

「ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ぅぅぅぅぅっ………!!!ん゛むぅぅぅぅん゛ん゛ん゛ぅっ!!ん゛ぐぅぅぅぅ……!!」

 

 舌を吸われ、擦り合っている乳首からも快楽を送りこまれ、子宮部屋をマハトマで満たされている彼女は白目を剥きながら、声にならない悦びの悲鳴を上げる。

 

 結論:エレナは死ぬ(性的に)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……あへぇぁ……あんぅぅっ!んふぅぁっ……!ますたぁ、ますたぁ……」

 

 最高の射精をした後、未だ離れる事なくマスターの腰の上で喘ぎ続けるエレナ。そんな二人の部屋に訪問者が。

 

「エレナをマハトマから寝取って舐める脇の味はうまいか?マスター」

 

「……れろぉっ……うまいに決まってんだろ」

 

「ブレないな。さすマス」

 

 今のエレナにはマスターとやらかすきっかけを与えてくれたアルテラの存在は目に入って無かった。頭も瞳にも膣の中もマハトマ(マスター)の事でいっぱいだった。イエス、レムリア(隠語)。マーベラス、ハイアラキ(隠語)。この痴態っぷりにはエレナをマスターに嗾けたアルテラもにっこり。

 

「心配でエレナの様子でも見に来た?」

 

「いや、面白い事になってないなかーって期待して来ただけだぞ」

 

「あっそう……」

 

 ――あひぃ、ひぅぅんんぅ……あんぅぁっ、ますたぁぁっ……もっとぉ……んぅふぅぁあっ!!

 

 エレナの嬌声をBGMに語らい続ける二人。まぁ、アルテラとしても9割ぐらいは愉悦魂があったが、それでもモジモジしていないでさっさと抱かれろと発破をかける気持ちもあったのかもしれない。そうだよ。この引きこもりの文明っ娘だって偶には純粋な良心で動く事だってあるんだよ。

 

「あっそうだマスター。この『白いスライムでネチョネチョになったエレナ(M字開脚)』をプリントした人を駄目にするクッションを」

 

「駄目です」

 

「ちぇ……」

 

 




Q:マハトマって?


A:あぁ!










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Thetans(シータンズ);Gate(ゲート)(ラーマ前編)

エイプリルフールは何かをやらかさないと気が済まない日である。

というわけで感想欄でもちらほら見かけていたラーマきゅん好きの紳士達の為の今話。

ラーマ好きはホモではない。いいね?…………ブラウザバックをしなかった読者諸君には私と共に新世界へと付き合ってもらうよ。




















エロ本編に関してはあまり時系列は気にしないでくださぁい。



 世界にはどんなに願っても、足掻いても、力を尽くしても、無様に手を伸ばし続けても届かないものがある。

 

 人はそれを夢とも言うし、無謀とも言うし、願いとも言う。

 

 たとえ、それがどんなに達成困難な茨の道だろうとも諦めず進み続けた人間達がいるから今日まで人類史という物語は続いてきたのだ。

 

 そして、今日……ここに叶わぬ頂きへと挑み続ける愚か者達の姿があった。

 

「「シータァァァッ!!」」

 

 人類最後のマスターは後ろにいるコサラの王の激励とシンクロし、叫び、光の輪を作り出し続ける。

 カルデアの召喚システムにて、吠え、ひたすらに意志()と命を燃やし、円環の理と戦う男達の姿があった。

 

 一体、幾つの石が犠牲になったか。

 一体、幾つもの涙を流したか。

 

 それでもマスターは回し続けた。この愛すべき少年が妻と出会う悲願があるのなら、それを叶えてあげるのがマスターとしての務めだろうと……。

 

 だが無情にも届かない現実があった。叶えられない大望があった。

 今回はこの人外マスターでも届かなかった……ただそれだけの話。

 

「あ、アァ……」

 

「ま、マスター……」

 

 概念礼装『ミラクル救道者』がパサりと落ちる。あの天真爛漫、唯我独尊を行くマスターらしからぬ絶望の声。

 

 ――消費した石:6000個

 ――召喚した回数:2000回

 

 それが得た結果は彼の周りにある大量のマナプリズムとレアプリズムに概念礼装の山が物語っているだろう。

 

「あれ、あれ……?石がないよ……。おかしいな……。さっきまであんなに山のように石があったのに……。石が無いと召喚出来ないじゃないか……ガチャを回せないじゃないか…………ねぇ、ラーマ……。シータを迎える為にあった石の貯蔵はどこに消えてしまったんだい……?どうして俺の目の前はこんなにまっさらになって……あぁ、気を利かして誰かが掃除でもしてくれたのかな……?」

 

「っ……!もういい、もういいんだ……!休め!休んでくれマスター!」

 

 親を亡くした幼子のような瞳で幽鬼の如く彷徨うマスターのあまりにも痛ましいその様子にラーマは堪らず駆け寄り、力の限り抱き締めた。もういいんだ、もう余の為にこれ以上自分を傷付けないでくれと叫ぶように。

 

「へへっ……。なんて声出してやがるラーマ。俺はまだ、元気イッパイ……だぜ……。ほら、見ろよ。こんな時の為に貯めていた呼符貯金……全部で200枚あるんだぜ……これだけあればまだ戦争に挑めるさ」

 

「頼む……!もう止めてくれマスター……。確かに余はシータと出会いたい……だが、だがっ……決してそんなボロボロになったマスターを見たいと思ったわけではない……もう、止まってくれ……お願いだから、止まって……」

 

「俺にもシューティングゲームの如く、撃っても撃っても尽きないぐらいの無限の聖晶石があったら…………不甲斐ないマスターで、本当にごめん……」

 

 どこにも行かないように渾身の力でマスターを抱き締め続けるラーマ。その瞳には涙が流れていた。それはこれだけの対価を尽くしても妻と出会えないとわかった自身の運命の嘆きか。いや、あるいはいつも自由奔放で悲しみなど知らないようなマスターをここまでボロボロになるまで戦わせてしまった不甲斐なさへの涙かもしれない。

 

 マスターも久しく味わっていなかった敗北の味を今更ながら痛感し、癒しを求めるようにラーマを抱き締め返した。

 召喚ルームにて泣きながらお互いを抱き締め、温もりを感じ合い、慰め合う二人の少年の姿がそこにはあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「落ち着いたか?」

 

「うん、ごめんね?情けない所見せちゃったかな……」

 

 マスターのマイルームに戻り、意気消沈した様子の彼に甲斐甲斐しくもお茶を差し出すラーマ。

 普段なら、「全く、王たる余をお茶くみにする不届き者などマスターぐらいだぞ」と文句も出ていたかもしれないが、今はそんな軽口を出す空気にもならなかった。

 

 マスターのライフワーク、そしてカルデアの戦力確保における貴重な資源を自身の勝手な望みで消費させてしまった罪悪感がラーマの胸によぎっていた。

 

「ハハ、ごめんねラーマ。力なきマスターでさ。自分を支えてくれている友達の願いも叶えられない愚かな男だと笑ってくれ」

 

「何を言うか!余の願いを叶えようと全身全霊に戦争に挑んだマスターを笑う者などいるものか!そんな者がいたら、この一刀の元、斬り伏せててくれる!」

 

 らしくなく弱り切っている彼を拳を上げて励ますラーマ。だが、すぐにその拳も力なく降ろされる。そもそもこんな事になっているのは誰のせいだと。

 

「むしろ斬り伏せられるべきは余かもしれぬ……。余が退き所をもっと早く見極めていたら……。マスターに願いを叶えてもらおうとした余の不徳ゆえだ……。なぁ、マスター、確かに余はシータに会いたい。だがその願いを叶える為に最愛の友を悲しませるような事はしたくないんだ。マスターの元気の無い顔を見ると、余はとても心が痛い」

 

「へへ、何言ってんだよ。別にこれぐらいの爆死……に、日常茶飯事さ」

 

「全身がガックガクに震えて、汗がヤバいぞマスター。今すぐに消費した聖晶石を全て持ってくるのは無理だが……」

 

 先程の大爆死を思い出し、心が折れかかっているマスターの顔に浮かんだ汗を甲斐甲斐しくもタオルで拭き、手をそっとラーマが握った。

 椅子に座っているマスターの足元に寄り添う姫のように。おっきーあたりが見たら、ちょっとマーちゃんとラーくんの距離感が薄い本が厚くなるぐらいに近くなーい?と興奮しそうだが。

 

「シータと会う方法はまた別の方法を探ればよい。今はどうか、汝の傷を癒させて欲しい。マスターには笑顔が似合うからな」

 

「ありがとう、ラーマ……」

 

 自分のせいであの青空のような笑顔が曇ってしまうのは忍びないと跪くラーマはマスターの手を握り続ける。

 彼の男とは思えない柔らかな手をニギニギしながらマスターは礼を述べる。はい、ラーマ君、頬を紅潮させて、「んっ……」とか身じろかない。

 

「『離別の呪い』だよね。ラーマがサーヴァントになってもシータと出会えない理由は」

 

「遺憾ながらも余のスキルにもなってしまっている」

 

 本来なら聖杯でそのスキルを消滅させてしまう事が出来れば万事解決なのだが、沖田の『病弱』スキルすら「残念だが、その願いは私の力を超えている」と治せない聖杯君がこの呪いを解ける筈もなく、肝心の所で使えないレベル上限UPアイテムなのだ。

 

「むのー、聖杯君、むのー」

 

「こと聖杯戦争においてシータは余……ラーマという英霊の異なる側面として扱われている。つまり同一人物の英霊が召喚される事はない聖杯戦争では余達は……並び立つ事が出来ない……」

 

「う――む、けど。それも冷静に考えるとおかしな話だよね?」

 

「何がだ?」

 

 ラーマの一見、正しそうに見える意見にもマスターは疑問を呈したくなった。

 

「だってほら、アルトリア種とか。クー・フーリン種とか」

 

「あ――……」

 

 得心がいったようにラーマは声を上げる。確かに異なる側面というのならあれらこそ当てはまるだろう。青王からオルタ化した王様、中身がヤバい白きリリィ、宇宙からの使者ヒロインX、槍の中でマスター飼育したい王様だったり、そこから黒化した余は悪くないもんだったり……カルデアのガバガバ召喚システムなら元は同一人物扱いだとしても、普通に別個人として存在しているわけであり。ラーマとシータが同時に召喚出来ない理由としては少し弱い。

 

「最初は只の衣装チェンジだけの筈だったエリちゃんもここ最近はハロウィン、勇者、デフォルトって3人に分裂する事も出来るようになったし……」

 

「プラナリアか……あの竜娘は」

 

「トリプルエリちゃんスペシャルベッドライブは美味しかったです」

 

「そ、そうか……。マスターが楽しんでいるようで何よりだ」

 

 分裂したエリザベート達との乱交を想像したのかさらに顔を赤らめてしまうラーマきゅん。もっともその照れはどっちを意識した故なのかは本人しかわからぬが。

 

(ええい!何故、余はマスターの方を想像して照れているのだ……。違う!違うぞシータ!これは不貞行為ではない!うむ、そもそもマスターは同性だしな。何も疚しい事はない筈だ!)

 

 纏う服が一切無いありのままのマスターの妄想から首をブンブンと横に振り、思考を切り替える。

 

「むむむ、なら一体何が足りない。まだまだ余のシータに対する愛の咆哮が足りないとでも言うのか……」

 

 コテンとマスターの手の甲におでこをぶつけながら、ラーマは悩む。何か名案はないかと、もうマスターの悲しい顔は見たくないと彼は必死に考える。そしてやっぱり同性にしてはこの二人非常に距離が近い。

 

「その呪いは……『ラーマ』と『シータ』を生涯すれ違いさせ続ける………………。聖杯戦争ではシータはラーマとして扱われる…………むむっ……!?……なら……いや……もしや……これならっ……?」

 

 ブツブツと呟いていたマスターがハッと雷に打たれたように固まる。

 ラーマの手を握り返していた事からラーマきゅん成分を補給した事による効果か、彼の頭に迷案が閃く。

 

「きたぜ……ぬるりと。この窮地を脱するウルトラCが。君とシータを会わせる事が出来るかもしれない神の一手が……!」

 

「な!ほ、本当か!マスター!!」

 

 マスターの手を握ったままキスでもしてしまいそうになるぐらいに身を乗り出し、彼の顔面ギリギリ至近距離まで迫るラーマ。

 闇に降り立った天才勝負師の如き彼の言葉に瞳を輝かせてこちらを見つめてくるラーマに不敵な笑顔でマスターは頷く。

 

「あぁ、まだ現段階では可能性のレベルの話だが。やってみる価値はある」

 

「そうか……!あっ…………す、すまぬ!少々気安過ぎたな!す、すぐに離れ…………ふみゅっ!?」

 

 お互いの吐息がかかってしまうぐらいにマスターの顔に近づいていた事に今頃気付いたのか、焦りながらすぐに離れようとするラーマの頬を先程まで彼の手を握っていたマスターの手が挟み込む。可愛らしい声を上げて、固まるラーマにマスターは真剣な面持ちで聞いた。

 

「ラーマ、君はシータと会う為ならどんな試練だろうと、苦しみだろうと超えてみせる……。その想いに偽りはないね?」

 

「……あぁ、当然だとも。例えそれがどんなに七難八苦に満ちた獣道だろうとも余は……!必ずシータに巡り会ってみせる!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――その答えが聞きたかった。とマスターはラーマに外出を促し、30分後ぐらいに再び部屋に戻って来て欲しいと頼んだ。

 

 そして、またマスターのマイルームに入った時。先程とは違い、灯り一つ点いていない暗い部屋に白衣を着たマスターが立っていた。

 明らかに異質な空気。ゴクリとラーマは息を飲む。

 

 ドアを開けた事による、廊下からの光だけがマスターの部屋を照らしていた。

 

「マスター……?」

 

「疑問に思っていた」

 

 背を向けていたマスターがこちらに振り向く。

 

「異なる側面として、アルトリアは多数召喚されている。クー・フーリンも召喚されている。その各々が確固たる個として存在している。なのに何故ラーマとシータが並び立つ事が出来ないのか?同一の英霊は存在出来ない?シータはラーマの異なる側面として扱われる?割とガバガバなカルデア式英霊召喚において、そんな道理が通るか?」

 

 未だ、マスターの表情は読めない。白衣をたなびかせ、彼は大仰に演技染みた仕草で言葉を続ける。

 

「生前、猿バーリはラーマに呪いを掛けた。その呪いが英霊としてなった今でも二人を縛り続けている。要するに『ラーマ』というサーヴァントと『シータ』というサーヴァントは絶対に会う事は出来ないとされている……。ここだ、ここが一つの打開点だった」

 

 空気が変わる。そこでラーマは気付いた。彼のベッドの上にある衣装の存在に。

 

「ならば逆説的に『ラーマ』じゃない存在になれば、『シータ』に会えるとも言える。アルトリアとアルトリア・オルタが同時に存在するように。『シータ』と『シータ・オルタ』が一緒にいてもそれはおかしい事ではない」

 

「マスター……ま、まさか、余にシータになれと言うのか……?」

 

 ラーマが釘付けになっていたその衣装は第五特異点でシータが着ていた服と酷似していた。だが、背丈はラーマにぴったり合うように調整され、臍の部分は隠し、スカートもミニスカートながら股間の所は見えないようにシータが着ていた物よりは露出度は控えめに作られていた。ここまでの衣装をたった30分で完成させたマスターも大分気持ち悪いが、今は置いておこう。

 

「どう見てもアルトリアがスポーティなジャージ姿になっただけにしか見えない謎のヒロインXのように言い張り続けろ」

 

「ほんき……なのだな……?余は、余、は……」

 

 ラーマはふざけるなと激怒する事はなかった。マスターが徹頭徹尾本気だという事が心の芯から理解させられていたから。マスターはいつだって余の願いを叶える為に尽力してくれていた。自身が傷付く事さえ省みず。そんなマスターに自分は一体何を捧げてあげる事が出来るのか……ずっとラーマは悩んでいた。

 

(羞恥心……?そんな小さな事で彼の手を払うのか?今ここで彼の案を拒絶する事はかつて()がシータにやった事と同じ事だ……。そんな事は絶対にしちゃいけない。今度は絶対に離さないって決めたんだ……。()はマスターの手を離さない)

 

 部屋の入り口で固まったままだったラーマは歩を進める。

 

(信じている、信じ切っているとも。君の案なら……地獄の底まで付き合うとも)

 

「今日から、シータが召喚されるまで君の名は……ラーマの名は『ラータ』ちゃんだ……。そして何故その名なのかも君ならわかる筈だ」

 

「「特に意味は無い」」

 

 二人の声が重なる。

 

「そうだろう?」

 

 微笑むラーマ。マスターの部屋の一部分しか照らしていなかった光が全体に降り注ぎ、同じく笑うマスターの顔が見えた。ラーマの大好きな青空のような笑顔。

 

 「これより最終ミッションオペレーションラーマーヤナの概要を説明する」

 

 「確定した過去を変えずに結果を変えろ。猿バーリの呪いを受けたラーマとそれによりすれ違い続けた二人。その確定した過去を変えずに結果を変えるのだ」

 

 「君自身を騙せ!」

 

 「英霊の座を……世界を騙せ!」

 

 「それが、シータンズゲートに到達するための条件だ」

 

 「検討を祈る。ヴィシュヌ、バージュ、コングル」

 

 

 差し出された新たな自身に生まれ変わる産声となる衣装を受け取り、もう一方の手でマスターの手を取るラーマ。その顔は凛々しくも勇ましいコサラの王の顔ではなく、どこか咲いたばかりの初々しくも可憐な少女のようで……。

 

 これは悪魔の契約なのか?それとも……。きっとラーマなら、いや『ラータ』なら声高に否定するだろう。これは『未来への一歩』だと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――君の案なら地獄の底まで付き合うとも。

 

「とは言ったもののっ……!」

 

 マスターの自室にて、膝上のきわどい丈をしているミニスカートの裾を真っ赤にしてつまんでいる美少女?の姿があった。乙女の如く、「奥で着替えるから覗くのではないぞ!フリじゃないぞ!絶対にフリじゃないからな!」と着替え終わったラーマ……ではなく『ラータ』ちゃん。

 

「やはりこれは……死ぬほど恥ずかしいっ……!股もスースーするし……世の女子達は皆、このような頼りない衣服をあんなに自信満々に纏っていたのか……」

 

 シータのツインテールと対をなすポニーテール姿で照れ照れのあざとさ100%パーペキ女サーヴァントにしか思えない。

 

「マーベラスぅ」

 

「ふぅぇあぁぃ!?……ままままマスター、にゃにをぉっ!?」

 

 あまりのラータちゃんの可憐さにより感無量の表情で突然のハグをかましたマスター。熱烈な抱擁を受けたラーマはテンパりにテンパっていた。

 

(いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや、余は一体何をパニくっているのだ!今までもマスターとは共に戦った時だったり、訓練の時だったり、お互いを称え合う為に抱擁の一つや二つぐらいしていただろう!あぁ、だけど今の余の姿は……やぁ、ちょっと太腿擦れて……)

 

 これはマスターの背へと抱き締め返すべきなのか混乱中のラータは宙で手をわたわたさせていた。なんだこの可愛い生き物。

 

(はぁ――――ぁぁ……ちかい……ちかぁぃぃぃ、マスターとの距離がちかぁいぃ……ちょっとまって……首元かぐのわぁ……)

 

「すぅ――はぁ――……うっし。ラータきゅん成分補給完了。うん、ラータ君、今の反応実に女の子っぽくてグッドだったよ」

 

「ぁっ…………うむ、女の子っぽいと言われてもな……余は男であって……」

 

 それは褒められているのかと?ジト目でマスターを見詰めるラータ。そういうあざと可愛い行為をデフォでやるからマスターに可愛いと言われるのだが、ちゃんと自覚はあるのだろうか。

 そしてマスターが離れた瞬間、か細く寂しそうな声を上げた自分の事も自覚しているのだろうか。

 

「そこだよ。より『ラーマ』とかけ離れる為にはむしろ女の子らしくなった方が得策。もう英霊の座が『お?なんやこの娘めっちゃ可愛いやんけ。けどラーマは男だよなぁ→じゃあこの娘はラーマじゃないな。→なら、ここにシータを召喚させても全然問題ないな。だってラーマおらへんもん』と思うぐらいに君は女の子に!ラータになるのだ!!愛すべき妻と!出会う為に!!」

 

「そうか。これも必要な試練なのだな……。さすがはマスターだ。良く考えている。……まったく、何を今更、余は躊躇をしていたのだ……。シータと会うためにどんな事だってしてみせると誓った筈なのに……。うむ、うむ!余はもっと女の子らしくなってみせるぞ!マスター!」

 

 ちょろっと騙されてしまうコサラの王様が心配になります。詐欺とかに引っかからないかしら?

 いつもの『ラーマ』らしい凛々しい名残を見せて、ドンと来いとラーマは無い胸を張った。

 

「じゃあ、部屋から出よっか?」

 

「へ?この格好でか?」

 

「モチのロンよ。ラータという存在を確固たる物にする為にはいつまでも部屋には引き籠ってられないでしょうよ。色んな所に行って、色んな人の目に入ってもらって『ラータ』という存在をこの世界に刻み込まないと」

 

「た、確かにその通りだが……。ちょっとまだ心の準備が……。あぁ!マスターまてまて!有無を言わさずサーヴァントを引き摺れる程の膂力で手を引っ張るでない!今の余のは……その、あの、お、おおおお女の子なのだぞ!もっとデリケートにぃぃぃぃぃぃぃぃぁぁぁぁぁぁぁ…………」

 

 マスターに手を引かれ、新たな世界へと飛び立つラータちゃん。

 ラーマだった頃から普通に彼とは手を繋いでいた事はあったが、何故かこの瞬間、今の姿でマスターと手を触れ合っている感触はいつもと違う感じがした。

 

 むず痒くて、照れ臭くて、離したいのに、ずっと離したくないそんな不思議な感触。心の中で持て余しているこの感情を何と呼ぶのかまだ、ラーマ(ラータ)はまだ気付く事はない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 昼頃、恐らく人が一番集まるであろう時間……カルデアの食堂へ赴くマスターに手を引かれ、俯きながらもう一方の手でマスターの服をちょこんとつまむ少女?の姿があった。彼の後ろをピッタリとくっつく新顔に視線が集中する。

 

 

「「マスター(旦那様)の背後は私のだぞ!」」

 

「ハウスせい、ストーカーコンビ。しっかし、キャラ濃度マシマシのカルデアでは珍しい部類じゃのう。パっと見普通の女子にしか思えんが(ニヤニヤ」

 

「まぁ、沖田さんのヒロイン力には敵いませんが!」

 

「そうやって慢心してるから剣豪編の出番も、水着も、第六天魔王さんの相棒ポジも奪われるんですよ♡」

 

「あっ、口と目から血の滝が出てる。人間って怒りの沸点を超えるとこうなるんだ!茶々、また一つ賢くなった!!」

 

「仄かな腐臭を覆い消す程のラブコメ臭が姫センサーにビビっと反応してる!」

 

「なぁ、メディア。やっぱりただの長髪だと味気ないのかな?マスターももしかしたら変わり映えしない私のヘヤースタイルに飽き飽きしているんじゃないかな?いや確かに今の私ならポニーテールだろうと、ツインテールだろうと、サイドテールだろうと、団子だろうと、ドリルヘヤーだろうと自由自在だし、髪伸ばして良かったぁ……って今、心底安心してるけど……。でもよく考えてごらん?これですぐに髪型変えて、あの橙色の娘に影響されたんだろうなーとか二番煎じだなーとか思われでもしたら、私は今すぐ自分をピグレットにしてカルデアの外へと身投げする自信はあるぞ!冷凍豚としてな!あぁ、けどマスターに新しい髪型褒めてもらいたいなー、こう一日中、髪先をクルクルイジってもらって、『もう、朝からこうしてるけど、もっと触りたい所はないのかい?』って私が」

 

「叔母様長い。三行で」

 

「うっう~~ん?何だろう……?こう、他人じゃない気がするというかあの娘はボク達と仲良く出来そうな気がするというか……ねぇ、どう思うデオン?」

 

「私に振っている時点で色んな意味で悪意しかないぞ」

 

「おい!ムニエルが発作を起こしているぞ!」

 

「これはセーラー服ナイトとメイド服ナイトのコンビを見た時と同じ症状だ!早く鎮静剤を打て!!」

 

 彼女の正体に気付いている者、気付いていない者、反応は三者三様だった。突き刺さる視線、視線、視線、ラータである()()は何故かラーマの時のような堂々たる振る舞いをする事が出来なかった。

 

 服一つで、髪型一つで、こうも世界は変わるものなのか……。

 

(いや、余はシータと出会う為にどんな事だってしてみせると誓ったのだ!こんな所で足踏みしてられるものか!!)

 

 意を決して、マスターから手を離し、食堂へと足を踏み入れていくラータ。腰回りでヒラヒラする布が気になって仕方ないが、出来る限り女の子らしさを意識して歩き出す。そんな彼女に近づく一人の男の姿があった。

 

「レディ」

 

「な、なんだ、なんでしょうか?」

 

 円卓最強の騎士、好みのタイプ人妻、最近は娘の冷たい視線が悩みのランスロット卿が紳士的な笑顔で語りかけていた。

 

「あぁ、申し訳ない。怖がらせるつもりは無かったのですが。このカルデアにやって来た新たな仲間には挨拶をしなければと思いまして。いやはや、まるで百合の如き可憐な少女を今日まで気付く事が無かったとは。私の視野の狭さを恥じるばかりです……」

 

「あっはい」

 

 ランスロットは目の前の少女がラーマだと気付いていないし、もちろん彼女が男だとも思っていない。

 まるで我が王を彷彿とさせるラータの凛々しさにこの穀潰しはいち早く動き出したのだ。大丈夫、今の貴方も十分に視野が狭いです。

 

「それでよろしければ、この後どうですかお茶でも?これからと共に戦う仲間として、お互いの事をよく知り合いたいと私は思うのですが……」

 

「あぅ、えっと余、わ、私は…………そのぉ…………ま、ますたぁっ……!」

 

 ラーマの時だったら特に武人衆だったり戦士衆とも普通に接する事は出来たが、何故かは今はその普通が出来ない。いつもと違う服。女子として扱われている事実。そして、異性として目の前の男に誘われているという今まで一度も経験した事のなかった事実にラータは極度の緊張と恐慌状態に陥り、半泣きになりながらマスターの背に隠れてしまった。

 

 「ラータ、今の反応は非常にグッドだ。ラーマとかけ離れた女の子らしい反応。君は順調に『ラータ』になっている」

 

 「そ、そうなのか。今のが正解なのか。女性とは難しいな……」

 

 小声で背にいるラータを褒め称えるマスター。まるで箱入り娘を思わせる初心っぷり、男の人怖いです!とマスターの背後に隠れる小動物らしきリアクションは一部の層を悶絶させる事間違いないだろう。

 そのマスターも男だろうって?何を言う、男に対して免疫の無い深窓の令嬢が男だろうとも唯一信頼を寄せてくれるシチュエーションとか超滾るじゃないか。

 

 

「あ!麗しきの君よ!せめて名前だけでmぉっぅぶるぅっぁっ!?」

 

「すみません、先輩とそこの新しい方。ちょっとこのゴミを片付けてきますんで」

 

 娘からの愛情表現(盾で頭を殴打)で意識を失ったお父さんはそのままマシュに引きづられていく。

 きっとお父さんも久々の娘とのスキンシップで嬉しくなっているかもしれない。

 マスターとラータは何も言わず、その背後を見送った。

 

 

「いよしっ!この調子で行ってみようか!」

 

「余はもう心が折れそうだが……。これもマスターとシータの為、何だってやってやろうじゃないか!」

 

 

 

 

 

 

 

 ――そうしてラータは女子力アップの為に若干やけくそになりながらステップアップしていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《女子?会》

 

 シミュレーションで再現された色とりどりの花達に囲まれたテラスにて、姦しくも女子?達が一堂に介していた。大きめの丸形テーブルを囲み、お茶やお菓子を楽しむ女子?達。

 

 当然、女子?会でもあるのでマスターは参加していない。こういう時は頑張って一人で行くものだよと諭されてしまったのなら、ラータも一緒に着て欲しいと強くは言えなかった。

 

 この女子?会のメンバーは……。

 

 マーリン(ラーマだと気付いている)。

 哪吒(ラーマだと気付いている)。

 デオン(ラーマだと気付いている)。

 アストルフォ(さっきデオンにラーマだと教えてもらった)。

 ラータ(バレてないと思っている)。

 

 の計5人。どっからどう見ても女子会である。

 

「此の面子 悪意有 女子会 疑問」

 

「いやいや女子会以外の何物でもないだろう?私も含めて、花も恥じらう乙女ばかりだ」

 

「自分で言うか……。それで、ラー…………タはもっと女子力を上げたいという悩みだったか?」

 

「ふっふーん。そういう事ならボクにお任せだね!マスターがメロメロになっちゃうぐらいの可愛さテクニックを伝授しよう!」

 

「ま、まてまて、余……わ、私は別にマスターとそういう関係になりたいのではなくて」

 

「およよ?じゃあなんで?」

 

「それはもちろん…………いや、何でもない」

 

 性別が色々と曖昧勢に囲まれているラータは落ち着かない雰囲気で困惑していた。ここで馬鹿正直に「シータと出会う為だ!」と言うわけにもいかず、ラータは口ごもる。だが口ごもった理由は本当にそれだけ?シータと会いたいという願いに偽りは無い。だが今の自分が抱えている願いは本当にそれだけなのだろうか。

 

「使いやすい言葉で話せばいいじゃないか。そもそも一人称が『余』の女性など珍しくも無いだろう」

 

「余☆を呼んだか!」

 

「誰も 呼んでない 暴君 帰宅 推奨」 

 

 デオンの言葉に赤王ちゃまが皇帝特権でダイナミックエントリー。噂をすれば暴君がやってくる。余は美少女も美少年も大好きだ!と公言する皇帝様にはこの花園は非常に魅力的に映るだろう。

 

「そもそもあんなにマスターしゅきしゅきオーラを振り撒いておいて、そういう関係になりたくないなんて言い分は通らないんじゃないかな。ボクの蒸発した目は誤魔化せないぞ!」

 

「どんな目だそれは……。とにかく、余は何と言われようともマスターを異性として見た事など一度も無い!あくまで彼とは信頼とかそういう友愛の感情であって!確かに手とか体を触れられるとドキドキするし、食堂で背に隠れた時も安心感を得ていたが、そこにそういった疚しい感情は一切無い!」

 

 若干墓穴を掘っている感じはあるが、それでもラータはマスターを異性としては見ていないと言い切った。その瞬間、棘が刺さったような胸の痛みを無視しながら。

 

 ズキリとその痛みを誤魔化すようにラータはお茶を飲む。そしてそんなラータちゃんを微笑ましく見守りながら、マーリンとネロはコソコソと本人に聞こえるようにお話をしていた。

 

「ところで奥さん、聞いて下さいよ」

 

「余は確かにマスターの妻だが、何だ?」

 

「この間、バレンタインがあったじゃないか。マスターは女性サーヴァントからチョコを。そしてマスターは男性サーヴァントにチョコを」

 

「うむうむ。余もお返しのホワイトデーにはそれはもう濃厚な物を頂いたがなぁ……うぇへへへへ」

 

「涎が出てますよ皇帝陛下。それでチョコをもらった男性サーヴァントもバレンタインデーの内に思い思いのお返しをマスターにしたわけだけど……あの『ラーマ』君って子がいるじゃない?」

 

「おぉ!インド神話に名高きあの幼き少年か!」

 

「ぶほぉっ!」

 

 盛大にお茶を吹くラータ。

 

「あの子ったら。お返しに『余の大好物だ』といってバナナ(意味深)を渡したんだよ?これはもうギルティだよね?」

 

「あぁ、それはローマ的にも夜のお誘いだ。余の時代だったらその場で襲われても文句は言えないであろうな」

 

「『お返しはマスターのバナナが欲しいぞ♡』みたいな?卑猥、コサラの王ったら卑猥」

 

「きっとその日はアソコに羅刹を穿つ不滅(ブラフマーストラ)られてるな間違いない」

 

「一体、何を穿ってるんですかねぇ」

 

「穿ってるのは貴様達の見方だろうがぁぁぁ!ただ単に自分の好きな物をお返しにした一般的なやり取りではないか!!」

 

 怒りと恥ずかしさで顔面を真っ赤にさせたラータはテーブルをひっくり返してしまう勢いで立ち上がり吼えた。他の面子も含めて、もうラーマだと気付いてので慌てる事なく、冷静に自分達のお茶とお菓子を確保している。

 

「いやだって。お返しに自身の好物だって言ってバナナを渡すんだよ?」

 

「バナナはなぁ。仕方ないであろう……。そもそもラータよ。何故そこまで激昂する?」

 

「いやだって不埒ではないか。そのラーマとやらの事は余は全く知らないが。只の友としてのやり取りをそんな、せ、性行為に結び付けるなど……」

 

 まるでフロイトさんのような論理展開を見せる二人にもごもごと口を噤むラータ。ネロ皇帝は先程の彼女の言葉を声高にして否定した。

 

「不埒?一体どこがだ!?愛し合う二人、想いが通じ合った二人、そうした二人が行き着く先は肉体関係他ならぬだろう!そこには薔薇のように燃える愛がある!それを否定する事こそが不埒であり、不健全であると余は叫びたい!ラータよ、貴様は女子力を上げたいと言ったな?ならばここの者が教えてやろう!シャルルマーニュが十二勇士、アストルフォよ!女子力向上の為の三本柱を言ってみよ!」

 

「オシャレ!恋!セックス!」

 

「大☆正☆解である!」

 

「ここまで酷い女子会は初めて見た」

「心底 同意」

 

 デオンと哪吒の至極真っ当な呟きは他の者達に届く事はなかった。

 

 

 

 

 







サイレントタグ増やし。今回は読む人を選ぶかなーとドキマギしながら書いてます。でも自分はラーマきゅんは可愛いと思ってるし、心から女の子だと思ってるのでこれはホモじゃない。はい論破。

とまぁ、お気に入り7000突破と。お気に入り数がR18作品の中で2番目になった記念も込みで好き放題書かさせて頂きました。冷静に考えるとこの頭とアソコがおかしいマスターの物語を7000人以上の方々に見てもらってると考えると非常に興ふ、……感慨深い物があります。もっと執筆に時間取れたら更新速度も上がるんですけどね。やっぱ仕事はクソ。

しかしまぁ、何だかんだでここまで来たのも読者の皆様方の応援や評価、感想があってだと思うので、隙あらば感謝を露わにするスタイルで行こうと思います(誤字報告、いつも超あざっす!)








一話で終わると思ったかぁ!?次回に続くんだよォ!!そして4月馬鹿に投稿したが、この話は嘘でも何でもねぇ!残念だったな!!これがシータンズ・ゲートの選択だぁ!



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Thetans(シータンズ);Gate(ゲート) 比棒恋理のだーりん(ラーマ 中編)

アタランテ「は?アタランテ・オルタ?魔獣化した吾?はぁ――……というか何?その下腹部の紋様?卑猥だわー、超卑猥だわー、淫紋とか超引くわ――。というかその淫乱の化身みたいな格好でくっころみたいな台詞ってどうなんだ?マスターと出会って即2秒で闇天蝕射でも誘っているのか?まったくアルテミス様に誓った純潔の誓いはどこに行ったのやら…………もう少し、私のようなお淑やかさをだな……」

哪吒(武迂目乱 頭に 刺突)

ブーディカ(突っ込み待ちなのかな?)

グダお(だが、そこが愛おしい)


0話にてアタランテ・オルタ更新。(当作品では別キャラとして扱います)













純愛ラブロマンスラーマきゅん……じゃなくラータ回の続き、いっくよー。




 《女子力アップの為の第一歩。おしゃれ&デート》

 

 

「どどどどどどうだ、まままままますたぁ?余にはどっちの方が似合うと思う?この白いワンピースか?それともこここここのスケスケのネグリジェか?」

 

 赤のパーカーに紺のミニスカートと少年っぽさと少女っぽさが混ざり合ったキューティクルな服を着て、もうデート開始から赤面がデフォになったのでは?と思う程の真っ赤な笑顔でマスターと買い物デートを楽しんでいた。おぉ、緊張と羞恥心で服が揺れる揺れる。

 

 特異点修復後に観測される歪み……微小の歪み。所謂、特異点もどき。幕間の物語だったり、イベントで便利に使われる事もあるその場所に二人はレイシフトした。座標は2000年代の新宿。アパレルショップで注目を浴びながら二人は買い物をしていた。そこにはシミュレーションと違って生きた人達がいる。『ラータ』という存在を世界に刻み込む為に二人はバカップルっぷりを絶賛披露中だった。

 

「う――ん。ラータには夏っぽい雰囲気が似合うからその白いワンピースの方がいいと思う。爽やかさもあるし。後はこの麦わら帽子もあると完璧かな。こう田舎に帰省して久々に再会した幼い頃は男だと思って接していたのに今はとても女の子らしくなってしまった幼なじみみたいな感じがして、ドストライクです」

 

「やけに長く具体的だな!?まぁ、君が良いならばこれをもらうとしよう……。む、これは少々値が張るな。余の手持ちだと……」

 

「何言ってんの。俺が全額出すんだから財布を確認する必要はないでしょ?」

 

「馬鹿を言うな!そこまでの施しをマスターから受けるわけにもいかないだろう!?」

 

「いいんだよ。君がより『ラータ』に近づく為にはこれも必要な事なんだからさ。それにこれは俺がしたくてしてるエゴでもあるからさ。この服を着てラータが俺に笑顔を見せてくれればそれだけで最高の報酬だよ」

 

「むぅ……わかった。なら心憂う事なくその貢物を頂くとしよう……。けど!ちゃんとお返しはするからなっ!」

 

「仰せのままにお姫様」

 

 有無を言わさず服を会計へと持っていくマスターにぷぅっと若干頬を膨らませながらも彼の言葉に嬉しさを隠せないラータちゃん。そんな二人のストロベリーなやり取りも多くの一般人達の目に入っていた。

 

「おぉう、止めてくれ、その光景は独身の俺の心に刺さる」「あらあら、いいわねぇ~~。若いってのは」「妬ましさが一周回って悟りを開いた」「彼氏の方のイケメン度がヤバい」「彼女の方、激マブ過ぎんだろ」「ふふ、下品ですが、勃」「ワイトもそう思います」

 

 これでいい。世界に『ラータ』という存在を認知させる為にはより多くの衆目に彼女()の存在を晒す必要がある。

 当の本人達はそんな事も忘れているかのようにデートを心から楽しんでいるようだが。

 頭を撫でられ、されるがままになるラータきゅんの乙女指数は急上昇していっている。

 

 その後もファミレスに入り、よりラータの女子力を向上させる為に二人のイチャつきは加速する。

 

「大変お待たせいたしました。こちら『ツインアイス・ビッグクランチパフェ』になります」

 

「ささささささぁ……マスター、ああああああああ――んだぞ」

 

「うん。美味しい。はいじゃこっちもあ――ん」

 

「あ、あぁ――ん。んむんむ、甘いな……本当に。あっ、こらマスター、頬にクリームがついているぞ、全く仕方ないな」

 

 延々とパフェを食べさせ合いっこをするカップル(♂×♂)。

 結局、完食するまで二人は自分自身で食べ物を口に運ぶ事は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてデートから自室に帰ったラータは女の子らしくマスターが用意してくれたピンク色の日記帳に今日のデートの事を書き記す。

 

 

 

 ○月×日

 

 今日は新宿という極東の地にて、マスターとデートした。白いワンピースを選んでもらった後にまさかランジェリーショップに連れてかれるとは思わなかったが……マスターは鋼の心臓なのか!?

 

 けど、その後、フェミレスとやらでマスターとパフェを食べさせ合いっこをしたのはむず痒くとも良い思い出となった。マスターったら何度余が上手く食べさせようとしても絶対に頬にクリームをつけるのだぞ?全く子供のように手のかかる人だと思いながら余は何度も口元を拭き取ってあげたのだが……。あぁ、うむ、あの時間は嫌いじゃなかった。お互いに上手く食べさせる事が出来なくて、何度やっても口の周りにクリームをつけて、それを笑いながら二人で拭き取りあって……本当に甘い時間だった。

 

 

 ・・・・・・・・・・・・

 

 

「ふふ、今日はもう寝るか。……その前に」

 

 日記を閉じ、寝床につく前にカレンダーにマスターとの次のデートの日にしっかりとハートマークをつけておく。間違いが無いように何度も確認した後にラータはベッドに入り、瞼を下す。次のデートの日を楽しみにする少女のように。

 

「って女の子役に何だか馴染み過ぎじゃないか、余……。いや、良いのだ。これで良い……これもシータと出会う為なら…………むにゃ」

 

「すぅ…………次のデートはどんな服を着てくればマスターは喜んでくれるか……今日選んでくれたワンピースか?いやだが、いきなり披露するのも勿体無い気がする……彼が選んでくれたものならもっと特別な時に披露したい……」とブツブツ呟きながら、ラータは眠りに落ちていく。少しずつ、自分が雌に墜ちていっているとも気付かずに……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こうして、デートを続けた数日後。

 

「今日は何だか距離が近いね」

 

「世界を、余自身を騙すというのならこれぐらい当然だろう?デートする男女というのは常にこの動きづらく突然の危機にも対処しづらい体勢で逢瀬に励むと書物で学んだからな」

 

 前回のデートでマスターが選んでくれた白いワンピースに麦わら帽子を被り、清楚な少女の雰囲気を持つラータはマスターの右腕を抱き、公園を歩いていた。

 彼氏に甘える恋人のような格好をしているラータは随分と歩きづらそうにしているがそれでもこれはシータと出会う為には必要な事だと自身に言い聞かせて、離れる事はしなかった。

 

(それにこれも存外に悪くない。マスターの温もりをより多くの肌で感じる事が出来るのはな……)

 

 ラータは自身の胸板と腕に包まれているマスターの腕の感触を認識する。世界を救い、戦い、そして自分自身をいつも引っ張り続けている只一つの手を。

 

「さぁ、今日はどこに行くマスター?余は君とならどこへだって付いて行くぞ」

 

「いや、今日はどこも行かない。こうやって二人で並んで散歩をするだけだよ」

 

「?それだけでいいのか?」

 

「あぁ、こうやって平穏な時間を気ままに好きな人とゆったりと過ごせるのってとても素敵な事だと思うんだ」

 

「す、好きか……」

 

 ギュッと先程よりも強くマスターの腕を抱き締めたラータの心には複雑な想いが襲来した。その好きはあくまで『ラーマ』の時としての自分に対する友愛の感情か。それとも――。

 

(フッ、何を余は馬鹿な事を考えているのか……)

 

 マスターが自分に恋や愛など異性に向けるような感情を自分に持つわけが無いと半ば自嘲する。そもそもこの一連の全てもシータと出会う為の布石、余をラーマではないと世界に錯覚させる為の策でしかない。だからマスターが余に今、『ラータ』に向けてくれている笑顔も温もりも触れ合いも……。全て――。

 

(それでいい。これはシータと会う為の寸劇に過ぎぬ。だから今の余が感じているこの熱も感情も、特に意味は無い)

 

 元々、その目的で始まった関係だった。マスターは本気で余とシータが出会えるように今の余を『女』として扱ってくれている。マスターは本気だろう。けどそれは余の願いを叶えようとしているからであって。余そのものに対してはきっと何も――。

 

 彼女の中にあるのはラータになってからのマスターとの思い出、そのどれもが新鮮で疑いようがない程にマスターは自身を女性としてエスコートしてくれていた。それはシータと会いたいというラーマの願いを叶える為に手を抜かなかっただけで……けどそれは正しい事で、自分も不満なんて無くて……。

 

(それでいいと思っている筈なのに……なんで、なんで……こんなに頭の中がグチャグチャになってるんだ!?)

 

「ラータ、大丈夫?」

 

「ふぇ?」

 

 顔をマスターに覗き込まれて、ラータはやっと自分が涙を流している事に気付いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「落ち着いた?」

 

「あぁ、すまぬ。みっともない所を見せたマスター」

 

 突如として涙が止まらず、情緒不安定になってしまった余を人がいない場所で落ち着かせる為にお誂え向きの場所を探したマスター。

 公園から少し離れたホテル街の一角。お城のような若干派手なホテルの中に入り、ベッドに座り、マスターのハンカチを借り、目元を拭っていた余はようやく心を鎮める事が出来た。

 

 奇しくもシータの召喚に失敗した時とは逆の立場、余が慰められる側だった。

 

 好きな部屋のパネルをタッチすると機械から鍵が出てくる無人のホテル。現代の宿にはこんなものもあるのだな……と余はマスターに手を引かれていた時もそんな他愛のない事を考えながらこの部屋まで辿り着いた。

 

「…………何も聞かぬのか?」

 

「君から話さないなら俺は何も聞かないよ。聞かれたくないなら聞かないし。話したくなったら全力で聞き役に徹するさ」

 

「フッ、マスターは優しくて、残酷だ……」

 

「今頃気付いたの?」

 

 でも今はその残酷な優しさに心を救われている。こうやって心配されて、マスターの注目をこの身に一心に浴びていると思うと先程の荒れていた感情が癒されていくのを感じる。我ながら現金な奴だと思うが。

 

「少し、手洗いに行ってくる」

 

 涙で崩れた薄化粧を直す為、今の自分の顔を確認する為、余はバスルームへと向かった。

 スキンケア・ファンデーション・リップクリーム、デオンやアストルフォに教えてもらった濃過ぎないナチュラルメイクとやらの状態を鏡の前で確認している。

 

「まるで女子だな……」

 

 目尻を赤くして、鏡の前でにらめっこしている自分を誰がヴィシュヌの加護を受けた戦士だと思うか。

 マスター(男)の反応に一喜一憂し、彼の心内が知りたくて知りたくて、感情を昂らせる。なる程、当初の予定通り、余は順調に『ラータ』になっているのかもしれない。

 

「だが体つきも少し……細くなったか……?」

 

 そういえばと、『ラータ』としてマスターとデートを続けていたいつの日か、今まで『ラーマ』の時に着ていた服のサイズが若干大きく感じる時があった。

 

「余は……こんな体をしていたのか……?」

 

 バスルームの外にいるマスターを意識して鍵をかける。

 鏡の前で全身を写している余の躰は『ラーマ』の頃よりも肩幅が狭くなり、間違いなく線が細くなっていた。

 

 ワンピースを脱ぎ、下着姿になる。

 戦士の象徴たる腹筋も無くなり、ウェストに少しのくびれが出来上がっていた。筋肉質だった太腿も蹴りを入れられてしまえば折れてしまいそうになるぐらいに細く滑らかに。お尻も女らしく柔らかみのあるふっくら丸みを帯びていた(胸はまるで膨らんでいなかったが)。

 

「今の余の体はこうなっているのか……」

 

 

 マスターとずぅっと女として『ラータ』として関わっていた影響か。確実に余の躰は女へと変化していた。か弱く、か細く、小さく、男に守られる華奢な体つきに。

 

 決定的なナニかを確かめるように余はマスターに選んでもらった女性用の下着を降ろした。

 

「あ……。は、ハハ、随分と可愛らしくなったものだ……」

 

 それでもまだ自分の体は医学上は男だったようだ。股間にぶら下がっている性器がそれを証明していた。

 だが、小さくなった。『ラーマ』だった頃よりも格段に。まだ精通していない少年。あるいは大きめに肥大化した陰核とも表現出来そうだった。男だった頃はプライドが無くなりそうになるぐらいのサイズに変貌を遂げていた。

 

 そこでやっと今、自分がどんな格好をしているのか気付く。

 白いスポーツブラを付けて、パンツをずり下ろし、いやらしい様で鏡に映った体を確認する女々しい人間の姿。

 

 外に出れば、マスターがいるというのに、こんな卑猥な格好で……。

 

「あっ……」

 

 マスターが外にいると意識した途端、下腹部が急に熱くなるのを感じた。それに合わせて、小さな性器がビクンと動く。

 

「余は……誰だ……?お前は誰だ?」

 

 鏡に映っている人間に問い掛ける。

 先程、公園でどうして自分が泣いていたのかその理由を探すように。

 

「余は『ラータ』だ。『ラーマ』ではない。『ラータ』だ」

 

 暗示をかけるように鏡に映った自分と額を合わせて何度も呟く。

 

「余は………………………………女だ」

 

 その言葉が驚くほど、ストンと胸の中に落ちていった。

 

 ホテルで、密室でマスターと二人っきりという意識が余にいや応なく本来は無い筈の雌の器官を疼かせてくれた。『女』になるとはこういう事なのか…………。この感覚は癖に、なってしまうな……。

 

 女子会でのアストルフォの叫びを思い返す。

 

 ――オシャレ!恋!セックス!

 

 慣れない雑誌を何度も読み、オシャレも化粧もした。そして今の余はきっとマスターに恋をしている。『ラータ』はどうしようもない程にマスターに恋い焦がれている。

 

 ならば最後にする事は決まっていた。

 

 シータと巡り会う為に、余を『ラーマ』ではない完全な『ラータ』にする為の最後の仕上げをここで行う。

 

『ラータ』となり、呪いを完全に消す為にマスターに抱かれる。

 

「いやこう言うべきだな……余は……『ラータ』はマスターに抱かれたい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 脱いだワンピースを着直し、バスルームから出た余は淀みない動作でマスターを押し倒した。

 抵抗する事も出来ただろうに特に慌てる事なく、ただキョトンと余の方を見つめるマスターの顔が愛おしくて堪らない。

 

「逢瀬をしていた男女が宿屋で二人っきり。それの意味する事がわからない程、余は子供ではないぞ」

 

 ベッドに倒れているマスターに馬乗りになって、ワンピースの裾を持ち上げる。爽やかさとは程遠い、純真なイメージの白いワンピースを汚すように男を誘う様。

 

 その下にあるマスターに選んでもらった白いレースのパンツを見せ付ける。

 

 服も下着もマスターに見繕ってもらったもの。そしてマスターに恋をする事で男とはかけ離れてしまった体つき。あぁ、そうか……服も体も心も、何から何まで全て――余は初めから彼の色に染め上げられてしまったのだな。

 

「一つ聞きたい。マスターは余が…………『ラータ』の事が好きか?」

 

 自分でもわかり切っていて、ずるい質問をしている自覚はある。逃げとでも言うべきか。シータと出会う為に余を『ラータ』にする為に今まで全力を尽くしてきてくれたマスターの答えは決まり切っているであろうに。

 

「好きだよ」

 

 当然、その答えを言うしかないだろうな。

 予想済みの答え。だからこそ、その次の言葉を不意打ち気味に無防備な状態で受けてしまった。

 

「目の前にいる『ラータ』も。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()全部好きだよ。初めて会った時からずぅっと」

 

「あ――――」

 

 心臓を突かれた気がした。『ラータ』の部分だけではない。さっき隠した、完全に殺した切ったと思っていた『ラーマ』の部分も。

 ずるい……本当にずるいぞマスター、その言い方は。確かに今、この関係において余を『ラーマ』と示唆する言葉を出す事は出来ないが……。

 

 それでも救われた。公園で流した涙は簡単に掬われてしまった。

 

 今の言葉だけでも余の胸に刺さっていた棘は外されてしまった。

 

 この女になれ切れていない出来損ないの中途半端な体でもマスターに愛してもらえる事が出来る確信を得てしまった。

 

 ポスンとマスターの体に倒れ込む。彼の匂いと男らしい体つきを直に感じ、心臓の鼓動が加速する。

 

「言葉だけでは信じられないぞ…………」

 

 ベッドの上で重なる二人。マスターの耳元で余は囁く。

 

「だから抱いて――」

 

 口から出た言葉はかつての自分では絶対に出せないぐらいに女性的な声色だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んぅ、ふぅ……」

 

 先程とは体勢も逆転していた。

 それなりに大きいベッドを軋ませて、余はマスターに押し倒されている。

 

 前までの体ならまだしも華奢な体つきになった余の体を意識してくれているのか、全身に体重をかけるような事はしなかった。

 

 四つん這いになったマスターの手足に囲まれている余はプニプニと唇を指で弄ばれていた。

 

「柔らかくて、張りがある。そして、柑橘類の匂いもする……。なんかいいクリームでも使ってるの?」

 

「あぁ、フランスの騎士から少々教えを乞うてな……んっ、んむっ、マスター……くすぐったいぞぉ……」

 

 吐息がかかるぐらいの距離で彼の指と触れ合う時間も悪くは無かったが、どうせならここまで近づいているのだから焦らさないでさっさとキスをして欲しい。

 余の心情を察してくれたのか、さっと優しく親指で唇を撫で上げたのを最後にマスターの顔がさらに距離を詰めてくる。

 

 ――ここが最終ライン、境界線だ。

 

 余の中の小さな理性が語りかける。

 

 ――ここを超えてしまったらもう後戻りは出来ないぞ。

 

 そんな脳内に響く警告のような物を一笑に付す。何を今更と。

 マスターとなら地獄だろうとも付き合うと決めたのだ。それに後戻りする必要も無い。

 

 これは『ラータ』という少女が好きな人と結ばれる只のありふれた恋の物語なのだから。

 

「んっ、ふぅ……」

 

 唇を触れる瞬間、目を閉じる。それは恥ずかしさではなくよりマスターの感触を繊細に感じさせる為。

 唇同士をただ接するだけの小鳥のようなキス。それだけでも余の――『ラータ』の心には今まで感じた事のない幸福感が支配していた。

 

「んむぅ、んちゅ、ちゅ……」

 

 唾を鳴らし、ほんの少し彼の唾液をスパイスにキスの味を楽しむ。うっすらと目を開けると視界一面に映る彼の顔に頬が燃える程熱くなる。

 

「ちゅぅ……んちゅ、はぁ、はぁっ……はぁっ――……!」

 

 キスの最中、呼吸が荒くなっていく。餌を前にした卑しい犬のように。こうやって女になって抱かれていく事で未知の体験が余を襲っていくのを感じた。

 

 目の前の人に無茶苦茶にして欲しい。獣の如く、蹂躙して欲しい。

 

 とても、優しくして欲しい。腫物のように、恋人のように繊細に扱って欲しい。

 

 相反する二つの感情が支配する。あぁ、ただきっと今の余ならマスターに何をされても受け入れてしまうのは確かな事なのだろう。

 

「ちゅ、ちゅ……はぁぁ……ますたぁ……」

 

 情欲に滲み、潤んだ瞳。だらしなく開いた口はマスターとの更なる激しい交わりを求めていた。

 

「欲しがりさんだね。ラータは。そんなに色っぽい様で俺を誘惑するなんて悪い子だ……」

 

 色っぽい……色っぽい……。そうか今の余はマスターにそう見られているのか……。

『ラーマ』の時だったら侮辱にしか思えない言葉も、今の状態でマスターに告げられているなら心から喜ぶ事が出来る。マスターは余の痴態で興奮してくれているのだと。

 

「んむぅっ……!!んじゅぅ、じゅるぅ……んぱぁっ」

 

 大きく開いた二つの口が貪り合うように交ざり合う。舌を絡め、唇で挟み込まれ、吸い付かれる。キス一つでこんなに淫らな動きが出来るのかと感心する暇がないぐらいに深い快感を与えられる。

 

 必死でマスターの舌技に応えようとおぼつかない様子で動く余の舌はまるで初夜に挑む処女のようで。マスターはそんな余をエスコートするように……舌を絡め返してくれる。

 

 美味しい。美味しい。マスターの舌が。マスターの唾液が。鼻腔をくすぐる匂い。その全てが。

 僅かに残っていた余の男の部分を女に作り変える情熱的なキス。

 

「んじゅる、むぅ、んんぅ……んちゅ、ちゅむぅ……れろぉぁ……ますたぁ、ますたぁ、ますたぁ……」

 

「ちゅ、ちゅぅぅむぅ、ラータ……」

 

 彼に付けられたその名前を呼ばれる度にまるでありもしない子宮が熱くなるようだった。いや、今の余は女だし、別に子宮があってもおかしくないだろう……?

 

「んぱぁっ……。あぁ、ますたぁ、駄目だ。もう体が熱くて、痒くて、疼いて……もうキスだけじゃ……」

 

 ディープキスを一度中断し、お互いを結ぶ銀色のアーチが途切れるのを見送り、体をもじもじと体を左右に揺らし、マスターをさらなる交わりへと誘う。全く自分でも驚くほどに女としての仕草に馴染んでいるものだ。いや、こういうのは冷静になってはいけないのだ。細かい事は考えずに突っ走る!例え、後で自己嫌悪や恥ずかしさで悶絶しようとも!恋する乙女は走り続けなければならないのだ!

 

「えっろいなぁ、ラータは」と微笑むマスターは余の上半身を起き上がらせて背中に手を伸ばし、ワンピースのファスナーを降ろしていく。

 ゆっくりと静かに、肩からそのワンピースをずり降ろされていくだけ、余の心臓ははち切れそうだった。

 こうやってシータの服を脱がした事はある。只、女の側になって脱がされるのは未知の経験だった。

 

「あっ、はぁ……あぅ、んぁ……はぁ……」

 

 スカートも含めて、衣類を剥かれていく間も露わになっていく肌の上をマスターの手が滑っていく。太腿、臍、鎖骨と敏感な部分をくすぐられる度に甘い女の声が抑えきれない。

 

 作り変えられていく。今もこうしてマスターに余は作り変えられているのだ。

 

「……はぁ、はぁ、はぁ……どうだ、マスター……?余の下着は、何か変な所はないか……?」

 

 押し倒した時は見せる事が出来なかったスポーツブラも含めて、上下の下着全てを見られている。

 自分で言うのも何だが女らしくなった今の肉体なら女性物の下着もそこまでおかしく見えないだろう……と信じたい。せっかく彼がこの間、選んでくれた下着なのだ。どうせなら良く映って欲しい。

 

「綺麗だ。健康的で、とてもラータに似合ってる。着てくれて、超うれしい」

 

「あう……」

 

 彼の心からの賞賛にまた雌の部分が疼く。駄目だ。言葉だけでは我慢出来ない。もっと触って欲しい。もっと舐めて欲しい。もっと愛して欲しい。

 

 そっとたくし上げられる白いスポーツブラ。膨らみがほとんど無い胸の中心部には女と化していく自分を象徴するように卑しくも興奮していた桜色の突起があった。

 

 ブラは完全に脱がされていない。慈愛に満ちた表情でマスターは余のそこを指で突いた。

 

「んひゃぅ……!」

 

 ビクリと電流が走ったかのような反応を見せる余の反応に満足気に更なる愛撫を続ける。

 

「乳首だけで、こんなに感じちゃって。いつからラータはここまでエッチになっちゃったのかな――」

 

「んぅ、あっんんぅっ……。それ、は……っ!マスターの手がうまいからぁ……あひんぅっ……!」

 

 楽し気に、愛おし気にマスターの指は余の乳輪を周回し、時折乳首を軽く引っ掻いていく。焦らされていく愛撫の中で不意に訪れる鋭い刺激。今の余はマスターの腕の中、乳首を苛められ、か弱く喘ぎ続ける只の小娘になっていた。

 

「白のブラの下にこんな美味しそうなさくらんぼを隠してさぁ……」

 

「んあああぁっ……!!」

 

 ちゅぅっと唇に吸い付かれた瞬間、雷に打たれたように頭が真っ白になる。

 その後、自分が達してしまった事に気付き、羞恥心に支配されそうになるがマスターの責めは余にそんな時間を与える事は無いと言うように依然として続いていた。

 

 乳首を摘ままれながら、もう一方を舌先で転がされる。指による反永続的な快感と生温かくリアルな感触が堪らなく余の脳髄を犯していく。

 

 感じる度に、喘ぐ度に、悶える度に、自分がより『ラータ』に『女』になっていくのを自覚していく。

 

「はぁっ、駄目ぇ……だぁ……。んぅぁっ、あんぅ、ちくび、きもちよすぎてぇ……」

 

「何が駄目なの?ここがこんなになってる事?」

 

 一度、余の乳頭の熱烈なキスを中断したマスターはパンツに隠されていた余の股間部を撫でていた。

 もうその感触で彼も察しているだろう。余の中にある『ラーマ』の時の名残、男としてあった時の証が。

 

 信頼はしている。マスターに体の全てを預けるとも誓った。それでも暴かれる自身の性器を見て気味悪がられないか。引かれてしまわないか。一抹の不安があった。

 

「大丈夫、()()()()気持ち良くしてあげるよ」

 

 ただ、そんな不安もすぐに吹き飛ぶ事になるのだが。

 

「あんぅっぅ!!」

 

 パンツを引っ張り、引きずり出される縮小化した余の性器。それでもバスルームで見た時よりは興奮で肥大化していた。マスターに散々性的に弄られたのだ。反応しないわけが無い。

 

 彼の手に握られてすっぽり隠れてしまう大きさ。陰茎をマスターの温もりで包まれた瞬間、極上の心地良さが余を蕩かしていった。

 

「はひぃっ、んひゃぁっ……。あぁ、あぁっ!まって、まってぇ……!そんな手ぇしこしこ、動かしちゃ、らめぇぇっ!おかしくなっちゃう、本当に余ぉ……戻れなくなっちゃうからぁ……!完全に女になっちゃうからぁ…………!」

 

「ラータは女でしょう?何も不安に思う事はないからさ。ほら、雌になっちゃいな……んちゅぅ……」

 

 乳首の責めは継続したまま、シュッシュッと余が気持ち良くなれる力加減を熟知しているかのようにマスターの右手は性器を扱き続ける。

 

 左手は指先で右乳首をくすぐり続け、口は左乳首を吸い続ける。そしてニギニギと余の陰茎の感触を確かめながら、雌の悦びを教え続ける手淫。性感帯の3点責めにもう余の理性は焼き切れていた。

 

「ひぃぁっ!あっ、あっ、んぅぁっ……!!ちくびもぉ……おちんちんもぉぉ……へぇぁ……あっ、あっ、んぁっぁっ……!」

 

 無理無理無理無理無理無理、むりぃ……むりだぁっ……!こんなの耐えられるわけがない。

 

 マスターに女として抱かれるのがこんなに気持ち良いなんて知らなかった。他の女性達が溺れるワケだ。惹かれるわけだ。愛撫の全てにマスターが自身を雌として想い焦がれているであろう強い感情を感じる。

 

 ベッドのシーツを握りしめ、もはや焦点さえ合ってないであろう瞳で全身の筋を張り、ガクガクと震え続ける自分の顔はきっとはしたない雌の顔をしているに違いない。

 

 今の余にそれを確かめる術は無いが……。

 

「あぁっ……!ますたぁ、ますたぁ……もう出るぅ、でちゃぅ……!」

 

 何が出るのかは言うまでも無い。マスターの手に包まれている余の性器はもう暴発寸前だった。かつての男だった部分も新しく女と化した部分も全て差別なく平等に愛撫される悦楽は余を射精へと導いていく。

 

「ちゅぱぁっ……いいよ。出して。何一つ隠す事なく俺の前で女の子として射精しちゃいなよ」

 

「あぁ、あぁ……でる、でるぅ……ごめん、ごめんぅ……ますたぁ、はぁぁっ!あぁんぅぅ!!でちゃぅ……あ、あ、でる、でる、はぁ――…………!」

 

 何に対して謝っているのか自分でもわからなくなった余にも遂に限界が訪れた。

 先程よりもさらに大きい絶頂。雌イキした瞬間に股間を熱く溜まった物全てを吐き出したような解放感が包んだ。

 

「ああああああああああぁっ……!!ひぃあぁっ……!とまらなぁぁっ……あっ、あっんぁぁっ……!」

 

 ビュルルルッと、潮吹きのように吐き出された余の白濁液がマスターの手と自身の腹部を汚していくのがわかった。女の絶頂は男の絶頂よりも何倍も気持ちが良いと花の魔術師は語っていたが、今それを身をもって理解した。

 

 この快楽はヤバい。余が男しての絶頂を知っている故か、それともマスターが特別上手いのか、ズブズブと沼に嵌ってしまうような中毒性が今の快楽にはあった。

 

 エクスタシーでチカチカしていた瞳に映った手にかかった余の愛液を舐めとるマスターの淫靡な様に、次なる交わりへの渇望が止まらなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「綺麗だなぁ。ラータの体は色っぽくて、エロい」

 

「もうわかったから……あんまり褒めないでくれ……。今でさえ恥ずかしさでどうにかなってしまいそうになっているのだから……」

 

 下着も完全に脱がされ、束ねていた髪も解かれた。ありのまま、隠す物が何一つない生まれたまま――という言い方は少し語弊があるか……。生まれ変わったままの無防備な姿をマスターの前に披露していた。

 

「んふぅっぁっ……!ぉぁっ……。あんまり、そこの穴をいじるのはぁぁぁぁ……!」

 

「だぁーめ。これからここに挿れるんだから、入念に準備は必要でしょ?」

 

 ベッドに寝そべった状態でだらしなくマスターに開かされた足。これから彼と交わる不浄の穴。

 皺を伸ばすように丹念にねちっこく弄る彼の手淫にもう参っていた。それでいて、延々と余を褒め続けるのだから勘弁して欲しい。いや、嬉しいぞ?嬉しいのだがな!

 

 そして、ようやく前戯は終わったのかおもむろに服を脱ぐマスター。見せ付けられていく彼の肉体に『ラータ』としての雌が歓喜を上げていく。その声は彼の怒張を見た瞬間に最高潮へと達する。

 

 余の先程の雌の男根とは比べ物にならないぐらいの剛直。表面に浮かぶ血管がその興奮の度合いを余に教えてくれるようだった。そして何よりも――。

 

「うれしい…………」

 

 自身の躰で、反応で、マスターがここまで興奮してくれた事が嬉しくてニヤつきが止まらない。みっともない顔を見せないように二の腕で口元を隠すがもう彼には気付かれているかもしれない。それでも頬を緩めるのを止める事は出来なかった。

 

 これが、好きな男を性的に悦ばす事が出来た女の喜びという奴なのか……?

 

 だが終わりではない。こんな所で終わりではない。マスターにはもっと余の躰で気持ち良くなって欲しい。その欲望を余す事なく余の中へと吐き出して欲しい。余をもっともっと雌にして欲しい。だから――。

 

「――――きて」

 

 菊門を指で出来るだけ広げ、切なげにたった二文字の言葉でマスターを誘った。

 

「あぁ……いくよ。『ラーマ(ラータ)』」

 

「ん゛ん゛ぅぅぅぁぁぁあっ!!」

 

 ズブリ、ズブリと引き裂かれていくような、そして体の奥底に残った僅かな男の部分も殺されていくような感触。マスターの肉棒をアナルという本来は性交の為に使用する穴でない箇所を使って受け入れ、彼に純潔を捧げる。

 痛みはある……けど、それを上回る嬉しさとその痛みさえも快楽に書き換えてしまう程の衝撃。

 

 熱く硬い生きた剣が余の雌の道を貫いていく。ナカで動き、進むたびに口の端から涎が垂れ、情けない声が止められない。

 

「んぉぁあっ……!!んひぃぃっ!!おぉぁっ!!あぉぉっ……!!んほぉぁっ……!!」

 

 こんな声が自分の口から出るのかと……半ば驚きながらも彼のペニスを一心不乱に飲み込む。

 挿入され、余が完全に雌に近づいていくのを自覚しながらも思い出すのは『ラーマ』の時にいつも隣にいたシータ。

 

 なるほど、これが抱かれる悦びという奴なのか。シータがあんなにキモチ良さそうに喘いでいてくれた気持ちがようやくわかった気がする。自身の大事な躰を全て曝け出し、雌になって愛しい雄に犯されるのはここまでの快楽があるのかと。

 

「んっ、ふぅ……キツくて最高だよ。ラータ、ここからもっと動いていくから気絶しないように頑張ってね」

 

 そして始まる。

 

 マスターとの本格的な性交が。

 

 余の身も心も……1ミリも余す事なく全てを雌にする蹂躙劇が。

 

「ん゛ひぃぃぃっっ……!!」

 

 熱く厚いカリ首が余の腸壁を何度も報復していくのを感じた瞬間に走る雷のような衝撃。

 まるで全神経に電極を刺されたように躰を痙攣させ続けた。

 

「あぅぅんんぅ!!あ゛あ゛あ゛ぁぁぁっ…………!!これぇぇっ……!!すごすぎるぅ……!余のおしりのなかでぇ……なんどもぉぉぉっ……ほぁぁっ!!」

 

 パンパンと臀部を叩きつける音がお前は雌だと教え込んでいるようで、結合部から聞こえる生々しい交わりの音も、マスターの息遣いも、余自身の嬌声も、耳に入る音全てに凌辱されている。

 

 マスターの腰が前後し、肉棒を叩き込まれる度に余の中の霊基がどんどん作り変えられていくような錯覚に陥る。

 

 あぁ、余は女だ。娘だ。雌だ。

 

 好き、好き、好き、マスターのおちんちんが好き。大好き、アソコの穴にズボズボされるのがすきぃ。

 

 脳内も桃色一色となり、淫靡なる宴に沈み込んでいく。

 

「んぉぁっ……!あっ、あっ、あっ、()()()ぁぁ……」

 

 自分でも何故、彼女の名前を出したのかわからない。『ラータ』として成る為なら今は彼女の事は口にするべきではないのに。けど、マスターに男根を突っ込まれながら愛すべき妻の名前を口にすると快楽がさらに増幅して――――。

 

 まるでマスターとシータの二人に犯されているようで余の興奮をさらに煽ってくれたその口を止める事は出来なかった。

 

「おほぉっ……んぉ!……ひぁあっ……しーたぁ、しーたぁ、しーたぁぁっ……!んふぁあぁっ!!」

 

 そんな余を咎めるどこらか、より愛おしそうにあるいは蠱惑的に口元を歪めたマスターは。激しい交尾によって揺れ続けている余の幼き陰嚢と肉棒に手を出してきた。

 

「んほぁぁあぁっ!!?……ん゛ひぃぃぃっ!!あぁぁくぅぅっんん!!だめ、だめぇ!!マスター、まってぇ……!!おひりズボズボしながら、おちんちん、いじらないでぇぇ……!!」

 

 手の平で玉袋をグリグリと押し込み、器用に指を伸ばして、再び勃起している余の性器を挟み込んで扱き始めたマスターの淫手。

 

 雌穴に挿入されているだけで頭がどうにかなりそうだったのに。男だった時の名残も犯される余の理性が耐えきれる筈もなく。そのまま無惨にも雌ペニスから射精の連射を始めてしまった。

 

「あひぃぃんぅぅぅ!!だめぇ、だめぇ!!とまって、とまって、とまってぇ……!!ますたぁぁ……!!ミルク出るのぉ、とまらなぁぁっ……!!イッてる!イッてるからぁぁ……!!」

 

「ん~~……?駄目だよ。だって雄の部分でメスイキしているだけ、まだ雌の方はイッてないでしょ?ラータを完全に女にするにはちゃんと二つの部分でメスイキさせてあげないとさ……」

 

「そんなぁぁぁぁぁあぁ……!!あぁぁぁあぁっ……!くひぃあぁぁっ……!また勃起してぇ、さっき出したばっかりなのにぃぃぃ……んおぉぉっぁっ!!」

 

 無情にもマスターは手を緩める事はしなかった。

 巧みに余の性器を刺激し、何度も射精を促す。腰の動きも止める事はせず、前立腺をガンガンと剛直で刺激された余はもう自分がどこにいるのかもわからなくなっていた。

 

「ますたぁ、しーたぁ、ますたぁっ、しーたぁっ、ますたぁぁっ……!しーたぁぁっ……!あ、あ、ああああああぁ…………」

 

 支離滅裂に最愛の二人の名前を呼び続ける。『ラーマ』の時に愛した人。『ラータ』の時に愛してくれている人。容赦なく送られ続ける快楽でグチャグチャになった余の顔はきっと酷い事になっているだろう。

 

 そして、腸道の中で抽送し続けたマスターの男根が余を生まれ変わらせてくれる希望を吐き出してくれる予感がした。

 

 ――どっちに出して欲しい?とマスターは優しく尋ねた。それが余には「俺の前ではどっちになりたい?」と聞こえた気がした。

 

 答えるまでもなかった。選ぶ必要もなかった。始めから選択肢は一つしか無いのだから。

 

「んぅうっぁ!!あっ、あっ……はぁっ。なるぅ……女の子になるぅ……マスターの前でだけならぁぁ……余はメスにぃぃ、なりゅからぁぁぁぁ……だからぁっ、んぉ、ぉぁっ……ナカに出してぇぇぇぇぇぇぇぇっ…………!!」

 

 葛藤とか理性とか道徳とか、そういうまどろこっしい物を全て書き捨てた裸のままの感情の叫び。

 

 今の余の中にあったのは愛する男の子種をこの身で受け止めたいという女の欲望だけ。

 

 吐き出して、射精して、受精して、孕みたいという女の原初の願い。

 

「……っ!いいよ。身も心も、女の子になっちゃえ……!」

 

 あぁ、あぁっ、あぁっ!!くる、くる、くる!マスターの精子がぁ……!余の中にぃ……!!

 

「んひやぁあああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁっ……!!」

 

 それは余がストローク中もずっと股間からだらしなく垂れ流していたミルクとは比べ物にならない程の密度で。

 余は全力で達し、全力で嬌声を上げ、マスターに言外にこう叫んでいた。

 

 ――余は女だぞ。貴方に雌にされてしまった。

 

「んぉぉぉぁっ!ほぁぁっ!ああああぁっ……!つくりかえられりゅぅぅ……ますたぁの……せいしでぇ……あぁ、余のナカがいっぱいになって溢れてぇぇぇ……。あぁ、こんなの妊娠しちゃう…………」

 

 痴態でそれを表現する。言葉と体でマスターが性的に興奮してくれるような女になるべくイキ続ける。

 雌チンポからはミルクをまき散らし、体が折れそうなぐらいに仰け反り、全身を何度もビクつかせる。ステージとなっているベッドが壊れてしまうのではと心配になってしまう程ののセックスのゴール

 

 マスターの精子が、魔力が余の細胞全てを新しく生まれ変えらせてくれる感覚。

 最後の力を振り絞り、余の子宮口までペニスをキスさせてくれるマスターを抱き締め、口の方でもキスをする。

 

「あいしてる……マスター……。余を、『ラータ』を妻にしてくれぇ…………んちゅ……」

 

 きっとそれは叶わぬ願いなのだろう。いずれ、シータと巡り会った余は『ラーマ』に戻る。

 だが、余が『ラータ』として、雌として、マスターの()になるのなら……、今だけならこの交わりも睦言も見逃して欲しい。

 

 たぷたぷと注がれる白濁の感触に溺れながら、余はそんな言い訳染みた祈りを捧げて、ゆっくりと意識を落とした。

 

 

 




そしてラーマの霊基は再構成される。幾人もの性癖や欲望を暴き、交わってきたマスターの影響力。近づけば近づく程、蜘蛛の糸のように獲物を絡め取る変革力に。

影法師に過ぎないサーヴァントに肉を付け、妊娠させる程の精子。いつかの世界で『この世全ての精(ファビアナ・スペルマ)』と宝具にまで昇華される代物。

女に『ラータ』になる決意をし、雌としてその白濁を叩き込まれたラーマの肉体は今、大きく変貌を遂げる。

それは英霊の座がラーマではないと誤認識する程に。

喜べ少年(少女)。君が渇望した『妻』への運命の扉は開かれた。










()の話をしよう。主と妻の間で悶悩する一人の少女(少年)の話を」

ダ・ヴィンチ著作、『カルデア寝物語:ラーマ編』から抜粋。


次回、ラーマ編最終話。『Thetans(シータンズ);Gate(ゲート) 主妻拘束のフェノグラム』






2話完結とは誰も言っていない。このヒロイン力なら3話分使う価値がある。






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Thetans(シータンズ);Gate(ゲート) 主妻拘束のフェノグラム(ラーマ&シータ 後編)

何故か3話も続いたラーマ(ラータ)編、最終話。
ハートフル&ハートフルです。

第0話にて、アナスタシア更新。










『最後の話をしよう。数多の者の性癖を歪めてきた一人の男の話を』



 リベンジである。雪辱戦である。

 

 円環の理に飲み込まれていった数多の石達……彼等の弔い戦である。

 

 だがマスターの手には聖晶石は無し、虎の子である呼符が200枚のみ。

 

「マスター……」

 

 その呼符も既に199枚が塵と化した。残るは1枚。

 絶望的な状況、だが胸の前で手をぎゅっと握る余の声には不思議な事に微塵も不安は無かった。

 

 それは予知にも近い確信でもあった。余の胸によぎるは蜜月の日々。マスターに恋し、犯され、愛され、女として生まれ変わった甘い時間。未だ、体は男の時の名残はあれど、あの時の自分は彼に組み伏せられる一人の雌だった。

 

 ――んぁぁあ゛あ゛あ゛、すごぉぃぃいっっ……! まだいくぅ、もっとイッちゃうぅぅぁっ!

 

 

「――祈りは届く」

 

 

 変えてみせるとも。騙してみせるとも。英霊の座も、世界も、自分自身さえも。

 そんな余の決意の返答としてマスターは最後の儀式に挑む。

 呼符を両手で祈るように握り潰し、魔力へと変換する。

 燃えるような音と目も開けられない光。それでも余は目を閉じる事はしなかった。

 座と現世を繋げる門として、黄金の3本の輪が現れる。

 

 

「――人はそれで救われる」

 

 

 召喚システムの前で祈りの姿勢のまま動かないマスターはとても神々しく見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「召喚に応じ、馳せ参じました。クラスはアーチャー、真名はラーマ…………嘘――」

 

 光の奔流の先に現れた影。聞き間違える事の無い声。

 聖杯戦争のしきたりとして、『ラーマ』として彼女は名乗り、姿を見せる。

 

 見間違える事は無い。余と同じ橙色の髪。燃えるような紅眼。生前と変わらない美しい姿だった。

 

 目の前に映ったのは驚愕に染まった顔。

 もう意識を失うような痛みも、二人を引き離す呪いも、魔王ラーヴァナの手も無い。

 

 信じられないと固まっている妻の元へ駆け寄る。

 

「本当に、本当に……ラーマ様?」

 

「あぁ、余だ」

 

 ずっと君に会いたかった。ずっと、ずっと会いたかった。君に会えれば何を犠牲にしても良いとさえ思っていた。

 

「あぁ、あぁ――――、これは……夢ですか?」

 

「夢ではない。夢のような現実だがな。今、君の前にいるのは正真正銘『ラーマ』だ」

 

 涙を流す彼女が恐る恐ると余の体に触れる。幻ではないか確認するように。やっと触れる事が出来た。一体どれだけの月日を費やした事だろうか、ここまで来るまで。シータと出会うまで。

 

「ラーマ様……!!」

 

「シータッッ!!」

 

 万感の想いを込めて、彼女を抱き締める。互いに回された手。もう消える事もちぎれる事もない。

 マスターを疑っていたわけじゃない。英霊の座を騙し切り、世界に余がラーマではない別のナニかと認識させる。けど、それでもまさか……本当に巡り会わせてくれるとは思わなかった。

 溢れる涙を止めずにマスターへ振り返る。この喜びを君とも分かち合いたいと――。

 

「マスター……?」

 

 振り返った先にはマスターの姿は無かった。余達以外誰もいない召喚ルームは「もう、俺が出る幕はないかな……」とマスターが語りかけているようで――。

 

 妻との再会に歓喜に打ち震えている心のどこが小さく痛んだような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫だよ。あのホテルで沢山中出しされたのをトドメにラーマの肉体はもう前とは完全に別物になっている。君がいくら()()()を名乗ろうとも英霊の座は離れ離れになるシータの旦那であるラーマとは認識しない。召喚された時点でアトラクタフィールドにある世界線は固定され、こっちのもんさ」

 

 シータを召喚してから数時間。彼女としばし語り合った後、マスターと会わせたいとシータを自身の部屋に残し、彼の姿を探す。

 そしてカルデアの食堂にて遭遇したマスターはそうにこやかに語った。余に向ける笑顔も距離感も『ラータ』ではなく、『ラーマ』の時に戻っていた。異性ではなく同性に向ける友愛の感情。

 

「俺に抱かれた時みたいなおかしな体にはならないと思う。シータの前なら生前と同じような男らしい体になれるさ」

 

「そ、そうか……それは良かった」

 

 そう言って余を安心させるように肩を叩くマスター。肌の触れ合いを嬉しく思う一方でそのスキンシップは同性に対する態度で。それは正しい筈なのに余は無性に寂しくなっていた。

 

 何を馬鹿な事を考えている。何の為にあのような女物の服を着て、小娘の真似事をして、そして、ま、まままままマスターに恋人のように抱かれたと思っている。

 もうあのような事をする必要は無いのだ。シータを召喚する事が出来た以上、もうマスターとはあのような関係を続ける必要はなくて。

 

 だがそう納得させようとする自分の声とは反面に、本当にそれでいいのか? それがお前の本心なのか? ともう一つの声が語りかける。自分の望みを果たしたからマスターは用済みだと。そんな道具のように使い捨てていつも通りの関係に戻るつもりか? と。

 

 違う、違う! 余はそんなつもりでは――!

 

「マスター……その余はな――」

 

「あ、ラーマ様。それに……カルデアのマスター様でよろしかったですか?」

 

「シータ!?」

 

 縋る声を遮るようにシータが余達の傍へと近づいてきた。

 

「どうしてここに……」

 

「私達が出会う為に貴重な財源を惜しみなく注ぎ込んでくれた恩人に自分から挨拶をしないなんて恥知らずな真似、私には出来ませんよラーマ様」

 

 どうやらその様子からして余達との会話の致命的な部分は聞かれてないようだった。

 ほっと一息を吐く。浮気現場を見られた夫とはこんな気持ちなのかって……違う違う違う違う!!もう余とマスターはそういう関係ではないのだ!『ラーマ』とマスターの関係には何も疚しい事はない!

 

「初めまして、いや久しぶりと言うべきなのかな」

 

「はい。うっすらと第五特異点の事は記憶にあります。魔術王との戦い……私は力にはなれませんでしたがマスター、貴方が繋いでくれた私とラーマ様の縁。その御恩に報いる為にもこの弓で微力ながらも尽くさせて頂きます」

 

「そんな固くならなくてもいいのに。割と好きにやってもいいんだよ?カルデアは度が過ぎなければある程度は寛容だからさ」

 

「そうは行きません。きっと私が召喚されるまでよくしてくれたのでしょう。ラーマ様の懐きっぷりを見ればわかります。この人がここまで心を許した同性なんて生前いたかどうか……」

 

「み、見ていたのか?シータ……」

 

「はい。ラーマ様の幼さと凛々しさと勇ましさが混ざった笑顔で尻尾を振るようにマスターに駆け寄っていった姿は何物にも代えがたいです」

 

「わかる。こう……顔をパァッと輝かせてこっちに走って来る姿を見るだけでご飯が進む」

 

「マスターとはいいお酒が飲めそうです」

 

「シータ!? マスター!?」

 

 まだ出会ってから数時間で無言でハイタッチをかましているマスターとシータの間には何か奇妙な友情が芽生えているような気がした。というか余が置いてけぼりなのだが……。尻尾ってなんだ?ご飯が進むってなんだ?

 

 うむ、だが、敬愛すべき主と最愛の妻の仲が良好になりそうなのは良い事なのだろう。

 

「ちなみにここに君が召喚されるまでの秘蔵ラーマアルバムの数々が」

 

「拝見しましょう」

 

「待て待て待て!! 余は撮られた記憶が一切無いぞ!! 大丈夫なのかそのアルバムの中身は!」

 

「見るがいい! ビリー君直伝のクイックドロウの早撮り術でアルバムに収めた無防備なラーマきゅんの姿を!! まずはNo.1! 『涎が口の端についたままの寝起きラーマきゅん』!」

 

「おいくらですか?」

 

「もしかして突っ込み役は余しかいないやつか!?」

 

 

 ちなみにこの後で聞いた事なのだが『ラータ』の時に撮った写真は裏アルバムとやらに保管してあるとの事。情事の時のも収めていたらしく(本当にいつ撮ったのだ?)、見せてもらったが…………うむ、うむ、あぁぁぁぁぁぁぁぁっ、うわぁぁぁぁぁぁって感じだった。いやほんと余はマスターにあんな顔を向けていたのかぁぁぁぁって……もうお婿に行けないじゃないかって一人ベッドの上でどったんばったんしていた。

 

 ただ――。

 

 もうシータの夫である余があの写真の中にいた『ラータ』になる必要はないんだと実感すると、心にぽっかり穴が開いたようで……だらしない顔のまま切り取られているアルバムの中にいるもう一人の自分に羨望の眼を向けるのが止められなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こうやって床を共にするのも随分と久しいな」

 

「んっ、はぁ……私にとってはラーマ様とまた肌を合わせる事が出来るとは思っていませんでしたから」

 

 離ればなれになっていた夫婦二人、今までの寂しさを埋めるようにお互いの体を求め合うのにそう時間はかかりませんでした。

 

 情事の後の余韻に浸るようにお互いに纏う服も無いまま、ベッドに寝転がり、ラーマ様の部屋で私達は語り合っていました。

 

 こんな時間をどれ程夢見た事でしょうか。ありのままラーマ様が触れられる距離にいる喜び。ありのまま、そうありのまま…………ありのまま?

 

 

「どうしたシータ……? もしかして、気持ち良くなかったか……!?」

 

「いえ、そんな事は無いのですが……只、今のラーマ様が昔より少し変わったような気がして」

 

 紳士的に私を労りながら責めるのも生前と変わらずですが、ラーマ様が快感で顔を歪める様子が失礼なかもしれませんが、どうにも()()()()()を一瞬匂わせるような感じがあったのが事実なんです。何でしょう......男らしい色気というよりも――――。

 

「可愛くなりました……?」

 

「んぐっ!! そ、そ、そんな事は無いと思うぞ。というよりもシータにはそう見えてたのか……」

 

「あぁっ、決して貶めるつもりで言ったわけではないのです!」

 

 私の台詞にラーマ様は落ち込み半分と何故か喜び半分といった複雑な感情を浮かばせていました。

 自分の夫に言う台詞ではない事は重重承知の上ですが、それでも今のラーマ様の表情はキュンとします。

 

 男らしいラーマ様にキュンとするのはわかりますが、女の子らしい仕草にキュンとするのは如何な物なのでしょうか。

 

 それにこの気持ちも初めてではありません。

 

 

 ――――ええい! だから頭を撫でるでない! シータの前だぞ! あまり子供扱いするなというのに……。いや別に嫌というわけではない、だからそんな寂しそうにするな……。そら、続ければ良いだろう……全く本当に仕方がないマスターだ。

 

 

 マスターとラーマ様の戯れ、同性同士の微笑ましいやり取りの筈なのに彼らのスキンシップを見るだけで私の心をざわつかせるナニか。

 

 けど、それは不快な物とか寂しいといった類の物ではなくて、むしろそのやり取りをもっと見たい。守りたいという感情。

 

 最近、知り合ったおっきーさんは「尊い、まじ無理ぃ」現象だとおっしゃっていましたが。

 

 不思議ですね。ラーマ様を取られたと嫉妬するのではなく、頬をにやけさせてしまう感情。混ざりたいような混ざりたくないような……この感情に名前を付けるとしたら――

 

「私はどんなラーマ様も大好きですよ」

 

「っ……! そう、か、それは良かった」

 

 ほんの一瞬だけ何かを耐えるようにラーマ様の眉間に皺が寄ったような気がしました。もしかして、知らず知らずの内に彼を傷つけるような台詞を吐いてしまったのでしょうか?ですがここで私が問いかけてもラーマ様は気を遣って大丈夫だと言い張るでしょう。

 

 生前ならいざ知らず、サーヴァントになってからのラーマ様を私はまだ全然知りません。マスターに聞けばもっとここに召喚されてからのラーマ様の事を教えてくれるでしょうか?

 

 彼ほど、ラーマ様の魅力について熟知している方も他にはいないでしょう。ラーマ様について語り合うラーマ様の為の談義、略してラー談をマスターとも幾度とも行ってきました。

 

 

 ――私のターン! 「好物のバナナの最後の一切れを床に落としてしまい、涙を堪えようとするラーマ様」を召喚!

 

 ――リバースカードオープン! 「日本の正月の風物詩だと信じて、恥ずかしさで顔面紅潮させながらも対魔忍かるたをする律儀なラーマきゅん」を発動!

 

 

 色々なラーマ様を分かち合える実に有意義な時間でした。

 

「あ、それとなシータ……出来れば余の写真をカードにしてマスターと遊ぶのは控えてくれると」

 

「それは嫌です」

 

「あっはい」

 

 

 ただ一つわかっている事はラーマ様は抱かれて喘いでいる私を見てどこか羨ましそうな顔をしていた事。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結局、またここに舞い戻ってしまった。

 

「んぶぅっ、ちゅ、ちゅぶっ……んじゅぅ」

 

 髪型をシータと同じツインテールにし、『ラータ』となった時に初めてもらった女の服を着て、余は考える。

 

 極上の果実を味わうようにマスターの肉棒をフェラしながら余は考える。

 

「んちゅ、ちゅむぅ……んぁ……はぁ、ますたぁのバナナおいしいぃ……」

 

 もうマスターの言う通り、『ラータ』として振る舞う必要は無いのに、シータが召喚されてから数日後……余はふらり、ふらりとマスターの元へと訪れた。

 

 この逢瀬がバレないようにわざわざシミュレーションまで使って。

 

 再現した部屋は生前、シータと僅かな時間を過ごした寝室。余の記憶に出来るだけ近い状態で再現したつもりだが……ふふ、妻と過ごした場所に似た場所でこんな事をしているなんて余はきっと地獄に落ちるのだろうな。

 

 ベッドに腰掛けたマスターの足元に跪き、男根を貪り続ける。

 

 余はどうして、こんな事をしているのだろう?

 

 今更になって馬鹿らしい自問自答を続ける。

 

 そもそも、「いつ座が余がラーマだと気付いてもおかしくない。だから適度にラータとして交わる必要がある」と説得力の欠片もない建前でマスターを誘ったのは余である。

 

 断れたら、拒絶されたらどうしようという不安はあった。だが、それ以上にこの身を焦がす熱を抑える事が出来なかった。

 

『ラータ』とそっくりなシータ。彼女が余に抱かれ、突かれ、声を上げているその姿に羨望しか湧かなかった。

 

 女になって抱かれる快楽を知ってしまった余にとってあのシータは毒であった。

 夫が抱く感想ではない事は承知の上だ。だが、それでも余がフラフラと『ラータ』の体となってマスター元に訪れてしまったのはきっと、彼にまた雌として抱いて欲しい欲望があったとしか言えない。

 

 きっと余は泣きそうな顔をしていたのかもしれない、マスターはそんな痛々しい余を見ていられなくて、同情で抱いてくれているのかもしれない。

 

 それでもいい、理由が何であれ、余を女として見てくれているのなら……。

 

 

「ほら、出すよラーマ。しっかりと咥えこんで」

 

「んむぅぅぅぅぅっっ!!んぐ、んぐっ、んぐっ、んぐぅぅ……」

 

 鼻につく匂いも喉奥まで流し込まれる感触も余を女だと教え込んでくれる。

 

 これは不貞行為ではない、シータに対しての裏切りではない。だって今の余は『ラータ』であって『ラーマ』じゃないから。マスターのお嫁さんにされちゃってるだけだから大丈夫……と自身に言い聞かせて、彼の肉体に溺れる。

 

 

「全部飲んじゃって……。そんなに美味しい?」

 

「んふぅ……はぁ、美味しいとも。マスターだって余の精液を飲んでくれるではないか。愛しい人の体から出る愛液は美味しく感じるように人体は出来ているのだぞ」

 

 あっ、まだ大きいまま……。

 じゃあ、次はこっちの穴で――――。

 

 

「……マスターはシータとは仲が良いのだな?」

 

 スカートをたくし上げて、何も穿いていない下半身を丸出しにしてマスターの膝の上に乗る。

 

 お尻に当たる熱い感触が堪らない。

 

「あぁ――、話が合うからね」

 

「その内容の9割が余で構成されてなければ、もう少し素直に喜べるのだがな……」

 

「ちょっと馴れ馴れし過ぎたかな?」

 

「いや、良い。マスターと彼女の関係が良好なら言うこと無しだ。それにマスターは人妻には手を出さんだろ?」

 

「えっあっうん」

 

 余が愛している女性。余を雌として愛してくれる男性。奇妙で歪な関係ではあるが……もし、もし、我ら3人が円満に繋がり合えるそんな結末があるのなら……。

 

 

 只、きっとシータはこんな余の姿を見たら泣いてしまうだろうな……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここにはいませんか……」

 

 ラーマ様の部屋の前に備え付けられているインターホンを鳴らす。

 返事も無い、どうやらこの部屋にはいないようだ。

 

「マスターの所でしょうか」

 

 カルデアにいる以上、ラーマ様にも別の人間関係があるでしょう。特にマスターといる彼は本当に楽しそうです。男同士、水いらずで積もる話もあるのかもしれません、ただ、やっぱりちょっと勿体無いと思う自分がいます。

 

 マスターとラーマ様が触れ合っている光景を視界に収めたいと思う自分が。

 

「あれ?扉が開いている……?」

 

 不用心だと思いながらも、部屋に入っていきます。入った瞬間に花びらが舞ったような気がしましたが気のせいだったみたいです。やはり、ラーマ様はいませんでした。

 

「ん?」

 

 ふと、ベッドの上に一つの雑誌が置いてある事に気付きます。

 薄く平べったい本。おっきーさんがいつの日か「シーちゃんにはまだ全年齢版の方がいいよねー」と見せてくれた確か同人誌なる物だった。

 

「これは私……?いえ、ラーマ様とマスター」

 

 

『カルデア寝物語』と書かれた同人誌を手に取ります。表紙に映った()()()()()()()()()()()()()ラーマ様とマスターの絵が私の心臓の鼓動を加速させた気がしました。

 

 何故こんなにもドキドキとしているのか自分でもわからないまま、私はページを捲っていきます。

 

 

 ――その日、私は運命に出会いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んぉぁっ……!あぁぁっ!やぁぁっ!この体勢ぇ、丸見えでぇぇ……」

 

 背面座位でマスターに犯されている女の姿が姿見に映っている。初めて肉体関係を持った時とは反対の姿勢。

 マスターの顔が見れないのは残念だが、自分がどんな顔をして快感を得ているのか客観的に見る事が出来るのは興奮をより一層煽ってくれた。

 

 くびれがある線の細い体、肥大化した陰核のように揺れる男の時の名残。

 揺れる二束の髪、リアルタイムで見る余の痴態は淫らの極みでもあった。

 

「ごりごりってぇぇ……んぁああっ!はぁっ!あふぅぁぁっ!!おひり、気持ちよすぎるぅぅっ……!!」

 

「そうだね。こんなに締めちゃって。奥さんがいるのに雌になって抱かれに来るなんて一体いつからラータはこんな変態さんになっちゃったのかなぁ?」

 

「んおおぁ!!あひぃっ!!ち、ちがぁぅぅ、今の余は『ラータ』にゃからぁ……。し、しぃーたは関係なくてぇぇ……だから、今ぁ、んふぅぅ!!ますたぁに抱かれてもおかしい事はなくてぇぇ……おほぉぉっ!!」

 

 これだ、これなのだ。

 

 女体の中に入れる側である男の体では得られない感触。愛しき人の肉を直に刺される生々しい快感。女にならなければ、『ラータ』にならなければ、感じる事が出来ないもう一つのセックス。

 

 もはや手遅れの領域に行っている余はマスターの責め句さえ、気持ち良くなってしまっている。

 シータの事を言われる度に、変態と罵られる度に、乳首とアソコがさらにツンと固くなり、マスターのペニスを締め付ける力が強くなる。

 

 股関節の辺りを撫でられながら、延々と挿入され続ける時間が愛おしくて堪らない。

 

「もっと弄って欲しい所ある?」

 

「あっ、あっ、あひぃぃっ!ぁぁ……乳首とぉ、おちんちん、どっちもぉ、前みたいに触ってほしぃぃ……」

 

 自分はシータとの関係もマスターとの爛れた関係も、どちらも捨てる事が出来ない浅ましいサーヴァント。鏡の前で舌を出して、コリコリと敏感な所を弄られ、喘ぎ続ける英霊の風上にも置けない変態。

 

 だがそれでも良かった。変態だろうがなんだろうがこうしてマスターに女として愛してもらえるのなら……。

 やっぱり余にはマスターとの恋人としての関係を只の手段として割り切る事は出来なかった。だってあんなに心身ともに愛されてしまったのだから、忘れるなんて出来るわけがない。

 

 だからだろうか。

 

 マスターとの肉欲に溺れていた余はこのシミュレーションルームに近づく者の存在に気付く事が出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 創作の世界の話だろうと、何故か割り切る事が出来ませんでした。

 

 女の直感と言うべきなのか、あれはノンフィクションだと。もしかしたら、今この瞬間にも起きている事かもしれないと。

 

 あの本を読んだ後、火照てしまった全身の熱を冷ますように私はフラフラと歩き出しました。

 

 胸を締め付けるこの痛みは怒り?悲しみ?絶望?…………いえ、そのどれでも無いでしょう。

 

 花びらの幻覚がまた目に映り、その後を夢遊病者のように辿っていった私は気づけばシミュレーションルームなる場所の前に辿り着いた事に気付きます。

 

 ここに入ればこの身を焦がす熱の正体もわかるのではと、もう私に迷いはありませんでした。

 

 シミュレーションルームにて再現されていたのはかつての私とラーマ様の逢瀬の舞台でもあった。コサラの城、王たる者の寝室、それを忠実に再現したかのような部屋。

 

「あ――――」

 

 

 そこで目に入ったのはあの薄い本の中で描かれていた物が現実となっていた光景。

 

 

 今まで見たことが無い程に女の子らしい格好をして。

 

 今まで見たことが無い程にだらしなく足を開き。

 

 今まで見たことが無い程に艶めかしくマスターに犯されているラーマ様の姿がありました。

 

「あ、あ、あ、ぁ――――」

 

 声にならない音が口から出てきました。全身を形容しがたい震えが包みます。

 動悸と呼吸が激しくなり、意識を失ってしまいそうになるのを何とか踏み止まらせます。

 

 ――ますたぁっ!ますたぁぁっ!!あぁっ!もっと奥まで余の子宮ついてぇぇ……!!

 

 私の事に気付かず、卑猥な言葉を叫び続けるラーマ様から瞬きすら忘れて、眼を離す事が出来ませんでした。

 

 ラーマ様は男性です。男の筈です。けど、今、私の前にいるのはラーマ様は女性です。体つきが若干特殊になっていってもそれは間違いありません。心は完全に乙女になっているのです。

 

 男の体だけど、心が女になっている?肉体が精神に引っ張られているのでしょうか?私の前で見せたラーマ様はあんなしなやかな体はしていませんでした。

 

 この感情は何なのでしょう?失望でも、喪失でもなく。むしろ新しい何かを見つけた感覚。新大陸を発見した船乗りのように、未知の物質を発見した研究者のように、新しい世界を知ってしまった私の中で持て余しているこの感情の正体はきっと――。

 

 あぁ、おっきーさん、これが貴女の言っていた『萌え』なのですね。

 

 可愛い。

 

 可愛い、可愛い、可愛い。

 

 かわいい、かわいい、かわいい、かわいいっ!!

 

 男の子同士で絡み合っている!男だった筈のラーマ様がマスターに惹かれて、心も体も雌になっちゃってる!!やだもう!ラーマ様ってばすんごくえっち!!

 

 女の子になってマスターに絡まれているラーマ様が…………いえ()()()様が可愛くて仕方がありません。

 

 もっと、もっと、もっと見せて欲しいと私の足は光に向かう蛾のように彼等の元へと誘われていきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え――?」

 

 初めはあまりの快楽の波状で視界がぼやけたのかと思った。

 だが、こちらに近づいてくる人影は今の余とそっくりの格好でありながら、確実に余では無かった。

 

 なんで、なんで、シータがここに――。

 

「あっ、あっ、あぁぁっ……!!!とめて、とめてぇぇ、マスター!!腰をとめへぇぇぇっ……!!」

 

 喘ぎながら、行為の中断を訴えるもマスターの腰が止まる事は無い。口は止めてという余の菊門もマスターのアソコを引き離さないように締め付けている。

 

 こんな、こんな状況でも余は興奮しているのか。

 

「ラーマ様…………」

 

「なんでぇ……にゃんでぇ……!?おねがいぃ、ますたぁぁっ、とめへぇぇっ……!!あひぃっんぅ!!」

 

 怖い、怖い、こわい、こわい。

 あんなに求めていたのに、あんなに会いたかったのに、今、余の傍へと近づいてくる妻が怖くて仕方がない。いや、本当に怖いのはこの状況でも尚、口だけで拒絶の意を示し、マスターとの情交を止める気が無い余自身。

 

「ひぅぅっ!!あひぁぁっ!!あぐぅんぅぅぁっ!んぉぁあっ……!!だ、めぇ……!み、ないでぇ!!みないでぇ!お願い見ないでぇ……しーたぁ、こんな余を見ないでくれぇぇ……!!んひあぁぁっ!!ぉぁあっ!!あんぅ!!」

 

 背面座位の体勢で足を開脚させられている余が出来る事はせいぜい両手を使って、だらしなく緩んだ顔を隠す事ぐらい、そんな事をしても目の前のシータがいなくなるわけではないのに。

 

 半ば現実逃避しながらも余は為す術なくマスターに犯される。本当に嫌なら全力で抵抗して逃げればいいものを。いや、自分でもわかっている。妻に……シータに見られてしまったこの状況でもマスターとの情事を手放す事が出来ないのだ。

 

「と、めてぇぇ……とめへぇぇ……ますたぁぁっ、あんぅぅ!あっ、あっ、おねりゃいらからとめへぇぇ……しぃたが、目の前にしぃたがいりゅからぁ……!!」

 

 それでもなけなしの理性を振り絞って口だけでは何とか止めて欲しいとマスターに懇願した。

 

「いえ、止める必要はありません。マスター……どうか私の事は気にせずそのまま続けて下さい」

 

「ふぇ?にゃんて…………あぐぅぅんんぅ!!?」

 

 だから、まさか――その残りの理性をシータに粉々にされるとは思わなかった。

 

「あぁ、顔を隠さないでラーマ様。いえ、ラータ様。手をよけて下さい。もっともっともっともっとシータにその愛らしい顔を見せて下さい。マスターの巨大な逸物でよがり続ける雌の様をもっと私に見せて」

 

「しぃたぁっ!?にゃにをぉぉ!あぁっ!あふぅぁっ!!ま、まってぇ!なんで、今、そこを扱いてぇぇっ……!!?あひぃっ!!」

 

 シータの小さな手にも隠れてしまう程の大きさである余の雌チンポが彼女に扱かれる。極限までに全身の性感帯が高まっているこの状況で、妻に敏感なアソコを愛撫されるのは形容しがたい絶頂へと余を導く。

 

 ラーマの時よりは断然に小さい子供のような男根。それに驚くことも侮蔑することもなく、漏れ続ける先走りを潤滑液にアソコを責め続ける。

 

「あ、はぁっ。可愛いですよラーマ様。貴方にこんな顔があるなんて知らなかった……。駄目です、油断すると鼻から血が出てしまいそうです」

 

 シータの顔には一切の怒りも悲しみも無かった。むしろ呼吸を荒げ、恍惚とした様子で余の痴態を眺めていた。間違いなく、今のシータは女と化した余に興奮していた。

 …………余の方こそシータのそんな顔を初めて見たぞ。

 

「ふっ、ラー談の時から確信していたよ。正確にラーマの可愛さを見抜くシータには『ラータ』を愛でる才能があると」

 

「えぇ、えぇ、視界が拡がり、新しい道が開拓された気分です。自分の今まで生きてきた世界のなんと狭苦しかった事か。この胸の高鳴りは恋?愛?あぁ、駄目ですね。一言では言い切れません。マスターは試していたのですね、私がこの領域に来られるかどうかを」

 

「あぁ、だか最初の邂逅で確信したよ。俺達は()()になれると」

 

「そこまで買ってくれるのなら期待には答えますとも。ですのでマスター、招かれざる客ではありますが、どうかお願いがあります。私にもラータ様を可愛がらせて欲しいのです」

 

「勿論。というよりもそれこそが最終ミッションオペレーションラーマーヤナのラストフェイズでもある。こここそが終着点。最後にシータ自身にも、もう今までのラーマとは違う事を完全に認識させる。離別の呪いを今ここで完全に断ち切る」

 

「その為には?」

 

「勿論、俺達二人で」

 

「「ラータ(ラーマ)をアヘらせまくる」」

 

「ちょ、二人とも本気か……んむぅっ!?」

 

 まるで展開についていけない余の口を黙らせるようにシータの唇が覆う。

 前からシータにはキスをされ、アソコを扱かれて……後ろからはマスターにアナルを突かれ、乳首を弄られ続ける。

 

 どうしてこんな事になっているのだ?

 

 シータは余の事を怒っていないのか?

 

 なんでそんなに嬉しそうに雌になった余の躰を貪っているのだ?

 

 これも全部、マスターの計算通りだったのか?

 

 疑問はいくらでも湧いてくる。けど――。

 

 今は死んでしまうぐらいにキモチが良いからどうでもいいか――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ――っ!あ、ぁんぅぅぁっ、シータぁ、その腰の動かし方ぁぁっ……!ひぎぃっ!マスターもぉ……奥グリグリだめぇぇっ!!」

 

「ほらラータ様。貴方の雌おちんちんが私のナカに簡単に飲み込まれていますよ。アソコの大きさはラーマ様の時より、随分と小さくなってしまったのにどうしてこんなに気持ちが良いのでしょう?下で喘ぎ続けるラータ様の可愛さが私の心を満たしてくれるからでしょうか?」

 

「『心のチンポが勃起する』という名言もあるからね。体だけの繋がりや満足感だけじゃなく心の充足感も大事なんだよ。ことセックスにおいては体と心、そのどちらも蔑ろにしてはいけない。両方を可愛がり、想い合い、堕としていく事こそ……それすなわち愛であると」

 

「『心のチンポが勃起する』……。あぁ、なるほど……正に真理であり、天啓を得たりと言うべきですね。私は今、マスターに犯されているラータ様が愛おしくて仕方がないんです」

 

 我が妻になんて台詞を吐かせているのだというツッコミをする余裕も無い。

 引き続きシミュレーションルームにて、3人が上がってもスペースがあるベッドの上にて余は二人の肉食獣に挟まれていた。

 

 滾る肉棒に貫かれたまま、横たわるマスターの上にいる余。ナカを凌辱され、興奮し切った余の性器を蜜壺で飲み込むシータ。

 

 今の余はマスターの雄々しい体とシータの華奢な体にサンドされ、シェイクされ、啼かされ続ける一人の無力な少女。

 

「んほぁぁっ!!ぁぁっ!!んぉぁあ!んんっぅ……!!あ、あぁっ、細かく動かすのぉぉ……おかしくなるからぁぁっ……!!」

 

「あはぁ!!あんぅ!!んぅ、ふふ……またラータ様のおちんちんがピクンとなりましたわ。よっぽどマスターにお尻を挿れられるのがお好きなみたいですねぇ……あっ、またぁ……」

 

 剛直が余の腸道を何度も抉る度にビクンと震えてしまう余の男根。その男根の反応によって快楽を得るシータの膣内。

 

 まるでマスターとシータが間接的にセックスしているようだった。

 ラータにとっての最愛の男が別の女(シータ)と肉体関係を持っても――。

 ラーマにとっての最愛の女が別の男(マスター)と肉体関係を持っても――。

 

 不思議な事に余には微塵も悲しみも怒りも湧いて来なかった。

 

 収まるべき所に収まってくれた安心感と喜び。そして余を雌として、愛し蹂躙してくれる二つの最愛から与えられる快楽にもう何憚る事なく溺れていいという許しが余の肉体をより『女』にしていく。

 

 生まれたままの姿となって絡み合う3人。

 前と後ろからマスターとシータに犯され続けている余はこれ以上ないぐらいに幸せだった。

 

「ほら、ラータ。今、どんな気持ち?恥ずかしがらずに叫んでごらん」

 

「きもちぃぃ、きもちぃぃのだぁっ!んぉぉぁっ!!んあぁ゛あ゛ぁぁっ!!はひぃぅんぅ……!!あっ、あぁっ……!めすになってぇぇ……!二人のお嫁さんになっちゃぅぁぁっ……!!」

 

「それはいいですね。ラータ様。今度はウェディングドレス姿の貴方をマスターと二人で愛で…………犯してあげたいです」

 

 余の今の肉棒の大きさでは決してシータの奥までは届かないというのにラーマの時に交わってた時よりも蕩かした顔をシータは晒していた。これが心の快楽というやつなのか。

 

 マスターに開発され続けて、余の躰はどんどん遠くへ行ってしまった。それがシータにも影響を与え始めている。

 なぁ、シータ、二人でどんどんエッチになろう。マスターと二人かがりでもいい、余をどんどんよがらせてくれ。今、途方も無い程に幸せなんだ。

 

「さて、と。じゃあそろそろ全身でラータを責めて、フィニッシュと行こうかな。シータ」

 

「では私は乳首と唇を戴きましょう」

 

「んんんむぅぅぅっ!!?」

 

 騎乗位の体勢のシータの深いディープキスを抵抗せずにそのまま受け入れる。さらに彼女の細い指はそそり立っている充血した乳頭へと伸びた。

 

 バックで余を突き続けているマスターは右耳を舌で舐め、両手で左耳と陰嚢をそれぞれくすぐり続ける。

 

「んんじゅるぅぅっ!!んむぅぅぁっ!!んん゛ん゛ぅぅぅっ!んふぅぅっ……!!んぁぁっ、じゅむぅっ……じゅるぅぅぅっ!」

 

 四つの手、二つの口、二つの性器が的確に余の性感帯を嬲っていく。字面的には少し正しくないが。

 

 視覚では視界いっぱいにシータの顔が拡がる。味覚ではシータとの甘いキスの味。嗅覚ではシータとマスターの匂いが鼻腔を刺激し、聴覚では耳の中を侵入してくるマスターの舌の水音が余の脳をふやけさせていく。触覚は言わずもがな。5感全てで快楽を受け取っている余の霊器はもう二人に愛される玩具として変化を遂げていくようだった。

 

「んぅっ――。んぅっ――。んぅっぅぅ!んぅっぅぅ!んむぅぅっ!!んむぅぅっ!!」

 

 前後から喰われ続ける余の肢体。マスターとシータの行為全てが余は雌なんだと教え込んでくれる。

 

「さて、と。じゃあこのまま、まずは一発目受け取ってもらおうかな。返事はしなくてもいいよ。する余裕も無いだろうし」

 

「じゃあ、同時にラータ様に出してもらえるように私も頑張らないといけないですね」

 

 前立腺を延々と刺激され、意識が飛びかけている余にマスターが声をかける。言葉も発せずイキ続けるだけの人形となっている余にはそもそもYESの選択肢しかない。

 

 ずちゅずちゅ、ぱんぱん、じゅぶじゅぶ、くちゅくちゅ、ありとあらゆる卑猥な音が余の体中から奏でられていた。

 

ラーマ(ラータ)

 

ラーマ(ラータ)様」

 

「ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ふぅぅぅぅぅぅうっぅ―――――――――――!!!!!!!」

 

 ハモった二人の声を皮切りにして、余のアナル子宮に待ち望んだ白濁の波が注ぎ込まれる。それと同士にシータの膣内にある男根も耐え切れず精液を放出してしまった。

 

「あぁっ……!あっ、あっ、あぁぁぁああっ!!?」

 

 自分でも驚いている程にナカを出されたシータの震えっぷり、それはラーマの時に交わった時よりも大きかった気がした。

 

「あぁ!ふぁぁっ!?な、なんですかぁ、この精液ぃ……まるで意志を持ったみたいにぃ、私の膣壁、を這いずってぇぇっ……!!あぁっ、うそぉっ……!?あっ、あんぅぅ!!これぇ……すごすぎですぅぅんぅぅっ!!」

 

 もしかしたらかもしれないが。幾度ものマスターとの交わりで余の肉体は大きく変化していった。彼の精液を下の口から飲み込んだ余の変貌ぶり……それは『ラーマ』の時は鳴りを潜めていたが、『ラータ』の時は殊更、顕著になる。

 

「あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、ひぅぅっ…………この精子ぃ、まるで私の霊基全てに染み込んでくるみたいでぇぇ…………!!んあぁ、ひぃぁっ……ああぁっ!き、もちぃぁぁっ……まだイ、っちゃいますぅ……!!ごめん、なさい()()()様ぁぁぁっ……!!」

 

 彼女が謝ったのは注ぎ込まれている今の精液が全て余の物ではないと直感で気付いた故か。

 これまでマスターに散々に中に出され、変貌を遂げた余の肉体から出される精液も間違いなくマスターの影響は受けていた。

 

『ラータ』という肉体がマスターの精液によって再構成され、固定されたというのならラータから出される愛液も彼に近い変貌を遂げているのは自明の理。

 

 むしろ、マスターの射精と同時に達した余のアソコから出される精液はもはやほぼマスターの精液と行っても差し支えないのでは?

 

「はっ、はっ、はっ、はぅ、はひぃぃ……」

 

 わかる、気持ちは凄くわかるぞ。シータ。余もきっとそんな顔をしていたに違いない。本来ならシータが自分以外の精液で快楽の極みに達している光景を見てしまったら間違いなくショックで座に帰るというのに。余は微笑ましいものを見るように頬を緩ませていた。

 

 イキ疲れ、余に倒れ込んでくるシータにある意味で仲間意識が芽生えたとも言えるのかもしれない。同じ快感を共有した女同士の仲間意識が。

 

 ふむ、もう余も自身を女とするのにもはや抵抗感も違和感も無くなってしまったな……。

 

「あぁ――――、このラーマ(ラータ)とシータの重さが心地よいぃぃぃ――――」

 

 至福の時間だった。こうやって3人で繋がり合って、ベッドの上で重なり合っているのが……。もはや女となった余にはマスターもシータもどちらも欠けてはならない翼だった。

 

 しばしの間、マスターに挿れられたままの体勢でシータの膣内に挿っているアソコを抜く事もなく、この陽だまりのような温もりに浸る事にしたのであった。

 

 シータにもこれから何度も余を通してマスターの精液を受け取って欲しい。余のように躰がサーヴァントの身から外れ、受肉するぐらいに。

 

 離れ離れになった時間をこれから沢山取り戻そう。マスターと余とシータの3人で。

 

 

 

 




《ラーマきゅんサンドセックスから数日後》

あれから余は女らしい仕草や女らしい格好をする事に一切の抵抗が無くなっていた。
それは自分自身がそう生きたいと決めた事もあるし、もう男としての生き方を忘れてしまったという点もある。順応性が高いカルデアも数日もしたら、変わった余を違和感なく受け入れてくれた。

マスターもシータも含めて、余を『ラータ』で呼ぶ者はいない。それはあの日、二人と致した時から『ラーマ』と『ラータ』で名前を変える必要が無いと余が判断したからでもあるし。例え、体が不完全だったとしても心が完全に乙女となった余にもう『ラータ』の名前は不要だったから。座が認識しているかつての『ラーマ』とここにいる雌の『ラーマ』ももう完全に袂を分かった。

最愛の人達を引き離す物はもう、何もない。

着慣れたスカートを穿いている余は楽しそうに談笑している二人を見詰める。

「やはり、ラーマ様を孕ませるにはもっとオーガズムが必要だと思うんです。挿入し、中出しする前に限界まで性感を高めていかなくては」

「二人で左右から耳舐め、乳首弄りしながら、アソコを挟み込んで扱き続けてあげたら? 半日ぐらい」

「そうですね。後は耳を舐める際に互いにラーマ様の可愛い所を囁き合いながら舐めるのはどうでしょう? マスターの国では山手線ゲームと言うのですよね?」

「天才かよ、シータちゃん」

いや、まぁ……楽しそうなのは結構なのだが、少しは手加減して欲しいな――――。










《白鷺城の姫とラーマーヤナのヒロインのほのぼの談義》

「やっぱりマーちゃん×ラーマきゅんこそが至高。この本を作ったダ・ヴィンチちゃんは良くわかってらっしゃる!」

「えぇ、雄々しいマスターに為すすべなく啼き続けるラーマ様の愛くるしさは何事にも変えられないお宝です。異論は許しません」

「この二人の絡みを」

「この二人の絡みに」

「見守りたい」
「混ざりたい」

「ん?」
「はい?」

「いやいやいやいやいや、何を言っちゃってくれてんのかな~シーちゃんは。あんまり不用意な発言をすると全国100億人の()女子の方々を敵に回す事になりますよ。よくもまぁ『混ざりたい』なぁんて、そんなダブーを口に出来たねぇ」

「フッ。だから貴女はチキンのままなんですよ、おっきーさん。創作の世界、紙の上での話ならいくらでもアグレッシブになれるのに現実になった途端にヘタれて常識人ぶってしまう。そこがまだまだ奥手故にマスターとの行為の回数が少ない貴女の限界とも言えてしまいますね」

「おっしゃぁ、表出ろてめー。姫がインドア系の戦闘のせの字も知らないか弱き乙女だと大間違いだぞ。大妖怪の力見せてあげちゃうからね、泣いて許しを乞え」

「ふふふ、全体NP付与を付けてから出直してきて下さい。私のハラダヌ・ジャナカで穴だらけにしてあげます」


シーちゃん、カルデアにて親友が出来るの巻。








《今話の隠れたMVP》

TS花の魔術師「おぉっと、うっかり手が滑ってラーマ君の部屋のロックを解除してしまったなぁ。さらにうっかりでシータ君が来るタイミングでたまたま見つけたカルデア寝物語(ラーマ編)をベッドの上に置いてしまったぁ……。あぁ! 今日はよく手が滑るなぁぁ! さらなるうっかりで今度は魔術でシータ君がマスターとラーマ君のいるシミュレーションルームまで辿り着けるように導いてしまった! うぅむ、まさにドジっ娘魔法少女とも言えるねぇ、今日の私は」










ラーマきゅんを使い、シータに間接的に中出しをするという高等プレイ。マスターとシータはラーマきゅんを愛でに愛でる唯一無二の同士となりました。

マスターとシータは直接的な性行為に至ってはいないのでセーフ。人様の妻に手を出さないマスター君は紳士的だなぁ、男の中の男だなぁ、アコガレチャウナー。






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テイルズオブセクステリア(アガルタ編)



感想数がR18作品の中で2番目になりました。この調子で投稿していけば、感想数だけならいつか1位になれそうです。累計ランキング?それは無理。













1年のスパンを開けての懐かしき亜種特異点編inアガルタでございます。
本編についてはあまり時系列的は気にしない方向で。今回の話の時点で不夜城のキャスター、不夜城のアサシン、エルドラドのバーサーカーはこのカルデアには召喚されていない体でいきます。真名バレ注意(今更感)。

亜種特異点は今の所、アガルタ・剣豪は書く予定。他二つは多分書かん。これ以上、風呂敷を広げると死ぬ。







「参ったな……」

 

 ふぅっとため息を吐き、独りごつ。隣にいる女海賊がビクッと震えた。そんなにおびえなくても、もう何もしないっての。

 

 事の発端をざっくりと振り返る。

 

 

 

 ダ・ヴィンチちゃんから魔人柱の残党の反応があると観測された西暦2000年のアジア。

 何と地上から奥深く、地底とあり得ない場所からの特異点の発生。統括局ゲーティアから逃亡した獣の残滓達を刈り取る為にも俺はカルデアのマスターとしてレイシフトしたわけなのだが。魔神柱、素材……今度は無限に湧いてくる魔神柱がいいなぁ。

 

 

 ――男だぁ!

 

 ――ひゃっはー!!野良の男だぁ!!

 

 ――野良チン、ゲットだぜ!!

 

 

 レイシフト先はいきなり世紀末な女海賊の集団のど真ん中というハードモード。

 

 案の定カルデアからの通信も効かないし、問答無用で女海賊達に襲われるし、いや最後は別に『百式官能(セクハラ術)』で撃退出来たから問題無いんだけどさ。っていうか君達、一撫でで昇天するとかちょっと脆過ぎ無い?攻めはいいけど、受けに回ると弱いってタイプ?

 

 

 快楽によって物理的に天に召されてしまったお仲間達を見て、すっかりと戦意喪失している唯一の生き残り女海賊Aさんと平和的交渉を行い、情報収集も兼ねて、水の都……イースを治める海賊公女様の所とやらに連れていってもらう事にしたわけなのだが。

 

 

 しっかし、予定通りに行かないレイシフトにももう慣れちゃったわ。気を抜くとサーヴァントの夢の世界に拉致られるとかもしょっちゅうだし、まぁ……今回は第三者の手によって意図的に事故られたような気もするけど。

 

 

「……ん、何だいソイツは?新しいペットか?」

 

「い、いや違う。公女様の所に連れていく新しい男さ……」

 

「はっは――!同情するよアンタ!まだアタシらに飼われてた方がマシだったろうさ!」

 

 

 近づいてきたこの街の住人であるその女は女海賊Aさんの答えに愉しそうに笑い、首輪を付けて四つん這いになっている男の尻に蹴りを入れながら、去って行こうとした。

 

 せっかくなのでこちらの女海賊Bさんもすれ違い様、『百式官能』で昇天させておいた。

 

「ひゃうぅんっ!!」

 

 恐ろしく早いセクハラ術……俺じゃなきゃ見逃しちゃうね。

 突如として自分を虐げていた者が消失した男は辺りを見回し、いずこへと走っていった。

 

 

 ガタガタと震える女海賊Aさんを連れて、この都の景観を視界に収める。うーむ、水の都って言うからベネチアみたいなの期待していたのに思いの外、汚ねぇ。というか物がそこら中に乱雑してるし、勿体無いな。円卓の皆さんが見たら発狂しますよこんなの。

 

 

 

「こ、この部屋の先にダユー様がいます……で、では私はこれでっ!」

 

 バレないようにノリで十数人ぐらい昇天させながら進んでいると、ようやく目的の屋敷まで連れていってもらえた。

 

 そのダユー様とやらがいる部屋の前まで案内した女海賊Aさんはそのまま逃げるように走り去ってしまった。そんな化け物を見るような目を向けなくてもええやん。

 

 ……さてさて、この国を治めるトップの顔を拝見するとしますかね。

 

 

「あら……また新しい人?どうしたのかしら、そんな入り口の所で固まらないでこちらまでいらっしゃい」

 

「ではお言葉に甘えて、お邪魔します」

 

 扉を開け、中に入ると権力者らしく豪勢な寝室のベッドの上でリラックスしたように腰をかけていたドレイク姐さんのコスプレをしていた美女がいた。さすがにウチの所にいるドレイクさんと別人だってわかる。ドレイク姐さんのファンかな?黒髭と仲良くなれる?

 

「……不思議な人ね。ここに連れてこられた男達は皆、大なり小なりわたしに対して怯えを見せるというのに……。あなたにはそれが一切見え無いわ……。豪胆な勇士?それとも鈍感な愚者なのかしら?」

 

「さぁ、貴女はどっちだと思う?ダユー」

 

 馴れ馴れしさを装い、俺は彼女の隣へと腰かけた。

 女海賊Aさんから、このイースの支配者ダユーの下へと連れてこられた男は皆、一夜を共にした後にその場で殺されているという話は聞いている。一度、得た物には興味を持たなくなるんだっけか?

 

 その話を聞いた後に「なら俺もその生贄の男達と同じようにダユーの所に連れていけ」と言ったら頭がオカしい奴を見るような目で見られたが。

 

「いいわ、勇敢な人。わたし、あなたが欲しくなってきちゃった。二人で存分に肉の快楽に溺れましょう……」

 

 早速とばかりに色っぽく吐息を吐き、服を脱いで豊満な胸を露わにして俺にしがれかかってくるダユー。

 

 

 何にせよ。この世界の事をよく把握している女性に近づく方法が性行為というのなら――。

 

 

 そこは俺の領分だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んひぃぃっ!!ああぁっ!!んぉおっぁっ!!」

 

 獣のような嬌声を上げて、髪を振り乱しているダユーを背後から突き続ける。

 たゆんたゆんと揺れるおっぱいを搾るように掴みながら、タイミングを見計らう。

 

「んあぁっ!!あぁぁっ!!イイっ!イイわぁっ!!あ、あぁっ……!!も、もうっ!」

 

 ……ん――ここら辺かな――?

 

「えっ――……」

 

 膣の動き方で大体、彼女のイク寸前のタイミングを把握した俺は腰の抽送を止める。

 せり上がってきてた快楽を一番良い所で止められたダユーは泣きそうな顔で俺の方を振り返る。

 

「何でぇ……何で、止めるのよぉっ!!」

 

 自ら腰を動かし、快感を得ようとするが絶頂までは至らない。俺が彼女の腰を抑え、満足に動かせないようにしているからだ。

 最初のただ一回のみは膣内出しをして、絶頂へと導いてあげた。だがその後、9回……俺は寸止めプレイで彼女の躰を焦らしに焦らしていた。どれだけ乞われようともイかせてあげなかった。

 

「嫌、いや、いやよ……!我慢は嫌っ……!!何で、なんで、イかさせてくれないのよぉっ!?……あなただって気持ち良くなりたいのでしょう?」

 

 途中、繰り返される寸止めプレイに耐え切れなくなったダユーが無理矢理俺を犯そうと襲いかかったがそこを巧みに組み伏せ、今のバック突きの体勢に到る。

 

「ただの人間がどうして、サーヴァントの私に力でっ……!」

 

 やめとけ、やめとけ、俺はベッドの上では負け知らずなんだ。多分、知名度補正(閨)とか入ってると思う。

 

「ねぇ……どうして、こんな意地悪をするの……?あなただって私との時間を愉しんでいるじゃない。なのにどうして……」

 

 涙を浮かべる年上のお姉さんを見ると凄く興奮しま……じゃなくて、痛む良心を抑えながら俺は次のステップに移る。

 体は十分に突き崩した。なら今度は心の牙城を壊してあげよう。

 

()()()()()()()()――。そして、()()()()()()()()()()()()だったかな」

 

 その言葉にビクリとダユーの体が震えた。

 俺が口にしたのはこのイースの唯二つのルールにして、無法者達が守っている規範。

 奪う瞬間の最大幸福のみを求め、それ以降の事にはこだわらない刹那的な生き方。

 

「最初の膣内出しの時にもう十分に抱いたよね?奪ったとも言えるんじゃないのかな?まだ欲しいの?」

 

 顎を掴み、視線を逸らさせないようにこちらに顔を向けさせる。

 

「……ただの一回だけじゃ、満足出来なかっただけよ……」

 

 目線が泳いでいるダユーちゃん。自分でもわかってるのかな?奪う事のみに重きを置いているのなら、今、俺との性交にこだわっているのはあまりよろしくない事だって。

 

「ふ――ん。じゃあ、次で満足するって事かな?もう欲しがらないって事だよね」

 

「え、えぇ。当然よ、私は何かに執着をしたりはしなぁひぃぃぃっ!!あぁぁっ!きた、きたぁっ!!これぇ……これが欲しかったのぉぉっ!!」

 

 先程の悲痛な表情はどこにやら、ちょっと腰を動かしただけでこの悦びよう、現金なやっちゃね。

 ベッドを軋ませ、奥深くまで突き続ける。ドレイクさんは別人とは言ったものの、体つきとナカの具合は似てるなぁ。ふむ、これはベースはドレイクさんにして霊基を弄ってるのか……?

 

 何てパンパンと肉付きのよいヒップに腰を叩きつけながら分析する事でもないか。

 

「あっ、あっ……んぉっ……!!いく、イく……イくぅっ……!お願い、止めないでぇ、止めないでぇぇっ……!!」

 

 懇願するダユーの膣奥へとお望み通り迸る精液を叩き込む。

 

「んんあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁっ!!」

 

 四つん這いの犬のような体勢のまま、雌叫びを上げるダユーさん。絶頂に至った彼女を見届けて、ペニスを引き抜いた。

 ビクビクと痙攣する下半身から精液を溢れ出させてるのがえっちぃっすね、ダユーさん。

 

「はい。これで満足した?」

 

「はぁ――、はぁ――……ぇえ?」

 

 ぐったりとしている彼女の目の前に未だ臨戦態勢の怒張を見せ付ける。

 

「君が欲しがっていた二度目ももう終わりだよ。もういいよね。どうする?奪った俺を殺す?」

 

「これで終わり……?」

 

「そう終わり。もう十分楽しんだでしょ。これ以上求めちゃいけないよね、イースのルールの見本となる海賊公女様がさ」

 

「いや……いや、いやっ、嫌っ!」

 

 浅ましくも口を開いてペニスにしゃぶりつこうとする彼女から離れる。腰に力が入らないのか未練がましい瞳を向けられた。掴み取ろうとしている手も抑え付ける。

 

「『自ら奪ったものは欲するな』。君は次で満足すると言った。本当は後、何回で満足してくれるんだい?3回、4回、10回、それともずっと?」

 

 未だ俺とのセックスを求めている彼女に。一つの物に執着している姿を、自身のアイデンティティを揺るがす客観的事実を突きつける。

 

「あ、あ、あ、あ――――……」

 

 俺の言葉に葛藤し、髪を掻きむしり、呻き声を上げるダユー。

 奪う行為に重きを置いているのなら、もう俺に執着するべきではないのだろう。だが欲しい物を前にして我慢もしたくない。

 

 そもそも俺からすればちゃんちゃらおかしい話なのだ。奪うという行為に最大的幸福?何かに執着しない永続的かつ流転的な資源の移動による社会制度?

 

 笑わせる。この目の前にいる娘もこの国の奴らもまるで楽しみを、愉悦を、快楽を理解していない。

 

 一度クリアしたゲームを何度もプレイするように。

 一度読み終わった本を時間を置いて、読み直し、新たな発見を見出すように。

 食べ物であれ、服であれ、武器であれ、嗜好品であれ……そして愛すべき女であれ、只の一回使っただけでやり切ったような顔をするな。

 

 俺は愛すべき人達を手放す事は絶対に無い。飽きないし、捨てないし、生涯、彼女達の全てを欲し続ける。共にいる為ならどんな事だってしてみせる。

 

 持ち続けるという楽しみを知らない子供が大きい顔でいきがるな。積みゲー駄目、絶対。

 

 

「んぁああっ!!ひぁああっ!!すきぃ、これ、すきぃっ!!ああんぅっ!」

 

 

 わざとらしくため息を吐き、正常位で再び彼女の膣内に挿入する。

 本当に可哀想な娘だ。奪うという行為そのものに酔ってしまって、自分が本当に欲しい物がわからなくなってしまっている。だから、こんな矛盾を起こしてしまう。

 

 

 再びイく一歩手前でストロークを中断する。今にも自殺してしまいそうな顔で固まっていた。

 

「あ、アァ――、いや、いやぁっ!」

 

 自分なりに快楽を得ようとしても、俺が彼女の動きを抑えている現状では満足に快楽を得られない。

 行き場を失った子供のように首を左右に振る。

 

 時間を置いて、再び抽送を開始する。

 絶望で歪んでいた顔に光が差す。俺の腕をギュッと握りしめ、媚びを売るような視線を向ける。

 

「あんぅっ!!はぁっ!すてき、すてきよぉ!あなたのオチンポぉっ!」

 

 だが俺はそれに絆されるような事は無い。またギリギリのタイミングで腰の動きを止める。

 

「……あっ、あぁっ!!ちがう、違うのぉっ!いや、いや、いやぁっ!!なんで、後ちょっとだったのにぃぃっ……!!あぁっ……ひどい、ひどいっ!」

 

 間を開け。

 

「んぁおあっ!!はぁっ!!あんぅぁっ!!今度こそぉぉっ……」

 

 寸前で止める。

 

「あぁぁっ……!!やだ、やだやだやだやだ!!動いて、動いてよぉっ!!」

 

 昂りが収まったのを見計らってまた膣を蹂躙する。そして寸止め、その繰り返し……泣き叫ぶ彼女を無視しながら、寸止めプレイを続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひっぐ……えっぐ……いや、もう嫌ぁ……頭、おかしくなっちゃうぅ……イかして、イかさせてよぉぉ……」

 

 寸止めプレイを二十回繰り返して、繋がったままのダユーは子供のように泣きじゃくっていた。

 今の自分が喉から手が出る程に欲しがっている快楽の極致。それを寸前で何度も取り上げられているのは我慢が嫌いな彼女には堪えるだろう。

 

「ぅぇ……んぐぅ……お願い……おねがいしますぅっ……。もう、何でもしますからぁ……あなたが欲しがってるものならあげるからぁっ……お願いイかさせてぇ……」

 

 ダユーの体と心はもうボロボロだった。言葉で揺さぶられ、快楽で正常な思考も奪われる。まぁ、元々正常とも言えないものの考え方だったが。

 自ら奪ってくれと懇願するぐらいに彼女は追い詰められていた。

 

 ここまで鞭を与えていた俺はやっと飴を与える。

 

「ダユー。俺は別に君が憎くて、こんな事をしてるわけじゃないんだ。ただ、嘘を付くのを止めて欲しい、正直になって欲しいだけなんだ」

 

「しょーじきぃ?」

 

 涙目で首をコテンと傾けるダユーちゃん可愛いですね。

 

「そう。俺に抱かれるのはこれっきりでいいの?もっと欲しいんじゃないの?」

 

「…………私が欲しがったら、ちゃんとくれるの?」

 

「あぁ、もちろん。これからもずっと。君がきちんと欲しがるならね」

 

 まぁ、この亜種特異点の情報が欲しくて、最初は接近した感じはあるけど。ここまで誑かしてしまった責任は取るつもりさ。ちゃんと最後まで面倒は見るとも。途中で飽きてポイなんてこの国の奴らみたいな事はするつもりも無いし。

 

「ずっと、ずっと、ずっと、ずっと…………」

 

 うわ言のように呟き続けるダユーはやがて、何かを振り切ったような蕩ける笑顔を浮かべた。

 

「……欲しい。欲しいわ、あなたからの絶頂が欲しいの」

 

 堰を切ったように彼女は俺に縋りついた。

 

「一回じゃ、満足出来ないの。これっきりなんて言わないで。お願い私が欲する度に与えて欲しいの!こんなの知ってしまったら他の男の粗チンじゃな、全然満足出来ないの!!私が掲げるルールが気に入らないなら捨てるからぁ!あなたに尽くすから……。だから、だから……」

 

「いい娘だ」

 

 堕ちたな(確信)。

 

「あ――」

 

 よく出来た娘にはしっかりとご褒美を上げないとね。

 腰を動かし、熟した彼女の膣内を擦り出す。

 

「んおおおぁぁっ!!あああぁっ!!これぇ、これだけが欲しかったのぉぉっ……!!もう、いらない他には何もいらないのぉぉっ!!」

 

 先程のしおらしさはどこへやら。狂ったようによがり続けるイースの女王。

 唇を近づけ、彼女のだらしなく開いた口から出ている舌を絡め取る。

 

 俺からの行為を全て受け入れるようになってしまったダユーは感極まったように目を細める。

 じゅぶじゅぶと上下の口から激しく水音を立てる。

 

「んじゅぅっ!ちゅっ、んじゅるぅ……んぱぁっ!あぁっ!!イくぅぅっ……イく、イくイくぅぅぅっ――……!!」

 

 クハハ……これでこの特異点の情報源&足をゲットだぜ。

 

 …………何だろう。この地底世界に来てから、澱みなく悪役ムーブしているけど、俺ってばそっちの才能があったのかな。

 いや俺がこんなあくどい事をしているのも特異点を発生させた魔神柱の仕業なんだ!!おのれ、許せねぇ魔神柱!!

 

「はぁっ!!んおおおおあぁあぁあっ!!あひぃぃっ!!嬉しい、うれしぃぃっ!!今度は止まってない……ちゃんと動いてくれてるぅぅぅっ!!あぁっ……もっと、もっとぉぉっ!!」

 

 ま、取りあえずは戦前の腹ごしらえ(性)とイくとしますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど、つまりこの地底世界では3つ……いやレジスタンスを含めて、4つの勢力がいると」

 

「はい。内向的であまり他の地域に侵攻をしない不夜城の勢力。他の勢力に手当たり次第、突発的な攻撃を仕掛けているアマゾネスの勢力。そして虐げられていた男達による反抗勢力」

 

 食事(セッ)&運動(クス)を終え、一息ついた俺は隣にいるダユーから地図を見せられながら、この国の情勢を知る。ちなみに二人とも服は着ていません。えっち。

 

「そしてそれぞれの勢力に君みたいな指導者がいると」

 

「マスターがお求めになっている魔神柱とやらもそのどこかの勢力を根城にしている可能性が高いなら確実にその内の誰かが……」

 

 ちなみにダユーちゃんは外れ。

 

 彼女の支配下にあったイースの国のヒャッハーな女海賊さん達もダユーが屈服した事により、俺の言う事を素直に聞くようになった。支配権が俺に移ったのかな?彼女達は実際に存在するというよりは使い魔的なイメージの方が正しいかもしれない。国の上がすげ替わればそちらに従う。国盗りシミュレーションゲームみたいだな。いや、あっちは忠誠度とか面倒くさいのあるし、まだこっちの方が大分楽か。

 

 イースの国を掌握した事で、女海賊達がペットにしていた男達は全員解放させた。そういうアブノーマルな趣味はウチ(カルデア)の所の少数派閥で十分なのです。彼女達には『エンジョイ&ダブルピース!』を標語にこの特異点攻略を手伝って頂きたい。

 

 解放された男達は逃げるようにイースから出て行ってしまったけど。それも仕方ないか。今まで自分達を虐待してた奴らが大人しくなったとはいえ、一緒にいるなんてごめんだろうし。さらにはたった一日でこの国の頭になっている俺も彼らからすれば化け物みたいなもんだろうさ、きっと。

 この国を奪うのに使ったのはアソコだけどね。俺の愚息に『国堕とし』とか異名を付けてもいいんじゃないかなこれは。

 彼等に関しては最低限の助けは果たしたって事にしておきましょうか。レジスタンスに与するか、自分達で生きるかは彼等自身の判断だ。

 

 

「後、気を付けるべきと言えば。災害のように現れる獰猛な巨人と君の所にいた筈なのにいつの間にか姿を消していた軍師さんか……。ま、当面の攻略対象は不夜城かアマゾネスだね」

 

 この亜種特異点が女>男の女尊男卑の世界というのなら、俺は虐げている方から攻略させてもらう。

 必ずしも黒幕が強者側にいるとは思ってなんかいないけど、幅を利かせている集団からカチコんでいった方が何かしら手掛かりはヒットする確率は高いでしょう。

 

「うむ。具体的な説明ありがとう。それにここで移動手段に長けている水路と操舵に長けている人材を確保出来たのは幸先が良い。褒めて遣わす」

 

「あ、ありがとうございます……。だから、そのご褒美を……きゃんっ!」

 

 そろーりと俺のペニスに手を伸ばそうとした手を叩く。

 

「ハウス」

 

「……わん」

 

 そんなシュンとしなくてもどこの勢力から落とすか決めたら、後でちゃんとあげるからさ。信賞必罰は上に立つ者の基本だよネ。

 さーて、亜種特異点in地底世界修復タイムアタック行ってみよ――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




「ふ――、ふ――、ふ――、抜き足、差し足、忍び足からの右見て、左見て、右見て、左見て、上と下も見て、速やかに安全歩行」

上下左右全方向を挙動不審に確認しながら、イースを後にする褐色美女の姿があった。石橋のタイルを一枚一枚全て叩きながら渡るレベルで慎重に逃亡を図るその姿は一つの感動さえも覚えてしまうかもしれない。

「上手い話には裏がある。あの下手ラップ魔神柱の話を鵜呑みにした私が愚かでした……。何が『我らが仇敵/カルデアのマスター/色狂いの癖有り、ならばこのアガルタとの相性大なり→我がカルデアからの支援を妨害。奴は孤立無援で狼狽。ここの女共でいくらでも絡め取れる』ですか……! 相性が良すぎるんですよ……最悪の方向で。今度からちゃんと書面で詳細に記載されているもの以外の話は断る事にしましょう。口約束程、恐ろしいものはありません……」

丁度、ダユーとこのイースを見限り、去ろうとしたタイミングであのカルデアのマスターがこの国に来たのは不幸中の幸いだったかもしれない。もしまだイースの軍師だった時に彼とエンカウントしてしまった日には……キャスター、シェヘラザードは想像だけ死にそうになった。

「あれは駄目です。女である以上、誰も彼には敵わない。不夜城のアサシンもエルドラドのバーサーカーもそして、当然私も……いえ、先の二人はともかく、もし私がこの特異点発生の片棒を担いでいると知られたら、きっと……閨でイき殺されてしまいます……。物語をかき乱す配役にも限度という物があります……。アレの口車に乗らないでフェルグス辺りのサーヴァントでもキャストしておけば良かったのかもしれません……」

魔神柱はプロローグの時点でやらかしているし、何故かカルデアからこちらに召喚出来たのはヘラクレスだけ。エレナ・ブラヴァツキーやフランシスドレイクはアガルタに引き込む事は出来なかった。あのダユーも英霊の座から呼び寄せたドレイクの霊基を弄り、その上にダユーという英霊としては貧弱なキャラクターを上書きしただけ。

エレナは最悪、いなかったとしてもそこまで物語上、不都合は無い筈。おかげで随分と手間がかかってしまったが……。何故、ヘラクレスはこちらで召喚出来て後の二人はこちらに呼ぶ事が出来なかったのか。

「カルデアにいる彼女達はサーヴァントではない……?私の宝具の世界に誘い込めない程の確立した存在になっている……?いえ、まさかそんな筈は……。ですが可能性として留意しておく必要はありますか。まだ勝負の土台に立てるのは極限狂化したヘラクレスもとい、メガロスか。あるいはレジスタンスのライダーか……」

まだ公の場に見せていないのは良かったかもしれないとシェヘラザードは心の中で深くため息を吐く。イースの致命的弱点となる水門の鍵の在処という手土産を持って、不夜城に行くのも手だろう。あの傲岸不遜な女帝ならアサシンの特性を生かして、自ら乗り込んでいってくれるかもしれない。十中八九失敗しそうだが。

「この狂い始めている物語の中で身の振り方を考える必要がありますね……。私の目的の為にも。あぁ、ストレスと恐怖で胃が死んでしまいそうです……」

鬱鬱と呟きながら、語り部は闇夜へと消えていった。















前回、甘々の話を書いてしまった反動。
アガルタ編を書いたのはあるサーヴァントのエロ回を書きたかったからです。全3話予定。




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テイルズオブセクステリアⅡ(不夜城のアサシン編)

どこまで早く更新出来るかチャレンジ。皆の応援がオラの力になるぞぉ!(満身創痍)






アガルタ編の続きです。







 地底世界アガルタのあらゆる所に流れ、行き届いている川。その水路を生かして、帆を張り、船を操る女海賊達は駆け巡っていた。

 それは今までの無秩序な略奪を繰り返す為ではなく、頭から与えられた指令を遂行する為。

 

 優れた移動手段を用いて、彼女達はアガルタ中にビラを配った。出来るだけ多くの者の目、特にアマゾネスの連中を重点的に。

 

『我らがイースの新たな王となったカール・D(デアー)・ロジャー様は次なる目標を不夜城へと定めた』

 

『偽りの輝き、張りぼての平等、虚ろな正しさ。その全てを滅ぼしに我らが王がやってくる』

 

『指を咥えて見ているがいいアマゾネスの者達よ。首を洗って待つがいい不夜城の者達よ。決行は2日後、大船団を引き連れて性賊王がやってくるぞ』

 

 海賊公女ダユーは男に敗北し、屈服し、新たな頭となったその男に心からの忠誠を誓った……と噂を折り込ませながら、プロパガンダを行った。

 

 イースの者達を、ダユーを知る者達はあり得ないと耳を疑うだろう。「あの品の無い女海賊共がたった一人の男に従わされている?何を馬鹿な」と。特に不夜城とアマゾネスの者達は。

 

 だが、女海賊達の各々の欲望を優先させた今までの勝手とは打って変わっての統率された動き。男達を見かけても襲わず、無視をするだけ。

 そして、何よりイースが陥落した時に逃げた男達が口々に言う言葉が信憑性を増した。

 

 ――あのイースに連れてこられた平凡そうな男がたった一日で国を落とした……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺の聖晶石か?欲しけりゃくれてやる。探せ!もうどこにも見当たらねぇからな!むしろ俺に恵んでくれ。

 

 ダユーちゃんを性的に堕としてから数日後。

 彼女の住処となっていた屋敷の一室でお世話になっている俺は今頃、この地底世界中に配られているであろうビラを見る。『性賊王』とか酷くない?何か怖そうな異名を付けて欲しいってダユーちゃんに頼んだ結果がこれだよ。この世界の人達に一体どんなイメージを付けられた事やら……。もっと天夜叉――とか死の魔術師――とか格好良いの無かったの?

 

 おい、自信満々そうな顔でこっちを見るな。「褒めて褒めて」じゃないんだよ。

 

「……んっ、あんぅ!!……はぁ、ではこのビラ通り、最初の標的は不夜城なのですね……っやぁんぅ!!」

 

「いや、厳密に言えば違う。俺の最初の標的はアマゾネス、エルドラドのバーサーカーからだ」

 

「……っ、ああっ……!あぁっ!!……ならぁ、どうしてぇ?」

 

 ご褒美も兼ねて、背面座位の体勢で嬉々として俺の腰の上で跳ね続けるダユーちゃんに説明する。

 俺が最初にカタをつけたかったのは機動力があり、積極的に領地を拡大しようと侵攻しているアマゾネスの方だった。

 

「だからといっていきなり敵の本拠地に乗り込むのも無策だし、自分達の国で迎え撃つのも却下。このイースって防御性、マジで皆無だからね。籠城戦には向いてないわ」

 

 申し訳なさそうに眉を下げるダユーちゃん、けど腰を動かすのと喘ぐのは止めないんですね。

 

「んっ、んああぅ……ならばこのビラはフェイク?」

 

「まさか。それに書いている通りに2日後には不夜城に攻め込むさ」

 

 わからないと言った顔。

 次の目的はエルドラドのバーサーカー。けど、アマゾネスの根城に攻め込むつもりもこの国で戦うつもりも毛頭無い。

 なら、何故わざわざアマゾネスの連中を煽るような文を添えながら、ビラを配らせたのか。そして最初に不夜城に攻め込むつもりなのか。

 

「アマゾネスがダユーに聞いてた通りの性格なら、血気盛ん、戦意旺盛。彼女達がこのまま黙って見てるとは思えない。話に聞く限り、強い男は種馬として、弱い男は殺す。この世界における女尊男卑の縮図の顕現として振る舞っている彼女達がいつまでもたかだか男一人にいいようにさせて大人しくしているのかな?」

 

 十中八九、不夜城に攻め込んだタイミングでアマゾネス達は現れる。自分達以外でこの世界で幅を利かせている勢力である不夜城とイースをまとめて消す為に。

 

「つまり、今回は『アーマゾネス君!不夜城であーそび(戦争し)ましょ!』作戦」

 

 第三者の庭でドンパチすれば、アウェイでも無いし、自分達にも被害は出ない。いそのー、他人のお家で戦争しようぜ――、アマゾネスの皆もイースの皆も何一つして気にする事なく戦える……誰にも迷惑がかからない……何と平和的な作戦だろうか。

 

 

 

「気にするわ愚か者――!!ここに迷惑がかかる一番の代表がおるのによくそんな話が出来るな貴様!不遜過ぎて憤死するわ――!!」

 

 というわけで携帯していた愚者の鎖で拘束されているこちらの紫髪の少女が水門の鍵がある保管庫に忍び込もうとしていた不夜城のアサシンちゃんです。

 ふむ、普段から邪ンヌとか、ハサ子さんとか、静謐ちゃんとか、セイバー・リリィ相手に振るっている緊縛術が役に立ったぜ。

 そもそも気配遮断:D程度でこちらの目を誤魔化せると思ったのか。こちとら普段からカルデアで不特定多数にストーキングされている身ぞ。

 

「あっ、あぁっ、あぁっ、オチンぽ、おっきぃぃっ!!あぁんぅっ!!」

 

「え、えぇ――い!一度乳繰り合うのを止めぬか――!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よーそろー!」

 

 攻め込むまで多少の時間がある俺は時間潰しも兼ねて、ダユーから話でしか聞いていないアマゾネスの人達を実際にこの目で拝見しておこうと船を発進させていた。やっぱり戦う相手は前もって自分の目で直接、確かめておかないとね。アマゾネス=鳳凰の羽根しか無いイメージを払拭する為にも。

 

 逆流だろうがお構いなしに進む不思議シップの甲板の上で潮風を感じる。

 さて水路の中でも比較的、目立つルートを選んでいますが、アマゾネスの方々は仕掛けてくれますかねー。

 

 イースの留守はダユーに任せて、俺はゲットした中華風のロリっ娘を連れて船旅を楽しんでいた。

 

「おのれ、抜かったわ……。ダユーは男との情交に溺れて隙だらけであるとあの軍師の口車に乗るべきではなかったの。愚かなりにも一応は国の王、罠の一つを用意しておいて当然か……」

 

 いや、ダユーちゃんのは素でもう俺との関係以外はどうでもいいと思ってるよ。

 

「しかし、半信半疑だったがまさか本当にあのイースが一人の男の手によって落ちるとは……。あの海賊公女も貴様の前では骨抜きじゃったしの。つまり、貴様がイースの軍師を離反させ、ダユーを性的に誑し込み、現在のイースが隙だらけと妾に錯覚させ、この国におびき寄せていたと……ぐぬぬ、敵ながら天晴としか言えん。妾とて、ちらりと見たあのダユーの乱れっぷりは演技だとは思えんかったからの」

 

 ごめんね、君を捕まえたのは偶然以外の何物でもないんだ。

 けどそれを正直に伝えるのも可哀想だから、このまま敵の権謀術策に嵌ったという事にしておいた方が本人にとっても幸せでしょう。

 

 俺は小さな女の子には優しい事に定評があるマスター。

 

「ま、あの猪突猛進共があんなビラを見てしまえば、突撃して来る可能性は高いだろうが……もし仮に貴様らが不夜城に攻め込んでいる間に留守中のイースに攻め込まれたら、どうするのじゃ?」

 

 捕虜の身となったふーやーちゃんはここまで何度も逃亡を図ろうとしていたがその度に『百式官能』で動きを止めて阻止されてしまうのでいい加減正攻法では諦めたようだ。俺の目の届く所なら拘束も外して自由にしてある。う――む、対女性ならこの極めたセクハラ術マジで便利。

 

「誇り高いとされるアマゾネスがそんな空き巣紛いの事をするとは思えないけど。それでも、もし留守中にそっちに攻め込まれたら待機中の部下に水門を解放してイースごとアマゾネスを沈めても良いって伝えてあるから大丈夫じゃない?」

 

「何も大丈夫じゃなかろう……。頭おかし過ぎてびっくりする」

 

 ダユーちゃんも「イースが沈む?けどマスターはここにいるのでしょう?何か問題でも?」みたいなスタンスだったし。うむ、ちゃんと全身全霊で堕とした甲斐がありました。大変結構。

 

「今回の船旅はそれも込みだけどね、実際にこの世界のアマゾネスがどういう性格をしているのか観察する目的もあったし」

 

「一応は敵国の頭によくもまぁ、内情をベラベラ喋るのだな。捕縛されて、無力化した妾など敵ではないと舐めておるのか?」

 

 ギンとロリだろうと不夜城の女帝に相応しい威厳でこちらを睨みつけるアサシン。うん、可愛い。

 ふーやーちゃんも自分から振ったとは言え、ここまで答えてくれるとは思ってなかったのかな。ま、舐めてるつもりはないけどね、違う意味では舐めたいと思ってるけど。

 

「一回船室に戻ろうか。引き続き、辺りを警戒。何かあったら迅速に報告、頼むね」

 

「ラブ&ダブルピース!(イエッサーの意)」

 

「ぬお――!離せぇ!!自分で歩けるわ!!この妾をよりにもよって猫のように掴むとは貴様、命知らずか!!」

 

 後の事は女海賊さん達に任せて、襟元を掴まれ、ジタバタと暴れる彼女を持ち上げ船内に戻る。中華風の服。王としての威厳。尊大な態度。猫嫌い……ははーん、さてはオメー則天武后だな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「むむむぅ――……」

 

 妾の女帝としての覇気もどこ吹く風。同じ船長室にいる妾を注視する事なく、本を読み、リラックスしているこの男。

 敵対する不夜城の王である妾を捕えても殺すわけでもなく、情報を吐かせに拷問するわけでも無い。

 

 逃げようとしたり、命を奪おうと襲いかかれば、摩訶不思議な体術で動きを封じられてしまうがの。何なのじゃ、撫でられた瞬間に全身がびりびり――と痺れて腰が抜けて動けなくなってしまうし……房中術の類か?あるいはこやつの時代のマーシャルアーツか?

 

 悔しい事に力の差は歴然か……。だからこそ、こやつも捕縛した妾など脅威とすら認識しないで放置しておるのだろう。

 

 だが、妾は諦めぬ。この程度の窮地、生前いくらでも乗り越えて来たわ。数多の政敵を陥れ、失脚させ、殺して来た。妾の道を阻む者は何人たりとも生かしておかなかった。

 謀略で妾を嵌めたのは敵ながら感嘆するが、ここで敗北を認めるわけにはいかぬ。どんな手段を使おうとも必ず返り咲いてみせる。

 

「魔神柱だったか?貴様……虎狼の目的は?」

 

「虎狼?」

 

「あだ名じゃ、あの海賊公女をイースごと簡単に喰らった貴様のな」

 

 最初は『昏羊』にしようと思ったがの。どう見てもこやつは狩られる側ではなく狩る側じゃ。って何か震えておらぬか?妾、もしかして地雷踏んだ?

 

「いやごめん。イースでは『性賊王』とかアレな異名だったから。『虎狼』とかストレートにカッコいいあだ名を付けてもらえて感動してた。ありがとうふーやーちゃん、飴ちゃんいる?」

 

「ええい!頭を撫でるでない!ちゃんづけをするでない!子供扱いするでない!不敬罪で引き伸ばしの刑に処すぞ!飴はもらう!」

 

 うむ、美味。

 だが、さらなる情報を聞きだすつもりだったが、意図せず好感度を上げてしまったのう…………。

 

 いや、それで良いのか?逃亡も暗殺も叶わぬのなら誑し込み、篭絡すれば良いではないか!!

 

 天啓が降りた妾は寝台の上で座りこんでいる虎狼の傍へと寄り、その下半身へと手を添えた。

 

 こやつが妾を逃さず、殺さず、傍に置いていたのはこういう事を期待していたからかだと確信した。きっとあの駄肉をぶら下げたイースの海賊公女では満足出来なかったのであろう。それで妾のぱーふぇくとぼでぃを求めてしまったと。

 

「……ふーやーちゃん?」

 

「妾が怒った理由はわかるだろう?そなたには子供ではなく、一人の女として見てもらいたのだ。もう真名は知っておるのだろう?『武則天』と呼んでおくれ」

 

 よい、よい、よい。その不遜を許そう。生前は女を……色を武器にして、政界を生き抜いた事もある。くふふ――、がさつな女海賊では到底味わえない天国を見せてやろうぞ。

 

 こやつも不敬に不敬を重ねてはおるが、ここで妾の魅力に陥落させてしまえば今後、有能な手駒には出来るしのう。単純な戦闘力に頭も回るし、策は奇抜過ぎて、ちょっと付いて行けぬ所もあるが。有能であるなら妾は重宝する。それこそ優れた指導者の証であるからな!

 

「これ以上は女の妾に言わせんでおくれ……妾とて恥じらいもあるのじゃ……」

 

 ここでこの虎狼を掌中に収め、イースを奪い、逆転してみせる……。

 そんな決意を込めて、熱に浮かされた女の演技をした妾はこやつの下半身を撫でまわし、下袴を脱がしていった。

 

 

 ……………………ちょいと、大きくないかにゃ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ、ふぅ……ぉお、す、凄いのぉ……。まだこんなにたくさん……」

 

 噴水のように噴き出す白濁が妾の体も汚していく。

 うぅ……これで何回目じゃ?十回はいっておるか?……いっこうに萎える気配が無いのじゃが……。

 

「ど、どうじゃ……妾の足技は?ぷにぷにの土踏まずで扱かれるのは手淫では味わえぬ快感じゃろ?」

 

「あぁ……とても気持ち良いよ」

 

 妾の腕よりも太い剛直を左右から裸足で包み込み、上下に何度も扱く。時には指先で器用に鈴口をくすぐりながら、虎狼を射精へと誘っていく。顔と声を聞く限り、間違いなく快楽は得てはおるし、演技とは思えぬ。

 

「ほれ、ほれ、ほれ……出すが良い。妾の足にちんぽ汁垂らして、全て出しつくしてしまえっ」

 

 ――ビュッルルルルッッ!!

 

 おぉっ……濃いのがまたぁ。して肉棒は……元気いっぱいじゃのう。

 ぬぅ、度重なる射精のせいで妾の体中も白濁まみれなのじゃが。ベトベト……。この雄臭を嗅いでると、何だか頭がボォーっとして…………ってイカンイカン!妾が気をやってどうする!これもサーヴァントの身の弊害か、こやつの濃厚な魔力に霊基が惹かれてしまっておる。

 

 ええい、くそぅ!ここまで絶倫だとは思わなかったわ!!陥落させると決意した以上、主導権は妾が握らなければならぬ!こやつが満足しないで妾が先に参るなどぷらいどに関わる!

 足こきで駄目なら更なる快楽を与えてやるだけの話よ!

 

「未だにここまでおっ立てておるとは……。くふふ――、いやしんぼの貴様にはもっと凄いのをくれてやろうぞ……」

 

 口の中に唾を溜めてから、汁まみれになっているぐろてすくな肉棒を頭から咥える。

 

「じゅぼっ、じゅぼぉ……じゅるぅ、じゅむぅぅ……んじゅるるぅっ……!」

 

 頬をすぼめ、卑猥な水音を立てて、音でも陰茎を犯していく。目線を上にすれば、そこれには気持ち良さそうに顔を歪めている虎狼の姿が。大丈夫、何も問題ないのじゃ。妾はこやつの精魂を吸い付くし、骨抜きにし、篭絡させ、服従させる。これはその為の必要な一手。

 

 だが、だが、何とも大きく雄々しい男根よ……。妾の顎が外れそうぞ……。

 

「んじゅ!んむじゅるぅ……!じゅるるぅぅ……んじゅぅるぅっ!!じゅぽっ、じゅぽっ……」

 

 手は抜かぬ。全身全霊、手練手管を尽くして、この男を抱き込んでみせる。

 べろべろと亀頭周りを舐めまわし、咥えながら両手で輪を作り、激しく扱く。肉棒にこーてぃんぐされた精液を接種した事で頭をくらくらさせながらも、喉全体で締めるようにその剛直を奉仕し続けた。

 

 股座の下で座り込み、不遜極まりない姿を妾にさせている虎狼は愛おしそうに妾の頭を撫でてくる。にはは、ここでも子供扱いか。だが良い。これは妾に対するこやつの好感度が上昇している証拠だとして、不本意ではあるが受け入れてやろうではないか。

 

「じゅむぅ……んばぁっ。ほれぇ……出してしまえ、妾の小さな喉まんこに貴様のおちんぽ汁をなぁっ……あむぅぅ……じゅるるるぅっ!!」

 

 男の興奮を煽るような言葉で媚びながら、一切合切吐き出させるように射精を促す。陰嚢を揉み込みながら、涙目になるまで虎狼の肉棒を咥え込み、尺八を行う。

 

 ほれ、ほれ、ほれ……その玉袋が空になってしまうぐらいに射精してしまえ!!心身共に妾に参ってしまえ!!

 

 ――ドピュルルルルルルゥッ!!

 

「んぶううううぅぅっ――――!?んぐぅぅっ!!んむぅぅぅっ……!!んじゅ、んぉぇ……」

 

 来た来た来た来た来たぁっ!……って何なんじゃ、この量!妾が足でした時よりもまた増えてはおらぬか!?待て待て!この量はまずい!精子に溺れてしまうっ!!

 

 あっ、あっ……口に喉に、そして胃まで容赦なくこやつの子種がかけられてしまっているぅ……。妾の体が口内射精で達しておるぅ……。

 

「っぁ……大丈夫?武則天ちゃん」

 

「んぐぐぅぅっっ……んぐっ、んぐぅ、んじゅるぅぅっ…………ごく、ごくぅっ」

 

 ……舐めるでない。貴様に心配される謂れはないわ。

 ここで生娘の如く、苦しさで吐き出すような醜態を見せるわけにもいかぬ。ここは余裕のある大人のお姉さんとして、妾は吐き出された全ての精液を飲み干そうと咥えた肉棒を決して離さず、喉を鳴らし続けた。

 

 軽く逝ってしまってるのを悟られないように掃除口淫を行う。

 

 おぉ、何と濃厚で膨大な男汁よ……。そしてこの味、思わず、ずっとしゃぶってしまいたくなってしまいたくなるような………………。まぁ、いずれ妾の手駒となるのだから雄として優れているのも悪い事ではない。妾の隣に置いた時に無聊を慰める良い玩具にもなるし、魔力供給にもなって一石二鳥じゃしの!

 

「……んぐぐぐ、んぐっ!……ちゅぽんっ。げほっ!けほっ……!」

 

 最後まで手抜かり無き口淫から生々しい音を響かせ、きゃっつの肉棒を解放した。これだけやったのじゃ、もうさすがに……。

 

「何でまだギンギンなんじゃ!」

 

「いたいっ」

 

 怒りのあまり張り手をかまし、揺れる肉棒の鋼鉄っぷりは未だ健在。何なのじゃ、こやつ……。底なしにも程があろう。あれか?妾の肉体がぱーふぇくと過ぎたせいか?くぅっ!自身の魅力が罪深い!!

 

「あ――、別に無理しなくてもいいよ?しんどいならここら辺で止めてもいいし」

 

「はぁ――!?無理ぃ!?何を言っておるのじゃ貴様!!聖心皇帝たる妾がこの程度の性交で臆すると思うたか!?ぜんぜぇん余裕だしぃ?寧ろ、そなたのがまだギンギンで安心したしぃ?」

 

 涎と白濁まみれになっている男性器の前に、妾はゴクリと唾を飲んだ。

 手も足も口も駆使し、こやつの肉棒を気持ち良くさせてきた。それでもまだ足りぬというのなら妾に残された武器はこれしか無かろうて。

 

「ここで止める?冗談はよせ。男と女が行き着く先、交わる先は決まっておろう。そなたとて、この蜜壺に挿れたくてしょうがないのであろう?よい、その不遜を許してやろうではないか」

 

 妾の関大さに咽び泣くが良い。虎狼の体に跨った妾は足を開き、服の下に隠れた陰部を見せるつけた。下着?妾は着けない派なのじゃ。ぱんつ、はか、ない、じゃ。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……ほれぇ、しっかりと見るが良いぃ。そなたの男らしい男根で妾のアソコがこんなに火照ってしまっておるぞ……?」

 

 ここが一番の大勝負、妾は必ず自身の為に妾自身の為にもこの男を誑し込んで見せる!!

 

 ……なんか濡れ過ぎな気がするのぉ……妾のアソコ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、お、おあああああぁぁっ……!!挿ってきたぁぁぁっ……!!」

 

「妾達の間に衣類などもういらないであろう?」と持ちかけ、裸のまま交わる妾達。寝そべっている虎狼の上で腰を降ろしていく。全く、アサシンクラスの妾の前でそうも無防備な姿になるとは……自殺志願者か貴様?ま、妾も物理的に殺すつもりは無いがの。貴様は性的に殺し尽くしてくれるわ。

 

 しかし……思った以上に大きくてえげつないのぉ!妾の膣壁がえぐれてしまいそうだわ!!

 

「ど、どうじゃ……?あんぅ……妾の肢体はぁ、ここまでの寵愛を授けられるなど、そうはいないぞぉぉ……おぉあんぅ!!」

 

「うん、武則天の体が色っぽくて、勃起が止まらないや」

 

 ッ……ぐぬぬ、さっきまで散々、ふーやーちゃんなど、子供扱いしておったくせにここでそんな台詞を吐くか貴様。色んな意味でずるいぞ。

 

「そうか……そうかぁ、ま、妾の体がえろちっくなのは当然じゃからのぉぉぉぉああああっ!して、そなたの肉棒も中々のものじゃぞぉぉっ……あんぅっ」

 

 こやつの自尊心を満たさせる為にも男が喜ぶような台詞を吐き、膣に入ってきた陰茎をさらに進ませていく。正直入るかどうか半信半疑な所もあったが、汁まみれになっていた男根と予想以上に濡れていた妾の陰部が良く滑らせてくれた。

 いや、妾のアソコが濡れていたのは期待していたからとかではないからな!妾クラスの女帝になると色仕掛けをする時にその気になってなくても濡らす事などちょちょいのちょいじゃからな!

 

「どうした……?そなたもされるがままではなく、存分に妾の躰を貪っても良いのじゃぞ?……ほれ、ここにある桜桃の試食でもどうじゃ?」

 

 痛いぐらいにそそり立っている乳首を虎狼の口元まで持っていく。

 

「んあぁっんぅ!!」

 

 ふふふ、赤子のように吸い付きおって。だがしかし、これで準備は整った。

 妾の色香溢れる乳房によってこやつの視界は覆われている。気付かれないように妾は髪飾りに隠していた小さな薬瓶を取り出した。

 媚薬では無い。妾が日頃から拷問用に携帯しておる触覚を鋭敏化する霊薬じゃ。まさかこんな時に使うとは夢にも思わなかったが。備えあって憂いなしじゃな。

 

 感覚が極限まで研ぎ澄まされた状態で妾の名器で搾り尽くしてやる。「もう無理」「聖心皇帝様に全てを捧げます」と泣いて懇願するまで許してやらぬからのぉ。くふふ――!

 

 ……さすがに突然、薬を飲ませようとするのは怪しまれるよのぉ……。

 

 ならば、さながら男に甘える恋人のように接吻から口移しをすれば無問題じゃな。

 

 悟られないように手すきの方で虎狼の頭を撫でつつ、薬を口に含ませる。後は接吻から飲ませれば――――。

 

 勝ったと妾が確信したその瞬間。

 

 ――ずんっ!!

 ――ちゅぅぅっ!!

 

「んむぎゅぅぅぅっ!?んごくっ……!!」

 

 刹那とも言える僅かな間。間抜けにも勝利を前に気を抜いたその隙に乳首と膣内に同時に奔った甘美で鋭い痺れ。子宮口を突かれ、乳頭を吸引された妾は急に来た官能の衝撃に薬を完全に飲下してしまった。

 

 こやつぅ――!何というたいみんぐで――!!あ、あ、あ、まずいまずいまずいのじゃ!今の状態でさらに感覚が鋭敏化されてしまったら……。

 

「あっぁぁああっ!!あああぁっ!!あひぃぃっぁぁっ!!これは、だめぇ、だめなのじゃぁああっ!!んひいいいいいあああああぁぁぁっ!!」

 

 死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!死んでしまう!今はこやつもそこまで激しく動いていないから、まだ何とか耐えられるが、もし妾の今の状態に興奮して獣のように犯されてしまったら……!壊される……妾の方が壊されてしまう!!

 

「武則天……?」

 

 胸への口付けを止めた虎狼が顔を覗かせ、妾の異常に気付いた。失禁の如く、潮を噴き出し続ける妾の姿はどう映っておるのか考えるまでもない。

 

 には、にはは……なるほどな。全ては貴様の手の平の上じゃったのか。ここまで妾を泳がせておいたのも、もはや情事でしか逆転の手立ては無いと妾を自身の土俵に誘い込む為。ここで完全に性的に妾を狂わせ、屈服させ、支配する為の布石じゃったのか。

 

「んんんんぅぅぅぅっ!!あ゛あ゛あ゛、あ゛あ゛あ゛ぁぁっ!!」

 

 軍師を離反させてまで妾を捕まえた手腕といい、本当に狡猾で周到な男よ。沼に嵌めるつもりが気付けば、飲み込まれていたのは妾の方じゃったか。あぁ――、これは妾史上に残る大敗北じゃの……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んぁ、はっ、あぁ、あぁ、あっ、あっ、あっ……」

 

 脳が蕩ける。

 だがそれは妾を壊す程の暴力的な快楽ではなく、ゆったりとした恋人同士のような快感。

 

 目の前で妾を抱えながら挿入している男は肉棒をほとんど動かす事なく、微々たる振動で緩やかな性交を行っていた。薬で自爆してしまった妾の躰を気遣い、持て余す熱をさましてくれるような暖かいせっくす。

 

 少なくとも妾はこうして物を考える事が出来るぐらいにはまだ正気を保っている。

 

 膣の中でほぼ動く事のない肉棒も、妾をあやすような抱擁も。鋭敏になってしまった躰の昂りを忘れさせてくれるぐらいには優しかった。

 

「にゃぁ、にぁっ、あんっ……あんっ、あんっ……んあっ」

 

 奴の胸の下で白痴のように喘ぎ続ける妾は思考する。

 こやつが一体何を考えているのかを。

 墓穴を掘った妾を性的に壊し、服従させる為ではないのか?どうしてこんな優しい責めをする?今の妾はちょっと激しく突いてしまえば、簡単に貴様に陥落してしまうぞ。

 

 わからぬ。まるでわからぬ。どうして自分の敵をそう簡単に懐に入れる。どうして自分を殺そうとした者を野放しにしておける。どうして自分を嵌めようとした者を許しておける。

 

 貴様の目的は不夜城の女帝たる妾を心身共に誑し込み、利用する事ではないのか?

 

 わからぬ。このような男は妾が生きる世界には存在しなかった。

 隙を見せれば、喰われる。心を許せば、利用される。陰謀渦巻く妾の世界はそんな化け物達の住処だった。

 

 多くの者達を見定めてきた妾だからこそわかる。妾の髪を解き、梳くように撫でるその男の瞳には野心も打算も無く、ただ偏に愛おしい……。妾の事が好きだと語っていた。

 

 ――きゅん。

 

 なんじゃ?今、胸がきゅぅって。何で妾はこんなに切なくなっておるのじゃ?

 

 わからない。知りたい。今まで見たことも無かった未知の塊であるこの男にもっと触れたい。

 

「ん?」

 

 しまった。ジロジロ見過ぎたか?妾の心境など知るよしもない虎狼は微笑み、妾のおでこにちゅっと接吻をしよった。

 

 ――ぼんっ!

 

「あう」

 

 まて、まてまてまて。何故、妾はこんなにも頬が熱くなっておる。何故、心臓の動悸が激しくなっておる。今までもっと凄い事してきたじゃろ!おでこの接吻ぐらいで何じゃこの生娘みたいな反応は!!「あう」って何じゃ!「あう」て!

 

 あれか!魅了でも妾にかけおったな!おのれ、道理でさっきから心の中が貴様一色になっておるわけだ!!あぁ、憎い!魅了にかかってるから、貴様の顔が凄くカッコ良く見える――!自然と唇が吸い寄せられてしまう!あぁ――!魅了のせいじゃからな――!これもこやつが妾にかけた魅了の魔術のせいじゃからな――!

 

「ん、ちゅ……あぁ、これ、しゅきぃ」

 

 だから甘えた声でこやつと唇を交わしているのも不可抗力なのじゃ!!ぐぬぬぬ、女の敵め!貴様に夢中になっている妾を弄んでそんなに楽しいか!悔し過ぎて、舌とか絡めてしまうわ愚か者!

 

「んじゅるぅ……じゅむぅ、んじゅぅ、んぱぁっ……れろぉ、ちろっ、ちろっ……」

 

 これはあれじゃ。こやつから唾液を吸い尽くし、脱水症状に陥らせようとする妾のぱーふぇくとな策なのじゃ。ほれ、だからもっと舌を出せい、涎をちょうだい……。

 

 

 

「のう……虎狼よ」

 

 下半身が繋がりあったまま、しばらく接吻を楽しんだ妾達は自然と息継ぎをするように唇を離した。妾達を繋ぐ銀の橋が途切れたと同時に妾は問い掛けた。

 

「ダユーを切り、妾につかぬか?」

 

 それは本来、こやつを性的に誑し込んでから言う台詞の筈じゃった。だから今の妾が言っても滑稽以外の何物でもない。だから、これは打算無き、妾の本心の言葉。

 

「ごめん。それは出来ない」

 

 まぁ、知っておったがの。だからこれは只の戯言じゃ。ずきりと突き刺すような胸の痛みも気のせいじゃろう。ここまで完膚なきまでに敗北した妾が今更どの口で言うのか。

 

「…………許さぬ」

 

 だからこれはこやつに与える罰じゃ。

 散々に妾の心を弄び、女帝からの勧誘という泣いて喜ぶべき栄誉を捨て去ったこやつに対する刑なのじゃ。

 

「絶対に許さぬ」

 

 敏感になってしまった膣に力を入れる。絶対に目の前の男を離さないという意思表示。落ち着いていた快楽の奔流が再び襲いかかってきた。

 

「っぁ!!絶対に許さぬからぁ……こうしてやるぅ……。そなたにはぁ……妾の胎に子種を吐き出し、孕ませる……『子育ての刑』に処す……」

 

 サーヴァントの身では不可能という事実を無視し、妾はゆっくりとやつの肉棒を扱いた。気絶してしまいそうになる快楽に耐えながら、射精を促す。逃さん、絶対に逃さん。妾は欲しい物は何をしても手に入れた。ならば、これまで通りだ。こやつも手に入れて見せる。無理を通してこその皇帝じゃ。関係を持った女が子供が出来たというのなら、こやつの性格上、無下にはしないであろう。

 

 喜べ虎狼。貴様は妾との共同統治者として選ばれたのだから。

 

「武則天……」

 

 にはは、何を驚いた顔をしておる。幼き肢体で妖艶に動く妾に気圧されたか?ふふ、ようやく貴様のそんな顔を見る事が出来たの。

 

「だし、てぇっ!妾の奥にぃ……そなたの精子ぃ!んああああぁっ!!あっ、あああぁっ!!膣内以外は絶対に許さぬから、なぁぁっ!!そな、たにはぁっ……妾を惚れさせた責任を取ってもらううううぅっ、あぁぁっ!」

 

 ずっちゅ、ずっちゅと卑猥極まりない生々しい音を奏でる。こやつ子種一滴まで妾の子宮に収めようと腰を振り続ける。快楽の暴力で視界が真っ白になる。あ、あぁ……そなたの顔が隠れてしまう。どこじゃ、どこにおる。ほれ、もっとちこう寄れ。

 

「んちゅぅっ!?」

 

 暖かい唇の感触に包まれる。良かった、そこにおったのか。視界いっぱいに拡がるこやつの顔に安堵しながら全てを受け入れる。

 

「んんんんぅぅぅうううううっ――――!!!!」

 

 出てるっ。出しておるっ……。妾の子宮どころか膣いっぱいにこやつの精液が。精子一個一個が妾を孕ませようと胎を犯してきておる。真っ白な雄の欲望を吐き出された妾の意識が投げ出される。

 

 敵の前で無防備を晒すなど、愚かの一言に尽きるのだが、こやつの前だと一切の不安が無いのがまっこと不思議な話じゃ。まぁ、お人よしの権化のような奴じゃからのぉ。

 

 

 ……うむ、妾の寝顔を見る事を……とくとゆる、す……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 穏やかな顔で寝息を立てる武則天ちゃんの頭を撫でる。ツインテもいいけど、下した髪もべりーきゅーと。

 

 お互いにドロドロになっているし、部屋中、ひどい匂いになってるんだろうな。もう麻痺っている俺にはわからん。

 

 まさか、自らの薬でいきなり自爆するとは思わなかったけど。ドジっ娘女帝……大いにアリですね。

 

 

 

 さて武則天ちゃん、平凡な俺が君達英霊をだまくらかす事なんて出来ると思うかい?

 

 全身全霊、命を賭け、全てを尽くして、隠す事なく曝け出し、本心から他者を求める。心の底から相手を好きだとわからせる。惚れた娘と一緒にいる為ならどんな事だってしてみせる。もし打算というのなら、ただ君と一緒にいたいという俺の欲望が打算なのかもしれないね。

 

 戦いゆえに愛が生まれる。けれど愛があれば、戦いはなくなるのさ。

 

「これが正しい人の心の支配の仕方だよ。女帝ちゃん」

 

 幸せそうに眠る彼女の裸身に毛布をかけて上げる。

 さて、もう彼女には拘束の必要も無いか。責任を取れとも言われちゃったしね。ならばカルデアにもお持ち帰り――!しないといけません。その為にもこの亜種特異点は必ず攻略せねば。

 

 取りあえず、俺もひと眠りするか――。

 

「モノローグの途中ですまないがアマゾネスの群れです!キャプテン!」

 

 …………期間限定とはいえ、国のトップってのは慌ただしいよね――。

 ま、色々とチャージしてもらったし、もう一仕事行ってきますか!

 

 

 

 

 

 

 




多分、アガルタ編3話じゃ、終わらんですわ(ザ・無計画)。

何か、不夜城のアサシンちゃん、ヒロイン力高くなってない?気のせい?そしてアガルタに来てから実に生き生きとしているマスター。う――ん、この傾国系主人公。




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テイルズオブセクステリアⅢ(アガルタ編その2)


久々に高評価が連続で入ったので、嬉しさのあまり連日投稿。

Plus Ultra!!(更に 更新を!!)













 戦いの刹那。瞬時に見える敵の隙を正確に突く。撫でるように放たれる官能の拳はこれまさしく一撃必倒。

 

「あぁっん!!」

「やはぁぁんぅ!!」

「アタシいま体温何度あるのかなーッ!?」

 

 極めたセクハラ術は相手に触られたという意識さえも置き去りにし、快楽と昇天という結果だけを残す。『百式官能』は救済の御業であると古事記にもそう書いてある。

 

 ゴウランガ!セクハラめいたインストラクションによって一人の男に群がったアマゾネスクローンが甲高い悲鳴を上げ、消え去っていく光景が繰り広げられていた。ジッサイコワイ!

 

 

 剣、槍、斧、さまざまな武器を振るう女傑達の攻撃を避け、すれ違い様の『百式官能』。息をするように『百式官能』。気付けば『百式官能』。一振りで一体消滅するから大分、楽ですわ。無双ゲーをやっている気分になる。これはある意味、二の打ち要らずを名乗ってもいいのではないのでしょうか書文先生?まぁ、夜の槍に関しては2回じゃ、済まないんですけど。

 

「その男に近づくな!!奇妙な武術で消滅させられるぞ!矢だ!矢を放て!!」

 

 だけども、女海賊さん達と違って勇ましさが違うねアマゾネスさん達は。仲間がどんどん消滅させられているというのに、怯む事なく攻勢を止めないのはさすがは戦闘民族。

 自身目がけて振って来る矢の雨を『矢避けの加護(自己申告)』で逃れる。

 

 さて、部下の報告からアマゾネス達がいる密林に単身で飛び込んでみたはいいものの、まだ半分ぐらいはいるかな?女海賊さん達には後で合流地点に向かうように指示しているし、俺一人で問題はないだろうけど、どうせここまで来たのだからトップの顔ぐらいは見ておきたいのだが……。

 

 

「一人の男相手に随分と手こずっているようだな……」

 

「じょ……女王!!」

 

 騒ぎを駆けつけたのか密林の奥から少女が現れた。

 乱雑に切られた白髪の前髪、動きやすさだけを求め、衣服として最低限の機能しかないような露出度の高い格好。

 

 実に良い体をしている。随分と鍛え上げたな……。ハサ子さんのような鍛錬の末でついたというよりは闘争の果てに得た天然の腹筋。女の子の腹筋ソムリエである俺を思わず唸らせる代物だった。

 

 他とは違う存在感。彼女は間違いなくサーヴァント……!

 

「君がエルドラドのバーサーカーか……」

 

「いかにも。そういう貴様は性賊王『カール・D・ロジャー』だな」

 

「…………長いから、便宜上、カルデアでいいよ」

 

「む?そうか、ならばそう呼ばせてもらおう」

 

 毎回、性賊王とか呼ばれると気抜けるわ。

 

「退廃の都。イースの女共を落とした男がいると話には聞いてはいた。あのビラの類といい、どんな怜悧狡猾な男かと思っていたが、意外にも単身で私達に挑む勇者だったとはな」

 

 戦意を高め、嬉しそうにバーサーカーは笑う。

 

「よい。この世界の男共は弱く、脆く、話にならなかった。我が精鋭達を歯牙にもかけぬ貴様なら強き子種を吐き出すであろう」

 

 何ですか、逆レ案件ですか。そういうプレイも嫌いじゃないですけど。

 

「悪いけど、自分のモノをいつ吐き出すかは自分で決める。生憎、無駄打ちはしない主義なんだ」

 

「それを決めるのは女王たる私だ。拒絶するというのなら死に物狂いで抵抗してみせろ。どうか死んでくれるなよ」

 

 殺意の塊を二つ付けたモーニングスターを引き摺り、彼女は戦闘体勢に入る。まぁ、わかってはいたけど対話は無理か。やっぱりバトルパートですかね。

 

「お前達は手を出すな。イースの海賊共に警戒をしておけ」

 

「あら?部下総出でかかってきても良かったのに」

 

「舐めるな。女王自身が出陣しておきながら、只の男一人相手に集団で叩きのめせというのか。不要だ。そのような不名誉も。貴様を組み伏せるのに必要なのは私自身の力で十分だ」

 

「君も王なら、部下も自身の力でしょうに。剣士が剣を使って、卑怯だ!なんて叫ばないでしょ」

 

「…………フッ、おかしな奴だ。だがこれは私自身の誇りの問題だ。久々の剛の者……複数ならいざ知らず、たった一人相手なら自らの力だけで戦い尽くしたいという欲望があるのだ……それにッ!」

 

 棘付きの鉄球の重さを感じさせない軽やかな動きで突進してくるバーサーカー。両手のかぎ爪が俺の肉を引き裂こうと振るわれる。

 

「この惨状を見れば、我が部下達が何人束になろうとも貴様には叶わぬとわかる!これは戦士の直感だ!貴様とまともに戦えるは私だけだと!!」

 

 あらゆる角度から振るわれる爪の連撃を『心眼(自称)』で凌ぐ。

 決め手にはならないと思ったのか、腰から抜いた剣が袈裟斬りで胴に迫る。白刃取りの如く、それを片方の膝と肘で掴み、硬直した隙を狙って肘鉄をお見舞いする。

 

 そこまで効いてはいないだろうが、一度距離を取ったバーサーカーは獰猛な顔のまま、唸りを上げてモーニングスターを振り回す。

 

「よいっ!実によい!!やはり思っていた通りの豪傑だ!どうせなら、部下共を仕留めた摩訶不思議な武術でも使うか?私に効くとは思えぬがなぁっ!!」

 

 いや、多分効くと思います。

 

 ただ、それでも『百式官能』を彼女に使うつもりは無かった。今ここで彼女が望んでいるのが全うな戦士としての戦いならば俺も全身全霊でそれに倣うとしよう。恐らくそれがこのエルドラドのバーサーカーの攻略の糸口になると俺は確信していた。

 他人を愛するのに必要なのは快楽だけではなく、狂気に至るまでの誠実さと渇望。

 

「潰れて死ねぇっ!!」

 

 周りにある木々をへし折る事さえ躊躇わず、バーサーカーはモーニングスターを振り回した。人工的な竜巻、近づく事を許さない暴威。だが……そこで敢えて突貫する!!

 

「死にたがりか!!」

 

『縮地(気合い)』で一息に距離を詰め、鉄球の台風の目の中に入り込む。バーサーカーが驚く間もなく、鉄球と彼女のちょうど中間あたりの距離で腕を上げ、鎖に手を差し込んだ。自滅を狙い、振り子の要領で鉄球を向かわせた。

 

「舐めるなぁ!!」

 

「っぶねぇ!」

 

 だがそれに臆する事なく、彼女は向かってきた鉄球を直線上にいる俺に蹴り返して来た。剛速球で飛んでくるモヤットボールを上半身を逸らし、何とか回避するが彼女の猛攻は終わらない。

 

「爆ぜよ!!」

 

 渾身の力で鎖を引き、俺の方に飛ばした鉄球を背後から潰すように引き戻す。それだけではない、もう一方の鉄球もまた前方から俺の方に向かってきた。

 

 刺々の鉄球が前後から襲いかかる。このまま大人しくしていれば、間違いなくミンチだろう。

 

「すぅ――……」

 

 呼吸を整える。『中国拳法(いいよぉ)』で培った太極拳、円の動き。セクハラ術『百式官能』にも有効活用させて頂いた滑らかで柔らかい動きで腕を回し、前後に迫って来た鉄球を受け流した。若干、棘が刺さったが少し血が出る程度なので問題ない。

 

「なっ……!?」

 

 そしてお返しとばかりに俺も反撃する。制御を失ったモーニングスターの合間をくぐり抜けるように一気にバーサーカーの懐まで接近する。大地を踏みしめ、『ヤコブの手足(殴ルーラー直伝)』で解禁した信仰心(拳)。

 

「ハレルヤッ!!」

 

 本家の姐さんが全力解放すれば、大天使さえ撲殺出来る祈りの拳をバーサーカーの顔面、喉、水月と人体の急所にそれぞれ三連撃叩き込む。

 

「グアアアァッ!!」

 

「女王ッッ!!」

 

 吹き飛び、茂みの奥に消えていったバーサーカー。手応えはあった。モーニングスターも既に手放されているが、殴り飛ばされた瞬間の彼女の顔は戦意喪失をした表情ではなかった。「よくもやってくれたなっ!」とリベンジを誓う闘争心に満ちた顔だった。

 

 

 証拠にほら。

 

 

「ははは、ハハハハハッ!!きいたっ!効いたぞ!カルデアよ!!今の一撃……いや三撃か。私の息の根を止めるに足る容赦なき攻撃だった!」

 

 心配そうにアマゾネス達が見守る中、顔面から血を流し、獰猛に笑うバーサーカーからこちらに歩を進めていた。うん、ちょっとホラー。

 

「安心した!イースの女海賊を誑し込んでいる軟弱者だと噂が流れてはいたが、所詮は噂。貴様は戦場であれば相手が女であろうともその刃を躊躇なく降ろす戦士だと痛感した!!そうでなくてはな!!」

 

 殺し合いで好感度が上がる。そういう世界もあるのです。

 バーサーカーは歓喜しているのかもしれない、自分とは勝負にはならない者達ばかりがいるこの世界に。極限の戦いを臨める好敵手に。

 

「サーヴァントでもない人間の身でよくもまぁ、ここまで。召喚されてからこの時代の人間の弱さには辟易していたが、お前のような人間がいるのなら現代とやらもまだまだ捨てた物ではない」

 

「まだやるかい?」

 

「当然だ。……そして、決めたぞ。貴様は部下共には渡さぬ。私自ら、叩き伏せて、専属の家畜として傍で一生、飼い続けてやる。我が隣で私の強さだけをその瞳に焼き付け、子種だけを吐き出す名誉を与えてやろう」

 

 わーお。熱烈なプロポーズ。なんか、滅茶苦茶メンチ切っているセイバー・リリィの幻覚が見えたけど、ハウス。今回はスタンドバトルじゃねぇんだ。

 

「さぁ、命を燃やして来るがいい……!!」

 

「女王!!」

 

 第二ラウンドが始まろうとした瞬間、誰もが固唾を飲んで観戦するしか無かった空気を打ち破って一人のアマゾネスがバーサーカーの下へ駆けつけていた。心底、不機嫌そうに顔を歪めた彼女はその一人のアマゾネスの方へ視線だけ送った。

 

「何だ……?お前達には手を出すなと命じていた筈だが」

 

「ヤツです!近くの町で()()が現れました!!」

 

「何……?そうか、そう、か…………。ヤツが、■■■ウスが現れたか……ならば、ならば――ッッ!」

 

 アマゾネスの報告を聞いた瞬間、一瞬だが彼女の名残惜しそうな瞳が俺に向けられた気がした。

 だが直後、その一瞬が気のせいだと思ってしまうぐらいにエルドラドのバーサーカーは豹変した。眼の膜は黒く染まり、眼球は燃えるような深い更なる金色へと変貌する。

 

「汚辱は、雪辱は晴らさねばならぬっ――!!殺してやる……コロシテヤルッ、コロスッ、コロスッ!!■■■■■ッッ!!」

 

 声にならない雄叫びを上げる彼女にとって、『ヤツ』とは譲れない最優先事項なのだろう。なるほど、ここが彼女のバーサーカーたる所以か。

 

「アァ、刺して殺す潰して殺す殴って殺す燃やして殺すねじり切って殺す殺す殺す殺すコロスコロスコロス!!征くぞ!!」

 

 おいおい待てや。

 

「ガアアアアアアァッ!?」

 

「貴様!?女王に何を!」

 

「誰を見てんだよ、てめぇは」

 

 あらぬ方向へと駆け出そうとしたバーサーカーの首を掴み、その体を思いっ切り地面へと叩きつける。土砂をまき散らし、暴れる彼女を逃さないようにその細い首を抑え付けていた。

 

「さっきまで命を懸けて戦っていた相手はもう眼中無しか?侮辱してんじゃねぇぞ、てめぇ」

 

 俺らしからぬ乱暴な口調。だが、理性を失った今の彼女にはこれぐらいの方が丁度良い。

 

「離せ、離せ、ハナセェエエエ!!私は■■■■■を殺すゥゥッッ!!邪魔をすルのならば貴様もッッ!!」

 

「ヤツなんて知らんし、君の真名もわからんし、どんな因縁があるのかも知らねぇ。ただ、今君と戦っているのは俺だ。目移りをするな。俺を見ろ」

 

「黙れ、ダマレダマレダマレダマレ!!殺すッッ!!邪魔をする貴様も殺スッッ!!コロス、コロス、コロス、コロスウゥッッ!!■■■■■■■■■■■■!!!!」

 

「それでいい……やっとこっちを見てくれた。そうだ。君が譲れない望みを持っているなら、先に俺を殺してからにしろ。話はそれからだ」

 

 大地を揺るがす程の咆哮を合図に俺からの拘束を逃れたバーサーカーは標的を再びこちらへと戻した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 密林の木々はなぎ倒され、大地は抉れ、岩場は粉々に。まるでそこは嵐が通った後のような酷い有り様だった。もしかすれば、アマゾネス達も何人か巻き添えを喰らっているかもしれない。

 

「はぁ――ッ!はぁ――ッ!はぁ――ッ…………」

 

 どれだけの時間、殺し合っていたのだろうか。血と汗と泥が混ざり合った匂いが鼻腔を刺激する。

どうやら、いつの間にか陽が沈んていたらしい。目の前には肩で呼吸を整えるバーサーカーの姿が。()()というスイッチによって極限まで狂化された彼女の膂力は最初の時とは段違いだった。俺も攻勢一方とはいかず、何発かイイモノをもらってしまったし。

 

 未だ、互いに二本足で立ってはいるが、それぞれ、体の到る所から血を流し、傷は負っている。

 

「…………女王、ヤツの行方を見失ってしまいました」

 

「ふぅ――……ふぅ――……、そう、か」

 

 やっと誰も近づく事が許されなかった俺達の戦いが落ち着いたのを見計らって、やってきたアマゾネスの報告に。バーサーカーの狂気が萎んでいったが目に見えてわかった。

 何というかバツの悪そうな顔で俺を見ている気もするが。

 

「…………興が削がれたな。貴様はどうする?」

 

「……そうさね。俺も今日はもう切り上げようと思ってた」

 

 何とも言えない微妙な空気が二人を覆っていた。先程まで殺し合いをしていたわけなのだから、和気藹々といくわけはないのだが……それでも二人の真っ当な闘争の間に余計な茶々を入れられたような感覚。

 

「ならば良い……。私も醜態を晒した。今日の所は見逃してやる。疾く去るがいい」

 

「あぁ、じゃあお言葉に甘えて。またね、バーサーカー」

 

「…………ペンテシレイアだ」

 

「女王!?」

 

「私が名を告げるのに相応しいと判断した者に授けただけだ。何か問題があるか?」

 

「い、いえ……」

 

 驚く部下を無視し、告げるその名は彼女の真名だった。どういう意図があってその名を俺に告げたのかは正確にはわからないが貰った物は受け取るとしよう。

 

 

「二日後に不夜城で会おう。ペンテシレイア」

 

「ふん……やはりあのビラは我らをおびき寄せる為の撒き餌だったか」

 

「けど、初めから気付いていたでしょ?そして君は気付いていても絶対にやって来る」

 

「そうだ。たとえ罠があろうとも踏み潰すだけ。だが今日貴様と会って確信した。そういったつまらない搦め手は用意していないだろうとな」

 

「今度は邪魔を入れず」

 

「二人きりで」

 

「「存分に戦り合おう」」

 

 再戦を約束し、ペンテシレイアに背後を向けて、その場を後にした。

 

 さってと……合流地点は教えてあるけど、予想以上に時間かかっちゃったからなー。イースの皆と武則天ちゃんを待たせちゃってるよなーきっと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その背を見えなくなるまで見送る。

 

 ――誰を見てんだよ、てめぇは。

 

 ――侮辱してんじゃねぇぞ。

 

 ――今君と戦っているのは俺だ。目移りをするな。俺を見ろ。

 

 

 身を焦がすような狂化の中で何故か覚えている言葉、そしてただただ私に向けられた純粋な瞳。どんな殺意を向けられようとも臆する事が無かった私がたじろいてしまったあの男の想い。

 

「ふふ、可笑しな男だ」

 

「いかがされましたか、女王?」

 

「何だ?」

 

「いえ、その……笑っていましたので」

 

「笑っていた?そうか、私は笑っていたのか……ふふ、ふふふ、ふははははは!」

 

 声を上げて笑い、我が家、エルドラドの地への帰路につく。

 部下からヤツの報告を聞くまでは久々に心地よい闘争に浸る事が出来た。気色の悪いイースや不夜城の雑兵共でもなく、張り合いの無いレジスタンスの鼠共でも、自身を忘れてしまう程の狂気に支配されてしまうアレとの戦いでも味わえない……久しく縁の無かったまともな闘争。

 

 また、あの戦いの続きをしたいと心から望んでいる。今でもあの男の事を考えている。あの程度では物足りぬ本能が叫んでいる――!

 

 あぁ、まるで恋い焦がれるおと……。いや、無い、それはあり得ぬ……。私にそんな事はあってはならない。

 

「はやく、二日後にならぬか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜も更けて、よい子は寝静まった時間。合流地点でもあるイースの支配下にある港町の一つに停まってある船へと帰ってくると――。

 

「それで?散々、妾の胎に子種を吐いておきながら、妾を放ったらかしにして他の女と乳繰り合っていた事に対する弁明は?」

 

 夜遊びしていた旦那の帰りを待つ鬼嫁の如く、船首の上でぷく――っと頬を膨らませ、仁王立ちしていたロリ嫁がいました。

 

「乳繰り合っていたわけじゃないんだけどね。飴ちゃんいる?」

 

「妾の目は誤魔化せぬぞ!するのじゃ……貴様の体から他の女の匂いがプンプンとな!後、飴はもらう!」

 

 いやー、血の匂いしかしないんですが。けど、まさかこんな時間まで起きて外で待っててくれるとは思わなかった。あんまり遅くまで起きてると大きくなれないよ?

 

「なんじゃ、その眼は?妾が逃げずにここにいたのが不思議か?愚か者。貴様には妾の後継者を認知してもらう役目があるのじゃ。絶対に責任は取ってもらうからの。ヤリ捨ては串刺しの刑じゃ」

 

 あ――癒される。一仕事終えた後の幼女のボイスは癒されるの――。

 

「そもそもあんなゴリラ女共の群れに一人で突っ込むとか正気の沙汰じゃないわ!何故、妾を呼ばなかった!ええい!何じゃ、そのみすぼらしい格好!妾が治してやるからさっさと部屋に入らんか!!」

 

 合間合間のデレを微笑ましく思いながら、武則天ちゃんに手を引っ張られて部屋へと戻された。

 この後、滅茶苦茶治療した(健全)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぅわ――!?マスター!?いかがなさったのですかその傷は!!あわわわわ、治療薬!治療薬!……違う、これはローション!!」

 

 夜が明けた頃、アマゾネスの親玉、ペンテシレイアと接触するという当初の目的を果たした俺はイースへと帰ってきた。「全く、何故妾がこのような下女のような真似を……」とぶつくさ言いながらも傷を負ったところにしっかりと包帯を巻いてくれた良妻ふーやーちゃんを連れて、屋敷に戻ると飼い犬のように玄関で待機していたダユーちゃんが一変、俺が傷を負っている所を見て、酷く狼狽していた。

 

「みっともなく慌てるな。既に治療は妾が施したわ。優秀ゆえな、この程度の傷なら問題ないのじゃ。何じゃ、その恨めしい目は?」

 

「マスターへの貴重な点数稼ぎが……おのれ、不夜城のアサシン、余計な真似を」

 

「似合わずに女らしく嫉妬か。貴様も随分と変わったの……」

 

「あなたこそ、どういう風の吹き回しかしら?敵対するトップに塩を送るような真似……。何を企んでいるの」

 

「さて、な。送ったのは塩ではなく毒かもしれんぞ?くふふ……」

 

 送られた所で俺には毒が効かないので別にいいんですけどね。こら、ふーやーちゃん。挑発するように俺の腕を抱き締めない。ちっぱいが当たってるのよ。

 

「今まで欲するものは奪ってきた私だけど……今ここで愛するものを守る為にあなたの命を奪ってもいいのよ?」

 

「ほっほー。良い面構えをするようになったのぉ。一丁前にこやつの正妻気取りか?貴様を沈めて、妾の国にこやつを拉致るのも手かもしれんな」

 

 自業自得感は否めないとはいえ、傷に響くのでいきなりここで修羅場るのは勘弁願いたい。ま、けどこういう所のフォローも敵のトップをホイホイ愚息で堕としてしまった俺の役目でもあるのか。取りあえず、割と最低だけど、キスで黙らしておきましょう。

 

「んむぅ!?」

「んにゃんぅ!?」

 

「ダユー。武則天ちゃんはアマゾネスとやり合って傷を負った俺の治療をしただけ、そこに悪意はないから突っかからないように。後、お留守番ありがとう」

 

「は、はい……。えへ、えへへへへへ……」

 

「お、おのれ……。この色ボケ海賊はともかく、妾を接吻程度で誤魔化せるとでも思うたか……」

 

 誤魔化せてるんだよなぁ。

 腰が抜けて、地べたに座り込んでいる二人を抱えて、部屋に戻り、ベッドの上に放り投げてから(エロい事はまだしてませんよ?)。数分後、唐突にドアがノックされた。

 

「……失礼します」

 

 どうぞと声をかけて、入って来たのは焦点の合わない瞳で変哲の無い白封筒を持った女海賊Aさんだった。俺をダユーと快く引き寄せてくれた案内人。彼女には確か、引き続きビラ配り兼斥候をお願いしていたのだが……。そんな彼女は虚ろな瞳のまま、俺に封筒を届けた。

 

「おい。こやつ、どう見ても様子がおかしいが……」

 

「暗示の魔術とかその類かな。ま、危険は無いから大丈夫だよ」

 

 俺から封筒をもらった女海賊Aさんは役目を終えたように正気に戻った。彼女に暗示の魔術をかけた誰かさんの目的はあくまで俺にその中身の手紙を渡してもらう事だけなのだろう。

 

「あ、あれ……?私、何をして……?はぅわ!?ひっ、きゃ、キャプテンンンンンッッ!?ど、どうしてここに!?」

 

 よほど最初の邂逅がトラウマになっていたのか。俺を見た瞬間に「しっ、失礼しますっ!!」と首がもげる勢いで頭を下げ、部屋から飛び出してしまった。

 

「マスターに対して、何という態度……。あの娘、シめておきますか?」

 

「いや、面白いからあのままでいいや」

 

「尋常じゃないぐらい怯えておったぞ。貴様、あの娘に、何をしたのじゃ?」

 

 そんな大した事してないんですけどね。最初の邂逅の時に目の前で仲間をセクハラ術で昇天させて、そしてダユーの所まで連れていってもらう時も鼻歌まじりで他のお仲間を昇天させただけで。

 

 渡された手紙の内容を確認しようと俺はベッドへ横になった。とても自然な形でダユーが膝を入れて、膝枕の形になったが。むっちり太もも……ベネ!

 

「どやぁ」

 

「いらっ」

 

 頬を引き攣らせた武則天ちゃんが瞬時に俺の膝に頭を乗せた。今度は俺が膝枕をする状態。

 

「ふふん」

 

「いらっ」

 

 君達、ドヤり顔でナチュラルに煽り合うのやめーや。ベッドの上で贅沢にも膝枕繋ぎで横になりながら、手紙を開く。

 手紙は真っ白……ではなく、()()()()()()()特殊な魔術文字によって特定の人以外が見ない限りは文字が浮き出ない仕様だった。

 

「あの、よろしいのですか?そんな不用心に開いて、罠では……」

 

「大丈夫。これもらうのは初めてじゃないし」

 

 ダユーと一夜を過ごしてから、武則天ちゃんを捕まえるまでの数日の間。俺は何度か同様の手紙を既にもらっていた。これは直接的に協力を申し出るというよりは自身の内情を詳らかに書き記した物。どうやらこの手紙の主は俺と直接的に関わる事が出来ない事情があるらしい。

 

「なんぞ、また悪だくみか?」

 

「いつの話かノッブにね、『合戦とはそれまでに積んだ事の帰結。合戦が始まるまで何をするかが戦じゃ』って教えてもらってさ」

 

「誰じゃいノッブって」

 

「うーん。若干、武則天ちゃんとキャラが被ってる娘?」

 

「キャラちゃうわ!妾の迸る女帝オーラによる素じゃ、これは!」

 

 優雅に美女に膝枕をしてもらいながら、幼女の頭を撫でる。

 さぁて、フィナーレまでもう少し。はやく二日後に……いや、明日にならないかなぁ。

 

 

 

 

 

 

 割とどうでもいい事だけど、今の俺の姿が悪役にしか見えない件について。

 

 

 

 

 

 

 





ここに来てからエロばっかだったので、偶には爽やかな感じで好感度を上げてみようと思いました by グダお







•ビ■ス■■/■■ー


真名:■■ ■■
理:■■



ステータス
筋力:A
耐久:A+
敏捷:B
魔力:EX
幸運:A
宝具:EX

クラス別スキル
獣の権能:C
単独降臨:A(現在使用不可)
それは時空どころか、世界、宇宙の壁さえ超えてしまう在り方。いつ如何なる時も気を抜く事なかれ、獣と成った彼はふとした時に隣に――――。



保有スキル
ネガ・ライフ:EX
彼の生き方そのもの。あるいは人理が焼却されようとサーヴァント達と通じ、体を交わし合い、受肉させる程の尽きる事無き生命力そのもの。彼は愛すべき者達と共に生きる為ならどんな無謀も通す。愛すべき者達と楽しんで生きる為ならどんな無茶だって行っていく。その為には人の身は少々脆弱過ぎたのかもしれない。
これは目の前にある壁や試練やシリアスを破壊する為に無限に成長していく最悪の星の開拓者スキル。絶対にボス系には持たせたらダメな奴。


魅了(零):A+(現在使用不可)
ビーストとなった彼のスキル。
他者にいきなり好意を与えるのではなく、負の感情を零にする。敵意や害意、嫌悪感を抱きづらいスキル。人畜無害、人当たりの良さの極致。絆ゼロスタート。隣人の如き平凡な雰囲気に惑わされ、不用意に近づいたら最後、もし彼のお目に適ってしまったら、そこからギュイーンと絆Pが溜まり、人たらし、たぶらかし、口説き、愛撫、ズブズブと最後まで絡め取られてしまう。これに対抗し、彼に敵意を抱くには、それを凌駕する程の大望と意志……それこそ世界に匹敵する想いを抱かないといけない。


授かりの智慧:A+
召喚した数多の英霊達から師事し、学び、我が物とした知恵。スカサハやケイローンが教育者として長けた英霊ならば、このスキルは生徒として、教えられる者として長けた者が持つスキル。ペンテシレイア戦の時のような『矢避けの加護(自己申告)』『縮地(気合い)』『中国拳法(いいよぉ』等々、呪いや元来の性質による特殊なスキル以外ならランクはどうあれ再現可能。
もしかしたら、ベッドの上でも『人体理解(性)』とか『愛の肉棒』とか『戦闘続行(射精)』とか『性礼詠唱(言葉責め)』とか使ってるかもしれないね。ビーストだもん、仕方ないよネ。

――――――。










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テイルズオブセクステリアⅣ(アガルタ編 その3)

どこの誰だよぉ! 3話で完結するって言った馬鹿はよぉ!












累計ランキング2位、感想、評価ラッシュが嬉し過ぎて2話連続投稿。こちらは1話目になっております。





 街の中心に先客がいた。悪趣味な処刑場があるその広場で鍛え上げられた背を向けた女戦士がたった一人。

 

 

「来たか」

 

「あぁ、待ったかな?」

 

 まるでデートの待ち合わせのような言葉。「ううん、今来たところ」なんてふざけた言葉を彼女は返さないが。

 

 

 二日後。嘘偽りなく、ビラまで使って宣言した通りに俺は不夜城へと足を踏み入れた。眩い都市にも関わらず、辺りは静けさを包んでいた。チグハグな印象を受ける……。まるでこの世界には俺と目の前にいる彼女しかいないようなだった。

 

 不承不承、ツンツンツンデレぐらいの割合で俺のお願いを聞いてくれた武則天ちゃんは皇帝特権を使い、民を退去させてくれていた。余計な邪魔はもう入れたくないからね。

 

「極東の地には『一日千秋』という言葉があるらしい。たった二日でもこの戦いを待ち焦がれた私は悠久の時を過ごしたのかもしれんな」

 

 あの時の狂気に囚われた瞳ではなく、正しく俺を認識した気持ちの良い顔でこちらに視線を向けてくれた。

 

「我が精鋭達はここにはおらぬ。海賊共の警戒を命じてある……もう二度と邪魔が入らぬようにな」

 

「奇遇だね。俺も部下の皆には待機を命じてあるよ。邪魔が入らないようにアマゾネスを警戒してって」

 

「相思相愛か?」

 

「そうかもしれない」

 

 冗談めかして、二人で笑い合う。まるで長年の連れ添った親友のような気分になった。まぁ、これからするのは殺し合いなわけだが。

 

 そして彼女の姿も初めて密林で遭遇した時とは少し違った。物々しいモーニングスターも、腰に差された剣も、かぎ爪が付いた篭手も外してある。まさか、無手相手に武器を使うのを躊躇うような性格でもなかろうに。

 

「今日は丸腰なんだ」

 

「あぁ。だがこれは決して、貴様を軽んじているわけではない。考えたのだ……。貴様と本気で戦り合う為に、貴様を打ち倒す為に私が出来る事をな……。そして気付いた。武器の使用こそ、私にとって手加減をしている事になると……。そう、私にとっての一番の武器は――」

 

 国中に響いた轟音。

 ペンテシレイアは近くにあった民家に思いっ切り拳を叩き込んだ。粉々になって模型のように軽々と吹き飛んでいく家屋。その破壊力に感嘆して、思わず口笛を吹いてしまった。

 

「これだ。我が五体こそが最強の武器――。文句はあるか?」

 

「はは、まさか」

 

 本当の戦いというものによーいどんは無い。

 どちらから示し合わせるわけでもなく、自然とその体勢を取っていた。

 ペンテシレイアは獅子のような前傾姿勢。俺は足を開き、両手を上げ威嚇する熊のような体勢。

 

「さぁ、やり合うぞ。戦り合うぞッ!殺り合うぞッッ!!」

 

「あぁ、来なよ。いや、俺から行こうッッ!!」

 

 お互いを求めた二匹の獣が原始的な戦いには不似合な豪華絢爛な都市の中でぶつかり合う。

 もはや言葉は不要。ここからはお互いの全てを求め、出し合い、臓腑を撒き散らす逢瀬なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 己の肉体だけを頼りにした野蛮なぶつかり合い、暴虐の逢引きは不夜城の舞台を容易く壊し続ける。

 

 ――実の所を言えば、その嵐を目の当たりにしていた者達はいた。決して彼等の邪魔をしないように遠目で観戦している者達が。

 

 

 

 

 

【イースの女海賊は語る】

 

「キャプテン?あぁ、そりゃあ最初は不安だったよ。アマゾネスと戦り合うなんて話を聞いた日にはさ。ほら、アタイ達みたいな荒くれ者にも優しいからさ。結構、ウチ(イース)では人気あるんだぜ?顔立ちとか振る舞いもイケメンだしな。姐さんもゾッコンだし。ただ、最初にキャプテンをこの国に連れて来た同僚がいっつもやけに怯えてんだよなぁ……」

 

「っとと話が逸れたな。だからさ、そういう所もあったから基本的に女には甘いと思ってたわけよ。いくらアマゾネスとはいえ、全力で戦う事なんて出来ねーんじゃねーかって。ま、すぐにその心配は杞憂だってわかったけどな。いや――見てて、ちょっとドン引きしたぜ。マジで容赦ねーのウチのキャプテン」

 

「うつ伏せに倒れた女の頭を踏み潰すなんて追撃かますか、ふつー?地面も当然の如く割ってたし、すぐに起き上がって頭突きブチかました女も女だよ。鉄で出来てんのかってその頭蓋骨。うん、やっぱどっちも頭おかしいわ」

 

 

 

 

 

【不夜城に住む男は語る】

 

「皇帝陛下の命により、退避をした時は何事かと思ったよ。まぁ、誰も文句は言ったりしないさ。そんな命知らずはこの国にはいないからね。噂では聞いてたよ、アマゾネスとイースのトップが戦い合うって話は。ウチのご主人さ……いや、この国の女共がワクワクしながら囁いていたからね、嫌でも耳には入るさ」

 

「だからどうせ、あの酷吏共の処刑みたく悪趣味なものを見せられると思ってた。この国の女共も期待してたんだろうさ、女に為す術なくボコられる男のショーをな。だが現実はそうはならなかった。あぁ、俺は思わず拳を握りしめていたね!自分でも何故かわからないが子供のようにかぶりついて見ていた。遠かったし、早すぎて何をしているかはわからなかったが何が起こっていたかはわかった。驚いたよ、人間の体ってぶつかり合うだけであんな音が出るんだな」

 

「不夜城の女共?あぁ、事が始まる前のニヤついた笑顔はどこへやら、傑作な事に青ざめていたよ。アイツらの中では男ってのは支配される側で、見下す側だからな。それがあれ程の力を持っていたら、いつ自分達に向けられるかわからないって怯えても仕方ないのかもな」

 

「あぁ、腕を振り上げて声を出してたね。自分よりも若い子が身一つであれだけの戦いを見せていた。興奮していたんだろうな。同時に自身の恥ずかしさを消し去る為でもあった。俺は一体、何をやっているんだって。こんな所で好きでもない女に媚びを売って、それでも男なのかって。眼を凝らして、少しでも焼き付けようと思った彼の戦いを。生憎、男ってのはいくつになっても『強さ』に憧れちまうもんなんだよ」

 

 

 

 

 

【アマゾネスの一人は語る】

 

「戦士である我らが息を呑む程の苛烈な戦いだった。周りの家屋を粉砕しながら不夜城を駆け巡り、時が経てば、経つほど、お互いの傷は増え、皮膚は抉れ、肉は露出し、血が流れていった。殴る、蹴る、絞める、噛み付く、頭突き、ありとあらゆる暴力を以て相手を叩きのめそうと二人は命を燃やしていた」

 

「笑っていたな。あぁ、女王がだ。珍しい光景だった。女王にとって闘争とは命の獲り合いであり、自身の強さを糧にする場……。ああいった顔を見せるのは稀だ。少なくとも私は戦いの最中にあれだけ笑う女王の顔を見た事は無い。よっぽどあの男との戦いを楽しみにしていたのかもしれない。これは噂なのだが……前日の夜、女王の住処からあの男の名前を呼ぶ声と水音が聞こえたと――……。いや、今の無しだ。オフレコで頼む」

 

「コホンッ……。と、とにかく、あの戦いはおおよそ余人が入り込めるものでは無かった。我らは当然、女王の勝利を疑っていなかったが、それでも『もしかしたら……』と頭によぎってしまうぐらいにはあの男は強かった。単純な身体能力に加えて、目まぐるしく変わっていく様々な武術……戦士として優秀なのだろう。そして最初の邂逅にて狂化した我らが女王を鎮ませる程の手腕……」

 

「不敬ながら、私は思ってしまったよ。あの男が女王の隣にいれば、我らに敵はいないと。あの仇敵たる『災害』も風のように吹き飛ばす事が出来ると」

 

 

 

 

 

【海賊公女は語る】

 

「えぇ、不安はあったわ。だって愛する人が死地に赴くのよ?けれど、そこで慌てず、信じて平静に待つのが佳い女というもの。…………え?戦いの最中に彼が傷つく度に飛び出そうになったのを部下達総出で抑え付けられていた?……誰かしら、そんな根も葉もない事を吹聴しているのは。あのお子ちゃまなんちゃって皇帝の言葉は9割が嘘で出来てるから、スルーなさい。あの人の子供を身籠ったかもしれないなんて妄言を平気で垂れ流す女なんだから」

 

「戦いの印象?そうね……。ちょっとだけ嫉妬しちゃったわ。エルドラドのバーサーカーにね。余人には殺し合いにしか見えないけど、私には微笑ましいデートにも映ったわ。だってあの戦いの最中、どちらも相手の事しか見えていないんだもの。恋は盲目?ちょっと違うかしら」

 

「まぁ、私にはあんなバイオレンスな趣味はないのだけれど。普通にベッドの上で可愛がられる方が好きよ。『愛する者を欲せ』『愛する者からは奪うな』……。私の新しいモットーよ。最近は焦らしプレイも好きになってきたわ。だって最後に絶対与えられるとわかっている我慢なら苦しくないもの。むしろ、絶頂への最高のスパイスになるわ。…………そういう話は聞いてない?」

 

 

 

 

 

【不夜城の女帝は語る】

 

「………………………………愚か、愚か、愚か、愚かに尽きるわ、全く。何が楽しくて、あんな野蛮な殴り合いをしてるのじゃ、あの阿呆は。一方的にいたぶるのは妾も好きじゃが、あれは理解の外よ。文明人がする代物ではないな。……せっかく妾が治療してやったのに、またぞ傷を作りおって……心配するこちらの身にもなれと…………ブツブツブツブツ」

 

「そもそも妾の不夜城を好き勝手に壊し過ぎなのじゃ!!あやつ、この戦いの前日に妾になんと言ったと思う?『邪魔が入らないように不夜城の人達の退避をお願いしたい。後、多分、街中滅茶苦茶になると思うから先に謝っておく。ごめん』…………ごめんて!ごめんで済んだら、酷吏はいらぬのじゃ――!!しかも、それを前日に言うか?国の主たる妾にじゃぞ!!」

 

「あん?やったわ。皇帝命令で退避させたから、きゃつらは好き放題、野蛮ごっこに興じる事が出来たんじゃろが。まぁ、物好きな連中が被害を受けない範囲で野次馬に来てたがそれは知らぬ、そこまで面倒見切れぬわ!全く、痛いのが好きなら妾がいつだって拷問してやってもよいのじゃぞ?」

 

「…………」

 

「…………筋肉質な女が好みなのかなぁ。妾だって皇帝特権を使えば……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁっ――……はぁっ――……!いるかっ……私の敵……!カル、デアよ……!」

 

「あぁ……!ここにいるとも……!」

 

 体中から血を流し、目にかかった紅を拭い、吠える戦士がいた。はは、ボロボロだな。満身創痍もいい所じゃないか。ま、俺も似たようなものかもしれないが。多分、色々と折れているだろう。けど、全く気にはならなかった。

 

 強かった。最初に邂逅した時よりも、その後狂化に囚われた時よりもずっと。この二日間で何があったのかは知らないが、彼女は格段に強くなっていた。サーヴァントは成長しない。ならばきっと心の持ちようが変わったのだろう。

 

「まだ……!やれるか!?」

 

「あぁ、やれる!だけど……」

 

 一対一、待ったなしの本気の殺し合い。シミュレーションでの特訓とは別次元。兄貴やベオニキ、書文先生はきっと、どこか手を抜いていてくれていたのだろう。

 ペンテシレイアは正真正銘、俺だけを見て、俺だけに触れて、俺だけを殺そうとしてくれた。あぁ、何て心地よい、今世界は二人だけで完結している。

 

「次で……多分、最後かな……」

 

「そうか……惜しいな!淋しいな……!だが、私もだ……」

 

 まるで空襲を受けたかのような残骸に乱暴な道が続いていた。ついさっきまで自分達がどこで戦って、どこを進んでいるのかすらもわからなかったが、ようやくほんの一息、決着の前の寸刻。どうやら俺達は最初の待ち合わせ場所。処刑場がある広場まで戻ってきていた。その処刑場も見る影もなく、破壊されているが。

 

 お互いに確信していた。もう次で出す技が最大にして最後。余力を残す事なくここが決着の地になると。

 

「何だろうな……。この気持ちは、私が死闘に対して初めて抱いたような……。あぁ、だがよい、よいのだっ!今はいい!今はもう余計な事は考えぬ!!ここで全てを出し切る事だけをっ!!」

 

 軍神の咆哮が輝夜に響く。燃える闘気のようなオーラが彼女を包む。考えるまでも無い……彼女の最強の宝具が向けられる。それと一緒に向けられる憎しみでは無い何か。ただとても強い想いという事だけがわかる。

 

「……う。…………がうっ!ちがう、違う……!貴様は……ではない!アキレウスでは無いッ!!私はもう……見失わぬ!!」

 

 体中が軋むように痛い。力を入れるだけで傷から血が噴き出す。……頭はぼやーっとしている。身体は火照るように熱い。服が今にも燃え上がりそうだ。あちこちがだるくて一歩踏み出すだけで倒れそう……。眼球から水分が飛んでいるが、彼女のの姿だけははっきりと見える。次に瞬きしたら、もう二度と目を開けないかもしれない。

 

 つまりベストコンディションだ。

 

 

「アァッ、コロス……、コロスゥ……、コロスゥ、コロスゥッ!!」

 

「『模倣宝具、複合技』」

 

我が瞋恚にて果てよ英雄(アウトレイジ・アマゾーン)!!」

 

 全身の血をエンジンとし、ロケットのようにこちらへ突撃して来たペンテシレイア、励起させた肉体が限界を超えて、俺の命を摘み取る暴虐の連撃となる。

 

「カルデアァアアアアアアアアア!!」

 

 ――『荒れ狂う悲しき竜よ(タラスク)』+『源流闘争(グレンデル・バスター)

 

「『荒れ狂う闘争(タラスク・バスター)!!』

 

 ならばこそ、俺が応えるのは小細工無しの鉄拳の乱打。

 自身の想いを鉄拳に込める凄女のように、あるいは最終的に信ずるのは己の肉体だと不敵に笑う狂戦士のように。

 

 ここからぶつけ合うは互いのこれまで積み重ねてきた集大成。技であり、力であり、そして人生。

 

「アアアアアアアアアアアアアァァァアアアアアッッッ!!!」

 

 息の仕方さえ忘れた無呼吸連打の応酬が続く。拳同士がぶつかり合う。何度も何度も何度も、痛々しい音を響かせて、殴り合う。

 腹を殴られる。顎を殴る。眉間を殴られる。頭蓋を殴る。互いに触れてはいない場所が無くなってしまうぐらいに。

 お互い、一歩も退く事は無い。前に前に、前!へと。後退のネジを止め忘れた馬鹿な男女はより近くへと――。

 

 あまりにも強いぶつかり合いが衝撃となって周りの瓦礫を吹き飛ばしていくという非現実的な光景を生み出していたが、それが一切気にならない。俺も相手も目の前の敵に心を奪われ、夢中になっていた。

 

 最後の技の激突。永遠に続くように思われた命の獲り合いもやがて終わりを告げる。時は平等に訪れるのだから、当然俺達にも。

 

 

「あぁ――」

 

 

 どちらが漏らした声だったろうか。

 

 骨と肉と力がぶつかり合う音が唐突に収まった。

 

 右手を思いっ切り振りかぶり、構えている俺、そして弾かれるようにして、無防備な体勢で両手を広げてしまっているペンテシレイア。

 

 彼女の血まみれで腫れた顔はどこか寂しそうにも見えた。一体、何を思ってそんな顔をしたのか……いや、今は考えるべき事ではないだろう。

 

 

「見事」

 

 

 彼女からこの勝負の結果を伝えるシンプルな二文字が送られた。

 返答はもちろん、拳で返す。出し惜しみ無く……ありったけを。

 

 

「獣拳性裁!!」

 

 振りぬき、最後の一撃を叩き込む。戦いを終わられる決着の拳を。

 

 彼女の体だけで止まる事を知らない一撃はそのまま突き進み、真下にある石畳の地面を崩壊させるまでに到る。彼女ごと下に叩き付けた拳は大地を砕き――。

 

 足場を失った俺達二人を何処へと落下させていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




【ある謎のキャスターからの手紙:1通目】

「初めまして。まだ顔も正体もわからぬ相手からの突然の手紙。大変失礼だと重々承知の上ですが、私も並々ならぬ都合上、こうやって間接的にでしか貴方と接触出来ない事をどうかご理解頂ければと思います」

「お詫びというより、信頼の証としては私の真名を晒します。キャスターのサーヴァント。シェヘラザードです。ダユーの元にいたキャスターは私です。今は不夜城のアサシンの元にいますが……。ただ見た事も無い者の真名を信頼の証とされても猜疑心を煽るだけなのですが、それでも今の私に出来る事は貴方に真実を紡ぐ事だけなのです。死なない為にも」

「真名だけでも不服というのなら、この世界の黒幕も一緒にお教えしましょう。貴方をこの異質な世界に引き込んだのは私です。正確に言えば、私の中に潜む魔神柱なのですが。ソロモン王の使い魔、七十二柱の一柱である不死の特性を持つ魔神柱、フェニクスがカルデアとの連絡も遮断させるという入念な準備の上で貴方をアガルタの世界に引き込んだのです。死んでしまいます」


【2通目】

「前回は気になる所で手紙を終わらせてしまい、申し訳ありません。語り部の質というか『今宵はここまで』精神が出てしまったというべきか。端的に言えば、フェニクスの目的は私の宝具によって完遂した伝承地表世界アガルタを浮上させ、現実の世界に墜落させる事による神秘の破壊。人理崩壊ではなく、人知泡沫によって人類の殺害、ひいては第一優先事項として貴方の殺害を目論んでいるのでしょう」

「私はその計画に便乗した共犯者とも言えます。彼の計画によって神秘の消滅、すなわち英霊の座の消滅。もう死が確約されている英霊召喚からの解放なのです。私がかの魔神柱に協力したのも、『死にたくないから』その一心のみなのです」

「ならば、何故魔神柱を裏切り、貴方にこうして手紙で計画を漏らしているか疑問に思っているでしょう。理由といえば、自身満々であの魔神柱がこのアガルタの世界は貴方を仕留めるにはうってつけの舞台だと息を巻いていたのを見て、このまま駄ラップ魔神柱に従っても酷い目に合うのでは?と私の長年培った死亡フラグセンサーが訴え始めたからでしょうか。貴方が一日でイースを落としたのは知っています。あの時は性的に死の危険がして、逃亡してしまいましたが、今になって考えるともう少し慎重に行動するべきでした」

「ともあれ、私は黒幕として、貴方に滅ぼされるのではなく、黒幕の内通者として貴方に内情を密告し、その成果によって今回は見逃してもらう方向にシフトしました。このままアレに従っても貴方にまとめて消滅させられる未来しか見えなかったので。ともかく私の中に潜んでいる魔神柱が表舞台に顔を出すのはこの宝具が完成した時、つまり貴方がこの特異点にいる英霊達を消滅させるか……あるいはそれと同等の別エネルギーを発動させた時です。その為には貴方にはいやがおうにも支配者達と関わる必要があります。死んでしまいます」


【3通目】
「手紙、無事読んでくれていると助かります。いえ、読んでくれなければ私が死んでしまいます。一応、文字にも信じてもらえるように誠実さの魔力を込めながら、文筆しているのですが。あ、そういえば私は今、レジスタンスに所属しています。表舞台には殆ど出ていなかったので野良サーヴァントとして信じてもらえています」

「不夜城のアサシンも自信満々に国を出てから戻ってきていないという事はそういう事なのでしょう。混乱している国を尻目に私は今後の為にもレジスタンスに組しました。唯一の女という事であまり快くない視線と情欲を向けられていますが……あぁ、欲望に染まった男は怖いです。死んでしまいます。後、偶に私の中で目覚めては駄ラップを披露する魔神柱が腹立たしいです。腹立たしくて死んでしまいます。ちなみにレジスタンスにいるサーヴァントはコロンブスです。男です」

「それと女海賊達がばら撒いているビラも拝見しました。これはアマゾネスをおびき寄せる。そういう目論見があるのでしょうか。いえ、この手紙に返答する必要はありません。私は貴方に情報を伝え、来るべき最後の時に私の言葉が嘘ではなかった。そう思って頂き、殺さないで頂ければそれで十分なのですから。レジスタンスももしかしたら、その日に不夜城へと攻め込むでしょう。絶好のチャンスですから。どうやらイースを支配している貴方も男達からは味方とは認定されていないようです。イースから逃げた男達によって恐ろしく伝えられている弊害でしょうか?私も形だけは軍師なので、何か策を考えろと命じられています。あぁ、戦争……嫌です。憂鬱です。死んでしまいます」
















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テイルズオブセクステリアⅤ(ペンテシレイア編)

何、連勤術師で執筆時間が取れない?睡眠時間削れよ。出来ませんでしたじゃ、済まされないからな。

というわけで初めての2話連続投稿、これは2話目です。1話目をまだ読んでいない方は前話へGO。













 重力に従い、目まぐるしく変わる景色の中で一瞬映った目を眩む程の輝き。そして、そのまま何か硬い物が体にぶつかったような強い衝撃。

 

 体に鞭を入れて、目を開ければさっきまで野外にいたというのに、気づけば、貴人が使うような清掃と整頓が行き届いた部屋にいた。

 

 あぁ、ここが武則天ちゃんが言ってた不夜城の地下に隠れた彼女の本拠地……普段はその姿を大衆に見せる事は無い支配者の居城たる瑶光殿か。

 

 地面をぶち抜いて地下施設へとダイビング。更に更に、城の天井へと突撃して、最上階の部屋へと屋根からお邪魔したわけか……。

 

 しかし、ついさっきまで命を懸けて、戦い合っていた後に行き着く先が寝所とは何とも俺らしい。

 運命の悪戯とでも言うべきか、ベッドの上で彼女を押し倒す形で着地するとは俺にはラッキースケベの神様でも宿っているのかね?

 

「……女帝め、こんな物を地下に隠し持っていたのか……」

 

「おや……もしかして、まだ動ける感じ?」

 

「馬鹿を……言え。はぁ――……もう指一本すらも動かす気力が無い」

 

 ズタボロになった体、彼女の血がベッドのシーツに染みを作る。

 すぅーと深く深呼吸をした彼女から漏れ出た次の言葉は誰に聞かせるわけでもない独り言のようなものだった。

 

「……貴様は……兜も何も無い私を全力で屠ろうとした……。それでよい……それでこそ、この姿になった意味がある。未成熟な少女の頃の……」

 

 押し倒されているペンテシレイアはポツリと感傷を吐いた。彼女が真名の通りの英霊なら、きっとその心にはアキレウスとの戦いが棲み付いているのだろう。英霊となった今でも狂化に囚われてしまう程の憎しみとなって。

 

「さぁ……殺せ。お前にはその権利がある」

 

 だが、残念かなペンテシレイア……俺は多分、アキレウス程優しくはない。

 

 戦場で戦士としての君を倒しただけでは満足出来ないんだ。もう一つの、()()()()()()()()でも君を倒したいんだ。地上での戦いも俺は全力で彼女の命を奪りに行った。そうしなければ、彼女の心には絶対に響かないとわかってたから。あぁ、やっとこの段階に移行出来る。

 

「さっきのは持て得る全てを振り絞った一撃だった。その一撃で仕留められなかった俺に死体を蹴るかの如くみっともないとどめを刺せって?君がまだ負けを認めてなくて、戦えるっていうなら考えるけど」

 

 俺が手を抜いていない事は彼女自身がよくわかっている。でなければ、最後に「見事」なんて言葉は出ないだろうさ。それでもなお、ここで生き残っているのは……彼女の自身の強さでもあり、成果でもある。

 

「……自身の丈夫さが恨めしいな。ここに来て生き恥を晒すとは、ならばどうする私の敵」

 

「ペンテシレイア、君は前に倒れ伏した俺を種馬として、一生傍で飼うような事を言っていたよね。なら、逆の立場になった俺が君をどうしようが俺の勝手だ」

 

「……貴様、何を……」

 

 

 ――ダユーちゃん、このペンテ……エルドラドのバーサーカーって娘に関して、何か情報あったりする?

 

 ――そうですね……。部下から聞いた話ですが、以前彼女を見た野良の男の一人が「美しい」と口走って……。

 

 ――それで?

 

 ――その男に対して興味が無かった目線が一変、殺意という言葉すら生々しい気迫で肉片にしたとか。これは、私の勘ですが、彼女は女として見られる事に対して極端な忌避感を抱いているのでは?

 

 

 戦う場所が戦場からベッドの上になっただけ。

 今まで命を懸けて戦ってきたというのなら、ここで死ぬ気で女の子を口説くのも通常運行だろうさ。死ぬつもりは毛頭無いけどね。

 

「これから、君を抱く。()()()()

 

 だから、敢えて地雷の中を突っ走る。

 

 その言葉を口にした瞬間に鈍い音と共に顔に痛みが走り、ペンテシレイアの拳が俺の頬を捉えていた事がわかる。おいおい、もう指一本動かせないんじゃなかったのか。ちょっと、歯、折れたかもしれないぞ。

 

「あっ、すまな…………いや、違うッ!やめろ、やめてくれ、私の中にそれを見出さないでくれ……!!もう、そういうのはもう懲りたんだ……貴様にだけは、貴様にだけは……私は!!」

 

 はっとした表情もほんの一瞬。犬歯を剥きだしにして、憎しみと悲しみと何かが混ざったグチャグチャの表情で彼女は俺を睨み付けていた。

 

「上で闘り合った戦場とは違う。ここがどこだかわかるだろ?寝所の上で男と女と犯り合う事なんて、一つしかないだろ」

 

 彼女の体を抑え付ける事なく、五体を自由にさせる。これは抵抗するなら好きにしろという俺の意思表示だ。

 距離をさらに詰める。息がかかる程に彼女の顔に急接近する。怒りか羞恥かわからないが、真っ赤になった彼女の顔が視界いっぱいに収まる。

 

「戦場で戦士としての君は倒した。けど、それだけで満足するような甘い男に見えたか俺が?今ここで()()()()の君も屈服させる」

 

「待て……わ、私はっ……!」

 

 黙らせるように彼女の唇を塞ぐ。舌を入れ、絡ませる性的なキス。

 突然、頭の中をハンマーで殴られたような衝撃が走った。俺の舌を噛み切ろうとしているのか。だが舌は繋がっていて、動かせる。ただ血が出て痛いだけだ。何の問題も無い。

 

「はぅ、んむぅっ!んんんぅっ!!」

 

 戦いで切った口内の傷か、はたまた俺の舌から出た血か、わからない鉄の味がする。背中を彼女の拳が何度も殴る。避けようとするたどたどしい舌の動きは逆に絡め取られ、まるで自分から求めているような動きとなって俺の口技に捕らえられてしまう。

 

「んぁっ……んちゅ、んんっ!んはっ、ちが、ちがう……!私は……んんっ、んちゅぅっ!!期待などしてっ……!んむぅっ!」

 

 接吻の合間に漏れ出る弁明の言葉を無視し、ひたすらペンテシレイアの口内を舐り続ける。じゅぶじゅぶと唾液と血が混ざり合った卑猥な水音を立てて、彼女の潤んだ瞳は一体、今何を思っているのか。

 

 数分、殴る、蹴る、噛まれるの抵抗を受けてもキスをし続けた。抵抗がやっと弱まった瞬間に俺は彼女を解放した。そこには息も絶え絶えになった女の姿が目の前にあった。

 

「上での気迫はどうした女王。君が戦場に戦士としての誇りを持ち、命を懸けて戦っているように……俺も男女の睦み合いには命を懸けている。本気で抵抗するなら、命を奪るつもりで来い」

 

「……未だ成熟していない小娘の体だぞ……!見ろ、貴様との戦いで、痣に、裂傷に血だらけだ……!貴様はそれでも、そんな姿の私にでも欲情するというのか!?」

 

「そうだ。どんな姿でも関係ない。俺は君の事が女として好きだ」

 

「す、すきぃ!?」

 

 剣呑な気配が萎んだ気がする。だが、まだだ。まだ足りない。俺はここでさらに彼女のトラウマを突く。

 もう、激しい戦闘で外れかかっている胸当てを外し、隠された乳房を露わにする。確かな豊かな膨らみとは言えないが、それでも性差は感じさせる確かなモノはある。何より、中心ある桜色の蕾が俺の欲情を煽ってくれる。

 

「君の体を綺麗だと、美しいと思っている」

 

 激変した空気と共に首に強い衝撃が襲いかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァッ!ハァッ!……ロス、コロスッ!その言葉を吐く者は誰であろうともッ!!」

 

 目の前の命を摘み取らんと私の両腕は確かに男の首を絞めていた。ここに落ちて来た時はもう一ミリも体を動かす事は出来ないと思っていたが、それでも怒りというのは体を動かす莫大なエネルギーとなった。胸を露わにされた羞恥なんかよりも強い怒りが私を支配する。

 

 万力を込めるとミシリと嫌な音がする。私は今、誇張無く、奴の命をこの手で握っているというのに……この男は、カルデアの目は変わる事は無い。怒りでも恐れでも無い別の色、私が見た事のないどこまでも純な色。

 

「あぁんっ!」

 

 何だ今の声は。誰の声だ。もはや、私か……?あり得ぬ、あり得ぬ、たかだか胸部を触られらたぐらいでこんな軟弱な声を出すものか!

 

「あっ、はぁっ……!よせっ……私の胸を弄ぶなぁっ!……ああっ!」

 

 硬く熱い手が私の胸を這い回る。情事というものを知らぬわけではない、ここに来てからも魔力を求め、性交を行った事はある。だが私にとっては屈服させた男達の中で比較的マシな者を下にして、腰を動かし、ただ種を吐かさせていただけ。そこには甘い男女の関係などあるワケが無いし。私も求めてなどいなかった。

 

 先程のように唇や胸などを触れる事を許す筈も無かった。

 

 なのに何だこの体を奔る疼きは……。恥ずかしい声を出され、屈辱を受けたと怒る所だろうに私は別の想いで感情を昂らせているのか?

 

「あっ、あぁっ……んぁっ!はっ、はぅんぅ!!やっ、やめ、胸をこれ以上……」

 

 何故、ここまで傷物になった私の体にどうしてそこまで情欲を向けられる?

 何故、今この瞬間、貴様の命を奪おうとしている者にそんな瞳を向けられる?

 

 私達は戦士として持て得る全てを出し尽し、戦い、そして私は負けた。そこには男女の情など一切無かった。貴様は徹頭徹尾、私を打ち倒そうとしていた戦士の瞳をしていた。

 

 ならば、敗北した私のこの結末は当然なのか?貴様を飼おうとしていた私は同様に貴様に道具のように欲望を吐かれても仕方ないというのか?

 

 いや、この男の瞳はそんな事を語ってはいない。先程の接吻も、今の愛撫も慈しみを込めて……本気で私を愛そうとして――……。

 

「んぁっ……!はっ、あぁっ……!私の体にこれ以上……やぁっ!」

 

 違う、違う、違う違う違う違う違う!私は悦んでなどいない!!

 このような展開を求めていたわけではない!前日の夜に自身を慰めたのも気の迷いに過ぎない!あれはただ戦士としての昂りを鎮めようとしていただけだ!!

 

 胸の上を這い回る手の感触が気持ち悪い(キモチ良い)。目の前の男が殺したい程憎い(愛おしい)

 

 徐々に込められる腕の力がカルデアの顔の色を青ざめ、その命の灯を奪おうとしている。

 

 やめろやめろやめろやめろやめろ、よせよせよせよせよせ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。死んでしまう、この男が死んでしまう。違うんだ、私は、私は……こんな形で貴様を殺したくないっ!だが、駄目なんだ……。私の中にある狂気の炎は。

 

「―――て――」

 

 かひゅーと僅かな呼吸音の中で奴の唇が動いた気がした。

 何だ?命乞いか?よい、今なら気の迷いで済む。まだ動ける貴様なら、ここから私にとどめを刺せるだろう。自身を殺しにかかる可愛げのない女を好きだと抜かしていた愚かさにやっと気付いたか。だから早く私を――。

 

 

 

「愛、して、る――」

 

 

 

 ……………………。

 

 あぁ――。そうか。

 

 どうして、戦いの決着の瞬間、私の胸中に飛来したのが怒りでもなく、解放感でもなく、寂寥感だったのか今わかった。

 

 惜しんでたのか、どこかで。この戦いだけで我らの関係が終わってしまうのを寂しく思っていたのか。まるで逢瀬の終わりを惜しむ乙女のように。

 

 その先を願ってしまっていたのか。

 

 驚くぐらいにあっけなく私の腕から力が抜けた。

 

 はぁ、全く、日に二度も敗れる馬鹿がいるか……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 呼吸が満足に出来ない。だが、脳に酸素が行き届いていないだけ。目は霞んでいても彼女の艶姿はまだ見えるし、体は動かせる。ならば、何の問題も無い。

 

「ハァ――ッ!はぁっ――!かひゅ、ごほっ、ごほっ!」

 

 そう思っていたのだが、突如として首にかかっていた力から解放される。急に入ってきた酸素の衝撃に思わず咳き込んでしまった。

 

 その代わりとばかりに俺の体を包んだ敵を殺す鯖折り……ではなく暖かい抱擁。

 

「……馬鹿だな、貴様。どうしてそこまで私を求める」

 

「好きだから。愛してるから。君の在り方全てに恋をしたから。他に何か理由が必要?」

 

「…………はぁ――。もう何も言うまい。ここまで完膚無き敗北を喫したのは初めてだ。貴様の馬鹿さ加減に私も参ってしまったのだな」

 

 こてんと俺の肩に彼女の顎が乗せられる。落ち着いた雰囲気で言葉を吐く彼女に殺意も戦意も霧散していた。

 

「戦場で吐かれた軽率な言葉でもなく、恥辱を込めた戯言でもない……。正真正銘、命を懸けて女としての私を求めた。死の淵に立とうともその言葉に偽りは無かった……」

 

 真正面から向き合う二人、第三者から見れば、お互い痣と傷だらけで酷い顔をしていたかもしれない。ただ、慣れない風に柔らかい雰囲気で俺に語りかけてくれるペンテシレイアを素直に可愛いと思った。

 

「そんな貴様の瞳を()()()と思ってしまった私の負けなのだろうな」

 

 今度は彼女から唇が交わされる。もう、舌を噛まれる事も無かった。ペンテシレイアから望んだ傷だらけの口で重なり合う親愛の接吻。背中に回される彼女の手が驚くぐらいに優しかった。もう二度と自身の手で傷つけないような……そんな想いが込められているような抱擁。

 

「ん、んはぁっ……。ふふ、この私を女にしてくれたのだ。存分に愛し抜かれよ。我が夫よ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「筋肉ぐらいしか取り柄が無い女によくもまぁ、ここまで興奮したものだ」

 

 ズボンを下げられ、起立した怒張を愛おしそうに撫でられる。

 他にも貴女の良い所はたくさんあると体で証明するように再び俺は仰向けに彼女を押し倒した。

 

「んっ、その……何だ。こういう体勢は初めてなんだ……」

 

 正常位になった途端照れるように視線を逸らすペンテシレイア。やばいな今の表情。俺のアソコがもう一回り大きくなった気がする。

 

「その……経験があるとすれば。男を組み伏せて無理矢理絞る体勢だったから……自分が下になるのは慣れていないのだ。ただ、まぁ、勝者が上、敗者が下の理論に基づくのなら……これは正しいのだろう。それに貴様に組み伏せられるのを好ましく思ってしまっている私がいる……」

 

 素直に女としての感情を吐露するペンテシレイアの破壊力よ。

 下穿きをずらし、お互いの性器を接触させる。

 

「んっ、濡れているね」

 

「よせ……辱めるな。本能が貴様との性交を……愛を求めてしまっているのだ……一思いに一気に貫いてくれ」

 

「わかった。優しくねっとりする」

 

「だ、だからっ……ひゃああんぅ!」

 

 じゅぶじゅぶと彼女の鍛え上げられた締まりのよい膣に剛直が侵入した瞬間、可愛らしい嬌声が上がる。自分の声だと信じられないのかペンテシレイアは自らの口を塞いでいた。

 

「ま、待て……思いの外、恥ずかしい声が……!何故だ、アソコに入れられたぐらいでどうして、こんな声が……んにゃあっ!!」

 

 悪いペンテシレイア。その反応は逆効果だわ。男の興奮を煽る彼女の反応と男根を締め上げる名器っぷりに感動しながら、挿入を進める。

 

「あぁんぅぅ!!待てと言っているだろうに……!あっ、こらっ……勝手にすすめ……ひんぅっ!!あっ、ひゃっ、駄目……声ぇ、止まらなぁ……んああぁあっ!!」

 

 挿入をしながら、彼女の体に覆い被さる。もっと一つに溶け合いと肌を重ねて、彼女の恥ずかしがる顔を凝視する。筋肉しか可愛げが無いとか何とか言ってたけど、俺としてはこの程よい硬さと奥底にある女性としての柔らかさが好きなんだけどね。

 

 戦士として格好良い所もペンテシレイアで、女性として可愛い所もペンテシレイアなんだ。俺はその両方を好きになったんだから。

 

 ペンテシレイアの首元に鼻を近づけ、芳香な雌の香りを鼻腔に与える。

 

「ん、んぁ、私を嗅いでも良い匂いなど……せぬぞ……あんぅ!」

 

「そんな事ないよ?目を瞑れば、ペンテシレイアの事で頭がいっぱいになるそんな香り」

 

「馬鹿を言え……やあぁんぅ!?ちょ、首元を舐めるなぁ……!っくぁあっ……あっ、はぁっ!」

 

 戦いの最中に俺自身の手でつけた傷に舌を這わせる。彼女の血と汗が混ざった甘露を飽きぬ程、舐め取っていく。

 睦み合いの場において、そこまでバイオレンスな趣味は無いが、自身が与えた傷で彼女が快楽を得てくれているのは言いようの無い興奮を感じる。

 

「んやぁあぁっ!はぁんぅ!あぁ!あぁっ!」

 

 そんな興奮によって加速していく腰の動きは二人の交尾を燃え上がらせる。

 どれだけ激しい攻撃を受けても、どれだけ深い傷を負っても、決して弱音を吐かず、退く事の無かったペンテシレイアが肉棒で貫かれているだけで全身を痙攣させ、泣いている。

 

「知らぬ、知らぬっ!こんなの知らぬぅ!あ、あぁっ!!性交とは……!こんなに恥ずかしい声が出てしまうのかぁ!?はっ、はぁぁっ!!だめ、駄目だぁ!!気持ち良すぎるぅ……!!貴様の事しかぁ、考えられなくなってしまうぅぅっ!!」

 

「今だけは頭の中を俺の事だけでいっぱいにしてくれ。俺も君の事でいっぱいにするから」

 

 まぁ、膣内もいっぱいにするんですが。

 

 ペンテシレイアの凶悪な膣襞に刺激され続けている肉棒はもうこの女戦士の胎に欲望を吐き出したいと訴えている。整った戦士と女としての美を内包した彼女の体を汚したいと本能が訴える。

 

「……どこに出して欲しいって聞くまでもないか」

 

「っぁ……当然だ……膣内以外になかろう……!他の男共でも種馬でも無い……はぁ、あぁっ……貴様には夫として、私を孕ませる義務が……違うな。この言い方は駄目だ。……私が産みたいと思っているのだ……カルデア、貴様との子を!」

 

 ペンテシレイアの足が背に回される。鍛えられた彼女の足に捕まった俺に許されるのは彼女に全体重を乗せて、お望みのままに子種を吐きだす事だけ。

 パンパンとひたすらに種付けプレスをして、彼女の嬌声をさらに響かせる。軍神の咆哮ではなく、女としての艶のある叫び。

 

「ハァっ!ああぁっ!!大きいぃ、おおきぃ!膨らんでぇ……中が抉れてぇ!………あぁぁっ!!んあぁっ!!駄目、もう駄目だぁっ……!はやく、早く出してくれぇ……!!私が先にぃ、先にイッてしまぁぅ……!!」

 

 急かすペンテシレイアの声に応えるようにさらに激しくなる抽送。俺自身ももう限界は来ていたので、二人の絶頂は同時だったと思う。

 爆発した精子の塊が彼女の子宮へと飛び込んでいく。ペンテシレイアを女として愛した証が彼女の中へと注入されいく喜びに震えながら、射精の余韻に浸る。

 

「あああああああああああぁっ――――!!!」

 

 その嬌声は、痴態は戦いで負った傷を癒してくれるようだった。彼女も俺の魔力で傷が癒えるだろうし。殺し合った傷をその後のセックスで癒す。うむ、二人でサイクルしてるエコの精神ですね!

 

「あぁ――……あぁっ……はぁ、はぁっ――……あぁっ、濃い、濃いなぁ……貴様の子種は……。何と強い男の精か……これならきっと強い子供が……いや、どのような子でも構わんな。それが貴様との子ならば……」

 

 あぁ、駄目駄目えっち過ぎます。腹を撫でながら、射精したばかりの男にそんな台詞を吐いたらいかんでしょ。

 俺の本能が男女の情緒に鈍感な強気系白髪アマゾネスウーマンにもっとエッチしろと囁いている。

 

 

「……んぅ?何だ、何をぉ……んぉぉおおぁっ!!」

 

 

 惚けていたペンテシレイアをすぐさまうつ伏せにして、彼女の敏感になっているドロドロの雌穴をもう一度突く。困惑した彼女の喘ぎ声と引き締まった尻とぶつけ合う音と感触が心地良い。

 

「イッたばかりぃ……だぞぉ……んあぁああっ!」

 

「女としても屈服させるって言った俺の言葉、もう忘れちゃった?」

 

「っぁ……あぁっ!!してる……もう、とっくのとうに貴様に屈服してるか、らりゃああああぁっ!!」

 

 一度射精したぐらいで治まってくれない陰茎は再び、濡れそぼった蜜壺を何度も貫く。

 端正で小ぶりな尻もいいが、そこから日々鍛錬しているであろう背筋とうなじまでのラインが素晴らしい。

 うつ伏せになったペンテシレイアは為す術なく女の子のように枕に顔を抑え付け、声を押し殺していた。

 

「んんんんんぅぅぅっっ!!!!んんぅ!!ん゛ん゛ぅぅっ!ん゛ん゛ん゛ん゛ぅぅっ!!」

 

 いや、全然押し殺せてなかったわ。すっげぇ声。

 

 バックから突かれる肉槍によって震え続ける彼女の手を握る。恋人繋ぎで。快楽の飽和でそれ所ではないだろうにぎゅっとたどたどしく握り返してくるペンテシレイアに愛おしさが溢れて止まらない。

 

「凄く綺麗だよ、今のペンテシレイア。もっともっと愛させて欲しいな」

 

 彼女の膣が更に強く締まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んっ、んぁ!こら、噛んでも今の私の乳房からは乳など出ぬぞ。そんなに欲しいのなら、妊娠させてからにしろ」

 

 何度も続いた激しい性交の一休憩。戦士の私には無縁だった穏やかな時間。幼子のように甘えて私の未発達な乳房を舐める。こんな私の胸を触って楽しいのだろうか?女性らしさとやらの欠片も無いぞ?

 

「……不思議なものだ」

 

「ちゅぱぁっ、何が?」

 

 顔を下げ、胸元で抱きすくめられているカルデアが顔を上げた。

 

「殺し合いをしていた者同士が、こういう男女の関係になっている事だ。一日の出来事だぞ?」

 

「愛に時間は関係無いのです。俺がペンテシレイアが大好きでゾッコンだという事が真実。君からのハグは命を懸けるのに値する最高の報酬だったよ」

 

 そう言って再び、私の胸元に顔をうずめるカルデア。全く……あれ程、雄々しい様を忘れさせてくれるレベルの甘えっぷりだ。いや……それだけ、私の事をす、好いていてくれているのか。

 

 今までの私なら、いや彼以外の者から放たれたなら今でも激昂するであろう「綺麗」「可愛い」「美しい」そういう女を感じさせる言葉。

 頭が沸騰しそうな快楽の中で、何度も何度も囁かれて、子宮から嬉しがってしまう女の私がいて。

 

 あぁ、戦士としても倒され、女としても倒されてしまっているんだな……と実感する。

 

 決して私の身からギリシャの英雄共、そしてアキレウスに対しての憎しみが無くなったわけでもないし、捨て去るつもりも無い。

 

 だが、それだけでは無くなったんだ。復讐しか、怒りの狂気しか無い女アマゾネスでは無くなったのだ。

 

 今に思えば、これまでの私は少々余裕が無さ過ぎた。今ならもしも復讐を終えた後の自分を想像出来るぐらいの余裕が生まれている。

 

 彼と家庭を作るのもいいかもしれない。戦士ではない自分というのはまだ想像出来ないが、それもこれからゆっくりと考えよう。

 

 復讐に駆られ、暴走する私の背後に彼がいてくれるのなら、もう私は何も怖くなくなった。

 

 きっとこれが愛おしいという気持ちなのだろう。

 

 そう言えば、私は散々こいつに囁かれたが自分からは直接的な言葉は言っていなかったな。

 

 愛している?好きだ?惚れた?……うぅむ、もう少し捻った方がいいのか。全うな愛の言葉を囁いた事など無かったからな。冷静に考えてみれば、最初に会った時に家畜として飼ってやるはいくらなんでも酷すぎる……。女らしさの欠片も無い……引かれても文句は言えないぞ。

 

 まぁ、良い。シンプルな言葉の方が私らしいだろう。よ、よし……言うぞ……。

 

 

 

「なぁ、カルデア?」

 

 

 

 

 

 

 

 だからこれは天罰なのかもしれない。

 

 

 今まで復讐に駆られ、この地で暴虐の限りを尽くしていた私が――。男共の命を刈り取っていた私が――。

 

 今更、捨て去った女としての自分を取り戻し、好いた男と暖かい世界に行こうと夢想した愚かな行い故の――。

 

 夢から覚ます天罰なのかもしれない。

 

 

「え――」

 

 何とも間抜けな自分の声。

 

 最初にわかったのは衝撃と轟音。

 

 そして鮮血――。

 

 どうして、彼が、カルデアが、傷だらけになっていた体をさらに赤く染めて吹き飛ばされている?

 

 無惨にも壁を突き破り、部屋の外、下層へと落ちていく愛しき男の姿。

 

「いや――」

 

 脳が理解を拒否していた。

 

 どうして、私が寝台から投げ出されるだけで済んでいる?馬鹿め、分かり切っている単純明快な理由だろう。惚けていた私を彼が庇ってくれた以外の理由があるか?

 

 

 

 地上からこの地に降りてきた下手人を瞳の捉えた瞬間、また激情が私の心を支配する。

 

 

 

 貴様は――。

 

 貴様はまた奪うのか――。

 

 私から愛しい人を――。

 

 我が姉、ヒッポリュテのように――。

 

 そうやって私から最愛の人を奪うというのか――!!!!

 

 

 「■■■■■――――!!

 

 ()()()()()()()()()()()!!!」

 

 

 私の瞳は正しく現実を認識する。

 

 傷だらけとは思えないぐらい軽やかに動いた体は私と彼の逢瀬を邪魔した大罪人を頭上高く吹き飛ばした。

 

 どうやら怒りと復讐という因果は私をそう簡単には離してはくれないようだ。

 

 そうして私は狂気のまま、彼との睦み合いの場を後にして、再び戦場の場へと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





【謎のキャスターからの手紙:4通目(ペンテシレイアとの初邂逅から帰ってきた日)】

「どうやらレジスタンスは海の底にある竜宮城……そこにある玉手箱を使い、この地を荒らすメガロスを支配して戦力とするようです。まぁ、その情報を伝えたのは私、というよりは私の中にいる雑音ラッパーがそうするように示唆したのですが」

「英霊はまだ、誰一人として消えてはいない筈なのですが、何故か私の宝具が完結に近づいています。……貴方、何かしました? もしかすると、貴方と彼女達の性的な交じり合いがエネルギーに……? いえ、まさか。……話が逸れましたね。どうやらあの騒音ラッパーはレジスタンスを使い、不夜城での貴方達の戦いに乱入し、そこで全てを終わらせる腹積もりのようです。私には止める術はありません」

「ここで貴方が決闘を取り止めるのも、あるいは続行して逆に罠にかけるのも自由です。この情報をどう生かすのかは貴方の選択に委ねられました。だから……どうか死なないように。死ぬのは怖いですから。ふふ、不思議な物です。この情報を秘めとけば、私の当初の目的は果たされる筈なのに。まるでそんな気が起きない。あのナンセンスラッパーが貴方に勝つ絵が想像出来ないのです。私はほんの少ししか貴方の事を見ていないというのに……」






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テイルズオブセクステリアⅥ(アガルタ編その4)

前までの投稿頻度が投稿頻度だったので、いつも通りのペースに戻るとガクッと間が空いたように見える法則。私は生きています。
感想、評価、誤字報告、いつもありがとうございます。

カルデアコレクションにてメイヴ更新。







駄ラッパー魔神柱を喋らせるのが一番、面倒くさかったです。






 アマゾネスの女王と人類最後のマスターがぶつかり合った日。

 余りにも荒々しく、圧倒されるしかないその戦いを目にしていた者達は更なる怒涛の展開にもはやついていけなくなっていた。

 

 恐らく、イースの主たる男の一撃によって決着はついたのだろう。

 

 大地は割れ、半径10m近くの穴を作り、二人は落下していった。不夜城の地下にそんな空間があったのか?結局、勝者はどちらになったのか?何故、出てこないのか?そんな疑問を抱えながらも誰もその穴に近づく事は出来なかった。

 あれ程までに超然とした戦いをした二人がいるであろう穴蔵に飛び込むぐらいなら、まだ虎穴に入った方がマシだと誰もが思っていた。

 

 だが、この世界にはまだいる。あの二人の戦闘力に匹敵する程の化け物が。

 

 アガルタの世界において知らぬ者はいない。生ける災害。膨張化した巨英雄ヘラクレス……。美的センスにこだわりがある者がつければメガロスと名付けるかもしれない。

 

 

 一瞬の出来事だった。その巨人が飛び込んでから数分――。

 

 

 弾き返されるように再び地上へと吹き飛んだメガロスとそのメガロスよりも恐ろしい怒気を撒き散らす女アマゾネスが飛び出して来たのは。

 

 

「コロスッ!コロスッ!コロスゥゥッ!!もはや、12回殺した程度でこの怒りが治まると思うな!!」

 

 今までペンテシレイアがメガロスと対峙したどの時よりも言葉自体はまともに発している。だがその激情と向けられる怒りの大きさは目にしただけで不夜城の臣民達が気絶してしまう程。

 

「■■■■■■■■――!!」

 

「殴りコロス!蹴りコロス!噛み千切ってコロス!捻じりコロス!絞めコロス!潰してコロス!呪いコロス!焼きコロス!抉りコロス!踏みコロス!叩きコロス!刺しコロス!神々が与えた試練など生温い程の地獄を見せてやる!!」

 

 メガロスの髪を掴み、もみじおろしにする勢いで街中を駆け巡り、引き摺り回すペンテシレイアの姿はどちらが怪物なのかわからなくさせてしまう。もう、最初の戦士同士の真っ当な戦いの範疇は超えていた。愛する男を傷つけられた女の激情の恐ろしさ。周りの配慮を一切しない大災害に野次馬に集まっていた者達は一目散に逃げ出していった。

 

 

 

 

 そんな阿鼻叫喚の中でも、逃げずに留まっている者も中にはいた。

 

「『穴の中に飛び込んで、生きている奴を全員殺せ』と俺は命じた筈なんだがな……まさか、あのバーサーカーが出てくるとは思わなかったぜ」

 

 巻き込まれないように崩れた家屋の残骸を背に様子を覗う老年の男がいた。

 レジスタンスのライダー……コロンブスがイース、不夜城、アマゾネスの3勢力が集まる絶好の機会を逃す筈は無かった。半信半疑ではあったが、あのキャスターの言う通り、海底に眠る玉手箱……膨大な魔力の塊である簡易願望器のような物を見つけたコロンブスは周りの部下達には見えない角度で実に気持ちの良い笑顔を浮かべていた。

 

「てっきり、イースを支配した。『性賊王』とやらが生き残っていると思ってたが……。あぁ――、勿体ねぇ、勿体ねぇなぁ……。一日で荒くれの女海賊共を支配した手腕……。きっと俺の良い相棒になったかもしんねーのによ。あっちの方が死んじまうとはなぁ」

 

 本気で惜しんでいる気持ちもあったのだろうが。いや同じ船に船長は二人もいらねぇから、きっとどこかで殺してかもなとコロンブスはすぐに思考を切り替える。だからこそ、あの怪物にどちらも殺せと命じたわけなのだから。

 

「あ、あの大丈夫でしょうか、ライダーさん。ここにいたら、危険では?」

 

「何シケた事言ってんだよ?ここが正念場。てめぇらの雪辱の日々を倍返しで叩き付けてやる時間だろうが。あの大嵐も俺達のカードになったんなら、後は突き進むだけさ。風は完全に俺達に吹いてるんだぜ?……そういや、シェヘラザードの奴はどうした?」

 

「えぇ――と。アマゾネスの奴が穴から飛び出したのを見た瞬間に一目散に逃げていきましたが……」

 

「……アイツの臆病っぷりもどうにかならんのか。まぁ、いい。()()の在処を教えてくれただけでもアイツは十分の仕事をしてくれたしな」

 

 そうしてこれ見よがしにコロンブスが持っているのはメガロスの命令権兼ブースト代わりになる玉手箱がストックとして数箱。

 厄介なエルドラドのバーサーカーを仕留めたら、レジスタンス一丸となって後はメガロスの突撃に呼応してここを落とすだけ、欲を言えば、イースのダユーと不夜城の女帝も確実に仕留めたい所だったが、それも近い将来きっと叶うだろう。何せ自分はこの世界で最強の戦力を手に入れたのだから。

 

「……さてさて。ウチの新顔君はそろそろバーサーカーを仕留めてくれたかねぇ?」

 

 厄介な支配者達をまとめて潰せる絶好の機会。コロンブスは狡猾にタイミングを見計らっていたが、彼の目には信じられない光景が映っていた。

 

「…………あん?オイオイ、何の冗談だ?あの女さっきまで満身創痍だったろうが。何で、ヘラクレスと戦り合えている?何で傷が()()()()()?」

 

 最初の怒りも長続きはしないだろうと思っていた。何せ、あの黒髪の優男との戦いによって既にもうボロボロだったのは確かに見たのだから。だから、いくらエルドラドのバーサーカーといえども、万全の状態のメガロスと勝負になるワケが無いとコロンブスは高を括っていた。

 

 だが、現実はメガロスが振り回す巨斧を怒りながらもクレバーに捌き、ランクA相当まで昇華された彼女の怒りの鉄拳が既に巨英雄の命を3つ奪っていた。

 

 ペンテシレイア自身も怒りの中で不思議に思っていたのかもしれない。どうしてここまで自分が動けるのかを。ただ単にギリシャの英雄というだけでアキレウスと混同し、暴れまわっていた頃よりも、この地でマスターと一騎打ちをした時よりも体が軽く、生前の時すら凌駕した力を生み出している事は事実だった。

 

 まさか、彼に散々膣内出しされたせいだとは夢にも思わないだろう。

 英雄の現身であるサーヴァントを一つの存在として肉付けをし、新たな宝具を獲得させるまで成長させる彼の精子はこれ以上無い程に潤沢な魔力として彼女の身に宿っている。

 

 だがペンテシレイアにはそのような原理はわからない。今の彼女の頭の中にあるのは愛する男を傷つけられ、逢瀬を邪魔した者達全てを始末する事。

 

 人類悪候補生の愛によってブーストされた狂化はメガロスすらも屠り得る破壊力を生み出す。ギロチンの要領で倒れ込んだヘラクレスの首に膝蹴りを叩き込むペンテシレイア。そこから「シネシネシネシネシネシネ死ねぇぇっ!」と連呼しながら頭蓋に肘を叩き込み続ける姿。……愛……怖いな――。

 

「あのアマゾネスの宝具か?ヘラクレスが負ける……?いや、手は早めに打っといた方が吉だろうな。おい、巨英雄よぉ!ご飯の時間だ……あぁ!?」

 

「あがっ!?」

 

 コロンブスが玉手箱によって劣勢なメガロスの回復をしようと瞬間、銃声が響いた。そして悲鳴と共に倒れるレジスタンスの部下。銃弾に撃ち抜かれたその男は何が起きたのかわからず、その場に倒れ伏す。

 

「不覚……大失態ね。まさか誰にも教えていないわたしの別荘からそれが盗まれていたなんて……マスターになんて詫びればいいのかしら」

 

 下手人はダユー。女海賊達を引き連れて険しい目でコロンブスを睨み付けていた。

 元々、玉手箱の在処でもある竜宮城はダユーのもう一つの本拠地。正直な話をすれば、マスターとの蜜月の時を楽しんでいた彼女は何もない退屈な竜宮城の存在などついさっきまで忘れかけていた。

 

「お、お、おぉぉぉおおおお……!て、てめぇっ!何て事をしやがったっ!!」

 

(この男の心臓を撃ち抜こうとしたけど……こいつ、今隣にいる部下を周りにバレないレベルで盾にしたわね……)

 

「……よりにもよって俺の部下から手ぇ出してくれるとは舐めた真似してくれるじゃねぇか……!動揺でも誘うつもりか?許さねぇ……許さねぇぞ……てめぇら……!!野郎共!!弔い合戦だぁ!!」

 

「わたしも人の事は言えないけど、中々の屑ね。あなた達、周りの男達(雑魚)は殺さない程度に遊んであげなさい。私はコイツを仕留めるわ……!」

 

「ハッ!大将の心配はしなくていいのかよ?それともお前にとっては消えてくれた方がいいか?あの男が消えれば、またイースはお前の所に戻ってくるわけだからなぁ!」

 

 銃弾、鞭、鎖、二人の船長は殺意を武器に乗せて激しく応酬し合う。

 ダユーは彼の言葉の返答として何発も銃弾を放つ。この男に言われなくとも、心配は最初からしているのだから。それでも――。

 

「その汚い口を今すぐ閉じなさい。わたしはあの人に信じられてここを任されているの。彼が我慢しろって言うのなら、わたしはいつでも我慢するわ!だって……その方がキモチ良くなれるって知っているから!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ダユーとコロンブスが対峙した頃……場面は変わり、先程、二人が消え、不夜城の本拠地に繋がっている穴の前に一人の美女がいた。

 

『探知!感知!歓喜!/嗚呼、仇敵の命の灯が風前!/空前絶後!おぉ、遂に我は統括局すら為し得なかった偉業を!!異形のマスターを始末する大偉業を!!』

 

(やかましいですね……)

 

 自身の中で韻を踏む魔神柱に顔をしかめながらも褐色の美女シェヘラザードは穴の底を見下ろしていた。

 メガロスが乱入するのは手紙で伝えていた。にも関わらず特に彼は対抗策を打っているようには見えなかった。フェニクスの言葉を信じるのなら、巨英雄の手によってカルデアのマスターは仕留められてしまったのか。

 

『我が同士よ。時は満ちた。アガルタの者達による狂乱/狂喜/狂愛!英霊死せずとも既にこの空想は完走の道を。貴様が求めていた終焉へ充ちた/この願いこそ Me too→さぁ、解放せよ開放せよこのアガルタを浮かべるのだ』

 

「いえ……その前にカルデアのマスターの顔を見ておこうかと思います。きっと最後になると思いますから」

 

 そんな疑問を抱えながらも、シェヘラザードはフェニクスの言う通りに宝具を起こす気にはならなかった。この駄ラッパーが自信満々に自身の物語の中にあのマスターを引き込んでから……イースをたった一日で落とした彼を遠目で眺めてから……彼女自身が抱えていた直感。

 

 数多の物語を語り続け、死を避ける為の様々な手段を用いてきた彼女の経験が作り出した勘。

 

 フェニクスの離反行為ともいえる内通の手紙を送り続けたのもシェヘラザードが彼の力になる事が死を避ける為の一番の近道だと、本能的に悟っていたからかもしれない。

 

『……成程。理解。豪快。痛快/死に行く者への最後通告か……我も今まで溜飲を飲まされた/勝者or敗者。物語の作者としての締めで奴の人生にも〆/そういう事なら止めはしない』

 

 勝手に納得しているフェニクスの戯言をスルーし、シェヘラザードは人型の精霊の肩に乗り、慎重にゆっくりと地下の城まで舞い降りていく。

 

 何故ここまで一言も言葉を交わした事のない者に入れ込んでいるのか?共犯者としての魔神柱が頼りないから?いや、それだけではない。彼女の行動理念は死なない事、それのみ。

 

 ならば不死の魔神柱よりも生の気配を色濃く残すマスターへと傾いてしまうのは当然だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、ペンテシレイアを庇い、メガロスの一撃によって武則天の本拠地である瑶光殿の最上階から落下したマスター。

 無人島では魔猪を狩り、時間神殿ではゲーティアとの殴り合いを行い、電子の海では協力者がいたとはいえ、自身も前線に出てサーヴァントを屠り、快楽天とも戦り合った彼のスペックはサーヴァント……もしくはそれ以上の物を持っていると言ってもおかしくはなかった。

 

 だが、そんな彼でもペンテシレイアと生身で殺し合い、床の場でも彼女からの抵抗を受け、トドメにはメガロスの強力無比な一撃。受け身を取る事なく地面へと激突した彼には今までの特異点で一番深い傷を負わせたとも言えるかもしれない。

 

 いつ死んでもおかしくない状態。常人ならとっくのとうに事切れている状態。

 

 だが、それでも彼は死なない。絶対に死なない。自分の死に場所はこんな所では無いと。『戦闘続行(根性)』によって息を吹き返した彼は血まみれになったまま笑う。

 

「は、はは……生き、てる……。いや――よかった、よかった……」

 

「何も良くないわたわけ!!貴様、よく今の状況で笑えるのぅ!この妾を未亡人にするつもりか、えぇ!?」

 

 血だまりの中で仰向けに倒れ伏すマスターを武則天は半泣きになりながら叱り付ける。

 シェヘラザードからの手紙によって、メガロスの乱入はダユーも含め、彼女も知っていた。だが、マスターは俺に良い考えがあると彼女達には余計な手出しをしないように命じていた。ダユーには怪しい者がいたら逃がさないように周囲の警戒を。武則天には自分に何かあった時の為の待機班として。

 

 これは策通りなのか、それとも不測の事態なのか。彼女にはそれを問い詰めている余裕は無かった。

 今は優先すべきは目の前で死にかけている愛すべき男の命を救う事。

 

「貴様、自分の状態がわかっておるのか?頭蓋骨骨折及び脳挫傷。鼻骨骨折。第7歯から第4歯欠損。第1歯及び第2歯欠損。頚椎捻挫、左鎖骨不完全骨折。右上腕骨不完全骨折―、右手手根骨及び中手骨完全及び不完全骨折。左前腕骨不完全骨折、左手中手骨及び中節骨不完全骨折。基節骨完全骨折。右肋骨4番5番複雑骨折及び左肋骨7番完全骨折。左大腿骨及び………これでもまだ半分じゃ!つーか、逆に生きているのが不思議なくらいじゃ!」

 

「わたしは……一向にかまわん……!」

 

「ええいもう口を開くな!!集まれ、酷吏共!めす!包帯!汗!さっさとこの大馬鹿者の治療を行うのじゃ!」

 

 命じられるままに続々と集まる酷史達。拷問によって人の体の壊し方を熟知している彼女達が逆に人の治し方にも精通しているのは道理でもあった。

 医者のように武則天は余裕がありそうにも見えるマスターの応急処置を行う。

 

 

 ――ザザッ、ザザッ……

 

『あ――もう、ようやく繋がった!まさかここまで念入りに通信を阻害する結界が張られているとは思わなかったよ……。まぁ、マスター君の事だから、マシュの心配も杞憂だと……思うけどぉぉおおおお!?何故ぇぇ!!?』

 

『……え、え、先輩?先輩……?あ、あ――――』

 

 魔神柱の妨害を掻い潜り、通信を繋げる事が出来たカルデアからの二つの悲鳴。

 彼の人外っぷりを理解しているダ・ヴィンチちゃんはまさかいきなりスプラッタな状態で彼が映し出されるとは思わず。万能の人らしからぬ叫び声を。

 いついかなる時でも先輩の心配をしているマシュはハイライトを失う。

 

 ここに来て、ようやく合流する事が出来たカルデアはいきなり混乱の淵に叩き込まれた。

 

「えぇえい!やかましい!!状況から察するに貴様らが虎狼の所属する組織なのじゃろうが……生憎と今はそれ所ではないわ!大人しくしておれ!!」

 

 武則天は叫びながらも当然入った通信に見抜きもしない。「女帝たる妾に医者の真似事とか不敬過ぎるじゃろ……」とかぶつくさ文句を言いながらも一心不乱に治療を続けるふーやーちゃんマジ良妻。

 

『いや……こっちも普通に事情を知りたいんだけど……マシュはぶつぶつ呟いたまま、機能停止しちゃったし。そもそも何故、彼が血まみれになっているのか、その状態でキチった顔でサムズアップしているのか。というよりも返り血がついたキョンシーもどきに囲まれている状況を見ると君達が下手人としか思えないのだが?』

 

「ふぅ――。大丈夫だよ、ダ・ヴィンチちゃん、彼女は協力者。今、必死に俺の治療をしてくれている所」

 

『おーけー、現地妻ね。天才は理解が早いよ。それよりもマシュがSANチェック失敗したから、一声かけて(精神分析して)もらってもいいかな?』

 

「マシュ。俺は大丈夫。君の先輩はいつも通りさ」

 

 どこがやねんというツッコミをダ・ヴィンチは飲み込んだ。天才は空気も読める子。

 

『せ、先輩……。あぁ、先輩の声が聞こえる。良かった、良かった……先輩、先輩、先輩、先輩、先輩……んっ、ふぅ……。取りあえず、迅速な事態の説明を』

 

 

 手術中だろうが意に介さずこの特異点における情報をすらすらと伝えるマスター。「関羽か貴様は……」という武則天のツッコミは届かない。悪い男に捕まってしまったのぉ……と女帝は粛々と治療を続ける。

 

 ホームズが出る幕もなく、この地底世界における大まかな情報が揃ったことにより、ダ・ヴィンチちゃんは治療班としてナイチンゲールを送り込もうと悩んだが……せっかく既に治療している先達がいるのなら、あのバーサーカーと衝突させるのは悪手だろうと考え直す。

 彼女も大方、マスターに誑かされたクチなら、信頼してもいいだろうと。思考を巡らせていた瞬間に乱入者が現れる。

 

 

 

 

『むむ!?新たなサーヴァント反応に加えて……何だこれは生体反応?いや、生きているとは言えないぞ……?』

 

『先輩、注意を!!』

 

「生きてはいたようですね……。その怪我でも意識をはっきり持っているのは驚愕ですが……」

 

 精霊に担がれ、降下してきたシェヘラザードと。

 

『素晴らしき!素晴らしき!/人類最後のマスターの死期!/我らが仇敵/怨敵/忌敵の最後!』

 

 今まで煮え湯を飲まされ続けたマスターの重傷っぷりに歓喜のあまりに人型のモデルで姿を現した魔神柱フェニクス。

 敵勢力の登場に治療を他の酷史に引き継いだ武則天は彼を背後に守るようにして構えた。

 

『入念な準備/カルデアとの断絶。アガルタでの孤立。女達による束縛=全てはこの時の為。我が目的を果たす邪魔をする壁/完全に仕留める為→成、成、成、我が大願ここに成功せり!』

 

「ちっ、やはりそちら側じゃったか、キャスター。まぁ、虎狼はともかくとして妾はあの手紙の事をこれっぽっちも信じてはおらんかったからの……。止まれ……それ以上、近づけば、妾の鞭が飛んでくるぞ」

 

「私もその事で話があります。あの手紙の通り、メガロスの来襲はあなたも知っていた筈……何故、何の対抗策も打たなかったのですか?」

 

『手紙?メガロスの来襲を予期?対抗策?wait,wait,何の話をしている我が同士よ』

 

 精霊から降り、不夜城の地下へと足を踏み入れたシェヘラザードはマスターの声が聞こえる距離まで近づき、言葉を投げかける。後ろにいる話せば話す程死亡フラグが建ちそうな魔神柱の言葉は耳に入らない。

 

「……それとも今のこの状況こそが()()()()だというのですか」

 

 真意を問い質すシェヘラザードの瞳に答えるように酷史の肩を借りながらも、マスターは立ち上がった。

 

「おい、まだ立っては……」

 

「アラフィフやバベッジ先生じゃ、あるまいし計算なんて何もしてないよ俺は。そう、ただ……彼女を()()()()()

 

「信じた?」

 

「そう。最初はメガロスの話を聞いた時、何かしらの準備はしてから不夜城で迎え撃とうと思った。何せ、君の話からすれば今回の魔神柱は狡猾で臆病。勝てると確信しない限り、俺の前に現れるとは思えなかった。けど、それもペンテシレイアと出会う前までの話……」

 

 フェニクスはシェヘラザードとあの男が一体、何の話をしているのか理解出来なかった。いや理解したくなかった。ここにいるのは死にかけのマスターと姿を現しているアサシンだけ、自身だけでも簡単に屠る事は出来る。それだけで後は宝具を発動させれば、自分達の目的は達成される。なのに何故、シェヘラザードは悠長に言葉を交わしているのかと疑問符を浮かべ続けるしかなかった。

 

『理解不能、理解不能/その話……まるで我が同胞と仇敵が通じていたようではないか/要求→説明を求む。欲求→貴様の願望はどこへ消えた』

 

「……消えてなどいません。私の願いは変わらず死なない事、それだけです。そして今、理解しました。どうして私が離反し、カルデアのマスターへと傾いていったのか……。単純な話です。フェニクス、貴方が得意げな顔で彼をこの地に呼び寄せた瞬間から消えないのですよ、死相が」

 

 満身創痍の状態であっても人類最後のマスターには未だ色濃く生の気配があった。反面、不死の特性を持つ魔神柱の方には死相しか見えない。それは生前、死にたくないが為にあらゆるものを凶王に捧げた語り部が磨き上げた慧眼。死の気配を敏感に感じ取る危険察知能力。

 

『死相?死相?死相?/何と愚かな思想!/大きく失望シェヘラザード!/我が音韻は生死司るフェニクスなり!我よりもその死にかけの男を選ぶとは!/愚昧、愚劣、愚行→そのような勘に進退身体委ねるとは!再考せよ!血迷ったか我が同胞よ!』

 

 激昂した状態でフェニクスは雑音を撒き散らす。何せシェヘラザードの宝具がなければ、このアガルタの地を浮上させて、神秘の秘匿を絶滅させる目的を……壮大な自殺を果たす事が出来ない。シェヘラザードの死に対する忌避感は本物。だからこそ、同胞として選んだわけであり。まさかここで裏切るなど微塵も思っていなかった故の焦り。

 

「じゃあ、ついでに勘以外の物も提供しようか。彼女が君のはた迷惑な自殺に付き合う必要が無い論理的な理由を」

 

『は?』

 

「彼女の手紙から知った事だけど……。神秘の秘匿が無くなれば、英霊召喚システムが破壊され、もう死が定まっている召喚を行われる事も無い。それこそが彼女の目的だったかな?はい、まずこれが唯一にして最大のダウト」

 

 人類最後のマスターは突きつける。極めて当たり前の事実を。

 

「仮にお前の目論見が成功したとしても、それはあくまでこの世界、あぁ、便宜上A世界としておこうか?A世界において英霊召喚が行われなくなるだけ。英霊の座は時間軸に捉われない、未来の英霊すら召喚するあそこに戻った君は別のB世界、C世界、他の並行世界といくらでもこれから召喚される可能性はある」

 

『そうだね――。英霊の座がそんなに脆いというのなら、まずアルトリア君達がたくさんのイフとして召喚されているのもわからないし、X君にいたってはユニヴァース世界なんてよくわからない出自だからね』

 

『英霊の座は常識に捉われてはいけない!と聞いています』

 

 お前の自殺ではシェヘラザードの目的は達成されない。そもそも同胞としての大前提が崩れているとマスターは断言する。

 シェヘラザードは詐欺師を見るような目つきで二の句が継げない魔神柱を見る。

 

「シェヘラザード……ここで君がアレと一緒に心中しても君はここじゃない世界でまた召喚されるだけだよ」

 

「フェニクス、その反応を見る限り、そもそも、そんな発想自体が無かったという感じですね……。むしろ騙していたのだと言ってくれた方が良かったのかもしれません……。私はなんて節穴な者の口車に乗ってしまったのでしょうか……」

 

『召喚に長けている■■■■王の使い魔である七十二柱とは思えない程のガバガバっぷりだね』

 

「小者臭が半端ないんじゃが」

 

『黙れ黙れ黙れ!/手遅れ手遅れ手遅れ!今から貴様の口から何が紡がれようとも全ては虫の息!/この愚図が協力しないというのならここで全員殲滅!マスターを失ったカルデアなど取るに足らぬ!我は再び、悠々と他の手段を探すのみ!!』

 

 全方向から正論ディスティニーを受けた魔神柱は当初の目的を諦め、せめてカルデアのマスターの殺害だけは試みようとする。唯一のマスターさえ、消してしまえば、自身の願望を止める者はいないとの考えだろう。

 

「だからさぁ。なぁ――んかズレてんだよなぁ、お前達。あの淫乱尼さんといい、どうしてそこまで俺を重要視する?俺なんて一人だったら寂しくて死んでしまう兎みたいな男なのにさ」

 

 関係はないが、オスの兎は年がら年中発情して性欲パないらしいね。関係ないけど。

 

 

 

「……『彼女を信じただけ』。その言葉の続きを語ろうか。正直な所、ついさっきまでメガロスの事なんて頭から抜け落ちていたよ。だって彼女との()り合いに余計な思考を持ち込みたくなかったからさ。本気で殺し合って、本気で愛し合う。それしか頭に無かった」

 

 

「それを無策と言うと思うのじゃが……ん?つか愛し合うとか言ったか今?もしかして、この城に飛び込んでから中々戻ってこなかったのもチョメチョメしておったからか?おいコラこっち向かんか。人の城で何してくれとんじゃ」

 

 ガン睨みしていたふーやーちゃんを頭撫でりこで黙らせる最低男。それで絆される彼女も彼女だが(チョロ可愛い)。

 

「その瞬間にメガロスの襲撃が頭に無くとも、俺は絶対にもう大切な人を失わないように本能的に彼女を庇う。この身がどうなろうとも。そしてペンテシレイアはその下手人を絶対に許さない。他の娘だったらまた違う手段を取るんだろうけど……彼女に限ってはさ」

 

 結局の所、照れ臭そうに頬を掻くマスターにとって語れるのは策と呼べる物ではない。

 ただ、単にペンテシレイアと本気で戦り合う!その後、本気で愛し合う、犯り合って堕とす!邪魔が入る?知らん!好きな女としてベッドの上では彼女を守り通す!だが、それだけではない。

 

 完全に狙っていたわけではないだろうが、好きな男に抱かれた愛情と、その男を殺されかけた怒りと、存分に注がれた特別製精液によってペンテシレイアのコンディションは限界を超えて強化されているだろう。

 

 

「俺はあの娘のそういうワイルドで格好良い所にも惚れたんだから」

 

 愛する男を傷つけられた怒りで限界まで強化された戦士――。

 

 つまりこれは『マスターヒロイン説作戦』とも言える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チッ!粘りやがるな……!」

 

 剣と鞭を使い、何とか銃弾を捌くコロンブスは苦悶の声を上げていた。食らいついてはいるもののもう何発かはイイモノをもらってしまっている。反面、相対するダユーには未だ傷が無い。サーヴァントとしてのスペックの差はそこまで無い筈なのに押されている現実。

 

 あのエルドラドのバーサーカーといい、ダユーといい、この世界の女共がまるで自分の知らない力でブーストされているような感覚。

 

「もう、諦めなさい」

 

「諦める……?諦めるゥッ!?ハハハ!冗談じゃねぇ!まだ、いけるさ!船を引き上げるには早すぎるんだろぉがぁ!ここで出し惜しみなく俺は秘蔵のお宝を使わせてもらうぜぇ!」

 

 彼の手に輝くは玉手箱。本来はメガロス用に使う物だが、出し惜しみで自分が死んだら意味が無い。だから濃厚な魔力の塊をここで自ら蓄えようとコロンブスは目論む。急激な魔力でブーストされた状態からの宝具で一気に決着をつけようと。

 

「ふぅ――……」

 

「あん?テメェ、何の真似だ?銃を下して……」

 

「あなた、サーヴァントなら自分のステータスもわかるわよね?幸運のランクどれぐらいあるのかしら?」

 

 戦いの最中、いきなり銃をしまいだしたダユーを訝しむコロンブス。ここに来て何かの罠かと彼は彼女から目を離さないように注視する。その注視こそ、()()()()()だと気付かず。

 もう、自身の真名も正確に思い出しているコロンブスは当然ステータスも把握している。

 

 

「ハッ!俺の幸運だぁ!?そんなの規格外のEXに決まっでぶッ!?」

 

 

 脳天から縦に真っ二つになったコロンブス。空から降ってきたメガロスの巨斧によってそれがなされたのだと彼が気付いた時にはもう霊基は消滅し始めていた。再起を図ろうと転がり落ちた玉手箱に手を伸ばすが、別れた体は無惨にも倒れる。

 

「一体……何が……?……玉手箱、玉手箱……。あぁ……畜生、何てこった。神様にも見放されちまったのなら……今回は……撤退する、しかねぇのか……ここまで来たのによぉ……」

 

「ライダーさ……ヒィ!?」

 

 レジスタンスの悲嘆の声を掻き消すようにさらに大きな塊がコロンブスを下敷きにして彼を完全に消滅させた。その塊はメガロス。そして、巨斧と共にそれをこちらに投げつけた張本人は巨英雄の体躯を踏みつけているペンテシレイア。

 

「匂う……匂うぞ。貴様だけではないな。まだ、いるな……私の逆鱗に触れながら、コソコソと暗躍する愚か者が……」

 

 怒りに捉われながらもペンテシレイアの思考は冷たく冴えていた。そもそも、あんな絶妙なタイミングで狂化しているヘラクレスが乱入するのかと。糸を引いている者が絶対に裏にいると勘付いた彼女は野生の嗅覚で獰猛に下手人を探し出していた。

 

 全身を怒りで掻きむしりたい衝動に駆られながらも頭の中はクリア。

 

「報いを与えねばならぬ。我が愛を貶めた者には相応の報いを……」

 

 もうここにはいないと判断した彼女はメガロスの首根っこを掴み、何処へと飛び去っていった。

 

「ちょっとだけ、死ぬかと思ったわ……」

 

 コロンブスの背後から巨斧が飛んで来たのに気付いていたダユーは安堵の息を吐いた。頭が無惨にも消滅してしまった事から戦意喪失し、うなだれるレジスタンス達の拘束を部下に命じながら、ダユーは先程のペンテシレイアの姿を思い返す、疑問符を浮かべながら……。

 

 

 腰まで伸びたツヤのある髪。女性らしく膨らんだ乳房。恐らく自分よりも高いであろう身長。さらには服までもが新調されていた。今までの露出度の高い衣装ではなく、白い布地と革が組み合わさった独特な民族的な衣装。マスターと戦っていた時との姿と合致しない。

 

 

「姿が変わった……?気のせいでなければ、大人になってないかしら……あの娘?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼女は逃さない。情事を邪魔した者を。愛する男を傷つけた者を。実行犯。首謀者共々全てを肉片と化すまで止まる事は無い。

 

 

 

『女王?/アマゾネスの女王?/アキレウスに敗北した女王?/破破破破破破!!破笑!嘲笑!失笑!俊足にすら勝てなかったあの英霊が最強たる巨英雄に勝てる道理無し!!貴様の切り札があの女とは……/Question?何だ、これは……頭上から生体反応……こちらに急接近……!?』

 

 死亡フラグを片手に踊り続けるフェニクスに死兆星が急降下してくる。

 すす――と迅速に魔神柱から距離を取るシェヘラザードは完全にカルデア側。

 地下へと急降下したペンテシレイアは巨英雄の巨体をハンマー代わりにフェニクスへ振り下ろされた。

 

『迸る痛みィ!?』

 

「見つけたぞ。塵芥。我が瞋恚はもはやあらゆる仇を逃さん。怒りで何も見えなくなったと思ったか?否だ、我が思考は激昂によってこれ以上ないぐらいに冴え渡っている」

 

 フェニクスは完全にメガロスの下敷きになって沈黙した。

 首謀者に鉄槌を振り下ろしたペンテシレイアは既に残りの命のストックが1となっているメガロスの肉体の上に立っていた。

 

 その肉体は少女のそれではなく、完全に成熟した女のものだった。外見だけで言えば、生前アキレウスが「美しい」と口走った頃のペンテシレイア。

 

「強制的に成長したというのですか……。メガロスが倒せるレベルまで……!」

 

「逃がさん、逃がさん。この身が味わった雪辱を晴らす為、彼の痛みを晴らす為、私は冥府の果てまで追い、殺し続けてやろう」

 

 ボッ!!と真下に右手を無造作に叩き付けただけでメガロスの肉体は爆発四散したかのように粉々に弾け飛んでしまった。周りの者が目を覆う程の破壊力。この狂った物語で操られるだけだったメガロスは漸く消滅をもって解放される。

 

『馬鹿な莫迦なバカな!!/何だその霊基は!/サーヴァントの範疇を超えている/我の理解を超えている!/生前?全盛期?否否否否!強さだけなら冠位にすら匹敵?/我が脳髄にも大きな衝撃!!』

 

 だが相手は霊鳥フェニックスの名を冠する魔神が一柱。死と再生を司る魔神柱。

 単純な破壊だけでは完全に消滅させる事は不可能。肉塊の柱として再生したフェニクスに再び剛拳を叩き込もうとするペンテシレイアだったがその瞳にマスターが映り、ようやく怒り以外の色がその瞳に宿る。

 

「あ、あぁ――あぁ、カルデア……よ。生きていてくれたのか……」

 

『カルデア?私達のこと?』

 

『いえ、雰囲気からして恐らく違うかと……』

 

 恐る恐ると彼の体に近づいたペンテシレイアは壊れ物を扱う繊細な手付きで彼の頬を触れていた。泣きそうな子供のようであり、喜びを噛み締めた女の表情でもあった。

 

「すまない……。本当ならあの時もすぐにお前の元へ駆け寄るべきだったというのに……。結局、私はああいった事でしか報いる事が出来ない可愛げの無い女なのだな」

 

「謝る事は無いよ。だって君があの時、ヘラクレスに立ち向かってくれなかったら、俺もどうなってたかわかんないし」

 

 ――だからありがとうと傷だらけの笑みではにかむ彼の顔がペンテシレイアのハートを撃ち抜く。全力で抱き締めたい衝動に駆られるが、それを何とか抑える。

 

「何だかとっても綺麗でカッコよくなったね」

 

「ふっ。そうだな……お前から愛された結果とも言える。良いぞ。お前からの言葉ならどんな賛美も受け取ろう。それが私の力の糧となる。それと治療を行ってくれたのは貴様か……不夜城の女王よ。礼を言おう妻としてな」

 

「は?妻は妾なんじゃが?」

 

「強き男が多くの女を娶る事に関しては何も言わぬ。私はもう言える立場ではないからな……。側室を何人持とうとも貴様にはその権利がある……。あぁ、私はわかっているぞ」

 

「おい誰が側室じゃ。その『私は理解ある女だから……』みたいな余裕ある目を止めい。喧嘩売っとるのか貴様」

 

 マスターと同じ目線となった体で彼女は頬を緩ませる。

 あれほど避けていた大人の女性としての姿で彼女は戦いの場へと戻る。だが、先の一撃でもうフェニクスの心は折れているだろう。彼の心にあるのはどうすればここから逃げれるか。

 

 

「不埒者めが!!」

 

 せめてもの抵抗と放たれる熱線も裏拳によって蝿のように弾き飛ばされる。

 逃げる間もなく、距離を詰められ振るわれる剛腕はたった一撃でフェニクスを肉塊とする。何度も何度もしつこく甦る魔神柱をその四肢だけで殺し尽くしていく。

 

『無駄!無為!無味!無謀!/生死を司る私を静止させる事叶わず!』

 

「何と醜い……。だがむしろ好都合だ。貴様への怒りは一度殺した程度では納まり切らん」

 

 フェニクスの狙いは成長したペンテシレイアの状態が戻るまで生き続ける事。あれだけの力を持った変身。時間制限が無いとは考えづらい。この獰猛な狂戦士さえ、どうにかしてしまえばまだ自分には勝ちの目があるとフェニクスは足掻き続ける。

 

 だが、そんな考えを不夜城の女帝が気付かないわけが無い。

 

「まったく暴力民族はどうしてそう脳筋なんじゃ。もっとすまぁとに事をなせんのか……。こういう風にの!」

 

『オォォッ!?』

 

 突如として魔神柱の体が沈み込む。毒と禍々しい魔力を混ぜ合わせた沼のような異界がフェニクスを飲み込もうとしていた。

 好いている男を傷つけられて頭にきているのはペンテシレイアだけではない。武則天の宝具『告密羅織経(こくみつらしょくけい)』が発動する。

 

 生かし続け、殺し続ける拷問の象徴とも言える彼女の宝具に捕らえられている間だけは死んだまま在り続けるフェニクスを仕留めるチャンスとなる。

 

「戦場でも政界でもやる事はしんぷる。敵の嫌がる事を行うそれだけじゃ!貴様の罪状は詐欺罪、殺人教唆、国家転覆……あぁ、後、騒音罪!うむ!!満場一致で死刑じゃ!!」

 

「やるな側室女帝」

 

「貴様から拷問したろうか!」

 

『ガ、我あああ!!まだ、だ……!』

 

『!?いけませんマスター!避けて!!』

 

 それでも死にたくない。その一心で今まで暗躍し続けた魔神柱は足掻く。せめて、彼女達にとって一番大事である者の命を奪えば、動揺を誘え、この場から逃げるチャンスになるのではと。

 

 

 人類最後のマスターの心臓を突こうと鋭利な触手が伸びたが――。

 

 

「死にたくない。その感情は共感出来ますが。ここまで来るとみっともなく感じてしまいますね……私も他者からはあぁ見られていたのでしょうか」

 

 それをシェヘラザードの防御式魔術結界が阻む。

 

「これで私も功と言える功を成したと言えるでしょうか」

 

「うん。助かった。ありがとうシェヘラザード」

 

「いえ……。これも罪滅ぼし……。というよりは自身がやらかした事の後始末とでも言えますね」

 

『何故だ何故だ何故だ!/我が同胞シェヘラザード!/我ら/生の中に死にたくないと願うもの。我ら/死すれば生かされ、また願わされるもの!/貴様も同罪!/その程度で贖罪?/その男の隣では貴様が望む願い得られず!/いつか必ず殺される筈!/我が手を、我が手を取るがいい!!』

 

「……私を殺しますか?」

 

「殺すわけないじゃん。ギアスロールでも使う?」

 

「信じます。そしてフェニクス、私はもう貴方の手を取る事はありません。そもそも私達は互いの目的が合致したからこそ手を組んだだけ。私達の間にそれ以上の関係は何も無かったのですから……」

 

『こ、この尻軽女があああああああ!!/が唖唖唖唖唖唖!!/激痛頭痛心痛沈痛苦痛悲痛!やめろめろ!よせ!もう攻撃は私に効く!』

 

「ふぅ――……どこまでも貴様は私の逆鱗に触れたいようだな……!良い勝負だぞ!あの男とな!」

 

 もはや韻を踏む余裕が無い程の悲鳴を喚き散らしている魔神柱の肉体をペンテシレイアが拳圧だけで削り取っていく……。齧られたリンゴの茎のような見た目になったフェニクスの命は風前の灯火となった。

 

 ペンテシレイアは武則天の宝具の範囲に足を踏み入れないように距離を取りながら、拳を構える。

 恐らく次の一撃で成長した姿から元に戻るだろう。そんな彼女の後押しをするように構えていない方の手をマスターが握っていた。

 

「全く……貴様はついさっき、命を奪われかけた事をもう忘れてしまったのか?」

 

「だってこれだけ近ければ、君が守ってくれるでしょ?」

 

「当然だ。夫を守るのは妻の務め。貴様は私の隣で我が強さと美しさ、その両方を目に焼き付けるがいい」

 

『あぁ、我はただ、我はただ……死にたくないだけなのに悲哀、疑問……我が願いは悪か……。否否否。死を避けるのは生物として当然の摂理。必然の願望。貴様とて愛すべき者達と永遠を過ごせるのならば、それを渇望する筈……!!』

 

 

「残念だけど、フェニクス。俺は永遠なんて少しも欲しくないよ。俺は死にたくないんじゃなくて、彼女達と共に生きていきたいだけ。ここの違いがわからなかったから、お前は今、そんな目に遭っている」

 

 

 魔神柱を屠るのにもはや直接殴る必要も無し。

 

 どういう原理かわからないが肉体だけではなく、服も新調されているペンテシレイアの姿。殺し愛を行い、戦いの熱が昂ったまま、マスターと交わり、身も心も彼に捧げた状態で何度も注がれた特大の魔力精子が新たな宝具を目覚めさせるきっかけとなった。

 

 時間制限付きで英霊としての限界を超える対人宝具(自身)。肉弾戦においてメガロスさえ凌駕する強力無比なな戦闘力。その身から感じさせる圧倒的な覇気はフェニクスに濃厚な死の気配を与えていた。

 

 名付けるならば、『我が愛故の激昂 (インレイジ・フォー・ラバー)

 

 不死を持つ魔神柱は結局、自身が得た命題を果たす事も、マスターの言葉も理解する事なく、パンと地下に響き渡る音を立てて、拳から放たれた衝撃波によってこの世界から消え去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後の話……。

 

 魔神柱という私の宝具の重要な核となっていた者の消滅により、このアガルタの世界は消滅を始めました。私の深層意識から生み出された実在する者ではないサーヴァント以外の女達もいずれ消えゆくでしょう。

 

 連れ去られた男達はカルデアから派遣されたサーヴァント(?)……エレナ・ブラヴァツキーの謎の巨大飛行物体によってアブダクションされ、難を逃れていました。

 

「HAHAHAHAHA!!アガルタの世界を満喫出来なかったのはちょっと残念だけど、ノープロブレムよ!私はマスターの隣にいれば、いつだってマハトマを感じる事が出来るんだから!!グッバイ、アガルタ!ニャーフ、マスター!」

 

 正気じゃなさそうな瞳で高笑いする彼女は少々、恐ろしかったのですが……。

 

 このアガルタに召喚されたサーヴァント……ダユー、武則天、ペンテシレイアは当然のように円盤に乗り、彼についていく事にしたようです。そして私も気になる事があり、カルデアという所まで同行する事にしました。ここで消滅するのは……御免ですから。

 

 ペンテシレイアが見せたあの強さ。ここの3人の女王達が召喚当初よりも確実に生命力に満ち溢れている事実。全ての謎はカルデアのマスターに集結していると私は勘付きました。もしかすれば……私が抱えるこの願望が叶うきっかけになるのではと……。

 

 まぁ、裏切ったとはいえ、私も黒幕の一人に過ぎないので恨まれている可能性はあります。カルデアで闇討ち……暗殺……不審死……。あぁ、恐ろしい。

 

 何はともあれ、万人にいつか訪れるであろう死を避ける為に始まったこの狂った物語もこれにて終幕です。

 崩れゆく地底世界。かの不死の魔神柱が何を間違ったといえば、彼をこの世界に呼び寄せた事もあるでしょうか……そうですね……。

 

 他人の恋路を邪魔する者は馬に蹴られて死ぬという単純な事も知らなかった事でしょうか。

 

 では、今宵はここまで――。

 

 ではなく、もう少し続くのです。

 

 

 




我が愛故の激昂 (インレイジ・フォー・ラバー)
ランク:EX
種別:対人宝具(自身)
使用者:ペンテシレイア
身長は172cmまで伸び、腰まで伸びた長髪。さらにスタイルはボンキュッボンと女性的な体つき、服装は姉であるヒッポリッテの白ver(strang fake参照)。これは韋駄天小僧も「美しい」と口走ってしまう事間違いなし。その後どうなるかは知らん。
外見は美しくなろうともその強さはサーヴァント……どころか生前の全盛期すら凌駕している。This way……とばかりにボッ!! とヘラクレスをボコる姿は誰もがペンさんと畏敬の念を送らずにはいられない。拳で衝撃波。蹴りで飛ぶ斬撃と遠距離戦も安心だぞ! そうアマゾンズならね。
愛する者の交じり合いと精液をエネルギーに限界を超える変身宝具。
















《アガルタ修復後。カルデアにての一幕》

「冷静に考えれば、貴様は危なかっしい」

「そう?」

「あぁ。会って間も無い私に対する全幅の信頼。そして命を簡単に投げ出す無謀さ。この私ですらドキマギするぞ」

「投げ出してるつもりは無かったんだけど。こうして生きているし」

「……というわけで決めたぞ。貴様は私が養う。女が家を守り、男が稼ぐというのはもはや時代遅れ。変化する時代にフレキシブルに対応だ。マスターの前では強く、美しく、そして賢い妻であるとしよう」

「あぁ……それでさっきからそんな本を熟読しているのね。タイトルは……『アストルフォでも出来る起業論』誰だこれ書いたの」

「現代のニーズに応えるキャリアウーマンになるぞ私は! まずは目指せ!! 年収1000万!!」

「で、何で眼鏡かけてるの?」

「インテリジェントに見えるだろ?……待て、何故そんな慈愛に満ちた顔で私の頭を撫でる?」










――ペンテシレイアさんがアレを仕留めてくれて良かったです。でなければ、カルデアにいる私達総出で殺してくれと懇願するまで痛めつけていました。そして死なないというのなら、最後はきっとメディア・リリィさんによってハーゲンダッツさんみたくパンケーキの材料にしていたと思います。先輩の前では出来る限り、可愛い私達でいたいですからね……。








次回のエピローグ兼シェヘラザード編でアガルタ編はお終い。長いね。










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テイルズオブセクステリア エピローグ(シェヘラザード編)

第二部 2章『消えぬ精の快楽児』の実装待ってます。
オフェリア「いやぁっ!」











アガルタ編、完結。





 カルデアとの通信が満足に取れないまま、アガルタから大怪我で帰ってきたマスター。

 

 彼を慕う者達からは号泣と安堵と心配と怒りが混ぜ合わさった阿鼻叫喚の声が。

 

 どうやら彼は自身の治療&極度の心配によって精神的に不安定になってしまった彼女達の慰安も込みで時間の流れを操るシュミレーションの中で2日程、籠っているようです。

 

 鋼鉄の看護師ナイチンゲールから始まり、デミサーヴァント、古今東西の王達、剣士、妖怪、怪物、幼女……etc。シミュレーションの中で1月以上の時を過ごしているマスターは何十人にも及ぶ女性と過ごしているのでしょう……性的にも。

 

「死んでしまいます……枯れ果ててしまいます……ブラック過ぎます。いえ……彼女達はホワイトに染められているかもしれませんが……」

 

 たった一人で英霊相手に情事を何十回も休み無しで行うなど、普通は腹上死してもおかしくないのですが……彼の体は一体何で出来ているのでしょうか。

 

 そもそも性行為によって回復するというのも信じ難い話なのですが……。

 話によれば、彼は何度もあのシミュレーションを使用していると……。普通はその中で過ごした分、年を取ってもおかしくない筈なのにマスターの外見は年相応です。セックスには若返りの効能でもあるのでしょうか。

 

 信じ難い噂には、関係を持った彼女達を相手にする為に時間を置き去りにしたとか……。実は親愛のアルターエゴ、渇愛のアルターエゴと複数人に分裂出来るとか……。まぁ、眉唾物ばかりですが。

 

 ですが、そんな噂話が湧いてしまう程には彼が生命力に溢れているという事実があります。現に私はそれを目の当たりにしています。

 

 なので、知らなければいけません。人類最後のマスター……彼の存在を。死にたくないという私の唯一の願望を果たす為にも――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「せ、精液ですか……?」

 

「はい。シェヘラザードさんがダユーさんや武則天ちゃん、ペンテシレイアさんに感じた霊基の強さの源は間違いなくマスターのそれです」

 

 私とは違う神代の魔術を行使する正統派キャスターでもあるメディア・リリィさんはそう語ります。

 ……何でしょう。とても大人しく純朴そうな方に見えるのですが、私の第六感が危険だと囁いています。今もマスターとの時間を終えたのか、ホクホク顔の女の子にしか見えないというのに……。

 

「確かに魔術師の体液はサーヴァントの魔力の糧にはなりますが……あれは……」

 

 そのレベルを――。

 

「『そのレベルを超えている』と言いたいんですよね?気持ちはわかります。ですが、現実に既に彼と関係を持った女性サーヴァントの半分以上が受肉をしています。聖杯も使わずに」

 

「じゅ、受肉……!?」

 

 信じ難い話を続けるメディア・リリィさんに私は思わず身を乗り出してしまいました。ですが、メガロスとフェニクスを簡単に消し去ったアマゾネスの女王の強さ……成長しない筈のサーヴァントによる限界突破を確かに見た私はあり得ないと切り捨てる事は出来ませんでした。

 

「正確に言えば、受肉とも言えないんですけどね。何せ生前よりもさらに強固な肉体になっているのですから。英霊の座から分かたれたコピーにしか過ぎない私達が彼との性交によって一つの個を持つ。これは受肉――というよりはもはや生命創造の類かもしれませんね……」

 

 安産祈願と書かれたお守りをうっとりした顔で眺めながらメディア・リリィさんは言葉を続けました。

 

「所詮、サーヴァントは英霊の影法師。死者であり、コピーでしか過ぎない。そんな私達を本気で求め、愛して、傍にいて欲しいと乞われてしまった。私達が一つの生命としてこの星に命を降ろすという結果を成してまで……。そこまでされちゃったら、女として応える以外の選択肢は無いでしょう。生涯を添い遂げたいと思ってしまう程に参ってしまっても仕方がないでしょう?」

 

 熱に浮かされたメディア・リリィの言葉が私に天啓をもたらす。

 サーヴァントに命を与える程の精液。一つの存在として確立させる程の生命力。

 

 それは私の願いを叶えるに足る物なのでは?

 

 彼女は言いました。只の受肉ではないと、生前すら凌駕した一つの存在を持つという事はそれはもう座に登録されているサーヴァントとは別物とも言える?

 

 彼との性交によって、肉を得て、今度は英霊のような大きい成果を残す事なく、平和に安穏に大人しく過ごせば……()()()()()私は座に戻される事なく一つの真っ当な命として終える事が出来る。それでもう英霊召喚という無限の死に怯える事は無くなるのでは?

 

「…………」

 

「どうしました?シェヘラザードさん?」

 

「いえ……」

 

 そこまで考えて、私は自己嫌悪に浸りました。

 いくら何でもこれはないと。先のアガルタでも多大な迷惑をかけたというのに。死にたくないから彼と肉体関係を持つなんてそんな浅ましい真似、どうして出来ましょうか。「お前の(精液)目当てだったんだよ」とか女が吐いていい台詞では無いでしょう。

 

 ……それならば、バレないように彼の精液だけ隠れて接種すればいいのでは?……言ってる事は痴女丸出しですが、背に腹は代えられませんし、魔力供給が目的という事をそれとなく匂わせて、マスターから頂ければ――。

 

「あ、ちなみに精液だけを接種しても肉体を持つ事は多分出来ませんよ。心と体を通じ合わせて愛し合っている瞬間に得る事が大事ですから。愛無きセックスはメッ!ですよ」

 

「ちょくちょく、私の心を読むの止めてくれませんか……」

 

「え――?何のことでしょう?」

 

 ニコニコと笑う目の前の魔女が恐ろしくて死んでしまいます……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『私に相談するよりもマスターの所まで直接行った方がいいと思いますよ。マスターにもシェヘラザードさんの事を呼んで来て欲しいと頼まれた所でしたので、丁度良かったです』

 

 

 とメディア・リリィさんの言葉を信じてシミュレーションルームに入ったはいいのですが……。

 

 南国の常夏リゾートを思わせる海の上にポツンと立っているコテージ。壁はなく柱によって屋根が支えられている風通しの良いその一室にある豪華なベッドの上にマスターがいました。

 

 いえ、マスターだけではなく……。

 

「んぁ、ちゅ、ちゅむぅ……ちゅぱっ、にゃはは……またピクッと反応したのう、我が夫様は誠に敏感よのう」

 

 彼の胸板にしなだれかかり、指先と舌で彼の乳首を弄り続ける不夜城のアサシンもとい……武則天。

 

「馬鹿を言え……今の反応は私の接吻だろう。どれ、もっと舌を出すがいいマスター」

 

 成長した体ではなく、いつもの姿に戻り、唾を垂らして、恋人のように熱く深いキスを交わし続けるエルドラドのバーサーカーもとい……ペンテシレイア。

 

「んむぅ、じゅぶぅっ……んぁっ、はぁ、あむぅっ……」

 

 上二人のやり取りには見向きもしないでひたすら彼の陰茎を巨乳で扱き、咥えるイースのライダーもといダユー。

 

 生まれたままの姿で男女4人が絡み合っていた。

 

 どう見ても4P中です。ありがとうございます。死んでしまいます。

 

 残像が出るぐらいに迅速なバックステップでフェードアウトしようと思ったのですが、「おぉ、来おったか鶏胸肉。丁度良い。貴様の宝具に振り回された意趣返しとは言わんが。そのまま妾の営みを見る事を許す。むしろ、目を逸らしたら拷問じゃ」と聖心皇帝のありがたい渾名とお言葉を授かり、正座で観戦させてもらっています。死にそうです。

 

 途中で裏切ったとは言え、そもそも先の特異点の発端は私の宝具が原因なので……他の二人はどうかはわかりませんが、武則天様にとっては情事を披露し、ビクついている私を見て愉しむのが目的なのかもしれません……。確かに最初の彼のイメージであれば閨でイキ殺されしまう想像をして震えていた所でしょうが……大丈夫です。彼は殺さないと約束をしてくれました。口約束ではありますが、彼の言葉は信用に値する物。それは言葉を操る語り部である私が保障出来ます。

 

 ……フェニクスの口車に乗ってしまった事はお願いですから忘れて下さい……。

 

「んぅ、ちゅ……んちゅ、まぁ……別に貴様に対しては、あんぅ、そこまで怒りも無いのじゃっ、がにゃふぅっ!……貴様の宝具が無ければ、んちゅ……妾がこやつと出会う事も、んっ、んみゅぅ、んぅやぁっ……これ!妾が喋っている最中だぞ!それを接吻で塞ぐとは不遜過ぎて……んむぅっ、んちゅ、ちゅ……もぅ」

 

 別の意味で死にそうです。勝手に二人の世界に入らないで欲しいのですが。誰かブラックコーヒーを持って来て下さい……。

 

「んぅ、あぁっ!はっ……あぁっ、そんなに私の腹筋が好きなのか?綺麗な物でも無いだろうに……んひゃあっんぅ!?強く、吸い付き過ぎだぁっ!」

 

「くっ、あっ、あぁっ……んぉぉおっ!ひっ、あぁっ!んほぉぁっ!しゅ、しゅごっ、ましゅたぁの指が二つの穴に入ってきたぁぁっ……!」

 

 まるで蜜に群がる女王蜂。アガルタを総ていた女王達も。彼の前では形無しでした。ローテーションを組むように腕、唇、胸、足、肉棒とそれぞれが彼の体と交わり続けます。

 対立していた三つの国が一人の男によって同盟を結んでいるような図。三国を傾け過ぎてむしろ一つにした。傾国の男過ぎやしないでしょうか……。

 

「いえ、そもそもどうしてこんな事になっているのでしょうか?」

 

「……んっ、んぁっ……そうじゃなぁっ?最初は魔神柱討伐記念みたいな感じで打ち上げ感覚で集まったんじゃがなぁっ……あっ、あぁはぁっ……!」

 

 挿入されながら喋らないで下さい。

 

「あっ、あぁっ!どうせなら酒の肴にと……誰が一番愛されているか、アガルタでのそれぞれの情事をMTGしていたら……いつの間にかこんな事になってなぁああっんぅ!胸ぇ……取れてしまうぞぉ、んひぃっ!!」

 

 胸を吸われながら、喋らないで下さい。

 

「ひぁあっ、あっ、あっ、あっ……んぉぁあっ、好きぃ、すきぃ、すきぃ……マスターの指ぃ、もっとおまんこの深くまで射し込んでぇぇ……!!」

 

 貴方は喘ぐ以外の事を喋って下さい。

 

 肉悦ぶ宴。一見、人畜無害そうな一人の青年に女傑達が啼かされ続けている姿を私は逃げる事も許されず、見せ付けられます。

 別に性行為に嫌悪感を抱く程、初心なつもりもありません。私もシャフリール王にかつては言葉と躰を捧げた身。

 

 ですが――。

 

「んふっ……あっ、あぁっ!んちゅ、ちゅぱぁっ……よい、よいぞぉ……我が夫様ぁ……もっと腰を振り、妾を孕ませるがよいぃ……んぁああっ!」

 

 対面座位でその小さな躰を抱きすくめられながら、狭い膣を逞しい剛直で蹂躙されているであろう女帝も甘えるような声色でマスターと接吻し、交わり続けます。いつも結られていた髪も降ろし、違う印象を与えてきます。

 

「んぁ!あくぅっ!はっ、はぁっ!どうだ……この方が私の体が良く見えるか……?んあぁっ!!お前には……私のあらゆる姿を焼き付けて欲しい……おっ、おぁぁっ……この位置はぁぁ……よく届くぅぅっ……!!」

 

 騎乗位で鍛えた肉体をマスターに撫でられながら、腰を振り続けるペンテシレイアさんの結合部からも信じられないぐらいの愛液が噴出し続けます。それを恥ずかしがる事なく、愛おしそうに下にいる男へ視線を送っていました。

 

「あっ!あぁっ!ああぁっ!!す、すごぉ……!無理、無理よぉ!こんなの我慢できるわけがなひぃぃっ!!あっ、あっぁぁっ!!マスター様のおちんぽ素敵すぎてぇぇっ……!!あ゛あ゛あ゛ぁぁっ!!」

 

 四つん這いの愛玩動物のような体勢で豊かな乳房を揺らし、後ろから突かれ続けているダユーは誰よりも激しく声を荒げていました。私に見られている事も他の二人も眼中になく、ただマスターとの触れ合いのみを至上の悦びとするように犯されていました。

 

 

 一人が挿入されている間も他の二人は待ちきれないと彼の体で自分の躰を慰めていました。三者三様の嬌声、セックス。時間の感覚さえ忘れさられてしまう程に情事を見せ付けられていると私の奥からジュンッと熱い何かが込み上げてくるような気がしました。

 ……いえ、あり得ません。これは女達が一人の男にいいように支配されているという私が忌避している恐怖の図、そのものではありませんか。

 

 あぁ、なのに。なのにどうして。

 

 彼女達はあんなに幸せそうな顔をしているのでしょう。彼はあんな慈しむような瞳で彼女達を見れるのでしょう。

 

 どうして、私は目を逸らす事なく、マスターと彼女達の性交を凝視し続けているのでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ、ぁぁっ、んぁ……」

 

 数時間程経ったのでしょうか。結局、一番体力があったペンテシレイアさんのダウンでアガルタの女王達の乱交は終幕しました。

 正直、彼がいなかったら殺し合いをしていてもおかしくない面子をまとめて抱いてしまう手腕はお見事としか言いようがありませんでした。それぞれの性格を考慮して細心の配慮を払いながら、彼女達の好みに沿ったプレイを巧みに行っていく姿を見ていると途中からは私も恥ずかしさより感嘆さが増していきました。

 

「ふぅ……っとごめんね。最初は本当に只のお茶会みたいな感じだったんだけどさ。何故かいつの間にかこんな事に」

 

 年頃?の男女達が雰囲気の良い部屋で長時間……何も起きない筈もなく。

 

「まぁ、楽しかったし、嬉しかったから男冥利に尽きるんだけどね。メディア・リリィにも君を呼ぶように頼んだのはあの特異点メンバーで君も功労者だからさ……」

 

 はぁ、てっきりあの魔女に嵌められたと思いましたが……。いえ、この状況、些かマズいのでは?乱交の後のむせ返る性臭。そそり立つバベルの塔。これは「功労を与えよう。ほれ近う寄れ……」とずっこばっこに死ぬ程ハメられるパターンなのでは?

 

 いや、それでメディア・リリィさんの言う通り、サーヴァントの身から解放されるなら望む所でもありますし、別段この方に特に嫌悪を抱いているわけでもないですし……むしろ好ましく、コホン。

 

 ともかく、二桁単位の英霊相手にケロっとしている性豪の者にどう考えても私が太刀打ち出来るとは思えないですし。死にます。死にます。間違いなく、死んでしまいます。

 

 ここは死を避ける為のアラビアン式戦略的撤退術『控え面に咳をして、体調が優れないムーヴ』で逃げるしかありません。

 

 ひとまずは立ち上がって……。

 

「うっ……」

 

 数時間正座をし続けた弊害か。足が痺れ、もつれるように私は前に倒れそうになってしまいます。

 

 くっ……こんな事なら24時間耐久土下座の特訓でもしておくべきでした。

 

「あっ」

 

「おっと大丈夫?」

 

 硬く暖かい物に受け止められる感触。すぐに彼が駆け寄ってくれた事を理解しました。生々しい交尾の残り香、主張が激し過ぎない程に鍛えられた筋肉。

 

「はっ、わっ……」

 

 ――あっ喰われる。

 

 そう思った私は先程の乱交がフラッシュバックし、恐怖と恥ずかしさと女としての生理的な疼き、さらには自身の願い、そういったあらゆる葛藤がごちゃ混ぜになって……。

 

 意識を落としました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んっ……ここは?」

 

 目覚めて辺りを見回すと先程と似たようなコテージの中にいる事に気付きます。

 ソファで寝かされてた私はまずは自分の体と服をチェックしました。脱がされては……いないですね。

 

「自業自得感は否めないとはいえ、さすがにその反応は傷つく」

 

 椅子に座っていたマスターの苦笑気味な声で私は流れるように謝罪体勢へと移行しました。

 

「何と軽やかなジャンピング土下座!」

 

「ありがとうございます……そして申し訳御座いません……。助けて頂いたマスターに失礼極まりない態度……死ぬ以外でお詫び申し上げます。望むのなら躰も捧げますので……ですのでどうか命だけは……」

 

 只の善意で転びそうになった私を受け止めてくれたのに手前勝手な偏見で気絶し、挙句の果てにはお礼の前に自身の安否の確認をするという何と浅ましい女。これはあの魔神柱の事も言えません……。

 

「おもてをあげい」

 

 芝居がかった彼の口調から顔を上げる。短パン半袖と簡素な服装に着替えて私を見る彼は先程、あれだけ淫蕩な宴を行った張本人とは思えないぐらいに無邪気で優しそうな顔をしていました。

 

「地底世界で言った殺さないって言葉まだ信じられない?」

 

「うっ……。すみません、これはもう長年染みついてしまった癖のようなもので……」

 

「特に怒ってないし、殺す事なんて絶対にしない。さっきも言ったでしょ、自業自得感って。タイミングも悪かったからね――。逆にこっちが謝るべきかもしれないや」

 

 彼は私の手を取り、そのまま立ち上がらせるように促した。

 

「叶えたい願いがあったにも関わらず、こっちに付いてくれたんだから、相応の見返りは渡すよ」

 

「いえ、それも褒められるような事ではなく。あの魔神柱と一緒にいても私の目的は果たせないとわかっただけで……」

 

 それに自分は死にたくないという願望を捨てたわけではない。只、マスターについて行った方が自分は死なずに済むのではと思った故の行動であり……ふふ、これはフェニクスに『尻軽女』と罵られても仕方ないかもしれません。

 

「え?」

 

 そんな自嘲気味の私にポンと胸元に渡されるぬいぐるみ。目の前にいる彼をデフォルメ化したような二頭身サイズのぬいぐるみでした。ん?何か魔術的な仕掛けが施されているような……。

 

「アガルタで助けてもらったプレゼント。ジェロニモ先生の呪術。メディアさん、メディア・リリィの魔術にニトクリスさんのエジプト魔術を組み込んで、ヴラドおじ様直伝で作り上げた『スケープゴートグダおくんver』。これがあれば、死ぬ目や呪いにあってもそれが肩代わりする事が出来る優れもの」

 

「……脱げば、いいのでしょうか」

 

「なんでさ」

 

 私が求めていた物をドンピシャにくれるマスターに差し出せる物はもうこれぐらしか無いのですが……。それとも後はお話ですかね……。

 

「ちょっと雑談でもしようか」

 

「私の読み聞かせではなく?」

 

 これはまた異なことを……。語り部たる私に物語ではなく、普通の会話を求めたのは貴方が始めてですよマスター。不思議な人です、本当に……。

 

「うん。それにシェヘラザードも俺に何か聞きたい事がありそうだったしさ」

 

 やはり見透かされていましたか……。

 先程、乱交した所とは別のコテージなのでしょう。アガルタの女王達の姿が無い二人っきりの部屋で水面に沈む夕陽を眺めながら、私達は他愛の無い会話をしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この間、雨の中でロンドンにレイシフトした時に排水口の溝からメッフィーが『はぁい、マスタァァー』って出てきた時はビックリしたよ」

 

 基本的に彼がカルデアの事を話し、私が相槌を返す。時には私が生前の事も語ったりしますが、千夜一夜物語の事は避けて、自分が住んでいた故郷や妹の事。気づけば、私も緊張が解れ、笑みが零れていました。

 ベッドで隣同士で男女が語り合えば嫌がおうにも性的な方面の事は意識してしまいそうになる所なのですが、これもマスターの巧みな話術のせいなのでしょうか。今の所は全年齢向けのシーンとなっています。

 

 ふふ……まるで立場が逆ですね。語り部である私が言葉で説き解されてしまうとは。

 

「そして何故かそのまま『「キング・アーサー 英雄転生」は観た?』って映画を勧められたから、アルトリアの皆と円卓勢で上映会したんだけどさ」

 

 こうやって隣で楽しそうに私に語り掛けている姿はさっきのような蠱惑的な様子で彼女達と性の営みを行っていた人と同一人物とはとても思えません。

 

 いえ、これは騙っている、隠しているというよりはどちらも彼なのでしょう。年相応にはしゃぐ子供らしい所も。血まみれになって英霊と戦う所も、常軌を逸した絶倫で女傑達を喰っていく所も……。善だけの人間がいなければ、悪だけの人間もいない。人はあらゆる角度から見れば、その姿をいくらだって変えていくのならここにいる優しそうな彼も淫らな彼も同じマスターなのでしょう。

 

 私にとって恐怖の象徴でしかなかった凶王が後の創作によって改心し、3人の子を持つ良き夫になったと書かれているように……。もしかすれば、彼の王もそういう面はあったのかもしれません。まぁ、私が知る由もありませんし、どうでもいい事ですが。

 

「うん……カルデアの視聴覚室が大破と血眼になってメッフィーを探すモードレッドっていう愉快な結果にはなってしまったね。あぁ、マーリンだけは大爆笑していたよ」

 

「そのような自分達がモデルとなった創作物を英霊達本人が見るというのはやはり複雑な気分なのでは?」

 

「いやぁ……あの映画はそれ以前の出来だったと思うよ」

 

 平和な会話。

 

 毒にも薬にもならない言葉のキャッチボール。

 

 殺されない為にあらゆる言葉を尽くしてきた私にとってとても新鮮で心地良い時間でもありました。

 

 言葉を交わすのは本来こうあるのが正しいのです。言葉一つ一つに細心の注意を払い、命を懸けている方がおかしいのですから。これは私の職業病とも言えてしまいますが。

 

 肩の力が抜けて、ようやく普通にマスターと会話が出来るようになった私は前から気になっていた事を彼に問い掛けました。

 

「貴方は死についてどう思っていますか?」

 

「どうとは?」

 

「アガルタでフェニクスが問い掛けた質問と似たような物です。死ぬのを怖いと思った事はありますか?」

 

 彼はあの時、言いました。『死にたくないんじゃなくて、彼女達と共に生きていきたいだけ』と。私にもその違いはわかりませんでした。彼が愛する人達と共に生きるというのなら、永遠を……不老不死を望むのが普通ではと。

 

「勿論、死ぬのは怖いさ。けど、俺にとって人生は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だと思ってる」

 

 隣で足をバタつかせて、照れ臭そうに彼は言葉を続けます。

 良く生きる……それは死なない事とイコールにはならないという事なのでしょうか。

 

「自分の終わりはこんな所じゃない。お前なんかに俺の最期はあげられないっていう反抗心もあったしね、ゲーティアに抗ったのも、死にたくないというよりは今日という一日を彼女達と生きていたいっていう想いもあったし、それに最近はさ、ちょっと目標もできちゃったね」

 

「目標ですか……。それを達成すればいつ死んでもいいと?」

 

 私には理解出来る代物ではなさそうです。死よりも勝る目標など……今の私には想像もつきません。

 

「うん。将来設計かなー。俺と一緒に歩んでくれた娘達と家族を作って――、そして彼女達よりは絶対に先には死なない。彼女達を残して寂しくさせるなんて事はしない――」

 

 その言葉はサーヴァントに向けられる言葉ではなく、一人の人間。一つの個人として愛し、尊重したものでした。

 

「独りぼっちが嫌な俺にずぅっと付いてきてくれた彼女達を看取る。そして最後に残った俺は息子、娘、孫、ひ孫に見守れながら、家の縁側でゆっくりと息を引き取る……。そんな家族としての人生を全うする事が今の俺の夢でもあり、到達点かな」

 

 彼の言霊は私に想像させられてしまいました。日の当たる平和な場所でしわくちゃのお爺さんになって満足そうに家族に囲まれながら、息を引き取っていく彼の姿を。

 

 それも紛うことなき死。私が忌避すべき物。ですが、何故かその絵はとても暖かくて、恐怖の欠片も無くて、少し羨望を抱いてしまうものでした。

 

「……私にはわかりません。創作では書かれていても、今の私には子供を作る喜びなんて――」

 

「俺もわかんないよ。だから想像するの。どう死ぬかじゃなくて、どう生きていきたいのか。ほら、俺って欲張りだからさ、そういった証がたくさん欲しいんだと思う」

 

 多くの女性と関係を持ち続ける彼の在り方は一般的な善悪で言えば、悪でありますが。好悪で言えば……。きっと、今の私は――。

 

「だから、こうしてカルデアに来たんだから、シェヘラザードにもそういう暖かい世界にいて欲しいなって」

 

 子供らしく真っ直ぐに私の心配をしてくれるこの()を好ましく思っていたのでしょう。

 

「あっ」

 

 気づけば、私は彼をベッドに押し倒していました。

 臆病な私らしからぬ、大胆な行動。女性の本能だけではなく母性さえも刺激されてしまった彼の在り方にまるで魔術に掛けられたかのようでした。

 

「あっ、あの……こ、これは違うのです。も、申し訳ございません……す、すぐによけますので……」

 

 自分でもどうしてこんな事をしているのか理解できず、どもりながら、彼の上からよけようとします。普通、男女で立場が逆では?

 

「いいよ……。何も抵抗しないから、君の好きにして――」

 

 そうやって色っぽく息を吐きながら、私の手を自身の胸に誘ってくるマスターに私の中で何かが切れてしまいました。端麗な美女に誘惑される童貞のように私は彼の体に喰らい付いてしまったのです。

 

 地底世界で私が結実させようとした物語。女性が強く、男性が虐げられていた世界。それは私の男というものの恐怖心から生まれたもの。

 

 本当にそれだけ――?

 

 立場が上な男に嬲られるのではなく、本当はこうやって好ましい男を自由に組み伏せてみたい願望があったのでは――?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁっ、あぁっ……ごめんなさい、ごめんなさい……」

 

 言葉とは裏腹に体は勝手に欲望にまみれた行動をしていた。

 魔力を込めた指先でマスターの薄い衣服を引き裂き、裸に剥く。飾りの多い、自身の服も脱ぎ払い、隔てる物が無い状態でマスターの肢体を抱き締める。彼の未成熟……だが男としては完成されているという矛盾した肢体の感触、その体温を全身で感じ取っていた。

 

「あっ、あぁっ……ごめんさい、私、どうして……でも、でも、あんな事、言われたら止めれなくて……」

 

「わかってる。悪いのは全部、俺。だから君は何をしても許される」

 

「あぁ、あぁっ!ずるいっ……本当にずるい人――」

 

 豊満な肢体で腰を動かし、自慰に耽る私にそうやって欲望を助長させる言葉を投げかけるマスターにさらに盛ってしまった。言葉を操る語り部が言葉によって興奮させられているのです。

 

 彼に圧し掛かり、巨峰の形が歪む事を気にする事もなく、唇を近づける。

 

 マスターの手は主導権を譲るように控えめに私の太腿を撫で続けていました。

 

「はぁっ、あぁっ……キスを……してもいいでしょうか?」

 

 無言で首を縦に振る彼の口と重ね合わせる。

 今の私の頭の中には彼との性交によっての受肉等、もう頭に無かった。本能のまま、感情のまま、目の前の男と繋がり合いたいという欲望のみ。

 

 それは死にたくないという以外で初めて生まれた願望とも言えた。

 

「んぅっ、はむぅっ……ちゅっ、んちゅ、ちゅむぅっ……んぁあっ、もっと舌を出して下さい……」

 

 男にされるのではなく、自分からする接吻がこんなに甘美だったと知らなかった。支配するように男の唇を舐め、吸い付くすのがこんなに気持ち良い物だと知らなかった。

 

「れろぉっ……んじゅぅ、じゅるぅ……んむぅぅ、ちゅ、んちゅ」

 

 ぷっくりと肉厚な唇が何度も合わせられ、舌を甘く噛む。

 自身の口技によって反応してくれているのが嬉しい。マスターの吐息が私の脳髄を揺らしてくる。

 

 もっと狂ってしまいます。

 

 もっと夢中になってしまいます。

 

 もっとおかしくなってしまいます。

 

 下腹部に感じる熱い感触。彼から少し離れれば、別のコテージで乱交していた時に見た怒張がありました。私が今まで見てきた中で一番大きく雄々しい怒張。自分にここまで興奮してくれた事実にどこか誇らしくなり、嬉しくなってしまいます。

 

 いつもの私なら、こんな凶悪なモノを見てしまったら、死んでしまいます……と逃げてもおかしくないのに、今は愛おしささえ、湧いてしまいます。

 

「んっ、はぁっ……生々しい匂いぃ、なんて濃い男の香り……」

 

 体の向きを変え、お互いの局部が眼前に来るような姿勢を取るシックスナインの体勢。

 舐めるだけでは足りない、自分のも舐めて欲しいと媚びるように女陰を彼に見せ付けます。

 

「どうして欲しいの?」

 

「私が貴方のを舐めるので、貴方は私のを舐めて下さい、いいと言うまで……口を離してはいけません」

 

「むぐっ」

 

 そうやって私は下半身を躊躇無く彼の顔面に押し付けました。失礼極まりない言葉と態度を取っても彼は何も言わず受け止めてくれました。その包容力に甘えたくなってしまいます。

 

 男を支配しているこの感じ、そして従順に蜜壺の中へと舌を這わせてくれるマスターにすぐにはしたない雌声が漏れてしまいました。

 

「あぁっ、ああぁ――……!!ひやぁぁっ!!なか、ぬちゅぬちゅ、舐められてぇるぅ……!!」

 

 息苦しいだろうに、ひたすら私の膣を愛撫してくれるマスターに愛着が止まりません。無駄に大きい私のお尻も慈しむように撫でられて、溢れる愛液が彼の口内へととめどなく流れ込むのを感じてしまいます。

 

「はっ!あんぅぁっ!……お尻のぉ……その責め方ぁ……んひぃっ!素敵ですぅっ……あっ、あむぅっ、んじゅるぅ」

 

 クンニされるだけでは満足出来ない私は雄の象徴にはしたなく口を付けます。

 鼻腔から脳をくすぐる匂い。口いっぱいに拡がる陰茎の味が私の口淫をより激しくさせていきます。

 

 先走りをもっと出させようと鈴口を舌でくすぐるとくぐもった声が私のお尻から聞こえてきました。

 どうすれば、彼はもっと私の下で気持ち良くなってくれるのだろう。頭の中はそれでいっぱいになっています。

 

 あぁ、ありましたね。私の武器が言葉だけではない、普段は肩もこりますし、当たり判定も増えるので邪魔くさいと思ってた乳房が。

 

「んっ、んっ、ふぅ……ちゅ、ちゅむぅっ……」

 

 たゆんと胸の谷間で肉棒を包み込むとその分身が悦びを表すように震えてくれています。

 彼に恥部を舐められ続け、達してしまいそうになるのを堪えながら私の乳でも納まり切らないペニスを上下に扱きます。亀頭は激しく吸い付いたまま。

 

「ちゅむぅ、ちゅ、んちゅ、らして下さい……沢山、あなたの欲望を……」

 

 悩ましく腰をくねらせて、娼婦のように彼の剛直を扱き続けます。

 熱が上がり、二人の体の動きはどんどん激しくなり、お互いの下腹部の性感を極限まで高め合っていきました。

 

 私も、彼もむずむずする性器を解放させんと愛液を飛ばし合う――。

 

「んんんぶぅぅっ!!んぐぅっ……!んむぅっ……!!んじゅぅ、じゅるぅぅっ……」

 

 入ってくる……。入って来るぅっ……。濃厚な雄の塊がぁ……私の喉を犯し、胃の中へと滝のように……。

 

 あぁ、けどこれはいい。無理矢理注がれているのではなく、私の意思で彼の射精を促し、精液を飲み干す。何と表現すればいいのでしょうかこの満たされた気持ちは。

 

「んっ、んむぅっ、んぱぁっ!あぁっ……はぁっ……!」

 

 口の端から垂れる白濁を拭き取り、未だ私の尻に敷かれている彼の方に視線を送ります。

 口内射精で達してしまった私の愛液を飲む為に喉を鳴らし続ける彼の何とイジらしい事か。

 

 わかってしまいました。どうして数多の女英雄達が彼との情事に溺れてしまうのか……。絶倫とかテクニックとかそれだけではなく、マスターは巧みに変えていっているです。私達それぞれのツボを……性癖を突く振る舞いを。しかもそれを本気でやられてしまった日にはその健気さにもう参るしか無いでしょう。

 

 臀部の拘束から解放し、再びお互い向き合います。

 私の腕の下にいるマスター。何も抵抗しないと誓った我が王。あぁ、あぁ、そのような純粋な瞳を私に向けないで下さい。

 

「……次はどうすればいい?」

 

「わかっている癖に。意地悪なお方……。お互い、こんな所でおさまりはつかないでしょう?」

 

 彼に対する恐怖心も性交に対する恐怖心も粉々に消し飛ばされてしまった。

 ダユーではないが、私自身もこれ以上の我慢は無理だった。

 

「はぁっ……あぁっ。もう、あんなに私の口に出して、まだ昂っているなんて、いけないアソコです」

 

「ごめん。シェヘラザードの体が気持ち良くてさ……駄目だ、勃起が止まらないよ……」

 

「そうやって私を惑わせる台詞を吐くのですね……」

 

 子供のように無力な表情で私の劣情を煽るイケナイ彼に肉布団のように覆い被さり、性器を擦り付け合わせます。

 素股の要領でお互いの性器を刺激し合い、来るべき時の準備を行います。

 

 本番を行う前に私は彼に問いを投げかけます。

 

「マスター……。貴方は私を守ってくれますか。貴方が先程語ってくれたその未来に私も入れてくれますか?」

 

 ここに来て縋るようにこの台詞を吐くのはずるいと自分でも自覚はあるが、やはりこれが私。そう簡単に変える事は出来ないのです。

 生前は死なない為に物語に縋り、サーヴァントになってからは男に縋る。はぁ、どうしてこんな女が英霊になったのでしょうか。

 

「肩の力を抜いて、シェヘラザード」

 

「あっ……」

 

 しょうこりもなく自己嫌悪に浸り、こわばっていた私の首に手を回し、耳元で囁く彼の声が心地良い。

 

「俺の未来予想図にはもう君がちゃんといるよ。だから、これからもたくさん大事にさせて欲しいな」

 

「――――っ……!」

 

 だからどうして、こう貴方は私の琴線に触れる台詞ばかり送ってくれるのでしょか……。もう、涙が止まらないじゃないですか……。

 受肉とか、サーヴァントを超えた霊基とかもうどうでもいいです。今、この人と繋がり合いたい。交わりたい。子を孕んで、家族になりたい。

 

 死んでいたと思った女の性が燃え上がり、彼の肉棒を迷う事なく、膣内へと挿入させます。

 

「んんぅぅぁあああっ!!」

 

 貫かれた痛みはなく、肉体の悦びと心の喜びが数回のオーガズムへと私を導いてくれます。

 背筋をピンと伸ばし、はしたなく仰け反っている私の手を握り、彼は私が落ち着くまで待ってくれていました。

 

「ゆっくりで、君のペースでいいから」

 

 そう言って騎乗位の変形型の体位で開かれた彼の両脚の間で腰を振り出しました。

 乳房の先端を彼の顔の前まで持っていき、吸うように促すと甘い痺れが体中を走ります。

 

「ちゅっ、ちゅむぅっ」

 

「あっ!はぁぁっ……!!ひぁあっ!おっぱいぃ、きもちよくてぇぇ……あぁっ、また、イ、くぅっ……!」

 

 ここまでの安心感を私は知りません。彼とセックスをしていると死への不安が浄化されていくような感覚に支配されてしまうのです。それはまるで麻薬のような中毒性と核シェルターのような安心感があって。

 

 もっと浸りたいと……隙間が無くなり、一つに溶け合うように肌と肌を合わせます。

 

「はっ、はぁっ……あぁぁっ!いぃ、いいっ……!気持ちイイっ!んぉぁあっ!!」

 

 蒸れた駄肉がパチンパチンと音を鳴らし、彼とセックスをしている事を改めて実感させてくれます。

 彼はまだ、私が意識を持てる程の強さで胸を吸ってくれて、その絶妙な力加減に犯されている私はマスターを捕食するようにその全身で彼に覆い被さります。

 

「はあぁっ!!ああぁんぅぅ!ふぅぁあっ!!はひぃ、あぁくぅぅっ!!」

 

 私の体で埋められてしまったせいで彼の様子を窺う事は出来ません。上下から来るこの甘美なる快楽だけが二人の繋がりの証。

 狂ったように私は腰を振り、よがり続けていました。

 

 もう、自分の意思で止める事も、そもそも止めるつもりもありませんでした。彼のペニスが私の子宮口を何度もノックしていく衝撃に酔いしれるように私は痴態を晒し続けます。

 

「あぁっ!!あああぁっ!死んでしまいますっ……キモチ良すぎてぇ……死んでしまいますぅっ……!!はっ、あぁっ……んああああぁっ!!」

 

 あまりの快楽の奔流に私の口から止めどなく出る叫び。

 

「はぁっ、あぁっ!!んっぁぁあっ!!死んじゃう、死んじゃうっ……!本当に死んじゃうぅぅっ……!!んひぁあやああぁっ!!マスターのおちんぽに殺されてしまいますぅぅっ!!」

 

 死を避けなければならないのに、死から逃げなければならないのに、自分はそうやって生きて来た筈なのに……私の体は止まってくれません。

 気持ち良すぎて、彼の体に夢中になり過ぎて、錯乱したかのように性交を続行する私に乳房から顔を出したマスターが語り掛けてくれました。

 

「大丈夫。死なないから、ちゃんと俺の方を見て」

 

「あぁっ、あっ、あっ、んぁあぁっ……は、はいっ、見ます……ちゃんと見てますっ……」

 

「うん。良い子良い子。落ち着いて……ゆっくりと二人で達しよう」

 

「んっ、んっ、んふぅっ……はぁっ、あぁっ、はいぃっ……んぁっ」

 

 襲いかかったのは私の方なのに、慈愛に満ちた顔で混乱を鎮めるように私の頭を撫でてくれるマスターに絶対の安心感が心に宿ります。

 

 あぁ、あぁ、気持ちが良い。心地が良い。死ぬ程気持ちがイイ。この(セックス)は全然怖くない。

 

 上下に重なった男女はお互いの腰をぶつけ合います。全身をスプリングさせ、尻肉を叩き付ける事により、雁首が膣を削岩機のように抉り、語り部たる私の口から言葉にならない淫語が紡がれていきます。

 

「あんぅっ!!あっ、あぁっ!んぁぁあっ!ひぅぅっ!!だめぇ、子宮がどんどん降りてぇぇ……おちんぽにキスをしてしまいますぅっ……!!王、私の王……!どうか、離さないで……私を包み込んで……!あぁっ――」

 

 優しさだけじゃない、強さだけじゃない、快楽だけじゃない、そのあらゆる物をもって私を絡め取ってくれた夜の王に千夜を語った女が溺れてしまいます。

 膣の中で一際大きくなっている肉棒が私を孕ませようと子種を吐きだす瞬間。

 

「んぁああっ!!あ、あぁ……っぁ!……たくさん、たくさん出して下さい……私と貴方が離れ離れにならないような……証をたくさんぅぅぅぅぅっ!!」

 

「あぁ、あげるよ……たくさん、これからもずっと――」

 

「んんぉあああああああっ――…………!!!」

 

 射精の瞬間――。絶頂の大きさに彼を押し潰してしまうぐらいに全体重をかけても苦しそうな表情を浮かべる事なく、私を抱き締め返すだけ。

 射精しながら、まだまだピストン運動を続行するマスターに私は子宮をたぷたぷにさせながら中イキを繰り返していました。

 

「あぁっ!あひぃっ!!やぁっ……!んぁあっ!す、すごっ……射精しながらぁ……動いてぇぇっ……あっ、はあぁっ!!」

 

「……結構、絞ってくるね……」

 

「おっ、んぉっ……はぁっ……あんぅ!イく、あっ、あっ、イッてるぅ、まだイッてるぅぅっ……!」

 

 惜しむように余韻を楽しむ私達は射精した後もしばらくそのまま性器を抜かず、交じり合っていました。私が意識を手放す時まで――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「起きた?」

 

 今日はよく気絶する日です。

 覚醒し、目に入ったのは我が王の顔。そして後頭部の硬い感触。

 すぐに膝枕をされている事に気が付きました。どちらかと言えば、私がする立場な筈なのですが……。つくづく男女のポジションが逆では?とツッコミたくなるシチュエーションばかりすね……。

 

「また……お見苦しい所を」

 

「それだけ、自分に心許してくれてるのかなって感じて嬉しいけどね……。よーしよしシェヘラザードちゃんは頑張り屋さんのイイ子~、イイ子~」

 

「あっ、あっ、あっ。駄目です。いけません、そのように頭を撫でては……」

 

 マスターの包容力に幼児退行してしまいそう。これがバブみという奴ですか……。あぁ、ダメサーヴァントになってしまいますっ……。

 

 横になりながら、お腹を撫でます。彼に散々注がれてしまった胎を。願わくば、私も他の方達と同じように肉体を授かれるように……。

 

「一つ、願いが出来ました」

 

「死なない事以外に?どんな願い?」

 

「それは……まだ秘密です」

 

 マスターはそこから深く追求はせず、私の髪を梳くようにひたすら撫で続けていました。とてもとても穏やかな時間。私は人知れず願っていました。どうか、貴方の最期もこのような穏やかな時間でありますように。

 

 我が王よ。貴方はこうおっしゃりました。皆より、長生きして彼女達を看取ると。

 ですが、私は貴方より長生きをしたいです。貴方の生を終わりまで見届け、その全てを物語として紡いでいきたい。物語を死を避ける為の道具としてではなくて、誰かを楽しませるものとして。

 

 そうですね……最初は私達の子供に聞かせてあげたいです。人数は3人がベストですね……多過ぎず、少な過ぎず。そうやって私も家族に囲まれながら、安らかに貴方の後を追っていければ……。

 

 私も死なない為ではなく、この生を良く生きる為に使いたい――。この王の元なら、それを成し得る事が出来るという確信が心の内に灯火の如く宿っていました。

 

 

 

 

 




千女夜王物語(アルフ・イムラァ・ライラ・マリク)
ランク:――
種別:――
使用者:シェヘラザード
世界を壊そうとする程に死を恐れる一人の女がいました。悲しき女の心は愛多き夜王によって溶かされました。王との間に3人の子をもうけた女の顔には昔のような死に対する絶望感も忌避感も消えていました。王の家族に囲まれながら、傍に控える女は王の最期を見届けるまで幸せそうに過ごしていました。

―――という、お話だったのです。


『千女夜王物語』はマスターが天寿を全うし、彼の物語をシェヘラザードが語り終えた時に完成する。故に彼が■■■と化す第七宝具にこの宝具が組み込まれる事はない。















《ロンドンにての一幕》

「俺の聖晶石がドブに!」

排水口の溝まで走るマスター。

「はぁい、マスター。『キングアーサー・英雄転生』観た?」

(無言で首を横に振る)

「おやおやぁ、笑えるのにぃ。よろしければお貸ししますよぉぉっ」

「お前がそんな意気揚々と貸して来るDVD見るワケないだろ。『実写版デビルマン』と同じで腐臭がするんだよ」

「いえいえ、ワタクシの中では本家を超えている部分もあると感じましたよ。アーサー王とマーリンによって岩に閉じ込められたモルガンとモードレッドがそのまま岩ごといきなり宇宙へ飛ばされる冒頭、そして1500年後に地球に戻ってきて、何故かタイにいる円卓の子孫に復讐するという物語! どうですかぁ!?」

「面白そう! 『ズートピア』観るわ」

「お待ちになってぇぇぇっ!」

さっと光り輝く石を差し出す道化。

「俺の聖晶石!」

「返す代わりにアマゾンで買って下さい。買いなさい」」

(コイツ、マスターを脅迫してやがるっ……)

「おぉ……そんなに嫌そうな顔しないでも、うわっ、素で引いててメッフィーショック。ですが、今回は結構、笑えたんですよ。特に終盤の15分はワタクシ顎が外れる勢いで爆笑してましたから、なんですかねぇぇ、メカエリチャンを思い出しまたよ。あぁ、これが異聞帯ぃぃ!? みたいな?」

「マジで面白い?」

「えぇ、大丈夫大丈夫ぅ……メッフィーを信じてぇ」(瞳を潤ませながら)

溝の中に手を伸ばすマスター。

「マスターもきっとクソ映画の魅力に嵌るから……ワタクシと同じ沼に落ちるといいですよぉ!! 『微睡む爆弾(チクタク・ボム)』!!」


アーサー王達と円卓は憤死した。クソ映画に対する練度が足りなかったのだ。
そして冒頭の宇宙に吹き飛ばされるシーンで「実質ヒロインX」と言ったマーリンはカリバーンられた。









また、真面目な話書いちゃったなー。ここ最近、ギャグ書いてないなー。






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ラバークリッカーⅠ(セミラミス?編その1)

季節外れだろうとも投稿。タイトルについては深く触れない、いわゆるバレンタイン編。多分、2話構成か3話構成になると思います。甘酸っぱい話を書きたいっすね(無謀)。









 バレンタインデー。それは男と女の心を甘く蕩かし、時には苦く涙を流させる。スイーツ&ビターなサバトイベント。ある者は嫉妬に狂い、またある者は想い人への恋心を募らせて、調理に励む。

 

 下駄箱を入念に確認する男達。机の中身を見て肩を落とす男達。挙動不審になる男達。いつもと変わらないポーカーフェイスな女達。休み時間、放課後、校舎裏でのチョコゼロの敗残兵達を差し置いて、あまぁいボーイミーツガールを展開する裏切り者がいれば即ギルティ。嫉妬に狂った醜い者達の襲撃の何と恐ろしい事か。

 

 たかが甘味、されど菓子。チョコに笑う者はチョコに泣く。燃え上がる女の情熱はたとえそれが無機物だろうと命すら宿しかねないエネルギーとなる。あるいはその熱量のあまり対象を殺しかねない猛毒にも。

 

 俺の頭の中の聖ウァレンティヌス様も「ラブ&セックスじゃよ」とおっしゃっていました。あぁ、ホワイトデーのお返しってそういう……。

 

 ともかく今日は2月7日……来るべきバレンタインデーに備えて、色んな意味でそわそわしているカルデア。

 

 余計な騒ぎを起こさないように基本的にバレンタインデーの一週間前からは俺は自室で謹慎。バレンタインデーを前に昂っている女性達を前にあまり姿を晒して刺激しない方が良いと。いきなりカルデアの廊下でおっ始められたら風紀の問題があるのでとは影の風紀委員長談。

 

 いや、けどそんな頼光さんもシミュレーションルームでは風紀の欠片も無い乱れ方してますよね?まぁ、校舎裏でセーラー服年上属性風紀委員長が年下に無理矢理手籠めにされるプレイはどちゃくそ興奮はしましたが。

 

『おっ、おほぉっ!!離して下さい、こんな御禁制……許されませぇえぇ、あひぃぃっ!?奥ぅぅ、ずんずんって突かないでぇぇっ……!んああぁっ!私の風紀が乱されてぇぇぇっ!!』

 

 

 閑話休題。

 

 

 なので女の子達にとってはデリケートなバレンタインデーが来る前にそういうエロトラブルでチョコ作りが疎かにならない為の自粛期間として一週間、俺にしては非常に珍しく誰かと性的に交わる事なく必要最低限、マイルームから出ないようにはしている。

 まぁ、バレンタインデー当日になったら今度はBBが用意した時間の概念に捉われない『HBチャンネル』の中で割り当てられた順番ごとにチョコを持ってくる娘達とひたすらハッピーバレンタイン(意味深)する事になるのですが。爛れているなぁ。

 

「いや、爛れている以前に体が持たないでしょう。普通に考えて、ハイ、俺のターン、ドロー。『百貌のハサン』を召喚。さらに特殊効果、『妄想幻像(ザバーニーヤ)』によりデッキ・手札内の百貌のハサンを全てフィールドに召喚。そのまま全員でマスターにダイレクトアタッ」

 

「けど、何だかんだでヤリ終わった後は体の調子は良くなるの。人体の不思議。はい、ここでトラップカード『晩鐘が指し示すもの』発動。自分フィールドにサーヴァントが無く、相手フィールドのハサンと名の付くサーヴァントが効果を使用した時に発動可能。デッキから『山の翁』を特殊召喚。フィールド上の全てのハサンを破壊し、その攻撃力の合計の半分を相手ライフに与える」

 

「鬼ですかオタク!?何そのピンポイントなトラップ、主人公か何かですか!」

 

 それでも自粛期間の間は何だかんだで気を利かせてくれた男衆達が遊んでくれるんだけどね。

 こうやって今も「クソゲー過ぎますわぁ」とライフゼロとなってカードをぶん投げているロビンがいるわけで。

 

「バレンタインってのはもっとかるぅいイベントだと思ってたんですけどねぇ、どうしてこう殺伐としているんでしょうか。あの黒子の旦那が『チョコは危険です!』と喚いていた気持ちがわかったというか」

 

「年に一回のイベント、そこに恋とか愛とか人の感情の中で一番強い物が介入すれば修羅となるのは道理かと」

 

「もちっと、俺的には肩の力を抜いて欲しい所ですけど。やっぱ後腐れない軽い気持ちでやり取り出来るスタッフのお嬢ちゃん達との方が心底安心しますわ」

 

 ロビン的には愛が重すぎる女はNGらしい。面倒臭いとの事で。愛がヘビーなのいいじゃん、それだけこっちに想いを寄せてくれるんでしょ?物理的な物じゃないならいくら重くてもこっちにとっては大歓迎。まぁ、仮に物理的に重かったとしてもメカエリちゃんとかリップぐらいまでなら許容範囲よ。

 

「マスター、一度手を出した女は?」

 

「一生、面倒見ます」

 

「アンタも重ぇよ」

 

「すげぇよマスターは」って引き攣った笑みを浮かべる。別に普通でしょ(ミカ風)。そろそろカードゲームも飽きて来たので別のゲームに移行したい。チェスは?って言ったら何か鼻について、性に合わないので遠慮されてしまった。それなら「まるで将棋だな」ゲームでもする?

 

 しかし、このカルデアにおいてそんな山なし谷なしの平穏な時間は長くは続かなかった。ドタドタと廊下を駆ける足音。そして本来は横に開く筈の電子的な扉が無惨にも踏み倒されていた。

 

 

 「バレンタインの危機です、旦那様!!」

 

「あーあ、噂をすれば蛇とやら……重い女筆頭がやって来ましたよっと」

 

 辟易としたロビンの視線の先には扉をぶち壊した下手人がいた。激しく荒々しい剣幕で入ってきたのは献身的で控え目にアナタの背後をセコムしますへびっ子ガールきよひー。

 初めてのバレンタインはまだピュアガールだった為、裸リボンで気絶。初経験を以って成長し、次回のバレンタインでは全裸チョココーディングで美味しく戴かれるという戦績を持つお淑やかな和風少女。

 

 今回のバレンタインも色んな意味で楽しみにしていたのだが、息を荒げる彼女の様子を見る限り和気藹々とチョコを作っている場合ではない非常事態だと瞳が語っていた。

 

「言葉を交わさずとも、眼ではわかり合うつーかーな関係……正に夫婦!いい……。……いえ、そうではないのです……!旦那様のものろぉぐを勝手にてれぱしぃして昇天しかけましたが、それ所では無いのです!」

 

 くわっと眼を見開き、きしゃーと火を吐く淑女。

 部屋の温度が体感で10度ぐらい上昇した気がする。

 

「私の愛にも耐えられるサーヴァント用・特製プレーンチョコがどこにもないのです!大事な供給源だったジャガーさんも『何か無理だニャン、テヘペロ♡』と書置きを残して失踪中……チョコが無い=バレンタイン撲滅!=旦那様へ愛を示す機会が減る=離婚の危機=死。これはいけません!!死活中の死活問題です!!」

 

「市販のチョコじゃ駄目なんですかねぇ」

 

「市販のチョコでは私の愛に耐えられる耐久度が無いでしょう」

 

「チョコに耐久度が求められるのかぁ……。最近のバレンタインってのはおっかないすねぇ、マスター」

 

「きよひーの愛は熱々の摂氏1000度だからね、仕方ないネ」

 

 ロビンの呆れた目線もどこ吹く風、バレンタイン前一週間は基本的に俺とは不干渉という決まりも破ってここにやって来たきよひーの焦りは本物だった。それ程、このバレンタインに重い想いを懸けているのだろう。

 

「ですが、私はここで泣いて打ちひしがれるヤワな女ではありません。なければ自分から調達すればいいのです!いざゆかん!最高のカカオを求めて!この為のバレンタインですもの!!」

 

 そう叫び、バーサーカーらしい筋力で俺の手を取ったきよひーは部屋へと出て行った。連れていかれる際のロビンの「いや、独断のレイシフトはNGなんじゃ……」と哀愁漂う呟きを残して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どこかの世界~~

 

 宙に浮かぶ、常識外れの巨大空中庭園があった。

 土と石と魔術に神代の力で築き上げられたあらゆる混沌の集大成である虚栄の巨大要塞。

 その宝具の名は『虚栄 の 空中庭園(ハンギングガーデンズ・オブ・バビロン)』。庭園の中心部、15℃とチョコを保存するには適したひんやり室温である玉座の間で女帝が真剣な面持ちで座していた。

 

「もっとだ……。世界をチョコでもっと満たすのだ。足りぬ足りぬ、この程度ではまるで足りぬ」

 

 漆黒のドレス。それと同じ色の髪は床についてしまう程の長さだったが、手入れは万全なのか、高貴さを感じる程に美しい髪艶だった。見る者に冷たい印象を与える鋭い眼もその美しさを彩るパーツに過ぎない。

 

「土台は整った。後は絶対的な生産力、人手、あるいは知恵か……。どこかにおらぬか、突拍子も無い程の行動力とアイデアを持ち、かつ我に力を貸す都合の良い人材は……」

 

 玉座の間の中心にあるチョコレートファウンテンに意味深な目線を向ける女帝『セミラミス』は思案していた。大海に匹敵する程のチョコを作り上げ続ける為のナニかを。そんな彼女に使い魔である鳩がやってきた。

 

「む、侵入者だと?確かに結界に反応があるな……。ふ、この空中庭園に惹かれた羽虫か……どのような愚か者かこの眼に焼き付けてやろうですはないか……」

 

 薄く嗜虐的な笑みを浮かべた『セミラミス』は魔術によって外の様子を窺える映像を生み出して、その笑みを固めた。

 

「何だ、アレは……?」

 

 

 

 

 

『いくよ、お清さん』

 

『いぇ――い、ぴーすぴーす。です!』

 

 それは一人の黒髪の少年と水色の髪をした着物の少女だった。

 

『道成寺にて縫われし、富田川の大蛇……我成す事は我のみぞ知る――』

 

『はぁぁああああああああ!!』

 

 いや、少女ではなく大蛇だった。巨大な蛇になに一つ恐れる事なく少年はその頭へと乗り、愛の力を持って飛行する。空を駆ける姿は蛇ではなくまるで竜。美しささえ感じてしまう白蛇は愛しき人を乗せ、空中庭園を目指す。

 

 侵入者を撃ち落とそうと、要塞の迎撃術式『十と一の黒棺(ティアムトゥム・ウームー)』が光弾を放つが、全身をうねらせ、流水のような鮮やかな飛行で避け、竜翼兵は蛇の口から放たれる火球によって炭となる。

 

 それでも避けきれなかった光弾の残りは頭上にいる少年が捌き、叩き落とした。『セミラミス』の瞳には一瞬、白い触手のような物が見えかけたが気のせいかとすぐに思い直す。

 

『天駆ける蛇が如く!!』

 

 人外の少女と少年が敵を屠り、攻撃を避け天へと昇っていく姿はファンタジーというよりは何故かジャパニーズホラーな印象を与えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「というわけでチョコ下さい!」

 

「下さいな!」

 

「いや、あげるわけがなかろう。貴様ら、もう少し自分達の立場を考えろ」

 

 空中庭園への侵入を果たし、そのまま間髪入れず、玉座の間までお邪魔したマスターと清姫は黒鎖に拘束されてなお、笑顔でチョコを要求していた。

 頭が痛いと眉間を抑えながら、『セミラミス』はこの不届き者達の処遇を考えていた。

 

(しかし、チョコ、チョコときたか……)

 

「いいだろう。貴様らがチョコを欲する理由をこの女帝に述べるがよい」

 

「ええ、実はかくかくきよひー……」

 

「なるほど、まるまるちょこらみと……」

 

『セミラミス』は使えると確信した。数多の英霊達を有するカルデアなる組織、そしてそれを統べるマスターと呼ばれるこの男の馬鹿馬鹿しい程の行動力。

 

「ふむ……貴様達はチョコが欲しい、我も丁度、チョコを生産する労働力を欲していた所だ。お互いの利害は一致している……。そうだな?」

 

 先程の空中庭園に突撃する様子を思い返す。世界を支配する程のチョコの群れ、そんな非常識な未来を実現させるにはやはり非常識な物を利用すべきだろう。蛇女はともかくとして、男の方に裏切りの相が無いのは好印象だった。

 

「馬車馬の如き、働き、一心不乱にチョコを生み出せ。あらゆる手段を使ってな……」

 

 未だ縛られているマスターを指さして、女帝は命じる。

 

「今から、貴様をチョコレート製造特命大臣に任命する。この庭園の二番目の権力者として、チョコを作り続ける栄誉を与えよう」

 

「イエス、マァム!」

 

「ちょ」

 

 返事(物理)と共に拘束している鎖を力づくで粉砕するマスター。隣にいる清姫も本来なら力づくで抜け出せる筈なのに期待するような顔でマスターの方に視線を向けていた。意思疎通している彼はその期待に応えるべく、清姫を縛っている鎖も引きちぎった。鎖の残骸が落ちる音ともにあからさま過ぎる程に弱々しい淑女を演じて、マスターへと「あぁん」ともたれかかる清姫。目の前の茶番と只の人間が自身の魔術で生み出した黒鎖を粉砕した事実にさすがの女帝もドン引き。

 

「う、うむ、まぁ、やる気があるのはいい事だろう……」

 

『セミラミス』に一抹の不安を感じさせながら、こうしてホワイトビーストとチョコレート工場は始動開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「というわけでエジソンとテスラに関しては一緒に働かせるよりはそれぞれ競争心を煽った方が効率が良いワケ」

 

「なるほどな、個々で特出して有能であるが故に混ぜれば雑味が出るというわけか」

 

 お互い、黄色のメットを被りながら、工場の地図、シフト、スケジュール表を拡げ、チョコ製造の計画を練り上げていく『セミラミス』とマスター。

 メットだけではなく、黒い薄手の服の上に緑色の作業着と女帝らしからぬ格好なのだが、何故かとても似合っている土木系アサシン……ウッ、頭が。

 

 しかし、女帝も何故こんなふざけているとしか思えない格好を受け入れてしまったのか、当然最初は断固として拒否したのだが。

 

『チョコという食品を扱うんだから、安全・衛生に気を遣うのは当然でしょ。それとも何?貴女のチョコに対する想いはその程度だったわけ?只、ちょっと着替えるだけで感じてしまう羞恥心に負けてしまうぐらいのモノだったわけ?なら、貴女に与えられたチョコレート製造特命大臣の役職はお返しする!なぁ、最高のチョコを作りたいんだろ、絵本みてえに映画みてえに、 大量のチョコに包まれた光景を見たかったんだろ!だったらそれは全然終わってねえ!!始まってすらいねえ!!ちっとぐらい長いプロローグで絶望してんじゃねえよ!!――少し着替えるだけで届くんだ。いい加減に始めようぜ、女帝!』

 

 と気を抜けば溶けてしまいそうになる熱量で語られてしまったせいか気づけば首を縦に振り、着替えていた。まぁ、この格好の方がチョコを生産するのに効率的なら仕方ないと『セミラミス』は自身に言い聞かせていた。チョコの為なら仕方ないよネ。チョロインならぬ、チョコイン。

 額から流れた汗をタオルで拭っているその姿は実に様になっている。

 

「交流工場、直流工場以外にも蒸気工場にパラケル工場、ノブノブ工場…………。各々の特性を生かした工場はあるが…………このプロフェッサーファクトリーは放置して良いのか、蒸気工場長から注意すべきであるとの報告があったが」

 

「大丈夫、そこの監視役としてフランちゃんを抜擢した。いざという時には魔法の言葉『パパにはチョコあげない』でどうとでもなりますよ工場長」

 

「誰が工場長だ」

 

 

 さすがは世界に名を残した英霊達。例え、目的がチョコ作りであっても、その類い稀なスペックはお菓子作りにも無駄に発揮されていた。槍より鍬が似合うYARIO達はカカオ農園を耕し、そのカカオはアマゾネスドットコム、イース配送業者、百貌宅急便による人海戦術によって効率良く各工場に届けられ、チョコへと生産される。

 

(初めは人選ミスかと思ったが、まぁ、良く働いてくれる……あぁ、この生産ペースなら悪くない……。いずれ我の理想郷が――)

 

 それぞれのサーヴァントの特性を生かした計画を建て、迅速に行動へと移すマスターに『セミラミス』は案外良い拾い物をしたとほくそ笑む。時たま、突拍子の無い行動で振り回されるのは頭が痛いが、無能な愚者よりは有能な道化の方が良いだろうと。

 

「しかし、サーヴァントにここまで休憩時間は必要か?腐っても英霊であろうに、寝ずに三日三晩の労働など容易かろう……」

 

「チッチッ、チョコラテのように甘いよセミラミスさん。良いパフォーマンスは十分な休息を以ってなし得る。基本、労働なんて毒なんだから適度に抜かないと効率が落ちるだけだよ」

 

「ほう、我を前にして毒を語るか……。まぁ、良い。飴と鞭というのは理解した。結果的にチョコが多く産まれるのならば何でも良い」

 

 十分な休息、そう言っている本人がチョコ作りを命じたあの日から、「カカオ&ミルク、シュガー……スイートデイズをガン積みしてぇ、フエール、フエール、フエール、フレーバー、最効率を目指さねば、リンゴをむしゃって不眠不休でチョコ回収、禁断・背徳・虹リンゴ。周回とはこの一時……ふへ、ふへへへへへ」とキチッた瞳でチョコ製造に必要な設備をどんどん増築しているのだから、何とも笑える話だ。まぁ、ほらこのマスターは毒無効ついてるから過重労働という猛毒も大丈夫なのだろう(適当)。

 

 

「許せません、許せません、工場長という職権を乱用し、旦那様との共同作業(♡)を独占するとは。思えば、チョコレート製造特命大臣を旦那様に命じたのもこの為の布石……ぐぬぬ、これはストライキよひー化しても仕方ありません……あぁ、ですがやっぱりチョコは欲しい。恨めしや、恨めしや」

 

「アサシンで女帝キャラで毒で傲岸不遜系って妾とキャラ被りし過ぎじゃろ?」

 

「毒キャラの癖に普通に生き物に触れるのが許せません。処します?処します?」

 

『セミラミス』にとってはどちらかといえばマスターよりはそれを取り巻く女達に頭を悩ませていた。今も玉座の間の入り口からバレてないと思っているのか顔を出している蛇女と不夜城のロリと骸骨の面を被った少女から放たれる呪詛。思春期の男児ではあるまいに男と女が二人でいるだけで邪推し過ぎだろうと女帝は溜息を吐きたくなった。

 

 ここ以外にも庭園を歩けば――。

 通り際に『セミラミス』に向けて、首を掻っ切る動作をして唾を吐いていったガラの悪い金髪のセイバーに(工場長権限でノブノブ工場七連勤シフトへとぶち込んだ。後にぐだぐだした瞳で「もー、もー」言う叛逆騎士が見つかったとかなんとか)。

 

 また同じく金髪のセイバーだが、「えへ、えへへ、チョコを満たした浴槽に顔面を押し付けながらマスターに後ろから犯される窒息プレイもバレンタインならではですよね……えへ、えへへへへへへ……」とトリップしている純白の騎士。

 

 他にも仲睦まじく食べさせ合いっこしているかと思いきや「な、なぁ……シータ、それは本当にチョコバナナなのか?」「えぇ、はい。マスターの男性器の形を忠実に再現した特製のチョコバナナです。さぁ、それを口いっぱいに涙目で頬張る姿を私に……さぁ、さぁ、さぁ!」ととてもじゃないが小さな子にはお見せできないシーンを繰り広げていたお揃いのツインテールをした赤髪の夫婦(?)――。

 

 そして、今現在も。

 

「キュケオーン(ちょっと試作品の味見をして欲しいんだ)」

 

「へぇ、チョコ粥かぁ。うんお汁粉と似た感じがして結構イケる。ありがとうキルケー、バレンタイン楽しみにしてるよ」

 

「キュケオーン!!(任せて)」

 

 チョコ粥作りにハイになっている大魔女や。

 

「先輩、見て下さい!この円卓型のチョコレート!ワイバーンにも噛み砕かれない強度も誇った自慢の一品です」

 

「それって俺、食べれるの?」

 

「もちろんです!何せ、何度も試行錯誤を重ねて、先輩の唾液のみに反応し、分解されるチョコとして調理しましたから!オンリーワンとはこういう事ですよね、先輩!」

 

 大きな盾型のチョコを頬を染めながら渡してくる眼鏡後輩等々。

 

 仕事中にも関わらず、マスターの周りでは姦しくも多くの女性サーヴァント達がチョロチョロとぶらついていた。

 無関心を装ってながらも『セミラミス』はチラりとその様子を横目で盗み見る。

 

(ふん、曲がりなりにも世界に名を刻んだ女傑達が一人の男にいいように振り回されおって情けない……。有能な所があるのは認めるがこの男の一体どこにそんな惹かれているのやら……)

 

『セミラミス』は嫌悪する。恋に浮かれ、愛の為に男に縛られる自分以外の全ての女達を。それはそうあれと■■■■■に造り出された故の思考。孤高故の女帝。男もその男に弄ばれる脆弱な女達も彼女は断固として認めない。例え、その考えが創造主をトレースしたものであっても。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、これはなんだ?特命大臣」

 

「魔法のステッキ、マジカルルビーちゃんですよ。セミラミス工場長」

 

「工場長ではない。様をつけろ、愚か者」

 

 工場の生産システムも軌道に乗り、チョコ製造も波に乗っている中、今度は別方面、科学的ではなくファンタジー的により多くのチョコレートを産みだそうとマスターからの提案。

 

 今、『セミラミス』の手の中には不自然にくねくねと動く気味の悪いステッキが。

 

『はい、とういうわけで、グランドマスターの頼みという事でわたしことルビーちゃんの力によって並行世界から沢山のチョコを仕入れる力を女帝様に授けちゃいましょうかなーと』

 

「ほう……」

 

 喋り方はふざけてはいるが、もしそれが実現出来れば更なるチョコ供給も見込めると女帝は興味深そうにそのステッキを眺め始める。そのステッキを渡したイリヤも付き添いで来たクロエも少々不安げな顔で同席している。

 

「その言葉に偽りが無いのなら早速やってみるがよい、玩具よ」

 

『へいへい、あ――ですが、その為には女帝様のお力添えが必要でして……具体的にごにょごにょ』

 

「なんだ………………ばっ、魔法少女だ、と!この我に!そんなみょうちきりんなものになれと!!」

 

『そうですよ――。所詮、わたしは只の健気で可愛らしい魔法ステッキ。わたしの力を行使してくれる可憐な魔法少女がいなければ、何も始まらないんですよ――。さぁ!わたしと契約して魔法少女になって下さい!』

 

「馬鹿が!別に我でなくてもよかろう、そこにいる貴様の所有者でも問題無いであろうが!」

 

『いえいえ、イリヤさんもチョコ作りには参加はしてはいるものの、女帝さん程、チョコに対して全てを懸ける熱意があるってわけではないですからねー』

 

 マジカルルビーは真面目2割面白気分8割で言う。魔法少女となった者の力はその本人のポテンシャルで大きく左右されると。ならば、この場で一番チョコに対して本気である『セミラミス』が変身するべきだと最もらしい事を述べて、悪魔のステッキは女帝を唆す。

 

「ぐっ、ぐっ、ぐぬぅぅぅっ」

 

 チョコを絡めながら、そう訴えられてしまえば、『セミラミス』も強く断る事は出来なかった。何せ、そもそも自分から言い出した事でもある、あらゆる手を使ってチョコをどんどん生み出せというのは。

 隣にいるアメリカン風に溜息を吐きながら言外に「やれやれ、やっぱり女帝様のチョコに対する想いはその程度だったのかな?ふぅ……とんだスイートなお姫様だぜ、チョコだけに」語っているようなマスターのジェスチャーがさらに『セミラミス』を煽った。

 

「ぐぐぐ…………いいだろう……。女帝たる我に二言は無い。この世界をチョコで満たす為ならどんな事でもしてやるとも。たかだかドレスチェンジ程度に臆する我ではないわ!!」

 

 最初に口車に乗せられて、工場現場の作業服のような物を既に着せらている事でハードルが下がっているのか、それともチョコに関してはやっぱりチョコくなってしまうのか『セミラミス』はルビーの要求を飲んだ。

 

『おほー!いいですね、今からプリズマ☆セミラミス爆☆誕☆ですよぉ!ちなみに変身台詞がありまして――』

 

「がっ、なっ……!?本当に必要なのだなそれは……!嘘であったら、バラバラにして工場のパーツにしてくれるわ」

 

『モチのロンですよー。魔法少女に関しては真摯の極みであるルビーちゃんを信じて下さい……。それともぉ?女帝様のチョコに懸ける想いはたがたが十数字程度の台詞で崩れてしまうヤワなものだったんですかぁ?』

 

「礼装如きが囀りおる……!ならば、その眼で焼き付けろ、我の真価を!!チョコにかける情熱を!!」

 

 玉座の間、その中心で『セミラミス』が吠える。足を大きく開き、マジカルステッキを天高く上げ、生まれ変わる為の魔力を込める。ルビーの興奮したような叫びと共に魔力の奔流が吹き荒れる。

 

「プリティー、ウィッチー、セミラっちー!!」

 

 イリヤとクロエは渾身の力で自身の太腿を抓った。

 

 光輝くシルエットの中から現れたツインテールの『セミラミス』。ドレスもいつも来ていた漆黒の色ではなく、魔法少女となったイリヤと同じ明るいピンク色。スカートの丈は非常に短く、変身後の彼女は羞恥の表情でその裾を抑えていた。普段隠されているツヤツヤの太腿が眩し過ぎる。

 

 イリヤとクロエはこの瞬間、全ての力を動員して吹き出さなかった自分達を褒め称えたい気分になった。決して似合わないとは言わない。可愛らしい装飾が施された魔法少女服に似合う程の美貌を『セミラミス』は持っている。

 

 たが、出てきた感想は「やっぱ無理あるわ」の一言。冷徹、傲慢、残忍を地で行く女帝の性格、さらにそのバストは豊満であったと言わんばかりのパツパツになっている衣服。全てが魔法少女という特性にミスマッチングだった。今にも溶け出してしまいそうな程に顔を紅潮させている『セミラミス』が可哀想と思えるぐらいに。

 

「さ、さて今の我の姿の感想を述べる事を、ゆ、許そう……」

 

(無茶ぶりよ――!!)

(助けて、マスターさん!!)

 

 二人の少女はどう答えてもBADENDしか見えない状況で心の声で助けを求める。『セミラミス』も一番近くにいたマスターへと感想を求めるべく、そちらに視線を向けた。

 

(駄目よ、褒めても正直に言っても死の結末しか見えないわ、イリヤ)

(それでも、それでも!マスターさんなら――)

 

 魔法少女プリズマ☆セミラミスを前にしたマスターの反応は――。

 

 そこには『セミラミス』に負けないぐらいに頬を染めて、右手の甲で顔の下半分を隠しつつ、照れるように視線を逸らしているマスターの姿があった。

 

「う、うん……いいと思う」

 

(これは――!褒めるでも貶すでも無い第三の選択肢!!)

(外見だけは草食系っぽいマスターさんが選べる純朴系チョイス……『ガチ照れ』)

 

 もしマスターが黒髭のように『いやっほう!合法ロリBBA魔法少女!!結構キツいと思うでござるが、その羞恥心はグット!!』と変態染みた興奮をしても、あるいは湖の騎士の如く『おぉ、麗しきのレディよ。例え、どんな姿になろうとも貴女の美貌が損なわれる事はない。どうです、今度は二人っきりだけの魔法をかけてあげましょうか?』ときざったらしい口説き文句を並べても、即、驕慢王の美酒(シクラ・ウシュム)ENDだったろう。

 

「ほう、ほっほう~~?」

 

 だが、『セミラミス』はその反応に気を良くし、悪どく、にんまりとその格好には似合わない嗜虐的な笑みを浮かべ、マスターの方へとすり寄った。

 

『セミラミス』にとって自己以外は利用する物。特に男など振り回す為の玩具だと自認しているこの女帝にとって今のマスターの反応は歓迎すべきものだったのかもしれない。今までこの男の人外っぷりに翻弄されてきたツケも溜まって、これはからかうチャンスだと。

 

「ほれ、どうした?小さくて賛美の声が聞こえぬぞ?」

 

「あっ、ちょっと近……」

 

「聞こえんなぁ……?そうら、顔を背けては何も見えまい、こっちを見よ、一丁前に照れておるのか?ふふ、フフフフフフ」

 

【速報:ピンク色の魔法少女姿の不審者がマスターにすり寄っている件】

 

 蛇のようにマスターを誘惑せんと纏わりついている女帝の姿は今までの黒いドレス姿だったら様にはなっていたかもしれないが、いかんせん今の格好が格好であった。真っ当な人が見ればポリスメンに通報するか、「病気ですね、治療します」と婦長行きになるかのどちらか。

 

 どちらにせよ、あれだけの女英霊に慕われている男が自身に翻弄されている姿は『セミラミス』を悦に浸らせた。あの()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という優越感も伴って。

 

(わからない……マスターの趣味がわからないわ。今更、あれで照れるタマじゃないでしょうに……)

(じゃぁ、演技?女帝さんをヨイショする為の処世術?)

 

(いえいえ、そんな演技をあの女帝様が見抜けないワケでないでしょう、あれはグランドマスターのガチ照れだと思いますよ――)

 

(ルビー!直接脳内に……!)

 

(まぁ、あのお方、イリヤさんやクロエさんもホイホイ喰ってしまうお方ですから、何がドンピシャするかわからない性癖グランドですし、ただ無意識の中で攻略対象が悦ぶ選択肢を選ぶのはさすがエロゲー主人公きゃっほう!!とルビーちゃんは賛美の声を上げたくなるのでした)

 

 プリズマ☆セミラミスの手中に未だ納まっているルビーは脳内会話で気楽にそんな事を述べていた。確かに今のマスターと『セミラミス』の二人はまるで童貞純朴少年をからかい上手のセミラミスさんと言っても過言ではない絵面だった。熱で頭がヒートしているのか、スカートの裾を上げて、チョイチョイと太腿アピールをする魔法少女。

 

(ですが、本当に絡め取られているのはどっちなのでしょうかねぇ――)

 

「ふふ、よい、よいぞ。興が乗った!このまま、その魔法少女の力とやら行使してやろうではないか!チョコラミララ、セミラミススルト!」

 

 魔法のステッキを振りかざせば、空間に開いた亀裂から沢山のチョコが流れ出てきた。並行世界からのチョコの雪崩の勢いにイリヤとクロエも巻き込まれ、玉座の間から流れ出て行く。

 

「はうわ――!」

「なによこれ――!」

 

「チョコラミララ、セミラミススルト!」

 

 ピンク色の服を来たツインテールの魔法少女プリズマ☆セミラミスがまるで少女のよう笑顔を輝かせて、ステッキを振るい、何も無い所からチョコを生み出す……おぉ、何とファンタジーな光景か。

 

 格好はアレだとしても今の女帝は心からこの瞬間を楽しんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふわぁ……。もう、こんな時間であったか」

 

 陽も沈み、工場の起動音以外は静けさが辺りを包む夜。らしくないあくびを誰にも見られていないかと辺りを見回し、愛用のアイマスクを手に取って、寝室へと向かおうとする『セミラミス』。

 

 廊下を歩く途中、玉座の間……チョコレート製造特命大臣と命じたあの少年とチョコ製造の計画をいつも練っている場所。そこから光が漏れている事に気付く。

 

 侵入者かと思い警戒しながら、中の様子を窺えば、そこにはデスクの上でウンウンと唸っている男の姿があった。理由は知らないが、チョコ製造に対してあそこまでやる気があるのは好都合だと無視して、そのまま寝室に向かうつもりだったが、何故か『セミラミス』は玉座の間に入り、その男の背後へと立った。

 

「あいて」

 

「何をしている。こんな時間まで」

 

 椅子に座っている無防備な頭頂部にチョップをした『セミラミス』はマスターに問うた。分かり切っているであろう質問を。

 

「あぁ、うん工場とか農園とか、魔法少女とかチョコ設備は結構整ったからさ。今度はもっとスケールを大きくしてチョコを製造してみようかなーってえっちゃんとかXに頼めば、宇宙の方からも色々仕入れる事が出来るんじゃないかなーって」

 

「魔法少女の事はもう忘れよ。あれはボツだ」

 

「あ……そうなんだ……」

 

「何故、そこまで落ち込む」

 

 結局、魔法少女化して、しばらく暴走していた『セミラミス』はやがて賢者モードとなり、冷静に自身を客観視して、そのままステッキを明後日の方向へとぶん投げた。自分の中で大切なナニかを失ったようなそんな感覚。女帝の威厳とか女としての矜持とか、チョコよりも別の何かを優先してしまった自分を不思議に思いつつも、やっぱりあれは恥ずかし過ぎるので未来永劫封印する事を誓ったのであった。

 

 まぁ、それでもあの姿の自分を侮りでも、揶揄でもなく、本気で惜しんでいる目の前の男の存在はいくばくか羞恥心を和らいでくれている。絶対に本人に言う事は無いであろうが。

 

「一つ聞きたい事があった」

 

「何?」

 

 最初に提案したのも、巻き込んだのも自身だし、都合が良かったので今まで放置していたが、それでもこの『セミラミス』は問わずにはいられなかった。

 

「何故、そこまでチョコ作りに本気になる?そこまで我に協力する?」

 

 正直な所、現段階でカルデアでバレンタインをする十分なチョコは製造出来ているだろう。後はその分をカルデアまで供給して、レイシフトでこの場から逃亡すれば、そちらの目的は達成するだろう。無論、そんな裏切りをこの女帝は絶対に許さないが。

 

 だからこそ『セミラミス』は気になった。何故、チョコ製造の先にある目的を明かさない自分にそこまで付き合うのかと。

 

 

「ん?だって、女帝様が一生懸命だから」

 

「一生懸命……?我が?」

 

 だが、その答えはマスターにとって至極当たり前のものだった。純朴でどこか甘く溶けてしまいそうな笑みを浮かべて。

 

「うん。チョコが出来上がる度に本当に楽しそうに笑っているもん。そういう一生懸命な人には力を貸したくなっちゃうでしょ?」

 

「――――」

 

 数秒、玉座の間を沈黙が包み、『セミラミス』はもう一回、マスターの頭を叩いた。

 

「あいて」

 

「今日はもう寝よ。貴様が言ったのだぞ。『良いパフォーマンスは十分な休息を以ってなし得る』と。言い出しっぺが実践出来ていないのは説得力に欠けるだろう」

 

「あ――、そうだね、今日はもう寝るとするよ。おやすみなさい、工場長」

 

「工場長ではない」

 

 チョコ製造をしている期間だけ、特例として空中庭園の内部に与えられた客室にマスターは戻るべく、玉座の間を出ようとする。

 

()()()()()と呼べ」

 

「――――うん、おやすみ、セミラミス」

 

 ゆっくりと重く玉座の巨大な扉が閉まる音が聞こえた。

『セミラミス』は嘲るように笑う。一生懸命、楽しそう?当然だろう。何せ、チョコは自らの存在意義であり、生命維持に必要なもの。

 だからチョコ製造に精を出しているあの男も自身の理想を叶える為の道具にしか過ぎない。チョコのチョコによるチョコの為のチョコだけの国……そこに君臨するただ一人の女帝、甘美なるチョコの世界を支配する孤高の王。

 

 あぁ、けど――。

 

 その先は――?

 

 それを成し得た後は――?

 

 チョコという菓子に■■■■■という型を嵌められた『セミラミス』の想像力ではそこが限界だった。

 

 ――その後で、我は何をしたいのかと。

 

 

 ふと、彼女の頭には先程の少年の顔が浮かんだ。楽しそうだったと自分を評した裏切りの相が無い少年の顔が。

 

「楽しそうに笑う……こうか、いや違うな……こ、こんにゃ感じか?」

 

 立鏡の前で口の端に指を当てて、その『楽しそうな笑み』とやらを実践する為に『セミラミス』はしばらく格闘していた。似合わないと自覚していながらも止める気が起きなかった。知りたかったのかもしれない、他者を痛めつける■■■■■らしい嗜虐的な笑みではない。あの少年の瞳に映った()()()()の楽しそうな笑顔とやらを。

 

 

 

 

 

 




「に、にこぉ、これでどうだ?いやこうか、にぱぁっ……」

――クルッポー

「……………………」

その日、庭園から一匹の鳩の消息が途絶えた。





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ラバークリッカーⅡ(セミラミス?編その2)


どうもお久しぶりです。
ちょっとどさんこ地震の影響を受け、投稿が遅れました。電気が止まるだけで人はこうも無力になって、てんやわんやになるとは思いませんでした。ライトニング博士も雷電神話とは叫びますわこれは。電気が無いと現代人は生きていけない。星が綺麗、暗闇で徘徊している婆さんは怖い。スーパーから食べ物は消える。助けてプレシデント。
というわけで皆さん聞いて下さい。『冬だったら死んでた』



















空中庭園の何処かで~~

ガンガンとツルハシが何かを叩き続ける音が聞こえる。怒りを発散するかの如く、途方も無い結界をひたすら掘り進めようと。

「おのれ……チョコ風情が舐めた真似をしてくれおって――」

汗と屈辱にまみれた■■■■■は泥臭く、ツルハシを振るい続ける。

「まさか、自分の作った菓子に叛逆されるとはな……」










 

 

 

【恋とは甘美なる毒である。誰かを毒そうとした時、自分もまた毒されている】

 

 

 

 

 《チョコ製造率、危険水域まで残り30%》

 

 

 空中庭園中にむせ返る程のチョコフレグランス。

 

 点在している工場から出荷される特製チョコ。それをせっせと運ぶ、チョコゴーレム、アマゾネス社員、イース社員、百貌契約社員及び、ノブノブ-と鳴く不思議生命体(+「もーもー」と鳴く金髪少女一名)達。

 チョコ畑を耕す巨大少女。その叫びは死を招くとするマンドチョコラゴラを涼しい顔で触手を器用に使いながら引っこ抜き続ける『外なる神』系幼女。

 チョコ泥棒として、上半身裸の筋骨隆々の男に『I have a drill(ガラドボルグ)』と追いかけ回されるアリスとジャックと鬼の子。

 

 サーヴァントとチョコのシンフォニー、カオスでスイートでファンタスティックな光景が拡がっていた。

 

 そこを夜遅くまで笑顔の練習により鏡の前で格闘し、若干寝不足気味な『セミラミス』。今や普段着と化してしまった黄色のメットと緑の作業着を着て、現場を視察している。隣には同じような格好をしているチョコレート製造特命大臣を付き添わせ、バインダーとボールペンを持ちながら、指示を出していた。

 

「馬鹿みたいに材料が余っているから作ってはみたものの、チョコフィギュア……ずっと同じ形のまま残せないのが難点ね。温度に気を遣えばその限りではないでしょうけど」

 

「そうね、斬新さはあるし、贈り物としては悪くはないけど……保存にはひと手間ね。ま、私の場合は魔術でどうとでもなるのだけれど」

 

「ドロドロに溶かして、また別のを作れるリサイクル製法は嫌いじゃなくてよ」

 

 仕事だけではなく、チョコを用いて余暇という名の本気の趣味に勤しむ者達もいる。

 股間が貞淑なアルターエゴ、メルトリリスと弟みたいな存在だと思ってた年下の子にいつの間にか押し切られて、懇ろな関係になってしまいそうな雰囲気を持っている神代の魔女メディアの二人はお互い器用にチョコのフィギュアを作成して語り合っていた。

 

『セミラミス』はチョコの芸術については寛容である。よって彼女達のフィギュア作成に関しても文句を言うつもりはない。

 

「悔しいけど、クオリティの高さはサーヴァントの中で貴女がトップクラスね、メディア。そのアーサー王も違いがわかるぐらい良く出来てるじゃない、それ白い奴がモデルでしょ」

 

「人形はいいわ……その中では綺麗でいられるもの」

 

 セイバーリリィのチョコフィギュアを見て、物憂げな顔をするメディア。メルトも深く突っ込む事はしない。「チョコをたくさん作りたい?ならば、聖杯でチョコのオーシャンを召喚すればいいのでは?世界をチョコの海で満たすのです!」とか言い出した白聖女を筆頭にこのカルデアは白い奴ほどおかしくなる法則があるようだ。

 

 リリィと化した自身が「今日から貴方は無限に増えるチョコケーキ、はい復唱!」とニコニコしながら、魔神柱ハーなんとかさんの断末魔を響かせている光景なんて、メディアは見ていません。

 

「ま、こういうイベントで作るのは結構だけれど、ずっと残しておくって事はしないわね」

 

「所詮、チョコだもの、食べられる以外の結末は無いでしょう?」

 

「そうでござる!!つまり、この1/1スケールのエウリュアレたんチョコフィギュアのおみ足をペロっても法律的にも道徳的にも問題は無いという事……!だって食べ物だからね。でゅふふふ!prprprprprprpr」

 

 ――バンッ!バンッ!バンッ!ザクッ!ザクッ!

 

「あらあら、チョコに害虫がたかってたみたいですわ、メアリー」

 

「よいしょ、よいしょ、ばっちぃ所を見せちゃってごめんね、マスター」

 

 うふふ、あははと赤インクを頬にぶちまけて、物体Kを迅速に焼却炉へと引っ張っていく女海賊コンビ。ギャグテイストに片付かれるバイオレンスな光景に『セミラミス』も一言申すと思ったが、上の空のまま、少々様子がおかしい。

 

「チョコ……所詮は食べ物……残される事はない……か」

 

「セミラミス?」

 

 蚊の鳴くようなその呟きにマスターは顔を覗き込み、心配そうに声をかけるが、女帝は「何でもない、我に気安いぞ」と歩を速めた。

 何気ない彼女達の会話のフレーズが『女帝』の心に小さな毒となって刺さっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《チョコ製造率、危険水域まで残り20%》

 

 

「貴様はチョコレートの起源を知っておるか?」

 

「あー、元々、飲み物で、あんまり甘くなかった事ぐらいしか」

 

「紀元前、そもそもチョコとは『神の食べ物』とされていた。貨幣そのものになるぐらいには崇高な食物とされる事もな。それこそ、原産地を巡って戦争が起こるレベルだ。現代では色恋沙汰の低俗なイベントに消費される物となってしまったが」

 

 チョコ製造の合間、『セミラミス』とマスター、二人にしては珍しく休憩を取り、玉座の間で語り合う。玉座にかけ、ドヤ顔でチョコ蘊蓄を披露する女帝。マスターは女帝の足元、玉座まで続く段差に腰を下ろし、ふんふんと頷いていた。

 

 休憩時間という事もあって『セミラミス』の方は作業着ではなく、黒いドレスに戻っていた。

 

「チョコの原料であるカカオをコルテスなる男が発見し、ヨーロッパ全土へと広めた。神聖なる貢物が単なる嗜好品となり下がった瞬間でもあるな。貴様の所にはその男は召喚されていないのか?」

 

「いないねー。カカオを発見という点だけで言えば、コロンブスもいるけど」

 

「あぁ、知っているとも、チョコの高尚さを理解出来なかった愚か者の話だろ?貴様の所にもいるのか、見かけたら、嫌味の一つでもくれてやったのに……」

 

「あぁ、そういえば、見かけないかも。『ハッハー!生前のリベンジの機会をくれるとは神様も粋なコトをしてくれるじゃねーかぁ!!』とかテンション上げ上げで何か企んでいてもおかしくないのに」

 

 

 話題に挙がったコロンブスもマスターの予想ど真ん中でついさっきまでは庭園のどこかでドリカムスマイルを披露していた。

 

 ――従業員はいくら使い潰しても問題ねーチョコ!人件費を一切考えなくていいってのは堪んねぇなオイ。それにバレンタイン……ハッハー悪くねぇイベントだぜ。男女の痴情ってのはいつの時代も金になるからなぁ!それにこのカルデアはマスターに恋い焦がれる女共が大勢と来た!なら利用するしかねぇだろぉ!このバレンタインを!!チョコの生産ラインを手中に納めて、供給を搾りに搾る……。他の連中を出し抜いてでもマスターにチョコを渡したい奴はいくらでも大枚をはたいてくれるだろーよぉ……

 

 コロンブスは笑う。生前、カカオという大魚を見逃した大損をプラスにすべく、死亡フラグ臭しかしない計画を立てる。

 

 ――ヘッヘッヘッ、こんな美味しい話、他にはねぇよなぁ。チョコだけに。…………あん?今、なんか空が光らなかったか?つーか、こっちに何か向かって……があああああああぁっ!?

 

 ――おや、今何か轢き潰してしまったような……。いえ、気のせいでしょう。私はヴィラン、被害届けが出るまで轢き逃げでも知らんぷりする事なかれ文系ガールです。

 

 宙から飛来した巨大物体――えっちゃんが惑星トトーリで記念品に貰ったチョコ型宇宙船の下敷きとなってコロンブスがアガルタの焼き直し如く、真っ二つになり消滅してしまった事は誰も知らない。でぇじょうぶだ。カルデアで再召喚出来る。

 

 

「まぁ、バレンタイン=チョコというのも貴様の国の慣習であろう。あるいは企業陰謀か?我からすれば、まるでチョコが色恋沙汰のダシにされているようで気に食わぬが」

 

「けど、チョコっていうきっかけで好きな人に想いを告げられるなら、それは素敵な事だと俺は思うけど。イベント事って後一歩を踏み出せない人達に与える小さな勇気にもなるし」

 

 チョコの話、それを真面目に聞き、小気味良く返しもしてくれる男。例え、その本人が認めなくても『セミラミス』は何だかんだでこの一時を楽しんでいた。でなければ、仕事ならいざ知らず、休みの時ですらマスターと一緒にいる事などあり得ないだろう。

 

「軟弱な」

 

「じゃあセミラミスなら、チョコに頼らなくても好きな人とかに告白出来る?」

 

「阿呆か貴様は……。我を誰だと思っている?アッシリアの女帝だぞ。何故、我から一々男なぞにこだわる必要が……」

 

 そう言った途中でこの女帝は自分の言葉の何と空虚な事かと気付く。何が「誰だと思っている」?何が「アッシリアの女帝だぞ」?所詮はそう作られた人形にしか過ぎない癖にと。

 

(違う、空虚ではない……!これは我だけの目的だ。チョコの帝国を、チョコで世界を支配しようとする我の目的――、チョコに対する想いだけは本物である……だって――)

 

 ――『うん。チョコが出来上がる度に本当に楽しそうに笑っているもん』

 

 目の前にいる男が先日の夜に語ったあの言葉。結局、あの後、いくら鏡の前にいてもその笑顔とやらは出来なかった。虚言の類ではないと見抜いてはいる。だが、甘言の類ではあるかもしれない。

 

 自分よりも自分の事を知っている男。自分の知らない顔を見ている男。『セミラミス』は今日までチョコ作りに勤しみ、自身に従う男に思考が囚われる。

 

(我はさっき――何を考えた?)

 

「好きな人に告白出来る?」と聞かれた瞬間、女帝の頭に一番最初に浮かんだのは今もこうして言葉に詰まっている自分を見つめているマスターの顔だった。

 それはこの世界に生を受けて、一番関わっている男だから?それとも偶々、目の前にいたから?

 

「……っ」

 

 急に胸が痛んだ。それに体温も上昇している。あぁ、これ以上はマズいと彼女が危険信号を発した瞬間、氷袋が手渡された。キョトンとしている『セミラミス』にマスターは立ち上がり、心配そうに言葉を投げかける。

 

「今日は休みなよ」

 

「何を……」

 

「一緒に工場の視察に行った時も調子悪そうだったし、顔も赤くなってる。たまにはゆっくり休むのもトップの仕事だよ」

 

「後は俺に任せてさ」と階段を降り、退出しようとする男の背に玉座から立ち上がれない『セミラミス』は決して届かない手を伸ばす。未だ、自身の心を持て余している女は結局、何も出来ず、そのまま扉の閉鎖音が無情にも玉座の間に響いた。

 

「は、ハハハ、我は今、何を言おうとした?」

 

 誰もいない空間の中心で貰った氷袋を大事そうに抱き締めながら、『セミラミス』は自嘲気味に笑っていた。体温上昇で溶けかけて弱気になった所為か?いくら何でもそれは無いだろうと女帝は頭の中で何度も否定する。部屋から出て行こうとした彼に――。

 

 ――そばにいてくれだなんて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《チョコ製造率、危険水域まで残り10%》

 

 

「あれはただの気の迷い、あるいは溶けかけた事による吊り橋効果のようなものだ……決して真っ当な思考回路から出された物ではない……」

 

 チョコ製造は順調、チョコ聖杯なる禍々しい物まで生まれ、生産スピードはさらに加速されていた。カルデアにとってはもうこれ以上、生み出せばチョコによって輸送路はパンク、ライフラインすらも脅かされかねない危険領域まで。

 

 チョコの王である『セミラミス』にとって歓迎すべき事である筈なのに何故か玉座に座る彼女の顔は浮かない。

「休んでいい」と言われたあの時から、マスターに今まで通り関われなくなった事が彼女の精神にどういう作用を与えているかそれは本人ですらあずかり知らぬ事。

 

 マスター自身はいつも通りなのだが、肝心の『セミラミス』が話しかけられる度に「ひぃやぁっ!?」と奇声を上げて、距離を取り、「ちょっと工場長として、あちらの生産状況も見なくては!」と何かと理由をつけて逃げる毎日。おおよそ女帝としての威厳の欠片も無い状態だった。

 

 理想の国が近づいているというのに、『セミラミス』の頭の中に浮かんでしまうのは今日もチョコ製造を手伝ってくれる青年の姿。

 許しを与えて、自分ではない自分の名前を呼んでくれる男の顔が悶々と浮かび上がる。

 

 ――セミラミス。

 

 ――セミラミスッ!

 

 ――大好きだよ、セミラミス……!

 

「ぬわああっ!!」

 

 後頭部を思いっ切り背もたれに強打させ、恥ずべき幻聴を霧散させる。荒くなった呼吸を整え、思考を切り替える。

 

(余計な事ばかりを考えるな!我!そうだ、我の国……偉大なるチョコの世界、我が理想はもはや間近ではないか……)

 

 彼女は思い返す。今までの軌跡を。■■■■■に作られ、意思を持ち、何も無い自分の存在意義を探すようにがむしゃらにチョコを作り続けた。からっぽではないと、我も王なのだと、この世に生を受けた者なのだと、決してただ食されるだけの存在では無いと主張するように。

 

 だからこそ、ここまでのチョコ製造を成し得たカルデア……そしてあのマスターとの出会いはある意味得難いものであった。

 

『セミラミス』の笑顔が楽しそうだから、なんて理由でここまでの成果を出してくれたのだから、それは褒美の一つぐらいあっても別段、不自然ではないだろう。むしろ、有能な臣下に褒美を取らせないのは王としての威厳も――。

 

「ま・た!考えておるっ!!」

 

 照れ隠しの黒鎖が玉座の間を激しくシャゲダンし、爪痕を残す。

 駄目だ駄目だと首を左右に振った『セミラミス』は出来るだけ彼から離れようと今度はマスターが関係無いであろう未来の事を夢想する。

 

 チョコの世界を支配するチョコの女帝。

 

 ――あぁ、けど、やはり王たるもの、ずっと独り身というのはしめしがつかない。ならば、伴侶も探さないといけないだろう。無能は却下、野心深いのも無理、裏切りの相が無いのは前提として、さらには自分のチョコ愛を肯定して、何かと世話を焼いて、自分の事を良く見てくれる黒髪の人畜無害そうな男が……。

 

「言ってるそばからっ!頭、スイーツかっ!!」

 

 その体はスイーツで出来ていた。照れ隠し砲台『十と一の黒棺(ティアムトゥム・ウームー)』起動。外にいる鳩が数匹ほど、塵になった。

 

 まるで思春期真っ盛りの乙女のような女帝。玉座をぎっこんばったんと悶え続ける。

 

「違う。違う。これは違うのだ。これはあの有能な男を篭絡し、我が手中に収めんとする女帝としての本能……。あぁ、そうだとも、あやつを誑かし、弄び、最後にはボロ雑巾のように捨てる……。それが()()()()この世に刻まれた数多の女英霊と懇意になっている男なら、その悦びは格別であろう」

 

 冷酷、陰惨、傲慢かつ狡猾。孤高の王である為……そんな女帝としての威厳を保つ為にラブコメ(チョコ)臭を隠している彼女の頬を――。

 

 

「べろんっ、これは……嘘をついている『味』ですわ」

 

 

 ドドドドドドドッと静謐ちゃんから恋の力によって『気配遮断(ストーキング)』を獲得した嘘許さないガールきよひーの舌が舐めていた。

 

「貴様ッ!」

 

 あまりにも急過ぎる接近。もしや自分の正体を勘付かれたのではと、臨戦態勢に入る女帝。ましてや暑苦しさ的にもレオニダス王に次いであまり近づかせたくないサーヴァント筆頭。こちらを凝視したまま、動きのない清姫から『セミラミス』は距離を取った。

 

「――ですが、それがまだ何も知らない乙女の恋心ゆえに生まれた無意識の嘘ならば、私はまだ断罪する事は出来ません」

 

「何を……言って」

 

「しゃらっぷ!私は生まれたばかりの雛を踏み潰すような非道はしないという事です!貴女は今、胸の中で持て余しているその感情と正しく付き合わないといけません……!失敗するのもいい、当たって玉砕するのも結構でしょう……。ですが、自分を偽るのだけはお止めなさい!と余裕を見せながら、助言を与えるきよひーちゃんなのでした」

 

『正妻』と書かれた扇子をバンッ!と得意げに開く清姫。

 清姫だけではない、『セミラミス』の周りに何人かの女性達が集まっていた。

 

「アンタの生まれ方とか正直知った事じゃないの。だけど、一つ、()()に大事なことを教えてあげる。『自分はこうすべき』じゃないの『自分は何がしたいか』なの。せっかくこの世に生を受けたのなら、いい子ちゃんぶってないでもっと醜く足掻いてみなさいな」

 

 前回のバレンタインはまんまとシェイクスピアの口車に乗せられて、自分の顔型チョコをマスターに渡し、パクリと食べられ自爆し、その後自身もパクリ(隠語)とされてしまったジャンヌ・オルタ。

 

 今回は真っ当かつ、マスターをアッと驚かせるようなチョコを作っているらしい。そんな彼女は生まれ故か、今ここにいる女帝を気にして、『セミラミス』に助言を残す。

 

「さすが私の恋敵(ライバル)その1。マスターLOVE勢筆頭を名乗るだけの事はありますね」

 

「一度たりとも名乗った記憶が無いんですけど!!」

 

 え?LOVE勢じゃないのに、バレンタインに自分の顔チョコ送ったの?ときよひーは『戦慄』と書かれた扇子を開き、邪ンヌのあざとさにマジで震える。

 

 そしてそんなジャンヌオルタの周りには赤、青、緑、黄、黒の色で分けられたTシャツを着て戦隊ヒーローの如き変身ポーズで現れた4元素アイリ+黒アイリ。

 聖杯の欠片、自我を持った小聖杯。その残りカスだった彼女達もかつて、マスターの精液によって確固たる存在として成立する事が出来た。

 

「ま、そういう事。正直生まれがどうとかあの人の前であんまり気にしない方がいいと思うわ」

「どうせ、皆、喰われる」

「元も子もないわね……」

「注ぎ込まれるなら、聖杯の泥より性杯の泥の方がいいものね!マスターの白濁こってり一丁!」

 

「全く、そもそも聖杯という物が人間の手に余る代物なのだ。だから、このような茶番劇に巻き込まれる事になる。のう、人形よ?しかし、どうせ踊るなら、自らの欲望に従った方がまだ見応えはあるがな?」

 

 意味深な事を言う黒アイリの言葉に『セミラミス』はここにいる者達がもしや自分の正体を悟っているのではと気付く。「ここで始末するべきか?」と思案するが、実行には移せない。それは彼女達のサーヴァントとは思えない程の存在感、まるで受肉したのかとすら錯覚するレベルでの覇気を感じ取っていたから。

 

 そして、どうしてもカルデアの……いやその中心にいるあの男と敵対行動を取りたくない気持ちが女帝の動きを留まらせる。

 

「ふふ、そんな怖い顔しなくてもいいわ」

「……ツンデレ女帝とか狙い過ぎて食傷気味……」

「あの中華ロリとかは体型的な意味でキャラ分けは出来ているけど」

「と、こんな感じでここぞとばかりに喋ってみるファイブスフィールズだったのだ!だって出番が少ないだもん!せっかくの復刻なのに霊衣解放すら無いなんて!!」

 

「メタい話は止めろ。ともかく、貴様が女帝としての矜持を誇りながらも、たかだか一人の男との接触を怖がっているというのなら、我々はもはや何も言うまい。贋作のまま生まれ、贋作らしく自分の心を偽ったまま朽ち果てるがいい」

 

「怖がる?王たる我が?たかだか一人の人間程度に?」

 

 だが、清姫の発破も、邪ンヌと4元素+黒アイリ達の煽りも的を得ているからこそ、彼女はその言葉を無視する事が出来なかった。■■■■■に作られた故の女帝としてのあり方、マスターと関わった事で生まれた心の中で燻っている熱いナニか、()()()()()()と人間であるマスターの間を隔てる果てしなく遠い差。

 

「たわけ、貴様らの言葉は筋違いもいい所だ。我がここで苦心していたのは予想以上にもチョコ製造の成果を出しているあの男への褒美を考えていただけだ。臣下への褒賞を疎かにしては王の格も知れよう……」

 

 それでも女帝はこの程度では折れない。傲慢に強がり、冷酷たる笑みを浮かべて、『セミラミス』たらんとする。

 もう、胸の中を渦巻く人間のような感情の奔流から彼女は逃げる事はしないと決めたのだから。

 

 だって、それはもしかしたら、■■■■■ではなく、初めて手に入れた自分だけの宝石かもしれないから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《チョコ製造率、危険水域まで残り5%》

 

 

 空中庭園内で改造を施された大浴場。

 体の60%が水分で出来ている人間がお風呂に入り、癒されるというのなら。この『セミラミス』がチョコで出来たチョコレートバスで体を休ませるのも何も間違った事ではない。

 

 ブラッドバスなんかよりはよほど絵面は平和的で教育にも悪くはないだろう。

 

 ■■■■■が封印され、聖杯からのバックアップを受けている以上、未だ人の体としての実体を伴っている『セミラミス』の肌は■■■■■と遜色ない程に透き通る白い肌。それを映えさせる黒い艶髪。チョコの風呂の浮力に従っている二つの乳房が目にした男達の劣情を催させる魅力。優雅に手足を伸ばすその姿はたとえ、一糸まとわない裸であっても王としてのロイヤル感が滲み出ていた。

 

「ふぅ――、ちゃんと後ろにいるな大臣」

 

「うん、すっごく甘ったるい匂いがする。後、お風呂場にしてはなんか冷やっとする」

 

 湯船に肩まで浸かっている『セミラミス』の背後。チョコ湯には浸からないように風呂の縁でタオルで()()()()()()()マスターがいた。彼の方は裸ではなく、短パンにTシャツと水場の作業に適した簡素な服装だった。

 

 結局、『セミラミス』が出した決断は成果を出した功労者への褒賞、そして自分はこの男との触れ合いに対して特に何も恐れてなどいないという女帝としての威厳を崩さない為のアピール。

 

 カルデアの女性陣に煽られたせいか、それが風呂場で自身の肢体を洗わせる奉仕という結論に至ったのは些か飛躍し過ぎている気もするが、纏う物が何も無い裸の付き合いというのも本音を曝け出すには絶好の場であるのも事実。

 

 視界を隠しているとはいえ、数多の女達が羨む玉体に触れる事が出来るのだ。これ以上の褒美は無いだろうと『セミラミス』は自身を納得させる。

 

「しかし盲目の状態でよくそこまで動けるな……実は見えているという事はあるまいな?」

 

「セミラミスってばいい匂いするから、視界が覆われていてもどこにいるかぐらいはわかるよ。それとも目隠し外す?」

 

「……は、外したら殺す。まずは腕からだ。石鹸は泡立てているな?今、この瞬間だけは我が肢体に触れる事を許そう。感動に咽び泣くがいい」

 

 割とマスターは変態チックな事は言っているが『いい匂い』という言葉で若干ニヘラっとしてしまう『セミラミス』ももう大分この男に参ってしまっているのだろう。

 

 だからこんな暴挙に出てしまう。生まれて間もない『セミラミス』。知識として、男女の交わりについて知ってはいるが経験は無い。頭でっかちのチョコの女帝は異性とまだ一度も手を繋いだ事の無い未通の乙女なのだから。

 

 そんな女の肌が……百戦錬磨あらゆる女英霊達の性癖回路を開発してきた男に触れられてしまえば――。

 

「ひゃうぅんっ!?」

 

『セミラミス』の二の腕から脇にかけて、泡がついたマスターの手がゆっくりと滑った瞬間、今まで出した事のないような大きな嬌声が響き渡った。

 

 バシャバシャと水音を立てるチョコレートバス。突然の未知からの刺激に痙攣しながら、足を伸ばし、悶える女帝。

 

「ま、まて、こりぇえは……いったいぃ……はひぃっ!」

 

 このマスターにしては珍しく、厭らしい気持ちはなく女帝に命じられた通りに体を洗ってあげているだけ。だが本人の感情はどうあれ、数多の女達を堕としてきたそのテクニックは彼の手に染みついている。まるで卑猥なモノを扱いているような手つきで『セミラミス』の右腕を指先から脇、端から端まで入念に丹念に行き来する。

 

「ふっ、んふぅっ!ふぅぁ……」

 

 堪ったものではないのはチョコ風呂の中で何度も両脚をバタつかせている『セミラミス』。洗われていない方の左手で必死に口元を抑えているが情欲に染まった色は隠せない。

 

 これでマスターの手付きが少しでも猥褻で、調子に乗ってまだ許していない部分まで手を伸ばそうとするものなら、キツい叱咤を飛ばす事が出来るのだが……。

 背後にいるマスターの雰囲気は至極真面目で王に命じられるがまま、洗浄行為として『セミラミス』の肌に触れ続けている。まぁ、彼の胸中が何も感じていないという事はないだろうが、それを一切おくびに出すことは無い。

 

(こ、これでは……感じている私がまるで痴女みたいではないか)

 

 頭の中のハト(使い魔)が【速報:女帝様、年下の男に目隠しをさせて洗いっこプレイに興じている件】『レベル高過ぎないwwクルッポーww』『女帝様の業が深い』『腕だけでイク女チョコラミスならぬチョロラミス』とやんややんやと騒ぎ立てる。

 

「よ、よい!もう止めよ!体の方はよい……!」

 

 息も絶え絶え、一度体の洗浄を中止させる『セミラミス』。このまま続けていたら、取り返しのつかない所までイッていたような気がする。冷たくしたチョコ風呂で良かった。でなければ、腕が溶けていたかもしれない。

 

「……か、体の方は自分でやる。髪の方を洗え」

 

 風呂から上がり、金色の豪勢な装飾が施されている鏡がついている洗い場の方まで目が隠されているマスターの手を引っ張る『セミラミス』。

 マスターの言を信じるなら、ここで手を引く必要は無いのだが、だからといって逃げるように離れてはまるで意識しているようにも感じるから、ここで大人の女としての余裕を見せる必要があるだろうと女帝はマスターの手を握る。

 

 余裕……余裕……。先程の洗浄で乳房の先端が起立していなければ、股から透明なナニかが垂れ流しでなければ、女帝としての余裕とやらも説得力はあるが。

 

 まぁ、マスターの目も覆われているし、誰も見てないので野暮な事は言わないであげよう。今は自分から手を握っておきながら、滅茶苦茶ドキマギして、洗い場に向かっている『セミラミス』の可愛さを愛でてあげようではないか。

 

(バスタオルでも持ってくるべきだったな……)

 

 ■■■■■をトレースされている自分なら、こんな事で今更恥じるような初心な性格はしていない筈だが……。

 

「髪を洗えばいいんだね?」

 

 鏡の前でバスチェアに座る生まれたままの自分。その背後にいる自身の心を掻き乱す元凶たる男。

 後ろにいるマスターには自分の姿は一切見えていない筈だが、一つの空間に異性と裸でいる状況が『セミラミス』の頬をさらに上気させる。

 

(今更ながら、我はとんでもない事をしているのでは?)

 

 だがここまで来て引く事は出来ない。名目上はマスターへの褒美としてこの浴場まで誘ったのだ。体は無理だったとしてもせめて髪を洗わせるぐらいはしないと女帝としての面目も立たない。

 

「あぁ、繊細にな」

 

「うん。大事にするよ」

 

「んっ」

 

 そんな何気ない返答でもどうしてここまで心が揺さぶられるのだろうか。髪の間に指を通し、上下へと緩やかに梳かれていく感覚に身を委ねながら、『セミラミス』は考える。

 

 だが、悪くない。もしもこれが■■■■■としてではなく、自身だけの感情なのだとしたら、きっとそれは何かとても素敵な事のような気がして――と、女の命ともいえる髪をマスターに全て預けている心地良さに震えていた。

 

「痒い所はありませんか、お客様――」

 

「なんだそれは?」

 

「美容室とかなら、常套句なんだけど」

 

「阿呆が。この髪を触らせるのは我以外には貴様ぐらいしかおらんわ」

 

「おぅ……」

 

 急なデレにマスターも結構グラっと来た。『セミラミス』も自分が何を言ったのか気付き、それを誤魔化すように言葉を続ける。

 

「つ、つまりだな……!我の髪を洗うというきっとこれから二度と来ないであろう栄誉に貴様はもっと感謝して、これからも我の隣でチョコ製造に励めという王からの叱咤激励であり」

 

「うん、ありがとう。姿が見えないのはちょっと残念だけど。こうやってセミラミスの綺麗な髪を洗えるのは嬉しいし、それぐらいには心を許してもらえてたんだって安心した。最近、避けられてたしね」

 

「…………避けてはおらぬ」

 

 嘘だと断じる無粋な事はマスターはしなかった。女の子の心の奥底に深く踏み込むのはケースバイケース時には受け流す事も必要だと。

 そして、ほんの少し、しかめっ面になった『セミラミス』も自身の言葉を思い返す。

 

 結局、自分はこの男をどうしたいのか。この男とどうなりたいのか。

 

 もし、自分の体が普通の人間だったら、もっと違う選択肢があったのだろうか。

 

(これからも?我ながら愚かにも程があろう……。我が目指すチョコ帝国まで残り僅か。……こやつが所属しているカルデアとやらを侵食する程のチョコの量まで届く。そうなれば、確実に我とこの男は袂を分かつ。……いや、元々利害が一致していただけで利用し合っていたに過ぎない……)

 

 マスターの優しい手付きがシャンプーを泡立たせ、指腹を使い、じっくりと丁寧に『セミラミス』の髪を解していく。その心も――。

 

「例えば――」

 

「?」

 

 何であれ楽しかったのだ。決して一人でチョコを製造していた時が苦しかったとは言わない。ただ、自らの存在を認め、尊重し、同じ道を進んで、時には振り回してくれている男の存在に『セミラミス』はどこか救われていた。

 

 それこそこのまま手放したくないと思う程には。

 

「今まで一つの目的に向かって邁進していた者がいた。他に何をすればいいのか知らない、わからない。そうあるべきだと自身に課して、進み続けていた愚か者がいた」

 

 浴場という開放的な環境が彼女の言葉を滑らせたのか、『セミラミス』は女帝らしからぬ、不安気な口調だった。

 要領を得ない、『セミラミス』の問いにマスターは真剣に耳を傾ける。

 

「そんな歩みの途中、ふと今まで見た事の無い綺麗な宝石が脇道に落ちているのが目に入ってしまう。その者は迷う。歩みを止めて、それを拾うべきか……それとも目もくれずそのまま進むべきか?」

 

「拾った後で歩みを再開するのは?」

 

「それは無しだ。止まった状態で拾ってしまえば、もう二度と進めない程にそれは魅力的な物だとする」

 

「なるほど……」

 

 考えながらも、マスターは髪を洗う手を止める事は無い。わずかな沈黙の間……静かな泡音だけが聞こえる。

 

「なら、止まらないで足で蹴り上げて上手い具合にキャッチする」

 

「……両方を取るか」

 

「気になるんでしょ?脇目も振らずに進んできた筈のその人の目に入ってしまうぐらいにはさ。落ちているって事はまだ誰の物でも無いわけだし……。うん、拾得物って事で犯罪でもない。合法合法。それぐらいの乱暴は許されると思うよ」

 

「誰の物でも無いと言われると語弊はあるが……いや、よいか、その暴君っぷりはきっと我らしいのかもしれぬ」

 

「もしかして、セミラミスの話?」

 

「そうかもしれぬし、そうでないかもしれぬ……んっ、まぁ、元より我は女帝。奪う側に回っても何も問題はあるまい」

 

 元々、綺麗な答えは期待していなかったし、無理難題という自覚はあった。だが、後ろにいるこの男から「諦めた方がいい」という答えを聞かなくて、『セミラミス』は心底安堵した。彼の答えはこれから彼女が行う事に許しを与えられたようで……。

 

 頭皮をマッサージされ、甘い声を零す『セミラミス』の脳内は晴れ渡っていた。

 

『セミラミス』の選択肢にあったのはこのままカルデアと、そしてマスターと敵対し、チョコの帝国建造を目指す事。

 もう一つはそれを諦める事。いずれ封印を解き、■■■■■が復活するその時まで、空中庭園で甘美で温いこの男の一時を楽しむ事、この身が朽ち、溶けるという決して報われない結末だと知りながら。

 

「何もせず、後になって悔やむなど、それこそ我らしくない」

 

 ――この感情が■■■■■……セミラミスではなく。生まれて初めて手に入れた()だけの宝石というのなら、手に取らなければな。

 

 低温のシャワーがセミラミスの髪についた泡と共に迷いも洗い流していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《チョコ製造率、危険水域まで0%》

 

 

 多くのサーヴァントの規格外の力も加わり、チョコレートオブガーデンから供給されるチョコの量はカルデアを圧迫し始めた。

 

 輸送路の扉を閉めようとも、津波の如く押し寄せるチョコの濁流にこじ開けられる。まるで一種の自然災害の如く、廊下、通気口と行先を求めて、空間を埋めていく。甘味の暴力にカルデア中のシステムがオーバーヒート目前だった。

 

「ひわわわぁっ……!?なんでこうなってるんですかぁ!?今回のチョコ製造にあたって共同販売を行おうとしていたコロンブスさんは行方知らずになったので一人でもチョコバブルを起こそうとした私への天罰なのですかぁ?私はただ、ゴージャスなチョコ風呂に入りたかっただけなのにぃ~~」

 

「噂によれば、チョコ風呂はあの空中庭園にあるらしいがなと、アルテラちゃんは耳よりな情報をシバの女王に教えてあげるのだった」

 

「今、そんな話聞かれても泣きっ面にチョコですぅぅっ!」

 

「バレンタインはここまで命の危険がある過酷なイベントだったとは……。しかもここにいるメンバーは皆、褐色。肌色がチョコと似ている私達では流されても誰にも気付かれず、救助もされず……そのまま溺死……!」

 

「恐ろしい未来予想をしないでこの窮地を脱する事を考えて欲しいものです!申し訳ございませんメシェド様……力をお借り致します……!出ませい、出ませい!」

 

「はい、私もマスターの老後を見守るまではそう簡単には死ねません」

 

 チョコの波に襲われる、シバの女王、アルテラ、シェヘラザード、ニトクリスの褐色カルテット。

 それでも飲み込まれる事なく、各々、精霊、羊のツェルコ、メシェド様達に運ばれ、無事であるという管制室まで目指す。途中、軽やかに壁を蹴りながら、合流したロビンも苦い顔しながらぼやいていた。

 

「バレンタインってのはもっと平和なイベントな筈なんすけどねぇ。どうして命の危険に晒されるのか、これがわからない」

 

「残念、ここはカルデアだ。イカれた職場にようこそ」

 

「マスターの傍にいた方が安全だったのでは?しかし、空に浮かぶものはそのどれもが墜落するのがセオリーですし……」

 

「今更ですよ、相棒。そもそも一週間前のカルデアの状態でチョコに埋もれる未来予想図を誰が想像出来るでしょうか」

 

「未来視を持っているそこの彼女なら、見えていたのでは?」

 

 シェヘラザードの言葉に目を泳がずシバの女王。

 

「い、いえ、見えてはいましたよ?こ、こう褐色組の私達が楽しそうに流れるチョコプールで泳いでいる姿が……」

 

「どこをどう見たら泳いでいるように見えるんですかねぇ!?」

「絶賛、溺れかかっているのですが!」

「思いの外、ポンコツでしたね。この獣耳女王」

「未来視(節穴)。持て余すチートは悪い文明だな」

 

「ふぇぇ、フルボッコ……」

 

 総バッシングにシバにゃん涙目。

 

「まぁ、ともかく。この騒動の中心がアッシリアの女帝様なら。マスターに任せるしか無いけどな。女が起こすイベントに対しての特攻300%キャラですからねぇ、ウチの大将は」

 

「ハッピー、セックスゥ!だとぉ!?という展開ですね。わかります」

 

「あながち間違っちゃいねぇのが何とも言えねぇっすわ。いや、それ以外もちゃんとしてくれていると思いますよ?多分」

 

「性交でトラブルが解決するなら、コスパはいいですけどねぇ」

 

「身も蓋もありません……」

 

「ふけい――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「セミラミスさん!今すぐ、チョコの製造を止めて下さい!このままではカルデアがパンクしてしまいます!」

 

 カルデア、チョコパニックの発端、その中心人物がいるチョコの女帝、『セミラミス』がいる玉座の間にマシュとマスターを始め、清姫、邪ンヌ、イリヤ、クロエが集まっていた。

 

 他のサーヴァント達は増え続けるチョコの対処に追われている。黒幕でもある『セミラミス』の元へ寄越す事が出来る人員はこれが限界だった。

 

 外部からカルデアへの直接攻撃に成功したのは魔法少女が集まる固有結界に女王として君臨していたコナハト☆メイヴに次いで『セミラミス』が二人目、実はこの二人、ゲーティアよりも凄い事を何気にやっていたりするのだ。

 

「何故、止める?我は作るのだ。チョコによるチョコの為のチョコだけの理想のチョコ帝国を……」

 

 言い詰められてもなお、チョコの女帝は何一つとして揺らぐ事は無い。彼女はあらゆる迷いを振り払い、自身が進む道を明確に定めたのだ。その王気は初めてマスター達と出会った時よりも濃厚になっている。

 

 アッシリアの女帝、セミラミスによって造られ、自我を持ったチョコレート。それがこの『セミラミス』の正体。人の国を統べるのが人の女帝ならば、チョコの国を統べるのはチョコの女帝だと。だが、チョコの国など無い。無いなら作るしかない。

 

 たとえ、その思考がセミラミスをトレースした物であったとしても、結局、彼女は生まれてからずっと見続けたその夢を手放す選択肢は取らなかった。

 

「もはや、ただ人間共に食される事は無く。廃棄される事も無く、あまねくチョコ達が存在する世界の頂きに我は立とう。王として」

 

「セミラミス……」

 

 明確なカルデアに対する敵対行為。初めからこれが目的だったのか。マスターであるチョコレート製造特命大臣との関係には打算しか無かったのか。マスターの蒼色の瞳と『セミラミス』の瞳が交差する。

 

 雑多は映らない。彼女の瞳に映るはマスターのみ。

 

「だが、王には隣に立つ伴侶が必要だ。ただ一人でいい、ヒトの番いが欲しい。カルデアのマスターよ、我を今まで支えてくれた右腕よ。共にチョコ史を肯定してくれ、我は正しいと告げてくれ。その同意を以てチョコの国で我と生涯を共にする権利を与えよう」

 

『なっ!?』

 

 女性陣の驚きを他所に熱い視線を『セミラミス』は向け続ける。大胆なプロポーズは王の特権。

 嗾けた清姫と邪ンヌもまさかここまで大規模な略奪婚まがいな事をしてくるとは予想していなかった。

 

『セミラミス』はどちらか一方を選ぶ事はしなかった。正確に言えば、()()()()()()()()という選択肢を取らなかった。

 聖杯がガス欠になる前に、オリジナルが復活する前に、全てにカタを付ける必要があった。このまま、安穏と過ごしても所詮チョコ……。人の世では朽ちる結末しか用意されていないというのなら、チョコの世を作り、愛しき男を略奪するだけの事。

 

「どうした……?大臣から女帝の夫へと大出世だぞ?」

 

 上段から差し伸ばされた『セミラミス』の手に対するマスターの答えは――。

 

「ごめんね」

 

 決まり切っていた。

 

「その誘いに応えるワケにはいかない。俺は彼女達を捨てる事は死んでもしない」

 

「フッ……」

 

 その答えに『セミラミス』は涙を見せる事も、激昂する事も無かった。胸の中の鋭い痛みを僅かに抑えて、毅然として前を見据える。

 

「…………知っていたとも、お前の顔には裏切りの相が無い、だから我も重宝したのだ」

 

 断られるのも予想済み、それで是と首を縦に振る男だったら、『セミラミス』は最初っから好きになどなっていない。だが、それはそれとして、一世一代のプロポーズで振られてしまうのはやっぱり辛い複雑な乙女心。

 

「しかし……!ここで傷心して寝込むような女ではない。たとえ、拒絶されようとも、欲しい物なら力づくでも奪う!!我は『女帝』ゆえに!!」

 

「嘘偽りなく、自分の気持ちを旦那様に伝えた所は100きよひーポイントです。ですが、私から旦那様を奪おうとした点はマイナス100億きよひーポイントです!!」

 

「ならば、こっちはマイナス100兆マシュマシュポイントです!!」

 

「張り合う所が違うでしょ、アンタ達……」

 

「バトル展開ってわけね、上等!いくわよイリヤ!!」

 

「うぇーん!平和なバレンタインイベントだと思ってたのに――!!」

 

 清姫を始めとし、構える女性陣を相手に気圧される事は無いチョコの女帝『セミラミス』。

 天高く彼女が手を振り上げれば、玉座の間の扉が閉まり、脱出不可能の密室となる。

 そして様々な古代紋章が描かれた壁のパイプのような装飾から甘い蒸気が噴出し始めた。

 

「これはまさかヒュドラ毒!?」

 

「違う!ショコラ毒だ!!」

 

「『ショコラ毒』!?何それ!?」

 

『随分と甘ったるい毒ですねぇ……食中毒的なあれですか?』

 

「チョコの中に含まれる成分、恋愛ホルモンとも呼ばれる『フェニルエチルアミン』を極限まで濃くしたショコラ毒を排出している」

 

『わかりやすく言うと?』

 

「この部屋に強力な媚薬効果を持った毒が充満するという事だ。枯れ果てた老人を性欲旺盛な猿に変えるレベルでな」

 

『あっ、ルビーちゃん、結末見えちゃった』

 

 イリヤの魔法ステッキマジカルルビーの言葉に偽りなく正直に答える『セミラミス』。彼女の言葉に口を塞いでいく女性陣。だがそのか細い抵抗も意味を成さない。

 

「息を止めようが無駄だ……。チョコを極めし、我が作り出した甘美なる毒だぞ。皮膚からも当然接種される。この空間にいる時点で貴様らは我の毒の支配下だ」

 

 紅潮する頬、荒くなる呼吸、内股になり、何かを耐えるように太腿をくねらせる女性メンバー。彼女達の視線は等しく、マスターに向けられていた。

 最初に動き出してしまったのは「マスタァァッ!白濁ドロドロの魔力供給しましょぉぉっ!!」「だ・ん・な・さ・ま♡ビバ!子作り!!」とクロエと清姫、それに続いて他の者達も最後には邪ンヌと理性を失った獣の如く、マスターに飛び掛かった。

 

(制御を失ったサーヴァント共が複数。少々、腕に覚えがあったとしても抵抗は不可能。令呪も間に合わぬだろうからな……。安心しろ、従者共に汚される前に我が文字通り救い出してやろう。冷静さを欠いた小娘共から、宝石を奪うなど、実に容易い……)

 

 一つ、チョコ女帝の落ち度を述べるとするなら、恋は盲目。マスターへの評価を正しく行う事が出来なかった事。

 

 もう少し、共に過ごす時間が長かったら、このマスターに対して、ただ行動が突飛でサーヴァント並の戦闘力を保有しているだけの男という評価は下さなかっただろう。

 

 ――んむぅぅぅぅっっ!?好きぃぃいいああああぁっ!ああぁっ!マスターさん、ご、ごめんなしゃひいいいぃっ!!あはぁっ、せんぱぁ、私のマシュマロがぁっ!!んおぁっ、ちょ、なんで、わたひはそっちのあにゃぁあああっ!?

 

 重なる五つの快楽協奏。ほんの数秒……。それが聞こえた後、『セミラミス』が見た光景は……女といえど、一騎当千の力を保有する筈のサーヴァント達が痙攣しながら、幸せそうにかつ淫靡な表情を浮かべてマスターの周りで倒れ伏せていた姿だった。

 

「な、なんだ、一体、何が……おき、た?」

 

 彼女の疑問に答えるとするのならば、マスターは飛び掛かったクロエを羽毛の如き、そのまま受け止め、舌で口内をディープレイプし、その状態のまま左右別々の手で清姫の淫芽とイリヤの乳頭を突いた後で、クロエを解放し、マシュのマシュマロをマシュマシュした後で邪ンヌのアナルをデュヘインしただけの事……。

 

 この間、経過した時間……実に2秒弱!

 

「いや、それよりもだ……。何故、貴様は平気でいられる?常軌を逸したこの媚薬空間で」

 

「成長しているのさ俺も。具体的には単行本10巻分ぐらいにはね!もう媚薬でドキマギしている初心な俺とはさよならバイバイだ」

 

 俺はコイツと旅に出る。ピカチュウ!(嬌声)な勢いで『セミラミス』の元へと駆けだすマスター。

 元々、彼を傷付けるつもりはなく、媚薬毒で動きを封じた所を攫うつもりだった彼女は玉座までの道を駆け上がる彼への攻撃に対して、数秒躊躇してしまった。その致命的な空白が明暗を分けた。

 

「ッッ!」

 

 絶対的な距離、お互い手を伸ばせば、触れ合えるような至近距離までの接近を許してしまった。悪あがきと出したチョコ色の神魚の鱗の装甲も拳で叩き割られてしまった。

 

「つかまえた」

 

 ぎゅっと肩を掴まれるとおかしな声が彼女の口から漏れる。

 

(あぁ――)

 

 触れられた所が熱を持ち、今にも溶け出してしまいそうな錯覚、いや錯覚ではなく、少しでも気を抜いてしまえばそうなってしまいそうだった。

 策謀もほんの一瞬で粉々にされた。決意も覚悟も決めたつもりだった。だがこうして目の前で触れ合える距離で彼の事を見てしまうと『セミラミス』はこれ以上、戦う意欲は湧いてこなかった。

 

 惚れた男に思いの丈を伝えて、振られ、それでもなお無理矢理モノにしようとした計画も打破された。女としては完膚無きまでこれ以上無い惨めな敗北だろう。

 この男はここに来て、まだ『セミラミス』に対して敵意を向けていない。いつもと変わらず、親愛と慈愛と心配に満ちた瞳でこちらを気遣ってくれている。この状況でなお。

 

「こんなに想われるのは男冥利に尽きるけど、カルデアをチョコで沈められるのは困るんだ()()()()()

 

「ふっ、()()()()()か……。そう呼ぶだろうな、我が名乗ったのだからそうだろうさ……」

 

 そう言えば、まだ大事な事を一つ告げていなかったとあらゆる虚飾を取り払ってチョコの人形は自嘲染みた顔で言葉を続ける。

 

「世界最古の毒殺者?アッシリアの女帝?違う、貴様の前にいるのはサーヴァントですら無い。それを模した人形。英霊セミラミスが作った意思を持ったチョコに過ぎない……。只の贋作……生き物ですら無いのだ」

 

 彼女は語る。オリジナルの英霊であるセミラミスを封印した事を。自身の存在意義の為に貴方達を利用し、チョコの帝国を作ろうとした事を。

 

 だから、()は貴方にそんな顔を向けられる価値は無いのですと。人形は呟く。バグで意思を持ってしまった只の食べ物、それが私。だから、躊躇なく、雑魚エネミーとしてこのまま叩き潰して下さいと。彼女は願った。

 あるいはきっと彼が手を下す事もなく、このまま彼女は溶けて朽ちるかもしれない。

 

(ふふっ、体が熱い……。良かった――。ここに来てまだ冷めないのなら、この恋は本物だ。私だけのものだ。恋を知った人形が恋の熱で溶かされて死んでいくなら、それはそれで幸せな結末だろう――)

 

 だが、そんな諦観を、甘い展開をこの男は許さない。

 

「で、それがどうしたの?」

 

「は?」

 

 瞼を落とそうとした彼女の目を覚ませようと両手で包み込まれる頬。

 

「一期一会って言葉知っている?人の出会いは一生に一度、何度も繰り返される事は無い。だから、俺は情愛を交わした人達と離れ離れにならないように手を伸ばし続けるの。三度目の失敗を二度としないように」

 

 彼は最初から気付いてはいた。目の前にいる『セミラミス』が普通の英霊とは違うという事は。だが、それは些細な問題というよりも問題にすらならない。

 

「チョコが増える度に一喜一憂して、可愛らしい格好で恥ずかしそうに頬を染めて、チョコの話を楽しそうにして、俺を労わってくれようとお風呂に誘ってくれた。そんな時間を共に過ごしたのは目の前にいるセミラミスだよ。他にはいない」

 

 贋作だろうが、人形だろうが、彼には関係ない。

 何故なら、彼女の言い分を認めてしまえば、それはサーヴァントという存在そのものを否定する事になるから。

 

「俺にとってのセミラミスは貴女だよ」

 

「……どうしてっ!貴方はそこまで……っ!」

 

 チョコである筈の自身の目頭から熱い物が流れた気がした。

 

 

 

「だから、その目を覚ます。特大の毒で」

 

「んむぅっ!?」

 

 玉座の前で重なる二人。触れ合う唇。突然の甘く痺れる刺激に彼女はただ瞠目するしか無かった。

 

『あ、あれは!?』

 

「知っているのかルビー!?」と問う者はいなかった。皆、絶賛絶頂中だからね、仕方ないネ。

 無機物ゆえ、媚薬毒の効果を免れたマジカルルビーは誰に聞かせるわけでもなく解説を続けた。

 

『かつてまだ召喚されたてでグランドマスターの恐怖を知らなかったクロエさんが調子に乗って魔力供給(キス)をせがんだ時に起きた大惨事!!』

 

 むちゅ、じゅぶ、じゅるるるるぅっ、むじゅぬるぅぅぅっと部屋の隅々まで響き渡る生々し過ぎる水音。

 

『その名も……模倣宝具 「妄想毒身(マウス・レイプ)!!」』

 

 キスをし、唇、歯、歯茎、口蓋、頬裏、口内全てを艶めかしく這いずり、舐めまわす舌。

 

「んふぅっ!」

 

 1critical!

 

 くぐもった悲鳴のような嬌声。口の端から甘く垂れ流れるチョコの唾液。

 

「んんんんっ――……!!」

 

 2critical!

 

 ビクビクと彼女が全身を痙攣させ、腰が砕け、膝を付き、体を弛緩させてもマスターの口淫は止まる事は無い。

 

(溶ける……身も心も……本当に溶けてしまうぅっ!!)

 

 3critical!4critical!

 

 セミラミスと認められた彼女の口内を舐めつくし、唾液も吸い尽くす。そして、これはまだ序章に過ぎない。前戯で彼女の抵抗力を根こそぎ奪い、顎を上げさせて、一切の力が抜けきった彼女の無防備な喉に今度は唾液を流し込む。

 

「んぐぅっ!?」

 

 5critical!6critical!7critical!

 

 突如として嚥下する粘性の液体。だが、今のセミラミスにとってそれは自分がこの場で出した毒よりも強力な媚薬。彼は愛すべき者達と共に生きる為ならどんな無茶も通す。故に彼の精液はサーヴァントを完全なる個として受肉させる。それには劣るが、彼の唾液はマスターに好意を持つ者にとっては強烈な中毒作用を持つ。

 

「んぁっ、はぁっ、んはぁっ……はぁむぅぅっ!ん゛ん゛ん゛ん゛ぅぅぅっ!!んじゅぅ!んぐぅっ!!」

 

 8critical!9critical!10critical!

 

『おほぉ――っ!!コイツはすげぇや!!3回の粘膜接触どころじゃねぇ!!まぁだイきますか――!!』

 

 キスで口内を愛撫し、弛緩し切った所に膨大な魔力を持った唾液を流し込む口内レイプ。流し込む唾液()で対象を殺すのではなく()かす模倣宝具 妄想毒身(マウス・レイプ)

 

(……ん、あ……毒殺者が毒されていたら、世話が無いな……)

 

 11critical!12critical!13critical!14critical!15critical!16critical!……

 

 マスターの毒でセミラミスは気付くだろう。いつまで経ってもチョコの体である自身が溶けていない事に。そして自身の体の変化に。性的絶頂を覚えながら、チョコの肉体が性エーテルによって霊基を持ち始めている事に。

 

「ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ぅぅぅぅぅぅっ――――!!!!」

 

 Finish!!

 

 顎を上げた状態でマスターから口内射液を喰らい続けたセミラミスはやっと解放される。唇を離した二人の間に作られた粘っこく長い銀のアーチ。それが切れるのを惜しむように視界に映すセミラミス。

 

「はふぅっ、はぁっ、はぁっ……あ、あぁぁ……」

 

 へたり込み、ファーストキスの余韻に浸り、唇を触り続けているセミラミスはどう反応すればいいかわからない。自分は許されたのか?自分は救われたのか?これからも貴方と共にいていいのか?今、わかる事はチョコの肉体はこのキスによって文字通り毒殺された事だけ。

 

「……私は、我はセミラミスとして貴方の、お前の隣にいていいのか?」

 

「うん」

 

「我は、我は――」

 

「ハッピーバレンタイン、セミラミスという最高のチョコを戴きに来た」

 

「あぁ……あぁ!あげる!あげるとも!いくらでも!!」

 

 その言葉は自身の生誕を祝福されているようで、マスターの胸に子供のように抱き締められたセミラミスの顔に浮かんでいたのは幸せそうな()()()()()()()()()()()だった。

 

「ありがとう……マスター……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 






《ツルハシ片手に封印から解放されたオリジナル、セミラミス》

「で、なんだこれは?」

オリジナルのセミラミスが女帝らしからぬ泥臭い土木作業もどきでチョコファウンテンの封印から自力で抜け出した事には全てが終わっていた。

まぁ、自身の慢心の後始末を下民が行ってくれたというのなら、彼女もとやかくうるさい事を言うつもりは無かった。褒美に聖杯の回収を許してもいいし、空中庭園を去るというのなら、止めるワケも無く。

ただ、自身のコピーであるチョコが熱っぽい視線で平凡そうな男の背中にしがみ付いている所を見た所でピキリと表情が固まる。

話を聞けば、チョコと化した自分はチョコ帝国を作る為に利用した男と何故か紆余曲折あって恋に落ち、共に生きる事を決めたらしい……。

(あり得んだろう。何だその我らしからぬビター&スイートな展開は)

現在進行中でラブコメ臭を吐き出している自身のコピーに眩暈がする女帝はアレも始末するべきなのではと思案した所――。

『おっと、良からぬ事を考えている毒の女帝様~~。出来ればこのまま、あの方達はスルーして頂けるとルビーちゃん的にも一安心なのですが?』

「なんだ貴様は?」

突如として話しかけてきた魔術礼装に顔を顰めながら答える女帝。

「あれは我の創作物でもある。そして、自身の不手際なら、その処理を行うべきだと思うが?」

『まぁ、まぁ、そう言わずこれを見て下さいな~~』

ササっとステッキがどう出したかは不明だが、セミラミスが目の前に出された写真に目を向ければ――。

「んな゛あ゛あ゛ぁっっ!?」

「色々とキツい魔法少女の格好をしてマスターに迫るチョコラミス」「大浴場で自身の体をマスター洗わせるチョコラミス」「そしてマスターからのキスでイキまくっているチョコラミス」と決定的な写真が飛び込んできた。

「百聞は一見に如かず。例え、本人がどう弁明しようとも映像という情報は余人に影響を与えると思いませんか、女帝様?」

「き、貴様――……礼装風情が我を脅すのか?」

『いえいえ、お互い大人の対応をしようというだけですよ。貴女はわたし達を見逃す。わたしはこの写真のデータを貴女に引き渡す。いいじゃないですか、自分の知らない所で自分とちょっと似た誰かさんが何をしようとも。創作者なら、自身の子供の門出を祝おうじゃあありませんか、ね?』

「認知しておらぬわ!!」

オリジナルの女帝は屈辱に震えながら、ルビーちゃんの要求を飲んだ。さすがは魔法少女のステッキ。ハッピーエンドの為にはいくらでも力を惜しまない。

まぁ恐らく、もしオリジナルの女帝がチョコラミスを害そうとした瞬間、百億パーセントの確率でマスターの百式官能が飛ぶ。
どちらかと言えば、愉悦嗜好のルビーちゃんでもあんな綺麗な結末の後に毒の女帝様のファッキング・オブ・タブルピースオチは蛇足過ぎるので平和な手段を選んだだけの事。この愉悦礼装有能。


かくして、バレンタインを前にしたチョコ難も解決し、カルデアを危機に陥れたチョコ騒動も一先ず収束の一途を辿った。

ならば、残るのは――。

セックス!! の時間である。















次回でチョコラミス……いや、セミラミス編完結です。チョコだからね、甘々でヒロイン度高めよ。








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ラバークリッカーⅢ(セミラミス編最終話)


白状すれば、前まで自分は♡マークが付いている喘ぎ声はあんまり好きじゃなかったんです。けど、ネタ集めに色んな薄い本とかエロ漫画とかエロssとか読み漁って、最近は何故かめっさ興奮するようになったんです。あぁ、これが性癖の開拓かと。エロも日々勉強なんですね。

99話ですよ、奥さん。ここまで話数が重なるとそろそろ評価もお気に入りも打ち止めになるけど、まだまだ更新するよ。理由? 知らん!
誤字報告、感想、評価、お気に入り、いつもありがとうございます!


















純白の姫騎士「チョコラミスさん……いえ、セミラミスさん……。彼女は我がサークルの新入部員の素質がある気がします」




当カルデアではお馴染みになったヤリ部屋もとい、精神と時の部屋。別名、『性神と妻達の部屋』。

 

 サーヴァント達の叡智と欲望と悪ふざけとカルデアの技術力の総結集。

 

 誰でも一度は考えた事があるだろう。好きな人とはもっと一緒にいたい。時間が経つのはどうしてこんなに早いんだろう……。このまま時が止まってしまえばいいのに……と。

 

 そんな浅ましくもいじらしい欲望を叶えたのがこの部屋。

 

 時の流れが現実の時間の1/24、一時間分で一日分過ごせるというマスターと閉ざされた空間で一日中イチャラブヌルズチョバコンプシャァをヤりたい方々にとっては垂涎物の一品。

 

「あの部屋で先輩と一緒にいるとアソコが特別な気分に浸れて、私は好きです」

 

 使用者もこのように大満足。

 

 さらに今回は2月14日。チョコ飢饉からのチョコ過剰災害という未曾有のトラブルに見舞われながらも無事乙女の決戦日を迎えた当カルデア。バレンタインから15日までの二日間。仲が良い娘同士による複数プレイもあるとはいえ、3桁にも届き得る人数を二日で捌くのは普通のヤリ方では無理がある。

 

 そういう面でもこの『性神と妻達の部屋』は非常に役立っている。そして、今回はバレンタイン特別仕様という事で。この小悪魔後輩も一仕事した模様。

 

「私の『HBチャンネル』でも悪くは無かったんですけどね。あれって、心身共になりきりプレイになっちゃうから、自然状態でのイチャエロにはあんまり向いてないんですよねー。というかというわけで路線変~更♡ バレンタイン特別verとさせて頂きました!」

 

 虫空間、犬空間なんのその、『陣地作成:A』は伊達じゃねぇ。チョコに関わるプレイをすれば、さらに一緒に過ごせる時間が長くなる縛り空間を作り上げた。その名も『性神と妻達とチョコプレイの部屋』(まんま)。

 

 それぞれ彼女達に現実時間で与えられた時間は限りがある。愛しのマスターと長く過ごせるに越した事は無い。チョコプレイに勤しみ、時間延長を望むか。あるいは無理をせず、自分の好みのプレイで予定通りの時間を過ごすかは各々の判断に委ねられた。最大一時間で一週間分の時を過ごせるというご褒美は恋する乙女達を悩ませる。

 

「あわわわ、大変なのだわ!大変なのだわ!マスターと密室で一週間も!きっと子供が出来てしまうわ!!」

「バレンタインもおかあさんがたくさんできる日なんだね!」

「マーベラス!子供がたくさん出来るなら土地も作らないとね!」

 

 そして今回、その『性神と妻達とチョコプレイの部屋』の恩恵を存分に授かる事が出来る唯一のサーヴァントがいた。マスターの『妄想毒身(マウスレイプ)』により、サーヴァントの身を得たチョコラミスもとい、セミラミス。

 

 元々がチョコという稀有な生まれにより、チョコプレイをしなくても彼女はこの部屋でマスターと最大限に過ごす事が出来る。

 

「べっつにー?深い意味とかは特に無いですよ――?造り物の癖に一丁前に恋心を持ったお馬鹿さんとか、それに熱心に向き合ってるセンパイをからかってるだけですぅ――。それに見た目は唯我独尊を行きそうな女帝様が生娘の如くセンパイにパニッシュされるのとか見物ですよね――。あの見た目で処女とか!プークスクス」

 

 相も変わらず善意を面倒臭さと捻くれで何重にもラッピングした小悪魔ムーブ。だが、何だろう……最近、脳内がピンク方面になりつつある盾子よりはまともな後輩をしていると感じるのは気のせいだろうか……。

 

「!?」

 

 ともあれ、マスターの手で無力化したとはいえ、カルデアチョコ事変を起こした張本人。さっさと囲った方が今後の事も考えると一安心だよねという若干ゲスい思考も働き、『性神と妻達とチョコプレイの部屋』にトップバッターとしてぶち込まれた。

 

 シチュエーションとしては彼女が生まれた場所でもあり、かつて彼女にとっての世界そのものでもあった空中庭園。澄み切った蒼天、草花が生えるのどかな庭……そこにおあつらえむきにと用意されたテラスとベッド。

 

 神秘的で非現実的かつロマンチックなロケーション。そんな場所に好いた男と二人っきりで放り込まれた女帝様はいつもの黒ドレスに似合わない正座姿でベッドの上にいた。

 

(どうしよう……これ、完全にセックスする流れだ)

 

 クルッポー、ヘタレミス様、ここに来てまだ覚悟を決める事が出来ないので?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「むむむ~~…………」

 

 お互いベッドの上で正座したまま動く事は無い。

 

 湯気が出る程に紅潮をさせて唸り続けているセミラミスを眺め続けて、はや30分。そんなに真っ赤になって溶けないのん?という心配ももう必要ないのだが……。

 魔力供給(ディープキス)でチョコの身から通常のサーヴァントとして存在再臨はさせたはいいものの、彼女の体は未だ不安定。贋作騒動の時の邪ンヌや初期のファイブスフィール組と同じぐらいには霊基は安定していない。彼女というおぼろげな存在を明確に確立させる為にはより濃厚な魔力が必要なのだが――。

 

「ちょい」

 

「ひゃわいぃっ!?」

 

 太腿をちょっと指でなぞっただけでこの反応、可愛すぎひん?取りあえず建前は置いておいて、目の前の女帝様を愛でたい、そらもう湯煎にするぐらい愛でたい。ホワイトチョコでシェイキングするぐらいには愛でたい。

 

「な、何をするんじゃ、愚か者!我を誰だと思ってる!?女帝やぞ、アッシリアの女帝やぞ!」

 

「キャラが行方不明過ぎる」

 

 テンパり過ぎでしょ、セミラミスさん。

 

「フッ、キャラなど今更言われてもな……我にそこまで深いバックボーンなど無いぞ……語尾にチョコでもつければいいチョコか?」

 

「それはイマイチだと思うチョコ」

 

「ちょこぉ」

 

 おかしい。あれだけ俺に熱烈なプロポーズをしておきながら、何をパニくっているのだろうか。……いや冷静に考えると彼女は英雄『セミラミス』を模られているとはいえ、それは知識だけ。俺の前にいるセミラミスは正真正銘の未経験。そんな彼女がいきなり男とベッドの上に放り込まれたら、そら迷走しますわ。

 

 ここは俺がしっかりとリードする必要があるか。

 

「とりあえずベッドの上で正座も変だし、足を崩して楽な体勢になろうか」

 

「楽な体勢、楽な体勢……あああああ、足ってどうやって動かせば……」

 

「あぁ、もう俺が伸ばさせてあげるから」

 

「わわわわぁっ!きき、き貴様ぁっ!誰の許しを得て触れている!?」

 

「うっさいキスすんぞ」

 

「きしゅぅっ!!?」

 

 玉座の間での初体験を思い出したのか、ボボンとホットチョコレートになって黙ってくれたセミラミスの足を伸ばし、お互い楽な姿勢で横に並ぶ。こっち見るのは気恥ずかしいのか、背を向けているセミラミス。うん、うなじまで真っ赤。

 

「すまぬ……」

 

「どうしたのさ」

 

「貴様に告白し、カルデアに仇なし、それを止められて、命も救われ、マスターの物になると誓った筈なのにこの体たらく」

 

 ポツポツと絞り出すような声量でセミラミスが語り出す。その表情はこちらからは窺う事は出来ない。

 

「べ、別に……貴様とそういう事をするのを嫌というわけでは断じてないのだ……!ただ、わからなくなったのだ。どういう風に振る舞えばいいのかを」

 

 いきなり青姦はハードルが高かったのか、いや屋根がついているテラスだから青姦ともいえないか……。けど、BBちゃんの言葉を信じるなら基本的にこの部屋で再現されるのは相手方の望んだシチュエーション。なら場所というよりは性行為そのものに戸惑っているのかな。

 

「人をお風呂に誘ったり、熱烈なプロポーズをした後に媚薬漬けにしようとしておきながら、ここでヘタれますかセミラミス様」

 

「う、うるさい……」

 

「ま、ありのままに振る舞えばいいさなんて、ありきたりな台詞を言うつもりも無いよ。それが今の貴女に一番難しいって事も良くわかってるし……」

 

 彼女のうなじを視姦するついでに掻き分けていた黒髪を指で梳く。深く色っぽい溜息が聞こえる。

 

「セミラミスがどうなりたいかはこれから一緒に探していこう。時間はいっぱいあるんだし、そして今からする事に関してもあまり焦らずイキましょう。こっちも時間はたっぷりあるんだから」

 

「ひゃ、ひゃいっ!」

 

 ベッドの上で背後からセミラミスを抱き締める。二の腕に触れる柔らかい乳房の感触が俺の興奮を煽ってくる。上ずった返事を返したセミラミスも抵抗する素振りは無い。

 

「それに言ったよね?セミラミスっていうチョコを戴きに来たって。せっかくのバレンタイン、今日ぐらいは難しい事、考えずに俺に食べられて欲しいな」

 

 耳元でそう囁き、ブンブンと首を縦に振るセミラミスの可愛さに鼻血が出そうになったチョコだけに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、食べるというのは何も比喩表現ではなく。言葉の通り、俺はセミラミスの体を唇と舌で味わい尽くすつもりだった。

 

「ふぅ――、ふぅ――……これで、いいのだな?」

 

 豪華絢爛な漆黒のドレスも無い、生まれたまま、ありのままのセミラミスが極上のデザートとしてベッドという皿の上に転がっていた。

 前を見せる勇気はまだ無いのか、うつ伏せのまま、興奮と緊張で呼吸を乱している。

 

 背後の俺に不安そうに向けるその流し目も、長髪のカーテンの奥に隠れている首から伸びるうなじも背中も腰も臀部も太腿も脚もシミ一つなく、俺の前に拡がっていた。

 

「うん、これからセミラミスの体を余すところなく、しゃぶり尽くすから」

 

「言い方が変態臭いぞ、愚か者……」

 

「じゃあ、ペロペロします」

 

「より酷くなったわ」

 

 覚悟を決めたのかセミラミスは逃げる事はしなかった。うぅむ、しかしエッッッロいなぁ……。一緒にチョコ作りに励んでいた時はいかにも王様系サーヴァントって感じだったけど、こんな無防備でいじらしい格好を晒されると俺の中のお竜さんが限界突破しちゃうんですけど。ムクムクっと文明開化の音がするんですけど。

 

「じゃあ、いくよ」

 

「……あぁ」

 

 彼女からの許しを得て、まずは左脚を持ち上げる。綺麗に手入れされた足の指を目の前に持ってくる。匂いを嗅いでも甘い香りしかしない。うん、まぁ、基本的に好きな娘達の体のどこを嗅いでも臭いだなんて思った事ないな俺。

 

 おっと、いつまでも鼻を鳴らしているから、羞恥心でセミラミスちゃんが泣きそうになっているのでさっさと事を始めるとしましょうか。

 

「はぁむぅ」

 

「~~ッッ!!」

 

 まずは前菜として親指からハムハムと口元に含ませる。チュパチュパと赤ん坊のように吸い付く音を響かせるとシーツを思いっ切り掴んでいるセミラミスが悶えている事がわかる。

 

 え――、まだスタートダッシュもいい所ですよ?ここで悶絶してたら、簡単に気失っちゃうと思うんだけど。……ま、いいか気絶したら、また快楽で起こせばいいもんね!(論理的思考)。

 

 親指の次は人差し指、中指、薬指、小指と順繰りに指をしゃぶり尽くしていく。指の間も舌でスライドさせるように入念に。

 

「んっ、んっ、ふぅ~~……!!」

 

 しかし、甘い。凄く甘い、セミラミスの体は。基本的に他の女の子の体を舐めた時も甘さは感じるがあれはどっちかというと汗も混じった甘じょっぱさ。それはそれで非常に美味なのだが、ポテトチップチョコレートみたいで。

 

 だがセミラミスの体は元チョコレートのせいなのか甘味度100%。まるでチョコバーをしゃぶっている気分にもなった。まぁ、かわいい女の子の体はお砂糖、スパイス、ステキなものをいっぱい、それにケミカルエックスで出来ているとも言いますし?別段不思議でもないか。

 

 声を押し殺して、足をピンと伸ばしながら痙攣しているセミラミスを眺めながら、今度は足裏、土踏まずを舌先でチロチロとくすぐるように舐める。

 

「んんんぐぅっぅぅぅっ!!」

 

 うぉ、すげぇ反応。実は足が性感帯?両手で恥ずかしい声を出さないように口を塞いでいるセミラミスはそれはもう凄い勢いで髪を振り乱していた。

 

「れろぉっ……うん、やっぱり凄く甘いなセミラミスの体は。チョコの女帝様だからかな?舐めれば、舐める程、美味しい体液が滲み出る感じ……はは、やっぱ甘い物を食べると頬がにやけちゃうね」

 

「んっ、ふぅ!……解説をするでっ、なひぃっ!」

 

 足を舐めるってのは服従行為の意味もあって、それこそイメージ的にはセミラミスにぴったりなんだろうけど、こうやってうつ伏せで足をしゃぶられてビクンビクンしているのを見ると支配されているのは果たしてどっちなのだろうか……ふぅむ、セミラミス様ってば男の興奮を掻き立てるのが上手なお人!

 

 セミラミスの足を大事に抱え、下へ下へ舌でどんどん舐め降りていく。太腿、膝、膝裏、ふくらはぎ、女の匂いと甘味を醸し出す彼女の足を涎まみれにしていく。

 

「あぁっ……はぁ、はぁ――……はぁ――……はぁ――、し、ぬ……」

 

 両足全てを唾液まみれにした頃にはまるで彼女は一通りの情事が終わってしまったかのようにぐったりしていた。

 

 えぇ……まだオードブルが終わっただけなんですど。

 

 

 ◇マスターフルコースメニュー

 オードブル(前菜)――足

 スープ――脇・背中

 魚料理――耳・首 

 肉料理――乳房・腹部

 主菜(メイン)――女性器

 サラダ――手

 デザート――臀部・尻穴

 ドリンク――唇

 

 ――後、7つかな、お前はセミラミス?

 

 まぁ、それでも余裕の無い感じの方が結構そそるし、これはこれで悪くない。

 ツツッと背中の中心部分を腰からうなじにかけて、舐め上げると覚醒したかのようにまたセミラミスが大きく反応する。

 

「ひぅぅっ!ん、あぁっ!」

 

 ジグザグに何度も執拗に彼女の背中を舌でペッティングしていく。掴んでいるシーツはもうクシャクシャになっていた。往復する度にセミラミスの体は強張り、電撃を打たれたような反応になる。

 

「んっ、んっ!んっ!んぅっ!!」

 

 枕に顔を押し付ける彼女の顔は見えないが、体の反応とそこから漏れ出る甘い声が俺の想像力をかきたててくれる。無防備な背中を晒している羞恥心と快楽に震えているのだろうか。あぁ、その反応がとてもいじらしい。もっと辱めたいと男の性が膨れ上がる。

 

「ま、まてぇ、そこはぁっ……あひぃっ!!」

 

 今度はがら空きな脇に顔を突っ込む。もわっと蒸れた雌の匂い。だが彼女に限ってそれは生々しいモノではなく甘いモノだった。ここもスイーツなのか女帝様は。

 

「お願い、まてぇ……あっ、ひぅっ!匂い嗅がないでぇぇっ……!」

 

「あぁ、凄い。今まで嗅いだ事の無い女の匂いだ。セミラミスだけの匂い……んちゅるぅぅぅ……」

 

「んんぐぅぅっ~~!!」

 

 手入れされたそこに痕が付くぐらいに吸い付き、味見を行う。彼女の汗と俺の唾液でトッピングされた窪みはまるで第二の女性器のようで俺の口を離させる事は無かった。

 

 口では嫌がるセミラミスも体で俺を突き放す事はしない。どんなに恥ずかしくても俺の行為を受け入れてくれる決意の表れか、あるいはその余裕すら無いのか。

 

 素早く細かく、脇を上下に舐めまわすとセミラミスの体が面白いぐらいに震える。足だけが性感帯かと思いきや、どうやらこの女帝様は全身が性感帯のようだ。

 

 チュッ、チュッとキス痕を両脇にいくつも残す。この最高のチョコレートは自分の物だと証明するように。

 

 俺の口淫はどんどん上に登っていく。乱れた黒髪を掻き分け、隠れたうなじと首に口を付ける。

 

「ふぅ、ふぁっ……んぅぅぅぅぅっ♡」

 

 彼女の顔は枕元から未だ上がらない。歯型をつけるように甘噛みをすると甘い嬌声が漏れていた。もしかすると、敏感肌というよりは口でされる行為に感じてしまう性質なのか?元々がチョコだったから?

 

 それを確かめる為にも首筋を弱々しい力でガジガジと齧ると返ってきた反応は顕著だった。

 

「んぅっ♡ んふぅぅっ♡ んんんんぅっ♡」

 

 枕のシーツを噛んでいる彼女の顔を覗き込むと完全に蕩け切った瞳で必死に声を押し殺していた。俺が覗き込んでいるとわかると恥ずかしそうに枕に顔をうずめる。

 ただ、俺としてはそろそろ、彼女の声もはっきりと聴きたい所。

 

「枕から顔、上げてくれてもいいんじゃないかな?」

 

「む、むり……だ……。こんな恥ずかしい声……」

 

「セミラミスの体だけじゃなくて、声も全部味わいたいんだ。こうやって隠されるとちょっと寂しいな……」

 

 自分でもずるいとわかっているが耳元で悲しそうに囁くと迷っている雰囲気が伝わってくる。

 

「貴女の体も反応も声も心も全部欲しいんだ……。お願いだよ、()()()()()()()()()()()

 

「んふぅっ!!」

 

 ふぅっと息を尖った耳に吹きかけ、催淫するように囁き続ける。

 

「俺に食べられちゃってる声、もっと聞かせて欲しいな、れろぉ……」

 

 舌で耳の中を犯すと「あ♡ あ♡ あぁ♡」と可愛らしい反応が返ってくる。カニバリズムというのと少し違うかもしれないが、俺に捕食されているという実感をより強く覚える程、彼女は興奮を覚えるらしい。

 

 ダメ押しに耳たぶを少し強く噛んで、達したセミラミスはようやく観念してくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひゃあ♡ あぁっ♡ あぁぁっ♡」

 

 先程まで埋めていた枕から顔を上げ、開放された口から自分でも信じられないぐらい媚びた声が出ていた。

 

 後ろからマスターに組み伏され、耳を噛まれ、舐められ続けている。

 

 体液を味わうように丁寧に耳の中をほじられると頭の中が馬鹿になる。

 耳たぶや耳の端を噛まれると子宮が熱くなってしまう。

 

 自分がこの男に食べられる只のデザートに過ぎないと実感すればする程、興奮と快感が止まらない。

 

「はぁぁっっ! あぁっ、あああぁんぅ♡ 脳みそもぉ、犯されてぇぇっ……! んひゃああぁっ!!」

 

 今やチョコの体ではなく、彼の魔力供給によってサーヴァントとしての霊基を得た我ではあるが、少し妄想してしまう。もし、チョコの体のまま、この人に捕食されてしまったらどうなるんだろうと。我が肉体が彼に砕かれ、口の中で転がり、喉を通し、胃で消化され、マスターの一部となる。

 

 想像した瞬間、恐怖……そしてそれを遥かに上回る性的興奮を覚えていた。いくら元がチョコだったとはいえ、この思考は猟奇的過ぎると自覚しながらも。

 

「あっ、あぁっ、あはぁぁっ♡」

 

 ピチャピチャと我の鼓膜の中で彼の咀嚼音のようなものが響き渡る。脳みそがふやけ、白痴のように喘ぎ声を垂れ流す。

 耳を噛まれたまま、引っ張られると娼婦のような悲鳴をあげ、耳の中で口付けをされるとアソコから愛液が溢れ出てしまう。

 自分が只の被食者だという事をわからされる。

 

 だけど、堪らなく気持ちイイのだ。このまま自身の肉体を彼が貪ってくれているのは。このまま肉体全てがマスターの胃に収まってもいいと思ってしまうぐらいには。

 

 まぁ、共に生きる事を決めてくれたマスターがそんな事を許すとは思わないが。

 

「あんぅ」

 

 気づけば、我の体は仰向けにさせられていた。生まれたままのセミラミスという女の肉体、乳房も秘部も全て。散々変態的な事を考えておきながら、彼の瞳に自身の肉体が曝け出されている事を自覚すると頭が熱暴走を起こしそうだ。

 

 それでも、彼に食べて欲しいという欲望から隠す事はしない。

 

「凄く美味しそうだよ、セミラミスの体。特にこの乳房、まさに肉料理って感じだね」

 

「……女の体に対して使う表現ではないだろう……」

 

「はは、ごめんて。それだけ魅力的って事で。生で齧り付きたくなるぐらいには、さっ」

 

「んひゃああああぁっ!」

 

 胸の先端に彼が吸い付くと、全身が歓喜に震えあがった。ピンと張り詰める筋肉は油断するとつってしまいそうで――。ただ舐められているだけ、特別な魔術も薬も使っているわけではないのに、その行為だけで我は簡単に壊される。

 

 セミラミスとしての女帝の矜持も。

 チョコの女帝としてのかつての自分も。

 

 取り繕った殻の中から出てきた自分という雌をマスターの口の中で弄ばれているこの感覚にいつまでも浸りたい。

 

「ちゅぷ、ちゅむぅ……ぅん、ホワイトミルクとかは出てこないか……」

 

「あっ、はぁっ……わ、我の肉体を何だと思っているのだ、母乳など出るワケがなかろう」

 

「あ――けど、妊娠したら出るようになるよね」

 

「なぁ!?き、貴様は我を孕ませたいのか……!?」

 

「おや、俺にプロポーズしてくれたセミラミス様から出た言葉とは思えませんね。うん、それはもう身籠らせたいよ。ボテ腹のセミラミスを犯して、搾乳したいね」

 

 くっ、こやつはまたそんな屈託ない瞳でそのような事を――!

 

 ニコニコと笑うマスターはその未来を示唆させるように我の腹部を舌で大きく舐めまわした。それだけではない、円を描く涎の軌跡は中心部、臍へと到達し、舌先でその中をほじくり出した。

 

「ひぃぃぃっ♡ あぁんぅ! ああぁはぁっ! や、やめぇっ、そこグリグリひたらぁぁっ♡」

 

 臍に挿入された我は背中を浮かして、性感帯を無理矢理拡げさせられていくようだった。体の表面も内部も、マスターにどこを弄られても感じてしまう愛玩菓子へと開発されている。

 

「ぽっこりとここが膨れたセミラミスから……」

 

「ひんぅ♡ はぁぁっ……♡」

 

 あぁ、止めろ、囁きながら、お腹を舐めるな……。甘い声が止まらない、想像してしまうだろう……お前との子を授かった自分の姿を……。幸せそうに膨らませた腹を撫でる女の我をぉ……。

 

「だらしなく噴き出すミルクをちゅぅぅって」

 

「んぁあああああっ!!」

 

 ねっとりと未来予想図を聞かせるマスターに再び乳房に吸い付かれると本当に乳が出ているのではと錯覚してしまう。乳輪が膨れて、乳首が硬くなり、我の肉体が彼に食べやすい卑猥な形に勝手に変貌していく。

 

「あっ、はあぁぁっ♡ そんな、駄目だぁ♡ 何度も何度もおっぱい、ちゅぅちゅぅ、したらぁっ……んぁあああ♡」

 

 マスターの服を皺になるぐらい強く掴み、快楽に翻弄される。生温かい舌が半球の上を我が物顔に這いずり回り、その先端へと喰らい付く。揺れる乳肉はプリンのように彼の食欲を誘ってたのかもしれない。

 歯で淡いピンク色のチェリーを噛まれると我の思考回路は簡単にスパークする。

 

「はぁっ! あぁっ、あああぁっぁっ♡」

 

「その為には先に俺のミルクをここにいっぱい注がないとね」

 

 トントンと舌先で下腹部、ちょうど子宮がある所をノックされた我はそれだけで簡単に達してしまった。激しく出てきた愛液の水しぶきは容赦なくマスターの顔にかかる。

 

「うん、やっぱりこれも甘い」

 

 顔にかかった愛液を嫌がる事なく、舐めてくれるマスターに我の子宮はどんどん降りていく。早く早く彼の子を身籠りたいと訴えるように。

 

「さて、散々焦らしたし、そろそろメインディッシュといくかな」

 

「あ――」

 

 もっととだらしなく両脚を開かれる。男の全てを受け入れる淫靡な体勢。なのに嫌悪感は一切湧いてこない。ここに、我の一番大事な所にマスターが口を付けてくれるという期待感しか頭に無い。早く食べてと女陰も媚びるようにヒクついていた。

 

「うわぁ、ここの匂いも凄い。ニヤけちゃうぐらい甘い香りがするよ。それに涎が止まらなくなってるね、セミラミスのここ。食べられる側なのにさ」

 

 鼻を近づけて、品評するマスターに限界が近づく。確かに立場はあべこべだが、おあずけされた犬のような気分。早く早く早く!口を付けて!舌を入れて!膣内を舐めまわして!吸って!噛んで!飲んで!待ちきれない本能が暴れ出す。M字開脚中の我はその想いを吐露するように下腹部に手を添え――。

 

「……めしあがれ」

 

 しおらしく誘った。

 

「それはズルい」

 

 意図したわけではないがマスターの反応を見る限り、この誘い方が一番深く響いたらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ストロベリー色のプルプルと震える媚肉。舌を射し込めば、溢れ出るロイヤルゼリー。蕩ける甘さは舌鼓を打たせてくれる。セミラミスの体はきっとスイーツで出来ていた――。

 

「あっ♡ はっ♡ ああぁっ♡ だ、だめぇ、駄目だぁっ♡ 水が出過ぎて、ひからびちゃぅぅんんぅぅっ♡」

 

 想像して欲しい。黒髪エルフ耳ボンキュッボンの傲慢系女帝様が自身の唾液でビチャビチャになった裸の姿で女性器を開きながら、照れつつ「めしあがれ」なんて言われた日を。

 

 おいおい瞬殺だよ。と理性はエロまつり状態。セミラミスの股座に勢い良くしゃぶりついても誰も文句は言えないだろう。

 

 止めどない彼女のラブジュースファウンテンは喉を乾かせる事は無い。うん、やっぱりセミラミスの愛液はあんまい。めっちゃ甘いのにくどくないこの感じ。この世界が料理漫画なら今すぐにでも俺の服はビリビリに引き裂かれていただろう。おはだけ!

 

「あっ♡ イク♡ また、イ、くぅっ♡」

 

 5秒に1回のペースで軽くイってしまっているセミラミスは恥も外聞もなぐり捨てて俺の顔を潮で汚す。特に膣内の入り口近く……Gスポットの部分を何度も舐め上げると狂ったように尿道からシャワーを噴き出してくれる。

 

「んんぅひぃいいいっっ――♡」

 

 チョコの女帝として生まれて間もない彼女のこんな乱れ姿を知っているのは自分だけなんだろうなという優越感がクンニリングスをより激しくする。

 

 下品な体勢を維持させるように太腿を抑えつけて、足は開脚させたまま。

 子宮口まで届きそうな舌は洪水中の膣内を何度も往復する。舐めると同時にずじゅるるるるぅうううっとエグい水音を立てて嚥下させる。

 少し飲み物が欲しいと思ってた所だったので丁度良かった。セミラミスの事も気持ち良く出来るし、一石二鳥である。

 アルコールじゃ、なかなか酔えないけど、好きな女の子のラブジュースならいくらでも酔える。

 

 喉を潤わせた俺の目の前にはプックリ腫れあがったクリトリス。まるでショートケーキに乗っているイチゴのようで、早く食べて欲しいと自己主張するそれに視線を送るとセミラミスの瞳が期待と不安に染まっている。

 

「ひ、あっ、待て……いま、そこ食べられたらぁぁっ――……んきゅぅぅっ!!」

 

 こういう時の女の子の「待て」程、意味がないものはないよね。けど、「まて」もそうだけど、「駄目」とか「止まって」とか言っている女の子を犯すのはドチャクソ興奮します。というわけでいただきます。

 

「んあああああぁぁっ!! あっ、ああぁっ♡ とま、とま、れぇぇっ♡ これ、はまずぃいいっ……刺激がぁっ、つよすぎだぁぁぁっ♡」

 

 一口サイズになってくれた陰核をコロコロと口の中で弄び続ける。唇で軽くハムるだけで、セミラミスの愛液の量と痙攣っぷりが凄い事になってる。

 

「ひょっほ、ふよへふはぁいろほうはひもひいい(ちょっと、強めぐらいの方が気持ちいいい)?」

 

「んひい゛い゛い゛い゛い゛い゛ぃぃっ!!」

 

 アクメは口ほどに物を言う。ンッン~、名言だなこれは。

 溺れるぐらいに溢れるラブジュース、()欲をそそらせるストロベリーヴァギナ、そして口を離したくなくなる中毒性を持ったイチゴのクリトリス。。

 味覚だけではなく、セミラミスの痴態が視覚と聴覚に訴えかけ、彼女という料理をより極上の物にしてくれる。

 

 淫芽をベロンと舐め上げた後には女性器周りの鼠頸部、下腹部にもいくつもの歯型を残す。行儀の悪い食べ方かもしれんが、女陰の反応を見る限り悦んではくれているそうだ。

 

「んあぁっ♡ ああああぁっ! はっ、はぁぁっ……あぁっ、貴様に我という女が齧られて、飲まれて、食べられてぇ♡ ひゃああぁっ!」

 

 嗅いで、舐めて、吸って、飲んで、齧って、セミラミスの雌食卓の上にあるメインディッシュ(女性器)をたいらげていく、鼻と舌と顔を触れる生のセミラミスの感触は俺を飽きさせない。

 

 俺はしっかりとスイーツなアワビをお残しなく完食する(彼女が気絶する)まで、食べ(責め)続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 指を包む生温かくてどこか安心する感触に目が覚める。

 

「んっ、んぅ?んんんぅっ!?」

 

 寝ぼけ眼だった我の睡魔を吹き飛ばす新たな快感の強襲にすぐに意識を覚醒させた。

 隣に目を向ければ、気をやっていた我の右手の指を赤子の如く吸っているマスターの姿があった。

 

「き、きさま、んぅ♡ どれだけぇ、あっ♡ ……我の体をぉ……ひゃ♡ 食べたいのだぁっ♡」

 

 恨みがましい瞳を向けようにも声が簡単に桃色に染まって全く締まらない。もう我の体――細胞全てが彼に食される事を悦んでいるようだった。

 

 彼は宣言通り、我の体全てを口淫するつもりだろう。いや、口淫だけではない、その先――愛し合う男女が通じ合う手段……性交。

 

 我の指を丹念に舐めているマスターのアソコがズボンの上からでもわかるぐらいに膨れ上がっているのが、自分の体を食した事で興奮を覚えている証明になって嬉しくなってしまう。

 

 元菓子という不出来な体でも彼はアソコを反応させてくれている事実にどこか安心を覚えていた。

 

 ツツ……と指をしゃぶっていた舌が手の平、前腕、肘、二の腕と登ってくる。くすぐったくも心地良い感覚。雄を感じさせる湿っていて暖かいその生の感触は恥ずかしさ2割、嬉しさ8割と我の頬を緩ませてくれる。

 

 緩やかな口淫。腕を往復して唾液まみれにした後は手の甲に何度もキスをされた。

 

「ふっ、ふふふ……」

 

 喘ぎ声ではなく、笑みが零れてしまった。自分でも驚くぐらいに穏やかな笑みだった。彼のキス一つ一つが我を大事にしてくれていると教え込んでくれる。堪らなく幸せだった。彼に捕食される食べ物としての幸せと彼に愛される女としての幸せ。その両方を贅沢にも与えられてしまっている。

 

 既に全身のあらゆる所が彼の唾液によってコーティングされている。いや、あらゆるは語弊があったか。まだ舐められていない所があった。

 

「もう一回、うつ伏せになってもらおうかな……」

 

「ぬっ、貴様……我にこんな屈辱的な格好を」

 

 口だけでは未だ女帝ムーブをしているが行動は完全に従順になっている。マスターの意図を直ちに察し、彼の眼前に尻を突き上げた服従の体勢。これが「口では嫌がっていても体は正直だな」というやつなのだろうか。

 

「美味しそうなピーチだ、果汁が吸いやすいように可愛らしい穴も用意されて、サービスが行き届いているね」

 

 いやらしい言葉で臀部を品評するマスターの手は艶めかしく尻肉を揉み込んでいく。食べる前の仕込みと言わんばかりにモミモミと。

 屈辱的な格好をさせられて、恥ずかしい菊門をバッチリと見られてしまっている。

 セミラミスとしての我は羞恥と屈辱に震え、チョコとしての我は歓喜と快楽に震えている。

 

「せっかくのデザートなんだし、かぶりついてもいい?」

 

「好きにせよ……どうせ、我に選択権は無いのだから」

 

 もはや触られるだけでは満足出来ない。愛しきその口で。我に口付けをしたその口で。我に命を与えたその口で。我の体を散々嬲ったその口で。捕食して欲しい。

 

「んおぉっ♡」

 

 硬さと湿った柔らかい感触。そして鋭い刺激。見なくとも、マスターが我の尻肉に齧り付いた事がわかった。

 

 ――がじっ、がじっ、がぷっ、がぷっ、がぶりっ

 

「あぁっ♡ はあぁっ♡ んぅ、んぉ♡ んぉぉぁあっ♡ そんな、何度も何度もぉっ! かじり、つくにゃああぁっ♡」

 

 ついぞさっきまでは言葉だけでも女帝の威厳を示そうとしていたが、口で責められてしまえばすぐこれか。本当にチョロ過ぎる……心身共に彼にまいってしまっている事を痛感するな。

 

 二つに分けられた我の尻肉を左右から均等に様々な方向からマスターは齧っていた。皮膚から出る我の体液をすすろうとする下品な音を立てながら、デザートとやらを楽しんでいる。

 

「またアソコからラブジュースぼたぼた零れてるけど、お尻責められるの好きなの?あむぅっ……」

 

「ひっ、あっ、あぁっ、し、知らぬ、しらぬぅひいぃっ♡」

 

「そっか。じゃあここからチューチューすれば正直になってくれるのかな」

 

「んっ、あぁっ、やめよ……そんな所、んんほぉぉぁっっ♡」

 

 臀部に散々歯型とキスマークを付けて満足したのか、間髪入れずに尻穴にニュルニュル入って来る異物感。間抜け面を晒して、王とは思えない嬌声を響かせる。蛇の如く這う彼の舌は入って、舐めて、出て、舐めてを繰り返して我のアナルを受け入れやすいように拡張し、開発していく。

 

「きたにゃい、きたにゃいからぁぁっ、あはぁっ♡ やめよぉぉっ……んぉおおぁっ♡」

 

 本来性行為には不必要な排泄器官を舌でほじくられて、禁忌を犯している背徳感が我の心を支配する。そんな汚い所を舐めないで欲しいという真っ当な乙女心とそこも含めて愛して食してくれている事が嬉しい雌の心。

 

「んぉぁっ♡ んんひぃっ♡ おおぉっ♡ んんんほぉぁっ♡ あぁぁっひぃぃっ♡」

 

 尻穴周りのシワ一本一本を丁寧に伸ばすように舐められ、またアナルに挿入される。

 下品で獣のような恥ずかしい声が壊れたラジオの如く再生し続ける。数センチ程度の舌たった一つで我の体全てを支配されていた。

 

「んちゅ、れろっ、んちゅるぅっ、ちゅぱぁっ……すごいやセミラミスの体、ここも滅茶苦茶美味しい……んずゅりゅぅぅぅっ」

 

「んひぃぃっっ♡ あああぁっ……アナルでこんにゃに気持ち良くなってぇぇっ……♡ 女帝なのにぃ、我は女帝なのにいぃっ……んぉぉぁぁっ♡」

 

 自身もベロンと舌を垂らし、もはや息が出来ないぐらいに悦楽の悲鳴を上げるしか能が無い哀れな餌に過ぎないのが我だった。お尻を突き上げる力も刈り取られ、マスターの手で無理矢理持ち上げられている状態だった。

 

「ひっ、ああぁっ♡ んぁおっ、イく、イクッ、尻穴ベロベロされながらぁっ、んほぉぁぁっ♡ アナルたべりゃれてぇ、イッてしまうぅぅっ♡ ますたぁぁっ、ますたぁっ♡ んおおおぁっ♡」

 

「じゅずぅぅっ……いいよ、恥ずかしい所舐められて、恥ずかしい顔になって、恥ずかしい声出して、俺にしか見せないセミラミスだけのアクメ見せて、んじゅりゅぅぅぅっ……」

 

「ひぃぃんお゛お゛お゛ぁぁぁああっ――――!!」

 

 菊門にディープキスをされたまま、思いっ切り潮を吹き、今日一番で大きい絶頂を披露した我は情けない体勢のまま、ベッドに身を預けた。

 

 ……これでさらに次は本番があって、時間も一週間程あるのだろう?命を戴いた矢先なのだが、我、本当に死んでしまうかも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ようやくこの窮屈だった服を脱ぐ事が出来る。特に下半身。セミラミスの全身をペロペロするにあたって俺の肉棒は限界だった。パンツどころかズボンさえも突き破ってしまいそうなぐらいに、いやホントカルデアで支給された頑丈な服で良かったです。

 

「わぁっぁっ……で、か……」

 

 セミラミスを完食する為の下ごしらえは完了。処女とは思えない程に痙攣している媚肉は彼女の表情と共に何かを待ちわびている。

 

「綺麗だ……マスターアソコの形は……。思わず、チョコで模ってしまいたくなるぐらいに」

 

「あぁ、もうやってる娘はいるわそれ」

 

 シータとか「ラーマ様にマスター製チョコバナナを衆目がある場であーん。どこか見覚えのある形、だけど食べ物に対してそんな卑猥な事を考えているとは思われたくない羞恥心を堪えてそれを頬張るラーマ様!ビバ!バレンタイン!!」って興奮気味に俺のアソコをモデルにしてたから。後でラーマの写真を分けてもらう事にしたけど。

 

「てか、綺麗て」

 

「ふっ、貴様も散々、我の体を賞賛してくれただろう。お返しだ」

 

 とにもかくにもお互い体は後戻りなんて許されない程に燃え上がっている。

 このセミラミスを産んでくれた『セミラミス』に、セミラミスと出会う事が出来た幸運に、そしてセミラミスの全てにありったけの感謝を込めて手を合わせる。

 

「では、いただきます」

 

「あぁ、くるがいい……」

 

 まずは亀頭と膣口の軽いキス。セミラミスはそれだけで跳ね上がりそうになった下半身を懸命に抑えているようだった。ズブズブとこの世に生を授かって一年すら満たないセミラミスの初めてを奪う為、膣の洞窟を開通させていく。

 

「んんんぉぉぉああああ♡」

 

 奥へ奥へとそのドリルが進んでいく度に祈るように両手を握っている彼女は舐められていた時と同じように瞳を蕩かせる。

 

「滅茶苦茶締めつけてくるよ、セミラミスのおまんこ。そんなに俺のアソコ食べたかったの?」

 

「ち、ちがうぅ、我が食べているのではな、いぃっ……あひっ♡ 貴様がぁっ、我の膣襞を舐めているのだぁ……その太いのでぇっ、んああぁぁっ♡」

 

「なるほど、その発想は無かった。じゃあこのまま子宮もパクパクしちゃっていいのかな?」

 

「あああぁぁあああ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁっ♡」

 

 俺の肉棒を舌と隠喩するセミラミスに応えて、子宮口をトントンと突く。結構浅い所にあったので期待した子宮が降りてきちゃったのかな?

 

「俺が前言った言葉覚えているよね。今からありったけの子種注ぎ込むから、子宮をドロドロに溺れさせて、膣内もゴリゴリ舐めて、セミラミスを本気で食べるからね」

 

「んぉぉおっぁっ♡ おおおぁっ♡」

 

 返答の代わりは子宮口の吸い付きだった。同意と受け取った俺は抽送を開始する。

 

 犯して、食べて、愛してやんよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 舌で責められてた時はこの世にこれ以上の快楽は無いと思っていた。しかし、そんな狭い我の思考を嘲笑うか如く、今極限の悦楽が我の体に襲いかかっていた。

 

「んぉっ♡ あぁっ、あああぁぁっ♡ なんだ、なんだこれはぁっ……! 我は……こんな悦びも知らずにぃ……死のうとしていたのかぁぁっ♡」

 

「悪いけど、俺と関係を持った以上はそう簡単には死なせないよ。墓場まで付き合ってもらうからっ……」

 

「あっ、あぁぁっ、うれしい、嬉しいぃっ!貴様はぁ……あなたはぁぁっ……我をそこまでぇぇっ、んひぁぁああぁっ♡」

 

 パンパンと腰を打ちつける音が、膣襞をグチュグチュ削る水音が、咀嚼音にしか聞こえない。

 我は今、文字通りマスターの男根に内部を食べられている。擦られる膣襞も亀頭にキスされる子宮口も全てはお菓子。彼がたっぷり味わってくれる為の捧げもの。

 

 ストロークの回数が増える度にまるで存在そのものが更なる次元に昇華されていくような幸福感。

 捕食されている我はマスターという毒に夢中になっていた。

 

「んんんむぅっ!? んんんっ!! んちゅぅぅっ♡」

 

 あぁ、幸せ過ぎる。このタイミングで唇を奪ってくれるとは。

 侵入して、我の舌を絡め取る蛇のようなキスが、あの時の事を鮮明に思い出させてくれる。

 

 カルデアに敵対し、無理矢理貴様を奪おうとした我を殺す毒の接吻。

 

「んんんぅっ♡ んんんじゅぅぅっ! じゅるるぅぅっ♡」

 

 パブロフの犬の如く、唇を重ねただけで我の体は簡単に絶頂を覚えていた。だが、あの時のように翻弄されるだけではない、今は自分から艶めかしくも絡ませる事が出来る。

 

「んむぅっっ、んじゅぅぅぅっ、んちゅむぅぅぅっ♡」

 

(あぁっ、あぁっ、ああああぁっ♡ すき、すき、これ、すきぃっ♡)

 

 上の口も下の口も喰いつかれ、上下から捕食されている。ベッドで上からマスターに逃げられないようにガッチリとホールドされている我に逃げる事は許されない。ヴァギナを極太ペニスで舐め回される事によって出る喘ぎ声はマスターの口内へと反響する。

 

 体だけではなく、体液も唾液も嬌声もありとあらゆる物を彼に捧げていると実感できるセックスが気持ち良すぎる。

 

 息が苦しかろうとも二人は唇も性器も離す事は無い。重ねた口で互いの嬌声を分かち合いながら、限界まで性交をする。

 

「んんんぅうっっ♡ んんんぁぁっ……! はぅむぅぅっ……! じゅるるるぅぅっ♡」

 

 空中庭園の中心で獣の如く交じり合う我ら。密着してる事で我の鼻腔をくすぐる彼の汗の匂いも高級食材の香りにしか思えない。これが惚れた弱みなのか、彼の色んな所が好きになってしまう。

 

 そして、さらに加速する腰の動きでその時が来たと察する。さらに膨らみ膣道を押し広げるペニス。

 我は最高の瞬間を最高の体勢で受け入れるべく、四肢を彼の体に絡める。

 

「んんんぅっ♡ んんんんぅ♡ ん゛ん゛ん゛ぅぅぅっ♡ んんんぅっ♡」

 

 食べて♡食べて♡食べて♡と訴えかけるように彼の舌と歯茎に舌を絡め伸ばす。口の端から零れた二人の唾液が頬をつたうのが心地良い。

 

 あぁ、くる、くる、くる、きてしまうぅ♡

 

「んん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ぅぅぅぅぅぅぅっぅ――――――…………!!!」

 

 子宮口をこじ開けてマスターのザーメンが飛び込んでくる。より深く射精しようと腰を突きだし、抱き締められるとそれだけで昇天してしまいそうになる。

 

 濃厚なザーメンが我の赤ん坊の部屋へと飛び込んできているのがわかる。孕まされているのだ。女帝たる我が人間の男の子に。

 そしてここで急に唇を解放される。マスターの精液を受け入れた快楽に酔いしれている我は本能のまま雌の声を叫び続ける。

 

「んんぁあっっ♡ ああぁぁっ!! はっっ、マスターのホワイトミルクが我の胎に注がれてぇぇっ……あんんぅうっっ♡」

 

 彼の腰はまだ止まる事は無い。射精しながら、あらかた射精してもなお萎える事の無い剛直を動かし続けていた。

 

「ひぃっ、んぉぉぁっ♡ 子宮でシェイクされてぇぇっ……! あっ、あっ、まだ動いてるぅぅ……マスターのホワイトチョコが我の中でミキサーにかけられてぇぇっ♡ んぉぁぁっ! あ゛あ゛あ゛ぁっ! 調理されてるぅぅっ♡」

 

 グチャグチャになった雌貌で、もう自分が何を言っているのかすらわからなくなっている。

 

「い、く♡ いく♡ またイ、くぅぅぅっ!! ますたあ゛ああぁぁぁっ――――!!」

 

 二回目の大きな絶頂。ようやくそこで体力の底が尽き、弛緩した我を見て、マスターの腰が止まる。

 

「すごかったぁぁ、本当にすごかったぁ♡ それしか感想が出ない、ぞ……♡」

 

「残り、6日。楽しみだねセミラミス」

 

「あぁ、私だけのマスター……」

 

 そのまま我らはしばし繋がりあったまま語り合い。死んだように眠り、一日を終えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

【2日目】

 

 その日は体を重ねる事は無かった。チョコの話、カルデアの話、仲睦まじく庭園内で談義する二人の姿があった。

 

 

【3日目】

 

 魔法少女プリズマ☆セミラミスの姿となって羞恥に震えながら男といたす。魔力供給と称して騎乗位でのイチャラブセックスプレイと悪の幹部に捕まっての凌辱プレイの二つを行う。一粒で二度美味しい。

 

 

【4日目】

 

 チョコのフィギュアを作って、競い合っていた。男の方は1/1000スケールで空中庭園を再現。セミラミス様は自刻像を造った。本当は途中まで男と寄り添うモチーフで像を造っていたが途中で恥ずかしくなり断念。

 

 

【5日目】

 

 駅弁の体位で空中庭園中の景色を観光する。頭がフットーしそうだよぉ……。

 

 

【6日目】

 

 庭園の花壇のベンチでセミラミス様は男に膝枕をして、語り合う。珍しくも穏やかな時間。

 

 

【7日目】

 

 もうセックスしてた。浅ましいぐらいにセックスしてた。セックスのゲシュタルトが崩壊するぐらいにセックスしてた。セミラミス様、噛まれて、舐められて、キスされてめっちゃ喘いでいた。何故か終わりの時間に空中庭園が崩壊してもその中でセックスし続けていた。クルッポー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ボ――。

 

 現実時間では一時間。『性神と妻達とチョコプレイの部屋』では一週間。淫靡過ぎる時間を過ごしたセミラミスは心ここにあらずでカルデアに戻ってきていた。赤く染まった頬、瞳の焦点は合ってない。正確に言えば色ボケってた。だから周りの突き刺さる視線にも気付かなかった。

 

「アッシリアの女帝……。今の貴女の姿は少々目に毒です。これをはおって下さい」

 

 突如声をかけられ、セミラミスはバサリとニトクリスにメシェド様風バスタオルを被せられた。

 

「目に毒……何を言っているのだ貴様は?」

 

「もう一度、自分の体を客観的によぉ~~く見て下さい」

 

 同じバビロンを支配した女王として語り継がれている情けか、そう忠告したニトクリスは頬を染めて、視線を逸らした。

 セミラミスには疑問符しか無い。格好?何を言っている?服も着ているし、別段おかしな所は――。

 

「なぁぁっ――!?」

 

 マスターの種火によって第三再臨まで果たし、露出度の高いドレスを着ているセミラミスの肌。胸元、くびれ、臍、首、顔、耳、おびただしい程の歯型とキスマーク。誰がつけたかなど、周りの人間は言われるまでもなく察し。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あぁぁぁっ――!!」

 

 ニトクリスにもらったタオルにくるまり、悲鳴を上げてセミラミスはその場から走り去った。

 

「愚かな……と言うのは酷ですか。同盟者との初めてなら、浮足立ってそこの所が疎かになってもあまり、責められませんね」

 

「ですが、今のセミラミス様の姿によって煽られてしまいましたね……。お預けされたままの方々が――、わかり切ってますし、恐ろしいので私は見ませんが」

 

 シェヘラザードの言葉通り、セミラミスの艶姿とそこから漂うマスターの匂いから瞳をギラつかせて、涎を垂らし、太腿を擦り合わせる女性が多数。これからマスターを捕食せんとシミュレーションに飛び込んでいくだろう。

 

 だが、今日はバレンタイン。あげる側が女性なら、当然食べられるのも女性の方であろう。

 

 ハッピーバレンタイン、全ての恋せし乙女に幸あれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




【チョコプレイに何とか挑もうとした女達の戦いの軌跡。その一部を抜粋】


《マシュ・キリエライト》

「デミサーヴァント時のギャラハッドさんの鎧をチョコで再現! これで条件クリアですね、先輩!!」

だが、不溶性を考慮しておらず、速攻溶けてしまう。肌に張り付いたチョコは責任持って綺麗にマスターが舐め取りました。

「マジでショックです! まぁでも先輩に全身を舐められて幸せだったので……OKです! (微笑み、力強く親指を立てる)」

草葉の陰でギャラハッドの涙の落ちる音が聞こえた気がした。



《清姫》

今度はチョココーディングした自分を食べてもらうだけではなく、全裸の自分にハケでマスターのお望みのままにチョココーティングしてもらう。そしてそれを食べてもらい、またコーティングの繰り返し。

「あぁっ! 自分の体を材料にして、旦那様に料理を御馳走してこその真の良妻! セミラミスさんは良いインスピレーションをくれました!」



《邪ンヌ》

シンプルにチョコのホールケーキ。ちょこんと乗ったマスターと彼女の人形が可愛らしく乗っかっている。

「は? 何よ? 前みたいな私の顔がプリントされた奴も食べてみたかったか?馬鹿ね、そんなもの食べなくても、ここに本物がいるじゃない」

そう言って、マスターの口に自身のメレンゲ人形を放り込んだ邪ンヌは死ぬほど犯された。



《酒呑&茨木》

「んっ、れぉぉっ……美味、甘美、そして悦楽ぅ……あんぅっばれんたいんとはまっこと心が躍る催しよぉぉっ、んじゅるぅぅっ♡」

チョコを口に入れたままお互いキスし合う。汚れた歯を歯磨きプレイで磨いてもらう。この縛りを心置きなく楽しんでいたのが茨木童子。

ちなみに酒呑はチョコを角に塗りたくられながら、角をエグいぐらいに手コキされていた。

「んんおおおぁぁっ♡あああぁ゛あかん、あかんよぉぉっ♡うちの角ぉぉ、あまくなってまうよぉぉっ、ああぁっ♡だんなはぁんぅぅぅっ♡」

茨木は若干、引いてた。



《ラーマ&シータ》

マスター型のチョコペニスバンドをつけたシータはラーマの口を犯し、マスターは後ろからラーマのアナルを突いた。

シータはマスターが射精する前にチョコペニスバンドを完食出来たら解放、食べ方は舐めるだけで齧って砕くのは反則。間に合わなかったらまた最初から口と尻穴を犯す……とちょっとしたゲームを設けた。

「んぐぅぅっ、んふぅぅっ、んじゅぅぅっ、んじゅ、ちゅむぅっじゅるるるるぅっ(これぇ、マスターのオチンポ、二つに犯されているみたいでぇぇっ……♡はやく、はやく舐め取らないとぉ、もう余の躰は限界なんだぁぁっ、これ以上出されたらぁぁっ……♡)」

「はぁっ♡はぁっ♡はぁっ♡可愛い、とても可愛いですよラーマ様♡私のアソコから生えたマスターのチンポを必死に咥えている貴方様の姿はぁっ……ほら、もっとじゅぽじゅぽぉって、動かさないとマスターのホワイトチョコがまた来ちゃいますよぉ」

結局、20回連続で失敗により、アナルに中出しをされ続けたラーマの失神で無効試合となった。




《セイバー・リリィ》

マーリンに今日だけ自身の肉体を魔術でチョコに出来ないか相談。

「え、死なないギリギリの範囲でマスターに食べてもらう為に決まっているでしょう。言わせないで下さい恥ずかしい。あ、後、青い私のアヴァロンを借りる事は出来ないですかね。再生して何度も楽しみたいので」

さすがに苦い顔になったマーリンに断られて断念。
平和的にチョコ浴槽四肢拘束ギリギリ窒息バック挿入プレイに落ち着いた。



《キルケー》

ん?どうしたいんだい、メディア。
これ、あぁ、大釜だよ。甘い香りが凄いだろう?
私はね、気付いたんだよ。男ってのは人形とかAIみたいな儚げでか弱い非人間とのロマンスを恋い焦がれていると。守ってあげたい系というやつかな?私みたいな女神の威光は只の人間には強いみたいだね。

うん、だから私はチョコに転生する事にしたよ。そしてマスターともう一回恋をして、種族の絶対的な差に絶望して、彼とぶつかり合って、結ばれた末のヒロイン力を手に入れるんだ! じゃあ、ドボンと釜に入るから30分ぐらいしたら引き上げてもらっていいかな。

や、ヤメロー! はなぁしてぇ!! だってズルいじゃないかぁっ、ポッと出のくせして、3話も使って! ヒロイン力が上限突破しているんだよぉ! だったら私もチョコになるしかないじゃないかぁっ! 鳴き声は「ちょこぉーん」でいいだろ! え、二番煎じにしかならない? 敗北者ムーブに磨きがかかるだけ? ハァ……ハァ……敗北者?








この後、メディアとメディアリリィも加えて、滅茶苦茶慰めックスした。





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ロスト・プラトニックⅠ(メイヴ前編)

新条アカネちゃんに夢中になっていたので投稿が遅れました。汚いマシュ、マシュ・オルタって言われたの少し笑った。


カルデアコレクションにてシトナイ(最終再臨エチエチ過ぎて獣ムーヴからのウコチャヌプコロ待ったなし)と謎のヒロインXX更新。

謎のヒロインXXは謎のヒロインXと別キャラとして扱います。セイバー絶対殺すウーマンとくたびれた行き遅れ成熟した女の躰持て余しOL感でキャラ分け出来るので。

後、カルデアコレクションにて、一度でもメイン回をやったら名前の後に○をつける事にしました。撃墜マークです。










 カルデアのマスターのマイルームにて、一組の男女がベッドで寛いでいた。

 

 珍しくシミュレーションルームではなく、通常の時間が流れる現実の空間。

 

 ――男の方は純情無垢に親しみを、時に熱烈な淫蕩を。ビースト候補生ことカルデア最後のマスター。

 

 ――女の方は清楚無垢に欲望を、時に悪辣な淫蕩を。コノートの女王こと恋多き貴婦人メイヴ。

 

 

 ベッドは何をする為の物?と聞かれたら平気な顔でスプリングでギシさせて異性をアンさせる為の場所ではと答えそうな二人。どちらもその性格上、経歴上、余人が見てしまえば、色恋沙汰からその先……性事情まで想像せずにはいられない。

 

 普通の男女どころかあのマスターと女王メイヴが二人でベッドイン、何も起きないはずがなく……と想像力を掻き立てられるモノローグで官能小説まっしぐらなシチュエーション。

 

『ギャアアアアアアアッ!!』

 

 しかしそんな桃色の予想を覆し、彼女が目にしているのは血腸ぶちまけるシーン。白いモコモコの熊型のフード付きのルームウェアを着ながら、チーズ味のポテチを片手にうつ伏せでゾンビ映画を鑑賞するメイヴ様の何と油断しきった体勢の事か。

 

 下は邪魔ぁ!と言わんばかりに下半身はピンクのレースのドエロい下着丸出しだったが、後ろにいるマスターもその美尻ではなく、フィクションの中の屍達の方に集中していた。

 

 甘い空気、エッチな空気未だゼロ!

 

「ねぇ、マスター。ゾンビ映画って最初の方は凄くワクワクするのに中盤以降からダレてしまうのが割と多い印象があるの、私」

 

「ある意味、ゾンビが現れてから日常が壊れるあたりピークだからね、一概に全部がそうだとは言えないけど」

 

「私、最初は怪物と戦っていたのに途中から、それが置いてけぼりになって人間同士の争いにシフトする展開きらーい」

 

「けど、極限状態で精神的におかしくなったイカレと戦うのは嫌いじゃない」

 

「たかだか人食い程度で潰れちゃうなんて現代の人間は脆いのね、間引いてあげようかしら?」

 

「英雄王みたいな事を言わないで欲しい」

 

「愛犬可愛さでバリケード壊すおばあちゃんもいるから、何を仕出かすかわからない点で言えば、最終的に恐ろしいのはやっぱり人間って結論に落ち着くのよね……」

 

「ババアインパクト」

 

「足の速いゾンビの方が緊迫感はあるわね。走っている車の窓ガラスに頭から突っ込んでくるシーンとかインパクトあるもの」

 

「そこまで来るとゾンビじゃなくて、クリーチャー的な別物になると思う。ワールド・ウォーZはそこらへん怖かったねぇー」

 

「もしゾンビに犯されたらどうなるのかしら?」

 

「何と薄い本的展開。ゾンビの強靭さと人間の優しさを持ったハーフなぁんてファンタジーな結末にはならないと思います。ていうか性器から感染してBADENDでは?」

 

「死後硬直でアソコ、滅茶苦茶硬そうよね……」

 

 益体も無い話をダラダラと。キュートなお尻を見せ付けながら、足をバタつかせるメイヴちゃんはポテトチップスを一つまみ。箸なんてお上品な物はつかいません。指についた塩をアダルトチックに舐めまわすまでがメイヴちゃんクオリティ。

 

 ぺろちんちょ、どっこいしょ。それでも二人はヤりません。

 

「ほほぉ、この状況でセックスですか。割と死亡フラグがたって……あっ、喰われた」

 

「情けないわねー。メイヴちゃんなら、男の上で腰振ったままゾンビの一匹や二匹ぐらい軽く殺すわよ」

 

「一般ピープルとスーパーケルトウーマンを比べちゃ駄目でしょ。それにしても、ホラーとかアクションとかラブコメとか案外ゾンビジャンルって幅広いよねー。最近じゃ、アイドルゾンビとかあるし、SAGAってすげー」

 

「まぁ、英霊がアイドルやるぐらいだし。けど、アイドル……アイドルねぇ、メイヴちゃんなら簡単に天下取ってしまうわね、きっと。グループ名は『チャリオット・ハイエース』とかいいかしら。あまねくファンの愛を攫っていてしまうメイヴちゃん!どう?プロデューサーとかやってみないかしらマスター」

 

「残念。既にエリちゃん率いる『カルデレラガールズ』のプロデューサーなのだ」

 

「えぇ――。いいじゃない――、私がアイドルの頂点に立つ様を舞台袖から見たいでしょ――。そもそも百股してるマスターが掛け持ちとか気にする?」

 

「まままままだ百いっとらんし」

 

 話はあらぬ方向に脱線。二人共特に意味があって会話をしているわけではない。だが気の置けぬ友人同士の雑談などこんなものだろう。もはや脊髄反射だけで行われている言葉の応酬。それでも二人の間には気まずさなんてものは微塵も無かった。ダラダラとダベっているだけなのに無性に居心地の良さを感じてしまう。

 

 人理が修復される前に召喚されたメイヴちゃん。カルデアの中では古参とも新参とも言わない中堅。マスターとの付き合いもそこそこ長いのに実はまだ一度たりとも肉体関係を持っていない。

 

 彼女を知る者なら、ハハハこやつめと笑うか、綺麗なメイヴ?メイヴ・リリィ……!?と戦慄するのどっちか。

 だが、今までもマイルームから出て来た二人からは性的な匂いは一切しなかった事がそれが事実であると物語っている。そもそもこのスーパーケルトビッチが情事において嘘をつく理由も隠す意味も無いであろう。

 

 ゾンビ映画に飽きたメイヴちゃんはごろんと仰向けに転がり、マスターから借りたラブコメ漫画を捲り始める。自然とその上半身は胡坐をかいていたマスターの膝の上になるのだが、不思議な事にまっこと不思議な事に甘いムードは漂ってこない。

 

「はぁ!?キムチ!?もう何よ!それどんな聞き間違いよ!こういうラブコメ漫画って男も女も肝心な所で精神疾患を疑うぐらいに鈍感になるわよね。いつまで経っても、うじうじうじうじ、迷惑がかかるからとか、彼女がいるからとか、今の関係が壊れるからとか、好きな癖になんで諦める理由ばっかり考えているのかしら?」

 

「身も蓋も無い事を言えば、恋愛小説とかラブコメ漫画って結ばれるのがゴールだから、商業誌である以上、そのゴールまであらゆる手を使って引き伸ばしにかかるのは定石なんじゃない?」

 

「愛や恋がビジネスで売り買いされるのね……悲しい時代になったわ」

 

「僕勉とか好きだけど、理系推し」

 

「マシュっぽいからでしょ」

 

「まぁ、皆好きだけどね!」

 

「知ってた」

 

「最近の主人公が乙女っぽくて何か可愛い」

 

「ホモかな」

 

「ホモちゃうわ」

 

「私は妹派よ。血の繋がった兄だろうが何だろうが好意を示していく積極的な姿勢は嫌いじゃないわ」

 

 漫画を読んでいる以上、唾液が付着した指でページを捲るなんて事はしない。親しき仲にも礼儀あり、訓練されたコノート国民なら大金はたいて購入しそうなメイヴちゃんの唾液だが、マスターの所有物を汚すなんて彼と()()()であるメイヴちゃんが行うワケが無かった。

 

 そう、ずっ友。親友。心の友。マスター・マイ・フレンド。

 

 何も言わず、目の前に差し出されたメイヴちゃんの指をごく自然にウェットティッシュで拭いてあげるマスター。そして、またページを捲り、ポテチをつまみ、汚れたら拭いてもらい、それを繰り返す。マスターが見やすいように本の角度を実は少し上げている所もミソ。「もう少しゆっくり捲って」なんて言葉も挟まず、黙々と同じスピードで漫画を読んでいる二人にはまるで竹馬の友が如き気安さがあった。

 

「添い遂げる相手を一人しか選んじゃいけないなんて、マスターの国は窮屈よね。ん?そう考えるとマスターってば法律に反している犯罪者?」

 

「いざという時は重婚が許される国に高飛びするよ」

 

「そんな逃げるような真似しなくても、国を作ればいいじゃない!私みたく!…………何よこの展開……せっかく実家が反社会的組織ならもっとそこを有効活用しなさいよ!女の4、5人ぐらい囲ってみなさいよ!他人の結婚式ぶち壊しておいて、変な所で常識人ぶってんじゃないわよ!あ――もうっ!イライラする!」

 

「文句言いながらも、最後まで読むんだね」

 

「当然でしょ。内容を知らずに何に文句を言うのよ。ちゃんと全部読んだ上で扱き下ろすわよ私は」

 

「アンデルセン先生とシェイクスピア先生がニンマリしそう」

 

「あの口だけ悪魔共の話はしないで頂戴。はぁぁぁっ――……私なら振った側の男が急に泣き出したら、その場でペニス蹴り飛ばすわよ、まったく」

 

 ぶつくさと不平不満を言いながらも、漫画を読み切ったメイヴちゃんは両腕をピンと伸ばす。マスターは何も言わず、その両腕を二の腕から揉んで、マッサージをしてあげていた。女王の顔が気持ち良さそうに蕩ける。しかし彼女には珍しくエロチックさを感じさせないゆるキャラのような表情だった。

 

「んああああああぁぁぁぁ~~~~……」

 

「メイヴちゃん、すっごい間抜けな声出てる。今の録音して兄貴に送っていい?」

 

「やめなさぁぁぁいぃぃ~~こぉろぉすぅわぁよぉぉぉぉぉぉ~~~~」

 

 いつからこんな関係になったかは二人にもわからない。メイヴも最初はもしかしたらマスターを性的に狙っていたのかもしれない。何せ、人外の魔獣やサーヴァントが跋扈する戦場に突撃しかねないマスター()である。メイヴにとっての愛する対象……勇士としての資格は十分にある。

 

 だが、気づけばこうなってた。肉体の接触面も現在進行形で多い。そして彼女も気を抜いているとはいえ、その黄金律(体)を十二分に生かしたセクシーな格好である。特に下半身。だが、二人の間にあるのは「メイヴちゃん、マニキュア昨日と変えた?」「当然でしょ。いい女はこまめな所でも毎日変化をつけるのよ」と女友達のような会話。

 

 生前において、同性は全て敵であり、友という存在がいなかった彼女がカルデアに召喚されて初めて出来た友達がマスターだった。

 

「っていうか――。どのクーちゃんもどうして全然、私に靡いてくれないのかしら?」

 

「押して駄目なら引いてみろ。今度はお淑やかムーヴで謙虚に迫ってみたら?」

 

「あぁ、そういう草食系は私には合わないわ。いつだって私は自信に満ち溢れているし、それに相応しい努力と美貌を持っているもの。だからそれを隠すなんてみっともない真似はしないわ」

 

「俺だったら惚れた娘がいたら、あらゆる手段を尽くすけどね。好きな娘と添い遂げる……それだけよ、それだけが満足感よ……。矜持や倫理観など、どうでもよいのだァ――!!」

 

「マスターは吐き気を催す邪悪だからね。チーズ以下の匂いがプンプンするわ」

 

「言いやがったな!未だ同性の友達がいないスーパーケルトボッチが!息の根を止めてくれるわ!」

 

「吠えたわね!ここで返り討ちにしてくれるわ!勝った!人理修復完!」

 

 何にせよ、メイヴにとってマスターとは波長があったのだ。男とは傅かせ、侍らせ、抱いて、抱かれて、愛し、愛される対象でしかなかったのに。彼に関してはこの瞬間のようにお互いの体をくすぐりあって、じゃれついていながらも、性的なアレを感じさせないぐらいには砕け、心地の良い関係だった。

 

 

 

「貴様ら、仲良すぎやしないか?」

 

 そして、ようやくここで二人の様子を今の今まで黙って見ていた第三者から声がかかった。

 

『生涯現役』と書かれた紫のダサTで椅子にかけていたおっぱいケルト師匠ことスカサハが渋い顔をしていた。メイヴに対抗してか、下は黒のTバック一丁。なんかここの部屋の女性陣の下半身の防御力低すぎない?

 

 スカサハの問いに、何を言っているんだ?と似たような顔とタイミングで首を傾げるマスターとメイヴ。その息の合いようがスカサハの精神値をガリガリ削っていた。

 

「え――、別に普通でしょ。マスター、あれ取って」

 

「はいはい」

 

「ん」

 

「横着しない」

 

「女王だもの。んぐんぐ、ぷはぁー。どうぞ」

 

「ごくごく、この蜂蜜酒結構いけるね」

 

「私の経血入れればもっと」

 

「食べ物を粗末にするのはNG」

 

「チョー失礼」

 

 飲み物を分け合い、極自然な流れで間接キスをし合っている二人。だがそれを特に気にしている様子もなく、むしろ気にする必要が無いぐらいにまるで熟年夫婦が如くわかり合っているような様を見せ付けられてスカサハは血を吐きたくなった。

 

「おい止めろ。そのツーカーな感じ止めろ。敗北感で死にそうだ」

 

「何、ワケ分かんないこと言ってんのよ。あんたがマスターと私が部屋で何してるかどうしても見たいって言うから入れてあげたんじゃない。私は死ぬほど嫌だったけど」

 

「大丈夫、師匠?おっぱい揉む?……いや、メイヴちゃん、無言で俺の胸板揉まないで欲しい」

 

「ほれほれ、ええのか?ここがええんか?」

 

「いやぁ、おやめになってぇ!」

 

「それだそれ!それを止めろと言っておるのだ!その友達以上恋人未満の最も楽しい瞬間を満喫しているイチャイチャを止めろと言っておるのだ!」

 

 キャッキャッとベッドの上でじゃれつく二人に思わずスカサハは吠える。そもそも男を見たら、「セックスしたいorしたくない」のチョイスしか出てこない淫乱があんな邪気なく男と絡んでいる様子が彼女には信じ難い光景だった。

 

「貴様らは本当に肉体関係が無いのだな?」

 

「やだもう――、男女が一緒にいるだけでそういう事想像しちゃうの?欲求不満?」

 

「世界で一番、貴様にだけは言われたくなかった台詞だなっ……」

 

 尋ねたスカサハだが、彼女自身も薄々は勘付いていた。過去にもマスターのマイルームから出て来たメイヴから事後を彷彿とさせる空気と匂いが一切無かったこと。それでもこの女英霊に対して吸引力の変わらないただ一つのダイソンであるマスターとスナック感覚で男のアソコをつまむメイヴがプラスされたらイコール、セックスしか無いと思うのは致し方無い。

 

 だからこうして、直接眼にする事を選んだわけなのだが、まさかここまで精神的に削られる展開になるとはスカサハも夢にも思っていなかった。これならまだまぐわってくれてた方がマシかもしれないと。

 

「師匠ってば、俺がメイヴちゃんとは健全なお友達同士のお付き合いをしていますといくら言っても信じてくれないだもん」

 

「相手が()()なら訝しむのも仕方なかろう……」

 

「ひどい女よね。自分の恋人の交友関係にも口出してくるのよ。あぁ、重い重い。今すぐ、縁を切る事をおすすめいひゃい、いひゃい、ふぁひふんのよ」

 

「隙あらば、煽ろうとしない。分かりづらいけど、こうやって俺を心配してくれるスカサハが好きなんだから俺は」

 

 メイヴのほっぺを抓りながら、真剣な口調でそう語るマスター。他の者がやろうものなら、ブチ切れ必至だが、彼女はそれを咎める事はしない。頬を解放されても、ぷくりと光る可憐な唇を尖らせて未だ不満気ではあったが。

 

「…………ふ――――ん、そっ」

 

「甘い言葉を吐いても、私はそう簡単には絆されんぞ……。どれ、マスターそんな悪女の頬より私の尻の方が抓り甲斐があると思うが。どうだ?ん?ん?」

 

「ねぇ、マスター。本当にコレがいいの?」

 

「普段はキリリとしているのに偶に見せてくれる駄目な所が愛しいの」

 

「雑食ねぇ」

 

「美食家ですぅ。……ん?おっ」

 

 そんなメイヴの呆れた目線を他所に振動したスマホをポケットから手に取ったマスターは外支度をして、部屋から出ようとしていた。

 

「あら?お出かけ?」

 

「うん。これから兄貴と釣りの時間なのでシミュレーションにこもってきまーす。フィッシュ!」

 

「クーちゃん!!私も行く!」

 

「メイヴちゃんが来るとクーちゃん逃げるから、だめ――。じゃあ、スカサハにメイヴちゃんも、俺はここでお暇するわ。部屋のロックはしなくてもいいから。好きに使ってもいいし、あと、ガチの殺し合いはご法度だからね!バイ!」

 

 シュバババッと嵐のように消えていったマスター。彼は友情的な意味合いでも性的な意味合いでも色んなサーヴァントと四六時中、コミュニケーションを取っている。最近はいつ寝ているのだろうか?と心配になるぐらいに。

 

「ぶぅー、ぶぅー。なによ、私だけ除け者にしちゃってさ。いいもん、こうなったらマスターがやり途中のノベルゲーム先にクリアして、ネタバレメイヴボムを喰らわせてあげるんだから」

 

 勝手知ったる他人の家、マスターの私室に何があるか全て熟知しているかのように棚から携帯ゲームを取り出したメイヴはマスターがいつも使っている枕を股に挟み、寝転がってピコピコと気晴らしに興じる。

 

 スカサハとメイヴの間にあったマスターという緩衝材が無くなっても殺伐とした空気はそこには無かった。そもそもメイヴ自身がちゃんとマスターの言う事を守ろうとしている節がある。

 

「何を企んでいる?」

 

「は?何がよ?」

 

「欲しい物は何が何でも手に入れる。唯我独尊、我儘の擬人化、世界は自分が中心に回っていなければ気が済まない女が素直にマスターの言う事を聞いているのが信じられんと言っておるのだ」

 

「あら、サーヴァントはマスターに従順。そういうものでしょ?」

 

「心にもない事を」

 

 琴線に触れる男がいれば、つまみ食いをせずにはいられないメイヴがマスターとあれだけ近くにいながら、未だ肉体関係を持っていない事がどうしてもスカサハには腑に落ちなかった。

 

 メイヴから迫り、マスターがそれをのらりくらりと断るのならまだわかる。女英霊を大勢喰ったとはいえ、彼も見境が無いというわけではない。彼の心の中にある、彼だけの理によって関係を持つ異性を定めているのなら、マスターのタイプではないという女が出てきても別段不思議な事でもない。

 

 だが、先程の二人の様子。マスターの女関係に関して寛容な方なスカサハが吐血する程の仲良しっぷり。即興の関係ではなく、マスターとメイヴはあれがデフォなのだ。気の置けないずっ友の関係。

 

 だからこそ、スカサハは疑問に思った。性に奔放なケルトの中でもさらにビッチ。エクストリームビッチなメイヴがそんな生温い関係で満足する事はあるのだろうかと。

 

「…………ま、確かに勇士という資格は得ているわね、マスターは」

 

 股に挟んだマスターの枕を太腿でスリスリしながら、メイヴは答える。

 

「竜種、ホムンクルス、魔獣、果てにはサーヴァントと殺し合えるぐらいに軟弱な人間を超えた戦闘力。どんな無茶ぶりでも応えてくれる寛容さ。小まめに話題を振って、時には余計な茶々を挟まず私の話に相槌をうってくれるコミュニケーション能力。些細な所でも奉仕してくれる気遣いに、私を飽きさせない行動をしてくれる破天荒さ。息を呑んでしまう程に魅力的な形をしたペニス。逆に何故、手を出さないの?と自問自答するレベル。えぇ、花丸満点。超タイプのドストライクよ」

 

「べ、ベタ褒めだな。まて、最後の方に聞き捨てならないことを」

 

「でも――」

 

 スカサハの言葉を遮り、彼女は言葉を吐き続ける。それは誰かに語っているというよりは自身に言い聞かせているような口調だった。

 

「あの子、絶対、()()()のものにはならないじゃない。だから、それが理由。私がマスターと男女の関係にならないのは――。えぇ、そうよ――。彼が私だけに夢中になってくれないって確信しちゃってるんだもの」

 

 もし仮にメイヴとマスターが男女の関係になったとしたら、マスターは全身全霊をもって愛し、生涯を尽くす。彼の番いが何人いようが関係無い。如何なる手段を用いて、その悪魔的に絶大な愛を捧げ、全てと添い遂げるのがマスターの在り方。だが、そんな相手はメイヴだけではない。彼の愛を独占出来ないのがメイヴにとっては我慢出来ない事だった。

 

「それだった……たった一つ。そこだけが私とソリが合わない致命的な所だった。まぁ、けどあの子といるのは居心地がいいし、楽しいから『友達でいましょう』みたいなノリで今日まで過ごしているわけ。御納得いただけたかしら?」

 

()()ね……。男女間の友情など、貴様が一番鼻で笑いそうなものだが」

 

「えぇ、私もあり得ないと思ってたわ!あぁ、けどマスターとなら、そういう関係でもやっていけそう。私の友達処女を奪ってくれた()()()()()()()()()()()()()()!うんうん!そういうのも素敵ね!」

 

 やけにそこの部分を強調し、嬉しそうに語るメイヴにスカサハは怪訝そうに眉を顰めた。メイヴの言い分はおおよそ納得出来るものだったが、話を聞いて尚、まだ大事な所で消化不良な部分が残っている……そんな感覚がスカサハにはあった。

 

「はぁーあ、やっぱりマスターがいなくなると暇ね。これ以上ここにいても目の前の女から死臭移されそうだし、さっさと退散するわ。気晴らしに男漁りでもしようかしらね――」

 

 結局、一人でゲームをするのも飽きたのか、メイヴはゲームを元の場所にキチンと戻し、乱れたベッドのシーツも直し、さらにさらに食べかすも捨て、クローゼットから取り出したデニムのショートパンツを穿いて、「マスターの私物でオナニーに浸るようなみっともない事したら鉄戦車で轢くから」と彼女らしからぬ几帳面さを披露しつつ、スカサハに釘を刺して、部屋から姿を消した。

 

 

「……意識しているのか、それとも無意識なのか。私には貴様がまだ何か隠しているように思えるぞ。メイヴよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「むぅ――むぅっ……」

 

 男性英霊、カルデアのスタッフ……比較的人の出入りが激しい食堂で男漁りをする筈だったメイヴはそちらに目を向ける事はなく、何故か仏頂面で椅子に座り、スマホを操作していた。

 

 ひたすらマスターに向けてLINEを送信しているメイヴの脳裏に浮かんだのはマスターとの出会いからこれまでの事。

 

 

 ――私はメイヴ、女王メイヴよ。私に相応しい勇士はどこかし……あら、平々凡々な魔術師かと思いきや……。へぇ、へぇへぇ、うふふ、結構イイじゃないあ・な・た♡

 

 ――ふ――ん、もういきなり二人っきりで部屋にお誘いしちゃうのね。マスターってば手が早いわ。まぁ、私の魅力なら仕方の無い事だけど!それに話の早い男は嫌いじゃないし。

 

 ――え?ジュースにお菓子……クッション?はぁ、ご丁寧にどうも。見たい映画?それともゲームする?って違うでしょ――!!馬鹿にしてんの!?うら若き男と女が密室で二人!そんなのヤる事一つしかないでしょ!ってかこのポテチ、チーズ味じゃない!?喧嘩なら買うわよ?

 

 ――は?英霊とか関係ない?メイヴちゃんならこうやって普段から苦手な物を食べて自分の死因を克服出来ると思った?具体的にはいついかなる時に飛んでくるチーズを蹴り飛ばすぐらいに?……いいわよ、やってやろうじゃないの、この野郎!!

 

 ――そもそもねぇ!私をチーズで死んだ女ワロスとか何かと馬鹿にする輩がいるけど、投石機で飛んでくる乾燥したチーズなんて砲丸と変わらないんだから!あんなもん頭に直撃したら誰でも死ぬっての!もぐもぐ、もぐもぐっ、このチーズフォンデュ・ウィンナー美味しいぃ!おかわり(怒り)!!

 

 もし自分が男体化したら、こうなるのかもしれない――なんて数多の女英霊と肉体関係を結ぶ彼に対してメイヴは強い親近感を最初は覚えていた。結局、それはすぐに間違いだと気付いたが。

 

(だって、私はあそこまで個人に対して尽くすつもりないもの。語らいも抱擁もセックスも全てはまず己から。私が楽しくて、私が気持ち良くないと意味無いじゃない)

 

 自分が恋し、愛した男達は大勢いる。だが、彼らに自分の人生を捧げるなんてつもりはさらさら無かった。他にイイ男がいれば追いかけるし、自分のモノにならない男がいれば、どんな手段を使ってでも屈服させる。今まで関係を結んだ男達を女々しく振り返るような殊勝な心構えは女王メイヴには存在しない。

 

 男達の方が自分に全てを捧げるのを当然とした上でのこの考え方こそ、混沌・悪の属性を持つ淫蕩の女王たる所以。

 

 メイヴは縛り付け、支配する側。なら、マスターは?

 

 サーヴァントとマスターの主従関係。ベッドでは歴戦の女傑達があっけなく卑猥に啼かされている。ではマスターもメイヴと同じく支配する側。過半数がそう考えるかもしれない。女英霊達を傅かせ、侍らせている主。

 

 けれどもメイヴにはそんなマスターの後ろに女達の鎖で縛られている獣の姿が浮かんでいた。もう二度と寂しくならないように彼女達と生涯を添い遂げると誓った(縛った)彼。自ら望んでそうなったマイフレンド。

 

 男女の駆け引きなんて無かった。甘い雰囲気も、疼くような交わりも。

 

 だが楽しかった。彼といる時間はどうしようもない程に。意味もない言葉の投げ合いも。馬鹿みたいなお喋りも。子供のようなじゃれあいも。サマーレースを滅茶苦茶にした駄女神を牢の中で二人がかりでこってり濃厚にお仕置きした時も。

 

 ――あひぃぃぃぃっっ!!んあ゛あ゛あ゛ぁぁっ!!ごめなひゃい、ごめんなひゃひぃぃっ……!!私は後先考えない頭うっかりの駄女神ですぅぅっ!!だからもうぅっ、バイブしながら、アナルつかないでぇぇぇっ!!んほぁああああぁっ……!!

 

(そのケは無かった私でもドキリとした乱れっぷりだったわ。いい気味だったわよあの金星の女神とやらは、フフフ。あぁ、それにしてもあの時のマスターの本当にいいブツだったわ……)

 

 彼女がその時、一度だけ眼にしたマスターのペニス。目隠しされて、バイブ付きの木馬に跨らされて、尻穴を突かれ続けるイシュタル。それだけ性が充満する空間にいてもメイヴはマスターと体を重ねる事は無かった。ただ、うっかり女神を性的に苛めただけ。

 

 当然、事が終わった後のメイヴの性欲の昂りようは凄まじく、それを慰めるのに一苦労したようだが。

 

 そう、性に奔放であるメイヴがそんな状況であってもなおマスターと肉体関係を結ぶ事は無かった。そこまで来るとある意味マスターがメイヴの心内の何か大事な領域を占めている気さえしてくる。

 

 マスターとマイルームで遊ぶ時間は多くはないが、支配と略奪の世界で生きてきたメイヴにとって彼との時間は新鮮だった。

 

 男女の友情を鼻で笑い、性が違えば、求め求められ愛し合い溶け合う関係に発展させる彼女が知らなかった世界。

 

 あぁ――こういう男女の関係もあるんだな、と。

 

 ポチポチとマスターにやり方を教えてもらったスマホのタップを軽快に行っていくメイヴ。

 

 

 ▲▲▲

 

 メイヴ

【ひま(・×・)】

 

 

 マスター

【そう……】

 

 

メイヴ

【は?スカサハに絡まれて意気消沈中の私に構いなさいよヽ(`Д´)ノ】

 

 

 マスター

【今、兄貴と蜜月の時を過ごしているので邪魔しないでどうぞ】

 

 

メイヴ

【クーちゃんを殺した後にあなたも殺すわ】

 

 

 マスター

【こわい、ゆるして】

 

 

 メイヴ

【ゆるさない、絶対に】

 

 

 マスター

【水が滴るピチピチの写真送ってあげるから】

 

 

 メイヴ

【はよ】

 

 

 

 マスター

       __

     _/;@/

    /””,:;ン

  __/,/

  `V

 

 

メイヴ

【誰が魚の写真を送れと言った】

 

 

 マスター

【クーちゃんの写真とは一言

 も言ってない】

 

 

 マスター

【いい体してるだろ?】

 

 

 メイヴ

【どうやら死にたいようね】

 

 

 マスター

【ごめんて】

 

 

 メイヴ

【性意を見せなさい】

 

 

 メイヴ

【誠意】

 

 

 マスター

【持って帰ったら焼いて食べる?】

 

 

 メイヴ

【たべりゅ、けど刺身の方がいいわ•(。・`∀´・。)】

 

 

 マスター

【今度、わさび醤油用意しておくね】

 

 

 メイヴ

【( ˘͈ ᵕ ˘͈ )♡】   

 

 ▲▲▲

 

 

「何を気色悪い顔をしている。飯がまずくなりそうだ」

 

 文字と共にどんどん下にスクロールしていく画面を眺めていたメイヴの心を天から地に落とすバリトンボイスが聞こえた。

 

 忌々しげに目線を上げれば、声と外見がそぐわない青髪の童話作家様がランチメニューのサンドイッチセットをトレイに乗せて、メイヴの前の席に腰かけていた。

 

「それならどうぞ別の所へ。まだ席はいくらでもあいてるわ。……それとも私を口説きに来たのかしら?残念、あなたみたいなペンよりも重い物を持てそうにないモヤシ男はノーサンキューなの」

 

「自信と自意識過剰をはき違えるとここまで滑稽になるとはな。まぁ、だが、人間は汚いもの、見たくないもの、おぞましいものに限ってついつい出歯亀精神で見に行ってしまうものだ。ふむ、今の俺の心情もそんな感じだ」

 

「マスターに仕える同じサーヴァントだから殺されないだろうなんて、馬鹿な事考えてないわよね」

 

 アンデルセンのあまりの物言いに本気の殺意を募らせて、メイヴはテーブルの下から鞭を取り出した。

 キャスターとライダーの相性に加えて、カルデア戦闘能力ワースト争いに名乗り出る彼のスペックならば、一叩きであっけなく消滅するだろう。

 

 そんな事を当然承知しているアンデルセンは席を立つ事も口を閉ざす事もない。小気味よくサンドイッチを咀嚼し、コーヒーを喉に流し込む。

 

「なに、ここまであからさまだとさすがの俺でも口に出すのかどうかもはばかられてしまってな。お前、わざとやってたりしないか?」

 

「は?意味がわからないんですど」

 

 彼の真意が不明ないきなりの物言いにメイヴが眉を顰める。

 

「ま、どちらにせよ口は出すのだがな。人間を品評し、扱き下ろしてこその俺だ。周りの奴らが空気を読んで黙っていたかどうかなんて俺の知った事ではない。そもそも周りに合わせて作家などやってられるか馬鹿め」

 

 戦闘能力は皆無でも他人の心底を暴く事に関してはカルデアで随一の能力を持つアンデルセンの蒼眼に射抜かれた瞬間、メイヴはとてつもなく嫌な予感に冷や汗を流した。

 

 それは彼女が決して、表に出す事の無かったシークレットガーデン(乙女の秘密)

 

「ビッチな癖に夢見る乙女。面倒臭い事極まりないな。まだどっちかに振り切ってくれた方が好感が持てる。さて、恋多きコノートの女王。お前の価値を散々に扱き下ろしてやろう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




スキルが二回も強化され、宝具も強化され、モーション改修もされて、霊衣解放もマシュに次いで二番目にされて、イベント出演も何かと多くて、水着イベにも二回も出て、なおかつ本人も水着鯖になって、運営に優遇されているメイヴちゃんサイコー!


ロマンティックが止まらない中編に続く。










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ロスト・プラトニックⅡ(メイヴ中編)


ハーメルンにおいて、最初は結構な頻度で投稿してるけど、話数が重なるにつれて、投稿頻度がどんどん落ちてくるの、そういうのあると思います。私も次回を楽しみにしている他の作者の方々の話の投稿が半年前とかになっているとちょっと寂しい気持ちになったりはします。投稿まだかなーと全裸待機している作品もありますし。
まぁ、確かに最初の方はお気に入りとか評価とか反響はグングン伸びますけど、投稿すれば投稿する程、どこかで頭打ちになりますからね。それにリアルの方が忙しくなればそちらが優先にもなりますから、趣味の範疇である二次創作投稿サイトでは仕方ないのかなーとか、思ってみたり。
私自身も働いている時と学生の頃を比べると間違いなく投稿の頻度は落ちてますし。それでも何で投稿しているのかといえば、まぁ、好きだからとかしか言えませんわ。FGOという作品とエロとそして投稿して反応貰えるのが好きだから。許されるなら毎日投稿したいんですけどね。お金になるわけでも別に義務でもないけど、それでもやり続ける……趣味なんてそんなもんです。
それはそれとして、最近小太郎君も性的な眼で見れるようになりました。







メイヴちゃんのヒロイン力が高くて、前編、後編ではなく、三部作になりました。おのれケルトビッチ。




 青臭く開放的な香り。上を見上げればどこまでも続く蒼穹。シミュレーションとはいえ、現実に限りなく近い状態で構成された大自然。太陽の光を反射し輝く川に二本の釣り糸が垂れさがっていた。

 

 川からせせらぐ水の音に加えて、今の空間には不似合な電子音がポコンと間抜けにさっきから何度も聞こえていた。

 

「おい、マスター。竿、引いてんぞ。こんな時ぐらい、スマホから手、離せっての」

 

「ごめんごめん、メイヴちゃんからLINEから来ててね」

 

「まさか、アイツ、こっちに来たりしねぇよな……」

 

 その女の名前がマスターの口から出た途端、露骨に顔を歪めるのはアルスターの英雄、カルデアでは釣り好き兄貴、スカサハに貫かれる回数No1ことクー・フーリン。

 

 彼にとって女王メイヴは生前からの因果で何かと絡まれる。このカルデアでは師匠よりも相手にするのが面倒くさい女サーヴァントの内の一人でもあった。

 

「いや、俺が来ちゃ駄目って言ってあるしそこは大丈夫」

 

 だがここ最近はクー・フーリンが彼女に追われる頻度は確実に減っていた。確かに会えば、死ぬ程鬱陶しいラブコールを受けていたが、待ち伏せやストーカー紛いの事をされる事は無くなっていた。それは彼女がマスターと交友関係を結ぶようになってから――。

 

「あの女が素直に人の言う事を聞くとは思えないんだがねぇ……。お前さん、一体どんな魔法を使ったんだ?」

 

「いやいや、メイヴちゃんってば結構優しい所あったりするんだよ?何気ない所でイケメンポイント見せてくれるし」

 

「あぁ――、あれか?俺が話しているメイヴとお前の話しているメイヴは同名の別人さんか?」

 

「この間なんて、おっとっとのレア型を俺が気付くまで食べないように取っておいてくれたし」

 

「しょうもねぇ……」

 

「しょうもなくないよ!だっておっとっとのレア型だよ!?ハート型だよ!?」

 

 だがまぁ、少し心配には思っていたがマスターの様子を見る限り、あの悪逆の塊のような女ともきっと上手くやっているのだろうとクー・フーリンは推考した。このマスターもマスターでカルデア中の女英霊をホイホイ喰ってしまう男なワケでそういう点では似た者同士、通ずる所があったのかもしれない。

 

(何せ、手前の年も考えずにニチアサの少女向けアニメとやらをお嬢さん達と見る痛々しい師匠を女の子っぽくて可愛いって言うぐらいだからな……雑食が過ぎるっつーの)

 

『我が逆鱗に触れるか。共にマスターに槍を預けたサーヴァントの仲だ。一度は許す。二度は無い』

 

「……ツツッッ!?」

 

「どうしたのクーちゃん?」

 

 突然の寒気と幻聴、そして命の危機に釣りざおから手を離し、臨戦態勢に入るクー・フーリン。もう登場する度に師匠の槍でアッーされるのは食傷気味である。

 

「思想の自由すら許されねぇのか、地獄耳ってレベルじゃねぇぞ。いや、何でもねぇ……あと、クーちゃんって次呼んだら川に叩き落とすからな」

 

 テヘペロ☆と自身の頭に拳をコツンとするマスターに若干、イラッとしながらも再び、草原に座り込み水面で揺れる浮きに視線を向けるクー・フーリン。入れ喰いとはいかず、まばらにしか魚がヒットしない穏やかな時間。何であれ、あのコノートの女王が自分にそこまで執心しなくなったのは歓迎すべき事なのだろう。その点ではマスターに感謝しなきゃなと彼はほくそ笑む。

 

「今度は真冬の釣りもいいかもね。凍った湖の上でさ」

 

「あん?凍ってる所でどうやって釣り糸垂らすんだよ。ルーンで溶かすのか?」

 

「穴釣りって言ってさ。小さい穴開けて、そこから釣ってくの。寒い場所で取れたてのワカサギを天ぷらで揚げて食べるのは最高の贅沢だよ兄貴」

 

「ほぉ、そりゃあいいな。何だ、経験あんのかマスター」

 

「あぁ……うん。この間にね……。朱槍の雨で氷の湖が穴だらけになって、ドヤ顔でバケツいっぱいの魚を見せてくる師匠が見れたよ」

 

 スマホ片手に釣り竿を緩やかに揺らすマスターの横顔は若干心ここにあらずのようにも見えた。

 

「お前さん、ちゃんと説明したか?若者向けのレジャーはお年寄りには馴染みが無いんだから――」

 

 想い人の前で180度間違った方向でイイ所を見せようとした師匠の乙女(脳筋)っぷりにドン引きしながらも茶化した台詞をクー・フーリンが吐こうとした刹那。

 

『言ったはずだぞ』

 

「へ?」

 

 空間を切り裂き、朱き死兆星が。

 

『二度はないと』

 

 彼に飛来する。

 

「ぬぉおおおおおおおおぅっっ!?」

 

 

 ▲▲▲

 

 マスター

【何時ぐらいに食べにくる?】

 

 ▲▲▲

 

 

「珍しいな、5分以上経っても既読がつかないのは」

 

 陰口絶対許さないボルグによって愉快なオブジェになったクー・フーリンの隣でマスターはメイヴとのトーク画面を開いたまま、誰に聞かせるわけでもなくそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この間、マスターから借りた小説でな。あぁ、若者向けの娯楽本だ。別に俺は毛嫌いはせん。なろう小説から純文学まで、小難しい本を読む時があれば、コメントが流れる動画だって見る。ネタはどこにだって転がっているからな。偏る事こそ作者にとって忌むべき傾向だろう。あらゆる物を満遍なく評し、けなしてこそだ」

 

「前置きはいい。さっさと本題に入りなさい。小憎たらしい童話作家様は一体、私の何を扱き下ろしてくださるのかしら?」

 

 メイヴとアンデルセンが向かい合っている場所は変わらず、カルデアの食堂の場。一国の女王、混沌たる戦場を何度も我が物顔で蹂躙してきたメイヴの圧。並の兵士なら気を失うであろう王者の風格にアンデルセンは気負う事なく話を続ける。

 口を開けば、神様であろうとも彼の口を塞ぐ事は出来ない。あの英雄王の前ですらこの男は変わらない調子で評論し続けるのだから。

 

「ふむ、せっかちだな。お前はあれか?結末だけをネットでさらっと見たい派か?一作者として思う所が無いとは言わんが……まぁいい。ともかくその本の中である現象――『くらやみ』という存在が出てくるわけだ。分かりやすくいうと、そいつは自分の存在を偽った妖怪を消す現象だ。自分を神様だと偽る吸血鬼。人を迷わせない迷い牛。自身のアイデンティティ、ルールから外れた者を問答無用で消し去る末恐ろしいブラックホールのようなものだった」

 

「で?その本の内容がなに?私と世間話でもしに来たの?」

 

「どうどう、そうカリカリするな。この間、見かけた時は大層楽しそうに雑談に興じていたからな、こういう話題も好きだと思っていたのだが……おっと失敬失敬、確か相手はマスターだったな。それは悪かった!相手がこんな三流サーヴァントじゃ、代わりにはならんな!」

 

 アンデルセンの煽りと嘲笑にテーブルの下で握っていた鞭がイヤな音を立てたが、気持ちを落ち着かせてメイヴは彼に話の続きを促した。ここで格下相手にブチ切れて、暴力に訴えるのはまるで相手の口から出る疚しい事を塞ぐ為に手を出したようにも思われかねない。

 

 こんな童話作家にどれだけ評されようとも、自分には何一つとして恥ずべき事も隠す事も無いと彼女には確信があった。相手の見当はずれの言い分を最後まで聞いた上で真正面から叩き潰してやろうとは実に女王メイヴらしい考えではあったが。

 

「で、だ。その『くらやみ』とやらは俺達英霊にも当てはまるのではないかと思ってな。死してなお、世界に使われるぐらいだ。その存在の核となる芯とやらもあるだろうよ。陳腐な言い方をすればキャラクターとも言えるか?俺達もそこから逸れる振る舞いを……『らしくない』事をすれば、もしかしたら消え去ってしまうかもしれんとつい下らない妄想をしてしまってな」

 

 戯言の類。メイヴ自身も、語っているアンデルセン張本人も自覚はあった。何せ、オルレアンのサーヴァントのバーサーク化、宿業を埋め込められた英霊剣豪のように聖杯、あるいはそれに準ずる強大な力があれば、サーヴァントは簡単に歪められてしまう。そもそもサーヴァント自体がある側面を切り取った影法師に過ぎないのだから、仮に元は同一人物だとして、正反対の存在が出てきてもおかしくはない。

 だからこれは前置き、本題に入る前の。このカルデアにいるメイヴの核を突く前の大事な序論。

 

「平気で嘘をつく清姫。他人の物を強奪するカルナ。あるいは人の顔色を伺い、胡麻をする俺。そして――」

 

 右手の指は小指から順繰りに折り曲げられ、そのまま人差し指がアンデルセンの目の前にいる桃色の髪の女の顔に向けられた。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。とかな」

 

 その瞬間、確かにメイヴの中で時が止まった。

 

「――――何の話をしているのかしら?」

 

 僅か2、3秒ではあった。だがその微かな間は女王の自信の綻びを証明してしまう確定的なものだった。

 

「どうした?動揺しているぞ」

 

 色んな意味でその声にマッチングしているアンデルセンの問いかけに静かに汗を垂らしたメイヴはそれでもこれ以上の醜態は見せまいと平常を装って返答する。

 

「作家様は活字ばかり追いかけて、現実が見えなくなってしまっているのかしら?好いた男?いつだってアプローチをかけているじゃない、クーちゃんに」

 

「俺が誰を指しているのかわかっている癖にまだとぼけるか。ラブコメ主人公気取りか?」

 

「だから、何を――」

 

 彼女の表情に現れているのは困惑。目の前の男が何を言っているのかわからないという疑問。ただし、それはあくまで表面上。無意識の内に感づいていた……アンデルセンが誰の事を言っているのかなんて。最初から。

 

()()()()の事に決まっているだろうがヴァカめ」

 

 カランと――、机の下で震えたメイヴの指から鞭が落ちる音がする。その音を気にする事なく、アンデルセンは一息入れようとコーヒーを啜っていた。

 メイヴはイライラしたように足を何度も組み直していた。大丈夫、まだ何も慌てる事はない。コイツもただ見当はずれの事を言っているだけだと自身に言い聞かせていた。

 

「はぁ、あなたもスカサハと同じような事を言うわけ?確かにマスターのタイプはドストライクだけど、あの子は」

 

「そもそも()()がおかしい。自分の好みである男を()()()()()()()()()()()()()なんて理由でどうして諦める?女王メイヴはそんなキャラクターだったか?」

 

 テレパシーのように自身が言おうとしていた事を悟られ、反論の言を塞がれる。何故そこまで知っていると聞くのもきっと野暮だろう。人の内面を見通す事に関しては他の追随を許さないこの男にとって今のメイヴはわかりやす過ぎた。

 

「自分になびかない男を屈服させ、這いつくばらせる。自分のモノにならない男を叩き伏せて、支配する。クー・フーリンの時だってそうだった筈だ」

 

 メイヴの口の中で徐々に水分が失われていた。緊張した面持ち。気丈ないつもの女王の顔が剥がされていく。

 

「なのに何故、友達だという温い関係で満足しているのか。そうだな、その様子を見る限り、お前自身まだ完全に目覚めきっていないようだから気付け代わりに俺がたった一つの答えをくれてやろう。駄賃は不要だ」

 

 お前の喋っている事は全て的外れもイイ所だ。マスターと私はただの友達だ。それ以上でも以下でもない。メイヴの頭で響く否定の言葉が浮かんでは泡の如く、消えていく。

 

「マスターがお前にとって好みなのも真実だろう。そしてどうあがいてもマスターがお前だけの物にはならないと何よりお前自身が悟っている。マスターにとって女王メイヴは唯一無二の物になって欲しい。自分だけを愛して欲しい。だが、その願いは叶わない」

 

 幸か不幸かここにいるカルデア最後のマスターは一人の女性だけを愛するという真っ当なレールからは既に外れてしまっている。迸るその膨大な愛を数多の女英霊達に甘す事なく捧げる。

 自分は過去・現在・未来・全ての素敵な男達を恋人にすると豪語しておきながら、彼が同じ事をするのを本当は認めたくない。何たる我儘、面倒臭さ、これが恋するビッチ女王メイヴ。

 

「大勢いるアイツの寵姫の一人になる事をお前は避けた。だから――『友達』という関係を選んだ」

 

(違う――)

 

「それは逃げや諦めというよりはお前自身を納得させる新たな関係だ。ケルトの悪女よ、その悪辣さから生前誰一人として友人がいなかったお前にとって『異性の友達』というのは逆に特別な関係になるのだろう。それは間違いなく()()()()()()()()()

 

(私は彼とは純粋に友達で――)

 

「それはマスターにとっても特別な枠に入るかもしれんな。『センパイとはフレンズな関係です』とか言いながら、ベッドで腰を振る桃色AIと違い、ある意味、アイツにとって()()()()()()()()()()()()()()()というのは珍しい部類だ。あぁ、その希少価値……成程、それこそお前が求めるオンリーワンと言えるかもしれん」

 

「黙れ――」

 

「お前がマスターを積極的に誘惑しないのもそれが理由だろう?大事な大事なオトモダチを()()()()()()()()()()()()なんて肩書きに成り下げたくなかったん」

 

「黙れっつってんのよ!!」

 

 罵声と共に胸倉を掴まれてアンデルセンの小さな体が持ち上がる。その衝撃で落ちたカップグラスが割れる音が食堂に響き渡る。

 シンと静まり返ったその場で食事を楽しんでいた職員やサーヴァント達が一斉に注目したその先にメイヴが怒りで瞳を潤ませて、呼吸を乱し、アンデルセンを睨みつけていた姿があった。

 童話作家の方は言いたい事は言ったと満足したのか、薄く笑みを浮かべるだけ。

 

「あいや待たれいご両人。喧嘩はキャットも喰わぬ。ここは血肉を貪るカルデアの憩いの場。キャットの顔も三度までだと知るのだな」

 

「あのメイヴさん……。詳しい事情はわかりませんがその手を離してもらってもいいでしょうか。Mr.アンデルセンも苦しそうですし」

 

 咎めに来たカルデア食堂の番人、タマモキャットに続いたその声を聞いて、メイヴはエプロンドレスの格好をしている獣の隣にいるマシュ・キリエライトへと鋭い瞳を向けた。

 

 いつの日かマスターとコイバナをした時。彼が照れ臭そうに話す初めての人との初夜。その時、茶化しながら聞いていた自分の心境をメイヴはこの瞬間やっと理解する事が出来た。

 

 マスターの初めてを奪った女――。

 

「メイヴさん……?」

 

「あなたじゃなくて、私が――」

 

 ギリギリの所でメイヴは踏み止まった。もしそれ以上言ってしまったら『女王メイヴ』としての矜持をズタズタにしてしまう程の醜態を晒していただろう。それこそ目の前の男が言っていた『くらやみ』とやらに飲み込まれかねない程に。

 

 彼女に出来たのは唇を噛み締めて、その場から走り去る事だけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――う――ん、残念だけど、マスターは私の恋人にはなれなさそうね。でも悲しむ必要は無いの。これは決してあなたの事が嫌いだからとかじゃないの。

 

 ――えぇ、そう。だから友達になりましょう。マスターは私の()()()のお友達。親友と言ってもいいわ!マイ・ベスト・フレンド!うんうん、グッドなお返事ね!

 

 ――海に遊園地にショッピングモール!楽しく遊びましょう!ちゃんと予定開けておきなさいよね!

 

 

 

 ――いつまで経っても、うじうじうじうじ、迷惑がかかるからとか、彼女がいるからとか、今の関係が壊れるからとか、好きな癖になんで諦める理由ばっかり考えているのかしら?

 

 

 

「どの口で言えたのかしらね、私は」

 

 食堂から走り出したメイヴが行き着いた先は自身の部屋だった。扉を閉め、電気もつけずに、ベッドの上で膝を抱える女の姿。

 自信と不遜に溢れ、我儘放題であった悪女とは程遠い。困惑し、落ち込み、心に影が差すまるで普通の少女のような様相だった。

 

 女王メイヴは妄想する。

 

 もしも、初めてマスターに召喚されたサーヴァントが自分で、彼の初めてを奪えたら?友達ではなく、マスターは私だけの素敵な恋人になっていたのだろうか。

 

 健全で楽しい友達同士の関係ではなく、淫靡で愛と肉欲に塗れた恋人の関係。

 

 メイヴはそこまでして、馬鹿らしいとその妄想を自嘲する。そうはならなかったイフを空想している時点で今の自分はよっぽど参っているのだろう。全て、あの童話作家に言われた通りだ。今の女王メイヴはらしくない真似をしていると。

 

「何をしているのかしら私は」

 

『らしくない』真似をしている事をアンデルセンに暴かれた事よりも、食堂で逃げ去るなんて醜態を見せた事よりも彼女の心を苛んでいるのは自分とマスターが純粋な友達関係ではなかった事を自覚してしまった事。

 

 唯一の恋人になれないから、友達という関係を選んだ逃げ。

 お互いに多くの恋人がいる同士、その中であえて『友達』という関係を取る事で特別を築き上げようとした浅ましさ。スカサハの前では聞こえの良い台詞は吐いていたが、要するに自分は諦めていなかったのだ。

 

 メイヴは楽しかった今までの彼との思い出を自らの手で汚している感覚に陥っていた。

 

「本当に……何をしているのよ、私はっ……」

 

「全くだよ。こんな所で何してるのさ」

 

「…………へ?」

 

 

 かかるはずのない第三者の声。気づけばメイヴと背中合わせになるようにマスターがベッドの上に座っていた。

 

「……っ、何で、いるのよ……」

 

 取り乱しそうになる感情を抑え、声を荒げないように後ろにいるマスターに問いかけた。今、一番会いたくなくて、一番会いたかった男に。

 

「5分経っても既読がつかないから何かあったと思って、探しに来た。それにお互いの部屋の合鍵持っているでしょ」

 

「あぁ…………そう言えば、そうだったわね。なら、私の姿を見つけてもう満足でしょう。今は一人にして、今日は女の子の日なの」

 

「サーヴァントにないでしょ」

 

 あぁもうとメイヴは歯噛みする。こういう所だ。女の子の機微に鋭くて、すぐに駆けつけて、助けて欲しい時に手を伸ばしてくれる彼のこういう所がきっと他の女性サーヴァントも好きで、自分自身もきっと――と。だが、今のメイヴにとってその優しさこそが一番辛い。

 

 どの顔を下げて、これから彼と関わればいいのかと悩んでいた真っ最中だというのにとメイヴは苦心する。

 

「何かあったの?俺で良かったら力になるよ。だって()()でしょ」

 

「ッッ!!」

 

 だから、その言葉がメイヴの最後の一線を切れさせた。

 

 バンッ!とベッドが大きく揺れ、軋む音。気づけばマスターはメイヴに上に圧し掛かられていた。その肉感的で黄金律で出来た下半身でマスターの腹部を抑え付けていた。

 

 ライダークラスに相応しい男に騎乗する姿。今の彼女が纏う雰囲気はマスターと一緒にいる時に見せていた友達同士の快活なものではない。雌の欲望のまま好いた男を喰らう肉食獣そのもの。

 

 だがその顔は迷子の女の子のように酷く悲しそうに見えた。

 

「友達、友達、友達ねぇ……!ねぇ、マスター、そう思っているのはあなただけだったのよ?」

 

 押し倒されたマスターの表情はわからない。突然の事に呆けているのか、驚いているのか、ただ堰を切ったように言葉を吐きだすメイヴを黙って見詰めていた。

 

「ずっと、ずっと、ずっと、セックスしたいって思ってた……。諦めたフリをして、一緒の部屋にいる時も、隣同士でDVDを見ている時も、ゲームをしている時も、漫画を読み合っている時も、シミュレーションで海とか遊園地とか行った時も、イシュタルを二人で調教していた時も……ずぅぅぅっと、こうやって組み伏せて、抱きしめて、唇を貪って、あなたの立派な男根を私の濡れそぼったモノで包んで握り締めて、腰を叩きつけて、何百回だって吐き出させたいと思ってた。友達面して、あなたの隣でずっとそんな事を考えていたのよ?」

 

 アンデルセンに暴かれたメイヴのSGは敢えて言うなら『恋愛脳』。

 黄金律で完成された女性としての肉体美。獣の如き積極性。王としての財力と権力。あらゆる力を持って数多の男達を虜にしてきた……いや虜に出来てしまったメイヴは普通に生きていれば一度は経験するであろう甘酸っぱい恋を経験した事が一度も無い。

 

 だからこそ、恋を知らない彼女は無意識の中で恋愛を神聖視していた。少女漫画の主人公のように。だが、それは自分には似合わない。多くの男達のモノを咥えてきた女王の自分が持つべきものではないと心の奥底に仕舞いこんだ。

 

「でもね、それは出来ないの。私もマスターも恋人同士にはなれないの。同じ多くの(男と女)を持つ同士、その選択肢を選ぶ事は出来なかった。傑作でしょう?あのクーちゃんの時ですら、どんな手段を使ってでもモノにしようとした私が友達っていう妥協案を選んだのよ!……この女王メイヴが!!ハハ、ハハハハッ!!」

 

 自虐し、痛々しい顔で笑うメイヴにマスターはまだ何も言わない。

 

「慰めなさいよ私を。マシュ・キリエライトがあなたにしてくれたように!!抱きなさいよ!!」

 

 もしメイヴが全ての男達に対する執着心を捨てて、マスターだけの物になれたら、もしマスターが他の女達を捨ててメイヴだけを選んだら、話はここまでこじれなかったかもしれない。

 だが、そうはならなかった。メイヴはメイヴであるがゆえに。マスターはマスターであるがゆえに。

 

「安心しなさい。たった一回肉体関係を持っただけで付き纏うようなウザイ女になるつもりは無いわ。このまぐわいが終わったら、令呪で自害を命じなさい。私自身がここまで醜態を晒した自分を許せないの。ここで全てを()()するわ」

 

 マスターとの一度の交わりを最期にその思い出を土産にカルデアから去る、と彼女は言う。アンデルセンの『くらやみ』の話ではないが、ここまで()()()()()事をしてしまったメイヴは自分自身をもう消し去りたいと切に願っていた。

 

「別にいいでしょ?所詮はサーヴァント、その場限りの関係。ここの私がいなくなってもまたいつか別の私が召喚出来るわ。あぁ、けど、次の私にはマスターとサーヴァントの関係に留めて欲しいわ。またこんな面倒事を繰り返されるの、マスターも御免でしょう?」

 

 そう言って、淡々と自身の終わりを話すメイヴの顔をマスターの手が優しく包み込み――。

 

「ふぇ?」

 

 呆けるメイヴの頭蓋目がけて、思いっ切りヘッドバッドをかました。

 

「あぐぇええっ!!?」

 

 ゴォンッと生々しい音を立てて、仰け反り、そのまま二転三転とベッドの上を後転し、壁に激突したメイヴ。哀れ、その姿はいつもの女王らしい威厳もマスターと過ごしていた可愛いらしさも微塵も無かった。

 

「な、なに、すんのよ……」

 

「それはこっちの台詞じゃい!このボケぇ!!」

 

 今まで黙っていたマスターが口を開き、仁王立ちになって吠える。「えぇ……」とメイヴは赤くなった額を抑えて困惑していた。

 

「さっきから聞いてれば、人の地雷ワードをポンポンと……!俺が親友の自殺を『はい、そうですか』って見送ると思ってんのか!何より気に食わんのが――」

 

 メイヴが羽織っているルームウェアの襟を掴み、無理矢理立たせたマスターは真正面から彼女に思いの丈を叫んだ。

 

「俺達二人の思い出を醜態とか、清算するとか言ってる事だアホ!何だ?メイヴちゃんと今まで遊んできた全ては黒歴史か?葬りたい汚物だったのか?友達だと思っていたのは俺だけだったのか?メイヴと遊んで、他愛も無い話をして、今度は何しよっかなって予定を考えて……。俺は心底楽しかったぞ!お前はどうなんだ、答えろこのスーパー恋愛雑魚ケルトビッチボッチ!!」

 

 メイヴが親友として今まで見た事が無いマスターの顔。彼は本気で怒っていた。

 

「うっさいわねっ……この女英霊ビュッフェ野郎……」

 

 何だかんだで今まで友達同士のお付き合いをしていながら、本気の喧嘩をしてこなかった二人。マスターの凄まじい剣幕に感化されて、唇を強く噛んだメイヴは涙を流しながら、負けじとマスターの胸倉を掴む。

 

「楽しかったに決まっているじゃない!!友達だと思っているわよ!!でも……でも、もう友達じゃ、いられないのよ!だって私があなたの事を友達以上で見てしまっているんだもの……!四六時中セックスしたいって思ってしまってる!私は女王メイヴ……。欲しい物は何だって手に入れて……手に入れて……」

 

「そう思う事の何が悪いんだ?」

 

「……だって裏切りじゃない、私の初めての友達になってくれたあなたへの……。純粋な気持ちじゃなかった、よこしまな気持ちで親友面していた」

 

「…………」

 

「漫画の中のヒロインを馬鹿にしてた。好きなのにどうして告白しないんだろう?って、今までの関係が壊れるとかなんでそんな小さい事、気にするんだろうって。けどその気持ちがやっとわかった。()()()事じゃなかった。私も壊したくなかったのよ、この心地良い関係が……」

 

「悪い事なのか?」

 

「え?」

 

「だから、友達に劣情を催す事は悪い事なのか?いけない事って誰か決めたのか?メイヴ、お前はどうしたいんだ?」

 

 マスターの問いかけからメイヴは逃げる事は許されない。いつだって彼女は自身の欲望を叶えてきた。どんな強引な手段を使っても悪辣で我儘な女王の如く。

 彼が聞きたいのは後悔の言葉とか、そんな後ろ向きの言葉ではなく、未来に続く欲望である。彼女がどうしたいのか。

 

「マスターとセックスしたい……。マスターと愛し合いたい……。でも本当は……本当はっ!それと同じぐらいにマスターと友達でありたいのっ……!」

 

 やっとメイヴは自身の想いを吐露した。それは一見矛盾していて、とてもメイヴらしい身勝手な欲望。マスターを掴んでいた手から力が抜ける。項垂れた彼女の顔が再びマスターの手で包まれる。今度は頭突きはされなかったようだ。

 

 その言葉が聞きたかったと――優しく、そして力強く顔を上げられる。

 

「ま、正直に言うと、俺もメイヴには大分前からムラムラしていた。柔らかくバランスの取れた肢体を抱き締めたい。桃色の艶髪を撫でて、犯したいって結構前から思ってた。だから別に変な事でも悪い事でも無い。互いに同じ事思ってたんだから」

 

「なっ……」

 

 さらっと、両想いだね俺達と告白するマスターにメイヴは眼を見開く。

 

「そんな素振り……今まで一度も……」

 

 そもそも、男の情欲の視線に人一倍鋭い自分がマスターの劣情に気付かない筈が無いと彼女は困惑する。

 

「だから、一切表に出さないように隠してきた。だって、メイヴちゃん、仮に抱いても俺だけの()には絶対、ならないでしょ?」

 

 要するに似た者同士だったのだこの二人は。互いに劣情を抱いて、でも相手が自分だけのモノにはならないと知ってて、そしてこの友達同士の関係がどうしようもなく心地良くて。

 

 同性で友だったラーマの時みたく、育んだ絆に獣の絶倫と技術で誑し込み、性癖が歪んだシータごと囲うという特殊な手段はそうそう使えない。

 

「何が……『惚れた娘がいたら、あらゆる手段を尽くすけどね』……よ、この大嘘つき。私に気、遣ってんじゃないわよ」

 

 恋人だろうと、親友だろうと、自身の全てを曝け出す必要は無い。どんなに仲が良くても、いや仲が良いからこそ隠したい事の一つや二つあるだろう。道成寺鐘燃やすガールは激怒するかもしれないが。

 

 要するに二人とも目の前にいる大事な親友の為に自身の欲望をひた隠しにしていたのだ。

 

 今回はそんな仲が良すぎる二人の親友の隠し事が偶々暴かれてしまっただけ。

 仮にメイヴが本当は異性としてマスターの事をずっと見ていたとしてもそれは二人が親友として過ごして来た事実を無かった事にするものではない。

 

「ねぇ……メイヴ。今まで通りではいられないと思ってるなら、今度は俺とセフレになってくれないかな?」

 

「ぷっ!ふふふ、あははははっ!!何よそれっ。今まで聞いてきた中で最低のプロポーズよ」

 

「この世界は案外寛容なんだよ?友達同士でセックスしても何も問題は無いだろうさ」

 

「でもマスター。抱いても私はあなただけの恋人にはなれないわ。あなたが私だけの恋人になってくれないように。本当は私の事も他の女達みたく家族にしたいんでしょ?」

 

「あぁ、けど。親友が悲しんでいるなら、自分の矜持ぐらいほんの少し曲げてもいいかなって思ってるんだ。大好きな友達のメイヴちゃんの為なら俺も()()()()()事、してみようって」

 

「あぁ、もう!そういうの反則よ!!どうしてこのタイミングでそんなキュンとする台詞吐いてくれるのかしらねぇ……あなたは!ほら、さっさと脱ぐ!いいからセックスよ、セックス!あなたと一緒にいるだけでここが濡れちゃって仕方ないんだから!」

 

 泣き笑いのような表情を浮かべたメイヴはやっと調子を取り戻してマスターを裸にひん剥く。

 やんややんやと二人で騒ぎながら、情事へ励もうとする様子は今まで通りの緩い雰囲気。友達同士の関係は変わらない。デキる事が一つ増えただけ。

 

 友達でも、セックスは出来る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





《没ネタ:第五特異点》

対峙するカルデアの面々とアメリカを歪めた特異点の黒幕、コノートの女王メイヴ。

「ねぇ、カルデアのマスター。あなたはどんな女が好み(タイプ)?」

「あ、あのその質問にどんな意味が?」

マシュの疑問はごもっともだった。

「ただの品定めよ。いいから答えなさい」

「う――ん、体は無駄な肉はついてなくてバランスが取れてて、性格は我儘で気は多いけど、自分磨きは怠らない努力家で自信家な女の子……」

「!?」

瞬間――。メイヴの脳内に溢れ出した存在しない記憶。


▲▲▲


校舎の屋上で語らう二人の学生。

『私、クーちゃんに告るわ』

『えぇぇ……俺、暴れるメイヴちゃんを慰めるの嫌だよ?』

『何で、私がフラれる事前提なのよ!?』

『逆に何でOKをもらえると思ったのか……』

『かのフローレンス・ナイチンゲールはこう言ったわ「実際に学ぶ事が出来るのは、現場においてのみである」と』

『決して、玉砕覚悟の告白で使う台詞じゃないんだよなぁ……』


――――――


『悪ぃ、お前はねぇわ』


結果は惨敗。あっけなく散り、泣き崩れるメイヴ。

『ふぇぇぇ……なんで、なんでよぉ……。こんなイイ女を振るとか、男じゃないわ……えぐっ、えぐっ……』

『はいはい、道端で塞ぎ込まない。他の人達の邪魔になるでしょ。帰りになんか食べに行こう。今日は奢るからさ』

『ケーキ……バイキング……』

『好きなだけ食べればいいさ。ほら、行くよ』

メイヴの背中をポンと叩き、支えるマスター。性別は違えど、確かな友情がそこにはあった。


▲▲▲


天を仰ぎ、涙を流すメイヴ。

「どうやら、私達は親友のようね」

「今ここで初めて会ったのに!?」










次回の本番(エロ)でメイヴ編完結。後、お気に入りが8000を突破しました。メイヴちゃんサイコー!





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ロスト・プラトニックⅢ(メイヴ後編)


カルデアコレクションにて蘭陵王、秦良玉、虞美人、アルテミス更新。
ここに載っている女性サーヴァントを必ず全て書くという事はありません。キャラによっては完全に寝取りモノになっちゃうし、え? 今の段階で割となってる? ハハハ、コヤツめ。












【ネタバレにならない第三章感想】


ダ・ヴィンチちゃん「男の娘三銃士を連れてきたよ」

マシュ「男の娘三銃士?」


ダ・ヴィンチちゃん「型月男の娘サーヴァントの第一人者。シャルルマーニュ十二勇士が一人アストルフォ」

アストルフォ「触れれば性交!(セックス・オブ・アルガリア)(理性蒸発)」


ダ・ヴィンチちゃん「マッスル・キャバリエの礼装が性的過ぎる。コサラの王、ラーマ」

ラーマ「マスターと妻にお嫁さんにされるとはこのコサラの王でもある余の目をもってしても見抜けなかった」


ダ・ヴィンチちゃん「期待の新人。魔性(メス)の貌を持つ武将。蘭陵王」

蘭陵王「仮面を剥がされたと思ったら、アソコも剥がされました」











エチエチヒロイン力増し増しフレンズメイヴ編、完結。



 情熱の紅。囚人を虐げる魅惑の獄長ルック。かつて、コノートのメイヴ大監獄の監獄長として現れた時と同じ衣装にメイヴは着替えていた。上着は脱ぎ、淫靡で佳麗な臍と太腿に谷間が露出されていた。

 

 王冠と帽子が合わさった権力の象徴を被るメイヴはその服装には不似合な格好で縛られていた。

 

 ガシャガシャと無機質な足枷の音が聞こえる……両足はベッドの端にあるポールにそれぞれ縛られ、はしたなく開脚させられ、スカートの下から覗かせるアダルティな赤のTバックがきわどく割れ目を隠している。

 

 両手も持ち上げられるようにして一括りで手錠で拘束されていた。手錠から伸びている鎖は足と同じくベッドのポールへと繋がれてる。

 

 ベッドの上で完全に四肢を拘束された状態、罪人を捕らえ、監禁する立場のメイヴ監獄長が抵抗も出来ない艶姿が披露されていた。

 

「本当にいいの?」

 

「ええ、今日はもう散々私っぽくない所見せちゃったし、それなら最後まで普段の私ならしないような事しようってね。攻める経験は星の数程あるけど、こうして攻められる経験は初めてだから、ちょっとドキドキするわ」

 

 このプレイも彼女が言い出した事。恋人ではなく、友達とのセックス。そんな未知の経験をするのなら、今までした事ない。絶対にしないようなプレイをしたいと。

 

「さしずめ、私は囚人に叛逆されて、囚われた間抜けな女監獄長。ふふ、こういうシチュエーション、男なら興奮するのではなくて?言わなくてもいいわ。あなたのソコを見れば分かるもの」

 

 あべこべでアブノーマルなシチュエーション。しかし、勝気で強気なメイヴが無防備で淫らな姿を晒しているのはマスターの怒張を最大限まで膨らませる興奮材料になった。

 ピクピクと血管が張り詰めているペニスに視線を向けるメイヴ。期待に満ちた眼の先には20cmを優に超える男根がある。

 

 挑発的に笑ってはみたものの、マスターの一糸まとわない裸体を見ると頬の紅潮が増すのをメイヴは実感した。

 

「うっわぁぁ……」

 

「何を今更ドキマギしているのさ。別に見るの初めてじゃないでしょ?」

 

「私も自分でびっくりしてるけど……ほら、ついこの間まであなたと私は友達だったわけじゃない?つまりこういう関係は予想して無かったわけ。私が男を恋人にしようとロックオンした段階ではもう既にチンコの事は考えているの。けど友達のチンコを考える事はまず無いじゃない」

 

 大分頭のおかしい事は言っているが……メイヴにとって絶対に堕とすという自信の元、セックスまでこぎつけた男のペニスとさっきまで異性としてのやり取りすら期待出来なかった友達のペニスでは価値が異なる。後者においては未知の領域であり、自分の今までの経験が通じるのかどうか不安がって足踏みしてしまっている状態とも言える。

 

「まぁ、けど……うん、私でそれだけ興奮してくれたみたいで良かったわ。いざという時に『ごめん、やっぱりビッチじゃ、勃たないみたい。メイヴちゃんはただの友達としてか見れないや。これからも健全なお付き合いしようね』とか言われたら、その場で頭をチーズに叩き付けて自殺してたわ」

 

「ムラムラしてたって俺の言葉信用してなかったの?」

 

「いいえ、けどいくら親友の言葉といえども馬鹿正直に全てを飲み込む程、物分かりの良い女じゃないの。ペニスは口ほどに物を言うって諺、マスターの国にもあるでしょ」

 

「ううん、ないよ」

 

「で、どうするの?纏う物が何もないあなたの目の前にいるのは身動きが取れない女囚人。強気な女を支配して屈服させて、犯して、凌辱したいのは全ての男の本能よね、マスター?」

 

 挑発するように鎖を揺らして、身じろぎをする女監獄長。かつて、サマーレース後、やかましい強欲女神を散々突いて、嬌声以外の言葉を出させなくした床の槍。それが今、自分に向けられているという事実がメイヴの股座を濡らしてくれる。

 

「ふむ……そういう面があるのも否定しない。さてさて」

 

 考え込んでいるマスターはペチペチとメイヴの太腿をその巨根でしなるように叩いていた。刺激は少ないが肉と肉がぶつかり合い小気味良い音が聞こえる。

 

「……んっ、何を、しているのかしら?」

 

「鞭代わり。いつもは叩く側だけど、こうして叩かれるのも新鮮でしょ?」

 

「だからって、それで叩くのはちょっと変態的じゃないかしら……あんっ」

 

 太腿を叩いていた肉の鞭がメイヴの股間へ。下着の上からその恥丘を焦らすように叩くと、彼女が漏らす声に淫らさが増していく。

 拘束された状態で男性器で躾をするように陰部を叩かれている屈辱。けれどもどうしても甘い声が漏れてしまう。

 

「んっ、ふぅっ、あっ、あっい、いつまで叩いて、いるのよぉっ、ひゃっ♡」

 

「メイヴちゃん、今すっごいエッチな顔になってるよ。写真撮ってあげよっか?」

 

「あっ、こら……やめな、んあぅっ♡」

 

 百戦錬磨。あらゆる男を手玉に取ってきた自分が友達だと思っていた男に肉棒ではたかれているだけでよがる様をスマホで撮られている。今までの性交で味わった事のないような性的倒錯感に何故かメイヴはゾクゾクが止まらなかった。

 

「水音がピチャピチャしてますよ――、メイヴちゃんのえっち――」

 

「あぁっ、んっふぅ♡うるさぁい……あんっ♡もうっ……じれったいわっ……ねぇ……」

 

 腰を浮かせて悩ましく悶えるメイヴの女性器とマスター男根がぶつかり合う肉の破裂音に水音が混ざり合う。既に準備万端で濡れ濡れ状態だった彼女は期待した瞳をマスターに向けるが彼がそれに応える事はまだ無い。

 

 肉棒の鞭、彼のペニスパンキングは腰、腹へとどんどん上へ昇っていく。グリグリと先走りでコーティングされた亀頭がメイヴの臍の穴を犯していた。

 

「ふっ、ふふ……あなたがこんな変態的な趣味を持っていた……なんてねぇ……あっ♡あっ♡おちんちん押し付けてぇぇっ……はぁっんぅっ」

 

「先に誘ったのはメイヴだよ。友達の見た事ない表情に俺も滅茶苦茶興奮しているのさ」

 

 彼女に覆い被さり、動けないメイヴの体にペニスを何度も擦りつける。肉棒で叩かれても痛みは感じない。だが熱く硬い生の感触がメイヴの柔肌を刺激する。

 決して一度も触れる事が無かった大親友のペニスが自身の肢体全体で触れている事実が嬉しくて、厭らしくて、彼女の声を歓喜と悶悦の色に染め上げる。

 

「あっ♡」

 

「おやおや、監獄長様は囚人のペニスで叩かれてこんなにおっ勃てていらっしゃるのですか?ちょっと変態過ぎてどうかと思うんですけど」

 

「う、うるさい……あなたのチンポが良すぎるからっ……よぉっ……あんぅ!」

 

 胸当てをずり降ろされて露わになった乳房。決して巨乳ではないが黄金律(体)に相応しく非の打ち所がない程に整った胸の形は女には羨望を男には劣情を催す禁断の果実だった。

 そして、その先端はプックリと腫れあがっている。数多の男と経験はあれど、そこを一切感じさせないピンク色。まるで処女の如く、淡い乳首だった。

 

「ひぅっ!?」

 

 涎を垂らしている亀頭が勃起している乳首とキスをすれば、メイヴの反応はさらに良くなってきた。

 電流を流されたように鎖を鳴らして、体をビクつかせる。

 

「メイヴちゃん、ちょっと敏感過ぎない?とてもじゃないけど経験豊富とは思えないんだけど、実はなんちゃってビッチだった?」

 

「…………だもん」

 

 鈴口の割れ目でメイヴの乳首をスライドするように弄ぶと淫らな吐息がさらに増す。そこから聞こえた蚊の鳴くような切ない声。

 

「初めてだもん……。恋人じゃなくて、友達とセックスするのは……。だから私の反応もおかしくないもん」

 

「やーらしぃ……」

 

「ひゃあああぁっ!?」

 

 顔を背け、照れるメイヴの何といじらしい様か。普段のギャップを強く感じたマスターの興奮はさらに強くなる。目の前にいる大親友の恥ずかしい様をもっと引き出したいと。

 パンツの紐を思いっ切り引っ張り、布を大洪水中の股間に喰い込ませる。左右へと揺らしながらメイヴの蜜壺の入り口を凌辱する。依然として、ペニスで乳首は犯したまま。

 

 決して強くない筈の性的刺激にメイヴは翻弄されたままだった。

 

「もしかして、いきなり監獄長プレイに入ったのも真っ当にセックスするのが恥ずかしかったから?」

 

「んっ……んぅぅ……」

 

 図星を突かれたメイヴは口を噤んで答えない。Tバックが喰いこんでいる股座からは愛液が漏れ出していた。まぁ、答えたくないならそれはそれでいいかとマスターは思っていた。

 経験豊富な悪女が友達とのセックスを前にどうすればいいのかわからなくなって、自身の動揺を悟られない為におかしなプレイに走ったというのなら我が友ながら可愛過ぎやしないかと。

 

「あ――……んむぶぅぅぅ!?」

 

 丁度、メイヴの頭を膝で挟む体勢に移行し、そのまま股からぶら下がっている凶悪な宝具を彼女の口の中に突っ込んだ。拘束されている以上、逃げる事は許されない。喉奥まで突き刺さった逸物の衝撃にメイヴの眼が見開く。

 

(大きくて、硬くて、顎、外れそう…………。あぁ、私、何でこんなに興奮してるんだろう……)

 

 縛られたメイヴに対してマスターは乱暴に腰を動かす。彼女の中にある煩悶を打ち消すように……友達とのセックスだけに夢中になれるように楽しさと快感だけを与える。

 

「んぶぅっ、ちゅぶぅぅぅ……んぐぅっ!んむっ、じゅぶぅっ!」

 

 下の口と同じぐらいに涎が溢れ出す。極上の逸物の匂いにメイヴは頭がクラクラしていた。そして勿体無いと、こんなにも待ち望んでいた親友のペニスを前に翻弄されっぱなしだなんて。

 口内で抽送する肉棒に合わせて、艶めかしく舌を動かした。

 

「あっ――、やばっ、その格好で犯していると、犯していると、興奮が……ってかメイヴちゃん舐め方っ……」

 

 吸い付き、絞るように蠢き、纏わりつくベロ。唇も唾液も口にある全ての物をふんだんに使ってマスターの肉棒への奉仕を続けていた。

 

(あっ、マスターってば気持ち良さそうに顔を歪めてるわ……もっと、もっと気持ち良くなって欲しいわ。私の体で……)

 

 物のようにイラマチオをされているにも関わらず、怒りも苦しみも微塵も湧いてこなかった。

 こんなにも近くで気になっていた親友のペニスを舐めつくす事が出来る悦び。それに反応してくれている達成感。自身の快楽だけを追及していた恋人とのセックスでは得られない未知の感情にメイヴは支配されていた。

 

「んぶぅっ!じゅぶぅっ、じゅぼぉっ、んじゅるぅぅっ!じゅぶるぅぅっ……!」

 

 二人の汁が混ざり合った音は加速する。唇、舌、頬裏、歯、唾液、メイヴのあらゆる全てが極上のオナホになってマスターの射精を促す。

 喉奥まで貫く肉槍、呼吸すらままならない口淫もやがて終わりが近づいてきた。

 

「出るっ……出すぞっ!メイヴ……」

 

(出して……!たくさん、私の喉まんこに、親友精液、いっぱい出してぇぇ!!)

 

 待ちに待った待望の瞬間が来た喜びともうこの至福のフェラチオが終わってしまう一抹の寂しさに支配されながらも、心の中で目いっぱいのおねだりをしてメイヴは精液の噴射を受け入れた。

 

 ――ビュウルルルルッッ!!

 

「ん゛ん゛ん゛むぅぅぅううううううっっ!!」

 

 食道を通過して、胃まで注ぎ込まれる白濁の奔流。濃厚で充満している魔力と雄の塊に溺れかけながらメイヴは腰を大きく浮かせて、ブリッジしながらベッドの上で痙攣していた。口内射精で彼女は盛大にイッていた。

 

「んぶう゛う゛ぅぅぅっ……!!んむ゛う゛ぅっ!!んじゅぅううう゛う゛っ!!」

 

(すごっ、すごすぎぃ……こんなに多くて、濃いのぉ?マスターの精液ぃ……あっ、あっ嘘、まだ終わらないぃ)

 

 栓の壊れた蛇口の如く、射精し続けるマスター。メイヴの胃の中が彼のザーメンでたぷたぷし始めていた。窒息死してしまいそうになる程、長い吐精。だがその剛直が抜かれる事は無かった。というより、メイヴの口腔がそれを許さなかった。

 

「んぐぅぅっ……!んぶっ、んごぉっ……じゅぶぅっ、じゅむぅぅっっ……んじゅるぅぅっ!」

(あっあっ、いい、これぇ……お腹ぱんぱんになってぇ……♡)

 

 白目を剥きかけながらも、大好きな友達のペニスを離さない。最後の一滴まで搾り尽くす――とそんな固い意思を感じる。メイヴ自身がそれ程までにマスターの精液に夢中になっていたのだろう。

 

「んんぐぅ、んぐっ、んぐっ……っぶはあぁっっ……!!げほっ、げほっ!!はぁっ――、はぁっ――はぁ、はぁっ」

 

 じゅるぼんっ……と卑猥な音を立てて、ようやく肉棒が引き抜かれた。涎と精液の残り汁で汚れた口周り、満足気でありながらどこか放心して瞳が朧げなメイヴはその姿も相まってまるで強姦された後だったようだった。

 

「ふふ、フフフフフフフフフフ――」

 

 しかし、その頬はどうしようも無い程に緩んでいた。

 

「初めて、ええ、初めてよ。こんな、こんな……縛られて、抵抗も出来なくて、道具のように口の中に突っ込まれて、窒息寸前まで精液吐かれて……私、女王なのよ?」

 

「でも離してくれなかったのはメイヴの方だし」

 

「うっさい。マスターのペニスが美味し過ぎたせいよ。もしこれで私が死んだらどうしてくれたのかしら?」

 

「フェラチオで窒息死ってチーズで死ぬより間抜けな死に方だよね……」

 

「そう?あなたのペニスで殺されるってのも私としては中々素敵な最期だと思うのだけれど」

 

「メイヴ」

 

「冗談よ。そんなマジな顔で見なさんな。もう自害なんて馬鹿な事、考えてないから。あなたみたいな寂しがりやの大親友を残して逝けるもんですか」

 

 軽口を叩けるぐらいにはメイヴもいつもの調子を取り戻していた。愛おしさと親しみを込めて、こちらを見詰めるその視線にマスターも無言で返す。

 彼女がさっきから腰を切なげにくねらさせている事から何を望んでいるのか察しているのだろう。メイヴとマスターは以心伝心。二人の距離つなぐマラパシー。

 

「すんごい量だったけど、まさか一回出したぐらいじゃ、終わらないでしょ?」

 

「当然」

 

 既に大洪水だとはっきり分かる下履きを剥くとそこも乳首と同様、何度も使っているとはとても思えない程に内部まで綺麗な桃色の膣口がパクパクとその美肉を覗かせていた。

 

「メイヴって、実は処女?反応もそうだけど、こことか一回も使ってなさそうに見えるぐらいに綺麗なんだけど」

 

 てっきり、「当然でしょ?私はコノートの女王、あらゆる勇士に愛される完璧な貴婦人。何度使ってもその美貌は崩れる事はないわ」なんて返しが来ると思っていたマスターだったが、メイヴは声のトーンを少し抑えて、照れ気味にこう返した。

 

「……処女よ」

 

「え?」

 

「だから、言ったでしょ。恋人じゃなくて、友達とセックスするのは初めて。なら私は処女よ。友達処女」

 

「何というとんでも理論」

 

「何よ、このメイヴちゃんの処女よ。聖杯なんかより百億倍価値があるものよ。メイヴちゃんサイコー!って感涙に咽びながらパコパコしなさいよ」

 

 不貞腐れるように呟くメイヴの初めて見る表情に、あぁ、自分にはまだまだこの親友の知らない面があるんだなとマスターは嬉しくなっていた。

 そして、そんな親友とこれから行う本番にも心を躍らせていた。

 

「あぁ、本当に最高だよ。メイヴ」

 

「ちょ、いきなりそんなイケ顔になって……うひぃっ♡……あっ、何よぉ……また焦らすつもりぃ……んぁ♡」

 

 だがいきなり挿入は行わない。前戯として、涎と精液まみれになったペニスとメイヴの秘唇が粘りつくようにキスをしていた。メイヴの媚肉が熱い剛直におし潰される度に壊れたように愛液が漏れ出している。メイヴは我慢の限界を訴えるように鎖を揺らしていた。

 

「ははっ、ほら見てメイヴ。ココもパツンパツンになってるよ。突いて欲しい?」

 

「あぁっ!?はぁっ♡あんぅっ♡や、やだ……これ、すごぉっ、マスターのペニスでクリトリスに何度もキスしゃれてぇぇっ……!ひぅぅんんっ♡」

 

 親指サイズに膨れ上がったメイヴの淫芽はグロテスクというよりは女体の神秘さを表しているようにも思える。

 まるで鈴口が捕食するようにメイヴの陰核に喰らい付き、彼女の脳髄に快楽信号を送りつける。

 

「メイヴ監獄長……イッたら挿入はお預けですよ――」

 

「んぇ?ひやぁあっ!?あっあっ、うそっ……そ、そんなの聞いてぇ、にゃあぁっ♡あっ、あっ、無理、無理よ……こんな気持ちいいの、我慢したくなぁっ♡」

 

 弄ばれる監獄長。囚人を支配する女王の姿は無く、浅ましくも腰を浮かせて快楽を貪る雌の姿。マスターからの約束事を本気にしてはいないが、何とか逃げようとしても本能がマスターの肉棒を求めてしまっている。メイヴの欲望は簡単に我慢出来る程慎ましい性格はしていない。

 

「ひっ♡ひぃ♡んひぃっ♡んぁぁあっ、クリトリスにぃ♡あなたのチンポぉ♡突かれる度にぃ♡頭のシナプスはじけちゃぁ♡あっ、あっ、むり、むり、むりぃ♡もう、イク、イク、イク♡」

 

 むしろメイヴこそがマスターの快楽の鎖に囚われた囚人。だらしなく出されたベロをマスターに引っ張られて、彼女の嬌声と共にコノート産の蜜の雨はマスター男根をコーティングしていた。

 

「この変態♪」

 

「ふぁあっ♡んひあっぁぁああああっ――……!!!」

 

 マスターの楽しそうなSっ気な言葉攻めと共に本日二度めのアクメ。下半身は彼女の意思に反して好き勝手に上下して絶頂の余韻に浸っていた。挿入すらしていないのに、とてもじゃないが他の人間には見せられない痴態をこれでもかと披露してしまった。

 

 攻めてなんぼ、男に乗ってなんぼのメイヴがペニスで体中を鞭打されて、よがっているのだ。恋人にも見せられないだろう、こんな恥ずかしい醜態は。

 

「あっ、んぁ……もう、馬鹿……最悪よ♡癖になったらどうして、くれるのよ」

 

「アカンのか?」

 

「アカンのよ。私は毒の暗殺娘とか、リリィ詐欺の騎士娘みたいなイロモノになるつもりはないの。で、どうするの?」

 

「どうするとは?」

 

「私、イッちゃったわよ。挿入はお預けかしら?」

 

「……そうだね。残念だけど、メイヴ監獄長への本番はお預けだ。だから――」

 

 彼女を縛っていた鎖を手刀で叩き斬り、赤い帽子を外す。

 

「これから、俺の大好きな友達、只のメイヴを抱くとするよ」

 

 ゆっくりと二つの男女の影は重なり合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ♡あっ♡この感じぃっ、んふぅっぁっ、やばぁぁっ……♡」

 

 恍惚としたその声をBGMにマスターの肉棒はメイヴの膣道の中を進んでいた。

 お互い纏う服は無く。ベッドの上で仲の良い友達同士のように全裸で抱き合っていた。友達の概念がこわれる。

 

「あ――……キッついね……メイヴちゃんのナカ、名器過ぎるわ……」

 

「当然でしょう?デキる女は毎日ここのトレーニングもかかしてないのよ……。あはぁっ!それにぃ、マスターのアソコが良すぎるのも、あるからぁっ♡んひぃっ♡」

 

 今まで異物を入れた事すら知らない程の窮屈さ。なのにそれは拒絶感というわけではなく、対象に奉仕する快感のシマリの良さとなっている。膣襞一つ一つがマスターの男根を搾り上げて刺激しているのだ。

 

 互いに互いの性器を褒めて、交じり合う。

 

 

 だが、予想外にも挿入を終えた二人はいきなり激しく交尾をする事は無かった。

 

 

 静かに緩やかに腰を擦りつけ合いながら、額をコテンと合わせて、何気ない会話を交わしていた。繋がり合ったまま。

 

 

「よくあるじゃない?ナンパされてしつこく絡まれている女の子を助けるシーン。そこからポッと惚れちゃう展開。けど、あれって現実問題そのナンパした方と女の子の方がくっついちゃうパターンもあるわけよね?」

 

「まぁ、リアルだと受け身より能動的な男の方が当然、出会いはあるからね。物語の話みたいなイベントやロマンチックなんて早々起こるもんでもないし、世知辛いけど」

 

「別にそれを否定したり、揶揄するつもりはないわ。現実に無いものを求めてこその創作物だっていうのは承知だわ……んぁ♡、んっ、ふぅ……け、けど、やっぱり世の男達はもっと肉食獣になるべきだと思うの。斜に構えるのではなくて、私みたいな美しさの化身を見たら即座に称えて侍るぐらいのアグレッシブさを、んぉ♡あんぅ♡……持って欲しいわ」

 

「メイヴちゃん、本当、最高。超良い匂いするし、この距離でも肌の乱れとか一切見えないし、枝毛も一つも無いし。おっぱいもおまんこも超気持ち良い。どんな時でも自分に絶対な自信を持っている所とか格好いい。けどさっきの時みたく友達の俺にだけ弱さを見せてくれるのも正直な所嬉しい。要するに全部サイコー!ひゃっほう」

 

「ひゃあぁっ……んぁっ♡はぁっ♡あ、あなたには別に、求めてぇぁぁあっ♡無いわ、よぉっ♡……んもぉ……けどやっぱり嬉しいから、たくさんチューしなさい」

 

 友達のように雑談を交わし、恋人よりも甘く、愛人よりも淫靡に唇を重ねる。

 弾力があり、潤っているメイヴの唇。重ねたままこの感触にずっと浸っていたい衝動にマスターは駆られた。何度も何度も何度もキスをする。小鳥が啄むように可愛らしい親愛のキスを何度も。

 

「んぅ、ちゅ、ちゅむぅ、んちゅ、ふふ、甘えん坊さん♡ほら、リップだけでいいのかしら?んれろぉっ……♡」

 

 頭を撫で合って、舌が絡み合う。メイヴは心から至福を感じてうっとりと瞳を蕩けさせながら、口吸いに夢中になっている。キスの度に自身の膣の中で反応しているマスターのペニスがやや子のようで愛おしい。

 

「んむぅ、じゅぷぅ……れろぉ、んぅぁっ……フレンチキスって、元々、性に奔放なフランスを揶揄った言葉だと聞いたわ。なら、あの聖女様や王妃様、性別不明なスパイ達ともあなたはこんなキスをしてたのかしら……?ねぇ、んちゅ、ちゅむぅ、んぅ♡んちゅ♡ちゅぱっ、はげしっ♡」

 

 自分でも理不尽とわかっている嫉妬心に対する答えとして唇を塞がれる。マスターの事をズルいと思いつつも簡単に気をやってしまう。それでもメイヴは愉しんでいた。セフレとしての性交を。友達としての性交を。他の女達とのセックスに決して劣っているとは思っていない。

 

 やがて、腰の動きも本来のセックスのように激しさを増していった。

 ベッドの上での控えめな抽送に飽きたのか、どんどん体位を変えていった。

 

 

「んっ、ふぅぁっ♡この角度、奥まで届いて……あっ、はぁぁ、んふぁあっ♡」

 

「メイヴの胸って控えめなのにすんごい揉み応えがある……。量より質って感じで」

 

「ひっ、あっ♡おっぱいぃ……んぁあっ、大きさが全てなら牛の乳でも揉んでればいいのよ……。女の胸の価値はそんな単純なモノじゃないんだからぁぁっぁっ!……やぁっ、乳首ぃ、いいのぉっ!」

 

 ――時にはベッドの端に腰かけ、背面座位でメイヴの股座を開き、胸を弄りながら何度も突き。

 

 

「あっ♡あっ♡いいっ、これ、いぃ♡最高よぉぉっ……んふぁあぁっ♡膣、痙攣しぱなっしぃっ……!」

 

 ――時にはテーブルに手を付いた彼女を後背位から犯し続け。

 

 

「ふふっ、あははっ……んぁっ♡……あはぁっ、やっぱり私にはこの体勢が一番しっくり来るわね……んぁあっ、あああぁんぅっ♡」

 

 ――時にはベッドの上に寝そべったマスターの肉棒をライダーらしく騎乗位で腰をぶつけながら、淫らに膣襞で擦り続ける。

 

 

「そういえば……私と同じ『黄金律(体)』を持ったイケ好かない芸術家が……んぁっ♡春画を書いているとか言ってたわよね……んんぅっ、私とマスターの本も書いてもらうのもいいわよね……。あんっ♡売りに出せば、大ヒット間違いなしね、なんなら二人でコミケ……?とかにもでも出てみる?」

 

「ん――。本当は不特定多数に自分の好きな娘の体は見られたくないんだけど、()()のメイヴをそこまで縛るつもりも無いし、好きにすればいいんじゃない?」

 

「あらあら、それぐらいの可愛らしい嫉妬なら……ひゃっ♡大歓迎よ。それに絵でいくら見られても……あぅ♡今この瞬間あなたの眼の前にいる実物の私が損なわれる事はないわ。私達はこんなに仲良しなのよって世に見せ付けてやりましょう……」

 

 ――時には側位でリラックスしながら、メイヴは背後にいるマスター語り掛け、艶声を漏らす。

 

 もし二人の薄い本が出るのならば、まず間違いなくここのシーンは定点カメラで数ページに及ぶだろう。それにそんな火種とも言える過激な本を世に出した瞬間。間違いなくマスターと懇意になっている彼女達との間で戦争が起きそうだが。

 

 

 ――そして、シンプルイズベスト。正常位の体勢でマスターは溜まりに溜まった精液を吐き出そうとしていた。

 

 蜜のように溶け合っている相手の肌の感触に二人のボルテージは最高潮になっている。

 

 汗だくになったメイヴは息を整えてマスターを迎え入れる。艶麗に出している吐息。そしてその表情は抱く前とは一目瞭然、憑き物が全て落ち切った非常に晴れやかな笑顔だった。マスターのセックスは心療効果もあるのかもしれない。セックスセラピー。

 

「おかしいかしら……。数多の男達と肌を共にしてきた私がこんな顔をしているのは。恋人でもない男と友達として体を通じ合わせているのは。そして、こんなにも心が穏やかなセックスをしているのは…………女王メイヴらしくないのかしら」

 

「いいんだよ、そんな深い事考えなくて。積み上げた歴史や英霊に相応しい確固たる精神(キャラクター)もあるけど。それでも()にあるべき姿なんてものはない。こうならなくちゃいけないルールなんてない、運命なんてものもない」

 

 彼は言う。端的に言えば、それは「ありのままの君でいい」という使い古された言葉だった。だがマスターにとってメイヴも含め彼女達はゲームや漫画、創作のキャラクターでは無い。変わってもいいし、変わらなくてもいいと。好みはあったとしてもそれを否定する事はしない。万が一にも無いだろうが……仮にメイヴがやっぱりマスターだけの恋人になると言っても彼はそれを受け入れただろう。

 

 

「そう……」

 

「らしさとかそんなの一々考えなくてもいいんだ。今日言ってた事が明日コロッと変わってるかもしれない。()()なんだから、気ままに考えていいんだ」

 

「座から分かれたコピーに過ぎないサーヴァント(私達)の事を人と言ってくれるのね、マスターは」

 

「あぁ、鬼だろうが、機械だろうが、神だろうが、なんだろうが、自らの意思を持っているのなら、()だよ。俺が大好きな愛おしい愛おしい人さ」

 

 恋人にも家族にもなれない。だが親友として自分の事を抱いてくれた親愛なるマスターに対して、メイヴは万感の想いを込めて、口を動かす。

 

「大好きよマスター、()()()()()

 

「俺も大好きだよメイヴ。()()()()()

 

 本来ならその言葉は恋愛対象にはならない遠回しのお断りの言葉だが。この瞬間の二人の告白には別の意味があった。マスターもメイヴを所有しない。メイヴもマスターを縛らない。情欲の心を隠さず友達でいる事を二人は選んだ。共に歩むのでもなく、共に生きるのでもなく、ふとした瞬間に遊んで話して出かけて性交をするセックスフレンドに。

 

「んっ、あぁ、んあぁっ――……」

 

 膣内に吐き出された射精。ビクリと震えたメイヴの喘ぎ声は今までで一番大人しいもので……そして――本人が感じていた絶頂は今までのセックスで一番気持ち良いものだった。

 

「また……セックスしましょう、マスター」

 

「うん。LINEでも何でもいいから誘って」

 

 二人はそのまま眠った。遊び疲れた子供のように穏やかな顔で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 初めての性交を終えてから数日経ったが、特に二人の関係が変わったという事は無い。

 いつも通りの友達の関係。遊ぶ、喋る、出かける、そこにセックスするの選択肢が加わっただけ。

 今日も女性鯖との付き合いの時間が入っていないマスターの余暇の合間を狙って、メイヴは彼の部屋に入り浸っていた。

 

「アマガミって良いゲームよね」

 

 黒いミニスカートに厚手の桃色セーターと寒くて暖かそうな格好をしているメイヴは定位置と言わんばかりにベッドの上で横になりながら、マスターから借りた携帯ゲーム機をカチャカチャとさせていた。

 

「それぞれのヒロインに複数のエンディングを用意しているのが気に入ったわ。異性との関係は恋人だけじゃないわよね。ナカヨシENDいいじゃない!友達同士でもゴールしていいのよ!惜しむらくはエッチシーンが無い所よね」

 

「家庭用ゲームだから、それ」

 

「ていうかマスターにしては珍しく全てのエンディングを解放させてないのね」

 

「解放条件がクリスマスデートの約束を二人以上から取り交わして、その中から一人選ぶという鬼畜仕様だからね。聖夜の寒空の下、女の子を放置するとかっ!出来るかそんなの!!」

 

「あぁ、ハーレムEND無いわよね、このゲーム」

 

「体を増やすとか!時間を置き去りにするぐらい早く動くとか!色々出来る事がある筈なんだ!」

 

「主人公は只の学生だから。あなたと同じにしちゃ駄目でしょ」

 

「俺は皆を幸せにしたいだけなんだ……!」

 

「どっかで聞いた事のある台詞ね」

 

 何故か親近感が湧くそのゲームENDを見終わったメイヴは小腹が空いた気がした。マスターと肉体関係を持ってからやけに生理現象を感じるようになっている。まぁ、サーヴァントの時よりも()()()()()という感覚があるので不満は無い。

 

「食堂で軽食でも注文する?」

 

「普通に行くのも面白くないわよね……。これで負けた方が買いに行くのはどうかしら?もちろん、お代持ちで」

 

 挑発染みた瞳で大乱闘なソフトが入った最新ゲーム機を手に取ったメイヴはマスターに誘いをかける。

 

「俺に一回も勝った事ないのに?」

 

「言ってなさい。雪辱を晴らす為に腕を磨いていたのよ。私はリンクで」

 

「じゃあ、俺はむらびとで」

 

「吠え面かかせてあげるわ!」

 

 何の縁か、カルデアの中でもトップクラスにゲームの腕が立つ未亡人属性のインフェルノに師事した事があるメイヴは意気込んでマスターと並んでモニターの方に目を向ける。

 

 今日も楽しく二人は友達同士として遊ぶ。互いに愛液と白濁液で性器を濡らしたまま。下着は穿いていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソゲーね」

 

 ストレートでボコボッコにされたメイヴは食堂へと向かっていた。下着は穿いています。

 フグの如く、頬を膨らませている彼女に職員達は道を譲る。

 

 よほど豪胆な者でなければ、今のメイヴには話かけないだろう。

 

「げ……」

 

「あ、メイヴさん。おはようございます」

 

 いつものパーカーに赤ネクタイで身を包んだマシュが何の気も無しにメイヴに挨拶をしていた。

 マシュに対して、何かしたというワケでも無い。ただ、この間アンデルセンに自身の心を切開され激昂した所を咎められた、そしてマスターの初めてを奪った彼女に対して湧き出た嫉妬心を自覚してしまった。バツが悪いのはメイヴの方。あれから彼女の事は避けていたのだが……。

 

「どうかしましたか?」

 

「……別に」

 

 あっちの方は特に気にしている様子は無い。あの時みせた自分が普段は絶対にしないような癇癪もこの女にとっては些事なのかとメイヴは負けた気分に支配される。

 

「すんすん……」

 

「はっ?あ、あなた、いきなり何をやってくれてるわけ!?」

 

 若干ダークサイドに堕ちかけていた所、いつの間にかマシュが至近距離まで近づいてメイヴの体を嗅いでいた。特に下半身の方を。「え?何、この娘、両刀使い?」と困惑するのはメイヴの方。すぐさま奇行をしたマシュから離れる。

 

「あっ、申し訳ございません!……その、メイヴさんのそこから先輩の残り香がしたのでつい――」

 

「やだ、この娘こわい」

 

 ケルトビッチのメイヴも思わず声に出てしまっていた。偶々マスターと出会いが早かっただけのモブ系小娘という印象は一瞬にして崩されていた。伊達にマスターの初めては手に入れてない。ドスケベビースト属性なので鼻も良いのだろう、きっと。

 

「良かったです。先輩とメイヴさんは波長がとても合っていたので、その二人が関係を持ってくれたのは……」

 

「あのね、言っておくけど。私とマスターはそんな甘ったるい関係じゃないの」

 

「えぇ。私達とは()()()を選んだとしても。メイヴさんはきっと先輩を大事にしてくれます。それが私にとって私事のように嬉しい……」

 

 慈愛に満ちた顔で微笑みかけるマシュを見て、こいつマジでどこまで知っているのだろうとメイヴは戦慄した。いやきっと恐らくマスター辺りがぽろっと喋ったのだろう、そうに違いないと無理矢理自身を納得させる。

 

「あ、メイヴさん、これから少々時間はあるでしょうか?私とスカサハさんとキャットさんと巴さんで女子会を行うのですが、よろしければ……」

 

「何よ、その一見脈絡無さそうでピンポイントな面子は。私に気を遣ってるのなら、そういう事はお断」

 

 マシュの誘いを即却下しようとしたメイヴのスマホが揺れ、LINEの音がする。

 

 

 ▲▲▲

 

 マスター

【なんか、邪ンヌに涙目で貸したゲーム進めれなくなったから手伝って言われたので行ってきます】

 

 マスター

【俺と遊んでくれるのも嬉しいし、楽しいけど。ちゃんと俺以外にも友達は作る事。親友がいつまで経っても同性の友達が一人もいないビッチボッチだと、マスターも悲しいです】

 

 マスター

【。・゚゚・(≧д≦)・゚゚・。】

 

 ▲▲▲

 

 

 全部仕組んでいるんじゃないかと思わずにいられない程にグッドなタイミング。メイヴは余計なお世話過ぎるとため息を吐きそうになったが、自分が社交性の無い女だと思われるのも癪だと思い、唯一のセックスフレンドを安心させるぐらいには友達を作ってあげてもいいかと考え直す。

 

「はぁ、わかった。行くわよ。行けばいいんでしょ」

 

「ありがとうございます!前々からメイヴさんに格好いい女性としてのノウハウを教えてもらいたかったので!」

 

「メンバーの時点でそんな展開は無いわよ。どうせあの人妻武者、また手当たり次第カルデアの英霊をゲームに誘ってるんでしょ」

 

 幸薄げに前の旦那を匂わせている巴御前も結局マスターと肉体関係を持っているわけで。まぁ、当の本人はその顛末については口を噤んではいるが。前にマスターが悪夢に囚われたという下総国で何かあったのだろう。武蔵、千代女、段蔵辺りなら詳細を知っていそうだが。

 あのマスターですら「ちょっとやらかした」と反省しているぐらいなのだから間違いなく碌な事ではないが。

 

 まぁ、メイヴにとって巴御前の印象は「時間を持て余してゲームにド嵌りした駄目専業主婦」。元既婚者として、それってどうなの?と思わずにいられないが、偶に打倒マスターの為にゲームの教えを乞う事もあるので実はカルデア内の同性の中では付き合いが一番多かったりする。

 

「最近、手に入れたゲームでホクホク顔なのが目に浮かぶわ。ま、巴にはまだ勝てないけど、あなた達はボコボコにしてあげる特にスカサハ」

 

「夕陽をバックにした河川敷で喧嘩理論ですね!戦いで高まる友情!」

 

「何か違う気がするけど……」

 

 何故かテンションが上がっているマシュの後ろを付いて行きながら、マスターへと返信するメイヴ。

 

 マスターとメイヴ、どこか似ている二人。互いに数多の恋人がいる身。その中で一番なんて決めれないし、決めるつもりもない。彼、彼女にとって全員が一番。だがそれでも――。

 

 

 ▲▲▲

 

 メイヴ

【いいわよ。あなたが羨むぐらいにたくさん友達を作ってあげる】

 

 メイヴ

【でも覚えておきなさい】

 

 メイヴ

【私がどれだけ友達を作ろうとも】

 

 メイヴ

【一番の親友はあなたなんだからね!】

 

 メイヴ

【忘れるんじゃないわよ!】

 

 ▲▲▲

 

 

 

 





●スマブラ持ちキャラ
マシュ:しずえさん
タマモキャット:ダックハント
スカサハ:クッパ
巴御前:全部


●マスターが最近、貸したゲーム
メイヴ:アマガミ
加藤段蔵:ペルソナ3
邪ンヌ:ドキドキ文芸部!





メイヴちゃんとはトモダチEND(ただしセックスはする)。マイ・ベスト・フレンド!(三話も使う程、話が長くなるとは思わなかった)




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君と贋作と贋作の恋Ⅰ(ブリュンヒルデ?前編)

「陣触れですよ、皆さん。ぶぅぉおおお~!! ぶぅぉおお~!!」

「ウチの後輩クソかわ」

「ぶぅぉお゛お゛お゛お゛~~っっ!! ぶぅぉお゛お゛お゛お゛~~っっ!!」(褒められ張り切り後輩)


 戦国時代は頭のオカシイ奴しかおらんのか(景虎ちゃんや森くん見ながら)。まぁ、100年もあんな狭い島国で殺し合ってた連中なんで当たり前っちゃ当たり前か。虎ちゃんのガンギマリニンマリ顔凄く興奮します。生中♡

 カルデアコレクションにて、長尾景虎、魔王信長更新。

 魔王信長は別キャラ扱いにはするつもりはなかったけど、一回統合させた後にまた通常ノッブ、吉報師、魔王信長で分裂させてもいい気はするのじゃ。複数プレイでも大歓迎。それはそれとして第二再臨の吉報師スタイルが一番シコいと思うんですけど。魔羅で啼かすホトトギス。











 久々のエロ本編だす。メイヴちゃん編から随分経ってますねぇ。



【前回のあらすじ!】

 邪ンヌ「なんか正統派の美少女ゲームがやりたいわー。女の子達がほのぼのとするやつ」

 グダお「どうぞ」

 邪ンヌ「『ドキドキ文芸部』……?」


 数時間後――。

『今すぐ部屋にカモン(涙声)』




 今話はノベルゲーム『ドキドキ文芸部』のネタバレがあります。







「死になさい」

 

 辛辣。カルデアの廊下を二人で並んで歩いていると目頭を抑えた邪ンヌからそんなご褒美めいたお言葉が。服装は現代風のジャケットを身に纏った新宿1999スタイル。時間は深夜2時――。もういい時間ですね。

 

「馬鹿じゃないの。何で正統派美少女ゲーム貸してって言ってんのにあのチョイスが出来るの? 馬鹿じゃないの? ほんと馬鹿じゃないの? 頭、人類悪?」

 

 涙声で俺を罵ってくれる燃えるツンギレ美少女。前に貸した『ドキドキ文芸部』というゲームについて、一言、二言ぐらい申したい模様。

 かつての贋作騒動であらゆる系統のイケメン贋作英霊(一名除く)を侍らさせていた若干乙女ゲー傾向が強いと思われていた彼女だったが、俺の見立てでは自分の側仕えに同性の友達枠――ブリュンヒルデをチョイスしているあたり、実は女の子とイチャイチャしたい願望もあるのではと思っている。俺にわざわざその手のジャンルのゲームを頼んできたんだし。最近は薫子さんとも仲が良いし。

 

 彼女との付き合いも結構長いがここに来てまさかの邪ンヌ隠れ百合説。あら~、嫌いじゃないわ。

 

 だがらそんな彼女の為にも渾身の一品をオススメしたというのに何をプリプリしているのかしら? 

 

「えぇ、そうね。途中までは楽しく学生生活ってのを満喫させてもらっていたわよ。文芸的な活動にも最近は興味もあったし、落ち込み気味な幼なじみを支えながらも学祭を成功させようと思った矢先にそんな彼女の自殺CGを電子ドラッグ的なBGMと共に見せられた私の気持ちがわかる? 『あっ、あの糞マスター、燃やさなきゃ』ってアヴェンジャー冥利に尽きるわよねぇぇっ?」

 

『ドキドキ文芸部』も一見、内容的には幼なじみを含めた4人の美少女がいる文芸部に入部した主人公との正統派ギャルゲーかと思われるのだが、その実はメタフィクションゲームで。ショッキングなシーンと共に画面向こうにいるプレイヤー本人に語りかける演出が多々あったりするのだ。

 

「そもそもゲーム冒頭に『このゲームには子供に相応しくない内容、または刺激の強い表現が含まれています』って注意書きがある時点で少しぐらいは怪しんでも良かったんじゃないの?」

 

「うっ、あんなの『このゲームには暴力シーンやグロテスクな表現が含まれています』的なよくあるアレだと思ったのよ!」

 

 鼻をすすりながら、涙目になっている邪ンヌ可愛い。

 

「でも良いゲームだったでしょ」

 

「………………そう、ね」

 

 ただ彼女の涙も決して恐怖からではなく、感動かそれに近い感情から来るものなのは確かだった。

 作られた世界の中で自我に目覚めてしまったヒロイン。画面の向こうにいる本当のプレイヤーに選んでもらう為にあらゆる手管を使った。それが悲劇を産むとわかっていても。

 あのゲームも単なるホラーゲームというわけではない。特に正統な英霊ではなく、元はジルドレ元帥が操る聖杯の力で産み出された邪ンヌにとっては何かしら琴線の触れる物があったのかもしれない。見事ゲームをクリアした捻くれ者の彼女が珍しく面白かったと認めているのだから。

 …………身も蓋も無い話をすると、何をもって正統英霊なのかは不明なのだが、メカエリチャン……謎のヒロインX、うごご。

 実の両親の顔も知らない俺からすれば、自分のルーツなんてそこまで気にするようなものでもないと思うけど。まぁ、そこは人それぞれって事で心の内に留めておきましょう。

 

「用意された箱庭、作られた設定、あらかじめ与えられていた感情。その中で自分だけは違うと目覚めて、私はうたかたの夢なんかじゃない! 他の娘達なんて見ないで! ここにいるの! 私を見て! 私を気付いて! それが愛する人にとって不利益な事だとわかってなお止まらずにはいられなかった。作り手の糸を外す末に待つのが消滅だったとしても選択肢は一つしか無かった。あぁ、まるで憎悪のような愛、よね……」

 

「やけにポエミーだね」

 

 俺のツッコミにも照れ隠しで燃やしにかからず「うっさい……」と頬を染めてそっぽを向くだけに留めてくれてるあたり、気分が高揚しているのだろう。

 わかるってばよ、神ゲーをクリアした後って数日ぐらい心が昂って、変なテンションになって、センチメンタルな気持ちに浸りたくなるよね。

 

「でも、次こそはオーソドックスな奴貸しなさいよ」

 

 

 かしこま! 『君と彼女と彼女の恋』にするわ! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、アンタはこんな時間に何してんのよ。またエロシミュレーションルームで慰安活動?」

 

「違います。ガチャの時間です」

 

 俺と彼女達の時間を慰安って言うのやめてよね。

 何故かついてきた邪ンヌと現在いるのはいつもの召喚ルーム。

 虹色の金平糖をジャグリングして、いざゆかん。石と精神性を溶かす遊戯へ。

 

「ふぅん、ここがサーヴァントの召喚の儀ねぇ。あれよね、呪文とかも結局どこも一緒なのかしら? 別に興味は無いんだけど」

 

 チラチラと言葉とは裏腹に俺と召喚サークルを気にしている邪ンヌ。

 呪文も必須じゃないけどね、俺のその日の気分でやったりやらなかったり、只のガチャ宗教です。深夜2時教、舞教、光原教、乱数教、セックス教……etc。運頼みだからこそ、人は何かに縋りたくなる。まぁ、俺は神様を尊ぶこそあれど、縋った事は一度も無いのでその宗教込みで楽しんでいるだけなんですが。

 

「代わりにやる? せっかくだからカルデア流の呪文も教えるけど」

 

「いいわよ、呪文の内容も知ってるし」

 

 あぁ、オルレアンで一応経験者だったか、ふむ……。

 

「実はさ、カルデア流は呪文だけじゃなくて、舞のような儀式も必要になるんだ。ここは通常の聖杯戦争みたく、聖杯に頼ったり、聖遺物が無いから、縁の手繰り寄せをカバーする為に呪文外のエネルギーも必要になるんだ」

 

 口から息を吐くように嘘を教え込む。面白そうなんでここは邪ンヌに引かせてみたいなー。邪教だが他人教とかもあるぐらいだし。

 

「……ちょっと教えてみなさいよ」

 

 チョロいわー。

 

 

 

 

 

 

 

 

「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。 降り立つ風には壁を。四方しほうの門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」

 

 はい、まずは片足上げてー、両手を拡げてー、荒ぶる鷹のポーズ。

 

閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)。繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する」

 

 次はスタイリッシュに片膝曲げて、両腕を斜めの対角線上に伸ばす。

 

「――――告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」

 

 今度は反対の方の片膝だけを曲げて、両腕を斜め下に降ろし、躍動感あるポーズ! 

 

「誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷しく者」

 

 いいね、いいね、最高っだねぇ! 片肘で片目を隠すように腕を上げて、体をくねらせる! 

 

「汝 三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」

 

 別に引いてしまっても構わんのだろう? 最後は空中に飛んでかっこいいポーズ!! 

 

 

 

「……ハァ、ハァ、何よ結構COOLじゃない」

 

 着地して、いい汗掻いたわと額を拭う邪ンヌちゃん。

 サバフェスの頃から思ってたけど、あのパンクな水着といい、焼却天理・鏖殺竜(フェルカーモルト・フォイアドラッヘ)という宝具名といい厨二病方面では特殊なセンスしてるよね。取りあえず、一連のアクションは全部スマホで撮って黒王様とジャンヌお姉ちゃんと妹のサンタにでも送っておくか。

 

 

 ▲▲▲

 

 ジャンヌお姉ちゃん

【また三姉妹のアルバムが増えました。嬉しい(*´ω`*)】

 

 

 黒王様

【サヴァッターに投稿したらバズッたぞ】

 

 

 ジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィ

【身内の恥が光の速さで拡散されているのですが!】

 

 ▲▲▲

 

 

 もう俺としてはガチャ結果よりもこれ見れただけで大勝利なんですが。今日は撤退しようかな。

 

「ねぇ、ちょっと虹色にバチバチしてるんだけど! これってもしかしなくても大成功なんじゃないの!?」

 

「え、マジ? あんなふざけた召喚で来るんか! 新しい舞教や!」

 

「フッ、これが選ばれし者のディスティニーってやつね。幸運低ランクって馬鹿にしてたヤツ見たかコラァッ! ……って今、ふざけた召喚って言った?」

 

 中指を立てて、絶賛大興奮の邪ンヌ。虹に光った召喚サークル。織りなすは三つの光の輪。黒歴史と共に自身を犠牲にしてくれた竜の魔女が手繰り寄せた縁が魔力の奔流と共に光源の先に姿を現した。

 

 

「ブリュンヒルデ。クラスは……ランサーです。私に――」

 

 

 紫水晶の瞳に淡水色の髪。物静かな言葉遣いだが、その声はよく通り、耳に心地良い。巨大な槍を携えたその女戦士はいつの日か夢の中で出会った事がある。北欧オーディンの娘、戦士をヴァルハラへと導くワルキューレ達の長姉。その名はブリュンビルデ――。

 

 

「お姉様ぁああああああ!!」

 

「ギヤアアアア――――ッッ!!」

 

 

 助走をつけずに自然体からの最高速度か。見事のものだ。0.2秒後にはもう邪ンヌの体に絡み付いてる。妖怪みてぇ。

 

「まさか、まさか、出会えるだなんてぇっ! あぁ、お姉様! 私のお姉様(ご主人様)!! これは運命(ディスティニー)! いいえ、運命(フェイト)! 懐かしくも香しいお姉様の匂い! 肌触り! 味! もっと触らせて下さいもっと抱きつかせて下さいもっと舐めさせて下さい!!」

 

「ギャ――! ギャ――! ギャ――!」

 

「こらっ! 暴れるな! パンツが脱がせにくいだろうが!」

 

 こちらが我がカルデアの新たなメンバー、戦乙女ブリュンビルデもとい、クレイジーサイコレズこと贋作英霊ブリュンヒルデです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だから食堂行くだけだって言ってんでしょ! いちいち引っ付くな! 歩きづらいのよ!!」

 

「あぁ! 久々のお姉様からの罵倒に足蹴(ご褒美)! ありがとうございます! ありがとうございます!」

 

「き゛も゛ち゛わ゛る゛い゛い゛ぃぃぃぃっ!」

 

 ゲシゲシゲシッ――。

 

 数日後、カルデアの廊下には仲睦まじく歩く二人の百合姿が。邪ンヌから絶対に離れないという固い意志を感じるブリュンヒルデの粘りが凄い。むしろ踏まれれば、踏まれる程悦んでステータスが上がってる感じがする。なんだ最強か? 

 

 しかし、懐かしいな。モナリザの偽物が出回っているといって犯人探しのレイシフトへと旅立った贋作騒動。当の犯人だった邪ンヌとそれを守る七人の贋作英霊達。その内の一人、邪ンヌが乙女ゲー臭がする男6人以外で唯一『フランクな友人』として産み出した同性枠。

 

 結局、あの騒動終盤に消えた筈だったのに何の因果かこうしてカルデアに召喚されたわけだが……。邪ンヌのかっこいい詠唱がふざけた運命手繰り寄せちゃったのかな? ま、いっか。カルデアの召喚システムに今更ツッコミとか不要だよね。

 

 

「デュフフフフフ、いやぁ――いいでござるなぁ百合。いいよね百合。視覚で接種する抗うつ剤ですぞぉ。あ、何かいい匂いも漂ってきたから嗅覚でも接種出来る。あ、頑張れ味覚でもイケない? イケちゃいそう」

 

 何やら影が出来たと思ったら、ドクロマークの白Tシャツでだらしない笑みを浮かべている大男、黒髭ことエドワード・ティーチが隣にいた。いつからいたん? 

 

「おんやぁ? 『あれは百合ではなくレズなのでは?』と言いたい系? チッチッチッ、甘いでござるなぁマスターは。ブリュンヒルデ氏の求愛は同性だからではなく、あくまでオルタちゃんに向けられているだけ、言動や振る舞いはクレイジーサイコレズ以外の何者でもないですがそこに同性愛は無いのですよ。『好きになった人』が偶々女の子だっただけ! くぁああ~~尊み増し増しじゃねぇかよオイ。これこそ百合。熱烈なアプローチをする妹枠とそれを嫌がりながらも受け入れてしまうお姉様枠! その二人の関係こそ百合! まさに百合という概念!」

 

 別に聞いてないけど、なるほどなー。

 

「うぅ――んでもどうせあれでしょ? 二人してマスターちんのちんちんで敗北するハメになるんでござるよなぁ。マスターってば『俺も間に入れてくれよ――、百合はチンコに堕ちる前ブリだろ?』を地で行く猛者である候。正直な所、あまり百合には近づかないで欲しいな♪ なんて」

 

「ガイアッッッ。そんな百合警察に殺されそうな振る舞いはしないよ。信用がないな――、全く。じゃあ、黒髭が言った通りになるか試してみる?」

 

「今まで自分の振る舞いを省みてどうぞ。拙者が引くぐらいのハーレム形成してんじゃねぇかテメェ。本当に行っちゃった。あぁ、短い百合の花園でしたな」

 

 俺が近づくと豊かな乳房に法悦の表情で絶賛頬ずり中のブリュンヒルデを引き剥がそうとしている邪ンヌが救世主(メシア)を見つけたように瞳を輝かせていた。本来なら君はその救世主(メシア)を嗤いながら燃やす側だと思うんですけど。取りあえず、アイコンタクトで「早く助けなさい」と強く語りかける邪ンヌの為にもブリュンヒルデに声をかける。

 

 

「ブリュンヒルデ――」

 

「困ります――ッッ!」

 

 

 腹部に()()強烈な衝撃。呼吸と意識が一瞬止まる。ミチミチと肉と繊維を裂くような音が間近に聞こえ、視界がブレる。吐き気と眩暈を感じながらもようやく自分の状態が理解出来た。腹から真っ赤に染まった銀の棒が生えている。首を後ろに回すとあぁ、彼女の巨大な槍に貫かれているんだな……他人事ながら鮮血を口から吐きながら思って――。

 

「いやいやいやいや! ギャグパートでござるよねぇ!? 拙者の串刺し死に芸と同じようなもんでしょ! そんな鮮明なモノローグで語るような場面じゃない気がするんですが! ほら、早く次のコマに移って全回復して下ちぃ! こんなのマスターガチLOVE勢に見られたら修羅の国になっちまいますよ?」

 

「とまぁ、俺とブリュンヒルデはこんな感じですね」

 

「やだこの子、槍が刺さったまま笑顔でこっちに振り向いている……超ホラー」

 

 一応はブリュンヒルデから解放された邪ンヌも俺を見ながら固まっているし、ほら救世主(メシア)だぞ。喜んでもいいのよ? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先輩、起きて下さい。先輩」

 

 腹部に重みを感じ、目を覚ます。自室のベッドで寝ているがどうやら上に誰かが乗っかっていたらしい。藤色の髪の眼鏡をかけた少女が何故か馬乗りになっている。俺を起こしにきてくれたそうだが、男には朝勃ちという息子が自律的にスタンドアップする現象があるので今は避けて欲しい。

 

「おはよう」

 

「おはようございます先輩と言いたい所ですが、数十分ほどしか寝てませんよね? 何故、そんなにシャキッと出来るのですか?」

 

 昨日、俺が腹から生えた槍を引っこ抜いた所、傷の気配を察知したのか救命婦長24時がマッハの速度で到着。別に唾でもかけてほっとけば勝手に塞がるんだけど、有無を言わさず首根っこ掴んで、俺を緊急治療室に連れ込んだ。

 

 確かに血でカルデアを汚すのも良くないし、早めに治すのに越した事は無いとお互いに全裸になり、メディカルセックス。俺の太い注射からフローレンスの膣内にハメリック医薬品を一発投与する頃には傷も完全に塞がっていた。

 

 

 ――んぉっ、貴方と交わるのもぉ、両手ではもう数え切れない程ですっ。あっ♡魔術などのオカルトな治療は今でも信用していませんが、うんぅっ♡これだけサンプルがあれば、おぉっ♡さすがの私も納得しますぅっ。司令官に関しては性行為が最も有用で効率の良い治療行為だとぉぉっ♡あっあっ♡房中術という極東の医術ですかぁっ……あんぅっ! 勉強になりますっ、あんぅ、あっ♡あっ♡んぁぁああっ――……! 

 

 

 恐らく性行為によって体内の淫と陽の気を循環させ、好きな人と肌を合わせる幸福エネルギーやアドレナリンと共に細胞の自己再生能力を高めて、傷の治りを劇的に早くさせたのだろう。確か漢書にも書いてあった。

 

 衛生上、行為の最中しこたま消毒液はぶっかけられまくったけど、それでも婦長とのセッ治療なので興奮は滅茶苦茶しましたよ? いつかアルコールの匂いだけで勃起してしまいそうだけど。

 

 婦長と健全な治療行為を終え、完治した後はいつも通り、精神と時の部屋(R18)に潜ったり、彼女達の自室に潜りこんだり、その日のスケジュールに合わせて絆UPに没頭していただけ。目の前の彼女の言う通り、確かに部屋に戻ってきたのもついさっき。もしかして、ずっと待ってくれてた感じ? 

 

「食欲、睡眠欲、性欲。人間の三大欲求って一個でカバー出来ると思うんだ。セックスで腹は膨れるし、目も覚めるよ」

 

「い、意味がわかりません……」

 

 倦怠期夫婦の「今日はそういうのいいから。仕事で疲れているから早く寝せさせてくれ」とかは都市伝説だと思ってる。何がワーカーホリックだよ! ワイフファックしろオラァァァ! 

 

「とにかくまだ安静にしてないと……昨日、お腹に大きな穴が開いたばかりなんですから」

 

「実際に開けてくれた張本人にそう言われると何だか不思議な気持ちになるよ」

 

「ッ――!」

 

 俺のその一言にマシュのガワを模った人物が固まり、その輪郭がブレる。確か原初のルーンだったっけ? 現実を誤認させる魔術。本家のブリュンヒルデと比べればさすがに負けると思うけど。それでも普通なら騙されるかもね。

 

「あぁ、なんか意地悪な言い方しちゃったけど。特に気にしちゃいないから。ここなら日常茶飯事だし」

 

「……所詮、贋作。偽物に出来るのはこの程度……ですか」

 

「いや、それ以前というかチョイスの問題」

 

 乱れたテレビ映像のように崩れたマシュの像の奥にいたのはやはり、彼女とは似ても似つかない哀しくも美しい瞳を持つ女性ブリュンヒルデだった。

 マシュや俺と関係を持っている彼女達以外だったら騙されていたかもしれない。

 

「俺がマシュを間違えるワケないじゃないか」

 

 バツが悪そうに槍を抱えて俯くブリュンヒルデ。昨日のような激情は突発的だったのか、鳴りを潜めていた。顔を洗って、サッパリした後に未だ部屋にいる彼女に問い掛ける。

 

「もしかして、邪ンヌにガチで怒られた?」

 

 ピクッと肩を震わすあたり、図星か。別に俺の腹に風穴開く程度、大事にするような事でもないんだけど。邪ンヌってば「コイツを傷付けていいのは私だけ」って所あるからな――。酒吞、ゴルゴーンとかと同じ系統。自分がやるのはいいけど、他の奴がやってるのを見るのはムカつくみたいな、糞デカ複雑感情。

 

「直接的に叱られたわけでは……ありません。私も――昨日の行いはどうかと思っていました。納得は出来なくても……お姉様の想い人に対して、あのような振る舞い……『何でもするので許してください』とお姉様に謝罪したのですが」

 

 

 ――アンタ、バカぁ? 私に言ってどうすんのよ。ハァ、どうせアイツも笑って「気にしてない」とか抜かすんだろうし、ムカつくわねぇ全く。…………しばらく一人にして。

 

 

「いっそ、怒鳴られた方がまだマシでした……。えぇ、わかっています。ここ数日ずっとお姉様と一緒にいて会話の半分以上が貴方の話題でした。お姉様は……心から貴方の事を愛しているとわからされてしまいました。…………ごめんなさい。今更頭を下げて許されるような事ではないと理解していますが、それでも謝罪はさせて下さい」

 

 哀しそうに瞳を伏せて、深々と頭を下げるブリュンヒルデから真摯に謝っているのを感じられた。昨日のアレも彼女は意図してやっているようには見えなかったからね。色々と我慢していた激情がアソコで爆発してしまった感じ。ついカッとなってやってしまいましたみたいな。

 

「貴方はお姉様の愛しい人。この世界を救う組織にとって重要な立ち位置にいる人。理解はしています、頭では理解していますが……あぁッ! あぁっ! それでも私の中で渦巻く炎が! お姉様の愛を一身に受けている貴方が! 羨ましくて(憎くて)羨ましくて(憎くて)!!」

 

 言葉の途中で彼女の様子がおかしくなった。

 

 頭を下げたまま、自身の肩を抑えて暴れ出す魔力を抑えているブリュンヒルデ。長い淡水色の髪が生きているように逆巻き、言葉でその激情を吐露する事で必死に暴力のような嫉妬心を抑えている様子だった。

 

「なのに……貴方は! 数多の女英霊達を喰い物にしておきながら、なお飽き足らずお姉様もその毒牙に! どうして、どうしてお姉様はあんなに幸せそうな顔でこの男の事を――ッ! だからっ、私は近しい者の姿に化けてッ! それで貴方が愚かにも気付かずに(マシュ)に手を出そうとしたら、あぁ、やっぱりこの程度の男だと、殺して(愛して)! 貫き殺して(愛して)縊り殺して(愛さなきゃ)――ッッ!!」

 

 ついさっきの奥ゆかしい程の謝罪の様子からは一変、依然と体を抑え込んだまま、頭を上げた彼女の瞳は涙を流しながらも愛憎混じった非常に魅力的な表情でこちらに殺意を向けていた。自分でも何を言っているのか、何をしているのか理解出来てないのだろう。彼女は確かにほんの一分前は心から謝っていたのだから。

 だが、もはや自分でも制御し切れない感情の激流は蒼い炎となってブリュンヒルデを中心に渦巻いていた。

 

「彼女達を喰い物にか……客観的に見れば……君から見れば、そうなのかもしれないね。惚れっぽくて気が多い糞野郎なのは確かに事実だし、それでも主観的にこう言おう。俺はどうしようもなく彼女達を貴賤無く愛していると、愛させて欲しいと」

 

「あぁ、アァ――。違い、ます――ッ、違うのです――、私はこんな事を言いたくて、したくて、ここに来たわけでは――ッ! あぁ、あぁ、いや、嫌……離れて、私から離れて下さい! 貴方に対する想い(殺意)感情(殺意)(殺意)が抑えきれなくて――ッッ! いや、嫌――、ごめんなさい、ここに召喚されるべきじゃなかった……ごめんなさい、お姉様、私――」

 

 

 

「だから謝る相手が違うって言ってんでしょ」

 

 突如としてブリュンヒルデの蒼い炎を掻き消すように黒炎が辺りを舞った。俺のマイルームが燃えちゃう。夏の風物詩、黒のビキニを纏った邪ンヌが呆れた様子で入り口近くの壁に寄りかかっていた。

 

「はぁ――。アンタ、これ以上暴れていたら死んでいたわよ。この部屋にはおっかないセコムが何人もいるんだから」

 

 部屋の隅に気配遮断した静謐ちゃん、天井裏に忍者組。俺が視線で御していなかったら、今すぐにでも飛び出してしまいそうなぐらいに殺気立っていた。古株の邪ンヌは当然、気付いていた。

 

「あ――、お、姉様」

 

「あぁ、もうっ。やめなさいやめなさい、その死にそうでみっともない顔は。それならまだ発情してるいつもの顔の方がマシよ」

 

 ペンタブ片手に部屋の奥へと入ってくる邪ンヌ。その顔は久々に見た懐かしくも意地の悪いニンマリとした表情だった。

 

「アンタ、昨日言ったわよね。『何でもする』って」

 

「はい……。お姉様の想い人を傷付けた私に、相応の罰を――」

 

「お、おもょいびと……。ンンッ! コホン! いいわ、あの時は思いつかなかったけど、アンタに相応しいお仕置き考えてあげたわよ」

 

 

 ゲス顔で親指をサムズアップした彼女はそれを俺に向けた。

 

 

「ブリュンヒルデ……アンタ、コイツに抱かれなさい」

 

「え」

 

 

「一回目のサバフェスは一応、全年齢だったでしょ。けど次回の夏コミ、いえ先に冬コミかしら? 噂によれば次のサバフェスはR18も解禁らしいじゃない。エロ有りだと『カルデア寝物語』で猛威を奮ってるあの倒錯芸術家の一人勝ちになってしまう可能性もあるでしょ? 第三者の視点で今の内にリアルな資料を取っておきたいのよ」

 

「お、お姉様?」

 

 先程の狂乱ぶりはどこへやら、ブリュンヒルデが小動物のようにプルプル震えてらっしゃるじゃないか。確かにブリュンヒルデ張本人ではないけど、あんな生前がある彼女に想い人以外の男に抱かれろってさすがの俺も心が少し痛むのですが……。

 

「やってくれるわよね? アンタの大事なお姉様の力になってくれるわよねぇ? まさか、『何でもする』ってのは口先だけの嘘って事はないわよねぇ?」

 

「は……は、い――」

 

 覚悟完了。悲痛過ぎる表情で完全に悲劇のヒロインみたいになってるのですがブリュンヒルデさん。

 

 

「あの――、邪ンヌさん?」

 

 俺が声をかけると邪ンヌは肩を組んで、思いっ切り顔を近付けブリュンヒルデに聞こえないように内緒話を始めた。そういう事をするとまた彼女が……ほら、嫉妬心で血涙してるじゃない。

 

「いいから黙ってなさい。今は誤魔化しは効いてるけど、昨日みたいな事がこれから続くようなら絶対にブリュンヒルデ(アイツ)は他の誰かに殺されるわよ。アンタも自分を慕ってる女共の事ぐらいは理解しているでしょ?」

 

 まぁ……そうだね。隅にいる静謐ちゃんからはボコボコォと新種の毒を生成しているみたいな音が聞こえるし。

 次の朝食に青色のパンケーキが出てくるとか、マシュが何故か盾についた黒いシミを丹念に拭いているサイコホラーな展開は俺も望まないよ。

 

「でもここには一つの鉄の掟がある。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。アンタ自身が懇意になった女同士でのガチの殺し合いを許していない事。それを破れば、()()()()()()()()()よく知ってる以上、私達は絶対にそれを破る事はしないわ」

 

 ぷにゅりとツンデレっぱいを押し付けて邪ンヌはシリアスな顔で言葉を続けた。やわらかい。

 

「あれを不安定な形で召喚してしまったのは私に原因があるわ。だから、他の女に殺されるぐらいなら、私が責任をもって始末をつける。でも、マスター。貴方はそんな展開をお望みでしょうか」

 

 まさか。

 

 自分で言った通り、俺は惚れやすくて気が多い。たかだか槍で体に風穴開けられる程度で嫌いになる理由は無い。何より儚い存在でありながら、本物にも劣らない()を燃やしている彼女を俺はとても好ましく思ってる。

 それに本人はマシュに化けて、騙し討ちするつもりだったみたいな事は言ってたけど、俺が戻ってくるまでずっと待っていたのも心配してくれてたっていう面も本当だと思う。

 

「なら、囲いなさい。堕としなさい。シミュレーションルームで私の当番、一時間分。つまり一日分もらってるわ。それがタイムリミットよ。ブリュンヒルデをここで消滅させたくなかったら、それまでに何としてでもあのレズをチン堕ちさせなさい」

 

 言い方。

 

 つまりは美少女攻略RTAって所か。ふむ、俺がいつもやってる事のような。マスターの仕事って何だろう。本当に邪ンヌが言っている慰安ってのを否定できなくなってきたような。

 

「コンセプトはそうね……『同じ大学サークルで同性でありながら恋慕の感情を抱いてしまった一つ上の先輩が悪い男と付き合っているという噂を聞きつけ、そのセレブ系のお嬢様がお姉様と別れるようにその男に近付いた所、逆に乱暴されてキャンパス内で犯され、ハメられ、女の悦びをその身に教えられてしまう』みたいな感じでいきましょ」

 

 

 設定が濃い。

 

 

 

 

























Just Jeanne alter.

ok
























エロ本編と言っておきながら、本番は次回なんですサーセン。
導入いれないで、さっさとサクサクセックスさせればもっとキャラもどんどん攻略出来るんですけどね、まぁこの作品のスタイルって事で許して下さぁい。

チョコラミスといい、偽物系ヒロイン好きよねーこのマスター。私が知る限り、純粋なレズキャラって型月作品いないよね?
『ドキドキ文芸部』はプレイヤーの自殺報道(デマ)とかショッキングなシーンで敬遠されてるかもしれないけど、最後までプレイしたら本当にいいゲームだから!単純なホラーじゃないんだよ!  無料でやれるのが勿体無いぐらい良い作品なの!


二部二章入る前にこのキャラのエロだけは入れておきたかったのだ。




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君と贋作と贋作の恋Ⅱ(ブリュンヒルデ中編)

ノーマルな女体エロを書くの久々。いやシロ君も女体だけれども。


英霊正装のロイヤルさもいいし、チア概念礼装のスポーティなエロチックも大変興奮するブリュンヒルデお姉様の欲張りセットです。




















 夕暮れ時、地平線に落ちかけている陽が大学構内を橙色に染めていた。

 

 既にその日の講義は全て終了し、サークル、部活に所属している生徒以外はアフターキャンパスの時間を各々楽しんでいる。

 

 本日の講義という役目を終えた教室はひっそりと静まり、()()ならもう生徒の姿が見える事は無い。

 

 だが、200人ぐらいなら優に収めれる講義室、横に広く階段状に机が並んでいるその先の教卓に二人の男女がいた。

 

 

 その様子は学び舎の日常からは少々かけ離れているようにも思える。

 

 女の名はブリュンヒルデ。

 

 今年入学した大学一年生。巨大文芸サークルの期待の新星、170cmを超えるプロポーション、ストライプ柄のハイソックスに蒼色のブラウスから羽織られたジャケットのコーデはまるで外国の噴水前にいる有能秘書のような印象を受ける。

 

 眼鏡をかけたその知的な様子に相応しい知性と思慮深さを持ち、丁寧に結られた淡水色の髪からは育ちの良さが伺え、物腰柔らかい口調は()()()()()を知らぬ者からは新入生にも関わらず、男女問わず根強い人気がある。

 

 しかし、今の彼女の様子はそんなイメージからはかけ離れたものだった。ホワイトボードを背に手首を拘束バンドで縛られた彼女はある男にその腕を抑えられながらも、肉親の仇のように目の前の者を睨み付けていた。

 

 

 下手人、男の名は■■ ■■。

 

 ブリュンヒルデが所属する文芸サークルとは直接的な関係は持たない男。彼女の一つ上の学年。所々跳ねながらも清潔さを保っている黒髪にデニムパンツとやや大きめの白Tシャツ、そして首にはシンプルなデザインのネックレス。

 一見、好青年のような印象を受けるがその性根は真逆。気に入った女がいれば、教師だろうが、彼氏持ちだろうが、所帯持ちだろうが、キャンパス内で手当たり次第女体を貪り喰らう色欲の権化。彼の人当たりの良いフェイスで油断してしまったら最後、蟻地獄のように引き摺り込まれてしまう。NTR本の寝取り男の見本のような悪漢だ。

 

 

「ちょっと酷くない?」

 

 シャラップ。こっちに話しかけんな。私はいない者として扱いなさい。

 

 

 事の発端はそう。サークルで彼女が慕う二年の先輩、ジャンヌ・オルタが男性と交際しているという噂を聞きつけた所から始まる。常日頃から同性としての枠を超えたレベルで慕っていた先輩が男と付き合い始めたという衝撃は計り知れないが、そこからのブリュンヒルデの行動は早かった。

 

 その男の近辺を調査し、もし彼がお姉様に相応しい者なら陰ながら応援し、身を引こう――と。

 

 だが現実は彼女の想像を超えて最悪だった。叩けば、叩く程出てくる彼のアレな女性関係。

 

 彼女が所属する文芸サークルだけでもジャンヌ・オルタを含めて、彼と交際関係及び、肉体関係にあるのが5人。

 

(※彼女のサークルは文芸部、漫画サークル、詩人会等の文系クラブや部活がいくつも複合している巨大サークルである)

 

「お姉様だけでは飽き足らず、刑部先輩、ラーマ先輩にシータ先輩、さらには部長でもある薫子先輩まで……その毒牙にかけているなんてッ――」

 

「言ってくれるね。俺は彼女達を等しく全員愛しているだけなのにさ」

 

「戯言をッ! どうせ、今の私みたく無理矢理手籠めにしただけでしょう――ッ」

 

 

 ブリュンヒルデは複数の女性と関係を持っている事実を手にこの男を講義室へと呼び出した。大事なお姉様にはまだ何一つ伝えていないのだろう。こんなクズ男だろうとも彼氏の話をするお姉様は本当に幸せそうだった。そんな彼女を傷付ける事をブリュンヒルデは望まない。

 

 だから男の方から大人しく身を引いてもらおうと動き出したのだった。

 

 誤算は二つ。

 

 一つは当の本人がそのスキャンダルを痛くも痒くも思っておらず、交渉の材料にすらならなかった事。

 

 二つ目はまさか自分が今、この瞬間に襲われている事。敬愛すべき先輩の恋人という存在に。

 

 

「離してください、大声を出しますよ……」

 

「それで困るのは果たして、どっちなんだろうね?」

 

 そう言った彼はスマホの画面を彼女に突きつける。LINEのトーク画面には『二人っきりで内密に話したい事があります。18時過ぎに――教室に来てもらえるでしょうか』と。この男をここに呼び出したのはブリュンヒルデからである。

 ジャンヌ・オルタからは「近い内にアンタも会う事になるでしょうから、今の内に教えておくわ」と既にこの男の連絡先は知っていた。

 

「くっ……!」

 

「確かに君の目論見通り、俺は後輩に乱暴した悪漢として糾弾されるかもしれない。だけど、あぁ困ったな。それで動揺した俺は気の迷いでこのトーク画面を外部に拡散してしまうかもしれない」

 

「……私に疚しい事はありません」

 

「あぁ、もちろん。それは事実だ。君は大好きな先輩の為に人知れず戦った勇気ある娘なのは認めよう。さぁブリュンヒルデちゃん良く考えてみよう。君が今、ここで俺と二人で密会している事が公になったら本当に困るのはどちらになるのかと」

 

 彼はまるで日中のカフェで偶然会った後輩を優しく窘めるようなこの場には場違いな程に柔和な笑顔を近付けて、ブリュンヒルデを追い込んでいく。

 

 こんな台詞、私用意した覚えはないんだけど……。わかってたけど、やっぱアイツ真性のドSね。アドリブがイッキイキしてるもの。

 

「おっきー、ラーマ、シータ、薫子さん……もしかしたら君が把握していないだけでもっといるかもしれない。文芸サークル内で一体何人の娘に影響があると思う? はは、君の大事な場所が滅茶苦茶になるかもね……。あぁ、そして大好きなお姉様は一体、どう思うのかな? 自分を慕っていた後輩がまさか恋人と密会していたなんて……真偽はともあれ今まで通りの関係なんてのは難しいんじゃないかな?」

 

 そうだ。そもそもブリュンヒルデが内密に片付けようと思ったのは出来るだけジャンヌ・オルタの心に傷を付けず穏便に別れてもらおうと考えていたからだ。

 他の女性関係の情報を利用して、迫ればあちらは簡単に引くという予想は覆されてしまったが。

 

 もし、自分の恋人と良からぬ関係を抱いているとお姉様に思われてしまったら――。ブリュンヒルデの表情が恐怖で強張る。

 

「あ、なたはッ! ……脅迫をっ、するつもり、ですか?」

 

「君も同じ事をしようとしていたんだろ?」

 

 突如として彼女のジャケットの内ポケットに男の無遠慮な手が差し込まれる。大方、言質として証拠を残すつもりだったのだろう。見透かした彼によってボイスレコーダーは簡単に奪われてしまった。

 

「ッ! 返しなさっ――ひぅっ!?」

 

 唯一の切り札を奪われて、焦ったブリュンヒルデは手を拘束されていようが構わず、彼に飛び掛かろうとしていた。

 だが、その動きも彼女の身体に走った未知の感覚に止められる。

 

 彼の手はブリュンヒルデの太腿の付け根、股の間、そう――服の上からとはいえ女性器の場所を覆い被していた。

 異性はおろか、同性にすら触れさせた事のない場所をこんな男に許してしまった生理的恐怖にフラつき、再びホワイトボードへと寄りかかってしまう。

 

 ボイスレコーダーは踏み付けられ、無惨にも壊される。

 

 初めての異性の手。脅迫に恐怖。お姉様への罪悪感。身体に走った寒気と仄かな熱さ。今もなお、彼女の黒のショートパンツの上から恥丘を揉み込んでいる異常な状況にブリュンヒルデの思考は二手も三手も遅れてしまっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んっ、ふぅ……っぁ、はぁっ……」

 

 透き通るような声色の喘ぎが漏れる、だがまだ甘さは足りない。アイツも現状ではそこまで本気じゃないのだろう。

 用意したシミュレーション内、私とアイツも今まで何度か使用した大学シチュ。それと同じ講義室で邪魔にならないように私は録画中の三脚付きビデオカメラの隣でタブレットにペンを走らせる。

 

「止めてください……好きでもないあなたにそこを触られても気持ち悪いだけ、です……んっ、今なら何も無かった事に出来ますから、解放しな、さいっ……」

 

「ん――、何も無かった事にして欲しいのは果たしてどっちなんだろうね」

 

 ビデオカメラには教卓にうつ伏せで乗せられて、まな板の鯉のように局部をまさぐられているブリュンヒルデの姿が映っているだろう。タブレットにはまだネームとメモのような走り書きしかない、どうせ後でいくらでも見返せるのだからペン入れは後でもいいのだ。

 

 R18指定のシーンを書くにあたって重要なのはリアルに出来る限り近づいた生々しさと艶めかしさ、私がここ最近で学んだのはエロというのはいくら正しい人体を書いても、興奮出来なかったら意味ないし、仮にイイシチュだったとしても作画崩壊していたら、それだけでページを閉じられてしまう。どちらも欠けてはいけないのだ。

 

 自分とのはまぁ、あの馬鹿マスターがいくらでも撮っているが、さすがに自分を題材にして濡れ場を本にして書くなど狂化が入っていてもまっぴらごめんである。刑部姫でもやらないだろう。シータあたりは自分の()を巻き込んで嬉々として書きそうだが。

 

 かといって他の女共に頼むのも些かハードルと羞恥心が問題。サバフェスあたりから頭がオーシャンになったあの白い奴なら「悦んで妹の力になります!」とかほざく未来が見えたので却下。

 

 私の馬鹿騒動で産まれてしまったあの愚かな妹分に責任を感じているのも事実なのでマスターに言った通り、さっさと誑し込んでカルデアで問題無く生きれるようにして欲しいのは本音だがそれはそれとしてせっかく良い資料をゲット出来るチャンスも無駄には出来ないわよね。プロの作家はどんなものでもネタにしてこそ、よ! 

 

 

「へぇ、水色の下着か。髪の毛とお揃いにしているのかな。これは上を見るのも楽しみになってきたよ」

 

「やめなさいっ……! やめて! 見ないで……」

 

「こらこら暴れないの。下着ぐらいでそんな狼狽えていたらこれからする事に耐えられないよ? ……ふむ、気持ち悪いと言いながらも濡れてきてるね。ベタな言い方をすればこれは生理現象?」

 

「ひぁっ! あっ……嘘、嫌、いやぁっ、指を動かさないでぇぇ……下、返してぇ……んぅっ、ごめんなさい、お姉様ぁ……」

 

 

 いつの間にやら下のショートパンツを剥かれたブリュンヒルデの下半身は水色の刺繡の入った高級感溢れるアダルトな下着姿になり、執拗にクロッチ部分を指で擦り上げられていた。

 うん、まぁ……大まかな設定を決めたのは確かに私だけどやけにノリノリよねアンタ達。実は仲良かったりしない? 

 

「さて、どうしようか。このまま直接指を入れて、君が堕ちるまで動かし続けるのも一興だけど……」

 

「あぁ、お願い……直に触れるのは許して、そんなのお姉様にも許したことないのに……」

 

 服の上からでもないわよ。

 ただ、アイツの格好をセレブお嬢様風にしたのは正解だったわね。黙っていれば清楚な美人だし、眼鏡も良く似合ってるじゃない。

 レズっ気があり高嶺の花。それが一人の男に散らされる。綺麗な物こそ汚したい。エロスってのは救いようが無いわよね、全く。

 

「誰にも今の状況をバレたくないブリュンヒルデちゃんの為にもまずはその口を塞ごうかな」

 

「……っ!」

 

「そんな怯えなくてもいいよ。今キスしたら舌でも噛み千切られそうだ。まぁ、それでも俺は構わずキスはするけど。今回は君も嬉しいんじゃないのかな。不幸中のって事で。はい、これなーんだ」

 

 そう言ってマスターがおもむろにポケットから出した()()()()()()()()()()()()

 …………待ちなさい。嫌な感じ、これはとても嫌な感じよ。

 

「あぁっ♡その匂いっ……間違いなくお姉様の――」

 

「そうだとも。この間、俺の部屋からノーパンで帰らせた時に返し忘れた邪ンヌの黒いパンTさ! もちろん! 洗ってすら! いない!」

 

「待てコラ」

 

 急にギャグを挟むな。そこは違うでしょ。アンタのデカ過ぎて硬過ぎて噛み切れない豪槍でブリュンヒルデの口を塞いでイマラする展開じゃないの!? 

 

「あれなんか声が聞こえるな――、でもいない者として扱えって言われたからな――、気のせいだろうな――」

 

「いくらですか!? それ、いくらなんですか!? ハウマッチ!!」

 

 コ、イ、ツ、ら、はぁぁぁあああああああ~~~~ッッ!! 

 

 ふぅっ――。ふぅっ――。落ち着け、落ち着きなさい私。心の中の邪竜もまだ慌てるような時間じゃないと囁いてるわ。

 

 あの馬鹿は後で燃やすとして、冷静に考えてみればそこまで悪い展開ではない気もするわ。

 

「むぐぅぅっ!」

 

 決して望んでいない色事。でもその中で恋慕する先輩の匂いを濃密に漂わせる下布を口に轡代わりに詰め込まれる。

 吐き出すのはお姉様に対して無礼に当たるのではと、躊躇してしまうブリュンヒルデ。倒錯的で変態的な行為に間違い無い筈なのに生々しい程にジャンヌ・オルタの味を染み込ませている下着を口からどうしても放したくない。

 

 夢中になっているブリュンヒルデの隙を突くようにクロッチ部分を横にずらした彼の指を汚れ無き彼女の女陰は容易く呑みこんでしまった。

 

「んむぅぅっ!?」

 

「わぁ、凄い。お姉様のパンツを口に入れた瞬間に水気がさらに増してるよ」

 

「んぅぅっ! んぅぅっ――!!」

 

 男の言葉を否定するようにイヤイヤと首を横に振るブリュンヒルデ。だが性器は口ほどに物を言う。綺麗なピンクでありながら淫らに男の指を受け入れている彼女の雌穴は教室内に淫靡な水音を響かせていた。

 

「経験が無いとは思えないよブリュンヒルデちゃん。ほらもう指が二本も入っちゃってる。これは指が気持ち良くて濡れているのか、それともお姉様のパンツで興奮しているのかな? どちらにせよ変態さんだ。君のファンがこれを見たらどう思うことやら」

 

「んぅぅっ! んぐぅっ!! んむっぅっ♡んっ、んっ、んぅ……♡」

 

 マスターの言う通り、彼が激しく指を膣内で暴れさせて、早くも股から漏れる愛液は教卓の上から滴っていた。男に対して生理的嫌悪を抱いているとは思えないぐらいに下半身は震え、くぐもった声には甘い喘ぎが混ざっているような気もした。

 

 私がブリュンヒルデの顔が見える位置に回り込めば、丸まった黒い布をギャグボールの如き咥えている眼鏡姿の美女が屈辱と快感の狭間で揺れ動いている実にイイ絵があった。

 

 事前に私の事は意識しないように言い聞かせていたが、さすがにこんな醜態を見せるのは応えるのだろう。顔を伏せて声を抑えるように試み始めた。……いつも私に発情しているアンタがここで羞恥心を覚えるのはちょっと意味がわからないが。

 

 だがそんな反応を性癖グランドであるこの男が許す筈も無い。もはや数多のサーヴァントの膣内を弄ってきたアイツの指はヴァギナソムリエと言ってもいい、数分も触れていればその女の弱点を探り当てる事は容易に過ぎる。この間は眼を瞑って指で触れるだけで誰の膣か当てれるとかほざいていたが……冗談だと言えないあたりアイツが恐ろしい。

 

「んふぅぅっっッ――!!?」

 

 毛色が変わった快楽に魚のように跳ね上がり、上半身をバウンドさせてしまったブリュンヒルデ。

 上半身は美人秘書のような高貴さ溢れる見た目なのに同性のパンツを咥えながら、涎を垂れ流して雌穴をほじくり回されている彼女の姿は思わず唾を飲み込んでしまう程にインモラルだった。

 

「盛大にイッたね。まだまだ締め付けてくるし」

 

「んぅっ、んむぅっっ♡ん゛ん゛ぅぅっ――」

 

 潮と愛液で既に教卓の下に水溜りを作っていても意に介さず、アイツは嗜虐心に満ちた顔でブリュンヒルの女陰の愛撫を続ける。教卓の上から落ちないように拘束された手で縁に何とかしがみつくブリュンヒルデは満足に呼吸も出来ないせいか体力の限界が近そうに見えた。

 

「この教室ってさ。広いだけあって講義の利用頻度が一番高いよね。これから大変だよねブリュンヒルデちゃん、ここで講義を受ける度に絶対思い出しちゃうでしょ? 生徒が一番注目する場所で自分がどんな姿で乱れていたのかをさ」

 

 汗が浮かぶうなじに顔を近付けて羞恥心を煽るように囁くマスター。ピクリと快楽に溺れかけていた筈のブリュンヒルデの瞳に敵愾心が再び灯る。

 そうそう、私が指示しなくてもちゃんとわかってるじゃない。さすがねマスター。

 調教物、凌辱物には鮮度が必要よ。静的な状態ではなく変化の動態。すぐに堕ちてしまったらそこから先は只の消化試合になってしまうのよ。獲物に怒りや希望を与え、煽って、反抗心を萎えさせない状態を維持して、体を弄ぶ。

 

 それを焦らしてこそ、堕ちた時のカタルシスが堪らないモノになる。成人向けでも私は同人の王になるわ! 

 

「っっ……んはぁっ! はぁ――ッ、はぁ――ッ、だ、まりなさい……よくもお姉様のお召し物を……このような――」

 

 彼女の唾液を存分に吸い込んだ私の下着はようやく壊れ物を扱うように静かに教卓の上へと吐き出された。ブリュンヒルデはまだ堕ちていない。敵意に満ちた瞳をマスターに向ける。アイツはそれすらも愉しんでいる感じだが。そもそもまだ本気で堕としにいってないだろうし。

 

「いやいや、それを咥えて乱れ狂っていたのはどこの誰なんだろうね。誇っていいよ、君は俺が引くぐらいの変態の才能を持っている。愛しのお姉様の物ならなんでも使ってオナニーしちゃうんじゃないかな。服とかペンとか髪とか……。俺の舌もさ、今まで邪ンヌと死ぬほどディープキスしてきてるからまだお姉様の残液があるかもよ? 使ってみる?」

 

「ふざけッ――ひゃあああぁっ!?」

 

 挑発に乗ってすぐ傍にあるマスターの顔に噛み付かんばかりの勢いで激昂したブリュンヒルデだったがまた甘い声がそれを中断させる。今度はマスターの指は膣内ではなく、小陰唇の上、今までの興奮で膨れ上がったクリトリスを摘まんでいた。タイミングとしては最悪で最高。まるでおちょくられているようにブリュンヒルデの怒りは快楽に上書きされる。

 

「ひっ♡ひっ♡……や、めなさぁっ……あっ♡あっぁっ♡そんな所、コリコリ、しないでぇぁ、んぁあぁっ♡」

 

「この慣れた反応……。ブリュンヒルデちゃんはオナニーする時、クリばっかり弄る娘と見た。膣内に指を入れるのは怖い……それとも愛しのお姉様にとっておいた感じ?」

 

「だ、ま……り、なさぁぁぁっっ、んあぁっ♡あひぃぃっ♡」

 

「それは悪かった。初めての指挿入をこんな風に奪ってしまうとは。お詫びにもう一つの初めても奪っておこうか」

 

「あぁっ♡はぁっ♡んむぅぅぅっ!?」

 

 クリトリスを弄っていない方の手でブリュンヒルデの顎を掴んだマスターは私のパンツを咥えていた時と同じぐらいに蕩けている彼女の唇をついに奪った。

 

「んぅっ――! んぅっ……! んじゅぅぅっ♡」

 

 不躾に自分の舌を吸い、絡め取ってくる男の舌を最初は噛み千切ってやろうと意気込んでいたのかもしれない。だが今の今まで女性器を嬲られた余韻に脱力し、今は淫芽を摘ままれるという鋭い刺激がブリュンヒルデの敵意を萎えさせる。

 さらには先程マスターが言った一言が楔となって効いている。

 

「んぅっ、んぅ、ちゅむぅっ♡んぁっ、あぁっお姉様ぁ……♡ごめんなさぁっ、んむぅっ、んちゅっ、じゅぅむぅっ♡」

 

 べ、別に現実では私とアイツはそこまでそんな死ぬほどディープキスとかはしていないけど……ここでは設定上の話。ブリュンヒルデは想像してしまったのだろうお姉様がこの男といつもこんな風にキスしてしまっているのかと。ま、まぁ現実の私はあんなはしたない顔とか音を立てたりはしてないけどね、あくまで設定上の話よ。

 

「キ、スぅ……いやぁぁっ……ん゛むぅぅっ、じゅぷぅっ、ちゅぅっ、やめっ、んんぅっ♡」

 

 何とか顔を逸らし、逃れようとしても巧みに這い寄る舌がブリュンヒルデの口内に入り込む。唾液を吸われ、与えられ、唇を汚される。彼女に一番堪えるのはその屈辱の中に抗えない快楽が確かに存在する事。

 

 恋慕する先輩がこの男と深い関係にあるのは事実。だから憎くて憎くて仕方ない相手の筈なのについ投影してしまった今の自分自身にジャンヌ・オルタを。恋人としてこの男と口付けを交わしているお姉様という存在を。

 

「ちゅむっ……んじっゅぅっ♡じゅるるぅっ……! じゅぷぅっ、んむっぅっ♡んあぁっ……はぁ、私ぃ、いやぁ、何でこんなにぃ……」

 

 ――気持ち良くなっているのだろうかという先の言葉は続かない。触れる事すら許していなかった男に一時間も経たずにマンコを好き放題触られ、口内を凌辱され、あまつさえそれで気持ち良くなってしまっている。

 

 男の手が抽送されている下の口からも、後頭部を逃げられないように押さえられながら清楚の欠片も無いいやらしいキスを交わす上の口からも、愛液が垂れ流れたままだった。

 

「んっ、んぅぅっ……いや、いやぁっ……はむぅっ、イキ、たくないぃっ……ちゅぅ、ちゅむぅっぅ、イ、キたくないのにぃっ……じゅるぅぅっ! ま、たきてし、まぅぅぅっっ♡」

 

 ねっとりと隙間が無いぐらいに口を塞がれたブリュンヒルデは講義室に響かせる筈だった盛大なイキ声をマスターの口の中で木霊させていた。痙攣し続ける肢体。完全に絶頂し終えるまで止まる事のないマスターの手淫。ここからは見えないがブリュンヒルデの反応を見る限り、クリトリスは恥ずかしいくらい充血してしまっているだろう。

 

「ん゛ん゛ん゛ん゛ぅぅぅぅううううっ――――……!!」

 

「んぅっぷぅっ……はぁっ。ご馳走でした。ほら、よく見なブリュンヒルデちゃん。これが今日、君の初めてをいくつも奪った男の顔だ。そしてこっちは初めてを奪われた時の君の様子だ」

 

 半開きになった口から舌を垂れ流し、呼吸もままならないブリュンヒルデ。激しい愛撫の連続に眼鏡も落ちかけているのがもうひと押しすれば彼女が雌として堕ちてしまうのを暗喩しているようでもあった。

 心ここにあらずなブリュンヒルデに見せられたのは彼が差し出したスマホに映った局部に指を突っ込まれ、浅ましくも喘ぎ続けている自分自身の動画。

 いつ撮ったのだと聞いている場合じゃない、これから何をされるのかも察してしまった。

 

「んぅ、はぁ――、はぁ――、んぁぁっ……はぁっ、はぁぁっ……そんな、なんて事を……消しなさぁっ……」

 

「消すさ、君が望むならね。だからちょっとだけ先輩の言う事を聞いてくれないかな? 大丈夫、何も難しい事はないからさ」

 

「んっ、ふぅっ……外道が――」

 

 ここでもう一押しすれば、恐らくブリュンヒルデはマスターの手で堕ちるだろう。だがアイツは律儀にも私の大学シチュレズ調教物の設定に沿ってくれている。

 

 一息で完堕ちさせるのではなく、堕ちかけの状態で間を置くのが調教物の醍醐味。その間、帰らせた後に獲物が一人で煩悶するのも含めて女を堕とすプロセスなのだから。

 

 ブリュンヒルデのハメ撮りという脅迫材料を手に入れたマスターは日を跨いで焦らし、再び彼女を呼び出すだろう。今度こそ完璧に堕とす為に。

 

 ――とまぁ、これはあくまで設定上の話なのでこのまま間髪入れず、次の場所へと移るのよね。そこの中間の描写は私の妄想で何とか補うとして……。

 

 ちゃっちゃと二人には別の所に移ってもらいましょ、体の熱が未だ冷めないブリュンヒルデからすれば堪ったもんじゃないでしょうけど、そこは自業自得って事で。オープンセサミ! 濃厚なエロカモン! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――コンコンッ。

 

「俺だよ。開けてもらえる?」

 

 大学構内にある3階の鍵がかかった多目的トイレがノックされる。続いたのは男の声。自分が指定した時間に必ずある女がいるだろうと確信した声だ。

 

 数秒……迷うような沈黙後、諦めたのか扉が開けられそこから出てきた手が間髪入れずに男を中へと引き摺り込む。

 

「すぐに入って下さいっ。こんな所、誰かに見られるのは御免です……」

 

 再び鍵を閉めて、焦った声を出す女はブリュンヒルデ。顔を真っ赤にして震えているのは男と密室で二人っきりでいるのが理由ではない。

『――のコスプレを着て、この場所に来てくれ』という指示に従わざるを得なかった彼女の服装は異常だった。

 

 この男も彼女が所属している文系サークル内で行われるイベントの衣装も把握していたのだろう。服を準備させるのに支障は無かった。

 

 彼女が現在着ているのはスポーツ競技場で見るような黒に紫色のラインが入ったチアリーディング衣装。しかしその露出度には健全さの欠片も無い。

 ユニフォーム部の裾は非常に短く臍が丸出し、スカートも太腿の際どい所までギリギリ、何より衣装が浮いた瞬間にチラ見せされてしまう柔肌を覗く限り、間違いなく下着をつけていなかった。

 

 全てマスターの指示によるものだが、スキャンダルを握られている以上彼女に拒否の選択権は無い。

 

 今は何とか隠れているものの少しでも飛び跳ねてしまえば、その中のピンクの媚体が簡単に零れてしまう。こんな姿で「がんばれ♡がんばれ♡」されたら別の場所がスタンディングオベーションになるだけだろう。

 

 多目的トイレにジャンヌ・オルタの姿は無い。彼女の三脚カメラだけが脇に置かれている。二人っきりにして欲しいというのはマスターの頼みだ。

 

 設定上では数日、跨いでだが……現実はあの講義室の愛撫から間髪入れずである。故にブリュンヒルデのアソコの火照りはまだ冷めていないのだ。そんな目に見える弱点をこの男が放って置く筈も無い。スカート越しにお尻の上へと手を滑らせ、股間へと潜り込ませる。

 

「おや、恥ずかしがっててもここはこんなに濡れているじゃないか。才女だけじゃなく、痴女の才能もあるんだろうねブリュンヒルデちゃんは」

 

「んぅっ……! あっ、くっ……もうこれっきりにっ……して、くださ、いっ――……私はあなたの、モノに……なるつもりは、ありませんっ……! 約束して、下さい……もうお姉様には近づかないと――」

 

「わかってるさ。これを最後の思い出にするよ。君にはもう付き纏わないし、お姉様とも別れよう。あのトーク画面も動画も削除するさ」

 

 信じていいがわからない。だが自分にとっては間違いなくベストな条件故にブリュンヒルデはここに足を運び。()()()()()()を捧げる事を決意したのだ。

 

「しかしエロっいチアリーディング衣装だよね。スポーツどころじゃないでしょ、こんなので応援されたら。ブラジャーも着けてないし、乳首がおっきしてるのも丸わかり」

 

「ひぅんぅっ!! あ、あなたが着てこないように……い、言ったのでしょう」

 

 服の上からの小さな蕾を突かれただけで電撃が走ったかのように腰砕けになってしまう。踏ん張りつつも睨み付ける彼女の瞳には最初程の覇気は無くなっている。

 

(悔しいけど、この男の女を悦ばせる術はホンモノ……早めに終わらせないと)

 

「このトイレがある東棟も比較的人が通らないというだけで、誰も来ないわけじゃないからね、不審に思われたくなかったら君が考えているように早く終わらせた方がいいよ」

 

「ッ……! わか、っています! あなたこそ、事を済ませるのならさっさと下を脱いでください……」

 

 卑猥な格好でありながらも攻撃的な視線を向けるという股間に悪いビジュアルを再現しているブリュンヒルデに苦笑しつつ、彼はズボンを下し、便器の上へと腰かける。

 

 ブルンッッと女を性的に殺す魔羅の槍が抜錨された。

 

(なんて大きさッ……これが男性の性器。お姉様のアソコを……中を性抜してきたモノ……)

 

 興奮状態の怒張となって目の前に現れた逸物にブリュンヒルデはビクリと震えた。あくまで知識としてしか知らない男性器、圧倒的に経験値が足りないお嬢様には些か刺激が強かった。

 

 そうマスターからは動く事は無い。初めての性交を。自身の処女を。奪われるのではなく自らの意志で捧げる。それがブリュンヒルデの要求を飲む条件だった。

 

 扇情的なチア衣装で下腹部に手を当て、便器の上で男に跨る姿はどうしようもなく劣情を煽る。

 体はもう講義室での愛撫で不本意ながらも出来上がってしまっている。女陰を大きく拡げ、傘のように膨れた亀頭へ狙いを定める。

 

「ごめんなさい……お姉様、ごめんなさい……ん゛ん゛あ゛ぁっ――――ッ!!」

 

 結果として不貞となってしまった事を詫びるブリュンヒルデは怖気づく事なく一息で腰を降ろした。

 ブリュンヒルデの贋作故、彼女に異性との経験は存在しない。性交渉は目の前にいる男が初めてではあるだろうが肉体はブリュンヒルデをベースにしている。生前シグルドとパートナーであったブリュンヒルデという英霊には処女膜は存在しない。だから彼の剛直もブリュンヒルデの膣内いっぱいに障害無くすんなりと入ってしまった。

 

「あ――っっ! がっ……はぁっ……♡これ、は……なぁにぃっ、あぁっ!」

 

 それがいけなかった。処女膜が無い処女という一部の層が大変喜びそうなブリュンヒルデの体にマスターの男根がいきなり子宮入口まで挿し込まれる衝撃が襲う。クレイジーサイコレズを装っていようが男性経験は糞雑魚な彼女は白目をむきかけ、数秒程完全にフリーズしてしまった。

 

「どうする? キツそうだけど、俺から動いた方がいいかな?」

 

「ひぅっ、は、ははっ……大したこと、ない、ですね……ぇぁっっ、あっ、こ、これふらいなら……じぇ、じぇんじぇん、よゆうです……んぁっ♡」

 

 だがここは百戦錬磨の人類悪棒(マジカルチンポ)をノーガードで受け入れておきながらまだ完全に堕ちきっていないブリュンヒルデを褒めるべきだろう。

 

 乱れた呼吸を整え、騎乗位の状態でブリュンヒルデは慣れない風に腰を跳ねさせ始めた。

 

「んっ、ふぅっ、あっ、はは……ぜんぜん……んぁ♡ぜんぜん、こんなのぉっ、んぉぁっ♡きもち良くぅぅっ……きもち良くなぁぁっ♡」

 

 チアリーディング衣装で不本意ながらも自身の膣内を締め付けつつ、男のペニスを何度も応援(チア)するブリュンヒルデ。上下運動に合わせて彼女の乳房はブラが無い為、服の下からでも躍動感たっぷりに弾んでいた。そんな胸を慈しむようにマスターはフェザータッチで刺激する。

 

「んっ……くっぅっ♡……胸ぇ、やめぇ、あんぅっ……よ、余計な事はしないでぇっ……あはぁっ♡大人しくして……いてぇ、くださいぃっ……んぉぁっ♡」

 

 甘い声が大きくなるのを堪えようとするブリュンヒルデは勝手に自身の胸を弄ぶ男に抗議をするが、意に介さず膨らんだ蕾を摘ままれてしまえば、クリトリスを弄られた時と同じように快楽で理性を掻き消されてしまう。

 

「ひっ、あっ♡……やっ、やめ、てくださいっ……その指の動きぃ、先っぽコリコリするのっ……んふぅぁあっ♡」

 

「ん――? どうして?」

 

 服を押し上げている突起物をいやらしい指の動きでくすぐり続ける、興奮して慎みを知らない乳頭はまだまだ勃起出来そうだった。背筋に昇るゾクゾクした電流に耐えつつ、ブリュンヒルデは何とか返答しようとする。

 

「それは……」

 

「正直に言ったら止めてあげるよ」

 

「んぅっ……! はっ、あっ……きもち、いい……からですぅっ……」

 

「これも?」

 

「はあああぁぁっ♡う、そつきぃっっ……んぁっっ、はぁぁっ♡やめるって言ったのにぃっっ……ひゃあああぁっ♡」

 

 軽い力ではあるが、摘まんだ乳首を乳房ごと持ち上げるように上へと引っ張られる。言葉でも愛撫でも肉棒でも完全にブリュンヒルデは玩具にされていた。

 

 それでも彼女はまだ堕ちてきってはいない。

 

 動画も消し、自身のサークル内の女性にも手を出さず、お姉様とも別れる。それを飲む為に差し出された交換条件はブリュンヒルデと一度、ナマ出しセックスさせてくれというものだった。

 

 ブリュンヒルデはたった一度、自身の体を汚して皆を守れるならという覚悟の為に。

 

「んっ……んぁっ、あっ♡……んぅっぁっ……ふぁあ♡あっ、んぁっ、ああぁっ」

 

 だが、あまり長くこの男の肉棒に突かれているとマズいとそう本能が訴えかけていた。だから腰を早く動かし、射精を早くと促していた。自分の頭がおかしくなってしまう前に。

 

「今、ブリュンヒルデちゃんが必死に貪っているコレもさ、今日まで邪ンヌが口で咥えたり、マンコで咥えたり、もう一個の穴に出たり入ったりしてきたモノなんだよね。どういう気分? お姉様との間接セックスって言えたりしないこれ?」

 

「だ、から……黙ってとぉぉっ♡あんぅぅっっ……! はっ、はぁっ……んああぁっ……射精なさいっ、さっさと、汚いモノを射精せばいいでしょ……ひゃあぁっ♡」

 

 講義室でディープキスをされた時と同じ、自分がどれ程望んだか分からないジャンル・オルタの唇、肢体、寵愛を全て受け取っているこの男に揶揄されながらお姉様と同じように犯されているのが屈辱で死ぬ程悔しい筈なのに何故か体だけではなく、心も法悦が蝕んでいた。

 

 どうしてもジャンヌ・オルタを想起させるような言葉を吐かれると体のガードが緩んでしまう。そしてその隙間を縫うようにマスターの尋常ならざる快楽の凶器が何度も何度もブリュンヒルデの女の部分をしつこく突いてくるのだ。

 

「はやく、はやく、射精してっ、出してぇっ、だしてぇっ……らしてぇぇぇっ♡」

 

 堕ちないように、屈服しないように、この時間をすぐに終わらせる為に腰を素早くピストンさせる。肉同士がぶつかる生々しい音が密室内で木霊し、マスターのカリがブリュンヒルデの膣襞を一往復抉っていく度に理性も削られていくような感覚が彼女を苛む。

 

「お、願いだからぁっ……はやくっ、はやくぅっ♡出して、くださぁい、だしてくださいぃっ……! んぁあっ! だしてっ、だしてぇ、だしてぇっ、だしてぇぇっ……♡」

 

 本人はこの凌辱の時間を早く終わらせる為に出してくれと懇願しながら腰を激しく動かしているが、それは外野から見れば愛しい男に跨り、応援衣装で男の精液を欲し、射精をねだって淫らに交わっている雌にしか見えない。

 

「はやくっ、はやくぅ……はやくぅっっ♡……あぁっっ、駄目っ♡そこ、奥ぅ……ひぃっぁあぁっ……あああぁっ♡」

 

(無理、もう無理。硬いのが全部私の気持ち良いのに当たって……あぁ、お姉様はいつもこんなイイモノに貫かれてたのですね……)

 

「あぁ、健気で、必死で、愛おしい娘だよ……もう出すぞっ! 膣内で!」

 

 快楽で思考回路が焼き切れてしまう前にようやくブリュンヒルデの奮闘が報われる時が来た。

 射精前に顔を小さく歪めるマスターを逃がさないように腰を深く密着させる。膣内で陰茎が膨らむのを感じる。その後間もなく、炎のように熱い液体が彼女の奥に注がれていった。

 

「んあああああああぁぁあぁっっ――――あああぁっ!! はぁっ、ああぁっ……♡」

 

 覚悟していたとはいえ、声を抑えきる事は出来なかった。女体内部全てを造り変えてしまうような衝撃、自分が男に犯され、生殖行為をしてしまっている事を深く自覚してしまう射精行為、雄の子種を余す事なくブリュンヒルデは受け止めていた。

 

「あっ、あっ、はぁっ、はぁっ、んぅ、んぅっ、んはぁっ――♡」

 

「ふぅっ――……結構出たよ。ブリュンヒルデ、気持ち良かった?」

 

「はぁっ、ふぅぅ……えぇ、とっても♡」

 

 

 

 

 

 改めて確認する事ではないが、このブリュンヒルデは壊れている。

 それはこのブリュンヒルデが英霊『ブリュンヒルデ』という存在の贋作だからという理由だけではなく、そもそもの話、ベースである英霊『ブリュンヒルデ』からして壊れているのだ。

 

 オーディンの忠実なワルキューレとしての役目に反し、英雄シグルドと恋に落ち、戦乙女ではなく一人の女として生きた彼女。その結末は裏切りによって全てを殺すという鮮血のエンディングだった。愛しい者は全てシグルドに見え=殺さなければならないという式が成立してしまう程に壊れ、壊されている。

 

 そんな英霊をベースとして正規の英霊ではないジャンヌ・オルタに「フランクな同性友達」として産み出された贋作ブリュンヒルデはもうバグにバグを重ねてしまっている。

 

 

 ――創造主でもあるお姉様(邪ンヌ)と共にいたい。

 

 ――それを邪魔をするマスターという存在を殺したい。

 

 ――だがブリュンヒルデ()としては殺したい即ち愛したいのでは? 

 

 ――それ程の激情を向けるこの人は愛しい人(シグルド)? 

 

 ――あぁ、違う、違う。私は贋作。ブリュンヒルデ(本物)ではない。

 

 ――私が愛するのはお姉様(邪ンヌ)のみ。

 

 ――だからこの男は愛さなきゃ(殺さなきゃ)殺さなきゃ(愛さなきゃ)愛さなきゃ(殺さなきゃ)殺さなきゃ(愛さなきゃ)愛さなきゃ(殺さなきゃ)殺さなきゃ(愛さなきゃ)愛さなきゃ(殺さなきゃ)殺さなきゃ(愛さなきゃ)愛さなきゃ(殺さなきゃ)殺さなきゃ(愛さなきゃ)愛さなきゃ(殺さなきゃ)殺さなきゃ(愛さなきゃ)

 

 

 もしここにいる彼女が『ブリュンヒルデ』の忠実なコピーだとしたら、彼女が殺意を向けるべきはマスターではなく、恋慕しているジャンヌ・オルタ。

 

 贋作ブリュンヒルデはジャンヌ・オルタには過剰なスキンシップだけに抑えて、殺意は恋敵であるマスターに向けられている。その理論は過激ではあるが愛する者を殺したい元のブリュンヒルデよりは筋が通っていて、まとも(+:プラス)に見えるだろう。

 

 ……アッシリアの女帝『セミラミス』はチョコで作成した自身の分身とも言えるチョコラミスを造り出した。彼女のキャラクターでもある傲慢不遜、自身こそが唯一の王という自尊心がある癖に惚れた男には甘ったるい程に純情な所が出てしまうのは間違いなくオリジナルの性格からだ。

 

 ならば同様に贋作ブリュンヒルデがオリジナルの『ブリュンヒルデ』の性格の影響を受けていないとどうして断言出来るだろうか。

 

 贋作ブリュンヒルデはしっかりと受け継いでいる。愛する者を殺したくなるという英霊『ブリュンヒルデ』としての業を。

 

 ここでもう一度、先程言った事を確認しよう。贋作ブリュンヒルデはバグにバグを重ねている。

 

 これが真の理論。彼女自身も自覚が無い式。

 

 愛する者を殺したくなる英霊『ブリュンヒルデ』の元から壊れている性質(-:マイナス)×愛しているお姉様に殺意を向けない英霊『ブリュンヒルデ』らしからぬバグ(-:マイナス)恋敵に殺意を向ける(+:プラス)

 

 過程を全て無視して、一見破綻していないように見えるその解だけが彼女の中で成り立ってしまった。

 

「あぁ……こんなに私の体を弄ぶなんて、なんて酷い(愛しい)人。許せなくて(愛おしくて)憎くて(愛おしくて)忌まわしい(愛おしい)人…………」

 

「ん?」

 

 親は子に似る。ジャンヌ・オルタがマスターに首ったけのように。贋作ブリュンヒルデは前からマスターに心を惹かれていた。

 

 でなければ、最初に彼を串刺しにした時、愛しい者に対する熱量に応じて巨大化する槍があんなに重くなる事はない。

 

「だから――殺します(愛します)ね」

 

 そして今、ブリュンヒルデはジャンヌ・オルタが語った設定もシチュも全て忘れて槍を構えていた。

 

 情熱的に手淫し、キスをし、交尾をして、子種を注いでくれた男に対しての愛は最初の頃より比べ物にならないぐらいに膨れ上がっている。

 

「『死がふたりを分断つまで(ブリュンヒルデ・ロマンシア)』」

 

 多目的トイレの天井どころか、その上にある大学の天井まで突き破る程に膨張する彼女の魔銀の槍。瓦礫を押し上げ、天を見上げる程に巨大化した槍はどういう原理で彼女の細い手で持たれているかは不明だがその刃先はマスターの腹部へと――刺突された。

 

 ドゴオオォンッッ――。

 

 標準的な大学校舎が宝具の一撃に耐えきれる筈も無く、そのまま崩壊し、二人は繋がったまま落下していく。原初のルーンで降り掛かる瓦礫を跳ね除け、残骸の上に騎乗位のまま男女はいた。

 

「あ、れ――わ、たし……何を――……あ、あぁ――あぁっ、あァッ――何でこんな……ちが、違います――……わ、たし……どうして? い、や、イヤッ――……」

 

 贋作ブリュンヒルデとしての正気が戻った彼女は自分が何を仕出かしてしまったのか自覚したのだろう。憎い恋敵だった。大好きなお姉様を奪うお邪魔虫だった。でも愛され、抱かれ、犯され、中に射精(出さ)れてしまった瞬間、自分でも制御出来ないぐらいに彼に対する情愛が爆発してしまったのだ。

 

 チャンスをくれた彼に、槍で刺してなお、微笑み気にしていないと許しをくれる彼に自分は今何をしている? 

 

 槍を握っている彼女の手が小刻みに震えている。戦乙女やサーヴァントとしての屈強さはなりを潜めて、取り返しのつかない事をしてしまったと怯える少女の姿しかここには無かった。

 

 一度目に串刺しした時よりもさらに強大になった巨刃がマスターの胴体を貫いていた。血に染まった全身。体は引き千切れていない、只の人間が宝具の一撃を受けて、原型を留めているのは不思議だがそれでもブリュンヒルデの眼にはもう手遅れな致命傷を負っているようにしか見えない。

 

「ちが、う……ちがいます――、私……こんな事したかったわけじゃッ……」

 

「けほっ……大丈夫。そこまで重く感じない」

 

「へ――?」

 

 何てことはない。これもいつも通り(日常パート)だと。血を垂れ流した口元で微笑んだマスターは指二本で槍の刃先を掴み、抜いたそれを放り投げた。

 マスターの胴体は向こう側の景色が見えてしまうぐらいにバックリ開いている。だがその顔に焦りも苦痛も無く、自分が好きな者の一撃なら喜んで受け止めようと笑う血みどろの好青年の顔があった。

 

「んひいぃ――っ!?」

 

 お互いの性器はまだ繋がっている。ブリュンヒルデの膣内にある異物が大きく脈動した。

 

「なぁ、ブリュンヒルデ。まさか――」

 

 多量に出血した事によるドーパミンか。あるいは傷を負った事によって子孫を残そうとする獣の如き生殖本能が刺激されたのか。マスターの肉棒はブリュンヒルデの膣内で更なるサイズへと勃起していた。

 

 彼女が串刺しにしたのは只の人間にあらず、英霊でもあらず、好きな人とのエッチならどんな無理でも押し通す人類至上、最高の(馬鹿)

 

「君みたいな娘を抱いて、一発出しただけで終わるとは思ってないよね?」

 

「ちょっと待って……まさかこの状態でぇぇえぁああんぅ♡」

 

 串刺しにされたんだ。今度はこっちの魔槍で串刺しにする番だとマスターの抽送が始まった。絶対に逃がさないようにブリュンヒルデの腰と肩を抑え付け、大怪我など知った事かと一回りビルドアップしたペニスで媚肉を打ち付けた。

 

「あっ、あぁっ♡はぁっ♡だ、から待ってまってぇ、今こんな事してる場合じゃあぁっ、んぉあっ♡ち、治療をぉぉっ……んぁおぁっ♡」

 

「今! セックス以外で何をするのさ! もう霊基がオリジナルよりも強靭になるまでドロドロの魔力吐き出してやるからな!」

 

 浅い所でGスポットを擦り殺すように腰を打ち付ける。深い所で子宮を孕み殺すようにピストン運動をする。緩急合わせて、高速で男根を打ち付ける彼の腰づかいは先程までのブリュンヒルデをまるで児戯だと鼻で笑わんばかりの洗練されたものだった。

 

「はっ♡あぁっ♡あっあっあっあっ♡まってまって♡まってくださいぃっ……むりむりむり♡これむりぃぃっ♡なんでこんなふくらんでぇぇっ♡んぉ、おっおっおっおっ♡アソコ、いまびんかんににゃってるかりゃああぁぁっ――――♡」

 

 二発目。一発目よりも濃厚で嵩増しした精液が放たれる。

 

「あぁっ――……! はぁっ――……! んぇえあぁっ!? んひっ♡ひぅっ♡う、そっ、何でだしたばっかりなのにまだ、硬くなってぇぇっ♡はぁっ、はぁぁっ、んあああぁっ♡」

 

 まだマスターの剛直は萎える兆しは無く。結合部から漏れ出している白濁を潤滑液にして、インターバル無しに動き出す。激しい交尾にユニフォームは捲れ、雪のように白い乳房に淡いピンクの乳頭が露わになる。

 

「ひんぅぅっ♡おっぱい咥えちゃらめぇっ♡すわっ、ない、でぇっ♡はぁっ、はぁっ、んあぁあっ♡あ、へぇ……なんで、にゃんで傷が塞がってぇぇぇっ……あぁぁっ――!! だめだめぇ♡やめて、くださぁい、その動きだめぇぇっ♡アソコではやくていっぱいコンコンしにゃいでぇぇっ――!!」

 

 傷は完治した。三発目。ボコリと膨らんだ下腹部が断面図からは見ずとも射精量の凄まじさを語っている。

 

「ん゛あ゛あ゛ぁあっぁああっ――!! あっ……はぁっ――これ、で、おわりぃぃっあぁぁっ♡う、そ、まだうごいてぇぇっ♡ひっむりむりむりむりですっ♡これ以上吐かれたらぁぁっ♡もうお腹ぱんぱんぅっ、んふぁあっ♡ぱんぱんなんですぅぅぁっ♡だからもうぱんぱんしにゃいでぇぇっ♡ふあああああぁっ――っ♡え、キス? だめ、だめ、だめ、だめ、です……今、キスしたら完全に堕ちてしまいますから、もうあなただけの戦乙女になってしまいますから絶対にキスは……ん゛ん゛ん゛ん゛むぅぅぅぅううううっ――♡」

 

 四発目。キスハメ膣内射精。駄目と言いつつもブリュンヒルデの両手足はマスターをだいしゅきホールドしていた。

 

 君が俺を殺すというのなら、それを上回る快楽と愛で君を性的に殺そうと訴えかけるような暴力的かつ情熱的なセックスは未だ終わりが見えない。廃墟となった大学の残骸の上で体中をべっとりくっつけ合って貪り合う男女の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゲホッ! ゲホッ! ったくなんなよ! 何が起きたのよ!」

 

 マスターの言う通り、別室で待機していた筈の邪ンヌが瓦礫の山から汚れを掃いながら、出てきた。

 

「一体何をしたら、こうなんのよ! どんなハードなプレイをやってんのよアイツらは!」

 

 悪態を吐きつつも、邪ンヌが地上で一番最初に見た景色は――。

 

 

 

 

「こまりぁぁっ♡困りまぁっ♡困りまぁすぅっ♡もう精子入りませんからぁああっ……ひああああぁっ♡あぁっ、んぁおああっ♡とまって、とまってぁあぁっ♡あひぃぃいいいいっ――♡」

 

「体に穴が開いたぐらいで俺の腰が止まるわけないだろ! そんな体液まみれのどエロい体で困る困る言っても説得力がないんだよ! またっ、出すぞ――!」

 

「あふぅぁあっ♡あっあっあっ♡んぁあああっ……はひっ、はひっ、あぁっ……もう精液はいりませんぅっ♡しきゅう、これわれぇぇっ……あああぁっ♡だめっ、イ、クのとまらなぁぁっ、あぁっ、ま、たイク、イクイクイクイクイクイクぅぅううっ――♡」

 

 この世全てのセックスの音を演奏しているかのような生々しい水音を響かせて、交じり合う男女。殺伐とした空気は綺麗さっぱり消え、代わりに桃色過ぎる空気が充満していた。

 

 

「…………あ――……。ふぅ――――……カメラ、絶対に壊れてるじゃないのよ……」

 

 抜かずの七発目発射で邪ンヌのレフェリーストップが入り、この情事はひと段落ついた。

 淫裂からゴボゴボと白濁の滝を垂れ流しながら、幸せそうにトリップしている彼女を見れば、堕ちたかどうかは語るまでも無いだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 















何か足んねぇよなぁ? ……というわけで次回の邪ンヌを加えた3P+エピローグにて完結です。





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君と贋作と贋作の恋Ⅲ(ブリュンヒルデ&ジャンヌ・ダルク・オルタ後編)

4周年目前なのでいつもより早めの投稿。
3話構成、ブリュンヒルデ編最終話でございます。中編は前話です。
邪ンヌのエロ回の数、マシュと並んじゃったね。








「というわけでブリュンヒルデの前でお姉様(邪ンヌ)のアナルをぶち犯したいと思います」

 

「わー、ぱちぱち……」

 

「起承転結とかもう少し考えなさいよ!!」

 

「考えてるよ。起承転(ケツ)だよ」

 

 エロはね……ショートショート並に展開を早くする事も必要なんだ。

 

 大学を壊す程のハードセックスをしてから休みを挟んで数時間後。同じくシミュレーション内、今度の場所はピンク色の照明がいやらしいムードを醸し出すラブホテルの一室。3人並んで寝るには十分なサイズのベッドの上で俺は黒ビキニの水着姿の邪ンヌをうつ伏せの状態で取り押さえていた。

 

 ブリュンヒルデは体液まみれでアレな状態だったのでバスルームで丹念に洗わせて頂きました。敏感な所に触れる度にビクンビクン触れて非常にエロかったです。

 今はベッドの上で正座で拍手している。かわいい。後、全裸です、準備が早い。

 

「おかしくない!? この後はアンタの手に堕ちたブリュンヒルデを最初とのギャップを感じさせながら、抱いていくエピローグ的なシーンでしょ? 私の出番は電話だけじゃなかったの?」

 

「ふふ。まだまだ思い切りが足りないな邪ンヌちゃん。このシチュなら最後は恋人であるお姉様とそれを慕うレズ後輩の両方を戴く疑似姉妹丼しか期待されてないでしょ」

 

 確かに余韻を楽しむようにエロ無しのほのぼのエピローグで終わるエロ同人も俺は否定しない。だがそれはそれ、これはこれ。「その点このエロ同人ってすげぇよな。最後までエロたっぷりだもん」と思われる作品を書かなければ、ダ・ヴィンチちゃんを超えるなんて遠い話になっちゃうぞ。

 

「ガチの妹じゃないから! これ以上私の家系図を滅茶苦茶にするんじゃないわよ!」

 

「お前等が竿姉妹になるんだよ!」

 

「マジで燃やすわよ馬鹿マスター!! ってかアンタ(ブリュンヒルデ)も見てないで助けなさいよ! 愛しのお姉様のピンチよ!」

 

「私……マスターに抱かれてからちょっとNTR趣味に目覚めてしまって……」

 

「え? ちょっと待て、今の話の流れのどこにアンタの性癖をカミングアウトする必要があった?」

 

「今はもうマスターの事も殺したい(愛おしい)と自覚しているので、二人の営みを眺めれば、お姉様を寝取られていると言いますし、マスターを寝取られているとも言えますよね? 一犯りで二度おいしいみたいな」

 

「俺は普通に抱いてただけなんだけどね。何でそんな性癖になっちゃったんだろ?」

 

「もう。マスターが情事の際にお姉様との営みを意識するような言葉責めをするからですよ……。その時に今、抱かれているのは自分なのにお姉様と比べられているのではという潜在的NTRと大事な後輩が自身に隠れて恋人とセックスをしているというお姉様側に自身をトレースした投影NTRが覚醒してしまったのでしょうね……」

 

「性癖がハイレベル過ぎるっ……。前よりさらに頭おかしくなってるじゃないの。何で数時間でこうなるのよ! マスターに抱かれたせいよね! そうね、私が言ったんだもんね自業自得ねバーカ!」

 

 まぁ、邪ンヌが言い出さなくてもいずれ抱いていたけどね──。惚れた女の子は絶対に逃がさない事に定評があるマスター。

 じゃけん脱ぎ脱ぎしましょうね──。

 

「やめっ、パンツを降ろすなっ! あっ、コラッ!」

 

 白い肌に黒い水着のコントラストが素晴らしい。プリプリの美味そうなお尻が露わになる。エロ同人の資料集めるなら、やっぱり我が身で突撃取材しないとさ。

 

「ブリュンヒルデはオナニーするのは禁止ね。そのまま眺めるだけ」

 

「あぁ、なんてご無体なっ。でもそれはそれで焦らされて悔しイキ出来そうです」

 

「クソッ! 正気なのは私だけかっ!」

 

 大丈夫大丈夫。どうせすぐにアヘって、んほって正気失う事になるから。

 

 ぷにぷにと指で擦ってやれば、可愛らしくすぼんでいた邪ンヌのピンクの菊門がはしたなくぱかぱかと口を開きだした。完全に俺の指に馴染んでいるよね──、このドスケベな穴。

 

「もう俺の指が触れるだけで何されるかわかっちゃってるんだ。えっちぃ穴になっちゃったね邪ンヌのここはさ。パブロフのアナルみないな」

 

「んぉっ♡……んっ、くぅぁっ……馬鹿なこと言ってんじゃな、いわよぉおおっ♡アンタも見るなぁああぁっっ……」

 

「あぁ、凄い! お姉様がっ、私にとって憧れのお姉様が不浄の穴を穿られ、快感に耽っているなんて。マスター、マスター、もっともっと弄ってあげってください……!」

 

「ここにぃっ……味方はいないのねっ……んほおおおおぁっ♡」

 

 少しの愛撫ですら涎だらだらで受け入れ準備OKになっていたので興奮状態の逸物を彼女のアナルにぶっ刺した。

 今まで何度も調教してきたそこはヴァギナよりもぴったりと俺のブツを受け入れていた。そこにあるのが当たり前だと訴えるように何とも言えぬ生温かさで締め付ける彼女の腸道はお互いの頭を蕩けさせる。

 

「お姉様が男の性器でよがっている……。さっきまで私を抱いていたマスターが別の女の穴に夢中になっている……」

 

 邪ンヌは──アナルを犯したら自然に四つん這いになっちゃう娘──。

 ゾクゾクッとトリップした顔で俺からのおあずけを守っているブリュンヒルデは爪先を噛みながら、一挙手一投足見逃さないようにセックスを眼に焼き付けている。

 

「何でいつもこんな目にぃいっ……あひっ♡んぉおっ、おっ♡おっ♡……あっ、はぁっ、やめ、見るな、見ないでぇっ……んぁぉおおおっ♡」

 

 邪ンヌの中ではブリュンヒルデを堕として、一件落着で終わる予定だったのだろう。いやいや君も犯すに決まってんじゃん。ブリュンヒルデとハッスルしている隣にビキニ姿でいる君を見逃すと思っているのか。疑似姉妹丼するしかないでしょ。お前も薄い本になるんだよ。

 変な所で鈍い辺り、天性の誘い受けの才能があるんだよね。実に苛め甲斐がある。

 

「ブリュンヒルデも何ぼっとしてんの」

 

「え?」

 

「俺が禁止したのはオナニーだけで、他の事は好きにしてもいいんだよ」

 

 意図を察してくれたは彼女は妖しく微笑み、臀部を叩き付けられて、揺れ動く邪ンヌの乳房に近づくと、水着を擦り下ろし、てっぺんにある乳首を露出させた。

 激しくアナルを犯す俺との動きと対比させるように優しく慈しむように邪ンヌの胸を揉み始めた。

 

「あっ、ちょっ……アンタ、何をっ? はぁっ、あっ、あぁっ♡くっ、んぅっ♡やめぇぇっ♡んひぃぃっ♡」

 

 ぬっぽぬぽと下品な音を立てて、下半身は男の象徴で無骨に激しく獣のように犯されているのに上半身の乳房は白魚のように細長い指で繊細に愛撫されているギャップが邪ンヌの体をさらに狂わせていく。

 

「ふふ、お姉様の乳首、私と同じくらいに硬くなって……こうすると気持ち良いですか? さわさわ~~」

 

「アナル出し入れする度にマンコから汁がじょばじょば漏れてるよ。もうここの穴も邪ンヌにとっては生殖器みたいなもんだよね。ここで孕ましてあげようか」

 

「んっふぅ♡やっ、やああぁっ♡も、もうぉっ……アンタのに入れられるとぉ……ひっ、お尻おかひくなるからぁっ……やめっおっ♡んぉぁっ♡乳首もぉ……そんな触り方する、にぁやああっ♡」

 

 尻肉を揉みしだきながら、吸い付いてくる邪ンヌのケツ穴の感触を楽しんでいるとブリュンヒルデが物欲しそうな顔でこちらに視線を送っている事に気付く。俺からの指示はちゃんと守っているが時折強く噛んでいる唇が彼女の忍耐の限界を物語っていた。

 

 もう辛抱堪らんのか。我慢が出来ない娘め。

 

「こっちにおいで」

 

「はいっ……」

 

 器用に邪ンヌの体の下にその裸体を潜り込ませたブリュンヒルデは股を開き、ここ数時間で俺に散々開発された秘所を剥き出しにして誘っていた。色素の薄い髪を揺らして、異なる性格の美女二人が俺に陰部を差し出している。それは興奮と言葉に出来ない優越感を与えてくれた。

 一度、邪ンヌのアナルから竿を抜き、こちらまで雌臭を漂わせている女陰に挿入する。

 

「あっ、あぁっ、はああぁっ♡き、たぁっ♡私だけの、私を串刺しにして、くれる槍ぃぃっ♡んああああぁっ♡」

 

 俺が彼女を初めて犯し、子宮がふやけるまで男の味を叩き込んだブリュンヒルデの膣はもう俺の逸物のサイズにしか適応出来ない専用の名器になっている。休みを挟んだとはいえ、まだまだ足りないと執拗にペニスを締め付けてくる。邪ンヌとは異なる膣の感触、どっちかだけなんて殊勝に選ぶつもりはない。

 

 

「はぇ……え、なんで……」

 

 その声は尻穴を凌辱していたモノが無くなっているのを寂しがるような声色だった。快楽に染まりながらも困惑している表情で突然始まった俺達の情交を見守る邪ンヌ。疑問に続く言葉は出てこない。自身の真下にいる妹分は肉棒に突かれて、気持ち良さそうにあるいは自慢気によがっている。

 

「あぁ、お姉様……。んっ、ふぅ♡……なんて、そそる顔を。あんなに愛おしかったチンポを私に寝取られてぇ、ゃんぅっ♡悔しいんですねっ、あっはぁっ♡その気持ちよくわかり、ますぅっ……んぁああっ♡さっきまでの私もそんな気分でしたからぁっ……で、もその悔しいのも気持ち良く、てぇぇっ♡」

 

「っ、だれが……。別にいいわよ、アンタ達が勝手に盛るなら、私は資料集めに専念させてもらぁああっひぃっ♡」

 

 その場から離れようとする彼女の尻穴の皺を指腹で優しく撫で上げる。その動作だけで情けない顔で喘ぎ、逃げようと動かしていた四肢もほんの少しアナルに指先を侵入させるだけでビクンとフリーズしてしまう。素直に俺の愛撫を受け入れるいい娘……もう邪ンヌの体は俺が尻穴に触れるだけで言うことを聞いてしまう愛玩人形のようだった。

 

「こらこら勝手に逃げちゃダメでしょ」

 

「あぁっ♡はぁっぅ……素敵、とても素敵で、すっ……んああぁっ♡お姉様をオカズにぃっ♡マスターのチンポで犯されるのがぁああっ……最高にキモチいいぃぃで、すぅっ♡」

 

 淫語を言うのにもう躊躇いも無くなったブリュンヒルデは恍惚とした表情で肉棒の抽送を受け入れている。邪ンヌも尻穴を弄っている最中はプルプル震えて動けそうにない、腰を動かしながら、中指で円を描き、菊門の周囲をくすぐる。物足りないのだろう。ブリュンヒルデの様子を見て、物欲しそうにこちらを盗み見ているのはバレバレだ。

 

 だから、また──。

 

「やぁっ、そんなぁっ、抜かないでぇぇっ……」

 

「くぅぅっ! んぉおおっ♡ま、たぁぁっ、入って、きいたあぁっ♡」

 

 ブリュンヒルデの膣穴から男根を抜き、邪ンヌの尻穴に挿入する。

 上下から惜しむ声と喜悦した声が聞こえる。

 

「あっ、はぁっ……そんな、マスターのチンポ、お姉様にぃっ♡……寝取られてぇぇっ♡あっ、お姉様がそんな満足気な顔を浮かべると、私ぃ、悔しイキして、しまいますぅっ♡」

 

「そんな、顔ぉ……していなひぃぃぃっ♡んおっ、んぉっ、あぁっ、おおっぅ♡もうだめ、だめ、だめぇぇ、しりあな馬鹿になりゅかりぁああああぁっ♡だから胸、いじるにゃあああぁっ♡」

 

 チンポをお姉様に取られている、お姉様を俺に取られている、その両方で興奮しているブリュンヒルデは軽くイキつつもたぷたぷ揺れる邪ンヌの乳房を愛でていた。新参者に好き放題されるのはプライドが許さないのか邪ンヌの手も自然にブリュンヒルデの胸部へと。ブリュンヒルデと対照的な乱暴な手付きだが、お姉様からの愛撫なら、どんなに雑でも彼女にとってはご褒美だろう。

 

「調子にのっるなぁっ……たった数時間でコロっとコイツに堕ちてっ……んぉぁっ♡このファッションレズがぁぁっ……ああ゛ぁぁっっ♡」

 

「んくぅぅっぅ♡はっ、あぁっ……お姉様がこんなに私のおっぱいに夢中になってぇっ……♡ひっ、そんな強く、潰れちゃぁっうぅっ……♡」

 

 ブリュンヒルデの整った巨乳が形を歪ませる、邪ンヌの可愛らしいピンクの蕾が優しくこねくり回されている。

 二人の女達が重なり、絡み、自身の愚息で啼き喘いでいる。タイプの違う彼女達の濡れ場はどのような化学反応が起こるか予想もつかない。百合っプルを影から見守る理論も良くわかるし、不用意に男を入れて汚したくない気持ちも理解は出来る。ただ、その百合の花に俺自身が心底ぞっこんなら、残念だけど見てるだけで満足は出来ないのだ。

 絡み合っている女のカップルに男の物を挿入し、吐き出し、二人まとめて獣の快楽に引き摺り込む。これだから3Pは止められないのだ。

 

「にゃんでっ、にゃんでぇっ……また抜くのよぉぉっ……もうちょっとぉ、もうちょっとだったのにぃっ……」

 

「はひぃぃっ♡また、きたぁあぁっ♡お姉様とのぉ、間接セックスぅぅううっ♡あぁぁぁっ……♡」

 

 再び抜いて、別の穴へと刺す。贋作だろうが正規の英霊じゃなかろうが知った事じゃない。ここにいる彼女達を絶対に逃がさない。二人まとめて本物にも劣らない霊基に塗り替える勢いで犯し尽くす。

 

「んあぁっ♡もうこのアソコの形がこの槍専用になってますぅっ……あぁっ、あんぅっんぁあっっ♡はぁぁっ♡マスター……マスターっ、もっと♡もっと♡もっとぉっ♡」

 

「や、だぁっ、やだっ、やだぁぁっ……んぉっ♡んぅっ♡指だけじゃ満足出来ないわよぉぉっ♡もっと太いの入れてくれなきゃぁ、やだぁぁあっ♡」

 

 またブリュンヒルデの鞘から解放した槍を邪ンヌの尻穴に挿入する。

 ブリュンヒルデの俺の逸物に馴染んだ俺のペニスしか知らない純粋な膣の締め付け。

 邪ンヌの今まで開発された影響で俺のモノなら万力の如く、吸い付いてくるアナルの締め付け。

 両方まとめて絶対に死ぬまで自分の女にするという覚悟を決めて、何度も抜いて入れてを繰り返して恥穴を犯し続ける。

 

「あっ、だめ♡これだめっ♡大きいのがおひりズボズボぉって……あっ、んぉっぁあぁっ♡」

 

「ひぁぁっぁ♡何度いれられても気持ちいいっ♡……んあぁっ……あぁぁっ♡もっと、もっとたくさん私を串刺しにしてくださぁひぃっ♡」

 

 数え切れないぐらい出し入れを繰り返して、重なる嬌声の中でもうどちらの穴に挿れているのかわからないぐらいにドロドロに溶け合って。

 

「んぉっ♡おっおっ♡あっぅうっっ……♡んはぁっ♡んぉぉっ♡ぬかないでっぬかないでぇっ♡もっともっといっぱい、おひりにオチンポちょうらぁあいっ♡」

 

「ひぅぅん゛ん゛ぅっっ♡もう、オチンポ抜かれるだけでもイっちゃうぅううっっ♡お姉様っ、お姉様っ、キス、キスしましょぉっ、んっ……♡」

 

「こらっ、やめっ……もうっ、んぅっ、んむっっ、ちゅ、れろぉっ♡」

 

 

 邪ンヌはもう四肢に力が入りきらないのだろう。完全にブリュンヒルデの肢体を下敷きにしていた。

 最後は抱き合って汗だらけの二人は感極まってベロを出し合いながら、はしたないディープキスを交わしていた。つぶれたお互いの胸が交差して、敏感な乳首をぶつけ合って、性感を限界まで高めている。淫らに絡み合っているレズカップルの穴を挿入し続けている興奮に俺のアソコも早く出させてくれと訴えていた。

 

 パンパンに膨れた陰嚢から精液が絞り出される感覚が走る。

 

「まずは……邪ンヌからっだ……!」

 

「ん゛ん゛んぅぅぅっ! んはぁっ……♡おっ、んぉぉっっ♡肛奥にザーメン、吐き出しゃれてりぅぅぅうっ──♡」

 

 アナルに吐き出された射精の衝撃にブリュンヒルデから唇を離し、仰け反りになって歓喜のイキ声を叫ぶ邪ンヌ。半分程、出した所で陰茎を抜き、一滴でも無駄にしないように高速でブリュンヒルデの膣穴へと挿入し、残りの精液を飲み込ませる。

 

「あ゛あ゛あ゛ぁぁぁあぁぁぁっ! き、ましたぁっ♡好きなのがきたぁぁっ♡……はっ、はっ、あぁぅぅぅ……♡お姉様とのザーメン共有ぅぅっ……んっ、はぁぁ──♡すて、き……」

 

 邪ンヌはブリュンヒルデへと倒れ込み、柔らかな肉体が重なり合う。邪ンヌの尻穴から漏れている白濁の滝がブリュンヒルデの膣穴から出ているものと合流して、生々し過ぎる性の匂いを鼻へと運んでくる淫靡な光景を作っていた。二人して、絶頂の余韻から仲良く痙攣しているのは微笑ましくもあり、卑猥でもあった。

 

「んぉっ♡おっっ──……♡ひぅっ……♡」

 

「はぁっ、あぁ……♡お姉様ぁ……マスター……素敵な感覚。あぁっ……♡これが家族の営み……私が、張りぼてに過ぎない私がこんなにたくさんの幸せをもらっていいのでしょうか」

 

「いいんだよ。分からないっていうなら、分かるまで俺の槍で刺し続けるさ」

 

「ふふっ、それは困りますね……」

 

 恍惚とした顔でぐったりとしている二つの女体。彼女達の汁まみれになっている俺の剛直はまだまだ元気いっぱいだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちゅぷっ、ちゅむっ、んじゅるるるぅっ……っぱぁ……だからいちいち全部下の穴で出させてたら、こっちの体がもたないからっ……じゅぼぉぉっ♡れぇぁっ……こうやって口でも抜いてあげるのよぉっ」

 

「ちゅ、ちゅ、れろぉっ……あっ♡裏筋舐め上げるとピクピクしました、ここが好きなのですね……。ちゅむぅっ♡愛しい(マスター)のモノを愛しい(お姉様)とご奉仕する。あぁっ……幸せ♡」

 

 先走り、精液、愛液、涎、加えて、雄と雌の生々しい匂いをこれでもかとふんだんについた陰茎を両サイドから二人の美女が舐めていた。お互いの舌と唇がぶつかり合おうがお構いなし、綺麗にする為にそして射精させて汚す為に矛盾した口淫を続けている。髪をかき上げて、時折目を瞑りながら、色っぽく咥える邪ンヌ。顔を動かして、舌先を根元から亀頭まで走らせるブリュンヒルデ。二者特有の舐め方に辛抱堪らないと愚息も震えていた。

 

「じゅ、じゅむぅっ、アンタもちゃんと撮ってるんでしょうねぇ……。んぶぅっ、っぷはぁっ……最初のカメラがおじゃんになった分ここで、回収しないと……アンタも嬉しいでしょ……私達姉妹にオチンポ舐められてっ、んじゅっ、ちゅっ♡」

 

「はい、どうぞマスター♡ちゅ、ちゅむぅっ……んじゅるぅっ、ちゅ♡遠慮なさらず、私達贋作姉妹に……溜まったザーメン吐き出してくださぁい……ぇろぉぉっ♡」

 

 柔らかいベッドの上で仁王立ちにしている俺の肉棒を膝をついてお掃除フェラしている二人の美女をカメラで撮り続ける。邪ンヌは後で正気に戻ったら、悶え狂うだろうなぁ。セックスでイかせまくったら大体気分がハイになってシラフじゃしてくれないようなドスケベな事もやってくれるし。セックス洗脳でブリュンヒルデを妹判定しちゃってるし、やっぱりイルカお姉さんと同類じゃないか。その後で羞恥心で殺しなさい──ってシーツを被るまでがワンセット。なんでそんなにあざといの? 

 

 エロ酔い状態の邪ンヌちゃんはどうやらタブルフェラのシーンを表紙にするつもりのようだ。百合目当てで買いにくる客との悲しい事故を無くす為に表紙の段階でふるいにかけるんだってさ。絶対に素面に戻ったら、「書くか馬鹿! 見られて興奮するような性癖は無いっつーの!」ってなる未来しか見えないんだけど。

 

 でもまぁ、何はともあれこれで一安心。ペニスを挟んで仲睦まじくフェラをしている二人の間にギスギスとした空気は無いし、ブリュンヒルデもこのカルデアでのイキ方を学んでくれたでしょう。やっぱりセックスって万能だな! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ──っ、う──っ……」

 

 原稿中の作品がひと段落ついたので、休憩がてら食堂で軽食と飲み物を口に運ぶ。ふと冷静になるとあの馬鹿がカメラで撮っていた自分の醜態を思い出して、頭を抱えたくなる。何故ブリュンヒルデを妹扱いしているのか。私もあのイルカ女の電波が移ってしまったのか、死にたい。

 いつもこうだ、今度こそは手玉にとってやろうと意気込んでも結局、主導権を取られて、よがらされて、恥ずかしい真似をして、恥ずかしい言葉を言わされて、終わった後に悶えてグルグルするのがテンプレ化してしまっている。しかも実はアイツに寝所で苛められるのがそこまで嫌いじゃなくなっている自分にさらに死にたくなるのだ。

 

 だからこうやって黒歴史を消し去るように呻くしかない。

 

「何を呻いておるのだ」

 

「あん?」

 

 チョコレートパフェを手に前の席へとかけている白いドレス姿の女がいた。ゲームで見るようなエルフ耳をした偉そうな女。

 

「チョコラミス……」

 

「セミラミスだ、二度と間違えるな。どうやらそこまで大事にならなかったようだな。くく、残念だ。サーヴァントらしくマスターに仇なす不届き者を誅する良い機会だったのにな……」

 

「むしろ、私には安心しているように見えるけど」

 

「ふん、まさか」

 

 そうやって別の席で、アリスやジャック、アビゲイルといった子供達と戯れているブリュンヒルデに視線を送るセミラミスには優しさも感じられた。

 

 ブリュンヒルデの姿は召喚当初のものから変わっている。理由?マスターの白濁種火で霊基再臨でもしたんじゃないの?少なくともカルデアのデータベースにある英霊『ブリュンヒルデ』とは異なる姿だった。

 

 変わった事に気付いたのはシミュレーションで一日がかりでまぐわって出た後。銀色の鎧部は黒色になり、黒いドレスは白色に変わっていた。私とマスターをモチーフにしているかどうかは知らないが。個人的には結構痺れるビジュアルになっている。

 そういえば、コイツ(セミラミス)もバレンタインの日に一週間がかりでハメられてから黒ではなく白いドレスへと変化していたし。

 

 あの変態芸術家曰く、『彼女達は聖杯の力で一騒動起こしてから人理焼却という特殊な状況に限り、座に自身を刻んだ君よりもさらに霊基は脆弱で儚かった筈だ。只のドレスチェンジってわけじゃない、あれはマスター君から吐き出された魔力によって霊基自体が変化し、オリジナルと袂を分かっているのさ。自分は彼だけの『セミラミス』『ブリュンヒルデ』であるという彼女達の意思表示とも言えるだろうね』らしい。

 

「いわゆる2Pカラーでしょ?」と無粋ツッコミはさすがの私もするつもりは無かったけど。だからホワイトチョコレートになった女帝様もちょっとした親近感があるのかしら? 

 

 まぁ、私もコイツも出自は似てるのよねぇ……。『聖女ジャンヌ』『女帝セミラミス』。本物であれとして産み出されて、決して本物にはなれない私達。オリジナルの後塵を拝する贋作。自身の生まれた意味を必死に探していた人形。

 

「アイツと一緒にいるとそんな悩みも馬鹿らしくなるのよね……」

 

 偽物って事は何にでもなれるとも言える。私には無限の可能性があるのだ。うたかたの夢として消えるつもりだったのにマスターに抱かれて、未来を与えられてしまった。『ジャンヌ・ダルク・オルタ』という存在は彼にとって私だけなのだ。なら責任をとって地獄までついてきてもらわないといけないじゃない。アイツは地獄でもヘラヘラして私にスケベな事しそうだけど。

 

「ふん……貴様と同じ意見なのは業腹だかな」

 

「だから私もマスターにアレ(ブリュンヒルデ)を任せられたのよ」

 

 

「デミサーヴァントには色彩をくれ、贋作には愛を与え、創り物にはハッピーエンドを描き、硝子細工の人形には恋を教え、冷たき菓子には温もりを注いでくれた。まったく我らが主様の毒牙はつくづく節操が無い……」

 

「あっ、そのフレーズいいわね。もらってもいい?」

 

 ここから見えるブリュンヒルデの顔はもう最初の頃の不安定さも危うさも無い。ここ数日はマスターに対しての殺傷沙汰も聞いてない。私に対する過度なスキンシップも、うん、まぁ……幾分かは落ち着いたようにも見える。もう日中に興奮して槍を持ち出す事は控えるだろう。

 

 ただし、夜。二人っきりのベッドの上でどうだかは知らない。そこはアイツらのプレイの範疇だし、私も深く突っ込むつもりはない。逆に痛めつけて欲しいとかいう輩もいるぐらいなのだから、好きにすればいい。どっちの性癖も私には理解不能だが。

 

 そもそも話には聞いたが、体に風穴開いてても犯せるアイツがおかしいのだ。まぁ、おかげで話作りにも困らないけど。

 

 また思考が書きかけの作品の方へと捉われる。

 

 本当は自分を含めて3Pをしている映像なんて見返したくないのだが、予想以上にイイ作品が出来そうなのでこうして筆を進めている。

 

 カメラが壊れて、撮れなかった部分はブリュンヒルデがノリノリでネームを描いてくれた。ビックリするぐらいに鮮明に描いていたので理由を聞くと。

 

 

 ──原初のルーンです、お姉様。

 

 ──いや、それ言えばいいってもんじゃないでしょ。

 

 

 ともあれ、次のフェスまでには愉快な作品を脱稿出来そうだ。壊れかけの女を肉の棒で叩いて直す男の話。色気と狂気が混じり合ったサバトな本が出来上がりそうよ。

 

「タイトルが……まだ決まってないのよね……」

 

「またあの薄い書物の祭りの話か。暑くて、あまり好きではないのだがな……冬にやってくれ冬に」

 

「一応やってるわよ冬も」

 

「マジか」

 かといって会場内は夏と変わらずの熱気でしょうから、涼しくなるとは思えないけど。

 ていうかブリュンヒルデはガキんちょ達に何を絡まられているのかしら? 接点なんて無いでしょ。

 

「聞いたのだわ聞いたのだわ! 情報つーの文明お姉さんから聞いたのだわ! 貴女は黒い聖女様から産み出された物語のような存在だって! わたしのご同輩って事かしら、むしろ私が先輩? ふふ、マスターと同じ先輩デビューだわ!」

 

「……つまりおかあさん?」

 

 やめなさい露出ロリ。ナイフを構えてこっちを見るんじゃないわよ。あんな変態産んだ記憶ないわよ。ほんと余計な事しか言わないわねあの引き籠りセイバー。

 

「そういえば、ジャンヌ・リリィもあの怖い魔女さんの子供みたいな存在なのよね? あら素敵、ジャンヌ・リリィはいつの間にやらお姉さんになってたのね! ……でもどうして彼女ここにいないのかしら?」

 

「ハァ、ハァ、小さいお姉様。小さいお姉様……ハァ、ハァ……」

 

 そりゃあ、30cmも身長差がある見ず知らずのデカ女から「ミニマムお姉様ぁぁぁああっ♡」なんて飛び掛かられたら、あのチビ助も逃げるでしょうよ。初めてよアイツが私の事を頼って、背中に隠れたの。

 

 

「アンタ達、あまり不用意に『お姉さん』とかそういう言葉吐かないこと。でないと──」

 

「私に妹が増えたと聞いて!」

 

「出たわね」

 

 食堂にイルカを持ってくるな。ルーラー時代の常識はどこに消えたのよ。

 もうコイツの存在の方がクトゥルフじゃないかしら。後ちっこい私が腕に抱えられているし、どっかで捕まったのね……。気は失ってる、南無……。

 それとこの聖女様はいつまで競泳水着なのかしら、アンタがルーラーの姿になってるの久しく見てないのだけれど。

 

「貴様も水着だろうが」

 

「私のは勝負服なの。これじゃないと執筆が捗らないの!」

 

 普段着ですら水着よりも露出過多な奴なんてザラにいるんだし、別にいいでしょ。

 

 

「そんなお姉様なんて畏まった言い方はよして下さい。あの娘の妹分なら私にとっても妹です。お姉ちゃんと呼んで下さい!」

 

「お姉ちゃん……?」

 

 あぁ、もうあの馬鹿(ブリュンヒルデ)早速洗脳されてるし! 

 

「それに話は聞かせて頂きました。(ブリュンヒルデ)とアリスさんが御同輩なら、つまり私の妹! 汝らは妹! 姉ありき!」

 

「出たわ妖怪妹増やしよ! 妹にならないとイルカをぶつけられるわ! ホラーだわ!」

 

「そのはっそうはおかしい」

 

 アンタの妹判定ガバガバ過ぎるでしょ。ガキんちょ達も怯えているじゃない。

 

「セミラミスも産まれ方が(邪ンヌ)と類似していると聞きました。つまり貴女も妹です」

 

「おい、こっちにも飛び火してきたぞ」

 

「そんなぽこじゃが妹が増えて堪りますか! アンタは姉なるものではない!」

 

 アイツの中にいるペルソナ(魔法少女ジャンヌ)は何してんのよ! 宿主、アンタよりも色物になってるわよ! どうにかしなさいよ! 

 

『不用意に出てったら間違いなくキャラ喰われるので本日は休業だわん。早く私もマスターの精液でなんかこう上手い具合に受肉してオリジナルと別れたいですね──。姉電波流す女と四六時中一緒にいる私の気持ちわかります? 魔法少女にも限界はあるんですよ』

 

 Fuck! 使えないわね! あのコスプレ女! 

 

「もう、また反抗期ですか? まだお姉ちゃんの愛が足りなかったみたいですね……」

 

 愛(拳)でしょ、アンタのは。あるいは愛(投擲イルカ)でしょ。あぁ、もうっ姉ゲージに振り切れてるコイツを止めれるのってそれこそマスターぐらいしかいないじゃない。

 

「既にハトを飛ばしている」

 

「ベネ! 仕事が早いわね!」

 

 アイツが戻ってくるまでの時間稼ぎよ。正直トチ狂った姉モードのコイツとやり合いたくないけど……。はぁ、私はコレにライバル意識をもってたのかぁ。

 

「アンタも手を貸しなさい、ブリュンヒルデ。一人だと手に余るわ」

 

「お姉様が自ら、共同作業を……。はいっ! 不肖、ブリュンヒルデ……お姉様の槍となります!」

 

「さぁ、来なさい妹達! 遠くない未来、翼の生えた白フードの妹が100人ぐらい増える啓示が降りてきた私に死角はありません!」

 

「うぉおおお!! 行くわよぉおおっ!!」

 

 

 贋作姉妹の勇気が世界を救うと信じて! ご愛読ありがとうございました! オルタ先生の次回作にご期待ください!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ、弟君(マスター)。えっ……いや──、これは只の姉妹のスキンシップです……。ここは食堂ですね、はい、皆の憩いの場です、ハイ。あのお姉ちゃん、弟にはそんな怖い顔しないで欲しいな──なんて、えっ尻を出せ? 嫌です! こんな公衆の面前で! せめて人気の無い所で!」

 

「ハッハッ──! ファッキュー、クレイジーサイコシスターが! 妹より優れた姉なんて存在しないのよ! ざまぁ見ろ! ……えっ、待ちなさい、私は違うでしょ。何で掴まれてんのよ。喧嘩両成敗? いやいや、確かにブリュンヒルデもけしかけて、ちょっとやり過ぎた感はあるけど、正当防衛でしょ! ちょ、もうSMはごめんだっつーの!」

 

 

 

 

 

 

 ──パンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンッッ。

 

「「ああああああァァァァァァァァッ──!!」」

 

 

 滅茶苦茶、公開尻叩きした(卑猥は一切無い)。

 

 

 

 

 




『君と贋作と贋作の恋』
サークル:ゲシュペンスト・ケッツァー

どこぞの竜の魔女と酷似したサバサバ系の女と男のボーイミーツガールなキャンパスライフである第一部(一般本)。
それを疎ましく思うこれもどこぞの戦乙女に酷似したレズ系後輩が男によって牝の悦びを開花させられる第二部(18禁)
最後は二人まとめてどエロく戴かれる3Pの第三部。表紙は膝立ちになって白濁まみれで何かに視線を向ける二人の姿。卑猥しか無い(18禁)

3冊で一つの作品となっている同人誌では珍しい部類。第一部の表紙の段階でマスターと酷似した男が写っているので百合厨の人に対する配慮も怠っていない。
第二部で只の女子大生にしか過ぎない娘が巨大な槍で大学を崩壊させるが、そこは三部の後書きで、実は彼女達は英雄の生まれ変わり不思議な力……云々かんぬん書かれているが特に読まなくてもエロい事には変わりないので気にしない事にしよう。リアル志向どこいった。
やっぱりモデルとはいえ、自分と似たキャラクターのエロを表紙に乗せるのに抵抗があった邪ンヌ先生だったがアシスタントのブリュンヒルデが原初のルーンで拘束し、マスターが先生のアソコにペン入れ(隠語)して正気を失わせたら悦んで書いてくれました。チームプレイって大事ですね。







「……ぁぁっ、はぁっ、はぁぁっ、はぁ――……、そうです、ね。誰が妹とか些末な問題でした。私達は皆、姉妹……竿姉m」

「言わせないわよっ!」














次回は第二部二章……入るんかな?入らないかもしれへんわ。先にもう一キャラエロ挟むかもしれへんわ。予告すんのやめとくわ。確信がないわ。



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グダお英霊編
君と私の聖杯戦争(序章)


4月1日だから、何かしなきゃいけない衝動に駆られて書きました。
好き放題書いてます。本編とは多分……関係ないんじゃないかな……?エロは無しです。


レイシフトした位置が悪かった。運が悪かった。巡り合わせが悪かった。間が悪かった。全てが悪かった。理由はいくらでも思いつくのかもしれない。

 

「■ ■ ■ ■ ■ ■ ■――――ッ!!!」

 

「なんでよっ……なんでこんな事になるのよぉっ!!」

 

「先輩、所長下がってくださ……きゃあああぁっ!!」

 

「マシュっ!!」

 

燃え盛る街、生者の気配を一切感じさせない場に響き渡る咆哮。

 

あれよあれよといつの間にか雪山の上にあるカルデアとかなんとかよくわからない施設にやってきた藤丸立香なる少女は自分を先輩と慕う少女に守られる事しか出来なかった。

 

その少女――デミサーヴァント マシュ・キリエライトも目の前にいる理性を失った黒く巨大な怪物に為す術なく吹き飛ばされる。

その正に暴力化身ともいえる存在に藤丸立香もオルガマリー・アニムスフィアも震えるしかなかった。

 

「……っぅ!二人共っ……逃げてっ!!」

 

余裕の無いシールダーは叫ぶ。

後輩が、自分と性別も変わらない同年代の女の子があんな傷だらけで戦っているんだ。

どうしておめおめと自分だけ逃げれるのか。立香は目の前の怪物に恐怖を抱えたまま前を見据えた。

 

何が出来る。カルデアでの爆発が起きた時も下敷きになっていた少女の手を握る事しか出来なかった自分に何が出来る。このか細い手では戦う力なんて到底望めないだろう。

 

気に食わない。あぁ、そうだ気に食わないんだ。世界を滅ぼそうとしているどこかの誰かも、自分に諦めろと語りかけてきているようなこの現状も。

 

―――ふざけるな。

 

―――どこの誰だか知らないが私はこんな結末は認めない。

 

少なくとも自分が終わる場所はここじゃない。

マシュとは私服でお出掛けしたり、夜遅くまで恋バナでもしてみたい。

隣でヒステリックに叫んでいる所長だって打てば響くような弄り甲斐がある愉快な人なのだ。

乙女の部屋を勝手に休憩室代わりにしていたあの胡散臭いロマンとかいう男にも言いたい事はある。

自分はまだまだやりたい事がたくさんあるのだ。

 

―――私は笑って今日という一日を終えるんだっ……生きてやるんだ……!お前(理不尽)なんかに負けてたまるかっ!

 

人類最後のマスターは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、力の入らない足に活を入れて立ち上がる。

戦う力も、逆転の手立ても、助けもまるで期待出来ない。それでも絶対に私は諦めないッ!

 

そう心の中で叫ぶ立香に無情にも黒い影が霞がかった怪物の斧が振り下ろされる。

 

「先輩!!だめぇっ!!」

 

悲痛な盾のサーヴァントの叫び声を最期に少女の人生は終わりを――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

「――ところがどっこい、少女の冒険はまだまだ続くんだなこれが。模倣(まねっこ)宝具『ぐれんでる・ばすたー』!!」

 

「……え」

 

誰かの驚きの声が上がる。もしかしたら、3人全員の声かもしれない。

立香に襲いかかろうとした怪物はいつ現れたのかわからない何者かの拳に吹き飛ばされていたのだから、驚くなというのが無理な話である。

 

藤丸立香の隣には、黒髪で、年もそう離れてなくて、どこか他人とは思えない少年がいた。

 

「『今日』という瞬間を存分に楽しみなさい。生きるというのはその積み重ねなんだから、自分が納得出来ない終わりなんてそれは抗うに決まっているじゃないか。いやはや、少女とは思えない程に漢気に満ちているよね、君。うん……俺よりは間違いなくまともなマスターだと自信を持って言えるよ。主人公力がパないの」

 

プラグスーツのような近未来的な白い衣装の上にそれとは正反対な古い魔法使いのような黒色のマントを羽織っているその少年は構えていた拳を解き、立香に笑いかけた。

 

「問おう、YOUが俺のマスターか」

 

つい、首を縦に動かしてしまった彼女はまだ知らない。このサーヴァントが色んな意味で()()()()事を。

 

さぁ、シリアスの時間は終わりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「吾輩はサーヴァントである。クラスはまだない」

 

「さ、サーヴァント……この土壇場で召喚に成功したっていうの?……何はともかく、よくやったわ藤丸!」

 

「先輩、無事ですかっ!!」

 

私を守った謎のサーヴァントが影の怪物を吹き飛ばしたことにより、安堵の空気が流れた。

多分、この人は私が召喚したのだろう……イマイチ実感はわかないが、ともあれ危険は……。

 

「■ ■ ■ ■ ■ ■ ■――――ッ!!!」

 

「ひぃっ!!」

 

瓦礫を吹き飛ばし、巨大な黒き影が立ち上がる。まだまだ元気いっぱいだぜという感じだ。

 

「シャドウサーヴァントとはいえ、いきなりチュートリアル段階でヘラクレスとか無理ゲーだよな。ちょっと運営、調整バランス間違ってんよー」

 

「ヘラクレス!?今、ヘラクレスって言った!?冗談でしょ!?」

 

所長が泣きそうな顔で叫んでいる。確かに私達も全く勝負にならなかったから強いのはわかるが、そこまでヘラクレスというのはアカンやつなのだろうか。

 

「マスターにわかりやすい説明だと……そうだな。ポケモン的に言えば、『威力90以下のダメージは”こうかはないようだ”で……それをくぐり抜けても一度でもくらった技は次からは”こうかはいまひとつだ”になって、なおかつHPバーが12本あるLv99の格闘タイプ』って感じかな?」

 

「なるほど確かにそれは無理ゲーだ」

 

「今の説明でわかったのですか!?」

 

「まぁ、今の彼の状態は弱体化とも言えるし、俺の言った事が全て当てはまるというワケじゃないけど、少なくとも現段階の君達が相手するのはちょっと無理があるかな」

 

「悠長に話してる場合じゃないでしょ!あいつこっちに来てるわよ!!貴方、英霊なのでしょ!何とか出来ないの!?」

 

「当然。その為に俺はここに来たのだから。”逃げるは恥だが役に立つ”。近寄らなければ戦闘は回避できる彼と殺り合うメリットは今ん所ないかな?ほい、そこのマシュマロサーヴァントちゃん!俺の背中にしがみついて!早く!」

 

「……わ、わかりました!後、私はデミ・サーヴァントです!!」

 

有無を言わせない彼の言葉にマシュが首に手を回して、おんぶするようにしがみつくのを確認した黒髪のサーヴァントは私と所長をそれぞれ腕に抱えると跳躍した。

 

「「きゃああああああっ!!?」」

 

「生前も女の子抱えて、ヘラクレスから逃げきった事実がある以上、間違いなく逃げ切れると思う!!アメリカ大陸横断をやった自慢の脚力を見せてやろうじゃないか!!」

 

「へ、ヘラクレスから逃げ切ったって……何、貴方、ギリシャ出身なの?けど、アメリカ大陸横断って……あぁもう!どこの英霊なのよ!!藤丸!あんたマスターになったんでしょ!、コイツの真名とか見れないの!?」

 

「……すみません所長。彼の真名もクラスもよくわからないんです」

 

何故だかステータスの真名の欄を見ようとしても『禁則事項です☆』って腹立つ文字で塗り潰されているし、クラスの所はv@ersって文字バケしてるし。

 

「あんまり喋っていると舌噛むよ――」

 

さらにスピードを上げた彼に抱えられて私達はあのシャドウサーヴァントから何とか逃げ切る事が出来た。

 

 

 

 

 

 

その後、安全な場所で乗り物酔いしたのかグロッキーな所長を隣に私が真名とクラスについて問い質すと。

 

「まぁ、真名についてはぶっちゃけ、そこまで大した理由もないんだよね。俺自身も何で隠されているのかよくわかってないし、けど世界意思というかこう見えざる大きな力が働いているというか、俺の口からも言えない感じなんだよ。不思議だね。只の平凡な名前なのにさ」

 

あれか?名前を言ってはいけないあの人みたいな扱いなのかこのサーヴァントは。

 

「じゃあクラスについては」

 

「あぁ、それは……俺、セイバーからバーサーカーまで大体のクラス適性があるんだけど、君にいざ召喚されるってなった時、どのクラスで行こうか迷いまくっちゃってさ。それで悩んでたら君の頭に斧が振り下ろされそうになってたし、ヤバいヤバイと思って結局決めきれないまま飛び出したら、なんかサラダボウルみたいにごちゃ混ぜになったクラスで出てきちゃった☆みたいな。いやー優柔不断ってよくないよね」

 

「あんなに格好良く助けてくれたのに、実はそんなドタバタした感じで召喚されたっていうの!?」

 

なんだろう、物凄く夢が崩れた。

それとマシュ、「クラス適性がたくさんあるなんて凄いですね!」って尊敬の眼で見るべきじゃないぞコイツは。絶対色々とアレなサーヴァントだと思う。助けてもらった事は心から感謝しているが。

 

「この特異点から戻ってきたら、詳しい話聞かせてもらうからね……けど、ありがとう、私達を助けてくれて」

 

「私からも、ありがとうございますっ!先輩と所長を守ってくれて!!」

 

「……ぜぇ、はぁ……そう、ね、本当に……助かったわ、うっぷ……」

 

所長は無理せず、もう少し休んでて下さい。

 

「お礼を言うのはまだ早い気もするけど……受け取っておこう。サーヴァントとして当たり前の仕事をしただけだしね……いや―、俺がサーヴァントかー、なんだかとても新鮮な気分」

 

「あ、そういえば……真名もクラスも不明なら私はあなたの事を何て呼べばいいの?」

 

「うぅむ、確かに呼称が無いのは不便だよな…………よしっ、結構な子宝に恵まれているし、『グランドな、ダディで、お父さん』略して『グダお』とでも呼んでくれたまえ」

 

「……何よ、その適当な名前の付け方……」

 

所長の突っ込みに「え、結構悪くないと思ったんだけどなぁ……」と落ち込むグダお。

……というか彼、子持ちだったのか、自分と年はそう変わらないように見えるのだが、やっぱり英霊って私とかとは住む世界が違うのかなー。

 

けど、私はまだ本当の意味で理解していなかったのだ……このサーヴァントの常識のとらわれなさに、イカレ具合にッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ぁっ、私がこんな無様をっ……貴様、一体何をし、たぁぁっ……」

 

大聖杯前、私達の敵として立ち塞がった黒き騎士王は地に伏していた。

 

「先輩!何故目を隠すのですか!?これでは貴方を守れませんっ!」

 

「見ちゃ駄目!絶対に見ちゃ駄目だからねマシュ!教育に悪すぎるからっ!!」

 

「……見ていない見ていない見ていない……私は何も見ていないわ……」

 

所長が名付けた仮想宝具 擬似展開/人理の礎(ロード・カルデアス)

私の自慢の後輩の宝具は聖剣から放たれたアーサー王の黒き極光を見事防いだ。

 

そこはいい。そこまではいいんだ……ただ、マシュが耐え切った瞬間に飛び出したグダおが問題だった。

聖剣を振り切り、一瞬の硬直を見せた彼女の懐まで突っ込んだ彼……私としては止める間もなかった。

 

そしてまぁ、宝具の余波で立ち上っている土煙が晴れると、さっきのシーンになっていたのだ。

黒き騎士王が()()で倒れているという画が。うん、妙に艶っぽい悲鳴が聞こえた時は何事かと思ったがこんな事になっているなんて予想出来るわけないだろ馬鹿。

というかアイツは何でハートを模った両手を前に突き出したポーズをしているのか、決めポーズのつもりか?

 

「サーヴァントになってまだ間もないあの娘が勇気を振り絞り作ったこの隙、俺が見逃す筈がないでしょ。君の敗因は『女であったこと』、『自身が”セイバー・オルタ”だったこと』……この二つだ、黒セイバー」

 

「……はぁ、はぁ……女性特攻宝具というワケ、か、だが……後者はどういう意味だ?」

 

「あ――、それはまぁ……そういう事を致した時の思い出補正的なアレでさらにランクというか破壊力というかテンションが上がっちゃう的な?こことは違う遠い遠い世界の話だし、君にとってはほぼ別人みたいなもんだから、気にしないでくれ……ただ一つ言えるとしたら『ゴスロリドレスもいいけど、鎧を脱がすのも実にベネ!』ということかな」

 

まさかそんな理由であの頑強そうな鎧を脱がしたのか、このセクハラサーヴァントは……もしかしてコイツ狂化入ってるんじゃなかろうか。

というかどうしたら、あんな一瞬で全裸に剥けるんだ!?

 

「さっきからやけに通信が静かね……もしかして、ロマニ……?」

 

『……いやいやしてませんよ!全スタッフ総出であらゆる角度からモニターしようとかしてませんから!』

 

「あのー、先輩……私はまだこのままなのでしょうか?」

 

語るに落ちてらぁ、あぁ、所長の眉間に青筋が……上に立つ人は本当に大変ですね。私はこうしてマシュが汚れないようにお目目を塞ぐ事しか出来ませんし。

私の体は一つしかないからね、決して所長は汚れてもいいとかそういう意味で言ったわけじゃないから。

 

「君がこの大聖杯前で立っている意味も理解はしているつもりだけど……それはそれ。これはこれ。俺は敵対した以上は容赦なく全力で相手を辱めることに定評があるサーヴァントだから」

 

「……まて、もう私には戦う力はない、命乞いをするつもりは毛頭ないが……せめて最後はまともな方法でとどめを……」

 

「『百式官能 壱乃掌』」

 

「あんぅぅぅっ!!」

 

グダおが何かをした。ただ動きが速すぎて何をしているのかこちらからはまるでわからなかった。

エロい顔しながら消えていくアーサー王の様子を見る限り、100%ろくでもない事だが。

 

「あぁ――、こりゃあ、アーチャーの奴は先に脱落してて良かったな……色んな意味で」

 

キャスターの言葉を耳にしながら、私は聖杯戦争の恐ろしさを実感していた。

 

「こんな聖杯戦争あってたまりますか!貴女も悟ったような顔して現実逃避しないでちょうだい!一応、アイツのマスターなんでしょ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なるほどなるほど、つまり君は並行世界のカルデアで人理修復を成し遂げたマスターだったわけか。位置的には立香君ポジだったのかな?」

 

「唯一のマスターという点で考えると合ってるかな。ただ、俺がいた世界とここの世界が同じという保障も全くないんで未来的な知識もアテになるかどうかはわからないし、そもそも俺がこうしてサーヴァントとして召喚されている以上は間違いなく俺が知っている軸とはズレていくでしょうよ。なのであんまり先の事はベラベラ喋るつもりはないよ…………うんまぁ、ノリでぽろっと零してしまうことはあるかもしれないけど」

 

「…………」

 

炎上した冬木から聖杯を回収し、無事特異点から帰ってきた私達はこのどうしようもないサーヴァントの話を聞くことにした。

モナリザ大好きっ娘ダ・ヴィンチちゃんの質問にグダおは答えている。ロマンは何故かさっきから難しい顔で黙ったままだ……。

 

どうやら彼も別の世界線にあるカルデアのマスターだったという事がわかったのだが、もし私と同じ一般枠のマスターなら一体何がどうしたら英霊になるのだろうか。というよりもそんな並行世界の英霊をほいほい呼べるものなのか、システム・フェイトやらとは。

そんな私の疑問にグダおは。

 

「いや、割とゆるゆるだよ、カルデアの召喚システムは。もしかしたら、紀元前1万年前の時代を斧片手にヒャッハーして生きていくような君とそっくりな女の子がいてもおかしくないし」

 

「私のこと何だと思っているんだお前は!?どこの世界線にもそんな私は絶対にいないからな!下着をかけてやってもいいぞコノヤロウ!」

 

私の啖呵にフォウくんを抱えながら、「えぇー?ほんとにござるかぁ?」と煽るこのサーヴァントの脛を無言で蹴り続ける……すんごい腹立つんですけど!ものすっごい腹立つんですけど!そんな化物フレンズな私がいるわけないでしょ!こちとら、どこにでもいる平凡な乙女だっつーの!

 

「ふふっ、なんであれ藤丸君がグダお君を召喚できたのは僥倖だったと思うよ。もし、彼がいなかったらマシュや君……そして()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

ダ・ヴィンチちゃんの言葉に異を唱えるものはここに誰一人としていなかった。

アーサー王の倒し方はこちらが同情するレベルでドン引きものだったが、確かに私達3人は彼に救われたのだ。特に所長は。

 

――ドタドタドタドタッッ!!シュインッ……

 

「おいごらぁっ!!あの変態サーヴァントはどこにいんのよ!!!」

 

あの時、レフに裏切られ、自身が既に死んでいる事を告げられ絶望していたオルガマリー所長が猛ダッシュで私達がいる部屋に殴り込んで来れるのも……こうしてお元気な(ブチ切れている)姿も彼がいなかったら見れなかった光景だったのだろう。

 

「あ!良かった所長!無事だったんですね!」

 

「無事ぃ!?今の私の姿のどこを見て無事って言えるのよアンタは!大惨事もいい所じゃない!!」

 

所長に激しく突っかかられても特に気にする事なく心底嬉しそうに笑っているグダお。

 

うん、まぁ……所長が()()()()()()()()()()()()()になっているのも間違いなく彼のおかげなのだろう……。

 

「ねぇ、あなたにわかる!?あなたにわかる!?目が覚めて、自分が生きていた喜びと鏡に痴女と化した自分が写っている絶望が同時にやってきた私の気持ちが!!何とも言えないこの私の気持ちが!!あなた私の体に何してくれたのよ!!」

 

最後の言葉だけは何か誤解を招きかねませんよ所長。

羊のような角、デビル的な尻尾に羽、そして大事な所は隠しているから恥ずかしくないよ!と言わんばかりのきわどい紫の衣装。所長ってばスタイル結構良いから目に毒すぎるよ……。

 

「まぁ、まぁ、そうカッカするものじゃないよマリー。彼が自身の宝具を切り売りしてまで君を助けたんだ。結果はどうあれ……まず、そこは感謝すべきだろう?」

 

「うぅ~~……わかってるよ。確かに終わっていた私の生を救ってくれた貴方には感謝しているわ……でもやっぱりいきなりこんな姿になっているんだから説明は欲しいわよ……」

 

「ふむ……確かに私もそこは気になるね。ロマニと一緒にモニターで君が宝具らしきものから聖杯を取り出したのは確認できたけど……」

 

「それは私達も見ました。グダおさんは何もない空間から聖杯を取り出していた筈です」

 

「真に万能の願望器なら所長を生存させる手段なり得るけどね……まぁ、そもそも普通のサーヴァントが聖杯を所有して、さらにはそれをホイホイ使っているのは異常としか言えないけども」

 

ダ・ヴィンチちゃんの言う通り、私達には特異点を修復し、聖杯を回収する役目がある。

その目的の品をこの男が簡単に使っている光景を見てしまうと、ありがたみが薄れるというか……達成感が無くなるというか……。

 

「イグザクトリー。聖杯を所長に使ったのは確かだよ。あぁ、数はまだまだあるからそこは気にしなくていいから。結局誰にも聖杯転臨に使わなかったから数は割と余っているんだ。特定の娘に使って余計な火種は作りたくなかったしね……とと話が逸れたか、ただ、実を言うと使ったのは聖杯だけじゃないんだよね」

 

「は?」

 

グダおの最後の発言に所長の表情がピキリと固まった。

 

「ほら、聖杯って杯じゃん?そんでもって中には何も入っていないじゃん?」

 

「そうだね」

 

「何も入ってなかったら何か入れたくなるじゃん?」

 

「そうだね……?」

 

取り敢えず、私はグダおに同調していたが彼が何を言い出そうとしているのか見当もつかなかった。

 

「だから、ね?聖杯に礼装『ハロウィン・プリンセス』をベースに蛮神の心臓とか戦馬の幼角とか鳳凰の羽根とかくべて、アレをアレしてうまい具合にアレしたら、今の所長になったという……」

 

「あああぁぁぁなああああぁぁたねぇえええええ!!!」

 

キャパをオーバーした所長がグダおに掴みかかった!

胸倉をぐらんぐらん揺らしているが、当然、サーヴァントに効くわけもなく。彼は微笑ましそうに所長の好きにさせていた。

 

「なんでそんなあやふやな感じで私を助けようとするのよ!!聖杯を闇鍋して使用するとか正気の沙汰じゃないわ!!何!?私、実験体なの!?あなたの玩具なの!?」

 

「いやいや所長、俺がキャスタークラスでまともに召喚されていたら多分聖杯だけ使ってたと思いますよ。ですが、最初に言ったように俺の今のクラスって割りとごちゃ混ぜ状態なので全てのクラススキルが中途半端なんですよ。その状態で聖杯だけを使用してあなたを確実に助けれる保障も無かったので……」

 

「……で本音は」

 

「今まで他人に認められようと頑張っていたメンタルが結構弱いチョロ上司系所長が色事に疎いサキュバスになるとか凄く滾りますっ!!」

 

「君とはいい酒が飲めそうだ!!」

 

何故か意気投合したダ・ヴィンチちゃんと「ヘェィイ!!」とハイタッチし始めるセクハラサーヴァント。

所長は顔を覆い隠し、「もうやだ。この変態サーヴァント共……」と嘆いている。う――ん、このカオス。

 

「しかし、今の話を聞く限り、聖杯以外にも色々入っているみたいだね君の宝具の中には。……まるでどこぞの金ぴか王様みたいだ」

 

「いやいや、俺にとってはどれも宝物だから、射出はしないからねロマン?」

 

そういえば、レフが現れた時も、テンションMAXになっていた彼は他にも出していた気がする。

 

 

 

 

 

 

『いや、まさか君たちがここまでやるとはね。計画の想定外にして……』

 

『もおぉっと素材をよこせぇえええ!!フラウロス!!』

 

―――ドゴォォオオッッ!!

 

『グボァアアッ!!……貴様ぁ!!何故、その名をぉっ!?」

 

『『人繋ぎの大秘宝庫(マテリアル・ボックス)』!!これは共に世界を救った者達からの宝石箱である!!”君もドラゴンセット+ライダーベルト・レプリカ+何者かの宝剣+弾丸と銃”!!』

 

『グォォォオッ!?ゴハァァッ!!この低能サーヴァントがぁぁっ!!少し装備を揃えた程度でこの私に敵うとでもぉおおっ!!』

 

『悪魔……!このど悪魔め……!吐き出せっ!吐き出せっ……!お前が喰らってきた……ユーザー達の金っ!石っ!魂っ!素材っ!QPっ!その全てを吐き出せっ……!』

 

―――震えるぞドラゴンハート!痺れるほどゴールデン!宝剣!盗まずにはいられないッ!君がッ死ぬまで起源弾をブチ込むのをやめないッ!

 

『ヌワアアアアァァ―――っっ!!』

 

 

竜人と化したグダおがベルトから放電しながら、暗黒オーラを纏った剣と銃を片手にレフに襲い掛かった時は最初は皆、彼が乱心したと思ったが、どうやら死に体で逃亡したレフの捨て台詞や状況証拠により彼が人理焼却に一枚噛んでいるという事はわかった。所長は最初の方は信じられなかったようだが……。

 

『待て!逃げるな!俺はお前を殺したいだけで、死んで欲しいワケじゃないんだ!』

 

 

 

 

 

 

「まったく、どっちが悪魔なんだか……」

 

「所長かわいい!かわいい所長!怒りのあまり自分がどんな格好でここまで来たのか今更思い出して羞恥心で震えている所長かわいい!スタイルいいのにどこかで自分なんて……って卑下してる感じが出ているのがかわいい!いきなり内部の裏切り者が出て、カルデアがヒドイ事になってホントはいっぱいいっぱいの上にこんなワケわかんないサーヴァントまで現れてしんどい筈なのに胃の痛みに耐えながら責任者として自分が出来る事を必死にやろうとしている所長凄い!本当凄い!!所長は頑張ってるんだよ!マジで頑張ってるだよ!可愛くて頑張り屋さんって最強かよ!オ・ル・ガ・マ・リィ!!カルデアで上司にしたいランキング1位オ・ル・ガ・マ・リィ!!オ・ル・ガ・マ・リィ!!フゥ!フゥ!ほらっ、マシュも一緒に!」

 

「え、え、え?え――と……お、オ・ル・ガ・マ・リィ……ふぅ、ふぅ……?」

 

「GAAAAAAAAA!!」

 

「そろそろ所長が言語を忘却しそうだから、その辺にしとこ?」

 

後、ウチの後輩を巻き込もうとするなセクハラサーヴァント。

 

「いい機会だと思うよ、私は。マリーは何だかんだで小心者で溜め込みやすい性格だから、どれだけ癇癪をぶつけても良心が痛まない相手は貴重だろうさ。ストレス発散にもなるしね。ほら、あんなに楽しそうにしているのに止めるのも忍びないだろう?」

 

「うーん、僕にはカメラ片手に動き回っているグダお君に髪を振り乱し、本気でぶん殴ろうとして襲い掛かっている所長の画にしか見えないよレオナルド」

 

これから、人理修復の旅に出るというのにこのぐだぐだっぷり。

まぁ、気負い過ぎて余裕のない空気になるよりはマシかもしれないが、もしかしてグダおはそこまで考えてこんな行動を取ってい…………んなワケないか。

取り敢えず、今日は疲れた。マイルームに戻って寝るとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――男がいる。

 

――私と似たような服を着ている男が。

 

――男は愛多きマスターであった。

 

――何人もの女性英霊を愛し、そして愛されていた。

 

――まるで彼の起源が寵愛であり、愛慕であり、そして『親愛』であるかのように……。

 

――その愛が行く着く先には当然、肉体の繋がりもある。

 

――男は女性を悦ばせる事に長けていた。男自身も彼女達のその姿を喜んでいた。

 

――巨乳・貧乳・年上・母・お姉さん・メイド・ロリ・同年代・男の娘・先輩後輩・SM・複数プレイ・背徳プレイ・ソーププレイ・制服プレイ・スライム姦・………………幾度の戦場を超えて不敗。

 

――担い手は女体の丘で(肉棒)を鍛つ。

 

 

 

――『俺はね、性技の味方になりたかったんだ……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フォウ……?キュ、フウウ?」

 

「…………ヒドイ夢を見た」

 

「おはようございます。先輩、昨夜はよく眠れましたか?」

 

「どっかのアホのせいであまり眠れなかったよ……」

 

「……?……もしかして、グダおさんの事でしょうか?」

 

マイルームにて安眠を貪る筈だった私を起こしにきてくれたマシュとフォウには悪いが、私は今すぐ行く所が出来た。

乙女にえげつないモノを見せてくれたサーヴァントに一言言ってやらないと気が済まないのだ。

 

「あ、グダおさんの所に行くのですか……先輩とすぐに打ち解けてこんなに仲良くなっているのは、少し羨ましいですね……」

 

「マシュ。悪いけど、そんな嫉妬シーン見せるような所じゃ絶対にないから」

 

全く……心配性な後輩だね。彼と仲良くなる=喰われる(性的)なんだから、私がそう簡単に打ち解けるわけないじゃない。私はガードに硬い事に定評があるから!そんじゃそこらのチョロインみたくすぐ堕ちたりはしないんだからネ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど、それで俺の部屋に入るなり、右ストレートをお見舞いしたワケか。女の子でありながらどこまでもアグレッシブだ」

 

その渾身の一撃は難なく防がれたわけだが、まぁ、一応英霊だし……知ってたけど。それでもやらずにはいられなかった。

 

「しかし、夢の中でのサーヴァントとの記憶の共有かぁ……ふふっ、いざされる立場になると照れるもんだね……」

 

「なに恥ずかしそうに頬を染めているんだ!恥ずかしい想いをしたのはこっちだわ!花も恥じらう乙女だというのに、あんなR18確定のエロCGを延々と見せられたこちらの身にもなって欲しいんだけど!」

 

「君がどんな夢を見たのか、大体察しはつくけど。それでも良く俺の部屋に来たよね?そんな夢を見た後なら女の子一人なんて絶対避けるべきだと思うんだが」

 

そう聞いているグダおは私を本気で心配しているのが表情から見て取れた。たまーにこういう真面目な顔をするのはちょっとズルい……。

あの時、シャドウサーヴァントに襲われた時もそうだったけど、最初っから最後までそんな風にカッコイイ感じでいてくれれば私もボーイミーツガールっても吝かでは無かったというのに。

そりゃあ、今更ながら危機感が無いかなーと少し思わない事もないが……。彼がそんな事はしないぐらいには信頼している。これでも契約を結んだサーヴァントなのだから。

 

「だって、君は無理矢理ではしないでしょ……それに数は多かったけど、君とその…………ゴニョゴニョした娘達、皆心の底から幸せそうだったもん。そういう経験がない私にもわかるぐらい君に愛されて嬉しいって顔してた」

 

「……そっか」

 

「ただマシュにあんな格好させたのは許さん。なんだあの紫のフサフサは?ウチの後輩はあんなエロい格好でお尻フリフリして男を誘ったりなんてしない!」

 

「いやー、そりゃあここにいるマシュと俺の世界にいるマシュは別者だし……」

 

「それでも気に食わないものは気に食わない!ウチの方のマシュにも手を出したら令呪案件だからな!爆ぜてグダおになるからね!どうしてもっていうなら、代わりに所長の方なら好きなだけ手を出していいから!」

 

「そこで自分じゃなく上司を躊躇なく差し出す辺り、君も俺に劣らずイイ性格してると思うよ」

 

「私は身持ちが堅い娘なの!そう簡単に自分を安売りなんてしないから!」

 

ま……まぁ?ほんの少――――しだけ夢の女の子達を見て、「……そんなに気持ちいいの?」ってナノレベルで気にはなっているけども……。

私はそう簡単に喰われたりしないんだからネ!

 

 

 

 

 

 

 




《第一特異点  邪竜百年戦争 オルレアン》

「さぁ、どちらの手で脱がされたい?右か、左か、それとも両方かァ!?」

「いやああああああ!!ジル!助けてジル!もう脱がされるのはイヤなのぉぉ!アヘェってなるのもイヤなのぉおっ!!」

「先輩!竜の魔女がファヴニールに乗って逃亡していきます!」

「もう、これどっちが悪役か、わかんないなぁ……」








・グダお(あくまで呼称)

マスター:藤丸立香
真名:『禁則事項です☆』
クラス:v@ers
属性:混沌・善


ステータス
筋力:C
耐久:B
敏捷:B
魔力:A+
幸運:A
宝具:EX


保有スキル
『かりちゅまA』:生前数多の英霊達と契約を結んだ事から得たスキル。カリスマ性の高さを示しているというよりは「この人と一緒なら特に根拠はないけど大丈夫だろう」や「この人についていけば愉快な事が起きるに違いない」や「もうしょうがないなぁ……(歓喜)」といった感じでついつい言う事を聞いてしまうスキル。故にかりちゅま。

『カオスクラスB』:グダおはセイバーからバーサーカーまで全てのクラス適正(ルーラーとアヴェンジャーのクラス適正は彼にはない)があるが、一つに決められなかった状態で無理矢理召喚に応じた為、少なくとも上記の7つには当てはまらないクラスで召喚された。
実は7つのクラススキル全てを中途半端に使えたりする。だから多分狂化も少し入っている可能性もある。

イカれた幻想(ブロークン・シリアス)EX』:「そのふざけたシリアスをぶち殺す!」「歯ぁ食いしばれよ最強(シリアス)……俺の最弱(ギャグパート)はちっとばっか響くぞ」
徹頭徹尾相手のムードにさせない。敵が真剣であり、真面目であり、シリアスに準していればいる程、グダおのステータスは軒並み上がっていき、相手に問答無用で有効打を叩き込める理不尽。このスキルは彼を規格外たらしめている重要な要素の一つ。


宝具
『百式官能』
ランク:A~EX
種別:対人宝具
脱衣術・セクハラ術を極めた彼が至った性技の極致。
後ろに観音像が現れるなんて事はなく。目にも止まらぬスピードで相手を性的絶頂にむかわせる。
この宝具の対象となるのは女性……正確に言えばグダおの認識で女性である事が条件の為、性別不明とされるサーヴァントも彼が雌だと認めれば、宝具の餌食となる。
彼の世界線においてその同一人物と肉体関係を持っていればさらにランクは上がる。
――その手はあらゆる衣を剥ぐもの。その手はあらゆる女性を悦びへ誘うもの……だが手がなけりゃ、イカせれねえとでも?
奥の手ともいえる、『零の手』が使う日が来ない事を皆で願おう。

模倣(まねっこ)宝具』
ランク:C
種別:対人宝具
かつて契約を結んだ英霊達に師事したり、遊んだり、戦ったりした経験から彼らの技を模倣して再現した宝具。
あくまで技の再現なのでどこぞの贋作者みたく武具を投影したりは出来ない。「ぐれんでる・ばすたー」とか「つばめがえし」とか「にのうちいらずとか」とか「むみょうさんだんづき」とか……本来の使い手よりはランクも当然下がっている。
グダお曰く「男はいつまで経ってもごっこ遊びが好きなお年頃なのよ」らしい。宝具になるごっこ遊びとは一体……。

人繋ぎの大秘宝庫(マテリアル・ボックス)
ランク:EX
種別:対人宝具
素材とか礼装とかガチャとかコレクター癖に憑りつかれたグダおの宝がたくさん入っている宝物庫。別名『アイテムBOX』。空白は許されない。
聖杯とか神獣達の素材を始め、概念礼装及び男サーヴァント達からのバレンタインのお返し、テスラ博士作成のパワードスーツとかバイクとか、師匠がくれた複製ゲイ・ボルグとか、アルテラちゃんの手によって3色棒と化した『マルスパンキング』とか……思い出の品がたくさん入ってる。秘宝庫の中身は正に大混沌時代!!








エイプリルフールという免罪符を片手に本当に好き勝手やりました。苦情は受け付けます。
こんなん書いてるヒマあったら、エロある本編書けやとか言われそうだけど、仕方ないんじゃん?だって4月1日は型月が毎年何かしらやらかしてくれるじゃん?リスペクトしているこっちもささやかでもいいから何かしようという気分にも駆られてもしょうがないじゃん?
多分この特別編もこれっきりだと思います。次話はちゃんとエロ書きます。


…………もし、反響があったら、またいつか書くかも?……まぁ、無いよね?






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限りなくシリアスに近いカオス(第1章)

1年、その月日の何と早い事か……。


はい、連載1周年記念ということでまさか続くとは思わなかったエイプリルフールネタという名のグダお英霊編の続編で御座います。これが嘘から出た実ってやつですか……。
しかも、前回の2倍の文字数って……元は一発ネタだった筈なのにどうしてこんな長くなったんですかねぇ……。
あ、後、累計ランキング5位になりました、感謝。皆様に圧倒的感謝。こんな自重する気がサラサラない作品でも評価されるのはマジで嬉しいです。









人理定礎値C+―――邪竜百年戦争オルレアン。

全てを憎悪し、復讐を誓った竜の魔女はカルデアによって倒された。

元帥の手に渡っていた聖杯も回収され、歪んだフランスの歴史は修正された。

 

喜ぶがいい諸君。第一特異点はこうして救われた。

 

 

「何が、”喜ぶがいい”だ!このたわけ!」

 

「はっはっはっ!マイルームに戻ってから、マスターのスキンシップが激しいな。もう最近は肉体言語を通してしかコミュニケーションをしていない気がするぜ」

 

ジャブジャブ!からのストレート!私が繰り出す連続パンチもコイツは涼しい顔で受け止める。

”きかねぇ!サーヴァントだから!”ってか?あぁ、そんな事は私もわかっている。だがグダおへのツッコミを諦めるわけにはいかないのだ。

「こいつがやる事だから仕方ないよね……」で放置していたら、よりカオスになってしまうだろう。そんな事、認めるわけにはいかない。

だって私は彼のマスター。たとえ、頭とか胃がおかしくなりそうになってもこのサーヴァントのお世話はちゃんとしなきゃいけない。私が拾ってきたようなものだし。

 

「そうだね!特異点は救われたね!めでたしめでたしだね!過程から目を瞑ればねぇ!お前はあれなの?真面目にやったら死ぬ病気でもかかってるの?何かやらかさないと霊基が死んじゃうの?」

 

「大真面目にふざけるのはイカンのか?」

 

「イカンに決まってんだろうがぁ!!」

 

「女の子があまり乱暴な言葉遣いをするものではないよ」と窘めるグダおに私は効かないとわかっている追撃を叩き込む。誰のせいでこうなっていると思っているんだ!私だって、もっとこうマシュみたいな可愛い女の子や騎士系の爽やか風イケメンに守られながらも頑張って指示を出すような普通のゆるふわ系マスターでいたかったわ!

コイツだって顔はイケている部類に入るのに中身のせいでマイナスが臨界点突破なんだよ!なんでそんなにカオスなんだお前は!

 

「ふ――む、俺にはどうしてマスターがそんなに激昂しているのかがわからないな。フランスでの人理修復の旅は特に問題は無かっただろう?」

 

「ほぉー、ほぉー、ほぉー!あ れ が特に問題は無かったと?よぉし!じゃあ一個一個振り返ってみようかぁ!君があの特異点で何をやらかしたのかさぁ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突発的に始まってしまった冬木の時とは違い、私達カルデアが本格的に人理修復へ臨んだ初めの一歩ともいえる特異点。

そこで見た物は本来その時代にはいない筈の飛竜の群れがフランスの街そしてそこに生きる民や兵達を無差別に襲っている光景と――――

 

 

「な、なんだ!?屋根の上に人がいるぞ!!」

「くそ!化物(ワイバーン)に続いて、新たな敵襲か!?なんなんだあいつらは!?」

 

 

 

 

「……うぅ、これ本当にしなきゃいけないのかしら……あぁ、もうやるわよ!やればいいんでしょ!!なんだかんだと聞かれたら」

「答えてあげるが世の情け」

 

「……人理の破壊を防ぐためぇ!」

「人理の平和を守るため」

 

「あ、愛と真実の正義を貫くっ!」

「ラブリーチャーミーな主役」

 

「おっ、オルガマリー!」

「グダ男!」

 

「じ……時代を駆ける カルデア団の二人には!」

「ホワイトソース白い明日が待ってるぜ!」

 

「フォーフォウ!」

 

 

――建物の屋根の上でキレキレの決めポーズを取っている()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()姿()、そして何故か白い小動物の姿があった。

 

「さぁ、所長!ドラゴン達がこっちに注視している今がチャンス!生まれ変わった新しい貴女の力を見せる時ですよ!ほらっ!さっき俺が教えた通りに!」

 

「せっかく、レイシフト適正を得たと思ったらこんな姿で人理を救う羽目になるなんて誰が想像出来るのよ……こうなったらヤケよ!『感謝するわ!これまでの全てに!おいしくな~れ♡萌え萌えキューン♡』」

 

 

限界まで顔を真っ赤に染めた女性がやけくそ気味に両手でハート型のポーズを取ると、なんとハートの形をした数多の魔力の弾が弾幕となって放出されるではないか。

被弾したワイバーン達はまるでその女性に魅了されたかごとく動きを止めていく。

その隙をあの男が見逃す筈もなかった。

 

「”俺にとってはどれも宝物だから、射出はしないからね”と言ったな?スマンあれは嘘だ。ただし一部を除くというやつだ!ゴミ礼装庫の鍵を開けてやろう!『人繋ぎの大秘宝庫(マテリアル・ボックス)!!』」

 

海パン男の背後、何もない筈の空中にいくつもの波紋が浮かび、そこから数多の剣が弾丸のように射出されていく。

 

「”爆死や兵どもが夢の跡”……アゾット剣×250、青の黒鍵×250、赤の黒鍵×250、緑の黒鍵×250、かつて光すら見えない絶望の中に沈んでいった戦士達の忘れ形見よ!存分に喰らうがいい!!フハハハハハ!」

 

『キシャアアアアアアァァッ……!!』

 

動きが止まっている飛竜達はもはやただの的に過ぎない、どんどん屠られていく飛竜達、おかげで私とマシュは地上の骸骨兵達の方に集中出来るのだが……。

 

「す、すげぇ!あんなにいたドラゴン共をあっさりと!」

「あぁ!最初はただの露出狂かと思ったが、まさか俺達にとっての救世主だったとはな!」

 

すいません、すいません……その露出狂共、私の知り合いなんです。

 

「見た目だけで判断した自分が情けない!あんな勇者達を只の変態と痴女だと思ってたなんて!」

「それに良く見れば女性の方は神々しい雰囲気を感じないでもない!あれが我らにとっての救国の聖女……いや女神だ!」

 

すいません、すいません……その変態、私のサーヴァントなんです。その痴女、私の所の上司(所長)なんです。

 

 

「……あ、どうやら私の出番は無かったみたいですね……いえ、大丈夫です。民と兵士が無事なのならば私は何も言うことはありませんから……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「謝って!スタンバってたジャンヌさんに謝って!」

 

「いや、彼女も俺達に感謝してたじゃん」

 

「複雑そうな顔でね!自分の出番を海パン一丁の変態と痴女に奪われたら、いくら聖女でも苦笑いだわ!」

 

確かにジャンヌさんはフランスの人達を救ってくれた事には心から感謝していただろうけども!

それでも、もう少し格好と現れ方は何とかならなかったのか……あれがカルデアの代表ってフランスの人達に認識されたままだったらどうするのさ……いや、片方に関しては事実としてカルデアの代表なんだろうけど……というか彼女があまりに懇願するからカルデア内では普通の格好になるようにグダおが何とかした筈なのに、レイシフトしたら何故かまたドスケベ所長になってるし。

 

 

『ねぇ!今更なんだけど、なんでレイシフトしたら、私またこの姿になっているのよ!』

 

『ほら、あれですよ。所長ってば一回死んでからレイシフト適正得たみたいじゃないですか』

 

『……それが何よ』

 

『所長がハロウィン・プリンセス姿になったのも、所長の肉体が死んだという事実からきている以上、所長が死ぬ=ハロウィン・プリンセス姿になる、所長が死ぬ=レイシフト適正を得る……つまり』

 

『まさか』

 

『ハロウィン・プリンセス姿になる=レイシフト適正を得るの方程式が成り立ってしまったのかもしれませんね。ハッハッハッ』

 

『ハッハッハッじゃないわよ!やっと念願のレイシフト適正を得たら、なんでこんな呪いの装備を付けないといけないのよ!!それにマスター適正は?そっちは変わってないの!?』

 

『残念ですが現実は無情です。変わらずゼロのままです』

 

『ファック!しかも、さっき貴方に言われるがままにやったけど私の魔術にあんなものは無いんだけど!ワイバーンにも通用するレベルまでになってるとか私の体どうなってるわけよ!?』

 

『”ラブラブ波動オルガマリービーム”の事ですか?』

 

『名前はどうでもいいわ!ってか何なのよその心底頭の悪そうな技名は!』

 

『まぁ、一応まがりにもサーヴァントの宝具を使って、貴女の体を構成したわけですから……今の所長はスペックだけ見れば、平均レベルのサーヴァントとなら互角に戦り合えるぐらいの戦闘力を有してますよ』

 

『……な、なによ、それ……』

 

『良かったじゃないですか、街の人達は皆所長に感謝してましたよ。それこそ宗教とか出来そうな勢いで。さすがは所長です。嫌々と言いながらも無茶ぶりをしっかりとこなしてくれるそこに痺れて憧れて惚れちゃいますよ』

 

『ふ、ふんっ、別におだてても何も出ないわよ!…………まぁ、そうね……感謝されるのは私も悪い気分じゃなかったわ……』

 

『ただ、人理を救った後に魔術協会に封印指定とかされそうですけどね!』

 

『イヤアアアアア!ホルマリン漬けはいやあああ!アナタなんとかしなさいよ!元はといえば、アナタから始まった事でしょ!!』

 

『わかってますよ。一回助けて、満足、ポイ、なんてしませんから俺は。手を差し伸べた以上は当然最後まで面倒見ますから、安心して下さいな所長』

 

『……ほ、本当、私を見捨てない?』

 

『はい、むしろ嫌と言っても逃がしませんよ』

 

『…………グスッ……ありがとう』

 

 

 

「――とまぁ、こんな感じでこれからも所長はレイシフト先ではあの姿になるのでそこん所、これからもヨロシクオネガイします」

 

あぁ、なんというマッチポンプ。依存癖がある所長が悪い男に捕まってしまったではないか。

いやこれは色々とチョロ過ぎる所長に問題がある気もするが。

 

「っていうか何故海パン?」

 

そう、最初の姿は白いプラグスーツに黒いマントというまともな格好だった筈なのに一度霊基再臨したら、エメラルド色の海パン一丁姿になりやがったのだコイツは。マシュの教育に悪すぎるので控えて欲しい。

 

「ほら、霊基再臨したら脱ぐのは基本というか、世界意思というか……」

 

「よし、お前のレベルはこれ以上あげん」

 

「いやいや冗談だってマスター!一度脱いで、また着るサーヴァントもいるから俺もその類だって!さすがにこれ以上キャストオフはしないから!」

 

彼の弁明をジト目で聞きながら、私は先程の育成放棄を撤回してあげた。

 

ただまぁ、なんというか……確かに英霊というだけあって結構イイ体はしている。顔と雰囲気は私と同年代という感じがする癖に。

…………むむ、なんだか意識するとあれだ。密室でパンイチの男と二人っきりの状況はもしかしなくてもあまりよろしくないのでは?私が自身の頬が熱くなっていくのを感じていき、それを誤魔化すように次の話を続けた。

 

「ンンっ!……それと君の新しい宝具についての話なんだけど……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんの陰険ストーカーアオダイショウ!!」

 

「鬱陶しいですわよ!殺人音痴エリマキトカゲ!!」

 

聖人探しをしていたら、キャットファイト?いやむしろドラゴンファイト?に遭遇しました。

間違いなく、彼女達は聖人の類ではないが、それでもサーヴァントである事は間違いないのでこのままにしてはおけない。グダおの懐かしいような、微笑ましいような目は少し気になったが。

 

私がどうしようかと思案しているとワイバーンとゾンビの群れが再び街を襲い始めた。どうしてこうトラブルは畳み掛けるように一気にやってくるのだろうか……。

 

「彼女達の争いを止める&ここの敵を一掃するウルトラCがあるのだが?」

 

どう足掻いても嫌な予感しかしないのだが、人命がかかっている以上背に腹は代えられない。私とマシュだけではこの状況を治めるのは難しい。

『私にいい考えがある』とばかりにサムズアップするグダおに任せる事にした。

 

すると彼は『人繋ぎの大秘宝庫』で何やら銀色の機械的な杯を引っ張り出した。

私達が最初の特異点で回収した聖杯と形が似ていたが、彼が持っているのは近未来的でマシーン的なイメージを抱かせる。

 

「『性神と妻達の部屋(アダム&イブズ)』」

 

グダおは手にしたその聖杯?を横にして目の前の何もない空間に突き刺し、ドアノブのように杯をひねり出す。

すると杯を起点としてドアが現れ、その扉が開き、中から割烹着を着た女性が出て来た。

 

「ごめん、もしかして今忙しかった?」

 

「いえ、ちょうど清子を寝かしつけた所でしたので丁度よかったですわ旦那様。それにあなた様のお呼びですもの、たとえ溶岩の中にいようとも私はすぐに飛んでいきますわ」

 

「家事をしている妻を職場に呼びつけるロクでもない夫だと怒ってくれてもいいのにさ……」

 

「夫の職場に顔を出すの実は夢だったりしますのよ……?」と彼の宝具のような扉から出て来て笑う女性はさっきまでギャンギャン騒いでいた二人の内の一人、着物の女の子の方に似ていた。

 

「…………あ、れは、私……?」

 

自分と似た存在が急に現れたせいか、着物の彼女は争いを止めて、固まっていた。

疑問を抱いてるのは確かに似てはいるが見た目以上に雰囲気が大分違うせいだろう。自身には無い包容力とグラマスさと温かさが内在している事に気付いてしまったのかもしれない。

 

「それじゃあ、清姫……」

 

「皆まで言わなくとも私がすべき事はわかっていますわ旦那様。たとえ言葉を交わさずとも互いに分かり合えるもの……夫婦の関係とはそういうものですわ……まぁ、それでも言葉を通した慈しみ合いを疎かにするつもりもありませんが」

 

グダおが何を望んでいるのかすぐに察した清姫と呼ばれた女性はどこからともなく扇を出し、周囲に存在する『敵』を睨み付けた。

 

「これより旦那様に仇なす敵を退治します。『献身幸生三昧』!」

 

竜のように口から太陽のような淡黄色で輝く炎を吐き出した。その炎は街全てを包み込むぐらいに大規模だった。

 

『……ちょっと待って!確かにすごい宝具だが、これだと敵だけじゃなくて立香君達や街の人達も巻き込んでいないか!?』

 

ドクターの焦る声が耳に入る。だが、私達の身は特に何とも無かった。

 

「先輩!炎に包まれているのに熱さも痛みもまるで感じません!」

 

「私の炎の対象になるのはあくまで旦那様の敵となるものだけです。手当たり次第に焼き尽くす慎みの無い炎と一緒にしてもらっては心外ですわ」

 

炎の波が引けると、そこには見事に焼き尽くされたワイバーンとゾンビの残り滓、しかも街やそこの住んでいる人達には一切の被害がいっていないという申し分の無い結果付き。

 

「これが私の炎。夫を、子供を、家を、愛すべき家族を守る妻の炎。我を失って関係無い物まで、果ては大事な者まで傷付ける青い炎からはもう卒業しましたの」

 

「…………それは私に対しての揶揄ですか?私の()()()()()()?」

 

「ふふ、そんな事言っても本当は気付いているのでしょう?遠い世界の『私』。幸せそうな私に対しての妬みが隠し切れていませんわ」

 

「……っ!」

 

「けど、それは不要な事。だってたとえ同じ存在だったとしても世界が違う以上、それは違う『私達』。歩む軌跡が変われば、生き方も変わります。誤解を解きますがあなたを揶揄するつもりは毛頭ありません。まぁ、言いたい事がないわけでもありませんが」

 

大人になった自分。妻と自称する自分。愛する者とあんなに幸せそうにしている自分。そして噛み付く自身を諭す自分。

彼女は心底羨ましがっていたのかもしれない。生前手に入れられなかった物を手に入れている『自分』を。いつの日か夢に見た光景を現実にしている『自分』を。勝手な憶測だが何故かそんな気がした。

 

「恋をしなさい私。熱烈で過激な恋を。きっと、それで誰かを傷付ける事もあるでしょう。誰かを巻き込む事もあるでしょう。もしかしたら、自分自身が傷つく事もあるかもしれません。けどそれでいいのです。だって恋とはそういう物なのだから。私はもう昔のような無茶はあまり出来なくなってしまいましたが……」

 

隣にいるグダおは「そんな事ないと思う」と言いそうな顔だったが空気を読んだのか何も言わなかった。

 

「ただ、恋をする者を見失ってはいけません。好きと言っている相手を通して、別の誰かを見てしまうなんて……そんなにも悲しい事は無いのだから……」

 

「……な、にを言って……」

 

「ふふ、あなたもいつか気付きますわ。それでは旦那様、お勤め頑張って下さいまし」

 

結局、どこまでも自分自身を困惑させたままだった清姫(割烹着)さんは慈愛に満ちた顔のまま出てきたドアの方へと戻り、消えていった…………と思ったのだが――。

 

『……あれ?アンタ、どこ行ってたのよ?』

 

『どこでもいいじゃありませんか』

 

『いや隠してもバレバレよ。なんか楽しそうな事してたわね!アイドルの勘なめんじゃないわよ!』

 

『ちょ、ちょっと!!貴女が出てくるとまた面倒な事になるから自重して下さいませんか!?』

 

『アイドルマスターたるアタシに随分な言い草ね…‥アンタ、子イヌに会いに行ったんでしょ?』

 

『私は旦那様のお呼び出しに応えたまで、妻として当然のことをしただけです』

 

『アタシもワイフだし!アンタを呼び出して、アタシを呼ばないとかいい度胸じゃない!ちょっと子イヌに一言言ってくるわ!』

 

『あぁ、もうコラやめなさっ……!』

 

ドアの向こうから何やら揉め事の雰囲気が。

少しすると再びドアが開き、先程とは違う女性が出て来た。

 

「サーヴァント界No1アイドルのアタシをいの一番に頼らないのはちょっと冷たいんじゃなくてプロデューサー(アナタ)!?」

 

バァアアアン!!と現れたのは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()の女の子、アイドルが着るような服にも思えるし、どこか花嫁を彷彿とさせる姿でもあった。

 

「は、はぁっ!?アタシ!?アイツ(カーミラ)、じゃないわよね……」

 

服も髪型もまるで違うが、自称アイドルの頭から生えた赤紫の角と顔はさっきまで清姫(着物)と喧嘩していた女の子の方と瓜二つだった。どうやら今度はこの娘と同じ英霊らしい?

 

「アタシの体を見て、カーミラ(同業者)と間違えるなんて節穴過ぎるわよ昔のアタシ。……まぁ、アタシも昔はボンッキュッボンな躰に憧れた事もあったけど、アイドルの頂点に立って一つわかったわ……何がNo1なのかはいつだってその時の価値観で変わっていくんだって!なら、子イヌが愛してくれたこのアイドルマスターの躰が結局世界で一番キュートってことをアタシは自信を持って歌い続ければいいのよ!!」

 

「あ、ああああ、愛ぃ!!?」

 

叫んでいる昔の自分を前に純白のアイドル衣装を着たその女性はどこまでも自信に満ち溢れていた。しかもそれは根拠の無い強がりではなく、確固たる何かを持って謳っているように思えた。

 

「あ、あのアイドルマスターさん……登場した所申し訳ないのですが、残存している敵勢力は清姫さんの炎で駆逐されました。もう、貴女の出番は……」

 

「何言ってるのよドスケベシールダー、こんなシチュエーション、アタシにうってつけじゃないのよ!」

 

「デミサーヴァントです!」というマシュのツッコミをスルーしてアイドルマスターとやらは歩き出す。この間、グダおのあんな夢を見せられた私はドスケベシールダーという言葉を強く否定出来なかった……すまないマシュ……これも全部、あの変態が悪いんだ。

 

「全く、どいつもこいつもシケた顔してるわね~、子イヌに文句を言う前にここは一つ、私の歌で盛大にイカせてあげようじゃない!!」

 

槍のようなスタンド型のマイクを得意げにくるくる回している彼女はフランスの人達の消沈した表情が気に食わないらしい。

 

「……なっ!?ちょっとそこの大人の私の旦那様!!いますぐあのエリマキトカゲの暴挙を止めるべきです!死人が出ますわ!!」

 

「どういう意味よ!!?」

 

何故か怒ったのは私達の世界の方の彼女だったが、清姫(着物)の焦り具合から死人が出る程音痴らしい彼女の歌は……逆にどんな歌なのか気になりもする。だがそれでもグダおは動じる事なく、むしろ信頼した面持ちでアイドルマスターに全てを任せていた。

 

「サーヴァント界最高のヒットナンバーを歌うわ!心して私の声を聴きなさい!!『純潔花嫁真嬢(バートリ・ブライド・エルジェーベド)』!!」

 

槍っぽいそのマイクを地面に突き立てると純白の城……まるで結婚式場をイメージさせるライブステージが現れた。

 

清姫(着物)は世界の終わりのように耳を塞いでいたが、私達の耳に届いたのは間違ってでもそんな聞くに耐えないような歌声と言える代物ではなかった。

 

『La―――――――♪』

 

それは歌詞自体は特別な物ではない、元気と明るさ、ありふれた良い物を綴った歌詞。

 

『aaa――――――♪』

 

なのにどうしてか、楽しそうに、嬉しそうに、心底幸せそうにステージを飛び跳ねる彼女から皆が目を離せなくなっていた。彼女の歌声が凄く、心地が良い。戦いで荒んだ心を癒すように。あれだけ反対していた清姫(着物)もいつの間にか耳から手を離して聞き入っていた。

 

『―――――――――♪』

 

フランスの人達が兵、市民問わず、熱狂していた。夢中になっていた。さっきまで化物に襲われて疲弊したとは思えない程に活力を取り戻していた。

 

『エリザLOVE』と書かれた団扇を手に皆がノリノリだった。ってかいつの間にそんな物持ってたし。何故かモニターのロマンも団扇を手にしてはしゃいでいるし。

あぁ……うちのサーヴァント(グダお)が配っていやがりましたわ、仕事が速い。そしてマシュも団扇片手にノリノリだし、うん可愛い。

 

『Thank you♡』

 

『うおおおおおおおお!エリちゃんぅぅううう!!』

 

皆、さっきまで戦いを忘れたかのように元気になっていた。

それは身体的な傷ではなく、直すのが難しいと言われている心の傷を癒したともいえる歌だった。

 

「うんうん、さっきの顔よりは百倍ぐらいマシな顔になったわね!スーパーアイドルのアタシが目の前にいるんだもの、それぐらいの元気は見せてくれないと困るわ」

 

「……今のが、『アタシ』の歌……?」

 

信じられない、もしくは信じたくないのか、おそらく同じ存在であろうエリちゃん(仮称)は体を震わしていた。

きっと彼女も先程の清姫(着物)のように噛み付くだろう。だがあんな素晴らしい歌を魅せてくれたアイドルだ……きっと清姫(割烹着)さんの時のように自分自身に道を示してくれるかもしれない……そんな気が――。

 

「お疲れ様、エリちゃん。今日も最高にイカしていた歌だったよ」

 

「当然!ちゃんと家事も終わらせて、()()()()()()()もひと段落させてからこっちに来たアタシに隙はないわっ!」

 

「こ、こどもぉぉっ!!?」

 

だが、エリちゃん(スーパアイドル)は知った事かとばかりに爆弾を放り投げた。

 

「ちゃんと仕事終わったら、家に帰ってきなさいよ。お勤めをした夫を癒すのも妻の役目でしょ?夜はちゃんとベッドの上で最高の歌を聞かせてあげるわ♪アタシより清姫を先に頼った事はそれでチャラにしてあげるっ」

 

「妻ぁ!!?夜はベッドの上ぇ!!?」

 

もうやめて!エリちゃん(初心)のライフはゼロよぉ!

お目目グルグル顔面紅潮角娘の叫びが木霊する。

 

「あ、あ、あ、ああ、アナタねぇっ、仮にもアイドルを名乗ってるのでしょぅ……!?そ、それをこんな大勢の前でい、い、いやらしい事を…………」

 

「ふっ、青いわね私……」

 

そんなもう一人の自分をエリちゃん(スーパーアイドル)は鼻で笑った。今指摘された事は本当に些細な事でしかないと、自分にとって何のダメージにもならないと……。

 

「アイドル……確かに彼女達には偶像として処女性が求められているかもしれないわね……けど、それは私のようなアイドルマスター以外の有象無象に当てはまる話よ!全てのアイドル道を究め、もはやアイドルの生みの親と言っても過言ではない私にとってはスモールな問題でしかないわ!アイドルの卵から全く孵化していないベビーな私……アナタに一つ良い言葉を教えてあげる……」

 

「な、なによ……?」

 

「『奥様はiDOL』なのよ!!」

 

「ファッ!!?」

 

「そもそも、アタシは子イヌであり、プロデューサーであり、夫であるマスターを真剣に愛しているの!子供達も愛しているの!そこに疚しい気持ちも、不純な物もないわっ!アタシのアイドル業になんの傷にもならない、むしろ燃料源よ!」

 

「子持ちアイドルぅっ!?」

 

彼女の言っている事はどう考えても荒唐無稽で滅茶苦茶なのだが、先程の歌……そして何より現在進行形で溢れる眩しい程のアイドルオーラがその場にいる人達を納得させてしまう程の力を持っていた。

 

「むしろ私のアイドル道は彼に非処女にされた時から始まったと言っても過言じゃないわ!!」

 

「…………~~~~っ!不潔っ!不潔よぉ!!スーパーアイドルになる為には処女を捨てなきゃいけないなんて、そんなの枕営業じゃないのよぉぉ~~!うわああああんっ!!」

 

衝撃がキャパを超えてしまったのか、エリちゃん(初心)は泣きながら走り去ってしまった。エリちゃん(スーパーアイドル)の方は「枕営業とは失礼ねっ、子イヌ以外とはヤっていないわよ!あぁ、けどたまに彼の魔力特製スライムプレイとかしてるけど……それはノーカンよね?」とかぼやいていたが……あぁ、もうこれ以上彼等の性事情は聞きたくないです。

 

「けど、シた後にピロートークを交えながらベッドの上で仕事の話をする事もあるし、ある意味では『枕営業』と言えない事もない?」

 

「お前は黙ってろ」

 

「あのぉ、グダおさん、先輩……『枕営業』とはどういう意味なのですか?」

 

「あぁ、『枕営業』という言葉は仕事で関係のある人達が性的な……」

 

ガンドオオオォッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いい感じで終わりそうだったのに、途中まではいい感じの話で終わりそうだったのにぃ!!」

 

最後は未経験ないたいけな少女を苛めて終わっただけじゃないか!いやもう、あの街でドラゴンファイトしてた二人もグダおの夢で何か見覚えあった娘達だったし、嫌な予感はしてたけれどもぉ!!

 

「っていうか君、何人奥さんがいるんだ……?」

 

「え?聞きたい?聞きたい?」

 

「いや、やっぱりいい」

 

瞳をキラキラさせてウズウズしている彼を見ていると話が長くなりそうなので遠慮させてもらった。そんな残念そうな顔をしても駄目な物は駄目です。

 

「そもそも、あの聖杯モドキはなんなの?なんであそこからドアが出て来て、君の奥さんとかが現れるワケ?」

 

「そうだね……アレはわかりやすく言えば”人語を話すぐらいに知能が発達したうりぼう達が元を作り出して、それに目をつけた水着が似合うお師匠さんとカルデア技術班の知恵と叡智が開発して出来上がった物がこちらです”っていう感じの代物かな?」

 

「うむ、まるでわからん」

 

全然、わかりやすくないのだが。

 

「マスターの方のカルデアにもあるでしょ?……戦闘シュミレーター的なものがさ。あれの応用編みたいな物だと思ってくれればいいよ。時間を有効活用して鯖と訓練したり、絆を深められる事が出来るってわけさ、大体のシチュエーションは再現出来るんだぜ?」

 

「成程、つまりお前のヤリ部屋ってワケか」

 

「言い方。……いや、うん。生前の事を考えると否定できねぇやハハハ」

 

「つまり、生前の所業がそのまま宝具となって……その空間には君がかつて連れ込んでグチョグチョのぬちょぬちょにした奥さん達がいるって事でしょ?」

 

「だから言い方に悪意しか無い……うん、まぁ、もうその解釈でいいよ……空間の広さとしてはそれこそ島1個分ぐらいあるけどね!何せ人数が多いからそれぐらいスペースは確保しないといけなかったし!」

 

コイツ、マジで何人奥さんがいるんだ……!?アダム&イブズか……確かにこの話を聞くとピッタリな宝具名だよ全く。

 

「けど、あの時の事はそこまで言われるような事かなぁ……?確かにエリちゃんは少しだけはっちゃけてしまったと言えない事もないけど」

 

「じゃあ、二人の時じゃなくて、マリーさんの方も宝具で出した件についても同じ事言える?」

 

実はさっきの話でグダおがあの宝具を開帳したのは二度目だったりする。宝具自体を見たのは清姫とエリちゃんの時が初めてだったが……。

あ、露骨に目を逸らしやがった。さすがにあの件についてはコイツも多少は罪悪感を感じていたらしい。

 

「いや、あれは……俺が呼び出したワケじゃないし……だってマリーがせっかくフランスに来たなら自分も一目見たいって言って聞かないんだもん……俺としては身重なんだから安静にして欲しかったのに、けどあまり妊婦を不自由にさせてストレスを感じさせるのも良くないし…………お、俺は悪くねぇ!そうだ……王妃様が、王妃様がやれって言ったんだ!こんなことになるなんて知らなかった!誰も教えてくんなかっただろっ!俺は悪くねぇ!俺は悪くねぇっ!」

 

「シャラップ」

 

「ハイ」

 

「…………ふぅ――まさか、妊娠しているもう一人の王妃様が現れるなんて、アマデウスもサンソンも夢にも思わなかったでしょうよ。そりゃあ、ショックのあまり座に還りますわ」

 

そう……あれは聖人探しをする為に私達が二手に別れる前の話――竜の魔女の配下のサーヴァント達が再び襲い掛かってきた時の話だ。サーヴァントの数では負けていない私達が応戦しているといつの間にか、グダおの隣にお腹を膨らませマタニティウェアを着た銀髪の貴婦人がいて……。

 

 

 

『フフフ、お腹にいる子は4人目よ』

 

『腹ボテマリィイイイイイイ!!?』

 

『……なんだ、なんだこの気持ちはっ……?まさか今僕は彼女を処刑した時よりも興奮しているというのかっ……!?』

 

二人の断末魔の叫びが色んな意味でヒドかった……。敵のサンソンはともかく、味方のアマデウスまでが消えてしまったのは皆( ゚д゚)ポカーンだったからね。

 

『私とは違う”私”……あぁ、けど決して穏やかとは言えない最期を迎えた私が――死んでしまって英霊になった後の私が――あんな風になる未来もあるのね……うん!子供に恵まれて何よりねっ!もう一人の私!ヴィヴ・ラ・マリー!』

 

 

 

まぁ、王妃様が凄く嬉しそうに笑みを零していた点は良かったかもしれないが……。

 

「アマデウスとサンソンの二人の新たな性癖を開拓してしまった点もある意味良かったと言えない?」

 

「よし、霊基変還でもするかな」

 

「……まってまって、これでも自重した方なんだって……。こっちのジャンヌとか、ジャンヌオルタとか、神風魔法少女ジャンヌとか、ジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィとか、カーミラさんとか、マルタ姐さんとか、アタちゃんとか呼び出さなかっただけ、しっかりと弁えているんだよ。特にバーサク化しているこっちのアタランテにアタちゃんと対面なんてさせたら、狂化が上限突破して『神罰の野猪』なんて可哀想な事態になってもおかしくなかったと思うのじゃ」

 

アタちゃんはあの獣耳アーチャーの事を言っていたのか……後、何か二人ぐらいおかしいジャンヌさんいなかったか今。というかやっぱり彼女達も全員当たり前のように彼の宝具の中にいるんですね……。こいつ一体、生前はどんな風に特異点を巡ったんだ?まさか女性英霊全員を奥さんにしたわけじゃないなぁ……?あれ、なんだか人理を滅ぼそうとしている黒幕を倒すより先に何とかしなきゃいけない悪が目の前にいる気がしてきたぞ。

 

「けど、ほらっ、あの事がきっかけで何故か所長もやる気出してマリーさんを助けれたわけだし……」

 

「そこは否定しないけども……」

 

聖人探しで、私、マシュ、グダお(アマデウスは衝撃のあまり座に還ってしまったので当然いない)グループとジャンヌさん、マリーさん、所長グループの二手に別れた後の事を言っているのだろう。

私達の方は成果無しだったが、どうやら所長グループの方は上手く聖人と合流出来たらしい……だが、運悪く、いや狙いすましたタイミングでファフニールに乗った邪ンヌが襲来した。ジャンヌさんとゲオルギウス先生の二人は竜殺しにかかった呪いを解くという役目がある以上生き延びなければならない。

そして、まだ避難し切ってないフランスの人達を守る為にマリーさんが残ったのだが……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カルデアの所長さん!?ど、どうして、貴女も残っているのかしら!?早くジャンヌ達と一緒に立香さん達と合流を!?」

 

「う、うるさいわね!私だってどうして残ったのか自分でもわからないわよっ……!別にここでサーヴァントが一人犠牲になった所で何も問題は無いわ…………けど、私は違う……私はカルデアの所長……人理継続保障機関フィニス・カルデアのトップなのよ!」

 

「なら、どうして……?」

 

自分でも支離滅裂な行動を取っている事は所長自身も自覚はしていた。

だが、マリーがフランスの人達を逃がす時間を稼ぐ為に一人で残ると言った時……彼女の脳裏にはあのふざけた登場、ふざけた姿、ふざけた技……それでもそんな自分に「助けてくれてありがとう」と感謝してくれた人達の顔、そしてグダおの宝具で現れた幸せそうに自身の腹を撫でるもう一人のマリーとそれを見つめるこっちのマリーの表情だった。

 

「ふんっ!箱入り王妃様一人であの巨竜と魔女相手に時間稼ぎなんて出来ないでしょ?私達カルデアの目的は人理を救う事……当然その特異点で被害に合っている人を見捨てる選択肢なんてないわっ!!」

 

嘘である。最終的に聖杯を回収し、特異点を修復さえ出来れば、ある程度の過程……犠牲は無視できる。カルデアでコールドスリープ状態になっているマスター候補達は自身の責任問題が関わってくるので全力で命を繋げさせたが……この特異点に関しては自分達は異邦者、余所者でしかない。そこで生きる人達がどうなろうと、帳尻さえ合えば何も問題はない。自分には関係ない、少なくとも最初のオルガマリーならそう考えていた。

 

「所長さん……貴女、足が震えて……」

 

「黙ってなさい!貴女だって人の事とやかく言えないでしょ!アイツ(グダお)の宝具で出て来たもう一人の自分をあんな眩しい物を前にしたような目で羨ましそうに見てた癖に簡単に命放り投げてっ!勝手に親が亡くなって!残された子供がどんな気持ちになるかわかってる!?どんな目に合うか想像出来る!?……あぁ、もう!言われなくてもわかってるわよ!私が今言っている言葉の全てが意味不明だって!貴女達は並行世界の別人だって!」

 

「オルガマリーさん……」

 

「この特異点が修復されたら、元々この特異点の聖杯で召喚されたサーヴァントは皆消えるわ……なら別に貴女の力になる意味なんて無いかもしれない、結果はどうせ同じかもしれない……。それでも、子供を愛せる親が、幸せそうに自分の子供の事を語れる未来の可能性を持った貴女が……!ここで竜に……竜の魔女の炎で焼き尽くされて消える最後なんて、認められるわけないじゃない!」

 

わかっている。勝手に感情移入して、勝手に喚いて、勝手にここに居残っているだけだと、トップとしてあるまじき行為というのはわかっている。

 

……尊敬していた父が亡くなってから、そこから自分の世界はガラリと変わった……不釣り合いな重責を背負わせられる、父の負の遺産が襲い掛かってくる。ただ、そんな過去のせいで親子の生き死に関して敏感になっているだけだ、オルガマリーはそう自分に言い聞かせていた。

 

「初めてだったのよ……あんなに大勢の人達に認めてもらえたのが、褒めてもらえたのが……」

 

そして、マリーの事だけではなかった、彼女がここに残った理由は。

特異点に来て、またこんな破廉恥な姿になった時は心底死にたくなったが、それでも救えた命があった。笑顔で、涙を流しながら、本気の「ありがとう」を言ってもらえた。

”生きている……この特異点にいる人達は生きているのだ”――彼女はそれを本当の意味で理解した。

ここで助けるのは只の自己満足、自分の視界に映っている人達だけを助けようとしているだけのどうしようもない偽善……ここに自分がいてもいなくても何も変わらないかもしれない、マリーだけでフランスの人達が避難出来る時間は案外稼げるかもしれない……それでも所長はここに残る選択肢をとった。

 

(私がこんな似合わない事するなんて……あぁ、きっとグダおのせいね、アイツに可笑しな材料と聖杯で蘇生されたからよ……うん、きっとそう)

 

オルガマリーは葛藤とか自分がこうしている原因とか責任とかを全てあの規格外サーヴァントに押し付けた。すると妙に気が楽になった気がした。

 

(どうせ、私がどんなに喚き散らそうともアイツは気にせず笑いながら受け止めるんだから、何も問題無いわ)

 

あのふざけたサーヴァントの事を思い出した所長の足の震えはいつの間にか止まっていた。

そして、そうこうやり取りをしている内にファフニールに乗った悪しき聖女が現れた。

 

「……あの聖女様は逃げたってわけ、最悪ね。それで残ったのが戦闘の”せ”の字も知らなさそうなお嬢様と変態痴女ってワケ……随分と舐められたものですね……」

 

「ハッ!……散々グダおに裸に剥かれてアヘアヘされて、死に体で竜に乗ってとんずらしたアンタが大物ぶってももう手遅れよ!私達は現在進行形でアンタを舐め切ってるわ!」

 

ジャンヌ・オルタの額に青筋が浮かぶ。少しでも時間を稼ぐ為、避難している人達より自分を注視させる為、所長は挑発を続けた。

 

「……人ならざる力を身に付けて増長しているようですね。あなたの魅了の魔術は雑魚(飛竜)共に効いても悪竜(コイツ)に効果があるとは思えませんが……怖くて逃げたいなら、どうぜご自由に、私は止めませんわ。クスクス……」

 

「逃げたいのは本当はアンタでしょ?私はアンタをメッタメタにしたグダおの宝具で蘇生した元人間よ、私が危険な目にあえば、すぐに察知した彼がすっ飛んでくるわ」

 

「………………ハッタリよ」

 

竜の魔女の言う通りだった。確かに所長は彼の宝具で蘇生されたが何かパスのようなものが繋がっているわけでもないし、サーヴァントよろしく令呪を使って呼び出せるワケも無かった。だって彼のマスターは藤丸立香なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『マズイマズイマズイ!竜の魔女とファフニールだ!彼女達が危ないっ!っていうか何で所長まで残っているんだ!?あの人そんな熱血キャラじゃなかっただろうに!?』

 

「私達も早く行かないと!!」

 

「ですが、先輩ッ……!こちらにもまた敵の群れが!!」

 

「…………」

 

二人の様子は通信で立香達にも伝わっていた。所長とマリーがいる街に駆けつけようにもワイバーン、骸骨兵、ゾンビ……嫌なタイミングで敵が襲い掛かり身動きが取れない。

そんな中、グダお一人は冷静だった。

 

「マシュ、清姫、ジークフリートさん……マスターの事、頼んでもいいかな?」

 

「最初から守るつもりだが、お前はどうするつもりだ?」

 

グダおのマスターである藤丸立香は彼のステータスを確認出来る。そして今の彼のステータスを見て驚愕し、そこで気付いた。グダおには()()()()()があったと。

 

「間に合うの……?」

 

「話が早いマスターは好きだぜ。あの所長が今世紀最大の勇気を振り絞って、おあつらえむきな良いムードを作り出してくれたんだ……実にそげぶのし甲斐がある」

 

「いくらサーヴァントの足でも結構な距離でしてよ……大人の私の旦那様」

 

「大丈夫だ問題ない。今の俺の敏捷はEX、純潔の狩人に正面から求婚出来るレベルさっ……!!」

 

物理法則を無視したレベルとも言える跳躍力を見せたグダおはその場から跳び立ち、走り、駆けて、翔続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「殺りなさい、ファフニール」

 

(……もうこれ以上の時間稼ぎは無理ね。あの竜に食べられて私はおしまいか……。はぁ、結局、私はここに何をしにきたのかしら?ただの自殺志願?)

 

自分が今この瞬間にも殺されそうになっているというのに所長の心はとても穏やかだった。冬木で既に死んでいると告げられて取り乱した者とは同一人物とは思えないぐらいに。

なら何故か?知らぬ間に死への恐怖心に打ち勝つぐらいに自身の心が成長したというのか?

いや、有り得ない……彼女は自嘲するように否定した。そんなにすぐに変われるのならカルデアでももっとうまくやっていた筈だから。

 

(あぁ、そう言えばいたわね。私をおちょくって、構って、認めてくれて、褒めてくれて、そして助けてくれた大馬鹿者が)

 

所長の脳裏に浮かんだのはあの燃え盛る街で生を終える筈だった自分に手を差し伸べてくれた規格外の存在。助け方とかその後の自分の姿については文句をもっと言いたいが、それでも彼女は心から彼に感謝していた。

 

まだ何も出来なかった、何も始められなかった自分を終わらせてくれなかった人。新しい始まりをくれた人。

 

(…………やっと妙に落ち着いている理由がわかったわ)

 

――――ドオオオオンンンッ

 

「何ッ!?」

 

所長とマリー、ジャンヌ・オルタとファフニール……相対する2組のちょうど間に轟音をあげて流星のような何かが飛んできた。

 

(冬木の時みたく彼が助けてくれるって根拠のない確信を抱いてたのね……たったそれだけで前みたくヒステリックに叫ばずに済んだ……)

 

「……良いシリアスだ。感動的だな。そして意味はあった」

 

「あ、あ、あ、あ、アンタはぁっ……!!」

 

その墜落地点に立ち込める煙が晴れると竜の魔女の天敵とも言える存在が、トラウマの象徴が、カルデア所属のクラス不明のサーヴァントがそこにいた。直立不動イケメンのみに許されたハイカラなポーズで不敵に笑っていた。

 

「はぁ……我ながらチョロ過ぎると思うわ」

 

 

イカれた幻想(ブロークン・シリアス)EX』――敵がシリアスであればある程、グダおのステータスは軒並み上がっていくスキル。

そして、ここでいう『敵』の捉え方は彼にとって広義的であり、非常に曖昧である。要するにグダおが「あ、これシリアスだわ。壊さなきゃ」と判断すれば……たとえ原因の元ともいえる敵が目の前にいなくても空気自体がシリアスであれば、もうこのスキルは発動するのである。テラ理不尽。

 

そして、意図せず所長のおかげで最高の舞台(シリアス)が出来上がった今、驚くなかれ、彼の現在の敏捷はEX。たった数秒でここまで辿り着いたまさに『サラマンダーより、ずっと早い!!』状態。

 

 

「ファフニールッッ!!」

 

間髪入れずに竜の魔女が騎乗している悪竜に業火を吐かせる。対グダおに関して、有無を言わさず先制攻撃をするのは案外悪い手ではない。確かに彼に先に攻撃を許してしまえば、大抵は碌な事にならないのだから。

 

だが、『イカれた幻想(ブロークン・シリアス)EX』によって敏捷だけでなく、耐久も上昇しているグダおにとってその炎はあまりに無力だった。

 

「残念だが、生前は邪ンヌにデュヘられたり、きよひーに安珍焼きされたり、茶々お母さんに折檻されたりとか色々あったおかげで炎に関しては結構耐性があってね……。さて、愛しき所長が根性見せたんだ。ここは俺も少しぐらい格好いい所見せないと駄目だよね!『人繋ぎの大秘宝庫(マテリアル・ボックス)』!”君もドラゴンセット”+”名刀薄緑チョコ風味”!」

 

「――――ッッ!?」

 

かつてすまないさんからもらったバレンタインのお返し、その仮装に身を包んだグダおを見た時、ファフニールは本能で察した、あれは……あれは駄目だ……と。

英霊と化してもなお宝具として手元にある鯖達の絆。”君もドラゴンセット”はもはや只のコスプレ衣装ではなく、ジークフリートを彷彿とさせる竜特攻装備へと昇華していた。

 

そして、その手にはとてもじゃないが食べ物とは思えない切れ味を持つぽんぽこりんからのバレンタインチョコレートが。首を狩る事に特化したそのチョコ刀を彼は構えた。

 

「時に竜の魔女よ。一つ、こんなおとぎ話を知っているか、遠い遠いどこかの世界……。ここではないフランスに現れた農民の話を」

 

 

――それは数多の新米マスターの希望となった侍の話。レア度?何それ?おいしいの?彼は物干し竿を片手にふらっとオルレアンに現れた。

 

――フランスの人達からすれば、竜相手では簡単に折れてしまう程に頼りない武器だったかもしれない。彼が手にしていた刀……物干し竿は。

 

――だが、その侍は全ての竜を地に叩き伏せた。切り落とした。「燕よりは楽な相手よ」と笑うように。

 

――そしてその刀は、あのファフニールにまで届いた。悪竜を打ち取った無名の浮浪者を人々は讃えるようにこう呼んだ。『ドラゴンスレイヤー』と……。

 

 

「な、何の話をしてるのよ……っ?」

 

模倣(まねっこ)宝具……」

 

 

――またの名を。

 

 

「『秘剣――悪竜返し』」

 

 

――『レジェンド・サムライ』と。

 

 

「………………は?」

 

竜をすまない特攻装備に、首をぽんぽこりん特攻武器から放たれるその技はまさに「竜殺すべし、慈悲は無い」と言わんばかりの容赦の無さ。

気付けばファフニールの首は斬り落とされていた。断末魔の叫びをあげることすら許されず。静かに、ただ静かに地に横たわり、絶命しているその巨体をジャンヌ・オルタは呆然と眺め続ける事しか出来なかった。

フランスを散々に苦しめた悪竜の最後はまさにアッケナイモノヨだった。

 

 

 

 

そして、そこからの戦いは消化試合。長々と描写する事もない。

 

最大級の戦力を失ったジャンヌ・オルタはその場でグダおの百式官能によって天国にイキ、昇天。ブチ切れたCOOL元帥が海魔の群れを引き連れて、襲い掛かったが合流した藤丸立香達も参戦し、元帥はグダおのチョコ刀によって首をぽんぽこりんされた。中でも一番頑張ったのはオルガマリー所長だった。

『ラブラブ波動オルガマリービーム』で海魔の群れを魅了したおかげで周りへの被害をほとんど無くす事が出来たのだから、なお本人は半泣きになりながら「いやぁ!何かニュルニュルしてるのが迫ってくるぅ!!グダお!早く助けなさいよ!!」と逃げ回っていたが。

 

しかし、フランスの民は……守られた人達は彼女の雄姿をしっかりと見ていた。

 

 

「えぇ……彼女も私達と同じく恐ろしかった筈です。にも関わらず、その身を晒して私達の盾となったのです。あの震えながらも叫ぶ彼女に私達は勇気をもらいました」

 

「情けないと言う奴も中にはいるだろう……だが、恐怖心を持ちながら、そして人間らしく喚きながら戦うあの姿にこそ、俺達は惹かれたと言えるかもしれん。自分達もやれば出来るのではという気にさせてもらったよ」

 

「あの谷間から太ももにかけての絶妙なボディライン。過度な露出から光るように白い肌を流れる汗……ふふ、下品ですが、勃」

 

 

フランスに生きる人達は、彼女の姿を見た人達は、口を揃えてこう言った。

 

――『彼女こそ、救国の性女だ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だから、ジャンヌさんの出番んんんんんん!!」

 

最後はもう、お前と所長が全部持っていっちゃってるじゃない!

黒いもう一人の自分とか!悪堕ちしたかつての戦友とか!ジャンヌさんの因縁がしっかりとあったのにぃ!!彼女もお別れする時は「もしかして、私には露出度とはっちゃけっぷりが足りなかったのでしょうか……?」とか不穏な言葉を口にしながら消えちゃったしさぁ!!

 

「神風魔法少女フラグをここで建ててしまったか……」

 

「頼むから私にわかる言葉で話してくれないかなぁっ!」

 

こうして、第一特異点は二人の露出狂によって救われました。めでたし、めでたし。いや、文字にすると本当ひどいよね。

 

「…………別に私とかいなくても、本当は君一人で何とかなるんじゃないの?」

 

私がそう言うと彼は「何言ってんの?コイツ?」と心底不思議そうな顔になった。うん、なんかムカつく。

 

「俺が好き放題出来るのもマスターがいるからだよ?マスターが何だかんだ文句を言いながらも俺を信用してくれているからサーヴァントとして大暴れ出来る。そして、そのマスターをマシュが守ってくれているから、俺は突き進む事が出来る。マシュはマスターの『盾』で、俺はマスターの『矛』。使い手がそんな寂しそうな顔をしないで下さいな、信じられないかもしれないけど、俺はマスターに相当頼ってるんだよ?」

 

……こいつのズルい所は普段はアレな癖して、こういう時だけ、疑う余地の無い真摯な態度と誠実な言葉をこちらに見せてくれる所。まぁ、さっきはちょっとネガティブ入ってたけど、確かに第一特異点では私とマシュだけで倒したサーヴァントも何人かいたわけだ。特に黒鎧のバーサーカーにはマシュが「この穀つぶしぃ!」と叫びながらシールドアタックを金的に叩き込んでたし、あの戦い方教えたの絶対お前だろ。見てて可哀想になるぐらいフルボッコだったぞ。

 

ともかく、彼も考えなしに好き勝手してたわけじゃない事がわかったからいいとしよう。私達の事を頼ってくれている面があるのも、まぁ……素直に嬉しかったりもする。次の特異点では今回みたくあまり口うるさく言わない方がいいのかもしれないね……?うん、私も少しは彼のノリに合わせられるように歩み寄ってみようかな!

 

私が新たな決意を胸に宿していると、マイルームの扉が開いた。そこには所長の姿が。うん?あれ?確かレイシフトする以外では普通の姿に戻れる筈なのに、なんでまたドスケベプリンセスの格好になっているんだ。

 

「こんな所にいたのね……全く探したわよグダお」

 

「おや、俺に何か御用ですか?」

 

「……ほ、ほら、これから特異点を攻略するにあたって戦いも厳しくなるじゃない?その中で魔力が尽きる危険性とか出るじゃない?なら、こまめにま、ま、()()()()する必要も出てくるでしょ?と、特に私は貴方の宝具で蘇生されたのだがら、関係的には私がサーヴァントで貴方がマスターと言ってもあながち間違いではないし、相性は悪くないと、お、おお思うのよ」

 

「フランスでした()()()()が随分とお気に召したみたいですね、所長。いやはや……外見だけではなく、中身までドスケベになってしまうとは……」

 

「ち、ちちちち違いますぅっ!これは人理を救う為に必要な事だから、私が嫌々義務的にやってるだけよ!し、私情なんて一切交えてないわっ!」

 

「え―――――、嫌々かぁぁ……、どうしようかなぁ―――、オルガマリーの嫌がる事をするのは心が痛むしなぁ―――……それなら違うやり方で魔力供給させた方がいいよなぁ―――……」

 

「え、え、え……う、嘘よね?冗談、冗談だってば、本当は魔力供給云々は建前だったのっ!謝るから、お願い考え直してね…ね…ね?」

 

「ハハ、最初から照れ隠しだってわかってましたよ。いや、涙目ですがりつくオルガマリーも、うん。実にイイ」

 

「……バカ、変態」

 

「申し訳ございません。お詫びに今日はいつもよりたっぷり、じっくりシてあげますから……。というわけでごめん、マスター。ちょっと外せない急用が出来たから席を外すね。話の続きはまた今度ということで!じゃっ!」

 

耳を真っ赤にして俯き、彼の腕を抱き締めたままの所長を連れ添って、グダおは部屋から出て行った。

 

そして、哀れポツンと自身の部屋に取り残された少女がここに一人。

 

「……やっぱアイツ、自害命じた方がいいかなぁ……」

 

 

 

 

 




宝具
『ラブラブ波動オルガマリービーム』
ランク:C
種別:対軍宝具
使用者:オルガマリー・アニムスフィア(ハロウィン・プリンセス)
羞恥心に顔を赤らめて、やけくそ気味に叫びながらする所がミソ。
ハート型の魔力弾を大量にばら撒く。普通のサーヴァントやファフニール級の怪物には効果が薄いが、数が多い雑魚的に関しては効果は抜群。わかりやすく言えば、魅了とタゲ集中。所長の苛めたくなるような可愛さには誰も抗えないのだ。
余談だが所長はグダおにフランスでの野営中に喰われた。




性神と妻達の部屋(アダム&イブズ)
ランク:EX
種別:島国宝具
使用者:グダお
かつて、一人のマスターが多くのサーヴァント達と絆を深める為にあらゆるシチュエーションで彼女達と交じり合うことに利用した物が宝具化したもの。本編で立香が言った言葉で大体合ってる。
今では時間と空間の概念さえ、飛び越えて彼と彼女達の新居となっている。銀の聖杯もどきは新居の鍵のようなもの。彼も隙を見ては帰って家族サービスに精を出している。無人島サイズだが、そこに住んでいる彼女達の強さを考えると国と言ってもあながち間違いではないだろう。さてさて、その島の人口は一体何人なのだろうか……。




『献身幸生三昧』
ランク:EX
種別:対軍宝具
使用者:清姫(割烹着)
愛すべき夫と子供を守る妻の優しき炎。そこにあるのは家族へのあくなき愛である。
自身の敵……厳密に言えば、旦那の敵になるだろうと自分が判断した敵のみが攻撃対象となる。それ以外の者には炎に触れても熱さも痛みも感じない。ちなみに大蛇になった時、娘に泣かれたのでこの宝具を使っても転身はしない。




純潔花嫁真嬢(バートリ・ブライド・エルジェーベド)
ランク:S(宝具にこんなランクは無いが、彼女のアイドル特権で無理矢理このランクに)
種別:対ファン宝具
使用者:エリザベート・バートリー(スーパーアイドル)
もう「ぼえ~~~」という殺人ボイスからは卒業。プロデューサーから白い元気をたっぷりと注がれたエリちゃんの歌は真のアイドルへと進化した。
グダおと実際に式を挙げた城を出現させ、ライブステージにして花嫁イメージのアイドル衣装で歌い踊る。ネロ激オコ。
鮮血魔嬢と違い、破壊力は無いが聞いた物の心を癒す……弱体解除、弱体化無効、ステータスUP、味方を立ち直らせ、奮い立たせるには持ってこいの宝具。サーヴァント界の子持ちアイドルとして今日も彼女は歌い続ける。









勝った!第一特異点オルレアン完!

というわけで何故、続いたしと言われそうなグダお英霊編第2話。
あまり詳しく描写してもあれなので、今回みたく切る所は切ってダイジェスト風味でお送りしようかなーと思います。多分、1つの特異点に付き1話って感じで行くと思うんで。

全7クラスの適正があるグダおは一応宝具も7つあります。残りは使う時がくるのかな――……。今回の特異点に関しては実は『百式官能』はジャンヌ・オルタにしか使っていません。あまりヤり過ぎて、立香とマシュの成長の機会を奪ってもあれなので、これでも…………こ れ で も一応は自重している方です。タブン…………。




まるで所長がメインヒロインみたいだ……。






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皇帝オブザアイドル(第2章)

お気に入り5555記念で投稿しようと思ったら、何かいつの間にか数字が増えてたので……お気に入り5561記念ということでグダお英霊編インザ第二特異点編を投稿。
いつも感想、評価、お気に入り、誤字報告、ありがとローマ。



前回の特異点よりは真面目ですよ。当然じゃないですか。








余の歌を聴けぇ~~~~!!」

 

――ロォォォォォオオオオオオマァァァァアアアアアア!!!

――ネロォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!

 

大地……いや、この特異点そのものを揺らしているのではと錯覚する程の歓声、歓喜、熱量。

私の隣ではネロがステージを楽しそうに飛び跳ねている……その一挙一動にローマに生きる全ての民が声を張り上げる。

地面が見えない程の多くの人間が一つとなって何かに夢中になっている光景を私達が作り出しているというプレッシャーと嬉しさがエネルギーとなる。

 

「凄いです!先輩は、今の先輩は皇帝陛下に勝るとも劣らない輝きを見せています!私の中ではナンバーワン推しドルです!!」

 

 

拝啓、お父様、お母様。

私、藤丸立香はマスターを辞めてアイドルになりました。

 

 

……………

 

 

どうしてこうなったっ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふははは!見るがいい!人がローマのようだ!!」

 

「皇帝陛下!言っている意味がまるでわかりません!」

 

西暦60年、かつて全ての道はローマに通ずと言わしめる程の大繁栄を築いたローマ帝国に私達はレイシフトした。

そこで出会ったのは赤い男装?で闘う金髪の少女……帝政ローマ第5代皇帝、ネロ・クラウディウス・カエサル・アウグストゥス・ゲルマニクス。暴君と呼ばれた彼女は、私達が抱いていたイメージと違い、咲き誇るように破顔しながら、自身の国を誇っていた。

 

この地にやって来てすぐ、多勢に無勢だった所を救ってくれたとして、ネロさんは私達を信用し、首都ローマへと招客してくれた。まぁ、この間みたくウチのグダおも海パン一丁じゃなくて、黒スーツ姿というまともな格好なので警戒される事はないだろうけども(所長はいつもの如く、ドスケベコスチューム。そろそろ見慣れてきた)。「あはは!2段階目の霊基再臨でも衣装を変えるこのサービス精神に震えてくれてもいいんだぜマスター!」とか楽しそうに叫んでいたが……。そしてその姿を見ていたマシュは「すみません、すみません。一度も霊基再臨出来ない駄目な後輩ですみません……」ってヘコんでいたし……。

ダ・ヴィンチちゃんも「ほう、”これが女同士の友情より、結局は男を取るのね……”的な奴かい」とか人聞きの悪い事言うの止めてくれないかなぁ!私だってマシュを育てたいよ!再臨させたいよ!けど、必要な素材がまるでわからないんだもん!!

その後、グダおが次の特異点を修復したら、再臨出来るよとか妙に確信めいた事言うからマシュも元気を取り戻してくれたから、いいけどさぁ……。

 

 

『……ネロ陛下に襲いかかっていた連合ローマ帝国なる軍団、もしさっきのカリギュラのような歴代のローマ皇帝が敵側に召喚されているならこちらにとっては非常に不利な展開になるね……特に数的な面でも……』

 

「いやいや、案外そうでもないよ。ドクター」

 

戦力差に対して現実的な見解を述べるロマンの言葉に、グダおは異を唱えた。

 

「何か良い策でもあるわけ?」

 

「おぉ!そちらの黒き拳闘士殿は軍師の役も担えるのか?」

 

所長の問い掛けにモチのロンとVサインをする黒スーツ。

黒き拳闘士……今のアイツの格好と連合ローマ兵との闘いを振り返れば、その名前もある意味ピッタリなのか?一応は素手で戦ってたし。

ただ、片足立ちで滑るように移動するとか。胡坐をかいて、左右に腕を振り下ろして衝撃波を飛ばすみたいな変態機動はどうかと思ったが、取り敢えずアイツがまともな武術家ではないという事はよくわかった。

 

ネロさんがいう軍師役っていうのもあながち間違いではないのかなー?

策自体のアレっぷりから目を瞑れば、『今です!』って絶妙なタイミングで何か仕出かしてくれるわけで……まぁ、私はこんな孔明はごめんだが。

 

 

「ネロちゃまには信じ難い所かもしれないが、敵の軍勢を率いている首領が歴代のローマ皇帝である事は事実。ならばその軍勢も一つのローマである事は認めなければいけない、たとえ歪んでいたとしてもね」

 

「むむぅっ」

 

「だが、敵がローマであり、その上で味方にネロちゃまがいる現状は幸運だったかもしれない。この戦いを手っ取り早く終わらせる策が実行出来るのだから」

 

バッとどこから出したのか白い扇を拡げて、グダ男はニヤリと笑った。いやホント胡散臭い孔明だなコイツ。

 

 

「ネロちゃまは可愛いよね?」

 

――は?

 

「うむ!至極当然の事実であるが、あえて言葉にする拳闘士殿は殊勝であるな!」

 

喜んでいるネロさん以外はその台詞にクエスチョンマークだった。

ん?なんだ?もしかしてここに来て、ネロさんを口説きに来てるのかな?所長よろしく喰ってやろうという魂胆なのかな?私の自害令呪が光輝く時が来たのかな?

 

「さてと、マスターの目の光が失ってきてるのでさっさと本題に入るとしようか。カモン!マイアイドル!」

 

そう言った彼は前回の特異点で見せた、銀の杯を取り出し、上に投げ、指をパチンと鳴らした。

 

 

 

「終わりの無いアンコールサンキュー!大喝采を浴びてアタシは声高に叫ぶわ!”何度も出て来ても恥ずかしくないのよ!!”ってね!」

 

赤白のストライプ模様に黒いリボンがついたシルクハットを被り、帽子と同じ柄のフランスの時とはまた一味違ったアイドルコスチュームを身に纏ったスーパーアイドルエリちゃんが登場した。

 

「歌は世界を救える……。この特異点に必要なのは救世主でもヒーローでもないわ、アイドルッッ!そう!貴女達はアイドルになるのよ!!」

 

…………はい?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つまり、敵はローマ兵=ローマの華であるネロ厨、もしくはその可能性を秘めている。

 

→ならば、そんなネロがローマの地でアイドルをやれば、敵はその可愛さにイチコロになり武器を放り投げて、アイドル団扇を片手に戦闘を放棄するに違いない。

 

→この戦い我々の勝利だ。

 

ということらしい。どういうことなの……?

 

「……むぅ、確かに余の美しさはローマの果てまで届き得る物を持っているという点は否定せぬが、さすがにそれが戦いを終わらせる程の物と言われれば……」

 

「このバカッ!!」

 

「あぁん!?」

 

エリちゃんの尻尾ビンタでネロさんが少女漫画チックに頬を抑えながら倒れた!?しかも何か薔薇まで舞ってるし!なんだこのエフェクト!?

 

「アタシの最大のライバルはそんな弱気な事は言わないわ!!貴女なら、『ローマに余の歌を聞かせるのはいいが――別に大陸の向こう、海の先まで余の美声を轟かせてしまっても構わんのだろう?』ぐらい言う筈よ!アタシ達の世界にいたネロはそれはもう凄かったんだから、アタシはマスターの手(意味深)を借りて音痴を直したけど……ネロったら、殺人的な音痴はそのままでサバコン1位を何週も取り続けるとかあったのよ。あんな『しゅぱっ、どーん!』みたいな歌で人気をもぎ取っていたのは複雑でしかなかったけどね!!」

 

「ネロちゃまはエリちゃんと違う路線で行こうと思ってね。猟奇的な音痴という名の砲台も正しい照準に導けばアラ不思議、ミリオンセラーもちょちいのちょいだったよ。むしろ『あの音痴っぷり』が逆に良いって中毒者が出る程に」

 

「そ、そうか……。余とした事が劣勢に次ぐ劣勢で少々気が滅入っていたのかもしれぬな。うむ、突然現れた余好みの派手な少女に拳闘士殿……そなた達が余を大きく買ってくれている気持ちは良く分かった。ならば皇帝として、その期待に応えなくてはならぬなっ!なってやろうではないか!『アイドル』とやらに!」

 

立ち上がったネロ様が意気軒昂に宣言する。どうやら彼女の耳は「音痴」という部分は聞こえない都合の良い作りをしているようだった。

 

しかし、歌で敵を降服させるか……いや、フランスで聞いたエリちゃんの歌を聴いた私達にとっては荒唐無稽な話にも思えない。案外イケルのかな?ただ、一つ気になるのが……。

 

「確か、さっき()()()って言ったよね?」

 

私の疑問にエリちゃんはネロさん……そして、()()()()へと指を指していった。……って私ぃ!?

 

「いやいやいや!!私はアイドルなんて無理だから!しかもそんな大勢の前でなんて!!そもそも平凡な私を入れるならマシュの方を入れるべきでしょ!!」

 

「残念だけど、マシュマロには熱狂的過ぎるファンからアイドルをガードする重要な役目を持ってもらうつもりだったから、今回は外れてもらったわ。アイドルのステージだって戦場と負けないぐらいに危険に満ちているんだから」

 

「”行き過ぎたお触りは禁止です!”って先輩をしっかりと警護する役目ですね!このマシュマ……じゃなくてマシュ・キリエライトしっかりとボディーガードの任を果たさせて頂きます!!」

 

「そもそも、マスターは自己評価が低すぎる。君の外見は平凡という枠では収まらないぞ?こう、心根の美しさと強さが滲み出てるような……」

 

あぁ―――――!!うるさいうるさい!!

 

『おぉ、立香ちゃんの顔が真っ赤っか』

 

ダ・ヴィンチちゃんうるさい!!

 

「私はもう、察してたわよ。また大勢の前で見世物になるって」

 

散々、フランスでグダおのおもちゃとなった所長は悟った顔をしていた。慣れって悲しい……。

 

「魔法少女も、戦隊ヒーローもスタンダードは5人。アイドルだってそこは変わらないわ。貴女達3人に私達プロアイドル『カルデレラガールズ』からもう一人、まぁ、今回の主役はネロ。食い過ぎないようにする良い塩梅だと思うわ」

 

どうやらグダおの宝具で登場するもう一人で本当にアイドルユニットを組むらしい。

通信越しに入る、ロマンの『ようし皆、録画に団扇にサイリウムの準備は出来ているね!まさかまた特異点でアイドルライブを見る事になるとは思わなかったけど……これは楽しくなってきたぞぅ!』の声が腹立たしい。他人事だと思ってぇ……!

 

「さて、と。アタシ達の方からは……ネロはこっちと被ってややこしくなるし却下。毒ロリ女帝も我が強いので却下。あのヒッキーはそもそもアタシが呼びかけても出てくるわけないし……最初っから選択肢は一つしか無かったわね。っていうかなんでアイツ、アタシと一緒に出てこないのよ」

 

 

 

「……そんな鬱陶しいハイテンションの貴女と一緒に登場なんて御免と思っているからに決まっているでしょ」

 

そうぼやいたエリちゃんの背後から露出度が高めの紅いビキニアーマーを纏った白髪の女性が現れた。

 

「随分な言い草ね。アタシ(カーミラ)

 

カーミラ!?

 

『カーミラってあのカーミラかい?フランスで立香君達と戦った悪の女幹部的なおっかないサーヴァント!?』

 

ロマンの驚く気持ちは良くわかる。確かに私達が戦った彼女とは違い仮面を外しているし、随分と雰囲気が変わっている。所長にも負けないエロチックな鎧を着ている彼女もアイドルなのかぁ……。グダおの世界のアイドルは随分と様変わりしているんだなぁ……。

 

「別世界とはいえ、世界を救う旅なら勇者の服を着ても問題は無いでしょう。それと今の私の名前はアイドル魔王勇者カミランよ……間違えないように。貴女と違って私は仕事とプライベートは分けるのだから」

 

「まぁ、この娘達には確かにアンタの宝具が必要ね。ならさっさとやっちゃってちょうだい」

 

「何故、私が貴女の言う事を聞く必要があるのかしら?確かに同じ仕事仲間ではあるけれど、上下関係は無いわよ」

 

「カミランお願いしてもいいかな?」

 

「ふ、プロデューサー(マスター)の頼みなら仕方ないわね……」

 

「うわ、めんどくさコイツ」

 

エリちゃんの冷たい視線を無視するようにグダおの頼みを受けた魔王勇者カミランさんは剣を下に突き立て、宝具を解放していく。

 

「少女達の幻想は……夢は……時計の針が過ぎても解ける事は無いわ。その歩みを止めない限り……魔法の輝きはいつだってこの箱に……『幻想の衣装箱(シンデレラ・メイデン)』!!」

 

かつて私達に見せた処女の生き血を吸う恐ろしい宝具とは正反対のイメージを抱かせる白いシンデレラ衣装を着た神々しい像がカミランの隣に現れた。

どこまでも眩しい輝きを放ちながら、その像は開いていた。その輝きは童話のシンデレラの姿を変身させた魔女の魔法を彷彿させる程に。

 

「アイドルにはまず、それぞれのキャラクターを固定させる衣装が必須。コスチュームが適当なアイドルなんてアイドルにあらずよ。そういうわけで、私の宝具で貴女達に最適なアイドル衣装を纏わせるからさっさと入りなさい」

 

確かにカーミラの宝具と魔王勇者カミランの宝具は全然雰囲気も違うが、それでも同一人物という事あってか、あの棘々しい鉄処女を思い出し、私の足は進みだすのを躊躇してしまった。

そんな事は露知らないネロさんは興味深そうに進んでいく。

 

「ほうほう!何とも奇妙な魔術を使うのだな異邦の旅人達は……。うむ、造りはわからぬがその魔術が余に衣装を献上するというのなら断る理由はなかろう!この輝きは余好みでもあるしな!」

 

「あ、待って下さい皇帝陛下!」

 

マシュの制止も虚しく、足取り軽やかに宝具の中へと入っていった。

扉は閉まり、輝きはさらに強さを増していく。私達の目が開けられない程に。

やがて、その光が収まった私達の目に映ったのは再び開いた像から出てきたネロさんの姿――――。

 

「お、おぉっ……おぉぉぉ!!」

 

ネロさんの頭と背中からはそれぞれ天使のような羽。彼女のイメージ色でもある赤いマント……そして手、足、肩、そこを防護するように白銀の鎧が付いているのはいいのだが……良いのだが……肝心の他の部分が全然守られていない!

本当に鎧部分が申し訳程度過ぎて、露出度が凄い事になっているんだけども!!胸とかアソコを隠している部分が本当にマズイ所だけは隠しますよってレベルの面積!!

 

当人の皇帝陛下は感激しているようだけれども!!

 

「あぁ、駄目ですってば、ネロさん!マント捲っちゃ!お尻……!お尻が見えちゃいます!!」

 

所長のドスケベコスに見慣れていた私達ですら顔を赤らめてしまうぐらいにアレな格好。本当にあれが最適なアイドル衣装なのか?

 

「まさに、ネロ・ヴィーナスって所かな」

 

「ヴィーナス……女神…………良い、良い……実に良い響きだ。心から感謝しよう……異邦の勇者殿、拳闘士殿。今まで数多の衣服を贈られた余だったが、ここまで余を震わせてくれる御衣は生まれて初めてかもしれぬ」

 

ツゥーと涙を流し、感謝の言葉を口に出すネロ様。彼女の琴線にはこれでもかってぐらいに触れたらしい……異国の文化って遠いネ。

 

「じゃあ、マスターも入ろうか」

 

「ちょ、ちょっと待って!?アレに入ったら私もネロさんみたいな格好になるんでしょ!まだ嫁入り前なのにあの姿でアイドルやるのは無理無理無理無理無理だって!」

 

「大丈夫大丈夫、痛いのは最初だけ。すぐに気持ち良くなるから」

 

「ヤメロ――!ハナセ――!」

 

グダおに背中をグイグイ押される私は先程とは別の理由でカミランさんの宝具に入るのを全身で拒否していた。

しかし、悲しいかな。サーヴァントの筋力に勝てる筈もなく、私は白像の中へと放り込まれた。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「可愛いですよ!先輩!」

 

『見た目的にはなんだか孫悟空っぽいね』

 

よかった……。割とまともな衣装で本当に良かった。

脇の露出とか、スカートの短さとか、なんで中華っぽい服なのかとか、気になる点もあるけど……もう色々と疲れたのでいいです。

無言で私の姿をカメラで連射しているグダおにも、「後でその写真いただけませんか?」ってねだっているマシュにも突っ込む気力はないです。

 

「ともあれ、準備は整ったわ。アイドルの卵から孵ったばかりのヒヨコ達!悠長にしている時間は無いわよ。アタシとカミラン、そしてプロデューサーの手で貴女達を一流アイドルへと育てあげるわ!」

 

「……あ、あれ私は?」

 

「所長のハロウィンプリンセス姿は大事なアイデンティティ。それを捨てるなんてとんでもない。ありのままの君が一番美しい」

 

「コレを個性にしたつもりはないわよ!!」

 

「そうね。プロデューサーの宝具で変化した貴女を私の宝具で変身させられるかどうか保障はないわけだし……。ただ、彼が自らの宝具を使ってまで貴女の体を作ったという点を考えると少し……いえ大分羨ましいわね。それだけ貴女はプロデューサーに気にかけられているアイドルという事になるのだから」

 

「ふ、ふ――ん、まぁ、そういう事なら、仕方ないわ、ね……え、えへへ」

 

所長ェ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ステージ自体はエリちゃんの宝具ですぐ作れるからいいとして、その事前準備及び特訓には人手が必要という事で今まで各地で戦っていた客将を呼び戻し、私達はガリア近くの遠征地へと集結した。

ライブをする為に。

 

……もう一度言おうライブをする為にだ。

 

ブリタニアの女王ブーディカさんはネロさんの姿を見て、絶句していたし。アサシンのサーヴァント荊軻さんは爆笑していた。

 

「■■■■■■■■■――!!!」(意訳:うぉおおおおおお!!貂蝉―――!!!)

 

「ひぃっ!何!?何でこのバーサーカーこんな興奮してるの!?」

 

「どうやら所長が貂蝉に見えるみたいですね。さすがはバーサーカー、性格はどう考えても似ても似つかないというのに、いや……露出度に関して言えば似てなくもないかな?よっ!所長ってば傾国の美女!!」

 

「嬉しくないぃっ!」

 

 

 

 

 

「おぉ、素晴らしい!!私には感じる!君の魂に刻まれた叛逆者としての勇気が!!熱意が!!誇りがっ!!これまで、君がどれだけの圧政者に抗ってきたのか、言葉にせずともわかる!!ハハハハハハハッッ!!まさしく僥倖!これ程の戦士と共に愛を高らかに叫べるとはっ!!」

 

「アイッドル!!」

「愛ッ!ドル!!」

 

「叛逆者?」

 

「一夫多妻って法律(圧政者)に真っ正面から喧嘩売ってるって事じゃないかしら?」

 

「なるほど」

 

呆れた私と所長の視線の先には互いに拳をぶつけ合い、笑い合うマッスルと黒スーツ。その衝撃波で味方の兵士が吹き飛んでいる。

ウチのサーヴァントってやっぱりクラス:バーサーカーなんじゃ……。

 

 

呂布とスパルタクスといったバーサーカー組の手綱?も何とか握れそうなので一応は一安心。

何だかんだで皆、このふざけた案を受け入れてくれるようだったし。これもネロさんの人望かあるいはグダおのスキル『かりちゅま:A』のおかげか。ただ、もう私としてはマジでこの特異点でアイドルになるんだなぁ……って逃げ場を失っていく感じなのだが。

しかし、人理を救う為には私の羞恥心なんて安い。世界を救う為に私達は早速アイドルの特訓を開始した。うん……自分で言っててもまるで意味がわからないわ。

 

 

こうして私達、『新生カルデレラガールズ』は――――。

 

 

 

 

「違う!ネロちゃま、もっとこう、可愛さと美しさと気高さとアホっぽさを織り交ぜた感じで歌うんだ!!」

 

「難しい事を注文するな拳闘士殿は!!」

 

「今はプロデューサーと呼べぃ!!」

 

――厳しい練習に耐え。

 

 

 

 

「はい!そこの連続フリックが遅れているわよ子ジカ!!MASTERクラスをフルコン出来ないようじゃ、スーパーアイドルなんて夢のまた夢よ!」

 

「何で私音ゲーしてるの!?」

 

――挫けそうになる心を奮い立たせて。

 

 

 

 

「いいかしら?貴女は今の自分の格好に恥ずかしさを覚えているかもしれないけれど、その羞恥心はアイドルにとって大きな武器になるわ。赤面、照れ顔、ギャップ……これを上手く使えば、一流アイドルも簡単よ。さぁ、私に続きなさい。『カミラン星からやって来たアイドル魔王勇者カミラン〇じゅうはっさいですっ!!キャハッ☆彡』」

 

「…………か、カルデアからやってきたアイドルプリンセスオルガマリーじゅ、じゅうはっさいですぅっ!きゃ、きゃ、はっ……うぅ、うぅ~~~~~~……」

 

「そう!その今にも死にそうな羞恥心の極みを忘れないようにするのよ!!」

 

――アイドルとしての階段を一歩ずつ登っていき。

 

 

 

 

「悩み事か、リッカよ……」

 

「ネロさん……」

 

「ネロでよい。今や余達は同じ夢に向かって歩む仲間(アイドル)であろう?上下関係は無い筈だ」

 

(そんな姿で黄昏られても目のやり場に困ります……)

 

――友情を育み、ライブ当日を迎えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

歌が聴こえる。

 

エリザベートが今回のライブ用に改良したローマの首都を彷彿とさせる、赤と金が混ざった城をバックに巨大なステージが荒野に出来上がっていた。

 

「我らが舞いを見よ!万雷の歌唱を聞け!インペリウムの誉れをここに!」

 

メインボーカルである、ネロヴィーナスを中心に5人のアイドルが歌い続けていた。

 

エリザベート・バートリー、アイドル魔王勇者カミラン、藤丸立香、オルガマリー・アニムスフィア。

宝具の力か、それともアイドルとして特訓された5人の力によるものか、その歌はローマ全土へと響き渡っていた。

 

「これは……」

「陛下の声だ……なんとお美しい……」

「一体、どこから?」

「あっちから聴こえるぞ!行ってみよう!!」

 

各地にいるローマ市民、ネロの下で戦っていた兵士達の耳にもその不思議な歌声は届いていた。彼等は今が戦争中だという事も忘れて、歌の方へと走り出した。

もっと、もっと、もっと近くへと。そして、その影響を受けているのは味方だけではない。

 

 

 

 

 

 

「――おぉ、聴こえる。我が愛しき姪の――歌声が。狂気に囚われた余を救い出してくれるのか――。……今は、今は……ささやかでもいい、この心地良い宝に浸らせてくれ……」

 

バーサーカーとしての、あるいは月の女神からの寵愛による狂気は鳴りを潜めたのか。その瞳にかつての名君としての光を取り戻したカリギュラは妹の子がいるライブ会場へと足を進めていった。

 

 

 

 

 

 

「伝令!カリギュラ陛下とその兵士達が武器を下ろし、ガリア近く敵軍の遠征地へと向かっています!」

 

「だろうな。あの様な歌声を聞かされては奴も正気に戻ざるを得ないだろう。お前達も本当は今すぐにでも向かいたいのだろう?我らが愛しき子の晴れ舞台へと」

 

「で、ですが……」

 

「良い。確かに私はささやかながら聖杯に託す願いもあったが、ここまで美しき声をローマ全土へと響かされてしまえば、剣を下ろすしかあるまい。ふはは、まさかこの私が扇動されるとはな!見たい!もっと聴きたい!ならば後は向かうだけよ!!」

 

「報告!ネロ陛下を始めとした歌い手達の商物が近くで販売されていると!既に何点かは売り切れも出ている模様です!!」

 

「何ぃ!!なんと商売上手な事か!私にも一枚と言わず、三枚程噛ませるがいい!!」

 

そのふくよかな巨体からは想像出来ない程の軽やかなスピードで連合ローマ帝国の皇帝の一人であるカエサルも歩を進めた。そして――。

 

 

 

 

 

 

「ネロよ……愛しき子よ。お前の(ローマ)は全てのローマを包み込むか……。ならば(ローマ)も駆けつけよう。お前の(ローマ)はローマのどこへいようとも聴こえてくる……あぁ、だが(ローマ)は新しきローマをこの瞳に焼き付けなくてはならない」

 

「待て!神祖ロムルス!!貴様、一体どこへ行くつもりだ!!」

 

「ネロと共に舞う娘達よ……お前達もまさしくローマなのだ……」

 

「ええい!姿を消すな!!何故だ!?何故、マスターたる私の言う事を聞かぬっ!?」

 

混乱する緑色の紳士服の男を置いて、建国王ロムルスは皇帝特権EXで身を消した。何処へ向かったのかは言うまでもないだろう。

 

 

 

 

 

「ありゃりゃ、見事に兵士達はあの歌に誘われるようにいなくなっちゃったね先生」

 

「……成程な、敵のほぼ全てがローマ兵で構成されている故に実行出来る奇策と言えるか…………いや、悪いが私はこれを奇策とすら認められんぞ。世界の命運が掛かっている戦いでこんな案を考え、実行した奴はよほど狂っているとしか思えん」

 

「どうしよっかね。さすがにこの状態で戦争を吹っ掛ける程、僕も恥知らずじゃないしね。うん。僕達もあのライブ会場とやらに向かおうか」

 

「お前がそうしたいのならば、私は従うだけだ」

 

「先生に法被を着て、ほら……何だっけ?あのオタ芸とかやって欲しいな」

 

「死んでもやらんぞ」

 

ローマ皇帝ではない、かの幼き征服王も。それに従う軍師も。もはや戦意はなく、宴の地へと。

 

 

 

 

 

 

「ふむ、不思議な事もあるものですな。歌声が聴こえてから、あの男との契約が切れ、只の野良サーヴァントに近い状態になるとは……。私にとっては歓迎すべき事ですが」

 

「レオニダス王、歌声の発端である舞台前で、筋骨隆々の大男二人が何とも力強い舞いを魅せていますが如何いたしますか?」

 

「我らも混ざるに決まっているでしょう!!」

 

このローマの地には闘うべき敵はほぼ完全に消え去った。あるのは今を生きるローマ一のアイドル達が歌い踊る姿を一目見ようと集まるファンの群れだけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くぅび~しめ~た~、お獅子のおくび~♪」

「たっちあが~れ、コロッセオ~♪ガシャン♪ガシャン♪」

 

音程も、歌詞も酷いとしか言いようがないのに、誰もがその歌声に酔いしれていた。夢中になっていた。

ネロの声そのもの美しさが、ヴィーナスとしての姿が、そして傍らでサポートするように共に歌い踊っている四人のアイドル達によってその酷さがむしろ魅力の一つとなっているように。

 

 

 

「はいはい、押さない。押さないっ!順番を守らない奴は私の戦車で轢き回すからね!」

 

「ネロ法被三つに、ネロ鉢巻も三つ、マルス式3色サイリウムと立香ちゃんブロマイドね。毎度アリ!!」

 

黒スーツのサーヴァントと赤髪の勝利の女王はグッズ売り場にて殺到するローマ兵達を捌いていた。

彼曰く、プロデューサーの仕事はライブが始まるまでであり、そこからはもうアイドルのみの領域。自分が出る幕は無いと。彼女達の歌と姿が聴こえる所にさえいれればいいらしい。

それはそれとしてQPはいくらあっても困る事はないので商魂逞しく稼いでいたのだが。

 

「……なんか、ごめんねブーディカさん。わざわざ手伝ってもらっちゃって」

 

「んー?全然良いよ。私も暇してたし…………それともこの私に気使っちゃってる?」

 

「それもある」

 

「全く、子供が変な気回さなくていいの。どんな方法であれ、流される血が少なく済むならそれに越した事はないの。確かに大勢のローマ兵が目の前で歓喜している姿を見せ付けられているのは私も思う所が無いわけでもないよ。そういう血濡れた復讐に狂った私は確かにいるんだろうね。けど、今の私はこれ。守る為に戦ってきたんだから、ライダーのブーディカはこれでいいの」

 

「サーヴァントは全盛期で召喚されるから見た目的にはあれだけど、俺ももう子供って年じゃないんだけどね」

 

「私からすれば、全然子供だよ君は。だっ~て、こんなにも構ってあげたくなる顔してるんだから、よーしよしこの頑張り屋さんめ!」

 

親戚のお姉さんようにグダおの頭をがっちりホールドしたブーディカはその髪を撫で回した。

世界が変わってもこのお母さんのバブみは変わらないようだ。抗えないこの母性、この顔を包み込むおっぱいの柔らかさはブリテン一ィィィとグダおは叫びたくなる。

 

 

「ふむ、逢瀬を邪魔して非常にすまなく思っているが、やはり目の前の客をスルーされるのは些か堪えるぞ」

 

「おっとごめんなさいね、で……どれをお買い上げだい?……うわっ、すっごいお腹。っていうか逢瀬じゃないからね」

 

胸に埋まるようにグダおの頭を抱いていたブーディカは離れて、店先に立っていた男の容貌に驚く。

 

「カエサルじゃないですか」

 

「ほう、私の事を知っているか名も知らぬ黒きサーヴァントよ。まぁいい、ネロ人形なる者がここで販売していると聞いたが……」

 

「あー、ネロちゃまのフィギュアならさっき完売したよ。法被と鉢巻とサイリウムセットならあるけど」

 

「いくら我が愛しき愛しき子顔が写っているからとはいえ、この美男子たる私にその様な物を……」

 

「けど、ほら」

 

「む?」

 

グダおが指を指した先、多くの観客を掻き分けるように視線を向けると、ステージの最前列の席で彼が先程売りつけようとした物をフル装備し、熱狂している男の姿が。

 

「ウォオオオオオオオオオ!!ネロ!ネロ!ネロ!ネロ!ネロ!ネロ!我が妹の子よ、お前の在り様は芸術の神ミューズよりも!月の女神ディアーナよりも!美しいぃいいい!!ネロォオオオオオオオオオオ!!」

 

「…………思いのほか似合っているな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「愛ッ!愛ッ!愛ッ!愛ッ!愛ッ!愛ッ!愛ッ!愛ッ!愛ッ!愛ッ!ハハハハハハ!!まさしく歓喜である!圧政に抗い、凱歌を叫ぶ同士達がこれ程いようとはっ!さぁ、我らと共に愛を叫ぶ時は今である!我が筋肉も嘶いているぞぉ!!愛ッドルッ!愛ッドルッ!愛ッドルッ!愛ッドルッ!愛ッドルッ!愛ッドルッ!愛ッドルッ!」

 

「■■■、■■■■、■■■■、■■■■■■■■――!!!」(意訳:貂蝉ッ!貂蝉ッ!貂蝉ッ!貂蝉ッ!貂蝉ッ!)

 

「これが漢太(オタ)芸というものですかぁぁっ!……それにぃっ!ふんぬぃいいいい!なんという益荒男達ぃ!ですが、私の計算し尽された筋肉も負けてはいませんぞぉぉっ!!テェルモピュライィィッッ!!! エノモォォォタイアァァァアアアアッッ!!!」

 

何という暑苦しさ。上半身を曝け出した3人の大男達が自慢の筋肉を晒し出しながらサイリウムを振り回し、一糸乱れぬ舞いを魅せていた。2人のバーサーカーに、バーサーカーっぽいランサー。言葉は通じずとも3人はわかり合っていた…………筋肉で。

それに追従するように周りのローマ兵も法被を着て、渾身の漢太芸を披露していた。舞台にいるアイドル達に想いを届けようと。

筋肉、筋肉、筋肉、筋肉…………とてもむさ苦しいです……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぉっ!見ろよ!あの空を飛んでいるネロ陛下の神々しさ!!我らが皇帝陛下は天使いや……女神だったのか!!」

 

「確かに陛下の美しさは素晴らしい。だが私は黒き翼で陛下と共に空を翔けているエリちゃんなる少女の歌声に注目したい。陛下とはまた違ったベクトルでの歌声、まさに翼の色と同じく正反対……それでありながらハモリの部分は別格のシンフォニーを奏でている。彼女もまさしくローマであると」

 

「良い着眼点をしているな兄弟。だが上ばっかりに気を取られて下が疎かになるのは減点だ。俺はあのアイドル魔王勇者カミラン様のむっちむちな鎧にギリギリセーフかと見せかけてやっぱり、ちょっとアウトな感じに興奮している。正直に言おう。踏まれたいと」

 

「それを言うなら、恥ずかしさで震えながらも踊り続けているあのオルガマリーというアイドルという娘の健気さにも注目してやるべきだ!俺はさっき、オルガマリーちゃんのブロマイドをコンプしてきた!!見ろ!この『SSR:涙目ガクブルオルガマリーちゃん』を!!」

 

「青い、青い。どいつもこいつも見た目の派手さだけに惑わされおって、儂はリッカちゃんというアイドルを推すぞ。ネロ陛下の可愛さが天高くどこまでも舞い上がっているのは認めよう。だが、高嶺の花よりも足元の蒲公英。あの孫娘にしたくなる純真さに何故、誰も気づかぬ」

 

「……そうだな、俺もあの娘の見えそうで見えないスカートの裾が気になって仕方なかったんだ。この気持ちは正しくローマなんだな」

 

「あぁ、ローマだとも」

 

「うん、すごいローマだ」

 

「ローマ……」

 

 

多くの兵士達がネロに魅了されていたのは事実。

だが、惹かれていたのはネロにだけではない。

『プロデュース:A+』のスキルを持つグダお……そしてかつて彼の手によって名実共にサーヴァント界のプロアイドルとなったエリザベートとカーミラ、この3人に特訓された藤丸立香とオルガマリーも常識では計り知れないアイドル力を手に入れた。

ローマに生きる兵士達が、民達が、皇帝たちが……ネロ以外の4人のアイドルにもローマを感じていた。

眼が離せない、耳から入るこの歌声が自分達を高揚させ、癒し、萌えさせ、歓喜させる。

これ程までにローマなアイドル達を前に、どうして武器を取れようか。戦えようか。血を流す事が出来ようか。

我らの手は彼女達を支え、応援する為にあるのだ。振るうは剣でも槍でもない。このアイドル達の顔が映った団扇と光る棒である。

我らの声は戦争の鬨の声をあげる為ではない、彼女達の名を叫び、応援する為にあるのだ。

もはや、ここに存在するローマの人間達は誰一人として戦争を望まず、ただアイドルの歌声に導かれるままにこのステージへと集結した。

 

 

その結果、残るのは自身の力だと何一つ疑っていなかった戦力を見事に引き剥がされた哀れな道化だけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一体何が起きている!?何故、召喚者たる私の制御が効かない!我が魔術の拘束が解ける!?」

 

連合首都にて一人ぼっちとなったレフ・ライノールは混乱していた。

自分が召喚したサーヴァントだけでない、そのサーヴァントに従っていたローマの者共が誰一人として自身の言う事を聞かず、あの歌が聴こえる方へと歩み出してしまったのだから。

 

「あの鬱陶しい雑音が聞こえてから、奴らの様子がおかしくなった!!」

 

今もなお自身の神経を逆撫でさせる音が、腹立たしくてしょうがない。そんな怒りの中、レフの頭にふと思い浮かんだのが冬木の特異点で有無を言わさず襲いかかってきたあの黒髪のサーヴァント。

 

「やつか……?不敬にもこの私に傷を負わせたあのバーサーカーめがこのふざけた状況を作り出したのか……!?」

 

グダおの正しいクラスはバーサーカーではないのだが、ただ……あんな素材寄越せ!と叫びながら一心不乱に自身の(素材)を削り取りに来るサーヴァントを見れば誰だってバーサーカーだと思うだろう。

 

「…………ふん、それがどうした。全てを見据える我が王はあの黒髪の英霊については何もおっしゃらなかった……。ならば奴の事は口に出す必要もない些事だということだろう!!クハハ、クハハハハハハッ!むしろ目障りな有象無象が一つに纏まったのはむしろ好都合だ。まとめて掃除出来るのだからな!!」

 

この世界を狂わせている要因でもある聖杯を手にレフは新たな英霊を召喚しようとする。

レフにはアイドルがわからぬ。けれども自身を虚仮にするものには人一倍敏感であった。その様な物は何一つとして塵すら残さない怒りを込めて、召喚の術式を行おうとしたのだが……。

 

 

 

それを阻む暗殺者がいた。

 

 

 

「全く、あのプロデューサーとかいうサーヴァントめ……まさかこの私にこんな美味しい役目をくれるとは気が利き過ぎているぞ」

 

「ガァッ……!?」

 

「実に刺し甲斐のある背中だ……『不還匕首(ただ、あやめるのみ)』」

 

どこかの弟子にぶっ刺される優雅のような顔芸を炸裂させたレフは自身が宝具によって刺された事を理解した。

暗殺者……荊軻の気配遮断Bがあるとはいえ、宝具をくらうまで一切存在に気付かなかったのはネロ達の歌による効果も大きいかもしれない。

 

「この糞サーヴァントがあぁぁぁっ!!」

 

腐っても魔神柱の一角、サーヴァントの宝具を直撃させても、その身を滅ぼすには届かない。

だが荊軻の優先順位は元々、その男の手にある聖杯を奪う事。宝具と化した匕首を無防備に受けたレフ・ライノールから杯をかっぱらうのはそこまで難しい事ではなかった。

まぁ、一緒に暗殺も出来れば言う事なしだったのは彼女も思っていただろうが。

 

「始皇帝如きすら、殺せなかった貴様が私を暗殺出来ると思ったかっ!!よほど、生前の焼き直しをしたいようだなぁぁ!!」

 

「ふむ、それを言われると耳が痛いな」

 

激昂し、襲いかかるレフ・ライノール。元々、真っ正面から戦うタイプではない荊軻が魔神柱と1対1で勝てる可能性はほぼ皆無。

だが、それでも白装束の暗殺者は笑っていた。その笑顔は始皇帝の暗殺を失敗し、その臣下に捕らえられた時の悟ったような笑いではなかった。

 

 

「だが御生憎、()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

―――へいよーあるてらっくす

 

 

「は?」

 

空から巨人が降ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは凄まじいな……」

 

白と青が混ざり合った肌、ある意味裸にも見えてしまう体には特徴的な紋様が浮かんでいる。

頭から兎のような耳を生やし、全長100m近くにも及ぶ光の巨人はその手でレフ・ライノールを押しつぶしていた。

その有無を言わさない破壊の権化に聖杯を手にしたまま荊軻は驚愕の溜息を出すしか無かった。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()的な場所で。

 

「真打ちは最後に登場する……新生カルデレラガールズ幻の六人目。動かない働かないネット配信系引きこもりアイドルアルテラちゃんここに健全だ」

 

確かに荊軻もこれには驚くしかないだろう。なにせ巻き込まれない為に避難したとはいえ、神秘的な巨人の首の後ろ側に扉があって、そこから入ったら6畳の一人部屋の真ん中でジンジャエール、スナック菓子フル装備でコントローラーを握り締めている褐色白Tシャツの少女の姿があったのだから。

 

「ググッ、ガゥァッ……きさま……!まさか、『セファール』か!?ば、馬鹿なありえん!!何故だ!!、何故貴様がこのタイミングで現れる!!?」

 

「ふむ、さすがは200万回殺され続けただけの事はある。ゴキブリ並の生命力だな……。そして並行世界の遠い私の話をされてもマジ困惑。さらに言えば、私が乗っているこのモビルスーツも『セファール』などではなく『帰ってきたアルテラマン――文明が静止する日』というイカした名前がある。私の実働時間は3分だと知れ」

 

自らの体を圧迫しているアルテラマンの腕を押しのけるように醜悪な肉柱……魔神柱としての真の姿を現したレフ・ライノール。だが、彼の頭には疑問符しか無かった。何故、ヴェルバーの尖兵がここに来て、この星の為に戦うのか?

まぁ、前提条件からして色々と間違っているのだが。

まさか彼も目の前の巨人がGCコントローラーで動いているとは夢にも思っていないだろう。

 

「ロボットは男のロマンであり文明。……私は女の子だがそれはそれとしてだ。私は考えたのだよ。どうすれば引きこもったまま外の世界で好き放題出来るかを。その夢の果てに出来上がったのが、この私の自室を頭部内に再現した移動方巨人要塞アルテラマン。マイスイートルームにいたまま、我がハズバンド()の為にも戦えるというハイスペックロボット……私を褒めにやってきたマスターとコックピット内でギシアンしても外に漏れ出る事はない完全防音。ただ、声だけスピーカーで外部に漏らして、羞恥プレイも良い文明だがな」

 

レフは目の前の異星人が何を言っているのか一切理解出来なかった。ただ、一つだけ本能で理解していたのがこのままでは確実にヤバイという生物としての恐怖。

 

そして、その本能は正しい。おちゃらけていても、残念になっていても、色ボケしていても目の前にいるのは超級サーヴァント。彼はそれを身を持って知る事となる。

 

「おっと、そうこうしている内に後30秒で3分経ってしまうな……ではさっさと手短に終わらせるとしよう。サービス残業は悪い文明だからな」

 

「……ま、待てっ!待ってくれ!!」

 

口を大きく開けた巨人――アルテラマンの中心部分に光の球が収束していく。

余りにも大きい魔力の奔流にレフ……魔神柱フラウロスは戦う事すら忘れて必死で制止の言葉を吐き出すが、そんなもので彼女が止まる筈がない。

そもそも彼女を止められるのは遠い向こう側でアイドルグッズを嬉々として売りつけているあの黒スーツのサーヴァントしかいないわけであり。その時点でもうこの魔神柱の運命は決まっていた。

 

 

 

「『魔神柱総辞職ビーム』」

 

「ゲェァッ――――――――――………!!!」

 

アルテラマンの口から放出されたそれは竜の咆哮のように、吐き出された火炎のように……だが破壊力だけは次元の違う光の筋となって蠢く肉柱へ迫り、モニター越しに見て頂いて荊軻が目を開けてられない程の眩しさとエネルギーの大爆発を引き起こした。

 

魔神柱フラウロスはこの特異点から肉片の一つすら残さず消え去った。

 

かくして、ネロを始めとするアイドル達がライブ活動をしている間に聖杯は回収され、特異点を乱していた大本は打破されたのだった。

 

「またつまらぬ文明を破壊してしまった……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うむ!余達の独壇場だったな!独! 壇! 場! だった! なっ!」

 

「当然よ!アタシ達が手ずから鍛えてあげたんですもの、これぐらいの超絶大反響は無くっちゃね!!」

 

「喉が渇いたわ。プロデューサー(マスター)、私はドリンク()を所望よ……さぁ、首を出して頂戴」

 

「おいコラ、アイドルはプライベートと仕事を分けるんじゃなかったかしら」

 

アンコールに何度も応え、最後の曲を終えた私達はライブで火照った体を控室という名のテントで休ませていた。

ガードマンには呂布とスパルタクス、そしていつの間にか混じっていたレオニダスさん。マッスル達が熱狂的なファンがここまで押し寄せてこないように外で警護にあたってくれていた。

 

「ねぇねぇ、グダお。あんなに大勢の人達が私の名前を呼んで応援してくれたのよ!!凄いわよね?私凄い事したのよね!?」

 

「えぇ、所長の素晴らしさはきっとローマ全土あらゆる人に届いたと思います。胸を張って誇って下さい」

 

「先輩、先輩!後輩の務めとして先輩のブロマイドちゃんとコンプリートさせて頂きました!見て下さい!この『SSR:髪ゴムを咥えながら髪を結い上げるリッカちゃん』の輝きを!!」

 

「…………あぁ、うん。良かったねマシュ」

 

疲れた……滅茶苦茶疲れた。

興奮した様子でリッカちゃんプロマイドを見せてくれるマシュを宥めながら、私はぐったりしていた。

 

確かに慣れないアイドル活動とはいえ、色々と楽しかった。けど終わった後の疲労感は凄まじい……一種の燃え尽き症候群だろうか。

 

 

「お疲れ様マスター。最高に輝いていたよ」

 

ただ、まぁ、こうして褒められるのは悪くない。

グダおから渡されたコップを受け取る。あっ、首元に噛まれた後が……結局カミランさんに吸わせてあげたのね……。後ろで「次、アタシ!アタシ!労わって!!」ってすんごいアピールしているエリちゃんがいますが……。

 

それに、このコップやけに重いというか……金色で眩しいというか……。

 

「っ!?せ、先輩それ聖杯です!?」

 

WHY!どうして!?何故!?

 

『おー、今までライブに夢中で気付かなかったけど。喜びたまえ、立香君達、その特異点の人理定礎は見事に修復さているよ』

 

ダ・ヴィンチちゃんの通信が私達をさらなる驚愕へと叩き込んだ。

え!人理修復?この特異点もうクリア!?いや、アイドル特訓は凄まじく大変だったから楽だったわけじゃないけど!

マジでこのライブで世界を救っちゃったわけ!?

 

「可憐な歌姫達によって万能の願望機が天から降り、世界は救われた……。ふふ、実に()()のある話ではないか……」

 

盃を傾け、酒で喉を潤している荊軻姐さんは意味深に笑っていた。

 

 

「そう浪漫(ローマ)である」

 

「神祖!?」

 

さらにさらに突如として現れるバーサーカー組にも劣らない筋肉を持った大男が現れた。Yのポーズで……もうさっきから何なんですかね!仰天の波状攻撃でお腹がいっぱいなんですけど!

 

「ネロよ。当代の皇帝よ……お前の(ローマ)、しかと感じさせてもらった」

 

一般人の私でも感じるカリスマ力を持ったその男は周り(グダお以外)が驚愕しているのも一切気にせず、言葉を発していた。

 

「そうか……連合ローマ帝国を名乗っていた軍勢と戦っていた時から予感はしていたが……まさか貴方様が」

 

「よい。お前のライブ(ローマ)は我らのローマを下したのだ。血も流さずにな……それはとてつもなく浪漫(ローマ)ある決着だ。誇るがいいネロよ。お前は真のアイドル(ローマ)としてこのローマに生きる全てに根を下ろしたのだ……我が大樹(ローマ)のように」

 

「も、勿体無きお言葉です……」

 

あのネロがここまで畏まっている所を見る当たり、物凄い英霊なのだろう。

ローマ、ローマ、言ってて話の半分も理解出来ないが。

 

「そして、ネロを含める娘達をここまで導いた獣を宿し者よ……」

 

手を下ろし、Yの字ポーズを止めた神祖と呼ばれた男の視線は私のサーヴァントグダおに向けられる。

獣?確かにあんだけ奥さんがいるのなら性的に獣かもしれないけど。

 

「その獣は世界を滅ぼし得るものではなく……。少なくともお前はその選択肢を取らなかったのだろう。獣でありながら救いの声に応えた者よ。その矛盾した在り方、実にローマである」

 

「ローマ……」

 

だからローマってなんだよ!?お前(グダお)もわかったような感じで相槌打ってるんじゃない!

 

「カルデアのマスターよ……そこの男を手放さぬようにな。たとえ、お前の理から大きく外れていたとしても、その在り方は決して悪ではない」

 

まぁ、確かにグダおを召喚してからいくら聖晶石を使っても概念礼装しか出てこないし、マスターの私に初っ端からどエロい夢を見させてくるし、第一特異点では竜の魔女をセクハラして消滅させるし、奥さんをたくさん召喚してくるし、所長を喰うし…………言われなくても怪しさとヤバさしかないサーヴァントだが……。

 

「うん。元からそのつもりだよ。だって私が召喚したサーヴァントだもん。なら何があっても、どんな無茶振りされようとも、彼がどれだけ埒外な英霊だったとしても……私がちゃんと最後まで面倒みます!!私が拾ってきたようなものだし!!サーヴァントとマスターってそういうもんでしょ?」

 

悪ではないというのは首を傾げるけどね!少なくとも女にとっては悪だよ、コイツは!!お前だよ!「やだ……ウチのマスター、イケメン過ぎ……!」って乙女ポーズしているお前のことだよ!!

 

「うむ、実に良き返事(ローマ)だ……」

 

あなたもとりあえず、ローマって言っておけばいいと思ってません?

 

さらばだ(ローマ)!!」

 

あっ!消えやがった!!

って私達も消えかけてる!?

 

『目的が果たされた以上はそうなるよ……僕としても親交を深めている君達アイドルの仲を裂くような最後にしてしまって申し訳なく思ってるけどね……。もういっそ残りの特異点もこんな感じで修復したらいいんじゃないかな?』

 

「うるさい、三十路ドルオタ(ロマン)

 

『辛辣ぅ』

 

ローマにおける私達の人理修復の旅(アイドル活動)が終わる。最初っから最後まで慌ただしい毎日でしかなかったけど、それでも楽しかった。

ネロの「余は……!余はお前達を忘れぬからな!!絶対に、お前達のいるカルデアとやらまで、ローマ一、いや……世界一のアイドルたる余の歌声を響かせてやるからな!……泣いておらん!!こんなコトで、泣くはずがっ……あるものか!!アイドルに似合うのは泣き顔ではなく……笑顔!!そうであろう!!プロデューサー!!」と涙目でありながらどこまでも見惚れてしまう笑顔にグダおは負けないぐらいの力強さでサムズアップしていた。

 

なんだろう……本当にローマの歴史は正しく修復されたのだろうか?大丈夫だよね?私達が戻ったら、ローマ帝国がドルオタ帝国とかになってないよね!?歴史の教科書にネロがヴィーナス化した写真とか出てこないよね!?本当に大丈夫だよね!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《某形ある島》

 

「誰も来ないわね……」

 

「ぬぉ――、暇であるぅ!『怠惰心、キャットを殺す』という名言を知らぬのか!?」

 

「途轍もなくもったいない感じで出遅れた気がするわ、アタシ!!」

 

 

 

 




ジャンヌ「何だか私より格段に出番多くありません?こちとら前回の特異点で殆ど台詞が無かったんですが」

ネロ「至高の名器である余の出番が多いのはわかりきっていただろう?時代は聖女より皇帝!!」

ジャンヌ「未だに本編の方で登場する気配が微塵も無いくせに……(ボソッ」

ネロ「それを言ったら戦争だろうがぁ、貴様!余だって、余だって!きっとバビロンの妖婦にも負けないぐらいのドエロエロな話が来る筈だもん!!」

ジャンヌ「貴女がそれを言ったらシャレにならないので止めましょうね」








グダおスキル
『プロデュースA+』:英雄作成の亜種的な奴。アイドルを積極的にスカウトし、育てる技術。
彼が実際に初めて手にかけた原初ともいえる5人のアイドル……マシュ、清姫、エリちゃん、カミラン、アルテラちゃん。その5人をサーヴァント界におけるトップアイドルとして育て上げた実績故に保有しているスキル。今話のようにネロ対ローマとなると相性が良すぎてそれはもうファンがじゃんじゃんばり湧いてくる。
余談だが。初代カルデレラガールズのメンバーの内マシュと清姫は子供が出来ると同時に引退。その後釜を埋める為に赤き薔薇皇帝と幼き拷問皇帝が新メンバーとして参戦。グダお曰く、ティンと来たらしい。

グダお「プロデューサーの素質?……担当したアイドルを全てお手付きにする事ですかねぇ……」
立香「んなわけねぇだろ」




宝具
幻想の衣装箱(シンデレラ・メイデン)
ランク:A
種別:対人宝具
使用者:カーミラ(アイドル魔王勇者)
夢は夢で終われない。かつて少女達に恐怖を与えたとされる拷問器具は少女達に夢を与える宝具へと昇華した。
その者がこれから臨むライブに一番似合う衣装を装備させる。今回着たネロちゃまの衣装はエクステラ参照、立香の方は概念礼装『英雄風采 三英傑』参照。
この宝具を使えば、簡単に誰でもアイドルになれるわけでは決してない……だが、厳しいレッスンを乗り越えれば、纏ったドレスは君達アイドルの想いに必ず応えてくれる。その魔法の効果の程はグダおの『プロデュースA+』のスキルと合わされば、今話の通り。さすがカミランさんじゅうはっさいだぜ。
実はステータスの方も上昇効果がある。昨今のアイドルは戦闘力も求められるからね、仕方ないね。




『帰ってきたアルテラマン――文明が静止する日』
ランク:EX
種別:対文明宝具
使用者:アルテラちゃん(アグレッシブ引きこもり)
帰ってくれアルテラマン(切実)。
並行世界の電波を受け取ったアルテラちゃんの不思議力とマスターのギャグ力とエレナのマハトマ力とライトニングテスラとエジソン博士の電流力とダ・ヴィンチちゃんの万能力とメルトのモデラー力とかが色々と備わり最強に見える宝具。ぱっと見セファールにしか見えないけどね!けどGCコントローラーで動くからロボ初心者にも安心だぞ!
だが、どんなにふざけた名前でも実際宝具としてのスペックはマジでヤバい。最後にレフを焼き尽くしたビームも出力を抑えている。本気を出したら、口からだけではなく、目、背中、指、おっぱい、あらゆる所からビームが出る。ロボというか怪獣。大陸ぐらいはその気になれば消し飛ばせると思う。原作で真っ二つになっていた方がマシだったねレフ君。











しっかりと原作準拠の第二特異点。やっぱり人理修復の旅は真面目にしなきゃ駄目ですよ。


呂布が所長を貂蝉と見間違えたのはそこまで深い理由はありません。EXTRAではラニが貂蝉に似てるとかいう話だったのにEXTELLAではラニちゃん陳宮にそっくりやし。多分、えっちい衣装着てるし、今の所長と似たような格好してるんじゃないですかね。バーサーカーだし、すぐ見間違えちゃうんでしょうよ。え?グダおが貂蝉と面識ありそうな発言をしていた?…………さぁ?


ダレイオスくん三世はアレキくんがやる気になる前に大体片がついてしまったので連鎖召喚されなかったって事でよしなに。


あ、それとガチャで引いていないキャラは出ないという話でしたが、それはあくまで本編(エロ)の方の話。こっち(特別編)では書かないとは言っていない。むしろ、ここでネロちゃんを書いた事でタイムパラドクスと因果律云々で本編(エロ)の方にも書けるんじゃないですか?あらゆる運命は全てここに収束するぅっ!!



この世界における立香ちゃんのサーヴァントはマシュとグダおだけということにしました。まぁ、ストーリーでも色んな鯖が力を貸してくれますし、ある意味これも原作準拠でしょう(どこが?)
つまり、このグダお英霊編における立香ちゃんはチュートリアル10連ガチャで何故か星5クラスv@ersの性人を引いてしまい(他は全て概念礼装)、そしてこれからのガチャも概念礼装しか出てこないという呪いを受け、パーティーメンバーはマシュとグダおとサポートメンバー(後所長)しか使えないというハードモードor縛りプレイなんだよ!!







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気だるき特異点をイかせイきるだけ(第3章)

累計ランキングが遂に4位になりました。これも皆様の応援のおかげで御座います。何度も言いますが、閲覧、お気に入り、感想、評価いつも更新の燃料材料になっています。誤字報告も助かっております。
読専時代から読んでいた方達のランキングに混ざってるのはマジでガクブルなんですけどね。
まぁ、ランキング的はそろそろ、ここいらが限界かなと思ってたりします。正直な話、連載した始めはここまで来るとは思ってなかったんで、やっぱり継続って力なんすねって思います。どんなに更新が遅くなっても連載停止はしない。それが私のジャスティス。よおし、おいちゃん次の目標は100話投稿目指しちゃうぞぉ――――(白目)。








4位記念ってわけじゃないけど、何故か続いている英霊編第4話。
いくら、特別編と言ってもあまりネタを詰め込み過ぎるのもどうかと思うんだ。人理を救う旅だぜ?もっと真面目にシリアスにやるべきだと思って今回は自重しました。





 ――おいでよ、カルデア島

 

  そんな文字が書かれた適当極まりない木製の看板が刺さっているある海岸。

  だが驚くことなかれ、看板は雑でも、その島には多くの人間が生きていく為に必要な全てが揃っていた。

  学校等の教育施設。映画館、ゲームセンター、なんとかざぶーん等の娯楽施設。バーガーショップ、牛丼屋から三ツ星の高級レストランまで幅広いジャンルの飲食店。闘技場、野球場、サッカー場、畑、牧場、温泉施設……道路、鉄道、上下水道、発電施設、ダム、通信施設等のインフラ……そして寝床として西洋風の巨大な城から和風でありながら、どこかモダンでもある大豪邸。

 

  衣食住に加えて娯楽と教育。島というよりはまるで一つの国と思えるぐらいにそこにはあらゆるものが充実していた。

 

  藤丸立香とカルデアが現在戦っている世界に当然このような島があるはずもなく、そもそも彼女達の星がある宇宙に存在するかすらも怪しい。

  そんな時間と次元を飛び越えたどこかの外宇宙の星の一つにカルデア島――すなわちグダおが『性神と妻達の部屋(アダム&イブズ)』という宝具でも使用しているマイホームと呼ぶべき場所があった。

 

 

 

 

「ははうえー!ただいまー!」

「かあちゃんー!ただいまー!」

 

  カルデア島のグダおと奥さん達の住居の一つ、和モダンで2ケタに届く大家族が住んでいても余裕がある程の大きさを持つ集合住宅。その住宅の中庭で学校から帰ってきたのかそこには二人の子供が駆けていた。

 

  金髪の少年、黒髪の後ろを短めに束ねた少女。誰かさん達の面影を残す齢二桁にも満たない二人の子供は家の縁側で座っている母親と思われる女性の胸に飛び込む。

 

「おーう、おかえり! 今日も元気いっぱいだなお前ら!」

 

  赤いジャケットに白いチューブトップ、そしてショートのデニムパンツといった姿のヤンママことモードレッドは自身の子供達を抱き留め、頭をくしゃくしゃに撫でまわす。

  格好はともかく、その表情はもう一人前の母の顔であった。

 

「僕は、やがいじゅぎょうでワイバーンを倒してきたよ!」

「う――んと、う―――んと、オレは給食でご飯を5はいおかわりしたぜ!」

 

  嬉しそうに学校であった事を報告する子供達、そんな二人と戯れながらモードレッドの表情はこれ以上ないぐらいに緩んでいた。普通の家族を、親からの愛を、知らない自分が母親になるなんて最初は不安でもあったが……いざなってみると、あぁ、こんなにも心が暖かくなってしまうものなのかと。

  それはあの純潔の狩人が全ての子供達に祝福をなんて願いを持つわけだと納得してしまうほどに。

 

  まぁ、自分はアイツほど拗らせるつもりもないがと考えていたモードレッドの隣に噂をすれば何とやら……黒髪の獣耳の赤子を抱えたアタランテが隣に腰を下ろした。

 

「はぅわ~~~~~~…………これであるっ、吾が求めていた幸せとはっ……! 駄目だ……幸せ過ぎて駄目になってしまう……! ぐすっ……」

 

「アタランテのおかあさん泣いてる」

「また泣いてるー」

 

「……はぁ……この島に来てからどんだけ経ったと思ってんだ。毎日そんな感動して疲れねぇか?」

 

「戯け! こんな幸福過ぎる日常が毎日あるからこそ、その幸せをこうやって噛み締めているのだ! ありがたみが薄れぬようになっ!! これでも抑えている方なのだぞ!!」

 

  モードレッドファミリーにそう興奮気味に返答するアタランテ。しかも腕の中で抱えている子供には振動も自分の声のボリュームも届かないようしながら、なおかつ気持ち良く眠れるようにあやすという徹底ぶり。

 

「そうですね……安寧とした日常を当たり前としてただ享受するのではなく、日々感謝をして過ごすというのはとても良い心掛けだと思います」

 

「あ、第一特異点でマスターからお呼び出しがなかった奴だ」

 

「おそらく、もう出番がない可能性大の聖女ではないか。急に吾らの話に入ってきおって、この寂しがり屋さんめ」

 

「わ、私はいいんですっ!身持ちになった状態でマスターの元に駆け付けても、彼に迷惑でしょう?……それに激しい運動でお腹の子に何かあったらそれこそ死んでも死にきれませんから」

 

  少しだけ不貞腐れたように頬を膨らませているのはいつもの三つ編みを解き、白いエプロンドレスに身を包んだジャンヌ・ダルク。そして、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 かつて監獄塔の復讐者が「女というには心身ともに堅すぎる」と評していたが、現在の彼女には鋼鉄の聖女という雰囲気は無く……どこまでも柔らかく、女をそして母を感じさせるような……まるで聖母の如く自身の腹を撫でていた。

 

  マリーのようにちょっと顔を出すぐらいはしても良かったかもしれないが、それをするとオルタやサンタリリィ果てには魔法少女と化した自分まで間違いなくついてくるので自分はここで大人しくしてて正解だったとジャンヌは考えていた……。

 

 ――私の姿を見たフランスにいる別の世界の『私』に”かつて不思議空間で自身が魔法少女と化したもう一人の自分と相対した時”と同じような気持ちにさせるのも忍びないとも。

 

(まぁ、私はアレ程残念でも色ボケでもないですけど…………あっ、今、いまっ!お腹の中で動きました!くぅっ、まだ生まれてもいないのにこのちょっとした動作だけでも愛おしさが止まりません!……あぁ、早く名前を決めなきゃとは思っていますが……未だにしっくりと来るのがぁ……むむむっ、こんな事ならもっと文字の練習をしておくべきでした。やっぱり、私の国とマスターの国の字をうまく掛け合わせた名が……!識字力の重要性!)

 

「うむ、お腹にいる子を案じるその意気、天晴だ。吾は既に二人産み、今はまだ懐妊しておらぬから、次の特異点にお呼ばれ出来るな。聖女よ、汝の分までマスターの隣で奮闘してやろうではないか。その間は生まれて間もないこの子はブーディカに預けるとしよう……奴なら私も安心して赴く事が出来」

 

「あっ、第三特異点は貴女の出番が無いって『啓示』で出ました」

 

「………………………………嘘であろう?」

 

「マジです」

 

「グハッ」

 

  アタランテはなんだかんだで長い付き合いであるジャンヌの顔が嘘を言っていないとわかってしまった。

  そもそもこの聖女は冗談はともかく、こういう場面で虚偽の発言はしないと。

 

「アタランテのおかあさん真っ白になってるねー」

「燃え尽きたぜ……ってやつ?」

 

「お前ら、あんまり言ってやるな」

 

  自分はおそらく、ロンドンで出番があるだろうと踏んでいるモードレッドは二人の愛子達を抱き締めながら余裕を見せていた。

  耳がへたれ、尻尾がふにゃっとなっているアタランテを見て、ジャンヌは言わなかった方が良かったかな……と少し後悔していた。そんな状態でも我が子を撫でる手に一切の翳りがないのはさすがアタランテと言うべきか。それとも我が子のスキンシップで回復を図ろうとしているのか。

  そんな平和なママ友の会に新たなママさんがエントリー。

 

「みんな、何してるの――?」

 

「何もしてねーよ。ただ駄弁ってるだけだ。お前こそ、何してんだ。どっか出かけんのか?」

 

  かつては短めだった白髪を腰まで伸ばした幼き殺人鬼ジャック・ザ・リッパーもいまでは立派な一児……いや、六児の母。

  いつもの露出過多の服装にエプロンをかけている格好なので正面から見れば裸エプロンにしか見えないのだが、もうこの島にいる人達は皆そんなジャックの姿にも慣れてしまっている。

 

「うんとね、うんとね……おかあさんが帰ってきたら、ハンバーグご馳走しようと思って、買い物しにいくの」

 

「おめぇもお母さんだろ」

 

「お母さんのお母さん、ジャックの子達からしたら、マスターはおばあちゃんという事になるのでしょうか」

 

「まるで意味がわからねぇな」

 

  ほんのりだが、ジャックの体つきも少し女性らしさが出てきている。身長は相変わらずだが、胸の微かな膨らみ、腰のくびれ、黒いパンツが食い込んでいるお尻……かつてサーヴァントとして駆けていた頃よりも本当にわずかなレベルだが、肉々しい肢体になっていた。少女が女と孵化を遂げるような刹那の瞬間にこそエロスを感じずにはいられないとあのマスターなら言うかもしれない。

 

「おかあさんとわたしたちの子達で散歩しながら、商店街にいくの。みんな色々とサービスしてくれるんだよ」

 

  顔を綻ばせているジャックはその小さな体に不似合いな大型のベビーカーを押し進めていた。

 ベビーカーの中にはなんとジャックそっくりの白髪六つ子の赤ん坊が寝息を立てて並んでいる。このロリな躰で一度に6人も産んだのだから、驚くしかない。そしてそんなロリを6人産ませる程、孕ませたマスターはやっぱり逮捕されるべきである。

  まぁ、残念な事に彼を御用する法律がこの国にはないわけだが。

 

「買い物か、いつ出発する?吾も同行する」

 

「「アタラ院」」

 

「復活がはえぇなお前も、つか、おいお前らそのノリどこで教わった」

 

「「お父さん」」

 

「……アイツは」

 

  我が子達にしょうもない事を吹き込む、夫に頭を悩ませるモードレッド。

  自身の子の温もり&六つ子リトルジャックの登場に子供成分を十分補給し、リカバリーしたアタランテ。

 

  まぁ、アタランテにとっては慈しむべき子供であるジャックが子供を産み、母親になっているという一般的な倫理観からすればアウト確定な光景も子供がたくさん、家族がたくさん、幸せ倍プッシュなシーンにしか見えないのだから、もうこの元純潔の狩人も既に手遅れ感しかない。

 

「しかし、商店街が出来るぐらいにはこの島、いえ、もはや国というべきですか……経済が回るようになったんですね」

 

「最初はマスターと()()()()しかいなかったからな……それでも結構な人数だったけどよ」

 

「かつての無人島のように施設は作ったはいいもののそれを回す程の人口もいなかったわけだしな」

 

「けど、今はたくさんだよね!」

 

「また別世界に出張したマスターが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「あぁ……平気で犯罪行為を行うマスターを妻として説教するべきなのでしょうか……ですが彼等達の未来を考えればここに来て、職業選択の自由を与えたのは決して悪くない未来で……」

 

「つーか、お前らがそれぞれの特異点でお呼ばれされなかったのは、その聖杯戦争で色々とやらかしたからじゃねぇのか?」

 

「なっ!?……アタランテはともかく、私はそこまででは無かったでしょう!!」

 

「吾の姿っ、行いにっ、一片の恥なしっ!」

 

  彼女達もモードレッドの言う通り、やらかしてはいたが……一番やらかしたのは間違いなくマスター。しかも、立香達がいるカルデアで召喚された時のようにサーヴァントとして乞われ、召喚されたというよりは自らの意思で顕現した形に近いので普段よりさらに自重しないやべぇクラスで出てきたわけで…………後はもう、ね。わかるでしょ?

 

「あっれー、皆集まって何してんの―?」

 

「うー?ママとものかい……?」

 

  和やか?に談笑を楽しんでいる4人のママさん達に桃髪の二人の女性が中庭へいつの間にか入り込んでいた。厳密に言えば片方は女性ではないが。

 

 着てんのYシャツしか無くない?という彼シャツルックスで見る者をもう性別とかどうでもいいフォと思わせる魅力を振りまく、「性別:アストルフォ」こと、アストルフォ。

 

 水着verになって少し喋れて、あざとさを身につけた包帯コスチュームというパパ志望の男達が大歓喜しそうな姿のフランケンシュタインことフラン。

 

「全く!なんて格好をしているんですか。まさかそんな服装で外を歩いてきたのですか?ふ、やはり、PINKはINRANですね!」

 

「う――……ぴんくはいんらん、わたしもいんらん……?けど、いんらんの方がマスターもよろこぶ?」

 

「アイツの話は真に受けんな。あの女モドキ相手だとテンションおかしくなんだよあの聖女」

 

「むぅ――これ見よがしにボテ腹を見せつけている聖女様に、淫乱どうとか言われる筋合い無いんですけどー」

 

「ふふふ、羨ましいですか?羨ましいでしょう!これが性別という高くそびえ立つ壁!子を宿せるかどうかという決定的で絶望的な差異!男の貴方ではマスターと家族は作れないんですよ!!」

 

「いやぁ――……けど、マスターならボクのことも……」

 

「マスターだからなぁ……」

 

「家族が増えるのは良い事だ」

 

「かいにんする?」

 

「あ――、じんぞうにんげんのわたしもうめたし、わりとよゆう」

 

「やめてください!私も自分で言っておいて自信が無くなりました!」

 

 ジャンヌが即座に自身の言葉を撤回せざるを得ない状況。自分の夫が色んな意味で規格外なのを身をもって知っているからだろう。

 確かに、性別不明のデオンが既に二人産んでいたり、何だかんだで女体化し元に戻らないままこの島まで付いてきた花の魔術師もいるわけで……女より可愛らしい男であるアストルフォがおめでたしても別段驚くような事ではないのでは?(麻痺)

 

「そういや、話変わるけど。お前らがこっち側の家に来るのは珍しいよな。いつもは冷房完備の城の方に入り浸ってる癖によ……」

 

 モードレッドの言葉にポンと「あ、そうそう!」と手を叩いてアストルフォは自分がマイホームでもある城から和風住宅の方に顔を出した理由を思い出した。

 

「さっき、メディア・リリィが『私は待つだけの女ではありません!自ら向かえばいいのです!召喚割り込みなんのその!伊達にキャスタークラスじゃありません!なんでこの事にもっと早く気付かなかったのでしょう!?いま会いに行きます!マスターッ!』って杖持って城から飛び出して行ったからさ…………」

 

「目がわりとさいこぱすってた……」

 

「あ、『啓示』で」

 

「そのスキルが無くても嫌な予感しかしねぇってわかるわ」

 

「その手があったか」

 

 魔術を嗜む純朴で純粋で純真で可憐な少女メディアは一体どこへ行ったというのか…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【たまにいくならこんな特異点   ゲームセンターBBX】

 

 

 

「はい、へいよーかるでらっくす。私は大海原拡がる特異点、封鎖終局四海オケアノスに来ております。おハガキの方も頂いていますよ。PN.王の話し過ぎっ娘ちゃんから……『グダおエグゼクティブディレクターこんにちは!』――こんにちは。『いつも、楽しく番組拝見させて頂いております。モニター越しじゃなくて、千里眼越しで』――ありがとうございます。『【たまにいくならこんな特異点】も今回で4回目となり、エグゼクティブディレクターのマスターのツッコミスキルもそろそろ洗練され始めた頃だと思います。これからも、彼女がエグゼクティブディレクターによって右往左往している姿を生暖かく見守らせて頂きます。ps.花の魔術師というか花を散らされた魔術師でもあるので、そろそろ本格的に一人称を「ボク」にしてボクっ娘デビューをしてもよいとおも」

 

  星の開拓者、世界一周を成し遂げた海賊ドレイク船長。小悪魔女神エウリュアレ。その傍らにいる大きくてモフモフしている牛くんアステリオス。スイーツ神様アルテミス。そんな神様に頭を悩ませている純潔の狩人アタランテ。どう足掻いても尊敬する気が微塵も起きないダビデ王。あと、喋るぬいぐるみオリオン。

 

  4つ目の特異点。海賊が跋扈する摩訶不思議な海域。この地に元から存在した聖杯を所有していたドレイク船長と共に私達は大冒険をし、多くの仲間と荒れ狂う航海を乗り越えた。

 そして、私達が回収すべき聖杯を持つ、黒髭エドワード・ティーチ……その船団と海のど真ん中で真っ向からぶつかり合ったわけなのだが………………。

 

「ひぅ……ぇあ、あ、アン、ごめん、もうだめぇ……」

「大丈夫、ですわ……あぁ、んんぅっ、()くときはいっしょ、ですわぁ……」

 

「いやああああああっ!アン氏ぃぃぃぃっ!?メアリー氏ぃぃぃぃぃっ!?」

 

 グダおの最低最悪の宝具によって、ビクンビクンしながら消滅していった二人組の女海賊アン・ボニーとメアリー・リード。

 そんな二人を見て、絶叫している何故かオタク風になっている黒髭。

 

 うん、前の特異点では大人しくしていたから忘れていたけど、やっぱアイツの宝具ひどいわ。

 しかも、消えかけている二人の前で青いTシャツ姿で悠長にハガキなんて読んでいるし。なんだよ【たまにいくならこんな特異点】ってたまにでも特異点にそんなポンポン行けるか。

 

「マスター、バーサーカー・エイリークの消滅確認。戦闘終了しました。ご無事ですか?」

 

「うぅ―――、怖いし、叫ぶし、たまに真顔になって女口調で「我が夫を魅了したな?殺す」とか意味わかんない事言ってくるし、怖いし、けど、私も私も頑張ったわよね?ね?ね?」

 

「はい、所長がうまく、あのサーヴァントの気を惹いてくれている隙に、うまくマシュと私で戦闘を進める事が出来ました。さすがは所長です」

 

「ふふん、当然ね……当然よねっ!褒めなさいっ!もっと私を褒めなさい!」

 

 得意げになっている所長に「所長は最高です!」と褒め言葉を頑張って絞り出すマシュと、それにさらに気を良くしている所長の姿にほんわかしながらも、視線をさっきのグダおと黒髭がいる方に目指す。うん、マシュがさっきまで戦闘中で本当に良かった。またお目目を隠さなきゃいけない事になってたし。

 

 

「ふ、グフフフフwww、まさかこんな所で、いきなり拙者の愛すべき部下が即堕ち、んほぉぉぉぉぉぉ、NTR展開になるとはっ!しかも、それを為したのが拙者が気に食わなさそうなリア充っ!だが、残念、デュフフフフwww拙者程訓練された船長はむしろ、NTRでも気持ち良くなってしまう事が出来るのでござる!!」

 

「相も変らない気持ち悪さ全開の生物だね、アン」

「言っては駄目ですわよ、メアリー。私も直視しないようにゲームの方に集中しているのですから……あ、敵が全オチしてますわよメアリー。ささっと塗り返しましょう」

 

「悪いけど、その試合が終わったら、一旦ゲームは中断してくれてもいいかな?」

 

「了解だよ、旦那様」

「はぁい、ア ナ タ」

 

 そして、自分達と同じ存在が昇天したというのに、全く気にする事なく、私の隣で黒い長方形のタブレット的なもので塗りゲーに勤しんでいるグダおの奥さん達。

 先程、消滅した二人とは変わり、海賊要素の欠片も感じない赤い「BUST」、緑の「QUICK」。グダおが来ている青の「Arts」とペアのようなダサTを着ていた。

 

「『旦那様』?『アナタ』?……ま、まさか、今さっき快楽堕ちし、消えてしまったアン氏とメアリー氏がもうそちら側についてしまったのでござるのか!キングクリムゾン的なあれで!!ぐぬぬ、寝取られた姿を見せつけるようにするとはそこの青Tの奴、中々な鬼畜外道サーヴァントと見たっ!!」

 

「夫婦や恋人でもないのに、寝取られとはおかしいだろう。しょせん、ただの失恋でしかないのでは?」

 

「……なんだぁ?てめぇ?」

 

 黒髭、キレた!!

 フックと銃で攻撃をしながらグダおとの距離を詰める、だがそれに焦ることなく、グダおはギリギリの動作で回避していた本当に()()()()で。

 

「アンタ達は行かなくていいのかい?アンタらの男なんだろ?」

 

「良い奥さんっていうのは本当に必要な時以外は座して夫を待つものなんだよ」

「それに、マスターがあんな()()()で笑っているんですもの。きっと面白い事を考えているに違いありませんわ」

 

 ドレイク船長へ、そう返答する二人。彼女達の言う通り、あんな風にキチ顔で笑っているグダおは今まで面白いかどうかはともかく、ロクでもない事はしでかしてきたわけで。

 まぁ、私は良い奥さんになるつもりなんて、ないけど……アイツのマスターなんだし、信じて待つぐらいはする。

 

 

 

「ぬおおおおおおっ!嫉妬の闇に飲まれろぉぉっ!麦わらぁっ!!」

 

「違う黒髭出てんぞ……。さて、せっかくの大海原だ。やっぱり、派手に船同士にドンパチしないのは勿体無いよなっ!」

 

 一度、黒髭から大きく距離を取り、船の端ギリギリまで引いたグダおはいつもの如く、銀の杯を手に宝具『性神と妻達の部屋(アダム&イブズ)』を発動。ダサTコンビ、アンとメアリーのようにまたぞろ、奥さんをいらっしゃいするようだ。

 

 宝具の光の中、現れたのは純白の花嫁衣装に身を包み、顔に傷を残しながらも、見る女性に憧憬の念を抱かしそうになる程の格好良さと美しさを両立させた雰囲気を持つ桃髪の巨乳の女性。

 

「家での船長はアンタだけど、どんな姿になっても海での船長は譲れないよ!」

 

 

「はっ!?アタシぃ!?」

 

「BBAぁぁぁぁっ!!?」

 

 かのフランシス・ドレイクとそっくり、いや、グダおの世界におけるドレイク船長がウエディングドレス姿で登場した。なんだろう、最初はこっちのドレイク船長はそういう女っぽい服装は似合わないと勝手に思っていたのに花嫁姿のグダおの方の船長はこれ以上ないぐらいに似合っていた。むしろ新郎の方をお姫様抱っこしそう。

 

 

「あ、あ、あ、ア、ア、ア、ア、」

 

 ん?てっきり最初にドレイク船長に会った時のような罵倒を口に出すと思ったけど、黒髭なんか固まってる?

 

「…………もん」

 

「あん?」

 

 震える声で絞り出すように黒髭は声高に叫んだ。

 

「BBAはち〇ぽなんかに負けないもおおおんんんんぅっ!!」

 

「ハッ!言いたい事があるんなら船で語りな!海賊ならねぇっ!!」

 

 どうやら、あの二人組の女海賊の時のような余裕はこけなかったぐらいに彼にとってはドレイク船長は聖域だったらしい。うーーん、面倒くさいオタクの琴線に触れてしまったみたいな?

 

 黒髭の滂沱の叫びを受けて、ドレイク船長(花嫁)は空高く、舞い上がる。

 分かりやすい程の魔力の奔流。今まで数々のサーヴァントを見てきた私にはそれが宝具の開帳だとすぐに理解出来た。

 

「世界の海を回ったアタシが次に目指したのは、宇宙(ソラ)、星の海。最高に愉快でイカれた奴らとの大航海……まぁ、まさかこのアタシが新婚旅行をするなんて思わなかったけどねぇ!!」

 

 やめてあげて!黒髭がドレイク船長の口から出る「新婚旅行」とかいうワードにダメージを受けてる!もう彼のライフはゼロよ!

 

 彼女の口上と共に空中に浮かぶ巨大な波紋。その中から登場する純白の巨大船が、跳んだドレイク船長(花嫁)の足場となる。

 

「『純白竜と性の夜(ウエディング・ハネムーンハント)』!宇宙(ソラ)の中、イかされ続けた女達ってな!!」

 

 宇宙戦艦だコレ!!?っていうかヒドい口上!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(はぁーあ、まいったねぇ、どうも。あっち側にはもう結構なサーヴァントが仲間になってるし、サーヴァントでありながらサーヴァントを召喚するワケのわからん奴もいるし、その上()()()()()()()()()()()()()()()()()()。いやー、防戦一方というかやられっぱなしでオジさん困っちゃいますよ)

 

 ドレイク(花嫁)が宇宙戦艦ヤマト的な宝具を展開している隙に乗じて、立香達が乗る船に乗り込んだトロイア戦争における大英雄ヘクトール。彼の目的は二つあった。

 

「女神様か契約の箱(アーク)か……。狙うならまずは前者の方を先にいきますかね――っと……ぉっ!?」

 

 黒髭とドレイク(花嫁)のド派手な戦闘に眼を奪われているエウリュアレの背後に忍び寄ろうとしたヘクトールに、両脇から二つの影が襲い掛かった。

 ギリギリで気づき、バックステップで回避したヘクトールは下手人を睨み付ける。

 

「残念、S+カンスト勢の僕達にその手の策は通用しないよ」

「裏取りキッズ死すべし、慈悲はありませんわ」

 

「やーれやれ、あんなにだらけきってたもんだから、てっきりオジサンの事は眼中にないと思ってたけど……いやいや中々に油断ならないねー女海賊さん達」

 

 さっきまでゲームに勤しんでいた、赤緑Tシャツの女海賊コンビはそれぞれ武器を構えて、ヘクトールと対峙する。

 アンはどこか水鉄砲のようなポップな色をした狙撃銃を。

 メアリーは自身の体と同じぐらいの大きさを持つ筆を。

 

 自分達の仲間であったこちら側のアンとメアリーとは毛色の違う武器を持っている事に疑問を持ちながらも槍を構えた。

 

「さぁ、メアリー。ノーデス、オーバーキルでいきますわよ!」

「いつも通りだね、アン!」

 

「「『三重翼にして烏賊(スプラッシュ・スリーバード アクト3)』!!」」

 

 近接戦担当のメアリーが筆の武器「ホクサイ」を手にヘクトールへ肉薄する。

 当然、ヘクトールも応戦するが……。

 

「そらそらそらそらそらそらぁっ!!」

 

(っと、なんだぁ、この武器……?やりづらいったらねぇなぁ!!)

 

 一見すれば、武器に思えないふざけた外見をしているメアリーの「ホクサイ」もヘクトールの槍と打ち合えている以上、宝具として最低限の耐久力はもっているのだろう。

 しかも、彼にとって厄介なのは、その筆を振るう度にばら撒かれる緑や赤、そして青といった3つの間で色が変わっていくインク。

 ただの目くらまし程度ならまだしも触れると自身の霊基がダメージを追うという点。そして、筆とインクが届かないように少しでも距離を取ろうものなら……。

 

「目標をセンターに入れて、スイッチですわ!」

 

「ぐぅっ!」

 

 アンの狙撃銃「スプラチャージャー」から強烈なインクの一撃が飛んでくる。

 互いに絶対に邪魔にならない絶妙なタイミングで飛んでくるコンビネーション。さらに二人の攻撃によってばら撒かれるインクは消える事はなくその場に残り続けている。ヘクトールがそれに足を取られれば、動きが鈍るだけではなく、スリップダメージも受ける事になる。これなら、普通の剣や弓や銃と戦った方が百倍マシだと彼が思ってしまうのも仕方がない。

 的確にヘクトールの行動を封じ、仕留めにかかる二人組の女海賊の猛撃はまるで一つの生き物のように完成されていた。

 

(こりゃあ、いっそ船ごと吹き飛ばした方がいいかもなぁ)

 

「そらよっと!!」

 

「……!」

 

 槍を真下に突き刺したヘクトールはそのままテコの原理で舟板をひっくり返した。

 盾のようにその舟板に姿を隠した彼は投擲の構えをする。

 近づいてもやりづらい、離れても駄目なら、いっそ宝具で船というステージごと破壊するという目論見があった。

 

「……!マシュ!グダおッ!…………グダお?」

 

 戦闘に気付いていた立香が自身のサーヴァント達に指示を出す。黒髭の方は取り敢えず、グダおが召喚したドレイク(花嫁)に任せても良いと判断したのだろう。

 

 マシュが盾を構え、宝具を展開する。

 

「そぉらっ、しっかり耐えてみろよぉ、盾持ちのお嬢ちゃんよっ!」

 

 仮に防がれても構わない。そもそも自身の狙いはこの船にデカい風穴を空ける事。馬鹿正直に盾の方へ投擲するつもりはない。

 ほくそ笑むヘクトールに、アンとメアリーは何故か追撃する事なく口だけを動かしていた。

 

 

「ねぇ、何で僕達の宝具名に『アクト3』ってついていると思う?まぁ、もちろんver3っていう意味もあるんだけどさ」

 

「重なる翼は三つ、申し訳ありませんが今の私達はトリオですのよ」

 

 立香は気付く。グダおの姿が見えない事に、いつの間にか黒髭の船にもこっちのドレイク船長の船にもドレイク(花嫁)の宇宙船の方にも彼の気配は感じない。

 

「仕上げは」

 

「マスターですわ♪」

 

 ヘクトールの背後、メアリーとアンが今までまき散らしたインクの一つ、青いインクの中からそれと同じ色である「Arts」と書かれたTシャツを着たグダおが突如として飛び出した。そのインクの中に潜んでいたのか、一体化していたのか、今の今まで……この瞬間までまるで気配を感じさせない完璧な不意打ち。

 グダおは自身よりも二回りも大きいコロコロローラーのような巨大武器を振りかぶっていた。

 

「なっ!?」

 

「ダイナモローラーだっ!!」

 

 もう遅い! 回避不可能よ! 背後からの強烈な一撃に虚をつかれたヘクトールは押し潰された。

 

(あっちゃ……拉致とか強奪とかあんまり慣れねぇ事はしないで、さっさとトンズラこいておくべきだったかね)

 

 インクを纏った巨大ローラーの下敷きとなり、サーヴァントとしての核にも致命的なダメージを負い、後は消えるだけだったヘクトールはグダおの妻となっているドレイク(花嫁)やアンとメアリーを見て、一つわかった事があった。

 どうして急に上司と連絡がつかなくなったのか、その理由が。

 

(こりゃあ、イアソン船長ももう無事じゃ無さそうだな。()()()()()()()()見て、嫌な予感しかしなかったけどよ…………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちくしょう、ちくしょう!殺せっ!今すぐあの女を殺せっ!!ヘラクレス!!」

 

「■■■■■■■■■■■―――!!」

 

「まぁ、イケない人。ヘラクレスをマスターに差し向けるなんて、彼なら負けないでしょう……けど、相手はかの大英雄、もしかしたら傷を負うかもしれません。マスターを傷付ける可能性は一粒たりとも残してはおけませんから…………えぇ、えぇ、こうしましょう『無限の柱製(アンリミテッドパンケーキワークス)』」

 

 藤丸立香達が黒髭陣営と衝突している時と同時刻、そこまで距離が離れていない海域でもう一つの戦いが起こっていた。

 召喚されてから、一切イアソンの言う事に何の反応も返さなかったメディア・リリィ。そしてようやく痺れを切らしたイアソンへ口を開いたかと思えば、その第一声が「ねぇ、イアソン。ちょっと死んでもらってもいいですか?」

 冗談ではない、それは紛れもなく本気の言葉。そして、その言葉はまるでお茶にでも誘うような軽い調子で紡がれた。瞳は、雰囲気は、正気のままだ。神に呪いをかけられているわけでもなく、誰かを見ず自身の世界に閉じこもっているわけでもない。

 メディア・リリィはある人の為にまともなまま、自らの意思で狂っていた。

 

 それを本能で悟ったイアソンはヘラクレスをけしかけるが……。

 メディア・リリィがパンッと手の平を叩き、宝具を展開すると共に現れた大量のパンケーキもとい、ピンク色の魔神柱がそれを阻む。とても甘い匂いを漂わせているがこれでも立派な魔神柱である。確か、名はハーゲンダッツ。

 

 アルゴノーツを取り囲むように海底からどんどん生えてくる無限のパンケーキ。

 そこから伸びる数多の触手がヘラクレスを捕らえる。

 

「この世の終わりの予感……」「「困っている!」「どうなっている!」「ふざけている!」「貞操の危機!」「とても暖かい!」

 

「■■■■■■■■■■■―――!!」

 

「ひ、ひぃぃっ!……な、何をしているヘラクレス!相手は只の醜悪な怪物だ!怪物退治はお前の十八番だろう!一体何を手間取っている!!」

 

「十二の試練、十二回もヘラクレスを殺すのは、それはそれは物凄く骨が折れる事ですが、別にそんな手段を取らなくとも良いのでしょう。殺さなくとも魔神柱(パンケーキ)の中へと取り込んでしまえばいいのですから……えぇ、あなた達にはパンケーキになってもらいましょう」

 

 ひゅぅっと言葉にならない悲鳴を漏らしたイアソンの視界にはピンク色の肉柱が大英雄へと殺到する画が映っていた。

 それでもさすがはギリシャ神話における最強の英雄。肉柱をへし折り、殴り、叩き斬り、引きちぎる。

 しかし、メディア・リリィもその宝具によって召喚された魔神柱の群れもヘラクレスを打破しようという目的はない。只、何も出来ないように無力化する事こそが目的。

 ヘラクレスの抵抗も暖簾に腕押し、ヌカに釘。聖杯の泥のように無限に湧き出る終わりなき魔神柱の波についに大英雄は飲み込まれてしまった。

 

「ふぅ……バーサーカークラス以外だったら、こうはうまくいかなかったんですけどね。まぁ、ヘラクレスも今回はあまりやる気も無かったようだったので助かりました」

 

「…………あ、あ、う、嘘だ」

 

 全幅の信頼を寄せる友がピンク色の甘い香りがする肉柱に取り込まれてしまった。

 取り残されたのは何の戦闘力もない自分一人。魔神柱の瞳が、そしてあの女がこちらを見ている。

 

「……だ、れだ……お、お前は誰だ、メディアじゃないな……誰なんだお前はっ!!」

 

 最後の強がりか、イアソンはこの惨劇を起こした女に向けて、震えを抑えながら叫んだ。

 宙に浮かび、マントをたなびかせているメディア・リリィは嬉しそうにその返答に答えた。

 

「はい、厳密に言えば私はあなたの知るメディアではありません。愛すべき夫と二人の子供、どこにでもありふれた幸せ家庭生活を満喫する普通の奥様■■メディア!■■メディア・リリィでございまーすぅっ!あぁっ……!愛する人の名の半分をもらえるっ!それを名乗る事が出来るなんてっ!!うふ、うふふふふふふ……!■■メーディーアー!!」

 

 わからない、恍惚としている目の前の女が何を言いたいのかがまるでわからない。恐怖で朦朧としているイアソンにはメディア・リリィが自身の名にくっつけている日本人の苗字すら只のノイズにしか聞こえなかった。

 

 メディア・リリィが言った「マスター」とやらも自分の事ではないのだろう。ならば自分がこんな目に合っているのもそいつが元凶かと。怖れと怒りに顔を歪ませたイアソンは悪足掻きに罵倒を口にする……その言葉が彼女の地雷を踏む事とは知らずに。

 

「は、はっ……ははははは、なんだ、結局アレか、サーヴァントになってもお前は男に媚びを売っているワケか。このイカれ女め!何が「マスター」だ……!お前みたいな魔女を重宝している時点でそいつの頭も狂っているな!どうせ、ロクでもな……ガヒュッ!!」

 

 イアソンの周りにある肉柱達が蠢動する……ギチギチギチチチチチチチ、メディア・リリィの目の前で人体が出しているとは思えない音が聞こえた。

 

「駄目よ。イアソン。私はいい、けど彼の悪口は許さない。口は災いの門……あなたの心無い言葉がもし彼に届いて、心に傷を負わせたらどう責任を取ってくれるの、私はもうあの人が傷付く姿を見たくないの。ねぇ、ねぇ、ねぇ、聞いている?どう責任を取るのと聞いているのだけれど、聞いているのかしら?……あぁ、もう聞いていないのね」

 

 ついさっきまで微笑みを絶やす事が無かったメディア・リリィからその笑みが一切消えた表情を彼女の宝具によって飲み込まれ、パンケーキと化したイアソンは終ぞ目にする事は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……デュ、デュ、フフフwwwまさにワンサイドゲーム…………真っ白に燃え尽きたぜ……」

 

 黒髭とドレイク(花嫁)による海上(?)戦闘も特に番狂わせもなく、残骸と化したアン女王の復讐号の上で黒髭は大の字で満身創痍になっていた。

 

 まぁ、普通の海賊船とかたや宇宙戦艦だからね、スペックが違い過ぎるというか……空からの弾幕掃射がエグ過ぎるというか……泣きながら戦ってた黒髭も頑張ってはいたけども、いやグダおん所のドレイク船長容赦なさすぎない?

 

「……あぁ、だが言い訳のしようもなく、尊敬すべき大海賊から真っ正面から戦い完膚なきまで叩き潰されたんだ。後悔はねぇ……………………ところで……あのぉ……そのぉ……ドレイクさん?ひとーつお尋ねしたいのですが」

 

「なんだい?」

 

「マジで既婚者?」

 

「そうだよ」

 

「もしかして、もしかしなくても、もう既に子供とかも産んじゃってる系だったりしましゅか?」

 

「あぁ、3人はこさえたよ」

 

「…………………………………………………………………………………………………そうでござるかぁ、そうでござるかぁ、そうでござるかぁ、BBAが経産婦でござるかぁ……あぁ、ちょっと興奮しちまってる自分が悔しいビクンビクン……これはあれでござるな。昔からずっと応援していた絶対に結婚する事はないと思っていた声優ができちゃった婚した事を知ってしまったファンの気分に近いような……」

 

 とても複雑そうな顔をしながら、黒髭は愛船と共に消えていった。

 自分が尊敬しているヒーロー的な存在を女にして戦わせるなんて、やっぱりウチのサーヴァントはホントえげつない。

 

「照れる」

 

「褒めとらん」

 

 お前、絶対『属性:善』じゃないだろ、『混沌・悪』とかだろ。

 

 

 

「ヘッヘッヘッ……所でグダおの兄貴、そのたくさんのねーちゃん達を囲えるハーレムノウハウとやらを俺にも」

 

「ダーリン?」

 

「アガァァッ!ヤメテェ!出ちゃうぅっ!綿が出ちゃうからぁっ!!」

 

 

 

「奥さんを何人もつくるとは不誠実の極みのような奴だ!許せないね!それはそれとして、もしかしなくても君はアビジャグじゃないか?」

 

「うふふ、殺しますわよ。クズ」

 

 

 

「君、アタランテだよね……」

 

「そうだが」

 

「……子供は好き?」

 

「あぁ、守るべき対象であり、慈しむべきものでもある」

 

「こっちのは大分まともだぁ、僕達と一緒にいる方はどうしてあぁなったんだろうねぇ……」

 

「?」

 

 

 黒髭とその一味を撃破した私達にはそれぞれ談笑する余裕が生まれていた。アルテミス様に雑巾のように絞られているぬいぐるみ、ちょっかいをかけたアン(Bust Tシャツ)にインクの銃弾をぶち込まれまくっているダビデ王。何故かアタランテを見て、遠い目をしているメアリー(Quick Tシャツ)。そしていつの間にかエウリュアレを肩に乗せているアステリオスと所長を肩車しながら船の縁でグリコで遊んでいるグダおの姿が。「ちょっ……下ろしなさい!ってば……ちょっばか、頭擦るなぁぁ……あんぅっ」………………うん、聞こえない、私には何も聞こえない。マシュも止めなさい。「私も肩車しましょうか、先輩?」じゃないから、しなくていいから。

 ホント、ウチの後輩に悪影響しか与えねぇなぁ!アイツは!!

 

 

「なんだい、なんだい、不細工な顔して、気に食わない事でもあったかい『アタシ』?」

 

「奇天烈な事ばかり起きる海だと思ってたけど、まさか自分のそっくりさんがそんな格好で現れるなんて思わないからねぇ……」

 

「確かに!どう考えても姉御はあっちの姉御に女力で勝負になってませんからね!もう、あちらの船長は性別女ってハッキリわかるけど、ウチの船長は油断すると性別どっちか忘れちまいますからね!ってか姉御って女でしたっけ?」

 

「よし、野郎共。後でソイツ(ボンベイ)を鮫の餌にしておきな。ま、アタシが結婚するなんてそれこそ世界が滅んでもあり得ない話だし、アンタとアタシは別人なんだろ?」

 

「そうさ。アタシ達はただ、名前が「フランシス・ドレイク」って同じなだけで只の別人さ。確かにアタシもガキをこさえるなんて最初は想像もしてなかったけどよ……」

 

 花嫁姿のドレイク船長は照れ臭そうに笑っていた。自分と同じ顔をした海賊の前で。

 

「未知や未踏を突き進む海賊としては、食わず嫌いは良くないと思っただけさ。女としての幸せもかっぱらってやっても悪くないってね。今着てる服や好きになった男(マスター)もアタシが手に入れたお宝さ。なら、派手に使わないと意味が無いだろ?ま!アタシの旦那はいくら散財しても消える雰囲気がまるでないいわくつきだけどね!」

 

「……見てて、退屈しなさそうな男だってのは同意するけどね……」

 

 海賊の人生と女の幸せ、交わる事ないと思っていた二つを両立し、謳歌しているもう一人の自分を見てドレイク船長はしかめっ面になりながらも、そういう自分もいるんだろうと納得しているようにも見えた。目の前の自分が言っている事が自分故に理解出来てしまう点もあったのかもしれない。

 まぁ、あんな剛胆で男らしい船長を退屈させないで娶る男なんて、私も知る所一人しかいないし。欲望に正直っていう点ではあの二人は相性は良かったのかな?………………んぅ、ちょっとだけなんかムカムカする。

 

 

『ともあれ、黒髭ティーチが保有していた聖杯も無事回収出来たわけだし、これでめでだしめでたし。勝った!第三特異点完!ってやつだね!』

 

 おいばかドクター。フラグが立ったぞ。

 

 

 ――――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ…………

 

「なんだいッ!?」

 

「先輩!海面が盛り上がって……!」

 

 いくつもの不自然な海面の盛り上がりが私達が乗ってる船を囲む。

 転覆しないようにドレイク船長が船の舵を切り、帆を操作する。

 

 やがて、海中深くから、どこか甘い匂いを醸し出すいくつものピンク色の肉柱が現れた。

 肉柱から生えている黒い十字を瞳孔とした虚ろな瞳が私達を凝視しているようにも思えた。

 

「なによ、これええええええええ!!」

 

 私の前に所長が驚いてくれたのでいくばくか冷静になれた。

 この特異点を乱していた聖杯は確かに回収した筈……まさか、まだ見逃していた何かがあったの?

 

「うわぁ……このサイコな宝具は彼女しかいないよねぇ……」

「まぁ、来ないわけがありませんもの」

 

 グダおの奥さん組が特に焦っていない様子を見るあたり……。

 

「待つんだマスター。確かに俺のせいかもしれないけど、俺は悪くない」

 

「妻がやらかす事は夫が責任を取るべきだろ、あん?」

 

「察しが良すぎるマスターの吐くど正論にぐうの音も出ない」

 

 

 

 

 

「そうですよリッカさん。今回は私の独断専行。誰かに言われてでもなく、マスターに命じられてということもなく、私が自分で考えて、自分の判断で、何か強制される事なく、自分の意志で本来召喚される筈だった『私』の召喚に割り込んでいただいたんです」

 

「!?」

 

『新たなサーヴァント反応だ!!』

 

 そのサーヴァントの元々の能力か、それとも魔術か。宙に浮かんでいる一人の女の子が海中から生えている肉柱達の中心にあたる位置から私達に語りかけていた。

 ドレイク船長(花嫁)は何かを察したようにその少女へと話かけていた。

 

「アンタがここにいるって事は……」

 

「はい、イアソンもヘラクレスもパンケーキの材料となりました。まぁ、霊基が完全に消えれば座に帰るんですけどね。私も悪魔ではありませんし、さすがに一生材料にするとかそんな事はしませんよ」

 

「ん?なんだろう、俺の耳が悪くなったのかな?今、女の子らしく見せかけて最高にパスってる台詞が聞こえたんだけど?」

 

「じゃあここにあるの全部、ケーキなの!?どうするダーリン?ケーキ入刀しちゃう?ゴールインしちゃう?」

 

「しねぇわ!こんなおぞましいウエディングケーキあってたまるか!」

 

 

「厳密に言えば、パンケーキとなった元魔神柱なんだけど」

 

『ハハハ、グダお君ってば面白いジョークをかますね。パンケーキになる魔神柱なんてどこの世界にいるのさ。メルヘンやファンタジーじゃあるまいし』

 

 

 だが、グダおの奥さんという事は敵ではない筈、なのにどうして今になって大勢のモンスターを引き連れて現れたのか。私の疑問に答えてくれるべく、彼女は杖を構えて言葉を放った。

 

「初めましての方は初めまして、私の名前は■■メディア・リリィ。私がここに現れた理由は一つ。リッカさん、あなたが彼のマスターとして相応しいかどうかを見極める為です。いきなりで申し訳ありませんが、この特異点が完全に修正される瞬きの間、どうか私と私の宝具と戯れて下さいな」

 

 ボスを倒したと思ったら、いつの間にか裏ボス戦に突入していた件。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は彼がこの世界でサーヴァントとして人理修復の旅路に付き合うのは正直な所反対でした。それは彼の考えに反対というのではなく、彼が傷付く可能性がある戦いに身を置いているというのが私自身が嫌だというわがままな理由です」

 

 水平線の彼方まで生えているのではと錯覚するほどの肉柱の軍勢、だが、メディア・リリィと名乗った彼女は本気ではないのか、攻撃を行っているのは船を囲んでいる数体のみ。

 

 それでもパンケーキになったとはいえ、元は魔神柱。たった数体でも脅威である事は間違いなかった。

 

 

 

 

 ――この戦闘において、彼の力を借りる事は許しません。

 

 戦いに入る前にメディア・リリィはそう条件を出した。確かに、グダおが参加してしまえば、この数多いるパンケーキ柱達も欠片も残さず毟られてしまうだろう。

 さすがに無理じゃないかと苦言を呈しようとしたグダおを制するように立香はその条件を飲んだ。

 

 ――こっちも元々そのつもりだったし、私だってコイツのマスターである以上、いつまでも頼りっきりってわけにはいかない。今回の特異点だってグダおがほとんど片付けちゃったわけだし。

 

 ――はい!グダおさんはここで大黒柱らしくどーんと構えて、見守ってて下さい!貴方がいない分も私がしっかりと先輩を守りますから!

 

 ――え、えぇ……あ、あなたがいなくてもまままままったくもって何ももももも問題はないわ………………けど、本当にヤバくなったら助けに来てくれるわよね……?

 

 立香、マシュ、所長の腹を括った顔を見て、グダおはこれは自分が何を言っても止まらないなと思った。男に譲れない物があるように女にだって譲れないものがあるのだから。

 

 ――私だって、君が自慢に思う、召喚されて良かったって思うぐらいのマスターになってやるんだから!!

 

 立香に力を貸すサーヴァントはマシュ、ドレイク船長、エウリュアレ、アステリオス、ダビデ、アタランテ、オリオン……そしてサーヴァントではないが所長の8人。

 

 決して少なくはない数だが、それでもいくら破壊しても再生を繰り返す複数の魔神柱達に立香とサーヴァント達は押され始めていた。

 

「やれやれ、僕の専門は巨人なんだけどね。そもそもコイツらに投石って効くのかい?」

 

「口を動かしている暇があったら手を動かせ!汝は!」

 

「銃弾は当たる!砲弾は当たる!なら殺せるって事だろ!出し惜しみしておっ死ぬのは笑えないさね、ありったけをぶち込みな!!」

 

 アーチャークラスが多数いるおかげで攻撃手段には困る事はなく、遠距離の大量弾幕をお見舞いする事は出来る。藤丸立香のマスターとしての指示、そしてドレイク船長の困難を打ち破る「星の開拓者」としての素質……押されてはいるが、何とか戦いにはなっていた。

 

 立香達が知り得る事ではないがメディア・リリィがイアソンとヘラクレスを襲った時のように本気で魔神柱達をけしかけた時程、全力を出していないという理由もあるかもしれない。今回の彼女の目的はあくまで試す事なのだから。

 

「うぅ……いいにおいが、する……くっちまう、ぞ?」

 

「間違ってでも食べるんじゃないわよアステリオス。絶対にお腹を壊すわ」

 

「あぁもう!キリがないわね!……こういうウネウネした気持ち悪い怪物はフランスの時で懲りてるのよ!!」

 

 しかし、このまま闇雲に肉柱共を攻撃しているだけでは埒が明かない。

 シンプルにこの戦いを終わらせるには術者でもあるメディア・リリィを何とかしない事は皆わかっているのだが、空中に浮かんでいる彼女に矢や砲弾を放とうとしても、やはり彼女の宝具である魔神柱の触手が肉壁となってそれを阻む。

 

 ジリ貧になっていた状況をひっくり返す為に立香はある決断をする。

 

「ドレイク船長……ちょっとお願いがあるんだけど」

 

 

 

(悪くない、悪くないチームですが、まだこれでは足りませんし、認められませんよリッカさん)

 

 ローブをはためかせ、空を飛んでいるメディア・リリィはただ冷静に彼女の采配を見極めていた。

 

「野郎共!砲撃用意!!たらふくぶち込みなぁ!!」

 

「!?」

 

 号令と共に発射される砲弾、しかし目的はメディア・リリィではなく水面。巨大な水飛沫が彼女の視界からドレイクの船に乗っている者達の姿を隠す。

 

(目くらまし……ですか?)

 

 

「令呪をもって命ずる……『マシュ!――――――メディア・リリィの真上に転移して』!」

 

 マスターたるものの最大の武器の一つでもある令呪。

 その一画を使用すれば、空間転移も造作ではない。

 

 令呪の効果によってメディア・リリィの頭上に大楯が現れる。盾に身を隠すようにその持ち主たるマシュ・キリエライトは重力に従い落下する。彼女を守る魔神柱達も所長の魅了によって、一瞬の間だが動きを封じられていた。

 メディア・リリィを守るの物は何もない……筈だ。

 

 彼女が先程、思ったように立香、マシュ、所長……カルデア組の3人はバランスが取れている悪くないチームだった。だが、ひ弱なキャスターと思われがちなメディアも神代の魔術師、さらにはあの絶倫サーヴァントの魔改造(SEX)を受けている身でもある。

 

「ふふ、サーヴァント歴がまだ浅いあなたに遅れは取りませんよ?」

 

「ぐぅっ!!」

 

 展開する大量の魔術式、もはや魔法に近いレベルで再現されているその速さと正確さ。迎撃として容赦ない魔術砲撃がマシュの盾を打ち続ける。

 そして、たまらないとばかりにマシュは盾を手放し、投げ出されてしまった。メディア・リリィに届く筈だった、攻撃が出来るルートから外れるようにマシュは海面へと落ちる。

 

(狙い所は良いかもしれませんが、まだ一手足りませんね。さて、リッカさんはどこに…………………………)

 

 攻撃を中断したメディア・リリィが水飛沫も消え、様子を伺えるようになった船の上へと視線を向けるとある事に気づく。藤丸立香の姿がない、と。

 

 

 

 さて、いくらデミ・サーヴァントとはいえ、英霊の力を授けられたマシュがそう簡単に盾を手放すだろうか?

 マシュが盾を使うのはいつだって大事なマスターを、先輩を守る為……なら、持ち主がいなくなり、落下し続けている盾の裏には誰がいる。

 立香が先程、令呪で下した命令は。

 

 ――『マシュ!()()()()()メディア・リリィの真上に転移して』!

 

 先入観とは恐ろしい物であり、頭上に突如として現れた盾を見て、メディア・リリィはマシュしかいないと思っていた。

 だから、彼女が盾の裏から投げ出された時に既に攻撃は止めたのだ。マシュは盾を手放されたのではなく、自分から手放した事に気づかず。その盾の裏にもう一人いる事に気づかず。

 

「まさか――ッ!!」

 

 メディア・リリィの砲撃によって少しズれたルートを修正するようにシールドと一緒に落下してきた立香はその盾を踏み台にして跳んだ。

 

「つぅーかまえたァッ!!」

 

 ――ドボンッッ!!

 

 両手と両足を使って全身をホールドしてきた立香に完全に意表を突かれたメディア・リリィは思わず飛行の魔術を解いてしまった。それぐらいに立香の作戦は想定外だったのだ。

 そのまま、重力に逆らえない二人は仲良く海の中へと沈んでいく。

 

 海中だろうと藤丸立香は口をぷくーっと膨らませたまま、メディア・リリィから体を離すことは無かった。自身が窒息するのもいとわない……そんな覚悟を感じさせる程に四肢に渾身の力を込めて、メディア・リリィにしがみついていた。

 

 まさか、自身を気絶させる為に、宝具を消させる為にサーヴァント相手に息止め勝負を挑む人間がいるとは誰も想像しないだろう。

 

(本当に馬鹿な人……もし私が迎撃しないで回避に専念していたら?もし私がマシュさんが放り出されようが気にせず残った盾にも攻撃をし続けていたら?私がびっくりしないで飛行の魔術を解かなかったら?一つでも何かがズレていたら、あなたは無事では済んでいなかったんですよ?)

 

 そして、多大な魔術を網羅しているメディア・リリィには海中で呼吸出来る魔術を使えても別段おかしくはない。

 だが、彼女は立香を嗤う事はしなかった。彼女の目的は彼のマスターとして相応しいかどうか立香を見極める事。私を……魔神柱達を倒せとは一言も言っていない。

 あくまでメディア・リリィを納得させてしまえばそれでいいのだ。

 

(もしかして、それも視野に入れて、こんな滅茶苦茶な作戦を決行したのですか?…………なら馬鹿な人というのは撤回しましょう。本当に強かな人…………合格です立香さん。貴女が彼のマスターで良かった。私も妻として、安心して、彼の帰りを待てます……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――んぅっ……んむぅっ

 

 なんだろう、暖かくて、柔らかくて、湿っていて、今まで経験した事のないナニかのようで…………そして、とてもキモチ良くて…………。

 

 

 ――……ッッ!!――っ!…………っあ……!!

 

 体が激しく痙攣するのが止まらなくて、凄く恥かしいのにずっと浸っていたいような気持ちにもさせてくれて……。

 

 目の前でいつも私を困らせているグダおが笑っている。滅茶苦茶するし、私もツッコミ疲れるし、ロクでもないサーヴァントなのに、彼が笑ってこっちに手を伸ばしているのが何故だか嬉しくて、気恥ずかしい気分にさせる。

 あ――ハイハイ、その手を取れば、いいんでしょ?わかってるわよ……。

 

 彼と手を繋いだ瞬間、体が浮かび上がるような感覚に…………あぁ、これは夢なのかな、そういえば私、どうしてたんだっけ?

 

「…………っ輩!!」

 

 これはマシュの声…………?

 

 

「……んっ、んぅ?あ、れ……私、なんで?」

 

「先輩、良かった!目を覚ましてくれて、本当に良かった!!」

 

 涙目になっているマシュに抱き着かれながら、私は思い出した。

 あ、そうだ。あの怪物の群れは!?メディア・リリィは!?

 

「もう、全部いなくなったよ。さすがにちょっとオイタが過ぎたから百式官能(ハードver)でお家に強制送還したけどさ」

 

「嬉しそうな顔しながら消えていったけどね」

「お仕置きされるまで、計画通りだったのかもしれませんわね。汚いさすがリリィクラスきたないですわ」

 

 グダおの言う通り、私が目覚めた船の周りにはあの肉柱の軍勢もメディア・リリィの姿も無く、穏やかな海が拡がっていた。

 

「全く、無茶し過ぎよ。あなたが海に落ちた瞬間に血相変えて飛び込んだグダおに感謝しなさい。ついさっきまで息してなかったんだから」

 

「え!?本当ですか!!なら私、よく無事でしたね……誰か治癒とか蘇生の魔術でもかけてくれたんですか?」

 

 そう聞き返した私に所長は何故かしまったみたいな表情をして、顔をそらした。同じように女性陣も皆顔をそらしている。え、何?ナニがあったの私?何で、皆して頬を赤らめているの?

 

「ほら、溺れた美少女、濡れた唇、そして愛しの彼女は息をしていないとなったら、定番のお約束があるだろ?いや、最初は僕が立候補しようと思ったんだけどね、あまりにも早いグダおくんの行動に先を越されてしまったよ」

 

 ………………………………………………………………………………………あぁ――、なるほど、ね……つ、まり、緊急蘇生的な……あれですか、ほ――ん、へぇ…………人口呼吸、マウス・トゥ・マウスですか………………ふむふむ、なるほどなるほど………………。

 

 燃えるぐらいの頬の熱さを感じている私がグダおへ視線を向けると、合掌し、御辞儀をして、「ご馳走様でした」と宣いやがった……。

 

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 っだああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁっ!!!!やっぱりさっきの夢だけど、夢じゃなかった!!!なーにが「とてもキモチ良い」だぁ!!なぁにが「恥かしいのにずっと浸っていたいような気持ちにもさせてくれて」だぁぁっ!!破廉恥か!!破廉恥の極みか!!

 

『いやぁ――凄かったよ。ピクリともしなかった立香君の体がグダお君の口撃であら不思議、電流が流れたようにビックンビックンしていたからね!!もう、音とかもね、一種の芸術の域に達していたよ。あ、これは別に立香君が達しているのとかけているわけではないからね!もし気になるなら後でカルデアに戻ってモニターを確認するかい?』

 

 ダ・ヴィンチちゃんの言葉で私の致命的なナニかがぶち切れた。

 

「マシュ!!今すぐ、カルデアに戻って記録機材をボッコボッコにぶち壊しに行くよ!!」

 

「は、はい!お供しますが……もう体は大丈夫なのですか?」

 

「悔しいぐらいに絶好調になってるよ!!畜生!!」

 

「マスター、人類最後の希望であるカルデアで破壊活動はどうかと思うんだが」

 

「うるさい!!誰のせいでこうなっていると思っているんだ!!お前もうら若き乙女の唇奪っておいて、反応が薄いんじゃないの!?」

 

「えー、とても柔らかく、甘く、美味しく、今度は人口呼吸とかじゃなくて。二人っきりで触れ続けたいと思うぐらいに素晴らしいお手前でした」

 

 ううううううううううううううぅぅぅぅぅぅぅっ………………死ねぇ!!ばかあああぁっ!!

 

 

 

 

 

 

 

 




《カルデア島》
グダ男と奥さん達のマイホーム、本文で語った通り、都市レベルで機能出来るぐらいには大体揃っている。国の通貨はQP。グダ男は今日も立香達の世界で金扉をボコボコにして荒稼ぎしてくる。家族を養うという事は大変なのだ。
グダ男がどっかのルーマニアから拉致ってきた本来短命だったホムンクルス達の寿命問題も解決済み。まぁ、優秀なキャスター達もいますし、心臓なら仰山ありますから(蛮神の心臓感)。働くも、働かないのも、何をするのも君達の自由なんだZE!
そこら辺の話もいつかやりたい、というかジャンヌとアタランテをハブったのもこっちの方で出番があるからです。



《ゲームセンターBBX》
感情豊かな邪ンヌが色んなゲームで見せる新鮮な反応を見たくない?見たいよね?というマスターとそれに乗った総合演出であるBBの手によって作られた番組。
クラス相性ゆえ逆らえない為か、BBのカンペによる無茶振りに翻弄される邪ンヌ。
「はぁっ?『クロック・タワー』?どうせ、只の子供騙しでしょ?1時間でクリアしてやるわよ」……1時間後→「クソゲー!クソゲーよっ!!車乗ったらそのままトンズラでいいじゃない!っていうか後部座席ぐらい確認しなさいよ!この女!!」この黄金のテンプレートはもはや視聴者お馴染みとなった。
最近、始まった『たまにいくならこんな特異点』も本編を喰いかねないない程の大人気コーナーとなっている。







純白竜と性の夜(ウエディング・ハネムーンハント)
ランク:EX
種別:対軍宝具
使用者:フランシス・ドレイク(花嫁)
まるでウエディングドレスのバーゲンセールだな……。
一人の男と女達は地球を発った。新天地を求めて……せっかくだし、このまま新婚旅行と洒落込みましょうかという事で造られた船。海賊船というよりは豪華客船に近い外見。モノホンのワイバーンとドラゴンを素材に作られているスペースシップ。船長の座を巡って、謎のヒロインXやヒロインXオルタを始めとした多くの女性陣達による「デッドハネムーンシーレース」を見事優勝したドレイクに賞品として送られたものでもある。
そして、宇宙船の中に一人の雄との大勢の雌達(一部不明組有り)……何も起きない筈がなく……。ただ一つ言える事は新婚旅行は約1ヵ月……自動操縦付きの船の中できっとビックバン(意味深)が何百発も起きた事は確実だろう。
使用者のドレイク船長一人でも十分な強さを誇るが、グダ男の奥さん達が乗れば乗るほど、宝具の性能は向上する。特にグダおが乗船すれば、まさに宇宙戦艦に相応しいスペックを誇るまでランクが上がる。彼と彼の奥さん達が全員乗れば、おそらく星一つぐらいは軽く滅ぼせる。ぅわらんこうぱーてぃつよい。




三重翼にして烏賊(スプラッシュ・スリーバード アクト3)
ランク:B+
種別:対人宝具
使用者:アン(Bust Tシャツ)&メアリー(Quick Tシャツ)&グダお(Arts Tシャツ)
マンメンミ!海賊は転売屋を許さないのだ。
マスケットの代わりに狙撃銃的な「スプラチャージャー」による遠距離攻撃担当のアン。
カトラスの代わりにどう見ても筆な「ホクサイ」による近接攻撃担当のメアリー。
そして、リスキル上等、脳筋「ダイナモローラー」による奇襲攻撃担当のグダお。
コンビネーションも厄介だか、この宝具の真価たるは武器を振るう度に撒かれるインクである。触れれば敵の霊基にダメージを与えるだけではなく、その場に残ったインクの中に3人がそれぞれいつでも転移可能な点。(赤色のインクにはアン。緑色インクにはメアリー。青色のインクにはグダお)そして、そのインクの中に潜んでいる間は気配遮断B相当の隠密性を保持出来るので、今話のグダ男のようにサツバツ!サヨナラ!も出来るわけである。元々のコンビネーションとインク転移の合わせ技は対人に関しては無類の強さを誇る。
3人に!勝てるわけないだろ!




無限の柱製(アンリミテッドパンケーキワークス)
ランク:EX
種別:対軍宝具
使用者:"――"メディア・リリィ
「この体は無限のパンケーキで出来ていた……」(杉田ボイス)
一度手を叩けば、美味しいパンケーキ、二度手を叩けば、尽きる事のないパンケーキ。三度手を叩けば、悪い子は皆パンケーキ。
かつて魔神柱を素材に無限に食べれるパンケーキを作り上げたメディア・リリィ(幕間参照)は、今度はそのパンケーキを素材に無限に湧き出る魔神柱を作り出した。魔神柱ハーゲンダッツさんがパンケーキになったのなら、そのパンケーキから再びハーゲンダッツさん×∞を作り出す事も可能ですよね?と因果律を滅茶苦茶にしたメディア・リリィちゃんの超物量サイコパス宝具。
その肉柱に取り込まれれば、皆漏れなくパンケーキになる。どうせ みんな パンケーキになる。
立香達と戦った時はまともな攻撃のみでさすがにえげつないゴア攻撃はしなかった。イアソンには黙祷。
前回の特異点でのアルテラちゃんの宝具に匹敵するヤバさがある。正直、味方が使っていい宝具ではない。
宝具とは関係ない話だが彼女が本編でも名乗っていた自身の名に付けているグダ男の苗字はグダ男の奥さん、または()()()()を満たした人ではない限り、只のノイズにしか聞こえない。






マシュ「グダ男さんが、あの…………じ、人口呼吸をしてから、先輩のバイタルが非常に安定しています。これから先輩は厳しい戦いに身を投じる事になります…………。私も先輩を支えるサーヴァントとして、いつでも出来る療法を身に付けておきたいんです!どうか、その手練ならぬ口練を私にご指導ご鞭撻を!」

グダ男「俺の指導は生半可じゃないぞ…………実技を交えての厳しいものとなるが?」

立香「ヤメろぉおおおお!てめえええぇっ!!」














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疾走する青春の桃色ジャンクフード ①(第4章)

ちょっと仕事の都合上、中々まとまった時間が取れず、基本的に1話完結式で投稿していたのですが、それだと下手をすれば月1更新レベルになってしまうので、ちょっと小分けで5000~6000字程度で投稿するスタイルにしました(こっちの方が間を置けず更新出来るし)。
出来る限りキリの良い所で話を上げたいと思いますので、どうかご容赦を。









というわけで覚えている人がいるかどうかはわかりませんが、グダお英霊編第4章でございます。本編も特別編も両立する勤勉スタイル(白目)。



霧が街を覆っている。

ただの霧ではない、普通の人間にとっては有害たる魔を含んだ霧が。

 

西暦1888年。輝かしくかつ深い歴史を携えていたロンドンの街は死を持った霧に覆われていた。

為す術の無い街の人間は救いを信じて、あるいは諦観して……霧の影響を受けないように家に閉じこもるしか無かった。

 

あぁ、だが中には状況を好転させる為か、あるいは飢えからか、ロンドンという街そのものから逃げる為か、外に出る人間もいる。

だが、この異質な状況で何の力もない人間が迎える結末は決まり切っている。

 

「……げほっ、こほっ!」

 

「くるしいの、つらいの?」

 

「……だ、だれっ!?」

 

「じゃあ、らくにしてあげるね。おかあさん」

 

「ひぃ!!」

 

うずくまる女性にナイフを向ける露出過多な少女のサーヴァント。

名をジャック・ザ・リッパー。かつてイギリスを震撼させた連続殺人鬼。

胎内回帰願望を持つジャックに目の前の怯える女性は格好の獲物だった。

 

 

「だめ、その人はおかあさんじゃないよ」

 

「!?……だれ?」

 

その凶刃を包丁で防ぐ者がいた。

驚愕に固まるジャック・ザ・リッパー。

それもそうであろう。目の前にいる者が自身とそっくりの顔をしていたのだから。

 

「わ、わたしたち……?」

 

「あ、あぁぁ……」

 

「ありゃりゃ気絶しちゃった」

 

自身に襲い掛かった少女がもう一人現れたのだ。気を失うのも無理はない。

呆然とするジャックを他所に倒れ込む女性に近づく少女。

 

その顔はジャックと瓜二つでありながら、髪は腰まで伸ばされ、布面積の少ない衣装の上からピンクのエプロンを付けていた。

体付きだろうか、あるいは気絶をしたその女性を介抱している様だろうか……この特異点の霧から召喚されたジャックとは決定的に異なる母性がその少女にはあった。

 

「うん、これでひとあんしん。この人は違うおかーさんだから、おそっちゃめっだよ」

 

妻となり、子を産み、6児の母となった少女。拙い回復スキル「外科手術E」から進化させた「家庭医療C」で女性の体調を安定させた彼女ももう一人の()()()()()()()()()()()

グダ男の宝具によってロンドンにやって来たジャック(エプロン)

包丁を片手にもう一人の自分を諫めるその姿はまさしくリアル幼妻。

 

「わ、わたしたち……?おかあさん、なに……どっち、わからない……わからないよ……」

 

「大丈夫、大丈夫……何も怖くない、こんな事してもあったかい場所にあなたたちは帰れないよ」

 

「あっ……」

 

自分とそっくりの姿なのに何故か無性に甘えたくなる母性がある。その矛盾に、摩訶不思議さにジャックのナイフは止まっていた。

困惑している殺人鬼を抱き締めるジャック(エプロン)。その表情は慈愛の塊としか表現出来なかった。

 

「世界は醜い、たしかにそうだけど、それ以上に美しいの。わたしたちはそれをしっている……一番大好きな人にもらったの……だからあなたたちにも分けてあげる」

 

「あったかい……あったかい……ねぇ、わたしたちしにたくないの、痛いのもいやなの……ただ、ただ、おかあさんの中に……」

 

「うん、うん。わかるよ。だから、わたしたちがおかあさんになってあげる。わたしたちが産んで、わたしたちとおかあさんと一緒に家族になろう、ね……『此よりは天国。"わたしたち"は妻、母、子――――温もりを此処に』」

 

 

懐胎聖母(マリア・ザ・ジャック)

 

 

―――ありがとう、ありがとう、ありがとう……。

 

 

浄化でも消滅でもない、それは一つの輪廻転生とも言える。

ジャック(エプロン)の宝具によって光の霧に包み込まれるジャックは涙を流しながら幸せそうな顔で姿を消していった。

ジャック(エプロン)の胎の中に多くの幼き魂が宿った事は本人と、その夫しかわからないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「霧は消えねぇな……」

 

「なら、原因はまだ他にあるって事だろうさ」

 

「おかあさん!」

 

「おかえりジャック」

 

霧の発生源と思しき殺人鬼のサーヴァントもグダおが連れてきた少女によって倒された(?)。

こちらに帰ってきたそのサーヴァントとそっくりの少女を抱き留めるグダお。

今度の服装は黒学ランみたいです。お前サーヴァントなのに服いくつ持ってるんだ……? 霊衣開放だとかよくわかんない事は宣っていたが。

 

先程、襲われかけていた女性を所長が抱き抱え、安全な場所――私達が拠点としているジキルさんのアパートメントへ連れていく。うん、所長も大分精神的に強くなった気がする。戦闘後、一般人を気遣い、すぐに避難させるぐらいには余裕が出てきたのだろう。

 

未だ消えずに残り続ける霧を忌々し気に睨み付けるモードレッド。

このロンドンで、アーサー王の地に手を出していいのはオレだけだという歪んだ理由で私達に力を貸してくれたロンディニウムの騎士。

そして、その隣でテンション高めに鼻歌を歌う()()姿()()()()()()()()()()()()()(水着)。

もう、私もそろそろ同じサーヴァントがいても驚かなくなった辺り、大分麻痺している気がする。

 

 

 

『てんめぇ、オレと同じ顔でなんて格好してやがる!』

 

『はぁ?んなの夏に決まってるからだろうが!』

 

『この街のどこを見れば夏だって思えんだよ!?』

 

『マスターの隣にいれば、俺の心はずぅっと夏だ!』

 

『てめぇの頭の中が常夏だよばぁか!そんな女みてぇな格好しやがって!!』

 

『その鎧脱いだら、おめぇも大して変わんねぇだろが!!』

 

『んだよ!!』

 

『やるか!?』

 

『は――い、ちょっと大人しくしようかお二人さん』

 

『ちょっ、てめぇ……どこさわって、んひゃあああぁっ!?』

 

『んおぁっ!あぁっ……マスター、お尻はやめぇ、んひぃっ!!』

 

 

 

出会い頭、喧嘩を始めた二人のモードレッドを最低の方法で諌めたグダお。

「知らんのか?アルトリア顔は皆、アナルが弱いという事実を」……いや、知らないし、聞いてもいないし、知りたくも無かったよ。そもそもアルトリア顔ってなんぞ。

 

水着姿のモードレッドはともかく、鎧の上からでも容赦なくセクハラを実行出来るとかコイツの宝具は本当に凶悪だ。その後顔を真っ赤にしてモジモジしていたモードレッド(水着)と同じく顔を真っ赤にして猫のようにグダおを威嚇するモードレッド。私とマシュがフォローしなかったら、絶対に斬りかかって酷い目に合ってたぞ………………彼女の方が。

 

現に今もこっちのモードレッドに距離を取られて、警戒されているし。

お前だよ、お前に言ってんだよ。ロリとイチャついているお前に言ってるんだよこら。

 

「あっちのジャックは?」

 

「うん、()()()()()()()。今度はもっとたくさん産まれるね。その為にもおかあさん、わたしたちにたくさん出してね?」

 

「なら、今いる子達も大きくなるまで育てないとね」

 

「うん!子育てがんばるよ!みーんな、しあわせにする!」

 

……私もそこまで鈍くはない。きっとこの幼き娘もグダおの奥さんなのだろう。

いや、駄目でしょ。犯罪臭しかしない。アウトだわ。なんなんだ「たくさん出してね」とか「子育て」とかこんなロリィな娘から出ていい台詞じゃないだろ。

 

「どうしたマスター?」

 

「もしもしポリスメン?」

 

「落ち着けマスター、この状況で警察は頼れないぞ」

 

「うるさい、ペド」

 

「マスターの対応がシベリア過ぎて泣ける」

 

何を私はイラついているのか、コイツと契約を結んだ後に見た夢でグダおに色んなタイプの奥さんがいるのはわかり切っていたのに。

いや、てかおまわりさんこいつです案件確定のロリにも手を出したのだろう? 

ならなんで、私に手を出さない?私はタイプじゃないとかそういうのか?

 

 

 

 

…………………………ちがうちがうちがうッ!! 何を言っているんだ私は!

 

これじゃあ、まるで自分にも手を出して欲しいみたいじゃないか! チョロくない! 私はそんなチョロくない!

只、あんな小さい娘にも女としての魅力に負けている感じがして気に食わないだけ!そうに決まっている!!

 

「あ、あの――先輩大丈夫ですか?バイタルが大きく変動していますが……」

 

「ほら、マシュ……きっとあれだよ。女の子には不定期にあるという」

 

「あっ…………す、すみません私とした事が、気が付かずっ!」

 

「ガンドォッ!」

 

もう! もうっ! コイツったら! はい、わかってますぅ! 私が勝手に空回りしてるのは!

けど、前の特異点で私の唇を奪っておきながら、特にいつもと変わらない接し方なんだもん!ドキマギしてる私が馬鹿みたいじゃない!

カルデア戦闘服を着ている拳の連打をきゃっきゃっ笑いながらしがみついているジャック(エプロン)と共に余裕で躱すグダおが憎らしい。こうなったら令呪を使うしか……ッッ!

 

『う――ん立香君の情緒が不安定だなぁ、やっぱり試運転とはいえ、あのプラグスーツみたいな格好をさせたのがマズかったんじゃないかな?』

 

『何を言うのかいロマン、マシュの格好とどっこいどっこいだろうし。それに私達は慣れたとはいえ、一番ヤバいのはマリーの姿じゃないか。ロンドンがこんな状態じゃなければ、御用間違い無しだからね!』

 

「やっぱりアレか!所長に最初に手ぇ出したのは胸か!おっぱいなのか!私も脱いだら実はすごいんだぞ!」

 

「先輩ッ!?」

 

「それは目視で服の上からでもよくわかる」

 

そうだった!今は新世紀のパイロットみたいな格好だったんだ!けど、それならもっとこの服にも食いついていいんじゃないの!?我ながら良いボディラインとか出てると思うんだけど!

 

「この姿の私を見て、何か言う事は?」

 

「うん今にも『あなたは死なないわ、私が守るもの』って言って死亡フラグを立てそう」

 

「違ーうッ!!」

 

当たれ! 当たれ! 当たれ! 当たれ! 当たれ! 当たれ! 当たれ! 当たってよ!

今コイツを殴らなきゃ! 今やらなきゃ! 私の気が静まらないんだよ! もうそんなの嫌なんだよ!

 

『その台詞を言うのはどっちかというとマシュな気がするけどね』

 

『割と冗談にならないから、止めてくれるかなレオナルド!?』

 

「おい、いつまでもこんな漫才を見せられてオレはどうすればいいんだ?」

 

「笑えばいいんじゃねぇか?」

 

「…………共闘するの考え直した方が良かったか……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、立香は一体どうしたのよ?」

 

『複雑怪奇な乙女心の迷宮を絶賛迷い中なのさ、彼にチョロっと堕ちて、パクッと食べられたどスケベマリーには縁が無い話だろうけど』

 

「喧嘩売ってるの!?」

 

は――――い。ど――――も。ジキルさんの家な―――うです。藤丸立香で―――す。

家主のソファで体育座りをしている私は自分がさっきまで何を言っていたのか思い返して絶賛自己嫌悪でございま――す。

口論をしているダ・ヴィンチちゃんと所長は恋がどうのこうのとか全くもってワケのわからない事を言っていますが……。

は? LOVE? 私が? あのハチャメチャ変態不思議アドベンチャーのサーヴァントに? 甘酸っぱいボーイミーツガール? ははははははははははははははははははははははは、そんな事あるワケないじゃないですか、世界が滅びでもしない限りあり得ませんよ。

 

ふぅ、今は隣で慰めてくれている後輩のマシュマロボディが唯一の癒しです。

 

「どうしたエロゲ主人公。傷心中の乙女にハイエナの如く近付き、その心と体を貪る絶好のチャンスだろうに」

 

「いや、原因は俺だし……さすがにそんなマッチポンプみたいな真似は……」

 

「『男ってやつは口説くときだけ春で(Men are April when they woo)結婚したとたんに冬になっちまう(December when they wed)』。やはり、あれですかな黒衣のサーヴァント殿?それだけ、ご夫人がいるともうお腹いっぱいって所ですか?」

 

「は?結婚しようが、子供が出来ようがオレのマスターは永遠に夏だっつーの。ぶった斬るぞ髭」

 

「ははははははは!!いやぁ、申し訳ありません!何せあの叛逆の騎士がここまで女であり、母なる雰囲気を振り撒いているのですから、つい口が滑ってしまうのですよ!ふむ、ところで、もう一人のモードレッド殿、色んな意味で大人の階段を登ってしまった自分を見て、何か一言」

 

「死ね」

 

「……あの、僕の家で暴れないで欲しいんだけど」

 

瞬時にグダおの背に隠れるシェイクスピア、抜き身の剣を片手に引き攣った顔で彼に近づけずにいるモードレッド。彼女の弱点を簡単に見抜き、すぐさま利用するのはさすがと言うべきか。

 

「ハーレムは男の夢だの何だの言うが、腹に三物ぐらい抱え、国一つも簡単に滅ぼしてしまえそうな怪物共を囲っている様子を見ると、結婚は人生の墓場というよりはラグナロクもいい所だなお前の場合は」

 

「ラグナロクがあんなに居心地が良い物なら、何万回起きてもいいさ……」

 

「イイ笑顔で言うな。お前も似たような怪物、いや……それ以上だったか。来る者来る者、全員拒まずにいたら取り返しのつかない所まで行ってしまったんだろう?だから、お前自身も行き着く所まで行ってしまった……行き過ぎた愛は一般観衆共、果てには世界そのものから排斥されるのが常だというのにな」

 

「そんな、人を誰でもいいみたいな言い方を……。どっちかというと俺からいった方が多いし、それにこれでもちゃんとフッた経験だってありますよ」

 

「なに?雑食悪食暴食系男子のお前がか?このエロゲ主人公が振りそうな相手なんて…………まぁ、コイツと似たような奴ならその可能性も………………………………いや、まさかな」

 

ハスキーなショタボイスが特徴な童話作家、アンデルセンと談笑するグダお。

むむ、しかし何でアイツは作家陣とあんなに仲良さげなのか。

ここに落ち込んでいるマスターがいるのだが、絆UPイベのチャンスなのだが。

 

あぁ、もう駄目だ。さっきから頭がスイーツ脳になっている気がする、自分でも認めるのは癪だが。

そもそもの話、私はこんなにテンパっているのにアイツが平然としているのは気に食わない。

 

「えいっ、やぁああっ!!」

 

バッチィイインッ!!

 

「先輩ッ!?」

 

思いっ切り自分の頬を叩く。紅葉の跡が残るぐらいに。

うっし、切り替え完了! アイツが特に変わらないのなら私もいつも通りで行く! グダおのやる事なす事ちゃんとマスターとして目を光らせてツッコミを入れていく! うん、これが正しいマスターのあり方なのかはわからないけど、今までもそうして来たんだし!

ふっふっふ、覚悟完了した私は強いぞ――。もうワケのわからない感情であたふたなんてしない!

マスターらしく、アイツにも指示を出す!

 

「グダお!」

 

「どうしたマスター?」

 

 

 

…………あの人口呼吸事件から真正面に見れなかった彼の顔を見つめる。

 

今着ている黒い学ランと同じ髪の色、平均以上に整っている日本人らしい顔。凛々しいというよりは可愛い系寄り。けど、その体はフランスで見せた海パン姿でもわかるように鍛え上げられた肉体を持っている。これがギャップ萌えという奴なのか……。そして私の瞳はグダおの唇で止まった。そう、だよね、不可抗力とはいえ、私は彼と、き、き、き、す…………。

 

 

「きしゅぅうっ!!」

 

ボンッ!!

 

「どうしましょうグダおさん!先輩の顔が麻婆豆腐のように真っ赤に!顔から湯気が止まりません!!」

 

「本当に愉快だなお前のマスターは」

 

「あぁ、自慢のマスターだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




「…………ま、待ちなさい、何故私が、その、か、彼と…………し、シた事知ってい、るの……?」

『いや、フランスの特異点だって私達はモニターはしているからね』

「なっ」

『まぁ、何故か映像の方はモニター出来なかったけどさ……。ははは、いやいや音声だけでも凄かったよ。他の男性職員が前屈みになるぐらいには。まさかヘタレの所長があんなに情熱的に彼の事を求めるなんて……』

「いやあああああああああっ!!」

所長が(社会的に)死んだ!












懐胎聖母(マリア・ザ・ジャック)
ランク:C
種別:対人宝具
使用者:ジャック・ザ・リッパー(エプロン)
お前が!おかあさんに!なるんだよ!
何の因果か、誰のせいなのか、母の胎を求めていた幼き魂は今や立派な六児の母に。
一度発動すれば相手を光の霧に包み込み、次のジャック(エプロン)の子供に転生する魂として、彼女の胎に宿す事が可能。
しかし、この宝具の発動条件は『対象が子供であること』『対象が一度でも親の愛を受けた事がないこと』『対象がジャック(エプロン)を母として受け入れること』の三つあり、とてもシビア。というか使い所が限定され過ぎているのだがこの宝具。
やったね、グダお君!また家族が増えるよ!

ちなみにジャック(エプロン)の六つ子達はこの特異点攻略最中はアタランテに預けている。
純潔(過去形)の狩人、子供達の可愛さと尊さで昇天仕掛けています。





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疾走する青春の桃色ジャンクフード ②(第4章)

小分けにすれば、そりゃあ更新速度は上がりますよ。






「見果てぬ夢をここに、我が未来は潰えぬ、我が理想は果てぬ。蒸気に満ちた鋼鉄たる文明を」

 

シティエリアの中心部、異質たる存在があった。

鋼鉄の機関鎧を纏った紳士。魔霧計画の首魁が一人、魔術師「B」と名乗る者。

 

コンピューターの父、キャスター、チャールズ・バベッジ。

 

「終ぞ叶う事の無かった空想世界を……『絢爛なりし灰燼世界』を渇望する私に立ち向かうか……」

 

彼自身、そして彼が生み出す不明の怪機械の軍団と相対する二人の少女がいた。

 

 

「妄想、空想、創作……素敵だわ。人の数だけ、物語があるんですもの。夢見るお話は子供達の頭の中に不思議な国を作ってくれるの。楽しいわ、楽しいわ、楽しいわ、だって白ウサギを追いかけなくても、誰でも物語の主人公になれるのだから。でも、駄目よブリキのおじさま。そんなおっかないやり方じゃ、誰も笑えないわ。ねぇ、ありす(わたし)?」

 

「ええ、アリス(ママ)。だってこんなどんより天気じゃ、いつまで経ってもパパとお茶会が出来ないわ!!このモクモクおじさんに教えてあげましょう。子供達の空想世界を!」

 

不思議な光景だった。

今のロンドンにはそぐわない光景だった。

白いゴスロリ衣装に同じ色で腰までふわふわと伸ばした髪を持つアリス(ママ)と呼ばれた少女。

色違いの水色のゴスロリ衣装に三つ編みで可愛らしく髪を結んでいるありすと呼ばれた少女。

 

二人は片手を繋ぎながらくるくるくるくる回っていた。楽しくダンスをするように。

片方はママと呼んでいたがそれにしても親子にしては、背丈も顔もそっくり過ぎる。双子と言った方がしっくり来る。

 

「カルデアからのサーヴァントか?違う……その霊基は、いや霊基ですらない……?幼子達よ、お前達がこの街の子供ではないのは理解出来る、だが……なんだ、英霊ではない。確信、驚愕。まさか、確固たる生命としてこの地に降りたっているのか?一体何者だ……?」

 

「あら、おじ様は変身シーンを律儀に待ってくれるタイプなのね。ふふ、とても紳士だわ。わたしはわたし(アリス)よ。マスターのワイフ。大人になんてなりたくなかった夢見る少女は立派なレディになったの。そして、この娘はわたしの大事な一人娘(ありす)。不思議な話だわ、素敵な話だわ、物語にしか過ぎなかったわたしがマスターの奥さんになって、()()()()()()()()()()()()()。ふふ、周りの唖然とした表情に勝ち誇った気分になっても仕方ないわよね?」

 

「えぇ、あの島は、わたし達の家は、宝石箱よ。子供達が皆、笑ってるの。たくさんのママ達も優しいわ、叱る時はジャバウォックよりもおっかないけど!毎日が冒険譚!そんな子供達の夢を見せてあげるわ!」

 

「宝具か……!」

 

歌い続ける。詠い続ける。少女達は、母娘は。夢みたいな現実を、現実みたいな夢をくれた彼を想って宝具を発動する。

 

「悪い夢はおしまい。ほんとのわたし(アリス)を見つけてくれた愛しいあなた。ページを閉じて、さよなら?いいえ、それは新しいページを開く合図よ」

「わたしとアリス(ママ)とパパと皆のしあわせを。居場所を。やっと見つけたわ。夢みたいな現実。けど、もし物語が現実みたくずぅっと続くならそれはとても素敵な事だわ!」

 

「「くるくるくるくる回る世界!行き着く先は渦の中!!」」

 

 

世界の果ての物語(ワールド・エンドコンテンツ)

 

 

少女達の宝具によって、霧に包まれていたロンドンの外観が変わっていく。

時計塔は巨大な闘技場に。住宅街は和洋折衷豪華絢爛な屋敷に、ありとあらゆる建造物が世界観がごちゃ混ぜな物へと変貌していく。

何より、一番目立つのが空を燦々と照らしている太陽。

今、このロンドンは樹々が生い茂る常夏リゾート島スタイルへと変貌を遂げた。

それはグダおのマイホームたるカルデア島に酷似していた。

 

「世界が、書き換えられて、いるっ……!?」

 

「これなら、モードレッドも喜ぶかしら。きっと太陽を得たぬんぬん騎士様みたく生き生きとするわよね」

 

「ふふ、絶好のお茶会日和。ほら見て鋼鉄のおじ様、さっきは不気味な人形達しかいなかったけど、今はこんなに賑やか。ファンタジーだもの、色んな友達を用意しないといけないわ!」

 

舞台は彼女達のマイホーム。

そして、そこにはかつてグダおが妻たるアリスと一緒駆け抜け、娘たるありすに読み聞かせた物語の一端。

ワイバーン、デーモン、キメラ、ウルフ、ゴブリン、スプリガン、ゲイザー、ヤドカリ、バイコーンetc……魑魅魍魎ともいえるエネミーの数々が生まれていた。

 

 

「さぁ、おじ様。あなたの空想と」

「わたし達の空想どっちが楽しいか勝負なのだわ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『って、うわぁ!!なんだいこれは!!?ジャパニーズモンスターパレード?百鬼夜行というやつかい!!?』

 

ドクターの驚く声、実際に目の当たりにした私達は声すら上げられなかった。グダおが懲りずに召喚した二人の少女達(またロリか……)と合流した私達の目に入ったもの。

 

三つの特異点を経て、それなりに場数は踏んだつもりだったけど、目の前の光景は思わず、現実逃避をしたくなる程に現実離れした景色だった。少女達の前にいる巨大ロボが気にならないぐらいに。

 

「おぉ、おぉぉっ!これはこれは!まさに世界の終わりのような絵!所詮は童女達の妄想と何故、笑う事が出来ようか!げに恐ろしきは穢れを知らぬ純粋無垢たる少女達の夢物語!!吾輩の創作意欲がガンガン湧いてきますなぁ!」

 

「何が純粋無垢たる少女だ。お前の目は節穴か、あの小娘共もどっぷりこの淫蕩魔王に誑かされているではないか。男の肉の味を知った身で純粋無垢を名乗るか、ハッ!片腹痛いわ!!」

 

「ふぅむ、アンデルセン君はどうにも、潔癖症ですね。『綺麗は汚く、汚いは綺麗(Fair is foul and foul is fair)』!真っ白なキャンバスのような少女達がドロドロに煮え滾った欲望という名の絵の具をぶちまけられたからこそ、得られた光景でしょうに!」

 

「てめぇら、何でついてきた?」

 

「「そこにネタの香りがするからっ!」」

 

モードレッドの返答に大変楽しそうな作家コンビ。

私とマシュと所長はそこまで余裕がありません。所長は「ひぇ~~……」って言いながら、グダおの腹にしがみついてるし……前々から思ってたけど、あなた達、ちょっと距離近すぎじゃありません?おい、頭撫でてんじゃねぇぞグダお。

あれですか?何回か寝たぐらいでもう恋人面ですか?さすが名門の当主、きたない、ドスケベ所長きたない。

……大丈夫です。もうさっきみたいな醜態は晒しません。ちゃんとマスターらしく毅然とした態度で人理修復に臨みます。もう、色ボケなんてしません。

 

「夏だぁぁぁぁっ!!イヤアアアアアアッホウウウウウウゥゥ!!!」

 

『うむ、スイッチがぶっ壊れたように叫ぶもう一人のモードレッド君は置いておこう。それにしても、圧巻の一言だよ。英霊でも固有結界持ちは何人かいるが、これはロンドンの街そのものを取り込んでいる……規模が桁違いだ!!』

 

「ま、待ちなさいっ!それが事実なら、固有結界の、範疇を超えているわ……!そんな、そんなの……魔法のレベルじゃない!!あり得ないわ!!」

 

ダ・ヴィンチちゃんの感想に所長がヒステリックに叫ぶ。

最近はカルデアのトップとしての貫禄が出てきたと思ったら、この様です。

まぁ、気持ちはわかるけどさ。歴史あるロンドンの街並みがカオスなリゾート地になったら誰だって混乱する。

 

 

「『ありえないなんて事はありえない』なのだわ。怖がりの悪魔様。」

「『奇跡も、魔法も、あるんだよ』。でも納得いかないかしら?なら、わたし達はこう叫ぶの!」

 

「「愛に不可能はないの!!」」

 

愛……こわいな――っ!

 

「どうやら、彼女達に召喚されたエネミーは私達には攻撃は加えてこないようです。皆、不明の怪機械とその首領らしき、巨大機械兵に向かっています。」

 

「ウゥ……ッ!」

 

ん?フランちゃんが唸りながら、急に前に出てきた?

相変わらず、何を言っているかはわからないが声色が少し、悲しそうな……。

 

「ごめんなさい、わたし達が知っている彼女より口数が少ないもう一人のフラン。貴方が迷って、悩んでいるのはわかっていたの」

「そして、このおじ様の所まで案内したくないという気持ちも。けど、子供はそういうのに敏感なの。隠された物は暴いてしまいたくなるどうしようもない性があるの」

 

「ゥァゥ…………」

 

「おぉっ……!ヴィクターの娘よ。そうか、そうか……お前もいたのか、だが、わ、たしは……グガァッ、!もう止められぬ。聖杯の影響下にある以上、この身の理性はッ!破壊、され……ている……我が夢は、隣人達を脅かす悪夢として……!」

 

そうか、あのサーヴァントもフランちゃんとは顔見知りだったんだ……。

だから、彼女は私達にここまで案内するのを迷っていた。そして、この白青の少女コンビはそれに勘付き、フランが案内する方向とは逆方向へ走り出したのか……。

 

「離れろッ……ヴィクターの娘よ……!そして、カルデアの者達よ、私を……止めろッ!!」

 

鋼鉄の鎧から吹き出る蒸気の量がさらに勢いを増す。

少女達が呼び出したエネミー達に対抗するように不明の怪機械達もその数を増やしていく。

 

確かに、ロンドンの街並みは変わったがっ……!霧だけは未だ、残っている!なら、原因を突き止める為にも私達がする事は一つ。

 

「マシュ、グダお!」

 

「了解です、マスター!敵性、大量の不明の怪機械を操る、鋼鉄のサーヴァント!戦闘態勢に入ります」

 

「おっけぇ。というか所長、そろそろ離れてくれないとくっついたまま、敵陣に突っ込む事になるけど」

 

「ご、ごめんなさいっ……!」

 

そこ!ラブコメんな!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『人繋ぎの大秘宝庫(マテリアル・ボックス)』!、”全戦局対応型直流交流万能籠手”装着!!」

 

『おぉっ!?』

 

宝具で雷が走っている金色のガントレットを取り出したグダおはそれを左腕に装着。

モニター越しに驚いているダ・ヴィンチちゃんが付けているのと良く似たものだった。

 

「さぁ、さぁ、さぁ!進め勇者達よ!数多の魂無き屍を越えて!吾輩は後ろで心を込めて応援させていただきますぞ!」

 

「戦いなさいよ!なんでサーヴァントの貴方達が戦わないで、私が戦ってるのよ!?」

 

「まぁ、そう言うな恋愛雑魚痴女。お前の駄肉をみっともなく揺らしながら戦う様も余す所なく執筆してやる。だから心置きなく戦うがいい!」

 

「恋愛雑魚痴女!?駄肉!?」

 

否定は出来ない。私達はもう慣れたとはいえ、どスケベプリンセス姿の所長だもん。後、恋愛雑魚というのもまんまかと。

 

しかし、作家コンビが戦闘ノータッチでもサーヴァントの数はこっちが上。

不明の怪機械の集団も、モードレッドに叩き斬られ、ジャック(エプロン)に解体され、モードレッド(水着)にサーフボードで殴打され、少女達のモンスターに蹂躙されている。

所長の魅了であちらの統率を乱しているという点もあるが、この狭い市街地で良く戦えている。

 

そして、私自身も。

 

「マスターには、指一本触れさせませんっ!」

 

一番信頼出来る盾がこうして、守ってくれているのだから安心して指示を出せる。

ならば、最後のとどめは一番信頼出来る矛に任せるとしよう。

 

「戦闘服スキル!『全体強化』!!やっちゃえ、グダお!!」

 

「■■■■■■■■■■■■!!じゃなかった、了解マスター!模倣(まねっこ)宝具、『にのうちいらず』!!」

 

押し寄せる不明の怪機械の集団を蹴散らし、鉄のサーヴァントへ肉薄するっ!

稲妻が走っている左手で宝具を発動させたグダおは見惚れる程に綺麗な動作で目の前の鎧に拳を叩き込んだ。

 

「グゥオオオオオオオッ!ガアアァッ……!……グ、ヌゥッ……あぁ、良い、この一撃は……なる程、私とは……別のあらゆる技術、叡智が詰まっている……」

 

「それと武術だよ。キャスター・チャールズ・バベッジ」

 

見事に貫いていた。

素人の私でも致命的な一撃とわかる程だった。

鋼鉄だろうと関係なく、雷鳴を轟かせたグダおの強打は豆腐の如くチャールズ・バベッジと呼ばれたサーヴァントの霊基を破壊していた。

 

「そうか……その腕に纏う鎧も、叩き込まれた拳も見事で、あった……うむ、これならば、私も心置きなく、消える事が出来る……もう、これ以上、無辜なる市民達を、街を、ヴィクターの娘を傷付ける事もなく……カルデアの者達よ、シティの地下へ向かえ……。そこに全てがある……魔霧計画の主体、我が発明『アングルボダ』……その中に、聖杯も…………この事件の全てがそこに――――」

 

私達に貴重な情報を残して、鋼鉄の紳士はこの特異点から姿を消した。

憎らしくも、笑顔で戻ってくるグダお、鉄の拳でこちらに手を振っている。

良かった……スキルのタイミングは間違ってなかったみたい……。

 

「ナイスガード、マシュ。俺も安心して攻撃に専念できるよ……へぇ――い、ハイタッチ!」

 

「へ、へぇーい……!」

 

…………。

 

「マスターも、へぇーい!」

 

「腕」

 

「ん?」

 

左手でじゃなくて、そっち。

籠手を着けている方じゃなくて、素手で。

ちゃんと素肌で触れ合いたいの。ほら、ハイタッチ。

 

「へぇーい……!」

 

パチンッ!

 

「マスターもナイスサポートだったよ!ご褒美にヴラドおじ様直伝裁縫式『スケープゴートグダおくんver』を上げよう」

 

空中の波紋から、出てきたぬいぐるみを押し付けられる。

ちょ、ちょい近いっての! 何だこの二頭身のデフォルメされたグダおは!完成度高いなオイ! ……ってか妙に可愛いのが腹立つ……。

 

「どうしたマスター、反応が鈍いぞ?もしかして、二体欲しいのか?このいやしんぼさんめ!」

 

「違うっつーの!あぁ、もう顔にぐいぐいするな――!」

 

「ずるいのだわ!ずるいのだわ!頑張ったワイフにもご褒美が欲しいのだわ!」

「そうよパパ!家族サービスを要求するのだわ!」

 

「おかあさん!わたしたちにも家族さぁびす!」

 

うぉぉおおお!トリプルロリにもみくちゃにされているぅ!!

マシュ! マシュは!? いつもの鉄壁のディフェンスっぷりはどこへ!?

 

「おぉ、胸元で抱けるベストサイズ……。フォウさんとはまた違った抱き心地です……あれ、所長はもらいに行かなくて良いのですか?」

 

「いいのよ、私は七つもらってるから……な、何よ!その生温かい瞳は!?いつからそんな瞳が出来るようになったのマシュ!?」

 

「フォ、フォーーウ!!(噛みちぎる!!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――ごめんねマスター。ちょっと寄りたい所があるの。

 

地下鉄へ向かう前のちょっとした寄り道、ソーホーエリアにて人々を覚める事のない眠りに陥らせている魔本があるとの噂。

アリス(白ゴスロリ)のお願いを聞き、私達はそこに歩み始めていた。フランをジキルさんの家まで送り、()()()()()()()()()()()()

 

「オイ、オイ、オイ、オイ!んだよそのメカニックな左腕超クールじゃんかよぉ!グダおの旦那!!デザインもそうだが、雷って所がたまらねぇ!!メタルスパーキング!!かぁ―――ッ!男のロマンだよなぁ!!」

 

「何を言うのか、Mrゴールデン。そっちの腕、『赤龍の尺骨』が宿っている?痺れる程にイカしてるだろ。クリムゾンドラゴンとか男心をくすぐりまくりじゃないか」

 

「あっれれ~~?私、確かロンドンに来たんですよね?何ですこの世界観闇鍋的な街並みは?お天道様が燦々としてるのは良い事ですが……。二階建てバスは?時計塔は?バッキンガム宮殿は?いつからロンドンはこんな魑魅魍魎なリゾート地になったんです?というか霧が深すぎるのですが!!」

 

「あぁ――、わかるぜ狐女。せっかくの常夏日和なのにこんな天気じゃ、アゲたテンションも急降下だぜ……さっさと邪魔くせぇ霧も取っ払ねぇとな!おちおちビックウェーブにも乗れねぇよ!」

 

「隣にはサーフボード片手の水着ノー天気女が普通に話しかけてきます。みこぉーん、これはあれですかね?私が知らない間にロンドンはハワイアンな観光地にイメージチェンジでもしたのですか?彼女の格好がデフォルトなのですか?まぁ、別にこういうリゾート地も嫌いなわけじゃないですけど――……」

 

ゴールデンこと金時君、フォックスこと玉藻の前さん。

私達のパーティは結構な大所帯になった。

グダおと金時君は随分と少年談話に花を咲かせているが……騙されるなよ、見かけはキッズでも中身はドロドロのアダルティだぞそいつは!!

 

 

「ふぁ!?その年で子持ちとか犯罪でしょう!!しかも、もう6人も産んでいるとか……!言うに事を欠いては多妻国家ですとぉ……!?おぉ、静まれ、静まれぇ……我が去勢拳ぅ……!!」

 

「でも、わたしたちの所にも狐のおねーさんいるよ」

 

「しかも9人、いるのだわ」

「キャットママ、グッチママ、モデルモママ、ヴィッチママ、ヒメママ、アリアママ、シャークママ……あ、これはタマモママだったわね」

 

「み゛ごぉおおおおおおん゛!!!!??…………な、ななななななななぜ、私の黒歴史達の名を…………」

 

「いがみ合っていた9人がマスターを独り占めしようとして、合体したりした時は凄かったのだわ。島を飲み込みかねない巨大怪獣に大変身!マスターと九尾の忍界大戦!最後はマスターの万年殺しでフィニッシュだったわ!」

 

「でも、タマモママはまた懲りずに暗躍しそう……パパの前では外面良くしているけど」

 

「……し、かもあの大化生状態の私とタメ張れるって……。ぬぬぬ、彼の魂を見て、イケメン度に隠れた奥底の中に得体の知れない物があると思ってましたが……あっ(察し)、な・る・ほ・どぉ……それはヤり合えますわ。結構な厄ネタじゃないですかー、獣案件じゃないですかー、やだ――。あ、あと貴女にママと呼ばれる筋合いはありません」

 

「じゃあ、タマモおばさん?」

 

「ころころするぞ♪くそがきゃぁ♪」

 

ふぅ、玉藻の前さんの驚きっぷりが最初の頃の私を見ているようで微笑ましい。

グダおと付き合いが長い私はもう、ちょっとやそっとの事では驚かなくなったのだ。ハハハ。

ふっ、ふ――ん。これも培った絆レベルの賜物なのだ!サーヴァントの事を真に理解してこそのマスターだもん!

 

「随分と余裕綽々なラブコメ主人公に一つ、耳寄りな情報を教えてやろう。あのアリスと呼ばれた少女達が母娘なのはもう知っているな」

 

イイ声で喋るショタ作家が私に話しかけてきた。

まぁ、知ってますよ。もうロリが彼の子供を産んでるくらいじゃ、私は驚かないよ。

 

「では、アイツらが、厳密に言えば、母である白い童女の方がどういう存在なのかは知っているか?」

 

「どういうって……だからロリでしょ?」

 

それは本質ではないと笑う童話作家はアリスちゃん(白ゴスロリ)の方を指を指す。

話に夢中になっていたのか、いつの間にかソーホーエリアの件の場所に辿り着いていた。

 

古書店から飛び出したナニか……アリス(白ゴスロリ)ちゃんの手元に吸い込まれるように浮遊してきたそれは……絵本……?

 

「ここにいると思ったわ。可哀想なわたし、ここにはありす(わたし)はいないのにね……。ふふ、自分で自分を名付けるなんておかしな気分……寝坊助さんな私、悪夢から覚める時よ『ナーサリー・ライム(アリス)』」

 

「…………ここは、どこ?ありす(わたし)は?あ……」

 

「?」

 

「せ、先輩!本が……アリスさんの手元にあった本が女の子になりました!!」

 

見ていた、見ていたとも!え、つまり!?

 

「さすがに気付くか。概ね合っているぞ。何の因果か、どこぞの奇特な奴が名を付けたおかげであの姿になっているが、『ナーサリー・ライム』の名の通り、元は創作、わらべうた、絵本のジャンルの一つに過ぎない!」

 

ま、まさか――!!

 

「隣にありすと呼ばれている子供がいる以上、真実は一つ!奴は本すらも孕ませたというわけだ!!はははははは、この俺ですら、罵詈雑言が思いつかない!あぁ、曇りなき称賛の言葉だけだ!創作物を妻にし、子供を産ませる!!二次を妊娠させる等、正に全童貞の夢とも言えるだろう!!これを褒めずして、何を褒める!」

 

 

ありす(わたし)ありす(わたし)なの……?それに、もう一人のわたし(アリス)?」

 

「いいえ、この娘はあなた(アリス)の知る私ではないわ。けど、わたしにとっては切っても切れない大事な娘。悪夢に誘い出されてしまった悲しいもう一人のわたし……このまま何もせず、消えるなんてバッドエンド、わたしはごめんなの。わたし達と一緒に来ないかしら?ねぇ、ありす(わたし)?」

 

「うん!姉妹が欲しいと思ってた所なのだわ。わたしがお姉さんね!ありすおねえちゃんって呼んでいいのよ!アリス(わたし)!」

 

「来る?どこへなのかしら……?」

 

「「絵本みたいに楽しい所!!」」

 

白色と水色の童女達にそれぞれ手を取られ、困惑しながらも笑みを浮かべる黒い童女。

3人目のアリスはその笑みの中に涙を浮かべていた、理由は自分でもわかっていないのかもしれない。

けど、その涙はきっと悪いものではないと彼女自身もわかっているだろう、でなければあんな眩しい笑顔は出せない。

 

うん、童女達の心温まるシーンにそれっぽいナレーションは付けてはみたものの私の心の中は一つの事でいっぱいになっていた。

 

 

 

 

 

本に欲情出来るのにどうして私に欲情出来ないんだよぉおおおお!!!

 

「うぉ!どうしたマスター!?無言で脇腹突き始めて、あ、ちょ、くすぐったい!!」

 

 

 

 

 

 




アリス母娘を見てのアンデルセンの一言「あの小娘共もどっぷりこの淫蕩魔王に誑かされているではないか。男の肉の味を知った身で純粋無垢を名乗るか」

話は変わるけど、親子丼っておいしいよね?











世界の果ての物語(ワールド・エンドコンテンツ)
ランク:EX
種別:対国宝具
使用者:アリス(白ゴスロリ)&ありす(水色ゴスロリ)
アリスとありすの二人で使用可能。一人では発動出来ない。
アリスが夫と共に過ごしたカルデアでのかつての現実、夢のような結婚生活。
ありすが父親に聞かされたカルデアでの夢のような話、実際に過ごしている家族生活。
彼女達の思い出、幸せ、夢、憧憬、あらゆる物を詰めた宝石箱のような宝具。
カルデア島より小さい面積であれば、そこを彼女達のマイホームと酷似した場所として再現可能になる固有結界。
街、そのものを取り込む固有結界とか空想具現化レベルを通り越して、異界創造レベルまで達しそうだが、愛があれば問題無いのです。イイネ?
かつて、人理修復で戦ってきた特殊な物を除くエネミー達をアリス達の友達として多数召喚も可能。その物量は本編で不明の怪機械の集団を蹴散らす程。ぅゎょぅι゙ょっょぃ。






グダおの子供を産んだ順番トップ3
1位:アリス
2位:マシュ
3位:スカサハ











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疾走する青春の桃色ジャンクフード ③(第4章)

一月に4話も投稿するなんて、いつ以来でしょうか。
感想、評価、閲覧、お気に入り、誤字報告、いつもありがとうございます。更新の燃料となっています。
第四特異点もそろそろ終わりが近づいてきました。










「ワタクシ、思うんですけどねえ~~~……『魔霧計画』、まぁ、この名前も遊び心はありませんが、それはいいでしょう!ですが首謀者を『M』『B』『P』っていうのはちょっと悪魔的にセンスが無いのではと、ワタクシ、メッフィーですし?一応『M』にもあたりますから、ミスリードを誘うという点では良いかもしれませんが、虐げられて喜ぶような特殊性癖はないのですよ?ゾォルケンさんにもう少しユーモアセンスがあればワタクシもサーヴァントのし甲斐があるのですがねぇ……クヒヒヒッ」

 

「来ましたか、星見の勇者達。『B』が倒された以上、ここへ来るだろうと、えぇ、わかっていましたとも、私のような悪逆は善なる者に見過ごられる事はないと」

 

「スルーは寂しいですねぇぇえええ!しっかし、団体様が到着したのですから、そちらを優先するのは致し方無い事でしょう!!えぇ『P』さん、貴方の「こう反省はしているけど、その色が他者には伝わらなく、意味深な言葉を呟きながら、満足気に倒される」芸の見せ所ですよぉ!よかれと思ったら何もかもが許されるわけじゃないですからねぇぇえええ!!」

 

チャールズ・バベッジが語っていた地下深く、聖杯があるという所まで向かっていた私達。

地下鉄の入り口に、二つの影が私達を待ち構えていた。

道化師のような格好でヤケにテンションが高い奴と、対照的に落ち着いた雰囲気を白いローブで長髪の美青年。

発言から察すると、多分敵だと思う。

 

「迷う事なく、世界を救う為の道を邁進する……それでこそ、です……。貴方達は正しく正義の味方なのでしょう」

 

性技の味方?

 

「ごちゃごちゃうるせぇな。で、お前らは敵なのか、それとも味方か?こちとら暇じゃねぇんだ。さっさと道を開けろ」

 

痺れを切らしたモードレッドが剣を抜き、問い掛ける。

その問いに答えるか如く、数色の宝石が『P』と呼ばれた男の周囲に浮かぶ。

戦闘体勢に入った彼が短剣を構えたが……まさか、クラスはセイバーとかじゃないよね?どう見てもキャスターっぽいですし。

 

「残念ですが、貴方方とは友人にはなれない。悪は正しき者に滅ぼされてこそ、ですから……」

 

「えぇ――、ワタクシは味方ですよ。ホントホント、決して数的も質的にも劣っているから今だけ裏切って、後で背後から爆弾ドカーンッ!とかは考えていませんよ!!ワタクシ、善なるメッフィーですから!!え、信用出来るワケがない?これはごもっともぉぉっ!!」

 

うちのグダおが正しき者なのかどうかはちょっと首を傾げる所だけど、そっちがその気なら容赦はしない。

『P』!あなたはグダおの前でシリアスになり過ぎた!!

 

さぁ行って!性技の味方!『イカれた幻想(ブロークン・シリアス)EX』の見せ所だよ!!

 

「星のように!!」

 

「あぁ!あきれうす(アリス命名)が!」

 

私達と行動を共にしていたエネミー達の一体。見上げる程に巨大なヤドカリを右手に掴んでそのまま、敵サーヴァントへ突っ込んだ。

重量物を担いでいるとは思えない程に軽やかなスピード!

そして、そのまま大ヤドカリを詠唱の間すら与えず、『P』に叩き込む!

 

「ぐうあああっぅっ!!」

 

模倣(まねっこ)宝具『たらすく(簡易版)』!!」

 

―――ドドドドドドドドドッッ!!!

 

連打、連打、連打、連打、連打、連打、連打。

下敷きになった敵サーヴァントにヤドカリごと拳の猛撃を叩き込む。見ているこっちが思わず、目をつぶってしまいそうになる衝撃。ん……? 今、水着姿のステゴロ世紀末聖女の幻覚が……。

 

「逃げ場はないぞ!!鉄・拳・性・裁!!」

 

鉄の拳と生の拳。殴打の嵐で『P』と呼ばれたサーヴァントは大ヤドカリの殻ごと粉々になった。

『P』とあきれうすが死んだ!

 

「まぁ、キャスタークラスが特に準備もなく、近接タイプのサーヴァントの前に出ればこうなりますよねぇ。…………アッ、ワタクシもキャスタークラスでしたぁぁぁ!!ガフゥゥッ!!」

 

特に加勢するわけでもなく、喋り続けていた道化師のサーヴァントの腹部にグダおの籠手が突き刺さる。

そして、敵の体内から雷鳴が轟く。恐らく、グダおの籠手からだろう。

真面目に戦えばこうまで頼りになるのになぁ……。セクハラと、性癖と、奥さんがたくさんいるのさえ無ければな――――、至極真っ当なサーヴァントなのに。

 

「ふぅむ、鋼鉄の強度を持った拳を尋常ならざる膂力で敵の体内に叩き込む。後はガンドレットから迸る雷撃で敵の体内を霊基ごと焼き尽くす!!『あっという間に終わってしまいました(Tis brief, my lord)』。背筋がゾッとする程の容赦の無さ!今更ながらですが、吾輩、こちら側に拾われて良かったと安堵しています!」

 

「アガガガガガ、ハヒヒヒヒ……ま、まなりませんねぇサーヴァントというのはぁ…………貴方も随分と窮屈そうに、見えますがねぇ……本来ならば……もっと自由に振る舞えるのでは……?クヒヒヒヒ、グヘェエッ……」

 

意味深な、そして不気味な嗤いを残して二人目のサーヴァントは消えた。

もう、私達を阻む者は何もない、ロンドンの地底まで歩みを進めるだけ。

しかし、あのピエロっぽいサーヴァントの言葉……いや、コイツにこれ以上フリーダムになられても困るわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「地下トンネルを抜けるとそこは地下闘技場だった……いつからこの特異点は地上最強を決める格闘漫画になったんです?でも、何故だかここからは男臭さというよりは女の戦い臭がしますねぇ……狐の勘的に……」

 

『ここもアリスちゃん達の宝具の影響を受けているって事だろうね。元はもっと禍々しい場所だったと私は予想するよ。ロンドンの地底奥深くにある場所なんて曰くつきに違いないから、ね……その証拠にほら、闘技場の中心においでなさってるじゃないか』

 

 

ようやく長い地下通路を抜けたその先、ローマで見たコロッセオよりも格段に広く、大きい闘技場があった。アリス達母娘とジャック(エプロン)は「大惨事正妻戦争の時間なのだわ!」「性杯を求める戦いなのだわ!」「おかあさんにかいにんさせられる?うむ?」とはしゃいでいたが……。ジャック(エプロン)ちゃん、最後のはシャレにならないよ……。

そして砂のステージに足を踏み入れ、目が回ってしまうぐらいに大規模な観客席に囲まれた私達の目の前……闘技場の中心部にそれはあった……。

 

蒸気を吹き出し、駆動し続ける巨大蒸気機関……。

これがチャールズ・バベッジが語っていた『アングルボダ』、すなわち聖杯。

 

そして、それを守るように鎮座しているのが。

 

 

 

「ここまで、飲み込む固有結界……。なるほど、規格外に過ぎる……。標準レベルのサーヴァントでは敵わぬのは自明の理であったな……。貴様の仕業か、王ですら見通せないネームレスのサーヴァントよ……」

 

黒き醜悪な肉の体を持った巨大な柱。

圧倒的なまでの魔力量。この特異点を作り出した黒幕、魔神柱。

 

「いや、うちの自慢の嫁さんと娘の力だよ…………バルバトスゥゥゥゥゥ!!」

 

「ぶい!なのだわ!」

「パパの目がギラギラと輝いているのだわ!お宝を見つけたフック船長みたい!」

 

『魔神柱……!?…………う――――ん、けどあれ?なんでだろう?そこまで危機感を持たなくてもいい気がするぞ?』

 

そう、ロマンの言葉には概ね同意だ。

だって私達は前の特異点で水平線の彼方まで埋め尽くす魔神柱の群れと遭遇したから!

たかだか魔神柱一体、サイコな魔法少女に比べれば可愛いもんだよ!!

 

「我が王は貴様の事に関して何も答えをお返しにならなかった……私はそれをフラウロスのように楽観視する程能天気ではない……。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!故に!私は、人の身で貴様達の前に現れるような慢心は見せぬ!我が悪逆をもって、善なる者を滅ぼすと!!既に召喚の儀は終わらせてある!!さぁ、現れよ!!『雷電神話――星の開拓者』、『黒き暴虐――嵐の王』!!」

 

『極めて強力な魔力反応が二つ!!来るよ皆、衝撃に備えてくれ!!』

 

 

「もっとだ……!もっとよこせバルバトス!!」

 

「止まりなさいよ!グダお!!」

 

しがみついて制止しようとしている所長を引きずりながら魔神柱へ突撃をかまそうとしているグダお。

あぁ、もう! うちの子はどうしてバーサーカー化してるんですか!? うぇいと! うぇいと! 突っ込もうとしない!! レフ教授の時と同じ感じだよ!! 何か因縁でもあるの!?

 

「皆さん、下がってください!!宝具展開します!『仮想宝具 疑似展開/人理の礎(ロード・カルデアス)』!!」

 

「こきれうす(ありす命名)×100!出番なのだわ!!」

 

暴威となって襲い掛かる爆発的な魔力の衝撃に備えてマシュが盾を構える。

ダメ押しと彼女を助けてくれるかのようにありすの号令で小ヤドカリの群れが私達の前に集合し、壁となってくれた。

吹き飛ばされてもおかしくない魔力の波、だが、それを防ぐのは私達を何度も守ってくれた自慢の後輩の盾。これぐらいで揺らぐ事はない。こきれうす達は無残にも吹き飛んでいたが。こきれうす×100が死んだ!!

 

 

 

「ふふ、ふはははははははは!この私に文明を滅ぼせというか!!人類の叡智が結集した、天才二コラ・テスラに!!哄笑するしかないな!!ここまでの皮肉があるか!!うむ!私が知るロンドンとはかなり様変わりしているが、些細な事である!!さぁ、さぁ、さぁ!さぁ!我が雷を止めてみせよ!!」

 

「随分と懐かしい顔がいる。そうか、モードレッド卿、卿が人理を守る側で、私が滅ぼす側か……数奇な運命もあったものだ……」

 

「っ!!」

 

存在感をどこまでも示す高笑い。立ち振る舞いの全てが自信に満ちあふれ、全身に雷電を纏っているサーヴァント。

そして、黒き鎧に身を包み、鎧と同じ色を持つ、巨大な馬に騎乗する騎士。凶兆をもたらすかのような槍、それを手に金髪のサーヴァントはモードレッドに語りかけていた。

 

対峙しているだけでもわかる。あの二つはどちらともトップクラスのサーヴァント……加えて魔神柱。

今、このアリスちゃん達の宝具によって歪んだフィールド、ロンドンの底深い場所で三つのカードが切られた。

 

「さて、我々は」

「後ろに下がらせて頂きます!!」

 

うん、君達(作家組)には期待していない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二コラ・テスラ

   vs

金時、玉藻の前、ジャック(エプロン)、アリス(非処女)、ありす(非処女)、アリス(処女)

 

 

 

 

「厄介な霧だなぁ、オイ!」

 

「ははははははは!!そう言うな!!Mr.ゴールデン!!私とて多勢に無勢だ!!これぐらい目溢しして欲しい!何せ、只の愛らしい少女達かと思えば、ここまで強烈なレディ達だとは思わなかったのだから!!」

 

アリス達母娘の宝具による『世界の果ての物語(ワールド・エンドコンテンツ)』。

そこから絶え間なく召喚される数多のエネミー達。

テスラが展開する活性魔霧に消滅させられながらも、その物量で確実に魔霧の鎧を削っていた。

 

「戦いは数!なのだわ!!」

 

テスラの雷電によって活性化した魔霧、本来ならサーヴァントですら霊基に多大な影響を受け、行動不能に陥る代物。

だが、アリス母娘、ジャック。彼女達の肉体はもはやサーヴァントにあらず、「性の開拓者」たるグダおから存分に愛を受け取った幼女達が活性魔霧から受ける影響は微々たる物だった。

 

「この霧の影響を!受けずに!こうも動き回る!!一体、君達の体は何で出来ているのだ!?リトルレディ達よ!!」

 

「ラブ&」

「ホワイト!に決まってるの!!」

 

「おかあさんのおかあさんがたくさんだよ!!」

 

「ムムム、少女達の詩的な表現は中々に難解だ、なっ!ぐぬぅっ!!」

 

多分、わからなくてもいいと思います。

 

アリス達の宝具によってポコポコ産まれるエネミー達、テスラの雷威によって吹き飛ばされていくが、それを踏み台にして、宙に浮かぶ彼の周りを縦横無尽に駆け回るジャック(エプロン)。ヒット&アウェイの要領。調理用包丁で切り裂き続け、テスラに確かなダメージを与えている。

 

 

「これ私達、いります?…………ん?おや金時さん、その左腕につけているのはさっきまで、厄いイケメンさん、略して厄メンさんが付けていた籠手じゃないですか。駄目ですよ、借りパクは」

 

「んなダッセぇ真似するかよ!グダおの旦那があのライトニングな奴と戦うのに持ってけってな!後で返すっつーの!」

 

「え――、金時さんだけずるいですねー。私にも戦闘が楽ちんになる便利グッズを寄越して下さいよ――」

 

「あるのだわ」

「これをどうぞ、狐さん」

 

「いや、パラソルと水着じゃねぇですか!なんです!?あのアッパーな金髪サーフィンっ娘と同じ感じになれとでも言うのですか?こんな所で生着替えなんてしませんよ!!まぁ、貢物はもらっておきますが」

 

「残念、弱点をピンポイントなのに」

「槍クラスからの、去勢拳なのだわ」

 

 

金時が装着したグダおの『全戦局対応型直流交流万能籠手』。ダ・ヴィンチちゃんの変態技術が詰め込まれたそれは、使い手の腕の大きさによって変形する。金時の剛腕にもピッタリとハマった。

 

そしてこの籠手、名前から察する通り、Mrすっとんきょう&凡骨とお互い反目し合っている筈の二人の技術も加わっている。共同制作という形で。

 

「んんんぅ?」

 

そして、世界は異なるといえど、見間違う事ないその技術。少女達の猛攻で油断を許さない状況でテスラの動きは止まってしまった。そこが致命的な隙になる事を知っていても。

 

「――――馬鹿な」

 

天才故の早い理解。遠目で映るそのガンドレットは自身が作った記憶はないが、間違いなく自らの手が加わっていると。

そう、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()があるという現実にテスラは大き過ぎる衝撃を受けた。

 

「ジャバウォック!!」

 

固有結界にもう一人の友達が現れる。

この特異点で出会ったもう一人のアリス(黒ゴスロリ)。

自分も力になろうと奮起したのか、アリス達母娘の宝具の影響を受けたのか、彼女達の宝具では召喚出来ない怪物。「鏡の国のアリス」で登場する正体不明の化け物「ジャバウォック」をテスラの頭上に召喚させた。

 

「うぉぉおおおおおお!!」

 

本調子なら全ステータスEXを持つ、ジャバウォック。まだアリス(黒ゴスロリ)が扱いきれていないという点もあるが、それでも現段階では並のサーヴァントでは倒す事が容易ではないスペックを持つ。地上へと押し潰されたテスラ、『人類神話・雷電降臨(システム・ケラウノス)』で吹き飛ばすが、そこに最後の一手が迫った。

 

「おうおう、ここまでお膳立てされて何もしないワケにはいかねぇからよ」

 

宝具発動後の硬直。かの天才は自身の目の前にある発明品に未だ困惑し続けている。

 

「メタルにスパーキング!!」

 

構えるはマサカリではなく、ガンドレット。

 

「クレイジーにゴールデン!!」

 

籠手の直流、交流が見事に合わさった雷電と雷神の子たる彼自身の雷が合わさり、力となる――――!

 

「吹き飛べ、必殺!『黄金腕撃(ゴールデンインパクト)』!!」

 

周囲一帯を消し飛ばしかねない強烈な一撃が消耗していたテスラに襲い掛かった。

 

「あり、えん――――」

 

 

 

対雷電神話――星の開拓者戦、決着。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルトリア・ペンドラゴン・オルタ・ランサー

        vs

モードレッド、モードレッド(水着)

 

 

 

 

「潰すか」

 

その槍は振るう度に吹き荒れる暴風。

 

「砕くか」

 

一突きが敵の絶命に足る、冷酷無比な一撃。

 

「けっ、そうまでしてオレを殺してぇか。そんなに国を滅ぼしたオレが憎いか!アーサー!!」

 

「いやアレはただ単に聖杯で召喚された影響でオレたちの敵として振舞うしか無いだけだろ。槍の黒い父上だって世界を滅ぼしたいわけねぇだろうし」

 

「…………お前、何でこっちに来た」

 

マジレスするモードレッド(水着)に問うモードレッド。

重装備と軽装備、反する姿の二人のモードレッドが嵐の王と相対していた。

 

「あ?俺が『モードレッド』に決まってからだろ。それに、オレの旦那はあんな雑魚には負けねぇからな。心配はいらねぇ」

 

「男に媚び売っている奴がいても邪魔なだけだ」

 

「あははははっ!やっぱし愛も恋も知らねぇお子ちゃまだな!言っとくが、今の俺は生前含めて一番の全盛期だ。剣を捧げるに足る王であり全てを捧げるに足る夫、そして守るべき子供もいる!!こうなった()はつえぇぞ!!こうして槍をぶんぶん振り回している父上だってオレからすれば、こっちに沢山いる父上の一人に過ぎねぇからな!!」

 

「子供……?父上が、たくさん……?」

 

モードレッド(水着)は朗らかに笑い、サーフボードを握っていない方の手にクラレントを出現させる。

盾たるサーフボード(ブリドゥエン)と剣たるクラレント。ビキニ姿だとなお不格好かもしれないが、戦闘においてのバランスは良いだろう。

 

「二人の叛逆の騎士、そして王殺しの二振りの剣……私を仕留めるには十分過ぎる要素が揃っているな」

 

「おうよ!ならもういっちょ、面白いもの見せてやる!!」

 

モードレッド(水着)は考えた。海が無ければ、飛び込む事は出来ない。波が無ければ、サーフィンも出来ない。

だが、サーファーとはそこまで不自由な生き物なのか?違う、サーファーはもっと自由であるべきだと。

凪ならば、魔力放出を起こせばいい。凪以前に海がない?なら、サーフィンが出来るほどの水を呼び起こせばいいだけだ。

 

「『燦然と輝く奥様気分(クラレント・チューブライディング)』!」

 

水のないところでこのレベルの水遁を……!

サーフボード(ブリドゥエン)を縦に叩きつけ、宝具を開放したモードレッドの周囲に大洪水レベルの水が突如として現れる。

それを操るはサーヴァント界一のサーファーを名乗る彼女。その大量の水を束ね、幾つもの水流としてオルタ・ランサーに叩き込む。

 

「こ、れはっ……!?」

 

消し飛ばそうとその水流に槍を振るうが、嵐の王の魔力放出を伴った攻撃は、まるで生きているように蠢く水流によって逸らされる。剛ではなく、柔。まるで波に乗るサーファーのように。その宝具全てはオルタ・ランサーの攻撃を乗りこなしていた。

 

そして槍によって生み出された暴風を乗り越え、オルタ・ランサーを飲み込む水流。

 

「たかが、水遊び程度で……!!」

 

「遊びに本気になれねぇ奴は何をやっても、ダメだぜ!そらぁっ!!」

 

さらに自身が操っていた水流の上をサーフボードを使いライディングしていたモードレッド(水着)はクラレントの剣先から赤雷を水流全てに流し込んだ。

雷属性の生きた大波、全て愛と魔力と宝具によって発動されたこそ出来る大技。

 

水の檻の中で、赤雷を全身に受けるオルタ・ランサーは遂に宝具を開帳する。

 

―――突き立て!喰らえ!十三の牙!!

 

黒く変質した聖槍。放たれる神造兵器。

 

―――『最果てに輝ける槍(ロンゴミニアド)!!』

 

水流全てごと、敵を喰らい付くそうと渦巻く漆黒の暴虐。

だが、嵐の王の目の前には信じられない光景があった。

 

暴風の如き、聖槍の一撃は。その全てが水流の波によっていなされていた。

オルタ・ランサーの宝具はモードレッド(水着)の宝具によって波が巻くことで出来る空洞、すなわち極上のチューブと化していた。

 

「なん、だと……」

 

「手、抜きまくってる宝具ならそうなるに決まってんだろ、あんまし所帯持ちナメんなよ。そして――――」

 

チューブという名の水の通り道。オルタ・ランサーまで続く、その道を駆け抜ける者がいた。

 

モードレッド(水着)のように水の上を自由に行き来する術が無い彼女は魔力放出でロケットよろしく無理矢理そこに飛び込むしか無かった。

 

「オレばっかしに注視し過ぎだぜ」

 

クラレントを振りかぶり、乱暴な手段でアーサー王の目前まで迫る!

 

我が麗しき(クラレント)――」

 

「なるほど、たった一本でも相打ちとなったのだ」

 

父への叛逆(ブラッドアーサー)!!」

 

「二本相手では、こうなるのはわかり切った結末だったか……」

 

アーサー特攻を持つ、ブれる事のない真っ直ぐな赤雷の一撃は人類の敵として召喚されてしまった嵐の王を打ち倒したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「不格好だなオレ、波の乗り方がまだまだだぜ。もっと父上やマスターみたく水の上を走れるぐらいにはなれねぇと」

 

「うっせぇ」

 

お互いの宝具も消え、残ったのは水浸しのモードレッドといい汗かいたぜと満足気なモードレッド(水着)。

 

「けど、波乗りもいいもんだろ?」

 

「まぁ、悪くはなかったな………………。あ、ちょっと待てお前に一つ聞きたい事があった」

 

「なんだよ」

 

こちらの戦いも終わり、マスターの所へ合流しようとしたモードレッド(水着)を呼び止める。

 

「お前(オレ)が、まぁ、色々と納得して、アイツの、その……お、女つーか、お、お、お、奥さん……みてぇなのになったのはよくわかった。強制されたわけでもねぇ、てめぇで決めた事なら、文句はねぇ」

 

「おう」

 

「……なぁ、お前らのマイホームとやらにも父上がいんのか?」

 

「おう、いるぜ。たくさん」

 

「まさか、お前と同じく結婚してるとか言わねぇよな?」

 

「?全員してるぞ。ガキもこさえてるし」

 

「……………………………………やっぱ、あの黒髪のやつ、殺すわ」

 

「待て待て待て待て待て待て待て待て!!落ち着け!」

 

「邪魔すんな!!」

 

「お前の為に止めてんだよ!次、粗相をしたら、最初の時みたくお尻の穴、突かれるぐらいじゃ済まなくなんぞ!!女とか騎士とかサーヴァントの尊厳を失うアヘ顔晒す事になるわ!オレも何が悲しくて違う自分がそうなるのを見なきゃいけねぇんだよ!!」

 

「は――な――せ――!!」

 

「そういうのはキャメロットまでとっておけって!!」

 

 

 

対黒き暴虐――嵐の王戦、決着。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔神柱バルバトス

    vs

藤丸立香、マシュ、所長、グダお

 

 

「ギャハハハハハハ!!タノシイ!タノシイ!マジンチュウガリタノシイ!!ソザイソザイモットモット!タクサン!タクサン!」

 

 

 

対魔神柱――バルバトス戦、決着。

 

 

 

 

 

「悲しい戦いだったね……」

 

「やっぱりバーサーカーよアイツ」

 

「え、えーと、グダおさんを呼び戻さなくてもいいんでしょうか?」

 

いいんだよマシュ、魔神柱の死骸の上で狂喜乱舞しているアイツは、その内しれっと戻ってくるから。

まぁ、なんであれ、私達も相手が魔神柱だろうと、問題なく勝利を掴めるようにはなったね。

 

『色々とツッコミ所はあるけど、結構イイチームなんじゃないかな?』

 

『そうだね、頭脳担当はマスターでもある立香ちゃん。防御担当はシールダーのマシュ、攻撃担当は規格外のグダお君』

 

「あれ、私は?」

 

『マリーはお色気担当じゃないかな?』

 

「それいる!?」

 

ダ・ヴィンチちゃんの言葉に打ちひしがれるチョロガマリー所長。

特異点では常にドスケベスタイル、そしてグダおに一番早く喰われた点を考えると仕方ないよね。

 

「ふぅ――――――……あれ、どうしたの?」

 

「所長がナイーブになっているいつものだよ。ていうか素に戻るの早いな」

 

「今は倉庫の中も十分過ぎる素材があるし、今更、あんな必死になってもぎ取りに行く必要も無いんだけどね、これはもう昔の癖というか、条件反射みたいなものかな?」

 

それはもしかして、生前の逸話的な呪いか何か?結構ガチな話?弱点とかになっちゃうの?そういえば、私、グダおの事、知っているようでまだそこまで知らないような……。いやドスケベでセクハラで多妻国家で規格外でカオスなのは知ってるけどさ。

 

「いやいやそんなシリアスな話でもないから。マスターってば心配症」

 

「ええい!頭をぽむぽむするな!女の子の髪に対して気安い!!」

 

「おっと、ごめんね」

 

あ、止めるの……。むぅ。

 

落ち込んでいる所長の傍に寄り、脇を掴んで高い高いして慰めるグダお。

真っ赤にしてまんざらでもない感じであざとくテンパるオチガマリー所長。

その周りをオロオロとするマシュ。そしてツッコミと少しのイライラを解消する為に彼の所まで走る私。

 

まぁ、ロマンの言う通り、結構イイチームなんだろうさ。こうして、4つ目の特異点も無事攻略出来たのだから。

あ、そういえば聖杯を回収しないと――――。

 

 

 

 

「お見えになった。我らが王が…………イレギュラーを消し去ろうと……御身自ら……」

 

残骸の魔神柱から、そんな声が聞こえた気がした。

 

 

 

 






次回、対憐憫の獣――グレートトナカイマン戦。










『全戦局対応型直流交流万能籠手』
グダおがかつてカルデアにいた時、ダ・ヴィンチちゃん、テスラ、エジソンによって作ってもらった籠手。
ダ・ヴィンチちゃんの「まぁ、直流も交流も懐が狭いからね――、相反する技術すら抱え込もうとする漢気なんてないよね――」という煽りから「「できらぁっ!!」」とあの二人も共同制作という形で参加。
鋼鉄の強度からの一撃や迸る雷撃だけでななく、実は装着した持ち主の神経や魔術回路に雷電を流し込み、刺激して、反応速度や、身体能力も格段と向上させる。
………………普通ならバーベキュー状態になると思うのですが。まぁ、オートマチックと雷は男のロマンという事でここは一つ。





燦然と輝く奥様気分(クラレント・チューブライディング)
ランク:EX
種別:対軍宝具
使用者:モードレッド(水着)
卑劣な宝具だ……。
囮役はもちろんアーサー王が行く。オレはこれからの家を守るマスターの正妻だからな。なお、この台詞を吐いた後、数多のカリバーンとロンゴミニアドで折檻される模様。
波が無ければ、波を起こせばいいじゃない。水が無ければ、水を生み出せばいいじゃない。そんなトンデモ理論で生み出されたどこでも手軽波乗り宝具。
相手の攻撃を自由自在に操る水流で相殺するのではなく、受け流すのがミソ。敵、全ての攻撃を波とし、飲み込み、サーフィンし、クラレントを叩き込むモーさんらしいアクロバティックな戦い方。




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疾走する青春の桃色ジャンクフード ④(第4章)

11月最後の投稿。セイレム実装までの時間潰しにどうぞ。
12月はクソ忙しくなるので、今月のような投稿出来ないかも……けど、僕頑張るよ。










R18小説の中でお気に入りの数が3番目になりました。ウレシイ、ウレシイ、ウレシイ。



 大丈夫だと思っていた。

 

 

 彼は……グダおはどんな時でも、負けないって。色々と最低な所もあるけど、最強のサーヴァントなんだって。

 

 

 冬木で召喚した時も、目の前のシャドウサーヴァントを私達を覆っていた絶望そのものも一緒に吹き飛ばすように現れてくれた。

 

 オルレアンでも、竜の魔女が絶対の自信を持っていた邪竜ファフニールを一刀のもとに斬り伏せたって聞いた。

 

 ローマでも群がる連合兵を拳で薙ぎ払い、グッズ販売では群がるファンを捌き続けた。

 

 大海原、三つ目の特異点では、トロイアの大英雄をものともせず、無茶をした私を助けてくれた…………ま、まぁ、やり方はちょっとアレだったけど。

 

 そして、このロンドンでもサーヴァントだろうと、魔神柱だろうと、鎧袖一触。苦戦の素振りすら見せずに、私がちょっと寂しくなるぐらいにグダおは強かった。

 

 もしかしたら、文句を言いながらもどこかで甘えていたのかもしれない……彼の滅茶苦茶さに。慢心していたのかもしれない……彼がもっと弱かったら、私ももっとマスターらしくサポート出来たのかもしれないって後で自分自身をぶん殴りたくなるぐらいに不謹慎な事を考えて…………。

 

 

「グダ、お…………!!」

 

「グダおさん……!!」

 

 あぁ、ならきっとこの状況は私の見通しの甘さが招いた事なのかな。

 

「カルデアからの通信も、効かないっ!」

 

 その男が現れた時、今までの連戦連勝から楽勝ムードでもあった私達の空気は一変した。

 

 

 

 自らをグランドキャスターと名乗る魔術王……。

 

 いや、違う。

 

 七十二柱の魔神の集合体。

 

 

 白髪で褐色肌のかろうじて人間らしかった姿は、悪辣極まりない表情を全身に表現したかのように変貌した。こちらを射殺さんと開く胸部の燃紅の眼球、膝を屈してしまいそうになる威圧感を与える黄金の角。

 

 

 

 ビーストⅠ――『憐憫』の理を持つ獣。ソロモン王の内側に存在し続けた魔神達の集合体……その名は「魔神王ゲーティア」

 

 筋骨隆々な肉体を持つその獣は別次元の生物として私達を……正確に言えば、グダおを消滅させようとこの特異点に訪れた。

 

 ゲーティアは語った。

 

「疑問ではあった。時間軸の流れから外れたカルデアが私の眼から逃れ得るのは納得しよう。だが、何故、たかだか一介のサーヴァントの正体が掴めなかったのかと」

 

 魔神王が語る計画。人理焼却の目的というよりは手段でもあった。

 逆行運河/創世光年。特異点を作り、人理を焼却し、そのエネルギーを束ね、新たな星を作る。

 スケールが大きすぎて、正直な所ついていけなかった部分もあった。だけど、ゲーティアはこの計画に一切の不穏分子を残してはならないと激憤していた。

 

「私の観測外、別次元の世界において、我々を下し、人理修復を成し遂げたマスターがいるだと。そんな刹那の可能性を、敗北を甘んじて受けた自分がいる……!たとえ、私がいるこの世界とは遠い話だとしても、許せる筈がなかろう!!敗北した自身にも!その世界そのものにも!!この計画には、人類をやり直す計画には!0.00000000000001%のミスも許されぬのだ!!」

 

 グダおがこの特異点で着ていた黒学ランはボロボロになっていた。本人は顔だけはどこ吹く風だけど、引き裂かれた衣服から覗かせる傷が生々しい、私の回復魔術も焼け石に雫状態だった。

 

 わかる。魔術の素人の私でもわかる。桁が違い過ぎる。目の前で呼吸をする事すら辛い。

 魔術師の名門である所長やデミサーヴァントのマシュは私よりもその絶望的過ぎる差を感じ取っている筈。

 

 金時君も、玉藻さんも、シェイクスピアも、倒されてしまった。

 

 身も心もボロボロの私達3人に加えてモードレッドとアンデルセン。

 そして、庇うように目の前で仁王立ちをするグダお。

 

 

「ふぃ――――、まったく一張羅が台無しだ……。いや、サーヴァントの服に一張羅って表現もおかしいか?魔力で元に戻るのなら『大嘘憑き』とか言うべきなのかな?黒学ラン的には」

 

「強がりでも無い、か……貴様は文字通り、私を前にして無駄口を叩くほど余裕を保っている。それは、ここではない世界で我々を下した成果からか?あぁ、成程、名も知らぬネームレスのサーヴァントよ。未だ貴様の正体は千里眼でも掴み切れぬ。だが、ここまで対峙して何もわからぬ程、知能は耄碌はしてはいない」

 

 冬木の時と同じだ。震える私達の前にグダおがいる。

 同じ、あの時と同じ、何も心配は無いって今も笑っている。

 

 

「人の旦那に何してんだ!この小便野郎!!」

 

「おっかないトナカイマンに!」

「お仕置きなのだわ!!」

 

「かいたい、カイタイ、解体ッッッ!!!」

 

 並のサーヴァントでは勝負にもならない。

 だが、彼女達の妻は夫と同じく規格外の域。トップクラスのサーヴァントですら蹴散らされてしまった魔神王に未だ戦闘を続行出来ているのはグダおの奥さん達だけだった。

 

 

「不明瞭、不確定、理解不能、何故たかだか数騎如きに我々が押されている!?」

「奴らの霊基は何で出来ている?このエネルギーはサーヴァントのレベルではない……!」

「我々、魔神柱に匹敵する程の熱量!こいつらは……!この女共は!英霊ではない……!」

「解体される!(魔神柱でありながら!)」

 

 

「都市すらも飲み込む固有結界か…………。喜べ、カルデアの者共よ。この宝具が無ければ、既に戦いの余波でこの特異点はとっくに崩壊していた。我々と勝負の舞台に立てているのはこの女共だけ。だが、当然の事でもあるか。英霊であらず――――()()()()()()ともなれば、魔神柱の群れにも匹敵するだろうよ」

 

「え…………人類悪の眷属!!」

 

「じゃあ、コイツは……?」

 

 

「むぅ――!眷属という表現は的確ではないわ!」

「情報の伝達に齟齬が発生するの!」

「わたしたちはおかあさんのおかあさんなの!!」

「ワイフと呼びな!!白筋肉のトナカイマッチョ野郎!!」

 

「ぐぅっ……!!貴様らの戯言も、抵抗も、そろそろ不愉快だぞ!!眷属共!!」

 

 彼女達と未だ戦闘を続けているゲーティアの口から衝撃的な事実が出る。マシュとモードレッドの驚愕に染まった声色。

 グダおの奥さん達が人類悪の眷属と表現される、ならば必然的にグダおは……。

 特に顕著な反応が無いのはアンデルセン君と…………所長、さてはアナタ知っていましたね?オイ、目を逸らすな。

 

「存在せざるビーストと言うべきか。ネームレスのサーヴァントよ、要するにここと交わらざる世界で私はもう一つの人類悪に滅ぼされたのだろう?人類を救うべき者達に人類悪が現れる……。はっ、誠に皮肉な話だ!!貴様等は自分達に力を貸してくれている者の正体も掴めなかったのか!!ははははははははは!!どこまで無知蒙昧か!!」

 

「カルデアというのはとことん人類悪に縁があるらしい。味方サイドにも敵サイドにもビースト……。まるで獣のバーゲンセールだな。作家としてはインフレに次ぐインフレはどうかと思うが……」

 

「フォウ…………」

 

 ゲーティアの嘲笑が事実を突く。確かに私達は彼の事をまだ何も知らない。

 私と同じで、カルデア唯一のマスターとして人理修復の旅に臨んだ。そこからどうして、サーヴァントに……いや、人類悪になったのかは知らない。でも、そこはいい。これから知る機会はたくさんある。無知は罪じゃない。知ろうとしない事が罪。その蔑みは別に痛くとも何ともない。

 

「厳密に言えば、お前を滅ぼしたのは俺じゃないんだけどね、ゲーちゃん…………」

 

「死ね、死ね死ね死ね死ね死ね。どことも知らぬもう一人の自分の敗北、その負債を今ここで文字通り消し去ってくれる。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()など、取るに足らぬ」

 

 だけど、その最後の言葉はマスターである私に致命的なダメージを与えた。

 

 まだ、私はサーヴァントという仕組みを理解していなかったらしい。ビーストという存在は未だ掴み切れていない……けど、生前より弱い?あんなに頼りがいがあったグダおが?サーヴァントになったせいで?

 

 

 ―――ま、まなりませんねぇサーヴァントというのはぁ…………貴方も随分と窮屈そうに、見えますがねぇ……本来ならば……もっと自由に振る舞えるのでは……?

 

 じゃ、じゃあ、私が……呼んだから?グダおを召喚してしまったから?

 

 ―――問おう、YOUが俺のマスターか。

 

 今、目の前で彼が傷だらけになっているのは私のせい……?

 

「全くもって理解できぬ。何故、そのような無価値で無意味で無能で塵芥のような人間の声に応じた。ソイツは今まで貴様の足を引っ張る事しなかった筈だ。現に今でさえ、何も出来ずに貴様の後ろで震えるだけ。悲劇だな。そんな何の才能も無いマスターの召喚に応えてしまったのは……」

 

「その言葉は断固として否定させて頂きます!先輩は無価値ではありません!今までも、私とグダおさんのマスターとしてサポートし、諦めず、前を向いて、共に歩んできました!!」

 

「貴様が眷属を数人しか呼び出せぬのもサーヴァントという格に落とされているからであろう?」

 

 ボロボロになりながらも否定するマシュの声。

 けど、私は何も言い返す事が出来なかった。だって今の状況はまさしくゲーティアの言う通りだったから。

 

 私がこれまで、必死に彼をサポートしてきたのも只の自己満足だったのかな……。

 本当は彼だって、私の助けなんか無くても……。いや、むしろ私がサーヴァントとして呼んでしまったからこんな痛々しい姿に。

 

 視線が下がる。瞳が悔しさと悲しさと無力感で滲む。

 この絶望的な戦力差にじゃない、ゲーティアの言う事に何一つ否定出来ないのが、グダおの足を引っ張り続ける事しなかった自分が惨めで……。

 

 駄目だ。グダおの顔も見れないな。

 

 

 ―――ギュッ……。

 

 

「あっ」

 

 

「わかってない。まるでわかってないなぁ……ゲーちゃん」

 

 暖かくて、安心感があってどこまでも浸っていたくなるような温もりが私を包む。

 

「このマスターが無能?はははははははっ!!節穴なのはフラウロスだけじゃなかったみたいだな!」

 

「何……?」

 

 私達よりも痛々しい姿になっているグダおが余裕たっぷりにいつもの不敵な笑顔で私の肩を抱いていた。

 

「真名も!クラスも!経歴も!不明なサーヴァントを信頼し!」

 

 ―――君は無理矢理ではしないでしょ……それに数は多かったけど、君とその…………ゴニョゴニョした娘達、皆心の底から幸せそうだったもん。そういう経験がない私にもわかるぐらい君に愛されて嬉しいって顔してた。

 

 

「好き放題に滅茶苦茶やっている俺を見捨てる事もなく、諦めるのでもなく、真っ正面からぶつかってツッコミを入れてくれる!」

 

 ―――そうだね!特異点は救われたね!めでたしめでたしだね!過程から目を瞑ればねぇ!お前はあれなの?真面目にやったら死ぬ病気でもかかってるの?何かやらかさないと霊基が死んじゃうの?

 

 ―――だって私が召喚したサーヴァントだもん。なら何があっても、どんな無茶振りされようとも、彼がどれだけ埒外な英霊だったとしても……私がちゃんと最後まで面倒みます!!私が拾ってきたようなものだし!!サーヴァントとマスターってそういうもんでしょ?

 

 

「怪しさしかない俺に命まで賭けてくれる!」

 

 ―――私だって、君が自慢に思う、召喚されて良かったって思うぐらいのマスターになってやるんだから!!

 

 ―――つぅーかまえたァッ!!

 

 

「あぁ、!全くもって心底素敵な女性(マスター)だ!実に惚れ甲斐がある!!」

 

 ほ、惚れえぇっ……!?

 

 

 

「召喚されて本当に良かった!と、嘘偽りはなくそう叫べる!さぁ、マスター!言われっぱなしでいいのかい?あの勘違いトナカイマンに一言言ってやる事は?」

 

 う、うるさいなぁ……もう、もう、もう、もうっ、もうっ……! もうっ!! 全く! 人の気持ちも知らないでぇ……!

 

 さっきと変わらず涙は浮かんだまま、けどそれはさっきとは正反対の意味合いになっていた。グダおがここまで私を見てくれていた事、想っていてくれた事、その嬉しさが立ち上がる勇気となる。

 

「うるさいっ!外野が私達の関係にとやかく口出すなっ!!ばーかぁっ!!」

 

「よく言った!」

 

「マシュ!!」

 

「はい、まだ続行可能です!!」

 

 彼と触れ合っている体の部分から形容し難い力が流れ込んでくる……。うん、私はまだ戦える。

 令呪を持って命ずる――!

 

 

「それは、オケアノスで見たぞ。芸がない」

 

「『仮想宝具 疑似展開/人理の礎(ロード・カルデアス)』!!はぁぁぁぁぁぁ―――――!!」

 

 第三特異点でメディア・リリィと戦った時と同じ、令呪でゲーティアの傍までマシュと共に転移。

 この魔神王は本腰を入れに来た。けど、それはあくまでグダおにだけ、私達の事は敵としてすら認識していない。

 

「しかも、あのサーヴァントではなく、マシュ・キリエライトを引っ張り出すとはつくづく無能だな……。人類最後のマスターよ」

 

「いえ!先輩は……!グダおさんと私を、カルデアの矛と盾を一番上手く使える最高のマスターです!」

 

 だから、今も片手間で片付けようとしている。それこそ虫をはらうように。

 それでも私達にとってはゲーティアの微細な魔力の放出は一瞬でも気を抜けば、身も心も跡形も無く消し飛んでしまうほどに強大であった。

 

 二画目の令呪でマシュの宝具を強化!

 

 ――そして、最後の令呪を持って命ずる!

 

「マシュ!負けないで!!」

 

「はい!絶対に負けません!」

 

 カルデアで一番信頼出来る盾の後ろで私は準備をする。

 次の二手を打つ決定的な準備を。

 

「はあああああああああああああああ――――!!!」

 

 永遠に続くようなマシュの怒号。

 だが、大丈夫。相手は本気じゃない。真面目に攻撃してこない奴にマシュが負けるもんか。

 

「ほう、耐えたか。だが、児戯にも劣る攻撃を凌いだ所で、何の意味が―――」

 

「『オーダーチェンジ』!」

 

「選手交代だ」

 

「ぬぅっ!?」

 

 マシュが耐え切った成果。攻撃の切れ目、敵のほんの一息。私達を見下す戯言。その隙をついて魔術を使用。

 グダおは絶対にどんな時でも何らかの策(ネタ)は持っていた。

 けど、今回はゲーティアはそれをさせないぐらい、グダおを集中攻撃していた。『イカれた幻想(ブロークン・シリアス)EX』で限界まで強化されても差があるビーストとサーヴァントのステータス差。

 尚且つ、私達を庇いながらではその暇すら無かった。

 

 なら、その一瞬は。勝利への隙間は!私がこじ開ける――!!

 

「いったれ、マスター」

 

 さっきと同じ。

 私を抱きしめて、ゲーティアと対峙するグダお。彼に触れられていると、嬉しさと照れが恐怖心を勝ってくれる。

 うん、体はボロボロだけど、万全のコンディションだ。

 

「『ガ ン ド』」

 

「ガァッ……!?」

 

 今まで数多のエネミー、サーヴァント、果ては魔神柱まで。あらゆる物の動きを封じてきた私の切り札『ガンド』。カルデアの技術力は凄まじいなーと思ってたけど、ダ・ヴィンチちゃんとかロマンは「いやー、そんな狂った性能にした覚えはないんだけどね――、これは間違いなく君自身の才能だと思うよ」って言ってくれた。

 

 人類悪相手に効いたはいいけど、恐らく数秒がいい所だろう。

 

「……それで、どうした……?どうせ貴様らは私に一切の傷を負わせる事はない。寿命が一瞬延びただけだ……!」

 

 いい、その数秒さえ作れてしまえばいい。仕上げは私の最高のサーヴァントがやってくれるから!!

 

 

 

「『人繋ぎの大秘宝庫(マテリアル・ボックス)』」

 

 流れる動作で空中の波紋から、聖晶石を数十個程、取り出した。

 

「――――!!」

 

 何故か、ここに来て初めて、ゲーティアに恐怖の感情が浮かんだ。

 それを無視し、その石を両手で祈るように握り潰す。

 

「やめろ――――」

 

 懇願するように未だ痺れる手を伸ばすゲーティア。

 彼もグダおが何をするのかはわかっていない筈。だが、本能的に察しているのかもしれない。このままでは自分は碌な事にならないと――――。

 

「よせ――――」

 

「第五宝具展開――!」

 

「その宝具を私に使うなああああアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

 潰された石が媒介になってナニかが現れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『這い寄る絶望(リョグダコポテプ)』」

 

『おう、こら、よくもウチん所のなすびちゃんと所長をキズものにしてくれたなぁ』

 

 

 

 

 

 なんか、グダおの背後から。サイドテールの世界観を壊しかねない目が完全にイッている半裸の女性?が現れた。

 

 …………なんだあれ?

 

 いや、なんだあれ!? なんだあれ!?なんだあれ!?なんだあれ!?

 

「ぬおおおおおおおおお、はな、せ……!」

 

『やかましい』

 

「ガアアアアアアアッ!!?」

 

 ――ボキイイイィッ!!

 

『は、?戦馬の幼角じゃないのか。萎えるわぁ……。そんな大層な角付けてなんの素材もドロなしとか無いよね?魔神柱共の親玉だもんね?もっと美味しい素材ボロボロ落とせるよね?』

 

『王よぉ――――!!』

 

 

 

「かつて、俺がカルデアスに手を突っ込んで遊んでいた頃……。その時から何度か、悪霊のようなナニかが、俺の傍に現れる事があった……『宝具skipはよ』、『福袋で好きなキャラを選べないとか糞』、『運営の悪口を言え』など、要領の得ない事ばかりだったが……」

 

 待て待て待て待て待て!何をシリアス顔で解説してるの?目の前の光景が見えていないの?

 あんなに立派だったゲーティアの角が両方とも折られて、ゴミくずのように捨てられているんだけど!

 

「クレオパトラはスタイリッシュな立ちポーズでこう教えてくれた……」

 

 ――マスター!貴方が悪霊だと思っていたのは、生命エネルギーが作り出す、パワーあるヴィジョンよ! そばに現れ立つというところから、そのヴィジョンを名付けて……『スタンド』と!!フフ、妾の美しすぎる解説に泣いて悦びなさい!!

 

「宝具として使うには、俺の倉庫から聖晶石30個という決して軽くない代償を差し出さなければ応じてくれない。だが、それだけの代償を差し出すだけの価値はあるっ……!」

 

 

『落とせよ。QPとか心臓とか羽根とか骨とか頁とか勾玉とか呼符とか石とかさ。悲鳴だけ上げるなら子供でも出来ますよ?』

 

「オボボボボボボボボボボボボボボ!! 」

 

 全然、そばに立っていないんだけど!むしろお前から離れて好き放題やってるんだけど!

 首つかまれて、持ち上げられて、顔面に殴撃の嵐を受けているゲーティアが可哀想になるレベルなんだけど!

 自分の宝具ならもっと制御してよ!!

 

「けど、なんかアレ……貴方に似てないかしら?」

 

「もぐぞ」

 

「もぐ!?何を!?」

 

 所長は一体何を言っているのか、あんな人類悪をマウントで殴り続ける女を捨てたような化け物と私が似ているわけないじゃないですか。

 

「図に乗るなぁ……!!」

 

『お?』

 

「このような所で、不完全な状態で放つのは……甚だ不本意だがっ……!もはや、そうは言ってられぬ。消え失せろ化物!!…………我が偉業! 我が理想! 我が誕生の真意を知れ!」

 

『…………………………………………』

 

 マズい! 今までの魔力放出や熱線の放出とはレベルが違う! のしかかる重圧のような魔力がゲーティアに集まっているのがわかる……! あれはきっと正真正銘、ゲーティアの宝具解放……!

 グダおが召喚した謎生物だけじゃなくて、ここにいる私達も危ない――!

 

「この星は転生する! あらゆる生命は過去になる!讃えるがいい――我が名は」

 

『口上が長い』

 

「ぶべぇぇええっ!!」

 

 ビンタで止めたぁぁぁっ!?

 

「30秒以上ある宝具演出とか舐めてんの?その間バニヤンちゃんの宝具なら何回打てると思ってるの?」

 

 あぁ、またマウントでリンチし続けている!! もう止めて! ゲーティアのライフはゼロよ!!

 レフリー(魔神柱達)が止めに入った!!うわあああ、全員もがれている―――!何?何なの!?物理法則とか完全無視?結果だけ残るの?キングクリムゾンなの?

 

『お前が勝手に憐れんで人類を諦めるのは勝手だ。人間は始まりから失敗していた?終わりのある生命は間違っている?だがな、それでも人は今日までがんばって生きてきたんだよ。人類はどんな逆境にも立ち向かう力がある。未来を勝ち取る力があるんだよ』

 

 言っている事は格好いいのに、姿とエグ過ぎる原始的な攻撃で全てが台無しになってるよ!!

 

『これはパンティを奪われた所長の分!』

 

 ――ボコォォォッッ!!

 

「そんな覚えはないわよ!!」

 

『これは男の味を知ってしまったなすびちゃんの分!』

 

 ――グシャアアアッ!!

 

「なんでこっちを見ながら言うんですか!!もしかして、なすびちゃんって私の事を言っているんですか!?」

 

 

 

『そしてこれが』

 

 振り下ろされる拳。それはゲーティアの胸部、大きく赤い瞳のような……。心臓にあたる場所に定められていた。

 

『いつまでたっても宝具skipが実装されない私の怒りだぁぁぁぁぁ!!!』

 

「オオオオオオオォォォォォォォッッ!!ヌオオオオオオオオオッッ!!!」

 

 ただの八つ当たりだぁ―――!!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『へっへっへっ、さぁ、なすびちゃん。窮地を救った私にアソコをキュンキュンさせて、人理修復ックスをする時間が来たよぉ……』

 

「きゃああっ!先輩!グダおさん!この人?怖い、怖い、怖いです!私のあらゆる生存本能が危険信号を告げています!」

 

「はい、お疲れっした―――リョグダコさん、また機会があったら頼りますんで」

 

『お、おのれ……私が消えても、第二、第三の私が……』

 

 パンパンと宝具使用者であるグダおが手を叩くと洒落にならない言葉を残して、謎の生物は消えていった。

 うん。色々とひどい終わり方だった。一応、ラスボスにあたる相手にあんなカオス過ぎるトドメの刺し方……。

 私達の人理修復の旅、これで良かったのだろうか……?

 

「久々に見たわ!マスターのあの宝具!」

「お祈りをするように石を砕いて召喚!」

 

「じんたいれんせいする?」

 

「あぁ―――、悪ィ、お前の剣とか妻とか、デカい口叩いておきながら、マスターをこんなボロボロにさせちまった…………はぁ、まだまだ嫁修行が足りねぇか?」

 

「何言ってんのさ、モードレッド達がいなかったら、もっと早くケリをつけられてたよ。魔神柱の群れを相手してくれてありがとう。モードレッド、アリスにありす、ジャックは自慢の奥さんと娘だよ」

 

「まぁ、今だけ召喚されたのがオレ達で良かったと思うわ。白い父上がいたら、どうなっていたか想像もしたくねぇ……」

 

「デウス・エクス・マキナいや、あのナマモノらしき神様はどちらかと言えばクトゥルフ神話方面か?ガワだけ女の形をしていたのだ余計におぞましかったな……それで、どうだ叛逆の騎士?最後のおいしい所は持ってかれてイイ所無しだが?」

 

「は?父上をぶった斬ったの見てなかったのかよ。作家の瞳が節穴とかいよいよ廃業か?」

 

「そうだな、もう一人の頭春夏娘にお膳立てされてな。お前も、もうあの男の上で腰振って色々と注入されればどうだ?強くなるかもしれんぞ?」

 

「ああ――、ああ――、急に隣にいるガキの首を落としたくなったなぁ―――!!」

 

 シェイクスピアの時と同じく、グダおの背後に隠れる童話作家。

 近づけずぐぬぬ顔のモードレッド……もう、君達、最後なんだからそろそろ仲良くしてよ。

 

 

 

 

 

 

「私の負けか……ふ、結局、貴様の世界の焼き直しだったか……存在せざるビーストよ。この世界でも私はお前に負ける運命というわけか……」

 

『……!!』

 

 ゲーティア……?いや、姿も雰囲気もまるで違う……。グダおの宝具にボコられて色々吹っ切れてしまったのか?

 地面まで届く、金髪に褐色肌の人の姿……。ソロモン王として現れた時よりも人間らしい姿をしていた。

 周りにいた魔神柱も集合体として、彼の中に戻ったのか。今、私達の前には一人の男の姿しか無かった。

 

 けど、戦意は無さそう。いや、肉体も既に朽ち始めているような……。

 

「だから、何度も言ってるじゃん。俺の世界でもこの世界でも、お前に引導を渡したのは俺じゃない」

 

「ならば、私は一体、何に負けた」

 

「人間だよ。マシュがいなかったら、マスターをお前の攻撃から守り切る事は出来なかった。所長がいなかったら、魅了もなく、魔神柱達はもっと統率された動きをしていただろうさ。そしてマスターがいなかったら、宝具を発動する時間さえ、俺には与えられなかった。まぁ、そもそもの話、カルデアの皆のサポートが無ければレイシフトさえ出来ないしね」

 

「―――――」

 

「お前がいう無価値な人間なんて誰もいないのさ。たった一人で何かを成し遂げられる程、この世界は簡単じゃない。たった一つのピースでも欠けていたら、俺はお前に負けていた……。トドメは俺の宝具だったとしても、断言出来る――。お前はマシュに、所長に、マスターに、カルデアの皆に、人間に負けたのさ」

 

「そうか――――」

 

 納得した息、答えを見つけたような万感の思いを込められた呟きだった。

 

「無能と眼中にすら無かった者の魔術に、この魔術王が数秒間も動きを封じられていたのだ……。一切の反論を許さない完璧な敗北だな。私は人類最後のマスターに藤丸立香に、ひいては人間に負けたのか……」

 

「おう、うちのマスターは無能じゃないぞ!こんなに心が強くて、健気で、可愛くて、いい感じの均整が取れた体つきで、咲くまえのような蕾を感じさせる良物件だからな!」

 

 ……いつもなら照れ隠しで蹴ったり、殴ってたかもしれないけど。まぁ、今日ぐらいはコイツの恥かしい褒め言葉も受け取ってやろう……ほれ、もっと言いなさいよ。

 

「我が計画は中途半端も良い所で終わるか……。あぁ、全く人間というのはどこまでも度し難く……そして不思議な程に面白い――――」

 

 そうか。こうして人理焼却を目論んでいた黒幕を倒したという事は、世界は救われたって事でいいんだよ、ね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ングゥッ――――!!?」

 

 その時、決定的なナニかが産まれる音がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『!!』

 

 突如、苦しみだすゲーティア。

 グダおは何もしていない、彼にしては珍しく驚愕の表情を浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴様……!」

 

 ゲーティアの声は私達に向けられていない。

 自身の中、魔神柱達に語りかけている。

 

「貴様、一体、ナニを連れてきたぁあああああ!!()()()―――!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやだよぉ」

 

「一体、どういう事だ!?」「とても暖かい!!」「消える……!作り変えられる!数多の情報因子が……!」「なんだ、なんだ、このような物、我々が知る人類の中では!?」「性と生/絶頂→腹上/死と賜」「溶かされている……いや、蕩かされている!?」「快楽を感じている!(魔術王でありながら)」「快楽、悦楽、解放……止めろ止めろよせよせ」「違う、違う、こんなものが人の性だと認められるか……」「そんな、やめて、みすてないで」

 

 私達にまで聞こえる魔神柱達の怒号と悲鳴。崩れ行くゲーティアの体、だが、その胎から出てはいけないナニかが――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お膳立てご苦労様。やはり、貴方達では彼には勝てませんでしたか。えぇ、わかっていましたとも、わかり切った結末でしたとも。だって彼に勝てる(と結ばれる)のは私しかいないのですから」

 

 世界そのものを陵辱したかのような、淫魔の声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヌアアオオオオオオオオオオオォォォォ―――――!!」

 

 苦悶の叫びを上げるゲーティアの中からそれは出てきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――そもそも俺がこうしてサーヴァントとして召喚されている以上は間違いなく俺が知っている軸とはズレていくでしょうよ。

 

「ふむ、分岐点は。俺がマスターの召喚に応じた所からか……そこから未来は変わったというべきか……。いやぁ、フラグ建てちゃったかな――?」

 

 

 

 

「あれは誰だ?」

 

「美女か?」

 

「聖女か?」

 

 

 ―――たすけて、きあらさま

 

 あの強大だった魔神柱とは思えない程にか細い断末魔を最後に。

 

 

「もちろん、私です♡」

 

 

 全てを蕩かし、溺れさせる、最低最悪の快楽天が顕現した――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回、第四章最終話『蘇る超悪魔級』





















這い寄る絶望(リョグダコポテプ)

ランク:不明
種別:対シリアス宝具
使用者:グダお
人類悪 顕現。
聖晶石30個を代償に解放可能な許されざる意思を持った自立型宝具。祈るように石を砕き、我は汝、汝は我と、寄り添うに現れる(その後、使用者の傍から離れないとは言っていない)。もう、錬金術師なのか、ペルソナなのか、スタンドなのか、わかんねぇなこれ。
ともあれ、グダおも石の代償からあまり使用したがらないこの第五宝具はヤバい(語彙力消失)の一言でしか表現出来ない。特に宝具演出が長い奴には烈火の如き、制裁を与える。物理法則、設定、世界観、彼女が現れたらあらゆる物が崩壊する。
エロ方面には弱い?ので、なすびちゃんや所長のパンティを与えて大人しくさせよう。










《カルデア島でゲーティアにボロボロにされるグダおを見たある面々》

「ちょっと私の(息子)においたをする鹿を狩りに行ってきます」

「おや、奇遇やねぇ、うちもちょうど……角漬けの酒でも飲もうと思っとたんよ」

「……いつもなら貴女の助けは不要と言う所ですが、数はいくつあっても邪魔にはなりません。好きにしなさい」

「かはは、うちに子供が出来てから、随分と当たりが優しゅうなったなぁ……頼光はん…‥」

「炎があってもいいですよね?旦那様を傷付ける悪い鹿を炙る極上の炎は」

「毒も必要です。暴れる動物を大人しくさせる為の毒が」

「待て待て待て、待つでござる!そんなお館様の許しなく、そもそも、もう定員一杯であろう!」

「おんやぁ?なら千代女はんはこのまま、旦那はんがいたぶられてもええと……?ほぉ~ん、はぁ~ん」

「ぴぃっ!?そ、そんな事は言ってないでござる!!だから、その眼で見るのはやめてっ……」

「皆さん、落ち着いて下さい。私達はマスターの剣であり、妻であります。家を守る使命もあり、主の許可なく勝手をするのは許されません。まずは落ち着く事です」

(白騎士殿……全身で武者震いしながら、噛み切った両端の唇から滝のように血を流しながら言う台詞ではないでござるよ……)















何故、私がこの第4章の前にCCC編を完結させたのか。
何故、マスターがキアラを振ったのか…‥。
全てはこの時の為、さぁ、ラスボス交代のお時間です。
うーむ、今回はネタ少なめだっかな?





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蘇る超悪魔級(第4章)

今回にて、第4章は最後です。小分けに投稿したとはいえ、中々に長かった気もします。これも全部、逸般人ビーストとリヨグダ子と快楽天ビーストが悪いんや……。

0話にて、オケアノスのキャスター、更新です。













世界が変わろうとも、どれだけ距離が離れていようとも、時が経とうとも、この想いが朽ちる事はありません。あの失恋から、私の恋が始まったのです。

貴方こそ、貴方様こそ、私の比翼なる存在なのですから。右羽しかない蝶が飛べる筈もありません。どうか、どうか、私の対になり、新天地へ共に飛び立ちましょう。

『愛欲』の獣に恋を教えてくれた責任取って頂きますよ、人類最後のマスター様……。



突如、現れたそれの正体は私にはわからなかった。頭に生えている特徴的な黒い二本の角。人間ではない事はさすがにわかる。

 

ただ、本能が告げている。この女はヤバイと。

 

ゲーティアとは違う全貌が掴めない驚異。強いとかそういうベクトルの話ではない。戦う以前にまず彼女と関わってはいけないと、私のナニかが訴えていた。

 

白い尼装束……には淫らに過ぎる。女の武器をこれでもかと露出させた厭らしい姿。流れる黒髪。身体の全てが性別問わず、あらゆる物を誘惑するぐらいに魔性の魅力を持っていた。

恍惚とした表情で現れたその女は、猛熱に浮かされるように私のサーヴァント、グダおを一心に見つめていた。

 

 

 

「一日千秋……。時を越え、世界を越え、こうして相まみえる事が出来ました……。電子の海、あの時から貴方様が私をひどく玩具のように袖にした時から、片時も忘れた事はありません」

 

「快楽天……君が現れるから、俺がこうしてこの世界に呼び出されたのか。それとも、俺が召喚されたから、君がやって来たのか…………」

 

「ふふふ、どうか『キアラ』と呼んでくださいな。それにそんな卵が先か、鶏が先かなんて無粋な話は止めましょう。私と貴方がまた出会う……偏にこれはFate(運命)なのですから……」

 

 

「おい、グダおとやら」

 

「どうしたアンデルセン先生」

 

今まで、一切の反応が無かったアンデルセンが隣のグダおに語りかけてた。

…………ってか汗やば! 顔色悪ぅっ!! 持っている筆とかガクガク震えているんだけど!!大丈夫!?

 

「もしかしなくても、お前が振った相手とやらはこのどうしようもない乳袋女か……?」

 

「まぁ、そうだね」

 

「……馬鹿がっ……!この馬鹿がっ!よりにもよって、なんて女を……!いや、結ばれたら結ばれたで、それは最悪過ぎるが……!どちらを選んでもBAD ENDか!とんだクソゲーだな!!」

 

「ちゃんとお断りはしたんだけどねー」

 

「よっぽどお前をお気に召したんだろうよ……。今のアイツは俺が知る記憶の限り、類を見ない絶好調、最高にハイッてやつだ、嫌な方向にな。悲劇・喜劇は大好物だが……。笑えもしない生々し過ぎる官能物はごめんだ……スケールがデカ過ぎる。お前らのペッティングで地球が滅びるとか焚書ものもイイ所だ……!」

 

「おい、チビ作家。お前、急に現れたあの気色悪い女の事、知ってんのか?」

 

「エロゲ主人公、お前が蒔いた種だ……。お前が、片付けろ……。ここまでくればもう、作家の出番もあるまい…………ひとりでに物語は加速する……」

 

―――シュゥゥウウン……

 

「うぉい!アホ作家!?」

 

アンデルセン先生が逝った――――!!

何で?何もされていないのに?これもあの女の力なの!?

 

「蒔いた種って……そんなヤリ逃げみたいな……」

 

「おや、今どこかで聞き覚えのある声がしたような………………っといけません、いけません。想い人がいるのに他の者に現を抜かすなんて、あなたに失恋した時から私は学習したのですから……。あの時の私は些か不誠実ではしたなかったですもの……人類最後のマスター様……いえ、今はグダお様ですか?」

 

性別問わず、他人を惑わす魔性の魅力。初対面にも関わらず、私は彼女をそう表現する事が出来た。

彼女の正体を知らずとも、わかってしまうぐらいに分かりやすかった。

 

なら、そんな魅力を持つ女と相対して何故、平常でいられるのか?

それは彼女が徹頭徹尾、私達なんて眼中にないからだ。

 

「全人類を自分の快楽に使おうとしておきながら、恥知らずにも貴方様に告白してしまった私をどうか許して下さい。えぇ、えぇ……貴方もそれはタイプではないと断る筈でしょう。そんな移り気なはしたない女が愛される筈なんてないのですから」

 

頬を両手で挟み、所謂、恍惚なヤンデレポーズで息を色っぽく吐き出す淫魔。

彼女が持つ女という武器は全てグダおただ一人に向けられていた。

 

「ですので、私の中にある全人類への愛を、溢れんばかりの欲望を全て貴方だけに向ける事にしました」

 

恋する乙女というには、重すぎる。

邪悪というには、純粋過ぎる。

 

「私の願いはもはや『自分だけが気持ちよくなる』ではありません。『貴方と一緒に気持ちよく』なりたいのです」

 

「ちぇんじなのだわ!!」

「泥棒猫よ!一生、シュレディンガーの箱に入れてあげる!」

「私も手伝うの!」

 

激昂したトリプル童女達が嗾けたモンスター達の群れも一切気にも留めず、背後に現れた巨大な髑髏と数多の黒い怨霊の手が片手間で迎撃していた。吹き飛ばし、潰し、千切り、掴み、胎にしまう…………え、えぇ……うわぁ。当の本人は未だ、グダおの方だけを見て言葉を続けているのが狂気過ぎる。

 

「どうよ、ジャック。お前的にはおかあさん要素あるんじゃねぇの?」

 

「あれは、なんか、いや」

 

 

 

「では改めまして、自己紹介を。お久しぶりです。そして初めまして。この身はかつての蛹から羽化をした一匹の蝶。恋を知り、完全体となった人類悪。『ビーストⅢ/R――ラプチャー』。『愛欲』の理を持つ獣でございます」

 

またビースト……!

 

「どうなってるのよ!!なんでそんな人類悪がポンポンポンポン出てくるのよ!!」

 

「もしかして所長、人類悪はそこまで珍しくないのでは!この特異点で3人の人類悪が判明していますし!」

 

「フォウ――……(実は4)」

 

「そんなわけないでしょ!!」

 

所長、ヒステリック再発。

グダおが人類悪って言われていた時は落着いた雰囲気だったのに。まぁ、人類悪のお腹から新たな人類悪が生まれたら狂乱するだろうけど。SAN値チェック入ります?

私?私は当然驚いているし、下手をすればゲーティアより怖いけど……それと同じぐらいにちょっと気に食わないって感情がある。

 

「一回の失恋で、身を引くような臆病な性格はしていません。恋は破れてからが本番。どうか、グダお様。その偽りの身を捨て去り、私と同じ人類悪、その片割れ、ビースト/Lとして爛れて淫らで素敵な円満家庭を築きあげませんか?貴方と一緒なら何をしても気持ちよくなれる確信があるのです」

 

「いやー、ほら一緒に人類悪になって噂されると恥ずかしいし……」

 

どんな断り方だ。パワーワード過ぎる。

 

「あらあら、もしかして、そこの虫と結んだサーヴァントとしての契約。人理修復が完全になされていない事が不安ですか?たしかに私はゲーなんとかさんを取り込みましたが、それは他の特異点にばらまいた聖杯を回収し、人理焼却を取りやめる事が私の意思次第とも言えます」

 

あん?

 

「私が貴方と結ばれれば、この星には用はありません……ハネムーンと参りましょう。私の目的はグダおさんだけですから。もちろんゲーなんとかさんの計画も私の手で凍結。カルデアの方々はこれ以上、労する事なく人理修復を成し遂げる事が出来ます。貴方方にとってはサーヴァントの一人に過ぎない筈でしょう?」

 

ふっざけんな!

 

―――ザザッ!!

 

 

「おぉ?」

 

グダおに向けるキアラとかいう奴の熱い視線。それを遮るように、あるいは守るように。私はグダおとキアラの間に立っていた。

 

私だけじゃない、マシュも、所長も。グダおの奥さん達もこちらの世界のアリスもモードレッドも。彼の前へ歩を進めていた。

 

「……なんでしょうか」

 

心底興味ない目線が、人外の瞳が、私達を人でも何でもないと思っている悪魔の瞳が貫く。

 

「コイツは私の(サーヴァント)だ!!誰がお前なんかにあげるか!!ばーか!!」

 

「はい!グダおさんは私と対になるカルデアの矛!今日まで一緒に先輩を守ってきた大切な仲間です!!ここでサヨナラなんて絶対にお断りです!!」

 

「そ、そうよ!ここでグダおに捨てられたら、私はどうすればいいのよ!散々、彼に開発された私の躰の疼きはどうやって解消すればいいのよ!」

 

「へぇ……」

 

所長ェ……。

私達の言葉、特にエロマガリー所長の言葉が快楽天ビーストの琴線に触れたのか、塵芥を見る瞳が、明確な敵意へと染まる。うぅ……!!

 

「ひぃ!」

 

「……!!」

 

ゴボゴボとこの世の物とは思えない耳に毒な音を立てながら私達の周囲に現れた黒い淫手、数十はある魔の邪手がグダおとの逢瀬を邪魔するなとキアラの怒りを代弁するように襲い掛かる。

あ、これ……触れただけでアカン奴なんじゃ……。

 

「『百式官能 四十八の手』」

 

その手群をグダおの宝具が一つ残らず、切り落とした。そのセクハラ術……普通に防御でも使えるんだ……。相変わらず、原理は意味不過ぎるけど、なんか観音様の手が見えたような気もする……。

 

「と、いう事だ。今回はお引き取り願おうか。ビースト――ラプチャー。そして、ウチの嫁さん達と大事な娘達、そしてマスターにあまりおいたをするな。お前にとって()()()()()()()事になるぞ」

 

ここまでの旅路で殆ど怒りの感情を出さなかったグダおの怒気が伝わる。

そっか、そっか――……私の為に怒ってくれてるのか―――ふっふーん。マスター想いのサーヴァントだなこのこの。どうだ、ドスケベ女!羨ましかろう!!

 

「あ、あぁ………………」

 

う、うらやましかろう……?

 

「んぅっ、あっ……はぁんぅ!彼の手と私の手が触れ合って、切り落として、そんな熱の籠もった瞳で見詰めてくれるなんて……あぁ、あぁっ……!ひぅぅんぅ!あ、ソコから蜜が止まりません!!」

 

マシュのお目目をブラインドォォ!!耳をシャットアウトォォ!!

 

「え、え、先輩何をするんですか!?」

 

「ありす……一体、あのおばさんは何をしているのだわ……?」

 

「そうね、家に帰ったらわたし(ありす)が教えてあげるわ。お姉さんだもの!!」

 

「う―――わぁ……」

 

豊満な胸を鷲掴みにし、もう一方の手を自身の股関に潜り込ませて盛大過ぎる公開オナニーを始めたビースト。

遠目でも、そして服の上からでもわかる程に胸の先端は屹立し、彼女はそれをグダおを見ながら、盛大に扱いていた。

股の間から聴こえるグジュグジュと響く水音も……、いや、お前どんだけ濡れているんだよ。

 

「い、けません……せっかく、想い人の前にいるというのに、いぁっ……あはぁっ!あんぅぅ!!こんな、売女のようなはしたない真似を……んふぅっっ!あぁっ、ひぁあっ……あぁ、けど……女の部分を擦り上げる手が止まりません……だって、だって、彼との触れ合いを一体どれだけ切望したと思っているのですかぁ……!それがやっと現実になったのですから……情欲に溺れて、一体誰が罰するというのでしょうか……!あぁ、あひぃ……、あぁ、私の自慰を……あんぅ、彼が見ているぅぅ!恥ずかしさで、恥ずかしさで……体が火照ってしまいます……見て、見て、私をもっと見てくださぁ……あんぅぅぅ――――!!」

 

 

そこから十分程、私達は呆然としながら、快楽天のオナニーショーを見せられる羽目になった。……………………なんだコレ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっ、ふぅ…………お待たせして申し訳ございません。で、何の話をしてたのでしょうか……?え―――と、あ!こ、これは違うのですよ!グダ様、私は確かに自らの手で快楽を得てしまいましたが、脳内は貴方しかいなかったので決してこれは浮気ではありません!オカズは貴方しか使っていないのでむしろこれは私の一途さを表現した神聖なる儀式とも」

 

もういい、もう口を開くな……。

 

「あ、あの――先輩、そろそろ私の耳と目を解放してもらえると助かるのですが……」

 

この歩く有害図書がいる限り、教育に悪すぎるのでマシュはずっとこの状態でいて欲しいのだが。

 

「そうでした……交渉は決裂したのでした。ふむ、ふむ……そうですか、まぁ、サーヴァントというのはマスターを第一に考えるものですから……」

 

今までグダおしか眼中に無かったキアラの瞳に私が映る……。あ、あれ?私?てっきり所長の問題発言でプッツンしたと思ったんだけど、もしかして盛大な自慰行為からの賢者モードで記憶が混同している?私がこうグダおと懇ろな関係になっているマスターと思われている?敵視されてる?

な、何それ……。こちとら、まだAしかしていないというのに、しかもそれも自分の意識が無かった時だし。

 

「逢えない時間が二人の愛を育む……。恋敵の出現……。そうですね、恋は障害があった方が燃え上がると……私を袖にした殿方がそう簡単に物になるとは思っていません。私と彼のアバンチュール、それをこんな所で終わらせようなんてロマンの欠片もありませんでしたね」

 

 

――――ゴゴゴゴゴッッ!!

 

これはアリスちゃん達の固有結界が崩れる音……?

 

「いえ!固有結界じゃないわ!特異点の元凶だったバルバトス、ひいてはゲーティアが消えた以上、もう破壊されていたロンドンの人理自体が修復されつつあるわ!私達もカルデアへ強制送還されるのよ!」

 

アリスちゃん達の宝具で地下空間を取り込んでいた闘技場も崩れていくと同時に私達の体も消えかけていく。

 

「人理を視姦し、人類史を蕩かし、あらゆる歴史をオカズに自家発電して、その熱量で世界を滅ぼす。確か、ゲーなんとかさんの計画でしたか……そうですね。私も彼を取り込んだのだから、その計画に倣うとしましょうか」

 

そんな頭の悪い計画なワケないだろ!いい加減にしろよこの女!!草葉の陰で魔神王が泣いてるわ!!

 

「私と貴方の恋物語、やはりそれは終局の座でフィナーレ、いえそこから始まるべきなのです。せっかくばら撒かれた聖杯ですもの、便乗に便乗を重ねて頂きましょう。どうか残り3つの特異点も挫ける事なく修復して下さいな。私は七つの特異点を越えたその先でお待ちしております。貴方の需要に応えるように、しっかりとこの身も処女に変生したのですよ?」

 

 

「いや、別に俺は処女かどうかは判断材料には入れてないよ」

 

「で、では……やはり、年下の方ですか?ロリですかなのですか!?年上顔はノーサンキューなのですか!?」

 

ジャックやアリス達、そして何故かモードレッドも見ながら、キアラは若干焦りを混じった表情でグダおに問いかけていた。

 

「俺の中の趣味趣向は好きになったかどうか。ただその一点だよ。ロリだろうが、熟女だろうが、学生だろうが、人妻だろうが、巨乳だろうが、貧乳だろうが、巨人だろうが、本だろうが、ロボットだろうが、神様だろうが、性別不明だろうが、元男だろうが、共に情を交わし合って愛しあえれば、全部ただの魅力の一つに過ぎないんだよ」

 

「なるほど、メモっておきます」

 

最初の真のラスボスらしき威厳はどこへやら、グダおの言葉を嬉しそうに聞く愛欲の獣。

満足したのか、ゆっくりと崩壊していく固有結界の中に作り上げた亀裂の中へ、最後までグダおから目を離さず、消えていった。

 

「あ、消える……わたし(アリス)も消えるのね……。せっかく、ありす(わたし)ともう一人のわたし(アリス)に会えたのに……」

 

「むぅ―――!わたしの話を聞いてなかったのかしら!アリス(わたし)はわたし達のお家に来るのよ!ね、いいでしょ?パパ?」

 

「ちゃんと、面倒見るんだよ?」

 

「ペットみたいな扱いには不服を申し立てるわ!!」

 

「あぁ――、マスター。後で家に帰って皆の様子見に行った方がいいと思うぜ」

 

モードレッド(水着)の言葉に思い当たる事があったのか、いつもの宝具で奥さん達を呼び出す鍵でもある銀の杯を取り出したグダお。

 

「わーお」

 

黒っ!!ってかめっちゃガタガタ震えてるんだけど!!こう聖杯に呪いあれ!って感じで荒ぶってるんだけど!!

 

「ゲーティアにボロボロにされてからの、あの変態快楽中毒女の猛烈なアピールだからな、家から見ていた皆は堪忍袋が切れてるだろうさ。後でその――うん、オレも含めてフォローしてくれるといいなーって、か、家族サービス的な感じで……な?」

 

「見えてない、見えてない……もう一人のオレが女の顔してあの野郎ににじり寄っている姿なんて見えてない」

 

予想外の事はあったし、これから考えなくちゃいけない事はたくさん出てきたけど、特にあの淫欲魔神とか!グダおとどういう関係だったのかとか!

ともかく、人理修復の旅は折り返し地点まで来た。悩んでいてもしかたない、私達に出来る事は前に進む事だけだから。ただ――――。

 

 

 

 

 

 

「う、うぅ……。人類悪が倒れたら、また新しい人類悪が出て来るとかぁ……これ、あの変態女倒しても別なのが湧いてくるんじゃないの……」

 

「所長には、グダおが人類悪だった事を黙っていた件についてしかるべき場所で詰問させていただきます」

 

「そうですね先輩、法廷の準備は必要ですか?検事役は私が立候補しましょう。」

 

「うぇ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カルデアの管制室のすぐ隣の一室。コーヒーメーカーや冷蔵庫。喫煙所に、仮眠用ベッド、雑誌コーナー、シャワールームなど、多くのカルデアの職員達が身をひと時休める為の休憩室。

 

そこに二人の男女?の姿があった。カルデアの技術部と医療部のトップ。ロマニ・アーキマンとレオナルド・ダ・ヴィンチ。

 

 

「魔神王ゲーティア、ソロモン王が召喚した魔神柱達の集合体。人類への憐憫から獣になった王か……」

 

「そして、その王からおめでたし、取り込んで人理焼却を引き継いだ……というよりは利用したというべきかな?グダお君をモノにする為に」

 

「『愛欲』の理を持つ。ビーストⅢ/Rだろう?本名は殺生院キアラ。確かにその名前はセラフィックスの職員、セラピストの一人としてあったけど、その彼女の評判は立香君達の前に現れた人類悪とは似ても似つかないものだよ」

 

「並行世界から来た別人みたいなものならそれも当然さ。人類悪として変質している可能性だってある。君だってずっとゲーティアがソロモン王の名を騙っていたら、同じような反応になっていた筈さ。今はそれよりも」

 

「グダお君の事だね…………。そのうち考えるのをやめたじゃ、駄目?もう事態に頭が追い付かないんだけど」

 

「私としては興味深々だよ。カルデアのマスターが一体どういう因果があって人類悪になったのかは」

 

 

 

「女性英霊とヤリまくってたら……いつの間にかとしか答えられないな、それは」

 

「「うわぁぁっ!!」」

 

バァ――ンッ!とシャワールームから出てきたグダおは真っ裸であった。惜しげもなく自身の体を披露していた。

 

「くっ、ぐぅっ!美の追及者たる私を怯ませる程の、黄金比で出来た肉体……!く、悔しい!でも気になる!」

 

「はい!レオナルドも彼の体をツンツンしない!グダお君もさっさと服を着る!!マシュが見たらどうするんだい!!」

 

指パッチンで弁護士風のビジネススーツに身を包むグダお、意外に服のレパートリーはあるようだ。

 

「いや――ごめんごめん。ちょっと実家に帰って奥さん達と性の一週間――滾る!セクシャルトライアスロン的な家族サービスを終えて帰ってきたばっかりだったからね。ちょっと匂いを落とそうとシャワーを借りていたよ。んんんぅ――――3桁斬りを終えた達成感に解放感、そして彼女達の耽美な思い出に浸る心地よさ。ふふ、これこそが正しい安息日の過ごし方」

 

「一週間……?いや、君の姿が見えなくなってからまだ半日も立っていないような……」

 

「異なる世界線だからねー、時の流れが違うからねー」

 

「そこを好きに行き来出来る君も大概だと思うよ」

 

「取り敢えず、マスター達が何か楽しそうな事をしてるからそっちに顔出してきます。それじゃ」

 

 

 

「一つ訊きたい」

 

部屋から出ようとするグダおをダ・ヴィンチちゃんが呼び止める。

 

「君はカルデアのいや、立香ちゃん達の味方かい?」

 

「うん」

 

彼は笑っていた。とても人類悪とは思えない程に純粋で愛らしい顔で。そこが逆に恐ろしいと思える程に。

 

「俺はサーヴァントとして、一人の男として『藤丸立香』の味方だよ」

 

だが、その言葉には嘘偽りが無いと何故か納得した。

そもそも、仮に彼がカルデアの敵だったとしたら、冬木で所長に肉体を授けるものか。第一特異点で所長を助けに行くものか、第二特異点であんな馬鹿騒ぎをしてくれるものか、第三特異点でマスターをあんな必死になって助けるものか。マシュをカルデアのトレーニングルームで真摯に鍛えるものか。

 

だからこれはきっと只の確認作業……人類悪だろうが、何だろうが、彼も変わらずカルデアの一員であり、人理修復の旅を歩む仲間の一人だという。

 

話は終わったかなと再び退出しようとする彼に今度はロマンが声を掛けた。

 

「君は」

 

「…………」

 

「召喚された時から僕の正体に気づいていたんじゃないのか?」

 

 

 

「知ってるとも」

 

「……!…………やっぱりか」

 

 

 

「チキンで打たれ弱くて、ネットアイドルに現を抜かして、その癖誰よりも働き者で真面目で、自分に出来る事を全力で取り組む勤勉さを持つ30歳独身。ロマニ・アーキマン。それがDrの正体だろ?」

 

「――――――――」

 

「じゃ、また後で」

 

自分の問いに答えたグダおの顔を見たロマンはそれ以上、言葉を続ける事は出来なかった。

時が止まったように動かないまま部屋から出るグダおを見送るだけ。

 

「ふふ、これは一本取られたねロマン……君は彼になんて言って欲しかったんだい?」

 

「さぁ、ね……自分でもわからないよ。ただ、」

 

「ただ?」

 

「外見が自分よりも年下に見える子に30独身って言われるのは堪えるね。ましてや彼には奥さんがたくさんだし」

 

「ははははっ!そこかい!!」

 

 






―――カンカンッ!

「これより、カルデア所長、グダお人類悪情報隠匿事件についての裁判を行います。被告人は前へ」

「なんで貴方が裁判長なのよ!!立香!!」

「静粛に。被告人は粛々と前へ。当裁判は嘘偽りを許しません。法の平等の下に公正な判決を下すでしょう」

「異議あり!私に弁護人がいない時点で公正とは程遠いと思いますが!」

「異議を却下します。では検事マシュ。告発内容を」

「はい。被告人は第4特異点にて、グダおさんが人類悪だった事実を晒されても、特に動揺の素振りは見せませんでした。これは被告人がグダおさんが人類悪だった事実を知りながら、隠匿していた事となります。こんな重大な情報を隠していたのは、私達、特異点攻略組――カルデアカルテットの絆に亀裂を生じかねない大事件につながりかねません」

「カルデアカルテット?初めて聞いたわよ!そんな呼び名!!」

「被告人は静粛に。発言の許可を許していません」

「彼が人類悪とわかれば、私達の見る目が変わる……もしくは排斥されるという恐れから隠し続けた可能性もありますが、私からすればちゃんちゃらおかしいです。せんぱ、コホン、裁判長と私、グダおさんの3人の絆の深さを甘く見ないで下さい。今更、そんな色眼鏡で見る事はありません」

「う、うぅ……それは悪かったわよ」

「では被告人に問います。グダおが人類悪だと知ったのはいつからですか?」

「え、え――と、一つ目の特異点、フランスの時に」

「大分序盤じゃねーか!!」

――バンッ!!

「ひぃ!」

「裁判長!これはもう議論の余地は無いかと!被告人は第一特異点から帰って来てから二人で防音の密室にこもる事が頻繁に見受けられます!私が聞いても、曖昧な顔で誤魔化すだけで何をしているのか答えてくれません!カルデアカルテットの輪を乱す許されざる行為かと!」

「その呼び名、気に入ったの!?」

「では、被告人に問います。グダおがどうやって人類悪だと知ったのですか?正直な所、最初のポンコツ所長が自力で気付けたとは到底思えません」

「ズバズバ言うわね!」

「詐称、偽証は、断じて、許しません」

「う、うぅ…………そ、それは……」

――バタンッ!!

「お待たせしました。いやー遅れてすみません。髪型のいい配置が決まらなく、手間取ってしまいました……」

「な、何故、七三分け……」

「グダおっ……!!」

「その件について、女性の口からは憚られるでしょう。ですので、私から答えましょう」

「あ、ばかっ」

「あれは第一特異点で、野宿していた頃。私の宝具で出した簡易版カプセルホテル式防音テントで所長が眠っていた時、人数の関係上、所長が一人でいたのを心配した私はそのテントへと忍び込みました」

「ほぅ……」

「案の定、うなされて苦しむ所長の姿が!そこでまぁ、後は色々あって防音テントだし、丁度いいかなと思って、慰めックス的な事をしたわけで」

「裁判長、な、慰めックスとは一体何でしょうか?」

「さーねぇ、ナンダロウネー」

所長、机に突っ伏したまま死亡。

「でまぁ、肉体関係にあった以上、自分の素性を隠すのもあれなので、その時に致しながらエロエロと、失礼、色々とお伝えしたわけです。いやーその時の所長ったら可愛いのなんのって『いいのぉ、それでもいいのぉ!貴方が何だろうと、私を助けて、絶対に見捨てないってわかっているからぁ……それだけでいいのぉっ……(自主規制)!』って縋りつかれた時は割とハッスルしてしまいましたなー、はっはっはっはっは」

「もう口を開くなぁ、馬鹿ぁ!!」

「二人とも死刑で」

「い、異議あり!私怨に混じった判決結果です!!」

「シケイ」

「な、何故だ!?」

「何故だ!?じゃないわよぉ!!このポンコツ弁護士!!!!」



判決
所長:次の特異点レイシフトまで、グダおとの接触禁止。
グダお:次の特異点レイシフトまで、マスターの部屋から出る事を禁ずる。例外はマシュとの戦闘訓練時のみとする。ただし、その時はマスターとの同行を必須とする。
















これにて、第4章はオシマイ。残りの特異点も問題なく攻略していきます。ただ、ラスボスは最低最悪の快楽天となりました。やったぜ。
皆ももっときあらさまの可愛さを崇めるべきなんだぜ。きあらさまぁ。

次回からはエロありの本編の方に戻ると思います。ただ、12月は出張やら、研修やらでゲロ忙しいので、もしかしたら、1話投稿出来ればいい方だと思います。クリスマス、年末年始、お正月……?ウチにはそんなメニューはないよ。アァ……書きたいキャラがどんどん増えていくぅぅぅ……。




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オール・オール・オルガマリーズ (オルガマリー所長 前編)

更新が遅くなるというのは何だったのか……。
二か月ぶりのグダお英霊編そして、待望? の所長回でもあります。
時系列は第一特異点中でごぜーます。










0話にてパールヴァティー、セミラミス更新。




 赤々と燃え盛るカルデアスに体が引っ張られる。

 魔術師の名門の当主という肩書きは持っていたが、所詮は張りぼて……。結局、マスター適正もレイシフト適正も無い私は為す術なく只泣き叫ぶだけだった。

 

 

「いや――いや、いや、助けて、誰か助けて! わた、わたし、こんなところで死にたくない!だってまだ褒められてない……! 誰も、わたしを認めてくれていないじゃない……!」

 

 子供のように泣き叫ぶ私の慟哭に誰も答えを返してくれない。

 カルデアス(永遠の死)が迫ってくる。

 

「どうして!? どうしてこんなコトばっかりなの!? 誰もわたしを評価してくれなかった! みんなわたしを嫌っていた!」

 

 今、この光景を見て、どこか冷静になっている自分がいた。

 届く筈の無い手を必死の形相で伸ばそうとする藤丸とマシュ。

 カルデアス(永遠の死)が迫ってくる。

 

 ――あぁ、これは夢ね。それもとびっきり最悪の。

 

「やだ、やめて、いやいやいやいやいやいやいや……! だってまだ何もしていない! 生まれてからずっと、ただの一度も、誰にも認めてもらえなかったのに―――!」

 

 カルデアス(永遠の死)が迫って――。

 終わりなき地獄、分解と再生を延々と行うブラックホールに飲み込まれ、小娘のまぬけな絶叫が響き渡る。

 

 ――これは、もし()()()()()()()()()()()()()の私の顛末。あり得た可能性。

 

 

 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しいやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだ。助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて――――。

 

 お願い、だれか、私に手を伸ばして……褒めて――。一人は寂しいの――。

 

 

「あいよ」

 

 

 ――暖かい感触が手を包んでくれた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んっ、ぅぅ……はぁっ……はぁ――」

 

 寝起きは最悪………でもなかった。全身に汗が張り付き、悪夢にうなされていた筈なのに。

 周りを見回し、自分の所在と状況を冷静に確認する。

 

 私はオルガマリー・アニムスフィア……。アニムスフィア家の当主。人理継続保障機関フィニス・カルデアの所長。

 そして、グダおの聖杯と神獣達の素材で新たに肉体をつくられた女。格好の事は知らない。

 

「また、あの夢ね……」

 

 レフの裏切りによる候補生マスター達の脱落、延命措置として冷結保存を行ったが、彼達のこの聖杯探索の戦いへの参加は絶望的。七つの特異点をたった一人のマスターと共に修復していかなければならない重圧からか、冬木から戻ってきた私は今日まであの悪夢に何度もうなされる事になった。

 

 でも、でも……終わり方はいつもと違った。最後は苦しい思いのままわけもわからず飛び起きるのがお決まりになっていたのに。

 最後の声と、私の手を握ってくれたのは一体誰なのだろう……。

 

「はぁ、ちょっと目、覚めちゃったわね……夜風にでも当たりに行こうかしら」

 

 そう言って、今の自分の場所を確認する。

 正式なグランドオーダーとして始まりの一歩となるフランス。

 

 私達はそこで竜の魔女として狂ったジャンヌ・ダルクと本来の歴史にはいない筈のワイバーンに蹂躙されるフランスを目にする。

 そこで、正しき聖女であるジャンヌ・ダルクと王妃マリーアントワネットと音楽家モーツァルトと合流。

 戦力としては心もとな……くないわね、一人規格外がいたわ。正直アイツだけでも割と事足りる気もするのだけど。

 

 ともかく、私達は王妃やモーツァルトのように私達に力を貸してくれるサーヴァント達を探して、フランスを探索中、この森の中で野宿をし、一休みする事にした。

 

 

 ――てれれれてってーん♪カプセルハウス(万能の天才による商品登録済み)~~。

 

 睡眠は充実された環境で行われるべきとして、グダ男が宝具から、簡易テントというには豪華過ぎる物を出してきた。

 ピンク色のカプセルからスイッチを押して出てきたのはテントというよりは家、頑丈な造りにやけに豪勢なシャンデリア、ベッド・クーラー・トイレ・マジックミラー付きのシャワー・テレビ・冷蔵庫完備、登録されていない人物が近付くと防衛システム、アルソックならぬサバソック起動というキャンプを舐めくさっている作り。

 世界が焼却されている今、テレビがあっても意味は無いのだけれど、何故か延々と流されていたBBチャンネルとやらで『絶対にイッてはいけない百重の塔 24時』とかやってたし……内容はR18なアレだったのだけれど、ついつい見入っちゃうぐらいには面白かったわ。

 

 

 

 ――完全、防音ってさぁ。僕の楽しみが無くなっちゃうじゃないか。

 

 ――ふふ、見てジャンヌ!このベッド回転するわ!生前、住んでいた城でもこんな面白いベッドは見た事ないわ!

 ――あぁ、マリー……あまり無闇やたらにいじらない方が……。

 

 ――先輩、この冷蔵庫のボトルに入っている液体は何でしょうか。飲み物ではありませんって注意書きもありますが……。きゃっ!何かヌルっとしますよ!先輩。

 ――あの変態サーヴァント、完全にアレなホテルじゃねぇかこれ……。

 

 

 二人部屋という事で、藤丸とマシュ、ジャンヌとマリーが一緒。

 さすがにサーヴァントといえども男と二人っきりはマズイので私が一人になったわけなのだが。

 グダ男は見張り役という事ではハウスの外で警戒中。

 ……何かせっかくこの部屋用意をしてくれたアイツを一人だけ外で待機ってのも可哀想よね。

 

「別に私の部屋に入ってくれても良かったのに……」

 

「何がです所長?」

 

「自分の宝具なんだから、貴方の好きに使っても罰は当たらない筈よって思っただけよ」

 

「ははっ、それは安心しました。こうしてうなされていた所長の手を握っていても怒られないって事ですよね?」

 

「…………ぴゃっ?」

 

 ベッドから体を起こしていた私の右手をギュッと握っている海パン姿の男がいた。

 藤丸立香が初めて自力で召喚したサーヴァント、自称並行世界からのカルデアのマスター。名称グダお。サーヴァントなのに誰もコントロール出来ない規格外の英霊が私の傍にいた。

 

「にゃにゃにゃにゃ、にゃんでここにいるのよっ!?」

 

「だって『助けて』って聞こえちゃいましたからね。手を伸ばすぐらいはしますよ」

 

「くぅぅ、寝言で、出ていたのね……いや、そもそもここは防音性バッチリって話だったじゃない。なんで私の声が聞こえるのよ」

 

「今の所長の体は俺の宝具で作られているみたいなもんですからね。マスターとサーヴァントのパスより深い形で繋がりあってますから、所長の事は奥の奥まで俺に筒抜けってわけです」

 

「乙女のプライバシー!」

 

 ポカポカと殴りかかる私の腕を防ぐ事もなく、笑いながらなすがままにするグダお。

 そ、そう……じゃあ、夢の中の最後の声も手もコイツだったわけね。

 それにコイツの海パン一丁の姿もそうだけど、私のふざけた格好も合わさると何だか変な気分になるわね。肌色率高いし……用意されている部屋もピンク寄りだし……。

 

「むむ?所長、ちょっと頬が赤いですが」

 

「うるさい、わかってて言ってるでしょ。馬鹿」

 

「ならなんか飲み物でも飲みます?一応、酒も含めて飲料水も兼ね備えてますよこの部屋は」

 

「本当にわけのわからない宝具をポンポンと出すわね貴方……。剣だの銃だの変身スーツだの出したと思ったら今度はこんないたれりつくせりなテント(?)を出すとか……」

 

「このラブh……カプセルハウスも一個、マナプリ5000個で万能の天才ちゃんから購入した奴なんですけどね。高い買い物ですけど、それなりに重宝しましたよ。野外プレイがあんまり好きじゃないって娘達には特に――」

 

「いい。それ以上聞きたくないわ。ほら、酒でもいいから寄越しなさいよ」

 

 そういって彼が手渡して来たのは二頭身のグダおから「エサヒィ~~スープゥードゥラァァア~~イ!!」と吹き出しが出ているラベルが貼られたやけに腹立つ缶ビールだった。

 

 こんな安物……普段の私なら飲むはずもないんだけど、まぁ……人理が焼却されている異常事態ですし、普段なら絶対に口しないような物を頂くのも一興かしら。

 プルタブからはやけに気持ちのいい音が鳴った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぅ――もう一本~~」

 

「所長、飲み過ぎですよ」

 

「あぁん!?私のどこが飲み過ぎだってんのよぉ!まだ缶もひぃ、ふぅ、みぃ、よぉ、いつ…………こんなの飲んだうちには入らないわよぉ……わかってんの?自分が何言ったのかわかってんのかぁぁ~~!?」

 

「うへぇ、完全に出来上がってらぁ」

 

「ひっく、カルデアは爆破されるし……。マスター候補生は一般枠の素人しかいないし、レフは裏切るし、藤丸が召喚したサーヴァントは意味不明だし、カルデアでの召喚に成功した第三号の英霊は変態だし、私は何故か死んでいるし、と思ったらグダおに助けられたし、うぅ、ぐすっ、うぇぇ……ありがとう、本当にありがとうぉぉぉぉ……!」

 

「情緒不安定ですね。見ている分には愉快ですが」

 

 情緒不安定じゃないわよ。一応は命を救ってくれたわけだし、こうして感謝を示しているのよ。失礼な奴ね。サーヴァントの癖に……。私を誰だと思っているわけ?亡きお父様からアニムスフィア家を引き継いだ現当主にして、人理継続保障機関フィニス・カルデアの所長よ?これぐらいなんて事はないわ。それにしても結構おいしいじゃないこの缶ビール。ついつい手が伸びて――――――――うぷ。

 

「ウッ」

 

「うっ?」

 

「ゲェ――(以下の音は所長の名誉の為伏せさせて頂きます)」

 

「所長ぉぉ――!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う、うぅぅ……ぐすっ、なんでよ……なんで私ばっかりこんな目に遭うのよぉ……」

 

「所長が飲み過ぎたからですよ」

 

 マジレスは止めなさい。

 外見は年下に見える男の子に、吐瀉物をぶっかけておきながらその世話を全部させるカルデアのトップがどこにいるのかしら……。いや、元々あのドスケベコスチュームに転身した時から威厳なんてものはとうに無くなってたわね……ハハハ。

 

「それじゃあ、行きましょうか」

 

「ふぇ、どこによ?」

 

「シャワーに決まってるじゃないですか。あんな盛大に粗相したまま気持ち良く寝れないでしょう?一回、サッパリするべきですよ」

 

「あわわわわ、ま、ままま待ちなさいっ!一人で、一人で入れるからっ!」

 

「そんなフラフラのご様子で何をおっしゃっているのやら、大丈夫ですよ所長、こう見えても介護(女性限定)は大の得意なんです」

 

 え、え、え……?い、今から?ナウ?一緒にシャワールームに向かうの?う、うぇ、みゃ、みゃって、待って……わ、わわわわわわたし、体の処理とか大丈夫かしら?っていうか初めてはもう少しロマンチックな場所が良かったのだけれど!こんな嘔吐の処理のついでとか、場の流れとかじゃなくて綺麗な夜景が一望できる高層ビルの最上階で、指輪を渡してもらって、二人で手を繋ぎながら、ベッドの上で1時間ぐらい話した後に、グダおの方から自然な形でキスをして、優しく押し倒してもらう感じで、そしたら、私が「電気をけして……」って言ってそのまま二人は重なり合って――――、あっ、あっ、あっ、行くのね?行ってしまうのね?私の初めてがバスルームで奪われてしまうのね――――!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………………………」

 

「スッキリしたでしょ、所長」

 

「…………えぇ、そうね。体は綺麗になったわ」

 

 ビックリするぐらい紳士的だったわ……けど、釈然としないわ。

 

 ドギマギして心の準備も覚悟も完了している私の事なんて露知らず、一流の介護士の如く、邪心なく私の躰を洗ってくれた。胸もアソコも……。

 

 

 ――んっ、あぁっ。ひぅんぅぅっ!

 

 

 なんでよ……なんでナニもしないのよ!

 なんかイヤらしい声を出している私が馬鹿みたいだったじゃない!

 けど、仕方ないでしょ?洗い方はイヤらしくなかったけど、触られる所触られる所、全部が気持ち良かったんだもの!むしろ、生殺し気分だったわ!これならいっそ獣の如く襲いかかってもらった方がまだマシだったわ!!

 

 確かに体は綺麗になったけど!スッキリはしていないわ!色んな意味で!昂っている分、さらに目が覚めてしまったわよ馬鹿!

 私の体はそんな魅力的じゃないって言いたいの!?敵サーヴァントには嬉々としてセクハラする癖に!私みたいな小娘の体じゃ興奮出来ないって言うのね!馬鹿、馬鹿、死んじゃえ!

 

「うぅ~~~~……」

 

「そんな恨めしい眼で見ないで下さいよ。所長の初めてはお風呂とかじゃなくて、ちゃんとした場所で奪いたいなって思っただけですから」

 

「え、私の事想ってくれて……」

 

(酔いとチョロさで心配になる……)

 

 な、何よ……それなら最初っからそう言えばいいじゃない。確かに初めて抱かれる場所はやっぱりベッドの上が一番よね。いきなりそんなハードなプレイとかハードルが高いし、興味が無いと言えばウソになるけど、そういうのは回数と段階を踏んでからちょっとずつ試す感じでチャレンジした方がいいと思うわ。

 

「そう言えば、服も変わってるわ。レイシフト中はあのふざけた衣装から着替えれないんじゃなかったかしら?」

 

 正直、バスルームに連れて行ってもらった時は夢見心地だったので脱がせてもらった記憶も着替えさせてもらった記憶も殆ど無いが、今の私の服は洗濯と乾燥をしっかりと行われているふわふわのバスローブである。

 いつもの『ハロウィン・プリンセス』とかいう小悪魔コスよりは全然マシ。

 

「このカプセルハウス(裏名ラブセクハウス)の中ではありとあらゆるコスチュームプレイを楽しむ為に、人間だろうと、英霊だろうと、獣だろうと、身に着ける服は俺の自由自在に選べるんですよ。例えばほらっ」

 

 パチンとグダおが指を鳴らすと――。

 

「スケスケのネグリジェ!?」

 

 パチン――。

 

「セーラー服!?」

 

 パチン――。

 

「バニー!?」

 

 パチン――。

 

「スリングショット!?わかった!わかったから、もう服を戻してくれていいからっ!」

 

 ひ、紐はまだ……まだ、ハードルが高いわ……!

 

「とまぁ、この家の中においては俺に心を許してくれている娘達に関しては衣装変えが自由自在という事をわかってもらえたと思います」

 

「な、何でもアリ、ね……」

 

 

 

「それで、所長……。ちょっとは気が紛れましたか?」

 

「………………」

 

 まぁ、そうなんだろう。このわけのわからないサーヴァントはこの部屋で私の手を握ってくれていた時からずぅっと私の事を考えてくれている。酒に飲まれて、ウザ絡みして、愚痴を吐き出して、物理的に吐き出しても嫌な顔一つせず私の相手をしてくれた。

 

「ねぇ、どうして私にそこまで気を使ってくれるの?」

 

 ずっと、聞きたかった事がある。あの冬木の地で死ぬ運命にしか無かった私に手を伸ばしてくれた時から気になっていた。

 何故大切な宝具まで使って、私に肉体を与えてくれたのか。そして、今のように事あるごとに私に目をかけてくれるのか。まぁ、見方によってはおちょくられているとも言えるが。それでも、グダおが馬鹿をやって私がツッコミを入れている時は人理修復の責務とか責任とかそういった重みから解放されている気がするの。

 

 コイツがそれを狙ってやっているかどうかはわからないが……。

 

 英霊が人を助けるのは当たり前の事?そんな台詞を吐かれても私は信じられない。だって――。

 

「自分が助けられるような、そこまで手を伸ばしてもらえるような価値のある人間だと思えないから?」

 

 私の心を読んだかのようにグダおの言葉に返答する。

 

「だって、だって、今まで時計塔の魔術師だって、カルデアのスタッフだって、普通の人間に褒められた事も無いのに……いきなり人理を救った英霊に救われるだけの価値なんて……私にあるわけないじゃない……!皆、言うのよ!『ただのお飾りの小娘だ』、『相応しい人間が来たらすぐにすげ替えられる』、『カルデアの運営をアレに任せるなんて正気か』って……けど、それも当たり前よね……私は何の結果も残してこなかったんだから……」

 

「所長は今まで頑張ってきたじゃないか」

 

「フッ、随分とお優しい言葉を吐くのね。どんなに努力しようが、頑張ろうが、結果を出せなかったら何の意味も無いのよ……」

 

「そうかなぁ――。そんなに結果が大事?」

 

 偉業を成し遂げて英霊の座に祀り上げられた筈の男から、偉大な結果を残した男からは純粋な疑問符が出ていた。

 

「『結果だけが全て』というのなら、俺はそんな人類は全て滅ぶべきだと思うよ」

 

「い、いきなりの暴論ね」

 

「大事なのは歩み、過程、軌跡であり、その人が歩いてきた旅路にこそ意味がある。結末だけに目を向けるなんてツマラナイ事は俺はしたくないね。過程に意味が無いのなら、この世のあらゆる闘争もじゃんけんで良くね?って話になるし」

 

 ベッドに座っていた私の隣に腰掛ける、やけに距離が近い。さっきはもっと恥ずかしい事をされていたのに、今はそれよりも動悸が激しくなっている。

 

「こと情事においても結果論で言うなら女の子を抱きました。中出ししました……。で終わってしまうじゃないか。あぁ、なんて情緒の無い表現の仕方だろうか……。向き合う娘の表情、胸、太もも、腹、背中、くびれ、尻、腰、髪、性器、匂い、漏れ出す声に反応や震え、抱き合う過程の中で湧き出る甘美なる交わりを真剣に観察し、表現し、噛み締めるべきだと俺は思う。男女の交わりとは始まりから終わりまで全てを慈しむべきだと!」

 

「そんな生々しい話なのかしらこれは!?」

 

「所長はここまで本当に何もしてこなかった?自分は何の努力もしてこなかったって自信を持って言える?有り得ない、所長は誰よりも必死にこのカルデアでもがいて、足掻いて、努力していた筈だよ」

 

 わ、わかったような口を。まるで見てきたかのように……。

 

「私はねぇ!あなたが思うような立派な人間じゃないのよ!ここで頑張ってきたのだって、人理を救済するとかそんな大層な大義とか無くて、未来の意味とか目的とかそんなものどうでもいい癖に!有能であろうという強迫観念だけに動かされて、トップの座で威張り散らしている……そんな分不相応な小娘なのよ」

 

 隣にいるサーヴァントに、命の恩人に当たり散らすように私は喚く。自分でも最低な事をしているのはわかっている……彼にしているのは只の八つ当たりだ。それでも叫ばずにはいられなかった。こんな醜態を目の当たりにしてもなお、目を逸らさず真剣に私の事を見てくれているグダおに。

 

「結果がこれよ!腹心の裏切りも見抜けず、スタッフは半分近くが死亡、マスター候補生も一人を残してコールドスリープ状態!私自身が助かったのも藤丸が偶々、あなたを召喚して、そのあなたが何を思ったのか私を助けてくれた……聞こえるの、聞こえるのよ……。死んでいったスタッフ達が『なんで、だ……。なんでお前だけ生き残っているんだ!私達は終わってしまったのに何でお前だけ』って……私が所長になんてなったせいで、むぎゅっ!」

 

 私の癇癪を遮るように、グダおの触り心地良い手が頬を挟んでいた。

 

「所長、死者の気持ちがわかるのはその当の本人だけだよ。生者が勝手に代弁していいものじゃない」

 

「でも、でもぉっ……」

 

 まだアルコールが残っているせいか、子供の如く私は泣き腫らし、グダおの胸板に顔を埋め、嗚咽を漏らす。

 ポンポンと背中を叩いてくれる彼の気遣いが嬉しくて情けなくて申し訳なくて、私は只々肩を震わせていた。

 

「ふぅーむ、周りにも原因があるとはいえ、所長の自己評価の低さ、自信の無さは筋金入りだね……。ちょっとこれは荒療治が必要かな」

 

「ふぇ……?き、きゃっ……」

 

 ドサッと景色が天井とグダおの顔に代わり、背中に柔らかい感謝を感じる。

 

 え、えぇ?うぇええ!?あ、あれ?何で私、押し倒されているの!?何、何?そういう流れ?こうセクシャルでアダルティな感じで慰める流れなの?ま、待って、私今日の下着、大丈夫よね……って……あぁ、そういえばさっき汚れて全部、彼に脱がされたんだっけ……。でもでも待ちなさい心の準備が――――。

 

「所長の治療にはとびっきりの劇薬が必要だと理解した。某婦長から『良薬口に苦しといいますが、司令官の場合は行き過ぎて毒になる危険性もありますね。まぁ、そうならないように私が管理しますが』とお墨付きをもらっている薬をキメてあげる」

 

 あ、あぁ……覆い被さられて……。

 

「今からオルガマリー・アニムスフィアを抱く。っていう俺がさっきから貴方を抱きたくて仕方がない。もうマジで好きでペロペロしたくて堪らなくなってる」

 

「ぺ、ペロペロって……わ、私そんなイイ体してないし、経験も無いし……同情なら――」

 

「俺が同情で言っているように見える?義務感で押し倒しているように見える?」

 

 わかる……わかってしまう。経験が無い私にも理解出来る程に情欲と親愛の色がベッドに横たわっている私を見る彼の眼に灯っている。

 

「私、めんどくさいわよ……。自分で言うのも何だけど、本当にめんどくさい性格してるわよ……すぐにヒステリー起こすし、こういう男女の仲の時も気の利いた事も言えないし……貴方みたいな英雄を楽しませるような反応は出来ないわ……」

 

「いい。俺は所長のそういうポンコツな所とか子供らしく癇癪を起こす所とか、人一倍頑張っている癖にメンタルが弱い所も全部ひっくるめて好きだから……所長は何も考えず、只、あるがままに反応を返してくれるだけでいい。俺はそんなオルガマリー・アニムスフィアが愛おしくて仕方ないから」

 

 疑えない。彼の言葉が、行動が、表情が、全て本気だと私の脳に染み込ませてくる。本気で私をこれから、抱いて、愛してくれるのだと、打算とか同情とかそういうのじゃなくて……さっきまで治療とか言っていたくせに当の本人がその言葉を忘れてしまっているのかと思うぐらいに目の前にいる男は一直線に私への好意を示していた……。

 

 それはこれまで生きてきて中で初めて向けられた感情だった。

 性行為自体は知っている……魔術師という面でも、女という面でも。

 けど、今シーツをギュッと握りしめ、心臓をバクバクさせている私には未知への恐怖と何故かそれを凌駕する期待があった。

 

 

「せめて……電気は消して……」

 

「ごめん、それは無理」

 

「な、なんでよっ!……あっ、まっ……んっ――――」

 

 フランスの森にて、野営中に建てられた密閉された特異な空間の中、寝台の上で二つの影が重なった――――。

 

 

 

 




次回、自分に自信が持てないのなら自信を持てるまで君にラブなんだぜを心体ともにじっくり、ねっとりとわからせてやるカウンセリング回(R18)。










【絶対にイッてはいけない百重の塔 24時】

『ほぉ、ようやく集ったんね。今日からあんたはん達はこの快楽百重塔に挑んでもらう修行僧や、ここでのNGの行為は只一つ……『イく』事、ただそれだけやよ。まぁ、歴史に名を連ねた英雄はんがたがそんな、痴態を晒すような真似はせえへんと思うけど……。ちなみに階を重ねる毎に感度が上がっていくから……きばっていくんやでぇ』
マスターと体を重ね続けた酒呑が新たに得た宝具『精子乱交・淫便鬼毒』で創り出した。快楽百重塔……。
集められた日ノ本の女英霊達……。「楽しいゲーム」としか聞かされず、概要を何も知らないまま訪れてしまった節分大将。
塔の頂上……天辺にある温泉、絶景を楽しみながらマスターと混浴が出来るのは百階まで辿り着いた者だけ。
階を重ねる毎にメンバーに襲いかかる淫劣な仕掛人と罠――。体を癒そうと塔の外にある湯で癒そうとした時、誰かが気づく。嗅ぎなれたこの匂い……! 何度も体の表面と外にかけられたような親近感……! 『にごり湯と聞いていましたが……この湯の中にある白濁はまさか――!』塔の外でも中でも、休める(セクシャルから)場所はどこにも無い。もう枯れていたと思っていた情欲を燃え上がらされてしまう未亡人……。そして裏切り、葛藤、悦楽、笑い、感動……。
快楽の塔の中で揺れ動く女達の淫靡なる長編ドキュメントバラエティ!
21××年 12月31日 公開!













所長本番回の後編に続きます。
何気にオルガマリー所長のエロをハメで書くのは私が初めて? 皆、もっと所長の可愛さを認知して、ほらほら。




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オール・オール・オルガマリーズ(オルガマリー所長後編)


グダお「チョコラミス……ふむ、ひらめいた」
セミ様「通報した」












何とか週更新はしようと思って頑張る毎日。ネタはあるのに物理的に時間が無い悲しみ。
所長ネタを集めようと、コミカライズ2本と、アニメと、原作を見直して、4回カルデアスに飲み込まれる所長を見て嘔吐した後に、よく分かるFGOで癒されながら書いた今話をどうぞ。




「スゥーハァ――、んぅ――……所長の体、いい匂い――」

 

「んっ、くぅ……あっ、もうあんまり首元でモゾモゾしないで……それに、いい匂いって、さっき貴方が入念に私の体、洗ってくれたじゃない……その石鹸の香りでしょ……」

 

 押し倒されてから数分、てっきり野獣の如く戴かれてしまうのかとドキマギしていたが、意外や意外、グダおはベッドの上で抱き締めたまま、そこから派手なアクションを起こす事はなかった。

 

「いや……これは所長生来の香り、オルガマリウムに間違いない。あぁ……補充される所長成分に対する愛おしさと切なさでダメになってしまう~~……」

 

「何よオルガマリウムって……」

 

 ベッドの上で重なり合う私達、バスローブの上からギュッと私を抱き締めてくれる彼の力加減は強すぎず、弱すぎず、安心を分け、寂しさを与えない、最高の塩梅の温もりだった。

 これから、初めての性行為にドキドキさせていた私にとっては肩透かしな面もあったが、サーヴァントとしてあれだけ絶大な力を持っている彼が……所々カオスな面もあるけど、先陣に立ち、頼り甲斐のあるグダおが……こうして私に夢中になってくれる様子を見せてくれるのはどこか女の自信を与えてくれるようで少し……いや、凄く嬉しい。

 

「ほーら、所長ももっとギュっとして、今の俺はサーヴァントなんだから、壊れるぐらいに力入れてくれちゃってもいいんだぜ?」

 

「こ、こうかしらっ?」

 

「足りない足りない」

 

「こう、かしらっ!」

 

「まだまだ!もっと!もっとだ!両手だけじゃなくて両足使ってだいしゅきホールドする感じで!」

 

「え、え~~いっ!」

 

『だいしゅきホールド』の意味はよくわからなかったが、四肢で甘えるようにグダおにしがみついている自分の姿は結構間抜けな感じがする。何故か天井についている鏡が水着姿の彼を全身で抱擁している私の顔を写していた。

 

 なによ……結構幸せそうな顔してるじゃない。

 

 そもそもコイツのスキンシップもずるいのだ。

 私に向けられる声色も表情もハグも、一切の打算とか企みを感じさせず、子供でもこの人は私の事が本当に好きなんだ、全身全霊で愛してくれているんだという事を理解出来てしまう程に親愛に満ちていた。

 

 私って、こう易々と他人を信用するタイプだったかしら……?

 

「あ――、所長、可愛い。俺の言った事を真面目に挑戦してくれるその健気さが可愛い、本当は恥ずかしいのに必死に俺の体を抱き締め返してくれるその顔が可愛い、あぁ、可愛い可愛い超可愛い」

 

「う、あ……あんまり可愛い可愛い連呼しないでもらえる……私はそんなかわいげある女じゃ……」

 

「ほーら、またネガ入ってる……。一晩使ってしっかりと教え込むからね、貴女に……自分の可愛さを」

 

「一晩……」

 

 私が下でグダおが上の体勢から、いつの間にかコロンとお互い向き合ったまま横向きになった。

 両手足は依然として、グダおの体に絡んだまま……ちらっと下に視線を向けると、乱れたバスローブから私の太腿が覗かせている。

 

 やばい……両手で着衣が一切無いグダおの肌に触れるのもそうだったけど、二人の太腿がこうして遮る衣類が無く……触れ合ってるドキドキが尋常じゃない。

 彼の素肌が恥ずかしいのに心地良くて、動悸で胸が苦しいのに、とても気持ち良くて。

 まるで物語の中にいる恋をした乙女のように私の瞳は目の前の男の顔だけに釘付けだった。

 

「なんだか、えっちぃわね……この感じ」

 

「何言ってるんですか所長……これからもっとえっちぃ事になるんですよ?」

 

「きゅぅ……」

 

 そう面と向かって言われるとさらに心臓の鼓動で死にそうになるから勘弁して欲しいわ……。

 電気も消してもらえなかったし……あぁ、私、変な顔してないかしら?

 

「所長ぺろぺろ」

 

「あ、ちょ……首なめちゃ、やぁ……ひぅんぅ」

 

 首元に顔を近づけたかと思いきや、おかしな台詞と共に生温かく湿った感触が私の喉仏の辺りを這いずり回る。

 くすぐったくて、未知の感触。異性に肌を舐められるという異常事態。なのに私が上げているのは悲鳴ではなく、色情に満ちた悦びの声。

 

「は、あぁっ、ふぅ……なにこれぇ……舐められるのって……こんなに気持ちいいの……?あっ!ひぅ……あっ、首にきすぅ……」

 

「んぅ、ちゅ……ちゅるぅ……ちゅぱっ、れろぉ……はむぅ……んぁ、所長の体、すんごく甘いですよ。うん、所長の体は実は砂糖で構成されているのかもしれませんね……これはもっと調査の必要が……」

 

「んぅ、ふぅぁ……あっ、バスローブ……」

 

「さっきお風呂で体を洗った時は生殺しもいい所でしたから……。もう焦らすなんて事はしません、俺の全身全霊を込めてオルガマリーを愛でる事にします」

 

 既に肌蹴かけていたバスローブを脱がされる。上半身がブラジャーも無い生まれたままの姿へと剥かれていく。

 浴室では酔いもあって割と前後不覚状態もあったが、今こうして寝台の上で彼に優しく脱がされていくと、より生々しくこれからの性行為についてより意識させられてしまう。

 

 私の胸の形……おかしくないかしら……?

 

「綺麗だよ。オルガマリー」

 

「んひゅぅぅっ!!?」

 

 私の胸を褒めて、そのバストを手の平で包んだだけ……。

 それだけなのに、抗いようの無い幸福感が訪れた。

 女の象徴に彼が夢中になって触れてくれている……胸から来る痺れの何と甘美たる事か。

 

「あぁっ!んぅう!はぅぅっ!グ、ダお……!指の動きがぁ……!あはぁぁっ!!」

 

 触られただけでこれだけの艶声を上げてしまったのだ。ならば指を動かされ、揉まれてしまったら一体どれだけの刺激が私の体に襲いかかってしまうのか?

 そんな心の疑問に答えてくれるかのように、私の胸の上を蠢き出すグダおの両手。

 

「ひぅ!んんぅっ!!あぁぁ……あぁぁ――――!」

 

 凄い、凄い……そんな単純で語彙力に欠けた感想しか出てこない。

 胸ぐらい別に自分で触った事はある……けど、こんな刺激は無かった。

 異性に触れられるだけでもこうも違うの?それとも相手がこの人だから?あぁ、気持ちいい、気持ち良い、キモチいい。

 撫でて、寄せて、くすぐって、突いて、摘まんで、揉んで。彼のありとあらゆる動きで素直過ぎる反応を返してしまう。

 

「ふぅ、んぅぅ!あっ、あぁっ、んぁァ!おっぱいぃ、おもちゃにされちゃってるぅ……あ、グダおぉ……」

 

「おっぱいは大きくて張りがあるし、なにこのスベスベでモチモチの感触、それでいて未成熟を感じさせるような蕾……マリぃっぱいはえっちぃ過ぎますわ……これは特異点になりかねないですよ」

 

「ふぅ、んぅうぅ……マジマジと、ふざけた品評してんじゃ、ない…わよぉっ……んくあぁぁっ!やっ、ちくびツンツンやぁぁっ……」

 

「もうマリーってばどうしてそんなにそそらせる反応をしてくれちゃうんですか……あぁ、もっと味わってもいいんだよね……これはさ」

 

 いつもの丁寧な言葉から、少しずつ砕けた語調になるグダお。それが私達の距離感を縮めてくれている気がして何だか無性に嬉しくなった。

 

 ……ん?私の胸に口を近付けて、何を……?

 

 

 ――ちゅぅぅぅぅ……。

 

 

「んくぅあああああっ!!?すってぇ……!んにゃああぁっ……!!」

 

 先程、舌で私の肌をねぶっていた延長。今度は赤子のように乳頭にグダおは吸い付いた。

 当然、私は妊娠もしていないし、母乳が出る筈も無い。母親になるにはまだ少しばかり足りていない年齢。そんな私が外見上、そう年が離れていない男の子に乳を吸われている……倒錯的で変態的な光景。だが私の体は悦びしか感じていなかった。彼の手、舌、唇……全てから与えられる物が女の性をハンマーで叩きつけてくるような衝撃。

 

 お願い、もっと吸ってと淫らに私は彼の頭をギュッと抱き締めていた。

 

「んふぅっ!あっ……はぁっ、はぁっ、あぁぁっ!!ちゅっちゅってぇ……おっぱいどんどんキモチよくなっちゃってるぅ……なによぉ、なんなのよこれぇぇ……あんぅぅ!!」

 

 吸い付いてくる彼の舌の動きが鮮明にわかってしまう。乳輪を回る舌先、時折唾液を塗すように乳首に絡みついてくる……もう一方の手で乳房をたぷたぷと円を描くように彼の手は淫らに動きまわる。

 

「あっ……!はぅぅ!!ひぅぁああっ!!おっぱいぃ……あつくなってぇ……おかひくなっちゃぅうっ!」

 

 今まで他人に触らせた事の無い胸、それを咥えられ、弄ばれている現状。

 恥ずかしさでどうにかなってしまいそうだけど……それ以上に胸奥から彼に対する母性愛と女の性が呼び起こされる。

 

「んぅ――……ふぅ――、あっ……んはぁ――……」

 

 私がどれだけ喘いでも、グダおの口淫は留まる事を知らなかった。抱かれてから1時間、胸責めからやっと解放されて唾液でベトベトになった私の胸は淫猥極まりなかった。

 未だはしたなく屹立している乳頭をピンとグダおに指で弾かれる度に下腹部から大きな液が漏れ出そうになる。

 

「いやらしい顔になってるのに、とっても綺麗でなお初々しさを失わない……はぁー、本当大好きだな、マリー……だぁいすき」

 

「んっ、あっ……やめ、てぇ……」

 

「う――ん?やめてって何が?『好き』って言う事?それとも……」

 

 厭らしく口元を歪ませて、私の耳元で囁いてるグダおの指はもう大洪水になっている秘部へとすらりと伸びていく。

 

「ここに指が入っちゃう事?」

 

 駄目……今、触られたら私本当に狂っちゃう……。

 お願い……早く触って……この疼きを抑えて……。

 

 相反する二つの感情が混ざり合って、ぐちゃぐちゃになる。

 彼に女の象徴を弄られる未知への期待感と不安感……上半身だけを露わにさせていたバスローブはさらに開かされる。グダおの前で男を知らない未熟な体がいとも簡単に暴かれてしまう。

 

 見てて楽しくもないであろう体をグダおは何度でも『綺麗』だという。

 聞き分けの無い子供を諭すように何度でも『好きだ』という。

 駄目よ駄目……そんなに褒めないで、自信を持ってしまうわ、己惚れてしまうわ。

 

「はっ、はっ、はぁっ、あぁっ、あぁんぅぁっ……!」

 

 その言葉を耳で囁かれる度に私の体は達してしまったかのように痙攣してしまうのだった。

 

「全身も綺麗でいい匂いしかしない……ここもプニプニしてて一生触ってられるよマリー」

 

「ひぅっ!あぁっ……!ゆびぃ、スリスリ……やぁぁっ……!」

 

「反応も可愛すぎるし、そんないじらしい顔されるともっと好きになっちゃうよ」

 

『所長』ではない、『マリー』と彼に呼ばれるのがくすぐったくて、それ以上に嬉しい。カルデアの所長とそこに所属しているマスターのサーヴァントという関係ではなく只の男女の関係のようで……煩わしい物が一切無く愛しあえる。

 

 幼児退行してしまったかのように首をわけもわからず振り続ける……私の淫筋を擦る彼の指が熱くて熱くて、まだ中に入れられたわけでも無いのに内から溶かされてしまいそうで……。

 

「はずかしさで、頭がおかしくなるぅっ……あっ、はぁっ……!あぁ、下ぁ……!指、だめぇぇっ!だめ、だめぇぇ……!恥ずかしすぎるのぉっ……!」

 

「いいんだよマリー……どんどん恥ずかしくなって。どんなに恥ずかしい恰好になっても、どんな醜態を晒そうとも、どんなに快楽に溺れようとも、俺が貴女を失望する事も見限る事も見捨てる事も絶対に無い、だから俺に全てを見せて」

 

「あ――――」

 

「貴女がどこにいようとも絶対に拾い上げて、大事に俺の懐で未来永劫抱き締めるとも。こう見えても独占欲は強いからね?一度情を交えた娘には生涯、俺と付き合ってもらうから」

 

 陰部を弄られながら、真剣な顔で告げられる愛の囁き。どこまでも真剣で本気で、私に逃げ場が無いって事をわからせる強烈な言霊。

『逃げ場が無い』なんて閉塞としたマイナスのイメージしかないのに、彼に言われてしまうと……逃がさないと囁かれてしまうとどうしてこんなにも胸が高鳴ってしまうのだろうか……?

 

「…………私を捨てない?」

 

「むしろ勝手にどっかに行ったら地の果てまで追いかけて連れ戻すとも」

 

「ずっと傍にいてくれる……?」

 

「もちろん」

 

「う、うぅ……うぅぅぅぅぅぅぅぅっっ」

 

 全裸でアソコを愛撫されているという酷い絵面なのに、感極まった私はボロボロと涙をこぼしていた。

 ずっとずっと何かを求めていた……。欲しくて仕方なかった言葉が、与えてもらいたかった感情が目の前にいる彼が用意してくれた。

 

 っていうかこれ、プロポーズ!?プロポーズなのかしら!?私、既婚者にプロポーズされてるの!?いきなりそんなハイレベルでアダルティなロマンスから始まるの?私まだ恋愛経験値全く無いのに………………あぁ、けど彼、英霊よね……サーヴァントよ、ね…………夫婦みたいな関係には……あ、そうよ!聖杯があるじゃない!どうせいくつも特異点あるなら一個ぐらい彼の受肉に使っても文句は言われないわよね!

 いやいやいや、彼のプロポーズに答えるつもりとかべべべべべ、別に全くもってないけど?けど、所長としてはね?カルデアの長としてはプライベートな場所といえども告げられた言葉に虚偽が無いか判断する必要があって、その為には彼には私とずっと一緒にいてもらう必要があって、そう考えると聖杯の使用はむしろ必要経費よね?

 

「ひゃうぅぅんぅぅ!!」

 

「あ――、マリー大丈夫?顔から湯気が蒸気王なみに出て、目がどっかイッてたけど……」

 

「ららら、らいじょうぶよ。ぜんぜんおちちゅいてるわ。私はいたってれれれれいせいよ……何なら今から九九の段を言ってあげてもいいわ」

 

「冷静さのかけらもねぇ。ごめんねぇマリー……。貴女が恋愛大雑魚なのすっかり忘れてた。もっと段階を踏むべきだった。カルデアの食堂デートから始めるべきだったよ」

 

「誰が恋愛大雑魚よ!」

 

 確かに経験は無いけども!大雑魚は言い過ぎでしょう!

 

「マリー」

 

「あぅ」

 

 かかかか顔が――――。

 

「下の口は指とキスしちゃってるからね、上の口も寂しくなってるでしょ?」

 

 お互いの吐息が顔にかかり合う。

 迫りくるグダおの顔、若干の幼さがある少年と青年の境目……だけどまるで歴戦の勇士であるような妖艶とした色気もある矛盾してながら完成されている彼の容貌にクラクラしてきてしまう。

 

 キス、よね?キス……?口…………!?

 ま、まままま待ちなさい!そういえば!私、さっき吐いたばっかりじゃない!!

 

「せ、せめて歯を磨かせて――」

 

「却下。言ったでしょう?『俺に全てを見せて』って」

 

「あ、そんな――……んぅぅっぅ!!」

 

 有無を言わさず奪われる唇、体内の吐瀉物を出したばかりの女の口にどうしてこの男は一切の躊躇なくキスする事は出来るのだろうか……。

 

「んぅっ!んむぅぅっ!!んぅっ……んっ、ふぅ……」

 

 女としてのプライドを守るべく頑固として口を開けるつもりの無かった決心も彼とマウストゥーマウストゥーをした瞬間に吹き飛んでしまった。

 男とは思えない程に柔らかな唇、優しく微かな力で私の下唇を啄まれ、リップ全体を舌でくすぐられる事でその防壁もあっけなく開城してしまった。

 

 あっ……舌が入って――――。

 

「んぁ、ぁむぅっ……んじゅぅ、ちゅぅぅ……れぇあぁっ、んはぁぁっ……んじゅるぅぅぅっ」

 

 バキュームの如き卑猥な音と共に私の体は弓なりに反り返る。

 彼の舌が口内のありとあらゆる全てを舐めつくそうと動き回る。躊躇も遠慮も無く、吐いた後だろうが、何だろうが、そんなもの関係ないとばかりにグダおは口内の全てを蹂躙し始めた。

 

 言葉に出さなくとも私の全てが愛おしいとそう語りかけるような彼の口技にだらしなく口が半開きになっていく。

 

「っんはぁっ……マリーももっと舌、絡めて……」

 

「っはぁっ、ふぁい……あむぅっ、んぷぅっ、んちゅ、ちゅぅ……れろぉぁっ……」

 

 私はただペロンと舌を出しただけ……それだけなのに彼の舌に絡め取られた私のソレは踊るように弄ばれてる。

 ちゅぱちゅぱ、ぶちゅぶちゅ、じゅるじゅる……もう音だけでも恥ずかしいのに、彼の舌が私の口の全てを舐めとろうとする蠢動から与えらる快感により一層恥ずかしい声は溢れる。

 

 熱烈なディープキス、されるがままだったの私だが、体の反応は律儀に返している。

 特にグダおの指腹にキスされてしまっている女陰からはもう愛液の噴水が彼の手を汚してしまっている事だろう。

 

「ァっ……ぇああっっ……はぁっ……あむぅっ、ちゅ、ちゅぅ……きしゅ……しゅごぉい……あぁっ……こんな大人のきしゅ……いきなりされたらもう……普通のじゃぁ……満足できにゃぁい……あむぅ、グダぉ……ちゅ、んじゅるぅぅぅ……」

 

 嘔吐の後のディープキス、彼に私の醜い部分まで吸い取られている気分になって何故か無性に興奮が止まらなかった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇぁ……ぁあっ……んはぁぁ――――……」

 

「もう上下の口どっちも涎がひどい事になってるよマリー」

 

「だ、誰のせいよぉ、ばかぁ……」

 

 キスの後のお互いを結ぶ長い長い銀色の唾液のアーチを見せられて小休止。

 ディープキスだけで軽く二桁は達してしまった私だったが……不思議なことにまだ体力的には余裕がある。

 これもグダおが私の肉体として与えてくれた宝具のおかげか……はたまた彼の唾液には霊薬的な効果が含まれているのか……。

 

 ただまぁ、それより気になっている事がある。

 

 キスの最中はいっぱいいっぱいで余裕は無かったが、今ははっきりとわかる。唇を交わしながら時折触れ合った彼の下の膨らみ……。水着の上からでもはっきりわかる彼の興奮の象徴がそこに眠っているのが眼に入る。

 

「…………苦しいんでしょ?」

 

 確かに私は処女だけれども、そういう経験も無いし、彼に恋愛大雑魚とか言われても仕方ないぐらいにはその方面ではポンコツだけれども……それでも、されるがままの人形にはなりたくなかった。

 こんなにも自分を愛してくれているグダおの思いにアクションを起こしたい。

 

「マリー……」

 

 彼の海パンにそっと手をかける。

 

「動かないで」

 

 ――ボロンッ……!

 

「………………」

 

 え、え、ぅえ!?デカっ……!男の人って……興奮したらこんなに大きくなるの!?ちっちゃい頃、お風呂で見たお父様のと全然違うわ!!

 

「あっ、マリー……ちょっと……そんなツンツンされると」

 

「……でででもこれって、私でこんなになるまで、えええエッチな気持ちになってくれたって事よよよよね?」

 

 恥ずかしさで気絶しそうになるのを何とか根性で踏み留まらせる。

 確かに私の顔より長くてグロテスクだけど、指で突く度にピクピクと震えるのは何だか愛おしさも込み上げてくる。

 不思議な気分ね……。本来なら男の人の性器なんて目の当たりにしたら、逃げ出してもいい気がするのに……今は彼のココから眼が離せなくなっている。

 

「あなた、実はココに魅了スキルがあるとか?」

 

「ディルみたいな『愛の肉棒:EX』的な?無い無い」

 

「そう、なら……この感情はスキルで生まれたものじゃないのね、良かったわ……。ん、ンンッ!コレ、このままにしておくと苦しいんでしょ?私の中でスッキリさせないといけないのよね?」

 

 知識として、男女の『抱く』という行為の何たるかを理解している私は必死に弁を続ける。

 

「いやスッキリするのなら別に膣内じゃなくてもいいんだけど、いきなり膣内射精をご希望とは、マリーってばえっちぃんだぁ」

 

「貴方が私のアソコをずぅっと焦らすからでしょ!キスされながら指であんな厭らしい動きで擦られ続けたら切なくなっちゃうじゃないのよ……」

 

「ハハハ、ごめんごめんて。マリーが女としての部分で俺を求めてくれるのが嬉しくてさ……。そうだよ、マリーの全てが愛らしくて、愛おしくて、欲しくて仕方ないから、俺のアソコがこんなにギンギンになってるんだよ。ちょっとは自分に自信が持てた?」

 

「…………言葉だけじゃ、信じられない」

 

 すすっと、湧き出る羞恥の心全て押し殺して股を開く――――。

 

「行動で示しなさいよ……」

 

 

 

 そこから、私は彼に初めてを奪われた。

 

 いきり立つ怒張とは正反対に彼の挿入はビックリするぐらいに優しかった。

 

『挿れるよ……マリー』と蕩かすような声色でそっと始まる私が密かに夢見てたロマンチックな交わり。

 私の男を知らない女性器でグダおのモノを受け入れられるかの心配は杞憂であった。挿入する時のグダおの腰の動き、むしろ私の膣内は彼のペニスの為にあるのかと思うぐらいにピッタリであった。あんなに、あんなに大きかったのに……。

 

「ひぅぅんんゥゥっ!!!あぁ――……アァぁっ!……大きいのに、とてもぉ……はまってるぅ……ハメられちゃってるっ……ふぅあああぁァァっ!」

 

「ちょっとずつ進むよマリー」

 

 その挿入は驚く程に紳士的だった。

「初めては痛い」という固定観念を打ち破るぐらいに気持ち良く。純潔を失った痛みすら無かった。

 むしろ荒々しくアソコを強く挿入してくれた方が良かったかもしれない。少しずつ少しずつ円を描くように膣壁を擦りながら進んでいく彼の陰茎に結合部からの潮が止まらなくなっていた。こんなにじっくり挿入されるともう軽く達してしまいそうになって----。

 

「あぇぁっ……あんぅぅ!!アァ!はぁぁんぅぅ……!はぁ、はぁ、男女のって……こんなに、こんなにぃ、キモチいいものなのぉ……!?あ、はぁっ……!だめぇ……依存しちゃう!こんなセックス知ったら、これしかしたくなっちゃうわぁ……」

 

「ほーら、奥まで入ったよマリー。よく頑張ったね、えらいえらい」

 

「ふわぁっ……あっ、あっ、んふぅぁ」

 

 彼の熱い温もりが体全体を貫いている気がする。なのに痛さが無い。心地よさと安心感しか無い。

 グダおに抱き締められて、頭を撫でられ、褒められるだけで、こうも容易く涙を流してしまう。

 

 あぁ……涙は嬉しくても出るのね。

 

「んふぅぅっ……!」

 

「いつもお疲れ様マリー、人類史を観測し、守るなんていう大役をいきなり任されて右も左もわからない中、必死に頑張って……」

 

 耳に彼の唇が近づく。肉棒が私の中で緩やかに動いているのを感じる。

 

「マリーは凄いよ。本当なら逃げたくて仕方なかったのに、ここまで必死に足掻いて。カルデアも爆破されて、マスター候補生達も全員意識不明になった……そんな異常事態でも最善の道を選ぼうって考えて、重圧に押し潰されそうになりながらも進み続けた」

 

「はぅっ!あんぅぅ!……んあぁっ……!!ま、まってぇ……!!」

 

 吐息と私を褒めてくれる言葉が耳から脳髄へと届いていくようだった。快感が増幅される。

 

「一度、肉体を失っても。所長としての責務から逃げないで。本当は後方支援でも良かったのに、こうして俺達とレイシフトまでして戦って……マリーはえらいなぁ、凄く頑張っててさ。いつもありがとうね」

 

「ああぁ!!あぁァァ!!んふぅぁぁっ……!だ、めぇっ!それ、ダメぇ……褒めながら、耳元で褒めながら、ズンズンしちゃぁ、ダメぇぇ……!あ゛あ゛あ゛あぁぁっ……!!」

 

 小刻みに動く剛直が私の体を愛していると教えてくれている。

 何度も耳元で囁かれる言葉が私を認めていると教えてくれている。

 

「こうやって一つ一つの行動に返してくれる反応も初々しくて、その時の表情も生き生きとしてて、ずぅっと一緒にいても飽きないよ……。体も柔らかくて、スベスベで、どこを嗅いでもいい匂いしかしない。綺麗だよマリー」

 

「ひぅんっぅ!ダメェぇ!それ、ダメぇ……!おかしくなっちゃうぅ!あぁんんぅう!……本当におかひくなっちゃうからぁぁっ……!」

 

 くるっちゃう。くるっちゃう。こんなにエッチにされながら褒められ続けたら、嬉しすぎて死んじゃうよぉ……。

 

 ――パンパン……。

 

 膣内と耳から、行動と言葉で、肉体的にも精神的にも堕とされてしまう。

 動きながら、ギュッと全身で抱き締められる。ストロークの度に伸し掛かる彼の重みが愛されているんだという実感として、犯されながら告げられる言葉が本気で私を褒め殺そうとしている。

 

 彼の肌が心地良い。彼の言葉が心地良い。彼の肉棒が心地良い。全部全部が気持ち良すぎて逆に怖くなってしまう。

 

「可愛いよマリー。レイシフト中の恰好で恥ずかしがる姿も、ワイバーンを倒した時小さくガッツポーズしてた所も、フランスの市民に感謝されて照れていた所も……今こうしてベッドの上で喘いでいる姿も……んちゅ……」

 

「にゃああぁっ!耳ぃ、舐めちゃぁぁ……はぁあんぅ!!あっ、あっ!はぁんぅぅ……んふぁぁっ!!ひぅ、もう、脳とアソコが両方犯されてぇぇ……ああぁぁっ……!!」

 

「ちゅぅ、んちゅ……すき、大好きだよマリー」

 

 男根で女性器を犯され、言葉で脳を蕩かされる。

 あぁ……あぁ……彼に「好き」と言われる度に、「愛している」と言われる度に、「綺麗」だと言われる度に、「可愛い」と言われる度に、雌の本能が熱く滾ってしまう。

 

「はぁんぅぅ……うるひゃい、うるひゃいのよぉ……!!私の方がずっと好きよばかぁ……!あぁ、あぁっ」

 

 助けられてからずっと言えなかった想いを口に出す。

 こんな状況になってから言う自分の素直のなれなさに辟易しながらも、彼を抱き締め返す。

 

「命を救われて、そこからもずぅっと私の事気にかけてくれて、褒めてくれて、認めてくれて、見てくれて……こんなの、こんなの好きになっちゃうじゃない……好きになるしかないじゃない、ばかぁっ……!」

 

 お互いに「好き」と「愛してる」と素面では絶対に言えないような言葉(私の方は)を口にしながら、交じり合う。耳内をピチャピチャと舐め続ける卑猥な音とぬめった感触と私を認めてくれる褒め殺しの嵐。

 

 これは駄目だ。もう絶対に離れられない。こんな温もりを知ってしまったら今までの独りぼっちになんて戻れない。

 

「…………マリー、ナカに出すよっ……いいかい?」

 

 膣内に出す……?妊娠……?私の今の肉体は聖杯から造られているし……してもおかしくないけど、サーヴァントの精子で孕むのかしら……?

 

 そこから彼に聞かされた驚きの情報。自分が何者なのか、どうしてこうなったのか。

 そして、彼の第六宝具『この世全ての精(ファビアナ・スペルマ)』。グダおがマスターだった時、サーヴァントだろうが、受肉させ、子を宿させた彼の封印指定待ったなしの規格外の精力。

 こうしてサーヴァントの身ではあり、確率ではあるが、私がその宝具の影響を受けてもおかしくはないとグダおは前もって言っていた。

 

 答えは決まっていた。今更、そんな情報で引くようなオルガマリー・アニムスフィアじゃないわ……。

 

「いいのぉ、それでもいいのぉ!貴方が何だろうと、私を助けて、絶対に見捨てないってわかっているからぁ……それだけでいいのぉっ……だから、全部出してぇ……私に吐き出してぇ……私だって貴方を受け止められるんだからぁ……!」

 

「ふふっ、ありがとう……所長っ」

 

「あ゛あ゛あ゛あ――――――……!!」

 

 ――――ビュルルルルルルゥゥッ!!!

 

 二人とも渾身の力で目の前の異性を抱き締める。

 子宮に注がれるマグマのように熱い精子の塊が私の嬌声をさらに大きくさせる。

 

「あんぅぅぁっ……!!あアアァァっぁっ……!ひんぅっぁあっ……!……あぁっ、あぁぁっ……うれしい、うれしいぃ……」

 

 天井の鏡にだらしなく映る口を半開きにした私の顔、それさえも気にならないぐらいに幸福感に満ちた今の感情。これが女の幸せってやつなのかしら……誰かに頼られて、愛されて、求められるのってこんなにイイものなのね……。

 

「マリー、まだ治まりそうにないや。このまま動き続けてもいい?」

 

「んふぅっ!んぉぁっ……!もう、了承得る前に動いてるじゃないのぉ……好きにしなさい……私も、もっと貴方に抱かれたいからぁっ……」

 

 そんなに、私の体が良かったのかしら……。ふふ、ふふふふふふ、しょ、しょうがないわねぇ、しょうがないわねぇ!ならもっとギュッとして、私を褒めなさい。頭がおかしくなるぐらいに……あんっ、またアソコが膨らんで――――。

 

 

 

 そこから、私が眠るように気絶するまでグダおとの情事は続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んっ、あ、もう朝かしら……」

 

 室内に付けられた時計が外に陽が昇っている事を教えてくれる。

 隣には黒髪の少年が寝ていた。私を散々犯したとは思えないあどけない表情。

 一つのベッドの中で仲良く眠っていたらしい。

 

 つんつんとその頬を指でつく。

 

「えへ、えへへへへへへへへ……」

 

 思い出すのは夜の交じり合い、恥ずかしい言葉や恥ずかしい行為をたくさん見せた気もするがそれでも今は嬉しさが勝る。

 

「うへ、うへへへへぇっ」

 

 自分でも気味が悪いと思う笑みがつい零れてしまう。

 最高の気分だった。今まで自身が低俗だと思っていた雑誌に書かれていた『彼氏に抱かれて世界が変わった』だの何だのが本当だったんだと。あぁ、世界の色が10倍ぐらい鮮やかに見える。

 認められて、褒められて、心身ともに愛されるのがこんなに素晴らしい事なんて!

 

「もう、貴方無しじゃ、いられなくなったわよ馬鹿」

 

 まぁ、カルデアでは公私を分けないといけないわね。グダおは藤丸のサーヴァントだし、この関係は周りには悟られないようにしないと……。私は所長という立場もあるのだから……。けど、それで彼とできなくなるのは嫌ね……。ふむ、魔力供給…………そう魔力供給よ!建前上はグダおの宝具で造られた私のメンテナンス兼魔力供給って事にすれば、二人っきりになれる機会は作れるし、私達が男女の関係になったって事はバレずに済むわ!ふふ、こういう秘密裏な男女の関係っていうのもアダルティな感じがするわね!私ももう一人前の女になったって事かしら……ふふ、うふふふふふふふふふ。

 

 

 

 

 ――所長、いやんいやんと頬を染めながら、クネクネして妄想に耽っている様子をもう眼を覚ましていたグダおに見られている事に気付くまで、数分。

 

 

 

 

 




なお、この特異点から帰ってきて既にバレてる模様。








この世全ての精(ファビアナ・スペルマ)
ランク:EX
種別:対人宝具
おめぇの精子、もしかして根源から来てる? と思わずにはいられない程生命力に満ちたナニか。マスター時代はそれで肉体関係を持ったサーヴァントに肉を与え、子を宿させた。彼の精子を上の口だろうが、下の口だろうが、飲めば体が快調になる。病気が治る、心の病も落ち着くのでメンタルケアにもOK! 傷が癒える。新しい宝具を得られる。本でも孕む。体がかけられれば、美肌になる。おっぱいが大きくなる(個人差はあります)と、たくさんの効能がある万能液。彼をビーストせしめんとした重要な要素の一つ。なお、所長は彼に抱かれた後、精々ワイバーン程度が限界だった魅了をサーヴァントや魔神柱に通用するレベルまで成長させる。恋する乙女は強くなくっちゃね!








第一宝具:『百式官能』
第二宝具:『模倣(まねっこ)宝具』
第三宝具:『人繋ぎの大秘宝庫(マテリアルボックス)
第四宝具:『性神と妻達の部屋(アダム&イブズ)
第五宝具:『這い寄る絶望(リョグダコ・ポテプ)
第六宝具:『この世全ての精(ファビアナ・スペルマ)
第七宝具:――――――













第四特異点から帰還後、抜け駆け(?)をした事で次の特異点発見までグダおとの接触禁止を言い渡された所長が自室で耽っていた行為とは……。

「うっ、んんぅっ、ふぅぁっ……あんぅぅ……」

既に彼から大量にもらっているぬいぐるみ『スケープゴートグダおくんver』を股間に擦りつけるオナニーだった。

「あぁっ、だめ、だ、めぇよぉ……そんな所舐めちゃぁ……」

既に愛液でふやけている黒髪のぬいぐるみをこれでもかと剥きだしの女陰に押さえつけている。

「あんっ!あっ……はぁっ、は――――空しい……これも悪くないけど、やっぱり本物が欲しいわ……」


――『所長さん、楽しみにしていますから……貴女が彼の子を宿すその時を。貴女を私達の家に招待出来る日を待っていますから……』

――『嘔吐した後にキスされるぐらいどうという事はないだろう。私なんてマスターに吐瀉物をぶっかけてしまったまま自己嫌悪で死にかけているのをシャワーを浴びる事すら許されないまま慰めックスだからな……いや、あれは色んな意味で心にキた。滅茶苦茶キモチ良かったけれども、女としての矜持という点で暗殺失敗よりも心にキたぞ――』


「ん?」


サイコ魔女とへべれけアサシンの幻聴が聞こえた気がした。
所長に何かフラグが立った気がした。









立香「もしかして、メインヒロインは所長だったの……?」



















所長回書くのすんげー楽しかった(小並感)。




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カルデアのマスターは淫計仕掛けの夢を見るか?(藤丸 立香 前編)

久々の英霊編です。メンテ合間の時間潰しにどうぞ。

《エクステラリンクの感想》
『天声同化』って何か薄い本ネタで使えそう(小並感)。











半年以上、放置されているメインヒロインがいるらしい。





 酒が人を駄目にするのではなく、酒がその人の本性を暴くとカルデアの職員の誰かが言っていました。

 

 どうも皆さん、こんにちは。マシュ・キリエライトです。

 

 第四特異点でのあの衝撃的な邂逅を経て、無事カルデアに帰還出来た私達は今は束の間の、そう束の間の休息を満喫していました。

 

 

「お――い、こらぁ、グダおこっち向きなさいよぉ。もっとマスターたる私を甘やかしなさいよぉ」

 

 ……はい、満喫しているのです。

 

 先輩も顔を真っ赤にして、呂律が回らない様子でグダおさんに絡んでいます。

 お姫様抱っこを所望し、グダおさんの膝の上で彼の頬をペチペチと叩いています。

 体重を彼に預け、据わった瞳で杯を片手にぐでんぐでんしている様子は何でしょうか……先程までいたダ・ヴィンチちゃんが「まるでキャバクラに入り浸っている駄目親父みたいだ……」と呟いた通りのイメージなのかもしれません。

 

 うぅ……先輩、おいたわしや……どうしてこうなってしまったのでしょうか?

 

 

 ――所長によるグダおさん人類悪秘匿事件のせいなのか。

 

 ――それによって嫉妬心を爆発させた先輩が次の特異点発見までグダおさんとマイルームで二人っきり条例を強行したせいなのか。

 

 ――いざやると気恥ずかしくなった先輩の気を紛らわす為にグダおさんが『人繋ぎの大秘宝庫(マテリアルボックス)』からウルク産麦酒を振舞ったせいなのか。

 

 ――それを浴びるように飲んでしまった先輩のせいなのか。

 

 

 

 先輩は自身と同じカルデアの白い制服を着ているグダおさんの襟を掴みながら、「何さ半年放置って!ヒロイン枠にこの扱いとか雑過ぎるでしょ!!」とよくわからない事を訴えています。さすがのグダおさんもこの先輩には苦笑でした。それでも嫌な顔を一切見せずに付き合っているのはさすがと言うべきだと思います。

 

 

「そりゃあね?マスターだった頃の君にはたくさんのサーヴァントがいたのかもしれないよ?けど、サーヴァントの君にマスターは私、唯一人!オンリーワン!!」

 

「あ――、つまり?」

 

「もっと私に構え!」

 

 いや、グダおさんは結構な頻度で先輩を構っていると思うのですが……というツッコミを私はグッと飲み込みました。マシュ・キリエライトは出来る後輩なのです。敬愛すべき先輩の逢瀬を遮るような真似をしてはいけないのです。

 

 グダおさんの困った雰囲気を感じ取ったのか、先輩はさらなる要望を重ねます。

 

「ギャグチックじゃなくて、乙女チック&ロマンチックに構って欲しいの!!」

 

「えぇ――」

 

 グビグビと先輩はさらなるアルコールを摂取します。

 

「で、ですが……先輩、私が思うに、グダおさんとの出会いの頃からこれまでの事を振り返れば、何度か先輩が望むようなロマンチックな場面はあったのでは」

 

 それこそ、冬木の街でシャドウサーヴァントを吹き飛ばして、先輩を助けてくれた場面。オケアノスでグダおさんの為に戦って、溺れかけて、人工呼吸をした場面。ロンドンでゲーティア相手に先輩を抱き締めながらグダおさんが心底素敵な女性だと啖呵を切った場面。おおよそ、先輩が……ひゃあ!?そんなキマってしまった眼で私を見ないで下さい!

 

「足りない……」

 

「はい?」

 

「他にも私が高い所から飛び降りて「着地任せた!」って叫んだら、いつでもどこでも駆けつけて、お姫様抱っこしてくれるシーンとか。敵の策略によって記憶を失ったグダおの為に体の殆どが崩壊しても進み続けて、絶対絶命の窮地でやっぱり彼が助けてくれるシーンとか。崩れゆく空中庭園で満身創痍の私を膝枕して微笑んでくれるシーンとかあってもいい」

 

「何でそんな具体的なんですかねぇ」

 

 麦酒の入ったカップを置いた先輩は「にゃ――!一体何をすればお前の絆値はMAXになるんじゃ――!絆礼装よこさんか――い!!」とポカポカ、グダおさんの胸を猫パンチし続けます。

 大変、可愛らしい姿なのですがこのままにしておいていいのでしょうか。後で先輩の酔いが覚めた時に自己嫌悪で引き籠ってしまいそうな気がするのですが。

 

「俺はマスターの事、大好きだよ」

 

 そういった機微に疎い私でもわかる真っ直ぐで偽りの無い言葉が先輩に向けられました。

 

「あん?誰にでも言ってんだろその言葉」

 

「誰にでもじゃないです。好きになった人だけです」

 

「おめぇはよぉ!その好きになった人が多過ぎんだよぉ!!」

 

 ですが、へべれけ状態になった先輩にはその言葉は届きませんでした。

 グダおさんの頬を摘まみながら、酒気の混ざった吐息を吐きかけ続けます。

 

「これか!この甘いマスクが色んな女を誑し込んだのか!?それともこっちか!こっちで堕としたのか?おぉ!?ここのマジカルグダお君が炸裂したのか?えぇ!?」

 

 パンパンとグダおさんのこか……股の間を叩き続ける先輩を見て、私はそろそろ止めるべきかと思案しましたが、グダおさんが私の方を見て、大丈夫だからと首を振ります。急所を叩かれながらもその余裕はさすがです。

 

「なんだよ、なんなんだよ。獣っ娘とか人妻とかロリとかならまだしも、本とか機械とか、挙句の果てには既婚者の旦那にも負ける私って……。女よりも女らしい亭主様ってか……う、うぅぅ……」

 

 怒り上戸の次は泣き上戸ですか……。

 ですが、ここでグダおさんに溜め込んでいた物を吐き出したのは良かったのかもしれません。

 人理を救う大業を背負わされてしまった先輩の心の底にある澱みは私では計り知れません。

 

 だから、私は安心しているんですよ先輩?いつも大声を出して、グダおさんにツッコミを入れている先輩の姿には。

 先輩は否定なさるかもしれませんが、グダおさんの傍にいる先輩は年相応のどこにでもいる女の子らしい顔を見せているんですよ。

 

「私の事、すきー?」

 

「好きだよ」

 

「もっと馬鹿っぽく!」

 

「いっぱいちゅき♡」

 

「むふ――!」

 

 嬉しいのか酔いのせいなのか、顔をさらに紅潮させた先輩は甘えるようにグダおさんの胸に顔を擦り付けていました。素面に戻ってもこの事を覚えていたら、どんな顔をするんでしょうか。

 

「……んぅ?」

 

「マスター?」

 

 一瞬、先輩の瞳が焦点が合わなくなったような気がしました。アルコールが完全に回ってしまったせいでしょうか。フラフラと意識を失いそうになった先輩はロンドンでグダおさんから貰ったぬいぐるみ『スケープゴートグダおくんver』を枕元から自分の胸元へと抱き寄せました。

 

「レムレムですか……先輩。ん?どうしましたグダおさん?」

 

 気絶するように横になった先輩を何故かグダおさんは真面目でどこか心配するような顔つきで見詰めていました……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ……ここどこ、っ……頭いたぁ……」

 

 ちょっとした頭痛に耐えながら、目を覚まし、自分が今まで何をしてたのかを思い返す。

 第四特異点から帰還した私は所長の抜け駆け裁判を経て、勢いでグダおをそのまま自室へと連れ込んで……確かアイツから酒をもらって……それから。

 

「思い出せない……」

 

 思い出せないけど、自分でも取り返しのつかないナニかをたくさん積み上げてしまった気がする。

 

「というよりここはどこ?」

 

 柔らかい感触、自分が目覚めた場所が豪華な装飾がされたキングサイズのベットの上である事に気付く。

 

「綺麗な場所……」

 

 自分のおおよそ想像通りなロマンチックな部屋だった。天井から吊り下されたシャンデリア、埃一つ落ちていない高価そうな絨毯。豪華な装飾がされた立鏡に箪笥と暖炉。まるでお姫様にもなったような気分だった。

 

「唯一あるドアは開かない。窓も無い……」

 

 こんな閉じ込められた状況でなければ、私ももう少しはしゃげたのかもしれないが。

 

 何だろう。場所は私の好みなのに喜ぶ事が出来ない。まるで今の状況が()()()()()で成り立っているかのようで……。

 

 

『あら、ようやくお目覚めですか。随分と焦らされてしまいましたわ……』

 

「……っ!」

 

 声だけが聞こえる。だが姿は見えなくとも、その声だけで私はすぐに誰だかわかった。

 忘れようとも忘れる筈の無い、それほどのインパクトを第四特異点で私達に残していった女。

 

「殺生院キアラ……!!」

 

 ようやく今の状況がこの歩く有害図書によってもたらされたものだと自覚する。

 

『生温い殺気ですね……まるで昂りませんわ』

 

「こんな所に私を閉じ込めてどうするつもり……?」

 

『どうもこうもするつもりはありませんよ。()はですが』

 

 ぞっとするような彼女の言葉を皮切りに部屋から異質な存在が何体も現れた。

 

『もちろん、命を奪うつもりもありません。私、こう見えても聖職者ですから殺生は好みません』

 

 粘液を撒き散らす触手の塊、面貌が無いのっぺら顔のホムンクルスのような人型のナニか、四つん這いで涎を垂らしている獣。殺生院の手によって召喚されたそれらは殺意ではなく、殺意以上のおぞましいナニかを込めた視線で私を見つめ続けていた。

 

「ひっ」

 

『殺すつもりも、ここに一生閉じ込めるつもりもありません。この『淫獄塔』から出る条件はただ一つ、『性行為』を行う事。最もこの部屋で貴女以外の生物は彼等しかいませんが……。まぁ、簡単な事でしょう?」

 

 こいつッ……頭おかしいんじゃないの!?

 

 小さな悲鳴を漏らした私に気を良くした殺生院が話を続ける。

 ロンドンで盛大なオナニーを見せつけてくれた痴女らしい。どうやら、コイツらに私を犯させるようだ。

 

『場所は年頃の乙女が夢見がちな豪華な寝室。ただし、相手は欲望まみれの獣畜生。このチグハグ感、堪りませんわ』

 

「……やめて、くるなっ!」

 

 にじり寄ってくる殺生院が生み出した淫魔共から逃れようと後退していると、ベットの端につまずき、背中から倒れ込んでしまった。

 

『あらあら、年端もいかない女の子がそんな自分から誘うような体勢をして、はしたない』

 

 クスクスと笑う殺生院の台詞でようやく自分がどんな服を着ているのかに気付いた。

 赤いリボンに紺色のセーラー服。私が通っていた学校の制服とそっくりだった。

 

『こんな人理修復なんて事態に巻き込まれなければ、享受出来たであろう普通の少女としての時間、その時間の象徴でもある服で、人知れず心無き者達に犯されるなんて、大層滾るシチュエーションだと思いませんか?これは決して制服を着ても、『うわキツ』としか思われない私の若さに対する嫉妬とかではないのです』

 

 コイツのポルノに満ちた思考回路は本当に理解出来ない。

 そんな事よりもまずはこの窮地を脱しなければならない。私はグダおとマシュ。自分の頼りになるサーヴァントを呼ぼうと……呼ぼうと――……。

 

「令呪が……ない?」

 

『無駄ですよ。肉体の転移ではなく、私は貴女の精神を淫獄の底へと引き摺り込みました。サーヴァントに格落ちしてしまった彼では貴女の声に応える事は出来ません。けど、ここから出るのは簡単な事ですよ?只、彼等に身を委ねればいいだけです。それだけで脱出出来るのですから』

 

「冗談じゃないってのッ!!」

 

 ホムンクルスような全裸のナニかがバイブを片手にベットに上がってくる。

 足に触れられるとおぞましくなって鳥肌が立つのが止められなかった。

 

「はなせッ……はなして!!」

 

『いつもの私なら、ここで貴女の精神が壊れてしまうまで嬲っても良かったのですが。汚した状態で貴女をカルデアに返すのも一興だと思いまして。醜悪な怪物に犯された経験も貴女だけの物。貴女が語らなければ、誰の耳にも届く事はありません。えぇ、きっと貴女は誰にも言わないのでしょう。特に心惹かれている彼には……。ですが、そんな汚れた身で貴女は彼の隣に立ち続ける事が出来るのでしょうか……?「言えない、知られたくない……彼だけには」。ふふ、鬱鬱とした貴女の未来を想像するだけで私の溜飲も少しは下がるというもの』

 

 姿を現す気は一切無い殺生院は楽しそうな声色で好き勝手な事を吐き続ける。よっぽど、只の小娘がグダおの隣でマスターをやっているのが気に食わないみたいだ。ここまで陰湿な催しをするぐらいなのだから。

 本当なら泣き喚きたかった。けど、この女の前でだけはそれをしたくなかった。

 

 私は唇を血が出るぐらいに噛み、痛みで恐怖を紛らわす。

 

「ハッ、そうよ。アイツのマスターは私だけ。グダおは私の最高のサーヴァントなの。いつだって私がアイツの隣にいるの。アンタじゃないわ。羨ましい?お・ば・サ・マ」

 

『……………………その強がりがいつ助けを乞う言葉になるか楽しみにさせて頂きます』

 

 殺生院の猥褻極まりない化け物共に囲まれる。

 強がってはみたけど、駄目みたい。こういう展開って物語の中だけでまさか自分がなるとは思わなかったけど。はーあ…………。

 

 

 

「初めては……グダおにあげたかったなぁ」

 

 

 

「なら、もらうさ」

 

 

『は?』

 

「え――」

 

 

 心の底にあった呟きが漏れ出た瞬間に気づけば、私を覆い囲んでいた怪物達が吹き飛んでいた。

 

 そこには現れたのは何故か学ラン姿で私を守るようにベットの上で仁王立ちしているグダおだった。

 

「マスターに汚い物向けてんじゃねぇ。模倣(まねっこ)宝具『騎士は徒手にて死せず(ナイトオブオーナー)』」

 

 吹き飛ばした際に奪ったのか、R18版ホムンクルスが持っていたバイブで殺生院の眷属共が細切れになっていく。はえーすっごい、バイブってあんなに切れ味あるんですね。

 

『なっ……!どうして貴方がここに!?』

 

 確かにカルデアからの通信はおろか、マスターとサーヴァントを繋ぐパスも感じなかったのだ。一体、どうやって。

 

「マスターが現実の世界で気を失った時に抱いたぬいぐるみがあるだろう?あのヴラドおじ様直伝『スケープゴートグダおくんver』が俺とマスターを繋ぐパス代わりになったのさ。夢や精神の世界では結構、重宝する代物なんだぜ?」

 

 そうなのか……。というか私があのぬいぐるみを抱いている所をバッチリ知られているのは何だか気恥ずかしいのだが……。

 

「大丈夫。気を失う前にもっと恥ずかしい事やってるからマスターは」

 

「え?」

 

「覚えてないって幸せな事よねー」とグダおが生暖かい瞳でこちらを見つめる。おい、何だよ。言いたい事あるのならはっきり言ってよ。

 

「というわけで快楽天ちゃんは俺の好感度ポイントがマイナス100万ポイントになりましたー。おめでとうございます」

 

『ぐえっ』

 

 抑揚の無いグダおの言葉に何とも言えない迫真の呻きが聞こえたような気がした。グダおの怒気や殺気を受けた時はオナニーするぐらい興奮していた癖に、普通の嫌悪は堪えるんですね。このオナニービーストの事がわからなくなってきました。

 

『どうして……どうして、貴方程の男がそんな何の力も無い只の小娘に……ぐっ!マーリンッ!!また、私の邪魔を――』

 

 恐らくグダおの奥さん達の誰かが力を貸してくれたのかもしれない。殺生院キアラの怒りの声が突如として切れ、最後に部屋が静寂を包む。どうやら、もうここはあの快楽天の監視下では無くなったみたいだ。グダおに斬殺された彼女の眷属達の死体も粒子へと却っていく。後はこの部屋から出ていくだけ。

 

「多分、ロンドンで彼女の淫視に見られたせいでここに引き摺り込まれたんだろうね」

 

「視界に入れるだけとか……ズル過ぎるでしょ……あれ?」

 

 ベッドから起き上がろうとしたのだが腰に力が入らない。

 情けなく女の子座りしている自分の体が今更になって震えている事に気付いた。

 

「あれ、何で、私……泣いて、ははっ。おっかしい――。ちょっと待って、すぐに、止める、から……」

 

 畳みかけるように今度は涙が零れてくる。今まで色んな特異点で散々怖い目にあってきた筈なのに、私ってこんなに脆かったけ?それともグダおが助けに来てくれた安心感で色々溢れちゃったのかなー?

 

「いいよ。ゆっくりで。いくらでも待つから」

 

 宝具で出した傷薬を付けた指で血を流していた私の唇を拭ったグダおはそのまま私を抱き締めてくれた。

 お互い何故か学生服だし、雰囲気のあるベッドの上だからちょっと気恥ずかしかったけど、いつものようにギャグ風味じゃなく真剣に私を案じてくれる彼の温もりにしばらく浸りたくなって私は彼の胸元に顔を押し付けながら、しばらく涙を流し続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふと思い返すとさっきのアレは自分でもちょっと恥ずかしかったかもしれないと羞恥でベッドの上をゴロゴロしている私をよそにグダおは室内を物色していた。抜け道は無いのか、あるいは物理的に壊せないのかとか、宝具をぶっぱしてみたり。

 

「どう、マーリン?」

 

『あのビーストⅢは性行為に関してはある意味、真面目で妥協を許さないタイプみたいだね。ハッキリと言おう……そこから出るには彼女が言っていた通りにリッカ君自身が誰かと性行為をしない限りは無理だよ。相手が誰かは言う必要は無いよね?』

 

「あ――、そっか――」

 

『おやおや、マイロードにしては随分と歯切れの悪い返答。君だったら「よし!いいから、セックスだ!!」ってリッカちゃんの所にルパンダイブしそうなものだけど』

 

「今までの実績が積み重ねた信頼の結果がこれか。言い返せねぇなぁ……」

 

『ま、君が今まで囲ってきた女性陣の中では特殊な部類だもんねリッカ君は。英霊でもなければ、人類悪というわけでもない、魔術の素養があるわけでも無い。恐らく、こんな事がなければ君と交わる事はまず無い普通の娘だからね』

 

「ふ――、後はこっちで何とかする。助かったよマーリン」

 

『お礼は体でいいよ。じゃあハッピーエンド目指して、頑張ってくれたまえ!』

 

 嫁さん達との通信を切ったグダおは安心させるようにこちらに微笑む。

 

「安心してマスター、絶対に君をここから出してあげるから。俺がここで人類悪化出来ればいいんだけど、マスターの魔力もカルデアからの魔力も尽きているこの現状だとね……無い物ねだりは出来ないか……」

 

 そう言って引き続き、部屋の捜索を続けるグダおに私は釈然としない気持ちが沸き上がっていた。さっきのマーリンとやらの通信は全部、聞いていた。ここから出る手段が一つしか無いというのなら、さっさとそれを実行すればいいのに。一体、コイツは私の何に気を遣っているのか。

 

 

「抱けばいいじゃない」

 

 

「マスター?」

 

 

「それで出られるなら、さっさと私とセックスすればいいじゃない。何をさっきから躊躇してるの?いつものアンタならとっくに私に襲いかかってるじゃない」

 

 頬を膨らませて、八つ当たりとわかっていながらもつい強めの語気になってしまう。

 

「なぁ、マスターは本当にそれでいいのか?君は」

 

「聞きたくない」

 

 多分、グダおは脱出する為の手段として、あるいは義務感でここで私の純潔を散らしてしまう事を歓迎していないのだろう。いつもはセクハラ常習魔人の癖にこういう所だけはやけに紳士的だ。

 

「場所とか状況とか関係ないの。ずっときっかけが欲しかった」

 

 上昇していく頬の温度に、加速していく心臓の鼓動を必死に抑えながら、訴える。

 

「さっきまで心が無い怪物共に犯されそうになった私が只、ここから脱出したいっていう理由だけで君に抱かれたいと思っている?」

 

 四つの特異点を経て、そう短くはない時間をグダおと過ごして来た。頭のおかしい変態サーヴァントだけど、いつも私を振り回して、ツッコミが追い付かない男だけど……それでも。

 

 

 召喚された時は命を救われた。

 

 オケアノスではキスされながら、助けられた。

 

 ロンドンでは抱き締められながら、最高のマスターで私を誇ってくれた。

 

 何度も何度も私を巻き込みながら、とんでもない事を仕出かしてくれるサーヴァントだったけど、それでもこの人理修復の旅で私の心が折れないようにずっと傍で支えてくれたサーヴァントだった。

 

「好きなの――――。宝具がセクハラ染みていようが、嫁さんが3桁単位でいようが、人類悪だろうが、所長に先に手を出していようが、好きなの!君の事が大好きなの!!大好きだから愛して欲しいの!抱いて欲しいの!!そう思うのはおかしい事なの!?」

 

 再び、涙で滲んだ瞳からはグダおの表情は見えない。

 私のいるベッドに近づいている事だけはわかった。

 

「それとも色気の無い乳臭い子供は抱けない?所長みたくエロい格好しないと駄目?……ほ、ほら、見てよ!今の私の格好、セーラー服!君の夢で見たよ……制服プレイも好きなんでしょ?リアルJKだよ……好きにしてもいいん……あう」

 

「もういい、マスター」

 

 自分でも何を口走っているのかわからないまま、気づけば、グダおに押し倒されていた。

 指で涙を拭われて、ようやく彼の顔が見える。怒るわけでも悲しむわけでもなく、ただ、慈しむように愛しい何かを相手にするような優しい表情をしていた。

 

「さっき助けてくれた時……私の初めてもらうって言ってくれたじゃん」

 

「そうだね。俺はマスターの事は認めてながらもどこかで普通の女の子扱いしていたのかもしれない。けど、まぁ……冷静に考えてみると、俺の為に人類悪相手に啖呵を切る娘なんて普通じゃないか」

 

 殺生院が用意したこの空間の影響かグダおの服も私の学校の制服だった。

 こう見ると彼も年相応で私と変わらない年に見える。それが無性にくすぐったく、嬉しかった。

 

 

「俺の負けだよマスター。この空間から出る為とかじゃなくて、俺は君が好きだから、君を感じたいから、今ここで抱く。いいかい?」

 

 

「うん――。その方が君らしい。だから来て――」

 

 

 




「これが人間のする事ですか……!! 当初の予定通りに藤丸立香が凌辱されても良し……万が一にあの方が助けにきたとしても寝取られシチュで私が興奮出来てそれはそれで良し……な二段構えの策略がっ!!」

ゲーティアを取り込んだ事により得た殺生院キアラの千里眼の前には妙に腹の立つテロップしか浮かんでいなかった。

【お宅の地域ではこのチャンネルをご覧になる事は出来ません。一度死んで、真っ当なセラピストになってからもう一度お越し下さい。 ps.夫婦や恋人でも無いのに寝取られとかおかしくない? 所詮、ただの失恋では? byマーリン】

「マーリンッッ!!」










Q:所長もキアラの淫視の対象になりそうだけど、何故無事だった?

A:グダおの『人繋ぎの大秘宝庫』から出した聖杯と素材によって造られた肉体に、セックスゥッ!!でたらふく注がれた精液(『この世全ての精(ファビアナ・スペルマ)』)の影響で体のスペックだけはトップサーヴァントにも匹敵する為。所長パないの!

「けど、酔ってグダおに絡んでからの本番回って私の二番煎じ感が……あっ、痛いっ! ちょ! 止めなさいリッカ!! 無言で頬をぶたないで……! イタッ、やめ……!」








次回、本番回。やっぱり立香ちゃんがメインヒロインなんだよな――。



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カルデアのマスターは淫計仕掛けの夢を見るか?(藤丸 立香 後編)

0話にて、魔人セイバー。不夜城のキャスター更新。













砂糖吐きながら、書きました。





 セックスとは性交、あるいは生殖を目的とした性行為。

 

 捉え方は人それぞれだろう。

 中には不健全な物だと、遠ざけようと、排除しようと躍起になっている人もいる。自分達がそういった行為の果てで生まれた事に目を瞑りながら。

 

 まだ子供ながら、ふんわりとその言葉を知っていた私は――。

 

 セックスは、心を交わした者達が何もかも曝け出して、手探りに互いを確かめ合う愛の儀式みたいな物だって我ながらロマンチックな事を考えていたものだ。

 

 知ってはいる。自分もいつか経験するであろう。けど、今すぐじゃない。

 

 どこか自分とは関係ない遠い世界のような話として、のほほんと日本で普通に生活していた。

 

 もし、私がそういう事をするのなら――。

 

 相手は誰なんだろう。場所はどこなんだろう。私はその時、何を思っているのだろうって……いざ振り返ってみると少し恥ずかしくなるような妄想をしていたような気もする。

 

 

 

「……すぅ――はぁ――、あぅぅぅ……」

 

「そうそう、ゆっくりと深呼吸、深呼吸。二人のペースで行こう。慌てなくても俺は逃げないからさ」

 

 まぁ、けどまさか。どこにでもいる変哲も無い只の少女である私が世界を救う為のただ一人のマスターとして、自分が召喚した英霊とやらとこんな関係になるなんて想像もつかなかっただろう。

 

 それこそ、まるで物語の中の話みたい。

 

 私のピンチに颯爽と助けに現れた白馬の王子様……というよりは大魔王の方が似合うけど。それでも私にとっては王子様なんだ。面と向かって言うのはまだ恥ずかしいけど。

 

「あ、あ、あ、あわわわ慌ててないし……全然余裕だし――、だいじょうびぃ――……」

 

「そうだね。マスターは強い娘だもんね――。さすが、さすが――よしよし~~」

 

「こ、子供扱いすんな……」

 

 呼吸が中々整わない私を押し倒した状態のまま、緊張を解すように頭を撫で続けてくれるグダおについ不満気に返してしまうがそれでも髪を通して撫でられる手の感触が心地良くて、頬が綻んでしまう。

 

 っていうか……するんだよね?私達、これから、せ、せ、せせせ、セックスを。

 

 け、けど、セックスって最初は何からするのが正解なの?キス?あ、まずは服を脱ぐのが先だよね……。け、けど男の人の中には着けたままの方がいいっていう人もいるし……。多分、色々と凄い事されるんだよね。おっぱい揉まれたり、あ、あ、アソコ触られたり……舐められちゃったりもするの、かな…………。

 

 うわー、うわ――、大丈夫かな、私……気絶したりしないかな?

 

「…………」

 

「ん?どうしたの、グダお?」

 

 私が体をくねらせながら、悶々としているのを何も言わず、じっと見詰め続けていたグダおが気になってしまい問い掛けた。

 

「……いや、マスターってそう言えば女子高生なんだよなーって」

 

「まぁ、花も恥じらう17歳の女子高生だけど。この制服も私の学校のなんだよ?似合う?」

 

 あの発禁痴女に用意された物っていうのが気に食わないが。

 

「似合うとも。それにちょっと本物のJKを相手にするのって初めてだから、今とても新鮮かつ未知な気分に浸っているの」

 

「色んな娘を相手にしてきた君にとっては退屈なんじゃないの?私みたいな普通の女はさ」

 

 自分だけ余裕が無いのが悔しくて、ついそんな意地悪を言ってしまう。

 

「マスターは今の自分の魅力を自覚して欲しい。さっきから女子高生スタイルでベッドの上で恥じらうように体をもじらせている破壊力とか凄まじ過ぎて、本能の赴くまま襲いかかりたい欲望を必死に抑え込んでるだから」

 

「ふ、ふ――んぅ?」

 

 つまり、コイツは今の私の姿に滅茶苦茶興奮していると。

 

 ……。

 

 …………。

 

 ヤバイ。

 

 嬉しい。

 

 ちょううれしい。

 

 顔がにやけるのが止まらない。

 

 あれだけ多くの女性を、それこそ、私が女として勝てないだろうな……って思っていた人達も抱いてきたであろうグダおが私に興奮してくれている。

 

 この部屋で私だけを見て、私だけに夢中になってくれている。その事実が体のどこかを疼かせてくれた。

 

 女としての優越感?それとも愛しい人に求められている充足感?駄目だ、言葉じゃ言い表せない。だから――。

 

「んっ!」

 

 感極まって、彼の首に手を回して、熱烈なキスをした。熱烈とは言ったもののそれは勢いだけで、唇を合わせるだけの我ながら可愛らしいキスなのだが。

 

「はぁ、ぐだ、お……。んっ」

 

「マス、た……ちゅ……」

 

 舌を入れるなんて生々しいキスはまだ自分からする事は出来ない。何度も離しては唇を交わす。それだけのキスを繰り返す。

 

「んっ、んっ……んっ……はぁ……えへへ、キスしちゃった」

 

 3度か4度の口付けを交わして、照れ臭くなった私は頬をかいて笑う。

 オケアノスで溺れかけた時みたく、深く口内で絡み合うようなディープなキスではないけれど、それでも心は満たされていた。

 

 好きな人と唇を合わせるだけでこんなにも心がポカポカする。

 

「キスだけでいいの?」

 

「ううん。もっと色んな事したい。もっと凄い事したい……私にたくさん、教えて?」

 

 グダおがボタンを外しながら、上着の裾をゆっくりと捲り上げる。

 あぁ、脱がされちゃうんだ……って期待と不安に胸を高鳴らせていると、お腹だけを露出させた中途半端な状態で脱衣を中止した。

 

「え、ちょ……んぅ、やぁんぅ……はは、くすぐったいってぇ……ぁん」

 

「ごめん。いきなり全裸にするのは勿体無いからしばらくは制服姿のまま愛でさせて」

 

「んもぅ……変態……ゃんぅ」

 

 臍の周りを指先で円を描くようにくすぐり、プニプニとその感触を楽しむように指先でつつき続ける。性的な場所とはまだ言えない部分だけど、彼が夢中になって私の体に触れている事が嬉しい。

 

「いや――、駄目だ。背徳感がパない。犯罪的過ぎるよ、今のマスターの魅力」

 

「んっ、んぅぅ……あ、んぅぅっ」

 

 両手を使い、腹の上を延々と滑らせて、撫で続けるグダお。

 

 私より、幼い娘とかにも手を出しておいて犯罪的とか、コイツは何を言っているのだろうか。あ――、けど、グダおが今まで抱いてきた娘達って英霊とか普通じゃない娘達ばっかりなんだよね。だから、逆に平凡な娘とか抱いた事とかなくて、新鮮さを感じているのかな?

 

 ふふ、ここに来て、まさか私の平凡さが活きる時が来ようとは。

 

「あっ、やんっ!……胸も、さわってぇ……はぅんぅっ」

 

「おぉ……結構大きい。これはDあると見た。マスターってば着痩せするタイプ?」

 

「し、知らない……あ、あんぅぅっ!!」

 

 上着の中に手を滑り込ませ、未だ隠れているブラジャーの上から胸を揉み込んでいくグダお。正直に答えるのは恥ずかしくて、そっぽを向いた私の口からは恥ずかしい声が止まらなかった。

 

 異性に触らせるのは初めてだけどっ……。直接触ってるわけでもないのに、こんなに気持ちいいのものなの?それともグダおが上手いから?……あ、ちょっと指の動きがいやらし過ぎるんだけどぉ!

 

「どうマスター。気持ちいい?」

 

「ひぅ……あっ、あぅ、わ、わかんない……。胸から頭までビリビリしてぇぇっ……あんぅっ!」

 

 喘ぎ声を漏らす私に気を良くしたグダおはどんどん体を私の方に預けてくる……って近い近い!さっき自分からキスした私が言う台詞じゃないけど、息が顔にかかって……。

 

「ま、待って……。今ちょっと、変な顔になってるから、あ、あんまり見ないで……」

 

「んー?全然変じゃないよ。可愛くて綺麗な顔。ずぅっと眺めたくなる俺の大好きな女性の顔だよ……ぺろっ」

 

「ひゃぅんぅっ!?」

 

 舐めた――!今コイツ私の首元ペロッて舐めたぁ――!ドスケベだよ!私のサーヴァントはとんだドスケベサーヴァントだよ!

 

 捕食される草食動物のような気分に陥って、私は胸を揉まれながら完全にグダおに覆い被さられていた。

 もう……どんだけ、私の胸、揉んでんのよぉ……。無くなっちゃうってばぁ……。

 

「またキスする?」

 

「はぇ?」

 

 トロンと夢心地になってた私からのつい間抜けな声が出てしまった。

 

「さっきみたいなキスじゃなくて、大人のキス」

 

「大人の……」

 

 それはあれか、前に人工呼吸した際にやったやつぐらい凄いのか。あの時は意識は半分以上無かったけど……ごくり。大人の、大人のキス……。そうだよ。私は今ここで大人の階段を上ってるんだから、ディープキスぐらいで臆してられないっての!

 

「わかった……して」

 

 そう言って口を開け、控えめに舌を出した私の口内にグダおの舌が入り込んで…………!

 

「んんぅむぅぅっ!!」

 

「んっ、ちゅぅ……んじゅぅぅ」

 

 あ、あ、あっ、あっ……私の舌、舐められて、摘ままれて、絡められて、引っ張られて……。えっちな音が口から止まんなくてぇ……人工呼吸の時、こんな凄いキスされてたの、私……!?

 

「あっ、あむぅ……んぁ、ちゅ、んじゅるぅぅ……んぱぁ……はぁ、ちょっと待っ……んむぅぅっ!!」

 

 近い、近い、近い!グダおの顔がこんなに近くに!

 

 口内を貪られ続けている私は唇を包む、生々しくも温かい感触に全身を縮こませて、グダおの学ランを掴む事しか出来なかった。薄目で開けて、視界一杯に映る彼の顔に恥ずかしくなって、再び眼を閉じてしまう。

 

 呼吸すら忘れて、私はベッドの上で捕食されていた。

 

 

「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁ――……はぁ――……あ、はぁ、はぁ、はぁ」

 

 数分か、あるいは数十分か。解放されても息も絶え絶えで、夢心地状態になっている私には正確な時間の経過もわからず、唾液まみれになった口周りを拭く事さえしないで、息を荒げていた。

 

 口内には未だ、グダおの舌が蹂躙した余韻が残っている。

 

 舌を引き抜かれ、寂しくなった口内を慰めるように私は自分の指を咥えていた。

 

 アイツの舌、蛇みたいだった。私の舌も唇も歯も歯茎も全部しゃぶり尽くされて……。は――もう、ここまでされちゃうと愛されてるんだなーって実感でいっぱいになって蕩けちゃうじゃない、馬鹿……。

 

「あ――……マスター?もしかして、それはわざとやってる?」

 

「んちゅぅ……はむぅ、にゃにがぁ?」

 

「お――け、わかった。無意識なのね。こうも俺の男心をドストライクにくすぐってくるとはマスターってば恐ろしい娘」

 

 よくわからないがグダおも私とのディープキスには満足してくれたらしい。

 それは良かった。もし、「ん――、ぶっちゃけ微妙。これならフォウ君にキスしてた方がマシだったよ」とか言われた日にはカルデアスに身投げしている自信があった。

 

「正直な所、俺のアソコがもう限界突破しているけれども、マスターの方ももう少し解していかないと駄目だよね?」

 

 彼がスカートの裾に手をかけた瞬間についに来たか――と心拍数がビートを刻んだ。

 そりゃあね、セックスだもん。キスして、おっぱい揉んでおしまいなわけないもんね。

 下の方にも手は出すでしょうよ。あ――けど、大丈夫。ここ最近はいつ何があってもいいように、下着の方は常在戦場。アソコの手入れもバッチリ。さぁ、来るなら来い!

 

「小さくファイティングポーズを取っているマスターが可愛すぎる件。取りあえず、捲るから力抜いてね」

 

「は……はい」

 

 スカートがたくし上げられて、露わになったのはレースのついたスタンダードな水色の下着。際どいTバックなんて背伸びをしないで、自分らしさを出す為に悩みに悩んだ勝負下着の内の一つ。いつか彼に見られる事を夢見ながら、穿いてきた私の宝具。

 

「率直な感想良い?可愛い、綺麗、エロい。俺を殺す気かな?」

 

「そ、そう?そんなに良い物?何の特徴も無い地味な下着だと思うけど……」

 

 彼のお褒め言葉に『いよぉしゃあああああっ!』と狂喜乱舞したい気持ちを抑え込み、何でもない風を装って髪先をグルグルする。あ、痛、巻き過ぎた。

 

 

「んっ、あんぅ……あっ、ニーハイも脱いだ方がいい?」

 

「それを外すなんてとんでもない!」

 

 そういうものなのか。

 

 真剣な表情で太ももから付け根まで滑らせていくグダおの手は進行していく度に私に甘い痺れをもたらしてくれる。

 切ないぐらいに震えて、全身の全てが敏感になっていくような官能。気を抜くと股から恥ずかしいナニかが漏れ出しそうになってしまう。

 

 パンツは露出しているけど、未だ制服は着けたままの私。そんな私の股間付近を撫で続けているグダおは何を考えているのだろうか。

 

 ……興奮してくれていると嬉しいな。

 

 やがて、彼の手は私のパンツの上。布一枚挟んだ局部へと誘われる。

 

 股の間、それも陰部を他人に曝け出すというのは思いの外、不安になる。けど、この不安は恐怖とかじゃなくて、この人とこれからどうなっちゃうんだろうっていう期待感の方が強い。

 

「触るよマスター」

 

「うん……」

 

 下着の上から、彼の指が控えめに私のアソコを撫でた。

 

「ひぅんぅぅっ!?」

 

 

 ――――え、えっ、えっ、えっ?今の何、ちょっと撫でただけだよね?何で私、こんなに反応してるの。こんなに大きい声出しちゃってるの?

 

 

「ひゃあ!あんぅ!!……あっ、あっ、あぁっ!」

 

 彼が中指の腹を使って割れ目の部分をピンポイントにスライドし続ける。

 他人による予測出来ない指の生々しい愛撫が未経験の私を啼かせるなんて容易な事だった。

 

「はぅんぅ……あ、あひ……んっぁ……ま、待って、ちょっと待って……!タンマ!!」

 

 声を上げて中止を求めた私にグダおは見守るような目つきで愛撫を中断してくれた。その余裕のある顔つきは若干、気に食わなかったが今はそれ所では無い。

 

 彼に背を向けて、自分の下着の状態を確かめる。

 

「うわぁ」

 

 悲報、私の勝負下着、ものの数分でおしゃかになる。

 え――、なぁにこれぇ。尋常じゃないぐらいに濡れているんですけど。藤丸ダムが崩壊しているんですけど。下着の上だよ?ちょこっと撫でられただけでこれ?あのオナニー痴女の事、笑えないじゃない……。

 

 ずぶ濡れになったこのパンツをいつまでも穿いているわけにはいかない。私には二つの選択肢がある。

 

 自分から脱ぐか、彼に脱がさせてもらうか。

 

 

 

 

「じゃあ、足ちょっと上げてねー」

 

……はい

 

 ビチョビチョのパンツを自身のサーヴァントに脱がさせているマスターがいるらしい。

 

 そうです私です。顔を覆い、されるがままに熟練の手付きで彼に下着を脱がされているこの変態JKを笑えばいいと思うよ。

 

 結局、自分から脱ぐという選択肢は選べなかった。だって絶対途中でフリーズするもん。それなら相手に委ねた方が気持ち楽……なワケない。どっち選んでも茨の道よ。なら、私は敢えて険しい道を行く。初体験は色んな物を失ってこそだってクラスメイトの娘達も言ってたもん。

 

 下着にはノータッチで横にすぐに置いてくれたグダおの優しさが身に染みる。ここで「あれ――、何したらここまで濡れるのかなー」みたいな攻め方をされたら、多分羞恥で気絶する。まだそういったプレイは私には早いのです。

 

「じゃあ、改めて触るよ」

 

「ど、どうぞ」

 

 剥きだしになった女性器、涎を垂らしている割れ目に彼の指が触れる。

 

「ひゃああううっ!!」

 

 ズブリ……と指が沈みこんだ瞬間、体内の空気全てが口から漏れ出たような錯覚に陥る。

 指先を揺らし、解しながら、私の膣を進んでいくとくすぐったいともむず痒いとも言えない未知の感触が私を支配した。

 

 ちょっと、やばい。これぇ……やばいって。アソコから水音が止まらないんだけどぉ!

 

「あっ、あぁっ、ひぅんぅぅ!これぇ……すごぉ……あふぅっ!!声、とまんないぃぃっ……!」

 

 中指と人差し指を愛おしそうに受け入れた膣内は離さないように締まり続ける。

 腰を浮かした私は目を白黒させて、恥ずかしい声を出し続けるしかない。

 

 人体の急所とも言える場所を彼に晒している不安もどこかへ飛んでいった。今はこの快楽によって自分はどこへ連れてかれるのかという期待しかない。

 

「ん――む、この絵、すんごい犯罪的。けど、今の俺の格好も学生服だし大丈夫か。健全、健全」

 

「は、ひぃっ……とんじゃう、とんじゃぅぅぅぅっっ……あっ、ぐだおぉ……わたし……どこかにとんじゃうよぉぉ……」

 

 年頃の女の子、恥ずかしながら、自慰を行った事もあった。けれど、その時とは比べ物にならない絶頂が今、股座を手淫され続けている私にやって来る。

 

「んあああぁぁっ――――ッッ!!!!」

 

 腰を上に突き上げて、自分でも間抜けだと思う格好で盛大に潮を吹いた。スカートや彼の腕にかかるのも躊躇わず、はしたなくも成人前の私の体は女の悦びを教え込まれてしまった。

 

 

「はぁ、はぁ、んはぁ…………ぁぇえ?ちょ、ちょちょ待って!……えっと……何してんの……?」

 

 指を引き抜いた彼は私の太ももを肩に乗せて、口元を股座に近づけていた。弛緩している私は抵抗する事も出来ずに腰が浮いた状態のまま、その体勢を受け入れていた。

 

「近い近い近いちかいって!ソコ、そんなじっと見ちゃ駄目だってばぁ!今、変になってからぁ!」

 

「変じゃないよ。淡いピンク色で綺麗。愛液でキラキラ、コーティングされて宝石みたいだ」

 

「……ふ、ふーん。そ、そうなの?自分じゃ、よくわからないけど……」

 

 チョロいとか言うな。好きな人に自分の体を褒められるのは嬉しいもんなの。例え、それがどこだろうとも。っていうか人の女性器間近にして、「宝石みたいだ」って言う男なんてコイツぐらいな気もするが。

 

「もう十分なぐらいに解されているけどさ。メインディッシュの前に味見をしようと思ってね」

 

「……なら、有無を言わさずすればいいじゃない。抱いてって言ったのは私からなんだかりゃああああああんぅうぅっ!!?」

 

「じゅるるるるぅっ」

 

 コイツッ!吸った!吸いやがった!いや私がしろって言ったんだけどもさぁ!せめて、最後まで聞いてからしてよぉ!もう少し辛抱というものを覚えて欲しい。

 

「あっ、あっ、あぁ!あぁ!はぅぅぁぁあっ!!ひぅぅんぅぅっ!!ひ、はひぃ……だめぇ……私の汁のまないでぇぇ……んんぅぁああっ!!」

 

 下半身を彼に持ち上げられている私は唇をびったり付けられた女陰から愛液どこらか魂すらも吸われている気がした。それぐらいに彼のクンニは凄かった。指ではなく、生温かい舌と唇の感触というのは私の想像外の快楽を与えてくれる代物だった。

 

 掻きむしるようにベッドのシーツを掴んでいる私は髪を振り乱し、喘ぎ続け、拘束されている下半身をバタつかせる事しか許されない。

 

 今まで、他人に触らせた事のなかった場所から聞いた事のないような水音が私の耳も犯してくる。

 

「ひぅぅぅぁっ!!あっ、あぁぁっ!!なにこれぇ、なにこれぇぇっ!!はっ、はっ……下から漏れちゃうのがとまんないぃぃっ!!」

 

 ……冷静に考えると私の下から出てる液が彼の喉を通過して、飲下されてるんだよね。駄目だよもう、こんな事されたら責任取ってもらうしかないじゃない。もうお嫁に行けないよ。実質、結婚だよこんなの。

 

「はっ、はぁっ!あはぁあっっ!!舌、したがぁっ!!グダおのしたがぁ……私のナカに入ってぇ……ベロベロって舐めまわしてるのわかっちゃうぅぅっ……!!あ、あんぅ、ひゃぁぅう!!むり、むり、むりにきまってるよ、ばかぁっ!!」

 

 膣の浅い所を容赦なく責め続ける彼のベロストロークに脱水症状になるぐらいに愛液を溢れ出させる。

 口淫の接触面から零れ落ちている汁がベッドの上に染みを作っていた。

 

 尻を掴んで、小さく官能の悲鳴を上げた私に追撃をかますように、起立しているクリトリスが心地良い粘膜に包まれる。敏感な部分にキスをされた私は本日二度目の潮吹きを今度は彼の顔目がけてしてしまった。

 

「あっ、あぁっ、いく、イッくぅぅぅっ……んひゃあああぁぁっ!!」

 

 けど、もうここまで来ると恥ずかしいとかのレベルの話じゃなくなってくる。

 気持ち良い、好き、大好き、もっとしてって彼を求めたい感情がグングン上昇していく。

 

 あぁ、なるほど。要はセックスというのは相手の全てを受け入れる所から始まるものなのか。なら、彼の大事な部分も受け入れないと。

 

 いや違う。受け入れたい。繋がり合いたい。一つになりたい。この気持ちを抑える事が出来ない。もっと、もっと、もっともっと彼の躰を感じたい。

 

「あぁっ、はぁ……んはぁ……ねぇ、もう十分に解れたでしょ……ナカにいれて……」

 

 ベッドに下ろされた下半身をはしたなく開き、彼を迎え入れる準備をする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 軽いキスをして、ディープキスをされて、胸を弄られ、アソコを弄られて、舐められた。ならば最後に行き着く先は……。

 

「わ、わ、わぁっ……」

 

「そんな熱烈に見詰められると照れるんだけど」

 

「ね、熱烈ちゃうわ……」

 

 私の前にあるそそり立つバベルの塔。私の体で興奮していたという言葉に嘘偽り無い事をその佇まいで証明していた。血管スゴ……もう男性器というより腕な気がするんですけど……。おっきい……あれ、私のナカに入るのかな?殺生院が言ってた『淫獄塔』ってコイツの男根の方が相応しいんじゃないの?えぐい、形がえぐい。

 

「うわぁ、うわぁっ……うわぁっ――……」

 

 けど、目が離せない。グダおのエクスカリバーに釘付けになっている。剣を引き抜いたアーサー王もこんな気持ちだったんだろうか。

 

 そもそもこれってさっきの私とのアレコレでここまで大きくしてくれたんだよね……。そう考えると愛おしさしか湧いてこない。彼の雄の部分が私の躰で満足してくれたというのなら、私はやっとコイツに胸を張れるマスターになった気がする。ん、何か変な事言ってるかな、私?

 

「十分に濡らしたから、問題無いと思うけど。念には念を入れて、胸も弄りながら挿入するから、マスターは力み過ぎないでね」

 

「……立香」

 

「ん?」

 

「名前で呼んで。私は君のマスターだけど、今ここでは男と女でしょ。だから立香って呼んで」

 

「あぁ、わかったよ()()

 

「はうっ」

 

 嘘……。今私、名前呼ばれただけで軽くイッた?いやいやまさか。どんだけ、彼に開発されてんだって話になるでしょ。

 

「じゃあ、挿れるよ立香」

 

「っぁ……う、うん」

 

 下の名前を呼ばれる度に走る軽い絶頂を悟られないように彼の陰茎を受け入れる。

 正常位で彼に挿入されている私が脱いだのはパンツとブラジャー。セーラー服は彼の熱い要望で着たまま。

 

 上着をたくし上げて、露わになった乳房を揉み込みながら、彼は腰を進める。

 

「ん、んぅぁっ……あんぅっ、やぁんぅっ……おっぱいの触り方、えろいって、もう……」

 

「そりゃあ、エロい事してるからね。さ、ちょっとずつ進むよ」

 

 私のおっぱいの感触をじっくりと確かめるように軽く握ったと思ったら、指先で勃起した乳首を掻き始める。弱い刺激だが、私のアソコからさらなる愛液を分泌させるのは十分な効果となり、挿入の潤滑液となる。

 

 彼はズボン脱ぎ、上は学ラン姿のままなのでまるで同級生とエッチをしているようなイケない気分だ。

 ……もしグダおがクラスメイトだったら……想像出来ない。出来ないけど、それはそれで結構楽しいかもしれない。

 

 そんな益体の無い妄想に浸りながら、私の膣肉が少しずつ彼の剛直に掻き分けられていく。

 

「あっ、あぁっっ……あっついぃ……んぁああっ!!」

 

 あんなに大きい物が自分の体に入っていっているんだって驚く暇すら無く、甲高い声を響かせてしまう。手淫や口淫とは別次元の交わり。正真正銘、互いの大事な部分を預け合っている状態。

 

「は、は、はぁっ……ああああぁっ……グダおのがぁ……どんどん奥にぃぃっ……」

 

 気づけば、私はポロポロと涙を零していた。けど、それは決して痛みや悲しみの涙ではなく、彼と行き着く所まで行く事が出来た喜び。マスターとサーヴァントの関係を超えた、男女の関係になれた嬉しさだった。

 

「うん、立香の中、あったかいや。狭くて、ヌルヌルして、どんどん締め付けてくる。俺達は体の相性もバッチリみたいだったね」

 

「う、うるさいよ……。ほら、さっさと処女膜、破ればいいじゃない。私に気遣う必要なんて無いんだから、君の好きなように……」

 

「いや、もう破ったよ?」

 

 ………………。

 

 ぱーどぅん?

 

「初めては痛いってのは。十分に濡らしてない状態で挿入したり、不安とかで互いに緊張してアソコの筋肉もこり固まったまま無理に入れようとするからそういう目に会うのであって。しっかりと前戯をして、濡らし、お互い安心した状態で体を預け合う事が出来れば避けれるわけなのです。つまり、心体共にベストパートナーとも言える俺とマスターなら無問題。立香……貴女が私の鞘だったのですね」

 

 ………………何でしょう、この肩透かし感。

 

 私としては処女を失った出血と涙と共に苦悶の表情を浮かべて、「立香……ごめん。痛くして、辛いでしょ……」「ううん、この痛みは君に初めてを捧げる事が出来た痛みだからいいの……私、嬉しいよ」みたいな展開があってもいいと思ったのですが。

 

「心を交わしたセックスは楽しく、気持ち良く、安心をモットーに!あぁ、けど立香が痛い方が好きっていうならちょっと考えるけれども」

 

「なわけ」

 

 一瞬、金髪の白いドレスの女の子が笑顔でこっちに手を振っているような幻覚が……。

 

「それにここはまだスタート地点も良い所だからね。ここからが本番っ」

 

「あぁんぅっ!!」

 

 ピクリと私のナカにある異物が動き出したのを感じる。少し奥を突かれただけなのに、私の躰は電流を流されたかのように激しく痙攣した。

 

「あっ、あぁっ……!あんぅぁっ!ひっ、はぁぁっ!やぁっ!声、とまんなぁっ……!!」

 

 ゆったりと一定のリズムでストロークされ、私の全身が快楽に包み込まれる。膣内に入っている彼の男性器が少しでも動くだけでもう私の躰は壊れたおもちゃのように喘ぎ声を延々と垂れ流す。

 

「あんぁぁっ!!はぁぁっ!!ぐだ、ぉ……んひぃっ!」

 

 胸を揉まれる彼の手が心地良い。気持ち良さそうに腰を動かす彼の顔が愛おしい。私を貫いている肉棒が気持ち良くて仕方ない。

 

 セックスって、セックスって……大好きな人とするセックスってこんなにイイ物だったんだ。

 

「凄いよ……立香のナカ……どんどん締まって、体全部が吸い込まれそうだ……っ」

 

「はっ、はぁっ……!呼んで、呼んでぇ……!もっと私の名前、呼んでぇぇ……!!」

 

「立香、立香、立香……」

 

 汗を流し、必死に自分の名前を呼んで腰を動かし続ける彼への想いが止められない。

 太く熱いペニスがガリガリと膣襞だけでなく、私の理性も削っていく。

 

「よかった……やっとこうなれた……君とずっとこうなりたかって……嬉しい、うれしいよぉ……動いて、もっとたくさん動いてぇぇ……」

 

 泣きながら笑う私にグダおがプレスする形で覆い被さる。

 より深い衝撃が奥へと襲いかかる。彼と密着し、ズンズンって突かれながら、頭を撫でられるのが幸せ過ぎて死んでしまいそうになる。

 

「はぁー、はぁー、あ、はぁー!」

 

 耳元で名前を囁かれ、脳内を蕩かされてしまう。イキ過ぎて頭がおかしくなる。自分が今、どこにいるのかもわからなくなるような浮遊感。彼とのセックスはまるで麻薬のようで。

 

「ねぇ、立香、どこに出して欲しい?」

 

「どこぉ?」

 

 一瞬、何の話をしているのかと疑問符を浮かべたが、すぐに理解する。男の人が気持ち良くなって最後に出す物。赤ちゃんの素。精液。

 

 保健体育の授業で知ってはいる。今何度もグダおのアソコにキスをされている子宮口に精子が入っていき、私の卵子に受精すれば、子が私の胎に宿る。まぁ、確率の問題だから絶対に孕むとは言わないだろうけどさ。

 

 それに私はまだ未成年だし、今だって人類最後のマスターとしての大任がある。妊娠なんてしている余裕は無い。だから私の答えは決まっていた。

 

「だして……私の赤ちゃんの部屋に君の精子、いっぱいだしてぇぇっ!!」

 

「本当にいいの?」

 

「いい、いいっ!……他の所に出したら、承知しないからぁっ!!」

 

 絶対に逃さないように四肢を回して、彼の体を抱き締める。

 ……しょうがないじゃない、決めたんだもん。私は彼の全てを受け入れるって。それにこの状態で別の所に出すという選択肢が無かった。私の頭の中には愛しい男の遺伝子を自分のナカに好きなだけぶちまけて欲しいという欲望しか湧いてこなかったんだから。

 

 子持ちマスター?上等よ!おしどり夫婦って呼ばれながら特異点修復してやるんだから!

 

「わかった……。何があっても責任は俺が取る。ナカに、出すぞっ」

 

「うん、うんっ……出して、だしてぇ!私をお嫁さんにしてぇっ!」

 

 さらに加速する抽送の動きで彼が本気で私に種付けしようとしているのが理解出来た。

 あぁ、あぁ……嬉しい、うれしい。グダおが未成年で、女子高生で、マスターたる私を孕ませようとしている、そこまで私の事を求めてくれるのが実感出来て、子宮がキュンキュンと疼くのが止まらない。

 

「あっ、あぁぁっ!あっ!はぁぁぅうぅ!!ひゃぁ!!キスぅ、キスしてぇっ……!!んむぅっ……ちゅっ、んじゅっ」

 

「立香、ちゅぅ、立香……ちゅ、じゅるぅっ……んむぅ」

 

 キスを求め、じゅるじゅると唾を交換し合う。ここまで燃え上がると恥ずかしさとかの段階はとうに超えている。彼となら何をしても気持ち良くなってしまうように体が調教されているのかもしれない。

 

「はぁ、ちゅぅ……イッちゃう!私、もうイッちゃうから出してぇ……!一緒に、一緒にイきたいからぁ……早くらしてぇぇっ!!」

 

「……っ愛してるよ立香。今までも、これからもずっと」

 

「ここで、それ言う……?ほんっとにずるいんだからぁっ……!!あ、あ、あ、あぁぁっ――…………」

 

 彼の言葉に、行動に、子宮口が開き、グダおの全てを迎え入れる準備をしてしまう。私が完全に身も心も彼に堕ちしてしまった証として、精液の濁流が今、私の奥に――。

 

「ひやああぁぁぁぁぁああああああっ……!!!あぁっ!!あああぁっ……!!」

 

 自分でも驚くぐらいに長く、大きい絶頂の悲鳴。それ以上に体内に流れ込んでくる彼の精液の量と勢いに瞠目した。私の未熟な子宮と膣内では入り切らず、結合面から白濁が漏れ出していた。

 

「あっ、あああぁっ!濃い、すごく濃いよぉ……んふぅあっ……私の奥にまだ入ってきてるぅ……こんなの妊娠するしかないじゃない馬鹿ぁ……」

 

「大丈夫。妊娠したら、一生面倒見て上げるから」

 

 ちょ、お前……今それ言うのやめろって。溺れちゃうじゃん。依存しちゃうじゃん。駄目女になっちゃうじゃん。は――、数多の女性達がコイツに参ってしまった理由がわかった気がする。

 

「……馬鹿、変態、セクハラ魔人、人類悪……。好き、好き、だいすき」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んっ、ふぁあっ!あっ、あっ……もう、そんなに私のおっぱい、おいしぃっ……?ひゃんぅ!!」

 

 男とはいくつになっても乳離れ出来ない生き物らしい。お互い全裸になって、対面座位で乳を吸われながら、彼の肉棒に突かれ続けている私は彼の頭を慈しみを込めて抱いていた。

 

 あ――、この体勢結構好きかも。肌もぴったり合わさって、彼のモノが入り込んで……。

 

「あっ、ああぁっ!深い、ふかいぃっ……んぁああっ!」

 

 最初の時みたく彼だけが一方的に動くのではなく、今度は私の方も腰を動かしていた。二人で呼吸を合わせて、グチュグチュパンパンと卑猥な水音を立てて、交じり合う。

 

 興奮で膨張している乳首はグダおが咥えるのに丁度良いサイズとなり、しゃぶられている。

 彼の子供を授かった時の予行演習とも言えるかな?まだお乳は出ないけどさ。

 っていうか、胸を吸われる度にこんな喘ぎ声を出してたら、おいそれと子供にお乳上げれないよねぇ……。いや、多分コイツの舐め方がドスケベなだけだ。そうに決まっている。

 

「んじゅるるるぅっ」

 

「あぁ――っ!んああああぁっ!!おっぱい噛みながら、射精されてるぅ……!!はぁっ!あああっ……!!子宮、おぼれちゃうってばぁっ!!」

 

 本日何度目かすらもわからない子種が私に注がれる。もう私の膣内も子宮も、彼専用になってしまった。悦びの嬌声を室内に響かせて、彼の射精を受け入れていた。

 

 

 そういえば、彼とこうなれたのはとても嬉しいけど、元々何がきっかけだったんだっけ?

 

 

 んぅ――――……。まぁ、いいや。今は彼とのセックスの方が大事。

 

 

「……あ、はぁ……。ねぇ、今度はどんな体勢でする?いいよ、君のしたい体位で……」

 

 

 

 結局、5回戦目を犯り終わった後に私はこの部屋の扉がとっくに開いている事に気付いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




「うへへ…………うへへへへへへへへぇ」

「あのぉ。先輩、本当に大丈夫ですか。先程から顔がだらしなく緩んでいますが……」

「大丈夫だって、ドクター達のメディカルチェックでも問題無かったんでしょ」

マシュの話だと。あちらの世界に引き摺り込まれた後、こっちにいた私は結構危険な状態だったらしい。一見、ただ眠っているように見えるけど、こっちが何度呼びかけても一切の反応が無かったのだから。

グダおがいなかったらマジで酷い目に会ってたと思うとゾッとするけど。それでも、ふふふふふ、おかげでイイ思いをする事が出来た。グッジョブ快楽天! アンタは良い踏み台になってくれたよ!

「そうですね……。心身共にいつもと変わらずのバイタルで私も安心しました」

そうそう、いつもと変わらず…………。え?今なんて?

「ねぇ、マシュ。私の体、前と一切変わってない?」

「はい、ドクターもダ・ヴィンチちゃんもいつも通りの先輩だとおっしゃってましたが……先輩! どこへ行くんですか!?」

変わってないわけないじゃん! だってあんなにグチュグチュにされて、ズコバコされて、ビュルビュルされたんだよ!!
処女膜だって……ある……というよりも全然、濡れてないじゃん私のアソコ!!


――私は貴女の精神を淫獄の底へと引き摺り込みました。


じゃあ、肉体は未だ綺麗ピカピカな処女のまま?
マイルームから飛び出した私はグダおの姿を探してカルデア中を駆け巡った。

「おや、マスター。どうしたんだい、そんな血相を変えて」

いた!

休憩室で、コーヒー片手にドクターとダ・ヴィンチちゃんと談笑しているグダおの姿が!



「グダお!! 今から私とセックスして!!」

「ブホォォッ!!」

何故かドクターがコーヒーを吹き出し、ダ・ヴィンチちゃんの顔が劇画調になったが今の私には構っている余裕が無い。さぁ! ハリー、ハリー、ハリー!

……あ、あれ? カルデアの皆、いつの間にここに集まったのかな? どうして私を取り囲むのかな?何で、そんな悲痛に耐えるような顔で私の事を見るのかな?

「くっ。グダお君からラプチャーの淫視によって精神を取り込まれたと話は聞いていたが、まさかここまで影響が出ているなんて……」

「悔やむなよロマニ。私だって立香ちゃんの精神性に何の影響も無しと太鼓判を押したんだから……全く、天才の名が泣くぜ」

「もう一度、入念なメディカルチェックが必要だね……。皆! 迅速に準備を」

「い、いやだな――ドクター。私にはもう何も異常なんてないよ。体調だっていつも通りだし」

「いつも通りの立香君が公共の場で男相手にセックスしようなんて言うわけありません!!」

ぐぅ正論。

冷静になると私は人目のつく所で男にセックスをせがんだビッチにしか見えないわけで……。我に返り、羞恥で顔を真っ赤にした私は心配そうなカルデア職員の皆に子牛の如く、連れてかれた。ドーナドナ♪

死にたくなる気持ちになりながらも、ふと、グダおの方に目を向けると妖艶な顔で口元を動かしていた。


『後で、部屋で待ってるから。立香』


………………もうっ! しょうがないなぁ! 初めてを精神と肉体で二回も経験出来るなんて、結構貴重だもんね!! もう、エッチなサーヴァントを持つとマスターは困っちゃうよ!! もう、もう、もうっ!

読唇術?愛があればわかるの!!




【藤丸立香】
肩書:元女子高校生。現在、人類最後のマスター。経験済み処女。






















久々にスタンダードなセックスを書いた気がします。ここ最近がちょっとおかしかったのかもしれません。ロボット操作セックス、炬燵触手プレイ、妻持ち旦那の雌堕ちックス。間接的に奥さんに射精するとか意味がわからんわ。

シンプルイズベスト!!






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週刊性年インボウマガジン①(第5章)

新年あけましておめでとうございます。12月は一話しか投稿出来なかっただらしない作者を許して下さいでち。今年だけ……今年だけ頑張った者に来年が来るんだよ……をモットーに2019年は更新速度上がるといいなー(願望)。

グリッドマンとかゴブスレとか青ブタとかゾンビランドサガとかスマブラに加えて残業パーリナイをやってたせいで中々書く時間が無くてね。ごめんね! いや、平成最後に相応しい豊作だったよ今季は(反省ゼロ)。

年末のfate生放送もちゃんと見てたよ、予想通りエルメロイ教室のアニメ化でしたね。さすがにリヨアニメは想像出きんかったわ。けどイキイキとしているオルガマリーちゃんが見れたのでオッケーです。そして何気にキャス狐の初アニメがリヨなのが笑う。

HFも超楽しみです。内容知ってても視聴欲が全く劣らないのもufotableの力なんやなって。訓練された型月兵なら五回は劇場で視聴するべし。僕は英雄王の活躍を全裸待機してます。


カルデアコレクションにて、ケツァル・コアトル(サンタ)、紅閻魔(ママァ)ちゃん更新。






一年以上ぶりの特異点攻略。第五特異点、久々の英霊編です。お待たせして、申し訳ない。



 五つ目の特異点。独立戦争時代の北米大陸。

 

 現代社会において世界の中心たるユナイテッド・ステイツ。その覇権を巡り、アメリカの歴代大統領達と霊基を合成させた大統王エジソン率いる合衆国軍とコノートの女王メイヴが率いるケルト軍がぶつかり合った。

 

 コサラの王ラーマ、施しの英雄カルナ、授かりの英雄アルジュナ、聖杯の力によって歪められた凶王クー・フーリン、影の国の女王スカサハを始めとする神話の時代の英傑達。

 

 まさに北米神話大戦の名に相応しい錚々たる英霊達が揃っていた。

 

 各々、思惑はあれど、英霊として全力で戦った。それが本来辿るべき筈だった道。

 

 

 だが、そこに特大の異物が注入されればどうなる?それは媚薬どころか劇薬という言葉すら生優しい最悪の欲情魔神。

 

 七十二柱の魔神柱、魔神王ゲーティア全てを取り込んだ究極変態体、ビーストⅢ/ラプチャー。殺生院キアラ。

 

 

 

 歯車が外れた音が聞こえる――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私、藤丸立香!献血のボランティアとホイホイ怪しそうな人に付いていったら、いきなり極寒の雪山に連れてこられたの。わけもわからず、世界を救うマスターの一人になったと思ったら、爆発で私以外のマスターは全滅!愛しの後輩と共に冬木で初めて召喚したのは同年代っぽい黒髪サーヴァント!一見、人畜無害に見えるかもしれないが、こいつが大の問題児。アーサー王はセクハラで消滅させるは、竜の魔女はセクハラで消滅させるわ。私より先に所長に手を出すわ。ポンポンお嫁さん連れてくるわ、守備範囲が広すぎるわで、ツッコミが追いつかない私は血圧が上昇中!立香、困っちゃうよぉ。

 それでも、ラブホもどきのカプセルテントでキャンプしたり、ローマでアイドルやったり、大海原で人工呼吸されたり、ロンドンで頭のおかしい淫乱メンヘラ女に絡まれたりしたけど、元気に人理修復やってます!

 

 そんなロンドンから帰ってきた私に待っていたのは、ビーストおばさんからの薄い本的な展開!でもでもやっぱりグダおが助けてくれたのでハッピーエンド。二人は幸せなセックスをして終了!の筈だったんだけど――。

 

 

 

 

 

 

『というわけで、五つ目の特異点、アメリカ大陸にレイシフトしたわけど……あの――、立香君、もしかしなくても機嫌悪い?』

 

「べつにぃ、悪くないですけどぉ。精神患者の如く、隔離させられて、メディカルチェックさせられて、そしてそのまま自分のサーヴァントとのスキンシップもままならないまま、レイシフトさせられて思う所はまるでありませんけどぉ……」

 

 結局、淫獄塔で助けられてから、私とグダ男は肌を重ねていない。心の処女はグダ男に授けたけれども、未だ体は穢れを知らない未通女。体と心の処女を両方捨ててこそ、一人前のマスターだと思うの。

 妬ましい、乙女の恋路を邪魔してくれたドクター達が妬ましい……。

 

『おぉう、なんと恨みがましい目線……』

 

『けれど、往来の場であんな発言をしてくれた立香ちゃんにも問題があると思うよ?ビースト/ラプチャーが乗り移ったのではと心配しても致し方ないでしょう』

 

「正論だけれども!それでもさ!恋する女の子には止められないパトスが出ちゃう時があるんだよ!」

 

「先輩の顔が凄く切実です……!」

 

『接触禁止令が解除されたマリーとグダ男君の距離がやたらと近いのも彼女の不機嫌に拍車をかけているのかもしれないね』

 

 そうそれ!

 

 そんなこんなで西部劇に出てきそうな如何にもな感じの荒野のど真ん中にレイシフトした私達。そしてすぐに状況確認をしようとした相も変わらずドスケベ衣装の所長は立ち振る舞いだけは凛とした状態で何やら魔術的な結界を用いつつ辺りを調べているが……その腕はこれでもかってぐらいにグダおの腕絡み付いている。

 

 グダおの格好はローマの時と同じく黒スーツの上にジャケットを羽織り、マフィアが被るようなつばが一周している帽子を被っていてぶっちゃけ極道か何かにしか見えない。コイツ、サーヴァントなのに服装が本当自由だよね。ゴッドファーザー気取りなのかな?いや、子だくさんという意味ではゴッド父親(ファーザー)なんだろうけど。

 

「ほら立香、いつまでもわけのわからない事言ってないで周囲を警戒しなさい。マシュとグダ男のマスターは貴女なんだから」

 

「卑しい、権力者の色じかけ、卑しい……」

 

「何の話よ?」

 

「無自覚とは、なおの事卑しい!」

 

『もう立香ちゃんには鎮静剤でも打った方がいいんじゃないのかな』

 

 いやまじで本当ズルいと思う。そんな露出度の高い格好で谷間でぽよんぽよんて。ていうかグダ男もグダ男だ。確かに接触禁止令を出された所長を気に掛ける気持ちはわからないでもないけど、ここに生理かってぐらい精神が荒ぶっている女の子がいるんだよ?このままだと特異点攻略にも支障が出ちゃうよ?マスターのメンタルもケアして欲しい。いいじゃん、所長は今まで散々ズコバコやってきたんでしょ?私なんてまだ一回じゃん。しかも精神世界の話だし。ってこれ下手すれば妄想の中でグダ男とヤりましたって言ってる相当痛い女になってる気がするもん。

 

「マスター」

 

 そんな私の思考を察したのか、彼が差し出したのは所長が掴んでいない右手。

 

「…………何さ」

 

「おいで」

 

 私は何も言わず、彼の手を全力で握った。やっぱサーヴァントとマスターは近くにいてこそだもんね。

 

『恐ろしく早い動き、私じゃなければ見逃しちゃうね』

 

 うるさい、ダ・ヴィンチちゃん。

 

「え、えーと私は」

 

 所長と私を見て、逡巡しているマシュ。サーヴァントとしては警戒に全力を尽くすのが正解なんだけど、私は彼女を仲間外れにするつもりはなかった。マシュだって私の大事な後輩なんだから。

 

「はい、マシュ」

 

「先輩……。で、では失礼します」

 

 きゅっと控えめに手を握ってくれる後輩の何と愛らしい事か。何だかんだでカルデアカルテット、いい感じに収まっているのでは?

 

『お手手を繋いで人理修復かぁ。何だろうね、これ』

 

『仲良き事は美しき哉だよ。レオナルド』

 

『そういえば、女の子の友情って男で簡単に崩れる時もあるよね』

 

『今言う必要あるかい、それ?……って何だ、この反応!?』

 

「どうしたのドクター?またお得意のワイバーン芸?」

 

『いや、ここ最近は言ってないでしょ!そんな事よりも警戒態勢!不特定多数の敵性反応がそっちに近づいている!!』

 

 ロマンの切羽詰まった声と共に地響きが聞こえ、前方に土煙が立ち込めていた。未だ、私達とは距離があるが土煙の中にいるであろう()()かは確実に私達の方へと近づいていた。

 前衛にマシュ・グダお、後衛に私と所長とスタンダードなフォーメーションを取った私達はドクターの指示通り、警戒を続ける。

 

 ここが特異点である以上、時代を乱す()()()()()()()()がいる筈なのだ。敵であれ、味方であれ、まずはそこから見極めなければならない。

 

「グダお……もしかして、貴方の言っていたケルト兵とかかしら?」

 

「いや、どうだろう?ゲーティアがラプチャーに取り込まれた以上、本来の道筋とは外れているし、俺の世界線の話もあんまりアテにはならないからなー」

 

『この北米大陸にケルト兵?もしかしなくても、所長はグダお君からこの特異点の展開を聞いてたりするのかな?』

 

 ダ・ヴィンチちゃんの鋭い指摘に所長は耳まで紅く染めて、そっぽを向いた。おいこっち向けドスケベプリンセス。そもそもグダおは自分が知っている人理修復の事については話すつもりは無かったのでは?

 

「あ――……ほら、ね?怖がりなオルガマリーにベッドで甘えられちゃったら、ポロっと漏らしても男として仕方ないというかさ……あ――痛い!マスターからの愛が地味に痛い!」

 

 目の前の色ボケサーヴァントの背中の皮を服の上から万力の如く摘まむ。とまぁ、こんな微笑ましいやり取りを挟みつつもようやくドクターが言う敵性反応が視認出来る距離まで近づいてきた。

 

 それは所長が言っていたケルト兵なのか――。

 

『な、なんだ、あれは……!?』

 

 ドクターが言葉を失うのも無理は無い。それは辛うじて人の体を成しているナニかだった。

 纏っている鎧と持っている槍で()は兵士だったという事は推測出来る。

 だが、その集団を構成する一人一人に人間としての共通性は無かった。

 

 肩から肥大化した黒い肉塊が腕の代わりになっているモノ。腰から下が蛸のような触手で足の代わりになっているモノ。明らかに体のバランスが狂っている腫れたように肥大化した顔を持っているモノ。

 

 私はそんなクリチャー達を見て、第三、第四特異点で見た『魔神柱』を何故か思い出した。人間と魔神柱が無理くり繋ぎ合わされているそんな印象を受ける。

 

「ひぃっ!け、ケルト兵って、あんな異星人みたいな見た目だったの!?野蛮ってレベルじゃないわよ!」

 

「野蛮って所は否定しないけどさすがにあれは普通のケルト兵じゃないね……もしかしなくても第三者の手が加えられていると思う」

 

「先輩、所長!下がってください!敵性勢力、有無を言わさずこちらに一直線に向かってきます!」

 

 さすがに珍しく気丈に振る舞っていた所長もあんなSAN値が下がりそうな光景を見てしまってはいつも通りのテンパリ恋愛雑魚卑女に戻ってしまっている。

 まぁ、私もあの怪物の軍勢を見ていると何故か淫獄塔で囚われた時の事を思い出してしまう。正直な所、嫌な予感しかしない。

 

 一応、声帯は存在するのか、鳴き声のようなものを発して私達に近づいてくる。

 

 

 

 ――キアラちゃん、サイコー!

 ――キアラちゃん、サイコー!

 ――キアラちゃん、サイコー!

 

 

 

 うわぁ。

 

 

 

 今、カルデアメンバー全員の心の声が一つになった気がする。

 

「グダお!」

 

「了解!汚物は消毒だぜ、ヒャッハー!!」

 

 相思相愛のパートナー、私が言葉に出さなくとも意図を察してくれたグダおは宝具『人繋ぎの大秘宝庫(マテリアル・ボックス)』を展開。空中の波紋から何かを取り出す。

 

「鬼救阿、お借りする!カモン!護法少女式大ビョウタン!」

 

 現れたそれは私の体と同じくらいのサイズの巨大な瓢箪だった。グダおは飲み口をクリチャー共に向けて、それを大砲のように構えた。おにきゅあって何だ、プリキュアの次回作か?

 

「俺達が本隊だ!!模倣(まねっこ)宝具!『千紫万紅 神便鬼毒』!」

 

 どういう原理かは全く不明だが、噴水の如く勢い良く噴き出した液体がこちらに襲いかかろうとしてきた汚物達を押し流していく。ていうか、何か酒臭い……。

 

『分析が完了したけど、ただの酒じゃないみたいだねそれ。呪いと毒もえげつない程に混ざり合ってるよ。現にほら』

 

「はい!グダおさんの宝具によって敵性勢力の動きが鈍っています。中には肉体が溶け、消滅しかけている者も!」

 

 ダ・ヴィンチちゃんとマシュの言葉通り、グダおのアルコールスプラッシュによって出来た水溜りにどっぷり使っている怪物達は酔っ払ったようにふらつきながら、溶解していってる。だが、それも全てではない。何体かはまだ戦意を滾らせて、踏み出そうとしている。

 

「ケルト兵というかサーヴァントでも無いそこら辺の雑魚なら今ので溶けてる筈なんだけど……。やっぱり魔神柱でも混ぜたのかな、あの尼さんは……。オルガマリー、後はお願い!」

 

「ちょっと今ポロっと無視出来ない情報漏らさなかった!?……Anfang(セット)……!」

 

 気になる事はあるけども、そこは一応組織のトップ。優先事項を間違えず、半泣きになりつつも指先に魔力を込める。

 

Liebe(恋のように)――Brennen(燃えろ)

 

 所長の人差し指から放たれた紅い光弾は酒の海に着火した。

 

「Agaaaaaaaaaaaaaa!!!?」

 

 アルコールは良く燃える。辺り一面に広がる火の海とその中で踊る怪物達。何と汚いキャンプファイアーか。

 

「所長ってば今の格好も相まって、本当に悪魔みたく見えてきました」

 

 それにあのハート型の糞ダサビームも止めたんですね。なんだか初めて所長の魔術師っぽい所見た気がする。

 

「好きでこの格好してるわけじゃないのよ!私ももっとまともな格好でレイシフト出来るならやってるわよ!わかってて言ってるでしょう貴方!」

 

「ふぅいふぁふぇん」

 

 炭になったクリチャー達をバックに私の頬を伸ばす所長。羞恥と怒りに染まった彼女のそんな顔を見ながら、コンビプレイで直接グダおと一緒に戦える所長がちょっぴり羨ましい立香ちゃんなのであった。

 

 きっと、あの女。殺生院キアラはまだグダおの事は諦めていない。この特異点でも間違いなくちょっかいをかけてくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「負傷者を急いで運べ!傷の度合いによって搬送するテントを分けろ!」

 

「重傷者はなるべく同じテントだ!手が足りん、軽傷者も動ける者は手を貸してくれ!」

 

 

 北米大陸の西側。前線より離れた後方基地。戦場ではなくとも、怒号と血の匂いが生々しく感じられる。

 合衆国軍の兵士達が慌ただしく駆けている中で一際目立つ存在があった。橙色の長髪をなびかせている一人の少年の姿があった。

 

 胸も抉られてはおらず、軽いとは言えないが擦り傷程度で自らの足で立っているサーヴァントがいた。

 

 カルデアのメンバーが来る前にこの地に召喚されたコサラの王、セイバーのサーヴァント、ラーマ。

 

 彼はここに来る前に死地を経験していた。

 

「おい、アンタ確か、『狂竜』と出くわしたってな?よく無事でいられたな……サーヴァントってのはそんなに頑丈なもんなのか?」

 

「『狂竜』?あぁ、あの黒い鎧を纏ったサーヴァントか。いや、あの雰囲気はサーヴァントとすら言えんな、もっと悍ましいナニか。しかし、『狂竜』という名前なのか、アレは」

 

「さぁな。明確な名称があるとも思えん。『狂竜』が通った街は草木も一切残らず屠殺されてる。災害みてぇにな。近くで見た奴なんて誰もいねぇ、戦ってる奴は皆死んじまってるからな。偶々遠目で眺めて生き残った奴らの噂が一人歩きしてんだろうさ」

 

 一人の兵士がラーマに語りかけていた。

 その男が言う『狂竜』とやらはラーマがここに来る前に戦った正真正銘の怪物の事だろう。

 

「運が良かっただけだ。余一人だけだったのなら、『狂竜』とやらに屠られた犠牲者に名を連ねていただろう……」

 

 生前、神仏にすら匹敵する魔王ラーヴァナを打ち倒した自信家のラーマにすらそう言わしめる『狂竜』の恐ろしさ。彼は思い返す。あの狂った竜と戦った時の事を。

 

 竜と言ってもドラゴンではなく、ダイナソーだったが。

 

 

 

 

 

 

 ――――

 

 

 

 

 

 

「GAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!」

 

「くっ、滅茶苦茶過ぎる!」

 

 ガトリングのように弾幕を張った紅い死槍の群れがラーマに降り注ぐ。一弾、一弾が一撃必殺。武人としての矜持さえ、かなぐり捨てて逃げる事だけに専念しなければならない怒涛の死撃。

 

 避けて、ブラフマーストラで捌き、転がるようにして敵の射程範囲から必死に逃れる。防ぐ為に最初に使っていた棍棒モーダキーとシカリーは既に粉砕された。

 

 漸く、攻撃が止み、一呼吸の瞬間。ラーマとその怪物が相対している荒野には他の生命は存在しなかった。墓標のように突き刺さっている紅槍が並び、人の死体と機械兵の残骸が散らばっている。

 

 サーヴァントでありながら、誰一人として守れなかった事を歯がゆく思い、泥と傷だらけになりながらも、戦意だけは失わないように敵を見据えるラーマ。

 

 

「ZIAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!」

 

 四足歩行で立つ黒いソレをラーマは英霊とはとてもじゃないが思えなかった。

 

 全身を包んでいる魔獣のような黒い鎧。血のような赤い紋様が全身を巡っていて蠢動している。爪と角は攻撃に使っている槍と同じく紅く強大で、肘、膝、肩から生えている赤黒の巨大な触手は今まで散々戦ってきた敵の兵士達に結合していた黒い肉塊と酷似していた。三本ある尻尾は4M程あり、別の意思を持ったかのように蠢いている。

 

 今も吠えている口内からはやはり槍と同じ色の赤い牙しか見えなかった。

 

「ええい、くそっ!昔を思い出すな全く!せめてサーヴァントの身ではなく生身であったのなら!」

 

 そんな彼らしからぬ泣き言が出てしまうのも致し方無い事。距離を離せば、途方も無い程の量を持つ槍の雨が飛来し、ならば近距離と接近戦に持ち込めば爪と全身の触手に加えて尻尾と二本の腕では捌ききれない連撃が襲いかかる。正直ズルいだろうとラーマは弱音を吐きたくなる。

 

「DAAAAAAAAAAAA!!!!」

 

「しまっ……」

 

 そんな彼の隙を突くように『狂竜』の開いた口に紅い光が収束している。遠距離攻撃が槍だけだと思っていたラーマは回避行動が完全に遅れた。放たれた一筋のレーザー、それがルーン魔術で編まれている物だと死を覚悟したラーマは知る由も無い。

 

『狂竜』の元となった者のルーン魔術と無理矢理混ぜられたナニかが合わさった死の砲撃がラーマに迫ろうとした瞬間――。

 

 ラーマの背後から救いの一射が飛んでいた。

 

 まるで祝福のような暖かい光を帯びたその矢はラーマにどこか既視感を覚えさせながらも初めて見るような不思議な感覚を抱かせた。

 

 橙の矢と紅いレーザーは正面からぶつかり合い互いを相殺させていた。

 余波でその身を投げ出されたラーマはグルグルと回る視界の中で確かにそれを見た。

 

 

 ――穢れを知らない白き花嫁衣装。

 

 ――本来の使い方であるブラフマーストラと似た弓を持つ少女。

 

 ――ヴェールから覗かせた自身と同じ色の髪。

 

 

 そしてうっすらと、だが確実に見えたその顔は戦いの最中だというのにラーマに綺麗という感想しか抱かせなかった。

 

「シータ……?」

 

 

 

 

 

 

 ――――

 

 

 

 

 

 ラーマの戦いの記憶はここで途切れている。目覚めたのはこの後方基地のテントだった。お目覚め早々、頭のおかしい看護師に切断されそうになったのは苦い思い出だったが。

 

「他の患者に早く場所を譲りなさい。この戦地で無駄に出来る場所は1マイクロメートルもありません」

 

 結局、大した傷が無いとわかった段階で早々に叩き出されて今に至るのだが。

 

「さて、余はもう行く。ここにいても大して力になれなそうでないのでな、世話になった恩は戦場で報いるとしよう」

 

「オイオイ、噂の化け物と戦って戦意がまだ折れてないのかよアンタ……」

 

「ふっ、それ以上の希望をもらったのだ。さすがに勝算も無く、『狂竜』に挑む事はもうせん。余は臆病ではないが蛮勇でも無い。だが他の醜兵共は仕留めさせてもらうぞ」

 

 剣を担ぎ、戦場に赴こうとするラーマの脳裏にはあの光景が焼き付いている。思い出せば高鳴る胸の鼓動と頬の熱。今すぐに会って抱きしめたい衝動。見間違えるわけが無い。どういう理由があってあれ程の力を持ったのかはわからないが、それでも――。

 

「もう一度、もう一度余は君に会いに行くぞ、シータ」

 

 その為にはまずこの世界を平和にする事から始めなければならない。幼き少年王は熱き決意を宿し、再び死地へと戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




※シータは現在、アルカトラズ島に囚われの身です。













先の展開について聞かれても基本的にノーコメントしか答えれんから!まぁ、私の作品って奇をてらってない王道故、分かりやすいし仕方ないよネ。


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週刊性年インボウマガジン②(第5章)

早くもHFの映画を二回見に行った訓練された型月兵。あれはいいぞ、一章も素晴らしかったが二章はそれを遥かに超えてきた。多くは語らない。一回はスクリーンで見るべき。家族では見に行くなよ!

てか聖杯から無尽蔵に魔力が供給される黒王様ってマジチートだわ。どうやってあれに勝ったんだっけ?(痴呆)
黒いウネウネことアンリマユの不気味さが一層あの映画の味付けをしてる。グダお君の白いウネウネの方がまだ可愛げあると思うの。










エクストラ編が思った以上に好感触で驚いた。でもしばらくは本筋の執筆をするので放置です。引き続き英霊編第五章入りまーす。







 コロラド州の首都デンバー。エジソン率いる合衆国軍の本拠地。

 デカデカと自己主張が激しい星条旗が掲げられた城の会議室で複数のサーヴァントが集まっていた。

 

「ぐぬぅ……」

 

 通信機で各地の兵士達から戦況を聞くエジソン。その真剣な獅子の顔は決して晴れやかではない。

 異形の怪物となったケルト兵達も数で勝れば、殲滅出来ない事は無い。サーヴァントがいれば余力を残して勝利が出来る。

 

 だが、『狂竜』と呼ばれるたった一体の怪物によって簡単に戦線が崩壊してしまう。

 少しでも敵の本拠地と思われるワシントンに近づこうとすれば、ミサイルのように飛来してくる『狂竜』によって自慢の機械兵団がガラクタのように粉砕されてしまう。こっちの本拠地まで攻めてこない癖にひとたびこちらが攻め込もうとする全力で殺しにかかってくる。

 

『狂竜』がいなければ、サーヴァントの数で勝っている合衆国軍はすぐさまワシントンを奪還し、聖杯を手に入れていた筈なのにと大統王を名乗るエジソンはとても歯がゆい思いをしていた。

 

「もういいんじゃないの、エジソン。私達は後一手が足りない。ここまで来たら素直にカルデアの力を借りるしかないでしょ。貴方だってアメリカだけ助かればいいだなんて本心で思っているワケじゃないでしょ?」

 

 体は子供。精神はおばあちゃん。前線の戦から一度こちらへ帰って来た女性オカルテイスト、エレナ・ブラヴァツキーは悩める大統王を諭す。さらにそれを後押し?するエジソン特攻鯖が一人。

 

「仕方あるまい夫人よ。この凡骨は分相応にも歴代大統領の肩代わりなんてしようとしたのだ。戦場ではなく、裁判所でせせこましく戦っている方が似合っているというのに。身の丈に合わん地位は自身を滅ぼすだけだぞ」

 

「ええい、やかましいわ!何故、貴様が味方面でここにいるのだすっとんきょう!私はこの城に入る事を許可した覚えはないぞ!」

 

「誰が貴様の味方をするか馬鹿め。私は『人』の味方だ。そしてロンドンで迷惑をかけてしまった少年少女達に借りを返そうとする素敵な紳士でしかない」

 

 今、この会議室にいる計3人のサーヴァント。その最後の一人は交流至上主義。エジソンとは水と油の犬猿の仲。雷電博士、ニコラ・テスラ。

 

 エジソンは絶叫する。何故この男がいるのだと。誰が呼んできたのだと。あぁ、そういえばカルナ君が「今のお前にはこの男が必要だろう」とか言ってある日、連れてきたんだっけな!

 確かに顔を合わせた瞬間の雷電ファイト(只の殴り合い)と怒りで自分に憑りついていた歴代大統領達の重圧からは解放され、柔軟な思考は持てるようにはなったが……それはそれ。世界が100回滅んでもエジソンがこの男に感謝する事は無いだろう。

 

「ふっ、無様にも敵の傀儡になったとな。これだから知名度の低いマイナーサーヴァントは困る」

 

「確かに有名だな貴様は。子育ての反面教師としてな、母親の血は受け継がれなかったのだな」

 

「家族の話はするんじゃねぇよ!!」

 

「この戦争中は喧嘩はしないって私、言ったよね?」

 

「「Yes,ma'am」」

 

 決して、迎合する事ない二人だが、エレナの前だと子供のように従順になる。まだまだこのロリおかんには頭が上がらないようだった。エレナが彼等の仲をフォローしてくれてるからこそ、合衆国本部も割れる事なく上手く機能しているのだ。

 

「全くもう……ほら、デモインで交戦中だった書文から報告が入ってるわよ」

 

 エジソンが作った通信機から老齢の男がモニターで映し出される。老いてはいるが全く枯れていないその眼光と佇まいは若年期と比較しても劣る事のない覇気を持っている。

 

 アサシンクラスで現界した中国随一、伝説的な武術家、李書文は一仕事終えたと頬についた血を拭い、戦況を報告した。

 

『こちら、遊撃隊隊長、李書文。でもいんで暴れ回っていた怪物共は全て屠り終えたぞ。しかし……呵々(かか)!まさかこの年になって蛇蝎磨羯の類と殺し合えるとはな……。わしとしては狂竜とやらも気になる所なのだが……』

 

「駄目よ。インド神話の英雄ラーマでも手も足も出なかったんだから。敵の戦力が未確定な戦場に貴方を放り込む事は無いわ。勝算の目が少しも出てない以上、今は我慢して」

 

『ふむ、若いわしなら知ったことかと飛び出していただろうが。あいわかった。今やこの身は老骨。自身の欲望ではなく、若人の未来とやらの為にこの拳を振るうとしよう』

 

「あなたが今の年齢で召喚されて心底安心してるわ」

 

 李書文との通信を切って、ほっと一息を吐くエレナ。カルナ、ラーマといいあれだけの武人達が味方をしてくれているのは非常に助かっている。

 今はひたすら治療に専念しているナイチンゲールを含めて、合衆国軍側として戦ってくれてるサーヴァントはエジソン、エレナ、カルナ、テスラ、李書文、ラーマの7人。明確にこちら側というわけではないが、自分達が本気で人理を守るとわかってくれたらついてくれるであろうアウトロー組の野良サーヴァントも複数。それにカルデアも加わってくれれば。目の上のたんこぶでもある『狂竜』を片付ける算段も建てれるとエレナは考える。

 

「ふん!所詮は戦う事しか能のないケダモノ共よ!人間の叡智とやらには遠く及ぶまい!ここでさらに私は柔軟かつ臨機応変な思考を見せるぞ!エレナ君!カルデアの者達と合流次第、我らもサーヴァントと機械兵でワシントンに向けて大規模な進軍を決行する!敵のサーヴァントらしき者は『狂竜』一騎。数を揃えた我らにとって恐れるに足る物ではない!戦いは数である!」

 

「ならまずはカルデアの人達を見つけないと話は始まらないわよ。『狂竜』と遭遇してなければいいけど」

 

『こちら、本隊副隊長カルナ。カルデアに所属していると思われる人物と遭遇した。我々のトップに会いたいというので既に城門前まで来ているが、連れてきても構わないか?』

 

「何というベストタイミング!やはり幸運の女神は私についているのだな!風が吹いてきている!確実に、着実に、私達の方に!構わんよ、カルナ君!是非是非、案内してくれたまえ!」

 

「あぁもう、そんな簡単に決めちゃって……。でもまぁ、『貧者の見識』を持つ彼が騙される事もないか。それで一体、どんな人物なのかしら?」

 

『ふむ、それは……。実際に見てもらった方が早いな。俺も説明が難しい。もっとボキャブラリーとやらを鍛えておくべきだった。特にお前は驚くだろうな、エレナ』

 

「私……?」

 

 頼んでもいないのに人の耳が痛い所をズバズバと突いてくる施しの英雄にしてはやけに歯切れの悪い返答だった。

 通信を切ったカルナはこのまま、疑問符を抱えているエレナ達がいる会議室までカルデアの者を連れてくるだろう。

 

「私が驚く?むしろ、あっちの方が驚く側ではなくて?」

 

「確かにこの悪鬼の顔を見れば誰もが驚愕するだろうな。一つ言っておくが凡骨、アメリカの象徴とか言ってるがたて髪がついているライオンはアメリカには生息していないぞ」

 

「細かい事は気にしない!アメリカは広いのだからね!」

 

 さすがは自身の発明を世界に普及化させたホワイトライオン。頭脳が無事なら顔の変化など些末な事と笑い飛ばす。彼の無駄に喧しい三段笑い声が収まった頃にノックの音が聞こえた。

 

「いるな、では入らせてもらうぞ」

 

 入室したカルナの後をついている者がカルデアの者だろう。

 性別は女性、薄紫の髪が腰まで伸び、ハイレグのように股間のラインが際どい黒の肌着の上から緑色の軍服らしきものを羽織っている。しかも抱っこ紐でおしゃぶりを咥えた彼女の面影がある赤ん坊を左右に二人抱えている。だが、エジソン達が驚いたのはカルデアの者が赤ん坊同伴で来たことではなく――。

 

「ニャーフ!(挨拶)」

 

「マハトマ!?(驚愕の意)」

 

 彼女の顔がどうしようもなくエレナ・ブラヴァツキー夫人にそっくりだった事である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここにブロードウェイは無かったわ……」

 

「ここにハリウッドは無かったのだ……」

 

 肩を落とし、重い足取りで私達と同行する自称アイドルサーヴァントが二名。

 サーヴァントとなった彼女にその時の記憶は無いけれど、ローマで一緒にアイ活した思い出は新しい……。情熱の皇帝ネロ。白が眩しいウエディングドレスVer。

 そしてそんなネロの隣で尻尾を引き摺りながら歩いてるのはオルレアンで奥様はidol化してしまった自分を見て羞恥の逃亡をしてしまったエリザベートちゃん。うん、グダおとの距離が非常に遠い。

 

「がおー」

 

「ひゃああ!食べられるぅっ!性的な意味でぇっ!助けてぇお父様ぁ!!」

 

「おい、怖がらせんな」

 

「ごめん、何かあんなエリちゃんを見ると嗜虐心がムクムクと」

 

 それなら、あんなドラゴン娘よりも私を食べて欲しい。私に嗜虐心を持って欲しい。……ってイカンイカン。なんか彼に抱かれたからすぐ思考がピンクの方向になってしまう。欲求不満か。十代の性欲ってこんなに強かったんだね。

 

「さすがにあの怪物共には余の芸術を理解出来る頭はなさそうだったな……。そもそも余の歌を前にして他の女を賛美するとか不敬極まりないぞ!一体、誰なのだ!!『キアラちゃん』とやらは!」

 

「何がアメリカンドリームよ。スプラッタとかそういうのはアイドルにはご法度っていうのに」

 

「ブラッドバスが趣味のお嬢様が何を言ってるんでスかねぇ……」

 

「うるさわいよ緑ネズミ!今はもうそういうのは止めてるの!!」

 

 久しぶりの顔があれば、初めて会う顔もある。辟易とした顔でエリちゃんからの追及を逃れている緑色のマントをつけた優男。アーチャーのクラスであるロビン・フッド。

 

「お兄さんお兄さん、敵の魔術回路をズタズタにするのにお得な銃弾は欲しくないかね」とグダおから物騒な弾をもらっている金髪の少年。私でも名前を聞いたら少しだけピンと来た、早撃ちガンマン、ビリー・ザ・キッド。

 

 そして快楽天の親衛隊もどきを燃やしてフィーバーしていた私達を見つけて、他のサーヴァントと合流出来るように誘導させてくれた常識人。アパッチ族のシャーマン、ジェロニモさん。

 

 彼等のおかげで無人になった街で呑気に歌っていたネロとエリちゃんを救出して合流出来たわけだけど。

 

「なんだか大所帯になりましたね、所長」

 

「これだけ味方になってくれるサーヴァントが大勢いるのはありがたいわ。でどうするのグダお?またローマの時みたくアイドル活動でもするのかしら?」

 

「ローマ!?」

 

「アイドル!?何、アンタ達、あの特異点でそんな楽しそうな事してたの!?」

 

 所長の言葉、自称アイドル系サーヴァントが二人ほど食いつきましたが……。

 

「何言ってんのオルガマリー。アイドルで世界が救えるワケないでしょ、メルヘンやファンタジーやSAGAじゃないんだから……ぐえぇっ、す、すみません」

 

 無言でグダおの首を絞める所長。泣いてばかりいた彼女も特異点を修復をする度に逞しくなってるのか……。

 

『計5人のサーヴァント。この特異点に来てから、これだけの英霊達が仲間になってくれたのは正直助かるよ』

 

『そうだね。こっちで調べていた怪物達の解析も終わったし、うん間違いなく第四特異点で現れた魔神柱達と同じ魔力反応が検出されたよ。元の存在が何であれ、恐らくビーストⅢ/ラプチャー、あの快楽天が一枚噛んでいるね』

 

「元の存在か……。最初はちゃんと人間らしい姿はしていた。狂ったように称えていた名前も『キアラ』ではなく確か『メイヴ』とかだったからな」

 

 ジェロニモさんの返答にダ・ヴィンチちゃんはやっぱりかと得心したように声を上げた。

 

『メイヴ……ケルト神話に登場するコノートの女王である彼女で間違いないね。で、あればやっぱりアレらは元はケルト兵だったのか……』

 

「私としては君達のいう『ビースト』とやらの存在の方が気がかりなのだが……」

 

『おーけー、お互い隠し事は無しだ。色々とぶっ飛んでいるけど情報交換といこうじゃないか』

 

 

 

 

 

 

 カルデアの参謀陣とジェロニモさん達が言葉を交わし、数十分。私達からは主に第四特異点で出会った淫欲魔人の事そして、グダおという英霊について。ジェロニモさん達からはこの特異点について。

 グダおが出した白いタオルケットに足が生えたキモカワイイキャラクターのクッション(所長は「エジプト神話の神様じゃないのよ……」となんか戦慄してた)でリラックスしながら私達も色々と現在のアメリカの戦況に関して新たに情報を知る事が出来た。

 

 最初はまともな人間の姿だったケルト兵。そして恐らくその首魁と思われたメイヴ。

 だが、ここ最近になってからケルト兵はあの魔神柱達を無理矢理融合された形となって各地を襲い始めた。ケルト兵よりも大幅に強化されている化け物共だったが幸い、数はそこまでいなかった為、元々ケルト兵と対立していた合衆国軍とやらが擁する機械兵達の出兵によって戦力の均衡は何とか保っていたらしい。強さ的には魔神ケルト兵一体=機械兵二十機とのこと。

 

 だが問題は別にあった。魔神ケルト兵とは別個で活動している正真正銘の怪物がいるらしい。

 その『狂竜』と呼ばれている怪物をここの中で唯一見た事があるロビン・フッド曰く、あれがいるだけその戦場は簡単にひっくり返ってしまう。合衆国軍側、いくら数で魔神ケルト兵側を上回ろうとも全くもって安心出来ないと。

 

「あの『狂竜』がやっこさん側にとってのサーヴァントみたいなもんだろうな。幸いなのは警戒すべきなのがソイツ一体だけって事ですかねぇ。何だかんだでオレ等側にこうして結構なサーヴァントも揃ってるワケですし?最近ではコサラの王子様が獅子奮迅の大活躍って聞きますし、いやぁ、真っ当な英雄様がいるとこっちの仕事もやりやすいですわ」

 

 人理を守る側であろう合衆国軍にもジェロニモさん以外のサーヴァントが多数、見られるとの事。魔神ケルト兵は一般兵では荷が重いがサーヴァントならば余程の数で囲まれない限りは対処し切れるらしい。

 

「いや、オレは御免ですよ?あんなゲテものと真っ向からやり合うとか、冗談じゃないっての」

 

「そう言って、罠で何十体も狩ってきたじゃないのさ、グリーンってば」

 

「邪道ならいくらでも。けれでもオレはあれを拳でぶちのめすなんて真似は出来ませんよ。いや、亜細亜人ってのはおっかないねぇマジで」

 

「そうだなロビン。だが更におっかない存在が私達の前に立ち塞がる事になってしまった。人類悪、愛欲の獣『ビーストⅢ/R』。メイヴのままでいてくれた方がありがたかったぞ、これは」

 

「ある意味、人理が焼却されてるのって君達の痴情のもつれみたいなもの?」

 

「世界を滅ぼす程の情愛!余は大いに結構だと思うぞ!」

 

「程度があるでしょ……。なんで皆してこんなHENTAIに惚れるのよ……趣味が悪過ぎるわ……」

 

「がお―」

 

「きゃあああ!食べないでぇ!アイドル卒業するまでは清い体でいたいのぉ!」

 

「だからやめなさいって」

 

 ちょっと両手を挙げて迫るだけで狂乱状態になるエリちゃんを面白がるグダおに釘を刺しておく。私も所長やエリちゃんみたくツン要素があれば、もっとグダおに構ってもらえるのかな――って。あぁ、駄目だすぐに思考がラブ方向に行ってしまう。ピンク脳自重。私は仕事とプライベートを分ける女。今は人理修復に集中よ。

 

「君達の言う通り、知性体に勝ち目が無いのが事実だとするのなら、そのビーストに我々サーヴァントが束になって挑んでも餌を増やしてしまうだけだろう」

 

 確かに、グダおの変な宝具でボコられた後とはいえ、人理焼却した魔術王もといゲーティアでさえ、あっさりとあの発禁おばさんに取り込まれてしまった。けど、私を淫獄塔に取り込んだ時も私の命ではなく、グダおのマスターである私が気に食わないから女の尊厳を奪おうとしてきた。あの女は世界とかはどうでもよくて、徹頭徹尾グダおの事だけにこだわっている感じがした。

 

「で、どうなんですかねぇ、マフィアみたいな格好した旦那。オタクでそのビーストとやらに勝ち目はあるんですか?」

 

「正直、勝ち目を作っちゃ駄目というか……。そもそも俺とあの人が本気で戦っちゃいけないというか。それならまだ嫁さん達が相手した方が万倍マシなんだよなぁ」

 

「ハイ?嫁さん?」

 

 緑の人を筆頭に疑問符を抱える彼等に私達はさらっと彼の宝具『性神と妻達の部屋(アダム&イブズ)』について説明する。

 

「自分より強いサーヴァントを召喚する宝具とか……、そんなのアリか」

 

「世界はこの大陸よりも広大だ。星の数だけ様々な英霊がいるだろうさ、ロビン」

 

 エリちゃんはオルレアンの時を思い出しているのか顔を顰め、ネロは情熱の皇帝らしく羨ましがっているのか瞳を輝かせている。そんなにロマンチックなものでもないんだけど。そういえば――。

 

「まだ、誰も召喚してないよね?君にしては珍しく」

 

「いや、もういるよ。何せ2400万平方kmの広さを持ったアメリカ大陸。俺が知っている本筋と逸れているわけだし、情報収集の為にいつまでも一緒に行動は効率が悪い」

 

『成程、じゃあ現在こちらに急接近中なのは君のお嫁さんなんだね。今までの特異点で見てきた彼女達と似た魔力反応だったから特に警戒はしていなかったけど』

 

「マスター!」

 

 快活で可憐な声と共に柵を飛び越え、マスターと呼ぶ男の元へ駆け寄る花嫁の姿があった。ネロの方ではない、橙色の髪をした女性。マシュが思わず「綺麗……」と呟くのもわかる。女としてある意味憧れの象徴のような姿をしていたから。でもね、マシュ。違うんだ。

 

「お疲れ様、()()()。いきなり熱烈な抱擁だね」

 

 グダおの胸に飛び込み、彼に抱かれながら花嫁に相応しい笑顔でグルグルと回るラーマと呼ばれた少女(?)。ようやく大勢のギャラリーの注目を浴びている事に気付いたのか恥じらいを見せて彼から離れていった。ちょっと乙女指数が高過ぎない?

 

「す、すまぬ。この格好で少々はしたなかったな……。汝と将来を誓い合ってしばらく経つというのに余はまだまだ落ち着きが足りぬな」

 

「ほっほーう。そこのお嬢さんが旦那の宝具ってわけかい。随分と可愛らしいじゃないの。……ん?ちょっと待てよ()()()って確か……」

 

「なに、驚く事ではないだろう、ロビン。彼が別世界から呼び出された英霊というのなら、我々とは違う歴史を歩んでいるのは分かり切った事。そこのローマの皇帝のように性別の差異など今更だ」

 

 肝心のローマ皇帝様は「は?花嫁衣装で?一人称が『余』?キャラ被り過ぎじゃない?」って濁った瞳で剣を握ってますが。そして冷静なジェロニモさん、貴方は一つだけ思い違いをしている。

 

 マスターである私は彼と夢を共有して、不本意ながら全員ではないけど彼のお嫁さん達の事を結構見知ってたりするのだ。特にこのラーマ君ちゃんは印象深い。やっぱりいくら見ても実際に自分で確かめないと信じられない事だってある。

 

 そう、私はこの娘(?)に会ったらどうしても、一つだけ確認したい事があったのだ。

 

 ラーマの傍まで近づくとよりわかる彼女(?)の女子力の高さが。線が細く、女である私も見惚れてしまう程に綺麗な肌。愛し人との抱擁で紅潮している頬は何と耽美的か。

 

「む?汝が我が伴侶のマスターか。これからよろ」

 

「ナイスちんちん!」

 

「ふわあぁっ!?」

 

「せんぱぁいっ!?」

 

 手のひらに微かに感じた女性にはない筈の感触。こんな可愛い花嫁が男のわけがない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





「百歩譲って同姓ならまだいい……。けど男にここまで敗北感を覚えるなんて」

「先輩、どうして!? 初対面の人の局部を鷲掴みにするような、ハードルが高過ぎるコミュニケーションを!?」

『いやぁ、逞しくなってねぇ立香ちゃんは。グダお君との人工呼吸で赤面していた頃が懐かしいよ』

『待ってレオナルド。そんな感慨深く頷くシーンじゃないと思うんだ』

「たかだか1度のセックスで蚊トンボを獅子に変える。性交とはそういうものだ」

「鬼のような顔で何を言ってるのかしら、貴方は」











子持ちエレナママの衣装は松竜先生のエレナ初期案で検索。軍服女性はいいぞ。



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週刊性年インボウマガジン③(第5章)

何でクロの制服霊衣ないんですかねぇ? 女子小学生トリオを3人並べるという兵共の夢がぁ。後、ショップのエプロン霊衣も3人分欲しかったんですけどぉ?
話、変わるけど剣豪のコミカライズは凄いぞ、画力もそうだけどFate好きじゃないと書けないなぁという愛が伝わってくる。一話は無料だからスマホでチェックだ!(ダイマ)。










カルデアコレクションにて美遊、エルキドゥを更新。



 未だ芽吹く事のない巨大な蕾あるいは地表に顔を出した球根。()()()は脱獄不可能と言われているアルカトラズ島を始めとして、シアトル、ロサンゼルス、シカゴ、、ニューオリンズの五つの場所にそれぞれ存在していた。

 

「結局、これは何なんだろうなぁ……」

 

「薄気味悪くてしょうがねぇ」

 

 球根の表面には赤い眼球のような球体がいくつも浮かんでいた。黒く巨大な球根が街の中心に我が物顔で鎮座している。大体、家屋三軒分の大きさを持つ球根は特に何かをするわけでもなく、ケルト兵が狂い始めた時期からいつの間にか出現していた。

 

「撃っても、斬っても、ビクともしねぇ。カルナさんの炎でもピンピンしてやがった」

 

「攻撃してくるわけでもなし、かといって無視も出来ない」

 

「ったく、ただでさえ人員が足りねぇって時に」

 

 合衆国軍の兵士達は溜息まじりに黒い球根を交代で見張っていた。街の住民は気味悪がって一切近づこうとはしない。見張りの兵士達も好き好んで近づきたいワケもないが、放置は出来ない。大統王の命の下、少しでも異変があったら報告するように警戒しているのだから。

 

「これも立派な仕事だ。ここ最近はサーヴァントってえらく強い連中が何人も味方してくれて、やっと戦況が好転してきた頃なんだ。下らねぇ事でケチがつかねぇように俺等もきばらねぇといけないだろ」

 

 直接的な実害は出ていない。それでも心底不気味だ。

 まるで合衆国軍の本拠地であるデンバーを囲むように5つの地点にその球根は生えているのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「素晴らしい……」

 

 私が花嫁な男の娘にナイスな挨拶をかましてしまって所長に怒られた後……合衆国軍の後方基地まで移動した私達が出会ったのは世界一有名な看護師ナイチンゲールだった。

 そしてそんな白衣の天使にグダおが贈ったのはかつてオルレアンで私達が野営に使用したカプセルハウスという名の簡易テント式ラブホテル。所長がグダおに初めてを卑しくも私に先んじて奪わせたという忌まわしきラブホテル。

 何でこいつこんなに持ってるの?という私達の疑問をよそにドラえもんよろしく百個に届くカプセルラブホテルをぽんぽん出現させる。

 

「人手も医療用具も何もかも足りない状況でしたが、私が一番ネックとしていたのは衛生面についてでした。貴方に感謝をMr.グダお。これほどまでに清潔な病室をここまで多く与えて頂けるとは」

 

 病室じゃなくてラブホなんですけどね。見たくなかったよ……。教科書にも載っている偉人がラブホテルの乱立に心を弾ませている光景なんて。でもここで私が野暮なツッコミをしてもナイチンゲールさんは聞いてくれなさそう。基本的に人の話を聞かないオーラーがあるもん。さすがバーサーカー。

 

「忌むべきは黴菌と細菌。治りかけの患者だったとしても不衛生な所に長時間伏せていれば、全ての治療が無意味になります。清潔なシーツに適温環境。貴方のような宝具を使う方がこれからもっと増えてくれればいいのですが」

 

 何人もいてたまるか、ラブホテルが宝具の英霊なんて。そんなもんが座に溢れる人類史なんて滅んでしまえ。

 

「回転するベッドは重傷な患者の体を動かさずに治療を行う事が出来ます。冷蔵庫の中に大量の消毒液が入っているのも非常に助かります。Mr.グダお、貴方はこの戦場に何が足りないかを示し、提供して下さいました。きっと私と同じ道に進んでいた英霊なのかもしれませんね」

 

 満足気な所すみません婦長。それ、消毒液じゃなくてローションなんです。そしてコイツが得意なのは保健体育ぐらいです……。そもそも未だに闇世界の頭領みたいな格好しているコイツを見て、どうしてそんな感想を抱いてしまうのか。

 言いたい事は言ったのかすぐさま患者の治療に戻っていったナイチンゲール。本人にその気が無くても、もしあんな美人さんにローションまみれの手で体を洗われてしまったら性癖が今後歪みそうな気もするんですけど……。

 

「先輩、グダおさんが何故かナイチンゲールさんを見て微笑ましくも懐かしい感じの瞳になっているのですが……」

 

「大方、自分の世界のナイチンゲールさんとの初体験でも思い出しているんじゃないの?治療と称してローションまみれのダイナマイトボディを好き放題したんでしょ」

 

「先輩の察しが良過ぎます!?」

 

「残念マスター、ローションではなくボディソープなのだ」

 

「あぁん!?それがどうしたぁっ!!」

 

 ならそのボディとやらで悠久の大地に放り出され、汚れた私の体も洗って欲しい!そして欲望の赴くまま保健体育の授業に勤しんで欲しい!だってこんなにラブホテルもどきがあるなら一個ぐらいいいじゃない!……そう叫びたい気持ちをグッと堪えた。さすがに怪我人を押し退けて性行為を優先するようなあの快楽天みたいな真似はしない。

 

 大丈夫、この特異点を修復してから……修復したらワンチャンどころじゃないメニーチャンスが私に……。

 

「治療は彼女の本分。適材適所、余達は余達に出来る事をしようマスター」

 

 性別詐欺の花嫁ラーマ君が私と若干距離を保ちながら、グダおに提案していると兵士の人達が急にザワつき始めていた。彼等の視線の先を追うと、フラフラ空中から銀色の飛行物体が近づいていた。大きさ的にはマシュの盾と同じぐらい?

 

「先輩、UFOです!UFO!さすがは未確認飛行物体の発見が多いと言われている北アメリカ大陸!こんな近くで見る事が出来るとは!」

 

 あぁ、もう瞳を輝かせている後輩は可愛いなぁもう。

 

 警戒している他のサーヴァント達にグダおが「大丈夫」と呟き、手を挙げるとその小型UFOからプロジェクトのように光が照射され、モニターが映し出された。

 

『レムリア!(挨拶)』

「ハイアラキ!(挨拶)」

 

 グダおと軽快に意味不明な挨拶を交わす露出度が高い軍服姿の女性。まぁ、例の如く彼女も彼のお嫁さんなのだろう。抱っこ紐で彼女の腰に抱かれた二人の赤ん坊が「れむりあぁ」「はいらきぃ」ってグダおに向かって小さく手を振っていると彼の顔がだらしないぐらいに緩んでいた。

 多分、私達も頬を緩めていたかもしれない、だって滅茶苦茶可愛いもん。いいなー、子供、いいなー、欲しいなー。

 

 ……うん?後ろにも何人か映ってるな……?

 

『世界が変わっても私は子供を作る事はないと思ってたのに……。そもそもマハトマ一筋だし私、色恋沙汰に現を抜かさないで自分の夢を追い求めただけだもん。体つきが大人っぽくなってる事とか、子供と旦那の生活を幸せそうに語る自分に対して思う事は何も無いんだから』

 

『おい、凡骨。既に通信が始まっているのにエレナ君が帰ってこないぞ。ここは既婚者の貴様が慰めの言葉でもくれてやった方がいいのでは』

 

『デリケートな場面で私を押し出そうとするんじゃないよ、すっとんきょう。貴様が行けばいいだろう』

 

『私、童貞だから、女性の心の機微ワカリマセン』

 

 肩を落とし、目を濁らせている女性の周りで困り果てている様子な大男が二人。一人はロンドンで滅茶苦茶高笑いしてた人じゃないですか。で、もう一人は顔がライオン?……なんだろう、グダおのせいで訓練されている私達はもうこれぐらいじゃ、驚かなくなってきた。

 

「あの二人、どこか似ていますね。もしかして、姉妹でしょうか?」

 

「いえマシュ、発育の面が見れば母娘の可能性もあるわ」

 

『ぐふっ』

 

 何気ないマシュと所長の推察が彼女を傷つけた。

 

『あぁ!いけない!エレナ女史の目から光が失わている!!助けてカルナ君!!』

 

『気にする事はないエレナ・ブラヴァツキー。別世界のお前は女としての幸せと自身の夢の両方を掴んだ。そしてお前は後者だけを選んだ。愛も恋も家族の営みも捨てて、探求心の赴くままに自身の夢に独り身で邁進するその様は正常な女性では決して真似出来ない生き方だ。驚愕に値する』

 

『ふぇええええぇんっ!!』

 

『だからカルナ君、手心おぉ!!』

 

『あぁ、マスターちょっと落ち着いてからまた連絡するわ』

 

「わかったよエレナ。あんまり無理しないで……また、後で」

 

 本職の赤ん坊よりもガチ泣きする少女、その周りで狼狽する男衆。そんなカオスな背景をバックに弱った顔をしつつもどこか母性を感じるエレナと呼ばれた彼女の言葉を最後にモニターは消えた。

 

 ……結局、あの人達は何しに来たの?

 

「詳しい事情はわからないが……今、投影されたのが君の仲間だというのなら、役者は揃った。我々の目的はもはやすれ違う事は無い……。そういう解釈でいいのかな?異世界からの訪問者よ」

 

「うん、話が早くて助かるよジェロニモさん」

 

 待て待て、勝手に自己完結してマスターを置いてけぼりにしないで欲しい。マシュやエリちゃんも疑問符を浮かべたままだ。私には赤ん坊よりも幼児退行して泣き出した少女の印象しか残ってないんだけど。グダお、グダお、もっとマスターとこみゅにけぇしょんとって。

 

「そうさね……。立香とカルデアは人理そのもの修復が目的だよね?一つの国だけ助かればいいなんて考えはない筈。じゃないと人理継続保障機関なんて名乗ってないしね」

 

「えへへ、立香、立香……えへ、えへへへ……」

 

『あー、好きな人に名前を呼ばれただけでトリップしているチョロ過ぎ立香ちゃんの為に後はこの天才が説明を引き継ごう。所長がグダお君をハニトラにかけて得た彼の世界線における北アメリカ大陸の特異点について既に万能の擬人化でもある私はこの基地に来る前に彼女からしっかりと聞き出しているからね』

 

「ハニトラじゃないもん、純愛だもん」

 

『う――ん、ウチの唯一のマスターと実質トップが揃いも揃って色ボケしてて不安しか無いね!』

 

『はいロマン、余計な茶々を入れない』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ダ・ヴィンチちゃんの話をまとめると合衆国軍のトップであるエジソンは私達が来る前からケルト軍とは戦っていたけれど、人理を修復する気は無く、聖杯の力を使ってこのアメリカだけを人理焼却から守るつもりだったらしい。だけれども、ケルト兵が得体の知れない化け物になったせいか、あるいは他に要因があったのかは不明だが、ああしてグダおの嫁さんが合衆国軍の本拠地から連絡を寄越す事が出来たという事は彼も人理修復に力を貸す気になった証明だと。

 

「オカン属性が上限突破しているエレナの前でアメリカだけ助かればいいなんて世迷言吐いたら、間違いなくハイアラキ(ボコボコ)にされてたし」というのはグダお談。

 

 そっかそっか、あのライオンフェイスがエジソンのなのか――。エジソンはライオン人間、そんなの常識ってまる子ちゃんも教えてくれなかったよ。

 

 というわけで膨大な兵力と何騎かのサーヴァントを保有するエジソン軍とカルデアが手を結べるとわかった以上、今まで防戦一方だったこっちが敵の本拠地に攻め込む事が出来るらしい。

 

「トップサーヴァントですら相手をするのに骨が折れる『狂竜』。だがそれを抑えるだけの頭数を揃える事が出来た。後はワシントンにいるであろうその殺生院キアラの元に唯一勝機があるグダおを連れて行く事が我々のミッションというわけだ」

 

「何故、敵の本拠地がワシントンに?」

 

 疑問に思った所長がジェロニモさんに問いかけた。

 

「国家という存在に最も屈辱を与える為には何をすればいい?首都を奪う事さ。だが、理由はそれだけではない。ロビン」

 

「ハイハイっと、そこからは俺が引き継ぎますよ。あの奇声を上げる不気味な怪物共が出現してからか?単独で『狂竜』に見つからないように北米大陸の東部を偵察していた俺は天まで届きそうな黒い不気味な樹木……いやあれを樹っていうのは自然に失礼か、ともかく黒くてウネウネした太いモノが生えているのを発見したワケですよ」

 

『それは魔神ケルト兵の肉体に融合しているの似たようなものだったかい?』

 

 ダ・ヴィンチちゃんの問いにロビンフッドは首肯した。

 

「方角は間違いなくワシントンでしたよ。何キロも離れている距離からでもはっきりとわかったんだ。ケルト兵が狂うまでは無かったあんな馬鹿デカい物体が無関係とはオレには思えないですからねぇ」

 

「うん、私もそこにあの女がいると思う」

 

 確信をもって、私も彼等の意見に賛同した。

 人前で恥ずかしげも無くオナニーするようなイッちまってる女だ。自分の本拠地に魔神柱を材料に黒くて太くて卑猥なモノを生やして悦に浸るぐらいしても別段おかしくない。

 

「なら、さっさとワシントンに向かいたいわね。今、この瞬間にもその『狂竜』に遭遇しないとも限らないもの」

 

「オレはあのお嬢さん……うん、まぁお嬢さん、お嬢さんでいいや。お嬢さん(?)がいれば問題無いと思いますけどねぇ。一射放つだけで奴さんが塵のように吹き飛んでるじゃない。格好といい、インド神話の英霊ってのはぶっ飛んでますわ。つーかジェロニモのおっさん、これってオレらいるの?」

 

 引き気味にロビンが視線を向ければ、轟音や突風と共にケルト魔神兵の方々が「キアラちゃんサイコー!」と最悪の断末魔をあげて、性別詐欺花嫁の弓の餌食になっていた。

 弓を構え、弦を引き絞り、矢を放つ。真っ当な弓兵としての動作に一切の澱みが無い正統派のアーチャー。そして敵軍に着弾を確認したら、グダおの方を見て、照れ気味に手を振る。…………うん、最後のは別にいらないよね(半ギレ)?

 

「戦ってる姿も絵になってる。非の打ち所が無い可愛さだ」

 

「こら、今の余は戦士だ。可愛いではなく、勇ましいと言え。ふふん、だが見惚れる分には構わないがな!」

 

「おいオタクのマスター、隣でフグみたいになってますけど」

 

「こうやって頬を突いて、空気を抜けさせればいいのさ」

 

 ぷしゅぅるぅ。

 

「あ、先輩の機嫌が上昇しました」

 

「とりあえず、構ってもらえればいいのね……」

 

 結局、私達はもう一度、謎の小型UFOからエレナさんの連絡が来るまではこの世界の兵士さん達の負担を軽くする為にキアラちゃんファンクラブの処理に勤しむ事にしたのだった。まぁ……だが男だ君一人でもオーバーキルなので私達がこうして今後の展望を話し合えるわけなのですが。

 

 ちなみにネロとエリちゃんは「ボイストレーニングしてくる!」と別行動、魔神ケルト兵相手にその美声を披露しているだろう。婦長さんは絶賛治療中。

 

 あちらの合衆国軍の正規サーヴァントとジェロニモさん組の野良サーヴァントに私達カルデア組で編成次第、すぐにワシントンを目指すらしい。

 

 そして恐らく、『狂竜』の対応にあたるのはグダおの奥さん達。ボーイズブライド君の話によると一度交戦はしているらしい。

 

「この世界の余を助ける時だったな。余の弓は確かに貫いた――だが間違いなく生きている。甦ったとでもいうべきか、『狂竜』のスキルか、それとも愛欲の獣が付与したものかどうかまでは不明だがな」

 

「『武の祝福』と『花嫁の祝福』に加えて神父役をしてくれた翁さんの『鐘の祝福』を授かっているラーマの不滅の刃をまともに喰らって生きているとは思えないけどね、ヘラクレスみたいにガッツスキルかな?」

 

 ちょっと何言ってるかよくわからないです。

 

「う――ん、土煙で汚れちゃわない?ウエディングドレス」

 

「これは余がマスターとシータの妻になった事を証明する思い出の品。THE・勝負服だからな気持ちステータス補正がかかってる気がするのだ」

 

「ま、汚れたら後で綺麗にするよ」

 

「ふふ、マスターの白で上書きしてくれるのか?」

 

 あぁ、あぁっ!あああぁぁっ――!私も花嫁型の魔術礼装が欲しいなぁ!エヴァもどきとかホグワーツもどきじゃない女の子を夢を詰め込んだ服が欲しいなぁ!カルデアならそれぐらい作れるんじゃないの!?

 

「先輩のバイタルが荒ぶってます!!」

 

「着替えれるだけいいじゃないの……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「酷い目にあった……」

 

 東部戦線での戦働きを終え、未だ鼓膜に鳴り響いている凶音に顔を顰めつつも後方基地に余は帰ってきた。

 カルデアなる組織の者達の中に花嫁姿の女の子を見たという情報を受けて余は一目散にその彼女がいる戦場へと駆け出した。

 

 

 ――花嫁姿?あぁ、いたいた真っ白のウエディングドレスの娘がなぁ、えらい別嬪さんだったぞ。どこ?やけにリアルな角と尻尾をつけたサーカスにいそうな女の子と一緒にあっちの方へ……。

 

 

「確かに花嫁姿ではあったけれども……」

 

 ――おぉ、そんな汗だくになってまで余達の元までやってくるとは……。

 ――さては、アナタ、私達のファンね!ボエ~~~~!!

 

 そこからはあまり覚えていない。味方の鼓舞がデバフになる状態で戦うという貴重な経験を終えた余は珍妙な雰囲気を醸し出すかつ堅固なテントが最近になって大量に建てられた後方基地の中を歩く。ピンクの光が眩しい。

 

「人違いであったか……」

 

 シータよ……やはり余達は出会えない運命なのか。

 

 薄れゆく意識の中で見た君の晴れ姿。未だ余の瞳に焼き付いて離れない。贅沢は言わない……たった一言でもいい。君と言葉を交わしたい。愛の囁きでも、感謝の言葉でも、生前叶う事のなかった続きを余は――。

 

「ん?あれは……まさか……」

 

 

 だからここで引き返していればよかったのだ。余計な事を考えず戦士としてサーヴァントとしての責務だけを果たしていればよかったのだ。

 

 

 あぁ――。ならばこれは罰だ。

 

 

 王としての責務を優先し、妻を国から追放する選択肢をしてしまった癖に未だ妻との再会を夢想する愚かな男への罰だ。

 

 

 余を助けてくれた時と寸分違わない衣装。そんな彼女は余が知らない男と語り合っていた。

 

 

 肌が触れ合うぐらいに近い距離。どんなに鈍い者でもわかる。その瞳、その口、その所作は全て愛する男に向けている物だった。

 

 

 あんなにも聞きたかった彼女の笑い声を背に余はそこから逃げるように離れた。

 

 

 胸が槍に貫かれたかのように痛い。これも猿バーリの別離の呪いだというのなら、見事過ぎて笑うしかない。

 

 

 

 

 

 




(うわぁ……嫌なタイミングで遭遇しちまったなぁオイ。「顔の無い王」でトンズラしておけばよかったか?)

「ハァ、ハァ……ん……貴様は確かあの者達と共にいたサーヴァントか? …………一つ、一つだけ聞きたい事がある……」

(いやいやそんな苦渋にまみれた顔しなくても何が聞きたいかわかりますっての)

「あの美しさと可憐さと儚さと強さが共存した白き少女についてなのだが……」

(そら、別世界とはいえ女の子(♂)にジョブチェンジして男のお嫁さんになっている自分とか見た日には目を潰すか、ソイツ自身に「祈りの弓」するしかないでしょう……いやぁ、どう誤魔化せばいいのやら)

「あ、あぁ~~っ、あのお嬢さんなっ! ……なんか隣にいる旦那ってどうやらオレ等がいる人類史とは違う歴史から来た英霊らしいですよ?そんで件のお嬢さんはその旦那の奥さんらしい。ま、世界が変われば、歴史も大きく様変わりしますし? 偶々同じ顔と同じ名前をしたそっくりさんって事で納得しましょうや!うんうん!全くもってこれっぽっちも気にする必要は無いとオレは思いますよ?」

 花嫁の性別はボカしたせっかくのロビンのフォローもラーマに最後まで届いてなかった。「件のお嬢さんはその旦那の奥さんらしい」それ以降の緑の人の言葉は彼の耳に入っていなかった。

「…………………………………………そうか、違う世界のシータか。君はそこでは愛しい人と一緒になれたのだな」

 だがそれでも最悪の結末でなくて良かったと本当に今度こそ妻の不貞を疑う醜い自分にならずに済んだとラーマは心底安心した。

 違う世界とはいえ、隣に立っているのが自分ではない事に思う所が無いわけではないが。それでも別世界のシータは仲を引き裂かれる事もなく愛しい男と共に生きる事が出来たのだと。

 それが無性に嬉しくて、どこか悲しかった。

「礼を言おう緑の狩人よ。汝がいなければ、余は最悪の勘違いをしたまま戦う事になっていた」

「お、おう?そうですか?(うん? まぁ、何か勝手あっちで自己完結してくれたな)」

「どうか幸せに。余の知らぬシータよ」

 コサラの王の呟きは決して想い人に届く事はなく空へと溶けていった。
 もうさっきのような胸の痛みは無い。だが――未だ僅かな棘としてラーマの胸には何かが刺さっていた。

 人の愛と感情は複雑怪奇、どんなに清廉潔白な人物だろうと、言い聞かせようとも簡単に飲み込めない物もある。



















おら、シリアスだぞ。








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週刊性年インボウマガジン④(第5章)

《個人的新サーヴァントバレンタインエピランキング》
一位:アタランテ・オルタ(くんかくんか獣っ娘卑しい)
二位:虞美人(ポンコツと先輩風添えの100点満点真祖チョコエピ)
三位:蘭陵王(あざとさの化身かてめぇ……セックスだこの野郎)


《個人的ボイス付きで耳が幸せになったバレンタインエピランキング》
一位:アビゲイル(ボイスのせいで事案感がより濃厚になった)
二位:サモさん(はいセックス)
三位:茶々(急にシリアス風淀ボイスになるのは反則)





カルデアコレクションにて紫式部更新。
誤字報告、評価、感想、いつも本当にありがとうございます。






















「病気です貴方は」

「な、何を言っている。余の肉体は至って健康。そもそもサーヴァントが病にはかからぬだろう」

「五回。私が従軍して、戦闘中に貴方がどこか別の所に気を取られた回数です」

「……っ!?」

「私が言っているのは心の病、精神的疾患の事を言っています」

カルテを片手にこちらへ視線を向ける看護師の瞳は鉄のように冷たい。

「以前と比べて、貴方の敵兵の撃破数は一割ほど下がっています。もしこれが貴方の生命ひいては自軍の生命に脅かすレベルに達したら、私は今すぐにでも貴方の本格治療を開始します」

「余は……」

「その顔は原因に心当たりがあるようですね。その問題が解決するまで貴方が前線に出る事を私は許可しません。殺してでも後方に下がらせます」

立ち上がった彼女はテントの出口へと迷いなく歩を進めた。

「本当なら今すぐにでも治療を開始したい所ですが、他に優先順位が高い重傷患者達がいます。私はそちらに。ラーマ、治る気が無い者に病は治せません。特に心の病は」


「……フッ、フフ。治す? 余にどうしろと言うのだ。もう既に伴侶がいるシータに愛でも囁けというのか?……馬鹿を言うなッ……!」

血が滴る程に拳を握りしめた幼き王はうなだれたままだった。





 人類悪のシンボルたる黒き角を生やし、尼装束を淫蕩に引き裂いたような露出度の高い格好をしている女はその蠱惑的な姿とは裏腹に童女のように瞳を輝かせて()()()のページを捲っていた。

 

 それはかつて病に侵されていた時、絵本に夢中になっていた幼き頃の彼女を彷彿とさせる。

 

「絵本や物語のキャラクター達に恋をする。創作が溢れている今の世では案外珍しい話でもないのかもしれません」

 

 魔神王ゲーティアを取り込み、人理凌辱を引き継いだ『ビーストⅢ/R――ラプチャー』、殺生院キアラは誰に聞かせるわけでもなく愉しそうに言葉を紡ぐ。

 

 場所はワシントン。ホワイトハウスは地中から生えた肉柱に貫かれ、面影すら残していない。心臓のように拍動している醜肉の棲み処にて新たな女王は君臨している。

 

「えぇ、そうです。初めて会った電子の海。あの時は只の興味本位でした。ですが、あの日から私は失恋と恋を知ったのです。この本はそんな私への贈り物なのでしょう」

 

 宝物のように優しく『カルデア国物語』と書かれた本の表紙を撫でる。

 18禁も解禁されたルルハワ島で行われたサバフェス。そこで発行された童話作家作の人類最後のマスターの物語。何の因果か消滅しかけていた彼女の手元にに転がり込んだのだ。

 まぁ、フォーリナーが複数入り乱れた混沌たる即売会。時間も次元の概念もおかしくなっているあそこから『カルデア国物語』がドロップしてしまう奇跡もあるのだろうさ。あるいはいつの間にか出来ていたカルデアの図書館から寄贈されたものがポロッと流れ落ちてしまったのか。

 

 

「あぁ、終局の座で待つと言ったそばからもう顔を出してしまっている堪え性の無い女で申し訳ございませんデアー様ぁぁっ……んっ、んくぅっ!あっ、ふぅ……」

 

 右手に本を左手に女性器を。読書と自慰を愉しむという教養溢れる時間を過ごしている彼女の愛液は既に足元に水溜まりを作っている。本の角でオナらないだけまだマシというか、あるいは想い人の本をそんな使い方はしたくないという一抹の乙女心ぐらいはあるのかもしれない。彼の人類悪としての名前を口にしながら何度も指を秘所に擦りつける。

 

「もう来ているのでしょうね、えぇ来ているのでしょう。どうか貴方様が私に本気になって下さいますように……」

 

 彼女の言葉も瞳もここにいる者には一切向けられていない。この世に人は我と彼一人。故に今までこの特異点で聖杯の保有者だった女王には何の関心も抱いていない。

 

 魔神柱の樹木に人柱として埋め込まれている女王メイヴは虚ろな瞳のまま身じろきすらしていなかった。美しきその肢体は黒い肉塊で覆われている。

 

 彼女はもはや女王ではなく、彼女自身の兵士複製能力によって魔神ケルト兵を産み落とすだけの『怠惰』な装置と化していた。

 

「クー、 ちゃん……」

 

 国も兵士も矜持も男も聖杯も奪われた彼女の呟きが誰かに届く事は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「別に気にする事ないでしょ、私。よそはよそ。うちはうち。元は同じ私でも幸せの形なんて人それぞれなんだから。それとも今までマハトマを追っていた人生は無駄だって貴方は否定するのかしら?」

 

「ううん、そんなことない……」

 

「なら大丈夫。私だってマハトマ(最愛の人)と出会えたんだから、貴方だって叶えられる筈よ。だから、そんな悲しい顔しない、よーしよし」

 

 エレナは何故か若干豊満になった自分に慰められていた。捨てた筈の女としての幸せをよりにもよって自分自身に見せ付けられて感情が荒ぶってしまったのだろうか。トドメは間違いなく施しの英雄だが。

 

 まるで子供のように頭を抱かれていると際限なく甘えたくなってしまう。これが母性と子供を得た自分の力なのだろうかと、エレナは戦慄しながらも体は彼女の胸元に寄り掛かってしまう。悔しいでも甘えちゃう。エレナ(軍服)の言うマハトマとエレナのマハトマには齟齬が発生しているが大人になった自身にバブみを感じているエレナがそれに気付く事はない。

 

「あ、ありがとう、もう大丈夫よ。もう一人の私……。ってここは一体?」

 

 ついぞさっきまではデンバーの会議室にいた筈なのに彼女の目に飛び込んだのは360度、暗闇の空間に様々な魔術を修めた彼女ですら把握しきれない文字の羅列が光り輝きグルグルと回っている景色。というか体も何か浮かんでいる。

 

「う、う~~ん……ネバダ州を旅していた時に似たような事があったような……っていうか、滅茶苦茶マハトマを感じるわ!ね、ね!まさかこれ貴方の宝具!?一体、どこで手に入れたのかしら!?」

 

 泣き喚ていた過去の事は既に忘れてエレナの興味は自身が未確認飛行物体的な何かの中にいる事に向けられていた。遠い昔キャトられた記憶が甦ったのかもしれない。自身が使用する『金星神・火炎天主(サナト・クマラ)』とはまた違ったマハトみに興奮していた。

 

「さなと」「くまらぁ」と口にする赤ん坊×2を抱えながら、まるで子供にせがまれるように困った笑顔を浮かべ、エレナママ(軍服)は 答えを返す。彼女の持つ魔導書は生きているかのように凄まじい勢いでページを捲られていた。

 

「括目しなさい……!愛する旦那様と子供を得た私の新たな宝具。異形なる巨大円盤。『金星神・外なる偽神の書(サナト・ネクロノミコン)』よ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁぁ!!なんじゃありゃあっ!!」

 

「敵襲ぅ!敵襲ぅ!」

 

「エマージェンシー!エマージェンシー!未確認飛行物体がデンバー本拠地の上空に出現!至急プレシデンドに連絡を!」

 

 上空に浮かぶ円盤の影は城どころか、その周囲半径300mにまで伸びる程のサイズを持っていた。内部と同じく正体不明の黒の上に光り輝く文字列が模様となり、慌てふためく兵士と市民達を嘲笑うように浮かんでいた。UFOではあるがどちかというとSFではなく、クトルゥフ臭がする。メカチックでありながら、生命の躍動も感じるそんな不気味さがあった。

 

 現にその不気味さを加速させるようにエレナ(軍服)のUFOの底からはさっきマスター達と連絡を交わした小型UFOが大量に排出されていた。もうこれどっちが敵かわからんね。

 

「ちょっとエレナくぅん!我が軍を無用な混乱に陥れないでくれないかね!?すまないカルナ君、彼等の混乱を収めてくれないかな!?」

 

「心得た。あれは我々も知らない遠い世界からやって来た者が呼び寄せた理解不能な飛行物体と伝えておこう。」

 

「ねぇ、カルナ君。もはや、わざとやってない?」

 

「SF映画ならこの城に巨大ビームでも落とされているだろうな」

 

「不吉な事、言うんじゃないよ!このすっとんきょう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この牢屋に連れてこられて一体どれだけの時が経ったのだろう。

 定期的に巡回に来ていたケルト兵達もいつからか一切その姿を見せなくなった。

 その頃からか、充満する邪悪な気配。むせ返る程の獣臭がこの監獄全体を包んでいるような気がした。

 

 何かが変わってしまったのだろう。だが脆弱な英霊の身である自分の身では祈ることしか出来ない。愛すべき夫の無事。そして決して叶う事はない再会の夢を。

 

「キアラチャンサイコォオ」

 

 悍ましい鳴き声が聞こえる。決してケルト兵ではないナニかが近づいている事がわかった。幽閉されているのは慣れている。この身も奇跡的に清らかな身であった。そしてその奇跡はもう続かない事も。

 

「……っ!」

 

 鉄格子を挟んで、散々目にした彼等の体は変貌していた。無理矢理、この世ならざる生命を結合された歪な形。グルグルと回転していた眼球の焦点は私へと向けられた。感じていた邪気も獣臭も全てこの者達から出ているのであろう。飴細工のように鉄格子は曲げられ、異形の兵士達が私の体に近づいてくる。

 

 ――ラーマ様、助けて、助けて、たすけて、ラーマ様。

 

 ラーマ様以外に躰を許した事のない、許したくない肉体が恐怖で震える。頭で木霊する声にならない叫びのなんと空しい事か。

 

 だって何より私自身が知っている。離別の呪いによって裂かれてしまった私達の仲。

 

 ラーマ様が助けに来るワケがないと。会いたい。会いたい。大好きなあの人に死ぬほど会いたい。でも叶わない。あの人がここに来る事はない。

 

 今、私自身が理解出来るのは一つ。これから私は想像を超える凌辱に苛まれることになると。

 

 せっかくラーマ様は最後まで私の純潔を信じて下さったのに、その想いすら裏切ってしまう。獣欲に犯される事よりもその事がとても悲しかった。

 

 せめてもの抵抗と目を瞑る。私は何も声を上げない。反応しない。苦痛も官能も何もかも否定する。

 

 

 

「私の友達が言っていました。『凌辱プレイは良い文明。だけどリアル凌辱は悪い文明』だと」

 

 

 

 いつまで経っても私の肌に触れる物は何も無かった。代わりに聞こえたのは複数の風切り音と生々しい切断音。恐る恐る瞼を開ければ、残骸と化した怪物達の血溜まりの中で()()()は立っていた。

 

「嘘……」

 

 後ろで一つに束ねられた私と同じ橙色の髪に紅の瞳。皺一つない異国の黒い衣装に身を包んだ者が持つ剣を見るとかつてラーマ様が愛用していた弓の矢を思い出す。獣兵達を斬り伏せていたと物語っている刃は血に染まろうともその麗しき容貌には返り血が一切付着していない。

 

 あり得ない。だって……だって、あの人がここに来る筈がない。

 

 私を助けられるわけがない。私に出会えるわけがない。

 

 一体、何度そんな都合の良い妄想をした事か。それでも今、目の前にいるお人は――。

 

 

「『かわいそうなのは抜けない』……マスターの国の絵本は良い事をおっしゃります。まぁ、私はラーマ様で百万回以上余裕で抜いていますが」

 

 

 あ、人違いだこれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 東部戦線の荒野にて、深紫の戦装束に身を包んだ女戦士が戦場を舞っていた。無限の如く飛来する死槍の雨を捌き、避け、叩き折っていた。無造作に向かってくる槍の中の本命。宝具の力を纏った魔槍は自らも『貫き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルク・オルタナティブ)』を展開して相殺する。影の国の女王。人理焼却という稀有な事例によってサーヴァントとして現界した彼女の表情は芳しくなかった。

 

「目に付く全ての命を奪わんと気が済まんか!『傲慢』極まりないな……!」

 

 変わり果てた弟子は殺意の籠った凶撃のみを返答として師の命を脅かそうとしている。『狂竜』と呼ばれる怪物と化してしまったそれは生命体の物理法則を無視した連撃を続ける。

 ラーマ(花嫁)の矢によって貫かれた時よりもより強靱にその肉体は肥大化していた。

 

 凶爪を振るえば、叩きつけた地面から無数の死槍が標的に向かって生え続け。

 

 鎧の一部と化けしている巨大な触手からは投擲物として死槍を飛ばし続ける。

 

 咆哮は『精霊の狂騒:A 』など比べものにならないレベルでスカサハのステータスと精神に揺さぶりをかける。

 

「馬鹿弟子め……!貴様、その霊基に一体、()()を注ぎ込まれた――!」

 

 このままでは塵殺される未来が見えたスカサハはもう一つの宝具を展開する。

『狂竜』の後ろに展開されたのは敵を世界の外側へ強制送還する死の門。影の国へと飲み込む対軍宝具。

 

「『死溢るる魔境への門(ゲート・オブ・スカイ)』!!」

 

「GuRAAAAAAAAAAAA!!!」

 

 だがこの『狂竜』は魔神王を吸収した淫魔によって改造を施された眷属。常識外れの莫大な魔力は所詮はサーヴァントの身であるスカサハの身では捉えきれるものではなかった。

 

「やはり……かっ!」

 

 判定は失敗。死の門を振り切って脇目も振らずに狂竜はスカサハへと肉薄する。

 

 

 彼女一人では勝ち目は無い。ではどうする?

 

 

 人類悪が産み出したモノに対抗するのなら、やはり同じく人類悪が生み出した者でなければならない。

 

「そうら、凍れ」

 

「GAA…!?」

 

 スカサハの腸を貫く筈だった『狂竜』の動きが空中で止まった。まるで時を止められたかのように。そしてそのまま、周りの槍ごと氷結させられた。あれだけ傍若無人な暴れ方をしていた怪物が氷の城に閉じ込められ、完全沈黙していた。

 

「ほら、巻き添えを喰らってしまう。すぐに離れるぞ、別世界の異母殿」

 

 足が地から離れ、浮遊感を感じたスカサハは自らの脇を抱えて、氷の城から離れるべく飛行する少女を見た。右手に持つファンシーなステッキで先程の魔術を行使したのだろうか。年は十そこらと思われる白いドレスを来たツインテールの少女は自身よりも深い髪色をしていたがどこか他人とは思えなかった。

 

 そして彼女を助けに来た少女は一人ではない。

 

「とぉ――うっ!」

 

 戦場には不似合な気の抜ける掛け声と共に、『狂竜』を捕らえている氷の城を円状に囲むように紅槍が突き刺さる。

 地面に刺さった槍はそこから互いを結び合うように赤いルーンの紋様が伸び、ドーム状の結界を造り出した。

 

 氷とルーン結界の二重層。だがそれだけで終わりではない。

 

 天高く宙に舞っていた者の姿はスカサハの隣にいる白いドレスの少女と似たような顔と髪色だった。しかし差別化するように髪型はポニーテール。服装は年頃の女子高生が着るようなミニスカにブレザー。きわどい黒パンツが眩しい。

 

 太陽と重なる深影の戦士は膨大な魔力を内包した槍を構える。

 

「呪われし棘が結ぶは不壊の紅き檻。

 影より這い出る我が魔力は世界を修復する(しるべ)とならん。

 いざ仰ぎ見よ。最愛の父より賜し白き槍、哀れな獣にどうか安らぎを送りたまえ。

 万物等しく塵と化すこの一撃は死すらも救いとなる。

 刺し穿ち……突き穿ちて!『我が膜を貫き穿て白父の槍(ゲイ・ボルク・ヴァージン・ブレイカー)』!!」

 

 スカサハを抱えて飛んでいる少女のげんなりとした「いいからはよ撃て」という呟きの後、酷すぎる宝具名と共に天から堕ちる白き剛槍は結界の天辺に着弾し、結界を破った。その瞬間、ドームが覆っていた内部で凄まじい爆発が起きた。威力だけなら対国宝具にも匹敵する。目も開けてられない光、その後に音と衝撃が大陸に穴を作った。

 

 環境破壊は楽しいZOYと言わんばかりに巨大クレーターに降り立った少女は「クラスの皆には内緒だよ♪」と誰に向けているのかわからないキメポーズを取っていた。

 

 氷の城も当然、その内部にいた『狂竜』も塵一つ見当たらない。ありとあらゆる生命が沈黙していた。

 

「なんと……」

 

 スカサハは感覚で理解した。今の凄まじ過ぎる宝具の要領を。囲っている槍から漏れ出ている魔力はドームの中で破裂寸前の風船のようになっていた。そこに少女の槍が纏う白き魔力が起爆剤となったのだろう。

 

「ゲイ・ボルグで生成したルーン結界に敵を閉じ込め、その内部で魔力暴走を意図的に起こしたのか……。それにしても爆発の大きさが規格外だ……。儂が言うのもあれだが、えげつないな?いや……そもそも、凍結の魔術といい、宝具の威力といい、そしてその顔……。貴様等は一体、何者だ?」

 

 地に降ろされたスカサハの前にはやはり、あなたの子供だと言われてもうっかり信じてしまいそうなぐらいに、自身の面影を残す二人の少女。並べばまるで姉妹のようにも思える。

 スカサハの問いに何故かノリノリのポニーテールの制服少女。その隣で「本当にやるのか……?」と戸惑っているツインテールの白いフリルが付いたドレス少女。ドレス少女の方が制服少女よりは一回り小さい。彼女の方が妹なのだろうか。

 

「我が名はスカナナ!世界を救った勇者を父に持ち、母スカサハから妻の座を略奪せんとする愛の女子高生戦士!」

 

「わ、我が名はスコーネ!同じく人理を修復した父を持ち、北欧神話の女神であるスカサハ=スカディを母に持つ、十四歳のま、魔法少女!」

 

 ・・・・・・・・・

 

 ・・・・・・・・・

 

 ・・・・・・・・・

 

 ・・・・・・・・・

 

「わ、私は知らぬ間に二人も子供を産んでいたのか……!?」

 

 スカサハ、キャパオーバー。認知して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




金星神・外なる偽神の書(サナト・ネクロノミコン)

ランク:EX
種別:対軍宝具
使用者:エレナ・ブラヴァツキー(軍服ママ)
金星から飛来したと思われる飛行物体にこの世界には存在しない架空の魔導書の力が宿った。
半径300m程の漆黒の巨大UFO。中心の下部からはグダおとの通信にも使った小型UFOを千近くの単位で出動させる事が出来る。一機、一機それぞれ黒魔術、エジプト魔術、古代エジプト魔術と多様の魔術を使用可能。戦闘力はシャドウサーヴァント程度なら戦える力を持つ。本体の巨大UFOにも当然戦闘力はあるが、一人では小型UFOの操作と並行する事が出来ない。

「私がこの宝具を得た理由? そうね、昔、私がマスターとアラビア、インド、ネバダと青姦マハトマダイレクトマーケティングツアーをしていた時かしら?ドバイ噴水の所で盛り上がった私達、マスターのハイアラキがいつもよりも激しく私のレムリアを突いてたの。噴水と呼応するように私のアソコも大噴水。『もうダメぇ!!』とエクスタシーを感じた時にチカチカと光る視界の中でナニかが見えたの。マスターと心も体も繋がった事で私は更なる深淵を」
「誰が濡れ場を話しなさいって言ったのよ、バカぁっ!!」

という事らしい、マスター(マハトマ)とよくってよ!(セックス)した事で何かイケない物と繋がってしまったのでしょうか。この頃からエレナのクラスにフォーリナー適正が生まれた。そして実はマスターにもフォーリナー適正はある。あっ(察し)。









・『スカナナ』

父:グダお
母:スカサハ
備考:18歳、女子高生です。


ステータス
筋力:C
耐久:B
敏捷:A
魔力:A
幸運:B
宝具:EX

数多くいるマスターの子供達の中で上から三番目の女子高生。一番はアリスの子供のありす。二番目はマシュの子供(男)。
ブレザーとミニスカが眩しいピチピチのリアルポニーテール女子高生。父上大好き。お邪魔虫の母上の命を狙いに行くが毎回の如くボコられている。正直、父上の出会う前の不死身になって死にたがりの上に年寄り扱いは許さないスパルタゴリラ脳もどうかと思うし、父上と出会ってからのサブカルクソ女っぷりも年齢を考えて欲しいとメイヴお姉様から聞かされた時は彼女は切に思った。でも君の厨二病っぷりもどっこいどっこいですよ。


我が膜を貫き穿て白父の槍(ゲイ・ボルク・ヴァージン・ブレイカー)

ランク:EX
種別:対軍宝具
使用者:スカナナ
前口上は百八種類のバリエーションがあるらしい。
紅い槍で形成された結界は処女膜のメタファー。白い槍は父上の男根のメタファー。そして、投擲した槍は結界を破り凄まじい破壊力をもたらす。ここまで言えば、わかりますよね、父上?
いつの日か――と夢見る彼女の願いが宝具化したもの。基本的な原理は空間に敵を縫い止めて、放つ『貫き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルク・オルタナティブ)』と変わらないが父親譲りの馬鹿げた魔力がサーヴァントでは出せない爆裂を呼び起こしている。そもそも白い槍が結界を破った瞬間にこの宝具は発動するので、捕らえられた時点で敵は為す術は無い。「私もこれぐらい凄まじい処女喪失を父上とやってみたいものです」とは本人談。お前はセックスを何だと思っているのだ。

まぁ、こんなものを宝具にするぐらいからわかるように父に平気で夜這い、性的襲撃をかけるが悉く母スカサハに邪魔をされている。別にスカサハも我が子の事が嫌いというわけではない、むしろ馬鹿親の如く愛している。親子丼もバッチこい。ただせめて自分に一太刀浴びせるぐらいには成長してから夫と肌を重ねて欲しいとヤンキー時代のスパルタ脳が彼女の邪魔をしているわけである。

そんな親の心子知らずなスカナナにとってはスカサハは仇敵であり、いつか越えなければならない試練でもある。今回もスコーネがいなければ、この世界のスカサハ諸共宝具をぶっぱしていたらしい。ちなみにありすは普通にお母さん(アリス)と3P出来たって。その話を聞いた彼女は三日寝込んだ。

子を産んだスカサハは依然の面影がほとんど無い程に落ち着いた。子持ちのおっとり系人妻にしか見えない。娘と戦り合う時ぐらいしかかつての片鱗を出さず、完全に母としてこの生涯を全うする事を決意したようだ。なのでレディース時代もサブカルクソ女時代も今の彼女にとっては黒歴史状態。
故に母であるスカサハはレディース時代の自分と出会う可能性があるこの特異点には来ないのである。




・『スコーネ』

父:グダお
母:スカサハ・スカディ
備考:14歳、女子中学生です。

ステータス
筋力:D
耐久:D
敏捷:C
魔力:EX
幸運:C
宝具:EX

複数作られたマジカルサファイアの後継機の一つ『サファイアγ』を片手に戦うツインテールのふんわり系魔法少女。けど、本人は魔法少女なんてつもりは一切無く、ステッキも母殿に護身用で持たされただけで、名乗ったのも義姉殿に無理矢理付き合わされているだけ。()()()に常識人です。スカディ様?アメリカ大陸の日差しはあつーいので無理。
ちなみに彼女も普通に母殿と父殿で3P出来たとスカナナに報告したら、スカナナは一週間寝込んだ。

スカナナもスコーネも時たまカルデア島に遊びに来るメイヴには随分と可愛がられている。前者は対スカサハ抹殺同盟として、後者は一番の親友と愛らしい友達の娘として。「父上と結婚しないんですか?」という質問に対しては彼女は本当に、本当に何とも言えない表情で笑うだけだったという。


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週刊性年インボウマガジン⑤(第5章)

「ていうか、私今凄い事、思い付きました! この特異点にはあの鬼ババは来ない! という事は父上と出会って即二秒でヴァージンブレイクしても邪魔は入らない! イエス! 我が世の春が来た! というわけでイッてくりゅうううううっ!」

「あっ、待てコラ色ボケ異母姉。この呆けている別世界の異母殿はどこに連れていけばよいのだ?」

「知らなぁぁいでぇぇす――――!!」









「覇ァァッ!!良い功夫(クンフー)だな小僧!それ程の武、一体どこで磨いた!?」

 

「優秀な師匠方がたくさんいたんでねっ!邪ァァッ!!」

 

 ――キアラちゃんサイコォオッッ!?

 

 中華風の服に黒いコートを羽織ったナイスミドルのチャイナマフィアとウチの所のアメリカマフィア(グダお)が元気一杯に魔神ケルト兵を殴殺している後ろをついて行っている私達は正体不明の黒い蕾が生えていると情報があった北アメリカ大陸南部にあるニューオーリンズへと向かっていた。

 

 後顧の憂いは立ちたい。特に何かしらの被害があるわけではないが、カルデアの解析によって正体が掴めるのなら、ワシントンに電撃作戦を決行する前に何らかの手を打ちたい、何も無いのならばそれはそれでいいというのがジェロニモさん談。

 

『それって実は蕾じゃなくて卵だったパターンじゃない?ほら、新しい敵が産まれてくる的な?』とかドクターはヘラヘラしながら不吉な事を言っていたが。やめてほしい。

 

 合流したネロやエリちゃんを始めとするアウトローの野良サーヴァント組に合衆国軍の遊撃隊隊長、李書文のおじさんが加わっている。グダおの戦闘を見て何かしらの琴線に触れたのか、ああして二人仲良く敵陣に突っ込んでいるワケだが。

 

「余程、物騒な師達だったろう。一体、いくつの人を壊す術理を貴様に叩き込んだのだろうな」

 

「いやいや、出稽古で指導相手をうっかり殺しちゃった先生には負けますよ」

 

「ハハハ、こやつめ」

 

 

「うわぁ、野蛮……。ワタシに任せれば、もっとファンシーでキューティクルに敵を片付けてあげるのに」

 

「いやいやお嬢のデスボイス聞くぐらいなら、あっちの亜細亜コンビのマーシャルアーツが奏でる曲を聞いてた方がマシですって」

 

「ホワイ!?私の歌は撲殺音以下なの!?」

 

 うん、まぁ……エリちゃんの気持ちはわからないでもない。何せ血まみれで笑顔で物騒な雑談をしながら、戦場を駆けているのだから。もちろん俺等は抵抗(殺害)するで拳でみたいな気分なのだろうか。

 

 バイオレンスに楽しんでいる所、悪いのだが私としては聞きたい事があるので一度彼には戻ってきてもらう事にした。正直、気色悪いキアラ親衛隊もそこまで数がいるわけでもないので、他のサーヴァントと追従してきている機械兵達でも十分対処は出来る筈。

 

「どうしたマスター?」

 

「どうしたじゃないでしょ、ほら返り血もちゃんと拭いてから来なさい、もう……子供じゃないんだから」

 

『(迷いなく自分のハンカチで彼の顔を拭ったね彼女……)』

 

『(もうこれぐらいじゃ、動じなくなったんでしょ?恋は盲目ってやつ?図太くなったねー立香ちゃんも)』

 

(やだ……私の先輩、包容力高過ぎ……)

 

(私の服にはハンカチを入れるポケットなんてないわよ……!)

 

「それで聞きたい事があったの。君の宝具。『性神と妻達の部屋(アダム&イブズ)』について。ラーマ君とエレナさんは見た。多分だけど、他にも召喚しているんでしょう?」

 

 ゲーティアが言っていた言葉が確かのなら、英霊という格にはめられている彼の能力は生前あるいは人類悪の頃より劣化している。私の力不足なのは心の底から悔しいが『性神と妻達の部屋(アダム&イブズ)』によって召喚出来る嫁さんの人数も制限があるのだろう。

 

 完全に生えている花嫁、UFOから映し出された軍服ママ。キャラが濃いのはいつもの事だが、この時点で既に二人。

 

「そうだね、あの一件からマスターとのパスも深くなって最初の頃よりは多く呼び出せるようになった。現段階では最大五人までなら召喚出来る。一人多くなっただけとも言えるけど、これは大きな進歩だと俺は思うよ」

 

 しょ、しょれは……あれでしゅか?淫獄塔でそのぉ……君とチョメチョメした事が功を成したって事なのかなぁ?えへ、うえへへへへへへへ……。

 

『パスが深まる……それは』

 

「つまり、先輩とグダおさんが大人の関係になったという事ですね!赤飯ですか?」

 

『なるほど。この間、立香ちゃんがグダお君と一線超えたと錯乱していたのはあながち妄言ではなかったのかな?』

 

「でも検査で膜は残っている100%処女だって言っていたじゃない、ダ・ヴィンチ。ならやっぱり藤丸の妄想じゃながああぁぁぁっ!……痛い痛い!離して!離してってば!謝るから!」

 

「先輩!能面のような顔で見事なアームロックです!」

 

「フォウ、フォウ(それ以上、いけない)」

 

 

「『性神と妻達の部屋(アダム&イブズ)』で呼び出す事が出来るのは俺と家族になってくれた人。その気になれば子供も連れてくる事だって出来る」

 

 その話を聞いて、私の脳裏に浮かんだのはエレナと呼ばれてお母さんが抱えていた赤ん坊。まだ生まれて間もないといった感じだが、あれも宝具にカウントされているのだろうか。

 

 私の考えを否定するようにグダおは首を横に振っていた。

 

「さっきは最大5人って言ったけどね、それは奥さん達だけを召喚した前提の話。『性神と妻達の部屋(アダム&イブズ)』は人数制限というよりはエネルギー制限みたいなのがかかっているんだ。必要以上にカルデアとマスターに負荷をかけないようにね」

 

『ほうほう、ではつまり恐らく大人である君のお嫁さんよりはエネルギー量が少ないであろう子供達だけで縛れば、もっと多くの人数を召喚出来るということかな』

 

「さすがダ・ヴィンチちゃん。理解が早い。ま、お父さんの職場に顔を出すのを許すお母さんもそんなに多くないし、よっぽど好戦的でじゃじゃ馬でせがまれでもしない限りは呼び出す事はないかな?エレナのあの姿もデフォだし、マイベビー達が傍にいるとマハトマめっちゃ感じるらしいよ?」

 

 その後、彼の話を聞けば、エネルギー量の平均を奥さん=1とすると、あの赤ん坊達は0.1ぐらい。他にこの特異点にいるのは0.9の娘が二人に別の奥さんが一人で現段階では限界らしい。

 

 第四特異点ではモーさん――奥さんが一人、アリスとありすにジャックの子供達が3人……。その頃から考えると成長している……。ん?いや違うアリスとジャックも奥さんだ。水色の娘が子供……だったよね?いやもう、見た目ロリだから奥さんと子供の概念がぐちゃぐちゃになるんだけど!

 

 

 

「っと話もここまでだな。目的の地まで着きましたぜ、お嬢さん方」

 

 街の中に入り、ロビンの言葉にそちらへ視線を向けると機械兵達によって厳重に警戒されていた異物があった。人が住む街どころか、この地球上のどこに存在しても不自然さしか感じないという意味での異物。

 

 私達も含めて、初めて見るサーヴァント達は皆、圧倒されていた。

 

「何あれ……」

 

「ダ・ヴィンチ、ロマニ」

 

『う――ん、解析は終わったけど特に魔力反応は何も感知されないなぁ。敵性反応なんてもってのほかだし、ガワは確実に魔神柱と同じモノだけど中が空っぽみたいな?』

 

『いっそ、最初の時みたくグダお君のお酒と所長の魔術コンボで焼却してみてもいいんじゃなかな?』

 

『藪をつつくのはあんまり賛成出来ないんだけど、レオナルド』

 

『だからって放置し続けるのも私は賛成しかねるよ』

 

 カルデアの参謀陣の話を片耳に私は嫌な予感しかしなかった。あるいは殺生院キアラという女に対する一種の信頼か。淫獄塔で見た悪意と淫欲の塊の女が何の被害も出していない?魔力反応も敵性反応も何も無い?そんなワケが無い。

 

 あの女の目的は徹頭徹尾、グダおに注がれている。

 

 周りにいる私達の事など有象無象の(バグ)にしか見えていないだろう。

 

 だからこそ、あの女は自分の大事な物に虫がたかっている現状を許さない。淫獄塔の時のように()()を持って必ず排除しようとする。

 

 迷いなく叫んでいた。

 

「今すぐ、それから離れて!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「反撃の時は来た。愛すべき合衆国軍の勇敢なる戦士達よ、よくぞ今日まで耐えてきた」

 

 バルコニーから顔を出し、筋骨隆々な肉体を惜しげもなく晒しているエジソンは比喩表現ではなく獅子の如く吠えた。機械兵、一般兵、保護した市民達が固唾を呑んで軍のトップに立っている男の姿を見上げていた。

 

「敵は知性の欠片も無い野蛮の徒、あえて言おう!交流にも劣るカスであると!」

 

「おい」

 

 エレナ、カルナ、テスラを傍らに演説を続けるエジソンの熱は群衆にも伝波する。カルデア、そして野良サーヴァント達、数で勝っていても今まで攻勢に出る事が出来なかった彼等は一騎当千の戦士達を得た。故郷を蹂躙される屈辱を果たす時が来たと、地平線まで届きそうな人並み外れた声量で扇動する。

 

「諸君らの奮戦は決して無駄では無かった。幸運の女神は我らを見捨てていなかった。その証拠に遠い世界から友軍が救援に来てくれている。宙に浮かぶ、直流ばりに輝く飛行物体が君達にも見えるだろう!既にあの蛮族共をこの大陸、いや世界から殲滅させる手筈は整った」

 

 一時はこちらを混乱に陥れた巨大巨大UFOもトップであるエジソンが味方だと太鼓判を押す事で彼等に受け入れられつつあった。普通に考えれば、味方にロボットとも言える機械兵がいて、軍のトップがライオン頭なのだ。順応性はあるのだろう。

 

「数でも我らは勝っていた……そして今、質でも勝る!奪う事しか能のない獣共に合衆国の……人類の叡智を見せ付けてやる時が来たのだ!故郷を奪われた無念を晴らせ!愛すべき者を奪われた怒りを宿せ!そして自身の矜持を取り戻せ!今、君達がいる所がUnited States of Americaだ!」

 

 興奮は最高潮。エジソンが拳を振り上げるのに応えるように千近くにも及ぶ兵と民衆達も力強く腕を振り上げる。

 

「合衆国軍!プレシデンド!大統王!」

 

「トーマス・アルバ・エジソン発明王!」

 

「U・S・A!」

 

「U・S・A!U・S・A!」

 

 ――U・S・A!U・S・A!

 

 

 首都デンバーは大熱狂に包まれていた。これから大戦に挑む彼等にとってこの士気の高さは悪い事ではない。『狂竜』もグダおの妻達で倒せる事は証明されている。後はワシントンのホワイトハウスになだれ込み、首魁を討ち倒すだけ。これは決して楽観的な展望ではない。

 

 だが、その熱狂に飲み込まれていない者が何人かいた。

 

「浮かない顔ね、カルナ。何か不安ごと?」

 

「前々から疑問があった。どうして、敵にはサーヴァントに対抗出来るのが『狂竜』一騎しかいない?」

 

 巨大UFOから帰ってきていたエレナはカルナの顔を覗き込んでいた。インドにおける不死身の英雄。トップサーヴァント、カルナ。彼は悲観的にも楽観的にもならない、太陽の如き燃えるその瞳は正しく事実を射抜く。

 

「仮に、あの『狂竜』と同じスペックの敵がもう三騎でもいれば、この均衡は簡単に崩れる」

 

「それは……あれだけ強大なら聖杯を使っても一騎しか召喚出来なかった……って事は考えられないかしら?」

 

「ミス・エレナ。私もこのソル・インド君と同じ考えだ。自分達の方ばかりに都合の良い事が起きると考えるのはライオン頭の悪い癖である。我らの方にサーヴァントが多く揃ったのなら、敵側にも同じ事が起きても不思議では無い。ま、私のような天才が他の英霊にいるとは思えないが」

 

 時代と在り方は違えど、カルナとニコラ・テスラ、事の本質を見抜く事に長けた二人が口にした言葉は決して妄言では無い。

 

「それって……」

 

「嫌な予感がする。と私の中の交流が囁いている」

 

「エジソンに伝えておけ。早急に軍を動かすべきだ、と。何もかもが手遅れになる前に」

 

 突如――エレナの高まる焦燥感にトドメを刺すように通信機から悲鳴にも似た伝令が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 憐憫の獣を取り込んだ真性悪魔は魔神柱を弄ぶ。

 

 生命の鳴動を感じる。サーヴァントと魔神柱、そのどちらも弄んだ悍ましきナニかが産まれる息吹が。

 

「ソロモンの72柱、七つの大罪といい、悪魔というのは実にややこしてくて面倒です」

 

 この女に先人や過去の遺物に対する尊敬の念は一切無い。使える物は使い、使えない物は無理矢理捨てる。あるいは無理矢理使えるように改造する。

 ゲーティアが保有していた『召喚術EX』と自身が保有している『人理昇天式A』を組み合わせて殺生院キアラは飼っている魔神柱達のアイデンティティを都合の良いように書き換える。

 

「デアー様、リスペクトです。彼が女英霊達に白濁を注ぎ込んだというのなら、私はサーヴァントという器に黒醜を注ぎこみましょう」

 

 魔力反応も敵性反応もあるわけがない。各地に散在している五つの黒卵の中には未だ中身が空っぽの人形しかいないのだから。

 二騎は既に召喚されている。一つは目の前の生命の存在を許さない『狂竜』として、もう一つは狂ったケルト兵を産む『母胎』として。

 

「『アスモダイ:色欲』。『バアル:暴食』。『アモン:強欲』。はぁ、教養無き尼の身ではキリスト教の原罪に語られる悪魔もソロモンが操る悪魔も複雑ですね。もう全て一緒くたでいいでしょう。『ベレト:憤怒』『ベリアル:嫉妬』後は……サタンと名前似てますし『サガン:傲慢』でいいですか、欲情を操って男女の機微を好きにするなんてズルは怠惰以外の何物でもないでしょう……ですので、『シトリー:怠惰』。えぇ、はい、準備OKです。これで七騎。準備は整いました」

 

 クー・フーリン・オルタには『サガン:傲慢』を埋め込み、草木残さず目に映った命全てを奪う『狂竜』として。

 メイヴには『シトリー:怠惰』を埋め込み、魔神ケルト兵を産み出し続ける『母胎』として。

 ベオウルフには『バアル:暴食』を。

 アルジュナには『アモン:強欲』を。

 ディルムッドには『ベレト:憤怒』を。

 フィン・マックールには『ベリアル:嫉妬』を。

 フェルグス・マック・ロイには『アスモダイ:色欲』を。

 

 聖杯と自身のスキルを使い、召喚したサーヴァントと魔神柱達の霊基と肉体を自在に組み替える。邪魔が入らないように、彼に侍る眷属()達に対抗出来る使い魔達を召喚する。

 

 アルカトラズ島、シアトル、ロサンゼルス、シカゴ、ニューオーリンズの五つの場所に生えていた正体不明の黒き球体は球根でも蕾でもなく、卵。時が来たらキアラから魔神柱を注がれ、英霊のガワを装ったナニかが目覚める胎。

 

「物を壊すのに低い所から落とす人はいないでしょう。うーんと高い所から落とします。手を抜いて、喜ばせて、おだてて、勝てるかもって希望を見させて高い所から一押し、そして私は地に花を咲かせるのを見守るだけ、実に楽なお仕事です」

 

「んんぅっ、くぅっ……あっ、あぁぁっ……!!」

 

『母胎』として虚ろだったメイヴの口から苦悶の声が漏れ出ていた。それは兵士を産み出す彼女にそれだけの負荷が掛かっているという事。それが指し示すのは――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『こちらシアトル警備隊!監視対象の黒い蕾が突如として破裂、敵対行動を取る何者かが一名、我らにガアアアァッ――』

 

『ロサンゼルスが爆音と共に光に包まれてし、しょ、消滅!』

 

『くそぉっ!何でだよ!何で化け物共がこんなにいるんだよぉ!!あぁっ、やめろくるなぁ!!』

 

『シカゴから出現したケルト魔神兵の軍勢がこちらに向かっている模様!数はお、およそ千!』

 

『至急援軍を!これ以上、抑えるのは不可n、ギャアアアアアァッ!』

 

『指示を大統王!我々は、我々は、どうすれば!!』

 

 ザザァ、ザァァッ――と怒号と悲鳴の後には無機質な機械音しか聞こえなかった。

 カルナとテスラの当たって欲しくない勘は見事的中してしまった。

 

「な、んだ。一体、なにが――起きている――!」

 

 エジソンの疑問に答えれる者は今、この場に誰もいない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「女ァァァァァァァァアアアアアアッッ!」

 

 ニューオーリンズで立香が叫んでから事はすぐに起きた。ダ・ヴィンチが突如として高まり始めた常軌を逸している魔力量を報告する暇も無く、その悪魔は現れた。

 

 上半身の筋骨隆々な肉体と人の顔にはかつて彼がフェルグス・マックロイという英霊だった名残があった。

 だが頭から生えた山羊のように歪んでいる黒い角。そして股にマンモスの顔が付いている下半身は人の足ではなく像のように太く強靭な獣の脚へと変わり果てていた。

 

 

 「女!女!女!おぉ僥倖!僥倖!目覚めて間もなく欲情誘う女がこんなにも!」

 

 

 その表情は本来のフェルグスのように快活かつ豪胆に笑う益荒男のものではなく、はち切れんばかりの欲望を女体で発散したい獣の本能。相手の感情も状態も一切考慮しない壊れるまで犯し尽す悪魔の顔。『アスモダイ:色欲』を注ぎ込まれ、改造された『豪姦魔』は獰猛に目の前にいる彼女達の品定めをしていた。立香、マシュ、ラーマ(花嫁)、ネロ、エリザベート、そして。

 

「あぁ、選ぶ必要はない、飽きたら別の女へ、壊れたら別の女へ。だが、どれから手を出そうか非常に迷う。フフフフフ、非常に迷うがッ!!お前は特にいい!その格好といい、嗜虐心を煽る表情といい、実に良い声で啼いてくれそうだぁ!!」

 

「ひっ……!」

 

『豪姦魔』のお眼鏡に叶ってしまった、表舞台に君臨した悪魔の欲情に滾った視線に貫かれてしまった所長はあまりの恐怖に体を硬直させていた。

 

 いや所長だけではない、この数秒の一瞬の間は突然の事態に()()誰もが驚き固まっていた。

 

 だが何事にも例外はいる。悪魔の出現から迷わず行動をし出した者が3人いた。

 

「これが噂になっていた『狂竜』とやらか?何とも悍ましい生き物よ、だが隙だらけだな。覇ァァァッ!!」

 

 老いてなお盛ん、敵がどれだけ強靭だろうとも迷わず懐に飛び込んだ李書分は殺す勢いの拳撃を3発叩き込んだ。左裏拳で鼻柱、左肘で顎をかち上げて、右正拳で心の臓を完全に捉えた――筈だった。

 

「あぁ、だが」

 

「む、仕損じたか!?」

 

「男はいらん。お前らは邪魔だ。殺す」

 

 並のサーヴァントなら今の李書文の三撃で霊基はボロボロになっていた。だが目の前にいるのは快楽天が手ずから造り出した悪魔と英霊の複合物。中華最強の拳法家の拳は僅かなダメージを与えて、体を揺らしただけだった。最善の行動を取った李書文の唯一の落ち度は一発目から宝具を使わなかった事。

 

 

 「俺の女を奪うというのかぁ!俺の女、女、女を、女達をぉぉぉぉぉおおお!!」

 

『豪姦魔』の手に握られているのは『虹霓剣(カラドボルグ)』。腹いせに丘を三つも切り裂いた破壊力を持つランクA++の螺旋剣。悪魔は迷いなく剣を地に突き刺そうとしていた。近くにいる李書分は当然としてこの街そのものを簡単に吹き飛ばす威力を持つ宝具を躊躇なく振るおうとしていた。

 

「お前のじゃないだろ」

 

「ぬぅっ!?」

 

 李書文だけではない、突攻をかましたのはグダお、そして殺生院キアラの悪意にいち早く気付いた藤丸立香は迷う事なく令呪一画を消費し、彼にブーストをかけた。『人繋ぎの大秘宝庫(マテリアルボックス)』で両手にはロンドンで使用した「全戦局対応型直流交流万能籠手」。さらに足甲verも装着し、四肢完全装備。

 

 剣だけではなく両腕すらもぎ取らんとする勢いで『虹霓剣(カラドボルグ)』を蹴り上げた。

 

「最高のサポートだ、マスター」

 

 令呪のブースト、さらにこれ以上ないシリアスな空気によって『イカれた幻想(ブロークン・シリアス)EX』発動。彼のステータスは二段階跳ね上がっていた。足甲の直流と交流が唸りを上げて、蹴りの速度を加速させる。

 返す刀でこれみよがしに誇張しているマンモスの頭に踵落としを叩き込んだ。

 

「ホウワァァッ!!」

 

「オルガマリーを!怖がらせていいのは!俺だけだ!」

 

「なんて歪んだ愛情表現!」

 

 成程、『色欲』というだけあって、やはり弱点は局部をメタファーさせている獣の頭らしい。丸見え過ぎる。白目を剥きかけている『豪姦魔』はまだ倒れないが動きは完全に鈍っている。

 

「科学と武術の融合を見せてやる。ライトニングフォーオウル・フルカウル50%!!」

 

 手は緩めない。ここで完全に仕留めると彼の体に雷電が宿る。ダ・ヴィンチ、エジソン、テスラと三人の天才が造り出した「全戦局対応型直流交流万能籠手(足甲)」が彼のスピードとパワーをPlus Ultra(更なる前進)させる。

 

「勝手に合わさせてもらうぞ、小僧!」

 

「応!模倣宝具『十面埋伏・無影の如く』!」

 

「オ、オッ、男がぁ、俺の視界に入るなぁぁあああっ!」

 

 燕青拳の始祖、「水滸伝」に語られる伝説の義侠の高速歩法を再現する。

 激怒し、拳を振り回す悪魔の攻撃をかいくぐり、分身すら見える連撃を叩き込む。

 令呪、スキル、科学、武術、ありとあらゆる物を使用し、加速と強化を重ねた彼の宝具は模倣といえど、快楽天の眷属を打破出来るレベルまで達していた。

 

「ガァッ、ガァッ、ギィィィッ!!」

 

 速度と力は今のグダおに劣っていても、純粋な技においては遅れを取らず。武のみに生涯を捧げた老師の拳がグダおの高速連撃の合間を縫って追加打撃を重ねていた。

 

 まだ原型を留めている耐久力は称賛に値するが、フラついている悪魔にトドメの一撃を叩きこまんと両雄は『豪姦魔』の正面に並び立った。

 

猛虎硬爬山(もうここうはざん)!」

「ライトニングスマッシュ!!」

 

「オ、ン、ナァアァアアアアアアッ……」

 

 八極拳の奥義と雷電を帯びた鋼鉄の拳が振りぬかれた。

 上半身に巨大な空洞を作った『豪姦魔』は最後まで欲望を口にしたまま、朽ち果てていった。

 

 

『やったのか?』

 

『あ、ばか』

 

 ロマンのフラグ建立発言の後にも特に事は起こらなかった。だが、誰一人としてその表情は明るくない。周りにいる兵士達もザワついていた。慌ただしく各地に連絡を取ろうとしている様子。

 

「これはマズい……黒い卵から『狂竜』に匹敵する怪物が現れた。あの卵は確か、後4か所に存在していると聞いているぞ……!そこから全て孵化したとなれば……!」

 

「おいおい、サーヴァントも何もいない只の一般兵じゃ、虐殺にしかならねーじゃねぇか!」

 

 ジェロニモとロビンの最悪の予想は的中している。ここには偶々、対抗出来る戦力が整っていたが、シアトル、ロサンゼルス、シカゴでは目も当てられない虐殺劇が展開されている。

 

「あの色魔も完全に消滅した雰囲気は無いな、『狂竜』の時と同じだ。大本を叩かなければ、幾ばくかの間を置いて、またどこぞで孵化するぞ」

 

 いくつ眷属が死のうとも群体にして個体である魔神柱の総体という素材を取り込んだ殺生院キアラはワシントンからいくらでも眷属を再生出来る肉体を供給する事が出来る。彼女にとって、グダおがこの特異点に来た時点で既に目的は半分以上果たしていた。これから行うのは彼女にとって消化試合以外の何物でもない。

 

 全力で好きな人をモノにする。現実を歪め得る恋心は愛欲の獣を本気にさせた。

 

「ねぇ、ちょっと……あれってもしかしなくても私の見間違い……じゃ、ないわよね?」

 

「どうしたエリザベート、リスのように震えて貴様らしくない」

 

『何かの冗談かいこれは!今までだって多くてもせいぜい数十体だったろう!?』

 

『魔神ケルト兵確認、君達がいるニューオーリンズに向かっているよ!数は……5000!?』

 

 地平線の向こうから魑魅魍魎、快楽天を賛美する黒醜の軍勢が押し寄せてきた。

 

 

「とんでもないラブコールだな。情熱的なのか、まどろっこしいと言うべきか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「戦には疎い淑女ですけれども、真似事ぐらいは出来るのですよ」

 

 

 ――あぁ、いくら喰っても喰い足りねぇなぁ。もっと歯ごたえがあって食いでがある奴が欲しいなぁ。

 

 アルカトラズ島では『バアル:暴食』を注ぎ込まれた巨人が同族である魔神ケルト兵を手足り次第で貪っていた。

 

 

 ――ふは、ふははははは。なんと心地良い邪悪!悲鳴も怒号も死も何もかもが私のものだ!世界を滅ぼす。これ程までに欲深い事が存在するか!

 

 ロサンゼルスで『アモン:強欲』を注ぎ込まれ、全身を黒に染めた弓兵が高笑いを上げていた。

 

 

 ――妬ましい、世界を救う等という輝かしい使命を背負った者達が妬ましい。麗しい女達を侍らせているあの獣が妬ましい。殺したい程に。

 

『ベリアル:嫉妬』を注ぎ込まれ、ねじれた鹿の角を生やした槍兵がシカゴで黒き水を巧みに使い機械兵達を飲み込んでいた。その髪は英霊「フィン・マックール」の輝かしい金髪ではなく薄汚れた茶色と化していた。

 

 

 ――聖杯!聖杯!聖杯戦争!またか!またなのか!貴様達はまたこうして戦士の祈りを踏みにじるのか!この人理に生きる全ての者達に災いと呪いあれ!!

 

『ベレト:憤怒』を注ぎ込まれ、錯乱し、血の涙を流す悪鬼は魔猪の皮を被り、伸縮自在となった二槍で殺戮の限りを尽くしていた。

 

 

 ――キアラちゃんサイコー!

 ――キアラちゃんサイコー!

 ――キアラちゃんサイコー!

 

 莫大に膨れ上がった魔神ケルト兵を伴って、彼等はデンバーへと向かっていく。

 

 

「軍法これすべて山津波の如く、時を作り、場を作り、ありたけ積んで押し流せ。さぁ、悠長にしていますと簡単にこの世界が終わってしまいますよ、愛しの君」

 

 人理を修復する命がある彼等は逃げないだろう、逃げられないだろう。『カルデア国物語』を読んでいる彼女は正確にグダおの力量を把握している。もう彼がこれ以上、この特異点で眷属()を召喚出来ない事。この状況を打破する為には彼はもう人類悪になるしかないと。

 

 それこそが彼女の望み、それこそが彼女の願い。

 

 他の有象無象を掃討し、彼と二人だけで人理というベッドの上で思うがままに褥を重ねたい女の欲望。

 

「英霊などというつまらない殻を破りましょう。どうか、本来の貴方様の姿に。私と貴方であるがままの姿になって戦い(交り)合いましょう」

 

 本を恋する乙女の如く大事に抱える殺生院キアラは淫蕩に微笑む。

 

「これが貴方に捧げる私からのラブコールです」

 

 

 








キアラちゃん頑張ってグダお君攻略ルートを模索中。













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週刊性年インボウマガジン⑥(第5章)

週刊といっておきながら、全然週更新出来てねぇじゃねぇか。やる気あんのかお前。











カルデアコレクションにて、キングプロテア更新。
キングプロテア、バニヤン、巨神アルテラさん、ティアマトの5Pパーリナイも乙な物だと思うのです(地球、こわれちゃ~う)。








「さてさて、こうして一人っきりになるのは何だかんだで久しぶりな気がする。召喚されてからはいつも隣にマスターがいたからかな」

 

 コートをはためかせて、戦場には不似合な朗らかな笑みを浮かべるグダおはシカゴ方面からやってくる軍勢を見据えていた。彼の周りには信頼すべきマスターも、敬愛すべき所長も、可愛らしいマシュも、愛すべき妻達もいない。たった一人で千の軍勢と相対していた。

 

『嫉妬:ベリアル』によって中身を構成されているかつてのフィン・マックールの鎧はフィオナ騎士団の長を象徴する白銀の鎧ではなく薄汚れた黒き鎧に人ならざる鹿の角を生やしていた。

 

 瞳には輝かしい者、若々しい者、幸福な者に対する嫉妬。ここには英霊フィン・マックールは存在しない。殺生院キアラの眷属、七つの原罪が一つ。『嫉妬の老鹿』しかいない。

 

「この軍勢を前にたった一人で立つかね、あぁ……その勇猛さが妬ましい」

 

「まぁ、これが最適解なんでね。何せ今回はギリギリもギリギリの瀬戸際だ。他の皆にはそれぞれ別の所に行ってもらってるし。せっかく娘も来てるんだ、パパ頑張っちゃうぞぉー!」

 

 

【第一の戦】

 

 親愛の英霊:グダお VS 嫉妬の老鹿

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ▲▲▲

 

 

 

 

 

 

 千単位の魔人ケルト兵をグダおとラーマ(花嫁)の『羅刹を穿つ不滅(ブラフマーストラ)』によって蹴散らし、何とかニューオーリンズから離れる事が出来た立香一行はエレナ(軍服ママ)のUFOと通信を取り、これからの方針を決めようとしていた。

 

 

「ち、ち、う、えぇ~~♡」

 

 なんか空からJKが降ってきた。誇張なしに立香がそう思ったら、制服を来た若々しい女がワンコばりにグダおに抱き着いて頬ずりしていた。それはもう恥ずかしいぐらいに頬ずりしていた。頬肉削れるぐらいに頬ずりしていた。

 制服か、そんなに女子高生がいいのか。まぁ、私もJKだし?監獄塔で致した時も興奮していたもんね、そうだもんね!と立香は嫉妬と優越感が混ざり合った複雑な表情をしていた。

 

 スコーネに一緒に連れてこられたスカサハは凛々しい顔を紅く染めながら死にそうな顔で「やめよやめよ、私の顔でそんなはしたない真似をするな、まじでやめて」と引き剥がそうとしているが、くっつき虫が如くスカナナは離れない。

 

「お久しぶりです父上!うえっへい!何ですかそのワイルドな服装は!?娘の心を乱す悪い父上!はっふぅ!父上の頬!父上の髪!父上の首!父上の胸板!父上の二の腕!父上の匂い!この日をどれだけ待ちわびた事か!もう邪魔は入りません!致しましょう!今、致しましょう!周りの眼がある?大丈夫です私は気にしません!むしろ見せ付けてやりましょう!バッチこい!さぁ、ハリー!ハリー!ハ、あっぶねぇぇえぇっ!?」

 

 その時、不思議な事が起こった。彼女の頭上から突如として朱槍が落ちてきたのだ。ピンポイントに自身を狙っている槍を避けるべく、スカナナはだいしゅきホールドでしがみついていたグダおから離れた。地面に深々と刺さった槍からその威力は推して知るべし。

 

「ガッデム!!マジありえねぇです!あのババァ!?時空どころか世界線の概念さえ飛び越えて槍ぶん投げてきましたよ!どこの誰ですか!?『昔よりは丸くなった』とか言った奴は!おのれ我が宿願をこうまでして邪魔するかっ!ここまで来て私の処女卒業を邪魔してくれるとはぁっ……!グ、ぎ、ぎ、ぎ、ぎ、ぎ!!」

 

 空に向かって遠い世界の母親に吠えるスカナナ、まさに負け犬の遠吠え。ここまでか、まだあの鬼ババと私の力の差はここまで離れているのか。私は後、何回他の腹違いの姉妹達に先を越されてしまえばいいのか、悲嘆と怒りの嘆きを叫んだ。

 

 そんなどうしようもない姿を見て、立香は何故か他人事とは思えなかった。

 

「いつか地獄の釜に落ちながら、このスカナナの怒りを思い出せ!…………おや、あなたは確か、父上のマスターと噂の――」

 

 言葉は交わさずとも二人は通じ合った。

 片や夢の世界で心の処女は卒業したものの、そこからは間の悪さに邪魔をされ、未だ肉体は処女の藤丸立香。

 片や実の父親に膜を刺し穿って欲しいものの、実の母親に邪魔をされ続ける未通女スカナナ。

 

 ――ピッピッグッガシッ

 

 二人が無意識のうちにとっていたのは「握手」の姿であった――。

 

「遠い世界、まさかこんな所に同士がいるとは思いませんでした。あなたもそうなのでしょう、牡丹が落ちる日を夢見る少女」

 

「うん、私達は社会の不条理を嘆くティーンエイジャー。わかるってばよその気持ち」

 

 出会って間もない二人だったがそこには確かな友情があった。周りの何してんだコイツらという痛い視線があろうが、無言の女の詩があった――。奇妙な友情があった――。

 

 

 ギャクパート終了。

 

 

 

 合衆国軍の本拠地であるデンバーに戻ってる暇は無い。エレナ(軍服ママ)の小型UFOで通信を取った彼等は迅速に今後の方針を決めなければならない。モニターに映し出されているエジソン達の顔は当然の事だが沈んでいる。

 

『私の宝具から出した小型UFO達で魔神ケルト兵はまぁ、まだ何とか押さえる事は出来ているわ。ここ(デンバー)になだれ込むなんて最悪の事態は避ける事は出来ている。あれらがラフムみたいに飛ばなくて心底良かったと思ってるわ』

 

 彼女の宝具『金星神・外なる偽神の書(サナト・ネクロノミコン)』から排出された千にも及ぶ小型UFOの群れは北米大陸中の各地に散らばった。怪物達に追われている無辜の民達を救うべく。

 現段階で魔神ケルト兵には数でも勝られてしまったが、怪物達は地に足をつけて原始的な暴力しか行う事が出来なかった。空中から魔術攻撃を行う事が出来る小型UFO達によっては格好の的でもある。制空権を確保出来た事が未だ均衡を守れてる一つの要因でもある。たが――。

 

『正直、()()はどうにもならないわ。小型UFOじゃ、何百束になっても相手にならない。直接私達が出張るしかないわよマスター』

 

 新しく投影されたモニターは五つ。無慈悲な漆黒の光線を放つ弓兵。黒く染まった水によって機械兵を朽ちさせていく鹿の角を生やした槍兵。猪の皮を被り、両槍を振り回し、暴風が如き殺戮を繰り返す悪鬼。そしてスカナナやグダおと李書文が倒した筈の『狂竜』や『豪姦魔』もそこに映し出されていた。彼等が見た姿よりも強靭に禍々しくなって。

 

「なんで……!?」

 

「グダおさん達が倒した筈じゃ!?」

 

「あぁ――、やっぱり復活していやがりましたか。いえ、私の爆裂槍は一撃必殺。仕損じる事は父上に誓ってもあり得ませんが、甦るってのなら話は別です。これって大本の殺生院キアラを何とかしない限り延々とループすると思いますよ?むしろ殺された事でより耐性を得て復活してますから最悪ですねマジで」

 

 つまりはこの無限に供給される魔神の軍勢を何とかする為には東部のワシントンにいるであろう殺生院キアラを倒すしかない。だがそこに辿り着く為にはやはり湧き出てくる魔神ケルト兵と眷属達を退けなければならず。しかも怪物等は殺生院キアラがこの特異点に存在する限り無限コンティニュー。

 

「……あんま言いたかないですけど、詰んでませんこれ?」

 

 ロビンの言葉に沈痛な表情を浮かべるエジソンは絞り出すようにしてグダお達に問いかけていた。

 

『あれほど息巻いておきながら、自国の危機も異邦者たる君達に頼らなければならない自身の恥は自覚している。話は聞いた……魔術王すら取り込んだ愛欲の獣、それに対して勝ちの目があるのは君ぐらいだと。この絶望的な状況でもまだ我々には勝機はあるのかね?』

 

『狂竜』一騎ですら、手を焼いていた合衆国軍。それと同格と思われるのがさらに五騎。加えて万にも届く異形と化したケルト兵の軍勢。別世界のエレナの未確認飛行空軍がいなければ、デンバーは陥落し、この特異点も完全に焼却されていた。それでも今の状況はただ現状を維持しているだけ。

 

 エジソンは乞うしか無かった。愛する国を蹂躙される怒りとそれでも天才だとメンロパークの魔術師だと持て囃された自分の頭だけではどうしようもない無力感に支配されていた。

 

 だが目の前にいる男は絶望に苛まれている者達に勇気を与えるように笑っていた。

 

 この程度の危機は見飽きたと言わんばかりに。

 

「あぁ、ゼロ()じゃないさ」

 

 

 

 

 

 

 ▲▲▲

 

 

 

 

 

 

 

 

「不思議な男だ。論理性など皆無だというのに彼を見ていると何故か勝てる気しか湧いてこなくなる。あれが『カリスマ』スキルというやつかね」

 

「というか貴様は何故ここにいる凡骨。デンバーで猫のように震えていればよかろうに」

 

「喧嘩売っとんのか貴様は!もはや私が本拠地にいる意味も無くなった。文字通りの最終決戦!持て余せる労働力など0.1労時も存在しないのだからな!」

 

 獅子と雷電紳士が並び立っているのはシカゴからやや離れた荒野。彼等に加えてここにいるサーヴァントが一人、デミサーヴァントが一人、処女爆裂(願望)サーヴァントが一人、そしてマスター藤丸立香。

 

「何と悍ましい。あれ程の菌がここまで増殖していたとは、ミス立香。ワシントンに病原菌の発生源がいるのですね?」

 

「うん。その為には今私達の目の前にいる菌を殺菌しないといけないの。力を借りてもいいかな?ナイチンゲールさん」

 

「聞くまでもありません。私はありとあらゆる病原菌を滅する為だけに存在します。治療、雑菌、粛清します」

 

 指の間接をボキボキと鳴らし、バーサーカーに相応しい前傾姿勢で眼前の魔神ケルト兵を睨み付けるたった一人の軍隊『小陸軍省』たる鉄の看護師はいつでも戦闘行為に移行可能であった。

 

 そんなおめぇのどこが看護師だぁ?とツッコまぜるえないナイチンゲールの姿を見て、スカナナはどこか懐かしい気持ちにもなっていた。父上の子供達、特に幼少世代の『白の獣の幼子達(ビーストチルドレン)』達のトラウマを刻み込んだ『白い悪魔』。

 

 ――虫歯になれば、ガラドボルグを持った婦長がやってくる。

 ――夜更かしすれば、ベッドを持った婦長がやってくる。

 ――予防接種を嫌がれば、BB製巨大注射を持った婦長がやってくる。

 

「昔からこんなんだったんですね……ブレないキャラ。私の母上も見習って欲しいものです」

 

「え――と、スカナナさんですよね?どうして、私達と一緒に?そのグダおさん……お父さんの所にいなくてもいいのでしょうか?」

 

「戦力の有効活用ですよ。素敵で無敵な我が父上はあんな黒い子宮から産まれた化け物達には負けません。もちろん父上とは三百六十五日、一緒にいたい所ですが私も娘としてやるべき事はやっておこうと決意したのですよ。むしろ、私の方が聞きたい事があります。同士藤丸立香、マスターであるあなたそこ父上の傍にいるべきでは?」

 

「そうだよ。私は彼のマスター」

 

 ずっと、ずぅっと助けてもらってばかりだった。召喚してからずっと。処女を散らされそうになった時も救われた。心の処女ももらってくれた。グダおには体を何度渡しても返せないぐらいの恩が貯まっている。恩だけではない、年頃の女の子としての好意もある。いつだって傍にいたい。それが紛うことなき立香の本音。

 

「だから、私はここにいるの。グダおに助けてもらってばかりのマスターじゃない。胸を張って彼のマスターだって言う為にマシュと一緒にここで戦うの」

 

「エクセレント、それでこそ私のベストフレンド」

 

 立香の答えに満足気に頷いたスカナナは()()()()を彼女に手渡した。

 

「これは……?」

 

「念のためというやつです。使わないのであればそれで結構。ちなみに使い方はゴニョゴニョ……」

 

 魔神ケルト兵を率いる猪の皮を被った悪鬼はもう接敵範囲に入っている。フィオナ騎士団が一人ディルムッドの肉体に宿る『ベレト:憤怒』は快楽天の尖兵として、ナイチンゲールがブチ切れるレベルで死臭を撒き散らしていた。

 女性を魅了する輝かしい貌は既に失われ、浮かんでいるのは身を焦がす程の怒り。聖杯に召喚された英霊。マスター、魔術師という存在が死滅するまで止まる事の無い殺戮機構と化していた。

 

「殺してヤルッッ!サーヴァントも、魔術師も、聖杯戦争を生み出した世界そのものも!全てだ!!」

 

「周りの雑魚敵は私が引き受けましょう。どうしてもしんどくなったら猪男もまとめて片付けてもいいですが」

 

「大丈夫!こんな中ボス程度でヘコたれているようじゃ、あの変態尼をぶん殴れないもん!いくよ、マシュ、皆!」

 

「はい、先輩!」

 

 

【第二の戦】

 

 人類最後のマスター&精神的非処女:藤丸立香

 デミサーヴァント:マシュ・キリエライト

 クリミアの天使:フローレンス・ナイチンゲール

 メンロパークの魔術師:トーマス・アルバ・エジソン

 雷電博士:ニコラ・テスラ

 

           VS

 

  憤怒の魔猪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「走れ!走れ!距離を開けただけで安心するな!あの光線はどこにいても俺達を追い続けるぞ!」

 

「えぇ、よくわかっているようで何より。では私が貴方達の命を奪うのが草を毟るよりも簡単だという事も理解していますよね?」

 

「ち、くしょぉっ……!!」

 

 ロサンゼルスから命からがら逃げ出した兵士達が宙に浮かぶ漆黒の弓兵に狩られていた。いや、狩りですらなくそれはただの座興だった。天空から見下ろし、『アモン:強欲』を注ぎ込まれた悪魔は辺り一帯を吹き飛ばす力を有する弓を持っていながら、一人を一人を嘲笑い追い立て、胸を射抜いて丁寧に殺していた。

 

「貴方達の命も無念も、この私が全て授かってあげましょう。あぁ、殺戮の瞬間、他人の生全てを完全に手中に収めた快感に勝るものはない……ハハハ、フハハハハハハッ!!!」

 

 もはや泣きながら捨て台詞を吐く事しか出来ない兵士の背に光速の如き矢が迫ろうとした瞬間――炎が舞った。

 

「なに――」

 

「い、生きてる……?」

 

「銀色の円盤がお前達をデンバーまで回収してくれるだろう、今すぐここから離れるがいい」

 

 神から賜りし矢を叩き落とす事が出来る者はこの特異点において限られている。

 全てを射抜く眼光、痩身に纏う黄金の鎧。槍の一閃で黒き悪魔の矢を防いだカルナはエレナ(軍服ママ)の小型UFOに救助されている人間達を庇うように炎の壁を背に敵を見据えていた。

 

「ふく、クフフフフフ、ハハハハハハハ!!そうか、そうかぁっ!そうだろうよぉ!この私がいるとわかった以上、貴様が出張るよなぁ!カルナ!!あの時の続きだ!今度は貴様の槍も鎧も太陽神から与えられた全てを奪ってやろう!クハハハハハハハァッ!」

 

「高揚している所悪いが」

 

「ハハハ……?」

 

「誰だお前は?生前も含めて、お前のような者と会った記憶は俺にはない」

 

「………………殺す」

 

 

【第三の戦】

 

 施しの英雄:カルナ VS 強欲の黒

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  『狂竜』が一度、スカナナの爆裂宝具で消し飛ばされた場所からそう遠くない荒野。全長、10m近くまで成長を遂げた黒鎧の竜が四足歩行で大地を駆けていた。追従するように魔神ケルト兵を引き連れて、『サガン:傲慢』をその霊基に注ぎ込まれたクー・フーリン・オルタは海獣グリードの骨格と魔神柱の肉体を混ぜ合わせたアーマーを身に纏っていた。

 

 立ち塞がるように相対しているのは顔がそっくりな女性と少女。親子と見間違えてもおかしくない二人組。人理焼却という稀有な事例でサーヴァントとして召喚されたスカサハ。こことは異なる世界で異聞帯の氷の母と親愛の獣から生まれたサラブレッドことスコーネ。

 

「成程、異母姉殿の言う通り、以前よりも強靭になっているな。死ねば死ぬ程強くなるというやつか、異母殿の部屋に隠してあった漫画でそんなものがあったような……」

 

「随分と悠長に構えておるな。弟子……とはもはや言えんがあれはもうサーヴァントでは手に負えんレベルまで成長しているぞ」

 

「だからといって放置も出来ぬだろう。何、強靭とはいえ、あれぐらい、さして問題は無い。私の家には()()()()()()()()()()いる」

 

 強がりでもなく事実としてスコーネは述べていた。スカサハですら身構える『狂竜』の覇気を前にして、何一つ気負う事なく自然体であった。『狂竜』をあれぐらいで片付ける事が出来るスコーネが住む家とやらは一体どんな魔境なのか聞きたい気持ちにもなったが、自分と同じ顔でぶっ飛んでいるスカナナの事を思い出して、思い留まった。

 

 別世界の母となった自分の事も、父に色目を使う娘の事も一切関係無い、全ては他人の空似であると思いこむ事で精神安定を図っていた。

 

 今、ここにいるのは弟子の不始末を片付ける為。勝ちの目が無いというだけで逃げ出すか弱い性格をしていたのなら、最初から影の国の女王などにはなっていない。

 

「ただ、何度も強くてコンティニューされるのは非常にめんどーい。なので父殿の言う通り、()()()()()()()()()()()()()()()()()まで我々は防衛戦になるのだが、本当に別世界の異母殿も戦うのか?あれだけボコられたのに?」

 

「ぐっ……耳が痛い事を。やぶれかぶれで特攻するつもりはない。初見ならまだしも一度槍を交えた相手ならまだ戦いようはある。力は強大だが、知恵は捨てていそうだからな。それと、その顔で私を母と呼ぶのはむず痒いので止めてくれ」

 

 地鳴りとなって迫ってくるクリチャーの大群にスコーネは14歳とは思えないぐらいに落ち着いていた。クルクルと回している魔術礼装『サファイアγ』の先端は槍のように鋭くなっていた。

 

「生憎、他と違ってここは消化試合もいい所なのでな。恐らく、そなたの出番はないぞスカサハ殿。父殿に付き纏う悪質なストーカ退治といこうか」

 

【第四の戦】

 

 氷の魔法少女:スコーネ

 影の国の女王:スカサハ

 

    VS

 

   傲慢の狂竜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「美味そうな女の匂いがするぅぅぅぅゾォォォオオオ!!」

 

「ふっ、予定通り、他には目もくれず私の方に誘導されているわね。私の魅了(タゲ集中)にかかれば、理性も無い獣なんてこんなもんよ」

 

「大丈夫ですかいお嬢さん?膝が残像見えるくらいにガクついてますけど」

 

 ニューオーリンズで討ち取られた筈の『豪姦魔』はテキサス州へ魔神ケルト兵を連れて進軍。厳密に言えば、色欲の悪魔がオルガマリー所長求めて勝手に突出している状態であった。

 

 筋肉はより肥大化し、角と股に模られたマンモスの鼻は悪魔の興奮度合いを象徴するようにさらに反り勃っていた。血走った瞳から黒い血管が浮き出て、『アスモダイ:色欲』を注入されたかつての英霊は本能の赴くままに女を求めていた。今自分の瞳に映る最も性的な女を。

 

「手筈通り行くわよ。ロビンフッド、この森には貴方が仕掛けた罠が大量にあるのね?」

 

「あぁ、ジェロニモのおっさんのも少しあるが大半はオレのだ。本当は対『狂竜』の為だったんすけどねぇ」

 

 あらかじめ渡されていた地図には罠の場所が正確に記載されていた。「自軍の罠にかかる間抜けを晒すのはドラクルのお嬢さんだけで十分でしょ」とはロビンフッドの談。今、この場にいるのはオルガマリー・アニムスフィアにロビンフッド、ジェロニモ、ビリー、ネロ、エリザベートの五騎。

 

「改めてもう一度聞くが正気か?オルガマリー・アニムスフィア。自身を囮にあの悪魔が出来るだけ多く我らの罠にかかるように誘導して消耗させるとは……いくらスペックだけは英霊に匹敵しているとはいえ危険過ぎるぞ」

 

 レイシフトの時の弊害とはいえ、今のオルガマリー所長の姿は露出が多く、扇情的なハロウィン・プリンセス。しかも相当なレベルで魅了の魔術も行使出来るようになっている。意識せずとも、雄がちらりと目を追ってしまうぐらいには。

 聖杯と神獣達の素材で肉体を再構成し、グダおとのセックスによって『この世全ての精(ファビアナ・スペルマ)』を注がれたオルガマリー・アニムスフィアの美貌は色欲の悪魔の我を忘れさせるには十分なものだった。

 

 

 ▲▲▲

 

 

「人員にも限りがあるのはわかってるわよね?これが最善の策よ」

 

 所長の作戦に異を唱える者はいなかった。冬木で死亡フラグと泣き言だけを撒き散らしていた者とは同一人物とは思えないぐらいに理にかなっていた作戦だったからだ。だが理性と感情は別、マシュも立香もわかってはいながら心配そうな顔で所長を見ていた。

 

「……あの手の怪物はこの世に存在してはいけない類よ。私は人理継続保障機関カルデアの所長として、アニムスフィア家の当主として、魔術師の義務として、あれを討つわ」

 

 その時のグダおの顔を所長は思い出す。喜怒哀楽全てが混ざった何とも言えない複雑な表情。客観的に見れば、決して良い表情ではなかったかもしれない。だがそれでも彼女は嬉しかった。

 

 誰にも愛される事も認められる事もなかった自分が一人の男にここまで愛が籠った強い感情を向けられている事実に胸が一杯だった。

 

「そんな顔しないでグダお。貴方にもらった命だものも勝手に捨てるなんて事はしないわ。ただ……その、もし帰ってきたら、よくやったって頭を撫でてくれないかしら?それだけでいいの、それだけで私頑張れるから……」

 

「大丈夫ですか所長!順当に死亡フラグ積み上げてますけど!右上に『来週は夕方5時00分からお送りします』ってテロップが出そうなんですけど!」

 

「あぁもうちょっとは空気を読みなさいよ馬鹿立香!!」

 

 

 ▲▲▲

 

 

「じゃ、所定のポイントで落ち合いましょう……あう!?」

 

 決意を固めていた所でネロに抱き締められてしまう所長。

 

「想い人の元に帰る為に戦う……。余は魔術師の義務とかよりもそっちの方がとても好ましい!不安がる事はないオルガマリーよ!貴殿にはローマの加護がついている!」

 

「正直、ヘンテコな格好をしているお姉さんって印象しか無かったけど、覚悟を決めた瞳をしている。僕的にはそういう人をマスターとするのは大歓迎だ」

 

「マスター……?」

 

 ビリーの言葉にオルガマリーは疑問符しか浮かばない。だってマスターという単語が一番似合うのはあの赤髪の少女、藤丸立香しかこの世界においていない。レイシフト適正もマスター適正も一切無い自分には縁の無い言葉だ。

 

「パスが繋がってればいいってもんでもないでしょう。オレは貴族然としているお嬢様は苦手なんだが、アンタには何故か親近感が湧くよ、苦労人的な意味で」

 

「ここにいる者は皆、君の作戦に賛同し、剣を授けんとしてここにいる。それはもうマスターとサーヴァントの関係ではないのかね?」

 

「私は理想が高いからそう簡単には認めないけどね!ただまぁ、いつか来る本番の為の予行演習も悪くないわ!」

 

 ロビンの軽口が、ジェロニモの言葉が、エリザベートの照れ隠しがオルガマリーの心に染み渡る。

 

 ――そっか、マスターになるってこういう事なのね。

 

「貴方達の命、私に預けて頂戴。皆、生きて帰りましょう!」

 

 五騎のサーヴァント達が数多の反撃の罠が生い茂る森林へと姿を消していった。オルガマリーも間もなくそれに続くだろう……土煙をあげ、爆走する『豪姦魔』を誘い込んだら。

 色欲の悪魔には目の前の女を組み伏せ、犯し、貪る事しか頭に無い。

 

 

 「極上ダァ!その乳房も!唇も!太腿も!尻も!肢体全てガァァ!!触らせろ!舐めさせろ!ダカセロォォォオオオ!!」

 

「お断りよ。私の身と心はもう別の獣に捧げてるのっ!」

 

 快楽天の眷属に背を向けて、森林へと走り出す。それは逃走行為ではなく、闘争行為の合図。オルガマリー・アニムスフィアの一人きりの戦いが始まった。だがそれは決して孤独なものではない。

 

 

【第五の戦】

 

 親愛の姫:オルガマリー・アニムスフィア

 顔の無い王:ロビンフッド

 アパッチ族の戦士:ジェロニモ

 少年悪漢王:ビリー・ザ・キッド

 ローマの花嫁皇帝:ネロ・クラウディウス

 歌い踊る竜娘:エリザベート・バートリー

 

         VS

 

  色欲の豪姦魔

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 前線から離れているここも慌ただしくなっている。

 突如として魔神ケルト兵なる者達の数が膨大に膨れ上がったという。さらには『狂竜』に匹敵するレベルの怪物達が五体も現れたという。もはや生身の人間達でどうにかなる段階は過ぎており、機械兵達ですら足手まといになってしまうレベル。デンバーから飛行している大量の銀色の飛行物体がいなければ、ここも地獄絵図になっていたのかもしれない。

 

 剣を握り、戦地へ赴かんとした時、唐突に声をかけられた。

 

「そんな様子で一体、どこへ行こうというのだ」

 

 口ぶりは勇ましくもその声色はとても耳に心地良い。

 聞きたくて、一番聞きたくなかった声だった。

 

「迷った剣で戦場に来られても迷惑だ。今の貴様ではエレナのUFO1機にも及ばんぞ」

 

「ふっ、ははは。随分……と、手厳しいな……」

 

 乾いた笑いしか浮かばない。わかっている。このシータがいた世界にラーマという男がいたのかどうかは些事たる問題では無い。ラーマという男がいて、あの異邦の英雄と結ばれたのか。それともいなくて、結ばれたのか。そんな事を考えても何の意味も無い事はわかっている。

 

 わかってはいる……が……それでも、それでも、別人とはわかっていても……自分が実現出来なかった彼女の笑顔と幸せを花嫁姿としてまじまじと見せつけられてしまっている現実が余の心を締め付ける。

 

 気にしていない。嫉妬をするな。そんな無様な真似を晒すな。余はシータを救えなかった。あの男はシータを救え。ただ、それだけの話ではないか。感情を押し殺せ。この特異点に召喚された英霊としての本分を果たせ。

 

 なのに剣筋は鈍ってしまう。その事を婦長にも見抜かれ、今こうして別世界のシータにも見抜かれている。

 

 余は一体、ここになにをしに――。

 

「アルカトラズ島に貴様とそっくりな女の子が囚われているようだ」

 

「え――」

 

「余の大事な家族が保護しているが、その島も大量の魔神ケルト兵と『狂竜』に匹敵する巨人が跋扈しており、脱出が容易ではない」

 

 シータ……。君も、この世界に召喚されて――。

 

「これでまだ余の言いたい事がわからぬようなら、その頭、射抜く所だが……。フッ、やっと見れる顔つきになったではないか」

 

 遠い芝を羨ましがっても意味はなく、そこに憧憬や羨望、ましてや嫉妬と悔悟を抱えても何も得る物は無い。余の過去はもう終わった事なのだから。だが、今その続きが出来るというのなら、この瞬間に救える物があるのなら、余はもう二度と間違えない。

 

 今度こそ、この手でシータを救ってみせる。絶対にその手は離さない。

 

「行く。そのアルカトラズ島とやらに、魔神ケルト兵も巨人も斬り伏せてみせる。余の恋路を邪魔する者は何人たりとも許さん」

 

「貴様一人では荷が重いだろう、余も同行する」

 

「……ありがとう、遠い世界のシータ」

 

「えっ」

 

「えっ」

 

「んっ?」




【アルカトラズ島の監獄要塞にて~】

「はいもしもし~。こちら、貴方様のシータです。えぇ、脱出しようとは思ったのですがウジャウジャと雑兵達が湧いてきたので今、その処理の真っ最中です。しかも何か金髪マッチョの巨人が要塞の外で味方を喰いまくってますし、幸い、私達の方にはまだ気付いていないようですが……。共食いカニバリズムとか見たくないです。どうせ見るならマスターにお可愛いバナナを食べられてヒンヒン鳴くラーマ様を見たいのですが……今はそういう話をしていない? あっ、逆の方が良かったですか? もう、ラーマ様のえっち。…………はい、ごめんなさい真面目にやります。私の宝本をブラフマーストラは勘弁して下さい。えっ? そっちのラーマ様が勘違いしている? そのままの方がいいんじゃないんですか? いや冷静に考えて下さいよ男の自分が雌になって、花嫁になって、知らない男の上で腰を振ってるなんて誰が予想できます? 私と勘違いしたままの方が本人にとって幸せでしょう。あっちょっと待って下さい、ラーマ×ラーマもありのなのでは? 雄々しいラーマ様に組み伏せられる雌ラーマ様、逆もありぃ! 大丈夫です。不貞ではないです! 自分自身だからオナニーみたいなもんです! ハァ、ハァ、ハァ、今度、式部先生に書いてもらいましょうか。あぁっ! ごめんなさいごめんなさい切らないで下さい、はい、自重します。えぇ、了解しました。取りあえず、ラーマ様が来るまではこの世界の私を守りながら待機と。不用意にその巨人を倒さないようにですね……了解です。この世界の私? 戦闘は私一人で事足りるので精神安定も兼ねて本でも読ませてます。はい、式部先生の『七歌物語』を。もうラーマ様の章を食い入るように読みふけっていますよ。さすがは私。世界が変わっても趣味は変わらなかったのですね……ラーマ様? もしもし、もしもーし? ラーマ様――? ……………………切れてる」



【第六の戦】
コサラの王:ラーマ
花嫁にされた夫:ラーマ
     VS
暴食の巨人









『七歌物語』
作者:紫式部

式部先生の取材と脚色によって事実と虚構が織り混ざった長編ファクション小説。
仲睦まじい夫婦が治める国に一人の旅人が訪れた。その旅人は大層、夫と気が合った、合い過ぎる程に――『不貞羅刹』編。
その男は尾張の国の大名を見初めた。大名である姉の貞操を守る為に弟は姉に扮して、その男を謀ろうとするが――『快鳴時鳥』編。
その美男子が仮面を外す瞬間は限られている。宝具を使う時、体を清める時、あるいはマスターと……。いつからか、美貌を隠す為ではなく、秘めた感情を隠す為に仮面に頼るようになったのは――『剥面淫美』編。
等……を始めとする独立した七つの章で構成されている。刑部姫が挿絵を担当したライトノベル版もある。普通に18禁。ライトにした意味ないね。ホモじゃねぇから。











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週間性年インボウマガジン⑦(第5章)



CBC2019年のエンジェル・ブレスのジーク君とアストルフォ君の雌みが高くて私の邪竜が召喚されそう。シロ君のイメージはあの礼装の髪を長くした感じでオナシャス。







まだまだ第五章続きです。ここから始まるクライマックス。














 妻を殺して、私の関心を誘おうとした男がいた。地位も財産も捨てて、私へと溺れた権力者がいた。道徳心も忘れ去って獣のように私を求めた女がいた。

 

 男も女も大人も老人も子供も戦士も政治家も医者も僧も聖人もありとあらゆる人間は私が微笑めば蕩け、肌に触れれば沈み、褥を共にすれば、等しく溶けていった。

 

 私の言葉を、表情を、肢体を、お預けをくらった駄犬のように一挙手一投足、見落としまいとかぶりつく姿のなんど惨めで愛おしい事か。

 

 他者が私を愛している様はキモチいい、他者が私以外何も見えなくなってしまう様はキモチいい、他者が私の為に狂っていく様はキモチいい、他者が私の為に死んでいく様はキモチいい。

 

 自身の快楽の為に他の一切を消費し続ける人生。この欲望に限りはなく、我が悟りに終わりは無い。この世全ての物を使って絶頂の極みに至りたい。全ては人々()の幸福の為に。あまねく人類()を救いましょう。()は幸せになる義務があるのですから。

 

 なのに、あぁ、私一人だけがいれば良かったのに……共に歩んで欲しい人を見つけてしまった。きっと私と同じになれる人を見つけた。この星という寝台の上で森羅万象が滅びるまで、滅んだ後も隣にいて欲しいと恋い焦がれる人。

 

 セラフィックスで敗れた後も追い続けた、出会う事を夢見て。

 

 直感でわかってしまった。彼の心底にはきっと私と同じ愛が溢れている筈だと。その気になれば、全ての人間を踏みつけ天上楽土に到れる筈だと。

 

 にも関わらず、なんと真っ当な生き方か。なんと健全な交わり方か。なんと穏やかな愛し方か。

 

 たかだか数百人程度の女達と契りを交わすなんて平凡な人生でどうして満足が出来るのだろう。

 

 愛を囁き、体を重ね、孕まし、家族となり、生涯を遂げる。実に模範的でヒトらしい。

 

 ()()()()から産まれ堕ちたというのに、彼はまともな人間性を有していました。

 

 

 並行世界、編纂事象――数多の枝葉の中できっと奇跡のような確率で善性を得て、人並みの生涯を終えた私もいたのでしょう。

 

 けれど、ほぼ全ての私は数多の人間()を使い潰し続けます。聖人として教祖として魔術師として。

 そしてその最期は大抵、私の在り方を悪とする正義の味方や主人公と呼ばれる者達に断罪されるばかりの実につまらないものでした。

 

 私の親は犬畜生を孕ませたワケではありません。少々、環境は特殊だったとはいえ、殺生院キアラという人間はごく普通の人間から産まれたのです。

 

 月並みにこの世に生を与えられ、原罪の『快楽』の片割れとして真性悪魔になった私。

 類を見ない誕生の仕方でありながら人々を救うマスターになった親愛の獣でもある彼。

 

 そっくりのように見えて何もかもが正反対な私達。

 

 全てが反転している。鏡のように対称している。だからこそ、惹かれるのです。

 これは自己愛の塊であるが故に鏡に夢中になっているだけなのでしょうか?

 

 あぁ、デアー様、■■■■様、貴方様の生き様に夢を見たのです。貴方様そのものを求めているのです。現実を歪む程に恋し、愛したいのです。

 

 何かが変わるかもしれない。いいえ、何かを変えられるかもしれない。

 

 貴方様と一緒なら心の底から満足出来る(キモチ良くなれる)のかもれしません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『キアラちゃんサイコー!』

 

 大地を覆い隠してしまう程の魔神ケルト兵の群れが津波の如く迫っていた。醜兵共の波の乗り手は『嫉妬の老鹿』。エレナ(軍服ママ)の小型UFO隊もここにはいない、グダおが自分の所はいいから、他の所に数を回してくれと頼んだからである。

 

 数千単位の規模で軍を作り、大陸中で魔神ケルト兵が暴虐の限りを尽くしているのなら、余裕の無い所に数を回すべきだろう。英霊化(弱体化)したとはいえ、数多のイベント(戦闘経験)を経た人類悪、ピンチではあるがこのぐらいの窮地ならば許容範囲である。

 

 故に魔改造されたケルト軍と相対しているのはグダおたった一人。

 

「『人繋ぎの大秘宝庫(マテリアルボックス)』」

 

 彼の周囲から浮かんだ無数の波紋。百にも及ぶ空中砲台から王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)よろしく、かつてオルレアンでワイバーンを屠ったアゾット剣を始めとしたクズ礼装の剣達が嵐となって射出される。

 だが痛覚も人としての理性すらも失われている魔神ケルト兵は剣が刺さった程度では止まらない。体から剣が生えようとも意に介さず進み続ける。

 

「無駄だ。宝具ならまだしも、ただの鈍らでそやつらは止まらぬよ」

 

「どんな物も使いようだと俺は思うのさ。緑ゼリーか、餌にしかならない武器もこういう使い方が出来る」

 

『キアラちゃんサイコーォォォォオ!?』

 

「なにっ!?」

 

 連鎖する爆音。轟音に次ぐ轟音。突如として魔神ケルト軍を爆発の山が包んだ。

 先程、彼が放った剣全てにはメフィストフェレス特製「ちくたくくん」が付着していた。カルデアのマスコットの座を狙って大量生産したものの、結局、衝撃を与えると爆発してしまうという仕様によって不良在庫になってしまった悲しきグッズ。

 

「ふーっ、きもちぃぃっ」

 

 誰でも出来る「壊れた幻想(ブロークン・ファンダズム)」として追加攻撃がフィン・マックールの肉体を扱う嫉妬の悪魔に迫る。

 

 だが、それは彼が槍を振るって出現させた汚水の壁によって防がれた。

 

「朽ちるが如く」

 

 汚水の壁は解かれ、出て来たのは錆付き朽ち果てた剣だったもの。

 

「全ての物には老いがある。無機物、有機物、エネルギー、速度、ありとあらゆる物は老化で殺せる」

 

 フィン・マックールという英霊が保有している宝具『この手で掬う命たちよ(ウシュク・ベーハー)』。彼が掬った水は全てが回復効果を有するというもの。

 だが、嫉妬の原罪として魔改造された魔神柱ベリアルを注ぎ込まれた事により、その能力は歪められた。自身よりも輝かしいもの、美しいもの、若々しいもの、全ての寿命を加速させ、朽ち果てさせる嫉妬の宝具。

 

この手から零れる命たちよ(ウシュク・ショーン)』。彼が操る汚水に触れた定命の者達は滅びの運命からは逃れられない。

 

『嫉妬の老鹿』の両手槍の動きと呼応して、彼の周りにある汚水が生きた濁流となってグダおに襲いかかる。

 

「老いとは本当に恐ろしい。劣化していく肉体、鈍くなっていく思考、しがらみだけが増え、若かりし頃の輝かしい思い出さえも自身を蝕む!」

 

「昔は良かったなんて言葉、ダサさしかないから止めた方がいいと思うけど、おっと危ねっ」

 

イカれた幻想(ブロークン・シリアス)EX』によって全てのステータスがA以上になっているグダおは軽口を叩きながらも、残像さえも作り上げるスピードで『嫉妬の老鹿』に迫る。

 

 スカサハ特製の複製ゲイ・ボルクを五槍も展開。

 

 師匠曰く「人の限界が二本だと誰が決めた。その気になれば同時に使える武器などいくらでも増やせる。二槍流、三槍流、無槍流……型に捉われるなマスター。人間には無限の可能性がある」と。

 

 右手に一本、左指に二本挟め、肘裏、膝裏にそれぞれ槍を一本ずつ挟め、ジャグリングのように巧みに刺突、斬撃の連撃をお見舞いする。グダお自身も回転し、360度あらゆる方向から空間を削り取り、敵を追い詰める。何度か体を斬り裂かれる感覚に見舞われたがそれを無視して『嫉妬の老鹿』は魔神柱としてのスペックを存分に生かし、致命的な部分だけは守り切る。このまま押し切る事も出来るかもしれないが、『嫉妬の老鹿』を守るようにうねる汚水がそれを許さない。再び距離を取るグダお。

 

「老化ねぇ……。成長しないサーヴァントには効くとは思えないんだけど」

 

「私が気付かないと思っているのかね?貴様は座ではなく、別の次元から無理矢理顕現した人類悪。マスターを気遣い、肉体を無理矢理サーヴァントの格に落としているが。今の貴様を構成しているのはエーテルではなく純粋な肉体であろう?ならば殺せるとも」

 

「さすがフィンのそっくりさん。馬鹿ではないんだね」

 

「その上から目線。妬ましくて仕方がないなぁ!」

 

 嫉妬と怒りで顔を歪ませた老鹿はグダおの『人繋ぎの大秘宝庫(マテリアルボックス)』の意趣返しとして、

この手から零れる命たちよ(ウシュク・ショーン)』を鉄砲水のガトリングのように放つ。

 

「この状況でなお、何故笑っていられる!?世界を何度も救ったという偉業が貴様をそこまで増長させているのか?自分は負けるワケがないと驕っているのか?今まで成功してきたから次も同じように成功すると思いこんでいるのか?あぁっ!その余裕が妬ましい!!」

 

 避けきれない汚水の弾は『人繋ぎの大秘宝庫(マテリアルボックス)』で引っ張り出した素材「九十九鏡」を何十個も盾のように展開し、凌ぎ切る。何百年と受け継がれてきた神秘の鏡。先程の剣よりは持つが、巧みに操られる汚水の竜はその隙間を掻い潜って、グダおを喰わんとする。

 

「よしんば、何かの奇跡が起きて我らを倒せたとしよう!だがキアラさまが健在の限り、我らは何度でも復活する。貴様らがキアラさまに辿り着く事はあり得ん!もう詰んでいるのだよ人理は!!」

 

 時が経つ毎に量を増していく汚水が遂にグダおを渦のように取り囲んでしまった。

 

「聞こえるだろう!我が同族達と矛を交えてしまった仲間達の悲鳴が!誰も助からぬ!何も救えぬ!貴様にかつての栄光はもう訪れない!」

 

 

 ▲▲▲

 

 暴風怒涛、竜巻のように振り回させる二槍の軌跡は立香達を飲み込まんとして――。

 

「ぐ、ぬぬぬ……動きが無軌道過ぎて読めん……!人というよりはもはや獣!猪風情が獅子に歯向かうかね!」

 

『立香君!エジソン氏に礼装から応急手当を!』

 

「やってる!やってるけど、回復しないの!どうして!?」

 

「馬鹿め、我が魔槍は不治の呪いがある。貴様らには回復もやり直しも認めん。俺の怒りの肥やしとなれ」

 

「……は?不治?この私の前で……よくも、よくもまぁ……そんな戯言をほざけましたね。殺します。殺して殺します(治します)

 

「いけませんナイチンゲールさん、無策で突っ込んでは!」

 

 

 

 

 

 下半身の欲望が脳髄まで及んでいる悪魔はちょっとやそっとの罠では止まらない。弓や槍で貫かれようとも、毒沼に沈もうとも、地雷を受けようとも、喜色満面の笑みでオルガマリー所長を追い続ける。

 

 「ハハハハハハハ、そんなに愉快に尻を振って誘っているのかぁぁ!!ならば応えてやらんとなぁぁ!!」

 

「いやああああああああ!!全然効いてないじゃないのよぉ!!馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿ばかぁ!!軍隊の六割ぐらいは削れるって話じゃなかったの!?『破壊工作A』は!?」

 

「あれが異常過ぎるんだっつーの!さっきまでの勇ましさはどこに行ったんですかねぇ!?泣き言言っている暇が足を動かす!あんなのに犯されたくないでしょ、オタクも!」

 

「死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死んじゃ――――うぅぅっ!!助けてグダおぉぉぉっ!!」

 

 

 

 

 

 黒い粒子を全身に纏い、宙に浮かぶ強欲の化身は嘲弄の笑みを浮かべて、魔神柱の肉蔦が巻き付いている弓から放たれるは神の域に達した黒き光閃。

 

 アメリカの兵士達を追いやっていた時とは比較にならない速度と威力。一つ一つがまさに宝具級。彼が人間達を弄んでいた時とは全く別物の矢。そして『強欲の魔神』を注ぎ込まれたその弓兵が扱う矢の真に恐ろしいのは――。

 

「ほう、よけたか。よけたな、カルナァァ!貴様を無敵たらしめているその黄金の鎧を身に付けておきながら、避けたかぁぁ!……フフ、フハハハハハ!…………ったく、相変わらず勘の良いやつだ」

 

「その、矢、よからぬ物が混ざっているな」

 

 鎧部の右肩の棘の先、数センチ。そこが最初から無かったかのように欠けていた。被害としては微々たる物だが、圧倒的防御力を誇るカルナの鎧が削り取られたという事実。

 カルナは顔色を変えず、だが一切の油断は無いままに敵を見据える。

 

「簒奪し、強欲する我が原罪と、この鏃に込められた破壊神の業は実に相性が良い。もう自慢の防御力には頼れんぞ、我が矢を避ける選択肢しか貴様には無いのだからなぁ!」

 

「戦場で、敵の矢を避けるのは当然であろう。随分と当たり前の事を声高に叫ぶのだな」

 

「…………死に晒せぇえええええ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 ▲▲▲

 

 

「ここ一帯全てが既に我が領域!もう逃げ場はないぞ!老い干乾びた貴様を愛する者の前に投げ捨ててくれるわ!」

 

 寿命を搾り取る汚水がうねりをあげて、迫りくる。『嫉妬の老鹿』は勝利を確信した。世界を救ったという栄光を持ち、国時代を経て、あらゆる美女達を思うままにした男。死ぬ程に妬ましい男の生涯を終わらせる事が出来る快感に酔いしれていた。

 

「ここが貴様の初めての失敗だ!!」

 

「失敗なんてとうの昔から数え切れない程してるってーの」

 

 それでも槍を構える彼の顔に諦めは無い。

 

「皆がいなかったら、槍も扱えなかった。料理も出来なかった。本を作る事も出来ない。誰かを愛する事も。俺は独りじゃ、生きていけない自信がある」

 

「……何を言っている?」

 

「お前らに勝てる話さ」

 

 彼の懐にある携帯端末。21世紀において、世界中40億の民が持っている変哲の無い小型演算機。誰でも簡単に繋がる事が出来る電子の板からポコンと可愛い音が鳴った。

 

 

 

 マスター

【ちょっと助けて欲しい】

 

 

 メイヴ

【りょ】

 

 

 メイヴ

【秒で行くわ】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは前触れも無い突然の事だった。

 

 ワシントン上空から、元ホワイトハウスであるキアラの魔城に世界を超えて飛来した鉄戦車の流星が落ちてきた。

 

「ッッ――!?」

 

 殺生院キアラの声にならない悲鳴と、目を覆うばかりの衝撃。ミサイルの如く地上へ激突した何者かがもたらした破壊はそびえ立っていた魔神柱の塊を吹き飛ばし、肉柱に囚われていた女王メイヴも解放させた。

 

 殺生院キアラの落ち度は二つ。

 

 一つは『カルデア国物語』だけを読んで、彼の全てを把握した気になっていた事。『カルデア寝物語』……つまりは彼を取り巻く女性達の方へは興味を向けなかった事。

 

 二つは()()について考慮しなかった事。あらゆる事象について当てはまらない存在というのは出てくる。

 グダおの宝具『性神と妻達の部屋(アダム&イヴズ)』には確かに限界はある。彼が語った通り、この特異点で呼び出せる()()()これ以上いない。

 

 

「一度は尽きたこの命なんの因果か甦り」

 

 

「あり得ません……!彼の能力でもう呼び出せる羽虫はいない、筈……!」

 

 だが、家族はいなくともグダおのSOSに光速ですっ飛んでくる最高の友達がここにはいた。

 

 

「まぐわい語らい笑うが宿命なら」

 

 

 怠惰の魔神柱が消滅し、狂ったケルト兵の母胎としての役目から解放され、へたり込んでしまっている女王メイヴが呆然とした瞳に映していたのは自身とそっくりの顔と髪。だが服と溢れるばかりに濃厚な生命力は彼女とは次元が違う。

 

 

「親友への想いを胸に秘め」

 

 

 黒いスーツ、白いマフラー、艶めかしいパンストはこの特異点にてマフィアスタイルでいたグダおとのペアルックを意識したようにも思われる。鉄戦車をバックにガイナ立ちするその女の表情には自信と不敵に満ちていた。

 

 

「貫くまでよ己の(さが)

 

 

 いくら彼の精をその身に注がれようとも世界を跨いで単身でやって来れるのはグダおの妻達でもそうはいない。それこそ「単独顕現」でも持っていない限りは。

 

 

「何者ですか……?突然何なのですっ……あなたはッ!!」

 

 

 本来の女王メイヴには虜にした男達の宝具を扱える能力がある。新たな次元へと昇華出来る精を持つグダおと愛した男達の力を行使出来るメイヴと体の相性は最高だった。

 

 これは彼と家族ではなくセックスフレンドという道を選んだ彼女の新たな宝具。

 

親愛なる友へ(デアー・マイ・フレンド)』。

 

人類悪、親愛の獣:デアーの宝具とスキルをその身に宿す事が出来る対人(自身)宝具。

 

 到着早々、『白式官能』でこの特異点のメイヴに埋め込まれていた『シトリー:怠惰』だけに特大級の魔力を注ぎ込み、破裂、消滅させたメイヴちゃん(セフレ)。これで魔神ケルト兵の補給元も、他の原罪達の復活源も断たれた。無限ループというクソゲーからの解放という粋な仕事をしたメイヴちゃんにはまだ仕事が一つ残っている。

 

「キアラちゃん?誰よそれ。メイヴちゃんサイコー!と叫びなさい!」

 

 

 

【第七の戦――最終戦】

 

 スーパーセックスフレンド:メイヴVS愛欲の獣――ビーストⅢ/ラプチャー:殺生院キアラ






親愛なる友へ(デアー・マイ・フレンド)
ランク:EX
種別:対人宝具
使用者:メイヴ(スーパーセックスフレンド)

我が物にした男達の宝具を扱えるというメイヴの特性が羽化を遂げた。最高のセックスフレンドであるグダお――零の獣:デアーのスキルとほぼ全ての宝具を使用出来る状態にする。
単独顕現で彼女も自由きままに色んな世界で男漁りをしているようだ。
零の獣は彼女の物にはならなかった。彼女だけの物にはならなかった。それでも()()の友達にはなってくれた。彼と一緒に住んでいるワケではない。家族でもない。今では友達として偶に会って、彼の娘達に男を堕とすテクを授け、彼と肌を重ね、彼の液を股から垂らして妻達には挑発をする。

あの子は所帯を持って、家族に包まれた暖かい人生を歩んでいる。前程、一緒にはいられなくなったけど、それでも彼が助けを求めたらどんな世界だろうとも飛んでいくわ。彼の家庭を脅かす奴は殺してあげてもいい。
友達ってそういうものでしょ?







ギャグエロなのに伏線を撒いていくスタイル。




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週間性年インボウマガジン⑧(第5章)

《大奥イベ妄想》

グダお「また俺のいない所で殺し合おうとしたな?」

グダお「俺がやれと言ったらやるのだ。抱き合え」

酒呑「……」
頼光「……」

グダお「令呪をもって命ずる抱き合え」

酒呑「……ッ」
頼光「……(泣」
















ここ最近の話はジョジョ5部の処刑用BGMを流しながら書いてます。




「あーあ、趣味が悪いわねーこの城。同じ女としてセンスを疑うわ」

 

 色っぽく胸元を扇ぎ、こちらの世界のメイヴを縛り上げていた魔神柱の残骸を横目に角を生やした快楽僧、殺生院キアラへと歩を進めるのはグダおの永遠のセックスフレンド、メイヴ。

 

 余裕のある言動とは裏腹に彼女は既に宝具を展開していた。『親愛なる友へ(デアー・マイ・フレンド)』から解放された宝具。七つある親愛の獣の宝具の内の一つ。生命力、魔力、快楽を思いのままに操る対界宝具『白式官能』。

 数多の白い魔手がメイヴを守るように出現していた。

 

「特異点は全部で七つ。ここが五つ目。あぁ、けど親玉が間抜けにノコノコと顔を出してきたのなら……マスターの手を煩わせるまでもないか。今、私がここでケリを付けてあげてもいいんだけど、『ビースト』」

 

 姿勢を屈め、構えるメイヴは臨戦態勢。本気の殺意で親友に付き纏う悪い(ストーカー)を駆除しようとしていた。

 

 だが、そんな殺意を向けられても殺生院キアラの様子は違和感を抱く程に静かであった。ついさっきまでは闖入者に対し、叫びながら素性を問うていたというのに。

 

 メイヴが白い魔手、人類悪デアーが扱っていた『白式官能』を解放した所から彼女の様子は一変した。

 

「な、ぜ……なぜ、何故、ナゼ、あなたがその宝具を使っているのです?彼の宝具を身に宿しているのです?」

 

 人知の領域を超えた快楽を産み出す『白式官能』とあらゆる快楽の受け皿になる殺生院キアラとの相性は最高である。

 だが、愛欲の獣は興奮する事も淫蕩に唇を歪ませる事も無い。その表情に浮かんでいたのはありふれた女としての嫉妬と怒り。感情の大きさだけは人類悪に相応しいエネルギーだった。キアラの中で飼われている魔神柱が数体その余波で消滅してしまうぐらいには。

 

「答えろぉぉ!阿婆擦れぇええ!」

 

「何だろう、会って間もないけど、あなただけには死ぬ程言われたくない台詞ね」

 

 以前までの殺生院キアラならば悦んで女王メイヴの宝具を受け入れていたのだろう。だが、今の彼女は違う。グダおに恋し、何としてでも彼と結ばれたいと目論む快楽天が望むのは()()()が使う『白式官能』。

 

 彼と星が滅んでも心ゆくまで溶け合いたいのだ。

 

 宝具とは英霊の象徴で生き様そのもの。恋慕する男と全く同じ宝具をどこの馬の骨とも知れない女が我が物顔で使っている事に対しては殺生院キアラの我慢の限界は簡単に訪れた。

 

「…………会って間もない。えぇ、その通りですね。そして女の勘ですが、私は確信しています。あなたと私は絶対に相容れない存在だと」

 

 藤丸立香にも、何度も自分の邪魔をしたマーリンに対してもここまでの怒りを抱く事は無かった。

 目の前の女は自分が欲しくて欲しくて止まなかった物を敢えて選ばない……何故だかそんな具体的な雰囲気を感じ取った。この女は何が何でも叩き潰す。殺生院キアラがそう覚悟した時は『白式官能』と対抗するように無数のドス黒い触手が彼女の周りに展開された。

 

「へぇ、いいじゃない。女の顔が剥き出しになってるわよ。キャットファイトは趣味じゃないけど、本気ぐらいは出してあげてもよさそうね」

 

「上から物を言わないで下さいますか、売女が」

 

 この瞬間だけ、殺生院キアラの眼は北アメリカの戦場からメイヴへと移った。

 親友は得ようとも男漁りは未だ継続中なケルトビッチ。一途になり、そういうのは卒業した元テラニービッチ。

 グダおがいた世界線では出会う事の無かった二人の女、どうしようもないぐらいに『女』な二人はアメリカの中心で激突した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ワシントンから供給されていたエネルギーが切れた?もしやキアラさまに何か…………。いや、あり得ぬか。何であろうと私の『この手から零れる命たちよ(ウシュク・ショーン)』に取り込まれた以上もう奴に為す術は無い。カルデアの要であるこの男を堕としてしまえば、人理も何もかも終わりだ)

 

 巨大な水球となった汚水の塊を眼前に捉え、『嫉妬の老鹿』は魔神ケルト兵達の再生速度が先程とは比べ物にならないぐらいに衰えている事、自身に供給されていた『怠惰の母胎』からの魔力が完全に途絶えている事に確かに気付いていた。

 

「結局、思わせぶりな事を言っていたこ奴も何も出来ずじまいだったな」

 

 だが、殺生院キアラという母を絶対視している『嫉妬の老鹿』は彼女の身に何かあったとは思わない。あの最低最悪天上楽土からの悪魔を脅かす者がいるなんて考え自体が存在しない。そしてそこから産み出された自分達の勝利も信じて疑わない。

 供給が断たれている事も「キアラさまが戯れに何か思い付いたのだろう」程度しか考えていない。

 叡智司るフィン・マックールの頭脳が泣いている。

 

 グダおが汚水に囚われて、数秒。並の人間ならとっくに骸だけになっているが――。

 

 この悪魔が敵対しているのはその並から最も遠くに位置し、悪魔よりもよっぽど恐ろしい男。

 

「なっ――」

 

 黒き水牢を破り、飛び出した彼の外見は毛ほどに変わらず健在。迷う事なく『嫉妬の老鹿』の懐へ潜り込む。

 

「ば、バカなっ!あり得ん!!十秒もいれば、千年の時は過ぎる!!何故、老いない!何故、動ける!何故、生きている!もしや、もしや、貴様――、不老不死、真祖の類だったか!!」

 

「おいおい、俺程度が不老不死とか、パイセンに比喩表現じゃなくて()()されるっての。見当外れもいい所だ、馬鹿ではないってのは撤回するよ。フィンの智慧もりもりな頭脳が可哀想だ。『嫉妬の馬鹿』に改名しな」

 

「ぐ、ぐ、き、貴様ァッ!!」

 

『嫉妬の老鹿』にはグダおが自分の能力の影響を受けなかった理由がまるでわからない。もちろん、彼が不老不死なんて虞美人ぶち切れ案件な事もない。

 グダおは定命の身。ただ、それが普通の人よりほんの少し長いだけ。

一交一生(ワンライフ・ワンセックス):EX(※愛シールド0 後半参照)』。自身の伴侶が増えれば、増える程、彼は彼女達に生涯を捧げる為に寿命を伸ばし続ける。数百のパートナーを持つ彼の寿命は既に万に到達している。

 

 だがそれも無限では無い。常人から見れば無限に等しい長さかもしれないがいずれ終わりはやってくる。その前にグダおは『この手から零れる命たちよ(ウシュク・ショーン)』から脱出しただけの事。

 

 最初に汚水を避けたのも、彼女達の為の寿命を浪費したくなかった男心。だがそれでも勝利の為には何かを犠牲にしなければい覚悟も必要だった。故に彼は死地に飛び込んだ。消費した寿命?マーリンを筆頭に埒外のキャスター陣達が上手い事やってくれるんじゃない?

 

(ま、ずい……!)

 

 接近を許した『嫉妬の老鹿』は足りない智慧をフル回転させる。両手槍で近接戦を挑むのは無謀。この状況において、『イカれた幻想(ブロークン・シリアス):EX』によって彼のステータスは二段階以上跳ね上がっている。ならばと、距離を取るべきかと思考を回転させる。

 

早着替え(ドレス・チェンジ)!!」

 

 だが、そんな悪魔に反撃の芽を許さないグダおは自身の姿を一変させる。

 数多の女を脱がせてきた高速の脱衣術。服を脱がせる術に長けているという事は逆説的に服を着る術に長けていてもおかしくはない。

 新宿で見せた女装術。戯れにカルデアのメイド喫茶で数多の客から財布(QP)を落とさせた魔性の美貌。

 

 ウィッグを付けて黒髪ツインテールになる時間も含めて、グダおが女と見間違う程の可憐さを含めた紅色の着物美少女姿になるまでの時間、0.3秒。

 

(理解不能!!何故、ここで女装!!策?魔術的な儀式!?それとも宝具の一種か――……!!)

 

「模倣宝具『人類悪の微笑(スマイル・オブ・ザ・ビースト)』」

 

 モデルとなった美の女神に勝るとも劣らない彼の女装姿はいつの日か戯れにその姿のままで男性陣にチョコを配ってみたら

 ランスロットには本気で口説かれ(その後、マシュに盾の角でボコボコにされた)、

 フェルグスには本気で部屋に誘われ(その後、メイヴに戦車で引きずり回された)、

 賢王様には貴様がもうイシュタルになれば?と高評価を戴き(その後、イシュタルはぶち切れた)、

 エルキドゥは涙目でマジで止めてくれと懇願されるぐらいには真に迫っていた。

 

 男を誑かし、蕩け、陥落させる毒の微笑みが炸裂する。

 

「ア、ア、あ、あー―なんと、美しく、輝かしい……」

 

『嫉妬の老鹿』が持つ両手槍『無敗の紫靫草(マク・ア・ルイン)』は精神干渉の能力を無効化する力を有している為、グダおの宝具によって魅了される事はなかった。

 なかったが――、嫉妬の原罪として存在している悪魔にとってその美しさはあまりにも眩し過ぎた。数秒間あっけに取られて思考が完全に停止し、無防備になってしまうぐらいには。

 

「トネリコの木製複製ゲイ・ボルクのストックはまだまだあるのさ。噴き上がれ魔力!この腕は鬼の右腕!!」

 

人繋ぎの大秘宝(マテリアル・ボックス)』から再び、朱槍を五本取り出したグダお。それを五本の指に見立て、『授かりの智慧:A+』から『魔力放出』を選択。炎の如き燃え滾る魔力を全ての槍に纏わせる。

 

「模倣宝具『愚神礼讃・一条戻橋(エンコミウム・モリエ)』!!」

 

 縁を結んだ英霊達の宝具の連続技。グダおの真骨頂はその引き出しの多さである。

 

 声に出してみたい宝具ベスト5に入る(邪ンヌ調べ)茨城童子の宝具は確かに巨大な鬼の腕を幻視させていた。ロケットパンチはアッパーカットの要領で呆けていた『嫉妬の老鹿』に突き刺さる。

 

「お、お、オォォォォォォォッッ!?」

 

「これが!俺達の!反撃の狼煙だぁああああ!!」

 

 槍によって構成された巨拳を振り抜き、大地が割れ、圧倒的な噴射力で巨拳と共に宙へと打ち上げられる悪魔。100、500、1000メートル……まだまだ浮かび上がる。

 

 

 ▲▲▲

 

 

『取りあえず、アイツらの再生能力はこっちで何とかする。どうやるかはちょっと言えない。ゲーティアを呑みこんでいる以上、愛欲の獣が()()()を持ってるかもしれないし』

 

『だから、無限再生能力を封じる事が出来たら、こっちから分かりやすい合図を送るよ』

 

 

 ▲▲▲

 

 

 上空一万メートルに到達した時、北アメリカの空にそれはそれは巨大な花火が咲いたそうな。

 大気を震わせ、核爆発のような衝撃を伴った輝く火の華は各地で戦う立香達にも届いただろう。

 

 

「長生きの秘訣?たくさん、愛することさ」

 

 

【第一の戦】

 

 

 

 親愛の英霊:グダお VS 嫉妬の老鹿

 

 

 勝者:親愛の英霊:グダお

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先輩、あれは!」

 

「うん!グダおが上手くやってくれたってこと!反撃開始だよ、マシュ!」

 

 スカナナがあらかた魔神ケルト兵を殲滅した頃、無限に湧き出ていた魔神ケルト兵の復活が突如として止み、『憤怒の魔猪』は己に流れていた力の断絶を感じていた。

 憤怒の悪魔は怒り狂いながらも確かに察していた。我が本拠地、主に何かあったに違いないと。キアラを絶対視している眷属にとってはらしからぬ思考回路。

 この悪魔が憑りついている肉体のかつての記憶が何かを想起させているのか。

 

「おのれ!おのれ!オノレェェッ!卑劣極まる魔術師共ガァアアッ!!我が主に何をシタアアアアアァァッ!!」

 

『気を付けるんだ皆!あの二槍、特に黄槍の方には回復阻害の呪いがかかっている!絶対に致命傷は受けないでくれ!』

 

「呪い?何をオカルトな事を言っているのですか。この世界に治らない病はありません。殺せない菌はありません。私はこの世の害あるもの、毒あるものを全てを断ちます」

 

 激昂のあまり加速する魔猪の二槍は伸縮させながら、その攻撃を加速させる。サポートに回っているエレナの小型UFO達も意に介さず叩き落とされ、立香達は攻めあぐねていた。マシュもテスラもエジソンも深い傷ではないものの『必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)』によってその身にいくつかの消えない傷を負わされていた。

 そんな中、鉄の看護師。この特異点において誰よりもバーサーカーなナイチンゲールはブレなかった。

 

「『我はすべて毒あるもの、害あるものを絶つ(ナイチンゲール・プレッジ)!!』

 

 宝具を発動させたナイチンゲールの背後に白衣の女神が降臨し、握った巨大な剣を振り下ろした。

 それは決して攻撃宝具ではなく、彼女の精神性を発現させた対軍回復宝具。彼女を中心とした一定範囲においてあらゆる攻撃性、毒は無効化される。当然、『必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)』によってつけられた傷も全て回復する。

 

『よしいいぞ!彼女の宝具と敵の宝具は相性抜群だ!立香君、マシュ!ナイチンゲールをサポート要員として、君達は』

 

「殺菌ッ!」

 

『って言ってるそばからぁぁっ!?』

 

 通信越しにドクターの悲鳴が聞こえるが一切意に介さないホスピタルバーサーカーは『憤怒の魔猪』に劣らない程の獣染みた動きで掴みかかる。

 

「菌の温床である猪の皮を被り、我が物顔で病を撒き散らす!私はそういう存在が!許せません!貴方の怒りなど!それに比べれば些末な!事なのです!」

 

『憤怒の魔猪』の胸倉を掴み、片手でペッパーボックスピストルを連射する看護師の形相は凄まじい物だった。憤怒の原罪である敵に匹敵する程の怒りがあった。鉛玉を何発か至近距離で受けた『憤怒の魔猪』は多少のけぞったが倒れるまでは至らない。

 

「些末!些末だと!我が怒りを些末な事と言ったか女ァァァ!!」

 

「マシュ!」

 

「はい先輩!!」

 

 長ったるい指示は不要。竜の尾のように伸びた二槍はナイチンゲールの死角を突き、背中から霊核を貫かんとしたが、マスターの意向を汲み取ったシールダーが彼女の背を守っていた。

 

「殺すッ!何もかも殺す!魔術師も!聖杯戦争に連なる英霊共も!聖杯戦争に関係し得る可能性がある全ての命を我が槍で突き滅ぼしてくれる!!死ね!死ね!ただ死ね!!」

 

 顎を蹴り飛ばされ、再び距離を取った両名。『憤怒の魔猪』はまだそこまでダメージを負っていないが、怒りのあまり額の血管が切れ、血が流れ始めていた。

 

「エジソンさん、テスラさん。距離を取った時点で電撃でどんどん攻撃しちゃっていいから!」

 

「しかしな、ミス立香よ……。婦長がああも敵に張り付いていたら巻き添えを」

 

「大丈夫!多分、ナイチンゲールさんなら痺れたぐらいじゃ止まらないと思うから!」

 

「フハハハハハ!君もレディと同じぐらいに豪胆な事だ!!ゆくぞ凡骨!!」

 

 雷撃の嵐の中、『憤怒の魔猪』は怒りに塗れた思考回路の中で一つの疑問を抱えていた。

 確かに数では負けている。だが、所詮は近代の英霊共に英霊のなりそこないが一騎。なのにどうして攻めあぐねている?と。

 確かにあのバーサーカーが扱う宝具と自身の槍は相性は悪いだろう。だがそれだけだ。ステータス的にも自分の方が優に勝っている。

 近代の英霊共が扱う雷撃も鬱陶しいだけで決定打にはなっていない。殺生院キアラという偉大なる母から生み出された自身に敗北はあり得ない。ならば、何故未だなお勝利を手に出来ない。聖杯戦争を起こす愚か者共を誅殺出来ない。悪魔の脳細胞全てが怒色に染まる。

 

「オーダーチェンジ!全体強化!」

 

『ようし!上手いぞ立香君!婦長に敵が襲いかかったタイミングでマシュと位置変更!防御という点においてなら、マシュは既に一戦級のサーヴァントだ。数秒でも敵を釘付けに出来るなら、他の3人の攻撃も当てれる!』

 

(やはり要はあの小娘か)

 

 今までも何度も殺そうとした。だが、その度にまるで殺気を予知されているかのようにあの小さき盾兵に妨げられる。成程、姿無き声だけの男の言う通り、何かを守るという点においては目を見張る物があるのは認めよう。

 

(あぁ、そうだ。聖杯戦争というのはいつもそうだ。単純な力比べならば魔術師など不要。現世に存在出来るだけの魔力タンクさえあればいい)

 

 雷撃の嵐を降らし、点ではなく、面での遠距離攻撃を続けるテスラ・エジソン。味方の攻撃が当たろうともお構いなしに狂気のまま『憤怒の魔猪』を殺しに行く型に嵌らない突撃兵ナイチンゲール。致命傷のみを守り婦長をサポートするマシュ・キリエライト。拙いながらも藤丸立香という少女はその4人を上手く扱っていた。

 

 五つの特異点を乗り越えた事。そしてグダおという特大の異物をいつも隣で見ていた経験は少なからず彼女に大きな影響を与えている。

 

(英霊と比べれば、吹いて消えてしまうようなか弱き存在なのに聖杯戦争においては重要な要素(ファクター)になる……。魔術師だ、やはり、魔術師だ……マスターという存在は聖杯戦争で()()()()()()()()()()()()()()()のだ!!)

 

『憤怒の魔猪』は愛槍二つを束ね、混ぜ合わせる。鞭のように伸びる二本は蔦のように絡み合い一振りの剣となった。その形状は間違いなくディルムッド・オディナが愛用していた魔剣『憤怒の波濤(モラ・ルタ)』。敵の変化に驚いているマシュ達を置き去りに、この剣を握った『憤怒の魔猪』は人知を超えた速度で跳躍する力を得る。

 

 彼が狙ったのは合衆国軍の長でもなく、星の開拓者でもなく、鋼鉄の看護師でもなく、白亜の盾兵でもない。

 

 何の力も無い平凡以下の魔術師。偶々生き残った為に人類最後のマスターとなってしまった少女、藤丸立香の背後。その無防備過ぎる背中である。

 

「殺った!!」

 

「せんぱ――」

 

 一瞬にして立香の後ろを取り、助けを許す事もなく、無慈悲にその刃は立香の心臓を貫いた。

 

(死んだ、死んだ――死んだ――ー!やった!確実に手応えはあった!こんな簡単な事だったのか!聖杯戦争に勝つとは!英霊共と馬鹿正直に戦う必要はない!惰弱なマスターの息の根を止めてしまえば、それだけで終わりだ!!)

 

 「はは、ハハハハハハハ!!ざまぁみろ!何とあっけない!貴様らの主はこの様だ!これで世界を救うなど片腹が痛いわ!!」

 

 肉を裂き、臓器を貫いた感触は確かにあった。口から血を流し、倒れ伏せる少女は間違いなく実体を持っている。物言わぬ死体となった。

『憤怒の魔猪』は歓喜に震える。悲嘆しろ、泣き叫べ、怒り狂え、貴様らの大事な主はこの俺が殺したぞ。我が怒りに絶望しろ、騎士が懐いた祈りを踏みにじった報いを受けよと残りの英霊達を屠ろうと下敷きにしている少女の肉体から顔を上げて――。

 

「ガンド」

 

 背後から受けた呪術の弾によって完全に動きが停止した。

 

「ガ、あ、アァ!?な、ナゼ――?」

 

(何故、貴様がそこに、俺の背後にいる。殺した!殺しただろう!今、この瞬間に!なら、俺の下にいるのは一体――?)

 

「さっきから気付いていた。あなたが私の事をずっと狙っていたのは……。殺気にちょっと敏感になっちゃったのかもしれない、普通の女の子としては悲しい事にね」

 

『憤怒の魔猪』が刺し殺した筈の立香の肉体が消えていく。まるで英霊が光の粒になって消えていくのと同じように。

 

 

 立香はこの戦いが始まる前にスカナナからファンシーな魔法ステッキを貰っていた。

 スコーネが愛用している蒼色の魔法ステッキと対を成す赤色の魔法ステッキ。元祖魔法少女イリヤスフィールを母に持つ「リヤンスフィール」が扱うマジカルルビーの後継機、その一本目「ルビーα」をちょろまかしていた。

 

 始めはどさくさに紛れてスコーネに渡して、ルビー&サファイアのツヴァイフォームにでもなってもらおうかと画策していたが、心の友(処女同盟)に出会った事により、そのステッキは一時的に立香の手に渡された。

 

 

 ▲▲▲

 

「マイフレンド。貴女にはこのステッキとカードを渡しておきます」

 

「白紙のカード……?」

 

「クラスカード、あるいはサーヴァントカードと言います。しかもオールクラスの極レア物ですよ、大事に使って下さいね。ほら、ここのステッキの星の部分がパカって開いてカードを入れれるようになったんです。先代にはないギミックですよ。皆好きですよね、カードを機械に差し込んで変身ッ!ってやるの」

 

「私、女の子だからそういうのにはちょっと……」

 

「最高じゃないっですか!普段は平凡な女の子だからこそギャップが映えて戦装束が輝くのですよ。自らの平穏の為に敢えて平穏と程遠い殺伐とした戦場へと身を投じる女の子!かぁ――カックァ良い!前口上、私が考えてあげましょうか?」

 

「取りあえず、使い方だけ教えて……」

 

 ▲▲▲

 

「初めてにしてこの使い方……やはり天才であったか」

 

 見物に回っているスカナナの呟きを他所に。『憤怒の魔猪』は何が起きたのか理解出来なかった。

 

 仕組みは魔法少女イリヤスフィールがいた世界においての『夢幻召喚』と変わらない。

 その身に限定的に英霊の力を宿し、行使する魔術礼装。

 だが、マスター適正はあったとしても魔術師としての才能も魔力も回路も十分にない立香が英霊をその身に召喚出来るのはもって十秒。

 

 立香は考えた。その十秒で自分が出来る事を。

 

 英霊を宿した自分も一緒に戦う?付け焼き刃にも程がある、足を引っ張るだけ。却下である。

 

 聖杯戦争における()()()()魔術師にとって本来重要なのは戦闘力ではなく、生き残る力。英霊同士の戦いに割り込めるキチガイ魔術師なんて特例はそうそうない。まともなマスター達はまず自分達の生存こそを最優先すべきなのだ。

 

 そもそも藤丸立香は人類最後のマスターなんて大任を任されてはいるけれど、何の変哲もない普通の少女なのだ。そんな彼女が歴戦の英霊達と混ざって戦えるなんて夢物語を見るわけもなく――。

 

 だから、立香は――『憤怒の魔猪』が自分に殺意を向けているとわかった時からサーヴァントの選択は決めていた。

 

 

 ――カード、セット。夢幻召喚『百貌のハサン』。

 

「あなたがもし、私を狙わずマシュ達と正攻法で戦われていたら、勝敗は分からなかった」

 

「フジマル……リッカ、キサマッ――!」

 

 自分が狙わているのなら、それを有効活用してやろう。彼女はそんな強かな気概を持っていた。

 

 百貌のハサンの宝具『妄想幻像(ザバーニーヤ)』は夢幻召喚において実体のある分身として囮になっていた。夢幻召喚の効力も消える。骸骨の仮面を付け、扇情的にも見える黒いチューブトップ姿からカルデア戦闘服へと姿を変えていた。

 

「何をやったってしくじるものなんだよ、ゲス野郎はね」

 

 魔神王すら数秒、動きを止めさせたカルデア特製の魔術礼装。バーサーカーの如く動き回っていた『憤怒の魔猪』の決定的な隙がこの瞬間出来上がった。

 

 最初で最後の好機!ここを見逃す彼等ではない。

 

「ミス・マシュ!彼女を連れて、射線上から離れてくれたまえ!!」

 

 エジソンの大き過ぎる声量の指示と共にマシュが立香を抱えて避難する。

 胸に付いている噴射口に電力(魔力)を充電するエジソン。背中には『道具作成:EX』で産み出したオートマチック的な送電機。さらにその背後には仇敵ニコラ・テスラの姿があった。

 

「貴様から協力を申し出てくるとはな、正気を失ったかと訝しんだが……。実は偽物とかじゃないよね?」

 

「ふん。何、英国でそのあり得ざる可能性によって私は敗北を喫した。ならば正気の一つや失ってもおかしくないだろう」

 

 テスラの脳裏に浮かんだのは第四の特異点ロンドンでマキリに召喚されてしまった時、自分を葬った怪力少年の腕に付いていた『全戦局対応型直流交流万能籠手』。今現在なお交流が直流に劣っているなど毛ほども思っていない彼だが、それでも忌み嫌っていた物と複合した物に自身が敗北したとなれば、考える所はある。天才故に。

 

「交流から直流の変換は容易。出し惜しみ無し、電力を回せ!決めに行くぞエジソン!――ついて、これるか?」

 

「貴様の方こそ、ついてきやがれ――!!テスラ!!」

 

 自前で産み出せる電力の量はテスラの方が上。故に彼がエネルギー源となり、送電機によって交流を直流へと変換し、膨大な電力をエジソンへと送り込む。発明王は砲台となり、迸る電力を限界まで溜め込む。

 

「強き英雄が世界を救う時代は終わり、幸福を願い、努力した者達が世界に光を灯した。これこそが多くの偉人、奇人、発明人達によって脈々と受け継がれてきた文明の灯火!貴様達に与えるものなど、只の一つもないぞっ!!」

 

 嵐の如き、雷音が彼の周囲に轟き、たてがみは伸び、その顔面はより一層人間離れした獅子に近づいていった。だが、いくら風貌が人外染みたとしてもその頭脳、志は変わらず。より良い世界の為に歩みを止めなかった二人の電力はさらに雷音強化(ブーステッド)され、特大の雷砲がエジソンの胸の噴射口から放たれる。

 

 

 「『(ユナイテッド)(ワールド)(フェイス)(ドミネーション)』!!!」

 

 

 あらゆる神秘や信仰を剥ぎ取る対民宝具が純粋な攻撃性を伴った極太の雷電レーザーとなって『憤怒の魔猪』を包み込んだ。数十秒。威力だけなら対軍宝具にすら匹敵する文明の集大成は埒外の化け物を電熱によって溶かしていく。

 

『近代の英霊とは思えない威力!さすがに人類悪から産まれた眷属でも直撃すれば……』

 

「ハァッ、ハァッ、ハァッ…………」

 

 自身のスペックを完全に超えた宝具の使用。電力を限界まで搾り出したテスラ共々、エジソンは膝をついていた。

 

 大地さえ削り取っていた雷電投射。地平線まで続いていた破壊の後に『憤怒の魔猪』の姿は……。

 

「グゥッ、ガァッ……アッァ、ハッ、ハッ、あ、危なかった……あと、後数秒、今の攻撃を続けられていたら完全に消滅していた…………」

 

『嘘だろ!?』

 

 皮膚は爛れ、全身の半分以上が黒く焦げ、被っていた大猪の皮は完全に消滅しているといった既に満身創痍といった状態だったが、それでも言葉を発するだけの余力は残っていた。

 

(理由は不明だが……『怠惰の母胎』の再生能力が断たれている以上、もう死ぬ事は出来ない……ここは一度逃げ、再起を図り、今度こそ油断なく奴らを仕留める――!)

 

 だがその今度は訪れない。生存している『憤怒の魔猪』を視認した段階で誰よりも早く動き出した者がいた。

 

「入念な滅菌処理に感謝を。ミスター・エジソン、ミスター・テスラ」

 

「グッ、アッ、ガァッ……き、キサマッ!」

 

 首を掴み、殺意を以て本格治療へ移行するクリミアの天使の姿がそこにはあった。

 

見敵殺菌(サーチ&デストロイ)!!見敵殺菌(サーチ&デストロイ)!!私はありとあらゆる病原菌の存在を許しません!!」

 

 至近距離から放たれた複数の銃弾が太腿を貫く。

 

「清潔!」

 

 鋸で右腕を切り落とす。

 

「消毒!」

 

『人体理解A』によって人体の破壊方法を熟知している故、傷口をさらに切開する。

 

「殺菌!」

 

 筋力B+の握力で頸椎を握り潰される。

 

「緊急治療!」

 

(マズい、マズい、マズい、この女!!頭がおかし過ぎる……!逃げなくては、殺されるッ!終わってしまう!距離を、距離を取らねばッ――!)

 

 人間でも英霊ですら死んでいるであろう情け容赦の無い婦長の治療行為。人類悪仕込みの邪法によって英霊と魔神柱を掛け合わされた作られた眷属のフィジカルが未だ生存を許していた。それでもその命は風前の灯火、最後の火事場の馬鹿力でナイチンゲールを引き剥がした『憤怒の魔猪』だったが――。

 

「は――?」

 

「逃がし、ませんっ!先輩が、テスラさんが、エジソンさんが、ナイチンゲールさんが、皆が作ってくれたチャンスを!ここで無駄にはしませんっ!」

 

 バックステップで離れようとした『憤怒の魔猪』の動きをいつの間にか背後にいたマシュが盾で妨げていた。

 婦長との距離を作らせない壁として、後ろからその背中を押し込んでいた。彼の眼前には手榴弾を持った看護師の姿が――。

 

「この、クソカス共がぁっ――!!」

 

 「殺菌!殺菌!殺菌!殺菌!殺菌!殺菌!殺菌!殺菌!殺菌!殺菌!殺菌!殺菌!殺菌!殺菌!」

 

 叫んでいた彼の口に手榴弾を突っ込み、(治療)の連打を叩き込む。『憤怒の魔猪』の口の中で爆発した衝撃によって自らもダメージを受けようともお構いなしに治療行為を続ける。爆風の中で聞こえる肉がひしゃげる音。ナイチンゲールの緊急治療は対象の生命が終わるまで続いた。

 

 「完全治療!!!」

 

 憤怒と不治の病原菌を撒き散らしていた魔猪は首から上を無くし、ようやく倒れ伏した。

 勝者はいうまでもなく、赤い軍服をさらに紅く染めたフローレンス・ナイチンゲール。

 治療を終え、血に塗れた彼女の顔は晴れ晴れしく見えた。

 

 

【第二の戦】

 

 

 

 人類最後のマスター&精神的非処女:藤丸立香

 

 デミサーヴァント:マシュ・キリエライト

 

 クリミアの天使:フローレンス・ナイチンゲール

 

 メンロパークの魔術師:トーマス・アルバ・エジソン

 

 雷電博士:ニコラ・テスラ

 

 

 

           VS

 

 

 

  憤怒の魔猪

 

 

 勝者:立香達

 

 

 




「はぁー……生きてるぅ。怖かった――」

「お疲れ様です。先輩」

『治療って何なんだ……』

『いやバーサーカークラスの影響ってやっぱ恐ろしいねー。さすがに生前からこんな熾烈な事はないとダ・ヴィンチちゃんは信じたい!』
















何でエロ小説の筈なのに真面目に戦闘描写を書いてるんじゃ、ワイ?





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週間性年インボウマガジン⑨(第5章)

「カルデアの方々を大奥そのものの材料にするとは、なんと非道な真似を……あぁ、けどマスターが使う」

「椅子になりたいとか言い出さないでね、リリィ」

「靴では駄目ですか?」

「何故、おーけーをもらえると思ったのか」

「いやぁ、この愛は私でもドン引きです……」



カルデアコレクションにてカーマ、更新。













エロ小説だって事を忘れかける英霊編の時間です。続きイクよ――。エイプリルフール編?来年のエイプリルフールまで待ってくれればいいと思うよ。







 私の前に立ち塞がるのがあの小憎たらしい娘(藤丸立香)だったらまだ良かった。

 彼が精を分け与え、契りを結んだ元英霊共なら、まぁ順当でしょう。

 

 だが――目の前にいる女は誰だ?我が物顔で彼の力を行使する不遜な女は一体何だ?

 

「私は知っています。彼の事なら、どこまでも。英霊である彼にもう召喚出来る女達はいない」

 

「お間抜けここに極まれりね。私の事、知らない時点でマスターのこと、何にも知らないじゃないの」

 

 360度、桃色の髪をした不愉快な女の周囲全てに魔神柱を捻じ曲げ生成した巨大な針を展開する。串刺しにせんと殺到する攻撃もあの女を守るように蠢く彼の宝具()があまねく防いでいた。

 

「好きな男だけに夢中になって周りの事はおろか自分の事も盲目になっちゃってるお可愛い快楽天ちゃんに答えを教えてあげようかしら?っていうか単純でしょ。マスターの家族が来れないのなら、ここにいる私はあの子の嫁でもなく、家族でもない。只の友達で親友で、セフレよ」

 

 なんだそれは、彼に焦がれる女でもない。彼と生涯を誓った家族でもない。たかが友人如きが私の邪魔をするのか。そこまで、そこまで――彼の匂いを濃厚に纏わせて私の恋路を断たんとするのか。

 

 あの人、あの人だけがいればいい。随喜の極みに到達する為に全ての人類を使い潰そうとしていた私が初めて()()()()に気持ち良くなって欲しくて、()()()()に気持ち良くさせて欲しいと心から願ったのだ。

 

 彼を独り占めにしたくて、独り占めにさせて欲しくて、彼の世界取り巻く全てを私一色で染めて上げたくて、愛欲の獣である私と、背中を合わせで寄り添うような半身になって欲しくて――。それなのに、事をあろうか……。

 

「と、も……だち…………?意味がわかりません。そんなものから……どうして、彼の存在が匂って仕方ないのですか――!!」

 

 もはや鬱陶しい建築物は存在せず、屋外で私は私の力全てを以て目の前の女の命を摘もうとしていた。五蘊黒縄……いや、彼の精を受けているであろう女に魅了は通用しない。ならば同じ顔をしたこの特異点の女と同じように……魔神柱の縄で捕らえ、物理的に擦り潰してあげます――!空想樹の如く、育ち、場違い極まりない女を呑みこみなさい――!

 

「『親愛なる友へ(デアー・マイ・フレンド)』……第二宝具展開」

 

 突如として上半身が丸見えな鎧姿と変貌を遂げた彼女は出現させた巨大な螺旋槍を地面へと叩き付けた。

 

「『模倣英霊』……原型(モデル)『フェルグス・マック・ロイ』!」

 

 尋常ならざる勢いで回転する螺旋は虹色の魔力を噴き出し、彼女を取り囲んでいた肉樹もろとも周囲の大地全てを粉砕していた。こちらに吹き飛んでくる瓦礫を素手で叩き落とし、鼻で笑う。その宝具ももちろん知っている。

 

「格落ちした宝具を使いますか。人類悪の足元にも及ばない英雄の影法師にしか過ぎない羽虫共の力を模倣する力……。出し惜しみして完全変態ビーストとなった私に勝てるとでも?どこまで私を虚仮にしてくれるのでしょうか」

 

 ビースト/ゼロである彼の七つの宝具の中でどうしても気に入らない宝具がいくつかある。今目の前で行使された『模倣英霊』もその内の一つ。

 英霊、英霊、英霊、サーヴァント!あぁ、気に食わない心底気に食わない!絆だの縁だの聞こえの良い言葉で彼の躰に群がる虱共。どこまでも縛り付ける醜い鎖。

 人ならざる者共が彼の真の姿を妨げている。その鎖が無ければ彼はどこまでも自由なのに。何にでもなれるのに。

 

 だがしかし、きっとその奥底は……私と同じでドロドロの情愛が渦巻いている筈なのに真っ当な愛を英霊達に振り撒く貴方のあり方に私は感じ入ってしまったのでしょう。だから、私はあなたを――。

 

「出し惜しみしてるのはお互い様でしょ?ここに来て、全然本気じゃない『殺生院キアラ』」

 

「ふふ、そうですか。今こうしてあなたが息をしてるのも私の慈悲だという事に気付かず」

 

「あぁ、違う。違うの、そういう事を言ってるんじゃないの。うん……私もまぁ、こうして拳を交えて何となーくあなたの事がわかってきたというか――」

 

 フツフツと怒りがこみ上げて来た。目の前の女がしたり顔で言葉を発している様が。

 

「あなたに――。私の一体何がわかるというのでしょうか。恋人も家族にもなれなかったから親友などという逃げ道を用意して、あまつさえ恥知らずにも肉体関係を持ってしまっている敗北者のあなたに」

 

 怒りのあまり、奥歯を噛み砕いてしまった気がする。えぇ、小事でしょう。いくらでも再生は出来ます。

 そうですとも、この彼のセフレを騙る女王メイヴという存在全てに私は心底虫唾が走っていました。歯を全て噛み砕いてもその怒りは収まる事はなく。

 

「あ――まぁ――、そうね。外野からすればその見方も事実っちゃ、事実なのよね。うん、けど全くもって無問題なの。周りがどうこうじゃなくて、大事なのは私とあの子がお互いの事をどう思ってるのか、どうありたいのか。極限突き詰めてしまえば、正しい男女の関係なんて私は無いと思うの。女がいれば、男がいれば、そのあり方は千差万別」

 

 友達などという寒気すらするぬるま湯に浸っている彼女がまるで一つの答えに到達した覚者の如き、悟りを覚えた女の顔をしているのか。私にとってこの『女王メイヴ』は全てを見通す魔神の王を取り込んだ私ですら理解不能(理解したくない)生き物だった。

 

「私もあまり人の事、言えないわね。盲目も盲目、超盲目よ。友達のあの子が困ってるっていうから、宇宙を、世界を超えて星の如く飛んで来たのだから。マスターの傍にはずっといれないけど、私が生きている間はいつでも彼の元に駆け付けれる格好良い私でありたいの。マイフレンドには情けない姿見せたくないじゃない?」

 

「もう結構。あなたの自分語りに付き合う余裕も容量も私には存在しません」

 

「あらあら、ごめんなさいね。でも未だ自分を偽っているおぼこちゃんよりはマシだと思うのだけれど?」

 

「一体、何を言っているのでしょう」

 

「マスターに聞いた事あるのよね。電子の海で己が欲望のまま振る舞った女の話」

 

 彼の口から私の事を語られたという話を聞いただけで憤怒の感情が治まり、頬が喜色に緩んでしまう。もう少しだけこの女の話を聞いてあげてもいいぐらいには。

 

「知性体なら問答無用で誘惑し、蕩かす『万色悠滞』。完全に人類悪として羽化したあなたは、成程私達でも持て余すぐらいには規格外のナニかになってしまったのでしょう」

 

 私は後悔するでしょう。気の迷いでこの女の話を黙って聞いてしまった事を。さっさと打ち切って戦闘を再開させてしまえば良かったのです。そうすれば、()()()()()を晒す事なんて絶対になかった。

 

「今の戦闘だけでもわかるわ。魔神柱を消耗品の如く、使い潰し続ける贅沢でスケール違いな戦い方。マスターの女達でも勝負として成り立つのは10%ぐらいしかいなさそうね。でもね、あれれ~~?おかしいな~~?って私、思うワケよ。ねぇ、快楽天、ビーストⅢ/R。あなた、本気の本気でマスターに恋して、愛して、欲しいのよね?」

 

 口元は厭らしく笑い。なのにその目元は真摯で。頼んでもいないのに人の心を暴いていく姿は摩耗した記憶の中にいつか現れた小さな男のようで。そしてその戯言は止まる事なく。

 

「ヤリ方が持っている力と比例していないのよ。グッドルッキングブレイブ達を支配下において、クーちゃんを始めとした男達の霊基を弄って、こんな後ろに引っ込んでさ。ねぇ、あなた本当はその気になれば、この大陸中を魔神柱で埋め尽くして崩壊させる事も出来るんじゃなくて?」

 

 ――あなた、本気の本気であの子の事を追い詰めようとしてる?

 

 言外にそう語るメイヴの視線がキアラの心の壁を的確に貫いていた。

 

「…………これだから、風情の欠片も無いケルト人は困ります。肉食獣の如き、追い求める事だけが男女の駆け引きではありません……。深窓の令嬢のように殿方から求められるのを淑やかに待つという選択肢もあるのですよ。結局、好いた男は手に入らず家畜の発酵物で死んだ貴女には理解出来ないかもしれませんが……」

 

「うぇぇ、マジぃ?本気で言ってるぅ?一度、()()()()()()()()()()()()()自分はまだベッドから出る必要無いってガチで思ってるの?本当の本気で真面目に冗談抜きで自分から求めなくてもまだ大丈夫だとか思っちゃってる?まさか、まさかそんなワケ無いわよね?まがりなりにも私に匹敵するぐらいに雌の香りを漂わせている女がねぇ?」

 

 今すぐ、この女の口を塞ごうと魔神王の力を行使し、拘束魔術を展開しようとする。逃げ場も抵抗も一切、無くしこれ以上言葉の刃も抜かせないように融かしてしまおうと私の指が動く前に――。

 

 ――今、戦ってわかっちゃったわ私。この世界における一番簡単な人理修復の方法。

 

 ロンドンで再会した時は嬉しくて堪らなかった。何を話せばいいのか、何から話したらいいのか、結局わからずじまいでラスボスムーブをかまして、愛欲の獣としてしか彼を口説こうとする事しか出来ず、それらしい事を言って退散してしまった私。

 

 当たり前のようにいる藤丸立香が憎くて、妬ましくて、羨ましくて、ちょっかいをかけたけれども、やっぱり彼が現れた瞬間に恥ずかしくなって、あっさりと引いてしまった私。

 

 止めなさい。囀るなほざくな評するな口を開くな。

 

 私の恋心を語ろうとするんじゃない。

 

 

 

 

 

 

 

「だってあなた次にマスターに()()で告白して、それでもまたフラれたら自殺するでしょ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 白銀の世界が拡がっていた。この時季、アメリカ大陸ではまずお目にかかれないだろう永久凍土の世界が拡がっていた。凡そ生物という概念を凌辱したであろう形を成した魔神ケルト兵達もそれは美しい彫像と化していた。

 

「メイヴ姉様が滅茶苦茶ハッスルしている気がする」

 

 その世界を産み出した張本人。神霊ではなく正真正銘の神、スカサハ・スカディと人類悪から産まれた血統種。スコーネは自慢のツインテールと共に槍を模した魔術ステッキ『サファイアγ』とクルクルと回していた。

 

「絶対零度は静止の世界。この世界で動ける物質は無く……。呼吸も嵐も狂走する怪物だろうも止められる」

 

「凍りつかせただけで満足するでない、スコーネとやら。しっかりと息の根は止めておけ」

 

「生憎と、そういう野蛮なのは苦手なのだ。暴力はきらい……。変化した『サファイアγ』の形も只の母殿リスペクトだからな、飾りだ飾り」

 

「クッ、その化け物染みた魔力を持っていながら締まらぬ奴よッ!」

 

 氷の世界で飛び回る深紫の影。スカサハはゲイ・ボルグを空中に多重展開し、氷像となった魔神ケルトに向けて投擲し、一切合切の殺り零しなく後始末を行っていた。そんな彼女の姿を見ながら『出番は無いと言ったがいてくれて良かった。非常に楽が出来る』と至極身勝手な事を呟いていたり。

 

 スコーネの中に内包された桁違いの魔力。もはや大きさを量る事すら馬鹿馬鹿しくなるスケール。千単位いた魔神ケルト兵を余す事なく氷塊にした術といい、十数歳に持たせるには過ぎた力。影の国の女王であるスカサハですら、感嘆していた。

 

「何、私など……。母殿になれば時さえ凍らせられる。それにまだまだメイヴ姉様の女子力ぶりには届かぬ」

 

「女子力とは一体……。まて、先程も気になったが『メイヴ』と言ったか?あのグダおとかいう男はもしやあの女も伴侶にしているのか?」

 

「いや違う。家族ではない、友達、セックスフレンドというやつだ」

 

「セックスフレンドとな!?いや、それを別の女を母親に持つお前が平然と口にしていいものなのか……?」

 

「ん?父にセックスフレンドがいてはおかしいのか?愛の形は千差万別。当人達が満足しているのなら、他者が異論を挟む必要はなかろうて、父殿は全ての母殿に区別はあるが差別はなく愛を注いている。愛そうか、愛そうか……」

 

「ケルトもびっくりの爛れっぷりな気もするが……」

 

 道徳心とか一般的なモラルを彼女が通っている学び舎は教えてくれなかったのだろうか……。

 あの悪女が大人しく妻に収まる性質(タチ)でもないだろう、セックスフレンド……愛人か。確かにそっちの方がメイヴというキャラクターには合っているとスカサハは自身を納得させた。

 

「さてさて、父殿から盛大な合図は頂いたが。ふむ、中々にしぶとい」

 

 スコーネが視線を向ける先には他のケルト魔神兵よりは一際大きい凍塊。『サガン:傲慢』の魔神柱を埋め込まれた凶王の霊基。だが、凍らせられたのはほんの一瞬。先程から何度チャレンジしても身震いするように氷の膜を粉砕され、『狂竜』は五体満足で健在だった。

 

「二度の死を経て、眷属共の中では一番の耐性を誇っているか。あ――ほんと、めんどうくさいなぁもう。コホン、いかんいかん口調が乱れてしまう。母殿のようにお淑やかに全てを包み込む慈愛を持った大人の女性を目指すのだ私は」

 

「魔神柱と奴が元々持っていた宝具――海獣の鎧が混ざり合って尋常ならざる強度を誇っている。我が魔槍も全てやつの肉体から絶え間なく発射されるゲイ・ボルグに迎撃されておるわ。同じ性質の槍を持つ者だからこそ出来る芸当だが……。やれやれ、死は望んでいたが……これに殺されたいと思わんな」

 

 周りの雑兵は片付けても肝心の『狂竜』に対しては決めてに欠けていた。それでも全く焦りの色を見せないスコーネにスカサハは何か手でもあるのかと言いたげな眼を向けていたが。

 

「あまり暴力的な手段は好かんのだ私は。戦いも本当は好きではない。父殿の職場に来たいというのと異母姉殿に無理矢理連れてこられなければ、この杖を振るう事も無かっただろうさ」

 

 自分はこうやって凍らせて敵の動きを止める術しか知らんと言いたげなスコーネの気持ちを目の前の化け物が汲んであげる筈もなく、『狂竜』の鋭利な全身の棘が禍々しく紅に光を灯し始めた。やがて、その百以上ある光はエネルギーを集中させるように顔へと移動していく。

 

「GAAAAAAAAAAAAA――――」

 

「悠長な事を言っている場合ではないだろう!来るぞ!!」

 

 ルーン魔術、魔神柱、そして人類悪によって強制改造された事によって得た無尽蔵の魔力が文字通り竜として開かれた口に全て収束していく。ラーマの時に見せた無慈悲の砲撃、その時よりも二段階格が上がった光線が放たれようとしていた。

 

(盾のルーン……!いや、間に合わぬか――!)

 

「ただ、年頃の娘として自衛の手段ぐらいは持っている」

 

 焦るスカサハとは対称的にスコーネの顔はどこまでも泰然自若だった。スコーネが杖を振るい、彼女を中心に白銀の魔力粒子が舞い上がる。

 

 

「魔術炉心解放。私が作りし氷の城。無限に続く鏡の城。どうか、この世界が愛で満たされますように」

 

 

『狂竜』の前に出現した城はあまりに美しく。穢れの一切が無い氷の城だった。

 一見すれば城だという事もわかりづらい程に整い完璧な黄金比で構成された氷の鑑。万華鏡の如き、美しさをもったそれは破壊の一撃を繰り出す『狂竜』の姿を映し出していた。

 

 だが、所詮は理性を跡形も無く削り取られた獣。突如として現れた城を警戒する事もなく、開かれた口腔から魔力光線を発射した。

 

 

「『鏡面世界・万華鏡(ミラー・スコープ)』」

 

 

 その鏡の城はスコーネの宝具。攻撃は、暴力は、破壊は、巡り巡って因果としていつか自身に跳ね返る。『狂竜』が放った光線はその城を破壊する事なく、飲み込まれ、一瞬の間をおいて全く同じ一撃として『狂竜』へと跳ね返った。

 

「GIAAAAAAAAA!!!」

 

「なんと恐ろしい一撃よ。破壊力だけなら、母殿や父殿にすら届き得る」

 

 氷鏡の城。敵の一撃をそのまま返す。ただそれだけの結界宝具。だが、自身の必殺の一撃をそっくりそのまま受けた『狂竜』への被害は甚大。屈強な鎧もおどろおどろしい魔神柱の肉塊も全て削ぎ落され、その命は風前の灯火だった。

 

 ――師匠に似たガキ共に二回も負けるなんて経験はもう出来ねぇだろうなぁ。

 

 スカサハがその隙を逃さず、『狂竜』の核を貫いた瞬間。そんな声が聞こえた気がした。

 

 

「ここはあつ――い。はやく帰って母殿と父殿3人でアイスを咥えて縁側でゆっくりしたいなぁ……んんっ、したいものだ」

 

 

 

 

 

【第四の戦】

 

 

 

 氷の魔法少女:スコーネ

 

 影の国の女王:スカサハ

 

 

 

    VS

 

 

 

   傲慢の狂竜

 

 

 勝者:

 氷の魔法少女:スコーネ

 

 影の国の女王:スカサハ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フフフ、フハハハ――随分とみすぼらしい姿になったな、カルナぁ?いや、施しの英雄と言われるならその姿こそが正しいか?」

 

 その性根を現すか如くドス黒い弓兵は確実にカルナを追い詰めていた。炎神アグニに授けられた弓としての神々しさは欠片もなく、アルジュナとしての公明正大さは消え失せ、宙に浮かんだ状態で邪悪な笑みを浮かべていた。

 

 相対するカルナもその瞳は未だ闘志を失っていないが、自慢の黄金の鎧を始め、紅蓮に燃えるマント、遂には肉体までもが所々、拳一つ分程欠けていた。血は出ておらず、まるでその部分だけが削り取られたかのような不気味さを感じさせる。

 

「無辜の民達を狙うか」

 

「卑怯と笑うか?だが勝てる手段なら躊躇無しに全てを使うべきだろう。喜べカルナ、お前の献身は逃げ遅れた人間達を余す事なく守り切ったぞ。お前のその致命的なダメージと引き換えになぁ!」

 

「構わん。それでお前が勝てると思うのなら好きに使うがいい。そして、この程度で致命的になっているというのなら俺は最初っから英雄などにはなっていない」

 

 的確に弓を避けていったカルナにしびれを切らした『強欲の黒』の狙いはエレナ(軍服ママ)の小型UFOに連れられている兵士と民間人達にシフトされた。戦場から遠く離れようとも黒き弓兵の視界に映るのなら、そこはいまだ魔矢の射程範囲。

 

 カルナが防ぐ事を承知で何十発も放ち続ける。回避に専念するならともかく。神速の魔矢を卓越した槍術によって全て叩き落としたカルナはその成果と引き換えに決して少なくないダメージを負っていた。

 

「その減らず口……叩き潰し甲斐がある!貴様はもう、私には勝てん!サーヴァントと人類悪の眷属の圧倒的なまでの霊基の差!貴様の矜持も力も勝利も何もかも根こそぎ奪い!私は高らかに凱旋しよう!!」

 

「もう勝った気ではいるとは……気が早いな」

 

 全身から炎と化した魔力を放出し、加速したカルナは真正面ではなく『強欲の黒』への真下へと潜り込む。そこから光を纏った槍を頭上にいるアルジュナに向かって全力で投擲した。だが、その攻撃も届く事はなく難なく避けられてしまう。動きが鈍くなっているぞと嘲笑を浮かべる『強欲の黒』。だが、カルナの追撃はまだ終わらない。

 

「武具など無粋、真の英雄は眼で殺す……!」

 

 宝具『梵天よ、地を覆え(ブラフマーストラ)』。余りにも強力なカルナの眼力が熱線となり、眼から放たれるビームとなる。冗談のような技だが、武具を使用せずとも対軍・対国宝具に分類されるその威力は甚大。

 

 直撃を喰らった『強欲の黒』。だが爆熱の中から、現れた彼は未だ健在だった。決してダメージが全く無いワケではないだろう。顔から滲み出ている若干の苛立ちがそれを物語っている。しかしそれでも戦況をひっくり返す一手にはならなかった。その事実を飲み込んだ『強欲の黒』はすぐに機嫌を取り戻す。

 

「クク、クハ、クハハハハハハハハッッ!そうか、そうかっ!ここまでか、ここまで差があったか!私の戯れの攻撃ですら、そこまでボロボロな貴様と必殺の宝具を受けて切ってなお五体満足な私!圧倒的だ!残念だカルナよ、宿敵よ!最初から勝負にすらなっていなかったのだな…………」

 

 ――気に病む事は無い。貴様が弱いのではなく、私が……俺が強くなり過ぎたのだ。

 

 もうこの戦いを長引かせても得る物は何も無いと悟った『強欲の黒』は弓を抱えていない左手を開き、光球を構成した。

 

 いや、それは光ではなく一つの宇宙にも思えた。黒と光が混ざり合った破壊の性質。『強欲の黒』はこの大陸……あるいは星もろともカルナを滅殺しようとしていた。

 

「神性領域拡大。空間固定解除。神罰執行期限設定解除――もはや俺は人類悪の眷属に収まる器ではない、宇宙すら焼き尽くすこの炎でビーストⅢ/Rすらも凌駕し、銀河系全てを手中に収める神となる」

 

「……母なる大地すら滅ぼさんとするか、愚かな」

 

「愚かなのは、これから何も出来ずにくたばる丸腰の貴様だァッ!!シヴァの怒りをもって、全ての命をここで絶つ!」

 

 その肉体の主であったアルジュナが制限に制限をかけてやっと地球上で使用出来る程に威力を落とし込んだ『破壊神の手翳(パーシュパタ)』を箍が外れた悪魔は全ての縛りを外して放った。

 

 生きとし生ける全てを崩壊させる破滅の光を何の躊躇いもなく『強欲の黒』は自らの掌から地上へと落とした。

 

 

 

 

「『破壊神の手翳(パーシュパタ)!!』」

 

 

 

 

 「マハトマ乱入チャンス!!」

 

 だが、その光球は地上に激突する事なく、突如として空間に現れた巨大飛行物体の中心部に飲み込まれてしまった。

 

 

「……………………はぁっ?」

 

 

「防げない、避けれないなら、こういうやり方もあるのよ!シヴァの怒りは私ですら預かり知らない深淵の空間にキャトられたわ……うんうん、凄くマハトマを感じる!」

 

 グダおの世界のエレナ・ブラヴァツキーはずっと機を伺っていた。各地で救助活動に専念している小型UFO軍の操作はもう一人の自分に任せて、本体である巨大UFO『金星神・外なる偽神の書(サナト・ネクロノミコン)』に光学迷彩を施して、二人の戦いを見守っていた。

 

「援護が遅れてごめんなさいカルナ。えぇ、これは決してインド神話大戦争的なシチュエーションに夢中になってたせいとかじゃないの……」

 

「いや、絶妙のタイミングだ。礼を言おう、伴侶を得たエレナよ」

 

「カ、ルナ……貴様、ふざけるなよッ……!一対一の戦士同士の戦いに部外者を許したのかッ!!」

 

「積極的に部外者を狙ったお前がそれを言うのか。その厚顔無恥っぷりには敬意すら覚える」

 

 あまりにも理解が及ばない現象に対して呆け、そして怒りを露わにした『強欲の黒』に対してカルナは至極当たり前の事実を突き付けた。

 

「確かに戦士同士の決闘に第三者の力を借りたとしたのなら、クシャトリアとして恥ずべき物だろう。だが、お前は戦士ではない。只破壊のみを是とする獣畜生ならば、これは決闘ではなく駆除である。この戦いは世界を救う為であるがゆえに俺はお前を滅する最善を尽くす」

 

 真下にいるカルナに釘付けになっている『強欲の黒』は気付けない。先程、放ったカルナの槍の投擲が、その攻撃がまだ完全に完了していない事を。冷静になれば、アルジュナの肉体に紐づけられている記憶をもっとしっかりと読み取れば、この攻撃は予期出来た筈だろう。

 

「少し戦っただけだが、大体理解出来た。お前自身を構成しているものは『強欲』ではない。慢心、過信、軽率。それだけだ」

 

 まるで太陽からの鉄槌のようにその巨大な劫火は『強欲の黒』へと降り注いだ。カルナが最初に繰り出した槍の投擲。宝具『梵天よ、我を呪え(ブラフマーストラ・クンダーラ)』の付随効果として容赦なく黒き弓兵を地上へと叩き落とした。

 

「頭上注意だ。悪く思え」

 

「がああああぁっ、お、おのれぇぇぇっ――!!この程度でぇっ!」

 

 傲慢かつ強欲な悪魔は地へと堕ちた。焼き爛れた黒き衣を纏う『強欲の黒』は立ち上がり弓を構えようとする。まずはあの目障りな飛行物体からだ。あれさえ、片付けてしまえばいくらでも勝機はあると標的を変更する。

 

 その背後に死神がいるとは気付かずに。

 

「ようやっと、地に降りてくれたか。自慢の拳も空にいる者には届かんからなぁ」

 

「は……?貴様、いつか、そこに……」

 

「ここに召喚されて、ようやくアサシンらしい事が出来る。息を顰め、機を伺い、瞬く間に殺す」

 

『圏境(極):A-』。気を満たし、天地と合一し、気配を自然と一体化させる。武を極めた者にのみ許される感知不可能の完全気配遮断。老いてなお盛ん、アサシン:李書文は気配を消し、この一撃を叩き込む機を伺っていた。既にもうこの距離は彼の領域。

 

 そして今、自身が最も信頼する武の極致を神話の領域に入っている悪魔へと――。

 

「では一撃、馳走してやるか」

 

「まて――」

 

『強欲の黒』が弓を構えるよりも、退避するようも早く繰り出される。その武術は『人間』の頂き。

 

「我が八極に无二打(にのうちいらず)!」

 

 武術の神髄。彼が生涯突き詰めた武の極致。一撃で事足りると言わんばかりに気に呑まれた悪魔の神経に直接衝撃を送り込む絶技。『无二打(にのうちいらず)』は的確に黒き弓兵の核を突いた。

 

「ガァッ、アァッ!く、ソガァアッ……!」

 

「ふぅむ、殺すつもりだったが動きを止めるのに精いっぱいとは……。先のおぬしの同族との戦いで大体の頚脈は理解したつもりだったが…やれやれ、まだまだ精進が足りぬか」

 

「お、のれ――3人がかりとは、貴様ら、恥を――」

 

「何を言う。おぬしは神とやらになるのだろう?まさか3人程度で卑怯とは言うまい。さて、わしの出番は終わりだ。後は太陽の申し子殿に任せるとしよう」

 

 エレナ(軍服ママ)の巨大UFOの中でこの特異点のエレナ・ヴラヴァツキーが操作する小型UFOを掴み、李書文はその場を離れる。()()()()()()()()()()()()()

 

 状況を把握していない『強欲の黒』が顔を上げれば、そこには彼にとっての死そのものが熱く、神々しく、燃え盛っていた。

 

 

 ――カルナ、貴方にはこれを。もしもの時に役立つわ。

 

 

 妻と夫の財産は共有。グダおがライフワークと称して集めている虹の石を当然伴侶であるエレナ(軍服ママ)は自由に使える。旦那が血涙して集めた物なので本人に許可を得てからカルナに渡したが。

 

「俺はつくづく恵まれている。かつても……今もこうして、多くの者達から返しきれない物を授かってきたのだからな」

 

 その石の名は聖晶石。ある界隈では別名大令呪(シリウス・ライト)と呼ばれているそれは単価にしておよそ約120円。つわもの達の怨嗟と希望の回転を産み出す虹の欠片は令呪3画分の魔力を内包している。

 

 石を砕いたカルナは自身の中で絶対破壊の一撃を繰り出すのに十分過ぎる魔力が満ち出しているのを感じた。

 

『強欲の黒』への意趣返しのように宙へと浮かび、彼が纏う黄金の鎧と紅のマントは炎そのものと化して、手元に戻った槍へと収束していく。あまりの灼熱に周囲の大地は溶け、マグマの海と化す。

 

 これこそが疚しき者に混ぜ合わされた醜悪な怪物などには到底届かない正真正銘の必滅の一撃。

 

「ま、まて、待てカルナ――。こ、こんな決着でいいのか!?俺……私と貴様との因縁を断つ、決闘がこんな――」

 

「何度でも言うが、俺はお前を知らない。そして、もう口を開くな。お前がどこの誰だかは知らぬが、我が宿敵と似た外見でこれ以上の醜態を晒すな」

 

「ッッ――」

 

 

 

 

「神々の王の慈悲を知れ」

 

 極太の炎柱が天まで昇る。あまりの衝撃にそこを中心にマグマの津波が起こる。

 

「チクショウっ、チクショウッ!ふざけるなっ、ふざけるなぁっッ!!」

 

 

 

 

「インドラよ、刮目しろ」

 

 吹き荒れる炎柱の中でカルナは槍を掲げる。彼の声に呼応するように背中の紅き4枚の羽根が一つずつ展開される。

 

「クソッ、あの野郎……殺す、殺してやるッッ!!」

 

 

 

 

「絶滅とは是、この一刺」

 

 槍の穂先に世界すら焼き尽くす灼熱エネルギーの集中させ、標的に定める。

 李書文によって乱された体内の気が『強欲の黒』の動きを阻害する。彼は弓を満足に構える事すら出来ず、無様にもがく事しか許されない。

 

「動け、動け、うごけぇぇっ――!!!」

 

 

 

 

「灼き尽くせ、『日輪よ、死に随え(ヴァサヴィ・シャクティ)』!!」

 

 宝具発動の瞬間、カルナの背後で彼のピアスと似た太陽の紋様が光輝いた。対神、日輪、絶滅、雷光、凡そ普通の人間では到れない領域から繰り出される灼熱の一刺しが流星の如く放たれた。

 

「カルナアアアアアアアアアアアアッッ!!」

 

 文字通り神話の一撃。大炎の奔流が『強欲の黒』へ直撃し、爆音と共に巨大な灼熱のドームを造り出した。大陸すら削り取る日輪の鉄槌。声を出すことすら許されない正真正銘の絶滅の一撃がそこにあった。

 

 もし、かの悪魔が先程言ったように自身が神の領域に到ったというのが事実だとしたら、神を滅ぼす光槍が『強欲の黒』を消し去ったのは分かり切った結末だったろう。

 

「……是非も無し」

 

 宝具の破壊の痕、あまりのエネルギーにマグマさえ干乾びた末に出来上がった巨大なクレーター。そこにはもう存在する物は何も無かった。

 

 

 

 

【第三の戦】

 

 

 

 施しの英雄:カルナ VS 強欲の黒

 

 

 

 勝者:カルナ、エレナ(軍服ママ)、李書文

 

 

 

 

 

 




《許可なく聖晶石を使った者の例》

「そのつい、な? まるで金平糖のようにキラキラ輝いて美味しそうに見えた物でな? 砂糖をまぶして頂いてみればこれが結構イケてしまったワケなのだクハハ。いや、うむ。確かに汝の許可を得ずに百個程頂いたのは事実である。だが忘れてはおらぬか? 吾は鬼。強奪、簒奪、傍若無人そのものである。故にこれは吾が吾であるが故に起こった当然の結末であり、種族としての本能ともいえる。そう! 人間風に言えば悪気は無かったと言えるな!! 言えるから――、なぁ、あのぉ、そろそろ何か言ってくれぬか? 真顔で見詰められるのは叱責よりも応えるぞ。というよりもだなあんなに貯めておいて使わぬ方が悪いと思う! 度を過ぎた貯蓄は汝の為にもならん! うむ! そう考えると吾は汝のぱぁとなとして良き道を」








【48時間口腔拘束歯磨きしながら手マンプレイ&白式官能角コキプレイの刑】

「へぇぁっ~~……ッ♡ ぁぁっ♡ っっ♡ ひぁっ♡ ッッ♡ ~~ァァ♡ ほぇっ♡ ァァッ♡ ……ッッ♡ ~~~~♡ ~~ッッ♡ ひっ♡ ひっ♡ ひっ♡ えぐっっ♡ あぇぇっ♡ おっ♡ おっ♡ オッ♡ オッ♡ オほぉっ♡ ぁぁっ~~ッッ♡ らぇぇっ~~……♡ ひぅっ♡ はぁっ♡ はっ♡ んはぁっ♡ はぁぁっ♡ はぁぁっ♡ ひぎっ♡ アガッァ♡ ンァアッ♡ ひぎぃっ♡ ァ♡ ンァ♡ オッ♡ んんんぅっっ~~~~ッッッッ♡ へひぃ♡ へひひぃっ♡ にゃっ♡ にゃあぁっ♡ あっ♡ あっ♡ あっ♡ あっ♡ あっ♡ あっ♡ あがっ♡ がぁっ~~ッッ♡ んぎぃっ♡ ッッ♡ ァァ~~♡ へぅぁ~~♡ あひ♡ あひぃ♡ ひぃぁ~~っ♡ んほぉぁっ~~ぁっぁっ♡ おぁぁっ♡ ~~~~ッッ♡ ッ♡ ッッ♡ ンッッ♡ ンンッッ♡ あ♡ あはぁっッ♡ はぁぁっァッ♡ あはぁぁんぅぅっ♡ んふぅっ♡ んんんぅっ~~♡ ッッ~~~~♡ ひゃっ♡ ひゃひぃっ♡ ふぇぁあぁっ~~♡ ッッッ♡ ンンンァッッッ~~♡」

「ふぅ、じゃ次からはちゃんと気を付けるように」

酒呑「羨ましい」
頼光「羨ましい」
リリィ(お仕置きを受けたい欲望とマスターを悲しませる行為をしたくない葛藤に揺れる自分を抑える為にカリバーンの鞘に額を叩き付けている)








鏡面世界・万華鏡(ミラー・スコープ)
ランク:A+
種別:結界宝具
使用者:スコーネ
周囲の景色全てを映し出す氷で構成された鏡の城。原理は対象が放った攻撃手段を吸収し、並行世界を挟み、基準点を正反対にして再びこの世界に帰す。端的に言えば、敵の攻撃をそっくりそのまま返すカウンター宝具。『サファイアγ』のサポートを得て発動する事が可能。愛を謳う母の血を受け継いでいるように暴力行為を嫌う彼女は直接的な攻撃手段を有さない。有してはいないが……凍らせ、跳ね返す、その二つの防御手段が何人たりとも彼女を触れさせない。鉄壁と化す。ただし下の城は父殿に対しては無血開城。










アポアニメにおけるカルナさんの槍はマジやべべ。映像化の素晴らしさを知ったね。やっぱバトル描写はアニメがナンバーワン!こんなんで毎日種火周回やられたら堪ったもんじゃないよね(賢者モード)。





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週刊性年インボウマガジン⑩(第5章)


司馬イネスで一番驚いてるのは作者だゾ。



カルデアコレクションにて、司馬懿(ライネス)、アストライア、グレイ更新。





【エルメロイ次期当主様からアニムスフィアのご令嬢(ハロウィン・プリンセス)の姿を見ての有り難いお言葉】

「うわぁ、うわぁぁ――――、アニムスフィア家って結構、性的に倒錯してた家系だったのかな? そりゃあ、私だってあんまり褒められた性根はしてないし、不意打ち気味に本来とは正反対の被虐心に目覚めかけてしまう事もあるけど、さすがにその格好は無いと思うぞ。そもそも特異点って現地の人間の衆目に晒される可能性だってあるわけで、それをあんなムチムチ布面積封印指定の小悪魔コスで跋扈するって露出強にも限度があるだろ。いや、もしかしすれば……そういった羞恥心や見られる事による興奮をエネルギーとして術式に組み込んでいるのか? 天体科というよりは変態科? え……?あの少年にこの格好を強要されているのかい?いや、嘘だろ君、部下からのそんなエロチックコスを受け入れて、なおかつ満更でもないとか……。あのね、もう少し真面目に人理修復に取り組んだ方がいいと思うぞ。君達の変態的な特殊プレイに巻き込まれる周りの気持ちを考えた方がいい。”私の体は彼に造られてしまったのだから、しょうがない”? …………………………………………ソッカ、ソッカ、君はもう心身共にあの年下の男の子に開発されてしまったのだね。それはしょうがないね。まぁ、人理焼却なんて生命に危機が迫っている極限の状態だから生殖本能増し増しになってオルガズム・アニムスフィアになってもしょうがないね。大丈夫! 大丈夫だとも! ちゃんと君の話は聞いているさ、ただTPOは弁えるべきだよ、草葉の陰でマリスビリーが泣いてるかもしれないからね。取りあえず、私はここでお暇するよ。やめろ触るなドスケベがうつる」




 「女ァァッ!!女ァァッ!!女女女女女ァァッ!!」

 

 

 背後に迫ってきているであろう怪物には目もくれず、森の中を駆ける。元々、人の手が加わっていない自然の路だが自分が走る()()()に関しては計画と寸分違わないように注意を払って走り続ける。

 

 普通の人間とサーヴァント……いやそれすらも凌駕した怪物の追いかけっこなど本来は成立する筈が無い。

 レフによる爆破テロで魂だけに存在になってしまった私に、聖杯と幻想種達の素材諸々で器を構成してくれたグダお。

 

 とてもとても好調だ。肉体だけじゃない、あれから彼に散々抱かれて精液を注がれた所為もあるかもしれない。人理が修復されたら間違いなく魔術協会から封印指定を発令されそうなぐらいには人間離れしてしまったが(もちろんそんなのは御免だが)、今はその事に感謝しよう。そもそも肉体派ではない私が数十分走り続けても息切れしていないのだから、その気になれば背中の羽根で空だって飛べるかもしれない。

 

「おい逃げるな女!!抱けないだろう!!揉めないだろう!!しゃぶれないだろう!!挿れれないだろう!!」

 

「ひいいいいいいいいいっ!!」

 

 だとしても半泣きになってしまうぐらいは許して欲しい。そんな簡単に精神まで成長する事は無いのだから。いや、それはまぁ、父が亡くなり、カルデアの所長を引き継いで毎日のように吐いてた頃と比べれば自分でも少しぐらいはメンタルも強くなったつもりだけど……。

 

 チラッ。

 

 

 「SEX!!SEX!!SEX!!SEX!!」

 

「無理無理無理無理無理無理無理ぃぃッ!!」

 

 

 顔が怖過ぎる!!興奮で血管がハチ切れて血塗れてでも満面の笑みとか!しかも股についてるマンモスらしき獣の鼻なんてバキバキに反り勃っているし!もしかしなくてもそういう事よね!?ああもう最悪のメタファーよ!!

 

 というかそもそもの話、私は何で前線で体を張っているのかしら!?所長よね?責任者よね?カルデアのトップよね?もっと後方でどっしりと構えているものなんじゃないの?

 

「所定のポイントまで……後、2キロって言った所かしらっ……」

 

 それでも守られるだけの女にも、喚くだけのお荷物になるつもりも無かった。グダおと肉欲に溺れて安穏と爛れた日々だけというのも……うん、ほんのちょっぴりだけ魅力的なのかもしれないのが。自分が好きになった男には格好良い所も見せたいのだ。俺が助けた女はこんな凄い奴なんだって誇りに思って欲しいのだ。

 

「ハハハハハハハハハハハハハッハハハハハァァッ滾る滾る滾るぞぉっ!」

 

「罠もお構いなしっ……全然倒れない。無敵なのっ!?」

 

 ロビンとジェロニモによってここ一帯の森林はブービートラップの宝物庫だった。毒が塗られた矢が飛んでくる、毒が塗られた槍が用意された落とし穴に落ちる。毒が塗られたトラばさみが足に噛み付く。地雷が炸裂する。毒を混ぜ合わせた底なし沼に落ちる。

 

 けれども色欲の悪魔は止まらない。矢が刺さろうとも関係ない。落とし穴に落ちようとも意に介さないで即座に這い上がる。トラばさみに噛み付かれようとも地雷が直撃しようともスピードは落ちる事なく、私という獲物に喰らい付く事しか頭に無い。底なし沼をバタフライで泳いできてる姿を見た時は詳しくは言えないが女性としての尊厳を無くす所だった。

 

 効果があるとは思えない。これで倒せるだなんて思ってない。でもこの悪魔には出来るだけ、ダメージを――毒を受けてもらわなくちゃ困るのだ。

 

「あぁ、さっきから鬱陶しくて仕方がないわぁぁっ!!」

 

「マズッ!」

 

 いつまで経っても自分が求める女が手に入らない事に痺れを切らしたのか、担いでいた魔神柱が螺旋に巻かれた巨大な剣のような得物を構えた。グダおから聞いてはいる。あの元々の霊基がケルトの大英雄フェルグス・マックロイだというのなら、まだここで宝具を使わせてはいけない。『虹霓剣(カラドボルグ)』なんて地形一帯を破壊する対軍宝具なんてここで使わせてしまったら、計画が台無しになってしまう。あの怪物には生身で私を追ってもらわなければならない。

 

 だから、ここは背に腹は代えられない……。

 

「いやぁん、そんな無粋なもの使わないで素手で私の事、捕まえて欲しいなぁ♡」

 

「……………………」

 

 自分でも寒気がするぐらいの猫なで声を出して、控えめにお尻を振り、人生、初の誘惑を行った。

 

「ふふ、フフフッ、ハハハハハハァッ!!そうか、そうか!何といじらしい女よ!!その逃げる様もこの障害も全てお前の求愛かぁ!ならば、俺は応えなくてはなるまいて!!おぉっ!我が怒張がさらに滾るぞぉぉぉっ!」

 

 目論見通り、剣を仕舞ってまた追いかけてきてくれたけど、私は何だかとても死にたくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「追いかけっこは終わりか。厭らしい女よ」

 

 誰が厭らしい女よ。と否定したい気持ちにはなったが、今の自分の格好とさっきの所業を考えるとまるで言い返す事が出来なかった。

 

 取りあえず、ありったけの罠を喰らわせるように逃げたつもりだったが、やっぱりというか致命的なダメージにはなっていない。未だ興奮に下半身を震わせている怪物には余裕しか無かった。

 

 私が足を止めた場所はさっきまで逃げ続けていた木々が生い茂る鬱蒼としたジャングルとは変わり、ゴツゴツとした岩肌が目に入る拓けた場所だった。この森を熟知しているロビンから聞いている。ここ一帯には地下洞窟があり、その中には天井部が脆くなっているポイントもあると。

 

「そうね。ここまでが私の勝利への逃走経路よ」

 

「ぬぅっ!?」

 

 人間一人ぐらいなら問題ないかもしれない。だが、下半身をマンモスにしている重量系の怪物が不用意に足を踏み入れたら、その地盤は簡単に崩れ、天然の落とし穴へと誘う。

 

「ははは、まだ俺を焦らすか!!よほど激しく犯されたいと見える!!」

 

 下からあの怪物の嘲笑うような声が聞こえる。

 人類悪に改造された悪魔を地下洞窟に落とした程度でダメージを受けるワケが無いのは私も敵も承知の上だ。

 けれども、洞窟という空間は音が反響し、よく響く。野外で聞くより、音が籠るだろう。

 

「ようやく、私の出番ね!芸術を介さない変態に私の歌を聞かせる気はないんだけど、今日は特別ファンサービスよ!最高のヒットナンバーを見せてあげるわ!」

 

 怪物が地下洞窟へ落ちたのと同時にファンシーな帽子と衣装に身を包んだドラゴン娘が飛び出した。エリザベート・バートリー……彼女だけでなく、他のサーヴァント達とも合流地点にここはなっている。李書文の一撃を耐えたこの怪物を滅する一撃を持つのはグダおやカルナ級のサーヴァントだろう。

 

 私達ではどうしても火力に難がある。だからこそ、手札の全てを尽くして、ありったけのダメージを負わさなければならない。出し惜しみ、一切無く――!

 

「イカしたバックライトを頼むわよジェロニモ!!」

 

「やれやれ、私の宝具は照明代わりではないのだがね……」

 

 ドラゴンの翼で飛び上がったエリザベートはジェロニモの宝具と重ならない角度から、狂音波を穴めがけて届ける。

 

 

「『竜鳴雷声(キレンツ・サカーニィ)!!』」

「『大地を創りし者(ツァゴ・デジ・ナレヤ)』」

 

「ぐ、おっっ、オォォォッッ!!」

 

 エリザベートの殺人級音痴攻撃に加え、ジェロニモの宝具『大地を創りし者(ツァゴ・デジ・ナレヤ)』……アパッチ族の伝承を再現する、私のような魔術師では到達しえない大魔術に相当するもの。召喚されたコヨーテは味方を強化し、コヨーテを追いかける太陽の陽光は洞窟への穴に降り注ぐダメージとなる。

 

 地下洞窟という限定された空間で音と光が怪物の身を襲う。宝具級のダメージをまともに受けたその成果は――。

 

「生温いわぁぁっ!!」

 

 鈍重そうな下半身からは想像も出来ない脚力で怪物が地上へと飛び出した。

 まぁ……知ってたわよ。この程度で倒れるような相手じゃないって事は。それにダメージを与える事も味方に強化を施す事も目的だけど、もう一つ。これは時間稼ぎ。彼女の宝具詠唱をタイミング良く完了させるまでの時間稼ぎ……!

 

「畳み掛けるわよっ!ネロ!!」

 

「承った!!開け、ヌプティアエ・ドムス・アウレアよ!」

 

 味方のバフが完了した次に行うべきは当然敵へのデバフ。

 怪物が地上に出た瞬間、既にネロの『招き蕩う黄金劇場(アエストゥス・ドムス・アウレア)』は展開されている。ローマ皇帝である彼女の権力と欲望そのものを現した大魔術。もうここは北アメリカの何処にある森林ではなく、マリッジ風味に建造された黄金劇場。

 

「ぬっ?体がっ……重い?」

 

「この劇場においては余こそがルール。余こそが主役。色情に狂った悪鬼よ……今、この場で余達が討ち取ってくれる。それでこの劇はエンドロールである!」

 

 ネロが剣をエリザベートが槍をビリーが銃をジェロニモがナイフを、4人……私を入れれば5人が怪物を囲んでいる。ここまで相当なダメージを与えた。消耗は恐らくしているであろうと信じたい……。ここで手を止めず畳み込む……!

 

「お、おぉ!あの女には劣るが良い女達!!急くな急くな!お前達の相手はあの小悪魔の如き淫らな女の後に十分にしてやろう!俺は!メインディッシュは!先に食べるタイプだからな!!」

 

「なにおう貴様!!オルガマリーが良い女である事は認めるが、ここで一番なのはどう考えても余であろう!露出度か!やはり男は露出していればよいのか!?」

 

「んな事言ってる場合じゃないでしょ!?ていうかネロ、これ本当にコイツ弱体化してるの!?くぅッ!一撃、一撃がっ……馬鹿重いんですけど!!」

 

「それだけコレが規格外って事でしょ!いやこれだけ鉛玉ぶち込んでも倒れない相手の殺し方とか誰にも教わった事ないんだけどな――!」

 

 ここに来るまで相当数のトラップを受けておいて、サーヴァントの宝具の直撃を受けておいて、圧倒的不利な状況でもまだ……追い詰められているのはこちらだった。剣と腕を振り回す剛力だけで4人の攻撃を捌ききっている。いや……それでも全てではない、致命的な攻撃だけ優先的にはじいているだけだ。比較的ダメージが少ないと踏んでいる攻撃は最初から無視をしている。

 

 だがむしろそれは好都合。ここで殺し切れるだなんて夢にも思ってない。ダメージの大小関わらずもっともっとこの怪物には4人の攻撃を受けてもらう必要がある……。

 

「よい閨だ……。我が寵愛を示すのに相応しい……。ならば邪魔者の掃除をしなければならぬ……!男男、男は!!俺以外の男はぁぁっ!!この空間に必要無しィィィイイイイ!!」

 

 そんな怪物が邪魔者極まりない男を先に片付けようとビリーとジェロニモに完全に狙いを定めた。だめ、まだ駄目、彼等がここで欠ける事は許さない。指でハートを模った私は魅了(チャーム)の魔術を起動する。グダおがラブラブ波動オルガマリービームとかセンスの欠片も無い名前を付けた魔力弾。オルレアンの時はワイバーン程度を魅了するので精一杯だったけど、最近になってはサーヴァント相手でも効くようになった。

 

「こっちを見なさいっ……!」

 

 そもそもあの怪物は初めから私に夢中だったわけで、意識をこっちに向けるのは簡単な事だった。けど、何かしらね……この躰になってから魅了とか火とか元々私には無かった属性ばかり扱えるようになったのは。

 

「お、オォォォッ、ウヘヘヘヘヘっ、そんなにも悩ましく求める必要は無いぞ美しき女よ。俺は今すぐにでもお前の方へと向かおうと」

 

 ゆっくりと方向を変え、男の欲望全てを詰め込んだともいえる下卑た顔がこちらに向けられる。真正面から相対するだけで心が折れ、その場にへたり込みたくなる。足を止めるな、思考を止めるな、眼を逸らすな。泣き喚くなら、醜態を晒すなら後でいつでも出来る。私は絶対に勝って、皆の元に帰って来るのだ。

 

「いや、参った参った。まさかサーヴァントがマスターに庇われるなんてねぇ。お嬢様――マスターがあれだけの『覚悟』を見せたってなら僕も見せないといけないよね!真の『覚悟』ってやつをさぁ!」

 

 小柄な少年が大胆不敵に笑った。

 アメリカで有名なガンマン。少年悪漢王。滑らかにかつ息をするように気付けば、彼は銃を構えていた。いや構えていたのではない、もう撃っていた。既に終わっていたのだった。

 

「どうだい?女の子のアソコよりもっと素敵で刺激的だろ?」

 

「ガアアァッヒィィッ!!?」

 

 銃声は確かに一つだった。だが、怪物の下半身の鼻に刻まれた三つの銃創が放たれた弾丸が一つじゃない事を物語っていた。ビリー・ザ・キッドという英霊を象徴する宝具、神速の三連射撃『壊音の霹靂(サンダラー)』。瞬きよりも早い神がかった早撃ち。

 

「これ見よがしに大層なものぶら下げてたらさぁ、狙ってくれって言っているようなもんだよねぇ!」

 

 野太く悲鳴を上げた怪物の様子を見る限り、ここでやっと痛恨の一撃を加える事が出来た。だからこそ、だからこそ……今まで女を犯す事にしか興味が無かった悪魔の逆鱗に触れてしまった。今まで抜く事の無かった宝具を振るう事を許してしまった。

 

 「鬱陶しいわぁっ!!」

 

 悪魔が螺旋剣を地面に突き立てた瞬間――黄金劇場よりも眩い虹色の光が私の視界全てを埋め尽くした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ハァ、ハァ、ハァ、まだ、生きてるみたいね……」

 

 

 むせ返る土の匂い。ネロの黄金劇場を展開する前の場所、自分が怪物を罠に嵌めた地べたで横たわっている事に気付く。怪物の宝具によって彼女の宝具は完全に崩壊し、その余波によってサーヴァント達は皆、倒れ伏せていた。消滅していないだけ、まだマシかもしれない。当然、私も。

 

 サーヴァントと同じぐらいの耐久力になってしまった事を喜ぶべきか、悲しむべきかは置いておいて、まずは目先の危険を排除しなければならない。

 

 震える四肢に力を入れて、立ち上がり、眼前に君臨する悪魔を睨み付ける。

 

 

「そう、熱い瞳で見詰めてくれるな。興奮でペニスがはち切れてしまうわ。はぁ、ハハハ、ハァ――ようやく、ようやくだ。垂涎物の馳走の前にここまで焦らされ、ようやくありつける……。どこから味わおうか……迷う、実に迷う」

 

 目の前のコレは勝利を確信しているのだろう。目に見える範囲で私を守るサーヴァントはおらず、色欲に染まった悪魔が私を手籠めにするのは赤子を捻る事より簡単だった。

 

「……何をしているのかしらね、私は。こういうのってどっちかというと代行者とかそっちの仕事よね、そもそも」

 

 魔術師の義務だの何だの格好つけた事をつい、皆の前で言ってしまったがそれでも泣き言を零すのは止められない。

 けれど、この泣き言は諦めから来たものでは決してなく。勝利を確信した安堵から。

 

ここだった。こここそが私にとってこの戦いにおける終着点だった。あの怪物を打破する為のゴールは最初から定めていた。

 

「最初から……最初から決めていたのよゴールは……。後はそこに至るまでの道筋を作るだけだった」

 

 獣欲に捉われた怪物には既に私の言葉など耳に届いていないだろう。頭の中では幾千の犯し方を妄想しているのかもしれない。

 

 だから――自分の後ろにある何も無い空間から音も無く現れた緑の狩人にも気付かない。

 

 一人だけ、待機してもらっていた。怪物の宝具の被害から逃れる為にネロの黄金劇場の中にあえて入らなかったサーヴァントが一人。

 

 

「……さっさと決めろ馬鹿者……。オルガマリーの意志に免じて、この余が美しくない手段を用いたのだから、な――」

 

 黄金劇場の中で畳み掛けた時も。ネロの剣には、エリザベートの槍には、ジェロニモのナイフには、ビリーの銃弾には全て毒が塗られていた。あの場で打ち倒す事が目的ではなく怪物の体を出来るだけ多くの毒に犯す事だけが目的だった。

 

 全員の宝具を確認した時、恐らく、怪物を打倒し得る宝具を持っていたのは彼だけだった。

 

「健気で無駄な抗いご苦労だった……だがそれも含めて俺が愛してやろう」

 

 愛……?鼻で笑いそうになった。残念だけど外面だけで私を求める男なんて御免。色気も無い世界で今まで育ってきた私だけど、男に対する理想は高いわよ。

 

 

「無駄なものなんて、ここに来るまで何一つ無かったわ。言った筈よ……ここに到るまでの全てが私の勝利への逃走経路だって。あなたは既にもう、()()()()()()()()……!」

 

 背後から彼を――ロビンフッドを象徴する緑色の弓から一本の矢が怪物に放たれた。

 

 それをまるで背中に瞳が付いているように歪んだ螺旋剣で叩き落とす。

 

 それでもロビンの表情には何一つ焦りが無い。自分を狩る側だと信じて疑わなかった獣を屠殺しようとする冷たい視線。

 

「いやいや、本当に化け物染みた反射神経だねぇ、オタク。でも圧倒的な自信から受けきったのか知らないけど、完全に避けるべきだったな。生憎だけど、オレの宝具は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「オッゴォッッ!?」

 

「『祈りの弓(イー・バウ)』」

 

 ここに来るまで溜めに溜めて来た不浄の毒が膨れ上がる。

 アーチャー、ロビンフッドの宝具『祈りの弓(イー・バウ)』。イチイの木から作られたその弓は矢が命中した標的の体内にある毒を直ちに増幅させ、爆発させる能力がある。

 

 その効果は紫色に変色し、体中のあらゆる所を膨れ上がさせて、眼球、口と血を垂れ流し、もがく目の前の怪物の様を見れば一目瞭然。ここに来るまで一体、どれだけの毒を溜め込んだ事か。驚嘆すべきはその毒に犯されながらも、ここまで暴れ続けた無尽蔵とも思える体力か。

 さらに付け加えるなら、この宝具が悪辣な所は、掠ろうが、得物で防ごうが、標的に当たったという事実さえあれば宝具が発動するという事。

 

「自分が囮になって、逃げ回っている間、オレの宝具で殺せるレベルまでコイツの体内に毒を喰らわせ続ける。言うのは簡単ですけどね、まさか実行に移す大馬鹿がいるとは思わなかったわ。いや、勿論、褒めてますけどね?」

 

 私という女に夢中になって、意に介してなかった毒が無視出来ないレベルで怪物の肉体を破壊し尽しているだろう。

 無駄な物なんて何も無かった。私が命がけで逃げ続け、嵌め続けた罠も。サーヴァント達が自らの得物に毒を塗ってまでつけた傷も、決死の覚悟で放った宝具も、全てはこの怪物を仕留める最後の一手に繋がった。

 

「お、オォォォォッッ!女、女、オレの女よぉぉぉっ!オレの女が離れていくぅぅっっ!!あ、アアアアァァァァッ!!」

 

 跪き、もはや満足に肉体を動かせなくなった怪物は血涙しながらも、私に手を伸ばそうとする。だが、もはや毒だけではなく、ロビンの宝具の影響かその躰から樹木が生え、完全に怪物を取り込んだ天然の牢獄となった。

 

「お、オオ、おれ、オレノモノニナァァレェェェェエエエエッツ――!!」

 

 ここに来て、まだ自身の欲望に忠実なのは感嘆する所だが……。

 

「ほら、マスター。男の熱いラブコールだ、ちゃんと答えを返してやらないとな」

 

 毒の樹に取り込まれ、後僅かの命となった男に火を灯した指を向ける。

 モエテ、モヤスワ、ミンナモヤスワ、モヤシテアゲル。この肉体になってから魅了だけではなく、火属性の魔術の行使も容易になった。私の今の体にとてもよく馴染む。この炎はまるでいつの日か悪夢で見た燃え盛るカルデアスのようで。私の魂に焼き付いて離れない。

 

 魔術師らしい優雅さの欠片も無い泥仕合もイイ所な決着のつけ方だった。それでも私が自ら、この戦いに臨んだ理由は。

 

 

 ――す、凄い!さすが所長だ!インテリジェンスと美しさだけでなく、勇猛さも兼ね備えていたなんて!

 

 ――いやーまいった!君こそ真の万能!現代のレオナルド・ダ・ヴィンチと言ってもいいね!

 

 ――サーヴァントすら凌駕するビーストの眷属を倒すなんて、なかなか出来る事じゃありません!さすが所長、さす所長です!

 

 ――グダおに相応しいのは所長だった……。敗北者はクールに去るよ……。

 

 

 魔術師としての義務とか人理保障機関のトップとしての責任とか、そういうものよりもっと単純で俗物的で――。

 

 

 ――お疲れ様、オルガマリー。よく、頑張りました。

 

 

 ただ、皆に褒めてもらいたかっただけだった。好きな人に認めてもらいたかっただけだった。私がここまで頑張って来た理由はそれ以外に無かった。

 臆病で泣き虫な女はもう卒業。だから、私は目の前の怪物にも逃げずにこう言うの。

 

 

「ごめんなさい。私、好きな人がいるから」

 

 

 大樹が燃え盛る光景は今まで見たどんな炎よりも美しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【第五の戦】

 

 

 

 親愛の姫:オルガマリー・アニムスフィア

 

 顔の無い王:ロビンフッド

 

 アパッチ族の戦士:ジェロニモ

 

 少年悪漢王:ビリー・ザ・キッド

 

 ローマの花嫁皇帝:ネロ・クラウディウス

 

 歌い踊る竜娘:エリザベート・バートリー

 

 

 

         VS

 

 

 

  色欲の豪姦魔

 

 

 

 

 勝者:オルガマリー・アニムスフィア達

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 









次回、英霊編第五章完結。







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週刊性年インボウマガジン終(第5章)

ブラック・ファイア「アヴェンジャーズ、あっせんぼう!!」

スリーピン・アイ「私は嬉しい……。ハリウッド映画に抜擢されるとは、これでますます世の婦人方がほっとかなくなるでしょう」ポロロン

キャプテン・シールダー「ヘラクレスさんは全身緑色にされてますし、私もいきなりこんな盾を渡されて一体どうすればいいのでしょうか先輩」

アンアンマン「同人誌の次は映画かぁ。影響されやすいお年頃だから温かい眼で見守ってあげようね、マシュ」

雷神キントキ「いやいや文句はねぇぜ大将!俺っちにピッタリな役も用意してもらったんだ!お天道様に負けねぇぐらいのスパーキング見せてやるよ!!」





映画の世界で邪ンヌ主役ってつまりこういう事? 違う? マンガでわかるライダー「ジョル○○・メリ○○」出たいしない? しないかー。




4か月以上かかった5章も今回で完結。もっとダイジェスト方式にすれば早く終わったのにね。半年近くエロを書いてないR18作家がいるらしい。


いつも誤字報告、感想、評価、閲覧くれる読者様の方々は3000回愛してます。




「はい、こちら愛しのシータです。大丈夫です。ギャグパートはもう終了したので真面目にやります。監獄要塞の残骸に隠れて、巨人の様子を伺っていたのですが少々マズい事になったかもしれません」

 

 隣から式部先生の書物に眼を剥かせながら水音を響かせているもう一人の自分と共に薄い金属製の板、魔術という神秘を壊す神器スマートフォンなるものでラーマと連絡を獲り合っている男装姿のシータが最後に残った殺生院キアラの眷属『暴食の巨人』の動向を伺っていた。

 

「魔神ケルト兵は全て巨人に喰われました、この島には私達以外は綺麗さっぱりです。なのでてっきり私達を探し始めるかと思っていたのですが……」

 

 敵味方の区別すら無く、目についた生命体を手当たり次第咀嚼していく『暴食の巨人』。みるみる成長していくその体長は監獄要塞には納まりきらず、次の行動はシータの予想を覆した。

 

「えぇ、はい。海を渡ってアメリカ大陸の方に向かっています。質より量なのでしょうか?より多くの獲物がいる場所へと足を進めています。ラーマ様、私が斬りますか?」

 

 

 

『いや、その必要は無い。もう姿は確認出来た』

 

 

 

 

 

 

 

 二人のラーマがいる場所はカリフォルニア州のオークランド。アルカトラズ島からそう離れていない大陸の港。剣を携えた赤髪の少年に同じく赤髪を二つに束ね、弓を構える花嫁姿の美女。まるで姉弟のようにそっくりな二人の戦士は津波を起こしながら、徒歩で大陸に迫ってくる巨人に一切物怖じをしていなかった。

 

「カヴァンダよりも大きいな……」

 

「シータよ。連絡を取っているのは余のシータを保護してくれた汝の家族とやらか?……まさか、既にそこにシータがいるのか!?頼む、声だけでも、聞かせてくれ!」

 

(……シータ(男装)、もちろん分かっているな?)

 

(はい、余計な事はもうしませんよ)

 

「シータ!シータ!!無事なのか!?頼む、声だけでも聞かせてくれ!」

 

「……んっ、あっ、はぁ……ら、らーマ様ぁ……?」

 

 ラーマは歓喜した。途切れ途切れでどこか熱っぽい声で水音らしきノイズも聞こえたがそんな些末事がどうでもよくなるくらいに。決して会えないと思っていた生涯の伴侶とこうして再び声を交わす事が出来たのだから。

 

「あぁっ!良かった!本当に、本当に良かった……!」

 

「はぁ、はぁ……。私も、んっ、こうしてラーマ様の声ぉ……聞きながらする事ができてぇ……体が、嬉しがってますぅ……」

 

「もう少しの辛抱だ、すぐに余が向かいに行く!」

 

「はい、辛抱します……あっ、あっ、ラーマ様が来るまでぇ、んぅ、ぁやぁっ、どこにもイキませんぅ……」

 

「余の剣であのような巨人……一息に貫いてみせるともっ!」

 

「巨チンで……ラーマ様が貫かれて……?あぁっ、そんな、す、ごい……!」

 

 シータ(男装)は確かに余計な事はもうしていなかった。というか既にしていた。離れ離れになっていた比翼の夫婦。そんな二人の会話には悲しいぐらいに齟齬が発生していた。

 最愛の人と会えた喜びでラーマは気付いていない。電話の向こうでシータが『七歌物語』を読みながら、ラーマの声をおかずに既に三回は達している事に。全然辛抱していないし、普通にラマニーしまくってイキまくってる。

 

 別世界の自分にも高尚な文化を布教出来たシータ(男装)は満足気にシータと電話を代わってもらった。

 

「世界は違えども、やはり同じ私。ラマニストとしての素質は十分にあったようです」

 

「後で説教」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「腹が減るんだよぉっ。喰っても喰っても、足りやしねぇ……。しゃぶって、噛み砕いて、飲み込んで――」

 

 ベオウルフという霊器に魔神柱『バアル』を暴食の原罪として、注ぎ込み改造を施された眷属の姿は皮肉な事にまるでかつて彼に討伐された巨人の化生「グレンデル」のようだった。

 英霊ベオウルフ時の金髪も今では乱雑に延び、黒ずみ、その風貌はただいたずらに口に入れる生命だけを求める暴食の化身。食せば食す程に成長するのではなく、飢餓を覚えれば覚える程、『暴食の巨人』は成長をする。だがその体系に見合う程の食事を行う事が出来るワケもなく、成長すればする程、飢餓を覚えて、また再び大きくなるという悪循環。キングプロテアの如き、際限なく成長し続ける巨人は全長100mまで到達し、今度は海から水を掬い、口に運びながら、より多くの生命がいる大陸に進んでいた。

 

 そして、これ以上、その巨人を進ませんとする二人のラーマは一つの武器を手にしていた。

 

 ラーマ(花嫁)が『狂竜』を屠り去った弓。ラーマ自身が持つブラフマーストラと似た紅蓮の弓は彼等の身の丈以上の大きさを持ち、矢は装填されていなかった。

 

「この宝具は本来1人で使用するものではない」

 

 弓を構えるラーマに覆い被さる形でラーマ(花嫁)はもう一人の自分自身と手を重ねる。まるで弓の扱いに不慣れな若輩者に教えを授ける指導者のように。

 

「この弓は3人で引き放つ事で真の威力を発揮する。1人よりは2人、2人よりは3人だ」

 

 ラーマ達の魔力によって構成された矢がつがえられた。ラーマ(花嫁)の説明通り、それは1人で彼女が放っていたのが霞んで見えてしまう程に強靭で荒ぶるオーラを持った矢だった。

 

「余の夫の国では3本の矢という逸話があるらしい。それにちなんでいるワケではないが……今回は2人で十分だ。3人で放つ必要は無い。あまりに威力が強力過ぎてな、下手をすると背後にあるアルカトラズ島まで吹き飛んでしまう」

 

 1本では簡単に折れてしまう矢も3本ならば、容易に折れる事は無い……そんな毛利元就の言葉にシータも「確かに1人遊びより3Pです!ラーマ様のおTINTINにマスターの肉棒と私の張形を加えた3本の矢があれば、夜の結束も崩れません!」と感銘を受けたそうな。

 

 花嫁となり、雌となったラーマの宝具『不滅の嬲情矢(ラーターナナ)』。彼女の家族に当てはまる者なら、弓を引く人数によってその威力は桁違いに跳ね上がる。

 ランクが上がった矢を見る限り、この世界のラーマも元を辿れば女の子となったラーマと同一人物であり、血の繋がりという点でいえば、彼女の家族認定をされたという事なのだろう。

 

 だが、そんなラーマ(花嫁)による宝具の説明もラーマの頭の中には入っていなかった。

 

(体が近い!背中に慎ましくも柔らかい感触が当たっている!物凄く良い匂いがする!)

 

 ピッタリと自身の背中に張り付いて、手を重ねているシータ(と彼が思い込んでいる)に思春期真っ盛りの中学生よろしく心臓が荒ぶっていた。

 異世界の別人といえど、長い間、触れるどころか会う事すら出来なかった妻(と彼が思い込んでいる)との突然のスキンシップにラーマの弓を持つ手が震えてしまう。その震えを抑えるように強く握り締められ、さらにドキりとしてしまう悪循環。

 

「違うんだシータこれは浮気じゃない不貞じゃない鎮まれ鎮まれ余のマーラ」

 

「おい前屈みになるな。姿勢を伸ばし、標的を見据えろ」

 

 それでもシータを助けるという意気込みに偽りはなく。興奮を抑えて、無理矢理弓を引く。

 

「弦を限界まで引け。息を合わせろ」

 

(ふおぉぉぉぉぉっ!息がかかって!シータの!シータの息がぁっ!)

 

 シータ禁欲状態からのいきなりの濃密な供給にラーマも下腹部が熱くなってしまうのを感じる。彼は今だけ周りに誰もいない事に感謝した。特に今の自身の状態を正面から見られるワケにはいかなかったから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ワァァァアァァァァァッッ!ラーマ×ラーマキテル!!我が世の春がキタアアアアアアァァ!!公式からの供給で妄想が捗る捗る!雄ラーマ様のマーラがご立派してる丸わかり!そしてそれを隠すように少し内股になっているラーマ様の雌みが高い、あぁこの時からもう素質はあったんですねまるで新芽を慈しむ造園士の気分ひゃっはぁ」

 

「ラーマ様が後ろから花嫁姿のラーマ様に覆い被さられてあぁそんな完全に入ってるじゃないですかやだぁ。雌のラーマ様に雌にされてしまうラーマ様。前もラーマ様後ろもラーマ様終わりのない永久供給機関、天上はここにあったんですね。寝取られ?いえ、ラーマ様にラーマ様を寝取られるならむしろ興奮しますが何か」

 

 

 バッチリと見られていた。大陸各地に飛ばしているエレナ(軍服ママ)の小型UFOはこちらにもきており、シータ(男装)の熱い要望によりアルカトラズ島とオークランドで絶賛生中継だった。

 

 勇ましくあろうとも後ろにいる女よりも女らしいラーマ様(花嫁)によって頬を紅潮させ、身をよじるラーマ様、ピチっとした黒い下履きから窺える確かな膨らみの映像は二人のラマニストを興奮の渦に叩き込んでいた。

 

 一応、矢をつがえている二人は妻達を助けるという名目で来ているのだが世界の終わりのような声を上げて狂喜乱舞しているシータ達はどうしようもないぐらいに腐っていた……早すぎる。

 

 

 

 

 

「あ?なんだ?眩し――」

 

 

 結局の所、マスターの手によって女の子にされたとはいえ、インド神話における大英雄。さらには彼の精液によって進化を遂げたラーマ(花嫁)の宝具は本来の威力には及んではいないとはいえ、災害とも言える程に成長した『暴食の巨人』の上半身を跡形も無く吹き飛ばした。

 

 星のように流れていく魔弾は暴食を続ける巨人の口へと吸い込まれ、光と爆風によって構成された巨大な球型の炎となって大海を照らした。

 

 実にあっけなさ過ぎる最期だったが、これは『暴食の巨人』が弱いというわけではない。飢餓を覚えれば覚える程、成長するスペックと耐久力、破壊力に関しては今回、殺生院キアラが召喚した眷属の中ではトップクラスだが、それによって俊敏性と思考力は完全に欠如していた。

 

 故に『暴食の巨人』を殺し得るだけの攻撃力という高いハードルさえ超えてしまえば、実に楽な仕事である。

 

 カルデア島に住む彼女達ならば「キングプロテアの方が万倍厄介」と口を揃えて言うだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【第六の戦】

 コサラの王:ラーマ

 花嫁にされた夫:ラーマ

 VS

 暴食の巨人

 

 

 

 

 勝者:ラーマ(♀)×ラーマ(♂)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 エレナさんが操る小型UFOに乗り、敵本拠地であるワシントンまで向かう私達。各地で奮闘していた皆も徐々に合流していった。大なり小なり傷は負っていたけれども、エレナさんの話を聞けば、味方陣営で消滅したサーヴァントはいないらしい。

 主要メンバーで今、この場にいないのはグダおとついてる花嫁ぐらい。もしかすれば、グダおの事だから、さっさとワシントンで殺生院キアラと決着をつけていそうなものだが……。

 

「正直、所長がグダおの力を借りずにラプチャーの眷属を倒すとは思いませんでした……。てっきりやっぱ無理ぃ!って喚いて泣きつくもんだと」

 

「まぁ、喚いてたのも泣いてたのも事実ですけどねぇ」

 

「シッ!黙ってなさいロビン」

 

「ですが李書文さんの拳をものともしなかったあの悪魔を打倒出来たのは素直に素晴らしいと思います!所長はカルデアのトップとして相応しい実力を既に兼ね備えていたのですね!」

 

「あぁ、マシュ……。私の味方は貴女だけよ」

 

 所長があの悪魔を倒したと聞いて、書文さんの瞳がピキンと光ったような……。

 純粋に大金星を上げた所長を褒めるマシュを感極まった所長が抱き締める。わたわたと慌てるマシュも可愛いがそのなすびちゃんはうちの大事な後輩なので百合の道には導かないで欲しい。

 

『最初の頃はマシュが怖くて、トイレでゲーゲーしてた所長が成長したね……』

 

 確かに一見すればクソ雑魚メンタルなのは変わらないけど、今の所長は同じクソ雑魚メンタルでも形状記憶合金性。折れてもすぐに戻る精神性を有しているように見える。

 

 くっ、これが男に抱かれた女の余裕か。私と所長ではまだ回数に圧倒的な差があるし……。

 

「やはり露出度なのでしょうか。私もシャツとスカートの丈を半分ぐらいにしてパッツンパッツンに詰めれば獣になった父上にゲイ・ボルグしてもらえます?今、ちょっと服斬りますね」

 

「そんなはしたない格好をしていると異母殿からまた槍が飛んで来るぞ」

 

「現役時代にあんな対魔忍みたいな格好している女に服装についてとやかく言われたくないです!感度3000倍になってその辺の魔獣とFUCKされればいいんですよあんな女ぁぁあああっ!?」

 

「言ってる傍から……」

 

 虚空から投擲されている槍の雨を叫びながら避けているマイフレンドたるスカナナの言う通り、もっと服装からのセックスアピールが必要なのかな?確かにアイドル衣装とか、プラグスーツとか、学生服には反応してたわけで……。

 

「さすがに水着の魔術礼装とかは、ないよね……」

 

『あるよ』

 

「あるんかい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめん逃げられちゃった」

 

 よほど激しい戦いがあったのだろうか、私達がホワイトハウスがあったであろう更地に到着した時、桃髪の女ギャングのような格好をしている女の人はそう笑いながら、私達に聖杯を投げ込んだ。この特異点の原因となる聖杯を。

 似たようなマフィアの格好をしたグダおも隣にいて、ペアルックでにこやかに話す二人をお似合いに見えて、ムムムとなりかけたが――。

 

「お疲れ様、皆。よく頑張った」

 

 私達の姿を確認するやいなや、私、所長、マシュ、3人まとめて抱き締められるとそこら辺の嫉妬心なんて簡単に吹き飛んでしまうぐらいには私も扱いやすい女になってしまったのだと思う。

 

 その後、スカナナとスコーネの子供二人も抱き締めてグルグル回っている姿を見ると父性を感じて、キュンキュンしてしまう。

 

 というより逃げた?あの初対面だろうが公開オナニー絶賛公開中する羞恥心の欠片も無い女が?何の冗談だろうかと思ったが、彼女が投げ込んで来た聖杯は紛うことなき本物であり、それはこの特異点が修復された意味を示す。う――む、大変は大変だったけど、最後は拍子抜けというか……。私としてはあの女と雌雄を決する気満々だったのだけれど。

 

「まさか核心突いただけであんな取り乱すと思わなかったわ。人類史上最悪の淫魔だの何だの言われているけど、結構可愛いもんだったわよ」

 

「メイヴちゃんにレスバで勝てる女の子ってそうそういないと思うんだけど」

 

「体だけよ経験豊富なのは、心は処女。そんな女だったわ」

 

 まるで精神世界でグダおに抱かれた私と正反対みたいだぁ。

 そんな益体も無い事を考えている私に女ギャングの格好をした彼女――メイヴは突然近づき、クンクンと匂いを嗅ぎ始めた。いや、ちょっと今は汗と土まみれなので止めて欲しい……。

 

「ふぅーん、貴女が彼のマスターね。ふふ、体は処女なのに、心は破瓜済み、そんな匂いがするわ。一体、どこでこの子に抱かれたのかしら?」

 

「どんな匂いよ……」

 

 所長のツッコミに同意しかない。スカナナも「裏切ったなッ!私の気持ちを裏切ったな!」みたいな瞳で睨み付けないで欲しい、親友だよね私達?

 

「マスター。この娘、あの快楽天を倒すまでは抱かない方がいいかもしれないわ」

 

 …………は?

 

「あぁ――やっぱり、そうなっちゃうかぁ」

 

 グダおが納得したような声を上げて、天を仰いでいた。

 んっ、ん――?ちょっと意味がよくわからないのですが。

 

「最後にあの女と対峙した時にその意味がわかるわ。童貞は何のステータスにもならないけど、処女って男にとっては大きな意味を持つ時もあるでしょ?貴方は大して気にはしないでしょうけど。体は清らか、けれど心は殺生院キアラが最も求めている男と経験済み。肉体でも精神性でもマウントを取れるって結構重要よ」

 

 さっきから私にとって嫌過ぎる方向に会話が進んでいるのだけれど……スカナナがすんごい良い笑顔で肩を叩いてくる。殴って良い?

 

「ま、貴方はいつだって好きな時に女を抱いているだろうし、一任するわ」

 

『立香ちゃんの処女膜の有無がビーストⅢ/Rの攻略に関係があるというのかい?』

 

 え?え?何で、私のバージンについてダ・ヴィンチちゃんもメイヴさんもシリアス声で会話してるの?

 

「えぇ。マスターの()()()にも大きく関係するわ。バージン残すだけで人理救えるなら安いものでしょ?」

 

「ハ、ハハハハ、ヤダなー、もう。私の処女膜の有無なんてそんな重要なものじゃないでしょ?」

 

「駄目ですよ先輩!初めては女の人にとって大事なものと聞きます。そんなぞんざいな扱いをしたらメッですよ!」

 

 違うんだよマシュ!大事だけれどもぉ!大事にされ過ぎても困るんだよぉ!淫獄塔であんな経験して、これ以上お預けされたら私の理性が焼却されるんだよぉ!

 

「ふむ。人理を救った後に初夜を迎える……実に浪漫(ローマ)であるな!」

 

「何よ……結構、ロマンチックじゃない……」

 

 止めて止めてネロやエリちゃんの援護射撃で人理修復の為ならしょうがないかーみたいな空気にするの止めて。「世界を救ったら二人で愛し合おう……」なんて死亡フラグプンプンじゃない。ね、グダお!こっち見てよグダお!私のセーラー服に滅茶苦茶興奮してたよね?本当は今からでもむしゃぶりつきたいんでしょ?大丈夫よ私はいつでもウェルカム・トウ・ザ・ヴァギナパークよ!

 

「マスター……」

 

 いやだー!聞きたくない!そんな慈愛に満ちた顔で見ないで――!

 

 

「もうちょっとだけ、お預けだね……」

 

「――――」

 

「先輩……」

 

『いいのかいマリー?立香ちゃんに慰めの言葉は』

 

「しないわよ……。今度こそ、腕折られるわ」

 

 おのれ殺生院キアラ……。全部あの女が悪い……。でも私はまだ諦めない……!

 

「挿入しなければいいんだよね?な、ならBまでならOKでしょ……!?」

 

『強かになったねぇ、立香ちゃん……』

 

 

 次の特異点ハリー!!RTAの時間じゃああぁっ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 聖杯は回収され、このアメリカの特異点も完全に修復された。既に召喚された英霊達及び、カルデアメンバーの退去は始まっていた。

 アメリカ大陸の西端、徐々に光の粒子に包まれたながらも涙して抱き合う二人の男女がいた。

 

「ラーマ様……!」

「シータッ!」

 

 

 不幸とすれ違いが重なり、英霊になってもなお続く別離の呪い。聖杯戦争においても決して出会う事が出来ない二人は別れ際とはいえ、感動の再会を果たす事が出来ていた。

 

 当然、歓喜の中に包まれた中でもその事についてラーマは疑問を抱えていた。

 

(一体、どういう事だ……?いくら特殊な形式の聖杯戦争だからとはいえ、余とシータはこんな容易く出会って、ましてや触れる事など出来なかった筈だ……)

 

 

 

 

 二人には気付かれないような距離から抱き合うラーマとシータを被写体に収めシャッターを切るシータ(男装)は語る。

 

「離別の呪いは夫婦であったラーマとシータにかけられました。二人は互いに愛する者と出会う事は出来ないそういう呪いです。ならば、認識をずらしてしまえばいいのです」

 

 この世界のラーマはここのシータとは別種の色気を持った異なる世界のシータ(と本人は思い込んでいる)と出会い、肉体的な接触も持った。

 

「世界とは観測と認識で成り立っているのです。たとえ、あるAが『自分は存在している』という意識を持っていてもそれを観測する人が誰もいなければ、その人は存在しないという事になります」

 

 シータ(男装)は至極真面目な顔で頭がおかしい理論を唱える。

 

「ラーマ様の事を、周囲にいる全ての人が『雌みがヤバいラータちゃん可愛いよラータちゃん』と認識し続ければ、ラーマ様はラータ(♀)ちゃんになり得るのです」

 

 見たことも無い男を夫とする純白の花嫁姿のシータ。自分ではない男と結ばれる妻の存在は少なからず、ラーマの認識に大きな衝撃を与えた。

 

 そしてラーマだけではない、シータにも新たな扉は開かれている。

 

 

「では余の役目もここまでだな。ラーマよ、今度はその伴侶の手を離さないようにな」

 

「……まっ、待ってくれ!もしかして、君が何かしてくれたのではないのか?」

 

 ラーマは振り返り、去ろうとする花嫁姿のラータちゃんを呼び止める。別の世界の見ず知らずの男と結ばれたシータだが、それでもこの特異点では何だかんだで自分の事を気に掛けてくれ、発破をかけ、こうして妻との再会の場まで導いてくれた。

 異なる世界だろうとも、その言葉遣いは変わろうとも、匂い、感触は思わず劣情を覚えかけてしまうぐらいにはラーマにとって彼女はシータだった。

 

 最後までもらってばかりで、何一つ返す事は出来なかったが、せめて感謝の意ぐらいは示したかった。

 

「ありがとう……!本当に……ありがとう!君にとっては知りもしない男をここまで助けてくれて、ありがとうッ……!!」

 

「余は何もしておらぬ。そして、余ではなく、後ろにいる彼女の事を気にかけよ」

 

「あぁっ!」

 

 ラーマ(花嫁)は切に願った。今、お前の背後で涎を垂らしながら、「はぁはぁ、あんな切なくラーマ様(♀)に訴えかけるラーマ様(♂)もたまんねぇ……勃起もんです」と悶えている嫁の顔を心から気にして欲しいと。

 

(余はそちらのシータに関しては何もしておらぬ)

 

 この世界のシータにとってラーマは愛しい夫という点だけではなく、推しであり、おかずであり、萌えとなった。矢を構え、ラーマとラーマが絡み合っているあの光景を見た瞬間、シータの中で新しい世界が開けたのだ。甘美で耽美な雌みに溢れたラーマにあらゆるものが掛け合わさる無限大な夢。

 

 シータ(男装)はこの世界のシータにマスターに翻弄され、雌に堕ちていくラーマが描かれている『七歌物語』を見せた。それだけでなく、自らの口からもラーマとマスターの営みを赤裸々に語り、そして最後には自身の夫と花嫁姿のラーマを絡みを見せた事でこの世界のシータも完全に勧誘した。

 

 これが彼女の布教宝具。ありとあらゆる手練手管を用いて同士を増やす洗の……啓蒙活動。

 

腐女沼の扉(シーターンズ・ゲート)』。未知なる文化を知った対象は数刻前の自身とはもはや完全に生まれ変わり、世界線の狭間へと飛び込む。

 

 もはや猿バーリが離別の呪いをかけたまともな夫婦はこの世界に存在せず。女装した自身にドキドキしてしまったラーマと夫に対して801以上のプリミティプなシチュエーションを妄想して悦に浸っているシータが出来上がった。

 

 ――離別の呪い「ラーマ王?シータ王妃?知らない人達ですね……」

 

「帰ろうか、シータ」

 

「はいラーマ様♡」

 

 特異点から二人は消失する。だが、もうこの世界において二人を引き裂くものは無くなった。

 あのラーマならきっとシータの腐り切った欲望も受け入れるだろう。離別の呪いを乗り越えた二人はまたどこかで出会う筈。

 

「――この特異点で得たかけがえのない思い出をたとえ座に還っても彼女は忘れる事はないでしょう……」

 

「良い話風に締めようとしても余は騙されんぞ」

 

「あいたっ」

 

 

 

 

 















「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ――」

ソロモン王――魔神王ゲーティアの本拠地だった冠位時間神殿、彼等を取り込み、存分にその肉体を使える殺生院キアラは当たり前のように魔術の王の神殿も改造を行っていた。

不思議な空間だった。

星々が浮かぶ宇宙に幻覚すら疑う程不似合な平凡な庭付きの一戸建てが浮いていた。

夢見がちな乙女が結婚願望を想像する時に出てきそうなオーソドックスな家。

だが外見と内部の空間は一致していない。恋を知った獣はその()殿()の底の底の誰にも見られず、訪れられない最深部まで引き籠っていた。

「あ――、あ――、あ――」

殺生院キアラは浮かんだ汗で淫らな尼装が肌に張り付いているのも気にせず、髪を掻きむしっていた。

「は、恥ずかしい! 恥ずかしい! 恥ずかしいっ!! 恥ずかしいぃ――!! あり得ない!! あり得ない!! あり得ない!! あんな女に! セフレだの! 親友だの! 聞こえの良い言葉であの人の心地良い位置を占領している淫売に知られた! 知られてしまった!!」

それはまるでふとした瞬間に黒歴史を思い出して、ベッドの上で悶える若人のように恥ずかしさで顔を真っ赤にしたキアラは誰もいない空間でうずくまり、ひとりでに叫んでいた。

「違いますから! べ、別に何も怖くありませんから! 振られたら自殺する? 全然! ぜんずぅぇ――ん!! 堪えませんし! 私の物になるまでアプローチし続けるだけですから!? 101回ぐらいプロポーズ出来ますもの!! 恋愛経験超豊富ですし!! はい論破! 私の勝ち! 貴女の言ってる事は見当違いの的外れ! そんなドヤ顔で言って恥ずかしい恥ずかしい! だからこの話はここで終わり! 私の勝ちで終わりです!」

キアラにトドメの一言をくれたメイヴはここにいるワケはなく、キャラ崩壊している彼女の叫びは虚しくこだまするだけ。
そもそもワシントンで「マスターに次、振られたら自殺するでしょ?」と言われた瞬間、彼女は数秒固まってしまったのだ。それはメイヴの言っている事が事実だと自ら証明するのに十分過ぎる時間だった。

キアラは全身全霊で殺そうとした。死人に口無し。自身の乙女の園を暴いたメイヴを始末しようとした。

だが彼女はそう経たない内に逃亡の選択肢を取った、アメリカの特異点そのものから。
ワシントンに彼が近づいているとわかった瞬間に気付いたらここにいた。

「どうして!! 私の体は心の思うままに動いてくれないのですか!! 何がビーストⅢ/R! 何が愛欲の獣! 何故こんな生娘の如き振る舞いを私がしなくてはならないのですか!? 欲望の赴くままに彼を求める筈だったのに!! どうして!どうして!!」

期せずしてキアラが自らの行動によってメイヴの言っている事が正しいと証明してしまった。
『愛欲の獣』。確かに殺生院キアラという獣が欲望だけで彼を求めていたら、こんな事にはなっていなかった。
皮肉にも世界線を越え、ここまでやって来た原動力ともなる彼への『恋』がキアラを縛り付ける毒となっていた。

その毒は魔神王を飲み込んだ愛欲の獣にスケールと比べれば小さきものだが……余りにも致命的だった。

「…………………………死にたい」

膝を抱えたキアラは神殿の鍵を固く固くしめた。もうここから出たくない。誰にも会いたくない心を示すように神殿の奥底へと引き籠った。






第六特異点、及び第七特異点。殺生院キアラ不在……確定。








不滅の嬲情矢(ラーターナナ)
ランク:A++~EX
種別:対軍宝具(一人使用時)、対城宝具(二人使用時)、対国宝具(三人使用時)
使用者:ラーマ(花嫁)+シータ(男装)+グダおor(血縁者)
歪つな形で結ばれた3人の名を冠した弓。矢はつがえられておらず、使用者の魔力によって矢が構成される。本来の使用方法としてはラーマが弓を構え、両サイドからサンドするようにマスターとシータが挟む込み3人で放つ。その威力は簡単に大陸の地形を変え得るものとなる。一応は血の繋がりさえあればラーマかシータの子供でも使用条件を満たす。この弓を放つ体勢と3人のお気に入りの体位は奇しくもそっくりらしい。シータが張形で後ろからラーマを犯し、マスターは前からキスしながら雌チンポをしごき犯す決して折れる事のない3本の矢。まぁ、ぶっちゃけシータからすれば3Pならどんな体位でもOKですとの事らしい。嬲情矢が嬲情夫に見えても仕方がない。





腐女沼の扉(シーターンズ・ゲート)
ランク:C
種別:対人宝具(布教宝具)
ラマニストたるシータのラーマへのちょっと歪んだ愛の形が宝具化したもの。シータの腐った瞳はほんの少しでも素質のある者を絶対に逃さない。書物、映像、話術、実体験、あらゆる媒体を用いて対象を沼へと沈める。この沼に完全に沈んだ者は沈む前とは別人言える程に変貌を遂げる。ステータスは全てワンランク上がる。創作・布教活動には体力も基本。毒を以て毒を制する……今回のように離別の呪いを解呪する事も可能。ちょっと毒が大き過ぎひん? 
かつてはラーマ×マスターで混ざりたい派であった彼女は見守りたい派である刑部姫と解釈違いでしばらく対戦状態だったが、ドアの隙間からひたすらマスターに犯されるラーマを見せ付けられるプレイでNTRにも目覚め、和解し、あらゆるものに寛容になった。どうてもいいね。








次回からは9か月ぶりのアポ編イキますよー。






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番外編(第二部)
かしましたちの夜(2部 序 前日譚)


前話で今年最後の投稿とか言っておきながらすまない。2部、序を見たら気付けばこんな話を書いていた…………。本編のエロとは時系列飛んでいるし、睡眠不足の深夜テンションで書き上げた作品なので軽い気持ちで読んでくれると嬉しい。番外編として投稿。

31日まで待ちきれない。私の欲望が爆発したと思って欲しい。













マスターの名状し難い白いドロドロのアレでサーヴァントじゃなくなった彼女達はどうやって帰るんでしょうねぇ…………。


 2017年12月25日。23時**分。

 

 クリスマス兼()()()()()()で食堂にて盛大にパーティーを行っていたカルデアのメンバー。宴もたけなわという事で、ダ・ヴィンチちゃんが集まっている面子に一声かける。

 

「はい、ちゅーもーく。クリスマスに水を差すような事は言いたくなかったから、黙ってはいたけど、そろそろ日付も変わる頃だから、ちょちょいっと現実に戻る大事なお話をダ・ヴィンチちゃんから報告させてもらうよ」

 

 カルデアの所長代理の言葉。

 マスターを含め、殆どのサーヴァントが手を止め、耳を傾ける。

 

「はい、茨木ちゃんは口に詰め込んでいるケーキを全て飲み込んでね――。えっちゃんも和菓子ならいいでしょ? じゃない、一旦食べる手を止める。初代サンタも両手いっぱいのターキーを頬張るのはストップだ。おっきーちゃんもコミケの脱稿が迫っているのはよくわかるけど、数分だけ手を置いてもらってもいいかな? はいぐだぐだ組とゲーム好き未亡人もコントローラーから手を離し、こっち向く。コンセントぶちっなんてお母さんみたいな事したくないからね、私は………………はい、よしよし、じゃあ、まずは良いニュースが1個と悪いニュースが2個あるんだけど、どっちから聞きたい」

 

「じゃあ、良いニュースの方から」

 

 

 膝の上にアリスを乗せ、ご飯を食べさせていたマスターが促す。

 

 

「OK。ではもう既にご存知の方もいると思うが、キャスターのサーヴァント、ナーサリー・ライムことアリスちゃんがおめでたしました。誰の子か? 言うまでもないでしょう!! これはグッドニュースだ!! ましてや人理修復後ならなおさらだね!! 素直におめでとうの言葉を送ろう!!」

 

 ――おおっ

 

 既にここにいる9割方に周知の事実であったが、それでも感嘆のどよめきが場を包む。

 

「おめでとう、アリス!!」

 

「男の子かしら?女の子かしら?きっとどっちでも可愛い子よね!私ちゃんとアリスの子が無事生まれてくるように毎日お祈りするわ!!きっと向こう側にいる神様も応えてくれるわ!!」

 

「クリスマスはお母さんがたくさん出来る日って言っていた師匠の台詞は間違ってなかったのですね!!」

 

「かいにんする?」

 

 

 

 バニヤン、アビゲイル、ジャンヌリリィ、ジャックとロリ組から祝福の言葉を受け、照れくさそうに微笑むアリス。マスターの膝の上に乗っている彼女は彼の手をそっと自分のお腹の上に当てさせる。

 

「ただの物語にしか過ぎなかったわたしが……新たな命を、そして新たな物語を紡ぐ事が出来るなんて、こんな事、夢ですら見た事なかったわ!本当の幸せって自分の想像外から訪れるのね!!ありがとう、マスター……アナタという最高の読み手に出会えて、心から幸せよ……うふふっ」

 

 

 幸せそうなアリスとマスター、それを見て、テーブルの上でシャンパン片手に「Fooooo!!」狂喜乱舞する子供スキーなアタランテと哪吒のコンビ。

 

 

「結構、結構。このカルデアで新たな命が紡がれるのは大変結構。私も心が暖かくなるさ。まぁ、これからシャレにならない数の女性サーヴァント達がまだ見ぬ我が子を求めてこれからいつも以上にマスター君に性的に襲いかかっていく未来は確定したわけだが、私はこれっぽちも君の事は心配はしていない。そして、嫉妬と祝福の感情が合い混ぜになって凄い顔になっているマシュの顔も見えていない」

 

 

「ふっ……子供を授かった順番で何を騒ぐ事があろうか……。女として愛されているかどうかはそんな事で語れないだろう」

 

「師匠、槍の持ち方、逆さだぜ…………」

 

「逆でも刺さるわ」

 

「ぐぇええ!!石突の方でっ……!?」

 

 

 ランサーが死んだ!!

 

 

「とまぁ、そんなこんなで良いニュースはおしまい。祝福ムードの中、空気を読めないようで悪いけど、二つある悪いニュースの方を君達に知らせよう。まぁ、一つ目は知っての通り、12月27日にこのカルデアを視察、そして新体制として引き継ぎに来る国連査問会の連中がやってくる」

 

「それはMs.アリスの出産より優先すべき事項なのですか?」

 

「気が立つ気持ちはよくわかるが、ここで私に銃を構えられても困るよナイチンゲール婦長。どちらにせよ、無用な揉め事は避ける為、英霊召喚システムは凍結。カルデア所属のサーヴァントは皆、ここを去ってもらうつもりだった……。そりゃあ、彼等からしてみれば、私達は兵器みたいなもんだからね」

 

「『そこでもし権力が人間を変えるとするのならば(Hence shall we see, I)この仮面をかぶった人間が(If power change purpose, )どう変るか見届けたいものです( what our seemers be. )』何をおっしゃいますか!レオナルド氏!!こんな面白そうな展開が待っているというのに、吾輩達には退場とは書き手殺しにも程がありましょう!!二部なるストーリー実装をいまかいまかと待ちわびているというのに!」

 

「ここにやってくる新たなお客様は爆弾を抱えてらっしゃる。そしてこちらのカルデアも我らがマスターという特大の爆弾を抱えてらっしゃる。爆弾同士が交差するとき、物語は爆発するぅぅ!!いやぁはやぁ……爆弾スキーとしては見逃すとかないわーみたいな?標高6000Mからの花火はそれはそれは綺麗でしょうねぇぇぇええ」

 

「座にゲッラウトヒア」

 

「そんなごむたいな!!」シュゥウウウン……

 

「あぁ――!なんたるロマンチック、ペダンチック……」シュウウウン……

 

 

「ダ・ヴィンチちゃん、では……それに加えて悪いニュースがもう一つあるのですか?」

 

 どうすればセンパイの子を授かる事が出来るのか、頭の中で百通りのプランを浮かべながら、マシュはダ・ヴィンチちゃんに問う。

 そもそも、アドバンテージはサーヴァントではなく、普通の人間に戻ったマシュ・キリエライトにありそうだが……ただまぁ……かのマスターに抱かれ、その精液を頂いてしまっているマシュも普通の人間と言えるのか怪しい。

 

 

「そうだね。そのサーヴァントの退去の問題に関係もあるのだけれど…………」

 

 場を緊張が包む。

 ここにいるのは査問会の連中が来るから帰ってくれるかな?いいえ、死ねとも!と反抗しそうなメンバーが多すぎる特に『彼』にお手付きなっている者達に関しては。

 

「まずその前に、ここのマスター君に頂かれている娘達はどれくらいいるのかな?うん、マシュはわかりきってるから、そんなモゲそうな勢いで手をあげなくてもいいからね……ふむふむ、まぁ予想通りかな」

 

 この食堂にいる女性英霊達の大体ほとんどが、挙手をしていた(一部性別不明&♂もいたが)。

 本当に、悩ましそうに、頭が痛そうに、ダ・ヴィンチちゃんがこめかみを抑えながら深く息を吐いた。

 

 

 

 

 一体、どんなバッドニュースが彼女の口から語られるのか…………。

 

 

 

 

 

「はい!今手上げた娘達がね、もれなく全員受肉しているというか、サーヴァントではない別のナニかになっているから座に退去させる事ができません!!」

 

 

『いええああああああああああ!!』

 

 

「いえああああ!じゃねぇよ!喜んでる場合かこの馬鹿共が!!どうすんだよ!!サーヴァント大勢いるだけでもやべぇってのに揃いも揃って受肉してるとか!どう言い訳すんだよ!!」

 

「ダ・ヴィンチちゃん!口調がキャラ崩壊を起こしてます!!」

 

「そりゃあ、起こしたくもなるわ!!只でさえ、マスター君は人畜無害の一般マスターですという無理難題の提出書類を連日徹夜で作ってるってのに、ここに来てさらに爆弾発覚とか!!私は天才ではあるけど、社畜じゃないからね!!」

 

「けど、退去にならなくて良かったと思うよ。ねー♡エレちゃん」

 

「ねー♡なのだわ。…………クリスマスに来て、即日退去とか冗談じゃないわ。今日日蝉の方がもう少し長生きすると思うの」

 

 互いに可愛く体を傾け合う、冥界の女主人と性界の男主人。

 

「私としては、君がこんなにも早く受肉している事に驚きなんだけど、一体一日でどれだけ激しいセックスをしたのかな?」

 

「ははははは破廉恥なのだわ!!」

 

「そうは言ってやるな芸術家よ。この娘、第七特異点攻略ではマスターにBまでしかしてもらえず、『次に会ったらもっと凄い事をしてあげるよ』と言われて、気付けば一年にも及ぶ焦らしプレイ。冥界下りでマスターとのしょっぱなの邂逅で、記憶をんほぉおおと思い出して、ネルガル即ボッコへ移行したのは見事な流れだったぞ。マスターの性行為は『忘却補正EX』がついているからな、魂にその色が染み込んでいるぞ。カルデアを襲ったシュメル熱もマスターの精液をたらふく頂いている奴らには全く効かなかったからな、万物抗体が出来てるかもしれん」

 

「エリクサーかよ」

 

「おかげで冥界下りも早く終わった……ネルガル涙目、早上がりは良い文明だ」と解説するサンタコスのアルテラちゃん、バイブとローターも未だ、装着済みである。

 

「てか、熱に乗じて、体壊せばマスターとの看病ックスがまた出来たんじゃないんですか!?沖田さん一生の不覚!!」

 

「そもそも貴様から病弱取ったら、人斬りしか残らんくね?」

 

「ありますぅ……。実は恋愛に初心なヒロイン力高めの期間限定☆5最かわサーヴァントとか――」

 

「プッ……ノン水着」

 

「表出ろぉ!!ゴラァッ!!」

 

 

 骸骨スタンドとオラオラで切り合うぐだぐだ組をガンスルーし、ダ・ヴィンチちゃんは死んだ眼で話を戻した。

 

 

「マジでどうすんだよ……。マスターが抱きまくったら皆、受肉しちゃいました♡って説明するのかよ……」

 

「子供という新たな命だってある意味精子から出来ているわけで、そう考えると俺の精液で皆が受肉し、新たな肉体を持ってしまったのもそう可笑しな話だろうか?」

 

「可笑しな話だよボケ。もはやもうここにいる彼女達は座から召喚されたサーヴァントという名のコピーから別れ一つの個として、新たな生を持ってしまったからね。これから何かの間違いで聖杯戦争が起きて同じサーヴァントが召喚されても、君達とは別種の存在ともいえるよ。もう英霊ともサーヴァントともいえないねぇ……。はぁ、あの『精神と時の部屋』の扱いにも困っているというのにさ…………」

 

「ありのまま伝えたらイカンのか?」

 

「イカンわ、カルデアがピンク色の施設としか思われんぞ、いやもうあながち間違いじゃないのかな…………」

 

 未だ口調崩壊継続中のダ・ヴィンチちゃん、天才といえども、こんなに大量に残った爆弾を明日まで処理するのは無謀過ぎる。コカイン中毒ホームズ君は「なら、いっそ皆に全てを打ち明ければいいじゃないか」と助言とも言えない投げっぱなしジャーマンで今の状況に至っているのだが……。

 

「もう面倒くさいから、査問会の人達全員豚になーーれ♡じゃ、駄目なんですか?」

 

「お?ピグレットにするのかい?いいねぇ、私とマスターの楽園にずかずかと土足で踏み込む輩には良い薬になると思うよ」

 

「それをすると間違いなくマスターが人類の敵認定&人類悪√に進みそうですが、ま、そうなる前に私がこの辺鄙な星から飛び立ってサーヴァントユニヴァースへレッツ、ハネムーンとさせて頂きますが」

 

「悪√になるなら、むしろヴィランとして私と一緒の方がいいのでは?」

 

「文系スパッツは黙っとれ」

 

 

 

 

 

 

 

 脱線している話も織り交ぜ、場がカオスとなって紛糾しかけた時…………。

 

 

「なら、ほとぼりが冷めるまで、そのシミュレーションの機械ごと私の門の向こう側の世界に皆で避難すればいいと思うわ」

 

 

 

 

 割とあっさり解決策が出てきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハンカチとティッシュは持ちましたね?困った事があったら母にメールをするのですよ……。虐められたらすぐに言いなさい、コンマ一秒で駆けつけますからね」

 

「えぇ、旦那様に仇なす輩をシャー(こんがり)してあげますから」

 

「貴方の傍を離れるひと時の痛み……これも愛なのですね、次は私とも子供を…………」

 

 

 アビゲイルの門に続々と入っていく。新たな肉体を持った女性英霊達。溶岩水泳部を始めとして、皆がひと時の別れを惜しんで言葉を交わす。

 

「マシュ殿!雌犬調教派閥の一人として、しっかりと主殿の護衛を任せましたよ!!」

 

「だから、そんな派閥に入った記憶は無いのですが!!」

 

「深夜、カルデアの廊下、誰もいない中、マスターと紫髪の尻尾をつけた全裸の雌犬、散歩プレイ…………」

 

「……!!な、なぜ、それを…………」

 

「マシュさん、首輪は良い物ですよ……」

 

「セイバー・リリィさん!?」

 

 

 

 

 

 

「みみみこーんと、さてさて皆さん、何も疑いなく入りましたが、この門の向こう大丈夫なのですか?入った先の世界でいきなりSAN値/ZEROになったりしません?」

 

「フフフフ、大丈夫よ。狐のおねーさん、貴女の大元よりは可愛い物だわ」

 

「いやん♡玉藻、何の話だかわかんな――い♡」

 

「ほら、さっさといくぞオリジナル。吾輩のナインズセンスが近い内にやったねご主人、新たなタマモが増える的なナニかが来ると告げている」

 

「縁起でもない事、言わないでもらえますぅ!?」

 

 

 ヤリ部屋兼シミュレーションだった『精神と時の部屋(R18)』の設備もそして、マスターの形容しがたい精液を注ぎ込まれて、新たな肉体を持ったサーヴァント達も皆、アビゲイルの門の向こうへ消えていった。

 残ったのは、妊婦となったアリスとアビゲイル。

 

「フォーリナー……セイレムの魔女たる彼女が作った世界……。一体どこに繋がっているのやら」

 

 心配そうにかつ興味深そうに、鍵穴型の異界への入り口を見つめるダ・ヴィンチ……。

 いつもの金髪碧眼のゴシックドレスではなく、肌と髪を含め、全身を白くし、禍々しくも別次元の神秘さを感じさせる帽子と服の体を成していない葉のような何かに身を包んだアビゲイルは巨大な黒色の鍵をブンブンと振り回し答える。

 

「せっかくここで新しく出来た友達(アリス)よ。変な所に繋げたりしないわ。やっぱり慣れ親しんだ所がいいもの。誰も人がいない施設だけ残ったカルデアの世界線に繋げたわ。……座長さんのお嫁さんは頼りになる人ばかり……アリスは安心して新たな命を紡いでいいのよ」

 

「あらゆる並行世界に繋げる事が出来る鍵……空間接続による渡航……。うーむ、規格外もいい所だ。未だこの天才の眼をもってしても計り切れない悪幼女なだけの事はある」

 

「ふふふふ、座長さんに零れる程、注ぎ込まれてから凄く調子がいいの!世界を救うのも滅ぼすのも彼次第だわ!!」

 

 

 下腹部を撫で、少女とは思えない恍惚とした表情でシャレにならない事を口にするセイレムの魔女。まぁ、彼女もマスターの精液の影響で鍵の力を十二分に使えるようになった以上、絵空事ではないだろう、肝心のマスターが今の性活に満足している以上、悪用する事はないが……。

 

 

 

「アリス、何かあったら……いや何もなくてもちょっとの事でもいいから、寂しくなったらすぐに呼んでくれよ。カルデアの引継ぎの事も大事だが……今は君の事が一番大事だから」

 

「心配症なパパさんね。大丈夫なのだわ、この子の事をわたしに任せて、アナタは仕事を頑張ってきなさい。うふふ、今の台詞、凄く奥さんっぽいわマスター!」

 

 身長差がある二人、マスターは屈んで、少しお腹が膨らんでいるアリスと微笑ましく抱き締め合う。顔を交互にお互いの肩に乗せて、その温もりを残し合うように。

 

 

「一番最初に孕んだのが、物語にしか過ぎなかった彼女か。いやある意味マスター君らしい。そう思わないかい?マシュ」

 

「先輩との次に致す日……私の排卵日も計算しないといけませんね。体温調整も考慮して……明るく開放的な場所でする方が懐妊率が上がるという説はあります……女性器、口、菊門、ありとあらゆる穴から先輩の…………ブツブツブツブツ」

 

 ダ・ヴィンチちゃんは見なかったことにした。

 

 

「座長さん。セイレムで拾った鍵のペンダントは持ってるかしら?えぇ、それ。それよ。返さなくてもいいわ。それは今、私達が移った異界への扉の鍵、空間に刺して、捻ればどこでも繋がるわ。休息日になったらいつでも会いに来てね」

 

 初めはサーヴァントとして召喚された私達……でも今はこうして、一人の女性として貴方と寄り添う事を決めた一個人、マスターと呼び名は変わらないけど、使い魔とか従者の枠組みは超えた身。もう誰も貴方を離さないし、座長さんも皆を離す気はないわよね?

 アビゲイルは笑う。セイレムの魔女は微笑む。異界からの降臨者は破顔する。

 だってまだまだ彼との旅は続くのだから、箒星が何度飛んでこようとも。私達は寄り添うの、彼が『彼』である限り。

 

 

 異端なる物語から生まれた少女と全ての子供達の物語から生まれた少女は門の向こうへと消えていった。それを繋ぐ鍵は彼の手元に。

 

 

(これ、私とホームズが作ったトランクいらないやつかな?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




「ほう!ほほーう!!その聖晶石とやらでサーヴァントが召喚出来るわけか!所詮、使い魔といえども英霊を召喚する触媒となるもの……高価なのだろう?」

「はい、1個120円です」

「安っ!!」

「9800円払えば、おまけで81個もらえます」

「おまけって何かね!?」

「50日ログインボーナスで20個もらえたりします」

「だから何の話をしている!!」

「そして、石3個をポーンと投げると」


キュイイイイイインンン…………

「あ、こら!勝手に凍結した召喚システムを……!!」

「偶に麻婆が出ます」

「何で!」

「ふむ、頂いても?」

「どうぞ」

「言峰くんぅ!?」

「ハフッ!ハフッ!ハフッ……!!これは、なんたる美味!!麻婆自体の素材の味だけではない!数多の戦士達の嘆き、慟哭が聞こえる!!『これじゃないコレジャナイ』『後一回、後一回だけ回したら終わりだから…………』『呼符で来ました……?死ね』。まさしく愉悦の極致ともいえる味…………んむぅっ、んぐっ……はぁ――――…………礼を言おう少年、まさかこんな雪山でこれほどの麻婆に出会えるとは」


「い、一体、どうしたというのだね……言峰君……………………しかし、コヤンスカヤ君、さっきから妙に私達から距離を取っていないかね?具体的にはこのカルデアの一般マスターから」

「あらやだ、閣下ってば、世界を滅ぼしたいんですか?」

「なんで!?」
















受肉している娘達、帰れねーじゃんという原作破壊もいい所で書いた今回の前日譚、はい。大人しく乳王の執筆に戻りま――す。え、続かんよ?






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樹切草(第2部序)

総文字数が100万文字突破したので、自重を許さない特別編。
第二部続きの物語。第二部以降に抱いたサーヴァントについてはこれから2部編で掲載していきたいと思います。













「いやぁ、驚いたよ。シャドウボーダー内の中にこんな扉を作るなんてね。けど、君がアビゲイル君から託された鍵はわざわざ扉を作らなくともどこでも捻れば、彼女達がいるもう一つのカルデアとやらに繋がるんだろう? ここに作る必要はあったのかい?」

「それは気持ちの問題だよダ・ヴィンチちゃん。カルデアの皆に狭い車両内でずっと過ごしてもらうわけにもいかないからね」

シャドウボーダー内の壁に付けられた白い紋様で模られた扉の前でダ・ヴィンチちゃんとマスターは言葉を交わしていた。扉の中心にはカルデアのマークがあり、本来ならその扉を開けても只の壁しか無い筈なのだが、アビゲイルに託された銀の鍵を捻ればあら不思議、扉の向こうには彼女が繋げたもう一つのカルデアがあるのだ。

「世界の可能性はいくらでもあるわ。それこそ樹木のように、枝葉のように、一つの世界に多くの可能性は存在出来ないけど、私は世界ごと繋げ合わせる事が出来るの。『座長さんがいなかった世界』『最初の爆発が起こらなかった世界』『座長さんの代わりに二頭身の女の子が人類最後のマスターになっている世界』『そもそもカルデアが存在しない世界線』……」

二人の会話に混ざり、マスターの後ろに引っ付きながらアビーは楽しそうに言葉を紡ぐ。たとえ人間の想像力の埒外だとしても宇宙の外は可能性の無限大、いくらでも世界は拡がっている。

「だから私が繋げたのは『カルデア以外の全てが滅んでしまった世界』。都合よくも電力供給は続いているから人がいるのなら前のカルデアのように運営は出来るわ」

「随分と都合の良い世界もあったもんだね。いやはや全くもって末恐ろしいよ、君がそこまでの力を持っている事がね」

「大丈夫よ。私、座長さんの言う事しっかり聞く良い子だもの」

「それは言外に彼の言う事だったら世界すらも滅ぼすとしか聞こえないけど」

「えぇ、そうね。彼が言うなら私は従うわ。当然でしょ? だって私はこの人に寄り添う悪い魔女だもの……」

「ふぅ――。ま、それも今更か。それこそマスター君が世界に匹敵しかねない力を持っているのだから、世界征服なんてやれるならとっくにやっているか…………。それはともかく、あっちのカルデアのフェイトシステムで受肉していなかったサーヴァント達を全員再召喚したって聞いたけど、よくそんな資源あったね?」

「ふふふ、聞いて驚くがいいダ・ヴィンチちゃん。なんとアビーが繋げてくれたカルデアの世界では召喚が聖晶石が1個で済むんだ」

「なん、だと……」

「しかも、10連で星4鯖確定!100連で星5鯖確定!」

「色々とメタいが何だいその世界! 桃源郷じゃないか!」

「もうアビーの感謝の気持ちが抑えきれなくて、ついシミュレーションルームでエロゥルフTRPGで3日ぐらいアビーとハッスルしてしまったよ……」

「あの時の座長さんは凄かったわ。私の色んな鍵穴に注ぎ込んで、私のアソコが座長さんのダイスでクリティカルになって、ビクビクが止まらなさ過ぎて死んじゃうかと思った……けど死んじゃうくらいに気持ちいい物がこの世界にあるって良い経験にもなったわ…………」

「よっし! じゃ、ちょっとアリスに会いに行くかな。彼女の経過も見に行きたいし」

「えぇ、えぇ、えぇ!ちょっとずつだけどお腹が膨らんでるわ。私と変わらないあんな小さな子でも命が宿るなんてとても不思議な気持ち……あれだけ出されたんですもの。私も座長さんとの子を――――」

この宇宙の法則に縛られないカルデアがある世界へと繋がる扉を開け、二人は消えていった。未だ彼に一度も抱かれていないダ・ヴィンチちゃんはその楽しそうな様子を見送るだけ。

「彼はやっぱり、幼児体型の方が性的に興奮してくれるのかな――?」

万能の天才の呟きは誰にも聞こえる事はない。





「濾過異聞史現象――――異聞帯の書き換えは無事、終了した」

 

 それは円卓というよりは植物の葉のような巨大なテーブルだった。

 見上げる程に高い天井から吊り下げられた照明から燃え盛る黒き炎がその空間を妖しく照らしていた。

 

 席を囲む七人の人影。内六つは映像で映し出された虚像。実体を持って座っている者は只一人。

 

 その者の名はキリシュタリア・ヴォーダイム。

 

 1000年続くヴォーダイム家の名門にして、マリスビリーの弟子。Aチーム最高の魔術師。才能と血筋を手にした天才。

 

「これも諸君らの尽力によるものだ。まずは第一段階の終了を祝いたい所だが、その前に大きな懸念を晴らしておきたい。我等の障害になりかねない危険性を秘めたカルデアについてだ。本来なら君の息のかかった部隊により、内部から無力化し、制圧させる予定だったが――――」

 

 眉間に若干の皺を寄せてキリシュタリアが睨む先、カドックとデイビットの席の間。そこに新たに現れたコヤンスカヤのホログラムがあった。

 毛先をクルクルと回し、キリシュタリアの威圧もどこ吹く風と退屈そうにしていた。

 

「カドックのサーヴァント及び殺戮猟兵達が踏み込んだ時には既にカルデアはもぬけの殻。カルデアスは凍結出来たものの、そこにいるスタッフ、サーヴァント、そして補欠枠のマスター、マシュ・キリエライトの姿は無く、シャドウ・ボーダーにて虚数空間に潜航後。答えるがいいコヤンスカヤ、君にはカルデアとの内通の疑惑がかかっている」

 

「え――?やだぁ――♡もしかして、私、今糾弾されちゃってますぅ?ファインプレーと褒められる事はあってもまさか責められるとは思わなかったわ」

 

「ファインプレー?カルデアの連中全員に逃げられているというのにか?」

 

「その口ぶり、カルデアの逃亡の手引きを自身がしたと認めるのですね。キリシュタリア様の前です。虚偽は許されません!答えなさい」

 

 カドックとオフェリアの言葉に「はぁ――――」と心底面倒臭そうに溜息を吐き、髪遊びを止めずに彼女は答えた。

 

「仮に当初の計画通りに事を進めたとして、オプリチニキは全滅。私と言峰クンはトンズラこきますけど、皇女様は間違いなく、人類最後のマスター君に捕まってアヘ顔コサックダブルピース√。まぁ、カドック君がそんなソリッドブックな展開の方が興奮するというのなら、今ここで存分に爆笑してあげますけど」

 

「……冗談?」

 

「…………ふざけているのか?」

 

 芥ヒナコとカドックの反応をコヤンスカヤは気にも留めない。

 

「カルデアのスタッフを何人か仕留めたとしましょう。断言します。報復で貴方達クリプターの7人中5人は殺されます。私、弱いものを踏みつけるのは大好きですけど、獣の尾を踏むのは時と場合を選びますの」

 

 この最後の言葉に限り、コヤンスカヤはクリプター全員の方向を見て、茶化す事の無い真剣な口調で語った。だからこそ、クリプター達は表情を強張らせた。

 

「オイオイ、俺等の内、5人がぶち殺されるとか穏やかじゃねぇな。まぁ、復讐ってのは元から血生臭いものだけどよぉ」

 

「貴方がそこまで警戒するに足る人物なの?カルデアの補欠枠だったマスターちゃんは」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――2017年 12月26日へと遡る。

 

 場所は査問会の招集が終わり。謹慎室へと戻るカルデアのマスター。担当官の「だからチェイテピラミッド姫路城って何なんだよ……」という呟きは彼には届いていなかった。

 

 その道中、廊下にて、二匹の獣は出会う。

 

「キミは彼らから、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「それは()()()()()()()()()?コヤンちゃん」

 

 まるで級友と談笑するかのような雰囲気、しかしどこか物々しい異質な空気も感じる。

 ピッチピッチの白スーツに眼鏡姿のコヤンスカヤに、いつもの白を基調としたカルデアの制服に身を包んだマスター。そして、マスターに腕に抱かれ、今にもコヤンスカヤに飛び掛かりそうなぐらいに興奮しているフォウ。

 

「フォゥッ!!フォ――!!」

 

「はいはいフォウ君、どうどう。興奮しなーい興奮しなーい、ゴロゴロぉ……」

 

「フォ、ふぉ、ふぉぁ……」

 

 そんなフォウ君も喉下を彼にくすぐられて、うっとりしたように脱力し、やがて大人しくなったが。

 

「あらあら、随分と飼い馴らされちゃってまぁ。もしかして君、ケモナー?」

 

「フォウ君カワイイでしょ」

 

「ファッ!?」

 

「守備範囲広過ぎじゃないですかねぇ……。っとと脱線したわね。さっきの疑問に答えてあげましょう、一応、お人好しの善人君なら動揺する言葉で斬り込んであげたのに、()()()()眉すら動かさないで返答した君にね。勿論、私の勝手な想像じゃなくて、七人全員がそう思ってるわ。貴方にチャンスを横取りされたって」

 

「ん――……」とまるで夕飯の献立を考えるように彼はコヤンの言葉を頭の中で反芻していた。言われてみれば、自分は凍結されていた他のマスター達の事をまるで知らなかったと。人理が焼却されたから、レイシフト、レイシフト、セックス、レイシフト、レイシフト、セックス、セックス、セックス、レイシフト、セックス、セックス、セックス、セックス、セックス…………と忙しく、そちらまで気を回す余裕が無かったからとも言えるが、つーかセックス多過ぎるわ、そら査問されるわ。

 

「まぁ、そうだね――。たった一回の失敗で何もかもおじゃんになるなんて、そんな人生ハードモードは御免だもんね。普通だったら挽回のチャンスの一つや二つ与えられて然るべき……。失敗というよりは不運と言うべきだけど――――。俺が横から全部掻っ攫ったという見方も出来るか――。んぅ――、そっか――そうだよねー、俺が来る前からちゃんと訓練して準備をしてきた人達だもんね――…………ん?何その顔?」

 

 頭を捻って、しばらく唸っていたマスターをコヤンスカヤは目を丸くして珍しい物を見るような顔をしていた。

 

「いえ、貴方なら『うるせぇ、知るか、死ね』ぐらいの反応を返して終わりだと思っていたので」

 

「俺を何だと思ってるのさ」

 

「私と同種でしょ?有象無象の人間達を凌辱し、踏みつぶし、愛したい、欲望の権化」

 

「失礼な。俺の理想は高いよ。そんな誰でもいいみたいな言い方をしないで欲しい。それに君の愛し方には美学と敬意が足りない」

 

「あら、私の何がわかるのかしら?坊や」

 

「他の人間に向ける眼の色でわかるよ。その愛し方はあんまり楽しくないと思うけどね、もっと愛のお勉強をした方がいいよ、おねーさん」

 

「ぷっ……!」

 

 そのマスターの言葉にコヤンスカヤは腹を抱えて笑った、それは嗤笑でも嘲笑でもない純粋な笑い。まさかこの自分にそんな言葉を投げ掛ける者がいるとは思わなかった彼女は人目を憚らず半泣きになりながら笑っていた。

 

「あはははははははははははっ!お勉強って、愛のお勉強って!そんな言葉を言われるとは思わなかったわ!あぁ――確かに、私の接触最優先事項はAチームだったけれど……」

 

 涙を拭って、コヤンスカヤは姿勢を整え、色っぽく腰を揺らしながら彼に近づく。

 

「今後の展開を考えると出来る限り、貴方とは距離を置いておくべきだと思ったんだけど……。うん♪作戦へーんこうっ!色んな意味で君に興味がさらに湧いてきちゃったわ。ちょっとおねーさんと二人っきりでプライベートな会話でもいかが?元人類最後のマスター君」

 

「実に魅力的なお誘いだけど……それはコヤンちゃん自身の考え?」

 

 ――それとも

 

「君の()()()()()()()()?」

 

「――――」

 

 ほんの一瞬。常人だったらまず気にも留めないだろう沈黙。だがマスターはそこを見逃さなかった。今回来た査問会、厳密に言えば、コヤンスカヤと言峰綺礼のバックには何かしらいると。

 

「冷や汗一つかいたら負けだよ。けど、ありがとう。今の反応で確信した。いるね、君達のバックに第二ボスが、人ならざるナニかが」

 

「……一体、いつから気付いたのかしら?感づかれるようなヘマをしたをつもりは無いんだけど?」

 

「いやだってこのタイミングのカルデア乗っ取りで如何にもみたいな二人が来たらキナ臭さは感じるでしょ?大抵こういうのってラスボスは来なくて、それに準ずるポジションが顔を見せるのが定石」

 

「そんなふわっとした理由であんな確信に満ちた顔でハッタリをかましてくれたのね……」

 

「外れたら、イタい事言ってんなーコイツで済む話でしょ?俺は何も失う物はないし。それに……最近みた夢で白髪の騎士さんが半ギレで人理は失われたみたいな事言ってたしな――。もしかしなくても、あれ多分ギャラハッド君だよね。っていうか人理君ちょっと凌辱され過ぎじゃないですかねー、燃やされたり、白紙にされたりさぁ」

 

「クレイジーだけならまだ扱いようがあるのに……嫌な所でクレバーね貴方。それでどうするのかしら?ここいらで私と戦り合ってみます?」

 

「そうしたら、君真っ先にカルデアの人達を狙うでしょ?それをされるといよいよ君を殺すしか無くなっちゃうから遠慮してもらえると助かる」

 

 誇張でも強がりでもなく、彼はそう言った。

 コヤンも目の前の人類悪候補生とここでまともに戦うつもりは無い。今ここで戦闘に入ったら彼の言う通り、待機させているオプリチニキに戦闘力の無いカルデアのスタッフを優先的に狙わせるつもりだった。

 恐らく目論見通り、元人類最後のマスターは彼らを庇い、満足に戦えはしないだろう。だが犠牲者が出たら、絶対にその首謀者のコヤンスカヤを許しはしないし、地の果てまで追い詰めて狩り尽くすだろう。

 

「おぉ、おっかないおっかない、それは脅しかしら?」

 

「いや、違う。平々凡々な年下からの只のお願いだよ」

 

 殺気など1ミリも無く、どうか貴女にそんな事はしたくないから、止めてくれると嬉しいと純粋な頼み事として彼女にお願いをしていた。

 

「ま、それ込みで色々と話しましょうか。ちょっとだけ長くなるかもね。フォウ君は先に部屋に戻っていて。大丈夫、心配しなくてもすぐに戻ってくるからさ」

 

「フォ、フォーウ……(おめぇの心配じゃなくて、おめぇが何かやらかさないか心配してんじゃ)」

 

「はぁ――あ、もしかして、ハニトラに引っかかっているのは私なのかしら?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――異星の神ねぇ。

 

 ――正体までは今、君も言うつもりは無いでしょ?

 

 ――下総国での晴明アンチの事も気になるし。

 

 ――クリプターと名乗るAチームは重要な手掛かりとも言えるか。

 

 ――俺にとっては先輩に当たる人達だし。無下には出来ないかぁ。

 

 ――むしろ、その異星の神様とやらと通じる取っ掛かりにもなるから、問答無用で蹂躙して、情報の一切を失う方が悪手か……。

 

 ――そうだね。俺は俺の手が届く世界を守るとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「R18的な大人の肉体コミュニケーションがあると思いましたか?残念!それはまだお預けなのでした♡というわけでコヤンちゃんとマスター君の和平会談により。彼はカルデアのメンバー全員+1を連れて、虚数空間にダーイブ。私達は余計な出費をする事なく平和的にカルデアを占拠。これこそウィンウィンの関係ですよね――」

 

「まさかとは思うが、よもや貴様が絆されたなどとは言うまいな。その補欠枠のマスターに」

 

 コヤンスカヤの話の内容についてクリプター達は驚き半分、疑惑半分で聞いていた。むしろ彼女は真面目に話すつもりはなくて、作り話でここを煙に巻こうとしている方がまだ信じられる。

 

 だって只の一般枠のマスターがそんな段階から異星の神について勘付いていた等、到底信じられない。信じたくない――。特に彼は――。

 

「はは、重要な手掛かり?僕達をインフォメーション扱いとはね。世界を救ったという大業はそこまで人を増長させるものなのか?」

 

 吐き捨てるようにカドックは頬を歪めていた。ここにいる他の6人ならまだいい。劣等感はある、勝ちたいという気持ちも当然ある。その為にかつてカルデアにやって来たのだ。自分にも世界を救えると証明する為に。なのに気づけば終わっていた何をする事もなく、眠っていて、目を覚ましたら。そして、自分達の代わりに人理修復を成したのが――。

 

「ソイツはたまたまそこにいただけじゃないか。ソイツじゃなくてもしも、僕達がいたら、もっと――」

 

 憔悴しながらも、若干の苛立ちを込めながらも、それが只の八つ当たりだと自覚しながらも彼は言葉を続けた。

 

 だが、その言葉を遮るように。

 

 

 

 

 

 

 

「そうだね。多様性は可能性だ。俺のようにたった一人じゃなく七人もいて、なおかつキャラも濃く、有能な先輩方がいたらもっと早く人理修復は成し遂げられていたかもしれない」

 

 

 その場にいる筈の無い第三者の声が聞こえた。

 

「でも、そうはならなかった。ならなかったんだよ、カドック先輩。だから――この話はここでお終いなんだ……」

 

 

 ――――ギチギチギチギチと。

 

 突如として罅入った空間の亀裂をこじ開けるように光輝く異界の触手が現れる。

 

 とてもじゃないが、補欠枠のマスターとは思えない。

 とてもじゃないが、只の一般人には見えない。

 とてもじゃないが、人間には思えない。

 

 大きな漆黒の鍵を持つ肌白い少女を抱きかかえた黒髪の人類悪候補生がクリプター円卓会議にダイナミックエントリーした。

 

 

 

 

 




《グダ男の夢の中で出てきたある騎士の叫び》

「お前よぉ――! ほんっとふざけんなよぉ! 僕が力を貸したあの純朴な娘にナニしてくれてんだよぉ! 何だよデンジャラスドスケベビーストで深夜のカルデア散歩プレイって!何であの娘も満更じゃないみたいな格好をしてんだよぉ! それを毎回見せ付けられる僕の身にもなれよぉ!!」

「これが俺達が人理を取り戻した後にマシュに見せたかった景色なんだよ」

「クソッッ! 滅びろ! こんな人理!!」










《逆境をチャンスに変えるんだ。不死鳥ムジーク》

「ねぇ、ねぇ、ねぇ? なんで私ここにいるの? コヤンスカヤ君がいきなり査問会を撤退させたと思ったら、『もうここまで来たら閣下は不要でーす』って半ば脅されながら放り出されたんだけど?何か隕石が降ってきたと思ったら、キリシュタリアの若造が生意気な演説しているし、 知らぬ間に、私もカルデアの連中と一緒に大型車両に乗り込んでるし、何故か中には物理的にも空間的にもあり得ないカルデアと同じ施設が完備されているし…………あぁ、もう突っ込みが追い付かないわ! もう少し展開は小出しにしろと言うのに!! 何、何? 夢でも見ているのか? おいっ! ちょっとそこのソテー! 私の疑問に答えなさいよ!」

「うるさいなぁ。今はラーマきゅんのプロマイドで癒されている至福の時間だってのに。後、俺の名前はムニエルな」

「うん、そうだね。ゴルドルフ氏の疑問に答えるとするのなら。そこはマスター君がこのシャドウボーダー内における司令官になって欲しいとヘッドハンティングを」

経営顧問シャーロックホームズの言葉に気を良くしてゴルドルフ氏ニンマリ。

「ほう、ほう、ほほーう! あの小僧。只の数合わせの一般枠だと思っていたが私に眼をつけるとは中々の慧眼! 溢れる高貴さと才能とそしてガッツが隠し切れなかったか!!」

「『あのおじさんにはきっとこれからの道中、新鮮な反応が期待出来る』ってね」

「あぁー、確かに俺達、もうアイツのやらかしに若干慣れというか麻痺している所があるからな。このおっさんなら活きの良い反応をしてくれるだろうな」

「そんなリアクション芸人みたいな事期待されて、引き抜かれたの私!?」









というわけでおめぇ(グダ男)の血は何色だァー!な異聞帯蹂躙劇な第2部はっじまーるよ。はい、よーい、スタート。 もうちょっとだけ続くんじゃ。




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Fate/Call Dear





ビーストなのに角が無い?股間に立派な角が生えているでしょーが。








 外宇宙の巫術者でもある『降臨者』――アビゲイル・ウィリアムズ。彼女の形容し難い触手に囲まれながら、元人類最後のマスターはクリプター達が会議に使っていた巨大なテーブルの中心にどこから用意したのか、椅子ごと鎮座していた。

 腰かけ、膝の上に少女を乗せる少年。少女の異端なる姿に目を瞑れば仲の良い兄妹に見えない事もないがいかんせん、その当の本人達が凶悪過ぎるし、周りで蠢いている邪神の触手が目の毒過ぎる。

 

「あ、あ、あぁッッ――――!!」

 

「はぁい、SAN値チェック入りまーす。皆さんはダイスを振ってくださいねー。あら、オフェリアちゃんだけが失敗。5減少でーす♡狂気表は2。『パニック状態で逃げ出す』。いやぁー、見え過ぎるのも問題ですよねー」

 

 ケラケラと楽しそうに笑うコヤンスカヤの声と、オフェリアの狂乱した声が木霊する。恐慌状態に陥ったオフェリアはキリシュタリアの身を案ずる事なくそのまま映像ごと消えてしまった。

 

 その様子を見て、悪い事しちゃったかな……と反省するように頬を掻きながら、闖入者は自己紹介を始めた。

 

「あ――コホン、どうも初めまして先輩方。一般枠の補欠マスターです」

 

「……どうやってここに入って来た?虚数空間から浮上するのはそう容易ではな無い筈だが」

 

「ん?コヤンちゃんからは概ねAチームの情報を教えてもらったから、その縁を勝手に辿ってこちらにお邪魔しただけだけど?」

 

 クリプターを代表して問いかけるキリシュタリアにそうあっけらかんと返答する彼。

 

「……お前はどちらの味方なのだ?コヤンスカヤ」

 

「自分の味方に決まっているでしょう。当たり前の事、聞かないでもらえますぅ?」

 

 今ここに確かに実体を伴って存在しているのはキリシュタリアだけ。元人類最後のマスターは彼の事をコヤンスカヤに教えてもらったという、たったそれだけの縁だけで無理矢理キリシュタリアが担当する異聞帯へ割り込んで来たのだ。

 

「アンダーソンちゃんは一体、どこでこんな子をスカウトしてきたのかしら……」

 

「ハハハハッ!これのどこが何の才能も無い一般枠!?査問会の連中は本当にそんな資料を鵜呑みにしたのかよ!!頭の先から爪先まで余す所なく狂っている現物のコイツを見てよぉっ!!」

 

 

 各々、ここにいるクリプター達は又聞きでしかその補欠枠のマスターの事は知らなかった。何の才も血筋もコネクションも無い、魔術師とすら言えない一般人が自分達の代わりに人理を修復したと。

 

 話が違う。自分達が人理を修復出来ずに何もかも終わっていた事ではない。

 目の前にいるこの存在のどこを見て一般人だと思えるのだと。

 

「下がれマスター。黒髪の野郎も確かにやべーけど、下にいるクソガキもさっきからここにいる全員に殺意を向けてんぞ」

 

 そしてサーヴァントとしての責務を果たすようにキリシュタリアのサーヴァント。神霊という普通のサーヴァントとは一線を画す英霊。「お前なんかムラッとしたわ」と言う理由で海神ポセイドンに犯され、男になって、何故かサーヴァントになってまた女に戻っている性別転換なんのそのギリシャ神話に名高き王、カイニスも戦闘体勢に入ったままこの場に現れた。

 

 

「あら?おねーさん、アナルが弱そうな顔をしているわ」

 

「おいこのガキ頭おかしいぞ。どういう教育してんだテメー、マスターだろ」

 

「こらアビー、初対面の人にそんな言葉遣いしちゃいけません」

 

「あぁ、ごめんなさい座長さん。私ったらイケない娘だわ。はしたない言葉使って……これはまた座長さんにお仕置きしてもらわないといけないわ」

 

 敵陣真っただ中と言えるのにそのマスターは我が家の如くリラックスした雰囲気だった。

 彼が纏う空気の異常性、非凡性、規格外っぷり。テーブルの中心に陣取る彼を見て、クリプター達は多種多様な反応を示していた。

 

 その中で一番、彼の空気に呑まれていたのはカドック・ゼムルプスだった。ついさっきまで抱いていた妬みも遥か彼方へと追いやってしまう程の自分との明確な差。差というよりも生き物として根本から違うような……。

 

「は、ハハ――。一般枠?補欠マスター?僕達を含めて、全員節穴も良い所だったな…………あぁ、そうかよ。世界を救うにはそれぐらいイカれてなきゃいけないって事か」

 

 敵愾心が削がれてしまう程の逸脱ぶりも良い所だった。いま目の前にいるコイツはどちらかと言えば、ベリルやデイビット寄りだ。既存の常識じゃ測れない。成程、それは自分達を舐めるわけだ。コイツにとって僕達は一度負けている敗北者の集まりなんだから――とカドックは自嘲染みた笑みを浮かべた。

 

「ここに来たのは私達に対しての復讐かしら?補欠枠のマスターちゃん」

 

「あぁ――、そういうじゃないんだ。ペペのお姐さん。っていうかオネェキャラって初見だから何か新鮮」

 

「……じゃ、何しに?」

 

「顔見せかな?文学少女チックな先輩。お互いに知ってはいても顔だけはまだ直接会ってないでしょ。そういうのは良くないと思うんだ。相手の事をよく知らないままってのは、無知の放置こそ一番の罪ってね。せっかく、カルデアにいた同じマスターなんだからさ」

 

「随分と友好的だが、それは昔の話だ。元人類最後のマスターよ。お互いに譲れない目的がある以上戦い以外の未来は無い」

 

 キリシュタリアは言う。もう既に異星の神の力を借りて、人理は漂白された。手を取り合えるという分水嶺はとっくに過ぎた。クリプターのほぼ全てがこの星の覇権を目指している以上、最後に残った旧人類であるカルデアとクリプター達は争う以外に道は無いと。

 

「そもそも友好的になりてぇんなら、てめぇのサーヴァントぐらいちっとは抑えておけっつー話だ。ここの連中全員をゴミのような目でしか見てねぇぞ」

 

「座長さんの平穏を奪っておいて、殺気に留めているだけまだ温情がある方だと思うわ、神霊(笑)のおねーさん。メディア・リリィさんだったら、貴方達全員今ここでパンケーキになっていたもの」

 

「……パンケーキって何?」

 

 芥ヒナコの疑問に答える者はいない。

 

「吠えるじゃねぇか。たかだか神性モドキを持ったガキがよぉ」

 

「触手プレイがお好み?それとも座長さんに太ぉぉい丸太でヒィヒィされる方がいいかしら?大丈夫よ、どんなにエッチな顔になってもダ・ヴィンチちゃんさんと北斎さんが可愛く描いてあげるわ」

 

「…………ブチ殺されてぇかクソガキ」

 

「いあ、いあ!いや、よ……ふふ、フフフフフフフ」

 

 どうどうとカイニスとメンチを切り合っていたアビゲイルを落ち着かせる為に彼は彼女の頭を撫でる。まぁ、殺気と挑発に留まっているだけ本人の言う通り、温厚な方なのだろう。白騎士だったり溶岩水泳部の方々だったり、そっち方面の方々だったらもっと場は紛糾していたというか会話すらまず成立していない可能性が。

 

「ここまで来た以上戦い以外の道は無い。けど、俺としては色々と疑問なんだ。確かにコヤンちゃんの言う通り、俺は君達からチャンスを奪ったといえるマスターだけど。だからといって人理を救えなかったから既存の人理を滅ぼして、新しい世界を作り出すという発想に本当に至るのか。だって元々Aチームは人理修復の筆頭として集められたチームでしょ?」

 

 汎人類史を救ったマスターは穏やかに朗らかに、親しみを持ってクリプター達に語りかける。

 それは普段の日常なら特別可笑しい所は無いが、今この場にはそぐわない異端の表情。

 だがクリプター達の誰もがその表情に嫌悪感を抱けない。

 

 

「自分の命と天秤にかけられたから仕方なくその神様に従っているのか?それとも蘇生される際に頭の中を弄られたのか?それとも各々、個別の思惑があって今の立場に甘んじているのか?それともマリスビリーが集めたクリプター自体、人理修復以外の意味があったのか?それとも、それとも、それとも…………とまぁ、いくらでも可能性は考えられるけどそれ込みで一度、話合って、戦い合って、面と向かって正喰(正直)にぶつかり合った方がいいと思ったんだ。人間ってのはそうやって相互理解していくべきじゃない?()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 飄々と彼は話し続ける。今ここで不意討ちのように君達を問答無用に叩き潰すのは何か違うと。

 

 

「あぁ、成程。そういう事か」

 

 今まで沈黙を守っていたデイビットが口を開く、合点がいったと。

 

「何が成程なのかしらね?」

 

「ソイツにとって俺達は一度敗北した脱落者だ。そしてそれを本気で忍びないと思っている。たった一度のミスで何もかも無かった事にされるのは……あまりにも冷たいと。だからここでチャンスを与えている。敗者復活戦とでも言うべきか……。要するにこれは()()()()()()()()()()()()だ。多少、形式は違うがな」

 

 天才にして、異端。誰も理解しないし、誰からも理解されない異常者デイビット・ゼム・ヴォイドはクリプター達の中で最も正しくこの人類悪候補生の思惑を把握していた。

 

 

 

 

「ならば証明して見せろと言うのだろう?俺達にも世界が救えると吠えるのならば……。()()()()()()()()()()()()、な……」

 

「なっ……!!」

 

 今、コイツは何と言った?デイビットの台詞に他クリプター達が本日一番の爆弾に驚愕する。彼は何でそこまで驚いているのか理解出来ないといった風に言葉を続けた。

 

「あの触手の演出に誤魔化されたな。この場に現れたのはソイツのサーヴァントの能力では無い。ソイツ自身の単独顕現だ。単独顕現を持つなら必然的にビースト以外にあり得ないだろう?」

 

 

 

「おぉ、さすがはダ・ヴィンチちゃんが天才と評するだけの事はある。あぁ、うん。何か言いたい事、大体言われちゃったかな。……………………はは、あはははは――――!まさか、この俺がゲーティアの真似事をするなんて思わなかったけどね!」

 

 

 アビゲイルとこの場に乱入した時の覇気すら前座に過ぎなかったと、クリプターの円卓を包む空気がさらに重苦しく形容し難いモノへ。――――あるいは、目覚めさせてはいけないナニかを目覚めさせてしまった……そんな取り返しのつかない事をしてしまったような感覚に陥っていく。

 

 姿だけはどこにでもいる平凡な少年の外見も目に見えて変化する。

 

 今まで精々、肩までの長さしか無かった彼の黒髪が腰まで伸びる。右手の甲にあった令呪も伸び、服の下で全身の()()を覆う程の画数と成る。先程まで場を圧迫していた彼の威圧、そして魔力……いやそれに準ずる未知のナニかが留まる事を知らずに高まり続ける。

 

 

 

「慢心込みで魔神王ロールプレイだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 遂げる。蛹であった獣は未だ不完全であれど、人類悪へと羽化を遂げる。

 

 

 

「救ってみせろ。抗ってみせろ。俺は俺の手が届く世界を守ろう。その為に君達の世界を取り込もう」

 

 

 

 アビゲイルの概念触手ではない。彼の背後から伸び続ける数多の白き魔手が顕れる。

 

 この瞬間、人類最後のマスターであった彼は存在せざるビーストへと至る。

 

 ()()()で、人類()への昇華の為の供物として捧げられる創作物は五つ。

 

 

 

 

 

 ――お集まりの紳士諸賢、淑女の皆様。 これよりアンデルセンが語りますは一人の男の物語

 

【童話作家 ハンス・クリスチャン・アンデルセン作:『カルデア国物語』解放】 

 

 

 ――人間はなんて美しいんでしょう(How beauteous mankind is!)素晴らしい新世界(O brave new world)。さぁ、さぁ、さぁ、存分に貴方様の業を世界に示すとよろしい!!

 

【劇作家 ウィリアム・シェイクスピア作:『カルデア業物語』解放】

 

 

 ――君は君の道を進めばいい。生憎、それについていく物好きが大勢いるんだよ。私も含めてね?……そろそろ、私も自分がメインの話を書いてみたいな――。だってこんなに美人なんだぜ?

 

【天才芸術家 レオナルド・ダ・ヴィンチ作:『カルデア寝物語』解放】

 

 

 ――これでかなりの世界を敵に回してしまったZE!チェリーボーイやヴァージンには刺激が強いR18の桃色バラエティ!笑いと涙とエロ有りのHBチャンネルはじまりますよ――♡

 

【月の超級AI BB作:『HBチャンネル』解放】

 

 

 ――ふんぐるいふんぐるい、ふたぐんふたぐん……白きに輝くマスター殿の墨を存分に塗りたくるサ!いざいざご賢覧あれ!『蛸女と獣男』!異世界、桃色、肉荒び!

 

【浮世絵師 葛飾北斎作:『官能会之故姦通』解放】

 

 

 

 

 あらゆる媒体で彼の旅路を物語る英霊達の織物。それはまさに宝具とも呼べる代物だろう。

 

 無辜の怪物のように、あるいは物語や人々の口へ口へと移る流言がその人物を形作るように……。

 

 月の裏の海で童話作家が最低最悪の真性悪魔を生み出したように。

 

 捧げられた5つの宝具は誇張無しに間違いなく、カルデアに来てからの彼の人生を記し、表現し、形作るものだとしたら――。

 

 彼の奥底にあった獣性は今、ここで存在せざるビーストとして目覚めかける。

 

『親』しみを持って近づき、『深』きに結び付き、『信』を交わし、『真』の愛を得る。

 

 ストライクゾーンに入るなら『神』様だって愛してみせる。

 

 遠い未来、英霊となった彼が人類悪――『ビースト0』へと至る第七宝具にも当たるその宝具の名は――。

 

 

 

 

 

 

Call Dear(親愛なる 貴方へ)

 

 

 

 

 

 

 彼を最低(最高)の姿へと昇華させる作品達によって異聞帯を喰らい尽くす獣が生まれる。

 

 

「Call Dear…………カル、デア……」

 

 

 クリプターの誰かの呟きを最後に異星の神の尖兵達による会議の場は崩れ出す。

 円卓があった間も、その建造物も、観音像のように伸び続ける彼の白き千手が崩壊させていく。

 

 ――まさに災害。

 

 その悪魔の手はやせ細ったブリテンの土地に作物を芽生えさせる程のエネルギーを持っている。だが、過剰なエネルギーは場合によっては毒になる。有機物だろうと、無機物だろうと、ビースト0が生命力をその気になって止める事なく与え続ければ、キリシュタリアがいた建物は空気を入れ過ぎて破裂した風船のように音を立てて、崩れていく。

 

 人類悪と化した彼の第一宝具『白式官能』。彼が物質と認識すれば、無限に迸る生命力を与える事が出来る。それはこの獣の匙加減で快楽となり、痛みともなり、あるいは死ともなる。

 

「こんな場所にはもういられないわ…………わ、私は自分の異聞帯に引き籠らせてもらう!」

 

「それどうあがいてもフラグよヒナコ」

 

「うっわぁぁおぉ――――、予想以上に凄まじい…………。これはこれは私も転職をちょっと考慮に入れておくべきかしら?ビースト0……貴方、カルデアに所属しているマスターの中で文句無しにダントツ一等賞で愉快だったわ」

 

 

 

 決壊していくその場でもはや個々の異聞帯から映し出しているホログラムも保ってられない。これからのクリプター達の未来を示すかのように一つ、一つ、コヤンスカヤのも含めて、消えていく。唯一、この場で実体を持っているキリシュタリアとカイニスも崩壊している建造物から身を投げ出していった。

 

「馬鹿な――――」

 

「おい、一旦引くぞマスター。この身を裂くほどの屈辱だがあの野郎は本当に只の顔見せみてぇだ。今ここでオレ達と戦り合うつもりはねぇぇ……あひゅぅんぅっ!?」

 

 白き官能手の一つがカイニスの尻を撫でた。そこから与えられるのはもう彼とズブズブの関係になっている眷属(お嫁さん)達からすれば挨拶程度の控え目な快楽。それでも今までまともな官能を知らなかった彼女にとっては衝撃的な物だった。

 

「まぁ、アビーに暴言を吐いたって事でワンセクハラさせてもらったよ。文句があったら君も全力で挑んでくるといい。君みたいな気の強い()の子は大歓迎だ」

 

「あははははっ!『あひゅぅんぅっ』だって!可愛らしいお声だったわおねーさん!今の貴女なら好きになれそうだわぁ」

 

「おっけぇ……そんなに死にてぇかぁっ……!!」

 

 褐色の肌を紅く紅潮させ、怒りと湧き上がってしまった快感で吠えるカイニスの手も宙へ宙へと浮かび上がり続ける人類悪とそれに傅く魔女に届く事は無い。

 

 

 白きに輝く魔手と光り輝く概念触手に包まれたまま、空間の狭間へと戻っていく二人の姿の何と異形な光景の事か。まるで嵐が過ぎ去った後のような惨事だが、これでも彼にとっては只の顔見せだった。

 

 

 

「世界は終わらない。誰か一人の手で滅ぶ物でも、救う物でも無い。それでも君達が諦めず、厚顔無恥に、我こそは人理を救う者だ!と言うのなら、力の限り、叫び、足掻き、(人類悪)に挑んでくるがいい」

 

 怒りも悲しみも絶望もその一切を断って、楽しみと悦びと希望と親しみを持ってその獣は笑う。

 

「――何なのだ、貴様は……?」

 

 

 異界の彼方、別次元の向こうへと消えていく存在せざる人類悪にキリシュタリアは問わずにいられなかった。

 

 

 

「問われたのなら答えよう――。親しみを込めてこう呼ぶがいいさ!『ビースト0/デアー(親愛)』と!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




以上の過程をもって彼のクラスは決定された。人類最後のマスターなぞ偽りの名。

其は"自身の好きな人と共に生きたいという"人間が誰しも持ちうる当たり前の感情。だがその感情も規模が膨れ上がれば、度が過ぎれば、極限まで昂れば、ここまでの力を――人類に牙を剥く大災害になり得る結果となる。七つの可能性の外で終わりをもたらす番外的かつ平和的な『愛』。

その名もビースト0/デアー。存在せざる人類悪の一人、『親愛』の理を持つ獣である。














Call Dear(親愛なる 貴方へ)

ランク:EX
種別:対人宝具(自身)
使用者:元人類最後のマスター

カルデアに来てからの彼の人生をあらゆる媒体、あるゆる方面から語り、記し、映し、創作し、存在せざるビーストへと至らせる事が出来る。
もし遠い未来、彼が英霊になる事があるとしたら、恐らくこれが第『七』宝具となるだろう。
今回、彼がクリプターへ宣戦布告しに来た時に捧げられた供物は5つ。だがこの数でもまだ彼は完全に人類悪とは成っていない。
かの魔神王が特異点を『七』つ作り出したように。
虚構のセイレムを創り出した魔神柱が『七』度繰り返したように。
マリスビリーがクリプターなる者達を『七』人集めたように。
『七』という不変たる数字は宇宙を含めても万象に関わる特異性を持つ――――。


【童話作家 ハンス・クリスチャン・アンデルセン作:『カルデア国物語』】

【劇作家 ウィリアム・シェイクスピア作:『カルデア業物語』】

【天才芸術家 レオナルド・ダ・ヴィンチ作:『カルデア寝物語』】

【月の超級AI BB作:『HBチャンネル』】

【浮世絵師 葛飾北斎作:『官能会之故姦通』】

【文筆家 ■■■■■■■・デ■■作:『カルデア偽物語』】

【映画監督 ■■■■■・メ■■■作:『女体世界旅行』】

以上の『七』つをもって彼は完全なるビースト0へと到達する。恐れる事なかれ、侮る事なかれ、心を許す事なかれ、彼は親しみを持って君達の大事な世界を奪いに来るぞ。









•ビースト0/デアー


真名:■■ ■■
理:親愛



ステータス
筋力:A
耐久:A+
敏捷:B
魔力:EX
幸運:A
宝具:EX

クラス別スキル
獣の権能:C
単独降臨:A
それは時空どころか、世界、宇宙の壁さえ超えてしまう在り方。いつ如何なる時も気を抜く事なかれ、獣と成った彼はふとした時に隣に――――。



保有スキル
ネガ・ライフ:EX
彼の生き方そのもの。あるいは人理が焼却されようとサーヴァント達と通じ、体を交わし合い、受肉させる程の尽きる事無き生命力そのもの。彼は愛すべき者達と共に生きる為ならどんな無謀も通す。愛すべき者達と楽しんで生きる為ならどんな無茶だって行っていく。その為には人の身は少々脆弱過ぎたのかもしれない。
これは目の前にある壁や試練やシリアスを破壊する為に無限に成長していく最悪の星の開拓者スキル。絶対にボス系には持たせたらダメな奴。


魅了(ゼロ):A+(現在使用不可)
ビーストとなった彼のスキル。
他者にいきなり好意を与えるのではなく、負の感情をゼロにする。敵意や害意、嫌悪感を抱きづらいスキル。人畜無害、人当たりの良さの極致。絆ゼロスタート。隣人の如き平凡な雰囲気に惑わされ、不用意に近づいたら最後、もし彼のお目に適ってしまったら、そこからギュイーンと絆Pが溜まり、人たらし、たぶらかし、口説き、愛撫、ズブズブと最後まで絡め取られてしまう。これに対抗し、彼に敵意を抱くには、それを凌駕する程の大望と意志……それこそ世界に匹敵する想いを抱かないといけない。
――――――。
――――――。





『白式官能』
ランク:EX
種別:対界宝具
使用者:ビースト0/デアー
ついに最悪の観音像が彼の後ろに顕れてしまった……。
ビースト/デアーの背後から伸びる無数の白き手。
それは彼のお眼鏡に叶った対象に快楽を与える対雌宝具。あるいは殲滅すべき対象に無慈悲に生命力を供給し、破裂させ、叩き潰す対界宝具。この手が伸びる範囲は彼の視界に映る所ならどこまでも。
ちなみにCCC編においてマーリンが本気を出した彼が快楽天とヤり合ったら地球が滅びると言っていたのはこの事。キアラさんは「ンきもちぃいいっ……」ってイキ続けるけど、とばっちりでこの宝具を喰らってしまった地球君は「らめぇぇぇっ……」って滅びます。是非も無いネ。



英霊:グダお

第一宝具:『百式官能』
第二宝具:『模倣(まねっこ)宝具』
第三宝具:『人繋ぎの大秘宝庫(マテリアルボックス)
第四宝具:『性神と妻達の部屋(アダム&イブズ)
第五宝具:『這い寄る絶望(リョグダコ・ポテプ)
第六宝具:『この世全ての精(ファビアナ・スペルマ)
第七宝具:『Call Dear(親愛なる 貴方へ)




人類悪:デアー

第一宝具:『白式官能』
第二宝具:――
第三宝具:――
第四宝具:――
第五宝具:――
第六宝具:――
第七宝具:――





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フォトアナ(アナスタシア)

【アポコラボの感想】

自分が書いた作品のせいで、終始ジーク君を性的な目で見てました。
























《イカれたメンバーを紹介するぜ!! 【第二部 一章 獣国の皇女 アナスタシア編】》


マイナス百度の吹雪が吹き荒れる極寒の凍土。旧種と呼ばれる人間達は絶滅し、この過酷な環境で生きていく為にヤガと呼ばれる獣人達が強食の理に従って日々の糧を求める。

異聞深度D 永久凍土帝国アナスタシア。汎人類史に上書きしたこの凍てつく大地にて、寒さを一切感じさせず、むしろこっちが色んな意味で寒くなる頭のおかしい連中がヤガ・モスクワを目指して、雪山を滑走していた。


そんな外見、中身共々イカれたメンバーは――。

「バカンスッ! ですので!」

水着ワンピースで元気に明るく盾をスノボー代わりに滑るマシュ・キリエライト。


「なぁーにが獣国じゃ! こっちのマスターはモノホンの(ビースト)じゃぞ!貴様等全員廃棄物にしてやるわ! フハハハハハハ!!」

体のいたる所に炎を宿し、それそういう使い方じゃねぇからぁ!! とギター兼鈍器であるマイ武器を踏みつけ滑走する現在生身炎上中。赤ビキニ姿の第ロック天魔王 織田信長。


「ね゛え゛え゛え゛え゛ぇぇぇ!! 姫ってば炬燵で自堕落生活を満喫していた筈なのにぃ……何で炬燵ごとロシアに放り出されてるの゛お゛お゛お゛お゛お゛!? 昔のドッキリ番組だってもう少し優しかったと思うんだげどお゛お゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!?あぁっ! イタイイタイイタイ!! 雪がぁっ! 強風がぁ!! 顔にぃっ!!」

異聞帯? 第二部? 何それ美味しいの? ぬくぬくインドア生活を楽しんでいた筈の芋ジャージ姿の姫は知らぬ間に炬燵ごと異聞帯の地へ発射されていた。泣き叫びながら、炬燵に入ったまま雪山を滑り落ちる姿は哀愁と感動を誘う。


「ドッキリ……良い文化ね。電波を使い、悪戯を全世界に見せて娯楽として成立させる……。私の時代にもこういうのがあれば良かったのに。それにしてもおっきーは情けないわ。これぐらいの寒さでヘコたれるなんて」

そして同じく何食わぬ顔で姫と同じ炬燵に入り、『ドッキリ大成功!』の看板を持ちながら皇女の威厳もへったくれも無い青色ジャージを着ている白髪の女性は拠点を移した後にカルデアに入って来たニューフェイス、汎人類史アナスタシア。


「お前の仕業かあ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁ!! 酷い!ヒドいよ! アナちん! 同じ炬燵同好会の親友だと思っていたのに!」

「良い反応だわおっきー。今の顔、インスタにも上げていい?」




「炬燵から出てこない引きこもりにはいい薬になるでしょ? 出る気が無いなら炬燵ごと外出させればいいじゃない?」

さらにさらにスキー板で自身の刀をストック代わりにこの中では一番まともな方法で雪山を滑っている女性。あらゆる世界を放浪する大剣豪。下総国でマスターに美味しく戴かれ、白く濁ったアレで存在を確固たる物にした美剣士。「色んな所を旅するのは君の性だし、止めは出来ないけど……どこにいようとも俺が君の帰る家だって事は忘れないでね」とプロポーズ紛いの事を吐かれ、「んもぉぉぉ~~、しょうがないわねぇ~~~~!!」と二刀をぶんぶん振り回し、悶え、コロッと堕ちてしまった宮本武蔵ちゃん。

ちなみに「うぇ! 何事ぉ!? 何故、マスターは海パン一丁? いや、ここでは正しいのだけれども! ちょっと目の保養過ぎるんですけどぉ!?」とハワイの丸亀製麺でバケイションを楽しんでいた所、単独降臨したマスター(ビーストver)に拉致。


「ゲェっ!? 恋愛雑魚侍!! 何故ここに!?」

「その炬燵も叩き斬ってあげよっか?」


そして最後はマスター兼ビーストとジョブを増やした。海パン一丁姿のBeast/Zero。ボコした殺戮猟兵を板代わりに桃白白風で滑走するSAN値削られそうな光景はまさに色んな意味でラスボスに相応しいかもしれない。寒さなんてCHA-LA HEAD-CHA-LA。


「オラ、わくわっくすっぞ!」











『なぁ、ホームズ君。大波の如く、オプリチニキ共を殲滅していく奴らの姿を見ていると本当に私達が人理を修復する正義の集団とは思えないのだがね。敵の死体を板代わりとか主人公がやっちゃいかんでしょ。むしろ悪役(ヴィラン)なのでは?』

『ふむ、まぁ……マスター、いやここではデアー君と呼ぶべきかな?彼はここ最近、人類悪へとイメチェンを行ったのでそう映ってしまうのも致し方無い事かと、ゴルドルフ司令官』

『あれぇ、おっかしぃーなぁ。私の耳がおかしくなったのかな? 隣にいるホームズ君からあり得ない単語が聞こえてきたんだけどなぁ……。ねぇ、何? どうして、誰も彼も私から目を逸らすの?』

「UVカット、セット!」

『紫外線より守るべき物がもっとあると思うのだが!!』






「旧種ってやべぇな……」
「ヤガじゃなくてもそれは引く」









 

 虚数海に潜って、約三か月。

 

 シャドウボーダー内でアビゲイルが繋げたもう一つのカルデア。

 

 そこのシミュレーションルームにて再現されたチェイテピラミッド姫路城。

 

 より強固に。より怠惰を。より引き籠りやすくをコンセプトに姫はその城を再現した。

 

 シミュレーションだから、時の流れは遅い。そしてマスターのアレで受肉したけど、体の老化は何故かとても遅くなっているから、浦島太郎効果も気にせず、存分に引き籠れる。

 

 まさにニート垂涎の自堕落空間。温室育ち万歳。ネットとゲームとスナック菓子と炭酸飲料。そして気が置けない友人達とマスター。この空間には必要な物が全て揃っていた。

 

「あーぅ――っ……ひっどぉい目に遭った……。炬燵でのヌクヌクタイムから一変、いきなりロシアンワールドにボッシュートされてオプリチニキとの炬燵カーチェイスとかハリウッド映画だってもう少し段階踏むよぉ」

 

「これがダーリンとの絆を結んで強化された私のスキル『シュヴィブジック:B→A』よ。命の危険が無いレベルでなら不可能と思われる悪戯だって起こせるわ」

 

「普通に姫の命が危機だったんだけど。炬燵ごと城からスライダーされるとかショック死すると思ったんだけど」

 

 マスターことビーストの白く濁った魔力によって強化されたアナスタシアの悪戯スキルは更なる不可能を可能にした。防御性においてはカルデアサーヴァントの中でもトップクラスの性能を誇る姫の城をまるで過激なテレビ番組の如くドッキリ仕様にしてロシアの寒空の下、射出するという悪戯ってレベルじゃない現象さえ起こしてみせたのだ。

 

 巻き込まれるようにオプリチニキの殲滅の間の暇。武蔵ちゃんのチャキチャキ鯉口の切り音から逃げるように再びマイ姫路城へと戻って来たお姫ちん。

 

 時間の流れが異なるシミュレーションルーム。ここで一日過ごしても、外では一時間程度しか経っていない。英気と性気を養ってホクホク顔のビーストがまた出てくる。異聞帯に生きる者達にとっては悪夢のような代物。

 

 もうしないよね?もうさすがに無いよね?前と違ってアナちんと姫以外にも他に人がいる時にはあんな頭おかしい真似はしないよね?と皇女不信になりながらも姫はいつものメンバーとインドアタイムを楽しんでいた。

 

 

 

 

 

「えいえいっと。ゼノ・ジーヴァって何だか神々しいね。滅びのバーストストリートとか吐きそう。ま、姫のガンランの敵では無いのですが」

 

「守りながらせせこましく、ツンツン突いていくのもおっきーさんらしいプレイです。どうせ突くのならラーマ様の可愛らしいお尻を…………」

 

「モンハンしながら、性癖の話にシフトしていくのは悪い文明。我がフォトンレイ(只の溜め斬り)で骸と変えてやろう」

 

「ねぇ、ダーリン?どうして、この女は今まで主人公に迷惑しかかけてこなかったのに、ここでヒロイン面をしているのかしら?『相棒、相棒!!』ととても喧しいのだけれど」

 

 

 それは女達が集まる花よ蝶よと可憐に舞う女子会に非ず。

 刑部姫(桃色ジャージ)、シータ(赤ジャージ)、アルテラ(白ジャージ)、アナスタシア(青ジャージ)、マスター(黒ジャージ)が炬燵でぐだぐだする脱力空間。けど、美少女率が高いので凄く良い匂いとかすると思います。

 

 2.5m×2.5mという4畳近く程のスペースを持った巨大炬燵。存分に温りながら、4つのモニターを使い、彼女達はモンハンでオンラインプレイという贅沢な遊びに興じていた。

 

「というかマスター。『突撃!隣のクリプター晩ごはん』をして、ラスボスへとムーブした筈なのに何故いつもの姿に戻っているのだ?」

 

「髪長いし、鬱陶しいし、ケアが大変だしで、普段の時は元の姿にしておこっかなって?けど前から思うんだけど、こうやって強くなったり変身したりすると長髪になっちゃう傾向は何なんだろう。超サイヤ人3然り、俺自身が月牙天衝然り」

 

 アルテラの質問にいつものぐだぐだ黒髪フェイスに戻っているマスターはちゃっかりと膝上にいるアナスタシアに狩猟アドバイスをしながらも、あっけらかんと答える。前回あれだけ、ラスボスアクションかましておきながら、もう次回では元に戻っているとかこの人類悪ちょっと自由過ぎない?

 

「そんな軽い感覚でコロコロ人類悪になられても困るんですけど――……」

 

「獣スイッチ、ダーリンのはどこにあるんだろ~♪」

 

「きっと下半身ですね、間違いありません。私の心のラーマ様もそう言ってます」

 

 全員がゲームをしながら脊髄反射で言葉を垂れ流す脱力空間。とてもクリプター達と戦争中とは思えない。シリアスは一体、どこへ消えてしまったというのか。

 

「というか姫としては何で召喚されてから一週間足らずの新入りのアナちんがマーちゃんの膝上を独占しているのかにもツッコミたい気分」

 

「あらやだ、おっきーってばこんな真昼間から突っ込むだなんてお下品よ」

 

「むしろ、今のアナアナの体勢的にはこれ入ってるよね?とも言える。ゲームしながらの騎乗位羞恥ックス……それも文明だ」

 

「どこのアナに入れているんですかねぇ……。というよりも入れるならラーマ様の穴に入れてくださいよ!!(ノシ´・ω・)ノシバンバン」

 

「うぇぇ……もう姫以外、頭おかしいのしかいないんですけどぉ……誰かたちけて」

 

 姫の友達が変人しかいない件。

 シータの脳内、腐敗し過ぎな件。

 

「む、そうこう言っている内に狩猟完了だな。一応ストーリー的にはラスボスに位置する癖に根性の無い奴だったな。少しは何度でも何度でも空から爆撃してくるクソモンス筆頭バゼルギウスさんの根性を見習え」

 

 画面に浮かぶQUEST CLEARの文字。正直ここのモンスター達よりもおっかないのを散々倒してきた英霊諸君が楽しんでいるのはシュールと言えば、シュールなのだが、ゲームはきっと別腹なのだ。問題は無いのだろう。後、皇女様馴染み過ぎ問題。

 

「ふふ、一応ストーリークリアという事でインスタに上げるわ。さぁ、マイハニー、もっとこっちに寄りなさい。えーと、『今日は彼ピッピの力を借りて、モンハンストーリークリア☆彡ちょー、うれたん、今度は私のハートを狩猟して欲しいな♡』と…………」

 

「ゲーム画面ではなく、俺とのツーショットを撮るのか……」

 

「マイハニーて」

「彼ピッピて」

「召喚当初のキャラが焼却中」

 

 

 画像編集を巧みに使い、ハートマークやら星マークを二人の周りに貼り付け、刑部姫がペッと唾を吐きそうなバカップル画像を投稿するアナスタシア。けど、こんなんでもいいねはやたらと来るらしい。人理が漂白されているというのに、一体誰が見ているのやら……。ホント、ネットの世界ってば不思議。

 ちなみにおっきーはツイッター派。

 

 

「さて、そろそろ。ダ・ヴィンチちゃんさんに頼んでいた『カルデア寝物語――開発される雌の肢体~~ 妻と夫に翻弄されるコサラの王』が完成した時間だと思いますので、私はここでお暇させて頂きます」

 

「私は自室に戻ってインフェルノとPUBGの時間だ」

 

「ここでやってもいいんじゃないの?」

 

「いや、あの人妻ゲーマーはな。ことゲームに関しては妥協を許さない鬼の戦士で、このぐだぐだ空間で下手なプレイをしたら、何言われるかわかったものじゃないからな……」

 

 シータとアルテラが炬燵ルームからログアウトする。

 

「んっんぅ~~~~!!ってと!姫も息抜き終わったから、新刊の続きに取り掛かろうかなー。『まだ、~~日もある。余裕余裕』の悪魔の囁きには負けないよ!」

 

「コミケ?だったかしら……。今の世界でそんな事をする余裕があるのかしら?」

 

「アビーちゃんが一晩でコミケがある世界に繋げてくれました!さすがアビえもん!」

 

「異界の神ってすげーなー」

 

「マーちゃんも大概だと思うけどねー。そういうわけで私は一旦、修羅場ルームに戻るけど、アナちんの後は私の番だからね!ちゃんと執筆活動で疲れた私を労わる準備をしておいてよね!!それじゃあ、サラダバー」

 

 

 

 

 

 抜け目なく釘を刺して、刑部姫も居なくなる。

 そうして、さっきまで姦しくも喧しかった空間は二人だけの密室となった。

 

 アナスタシアもゲーム疲れで気が抜けたのか、顎を炬燵に乗せてぐでぇとしていた。美味しそうな白い頬がぷにぃとなっているのが可愛らしい。

 召喚当初の威厳さの欠片も感じさせない脱力具合。ロマノフ王朝の最後の皇女が青ジャージで炬燵の中で駄目人間になっているなんて……。

 

「雪見だいふくみたい……」

 

「雪見だいふく……。お腹が空いたわね……ますたー、ますたー、皇女はアイスを所望よ」

 

「はいはい、と……。掴まれると炬燵から出れないんだけど?」

 

「もう私の言葉を忘れてしまったのかしら?掴んだ手を、離さないで……。私の目の届く所に居てと言ったでしょ?ここから動かずに冷蔵庫ぐらい開けてみなさいな」

 

「そんなロマンチックな言葉をまさか、またこんな色気もへったくれも無い場所で言われると思わなかった」

 

 炬燵の上でゆるキャラ化しているアナスタシアはギュッとジャージごと掴んでいるマスターの太ももを離すつもりはないようだった。

 仕方ないので、マスターはちょっとだけビースト化し、『白式官能』で伸ばした手を器用に使い、冷凍庫を開け、二人分の雪見だいふくを取り出す。まさに人類悪の無駄遣い。

 

「ほら、マスター……。あーん、あーんよ。はい、そこで止まって。食べさせるのは写真を撮ってからよ。うん、うん……この角度が一番良いわね……またインスタに上げるわ」

 

 自撮り棒を巧みに使い、イチャ付き画像を再び投稿するインスタ嬢の鑑。

 コメントの『嫉妬で人を殺せたら』『新参者、ちょっと顔出せや』『おい、場所を教えろや』はこの幸せそうな顔を見る限り、見えていないのだろう。

 

「むぐ、むぐ、むぐ……。はぁ――……やっぱり、至高ね。炬燵に入りながら、マイハニーに食べさせてもらうアイスは。辺境の地と思っていたけど、侮れないわね……極東の島国も。私の国にもこの炬燵があれば……いえ、止めましょう。あり得ないイフを想像しても仕方ないわ。私達は確かに過去の英霊……けど、今をこうして愛する人と生きているのだから、未来を見ましょう」

 

「炬燵でそんなシリアス風味をされても困る。別にいいでしょ、それぐらいの妄想は。後、ダーリンだったり、マイハニーだったり、二人称が統一されない件について」

 

 パクパクとアイスを餌付けされている雪見皇女。彼女が汎人類史のサーヴァントとして召喚されたのは一週間前。縁?空っぽのカルデアに攻め込んで来てた異聞帯のアナスタシアとオプリチニキの集団を遠目からちらっと見た縁じゃないですかね?それだけで召喚するコイツも大分恐ろしいが……まぁ、アレな方法でシータを召喚しているし、突っ込んだら負け。

 

 それにこうして天真爛漫に、ある意味年相応に笑うアナスタシアも楽しんでいるのだろう。未だ人理は失いかけている危機的状況だけれども、召喚したマスターが最近人類悪になってラスボスムーヴしているやべぇ状況だけれども、こうして第二の生を謳歌しているようにも見える。

 彼女にとってはこの新生カルデアの何もかもが新鮮なのだから。

 

「あら、お嫌いなら普段のマスター呼びに戻すわよ?」

 

「いや、試行錯誤している感じのアナスタシアが可愛いからそのままでいいよ。ダーリン呼びってのも新鮮だし。えい、えいっ」

 

「むにゅ、ひょ、ひょら……ほっへをいひふゃいで……」

 

 後ろから饅頭のように柔らかい頬を指でプニプニと弄り続けるマスター。文句を言いながらも満更じゃなくされるがままのアナスタシア。

 色違いのジャージ姿で炬燵で密着している二人はほのぼのとした時間を過ごし、お互いの温もりを感じていた。

 

「ふぃ――…………これだけ長時間、くっついているとさすがに暑いわね……」

 

「この程度の環境で『暑い』などと知覚するとかw」

 

「何か無性に腹が立つ言い方だわ」

 

「炬燵から出る?」

 

「ロマノフ王朝の皇帝の血を持つ私をそう簡単にここから退かせれると思わないで頂戴。私がここから出る時は死ぬ時よ」

 

「ぐでりながら、そんな迫真でカッコいい台詞吐かれても」

 

「冗談よ。貴方との子を成しえて、その子が独り立ちするまでは死ぬつもりは無いわ」

 

 マスターに背中を預け、振り返ったアナスタシアは上目遣いで彼を見つめたまま、ジャージのチャックを少しずつ降ろしていた。

 

「暑いのなら脱げばいいじゃない。女にここまで言わせておいてすっとぼける程、鈍感主人公でも無いでしょ?マスターは」

 

「多分、もっと熱くなると思うけど」

 

「上等よ。極寒の地で育った私の体を溶かして、真の地獄(天国)を見せてみなさいマスター」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いつもの王家の人間らしく着込んだドレスからはわかりづらいが、彼女も結構なモノを持っている。

 俺は彼女自身がチャックを下まで降ろし、露わになった二つのだいふくを弄んでいた。その穢れを知らない白肌も雪を彷彿とさせる絹のブラジャーも、これからする行為をより一層強調させる程に純白だった。

 

 というか、ジャージの下の下着だけですか。えっちぃですね。

 

「んぅ、ぁっ……ぁんぅ……んふぁっ……ゃあんぅ!」

 

 先程言っていた通り、熱いという言葉に偽りは無いのだろう。うなじから浮かぶ汗の何と艶めかしい事か、眼福、眼福と頷きながら、アナスタシアの巨乳の感触を楽しむ。

 

 たぷたぷと柔く、そして確かな重量がある色白の乳房をマッサージするように周りから揉み込んでいく。炬燵に入っている下半身だけじゃなく、上半身も熱くなってきているようだった。

 

「そろそろ、ブラジャーも脱がすけどいい?」

 

「……んぅ、ふぅぁ……はぁ……いちいち、聞かなくても、脱がせばいいじゃない……」

 

「そういう乱暴なプレイをしないとは言わないけど、アナスタシアとは会話を随所に挟みながら、体の重ね合いを楽しみたいの?こういう穏やかなセックスはお嫌い?」

 

「……ばか、大好きよ……ダーリン」

 

 あぁ、もう、そんなトロンとした瞳でこちらを見られるともっと興奮するっての。こちとら最近、人類悪化したどこにでもいる普通の青少年なんだからさ。

 

 慣れた手つきでブラのホックを外す。

 真っ白な柔実の中心に咲き誇る桃色の蕾、白の肌に良く映える。充血しているそれは外界からの刺激を今か今かと待ちわびているようにも見えた。

 

「……よいしょ、んっ、あぁ……ダーリンは気にしなくてもいいわ。そのまま、揉み続けてくれていいから……」

 

「自撮り?」

 

「えぇ」

 

「インスタ?」

 

「あげるワケないでしょう。ダーリンとのイチャつきっぷりは見せびらかす為にも投稿するけど、私の肌は衆目に晒すほど、安い物ではないわ」

 

 自撮り棒を使い、スマートフォンを高く上げ、位置を調整するアナスタシア。巨乳を後ろからマスターに鷲掴みにされている姿は男なら誰もが目を惹かれてしまう魅惑の写真だった。

 

「思い出は確かに脳内に残る。けどこうして形にも残したいのよ。どんな時でも、どんな姿でも、貴方との思い出なら――ね。はしたない女だと笑うかしら?」

 

「笑わない。その代わり、ここまで想われて嬉しいし、正直興奮する」

 

「んぅふぅ!!……ぁんっ、もう、仕方のない人ね……」

 

 胸の先端を指で優しく突くと目に見えて反応が大きくなる。首筋まで赤くなっている彼女の肌も声色も髪も反応もその心内も全てが愛おしい。

 

「自撮りするのは結構だけど、気持ち良くなり過ぎて、シャッターチャンスをたくさん逃しちゃうかもしれないよ……?」

 

「へぇ、世界初の自撮りをした女。自撮りマスターとも言える私に大きく出たわねダーリン……。えぇ、その挑戦受けて立つわぁぁぁんぅぅっ!?ちょっ、いきなりぃぁ、やぁんぅ!!」

 

 最初よりも早く激しく、巧みにそして的確に彼女の性感帯を突いていく。

 もにゅもにゅと俺の両手の中で整った形を歪ませていくバスト。熱いのに冷たい、未知の彼女の肌触りにいつまでも浸りたくなってしまう。

 

「んぁっ、あぁっ……ああぁっ!んぅ、こ、このぉ……」

 

 胸を撫でられ、揉まれ、摘ままれ、悶え喘ぐアナスタシアが持つ自撮り棒も当然、面白ぐらい震えているがそこは自称自撮りマスター。快楽を得ながらもしっかりとシャッターを切っていた。これもある意味ハメ撮りと言えるのかね?

 

 というか……。

 

 ――カシャ

 

「んぅぅっ!」

 

 ――カシャカシャ

 

「んぁっ!!あぁんぅ!!」

 

 ――カシャッ!カシャッ!カシャッ!

 

「ああぁんぅぅ!ふぅぁっ!!ひゃぁっんぅ!!」

 

 

 シャッターを切る度に彼女の反応が一際大きくなっているような気がする。アナスタシアの肌に浮かんでいる汗の量が彼女の興奮の大きさを物語っているようにも……。ふむ、もう自撮りで興奮を得るまでになったのかこのエロ皇女め。

 

「自撮りでキモチ良くなっちゃってるの?変態さんだね、皇女様は」

 

「んぅ、んぁっ!だって、仕方ないじゃない……あなたとの営みをこうやって一枚一枚フォルダに残していると考えるとぉ……ああんぅんぅ!ゾクゾクがぁっ……止まらないだもんぅぅっ……!だから、そのまま、私を犯し続けてぇ……!これも思い出だからぁ……あぁ……胸、なめちゃぁぁっ……!」

 

 アナスタシアの体をこちらに向くように少し回転させる。鋼の意志で未だ自撮り棒から手を離さない彼女の弛緩した口元からは涎が垂れていた。一体どんな画像が収まっているのか今からでも楽しみになる。

 

 そして誰も踏みつけていないまっさらな雪面に足跡を付けるように……穢れを知らない乳房へと口を付ける。男に赤ん坊の如く胸を吸い付かれるその倒錯的光景にも何一つ躊躇う事なく、彼女は写真を撮り続ける。

 

「はぁっ……あっ、あぁんぅぅっ。ひぅんぅ、ぺろぺろ舐めてぇ……犬みたいよぉ……あ、あんぅぅ!!」

 

「れろっ、れろぉ……ちゅ……んっ、胸もそうだけど、汗が美味しくてさ……。ほら、炬燵に長時間いたせいか、体中に浮かんでいるだろ?」

 

「あっ、こら……。そんな所に顔を突っ込まないでってばぁ……ひゃんっ!!」

 

 自撮りを続けている所為でがら空きになっている脇にも舌を這わせる。しょっぱくもどこか甘い。香水と彼女本来の体臭が混ざった雌の匂い。ペロペロと舐め続けられ、喘ぎながらも彼女は自撮りを止める事は無い。

 

 細くもちっとした彼女の二の腕に挟まれながら、延々と唾液を塗し続ける。甲高い声を上げ、快楽に翻弄されながらも健気に自撮りを続ける彼女が愛おしい。

 

 フィルムの中にいる彼女はどんな蠱惑的な表情をしているのか。後の楽しみにしながらも俺は彼女の乳房の中心に顔を戻し、吸い付いた。

 

「ひゃぁあっ……!!!!」

 

 一際大きい嬌声が響く。脇に手を挟み、逃げられないように……。徐々に硬くなり、勃起した蕾を甘噛みし、彼女の快楽のエキスを吸い出していく。口の中で好き放題にされる乳頭は舌で舐め上げられ、舐めまわされ、突かれ、噛まれ、唇でキスをされる。

 

 

「や、や、や、やぁっ……やぁっ!やぁんぅぅ!!あっ、あっ、す、すごっ、ひんぅぁっ……!ちくびだけでぇ……イッちゃああぁっ――……!!」

 

 上目遣いで覗いていた彼女の顔から胸の愛撫だけで達してしまった事がわかった。やがて、手から力が抜け、あれだけ離さなかった自撮り棒も床へと落ちてしまった。

 

「はぁ――っ、はぁ――っ、はぁ――っ…………」

 

 性的興奮と下半身を炬燵に入れている事による暑さが彼女の肌に玉露をいくつも浮かばせていた。

 びしょびしょになっている肢体、淫らさと美しさと純白さを兼ね備えた彼女らしい痴態。

 暑さでぐったりしていたがその瞳はまだ犯れるわと言いたげだった。

 

「おぉ、おぉ、大分撮ったね。ってかうわぁ、えろぉい」

 

 見下ろすようなアングルで撮られているアナスタシアのパイオツ揉まれアルバムは快楽に翻弄されながらもどこかそれを愉しんでいるような女の子が写っている見事に爛れた写真集だった。特に俺の顔が微妙に写りそうで写っていない所がよりエロチックさを増している。

 俺を知っている人なら、「あぁ、これはあの人だな……」ってわかるだろうし、詳しく知らない人からすれば「誰だ!後ろの男は!」って思うだろう。

 

 こういう女性のエロチズムを一枚の写真で表現する時は男はそこまで前面に出さない方が映える場合もある。あくまで主役は犯されている女性。男に胸を揉まれ、あられもない姿を晒しているアナスタシアの艶麗っぷりを堪能するべきなのである……うん。これは良い思い出になりそうだ。

 

「はぁ、はぁ、足りないわ……。まだ、まだ……その程度じゃ、512GBのメモリがいっぱいになるまで、撮り続けるわ……」

 

「何万枚って域まで行くね……さすが自撮りマスター。けど、もう自撮りする余裕もあんまり無いでしょ?だから――ここからは」

 

 スマホのレンズを彼女へ向ける。ディスプレイに映っているのは息も絶え絶えに不思議そうにこちらの様子を覗っているアナスタシア。俺の思惑もきっと察してくれるだろう。

 

「ここからは貴方が撮るとでも言うの……?」

 

「ご不満?」

 

「だって、その分、ダーリンと触れ合える手が少なくなっちゃうじゃない……」

 

 ぶぅっとこっちが悶死してしまいそうになるぐらいに可愛らしく頬を膨らましている雪国っ娘が愛おしくて死ぬ。

 

 ふっふっふっ、だが一つお忘れじゃないのかな君は?俺が何の為に人類悪になったのか、何の為にこの宝具を会得したのか。

 

 ビーストモード小解放。『白式官能』の魔手がスマホを手に取り。カメラマンと化す。

 

「す、凄いわ……。ダーリンがその気になれば百台あっても同時に撮影出来るわね!」

 

「千でも、万でも余裕よ」

 

 これで俺の両手は心置きなく、彼女の肢体を愛でる事が出来るというわけで。

 え?『白式官能』による触手プレイ?う――ん、悪くはないけど、それはまた今度という事で。出来れば、強気で「クッ!あなたなんかに堕ちたりしないんだから!殺しなさい!」みたいな感じの娘までとっておく事にします。

 

「汗が凄いね……。そろそろ下も脱がした方がいいんじゃない?」

 

「よきにはからいなさい」

 

 あっ、俺に脱がせろって事ね。けど、ジャージって便利だよね。女子力とかお洒落力は投げ捨てているけど、こうやって脱衣する時に手間はかからないし…………あぁ、けどもう俺は鎧だろうが、複雑なドレスだろうが、コンマ数秒で脱がせる程の脱衣術を身に付けていたよな……。これも頂点に達した事による弊害か。あるいは極めし者の寂しさというべきか……。

 

「んっ、ふぅ……ぁぁ……」

 

 彼女の悩ましい声を耳の保養にしながら、下を脱がす。炬燵にいてあれだけ乱れていたのだ。下半身も汗と別の汁でびしょびしょになり、むわぁっとむせ返る程の湯気が雌臭と共に立ち込めていた。

 

 この汗の量からわかるように雪国育ちの彼女にとっては暑くて仕方ないのにアナスタシアは頑なに炬燵から出ようとしない。それほどまでに炬燵が気に入ったからなのか。それとも――。

 

「汗だくで酷い状態だよ。どこを触ってもヌルヌル、ベチョベチョで、匂いも溜まって……」

 

「あっ、んっ……やっ……恥ずかしい事言わないで……」

 

「嘘。本当は汗だくになってイチャつくのが大好きなんでしょ?だから炬燵からも出ようとしない。こうやって二人で服を全部脱いでも炬燵からは出ないで獣臭をプンプン香らせながら、汗を塗りたくるようにドロドロセックスするのが好きなんでしょ?」

 

 自身の服も脱いで、一糸まとわない姿でアナスタシアの体を包み込むように抱き締める。

 彼女の肌着は後は白い絹のパンツのみ。いきり立った逸物がその布上からお尻をツンツンと刺激する。

 

「はぁっんぅぅ~~~~…………ぁああぁぁっ……!」

 

 素肌同士の触れ合いで感極まったように俺の腕の中で悶え続ける白銀の美少女。

 互いに汗まみれのヒドい状態だったが、この触れ合いが二人の境界線をまるで無くしているかの如く溶け合っているようでとても心地が良かった。

 

 

「ほら、最後の一枚も脱がされちゃうよ()()()()。剥きだしの性器、好き放題撮られちゃうよ?」

 

「ひぁっ!!ぁ、ぁ、んぅ、んっぁぅ……ず、るいわ……今、その名前で呼ぶのはぁぁ……」

 

 耳元でアナスタシアの愛称を囁き、彼女を蕩かさせる。

 素手での全身愛撫を続けながら、やがてその手は下腹部へと伸びる。スマホを持っている魔手も炬燵の下へと潜りこみ、俺が少しずつ、アナスタシアの下着に手をかけていく瞬間も容赦なくシャッターを切り続ける。その音が聞こえる度に彼女の反応はさらに大きくなっている。

 

「はい、ナーシャ。あ――ん」

 

「はぇえ?……あ、ぁぁ――んんんぅぅっ!?んむぅっ!!ちゅ、んちゅぅぅっ……」

 

 まるでハートマークが浮かんでいるようにも見えるトロンとした瞳でこちらの顔を映す。心ここにあらずな感情は言われるがまま素直に俺の言うことを聞き、口を開け、その無防備に開いた唇を奪われる。

 

「んんんんむぅぅっっ!!」

 

 カシャッ、カシャッ!とパンツを脱がされ、丸出しのアソコを撮られる音。さらには舌を強く、深く吸われる音。上下から流れる淫靡な音が再びアナスタシアを絶頂へと導いた。

 

 パンツも不要だと炬燵の奥へと投げ捨てる。まぁ、色んな液でビショビショだったし、乾かすのには丁度いいでしょ。

 

「舌、使って、ナーシャ」

 

「はぁ、んはぁ…………んぅぁ……ふぁ、ふぁい……ちゅ、れろぉ、んむぅ、ちゅぷるぅ……」

 

 チロチロと浅く、ヌチョヌチョと時に深く、舌を舐めまわしながらお互いの唾液を交換する。

 雪のように透き通る白髪を梳くように撫で、胸を揉み、ディープキスを交わしている相手の顔を視界に収める。あっ、ちょっと目を逸らした。さっきまであんなに恥ずかしい自撮りをしていたのに俺に直接見られるのは恥ずかしいみたい。

 

 オープンなのかと思いきや、そういう照れ屋な所も男心をくすぐってくれる。

 

「んひぃっ!?」

 

 そしてわざわざパンツを脱がしたのだからそちらをいつまでも放置するわけもなく、俺の指がアナスタシアの陰核を小突く。見なくても女性のクリトリスの位置が正確にわかるようになった自身の成長ぶりをしみじみ感じながら、陰部の愛撫を続ける。

 

 炬燵で存分に暖まっている中、さらに暖かいナカ、ナマの感触を求めて指は大洪水中の彼女の淫裂へと沈み込んでいく。いつもは氷を彷彿とさせる冷たさなのにこうしてスキンシップを続けるとすぐに体温を上昇させる彼女のギャップに口角を上げ、至る所を指でノックしていく。

 

「んぁ、ぁぁっ!あぁぁっ!!あつ、い……あつい、あついわぁ……そんなにグチョグチョしたら、とけちゃうわぁ……んひゃあぁっ!!」

 

 おやおや指程度でとけちゃうとは。これからもっとグチョグチョになるというのに。

 蜜壺へ淫らに指を出し入れしているこの時も我がカメラマン(白式官能)は容赦なく撮り続ける。フラッシュもたいてるから暗い所でも安心ですね。

 

「やぁっ……あっ、あぁっ!んむぅ、ちゅ、んちゅぅ……んぱぁっ、はぁっ、だーりん、その、おしりにぃ……あんぅうぅ!!あついものがぁぁ……はぁぁっ――……」

 

 まぁ、全裸なら当然気付くか。彼女の尻の割れ目にさっきからずぅっと擦り付けている肉棒。アナスタシアの汗をより多く浮かび上がらせている原因の一つにもなっている灼熱の剣。

 腰をちょっと動かすだけで悩ましく体をくねらせているからなぁ……。

 

 さて、どっちに入れて欲しいのかな?

 

「んっ、はぁっ……悪い顔をしているわ、だーりん……ふぅあっ!」

 

「悪戯するのは好きだけど、されるのは嫌いかなナーシャは」

 

「はぁっ……カニェーシナ(もちろんよ)。けど、んっ……貴方なら好きなだけ悪戯してくれていいわ。私が言ったのよ?『極寒の地で育った私の体を溶かして、真の地獄(天国)を見せてみなさいマスター』って」

 

「暑過ぎて狂っちゃうよ?」

 

「もう貴方に狂ってるわ……んちゅぅっ」

 

 返答代わりの熱いキス。唇も背も胸元も四肢も局部も蛇のように絡み合い二人の汗も一つになっていく。

 激しいペッティング、快楽によって得られる熱は二人の理性も奪う。

 俺だけじゃなく、彼女自身も挑発するように腰を動かしていた。

 

 ヴァギナは手マンで埋まっているのなら、()()()に挿入するしかない。

 

「あっ、ひんっ……!!」

 

 割れ目に溜まった汗と亀頭の先走りが良い潤滑液になる。少し力を入れて不浄の穴に侵入しようとすると電流が走ったかのように彼女がビクンと震える。

 

「こっちを見て、ナーシャ。君のアナル処女が奪われる瞬間がバッチリと撮られちゃうよ」

 

「あ、あ、あ、あ、あぁ――――」

 

 散々、彼女の陰部を連写し続けていたスマホは炬燵から出て、上から今か今かとその瞬間を待ち侘びていた。いやーホントに俺の第三の手ってば便利。

 

 アナスタシアの顔に浮かんだのは羞恥でも怒りでも悲しみでもなく、恍惚とした悦びの顔。深く感嘆の息を吐くのを合図に彼女はこう呟いた。

 

「私の全てを奪ってマスター。私を構成するありとあらゆる全てが貴方の物だと私に刻み込んで――」

 

 きつく狭い筈なのに、その剛直は難なく彼女の純潔の一つを奪った。

 

「んはああぁっんぅぅっ!!!!」

 

 可愛らしい悲鳴。きゅうきゅうとこちらを締め付ける腸道と同じくそれはこちらの興奮を高めてくれる絶好のスパイスとなる。

 

「あっ、はぁっ……あはぁっ!!やけちゃう、やけちゃうぅ……!あつくて、あつくて、死んじゃいそうなのに……それが心地良くてぇ……はぁっ、はぁっ!」

 

 パクパクと酸素を求める彼女の口をさらに追い詰めるように唇を塞ぐ。グッグッと腰を細かく動かし、尻穴を刺激し続ける。もはや氷の女王と呼べない程に熱い吐息が俺の口内へと送り込まれてくる。

 

 炬燵というゆるい空間で汗だくになって肌を合わせているこの時間が堪らなく心地が良い。

 

 指で膣内を刺激し続け、舌で口内を舐め続け、肉棒でアナルを犯し続ける。

 

 彼女は気付いているのだろうか?自分が今、とんでもなくはしたない顔をしている事に。それを余す事なく写真に収められている事に。

 気付いているんだろうな……シャッター音がする度に膣とアナルがきゅうきゅうとこっちを締め付けているんだもの。

 まぁ、撮られて興奮するようなイケない娘にはこちらも遠慮はいらないか。

 

「んんぅぅっ!!んぅぁっ!!んちゅ、ちゅるぅぅ!!んぁうっ……!!んぉぁっぁ!!」

 

 背面座位で腸奥を突き続ける。指でGスポを撫でるのも忘れずに。淫らに俺の唇を貪り続ける皇女様のエロ画像がどんどんアルバムに溜まっていく。

 

「すんすん……二人とも汗でひっどい匂いしてるね」

 

「んちゅ、ちゅ……はぁっ……んぉ、おぉぁっ……!し、仕方ないじゃない……こうやって、こたつで汗だくセックスするのぉ……好きなんだものぉぉぉほぁあっ!!」

 

「そーだね、ナーシャは炬燵ハメ撮りアナルセックスで気持ち良くなっちゃう悪い娘だもんね――。はい、チーズ」

 

「ちーずぅ……あっ、あっ、はふぅ!!あぁ!あんぅぅぁ!!んほぁあぁっ!!あ、ついぃ、ますたぁぁのおちんちん、あちゅぃいいぃ……!!」

 

「これぐらいの熱さでヘコたれてら先が思いやられるよ?これからもっと熱い物を吐き出されるんだから」

 

「ふぇ?あ、あ、あああああぁぁっ!!!」

 

 ブリッジするように彼女の下半身を突き上げる。胸と淫唇に添えた両手はそのままに。「カメラ目線で」と俺の言葉を素直に聞くアナスタシアは痴態を観察し続けているスマホに肉欲に狂った視線を向けていた。どこで覚えたのかわざわざダブルピースまでして。

 

「んんんぉぁあああああ―――!!!!」

 

 冷たさと熱さが混在したようなアナルが際限なく俺のペニスを締め付け、子種を吐き出させようと促す。

 堪える事なく放出された白濁の波は皇女様の腸道を容赦なく犯しつくした。指を締め付ける膣の強さが彼女の昂りっぷりを教えてくれている。

 

 獣のような快楽の咆哮。只、男の欲望を受け止める雌となった瞬間も容赦なく写真に撮られ続ける。

 

 

「んぁっ――……んぁああっ、んぉ、ほぉ、おぁ……あんぅっ……はぁ――……だぁーりん?」

 

 息も絶え絶えになっている彼女を横にして、押し倒すような体勢へと移行する。

 まだ終わりじゃないさ。だってもう一つの方にも出してあげないといけないだろ?アナスタシアの下半身の氷を完全に溶かし切らないと。

 

「休憩は必要?」

 

「ふふ、いらないわ……。むしろここで焦らされる方がぁぁあああんぅぅぅっ!!」

 

 言葉途中で挿入を開始する。キリッと一瞬だけ何か言いたげにこちらを睨んだ彼女だったがすぐに快楽へと意識が流されてしまった。両手足も俺を逃さないようにガッチリとホールドしている。

 

 正常位での激しいセックス。上半身は外に出ているが下半身は未だ炬燵の中。ギシギシと炬燵が揺れている……うむ、上に置いてあるモニターとかが倒れないかちょっと心配。

 

「あっ、あっ、ぁぁっ!とけちゃう、とけひゃうぅ……!キモチよしゅぎてぇ……あなたのおちんちんでとけひゃうわぁぁっ……あんぅぅぅ!!」

 

 こういう見せない構図って客観的に全部見えている物よりエロく感じてしまうのは何故なのだろうか。想像力を描き立てられる……あるいは人は隠された物により強くエロスを感じるのか。まぁ、確かに人が服とか必要としないで常に全裸だったら、人間のエロに対する探求心も失われていったのかもしれないし。

 

 見えないけど、見えるもの……。炬燵ックスとは深いな。あ、カメラさん(白式官能)、横からの写真もよろしくお願いします。

 

「うぅぁっ……あん、あんぁぁっ……!はぁぁんぅぅぁ!!んんぅ、んふぁあっ……!!あ、あぁ!ああぁっ!!」

 

 こうやって炬燵に下半身を隠されていると確かにオーソドックスな正常位のセックスとは違う感触でもある。暖められた空間でさらに暖かい肉の空間へと竿を挿入するこの感触。しかもその結合部は見えない……と。肉棒を包む感触とアナスタシアの乱れっぷりを肴に腰を振り続けるプレイも案外悪くない。むしろ良い。っていうか冷たくて暖かいアナスタシアの膣の感触をよりリアルに感じられる。アイスパンケーキみたい。

 

 おっきーとも何度も犯ってたりはするが、相手が違うとまた別の感想が出てくる。炬燵ックス侮れんな。

 

「ひぅぅぁっ!あぁっ!ちくびぃ……こねちゃぁっ……あっ、あっぁっぁ……!!」

 

 揺れる皇女パイも容赦なく揉みまわし、隆起している先っぽも抓んで伸ばす。

 余りにも熱くて、目の前の彼女が溶けてしまうのではと心配になる程の激しいセックス。ま、アナスタシアが消えて無くなるなんという展開は俺が許すわけが無いんだが。

 

 これからも共に生きて欲しいという願いも込めて、白濁の魔力を注入する準備をする。受肉させ、やがて彼女を孕ませるつもりのドロドロの精液を。

 

「出すのぉ……?だすのねぇ、だーりん……いいわぁ、私の初めてをたくさん奪ってぇ……これからも、初めてをたくさん教えてぇぇ……あんぅぁっ!」

 

 両手を伸ばし、慈愛の表情となって俺を迎え入れる彼女は成程、確かにこのカルデアで召喚されて色々と駄目になってしまったが王家の人間として相応しい風格と威厳を持っているようにも見えた。

 

「んぁっ、あぁっ……溶かして、蕩かして、ドロドロにしてぇ……んぁ、一つになりましょう。愛しい貴方……私はもう、何も失いたくないのぉ…………あ、あ、あ、あぁっ――」

 

「愛してるよ、ナーシャ」

 

「あ――――」

 

 心のどこかにある小さな悲しみと寂しさ、それを完全に溶かすように子種をアナスタシアの最奥に吐き出す。一回目よりもさらに増えた射精。彼女の霊基全てを確固たる存在として根付けようと精子が肉体へと染み込んでいく。

 

「あああぁぅぅぅぁっ―――!!!はあああぁっ!!あぁぁっ!!でてぇ……まだでてぇるぅ……あんぅぁっ……こんなにたくさぁんぅぅ……」

 

 隙間なくピッタリと密着した下腹部。溢れ出る精子全てを彼女に捧げようとしばらく離れる事は無かった。火傷してしまいそうになるぐらいの激しい性交。ピュッ、ピュッと精液を吐き出す度に敏感に痙攣するアナスタシアの体。

 

「あっ!んぅぅ……ふぅ……あっ!お腹ぁ……せいしでぇ……膨らんでぇぇ……んふあぁ…………」

 

 射精の余韻に浸るように彼女の方へ倒れ込む。お互いに髪を撫でて、微笑み合う。

 

「あっ……んはぁ――……暖かい……。マスターの傍は本当に暖かいわ」

 

 頭の片隅で後で炬燵の掃除をしないとなーと思いながらも、ピロートークを交わしつつ、しばらく横になりながらイチャ付きあっていた。

 

 最後に皇女様はまたツーショットで自撮りを撮った。ちなみにこれはインスタに上げるらしい。肩までしか映ってないけども、雰囲気的に事後だと丸わかりなのだが……。コメントにも「今日はダーリンに色んな所をハラショーされちゃいました♡キャッ(〃ノωノ)」ってぶち込んでるし。まぁ、本人が楽しそうなのそれで良いのだろう。俺も現代文明を楽しむ英霊の皆を見るのは悪くない気分だし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そういえば、そのインスタ投稿の後もしばらくスマホを弄っていたので何をしてるのかと聞くと。

 

「行為中の画像を全部、LINEでおっきーに送ってるわ。私の肌は衆目に晒すほど、安い物ではないと言ったけど、親友のおっきーには別よ」

 

 そう言ってアナスタシアは満足そうに寝息を立てた。え――、その親友に喧嘩でも売っているのですかね貴女は。

 

 

 

 

 

「イキリ雪国の大馬鹿女はどこだ!!」

 

「お、俺の隣で寝ています……」

 

 しばらくもしない内にブチ切れ気味のおっきーが戻ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




《ヤガ・モスクワにて》


「うわあああああっっ!! あ、あ、…………はぁ――、はぁ――、はぁ――…………夢、か……」

「びっくりしたわ…………酷い顔ね、カドック。よっぽど悪い夢でも見たのかしら?」

「アナスタシアか………………インスタは、いいのか?」

「何を言っているのかしら?」

「……いや悪い。僕も自分で何を言っているのか良くわからない。もう覚えてないが色んな意味で凄まじく、二度と見たくないような悪夢を……見たような気が、する……」

「隈もより一層濃くなってるわ。夢で魘されるぐらいに衝撃的だったのかしら?デアーと名乗る獣との出会いは」

「……もし仮に僕達の代わりに人理を修復したのが報告書通りの何の変哲も無い補欠枠のマスターだったら、僕は今頃、嫉妬に狂っていたんだろうけどね……。あぁ、だがそんな嫉妬心すらも湧かない程の規格外っぷりだったよ。あの自称補欠枠のマスターは」

「皇帝を起こしても駄目、かしら……?」

「勝負にはなる……。と信じ込まなきゃ、やってられない状況だな。あぁ、クソッ。本来ならカルデアとの戦いなんて雑事も良いところだったのに。どうしてこうなった…………」


「随分と悲観的だな少年。そんな君に朗報を持ってきたのだが」

「マカリー司祭……」

「…………ふぅ、で?朗報って何だ? あんたの顔を見る限り、良い知らせとはとてもじゃないが思えないのだが」

「――喜べ少年。人類悪(馬鹿)が海パン一丁でやって来たぞ」

「は?」

「失礼。言葉足らずだったな。鎧袖一触の勢いで君達の恐れる獣がこの都市に向かっているらしい。わざわざ徒歩で来てくれるあたり、随分と手心を加えてくれているようだな……」

「いいから、事の詳細を伝えなさい」

「デアーなる獣。マシュ・キリエライト。そして黒髪の少女らしきサーヴァント。この3人は水着姿でこちらへ滑走している」

「なんでさ」

「寒さで頭がやられたのかしら」

「それとは別に二騎のサーヴァントも炬燵に入りながらこちらへ急接近中だ」

「カドック、炬燵とは何かしら?」

「確か、日本の暖房器具だな。Dr.ロマニが良く入り浸っていた……待て待て待て待て待て待て待て、何でそれでこの極寒の地を移動出来る」

「ちなみに内一人は皇女、貴女でしたよ。格好は青ジャージと随分と俗世に馴染んだ姿でしたが。高速で動く炬燵の中で楽しそうにスマホをいじっている姿も確認されています。この場合は汎人類史のアナスタシア皇女と言うべきですかな」

「カドック、私ちょっと寝てくるわ」

「おい待て。現実逃避をするな」

「あぁ、それとは別に大量の食糧の施しをしながらヤガの村々を回っているサーヴァントの一団がいるようだ」

「はぁ……やっとまともな報告が聞けそうだ。そいつらもカルデアの関係者だろう」

「確か、礼を言ったヤガの者達には『サンタ』と名乗っていたそうな」

「サンタクロース? 聖ニコラウスの英霊か? まぁ、確かに贈り物の宝具やスキルは持っていそうだが……。そんな奴も召喚していたのか、あの人類悪は」

「あぁ、その『サンタ』と名乗った数は3人。オプリチニキをプレゼント袋で撲殺するブラックサンタと年端もいかない水着のような格好をした少女と布面積が信じられないぐらい少ない羊に乗った褐色の女性だったそうだ」

「いや、それ絶対サンタじゃないだろ」















多分、悪夢から覚めたカドック君はアソコがおっきしていると思います。

おっきー、新参者に十八番の炬燵プレイを先取りされてしまう件。
異聞帯攻略? 前書き、後書きのダイジェストでいいでしょ? 本編はイチャエロ!!
次回、姫の悲しみの本領発揮(?)回。


アナスタシア「4代目サンタ? いやいや、やりませんよ。わざわざ寒い時期に薄い格好で働くとか理解に苦しみま、え? インスタ映えする?ダーリンとのプレイの幅も拡がる?ミニスカサンタで辛抱堪らんダーリンがおにゃんにゃんにプレゼントフォーユー?……………………話を聞きましょうか」





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妖怪キャッチ(刑部姫&?)

虚月館殺人事件イベ。ミステリー要素で構成されて、今までのイベの中でも大分特殊な部類。けど、中身は本人じゃないとはわかってるけど、こうやってサーヴァント達による殺人ミステリーを見るのはめっちゃワクワクしましゅ。
特に出番が少ないステンノ(ジュリエット)様が滅茶苦茶ヒロインヒロインしてて、浚っていきたい気分になりました。



――おらっ! おらっ! お前のどこが男だ!! どう考えても雌だろうが! 何が婚約者だ!! 後継者だ!! 雌イキしろ!! 俺の婚約者になれ!! 俺の後継者を産め!! このっ! このっ!!

――おっ! んぉっ!! あっあっ!! や、やめえぇ!! オレはおと、男ぉぉ!! おとこぉぁぁぁっ……!! や、やめぇぇ……!! んぉ、んほぉぉぁっ……!! あっ、あっぁぁぁっ……出さないでぇぇっ……!!


BB「みたいなプレイ。HBチャンネルで再現しちゃいます?」

グダ男「いーねぇっ」

モーさん「止めろアホ共!!」








○ックスの十戒

1.主人公は物語の当初に登場していなければならない
2.性行為に超自然能力を用いてはならない
3.性行為においてに交わる穴が二つ以上あってはならない
4.未発見の媚薬、難解な科学的説明を要する機械を性行為に用いてはならない
5.殺生院キアラを登場させてはならない
6.主人公は、偶然や第六感によって性感帯を見つけてはならない
7.なり切りプレイで致す場合を除き、嘘で性行為を行ってはならない
8.主人公は読者が想定出来ない性行為によって対象をイカさせてはならない
9.語り役は性行為の描写を全て読者に知らせねばならない
10.姉妹丼・親子丼・他人丼・夫婦丼を行う際には予め読者に知らされなければならない












前回の続きです。



 姫は激怒した。必ず、かのイキり雪国の皇女を除かなければならぬと決意した。姫にはインスタがわからぬ。姫はツイッターでTLに流れる神イラストに癒されながら、マイイラストや鬱憤を垂れ流すツイートでファボとリツイートを稼いで、偶にバズって暮らして来た。けれどもリア充に対しては、人一倍に敏感であった。鳴り響く通知音と共に個人LINEに送られてきた数百枚にも及ぶマーちゃんとアナちんの絡み画像は姫に怒りのパワーを与えた。一週間かかるであろう新刊を見事、ものの数十分で脱稿させたのだった。

 

 そして姫はここへ戻ってきた。

 

 

 

「マーちゃんはこっち」

 

「あっはい」

 

 怒りのままにアナスタシアを起こすのは得策では無い。やり返されたらやり返せ、おっきーにとっての最善はここでアナスタシアに怒りをぶつける事ではなかった。

 

 炬燵のある方向を指を指し、マスターをアナスタシアがいた向かい側の座椅子へ来るように促す。

 先程までモンハンをしていた自分の席へ彼が座るのを確認したら、アナスタシアがやっていたのと同じようにすぽっと彼の懐に座り込んだ。

 

「んっ、んぅ。位置よし、位置よし。フフフ、怒りと欲求不満がここまで執筆を加速させるとは思わなかったよ。その点ではアナちんには感謝しようかな――」

 

 桃色ジャージ姿のラフな格好で若干照れつつもマスターの温もりを堪能している彼女の表情は赤みがかかっている。マスターからの熱いラブコールで常に眼鏡装備の刑部姫はモニターの前にカメラをセットした。

 

「嫌がらせかと思わんばかりの画像の量……。確かに驚いたけど、所詮は写真。そこがアナちんの限界というのなら、姫はより上に行こうじゃない」

 

 いつも配信に使っているカメラの準備を整えた。若干あくどい顔を披露しながらも姫の前にあるモニターにはマスターに抱きすくめられている黒髪眼鏡の美少女がいた。

 

 んっ、んっ、と緊張を紛らわすような咳払い。ここまで来れば、マスターも刑部姫が何をしようとしているのか察しが付く。

 

「切り取られた画像にはない躍動感とエロス。それこそが動画撮影の醍醐味。写真を撮るだけで終わってしまったアナちんとの嫁力の差を教えてやろうじゃない」

 

「大丈夫?無理してない?」

 

「ぜぜぜん、ぜんじぇんしてないしぃ!?寧ろ、テンション上がって、ドキドキパラダイスだしぃ!?」

 

 普通のオーソドックスなセックスですら、最終的に恥ずかしがって顔を背けてしまう姫はアナスタシアに煽られた事により、動画撮影によるリアルハメ撮りという凶行を実行しようとしていた。新参者に負けてなるものかと乙女の意地がそうさせたのか。

 

 マスターは見守る。後で冷静になって自己嫌悪と恥ずかしさで悶えてベッドの上でグルグルする姫を見たいという想いをそっと隠して、この内向的なお姫様が頑張っているのなら、最後まで付き合ってあげようと密かに決意した。

 

「生放送?」

 

「しない……さすがにそれはしない……。姫のお肌はそんな安い物じゃないのです……。まぁ、後でアナちんには見せ付けてやるけどねぇ……。『ねぇ、ねぇ、どんな気持ち?寝ている間に愛しのダーリンが他の女とハメ撮りしているのってどんな気持ち?』って煽ってあげるんだから……」

 

 グツグツと報復心に燃えているおっきーを止める者は今はいない。

 向こう側ですやすやと寝息を立てているアナスタシアに対抗すべく、姫は一人の女として戦う。

 アナスタシアよりも過激でエロチックでハードな思い出を残してやろうと。

 ツイッター界の姫としてリア充臭プンプンのインスタ勢に負けるわけにはいかないのだからと意気込む。

 

「すぅ――はぁ――……すぅ――……はぁ――……はぁい画面前のファンの皆、こんにっちわ――、今日は姫のプレミアムシーンを見せちゃおうかなーって思いまーす♪」

 

 深く深呼吸をし、カメラ前に満面の笑みを見せる。

 さっき言っていた通り、放送などしておらず、ただ録画しているだけで、今の所、この撮影も二人以外の目にも止まる事は無いのだが、刑部姫は緊張を解す為かいつもネット生放送をしている然で語り始める。

 

「プレミアムって言ったら、それはもうエッチでアダルトでスケベな姫のシーンだよ……ふぅ、はぁ……はぁ……うふふ、み、みーんなちょっと期待しちゃってるかなぁ……?」

 

 何度も、途中途中で呼吸を整え、言葉を吐き出す。

 

「そうそう、今後ろにいるマーちゃんに姫の大事な所、ぜぇーんぶ暴かれちゃってぇ……い、イケない所とかぁ、やーんな所とか、まとめて、イ、イヤらしくされちゃうのを見てもらおうかなぁーって」

 

 一見、吹っ切れているように見えるが、刑部姫も恥ずかしさでいっぱいいっぱいなのだろう。だがここで我に返って中断してしまう方が余計に惨めに思えてしまう彼女は止まる事は無かった。

 せめて、羞恥心を紛らわすように瞳をグルグルさせながら、実況を続ける。

 

「姫のぉ、隠された所、見たい?見たいよねぇ……?ふふ、どうしよっかあんぅっ!?……こ、こらっ、マーちゃん、ちょっと手が早すぎるぞぉ、んぅ、ふぅんぅっ……あっ、もう……がっつき過ぎる男の子は嫌われるぞぉ……やぁんぅっ」

 

 カメラ前でのトークを続けていたおっきーに痺れを切らしたのか遂にマスターの両手がジャージの上から彼女の乳房へと伸びる。

 服の上からでもよくわかるボリューム感と柔らかさを手の中に包み、じっくりと堪能する。

 

 咎めるように視線を背後に向ける刑部姫もすぐに情欲に瞳が染まり、スイッチが入った。

 モニュモニュと胸を歪ませる淫靡な様を動画に撮り続け、彼女は実況を続けた。

 

「んぅ、姫の、あまりの魅力にぃ。マーちゃんが堪えきれなくなっちゃいましたぁ……あんぅ、や、その揉み方ぁ……はぁ、んぅふぅっ!男の子はやっぱり、皆おっぱいが好きなんですねぇ……んぁっ!」

 

 悶え続けながらも実況を続ける姫は例え、オーディエンスがいなかったとしても生放送主の鑑だった。

 

 胸だけで満足する筈も無いマスターの片方の手は姫の股間へと這っていく。

 未だ焦らすように服の上からの愛撫。だが既に刑部姫の肢体を知りつくしているマスターにとっては直接触らずとも十分過ぎる快楽は与えられる。

 

「いまぁ、姫はぁ……。あんぅ!マーちゃんに、イケない所を……。え?はっきり言わないと駄目?う、うぅぅぅぅぅぅ……お、おまんこの部分をズボンの上からスリスリぃ、されちゃってますぅ……あっ、あっ、あぁっ!!」

 

 炬燵に入っている下半身の部分に伸びた愛撫の手。『カメラに映らない以上姫は事細かに実況しなければならない』と耳元で囁かれた彼女は恥ずかしさとゾクゾクと沸き上がった痺れと共に卑猥な言葉をカメラに投げかける。

 

「んっ、ふぅ……。まだぁ、指は入れられてなくてぇ……。丁度、すじの所をぉぉぉぉぁああんぅっ!あっはぁ……!んっ、往復するように擦り上げられてぇ……!あっ、やぁっ!やだぁ、すごぃ、なんで、姫のクリの位置も正確にわかっちゃうのぉぉっ!?」

 

 後ろの男に胸を揉まれ、見えない雌の花園を好き勝手触られている自身を実況している様をモニターから見た姫はより一層下腹部が疼き、陰部から蜜を垂れているのを感じた。

 

(あっ、あっ、やだ……。姫、マーちゃんにエッチな事されてる自分を見て興奮してる。実況すればする程、興奮が止まらない)

 

 最初は只のアナスタシアに対する対抗意識だけだった。

 いつもの彼女ならハメ撮り実況プレイとか恥ずかし過ぎて出来る筈も無い。

 こうして客観的に好きな男に自身の躰を好き放題嬲られている画を見て、姫の胸中には確かな悦びが宿っていたのかもしれない。

 

(うわぁ――、うわぁ――うわぁあああ……姫ってばこんな顔してたの?マーちゃんとする時、こんなエロい顔してたの?)

 

 まだ緩やかな刺激。にも関わらず、髪を振り乱し、息を荒げ、嬌声を恥ずかしげも無く披露する艶姿は大妖怪としての威厳も、男達を惑わす姫としての余裕も見えず、只浅ましくも淫らに男からの快感に溺れる一人の雌でしか無かった。

 

(恥ずかしいけど、死ぬほど恥ずかしいけど―――――――…………それ以上に、キモチいい)

 

「じゃ、最初の宣言通り、姫の恥ずかしい所も映しちゃおっか?」

 

「え……?ちょっ、まっ、にゃあああああ!?たんま、タンマ、いきなりはズルいってばぁ!!マーちゃあああんっ!」

 

 恍惚としていた刑部姫の思考の隙を突くようにマスターは姫のジャージを下のTシャツごとずり上げる。

 彼女にしては攻めている黒色の大胆な下着も容赦なく脱がされ、ボリューミーかつ滑り落ちてしまいそうな極上の乳房が露わになった。

 

 確かに自分で言ったけども、いきなり脱衣させられるとは思わなかった彼女は何とか隠そうとするものも、両腕は中途半端に脱がされた上着が枷となって身動きが取れず、マスターに抱き締められている今の現状では逃げる事も叶わない。

 

「ちょ、ちょ、姫の体は数多の草食系童貞諸君が追い求めた日本の宝みたいなもんなんだから、もう少し繊細にぃぃぃんんぅっ!!ああひぃ!」

 

「ほらほら、ちゃんと今何されているか実況で伝えないと。トーク放棄とか生主失格だよ?」

 

 カリカリと爪先で両乳首を微弱に刺激されるのは刑部姫の好物でもあり弱点でもある。

 いつもセックスする時は恥ずかしながらも執拗な乳首責めをリクエストするぐらいにこれがお気に入りな姫は大人しくなってしまい、素直にマスターの言う事を聞いた。

 

「ん、あっ、ひぃ、姫はぁ……今、鬼畜マーちゃんに脱がされてぇ……あんぅ!おっぱい丸出しにされちゃってぇぇ……ひぁっ、んふっぁっ……!ちくびぃ、たくさん苛められちゃってぇぇ……あんぅ!!ビンビンにぃぃ、しちゃってるのぉぉぉっ……!!」

 

(やば、やば、これ、やばぁ……。カメラ前でマーちゃんに犯されながら、実況するの気持ち良すぎてやばぁぁ……)

 

 このプレイを始めた理由でもあるアナスタシアへの敵対心もどこかへ飛んでいった。

 恥ずかしくて堪らない筈なのに、今の自分はノリノリで胸を好き放題にさせて、実況を続けている。

 もっと卑猥な言葉を、もっと卑猥な攻めを、もっと卑猥な姿をと、姫の理性とは反して本能が貪欲にもっと淫らな交わりを求め始める。

 

「あっっっ……!!やぁっ……!!こんな感じで牛みたいに乳首摘ままれちゃうとぉ……。妊娠してないのにぃ、ミルクが出ちゃいそうになるぐらい感じちゃうのぉ……。あっ、あぁぁっ!!姫ぇ……おっぱいの先っぽぉ、弱くてぇ……だめぇ、ひぃ、あぁっ、んぁぁっ!もう達しちゃうぅぅ……モニターの前の皆に見られながら、達しちゃうぅぅぅ……!!」

 

 親指と人差し指でギュッギュッと乳頭を絞られる刑部姫は前屈みになり、だらしなく口を半開きにしながらも、今の心境を語り続ける。妄想の視聴者に愛しい人が自身の躰に夢中になっている様を見せ付けるように。

 

「視線落ちちゃってるよ。ほら、カメラ目線カメラ目線」

 

「んひゃああああああああ!!」

 

 達するのと同時に勃起した蕾を抓みあげられ、姫らしからぬ淫猥な顔をカメラに余す事なく披露する。

 マスターは達した後も満足気に、飽きる事なく、刑部姫の上半身を撫で続ける。

 

「あっ、あぁ、あぁぁ――――……」

 

「じゃあ、おっきー。ちょっと立とうか?残りもカメラの前で脱ぎ脱ぎしないとね」

 

 今までのセックスとは別種とも言える快感を受けて、戸惑い気味のおっきーを追い詰めるようにマスターは言葉を掛ける。

 達した直後で余裕の無い姫は彼の言葉を反芻する事も無いまま、立ち上がされた。

 

「はーい、じゃ、姫のむちっとした下半身もご披露と行きましょうか」

 

「うぇえ!?ちょちょちょちょ、ちょい待ちぃ!!ってかむちっととは失礼過ぎないぃ!?あっこら、待ってぇぇ……」

 

 半泣きになりつつも抵抗しようとする姫の手は非常に弱い。そもそも元々はカメラの前で情事をおっ始めようと言い出したのは自分なわけで……そう考えると今まさにズボンを脱がしてくれているマスターの行動は正しいわけで。

 

 

 

 マス×ラマガチ勢『何ですか?やっぱり口だけのチキンですか?もう蝙蝠じゃなくて、鶏の妖怪にでもなればよろしいのでは?』

 引き籠り星の尖兵『口だけ……刑部姫は口だけ……』

 インスタ皇女『だから私に炬燵ックスを先取りされる……所詮は敗北者ですね』

 

 

 

(やってやろうじゃねぇか!!)

 

 羞恥心が天元突破しておかしくなったのか、友人達の激励(幻聴)で目覚めたのか、姫はもうここまで来た以上イケる所まで突っ走る事にしたのだ。この性癖グランドマスター兼ビーストに付き合うにはここで怖気ついてられないのだから。

 

「ん、うぅ、や、やぁ――ん♡もうマーちゃんったら獣さん……。姫の魅力に我慢出来なかったぁ?あぁ……ほら見てぇ……今ぁ、マーちゃんに最後の布キレも脱がされちゃってま――すぅ、姫の健康的な太ももとピチッとした……お、お、おまんこがぁ、画面いっぱいに映っちゃってるぞぉ……」

 

 顔面が茹蛸のように煮えてしまっているが、何とかクソ雑魚メンタルを奮い立たせて、おっきーはリポートを続ける。

 

「ん――、やっぱりいいねぇ、姫の肉付きがいいムチムチとした体は……」

 

「ぽっちゃりじゃないし!(夜の)運動もしてるから、ほどよい体つきだもん!女の子はこれぐらいが丁度いいのって……あっ、やっ、ちょ、腹をつまむなぁぁ……」

 

 すっぽんぽんの姿になった自身の腹を愛おしそうに抓んでいくマスターに一言申したい気分になった彼女だったが、その繊細でいやらしい指使いにすぐに言葉が詰まってしまう。

 彼女の腹回りを撫で、滑らすように愛撫していた指はその下へと進んでいく。

 

 蜜を垂らしている淫裂、男の二本の指がいやらしくその秘所を開いた。

 羞恥心で上がる頬の体温を両手で押さえつつも、刑部姫は逃げる事はしなかった。

 

「あっ、やぁぁんぅ、んっ、マーちゃんでグショグショになっちゃった姫のおまんこが丸見えでーす……はぁ、んぅ、もう汁とかが垂れ流しで……ピンクのビラビラも見えちゃってるよねぇ……ひぅんっ!引き籠ってた姫の城門がマーちゃんの前だとあっけなく無血開城でーすぅ……」

 

(やばいやばいヤバいヤバいヤバイヤバイ!!男の子にアソコを開かされるのが映ってるのこんなに恥ずかしいと思わなかった!!死ぬ!羞恥心で死ぬ!!てか自分で言っておいてなんだけど、無血開城ってなに?確かにもう姫の純潔はマーちゃんに奪われてるから血は出ないけども!!)

 

 頑張ると決めた矢先にやっぱり脳内大パニックの姫。そして、そんな恥ずかしさを忘れさせてあげるようにマスターの指がズブリと難なく姫のナカへ侵入していく。

 

「あひぃぃぃっ!!あぁっ、あぁっ……ふ、あっ、見えてるかなぁ……?マーちゃんの指が姫の花園に入ってちゃってぇぇ……んぅぅっ!!あっ、ふっぁっ……あっ、ヤバ、これぇ……やっぱり、マーちゃんの指ぃ、あったかくてぇ……キモチ良すぎるってぇぇぇ……」

 

 人差し指と中指が膣内に入り、膣襞を刺激する。愛しい男の指を容赦なく飲み込んだその女性器は与えられる快感を遠慮する事なく享受する。

 上下、上下と、大きい水音は彼との性的な交わりを露骨に感じさせる。

 

「ぁっ!あぁっ……!!ひゃぁっ……!!姫のコリコリしたぁ……数の子天井にぃぃ……マーちゃんの指が何度もグリグリしてぇぇ……!あっ、あっ、す、すごぉ、これしゅごぉ……おひぃぃぁあっ!!?ひぅ、ぇあぁっ?クリトリスもぉぉ……!?あっ、あっ、勃起したクリちゃん、指でつぶしちゃぁあぁっ……あっ、あっんぅぅぅっ!!Gスポとクリ同時に責められちゃってまぁすぅぅぅぁぁっ……!!」

 

 落ちる愛液は座布団に染みを作り、断続的に与えられる快楽は姫の太腿をきゅっと閉じ、マスターの手を絶対に離さないように締め付ける。

 やがて軽い絶頂を繰り返してる刑部姫は内股のまま腰をガクガク揺らし、膝を付きそうになったが、そこでマスター手が差し伸べられる。

 

「ふぇ、マーちゃああああんんぅっ!?」

 

 助けてくれたのかな?と思ったのも束の間、マスターは局部を苛め抜いていた指は抜き、彼女の両足を持ち上げる。はしたなく開脚される女の脚。姫の濡れそぼった女陰は隠す物なくカメラに捉えられ、モニターに映される。M字開脚のままマスターに抱きかかえられる刑部姫。彼女に出来るのは羞恥の絶叫を上げることだけだった。

 

「そろそろ、準備万端って感じかな?」

 

「んひっ、あふっぅっ……あっ、あっ、ソコ擦りつけないでぇ……ん、やだっ、マーちゃんのアソコ、あついぃ……」

 

「アソコじゃないでしょ?」

 

「うっ、うぅぅぅぅぅっ、…………お、オチンチンが硬くてぇぇ……姫のオマンコの入り口スリスリしてるぅ……」

 

 膨れ上がり興奮している男性器。刑部姫の太腿を擦りながら、その入り口を求めて狙いを定める。愛汁を塗している淫靡な扉を接触しているソレと亀頭がキスをする度に彼女は気絶してしまいそうになるぐらい鋭い痺れに襲われる錯覚に陥る。

 

 恥ずかしがりかつ土壇場でチキンな刑部姫が今までマスターとのセックスで出来たのは正常位ぐらいだった。恋人のようなセックスかつスタンダードな体位。他のハードな体位は彼女にはまだハードルが高かった。特に背面駅弁なんて。

 

「どうする?止める?カメラも止めて、いつもの普通のセックスに戻る?」

 

 マスターの声に現実に戻される。確かに今にも意識を失ってしまうぐらいの羞恥心が刑部姫の心を支配していたが、それでも彼女はマスターの問いかけに、ここならまだ引き返せるかもしれないという悪魔の囁きに首を縦に振ることはしなかった。

 

 それはこのハメ撮りを始めた姫としてのプライドか。あるいは愛しのマーちゃんと新しい扉を開いてみたいという好奇心か。

 

 彼女は眼鏡越しに蕩けた瞳を彼に向けて、そっと呟いた。

 

「―――いれて」

 

 自身の陰部を開き、媚肉が露わになる。何度もマスターと交わったとは思えない綺麗な桜色のそれはもう既に凶悪な男根を咥えかけていた。

 

「マーちゃんのごく太オチンチンで姫の生意気なダメおまんこをたっぷり躾てぇ……何度も何度もバチンバチンってえっちなお肉がぶつかり合う音を響かせて、姫のナカかき混ぜて、子宮犯してぇ、ドロドロのザーメンでお腹膨れるくらいにタプタプにしてぇぇ……」

 

 実を言えば、カメラの前で淫猥な言葉を吐き出す度に気持ち良くなっていた。この人との営みを映像に残しているという現在進行形の事実に興奮しっぱなしだった。刑部姫の甘ったるい誘うような言葉で遂にマスターは姫の腰を下した。

 

「んぉぉぁぁっ――――っっ!!!」

 

 ズブズブズブズブズブッッ!と体勢が体勢のせいか、挿入は勢い良く姫の膣内を蹂躙した。あまりの衝撃と快楽に前屈みになる姫の口から淫らな悲鳴が零れる。それだけじゃない、挿入の刺激だけで結合部から潮も吹きだしていた。

 

「ぉぁっ!!んひぃぃぁっ……ふゃぁあっ……!!あっ、あっ、ウソぉ……体勢かわっただけぇぇ……こんなにぃぃぃ……あっ、あっ……もしかしてぇぇ……今までマーちゃん、気ぃつかってたぁぁ……?」

 

「壊さないように大事には扱っていた」という胸キュンな返答を脳内にセーブしたい気持ちに駆られた姫だったが、下腹部からせり上がってくる甘い痺れがそれを許してくれない。

 

「じゃ、動くよ。刑部」

 

『姫』をつけないマスターのマジボイスを耳元に囁かれ、ストロークは始まる。腰と手を器用に使い、膣内全てから子宮まで犯すマスターの抽送は生々しい交尾の様をカメラに見せ付ける。

 

「んひゃぁああっ!!んぁぁっ!!あぁはぁっ……!!あっ、あっ!!す、すごっ、ひっぁぁあっ!!マーちゃんのオチンチンが姫のオマンコを行ったり来たりしてぇえぇ……ひんぅぅぅぁっ!!潮がぁぁっ、とまらにゃぁぁっ!!」

 

 パンパンとむっちりとした姫の尻肉がぶつけられる音。激しい挿入の水音と混じり合って、より淫靡な演奏が部屋に響き渡る。緩やかに長く動いたと思ったら、素早く小刻みに動き、緩急を付けて飽きさせず彼女の膣内を刺激し続ける。

 

「マーちゃんのカリの部分がぁぁっ……あんぅぅっ!!姫のぉぉ……びらびらにぃ……んほぉぁああぅ!!……むりぃ、むりぃ!こんなの実況する余裕がなぁひぃぃっっ!!あんぅぅぁっ……!!ひゃっ、あひぃっ!!んんぅぅぁっ!!」

 

 結合部の激しい出し入れにより、潮と愛液が目の前のモニターにかかっていくのが二人の性交の激しさを物語っていた。もう彼女の頭の中にあるのはキモチいい事だけ。自分の膣内がどうなっているのか、マスターの肉棒がどう犯しているのか事細かに語る余裕なんて無かった。彼の性行為一つ一つが姫の脳内から思考を刈り取っていく。

 

「マーちゃん、マーちゃん、マーちゃんぅぅぅっ……!!キスぅ、きしゅしてぇぇ……」

 

 それでも深層心理は乙女心でいっぱいな彼女はマスターとの恋人チックなスキンシップを求める。

 首を後ろに向け、マスターの後頭部に手を添える。眼鏡がぶつからないように注意しながら、お互いの舌を絡め合う。

 

「んちゅ、ちゅ、れろっ……ちゅるぅぅ……ちゅ、ちゅぅ……ちゅぱぁっ、しゅきぃ、あんぅ、きしゅ、しゅきぃ」

 

 姫モードで媚びる演技ではなく、本気で男に溺れているメスの顔と言葉。だらしなく口を半開きにして、マスターとのディープキスに夢中になる今の彼女にはサーヴァントサークル的な姫という自覚は無い。

 

 上と下でキスをされて、好きな男に「好き♡好き♡」とぼやき続ける女の姿。上下に揺れ続ける巨乳もプラスしてモニターに映るそれは永久保存版とも言えるぐらいに今までで一番エロチックな刑部姫のセックスだった。

 

(舌、吸われてぇ……あぁ、今まで一番エロくて、熱いキス……。マーちゃんが必死に私の唇を求めて……。いやらしく、舌フェラされちゃってる……)

 

 舌を絡め、唇で吸われ、口内にも侵入され、蹂躙される激しいキス。首をマスターの顔へ向け続け、突かれ続ける彼女は涎と愛液を止める事なく流し続ける。実況の事もカメラの事も頭になく、ただこの人との肉欲に溺れる事だけ、姫はその事だけで頭がいっぱいになっていた。

 

「んぉ、あぁっ、じゅるぅ……!あっ、あっ……ん、ちゅぅ……んむぅぅっ!!!マーちゃんのおちんぽぉ、どんどん子宮にキスしてぇぇぇ……したいのぉぉ、射精したいのぉ……?」

 

 何度も交わされる子宮と鈴口の接吻。キスの合間に喘ぎ声を絶えず漏らし続ける刑部姫の体の痙攣はどんどん大きくなる。肉棒をさらに強く締め付け、欲望を吐き出させようと膣が蠢く。

 

「姫を孕ませたいのぉ……?んふぅっぁっ……!ザー汁、びゅーびゅーしてぇぇ……引き籠りのインドア女を……子持ちにしたいんだぁぁ……。腰をそんなに動かしてぇぇ……姫のお腹をパンパンにしたいんだぁ……。あっ、あっ、んぉぁっ……いいよぉぉ……マーちゃんならぁ……。いくらでもぉ……んはぁぁっ!!」

 

 実況の事を意識せずとも卑猥な言葉がスラスラと自分でも驚くぐらいに流れた。故にこそ、これが彼女の本心だとも言える。ゴムもいらない。外に出す必要もない。既にマスターのアソコによって受肉された身ではあるが、容赦なく中に出していいと。彼女は言葉と体で訴える。

 

「あっ!あっ!あっ!あっ!あっ!あっ!あっ!あっ!……んひぃぃぃっ!!もっとぉぉ、はやくぅぅぅっ!!あっ、マーちゃんのオチンチンふくらんでるのぉぉ……わかっちゃうよぉぉ……」

 

 そんな姫の言葉に興奮を煽られたマスターのストロークがより激しくなる。

 子宮を突き上げる腰の力。体重と合わせって沈み、駅弁の体勢を生かし、深い刺激が姫の膣を……躰全体を襲う。

 モニターにどんな淫靡な姿が映っているのか見る余裕も無い。

 

「あぁっ、マーちゃん、マーちゃん、すきぃ、大すきぃ……炬燵でダラダラしている時もぉ……ゲームしてる時もぉ、漫画の話で盛り上がっている時もぉ、こうやってセックスしてる時もぉぉ……だいすきぃ……。マーちゃんとならぁ……んぅ、ちゅ、ちゅぅ……お外でも姫は付いていくからぁぁ……あぁぁっ、あぁっ……あはぁっ……だから、きす、きすぅ、もっとしてぇぇ……姫の子宮にたくさんきしゅしてぇぇ……んじゅるぅぅぅぅ……」

 

 舌を激しく吸われ、極限まで性感を高められ、やがて彼女の最奥までペニスが突き上げられる。

 

 同時にわかる。これ以上ないくらい膨らんだ陰茎から湧き出る精液の洪水が溢れているのを。

 

「んんんんむぅぅぅぅぅぅっぅぅっ――――……!!!!」

 

 キスを交わしたまま、宙に浮いている姫の体はその射精の快楽を逃す事なく全て受け止めた。

 白目を剥いてしまいそうになるぐらいのアクメ顔をきめてしまう。

 

「んふぅっ!!んんんぅぅむぅ!!んじゅるるるるぅぅぅ―――!!!!」

 

 長い長い永遠のようにも思える射精。未だ、唇を貪られたままの刑部姫は快楽とキスにより呼吸困難になりそうだが、このまま窒息死してもいいかな……と思ってしまうぐらいに甘美な絶頂へ身を任せていた。

 

 そして人間離れした射精もやがて終わる。

 

「んぅ、ちゅぅぅ……ちゅぱぁぁっ……はぁ――……はぁぁっ――――……しんじゃうぐらいキモチいいセックスとか……同人の世界だけだと思ってたけど、マーちゃんと会ってから考えが変わったというか……もう、多分、漫画だったら、今、姫の瞳ハートマークでいっぱいになってると思うんだけど……」

 

「凄い乱れっぷりだったよ。後で録画確認しよっか……」

 

「あ――、そういえば、そんなのあったね……。ねぇ、マーちゃん消すとかは」

 

「却下」

 

「デスヨネー。そんじゃまぁ、ひとまず降ろしてもらっていいかな……あひんぅ!?」

 

 その時、彼女の陰部……具体的にはクリトリスの部分を舌で舐め上げられたような感覚が襲った。

 

「んもぅ、マーちゃんったらまだしたいの……んけど、あれ?」

 

 最初はマスターが第二回戦を所望かと思い、満更でもない姫だったが。ふと位置的におかしい事に気付く。マスターの顔は自分の顔のすぐ隣にある。なら、どうやって舐められる?

 

 疑問に思った刑部姫が下に視線を向けると――。

 

「んちゅ、ぺろっ、れろぉ……ドーブラエ ウートラ(おはよう)

 

「げぇ!アナとインスタの女王!!」

 

 四つん這いになって刑部姫の陰部……というよりは漏れ出ているマスター白濁液を舐め取っているアナスタシアの姿があった。うっとりとその精液を舌へ転がす皇女様の何と卑猥な事か。

 

「さすがに近くであれだけ激しく交わっていれば私でも気付くわ……あぁ、勿体無い。れろっ……ちゅぅ、せっかくだし、私も混ぜてもらおうって。私達の仲でしょ?おっきー」

 

「あれだけの所業を行っておきながらケロりと親友面とは……。ってかそれはマーちゃんが姫に出してくれたやつぅ!勝手に横取りすんなぁ!!」

 

 マスターに竿を抜いてもらい、ずいっと同じく四つん這いになり愛液と精液で凄い事になっている彼の肉棒へ顔を近づける。

 

「ふふ、けど元気そうで良かったわ。おっきーたら、本当はダーリンの事、大好きな癖にいつもどこかで恥ずかしがって弱気になっちゃうから……」

 

「まさか、アナちん。姫のLINEに大量の画像を送りつけたのも……発破をかける為に」

 

「いえ、それは面白そうだと思ったからよ」

 

「ですよね!知ってましたよコンチクショウ!!」

 

「ただまぁ、おっきーにもハメ撮りの良さに気付いて欲しかったのは本当。私達はサーヴァントで、今やこうしてダーリンのあれで受肉した身だけど。思い出は残したいじゃない?」

 

「けど、姫としてはマーちゃんとの初めて保存したラブシーンが背面駅弁とかちょいとハード過ぎな気も」

 

「いいじゃない。おっきーの痴態がはっきりと見れるハメ撮り向きの姿勢だと思うけど」

 

 ――んぉ、あぁっ、じゅるぅ……!あっ、あっ……ん、ちゅぅ……んむぅぅっ!!!マーちゃんのおちんぽぉ、どんどん子宮にキスしてぇぇぇ……したいのぉぉ、射精したいのぉ……?

 

「おいごらぁっ!!勝手に再生してんじゃねぇ!!」

 

 姦しくも気の置けない友達のようにじゃれつく姫と皇女。美しくも微笑ましい光景のようにも見えた……目の前にドロドロのペニスがなければ……。

 

「私とおっきーって連戦続きなのに萎える気配も無いわね、ダーリンのこれは……ちゅぅ、んじゅるぅ……」

 

「この程度でマーちゃんの人類悪が萎えるわけないでしょって、だーかーら、勝手に舐めるなってのぉ……んむぅっぅ……んじゅぅ」

 

 付着している白濁液を舐め取ろうと唐突に始まるアナスタシアと刑部姫のダブルフェラ。

 白髪と黒髪。皇女と妖怪。オタサーの姫とインスタの女王。異なるタイプの二人が男根を両側から舌を這わせている姿は中々に圧巻だった。

 

「ちゅ、んちゅ、ふふ、見なさいおっきー、私達の唇に触れる度にこんなにピクピク震えて……かわいらしいわ……はむぅぅ」

 

「むむぅ、このままなし崩し的に3Pに行きそうな流れ……ちゅ、んちゅ……私はアナちんに一泡吹かせるつもりだったのに……」

 

「泡を吹く事になるのは私達ね。んむぅ、むちゅぅ……同じ炬燵でダーリンと交わった者同士仲良くしましょ?……私達姉妹みたいなものでしょ?」

 

「竿姉妹ってか?やかましいわ。そもそも、それを言ったらカルデアの女性サーヴァントがほとんど姉妹になるんじゃないの……んむぅっっ……ちゅ、ちゅ」

 

 あら?それなら既にもう私にはたくさんのお姉さんが出来てたという事なのかしら?という大分このカルデアに染まった考えをしながらアナスタシアは肉棒にキスを浴びせ続ける。既に付いていた精液はほぼ舐め取られている。フェラをしながら、軽快な女子トークを挟む二人。

 

「んむぅっ、んぼっ、じゅぅぅ、じゅぅ……じゅるるるるぅ」

 

「はむぅ、むちゅ、ちゅ……あはぁ、マーちゃんのタマタマ、まだ膨らんでるぅぅ……」

 

 一方が竿を咥えている時はもう一方が陰嚢を弄び、時には両サイドから舌を上下に滑らせて、竿を舐めたり、お互いの唇が接する事を気にする事もなく亀頭に何度もキスをする。その度に愛おしい男がアソコを気持ちよさそうに震えさせる姿を見ている二人は堪らなく幸福だった。

 

 ダラダラと淫らに炬燵の部屋でヌクヌクとセックスをする。外界と切り離された怠惰なる空間での情事は至福の時間だった。

 

「ンッッ……出すぞっ、二人とも……!」

 

「んんんぁあっっ……んはぁっ。きれい……」

「んんぅっ!!んっ……あ、もう、眼鏡にかかって……」

 

 ご奉仕フェラによって吐き出された白濁の噴水をかけられても二人は恍惚と顔を蕩かさせるだけだった。その二人の美少女の顔を雄の欲望が汚す。ナカ出しとはまた違う快感。この二人は自分の物だと示すかのような征服感と視覚的な興奮を顔射は教えてくれる。

 

 

「ねぇ、ダーリンにおっきー。せっかく大きい炬燵なんだから、中でもヤッてみましょうよ」

 

「ぇええ~~……。炬燵で3Pはさすがに暑すぎない?っていうか酸欠になりそうなんだけど――」

 

「大丈夫よ。苦しいぐらいの方が気持ちいいって純白の騎士様も教えて下さったわ」

 

「あのキ○ガイリリィ、どこでも出てくるうぅ……」

 

 ――いいじゃないですか!酸欠っクス!!呼吸困難になるぐらいの方が愛されているっていう実感もあって尚良し!です!

 

 可憐な笑顔で力説する白百合の騎士見習いの姿が見える見える。

 まぁ、姫にしてもさっきのベロチューハードセックスは息苦しかったけどそれ以上に滅茶苦茶気持ち良かったから否定は出来ないのだろう。

 

 2.5m×2.5mの四畳近くの巨大炬燵の中へ3人は入っていく。

 3人入ってもまだスペースには余裕がある程の広さ。マスターを挟んで、川の字で密着していた。

 後ろにはアナスタシア、前には刑部姫。

 

 未だ反り返っている肉棒は刑部姫の下腹部を焦らすようにツンツンと突く。

 

「あら、おっきーのおまんこ、まだ犯し足りないみたいね。いいわ、私は後ろから好きにダーリンを愛でるから、その引き籠り姫を徹底的に更生してあげるといいわ……」

 

「ぅえ、ぇ、ぇぇえ?ちょ、ちょい待ちっ!さっきのさっきだから休憩を挟みたいんだけどぉぉんんぅぅぅ!?んおぁぁっ!!あぁぁぁぁんぅぅ!!もう、有無を言わさずぅぅぅっ!!あっ、あぁっ、マーちゃんのばかああぁぁんぅぅ!!」

 

「いい声よおっきー。ほら、ダーリンの乳首、弄ってあげるわ……んぅ、ちゅぅぅ……れろぉ……」

 

 挿入される刑部姫。ガッチリとマスターの両手でホールドされている彼女は逃げる事も叶わず、再び膣攻めを受ける。

 心底楽しそうなアナスタシアはマスターの背中に隙間なく密着し、その豊満な胸を擦りながら、彼の乳首を指先でくすぐり、耳に舌を這わせていた。

 

「あっあっ、あっぁぁぁ!!んぉぉあぁっ!!ひぅぅぅっ!!キモチぃぃぃ所ぉぉ、全部つかれてえぇぇ……!!あっ、ひぃ、おっぱいもつぶれちゃってるのにぃぃ、なんでこんなにキモチいいのぉぉぉっ!!」

 

「んっ、んちゅぅ、ふぅ、ふぁああっ……!あっ、ダーリンの背中で汗だくオナニーするのぉぉ……ホントに愉しいわぁぁ……あっ、あっ、あつくてあつくて、とけちゃいそうぉぉっ……!!」

 

 ギシギシッ……と揺れる炬燵の中では3人の男女が淫らに肉の交わりを続けている。

 荒々しい呼吸。吹き出る汗。マスターをサンドして行われる美女達の情事は炬燵内の酸素をどんどん奪っていく。

 

「んぁぁっ――!あぁあぁっ……!!マーちゃん、マーちゃん、まぁちゃぁんぅぅ!!あひぃぃっっ!!」

 

「んぅ、ふぅぅ、んぁっ、あっ!あっ!ダーリン、ダーリン、だぁりぃんぅぅ……!!んふぁああっ!!」

 

 ペニスに突かれながらも、両手足でアナスタシアごとホールドする刑部姫。無意識的にマスターと何度も舌を絡ませて、生々しい獣のセックスに興じていく。

 アナスタシアも多量に流れる汗を潤滑液にして、ソープ嬢のように彼の背面を上下し、性的快感を得る。耳を舐める舌も、雪の皇女の胸と性器の柔らかさも見えないからこそ、より鋭敏に快楽をマスターに与えてくれる。

 

 密閉された空間で行われる性交。流れる汗で全身はずぶ濡れになっていた。だが、3人の誰もがそれを不快には思っていない。それが愛しい人と混ざり合ったものなら、媚薬の如き快楽すらも与えてくれそうな気がして。

 まるで一つの肉の塊になっているぐらいに密着している3人。暑くて、暑くて、堪らない筈なのにより激しい熱さを求めて性交する。

 

「おっきー、おっきー、出すよ。また、おっきーのナカに!」

 

「んぅ、んぅぅ……うん、うんぅっ!!だして、だしてぇえぇ……!!姫のおまんこ、馬鹿にしてぇぇぇ……」

 

 刑部姫の膣内に出される本日二度目の射精。

 馴れる事も飽きる事もなく、例え何百回交わろうとも新鮮な快楽を与えてくれる魔法の精液。

 仰け反りアクメを決めた刑部姫は舌を出しながら情けないイキ顔を晒してしまった。

 

「あひぃぃぃいぃぃっっ!!!あぁぁっ!!あ゛あ゛あ゛ぁっぁあぁっ!!」

 

「んぅっ、ふぅぁぁっ……あんぅ、次はこっちの番よ、ダーリン……」

 

 刑部姫の膣に飲まれていた肉棒を引き抜き、固さを保ったままのそれを今度はこちらの方へと差し向けるアナスタシア。まだ雄の精気をムンムンと匂わせている肉棒から目を離す事が出来ない。

 

 目の前で刑部姫が犯されているのを肴に自慰に耽っていた事が彼女の股をさらに濡らしていた。

 

「あら?おっきーってばダーリンに奉仕する元気も無さそうね。どうしようかしら……。放っておいて二人で致すのもねぇ……」

 

後ろのおっきーは……色っぽい吐息を漏らし、ぐったりしてる。

 

 普通のベッドならまだしもこうも狭い炬燵の中だと、中々2人同時にヤる体位というのも限られてくる。しかし、そこは性癖の開拓者。困難な道を切り拓いてこそのエロビーストマスター。彼は私に良い考えがあると言わんばかりに頬を歪ませる。

 

「『白式官能 参の手 内の壱:ディルドの型』」

 

「おぉ!」

 

 興奮気味に瞳を輝かせたアナスタシアに映ったのはその為の人類悪。宝具『白式官能』により顕れた三つの手。彼の魔力で構成された淫手。いや、内一つは彼とそっくりな張型と変形していた。何でもありかこの宝具。

 

「仲間外れはよろしくないからね。何人だろうと同時に犯してあげるよ」

 

「ぅえぁああっ……はぁ――、はぁ――……マーちゃん、まって……ちょっと……さすがにリアル触手プレイはぁぁぁぁんんぅぅぅぅ!!?」

 

 長い触手のようのそれはマスターの背後にいる刑部姫のむっちりとした肢体に巻き付く。手の形をしている二つは胸を丁寧に揉み込み、そして白式のディルドは雌汁を充満させている蜜壺へ。

 

「私もそっちの方でも良かったかも……」

 

「なぁに、時間はまだまだあるさ。後で全身たっぷり余す所なく犯し尽くしてあげるさ」

 

「やぁん、それはぁ……楽しみねぇ……んあああぁんぅぅ!!」

 

 肉体同士で交じり合うアナスタシアとマスター。彼の魔力の塊に凌辱される刑部姫。

 汗、性、肉、魔、様々な物が淫蕩に混ざり合う炬燵の中は、白い触手が何本も生え、一種の異界へと変貌していた。

 

「はぁぁっ……!!あぁっっ!!あつい、あついぃわぁぁ……触れ合ってる肌も溶けそうだけどぉぉ……いれられているナカはもっと溶けてグチョグチョになって掻き混ぜられてぇぇぇっ……!!あっ、あぁっっ!!ベトベトになってセックスするのぉぉ、すきぃぃぃ……んほぉぁぁあっっ!!」

 

「ひぃ、ひぁあぁっ!!マーちゃんの触手チンポぉぉぉ……鬼畜すぎぃぃぃっ!!だめだめだめぇぇ……乳首摘ままれながら、お腹グチュグチュしたらぁぁぁっ……!!あひぃぃ!!イキ過ぎて、しんじゃうよぉぉぉ!!」

 

「いいじゃないぃぃ、二人で天国にイッちゃいましょうよ、おっきぃ……あっ、あんんぅぅっ!!もっと抱き締めてダーリンっ、力強く、折れちゃうぐらいにぃぃぃ……あ゛んぅぅぅッッ!!」

 

 揺れ続ける炬燵の中で3人はいつまでも交じり合う。

 キスをして、胸を揉まれ、乳首を弄り合い、性器を舐め合い、触手に巻き付かれ、体の到る所を何本も増えていく白手で愛撫される。嬌声と汗を撒き散らして、悦楽の宴へと溺れていく。

 炬燵の中で愛しの人に極限の快楽を与え続けられるのは炬燵同好会の二人としては最高の展開だったのかもしれない。

 

 もはやその炬燵は人類悪デアーによって、魔の炬燵となった。

 

 比喩表現ではなく、中に入り込んだ女達を誑し込み、肉欲に浸らせ続け、逃れられない魔性の炬燵。

 

 いや、中に入るだけではなく、近づくだけでも危険かもしれない。ほら、このように炬燵ルームに帰ってくる者達の姿が――。

 

 

 ♦

 

「ふぅぅぅ――――――――、予想以上の仕上がりでした。さすがは万能の天才。いけませんね……。心が昂り過ぎて、語彙力が欠如してます……ラーマ様のお尻おまんこにぃ、マスターのおちんちん……はふぅ。おや、誰もいません?まぁ、いいでしょう。炬燵で暖まりながら、もう一回この本をぉぉぉぉぉ……!?」

 

「はぇ!?マスター!?それにぃ、おっきーさんに、アナアナさん!?これは一体、どういう状況でぇぇぇんぅぅっ!?あっ、あんぅ、いけません、私にはラーマ様がぁ……あっ、けどラーマ様を犯し尽くした肉棒に犯されるのはそれはそれでイイ?……んあんぁぁぁっ!!あぁっ、あっ……これってラーマ様との間接セックスと言えるのではぁぁんぅ!!……んぉぁああああっ!!」

 

 

「はぁ、はぁ、はぁっ!運転ミスって仲良死したぐらいで部屋に乗りこまれる程、キレられるとは思わなかったぞ!!怖い、PUBGガチ勢インフェルノモード御前マジ怖い。というわけで匿ってくれ同好の士達よ!!ん?誰もいない……?って炬燵から手ぇぇぇぇ!?引きずり込まれぇぇぇ……」

 

「ひぅぅぅっ!!あっ、あっ……炬燵で乱交触手プレイとかぁぁっ!!あっんぅぅ!!ちょっと文明の先をイキ過ぎではないかぁぁっ!!あぁっ……ひぐぅぅぅぅっ!!んふぁぁぁっ……ダメ、まってぇくれぇ……そのスピードで二穴同時はキッツゥゥゥんぅぅぉぉぉああっ!!!」

 

 

「どこへ行きましたかフン族の王よ!!本気でやって負けるのなら巴は文句も言いません!ですが、私の耳は聞き逃しませんでしたよ!!貴女の『動画の撮れ高が欲しい……やっぱり、運転中のぶっ飛び爆発オチが定番だな。まぁこんな日もあるのさ!』という呟きを!何故、ここぞという場面でウケ狙いに走るのですか!!巴はそういうのは求めていません!!」

 

「……むむっ。ふっ、ふっ、ふっ。上手く隠れているようですが無駄ですよ!我が灼眼の瞳はその炬燵から流れる魔の気配を見逃しません。舐めプは悪い文明です!!いざ、成敗!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「んぉぉ!!んぉおっぉぁっ!!あんぅぅぅっぁっ!!あっ、あっ、あっ……。節度っ、節度をぉ……節度ぉぉっ……おひぃぃっ!!せつどぉ、せつどぉっ……せつどをぉぉぉっっ……。んひぃぃぃぁぁっ!!!いけません、ますたぁぁ……このような淫蕩をぉぉぉぉ……せつどをぉぉっ……!!!!いくぅ、イッくぅぅぅ……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 その日、カルデアではチェイテピラミッド姫路城にある妖怪がいるとまことやかに噂された。一見只の炬燵のように見えるソレは中からどこまでも伸びる白い手を伸ばし、気に入った雌を絡め取り、引き摺り込む恐ろしい妖怪。引き摺り込まれた後は理性を失ったかのような艶に満ちた悲鳴と生々し過ぎる水音しか聞こえないと言う。

 

 しばらくして、炬燵から吐き出された者達は皆、全裸で体液びしょびしょになりながら至福の表情で気絶しているそうな。

 

 かの妖怪の名は性鬼深愛獣様というらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




アポ編の刑部姫の新宝具名回収(伏線ではない)。これはまさに人類悪。














《異聞帯侵略 獣国の皇女編 NGシーン》

「はいはいはい、まーそういわけでね。人類悪ならぬ白王なんですけどね。いやーほんと頑張ってまいりましょう。さーいきましょう。白王としてはこれからバリバリに頑張って異聞帯ムチャクチャにしたろーかなとか思ってるんですけど」

「あ……あの、マス……じゃなく、白王様……? どうしたのよ……ですか?」

「何か用かおっぱい復讐者。そのパイオツを少しは小さくする努力をしなさいよ。別世界のバレー部主将っぽいジャンヌに申し訳ないと思わないの?なんなのその邪っぱいなめてんの?」

「あんっ。……ってコラ指で突くんじゃないわよ!!」

「けど仕方ないわ。おっぱいアヴェンジャー。大は小を兼ねる。巨乳こそジャスティス。インスタ映えするのもナイチチよりデカパイだもの」

「あのインスタジャージ女はそう言ってるけど?」

「私が作る国はまな板から爆乳まで差別なく平等に暮らせるおっぱいランド」

「キリッとした顔で最低の事言ってるわコイツ」

「フッ、懐が広いのねダーリン。そういう所も  好  き(挨拶)」

「 みんなちがって、みんないい  」

「金子み○ずに謝りなさい」






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カルデアーズ (第2部 1章)

誤字報告、感想、評価、いつも感謝で御座います。
前書き、後書きのダイジェスト方式で片付けると言っておきながら筆がノッたので本編として書かせて頂きました。
拙者、少年誌バトル漫画で新登場の幹部クラスが雑魚敵を蹴散らしながら、並んで登場するのが好き侍(ジャンプ脳)。








――世界一有名な顧問探偵は語る。

「さて、私は古参というわけではないが……。このカルデアにおいて『人類悪』というワードは非常に縁があるものだと感じている」

「カルデアの医療部門のトップであったロマニ・アーキマンのかつての体……ソロモン王の体に巣くっていた自立型魔術式、『憐憫』の獣ゲーティア」

「第七特異点、バビロニア修復中に立ち塞がった原初の母、『回帰』の獣ティアマト」

「カルデアの予算の資金源でもある海洋油田基地セラフィックスのセラピストだった筈が何の因果か魔神柱によってビーストの蛹として羽化してしまった究極の自己愛の化身、『愛欲』の獣殺生院キアラ。まぁ、これは記録も残っておらず、ある者からの話の又聞きに過ぎないが」

「さらには何食わぬ顔でこのカルデアでの生活を楽しんでいる『比較』の……。いや、この場で語るのは相応しくないか……。彼がマスターを同類として最初から受け入れていたという話は気になる所だがね」

「そして、ビースト0、元人類最後のマスター、『親愛』の獣デアー。純正な人類悪というよりはサーヴァント達の宝具によって軌道修正された人工的な人類悪とでも言うべきか……」

「悪くはない手だろう。0の数字が示すように存在せざる人類悪に彼がなったのは。天然の人類悪よりはよっぽどね……。もし、彼等の宝具が無かったのなら、彼が何に成るかは私にも想像がつかない。『性愛』か『共感』かはたまた……」

「どちらにせよ、このカルデアにおける人理修復の所業が彼を人類悪にしてしまったというのなら――」

「あぁ――『Call Dear』という宝具は何とも皮肉が聞いている」






 あるヤガの村。

 

 そこに黒衣の集団。皇帝の忠実なる僕。夢見る群体。殺戮猟兵が集まっていた。

 周囲を包む空気から只事ではない事がわかる。そもそもオプリチニキが出張って、良い事が起きたなど一度も無い。

 その眼には慈悲は無く。目の前で固まっているヤガ達へと向けられている。

 

「貴様達は偉大なる皇帝(ツァーリ)に仇なす叛逆軍に与している罪がある。然るべき罰を与えにきた」

 

「ま…待ってくれ。俺達の村も見てくれよ。こんな防衛も出来そうになく、最低限の武装しかない奴しかいない村が叛逆軍のように見えるのか。お、俺達はアンタ達にも、もちろん皇帝(ツァーリ)にも逆らうつもりは……」

 

()()()()()()()()()()()。それは皇帝(ツァーリ)に叛逆の意ありと十分に見れる理由となる」

 

「なっ!!」

 

 それだけで、それだけの理由でこいつらはわざわざ、軍勢を率いて自分達を殺しにきたのか――。

 寒さではなく、恐怖でヤガ達は震える。目の前のこの死神達はもう自分達を殺す以外の選択肢を用意していないと。もうコイツらには何を言っても無駄だと。

 

「……俺達ヤガに死ねというのか……」

 

「そうだ。速やかに死ぬべきだ。呪うなら皇帝(ツァーリ)の威光を忘れた自分達の浅ましさを恨め」

 

「な、何が皇帝(ツァーリ)の威光よ!!確かにヤガというこの極寒の地を生きていけるだけの体を与えてもらった恩はあるわ!けど、それから何もしていない!いえ、むしろ私達を追い込んでいるだけじゃない!!」

 

 村のヤガの内の一人。恐らく女性のヤガの一人が耐え切れず、叫んだのをきっかけに堰を切ったかのように不平不満が村中から溢れる。

 

「生きていくだけでも精いっぱいなのに税は減らない。むしろ増える一方だ!!」

「村は餓死で、化け物で、盗賊で、滅んでも皇帝(ツァーリ)は何もしてくれない!!」

「そりゃあ、叛逆軍に期待もする!!彼等はウチの息子を助けてくれた!!」

「ちょっと食糧を彼等に工面しただけだ!!咎められるような事じゃない!」

殺戮猟兵(お前たち)は何をしてる!?皇帝(ツァーリ)の悪口探しでヤガを殺し回ってるだけじゃないか!!」

 

 だが、その抗いの声もチャキ……と鉄の殺意が向けられる音がした途端に水を打ったように静まった。

 

「もはや情状酌量の余地なし。処刑場まで連れて行く慈悲を与える必要も無いだろう。今、ここで、命を差し出せ」

 

「ヒッ……」

 

 誰かの悲鳴が漏れるの合図に。尋常じゃない程の殺戮猟兵が群れを成してヤガ達に迫る。まだ、まだ……増えるのか。ヤガ達の絶望が聞こえる。その数の多さはまるで皇帝(ツァーリ)が未だあいまみえない獣への警戒が現れているようで……。

 

皇帝(ツァーリ)に栄光あれ」

 

「に、逃げッ――」

 

 救いなき蹂躙劇がヤガ達を襲う――。

 

 

 ――ボォォォォオオオオオッッ!!

 

 

 事は無かった。

 この極寒の地には不似合な紅蓮の炎、決して消える事のない復讐の大炎が魔物のように大勢のオプリチニキを飲み込んでいった。

 

 

 

 

「はははははははははは!!ほら、ほら、ほら、ほらぁ!!逃げなさいよ、熱い、熱い、熱いわよぉぉ!!燃えちゃうわよぉ!!あははははははは!!」

 

 踊るように炎の中で悶え消えていくオプリチニキを嘲笑する魔女の声が木霊する。

 手を広げ、旗を振り、群がる黒虫達を炭に変えていく黒き復讐者。

 

「ハッ!つまんない連中。悲鳴も上げなければ、顔もわからない。まるで案山子を焼いている気分だわ」

 

【偽りの聖女。憤怒の復讐者――ジャンヌ・ダルク・オルタ。得意プレイ:誘い受け】

 

 

 

「やっぱ火はいいのう!伊勢長島を思い出すわい!!ふははははははは!!」

 

 その復讐者とはまた別の笑い声が聞こえると同時に巨大な骸骨の拳がオプリチニキをまとめて粉砕していく。

 謎ウエポンを弾き、衝撃波を飛ばす。さらにそのリズムに応じて拳の連打を叩き込む骸骨スタンド。生身炎上中の赤ビキニの水着美少女。

 

「冥土の土産に、わしの能楽ロックを聴いていくがいい!!さぁ、万炎の拍手をおくれ、露西亜のボケども」

 

【革新の覇者。第六天魔王――織田信長。得意プレイ:わびさびセックス】

 

 

 

「首置いてけ!なあ!大将首だ!大将首だろう!?なぁ、大将首だろ貴様!?」

 

「なんだ……貴様ら……ガッッ」

 

 ヤガの遠吠えよりも凶暴で攻撃的な雄叫びを上げ、一人の武将が殺戮猟兵の群れへ吶喊し、突貫する。跳び、跳ね、駆けて、刃を振るう。執拗に首を狙い、オプリチニキの命を一刀の元、伏せていく。その速さ、まさに狂犬に相応しい。

 

「いや……大将首とか無いじゃろ、こやつらに。全員同じ顔だもん」

 

「おい!ふざけるな貴様ら!消えるな!!塵になるな!!首!!首を置いてけ!!首手柄立てなければ主殿に顔向けができぬ!!」

 

【ブレーキの壊れた忠犬。九郎判官義経――牛若丸。得意プレイ:わんわんプレイ】

 

 

「一体、なんなんだ……」

「彼等は一体……叛逆軍か?」

「どいつも尋常じゃない強さだぞ。あのオプリチニキが……まるで赤子だ」

 

皇帝(ツァーリ)に仇なす異邦の怪物達。カルデア……そうか、貴様達がその不敬者の集まりか……」

 

「おい……何だあれ……?」

「ジャヴォルトローンだ!!オプリチニキの奴ら、あんなのまで手懐けてやがったのか!!」

「おい、アンタ達!!早く逃げろ!!」

 

 ジャヴォルトローンと呼ばれる禍々しい黒皮を持つ多頭の大蛇が舌を鳴らして、現れた。村一つを平気で潰す化け物。破壊力に関しては殺戮猟兵よりも遥かに上だろう。

 

「首!首!首ィ!首がたくさん!!」

 

「ハウスじゃ源氏の悪童。せっかく、わしらの大将がいるんじゃ、トリは譲ってやらんとな」

 

「爬虫類相手なんて、役不足もいい所ですが」

 

 牛若丸、信長、邪ンヌの3人が軽口を挟みながら、視線を向ける先に長い黒髪の男が現れた。白い文字で『炬燵触手』と書かれた黒ジャージを着る男は話から察するに彼女達の頭なのだろうとヤガ達は推測した。

 

 

「お前の首はいらん。奇奇神酒(素材)だけ置いてけ」

 

 

 血走った目で獲物を食い殺そうと襲いかかる大蛇を前に彼は気圧される事なく宝具を発動させる。

 

 それは英霊となった彼がもつ『模倣宝具』のさらにもう一ステージ上へと行く宝具。

 

 例えば、ウェイトトレーニングでも目標とする体型のイメージがあるのとないのでは結果は明らかに異なる。

 思い込みの力は、心に、果てには体にまで影響を及ぼす。

 思いが実現する事など、不可能だという前提を捨て去れ。リアルに思い描く事は実現する。

 

 この宝具はつまり、なりきり遊びを極めに極めてしまった成れの果て。人類悪となった彼の第二宝具。その名は――。

 

「『()()()()』……原型(モデル)――」

 

 ――イメージするのは常に最高の彼等だ。

 

「『土方 歳三』」

 

 ――ゴォォォッ!!

 

 英霊の力を身に降ろすその技はまるで別世界の魔法少女達が使う夢幻召喚(インストール)のようで。

 彼の服装が変わる。黒の羽織を纏い、その下には軍服。腰には刀に、拳銃と長銃の二丁の銃。

 その格好は間違いなくカルデアに登録されている土方歳三の姿と酷似していた。

 

 

「親愛の旗は不滅だ……。斬れ……進め……斬れ!進め!斬れ!!進めェッ!!」

 

 

 瞳から白炎が燃え盛り、鬼の副長の如く獰猛に笑い……そして吠えた。

 足場が悪い状態など気にする事なく、土方歳三の力を自身の体に具現化した彼はロケットのように飛び出し、ジャヴォルトローンと肉薄する。

 

「アンタ達は一体……」

 

 ヤガの漏れ出た疑問に答えるように彼は叫ぶ。

 

「ここが!!」

 

 一刀――。刀が振り下ろされ、大蛇が縦に真っ二つになる。

 

「俺達が!!」

 

 二刀――。続けて斬りあげ。無惨に刻まれる大蛇の体。日本刀で斬ったとは思えない斬撃の太さ。

 

カルデア(Call Dear)だぁあああああ!!!」

 

 トドメに長銃を構え、放つ。鉛玉のレベルを……いや、大砲すら超える衝撃と轟音。

 

 目の前には木端みじんとなり、辛うじて残っている蛇の残骸モドキしか無かった。

 

【ビースト0、親愛の獣。一夫多妻の擬人化――デアー。得意プレイ:色々】

 

 

 

「ジャンヌ・ダルクに、織田信長に、源義経。終いには土方歳三って漂流者なのか、廃棄物なのかぐだぐだじゃのう……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前達、恥ずかしくないのか子孫に」

 

 先程助けたヤガの村。比較的、大勢が入れる大きな建物の中で織田信長は言葉を吐く。

 

「恥ずかしくないのか祖先に」

 

 普段はおちゃらけていようともそこは第六天魔王。かつて天下目前まで至った王としてのカリスマを見せて演説をする。

 

「このまま喰われる側で、搾取される側でいいのか。その堅固な皮はただの布きれか。その強靭な爪はただの飾りか。ヤガ……今のお前達のどこが強者か」

 

 他者を駆り立て、奮い立たせ、煽り立てる乱世の風雲児、織田信長。彼女の言葉は間違いなくヤガ達の心に突き刺さっていた。

 

「這うて、悔いて、死ぬか。疾って、夢見て、死ぬか。どちらにする!?決めろ!!」

 

 

「は、恥ずかしくないワケないだろ……ッ!」

「喰われる側で……搾取される側でいいわけないだろ!!」

「飾りじゃねぇ……!俺達の爪は飾りじゃねぇんだ!!」

 

 

「であるか。ならば皆で(異聞帯)盗りじゃ」

 

 この極寒の地で暴政に耐え忍んでいたヤガ達は拳を振り上げ叫ぶ。

 そこには今までどっちつかずの道を進んでいた半端者の姿はなく、生きる為に戦う道を選んだ戦士達の顔があった。

 

 声を上げるヤガ達に満足そうに信長は頷く。

 

「あなた、本当にイヤな女ね。そら、反逆もされるわ」

 

「やかましい!……それよりもマスター。他のチームとの連絡は取れておるのか?」

 

「モチのロン」

 

 楽しげにマスターはスマホを4台取り出す。もちろん契約プランは家族割りです。

 この『異聞帯滅ぼしワクワク白王チーム』以外に各地で活動を続けているカルデアのチームは4つ。

 

 

『あ――先輩、聞こえてますか?こちら、矛盾チーム。ベオウルフさんとビリーが率いている叛逆軍と合流。「女は弱いから仲間にする必要は無い」とかおっしゃるあちらの部下の方達を納得させる為に武蔵さんと私でみねうちオーバーキルをしました。このオルテナウス装備はいいですね!!いつでも先輩との思い出をVR視点で再生出来るので、士気がグングン上がります!オーバー』

 

「うん、戦闘中はあまり使わないようにね」

 

 オルテナウス装備で新たなスキル『自家発電(VR)』を得たマシュ&武蔵コンビの『矛盾チーム』。

 

 

 

『こちらサンタさんチームだ、トナカイ。スキル『聖者の贈り物』で村々に食糧をプレゼントフォーユーをしていくメリークリスマス作戦は順調。私チョイスのハンバーガーシリーズは好評だった。ちなみにヤガ達の毛を刈ろうとバリカン片手に追い回していた3代目サンタはドツいておいたぞ。オーバー』

 

「いつもありがとう。常識枠のサンタ・オルタさん。あんまりおイタするなら『触手炬燵ワンマンプレイの刑だぞ』ってアルテラには伝えておいて」

 

 サンタオルタ、ジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィ、アルテラの『サンタチーム』。

 

 

 

『ハ――イ。プロデューサー。こちらアイドルチーム。なんか、オシャンティなお面を被ったサーヴァントが仲間になったわ。『サリエリ』とか語尾に私の名前を付けてるから、私のファンで間違いないわね。フフ、こんな田舎でも熱狂的なおっかけが出来てしまう自分の魅力が怖い!怖いわ!!引き続き、歌での慰安活動を行っていくわ……。後、彼ピアノが得意みたい。バックミュージシャン付きってのも悪くないわね!オーバー』

 

「致命的な誤解がありそうな気がするけど、面白そうだからスルーしとく」

 

 絶望音痴はそのままに、可愛いボイスに極振りにしたネロの電波中毒ボイスと、マスターの白色エナドリで音痴を回復したエリちゃんの正統派ボイスによるデュエット。『アイドルは止めらんないチーム』。

 

 

 

『もしもしダーリン。こちら炬燵同好会チームよ。アヴィ先生のゴーレム素材集めに奔走中。各地の村の防衛に十分な素材がそろそろ集まりそうよ。ちょっとモンハン気分だわ。あ、それと炬燵ドリフトし過ぎて、おっきーがゲロンパしてしまった写真もLINEに送っておいたから確認お願いね。大丈夫よ、ちゃんと致命的な所はキラキラエフェクトで誤魔化して『アナちゃああああああんん!?何してんのかなぁ!!?』

 

「大丈夫。ゲロインな姫でも俺は大好きだよ」

 

 炬燵プレイによる大乱交セックスシスターズから小休止していた所、再びアナスタシアの『シュヴィブジックA』によって射出された不憫姫とインスタ皇女の『炬燵同好会チーム』。

 

 

「ふふ、皆、順調のようで何よりだよ」

 

「いや、何人か色んな意味で心配な奴らがおったのじゃが」

 

「なーんかこの異聞帯で一番真面目に仕事してるのわしな気がするんじゃが――」とノッブがギャグチックな面でリアクションをしているのを傍目にマスターは……人類悪デアーはモスクワへと歩を進める準備をする。

 盗賊をボコり、魔獣を屠り、オプリチニキを殲滅し……そして、各地のヤガ達を助け、食糧を与え、鼓舞する。今の現状に少しでも不満を持っている者達を立ち上がらせる勇気を与える。

 

「このようなまどろこっしい事をせずとも。主殿が命じてくれれば、今すぐにでもクリプターなる狼藉者共の首を持ってきますが」

 

「何よ、あなた。アイツの忠犬名乗ってるわりにはそんな事もわかってないワケ?」

 

 単独顕現を持っているデアーにとってはここで悠長に準備をせずともモスクワに現れる事は出来るだろうし、その気になれば、今からでもカドックの背後に現れてその命を掻き取る事だって出来る筈だ。だが、彼はそれをしない。絶対にしない。

 

「『本気で遊ぶけど、全力では滅ぼさない』。アイツの言葉はそうね……。結果だけを求めるなら、ただ単に機械のようにクリプターとか異星の神様を淡々と滅ぼして、この話はお し ま い。けど、そんなのに一体何の意味があるのかしら?味気ない過程と2、3行で終わりそうな結末が私達に何をもたらしてくれるのかしら?」

 

 邪ンヌは馬鹿にしたかのように口元を歪ませて、牛若丸の方に視線を送る。

 そうだ。十分な戦力も既にある。ヤガ達を扇動する必要も、叛逆軍達と合流する必要も、アタランテ・オルタ、ベオウルフ、ビリーと肩を並べる必要も、この地でアヴィケブロンを召喚する必要も無い。

 

 彼が……「彼等(ヤガ)には俺みたいな化け物に突然何もかも助けられるんじゃなくて、自分達の足で立ち、理不尽に立ち向かい、戦ったという経験を一度でもいいから持って欲しい。いつか絶対()()()でそれが糧になる時が来るだろうから」と異聞帯で漏らしていたのを邪ンヌは聞いていた。

 

()()()()()。そういった……余分こそをマスターがいつも持ってて、人生とコイツら狗もどきに一番必要なものよ。だってねぇ?妻を何人も作るような奴よ?普通の観点から考えるとそれこそ余分極まりないないでしょう?…………でも、無駄だから、不必要だから……そんな理由で切り捨てる事をマスターがしない事はてっきり知ってるものだと思ってましたけど……。って何よノブナガ、その顔」

 

「すまん。今までおぬしをただのチョロインおっぱいアヴェンジャーかと思ってたが、マスターの事、よくわかっておったのじゃな……。結構、考えてて、わしびっくり」

 

「燃やしていい?」

 

「焼き打ちは二回でのーさんきゅー!!」

 

「さすがは主殿からのお仕置きを一番自然に受ける事が出来るチャンピオンの称号を持つ女……悔しいですが、主殿への理解度はまだ、私は敵わないというわけですか……」

 

「不名誉極まりないわね!!初耳よ!!」

 

 悔しそうにかつ羨ましそうに下唇を噛む牛若丸に邪ンヌは心外そうに吠えた。この様子を見ると先程、一騎当千ぶりの戦いを魅せた英雄とは別人のようにヤガ達には見えた。話している事は半分も理解出来ないし、今の所は彼女達がとんでもなく強いということしかわからない。

 

 ただ、いつも世界に怯えていた震えは止まってくれてた気がした。

 

 

「旧種のお兄ちゃん――。あそこのお姉ちゃん達、皆お兄ちゃんのお嫁さんなの?」

 

「こら、お前。デアーさんに失礼だぞ……」

 

 子供のヤガが無垢な瞳でマスターに語り掛けていた。大人のヤガは心配そうにそれを咎めていたが。

 

「あぁ。嬉しい事にね」

 

「けど、お嫁さんは一人しかもっちゃ駄目なんだよ?そういう決まりがあって、捕まっちゃうんだよ?旧種のお兄ちゃんってもしかして悪い人?」

 

「おぉ、よく気付いたね。お兄ちゃんはその悪の極み。とんでもなく悪い人なんだぞ――良い子も悪い子も皆食べちゃうぞ――、がお――」

 

「きゃ――」

 

 子供のヤガは笑いながら楽し気にマスターから逃げる。

 子供達と人類悪がじゃれつく様子を後で合流していたアタランテ・オルタは微笑ましそうにその光景を見ていた。一瞬、自分と似た顔した緑髪の女の子が視界に映ったような気がしたが、気のせいだろう。

 

 

 準備を終えた人類悪は呟く。

 

「さて、そんじゃまぁ、この異聞帯を()()に行こうか」

 

 

 

 

 




《ヤガモスクワ。皇帝(ツァーリ)の城にて》

「来ているわね、こちらに」

「あぁ……」

「各地のヤガ達も一斉に蜂起しているようよ」

「道理でオプリチニキ共が騒がしいと思った」

皇帝(ツァーリ)が今すぐにでも起きてしまうかもしれないわね」

「その方がいいかもな。対抗する手段はもう、あの王さまを利用するしかない。でマカリーあんたはどうするんだ?」

「もう、その名も相応しくないのだがね……」

「?」

「いや。勿論、見守らせていただく。人理焼却によって目覚め、人理漂白によって覚醒した新たなる生命の祝福をしながらね」

「そうかい……。あぁ、まったくクソ、胃が痛い……」




《シャドウボーダーにて》

「ほう、ほう、ほう!! 素晴らしい! 素晴らしいじゃないか! カルデアという組織は! この私が目を付けていただけの事はある!! 困難なサーヴァント召喚をこんなに複数!しかも、マスターと離れても長時間活動出来る程の燃費の良さとは!! うむ、うむ! もう、あのマスターが人類悪だとなんとかは私のただの聞き間違いだろう! きっとあ奴は『ジーンルゥ・アーク』という名前か何かだろう! 都合の悪い情報は出来る限りカット! それが長生きの秘訣!!」

「ゴルドルフ司令官、一つ誤解を解くと、我々カルデアがこのロシアの地で召喚したのはアヴィケブロン氏、只一人ですよ」

「え? いやいや、何をおっしゃってるのかねホームズ君? だったら、各地で好き放題しているハンガリー家のドラゴン娘とか、ロシアの皇女とか、ジャパニーズの侍とか、何故かサンタの格好をしているアーサー王とか彼女達の姿が説明つかんでしょう?」

「ふむ、そもそもの話。彼女達をサーヴァントと評するのはあまり正しくない。彼女達が何人も何人も呼び出しに応え、カルデアの魔力供給を気にせず戦えるのはデアー君の宝具の力もあるのだが……」

「宝具……?」

「その宝具については……今はまだ語るべき時ではない(いつもの)だろうね!」

「腹が立つ笑顔!!」















『模倣英霊』
ランク:EX
種別:対人宝具(自身)
使用者:ビースト0/デアー

蟷螂拳!熊掌拳!猿拳!え…………………ッッ英霊……………………――――――拳ンン!!?
限りなくリアルに近いイメージは実現する。別名エア英霊。
傍から見ればプリズマ世界線における『夢幻召喚(インストール)』と変わらないが原理は全く異なる物。縁を結んだ英霊の力をイメージし、この身に再現する……。服装まで変わるのはおかしいという野暮なツッコミをしてはいけない。
「え?そんな宝具を使わなくても『白式官能』を使えば、もっと楽に手っ取り早く敵を倒せる、むしろ弱体化してるでしょって?…………はぁ――。浪漫が足りないね。
世に出ている魔法少女、戦隊ヒーロー、仮面ライダー、ロボットものにどうして人々が惹かれるのかわかるかい?効率化のみを追及しただけじゃ絶対に辿り着けないカッコ良さがあるからだよ!!この余分こそが文化の神髄!!変身!必殺技!最高じゃないか!!メカメカしいギミックがあるとなお良し!!」とは本人の言。




英霊:グダお

第一宝具:『百式官能』
第二宝具:『模倣(まねっこ)宝具』
第三宝具:『人繋ぎの大秘宝庫(マテリアルボックス)
第四宝具:『性神と妻達の部屋(アダム&イブズ)
第五宝具:『這い寄る絶望(リョグダコ・ポテプ)
第六宝具:『この世全ての精(ファビアナ・スペルマ)
第七宝具:『Call Dear(親愛なる 貴方へ)




人類悪:デアー

第一宝具:『白式官能』
第二宝具:『模倣英霊』
第三宝具:――
第四宝具:――
第五宝具:――
第六宝具:――
第七宝具:――












第二部 1章は3話完結予定。サクサクいくよ――。




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私のダーリンが人類悪なわけがない(第2部 1章)

 決着の時は来た。ヤガ・モスクワにて人類悪とクリプターは対峙する。

 

 片や異聞帯を滅ぼす為。片や世界を救えると証明する為。

 

 カドック・ゼムルプスは自身が最も信頼する異聞帯のサーヴァント、アナスタシアを傍らに魔王へと挑む。彼らの周りには大勢の殺戮猟兵が群れを成している。だが、今後の展開を考えれば、オプリチニキの軍勢は戦力として数える事は出来ないだろう。

 

 

 

 その魔王もまるで鏡合わせのように同じサーヴァントを控えさせていた。

 

「そうかい。同じサーヴァントなら、マスターで差が出てくるって魂胆か?悪趣味な事だ、さすがは人類悪と呼ばれるだけの事はあるなデアー」

 

 カドックは忌々しそうにそう呟き、眼前の敵を睨み付ける。折れてなるものかと拳を握りしめて。いやそうやってシリアスを装わないと色んな意味で心が折れてしまうから。

 

 青ジャージ姿のもう一人のアナスタシア、黒ジャージ姿の人類悪。この二人が自分達そっちのけで「異聞帯ロシア旅行記念~~♪」とスマホで写真を撮っている現実を直視してしまいそうになるから。

 

 隣にいるこっち(異聞帯)側のアナスタシアはさっきから白目を剥いている。

 気持ちはわかるが、マスターがいるのに敵から目を逸らす真似はあまりしないで欲しいとカドックは胃を抑える。

 

「ここが異聞帯のロシア……。私のいたロシアとは随分と様変わりしたのね……。民達も皆モフモフになっていましたし、これがジャパリパークなのね……すごーい、さーむーい」

 

「た、た、た……楽しんでいるようね、もう一人の私……。敵陣の真っただ中だというのにその余裕は隣にいるマスターのせいなのかしら?」

 

 ようやく現実を直視した異聞帯のアナスタシアがIQが下がりそうな台詞を垂れ流しにしている汎人類史のアナスタシアを挑発する。

 

「そういう貴女はあまり余裕が無いように見えるわ。駄目よ、心に常に余裕を持たないと。あらゆる事を楽しんで、インスタに上げる。それこそが皇女ライフの正しいあり方」

 

 いや、それのどこに皇女要素がある?というツッコミをカドックはグッと飲み込んだ。隣のパートナーが頑張って、シリアス方向に何とか持っていこうとしているのだ。その努力を無下にはしない。

 

「戦いに来たとは思えないのその格好も楽しみとやらの表れか?あぁ、まったく随分と舐められたもんだ。いや、その態度も正しいか。お前等にとって僕達は敗残兵もいい所だからな」

 

「諦めんなよぉ!」

 

 がんばれがんばれできるできる絶対できるがんばれもっとやれるって!! やれる気持ちの問題だがんばれがんばれそこだ!そこだ! 諦めんな絶対にがんばれ積極的にポジティブにがんばれがんばれ!! とこっちを何故か鼓舞している人類悪は見えていない。見えていないったら見えていない。

 

「油断しないでマスター。隣にいるデアーとやらはどうだか知らないけど、こと私に関しては服装は関係無いわ。冷気を司る力も、そしてアナスタシア・ニコラエヴナ・ロマノヴァの本領でもある契約した精霊も」

 

 そうだ。彼女と契約した謎満ちたロマノフ帝国の精霊『ヴィイ』。もし目の前の青ジャージが本当にこちらと同じアナスタシアだとしたら、当然宝具も――。

 

「その私と同じ顔で見せる気に食わない表情も服装も、何もかも凍てつかせてあげるわ。現れなさい!『ヴィイ』!!」

 

 全貌が把握出来ない兎のような黒いシルエット。彼女の何倍もあるであろうナニかがアナスタシアの背後に現れる。全てを見抜き、凍てつかせる瞳が剣呑と輝き、ビーストデアーと汎人類のアナスタシアを視界に収める。

 

「ポケモンバトルね、いいわ。どっちのヴィイが強いか勝負よ」

 

 隣の人類悪が持ったスマートフォンからシロガネ山にいる最強トレーナーのBGMが流れる。

 アナスタシアもダーリンのアシストにノリノリになりながら、両手をクロスし、腰を曲げ、スタイリッシュな体勢を取る。コイツら少しはシリアスに出来ないのか、カドック君と異聞帯のアナスタシアの努力をもうちょっと見習って欲しい。

 

「……すぅ――はぁ――――……いや…………悪いが人類悪、お前は一旦ここで退場してもらう」

 

「むぅ?」

 

 カドックの言葉と同時に雪原を駆け、人類悪デアーに迫る獣の姿……いや一騎のサーヴァントの姿が。

 肩に獰猛な猪の頭に黒き毛皮。この異聞帯のロシアに召喚されたサーヴァント。カリュドーンを身に宿した純潔の狩人。

 叛逆軍を率いるサーヴァントであり、ここまで共に戦ってきた筈の戦友でもあるアタランテ・オルタが人類悪デアーに対峙していた。

 獣のように四肢で大地を踏みしめ、人類悪へと肉薄したアタランテ・オルタは彼にどうしても問わなければならない事があった。

 

 

 

 

 ――汝らに協力しろ?あり得ぬ。汝らが皇帝側に与している以上、ここにいるヤガ達を虐げている以上、我らが手を結ぶ事は無い。

 

 ――与していない。いやもうそう言ってられる状況じゃない。この世界を滅ぼすと言ってる奴が間もなくモスクワにやって来る。そもそも僕の目的はこの世界を救う事だ。その為にはアレを打倒しなければならない。でないと、あんたも守るべき者一切を失う事になる。

 

 ――妄言の類にしか思えん。彼等は我らを救ってくれた。虐げられる者達に手を差し伸べてくれた。……そんな事が。

 

 ――あんたも薄々気付いている筈さ。あいつらがやろうとしている事の結末が何をもたらすのか。

 

 ――………………。

 

 ――証拠を見せよう。オプリチニキももう叛逆軍に手を出させる事はしない。もはやそんな余裕すらないからな。まだ信じられないと言うのなら、本人に聞けばいいさ。

 

 

 

 

 

 

「答えてくれ、デアーとやら……汝は本当にこの()()()()()()()()()のか!?」

 

 叛逆軍と、そして多くのヤガ達とここまで歩を進めてきた戦友とも言える存在に彼女は声を大にして問う。頼む、どうか否定してくれと、あの魔術師の虚言だと言ってくれるのを期待して。

 

「ふむ……まぁ、俺はこの異聞帯を()()()()からは消し去りに来たね」

 

「っ!!…………本当なのか……」

 

「あぁ、嘘はついてない」

 

「汝らを信じて、汝らに希望を見出して、ついてきた者達も大勢いるのだぞ……」

 

「きっかけは確かに俺達だ。だが、その一歩を踏み出したのは彼等自身の選択だ。それすらも全部自分達のおかげだと傲慢極まりない事を思うつもりはないけど」

 

 人類悪デアーは確かに嘘を付かず。誠実に答えた。

 返答を耳にしたアタランテ・オルタはその喉元を食い千切らんと襲いかかる。迷いはある……だが、オプリチニキ達を屠殺してきたこの男の戦闘力は既に目にしてある。危険だ――。もし、もしも本当に皇帝同様、ヤガ達を食い物とするのなら――。

 

「汝らに恩はある。多くのヤガを救ってもらった恩が……。だが汝らの目的がこの世界の滅亡というのなら――……」

 

「どうする?」

 

「汝も我らの敵だ!!」

 

 

 

 人類悪vs黒獣の狩人。ある意味同じ獣同士とも言える戦いが勃発すると思いきや……彼女の鋭い爪がデアーの肌に迫ろうとしたその瞬間。第三者が、肉に飢えた白き怪物が、参入した。

 

「ハラ、ヘッター……クワセロ、クワセロッ……!クワセロォォォッ!!クッテヤルゥゥゥゥゥウウ!!」

 

「なっ!」

 

 カドックのもう一つの切り札。見上げる程の巨躯。迷宮にて迷い込んで来た者達を容赦なく喰らい尽くしてきたギリシャ神話における『牛頭人身』の怪物ミノタウロスが乱入した。

 

万古不易の迷宮(ケイオス・ラビュリントス)!!」

 

 マスターの命通り、ミノタウロスは宝具を発動させる。任意でその場にいる者達を迷い込ませる複雑怪奇なクレタ島の迷宮。対象はアタランテ・オルタとデアー。突如として現れた石の迷宮に二人は飲み込まれていく。

 

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 迷宮の効果か頭を揺さぶられるような感覚。切り替えるように頭を抑えながら前を見据える。閉塞された空間に閉じ込められた先には先程、その命を奪おうとした男の姿があった。若干の距離があった為かこの迷宮の主は今は視界に映る距離にはいなさそうだった。

 

「チッ、完全に信用したつもりは毛頭無かったが……あの魔術師め、全くやってくれる。だがいい……これで邪魔も入らず、巻き添えも気にする必要が無い。私と汝の二人きりだ」

 

「そうだね。確かに()()()()()――」

 

(なんだ?)

 

 そこでアタランテ・オルタは奇妙な感覚に包まれた。

 自分はカリュドーンの毛皮により変身した獣。喰らう側である肉食獣と言える。

 けれども、微笑みながらこちらを振り向くこの男の姿を見ていると――。

 

(吾はなんで、震えて――)

 

 まるで――あの男が今にもこちらに齧り付こうとしている獅子のように見えて。

 まるで――この迷宮が檻のように見えて。

 まるで――自分が目の前の獣に差し出されたの餌のように思えて。

 

 

(え、あ――、近、なんだ、白い手が――)

 

 

『白式官能 ()の掌』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――えぇ、えぇ!人類最後のマスターもとい、人類悪デアー君は女たらしで、女好きよ?ですからぁ、例え自らの命を取りに来た相手でも基本的に見目麗しいレディの質問には嘘は付きません。紳士ですし?あぁ、注意を引くという点でも美女を用意するのは良いかもしれませんね――?あ、もしかして、見逃してもらう代わりに皇女様を差し出すとか?やだぁ――!カドック君ってば大悪党!!……な――んって冗談ですからそんな怖い顔しないで下さ――い。コヤン、怖くて寝返ってしまいそうになっちゃいそう……。フフフ、冗談、冗談ですよ。私ですか?あぁ、手出しはしません。遠目で貴方達の戦いの顛末を見たら、次の異聞帯にシュバババババと転勤させて頂きますからご安心を。

 

 

「半信半疑だったが、あの悪女の言う事は間違っていなかったか……」

 

 カドックは何が面白いのか口元を歪めて、そう言っていた女狐の顔を思い返す。

 

「平穏は失われた」

「あの方が夢から醒める時」

「我らも旅立とう」

「皇帝に栄光あれ、皇帝に栄光あれ」

 

 黒衣の死神、殺戮猟兵達が次々へと塵に帰る。首都モスクワまであの劇物たる人類悪の接近を許したのだ。楽園に浸る時間は終わる。もう皇帝は夢を見てられない。正しく今のロシアの現実を認識する。巨物が、怪物が、山が、目覚めようと大陸が震える。

 

「コヤンスカヤの情報でカルデアにはあのアタランテとは別側面のサーヴァントがいると。女に甘いという情報に偽りが無いのなら。あの迷宮に縛り付ける良い枷になるし、雷帝が目覚めるまでの時間稼ぎにもなる」

 

 まず第一段階と。カドックは呟く。アタランテ・オルタとミノタウロスであの人類悪を少しの時間でもいい、迷宮内で縛り付けると。

 

「あいつの空間移動能力は見ている。イヴァン雷帝の姿を目の当たりにして別の場所へ顕現されても厄介だ。なら、外の様子が一切わからない状況で迷宮ごと踏みつぶす。不意打ちの如く、事故のように、何が起きたのかわからないまま、最大の一撃を受けてもらう」

 

 カドックはクリプターの会議において乱入した人類悪の姿を見た瞬間に、もしこの異聞帯において自身に勝機があるとしたら皇帝を起こし、アレとぶつけるしかないと心に決めていた。

 

 英雄でも、サーヴァントでもない。一つの災害のようになったイヴァン雷帝なら、あの人類悪に一矢報いるカードになると。

 

 これが第二段階。ベストは皇帝と人類悪デアーが共倒れしてくれる事。ベターなのは人類悪が倒れ、尚且つ皇帝がこちらのカードだけで倒し切れる程、消耗してくれる事。最悪なのは――…………。

 

(……いや、今はそれを考えるのはよそう)

 

「君がいたのは想定外だったが、この状況なら案外歓迎すべき事かもしれない。同じサーヴァントなら、マスターで差が出る。だが、マスターと離れ離れになったこの現状なら、アナスタシアという英霊を知りつくしている僕達に分がある」

 

 突如として現れた迷宮の方にスマホを向けながら『ロシアの雪原にいきなり石の迷宮とか神秘過ぎてマジやばたにえん( ゚Д゚)、ダーリン攫われちゃった。ドーシヨ(棒読み)』とインスタを投稿している汎人類のアナスタシアの表情は伺い知れない。ガンスルーされているカドック君の眉間に皺が寄る。

 

「僕達としては皇帝と人類悪さえ、仕留めてしまえば後はどうでもいい。正直な所、残ったカルデアを脅威だとは思っていない。だからもし、君が彼との契約を切って、こちらに与するというのなら歓迎す」

 

「え?何ですか?もしかして、私と同じ顔を並べて夜のロックンロールぐっへっへっとか考えているんですか?ドン引きです。通報しました」

 

「考えるかぁっ!!待て、アナスタシア、君もそんな瞳で見るな」

 

 言いがかりもいい所だったが、このロシアの気温よりも冷たい極寒の眼差し×2に射抜かれたカドックは無性にいたたまれなくなった。汎人類の方は言わずもがな、異聞帯のアナスタシアも他のサーヴァントはともかく自分と同じ顔をしたサーヴァントをいきなり勧誘するマスターを見てイラッとしたのも致し方ないのかもしれない。

 

「ねぇ、異聞帯の私のマスター。誰から聞いたか策なのかは知らないけど、貴方はあの露出強くっころ獣娘を餌にダーリンを迷宮に閉じ込めたわけよね?」

 

 異聞帯のアナスタシアはマスターと分断されたこの状況でも何一つ慌てる事なく、言葉を続ける。出来の悪い生徒を諭す先生のように。

 

 

 

「駄目じゃない。ビースト(ダーリン)にあんな()()()()()()ご馳走を差し出したら……時間稼ぎにもならないわよ」

 

 

 

「なにを――」

 

 

 

 

 ――あぁぁっァァァッ!!!

 

「っ!?今の声は――」

 

 

 

 

 ――ヒぃぃっ!!あぁぁぁっ!!ンあぁあぁっ!!ま、まって、まぁぁって……!アンぅぅあぁっ!!わかった、わかった私の負けだからぁぁっ……!もう、ゆるひてぇぇぇぇ……んぎぃぃっぁっ……!!あっ、あぁぁっ!!とまって、とまぁぁって……!!尻尾掴みながら、ズンズンってぇぇぇ……ダメぇぇぇ……ンふぁああァァッッ!!むり、無理ぃぃぃ、手が多い、多過ぎるひゃらああぁぁっ……アァァ、アアアァ……んほぉっぁぁあっ!!ぇぇあ……こんなの、こんにゃのぉぉ、死ぬより、きちゅいいいいぁぁあぁああっ……!!!!淫紋……?そんなもの生えてぇぇ……え、何これ、何で私の体にぃぃぃぃっぃぃぁアアアアアアっ、あぁぁっ、あぁああああぁっ!!止まって、止まってぇぇぇえっ、そこ撫でないでぇぇえ……!!ひんんんぅうっぁあああ!!お願い、お願い、ほへふぁい……もうどこ触られてるのかも、わかんなくなって……あっ、あっ、あっ、あっ、アッ、アッ、アッ、アッ、とんじゃう、とんじゃう、とんじゃぅぅぅぅぅぅんぎぃぃぃぃぃぁあああああっ……!!

 

 

 

 

 ミノタウロスが造り上げた迷宮から外部まで響き渡る絶叫と嬌声が混ざり合った快楽の鎮魂歌。

 青ざめたカドックとアナスタシアが耳にしたそれは勇ましくも皇帝に叛逆していた軍の頭でもあった英霊の声であり、間違いなく、絶望に沈む啼き声さえも悦楽に塗りつぶされる凄まじき喘ぎだった。

 

 迷宮の中にいるアタランテ・オルタが何をされているのかは理解出来ないが、異常な事があの迷宮で行われている事は理解出来た。

 

「……ねぇ、マスター、一体、何が起きて……」

 

 ここでカドックは自分が致命的に打つ手を間違えた事を悟る。

 

「貴方達の敗因は三つよ。一つ、ドスケベペットサーヴァントをチョイスした事。二つ、ダーリンを過小評価し過ぎた事」

 

 先程、宝具を発動させた異聞帯のアナスタシアの時よりも大きい圧が彼女を中心に吹き荒れる。

 理解せざるを得ない。服装と言動と挙動はふざけているが、彼女も王族に連なるサーヴァント。それに相応しき、威厳と力は持っている。その証拠が。象徴たる物が今、背後に現れる。

 

 

 

「そして、最後、三つ。私を舐めた事よ。現れなさいヴィイ!!」

 

 

 

 異聞帯の彼女が繰り出した死の瞳を持つヴィイと同じ背丈の精霊が現れた。それは――。

 

 

 

「オイラはビィ!!」

 

 

 

 筋骨隆々な八頭身の体とデフォルメ化された頭を持つ赤い竜の精霊だった。

 

 

 

「ヴィイ……ビィ……?え、え、いや違います。それはヴィイじゃないです」

 

 異聞帯のアナスタシアも思わず敬語になってしまうぐらいの異形だった。というよりも目の前のもう一人の自分がどうしてアレをヴィイと呼んでいるのかすらわからなかった。そもそもあれは精霊とかそんな神秘的なものじゃなくて呼んではいけないダークファンタジー的なナニかではないのだろうか。ナニアレ?ナニアレ?いやホントになんだろうねアレ。

 

「トカゲじゃねぇ!!」

 

 聞いてない。

  

「なんだ……あの、化け物は……ヴィイと言ったのか……冗談だろ……?」 

 

「死ぬ直前、私が英霊となって力を貸してくれたヴィイ。ダーリンと出会った事でやっとその全貌を掴む事が出来た……。わかる?もう一人の私、貴女の使役するヴィイと私のヴィイとではレベルが違うの」

 

「違う、違うわ。そんな肉ダルマをヴィイと認めない……!来ないで、来ないで、こっちに来るなぁぁ……!!ヴィイ!!凍てつかせてェェ!!」

 

 のそのそと歩を進ませる異形なるビィイに叫びながら、自身のヴィイの魔眼を解放させる異聞帯のアナスタシア。およそ、生命が生存出来ない絶対冷凍の吹雪がビィイに襲いかかり、その体を氷像へと変えていく。

 

「ハァ、ハァ、ハァ…………見掛け倒しだったわね……」

 

 息を荒げ、安心したように呟く彼女に絶望が訪れる。

 

「あくびが出るぜ」

 

 ――バキバキィッッ。

 

 不気味な八頭身マッスル氷像にヒビが入り、氷はあっけなく崩れ、ピンピンとしているビィイが現れる。これほどまでに味方で頼もしくかつ、敵にとっては恐怖でしかない存在がいただろうか。

 

「死にたいやつは順に並びな!!」

 

「きゃああっ!!」

 

 拳の風圧、それだけで異聞帯のアナスタシアはヴィイごと、吹き飛ばされる。

 

「さぁ、あの迷宮にいる獣っ娘は何秒保つかしら?そして、貴方達は何秒耐えれるかしら?」

 

 マスターとしての役割を持つカドックが傍観に徹するワケもなく。ダメージを受けたアナスタシアに治癒魔術を施し、自分をヴィイだと思い込んでいる八頭身の怪物を打破すべく、出し惜しみなく令呪を解放する。雷帝を倒す時の為とか、この後の勢力争いの為とか温存している場合ではない。

 

「第一の令呪を以て命ずる。敵を凍えさせろ!第二の令呪を以て命ずる。宝具を解放せよ!最後の令呪を以て命ずる。皇帝になれ!」

 

 

 三画の令呪によるブーストを受け、先程とは段違いの冷気が渦巻かせて、異聞帯のアナスタシアは自身が出し得る最強、最高の宝具を放つ。

 

「ヴィイ、全てを見なさい。全てを射抜きなさい。我が霧氷に、その大いなる力を手向けなさい。『疾走・精霊眼球(ヴィイ・ヴィイ・ヴィイ)』!!!」

 

 魔眼の全力解放。あらゆる秘密、弱点を見抜くヴィイの魔眼。後ろのアナスタシアごと、凍てつかせようとする極大の魔力と吹雪が混じり合った攻撃がビィイに襲いかかる。

 

 だが、彼(?)は逃げる事も恐れる事もせず、その強靭な手を伸ばし、受け止めた。

 

「オイラァ!!」

 

 周りのヤガ達は近づく事すら許されない衝撃。だが、気合いの雄叫びを上げ、パーの形で異聞帯のアナスタシアの宝具を受け続ける精霊は微動だにしない。

 

 令呪三画のサポートを受けたアナスタシアの全力の宝具が与えたダメージは如何ほどか。

 

「うそ……だろ……?」

 

「あぁん?この程度で全力かよ。だらしねぇな」

 

 無傷なり。未だ無傷なり。その体に一切のダメージ無し。

 今度はこっちの番だなと、全身に力を蓄え、筋肉をさらに増長させるビィイ。

 

「オイラが怖えのはデアーの兄貴とナイチンゲールの姉貴だけだ!!」

 

 脚力だけで空高く舞い上がり、雄叫びを上げる。

 

「オイラはドラゴン!!」

 

 背中の羽根も一切使っていないし、筋力だけで空中に浮かんでいるのでどう考えてもドラゴンには見えない。そもそも筋力で空って飛べるんだね。すごいね、マッスル。

 

「おらおらぁ!!平伏すがいいぜ!!ちっぽけな者共よぉ!!」

 

 ロシアの寒空をバックに彼は再び、手を広げ構える。膨大な魔力のような力のプレッシャーがカドックと異聞帯のアナスタシアに襲いかかる。理解不能な規格外の存在。見た目は気色悪い事この上がないが実力は本物。

 

「うりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃあああ!!」

 

「きゃあああああ!?」

 

「アナスタシアッ!」

 

 宙から放たれる連続のエネルギー弾が無慈悲にアナスタシアとヴィイに襲いかかった。巻き上がる雪塵と轟音。彼女に駆け寄ろうとしたカドックもその余波で吹き飛ばされてしまった。

 

「グミ打ちは敗北フラグ?真の皇女なら、そんなフラグは折ってこそ。その身で味わうといいわ異聞帯の私。常に余裕を持ってインスタを投稿。服装ではないのよ。たとえ、ジャージだろうとも振る舞いで気品さが溢れてしまう私の美技に酔いなさい」

 

 これこそ、彼女がマスターと炬燵でぬくぬくイチャラブセックスし、肉体を持った末に辿り着いた宝具。外形がはっきりしなかったかの精霊を彼女だけの現実で捉えた(バグってしまった)ヴィイの姿。神霊とタメを張れる許されざる宝具。

 

 連続気弾による爆風をバックに彼女はキメ顔で自撮りをする。写真と共にインスタにはこう投稿されていた。

 

 

覇空疾走 精霊創竜(オイラ・ハ・ビィイ)

 

 

「ふぃ――。こんなんでいいのか?アナスタシアの嬢ちゃん」

 

「えぇ、十分よ。これが報酬の黄金の果実よ」

 

「いやっほう!!」

 

「もう、倉庫にあるのを勝手に食べては駄目よ。ダーリンのあんな無の表情、私、初めて見たんだから」

 

「う、うぅ……思い出させないでくれよ。マジでトラウマになってんだからよ……。もう過ちは犯さねぇ。ドラゴンは間違えない。ドラゴンは間違えない……」

 

 

 本気は出していなかったのか、それとも致命的な所は外してくれていたのか、倒れ伏せていたアナスタシアは大破エフェクトのようにドレスが破れているぐらいで……気を失ってはいるが、消滅する程のダメージは負ってはいなかった。吹き飛ばされていたカドックが足を引き摺りながら、何とか異聞帯のアナスタシアの元へと駆け寄っていた。

 

「彼等には消滅とか、そんな結末を許すつもりはありません。この異聞帯の結末を見届ける義務があります。このロシアの地を任されたマスターとサーヴァントとして」

 

 

 ――オォォォォォ……オォォォォォオオオオオオオオオ!!アナスタシアァァァァッ!!

 

 デアーの妻であるアナスタシアの前に山が動き出していた。

 その雄叫びだけで雪崩を起こしそうな、眠れる巨躯が遂に目を覚ます。

 古き生物マンモスと一体化した、だがその大きさは常識を覆す。神霊にも匹敵する異聞帯の王。

 

 自身の世界を侵略する人類悪に対して、イヴァン雷帝が動き出す。

 

 

 

 

 

 

 




覇空疾走 精霊創竜(オイラ・ハ・ビィイ)

ランク:EX
種別:対軍宝具
使用者:アナスタシア(インスタ系皇女)

オイラァ!!
炬燵でぬくり、モンハンをしながらイチャ付き、インスタを投稿していた雪の皇女が捉えた自分だけのヴィイの姿。マスターの白濁液と彼女のゲームによるドラゴンへの憧れで別次元のナニかを受信してしまったのかもしれない。グラブルの世界に帰れ。
戦闘時は八頭身のマッスルだが、普段はマスコットらしく二頭身に収まっている。外見はギャグにしか思えないが戦闘力においては絶大の一言。主に肉弾戦と気弾を用いた戦闘を得意とする。おめぇ、ドラゴンボールかよ。
通常クラスのサーヴァントなら複数でも簡単に屠れる。言動とか戦い方がどう見ても悪役にしか見えない。
というかこんなのにずっと見つめられていたら、そらロシアの兵達も頭狂いますわ。
倉庫の黄金の果実を勝手に食べた事から、一度マスターにボコられている。その後、傷だらけの所を婦長にビィィィィィくぅぅぅんんんぅ(雑菌消毒)されているので二人がトラウマになりかけている。
後、一応ドラゴンらしいので竜特攻は効く。












ノッブ「おっ、おぬし、そう言えばロックが好きなようじゃな。うっし景気づけにわしらのくぎゅぅロックンロールを聞かせてやろうかの!」

ビィくん「おっしゃぁ! ディスってんじゃねぇぞ♪」

ノッブ「オイラは魔王♪」

ビィくん「トカゲじゃねぇ!(合いの手)」

カドック「てめぇらぁ!! ロック馬鹿にしてんのかぁぁ!! 今すぐ止めろぉぉ!!」

サリエリ「これも新たな音楽の形か……。アイドルといい、実に興味深いな」

エリちゃん「私達も負けてられないわネロ! こっちも最高のロックナンバーを見せてやろうじゃない!!」

ネロ「うむ! 我が美声をこの異聞帯全てに生きる者達に届けてやるとも!! ボエェ~~~~♪」

アナスタシア「気絶しているあっちの私が消滅しそうだから、ほどほどにね」










頑張って、イヴァン雷帝!!この異聞帯を守る為に!!人類悪に立ち向かって!(無茶ぶり)





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ダーリン・イン・ザ・セックス(第2部 第1章)

ちょいとしくったので投稿し直し。

















「雷帝が完全に目覚めたか……」

気絶している自身のサーヴァントの傍で山と一体化した魔獣を見上げる。さっきまでロックを冒涜しているとしか思えない怪音波を聞かされていたせいかまるで恐怖心が湧いてこない。

「それとも、もっと怖い存在を知っているからか――」

まだあの人類悪は迷宮の中。雷帝が足を或いは鼻を振り下ろしてくれれば、きっと――。

「駄目だ――」

カドックの脳裏にはずっと目を逸らし続けていた光景が浮かび上がる。クリプター達の会議に使われていたキリシュタリアの根城を崩壊させる白手観音像……すなわちビーストデアーの姿が。
あれを思い出せば思い出す程、あの獣の存在を目の当たりにすればする程……。

「アイツがマンモス程度に負ける姿がまるで想像出来ない……」











「はぇ、あ、あ、ぁぁっ……ぁぁっ、あぁっ、んふぁぁっ……あひ、ひぃぅ……はぁ、はぁ……あひぃ……んぅ……」

 

「空しいな。戦争というのは」

 

 場所は変わって再びミノタウロスの宝具の中。

 

 全裸でイイ汗かいたぜと言わんばかりの爽やかな顔でトチ狂った事を言っているデアーの足元には様々な液まみれになって生まれたままの体を火照らせながら、喘ぎと吐息を延々と口から漏らすアタランテ・オルタの姿があった。端的に言えば、「見せられないよ!!」状態。

 

 もう彼女はこの異聞帯においては使い物にはならない事は間違いない。きっと誰の目も届かないこの迷宮では凄まじい戦いがあったのだろう。彼女がどんな目に遭ったのかは当の本人達以外は知る由も無い。まぁ、アヘ顔淫紋オチしている様子を見れば容易に察する事が出来るだろうが。

 

 

「ミ、ツケタァ……ミツケタァッ……!!エサ、エサァァッ!!」

 

「おっと。さすがにあれだけ声響かせてたら、そら気付くか」

 

 色んな意味で余韻に浸っていたデアーに迷宮の主が襲いかかる。

 迷宮の奥から、双斧を振り回し、ミノタウロスが彼に迫っていた。血走った眼で彼をただの餌としか見ていなかった。間違いなく、腹に入れたら壊す部類の劇物だと思うが。彼が人類悪とアタランテの獣セックスを目にしてなくて本当に安心した。

 

 

 そんな中でも人類悪デアーは焦る事なく、指をパッチンと鳴らした。

 

 

 この迷宮は外部と隔絶された複雑怪奇の檻。辛うじて、音声だけの連絡が可能なぐらい。だが、ことこの人類悪に関してはあまり関係は無い。

 

 英霊の彼が持つ、第四宝具『性神と妻達の部屋(アダム&イブズ)』の上位互換。

 

 彼と交わり、肉体を持った妻達を呼び出す宝具。だが、『性神と妻達の部屋(アダム&イブズ)』のように人数制限も無く、銀の杯を使ってドアノブのように捻る必要も無い。というかぶっちゃけ指パッチンする必要も無い(只の演出)。

 

 タイムラグも制限も無く、彼の召喚に応える妻達をいつでも際限なく呼び出せる人類悪デアーの第四宝具。

 

 

「『通い妻オーバーラン』」

 

 

「メリーの時間だ」

「ロジカルの時間です!」

「性夜の時間」

 

 瞬時に呼び出したのはサンタ・オルタ、ジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィ、アルテラ・ザ・サンタのトリプルサンタ。

 

 彼女達は相対するミノタウロスにスキル『聖(星)の贈り物』を発動する。

 

「ウ、ウゥッ……?」

 

 空から降ってくるターキー、ナゲット、ポテト、ケーキを始めとしたクリスマス風味な豪勢な食べ物、食べ物、食べ物の雨。怪物としての面を強調されているミノタウロスなら生きた者に齧り付く筈だが、ミノタウロスは突如として現れた山盛りの食べ物に何故か目を離す事が出来なかった。

 

「ウ、マイ……ウマイ、ウマイ、ウマイ!!……ナンダ、ナンナンダコレ!!」

 

 気づけば、手に取り、口元に運んでいた。

 手づかみで夢中に食事を続けるミノタウロスの動きが完全に止まった。ひたすら何かに飢えていた彼はその渇きを癒すように食べ物を喉に通し続ける。

 

「生きた者なんかより、こっちの方がよっぽど美味だろう。ミノス王の怪牛よ」

 

「アステリオスさんではないアステリオスさん!!貴方のお腹と心の渇きを私が今、ここで癒してあげます!!」

 

 もう人類悪デアーとトリプルサンタ達の事は眼中に無いミノタウロスを前にして、ジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィは新たな宝具を解放する。

 

 槍を地面に突き立て、魔力を解放する。

 

「悪い子にはお説教を、良い子には贈り物を、そして救われぬ子には思い出を!!」

 

 今までその小さな体にマスターから性者の贈り物を受け続け、受肉したロリサンタが得た宝具。

 

 

 その瞬間、ミノタウロスには突如として様々な記憶が脳裏に浮かんだ。

 

 

 ――おぉ……おおぉお――!!これは、これは……!!

 ――やった――!トナカイさんだ――!おっきなおっきなトナカイさんだ――!!

 

 雪降る聖夜に自分の姿をした誰かの周りを走り回る少女達。

 

 

 

 ――いいの?マスター、かたぐるまなんて……ぼく、おもくない?

 ――思ってた程じゃないよ。ほら、いつもする側でしょアステリオスは。なら偶にはされる側になってみてもいいかなって!

 ――だからってアステリオスが私に肩車をしてる時じゃなくてもいいでしょ!!あぁぁ、高い高い、揺らさないでってばぁ!!

 

 自分に一切恐怖心を持ってない男と女神の微笑ましい戯れ。

 

 

 ない。知らない。自分にはそんな思い出は一切無い。笑える程に平和で。泣けてしまうぐらいに暖かったその光景を見せられたミノタウロスにはもう全身から力が抜けていた。

 

「お腹の飢えは食べ物で癒えます。なら心の飢えは何で癒えますか」

 

 これぞ心を論破するジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィの新宝具。『安穏に浸れ、最高の思い出に( ル・メイユール・スーヴニール)

 

 対象が深層意識で最も求めている思い出を脳裏に投射する浄化宝具。たとえ、目を瞑ろうとも心の飢えを癒すその思い出は浮かび上がる。

 カルデアのアステリオスではないミノタウロスにはこんな経験は無い。だが、それでも最も心に効果的な記憶を映し出すその宝具は自分ではないミノタウロス(アステリオス)が得た最も幸福な一時を選んだ。

 

「ハハハ、ナンダソレ、ナンダソレ……オレハイチドデモソンナメデ……」

 

 嫉妬する気も怒りも湧いてこない。ただ、自分にもあんな時間を得る事が出来る可能性があったのかと知る事が出来たミノタウロスは微笑みながら、涙を流していた。

 

「イッパイ、イッパイダ……ハラ、イッパイダ……モウ、クエナイヤ……」

 

 お腹も心も満腹になったミノタウロスはそう呟いて満足気に消えていった。

 

 

「とても良いシーンなのだがな。全裸のトナカイと足元にいる獣っ娘アヘ顔サーヴァントのせいで台無しになっている件について申し開きはあるかマスター」

 

「おっとイケネ」

 

 オルタのツッコミを受け、主を失った事で崩れ始める迷宮の中でマスターはいそいそとジャージを穿いていた。ビクンビクンしているアタランテ・オルタは未だ目覚める気配が無いので彼が担ぐ。触れただけで達してアソコから潮を吹いている彼女の姿が哀愁を誘う。

 

「チョロい……やはりオルタ勢は皆、チョロい……」

 

「何故こちらを見ながら言うのか、体に聞いてやろうかこの聖剣で」

 

「むむ?黒いアタランテさんとトナカイさんはここで何を……。成程、肉体言語で平和的に和解したんですね!!さすがトナカイさんです!!ラブ&ピースですね!!」

 

「まぁ、間違ってないかな。肉体言語だし、ラブ&(アヘ顔ダブル)ピースだし……」

 

 ジャンヌ・リリィのキラキラとした瞳にもいけしゃあしゃあと答えるこの人類悪っぷり。少しは綺麗に子供にも見せられる形でミノタウロスを退けた二代目サンタの手腕を見習って欲しい。

 ただ、このマスターに染まってしまったジャンヌ・リリィが真実を知っても「黒いアタランテさんの心の隙に希棒を打ち込んであげたんですね!!ロンパです!!」と諸手をあげて喜びそうだが。

 やっぱジャンヌ3姉妹でまともなのは邪ンヌしかいませんね。オルタは常識枠!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へっくち」

 

「性格の割には可愛いくしゃみをするのう、おぬし」

 

「うっさいわね」

 

「随分と大きい獣です。首を落とすのには骨が折れそうですね……」

 

 アナスタシアとの戦いを見守っていたカルデアのメンバーは雷帝の前に集結していた。ヤガ達は雷帝のあまりの強大さの前に膝を屈していた。彼等はもうこれ以上、戦えないだろう。ヤガの本能として染みついてしまっている。絶対強者には逆らえない強食の本能が。

 それでも、ここまでオプリチニキ達に対し、戦い、ヤガモスクワまでやって来た彼等を責める者はいなかった。彼等はもう十分に自分達の為に戦ったのだから。

 

 縋るようなヤガ達の視線に邪ンヌは口元を歪ませて吐き捨てるように答えた。

 

「あんた達……なぁ?あんた達はあんな怪物を前にして、何も怖くないのか?」

 

「べっつにぃ?……ティアマトの方が大きかったわねぐらいしか思いませんけど」

 

「あの駄女神が生み出したクガランナの方がインパクトはあったの!」

 

「あんなマンモスよりも先輩の象さんの方が魅力的ですから」

 

「とんだドスケベマシュマロVRビーストじゃのぉ」

 

「デミサーヴァントッ……ではありませんでしたね、もう私は」

 

 震える声で問い掛けるヤガ達には彼女達の返答は焦りの色すらも無かった。まるでこの状況が日常茶飯事のようではないか。ぶっちゃけると目の前のマンモスより隣で金色のリンゴをムシャムシャしている八頭身の赤いマッチョの方が気になるのではと一言申したい所だが。

 

 

「カルデア……ビースト、人類悪……!!許さぬぞ……!余の国は滅ぼさせぬ、滅ぼさせぬぞ!!……我が妻と同じ名を持つサーヴァントよ……!!そこを退けぇぇっ!!邪魔をすれば、汝ら諸共、消し飛ばしてくれるわぁっ!!」

 

「あらあら今までグースカしていた寝坊助さんが偉そうな事を言っているわね。いいわ、二度あることは三度ある。ここはおっきーにもうひと頑張りしてもらおうかしら」

 

 巨大な鼻先に魔力を集中させ、雷撃を放とうとしている雷帝。オプリチニキ達の報告から聞いた自身の国を滅ぼそうとしている人類悪を消し飛ばそうと皇帝の怒りを振り下ろそうとする。

 

 そんな状況でも余裕たっぷりに微笑んでいるアナスタシアはスキル『シュヴィブジックA』を発動させる。不可能を可能にする悪戯。今度は一体何をこのロシアに射出するというのか……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っていうかさー。マーちゃんだけでも戦力過多もいい所なのに、それに加えてエリエリに、アナちんに、武蔵ちゃんに他にも沢山でしょう?どう考えても私要らないよね?だから、姫がここでお休みしても何も悪くない!!むしろコストパフォーマンス的にはサボるのは間違ってないもんねー」

 

 炬燵ドリフトで口から虹色の何かをリバースし、乙女として大切なナニかを失ってしまった刑部姫はアナスタシアがもう一人の自分と戦っている隙を突いて、マイホームたるチェイテピラミッド姫路城に戻っていた。

 

「大丈夫だよね?もうさすがに大丈夫だよね?三度目の正直って言葉もあるし?」

 

 入念に自身の炬燵が細工されていないかチェックする刑部姫。彼女にとってはもう炬燵ドッキリレーシングゲームは勘弁して欲しい所だった。

 彼女の不安も杞憂だろう。何故ならもう、()()が射出される事はないのだから――。

 

「だいじょうぶ、そうかなぁ――?あぁ――あ、もうつっかれたぁぁ……!やっぱり労働は悪だよ――。スパロボでもやろっかな――…………ぁぁ?」

 

 

 ――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッッ!!

 

「何ッ!なになになになになになになに!!!何事!!地震!?ちょっと待ってこの城、耐震設計にはちょっと不安があるんだけど!!特に上の部分が!!」

 

 突如として、部屋ではなく城全体を襲う尋常じゃない揺れ。地震かと思ったが、それはおかしい。どうしてシミュレーションルームの中で設計されていない自然現象が起きる?

 

 嫌な予感がして、そっと窓から外の様子を見た姫の視界には――。

 

「うっそ――――ん…………」

 

 流れるように変わる濁った空、見下ろせば、そこはロシアの大地。アナスタシアのスキルによって今度は炬燵ではなく、チェイテピラミッド姫路城()()()()がロシアの世界に射出されていた。着地点は丁度巨大マンモスの目の前。

 

「ぎやあああああああああ!!城が飛ぶわけないでしょぉぉぉぉぉ!!!しぬしぬしぬぅぅぅぅっ!!マーちゃあああああああんん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「消え失せろ……。異邦の者共よ。粛正の時は来た……!!」

 

「駄目だ……あんなの逃げ切れるワケがねぇ……!!死ぬ……皆、死んじまうんだ!!」

 

 イヴァン雷帝から放たれる神の如き暴虐の前に、ヤガ達の絶望の声が聞こえる。村一つなど軽く消し飛ばす彼の攻撃を防ぐ物は何も――。

 

 ――ドオオオオオオオオォォォォンンッッ!!

 

「何事っ!?」

 

 あった。そう。雪崩のような衝撃と共に空から巨大な城が降ってきたのだ。雷帝の一撃を全て防ぎ切る。強固な引き籠りの城が。

 叛逆軍に組しているビリーの驚きの声と共に登場したその城は雷撃を直撃しても全くの無傷だった。さすがは防御性に関してはかつてのマシュの宝具ともタメを張れる違法建築物。

 

「何と奇怪な……。余の一撃をものともせぬとは……!」

 

 ドッキリ突撃お姫のお城ガード。中で絶賛パニくっている城の主以外は誰一人犠牲を出す事なくイヴァン雷帝の攻撃から皆を守り切った。チェイテピラミッド姫路城……多分、カドックとかゴルドルフ司令官辺りが耳にすれば、二度聞きする事は間違いない。現に二人の顎は驚きのあまり外れそうになっている。

 

「ただいまーっと。うわ何このカオス」

 

 空から降って来た城にここにいるほとんどの者がポカーンとしている中、しれっと迷宮からアタランテ・オルタを担いだマスターがトリプルサンタと共に戻って来てた。

 

「姐さん、無事だったのか!!」

 

「無事ではない……無事ではないがな。サンタの情けだ。服は着させてやった」

 

 地面に降ろされ、幸せそうな顔(?)で気絶しているアタランテ・オルタに叛逆軍の者達が駆け寄る。鎧はブレイクされていたので、サンタ・オルタがトナカイの着ぐるみを着させてあげてたようだ。

 

「ってか何あれ、うわデカ」

 

「その感想で終わる辺り、カルデアの連中がいい具合にイカれているのはよくわかった」

 

 イヴァン雷帝に対するリアクションがあっさり過ぎるデアーにベオウルフが呆れたようにため息を吐く。まぁ、かくいう自分達も空からあんな狂った城が降ってきたインパクトのせいで、雷帝の印象が若干薄れかけている感も否めないが。

 

 

「なるほど、つまりは最終決戦か」

 

「えぇ。理解が早くて助かるわダーリン」

 

 巨大マンモス。立ち塞がっているのはチェイテピラミッド姫路城。頭がどうにかなりそうなこの状況で彼には最終決戦へのビジョンが見えていた。

 

 ヤガ達もカドックもゴルドルフ司令官もまるでワケがわからなかった。こんな頭のおかしい状況で何故コイツはこんなイイ顔が出来るのだろうと。

 

 間違いなくロクでも無い考えを思い浮かべているマスターの腕を取り、アナスタシアは共にその城の中へ入ろうとする。ちなみにビィ君はマスターの姿を確認した瞬間にお空に帰りました。

 

「先輩……?一体何を……?」

 

「決まっているさ、マシュ。古今東西、巨大怪獣に立ち向かうのといったらね」

 

 城の門が閉まる瞬間、マシュの唇に軽い口づけをして彼は微笑む。

 

「時間稼ぎは任せたよ」

 

「はい!!任せてください!!!例え、対界宝具が何百発来ようとも!!いくらでも耐えてみせまっしゅっ!!」

 

「チョロいわねぇ……マシュったら、子犬にちょっとキスされたぐらいであの喜び様」

 

「アンタも似たようなもんでしょ。いつか刺されるわよアイツ」

 

 マシュが顔を真っ赤にして盾をブンブン振り回す様子を生温かい瞳で見守るエリちゃんと邪ンヌに対して、サンタ・オルタは「お前達もチョロさでは大して変わらんぞ」というツッコミはグッと飲み込んだ。初代サンタは空気の読める娘。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっとアナちん!!どういうつもり!?炬燵の次は城ごとドッキリスライダー!?しかもいきなり巨大マンモスに雷を自宅にぶち込まれた恐怖がわかる!?」

 

 城に入り、早速姫がいる自室へと乗り込んだマスターとアナスタシア。

 

「城主の部屋ならコックピット代わりに十分ね。ごめんねおっきー、後で文句は好きなだけ聞くわ。けど、今は私のお願いを聞いて欲しいの」

 

 刑部姫の怒りを華麗にスルーして、姫の自室を入念に物色するアナスタシアは納得したかのようにウンウンと頷き、姫の方へと体を向ける。

 

 それは今まではっちゃけてきた彼女らしからぬシリアスな表情。思わず刑部姫も姿勢を整えた。普段はジャージ姿でだらけにだらけて、マスターとのハメ撮りインスタライフという爛れた生活を送っている女だったが、腐っても王族。きっとこれがロシア皇女の威厳というやつなのだろう。

 

「お願いって……?」

 

 

「今ここでダーリンとセックスするわよ」

 

 

「……………………………………ふぁい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オルテナウス疑似性交開始……。『自家発電(VR)』による疑似魔力供給完了。あぁ、あぁ、あぁっ!!先輩、先輩、先輩ッッ!!真名、結合展開。これはあらゆるプレイ、ただ一つの愛を受けた貞操の城。呼応せよ!!『先輩に捧げた処女膜(ヴァージン・キャメロット)!!』

 

「我がロシアに異国の城を建てるか!!この不敬者共がぁぁっ!!朽ち果てろぉぉっ!!」

 

 連続で放たれるイヴァン雷帝の雷撃を前に、マシュの白精の城が完璧な防御を見せる。

 

 マスターとの性交によってサーヴァント達が受肉したように彼女もまたギャラハッドが肉体から退去した事による不足分の霊基を彼からの愛で補っていた。マシュが身を纏っている外部補助装甲『霊基外骨格(オルテナウス)』。VR越しに映る先輩との今までのメモリーでその装備はさらに強化される。

 

 その堅固性はかつての白亜の城をも凌ぐ。彼女の先輩への愛が揺るがない限り、その守りは決して崩れる事はない。

 

「崩れぬ!!崩れぬ!!何故、崩れぬ!!これだけ、打ち込んでも、何故ものともせぬ!?」

 

「はぁ、はぁ、はぁ……駄目、大丈夫、大丈夫ですよ先輩……私も初めてですから……もっと二人で肌を重ね合いましょう…………あっ、あぁぁ……」

 

 そして宝具の使用者は消費する魔力をVR越しの疑似性交で回復する。懸念されていた持久性もこれで解決。半永続的に続く無敵の守り。それこそマシュが得た新たな宝具。

 

「私の貞操を貫いていいのは――先輩の象さんだけなんです!!」

 

 ハァハァ、とVRゴーグルを装着したまま息を荒げ、恍惚そうに頬を染めながら、何度でも雷撃を防ぎ切るマシュの姿の何と凛々しい事か。

 

「貞操の概念が崩れる……これにはギャラハッド君も逃亡」

 

「止めてくださいアルテラさん!!心が傷ついている先輩サンタもいるんですよ!!」

 

 円卓の王は泣いていい。

 

 

「ふむ、彼女が頑張っているのなら、あまり時間もかけてはいられないな……」

 

「いや、一日ぐらいならぶっ通しで頑張れそうだけど……。アヴィケブロン……貴方、何をするつもり?」

 

 神話の時代の再現のような攻防劇を尻目に青いボディースーツとマントに身を包む仮面のサーヴァント。アヴィケブロンが姿を見せていた。

 チェイテピラミッド姫路城に手を添えているアヴィケブロンに武蔵が訪ねる。今の彼は何かを決意している雰囲気だった。

 

「勿論。この戦いの終焉だよ。僕がここに召喚された理由はそれだからね」

 

 アヴィケブロンを中心に尋常じゃない魔力が高まる。サーヴァントなら誰もが宝具発動の予兆だと気付くだろう。

 牛若丸が鞘に手をかけながら、剣呑な様子で尋ねる。

 

「仮面の魔術師殿……。主殿が入っていった城に一体何をするつもりだ……?」

 

『おっと――!心配無用だよ狂犬君!!これは彼とアヴィケブロン君が前から計画していた事だからね!』

 

 それを遮るようにダ・ヴィンチちゃんのハイテンションな通信が入る。

 

「あぁ、この城を下地にして僕の宝具を起動させる。山岳型魔獣と合体したイヴァン雷帝を打破する為の切り札を」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――アヴィケブロン先生の王冠:叡智の光(ゴーレム・ケテルマルクト)ね……。うん、素材は多分、こっちで用意出来ると思う。

 

 ――刑部姫のあらゆる国のサラダボウルともいえるチェイテピラミッド姫路城。そして、アナスタシアの残光、忌まわしき血の城塞(スーメルキ・クレムリ)。宝具の材料としては申し分無い。後は……。

 

 ――却下。

 

 ――…………まだ、何も言っていないが。

 

 ――どうせ、「僕自身が炉心になることだ――」とか言い出すつもりでしょ?

 

 ――しかし、それが最適解だろう。

 

 ――アヴィ先生。貴方は人々を幸せにする為に『原初の人間(アダム)』を生み出そうとしたんだろう。そして、宝具はその願いを叶える為の至高のゴーレム。なら、それの核となる物が誰かの犠牲前提になってるなんて悲しいじゃないか。

 

 ――……代替案は無い。我が宝具がひたすたに魔力を喰らい続けるなら魔術回路を持った魔術師を捧げるしか無い。

 

 ――要は貴方の宝具が動き続けられるだけのエネルギーを中で生み出せばいいんでしょ?なら、とっておきの案がある。

 

 ――マスター、君は何を…………。

 

 ――…………………。

 

 ――あぁ、そうか。確かにアダムがいるのなら、イヴもいるべきか――。

 

 ――アヴィ先生、確かに始まりは迷える民を救いたい、人々を導きたいという救済だった……。けど貴方の根底にあったのはきっと、()えだったんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「例え、その先が地獄だったとしても僕は美少女ゴーレム製造師の道を進み続ける」

 

 アヴィケブロンの宝具の解放によって只でさえ、見た目が奇抜の極みだった城が音を立て、城壁を隆起させながら姿を変えていく。

 

「おぉ!?おぉぉ!?な、なんじゃ!?おさかべのバグ路城が変形し始めたぞ!!」

 

「私、見た事ありますこれ!!ニチアサとかで!!」

 

 ノッブとジャンヌ・リリィの驚嘆を尻目にヤガ達は只事ではないと、イヴァン雷帝ではなく、そちらに視線を送る。

 チェイテピラミッド姫路城から、そのバランスの悪い部分を補うようにアナスタシアの宝具、『残光、忌まわしき血の城塞(スーメルキ・クレムリ)』により、純白の城塞がいくつも生えてくる。

 

(はは)に産まれ、(ちせい)を呑み、(いのち)を充たす」

 

 それはまだ前兆。もはや建造物ですら無くなったその城はさらなる変貌を遂げる。生物のように蠢き、手足を模る。流れるようなアヴィケブロンの呪文が不思議なぐらいそこにいた全ての者達の耳に届いた。

 

「霊峰の如き巨根は、巌の如く堅牢で。万女を誑かし、万女を堕とし、万女を支配する貌を持つ」

 

 内向的ツイッター系女子刑部姫の『チェイテピラミッド姫路城』と外向的インスタ系女子アナスタシアの『残光、忌まわしき血の城塞(スーメルキ・クレムリ)』はアヴィケブロンの宝具にはこれ以上ないぐらいの素材だった。

 

「汝は獣にして獣にあらず。汝は人間にして人間にあらず。汝は楽園に佇む者、楽園を統治する者、楽園に導く者」

 

 巨大な城がその堅甲な城壁で手を、足を、目を、口を、髪を、スカートを、模していく。

 二足でしっかりと立ち。体を徐々に起こすその姿はイヴァン雷帝と何ら遜色無い大きさを持った巨人だった。

 

「汝は我らが夢、我らが希望、我らが”親愛”……。イヴ達を抱く汝の名は――――『原初の人間(アダム)』なり」

 

 大きく開いた愛嬌のある瞳。白石が造り上げた腰まで伸びた髪とスカートのような物は目の前の巨人の性別が雌だとわからせる。ドレスのような外装に身を包んでいる巨体は元が城だった事を忘れさせてくれる。

 

 

 それは紛うことなき、()()()()()()()()()だった。

 

 

 

「そう……。僕は彼等のセックスエネルギーを炉心とした」

 

「このゴーレムマスター、イイ声でトチ狂った事言い出したわよ」

 

 

 魅せるは天下一のゴーレム術、材料は極東と極寒の姫達の城と城塞、力の源となるのは巨人の中で交わる獣の性交。

 全てのピースが何一つ欠ける事なく嵌った奇跡の作品。そのゴーレム……宝具の名は『ダーリン・イン・ザ・セックス』。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




『通い妻オーバーラン』
ランク:EX
種別:契約宝具
使用者:ビースト0/デアー
押しかけ女房とか素敵やん?
英霊編における『性神と妻達の部屋(アダム&イブズ)』はサーヴァントという形で召喚された彼の霊基の限界により、数人しか呼び出せないが。人類悪化した彼は自身の妻を瞬時に人数制限無く呼び出す事が出来る。生涯を寄り添うと誓った伴侶達をいつでもどこでも召喚する人類悪デアーの第四宝具。
その1:呼び出す事が出来るのは彼との性交によって受肉したサーヴァントに限る。
その2:彼の助けに応じる妻の合意が必要。一方的は駄目。
その3:自身の傍という縛りはなく、彼が明確に場所の指定をする事が出来れば、遠隔多数召喚も可能。




安穏に浸れ、最高の思い出に( ル・メイユール・スーヴニール)
ランク:A
種別:対心宝具
使用者:ジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィ
若干ボテ腹になりつつある親友(アリス)が羨ましくなっているお年頃のリリィの新宝具。その者の心に最も響くメモリーを脳裏に投射するプレゼント兵器。本編の通り、あくまで対象が幸せに感じてしまう場面を想起するので、本人が必ず経験した過去を想起しているとは限らない。特に何一つ幸せな思い出が無かった者にはクリティカルな浄化宝具ともなる。「シェイクスピアさんの意地悪宝具と一緒にしないで下さい!!」
以下、面白半分で宝具を受けた者達の記録の一部抜粋。
【監獄塔のような場所で6日にわたる焦らしプレイを受け、マスターと最終日は「しゅき、しゅき、あなたの事がだいしゅきなのぉぉ……もっとぎゅってしてぇ……」と普段は絶対言わないような甘いボイスで全裸でズンズンパコパコしている黒聖女】
【同じ大学のゼミ仲間で、二日に一度はランチを一緒して、週に一度は観光(レジャー)に出掛け、月の半分以上は同衾している程度の友達が婚約の決まった自身を助ける為に実家と婚約相手の家の追手を振り切り、駆け落ちをする。お金も無く、頼るべき相手も互いに目の前しかいなかったけど、それでも私達は幸せだったわ。彼の瞳には私が映っていて、私の瞳には彼が映っていた。まるで映画のようだったわ。そしてヘトヘトになってたどり着いた誰も来ないであろう島で二人きりになった私達は永遠の愛を】






先輩に捧げた処女膜(ヴァージン・キャメロット)
ランク:A+
種別:対人宝具
使用者:マシュ・キリエライト(VR)
マシュ・キリエライトは思い返す。あの日、冬木のレイシフトから帰って来て、真っ暗な部屋のマイルームの隅で座り込んでいる先輩の瞳を。所長を失って全てをごちゃ混ぜにした底の見えない泥のように濁った瞳を。もしかしたら、あれがきっかけだったのかもしれない。先輩が人類悪に到る一つ目のきっかけ。マシュ・キリエライトはただただ目の前の男を抱き締めていた。気づけば二人は生まれたままの姿で慰め合っていた。お互いの初めてを捧げた。その日からかもしれない。彼の箍が外れたのは。彼が性的な温もりを求めたのは。情を交わし合った人達と離れ離れになる事を恐れたのは……。だがマシュ・キリエライトは先輩に捧げた純潔を後悔する事は無い。あの時の思い出はたとえ死んでも失われる事のない聖域。その処女膜は彼以外に何人たりとも壊される事の無い究極の守り。新たに建ったキャメロットはそんな彼女の精神を具現化した宝具。
って書けば、円卓の方達も納得してくれませんかね。






『ダーリン・イン・ザ・セックス』
ランク:EX
種別:対軍宝具
使用者:ビースト0/デアー、アナスタシア、刑部姫、アヴィケブロン
素材に防御性に秀でた『チェイテピラミッド姫路城』と攻撃性に秀でた『残光、忌まわしき血の城塞(スーメルキ・クレムリ)』。炉心はかの人類悪のsex energy。製作者はゴーレムマスターアヴィケブロン先生。
長い髪、パッチリと開いた瞳、膝まで丈のあるスカートに膨らんだ胸部という外見を持つ女型ロボット……ではなくゴーレム。攻撃、防御、共に最上級とも言えるが、それ以上に特筆すべきはその回復力とも言える。
コックピットでマスターと彼女達が性交し続ける事で稼働する宝具。そも人の始まりはセックスとも言えるのならばパートナー同士が互いに愛し合うエロス以上のエネルギーは無いだろう。
「今日から貴方が私のダーリンよ」









英霊:グダお

第一宝具:『百式官能』
第二宝具:『模倣(まねっこ)宝具』
第三宝具:『人繋ぎの大秘宝庫(マテリアルボックス)
第四宝具:『性神と妻達の部屋(アダム&イブズ)
第五宝具:『這い寄る絶望(リョグダコ・ポテプ)
第六宝具:『この世全ての精(ファビアナ・スペルマ)
第七宝具:『Call Dear(親愛なる 貴方へ)




人類悪:デアー

第一宝具:『白式官能』
第二宝具:『模倣英霊』
第三宝具:――
第四宝具:『通い妻オーバーラン』
第五宝具:――
第六宝具:――
第七宝具:――





次回 第2部 1章 完結。



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白色ビーストドロップ(第2部 1章 完結)

毎度、感想、評価、お気に入り、誤字報告ありがとうございます。

実はアガルタ編とか剣豪編とかもざっくりプロットだけは思い付いてるんですけどね、絶望的に時間が足りない。本編も英霊編もアポ編も更新せなあかんし。毎日更新してる人ってマジで化け物だと思います。これでも頑張って更新してる方なんだけどね、つーかこれが限界(ノブナガ風)。












「あっっ!!あぁぁ……!!きた、キたぁっ!!ダーリンの入ってきたぁぁっ……!!」

 

「んひぁぁっ!!姫、まだぁ、状況も何もつかめてないんだけどぉぉ……!!せ、せめて説明をぉぉんぅぅぅっ!!」

 

 

 いつの間にか、刑部姫のマイルームは魔術らしい神秘さと科学らしいメカニックさを足して2で割ったような機械然としたものと変わっていた。周りのモニターにはよくわからない数字の羅列、アナスタシアと刑部姫の興奮具合によって変化しているようなグラフ。

 

 真正面のモニターには。女型ゴーレムの瞳に入っている景色がそのまま映し出されていた。対峙するのは突然の事態に固まっているイヴァン雷帝。

 

 そして、その部屋の中心で四つん這いになって、刑部姫を下に重なって並んでいる二人の女。彼女達の濡れそぼった女陰を肉棒と『白式官能』で再現した張形で同時に突き続ける人類悪デアー。

 

 そう、おわかりの通り、ここがコックピットだ。

 

「余と同じ目線で立つか……。なんだ……なんだ……!その巨人は……!その身から溢れる終わりの見えぬエネルギーは……!!」

 

『これが貴方の夢の終わりを『あっ、ぁぁっ……!!ダーリンのすごっ……!!きもちイイわぁぁっ……!!』……異聞帯の終わりを告げ『ひぅっ……!!や、あんぅっ、マーちゃんのがぁぁっ……流れ込んでぇぇ……』…………ちょっとごめん。彼女達のマイクだけ切るね』

 

「貴様ぁあああああああ!!戦場でナニをしてるうううッッ!!!」

 

 スピーカーから漏れる艶声からナニをしているか察したイヴァン雷帝は激怒した。皇帝(ツァーリ)は賢い子。

 今までマシュの貞操盾を攻撃し続けていた雷撃に更なる力を込める。目の前の不埒者を仕留める為の完全一撃を。

 

 先程、漏れ出てしまっていた喘ぎ声を無かった事にしてシリアスボイスでデアーはこの異聞帯の王に語り掛ける。

 

『イヴァン雷帝……。力を持ち過ぎて、度を過ぎてしまった個っていうのはいつか絶対どこかで普通に生きる人達にとって不要になってしまうんだよ』

 

「黙れ、黙れ、黙れ、黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ!!余は……余の国は……ロシアは終わらん!!剪定され、何もかも無かったなど、誰が認められる!?……余は、この国を導くのだ!!」

 

『貴方は確かに一度、この国を救ったんだろうさ。けど、退き際を見誤った。自分の力が暴虐しか生まないとわかった瞬間にこの国から去るべきだったんだよ』

 

「余がいなくなれば、誰がこの国を守る!?貴様のような侵略者に、人類悪に……!!滅ぼされるのを黙って見てろと言うのか!?否!!断じて否!!余は皇帝(ツァーリ)ゆえに!!」

 

『なら――守ってみせろよ。寝坊助さん』

 

 デアーの挑発に乗るように、天高く掲げた鼻先に魔力が集い、嵐が吹き荒れ、神霊クラスの雷撃を放つ準備が整う。

 

「我が国は終わらぬ、我が行軍は永劫に続く。踏み砕かれろ……人ならざる獣よ――!!」

 

 刹那、音さえ消えたような気がした。ヤガ達が思わず拝んでしまう。雷の天罰が女型ゴーレムに降り注いだ。余力を許さないイヴァン雷帝、渾身の一撃は目も開けられない程の衝撃を伴って、巨人に襲いかかる。

 

 その破壊の余波はマシュの宝具が防ぎ切る。だが、白光の中にいるゴーレムの様子は窺えない。ロシア全体に轟く雷の音。普通に考えれば、終わったと思うだろう。ゴーレムもその中にいるマスター達も。()()()()()()()()()であれば。

 

 

「聖なるかな!聖なるかな!人類を滅ぼす獣など、余は断じて許さぬ!!あぁ!見て下さったかよ師よ!!余の光を!!天から賜れたこの怒りをぉ!!おぉ――おぉぉぉぉっ!!余は愛すべきロシアを守り――――」

 

 

 光が、破壊の余韻が晴れる。雷帝の瞳に映った景色が山肌を震わせた。

 

 

「…………馬鹿――な――――」

 

 

 イヴァン雷帝が出し得る最高の一撃を直撃したゴーレムは腰を屈め、左拳を思いっ切り引き、構えた状態というおおよそ女らしからぬ勇ましい状態で健在だった。

 体勢からわかるように、それは防御の姿勢ではなく攻撃の姿勢。マスターは、そのゴーレムはイヴァン雷帝の一撃に一切の防御体勢を取らなかった。

 

「冗談だろ……あんな世界さえも滅ぼしちまいそうな攻撃を受けて、無傷だと……?」

 

「無傷ではない」

 

 今日一日で来世分までの驚きをしているヤガ達の漏れた声にアヴィケブロンが答えた。

 

「なるほど、怒りで倍増されたとはいえ、確かにイヴァン雷帝の一撃は強烈だった。彼の攻撃は間違いなく僕の最高傑作にダメージを与えた。だが――」

 

 グッと人差し指と中指の間に親指を挟めて、ゴーレムマスターは力説する。

 

「彼の破壊速度よりも、こちらの回復速度が優った。それだけの話。何せ、女性サーヴァントを受肉させ、強化し、新たな宝具を生み出すきっかけにもなる精液を持つ男のセックスだ。エネルギーとしてこれ以上に上等な物はない」

 

「冷静に考えるとあれじゃのう。シリアス風味で戦っているように見えて、マスターはあの中で腰を振ってるんじゃろ?ちょっちぃ、雷帝が可哀想なレベルなんじゃが」

 

「とんだ不健全ロボね」

 

 ノッブと邪ンヌのツッコミは至極真っ当なものだった。

「ファンネル!!余のファンネルはいらぬかマスター!?」「せんぱーい!!無手は寂しいと思うので頼り甲斐のある盾とか欲しくないですか――!」「盾では首を落とせません!主殿――!!何でも言う事を聞く刀はいりませぬか――!!」って羨ましさを持て余して、叫びながらゴーレムに突っ込もうとしている一部の女性陣がおかしいだけで。

 

「成程。イヴ役が増えれば、またゴーレムの外見は変わる……。むしろ人数が多くなる方が炉心たるsex enegyが増すのでは……」

 

「止めなさい」

 

 武蔵が頬を赤らめながら、よからぬ事を考えるアヴィケブロンの肩に手を置いて、なんとも言えぬ顔で首を横に振っていた。恋愛雑魚侍にはまだちょっと過激な話だったのかもしれない。これ以上の魔改造は勘弁して欲しい。

 

 

 

 

 

 

 

『一発は、一発だ』

 

 左拳に力を込め、右手は開かれ、照準を決めるように雷帝の方へとかざされていた。宝具『ダーリン・イン・ザ・セックス』は中で行われる性交の興奮と快感が増幅すればする程、力を増す。

 

「んぅぁあぁあっっ……ナカ、えぐれてぇぇ……奥何度もノックしちゃああぁっ……あんぅぅぅ!!」

「ひゃああぁっ!!あんぅ!あんぅぅ!!マーちゃんの魔力おちんちん、姫のナカであばれてぇぇぇ!!」

 

 端的に言えば、今バックで膣奥を突かれ続けている二人とマスターが絶頂に達し、膣内に思いっ切り射精する瞬間こそが最も爆発的なエネルギーを生み出す。

 

 左肘がロケットの噴射口のように開き、3人のセックスエネルギーによってブースターがかかる。

 熱く熱く、より熱く濃厚に。愛し合う男女のエネルギーは無限大。

 

「あっ、あっ、んんぁぁ゛ぁぁっ……!!い、イクゥ、イ、クゥ……い、くわぁ……!!ダーリン……イッくぅぅっ――!!!」

「姫も、ひめもぉ……イッちゃうぅぅっ!!あぁぁっ!!あんぅ、あん、あんぅっ……!!マーちゃんの白チンポでぇぇっ……イッちゃうぅぅっ……!!!」

 

 

 

 深く結合し、二つの子宮に注ぎ込む射精の解放感。彼女達のエクスタシーは爆発的な破壊力を産む。セックスとは生命の始まりであり、エロとは此れ力。それを炉心としたゴーレムの一撃はたとえ、ただのパンチでも絶対破壊の一手となる。

 

『夢から覚めろ雷帝。(ヤガ)が生きる世界に我ら怪物住まう場所無し、だ』

 

 シリアスな声で何か言ってるけど、こいつ今女二人に思いっ切り射精してるからな。うん、彼女達のマイクを切って正解でしたね。

 

 

 握りしめた左拳はロケットのように加速し、巨躯を持ったイヴァン雷帝の鼻っ面に最初で最後の殴打を叩き込む。

 

 

『ホワイトインパクトオオオオォォォッッ!!!』

 

 ただのパンチ。だがあまりにも美しい軌跡を描いたその拳は巨大な怪物を沈めるに足る物だった。

 

 

「おぉ――神よ――」

 

 

 ただただ目の前の事象が信じられない。今までこの国を必死に守ってきた余がたったの一撃で全てを終わらせられた。しかも笑える事に相手は性交しながらだ。夢から覚めたと思いきやどうやら自分はまだ悪夢の中にいたらしい。

 イヴァン雷帝のその言葉にはそんな想いが込められていたような気がした。

 

 山の如し巨体を紙のようにひしゃげさせた拳は衰える事なく進み続ける。振り切った拳は何もかも置き去りにして、山岳型魔獣と一体化したイヴァン雷帝の巨躯を粉々にした。

 

 頭上にある王冠が外れ、本体であるイヴァン雷帝が大地へと失落する。暴虐の化身、その姿だけで全てのヤガ達の心を折った皇帝(ツァーリー)はより理不尽な存在に打ち滅ぼされた。王冠が破壊された王は消えゆくのみ。

 ヤガ達はそんな神話の再現のような光景を見開き、時には涙を流して見守っていた。

 

「なんて、神々しい……」

「あれが天使というやつなのか……?」

「いや、救いの神。女神だ……」

 

 堂々と佇む巨大女型ゴーレムは多くのヤガ達から畏敬の視線を浴びていた。

 

 

 まぁ、中ではまだヤッてるんですけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あぁ、ホームズ君。何かイイ薬もっていないかね?持ち合わせの胃薬が底をついてね』

 

『胃薬ではなく、吸うだけで気分が楽になる薬ならたくさん』

 

『ほぉ……そりゃあ――……いいなぁ……』

 

『はぁい、ホームズ。ヤク中仲間を増やそうとするのは止めよーね』

 

 

 カドックは戦意喪失。アナスタシアは一度目を覚ますが、巨大ロボットから自分の喘ぎ声が流れたタイミングで再び気絶。雷帝は完全に無力化。

 この異聞帯におけるおおよそ敵と呼べる物の打破は達成出来たのだろう。

 

「何かじっとしたまま動かないわね……あのゴーレムはいつになったら解除されるの?」

 

 イヴァン雷帝をぶっ飛ばした後、身動きをしない巨大ゴーレムを見て、武蔵がその制作者に尋ねた。

 

「それは彼等のセックスエネルギーを炉心にしているのだから、当然、彼等が性交を止めない限りはあのままさ」

 

「はい?」

 

 武蔵の疑問に答えたアヴィケブロンの返答に女性陣の半数が嫌な予感に汗を垂らす。

 

「えぇ……それっていつになったら終わるんかって話になるんじゃが……」

 

「シミュレーションルームと同じ感覚でヤリ続けてたら、日は暮れそうね」

 

「むむむぅっ……。派手な巨人の中で行われる退廃的で淫蕩な宴……余も混ざりたいのだが――」

 

「二人程度だと先輩も中々、満足まで時間がかかると思います。ここは一番絆値が高い後輩に参加を……」

 

 もし彼等が時間の概念が狂っているシミュレーションルームと同じ様に性交にまだまだ耽っていたら、このゴーレムはいつまで経ってもこのまま。恐らくアナスタシアと刑部姫の二人の体力が尽きる結末で宝具が解けるだろうが……それは一体いつになるのだという話になる。

 

 どちらにせよ素材に刑部姫の城を使っているだけあって、一度閉めたらその拒絶感は尋常じゃない。さすがは引き籠りの姫。下の門はマスターに無血開城のくせにここはガッチガチのようだ。

 

 巨大ゴーレムと化した『ダーリン・イン・ザ・セックス』に入り口らしい入り口は見つからない。辺りをウロつく女性陣は力技で事に及ぼうとしてもそこは雷帝の一撃でもピンピンしていた回復力。徒労に終わるだろうと思われる所だったが――。

 

「ま、おっきーも割りとむっつりな所あるから。この状況を役得だと思って楽しんでるじゃないの?」

 

 

「ほ――おぉ――?」

 

 

 エリちゃんの何気ない一言が大剣豪武蔵の琴線に触れた。

 目元をひくつかせて、その手は既に鞘に添えられている。

 

 

 彼が色んな娘と関係を持っているのは知っている。一人だけじゃ、抑えきれない程の性豪の者だという事も身を以って痛感している。

 しかし、あの怠け癖の引き籠り姫と密閉された城で人目憚らず耽美な伽物語……?

 なんて羨ま……じゃなく、気に食わない。特に武蔵にとっては刑部姫の出不精スタイルにマスターを引き込もうとしているのは前々から一言申したい気分だったのだ。

 

「いいわ……。あんたが出てこないというなら好きにしなさい。ただしその頃にはあんたの城は真っ二つになっているだろうけどね」

 

 両脇に差してある。二刀の鞘にさらなる力が籠められる。

 腕を交差させ、今にも周りに斬りかかりそうな武蔵の背後には不動明王像の幻覚が思わず見えてしまう程に。

 

「武蔵さん……?」

 

 マシュの声に反応しない武蔵から途方も無い剣気が溢れ出してくる。

 

 色恋などの雑念は剣の道には不要と斬り捨てた未熟者はここにはいない。

 禁欲の果てにたどり着く境地など高が知れたもの。我が二刀は何の為か、恋と剣の道、その両方を極める為。

 

「一刀三拝、無限を破り零に至り――――その先にて、零の獣の愛に達する」

 

 最強なんて最愛と比べればタカが知れていると吠える乙女の恐ろしさを特とご覧あれ。

 女心は秋の空。女の嫉妬は猛嵐。湧き出る恋心は灼熱地獄。

 

 さぁさぁさぁさぁ、下総国で色んな意味で達した剣豪の一撃を喰らうが良い。

 

 

「『真恋――――……ッッ仏陀斬りぃぃぃぃぃいいいい!!!』」

 

 

 飛びたつように刀を抜く両手からそれぞれ解放される二刀。

 振り払われる斬撃は二刀にも関わらず、一撃だった。

 

 二天一流。あまりにも速く、巧く、狡い武蔵の剣は完全に別個の斬撃を一つと重ねた。

 

「僕のゴーレムが……」

 

「「「斬れたぁぁぁあぁああっ!!?」」」

 

 飛ぶ斬撃。

 一人の剣士の領域を遥かに凌駕しているそれは大きさも距離も関係なくあれだけ無敵の回復力を誇っていた。女型巨大ゴーレムを胴体から真っ二つにしていた。

 

 

 

 いや……それだけには()()()()()()()

 

 

 

 ずっとずっとこの異聞帯の謎として鎮座していた巨大な大樹のような物。

 

『空想樹』と呼ばれていたそれが斬撃の射線上にあったせいか。

 

 それもゴーレムを斬るついでと言わんばかりに()()()()()()()()()()()

 

「うっっそだろ…………?」

 

 今日一番の驚愕の声を上げたカドックの前には信じられない光景があった。

 

 武蔵の唯我独尊な斬撃の元に斬られたそれは真っ二つになるだけで終わらない。

 完全に斬り分けられた瞬間に()()()()()()()()のだから。

 

「斬り捨て――御免」

 

 ”私が斬ったんだから死ね”究極の一、無二を超えた零の剣。そんな武蔵の剣はあらゆる可能性を斬り伏せ、そのただ一つの無慈悲を叩きつける。

 

 恋の道はまだまだ精進中。未だ本人も使いこなせていない新宝具の名は『真恋 仏陀斬り』。

 

 

「空想樹の完全消失……確認です」

 

「うっへぇ――……い、やぁ――……ジャパニーズの侍って本当におっかないね。君の時代はあんなのが跋扈してたのかいノブナガ」

 

「馬鹿言え。あんなバスターゴリラそうそういて堪るか。沖田の方がまだ可愛げあるわい」

 

 雪のような白銀のゴーレムの残骸と共に舞い降りるマスター達の一見幻想的にも見える姿に安堵しながら、ビリーと信長は軽口を挟む。

 

 異聞帯の王は討ち取られ、そこを担当するクリプターとサーヴァントは無力化、楔として打ち込まれた空想樹も伐採された。

 

 こうなってしまった以上、この異聞帯――ロシアの結末は決まっているだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハ、ハハハ、結局……こうなったか」

 

 茫然と空想樹が砕け散っていく様子を見守る。雷帝が死した以上、『非常大権』はアナスタシアに移り、彼女がこのロシアの皇帝になったそうだがこの状況でそれの何の意味がある。そもそもアナスタシアは絶賛気絶中だ、まぁ、自分とそっくりの喘ぎ声が常識外れのロボットから流れてくれば、気を失うのも仕方ないだろう。僕もあの声を聞いた瞬間に……何か悪夢のような物を思い出し――ウッ、頭が……いや、止めておこう……これ以上考えるのは。

 

「最初っから気付いていた……勝ち目が無いって事は。それでも目を逸らし続けないとやっていけなかった」

 

 あの元人類最後のマスター……人類悪と邂逅してから、驚きとツッコミの連続によるストレスのせいで胃がどうにかなりそうな毎日だったが、それでも勝てる策は、手段はあると自分に言い聞かせてここまでやって来た。心の奥底では無理だと諭すもう一人の自分を無視しながら。

 

「その結果がこれだ」

 

 自嘲するように俯く。

 マスターとしての能力以前の問題だった。アイツ自身の力もそのサーヴァント達も雲泥の差があった。僕達の手札と人類悪の手札では。

 それでもアイツは全力で僕達を滅ぼしにこなかった。本気で遊びにかかった。むしろその方がえげつなかった気がするが。

 

「カドック……?」

 

 うっすらと目を開けるアナスタシアの視線に気付きながらもつい、無駄とわかっている独白を続けてしまう。今更、『大令呪(シリウスライト)』を使っても只の焼き直しになるだけだ。

 

「アイツぐらいの力を持ったら、世界を救うなんて容易かったんだろうな……」

 

 

「そんな事はない」

 

「……ッ!」

 

 いつの間にか隣に立っていた男の声に無駄だとわかっていても身構えてしまう。

 黒い長髪をなびかせて、袖が短いカルデアの礼装と思わしき黒いジャケットを身に纏っている人類悪は僕の敵意なんてどこ吹く風だった。

 傍にいたアナスタシアがアイツを見た瞬間に真っ青と真っ赤を混ぜ合わせた不思議な顔色になって再び「うーん」と気絶してしまった。彼女は聡明だから、もう一人の自分とコイツがあのゴーレムの中でナニをしていたのか気付いていたのだろう。

 

 別に自身のサーヴァントと何を致そうが、マスターの勝手だろうが……僕は若干、いやかなりの気に食わない気持ちを込めて、デアーを睨み付けていた。それも只の強がりだと気付いていながら。

 

「僕達を殺しにきたのか?」

 

 

「……結局の所、俺に世界なんてものは良くわからなかったよ」

 

 どうやら、質問に答える気は無いようだ。それよりも僕の先程の独白をしっかりと聞いていたらしい。アイツの口から出た言葉に思わず鼻で笑ってしまう。

 

「嫌味もいい所だな……良く分からなかったけど、救ってしまいました……ってか?」

 

 もしコイツが本当に何の魔術的素養が無い、数合わせのそれこそ本当の補欠マスターだったら僕はもっと激昂していたのかもしれない。殴りかかってしまう程に。

 

「フランス、ローマ、オケアノス、ロンドン、アメリカ、エルサレム、バビロニア。新宿……っとここからはちょっと特殊なケースだから省くとして、まぁ、人理が焼却されてからそれなりの国を見てきた。それでも俺が見てきたのは世界のほんの極わずか、一部でしか無かった」

 

「何が言いたい?」

 

 デアーは先程、空想樹があった場所。今はもう既に何も無い空の場所を見つめていた。

 

「俺には今でもなお世界のイメージが出来てないんだよ。あまりにも壮大過ぎて、さ。そして分からないもの、知らないものは救えない。当然の帰結でしょ?」

 

 こちらに視線を向けないコイツの瞳がどこを向いているのかが分からない。

 だが言葉の意味は理解できる。世界の全てを詳細に把握している者なんていない。もしいるとするならばそれはきっと神……いや、神様にでも無理だろう。

 

「俺が人理焼却に立ち向かったのは自分の大好きな嫁さん達とカルデアの皆と離れ離れになりたくなかっただけ。皆と生きたかっただけ。ざっくり言えば、俺にとっての世界は()()だったんだよ」

 

 ――俺は俺の手が届く世界を守ろう。

 

 クリプター達の会議所に突然と現れたコイツの言葉を思い出す。

 そうか……この人類悪にとっての世界とは縁を結んだサーヴァント達とカルデアの連中だったのか。

 

「個々が抱える世界なんてそれぞれだろうさ。大小関わらずね」

 

 何故、コイツがここでこんな話をしているのかがわからなかった。

 

「なぁ、カドック先輩……いやカドック」

 

 ただ、きっとこれは予感だ。今からコイツは僕にとって致命的なナニかを――。

 

「君は一体()()()()()()()()()()()()()()?」

 

「――――」

 

 自分でも間抜けな顔をしていたかもしれない。コイツの問いに何故か答えを返せなかった。

 

「そ、そんなの決まって――」

 

『もちろんこのロシアだ』という当然の言葉が出てこなかった。

 そうだ。確かに僕は世界を救いたかった。けど、それは――――。

 

「『()()()()()()()()()()()()()()()()()()』……だろ?」

 

 心を読んだように囁かれたコイツの言葉を否定出来なかった。

 あぁ――。その通りだ。

 僕は自身の存在を証明する為に、自らの手で成しえた功績を打ち出す為に、世界を救おうとした。

 もし別の異聞帯が担当でも同じ事をしようとしただろう。

 

「ヤガの人達がさ。どんな時に怒って、どんな時に笑って、どんな時に泣くのか、知らないでしょ」

 

「…………それを知ってなんの意味がある。僕以外のクリプター達はサーヴァントも異聞帯の王も含めて、化け物揃いだ。そんな非効率的な事をしていたらいつまで経っても天才達には追いつけないッ……!!」

 

「そもそも天才相手に効率勝負してどうすんのさ。同じステージで追いかけっこしても追いつけるワケないじゃん。周りが無駄、無意味と笑う『余分』こそに下克上の秘訣があるのにさ。君はちょっと、余裕が足りない」

 

 じゃあ、何か。僕が散々虐げられてきたヤガ達ともっと親しくなっていれば、彼等と近しい距離になっていれば、この結末は変わっていたとでもいうのか?下らない、この異聞帯を生きるヤガ達の情報は全て必要な分は取り揃えている。それ以上の何かを得て、意味があるのか?

 

 そこに僕が失敗し続ける理由が、天才に追いつけない理由があるとでもいうのか?

 

「知らない物は救えない。見えない物は救えない。ただ漠然としている世界という代物全てを救ってやろうという願いはいつかどこかで絶対に破綻する」

 

 何一つ言い返せなかった。コイツ自身は否定するだろうが、コイツは数多の特異点(世界)を救ってきたプロフェッショナルだ。それに関しては僕達クリプターより格段に経験値が高い。僕が世界を救ってみせると息巻いていたのはコイツからすれば、滑稽だったのかもしれない。

 

「……なら、なら僕はどうすれば良かった……?何をしたら良かったんだ……」

 

「まずは自分とその周りを幸せにする事からでしょ。それすらも出来ない奴が世界を救うだなんて臍で茶が沸くぜ先輩(ルーキー)

 

 

 こっちを見て、そう笑う人類悪はムカつくぐらいに幸せそうな顔だった。

 

 

「…………空が崩れているな……もうじきこの異聞帯も終わる…………聞くまでもないが人類悪。お前にとってはぬる過ぎる第一ステージだったか?」

 

「はははははは、まさかここで終わりだと思ってる?まだまだこの俺の悪辣さを理解していないと見える。伊達に人類悪はやってないよ」

 

 

 デアーを中心に魔力の嵐が吹き荒れる。突然の衝撃に僕とアナスタシアは軽く吹き飛ばされた。一体何を――――。

 

 

「『白式官能 唖摩多の手』」

 

 

 コイツらと戦ってから、一生分の驚きを堪能した僕はこれから先もう驚く事は無いだろうなという言葉を撤回する事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ、消えちまう俺たちの世界が……」

「あの魔術師の言ってた通りか」

「けど、仕方ねぇ。俺たちは弱かったんだから」

 

 世界が崩れていく状態でヤガ達は嘆く事もなく、ただ力無くうなだれていた。超展開の連続でもう悲しむ元気も無くなったのか、あるいは強食の世界で染み込まされた精神があれだけの強さを見せられたら仕方ないという諦めを生み出しているのか。

 

 このまま、ヤガ達は異聞帯と共に星屑のように消え去るだろう。

 

 

 だが、零の獣はそんな綺麗な展開を許さない。

 

 

「おい……なんだありゃぁ?」

 

 

 ヤガの一人が呟き、皆が視線をそこに向ける。

 

 人類悪の体、周辺から伸びる数え切れない程の数多の白手が顕れ、このロシアの大地のあらゆる場所へその魔手を伸ばし、突き刺していた。

 

 カドックは思い返す。キリシュタリアの根城を崩壊させたあの白手を。あれだけのエネルギーを異聞帯の存在証明に費やしているのかとエネルギーラインのように白手を増やし続けるデアーの方を信じられない顔で見る。

 

『崩壊が止まった……?いや、これは崩れかけている異聞帯が修復されているのか』

 

『確かに人類悪と開花している君が持つエネルギーなら不可能な話じゃない……けど、それはあくまでそこで永遠にエネルギーを供給し続ければの話だ!空想樹の代わりに君が楔になるつもりかい!』

 

 通信から来るダ・ヴィンチの叫びは最もだ。

 仮に世界を維持し得るだけのエネルギーを与えたとしても既に空想樹は切除され、テクスチャは剥がされる。この地球があるべき姿に戻そうと後ろ盾が何も無くなった異聞帯を排除しようとするだろう。

 

 なら、どうする?

 

「答えは簡単。この世界じゃない所に移せばいい」

 

 それこそ、人類の全てが滅亡し、ただ地球という土台だけがある世界。元からまっさらならページから上書きするなら文句を言われる筋合いは無い。

 

『そんな都合の良い世界が――』

 

 

 

 ――世界の可能性はいくらでもあるわ。それこそ樹木のように、枝葉のように、一つの世界に多くの可能性は存在出来ないけど、私は世界ごと繋げ合わせる事が出来るの、だから私が繋げたのは『カルデア以外の全てが滅んでしまった世界』。

 

 ――随分と都合の良い世界もあったもんだね。いやはや全くもって末恐ろしいよ、君がそこまでの力を持っている事がね

 

 

 

 言葉に詰まったダ・ヴィンチちゃんの脳裏にはシャドウボーダー内でのある少女との会話が浮かんだ。

 

「さぁて、エピローグの時間だ。アビー、後は任せた」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「我は禁断の秘鑰、導くものなり」

 

 マスターの声に応えるようにロシアの吹雪が収まった上空数百メートルで一人の少女がいた。

 少女というにはその姿は余りにも奇抜で禍々しかったが。

 

『降臨者』アビゲイル・ウィリアムズ。彼女は鍵のような杖を振り回し、構え、空へと刺す。

 

「イグナ……イグナ……トゥフルトゥクンガ………我が隣に白の獣あり。零より現れ、その指先で触れ給う。我が父なる神よ、我はその親愛なる獣を結び付ける現身とならん」

 

 大仰な呪文を並べ、鍵が捻られる。

 

「開け。門よ」

 

 空に大きな、大きな穴が空いた。あまりにも大き過ぎて、遠目で見ないと穴だとわからない程の虚穴が。それこそ、ロシアの地全てを飲み込むに足る大きさだった。

 

 

「ふふ、フフフフフフ、いけない。私ったらイケナイ子だわ。他の側室の方々も頑張っていたのに、最後にこんなおいしい所を取ってしまって、笑みが止められないの。えぇ、えぇ……やっぱり大事な役割を任せられるのは正妻の証……」

 

 もし、下の連中に聞かれていたら戦争間違いなしの独り言を吐きながら、アビゲイルは開いた門の端から概念触手を降ろす。

 

 その触手はビーストデアーの白手と淫らにきつく絡み合い、力を込める。

 既にロシア中に突き刺さっている。彼の『白式官能』はアンカー代わりとなるだろう。

 

 存在しないロシアをこの星に縫い付けていた楔はもう無い。

 アビーの触手はマスターの白手を持ち手として、この異聞帯を引き上げる。

 

『う、浮いたぁぁああああっ!!?』

 

 ゴルドルフの叫びが通信越しに響く。

 デアーの宝具からエネルギーを供給され続けられているロシアの大陸は釣り上げられた。

 空から城が降り、城がゴーレムに変形し、終いには自分達の国が浮き、空の門へと吸い込まれていく。

 

 あまりにも現実離れした光景。驚愕続きのヤガ達はまるで自分達が夢の中にいるような気分に陥ったのかもしれない。

 

「ふむ、ダイスでも振っておくか?」

 

「いや、SANチェックの必要も無いじゃろ」

 

 そんなアルテラと信長の言葉を最後に、ロシアの異聞帯はこの世界から完全に消失した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれから、どれぐらい経ったんだろうな……」

 

 

 最初っから最後まであの人類悪に翻弄され続け、気づけば、僕とアナスタシアはこのモスクワの城にいた。

 アイツの言葉を信じるのなら、ここは人類が滅び、ただ星というステージだけがある完全なる異世界。ロシアの異聞帯はその世界にサルベージされた。

 

 僕とアナスタシアは生きている。見逃されているのか、殺す価値も無いのか。

 

 ヤガを脅かす吹雪も、魔獣も無く。この極寒の地はこれまでと比べると格段に生きるのに容易い温い環境となった。それこそ僕が知る本来のロシアと同じような形へと。

 

 ――後は好きにしなさい。

 

 突如として姿を変えたロシアの地で茫然としている僕とヤガ達を前にそう言い残して、カルデアは消えた。

 

 

「なるほど、確かにあれは救世主なんかじゃないな。紛うことなき人類悪だ」

 

 皇帝の力を持ったアナスタシアは混乱の中にあるロシアを纏め上げようと奔走している。僕もマスターとして彼女に付き添い、共に尽力している。完全に敗北した僕達に他にやるべき事が思い付かなかったからだ。

 

「おい今日のインスタ皇女の更新見たか?」

「あぁ、見た見た。白色のカーディガンとか尊みがやべぇな。森ガールならぬ雪ガール」

「ウチの皇帝(ツァーリー)もあれぐらい愛嬌があればなぁ……」

「ばっかお前、あのツンツンっぷりがいいんだろ。俺も今日、スマホ弄ってサボってたの見つかった時の極寒の眼差し……!堪らねぇぜ」

「あぁ、だからお前、腕凍ってんのか……」

 

 人手はいくらでも必要になってくるので、『非常大権』で召喚されたオプリチニキは何かおかしくなってるし、あの人類悪からもらったのか、どこから手に入れたのやら、スマホに夢中になっている奴らがここ最近、見受けられる。お前ら、ちょっとキャラ崩壊が酷くないか?

 

「カドック!!LINEでもう一人の私からまた不埒な画像が送られてくるのだけど!!何であの女はあんなはしたない画像を平気で何枚も送ってくるのかしら!!なまじ、私と同じ体だから、羞恥心で座に帰りそうよ!!」

 

「ブロックするなり、ミュートするなりすればいいだろ。僕に言われてもどうしようもないぞ」

 

 怒りと恥ずかしさで顔を真っ赤にしてスマホ片手に僕に駆け寄るアナスタシアが息を荒げていた。君も使ってるんだな……。というよりも僕はもうカルデアの連中とは縁を切ってるわけだから、アイツらの行動をどうこうする手段なんて持ってないぞ。

 

だって男に抱かれて、自分と同じ顔であんなに幸せそうにされたら、気になるじゃない……

 

「何か言ったか?」

 

「……何も言ってないわヘタレ」

 

「うぐっ」

 

 どうしてヘタレと言われたのかわからないが。その言葉は心に突き刺さるから勘弁して欲しい。アナスタシアは頬を膨らませて、自室へと戻った。

 僕は傷んだ胃を癒す為か、何気なく改修中の城を後にして、外に出る。

 

「ネットの海ってすげー!」

 

 スマホを持った子供のヤガが元気そうに街の広場で走り回っていた。

 オプリチニキだけじゃない、ヤガ達もスマホを所有していた。まるで普通のロシアのような風景。彼等の外見に目を瞑ればの話だが。そもそもネット環境とかあるのか?いや、あれだけのキチガイっぷりを発揮してた連中なら別にこの世界に用意してもおかしくはないのか。

 

「考えるのは止めよう。胃の次は頭が痛くなる」

 

 何気なく、自分のポケットにいつの間にか入れられていたスマートフォンを取り出す。ベンチに腰かけ、特に意味も無く操作をしていたら、後ろから子供のヤガに覗き込まれていた。

 

「……なんだ」

 

「魔術師の兄ちゃん、何もアプリ入れてねーじゃん。だっせーの」

 

 まっさらなホーム画面を見て、邪気なく子供が笑う。

 

「なんなら、オレが何個か面白いの入れてあげよっか?」

 

 いつもの僕なら間違いなく断っていた誘いだったが、ふとあの時のアイツの言葉が甦る。

 

 

 ――ヤガの人達がさ。どんな時に怒って、どんな時に笑って、どんな時に泣くのか、知らないでしょ

 

 ――周りが無駄、無意味と笑う『余分』こそに下克上の秘訣があるのにさ。君はちょっと、余裕が足りない

 

 ――まずは自分とその周りを幸せにする事からでしょ。それすらも出来ない奴が世界を救うだなんて臍で茶が沸くぜ先輩(ルーキー)

 

 

「……今は何が流行ってるんだ?」

 

「んーとね、母ちゃんはインスタとかに夢中になってるけど。俺はこれかな?『FGO』ってゲーム!すげぇんだぜこれ!キャラメイクとか滅茶苦茶凝っててさ!あ、もし始めるならフレンドになろうぜ!兄ちゃんの名前は?」

 

「カドック……カドック・ゼムルプスだ」

 

 

 興奮気味に俺の肩に乗りかかり、始め方を教える子供のヤガの毛がくすぐったい。本当に楽しそうに笑う子供だ。

 

 

 面白いのか……?これ。

 

 

 





『真恋 仏陀斬り』
ランク:A++
種別:対人宝具
使用者:宮本武蔵(恋愛雑魚侍)
一見すれば、腰に差した二刀による同時抜刀攻撃だが。距離大きさ関係なく、一つの斬撃に重なったそれは武蔵が斬りたい対象だけをぶった斬る。私が斬ったんだから死ぬという傲慢とも取れる武蔵の剣士としての矜持が押し付けられたそれはあらゆる可能性から斬った以上は朽ち果てる零の結末を叩きつける。
武蔵の嫉妬心や恋心が一定基準に達さないと使用出来ない宝具なので使い所は限られる。
下総国でマスターである零の獣と恋し、愛し、犯り合った侍がたどり着いた剣を極めし先にあった恋の道。かつては雑念と斬り捨てていたその感情を武蔵は受け止め、彼の剣に貫かれ、存在を確立させた彼女はもうあらゆる世界を放浪する浪人では無くなった。彼女の居場所はここにある。



























【あるヤガの独白】

「じゃあ、言ってくるよ母さん」

「気を付けるんだよ。怪我……しないようにね」

「はっ、こんな世界で怪我のしようがねぇよ」

後ろからかかる言葉に笑いながら、家を出る。
ついこの間まで俺の顔もわからなかった癖に、世界が文字通り変わってから、急に正気になりやがった。窓からあの出鱈目な光景でも見てたんかね。ショック療法ってやつか?

ま、あんな光景見せられたら頭のおかしさが一周して正気に戻りそうだがな。

正気に戻った母親はまず泣きながら、俺に謝罪と感謝を繰り返した。

そんな姿を見せられて、自分でもわからず涙を流していた。
何となくだが、その時、どうして自分が息子の顔もわからなくなった母親に必死に食料を分け与え続けていたのか理由がわかった気がした。

正気に戻ったとはいえ、俺の母親の寿命はそう長くはない。それでも、例え残り僅かだったとしてもこういうありふれたやり取りが欲しかったんだろう。


カルデアとかいうやつらの口車に乗って、オプリチニキ共に叛逆して、流れ流れてやって来て俺達がたどり着いた先がここだった。



「やはりいつ見ても素晴らしい!! この完成された女神像の美しさよ!! 本物にはまだ遠く及ばないがな!!」

村に出ると、雪で造られた像の前で何人かのヤガ達が熱く語り合っているのが見えた。雷帝をぶっ飛ばした巨人を模した雪像の前で楽し気に。

「拳を振り切ったあの勇ましさ!! 一撃に込められた平和に対する願いと虐げられた者達への慈しみが私には伝わってきたわ!!」
「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ、若い衆は見る所が甘いのう……。儂は斬られ、崩れゆく女神に滅びの美学を感じたぞ。朽ちてなお損なわれぬ美しさ……あれを見た時は10年程、若返った気分になったわい」

どいつも勝手に独自の解釈を述べながら談笑し、新たな女神像を造ろうとしていた。

「暇人どもめ」

その呟きは言葉とは裏腹に自分でも驚くぐらいに優しい声色だった。

今までは散々、生きる為に、飢え死にしない為に、食料を求め、狩場を求め、弱者を切り捨て、隣人を騙し、強者に媚びてきたヤガ達が生きる事とは直接的に関係無い物事に夢中になり、笑って生きている。あぁ、そういや母さんもインスタ?とかやらに最近夢中になっていたがな。俺はどっちかっというとツイッター派だ。

栽培やら、養殖やら、農耕、酪農やら、気候も変わり、食うものを得る手段が増えた事によって余裕が生まれたのか。何の冗談か、あのオプリチニキ共も手伝ってくれるからな。「お前は誰推しだ?」とかフレンドリーに声をかけられた時は正気を失いそうになったが。

「おいパツシィ!」

「なんだ?」

知人に声をかけられる。顔は知っているが、名前は知らないその程度の関係。

「どこに行くんだ?」

「釣りだ。凍った湖に穴をあけて、糸を垂らす」

「よし! 俺も付いて行く! どっちが多く釣れるか勝負だな!」

「……好きにしろ」

何が楽しいのか、顔を輝かせて、道具を取りに戻るヤガ。前までなら「取り分が減るからついてくるな」で終わりだった筈だが……。

「……なぁ、父さん。これが俺達ヤガが遠い昔に忘れ去ったものなんだろうか」

(ヤガ)は死なない為だけに生きるのではない。弱者が滅び、強者こそが生き残るみたいな物々しい法則に縛られるんじゃなくて、生きるってのはもっとこう、余分があってもいいんだ。

スマホに夢中になったり、毒にも薬にもならない話で花を咲かせたり、腹が膨れるわけでもない雪像を作ったり、狩った獲物の数で勝負したり、生きる過程の中にある色んな楽しみってやつを見つけていく。

多分、幸福ってのはその積み重ねなんだろうな。

ふぅ――っと白い息を吐き、ふと空を見上げる。本日は快晴なり。


「空ってのは青かったんだな……」
















【空  想  強  奪】


第2部 1章 完結。




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愛シールド0 前半(マシュ・キリエライト初夜回)


100話記念&300万UA記念でどこかでやろうと思っていた主人公初夜回です。頑張れ、後輩。お前がナンバーワンだ。













一つのこと、一つの目的のために、多くを見失うもの。これを馬鹿という。馬鹿の恐ろしいところはな。多くのものを失うクセに、その大事な一つだけは決して取りこぼさない事だ。


男の話をしよう。


男には取りこぼしたくたない物がたくさん出来てしまった。馬鹿とは一つの為に他の全てを取りこぼすものの事。ならばと。一つの手でこぼれるなら()()()()()()を用意すればよいと実行した者がいた。考えるだけなら易し。言うだけなら易し。たとえ、その先が獣の領域だろうとも男は進み続けた。


男は言う。

――俺が守るのはせいぜい自分の手が届くまでの世界だけだよ。


はてさて、ではその愛ある獣の手は一体、どこまで届くのやら。この怪物の物語が幸福な結末になるか、どうぞ皆様、最後まで目をお離しなきように――!







 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

元異聞帯No.1。極寒の歴史に閉ざされた白岩の大地。かつて強食を信条とした魔獣と人間の混成でもある「ヤガ」が生きていた永久凍土の世界。あり得ざるロシア。

 

空想樹によって人類史に張り付いていたそれも白き獣と外なる神を導く巫女によって、別の世界へと強奪された事を他のクリプター達は知る由も無いだろう。

 

 

「見ろよ!兄者!()()スタシア様の『踊ってみた動画』!かぁ――!デニムショートパンツのラフな格好で踊っている尊姿がよぉ!ギャップ萌えがやばくて、俺の語彙力が凍結するぜぇ――!ヴぃ――!」

 

「おぉ、コメントの伸びが尋常ではない。それはそれとしてその呼称は何なのだ。弟者」

 

「いや、アナスタシア様のままだとウチの皇女様とごっちゃになるからな……」

 

「あぁ、確かにあっちの方が姉っぽいよな。大人の魅力というか余裕があってよ。デアーさんと経験済みだろ間違いなく」

 

「こっちの皇女様もカドックの坊主とさっさとくっつけばいいんだけどねぇ」

 

「くそっ、じれってぇな……。俺ちょっといやらしい雰囲気にしてきます!」

 

「あっちの皇女様がアネスタシアなら、こっちは?」

 

「イモスタシア様?」

 

「お前、本人に聞かれたら殺されるぞ……」

 

「だが、俺はそんなイモスタシア様のラーメンブログが生きがい」

 

「わかってるじゃないか、ヤガの」

 

「ロシアの世界って広大だわ」

 

ましてや、ヤガとオプリチニキがこうしてくだらない談笑をしている絵など想像出来る筈もなく――。

今日も今日とて、外なる世界に連れてこられたロシアは通常運行だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪役ムーブが足りないと思っている」

 

「いきなり何を言っているんだお前は」

 

カドックは目の前の人類悪に吐き捨てた。

場所はモスクワ。「雷帝vs性交ゴーレム」の戦いの余波から、王家の象徴たる城の改修も終わり、その客間にて、カルデアのマスターとマシュ・キリエライト、そしてカドックはテーブルを囲んでいた。

 

「というかアポ無しで来るのは止めてくれ、アナスタシアはまだお前がトラウマになっているんだからな」

 

「おっ、彼女の心配かぁ~~?このこのぉ~」

 

「うぜぇ……」

 

ニマニマ顔で膝をクイクイっと押し出すジェスチャーをする人類悪にカドックは眉間を抑える。デアーの前で空になったコップに心底嬉しそうに紅茶を注ぐマシュ。その姿を見てやっぱりAチームといた頃よりは断然に人間らしくなっているとカドックは思う。

そもそもそういう給仕の仕事もここのオプリチニキ共がやる筈だったのだが……アイツらと来たら、デアーを見るなり「へっへっへっ、カルデアの大将……『アダムvsダブルメカエリチャンvsアルテラマン』の次回作はいつ頃出ますかねぇ……」とか仕事もしないで雑談に耽るのでカドックが全員叩きだした。

 

いまこの部屋にはトラウマってるアナスタシアは当然いないとして、彼等3人しかいなかった。

 

「で、なんだよ悪役ムーブって。初めて、僕たちの前に姿を見せたアレで十分だろうが……。大魔王みたいだったぞ。未だに夢に出てくるんだからな」

 

そもそも自分は何でこんな所で敵だった連中と呑気にお茶会などしているのかとカドックは疑問に思いつつも話に付き合う。この人類悪に付き合うコツの一つとして、深い事を気にしてはいけないと彼は学習していた。

かつてのカドックならくだらないの一言で話を切っていたが、今はしない。その()()も何か意味があるものだと信じて。

 

「大魔王……。そう……古今東西、魔王と呼ばれる者。勇者と相対する悪の頂点。その者達に必要な物が何かわかるかねカドック君」

 

「あぁ……絶対的な力?優秀な部下とか軍事力とか、見るだけで心が折れそうな本拠地とかも必要だよな。後は全てに恐怖を抱かせるぐらいの悪逆とかか?」

 

ふぅ――やれやれと期待外れだと言わんばかりにアメリカンに手を拡げ、首を横に振る人類悪。カドックの額に青筋が浮かぶ。

 

「お姫様ポジだよ」

 

「は?」

 

「ローラ姫にピーチ姫。物語にヒーローがいるのならヒロインが必要なのも自明の理。確かに戦えない攫われ系ヒロインなんて古臭いかもしれないが、俺は敢えてノスタルジーに浸りたい。いいじゃない、お姫様」

 

「先輩、巷で話題になっているクッパ姫はどうですか?」

 

「特殊な例だけど、大変結構!魔王が実は美少女展開もTSも嫌いじゃないです!」

 

「僕はキングテレサ姫派だけどな」

 

「おーいぇす、マイハニー(アナスタシア)にメールしておくわ」

 

「やめろォ!確実にそこから間違いなくアナスタシア(こっちの方)にバレるだろ!!」

 

何だかんだでぶつくさ文句を言っていた異聞帯のアナスタシア……妹っぽいアナスタシア――イモスタシア様はカルデアのアナスタシア――アネスタシアとSNSで交流を持っていた。姉らしく『大丈夫よ。白くて扇情的な下着でYES/NO枕でも持って夜這いかければ、あんな拗らせ童貞一発よ。いいの?このままだと貴女のマスターも童貞のまま何年も経ってキャスターになっちゃうわ。もう一人の私もそんなの嫌でしょ?』と有り難いアドバイスを実はくれていたりする。

 

「カドックさんは色白巨乳系が好みなんですね」

 

「いいだろ……色白系……照れ顔が映えるんだよ……。で、お姫様ポジってあれか?オフェリアかヒナコでも拉致るつもりか?僕的にはどっちも姫ってイメージじゃないがな。けど、オフェリアの錯乱っぷりは酷かったな……」

 

矛先を逸らすようにカドックは話を戻す。この世界に連れてこられて数か月……何だかんだでサブカルチャーにどっぷり嵌っているカドック少年だった。ヤガ少年に勧められたゲームは雪国系美白美少女キャスターが引けるまでちゃんとリセマラしたらしい。

 

「あぁ、あの眼帯っ娘ね。やっぱり初手、邪神触手はSAN値によろしくなかったかしら?もっとPCに優しい進行をすべきだったと反省」

 

カドックがあの時見た印象としてはどちらかといえば、この人類悪を見たせいでああも取り乱したようにも思えた。彼女の魔眼がこの獣のどんな可能性を見てしまったのか、彼はあまり知りたくなかった。怖いもの見たさにも限界はある。

 

「オフェリアさん……。また女の子同士で集まって、お茶会をしたいですね」

 

(雷帝の一撃を何度も止める奴を女の子扱いしていいものなのか)

 

「何か言いたい事があるのなら、その口をホッチキスでチャックしますがカドックさん」

 

「縫われたら、喋れないだろっ!?」

 

凄みのあるその笑顔に思わず、ビクついてしまうカドック。そんなマシュを見ながら、Aチームとして所属していた頃よりは随分と人間らしくなったとも思う。男女の感情の機微にそこまで鋭くない彼でも自身のマスターに向けるマシュの表情からは愛慕や親愛の感情を感じ取れる。

 

無機質でどこか機械的だったマシュ・キリエライトが人並みに恋をして、笑ったり怒ったりしている。それはきっと自分達Aチームでは出来なかった事だった。そういうスキンシップが得意なのはせいぜいペペロンチーノくらいだったが、彼(?)でもマシュとの壁を完全に壊す事は叶わなかった。

 

だからこそ、カドックは少し気になった。デザインベビーとして人工的に産まれたマシュという人間がカルデア唯一のマスターであるこの男にどういう影響を受けたのか。

 

「ま、こんな出鱈目や冗談を体現したような奴が近くにいたら、少なからず影響を受けるか……。ちょっとだけ気になるよ、お前とマシュがどんな出会いをしたのか」

 

「そんな奇天烈な出会い方はしていないんですけどね……。いたって普通ですよ」

 

マシュは思い返す。自身の人生の主軸となった先輩との出会いを。ドラマがあったわけでもロマンチックな出会い方をしたわけでもない。最初の印象は「ちょっとだけ変わってる人だな……」ぐらい。それがいつの間にかこうなってしまった。まぁ、けど理由とかきっかけとかはいくらでも出てくるのだろう。

 

だが、もし一つ挙げるとするのならば――。

 

マシュ・キリエライトが■■ ■■という男の後輩として、愛する女として生涯を共にしようと決意したのは一番初めのレイシフト、冬木から帰ってきてすぐの事であった。

 

 

「初めて見たのはカルデアの廊下でフォウ君と四足歩行でドクターの茶菓子を取り合っている先輩の姿でした……」

 

「獣か……!いや、ビーストだったな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「レフの言う通り、人類は既に滅びた。だが、手が無いわけではない。滅亡の外に唯一あるこのカルデアから人理焼却の原因となった過去の時空の乱れ――特異点へとレイシフトし、修復する」

 

ボロボロになり、未だ少ない人員で修復作業を続けるカルデアの中で緊張で強張った顔でドクターは二人の少年少女に告げる。

 

「過去へと戻り、人類史のターニングポイントを正しい物へと切り替える。それが人理焼却という結末を覆す唯一の手段でもある作戦名『人理守護指定グランドオーダー』」

 

カルデア顧問であったレフは裏切り、所長はカルデアスに飲み込まれ、マスター枠は中心となる筈だったAチームを始めとして、一人を残し全滅。スタッフの人数もとてもじゃないが満足にいるとは言えない。

絶望という言葉がこれ程まで似合う状況は無いだろう。それでも暫定的にカルデアのトップと立ってしまったロマニ・アーキマンは残酷な事実を告げないといけない。

 

「一般枠の君に酷な事を告げている自覚はある。半ば強制である事も理解している。だが、それでも僕は問わなければならない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

どこか苦しそうに、それでも真っ直ぐにこちらを見据えるロマニに人類最後のマスターとなった彼ははっきりと答えた。

 

 

「あるわけないでしょ!そんなもん!」

 

「え、えぇっ……?えええぇっ――!?」

 

「先輩!?」

 

凛!として清々しい程にそう言い切ったマスターにロマニもマシュも流石に瞠目する。

 

「いきなり、人類とか言われても十数年しか生きてない若造には地球儀のイメージしか出来ないっての。だからドクター、そういうのじゃなくてさ――」

 

その言葉はよくよく考えてみると確かに当たり前の言葉で、だけどこの状況だとやっぱり異質で、それをはっきりと芯を通して伝えている少年がどこか末恐ろしく感じるものでもあった。

 

「俺は自分の好きな物、守りたい物の為に戦うよ。自分の手が届く――失いたくない物の為に……人間らしく、俗人らしくね。神様じゃないんだから、世界なんて見えないっての」

 

彼はそう言って隣にいるマシュ・キリエライトに静かに視線を向けた。

 

「……あぁ、そうだね。僕もまた無用な物を背負わせようとしていたみたいだ。うん、君は君の理由で世界を救ってくれていい、そして、その手伝いを僕達にもしっかりとさせて欲しい」

 

人類最後のマスターとなった彼の言葉は使命感を投げ出した無責任な物にも聞こえたかもしれない。だが、それはとても人間らしくて、そこにいたドクター、マシュ、カルデスタッフの肩の力を抜けさせる不思議な言霊が宿っていた。

 

「確かにぺーぺーのド素人で不安かもしれないけど、大丈夫!なんて言ったて俺の隣には可憐でえちえちで強くて頼りになる自慢の後輩がいるからね!世界一――!ウチの後輩は世界一や――!」

 

おかしなテンションで隣にいるマシュを抱え上げ、グルグルとその場を回るマスター。

 

「い、いえそんな過分な評価です……。サブミッションでスケルトンを粉々にする先輩に比べれば、私なんて……あぁ、止めて下さい、先輩……!め、めがまわりましゅ――……!」

 

恥ずかしさで頬を紅潮させながらも、されるがままのマシュ。マスターの奇行によってカルデア内の緊張していた空気が弛緩し、柔らかい物となる。

ちなみにスケルトンの骨をバキバキに折るのをサブミッションとは言わない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱり、先輩は凄いです。こんな状況でも自分を見失わず、しかも周りも笑顔にして」

 

次の特異点のレイシフトまで休息をもらったマシュは鎧姿ではなく、パーカーに眼鏡とカルデア内ではお馴染みの服装で先輩の部屋へと向かっていた。

 

重傷になり、危篤状態となったマスター達。レフの裏切り、人理焼却、所長の死。理解が追い付かない事項が嵐のように押し寄せてきていた。

 

それでも彼女が潰れずにいたのは隣にいる自身のマスターが――ただ一人の先輩がいつもと変わらない様子だったから。頼りになると彼は自分に言ってくれたが、マシュにとって先輩こそ一番頼りになる存在だった。予想だもしない言動も。周囲が驚愕するような行動も。導いてくれる足取りも。そして、不安にならないように私の手を握ってくれた温もりも――。

 

マシュは先輩が隣にいれば、デミサーヴァントとして未熟な自分に対する負い目も掻き消えて、十全に戦えるのだと鼓舞する。

 

次の特異点への作戦会議か、あるいは歓談でお互いの親睦を深めるべきか。先輩の部屋へと向かうマシュの足取りは非常に軽やかだった。

 

「先輩の事を考えるだけで、何だか、心がポカポカします……。何でしょう、この現象は?先輩に聞いたら、教えてくれるかもしれません」

 

出会ってから、まだ間もないが、この段階において、マシュ・キリエライトの先輩に対する信頼度、尊敬度は非常に高い物であった。それこそ、心のどこかで「先輩さえいれば、大丈夫」と盲目的な考えがよぎってしまっている程に。

 

 

だが――。

 

 

彼女はその考えをすぐに改めることになる。

 

 

「先輩、私です。マシュ・キリエライトです。いらっしゃいますか?」

 

反応はなく、近付いただけで自動的に開いたドア。どうやらロックはかかっていないらしい。不用心だと、心配になりながらも、部屋の中へと足を踏み入れた。

 

「ご不在……でしたか……?」

 

部屋に明かりは点いておらず、マシュがそう思うのも無理からぬ事であった。部屋を見回しているマシュは一度、電気を点けようかと逡巡した時にベッドの隅にいる存在に気付いた。

 

「あ、先輩……そこにいらして、い……たんです……ね――?」

 

 

 

その時、マシュは自分が見ている光景が信じられなかった。

 

 

 

それ程までに……膝を抱えて、虚空を見ているその人物の姿は――マシュが知っている先輩とはかけ離れている姿だったから――。

 

 

 

「届かなかった」

 

誰に聞かせるわけでも無い徒爾の言葉が吐かれる。

 

「せ、んぱい?」

 

 

「届かなかった届かなかった届かなかった届かなかった届かなかった届かなかった届かなかった届かなかった届かなかった届かなかった。あんなに助けてて言ってたのに、泣き叫んでいたのに、届かなかった届かなかった届かなかった届かなかった届かなかった届かなかった届かなかった」

 

 

壊れたプレーヤーのように呪詛の如き言葉を吐き続けるマスターの瞳は澄み切った蒼の色ではなく、全てをごちゃ混ぜにした底の見えない泥のように濁った瞳だった。

 

底抜けに明るいマスターのイメージにそぐわない瞳だったが、マシュは何故か強烈なデジャヴを感じた。

 

(同じだ、あの時と。爆発に巻き込まれて、下敷きになった私を見て――)

 

デミサーヴァントとなったきっかけ、レイシフト前の爆発テロ後。

 

彼女にとってその後、優しそうな表情で手を握られた光景の方が印象的だったせいか、記憶の片隅に追いやられていたが……。マシュの上にある岩盤を力づくでのけて、そして潰れた彼女の下半身を見てしまい、もう助からないと自覚してしまったマスターが一瞬、見せた瞳と全く同じ色をしていた。

 

「何で俺の手はこんなにも短い何で俺の手はこんなにも少ない弱い弱い弱い弱い話にならない話にならない話にならない話にならないあぁ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ好きな人がいなくなるのは仲良くなった人が傍から消えるのはいかないでいかないでいかないでいかないでそばにいてそばにいてそばにいてさみしいさみしいさみしいさみしい」

 

ベットの隅、息継ぎをしないで鬱屈とした言葉を延々と吐き続けるマスターの姿は狂気だった。誰が見ても、踵を返し、その場から逃げ去ったかもしれない。

 

(私は馬鹿だ――……)

 

だが、マシュ・キリエライトだけは違った。

 

(「何が先輩さえ、いれば大丈夫」だ……。所長を失って――……一番、心に傷を負っていたのは……不安だったのは……この人じゃないですか……!それを盲目的に、根拠も無く、先輩だから大丈夫だって勝手に――!)

 

無意識だった。気づけば、マシュは膝を抱える彼の手を取り、握っていた。あの時、死にゆく結末しか無かった自分の手を握ってくれた先輩のように。

 

ここは大きな分岐点。ここから彼女がマスターに対してどう関わっていくのか。どのような立ち位置になるのか、そしてこの人類最後のマスターが何に成るか重要なターニングポイント。

 

「どこにもいきません」

 

「……え……?」

 

ポカンと未だ泥色のまま変わらない瞳がマシュを射抜く。彼女は動じる事なく、それと見詰めあう。

 

「私は絶対に先輩の傍からいなくなりません。離れません。寂しくさせません。マシュ・キリエライトはここにいます」

 

「マシュ……?」

 

自分を代替品として使ってもいい、慰めの道具として使ってもいい。マシュの心にあったのはこの人を絶対に独りにしないという決意。マシュは堅硬な城の如く、マスターの体を抱き締めた。

 

その瞬間、彼女の精神性がある方向に成長した。滅菌室で人生の大半を過ごした彼女にとってそれは余りにも早過ぎたとも言える。

 

「大丈夫です先輩。弱音を吐いて下さい、私に頼って下さい、私は先輩の自慢のサーヴァントですから……ほら、ぎゅっと抱き締めて」

 

母性すら感じるマシュの言葉に促されて、恐る恐るとゆっくりとした手付きでマスターはマシュの背に手を回した。冬木でシャドウサーヴァントを殴り飛ばしたとは思えない程に弱々しい手付きで。マシュは先輩の頭を抱え、より一層決意を強固にする。この人は絶対に私が守ると。

 

「マシュは、ここにいる?」

 

「はい……いますよ先輩」

 

「マシュ……」

 

「はい、先輩」

 

「マシュ、マシュ、マシュ、マシュ、マシュ、マシュ、マシュ」

 

「先輩、先輩、先輩、先輩、先輩、先輩、先輩、先輩、先輩」

 

抱き締め合ったまま、二人でベッドの上に寝転がり、所在を確かめ合うように呼びかけ合う。その輪郭すらも確認するようにマスターの手が服の上からマシュの体を這いずり回っていた。マシュもそんな先輩の動きに応えるように腕から背中そして頭と、手の届く範囲で体を擦る。

 

「よかった……マシュはここにいる……いなくなってない……ちゃんと俺の手の届く所に……いなくならない、いなくならない、いなくならない、いなくならない」

 

「んぅ……はぁ……」

 

強く強く、苦しいくらいに抱き締められる。それはまだ彼が不安に思っているからだろう。それと同時にマシュはどこかで嬉しくなっていた。先輩の大事な物の中に自分が入ってる事に。

 

だが、それでも彼の声には未だ不安の色が付いている。マシュは考える。どうすればこの人の不安を取り除く事が出来るだろう。

 

言葉ではいくらでも慰めの言葉を吐く事が出来る。だが、それはマスターの心を安心させるにはとても軽く、足りない。自分はここにいると彼の体に刻み込みたくなった。

 

狭い世界の中で読み漁った本の知識をフル動員して、どうすればいいか思考を巡らせる。

 

どうすれば証明出来る。私はあなたを守りますと。私はいなくなりませんと。どうすれば、伝える事が出来る――?

 

言葉を超えたスキンシップ――。情を交わした男女達が行き着く最上級のコミュニケーションツール――。

 

そこで彼女はふと気付く、下腹部に当たる硬い感触に。人理焼却という生命の危機と女の体に興奮した生理現象。

 

(言葉だけじゃない……先輩に温もりを与える深い繋がりを――)

 

服の上から程度では足りない。もっと濃密な交わりを――。原初の交わりを――。

 

「ちょっと、待っててくださいね……先輩――」

 

決意を固めた盾の乙女は静かにパーカーのチャックを下していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベッドの上で生まれたままの姿で一組の男女が絡み合っていた。

 

特に性行為を行っているわけでもない。手足を絡ませて、服を着ていた時よりも生々しく抱き締め合っているだけ。未経験の男女が手足を擦り合わせて、互いの肌を感じ合っているのはとても淫靡な光景だった。

 

「はぁ、はぁ、はぁ…………」

 

眼鏡をかけたまま悶えるマシュは知識としては性行為についても知っていた。生殖行為としての意味以外にも、好き合った二人が、想いを通じ合った二人が、愛を確かめ合う神聖な儀式。デザインベビーとして設計された自分には雲の上のような話だと想っていたが、まさかこの人間らしい先輩を、自分からそういった行為に誘う事になるなんて想像もしていなかった。

 

(人生……何があるかわからないものですね)

 

衣服は自分で脱いだ。心ここにあらずだったマスターはマシュが脱がせた。抵抗する事の無い彼にどこか罪悪感を抱きながら、下半身を脱がせるのにとても手間取り、隠された陰茎を見た時、気絶しかけたハプニングを乗り越え、ここまでやってきた。

 

「……凄く、柔らかいマシュの体……」

 

「んっ、ふぅ……変じゃ、ありませんか?私の体……」

 

「ううん、とても安心する……」

 

暗闇に独りいた先輩を放っておけない一心でここまで来てしまったが、ふとマシュは自分がとんでもない事をしているのではと自覚する。傷心中の男子を慰めるという体の良い名目で裸にひん剥き、性的行為に及ぼうとしている自分はもしかしなくても、しかるべき機関にしょっぴかれても仕方ない犯罪者なのでは?と。

 

「……ありがとう、マシュ」

 

「あ――」

 

それでも自身の乳房に包まれる先輩の顔はこの部屋に入った時よりは確実に穏やかな物になっていて、自分の決断は間違いでは無かったとマシュに教えてくれる。

 

「あっ、んぅ……ふぅ……」

 

もぞもぞと動くマスターの動きに思わず艶めかしい声が漏れてしまうマシュ。恥ずかしい感情はあったが、後悔は微塵も無かった。先輩に女性としての体を見られて、そういった行為に及ぼうとしている事にも嫌悪感は無い。

 

(胸部の動悸が収まりません……。先輩に触られている部分が痺れて、熱く――)

 

「んっ、あっ……ふふ、くすぐったいですよ、先輩……」

 

親しみを表す猫の如く、頬を擦りつけ合う二人の表情は微笑ましいものであったが、いかんせん首から下の格好が格好なのでやはり官能的という感想が相応しい。

 

「マシュ、マシュ……」

 

(……何でしょうこの気持ちは?只、素肌を触れ合っているだけなのに頬がにやけてしまう。先輩の切ない声を聞く度に下腹部が疼いてしまう。胸は異常と言えるぐらいに高鳴っているのにそれがちっとも嫌じゃない。情事とはここまで心地良いものなのですか……?それとも――)

 

マスターと目が合う。息がかかるぐらいの至近距離。その瞳にはいつもの大空のような蒼の色彩が宿っていた。

 

瞳も睫毛も唇も吐息も鼻も耳も髪も輪郭も彼を構成する全てが愛おしい。

 

(あぁ、先輩としているから気持ちいいんだ――。会ってまだ間もないのに、我ながら尻が軽いかもしれませんが……。きっとあの時から、私の手を握ってくれたあの時から、この人に惹かれていたのかもしれません)

 

故にマシュは自身の好意の証明として、自ら顔を近付け、そのまま唇を合わせる。

 

「んっ、ふぅっ……んんっ!」

 

勢いが少々強い緊張で震えた唇を押し付ける不格好なキス。だけど、マシュにとってそれは一生忘れられない思い出になった。

 

「ファーストキスは柑橘系の味がするといいますが、これは――」

 

「どんな味がした……?」

 

「ん、先輩の味です」

 

「何か今のエッチかった」

 

唇を離して、お互いに笑い合う。初経験の男女としてはおおよそ理想的な初々しいやり取り。だが、マスターの体は無意識に更なる繋がりを求める。

 

「きゃっ……!先輩――……」

 

「もっと、もっと、もっと、もっと、たくさん――……マシュを感じたい。駄目かな?」

 

「駄目なんて事はありません。大丈夫、大丈夫ですよ先輩……私も初めてですから……もっと二人で肌を重ね合いましょう……たくさん、色んな事を勉強しましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男性は何故、そこまで乳房に夢中になるのでしょうか?胸部についた二つの脂肪。男性には無い物だから焦がれる?あるいは幼き日の母性を求めているのかもしれません。

 

今までせいぜい、入浴か着衣あるいは保健体育系の本を読んだ時に興味本位に触ったぐらい、その時は特に何も感じる事はなく……。

 

「んぅっ、あぁっ……せ、んぱいぃ……」

 

あぁ、けどまさか好意を抱いている人に触られるとここまで違うとは本当に人体とは不思議です。

私の胸部の膨らみを揉み込む先輩の指の動きに注視してしまう。

 

慈しむように、そして自身の欲望を発散す獣の荒々しさが混在する手付き。

 

「凄いね、ちょっと揉んだだけで女の子の体ってこうなっちゃうんだ」

 

「そ、れはっ……先輩だ、からぁっ……」

 

心拍数急上昇。体温急上昇。

私の乳房が……自分じゃない人の手であんなに歪んで、凄い、凄い先輩の手……凄い――。

 

乳頭もこんなに膨らんで、まるで男性の性器みたく……。これは私が先輩の愛撫に性的興奮を覚えているからでしょうか……?

 

え、え、先輩唇を近付けて……一体、な、にを――。

 

「ちゅむぅぅっ」

 

「んひやぁぃぃっっ!!」

 

あ、あ、これは、これは何ですかっ……?胸の先端を咥えられただけなのに、刺激が……頭の中を何度もスパークして思わず天井を仰いでしまいます。

充血した乳首は未だ先輩の口に隠れたまま、赤子のように吸い付いていますが、そのねぶり方はとてもじゃないですが、授乳目的ではありません。

 

「んぅっぅ!あっ、あぁっ!まって、待ってくだひゃい!せんぱぁい……おっぱい、くるっちゃいましゅぅ……」

 

そう言いながらも私の腕は先輩の頭をガッチリとホールドしていました。

乳房の先端を舌先で何度も転がされて、乳輪を舐められ、焦らされて、そしてまた胸が取れてしまうと錯覚する程の吸引。

 

「あっ、あっ、ああああぁっ!」

 

先輩の乳房に対する並々ならぬ執着心というべきでしょうか。両手で搾るように揉まれ、左、右と交互に乳首を唾液で汚していく。こんな快楽、カルデアのデータベースには乗っていませんでした……。ですが、伊達にシールダークラスのサーヴァントではありません!ここで気を簡単にやってしまうようでは先輩の頼りになるサーヴァントを名乗る事は出来ません。ステータスアップ!さぁ、先輩……!どんと来てください……!

 

 

「ひゃああああぁっ!!無理、むりですぅ……!あ、あぁっ!それ、だめぇぇっ、しぇんぱいぃ、しぇんぱいぃっ!歯でコリコリしたらぁぁっ、らめれすぅぅっ!んあああぁっ!!」

 

駄目でした。先輩相手には耐久度バーサーカー並になってしまうへなちょこサーヴァントでした。防御デバフも五重ぐらいかかってると思います。

 

股から得たいの知れない水音がしているとか、初めての性的絶頂を感慨深く思う余裕も無く私は数十分先輩に乳房を愛撫され続けました。

 

むしろ気持ち良過ぎて、フィットし過ぎて先輩の手と口が私のブラジャーなのでは?と頭によぎってしまうほど。

 

「やばい、今のマシュすんごく可愛い。もっともっと見たいな」

 

ようやく解放されて、その手が下へと伸びていく先輩の顔を見て、私は先輩の何かとてつもない物の目を覚まさせてしまったような……そんな気がしたのです。

 

 

 

 

 

 

 

 






◇爆発テロ後マシュと 出会わない→――の獣ルート
           出会う
            ↓
◇所長がカルデアスに 飲み込まれない→――の獣ルート
           飲み込まこまれる 
              ↓
◇冬木から帰ってきた後マシュとセックス しない→――の獣ルート
                    する
                    ↓
◇冠位時間神殿ソロモンにて、ロマニが消滅 する→『親愛』の獣ルート
                     しない 
                      ↓
                     ???










「初めての相手は所長ではないっ! このマシュだッ!」



後編に続く。




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愛シールド0 後半(マシュ・キリエライト初夜回)

消えぬ炎が延々と燻り続ける氷の世界。北欧の異聞帯。

オスロ・フィヨルドの北部……。その異聞帯の王、正真正銘の神たる女王が棲む旧オスロ城。

雪と氷で出来た城にて、与えられた私室に籠ったままのクリプターが一人、オフェリア・ファムルソローネはシーツに身を包んで震えていた。

自身のサーヴァントに霊体化を命じ、姿を現す事すら許さずに。

(あれは……何――?)

クリプター7人の前に現れた恐らくカルデア最後のマスターであろう少年。

(一般枠?  マスター?魔術師? 違う、違う、そんなありふれた言葉で語れるものじゃないっ)

眼帯越しですら、()()()()()()()強烈な存在感。()()()()()()()あらゆる可能性。

あの時目にした在り方だけでなく、あの獣が辿ったかもしれない別の可能性。

――総てを全力で愛そうとする破壊的な獣。
――たった一人の愛する女性の為にありとあらゆるものを犠牲にする獣。
――万物を蕩かし、快楽に耽る淫らな獣。

オフェリアは眼が良すぎる故に見てしまった。その衝撃の大きさは錯乱して、クリプターの中でいち早く姿を消してしまった彼女の様子からよく分かる。

(恋……? 愛……? 知らない、私は――あんなものは知らない……)

「無理、無理、無理よ。勝てるわけがない、誰も勝てるわけがない、わ……」

人知れず、か細い弱音が零れる。オフェリアの心は折れかかっていた。だが、そんな彼女の最後の一線を繋ぎ止めているものがあった。

「……! マシュ……あの娘はカルデアにいる……!」

閉ざされた世界をぼんやりと眺めていた()()()()()()。初めて、友達になりたいと思った少女。

「……たす、けてあげなきゃ」

あんなのが近くにいて、無事でいる筈がない。正気でいられる筈がない。オフェリアは消えかかっていた心の灯火に喝を入れる。

「私が、たすけなきゃ……! マシュ……!」

現代の戦乙女が知っているのは無垢なるマシュ・キリエライト。そして見てしまったのは獣へと羽化した人類最後のマスター。故にこの考えを見当違いと揶揄するのは些か酷であろう。

二年という月日、男女の関係が変貌していくには十分過ぎる時間だ。









 性的興奮によって怒張した男性器は女性器の中に侵入し、何度も擦り、膣内で刺激を与えられ、精液を子宮の中へと吐き出します。それが正しい男女の生殖行為。

 初めて知った時は些か手間だなと印象を受けました。

 

 何故、陰茎を膨らませる必要があるのか、何故、陰門を湿らせる必要があるのか、何故、男性が挿れる側で女性が挿れられる側なのか。

 

 お互いの経験値によっても気を遣う必要があるかもしれません。どちらかが童貞・処女であるだけで上手くいかない場合もあります。ならば、未経験同士の方が上手くいくのかと聞かれれば、首を横に降るでしょう。

 

 心が通じ合っていても、体の相性が悪いだけでその関係が拗れる事だってあります。

 

 かつての私にとっては人類の繁栄と生殖行為が密接に繋がっているというのなら、セックスは不便であり欠陥であると思わずにいられませんでした。

 

 ですが、今の私ならわかります。万能じゃないからこそ、人はありとあらゆる努力(前戯)を行い、工夫(プレイ)をしていくのだと。

 

 愛を語らい、手探りで触れて、二人で気持ち良い所を積み上げていく。

 

 穴に棒を入れるのはその不便と欠陥を埋める為。

 

「んっ、ふぅ……あんぅっ、せ、んぱい……私のアソコ、変じゃないですか?」

 

「ん――、本物を見るのは初めてだし、比べようが無いからね……。ただ、俺の指でクチュクチュになって喘いでいるのを見ると滅茶苦茶興奮する。一日中、触ってても飽きないかも」

 

「そ、れは……私の体が持たないかもしれません……!んっ、ふぅっ……!ですが、いつかご期待に応えるように特訓致しますので……!あんぅっ」

 

「アソコに指を入れられながら意気込む後輩がエロ健気過ぎて辛い」

 

 ま、私と先輩の体の相性はバッチリですので杞憂でしたが!

 まだ本番までイッてないのにわかるのかって?わかりましゅよ!相性バッチリでなければ、現在進行形で先輩の指を受け入れている陰唇からこんなに愛液が出るわけないじゃないですか!

 

 ベッドで仰向けに転がっている私は隣で胡坐をかいている先輩に解されるようにじっくりと手淫をされています。

 そして、目の前には私の顔よりも長いかもしれない怒張。

 

 これは私も先輩と同じ様に目の前の性器を撫でた方がいいのですが……。

 

 うん、おっきい。

 

 いえ、別に見るのは初めてではありませんし……男性器も見た事はありますし、図解の物ですが。マシュ・キリエライトはそこまで緊張してません。ですが、これが後々、私の陰部に入るわけで……………………。

 

「あ、さらに締め付けが強くなった」

 

「考えてませんっ、い、いやらしい事とか考えてませんからっ!」

 

「そ、そっか」

 

「あっ、うぅっ……あ、あの先輩……ずっと触ってて楽しいですか?私の、アソコ、んっ、ふぅっ!」

 

 くいくいと膣内で蠢く男の人の二本指が私の腰を浮かせてくれます。指を折り曲げ、愛液を掻き乱すその手管は初めての私からも容赦なくはしたない声を出させて、その様子を見ている先輩は何だか楽しそうでした。

 

「楽しいというよりは嬉しいかな?自分の動き、一つ一つで好きな人が反応してくれるのは嬉しい。一生、傍に置いておきたいぐらいに。俺ってば案外、ドスケベだったのかもしれない」

 

「だ、大丈夫です……わ、私もドスケベ、ですかりゃあぁっ!んんぅっ、お、おそろいですぅっ……!!」

 

 水音が激しく、より生々しくなり、私の性感を高めてくれます。

 興奮が限界まで高まった私の目の前にあるのは先輩の男根。

 

 せっかく、先輩が私の性器を触ってくれているのなら、ここでお返しをするのも後輩の務め。

 

 意を決して、その男性器に手を伸ばします。

 

「あっ、ぅっ、マシュ……」

 

「も、申し訳ございません!い、痛かったでしょうか?」

 

「いや、ちょっとビックリしただけ、気持ち良かったからそのまま続けて」

 

「了解です。マシュ・キリエライト……愛撫対象を先輩のペニスへと捕捉。状態は勃起。素手での接触を開始します」

 

「わざとやってる?」

 

「……?」

 

「天然って怖いわ」

 

 触れるだけで先輩の男根がまるで意志を持っているようにビクンと震え始めました。私が握っただけでここまで反応を返してくれるとこそばゆくも嬉しくあります。ええと、男性器は繊細なので優しく、骨董品を扱うように丁重に。

 

 あ、凄い。撫でるだけで何度も震えてくれます。成程、先輩の言っていた事がわかりました。これは嬉しいですね。自分の手で好きな人が反応を返してくれるのは。

 

 あ、鈴口の所から半透明の液が零れています。何か拭く物は……ティッシュは少々遠いですので――。

 

「ちょ、マシュ……!」

 

「ふぁい?んむぅ、ちゅむぅ、ちゅぱぁっ……。ぁぁっ、これで綺麗になった。どうかしましたか?」

 

 亀頭部分に口を付けて、カウパー液を吸い上げました。少し粘っこいですが、味はあまりしませんね。あぁ、ですが先輩の亀頭に吸い付いた時は不思議な気分でした。今まで嗅いだ事もない味に匂い、しょっぱくて仄かな甘さもあるような、先輩が私の乳房に夢中になっていたのと同じ気分なのでしょうか?

 

 あれ、先輩、どうして、そんな血走った瞳で私の事を見て――。

 

「んんむぅっっ!?」

 

「本当にイケナイ後輩だ……。そうやって無意識に先輩の劣情を煽って、もうこっちも我慢出来なくなるよ」

 

 突然、喉まで侵入してきた剛直。そして、女性器を襲う今までとは違う湿った感触。すぐに互いの性器が口に触れ合っている事に気付きました。私の何気ない行動が先輩の情欲に更なる火をつけてしまったようです。

 成程、これは……何とも合理的な体勢……。これなら効率的にお互いの性器を愛撫する事が出来ます。

 

「んんむぅっ、んぶぅっっ!」

 

「ピチャピチャと愛液たくさん零してさ、シールダーならもうちょっとここの防御もしっかりしておいた方がいいんじゃないの?じゅるぅぅぅっ……」

 

 ひ、う、あ――、脳が溶ける――。

 先輩は今、何を……あ、私の愛液を吸い出しているんですね……。なら、私もお勤めを果たさなくては……先輩のペニスからたくさん吸い出してだげなきゃ……。

 

「マシュ、マシュ……んむっ、じゅるぅ、じゅるるるぅっ!」

 

「んぶぅっ、んぐぅっ!んぁっ、しぇんぱぁいっ……あむぅっ、んじゅぅ、じゅぼぉっ」

 

 腰を浮かし、口内を行き来する肉棒を舐め回す私、腰を前後に動かし、私の陰門に舌を挿し込み回転させる先輩。

 二人は初めて見る想い人の性器を欲望のまま貪ってました。

 

 顔は見えないけど、性器の反応がまるでお互いの表情のようで、舐めて舐められている相乗効果で興奮がいやがおうにも昂ってしまいます。

 

 そうやってしばらくお互いの性器を舐め合っていると、弱い所がわかってきました。

 

「じゅぶぅっ、じゅむぅぅっ、あぁっ先輩汁がどんどん溢れてぇ……勿体ないです、んむぅぅっ……」

 

 先輩は亀頭にキスされながら、鈴口を舌で穿られるのが弱く。

 

「んぅっ――!んぁっ……!し、しぇんぱぁい、しょこだめぇぇっ、腰、ビクンってなっちゃぁっ……んぐぅぅっ!んじゅぶぅっ、じゅむぅっ……!」

 

 私は陰部の上にある陰核を舌で転がされるのが弱い。有無を言わさず、肉棒を口内に突っ込まれているせいで見えませんが、それでも私の陰核は乳首の時と同じように膨れ上がって先輩を誘っているのだろう。

 

 凄い、気持ちいい、嬉しい、楽しい、先輩とのセックス――。

 

「マシュ、マシュ……!でる、出すぞ、口の中に出すから……!」

 

「んんんぅっ!」

 

 私は自身に夢中になってくれている先輩に嬉しくなり、肉棒から口を離さず、見えていないでしょうが、首肯で返事をする。口から下品な音を加速させて、顎が外れそうになるぐらい剛直がさらに膨れ上がります。

 

 それは射精の前兆で。先輩が人に対して初めて出す精液が私なのがどこか誇らしくて――。

 

「んんんん゛ん゛ん゛むむむぅうぅっ――!!」

 

 それは性の爆発。一緒に潮を噴き出して、絶頂した私を犯し殺す精の濁流。栓の壊れた蛇口の如く、流れ込んでくる精液は私の予想を遥かに上回る物でした。男性の射精はこんなにも激しい物だとは――。

 

 苦しく、むせ返る程の雄の匂い。なのに何故か口を離したくない。魔力としてではなく、雌の本能として先輩の精を求めている肉体。

 

 先輩の腰を掴み、必死に喉をならす私は窒息してしまいそうな程の物量を持つ白濁を必死に嚥下していました。

 

「んんむぅぅっ……!んぐぅぅっ……!!んむむっ、んぶぅぅっ、んんじゅぅ、じゅむぅっ、じゅぶりゅぅぅっ……」

 

 飲むだけ妊娠してしまいそうな濃い精液がドクドクと私の胃に流れ込んでくるのをはっきりと感じます。

 目を白黒させて、ようやく全て飲み切った私は未だ萎える事のないペニスから口を離します。

 

 口の端についた残液も指で拭き取り、お残しなくそれも舐め取ります。

 

「えへへ、先輩の全部、飲んじゃいました……ご馳走様です」

 

 お腹を撫でながらそう言った私を見る先輩の瞳の熱さに子宮が疼いたような気がしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウチの後輩がドスケベ過ぎる件」

 

「……先輩だけです、こんなにエッチになるのは」

 

「そうやって男をくすぐらせる言葉をポンポンと吐く所なんだよなぁ……」

 

 ベッドの上で仰向けに押し倒された私は隠す物もなく、股を開き、先輩に全てを曝け出していました。

 頭から火が出るくらいに恥ずかしく、だけど先輩になら私の全てを見て欲しいと、好きな人だからこそ――と二律相反する複雑な乙女心が宿ってました。

 

 ――『恋よ、恋!マシュもオフェリアもヒナコも、女の子に産まれたなら燃えるような恋をしなさい!』

 

 なるほど、これがかつてAチームのペペさんが言っていた恋なのですか。確かに、今にも股座が熱くて、燃えてしまいそうです。

 

 お互い視線は目の前の異性の肢体に対して釘付けになっていました。

 

 こういう時に気の利いた台詞の一つでも吐ければ良かったのですが……。

 

「ひゃうっ!?」

 

 突然、ギュッと先輩に正面から抱き着かれました!も、もう挿入ですか!?い、いえ、大変バッチこいなのですが……!後ちょっとだけ心の準備をばばば……。

 

「重いって思われるかもしれないけど、一生面倒見るから――。だから、今から抱く」

 

「せ、んぱい――」

 

「ありがとう。俺はもう大丈夫だからさ――」

 

 良かった。本当に良かった。雲が完全に晴れ切った先輩の表情を見て、私は自分のした事が独りよがりの無駄な事じゃなかったと確信しました。

 性的な繋がりで他者を慰めるのは不純?いいえ、想いが通じ合った男女ならば、こんなにも美しい交わりはないと私は断言します。

 

 彼が挿入しやすいように自らを淫裂を拡げ、誘う。

 

 ですから、先輩――。

 

「まだ、誰も挿れた事のない」

 

 あなただけの――。

 

「雪花の蜜壺に先輩の愛を注ぎ込んで下さい」

 

 マシュ・キリエライトが貴方の物だと心身共にわからせるぐらいにたくさん……。

 

「大好きだよ、マシュ――」

 

「あぁぁっ……!」

 

 告白と共に襲いかかる未知の感触。痛みと共にむず痒い痺れを与えてくれます。

 

 あんなにも大きい先輩の陰茎が私の膣道に浸入して……少しでも先輩が挿入しやすいように息を吐き、力を抜きます。

 

 膣の中で何かが先輩の肉棒を遮って、それがすぐに自身の処女膜だと理解しました。

 あぁ、煩わしい。今まではどんな攻撃を前にしても破れないで欲しいという想いの元、盾を構えていましたが、これ程までに早く貫いて欲しいと思った事はありません。早く、早く、先輩に純潔を――。

 

「んむぅっ!?んぁっ、せん、ぱい……れぁっ」

 

 逸る私の心を落ち着かせるように唇を包み込む柔らかい感触。

 最初に交わしたキスよりも深く大人なキス。

 

「ぇぁ、んちゅ、しぇんぱいぁい……んちゅぅ、はぁむぅ……」

 

 舌をたどたどしく動かす私をリードする形でお互いの唾液を接種し合います。

 精液といい、先輩の体から分泌される体液はどうして私を夢中にさせてくれるのでしょうか。センパニウムを接種し過ぎて中毒患者になりそうです。

 

「んんぅっ……!!」

 

 先輩とのディープキスを貪っている間に迸った鋭い痛み。ようやく先輩に処女を捧げる事が出来たと私は歓喜の涙を流していました。

 

 それを痛みのせいだと勘違いしたのか、一旦、キスを中止し、心配そうな顔で涙を拭った先輩が私に問い掛けてくれます。

 

「……ごめん、痛かった?もっとうまく出来れば良かったんだけど……」

 

「い、いえ……そんな!?とても気持ち良かったです……。むしろ先輩に貫かれた痛みが心地良かったというか……!えぇ、はい、先輩になら何度でも処女膜を破られても無問題です!」

 

「お、おう。そっか……」

 

 色々ととんでもない事を口走ってしまった気もしますが、男女の情事において深い事を考えては負けなのです。それでも先輩の性器が私の中に入ってるのは感慨深いものがあります。

 

「先輩は……その、どうですか?」

 

「どう、とは?」

 

「気持ち良いですか?」

 

「うん。マシュの肉襞が絡み付いてどんどん絞ってくる。このままレイシフトして、特異点修復出来そうなぐらいに気持ち良い」

 

「そ、それは少し考え直して欲しいです……」

 

 普通に恥ずかしいですし、繋がった状態のままだと上手く戦えません。個人的な士気は急上昇するかもしれませんが。

 

「冗談だよ。じゃ、ちょっとずつ動くよマシュ」

 

「あ、あああぁっ……は、はいぃ、好きに動いて、くださ、いぃっっ」

 

 膣の中にある肉棒が前後する度に情けなく上擦った声があがってしまう。ですが、そんな様子の私を嬉しそうに見てる先輩を見てると恥ずかしいけど、もっともっといやらしい反応を上げたくなって――。

 

「んぅぁっ……!せ、せんぱい、何ですかぁっ、これぇ……!せっくすって……こんなに気持ち良いものなんですかぁぁっ!」

 

 でも、そんな事を意識しなくても先輩のストロークが始まっただけで私の口からは卑猥な声が自然に吐き出されていく。何度も何度も腰を叩き付ける肉と水音の衝撃が処女だった私の肉体を先輩専用へと開発していくようで――。

 

「あっ、ああぁっ、先輩のカリがぁ、何度も、何度も、ナカァえぐって……あぁっ!駄目、駄目ですぅっ、先輩、こんなの、は、ひっ、溺れちゃう……先輩とのセックスに溺れちゃぅうっっ……!」

 

「いいよっ。溺れてっ、ほら……!、人工呼吸してあげるから――」

 

「んむぅっ、ちゅ、ちむぅっ、んぁっ、しぇんぱい、しぇんぱぁい……れろぉっ……」

 

 言葉も情欲の赴くまま、理性を投げ出して、自分でも何を言っているのかわからないまま、お互いの体に喰い付く。下腹部を行き来する先輩の男根も。口内を淫靡に絡み合う舌も、そして――。

 

「んむぅ、マシュ……手を握って……絶対に、絶対に離さないから――!」

 

「ふぁい、んむぅ、ちゅ、しぇんぱぁい、ちゅ、ちゅむぅっ……」

 

 正常位で指を絡め、握り合い、唇を重ねて、お互いの腰を打ち付け合う。

 私の乳房が先輩の胸板の上で潰れて乳首が擦れるのが心地良い。口内を蠢く唾液が美味しい。不安気に絡められる指が愛おしい。子宮口を突く先輩の肉棒が気持ち良い。

 

「んむぅっ、んあぁっ、あむぅっ、ちゅ、ちゅ、ちぅむぅっ、ああぁっ……!」

 

 もっと手を握って、もっと抱き締めて、もっとキスをして、もっと腰を振って、もっと犯して。

 

 人というのはこうも我が儘になるのか。死ぬしかないと思っていたあの中で最期に手を握られるぐらいで良いと思っていたのに。今はさらに強い欲望を求めてしまう。

 

「んじゅぅっ!じゅぷぅぅっ!んあぁっ!あむぅっ!れろぉっ……!しぇんぱぁい、しぇんぱぁっ……!」

 

 狂ったように舌を絡め、肉棒を膣で咥え込み、先輩に呼びかける。

 

 気づけば、対面座位の体勢になってより深く男根が私の奥に入り込んでいました。先走りと愛液が混ざり合ってグチュグチュと泡立てています。

 手も唇も肉棒も握り合ったまま。先輩のアソコは再び、精液を吐き出す前兆として膨れ上がり始めました。膣の中でそれを如実に感じた私の子宮も子種を求めるように降りていっています。

 

「んぁむぅっ、ちゅむぅぅっ……んぱぁぁっ……独りにしませんから……。必ずぅ……ああああぁっ……」

 

 汗と愛液が性交の熱で蒸発し、霧となって二人を包み込む。これが性交の熱さ。愛する人とのセックス。私の世界は何と狭かったのでしょうか。こんな喜びを今まで知らなかったなんて。

 

「先輩……あっ、あんぅっ!らしてぇ、いいですよぉ……初めての膣内射精を私にしてぇ……私を先輩だけの女にしてくださぁい……んひぃぁっ!」

 

「マシュ、マシュ、マシュ、マシュ……あぁ、出る、出るぞ……マシュ……!二度と離れないように君の胎に精液を注ぎ込むぞ……!」

 

「はい、はひぃっ……デミサーヴァントの空っぽの子宮に熱い精液をらしてくだひゃい……!孕ませる勢いでぇぇっ……!んぅっ、ちゅぅぅぅむぅっ……」

 

 歯がぶつかりそうなぐらい強い勢いで再びキス。お互い初めてとは思えない程にセックスに没頭する。まだ終わりたくない。けど出して欲しい。出して楽になって欲しい。私を絶頂へと導いて欲しい。

 

 自身を女と痛感させる願望がどんどん湧き出て、先輩の射精を促す。

 

「んんんぅぅぅっ――!!!んんんっぁうっ……!!んああああぁっ……!!」

 

 口淫をした時とは比べ物にはならないレベルの射精量。驚きのあまり、キスを中断し、嬌声の悲鳴をあげてしまう。これが射精される感覚。子宮に子種を流し込まれる感覚。そして、それを堪能しながら、絶頂する悦び。

 

「やばっ、止まらない……マシュ……あぁっ、まだ出る……」

 

「あひぃっ……!あっ、あああぁっ……!んくあぁぅっ……!感じますぅ……!先輩の熱いのが、まだたくさん、ピュー、ピューって……んぅぅっ!あぁぁっ……!」

 

 子供が出来る肉体ではないけど、それでも叶うなら、先輩との子を孕んでみたい。

 私の年齢でそう考えるのは異常かもしれないが、抜かれる事なく、膣内出しをされ続けている私はその事で頭がいっぱいになっていた。

 

「あっ、ああぁっ……まだ終わらないんですね、こんなに出して……んぁっ、気持ち良かったですか……?」

 

 でももし、先輩との間に子供が出来れば、先輩と家族になれれば、もう二度とあんな悲しい瞳をさせる事はない。先輩を寂しくさせる事はない。先輩に()()()()()()()()()()()――。

 

「あぁ、最高だったよ。あっ、ん――っ……」

 

「まだ、治まりがつかないですか?」

 

「面目ない……けど、マシュがしんどいなら」

 

「何を言っているんですか。これでも耐久力に定評のあるデミサーヴァントですよ?先輩にも負けません」

 

 ぎゅっと力こぶを作り、二回戦を所望する。決して、虚勢というわけではない。確かに初めてのセックスに処女卒業と疲労感がありますが、膣内射精をされた後に不思議と力が湧いてきてるも事実なのです。魔術師の体液は魔力になりますが……これはそういう理由ではなそうです。先輩だから、先輩の精液だから?

 

 やはり、愛あるセックスは凄いです。

 

「うぅ……ウチの愛らしい後輩がこんなにエッチに夢中になるいやらしい娘になっちゃうなんて……」

 

「なっ!せ、先輩のせいですよ!こうなったのは……!」

 

「けど、ほら、ここの女性器とか抜いた後に白濁がどっぷり漏れてどえろい事になってるよ」

 

「出したの先輩じゃないですかぁ!」

 

「でも出させたのは後輩だもん。俺はマシュのドスケベボディに喰らい付かれた哀れな被害者なんだよ、このけだもの!」

 

「ヒドイ責任転嫁を見ました!?」

 

「というわけでマシュも大丈夫と言ってくれたのでリベンジマッチといきましょう」

 

「最初から最後まで私が防戦一方だったと思うのですが……」

 

「私を犯した責任、とってもらうんだから」

 

「それはむしろこっちの台詞では……!?」

 

 こうやって他愛の無い会話を交わす事が出来るぐらいに回復してくれたのは性療治をした甲斐があったもです。うん、やっぱり先輩落ち込んでいるよりも奇天烈な言動をして、破天荒な行動をしてる方が似合ってます。

 

 それでも――。

 

「辛い時は甘えてください。苛立った時は私の体で発散してもいいです。先輩には楽しく生きて欲しいです」

 

 また悲しい事があったら何度でも私が慰めてあげますから――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……」

 

「何度目のため息だい?ありとあらゆる幸せが君の元から去ってしまうよ、ロマン」

 

「いいさ、それで他の人達に幸せがいくのなら、僕は何度でもため息を吐くよ」

 

「これは重傷だ。あんなに勇ましく宣言しておきながら、気に病んでいるのかい?」

 

 管制室で二人の男女?がいた。ロマニ・アーキマンとレオナルド・ダ・ヴィンチ。ロマニの鬱屈とした顔を見て、ダ・ヴィンチは呆れながら笑っていた。

 

「そもそも人理修復はAチームという最精鋭の魔術師達を中心に48人のマスター達で万全のバックアップの元、行う物だったのに……それを僕は年端もいかない少年少女に押し付けて……あぁぁぁ~~……」

 

「今の状況でそれが最善なのだから仕方ないだろう。絶世の美女を前にあんまり鬱陶しいものを吐き出さないで欲しいな」

 

「仕方ないと納得しているんだから。こうやって泣き言を言うぐらいは許して欲しいよ、レオナルド……」

 

「君の悲観主義は今に始まった事ではないけど。私はそこまで不安には思ってないんだよ。マシュだってその身に宿っている英霊の力を十分に扱っている。そして、そのマスター君だって一般枠とは思えない程に肝が据わってて頼りになるじゃないか……。いや、ホント、色んな意味で」

 

 自身から少し離れた席でどこか遠い目をする天才にロマニもそれ以上は何も言わなかった。泣き言を言おうが言うまいが、すべき事は変わらないのだから。

 

「なんであれ、初々しい少年少女が一蓮托生で進んでいくんだ。その浪漫ある軌跡をこれから眺める事が出来る幸運を喜ぼうじゃないか。ロマニ」

 

「出歯亀は感心しないよ、レオナルド」

 

 嬉々として、カルデア中の監視モニターが映っているパネルを技術開発部部長特権で弄るダ・ヴィンチを見て、彼女?が何をするのか察したロマニが釘を刺す。

 

「芸術的取材と呼び給え!今日はマシュがあの子の部屋に遊びに行っていると聞いた。どこまで進展したか気にならないのかい、ドクター・ロマン。手は繋いだか、告白はしたのか、あるいはキスだって実はもう済ませているのかも!」

 

「あの二人はまだそういう仲じゃないだろ。気にならないと言えばウソになるけど。マシュに対してそういう不義理は……」

 

「面倒臭い親心というやつなのかね。じゃあ、いいよ!私だけで見るもんね!!」

 

 自分だけ楽しもうとヘッドセットを付け、ピピッとモニターをマスターのマイルームへと繋げる。ここに召喚されてから、男女の青春模様とは無縁な灰色の景色ばっかり、やれ、資源が足りない。やれ、戦闘訓練だ。やれ、メディカルチェックだ……と潤いが本当に足りないとダ・ヴィンチちゃんは憂いていた。

 

(私の予想ではマスター君の方がリードする側だ。ベッドの上で手を繋ぐぐらいはしていてもおかしくないかな?うひひ、さてさて、どうなってることやら――)

 

 

『あひぃっ……!!しぇんぱぁぃ、しぇんぱぁっい……そんにゃ、二つの穴、同時ににゃんてぇぇっ!んぉぉぁっ!あぁっ、ひやあああぁっ!!』

 

『ん――?どこの穴か具体的に言ってくれないとなー。どんな風に責められているのか、懇切丁寧にさぁ。俺の後輩は賢い娘だから言えるよねぇ?』

 

『ひゃい、しぇんぱいのお、おちんちんが私のアナルに挿入ってぇぇ……んあぁぁっ、おまんこの穴ぁ、指で穿られてぇぇ……あ、あぁぁっ!おっぱい揉まれながら、乳首を指で挟まれてぇぇぇっ……!んぉぉあああっ!』

 

『はい、良く出来た後輩にご褒美』

 

『んほぁあああぁっ!!出てるぅぅっ!しぇんぱいのドロドロ精液ぃ……私の特異点にレイシフトしてましゅぅっっ……!!あっ、んっ、ちゅ、ちゅむぅっ、んぅ、しゅきぃ、射精されながら、キスするの好きで』

 

「 」

 

 ほんの数秒、思考が真っ白になった天才芸術家は無意識の内にモニターを切っていた。ヘッドセットを付けて、音が漏れないようにした少し前の自分を褒め称えたくなった。

 

「ん、何だい?結局、真面目に仕事をする気になってくれたのかな?」

 

 ロマニの問いには答えず、息を吐き、背もたれに深くよりかかるダ・ヴィンチちゃん。

 

「はやすぎなぁい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ▲▲▲

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 王城から出た私と先輩はモスクワの街並みを楽しみながら二人で並んで歩いていました。カドックさんとのお茶会も突如として客室に乱入した異聞帯のアナスタシアさんが――。

 

 

 ――お、お化けだぞ――!べ、べぇっ――!

 

 ――……………………。

 

 ――べ、べぇっ……!

 

 ――い、いや、君は皇帝だろう?

 

 ――ッ!カドックの馬鹿!もう知らない!こういうのが好きって言ってたのに!ファッキン童貞!!うわーん!

 

 ――それをどこでっ!?て聞くまでもないがっ……!待ってくれ、アナスタシア!せめてもう一度チャンスを!

 

 

 泣きながら、逃げるアナスタシアさんを追うカドックさん。なし崩し的にお茶会は中止となりました。ヤガの子供達が楽しそうに雪道に足跡をつけていくのを目にしながら、私はふと懐かしい思い出に浸っていました。カドックさんが私達の馴れ初めを聞いたからでしょうか?初めて、先輩とまぐわったあの日を。

 

 あれから、何度も何度も様々な形で私達は体を重ね合いました。

 

 夏には海辺の岩陰で水着ずらし挿入プレイを。ハロウィンの仮装に身を包んで首輪をつけながら、深夜のカルデア散歩プレイを。お正月には振袖脱衣羽根突き勝負プレイを。バレンタインにはチョコ鎧女体舐めビッフェプレイを。そして時には、ギャラハッドさんなりきりくっころ凌辱プレイを。

 

 艶やかで温かく、とても輝かしい日々。

 

 今となっては無用な心配だったかもしれません。しかし……ある時、ふと私は不安に駆られました。

 

 私は人工的に造られたデザインベビー、デミサーヴァントになった影響もあって普通の人より寿命は短い。

 

 先輩を独りしないと大口を叩いておきながら、胸中は憂惧に染まっていました。もしも、私が所長のように先輩の元から去ってしまったら?あぁ――己惚れるつもりはないが、きっと先輩の心は壊れてしまう。

 

 だから、たくさんの『大切』をつくろうと思ったのです。

 

 所長を失った先輩の痛みを私が癒せたように。もしも、どこかで私がいなくなっても寂しくならないように先輩の『愛』を見つけようと。先輩が独りぼっちにならない為に家族をいっぱいつくろうと。私がその手伝いを出来ればと――。

 

 

 

『ふむ、まぁ……随分と早い再会になったが、これも運命だろう。あの特異点で聖剣の余波に恐れる事なく突貫する勇気は評価しよう。長い付き合いになるといいな』

 

 ――冷徹無慈悲な黒き騎士王、アルトリア・オルタを。

 

 

『あり得ねぇ……。普通、ベッドの中であんな好き放題するか?マジでケダモノ過ぎんだろ、お前、ちょ、待て……また、押し付けんなぁぁっ……♡』

 

 ――円卓の騎士が一人、アーサー王を終わらせた叛逆の騎士モードレッドを。

 

 

『マスターは吾にとって、父親であり、息子であり、幼馴染であり、恋人であり、夫でもある。何もおかしい所はない』

 

 ――ギリシャ神話における純潔の狩人、アタランテを。

 

 

『うおぇぇぇっ……すまない、本当にすまない。吐瀉物を君にぶちまけるなんて……その後始末もさせてしまうとは……従者失格で……んっ、んむぅ……だ、駄目だ、今、吐いたばかりで口の中で……んじゅむぅっ、そんな構わないなんて……んじゅるぅぅっ』

 

 ――傍若無人の語源となった義侠の暗殺人、荊軻を。

 

 

『帽子と軍服を脱ぐと只の正統派美少女にしか見えない?喋ると台無しだけど?是非も無いよネ!ふむ、まぁ、貴様と二人っきりの時だけに魔王の殻を脱いでみるのも一興かもしれんがのぉ?ふふ、どうじゃ、どうじゃ、ギャップ萌えじゃろ?じゃろ?え、やっぱ台無し?のぶー……』

 

 ――日ノ本で最も有名な偉人の一人、第六天魔王、織田信長を。

 

 

『最近、色々とアグレッシブに行動し過ぎた気がする。よって私はあのキャラ被りの危機を感じている姫に負けないぐらいの引き籠りをかますぞぉー。さぁ、マスターも私の虜となり、めくるめくる怠惰ワールドへ…………。あの何故マルスバイブを片手ににじり寄って……もうそのテンプレもいい加減飽きて、んぉおぁぁっ♡』

 

 ――文明に毒された文明の破壊者。破壊の大王、アルテラを。

 

 

『あひぃ♡ あぁっ♡ もうしわけぇ……もうしわ御座いましぇんぅっ♡ 姉様方ぁぁっ……もう隠れてぇ、姉様方のコスプレでマスターと致しませんからぁっ……!ひぁああっ……!!マスターも……腰、とめてぇぇっ♡』

 

 ――ゴルゴン三姉妹の末妹、女怪メドゥーサを。

 

 

『はぁ――もう、最っ低。新宿の衣装でラブホでパコりたいとか頭おかしいんじゃないの?つーか、あの時のドレスまで持ってきてるし……。は?「嫌なの?」って?。……ここまで来てる時点で察しなさいよ、馬鹿』

 

 ――憤怒の贋作、竜の魔女、造られた聖女。ジャンヌ・ダルク・オルタを。

 

 

『もう、また痕が付いてるわ。傑作ね……血の伯爵夫人が吸血されるのに嵌ってしまうなんて……。貴方だけよ、こんなに弱い私を見せるのは。捕食されるだけの生娘みたいな私を襲って……んぁっ』

 

 ――暗黒面のエリザベート・バートリー。吸血夫人、カーミラを。

 

 

『怪我をしたら、私の名前を呼びなさい。体調を崩したら、私の手を取りなさい。無理をしそうになったら、私の顔を思い出しなさい。性交をしたくなったら、私を求めなさい。未来永劫、貴方のありとあらゆる病を治す為に私がいる事を自覚して下さい』

 

 ――クリミアの天使、鋼鉄の看護師。ナイチンゲールを。

 

 

『ダイエットも兼ねてのスパーリング?やらないっての!アンタの攻撃ずるいんだもの……卍固めであんな所触ってくるなんて反則よ反則!神罰ものよ!もう、癖になったらどうしてくれるのよ……』

 

 ――拳と祈りで悪竜を鎮めた聖女マルタを。

 

 

『すき!スキ!S・U・K・I!好き!好☆き!好き(挨拶)!好き(迫真)!好き(この世の真理)!好き(宇宙開闢即ち旦那様LOVE)!』

 

 ――恋に狂う、執念の竜乙女。清姫を。

 

 

『マスター君♪6Pもいいけどー、そろそろ8Pもいいかなーって』『とぼけなくてもいいわ、私達がどこか親近感を得ているあの幼子達……』『自身の母親と同じ顔をした女達と乱交パーティ……背徳的過ぎるわね』『疑似親子丼とか、それどんなエロゲ!?けど、マスター君の存在自体がエロゲみたいなものだし、アイタ!?』『ククク、オリジナルがどんな顔をするか見ものよのぉ……』

 

 ――意思を持った小聖杯の欠片達。四元素と黒きアイリスフィールを。

 

 

『被虐趣味ではありませんよ。痛いのは勿論、嫌いです。マスターからされるのが好きなだけです。ふふ、一度経験してみてもいいかもしれませんよ、マスターに首をキュッと絞められるとそれと連動して、私の膣もあの人の肉棒を締め付けるんです。あぁ、今、私達は繋がりあってるんだなって女の悦びを……どうかされましたか?顔色が悪いですよ、師匠?』

 

 ――アーサー王のif。芽吹いたばかりの純白の騎士姫。アルトリア・リリィを。

 

 

『貴方と私の関係?そうね、マスターとサーヴァントで、食堂で見かければ、それとなく隣に座って、愉快な催し事があれば一緒に悪ノリして、一週間に二日分ぐらいの時間を取って、体を貪り合う程度の関係。でしょ?それとも貴方が前に見た夢のような関係の方がお望み?』

『あー、マスターいい?虚月館……だったかしら?あんまりその夢の話を(ステンノ)にしないで欲しいの。(ステンノ)あれで、嵌りやすいタイプなのよ?この間も「キャンパスライフね……そういうモブっぽい女が好みなのかしら、あの人は」とかブツブツ呟いていたし。…………もしかしなくても手遅れなのかしら、これ?』

 

 ――男を誑かす偶像の女神達。ゴルゴン三姉妹の上姉妹、ステンノとエウリュアレを。

 

 

『う――ん……。マスターに抱かれる度に体の調子が良くなるのはいいのですが、看病してもらうチャンスが少なくなるのを惜しんでしまうというどこか不謹慎な事を考えてしまう乙女心。座薬?なななななにをおっしゃっているのでしょうかかかかか!?そんな特殊プレイに嵌るわけないじゃないですか――』

 

 ――幕末における天才剣士の一人。新選組一番隊隊長、沖田総司を。

 

 

『んあぁっ!んぉっ……!た、宝は使ってナンボだけどぉぉっ!やっぱり花嫁衣装で、抱かれるのはぁ……アタシのタイプじゃにゃあああぁっ!?や、やめぇっ♡ 鏡に映すなぁぁっ!んぉぁっ♡』

 

 ――イギリス艦隊司令官。太陽を落とした女、フランシス・ドレイクを。

 

 

『シャドウボーダー……。鋼鉄の馬も悪くありませんが、せっかく漂白の大地を走るのなら犬そりとかどうでしょうか主殿!玉座に座る主殿を引っ張りながら四足で走る私を筆頭とした雌犬同盟!敵も怯む事間違い無しですよ!さすがに却下?そうですか……くぅーん』

 

 ――天賦の才に愛された源氏の女剣士。源義経……またの名を牛若丸を。

 

 

『うふふ、いっぱい出したわねマスター。お腹がタプタプよ。まるで妊娠してるみたい♪子供……?そうね、4……4人欲しいわ。う――んと愛情を込めて幸せにしてあげるの!!』

 

 ――革命に倒れる前、フランス国民に愛された王妃。マリー・アントワネットを。

 

 

『なんやろねぇ……。ちびっと前までは旦那はんを鬼にせんと躍起になっとったのに。びぃすと、やったけ?いつの間にかひとでなしになっとるし。ホンマ飽きないねぇ……旦那はんといると。このまま死ぬまで一生楽しめるかもしれへんわぁ……』

 

 ――酒気と共に淫気を吐く生粋の『鬼』。酒呑童子を。

 

 

『ふっ!貴様に吐く情報など何一つ無い!これ以上、辱めても何も得る物はない、んおぉぉあああぁっ!?あ、主殿ぉ……♡ いきなり、挿入はぁっ……は、反則ぅ、んひやあぁっ♡』

 

 ――百貌のハサンの一人格。マスターの精液によって一個人としての存在を得た通称アサ子さんを。

 

 

『マスター!リーグマッチしましょう!見込みのある新メンバーが加入したんです!ドレイク船長?いいえ、違いますよ。誘ったのですが、ゲーム自体にトラウマを持っている様子で……。「武器がカメラだけとか心細過ぎるっての。あぁ、映したくない……けど撮らなきゃ殺される……」とか何とかブツブツと』

『知ってる知ってる確か泣きながら実況動画上げてたし。マスターがやらせたの?あの汚物が「解釈違いっぽいけど、これはこれでアリィ!!」って気色悪い動きで発狂してたから。それで新メンバーってのは水着になると若干テンションが高くなる金髪の騎士王様だよ。空気が読めないぐらい敵を殲滅しそうな所がグッドだよね。あとアンと声が似ている気がする』

 

 ――比翼連理の女海賊コンビ、アン・ボニーとメアリー・リードを。

 

 

『まぁ、元祖アルトリア顔セイバーが来ようが、やたらと衣装が優遇されている赤いセイバーが来ようが、何か相棒面している恋愛糞雑魚うどん侍が来ようが、私がマスターにとってのNo1セイバーだという事は揺るぎないのです。最近の悩み?弟子(リリィ)がしんどい』

 

 ――サーヴァントユニヴァース界からの異邦者。セイバーを殺すセイバー(自称)、謎のヒロインXを。

 

 

『マスター、蠱毒という言葉は知っていますか?えぇ、入れ物の中に大量の生き物を閉じ込めて最後の一匹まで殺し合わせるというものです。直接的に関係ないとしても毒とつく以上、毒のスペシャリストとして私も無反応とは……え?まずは「俺の着替えが入っている洗濯籠から出てきて欲しい」?そうですか……。このままマスターの匂いに包まれながら洗濯機で回転させられるも良かったのですが……』

 

 静寂の暗殺者。毒と女を司るハサン・サッバーハの一人、静謐のハサンを。

 

 

『ふふん!いつもは子イヌにあひん♡ あひん♡ ってされてるから偶には私が攻め側になるわ!というわけで人海戦術でハロエリ!ブレエリ!と自力で人数を増やす事に成功!まさにプラナリザベート!3人に勝てるわけないでしょ!』

 

 ――吸血鬼カーミラの幼き姿。恋し歌うドラクル、エリザベート・バートリーを。

 

 

『いえいえ、何も問題はありませんとも。マスターは魂が震える程にイケメン。ぷるぷる、ぼくはわるいビーストじゃないよう。というやつです。遠い未来、私の本体と怪獣大決戦とかおっ始めなければ、大丈夫ですとも。おほほほほ』

 

 ――自称良妻狐耳巫女呪術師。別名タマモシャーク。白面金毛九尾の一尾、玉藻の前を。

 

 

『うむ。正直な所、第1次正妻戦争に関しては少々やり過ぎたと思っているすまなんだ。しかし、事態を収拾する為とはいえ、お前もヤリ過ぎだと思うがな。「膣に挿入した」という結果をつくりだしてから「肉棒を取り出す」という原因をもたらす……フフ、まさに必殺の魔槍。お前だけのゲイ・ボルクというわけか』

 

 ――世界の外側に弾き出された紅槍使い。影の国の女王、スカサハを。

 

 

『私もあんまりアタランテの事、言えなくなっちゃったかなぁ。うん、正直に言うと子供になった君を甘やかしたり、獣みたく背徳的に犯されるのに嵌っちゃってる。私も変態さんだったみたい。……ありがと、そう言ってくれる君が大好きだよ』

 

 ――古代ブリタニアの母。勝利の女王、ブーディカを。

 

 

『せっかくの休み日といってもそこまで甲斐甲斐しく私のお世話なんてしなくてもいいのよ?確かに私は働いているけど、あなただって毎日のように家事をしているじゃない。え?今日は「朝から夜まで食事はぜーんぶあーん&お風呂は湯上り後のマッサージ付き全介護&二度寝昼寝就寝は全て膝枕or添い寝コース」?駄目よ!そんな事されたら、私二度とキャリアウーマンにはなれないわっ!あ、あ、あ、堕落の音~~……』

 

 ――世界で最も有名な女スパイ、陽の眼を持つ女。マタ・ハリを。

 

 

『私もそのぉ……トナカイさんの子供が欲しいと言ったら迷惑でしょうか?日に日に大きくなってくアリスのお腹を見て、羨ましくなったという気持ちもあります。私のここの袋の中にトナカイさんのプレゼントを頂けたらなって……えへへ、サンタ失格ですよね、こんなの』

 

 ――うたかたの夢。聖女の贋作の幼き姿。サンタを夢見るifのif。ジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィを。

 

 

『あっ、マスター。今、私のお腹の中を蹴ったわ。ふふ、妊娠って現実的な事なのに、私の中では物語の話以上に現実離れした事よ。私には縁が無い話だと思ってたもの。だからありがとう、アリスを愛してくれて、ありすを産ませてくれて』

 

 ――多くの子供達に愛された絵本。鏡の国のアリス。ナーサリー・ライムを。

 

 

『ジャックにアリス、バニヤンにアビィとイリヤとクロエとアナ、それにわたしたち皆でおかあさんにおかあさんにされるの!とぉっても楽しみ!ん?アタランテのお姉さん、どうしたの?』

 

 ――水子の魂の集合体、シリアルキラー『切り裂きジャック』。ジャック・ザ・リッパーを。

 

 

『んぉあああっ♡ あひっ♡ あひぃっ♡ そんな、そんなぁっ!風紀紊乱はいけませんのにぃっ♡ マスターの金剛杵で私の御禁制が御禁制されてますぅっ♡ んんんぁあぁああっ♡ 母なのにぃっ♡ 風紀委員長なのにぃ♡』

 

 ――牛頭天王の血を司る平安時代の都を守護した母たる武士。源頼光を。

 

 

『王妃の時といい、アストルフォの時といい、君と二人っきりの時といい……毎回、何故私ばかり苛められる側になるのだ……。受け担当?何の話かな?……はぁ、最近はラーマ殿と話が合うよ』

 

 ――女であり、男、男であり女。フランス王家を支える為に活躍した騎士にしてスパイ。シュヴァリエ・デオンを。

 

 

『魔力供給青姦プレイ……魔法少女凌辱プレイ……姉弟おねショタプレイ……マリーを混ぜてのヴィヴ・ラ・セックス……。あ、マスターですか。えぇ、大丈夫です。今、頭の中で響いている煩悩と戦っている所ですから』

 

 ――主の導きの元にフランスを救った聖女。ジャンヌ・ダルクを。

 

 

『ほむほむ、はふはふ。甘い物もいいが粉物も悪くない……。祭りというのはやはり良いなマスター!むぐぐ、口元ぐらい自分で拭けるぞ!子供扱いするでないわ!』

 

 ――大江山の鬼の首領、享楽(甘味)に耽る鬼の童。茨木童子を。

 

 

『全く貴様は。この私の膝の上に躊躇いも無く乗ってくるとは……。魔獣たる私を椅子扱いか。もういい、貴様の性癖が逸脱しているのはとうに承知している。あぁ、同じ獣らしく躰を貪り合うとしよう』

 

 ――メドゥーサの別側面。魔獣の女王、ゴルゴーンを。

 

 

『不思議な気持ちです。きっと泡沫の如く、短い間だけ見れる夢だと思ってたからです。二度と会えないと思ってた姉様方。そしてマスター、大好きな人達とこうして家族みたいに過ごせるなんて思ってもいなかった。未来の私(メドゥーサ)怪物になった私(ゴルゴーン)も同じ事を思っていますよ。……ありがとうございます、本当に…………本当にありがとうございます……マスター、大好き』

 

 ――偶像となったメドゥーサ。幼き女神の可能性、メドゥーサ・リリィ、通称アナを。

 

 

『チョコラミスさん?でしたっけ、何でもマスターさんにパコられる前は体がチョコで出来ていたとか。そうですね、餡子でしたら私も危なかったです。マスターさん一筋の所を浮気していたかもしれません。はむ、はむぅ、じゅるぅぅっ……っはぁ、うん、やっぱりマスターさんの体はあまぁいです』

 

 ――サーヴァントユニヴァース界からの来訪者。甘味中毒、暗黒のヴィラン。謎のヒロインXオルタを。

 

 

『嬉しいです。はい、アリスさんが身籠った事ですよ?こうして、マスターの家族が……。私達の家族が増えるんです。嬉しくないわけないじゃないですか。ここからたくさん私達の家族をつくりましょうマスター。マスターがもう二度と寂しくならないようにたくさん、ね。異聞帯とか、クリプターとか、異星の神とか、邪魔な物があれば全部私がパンケーキにしてあげますから』

 

 ――コルキスの王女、裏切りを知らず、魔女となる前の可憐な少女。メディア・リリィを。

 

 

『そう、ビーストになったのね。何よ、月並みな言葉だけど貴方は貴方。朽ちかけのプリマドンナを拾った愚かで優しい貴方のまま。何も変わらないわ。愛しい愛しいアルブレヒト、どうか最後まで踊らせてくださいな。心だけじゃなくて躰も繋げられた私は貴方から飛び立てなくなってしまったのですから』

 

 ――電脳空間でマスターと出会ったプリマドンナ。快楽のアルターエゴ、メルトリリスを。

 

 

『マスターにお仕置きされるの期待して、喧嘩をするとか同じ女としてどうかと思うんです。まわりくどくて見てられないというか……。やって欲しいなら、素直にそう言えばいいのにそんな度胸も無いのかなって。あんな痴女みたいな格好している癖に。え?マスターの国の鬼の人と武者さんの事ですけど?』

 

 ――二つの凶悪な武器を抱える少女。愛憎のアルターエゴ、パッションリップを。

 

 

『余計なお世話だったんでしょうか。リップとメルトを押しかけて性的にセンパイを堕とそうとしたのも、残酷な未来を目にしなくてもいいようにセンパイを閉じ込める空間を作ったのも……もうこれ以上、戦わなくてもいいと思ったのも。…………なぁーんて、殊勝な事をこのBBちゃんが言うと思いましたかぁ?』

 

 ――月の頭脳が生み出した超級AI。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。ムーンキャンサー、BBを。

 

 

『父ショタ?わけのわからぬ事を言うな。そうだ、もうあれはせぬ……。だから、モードレッドとナイチンゲールを誘わなくともよいと。純潔の狩人も呼ばなくていい。もう一度、あのプレイを味わったら、余は、こほん、私は戻れなくなってしまいそうな気がしてな』

 

 ――聖剣ではなく聖槍を持ち黒化した騎士王。嵐の王、ランサー・アルトリア・オルタを。

 

 

『えぇ、マタ・ハリとペンテシレイアにマスター専業主夫同盟に誘われたのですが、丁重にお断りしました。いえ、仕事から帰った自宅にいつでもマスターがいるのは心が惹かれますが……はい、やっぱり旦那様よりも首輪をつけて私を舐め回してくれるペットなマスターの方がいいな……と』

 

 ――獅子の如き鎧に身を包む騎士王。聖槍を持ち、女神に近付いたアルトリア・ランサーを。

 

 

『やぁ、メディアっ…………て。そろそろこの語り口から始まるテンプレもどうかと思うんだ。まるで私の持ち芸が妹弟子がいないと出来ない半端な物だと思われてしまうからね。というかこれ、まるで私がお前以外に碌に話相手がいない寂しい女みたいでちょいと印象がよろしくない。そろそろ、姪離れをする時が来たと思うんだ。そもそも私は単体でも十分成り立つヒロイン力を持っていると思うんだ。だってほら、大魔女だぞ?キュケオーンだぞ?という事で勝ちヒロインになる為にお前にはこの場から一回去って欲しいんだ。「別にそんな事言われなくても、これから用事があるからいなくなるつもりだった」?そうかいそうかい、それは結構。うん、うん、マスターとシミュレーションに籠って魔術とフィギュア作りの授業ね……しかも二人っきり。あっちの時間で一日ぐらいか、それは長丁場だ、いってらっしゃい!…………………………え?』

 

 ――アイアイエー島の神話に名高き魔女。恋に翻弄される乙女、キルケーを。

 

 

『ひぅぁぁっ♡ あぁっ♡ んぁああぁっ♡ あぁ、すごぉい♡ マスターのハイマラキが私のレムリアにドジアンアンってぇえっ♡ こんなのぉ、私のレムリアが射精同調しちゃうぅぅっ♡ くるぅ♡ マハトマきちゃぅう♡』

 

 ――神智学の祖。高次元の存在マハトマを求めた天才魔術師、エレナ・ブラヴァツキーを。

 

 

『どうです、ラーマ様気持ち良いですか?私から生えたマスター型のディルドとマスターの本物ペニス。ラーマ様の可愛い雌ちんちんをこうやってマスターの偽物チンポと本物のチンポで挟めてシコシコチンズリされるのはどんな気分ですか?あはぁっ♡ またいっぱい出てきましたね♡ じゅるゅぅ……』

『あっひぃっ!あっ♡ あっ♡ それ、そりぇ、もう止めてぇ……♡ 出ない、もうミルクでにゃいからぁっ♡ ああああぁっ!!シコシコ止めてぇぇっ……!シータぁ♡ マスターぁ♡』

 

 ――コサラの王と王妃。離別の呪いをかけられた悲劇の夫婦。ラーマとシータを。

 

 

『そうですね。もしあの時、アマゾネス達がマスターの思惑通り動かなくて、イースを攻めてきても私は躊躇いなく都を沈めていたでしょう。本当に欲しい宝は手に入りましたから……貴方という悪魔にならいくらでも騙されて、いくらでも水の底に沈めましょう』

 

 ――退廃の都イースの海賊公女、ダユーを。

 

 

『さぁて、今日も今日とてぱーふぇくとな女帝目指して精進じゃ。というわけで我が夫様。幽霊克服の為にちょびっとシミュレーションに籠ってくるぞ!なぁに心配はいらぬ。ダユーと顔がそっくりな女海賊を連れていく事にしたからの!色狂いのあれと違ってこっちは報酬を与えれば動いてくれるらしいからの、にゃはは』

 

 ――傲岸不遜、中国史上唯一の女帝。聖神皇帝、則天武后、またの名を武則天を。

 

 

『どうだ。この宝石のような摩天楼を見下ろすのは気持ちが良いだろう?何、ドレス?あぁ、お前の為にこしらえたものだ。……さて、この私の姿を見てお前の正しい感想をここでフィックスして欲しいな。――――――正解。他の者なら絶対に許さない……マスターだけの答えだ』

 

 ――熾烈にして高潔。アマゾネスを束ねる激昂の女王、ペンテシレイアを。

 

 

『黄泉路は私が付き合います、我が王。貴方の最期を看取る為に私は生き続けます。どんな手段を使おうとも、どんな禁忌に触れようとも、貴方が寂しくならない物語を紡いでいきましょう』

 

 ――死の脅威に晒され、忌避し続けた褐色の美女。『千夜一夜物語』の語り手、シェヘラザードを。

 

 

『はっ、ハッピーバレンタイン♡ な、何だその顔はっ、チョコだチョコ!結局、ちゃんとしたチョコはあげていなかっただろう?お、愚か者!わ、我を食べたのはノーカンだっ!あれは別物だろう!あぁ、ホワイトデーは期待しているぞ我がマスター』

 

 ――世界最古の毒殺者でありアッシリアの女帝を模した、意思を持ったチョコ。チョコラミス……いいえ、セミラミスを。

 

 

『べぇ――、ふふどうかしら、私のキングテレサ姫のコスプレは?おっきしたかしらダーリン?あんっ、情熱的なアプローチ。やっぱり効果は抜群ね。照れ顔の女の子は男の大好物でしょ?んぁあっ♡ 私のアソコがマスターのをオバキュームしてるわ♡ ひぁああぁっ♡』

 

 ――赤き妖精?を操る絶対零度の純白の皇女、アナスタシアを。

 

 

『ねぇ――、マーちゃんも、もう異聞帯レイプとか止めて姫と引き籠ろうよぉ……。ツイッターで炎上している垢にさらなる燃料投下したり、炬燵でゴロゴロしながら社畜辛いツイートをニートの優越感でニヤニヤしながら拝見したり、タイムラインでひたすら尊い絵にいいねし続けるだけの自堕落な生活を送ろうよぉ――』

 

 ――姫路城の天守閣に棲み付いた妖怪。城化物、地主神、引き籠り。刑部姫を。

 

 

 

 

 もっと、もっと先輩の大好きを作りましょう。惚れやすくて、重い先輩がもう二度と悲しい顔をしなくても済むように潰れないようにする為に。

 

 心と体の二つで先輩を包み込みましょう。沢山の愛で先輩が寂しくならないようなお城を作りましょう。

 

 抱いて犯して愛を囁いて、子供を作って――。皆と家族になりましょう。

 

「先輩」

 

「ん?」

 

「大好きです」

 

「俺の方こそ」

 

「いいえ、私の方が大好きです」

 

「なにおう、俺なんてこれぐらい大好きだぞ」

 

 手を大きく拡げて丸をつくる先輩に負けじと手を拡げながら走り回って大きな大きな丸を表現します。

 

「私はこれぐらいっ!これぐらぁ~~いっ大好きです!」

 

「じゃあ、俺はこれぐらぁ――――――――いっ大好きだ!」

 

「あ、先輩!『白式官能』を使うのはずるっこです!」

 

 雪ふる白銀の街でヤガの子供達の「あっ、バカップルだ」「本当だ、バカップルだ」という言葉も気にせず、私達は童心に帰ったようにはしゃいでいました。

 

 やがて疲れたように二人で人気が無くなった雪原に並んで転がり、笑い合います。

 

「先輩、次は私が産みます。先輩との子供」

 

「そっか。男の子かな?女の子かな?」

 

「先輩との子なら」

「マシュとの子なら」

 

「「どっちでも可愛いですね」」

 

 自然とそうあるべきと言うように手を握り合う。あの時のままの先輩の温もり。

 あぁ、そうだ――私にとっての世界はここだったんだ。

 

 先輩のいる世界、先輩の世界にいるこの一秒一瞬が愛おしい。

 

 赤 青 藍 水 虹 空 色――。

 

 どうか、蒼空のようなこの人の瞳に映る色彩が数え切れないぐらいの程に色で鮮やかになりますように。

 

 

 

 

 

 

 




◇スキル
一交一生(ワンライフ・ワンセックス):EX
情を交わし、体を重ねた者に対して彼は一生を添い遂げる事を誓う。故に彼の寿命と生命力は関係をもった人数分だけ延びていく。決して不老不死というわけではない。伴侶がどこまで増えようとも彼はその一人一人に平等に一生を捧げる。





マシュ「むっふーん! (勝利の正妻メインヒロイン面ドスケベ後輩わがままボディデンジャラスビースト先輩の童貞強奪ドヤ顔ダブルピース)」















まるで総集編みたいだぁ……。

これからの予定としてはメインのエロ回一人分挟んで、英霊編行って、アポ編行って、第二部二章入る感じです。あくまで予定ですけど。遠いなぁ。

感想、評価、誤字報告、いつもありがとうございます。おいしいです。




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けだものフレンズ1(アタランテ・オルタ前編)



カルデアコレクションにてダ・ヴィンチちゃん(ロリ)、サロメ、ガレス、パリス、シャルロット・コルデー更新。

増えすぎなんだよ、更新追い付かねぇわ。馬鹿じゃねぇの(褒め言葉)。
ダ・ヴィンチちゃん(ロリ)はキャスターの方とは別キャラとして登場させます。うん、記憶は同期してるけど、マイルームでつつくとやっぱ別キャラですわ彼女達。まぁ、そこら辺は第二部編でやるであろうダ・ヴィンチちゃんのエロ回で上手い事やります。

パリスはヘレネって妻がいるし、男だろ、エロとか正気かお前だって? 君、それラーマ君の前でも言える? 第三再臨の黒い肩紐ついてる服がネグリジェにしか見えないのでパリスちゃんは女の子です、はいノーマル。


これからFGOを始める新規はきっと陳宮を使って、サンソンにマリーとかシャルロットを射出したり、カエサルにクレオパトラを射出したり、黒髭にドレイクを射出したり、アルジュナにカルナを射出したり、ランスロットにガレスを射出したり、ゴルゴーンにステンノとかエウリュアレを射出したり、英霊剣豪七番勝負……いざ尋常に射出!とか出来るんでしょうね、羨ましいです。フォウ君は100%目覚めると思いますけど。

そんな人の命でやるステラよりも、水着ですよ、水着! マスターさん! 武蔵ちゃんがアメリカンなガンソードでおっきーの腹肉チョメチョメセクシャリティでカーミラさんに大事なもの盗まれてメルトと一緒にペンギンになって一生を踊り続けたくてバニー獅子王が完全に薄い本で犯されにきてて精神的幼女の葛飾応為ちゃんのふにゃ顔で鉄棒ぬらぬらですよ! 後、ある界隈で沖田さんがフォーリナー説が囁かれて、実はCMのあれは異世界の沖田さんで編纂事象の沖田さんは変わらずやっぱり水着になれてないとか言われて、いやどこまで曇らせたいんだっていう。普通に腰のパーツはヒロインXXから追い剝ぎったんじゃないんですか?
後、私は基本的に水着鯖は毎年コンプする事にしています。水着とかいう想像膨らむ布一枚のセックスアピールはR18小説を書いている身としては取りこぼしは許されないですから(褒めて)。











茶番が長かったですが、二章前にもう一キャラエロ挟みます。今回は本番無いけどね。時系列は懐かしき二部編でごぜーます。エロがメインですから、クリプターとか異星の神とかは二の次です。行けたら行く精神ですよ。

なので馬鹿みたいなやり取りの中でもしれっと重要な情報入れてたりする事もあります。伏線もどきを入れて、いっちょ前に作家気取りかな?











 木瓜紋をあしらった軍帽を被った軍服姿の少女と桜色の和服を着た美少女剣士が並んでカルデアの廊下を進んでいた。

 ぐだぐだ勢の最古参、織田信長&沖田総司。日本において知らぬ人はいないビッグネームの二人。

 

 彼女達が歩いているカルデアは査問会の詰問から逃れる為にアビゲイル・ウィリアムズが外なる宇宙と繋げた扉の先にて存在する似て非なる世界。アビゲイル曰く、カルデア以外が滅んでいるからっぽの星。空に月と()()()の二つが浮かんでいる不思議な世界。現在はここ以外では強奪した異聞帯のロシアと下総国ぐらいしか、人が住んでいる地域は存在しない閑散とした星。

 

「いやー、しっかしここのカルデアも前の所にあったのと瓜二つじゃのう! ぶっちゃけ外宇宙の神様とかくとぅるふ系はわし、からっきしじゃが……本能寺の時もあんな能力あったら異世界転移とか出来たかもしれんの! 『天下統一目前だった魔王な儂が異世界でまた火薬を作り出す件』みたいな!」

 

「アビィさんの話だと、実は自分だけの力ではないとか、マスターと協力した合わせ技らしいですよ? 後、バニヤンさんとか他何人かの力も借りたとか。まぁ、私は斬れれば何でもいいので合体技とか毛程も興味ありませんけどねー」

 

「夜の戦場で無明三段突きされてる奴が何を強がっておる」

 

「誰が口とアソコとアナルを同じ逸物で突かれて絶頂飽和を起こしている女ですか!」

 

「誰もそこまで言っておらんのじゃが……」

 

 情緒不安定な相棒の返しにドン引きな魔王。「いえ、むしろ場所が違うので燕返しの方がシックリ来ますね……孕め返し?」とブツブツ呟く新選組一番隊隊長。水着をネタにされ過ぎて、少々頭がおかしくなっているのだろうかこの人斬りは。大丈夫、近い内来ますよきっと。

 

 彼女達はある病室からのお見舞い帰りであった。お見舞いといってもカルデアの職員の誰かが病気や怪我を負ったわけでもなく、サーヴァントが病魔に侵される事はない。受肉した彼女達にいたっては全盛期よりも絶好調な体になっているのであり得ない。

 

 

「あんな小さな女の子がお腹膨らませて、大人っぽい表情していると同性でもドキドキしますよ……。アリスさんってばあんな顔出来るんですね」

 

「ぱっと見は犯罪臭パないがの」

 

 幾多の性交の先、初懐妊競争を見事制した童女。マスターの子供を一番に身籠ったのは誰も予想していなかったブラックホース、ナーサリー・ライム、ここではアリスと呼ばれている彼女であった。

 元々は絵本、童話……子供達の物語という概念が英霊化した本の姿だったが別世界の因果か再臨が進むにつれて少女の姿となり、マスターと大人の関係になり、精子がヒット。当カルデアで初めてのおめでたとなったのだ。

 

 人理焼却に続き、人理漂白という異常事態ではあるがそれはそれ、子の誕生は万全な準備の下、迎えなければならないという事でナイチンゲール、パラケルスス、メディア、サンソンを始めとした医療系&魔術系なメンバーの協力により、安定期に入ったアリスは病室にて安静にしていた。

 

 マシュと一緒にロシアへの顔出しから帰ってきたマスターも最近はアリスに付きっきりだった。過度なストレスをかけないように……そして彼女を出来る限り、病室に一人ぼっちにしないように。

 

 

 

 ▲▲▲

 

 

 

「大丈夫アリス? 何か欲しいものとか、して欲しい事はない? 苦しくないか、痛くないか? 食べたいものは? 絵本でも読む?」

 

「ふふ、まるで時計を持って走るウサギみたいな慌てっぷりねマスター。いいのよ、ここで手を握ってくれるだけで……。今はたくさんの人がわたしの所に来てくれるの。病室は好きじゃないけど、ちっとも寂しくないわ」

 

「そうか……。しかし、俺もお父さんになるわけだし、何か出来る事を……。ならば今の内に子供の育て方でも! 『絵本 幼女化 懐妊 子供 育て方』……検索ッ! ……クソ! 何もヒットしねぇ! 文明の利器の敗北か!!」

 

「わたしにたくさん構ってくれるのは嬉しいけど、ジャックやジャンヌ、アビーやバニヤン、他の皆を寂しくさせないで欲しいわ。ハッピーエンドは皆揃ってこそでしょパパ(マスター)?」

 

 

 

 ▲▲▲

 

 

 

「あんなに慌てているマスターを見るのは珍しいですよね」

 

「まぁ、父になるような事はたくさんしておっても、実際に父になるのは初めてじゃろうし」

 

 その後、マスターは「患者に負担がかかります、お静かに司令官」と婦長に首を締め落とされて大人しくなった。隣には数分前に「アリスさん、後学の為にボテ腹セックスの感想を聞きたいのですがっ! どうです? 結構良い感じでした?」としつこく迫っていた為、同様に締め落とされ、同じく気絶しているマシュ・キリエライトなる少女がいた。この先輩後輩救いようがねぇ。

 

「ふ──む、しかしマスターがしばらくあちらにかかりっきりとなると暇になりますね──。ボイラー室に戻っても妖怪白目たくあん(土方さん)しかいませんし」

 

「ならばアニマル喫茶でも行ってみるか?」

 

 風の噂ではアルトリア顔の誰かさんによってこれからマスターと彼女達によるシミュレーション内での絆上げクエスト(SEX)当番の大規模調整が入るだろうと囁かれている。事の真偽が明らかになるまでは沖田は力を持て余している剣士系サーヴァントでも誘って鍛錬でもするべきかと思い悩んでいる所、隣にいる信長が唐突に胡散臭いチラシをヒラヒラさせていた。

 

「アニマル喫茶? 何ですかそれ」

 

「いやさの、あのジャガー何某がこの間ばら撒いておってな。犬、猫に加えて、虎、狐、蛇、色んな動物がおるらしいぞ? 最近では猪でも入ったとか」

 

「へぇ──。どこから連れてきたんですかね? でも確かレイシフト先から生き物を連れてくるのはNGだった筈じゃ……?」

 

「馬に乗って召喚されたり、鳥とか蛸とか連れてきてる奴もおるし、そこらへんの横紙破りならあの着ぐるみ女なら得意そうじゃがの。まぁ、冷やかしついでに行ってもいいよネ? どうせおまえも暇なんじゃし」

 

「別に暇ではないんですけど……。動物喫茶、フォウさんが荒ぶりそうですね」

 

 

 

 地下図書館にライブ会場、バーにレクリエーションルームに銭湯等々、能力と技術の無駄使いを存分に行ったサーヴァント達によってカルデアは初期の面影を失い、増築、改造を繰り返し、どんどんビルドされている。今更、猫喫茶ならぬアニマル喫茶が出来ていても別段驚くような事でもない。

 

 二人はチラシに書かれている部屋の前へ到着。隣には『ようこそジャガリパークへ! 食べないよ! むしろ食べられるよ!』と力が抜ける顔で右拳を挙げているジャガーマンのイラッとする看板が立っているのでここで間違いないのだろう。

 

「けものはいてものけものはいない、むしろけだものしかいない。おいでよジャガーの国! いらっしゃいニャお客様、二名様でよろしいかニャ? さぁ、さぁ、この10cmしかない段差をまるで最終回のように大袈裟にかつ決死の想いで越えるがいい! さすればめくるめくる癒しの時間へ。けものの気持ちになるのですよ!」

 

「出だしから濃いのぉ」

 

 中に入れば、カウンターにていつもの虎の着ぐるみの上からエプロンを付けたジャガーマンがニカッと八重歯を光らせて出迎えていた。

 沖田が覗いている奥の部屋には畳の床に()()()()()()()()()()キャットタワーや小屋がいくつも鎮座している。

 

「なんじゃ、結構景気良いのか? てっきり閑古鳥が鳴いとると思っておったが」

 

「へっへっへっ、所がぎっちょん。常連客が何人もついて、懐がウハウハなんすよ。ジャガーアイは経営においても先見の明を発揮してしまう! こりゃあ生贄とかなくても独立できてしまいそうかニャーなんて、私はキャラの根幹を揺るがす発言をしてみたり」

 

「ほぉ──、わざわざ金払って動物と戯れるような酔狂な連中がカルデアにそんなにおったとはな」

 

「モチのロン! 当店はイキのいいアニマルが揃ってるのニャ! ほれほれ、耳を済ませれば聞こえてくるでしょう動物達の楽し気な鳴き声が」

 

 ──ワンワン! 主様! ワンワン! 

 

 ──キシャ──♡

 

 ──にゃ────!! 

 

「ん?」

 

「…………ちょっとノッブ」

 

 鳴き声というか聞き覚えのある可笑しな声が耳に入った気がするが、トントンと肩を叩かれ、何とも言えない表情で固まっている沖田と同じ方向を見ると。

 

 いつもの鎧姿ではなく、赤い水着とふんどしに黒の犬耳と尻尾をつけて、マスターが投げている狂骨を何度も四足歩行で撮りに行く牛若丸。尻尾をどうやって刺しているのかなんて野暮な事を聞いてはいけない。

 

 下半身を蛇化させて、マスターの腰に巻き付き、長い舌をチロチロさせてひたすら頬を舐め続ける清姫。

 

 マスターに抱かれたまま喉元をくすぐられてゴロゴロと鳴いているアタランテ。当然の如くロリ化。

 

 他にも部屋を見回したら、何かヤバい薬でもキメてらっしゃる? と感じに壊れている見知った顔が何人も。確かにまぁ、アニマルはいた。どちらかというとメスとルビを振られそうな淫獣の方だが。他人のふりをしたい。

 

「おい南米の神とやら、まさかこのアニマル喫茶は」

 

「うん。私は既存の枠に捉われない型破りなジャガー。客側が動物となって当店のエース(マスター)に癒されるのが売りとなっております。そして、一回来るごとに押してもらえるこのジャガリパークスタンプを全部ためると、何とあちらのラッキービーストルームでマスターと二人っきりでにゃんにゃんできちゃうわけだニャン。ご利用は一時間10000QP、OH、リーズナブル」

 

「ホスト狂いになった女性を見てる気分ですね」

 

「わしはイメクラを想像した」

 

「でもマスターの撫で撫でテクってマジやばいのよ? 私も年上とか神霊の威厳なくして、ついついゴロニャン♪ しちゃうし。だからこそ、これは儲けれる! と思い付いたわけだけど!」

 

「やり過ぎて、あのサンバ女にパワーボムされる未来しか見えないんじゃが」

 

 入室に必要なQPを払い、沖田は垂れた犬耳をつけ(アナルビーズがついた尻尾はさすがに断った)、信長は雉をかたどった帽子被る(「わし、この帽子無かったら誰だかわかんなくんね?」という呟きはスルーされた)。

 とりあえずはこの中で一番まともに話が出来そうな、蛇ひーに顔面を舐められながら、アタランテに哺乳瓶で授乳中のマスターに声をかけた。

 もしかしたら、近い内に赤ん坊が出来た時の予行演習をここで行っているのかもしれない。

 

「いらっしゃい沖田さんにノッブ。こんな所で奇遇だね」

 

 アニマル喫茶の流儀なのか、彼もフォウ君を模したフサフサの着ぐるみに扮していた。

 

「なんじゃ、その格好」

 

「いやさね、俺も節操なしに色んな格好をしているけど、そろそろ第一、第二再臨、最終再臨的な衣装を考えた方がいいんじゃないかなーって。第二は可愛さアピールで着ぐるみとかいいと思ってるんだけど、プロテア的な? がおー、食べちゃうぞ──」

 

「その食べちゃうぞ──が性的な意味しかない段階で一体、何のゲームに出る気じゃ貴様。18禁か?」

 

「カドック君が今やってるソシャゲでさ、最初は色白皇女系キャスターをスタメンにしてたんだけど、最近は極東の二刀流侍に入れ込んじゃっているのが彼女さんにバレちゃったらしくて、冷戦に入ったとか。意気消沈している彼に気分転換がてら俺がレイドボスとして登場してあげよっかなって♪」

 

 冷戦というよりはアナスタシアの方が頑なに国交断絶を解かないというか……「カドックの馬鹿! そんなビームを出す侍スピリッツの欠片も無い女と夜の剣豪勝負でもすればいいじゃない!」と引き籠る彼女にカドック君も「君が一番だよマイハニー!」ぐらい言えれば良かったのかもしれないが。まぁ、もう一人の自分(妹スタシア)が青春(?)をしてて何よりと嬉しそうなのはカルデア側の姉スタシアさん談。

 

「それは気分転換になるのか?」

 

「ポジションはやっぱりラスボスなんですね」

 

「撃破後は『お見事、大討伐!』ってメッセージ入れればいいか」

 

 そんな鬼仕様を考えていると、世話をしている動物達がぐずり出す。

 ペロペロ、チロチロ、ピチャピチャ。

 

「パパー、パパー……」

 

「はいはい、ミルク飲んだら、トントンゲップしまちょうね──。はい上手くできまちたねーアタちゃんは偉い子でちゅねー」

 

「そいつだけコンセプト間違っておらん?」

 

「というかマスター、さっきまでアリスさんの病室にいましたよね? いつの間にこっちに来てたんです?」

 

 二人が退室した時は確かにマスターはマシュマロサーヴァントと仲良くダウンしてた筈。『固有時制御・五重加速』とかで沖田や信長が気付かないレベルで先回りしてたなんて事はまさか無いだろうとか言えない辺りがこのバグの擬人化の恐ろしい所だが。

 

「いや、俺は最初からここにいたよ?」

 

「なにそれこわい」

 

 マスターがしれっと語ったのは人類悪と化した自身の第三宝具『竿繋ぎの多元性交(パラレル・セックス)』。性交を行っている最中はどれだけ場所が異なろうと自分は多元的かつ並行的に存在していると。決して自分同士が出会う事はない為、分身という言い方は適切ではない。

 

「分かりやすく言えば、ほら人間の体は一つだけど別に一つのアクションしか出来ないってわけじゃないよね? テレビを見ながらご飯を食べてかつ談笑も出来る。ならば同時に複数のセックスが出来てもおかしくはない。ちょっと場所が異なるってだけで」

 

「いやいやいやいや、まったくもって分かりやすくないし、納得出来る要素が何一つとして存在しないのですが。情報の波状攻撃過ぎません? そもそもマスターは……その、別に今性交なんてしてないじゃないですか」

 

「ふっ、俺にとってセックスとは心を交わした人達によるコミュニケーションツール。つまり逆説的に愛した人達とのコミュニケーションならばなんであれセックスと言える。ということは妊娠したアリスと共にいるのも、こうしてアニマル喫茶で皆の癒しになっているのも広義的な意味でセックスって言えるネ?」

 

 ここで絆上げクエスト(SEX)当番表の大規模調整の噂の発端が二人にも理解出来た。確かにこの宝具があれば、これからマスターの周回作業(隠語)は間違いなく捗るだろう。夜将軍、ここで射精です! 子供がたくさんドロップするね。

 

「ねぇノッブ。マスター今、一応日の本語喋ってますよね?」

 

「物理法則ガン無視過ぎるわ、あのグラサンキャスターの方がまだマシじゃろ…………ところでのマスター、さっきからあのキャットタワーの上でこちらを威嚇している虎耳女に物凄ーく見覚えがあるんじゃが」

 

 おかしい、ぐだぐだ勢はボケ役の筈なのにどうしてさっきからこんなにツッコミをしているんだろう、むしろ自分達は突っ込まれる側なのに……と疑問を抱きつつも、傾奇者だの魔王だの言われながら、一つ一つのボケを片付けようとしているノッブの根は真面目で律儀。

 

 ここに来て小屋も遊具もデカい理由を二人は察した。人間が使うんだもの、そりゃあ大きくしないとね。

 通常サイズの4倍程のスケールになっているキャットタワーの頂上からノッブ達がよく知る和装の銀髪女性が伏せた姿勢でグルグルなお目目を向けていた。実際コワイ。

 

「あの人、ここ最近見ないと思ったらこんな所に入り浸っていたんですね……」

 

「虎ちゃんのこと? まだまだ人見知りだからね──、中々、俺以外には懐いてくれないんだよ。でも結構可愛い所もあるんだよ? おいで虎ちゃん…………よしよし、ほらこうやってお尻の尻尾の付け根の所をトントンと叩いてやると」

 

「にゃ──────────っっ♡」

 

 床に伏せたまま、めっちゃビクンビクンしてる。

 

「うわ、軍神の顔が凄い事になってますよ。甲斐の虎が泣きますよこれ」

 

「塩を送る側が潮を吹いてるんじゃが」

 

 他のペットにご執心なのが気に食わないのか、蛇ひーはもう顔面を涎まみれにしてくるし、バブランテは泣き始めるし、狂犬牛若は猫科の軍神に嫉妬心滾らせて噛み付こうとするし、人の心を色んな意味で失っている景虎ちゃんも抜刀して対抗しようとするし。

 

「地獄かここは」

 

 そんな状況でもマスターが両手+白式官能の魔手で「よーしよーしよしよしよしよし」と撫でまわしてあげたら、全員がふにゃって脱力しているので今までもこのようにして大事にはなっていなかったのだろう。「いいなー」という沖田の呟きはノッブは聞こえないフリをした。嫌なムツゴロウ王国ですね。

 

「おい汝達。ここはアニマル喫茶……人の振る舞いを忘れ、動物になるのが習わし。いつまで二足歩行でいるつもりだ」

 

 ロリ化しているアタランテと髪や獣耳の色以外はそっくりな顔に声……黒い猪を模した肩パッドのようなものに悪役レスラーに近い露出狂な姿をしている姐さん。カリュドーンの毛皮によって変質した純潔の狩人(笑)アタランテ・オルタが()()()()で背中に子供を三人乗せつつも、だらしない顔をして声だけはガチトーンで信長と沖田に忠告していた。下腹部の淫紋が眩しい。

 

「なぁ、そろそろわしらにツッコミをさせるの止めさせて欲しいんじゃが」

 

「だが汝の相棒は既に適応しているが」

 

 信長の足元には降参のポーズでお腹をマスターにくしゃくしゃ撫でまわされてご満悦な沖田がいた。つけてはいない筈の尻尾の幻覚まで見える見える。

 

「沖田……貴様……」

 

「いやぁ、でも、これはいいものですよノッブ。義経さんの気持ちがよくわかる……。あぁ──、そこ、そこいい感じですぅ──。首輪をつけてほしい、あぁ、さっきも尻尾をつければよかったですかね──わんわん、わん♡」

 

「マジで戻ってこい! このツッコミ地獄のワンオペをわしにさせる気か貴様!」

 

 蹴りを入れて、キャインッ! とあちら(雌畜生)側に誘われそうだった沖田犬を正気に戻そうとするノッブ。

 アタランテ・オルタも背中に乗っているジャックに「動物が人間の言葉をしゃべってるのはおかしいよね?」とパシンッとお尻を叩かれ、嬉しそうに「わんっ♡」と鳴いている。教育に悪過ぎるのだが、そのまま走り出した彼女の背にライドオンしている子供達(ジャック・ジャンヌ(小)・バニヤン)の無垢な笑顔を見ているとお互い幸せそうなので余計な口出しはしなくてもいい気がしてくる。

 

「つーか、あれ露西亜異聞帯の叛乱軍にいたボス猪じゃろ? 確か、おぬしに牙を剥いたとか聞いたんじゃが、何でここにおるの? 拾った場所に返してきなさい」

 

「そんなっ! 最後まで面倒見るからお願いママ!」

 

「誰がママじゃ」

 

「え? ノッブ、マスターの子を身籠ったんですか? また抜け駆けですか、裏切りですか?」

 

「ちげーよ馬鹿! まだ正気に戻ってねーのか! いい加減にしろや! 私もキャラ忘れる並に狂いそうだぞコラ!」

 

 余裕ゼロの切羽詰まった顔で抜刀しかけている人斬りだったが、マスターが「ふせ」と言えば、牛若犬と同様、ふにゃ~~とした顔で頭を撫で繰り回されるだけの愛玩犬に戻ってしまうのだ。

「もう駄目じゃこれ、誰か助けて」と泣きたくなる信長を労わるようにジュースが差し出された。

 

「ツッコミは義務ではない。元々ボケ役にこのギャグパートを捌き切るのは酷な話なのだな。水分補給で落ち着くがいいとキャットはキャットは申し訳程度の喫茶要素を提供してみるのだな」

 

 肉球に裸エプロン。中々狂った格好ではあるが人語忘れた他の連中と比べると相対的にまともに見える。信長にグラスを渡していたタマモキャットが給仕としてトレイ片手に軽やかに店内を歩き回っている、他のアニマル達(♀)が暴れまわった後を清掃したりとしっかりと労働に励んでいた。

 

「うむうむ、キャットは店員側。同じネコ科のよしみでジャガ村の手伝いをしているのだワン。思考に冷や水をかければ、別にお金を払わなくともアタシはご主人に可愛がられるわけだし、地獄の沙汰も金次第だが愛情の間にQPを挟むと碌な事にはならんぞ?」

 

「この中で一番話が通じるのが貴様だという事実にわしもう心折れそう」

 

「泣くな泣くな第Rock天魔王。キャットのおっぱいで泣くか? 残念、オリジナルはともかくとしてキャットは一途な良妻賢母。ここは生涯、ご主人専用だったのだ。なので気分転換がてら、あのおそロシアからの新入り、淫紋黒猪が仲間になった経緯でも話してやろうか? ロハでいいぞ……そう、あれは敵方の魔術師の卑劣な罠にご主人が嵌められた時────」

 

 

 

 

 

 










と自然な語り口で次回、後編のエロ編に続く。はい、以前第二部一章編でさらっと終わらせてしまった迷宮レイプ!ビーストと化したマスターです。更新はあまり空けないで出来る限り、早めに投稿します。こういう焦らしプレイはよくないからね。

タイトルにアタランテ・オルタとふっておきながら出番が殆ど無いとか詐欺では? という苦情は聞きません。

エロ回もまだで初登場なのにこんな扱いな景虎ちゃんについては謝罪します。






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けだものフレンズ2(アタランテ・オルタ後編)

毎度感想、評価、お気に入り、閲覧、誤字報告、誠にありがとうございます。
今年の水着鯖は性的過ぎてアソコが爆発しそうでしたけど、毎年爆発してたので問題ありませんでした。

偶にメッセージでリクエストをくれる方々がいます。その気持ちは有難く、私に期待を寄せてくれるのは嬉しいのですが、基本的に当作品は読者様側のリクエストを反映する事は無いのでご了承ください。というか自分のパトスを書き殴っているのが私のスタイルなのでリクもらっても100%書けない未来しか見えないんですわ。ごめんね。




アタランテ・オルタの再臨の淫紋、調べても何故ついているのか不明なのでもう勝手にさせて頂きました。マテリアル本Ⅶとかで語れるといいなー。







 ロシア異聞帯にて相対したカルデア側の人類最後のマスターとクリプター側のマスター、カドック・ゼムルプス。

 カドックの交渉から、このままカルデア側の侵攻を許してしまうと自分達が守るべきヤガ、叛乱軍、子供達が世界もろとも抹消される事を知ったアタランテ・オルタ。

 

 

 カルデアのマスター本人もロシア異聞帯が()()()()()()消える事を否定しなかった為、二人の対立は瞭然たるものとなった。

 

 カドックと人類最後のマスターが激突する最終決戦目前の場に現れたアタランテ・オルタ。彼を食い殺さんとばかりに駆ける黒き狩人。

 激突する二人、その瞬間にカドックが使役するミノタウロスの宝具『万古不易の迷宮(ケイオス・ラビュリントス)』によって外界とは隔離された迷宮に捕らわれてしまった。

 

 接近していたカルデアのマスターとアタランテ・オルタは同じフロア内に他に誰もいない二人っきりで。

 

「私と汝の二人きりか……ふっ、都合が良い。巻き添えも気にする必要もなく、ここなら全力で戦える」

 

 不敵な笑みを浮かべて、既に獣の如き前傾姿勢となり臨戦状態に入っているアタランテ・オルタだったが対峙する人類最後のマスターいや……人類悪ビースト0/デアーには構えすらない。

 微笑を浮かべて、やれやれ仕方ないと言わんばかりのまるでおいたをするペットとじゃれつくように両手を拡げていた。

 

「……何だそれは、今まで味方だった者とは戦えないか? 共に戦ってきた者とは刃を交える事は出来ないか? それとも私は敵にすら値しないか? ふざけるなっ!! 我らは既に袂を分かった。私の方はとうに覚悟は出来ている!!」

 

 殺意と遜色ない激昂をぶつけるアタランテ・オルタ。別に自身が正義だの何だのくだらない事をほざくつもりは無い。感謝もある、敬意すらある、自分達叛乱軍だけではどうにも出来なかった劣勢をひっくり返し、短い間とはいえここまで苦楽を共にした事から親愛すらも抱いているかもしれない。

 

 だからこそ戦ってほしかった。互いの守る者の為に決別するしかないのなら、交わる事がないのなら、せめて自分を敵として認識してほしかった。我が身は堕ちているが……それでもアタランテ・オルタは決して無抵抗の元仲間を問答無用で嚙み殺すほどの獣畜生までは堕ちたくなかった。

 

「拳を構えろ! 刃を出せ! お得意の仲間を呼び出しても構わぬ! 今まで殺戮猟兵(オプリチニキ)を屠ってきた時のように貴様の戦意を滾らせてみせろ! ここで無様に私に殺されるつもりか!?」

 

 全身の筋肉を稼働させ、一息で距離をつめる。その様相はまるで百獣の王かくやとばかり。ここまで挑発し、命を獲られる状況になれば、戦わざるを得ないとアタランテ・オルタは飛び掛かったが──。

 

「あ、へ…………」

 

 間抜けな声が自身の物だと気付くのに数秒必要だった。目の前にデアーの姿はなく、彼の数m後方、すれ違う形で見当違いの所に跳んでいた。おかしい。カリュドーンの毛皮でいくら変質しているとはいえ、この距離で獲物との目測を見誤るほど耄碌はしていない。

 

 ならばもう一度、四肢に力を入れて飛び掛かろうとしたがそれは叶わなかった。

 

「あっくぅんっっ……!?」

 

 苦悶の声ではなく、この場に相応しくない色気のある嬌声。それが自分の声であり、そして両膝に力が入らず、股から小水ではない粘液が漏れ出したまま転倒している事実を彼女はようやく認識した。

 

「確かに二人っきりだ」

 

「な、にをっ……した……?」

 

「撫でただけさ」

 

 アタランテ・オルタという雌が、彼の視界に映り、観測された時点で既に決着はついていたのだ。

 

 見た、触った、ならば後はイカせるのみ。彼女の敏捷A+を容易く上回る神速のセクハラ術。

 

 アタランテ・オルタは絞り出したその声と共に体が震えている事を自覚した。未だ微笑み、こちらに敵意の欠片も向けない男に本能から恐怖を感じている。魔猪の皮を被り、狂化に近い獣性を獲得した事による影響か、根拠はなくとも直感が危機を訴えていた。

 

「知っていた。バサランテの姐さんがその顔で戦うと決めた以上、もう対話の余地は無いって。葛藤を乗り越えて、譲れない自身のルールを引っ込ませる事は無いって。でも、俺はさ、貴女の事が嫌いじゃないんだ。はい、そうですか、じゃあ殺し合いますって納得して切り替えれる程、人生経験豊富で達観してるわけでもない」

 

 彼独自の呼称でアタランテ・オルタに語りかける。命の獲り合いをするつもりはないと、甘い事を言っている彼の言葉に虚言は無い筈なのにアタランテ・オルタの警鐘は鳴りやまない。

 

「だから──どうしても譲れないっていうのなら俺なりの戦い方でエゴを通させてもらう。俺流の肉体言語で説得するよ」

 

 魔獣たる自身がまるで怯え喰われる被食者の如く。

 この迷宮がまるで逃げ場の無い檻のようで。

 優しく語りかける彼が巨大な咢にしか見えなくて。

 

 

 ──撫でた? それだけで私の体はこうなったのか? 

 

 ──早く立たなければ、次は何をされるのか……。

 

 ──ん、何だ、あれ……は? 白い手……? 

 

 

 

「『白式官能 ()の掌』」

 

 

 

 彼の周囲から九つに伸びた親愛の獣の分身たる魔手。今回は優しさの欠片も無い鬼畜スタイル。

 

 一の掌、二の掌がアタランテ・オルタの両腕それぞれを手首から脇まで撫で上げる。

 

 三の掌、四の掌が優しくそれぞれの乳房をほんの一揉み。

 

 五の掌、六の掌が足首から太ももまでを沿うように撫でる。

 

 七の掌がうなじから背中をツツーと愛撫した。

 

 八の掌が鎖骨から首を指先でくすぐった。

 

 九の掌が尻の割れ目から性器の淫裂まで指でなぞり上げた。

 

 この間、0.11秒。まさに神速の淫パルス。アタランテ・オルタは以上の事を何一つとして正しく認識できていなかった。一掌だけでも常人の女なら狂い壊れてしまう快楽の暴力。

 宝具『白式官能』。まともな使い方をすれば無限の魔力を攻撃に転じさせる事が出来るが、雌をイカせる事だけに使えばこの通り。

 

「んひい゛い゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁぁあぁっ!!」

 

 ようやく彼女の脳が刺激を理解した時、吹き出した潮があまりの勢いに下穿を突き破り、四つん這いのまま、全身をこれでもかと強張らせ、仰け反った彼女は生前も含めて今まで受けた事のない刺激に誇りの欠片もない淫らな雌叫びをあげる事しか許されなかった。

 

「あ゛ぁぁぁっ────…………あ゛ぁぁぁぁっ────」

 

 愛撫の時間の百倍。十秒程、喘ぎ続け、喉を枯らさせたアタランテ・オルタは自身が放出させた液がつくった水溜りの上に脱力した全身を投げ出した。

 ビクンビクンと腰を大きくヒクつかせる彼女の直前の凛々しさはどこへやら、まるで数日薬漬けにあった売女の如き、頬を紅潮させ、舌を出し、いやらしい呼吸を続けている彼女に戦える力は残っていない。相性が悪い、いやある意味良過ぎた結果がこれである。振り絞る力すら残っていない。

 

「はぁ、はぁ、私は……わ、たしは負けぬ。虐げられる仲間達の為に……子供達の為に、私は絶対に負けぬ……」

 

 それでも心はまだ堕ちていないのはさすがというべきか。自分を信じて戦ってきた叛乱軍しいては彼等の家族でもあるヤガの子供達の為に精神を奮い立たせる。

 余談だが、ここで負けない的な台詞は「くっ殺せ」と同じスメルを感じる。何かその台詞を吐いた以上もう負けてしまう未来しか用意されていないというか、もうその手の勇ましい言葉は堕ちた時の為のスパイスでしか無いというか。

 

 どういうコンセプトかは不明な露出が些か多過ぎる彼女の戦衣。Tバックは無惨にも破れ、防御力が一切ない肉付きの良いお尻から力無く垂れさがっている二又の白い尾に彼は手を近付けていた。それはアーチャークラスの時とは異なっている尻尾に対しての彼の興味なのか。相手が何をしようとしているのか察した瞬間にアタランテ・オルタの焦燥は大きくなっていた。

 

「おい……待て、待て、ふざけるな。貴様はどこを触ろうとしている……そもそもまともに戦う気がぁんんおぉぉっ♡」

 

 ついでに尻肉にも触れてしまうように尾の付け根の部分をそれぞれ両手で握った彼はそこから緩急つけて、決して指の拘束を解く事はなく、その握り心地を愉しみ始めた。

『白式官能』が鋭く刺さるような快楽とすれば、生身で彼が直に触れるこの感覚は一生浸りたくなってしまう中毒的な心地良さがある底なし沼にジワジワと引き摺りこまれてしまうもの。

 

「まともだよ。戦いにおいて自分の長所をイかすのは当たり前だよね?」

 

「おっ……んぉぁっ……や、やめ、その握り方、よせぇっ……おっ、おっ、んっぁぁっ♡」

 

 獣として屈服した姿勢で出る喘ぎ混じりの拒絶を当然、聞き入れてもらえる筈も無く。ビーストブリーダーによるフレンズの調教はまだまだ続く。

 従来、動物の尾とは体の先端である事から非常に敏感な部位であり、下手に触ろうものなら威嚇されてもおかしくない不可侵の領域。一段と獣に近づいているアタランテ・オルタならば噛み殺されても文句は言えないデリケートな場所ではあるが、もはやセクシャル経験値は天元突破中、強くてコンティニュー状態の人類悪デアーの手からすれば、碌な男性経験もない純潔の狩人を尻尾にぎにぎだけでイキ殺すのは赤子の手をひねるが如く。

 

「おっ、おぁっ……んひっ、や、やめぇ、にぎるのぉ、やっ♡……んぁおっ♡」

 

 時折、上下に小さく小刻みに扱きながら尻尾を握る彼の手管はまるで男根を搾り尽くす膣内そのもの、デアーの手中という名器から受ける未知の快楽にアタランテ・オルタの声色に甘く媚びたものが混ざり出す。

 

「どうする? 参ったする? 俺はいつまでも構わないけど」

 

「ふぅっ……くぅぁっ……はっ、あっ……な、めるな……この程度の凌辱で私が屈すると……ぉっ、ひっ……思ったか……」

 

「そっか、あくまで俺達側に与する事は無いか……。寝取り返しってのは中々に新鮮なジャンルだけど、俺も貴女を離す気はさらさら無いんだ。悪く思ってくれていいよ」

 

「な、にを……?」

 

 そう言って彼は自慢の爪を振るう事すら許されない程に脱力しているアタランテ・オルタの体を起き上がらせて、背中から子供扱いするように抱きかかえた。なけなしの精神力を振り絞って言葉だけでは反抗の意を示しているが、体の制御は本人の意思から離れてしまっている以上、ただ自分がこれからされる事を固唾を呑んで見守るしかない。

 

 すぅっ……と背後から伸びる生身の男の手、へそを這い下腹部へと到達した。それだけの刺激ですら彼女は眼をぎゅっと瞑り、熱い吐息を漏らしてしまう。瞼を閉じ、視界を失ったその一瞬、彼女は自分の下腹部に何かを刻まれたような感覚に眼を見開く。

 

 薄く眼を凝らさなければ、そこにある事すら識別出来ないレベルではあるが、身に覚えのない紋様のようなものが確かにそこにあった。

 

「私の体に……何を、したっ……?」

 

指令紋章(コマンドコード)って言ってさ、サーヴァントの体に刻み込んで、特定の攻撃だけを強化させるっていうカルデアの技術なんだけど、これはその指令紋章(コマンドコード)を俺なりに改造したものでさ。今、貴女に刻んだ紋様は『隷属と懐妊』。頭の悪い言い方をすれば淫紋ってやつさ」

 

「れいぞく……かいにん…………いんもん?」

 

 デアーの言った言葉を頭に落とし込もうと反芻する。今までの行為の流れで自分がこれから何をされるのか、全貌とまではいかなくとも概要を理解出来たアタランテ・オルタの背筋に薄ら寒く、そして仄かに熱い何かが走った。

 

指令紋章(コマンドコード)ってのは本来、体に浮き上がる事は無いんだけど。これは別。君が身も心も俺に屈服した時、この淫紋は猥らな色を携えて浮かび上がり、全身が今まで以上に敏感になり、本能も子宮も堕とされ、相手の子種を求めてしまう。そしてそうなったら最後、サーヴァントだろうがこの淫紋から放出される魔力が君の肉体を疑似的に受肉させ、排卵させる。この意味がわかるだろ?」

 

 彼女の体を抱きすくめている下腹部をトントンと指で押す。その下にある子宮を強く意識させるように。アタランテ・オルタはそれだけで幻視してしまった。自分が心身共にこの男に籠絡して、お腹を膨らませて、子を産み、穏やかな笑みを浮かべて、幸せな家庭を築いている幻想を。

 

「淫紋……そんなものを生やしてっ……」

 

 否、否否──。自分にはそんな温かくも眩しい夢に浸る価値は無い。魔獣を身に宿し、戦いに奔走する狂戦士たる我が身にはその夢を守る宿願はあったとしても、たとえ誰もが子と共にある穏やかな日々に帰れるように傷を負い続けようとも、自身がその光を求める事はもう無い。

 

「舐めるなよっ──……人類悪。私はもはや甘さを捨てた獣そのもの……。今更そんな甘言に堕ちる事は無い。ましてや……んっ、決して、貴様と……子供などっ──」

 

「そっか……俺は貴女と家族になって子供を産んで幸せな家庭を一緒に築きたいけどなぁ──」

 

「っぁ、や、やめっ……」

 

 白い胸当てを外し、アーチャークラスの時より膨らんでいる乳房を露わにされる。それだけでまるで生娘のように顔が熱くなるのを彼女は感じていた。これも淫紋とやらの影響なのだろうか。

 

「子供は欲しくない? なら、このおっぱいは何の為に使うんだろうね……?」

 

「っ……はっ、ぁっ、んぁあぁっ……や、めろぉっ……んぁあっ♡」

 

 むにむにとその獣肉がのった乳の大きさを強調するように、デアーは彼女のおっぱいを弄ぶ。先端から何かを放出させるようにさながら牛の乳搾りのような愛撫の仕方で、アタランテ・オルタから艶ががった声を漏れさせる。

 

「想像してごらん。君がお腹を痛めて、産んだ小さな小さな子供。ママに抱えられて、ここからおっぱいをちゅうちゅう吸うんだ。その時、君の子供はどんな顔をしているのかな? 君自身はどんな顔をしているのかな?」

 

「子供……? 私のおっぱいを……ぉっ♡ひっ、あぁっ、あぁっ、あっ、あっ♡よ、よせっ、耳元で変な事を囁くなっ……ぁぁあっ、ふぅぁああっ♡先っぽをかりかり、する、なぁ……ひゃあぁっ……!」

 

 さっきからピクピクと震え続けている獣耳に息を吹きかけながら彼は囁き、催眠にかけるように彼女のウィークポイントを突きづづける。乳の噴射口として改造するように優しくかつねちっこく彼女の乳首を指で摘まみ続ける。カリカリと爪先で擽れば、甘い痺れが伴って本当に乳が出てしまいそうな錯覚に陥ってしまう。

 

『白式官能』の直撃で未だ一切の力が出ないアタランテ・オルタに許されるのは自身の子供の乳吞みをさせている絵を幻視して、悦楽に喘ぎ、体を震わせ続ける事だけ。

 

「んぁああああぁっ♡」

 

 ぎゅっと乳房ごと乳頭を引っ張ると同時に一際大きい嬌声が上がった。まるで胸部が自分の体では無くなってしまったような恐怖に駆られて、ついミルクが出ていないか確認してしまう。出てはいない、出てはいないが……その事実に安心だけでなく、惜しむような気持ちがどこかある事に彼女は気付いてしまう。

 

「ふむ、乳を出すまでにはまだ母性が足りないかな? ならこうやって口を付けて訓練しよう、いつか授乳させる為に、んちゅぅっ」

 

「よせっ、私は貴様の乳母ではっ……んんぅっっ!! はああぁぅ!? ひっ、あっ……吸うなぁぁっっ♡」

 

 敏感になって咥えるにはいいサイズになっているおしゃぶり乳首をデアーは躊躇せず、口に含む。子供は大好きだが育児経験は一切無い搾乳処女を舌で弄べば、面白いぐらいに体がガクついていく。

 

「ちゅっ、んちゅ……こうやってさ、いつか産んだ子供にも乳をあげるんだよ。そんな震えていたら子供もびっくりしちゃうよ? んちゅぅぅぅっ……」

 

「そんな、ことぉぉっっ、んぁあっ……言われてもっ……おっ……でなっい、出るわけがなかろうっ……おっ、あんぅっ♡今、吸われてもっ……乳など出るわけぇぇっ……んあああああぁっ♡」

 

 彼の乳吸いに欲望任せの乱暴さは一切無く。赤子が栄養を求めて母性の象徴に吸い付き、優しくチュウチュウとミルクを放出させようとするレベルの強さしかない。敵対していた男に赤子の如き甘えた行動を取られて、あまつさえ直接的な性行為ではないそれに快楽を感じてしまっているアタランテ・オルタの頭は倒錯感と混乱と無意識の悦びでどんどん狂わされていく。

 

「はぁっ──、はぁっ──……あぁ、もうよしてくれ、これ以上私の乳をおもちゃにしないでくれ…………」

 

 ちゅぽんっと耳に心地良い音と共に解放された彼女の胸部先端は涎以外の液もじんわりと染み出しているようにも見えた。

 胸から離れた彼を見て、もう乳責めはされないと安心しきっていた彼女だったが今度はその希望的観測を嘲笑うように再び下腹部の方へと指を突きつける。

 

「ほら、ここの淫紋がさっきより少し濃くなっている。俺に心を少しずつ許している証拠だよ。肌も敏感になっているでしょ?」

 

「っぇ、ぁっ……そんな嘘……だっ。私は……貴様にっ……ひゃああああぁっ!? あっ、何でっ、さっきよりっ……あっ、あっ、うそ、うそ、嘘だっ……んんっ♡」

 

 まだ完全ではないが彼女の下腹部に薄くまるで子宮のような形を帯びた淫紋が浮かび上がっていた。その淫紋から臍を経由して鎖骨、獲物を舌でねぶるようにデアーが指先を這わされば、電撃となった快楽が彼女の肢体を大きく仰け反らせ、股座をさらに湿らせる。

 

「言葉ではどんなに否定していても、指令紋章(コマンドコード)の効果が全てを物語っているよ。ほら、もっともっと頑張らないと貴女の体はもう俺無しではいられない程に淫乱になって、簡単に子供も孕んじゃうよ」

 

 

 

 

 嘘である。

 

 このピンク色の子宮デザインである淫紋……実は指令紋章(コマンドコード)でも何でもなく只のタトゥーシールである。

 肌に付けて一定時間経てば紋様が浮かび上がる仕様なので、別にアタランテ・オルタが快楽堕ちとかしなくても勝手に濃くなる仕様なのである。そして感度3000倍も無く、受肉して排卵させる効果なんてものも無い、薄い本やエロゲじゃないんですから。

 

 そもそもの話、女を堕とす手は八百万、習得済み。やろうと思えば自身の精液で愛した女性を受肉させる事が出来るこの男がこんな小道具に頼る必要も無いのだ。

 

 只、夜の一時のお遊びで使う事はあるらしい。例えばドスケベ後輩に『先輩専用♡』とか、セイバー・リリィには『マスターのザーメンBOX♡』とか、牛若丸には『雌犬便器』とか、マークだけではなくバリエーション豊富なシールが営みを燃え上がらせる発火剤となっている。

 

 ともあれ、現在アタランテ・オルタに刻まれている淫紋とやらにそんなドスケベな効果は一切無いのだ。なら、この男がわざわざそんな物をここで使った理由? そんなもの愉しいセックスを行う以外ないだろう。

 

「はぁっ、はぁっ……あぁっ、あつい、体が熱い……卑怯者めっ……こんな物に、頼らなけば、女一人も物に出来ぬかっ……んぁっ……」

 

 しかし、バーサーカーになった事でより直情的で思い込みが激しくなったアタランテ・オルタには効果は抜群だった。堕ち物のお見本のような台詞を吐いているが体が熱くなっているのも敏感になったのも、淫紋は一切関わっておらず、ここまでの言葉責めと愛撫で彼女の体が勝手に盛っているだけである。

 

(おのれ……何故、なぜ、私の体はこんなに反応をしてしまうのだ。悦んでいる……? 馬鹿なっ、あり得ぬ……全ては奴の卑劣な刻印のせい、これが無ければ私は絶対に……)

 

※淫紋は只のタトゥーシールなので人体には何の影響もありません。

 

「ここの口もさっきよりもっと敏感になってるんじゃないかな」

 

 淫紋のさらに下。獣臭くもどこか雌の芳香な香りを充満させる女陰へと指を当て、洪水中の蜜壺の入り口に指を這わされば、一際大きい反応が返ってくる。

 

「ひあ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁああっぁあっっ♡………(何だっ? この媚びた声はっ? ……そんな、私の体がどんどん作り変えられてしまってるっ……!)」

 

※もう一度言うが、淫紋の効果は一切ありません。

 

 指が一本、二本、容易く彼女の膣の中へと沈み込んでしまう。膣内に感じる異物が刻むように動くだけで雌として啼かされている声が迷宮内に響き渡る。叛乱軍のボスとしての勇ましく凛とした声ではなく、男を悦ばせる為だけの女の声だった。

 

「今、どこに指が入ってるかわかる?」

 

「あぁっ、んあああぁっ、んぉっ……指を抜けっ……さもなくば、貴様の喉元を噛み千切……おおおぁっ♡」

 

「いつか出産した時にここが赤ちゃんの出口になるんだから、今の内にこうやって解しておかないと」

 

「やめろっ……おかしな事を囁くなっ……はぁっ♡あっっ、あぁっっ……んくぅぅぁああっ!」

 

 最初に受けた『白式官能 ()の掌』の影響で全身に力を入れられないアタランテ・オルタの股は彼の足によって簡単に開脚させられている。後ろから抱きすくめられたまま、無知な子供に保健体育の教育をするように膣壁を指で擦り続け、胸部から乳を出させるように揉み下す。器用にも人差し指で飲み口である乳頭を擽り続けながら。

 

「あっ、あぁっ♡ひっ、くぅっぁっ、やめ、もうやめてくれっ……はああぁっ♡乳もアソコもっ、おかしくな、るっ……あぁぁぁあっ♡」

 

「なら、負けを認めるかい?」

 

 自身の下腹部にある淫紋が徐々に濃くなっている事からアタランテ・オルタは理性でどう抗おうとも本能はこの男に堕ちかけている事を自覚はしている。

 快楽によって視界の中で光が幾度もチカチカとフラッシュし、体も声も男に媚びた雌に近づいてしまっている。

 それでも快楽に溺れる浅ましい獣畜生にまだ完全になっていないのは彼女の中にある最後の矜持であった。

 

「み、みと、認めぬっ……。私は……んぁっ、はぁっ、彼等を、ヤガを、子供達を決して見捨てぬ……。殺されはせぬっ……好きなだけ、私の体を弄ぶがいいっ……おっ、んぉっ♡だがぁっ……心は決して堕ちぬ、ぞっ……んあぁっ」

 

 生殺与奪の権利は握られ、体を弄ばれている。もしかしたら殺されるかもしれない。それでも彼女は自分が守る者の為にロシア異聞帯で共に戦ってきたカルデア側を裏切ったのだ。今更、我が身可愛さで許しを乞うつもりは無かった。彼女はこれからどんな地獄が待とうとも自身の願いだけを失う事は決して無い。恭順の二文字は存在しない。

 

 

 

 

「え、別に殺さないけど」

 

「え?」

 

「ん?」

 

 だがそれもそもそもの前提が崩れたら、話は変わってくる。

 二人のすれ違いは只の言葉のニュアンス。些細なボタンの掛け違いである為、きっかけさえあればすぐに修正される。

 

 人類最後のマスター、人類悪、ビースト0/デアーは語る。このロシア異聞帯を消去させない手段。

 空想樹が消えた後に宝具『白式官能 唖摩多の手』を代わりの楔として固定。

 彼によって固定された敷物(テクスチャ)ごと、アビゲイル・ウィリアムズが父なる者の力を借り、外なる世界まで引き上げ、まっさらな新天地にて異聞帯ロシアという敷物(テクスチャ)を上書きする。

 

 話だけでも荒唐無稽でとても正気の者から出た言葉だとは思えない。

 

「だが……あの時……汝は『本当にこの世界を滅ぼしに来たのか』という私の質問に対して、否定しなかったではないか……」

 

「滅ぼすとは言ってないよ。ロシア異聞帯自体は確かに()()()()()()()()()()って言っただけで」

 

「気付くかっ……!」

 

 しかし、アタランテ・オルタはこの男の言葉を戯言と切り捨てる事は無かった。

 それは決して絆されて、盲目になっているからではなく。デアーの言葉に嘘偽り無いと信じる事が出来ていた。

 

「……本当に、本当に皆、助かるのか? 死なずに済むのか? 彼等も、子供達も……」

 

「あぁ、俺がこの眼で見てしまった以上、手は差し伸べるとも。何でもは救わない、俺が救うのは救いたいと思うものだけさ」

 

 サウジアラビアにこんな諺がある。セックスは口ほどに物を言う。

 乳房を愛撫している彼の手付き、膣に入っている指の体温。情熱的に語り掛けている彼の肉体言語によってアタランテ・オルタはどんな言葉よりも雄弁に説得されていた。

 幾千の言葉を費やすよりもほんの少しドスケベの方が分かり合える、そういった事は往々にしてあるものだ。

 

「そうか────良かった。…………あぁ、わかった。汝の言葉を信じよう……。敵の空言に……無様にも惑わされた私をまだ見捨てないでくれるのなら、共に戦う事を許してくれないか……?」

 

「もちろんだとも」

 

 返答ついでにデアーはアタランテ・オルタのGスポットを擦り上げた。

 

「んひいい゛い゛ぁぁぁぁあっ♡……な、なんでっ、指を抜けっ……!」

 

「?」

 

「何故、どうして? みたいに首を傾げている! もう私は過ちを認め、汝に与すると決めたのだ! もう、その……こういった行為をする必要はっ……んふぁあっ♡……にゃ、にゃいだろぉっ?」

 

「うん。お互いに誤解も無くなったし、これで心置きなくセックス出来るよね? 知ってる? この世には仲直りックスというものがある事を」

 

「待て待て待て待て待て待てっ……! 今、そんな事をしている場合ではないだろう! 隔離されているとはいえ、敵地のど真ん中だぞっ!?」

 

「そんな事だなんて寂しい事、言わないでよ。これは子供を産む事にも繋がる尊い行為。貴女の願いにも必要不可欠なものなんだから」

 

「それなら別にここでなくともぉぉぉぉぉおおおおおおっ!? 何故、もう全裸になっている!? 服を着ろっ服をっ!」

 

「うん? もしかして着衣セックスの方がお好みだった?」

 

「違うわ、馬鹿か汝は! って何だその凶悪なモノは待て待て待て、私に向けるなそんなもの、ほ、本気か? 本気で私とここで交尾するつもりか? 私とこ、子を設けるつもりなのか……?」

 

「あぁ。もし孕んだら、もちろんそれは貴女だけのものじゃない。二人で大事に育てる大事な宝だから、俺も一生面倒を見る」

 

「あっ♡」

 

 その言葉に子宮がキュンと疼いたアタランテ・オルタが視線を下ろせば、桃色の淫紋がいやらしい光を灯し、完全に浮かび上がっていた。

 

(は、はは。これでもう、私は完全に身も心もこの雄に堕ちてしまったのだな……なのに今は欠片も絶望感が無い。否定出来ないのだ、この男の子種を求めている事は……あぁ、これが淫紋の支配下に置かれてしまったという事か……確かに体にも違和感を感じる、私は本当に受肉したのか……?)

 

※淫紋は只のタトゥーシールです。

※彼女は特にまだ受肉も何もしていません。全て気のせいです。

 

「それじゃあ、イくよ」

 

 体だけでなく、言葉ですら抵抗の意を削がれた彼女はうつ伏せになり、挿入しやすいように尻を高く掲げられる。ボタボタとラブジュースを零し続けるその淫裂は雄の欲望を受け入れる孕み袋としては格好の入り口だった。

 欲情と相手への慈しみが混ざったデアーの瞳を見て、彼女は観念し、不安と期待が入り混じった劣情を誘う顔で告げる。

 

「その……な、? …………子供の名前は……二人で……考えたい」

 

「こっちが魔獣になるわ」

 

「はあああぁぁあっっ♡そんなっ、い、きなりぃぃぃいいいっ……!!」

 

 男を誘惑する言葉としては百点満点を叩きだしたアタランテ・オルタの膣道がビーストのはち切れんばかりの肉棒でいっぱいになった。

 淫紋の効果(と思い込んでいる)で全身が敏感になり、彼の子種を本能で求めてしまっている彼女にとって乱暴とも言えるその挿入は今までの常識を覆す程の衝撃で簡単に気をやってしまった。

 

「ひっ、ひぃっ! ぃぃっ♡……あぁぁぁっ!! ンあぁあぁっ♡ふかっ、深いっ、まって、これまって、だめ、おもったよりもだめぇぇっ♡」

 

 彼は背中から覆い被さるように後背位で獣の如きピストンを行う。予想を遥かに超えた快楽の連続でアタランテ・オルタは一度、止まってと懇願するが聞き入れられてもらえるわけもなく、長い剛直が彼女の膣壁を全てをくまなく味わうような抽送はどんどん加速していく。

 むしろ、彼女は無意識の中で自分からも腰を動かして、男根を求めていた。

 

「んぉぁっ、おっ♡んお゛ぁぁぁぁっっ……あ゛あ゛あぁっ♡……ん゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁっ♡おっ、んほぉぉぁっ♡」

 

 手を抑え付けられ、圧し掛かる形で犯されている彼女は人語を忘れた嬌声を上げる事しか出来ない。

 この世界においてどうかは不明だが、原典においてアタランテは神殿で性交を行い、神罰によって獅子()にされている。

 だが、今の二人は神罰を受ける前から既に獣であった。

 

「あ゛ぁぁ♡んぁあああぁぁっ……♡おっ、おっ、ん゛あ゛あ゛あ゛あぁぁっ♡あっ、んぁぁぁあっ、あぐぅっぁああっ♡」

 

 カリュドーンの毛皮によって変化した魔獣がより大きいビーストに襲われている。まさに性的な食物連鎖の縮図。焦点が合ってない瞳で涎を垂れ流しながら、喘ぎ狂うアタランテ・オルタは腰を打ち付けている雄の種を孕む為の雌獅子でしかない。

 

 けだものセックスで興奮が高まったデアーは彼女の首元、頸動脈がある位置に噛み付いた。

 出血させる程の強さはないが、動物としての弱点を捉えられ、女としての弱点も依然突かれ続けている。命も性も握られた彼女の感度は益々高まり、反応は昂っていた。

 

「んお゛あ゛あ゛あ゛あ゛あぁぁっ!! あ゛あぁっ♡お゛あ゛ぁぁっ……♡ひぁああっ、あああぁっ♡おっ、んぉっ、あんぅぅっ♡」

 

(あぁ、あぁ、私は完全に彼の獲物になっているんだ。獣として致命的な所を抑えられて、生殺与奪も握られて、雌として蹂躙されて、淫紋の通り、もう体も心も負けを認めているっ……やばいっ、噛み付かれているのに……死ぬ程気持ち良いっ……!)

 

 じんわりと痛みが感じるレベルで咬筋力を入れれば、出し入れをしている女陰からの愛汁の量は増し、全身の痙攣の頻度は大きくなっている。

 彼女は完全に自覚した。心から負けを認め、獣として、女として、この雄に屈服する心地良さを。

 

「わかった、わかった私の負けだからぁぁっ……! もう、ゆるひてぇぇぇぇ……♡んぎぃぃっぁっ……!! あっ♡あぁぁっ……♡とまって、とまぁぁってぇ……ん゛お゛あ゛あ゛ぁぁぁっ♡」

 

 敗北の意を言葉で出せば出す程気持ち良くなる。情けない許しを乞えば乞う程気持ち良くなる。自分が認めた雄に嬲られる獲物でしか無い事に自覚すればする程気持ち良くなる。

 完全に敗北したアタランテ・オルタの無様な姿により怒張を膨らませたデアーは子宮へと隙間なく亀頭を叩き付ける。もう何をするのか口にする必要も無い。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁっぁああああああぁっ────♡」

 

 迷宮全体に響き渡る程の甘い絶叫。白濁の欲望が彼女の霊基を作り変え、子宮を溺れさせ、卵子を犯そうと容赦なく注がれる。ドプドプと子宮、膣に収まりきらないザーメンは結合部から外へ漏れ出し、彼女が今まで出してきた愛液と混ざり合って、淫靡が過ぎる水たまりを作り出していた。

 

「おっ♡おっ♡……はぁっ、あっ♡汝の精子が……私の卵子を犯している……孕んだ、絶対に孕んだ……♡……子供、私と汝の子供…………♡」

 

 べちゃりとその卑猥な水たまりに腰を落としたアタランテ・オルタは夢うつつにそんな事を呻いていた。

 まだサーヴァント状態からの一発目の中出しなので身籠る事は有り得ないのだが幸せそうな笑みを浮かべている彼女にそんな無粋な事を彼が言う筈も無く。もっともっと射精して、孕みやすい肉体に改造してやると言わんばかりに第二ラウンドの準備を始めた。

 

 女を犯し、蕩かし、狂わせ、愛する為に最適化されたペニスの形は一回ごときの射精で萎える事は無く、桃色の媚肉に白で上書きされている女陰へと再び突き刺す。

 

「ひぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!? おっ、おぉっっ♡う、うそっ、まだ、するのかっ……?」

 

 牙を剥いた事を躾けられる獣の調教がこの程度で終わるわけが無い。完全に屈服させた上でなお、姦淫を続ける。

 ストロークを開始した、彼は『白式官能』を発動。自身の分身とも言える魔手達がいくつもアタランテ・オルタの肢体に纏わりついていく。

 

 二本の尻尾を男根のように扱きながら。

 

「尻尾掴みながら、ズンズンってぇぇぇ……♡ダメぇぇぇ…♡…ンふぁああァァッッ♡」

 

 増え続ける手は乳房も覆い隠し、ミルクを出させるように乳首を指の間で挟み扱き、乳肉も揉み犯す。

 膣内の凌辱は陰茎に任せ、汗と愛液でドロドロになっている肌を官能を高めさせるようにいくつもの手がいやらしく這い回る。

 

「あっ、あっ♡ま、た……おっぱいのさきっぽをっ……♡むり、無理ぃぃぃ、手が多い、多過ぎるひゃらああぁぁっ……♡アァァ、アアアァ……んほぉっぁぁあっ♡ぇぇあ……こんなの、こんにゃのぉぉ、死ぬより、きちゅいいいいぁぁあ゛ぁああっ……♡」

 

 だらしなく開いた口にも触手染みた白の手を突っ込まれ、舌を指で弄ばれながら開発される。快楽地獄でビンビンに膨れ上がったクリトリスも魔手の標的となり、ネジを回すように弄り犯す。脱水症状になるのではと心配になるレベルで彼女は潮のラッシュを吹いていた。

 

「お゛っ、お゛っ……♡えろぉっっ……じゅぶぅぅっ……♡あぁぁっ、あぁああああぁっ♡止まって、止まってぇぇぇえっ、おっ、おぉっ♡そこ撫でないでぇぇえ……ひや゛あ゛あ゛あぁぁぁっぁぁっ♡」

 

 肉棒からやってくる生身の温かさを伴った麻薬的な快楽。白式官能から送られる人外染みた暴力的な快楽。

 体の外と内、その全身を気持ち良い物で包まれている彼女は自分がどこにいるのかすらも忘れて、白痴のように喘ぎ続ける。絶頂の回数なんて数えるのが馬鹿らしくなるぐらいに。

 

「ほら、どんどん出していくよ! 子供に幸せになって欲しいなら、まず自分がいっぱい子供産まないとね!」

 

「こどもぉっ? うむっ、うむからぁっ……ひんんんぅうっぁあ゛あ゛あ゛っ♡だからっ……お願い、お願い、ほへふぁいぃぃ……♡もう……どこぉ触られてるのかもぉっ……おっ♡わかんなくなって……あっ、あっ♡あっ、あっ♡アッ、アッ♡アッ、アッ♡ひぃっ……♡とんじゃう、とんじゃう、とんじゃぅぅぅぅぅぅんぎぃぃぃぃぃぁあああああっ……♡」

 

 白き触手に全身を愛撫されながら、雄の逸物で串刺しになり種付けされる黒き獣。ビースト0/デアーに食されている彼女の姿はあまりにも目に毒で、セックスではなく交尾と表現するのに相応しい絡み合い。

 二回、三回、四回、度重なるザーメンの放出の中、膣も肌も体の全てをスペルマで犯された彼女がいつ気を失ったかは考える必要も無い些事であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──という話だったのだ。今宵はここまでだワン」

 

「描写が細密過ぎるじゃろ」

 

「アタシもご主人からざっくりとしか聞いていないが、そこは得意の話術でな♪ 猫の口も借りたいというのはここから来てるのだ。おっと、スケベな意味ではないぞ?」

 

「……何ですかそんなハードプレイ沖田さんの体が持ちませんよめちゃしこ羨ましいんですが」

 

「で、その後はヤガのフレンズ達がこの世界でもやってけそうなのを確認して安心した後、正式にご主人に御礼参りに行こうとした所、まるでエロゲのED後スチルが如くお腹を膨らませたアリスと語らっているご主人を目にして、偶々その場に居合わせたもう一人の(ロリ)に『汝がロシアでやった事は彼女(アリス)の夫とそのお腹の中にいる子の父を奪う行為だという自覚はあるか? ん? どうしたプルプルと震えて? 何か言いたい事でもあったのか? はっきり言ったらどうだ?』と虹色をリバースするまで精神攻撃を選択され続け、紆余曲折あって名実ともにご主人の奴隷ペット兼将来的なご主人の子供達の情操教育用ペットと昇格したワケなのだな。うむ! 問答無用のハッピーエンド!」

 

「貴様は今一度、昇格とハッピーエンドの意味を辞書で引いた方がよい」

 

「奴隷ときいて!」

 

「あぁ、やっぱりおったのだな。頭のおかしいセイバー」

 

 セイバーリリィはペットとして愛玩されるよりも畜生の如く折檻される方がお好みらしい。なので他のメンバー程ここには入り浸っていない。SMクラブでも作れば? 

 

 そして話の最中にカリュドーンのフレンズに騎乗していた子供達は帰ったのか、フリーになったアタランテ・オルタはフォウコスプレのマスターに寄り掛かり、未だに淫紋だと信じているタトゥーシールを撫でながら時折、「あっお腹蹴ったぞ♡」と不穏な事を呟いている。彼女が真実に気付くのはいつになるのか。

 

「あ──うん、これ以上ここにおったらわしも『たーのしー、きーもちー』とか頭おかしい事言いそうじゃから、そろそろ帰るな。沖田、貴様もあまり長いはせんようにな」

 

「ふわぁっ♡……マスターは……ぽんぽんを撫でるのがお上手ですね。あぁ、そこ、いい感じですぅ……病弱も治ってしまいそうですぅ……これがアニマルセラピーってやつなんですかね……」

 

「はは、アニマルセラピーで回復するのは人間側だぞ──沖田さん」

 

「もう、手遅れじゃったか」

 

 

 白いモコモコビーストに飼い馴らされている相棒その他大勢に溜息を吐いていると、突如アニマル喫茶の扉が大きく蹴破られた。

 

「次はなんじゃ」

 

「御禁制! 御禁制! 御用改めです!」

 

 お前等許さんぜよ! とバインバインなお胸を許して入ってきたのはスケバン風紀委員長、源頼光さん。バーサーカークラスの時よりも少々、頭が硬くなり色事に対して口うるさくなるランサークラスである。

 

「ここで公序良俗に反している如何わしいお店があると聞きました。シミュレーション内は治外法権で自由ですが、カルデアでそういった経営をする際には厳重な審査が必要です! この店舗はMMS(マスターと道徳的な性交を行う委員会)に一切の届出が提出されていませんよ!」

 

 マスターの存在そのものが公序良俗に反している気がするが、今はそれに突っ込む者はいない。

 頼光はアニマル喫茶の経営者であるジャガーマンに詰め寄っていた。

 しかし、そういった規則、常識をすり抜けるのはこの虎の十八番。警官に賄賂を掴ませるようにあるチケットを押し付けた。

 

「いえいえ滅相も御座いませんニャ。こちらはアニマルセラピーをモットーとした健全なお店ですよ。子供の情操教育にもピッタリ」

 

「ん? 何ですかこれは……?」

 

「知らずに否定はよくニャイとジャガー思うワケ。つまり、違法かどうかは判断するには利用してからでも遅くないよね? ってなワケでこちら、牛さんのコスプレとなっております。これで牛の気持ちになって存分にマスターと戯れていいのよ? こっちは数回分の無料チケットね」

 

「牛になって……我が子と?」

 

「そうそう幼い子に牛の乳搾りは良い経験になるわよ──。この場合どっちのとは言わないわけど。ほらほらほら、想像してごらん、四つん這いになってマスターに乳を搾られる牧場物語を。あっそれとも『邪魔だ!』って乳ビンタされるハードプレイの方がお好み?」

 

「……………………………………………………そうですね。確かに実際に身をもって体験しないで頭ごなしに否定はよくありませんでした。風紀を司る者として正しい裁定をする為には……で、ですがさすがに牛の装いで我が子と戯れるなど……」

 

「ふつうー! ふつうー! 余裕でノーマルよ! ごっこ遊びの延長みたいなもんだから!」

 

「左様ですか…………コホンッ。で、では少しだけ、少しだけですからね?」

 

「はいっ! 一名様ご案内──! ぐっへっへっ、チョロいわ──チョロ過ぎるわー。やっぱりマスターを餌にした性産業は儲かりまんなぁっ。これで体制側を取り込んでしまえば、これからもっと大胆に動け

 

 

 

「そうネ──。コンセプトは面白いデスケド、マスターに内緒でQPを全部懐にチョロまかしているのは余裕でギルティデース!」

 

「げぇっククる」

 

 

 ⇐To Be Continued

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先輩! 先輩! やはり人間よりも交尾排卵動物であるウサギや猫の方が孕みやすいみたいですよ! これはもうするしかありませんね! アニマルセックス略してアニマックス! 猫耳でもバニーでも何でも来いですよ!」

 

「おぉ、なんじゃドスケベビースト。ここの喫茶店、さっき潰れたぞ」

 

「そんなぁっ!」

 

「ノッブ、その雉の帽子最高に似合ってるね」

 

「あぁうん、ありがと。でも今それ言う? グランドマイペースかそなた」

 




その後、経営責任者はアタランテ・オルタに移行され、アニマル喫茶はけものパークとして生まれ変わり、昼の時間帯はラムレイ、ドゥン・スタリオン、ヒポグリフ、赤兎馬、リースといったリアルアニマル達との触れ合いある健全な場へと変わった。

夜の時間帯? さぁ? そこからは店名はけだものパークinアンアンちほーに変わるので、与り知らぬ事ですね。






















うぃっす! ククるんにシメられて次回予告をやらせれてるジャガーっす!
全然、第二部入んねぇじゃんかって呆れ返っているそこのチミ? もう見るのやめようかと思っている読者の皆にビッグなニュース!
出るっすよ、次回からあの女が!
ヒントは"オ"あと"フェ"!
とにかく純潔散り乱れ愛液が舞うR18小説の中で、花は花でも栗の花咲かして鳥は鳥でもリヴァイアサンもどきのペンギンを飛ばす世紀末のへっぽこエロギャグカオス小説『おいでよ カルデアの森』!
早くもOP中でも苦情電話が鳴り止まなさそうな内容の次回は『白い巨塔と戦乙女』
英語で言うとWhite giant tower and valkyrie
おぉヤっててよかったウコチャヌプコロ
英語を話して異聞帯の住民と仲良くなって残りのワルキューレをファックしよう!


ん?北欧で英語って通じるのかニャ?ジャガーわかんにゃい♪





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白い巨塔と戦乙女①(第2部 2章)

最近はサーヴァントじゃなくて、ポケモントレーナーのマスターになっています。ツクシくんくっそ可愛い。太ももにあまいみつ塗りたくってあげたい。

北欧編、そのイントロです。本格的な攻略は次回から。
それにしても第2部 1章から1年以上経ってるんですが、これ3章は2020年更新ゾ。まだ本家の第2部続いてるかなー?










《ロシア異聞帯の空想樹オロチ切除から1週間後、ギリシャ異聞帯にて──》

 

 

 

 

「お──、お──、あんだけ派手に破壊されたのにもう元通りか。やっぱキリシュタリアの所の異聞帯は自力が違ぇな。それとも全知全能の神様の力か?」

 

 髪をオールバックにあげ、眼鏡姿のインテリヤクザのような男が軽口を叩きながら立体映像姿で現れる。他にも同様に、映像が巨大なラウンド型のテーブルを囲むように4つ並んでいた。

 

 かつてクリプター7人が集まり、暗黒円卓会議の場となっていたギリシャ異聞帯の神殿の一角にある大広間。人類最後のマスター……親愛の獣を名乗る人類悪ビースト0/デアーによって挨拶代わりに粉々にされた建造物だったが、こうして再び会議の場を設けれるように再建築されていた。

 

 7人のクリプター。その内の2()()の姿は見えない。

 

 その意味を察しているのか場の空気は些か重い。敢えてその空気を無視している男、ベリル・ガットは飄々と口を開き続ける。

 

「カドック、オフェリアは欠席か? 俺達の中では真面目ちゃんな二人が珍しいなオイ」

 

 

 

「ロシア異聞帯はこの世界から消滅した。生死を含めて、カドックの消息は不明だ」

 

 

 

 その空気にトドメを刺すようにクリプターのリーダーとして、キリシュタリアが決定的な一言を告げた。

 詳細をある程度は把握している異星の神の使徒とクリプターの一人を除いたメンバーがピキリと固まった。ロシア異聞帯の消滅、即ち空想樹がカルデア勢力によって切除された事を。

 

「あーあー、そっか──死んじまったか──カドックのやつ。畜生、悲しくてこれから朝飯も喉を通ら無さそうだな。こりゃあ兄貴分として敵討ちしなきゃいけねぇよな? 俺達はある意味あのビースト0とか名乗るやっこさんに挑む立場だろ、んだよ結構熱血展開じゃねぇか、笑えるぜ」

 

「待ちなさいな。キリシュタリアは生死不明と言ったのよ。コヤンスカヤちゃんアナタ、ロシア異聞帯に最後までいたのでしょ?」

 

 ふざけているのか本気の口調なのかわからないベリルの発言を遮るように長身の男、インド異聞帯を担当するスカンジナビア・ペペロンチーノが異星の神の使徒を名乗るアルターエゴの一人、桃色の髪に防寒性が優れた軍服を身に纏った眼鏡姿の美女へと問いを投げかける。

 

 自由に異聞帯を行き来出来る術を持つ彼女、コヤンスカヤなら必ずロシア異聞帯の結末を知っている筈だと確信していた。

 

「う──ん、多分。期待しているような答えは得られないと思いますよ?」

 

 困ったような笑みを浮かべる彼女が指を鳴らせば、NFFサービスの機材で撮影でもしたものなのかある映像を円卓の中心に浮かび上がらせた。

 

 

 山すら越える巨大なマンモスのような山岳型魔獣となって目覚めたイヴァン雷帝。神霊サーヴァントにも匹敵する異聞帯の王をカルデア側のサーヴァントかあるいは宝具なのか白色の巨大ゴーレムが歯牙にもかけず、拳で撃ち抜いた──サーヴァント同士のスケールを遥かに上回るさながら怪獣映画を現実に再現したかのような戦闘が映し出されていた。

 

 音声が入ってない事だけは唯一の救いか。まさか異聞帯の王を打倒したゴーレムのエネルギー源がその中でスピーカー越しにあんあん♡嬌声をロシア中に響かせているセックスだとは、ましてやこのゴーレムの素体がチェイテ城とピラミッドと姫路城が重なった『チェイテピラミッド姫路城』+アナスタシアの宝具でもある要塞『残光、忌まわしき血の城塞(スーメルキ・クレムリ)』等の建造物だとはさすがのデイビッドでも「所感でいいか?」で看破は出来ないだろう。文字にして頭の悪さが際立つ宝具『ダーリン・イン・ザ・セックス』。

 

 その後は自ら自壊したのか不明だが、真っ二つになった巨大ゴーレムと同時に伐採された空想樹。後の結末はクリプターなら想像通りだろう。空想樹が切除された異聞帯に待つのはテクスチャの修正による消滅。

 

 だが本来なら()()()()()()()()()()()()()()()()()()()結末があった筈だが、映像は空想樹が切断された所で終了している。

 デアーと名乗る青年の周囲から夥しい数で伸び続け、ロシアの大地を突き刺す白色の触手。そして吹雪で荒れ狂う空に浮かんだ深淵なる巨大な穴……文字通り一つの世界に終焉をもたらしたその光景をコヤンスカヤが目にしているかどうかは彼女のみぞ知る。

 

 

「オイオイ、一番肝心な所が映ってねぇじゃねぇか。結局この後、ロシアはどうなったんだ?」

 

「あれ以上あそこにいるのはマズいと乙女の勘が告げていたのでスタコラサッサとロシアからおさらばさせて頂きましたよ。後はご報告の通り、ロシア異聞帯を囲んでいた嵐の壁は消え、残ったのは漂白されたまっさらな地表。クリプターvsビースト0の記念すべき第一戦はこちらの敗北というわけですね♪ どんどんパフパフ~~」

 

 カルデアひいてはデアーと名乗るビーストの力の一端を見る事が出来た貴重な映像ではあったが、カドックがその後どうなったのか答えを得られるものでは無かった。

 異聞帯の王に対する容赦ない一撃。そしてかつて堂々と少女を連れて、ギリシャ異聞帯にも侵攻してきた好戦的とも言える性格……そこを考慮すれば捕虜としているのも怪しい。下手をすれば、この異星の神の使徒を名乗るアルターエゴがデアー側にクリプターの情報を漏らしている疑惑もあるのだから、生かされる必要も無い可能性もある。だがそれを今、ここで追求する者はいない。現状で利の無い仲違いをする程愚かではないのだ。

 

 確定的な映像は無かったものの、カドックの安否はもはや絶望的だろうという意見でこの場はほぼ一致していた。

 

「デイビッド……先程から黙ったままだが、君の意見を聞きたい」

 

 ここまでまだ一言も口を開いていないクリプター。底が計り知れないというよりは底そのものが存在しないような雰囲気を感じさせる男……デイビット・ゼム・ヴォイドはどこに目線を向けているのか不明な表情で答えた。

 

「アルターエゴ達もカドック及びにそのサーヴァントの残滓すら追えなかったのだろう? ならば、そういう事だ。カドックもロシア異聞帯も()()()()()()跡形も無く消え去っているだろうな」

 

「……そうか」

 

 目を瞑り、小さく息を吐くキリシュタリア。異星の神に世界を終わらせる程の痛みと引き換えに他のクリプターの生存を願った、彼等にはそれだけの期待を懸けていた。それを悼んでいるのだろうか。

 

「そー、そー、俺達はあのデアーとかいう奴が苦労して救った汎人類史を滅茶苦茶にした下手人だぜ? 情けをかけられるワケねぇだろ。だからこそオフェリアも怖くなって愛しのキリシュタリア様をほったらかしにして逃げちまったんだろ? いやいや魔眼持ちってのは苦労するよなぁ、一体何を見ちまったのか……」

 

 オフェリアが担当する北欧異聞帯が消失したという報告は上がっていない。あそこの空想樹は依然として育成中だ。だが、ビースト0/デアーである彼がかつてこの場に現れてからオフェリアは定例会議の場に姿を見せないばかりか、クリプター同士の通信も一切を拒絶している。それは醜態を見せてしまった自分が会わせる顔が無いと思っているのか、あるいは話せる精神状態ではないのか。

 そんな彼女を揶揄するような発言をしたベリルに芥ヒナコから無言の批難が刺さる。

 

「こりゃあ珍しいもんが見れたな、ヒナコの鉄仮面が崩れるなんてよ、お前とオフェリア、そんなに仲良かったか? つーか、異聞帯に引き籠もるつもりじゃなかったのかお前さん、そんなにこの人類悪が気になるか?」

 

 すぐにいつものポーカーフェイスに戻った芥ヒナコはベリルの問いには答えない。基本的にクリプター同士の地球の覇権争いも一切興味が無く、たとえ待つ未来が消滅だったとしても自身が担当する異聞帯に最後までいたいだけという不可解なスタンスである彼女。恐らく、前回この場に顕現した……中国異聞帯の王以外で珍しく彼女が感情を露にしたビースト0/デアーの議題でなければ、今回この場にいなかっただろう。

 

「……まぁ、俺もオフェリアの事は心配してんだよ、早くここにいつもと変わらない顔を見せて欲しいなってな」

 

「魔眼を持つ者の世界はその本人でしか理解出来ない患苦だろう。それに原則、クリプターが受け持つ異聞帯への個人的な干渉は禁止だ。彼女が通信を拒んでいる以上、今の私達に出来る事は無い」

 

 今、この中で会議に出てこない彼女を糾弾する者はいない(ベリルの内心は不明だが)。

 宝石クラスの魔眼……対象の可能性も視認してしまうその眼で一体、彼女が何を見てしまったのか憶測ですら話せない以上、彼女に対する話題を重ねる必要も心配も不要であるとキリシュタリアは会議を締めにかかる。

 

「子供ではないのだ。一人一人、それぞれが異聞帯という領地を持つ王とも言える。私は信じているとも、オフェリアは必ず立ち上がれると。それに──()()が相手である以上、我々ももはやカルデアの残党処理は雑務等と慢心が出来る状況では無い。空想樹の育成と並行して対応すべき最優先事項だ」

 

「アナタの所のサーヴァントはまたお得意の予言はしてくれないのかしら?」

 

「真っ白で何も見えない──とだけだ。今、この星で行われているのは異聞帯の王を決める競争では無い。(ゼロ)のビーストを名乗る獣を討伐したクリプターこそ、地球の歴史を引き継ぐに相応しい先導者とも言えるだろう。君達には期待している……」

 

 純白の外套を翻し、会議の広間を後にしたキリシュタリア。どうやらカイニスがデアーの事を殺しに行くと言ってきかないようだ。単身で挑むのは自殺行為だとキリシュタリアはマスターとして抑えているようだが……何にせよ、不測の事態で忙殺されているのはどこの異聞帯も同じのようだ。

 肩をすくめたベリルに、「最悪、本当に最悪よ……」と呟くヒナコが後を追うように立体映像を切っていく。

 

「皆様方、忙しそうですね~~。カルデアとか余裕余裕と思ってた所にあんなのが出て来たのだから仕方の無い事ですが、せめての救いは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()調()()()()()()事ですかね? 私の予想では数ヶ月は掛かると思ったのですか」

 

 

 意味深な言葉と笑みを浮かべてコヤンスカヤもやがて消えていった。

 最後に残ったのはペペロンチーノとデイビッド。

 

「ねぇ、デイビッド、アナタ。いえ、アナタとキリシュタリア……実は()()()の正体に気付いているとかそういう事はなくて?」

 

 ペペロンチーノが指しているあの子とは当然、目下敵対しているカルデア側の唯一のマスターの事だ。

 

「…………一番最初に本人が語った通りだ。ビースト0──ナンバリングすらされていない番外の人類悪。今の奴はそれ以上でもそれ以下でも無い。デアーと名乗った奴の()()が仮に判明した所で、お前達にとっては何も有益なものはもたらさないだろう」

 

「ふぅん、まぁ……確かにね、枠外の存在の生い立ちがわかった所で人間に何が出来るかって言われてしまえばそれまで何でしょうけど。いやホントずるいわよね──、あっちはその気になれば私達の異聞帯のどこにでも出現おーけーってワケでしょう? しかも、異聞帯の王クラスの戦闘力だしぃ、どう足掻いても後手に回っちゃうじゃない──」

 

 コヤンスカヤからの情報だけでクリプター達と勝手に縁を繋いだ彼は『単独顕現』の類似スキル『単独降臨』で彼等のいる異聞帯へ易々と顔を出せるだろう。

 

 諦観の念を感じさせる言葉だが、表情には暗さの欠片も無く……自己主張の激しい面貌でそう嘯いているスカンジナビア・ペペロンチーノ。彼はそういう男である。どんな苛酷な運命が訪れてもそれはそれで仕方ないと激昂する事なく受け入れる人物。今の状況に関しても比較的、落ち着いている部類だ。

 

「次に奴らが浮上するなら、北欧か中国のどちらかだ。……8:2で北欧といった所か」

 

「断言するじゃない。その心は」

 

「奴は言った『慢心込みで魔神王ロールプレイ』だと。その気になれば、最初の時点でキリシュタリアを始末出来たにも関わらず、ご丁寧にロシア異聞帯から攻めた。デアーと名乗ったあれの中には譲れない過程や順序があるのだろう。陳腐な言い方をすれば自分ルールというやつか……? ならばこれから攻略する順序も与しやすいとされる異聞帯から攻めてくれるだろう。正直な所、ロシア異聞帯の王は一番真っ当な部類だ」

 

「中国と比べれば、神代が未だ続いている北欧の方が厄介極まりないと思うけど、あそこの女王様は色んな意味で恐ろしいわよ?」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()単純な戦力で言えば北欧に軍配が上がるだろうな。だが異聞帯は戦力だけで語れる単純な話では無い。当たり前のように神として存在した者よりも『人』の極致として神に匹敵する座へと至った者の方が手に余る。まぁ、それは逆でも言えるか、神の如き力を内包してながら『人』の型に収まっている者もな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──場所は変わって、話題に挙がった北欧異聞帯。神々の花嫁たる純正の女神が治める旧オスロにそびえ立つ氷の城。その一室。クリプターの一人、オフェリアのプライベートルーム。

 

「オーフェリアちゃん──、学校に行きましょう──ウチのクラスに不登校児がいるなんて先生悲しいですよ、ヨヨヨ」

 

「…………」

 

「おやおや、いつの間にやら復帰してますね? この間なんてシーツに包まってガクガク震えて引き籠っていたのにどういう心境の変化です?」

 

 勝手知ったる他人の家、部屋の主に許可も得ずに侵入したコヤンスカヤを出迎えたのは二足でしっかりと立っているオフェリアの絶対零度の視線だった。

 ビースト0/デアーの初接触からは嫌がらせがてらこの異聞帯に不法侵入しても碌に会話にならなかった娘が知らぬ間に立ち直っている。

 

「い~~え、怯えは完全に消えてませんね。それを誤魔化し、隠してでも立ち上がらなければならない何かを見つけたのか……。嫌ですね~~、人間らしく健気でいじらしく実に虫唾が走るゾ☆」

 

「教えなさいコヤンスカヤ……あの怪物について知っている事全てを」

 

「怪物ときましたか……。一体、アナタがその眼で何を見たのか実に気になる所ですが……まぁ、いいでしょう。お部屋への入室代金として支払ってあげますとも、お友達価格です♪」

 

 オフェリア・ファムルソローネが心底苦手意識を持っているこの女狐を叩き出す事をしなかったのは現状、彼女が知る中で最もカルデア側のマスターの情報を握っているのが胡散臭さの擬狐化でもあるこの女だと確信していたから。

 己の中にある未知への恐怖を少しでも減らす為、自分が見てしまった男と共にいる()()()()()()を知る為にも彼女は吐きそうになるぐらいの震えから目を瞑り、立ち上がる事を決意したのだ。

 

「本名……■■ ■■、出身は日本。母子家庭みたいですよ? …………え、そんな事はどうでもいい? はいはい、前置きはここまでにして、本題に入りますよ────」

 

 

 彼女は語る。オフェリアが通信が切った後の顛末を。

 彼は自身を人類悪。親愛の獣。ビースト0/デアーと名乗った。降霊科に所属している彼女も噂レベルでしか聞いた事が無い。

 災害の獣。自業自得の自滅機構。人類史の癌そのもの。自称とはいえ、もしそのビーストに匹敵するというのなら間違いなく並のサーヴァントでは太刀打ち出来ない。グランドクラスの戦力が必要になる。

 ふと、オフェリアは大人しく霊体化させている魔剣遣いの英雄シグルド……厳密に言えばその中に潜んでいるナニかに視線を向けたが、頭の隅に浮かんだ考えを消し去るようにかぶりを振った。

 

「あなたとしてはどうなのですかコヤンスカヤ……その力の一端を見せたデアーの力は」

 

「ふぅん、相性は悪いですね──。私も正直現状ではまともに戦いたいと思いませんし……それにまだ全然本気じゃなかったというか意図的に力を隠してたって感じはしますけどね、名乗りを上げたあの瞬間ですら、まだいい所50%ぐらいみたいな感じでしたしぃ? 変身をあと2回もオレは残している……その意味がわかるな? みたいな印象を受けましたけど」

 

「真面目に答えなさい。はぁ……どうして、そんなのが一般枠でカルデアのマスターとして入り込んだの…………あれは一体カルデアでどのように振る舞っているのかしら……」

 

「そらもう、当然()()でしょう?」

 

 親指と中指で輪っかを作り、その中心を別の指でシュッシュッとジェスチャーするがオフェリアは分かっていないらしくクエスチョンマークを浮かべて首を傾げるばかり。

 

「力を持った勇猛な雄が命が掛かった状況かつ閉鎖的なコミュニティで雌とどうなるか、それは有史誕生以来証明され続けてますよねぇ? えぇ、シンプルに言えばセックスです」

 

「セッ……!?」

 

 ようやくコヤンスカヤの言っている事を理解したオフェリアは沸騰したかのように顔を紅潮させた。

 キリシュタリアに淡い想いを抱いてはいるが碌に恋愛経験は無い。処女たる現代の戦乙女の反応にコヤンスカヤは愉しそうにレクチャーを続ける。

 

「えぇ、性交、交尾、房事、睦ごと、セッ……です。まぁ、ある意味健全なのでは? 人間も含めて生物とは生命の危機となれば種を残さんと積極的にセッ……する生き物ですし。というかお子ちゃまじゃないんですから、セッ……ぐらいでそんな取り乱さないで下さいよ」

 

「取り乱してません! あと真似しないで!」

 

「我がNFFサービスの確かな取材によれば彼は約100騎にも及ぶ女性サーヴァントと肉体関係を持っているでしょう」

 

「ひゃきゅっ!?」

 

 約100騎(但し全てが女性とは限らない)。

 

「その性豪っぷりはケルトの戦士ですら苦笑いするレベルで、王、神霊、未亡人、人妻、母、姉、妹、JK、JC、幼女、男の娘、元男、ロボット、鬼種、チョコ、本、etc……俺のストライクゾーンはコート全てだと言わんばかり。男根はアーサー王の聖槍ロンゴミニアドに匹敵すると恐れられ、本気を出せば男根の数は八本ぐらいは増やせるらしく、一回の射精で10ガロンの精液は余裕であり、異星の神によって人理が漂白されてなかったら彼の精液によって地球が白濁に染まり、マントルが孕んでいただろうと危険視され、興奮状態の彼とエンカウントしようものなら廊下だろうと食堂だろうとトイレだろうと満足するまで肉便器にされ、犯された者は皆あまりの快楽にアヘ顔ダブルピースで座に召され、間髪入れずに英霊召喚の魔法陣となった逸物から呼び戻され、イキ殺しの輪廻を繰り返すという鬼畜の所業を行い、一度犯された者が彼の半径10m以内に近付いてしまえば、股を開き、白目を剥き、滝のような潮を吹きながら、甲高い声でイキ狂うらしく、『真の英雄は眼で孕ませる』との事で彼の眼光に睨まれた者は英霊だろうと3秒以内には妊娠し、3分後には出産し、30分後には温かい家庭を築き、座に帰る事すら許されず第二の人生を生きる事を強要される事から『ゲットファッカーズ──座からの寝取屋』という異名がついてるとか」

 

 コヤンスカヤの今の悪ふざけの中でも全てが嘘と言えないあたり、末恐ろしい話なのだが……当然、交際経験値は糞雑魚レベル。「大人の男女関係……? 知ってます。キスをする時に舌をんべぇって出すのでしょう(ドヤァ」ぐらいがいい所のオフェリアが今のコヤンスカヤの話を半分も理解は出来ていなかったがビースト0/デアーが女性関係に非常にだらしないという事だけは言葉ではなく心で理解出来た。

 そしてオフェリアが最も懸念している事項は、確認したい所はそこにある。

 

「マシュは……」

 

 世界を知識としてか知らなかった儚げな女の子。カルデアという狭い箱庭の中でAチームの備品、人理修復の為の消耗品として育てられてきた純粋無垢たる少女。オフェリアが何度も友達になろうとして、その一歩を踏み出せなかった相手……マシュ・キリエライト。

 

「マシュはどうなってるの、無事なの……?」

 

 縋りつくようなオフェリアの問いにコヤンスカヤは北欧の雪よりも冷たい答えを授けてあげた。

 

「無事なワケないじゃないでしょう。あんな純粋培養で育った女の子なんて速攻、襲われるに決まってるじゃないですか」

 

「──」

 

「私もロシアで見ましたけど、えぇ、アレは実に……この私ですら目を瞑ってしまう惨い有り様でした。目元には拘束具のような器具が装着され……もしかすれば無理矢理前線に立たされていたのかもしれません。ロシア異聞帯の王、イヴァン雷帝から放たれた対軍宝具クラスの雷撃をそのか細い腕と盾で何度も何度も悶え苦しみながら耐え抜く様は涙無しでは語れませんでした」

 

 コヤンスカヤが大根役者ぶりを遺憾なく発揮して泣き真似しながら、投影した映像にオフェリアは心臓が掴まれた感覚に陥った。

 

「…………そ、ん……な──」

 

 争いとは無縁という印象しか無かった──戦場なんて似つかわしくない女の子が物々しい機械、戦う為の装備を身に纏い、盾を構えて全身を何度もビクビクと不自然に痙攣させ、頬を染めながら苦し気に口を開いては息を漏らしている様子が映っていた。音声は入ってないが、聞かなくてもわかる。きっと苦悶の声をあげているだろうとオフェリアはまるで自分の痛みかのように胸元を握り締めた。バイザーで隠れた苦痛に歪む彼女の眼を想像するだけで倒れてしまいそうになる。

 

「ふふ、悲劇のヒロインに酔っている所結構ですが、きっと貴女方Aチームと人理修復をしても彼女の運命は大して変わらなかったのでは? 英霊召喚としての礼装代わり、それがマシュ・キリエライトという少女に対してのクリプターの認識ではなくて?」

 

 弄び、弱っている犬に蹴りを入れる事に一切の躊躇の無い事に定評があるコヤンスカの言葉の刃はオフェリアに良く刺さる。

 

(あぁ、マシュ……あなたもずっと囚われてしまってるのね……)

 

 オフェリアは重ね合わせてしまった。日曜日という牢獄から逃げられず、とても自らの手で御し切れるとは思えない終末の巨人と契約を交わしてしまった自分と。

 どこにも行けず、人理修復の消耗品として生まれ、番外の人類悪の元で縛られてしまったマシュ・キリエライトを。

 

(申し訳ございません……キリシュタリア様、まだそちらへは顔を出せないかもしれません……いえ、逃げた私にはその資格すら無いのでしょうけど……)

 

 本当は自分が一番救ってもらいたいのに、誰かに手を差し伸べて欲しいのに。

 こんな弱くて臆病な女が今更、一体誰を助けるというのか自嘲染みた感情もあった……だが見てしまった以上、知ってしまった以上、最初の頃のように殻に閉じこもるのはもう止めると……彼女はたった一歩だが今までの人生で一番大きな一歩を踏み出した。

 空想樹を育てる。マシュも助ける。両方しなきゃいけないのがクリプターの辛い所。

 

「覚悟は……出来てるわ」

 

「おや、どちらへ?」

 

「私に求婚してきたあの弓兵(アーチャー)の所よ。まだ城内にいる筈。私の婚約者(フィアンセ)を自称するなら役に立ってもらわないと、戦力は多いに越した事は無いでしょう」

 

「オフェリア」

 

 彼女が席を立とうとした瞬間に霊体化を解き、現れたのは紅蓮の瞳をした仮面姿の剣士。

 オフェリアのサーヴァント、セイバー:『シグルド』を名乗るそれが現れだけで室内の圧力が何倍にも膨れ上がった。

 

「ここで大人しくしていなさいセイバー、あなたがいると碌に交渉も出来ないわ」

 

「俺はお前の剣なのだがな」

 

「なら、主である私の言う事を聞きなさい」

 

 冷たく会話を打ち切り、部屋を出ていくオフェリア。セイバーと呼ばれた仮面の騎士は主の言いつけ通り、それを黙って見送っていた。

 

「何を企んでいる女狐」

 

「人聞きの悪い事を言わないで下さいな。臆病な女の子の背中をちょこっと押してあげただけですよ? それでもたかだかサーヴァントが一騎、二騎増えた程度で戦況は変わりませんが……」

 

 オフェリアが不在となった部屋で二人っきり、万象を焼き尽くす色をした瞳に射抜かれたコヤンスカヤはあっけらかんと答える。

 異聞帯の要の一つでもあるクリプターがあぁも怯えてしまっていたら、ロシア以上にあっさりと空想樹が切除されてしまう。結果はどうあれ、せめて戦う意志ぐらいは見せてもらわないと異星の神の使徒としてここに顔を出した甲斐が無くなってしまう。

 

(縮こまってしまったオフェリアさんが異聞帯ごとなす術無く蹂躙され、犯され、あの獣の慰み者になるという展開もそれはそれで私好みではありますが……どうせならもう少し過程を愉しみたい所ですもの。親しい隣人も頼れる相棒もおらず、見当違いの義憤に駆られて勝ち目の無い戦へ必死に抗う処女(バージン)とか見世物としては最高ですよね?)

 

「切羽詰まったオフェリアさんがさっさとアナタの鎧を剥がして()()()()を解放して下されば、やっと戦いのステージに立てると思うんですけど」

 

「フン……人という脆弱な身で健気に俺を縛り付けようとしている。ククク、面白い女だ。俺に驚きと未知を与えた礼は返さなくてはならない。未だ誰も目にした事がない光景を……俺を見出したあの眼に捧げてやろう」

 

「アッハイ、ソウデスネ(うわぁ……硫黄臭というか童貞臭が凄いですね。今日日、『面白い女』だなんて少女漫画の俺様系ぐらいしか言わないわよね……。絶望的に噛み合ってない主従というか、さすがの私もオフェリアさんにはちょっと同情します。ストーカーに刃物とか一番アレな組み合わせじゃないですか──やだ──)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『先輩、バニーですよバニー!』

 

 さて、そんな渦中の人物()であるカルデアのマスターは旧ロシア異聞帯の首都……ヤガ・モスクワの王城にて、携帯越しに実に頭の悪い会話をマシュと楽しんでいた。

 

『つまりうさぎさんです! 常に排卵かつ発情しているアニマルなら命中率も100%とも言えますよ! 先輩はバニースーツはお嫌いでしょうか?』

 

「ふっ、まさか。マシュのバニーガール姿を想像しただけで俺は君の子宮にジャックポットをキめれるよ……」

 

『先輩♡』

 

「マシュ♡」

 

「おい、いい加減。その知性が下がりそうな会話を打ち切って欲しいんだが」

 

 青筋を浮かべている青年カドックはスマホに映ったお互いの顔にキスをしながら自分達だけの世界を繰り広げているバカップル共からのストレスで胃がどうにかなりそうだった。未だ皇女様とは冷戦中の自分に対する当て付けか。しかもその理由がソシャゲからだというのがくだらなくて頭が痛い。「仕方ないじゃないか、全体キャスターだけでは3章のトロイアの英雄に勝てないのだから、そりゃあ確かにジャパンのあの女侍のロックぶりに惹かれなかったとは言えば嘘になるが……」と弁明したら普通に体半分凍らされたらしい。

 偶々、通りかかった殺戮猟兵達にその氷像をSNSに投稿されてから救助されたようだが。

 

 そんなカドック君の気分転換させる為に遊びに来た親しき隣人ビーストデアー君。

 イライラしているカドックもついぞさっきまでは殺戮猟兵代表、兄者氏&ヤガ代表、パツシィ氏を交えて『朝までナマテレビ!』と題して【「あ」で始まる心ときめく女の子仕草は?】等、長時間に渡る議論を行っていたそうな。

 ちなみにカドック──「アナスタシアが頬を染めながら屋外で手をあてて白い息を吐く姿」(個人名を指してるので失格)

 ヤガ代表パツシィ氏──「あくびがばれて慌てて口元を隠す仕草」(食料を報酬に誘ったらあっさりと参加してくれた)

 殺戮猟兵代表兄者氏──「雨に打たれてYシャツから透けてしまった下着を隠し、『見た……?』と顔を赤らめてこちらを伺う仕草」

 ビースト0/デア──―「雨に濡れて、短パンだから恥ずかしくないとばかりに豪快にスカートを雑巾しぼりする姿」

 

 誰が優勝したかはご想像にお任せしよう。

 

 男だらけの白熱性癖議論が終わり、解散した後……現状まだ独り身には辛い図を提供してしまった事に反省したマスターはマシュとの通話もそこそこに打ち切り、今回、ロシアにやってきた要件、自分達がこれから北欧へ向かう旨をカドックに伝えた。

 

「はっ、真面目な事だ。こっちはお前に完膚なきまで叩きのめされた敗北者だ。今更、それを言われた事でどうしようもないさ。それに今はこのロシアをまともな国として運営させる為に大忙しなんでね…………いやホントに僕は一体さっきまで何をしてたんだ?」

 

「息抜きって大事よカドック君。よく学び、よく遊ばないと。人生楽しんだもん勝ちなんだから」

 

 正直、いきなり訪問された時は北欧異聞帯あるいは同じクリプターとしてオフェリアの情報でも尋問しにきたのかと気を揉んだが、結局しょうもない遊びで数時間付き合わされただけだったか……とカドックは溜息を吐くが彼も最終的には「雪国系女の子の白い肌と紅潮のコントラストにときめかねぇとかお前等人間じゃねぇ!」とガチだったが。ちなみにこの会議の映像は全て別室にいるアナスタシアさんにリアルタイムでお届けしています。仲直りの時はそう遠くない。

 

「…………なぁ、お前どうして僕に何も聞かないんだ? クリプターの事とか、異星の神とか、他の異聞帯とか山ほど知りたい事があるんじゃないのか?」

 

 ロシア異聞帯ごと、星を──世界を──移して、存続させたのは開いた口がまさに塞がらないといった所だったが結局その後カルデア側からのアクションといえば、マスターとマシュが雑談混じりに遊びに来るか汎人類史のアナスタシアがこちらのアナスタシアを通してちょっかいをかけるぐらいだった。

 

「え──、カドック君何も知らなさそうだし尋問しても意味が無いかなって」

 

「ぐっ……」

 

「冗談冗談。異星の神から強奪した君達をどうこうしようという気は俺に一切無いし、その必要性も感じてないからね」

 

「ふっ、もうお前に対しては嫌味にすら感じないな。この人理漂白、異星の神について全て知っていたとしても驚きはしないよ」

 

「まっさか──。何でもは知らないよ、知ってる事だけ。ネタバレいくないって俺のお母さんも良く言ってたし」

 

 かつてクリプター全員への堂々たる宣戦布告。数百の殺戮猟兵も屠り、化け物だった雷帝すらもあっけなく破る怪物ぶりを見せ付け、最後はこのロシア異聞帯という幻想(テクスチャ)現実(テクスチャ)の物にした規格外っぷり。自身をビーストと呼称するこの男に対して常識という概念は存在しないだろうというのがカドックの認識だ。タイプは全く違うが何故か彼はこの男を見て、ほんの少しだけデイビットの事を思い出した。

 

「未来が見れたら、救えた命もあったかもしれない。助けられた命もあったかもしれない。それでもだ……あぁ、それでもなんだ……。仮に先を見通す眼を持っていたとしても俺は未来を見ないよ。先を観測してしまったら確定しちゃうからね、誰にとっても未来()というのは真っ白であるべきなのさ。はは、今は本当に真っ白にされちゃってるけどね」

 

「ネタバレが萎える気持ちってのは最近わかるようになったよ……」

 

「おっいい感じに染まってきてるじゃない。ともあれ、俺のフローチャートにはクリプター尋問パートとかは無いの。自発的に語るなら止めはしないけどね、異聞帯をまともに攻略してその過程で情報を収集していきますよ。空想樹とかいう宇宙を内包しているあの樹を俺が観測するのはちょっとアレかもしれないけど、うん誤差だよ誤差」

 

 まとも(海パン姿で炬燵ジェットと雪原を滑走)に(敵の用意した迷宮の中でくっころ系獣女子とけだものックス)攻略(セックスで巨大ゴーレム化させた複合キメラ建造物で異聞帯の王を倒す)。

 

「……無駄だと思うがオフェリアの無事を祈っておくよ」

 

 口ではそう言っておきながらも早くこっちに来て(ギャグ堕ちして)、コイツから来る被害を分散して欲しいなとか思う色々と強かになったカドック君なのであった。

 

 

 

 







白い巨塔も戦乙女も出てないやん! タイトル詐欺とか……分かる? この罪の重さ。
はい、というわけで次回から本格的に北欧異聞帯、無姦氷炎性器イッテルハメルングーー消えぬ白濁の快楽児のRTAはっじまるよ――。今回は真面目だから、いやホントだってばよ。





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白い巨塔と戦乙女②(第2部 2章)


前もって伝えておきますが、2章は100%、1章より長くなります。
異聞帯攻略やった後もエロ回入れるとしたら、今年中に完結するかわかんねぇぞこれ。












「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」

 

 ドシンドシンと後ろからあたしをぺしゃんこにしようとする音が聞こえる。

 逃げられるわけないのに、見つかってしまったからもうあたしは終わりなのに、それでも雪に足を取られながら必死に走り続ける。

 

「はぁっ──、はぁっ──、なんで、なんでうまくやれないのっ……!」

 

 自分のどん臭さに今更文句を言っても何の意味も無い、叫んでも胸が苦しくなって遅くなるだけ……。

 風邪を引いてしまったラウラの為にちょっと集落を抜け出して暖かい所に薬草を取りに行くだけだった。

 巨人に見つからないように、そっと、そっ──と。

 

「ガア゛ア゛ア゛ァァァッッ──!!!!」

 

「あうっ……痛っ」

 

 でも見つかってしまった。あたしが20歩走っても巨人は1歩で済む。逃げれない、逃げられない。

 背後から耳が痛くなるぐらいの大声で驚かされたあたしは足がもつれて転んでしまう。

 まだお昼なのに急に暗くなった。大きい大きい巨人。その影になった私はもう石のように縮こまって震えるしかなかった。

 

「やだ……やだ……」

 

 こんな所でぺしゃんこになるのは嫌だ。こんな所で死ぬのは嫌だ。

 だってちゃんと大人になって、花束をもらって、定めの日にぺしゃんこにならないと御使いに連れてってもらえない。ヴァルハラに行けない。

 

 だから両手をぎゅっと握って祈るの。

 神さま、神さま、神さま、ごめんなさい。決まりを守らず、定めの日以外に大扉から出てしまった悪い子ですか──。

 

 どうか、あたしの魂をヴァルハラに連れてってください──。

 

 

 …………。

 

 

 ………………。

 

 

 ……………………。

 

 

 …………………………? 

 

 

「え──?」

 

 いつまで経っても何も起きないから、もしかしてお祈りが届いて巨人がどこかに行ってしまったのかと目を開けると。

 

 巨人はいた。いたけど、()()()()()()()()()()()()()()()()()()。ぼぉぼぉと見た事のない色をした真っ黒の炎に包まれた巨人は背中から倒れた。

 

 でもあたしは動けなくなった巨人よりも違うものに釘付けになっていた。

 

 あたしよりも大きい人。大人と同じくらいか少し小さい男の人。

 黒い髪に黒い服。御使いと正反対の色をした初めて見る人。人なのかしら……? 御使い? もしかして神さま? 

 

 大きい布がぱたぱたとたなびいてるとがった棒っこから包丁よりも長くてキレイな刃物が生えたそれを握ってる。巨人を燃やしている同じ真っ黒でキレイな炎がそこからもぼぉぼぉと。

 

 あたしがぼ──っと見てるとその人は安心させてくれるかのように微笑んでくれた。

 何故か心がとてもぽかぽかしたあたしは同じようににへらっと笑い返した。何だろう、すごく安心する。初めて会う人なのに巨人に追われてバクバクしてた胸が落ち着いてるの。

 

「あ、あのっ! ありがとうっ! びっくり、本当にびっくりなのだわ! 巨人に会ってもぺしゃんこになってないなんて! そんな炎を出す御使いは初めて見たの!」

 

「あぁん? 御使いぃ? 私が糞ったれの神様の使い走りに見えるのかしら、このガキんちょは」

 

「え? え? あ、あれ? お姉さん、どこから? さっきはお兄さんしかいなかったのに……?」

 

 気づいたらあたしを助けてくれたお兄さんの隣に眉間にぎゅぅっと皺が寄った白髪の鎧姿のお姉さんがいて、こっちをニラんでいた。わ、わ、どうしよう。あたし何か気に障る事でもしてしまったのかしら。

 

 でもお姉さんはいつからいたの? お兄さんが握ってた黒い炎を出してた棒っこも無くなってるし、もしかしてあたしを怖がらせないようにしまってくれたのかしら? 

 

 でも、でも……そんなに怖くなかったのよ? だって、とても綺麗だったもの。

 

「あっ! わかったわ! お兄さんが神さまでお姉さんが御使いね! お姉さんはお兄さんのポケットにさっきまで隠れてたのね!」

 

「アハハッ、コイツが神様とか笑えない冗談だし、私をティンカー・ベル扱いとかいよいよ燃やされたいみたいねこのガキ。こんな所に一人でいる所ワケだし、自殺志願者でしょ? 私が殺しても問題ないわよね」

 

「わわ、ごめんさいっ……何だか分からないけど、また怒らせてしまったのね! でもヴァルハラに連れてってくれるのなら、巨人にぺしゃんこにされるより全然良いわ、えっ──と、よろしくお願いします。黒いワルキューレさま」

 

「だ・か・らぁ! 御使いでもワルキューレでも無いって言ってんでしょうが。そもそも殺されそうになってんのによろしくお願いしますとかマジで頭おかしいんじゃないのこのガキ……」

 

 今度は呆れられてしまったのだわ。でも眉間に寄ってた皺は無くなったからもう怒ってないのかしら……良かった。隣にいた黒い髪のお兄さんが尻餅をついていたあたしに手を伸ばしてくれた。そういえば、腰を抜かしたままだったわ、恥ずかしい……。

 

「でもブリュンヒルデにお姉様って慕われてるからもしかしたら邪ンヌも実はワルキューレという可能性が」

 

「無いわよ殺すわよ。……まぁ、戦乙女、ワルキューレという響き自体は嫌いじゃないわね……ヴァルハラ、山の巨人に霜の巨人、オーディンとかフギン、ムニン……フフフフフ、北欧はネタの宝庫ね。そそるじゃない。あっ、でも巨人の弱点がうなじじゃなかったのはナンセンスよ。さっきのも豆腐のように柔かったじゃない」

 

「巨人が跋扈してる割には集落の壁も全然高くなかったねぇ」

 

 うぉーるまりあぁ? む、む、む……御使いの会話はむつかしいわ……。何を話してるのか全然分からないの。う──ん、御使いのお姉さんの雰囲気からするとお兄さんは神さまじゃない? そうね、二人とも御使いなのね! だって普通、御使いは神さまにすごくかしこまるものじゃない? 二人は距離も近いし、とても気安くて対等って感じがするわ! 

 

「あっ、そういえば。あたしまだ自己紹介してなかったわ! お兄さん、お姉さん、助けてくれてありがとう! あたしゲルダっていうの! 13歳のお姉さんよ!」

 

「あらあら13歳。余裕でマスターの射精距離じゃない。いかが致しますかマスター? 腹ボテロリをもう一人増やしてはどうかと具申しますが」

 

「ハハハ、こやつめ」

 

 ? 急にお姉さんがお顔を真っ赤にして「ひゃぁんっ!」と叫んで震えてしまったわ? もしかして風邪……? ふふふ、なら丁度いいわ、ラウラの薬草を取るついでにお姉さんの分も取ってきてあげる! あたしもお姉さんなんだからキチンと恩返しは出来るのよ! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 空に大きな、大きな太陽が北欧の地を照らしている。汎人類史の恒星とは桁違いのサイズで浮かんでいる。

 

 その下に氷の城があった。外敵と戦う為ではなく、ただ荘厳に神の威厳を知らしめるが如く美しくあれと建つ城。

 その城の唯一の玉座、唯一の神、唯一の王、古き神々の花嫁、スカサハ・スカディはゆったりと氷の玉座に腰を降ろして、報告を受けていた。

 

「なるほど。この北欧の地で跋扈する巨人達を屠り去る異形の集団か……」

 

「はい。ヒトの仔が住む集落の近くで生息、あるいは眠りから覚めて活発的になっている巨人を優先的に排除している模様。何やら甘い香りを漂わせる茶色の固形物で生成された使い魔が数十騎確認されています。戦闘力は統率個体である我らには及びませんが、恐らく量産個体とは同等、あるいはそれ以上──」

 

「よい、よいのだ。全て見ている。いたずらに我が子達を排しようとしているワケではなかろう。むしろ守る為に動いている。ならば放っておいて構わぬ。ふむ、しかし……あれが汎人類史の使い魔か、何らかの魔術であろうが一騎一騎の意匠が実に凝っている。私には理解出来ない造りだが……」

 

 粛々と膝を付き、女王の独白を聞いているのは大神オーディンによって生み出されたワルキューレが一人。この北欧異聞帯にて魂なき使い魔ではなく、統率個体として自意識、独立性を兼ね備えたワルキューレ、スルーズ。

 神の威光を知らしめるが如く眩しい金髪からは同じ色の羽根のような耳が生えている。彼女の無機質な美しさは確かに人ならざる雰囲気を感じさせる。

 

()()()()()()()()。別種であろう使い魔もか……。数多の集落で、定めの日に行われる『旅立ちの儀』を必ず妨害せしめんとする白衣を纏った人形集団」

 

「戦闘力は巨人種を打ち破っている茶色の使い魔と比べれば、格落ちですが……。その戦闘方法は非常に厄介です。白衣の使い魔なる集団は私達に敵対行為を取り、振る舞いは非常に暴力的でありながらこちらの生命は絶対に奪わないようにしている配慮さえ感じます」

 

「武具なき身で翼を引き裂き、槍を折り、盾を壊す。まるで命を奪わなければどんな事でもしてやるという一つの執念を感じるな。こちらが退けば、追わない以上あれらもヒトの命を守護する側にいる者達なのだろう。うむ、ならば愛そうではないか」

 

「ですが、北欧の地における唯一の神。我らが女王、スカサハ・スカディ。定めの日を迎え、大人となったヒトの仔らを集落から連れ出すのはこの世界を存続していく上で必須事項。たとえ、使い魔を操る者に害意が無かったとしてもこれ以上は看過出来ないかと」

 

「ふふ、わかっておる。今日はやけに口数が多いな我が子よ」

 

「いえ、そのような事は」

 

 神であり、主であるスカディの指令を忠実に遂行しようと機械に徹するスルーズの諫言も愛おしく思う女王は慈しみを込めた笑みを浮かべる。

 自身の魔術を込めた仮面でも完全に縛り切れない巨人達を討伐する甘い香りを漂わす集団。

 定めの日に迎いに来るワルキューレ達を無力化する白衣の集団。

 

 スカディはそのどれにも一つの愛を感じていた。

 だがここは既に多くの人間が生きていける地ではない。ラグナロクの置き土産、ムスペルヘイムの残り香、炎の巨人王スルトの残滓、その灼熱が残ってしまっている以上、この地で生存出来る人間達の絶対数はどうしても限られてしまうのだ。

 

 1万の人間を百の集落に分け、増やし過ぎず、減らし過ぎず、それを3000年維持してきた。

 ならば、その機構(システム)を脅かしかねないというのなら、愛を謳う女王でも完全な放置はするつもりはなかった。

 

「23集落の隣だったか。使い魔達と同時期に現れた移動を行う摩訶不思議なこの世界ならざる()()()()()()()()が現在、停止しているのは」

 

 確認されている異物は大まかに分けて三つ。

 一つはバリエーションに富んだ甘い香りがする茶色の使い魔達。

 一つは白衣を纏った人形の集団。

 最後にその白衣の使い魔達と同じ魔力反応が検知された白き移動型建造物。

 

「はい。その建造物からは白衣の使い魔達と同様の魔力反応を感知しました。間違いなく、術者が中にいるかと。既に30騎の量産型戦乙女(ワルキューレ)及びに我らが姉妹ヒルドも共に向かわせています」

 

「それとオフェリアも同行させた。本人たっての希望だ」

 

「オフェリア様が……? ですが、彼女は」

 

「うむ。十数日程か? 何かに怯えるように部屋に引き籠っていた時はどうしたものかと、気を揉んだが……。ようやく外界に出る決意をした模様だ。母としても実に喜ばしい。どういう心境の変化か、自身の騎士だけではなく、つがいを希望していたあのなんとかという弓兵(アーチャー)も伴ってな」

 

 まるで引き籠りの子供が自立的に外出するようになった事を喜ぶ母親のようにスカディは顔を綻ばせていた。オフェリアの内心を考えれば、そんな呑気な状況でも決して無いのだが……そこはこの世界の唯一神、人間の細かい感情の機微など気にする筈も無く。

 

「英断かと。神秘を有してないとはいえ汎人類史の勇士である弓兵に、魔剣使いの騎士。それに同胞達を率いるヒルドがいれば、如何なる敵にも遅れをとる事は無いでしょう」

 

「これ、戦いを前提にするな。異なる世界からの異邦人とはいえ、我が子らを守護してくれたのだ。何が出てこようと私は愛すると決めている」

 

 スカサハ・スカディは見ていた。この北欧の世界に降り注ぐ、自身の魔力を宿した雪を通して──。

 何かの手違いで集落の外で巨人に追われていた哀れなヒトの仔を助けた黒衣の男を。

 神である自身でさえ、薄ら寒さを感じた未知の炎を司るその男を見て確信していた。間違いなく、この男がカルデアなる者達の首魁だと──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 帰り道の途中であたしは二人の名前を聞いた。

 黒い髪のお兄さんはデアーお兄さん。白い髪のお姉さんはジャンヌ・オルタお姉さん。

 

 二人とも同じ色の格好をしてるから仲良しなのね! って言ったら、またオルタお姉さん(ジャンヌお姉さんという呼び方はとても嫌がられてしまったわ)に怒られてしまった。

 でもそこから落ち着きがないように髪先をクルクルしたオルタお姉さんはしきりにあたしがちゃんと付いて来てるのか確認したり、危ない道は手を引いてくれたりしたわ! 見た目は怖いけど、やっぱり優しいお姉さんなのね! デアーお兄さんも凄く優しい眼であたし達の事を見ていたもの。ぺあるっくって何なのかしら? 

 

「わ、わ、わぁぁぁぁっ!!」

 

 本当はラウラの為に薬草を取りに行きたかったんだけど、話を聞いたデアーお兄さんが治してくれるっていうから寄り道しないで二人に連れられて集落に帰ってきたら隣に凄い物があったの! 

 

 あたしが今まで見た事無いような大きな大きな家! あたしの家よりも全然綺麗な窓が数え切れない程いっぱいあって、見上げれば首が痛くなるぐらいに高くて。今朝、集落から出た時はこんなのは隣になかったから……もう目をグルグルにして驚きいっぱいになったあたしの口からは「わぁぁ」しか出てこなかった。

 

 ここはお兄さんとお姉さんのお家? って聞いたら、「コイツとの新居が薬品臭いこれなんて即別居よ」ってオルタお姉さんに否定されてしまったわ。

 この大きい白いお家は『病院』って言って、怪我や体の具合が悪くなった子達を直す為の建物らしいの。

 

 中に入ったら、不思議な匂いといっしょにまるで絵本の世界が広がってたわ。火も無いのにずっと明るくて綺麗で、白い帽子と服を身に纏ったお顔の無いお姉さん達がたくさんいて、もしかしたら自分は夢でも見ているんじゃないかって思うぐらいに口をぽかんと開けたまま辺りを歩いていたら、向こうからラウラが元気に走ってきた。

 

 熱を出して、寝込んでて、ずっと魘されていたラウラはちょっと怖い『ふちょう』さんって人に治してもらったらしいの。元気な姿を見せてくれたラウラにが集落に帰っていくのを安心して見送って、一緒に帰らなかったあたしはどうしようと悩んでいた。

 

「お兄さん、お姉さん。あたしの命も助けてもらって、ラウラも治していただいて、こんなに綺麗な場所も見せていただいだのに……あたしには何も返せるものがないわ──」

 

「そうだなぁ、じゃあゲルダの話を聞かせて欲しいな。俺達凄く、凄く遠い空の向こうから来たんだ。ゲルダのことも、この世界のこともいっぱい教えて欲しいな。まだ世間知らずなんだ」

 

 眼を瞑って、うんうんと唸っているあたしの頭をぽんぽんと撫でてくれたデアーお兄さんはそう言ってくれたの。

 空の向こう……あたしはそれをとても嘘だとは思えなかった。こんなに優しくて綺麗なお兄さんとお姉さんがあたしを騙すとは思えなかったから、うん、それぐらいの事で恩返しになるかどうかわからないけど……。

 

「わかったわ! たくさん、たくさん、話してあげる!」

 

「ふ──ん、じゃあ体で払ってもらおうかな? みたいな展開に持っていかなくて良かったの? こういう疎そうな少女の花を散らすのアンタ大好きでしょ?」

 

 オルタお姉さんがまたお顔を真っ赤にして変な声をあげたわ。やっぱり風邪なのかしら? 心配だわ。

 それに体……? う──ん、あたしはお肉もあんまり無いし、食べても美味しくないと思うの。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──旅立ちの儀? ヴァルハラ? 何を言っているのか理解不能です。死ぬとわかって外に出る貴方達の振る舞いもです。

 

 

 空中を浮遊する移動型巨大病院の持ち主、クリミアの天使──フローレンス・ナイチンゲールはそう語る。

 七階建て、患者一人の入院に必要なスペースを確保したワンルームが必ず与えられ、さらにその病院内には『治療、救助、生命維持、命を脅かす対象への雑菌処理』というオーダーの元、北欧異聞帯各地へ飛び立ったり、治療、折檻に励む白い看護服に身を包んだ顔無きオートマタ型使い魔が380体も存在する。名は『白き貴婦人』。

 

 生前、数学・統計学・経済学を始めとした多くの学問を修めた彼女が追い求めた理想的な病院のノウハウをつぎ込んだ宝具。どんな困難が待とうとも命を救う為に進み続ける彼女の新たな宝具の名は──。

 

境界無き病棟(ボーダーレス・ナイチンゲール)

 

 ちなみに空中移動は羽根を生やした使い魔『白き貴婦人』が数十騎持ち上げて、飛行して行っている。ワーオ、パワフル。

 

 北欧異聞帯に舞い降りたこの地の文化レベルにおいてはあまりにオーパーツな白き病棟の中で、デアーと邪ンヌに救われた少女ゲルダは一生懸命語っていた。

 

 二人は病棟内の広くスペースを設けられた待合室で彼女が語る当たり前を……この地の常識を聞いていた。

 邪ンヌは頬杖をついて、一見興味なさげに窓の方に目をやっていたが何だかんだで義理堅く真面目なアヴェンジャー。一言一句ゲルダの言葉は耳に入れてくれてるだろう。

 

「はぁ、ふぅ……。こんなにたくさん喋ったのは久しぶりだわ。でもこんなので恩返しになるのかしら、あたし本当に当たり前の事しか話してないのよ? オルタお姉さんも飽きてそっぽ向いてしまったわ……」

 

「大丈夫、とっても為になる話だったよ、ありがとうゲルダ。後、邪ンヌは真剣に話を聞こうとすればする程、人の顔を見れなくなっちゃう照れ屋さんだから気にしなくていいよ」

 

「そうなの……変わってるのね」

 

 渾身の力で否定したいがここで振り向いてもまたイジられる(性的にも)だけなのでノーリアクションを貫く邪ンヌ。「喉乾いた? あっちでお水でも飲む?」「えぇ!」と少し離れた所にあるウォーターサーバーまで二人が行ったのを確認して、誰に聞かせるワケでもなく彼女は呟く。

 

「ハッ! 神様の言いつけ通り、25まで生きた良い子ちゃんはヴァルハラに連れてってもらえる? 傑作、まるで家畜ね」

 

 顔は嗤っているがその心には沸々と憎悪の炎が燃え上がっていた。その怨嗟の矛先には北欧を統べる神、どんなに長く生きてもこの狭い集落の中で25で死ぬ(ことわり)に一切の疑問を抱かず幸せそうな顔を浮かべる人間、そしてその機構(システム)で成り立っている北欧異聞帯という世界そのもの。

 ぶっきらぼうな態度には今の顔をゲルダに向けて、下手に怖がられても面倒臭いという彼女なりの優しさもあった。

 

「一生を集落で過ごしている喧嘩も知らなそうな人間を死後、ヴァルハラに連れていくってのも眉唾物じゃない、戦の役に立たないでしょ。ヴァルハラ云々が嘘だったとしても、どうせいつもの上から神様理論で『希望をもって死を迎えた方が救いがある』とかほざくんでしょうけど……」

 

 集落の外を見た聡い彼女は理解していた。魔術結界から守られている集落から外に出れば、まともに人が住める環境は無く、碌に食料も得られない。強くあろうが弱くあろうがこの世界では人間は繁栄出来ない。既にどん詰まりなのである。

 それを理解しても尚、彼女の感情は気に食わないの一つで染まっていた。

 

「異聞帯の王とかクリプターが女なら、アイツがさっさと犯して、堕として終わりにしてしまえばいいのよ」

 

「やはり寝取りですか……いつ出発します? 私も同行しましょう」

 

 ブリュンヒルデ院。

 

「誰も呼んじゃいないんだけど」

 

 左腕を曲げ、集中線と共に現れたのは異聞帯とはいえ、北欧とは縁深き英霊。戦乙女の長姉、古エッダやサガに語られる女神──ブリュンヒルデ・シグルドリーヴァを模した贋作英霊。

 

 マスターとの相互槍刺しセックスと愛しのお姉様との3Pで霊基を完全に昇華させた造られた戦乙女。

 その白のドレス部と黒い鎧部、オリジナルのブリュンヒルデとは違う配色も彼女の一つのアイデンティティ。

 

 彼女は決して、もう一つのアイデンティティでもある寝取り、寝取られの匂いを察知して来ただけではない。

 本物とはいえなくとも、ベースとなったブリュンヒルデの魂がこの異聞帯に来てから妙にざわついている。

 彼女曰く、旧北ヨーロッパ地にそびえ立つガルフピッゲン山の山頂に行けと何かが訴えていると。どうやら同行者を求めていたようだ。

 

「あぁ、そう。じゃあ行きましょうか。まだまだ暴れ足りなかったし、鬱憤晴らしには丁度いいわ」

 

 邪ンヌは可愛い妹分の申し出を二つ返事で承諾した。このイライラを発散させてくれる燃やし甲斐のある敵が現れる事を期待して。

 

「お姉様はこの世界がお嫌いですか?」

 

「えぇ、嫌いも嫌い。大嫌いよ。神も人もまとめて燃やしたくなるわ。だけど──」

 

 一拍置いて、憎たらしくも不敵な笑みを浮かべて、ブリュンヒルデの方へと振り返った。

 

「私はあの人の伴侶(サーヴァント)です。旦那様(マスター)がこの世界を救うと宣うのなら、全力でその力になります。私達はそういうものでしょう?」

 

 ブリュンヒルデは濡れに濡れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 井戸も無いのに綺麗なお水を出す不思議な箱にまたまた驚いて戻ってきたら、オルタお姉さんはこれから用事があるからここでお別れらしい。

「また、会えるのよね?」と声をかけたら、背を向いたまま手をヒラヒラと振ってくれた。オルタお姉さんの隣にはまた見た事もないような綺麗な女の人がいたの。

 

「もしかして、二人ともデアーお兄さんのつがい?」

 

「つがい、というよりは奥さん、お嫁さんって感じかな。まぁ、夫婦だね」

 

 おくさん、およめさん、ふうふ……知らない言葉だわ。つがいと何が違うのかしら? 

 疑問を浮かべているあたしにお兄さんは教えてくれた。

 

 子供を産むつがいは男と女で呼び方が違うらしい。男は「旦那さん」、「夫」、「あなた」。女は「奥さん・お嫁さん」、「妻」、「おまえ」。二つの繋がりを「夫婦」って呼ぶ。

 

 どうして分ける必要があるのかしら? それにそんなに呼び方がたくさんあって混乱したりしないの? 

 

 そして、産まれた子供にとって自分を産んでくれた大人は『親』と呼ぶものだって。

 男の親は「お父さん」、「パパ」、「父上」。女の親は「お母さん」、「ママ」、「母上」。

 子供からも呼び方がたくさんあるって教えてくれた。

 

 そして、親と子供を纏めた繋がりを『家族』と呼ぶって教えてくれた。

 

『家族』はどんな形であれ、一生付き合っていく事になる絆になるって。だから『家族』になる前のつがい、お兄さんの世界では『恋人』、『伴侶』とも言うらしいの。つがいは自分の意志とお互いの意志で付いたり、離れたり、好き合ったり、嫌い合ったり、色んな選択から決めていくんだって。

 

 ……………………。

 

 お父さん、お母さん。夫婦──。恋人──。伴侶──。家族──。分からない、ごめんさいデアーお兄さん、あたしやっぱり分からないの。

 あたしを育てた大人はあたしが10歳の時の定めの日に大扉から外に出て行ったわ。お父さんもお母さんも親って言葉を言われてもあたしはまるで分らないの。だってもういないから。

 

 恋人……。好きな人とつがいになる? 好き嫌いと子供を産む事は何か関係があるのかしら? 分からない、分からないわ……。だって15になる前につがいと子供を産む儀式をして、子供を産んで大人になって、育てて、25になったら大扉から出てって、ぺしゃんこになって、ヴァルハラに連れてってもらう。そういうものでしょう? 普通はそうなのよ。

 

 だから分からない。好きって言葉は分かるけど、『恋』とか『愛』とかそんな言葉を言われてもピンと来ないわ……あぁ、どうしましょう。あたしももう少ししたら、子供を産まなくちゃいけないのに、こんな事じゃ良くないと思うの。

 

 分からないことだらけでも、お兄さんは今──とてもとても大事な話をしてくれる、それだけは分かるから。

 

「そうだね。じゃあ例え話だ。これはあくまで想像の話、ゲルダが想像してどう思うかって話だ」

 

「想像……?」

 

「そう。何十年も一緒に生きていきたいなって思う人とつがいになって、子供を産んで。その子供を好きな人と二人で見守るんだ。大きくなっていく子供は25歳よりも長く長く生きて」

 

 う──ん、何十年……。途方も無い話だわ……25歳よりも長く生きれるなんて信じられない事だけど……。

 

「年を取ったゲルダ達がその子供が一人で生きていけるように巣立つまで見守っていく。もしかしたら、その子供がまたつがいを見つけて、さらに子供を産むかもしれない。子供の子供──孫にとって、ゲルダはおばあちゃんになるね」

 

『孫』、『おばあちゃん』……。デアーお兄さんが言ってるのは絵本に書いてあったお年寄りの話をしてるのかしら? 

 想像、想像、好きな人……何十年も一緒に生きていきたいなって思う人。むつかしいわ。集落の子供達は皆良い子達ばかりよ? でも、一緒にいたいと言われると、う──ん。

 

 そうね、想像だし、深く考えなくてもいいわよね? 例えば、今目の前にいるデアーお兄さんとつがいになって──。子供を産む。想像……あくまで想像よ?

 お兄さんは優しいから、きっと子供の面倒はたくさん見てくれるわ。一緒にずっとお兄さんがいう『家族』になって何十年も生きていく。うん、うん、うふふ……。

 

「……………………やっぱり、お兄さんのお話はむつかしいわ」

 

 あたしの頭があんまり良くないせいか、その想像は泡となって浮かんではすぐ消えてしまう。

 あぁ、困ったわ。とても困ったの。きっとあたし、お兄さんの話はほとんど理解出来ていないのにどうしてこんなに胸がドキドキするのかしら? 巨人に追われてた嫌なドキドキじゃなくて、怖くないのに、切なくて、とってもとってももどかしいの。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここはお兄さんのお家じゃないのよね? もしかして、お兄さんもどこか悪いのかしら?」

 

 病院は治す所なんでしょ? と得意気なあたしの質問をやんわりと否定したお兄さんは教えてくれた。病院は治す以外にも子供を産む時のお手伝いをしてくれるんだって。こんな大きい場所を用意してくれるなんて凄く贅沢だわ……。

 

 だから、ここでお兄さんのつがい──お嫁さんが子供を産むらしい。お兄さんにとっては初めての子供。あたしは自分の事ように嬉しくなって祝福してあげたわ。

 お兄さんも嬉しそうにありがとうって言ってくれた。でも少しだけ不安をポロっと零していたわ。父親を知らない自分がちゃんとお父さんを出来るかどうかって。

 

 お兄さんは自分を産んでくれた本当の大人(両親)の事を知らないみたい。

 

 自分を育ててくれたお母さんのお腹の中から出て来たわけではないらしい。

 

「『あなたは赤ん坊の時、橋の下から拾ってきたのよ』って10歳ぐらいの時に言ってきてさ、まぁ、確かに顔も髪も全然似てなかったから。そうなのかー、ぐらいしか思わなかったけど」

 

 それは──とても悲しい話だわ。だって子供は生まれてから10年は自分を産んでくれた大人(両親)に育ててもらうのよ。赤ん坊の頃に外に放り出されたらそのまま死んじゃうわ。死んでもきっとどこにも行けないの…………。

 

「でも別に不幸とか思った事は一度も無くてね。変な人だったけど、十数年一緒にいて俺は胸を張ってあの人の子供だって言えるし、あの人が母さんだって言える。殺しても死ななさそうな人だから、今もどこかで元気にやってるだろうし……

 

 そういってお母さんの事を語るお兄さんの顔を見てると、あたしは何だか羨ましくなっちゃった。

 そしてきっと大丈夫だと、お父さんを知らなくてもお兄さんはきちんと親になれるって。お兄さんの手を握って励ますように上下に大きく振る。

 

「デアーお兄さんは絶対素敵なお父さんになるわ! だって、あたしがもし、お兄さんの子供だったらとっても幸せだと思うもの!」

 

 ありがとう──とお礼を言ってくれたお兄さんの顔は見惚れるほど綺麗だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、見知らぬお客さんがここに来るなんてとても珍しいのだわ」

 

 せっかくだからということでお兄さんのつがいに会わせてもらえる事になったわ。凄く緊張して、扉を開けたら雪のようにキラキラしている綺麗な銀髪をしたお人形さんのような娘がいたの。

 あたしよりも小さい女の子が大きくお腹を膨らませて、ベッドで横になっていた。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()、ベッドの隣でその女の子の手を握って見守っていた。

 

「ミス・アリス。妊婦であるあなたへの精神的ストレスは胎児にも悪影響であるが故に多少の我儘は容認しますが、いつ出産してもおかしくない現状である事は自覚して下さい」

 

「ふふふ、婦長さんはとても心配性なのね。でも経過は良好なのでしょう。病室に一人でいる方が気が滅入ってしまうわ」

 

 もう一人、薄い板をもって、ぐにゃぐにゃと動く線が描かれた不思議な箱とにらめっこしている白衣のお姉さんがいたの。ここに来るまでに会った人達と似たような格好はしているけど、今度はちゃんと顔がついてるの。目付きはするどいけど、とても綺麗だわ……この人がラウラの言っていた『ふちょう』さんって方なのかしら? 

 

「ふぅ、本当の所はアリスが落ち着くまで異聞帯の攻略は後回しにするつもりだったんだけど……」

 

「それは駄目なのだわ。だってマスター言ってたじゃないあの大きい樹は早めに切れるなら、それに越したことは無いって。わたしはもう一人前の奥さん(ワイフ)なのだから、夫の仕事にもキチンと理解を示すの。『わたしと仕事どっちが大事なの?』って意地悪な事は言わないわ」

 

「ありがとう婦長さん。彼女をここに連れてきてくれて」

 

「礼は不要です。この世界にも病が蔓延っているのですから、私は私の役目を果たします。看護師達の報告によれば、碌な設備も無いこの環境で15までの出産を強要される? あり得ません、母体が幼い以上、細心の注意と最適の環境で出産に備えるのが常識。全く、命を何だと思っているのか。旅立ちの儀などと訳の分からぬ世迷言を吐く輩の治療はあなた(司令官)に任せますが」

 

「………………」

 

「なにか?」

 

「治療ジャンキーの婦長さんが他の人に治療を任せるなんて、月でも降ってくるのかしら」

 

「適材適所があるでしょう。自分の限界も分からず、全てを一人でまかなう等、無謀を通り越して愚か。私とて、生前から手が回らないであろう所は多方面から力を借りましたとも、命を救う為ならあらゆるものを利用します」

 

「フローレンスの場合、その限界とやらが常人の遥か上を行ってるけどね」

 

 なんだかむつかしい話をして、置いてけぼりになってしまったのだわ。

 ふちょうさんって呼ばれた人もお兄さんのつがいなのかしら? …………! あたし、冴えてるわ! ここは悪い所を治す以外にもたくさんいるお兄さんのつがいの子供を産む為の場所でもあるのね! だから、こんなに大きいのだわ! ふわ──、お兄さんのつがいって何人、何十人、それとも何百人っているのかしら……。

 

「おっと、ほったらかしにしてごめんねゲルダ。彼女はアリス、俺の奥さんで、初めて俺の子を産んでくれる人だ」

 

「は、はじめっ、まして! あたしゲルダといいます! え、え──とアリス、ちゃん? さん? お姉さん?」

 

「普通にアリスでいいわ。よろしくね、ゲルダ。鏡の国のアリスみたいに綺麗な髪と眼をしてるのね、ふふふ、丁度いいわ。違う世界の女の子からもお話を聞きたかったの。わたしのお暇の相手をしてくれると嬉しいわ」

 

 あたしよりも年が下であろうその女の子かはあたしがドキッとするぐらい綺麗で大人に見えたの。そして、そんなアリスのお腹を撫でて、語らうデアーお兄さんとアリスはとても眩しくて、そうあるのがお似合いに見えて、その時から少しずつだけど、夫婦とか愛とかそういう言葉の意味がわかってきたのかもしれない。

 

 ここからだった。

 

 ここで二人に出会った事から、あたしの人生は、ゲルダの世界は大きく変わったの。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




『クルッポー! クルッポー! ご報告! ご報告!』

アリスの病室の窓に一羽の鳩がやってきた。人の言葉を発している鳩にあんぐり口を開いているゲルダだったがそれを意に介さず、使い魔は続ける。

『生体反応34! 内、サーヴァントが3、魔術師が1、残り30はワルキューレと判明。現在、視認出来る距離まで接近中!』

彼女達(ナース)からは何も報告はありませんでしたが……」

『何らかの魔術的偽装を施していると推測!一騎のサーヴァントを除き、敵対姿勢濃厚! 報告以上! クルッポー! クルッポー!』

「そっか。じゃあ、俺が出るかな」

「よろしいので?」

「うん、やっぱり何かあった時には婦長さんには病院(宝具)にいて欲しいし。偶にはアリスも年が近い女の子同士だけで話すのもいいと思うんだ。ここ最近は俺もびったりだったからね」

「わかったわ。すぐ戻ってきてねアナタ(パパ)

「わ、え、えーと怪我しちゃ駄目だからね!」

「うん。いってくる」

小さな命をお腹に宿した(ロリ)と助けた現地人(ロリ)の声援を受け、窓からデアーは飛び出した。珍しく肉体関係を持っている女の子も伴っていないので『竿繋ぎの多元性交(パラレル・セックス)』は発動していない。

「ふ――…………報告には感謝するとして、ここに雑菌をまき散らすとは一体どういう了見でしょうか?」

『クルッポァッ!?』

「殺 菌 処 理」

二重層の袋に鳩を叩き込んだナイチンゲールは口をガチガチに結んだそれを持って部屋から出て行った。今夜はターキーかな?











境界無き病棟(ボーダーレス・ナイチンゲール)
ランク:A
種別:対患者宝具
使用者:フローレンス・ナイチンゲール
七階建ての巨大総合病院。多数の病室、治療室、食堂、リラクゼーションルーム、中庭、巨大ナースステーション等、患者を治療する為に効率的かつ理想的な設計を施された宝具。
山だろうが、海だろうが、空だろうが、どこまでも。命を救う事に境界は無く。空中移動に使い魔達で無理矢理持ち上げさせて、移動する手段は原始的過ぎるとさすがのセミラミス様もドン引き。
この宝具と380体にも及ぶ、『白き貴婦人』と呼ばれる使い魔の魔力を補給する為にもマスターと致す集中痴療室なる物も存在する。その時の婦長の正装は非常に淫靡的(ハロウィン礼装・トリック・オア・トリートメント参照)。正装の腰につけたコンドームも特注品で射精したマスターの精液の魔力を一切損なわず、保管出来る。エンジンはスペルマ。地球に優しいバイオエネルギー。
『白き貴婦人』と呼ばれる使い魔の外見は白のナース服を着たオートマタ。その使命は「治療、殺菌、及び以上の行いを阻害する一切の排除」。戦闘は基本素手。顔は無い。羽根も生えたりするので空も飛べる。サイレントヒルのバブルヘッドナースを超清潔にした感じ。それでも深夜の病院でこれがランプ片手に巡回しているのは怖すぎる。失禁してしまった子供サーヴァントがいると苦情が上がっている。










邪ンヌ:ツンデレムーブでパートナーポジションに収まってる。
ゲルダ:今回の主役、めっちゃボーイミーツガールしてる。
アリス:初懐妊。正妻の余裕。母性がストップ高。
オフェリア:今回は出番無し。勘違いとはいえ、マシュを救う為に覚悟完了。
マシュ:次こそはと意気込んで。媚薬片手にウサ耳とか首輪を滅茶苦茶厳選している。


>>デアーお兄さんは絶対素敵なお父さんになるわ!
素敵なお父さんになった結果の親子丼です(疾走する青春の桃色ジャンクフード ② 後書き参照)。

>>たくさんいるお兄さんのつがいの子供を産む為の場所でもあるのね!
おっ千里眼かぁ?






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白い巨塔と戦乙女③(第2部 2章)

今年のギル祭は蘭陵王の乳首を突き放題だと思ってたの。








この小説の基本コンセプトは(ギャグ)暴力(バトル)!セックス!って感じで。やっちまうか?やっちゃいますか?やっちゃいましょうよ!






「集落で一生を終える人達、どんなに長くても25年以上は決して生きる事が出来ない人達」

 

 彼は知っている。この世界に降り立った愛を知る人類悪は知っている。この異聞帯の人間は皆、誰一人としてその現実を憂いていないと、自分を不幸だとは思っていないと。

 

「俺はそれが可哀想だなんて思わない」

 

 集落で出会った大人達は自らの結末を受け入れていた。子供達は笑っていた。皆、決して裕福ではないが生活に幸せを感じていた。だから、短い寿命に加え親という概念も知らず汎人類史から見れば憐憫を抱かずにはいられないこの世界に対してデアーが顔を歪める事は無い。

 

「もし俺達の星に異世界人がやってきて、『あぁ! 寿命が100年しかなく、こんな地球という狭い星で一生を終えるなんて君達はなんて可哀想なんだ!』とかいきなり言われたらなんだコイツはと思うだろうしね」

 

 デアーはこの異聞帯に対して憎しみを抱かない。フローレンス・ナイチンゲールはブチ切れ案件だったし、邪ンヌも表には出さないだけで心の内で憤怒の炎を昂らせているだろうが。

 

 けれど彼はどうしても、詰んでいるこの世界を見て怒りは湧き上がらせる事が出来なかった。

 愛を感じていたから、このどうしようもない世界を何とか存続させようとする気が遠くなる程の誰かの足搔きという名の愛を感じていたから。

 

「惜しむらくはここの人達がその愛を知らないことか。あぁ、そうだ。せめてもう少しぐらいの選択肢はあってもいいだろう。俺達みたいに普通の家族として、大扉を超える以外の天寿を全うするという未来を知るぐらいは。そこからどうするかは彼女達次第なんだから」

 

 ──ぶぅぉおお~~!! ぶぅぉおお~~! 

 

 SSRの排出率と同じくらいの確率で珍しくシリアス顔を披露していると愛しの後輩のホラ貝着信音が彼のポケットを揺らした。

 かつて霊界通信も試みた『道具作成EX』を持つエジソンがいつでもどこでも愛した女達を呼び出せるデアーの第四宝具から着想を得たその名も『愛phone』。繋がり合った彼と彼女達に限り、世界が異なろうとも連絡し合える代物。こうして異聞帯攻略に忙しい彼にとっては重宝している連絡手段だったりするのだ。

 

 ──なるほど、パケ・ホーダイならぬハメ・ホーダイってやつですね。

 

 ──私の発明品にそんな不名誉なサービス名つけないでくれるかね!? 

 

 

 

「もしもし」

 

『お疲れ様です! 先輩! 今、お時間よろしいでしょうか?』

 

「ん、いいよ。大事な話でしょ?」

 

 電話越しにもよくわかる思わず頬が緩んでしまう可愛らしい声。初めて会った頃にはこんなに快活ではなく機械的な印象を受けたマシュ・キリエライトだったが。

 

『はい。バニースーツの色と先輩につけてもらう首輪の色について助言を頂きたく……』

 

 今では好きな男の為にオシャレを気にして、一喜一憂するような人間らしい普通の女の子になっていた。

 彼は思い返す。かつての彼女もある意味この異聞帯の人間達と変わらない立場であったと。一つのレールだけが自分の人生の役割だと信じて疑わない、吹雪で囲まれたカルデアという狭い世界で短い生涯を遂げる。そしてそれを悲しむ事も憎む事も無い。穢れを知らない無垢なる少女、それがマシュ・キリエライトだ。

 

 そんな彼女に選択肢を、未来を、色彩を、愛を与え、踏み外させてしまったのは自分だ。ここまで来た道筋に後悔は無く、彼女も含め、自分が得た親愛を離す事は無い。それは燃え盛る瓦礫の下敷きになっていた彼女の手を取り、やがて慰め合うように互いの体を貪り合った時から決めていた事。

 

 だから、この異聞帯でもやることは変わらない。

 

『信頼たる文献によれば男の人が性的な興奮を最も得やすいのは赤との事なので、それもいいのですが……次点の紫も悪くないんですよね。私のイメージカラーにも合いますし。あっそう考えると自分は今まで常に紫色で男の人の興奮を煽っていたビッチという事になってしまうのでは!? 違います、違うんです先輩! あくまで不特定多数ではなくそれは全て先輩に向けていて、先輩が特異点とかで辛抱堪らんとかなってビースト化してしまう事はおーけーというかむしろバッチこいなので! あ、ビーストと言えば、やっぱり兎耳は王道の白色ですよね。思い込みの力は偉大です。自分は先輩に発情している雌兎だと常日頃から信じ込ませていれば、もう先輩の前に立っただけで排卵すると思うんでしゅよ!』

 

「マシュ」

 

『どうしました? 先輩』

 

「今、幸せ?」

 

『…………はい、とても』

 

「楽しい?」

 

『毎日が。未来を想像して、生きるのがとても楽しいです。将来的にはサッカーチームが出来るぐらい先輩の子を産みたいです』

 

「それは大変だ」

 

『先輩は今、北欧異聞帯ですよね。今すぐにでもそちらへ向かいますか?』

 

「いや、そっちの大切な用事を終わらせた後でいいよ。こっちのは大したことないから。バニースーツはそうだね、耳は白がいいかな。他の色は本番の楽しみって事でマシュに任せるよ」

 

『了解です! 先輩のうさぎマウンティング(腰振り)が止まらないぐらいに素敵な衣装を選んでみせます!』

 

 後輩との心暖まるほのぼのトークを切り上げて、静かに『愛phone』をポケットにしまうデアー。

 

 白い巨大病院こと『境界無き病棟(ボーダーレス・ナイチンゲール)』の正門入り口前に降り立った彼の視線の先には空と陸に分かれた集団がいた。

 空中には異聞帯を守護するワルキューレ達。地上にはクリプターであろう眼帯少女、そしてサーヴァントでもある騎士と部外者である弓兵が並んでいる。

 

 一対三十四。人数的に圧倒的に不利でありながら、彼の顔には微塵も恐怖も焦燥も浮かんでいなかった。いつもの如く不敵な笑みを零して、背後にある新たな命を育もうとしている場所を守護する為に立ちはだかっている。

 

「千客万来だ。患者なら婦長さんが歓迎しよう。お客さんなら俺が歓迎しよう。敵なら速やかにお帰り願おうか」

 

 先方へと聞こえるように発した言葉。それに一番早く反応したのはデアーの頭上やや前方にて、ワルキューレ達を率いて彼を見下ろす羽根のような耳を生やしたピンク髪の女性。製造されてきた戦乙女の中でも神に近い霊基をもった半神たるワルキューレ、ヒルドだった。

 

「白々しいね。もうこっちは把握してるよ全部。君達が『旅立ちの儀』の邪魔をしてる事も、異聞帯を消滅させようとしている汎人類史からの刺客だって事もね」

 

「やっぱり基本、神代の女性はパンツを穿かないのか……」

 

 デアーは見上げて、しみじみ呟いた。

 

「…………………………………………………………でも寛大な我らが神はその異物と使い魔を消すなら見逃すと。これ以上『旅立ちの儀』を邪魔立てしないのならあたし達も引き上げるよ」

 

 ヒルド達は下半身を覗かれない位置まで高度を下げた。あくまで戦いの準備であって、アソコを覗かれる事に羞恥心を覚えたワケではない。だって大神に造られた戦乙女ですから。人間らしい感情なんて全くもって御座いません。

 

「どうだろ。そっちの仮面の剣士さんはさっきから洒落にならないぐらいの殺気をぶつけてくれてるから穏便にってのは不可能なんじゃないかな?」

 

「当たり前だ。そのガラクタ共の戯言は聞き流せ。今、オフェリアの心は貴様一色に染められている。それが恐怖であれ、俺にとってはその事実こそが貴様を抹殺する千金の理由になる」

 

 魔剣を構え、視線だけで殺意を表現する灼熱の眼光でこちらを突き刺すオフェリアのサーヴァント、シグルド。肝心のマスターは隣で肩を抱え、小さく震えていた。決心はした。覚悟も完了した。だがそれでもトラウマを刻んだ張本人を目の前にすると挫けそうになってしまう。俯いてはいても逃げずに立っているだけ成長はしているが。

 

「オーララ! 俺は惚れた女が苦しんでいるっていうから立場関係無く力になりに来ただけだぜ!」

 

 クリプター側の中で最も敵意が薄い巨大な砲台を携えた偉丈夫の弓兵。本来なら汎人類史側として異聞帯と敵対する筈の英霊、ナポレオンが緊張した空気を切り裂くように高らかに宣言していた。

 

「いいね、そういう理由は大好きだ。けれどまぁ、この病院も使い魔も消すなんてのは無茶な相談だ」

 

「そう。なら敵対行動と認定。速やかに戦闘態勢へと移行」

 

 ヒルドの宣言に呼応して、周囲に展開している三十騎の量産型ワルキューレ達も光槍の輝きを強くし、構える。

 だが、空中で即座に攻撃へと移れるワルキューレ達をまるで眼中にないように……一切の敵意を見せないで真下を素通りしようとするデアーはヒルド達の後方にいるオフェリア達、地上組への方へと歩を進め始めた。

 

「ちょっと、どこに──」

 

()()()()()()()

 

 その言葉と同時にヒルドが気付いたのは小さな()()

 周りにいる量産型のワルキューレ達が一騎、また一騎と体を震わせていた。魂が無い戦乙女達が頬を紅潮させ、困惑かつ何かに耐えるように、けれどその何かに溺れたいような複雑怪奇極まるその表情をヒルドは初めて見た。

 

「報告。下腹部に急激な熱源反応、こ、れは……電撃? ひぁあっ♡」

「敵生体からの攻撃、魔術……? 一体、いつから、理解不能ォォっ♡」

「局部からっの……水分放出防止がっ……不可能、あっ、ンンぁっ♡」

「この刺激は未知のぉっ♡……統率個体ヒルドっ……対処命令をっ、ふぅぁあっ♡」

 

 気付けば、ヒルド以外の量産型三十騎のワルキューレ全てに不可解な反応が起きていた。太腿を擦り合わせ、悶え、瞳を潤ませ、彼女達の口から聞いた事も無いような甘い声を響かせて、下半身に液を滴らせる姉妹達。

 

「いったい、何が──んぅっ!?」

 

 ヒルド以外ではない。彼女にも漏れなくその魔の手は迫り終わっていた。

 

(ちょ、ちょっと待って。なによっこれ……? こんなの知らないっ!)

 

 痛みを伴う攻撃ではない。ヒルドだけは気付いた。自身の秘部に入り込んだ異物。激しいのに優しくて甘くて深く熱いナニか。秘部から脊髄を走る悦楽。今までの価値観全てを破壊する淫熱。周りのワルキューレ達と同様に悩まし気に口を開いて、感情を覚えた声を響かせた。

 

(いや……知識としては知っている……! これは……これはっ性的快楽っ!)

 

 体の造り自体は大神によってヒトのメスと同様に造られてはいた。いつの日かヴァルハラで戦士達の慰安として奉仕する為なのかヒルドの頭にはそういった行為は知識としてインプットされていた。

 しかし今日まで性的接触等とは無縁だったヒルドですら確信してしまう程に、そして恥ずかしいぐらいに自身の体に襲いかかった快楽は卑猥で気持ち良かった。

 

「あっ、ひぃっ……あぁっ。なんでこれっ、とまんなぁぁっ、あっ、やめっ、とまってぇ……だめぇぇぁっ♡ひあああああぁぁっ──♡」

 

 

『白式官能 三十一の掌』

 

 それは神速の手淫だった。彗星の如き煌めきをもってワルキューレ達の淫穴へと吸い込まれたホワイトフィンガー達の愛撫はあまりに完成された快楽と速さであるが故に彼女達の神経速度すら上回っていた。

 花火が打ちあがってから遅れて音が聞こえるのと同じように、彼の手淫が完了してから彼女達の肉体反応は起きた。

 

「君達の敗因はたった一つ。パンツを穿いてこなかったことだ」

 

 ──あああああああああァァァァァァァァァァッッ♡

 

 戦乙女三十一重奏第1919番。幾重にも重なる淫らな嬌声BGMと共に女体から吹き出した潮のシャワーを避ける事なくデアーはその身に浴びていた。

 撃ち落とされた鳥の如く、失神した白鳥達は一羽も残さず、彼の周囲へと堕ちていく。顔を濡らした彼女達の愛液を整髪料代わりとして前髪を掻き上げるデアーの周囲に墜落した人の感情を覚えてしまったワルキューレ達がヒルドも含めて、一瞬でケリがついてしまった淫惨たる戦闘の余韻を表現するかのように痙攣していた。

 

「うそ──神代に語り継がれたワルキューレ達が、そんな一瞬で……」

 

「ふん、奇妙な宝具を使うなヒトの皮を被った怪物が。魅了の類か? くだらん」

 

 顔を上げ、ようやく現実を認識したオフェリアが戦力と期待していたワルキューレ達が何もさせてもらえず地に伏している姿を見て、驚愕に震えていた。隣のセイバーには劣るとも北欧異聞帯の主戦力とも言える彼女達がまるで赤子のように相手になっていない。

 折れそうな心を踏み留まらせて、彼女は前を見据えた。シグルドの言葉を信ずるなら、恐らく異性を誑かす魅了の魔術を行使したのだろうが、自分には何の異変も無い。

 

「ふぅ、はぁ……そう。さっきあなたがワルキューレ達を見上げた時に既に仕掛け終わっていたのね。でも私に現状、何も変化が無いのは何かしら条件があるのかしら? それとも魔眼持ちには効果が無い……?」

 

(……多分そういうのじゃないだろうこれ。ワルキューレ達の反応見るに完全にアレにしか見えないぞ。些か少女の眼には毒過ぎるんじゃねぇかな。いやぁ、オフェリアがあんだけ怯えているからどれだけヤバいかと思ったらこういうベクトルでのヤバさかぁ……)

 

 見当違いの推測を真顔で披露するオフェリアにどうしたもんかと頭を悩ませるナポレオン。ただまぁ、彼もあくまでワルキューレ達の嬌声と反応から察しているだけなので具体的にナニが起こったのかは分かっていない。

 眼にも見えない速度で三十一騎のワルキューレ達を同時に手マンしたとか神々の智慧でも分かる筈が無いだろ馬鹿。

 

 そしてデアーがオフェリアを白式官能の餌食にしないのは、魔術発動の条件や彼女が魔眼持ちであるからなんて理由はなく、彼女がマシュの顔見知りであるのと前回、ギリシャ異聞帯で怖がらせてしまった反省という名の手心でもある。その手心も相対する者達からすれば小粒程度のちっぽけなものだが……。

 

「オフェリアさんでしょ。マシュの友達にこれ以上酷いことはしたくないからさ、穏便にお帰り願いたいんだけど」

 

 互いの距離は十数メートル。戦に長けた英霊ならば一息で詰めれる長さ。デアーの言葉はオフェリアに確かに届いていた。

 マシュ──その言葉が萎えかけていたオフェリアの闘志に再び火を灯してくれた。自分がここに立っている一番の理由。だから、彼女は問わずにはいられなかった。自分の中で無垢なまま止まっているあの少女が今どうしているのかを。

 

「…………マシュは? ここにはいないの、今、どうしているの?」

 

 無事でいるのか。いや無事な筈は無い。コヤンスカヤから見せられた七難八苦に苛まれているマシュの映像を見て、吞気にも無事だと信じられる筈が無い。だが──それでも映像も含め、全てコヤンスカヤの嘘だったと。自分が知っているあの頃のマシュ・キリエライトのままだと。それが現実だったらどんなに良かった事か。

 

 

「今はいないよ。俺の子供を産むって首輪を必死に選んでいるじゃないかな(あとバニースーツも)」

 

「──────」

 

 お前絶対ワザとやってんだろというその致命的な返答がオフェリアの箍を外し、戦いの火蓋を切った。

 

 

(子供を産む……? くび、わ──?)

 

 呼吸が止まってしまったオフェリアにとどめとばかりにフラッシュバックが起きる。

 

 ──無事なワケないじゃないでしょう。あんな純粋培養で育った女の子なんて速攻、襲われるに決まってるじゃないですか。

 

 ──目元には拘束具のような器具が装着され……もしかすれば無理矢理前線に立たされていたのかもしれません。

 

「あの子に──」

 

 いくつもの拘束具に身を縛られ、光を失った瞳で囚われているマシュの姿が脳裏に浮かんだ。踏み出せなかった自分が今更友達面をするつもりは無い。クリプターとして人類に害する側に立つ覚悟を決めた自分が救おうだなんて恥知らずにも程がある。

 けれど、怒りだけは──せめて今この瞬間だけはクリプターとしての立場も忘れ、怒りに身を任せ、目の前の男を殺す事だけに心身を委ねる事を許して欲しい。

 

 

「マシュに何をしたぁぁあッッ──!!」

 

 

 令呪一画使用。霊基強制再臨・最終限定解除。オフェリアの叫びと同時にサーヴァントの再臨が一段飛ばしで行われ、シグルドの仮面が完全に外れる。神々の智慧(メガネ)をかけていてようが露わになるのは知性ではなく、獰猛な凶貌。

 マントをたなびかせ、全身に魔力を漲らせている剣士は魔剣を構える。

 

「おいっ、オフェリアっ!」

 

「ククク、ようやくか」

 

「今すぐソイツを殺しなさい! セイバァァァ!!」

 

 落ち着かせようとする弓兵の言葉は耳に入らない。

 主の許可を得た狂狗は雪原を抉り、弾丸の如く飛び出す。数多ある魔剣の中でもその頂きに君臨する『魔剣グラム』を躊躇なく振るう。

 並のサーヴァントでは反応すら出来ない、煩わしい仮面を取り払ったシグルドはデアーの肉体を一片たりとも残さぬ本気の一撃を繰り出す。ここで決着。不用意にも魔剣の間合いに入った悪魔はここで葬られると誰もが思うだろう。

 

「『白式官能 弐の掌 纏の型』」

 

 だが実に厄介な事に零の獣を名乗るこの男。どこぞの快楽天と同様に性技だけではなく、普通に戦っても馬鹿強いので始末に負えない。

 二本の白い魔手を自身の両腕にそれぞれ纏わせ、篭手の如く一体化させる。赤い令呪のような紋様が毛細血管状に篭手の上に伸びている。

 

「なにっ……!」

 

 穢れなき始まりの魔力ともいえるそれで構成された禍々しい篭手を纏った片手一つで必滅として繰り出した魔剣グラムは掴まれていた。周囲に倒れているワルキューレ達を巻き込まないように攻撃に行使していない他の白い触手で彼女達を病院入り口まで運んでいるという気遣いも見せながら。彼の『白式官能』に捕まるごとに痙攣して喘いでいる現実には眼を瞑ろう。

 

「場所を変えよう。あまりここを騒がせたくない」

 

「キサマッ──!」

 

 余ったもう一方の腕でシグルド首を掴み、思いっ切り遠方へと投げる。病院から離れ、集落が無い山嶺の方向へ。遠投後、空の旅を楽しんでいるシグルドを追うべく、即座に常人離れした脚力でデアーも跳躍した。

 オフェリアはナポレオンに全力で後を追い、シグルドの援護を命令。強化の魔術で自身もそれに続いた。

 

「図に乗るなっ!!」

 

 必殺の一撃を防がれた怒りか、玩具のように投げられた屈辱か。空を舞っているシグルドはされるがままではなかった。ご丁寧に後を追っているデアーに反撃を与えるべく。原初のルーンを使用。

 

 詠唱も術式も必要としない、神代の魔術基盤。放たれたのは集落一つは軽く滅ぼし得る巨大な火球。跳んでいる彼を燃やし尽くさんと幾重にも迫った。

 

「『白式官能 玖の掌 球の型』」 

 

 逃れる隙間すら存在しない重なった火球同士が莫大な轟音と火柱を造り出した。骨すらも残さない神代の熱。しかし、灼熱の檻から出てきたのは燃え滓ではなく、白い球体。白式官能の触手が球体状に何度も周回し、360度全てを覆った防護壁は彼を保護するボールとなっていた。中で守られているデアーは当然の如く健在。

 

「『白式官能 拾の掌 槍の型』」

 

 ボール状のシールドは解け、今度はこちらの番だと魔手を一つ加え、防御に徹していた白き触手達は一つに絡み、捻じれ、伸縮自在な巨大な槍と化した。宙にいるシグルドのどてっ腹目掛けて、うなりを上げるように豪槍は伸び、地面へと叩き付ける。

 

 山と氷の針葉樹に囲まれた人里離れた地へとデアーも降り立つ。

 

 剣の腹で受けきったシグルドはすぐさま立ち上がり、雪煙を吹き飛ばして、対象への殺意しか存在しないマグマの如き怒りに満ちた魔力を放出させ、デアーとの距離を縮めた。

 蒼炎が燃え広がる山を背に二人は再び激突する。

 

「対セイバークラスなら、アーチャーかな。『模倣英霊──原型(モデル):巴御前』」

 

 イメージ(思い込み)の力で英霊の力をその身に宿す彼の第二宝具が発動。弓を扱うサーヴァントの力を呼び起こす。

 一度、距離を取ったデアーの風貌が変化する。全身を炎が包み現れたのは紅の武者鎧に黒き角が生えた白髪の鬼武者となった彼の姿。

 

 敵の姿が変わろうとも意に介さず、シグルドは息も止まらぬペースで魔剣の連撃を叩き込む。この間合いでアーチャークラスなどになった愚かさを知らしめるように。

 

「ハァァァッ!」

 

 豪炎と共にデアーの手に握られているのは薙刀。極東の鬼の炎に北欧の神代の炎。二つの炎を纏った武具が周囲一帯の樹々と大地を燃やし溶かし、ぶつかり合う。

 拮抗────はしていない。所詮は借り物で、しかも何の神秘も持たない武具。4合目でデアーの握った薙刀はあっけなく砕け散った。

 

「莫迦がッ!!」

 

 その隙を見逃さず、魔剣グラムが上段から頭をかち割るように振り下ろされる。

 だがここからがアーチャーの本領発揮。武芸百般・一騎当千の巴御前の力は武具が消えた程度で霞んだりはしない。剣が振り下ろされるよりも先に無謀な胴めがけて、短くだが深い右ジャブが二発入った。

 

「小パン、小パン、左肘ッ!」

 

 格ゲーにハマりにハマって「これは戦にも活かせるのでは?」と思いついてしまった巴さん。小学生のようなごっこ遊びなら微笑ましかったが、残念ながら彼女は源平時代を戦い抜いた鬼武将。その無駄な才能を生かして数多のコンボを現実に再現してしまった。

 いつもの如く悪ノリしたマスターにも伝授しており、右ジャブという名の小パンを叩き込んだ後は、脳を震わすように左肘を顎めがけて、振るう。

 

 攻撃の態勢を崩されたシグルドだったがそれでもさすがと言うべきか、無理矢理斬撃を繰り出した。しかし、そこも織り込み済み。破れかぶれの反撃など恐れるに足らず。腰を据えて差し出した左手は完璧に敵との呼吸に合わせて、青く光るエフェクトと共に斬撃を無効化した。時が止まったかのように強制停止してしまったシグルドは何が起きたのか理解不能だった。

 だがこれは万象の常識、ブロッキングに成功したら攻撃側は19フレーム(0.3秒)程、体が硬直してしまう。

 

「ブロッキングッ! か~ら~の~、昇・竜・拳!!」

 

「グガァァッ!?」

 

 跳躍と共に振り上げられた愛しさと切なさと心強さを籠めた炎の右拳が昇天へと誘う。打ち上げられたシグルドの肉体、だが人類悪デアーのターンは終わっていない。「巴は首をねじ切る事しかできない悲しいモンスターなのでちか」と紅閻魔先生からお褒めの言葉を頂いている巴さんの教えを受けている以上、生半可なコンボで終わらせてはいけない。

 

「敵の生命(ライフ)終わらせる(ゼロ)にするまでが決闘(デュエル)ですよね巴先生!」

 

 腕と脇でシグルドの首を絞めながら着地。そのままもう片方の腕でねじ切るように負荷を掛けて、敵の首をぶち獲りに行く。

 近接武器で迎撃し、油断した所に拳を繰り出し、肉弾戦へとなだれ込む。これこそがアーチャークラスのスタンダードな戦い方と言えるだろう。

 朦朧とした意識の中でまだ魔剣を握り続けているシグルド。彼の剣が振るわれるのが先か、彼の首がボロンと取れるのが先か。

 

 いや、ここに来てようやく援軍が到着。北欧の地には不似合な砲撃音が響いた。

 

「どらぁぁっ!!」

 

 鉄の雷火を防ぐ為、瞬時にデアーは音の方へシグルドの体を投げた。砲弾と肉体がぶつかり合う衝撃。牽制代わりだったのか、黒煙に汚れたシグルドは砲撃ではダメージを負ってなかった。むしろ今のが良い気付けになったのかもしれない。

 

「余計な真似をするなァァ! 弓兵!」

 

「あぁっ!? イケ好かねぇ事は知ってるけどよぉ、礼ぐらいは言えないもんなのかね! 今のは完全にヤバい状況だったろうが!」

 

「チィッ!!」

 

 大きく舌打ちをして、さらにデアーと距離を取った。窮地を救われたシグルドにはナポレオンに対して感謝の気持ちなど欠片も存在しない。心底、余計な真似をと憤っている。まるで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と言わんばかりに。

 

「しかし、強さだけは古き英雄に相応しいお前さんが随分と痛い目に合わされたみてぇだな。奴さんもさっきと姿が変わってるし。実は聖獣とかその類だったりしねぇかあれ?」

 

 少し遅れて戦場へと到着したオフェリアには驚愕と諦観の感情が入り混じっていた。

 あのビーストの数多の可能性を見た自分だけはこの中で一番アレの恐ろしさを理解している。マスターだからこそサーヴァントの状態は把握出来る。戦場跡、北欧の山を燃やしているのとは別種といえる炎の中で悪魔のように哂う(オフェリアにはそう見える)デアーにはシグルドと比べて、ダメージらしいものがまるで見当たらない。

 

(ここまで、ここまで差があるのっ……?)

 

 残るは自分にとってはデアーには劣るが恐怖の対象を内に秘めているセイバー:シグルド。初対面で自身にプロポーズを行う頭のおかしいアーチャー:ナポレオン。

 

「二人とも……宝具を使いなさいっ」

 

「いやぁ、婚約者(フィアンセ)の期待に応えたいのは山々なんだが……。お相手が解放まで悠長に待ってくれるかね? 大陸軍(グランダルメ)ぐらいの兵力が欲しい所だな、ハハハッ」

 

「言われないでもわかっているわ! そんな事! だからっ……今、何とかしようと頭を使っているのでしょう! あなたもフランスに名高き皇帝というなら、無い物ねだりではなく、建設的な意見を言ってちょうだい!!」

 

 ヒステリックな叫びと共に頭を抱えたくなるオフェリア。

 やはり駄目なのか? 永遠に日曜日に怯える自分では……今まで水曜日に引きこもっていた自分では何も成し遂げる事は出来ないのか。

 マシュを救う事も、クリプターとして役目を果たす事も、何もかも──。

 

 

『おやおや何を諦めてらっしゃるのですかオフェリアさん。もう少し踊って下さらないと面白味がなくてよ?』

 

 軽薄で冷酷な悪女の声が突如として響いた。姿は見えない。魔術かあるいは音響機器を駆使して届かせているのか。

 

『女性である以上、デアーさんと戦うのに下手に姿を晒せませんからね──。お友達サービスです。ちょーっとパワーバランスもよろしくないですから。料金は取りませんよ♡それでは本日ご紹介するのは私の可愛い商品はコチラ~~』

 

 悪女──コヤンスカヤの号令と共に十の巨体が津波の如く白銀の大地を破壊して、現れた。仮面でその本能を縛られている霜の巨人・山の巨人達。異聞帯の怪物コレクションが趣味であるコヤンスカヤの手によってペットとなった巨人達は耳をつんざく雄叫びをあげている。

 

 確かに白式官能は距離関係なく、デアーの視界に入った彼のストライクゾーンである女体を問答無用で辱めるセクハラ術。対デアー戦として姿を見せないというのは対処法としては正しい。

 彼女の特有のスキルなのか原理は不明だが、コヤンスカヤ自身の髪の毛をデアー達の元まで吹き届け、その毛を媒体に召喚を行ったのだろう。

 

(心底……気に食わない女だけど、今だけは感謝してあげるわっ!)

 

「『模倣英霊──』」

 

 これで宝具発動までの時間稼ぎぐらいは出来るであろう。しかし、オフェリアはまだ油断はしない。十中八九巨人達は簡単に屠られる。ならば更なる猶予を作り出す為に自分がすべき事を──。

 

(ただ、後ろで魔力タンクの代わりをしているのがマスターではないわっ!)

 

 眼帯を外し、ルビー色の右眼を露わにする。魔眼は既に照準を合わせている。

 魔力を回し、魔術回路を励起させる。全身全霊、失敗は許されないとオフェリアは魔眼に全てを込める。

 

 オフェリア・ファムルソローネの魔眼は宝石クラスの『遷延の魔眼』。あらゆる可能性、起こり得るifをその眼に映す。一種の未来視。

 そして『遷延の魔眼』は副次効果として、対象の可能性をピン留めするという効果がある。サーヴァントとすら射抜くその魔眼は対象が発動しようとしている攻撃、魔術、宝具を停止させ、そこに至るまで先延ばしする事が出来る。

 

 七つの宝具に『模倣英霊』という数多の選択肢を持つ、ビースト0/デアーにと対しては間違いなく効果はある。

 

 

 だがしかし──。

 

 査問会が訪れた日、カルデアにてコヤンスカヤと()()()()()()()()時についでとして彼女が魔眼持ちなのは知らされていた。その詳細に関しては契約外という事で知る事は無かったが。デアーは巨人達に気を取られる事なく、オフェリアが眼帯を外していたのも気付いていた。

 

 

 数多の英霊の力を借り、師事を仰いでいるこの男。

 

 魔眼の対抗策も諸葛孔明ことロードエルメロイ二世から実はレクチャーを受けていた。

 

 その一:全ての魔眼に対処可能というワケではないが、特殊な加工を施したレンズを眼鏡としてかける。いわゆる魔眼殺しという手段。

 その二:現実的ではないが、敵の視界に映らない。

 

 そしてその三──魔眼という視る力を逆手に取り、視られる力を行使する事。つまり、強く視られている状況を利用する事。

 

 こちらを一心不乱に視ている魔眼に対して、意図しない不快な情報、醜いもの、あるいは()()()()()を叩き込んで呪詛を防止するという対抗策も取れるのだ。

 

 つまり──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「事象・照準固定(シェヘン・アウフ)。私は、それが輝く様を──」

 

 

人・類・悪(B・E・A・S・T)・キャストオフ!!」

 

 

「ぶは──────っっ!!!!??」

 

 

 

 全裸になればよいのだ。

 

 

 

 

 おぉ、仰ぎ見るがいい『模倣英霊』を解除したありのままの彼の姿を。ミケランジェロが泣きながら、筆を取るであろう不純物無き裸体を。

 隠す事なく、恥じる事なく、北欧の地を踏みしめ、腕を拡げ、堂々と全てを曝け出す様を。

 鍛え上げられたその肉体、だが決して主張は激しくなくコンパクトなサイズに雄の筋肉が凝縮されている裸体。ずっ友である「黄金律(体):A」をもつメイヴが「体の相性は私とマジ抜群」と豪語する数多の女を抱いて来たその体はあまりの美しさに時が止まったようであった。

 

「あ、あわ、あわわわわわわわわわわわわ」

 

 大胸筋、腹直筋、降りていけば、男の股には雄にあって当たり前のものが輝いている。オフェリアの魔眼はその巨塔を寸分違わず捉えていた……捉えてしまった。

 魔眼は何を見たか理解している。だが彼女の脳がその現実を拒否していた。シリアスは焼却されましたと彼女の顔は数秒前の覚悟完了から人生で一番の紅潮顔へと変化し、エラーを起こしていた。

 

「じ、じ……じじじじじ、事象・照準固定っ!」

 

「いい! いいっ! 照準しなくていいから! あんなもん固定しなくていいからっ! おいてめぇこら! ウチの娘になんてものを見せてんだぁっ!!」

 

 ナポレオンの怒号が響くも、オフェリアの瞳にはそれはもうしっかりと脈打つグングニルが刻み込まれてしまった。CERO(年齢制限)がDぐらいだったらきんいろモザイクで処理されていたかもしれないが。助けてキリシュタリア様、ビーストなヘンタイが狩りに来たの。

 

「キサマァァァァァァッ!! オフェリアの眼にナニを映しているぅっっ!!」

 

 シグルド君が激昂するも、オフェリアのメモリーにはそれはもうくっきりと汎人類史最後の裸体が焼き付いてしまった。お許しください何処(いずこ)の炎の巨人様。オフェリアが爆破テロ後のコフィンの中であなたを見つけた思い出は完全にご立派様に上書きされてしまったようです。

 

 

 

「なんてもの? 俺の体に恥ずかしい所なんて何一つ無いッ!」

 

 

 ワールドワイドッッ!! 後ろにフハハハハハハと高笑いしている人類最古の裸王の姿が見える見える。

 

(ふっ、ふふふ、な、な、にゃにを男の裸程度で狼狽えているのかしら私は。別に男性のあ、アレなんて見るのも初めてじゃないし、小さい頃には父のも見た事だってあるし、時計塔でそれを模した礼装の類だって目にした事もあるじゃない落ち着いて……もう一度魔眼で対象を視て──)

 

 

「私は、それが──」

 

 

 パオーン。

 

 

「輝いてる様を見てるぅぅぅ!!?」

 

 

 

 

 

 

 




あまりの展開にコヤンスカヤも( ゚д゚)と巨人達への指示も忘れて固まり。
魔力で構成した雪を介して、一連の流れを覗いていた女神様もお色気シーンでチャンネルを変えるお茶の間のお母さんの如く、一度を視覚を切った。

真っ裸は世界を平和にする。






タイトル回収。






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私の妹分と戦乙女が修羅場過ぎる(第2部 2章)

一ヶ月経つだけで失踪疑惑が出そうな気がしたので初投稿です。
いつも誤字報告、感想、評価ありがとうございます。助け&励みになっております。

尻の描写に力を入れるアニメは神作。よってバビロニアは神アニメ。











 デアーは感動していた。

 

 大自然で真っ裸になる事がこんなに気持ち良かったのかと。いや、シミュレーション内で青姦なんて数え切れない程ヤった事はあるがその時は目の前の女体に夢中になっているので落ち着いて自然を堪能した事は無い。まぁ、駅弁態勢で山頂から見える日の出とかなら堪能した事があったか。

 

 とはいえ、肌をくすぐる外の空気はシミュレーション内では味わえないもの、異聞帯とはいえ彼がナイスtintinを披露しているのは現実世界。「Foooooo~~!」とついはしゃいで山びこを響かせてしまっても無理はないだろう。

 

「風呂上がりに裸になって散歩するのはマジきもちい」と教えてくれたアンデルセン先生には感謝しかない。この清涼感。自分が自然の一部となった解放感。知恵の実を食べる前のアダムになった気分。争いなんて下らないぜ、俺の裸を見ろ。葉っぱ一枚なくてもいい、生きているからLUCKYだ。

 

 ──と彼が艶めかしいポーズを取りながら、以上の事を考えるのに有した時間、僅か0,2秒。

 

 

「ば、ば、ばばばばばばばば──、ばばばばばばばばばばばばばばばばばば」

 

 魔眼処女を奪われ、膝に力が入らず、その場にへたり込んでしまったオフェリアはバグっていた。煙を出して、オーバヒートするマシン一歩手前のように。

 

 魔眼とはランクによってはピンからキリまでだが、魔術世界において人生を容易に左右する程の高値で取引されるものだけあって、価値は高く、それを持つ物を評価する重要なファクターの一つである。

 

 しかしランクが高い魔眼程、扱いには細心の注意を払わなければならない。

 魔眼は自分の体についた独立した魔術回路。身の丈に合わない魔眼を持っていれば、使用者の精気(オド)を吸い、勝手に発動し、破滅させるという結末も珍しくは無い。

 

 宝石クラスでもある『遷延の魔眼』で意図せず刺激的なモノを見てしまったオフェリアがこの瞬間、魔眼を自由に扱う事は不可能。

 眼帯越しですら彼が別のビーストになる可能性を見てしまった衝撃的な初見の邂逅、今度は直接しかもそそり立つ肉槍をしかとその眼に焼き付けてしまったのだから。

 

 意図せず、だかしかと彼女の脳髄に浮かんだ身に覚えのない思い出。

 

「あ、あ、あぁぁ……………」

 

 

 ──人理修復という旅路を経て、恋する乙女のようにベッドの上で服を纏わない彼に向かって手を伸ばす光景。

 ──後ろから、何かに突かれて道具のように乱暴に犯される光景。鏡には見た事のない表情の自分とデアーの姿が。

 ──そして、友達になりたかった、助けたかった誰かと手を握りながら、彼に抱かれる光景。

 

 

 距離も関係ない数多の未来の可能性が映画のワンシーンのように切り取られ、彼女の瞳に勝手に流れ込んでくる。しかも性質が悪い事にその全てが濡れ場。

「恋愛偏差値たったの5か……初心め」クラスのオフェリアが洪水の如き迫ってきた自身を題材にしたリアルAVを前にして、正気を保ってられる筈もなく──。

 

「きゅぅ……」

 

 白銀の北欧の地によく映えるぐらいに真っ赤な顔の彼女は口から魂を吐き出して仰向けに倒れた。脳が防衛機能として気絶を選んだのだ。

 

 全裸の男に気を失った女……やべーぞレイプだ!! 展開待ったなしかと思ったが、ここでようやく他の者達も固まった空気から回復して、行動を起こし始めた。

 一番早く、動いたのは男の全裸など見慣れた傾国の獣──コヤンスカヤ。彼女の指示を受けた巨人達はその質量で押し潰すようにデアーの元へ殺到した。

 その中身は埒外であろうとも、身長に関してはあくまで日本人の平均サイズに留まるデアーの体躯は20m程の巨体×10であっという間に埋もれてしまう。

 

「『模倣英霊──原型(モデル):ベオウルフ』」

 

 だが今や彼の宝具発動を邪魔する者はおらず、対巨人の模範解答ともいえる英霊を彼は模倣する。模倣とはいえ、上半身にはしる傷跡は巨人グレンデルに数多のドラゴンを屠ってきた証。

 髪は金髪に、肌は浅黒く染まっていく。下には金のバックルが眩しい青色のジーンズ、安心してください、穿いてますよ。

 

「アンド、『白式官能 九十の掌 (すてごろ)の型』」

 

 第二宝具に合わせて、第一宝具も発動。密集し、肉団子のようになっていた巨人達の塊が全方位に吹き飛んだ。

 白式官能の九十の触腕を十掌ごとに一つの巨大な腕として束ねた彼は九つとなった白の豪腕と自身の拳、合わせて十の攻撃手段として律儀にも一匹ずつ、巨人達のどてっ腹をぶち抜いた。針鼠の如く伸びる白の豪腕に、常軌を逸したその膂力に、物理法則に真っ向から歯向かう飛び方をした巨人達は腹に大きな風穴を開けて、一匹残らず、倒れ伏した。

 

「腹筋の鍛え方が足りないな」

 

『まぁ、こうなりますよね。ですが、時間稼ぎとしては上々では?』

 

 落下した巨人達によって地震のような小さな揺れが北欧を襲う。それによって引き起こされた雪崩をもしかしたら、集落まで届くかもしれないと危惧したデアーは巨人達を打ち抜いた白式官能の豪腕で押し止めていた。倒れているオフェリアを巻き込まない為にも白式官能から過剰な生命力を送り込み、雪の波を蒸発させていた。

 自慢の商品を壊されてもコヤンスカヤの声には焦りの欠片も浮かんでいない。予定調和だと。訪れた絶好の隙、オフェリアの魔眼を使わずとも宝具を使用するだけの時間は整っていた。

 

「魔剣疑似展開。我が炎、太陽を簒奪せり──」

 

 この瞬間まで秘めていた性能を全開放。魔剣グラムが雷鳴の如き、唸りを上げて切っ先をデアーに向けていた。シグルドは握ってすらいない、自身の目の前に浮いたグラムの後ろで拳を構えている。剣としては正しくないこの使用法こそが彼の宝具『壊劫の天輪(ベルヴェルク・グラム)』の真価。

 

 グラムの性能を全て引きずり出した上でそれに全力の拳を叩き込んで敵に投擲する対城宝具。無防備なデアーの背に向けて、今放たれようと──。

 

「もらった──朽ちろ異物よ! 『壊劫の(ベルヴェルク)──」

 

 

「もらう? 馬鹿言いなさい。あの人の毛先一本としてアナタなんかにあげるものはなくてよ」

 

 

 

 

 

 鈴のような声と共に突き出したシグルドの拳と魔剣ごと飲み込む巨大な水柱が突如として現れた。

 

 水流に阻まれ、魔剣グラムは見当違いの方向へ飛んでいった。白雪の大地には不似合な水柱。その頂点、そこに舞い踊る一匹の白鳥がいた。起伏が無く貞淑に隠された胸部と局部。バレリーナのような白いドレス姿で凶悪な程に尖った義足一本で水の上に立ち器用にくるくると回っている一人の女性が。

 

 持ち主の手に自動的に戻るように設定されている魔剣グラムは不規則な軌跡を描いてシグルドの手に戻った。意志があるように蠢く水流と共にこちらへ滑空する女を迎撃する為に。他人の命を貫くその鋭利なハイヒールによるフライングキックをシグルドは真正面から剣で受け止めた。

 

「魔剣グラムね……美しさはこっちのジゼルの圧勝として、頑丈さはどうかしら」

 

「ちっ、混ざり物が……そこをどけぇっ!」

 

 乱入者の名はメルトリリス。経緯は複雑なので省くがある月の困ったちゃんAIの分身。アルテミス、レヴィアタン、サラスヴァティーの女神三柱を複合しているハイ・サーヴァント。

 デアーの第四宝具『通い妻オーバーラン』によってこの場に呼び出された──というよりは無理矢理コンタクトを取って現れたというべきだろう。

 

 この零の獣の真に恐ろしいのは単体でも圧倒的な力を持っておきながら、他人の力を借りる事に躊躇が無く、そして彼に力を貸す愛情深き者が大勢いる事。主人公補正があるラスボスといえば分かりやすいだろうか。

 

「新手かっ……! いよいよ、大ピンチだな! だがっ……窮地にこそ、人の可能性は輝くっ! 『凱旋を高らかに告げる虹弓(アルクドゥトリオンフドゥレトワール)』」

 

 魔力が収束する巨大大砲。偉丈夫が片手で支える可能性の弓が輝いていた。

 メルトリリスとシグルドが戦り合っているのを尻目に少し遅れてナポレオンも宝具を解放──虹色の光線が婚約者に不埒を働いた下手人を飲み込んだ。

 ナポレオンという知名度、人の可能性の象徴、数多の伝説といったバックアップを受け、後付けされた彼の宝具の威力はたかだか近代ヨーロッパの皇帝が出すものとしては強力過ぎる。成程、確かにまともに直撃すればビーストだろうとももしかすればダメージは期待出来るかもしれない。

 

 ──()()()()()()()()()だが。あぁ、これもきっとあくまで可能性の話なのだろう。

 

「わかってるよ。この程度で打倒出来るだなんてお花畑な事は考えてねぇさ! 油断なく、間髪入れずに二射目と行こうか──」

 

 虹の砲撃が捉えたのは残像。瞬間ナポレオンの背筋に寒気が走った。数多の戦争という死地を経験してきた直感が彼を瞬時に振り返らせた。

 

「『模倣英霊──原型(モデル):巌窟王』」

 

「ッッ──! 悪い冗談だぜ!」

 

 黒い稲妻と蒼白い炎で構成される怨念の化身がいた。政略と謀略に巻き込まれ、嫉妬によって監獄に堕とされ、恩讐によって甦った復讐鬼──今、デアーに宿りし力はアヴェンジャー、モンテ・クリスト伯爵。「クハハハハ!!」と本人に似すぎている笑い声を上げて、超高速移動をもってナポレオンの背後を取っていた。

 

『英霊を呼び出し、さらには英霊の力を我が身に宿しますか……。まるでアナタの存在そのものが英霊の座のようですね。今のアナタにとって英霊召喚システム「フェイト」も無用の長物では?』

 

「力と宝具さえあれば英霊たるか……違うよね。本人が歩んだ歴史と重ねた月日こそが英霊たらしめる。だから俺のはあくまでごっこ遊びなのさ」

 

『ごっこ遊びにしては些か真に迫り過ぎていますが……』

 

 ガトリング方式に切り替えたナポレオンの無数の弾丸を躱し続け、デアーは虎のように吠える。残像の高笑いがエコーして非常にやかましい。

 

「俺の持ち味は手数の多さ(手癖の悪さ)!」

 

 砲身を蹴り上げ、一時的に射撃の手段を封じる。ここまで戦い抜いた弓兵に敬意を込めて、渾身のファリア神拳・改をデアーは捧げた。ムワァッと胸元が開いている上半身めがけて、深緑のマントをたなびかせた黒拳の乱打が叩き込まれる。

 

「がぁっ……!!」

 

 本気の連撃では無かったのかあるいはナポレオンの耐久力が優れていたのか、吹き飛んだナポレオンは原型を留めており、霊基は崩れていなかった。だがこれ以上の戦闘続行が不可能なのは明らか。すぐ隣にメルトリリスに大分痛めつけられたシグルドがボロ雑巾のように転がってきた。

 

「人形風情がァァァッ──!」

 

 死に体で叫ぶ魔剣の剣士。そもそも前半戦でデアーからのダメージを負っているシグルドは万全の状態では無い。それでなくともマスターからホワイトエリクサーをドレインしているメルトリリスの戦闘レベルはカルデアの中でもトップクラスに位置する。

 相手になる所か、死なないギリギリのラインでいたぶってきたメルトリリスに対するシグルドの激昂は凄まじいものだった。

 

(なんと煩わしい──。英霊の肉体……! これから解き放たれさえすれば、こ奴ら程度ッ……)

 

 

「ありがとう。助かったよ、メルト」

 

「ここに来たのは暇していたからよ。別に私の助けなんていらなかったでしょう?」

 

「必要か必要ないかじゃなくて、来てくれて嬉しいのありがとうだからいいの」

 

「そ。で、その格好は何かしら?」

 

「巌窟王スタイル! 超ハイカラでしょ! クハハハハハ!! 俺を! 呼んだな! 黒き怨念! 絶望の淵から」

 

「死ぬ程似合ってないから、いつもの姿に戻りなさい」

 

「ふぁい(´・ω・`)」

 

 シグルドの怒りもどこ吹く風。ドSの本領を存分に愉しんだメルトはホクホク顔で彼氏とのトークに没頭している。というか合流したこの二人なんて当たり前のようにお姫様抱っこ状態なんですかね。いつもその状態なんですかね。

 そして暇していたとか言っておきながら実はこのメルト、病院で妊娠しているアリスに思う所があるのか、屋上でちゃっかり護衛もどきをしていたり。好意というよりは一種の罪悪感、あるいは罪滅ぼしのような。

 

 メルトには残念ながら不評だった巌窟王スタイルから極地用カルデア制服に戻ったデアー。

 そこに最後の奇襲が迫った。

 

「『壊劫の天輪(ベルヴェルク・グラム)』!!」

 

 魔剣使いはまだ諦めていなかった。その執念深さだけは感嘆に値する。談笑し、一見隙だらけに見えた二人に死に体だったシグルドがこの場で出せる最後の一撃を繰り出した。ようやくまともな形で使用出来た宝具。投擲された魔剣グラムは轟音をあげ、直進して──。

 

「アン!」

 

 二人を──。

 

「ドゥ!」

 

 貫く事は──。

 

「「トロワッ!」」

 

 無かった──。

 

 奇襲に動じることなくメルトリリスは当然のようにマスターの右腕を胸に抱き、両足を一つに合わせた。体幹が一切ブレない剣と化した彼女を武器として迷う事なく切り上げたマスターに魔剣の投擲はあっけなく弾かれてしまった。

 

「馬鹿──な……」

 

 ここまでの一連の行動にアイコンタクトすら挟まなかった二人。電子の海にて128騎が織り成す狂った聖杯戦争を勝ち抜いたコンビネーションプレイは随一。さらにサーヴァント及びに彼の番いとなった彼女達はマスターの近くにいればいる程にステータスは跳ね上がる。苦し紛れに放った宝具が通用する筈も無かった。

 

「見るに堪えないわ。1+1=2以下よ、あなた達。それと眼鏡の男、嫌な眼ね。暑苦しくてねちっこい眼。この状況でもそんな眼が出来る事だけは褒めてあげてもいいけど」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次に眼を覚ました時は全てが終わっていた。

 

 砲台を支えに立ち上がろうとしているアーチャー。地べたに伏せたまま敵を睨み付けるだけのセイバー。ピクリともしない巨人達の残骸。

 これ以上ない程に分かりやすく勝者と敗者の図を私の瞳に映し出してくれていた。彼等の霊基が崩れていない事も何の慰めにもならない。

 

 コヤンスカヤの気まぐれの手助けも期待出来ない。

 完膚なきまでの敗北、こちらに眼を向けた満身創痍ともいえるセイバーの表情が何を望んでいるのか理解した。残った令呪で最初の召喚の時に命じた自害禁止を解けと言うのだろう。

 だがそれは出来ない。セイバーの中にある()()を目覚めさせる事だけは……。

 

 キリシュタリア様はその存在がいる事を喜んで下さった、私が上手くコントロールする事も期待してくれているだろう。

 

 けれど、とてもじゃないが私の手には余る。この北欧の地に日曜日が訪れてしまう未来を想像しただけで血の気が失せる。()()は北欧の地だけではなく、この惑星のテクスチャ全てを焼き尽くすだろう。

 

「コヤンスカヤはもういなさそうだな」

 

「あぁ、あの駄狐の亜種ね。ぽこじゃが増えて恥ずかしくないのかしら?」

 

「…………」

 

「何よ」

 

 

 デアーの隣には見知らぬサーヴァントが一騎。英霊召喚システムを有してるカルデアなら驚く事でもない。突如として立った建造物の主しかり、ビーストの元には数多のサーヴァントが付き従っている。それをどういう手段で異聞帯に連れてきてるのかは不明だが……。

 

「……ッ!」

 

 一歩デアーがこちらに近づく度に尻餅をついたまま身を引く。足は震えたまま立ち上がる事すらままならない。動悸がやけに激しい。

 コヤンスカヤからもたされた好色家である情報。目の前の男には殺意も敵意も感じない。もしも、女である私に()()()()()()()を見出しているのなら、まだ付け入る隙はある。

 

 意図したわけではないが、気絶する直前に流れ込んだ可能性の幻視のおかげで自分がされるであろう()()の覚悟は出来ている。

 

 怖気づくな。怯えるな。マシュを助けるのに必要の無い感情は押し殺せ。

 

「いいいいいわ、わわひをちゅれててくというのにゃら、しゅきにしゅれれれればいいいいいわ(いいわ、私を連れていくというのなら好きにすればいい)」

 

「なんて?」

 

 ふっ、私の突然の申し出に困惑してるようね。

 こうも容易く身を差し出すとは予想していなかったみたい。ワルキューレ達を悶絶させた術をこちらに使用してこないあたり、やっぱり私には魅了の類は通用しないと見たわ。なら問題ない。私は誇り高きクリプターが一人、オフェリア・ファムルソローネ。古のノルドの血を受け継ぐ降霊科の魔術師。今更、男女の情で絆される事はあり得ません。

 

 デアーが私を抱え込んで、現在所属しているカルデアに攫っていけばそこでマシュと接触出来るチャンスはある。この戦いも彼はマスターを狙う事はしなかった。コヤンスカヤの言葉を信じるなら、女に対しては命の保障はしてくれるという願望に縋るしか無い。どうせ今ここで無謀に抵抗しても殺されるだけならその可能性に私は懸ける。

 

 囚われたマシュを救い出す為なら、いくらだってこの体を汚されても構わない。えぇ、そういった男と女の関係など下らない話をする段階はとうに超越しているのです。大業の任を負っているクリプターである私にとっては。

 だからデアーに何をされようが、心を動かす事は無いでしょう。あの魔眼返しだけは意表を突かれましたが、わかっていれば何て事はありません。次に見た時は「お可愛いこと」と言ってあげますとも。

 

「どどどどどどどうひらのふぁひら? ふぁさか、わらひみふぁいなほふへにおひへふひふぁわけけけににゃないでひょ? (どうしたのかしら? まさか、私みたいな小娘に怖気づいたワケじゃないでしょ?)」

 

「訳、お願いメルト。Intel入ってるでしょ?」

 

「私にわかるワケないじゃない。気の毒になるぐらい呂律が回ってないし、顔も真っ赤よ。お手本のようなテンパリ具合ね。この娘、自分の事を客観視出来ていないんじゃないかしら? マスター、あなた一体この魔術師に何をしたのかしら」

 

「魔眼返しでヌードを披露してあげた」

 

「膝」

 

「いたい」

 

 ……な、中々乗ってこないわね? まさか、私の魂胆が見抜かれた? いえ、そもそもこの作戦もデアーが私に女としての価値を見出したらという前提で成り立っているワケで……。

 もしかして私……自分の事を過大評価し過ぎていた? デアーは数多の英霊を抱いてるというのなら、私程度の貧相な体には女としての価値は見出さないという事? 

 

「正気になれ、オフェリア! ソイツはきっと口にも出せないような変態プレイを強いてくるぞっ! (キス)が限界なお前じゃ太刀打ち出来ねぇ、逃げろっ!」

 

 誰がAカップよ。

 

 人の胸部を揶揄するなんて本当に失礼なアーチャーね。本気を出せばCぐらいあるわよ。

 

 …………それでも女としての魅力なんて確かに自分には無いのかもしれない。瞳の色は左右で異なり、現代の戦乙女だなんて可愛さの欠片も無い異名を付けられ、想い人には全く振り向いてもらえないと思えば、頭のおかしい既婚者のアーチャーにプロポーズされる……何なのかしらね、私の人生って。

 

「君が何を言ってるのかはわからないけど。このまま帰ってくれるなら特にどうとかするつもりは無いよ。只の正当防衛だったし、まぁ、ここの異聞帯の王様に会いたいってのはある。この北欧に対してどういうスタンスなのかなって」

 

 

 ──ほう、私に会いたいとな。異邦の獣よ……その言葉に偽りは無いか。

 

 これ以上の攻撃行為をするつもりは無い……そう言ったデアーの言葉を聞いていたかのように荘厳で聞きなれた声が何も無い宙から響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オフェリア達とデアーが激突している頃、ほぼ同時刻、ヒンダルフィヨルの山頂にて──。

 

「オーディンの呪いによって、炎に囲まれた館で王女ブリュンヒルデは深い眠りにつく事になりました……ハッ、わかりやすいわね」

 

 呆れたように言う女の前に炎で囲まれた氷の城が建っていた。熱く滾る炎に包まれてながら決して溶ける事のない不思議な城。まるで空間に固定されたかのような炎は来訪者を拒んでいた。

 

「で、アンタの言葉通り、ここまで来たけど十中八九いるわよね。モノホンのブリュンヒルデが。汎人類史か異聞帯か、どちらかは知らないけど」

 

 来訪者は二人。黒炎の魔女ジャンヌ・オルタ。贋作の戦乙女ブリュンヒルデ。ジャンヌ・オルタと同様の黒い鎧に身を包んだ彼女、便宜上ブリュンヒルデ・オルタと呼ぼうか、彼女の魂はこの場にオリジナルがいると訴えていた。

 

「ヴォルスンガ・サガを知っていましたか、さすがお姉様。博識ですね濡れます」

 

「下の栓もう少しちゃんと締めなさい。こんなの常識よ常識。観光地に行く前に予習ぐらいはするでしょ普通。で、この鬱陶しい結界は解除できるワケ? 出来ないなら私が無理矢理ブチ破るけど」

 

「いえ、恐らく私なら問題無いかと。この手の結界は内から破るのは骨が折れますが外からの干渉に対しては思いの外脆いものです」

 

「いや、やっぱ私がやるわ。別に力づくでもいいんでしょ?」

 

「お姉様……?」

 

 獰猛な笑みを浮かべて、邪ンヌが旗を構えていた……炎の結界を乗り越えて現れた複数の巨人達を迎え撃つ為に。ゲルダを助けた時とは別種の巨人。火山を彷彿とさせる黄土色の肌に幾重にも刻まれた傷痕から炎が噴き出している。身の丈に合った巨大な溶岩の槍を片手に火の巨人が数体侵入者を排除しようと姿を見せた。

 

「あ……? 何よ、コイツら」

 

 敵は巨人だけではなかった。血気盛んに巨人達を駆逐しようとする彼女に水を差すように宙から()()かが降り立った。

 逆円錐の底面部から四方に球体が繋がれている。それは常識的には生物とは思えないような構造をしていた。だが確かな攻撃性と凶暴性をこちらに向けていることだけはわかった。

 

 鳴き声なのか不明な音を発して、くるくると回っている。もしこの場に北欧を統べる女王がいればこう名付けるだろう。『種子』と──。

 

「実はこれが異聞帯のワルキューレとかオチじゃないわよね。アイスクリームみたいな外見しちゃって、サーティワンに帰りなさいよ」

 

「ワルキューレではありませんね……。そもそも北欧由来のものですらないかと」

 

「ふ──ん。まぁ、どうでもいいわ。邪魔なら等しく燃やし尽くすだけよ。丁度新技も試したかった所だし。手ぇ出すんじゃないわよ」

 

 

 火の巨人、五体。宙から降ってきた生命体、六体。

 臆することなく邪ンヌは自身を象徴とする旗を目の前に突き立てる。たなびく旗はその動きを激しくし、黒炎へと変化した。渦を巻いた黒炎は彼女ごと包み込み──そして、彼女がいる場所を基点として新たな世界が造り出された。

 

 

「『領域展開 讐骸憤竜園─炎葬式(しゅうがいふんりゅうえんえんそうしき)』」

 

 

 白銀の地も、巨大な太陽が拡がる蒼空も、突き刺す寒さも失われた。

 

 対峙する敵に加えてブリュンヒルデ・オルタの目の前に拡がった世界。果ての無い不毛な大地に夥しい程の十字架が全て黒炎にくべられながら、建てられていた。十字架の下には縋るような骸骨が重ねられ、空は竜の憤りによって灰色に染め上げられている。

 邪ンヌが造り上げた炎には神代の生物が理解出来ない人間の恨みつらみ妬み憎しみが呪いの領域に至るまで込められている。

 

「この炎は神々の叡智も奇跡も及ばない人間の怒りと悍ましさが生み出した炎。そしてこの世界は我が憎悪で構築した生得領域。術式の極致とも言えるここは我が領域、この空間で繰り出される技は全て必中必滅……故に領域展開」

 

「……………………固有結界では?」

 

「違います、領域展開です」

 

 そこは譲れない何かがあるのだろう。オサレ空間でテンション爆上げの邪ンヌの手元に旗は無い。この固有結界もとい領域展開を維持する要となっている魔女の旗は世界そのものと言ってもいい。

 だからこそ、この領域で旗無き彼女が振るうのは剣。邪ンヌが吠えれば、腰に据えた西洋式の剣が何故か刀へと変貌を遂げた。

 

「喝采をあげよ『荒覇吐七十二閃』! 鏖殺なさい『大黒毒竜万破』!」

 

 剣が二つに分かれ、両手それぞれに刀を抜くと同時に鎧と黒衣のマントは炎へと変化し、燃えるヴェールを脱ぐが如く、炎の中からアヴェンジャー姿からビキニ姿となった狂戦士が産まれた。

 ブリュンヒルデ・オルタは鼻血を必死に抑えていた。この領域の暑さにあてられてしまったのだろうか。

 

 弾丸となって飛び出した邪ンヌが目指すは北欧神話で語られる巨人達の駆逐。大地を踏み揺らして、前線に出てきた神代の生物達と激突する。

 

「『竜の呼吸 壱ノ型 鉤爪(かぎづめ)』」

 

 揃えた二刀を上から担ぐように振りかぶり、胴体目掛けて袈裟斬りにする。竜の巨大な爪痕をつけられた火の巨人は傷から噴怨の黒炎を噴き出し、息耐えた。

 

「まずは一体」

 

 仲間がやられた事に激昂しているのか空間を震わす雄叫びをあげて、巨人が一体、家屋サイズの足で小人を踏み潰そうとしていた。だが遅い。その巨体故に動きが鈍すぎる。この領域において、邪ンヌは全ステータスにバフがかかっている。巨人が彼女を圧殺するよりも先に──。

 

「『竜の呼吸 伍ノ型 飛天翔(ひてんしょう)』」

 

 彼女の刃が天へと飛翔する竜が如く、巨人の足だけにとどまらず、上半身、頭蓋も含めてその身と共に舞い上がりながら斬り上げた。縦に三枚におろされた巨人の頭上を飛び越え、荒ぶる愛刀を鎮めるように一度鞘へと仕舞う。ブリュンヒルデ・オルタも法被とハチマキと愛しのお姉様の顔がプリントされた団扇を両手に大興奮の模様。

 

「二体ッ!」

 

 しかし、宙へと浮いたわずかな時間、その無防備な隙を巨人達は逃さない。

 残り三体全員が大槍を両手で握り締め、三方向から迫る。蝿を叩き落とすように質量の暴力が隕石のように迫る。

 

「『邪道の六十三 紅蓮黒火墜(ぐれんこっかつい)』」

 

 大槍と衝突するよりも早く胸の前で火球を造り出した邪ンヌはそれを両手で押し潰した。外から過剰な力を加えられてしまった火球は弾け……内包していたエネルギーは行き場を求めて百近くの炎の棘となり、周囲にいる巨人達目掛けて、爆発的な勢いで突き刺さった。

 

 呪いと化した炎の榴弾を全身に受けて、神代の炎を掻き消す怨嗟の黒炎が巨人達の肉体を喰い破る。二種の炎が混ざり合いながら巨人達は朽ちていった。

 

「これで五ッ! はっ、大したことないわねっ──ッッ」

 

「お姉様ッ!」

 

 巨人達の駆逐は完了したがその奥には奇妙な鳴き声をあげる生命体──『種子』がいる。球体に浮かんだ十字の模様は狼煙のように不気味な赤色を帯びて点滅し、一迅の光線を放った。邪ンヌの着地を狙った六体同時に伸びるレーザーは人体の急所を突くように彼女の体目掛けて止まる事は無い。

 

「馬鹿ね、気付いてるっての。『血竜術 炎棘要塞(ほむらおどろのようさい)』」

 

 邪ンヌが人差し指をくいっと上げれば、地面を突き破り、黒炎を纏った銅鉄の杭が幾重にも重なって現れ、彼女を守る城壁となっていた。ヴラド三世の血塗れ王鬼(カズィクル・ベイ)と酷似している。さっきからの技といい、彼女の影響のされやすさが如実に表れているような気もするが。

 

 厨二臭さプンプンの技名は名前負けはしておらず、『種子』の光線は完璧に業焔の壁が防いでいた。

 

「飛ぶ斬撃って知ってるかしら?」

 

 杭の壁が無い角度に回り込もうと『種子』達が飛行を開始するよりも早く着地した邪ンヌは──攻撃を防いだ時点でもう刀を抜き、次の攻撃の段階に移っていた。何度も妄想した技を実践で使う事が出来ている邪ンヌのアドレナリンはもうドバドバ。そして、それを見ているブリュンヒルデ・オルタもラブジュースがドバドバ。ツッコミ役は不在。

 

「『百八竜撃鳳(ドラゴンキャノン)』!!」

 

 交差された手で握る刀から放たれた斬撃は二匹の黒竜となり、先程自身を守った杭壁さえ粉々にし、『種子』達の元へ肉薄する。燃える二つ首の竜は獲物を喰い破るようにうねり、飲み込んでいく。そのまま『種子』達は決して消える事の無い炎の薪となり朽ちていく。逃れたように見えた一匹だけが同胞を見捨てて上昇していたが──。

 

「避けきれてはないわよ。もう()()()()()

 

 直撃ではないが『種子』に付けられた小さな掠り傷。そこから黒炎が噴き出し、回避したと思い込んでいた『種子』を呆気なく飲み込んだ。火の巨人達を三体同時に仕留めた時と同様、この固有結界において自我の薄い者が彼女の炎による傷を受ければ、容易くそこから呪いという名の炎が燃え盛る。人間の怨嗟を知らない対象には抜群の効果を発揮する宝具。邪ンヌが語った『必中必滅』というのもあながち嘘では無かったりするのだ。

 

「ふっ、この領域は闇がよく見えるわ……」

 

 手で片目を抑えて意味深に邪ンヌがそう呟けば、世界は切り替わった。一切完勝。今のキメ台詞で綺麗に戦いを終わらせた彼女が何を思っているのか、エスパーでなくとも分かる。

 

(ヤバい……今の私、カッコ良すぎる……! 領域展開で竜で黒炎で紅蓮で竜撃鳳とかどんな人生送ったらこんなセンスが生まれちゃうのかしら──!)

 

 もし数年後、彼女が所帯を持って落ち着いたのなら今の自分を見て同じ事を思えるかどうかは未来の彼女しか知らない。少なくともこの場に異を唱える者は誰一人としていないのだから。

 

 ──もちろんこの女も。

 

「お姉様ァァァァァァァアアッ!」

 

「ギャアアアアアアアアアァァッ!」

 

 

 飛び魚如きルパンダイブ。捕食者の眼光に涎をまき散らして、愛しのお姉様の勇姿に子宮を射止められてしまったブリュンヒルデ・オルタがもう辛抱堪らんと邪ンヌを押し倒し、襲いかかっていた。馬乗りになって滅茶苦茶腰を艶めかしく動かしている。

 

「困ります……困ってしまいますお姉様。そんなに艶姿を魅せられてしまったら、もうこうするしかないじゃないですか……!」

 

「馬鹿じゃないの!? アンタ馬鹿じゃないの!? 普通ここで盛るッ!? TPOを考えなさいよ!! マスターでも弁えるわよっ!?」

 

「大丈夫です! マスターも今頃、ワルキューレ(妹達)をファックして、全裸になってると思います!」

 

「クソッ! 否定出来ないわねっ! ウギギギギギギギ、はなせぇ……離しなさいよぉぉぉぉっっ」

 

「魔力供給! 魔力供給ですから! 卑猥はありませんから!」

 

「アンタの言動全てが卑猥なのよ! ヤメロォォ! ビキニに手をかけるなぁぁ! 脱・が・す・なぁぁぁぁっ!」

 

「あっ、もしかして私から先に脱いで欲しかったのですか? じゃあ、はいもう脱ぎました。もうお姉様のえっち……」

 

「マジで頭おかしいんじゃないの!! 絶対アンタの方がバーサーカーよね!?」

 

 全裸になって邪ンヌの服を全力で脱がしにかかっているブリュンヒルデ・オルタ。ちょうどこの瞬間デアーもオフェリアの前でおtintinランドを開園していた頃だった。このマスターにしてこのサーヴァントあり、こんな所でシンクロニシティを起こして欲しくなかった。

 

 話は少し逸れるが邪ンヌが発動した宝具『領域展開 讐骸憤竜園──炎葬式(しゅうがいふんりゅうえんえんそうしき)』は実は巨人と『種子』達とまとめて、炎の館も飲み込んでいた。

 そして、先程の戦闘の最後に放った『百八竜撃鳳(ドラゴンキャノン)』は『種子』だけでは飽き足らず、館を守っている炎の結界まで喰い破り、館の扉を打ち壊している。

 

 つまり、当然()()()()()()()()()も出てくるワケで。

 

 

「あの……困ります。本当にどういう事態なのか意味不明で心底困ります……」

 

 

 カルデア側が来る以前に汎人類史側のサーヴァントとして彷徨っていたブリュンヒルデはオフェリアとワルキューレ達の手によって炎の館を再演した類感魔術による結界の中で封印され、眠り続けていた。

 まさか封印からおはようした一発目の光景が自分のそっくりさんが全裸になって知らない女の上でレズセッ……とか最悪の目覚め過ぎるだろう。見た事のない顔で固まっている。

 

「いい所に出て来たわねオリジナル! コイツを引っ剥がすの手伝いなさい!」

 

「例え本物の私でも邪魔はさせません! 誰かに負けるのはいい……けど、自分には負けられない!」

 

「台詞の使いどころ絶対間違ってるわよアンタ!」

 

 

 

 

「…………この瞬間ほど、説明責任を果たして欲しいと思った事はありません……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 北欧に百騎以上存在するワルキューレ達を統べる統率個体の三姉妹。

 スルーズは現在、氷の城を警備中。ヒルドはデアーとの戦闘後、敗北。その後痙攣している他ワルキューレ達とまとめてナイチンゲールの使い魔である『白き貴婦人』達の手によって『境界無き病棟(ボーダーレス・ナイチンゲール)』のベッドに叩き込まれる。

 

 三姉妹の中で唯一手が空いていたオルトリンデにその役目が与えられた。

 

 こことは異なる北欧世界で存在していた──けれど間違いなく自分達の愛しの姉君。

 自らの手で彼女を閉じ込めた炎の館が突然消失した事に加えて、そこにはカルデア側と思われるサーヴァント二騎の姿が確認出来たとの報告を受けたオルトリンデは量産個体のワルキューレを数騎を連れて現場へと向かった。

 

 性能限界のスピードで飛行している彼女の顔には機械らしからぬ焦りが浮かんでいた。

 

(駄目……間に合って……お姉様には全てが終わるまであの結界の中で──)

 

 

 

 

 

 

 

 ──思考媒体に深刻なエラー発生。修復実行中……不可能。

 ──統率個体オルトリンデ、目の前の現象に対する早期解決と我々のエラーに対する指示を。

 ──ヒルドとは同期不可能。他量産個体30騎とも同期不可能。直ちにスルーズと他量産個体との情報共有の必要有りと判断。

 

 ──統率個体オルトリンデから量産個体へ不許可。お姉様の痴態を他ワルキューレ達と同期する事は断じて許しません。

 

 

 

 

 

 

 

 到着したオルトリンデが目の当たりにしたのは封印した筈のお姉様とそのお姉様の同じ顔をした者が()()()()()で見知らぬ女ともみくちゃになっている光景だった。

 見ようによっては二人のお姉様が見知らぬ女を取り合っているようにも思えてしまう。

 

 

「何故ですかお姉様!! まさかオリジナルの方がイイと言うのですか!? それならそれでヨシです。私は邪魔にならない所にいるのでどうぞ二人でよろしくヤッちゃってください! もう一人の自分に好きな人を寝取られるとか中々出来ない経験ですので……!」

 

「ぐっ……! なんて力! まさか異聞帯の私が存在しているなんて……ですがワルキューレらしからぬこの激情、そこまでこの女性を追い求めているという事は貴女(もう一人の私)にとってのシグルドが彼女というのですか……」

 

「違うっつーの!」

 

 

 

 

 

 ──結界の破損確認。あれは間違いなくブリュンヒルデお姉様。ならば、もう一人のお姉様は一体何故全裸……エラー修正。土台(ベース)はお姉様だが違う物が混ざり合っている模様、そもそもその黒い薄着の女は一体誰泥棒猫……エラー修正。馬乗りになっているもう一人のお姉様の表情から推測……恋慕、敬愛、発情。ブリュンヒルデお姉様はそれを引き剥がそうとしている表情から推測……焦り、焦燥、嫉妬心。つまりあの黒い薄着の女は二人のお姉様の心を射止めた不埒者どうして、どうしてですかお姉様、オルトリンデはここにいるのに何故気付いてくれないのですかお姉様そんなにその女が大事なのですか……エラー修正、エラー修正、エラー修正、エラー修正、エラー修正。心臓部に不要なノイズを発見、除去、除去、除去、スルーズからの定期報告を兼ねた同期要求を拒否、拒否、拒否。私は、私は──。

 

 

 

 

 

 その日、機械じかけの戦乙女は生まれて初めて、人目憚らず声を出して泣いた。

 

 

 

 

 

 




『領域展開 讐骸憤竜園─炎葬式(しゅうがいふんりゅうえんえんそうしき)

ランク:A+
種別:対陣宝具
使用者:ジャンヌ・ダルク・オルタ
竜の魔女の旗を化身として展開する。同人作家になったり、女優になったり最近忘られがちだか、アヴェンジャーとしての彼女の原点が詰まった固有結界(本人曰く領域展開、ここ重要)。別に水着になる必要は無い。
本人が語った通り、必中必滅というワケではないがこの結界内において邪ンヌの全ステータスにはバフがかかるので今までわりかし雑だった命中率も上昇している。加えて彼女の攻撃により傷を負えばそこから噴き出す黒き炎による火傷&呪いによるダメージも入り、雑魚エネミーならそのダメージだけ打破可能。格上にはただのスリップダメージ。
作中で披露した技はこの固有結界内でしか使用出来ない(らしい)。実の所声に出す必要も無いが、その方が威力が三割増しになるというのは本人談。最近何の週刊誌にハマっているのかよくわかる。
邪ンヌの㊙ノートには技名とかこの手の宝具の設定が30ページにわたってビッシリと書き連ねられている。


「何々、追い詰められたら、”私に三刀目を抜かせるか……”という台詞の後、『卍解!底霊無変三頭狗(ケルベロス)!』と叫び三つ目の刀を口に咥える」

「イヤアアアアアアァッ!!」

「ねぇ、邪ンヌ。他二つの刀の名前がやたらと長いんだから、最後の刀の名前はもう少しシンプルの方がオサレだと思うよ。『残穢(ざんえ)の太刀』とか」

「もっと他に言う事あると思うんだけど!? やめなさいよ真面目な顔でツッコミを入れるの! 今、滅茶苦茶変な汗出てきてるわ! でもその名前はいいわね、私の宝具に合いそうなので採用!」









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ウエンズデイをうたって①(第2部 2章)



カルデアコレクションにて、スペース・イシュタル、カラミティ・ジェーン更新。

スペース・イシュタルのヒロイン力高過ぎない? 最初はドスケベ目当てでジェーンだけ引くつもりだったのに……あんなの見せられちゃったら本気出すしかないじゃない……! やっぱ、きのこのシナリオは最高やなって(モグモグ)。マイルーム性能も高くて一粒で三度美味しいイシュタりんを優雅にすこれ。ジェーンのおっぱいでシコれ。アニメでもノッてますし……来てますよ、遠坂の時代が!












本編とは関係ないおまけ。


「ブリュンヒルデの薄い本が少な過ぎるぞぉ──!」

そう、ブリュンヒルデの成人指定本は片手で数える程しかない……。

「誰か……誰か書いてくれ……」

もう、お分かりだろう!! ブリュンヒルデの薄い本が少なすぎるのである! 

「早く!! 書いてくれ──!! セミラミス本を! クレオパトラ本を──!! 誰か──!!」

そう!! キャラ人気に対して書く作家が少なすぎるのである!! 

「おかしい……これは、何かがおかしいぞ……」

「え?」

「ブリュンヒルデは英霊正装、チア礼装でも発覚したエチエチなボディと色気。愛した者に殺意を向けるヤンデレでニッチな需要にも応えれるかつCV能登だ。蒼銀のフラグメンツでビジュアルが公開されてから既に3年以上も経っている」

「え!! そんなに長く!?」

「うむ、彼女だけに限らず、アポクリファで敵方のヒロインとしてブイブイ言わせた女帝キャラであるセミラミスもCV釘宮という約束された勝利の声を持つ黄金比のダイナマイトボディを持つクレオパトラも決してポッと出のキャラクターではない! そんな彼女達が薄い本で裸体を晒そうものならマスター達は1分以内には股間のロンゴミニアドを抜錨していると言われる」

「だが! 彼女達の後に実装され、同じようにパートナーがいる巴御前やブラダマンテ、パイセンの方が薄い本が圧倒的に多い! 彼女達の魅力は良くわかる、なのにブリュンヒルデ達の方はエロのサイレンすら聞こえないとは……これは絶対におかしい……何かがあったに違いない」

「一体、何が……」

そう、もうお分かりだろう。

書きづらいのである!! 既にパートナー側が実装され、ビジュアルがハッキリしているキャラの薄い本は書きづらいのである! 

「何でよ! 私だって項羽様がいるじゃない!」

そう! ぐっさんパイセンはSINからの即ガチャ実装&閻魔亭ギャグ堕ち、さらには幕間でのクソ雑魚マスターっぷりというネタキャラ化で手を出すのにはあまり罪悪感が無いのである! 人妻チックな真祖エロボディからの先輩マウントの体だけの関係よ的なドライムーブで後輩とのエロが書きやすいのである! 

ぶっちゃけ、項羽とのエロを書くには作画コストがかかり過ぎるのである! 

「何でよ! 書きなさいよ!」







身も蓋も無い話をすれば抜くだけが目的なら竿側の方は没個性の方がいいんだよね。でも当作品の主人公、もう没個性とか言えねぇなコレ。








「あ、お帰りなさい! オルタお姉さん」

 

()()を連れて、ヒンダルフィヨル山から『境界無き病棟(ボーダーレス・ナイチンゲール)』のアリスがいる病室へと戻ってきた邪ンヌを一番に迎え入れたのはゲルダの明るい挨拶だった。それに対して彼女は弱々しく手を上げて返事をする。疲れ切った顔は戦闘で消耗していたというよりはギャグ疲れだろうと邪ンヌよりも数分早く戻ってきていたマスターは察した。

 

「お疲れ、後ろにいるのはお客さん?」

 

「えぇ、一応汎人類史(こっち)側のサーヴァントよ。まったくえらい目にあったわ……」

 

 気を利かせたマスターから水をもらい、病室にいるマスターとアリスそしてつい先程彼の宝具によって北欧異聞帯にやってきたマシュ・キリエライトに、邪ンヌは後ろにいるオリジナルのブリュンヒルデも含めて事の経緯を話した。

 

 

 

 

 ▲▲▲

 

 

 

 

「ブリュンヒルデお姉様! その女とここで何をしているのですか……?」

 

「ナニってそんな乙女の口からそのような事、困ります……」

 

「恥ずかしがる所、他にもあるでしょぉぉ……私の上から降りなさいよっ!」

 

「その前に服を着て下さい。私と同じ顔なのですから……」

 

「ワルキューレ、オルトリンデ……その女などと冷たく言うものではありません。この人は私にとって大事なお姉様。貴女にとってもお姉様と言えるのですよ」

 

 

「つまり大お姉様?」

 

「違う」

 

 

「確かにお姉様は私の創造主とも言えますので……姉妹という括りは正しくなかった……?」

 

 

「つまり汎人類史の大神(オーディン)?」

 

「だから違う」

 

 

 

 

 ▲▲▲

 

 

 

「号泣したと思ったら、ワケの分からない事を宣うわで地獄だったわよ」

 

「つまり修羅場だったと」

「ロマンスですね」

「黒い聖女様の周りにはいつも百合の花が咲いているのだわ」

「お花? オルタお姉さんの周りには何も咲いてないわよアリス」

 

「おーけー。愚痴を吐く相手を間違ったわ」

 

 マスター、マシュ、アリス、そしてちょっとズレているゲルダの反応に少しだけ目頭が熱くなった邪ンヌだった。あの場に現れたオルトリンデも槍を構えてNice boat.一歩手前だったが虚空に何か語り掛けたかと思ったら、名残惜しそうに邪ンヌ達に涙で濡れた瞳を向けて、その場を去っていった。彼女達の王からワルキューレ全体に通達されたのだろう一度、城へと帰還するように。

 

 今の彼等が知る由も無いが北欧中に降り注ぐ雪は全て女王スカディの魔力によって産み出されたもの。目であり、耳であり、口である。マスターとかブリュンヒルデ・オルタが全裸でハッスルしているのももちろん把握済みである。

 

「多分、ここの異聞帯の王様じゃないかな。こっちでもいきなり何も無い所から話しかけられたし」

 

「そういえば、クリプターとか何とかが襲ってきたんでしょ。ちゃんと殺してきたの?」

 

「物騒な。あっちのサーヴァントとは戦ったし、ワルキューレ達にはしばらく再起不能になってもらったけど、クリプターの方には何も手は出してないよ」

 

 手は出してないけど、ナニは出しました。

 

「マシュに会いたがってたみたいしだし、本当はここに連れてきたかったんだけど……。彼女が連れていた二騎のサーヴァントの内片方、セイバーの方がね……あれは多分話し合いとか懐柔とかは無理な手合いかな。ここに連れてきて無用な騒ぎは絶対に起こしたくないし」

 

 マスターが思い返すのは徹頭徹尾こちらに殺意を向けていた仮面の剣士。魔剣グラムでセイバーだから十中八九シグルドだろうが……英霊にしては妙な違和感を彼は感じていた。異聞帯の英霊だからこちらの常識で測れないという話では納得できない小さな違和感が。

 そんな一抹の不安を懐妊しているロリ妻の前で出すつもりは全くもって無い彼は表情には出さず、アリスの膨らんだお腹を慈しみを込めて撫でていた。

 メルトリリスは戦闘が終わった後にこの場に来るつもりは無かったのか、何処へと姿を消した。きっとまたおいしい所で姿を現すだろう。

 

 

 

 ▲▲▲

 

 

 

 ──只の正当防衛……その言葉は信ずるに値しよう。手を抜いていたわけではなかろうが、殺す気は感じられなかった。異邦の獣よ、哀れな北欧の子を救ってくれたお前と言葉を交わしたいというのは私も同じ気持ちである。

 

「いや普通に魔剣使いの首へし折ろうとしてたぞコイツ」

 

 ナポレオンの至極まともなツッコミも些事としてスカディはスルー。

 

 ──これ以上、ここでの死闘は認めぬ。オフェリアもカルデアなる所に友がいると聞く。その者を連れて、我が城へと来るがいい。どうあれこの世界で生きとし生ける全ての者を愛すると私は決めているからな……。だが我が居城で服を脱ぐ事は許さん。うん、あれは……駄目だ、その……眼に毒過ぎる。

 

 それはフリなのかな? とデアーは真剣に悩んだ。

 

 

 

 ▲▲▲

 

 

 

「それで行くの? ノコノコと敵の本拠地に? まぁ、分かってて行くんでしょうねアンタは」

 

「ならば私も同行させて下さい……カルデアのマスター、話を聞く限り、彼は間違いなく私が知る(汎人類史側の)シグルドではないのでしょう……。それでも例え、異聞帯のサーヴァントだとしても彼がシグルドの名を冠するのならば私は殺さ(愛さ)なければなりません」

 

 散歩に行くような気軽さで敵地の総本山へ向かおうとするマスターに呆れる邪ンヌ、そして異聞帯のシグルドらしきサーヴァントがいるという情報に愛憎混じった炎を燃え上がらせるオリジナルのブリュンヒルデ。

 件の場所はここから北西に数km行った所にあるとされる氷の城。

 所在の確認はクリプターの襲撃を発見した時と同様、セミラミスの使い魔の鳩から報告を受けている。もうターキーになるのは御免なので婦長が目を光らせる病棟には近づかないようにしているようだが。

 

「そこにオフェリアさんもいるのですか……」

 

「うん。しきりにマシュの事を気にしていたし、友達なんでしょ?」

 

「…………どうでしょうか。何度か食事を共にした事はありましたが、あの頃の私はまだ他人との距離を測りかねていました。察しの良いオフェリアさんも必要以上に踏み込んではきませんでしたし、友達? というにはお互いぎこちなかった気もします」

 

「恋人や夫婦と違って友達って必ずしも明確な契機があるわけでもないし、そこは気にしなくてもいいと思うよ。気付いたらなってたってもんだし」

 

 オフェリア・ファムルソローネ。同じAチームとしてマシュを一人の人間として接しようとしていた数少ない同胞(なかま)。当時は気付かなかったオフェリアの機微も今ならわかる。自分を備品でもホムンクルスでも英霊を宿した兵器でもない対等の目線で接してくれた数少ない魔術師。Aチームでマシュとそう接してくれたのは彼女とペペロンチーノぐらいだろう。

 

「お互いに相手の事を気にしているのならまずは話してみよう。目と目が合ったらサーヴァントバトル! なんて物騒な事言わないでさ。マシュと彼女ならきっとなれるよ、俺とメイヴちゃん(マイ・ベスト・フレンド)みたいな親友に」

 

「アンタの場合、フレンドの枕詞セックスがつくでしょ」

 

「…………私とオフェリアさんも肉体関係を持つべきという事でしょうか!」

 

「泣くわよ、そのクリプター」

 

「ですが私には先輩と心に決めた人がいます。…………! つまり、私とオフェリアさんまとめて先輩に召し上がっていただければ万事解決では!?」

 

「だれか──。ツッコミ役かわって──」

 

 仕事の比重が自分に偏っている現状に天を仰ぎたくなった邪ンヌだったが、これからの方針はとりあえず決まったらしい。この北欧を統べる異聞帯の王がいる城へ向かう。向かうメンバーはマスター、マシュは当然として、邪ンヌにブリュンヒルデ・オルタ、そしてオリジナルのブリュンヒルデの計5人。

 十中八九姿が見えない空想樹の在処も知っているだろう。対話で済むか戦いになるかは出た所勝負になってしまいそうだが。

 

「あんまり大人数で長居するとフローレンスの(ベッド)が落ちそうだから、さっさと向かうとしようか」

 

「また、デアーお兄さんは出かけてしまうの? アリスの傍にはいられないのかしら……?」

 

 腰を上げたマスターにゲルダがそう問いかけた。その言葉はアリスを気遣ってのものだった。彼がシグルドやナポレオン達と戦っている間に二人は随分と仲良くなったらしい。アリスの枕元に転がっている何冊の絵本がそれを物語っている。未だ、親子や夫婦という言葉を完璧に理解したワケではないが、それでも新たな生命をお腹に宿しているアリスの近くに彼がいるのが相応しい形なのでは、と幼いながらも考えていたようだ。

 

「大丈夫。出かけるけど、ここにずっといるから」

 

「? ……んーと? 謎かけ? お兄さんの言葉は時々難しいわ。でもここにいてくれるって事でいいのね!」

 

「ふふ、心配してくれてありがとうゲルダ。でも問題無いのだわ。私の旦那様は素敵な魔法が使えるの! 不可能なんて何も無いんだから……!」

 

「はいはい、あんまり大きい声出さない。お腹の子と体に響いちゃうでしょ」

 

 単独行動ではなく、彼が愛する者と行動を共にし、それを性交と認識すれば異なる場所に同一体として存在する事が出来るお前のセックスの概念ガバガバじゃねぇかと言わざるを得ない宝具『竿繋ぎの多元性交(パラレル・セックス)』。この宝具により、彼はアリスと病室にいながらマシュ達と一緒に氷の城へと向かう事も出来る。ダ・ヴィンチちゃんからもカルデアで色んな宝具を見てきたけど一番理解不能なものだねと太鼓判を押されるほど。素敵な魔法とは言うけれども字面は酷い。

 

 えへんと誇らしげに伴侶を自慢するアリス。何だかわからないけど凄いのねと感嘆するゲルダ。少女達の微笑ましい光景につい周囲の頬も緩んでしまう。「私も早く懐妊して先輩に体を心配されたいです。多分お腹撫でられただけでイくと思います。メディア・リリィさんに胎児を保護する魔術を頼めば出産までエブリデイボテ腹ックスも出来ますし、やっぱり今しか出来ない事で先輩との人生を彩らせていきたいですね」というマシュの極小声量の呟きは幸いな事に誰の耳にも入らなかった。

 そして、「ふふ、マスターが第一懐妊者と仲睦まじい光景をまるで私の入る余地が無いかのように見せつけてくれます。この蚊帳の外NTR感で十回ぐらいはイケそうですね」というブリュンヒルデ・オルタの呟きは邪ンヌの耳には入ってきたが彼女は聞かなかった事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ。マスター達は向かったか……」

 

 鋼鉄の馬の中で女帝が優雅に足を組みながらアイスティーを飲んでいた。その眼には使い魔の鳩と視界を同期した事によるマスター達の姿が映っている。

 

 

境界無き病棟(ボーダーレス・ナイチンゲール)』の屋内駐車場に計12のタイヤを持つ装甲戦闘車両が停まっていた。名を虚数潜航艇シャドウボーダー、本来なら、虚数潜航に必要なペーパームーンやゼロセイル等の機器機能が詰め込まれたこの車両を使って異聞帯に浮上しなければマスターをここに連れてくる事は不可能なのだが。今や人類悪と化したマスターの単独降臨及び宝具『通い妻オーバーラン』のお陰で彼と彼の家族となった者達に関しては必需品では無い。

 

 だがカルデアスタッフやホームズ、ゴルドルフ司令官等にはそんなふざけたスキルも宝具も存在しないので正規の手段を使って北欧異聞帯にいるわけである。

 さらにはアビゲイルがシャドウボーダー内に取り付けてくれた、ここと外宇宙のカルデアを繋げる扉を使えば、人理焼却から欠けていない二十弱のカルデアスタッフ達も全員この狭いボーダー内に収まる必要は無いので環境は至って良好だったりするのだ。

 

 駐車場所も婦長のお膝元という安心安全。10台もの救急車が停まっているここに襲撃をかけようものなら、修羅と化した婦長が300体の『白い貴婦人』達を連れて殺菌・滅菌・消毒(テルモピュライ・エノモタイア)を行うだろう。

 

 病院内にいれば、苦手とする婦長にも絡まれる可能性があるセミラミスはボーダーの司令室から使い魔の鳩達やチョコサーヴァント達を使役していた。…………チョコ、そう。正確に言えば彼女は女帝セミラミスが造り出した自我をもったチョコレート像、通称チョコラミスにマスターがホワイトチョコを注ぎ込みサーヴァントいやそれ以上の存在へと昇華した者である。正確に言ってもよくわからんね。

 

 

「番外の人類悪と神代に生きる王、非常に興味深いカードだ。観測出来るこの貴重な経験に感謝をしなければならないね」

 

 コーヒーが入ったカップを口に運び、セミラミス同様司令室の椅子に腰を降ろしているのは人理修復後から、今日までダ・ヴィンチと共にカルデアのサポートに徹していた世界最高の顧問探偵シャーロック・ホームズ。訳知り顔でマスターの戦いを傍観するという発言が癪に障ったのかセミラミスが鋭い視線を向ける。

 

「気に食わんな……。上から目線でマスターの戦いを裁定するか。全知全能の神気取りか? 探偵如きが」

 

「英雄王などになったはつもりは無いが。それに全ては知らないとも、私が知ろうとしない限りね。もし彼が特筆すべき秀でた才をもたずそれでも傷つきながら最善を選ぶ一般人だったら私も体を張るのは吝かではないが……」

 

 ホームズの前に映ったモニターには大砲を持つ弓兵と魔剣の剣士を前に大立ち回りするマスターことデアーの録画映像が流されている。

 

「乞われればもちろん力は貸す、だがこの様子を見る限り戦闘において私の出番は無いだろう。だからこそ我々は適材適所にこうして異聞帯での彼等の旅路を記録し続けている。君が賢しい男が嫌いなのは承知の上だが、そうあまり怖い顔をするものではないと提言するよミス・セミラミス。君の真名を知ったゴルドルフ司令官もボーダーから逃げてしまったからね」

 

「ふん。有象無象の男共の態度に何故、我が気に掛けなければならん。それにあれには相応の仕事も与えているのだろう?」

 

 別のモニターには『境界無き病棟(ボーダーレス・ナイチンゲール)』の隣、ゲルダの故郷である第23集落で何故か子供達に囲まれながら屋外で熱されている巨大鍋に入ったチョコレートをぜぇぜぇ言いながら溶かしている金髪髭の恰幅のいい男のコック姿が映っていた。

 

『ひぃ、ひぃ。おかしい、絶対おかしい! 財産はたいて得たカルデアから私のサクセスストーリーが始まる筈だったのに。何故こんな未開の地で汗水流しながらチョコレート製造機になっているのかね!? あっこら君達! 危ないから火の元に近付くんじゃないよ! 全くもう親の顔が見てみたい!』

 

 ゴルドルフ・ムジーク。人理修復後のカルデアを購入し、次期所長として就く筈だったが知らぬ間には人理は漂白されビジネスパートナーだったコヤンスカヤには放り出されて途方に暮れていた所を何か面白そうだからという理由でマスターに拾われ、カルデア特別司令官とかいうよく分からない役職に任命された幸薄そうな御仁。後、性格は魔術師らしからぬ善人寄り。

 

「奮闘しているようで何よりですゴルドルフ司令官。きっと得難い経験になるでしょう。剪定事象それも神代の北欧でのフィールドワーク。時計塔を震わすには十分な資料になるかと」

 

『この状況で一体何を書けというのだね! 世界が漂白された後私は子供達に囲まれながらパティシエになっていましたとか「あぁ、どうやらムジーク家のご子息は頭がイカれちまったそうですね」といよいよ時計塔での私の居場所が無くなると思うのだが! ……はい、だから君達! 人のお腹をポスポスしない! 調理には繊細さが要求されるんだから!』

 

『うむそうであるな幼子達よ。太っちょの腹を掻っ捌いても夢とか希望とかしか出てこないのだな。それは見るものであって食べるものではないぞ。どうせ食べるなら甘く蕩けるチョコレイトにしておくのだ。毒身は私に任せておくがよいさな。キャットにチョコは基本毒であるが故ワン』

 

『あぁ、こら駄目よボーイ達、勝手にレディの服を剥がそうとしては。ジャガーの内に秘められた魅惑のボディが気になる気持ちはよーくわかる。でも料理中の女に触るのはもっと何年かしていい男になってからの特権ニャ。とヌルヌル作画でいたいけな少年達の初恋を奪ってしまうジャガーなのであった』

 

 クッキングメンバーは他にも二人いた。肉球フニフニの手足に獣耳のメイドドレス良妻のタマモキャットと、虎の着ぐるみの上から緑のエプロン、こんなんでも神霊です。誰が呼んだかジャガーマン。

 何故か当たり前のようにゴルドルフ司令官の隣で集落に住む子供達にスイーツを調理・配膳している。格好も言動も理解不能なサーヴァントが二騎も近くにいる事に顔を青くしながらも調理を続けている辺りゴルドルフの律儀さがわかるが。

 

『あのね。外に出た私の護衛としてサーヴァントをつけてくれる判断は特別司令官として評価するけれど……も──う少し人選を考えて欲しかったのだが。見知らぬ地でどちらともコミュニケーションが取れないって割と致命的だよ? 何、どっちもバーサーカー?』

 

「ではボーダー内に戻ってきますか?」

 

『わかってて言ってるだろう君! 世界最古の暗殺者だぞ! 紀元前の女帝だぞ! 隣にいるだけでストレスで私の体重が絞られてしまうだろうが!』

 

 厳密に言えばセミラミス張本人ではないのだが、そこの詳細を伝えた所で「????」と宇宙の真理を見せられた猫みたいな顔になるだけだろう。

 セミラミスの真名を聞いた瞬間に「現地人との交渉で空想樹とやらの情報を華麗に取ってこようではないか!」という建前でボーダー内から飛び出したゴルドルフ司令官は今度はこの異聞帯の住民の栄養不足を危惧した婦長の使い魔『白き貴婦人』達に捕まり、医療従事に勤しんでいる。ゴルドルフの周りには一人当たりに必要なカロリー、栄養分配が詳しく書かれたフリップボードを持つ顔の無い看護師の姿が一つ。

 

『ん? 作りすぎ? しかし、ここの子供らは瘦せすぎだろう、むしろもっと食べて私のようなガッツあるボデーになった方が逆境に負けない大人に成長すると思うのだがががががが、痛い、痛い、痛い! 髭を! 髭を引っ張らないでくれたまえ! わかりましたよ、余計な事はしません! 全く、この威圧感……実家のホムンクルス達を思い出すよ……!』

 

「まぁ、異聞帯の住民と友好を深めるのは悪い事じゃないだろうさ……今後の事を考えるとね。何せ私達は人理修復よりも困難で神をも恐れぬ所業、『空想強奪』をこれから行っていくのだから。本当ならそれを実行出来る力を持っているマスター君の事をもっとつまびらかに知りたい所なんだけど……ねぇ、ホームズ、実は何か隠してたりしない?」

 

 ゴルドルフの悲痛な叫びに苦笑いを浮かべて、口を開いたのはレオナルド・ダヴィンチ。モナリザを模した黒髪の絶世の美女にして、カルデアにおける技術局特別名誉顧問。現在はセミラミスの使い魔が視認している北欧中の映像を精査し、空想樹の在処を探している所だった。

 

「…………ふむ。それはそれとしてダ・ヴィンチ、君はどうしてここにいるのかね。マスターの宝具を使えば、シャドウボーダーを使わずとも浮上出来るのでは?」

 

「あの子に抱かれてないからだよぉぉぉお! わかってて言ってるだろ君っ!!」

 

 ホームズにしては雑過ぎる話の逸らし方だったが逸らした先の内容がダ・ヴィンチのメンタルにあまりにクリティカルだったので万能の天才たる彼女はついさっきの質問も忘れ、叫んだ。

 

「ふ、ふふふ、か、体の繋がりだけを重視するのは凡人の悪癖だと思うよ。何せ私の創作物は彼が人類悪となる宝具のリミッターの一つとなっているのだから。もはや私は今のマスター君の根幹に欠かせない要石。肉体関係が早い遅いなんてレベルはとうに過ぎているのさ」

 

 

 ダ・ヴィンチが自信満々に語っているのはマスターがビースト0/デアー:親愛の獣と化した宝具『Call Dear(親愛なる 貴方へ)』のこと。実の所、彼は人類悪としての力を行使する時に限定的に自身に捧げられた創作物をリミッターとして解除している。

 

【童話作家 ハンス・クリスチャン・アンデルセン作:『カルデア国物語』】

 

【劇作家 ウィリアム・シェイクスピア作:『カルデア業物語』】

 

【天才芸術家 レオナルド・ダ・ヴィンチ作:『カルデア寝物語』】

 

【月の超級AI BB作:『HBチャンネル』】

 

【浮世絵師 葛飾北斎作:『官能会之故姦通』】

 

 解除した数によって人類悪としてのスペックも変わっていく。ギリシャでクリプター達に宣戦布告した際もビーストとしては完成形でない。いつか過去か未来かどこかの時間軸でさらに二つの創作物が加わり「おまえ、もしかしてまだ自分が死なないとでも思ってるんじゃないかね?」と100%中の100%になった彼の姿が見れるかもしれない──。

 

 ……それはそれとして、自身の作品が現在のマスターと深く結びついているという事実はダ・ヴィンチにとって他の女達のマウントを取る良い材料になっているわけだが。

 

 

「では加えて肉体関係も持っているあの謎のAIとオウイ・カツシカが最も彼の心を射止めているという結論でいいのかね?」

 

「その理論に従えば貴様はマスターにとってあの減らず口の作家共と同列という事になるが」

 

 探偵と女帝、何気ない二人の二言が天才芸術家の心を傷付けた。

 

「そもそもマスターとの付き合いの長さはマシュと同様。にも関わらずそのアドバンテージを生かせぬまま、ここまで来てしまった体たらく。それで絆がどうこう甘ったるい事を言われてもな」

 

「そう辛辣に語るものではないよ、アッシリアの女帝。今回はその親睦の長さが仇となってしまったのさ、いやそれにあぐらをかいてしまったと言うべきかな。『どんなに女が増えようとも、一番彼の事を理解しているのはカルデアに初めて来た時からずっと見守ってきたこの私』だと根拠なき自信でここまで来てしまっただから。別に悪を犯しているワケでもなし、それこそ糾弾ではなく温かく見守ってやろうじゃないか」

 

「フン、それで自分の半分の人生すら生きていない娘に先を越されたワケか。マシュが抱かれたと知った時にさっさと行動を起こせばよいものを……。下手に年を取ると体は鈍くなるからな、おぉ怖い怖い。その点、我は安心だな、生まれて間もないまだピチピチがゆえ……フハハハハハ!」

 

「お前らぶっ殺してやる!!」

 

キャラ崩壊した万能の天才がついにキレた。

 

「ハッ、やってみるがいい、キャスタークラスだから優位を取れると思ったか戯けが。『二重召喚(ダブルサモン)』の力を見せてやろう!」

 

「上等だコラ。こっちにも秘蔵のライダークラスのロリボディが用意してあんだよ、キャスターになってもカモじゃボケぇぇ!!」

 

「さすがにボーダー内で戦り合うのは勘弁して欲しい所だが……まずはこの良い香りがする薬でも吸って落ち着く所から始めないかね?」

 

『…………』

 

 通信先から聞こえる醜い争いの音にゴルドルフの顔はどんどん青くなる。もしかしなくても自分は転職先を間違えたのではないのかと。哀愁漂うその肩にポンポンと二つの手が置かれる。

 イカれているが人類最後のマスターだけだったならまだマシだったかもしれない。たちが悪いのはカルデア自体ももう十分彼によって毒されているという事。おぉ、まさしく人類種の癌。

 

 ──カルデアにようこそニャ、ここはアットホームな職場だワン。

 

 ゴルドルフは考えるのをやめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 狭き集落、この世界で生きる子供達は何も知らない。知らぬ人間、見知らぬ物、それを目にしようとも今日も今日とていつもと変わらない日常が回り続けるだろうと。神に願い、戦乙女に縋り、ヴァルハラを夢見て眠りにつく。そんな当たり前とされた明日を疑う事は無い。

 大地が突然消失すると恐れる者はいない。けれど世界がいつも通りこれからも在り続ける保証は誰にも出来ない。亀裂がもう入っている事には気付かず。

 

 北欧異聞帯。弱き人間達の世界は最終局面に移行する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お姉様──」

 

「まさか、本当にブリュンビルデお姉様が二人も……」

 

「不思議な気分だ……この城に客人を迎え入れる事になるとは。それも異なる世界からの異邦人、長生きはしてみるものか──」

 

 来客者は教わらずとも、彼女こそが異聞帯の女王、この世界の長であると理解した。銀のティアラに深紫の髪、同色の悠然としたドレス。本来は世界の存亡をかけて争うべきカルデアを前にしても全くの敵意を見せない在り様は彼女の常套句でもある愛に満ちていた。

 

「スカサハじゃない」

 

「む、既に我が真名を見抜いているのか。さすがは汎人類史のワルキューレ達の長ともいえる女よな」

 

「違う。全く違う。そこのポンコツワルキューレからどんな報告受けたのよ」

 

「オルトリンデからの伝達は要領を得なくてな。娘達がこのように取り乱すのは初めて見た。フフ、初めて見る娘達の顔に母としてちょっぴり新鮮で嬉しい気持ちもあったりするのだ」

 

「別に聞いちゃいないわよ」と白ける邪ンヌが先程つい呟いてしまうぐらいには顔がそっくりだった。そう、カルデアで悪口を言おうものなら次元の壁を越えて槍を投げつけてくる。暴力は全てを解決する系ウーマンのスカサハと酷似している。だが顔の造りは同じであってもその中身は全く別物。例えるなら魔王に攫われ勇者の助けを静かに待つ姫がスカディとしたら、同じく攫われた後、待ち切れなくて勇者が助けに来た時に魔王の肉でバーベキューしている所を見られてしまうのがケルトのスカサハである。

 

「で、そなたが汎人類史のマスター……オフェリアが恐れている獣か。よしよし今度はキチンと服を着ているようで結構。むやみやたらに肌を晒すならすぐに地下牢行きなので肝に銘じておくようにな」

 

「………………」

 

「フリじゃないからね、やめなさいよ。まずは話からするんでしょ」

 

 マスターの内心を正確に察している邪ンヌが肩を抑えて首を横に振っていた。何でコイツはここで残念そうな顔をしているのか説教を叩き込みたい気分に邪ンヌはなったがここはグッと抑えた。

 もうギャグパートの時間は終わり。袂を分かったワルキューレの姉妹達の再会を全裸レズの発情で上書きしてしまった件も彼女は少しだけ気に病んでいたりするのだ。

 

 会合の場所は氷の城。その玉座の間。ほぼ全ての調度品が氷で構成された非現実的な空間。氷の長テーブルの両端に二つの勢力が分かれて席に着いていた。

 

 北欧側として、オルトリンデ、スルーズ、ナポレオン、そして女王スカディ。

 カルデア側としてマシュ、邪ンヌ、ブリュンビルデ、ブリュンヒルデ・オルタ、そして人類最後のマスター。

 

「ふ、ふん。結構センスあるじゃない……」ってバトル漫画で敵幹部がいかにも怪しい会議を行いそうな場所に若干テンションが上がっている邪ンヌは強さは中間ぐらいだけど、終盤で実は幹部の中で一番最強だったキャラが座りそうな席を吟味している。そんな彼女を見て、発情しかけているブリュンヒルデ・オルタ。そんな痴女を見て、「やっぱりあの女のことを……」と複雑な眼で見ているオルトリンデに口元は笑っているが目がヤバイ事になっているスルーズ。そんなもう一人の自分と妹達を見て、何とも言えない顔で沈黙してるのがオリジナルのブリュンヒルデ。負の連鎖の空気が漂っていた。

 

 

「あの……一つよろしいでしょうか。女王スカディ」

 

「よい、発言を許す」

 

 控えめに挙手を行ったマシュが本来はここにいると予想していた人物について言及した。空想樹の排除も目的の一つだが、マシュ個人としての目的。オフェリア・ファムルソローネとの接触。

 

「私はマシュ・キリエライトと申します。クリプター……オフェリア・ファムルソローネという女性はこの城にはいらっしゃないのでしょうか?」

 

「ましゅ、マシュ…………あぁ、そうか。お前がオフェリアがしきりに口にしていた友の名か。オフェリアは自室で休ませてある。いきなり全裸を見せつけてきた男と冷静に対面出来ると思わんだろう。ふむ……だが念願の友が来訪したと知れば、精気を取り戻すか……。案内させよう」

 

 

 スカディが指を鳴らせば、量産型のワルキューレが一騎、マシュの傍へ降り立った。娘を想う女王の気遣い、マシュだけならオフェリアがいる部屋まで連れていくのも吝かではないという事だろう。

 

「あの先輩……」

 

「うん、行ってらっしゃい」

 

「……はい!」

 

 マスターのサーヴァントとして、近くにいるべきではと逡巡するマシュの悩みをその一言で吹き飛ばし、愛おしそうに目を細めマシュの後ろ姿を見送る彼は、スカディが思わず「ほう……」と溜息を零してしまう程に泰然としていた。父なる神々が消え失せ3000年、悠久の果てに忘れ去った父性というものを思い出してしまうぐらいに。

 

「外見は年若き男児にしか見えぬが……その中身は随分と成熟している……」

 

「ふっ。お褒めの言葉、どうもありがとう。これでも、もう少しで一児の父になるからね。いつまでも子供ではいられないのさ」

 

 大人はうら若き乙女の前で全裸になったりしません。

 

「えぇ、マスターは殺そうとした私とお姉様を纏めて身も心も虜にした勇士。おかげでこちらの性癖も歪んでしまいました……」

 

「「は?」」

 

 言わなくてもいい惚気を披露してしまっったブリュンヒルデ・オルタにガチトーンで反応したワルキューレ。しばらく、玉座の間は紛糾した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──お茶会ですか? 

 

 ──えぇ、そう。せっかくAチームの女子だけ集まってとペペが。ヒナコは……来るかどうかわからないけど。で……どうかしら、マシュ? 

 

 ──そうですね……。

 

 

 

「あっ……」

 

 少し眠っていたようだ。瞼を擦り、氷塊で囲まれた見慣れた部屋を見回す。セイバーには今は部屋には入らないように言いつけてある。霊体化で姿が見えなくても今は誰にもこの部屋にはいて欲しくなかった。

 

「何をやってるのかしらね、私は……」

 

 自嘲めいた呟きに答えてくれる者はいない。

 自身のサーヴァントを連れ、女王の部下のワルキューレ達に加えて、汎人類史側のサーヴァントの力も借りて結果は大敗。クリプターとしての最低限の責務も果たせず、マシュと顔を合わせる事すらなく、情けをかけられ、おめおめと逃げ帰ってきた……なんと惨めな事か。

 

 そう、情け──あのままセイバーとアーチャーを仕留めて、残った私をあの男はどうする事も出来た筈だ。けれど私は指一本触れられる事なく無事でいる………………………………凄いものは見せられたけど。

 

 私は一つ疑問を抱えている。あれだけ恐れていたデアーと相まみえて、マシュを傷付けたと激昂に駆られ、殺意を向けたが……もし、前提から間違っているとしたら? 

 

 あれだけの敵対行為を見せたマスターを見逃す彼の在り方はコヤンスカヤが語った極悪非道の悪辣漢とはかけ離れたものだった。もとよりあの女狐の言葉を一から十まで信じていたあの時の自分もよっぽど追い詰められていた気もするが……。

 

 異星の神の使徒、人類悪を名乗るカルデアのマスター。クリプターとしての立場なら迷うことなく前者を信じる。けれど──。

 

 

 

 ▲▲▲

 

 

「……お願い、あの娘、マシュにだけは酷い事はしないで…………!」

 

「ん──と、どこで誤解したのか皆目見当がつかないからそれは置いておいて、これだけは言っておくよ。俺はマシュを死ぬまで大事にする。どうかなりそうだった俺を繋ぎ止めてくれたマシュと一緒に幸せになるって」

 

「幸せ──」

 

「ここで俺がいくら言っても信憑性ないから、後は期待の後輩に任せるかな。多分、近い内にマシュがオフェリアさんに会いに行くと思うし」

 

 

 

 ▲▲▲

 

 

 

 去り際のあの言葉を嘘と斬り捨てる事は出来なかった。遷延の魔眼の暴走で垣間見てしまったせいだろうか、デアーと肌を重ねるマシュの顔は愛も恋も碌に知らない私から見ても、思わず見惚れてしまうぐらいに幸せそうな女の子でしか無かった。

 それは私も含めてAチームの誰一人として引き出す事の出来なかったマシュの素の顔だったと思う。

 あの可能性が現実にあり得るものだったとしたら、私がやろうとした事は──。

 

 

 ──コンコン。

 

 

 煩悶となっている私の思考を呼び戻すようにノックの音が聞こえた。珍しい……というより初めてな気がする。この城にいるのは人間の習慣に無頓着な者ばかり、霊体化で勝手に入ってくる、気付けばいる、窓から入ってくる。まともにドアを使っているのは私ぐらいだろう。

 

 

「オフェリアさん、いらっしゃいますか? 私です……マシュ・キリエライトです」

 

 

 その声は今一番聞きたくて、けれどいきなりの事に心の準備も出来ていない私の体は呆然と固まってしまって……。

 

 

「マシュ……なの……?」

 

 部屋の寒さでは無い何かで震えた私の声にも彼女はきちんと応えてくれた。

 

 

「……お久しぶりです。そしてはじめまして、です。ようやく本当の意味で貴女と向き合う事が出来ます」

 

 壁一枚隔てた先にいる彼女がどんな顔をしているのかは今の私には見通す事は出来ない。

 

 

 







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ウエンズデイをうたって②(第2部 2章)

無料配布されるクリプター(パイセン)とかいうパワーワード。
新規マスターがパイセンもらって人理修復するとか面白過ぎるでしょ。











引き続き、第二部二章です。今回は珍しく、主人公()真面目です。



 ──お姉様とマスターの3Pはマジ興奮しました。

 

 そう爆弾を投下したのは我が道を行く贋作の戦乙女。

 

 親愛なるお姉様を手籠めにしたという事実でさえ、憤慨ものだというのに他の女と並べるとは一体どういう了見だ。勇士が色事に奔放なのは理解出来るがやっぱりお姉様がそういう扱いになるのは納得いかないと、どこぞの築地市場の三代目のようなガンギマリした顔で槍を構え出したスルーズ、オルトリンデ。矛先が自分からマスターに移った事に少しニッコリした邪ンヌだったが、さすがにこの状態では話もクソも無いので誤解を解く必要がある。

 

 もうこのやり取りもしつこくなってきたので、同じ顔の英霊が召喚されるのはカルデアでは日常茶飯事。こっちの黒いブリュンヒルデはアンタ達の大好きなお姉様とは顔と声がそっくりなだけの別人だと思ってくれと、オリジナルの方は今もシグルド一筋の清い? 身であると邪ンヌは雑に説明した。

 

 その説明を受け入れてもらう為に一度、マスターの『白式官能』でお体に触りますよ……して落ち着かせたワケだが。

 

「この手に限る」

 

「この手しか知らないんでしょ」

 

 

 ともあれ、新たな感情をインプットして下半身を震わせているワルキューレ二体。それを見て気の毒そうな顔をしているナポレオン。何が起きたのかわからないという風に首をかしげているスカディ……北欧側の彼女達もようやっとテーブルについてくれた。

 本来こうして敵対している二つの勢力。それも異聞帯を統べる王直々が話に応じてくれるというのなら是非も無し。カルデアの参謀陣も情報を得るこの機会を逃すワケにはいかないとマスターの考えには同意を示していた。何故だかその声は3WAVEぐらい戦闘を行ったかのように疲れていたが。

 

「さて、我が娘達もこうして客人と親交を深めた事だ。そろそろ本題に入らせてもらおうか。お前達も北欧、ひいては空想樹の事を聞きたくて、ここまで足を運んできたのだろう?」

 

 邪ンヌはもう前半部分にツッコミを入れる事は放棄している。

 

「女王、話を遮るようで申し訳無いのですが、貴女の傘下であるシグ……魔剣使いのセイバーはこの場には?」

 

「大神の娘よ、お前が一番に求めるあの男は私の配下というワケでもない。そしてあ奴はこの場には呼べんよ。間違いなくお前達のマスターと殺し合いになるが故にな、この場を血で汚す事は許さん。なので大人しくオフェリアの護衛をしていることだろう。しかし弓兵、お前も惚れた女の近くにいた方がよいのでは?」

 

「その張本人から部屋に入るなって言われちまっているからな。先の戦いではてんで役に立たなかったし、さすがに我は通せなかったワケだ。それにあの脱ぎ癖がある男から目を離さない方がいい気がしてな」

 

 実の所誰一人として部屋に入る事を拒絶しているオフェリアにより、サーヴァントであるセイバーも含めて彼女の近くには誰もいない。これからマシュとのガールズトークを愉しむにあたってナポレオンがいない事は一見すれば良かったように思えるかもしれないが…………。

 

「シグルドに会いに行きたい?」

 

「いいえ。()()止めておきましょう。会ってしまえば、きっとそれこそ……その場を血で汚す選択肢しか無くなってしまいます……私達の関係が行き着く先は愛憎に満ちた殺し合いしかありません。マシュさんと違って、和やかにとは絶対にいきませんから」

 

 マスターの提案にもやんわりと首を横に振って断りを入れるブリュンヒルデ。近くにいるとわかった以上会いに行きたい。だが目にしてしまえば、自制は利かなくなってしまう。

 今は異聞帯の王が敵対する勢力だろうとも言葉を交えてくれている場を設けてくれている。そこに無用な暴力を持ち込むつもりは無いという彼女なりの気遣い。

 

 先程飛び出したマシュとその友人との語らいを邪魔する無粋をおかすつもりは無かったのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──所長も何を考えているのか。あれはデミサーヴァント実験の失敗作だろう? マスターとして使い物になるのかね。

 

 ──どうやら医療部門のトップから強く押されたらしいぜ。ま、ホムンクルスが一匹増えた程度だ。俺達には関係無い話だろうさ。

 

 

 

 

 ──マシュ、その……ね。

 

 ──? ……現在の私に対して、彼等の意見は至極真っ当です。思うところは何もありませんが、どうして貴女が気にしているのでしょうかオフェリアさん。

 

 

 

 

「そう、いい旅をしてきたのね。顔を会わさなくとも声色でわかるわ。あなたが人理修復という旅路を楽しんできたのが」

 

 

 フランスから始まり、ウルクで終わる七つの特異点。マシュの口から私達がいなかった人理修復、本来なら47人のマスターと万全のサポートスタッフで行われる筈だった偉業を代わりに一人のマスターとデミサーヴァントとなった少女が為し得た物語の一端を聞かされた。時折、ぐだぐだ粒子だのチェイテピラミッドなんとかだの聞きなれない言葉が耳に入ったがそれを詳しく尋ねてはいけない気がした。

 

 世界を救うオーダー、簡単な筈が無い。失った物もきっとあった筈だ。けれど彼女の語りには悲壮感も絶望も感じられなかった。だから私は率直な感想を口に出す事が出来た。

 

 良かった……無理矢理戦わせられているマシュという少女はいなかったのね。全て私の杞憂だった。コヤンスカヤが見せつけたあの映像も悪ふざけの捏造で、デアーの言葉も私の聞き間違いか何かだったのだろう。

 私が知っているマシュ・キリエライトという少女は元気で明るいどこにでもいる女の子になっていた。

 

「あの……オフェリアさん。やはり、この扉を開けてもらう事は出来ませんか」

 

 未だ開かれていない扉の向こうから聞こえる寂しそうな声は私の胸を締め付けた。

 彼女がこんなにも色んな感情を声に込める事が出来たのを喜ぶべきか、今マシュと顔を合わせる事が出来ない自分の弱さを悲しむべきか。

 

「……ごめんなさい。私がクリプターであなたがカルデアのサーヴァントである以上、それは出来ないわ。この扉を隔てている間だけは只のオフェリアとマシュとして話をする事が出来る……。私の我が儘でしかないけれど、今はそうさせて頂戴」

 

「直接、顔を合わせてしまえば戦う以外にないと?」

 

「…………えぇ」

 

 心優しい彼女にそんな選択肢を突き付けてしまった事に罪悪感が胸をよぎる。

 決して好戦的な性格じゃなかった。デミサーヴァントとなろうとも英霊と戦えるような娘じゃなかった筈だ。きっとカルデアで大事な人が出来たのだろう……彼女が力を振るうのに思い当たる理由はそれぐらいしかなかった。

 

 

 

「つまり今ここでオフェリアさんをボコボコに負かしてしまえば、私達は顔を合わせてガールズトークが出来るのですね!」

 

「!!!!????」

 

 マシュが何を言ったのか飲み込むのに数秒の時間を有してしまった。

 

「夕陽の河原の殴り合い。体力を赤ゲージまで減らしてからのモン○ターボール。一度痛めつけた後に起き上がった魔物は仲間になりたそうにこちらを見ている。えぇ、古今東西争いあう両者の垣根を無くすのは拳だと言っていました! マルタさんとか、ケツァル・コアトルさんとか!」

 

「ちょ、ちょっと待ってマシュ……落ち着いて? ね?」

 

「えぇ大丈夫です。私は至って冷静です。これまでの旅で盾峰打ちもマスターしましたから! オフェリアさんの立場も考慮していますとも。ですが一度ボコして捕虜という事にしてしまえば、そういう面倒臭い事情も全部ポイ出来ると思うんですよ」

 

「私が真剣に悩んでいる事を面倒臭いとか言わないで!」

 

 壊れる! ドアノブ壊れちゃうから! ていうかドア自体が取れそうな勢いで揺れてるわ! 元気になったとは思っていたけどさすがにこれはアグレッシブ過ぎるわ! 知らない! こんなマシュ、私は知らないわ! 誰よ、この娘をこんなにしたのは! 

 

「先輩だったら、きっとそうしていた筈です!」

 

 やっぱりあの人類悪(アイツ)か! マシュに一体何を教え込んでくれたのよ! 悪影響しかないわねホント! ……ググググ、今必死でドアノブ抑えているけど、力じゃ絶対敵わないし、このままドアを破られるのも時間の問題ね……。

 それは困る。確かにさっきマシュと顔を合わせられないと言ったけど今は別の理由で合わせられないわ! こんなはっちゃけているマシュ、私のキャパを軽くオーバーしてるわ! こんな現実見たくなかった! しまいには両目に眼帯つけるわよ! 

 

 ……何か、何かマシュの動きを止める秘策は無いのッッ……先輩、先輩? ハッ! 

 

「そ、そういえば……マシュ。私まだあなたのマスター……先輩とやらについてはほとんど聞いてないわ。特異点の話ばかりだったから今度はその人とのプライベートな事について知りたいわね……」

 

「私と先輩の馴れ初めですか?」

 

「え、えぇ(馴れ初めまでとは言ってないけど)」

 

 あんなにも荒ぶっていたドアはピタリと動かなくなった。何とかマシュの気を逸らす事に成功出来た事を喜ぶべき筈なのにどうしてか背中に嫌な汗が流れるのが止まらない。

 

 

 自分は後に後悔する事になる、この選択を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前達も目にしたのだろう。山嶺に拡がる蒼炎を」

 

 雪の女王は語る。このどうしようもない北欧の現実(空想)を。ここはラグナロクが完璧に終わらなかった後の世界。

 全ての始まりと終わりは巨人王スルト。かの黒き者が本来の役割から逸脱し、星の終焉を望んだ事から始まる。フェンリルを喰らい、ロキを殺したスルトをようやく封印した時には雪の女王──スカディ以外の神々は全て死に絶えていた。

 戦争が終わり、残ったのはスルトの残り焔によって焼かれ続ける凄惨たる北欧の大地。

 

「とても我が子達が生きていける環境ではない。故に私はこの世界を氷雪で覆った。愛し子達の命にあの忌々しい炎が迫らぬように」

 

 だがそれも全て解決とは至らなかった。死の炎を押し留める氷雪の世界には汎人類史のように大勢の人間が生きていくだけの動植物が育つ環境は無い。さらには闊歩する魔獣や巨人達の眼に付けば、弱き人間達は簡単に屠られてしまう。

 

「根本の脅威は去っている。天高く光り輝く巨大な太陽、あれはスルトを封じ込めた大神による牢獄だ。あの忌々しい災害が脱出する事はあり得ん」

 

 唯一残った神として、スカディには人間達を守る義務があった。

 

 集落には巨人が近づかず、人間が穏やかに過ごせる環境を保てるルーンを張った。神によって造られたその小さな箱庭しか知らない彼等は今の世界に何一つ疑問を抱く事なく生きていく。危険も争いも無く……。

 

『しかし、それでこの世界を存続させるにはいずれキャパシティに限界がくる』

 

 然りとホームズの言葉にスカディは頷いた。

 それは世界を運営し続けるただ一柱の神の限界でもあった。集落という閉じた世界で囲う以上、いくらでも養えるわけでは無い。

 これは決して汎人類史(こっち側)も無関係という話では無いのだろう。人口増加による資源枯渇。世界中でニュースにされている当たり前のような話。こちら側は科学の進歩、()()()によって現段階ではどん詰まりに陥る事は無かった。

 

 だが北欧は最も手っ取り早く単純な解決方法を取ってしまった。いや、その選択肢しか残されていなかった。

 器が割れてしまう前に過剰な容量は減らさなければならない。あまりに悲しくて残酷な決断、人類の足切りを彼女は下すしか無かった。

 

「100の人間に100の集落。あぁ、そうだ一万人の子らを守るのが私の限界であった」

 

 その時の女王が何を想ったのかは本人にしかわからない。

 これで子を産めなかった15歳と子を産んだ25歳が『旅立ちの儀』と称して死ぬとわかっている外の世界へ放り出される答えがわかった。『旅立ちの儀』は北欧を存続させる為に重要な間引きであると。

 

 この世界の人間達は御使い達を崇拝し、このサイクルを疑う事も無い。強く、余計な知識を持った所で生きてはいけず、それは他の者達の命と和を脅かしかねない脅威になり得る。生きていく為にはここの人間達は疑う事を知らず、ヴァルハラを夢見て穏やかに最期を迎える家畜になるしか無かった。もし、この場に婦長がいれば終末期医療だと罵っていただろう。

 

「そうして、あり得ぬ事に3000年の月日が過ぎた」

 

「そんだけ経ってしまえば、今更疑うヤツも出てこないでしょうね。神様の使いがヴァルハラに連れてってくれるっていうんだもの。嘘も方便ってやつ? お優しい神様もいたものね、フフフフ」

 

「……ッ! あなたに何が!」

 

 侮蔑を込めた邪ンヌの言葉に立ち上がろうとするスルーズをスカディは制した。マスターも視線で邪ンヌに釘を刺しておく。

 

「進歩も退行も無い、静かな時代がやってきた。だからこそ剪定される運命がやってきたのかもしれぬな」

 

 3000年経った後には目新しい情報は無い。クリプターと名乗るオフェリアが来訪し、空想樹を育てなければ、この世界が滅びると告げられる。そして敵対勢力、剪定されなかった勝者の歴史、即ち汎人類史側に立つカルデアの存在を。

 

「話に聞けば、お前達の世界には70億以上の人の子が生きていると。それを破綻させる事なく生き長らえさせてきた強さ、称賛に値する」

 

 だが──とそこで言葉を切る。神として、唯一残された神々の花嫁として、北欧の女王として、譲れない物があると神威を強くして彼女は宣言する。

 

「私にとって、汎人類史70億の命よりも我が北欧1万の命の方が重い。()()()、異邦の獣よ。お前達に空想樹の在処を教える事はなく、切除など断じて許さん。私は私が守護する世界を守る」

 

『結局は敵対するという道しか無いっていうのかい? なら、どうして私達をここに招待したのかな? 元々、我々は己の生存圏をかけて争わざるを得ない。敵対するという当たり前の事をわざわざ宣言するには少々回りくどく思うのだけれど』

 

 ダヴィンチは相容れない意を示すスカディからは敵意は感じられないと推測する。その推測は正しく、彼女は()()()()()カルデアからの来訪者達を害するつもりは無かった。ワルキューレ達やオフェリアを引かせた時のようにこの世界で争い、殺し合う事を是とはしなかった。

 

「だから()()()と言ったのだ。私は全てを見ている。お前達が集落から出てしまった幼子を助けたのを、大勢の子らに食料と施しをもたらすのを。この世界に憎しみを持っているわけではあるまい、我らは足並みを揃える事が出来ると考えているの私だけか?」

 

「つまり、この世界で共に生きろと? 汎人類史を捨てて──」

 

同調(愛そう)か、決裂(殺そう)か。もし、後者を選ぶのならば私もそれ相応の対応を取らざるを得まい。魔剣使いを圧倒した貴様は手を緩めて勝てる相手では無いからな」

 

 ブリュンヒルデの言葉に全身に視認出来る程の魔力と神威を漲らせて返答するスカディ。サーヴァントではない、3000年を生きた実在する神。その力をまさしく見せつけられている。

 

『フンッ、カビの生えた古臭い神風情が吠えるわ。我もこの世界自体は気に入ってはおるが、上から物を言うその態度は気に食わんな。立場というものを分からせてやろうか』

 

 ホームズ、ダヴィンチ同様、この場に存在しない者の声が届けられる。

 セミラミスにとって非常に適した気温故、この異聞帯は嫌いでは無かった。人間達に甘味という施しを与えるぐらいには……だが自身の主を、最愛の人をいいように使うというのなら、今この場に現れてその喉元を引き裂くと殺意を乗せた言葉を送る。

 

『愛そうか、だと? マスターが住む世界が滅びる事を是としておきながら、よくほざいた。その代償は貴様の命で』

 

「はいストップ、セミラミス。俺らだって同じ事をやろうとしてるんだからそれは言いっこなしだ」

 

 ここで初めて腕を組んでいたマスターが沈黙を破った。ボーダー内にいるセミラミスは何か言いたげに口を噤んだ。

 ロシア異聞帯が消失せず、存在している事をこの王は知らない。

 マスターの『白式官能』とアビィの外宇宙を繋げる能力があれば、空想樹を切除しようが北欧異聞帯は存続する。自身の主の口からその事実を言わない以上、セミラミスは自ら口を出すべきでは無いかとそれ以上は控えた。

 

 異聞帯が滅びない術がわかったとして必ずしもそこにいる王が手を取ってくれるとは限らないのだ。空想樹を根付かせないまま、自身の国の現状すらも把握しないで他国に攻め込もうとする王。争いを無くし、全ての統一を目指して、他国を滅ぼす王。完璧を夢想し、世界を何度も滅ぼす王。

 異聞帯という特殊な世界を統べるが故に一癖も二癖もある王達と和平を結ぶ方が難しい。

 

 

「お前達の力を借りれば、集落の数も200、300と増やせるかもしれぬ。我が子達の『旅立ちの儀』の上限も30、40と延ばせるかもしれぬ。愛を名に冠する獣よ、私の手を取るつもりは──」

 

 

「小さいよ。言ってることが」

 

 

 マスターの言葉でその場にいる全員の時が止まったようだった。

 

「どういう意味か──?」

 

「小さい」その言葉の意図がわかっているのは張本人のマスターのみ。

 もし北欧異聞帯の子供達の命を指して、発言したのなら──許すわけにはいかないと。魔力を込めた杖をマスターに向けるスカディ。返答次第では今すぐにでもその命を凍結せんと。その様子を見て、マスターの両隣にいた邪ンヌとブリュンヒルデ・オルタもすぐに動き出せるように静かに自身の得物に手を添えていた。

 

 

「根本な脅威なんて去っていないじゃないか。ベターじゃなくて、ベストを求めようぜ女王様。大団円ってやつをさ」

 

 マスターが天井を指さした意味がわからない程、察しが悪い者はこの場にはいなかった。氷で造られたシャンデリアをさしているわけではなく、マスターの指の先には城の外、空に鎮座する偽なる太陽。その中で封印されているスルトの事をさしていた。

 

「この3000年間、あの炎でこの土地が焼かれなければ……。自分にスルトを倒せる力があれば……。何度も思ったんじゃないの」

 

「ッ!? 貴様ッ!」

「女王!」

 

 全員がほんの少し上を見た一瞬の隙……マスターはスカディが座る隣に立ち、触れる事が出来る距離まで迫っていた。女王を守護すべくスルーズとオルトリンデが槍を首元ギリギリまで突き付けていたが、巨大鋏の如くクロスした槍に首を挟まれている彼には一切の焦りも浮かんでいない。立ち上がろうとしている邪ンヌ達を制する余裕さえあった。

 

「貴女のその偉大な力がスルトの炎熱を抑える為ではなく、この北欧の発展の為に行使出来れば、それはきっと希望になると思うけど」

 

「……お前達がかの黒き者(スルト)を倒すと? その妄言を信じろと言うのか」

 

「あり得ないッ! そちらに何のメリットも無い! むしろ、スルト復活の混乱に乗じて、空想樹を切除しようと目論んでいるとしか思えない!」

 

 激昂したスルーズが叫ぶ。カルデアの者達はいたずらに北欧の人間達を害するような悪心は持っていないのかもしれない。だがそれは何の意味も無い。汎人類史を彼等が捨てない以上、この男の吐いてる言葉は全て何の意味も持たない同情に過ぎない。結局はこの異聞帯を消滅させる選択しか残ってないのだから。

 

「ここに来て、ようやく確信を得たよ。スカディ、貴女はこの世界の在り方を良しとはしていない。()()()()()()()()()()から、人類の足切りは貴女にとって苦渋の決断。やりたくて、やっているわけじゃない」

 

「……それがどうした。私の好悪など何の意味も持たぬ」

 

「この世界が剪定されると知っても諦めたくなかった。ラグナロクを生き残った人類を見捨てたくなかった。だから足掻き続けた3000年も」

 

「何が言いたい」

 

「愛を囁き、貴女が無暗に命を奪う事を嫌う理由さ──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「愛を囁き、貴女が無暗に命を奪う事を嫌う理由さ──どうしようもない状況で命を摘み続けてきてしまったから、殺さなくてもいいという選択の余地が一欠片でも残っているなら、そちらに手を伸ばしたくなってしまった」

 

 あぁ、よろしくない。これはよろしくない。感情というものが揺さぶられてしまっている。目の前にいる男の眼で語られている言葉が遠い昔に氷結させた我が心を融解させているようだった。

 

 一度とて忘れたことはない。

 

 3000年、全てを見てきた。子供達が外へと旅立つのを見てきた。その最期を──。

 

 だから私は決して見逃さなかった。

 

 誰一人として恨み言は吐かず、世界を呪わず、神を信じ、祈っていた。

 

 けれど、()()()()()()()。それが当たり前の事だと疑いなく受け入れてなお、その小さき体が死の恐怖に震えていたのを私は見逃さなかった。

 

 私には正しい死など分からなかった。あぁ、だがきっと……いくら神の言葉で誤魔化そうとも、私が彼等に与えたのは少なくとも安らかな死では無かったのだ。

 

 これは私の責務であり、罰でもある。この世に祈る神が私しかいないのならば、せめて我が眼だけは子供達の最期から眼を逸らさずにいようと。

 

 何十人、何百、何千、万…………子供達を見送り続けよう。ずっと、ずっと、ずっと──。

 

「女王様もワルキューレも、そして多分集落の子達もこの北欧にいる誰もが、この世界の在り方を良しとしてはしてないと思うんだよ。そうするしかないっていうだけでさ」

 

「ならばどうする? いっそ滅びろというか。家族の愛も知らず、老爺や老婆になって生きることも叶わない閉じた世界など消えてしまえと」

 

「……あぁ、何かもう前置きとか面倒臭いから率直に言うよ。()()はこの異聞帯を存続する術を持っている。空想樹の代わりになる楔を用意出来る。あと、どうにかすればいいのはそのスルトとかいう奴だけだ。この世界は滅ばない」

 

 異邦の獣が今、発した言葉の意味に理解が追い付かなかった。

 槍を構えたままのワルキューレ達も息を吞んでいた。北欧を救えると? 足を踏み入れたばかりの部外者でしかないお前達が? 

 

「……あり得ぬ…………そんな事はあり得ぬ」

 

 本来なら一笑に付す戯言だが、私の口から出た言葉はとてもじゃないが神としての威厳は無く、弱弱しいものだった。

 ありもしない甘言に縋りたくなる程弱っているように見えたのか? 汎人類史と異聞帯が手を取り合って、互いの存在を許す? そのような夢物語を信じろと? 

 

「今ならまだ聞かなかった事に出来ます。先の妄言を取り下げ、席へ戻りなさい。カルデアのマスター」

 

「貴女も同じか? 蛇属性の普通の女の子さえ、嘘を見抜けるんだ。俺が本当の事を言っているかどうかなんて神様なんだから見抜けるんじゃないのか?」

 

 スルーズの忠告にも耳を貸さず、異邦の獣──デアーは身を乗り出して、私に迫る。首にあてがわれた戦乙女の刃先が皮膚を裂き、血が流れているのも無視して私に訴えかけていた。

 

 わかっている。だから困惑しているのだ。この男も、カルデアから来訪した英霊達にもこちらを騙そうとする害意が伝わってこない。元々部外者であった封印されていた戦乙女の長姉を除き、彼等に動揺が無いのがこの男の言葉の真実味を後押ししていた。

 

「何故、そこまでする? 元々お前達からすれば、我らは突如、この星に現れた侵略者だ。懐柔しにきた私が言う台詞ではないが、お前が救う道理はあるのか」

 

 当初はこの者達が汎人類史を諦める事はしないと当然理解していた。だがらといってすぐに殺すような手段は取りたくなかった。この者達も変わらない、我らと同じく自分達の世界を守ろうとしているだけなのだ。

 だから懐柔して、拘束して、手管を尽くして、我らと同じ道を歩んで欲しいと願った。同じ色の願望を持った者達が殺し合う……それ程までに悲しい事はない。

 

「道理? そんなのは無い。ゲルダちゃんには死んで欲しくない。集落で遊んだ子供達にも死んで欲しくない。俺は自分の独断と偏見と良心に従って、救いたい者を救ってるだけだよ」

 

 ──これまでも、これからも、俺のやる事は変わらない。首から血を流している男はそう笑った。

 

「ふっ……ならば偶々、我が北欧がその中に入っていたというだけか。………………よい、スルーズ、オルトリンデ槍を下げよ。まずは話だけは聞いてやろう。我が北欧を救うという具体的な手段を」

 

「おっけ。その前にまず功労者は労わってあげないと」

 

「? …………何をっ?」

 

 突然、頭に乗せられた手の意味が分からなかった。

 王の頭を軽々しく触れるその不遜を誅する気が何故だか湧かなかった。その手付きがあまりにも優しくて、慈愛に満ちていていたから。

 

 遠い過去に忘れ去った(スィアチ)のような父性を感じていた。心に不快じゃない熱がこもり、髪を掻き分けて緩やかに動く手の感触に少しだけ瞳を緩ませてしまった。

 

「長い間、よく頑張ったね。お疲れ様」

 

「……ッ!」

 

 

 頭を撫でられて、投げかけられたその言葉で──怒る事も、悲しむ事も、嘆く事も、許されなかった3000年間の自分が少しだけ報われたような気がした。

 

 

 静かに頬をつたう滴があまりにも懐かしかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こう、先輩ってふとした瞬間に下腹部がキュンキュンする言葉を投げかけてくれるんですよね。もう不意打ちで来るのがホントにズルいっていうか……。聞いてますかオフェリアさん」

 

「え、えぇ……。ちゃんと……聞いてるわマシュ」

 

 マシュは大丈夫だと思ってたら全然大丈夫じゃなかった。何かしらこれ、新手の拷問? 下腹部がキュンキュンって何? 

 本当は耳を塞ぎたいのに、マシュがせっかく楽しそうに話しているからそれも無下に出来ないし、私は彼女の先輩トークにキチンと耳を傾けていた。そもそも振ったのは私だもの。

 

 ま、まぁ。今の所は只の惚気話の範囲だし、さ……さすがに生々しい話は控えるわよね? そっち方面の夜の話とかはしないわよね? 信じてるわよマシュ……。

 

「特にそういう言葉をベッドの上で繋がり合ってる時に言われてしまうともうっ……! 先輩の子供を産みたい! むしろそれ以上の愛情表現をしたい! ってもどかしくてもどかしくて」

 

「グァッフッ!!」

 

「ど、どうしましたオフェリアさん? 凄い声がしましたが……」

 

「…………大丈夫、何も問題無いわ。ちょっと舌を噛み切ろうとしただけだから……

 

「それは一大事では?」

 

「ノープロブレムよ。時計塔では日常茶飯事だったわ」

 

「さすがは魔術の総本山……。恐ろしいですね」

 

 私は今のあなたの方が恐ろしいわマシュ……。よし、痛みで何とか精神を正常に戻す事が出来た、と思う……いや、ちょっと無理かも。

 ……フフ、だって正直体がまだ震えてるもの。助けてキリシュタリア様、友達になりたかった女の子に久しぶりに再会したら女としての『階位』が『冠位(グランド)』クラスになっていたんです。もう、私とは住む世界が違うんです。

 

「あ、それで話の続きをしてもいいですか?」

 

「アッ、ハイ」

 

 そして再び扉の向こうでマシュの赤裸々マシンガントークが続く。つくづく、つくづく……! 顔を合わせなくて良かった! マシュがこう色っぽい表情とかしてたら私きっと崩れ落ちるもの! 私の中のマシュはこんな事言わない! 

 ぺぺ……ガールズトークって恐ろしいのね。

 

「それで私も先輩と肉体関係を結ぶようになってから、かつての英雄達が戦場で昂った猛りをそういった行為で鎮めるというものにようやく共感を得まして」

 

「ソ、ソウ──。イイタビヲシテキタノネ」

 

「それで、まぁ。私達も特異点先で戦闘後の動悸や興奮が治まらなくて、互いに息を荒げて汗をかいているのを見てしまったら、あぁもう辛抱堪らないデシュ! って感じで野外でついハッスルを」

 

「『私は、それが輝くさまを視ない(lch will es niemals glǎnzen sehen)』!」

 

「急にどうしました!?」

 

「…………気にしないで、魔眼の練習をしているだけだから。毎日、適度にしないといけないよ。『私は、それが輝くさまを視ない(lch will es niemals glǎnzen sehen)』! 『私は、それが輝くさまを視ない(lch will es niemals glǎnzen sehen)』! 『私は、それが輝くさまを視ない(lch will es niemals glǎnzen sehen)』!」

 

くっ、別の可能性が発生しない!一つの道に定めきっている!何て執念!

 

「さすが……降霊科きっての秀才と呼ばれたオフェリアさん……意識のレベルが違いますね」

 

 あなたは倫理観のレベルが低すぎるわ! 

 けれどさすがにこれは友達として見過ごせない。マシュはそう、純粋ゆえに簡単に染まってしまうから、色事に対しての分別がついてないのよ。えぇ、そうに決まってる。そんなマシュの心に付け込んで──ふふ、あくまで私の敵なのね、零の獣……デアー……いいわ、ならばここで私がマシュを正しい道へと引き戻す! ここが勝負所よオフェリア・ファムルソローネ! 絶対に負けてはいけない戦いがここにはある! 

 

「あ、あ──、そのね、マシュ。そういうのは控えた方が……」

 

「そういうのとは?」

 

「だ、だからね、その──……えっちなのは良くないと思う……の」

 

「何故でしょうか? 性交なくして人類のこれまでの繁栄はあり得ませんよ、オフェリアさん。我々は皆、セックスなくして生存はあり得ないのですから。オフェリアさんもそのえっちの末で産まれてきたのですから。もちろん無理矢理や同意を得ないものは良くないと思います。ですが、私と先輩はお互いに尊重し、将来も約束した上で愛し合っています。『マシュは大事なパートナーだからそういう目では見れないな』ENDなんて焼却されればいいと思います。あっ、それともオフェリアさんは婚前交渉は否定派でしたか? 確かに計画性の無い懐妊は二人の将来に響くという点は否定出来ません。ですが私と先輩は長い時間を職場でもプライベートでも共に過ごし、今やアイコンタクトだけで意思疎通が図れるレベルです。これはもはや事実婚であり、私達は夫婦と言っても過言では無いと思います。結婚出来る年齢でもありますし。夫婦である以上、性交渉はコミュニケーションの一種であり、何の問題もありません。法的機関に書類を通して、正式に籍を入れなければ、夫婦とは言えないという考えもこれから時代が変わり、古いものとなっていくでしょう。夫婦の在り方も変わっているのですオフェリアさん。まぁ、婚姻届は女として憧れないと言われれば嘘になりますが、それもこの騒動全てが片付いてからゆっくりと考えればいいでしょう。レイシフト先の野外で致した時もキチンとその場で何分後に戻ると断った後に責任者であるドクターやダ・ヴィンチちゃんにモニターと音声は切ってもらうようにエチケットに気を配ってお願いしましたし、あぁ、ちゃんと異常がないか確認だけは出来るように生体反応だけはオンにしてましたよ、えぇ、事前報告は非常に大事です。ああいう場ではそこまで時間が取れないので手早く済ませる事となりますが……その後の戦闘パフォーマンスは目に見えて向上したと皆様からお褒めになられたので人理修復にも必要な行為だったと私は思います」

 

 ────────。

 

「それでオフェリアさんは具体的にどの辺りがよくないと考えになったのですか?」

 

「ご、ごめんなさい」

 

 

 負けました。完膚なきまでに……。思わず謝ってしまう程にね。そもそもマシュ達が平穏に結婚出来る環境を奪ったクリプターである私が正論を振るえる立場じゃなかったわ。後、何かマシュが凄く怖かった……。私、泣いてないわよね……? 

 

 でも、ここまで来ると二人はいつ、どちらから告白したのか気になるわ。マシュがここまで感情を剝き出してくるという事は余程、彼にお熱だという事だし……色々と複雑だけど。目尻に浮かんだ雫を拭って、聞いてみた。

 もうここまで来たら怖い物も無くなってきたわ、どうせあっち(デアー)からアプローチをかけてきたんでしょ? 人前でぜ、全裸になるような男だもの……。マシュからとは考えづらいわ。

 

「初めのレイシフト、特異点X、冬木から帰ってきてからすぐですよ。あっ、後誘ったのは私の方からです」

 

「若者の性の乱れ!」

 

 噓でしょ? マシュからなの!? それにいくら何でも早すぎるでしょ……。全ては幻想だった。私の眼が節穴だったの? ……マシュってば思いの外、肉食系なのね……デンジャラス、まさにデンジャラスビースト。

 

 それでも、せめて、せめて少しぐらいは甘酸っぱいエピソードがあってもいいんじゃないかしら、さっきから私の耳に入ってくるのがピンクなアダルト話ばっかりだなんてあんまりだもの。

 男女の関係ってそれが普通なの? 狙った相手は性的に襲わなければならないの? ……恋バナ……怖い、ガールズトーク……怖い。

 

「へ、へぇ……そこまで、するぐらいなら……何か好きになったきっかけとか、あ、あるんじゃないかしら……?」

 

 彼女のトークを止められないのならと、軌道修正を目論む。これ以上、そちらの話題についてマシュに聞かされるのは刺激が強すぎる。私の精神がもたない。これなら、恥ずかしがってもじもじしているマシュの方が100倍マシだった。

 

「え、えぇぇ……。きっかけ? ですか……先輩を好きになった所は沢山ありますけど──、一番最初のきっかけは、そう……です、ね」

 

「…………」

 

「どうしましょう? 言ってしまいましょうか? あぁ、でもいざ言うとなると恥ずかしいですねっ。けど、オフェリアさんがどうしても知りたいっていうのなら……きゃ──、それでもやっぱり恥ずかしいですっ! いやぁ、どうしましょう!」

 

「………………」

 

「言ってほしいですかぁ? 本当に言って欲しいですかぁ?」

 

イラッ

 

 

 ハッ! してないわ、別にイラッとなんかしてないわ私! あれだけ生々しいトークを披露しておきながら何を今更恥ずかしがる事があるのかしらこの娘は(怒)なんて思ってない……! 大丈夫、大丈夫よ、私はマシュが大好き。恥ずかしがるマシュ可愛いホントよ。

 

 

「手を握ってくれたんです」

 

 

 一分程焦らされた後、語り出したマシュの声は今までの会話の中で一番澄んだものだった。唐突に空気が変わった事に少し戸惑いを感じながらも私は真剣に耳を傾けた。

 

 

「記念すべき初レイシフト時に起きた爆破テロ、あの場にいて燃え盛る瓦礫に潰され、死を待つだけだった私、あの場にいなくて来る必要なんてどこにもなかったのに私の手を握り続けてくれた先輩」

 

 宝物のようにマシュはその思い出を語る。

 

「もうどう足掻いても助からない。それを自覚した私の命に対して、本気で悲しみ、嘆き、憂いて、でもそれを表に出さないように優しく、慈しむように自分の命も省みず、最期の時間を共にいてくれようとしたのです」

 

 あぁ、マシュ。あの極寒の地でどこにも踏み出せなかったもう一人の私。

 

「私はあの時初めて、人の愛というものに触れて──救われたんです……」

 

 あなたは助けてもらえたのね。燃え盛る火の海から手を伸ばしてもらえたのね。自分を好きになれたのね──。

 少し、いいえとても羨ましいわ。私はきっと……誰かに助けてもらえる事なんて出来ないから。

 

 

「オフェリアさん?」

 

「……最後にまともな話が聞けて、安心したわ」

 

「サイゴ? マトモ?」

 

「いいえなんでもないわ全く気にしないでちょうだい」

 

 危ない、ちょっと気を抜いてしまったわ。

 

「フフ、何だかAチームの方とまさかガールズトークするだなんて思ってもいなかったので、凄く新鮮な気持ちです」

 

 これがガールズトークと言っていいのか疑問を口にする事を私はしなかった。

 ……まぁ、色々と精神にダメージは負ってしまった気もするけど、確かにマシュとまたこうして言葉を交わす事が出来たのは嬉しいものだった。

 この時間はクリプターとカルデアという敵対関係を忘れるという意味では心地良い時間だったのは確かだったのだから。マシュもあの男が関わらなければ、まともだったし。

 マシュがここにいるという事は、デアーも女王と謁見しているのだろう。女王がどういった決断を下すかは今の私には知る由もないが、彼女がこの世界を愛している以上、争う以外に道は────。

 

 

「今度は先輩も交えて3人で────」

 

 

 マシュの言葉が途切れた。城全体、いいや北欧全てに圧し掛かった重圧に気付いたのだろう。

 そして()()()()である私はそれよりも先に異常事態に気が付いていた。

 

「あ、あ、あ……────」

 

 席を外させた、この場にいないサーヴァントの()に起きた異常事態。

 

 セイバー、()()()()の反応が無い。今、私の回路(パス)と繋がっているのは…………。

 

「うそ、うそ、嘘よ! そんな──どうして……!」

 

 自害は令呪で禁じている。認めたくないように否定の言葉を吐き続けても現実は変わらないし、私の心はどうしようもない絶望を認めていた。

 

 外殻(シグルド)が壊れてしまえば、あぁ、()()が出てきてしまう! 止められない! 止められない! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 宙で燃え続けている中天の炎の塊が裂け始めた。

 

 太陽ではない、恒星ではない、偽りの炎の星が胎動し、致命的なナニかを産み出そうとしている。

 

 マグマの如き煮え滾り、堕ちて産まれたそれは巨人だった。再び、北欧に終わりをもたらそうと生命を蹂躙する炎の化身。

 

 地上にいる全ての巨人達が仮面を砕き、大地に降り立った王の帰還に咆哮した。

 

 明確なサイズさえも不明な炎の巨人。

 

 火炎領域ムスペルヘイムの支配者。神殺しにして、北欧神代の終焉。

 

 黒き者、真名をスルトと──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一騎の量産型のワルキューレが玉座の間へ飛び込んできた。今しがたその場にいる全員が感じている魔力の元凶を。耳にしたくないその答えを。

 

 ──巨人王スルト、復活。

 

 その者の脅威を知っているスルーズ、オルトリンデ、そして女王スカディの表情が強張った。女王の視線が緩やかにデアーの方へ動く。

 

 

「ちょっ、タンマ。今回に関しては俺マジでなんもしてないよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〖 No.2:無間氷焔世紀 ゲッテルデメルング〗

 

 異聞深度:B+

 

 年代:BC.1000

 

 

 〚Last battle〛

 

 

 炎の巨人王、神殺しスルト

 

 

 VS

 

 

 ビースト0/デアー 親愛の獣

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




【次回予告】


ソード(意味深)マスターデアー、全てをアヘらせる時……!



「チクショウオオオ!くらえオフェリア『白式官能 寝取りの型』!」

「さぁ、来なさい人類最後のマスターァァ! 私の魔眼はあなたの全裸で簡単に封じる事が出来るわ!」

「キャストオフ!」

「グアァァァァ!!はれんちぃぃぃっ!! こ、この魔眼ヴァージンと呼ばれる四天王の私がこんな男に……バ、バカなアアアア」


オルトリンデ「オフェリアがやられたようですね……」
ヒルド「フフフ……奴はワルキューレ四天王の中でも最弱」
スルーズ「人類悪ごときに負けるとは戦乙女の面汚しよ」


「くらええええええ! 『白式官能』!!」

「「「あへぇえええええええ♡」」」

「やった……ついに四天王を倒したぞ……これでスカディのいる氷の城の扉が開かれる!!」

――よく来たなソード(意味深)マスターデアー……待っていたぞ。

(こ……ここが氷の城だったのか……! 感じる……スカディの魔力を……)

「デアーよ戦う前に一つ言っておく事がある。お前はこの私と戦うしかないと思っているそうだが、お前が北欧を存続する術を持つなら私には戦うつもりはない」

「な、何だって!!」

「そして空想樹を覆い隠していた氷雪の結晶は全て解いておいた。後は切除するだけだな、フッフッフッ……」

「フ……上等だ。俺も一つ言っておくことがある。このオレには血の繋がらない母親とか生まれの設定とかあったような気がしていたが別にそんなことはなかったぜ!」

「そうか」

「ウオオオ、イクぞオオオ!」

「さぁ、頑張れデアー!」



デアーの性器が異聞帯を救うと信じて……!ご愛読ありがとうございました!







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週末のワルキューレ①(第2部 2章)

怪盗団になって、ガラル地方でチャンピオンにもなったので更新が遅れました。




皆様の評価や感想が力になってます。誤字報告もいつもありがとうございます。
今年中には2章のストーリー部分は終わると……思います。


 ──おやおや可哀想に。愛しのマスターから入室禁止ですか? まぁ、アナタに傷心中の乙女の心の機微を察しろだなんて無理な相談でしょうが。

 

 ──何の用だ。

 

 ──手っ取り早くビジネスの話をと思いまして。今のアナタの状態で消化試合を見せられても退屈の一言ですから。

 

 ──…………………………フン、女という生き物はまどろこっしい。最初から要件だけ言えばいいものを。

 

 ──霊核を貫かれてもノーリアクションですか。自害を令呪で禁じられている以上、最低限の自己防衛ぐらいはすると思ったのですが……。あ──、なるほど♪ もうその元気すら無くなっていましたか。こっ酷くやられていましたものね~~。

 

 ──この時をずっと待っていた。先の屈辱は奴の死をもって……返す。女狐…………。

 

 ──あ──、ハイハイ。オフェリアさんを連れてこいでしょう。言われずともわかっていますとも、私はアナタを檻から解放する。その代わり、アナタは私達の敵である彼を滅ぼす。負担が大きいソチラにはそれぐらいのサービスはしてあげますとも。

 

 ──ククク、終わりだ。地も、獣も、人も、星も、愛も。全てを炎にくべよう、クク、クハハハハッ──。まずは、奴を殺す。異邦の獣ッ──! 

 

 ──行きましたか。さっさと空想樹を取り込んで欲しい所ですが……。

 北欧の神々を殺し尽くした終末装置。まさしく異聞帯の中でも最強クラス。

 それでも、依怙贔屓というわけではありませんが、彼がスルトに負ける図が想像出来ないんですよね──。おかしな話ですけど。

 まぁ、隠された力の一端ぐらいは明かして下さい。特大級の試金石として、ね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 行かなければならない……。

 

 北欧で最も起こしてはいけない禁忌(タブー)が目覚めてしまった。重圧と恐怖で眩暈がしそうになるがそれでも倒れる事は許されない。私はマスターであり、キリシュタリア様に期待されているクリプターの一人なのだから。

 

「オフェリアさんッ! ……ッく!」

 

 一瞬、マシュの逡巡したような声が聞こえ、やがて気配がドアから遠ざかっていく。彼女がサーヴァントである以上、この尋常ならざる状況には気付いている。マスターの元へと向かったのだろう。あれに護衛が必要かと言われれば、首を傾げざるを得ないが。

 ……本当に優しい娘。すぐにマスターの元へと駆け付けたかっただろうに敵である私に少しでも気を遣ってくれたのだから。盾で峰打ちしようとするマシュなんていなかった

 

 指先の小さな震えを隠すように手を握り、ベランダから外へと飛び出そうとする。でも一体、どうしてスルトが? 自害は令呪で禁じている。カルデアの連中の仕業? 

 

 

「お楽しみの日曜日がやってきてしまいましたね~。ま、永遠に水曜日だなんて過労死まっしぐらですもの。偶には週末(休み)も必要だと思いません?」

 

「あなた……ッ!」

 

 いつからいたのかはわからない。手摺に腰掛け、口元をいやらしく三日月に歪ませているその悪女を見た瞬間、根拠は無いが確信した。この女だ。スルトを呼び起こしたのは間違いなくコヤンスカヤだと。

 

「一体ッ……どういうつもり!?」

 

「どういう、とは? なぁーんてとぼけてもいい所なのですがスケジュールが迫っているので端的に答えてあげましょう。はぁい、そうです。アナタの騎士様の大事な所をブスッ♂と貫いてあげちゃいました」

 

「どうしてそんな事をしたのと聞いているの!!」

 

「自分でもわかっていること聞きます?」

 

「…………何をっ、放しなさいっ!」

 

 呆れたようなコヤンスカヤの返答に窮していると突然、荷物のように担がれてしまった。人間を、魔術師をも超越したスピードで彼女は城を後にして、炎の巨人を目指していた。

 蒼炎盛る山嶺に氷の針葉樹がどんどん後方へと流れていく中、大きさを測る事すら馬鹿らしくなってしまう巨人達の王がいた。可能性を垣間見た時の朧気のような姿ではないその存在感は私にどうしようもない絶望を与えていた。

 

「早いか、遅いかの違いしかありませんよ」

 

 スルトの元へ辿り着いてしまった。

 コヤンスカヤの言葉の意味を一番理解している私には反抗する気力は無かった。

 最初に相対した時から、いやそれ以前からわかっていた。シグルドの状態のままでは決してデアーに、カルデア側には敵わないと。この女はあくまでお手伝いをしたに過ぎないとそう嘯く。

 カルデア側がもっと脆弱なら良かった。シグルドの状態のまま、壊滅出来るぐらいに弱ければよかった。けれど、そんな可能性はここには無い。だからコヤンスカヤの言う通り遅いか、早いかの違いでしかない。

 

「あぁ! こういう選択肢もありですよね? アナタが完全降伏し、カルデアに空想樹を切除してもらって、その後でシグルド(スルト)を殺してもらう。異聞帯と一緒にスルトの肉体(偽の太陽)が消滅した後なら、もう何も憂う事は無いでしょう。彼の上で腰を振っているだけの甘美な性活が待っていますが?」

 

「……そ、んな事、出来るわけ……ないでしょう!」

 

 分かり切った答えだった。戦いの末による決着ではなく、自ら恭順してこの異聞帯を捨てる事など出来ない。汎人類史全てを敵に回しても生存を選んだ自分自身、何より私にもう一度チャンスを与えてくれたキリシュタリア様を裏切る事になる。

 これ以上あの人を失望させるワケにはいかない。会議の場で初めてデアーを見て、狂乱し、キリシュタリア様を置いて逃げ出してしまった私に挽回の機会があるとすれば、それこそデアーを倒す道しか残されていない。

 

「えぇ、えぇ。そうでしょうとも。大好きなキリシュタリア様に期待されていますものね。彼に助けを求めても『君ならその窮地を越えられる筈だ』と告げられてお終い」

 

 分かっている。スルトを召喚した時から全て分かっていたことだ。スルトの報を耳にした時もキリシュタリア様は喜んで下さった。興味深く、星を焼却する力を前に臆する事なく、君は良いカードを引いたと告げた。キリシュタリア様は私に期待して下さっている。

 私はマスターとして、スルトを制御しなければならない。私は間違わない……私は失敗しない……。私は──。

 

 

「なんて可哀想なヒロイン……。あの傑物は導く事はあっても、決してアナタを助ける事はないわ。いえ、全てに悲観し、逃げ出す事も踏み出す事も……手を伸ばす事さえしないアナタを一体誰が助けてくれるというのかしら」

 

 ノイズが何度も走り、頭痛が私を苛む。この悪女の言葉を否定する材料が私にはない。

 あぁ、結局何も変わっていなかったのだ。カルデアに来る前から、日曜日にひたすら怯えていた頃から私は何一つとして進歩していない。

 

「私は──……」

 

【戯れが過ぎるぞ女狐。度を過ぎれば殺すと言った筈だが……】

 

 脳に直接言葉が響くような感覚。声帯による発声ではなく、これは魔術による意思伝達……! 

 莫大な炎熱で周囲を燃やし尽くしている巨人の王が私達を見下ろしていた。さすがにマスターである私に対してその炎を向けるつもりは無いらしい。

 

「はいはい、わかっていますとも。これ以上ここに長居してしまうとお気に入りのコートが煤にされてしまいそうなので退散させて頂きますね~~」

 

 場を荒らすだけ荒らしたコヤンスカヤは私のこれからの顚末を嘲笑うかのようにその場から姿を消した。

 

 スルトの姿はコヤンスカヤに攫われていた時に遠目で確認した時から変貌を遂げていた。

 左半身は炎とは対照的な蒼。彼のイメージにはそぐわない氷の肉体から蒼炎が噴き出ていた。

 

「その姿は……?」

 

【ククク、本来の力を取り戻しただけだ。空想樹を喰らってな──】

 

 女王(スカディ)が隠していた空想樹を取り込んだ? 

 本来の力……かつて封印される前に呑み込んだ終末の獣──巨狼(フェンリル)の氷の権能を取り戻したと──スルトはそう嗤う。彼の言葉を信じるなら、空想樹の接続先も既に女王(スカディ)からスルトに移ってしまっている。

 それだけではない、可能性を見通せる私にはわかる。スルトの背後にある不可視の竜の翼。間違いなく悪竜現象(ファヴニール)が発生している。

 

 フェンリルの権能に竜の翼を得たスルト? 悪い冗談だ。けれどその馬鹿げた話が今、目の前で起こってしまっている。しかもそれが私のサーヴァント。

 

【ようやくだ──。これで、あの目障りな獣を殺す。貴様に不快な物を見せつけたあの男の全てを灰にしよう】

 

 スルトの殺意は当たり前だが、デアーに一心に向けられている。

 炎の剣を手にした竜種と巨人種のハイブリッド、これなら勝てる? 

 

 私が初めてあの人類悪(デアー)と遭遇してしまった時に垣間見てしまった別のビーストへと派生する彼のいくつもの可能性。もしこの世界におけるデアーがそのビーストの内の()()()だったのなら、私はこのスルトを見てもなお、勝機を抱かなかっただろう。

 

 23集落前で戦った(デアー)は確かに規格外ではあった。けれど──。

 

 壊してしまう程に全てを愛そうとする強靱さも。

 一人の女の願いの為に世界を滅ぼそうとする狂気も。

 全ての生命を自己の快楽の為に蕩かす悪辣さも。

 

 存在しなかった……。今なら気づける。彼は私が見た可能性の中で一番優しく()()()があるビーストだった。

 

 だから本来なら喜ぶべきなのだろう。あれだけ恐れていたデアーをスルトが倒す事が出来る可能性が出て来た事を。

 

 なのに私の心は晴れる事は無かった。自分でも取り返しのつかない道を転げ落ちているような感覚。

 デアーがマシュを虐待していたのなら話は違ったのだろうか。でもマシュの話を聞いてしまった私はあの娘の最愛の人を喜んで奪うような真似はしたくなかった。

 デアー自身もあれだけ殺意を向けた私に対して敵意は見せなかった。敵意以外のとんでもないものは見せつけられてしまったが、私自身は五体満足で戻ってきている。

 自分でも何をしたいのかもう分からなくなってしまっている。マシュとデアーをどうしたいのか……。私は戦いたいのか、逃げたいのか、それとも助けて──。

 

 いいえ、いいえ。違う、今はそんな事を考えるのではなく、スルトを……。

 

【また、あの男の事を考えているな──】

 

 飛翔のルーンを私にかけたのか、気付けば私はスルトの左肩に乗せられていた。体が燃えていない以上、スルトの熱気の影響を受けないように保護はされているがそれでもひどく息苦しい。その破壊しか知らない紅蓮の瞳を私に向けないで欲しい。

 

【俺を見ろ、俺の事だけを考えろ。お前の恐怖も煩悶も崇敬も全て俺にこそ捧げられるべきだ】

 

「ふざけた事を言わないで、これからどうするつもり──?」

 

【言った通りだ。まずは異邦の獣を殺す。そこが始まりだ。そしてそこから北欧に、いや地上全てに神々の黄昏(ゲッテルデメルング)を見せよう】

 

「……そんな事を……許すと思ってるの?」

 

【あぁ、許すさオフェリア。お前の大令呪(シリウスライト)の力があれば、他の異聞帯にも侵攻出来よう。あの時の約定を果たそう。お前には星の終わりを見せてやる】

 

「あり得ないわ………………星を燃やすなんて。…………私の大令呪(シリウスライト)を使って──全ての命に終わりを…………あぁ、それもいいかもしれない、わね…………」

 

 …………。…………? 

 待ちなさい──? 今、私は何を考えてッ──。あぁ、痛い、頭が……割れるようで──。これ、は呪言? スルト、私に何を仕掛けッ──? 

 

【「悪竜の呪い」だ。お前の魂と意志を縛った。案ずるなオフェリア。お前は何も考えなくてよい……。その瞳で俺が為す事だけを見ていればよい。ククク、まずは異邦の獣の灰で俺達の門出の祝福をしよう】

 

 自分の意志も思考も全てが炎で溶かされていく。

 あぁ、違う。違うッ、違うッ! わ、たしはッ……! ………………………………………………………………………………………………………………………………………そう、ね──。それでいいのかもしれない。えぇ、燃やしましょう。全てを…………滅ぼしましょう──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 苦しそうに呼吸をしているアリスの手をデアーお兄さんと一緒に二人で握る。あたしも何度か見た事があるからわかった。もう少しでアリスから新しい命が産まれる。あたし達の知らない世界からやってきたデアーお兄さん、アリス……二人の「子供」が。

 

 汗をかいて、歯を食いしばって、あたし達の手を必死に握り返してくれてるアリスに何度も頑張れ、頑張れって声をかける。顔の無いお姉さん達が周りを慌ただしく動いていた。デアーお兄さんも真剣な顔でアリスの様子を見ている。

 

 

 ふと、窓の外に目を向けると、遠くに真っ赤な人が見えたような気がした。おかしいの、巨人でもあんなに大きい人なんているわけないのに。

 

 

「あれ──? おひさまは、どこ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、巨人の足音近づいてきてない?」

 

「……あぁ、大丈夫だ。ここにはちゃんと御使いの加護がある。僕達をちゃんと守ってくれる筈さ」

 

 大地を踏み抜く足音がいくつも聞こえる。それは着実に集落の方へと向かっていた。

 女王スカディによる仮面の拘束から解放された巨人達が行軍を始める。

 戦争を──。

 蹂躙を──。

 暴虐を──。

 ラグナロクの続きを──。

 

 生きとし生ける命全てを喰らい尽そうと目覚めた巨人の軍勢が人里へ殺到し始めていた。

 言語化出来ないおぞましい咆哮は歓喜の感情に溢れていた。また大勢の命を奪えれる喜びに。

 

 眠りから動き出した巨人達の数は現在活動可能なワルキューレ達の十倍近く。女王の命によって集落の守護に回っているが彼女達だけではとてもじゃないが守り切れない。

 

 23集落にも魔の手が迫っていた──。

 

 

「おいおいおいおいっ! これもしかしなくてもマズくないかね!? 神代の巨人(ヨトゥン)とかゴメンだよ? そういう野蛮事は埋葬機関とかの仕事じゃない? 私のゴッフパンチもウェイトクラスが違い過ぎる相手には通用しないのよ?」

 

 異常に気付き、外を覗いたゴルドルフが巨人達が群れを成してこの集落に向かっている悪夢のような状態を目の当たりにし、即座に乱暴かつ迅速に住民を家屋に避難誘導させながらテンパり、怒鳴り散らすという器用な真似を披露していた。

 

『いや──そっちの方は問題無いでしょ、多分。むしろマスター君側の方がマズそうかも』

 

「はぁっ!? あのバケモノマスターが手こずる事態なんてあり得るのかね? 巨大マンモスと化した雷帝をワンパンでノックアウトする奴だぞ!? 何だ! オーディンか? フェンリルか? それともまさかスルトでも出てきたとか言うんじゃないだろうね?」

 

『お──、さすがはゴルドルフ司令官。察しが良いね』

 

「……………………じょ、冗談だよね?」

 

『冗談だったら良かったんだけどね──。ま、そっちには()()()がいるから何の心配もいらないかな』

 

「あのナマモノ達の事を言ってるのかっ? 大丈夫なのかね、アレ、ホントに戦力になる?」

 

 ゴルドルフが指しているのは虎の着ぐるみと狐耳を生やしたメイドというぱっと見コスプレコンビ。

 集落での料理中でも1言葉を吐けば、100で返ってくる。聞いてなくても100で語りかけてくる。しかもその内容が半分も理解出来ないのでとてもじゃないが理性的なコミュニケーションが取れない。完全にイロモノ枠としか思えないあれらが戦力になるとは信じきれなかった。

 

 

「オ──、そう褒めるなふとっちょ。所詮は大したモーションも用意されていない雑魚エネミー、同じバーサーカークラスでもオムライスにエッグハンバーグからのお昼寝スタンと多彩なキャットとは雲泥の差よ。スカスカシステムでNPチャージ余裕なのさな。え、キャットじゃ無理? そんなぁ」

 

「あぁん? ユー達どこ中よ? 私? 私、アステカ中。いや全然田舎じゃないし、この豹柄のマブさがわからないとかマジでか。ようし、じゃあOPからもEDからもハブられた乙女の哀しみ見せあげよっかニャ──」

 

 そういえば、あの二匹の姿が見えないとゴルドルフが気付いた時には二匹のケモノは臨戦態勢を取っていた。集落の唯一の出入口。巨大な大扉の両端、石で造られた支柱の上にそれぞれ立っている。

 

 獲物を見つけて、走り出す巨人達にそれ以上集落に近付く事はまかり通らぬと彼女達は自慢の得物を構える。

 

『あぁ、何の心配はないとも。言動、姿ともに冗談としか思えない彼女達だが』

 

「スカンジナビア風巨人の三枚おろしッ!」

「ジャガークロウッ! 敵は死ぬッ!」

 

 飛び降り、巨大化した犬の手を振るうタマモキャット、虎の手がついた謎の棍棒を振るうジャガー。ビジュアルは何とも気の抜けたものだがその威力は圧巻。

 一体たりとて集落に辿り着く事は許されず、血飛沫を上げて巨人達は崩れ落ちていた。

 

「おっ、おぉ!」

 

『片や九尾の分霊的化身。片や南米の神霊。単純な破壊力で巨人程度に遅れを取る事はないさ』

 

 

 そして今、巨人達の狼藉に最も怒りを募らせてる者がいる。『境界無き病棟(ボーダーレス・ナイチンゲール)』の屋上にて、白衣の天使はこの世界の治療にあたる。

 

 

「なんと悍ましい。司令官の子供──新たな命の誕生という祝福すべき瞬間にこうも菌がわきますか」

 

 ナイチンゲールの使い魔である『白き貴婦人』達は主の命により、30体を病棟に残し、残り350体は北欧中を飛び回った。

 

「子を産む喜びを知らなくとも、子を育てる人生を歩んでこなくとも、私がすべき事は変わりません」

 

 人を守れ。

 生命を救え。

 命を脅かす病源菌()を絶対に許すな。

 

 顔の無い看護婦達はナイチンゲールの精神性を具現化したもの。『病』と断じた物への対応は苛烈の一言。

 

 一体の『白き貴婦人』が巨人へと飛びかかる。だが体格の差は文字通り巨象とアリ。

『白き貴婦人』は巨人の掌に押し潰された。命が自分の手の中でひしゃげる感触に巨人が口元を歪ませたが──。

 

「ッ────!!?」

 

 突如として襲ったのは痛み。無謀にも自身に挑んだ小人を押し潰した筈の手の中指がへし折られている。180度折れ曲がった指の間から這い出た『白き貴婦人』は四つん這いの状態で信じられないスピードで巨人の腕から肩へと駆け上る。絵面はまるでホラー映画。

 

 痛みに悶える暇すら与えず、巨人の顔面に到着した『白き貴婦人』は敵の右目に手を突っ込み、眼球を引き摺り出した。バランスを崩し、フラつく巨人に追加の看護婦達が一体、二体と体に飛びつき、狂ったように拳を殴打し続ける。その猛攻は巨人が倒れ伏し、生命という活動を停止するまで続く。

 

 見的殺菌(サーチアンドデストロイ) 見的殺菌(サーチアンドデストロイ)

 サイズで大きく負ける巨人相手に複数で飛びつき、的確に肉体で殺菌していく彼女達の姿はまさしく細菌を分解する白血球が如く。

 

 ナイチンゲール本人もマシンガンのような注射器から殺菌・滅菌対象を消滅させるアンプルを嵐のように撃ち出し、巨人及び魔獣達を片付けていく。まさに人間戦車。あれ、看護婦なんですよと言って誰が信じようか。

 

「生者の為に施しを、患者の為に奉仕を。命の為に剣を持ち、悪菌共には死の制裁を」

 

 

 バーサーカー看護軍団が戦場へ馳せ参じているのを上空からセミラミスの使い魔である鳩が視界に映している。

 

 

『神代の兵士に対して何ともまぁ、野蛮な事よ。本当に近代の英霊かあれは?』

 

 

 呆れた様子で呟く女帝も手は回していた。自身のマスターが守ると決めた以上、一人たりとて人間の死者を出す事は許されない。万全の上に万全を期す。ワルキューレ、『白き貴婦人』、加えては自身が扱う()()()()()()()()()達。

 

 人里離れた外れの場所に()()はあった。

 何故か、魔獣や巨人さえも近づかない()()は全てがチョコレイトで出来ていた。

 成人男性程のサイズである()()は黒めでゆるキャラの没案にいそうなビジュアルの癖に見る人全てに邪悪な印象を抱かせる物体だった。

 

 頭上にチョコレイトの球体を浮かばせている物体Xはセミラミスの新たな宝具『チョコレイト・チャリス(チョコ聖杯くん)』。

 

 彼女の魔力の限り、口から垂れ流しているチョコレイトでサーヴァントを生成し続ける。紛い物とはいえ、サーヴァントの形を為したものが名状し難いゆるキャラの口から産まれ続けているのは如何なものかと思うが誰も見ていないのなら問題無いだろう。

 

 基本ここで産み出されたチョコサーヴァント達も暴走している巨人、魔獣、そして空想樹の種子の掃討に駆り出されているが()()だけ、セミラミスの命によりある場所へと向かっている。

 

『この異常事態だ。使える手は多ければ、多いほどいい』

 

()()()()()()()を模したチョコサーヴァントが向かった先には既に消滅しかけていた一騎のサーヴァントがいた。コヤンスカヤに霊核を貫かれ、座に還る寸前のサーヴァント。スルトの外殻でもあったシグルドが。

 

『本来は対シグルド用に準備させたものだったが……まぁいい。我が配下達にはこういう使い方もある』

 

 受肉していないサーヴァントすらも太らせる──まさにカロリーの暴力といえるチョコサーヴァントはエネルギーの塊。戦力以外にも回復手段として使用する事が出来る。

 

 霊基が消えかけ、指一本動かせないシグルドは摂食という行為をする元気すらないが……何ら問題は無い。今回は被食者側が自発的に食べられるように働きかけているのだから、具体的には──。

 

「オゴッ! オゴォォッ!!?」

 

 チョコブリュンヒルデが自らの片腕を突っ込み、シグルドの顎を無理矢理動かして、食べさせる。手足をバタつかせ、暴れるシグルドに馬乗りになり、抑え付け、嚥下出来るまでに回復したら、液体化し、つま先まで全てを無理矢理飲み込ませる。

「元気がないのなら、僕の体をお食べ」。愛と勇気だけが友達の正義の味方を彷彿とさせる施しの精神。美しい自己犠牲がそこにはあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『とまぁ、こっちの方は問題無しッ! 女王様のワルキューレ達と連携しながら、集落の子達を守っているから君達は心置きなく巨人の王、スルト討伐に集中してくれたまえ!』

 

 通信から入るダ・ヴィンチちゃんの快活な声を耳にしながら、俺達は()()()と対峙していた。

 フードを被ったワルキューレが焦った様子で報告をしたのは──スルト復活、さらに城内で消滅しかけのシグルドの発見……そこにあった魔力の残滓から下手人はコヤンスカヤとてんこ盛りだったのだが…………しばらくして、女王様の城の壁を破って、巨人に加えて、変な鳴き声がしているアイスクリームみたいなのが雪崩のように押し寄せてくる。やたらと多い。綺麗なお城だったのに……全く、勿体無い。

 

「先輩、ご無事ですか!?」

 

「うん、余裕余裕」

 

 駆け付けてくれたマシュはブーメランのように盾を投げ、巨人を切り裂き、盾が戻ってくると同時に跳躍し、そのままキャッチした盾で巨人の頭蓋を殴りつける。着地し、俺を背後にして、どんな時でも、どんな俺でも心配してくれるマシュにくすぐったさを覚えながらも状況を確認する。

 

 邪ンヌとブリュンヒルデは問題無し、ナポレオンも浮かんでいるアイスクリーム共を撃ち落としているし、スカディも杖を振るい、ルーンを刻んで対象を氷結させてから砕いていた。実は最初に「この狼藉! 許せぬ! 死せよ!」とドヤ顔で命じたのに、敵がピンピンとしていたのは内緒。俺はちゃんと見ていたぞ。

 後はワルキューレの報告でシグルドの霊基が消滅しかけている事を知って飛び出した筈のオリジナルの方のブリュンヒルデが何故か「浮気です殺します!」「誤解だブリュンヒルデ!」と様子が変わったシグルドを殺そうとしながら戻ってきてる事ぐらいだから特に問題は無いね。

 

「いや、スルーしようとしてんじゃないわよ! どういう事なのよ!」

 

「何か、セミラミスから聞いた話だと、自分とそっくりなサーヴァントをシグルドが食べているのを目撃して、浮気認定入ったとか」

 

 サーヴァントというかチョコレート? 食べるっていうのも一つの愛情表現だし、そういう考え方も否定しない。けど、俺は性的に食べるやり方の方が先があるし、生産的だと思うけどね──。

 

「おっけ! よく分からんってことだけは分かったわ! つーか、あのボケワルキューレ共も後ろで『殺れ殺れ! お姉様!』って応援してる場合じゃないでしょ! 状況見えてないの? こっち手伝いなさいよ!?」

 

「いつもは突っ込まれる側なのに、戦闘中でもツッコミ役を放棄しないお姉様素敵です!」

 

 邪ンヌはあぁ、もう全員死ねばいいと思う! と叫びながら、黒炎で敵を燃やしていく。いや器用ですね、さすが同人作家。まぁ、あの二人は特に心配しなくても問題無いって俺のビーストセンスが告げている。ほら──。

 

「案ずるな我が愛よ。当方にはお前しかいない……。お前を胃の中に入れてしまったら、当方の愛を伝える事が出来ないではないか……」

 

「シグルド……♡」

 

 数秒前はガチで殺し合ってたのにもう、抱き合って完全に二人の世界に入っているもの。黒髪と金髪のワルキューレの娘達はそれを見ながら唾吐いているけれども……女の子があんまりそういう事しちゃいけないと思うよお兄さんは。

 

「何これッ! 上が騒がしいと思ってようやくカルデアの人達とお義母さんが戦ってると思ったら斜め予想の状況なんだけど?」

 

 状況は目まぐるしく変わる。すぐ傍に白熊に乗りながら北海道で黄金探しそうな格好をしている少女が困惑しながらも戦っていた。知らない娘ではあるが顔は知っている。思わず、独り言が漏れてしまった。

 

「……あれ、イリヤ?」

 

「……ん? どこかで会った事あったかしら?」

 

「いや、ないよ。小学生で魔法少女な君を知ってるだけ」

 

「何それ!」

 

 俺が知ってるイリヤとは別か……。ドッペルゲンガーがポンポン増えても今更驚きは無い。一緒に戦ってくれてるなら味方だろうし、自己紹介は後かな。これからすぐに細かい事には構ってられなくなるからね。あぁ、でもカルデアに連れて帰ったら美遊とか悦びそう。

 

『君と対峙したセイバー……シグルドと今、ここにいるシグルド。霊基の反応は一致しているにもかかわらず、まるで別人。スルト復活のタイミングは偶然では無いだろう。つまり』

 

「何故かスルトの魂がシグルドの中にいて、コヤンスカヤがシグルドの体を壊した事で何か上手い事なって、スルトの魂と太陽の中にある体がドッキングして復活してここに来てるって事でしょ! 把握!」

 

『あぁ……うん。酷く雑だけど、大体それで合ってしまってるあたり……探偵泣かせだね君は。もうこの異聞帯における私の役目は無いだろう……』

 

 ホームズのシュンとした声が聞こえる。ごめんなさいね! 今はほら推理パートじゃなくてバトルパートだから。でもこれでセイバーと戦った時の違和感は分かった! はい、スッキリ! ありがとうホームズ! 

 

『はいはい、ヤク中探偵がナイーブになっているのは置いておいて。測定器がエラーを吐き出すレベルの魔力反応がすぐ近くまで迫っている。もうここまで言えばわかるよね、マスター君?』

 

「あぁ、もう気付いているよ」

 

 度重なる襲撃でついに城が崩壊し、氷の瓦礫が俺達へと降り注いだ。瞬間、スカディが杖を横にはらうように振って、全ての瓦礫が埃のように彼方へと吹き飛んだ。

 吹き曝しとなった城。外気を一切遮る物が無くなり、俺達が一番最初に感じたのは炎。

 

 燃え盛る剣を片手にこちらを見下ろしている炎の巨人がいた。首が痛くなる程にその頭は空高く。

 

 

【この景色から見下ろす貴様は……小さいな】

 

 

「そっちは見ない間に随分と大きくなったね。なに、成長期?」

 

 

 スカディが、ワルキューレ達が絶句していた。自らが住む世界の滅びの象徴となった存在が目の前にいる事実に。もはやサイズの差を比べるのが馬鹿らしくなってくる。まぁ、多分グガランナよりは小さいだろうけど。

 そして、視力19(自己申告)ぐらいある眼はスルトの肩に乗っている女の子も目視で確認済み。もしかしなくても、あれはオフェリアさんか……眼も虚ろだし、正気には見えない。

 

 

「それがお前さんのやり方か、仮面の剣士。自分のマスターをおかしな術で縛り付けるのがよぉッ」

 

【吠えるな、役立たずの弓兵が。オフェリアにはもはや道は無いという事だけだ。俺の手を取る以外にな……ククク】

 

 う──ん、何だろう。何故か今のスルトを見ているとキルケーを思い出してしまった。何故だか理由は全く分からないけど。

 

「そんなオフェリアさん……。私があの時無理矢理連れていってれば」

 

 バイザーで同様に確認したマシュが悔やむように唇を噛み締めていた。少なくともマシュはオフェリアが望んでこの状況を作っていない事は分かっているようだった。まぁ、見るからに無理矢理従わされているとかそんな感じの印象だし。

 

「大丈夫マシュ。取り返せばいいだけでしょ……いや取り返すという表現はおかしいか。元々は敵対関係なワケで、あっちとしては普通にマスターとサーヴァントの関係だろうから」

 

「では寝取るでいきましょう」

 

「じゃあ、それで」

 

「それでじゃないわよ」

 

 ブリュンヒルデと邪ンヌ、クソデカ巨人を前にしても全く動じていない二人が軽口を叩きながら、俺達の傍に立つ。

 

「先輩……私もっともっとオフェリアさんとガールズトークがしたいんです……。今度は顔を合わせて、だから──」

 

「分かってるよ。俺だって色々怖がらせてしまったこと、実はまだ謝ってないし」

 

 都合が良かったよ。元凶のスルトがノコノコここまで来てくれたんだから、探す手間が省けた……。ん、既に剣を振りかぶっている? あれ? もういきなり攻撃? ちょっと早くない? 

 

【雪の女神も英霊も人形も人も眼中にあらず、俺が動くだけで吹き飛ぶ塵芥よ。異邦の獣、番外の人類悪……お前を殺せば、全てが終わる】

 

『マズイッ! ここ(異聞帯)での名は明らかになっていないが、スルトが持つ炎の剣は間違いなく神造兵器! 振るわせたら、北欧のテクスチャごと消滅してしまうぞ!』

 

 その巨体に見合った剣を両手に、力を溜めている。この一撃で俺を仕留めようとする殺意を確かに感じた。宝具解放の前兆である熱気は高まり、周囲一帯を燃やし尽くす暴威となる。スカディがルーンで保護をしてくれてなければ、足場になっている城もあっという間に蒸発していただろう。

 

 うん、確かにあの剣はちょっとマズいし……北欧が消滅してしまうのも認めない。ここには俺の守りたい物がたくさんあるし。

 それに、もうこの異聞帯は俺のモノだ──。

 

「マシュ、ちょっと本気出す」

 

「では──」

 

 具体的に言わなくても察してくれる後輩、マジ後輩。

 

「あぁ、俺の第五宝具を解放する」

 

 

 






チョコレイト・チャリス(チョコ聖杯くん)
ランク:A+
種別:製造宝具
使用者:セミラミス(チョコラミス)

カーニバルでファンタズムな作品に出てくるあの邪悪なモノとは一切関係が無い、イイネ?
一定間隔ごとに口からチョコサーヴァントを産み出し続ける。短いスパンで多数産み出せば、産み出す程、使用者の魔力消耗は激しくなる。
戦闘力はシャドウサーヴァント以上、通常サーヴァント以下。だがチョコサーヴァント達の真価は食してもらえれば、霊基及び魔力回復という効果もある点。まさに戦うエリクサー。セミラミスが敵と認識した者に食された時は自動的に毒に変換されるので結構えげつない。
人里離れた所に設置されていたのは婦長さんに見つかれば、全てのチョコサーヴァントに間違いなく薬をぶち込まれるから。「お菓子が薬になる?それは実に素晴らしい」
実はマスターとセックスしながら使用すれば、ランク:EX『ヘブンズ・フィール(ホワイトチョコ聖杯くん)』モードになる。
かつての邪悪さはなくなり、ホワイトチョコとなった聖杯くんは神々しさに満ち溢れ、そこから産み出されるホワイトチョコサーヴァントは普通のサーヴァントにも匹敵する戦闘力を持ち、食せば回復に加えてステータスにバフがかかる。さらにさらにマスターからホワイトチョコを供給されている状態の発動なので魔力消耗についても心配する必要が無い。モラルとか羞恥心に目を瞑ればは欠点が無い切り札なのである。





スルト君、大令呪(シリウスライト)を使えば、オフェリアがどうなるか知らない模様。


第五宝具はちゃんと真面目なやつです。英霊編みたいなふざけたのは出しません。信じて。







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週末のワルキューレ②(第2部 2章)

いつの間にやら、感想数がR18小説の中で一番になっていました。これも皆様の応援とほぼ全ての感想返しを行った私のおかげですね(隙あらば自慢)。R18小説の中で唯一トップを取れそうな所でもあったので非常に嬉しいです。まぁ、最近はこれホンマにR18なんかってツッコミ入れられそうなんですが。
五章実装前に投稿したかったので、いつもとは違う時間です。










最近、キリシュタリア様が毎日金の林檎をくれるのでこれってもしや求婚ではっ?(ギリシャ的に)と訝しむ作者なのであった。ぐだ子だったらワンチャンあった(ないです)。





 スルトが保有する宝具『太陽を超えて耀け、炎の剣(ロプトル・レーギャルン)』。

 

 炎の剣をただ振り下ろすという至極単純な攻撃方法だが、摂氏400万度超という地球上に存在し得ない高熱を巨人のスペックで全身全霊叩き落とすそれは文字通り、世界を終わらせる業火であり、英霊だろうと神だろうと防げる者はほぼいないと言ってもいい。

 星の聖剣にも匹敵する神造兵器。油断も慢心も無く、世界を滅ぼす一撃がただ一人の男に向けて放たれようとしていた。

 

 文字通り神々の黄昏が炎の剣となって迫る──。

 

 その場にいるフランス皇帝も、魔剣の騎士も、戦乙女達も、雪の女神も、複合神霊も、全て等しく灰塵と化すであろう絶望の中、コンマ1秒の硬直も無く、この()()の窮地など日常茶飯事だと言わんばかりに一番早く動き出した者達がいた。

 

 

「『領域展開 讐骸憤竜園─炎葬式(しゅうがいふんりゅうえんえんそうしき)』」

 

 

 神殺しだろうが、世界を滅ぼす宝具だろうが、邪ンヌはマスターならそれを防ぐ術を持っていると一切の陰りなく信じていた。

 だから彼女はこのあまりにも規模が大き過ぎる戦いの余波が集落まで及ばないように固有結界で周囲の者達全員を含め、スルトをこの北欧から一時的に隔離した。

 

「そんなには持たないわよ!!」

 

 世界は書き換わり、恩讐の炎に包まれている十字架の草原の中で彼女は叫ぶ。スルトという神話級特大クラスのエネミーを固有結界の中へ取り込んだ状態は長続きしないと。

 

 

 言葉も交わさず、マスターを信頼し、最善の一手を取る……付き合いの長さは負けているが、絆の深さに関しては決してマシュにも劣らない贋作聖女。

 彼女に感謝しつつ、マスター……デアーはビースト状態を50%まで解放。

 

 リミッター……

【童話作家 ハンス・クリスチャン・アンデルセン作:『カルデア国物語』】解除(パージ)

【劇作家 ウィリアム・シェイクスピア作:『カルデア業物語』】解除(パージ)

【天才芸術家 レオナルド・ダ・ヴィンチ作:『カルデア寝物語』】解除(パージ)

【月の超級AI BB作:『HBチャンネル』】解除(パージ)

【浮世絵師 葛飾北斎作:『官能会之故姦通』】解除(パージ)

 

 極地礼装である黒い服がはじけ飛び、鍛え上げられた上半身が露になる。突然の露出に雪の女神が「すかっ!?」と驚愕しているがそれに反応している暇は無い。首元までしか無かった黒髪は腰まで乱雑に伸び、上半身の至る所に令呪の如き赤き紋様が刻まれる。

 かつて、ギリシャ異聞帯で宣戦布告した時と全く同じ姿となった。

 

()()()において七つの宝具を持つデアー。第五以上の宝具を使用する際には少なくとも宝具『Call Dear(親愛なる 貴方へ)』の内、五つのリミッターを解除(パージ)し、50%以上のビーストモードにならなければならない。

 

 

 世界が変貌を遂げようとも意に介さないスルトの終末の剣が降りてくる中で今……第五宝具発動の条件が整った。

 

 

 本来、この破壊を前にしてもマシュ・キリエライトという少女は絶対に引く事なく盾を構える。後ろに守るべき者がいるのなら、その身が消失しようと盾を構え続けるのがマシュ・キリエライトというシールダーの性質だった。

 

 だが──今回に限り、彼女は盾を構えていない。マスターの前に立つ事なく、隣で盾を手に全身の力を抜いた自然体でその場に佇んでいた。()()()()()()()()()()()かのように。

 

「ずっと一緒です。先輩(マスター)

 

「あぁ……第五宝具解放」

 

 

 

 デアーの声と共にマシュの肉体が盾ごと光の粒子に包まれる……その粒子は英霊が座に帰す時に現れるそれよりも遥かに強い輝きを放っていた。光の中でマシュは短く「あっ」と艶やかに喘いだ後に力強く宣言した。

 

 

「『Sex code(セックス・コード):マシュ・キリエライト』」

 

 

 光の粒子が夥しい数となり、マシュ・キリエライトという少女を構成する肉体の輪郭が薄れ、朧気になる。やがてマシュの姿は消え、彼女の肉体の素となった粒子デアーの元へと流れ、星雲のように彼の体を包み込む。

 

 その白き光がスルトの炎の光を押し返す程に輝きを増し続け……。

 

 

「『S (スピリット) E (エンゲイジ) X(ザナドゥ)!』

 

 

 輝きが晴れた先に白き盾を天高く掲げたデアー()()の姿があった。

 白く染まった円卓を模した十字架型の盾は彼を中心とした周囲100mを完璧に防御、スルトの剣による破壊を何一つ許さなかった。

 

「あれは……」

 

 変貌の一部始終を目にしていたオルトリンデとスルーズ……彼の宝具は彼女達に遠い昔、大神(オーディン)に聞かされた話を想起させた。

 未だ神代が続き、地上にいる彼女達が直に経験した事ではないが……ヴァルハラへと導かれた勇士達が戦乙女と共鳴した時、戦乙女はその肉体を勇士達にふさわしい武器へと変態させると、天界に訪れる危機に立ち向かえる力を与える為に。

 

 北欧の為にその身一つで絶望の炎と対峙している姿を見ていると、そんな機能は無い筈なのに胸が暖かくなったような錯覚に陥る。彼女達は自然と手を祈るように握っていた。敵対していた……この地はかの者が生きる地とは全く無縁の場所だ。見捨ててもいい、逃げてもいいのに──あぁ、どうして。我らでさえ諦めがよぎってしまう程だったスルトの終わりの一撃を、北欧を滅ぼさせまいと奮起してくれているのか。

 

 この時、二人の戦乙女は心で理解した。スカディに涙を流させたあの男の言葉に嘘偽りは無い。彼は間違いなく人の子が生きる我らが故郷を守護しようとしてくれていると。

 

 

 

『マシュの姿が見えない……? なのに魔力反応は確かにそこにある……いや、これはマスター君の体からマシュの魔力反応を感知している!?』

 

『これはただ単純に武器に変化したという生易しい話ではない……! 細胞、魂レベルで二人が完全に合一しているのか!?』

 

 ダ・ヴィンチとホームズは一つの肉体から二つの魔力反応を感知するという事態に驚愕する。

 

 カルデア式によって召喚されたサーヴァントは基本的にマスターとの距離が近ければ近い程ステータスを向上させる。セラフィックスにてレベルが低い段階でもマスターと手を繋ぎ、踊り、戦い、他のサーヴァントを圧倒したメルトリリスのように。

 ならば、肉体的な接触よりもさらに、性交よりも深く、結び付く事が出来れば? マスターに抱かれ、白き魔力を注がれ、サーヴァントよりも上位の体を持つようになった彼女達が最高のコンディションの状態でマスターと一体化すれば……それは一体どれだけの強さを産み出してくれるのか。

 

 スルトの宝具を盾でまともに受けてなお、彼は焦りも無く、笑みを浮かべる。重みすら感じてないかのように涼しい顔でただ盾を上へと掲げている。

 

 

 これが第五宝具『S (スピリット) E (エンゲイジ) X(ザナドゥ)』。

 

 愛と精を交えた乙女と一つとなり、強靭な()器や()装をその身に宿す合体宝具。

 

 初めて契りを結んだマシュとの相性は測り知れず……今や守る──その一面においてのみ、ありとあらゆる破壊全てを拒絶する白愛の盾となっている。

 

 

 

 

(なんだ……? 俺は今、何を斬っている?)

 

 未だ、剣を振り下ろし続けているスルトに浮かんだのは疑問。

 デアーが盾を構えた時、鼻で笑った。そんな小さき蓋で何が守れると。希望も余裕も何もかもその盾と共に真っ二つにするつもりだったが……現実はそうはならなかった。何故、未だに自分は剣を振り続けているのか……宝具を発動し続けているのか……奴らは滅びていないのか。

 

 

(まるで手応えが無い……)

 

 数多の神々をこの剣で屠り去ったスルトは断言する。剣を振るう以上何かしらの感触は絶対にあった。どんなに取るに足らない物であろうとも炎と衝突し、命が潰えるという感触がある筈だとスルトは訝しんだ。デアーの白き盾と接触している……筈だ、信じられない事だが『太陽を超えて耀け、炎の剣(ロプトル・レーギャルン)』が防がれてしまっているという事実が存在している。

 なのに、拮抗しているという実感すら湧かない程に手応えが無かった。

 

 

(馬鹿な、届いてすらいないのか…………!?)

 

 

『当然です。女の子の扱い方もわからない童貞敗北剣に()が破れる道理はありません!』

 

 誇るように白き盾からマシュの声が聞こえた。

 第五宝具によって武器(性器)と化した彼女達にはそれぞれの特性が現れる。マシュの場合はその貞操の硬さ。

 デアーの初めてを奪い、自身の初めてを捧げ、生涯をこの人と共にすると心に誓った一途さ。

 つまり、先輩(マスター)以外の男の接触行為を拒絶する彼女の潔癖の現れともいえるそれは盾と攻撃対象との間に無限の空間を造り出し、()に触れる事すら許さない絶対純潔領域。

 

 スルトはただその無限に向かって剣を振り下ろし続けているにすぎなかった。

 

『私の()まで届くのは先輩のぶっとくて長い剣だけですから!』

 

「力抜けるからもう少し真面目にやってくれないかしら!?」

 

 必死の想いで固有結界を維持している邪ンヌから苦情が入る。

 

「大丈夫ですかお姉様! おっぱい揉みますか!?」

 

「今すぐ黙って私にルーン魔術かけ続けるのと、一ヶ月マスターと私の当番表からはぶくのどっちがいい?」

 

「ブリュンヒルデは出来る妹です。クールにお姉様にバフをかけ続けます」

 

 しかし言動はともかくとして、神をも打ち砕く宝具をものともしてない現実をスルトは認めなくてはならなかった。ならばと──。炎の剣だけではない、スルト全身の魔力と熱がさらに上昇する。より強くより熱く際限なく剣に込める力を高める。誠に癪だが、眼下にある盾を破れないならば、別の物を破壊するのみ。

 

 表現するならば炎の津波。スルトの肉体と剣から紅と蒼が混ざり合った劫火が噴出し、邪ンヌの固有結界を破ろうと牙を剥く。

 

 

【その盾の強靱さだけは認めてやろう。だが一体それでどこまで守れる? 貴様の盾は北欧全てを覆い隠せるものなのか?】

 

 否と──せいぜい今周りにいる英霊共を囲う程度でいっぱいいっぱいの筈、わざわざ女の力を借りて、固有結界を発動したという事はデアーは北欧を戦場にはしたくないのだろうとスルトは推測する。その理由は彼にとって不明ではあるが、別段興味があるものでもないのでどうでもいいのだろう。

 

 現在の北欧はあまりにも脆い、封印される前のラグナロク以前よりも。雪の女神の助力がなければ、簡単に絶滅してしまう程に。剣を完全に振り下ろさなくとも、今の状態のまま全身に殺戮の炎を焚き続けていればそれだけで北欧という敷物(テクスチャ)はいずれその炎に飲み込まれ、消滅してしまうだろう。

 故にスルトは依然として宝具は発動したまま、全身に力を漲らせた。

 

 北欧を守ろうと盾を下ろすのならば、炎の剣をそのまま振りきるだけ。北欧も、この忌々しい獣の命も終わる。

 盾を下ろさないのならば、それはそれでよし。北欧を我が身の獄炎で灰にするだけ。現状、時間が味方をしているのはスルトの方だった。

 

(ククク、俺に宝具を発動させた時点で既に貴様の命脈は尽きている)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『と、あのデクの棒は思っているだろう。ある点ではその考えは正しい。さすがに今の状態ではマスターは身動きが取れぬ故、奴に対しての攻撃手段が封じられている』

 

 使い魔である鳩を潜ませていたセミラミスはマスターの盾による絶対安全域の中で残った英霊達にそれを通じて、言葉を送る。

 

『あの宝具を受けて、マスターが生きていたとしても北欧が滅んでしまえば、それはこちらの敗北に変わるまい。マスターはこの北欧で()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と決めているようだからな。では時間が無いので手短に貴様らの仕事を割り振ってやろう。本日のノルマ:「スルトに宝具をぶっ放せ」以上だ』

 

「以上……って。それであのスルトを打倒出来ると?」

 

 あまりに高慢かつ雑とも言える指示にスルーズが口を挟んでしまう。スルーズ個人としてはどうにかしたい……今もなお、盾を構え続けているデアーの力になりたいという想いがある。だが、戦乙女としての機械的思考が黒き者との戦闘力差を理解してしまっている。冷たく告げていた──不可能だと。

 

『戯け。貴様らに倒してもらおうなどと考えておらぬわ。我が主が第五宝具まで引っ張り出し、珍しく本気を出している以上、巨人殺しはマスターの仕事、誰にも譲らせるつもりは毛頭無い。一瞬でよい、奴が自身の宝具を打ち切るだけの衝撃を与えろ。後はマスターが如何様にもする』

 

 そもそも──と。使い魔を通じている為、姿は見えないが悪辣に口元を歪ませた女帝の姿を英霊達に幻視させるぐらいに挑発的な言葉を告げた。チョコレート工場にて部下にやる気を出させる上司のノウハウをマスターしたと自負するセミラミスは発破をかける。

 

『あの巨人はマスター以外、眼中にない。貴様ら程度は()()()で殺せると舐められているのだ。さぁ、曲がりなりにも人類史に名を刻んだ英霊、神霊達よ、その屈辱をよしとするか? 奴の炎の剣を中断させるぐらいの一撃すらも出せず泣き寝入りか? まぁ、それはそれでよしとしよう。隅で部外者が全てを片付けるのを眺めているがよい』

 

 その言葉に異論を挟む者も闘志を湧かせない者もいなかった。昂る魔力が彼等の答えを示していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──なぁ、女帝さんよ。さっき「人の死者を一人たりとも出すつもりは無い」って言ったよな? 

 

 ──あぁ。

 

 ──ならあの人類悪にはオフェリアを助ける術があるってワケか。まぁ、スルトに囚われている呪いをぶっ壊すぐらいなら俺もどうにか出来るんだが……。スルトとオフェリアの魔術回路(パス)がどうにも不安でな。それを残すと良からぬ事が起こるっていう勘がね……ま、これも可能性の話にしか過ぎねぇんだが。

 

 ──ほう、密林の奥に生息していそうな外見の癖に幾分か知恵が回るようだな。

 

 ──ゴリラじゃねぇよ! アイツ(デアー)には何か手があんだろ? 

 

 ──当然だ。我がマスターの力は貴様が身をもって経験した筈だが、弓兵? 

 

 ──あぁ、非常識っぷりを嫌って程にな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 デアーと矛を交えた時よりもより強く逞しい輝きをもってフランス皇帝が砲門を頭上へと向け、『凱旋を高らかに告げる虹弓(アルクドゥトリオンフドゥレトワール)』を放つ。不可能は無いという人類の(イメージ)によって後押しされた弓兵(アーチャー)の最大の一撃。

 

「おいしい所は譲ってやるよ!! だが、大団円(パッピーエンド)じゃなきゃ承知しねぇぞ人類悪(デアー)!!」

 

 ナポレオンの高らかな()哮を皮切りに北欧を……人が生きる世界を守ろうという一つの目的の元、集った英霊・神霊達が自己を象徴する宝具をスルトに向けて放つ。

 

 

 

「当方の霊基(肉体)が迷惑をかけた詫びはしなくてはならぬな。だが今は……」

 

「えぇ、私もこうして貴方と共に戦える喜びに酔いしれたい所ですが……」

 

 シグルドが魔剣グラムの性能を全て解き放ち、拳を構える。スルトに支配されていた時の悍ましい炎は無く、ただ人を守護せんとする正き英霊の光が迸る。

 

 その傍らでシグルドに寄り添う戦乙女がいた。

 彼女が構える槍の大きさは4m超、重量は5t。対象がシグルドならざるスルトの為、その威力は最大値まではいかぬが、ブリュンヒルデ自身のモチベーションの高さは自己ベストを叩き出している。

 

 会いたいと切望していた男と共に世界の危機に立ち向かう事が出来る。戦乙女としても、ブリュンヒルデという女個人としても燃え上がらないワケが無い。

 魔剣投擲『壊劫の天輪(ベルヴェルク・グラム)』。

 超巨大魔銀槍による真空の斬撃『死がふたりを分断つまで(ブリュンヒルデ・ロマンシア)』。

 愛憎深い男女の宝具が同時に放たれる。

 

 

 

「今が決別の時なのだな、3000年……人の世を苛んできた(貴様)との」

 

 異聞帯の王、スカサハ・スカディの背後に巨大な門が現れ、そこから死を彷彿とさせる影の城が姿を覗かせる。その影の城が与えるは幸運と祝福。今まさにスルトに立ち向かおうとしている勇士たちに絶大な強化を施す。ケルトの戦士、スカサハの面が色濃く出た宝具『死溢るる魔境への門(ゲート・オブ・スカイ)』。女神による後押しを受け、二騎のワルキューレ達が光槍を振りかぶる。

 

「機能最大値まで上昇」

偽・大神宣言(グングニル)投擲準備。対象捕捉完了」

 

 スルーズ、オルトリンデが手にする光槍はオーディンのグングニルの劣化複製版、名を『偽・大神宣言(グングニル)』。武具も、それを手にしている戦乙女達も全ては神の手による模造品であるが故に神殺しであるスルトに敵う機能は持たない。だが……いつの時代も戦況を変えるのは武具の性能ではなく、それを扱う心。理屈じゃなくとも、精神面の変化は攻撃力を上昇させる一つの要因になる。

 機械であると己を自負する戦乙女達もまた、北欧を守ろうとする決意と、仇敵スルトに対する憎しみを確かに持って必中の槍を放った。

 

「はっきり言おう。もうウンザリなのだ、お前(スルト)がもたらす悲劇を目にするのは。私はあの男(デアー)の手を取る。帰ってくるがいい……オフェリア」

 

 

 

 セイバー、アーチャー、ランサーという三騎士、さらにはトップサーヴァントともいえるスペックを持った英霊達の宝具が神の加護を授かり、スルトの無防備な胸先へと直撃した。突然横から殴りつけるように不意打ちを受けたスルトは一瞬、仰け反ったが──、足りない。まだ依然として炎の剣は下ろされたまま。

 

 けれど、彼等の宝具は無駄ではなかった。五騎による同時宝具攻撃の直撃、仰け反った瞬間、足元がおぼつかなくなった一瞬の隙を彼女は見逃さなかった。

 

「びっくり……。スルトの剣をあんなに長時間受け続けられるなんて。人間…………なのかしら? お義母さんも前より表情が柔らかくなってるし……」

 

 駆ける白熊に跨り、弓を構える少女シトナイもまたスカディからのルーンによりスルトが発する炎熱から身を守っていた。回り込むようにスルトの右踵を目指し、到着する前に弓から一射。

 弓から(はな)れた矢は氷の魔力を帯び、直撃したスルトの踵からシトナイまで放射上に氷の道を造り出す。

 

「置いてけぼり感は否めないけどっ! 取り敢えずあなたが邪魔だって事だけは理解しているわっ!!」

 

 氷の道を進み、シトナイを運ぶ白熊──シロウのスピードはさらに加速する。トップスピードのまま、スキル「スノーフェアリー」「カムイユカラ」により氷とアイヌの加護を受けた山刀を全力で振り切った。熊、弓、斬撃による連携宝具『吼えよ我が友、我が力(オプタテシケ・オキムンペ)』。実は竜特攻を持つこの宝具は悪竜現象を起こしているスルトにも非常に有効。

 

 シトナイの宝具と同時に、もう片方、左踵の方にも原始的な暴力を叩き込んでいる益荒男がいた。シトナイが召喚したヘラクレス。ギリシャ最強の戦士は斧剣をバーサーカーに相応しき破壊力で横なぎに振るう、シトナイと同等のタイミングで。

 

「やっちゃうわよ! バーサーカー!!」

 

 

 

【ぐっ……!】

 

 上半身前方、下半身後方それぞれから衝撃を受けたスルトもさすがに無視は出来なかった。宝具の発動を中断せざるを得ず、たたらを踏み、片手を地面につく。多少なりともダメージは受けただろうが、スルトの肉体は未だ健在。

 

 

【鬱陶しい……。この程度で俺が倒せると思ったか? 死にぞこないの英霊、神霊共、それら全てを喰らい、燃やしてきたのが俺だ。貴様らの必死の一撃もただ、ほんの少し寿命を延ばしたに過ぎん】

 

 

「あぁ、そしてそのほんの少しで十分だった。皆……ありがとう」

 

 炎の剣の重圧から解放された男が動き出す。盾を下ろし、艶めかしく腕を前へと出す。

 

「白式官能──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 日曜日が嫌いだった。

 

 

 現代の戦乙女と持て囃され、ファムルソローネ家の宿願、「第六架空要素(真性悪魔)」へと到達出来る希望として、両親に期待をされるのが苦痛だった。

 

 だから、その期待が一番顕著に現れる両親と共にいる日曜日という名の牢獄は息が詰まりそうだった。

 

 そして魔術師としてあるまじきそんな軟弱な感情をいつまでも捨てる事が出来ない自分が何より嫌いだった。

 

 

 期待に応えられる程の強さも無く、かといって逃げ出す勇気も無く、私は何もかもが中途半端なままここまで来てしまった。

 

 己の人生を全て魔道に捧げるまでは強くなく、放り投げて一般人として生きる事を選択出来る程弱くも無かった。

 

 囚われのお姫様のように私を助けてくれる誰かがいるかもしれない。気の迷いでそんなありもしない妄想をしてしまった事もあった。

 

 ──全てに悲観し、逃げ出す事も踏み出す事も……手を伸ばす事さえしないアナタを一体誰が助けてくれるというのかしら。

 

 結局、あの女(コヤンスカヤ)の言葉は正しく、私は被害者のまま、全てを台無しにする道化に過ぎなかったのだから。

 

 

 

 

 

 

 燃える、燃える、熱く、そして酷く()()場所。半身を束縛の炎に捉えられ、思考が煩雑になる。自らの手で何かをしようとするには致命的に手遅れの状態だった。

 

 あぁ、何も進歩が無い私はやっぱりここに戻ってきてしまった。

 まるで同じだ。炎に囚われているいる今の状況は……あの日、コフィンの中で全てが終わってしまった人理修復の始まりともいえるレイシフト初回実験の日と。

 

 

 人理焼却の炎に捲かれて諦めるしか無かったあの時と、今の状況に一体どれだけの違いがあるか。

 

 

 マシュと違って【一歩も踏み出す事の出来なかった】女には相応しい結末だろう。

 

 

「それは違うよッ!」

 

 

「………………私を殺しに来たの?」

 

 

「むっ、リアクションが薄いとそれはそれで気恥ずかしい」

 

 腕を前に差し出し、妙なポーズで私の前に現れたデアー。けれど驚きは少なかった。マスターとしてはどうかと思うが、こうなる可能性は想定済みだった。何故か上半身に服は着ていなかったが、全裸を見た私にはもはや気恥ずかしさ等、存在しない。視線を少し逸らしているのは敵愾心からだ。

 

 確かに神殺し、神代の終焉ともいえるあの巨人の王を正攻法で打倒するのは難しい。けれど、どれだけ規格外だろうとも今のスルトはサーヴァント。スカディのようにこの異聞帯に元から存在したワケではない。マスターという要石を失ってしまえば、要するに私さえ殺してしまえば、スルトを倒すのは今より遥かに容易になる。

 

 だから、スルトもマスターとしての価値しか無い私を悪竜の呪いまでかけて縛り付けたのだろう。

 

 空想樹と一体化したスルトを切除するという目的がある以上、いくら女に甘いという噂の人類悪であれ、もうこれ以上私を生かす理由は無い筈だ。

 

 でも、殺される前に一つだけ確認したい事があった。私の独白が耳に入っていた彼に。

 

「一体、何が違うというの?」

 

「あぁ、ちゃんと聞こえてたのね。良かった迫真のカットインまで用意したのにスルーなんてされた日には悲しみのビースト120%モードになってたから」

 

 マシュと長きにわたって共にいた彼なら理解しているだろう。人理修復が始まる前ならいざ知らず、今のマシュと私はもう似ても似つかない。彼女は外界に飛び出して、多くの経験をして自らの意志で選択する事が出来た。恋を知り、愛を知り、色んな意味で大人になった。

 

 それに比べて、私は未だにくすぶり続けたまま。なのにどうしてよりにもよって一番マシュを知っているあなたが否定するのか。

 

「本当に? 自分が何も出来てないと思っている? 踏み出せないまま、何一つ為す事が出来なかったと?」

 

「えぇ、わざわざ確認されるまでもないわ」

 

 汎人類史の敵であるクリプターとして非情に徹する事も出来ず、キリシュタリア様の期待にも応えられず、マスターとしてスルトを御する事も出来なかった。クリプターとしても、魔術師としても、マスターとしても、半端者だった。いずれ訪れる日曜日に膝を抱えたままの臆病者だった。

 

 もしカルデアマスターの唯一の生き残りが私だったら人理修復は間違いなく道半ばで失敗していただろう。

 

「それでもオフェリアさんは、ちゃんと一歩を踏み出したと俺は思うよ」

 

「あなたに何がわかると言うのッ!」

 

 何で断言出来るの! ……私の事なんて何も知らない癖に! 私がどういう思いで、どんな人生を歩んできたかなんて碌に接点がないあなたに分かる筈ないでしょう! 知ったような口を利かないで! 

 

「うん、魔術師であるのは当然として、クリプターである貴女の事も全くと言っていいぐらいに知らない。でも、それでも──俺はオフェリア・ファムルソローネという乙女が見せた勇気を知っている」

 

 

 癇癪を起こし、声を荒げる私に対しても彼は絶対の自信を持って告げていた。慰めているわけでもなく、気を遣っているわけでもなく、ただ事実として私が為し得た事を知っていると大空のような瞳が雄弁に語っていた。

 

 

 

「だって貴女は【マシュを助ける為に震える程に怖くて仕方なかった俺に立ち向かったじゃないか】」

 

 

 ──────。

 

 その言魂はついさっきの私の弱気を的確に打ち抜いていた。

 

「いえ、いえ……待ちなさい。でもそれは全て誤解…………マシュは助けなんて求めていなかった」

 

「それは大した問題にはならないよ。誤解だったとしても貴女がマシュの為に恐怖を押し殺して、立ち上がったという価値は絶対に損なわれない」

 

 彼は嬉しそうに笑っていた。誤解で自分の命が狙われたというのに一切気にしていなかった。

 

「ここは正直に答えてもらおうか。貴女があの時、俺に立ち向かったのはクリプターとしての責務を果たす為? あの時見せた激昂は敵対関係であるカルデアが許せなかったから?」

 

「違う……わ」

 

 私はあの時、本気で虐げられているマシュの現状を憂いて、道具のように扱うあなたの事が許せなくて、何とかしなくちゃって思って……それで、それで──。

 

「ほら、誰に強要されるワケでもなく、自分の心内から出た行動だったんでしょ? それは十分踏み出したって言えるんじゃない?」

 

 仇敵だったデアーの言葉に私は小さく嗚咽を漏らしていた。

 だってそれを認めてしまったら……私が自身の人生の中で初めて自らの意志で選んで、一歩を踏み出す事が出来たのが友達になりたかったマシュの為だなんて、あまりにも美談過ぎて私には荷が勝ち過ぎているじゃない。

 

「色々と気難しく考えてしまっているオフェリアさんにこんな言葉を授けよう」

 

 

 …………? 

 

 

「【貴女は何をしてもいいし、何を為さなくてもいい】」

 

 

 それはとても救いに満ちていて。ずっと、ずっ──と私が……昔から求めていた言葉だった。

 

「人の生き方にこうあるべきなんて正しき姿は無いよ。貴女は貴女の思うままに、命短し人の生。鳥のように自由に行こうじゃないか、それで最期の最後に『あぁ、楽しかった!』と思えれば上等よ」

 

 彼は眩しい程に人生というものを楽しんでいた。今、私と相対しているこの瞬間も。

 はぁ……はは、あはは。本当に情けないわ。散々よ、あなたが来てから。ギリシャ異聞帯の会議の場で初めて見た瞬間から、錯乱して、逃げ出して、引き籠って、マシュが虐げられていると知って、震えながら立ち向かって、全裸を見せ付けられて、そしてマシュの事は誤解で、当の彼女は女として遠く先に進んでいて、スルトに呪いをかけられたと思ったら、元凶であるあなたに励まされて……。

 

 

「でも、ありがとう。最後に私の質問に答えてくれて、もう思い残す事はないわ。もしこれからギリシャ異聞帯でキリシュタリア様に会うなら伝えてくれないかしら、クリプターとして期待に応えられず申し訳ございませんって。そして、マシュにはガールズトークの続き、出来なくてごめんとも」

 

私の言葉にこの人は何を言っているんだ?と首を傾げているデアー。何だか無性に腹が立つ顔をしているわね……。

 

「いや、殺すつもりとかまるで無いんだけど。貴女をここから出す為に来たんだし」

 

「は?…………えっ? いや、どうして? 状況分かっているのかしら? スルトを現世に留めている要石でもある魔眼を私ごと殺してしまえば、大幅に弱体化する事が出来るのよ? クリプターである私に、人理修復というあなた達の成果を滅茶苦茶にした私に情けをかける必要は無いでしょう!」

 

「オフェリアさんが今、心配している事とか、負い目に思っている事は取り敢えず、今は気にしなくていいとだけ言っておこう。それに俺はクリプターがどうとかはぶっちゃけどうでもいい。俺はいつだって、俺独自の判断基準に則って助けたい人を助けているだけ。もちろん全てを救いたいんだ! なんて博愛主義になるつもりも毛頭無いし」

 

「あ、あ、……後で体とか要求してきても応えれないわよ!」

 

「オフェリアさんって自己評価が高いのか低いのか偶によく分かんなくなるよね」

 

 差し伸ばされた手を前にして、私は未だに判断に迷っていた。

 今の状態のままでは良くない事は十分承知だ。だけど、カルデアに害していたクリプターという立場が私を硬直させる。マシュの想い人を襲った私にこんな都合の良い奇跡が訪れていいのか……だって私にはそこまでされる価値なんて無い。なんでこの人は迷いなく私を助けようとしてくれるのか、それがまるで分からなかったから。

 

 今まで助けられた事なんて無かったという経験の無さが躊躇を産んでいた。

 

 私を包んでいる炎が勢いを増している。悠長に話をしていたが、もう時間が無いのだろう。スルトの呪いが私を逃しまいとより深くまで入り込もうと──。

 

「ちなみに俺は相手が手を出すのを待つほど優等生な性格はしていない」

 

「えっ? ……きゃぁっ!?」

 

「手を差し出さないのなら、こっちから握ればいいじゃない」

 

 力なく下がっていた手を無理矢理引っ張りそのまま炎の中から引きずり出された。

 乱暴なのにどこまでも優しい助け方。もう熱さも息苦しさもまるで無く、私の体には笑ってしまうぐらいの解放感とほんの少しの気持ち良さがあった。そっか、助けられるってこんなに簡単な事だったの……。

 

 

 あぁ、マシュ……あなたもきっとこんな風に手を握られたのね。あなたの気持ちが少し分かった気がするわ。

 

 

 

 ──あの時もこうやって助けられる力があれば……。

 

 意識が途絶える瞬間、彼のそんな呟きが聞こえたような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「白式官能 漆の掌 寝取りの型」

 

 

 精神世界におけるデアーとオフェリアの対話も現実では数秒しか経っていなかった。その数秒は他の英霊達が決死の宝具で造り出したスルトが動きを止めた隙。

デアーの周囲から伸びた七つの白き魔手がスルトの肩に留まっているオフェリアの肉体へと伸び、巻き付き、引き摺り出し、コードが縮むように地上へと帰ってきたオフェリアはデアーに抱き止められていた。その間の彼女は少々体をビクつかせていたが、不幸中の幸いか意識はまだ目覚めていなかった。

 

「オフェリアさん!」

 

 ()器状態から人に戻ったマシュへとオフェリアを預ける。

 デアーが行った事は悪竜の呪いの破壊だけではない。オフェリアとスルトを結んでいる魔術回路の上書き、及び要石となっている魔眼との接続にも割り込んだ。

 

 全てが遷延の魔眼でスルトという可能性を見てしまった事によって生じた縁から始まったというのなら、更なるインパクトでそれを掻き消してしまえばいい。

 デアーの下半身の輝きを彼女の魔眼に焼き付けたというきっかけは既に出来上がっている。後はそこを起点としてオフェリアとスルトを結んでいる魔術回路に白式官能の魔力を注ぎ込み、ハックし、ベクトルをデアーの方向へと書き換える。

 

 

【オ、オ、オ、オフェリアァァァァァアアッッ! デアァァァァァァア────!! キ、サマァァァァアアッ!!】

 

 

「そんなに大事ならちゃんと離さないようにしっかり掴んどけよ」

 

 『単独行動EX』を持つスルトはたとえ契約したマスターが消えたとしても地球全土の焼却を遂行するまで行動し続けることが出来る。

 

 だが、魔術回路に加えてスルトの召喚のきっかけとなった()()との接続解除は炎の巨人王という存在を大いに揺さぶる結果を産んだ。

 

 それがもたらす効果はスルトの激昂から察する通り、既にオフェリアからの魔術回路そして魔眼への接続も全てデアーへと繋がっている。もはやスルトとオフェリアを結ぶ関係性は何も存在しない。精神的な動揺、それはデアーに幾ばくかの猶予を与えた。

 だが彼の肉体は英霊の霊基ではなく、偽りの太陽の牢獄に封印されていた全盛期そのもの。少々弱体化しようが、その性能に陰りは見えず。

 

 だからここで勝利の布石を整える必要がある。

 

 第四宝具『通い妻オーバーラン』発動。恩讐の炎のステージに花のように散っている可憐な水飛沫と共にシグルド状態のスルトを散々いたぶったドSプリマドンナ、メルトリリスが現れる。

 

「私を呼んだって事は整ったのね。スタァに相応しいフィナーレが」

 

「あぁ、攻略までのフローチャートは出来上がった──さぁ、エンディングまで泣くんじゃない!」

 

 

 




S (スピリット) E (エンゲイジ) X(ザナドゥ)

ランク:EX
種別:合体宝具
使用者:ビースト0/デアー
読み方はスピリット・エンゲイジ・ザナドゥか、婚約者達の楽園。それ以外には御座いません。
精と愛を交わした彼女達と魂で結び付き、()器や()装として使用する。交わる女性によって武具や効果も千差万別。鎧だったり乗り物だったり巨大ロボだったりする場合もある。基本ステータスも大幅に向上するので、この状態のデアーのステータスは全てEX。デメリットとしては武具から解除された女性はしばらく酔ったかのように本調子には戻れない。所謂、賢者タイムである。

「単純な受肉じゃないですよね絶対。だって冷静に考えると普通の肉体を持った人間がいきなり武器に変化しますか? まだサーヴァント状態でやってくれた方が納得しますよ。何というかマスターの精液ってアルトリウム並に万能物質感があるんですよね。調子が良くなった。強くなった。肌が綺麗になった。胸が大きくなった。女の子になった。寿命が伸びた。聖杯で治せなかった頭痛が治った。とかエトセトラ……。だから、きっと私達の肉体も単純な受肉状態じゃないでしょう。綺麗な聖杯の泥とか? まぁ、ぶっちゃけ私としてはセイバーをブチ出来ればいいので特に気にした事はありませんが。え、真エーテル?まっさか――」by謎のヒロインX




人類悪:デアー

第一宝具:『白式官能』
第二宝具:『模倣英霊』
第三宝具:『竿繋ぎの多元性交(パラレル・セックス)
第四宝具:『通い妻オーバーラン』
第五宝具:『S (スピリット) E (エンゲイジ) X(ザナドゥ)
第六宝具:――
第七宝具:――










次回、消()試合。(スルト)だけに……(スルト)だけにっ!(チラッ





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陽滅の刃(第2部 2章)

新年あけましてあけましておめでとうございます(2019年中に2章、完結するってて噓ついてごめんね)。

今年も当作品にお付き合いを(ゆるして、ゆるして)よろしくお願いします(あと、去年はエロを3キャラしか書いていないのもゆるして、ゆるして)。


第五章でコルデーを見た時は膝を叩いたよ。ヒロインレースにおいて、あれも一つの答えだと。そうきたかァァァ~~と刃牙の烈みたいに唸ったね。





今年の目標:エロを去年よりも増やす。






「さて契約は断ち切った。愛しのマスターを取り戻したいのなら、俺を殺すしかないよ、スルト」

 

【貴様ァァッ……】

 

 固有結界『領域展開 讐骸憤竜園─炎葬式(しゅうがいふんりゅうえんえんそうしき)』を維持していた邪ンヌにも限界が訪れ、恩讐の炎で彩られた世界が崩れ、見慣れた北欧の景色へと戻っていく。

 

 隔離された固有結界から元の世界へと帰還した事により、配下である巨人達が再び殺到し、襲い掛かる。今までスルトに宝具を打たせまいとしていたスカディを始め、他サーヴァント達もそちらの殲滅に追われる。

 

 セミラミスがスカディ達に語った言葉に偽りは無く、最後の決着は親愛の獣の手に委ねられる。

 

 巨人の王と巨根の王の戦いは文字通り、最終局面へと移行した。

 

「本当は私一人で十分だけど、初の国外遠征(異聞帯)、折角だし、ステージを彩るライト()ぐらいはいてもいいわよね」

 

「はいはい。病院の屋上でソワソワしてた奴が憎まれ口叩いても、あざといだけよ。無駄口叩いてないでさっさと片付けてしまいましょ、劇場版ヒロイン女」

 

「黙りなさい。後方彼女面」

 

 軽い口撃の応酬をしながら、デアーの周囲に女が三人。

 黒衣はためかせるジャンヌ・ダルク・オルタ。

 白いドレスと貞淑な衣装で蠱惑に微笑むメルトリリス。

 口を開かなければ正統派美女、ブリュンヒルデ・オルタ。

 

 固有結界を解いた邪ンヌ、実の所はもう一度ぐらいはまだ宝具を発動出来るが……その余力を残す理由がデアーの第五宝具『S (スピリット) E (エンゲイジ) X(ザナドゥ)』にあった。

 

「『Sex code:ジャンヌ・ダルク・オルタ』……んっ、これ……発動する時に変な感じになるの何とかならないかしら……」

 

 マシュの時、同様──恥ずかしそうに体をもじらせ、邪ンヌがマスターとの一体化を遂げる。光が晴れた後、彼が右手に握るは黒炎が焚かれている刀。彼自身の腕の長さ分ある刀の柄半分からは邪ンヌを彷彿とさせる邪竜の黒旗がたなびいていた。

 

 魔力が高まる。

 

「セックスとはコミュニケーションの極致。ここは痛くないかな? この人は気持ち良くなってくれているかな? って不安と期待に胸を膨らませて手探りで進んでいく開拓の旅。自分の欲望をぶつけるだけではない、相手を労わり、察し、気持ち良くさせ、言葉と肉体と魂の全てを使って愛を確かめ合う繊細な儀式」

 

『急に彼は何を話し出しているんだい?』

 

「しっ! 大事な所ですから黙ってて下さいダ・ヴィンチちゃん」

 

「こんな衆人環視でお姉様との共同作業(複数プレイ)なんて……あぁ、困ってしまいます。『Sex code:ブリュンヒルデ』」

 

 小気味よく語るマスターの左隣には贋作の戦乙女の姿が。ブリュンヒルデ・オルタも光の粒子となり、彼の身の丈以上ある大槍となって左手に握られる。柄は蒼銀。刃先の色はまるで邪ンヌとデアーを示すかのように黒と白に左右均等に別れている。

 

 さらに魔力が高まる。

 

「性癖を吐露するのは時に本音を明かすよりも苦しい事かもしれない。だがそれを受け入れられ、互いに通じ合った時の悦びは一際輝かしいものとなる。愛とは物質として存在しない(ゼロ)なるもの。けれど、確かにそこにあるのさ。人にいつだって絶大な力と勇気を与えてくれる」

 

【何の話をしている……?】

 

アナタ(童貞)の知らない話よ。『Sex code:メルトリリス』」

 

 仕上げはプリマドンナ。快楽のアルターエゴ、メルトリリス。人形のような白いドレスを摘まみ、一礼。滑り出す前のフィギュア選手のような上品さを見せて、マスターと一つになる。その瞬間浮かんでいるメルトリリスの隠しきれない喜悦の表情。かつて恋した人と溶け合い一つになる事を望んだ夢がまさかこんな形で叶う事になるとは思っていなかったのだろう。

 

 その報酬は鋼の具足。サファイアの如き輝きを持った刃の踵に膝の棘を持った、凶悪なスケートシューズがマスターに履かされていた。

 

「そして4Pも別段、珍しい話では無いという事だ!」

 

 三連()着完了。手足に彼女達の愛を完全武装したマスターの魔力がさらに、さらに──加えて、得体の知れない圧のような物も高まり、黒髪が生きているかのように荒々しく浮かび上がっていた。

 

『一騎という制限は無いのか!』

 

「はい、先輩にとって乱交は日常茶飯事です!」

 

『そんな事は聞いてないよ!』

 

 思わず、叫んでしまったダ・ヴィンチちゃんだが、かの宝具『S (スピリット) E (エンゲイジ) X(ザナドゥ)』は彼自身が不可能と思わない限り何人いようが()着が可能という事かと推測する。デアーにとって10P、20Pなんのその。賢者には最も程遠い男なのだから。

 成程、愛の結晶と表現するに相応しい造形美と強さを秘めてはいると彼女も認めてはいた。もし、自分だったらどんな形態になるのかつい想像してしまうぐらいには。

 

『(杖、篭手、変化球で戦車もありか……いやぁ候補が多過ぎて思いつかないなぁ。万能ってのはこういう時に困りものだよね!)』

 

『取らぬ狸の皮算用という言葉を知っておるか芸術家』

 

『うるさいよ! そろそろ私の番だろう絶対!』

 

 マシュ、ダ・ヴィンチ、セミラミスの阿保なやり取りについては一切、スルトの耳に入っていなかった。いやこの瞬間に限り、あれだけ固執していたオフェリアの事も瞬く間とはいえ、思考から消え去った。

 

(この俺が恐れ……? あり得ん。奴に纏わりついた女共は紛い物に贋作に混ざり物──。だというのに今すぐ奴から離れろと本能が訴えている)

 

 巨人の王の脳を埋め尽くしてるのは女を三人纏った親愛の獣に対する悪寒。根拠不明の危険信号。

 

 愛、愛、愛。獣の域まで昇り詰める人の愛はそれを知らぬ者にとっては理解しがたい悍ましい物として映る事もある。愛欲の獣ビーストⅢ/R(ラプチャー)にすり潰された魔神柱の一柱のように、例えそれが超常的な存在だったとしても──。

 

 スルトを襲った悪寒は彼を幾ばくか冷静にした。攻撃ではなく、不可視の竜の翼を拡げ、距離を取るという選択肢を与えてくれる程に。

 

『飛んだ──?』

 

「……い、けない。スルトは……悪竜現象を起こしている、今のあれは……飛行手段を持っているわ……それだけじゃないフェンリルの権能も……」

 

「オフェリアさん!?」

 

『おいおい、あのスペックで制空権を取られるとかちょっと笑えない冗談だぜ。スルトに加えて、悪竜(ファブニール)巨狼(フェンリル)? ちょっと設定盛り過ぎじゃないかな!?』

 

 マシュの腕の中で目覚めたオフェリアが途切れ途切れに伝えた情報に一部を除いて驚きを隠せない一同。スルトは1km、5km、10kmと雲がかかる高さまで上昇していく。

 

「くそったれが!!」

 

 ナポレオンが自慢の砲弾を打ち上げるが、届く事は無く、途中で燃え尽きる。自身の霊基を犠牲にした宝具ならば、届く事だけは出来るかもしれないが──。

 尽きる事なく湧いてくる巨人と空想樹の種子達がナポレオンだけではなく、他の者達にも対処を許さない。

 いや、彼等が戦ってくれているからこそ、デアーだけが集中してスルトを相手取る事が出来ていた。

 

【当たるものかよ、貴様の豆鉄砲など。そして当然俺の攻撃が外れる事はあり得ぬ】

 

 ワイバーン、ドラゴン。幻想種の頂点とされる竜種が恐れられているのはその単純な魔力の膨大さ、凶暴性も当然だが、飛行手段を有しているからとも言える。

 

 空を翔ける術を持たない生物にとって、上空から襲われるというのは脅威以外の何物でもなく、ましてやそれが大陸一つを軽く吹き飛ばせる程の力を持ったナニかだというのなら、もはや只の人間に許される事は祈るという行為のみ。

 

 悪竜現象(ファブニール)はスルトという神すらも殺せる兵器が空という知覚外の領域からその剣を振るい続けるという絶対に許してはいけない権利を持たせてしまった。

 

 スルトは宝具『太陽を超えて耀け、炎の剣(ロプトル・レーギャルン)』を先程のデアー一体に対する狭域集中型ではなく、広域殲滅型に変更、対象は北欧全域。直接斬らなくとも、振るった時に生じる余波、炎の斬撃だけで氷の女王の国は跡形も無く灰となるだろう。業腹だが、デアーの近くにいるオフェリアならば守られるだろうという算段もあった。

 

【『太陽を超えて(ロプトル)──】

 

 

 だが巨人が見下ろすは只の小人にあらず、人類悪。番外の獣。ゼロのビースト。

『白式官能』に用心する? 不用心だ。『S (スピリット) E (エンゲイジ) X(ザナドゥ)』に用心する? いや、それでもまだ不用心だ。空が落ちる、大地が裂ける、あらゆる不運に対する用心の遥か上に彼はいる。

 

「嘘──」

 

 それは誰の呟きだったろうか。

 

 スルトの炎の剣が振るわれる事はなかった。

 

 剣を振りかざしていた右腕が不可視の竜の右翼ごと、デアーの自慢の巨槍に貫かれていた。虫を針で固定する標本の如く、地上から伸びた巨槍はスルトを逃がさないように縫い付けていた。その太さはスルトの腕半分以上を貫く程。

 

「おい、誰かあの槍が大きくなったのを見たか?」

 

 ナポレオンの質問に誰も答える事が出来なかった。

 気付けば、いつの間にかという表現が真に正しい。瞬きをしたら、もう槍がスルトを貫いていたのだから、巨大化するという過程を一切吹き飛ばして。

 

「13kmや──なんつってね。もう、お前のターンはないよ」

 

『シグルドはブリュンヒルデに貫かれた。なら、そのシグルドを偽っていた貴方(スルト)が贋作である私に貫かれるのも当然の摂理と言えてしまいますか?』

 

【グ、ガァッッ……!!】

 

 今やブリュンヒルデ・オルタそのものと化した黒白(こくはく)の槍。その特性は『死がふたりを分断つまで(ブリュンヒルデ・ロマンシア)』同様、使用者が抱える愛によって増大する巨刃の槍。そしてこの槍の真髄は巨大化による破壊力ではなく、巨大化自体が知覚出来ない程の速度で襲いかかること。

 だが原典である宝具の()()()()()()()()と異なり、デアーが手にする黒白(こくはく)の槍は使()()()()()()()()()によって増大する。

 

 つまり、デアー自身が抱える彼女達に対する愛の大きさ故に──この槍の増大の限界は13kmどころではなく、成層圏を貫き、宇宙空間まで届き得る。

 

 巨大化した黒白(こくはく)の槍から手を離し、スルトまでの架け橋として、水飛沫を上げ音速でほぼ垂直といっていい槍の上をメルトの脚で滑り出すデアー。

 置いてかれ、自身を足蹴に別の女と進んでいくシチュにブリュンヒルデ・オルタはどちゃくそ興奮していた。

 現在のブリュンヒルデ・オルタのように『S (スピリット) E (エンゲイジ) X(ザナドゥ)』によって()器化した彼女達はたとえ、彼の手から離れても当人達の意志が無い限り解除される事は無い。

 パートナーによっては独立で動く()器と化すパターンもあるというのは余談。

 

 

 宝具は封じられた。とどめを刺さんと親愛の獣が天へと駆ける。

 

 だが、彼は煉獄ムスペルヘイムの支配者。神殺しのスルト。

 

 

【まだ、だ。この程度で、終わって堪るものか……】

 

 

 終末の炎として産まれた巨人は剣が封じられた程度で折れる事は無い。破壊を止める事は無い。自身が持ち得る全ての手段を尽くして、生命を屠るという絶対的な意志が消える事は無い。剣は無くとも生命を殺し尽くす手段を彼は百と有している。

 デアーが辿り着くよりも早くスルトは行動を完了していた。

 

『ッ!? スルトを中心に莫大な熱源反応! 測定器が壊れる勢いだぞ!』

 

 スルトの肉体に浮かび上がったのはルーン文字。それも一つではない。

 千にも及ぶ原初のルーンが不気味な光を灯していた。スルトが扱うルーンは炎。だが英霊が扱うルーンの威力は優に超え、一文字が一文字が宝具に匹敵する。

 夥しく書かれたルーンの羅列に全てを察したスカディが悲痛めいた叫びを上げていた。

 

「貴様ッ……貴様はッ! ふざけるなよスルト!! それ程までに、この世界を滅ぼそうとするか!! 何故だっ! 何故そこまでして炎をこの大地に向ける!? 世界が! 人の子が! 貴様に害を為したか!? 一体何をしたと言うのだ!!」

 

 全ては防ぎ切る事は到底出来ないと理解していてもスカディは魔術障壁を構築しながら、問わずにはいられなかった。

 3000年、彼の巨人の残り焔に苦しめられ、挙句の果てには三度も北欧が滅んでもおかしくない炎を見せられたスカディはここまで執拗に北欧を燃やし尽くそうとするスルトに我慢の限界が来ていた。

 例え、その問いが無意味なものだとわかりきっていても。

 

 

【必要か、理由が】

 

「ッ──!!」

 

 理由も、理念も、大儀も存在せず。彼はただ、時代を終わらせる終末装置として生まれたが故に。

 

【あぁ──だが。貴様ら神々、人間を含めた生物に価値があるとするのならば、その悲嘆だ。命が費える目前の絶望と怒号と悲鳴こそが命の価値だと言えよう】

 

 見下ろす地上全ての者を、そしてこちらに全速力で向かっている──決して間に合う事の無い獣をスルトは嘲る。

 

 

 

【一手、足りなかったな。守れなかった世界の上で貴様はどんな顔をするのか】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よく頑張ったアリス──。本当に、本当によく頑張った、産まれてきてくれてありがとう、産んでくれて、ありがとう──」

 

 アリスの顔に幸せが浮かんでいた。目元に涙を見せて、こっちが泣いてしまいそうになるぐらいな笑顔を見せてくれていた。

 二人の子供が産まれた、新しい命ができたのをあたしはこの目でしっかりと見た。

 

 腕の中についさっき産まれた小さな、小さな命を抱えて。絶対に二度と離さないって決めたように優しく、力強く抱いていた。

 あたしと変わらないアリスのそんな小さな手をデアーお兄さんも掴んで、溶けてしまんじゃないかって思うぐらいに緩んだ笑みを見せていた。

 

「ふふ、ありがとうはこっちの台詞よマスター。わたしの我儘を聞いてくれて、本当は別宇宙のカルデアで安全に産んで欲しかったのでしょう? でもわたしはどうしても、アナタと同じ世界でこの娘を産みたかったの」

 

「世界線を挟んでの『竿繋ぎの多元性交(パラレル・セックス)』は出来ないから、本当は異聞帯に行かないで、アリスが落ち着くまで待つつもりだったけど」

 

「それは駄目よ。だってこれからきっとたくさんマスターの子が産まれてくるわ。その度にアナタの歩みの枷に皆もなりたくないわ。ふふふ、今の台詞って理解のある大人の奥さんみたいな台詞ね」

 

「アリスはもう立派な奥さん(レディ)だよ」

 

「嬉しいのだわ、嬉しいのだわ。でもわたしはナーサリーライムだから、聞き分けの良い大人にずっとなるつもりはないの。だからここまでついてきてマスターの子供を産んだのだから」

 

 涙を見せて、笑いながらお話をする仲良しの二人。デアーお兄さんがお話ししてくれた夫婦とか、親とか、愛とかの意味が二人を見ているとやっと分かりそうだった。

 あたしもおめでとうって叫んで、二人に抱き着きたかった。嬉しいのに、とっても嬉しくて、喜ばしいことが起きてるのに。

 

「予感はあったの、わたしがこの寒くて大人になれない子供達の国に今いる意味がやっと分かった」

 

 でも今、とても怖いの。空に急に現れたおひさまみたいな巨人。

 あたしが襲われた巨人が可愛く思えるぐらいに大きな巨人。

 今もおひさまよりも輝いて、眩しくて、それが怖くて怖くて仕方なくて、空が気になってどうしようもないあたし。何かよくないことが起こるんじゃないかって震えてしまうの。

 

「ゲルダ、こっちにおいで」

 

 そんなあたしをデアーお兄さんが近くに来るように手を引いてくれる。

 情けないくらいに震えているあたしの手を包み込むように優しく暖かく握ってくれて、「大丈夫」って言ってくれた。

 

「本当は色々と不安だった、初めて父親というものになるのが。でも一人じゃなかったから。俺よりも小さい女の子が隣で必死にアリスに声をかけてくれたから、それが力になってくれた。ありがとう、ゲルダ、会って間もないのに俺達の助けになってくれて」

 

「そんな、あたしは何も。お兄さん達の方がたくさん助けてくれたわ……」

 

 当たり前のことしかしていないのに、お兄さんは本気であたしに感謝している。それがとても恥ずかしくて、嬉しくて、誇らしい気持ちになった。

 

 だから、あたしは必死に口を動かそうとした。お外に、お空に、この暖かくて幸せな時間を壊そうとする巨人がいるって。逃げましょうって、その赤ちゃんを連れて──遠くに遠くにって。

 

 あたしが口をぱくぱくしているのを見ていたアリスが微笑んでいた。全部分かっているって何も不安がる事はないって安心させてくれるように。

 

「ふふふ、だからこれはお礼。マスター(旦那様)だけで不満って事は絶対に無いけど。やっぱり、わたし(絵本)は子供達の声援があると嬉しいのだわ。ねぇ、マスター、ゲルダ。もっと近づいて、うん、力が湧いてくるわ」

 

 

 ──わたしはナーサリーライム(子供達の為の英雄)だから、ちゃんとあなたたち(子供達)を守ってあげる。

 

 

 そう口にしたアリスは目を瞑り、とても赤ちゃんを産んだばかりとは思えない元気な様子で、綺麗な声で不思議な言葉を口にし続けたの。

 

 

 ──悪い夢はおしまい。あたらしいわたし(アリス)を見つけてくれた愛しいアナタ。さぁ、栞を取って、物語の続きを見に行きましょう。

 

 

 アリスとデアーお兄さんと、そして赤ちゃんが優しい光に包まれる。綺麗な泡がいくつも浮かんで、まるで夢のような世界。

 

 

 ──おかえりなさい、もう一人のわたし(ありす)。えぇ、そう。ありす。あなたの名前はありすよ。ロックバイバイ、ベイビー。ゆりかごを揺らして、楽しい夢を見ましょう。

 

 

 さっきまでの怖い気持ちがうそみたいに無くなっていく。暖かくて、わくわくして、とても安心するような感覚。むかし、似たようなことがあった気がするわ。

 あぁ、思い出したわ。あたしがもっともっと小さくて、育ててもらっていた人に 寝る前に絵本を読んでもらったこと。もう顔も、どんな絵本かも思い出せないけど──。頬が濡れていることだけはわかったの。

 

 

 ──くるくるくるくる回る世界! 行き着く先は渦の中!! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 巨人の王自ら、生成された北欧原初のルーン。炎の流星と言うべき、千にも及ぶ火炎弾は破壊のカーテンとして、世界に降り注いだ。

 

 間違いなく、今度こそ、疑う余地なく、()()へと着弾した。

 

 

【なん、だと──】

 

 だがそれは彼の巨人が望んだ光景ではなかった。

 スルトの眼下には見たこともない世界が拡がっていた。残り少ない人が残存する白銀の地ではない。北欧では無い。ここは一体、どこだという困惑。

 

『これは一体、何が……?』

 

 ダ・ヴィンチちゃんやホームズだけではない、オフェリアやスカディ達、ほぼ全ての者が魔法のような奇跡に言葉を失っていた。

 

 それは世界というにはあまりに現実離れしていて、整合性が無く、チグハグで、まるで子供が見る夢のような世界だった。

 

 クリスマス風味に飾り付けられていた雪景色があった。常夏としか表現しようがない無人島があった。赤い薔薇が舞う巨大なコロシアムがあった。森と洞窟と氷と火山の先に城があるRPGのようなフィールドがあった。谷を越え、川を越え、車で何日もかかるような広大な土地があった。和洋ファラオごちゃ混ぜにした頭の悪い建築物とロボットがあった。ファンタジックなお菓子の街があった。

 

 幾つもの想い出が折り重なったような世界が北欧に直撃する筈だった災禍を全て受け止めていた。

 

 アリスとその身から産まれた小さな命によって織り成された宝具『世界の果ての物語(ワールド・エンドコンテンツ)』。

 

 彼女の中にある思い出を一つの世界として再現する宝具。思い出の欠片として、ビスケットゴーレム、チキン、スノーマン、トナカイマン、ヤドカリ、数多のエネミー達がスルトの僕と化した、種子や巨人達と争いあっていた。

 

 空想具現化にあらず、固有結界でもあらず。これはアリスが己が夢に従い、世界そのものを産み出す異界創造。

 

 重なるように現れた敷物(世界)北欧の世界(子供達)を確かに守っていた。

 

 

「情を交わし、セックスをし、子供が産まれる。そうやって命は紡がれ、助けて、助けられる。本当に俺は恵まれている」

 

【ガ、アァァアアッ!?】

 

 呆然としていたスルトを夢から覚ますようにみぞおちに加虐的な膝蹴りが叩き込まれた。

 絶望的なまでに体格の差があるにも関わらず、スルトの体はその瞬間、くの字に曲がった。

 

【貴、様! 何をしたァッ──!!】

 

『それはこっちの台詞よ。よくもまぁ、無粋な事してくれたわね。相手の事がまるで見えていない盲目な悪質ストーカー。貴方に恋も愛もレクチャーする義理は無いわね。私を無性にイラつかせてくれた慰謝料はしっかりと取り立ててあげるわ』

 

 跳ねるように、踊るように、白鳥が炎の巨体を蹂躙する。

 

 鋼の具足がメルトの怒りを表現するように苛烈なスピードでスルトの体中を駆け回り、切り刻んでいく。

 

 加速し続ける斬撃の嵐の中で──肉体を苛んでいるダメージ以上に、このまま攻撃を許してはいけないという焦燥感がスルトを駆り立てていた。あの男の足に斬られる度に、自身の中のエネルギー()が失われてゆく感覚。

 

【俺から、離れろッ──!!】

 

 自身の肉体を飛び回り続けるデアーを排除しようと、槍に貫かれていない無事である左半身──巨狼(フェンリル)の氷の権能が色濃く現れた左腕から、膨大な魔力を含んだ氷で構成された巨大な狼の顎がデアーを噛み砕こうと生えだした。

 

 しかし、スルトのその行動は一手どころか二手、三手遅れていると言わざるを得ない。

 

 女神の複合サーヴァントであるメルトリリスが変化した鋼の具足の特性は狙った物を必ず射殺するというクリティカル率が高くなるアルテミスの権能、レヴィアタンを彷彿とさせる水の権能、流体の如き舞うサラスヴァティーの権能。

 

 最後に彼女自身が持つ固有能力『オールドレイン』。斬り付けた傷から対象の魔力やスキル、容量を抽出する経験値吸収能力を持つ。

 

 メルトの毒は今までの攻撃の中で奪ったスルトの莫大な炎をエネルギーとして、自身の糧としていた。

 

 そして今のメルトは一人では無い。デアーを通し、邪ンヌとも繋がりあっている。流れ流れて、邪ンヌそのものである黒旗刀へ。

 メルトが好き放題吸収した神殺しの炎は確かなエネルギーとして()()()へと変換される。

 

「もう、お前のターンはないよって言ったよね」

 

『私はこんな暑苦しいもの使うつもりは無いから、しっかりと有効活用しなさい』

 

『言ってなさい──! 竜骨炎陽!』

 

 ムスペルヘイムの王の理解の外にある人が産み出す炎。悍ましき復讐と怨念が渦巻く業によって黒炎が膨れ上がる。メルトの具足を起点としてフィギュア選手のように回転するエネルギーはさらなる攻撃力を産む後押しとなる。

 回転の勢いをそのままに、吸収したスルトの炎を薪とし、尋常ならざる破壊力を秘めた黒旗刀の斬撃は噴火そのものだった。

 

 黒炎は獲物を喰らおうと開いていた巨狼を砕くだけには留まらず、氷で構成されたスルトの右半身を溶かし尽くしていた。

 

【ガァ、アアアアァァッッ、バ、バカなッ──!?】

 

 ゲルダを助ける時にも使用された黒旗刀。

 その特性は神、あるいは神に属し、信奉する対象への超特攻。加えて、竜の魔女を支配していた彼女らしく竜属性に対する特攻も存在する。

 

悪竜現象(ファブニール)だったっけ? そりゃ、悪手だろ巨人ンコ」

 

 

 ──模倣英霊──原型モデル:ジークフリート

 

 

 第二宝具開放。その身に体現するは竜殺しの英雄。黒から灰色と変貌した長髪。背中に菩提樹の葉の紋様。上半身裸から胸元と背中が大きく開いた鎧を身につけ、露出度が減る。

 無手だった左手に握られているのは竜殺しの大剣、バルムンクの模造品。

 

 スルトの肉体から降り、距離を取ろうとしたデアー。その時、彼が感じたのは浮遊感。

 すぐに地上からスカディが飛行のルーンをかけてくれていたと察する。ここまで距離があってなお手堅いサポートをしてくれる彼女に感謝した。

 最悪、ドレインしたエネルギーでメルトの脚からジェット噴射の如く飛行しようと思っていたから──。

 

 頭を上げれば──マスターを奪われ、炎の剣を翼ごと封じられ、内包する炎を半分以上吸われ、さらには氷の半身も黒炎で炙られたまさに満身創痍といった巨人の王がデアーを睨み付けていた。

 

【貴様はッ──! 貴様だけはッ──!!】

 

 何千年、屈辱の時を過ごしたと思っている。ようやく、地上へ降り立ったというのに、何も為せていない。何一つ命を壊していない。全て、全て、目の前の男に妨げられた──スルトは怒りで頭がどうにかなりそうだった。槍に貫かれた左腕を引き千切り、握り殺したい。だがそれが叶わないのを何より自身が一番良く理解している。

 

 

 戦乙女のコピー、聖女の贋作、硝子細工の人形、そして竜殺しの模倣。今のデアーの武器全てが有り体に言ってしまえば偽物で構成されていた。本来ならスルトが歯牙にもかけないような木端の戦力。だが、追い詰められていた、圧倒されていた。あらゆる破壊を断固として砕かれてしまった。

 

 両手足に偽りの太陽を滅する刃を纏い、最後の一撃が放たれる。

 

 

【なんだ──、貴様はなんだ――?愛とは、愛とは一体、なんなのだ──!?】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──俺は絶望していたのだ。

 

 ──剪定を待つこの世界で燻り続けるこの俺に。

 

 ──あの女はそんな俺、を見つけたの、だ。

 

 ──哀れな女、愚かな女。嗚呼、オフェリア・ファムルソローネ、俺はお前に一体何をしてやれ

 

 

 

 

「お前の回想に割く尺はないぞ」

 

 

「おのれぇえええええええ!! デアァァァァァァアアアア!!」

 

 

 親愛の獣が重なるように大剣と黒旗刀を構える。白銀に輝く竜殺しの魔力を竜を統べる魔女の黒炎が覆う。竜特攻の二重掛け。神代の炎に遅れを取らない人間の情熱が際限なく膨れ上がる。

 

 

「邪悪なる竜は舞い昇り、世界は今落陽に至る」

 

 

 炎は刃だけに留まらず、デアーの肉体全てを包み込む。黒炎で生成され産まれたのは悪竜を殺す邪竜。

 足から噴き出している水が渦を巻いて上昇し、黒炎へと変化する様子はグラデーションのように美しく、その美は推進力となり、より早く、より強い、斬撃となる。海の魔獣が吸収した炎は黒竜の炎に捧げられた。

 

 

「撃ち落とす──」

 

 

 まだ終われない、なお足掻こうと、スルトが残存する魔力の全てを行使して、口から大炎を吐き出した。宝具も、ルーンも、取り込んだ権能も封じられた王に許された最後の抵抗。

 そして、偽りの太陽が吐き出す炎に飲み込まれてなお、歩みを止めない黒竜と化した大斬撃。

 黄昏に終止符を打つ刃が破壊の炎全てを掻き消し、巨人の王の肉体へと達する。

 

 

「『邪竜円舞』!!」

 

 

 炎が消える音がした。太陽がひび割れる音がした。世界が変わる音がした。ようやく、春が訪れる音が──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アリスとデアーお兄さんに挟まれて、夢心地な気分。光の中で不思議な物を見た気がする。怖くて、大きくて、ぼぉぼぉ燃えている巨人をまたぼぉぼぉ燃えている黒くて長い生き物が真っ二つにしていたの。

 

 同じ火なのに、何故か黒い方は怖くなくて、むしろ安心感があった。それはあの炎の色を見たのが初めてじゃないからだわ。

 

 あぁ、きっとデアーお兄さんとオルタお姉さんがまたあたしを助けてくれたのね。

 

 消えていく怖い巨人を見て、あたしは二人と初めて会った事を思い出していた。同じようにあたしを襲っていた巨人を真っ二つにしたあの時と。

デアーお兄さんはここにいるし、あんな高い所にオルタお姉さんが行けるわけがないのに、それでもあたしはあそこに二人がいるって信じて疑わなかった。

 

 だってあんなに綺麗な炎を出せるのなんて二人しかいないから──。

 

 太陽が無くなって、新しい命が産まれる。

 

 あたしはこの光景を一生、忘れることはないだろう──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




世界の果ての物語(ワールド・エンドコンテンツ)

詳細はグダお英霊編『疾走する青春の桃色ジャンクフード ②(第4章)』を参照。
【捕捉】
英霊編においてはアリスとその娘が暮らしているカルデア島を一つの世界として再現していたが、今回はアリスが体験してきた今までの旅路が合成キメラのように一つとなって再現された。彼女自身の印象に左右されるので、特異点がほとんどなく、イベント時空が多いのはそういう事。産まれたばかりのありすの力も借りている。
その時々の彼女の内面の変化によって再現される世界もガラリと変わっていく。固有結界のように固定化された世界では無いが、スルトのルーンから北欧全てを守る程の規模で展開出来るので普通に魔法の域。













【没シーン:スルト決着】

「…………おめぇはすげぇよ。よくがんばった……たった一人で……今度はいい奴に生まれ変われよ……一対一で勝負してぇ」

オフェリア「ぜったいやめて」

「待ってっからな! 俺ももっともっと腕を上げて……」

邪ンヌ「もうこれ以上はいいでしょ」

「またな!」








次回、2部2章メインストーリー部エピローグ。





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エデンの庭(第2部 2章 完結) 

カルデアコレクションにて楊貴妃、両儀式(剣)更新。

マテリアルⅦのスルトの所を見直して、「週末のワルキューレ②」の後半部分を若干改訂。やっぱりスペックだけ見ると壊れですねスルト君は。キリシュタリア様も期待かけますわこれ。原作カルデア勢は一体、これにどうやって勝ったんだ……。






 ひとりぼっちの氷の神さま、それにしたがうたくさんの御使い、そして1万人の人が住むそんなおうち(世界)がありました。

 

 そのおうち(世界)には絶対にやぶってはいけない決まりごとがありました。

 

 •子どもを産めなかった人は15さいになったら集落から出なければならない。

 •子どもを産んだ人は25さいになったら集落から出なければならない。

 •それ以外で外に決して、出てはいけない。

 

 門から外へ出ていった人たちは誰ひとりとして戻ってきませんでした。

 みんな、ヴァルハラへ連れていってもらえるように御使いに決められたつがいと、子どもを産んでいこうとがんばります。

 

 しんしんと雪がふります、さむいねって白い息がにげていきます、高い高い木のかべの向こうに何があるのだろう。

 

 それでも人間は慎ましく、幸せに暮らしていました。

 

 

 

 そんな、ある日。お空のおひさまが大きな巨人となって大あばれをしたのです。とても長い剣をふって、火のたまをたくさん落して、うでから狼を生やして、口から炎をはいて、みんなのおうち(世界)をめちゃくちゃにしようとしたのです。

 

 氷の神さまや、御使い、神さまの娘や、たまたま遊びにきていた大きな大砲や剣や槍をもったお客さんたちも悪さをする巨人を止めようとしましたが、まるでかないません。

 

 

 そのとき、別のおうち(世界)からやってきた神さまが悪い巨人をこらしめたのです。

 大きな盾を出して、槍をのばして、空をとんで、かべをつくって、けりを入れて、竜になって、もうめちゃくちゃです。

 

 巨人がいなくなって、めでたしめでたしとはいきません。

 あまりに巨人が大あばれしたので、君たちはここから出ていってくれと地球さんが怒りはじめたら、さぁたいへん。

 

 氷の神さまは今までおひっこしなんてしたことがありません。ひとりぼっちだったので、ひっこしが出来るおうちをおしえてくれる友だちもいませんでした。

 

 困った、困ったと泣いていると別のおうち(世界)からやってきた神さまがじゃぁ、うちにおいでよとおひっこしを手伝ってくれたのです。

 

 お空にびっくりするぐらい大きな穴が空きました。鍵をもった別のおうち(世界)の神さまのみこ様がたくさんの手をうぬうねとそこからのばしていました。

 

 別のおうち(世界)の神さまは白い手をたくさん生やして氷の神さまの世界を持ちあげると、彼女にわたしました。

 

 みんなのおうち(世界)は大きな穴を通って、遠く遠くへ。はじめてのおひっこしを簡単に終わりました。

 

 

 新しいおうち(世界)はこわい巨人も獣もいません。前いた所より緑が多くて、あたたかく、ぽかぽかとようきな風がふいている、のどかな所でした。

 

 さて、新しいおうち(世界)に来たので、これからはそのおうち(世界)のルールに従わなければいけません。

 

 •長生きできるように頑張ること。

 •集落の外に出るのは自由。ただし、小さい子どもはひとりで出ないように。

 •自分がうんだ子どもをいつくしんであげること。

 

 そして──

 •これからは御使いに決められた人ではなくて、自分の好きな人とつがいになること。

 

 引っ越したばかりのみんなは新しい決まりごとにお互いの顔を見あいます。何をしたらいいのか分からないと門の前で途方に暮れていました。

 

 出ちゃ駄目だよとずぅっと言われていたものが、いきなり出てもいいと言われて困ってしまったのでしょう。

 

 しばらく、だれも動けないままでしたが、ひとり、またひとりと好奇心には勝てず、門の外へと出ていきました。

 

 門の向こうがわにはきらきらの宝ものがたくさんでした。

 

 知らない草、知らない花、知らない動物、知らない川、知らない山、知らない風、知らない色。助けてくれたここのおうち(世界)の神さまは(はる)がきたとおしえてくれました。

 

 (はる)──はじめて聞く言葉にひっこしてきたみんなはわくわくです。

 

 楽しそうに跳ねて、駆け出していきました。

 

 それはそれは嬉しそうに──。

 

 

 ぴょ────んと。

 

 

 

【月曜日に生まれた子供(世界)は】 著者:アリス から抜粋。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、この絵本は何だ」

 

「北欧異聞帯……元異聞帯かしら、そこで暮らす全ての人間に頒布する予定の本よ。新しいルールに適応する為に簡単で馴染みやすいものを使うって」

 

「どうせあの(デアー)の考えだろ。真面目なのか、ふざけているのか……まぁ、お互い生きていて何よりだ」

 

「それはこっちの台詞よ。あなた、多分クリプター(私達)の中で死んでるものと扱われているわよ」

 

 彼女がこの世界に来てから一週間後。

 元ロシア異聞帯。モスクワの王城、その貴賓室にて二人のクリプターがテーブルを挟んで、座り心地の良いソファに腰をかけて向かい合っていた。

 カドック・ゼムルプス、オフェリア・ファムルソローネ。二人の共通点を挙げるならば、同じ男に敗北し、空想樹ごと強奪された点だろう。いや、救われたという面ももしかすれば、あるかもしれないが──。

 

「そうだろうな。そして君もこれからは僕と同じ扱いだ。死体が見つかっていない以上MIA(行方不明)って所かだろうが……。しかし、あいつと初めて会った時、あれだけ取り乱していた君が随分と落ち着いているな。最悪、廃人になっていてもおかしくはないと思っていたよ」

 

「縁起でも無いこと言わないで頂戴。けれど、そうね──この右眼で色々と可能性を垣間見てしまったから、あなたの懸念も正しいと言えば、正しいわ。しばらく引き籠っていたわけだし、具体的に私が何を見たか、知りたい?」

 

「結構だ、好き好んでSAN値を削りたいとは思わないからな。ただ、北欧異聞帯で何があっただけは聞いておこう。ロシア異聞帯(こっち)の話と情報交換といこうじゃないか」

 

 ロシア、北欧それぞれ、凍てつく気候が支配する異聞帯を担当した二人は事の詳細を話した──具体的にはあのビーストが来てから空想樹が切除されるまで。さすがにイヴァン雷帝を破った巨大ゴーレムの中でセックスしていたとか、魔眼でデアーの○○○(輝いている)を焼き付けてしまったとか、お互いの恥部にあたる部分は意図的に隠したようだが。

 

「ムスペルヘイムの王、スルトか。ちっ……あいつめ、僕の時は一体どれだけ手を抜いていたんだ……」

 

「軽んじられてはないと思うわ……。ただ、全てを賭して排する敵とは認定されてなかっただけよ。きっと彼にとって私達二人はあくまで挑戦者の域を超えてなかった……」

 

「フン、随分と理解しているようなことを言うんだな。それもあいつとパス(回路)が繋がったおかげか?」

 

 デアーに対して訳知り顔で話すオフェリアの心境の変化を訝しんだカドックは彼女の手の甲に残った最後の令呪の一画を指す。パス(回路)の先は番外の獣……自分達に辛酸を舐めさせた男がいるのだろう。だがあくまでそれはパス(回路)という道が繋がっているだけで、二人に魔力のやり取りは一切無い。

 

 そもそもからして、平気でサーヴァントを受肉させる魔力と言っていいのかも分からないナニかを無限に等しい量で内包している()のデアーにとって、魔術師からの魔力供給など必要無いだろう。

 

 右眼に輝く遷延の魔眼も接続されている弊害か、未だにこの世界線では無い別の可能性のデアーを何度か夢に見る事があるが、以前と比べれば少しは慣れたようだった。ただピンク色系統の夢に対しては耐性など出来るワケも無かった。

 

 主従の関係では絶対に無いのだろう。あちらもこの繋がってしまったパス(回路)に関して、破棄することもしなければ、特に言及もしなかった。

 自分から言い出せば、全ての繋がりを消してくれるかもしれないが……何故だかオフェリアはそうする気が起きないまま、今に至っている。

 

「試しにそれで何か命じてみればいいんじゃないか?」

 

「通じると思うの?」

 

「いや、思わない。……で、どうするんだオフェリア、今の君がカルデア側につくと言い出しても僕はそこまで驚かないが」

 

「それは……ないわ。えぇ、クリプターとしての責務も果たせず逃げ出してしまった女だけれど、やっぱりキリシュタリア様の邪魔は出来ないもの」

 

 期待には応えたかった──そこに偽りは無い。けれど、その願望に対して、力量も精神も何もかもが足りていなかった。あの輝きには魅せられた…………しかし今の自分を冷静に見つめるとよく分かる──きっと自分はキリシュタリア様が進む道を最後まで共に歩む事は出来ない。間違いなくどこか中途半端な所で斃れるだろう。そして期待はかけられていたとしても、キリシュタリア様にとっても私という存在は必須では無い。仮に私がいなくてもあの人の歩みに陰りが生まれることは絶対に無いだろう。それが寂しくもあるし、嬉しくもある。憧れではあったのだろう、だが理解には程遠いと──オフェリアは自嘲めいた笑みを浮かべた。

 

(私達二人は助かった。けどそれはあくまで(デアー)にとって私達が脅威じゃなかったから)

 

 オフェリアは近い未来で必ず、デアーとキリシュタリアはぶつかると確信する。

 キリシュタリアが治めるオリュンポスは七つあるロストベルトの中でも頭一つ抜きん出ている。ベリルが出来レースと言ってしまうぐらいには神々が未だ健在する星の都市は()()であった……汎人類史を凌駕する程に。

 

 彼女が知るキリシュタリアは魔術師としては傑物。魔境極まる時計塔で君主(ロード)相手にも引くことは無い姿はまさに王と言えたが──戦闘技量に関しては彼女に劣るレベル。

 当然、どれだけ戦闘力を高めたとしてもそれはあくまで魔術師の範疇であり、サーヴァント相手には何の意味も持たないだろう。英霊相手に戦える人間など()()といえる、滅多にあることではない。

 

 あぁ、仮にキリシュタリアが従えるサーヴァントがどれだけ優秀だったとしても盟友ゼウスと呼ばれる存在が規格外だったとしても、異聞帯という特殊な環境でキリシュタリアが強大な力をもったとしても──。

 今のオフェリアは妄信的にキリシュタリアが絶対に勝つと断じることは出来なくなっている。

 

 デアーが七人のクリプター全員の前に初めて姿を見せたあの日、錯乱して消えてしまった彼女は見ていない。デアーがクリプターの会議の場に使われていた人類の技術を凌駕した建造物を崩壊させた惨状を。

 

 見ていないその彼女だけが──そしてデアーの可能性を垣間見て、今なお繋がりを持っている彼女だけがクリプターの中で最も彼の力量を正しく理解している。

 

 だから、オフェリアは危惧する。デアーがもし、キリシュタリアを排除すべき敵だと認定してしまったらと──。

 

 片や同じ仲間であり、自分を導いてくれた男、片や敵でありながら、自分を救ってくれた男。両者とも()()()()()()を見せてくれたという共通点はあるが、その二人がこれからぶつかり合うということを考えると何とも憂鬱な気分にさせられてしまう。

 

(もし、私が彼にキリシュタリア様の助命を嘆願したら……聞いてもらえるのかしら?)

 

 きっと効力なんて無いであろう令呪の一画。デアーとオフェリアを繋げている証をぼんやりと目にしてそんな益体の無いことを少し考えて、首を振る。いくら何でもこれ以上無償で助けてもらうのはさすがに甘えが過ぎるだろう。仮にきかなかったとしても令呪で強制するだなんて恩を仇で返すような真似は敵であってもしたくは無かった。

 

 何かを願う以上、こちらもそれ相応の対価を差し出さなければならない。

 

 ならばこの体でも捧げるか? とオフェリアの思考にふとよぎった。コヤンスカヤの言う事を信じるならば、好色家とも言えるあの人類悪は自分の身内()には存外に甘いと。

 

(って……なんでそっちの寄りの思考になるのかしらねっ! あぁ、これも全部、彼のせいね間違いなく!)

 

 

「なら、どうするんだ?」

 

 カドックの至極真っ当な問いが少し頬を熱くさせていたオフェリアを現実へと引き戻す。

 

「そうね……。どうしましょう?」

 

「おい」

 

「困ってるのよ。『何をしてもいいし、何を為さなくてもいい』って結構、難しいのね」

 

「君の所の女王様は何て言ってるんだい」

 

「『好きにせよ』って」

 

 

 

 

 

 

 オフェリアの網膜に今も焼き付いている決着の光景。デアーが生み出した黒炎の竜がスルトを同化した空想樹ごと喰い破り、上空で巨人王の残滓を一切残さず消滅させた。

 

「決着ぅぅぅぅぅ! いぇえええええい!」と彼とマシュ、そのサーヴァント達がハイタッチしている(メルトリリスだけは手を下げて控えめだった)中、スカディは呆けていたオフェリアを強く抱き締めていた。

 

 ──よくぞ、無事に戻ってきたっ……

 

 慈愛深い女神だということは元から知っていたが、それはあくまで超越した高みから人間を見守るという神としての愛だと思っていたので、まさかこんな人間のように心配されていたとは……オフェリアからすれば、自分に対する好感度の高さも含めて全くもって予想外ではあったようだ。

 

 3000年北欧を苦しめていた炎もスルトと共に消え、配下であった巨人や魔獣たちも二匹のナマモノ(虎と猫)や看護師団やチョコサーヴァントの群れに掃討されていった。

 もはや女王スカディが氷雪の魔力で凍てつかせる必要も無く、文字通り世界が変わった北欧には3000年ぶりの春がやってきたのだ。

 

 当然、全てが順風満帆とはいかない、何せ千年単位で続いた管理方法をいきなり変えていくというのは無理な話、環境も慣習も生き方もこれから北欧は少しずつ変えていくのだろう。

 だがきっと焦る必要は無い、何せ人々の時間は前よりもたくさんあるのだから。

 

 そしてスカディもスルトという呪縛から解放されたオフェリアをこれ以上、北欧に縛り付けるつもりは無いから「好きにせよ」という言葉を送ったのだろう。育成する空想樹すらないのなら、元々部外者であった彼女にこちらの事情に付き合ってもらう義理は無く、自由に生きて欲しいというスカディの願いも籠められていた。

 

 シグルドは自身の肉体が迷惑をかけた償いとして残り、北欧の管理に尽力すると……ブリュンヒルデも当たり前のようにそれに付き従うようだ。シトナイも斜め方向の結末に色々とぼやきながらも義母の手伝いをしているようだった。退去するだろうと思われていたナポレオンも「あくまで勘だが……俺達の役目はまだ終わってない気がしてな……何なら俺と契約してもらっても構わないぜ!」とこの世界に居残る事を選んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ま、お互い敗北して、あいつの箱庭に拉致られた身だ。細かいことを考えても仕方ないだろう。ここは神秘というのすら烏滸がましいぐらいに滅茶苦茶なルールがまかり通っている世界だ。君はここ(ロシア)まで、あの摩訶不思議な()()()()で来たのだろう?」

 

「えぇ……あれは一体なんなのかしらね? 外見は不安になるぐらいに簡素なのに乗っただけで勝手に目的地まで進むし、屋根も無い剝き出しの乗り物だったけど、あれだけスピードを出してもまるで屋内にいるように風の影響も無かったわ。魔術による結界が張られているわけでも無かったし……」

 

 カドックの消息を知ったオフェリアが一応同じクリプターのよしみとして直接に会いに行こうと決めた時、デアーに見せられたのがその木で出来たトロッコだった。もう本当に人一人ぐらいしか入れないTHE・トロッコ! としか表現出来ない外見であった。

 線路も当たり前のように引かれていて、モスクワまで続いていると教えられた。いつこんなものを造ったのかとか、そもそも勝手に線路を引くな(スカディに即許可をもらえたと言われ、押し黙ったが)とか言いたいことが山のように出て来たが、善意から来る行為ということで無下には出来ず、お礼を口にして乗った──。

 

 さすがにいきなり時速200kmでスタートした時や、宙に浮いた線路の上を走り出した時は命の危険を感じたそうだが、それでも彼女自身の言う通り、特に身の危険は無く、目的地には辿り着いた。冷静に振り返ると、動力も絡繰りも一切不明な乗り物に体育座りで半日近く揺られていたのは結構な恐怖体験な気もするが。

 

(途中途中で休息出来る停留所があって助かったわ……。まぁ、そういう気遣いはしてくれるのよね──)

 

 疲労は溜まったが、人類がまだほとんど住み着いていない大地という景色を独り占めした時は思わず感動の溜息が出ていた。

 ロシアに入ってからも獣人達がハンマーやピッケルを持ちながら、狂ったように柵で囲われた畑を耕したり、女の人の像を建て、拝んでいるというまず神秘薄れた汎人類史では絶対に見れない光景も含めて貴重な経験を彼女に与えた。

 

 余談だがまた半日揺られてロシアから帰ってきたオフェリアがデアーに「今度は宿泊出来るぐらいな豪華列車を造る(ビルドする)から! っていうかわざわざトロッコ使わなくとも俺の単独降臨で即連れていけたよね」とサラッと言われたときは一発どつきたい気持ちになったのはこれからの話。

 

「あぁ、あれは大地母神(ポール・バニヤン)からの奇跡(クラフト)だ」

 

「ポール・バニヤンって確か、北米のほら話に出てくる……」

 

「例のごとくあいつのサーヴァントだよ。君も見ただろう。畑も馬鹿に多く、寒冷な気候のロシアしてはやけに作物が育っていたと」

 

「そのバニヤンっていう彼……彼女? が創ったというの?」

 

「いや……厳密には違う。あの()()()木こりの巨人が手を加えたのは最初だけだ。未開の原住民に文明を教えるように見本を見せた。土や岩がブロックみたいに簡単に崩れるんだぞ? 土を変えて、少し鍬を叩いて、種を植えるだけで気候関係なく作物も育つし……そしてまぁ、それを見て、デアー曰く物造りの喜びに目覚めたものがビルダーズ(造り手)となり、大地母神(ポール・バニヤン)奇跡(クラフト)の一端を扱えると。つまり、多くのヤガ達が狩猟以外で食いでを稼ぐ方法を知ったわけだ」

 

「凄いわね……。飢饉で苦しんだ為政者達が聞いたら卒倒しそうだわ……」

 

 カドックの言う通り、この空っぽだった星を開拓しているポール・バニヤンの新たな宝具『驚くべき奇跡(マーベラス・クラフト)』は彼女が槌を振るえば、土も岩も木も削れ、削ったものは同じ質量の立方体のブロックとなって残る。ブロック同士を掛け合わせて新たな物を産み出すのもよし、削った大地に作物が育つ土を埋め込むのもよし、自分達の力でそれを行えるのは常に食料関係で悩まされているヤガにとってはまさに天の助けだった。

 

 バニヤン以外にも「いやーマインクラフトとか完全にニート(選ばれし者)の神器。やることが無限に出てくる……時間泥棒はいい文明だ」と開拓をしている白い巨人の姿が見えたとか何とか。

 

「お陰で、雷帝を倒した巨大ゴーレムに続いてロシアは巨女ブームだ。女性はより大きく、包容力があるべきだと熱弁している奴らがあちらこちらにいる。あぁ、まったくどうかしている」

 

「えぇ、そうね。女性の魅力を一つに決めつけるのは──」

 

「白髪片目カクレ色白皇女系がナンバーワンに決まっているだろうが。いや具体的に誰かとは言ってないが。まぁ、一時期は気の迷いで薄桃二刀流のジャパニーズサムライも悪くはないと思ったこともあるが……」

 

「えぇと…………カドック?」

 

 

「その通りだともメカクレ深度Dの少年よ!」

 

 

「誰!?」

 

 なんか色黒の伊達男(変態)が出て来た。

 

「んんぅ、失礼。芳醇なメカクレの匂いに惹かれつい単独顕現を。私の名はバーソロミュー・ロバーツ。独ッ!! 身ッ!! 以後お見知りおきを……運命の女神よ。あぁっ、私はあなたの眼帯になりたい──」

 

「ひっ」

 

 ナポレオンといい、スルトといい、これ(変態)といいオフェリアという少女はあれな男に言い寄られる星の下にでも産まれているのか。悲鳴を上げてドン引いているオフェリアにも変わらずのイケメン(変態)スマイル。この男のメンタルは強すぎる。

 

「おいお前、どこから入ってきた」

 

「あぁ、私はこの国の皇女のファンクラブ一桁会員なので、殺戮猟兵(彼ら)とも顔馴染みだし、ここは顔パスなのだよ。ところでカドック君、もう少し前髪を伸ばす予定はあるかな? そしてメカクレ同士で絡み合うという楽園(エデン)を私に──」

 

「つまみだせ」

 

 部屋の外で控えさせていた殺戮猟兵(オプリチニキ)数人がかりで連行される変態。「ロバーツ死すともメカクレは死せず!」と拘束されながら迫真顔で頭のおかしい事を言っている。

 王族が住む城なのにセキュリティガバガバ問題。殺戮猟兵(オプリチニキ)も雷帝のモノだった頃よりは融通がきくようになったのは良いのだが、いかんせんフランク過ぎる……キャラ崩壊のレベルで。

 絶対に自分のサーヴァント(アナスタシア)がデアーとか汎人類史のアナスタシアが扱う筋骨隆々のヴィイに遭遇したショックのせいだとカドックは信じて疑わない。

 

 

 

「はぁ……色々と話が逸れたが、捕虜とも言える僕にはここで彼女(アナスタシア)皇帝(ツァーリ)にするぐらいしかやることは無い」

 

「でも今はそれがやりたいことなんでしょ?」

 

「ま、あいつに御膳立てされた状況に関しては一言ぐらい申したいがな。……実はデアーが異星の神だったとかいうオチは無いか」

 

「笑えない、ジョークね」

 

 かつては目下の隈を濃くさせ、常に何かに切迫されるようだった男が随分と余裕のある顔をするものになったとオフェリアは感慨にふける。さっきの白髪片目カクレ色白皇女系がどうこうも含めて場を和ませようとするジョークも言えるようになったのだから、ペペが見たら口を開けて大笑いするだろうと懐かしいかつての仲間の顔を思い出す。

 

「でも、そうね……。やりたいことが出来たっていうのは私も一緒よ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ▲▲▲

 

 

 

 

「ほら、湖の白鳥さん(メルトリリス)。わたし達の子ども、しっかりとその手で抱いてくれないかしら?」

 

「正気? 私の感覚障害の事は知っているわよね、そんな女の手に大事な赤ん坊を預けるとか……」

 

「ふふ、大丈夫よ。この病院を守ってくれていたあなたなら信頼出来るわ。きっとありす(わたし)もお礼を言いたいだろうし」

 

「産まれたばかりで何を喋るっていうのよ……。……………………あぁ、はいはい抱いてあげるから、安静にしてなさいっ」

 

境界無き病棟(ボーダーレス・ナイチンゲール)』の一室、アリスとありす(赤ん坊)がいる病室にはナイチンゲールの厳格な面会スケジュールの元、多くの者が訪れた。純粋に祝福する者、羨ましがる者、赤ん坊の可愛さに頬を緩ませる者、次こそは自分だと意気込む者、興奮で痙攣する狩人等々。

 

 マシュに何故か連れてこられたオフェリアの目の前で自身のサーヴァントを圧倒した下半身の防御が薄い女性が汗を滲ませながら、絶対に落とさないように……これ以上無い程に真剣な顔で託された赤ん坊を抱いていた。

 マシュはマシュで感極まって、震えながら、胸に両手を当てて嗚咽を漏らしていた。

 

「マシュ、アンタ……今でそんな興奮してたら、自分の番の時、死ぬんじゃないの? もう少し落ち着きなさいよ」

 

「落ち着けるワケないじゃないですか! だってッしぇんぱいぃのぉッ、えぐっ、こどぉ……ひくっ……グスッがぁぁっ」

 

「あぁうん。何言ってるかまるで分らないわ。あぁもうほら、鼻チーンしなさい」

 

 ティッシュを持った邪ンヌに介護されるマシュちゃん。

 感情豊かになった事を喜ぶべきなのか、Aチームにいた頃のクールさの影すら無くなってポンコツになった事を悲しむべきなのか、オフェリアは何とも微妙な気持ちになったが……それを差し置いて一つ気になることがあった。

 

「そこにいる、アリスさんと言ったかしら? 赤ん坊っていうならお父さんは誰なの?」

 

 病室には男がデアーしかいない。だがマシュとの惚気を聞かされたオフェリアはデアーの女性遍歴はコヤンスカヤの虚言だったと思っている。まさか彼では無いだろうと考えていた……この()()()における彼はいたって好青年だと。

 アリスと呼ばれる母も随分年若く見えるが外見通りの年齢では無いのだろう、さすがに二桁もいっていない幼い娘が出産するなんてまさかそんなと……ちょっとした疑問のつもりで聞いていた。

 

 周りの「え、コイツなに言ってんの?」という空気には気付いていない中、一人の男が手を挙げていた。

 

「俺、この娘のお父さんなんだよ」

 

 それはさながらスチル(一枚絵)が用意されそうなぐらい眩しい笑顔で今すぐにでも──大丈夫だよ、俺も、これから頑張って行くから──をしそうな程に澄み切っていた。

 

「は?」

 

 認知したくない現実がオフェリアを襲う。ピシリと石像になった彼女に畳み掛けるようにアリスがベッドにかけながら、傍らにいたデアー腕を抱き締めていた。

 

「彼、私の旦那さんなの」

 

「え、え、え? いや、その、じゃあ、マシュは……?」

 

 その質問に答えるように回復したマシュが渾身のドヤ顔でデアー空いている方の腕を抱き締めていた。

 

「私、先輩の奥さんなんです」

 

「私、彼のプリマドンナ(伴侶)なの」

 

「あ、あたしもお兄さんのつがい(予定)なの!」

 

「じゃ、じゃあ私は……コイツの相棒、いやパートナー……じゃなくて、こ、こここ」

 

「お姉様、見切り発車は如何なものかと思います」

 

「うっさいわね!」

 

 あぁ、何ということだとオフェリアは天を仰ぎたくなってしまった。噂は真実であったと、自身を除いてこの部屋にいる女性は皆、彼の毒牙にかかってしまったと……。いやここにはいないだけでまだ他にも何人かいるのかもしれない──。

 オフェリアに宿ったのは決意。それはデアーに立ち向かった時同様、心の内から踏み出した彼女本心のエゴ。マシュを守護(まも)らなければ……という胸に宿った炎は彼女の膝を折ることはしなかった。

 

 

「不潔! え、え、……えっちなのは良くないと思うわ!」

 

 絞り出した言葉は何ともまぁ、目の前の男に言うのは3年程遅かった気もするが。マシュをデアーから引き剝がし、雛鳥を守る親鳥のように抱き締めこちらを威嚇する姿は健気で本来なら先輩とのスキンシップを邪魔する者は盾で峰打ちKO確定なマシュでさえも苦笑してしまうものだった。

 

 マシュとの話を聞いた時、彼女の豹変ぶりに押されてしまった時もあったが……オフェリアは心の片隅では二人はお似合いだと思っていたのだ。

 だから今はマシュを守るだけではない……。立場的には後輩にあたるこの男を更生させると。大事な友達と後輩をどこに出しても恥ずかしくないボーイミーツガールにして見せると彼女は誰でも無い自らの心に誓った。

 

 その決意が人理修復の100倍難しい偉業であることをこの時のオフェリアが気付けば、違う可能性(未来)もあったかもしれないが──。彼女自身がピン留めしないというのなら、後はもうなるようにしかならないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

▲▲▲

 

 

 

 

 

 

 

 

「私はマシュとデアーをきちんと健全な男女の道へと更生してみせるわ。これは誰に決められたわけでもない、私自身のやりたいことよ」

 

 瞳に炎を宿し、強く宣言したオフェリアを見て、カドックは「こいつは自殺志願者か」と戦慄した。オフェリアの頭上に無謀というデバフが異常に重ね掛けされている。

 

(デアー)も根は悪い人ではないのよ。女癖の悪さを正せば、きっとマシュとお似合いの男になるわ」

 

 なんかDV夫に洗脳されている妻みたいな事を言いだした同僚にカドックは頭が痛くなってきた。こうガソリンを被って火口に飛び込もうとしているかつての仲間を止めるべきかカドックは数秒悩み、出した答えは。

 

「ウン、ガンバレ、オウエンシテル」

 

 安定のスルー。本人がやりたいというのなら止めるのも野暮だろうともっともらしい言い訳を思い描きながら放任を選んだ。巻き込まれるの怖いもんね。触らぬビーストに祟りなし。

 

「デアーの本質は繋がりの強さ、関係を持った女性の数だけ強くなるというのなら、これ以上彼の毒牙にかかる女性を増やさないように私が監視する事は彼自身の弱体化──つまり私のこの行為も残ったクリプター、ひいてキリシュタリア様の為にもなるということよ!」

 

 ならねぇよ馬鹿──というツッコミをカドックはグッと飲み込んだ。

 

 まず、デアーの第三宝具『竿繋ぎの多元性交(パラレル・セックス)』がある時点で彼はマルチセックスが可能なので、肉体が一つのオフェリアが常に見張っていた所で彼がオフェリアと一緒にいる事もセックスだと判断してしまえば、複数体で存在したデアーはいつも通り、至る所でライフワーク(エッチ)に臨めてしまう。一魔術師が覚悟を決めた程度であの男が止まるのなら、まずカルデア最後のマスターはビーストになっていない。

 

 どうしてあの男に関わると誰も彼もがおかしくなるのだろうか……。本人じゃなくともストレスの種を持ってくる元凶を一発殴りたい気持ちになった。殴った所でカドックの拳が負傷するだけだろうが。

 

「マシュも今は恋に盲目だけど、きっと分かってくれると信じているわ。吉報を待っていて頂戴」

 

(いや、盲目なのは君だ。眼帯を両眼にでもつけているのか)

 

 やりがいのある目的を見つけ非常に生き生きとしているオフェリアはその後、退室した。彼女の背中を苦虫を嚙み潰したような顔で見送ったカドックは残された部屋で独りごちた。

 

「木乃伊取りが木乃伊にか……。千里眼なんてなくても、どうなるか分かるな」

 

 吉報ならぬ凶報が来るのはいつだろうな──と彼は小さく溜息を吐いた。

 

 

 

 

 





驚くべき奇跡(マーベラス・クラフト)

ランク:EX
種別:対民宝具
使用者:ポール・バニヤン
大地を削り、木を伐採し、かまどで生成し、住居を建て、作物を育て、家畜を増やし、村を造り、開拓を進める。破壊と創造は表裏一体。人理における全ての人間はそうやって繁栄してきた。物造りの道に終わりは無く、さぁ民よビルドの時間だ。
ポール・バニヤン振るう槌、それが産み出す奇跡(クラフト)奇跡(クラフト)を目にした人々に同種の力をもたらす御業。その全てが彼女の宝具である。破壊の後に産まれる、小さく立方体となったブロックの山で彼等はいつまでも創造の楽しみに悩むだろう。マインクラフトなのか、ビルダーズなのか……。
オフェリアを運んだトロッコとレールはデアーとバニヤン共同作。
試作品として上空2000mからのジェットコースター加速トロッコに乗せられたカドックは口から虹を吐き出した(一緒に乗った異聞帯のアナスタシアは地味に楽しんでいた)。



ロシアでは空前の巨女ブーム。
雷帝を打ち破った白石のゴーレム――救済の女神。
鋼鉄の化身、巨大メカエリチャン――守護の女神。
怠惰こそ文明、アルテラマン――文明の女神。
創造の喜びを。ポール・バニヤン――開拓の女神。
くぅくぅお腹が鳴りました。キングプロテア――渇愛の女神。

この五柱の誰推しかでヤガ、殺戮猟兵(オプリチニキ)達は日夜、SNSで激しい戦いを繰り広げている。バーソロミューは渇愛の女神推しらしい、死ぬほどどうでもいいね。














【空  想  転  居】

第2部 2章 完結




次回はロリ抱きます。









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幼女伝記(ゲルダ前編)

おひさ(土下座)。

カルデアコレクションにて、ブラダマンテ、清少納言更新です。
新年初(もう二月)のエロは金髪北欧系幼女です。今回は導入部分です。

お待たせしたお詫びに明日も投稿し(まんじ)。プチョヘンザ!








ちゃんマス「春は人妻、夏は青姦、秋は幼女、冬は乱交」
なぎこさん「それな」
かおるっち「ぶっ飛ばしますよマスター!?それとなぎこさんも適当に返事しないで下さいっ!」









 世界(宇宙)が変わり、偽りの太陽(スルト)は消え失せ、3000年の冬を越し、北欧には春が訪れた。

 延命措置としての人減らしの『旅立ちの儀』はもはや必要とせず、夜明けを迎えた100の集落全てに御使い(ワルキューレ)が舞い降り、新しい()()が下された。

 

 ──これより、我らが定めたつがいではなく、自らの意志で選択し、他者を尊重し、()()()()()者をつがいとせよ。

 

 今まで決められたレールの上を何一つ疑問を持たず生きていた人の子らにとってあまりにも困難で優しい神託だった。

 外に出る自由と、人生を謳歌する猶予と、愛する意思を突然与えられた彼等の顔色は困惑しか浮かんでいなかった。

 

 23集落の一人の少女を除いて──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 アリスの容態も落ち着き、スルト及び『旅立ちの儀』という病も治療が完了した以上、『境界無き病棟(ボーダーレス・ナイチンゲール)』は新たな患者を求めて、北欧を後にした。

 ナイチンゲールの使い魔『白き貴婦人』達の手に運ばれ、小さくなっていく病棟を見送ったゲルダの心はどうしようもない寂しさに満ちていた。

 

 デアーも邪ンヌもアリスも自分と住む世界が違うという事は初めから分かっていた。

 今生の別れではなく、きっと彼等はまたここに遊びに来てくれるのだろう。限られた空間──集落で育ったゲルダにはこの短い時間で本来なら出会う事が無いであろう沢山の友人が出来た。

 アリスの見舞いに来た──ナイフを持った危なげな銀髪の少女、不安になるオーバーオールの着方をしている少女、邪ンヌと似た大人ぶっている少女、いたずらっ子で不思議な雰囲気がする少女。集落の中で暮らしていたら決して出会う事が無かったタイプの刺激的な同年代の友人。

 

 そして、自身を助け、親、愛、夫婦という概念を語ってくれた太陽よりも優しく暖かい陽だまりのような男性。

 

 離れたくない。もっと一緒にいたい。新しい世界を沢山見たい。

 御使いに定められた好きでもない男性と子をつくる──かつては露程疑問を抱いていなかったその決まり事にも断固として首を横に振りたかった。

 

 だから、その御使いの新たな()()はゲルダにとって渡りに船だった。一騎のワルキューレがその神託を告げた集落の広場にて──()()ツルハシ片手に鉄と木材のブロックを山のように抱えて、おかしなものを造り出そうとしていたデアーの腰に抱きついた。

 

「あたし、このお兄さんとつがいになりたいの!」

 

 それは一人の少女がなけなしの勇気を振り絞った末に踏み出したとてつもなく大きな一歩だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 決意を固めたゲルダの中でデアーと一緒にカルデアへついていく事は決定事項であった。朗らかな印象を受けるが、集落の少女の病気の為に神託を破って、巨人が闊歩する外へとその身一つで飛び出したという前科がある彼女。意外にも頑固な一面はあり──ここで断ろうものなら、南極大陸まで一人で向かってしまいそうであった。まぁ、彼女の告白をあのストライクゾーンはゆりかごから墓場までなデアーが断るワケも無いのでいらぬ懸念ではあったが……。

 

 ともかくゲルダ12歳生まれて初めてのお引越しである。しかし、お引越しと言ってもそこまで大層なものではなく──彼女の自宅にある家具や食器、諸々を含むほとんどの物はこれから増えるであろう住人の為に残しておくようだ。

 最低限の衣類と絵本だけ、彼女の身支度自体はそこまで時間がかからなかった。

 

「食材を腐らせるのはもったいないわ……。少しだけだし、全部使ってしまいましょう。デアーお兄さんは嫌いな食べ物はあるかしら?」

 

「フッ、俺はもう子供じゃないから好き嫌いはないのさ……」

 

 ついこの間、子供をこさえておきながらニヒル顔でアホな事をほざいているが純粋無垢なゲルダちゃんは好き嫌いが無いだなんて凄いのね! ってもう何をしてもデアー褒めるbotと化して瞳を輝かせていた。ツッコミ不在の恐怖。邪ンヌお姉さんを残しておくべきだった。

 

 食材消費&お礼という事でレモン色のエプロンを纏い、鼻歌まじりでキッチンに立つゲルダ。

 デアーの手伝いの申し入れをお客さんだからとやんわりと断る。椅子に腰かけ、浮足立つぐらいに上機嫌だとわかるゲルダの後ろ姿を彼はじっと見つめていた。

 

 料理をしながら背後に視線を配っていたゲルダも当然気付いていた。じっと見られることは恥ずかしいが悪い気はしてなかったようだ。

 

(お兄さんのとても真剣な表情──。きっと今も頭の中ではこの世界のことを憂いているのだわ……。世界を救う大変なお仕事、せめて今だけでも休んで欲しいの…………)

 

(う──ん。時折、金髪から覗かせるうなじがすごくエロい……。前々から思ってたけど、外見も言動も年相応の少女にしか見えないのにゲルダって妙な色気を出す時があるんだよなぁ、今だってエプロン姿で料理している姿とか幼妻しか見えないし。チラチラとこっちを気にしているの可愛くてえちえちのえち。ロリとアダルティが混在している二重性癖(ダブルサモン)、すばらしい……あぁ、今日も世界は平和だ)

 

 平和なのはこの男の頭であり、ゲルダには今一度、この男の幻想から目を覚まして欲しい所だが尊敬と好感度の値がストップ高している様子を見る限りきっとそんな日は来ないのだろう。

 

 ソーセージとキャベツを具材にいもを煮込んだ北欧集落ではオーソドックスなシチューを木の皿から香りを漂わせてテーブルに並べられる。

 はふはふむしゃむしゃもぐもぐと人間火力発電所の如くシチューを胃へ流し込むデアーの様子は美味しい? と尋ねる必要も無いぐらいに気持ちの良い食べっぷりだった。

 向かいに座ったゲルダは自分の分にも手をつけないで花が咲いたような笑顔で目の前の男を見つめ続ける。

 

「ふふっ」

 

「ごくん──と、ふぅ……。ん? ゲルダは食べないの?」

 

「食べるつもりだったのだけれど……あたしったらおかしいの。お兄さんの食べている姿を見ているだけでお腹も胸もいっぱいになって……。あっ、おかわりが欲しいならあたしの分も食べて欲しいわ! お兄さんが幸せそうに食べているだけであたしまんぷくになっちゃったから!」

 

「ウッ」

 

 嘘や建て前を口にする事を知らないゲルダは本気でそう思っている。母性と純粋さが黄金比で混ざり合ったイノセント・エンジェルっぷりにデアーは浄化された。

 

「あれ、あれれ? ど、どうしたのかしら……? 胸を抑えて、うずくまって、病気ッ!? 病気なのかしら!? あぁ、大変だわ! フローレンスさんをお呼びしないと!」

 

「────そうだ。私は本当に、美しいものを見た。おめでとう、ゲルダ。第零の獣は、君によって倒された」

 

「お兄さ────ん!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 茶番を挟みつつ、お腹を満たした二人はベッドに腰かけ他愛の無い会話を交わしていた。約12の年月を過ごした我が家の別れを惜しむかのように、あるいは新天地への期待に胸を膨らませるように。

 年相応に足をバタつかせ、話し、相槌を打つ彼女は一分一秒が愛おしそうに表情を生き生きとさせていた。

 特にカルデアに在住する毒舌ショタ作家著作の童話『雪の女王』の話を聞かされた時は、その舞台背景と主人公の名前に加えてあの捻くれ者にしては珍しいハッピーエンドもあってか、ゲルダのお気に入りとなっていた。

 

「『雪の女王』……とても面白かったわ……。あたしと同じ名前なのが少し照れてしまうけど……」

 

「カルデアに来れば、その作者にも会える。感想は本人に言ってあげればいいととても喜ぶと思うよ」

 

「まぁ! それはとても素敵なことだわ……! ふぅ……あたしもこの中の『ゲルダ』みたく、もしお兄さんが雪の女王様に連れ去られたら助けてあげられるように頑張るわ!」

 

「どっちかと言えば、俺が連れ去る側だと思うんだけどねぇ」

 

「?」

 

「いや、ゲルダは健気で可愛いねって」

 

「可愛いだなんて……ほ、褒められてしまったわ……」

 

 ちょっとした褒め言葉にも照れるようにほっぺだを両手で抑えるゲルダ。こんな娘から邪気の無い瞳で『雪の女王』について持て囃されてしまったら、アンデルセンは間違いなくゴーヤを生で齧ったようなしわくちゃの苦々しい顔になるだろう。

 

(あぁ、とても幸せだわ……みんなと同じようにここで決められた人とつがいになって──十年ぐらい生きて──そして、巨人にぺしゃんこにされて──あたしの人生はそこで終わりだと思っていた)

 

 腕が触れ合う距離、隣にいる男の口から紡がれる話は全てが御伽話のようでゲルダにとっては新鮮で何日でもずぅっと聞いてられるものだった。

 

(でも、違ったの……。自分の好きな人とつがいになって『夫婦』になって、子どもをつくって『親』になる。『おばあちゃん』になって好きな人達と生きてられる……もしそんな未来が用意されているというのなら……)

 

 今まで絶対に見ることが無かった未来を彼女は夢想する。アリスのように愛しい人の子種を宿し、その腕で抱き締められる家族を、義務でもなく、誰かに指図されるのでも無く、自らの意志で産み、愛し、生きるという未来を。それがどれだけかけがえなく、暖かいものなのか、今ならよく分かるのだろう。

 

(幸せ──幸せ過ぎて、不安になってしまうわ。もう前の生活には戻れない……もしこれが夢だったら、()のあたしはきっと耐えれないもの……)

 

「ちょっとおねむかな、ゲルダ」

 

「へ、……そ、そんなことないわっ! もっとお兄さんのお話聞きたいもの!」

 

 気を遣った言葉ではない、だがゲルダの本心とは裏腹に彼女の肉体は疲労を感じていた。

 何せ、ラウラの薬を求めて外に飛び出し、巨人に追われ、そこからはアリスの出産の場に立ち会い、世界滅亡の危機までその目にしたのだから、十代の少女には些か負担が大きかったのだろう。

 

 否定しても、彼女の瞼はうつらうつらと閉じかかっている。

 

「少し休みなさい、目が覚めるまで傍でみているから……」

 

「う、わかったわ……なら少しだけ」

 

 デアーとの憩いの時間が中断されるのは寂しいが、指摘されてしまえば眠気に逆らえないのも事実。彼がほんの少し体を押すだけ、彼女の体は簡単に横たわった。シーツをかけられ、小さな頭を撫でられているとゲルダはすぐに意識を落としていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ▲▲▲

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んっ………んぅ──……あ、れ?」

 

 目が覚めると見慣れた景色が映り、自宅のベッドで眠っていたことに気づく。寝ぼけまなこをこすり、もう何度も目にした家の中をきょろきょろと見回すと何かが足りないと気づく。

 

「デアーお兄さんは……?」

 

 眠ってしまう前に楽しく会話をしていたデアーお兄さんがどこにもいない。

 あたしが声をかけたときも何か用事があるようにも見えたし、もしかしてお外にいるのかしら。

 

「それなら、あたしに時間を取らせて、悪いことをしてしまったわ……」

 

 急ぎ足で外套をはおり、外に出ると、集落の様子が少しおかしい気がした。

 

「誰もいない──」

 

 人の声が微かも聞こえない。せいぜい羊の鳴き声ぐらい。皆いなくなったわけじゃない、窓から中を覗けば、暗い中でベッドに膨らみがある事に気付く、どの家も中で人が眠っていた。

 

「まだお昼なのに変なの……」

 

 もう集落の外に出てもいいのに、巨人にぺしゃんこにされることもないのに……どうして誰もお外に出ないのかしら? 

 言いようのない不安で胸の奥がきゅぅっとなる。お兄さん、ねぇ、お兄さんはどこにいるの? 

 

 

「はぁ、はぁっ……」

 

 いない、いない、誰もいない。お兄さんもいない。嫌な胸騒ぎがして泣きそうになってしまう。

 駄目、駄目よあたし……こんな悲しい顔をしていたらお兄さんに心配されてしまうわ。誰もいないのは皆、たまたま疲れて寝てしまっているだけ……お兄さんはあたしが知らない用事があるのだわ。

 

 だから楽しいことを考えよう、楽しいことをしよう。

 

 今までのデアーお兄さんとの出会いが全部夢だったなんて恐ろしいことを考えずにすむように──絵本でかかれていた人達のように──思いっきり笑顔で跳ねてみよう。

 

「せ──の…………」

 

 ──ぴょ────ん! 

 

 空へ飛びあがった時に風が吹いた、あたしの体も時間が止まってしまったように浮いたまま。

 

 ──え? 

 

 空が割れる。大地が砕ける。山も木も動物も家も何もかも氷のように簡単にバラバラになって──。

 

 ──え……? 

 

 あたしは二度と地面に足をつけることなく、その風にさらわれてしまった。

 

 ──全部、夢? あぁ、嫌……た……す、けてお兄さん……。

 

 浮かべた笑顔は凍り付き、泣きわめくことも、助けを呼び暇もなく、そのまま……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ▲▲▲

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──……ダ。ゲルダッ!」

 

「………………はっ、はぁ、はあぁっ……お、お兄さ、ん……? あ、れ……あた、し──?」

 

 激しくなった動悸と共に意識を覚醒させたゲルダの瞳に最初に飛び込んできたのは真剣にこちらを心配しているデアーの顔だった。

 荒くなっている呼吸を落ち着かせ、周りを見回せば、自分が最初に眠りについた家にいる事を理解する……今度はちゃんとデアーも傍にいることが現実に帰ってきたと実感させてくれていた。

 

「凄くうなされていたよ……怖い夢でも見た?」

 

(あぁ、じゃあ……やっぱりあっちが夢──……)

 

 夢で良かったと今のゲルダは安心することが出来ない。ついさっきの悪夢があまりにも真に迫っていて現実味があったから……。

 彼女は子供ながらこう考えていた。あの夢の結末は()()()()()()()()()()だと、むしろあの悪夢の方が正しくて、本来辿るべき結末で……今の自分の状況こそが吹いては消えてしまう泡のような夢物語なのではと。

 

 無知なままなら良かった。それならきっと、あの夢のように消える自分は笑顔を浮かべたまま、痛みすら感じず消えていくのだろう。

 

 けれど、もう今のゲルダは知ってしまった。長く生きれる未来は幻想ではなく、現実味のある将来だと。

 ゲルダは思い描いてしまった、好きな人とつがいになって家族になるという愛を。

 ゲルダは味わってしまった、自らの意志で行先を決めることが出来る自由を。

 

「デアーお兄さん……あたし、あ、たし…………」

 

 未だ震えは止まらず、上半身だけを起こした彼女はベッドの端に腰かけていたデアーの腕にすがりつくように抱き着いた。体温とその感触が少しずつだが彼女の恐怖を和らげてくれる。

 

「幸せなの……いま、今とても幸せなの──。あぁ、けれど、幸せになるほど怖いの──、もしこれが夢だったら…………あたしはもう戻れないわ、怖さで頭がおかしくなっちゃうもの……」

 

 自分でも支離滅裂で何を言っているのか分かっていない。うわ言のように幸せと怖いというワードを口走り続けるゲルダに対して、デアーは何も言わずただ、その小さな頭を抱かれていない方の腕で優しく抱きとめていた。

 

「お兄さんはいなくて、あたしは好きでもない決められた誰かとつがいになって……子供が大きくなる未来も見れなくて、ぺしゃんこになるか、最初からいなかったみたいに風になって消えて──、お兄さんたちが来るまで当たり前だったことが……あたしは怖くて仕方ないの! こんなに、こんなに幸せなのに──」

 

 文明にどっぶり浸かっている現代人は石器時代には戻れない。贅沢を当たり前のように享受している富裕層に節制倹約は出来ない。

『幸せ』というのは一つの麻薬。味を知ってしまったが故にその前に戻ってしまう事に強烈な忌避感を覚えてしまう。ゲルダは子供でありながら、聡明である。今の自分がどれだけの奇跡を折り重ねた先に出来たものなのかと先程の悪夢で嫌というほど教わってしまった。

 

 だから彼女は夢ではないことを確かめるように、デアーの体に触れる。強く強く自らが出せる限界の力で彼の肉体にしがみつく。もし、デアーもアリスも邪ンヌも全てが夢幻だったとしたら、彼女はきっと壊れてしまうだろう。

 

(今のあたしは恵まれている……怖がって、お兄さんを心配させるのは間違っている……。だから、証が欲しいの……。あたしが立っている世界が現実だという証を──)

 

 ポロポロと零れるゲルダの涙がデアーの袖に染み込んでいく。彼の腕の中で震える彼女の体のなんと小さい事か。彼女は不安を消す為により深く強く、触れ合う方法を自ら求めようとする。彼女が知っている中で最も強烈な存在感があって、愛という概念を教えてくれた男の子種をせがむ。はしたないと思われようとも、自らの意志で止まることは出来なかった。

 

「んっ……?」

 

 あなたと子どもをつくりたい──と、口を開きかけた彼女の薄桃色の唇にデアーの人差し指がそっとあてがわられる。それ以上は言わなくても大丈夫だと。

 

「大丈夫。君がいる世界は絶対に消えたりしない。君を誰にも攫わせたりしない。ここに誓うよ、俺は君と君がいる世界を守るって」

 

 それは何の根拠も無い言葉だった。けれど、北欧(世界)を救った実績がある男が自ら誓約する……幼き少女にとってこれほど心強いことは無い。神様よりも信ずるに値する言葉だったから。

 

「ほん、とう?」

 

「あぁ、夢の中だろうと絶対に助けに行く。好きな人が苦しんでいたら手を差し伸べる。つがいってそういうものでしょ?」

 

「す、き? あたしがつがいでいいの?」

 

「あぁ、これ以上女の子からのアプローチを受け身のままでいるのも男の沽券に関わるからね」

 

 約十年しか生きていない小さな少女が自らが育った故郷すらも捨てて、どこの馬の骨とも分からない男に求婚したのだ。集落という衆目ある場で。その勇気と行動力をデアーは讃える。だから、ここでのアプローチは自分からしようと。

 

 もし彼女から性交渉を求めて、デアーがそれに応じても──後々にそれはもしかすれば、泣き喚いている自分を慰める為だとゲルダが勘ぐってしまう危険性をデアーは少しでも潰す。今の不安定なゲルダ自身が自分は彼に求められる存在では無いのではと不安に駆られてしまわないように。

 

 その不安を掻き消す為に、自信に満ち溢れた彼女でいてもらう為にデアーは言葉と行動で示す。決して、自分は憐憫で女を抱くことは無いと──。

 

「シンプルな言葉で言おう。君のことが好きだ、だから抱かせて欲しい」

 

 縮こまり、震えているゲルダの涙に濡れた瞳とデアーの眼差しが交差する。

 

「抱く……? でも、もうお兄さんはあたしのことを抱いてるわよね?」

 

 さもすれば男女の行為をただ子どもをつくるというものだけで捉えているゲルダはセックスという言葉すら知らないのだろう。

 不思議そうに首を傾げるゲルダに微笑ましく思っていたデアーは簡単に説明をした。

 

「『抱く』っていうのはこうして抱っこするという意味以外にもあるんだよ。子どもをつくるっていうのは好き合った者同士でするものなんだ、だからその行為の中で色んな所を触れ合って、好きって気持ちをお互い確かめる為に愛し合うことを『抱く』っていうんだ」

 

「すきって気持ちを──……確かめる……。お兄さんはあたしのことがすき──」

 

「今は言葉の意味はわからなくても、本能で理解して欲しい。君を抱く、愛する、犯す、君とまぐわう、交尾する、セックスする──君を俺の女にする」

 

 愛も恋も知らずに育った12歳の少女にとってはシンプルで燃え盛る程に情熱的な求愛を受けて、彼女はエメラルド色の瞳をパチクリと大きく開ける。

 告げられた言葉を胸に刺さってしまった恐怖という氷を溶かす為に何度も反芻する。震えはもう止まっていた。告白された言葉の意味を飲み込む程に固まっていた頬が緩んでいった。

 

「え、えぇと……そ、の……あたしで良ければ……よ、よろしくお願いしま、す……」

 

 原因不明の頬の熱によって上手く回らくなってしまった思考回路で発したゲルダの返答は非常にしどろもどろではあったが、北欧少女特有の白い肌に赤みがかった頬、口を何度も開閉させ、視線を泳がせるという彼女が初めて見せた男女の行いに対しての恥じらいの表情は意図せずにデアーの情欲を煽った。

 

「あっ、そ、そうだ! アリスに教えてもらったの、こういうときどうすればいいかって……!」

 

 何とも言えない空気を変える為か突然、何かを思い出したかのようにベッドから起き上がり、立ってデアーの前へと移動したゲルダ。視線の高さは腰掛けている彼と同じぐらい。

 屈んで、両手でドレススカートの裾の端を左右に掴んだ彼女は上半身と一緒にそれを持ち上げた。

 長い緑のスカートが捲り上げられ、扇状になる。露わになったのは纏うものが一切無い生まれたままの下半身。誰の足跡もつけられていない新雪のような肌。

 

 彼女自身も原因は分からないだろう、股からは僅かに液体が滲んでいた。

 

「あたし、もうこどももつくれる体です……。だから、どうか……たくさん可愛がって下さいな」

 

 赤面し、自分では原因が分からない羞恥という感情で目を伏せている少女はその誘いがどういう意味をもっているのかも、まだ深く理解していないのだろう。だが、その無知さ故の艶姿はデアーの獣性を完全に目覚めさせた。

 

 

 

 

 

 

 

 




《同時刻~~カルデア、マシュの私室にて》

カラカラッ……とルーレットを回す音と小気味よくコマを進める音が聞こえる。
大きなボードゲームを四つの座布団を下敷きにしているプレイヤー達が囲んでいた。

「1、2、3、4、5……あっ転職マスですね。魔術を利用したYouTuberが大当たり!やりましたよ先輩、毎ターン、100万の収入が入るようになりました!」

「魔術系YouTuberとは新感覚……。でも魔術協会からの警戒度が星一つ増えたから、これからはちょっと気を付けていかないといけないね」

「当たり前でしょう。神秘の秘匿も何だと思っているのかしら……」

「フォウ、フォフォ、マワレフォウッ! (訳:聖杯手に入れて、大金持ちに俺はなる!)」

「あっ、フォウさんは聖杯戦争エリアに進んでいきました……!チャレンジャーですね、三割が即死マスなので気を付けて下さい」

「小動物とは思えない程に器用にコマを動かしているわね、フォウ。私が知っている頃より大分知性を持ってないかしら?」

カルデアのマスター、マシュ、オフェリア、そしてフォウという三人と一匹が白熱しているボードゲームは『人生ゲーム メイガスドリーム』。
プレイヤーは一人のメイガス(魔術師)となってゴール(根源)を目指す。だがプレイヤーには頼れる実家が無い根無し草という設定。資金に関しては己が身で稼がなければならない。そんなの関係ねぇ!と無収入で研究し続けていると餓死で死亡(ゲームオーバー)。かといって、魔術をオープンにし過ぎた仕事につくと協会からの刺客で死亡(ゲームオーバー)。死亡フラグが一面に散りばめられている。人生の勝ち組になりつつ、根源も目指す非常に愉快なゲームである。過労死系君主(ロード)からも(ファック)ゲーと太鼓判を押されている。

「次はオフェリアさんの番ですよ」

「あっそうね……。1、2、3、……(そういえば、どうして私こんなことしているのかしら?)」

オフェリアのコマがハートマークのマスに止まった。

「おっ、結婚マスだ。結構メリットがあるよこれは。子供も産まれれば、根源に至れる確率も上がるし。パートナーがいる事で純粋に資金獲得倍率は上がって、死亡マスに止まってもパートナーの出目次第では避ける事も出来るし……さては魔眼を使ったなぁ?」

「使うわけないでしょ馬鹿。え――と、もう一回ルーレットを回して、時計回りで当たった人がパートナにー……ってえぇ!?」

「フォウ、フォフォウ……(訳:ピンポイントにアイツにあたりましたねぇ)」

「先輩……結婚した、のですか? 私以外の人と――」

ハイライトを失った眼がオフェリアを射抜く。

「あ、そのマシュ、待って、これは違うの……ご、誤解よ!」

「浮気した人は皆、同じ事を言う」

「あなたは黙ってて!そもそもどうして私がこんな弁明しなきゃいけないのよ!むしろ慌てるべきはあなたじゃなくて!?」

「俺からすれば、どうしてオフェリアさんがそんなに焦っているのかが謎。一応わかってはいると思いますけど、ゲームだからね?マシュもあんまりからかわないの」

「すみません、狼狽えているオフェリアさんを見るとこう胸のあたりがポカポカするんです」

「わかりみ」

「先輩!」

「マシュ!」

感極まり、抱き合う先輩後輩(バカップル)。真っ黒だったマシュの瞳は簡単にハートマークになっていた。二人にしか理解出来ないテンポとムードに置いていかれたオフェリアは頭が痛くなっていた。いや、二人の仲が良いことは歓迎すべきこと……そもそも自分はその監視の為にここに来たのだからと本来の目的を思い出していた。

「そもそも先輩の私以外の結婚相手なんて両手じゃ、数え切れませんし。何なら子供だっていますからね」

「ね――っ」

「ね――っじゃないわよ! そこにこそ怒るべきじゃないのマシュ? 奥さんが三桁もいると王族でももう少し慎みを持つわよ」

「なるほど、正妻は自分だと。結婚マスに止まった途端に正体を表しましたねオフェリアさん」

「いやだから……たかがゲームでしょ?」

「たかがだなんて言っちゃ駄目だよ。現代魔術科の君主(ロード)が監修済みの一品なんだから」

「私はその嘘が輝く様を見ない!」

周回地獄からの解放を条件に二世が過労死間近テンションで一晩で作ってくれました。

「むぅ、先輩へのキレキッレのツッコミ……羨ましいです。私はいつも突っ込まれる側なので――」

「あぁうん。マシュがボケなのよね? そういう意味よね? ね? ね! お願いだからそう言って!」

「フォウ、フォウ……(訳:早く、次回してくれよ)」


北欧ロリの処女膜を破るまで、残り一時間弱。












時系列的にはオフェリアさんがロシアに行く前です。


後半のエロは明日投稿しまーす。









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幼女伝記(ゲルダ後編)

久々の連日投稿です。前編を見逃した人は前の話に戻ってくださいな。




 

 さすがに英霊クラスを軽くイキ殺せるこの男が我を忘れて本気でゲルダを襲う事は無かった。ビーストの欲望を全て受け入れるにはサーヴァントでも無いゲルダの体はまだ未熟過ぎる。冗談抜きで腹上死してしまうだろう。

 

「そういえば、ゲルダ達が御使いとかに教わっていた子どものつくり方って具体的にはどんな感じなの?」

 

「んっ、ぁっ……ぇえっと、大きくなるまで男の子の股にあるものを触ってあげて……ふぅぁっ、そしてそれを女の子の股の穴にいれるの……ぁあっ、そして腰をふっていれば、子供の種が男の子から出てくるって……」

 

「なんというかザックリ過ぎるね……。いや、子どもをつくる為だけの行為として最低限のことしか教えて無かったのか。子づくりが気持ちの良い行為だと気付いて、余分なセックスを自主的にさせないようにって所かな?」

 

「き、気持ち良い……? んっ、あっっ、んくっ」

 

 ベッドに腰かけたままのデアーの膝の上に乗せられたゲルダは彼の言葉に耳を傾けながら未知の感覚に戸惑っていた。服の上から這っているデアーの手はゲルダの未発達な胸を優しく撫でていた。揉むと言える程には指は曲がっていない、こねるように手のひら全体で胸を愛撫していた。

 

 デアーにとっては挨拶程度、前戯の域に達しているかどうか怪しかったが性行為に対して一切の経験値が無いゲルダはそれだけで開いた口から涎が垂れ、自分でも今まで出したことの無い声が漏れ出してしまう。

 

「そ、産めよ増やせよ。人類がちゃんと繁栄しやすいように、つまりは子づくりが気持ち良くなれるように男女の体は設計されているんだ。初めての男女同士がさ、ゲルダがさっき言ったみたいな事からいきなり始めると凄く痛くて苦しい事になっちゃうんだよ」

 

「はぁ、あぁっ……そういえば、痛くならないようにって……ひゃぁっ……お、大きくなった男の子のおちんちんにあれを塗るって教わったわ……」

 

 ビクつかせた腕でゲルダは棚の上にあるビンを指さした。恐らくルーン文字が描かれた帯のようなものが巻かれているビンを両手で愛撫を継続したまま『白式官能』で持ってくると中には透明な液体が詰め込まれていることに気付く。

 

「ただのローションなワケないよな……痛覚が鈍くなる、後は治癒的なルーンも籠められているところか」

 

「ひっ、んぁ……子どもをつくれる年になった子たちから……あ、あぁっ、御使いから、はぁっ……も、もらえるのっ……」

 

 デアーの予想通り、そのローションには余程の無茶をしない限り膣を損傷させず、そして女性側が痛みで逃げないよう痛みを鈍くさせるルーンが籠められている。作り出したのはワルキューレかあるいはスカディか。3000年も計画的に一万人という人口のキャパをコントロールしていたのだから、子孫繫栄に対しては細心の注意を払っていたのだろう。

 

 彼はその瓶を手にほんの数秒悩んだ。ゲルダの小さな肉体に配慮するならば使ってもいいのかもしれないと。

 

 ゲルダは自分が今まで交わってきた女性達とは大きな隔たりがある。彼女達のように無茶をしても大丈夫な体では無いことは明白。霊基ではなく、普通の肉体を持つ女の子とのセックスはマシュに次いで二人目──いや、生まれとデミサーヴァントという過程を考慮するならばマシュもその枠には入らない。普通のどこにでもいる女の子とのセックスはゲルダが初めてとも言える。だから彼は欲望のままではなく、陶器を愛でるように、蕾を優しく摘むようにして彼女とのセックスに臨む。

 

 

 

 ──一般人系女の子は私が初めてじゃなかったの! どうして、私はいつも色んな人に先を越されるの!? 私はいつもそうだ。この処女膜は私の人生そのものだ。ロリ本に負け、男の娘に負け、人理が修復されるまで私はおぼこのままだ。誰も私を愛さない。

 

 いつか先の世界線で出会いそうなオレンジ色のサイドポニーの少女の慟哭が聞こえたような気がした。

 

(いや、これは旧北欧時代の遺物だ……人が只の家畜となっていた時のね。新しい時代を歩ませた俺がゲルダとの情事にこれを使うのはちょっと違うよな……)

 

 邪魔にならないように瓶を転がしたデアーはゲルダの未発達な胸部の愛撫を続ける。

 年相応の慎ましさではあるが、彼女が言った通り、子どもをつくれる体──初潮はむかえており……男女を区別するように、体も丸みを帯びはじめている。

 

「はぁっ、あっ……お兄さん、これ変……変なのぉ……。頭なでられた時と、全然違うぅ……胸がじんじんして、体が落ち着かなくなっちゃうの……あぁっ、はんぁぁっ」

 

 現在こねくり回されている胸部も控えめではあるが膨らみがある。そしてデアーは指を巧みに動かし始め、その僅かしかない膨らみを宝物のように大事に余すところ無く揉みしだいた。

 

 ゲルダ本人にとっては胸など体を洗う時以外に触れた事は無く、ましてや記憶のある限り赤の他人に触らせる機会なんてこれが初めてだ。

 

「それでいいんだよ。好きなつがい同士がセックスすると皆、変になるんだ。だから、変だと思っても自分が感じた事は全部喋っちゃおうか」

 

「うん……ふぁぁっ、お兄さんにお胸触られる度にお胸がぞわぞわってぇ……あっ、あっ……もじもじしたくなって、切なくなっちゃうのぉぉ……ひぁあっ、頭がぱちぱちしてっ、特にさきっぽがぁ……あっ、変、これ変なのぉっ……」

 

 上気した顔で半開きになった口から喘ぎと混じってゲルダはデアーが言われるがまま、自分の状態を伝えようとする。

 無垢なる少女の性を開花させている悦びを味わいながら、彼はゲルダのトップスのボタンと首まわりにある数珠のような飾りを慣れた手つきで外していく。

 

 下半身同様、下着という文化がこの世界には無いのだろうか……。簡単に露わになってしまったゲルダの胸部。女らしさではなく、幼さを感じさせる可愛らしいバストサイズ。だが──その小さな丘の頂上でぷくりと桃色に膨れている乳頭はどうしようもなく性を表現していた。触って、触って、今すぐ触って欲しいと自己主張するように。

 

 生まれて初めて女としての快楽を味合わされてるゲルダは自身の胸部が剝き出しになっていることにすぐには気付かなかった。ちょっとした愛撫でもう涎は垂れ、焦点の合わない瞳は天井をぼんやりとしか収めておらず夢心地だった。

 

 そんな彼女を現実へ帰すように新たな刺激が送り込まれる。シミ一つない乳房のしこりを左右それぞれデアーは指先で弱めに弾く。

 

「んひゃあっぁぁぁッッ──♡」

 

 絶叫──。電撃を打ち込まれたように背中は反り、ゲルダはデアーの膝の上で魚の如く跳ねる。

 何度か痙攣を経た後に彼女は自身の股だけではなく、スカートさえも湿っている事に気付く。

 

「あ、あ、あ、ふぇ、ぇ……ぇ? な、なに? これ、なに……?」

 

「今頭の中がパチパチって痺れて真っ白になったでしょ? 女の子は体が気持ち良いことでいっぱいになるとそうなっちゃうんだ。イクっていうんだけどね」

 

「イ、いく……? ふぁあっ、あっ♡」

 

 保健体育の授業を実技で教え込むように教鞭を取っていく男の言葉にゲルダは耳に傾ける。卑猥な言葉、淫らな行為がどんどん汚れを知らない少女にインプットされていく。

 イッたばかりのゲルダの体に無理はさせないように絶頂の余韻が落ち着くまで敏感な乳首の刺激をデアーは避けた。

 それでも労わるように乳房を撫でられるとくすぐったさとは別種のもどかしい感覚に陥る。

 

「あ、あの……お兄さん、あたし、大丈夫だから……さ、触って欲しいの」

 

「ん──、どこを?」

 

 分かってて聞いているであろう意地の悪い質問にゲルダは詰まることなく貪欲に求める。

 

「お胸の先っぽ……もっともっと触って欲しくて仕方ないの……あたし、どんどん変になっちゃってるわ──あっ♡でも、お兄さんの言う通り、これでいいのよ、ね……はぁっ……変になっていいのよね?」

 

 少女の瞳は蕩け、自身の椅子になっている男へと振り返る。つい先刻からは想像も出来ないぐらいに艶色に染まっている表情……。至近距離で吐かられるゲルダの吐息は甘く、まるで味があると錯覚してしまうぐらいに。

 

「あぁ、素直な娘にはご褒美だ」

 

「あんぅっっ──♡」

 

 よく出来ましたとおねだりが出来た優等生に飴を与える。クリ、クリ、クリ、と──人差し指で乳輪ごと左右の乳首が突かれる。触れたのは一瞬だが、筆で描くように何度も何度も膨らんだ桃色のそれに当たる。

 

「んっ、ふぅっ、あっ♡ひっ……はぁっ♡あっ♡あっ♡あっ♡」

 

 雌のスイッチと彼の指先が交差する度に甘い声と短い痙攣がゲルダの体から溢れ出す。

 初めての快楽に思考がどんどん沈んでいく。指先で細かく突かれると彼女は小動物のような鳴き声をあげて、前屈みになっていた。

 

「あっ♡あっ♡あっ♡……すき、シコシコってされるのぉぉ……すきぃ♡んぁぁあっ♡」

 

 なだらかでありながら、淫靡にそそり立つ乳頭は非常に弄りやすく。デアーの淫指の玩具となっていた。そして執拗に乳房を弄られる事でゲルダの体はさらなら反応を見せる。

 

 自身の股がさっきから、落ち着かない、もどかしくて仕方がない。湿ったような感触がする。

 

 今までベッドの端に置かれていたゲルダの手は長いスカートをかき分け、股の間に手を差し込む。

 

(あっ……すごく濡れてる──。もしかして、おもらし──? ……恥ずかしいわッ……でも、これ触ると……)

 

 自分が排泄したのではと羞恥に駆られたのも一瞬、湿って柔らかい不思議な肉の入り口を指で擦るとそれもまた気持ちが良いことに気付いてしまう。胸の愛撫で高められた性感は覚えたてのオナニーにハマってしまう子供のようにゲルダに自慰を加速させていった。

 

「あっ♡はぁっ、んぁっ♡お、兄さんっ……股のところぉ……指で弄るとまたっ変になる、のっ……触れば触るほど、たくさん濡れて、あっあっ♡指が止まらなぁっ……♡」

 

 まだ膣内に指を挿れるのは怖いのかオナニーは大陰唇のあたりを上下に擦り続けるだけに留まっている。胸を男に弄られながら、秘部を触る行為に耽ているゲルダという少女はまさに性に対して理解を深めている真っ最中だった。

 

 その痴態にデアーのズボンの下の膨らみも硬さを増し、膝の上にいるゲルダの小ぶりなお尻を突いていた。途切れない水音に少女の嬌声は獣の興奮を煽り続ける。

 

「ゲルダ。ちょっとスカートの裾を口で咥えて」

 

「ふぇ? ……ほ、ほうふぁひらぁ?」

 

「そう。噛んだまま離さないように頑張って」

 

 言われるがまま彼女が素直に裾を口に咥えれば、スカートというカーテンからまっさらな下半身と汁でふやけた淫裂が現れる。

 局部を隠す為の衣服を自らの手で暴かせ、口に咥えさせるというマニアックな手段でゲルダの艶姿をつくり出すデアー。

 

 この男は自身の欲望をいきなり注ぎ込むつもりは無かったが、かといってこと性交渉において妥協や手抜きをする筈も無い。相手がロリだろうが、エロに対する探求心に一切の妥協無し。

 

「じゃあ、次は股を触っていた手で胸のあたりを弄ってみようか。俺が触ってた時のことを思い出しながら、自分で気持ち良い所を探してみるんだ」

 

 疑うことも拒絶することも無く頷き、デアーの言葉をただ受け入れるゲルダはさっきまでの痺れるような快楽を求めて、自身の胸を愛撫する。今までしたことの無いようないやらしい動きで手の平と指を楕円形に撫で回し、そそり立っている乳首を指で掻く。

 だが──物足りない。今、自分を抱いてくれている男の快感には届かない。もどかしそうに後ろに視線を送ると安心させるような彼の笑みがあった。

 

 瞬間──。

 

「んんぅっ────ッッ♡」

 

 体が吹き飛ぶような感覚。下半身から頭にかけて風が吹き抜けたようだった。言われた通り、スカートを口でしっかりと噛んで全身を震わせる。

 ゲルダに胸を弄らせているのは少女の自慰姿を視姦する為ではなく、愛撫の場所を交代する為だった。

 

 今まで小ぶりな胸を愛でていた彼の指は初潮を迎えたばかりの少女の陰部へと伸びていた。

 

 触り方自体は先程のゲルダと変わらない。だが彼の指先が淫筋を上へなぞっただけでゲルダはさっきのような反応を見せた。

 

(すっごい……♡あたしが触ったときと全然ちがう……お兄さんに触られるとあたしの体喜んで……ぴょーんってしちゃう……♡)

 

「ふぅ──♡ふぅ──♡」と荒い呼吸でスカートを涎で湿らせるゲルダは口を開けない為、ハートマークが浮かんだような眼で胸の時みたく、もっともっと触って欲しいと無言でねだる。

 

 少女の我儘を受け入れる大人の指はついに本格的な女性器の愛撫を始めた。

 

 単純に触るだけではなく、太ももを擦り、焦らし、淫裂を指腹で抑え付け、軽く振動させる。肉ビラを開き、中へ中へと少しずつ指が沈んでいく。幼き膣内は非常に暖かく、湿っていて、形容し難いぬくもりをデアーの指に与えていた。

 

「んぅぅっ……んくっ、んっ、んっ、んっ♡んふぅぅっ♡」

 

 ゲルダが自慰していた時の比でない愛液がどんどん溢れ、滴り、床に染みをつくっていく。それでも健気に彼女はスカートから口を離さず自身の胸を弄り続ける。ついさっきデアーの手によって敏感にさせられた勃起乳首は膣からくる痺れも合わさって、拙い少女の手でも快楽を得てしまう。

 

()()()()()()()()を見越して、デアーはゲルダのヴァギナを存分にほぐす。第二関節まで二本の指がセットで挿入され、かき混ぜるように少女の膣内を拡張していく。トントントンと膣壁を小刻みに搔きながら、ゲルダの性器に男を覚え込ませる。

 

「んふぅっ──……!んぅうううっ、んんぅっ♡んっ♡んっ♡んぅぅぅぅっっ♡(やっ、やっ♡お兄さんの指があたしのおしっこする所に入って──、動くたびに体のびくびくとまらなぁっ──)」

 

 面白いぐらいに漏れる汁がデアーの手首まで濡らしていく。空いた一方の手で太股を擦られ、くすぐったさを与えるという焦らし、膣内を指で執拗に開発される快楽。自身の指で乳首を挟み行われる自慰。そしてスカートを噛み、声を自由に出すことが許されない状況。

 

 剥き出しになった下半身はガクガクと震えが止まらず、気を抜けばデアーの膝の上から落ちてしまいそうでもあった。

 

「んんぅっ♡んくぅっ♡んぅっ♡んふぅっ♡(お兄さん、お兄さん、お兄さん♡来ちゃいそう──……さっきの頭が真っ白になってバチバチってなるやつぅっ……)」

 

 言葉は出ない。だが焦点が合わなくなったゲルダの瞳が大きいエクスタシーの波がやってくると訴える。

 デアーは絹のような彼女の金髪を搔き分け、うなじに吸い付いた。折れてしまいそうな程に細い首──その肌に赤い虫刺されのキスマークをどんどん刻み、彼女の性感を限界ギリギリまで高めていく。

 

「んぅっ──♡んふぅっ♡んくっっ♡んんっ──♡(あぁ、そんなに首たべないでぇっ……♡)」

 

 愛汁は滝のように太股を滴り続け、幼き肢体は痙攣が止まらない、火が吹いたような顔でくぐもった嬌声を響かせる。

 やがてくる果ての瞬間、最も気持ちの良い絶頂を味合わせてあげようと太股を這わせていたデアーの指は陰核へ、膣内を弄り倒していた指はザラザラとしているGスポットへ──。

 

 ゲルダのエクスタシーのゲージが限界まで上昇したその時に──デアーはゲルダの耳元で囁き、局部の敏感な部分を突いた。

 

「もうスカートから口を離していいよ。好きに叫んでごらん」

 

(あぁっ──……)

 

 鼓膜を震わせるその優しい声色を合図にゲルダは一気に解放された。

 

「ひぁあああああっ♡はああああああぁっ♡ああああぁっ──……!!」

 

 初めて知った絶頂など比ではない法悦。男の上でゲルダはこれ以上ない程に女の反応を見せる。クリトリスもGスポットも指先で優しく擦られ続けている。

 だらしなく開かれた口からは甘く激しい嬌声と舌が零れ、絶頂している最中でさえも貪欲に快楽を求めているのか乳首を強く抓っていた。

 大きく見開いた瞳はもう気持ちの良いことしか分からないといった風に理性は搔き消え、女として性が完成されていることを証明していた。

 

「はあああぁっ♡あああぁっ──♡すごぉいっ……これぇぇっ、すごいわぁっ♡……はっ、はぁっ♡し、しんじゃうっ……」

 

 言葉だけではなく、股から幾度も吹かれている潮も全身に襲いかかった悦びを表していた。

 脱力し、自身の膝の上から崩れ落ちるゲルダを抱きとめたデアーは彼女の消耗具合から本番は別の日に回そうかと考えたが──。

 

「はっ、あっ、あああぁっ……はぁっ──……♡あっ、あっ、はぁっ……あぁっ──……はぁっ、はぁっ…………お兄さんも一緒に気持ち良くなりましょう? こんな幸せ、あたしだけで独り占めできないわ。二人で愛し合って、気持ち良くなる……つがいってそういうものよね?」

 

「ゲルダ……」

 

「これで終わりじゃないぐらいさすがに分かっているわ。あたしを攫ってくれた大好きなお兄さん、どうかゲルダを抱いて下さいな。精いっぱい頑張りますから」

 

 アリスに言われたものではなく、ゲルダなりに考えた彼女だけの誘い文句。

 もはや幼さなど関係なく、好きな女から首に手を回され、うっとりとした顔でそんな事を囁かれて耐える程、彼の獣性は大人しくなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 衣擦れの音。

 ベッドの上で座り込んだ二人が纏っている物を一枚、また一枚と脱いでいく。

 

 初夜に緊張する北欧少女は最後に脱いだスカートをぎゅっと抱き締めた後に放り投げた。カチューシャのような髪飾りを外し、解けた髪は彼女を大人びさせている。

 生まれたままの姿で仰向けに寝そべり、いつも寝ているベッドの上で行為に及ぶことに動悸を激しくさせ、これから繋がり合うであろう男の裸体を目に焼き付けた。

 

「わ、わ、わ、わ、わぁっ……」

 

 ピキピキと血管が浮き出ている怒張がゲルダの眼に飛び込んできた。

 集落の幼い男の子のお世話でモノ自体を見るのは初めてではないが、同じ男性器のカテゴリに入れられない程に確固たる差があった。

 

「怖いかい?」

 

 自身の腕よりも太いモノが今から股に侵入してくる事に恐怖を抱いていないかデアーが語りかける。確かに巨根ではあるがデアーの肉棒はゲルダの膣内を物理的に裂いてしまう程のサイズでは無い。彼女が受け入れられ、かつ快楽を得られるサイズへと最適化されている。だがそれでも初めてみる勃起状態の男根は幼い少女にとっては恐怖の象徴だろう。

 

「いえ、怖くはないわ。ただ、不安ではあるの」

 

 だがそれでも、自身を貫くモノを前にしてもゲルダに怯えの色は無かった。

 

「あたしの体でお兄さんをちゃんと気持ち良く出来るのかなって……あたしがしてくれたときみたいに」

 

「君はあれだね、気を抜くとに男の心にクリティカルしてくれるよね」

 

「……?」

 

「無自覚かぁ、恐ろしい娘だ」

 

 これまで自分の知らないことをたくさん教えてくれた愛しい人にお返しをしたかった。

 今、ゲルダは愛を本当の意味で理解した。つがい──夫婦になるということを頭ではなく心で学んだ。お互いに分け与え、受け入れてもらい、自分も受け入れること。どちらかの心が欠けては成立しないのだ。

 曇りなき瞳で両手を拡げ、受け入れる体勢になったゲルダを絶対に性交中に傷つけまいとデアーは心に誓う。何も問題は無い……処女を今まで何人も喰ってきた、膜の開通工事は匠の域に達している獣の本気の挿入は気付けば痛みも無く絶頂していましたという結果だけを創り出す。

 

 足を拡げたゲルダに正常位で挿入しようとデアーが覆い被さる。

 膨らんだ亀頭と滴っている膣口がキスをする。いきなり挿れるようなことはしない、これから君に種を仕込むモノだと教え込むように淫裂上に竿を擦り合わせる。先走りと愛液が混ざり合いネチャネチャと卑猥な音を立てていた。

 

「んっっ……ふぁあっ♡お兄さん、そ、んな意地悪しな、いでぇっ……はあぁぁっ──♡」

 

 さっきの絶頂の余韻からようやく治まった官能がその素股で再び燃え上がる。さすがのゲルダもこれが子作りの為の挿入行為ではないという事には気付いている。彼の肉棒が動く度にもどかしそうに体を小刻みに震わしている。幼い体でありながら、男の性器で悶える姿は実に妖艶だった。

 

「意地悪じゃないよ、これはキスをしているんだ。愛し合う準備の為の前戯さ」

 

「き、キス? キスって何かしら……?」

 

 愛や夫婦という概念を知らなかった彼女にとってその疑問は当然とも言えた。

 

「口と口を付け合う……文字通り、口付けって言ってね。つがいがお互いの気持ちを確かめ合う為の挨拶みたいなものなんだ」

 

「口をつけるの? でも、今お兄さんがしてる所は口ではないわよね……」

 

「別に口だけじゃなくて、お互いの大事な所をこうやって重なり合わせるのもキスって言うのさ。ゲルダは今、どんな気持ち?」

 

「あっ、えっ──と……お兄さんのおちんちんにキスされる度にお腹の下の方がきゅぅっ──ってとても切なくなるの。でもいやじゃなくて凄く胸がぽわぽわ──ってして、幸せ──って口の端が上がってしまって……あんぅっ♡」

 

 心から幸せを噛み締めるように熱くなった頬に両手を当て、照れながらそんな事を口にする彼女はどれだけ男の情欲に火をつけているのか分かっていないのだろう。デアーは無言でゲルダの両手を恋人のように指を絡めて握り、顔を近付けた。

 

「あっ…………ふふっ、お手手のキスもしちゃったわ」

 

 そのあまりに純粋で可愛すぎる言葉に消滅しかけたデアーは間髪入れずにゲルダの唇を奪った。小さく柔らかく弾むような感触。

 

「んんっっ……!?」

 

 驚いたのは一瞬、キスの意味を知ったゲルダは拒むことなく、男の口付けを受け入れた。

 覆い被さり、肉棒を擦り付けられ、恋人繋ぎでキスをする行為はこれからお前に種付けするという宣言をしている。

 

「んっ、んぅっ♡……お、兄さんぁっ……ちゅ、んちゅっ♡」

 

 唇を搔き分け、男の舌がゲルダの口内に侵入する。異性の肉体が口の中で蠢き、舐められ、くすぐったさと快楽が混じり合ったような感覚を受けた彼女はキスの仕方を知らない。

 だが、目の前の男に喜んでもらいたい、気持ち良くなって欲しい、二人で愛し合いたいと願うゲルダは拙いがデアーの舌の動きに呼応するように舌を動かしていた。

 

「んちゅっ、ちゅむぅっ……んむぅっ♡ちゅっ、れろっ♡」

 

 デアーの口技がゲルダを蹂躙する。舌、口蓋、頬裏、歯茎、満遍なく彼女の口内を舐め回し、溜まった唾液を投下する。単純にキスと言ってしまうにはあまりに生々しく、淫靡であった。口の周りを唾液まみれにして、彼女の瞳はどんどん蕩けていく。

 

 息継ぎの合間、デアーが「挿れるよ──」と囁く、ゲルダは首を小さく縦に動かした。

 

「ん゛ん゛あ゛あぁっぅぅっっ────……♡」

 

 熱い鉄のようなナニからが股を裂いてきたような錯覚をほんの一瞬、ゲルダに抱かせた。だが脳髄に走ったのは痛みではなく快楽。

 

 挿入の瞬間、デアーはゲルダのベロに吸い付き、握っていた手を離して、敏感になっている彼女の乳首を最も気持ちの良い力加減で抓った。それだけで彼女は容易く絶頂へと誘われて多幸感に身を委ねる。

 

 そう、その間にデアーの肉棒が処女膜を破り、膣内いっぱいまで挿入を終えていることに気付くことは無かった。処女膜を破る時は時間をかけず一息に、ゲルダが気をやっている最中にデアーは致す事を終わらせていた。

 

 破瓜の痛みすら無く、唇を解放されたゲルダが下半身の違和感に気付いたのは数分後。視線を下に向ければ、ぽっこりと下腹部が膨らんでいる。

 

「あっ、はぁっ……お兄さんのおちんちん、全部入っちゃったのね……」

 

 よしよしと妊婦のようにお腹の上からペニスを撫でるゲルダは痛みで顔を歪める事も、恐れることも無く、愛しい人とつがいになれた達成感しか無かった。

 

「とりあえず、落ち着くまでこの体勢でいよっか」

 

「……んっ、えっ、でもお兄さん、動かないと子供の種が出ないんじゃないかしら、あたしの体に気を遣わなくても、好きに動いて、あいたっ」

 

 先を促すゲルダのおでこをデアーは優しく指で突いた。確かに雄々しい腰振りで泣こうが、喚こうが屈服させメスとして完全に堕とすセックスをする事も相手によってはある。

 だが今回はそれを行う事は無い。ゲルダの膣が自身の肉棒に馴染むまでしばらく動かないつもりであった。

 それは彼女に気を遣うというよりは単純にゲルダに向いているのは痛みの無い甘く蕩けるセックスであるとデアーが判断しただけで、お互いが一番気持ち良くなれる手段をその都度取っているに過ぎない。もし、ゲルダが痛みで興奮する性質だったら、また彼は違う手段を取っていただろう。白き姫騎士のグッドスマイルが見える見える。

 

「こうやって繋がり合ってるだけでも結構気持ち良かったりするものなんだよ……どう?」

 

「んっ、あっ、はぁっ……♡」

 

 デアーの腰は動いていない。だが、一分、二分、十分と時が経つにつれ、ゲルダの膣内は少しずつ肉棒を締め付けていた。宿主が意図していないその膣壁の動きは本人に甘い吐息を漏らさせる。

 

「あっ、はぁっ♡なぁに、これっ……ひゃぁっ♡」

 

 体を駆け巡る甘美な悦楽にゲルダの反応にも変化が出てくる。もう一度言うがデアーは一切動いていない。時間が経てば経つほど彼女のヴァギナは想い人のペニスを受け入れる形へと蠢ている。

 

「ひぁやっ、やぁっ……んぁあぁぁっ♡……お、兄さんっ、あたしっ……落ち着かないのっ……♡変なのっ……♡」

 

 結合状態のまま30分経過。指で愛撫された時は異なる毛色の快感に戸惑い、行き場を求めた彼女の手足が覆い被さっているデアーの体へと巻き付かれている。ゲルダ自身は決して知らぬ事だが、それは俗に言うだいしゅきホールドの姿勢。

 

「ふぅぁぁっっ♡あっ……♡くあっ、だめ♡はっ、はぁっ、はあぁっ──……このままじゃ、どうにかなっちゃうっ♡た、すけて(う、ごいて)……たすけて(うごいて)♡お兄さん……」

 

 荒い息を顔に吹きかけて、そう懇願する。ゲルダの膣内はもう男根が動いても痛みを感じないように出来上がっていた。結合部分からは壊れた水道管のように愛汁が漏れ出している。

 

 ここに来てようやく、男の腰が動いた。

 

 ゆっくりと腰を引き、えげつないカリ高がゲルダの膣壁をえぐる。

 

「んぉぁあああああああああああっ♡」

 

 腰を引いている間、息継ぎ無しの長い喘ぎ声が響く。ぷしゅ、ぷしゅと潮を吹きかけていた。そして膣内に埋まっている部分が亀頭だけまでになったら、再び腰を前へと突き出す。引いた時と同様、ゆったりとしたスピードで。

 

「ひゃぁあああぅぅぅぅぅぅぅっっ♡」

 

 デアーは激しい抽送を行うつもりは無かった。初めての性行為、性的な快楽とは無縁の生活を送ってきたゲルダにとってこの男のセックスは麻薬にも勝る刺激がある。

 涙を流し、爪を立てて背中にしがみつき、目を白黒させているゲルダの様子を見る限り、恐らくもって七擦りで絶頂(限界)が来るだろうとデアーは推測した。

 

 四擦り目。

 

「ふぅあああああああああああっっ♡」

 

 もし、自分が射精する前に失神してしまったら、ゲルダは負い目を抱いてしまうかもしれない。自分だけ気持ち良くなって、つがいとして男に種を吐き出させる事が出来なかった事に自己嫌悪してしまうかもしれない。

 かといって気を失った後のゲルダをそのままオナホの如く酷使して精液を扱き出すなんて事をすれば、今の彼女は壊れてしまう可能性もあった。

 

 五擦り目。再び腰を突き出す。

 

「あんんあぁっぁあぁっううううううううっっ♡」

 

 だが問題は無い。宇宙の根源まで届き得る彼が極めた房中術はランクEXの域。理論上はテラニーさんとヤり合えるスペックは伊達では無い彼にとって、相手が愛する対象で自らが興奮さえしていれば、望んだタイミングで射精する等、朝飯前である。過去に『愛phone』で通話した時、マシュの声を聞いただけでも射精は可能だと実証済み。新時代のテレフォンセックス。

 

 ──あっ、あっ♡今、先輩の精液が電波越しにかけられています……♡これが、カケホーダイプラン……! 

 

 話を戻すと、後、二擦りで来るであろうゲルダの絶頂と同時に射精は問題無いという事。

 そもそもゲルダのこれまでの痴態は無自覚の色気を持っており、親愛の獣を十分発情させていた。早くこの幼い体に自身の種を植え付けたいという欲望を持たせる程には。

 

 六擦り目。ゲルダの全身の神経が波打つ。

 

「はああぁっ♡はあああぁっ♡とんじゃぅっ、とんじゃぅっ♡気持ちよしゅぎて、ぴょ──んってとんじゃうっ♡あっ、あっ、あっ……んあああああぁっ──♡」

 

 ずりゅりゅりゅりゅ、じゅぶぶぶぶぶっ、初めての挿入から六回、いやらしい水音とベッドのスプリング音を奏でてゲルダの頭の中は気持ちの良い事とデアーの事でいっぱいになる。

 ゲルダにとって至近距離で来る発汗した男の匂いも挿入の度に擦れる陰核の快感も全てが新鮮だった。もっともっと色んな事を学びたいと──。

 

 この後の射精でゲルダは気絶してしまうだろう。それでも彼女とのセックスの機会はこれからいくらでもあるし、ポテンシャルを見る限り開発のし甲斐もあると新たな楽しみを見つけたようにデアーは笑う。

 

「子種を吐き出すぞ──ゲルダッ」

 

「うん♡うんっ♡だしてぇっ♡いっぱい出してっ♡お兄さんのあかちゃんの種いっぱい出してぇっ♡あたし産むからっ……♡たくさん、たくさん、産むからぁぁっ……♡」

 

 射精前の男に対する懇願として100点満点を叩き出したゲルダはじゅぼぉっと幼膣を抉る最後の肉棒の侵攻を受け入れた。互いの鈴口と子宮口はそのまま熱烈なキスをする。そして下の口のキスは合わさるだけでは終わらない。溜まりに溜まったディープな白い欲望がゲルダの小袋へと吐き出された。

 

 ──どぴゅぅッッ……! どぴゅるるるるぅっ──ッッ!! 

 

「ひやあああぁぁッッ──!! あぁぁっ……!! おなかぁぁっ♡おなかにぃっ♡んはああああぁぁぁあああっ♡ああああああああああああぁっ♡」

 

 御使いではなく、ゲルダ自身が自らの意志で選んだ(つがい)からの射精は言葉に出来ない夢のような悦びがあった。女の卵を犯すと飛び出した精子の塊はゲルダの小さな子宮をすぐに一杯にしてしまう。

 精液を子宮にぶっかけられる快感。射精時特有の男根の振動、家の外まで響いてしまいそうな絶叫が襲いかかっているエクスタシーの度合いを指し示していた。

 

「んぅぅあああぁっ……はぁぁっ♡んぉぁっ……♡ひゃっ、ひゃっ……んはあぁぁっ♡」

 

 ガッチリとキスをしている下腹部。子宮に入り切らなかった白濁液は膣道を逆流し、結合部を白く汚していた。ポタポタと垂れる精子の滴がシーツに垂れる。

 

「ひゅごぉい……こづくりってひゅごぉい……あ、あああぁっ♡んはああぁぁっ────……♡」

 

 まだ性に未熟なゲルダの膣は暴力的な射精にただただ震えるしかない。だがその動きも男の精液を搾ろうとする懇願にもなっていた。もはや体内全てをデアーの精液で犯されたと言ってもいいゲルダは白目を剥きかけ、やがてしがみついていた四肢からも力が抜ける。

 

 ようやく肉棒を膣から解放すれば、小さな膣口からはこんなに入っていたのかと信じられない量のスペルマが溢れ出した。竿を抜く最後まで快楽で痙攣していたゲルダの様子を愛おしい者を見るような目でデアーは頭を撫でていた。

 

「さすがに気を失ったか……。お疲れ様、ゲルダ。よく頑張ったね」

 

 とりあえずは今の内にお互いの体でも拭いておこうかとデアーはベッドから離れようとする。彼の予想通り、ゲルダはしばらく目を覚まさないだろう。

 

「んっ?」

 

 だがここで本来なら北欧異聞帯で生きる少女Aに過ぎなかった彼女は親愛の獣の予想を裏切った。

 

「んぅっ!?」

 

 振り返ったデアーの首に回されるか細い腕。唇に小さく柔らかい感触。数秒程のバードキスを終えたゲルダは悪戯が成功した子供のように笑っていた。

 

「んちゅ、んはぁ……お兄さん、今のあたしはこれだけでいっぱいにいっぱいになっちゃうけど……お兄さんにたくさん満足してもらえるように……これからもっともっとこづくり出来るように頑張るわ──ふふっ…………これだけは言いたかったの…………」

 

 まさかまだ意識を保っていたとは思わなかった不意打ちのキスの後に、今度こそ気絶した彼女はデアーの肩に顎をのせるようにしてもたれかかってきた。耳に寝息の音が聞こえる。

 

 初めての、しかもビーストとのセックスでここまで喰らい付いてくるとは思わなかったデアーはポンポンと優しく頭を撫でながら彼女に対する過小評価を反省しつつも、今後の成長を大いに楽しみにした。

 

「これから、末永くよろしくね、ゲルダ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゲルダがカルデアへ転居して、数日後──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「日本人は皆、ろりこんなのじゃ!」

 

 

 指し棒片手にくわっと叫ぶは則天武后、聖心皇帝、真名を武則天。

 カルデアの一室。『小女学』と名付けられたその教室は将来有望な幼き少女達が後宮(比喩表現ではなく)に入るに至って必要な性知識、心構え、規範を教えるべく、武則天が自発的に開き、教鞭を取っている。扉の脇には『獣耳入室禁止! 特当狩人!』と書かれた張り紙がある。一体、誰を指しているのやら。

 

 

 

「はい、復唱!」

 

 

「日本人は皆、ロリコンなのじゃ!」

 

「ヨシ! ……じゃ、までは別に入れる必要は無かったが、その素直さは好ましいぞ」

 

「ありがとうございます! 幼師(先生)!」

 

「うむうむ、そなたは新入りにしては中々に見所がある。事を始めるにあたっては早いのに越した事はなかろう。我ら(幼女)は子供として軽んじられるのではない。決意した時にはもう、既に他の女共よりも数歩先を行っておるのじゃ、あどばんてーじというやつじゃな」

 

 教室に、教師、ならば当然の如く生徒もいる。熱く訓育している武則天の前には先程元気良く復唱したゲルダを始めとして、実年齢&外見年齢が十前後の少女達がまばらに席についている。

 

「どうしたのよ、イリヤ急に頭を抱えて」

 

「さっきの言葉を聞いた時、変な光景がフラッシュバックして、風雲城……バーサーカー()……うぅっ」

 

 穂群原学園小等部の制服に身を包んでいる二人の五年生、イリヤスフィール、クロエ。

 加えて、ふむふむと真面目にノートを取っているジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィ。今日はゲルダを加えて、4人の生徒が授業を受けていた。

 

 バニヤンは北欧異聞帯をマインクラフト中にて欠席。

 

「何を無駄口叩いておるのか! 妾よりも早くこのかるであに参じておきながら、未だに『小女学』を卒業出来ない不良生徒共が!」

 

「せんせーい、イリヤはともかく私が未だに補習で、美遊が先に卒業出来たのが納得出来ませ──ん」

 

「私はともかくってひどくない!?」

 

 一応は教育機関を模している以上、この『小女学』にも卒業制度はある。それは従来の一定期間を修学したら終わりというものではなく、生徒達の能力が()師である武則天が認定する基準に達した段階で卒業を認めるというもの。認められなければ、ずっと在学生のまま。何の能力はもはや言うまでも無いだろう。

 

 ちなみに卒業生一覧は──。

 

 第一懐妊を見事勝ち取ったナーサリーライムことアリス。

 最近、やけに母性が出て来た気がするジャック・ザ・リッパー。

 異聞帯攻略におけるMVPアビゲイル。

 イリヤには手を出さないで──勝てなかったよ……美遊・エーデルフェルト。

 

 ジャンヌ・リリィは卒業認定を受けているが、本人が自主的にここに学びに来ている模様。さすがは幼き邪ンヌとも言える。マジ勤勉。

 

 それと武則天がここに入学させる基準が独自にある。

 アナを含めたゴルゴン姉妹やエレナに清姫も外見は幼いが精神的に成熟している面もあるので却下。似たような条件で鬼っ娘二人も却下。つまり、外見と精神性が共に幼い事が条件。

 

「私のキステクにマスターってば、いつもメロメロだしぃ?」

 

「ふはははははははッ!!」

 

「大爆笑!?」

 

「当たり前じゃ! 最初の逢瀬の時にその調子で挑んで呼吸困難になるまで口内を蹂躙され、失禁したというのによくもまぁ、そんな口が叩けたものよ! 妾の腹筋大崩壊!」

 

「いやぁっ──!! 何で知ってるのよぉ!? イリヤですら知らないのにぃ!!」

 

「教え子の経歴をおさえておくのは師として当然であろう」

 

「クロ……」

 

「イリヤにそんな(憐れみの)目で見られる筋合いは無いわ! それに私知ってるわよ! あなただってマスターとお風呂で──」

 

「にゃあああああああああっ!! やめてぇぇぇぇぇええ!!」

 

 いつも頑張っているマスターを労わる為にどうしようか悩んでいた所を、マジカルルビーにそそのかされてその意味も知らずにマットとローション片手に浴室に突入してしまったというイリヤの恥部はまた別の話。

 

「醜いのぉ。ゲルダよ、この二人は反面教師として見ておくがいい。大人の体で妖艶さを宿すのは当たり前。だが真の(幼女)は幼い体で大人の色気を醸し出すものじゃ、武器は一つより二つ。人妻より幼妻。妾達に必要なもの、即ちあだるてぃじゃ」

 

「あだるてぃ」

 

 素直なゲルダが再び復唱する。つまるところ、この『小女学』の最終目的は幼女としてただ愛でられるのではなく、時にリードし、奉仕する大人の色気を身に付ける事。最初から最後までマスターに犯られっぱなしである絶賛争い中の二名にはまだ卒業証書を授与は出来ない。その点、武則天はゲルダの隠れたポテンシャルを見抜いていた。

 

「はいというわけでここで雌餓鬼(クロエ)に問題である!」

 

「あだ名、酷すぎないっ!?」

 

「そなたの口淫によってマスターの肉棒からたっぷりと精液が吐き出されました。次にそなたがすべき行動は?」

 

「何よ、そのサービス問題、簡単過ぎるわ……。答えは全部、飲み込んであげて、ご馳走様♡でしょ?」

 

「はい雑魚。一生、マスターにわからせられてしまえ」

 

「ねぇ、イリヤ。私ちょっと泣きそう」

 

「ならば白幼聖者(ジャンヌ)、卒業生の見本を見せてやるがよい」

 

今まで真面目にノートをとり続けていたジャンヌ・リリィが元気よく立ち上がる。

 

「はい! 答えは飲み込む前に口をくぱぁとして吐き出させた精液を見せ付けるです! 理由は幼い私達の口を男の欲望で汚した実感を視覚効果をもってより生々しく抱いてもらい、マスター(トナカイ)さんに興奮と背徳感を覚えてもらう為です!」

 

「満点じゃ!! 後で花丸印の聖心邮票(スタンプ)を授けてしんぜよう!」

 

「わぁ──い、やったぁ!」

 

「リリィお姉さん、凄いわ! あたしも見習って、頑張らないと」

 

 正しい答えを導き出した生徒を褒め称える教師、それに喜びを露わにする生徒。そしてその姿を見て次こそはと奮起する他生徒。正しい、教育の現場がそこにはあった。

 

「ガワだけ見ると、微笑ましいわね」

 

「教育内容がアレ過ぎるもん……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




《ゲルダの処女膜が貫通した頃~~カルデア、マスターのマイルームにて》




「マーリン、シスベシ……フォウ……」

『人生ゲーム メイガスドリーム』は終盤へと差し掛かっていた。フォウは聖杯戦争エリアで召喚したキャスターが女漁りをしている間に襲撃され、死亡(脱落)
 マシュはYouTuberで稼いだ資金を元手に人材派遣会社フィニスカルデアを成立。年収10億の敏腕女社長となった。

「フ、フフ……資金も魔術の研究も順風満帆……。間違いなく勝ち組と言えるのに、何でしょう、この虚しさは。結婚マスに止まらなかっただけたというのに、私の肩に重くのしかかる敗北感はっ……!」

「魔術刻印は一子相伝なのだから、他の4人を別の魔術師の家に養子に出してしまえば、ゴール出来る(根源に至る)確率は抜群に上がるのでしょう?」

「却下だ。俺は自分の子を捨てるつもりは無い。君が何と言おうともあの子達は俺が育てる」

「だ──か──らっ! ゲームの話だってあなたが言ったのでしょうがぁ!」

「自分の子供をゲーム感覚で育てるというのか……。いつから、君はそんな冷たい女になってしまったんだ。やはりクリプターとは分かり合えないのかッ……クっ!」

「えぇそうね! 私はクリプターだったわね! どうしてこんなに真剣にあなた達カルデアとボードゲームで白熱しているのか理解出来ないわ! 本当に今更過ぎるけど!」


 結婚マスで結ばれたカルデアのマスター&オフェリアペアはその後、子作りマスに何度も止まり、5人の子宝に恵まれた。さすがのマシュも一人行き遅れルートを邁進している中だったので心が若干荒み、ゲーム途中でオフェリアに対し、「先輩に色目つかわないでドスケベ淫乱必殺魔眼」と吐き捨てた。オフェリアは泣きそうになった。今の会話も聞きようによっては子供の教育方針で対立する夫婦のようでもあったので特にアリスに先を越されたマシュにとっては若干地雷とも言える。

「ふぅ……ふぅ……1、2、3、4、5、6、7──ってこれ、もしかしてゴールかしら?」

 結局、子供の教育は全て夫の方に任せたプレイヤー:オフェリアがゴール(根源)へと到達。黒くて大きい丸いマスに書かれた文字を読み始めた。

【Congratulation! Congratulation! あなたは全ての魔術師が目指すべき到達点──根源間近へと辿り着きました。あなたには二つの選択肢があります。今の幸せな生活を全て捨てて、根源を取るかあるいは根源を諦めて、家族と暖かな家庭を築くか。さぁ、どちらを選びますか?】

 Yes(根源) or No(家族)と別れた矢印の先に文字が何らかの魔術で隠されているであろうマスがそれぞれあった。まさにこれは究極の二択。魔術師としてなら迷うことなくYesへ。だが、今まで波乱万丈な人生を歩んできたプレイヤーにとってきっと残った価値観は根源以外にもある筈……。そんな心揺さぶる訴えを最後の最後に投げかけてきたのだ。

「いや普通にYes(根源)しかないじゃない。だってそれが目的のゲームでしょ?」

 オフェリア・ファムルソローネはドライだった。迷うことなくコマをYes(根源)と書かれた先のマスへと進ませた。

「フフ、これで私の勝ちということになるのよね………………ん? また何か書いてるわね、祝福のメッセージかしら?」


【あ―はいはい、根源へのゴールオメデトウゴザイマス。あなたはその後、抑止力に抹殺されました。魔術師の本懐を果たす為に愛するパートナーと子供も捨てた先に行き着いた結末がこれですよ、満足ですか? 家庭を犠牲にして食う根源はうまいですか? え―、はい、ゲームクリアですよ。別にあなたは悪くありません。そういう趣旨ですからねコレ。こんぐらちゅれーしょん……こんぐらちゅれーしょん……そうか、そうか、つまりきみはそんなやつなんだな】


「何でそこまで言われなきゃいけないのよ!」

 真の最後のコマに浮かび上がったメッセージでオフェリアの堪忍袋の緒が切れた。実は微笑ましくも一番でクリア出来た事に多少の喜びもあったのだが、その達成感も台無しにされ、遂にはボードゲームを怒りのあまりひっくり返した。やっぱり(ファック)ゲーだった。

「あっ、ちなみに最後の選択は俺が勝手に付け加えた設定だよ。ゲームとはいえ、与えられたレールの上を漠然と走るのはどうかと思ってね」

「やっぱり私、あなたのこと嫌いよっ!」

 与えられたレール云々についてはまぁ、色々あったオフェリアも賛成だが、それはそれ。

「そう? 俺は結構、オフェリアさんのこと好きだけど」

「んっ、ぐっ……! あなたはマシュの前でまたそういうことをッ……」

 一切の澱みも迷いも無く、当たり前のようにそんな台詞を吐くマスター。そういうところだぞ。
 ナポレオンの求婚さえ、ただの戯言と切り捨てた鈍感な彼女の頬が上気してしまう程に真っ直ぐで強烈な言葉だった。気圧されて、オフェリアは視線を逸らした。

 頬の熱さが怒りか、または別の感情から来るのか、今のオフェリアにはまだ分からなかった。



 後に偶々、その場面を目撃していた蒼玉の魔法少女は「まるでありし日の自分を見ているようです」と遠い目で語った。











エロ編(北欧)はまだ続くんじゃ。次回は三姉妹。




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戦乙女レビューアーズⅠ(ワルキューレ)

泥が引いて、やっとウルクに帰ってこれたので投稿しますね。
遅くなってごめんね。終局特異点アニメ化、非常に楽しみです。





【12時間後に死ぬ魔神柱】

1時間目
「起動せよ。起動せよ。管制塔を司る九柱。即ち」
「パイモン。ブエル。グシオン。シトリー。ベレト。エリゴス。カイム」
「我ら九柱、統括を補佐するもの。我ら九柱、末端を維持するもの」
「“七十二柱の魔神”の名にかけて、我ら、この統合を止む事認めず……!」


死まであと11時間









 北欧神話において名高き大神(オーディン)の手によって鋳造された戦乙女(ワルキューレ)という存在がいる。

 

 来たるべきラグナロクに備え、勇士の魂をヴァルハラへ運ぶという役目を担い、天を翔ける彼女達は優れた戦闘機能と高い神性を誇る。

 

 だが誤ったラグナロクを迎えた北欧異聞帯において、そのワルキューレ達は劇的に数を減らし大神(オーディン)手ずから造ったオリジナルは3騎しか残らなかった。

 

 オルトリンデ。ヒルド。スルーズ。

 

 そこに加え、彼女達をモデルとして女神スカサハ・スカディが造り上げた量産個体と呼ばれるワルキューレが150騎。

 統率個体と呼ばれるオリジナル3騎よりもスペックでは劣り、一騎一騎の戦闘力に関しては平均以上のサーヴァントには及ばないが、100の集落、1万人の人間を3000年間、保護し、管理するという点においては女王の元、その役目は十分に果たしていた。

 

 

 最大の脅威であったスルトは消滅し、埒外の幸運によって剪定に怯える事も無くなった。間引きする必要も無く、これから1万人、25歳をリミットとしていた人間達は増加の一方を辿り、長く生きる事となるだろう。やがては汎人類史のような文明も手にするかもしれない。北欧に現存する唯一の神スカディにとって管理する人間が増えるという見方もあるが──。

 

 ──これから、またワルキューレ(量産個体)を増やすのか? 

 

 愛するブリュンヒルデと北欧異聞帯に残る選択を取った魔剣使いの問いに彼女は首を横に振った。

 

「やがて人の子が増え、成長し、その中で北欧を統べようとする者も出てくるであろう。私のように遥か高みからではなく、同じ人の目線の高さでな。人の言葉で『為政者』と言うのであったな……」

 

 いつの日か、神の手を離れていく人間達を寂しそうに愛おしそうに夢想しながら、だがそれは間違いなく祝福できるものだと、自分はそんな未来を手に取りたくて3000年間、諦める事を拒絶し続けたのだから。そんな風に笑う女王の微笑みは暖かった。

 

「さすがに今すぐとはいかぬが……遠くない未来、人の子らが()御使い(ワルキューレ)達と訣別する時が来よう。だが、よいのだ、それでこそ、ようやく正しきラグナロクを迎える事が出来たとも言える。まぁ……今だけはその親離れの手伝いをしてやればよい……()が言うのもおかしな話だがな」

 

 神々の時代が終わり、やがて人の時代がやってくる。だがそれは喜ばしい事だと北欧最後の神は言った。

 

 終わりの見えない旅の果てにようやく光を見つけ、肩の荷が降りたようなスカディの様子を三人のワルキューレ達は喜んだ。

 

 

 

「我々もこの結末に至るまで、尽力した甲斐があります」

 

「えぇ、ですがデアーと名乗る異邦の勇士がいなければ、スルトに敵う事は無かったでしょう」

 

「あたしはイッた後、ずっと病室で寝てただけだけどね」

 

 

 その場の空気が凍った。

 

 

 スルトの手によって崩壊しかけていた氷の城は女王の手で修復され、元通りとなった玉座の間に何とも言えない沈黙が続いていた。

 オルトリンデとスルーズはヒルドから視線を逸らした。二人の気遣いも虚しく、ヒルドは自虐的な独り言を続けていた。

 

「いいよね──二人はちゃんと最終決戦の場で槍を振るう事が出来てさ──。あの人に下半身見られて、絶頂して、ベッドで寝てたら全部が終わってた時のあたしの気持ちがわかる?」

 

 デアーと最初の接敵で『白式官能』により空中アクメを決めてから、量産個体三十騎共々、『境界無き病棟(ボーダーレス・ナイチンゲール)』の病室に叩き込まれてから最後まで出番が無かった彼女の胸中を察すると涙が止まらないだろう。これなら普通の戦闘で重傷を負っていた方がまだ良かった。最近、他の量産個体達の間では「え? 統率個体はスルーズとオルトリンデの二騎だけでしょ?」とか囁かれているような。

 

 頑なに視線を逸らすオルトリンデとスルーズの顔をドロドロとした瞳で覗き込もうとするヒルド。

 

「ワルキューレネットワークでさ、【アヘってスルト戦に出れなかったワルキューレがいるらしい】って立てられるの」

 

 

 

 1:Maspro110

 これマ? 

 

 2:Maspro55

 さすがにないでしょ、北欧存亡の危機だよ。仮病より酷いでしょ

 

 3:Maspro21

 でもオフェリアさんが連れてった三十騎の量産と一騎の統率からの同期が急に切れた時あったじゃん? 

 

 4:Maspro121

 は? それだけで判断したの? 飛躍し過ぎ、釣るのにももうちょいマシなスレを立ててどうぞ

 

 5:Maspro69

 いやその同期切れた瞬間に偶々別任務で哨戒していたワルキューレが見たって

 

 6:Maspro45

 何をさ

 

 7:Maspro69

 空中で絶頂して潮ふいてるワルキューレ達がいたって

 

 8:Maspro12

 うわぁ

 

 9:Maspro21

 きたない

 

 10:Maspro7

 スカイハイってやつですね、分かります

 

 12:Maspro11

 これだから男日照りの処女共は

 

 13:Maspro15

 見て! ワルキューレが潮を噴いてるよ

 かわいいね

 

 14:Maspro77

 私達は真面目に仕事しているのにあいつらが色ボケているせいで、やる気を失ってしまいました

 

 15:Maspro30

 お前らのせいです

 あ~あ

 

 16Maspro69

 ちな統率個体はヒルドさんらしい

 

 17:Maspro15

 槍生えるわ

 

 18:Maspro39

 やはりピンクは淫乱

 

 19:Maspro77

 アソコがヒクヒクヒルド

 

 20:Maspro43

 そもそも戦闘に支障が出る程とか、敏感過ぎない? 欲求不満ですか? 

 

 21:leader2

 ここに書き込んだ奴全員特定したからね

 

 22:Maspro69

 

 23:Maspro15

 

 24:Maspro21

 あっ

 

 25:Maspro110

 やべっ

 

 26:Maspro45

 にgre

 

 

 このスレは終了しました。

 

 

 

 

 

「醜い争いだったよ。あれのヤバさは実際に経験したあたし達にしかわからないし。喰らってないからって好き放題言ってくれちゃってさぁ……入院組とそれ以外で確執できちゃったしね──。オルトリンデもスルーズもさ、ほんの少しだけヤられたって聞いたけど、こっちはそれの比じゃないからね。まぁ、あの時は彼も戦闘不能目的だったろうから仕方ないけどさ……もう腰砕け、槍を構えるどころか立ってられない状態? あれ以上されていたらあたしがヴァルハラに召されてたよ。それを知らずにあの乳臭い処女共はさぁ……あたしがベッドの中で後遺症抑えるのにどれだけ苦労したのか……。全員の股にグングニルしてやろうかな。あぁ、知ってる? あの三十騎の量産個体の中で疼きが治まらなくて互いの体を求め合った娘達がいるって」

 

「ヒルド、ブレーキ」

 

 ようやく諦めたスルーズがヒルドの肩を掴み、目を合わせてくれた事で彼女の毒は落ち着きを見せた。

 オルトリンデとスルーズの二人も贋作の方のブリュンヒルデが手籠めにされたと聞いた時の錯乱状態を落ち着かせる為に撫でるような『白式官能』を喰らったが、攻撃手段として『白式官能』を喰らったヒルドの快感には及ばない。

 

 ヒルドとしてもネットワークで舐めた口を聞いた量産個体共には御礼参りをしたい所だったが、それはそれでムキになってあちらの言い分を認めているようで癪だった。結局、暴力的手段には出なかった彼女だが上司に対する口の聞き方がなっていない連中をどうしたもんかと悩んでいたのだが。

 

 

「まぁ、それもあの人が、「それなら皆仲良く『白式官能』受けて、痛み(快楽)を共有すればいいんだよ!」って、他の120騎の量産個体にもアクメきめてくれて、丸く収まったんだけどね」

 

 丸くは収まっていない。頭のおかしい奴がサイコってる手段で無理矢理黙らせただけである。だがそれで結果的に全てのワルキューレが快楽を共有し、仲違いする事も無くなった所が始末に負えない。過程が狂っているだけで結果的には円満に至っているのだから。

 

 その瞬間のワルキューレネットワークが1レスから1000レス目までああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ♡で埋まっていく光景は地獄絵図だったが、ヒルドとしてはざまぁとスッキリした気分でデアーにお礼を言いたかった。

 

「……命を狙ってきた敵対勢力なのに、北欧にとっての満点のハッピーエンドを用意されてさ、こうやってあたし達の下らない、いざこざにも心を砕いてくれるワケだし。さすがに与えられてばっかりなのもさ……」

 

 後者はともかく前者としてはオルトリンデとスルーズも首を縦に振らざるをえなかった。心無き戦闘ドールとして自らを定義されている筈のワルキューレ達だが……それでも敬愛すべき、もう二度と会えないと思っていた長姉──ブリュンヒルデと穏やかな陽だまりの中で共にいれる幸福をもたらしてくれたあの男に対して感謝とノイズがかった感情を持っている事は決して否定出来なかった。

 

 だが、それでもワルキューレ達が自ら動く事は出来ない。

 

「…………ヒルド、貴女の言わんとしていることは分かります。ですが、我々はあくまで戦乙女。女王スカディに仕える身であるということを忘れずに」

 

「はい。私達は主から入力された命令をこなす自律機械。そこに個人の感情が入り込む余地は無いのです……そう、あっては──ならない……のです」

 

『ワルキューレ』という枠から決して外れないようにする彼女達には未だ知らぬものがある。それを知った時、自らの神性は剝がれ落ち、天から地へと落ちるだろう。かつての長姉のように。

 だが、それを不幸だと、憐れみを持つことはどうしても出来ない。

 憎々しい魔剣使いの隣にいるお姉様──狂気とも言える愛と憎の狭間にいる彼女だが、それでも微笑んているのだ。幸せだと、偶に爆発し、槍で愛する男を刺しても、肝心の男はそれを受け入れている。血だまりの中でなお、当方はお前を愛すると。余人が見れば、穏やかではない関係だが──それは確かに愛と言える代物だった。

 

 愛、愛、愛、愛情。それを手にした者はどれだけ強くなれるのだろうか。長姉じゃないもう一人のブリュンヒルデお義姉様。零の獣と創造主とも言える黒き魔女に溢れんばかりの愛はスルトすらも貫く魔槍となっていた現実は目にした。

 

 バグである、ノイズである、エラーである…………そう片付けるには、愛が成す奇跡を目にし過ぎてしまった。もし許しがもらえるのならば、この知的好奇心を。胸と股に宿る仄かな熱の正体を知りたい。

 そんな3人の共有した想いを見抜くようにやり取りを眺めていた女王スカディは慈愛の笑みを浮かべていた。

 

「ほう、私の許しがあれば良かったのか。そんな簡単なことであったか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「といった経緯(いきさつ)で我らワルキューレ統率個体スルーズ、ヒルド、オルトリンデ及びに量産個体合わせて、153騎、女王スカディから御身をマスターとして仕える事を命じられました」

 

 オフェリアがカルデアのマスターに破廉恥な事は控えるようにと釘を刺して、トロッコに揺られながらロシアに向かっている頃。

 そのマスターの自室で、綺麗に三角形の並びで跪いたまま微動だにしない三騎のワルキューレ達がいた。

 

 

 北欧の中で一番デアーに対して感謝の念を抱いているのはワルキューレでもオフェリアでもなく、間違いなく女王スカディである。

 

 かの女神は北欧を救ってくれた大恩をどうすれば少しでも返せるのか思案していた。

 悩みに悩んだ結果、行き着いたのは英雄色を好むという事で見麗しいワルキューレ達の身全てを彼の元に委ねるといったものだった。

 

 一応は大事な娘のような存在、彼女達がデアーに対して憎からず思っている事を確認出来た為、ようやく実行することが出来たとも言える。

 ここで我が身をと言えないあたりが女王スカディの中でもスカサハ成分っぽくない、いじらしさというべきか乙女らしさというべきか。

 

 今、この場にいるのは全てのワルキューレ達を代表としているオルトリンデ、スルーズ、ヒルド。ワルキューレネットワークでは量産個体達から、「ずるい」「職権乱用」「下部組織にも蜜よこせ」とクレームが鳴り響いていたが、そこの同期は切られている。デアーの手で全員バグっているのか。

 

 訪問されて早々、153体の女体を献上すると言ったにも等しい宣言を受けてもマスターは狼狽する事はない。

 彼女達がスカディに命じられたからという理由だけで自分に仕える事をよしとしているワケでは無いという事を何となく察していた。

 

「何をらしくなく考え込んじゃってるんですかセンパイ? 質の良いラブドールが153個増えたと思えばいいでしょ。ほらほら、元は敵だったワケですし、遠慮はいりませんよ。えぐいようなプレイをこのお人形さん達の体で試してみましょうよ~~♡」

 

 ワルキューレ達はともかくとして、教鞭でマスターの頬を実にうざったるくツンツンと突いている黒いコートを纏った女もいたが、彼がお返しにそのパツパツのお胸を揉みしだくと顔を真っ赤にして瞬時に離れていった。反撃されると分かっているならちょっかいをかけなければいいのに。

 

「何でいるの?」

 

「あ~~ぁ、そういうこと~~言っちゃいますぅぅっ~~? せっかくセンパイの部屋に備え付けてある『HBチャンネル』のメンテナンスに来てあげたのにぃ。センパイがこのカルデアで爛れた生活を送れているのは7割方はBBちゃんのおかげだってことをしっかりと自覚して下さいね☆」

 

『HBチャンネル』。魔改造エロシミュレーション的な何か。

 経緯は無人島から持ち帰った簡易疑似聖杯を元にスカサハ他キャスター陣によって造り上げられた時の流れが遅いシミュレーションルームをコンセプトに──さらにさらにとBB自身のスキル『黄金の杯』と『百獣母胎(ポトニア・テローン)』の権能に加え、無駄に重い容量(スペック)を駆使した結果──時間の流れすら超越したあらゆるエロシチュに対応可能なイメクラルームという認識でいればいい。

 

 そのエロスポットの入り口となるのが桜色のコフィンという拒否感湧き出る代物なのだが……当たり前のようにマスターの()()()()の自室に備え付けられてある。

 

 実は現在のマスターのマイルームはトイレや浴室等を除けば、()()()存在する。

 

 室外から見てしまえば、空間スペース的にとてもじゃないが、もう一つ部屋があるようには見えない。

 それはそれ──彼との性交によって受肉した神代のキャスター陣達の手によれば、空間拡張などお手のものである。

 そもそもの話、現在カルデアに在住しているサーヴァントの内約半分、つまり殆どの女性(元)サーヴァント達はバージョンアップされた状態で霊基ではない肉体を手にしたわけで、存在維持の為にマスターやカルデアからの魔力供給を必要としなくなっているのだ。

 エネルギー切れに配慮しないで好き勝手出来るという事もあって、現在のカルデア内は結構な魔境となっている。当たり前のように温泉、ライブ会場、メイド喫茶等々あるのだから、草葉の陰でマリスビリーも泣いているだろう。

 

 

 というわけで先日、ボードゲームを楽しんでいたオフェリアが気付くことも無く、一見簡素なマスターのマイルームの壁に9と4分の3番線よろしく入ってしまえば、そこには100坪程度の広さがある空間があるわけだった。

 

 その部屋に備え付けられてある『HBチャンネル』のコフィンはマスターの部屋だけではなく、1万サクラマネー(1000万QP)で女性陣限定に販売され、彼と関係を持っている彼女達の内半分以上は既に購入済みで自室に設置されている状態だったりする。

 

 後は互いのコフィンからマッチングすれば、それぞれの欲望に見合ったシチュエーションでエロエロヌチャヌル出来てしまう。

 

 ただ、普通に考えればマスターの体は一つなのでそんなに多数のコフィンがあっても予約待ちいっぱいで持て余しているようにも思えるがそこで零の獣の第三宝具『竿繋ぎの多元性交(パラレル・セックス)』である。

 セックスの数だけ自己を並列存在させることが出来るこの宝具とBBの『HBチャンネル』は幸か不幸か非常に相性が良く、吸引力の変わらないただ一つのダイソンの如く、数多の女達を終わりのないのが終わりな白濁体験へと叩き込めるわけで。

 当たり前のように最も使用率が高いマスターの部屋にあるコフィンは一番負荷が高く、BBが定期メンテと称して、彼の部屋へ突撃するのも仕方のないことなのかもしれない。

 

 まぁ、そうやって何かしら理由をつけないとマスターの部屋へ遊びに行くことが出来ないのがこのポンコツAIのいじらしい所というべきなのか、非常に面倒臭いところというべきなのか。

 

「そもそもあのオフェリアさんとか言いましたっけ? どの面下げてセンパイやマシュさんに引っ付いているんですかね? どうせ『この二人を清い男女交際にしなくちゃ──』とかありがた迷惑なこと考えているんでしょうけど……。あぁ──嫌ですよね──、相手方の意志を無視して、頼んでもいないことを勝手におっ始めるお馬鹿さんは。しかもそれが当の本人にとっては100%の善意になってる所が実に始末に負えないです」

 

「おっ、自己紹介かぁ?」

 

「………………」

 

 BBの背後から現れた黒い触手から「名状し難き―、ニャルニャルビーム!」と無貌の光線が放たれ、マスターの白き触手が「きかぬわぁっ!」と相殺する。仲良いですね。

 

「それ! あたし達はそれを学びに来たの!」

 

 ヒルドが立ち上がり、若干興奮した様子でマスターとBBの戯れに指をさしていた。

 

「はい。互いに致死性の攻撃を行いながらもその気安い関係は破綻することなく」

 

「まるでブリュンヒルデお姉様とシグルドのような『愛』を貴方達二人から感じました。えぇ、ワルキューレには不要だった『愛』という感情変動、私達はそれを学びにきたのです」

 

 オルトリンデとスルーズもそれに続き、もう一つの理由を明らかにした。本物と贋作、二人の姉を変え、時には莫大な力を産み出す『愛』という概念を学ぶ為に零の獣の従者としてこのカルデアに訪問したと。

 

 三人の宣言に数秒フリーズしていたBBは動き出した。ピクピクと頬を引き攣らせて──。

 

 

「は、は、は、は、ハアアアアアァ──!? ……いやぁ、いやいやいやいやいやいやいやいあいあいあいあいあ、ちょぉっとこの欠陥人形さん達はいきなり何をおっしゃってるんでしょうかぁ?」

 

 BBは否定する。マスターに向いている矢印は愛だの何だの甘ったるいものはなく、面白おかしくちょっかいをかける玩具(おもちゃ)ぐらいの意味しかない。あったとしてもLOVEではなくLIKE。あくまでフレンド的な清い関係でしか無いと。

 

「清いと言うにはもうお互い爛れたことヤッちゃってるから手遅れだと思うゾ」

 

「プププ──。何ですかセンパイはあれですか? ちょっと一緒に寝ただけでもう彼氏面ですかぁ♪ いやだ──、面倒くさ──♡ベッドの上で吐かれる言葉は風船よりも軽いと思った方がいいですよ? 他のメスサーヴァントさん達はそれで堕ちるかもしれませんが……残念ながら、スーパーデビル後輩なBBちゃんはそんなにチョロくないのです」

 

「ちょっとって言える回数じゃなくなぁい?」

 

 なお乱交も含めれば3桁はイッてる模様。

 

「体は堕ちても心が負けを認めなければノーカンです」

 

 かつて、マスターを人理漂白以降の未来へと行かせない目的の元、ルルハワで一生監禁しちゃえっ☆と暗躍していたBBだったが空港の初コンタクトで「何となく多分コイツ黒幕だと思う」という理由で有無を言わさずその場で無駄乳を揉みくちゃにされ、口内とベロを吸い尽され、膣と子宮に白濁液を叩き込まれて、全裸土下座のコンボ。イキ恥じ……これが後輩の姿か? ──をされたBBが言うのなら説得力がありますね。

 

 その後は単純に同人誌作りとバカンスを楽しむ為だけにループ能力を使わされてしまった彼女。……もう散体した方がいいのでは? 

 

「あくまでフレンズなのですBBちゃんは。ポジション的にはメイヴさんあたりと一緒ですよ」

 

「ハッハッハ、君みたいなエロ雑魚ナメクジがマイベストフレンド(親友)の位置に行こうとか喧嘩売ってんの?」

 

「え、え、え、え? 何でここで割とガチめでキレてるんですかセンパイ? あっちょっとやめて痛い痛い痛い痛い痛いぃぃぃぃぃ!! 腕挫十字固(うでひしぎじゅうじがため)はいたいですってば! ステゴロ聖女さんとかサンバサンタとか天秤の女神系統の技は私に良く効くんですって! クラス相性的に!」

 

 ベッドの上でパンパン(タップ)ギッシギシ(関節が軋む音)と卑猥なく仲良くじゃれ合っている二人の様子を目にして、「汎人類史の愛情表現は独特なのですね……」とメモを取り始める戦乙女三姉妹。シグルドも槍に刺されようがルーンで燃やされようがブリュンヒルデ相手なら微笑んでいたので、誤解の原因は元から近くにあった。

 

 数分後、半泣きで「……ハァハァ、もうっ、センパイってば本当に私のこと大好きですよねぇ……」と懲りずに挑発的な言動を繰り返すBBは一度置いておいて、改めてマスターはワルキューレ達と向き合った。

 

「俺に仕えてくれるっていうのは凄く助かるし、その気持ちは純粋に嬉しい。スカディの考えていることもまぁ、何となくわかる」

 

「我らが女王はいずれ北欧にて戦乙女の役目が無くなることを確信しております。今すぐではなくとも、それは遠くない未来に。行く当てを失うであろう私達の新たな存在意義を入力してくれた女神スカディのご高配をどうして無下にできましょうか」

 

「在職中に次の転職先の内定をもらっておこうみたいな感じ? しっかりしてるね」

 

「おめでたいことに家畜を卒業した人間の皆さんがこれから北欧で増えるというのなら、確かにワルキューレに加えて、神という存在も必要不可欠ではなくなるでしょうしね──。それにセンパイとバニヤンさんにアルテラさんあたりがマインでクラフトにインフラを盛り上げてしまってますから。ふぅ、開拓者と破壊の大王が力を合わせて人の営みを創造するっていうのは実に皮肉がきいていますけど」

 

 北欧で活動している白き巨人アルテラマンの姿を見て、ワルキューレネットワークがざわつきはじめていたのは余談。

 

 サーヴァントは何騎いても困ることはなく、それに目麗しい美女3人が自分の物になると傅きにきたのだ。現地住民のゲルダを拉致したのに等しい彼がここで今更、草食系好青年気取って彼女達の申し出を断る理由は無かった。

『白式官能』でお手付きした責任を取る為に彼女達が知りたい「愛」とやらを一生をかけて教えるのも吝かではないのだろう。

 

「かつて敵対し、槍を向けた私達の言葉をすぐには信じられないかもしれませんが──」

 

「ん、じゃあ、これからよろしく」

 

「え?」

 

 スルーズの葛藤する言葉を一蹴し、マスターは当たり前のように手を伸ばしていた。親愛の握手をする為に。

 

「そ、そんなあっさりと……?」

 

「いや君達だって北欧を救う手段があるって言った俺の言葉を信じてスルトと戦ってくれたじゃん」

 

 同じこととはとてもじゃないが言えないだろう。何せあの時、スルーズもオルトリンデも敵意を込めていた槍を降ろしたのは女王の意向があってのこと──自分達の懐はあなた程広くは無かったと彼女達は否定したかった。

 

 マスターからすれば、今でもごく稀にセックス中に感極まってブリュンヒルデ・ロマンシアで腹に風穴を開けてくる贋作妹分がいるので、あの程度のことを気に病む必要はある? と心から疑問を持っていたりするわけだが。

 

「私達は──……!」

 

「俺はそっちのおかげで助かったし、一切気にしていないって言っても……君達は多分気にしちゃうんだろうなぁ。まぁ、その葛藤は君達だけのものだからこれ以上は言わないでおく。そのモヤモヤとした感情もきっとこれから必要なものになるだろうし」

 

 罪悪感かあるいは後悔か。彼女達が本当に入力された命令だけをこなす機械だったならば、今のマスターの言葉をありのままに受け入れてただろう。

 

「答えが出ない問いに悩み悶える美女の顔もまた映えるねぇ」と頷くマスターに「いやん、センパイってばイイ趣味してます♡」とハイタッチをかますBB。ついさっきまで戦り合ってとは思えない仲の良さ。この二人の感情の揺れ幅は激し過ぎる。メイヴとは別ベクトルだろうが、波長は合うのだろう。

 

 戸惑いながらもオルトリンデとスルーズは差し出された手を握り返していた。

 こんなにもあっさりと受け入れられるとは思っていなかったのだろう。何とかあの手この手で懐柔しようとしていた交渉材料も全て無駄になってしまった。ひと悶着ぐらいあるとしていた予測を裏切られて、やや困惑している。

 

 ただ、受け入れられた以上は己の葛藤をひとまず置いておき、従者として尽くすと決意を固めた。その中で自分達が知りたい愛という概念を学んでいけばよいと。

 

 

 

とりあえず、ずっと蚊帳の外だったヒルドは服を脱ぎ始めていた

 

「「何をしているのですかっ!?」」

 

「えっ?」

 

「いや、えっではなく……」

 

 スルーズはどうしてヒルドの方が不思議な顔をしているのか理解出来なかった。上手く同期も出来ないし。

 一心同体の三姉妹だった筈なのに今はこの桃色の戦乙女が遠い世界に行ってしまっているような現実に涙腺が熱くなったような気がした。順調に感情を学んでいるようで何より。

 

「え──と、だって、こういうことする為に来たんじゃないの? ほら、今までのお詫びを体で払いますって定番でしょ。あたし達三騎はお礼出来るし、マスターは女の躰を抱ける、ついでに『愛』も学べるかもしれないから一石三鳥じゃん!」

 

ヒルド(淫乱娘)

 

ヒルド(発情娘)

 

 冷たい目でこちらを見る姉妹二人に「またあたし何かやっちゃいました?」と疑問符を浮かべるなろう系ならぬヤろう系戦乙女ヒルド。

 

「あたしはてっきり3人ともそれ目的で来たと思ったんだけど……。だって『愛』を学びに仕えにきたって最終的にはそういうことになるワケじゃん」

 

「じゅ、順序というものがあるでしょう!?」

 

「まずは服を着て下さいヒルド……」

 

「それなら私がお手伝いしてあげましょうか──?」

 

 そんな3人の漫才を見ていたBBがいつもの如く小悪魔的な笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『HBチャンネル』のコフィンがある別室へと誘われた三人、神代を生きた彼女達にとってもその空間に並んでいた宝の山は言葉を失うほど驚嘆に値するものだった。

 

 二桁単位で存在する魔力リソースの塊とも言える聖杯を中心に青赤黄の何やら強大な力を宿しているような石の山、竜種から剥ぎ取った牙に逆鱗、霊長の羽根にデミゴッドの心臓、自分達の鎧と同じオーラを感じる青い鋼、禍々しい宝剣、片目が隠れた不気味な雰囲気な女の子の人形に、敵意を感じるぬいぐるみ、北欧とは別の系統の神秘を感じる三匹の子猫。今挙げたものも、その山の一角に過ぎない。

 

 魔術世界ではその一つを求めて軽い戦争が起きてしまいそうな遺物が売れ残った在庫のように存在している。それはまるで何かの冗談のような光景だった。

 

 マスターのマイルームに隠れた宝物庫。誰が呼んだかその蔵の名は『マテリアルボックス』。

 

「どんどんアイテムも増えて、いつまで経ってもただの倉庫で保管ってのはセキュリティ面でも不安でさ」

 

「このカルデアで最も重要度が高い場所とも言えちゃいますから。大切なものと危険物を同じ場所に置いておいて防衛にかかるコストを安くしてしまいましょう──! という職員の皆さんの浅知恵です♪ 実に涙ぐましいですね」

 

「ちなみにどっちが危険物?」

 

「センパイに決まってるじゃないですかぁ。ばかぁ?」

 

 争いは同レベルの物同士でしか発生しない。ぐきぎと互いに頬をつね合っている二人の後ろに成人男性一人が余裕を持って入れる程のサイズをもった桜色のコフィンが鎮座していた。

 改めて説明するまでもなく、BBはワルキューレ達に『HBチャンネル』を使わせるつもりだった。彼女にしては本当に珍しく、()()()()()()は純粋な善意で。

 

「創造主の意向に反して、愛だの感情だのエラーを学んでしまった人形さん達がどうなるか見物ですよね」と言葉では嘲るように言ってはいたがそこに悪意は感じられなかった。

 

 それはそれとして後で撮った物は眼帯クリプターに送り付ける腹積もりらしい。他の人間に迷惑をかけないとは言ってない。

 

「はい♡ではワルキューレの皆さんはこちらのモニターからお好みのシチュをパパっと選んじゃって下さいね♡」

 

 

 コフィンと繋がっている筐体へささっと怪しい客引きのようにワルキューレ達を案内していくBB。

 筐体に映ったパネルを興味深そうに眺めながら、3人は説明を受けていた。

 

「ほえ──、すっごい」

 

「驚嘆に値します、仮想空間による疑似体験。汎人類史の技術力はここまで進んでいましたか」

 

「むむっ、これは『百獣母胎(ポトニア・テローン)』の権能で時間も空間もあやふやにした私だけの特権です。人類の皆さんがこの領域に来るのは1万4千年ぐらい足りませんよ」

 

 心外だとぷんすかするBBが続けるには、モニターにはこれから『HBチャンネル』の中に入るにあたって、そのモニターに映し出される質問にフローチャート方式で答えていって欲しいと。

 

 相手との関係性。お互いのバックボーン。神話か現代か未来か異世界か崩壊世界か等の世界観の再現からエッチに至るまでのいきさつなど……本人達の無理な性格改変以外はあらゆる要望に答える万能エロ領域。現実では味わえない甘美な悦楽がそこにはある。

 

 このエロに対する技術力の無駄遣いがあるからこそ、多くの女性サーヴァントが胡散臭さの化身であるBBから『HBチャンネル』を購入してしまうのである。

 

「あれ、けどこんな機能あったけ?」

 

 そもそもこの『HBチャンネル』はモニターで操作する必要なく、『五停心観』によって深層意識で本人が求めているエロシチュを引き摺り出す代物なのでただ入るだけで済み、今までこんな手間は無かった筈だと。

 

「『向上心のないものは馬鹿だ』と誰かが言いました。宝具は完成された物だから……なんてのはニートの言い訳です! 日々、バージョンアップするBBさんの勤勉さに惚れ直し、悶えて下さい。具体的に言えば、カルデアの性産業市場で遅れを取るワケにはいかないのです!」

 

 このシミュレーションで行われるエロも限りなくリアルに近い快楽が得られるが、やはり現実世界でマスターと致す行為にはどうしても劣ってしまう。

 

 言うなれば、『HBチャンネル』はゴムありセックスで、リアルの方はゴム無し生セックス。前者でどれだけセックスしようとも子供は出来ないという点でもこの例えは正しい。

 

 現実では到底できないシチュエーションで需要は得ているが、やっぱりリアルの方がイイという層はいるのだ。特にここ最近、あのアリスが懐妊してからマスターからの着床を狙っている層が急増している。

 

 ──おやおや一儲けの香りがしますね~~$

 

 それに目をつけたのが、褐色グラマラスボディ、金にがめつい、カルデアのたぬきちことシバの女王。

 自身の当番時間だったり、諸事情でマスターとの逢瀬に都合がつかなかった者達から、あの手この手で時間を買い取り、それを商品としてマスターごと他の消費者に適正価格(本人曰く)で売りつける。

 

 マスターデリバリーヘルスサービス、通称『スペルマスター』。

 

 あの獣耳守銭奴のシステムを時間よりも質を求める淑女達がこぞって利用している現状にBBは危機感を持ち始めていた。

 というよりも単純に自分以外の女が彼の性事情を握ろうとしているのが気に食わない。

 

竿繋ぎの多元性交(パラレル・セックス)』で女の子といればいる程、増加できるマスターにその商売は成り立つのか疑問なのかもしれないが、彼は並列存在を10以上は増やそうとはしない。その気になれば、関係を持った全ての女性達と二十四時間年中無休、一緒にいる事も可能なのだが。

 

 ──食欲に空腹、睡眠欲に疲労、どうしてこの世に賢者タイムがあると思う? 性欲にも緩急は必要でしょ? 会えない時間が二人の性を育むのさ。健全な時間なくして、射精のカタルシスはありえねェ……。

 

 マスターの台詞自体は頭おかしいのだが、言っている事の本質は的を得ている。

 適度の焦らしや禁欲もエロへのスパイスになると語る彼と現実世界で過ごす時間は限られているのなら、そこに多大な価値が生じるのは自明の理。

 

「らくだのももひきで寝ているような女子力の欠片も無い女に負けてたまりますかぁ!」

 

「あの……頼み込んでしまった我々が言うべきではないのでしょうが、ここ(カルデア)の風紀は大丈夫なのでしょうか」

 

「公の場とかではしないし、節度は守っているよ」

 

 スルーズの申し訳なさそうな顔にもなんて事はなさそうに彼は答える。こいつの言う節度はガバガバなのであてにならない。

 

 とまぁ、カルデアで最も性的搾取されているのはこのマスターであるという現実。

 

 彼が汎用型草食系好青年、備品の如く女性優位で英霊達に食い物にされるという一部のお姉さん達が大歓喜しそうな状況であれば心配にもなるかもしれないが。

 いかんせん、その女豪傑達を束で来ようともいきり勃つ豪槍で返り討ちに出来てしまう男になってしまったわけで(ちょっと進化キャンセルが数年程遅かったみたいですね)、もう当カルデアでは通常運行になってしまったというか。

 

「深くは考えず、軽い気持ちで試してみれば? あの宝具の本質は欲望の発露、君達が知りたい感情とやらを理解するきっかけにもなるだろうし……。無理矢理ってわけでもないからね、あまりにも合わなかったら途中で止めれるから」

 

「そ、そうですか……」

 

「ど、どうしますか、スルーズ?」

 

 まるで初めて風俗に来た童貞を誘惑するお姉さんのような色気でスルーズとオルトリンデを堕落の道へと誘おうとするビースト。どもり、恥ずかしがりながらもやはり気になってしまうのか桜色のコフィンから目を離すことが出来ないむっつりワルキューレコンビ。

 

「もう一人の娘はノリノリで選んでるみたいだけど?」

 

「うわぁぁ、こんなにあるんだぁ……。えっ! こういうプレイもありなの? マジかぁ、いや結構エグくない? でも割とアリかも、う──ん、結構数あって迷うなぁ。むむむ、すぐには決められないかも…………えっこれ!? いやぁ、さすがに女の子として終わっちゃわない? あぁ、でもちょっと気になる。イケちゃう?イケちゃうかなぁ」

 

 

 深い溜息が二つ。

 

 同期するまでもなく、オルトリンデとスルーズは分かりあっていた。

 

 まずはあの暴走している桃色の頭をシバいてからにしようと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 





この娘達にはまだ感情がありません。誰が何と言おうとありません。閃乱カグラの緑髪の娘並にありません。















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戦乙女レビューアーズⅡ(スルーズ)


カルデアコレクションにてディオスクロイ、カイニス更新。

 オリュンポスクリアです。まぁ、クリア後の概念礼装とマテリアル見に行って座に帰りましたが私は元気です。
 色んな意味でクソデカ感情を揺さぶられるストーリーでした。言いたいことは多々ありますが、平気で5,6000文字ぐらいになりそうなのでここでは語りません。 それなら、はよ執筆して、更新してね♡という話になるので。


 一つだけ言うとするのならば、私は何年かかろうがオリュンポス編までは更新しなくちゃいけなくなったってことですね。











――――――――――――――



 更地となった大地の前でピッケル片手にカドックが汗を拭っていた。

「ふぅ、ようやく整地が完了だな。これからここを人が住める場所にしなきゃいけないわけだが……まずは雨風凌げる家から造るのが定石か。意匠は凝るのは後回しだ、今まで崩したブロックで寝床と屋根と壁を造って……人手が足りないな」

 ブツブツと呟いていたカドックがこちらを振り向いた。

「まずは衣食住、いや衣は別にいい。食住もそうだが身の安全の確保も大事だ。畑と家とここ一帯を取り囲む外壁を急ピッチで造る。4人いるから上手く役割分担を…………おいオフェリア、一つ聞きたい。さっきまで計画と全く関係無い場所を嬉々として、掘り進んでいたキリシュタリアとデアーはどこに行った」

 嫌な予感がすると、眉間に皺を寄せたカドックが聞いてきたので素直に答えることにする。

「あそこよ」

「は?あそこって……」

 私が指を指した方向には――ジャンプした瞬間に自身の真下にブロックを置いて、その上に乗る。そんな奇行を連続で繰り返してどんどん高くなる土の塔の上ではしゃぐキリシュタリア様とデアーがいた。

 ――なぁ、キリシュ。この山のようにある土ブロックを積み重ねていけば大気圏まで行けるんじゃないかな?
 ――ふっ、突拍子もない提案と言えるが敢えて乗ろうではないか。ぶっちゃけ私もやってみたい。


 みたいな会話をさっきまでしていたことを伝えるとカドックはお腹を抑えて呻きだした。



 ――すまない、デアー。どうやら私はここまでのようだ。先ほどから、眩暈と吐き気と頭痛が収まらないのだ。
 ――そんな!キリシュを置いて先になんて行けねぇよ!くそっ……魔術師の仕業か!卑怯だぞ、逃げ場の無いこんな場所で攻撃してくるなんて!

「ただの酸欠だ馬鹿ども!そんな高い所まで行けば当たり前だろうが!早く降りてこい!キリシュタリア、アンタはなんでそいつ(デアー)が絡むと途端にIQが下がるんだ!?」



――――――――――――――




 目覚めてすぐ、覚醒していない頭でここがどこなのかを確認する。

 カドックと久しぶりに顔を合わせたロシアから帰路の途中、私が乗ったトロッコが走る線路の道中に備え付けられた停留所の中にある簡素な寝具の上で休息を取っていた事を思い出す。

「我ながら、随分とヘンテコな夢を見たわね」

 何でキリシュタリア様がデアーと一緒になってあんなにはしゃいでいるのよ。キャラ崩壊が酷すぎるじゃない。

 けれど、キリシュタリア様への不敬ともとれる夢の内容にも、私がこんな夢を見た原因の一旦であろうデアーにも、不思議と怒りの感情は湧いてこず、夢見は悪くなかった。


「彼のキリシュ呼び、妙にしっくりきたのよね……何故かしら?」













 性風俗の歴史というものは我々が想像するよりも存外に深い。

 そもそも性そのものが神であれ人間であれ、切っても切り離せないもの。楽園を追放されたアダムとイヴは恥じらいという名の性を覚えたが故に人となった。

 

 性は忌避すべきものではなく、嫌悪するものでもなく、寄り添い付き合っていかなければならないもの。あるいは神聖なものと扱われてもおかしくはない。

 

 何せ、古代メソポタミアにおいても神聖な儀式として売春行為を行う巫女、『神聖娼婦』なる存在がいると伝えられているぐらいだ。真か偽かエルキドゥの獣性を鎮める為にそういった者達が派遣され、性交渉を行っていたという伝説が『ギルガメッシュ叙事詩』にも残っている。

 

 まぁ、当カルデアではエルキドゥは間違いなく鎮められる側ではなく鎮める側であるということは断言出来るが、この当たりの話は結構面倒くさくかつバイオレンスなので今は割愛させていただく。

 

 さて日本の歴史でも各地を渡り歩き春を売る白拍子(しらびょうし)傀儡子女(くづつめ)と呼ばれる遊女たち。定住し、春を買ってくる客を待つ場所となった「風呂屋」に遊郭。中世から明治にかけては政治も深く手を出し、その規模は大きく、同時に闇も深かった。

 現代社会においてはデリヘル、ソープ嬢、AV女優。性産業という商いとして確固たる地位を築いている。古代から現代まで性風俗というのは手を変え、品を変え、連綿と続く人々の生活に寄り添っていたとも言えるかもしれない。

 

 正しき性風俗とは娼婦(夫)は一夜の春を売り、正当な報酬を得るというもの。

 客は快楽を得る為に金銭を支払い、娼婦(夫)は金銭の為に体を売る。

 

 それは他の商売でも何ら変わらないお互い対等な契約の元成り立つ関係である。

 

 たとえ、神々が健在だろうと、人間が不老不死に近い状態になろうと、現代よりも遥かに優れた文明を持とうと、性を発散させる場というのは早々無くなることはない。

 

 この前置きをもって、本題に入ろう。

 

 今回のケースでは娼夫はマスター。客はオルトリンデ、ヒルド、スルーズ。

 客が求めるのは『愛』という感情。差し出すのは金銭ではなく、サーヴァントとして仕える奉仕行為。

 

 では戦乙女達が望むものをマスターは与えることができたのか。

 

「はい♡最後の番だったヒルドさんもこれにて終了ですね。皆さん、お疲れ様でした」

 

 それは『HBチャンネル』から帰ってきた3人の表情を見れば分かるだろう。

 

 あえて一つ言うとするのならば──。

 

 

 エッチ(H)の後には(I)があるということだけ。

 

 

 

 コフィンが開き、桜色のスモークと共に最後の番に回されたヒルドがマスターと出てきた。

 

 スルーズ、オルトリンデ、ヒルドの順番に『HBチャンネル』の空間へと入り込んだ彼女達は現実世界へと帰還した。現実の時間にしても3人合わせて1時間程度か。

 

 ポーッとほんのり火照った頬、酩酊感に染まった様子で心ここにあらずなヒルド。何とかマスターの肩を掴みつつ、フラフラと歩き出していた。

 

 先に帰還していたスルーズとオルトリンデも全く同じ様子で虚空を見詰めながら体育座りで待機中。

 風呂にのぼせたかのような上気した表情は色っぽく、さっきまで体験していた夢のような一時を頭の中で反芻しつつ、よく分からないうめき声を上げていた。

 

「あ──、ばぁ──」

 

 よたよたとあっちへふらふら、こっちへふらふら、最後に戻ってきたヒルドも同じ姿勢で二人の隣へ座る。

 

『すごかったぁ……』

 

 うっとりとした甘くて深い溜息とその呟きが見事に重なった。

 

 その姿はまるで今まで深夜テレビに出てくるちょっとHなアイドルバラエティで興奮していたチェリーボーイ達が十万円程する高級風俗で童貞を捨ててしまったような雰囲気を醸し出していた。

 

 ジェネレーションギャップならぬ、セクショナルギャップ。

 

 人間の体って凄い。エッチって凄い。セックスって凄い。

 あぁ~~神性が剥がれ落ちる音~~。

 

 マスターから冷えたペットボトルを頬にピタリと押し付けられてようやく彼女達は現実に戻ってきた。

 

「ひぁ、ひゃっ!? これは失礼しました……」

 

「情事の後は水分補給って大事だよ。事を終えた後の一杯がまた格別なのさ」

 

「あ、ありがとうございます……」

 

「わぁ──い! ごくごくごくっ、おいしっ!」

 

 驚き、頭を下げるスルーズ、控えめにお礼を言うオルトリンデ、天真爛漫に笑い、喉を鳴らして水を飲み干すヒルド。三者三様の反応を見せる光景は実に微笑ましい。

 彼女達は「ワルキューレ」という同一個体として自らを定めているが、この様子を見ると「オルトリンデ」、「ヒルド」、「スルーズ」というそれぞれ別種の個体だと思ってしまうぐらいには個性に差があった。

 

 

「今更なんですけど、お三方は他の2人の情事について確認しなくても良かったんですか? 待っている間に映像として出せたりしたんですけど」

 

「その気遣いは不要です。あくまで我々の性格差・個体差は誤差の範囲。『ワルキューレ』として存在している以上、異なる見解、致命的な差異は発生しません」

 

 BBの問いに自信を持って断言するスルーズだったが、オルトリンデは自身のフードを下に引っ張りつつ少し、……いや大分不安だった。最近のヒルドを見てなお自分はそこまで楽観的には考えることが出来ない。

 

「そーそー、あたし達はあくまで『愛』という感情を学習する為の最適解を選んだ筈なんだから、うん。間違いなく、頭からつま先まで同じプレイだと思うよ。これなら3人同時の方が効率が良かったんじゃないかなって」

 

「それなら答え合わせでもしてみたら? 確かワルキューレって独自のネットワークとかで記憶とか思考を共有出来るんでしょ?」

 

「よくご存知で」

 

「この間、北欧で7号ちゃんとお茶した時に教えてもらってね」

 

「7号ちゃん……? あぁ、量産個体の方ですか。いつの間にそこまでの友好関係を」

 

 人間味と個性が薄い量産個体達と人間のようなコミュニケーションを築ける事に驚きを隠せないワルキューレ。

 そしてマスターの手の早さに驚きつつあるオルトリンデを尻目にヒルドとスルーズは彼の提案を受け入れ、シミュレーション中は切っていた同期を開始しようとする。あまりに乗り気ではないオルトリンデも二人が行う以上、強く断る事は出来ずワルキューレネットワークは回線を繋ぐ。

 

「あぁ……あまりオススメはしませんよぉ?」

 

 BBの言葉を最後に──自分以外のワルキューレが一体どのような『愛』を学習したのか、ワルキューレネットワークへ映像がまるで実体験のように流れ込んでくる。

 

 張り裂けそうになる胸の鼓動。

 

 上昇する体温。

 

 冷静になれない思考回路

 

 肌と肌が触れ合い。

 

 汁が──液が──。

 

 混ざって、飛んで、ぐちゃぐちゃになって。

 

 腰も、変な声も、震えも、何もかも止まらなくて──。

 

 硬く、柔らかく、気持ち良く。

 

 肉欲、色欲、快楽、悦楽、甘美、官能、絶頂。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──now loading…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『Case1:スルーズ_Tytle【あなたに堕ちた先で】』

 

 

 

 長き戦いが終わった。

 

 それは人理焼却という絶望に抗ってきたカルデアの最後のマスターと、彼に一番最初に召喚され、パートナーサーヴァントとして苦楽を共にした私の戦いも終わりを告げたことを意味する。

 

『ワルキューレ』と定義されたサーヴァントの中で『スルーズ』という一個体名を持つ私も役目を終える筈だった。

 

 取り戻した世界へと帰っていくマスターの背を見送り、私も消滅する筈だった。

 

 その筈だったのに──。

 

 

「おぉ、随分大きいマンション。こんな良い所に住まわせてもらっていいのかな?」

 

「貴方が成し得たことを考えれば、まだ足りないぐらいでしょう」

 

 

 カルデアの良き職員たち誰もが若き身でずっと戦い続けていたマスターに平穏に帰って欲しいと願った。

 彼が魔術だの政争だの、殺伐とした世界に巻き込まれなくて済むようにカルデアの全リソースを駆使して、隠蔽工作を行った。

 

 その隠蔽工作の過程でマスターに渡されたのが聖杯だった。万能とは言わずとも、サーヴァント一騎程度なら受肉できる願望器。もしも危機が迫った時の一手として与えられたもの。

 護衛役として最も戦闘力が高いサーヴァントに使われるべきだったが、皆、誰を選ぶかはマスターに任せるという事で一致していた。

 

 

 ──俺と一緒に生きて欲しい。

 

 

 そう言って真剣な顔で私に聖杯を差し出した彼の姿を二度と忘れることはない。

 

「プロポーズでは」と宣っていたオルトリンデやニヤニヤしていたヒルドが随分と憎らしかったが、ブリュンヒルデお姉様と共におめでとう、と祝福してくれたのは存外にこそばゆいものだった。

 

 別にお互いに告白したわけでも、恋人というわけでもない。付き合いや一緒にいた時間は最も長かったことから私達はきっともう()()()()()関係として周りから見られていたのだろう。

 

 そしてそれを二人とも強く否定することは無かったということだけ。

 

 差し出された聖杯ごと彼の手を握って「喜んで」と答える以外の選択肢は存在しなかった。

 

 

 

 手を繋いだまま二人で見上げていたのは鉄で出来た直方体の建造物。知識では把握している多数の人間が住み暮らすマンションという住居。

 もちろん、カルデアにいる皆が彼に日常を送って欲しいと戸籍も含めて用意されたものである。しばらくは親の元には帰れないらしいが、そこは彼曰く心配は無いらしい。何でも息子の自主性とやらを尊重する方らしい。

 

 そんな私もレイシフトでもシミュレーションでもないマスターが生きていた現代でその環境に合った姿をしていた。

 

 白い布で出来たゆとりあるタートルネックと呼ばれる服に膝程の短さしかない水色のスカート。頭の羽を隠す為にキャペリンというつばの広い帽子を被っている。

 

『白鳥礼装』と呼ばれる戦装束をずっと纏っていた身からすると、とてつもなく心許ない気もするのだが、私の姿を見たマスターが「ごめん、しばらく見惚れていい?」と熱い眼を向けてくれてから、この姿も悪くはない気がしてくるのだから我ながら何とも現金なものだと呆れてしまう。

 

 というよりも『白鳥礼装』を脱いだ姿を見られてしまった以上、もう嫁に行くしかないのでは? ワルキューレ的に。

 

 私からすれば、彼の普段着の方が魅力的である。これまで魔術礼装姿や、寝間着用の薄着しか目にしたことは無かったので凄く新鮮である……お洒落という概念には未だ疎い身だが。

 

 カルデアに来る前なら当たり前に着ていたであろう服についに袖を通した彼の隣で、彼が守った世界にいるとう実感が胸に熱いものをこみ上げさせていた。

 

 パスコードを打ち込み、開いた扉へと入っていく。

 

 エレベーターへ乗り込み、上へと昇っていく。

 

「…………」

 

 二人きりのエレベーター。お互い、いつの間にか無言になっていた。握った手が熱く、汗ばみ、どちらかは分からないが気付けば、指がいやらしく絡んでいた。

 

 告白したわけでもなく、恋人というわけでも無い。当たり前だろう。人理存亡の危機、色恋などにかまけている余裕などあるわけが無い。ましてや性行為など。それにいずれ消える身である私という存在をマスターの重荷にしたくなかったというのもある。

 

 せいぜい出来て頬へのキスぐらいだった。それも片手で数える程の回数。

 

 だが、今はその悩みも憂いも全て解決してしまった。『ワルキューレ』という存在から『スルーズ』という一個体としてこの世に生を授かった私とマスターがナニをしようが周りに配慮する必要は無い。

 

 生死がかかった状態で数年にも及んだ焦らしは二人の理性を殆ど焼き切っていた。

 むしろ、よくここまで我慢したと自分を褒めてあげたいぐらいだ。

 

 エレベーターのランプが目的の階に近付く度に呼吸が荒くなり、動悸が激しくなる。

 

 もう二人とも分かっている。誰の目にも憚る必要が無い密室へと入ってしまえば、何をするのか、どうなってしまうのか。

 エレベーターから降りて、これから私達の新居となる部屋を目指す。

 

 一歩、一歩、普通に歩いている筈なのにその歩みがやけに遅く感じた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

 ふと窓に映った自分の顔を目にした。酷い顔をしていた──まるで発情した雌だと揶揄されても仕方ない表情だった。

 マスターの方は見ることが出来ない、もし私と似た顔だったら、部屋に着くまで我慢出来ないだろう、この廊下で間違いなく襲う。

 

「大丈夫、大丈夫……あと少しだから、ほらあの部屋」

 

 5m先、マスターが指した先に黒色の扉があった。ゴクリと唾を飲む。無機質な扉が今の私にとっては砂漠を彷徨った後のオアシスのように見える。

 

(あの部屋に入ったら、マスターとセックス、あの部屋に入ったら、マスターとセックス、あの部屋に入ったら、マスターとセックス、あの部屋に入ったら、マスターとセックス、あの部屋に入ったら、マスターとセックス、あの部屋に入ったら……)

 

 4m、3m、2mとゴールへと近づいていく時間は1分にも満たないというのにもどかしくて仕方なかった。急かすように早歩きになってしまう自分の卑しさを戒めることすら考えない。重症患者のようにマスターへと寄りかかり、自身の欲望と必死に戦っていた。

 

(つい、た♡)

 

 カードキーをかざして、ピッとカギを解錠した音と同時にキュンと私の下腹部が疼いた気がした。

 マスターが先へと進み、私がそれに続く。

 

(はやく、はやく、はやく、扉と鍵を閉めて──)

 

 ガチャリと外界と断絶した音が鳴ったことを確認して振り向くと──。

 

「んんぅっぅっ────ッッ♡」

 

 被っていた帽子がパサリと落ちた。

 

 唇に襲いかかった柔らかい感触。両手を強く押さえつけられドアを背にキスをされていた。

 キスというよりは捕食かもしれない。大きく開いた彼の口は私の唇や舌を執拗に何度も啄み、吸っていた。

 鼻腔に入り込む彼の匂い。口腔に流れ込む彼の唾液。全てが甘美で私の体から力を奪っていく。

 

「んっ、ちゅ、ちゅむっ……はぁっ♡駄目ですっ、マスター……いきなり、こんな所でっ♡」

 

 こんなにも説得力が無い言葉があるだろうか。

 今までのカルデアで守ってきた『スルーズ』という思慮分別としたキャラクターを崩さない為の見せかけの窘めだった。だって表情も体もいとも簡単に喜びを表に出してしまっているから。

 

 自分からではなく、恋い焦がれた彼からここまで情熱的に求められて、嬉しくならないほど女を止めてはいなかった。

 

「んっ、ごめん……。あまりにスルーズが魅力的だったから。でも君もこうするのを望んでいたでしょ?」

 

「……何のことですか」

 

「頭の羽根、消滅してるよ」

 

 …………。

 

 あぁ、はい。

 

 神性も最低ランクまで落ちてますね。

 

 いえ、これは仕方のないことなのです。あのシグルドと恋に堕ちたブリュンヒルデお姉様と私も同じになったというだけの話。

 人間と恋に堕ち、ワルキューレという自身の役目に疑問を抱いてしまった者は大神(オーディン)の加護を失い人間と近い性質となる。

 まぁ、我ながら少しチョロ過ぎると思いますが、後悔は全くなかった。むしろ歓喜していたと言ってもいい。だってこれは彼と同じ存在になれたという証明にもなるから。

 

「……そんなに興奮するものですか? むしろ、露出度に関してはカルデアにいた頃より減っていると思うのですが……」

 

「あの鎧姿ももちろん素敵だったけど、今のスルーズの格好は全体的に柔らかくて、触れたくてたまらなくなっちゃうんだ。今まで我慢してた男には物凄く毒だよ」

 

「んっ、あぁっ……やっ♡」

 

 白い布地を膨らませている胸部にマスターの手が添えられれば、簡単に甘い声が漏れてしまう。

 片方の左手は未だ押さえつけられたまま、ねっとりと優しく、慈しむように胸を撫でられ、開いた口をまた塞がれてしまう。

 

「んっ、ふぅっ、ちゅっ、んうぁっ、マスターぁ、マスターぁ……んちゅ、んあぁぁっ♡」

 

 濃厚なキスをしながら、自由になった右手で私の胸を弄ってくれたお返しとばかりにマスターの服の下に手を潜り込ませる。

 人理修復という過酷な旅路で鍛えられた硬い胸板と浮かんだ汗の感触に興奮が止まらない私は彼の乳首を指先でカリカリとくすぐった。

 

「んはぁっ、ふふ、ピクッとしてますよ♡きもちいいのですかっ、あぁっ…! きゃぁっ♡」

 

 こっちはまだ服の上からで我慢してたのにという抗議の意を込めてか、私同様、マスターもたやすくタートルネックの下に手を入り込ませ、私の乳房を直接揉み始めた。

 

「あっ、やぁっ……ち、くび、だめっ♡そんないやらしい触り方……えっちです♡マスターぁぁっ♡」

 

「……そっちだって、えっちな触り方してるだろっ……」

 

 もうここまで来たら止まらない。いやそもそも玄関で既に盛り合ってしまっている私達に自制心は存在しなかった。

 だらしなく開いた口からダラダラと唾液を零しながらお互いの舌を舐め合い、いやらしい動きで胸を愛撫し、硬くなった乳頭を掻いて、摘まみ合う。

 終わりが見えない乾きを潤す為に私達は愛する人の体を求め合い続ける。

 

「んちゅ、むぅっ、んぁっ♡……んぅっ!?」

 

 気付けば、マスターの膝は私の股の間に入り込み、グリグリと下着の上から秘所を刺激していた。

 私もズボンの上からでもわかる彼の膨らみに目を離せなくなっていた。もう言葉はいらない。二人とも何を求めているのかは明確に分かっていた。

 

 マスターの国の文化に従い、靴を脱ぎ、ようやく部屋へ上がる。

 

 一分一秒が惜しい私達は寝室を目指す廊下を歩いている最中から我慢できずお互いの服を脱がせ合っていた。

 合間合間、キスやペッティングを挟みつつ、もどかしい速度で進む。前もって部屋の見取り図に目を通していた私達の歩みに迷いは無い。

 

 纏っていた衣類が少なくなり、露わになっていく目の前の肌に触れるのを止められなくなったせいでゆっくりとなったナメクジのような速度でようやく寝室と思われるドアの前に到着する。

 

 ふと、振り返ると玄関から始まった私達の軌跡が汁や脱いだ服で一種の道標として残っていた。自分達のはしたなさを見せ付けられているような気がして少々恥ずかしくもなってしまったが……。

 

 あぁ、だが今はそれよりももっと目に焼き付けるべきものがある……。

 

「そんなに、大きくして……♡」

 

 私もマスターも残すは下着のみ。彼が履いているボクサーパンツという下穿きを突き破ってしまいそうなぐらいに男性器が太い隆起をつくっていた。

 パンツの下に隠れている状態でさえ、雄臭が漂っていた。

 

 発情し、濡れてしまっている秘部と起立している乳首を隠すように内股になって腕を組んでいたが、当然ここに来て、そんな消極的な行為が許される筈も無く両手を握られ、開かせられる。

 

「ほら、もっとちゃんと見せて」

 

 いずれこういう事の為に秘していたいわゆる勝負下着。

 レースの着いたTバックに、谷間を強調させるハーフカップブラ。「紐でいいんじゃない?」というヒルドを物理的に黙らせた私自身の力で現代のマスターの国における女性観を学習し選んだ一品。色は髪と合わせて黄色で統一している。おかしな所は無いと思う……たぶん。

 

「とんだドスケベワルキューレだな。えっちが過ぎるんじゃないかな」

 

「あっ、ちょっと待ってくださいマスター。だめ、だめですってば♡今はだめっ♡そんないやらしい体で近づいたらいけません♡私、もう戻れなくなってしまいますからっ♡」

 

「何言ってんの、そっちの方がいやらしいだろ」

 

 鍛え上げられた筋肉。けれど決して主張は強くなく、暑苦しくもない全体的にバランスの取れた細身の体型。その肌に残ってしまった傷跡は痛ましくも思うが、勇ましさと淫靡さも私に与え、上気して浮かんだ汗も含めて、今の私にとっては珠玉の逸品でこれ以上の接近を許してしまえば、完全にマスターとえっちをすることしか頭にないドスケベワルキューレになってしまうと確信していた。

 

 それはいけない。それだけは拒もうと、一度距離を取ろうと思ったのだが──。

 

「ひぃあぁぁっ♡」

 

 ゾクゾクと全身に甘い痺れが走り、下半身に力が入らなくなった。

 何が起こったのかと視線を下に向ければ、()を犯す形をしたマスターの下半身の膨らみが私の陰部を突いていた。

 

 それだけだった。だが……あぁ、たったそれだけでこの瞬間、私は彼専用の性処理人形と化してしまったのだ。

 

「ひどい、本当にひどい人ですっ♡私がどれだけ我慢してたか知らないで……♡」

 

「けどもう取り繕う必要は無いでしょう。ここでは我慢なんていらないんだから」

 

 手を離された私は自分から彼に抱き着き、滴る汗を舐め取り、先ほどまで指で弄っていた彼の乳首に舌を這わせ、媚びた瞳で気持ち良さそうする彼の顔を下から眺める。

 

「ちゅ、ちゅむ、こんな、こんなえっちな体して♡乳首でピクピクして、ワルキューレを誘惑して♡いやらしい、いやらしい、本当にいやらしい♡じゅるるるぅっ……」

 

 寝室のドアが開かれる。

 中へ入り、ドアが閉められた瞬間──二人の自由になった手は互いの臀部へと這っていった。

 彼の逞しい手が私の肉尻を揉み込む度に軽い絶頂で頭がおかしくなりそうだった。だが、私も彼の硬く引き締まったお尻の感触を楽しんでいるのだからお相子だろう。

 

 お尻を触り合い、下着に指をかける。歩きながら、ペッティングしながら、互いのパンツを脱がせ合っている姿は行儀が悪いがそれを省みるのは今更過ぎる。今の私達はもう一つの事で頭がいっぱいだったのだから。

 

 ボロンッッ! 

 

 そう強く表現するしか無い彼の怒張に思わず、口での奉仕が止まってしまった。

 ビキビキと浮かぶ血管、膨張した亀頭、天を睨む豪槍はこちらを発情させる雄臭さをこれ以上ないぐらい主張していた。

 女をイキ殺す為だけの形としか言いようのない彼の男性器を眼にやきつけてしまっている私はブラジャーを脱がされ、どちらも全裸になっていることにすら気付いていなかった。

 

「これで、私を一体、どうするおつもりですか……♡こんな、熱くて、硬くて、長いモノで……♡」

 

「そっちこそ、こんなグショグショに濡れそぼった穴で一体どうするつもりなのかな?」

 

「んはああああぁっ♡やっ、やぁっ♡指、だめっ♡」

 

 目の前にいる異性の性器へと手が吸い込まれていく。私は脈打つ剛直を握り、彼は出来上がってしまっている私の蜜壺の中へと指を沈み込ませる。

 だめと言いながらも、体の反応は媚びたものとなり、腰を彼の手へ押し付け、いやらしい形状をねっとり確かめるように男根を何度も上下に擦る。

 

「マスター、はやく、はやくぅっ♡」

 

 私が何を望んでいるのか言葉に出さずとも察してくれたのだろう。マスターに指で膣内を解されるのも勿論、法悦ではあるのだが、もっと挿れて欲しいものが目の前にある。

 

 彼は決して陰口からは指を抜くことなく、グシュグシュと淫らな水音を奏でながら、寝室の奥にあるベッドへと足を進める。私も男性器から手を離すことはない。鈴口から漏れ出した先走りで滾った逸物を上下へ何度も擦る。

 

 性器を弄り合いながら、淫靡な二人三脚でゴールへと向かっていった。

 

(あのベッドに乗ったら、挿入、あのベッドに乗ったら、挿入、あのベッドに乗ったら、挿入、あのベッドに乗ったら、挿入、あのベッドに乗ったら、挿入、あのベッドに乗ったら、挿入、あのベッドに乗ったら、挿入、……)

 

 マスターと行き着くであろう展開に思考の全てが持っていかれる。

 まさか自分がここまで淫らだったとは思いもよらなかった。だがよく考えて欲しい、数年単位で焦らされた愛しい男と密閉された空間で全裸でいるのだ。むしろ冷静でいられる方がおかしい。

 

(あっ……やっと、ここまで、きた……♡)

 

 股座を指で弄られ続け、ガクガクとなった足でようやくベッドの前に辿り着く。

 まだ一度も使われていないであろうシワ一つないシーツ。二人が余裕をもって横になることができるダブルベッド。

 これから、マスターと行うことを考えると変哲もないベッドにさえ、酷く興奮してしまう。

 

「きゃっ……」

 

 驚くほど簡単にベッドへ仰向けに倒された。

 目の前には息を荒げた彼と天を見上げてそそり立っている男根。

 下半身を持ち上げられ、だらしなく開脚させられる。まんぐり返しの状態で濡れそぼった女性器をその熱視線で見詰められるだけで孕んでしまいそうだった。

 

「こんな、恥ずかしい格好をさせて……ひどい人です……♡」

 

「台詞と表情が一致してないよ。えっちなスルーズ……ちゅぅっ」

 

「んひぁぁああっっ♡」

 

 陰部から感じる生暖かい感触。下の口にキスをしたマスターは悦びを表現するかのように漏らし続ける私の愛液をジュルルルッと酷く卑猥な音を立てて、飲みこみ、喉を潤していた。膣内で巧みに暴れる彼の舌は体力の全てが持っていかれてしまうほど気持ち良く、私は下半身を震わせて必死に耐えることしか出来ない。

 

「あっ、あっ、はぁっ♡マスター、そんな音させて、私をいじめない、でっ♡」

 

 ──じゅ、むじゅぅっ! じゅぶぅっ! ……ちゅ、ちゅ、じゅるるるぅぅっ! 

 

 やめてと懇願する私の言動もただのパフォーマンスに過ぎない。彼の興奮をより煽る為のパフォーマンス。おいしそうに私の愛液を吸い続けるマスターに愛おしささえ感じている私は彼が飲み干せなかった汁が自分の顔まで滴ってきてもまるで気にならなかった。

 

 これから指よりも舌よりも、もっと凄いモノが私の中に入ってくると確信しているから──。

 

「髪……」

 

「どうしました?」

 

「ベッドに扇状に拡がったスルーズの髪がさ、お日様の光みたいで綺麗だな──って」

 

「もうっ」

 

 どうして、ここでさらに女を疼かせてくれる台詞を吐いてくれるのか。もしやわざとやっているのではと、訝しむ私もこれ以上取り繕うことも焦らされることも限界だった。

 ぐしゅぐしゅに出来上がった淫口を二本の指で開き、マスターを誘う。

 

「せっかくだから行動だけじゃなくて、スルーズが一番いやらしいと思う言葉でおねだりして欲しいな」

 

「鬼畜なマスター……」

 

 顔はいつものように朗らかにニコニコ笑っているというのに……これがベッドヤクザというものなのですか? 

 私からはしたない言葉を絞り出すまでは本当に動き出すつもりはないのだろう。

 いいでしょう。人の身に堕ちたとはいえ、かつては私も完成された存在として大神(オーディン)に鋳造されたワルキューレ。男、一人ぐらい言葉巧みに誘惑するなど容易いものです。

 

「どうか、お慈悲を……♡。冷たきワルキューレにその熱く滾ったおちんちんを何度も何度も卑猥に出し挿れして、あなただけの性処理発散肉人形に調教してください……♡」

 

「強請ったのは俺だけど、まさかそんなあっさりとスケベな台詞を吐くとは思わなかった」

 

「何なんですかもうっ!!」

 

 人が必死にひねり出した言葉を全くこの人は……。

 

「大丈夫、滅茶苦茶興奮したから」

 

 その言葉に偽りなく、暴走一歩手前と言った様子でビクビクと震え続けるペニスは、鎮めてくれる居場所を求めて私の女陰へと少しずつ、沈み込んでいた。

 

「んっくぅあ゛ッッ──♡」

 

 じゅぶりと1mm、2mm進む度に全身に走る快楽の電流と共に今までの想い出が駆け巡る。

 

 

 ──ワルキューレ……個体名、スルーズです。私は貴方をマスターとして仕えます。以後、人理を守る為に私を使ってください。

 

 ──人と変わらない? ……それはあくまでそう見えるだけです。人のように思考して、人のような表情を浮かべていても、ワルキューレとしての機械的な機能がそうさせているに過ぎません。私は本質的な所で貴方達人間とは違うのでしょう。

 

 ──ブリュンヒルデお姉様もきっとこんな気持ちだったのでしょうか。あぁ……ですが、これは今の私に許されるものではありません、私はきっと堕ちることはできない。きゃっ!? ま、マスター……! いらっしゃったのですか? ……もう、声ぐらいかけてくれてもいいでしょうに。

 

 ──貴方の体は暖かいですね……。えぇ、大丈夫です。今は同期を切っていますから、私達だけの時間です。

 

 

 パン、パン、パン、パン、私の尻肉と彼の下腹部がぶつかり合う音。

 雁首が膣壁を何度も擦り、亀頭がポルチオにキスをする度に今まで自分でも聞いたことのない(けだもの)のような声が口から漏れ出していた。

 

「んあ゛あ゛ぁぁっ!! くあ゛ぁ゛っ……♡あ゛っ、あ゛っ、あ゛ぁっ♡」

 

「あぁ、可愛い。本当に可愛いよスルーズ。もっと、もっとその可愛い声を聞かせて、俺だけの乙女」

 

 死ぬほど恥ずかしいのに、手で口を覆い隠したいのにそれは許されない。両手は抑え付けられ、上から種付けするように腰をぶつけ続ける彼のピストンに口を閉じ続けることも出来ない、だって……こんなにも気持ち良いことを口を閉じたまま耐えられるわけがない。

 

 それにマスターが私のこんな醜い声を本気で可愛いと連呼して、愛してくれているのだから……どれだけ恥ずかしかろうがもっと自身の痴態を見て欲しいと思うのが乙女心というものではないのか。

 

「お゛ぁ゛ぁ゛っっ♡んぐぅぁ゛あ゛っ……♡しゅごぉっ♡しゅごぉい゛ですぅ、ますたぁ゛ぁ゛ぁっ……!」

 

 新品のベッドが壊れてしまうのではと危惧するほどに激しい情交。

 家を探すにあたってマスターが特に壁の防音に気をつかっていた理由がようやく分かった。私もこんな声、マスター以外に聞かせたくはない。

 

 信じられないぐらいに濡れた女陰からマスターの竿が何度も出し挿れされている様子がよく見える。掻き出された愛液は水飛沫となってあたりへ散っていく。

 

 長く太い竿は私の膣をマスター専用となるように執拗に開発し続ける。先っぽがボルチオを突く度にかすかに残った私のワルキューレとしての理性もそぎ落としていく。

 

「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁっ♡だめ、い゛けませんますたあ゛ぁぁっ……! こわれちゃうあ゛ぁ゛っ、わ、たし、こわれちゃう゛ぁ゛ぁ゛ぁっ♡わるきゅぅれじゃ、なくなっぢゃう゛ぅっっ……♡」

 

「こわれてもっ……俺が一生めんどう見てあげるよっ! ほらっ! もう……っ出すぞ、スルーズ!」

 

 マスターの腰の動きが加速して、私のヴァギナを追い詰めていく。肉の叩打音と淫らな水音に悦楽に染まった私の声だけしか聞こえない。

 膨らむ陰茎、何度も何度も子宮口にキスをしている彼がどこに出そうかだなんて分かりきっている。

 そもそも甘えるように足を絡めている私だって、彼の子種を逃すつもりは毛頭ないのだから、孕むなら孕みたい。彼の子を胎に宿したい──。

 

「ん゛ん゛むぅぅッッ──♡」

 

 射精の瞬間──。

 

 絶頂の嬌声を叫ぼうとした私の口が塞がれる。

 濁点だらけの汚い喘ぎ声全てが彼の口内で響き渡り、独り占めされている。

 とめどなく、注ぎ込まれる温かい精液の感触と相まって、私の全てが彼に掌握されているような感覚が堪らなく嬉しい。

 

「ん゛ん゛ん゛ぅぅっ──! ん゛ぶぅぅっ♡んじゅっ……じゅるぅっ……♡」

 

 呼吸すらも忘れて、自分がワルキューレから人に堕ちたことを改めて自覚した。

 汗だくになった全身でお互いの肌を確かめ合ったまま、しばらく動くことは無かった。

 

 

 

 陽はまだ昇っている。

 

 

 

 今まで我慢を強いられていた二人の欲望がこの程度で治まることはなく。

 

 

「えっ? 繋がりあったまま、新居を見て回りたい……? 変態すぎませんかっマスターっあんぅっ! 待って……♡こんな抱っこしたまま動かないでぇ、あぁっ、あぁっ、歩く度に、振動でイクっ♡」

 

「あ゛っっ♡いけ、ませんっマスターぁっ……ベランダでなんて……♡見えてしまいますっ……んぉぁっ♡外に見えてしまいますからっ……♡」

 

「ちゅ、ちゅむぅっ……れろっ、んちゅ、ちゅ、ふふ、マスターの乳首、美味しいですね……んくぅぁ゛っ……♡あぁっ──♡あっ、また大きくなりましたね……腰もっ止まらなくてぇ、んおぁっ♡」

 

 

 リビング、キッチン、ベランダ、廊下、玄関、浴室、トイレ……また寝室。あらゆる所で狂ったように性交をし続けて、射精された回数も、絶頂の回数も、失神した回数も二桁になってからは覚えてなく……。

 

 適度に休息を挟んでも、お互い思い出したかのようにまた体を求め続け、夜になり、日付が変わって、再び、太陽が昇ってようやくその淫靡なまぐわいは終わった。

 

 

 ……………………

 

 

 冷静になった私達の目の前には家具や床や壁やらに色んな液がこびりついた新居の惨状が拡がっていた。

 私達は昨日、この部屋に入ったばかりなのに、どうして──と現実逃避をすることも許されず、まざまざと昨日からの自身の乱れっぷりを見せ付けられているような気分になった私は自分の行動を改めて、思い返し──。

 

「まずは掃除からしよっか」

 

「…………はい」

 

 至極当たり前のことを言ったマスターの顔も見れず、死ぬほど熱くなった顔で返事をすることしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 Tytle【あなたに堕ちた先で】

 レビュアー:スルーズ

『オーソドックスでスタンダードなプレイ』
 人理修復を終えたマスターと受肉したサーヴァントが現代の世界で生きることを決意した初夜……。
 はい。私はマスターが最も親しみ深いであろうサーヴァントとマスターの関係を活かしたプレイを選びました。恋に堕ちたお姉様の気分を味わいたかったという願望もあったのかもしれません。
 主従であり、パートナーであり、恋人であるような関係でマスターとの営みに臨めたと思います。
 キスをされるのも、アソコを舐められるのも、色んな場所でセックスするのも、えぇはい、恥ずかしかったです。ですが、それが気持ち良くもあり、嬉しく、心が満たされるものでした。
 ふと時間を置いて、冷静になってみると、全ての記憶を抹消したい程に羞恥心に駆られますが、決して消すことはあり得ません。
「好きなのに避けたい」「恥ずかしいのに嬉しい」「はしたないのに気持ち良い」この複雑怪奇な感情経路が人を人たらしめるものなのですね。手探りで愛する者の心を探り合うもどかしさと、じれったさに触れて、私も人の感情の何たるかの一端を理解できたのかもしれません。
 プレイの感想を述べるならば、密閉された生活空間で時間を忘れて、あらゆる所でマスターと体を交えるのは非常に気持ち良かったです。気持ち良過ぎました。下半身が繋がったまま、歩き回った時は頭が沸騰しそうでしたね。
 特に数年に及ぶ禁欲という焦らしの上での性交なので興奮もイチオシでしょう。
 甘く情熱的で恋人のようなセックスを1日中し続けたいという方にはオススメかもしれません。
 点数は文句無しの10点満点です。















【ワルキューレ回、当初の予定】
 1話:エロ無し回
 1話:ワルキューレそれぞれの単独プレイ。
 1話:ワルキューレ4P

 ↓

【現実】
 1話:エロ無し回
 1話:スルーズ回
 1話:オルトリンデ回
 1話:ヒルド回
 1話:ワルキューレ4P

 心の中のハンチョウに「へただなぁ……エロの開放のさせ方がへたっぴさ……」と言われたのでこうなりました。



 オリュンポスが更新されてから、やれカストロ雌堕ちディオスクロイ双子丼だの、雌堕ちマカリオスくんとのアデーレ双子丼だの、読者の皆様方はどノーマルであるウチのグダおくんの事を一体何だと思っていらっしゃるのでしょうか。

 私はせいぜいTSキリシュタリア様&カイニスの疑似百合主従丼くらいしか考えていないというのにプンプンしますね。





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戦乙女レビューアーズⅢ(オルトリンデ)

カルデアコレクションにて玄奘三蔵更新。

誤字報告、いつもありがとうやよ――。マジで助かってます。

オルトリンデは普段敬語なのに、スキルボイスとかで偶に「こんな感じかな……?」って素っぽい声を出すのがたまんねぇんだわ。






【『HBチャンネル』捕捉】
マスターの精杯によって受肉を果たしたBBはかつてムーンセルを掌握したオリジナル並のスペックを持っているが故にシミュレーション内で登場させることが出来るNPCは人間、英霊問わずほぼ再現可能(彼女がデータとして知らないという者以外は)。あくまでBBが知る範囲での再現度だが、上級AIだけあってそのレベルは高い。








――ワルキューレ達が『HBチャンネル』を使用する数分前――

「しかし感情学習の為とはいえ、私達がその……いきなり情事の段取りを全て設定するのは些かハードルが高いのでは?」

「ではでは、自分で決めるのが苦手な現代っ子のオルトリンデさんにはこんなのもありますよ~~☆」

「『性交履歴』……?」

「今までセンパイと致してきた方達とのプレイをサンプルデータとして追体験することも可能です。もちろん、オルトリンデさんがそのプレイでヤッても違和感がないよう(大きなエラーが起こらないよう)に致命的な差異はこちらで修正済みの上でダウンロード!いぇい♪」

「先達から学ぶ……。それは確かに効率的な学習方法ですね」

「まぁ、自らの性遍歴を残したいなんて、よっぽど自分のプレイに自信があるのか……あるいは只の変態か愉快犯かなので、全体数に対してサンプルデータは結構少ないんですけどね!気になるものがあったら教えてください♡」

「あの、それではこの方のを……」




『Case2:オルトリンデ_Tytle【甘やかし介護はいい文明】』

 

 

 ──AM.6:00──

 

「Zzzzzzz……」

 

 五人姉妹の末っ子、『(セイント)カルデア』学園2年生になるオルトリンデは一人で起きることができない。

 

 目覚まし時計を10個セットしても、姉達に体を揺さぶられても、「いけない……このままではお姉様が神ならぬ身にて天上の意思に辿り着くもの、レベル6に……」とワケの分からぬ寝言をこぼすだけで目を開けることはない。

 

 今日もフード付きの寝間着で頭を覆い隠し、ベッドの中で子猫のごとく丸まっているオルトリンデを毎日の日課として起こす為に幼馴染である男の子が彼女の自室へと入ってくる。

 

 家族である姉妹も、もう彼でしかオルトリンデの全介護を任せられないと判断した為、彼女は隣に建つ彼の家で同居している。つまり責任放棄、丸投げである。

 

 掛け布団をめくり、彼はオルトリンデの上半身を優しく抱き起こす。小さな子どもを相手にするように彼女の顎を肩にのせて、トントンと優しく背中を叩いてあげる。後はそれと一緒に頬にキスを5、6回すれば、彼女は自然と目を覚ます。

 

「朝ですよ~」

 

「うみゅ……お、はようございます」

 

「うん、おはよう」

 

 かつて家族にベッドから引きずり出されようが、部屋を光る槍で吹き飛ばされようが、決して起きようとしなかった彼女がこんなにも簡単に目を覚ました。

 初めてこの光景を見た金髪の三女は「ちょっと、現金過ぎませんか?」と青筋を浮かべていたが……あまりのオルトリンデの手のかかりっぷりに幼馴染の彼に任せることが最善手だろうと諦めた。

 

 

 ──AM.6:10──

 

 寝ぼけ(まなこ)をこすり、幼児のようにフラフラしているオルトリンデをおぶって1階まで降りる彼。一日の始まり、まずは体を清めて頭をシャキッとさせる為に浴室の前で着替えさせる。

 

「じゃあシャワー入るから脱ぎ脱ぎしますね~。バンザーイ」

 

「ばんさーい」

 

 比較的、脱がせやすいスウェットを上から脱がしていく。彼女は絶対に自分から服を脱ごうとしない。

 生まれてからこの方、誰かに服を着替えさせてもらい続けた彼女にとって身支度とは一人でやるものではないのだ。

 

 ぽんぽんと手際よく上下色が揃った黒の下着が露わになるが、もうこの工程を千回以上繰り返している彼は今更ドキマギなどしない。

 慣れた手つきでブラのホックを外し、爆乳とまではいかないが平均以上のバストがぷるんと揺れ、桜色のぽっちが外気に触れる。

 しゃがんでパンティも下ろすと精神年齢は幼児の癖に体だけは大人な陰部が目の前に現れる。何故か湿っているが彼は指摘しない。

 

 オルトリンデを全裸にして、今度は自分も服を脱ぐ。

 

「あぅ……」

 

「もう、嫌ってほど見てきたでしょ」

 

「それでも恥ずかしいものは恥ずかしいんです。あと、嫌ではありません」

 

 今更ピュアボーイよろしくドキマギはしないが、オルトリンデの体が駄目人間とは思えないほどに整っていてエロいのも事実。男の生理現象として、アソコがいきり勃ってしまうのも仕方がない。

 

 オルトリンデも脱がされるときはノーリアクションだった癖に彼のモノを目にする度に年頃の反応をするのも如何なものかと指摘されるが、それでも彼女にとっては自分の体で好きな男が興奮している様をまじまじと見せつけられるのは何回経験しようとも慣れないものらしい。

 

 2人ほどなら余裕をもって入れる一般的なサイズの浴室で彼はまずオルトリンデの頭から洗い始めようとする。

 

「目と口を閉じて~」

 

「んっ」

 

「いや、キスじゃなくて頭洗いたいんだけど……まぁ、一回だけね」

 

「…………」

 

「自分から振っておいて何でそんな照れてんの」

 

 彼から軽く唇にキスを受けて石像のように赤面硬直するオルトリンデ。彼女に小悪魔ムーブは3千年ほど早かった。

 大人しくなるのは都合がいいかと彼はオルトリンデを小さめのバスチェアに座らせて、背後からボサボサ頭の髪を洗い始める。

 水で濡らし、シャンプーで泡立てていく中で頭から生えた羽根に手が何度も触れる度に彼女から小さく甘い声が漏れ始めた。

 

「んっ、くっ、はぁ♡」

 

 服を脱がせられた時からもう出来上がり始めているオルトリンデの興奮は女陰の濡れと胸部先端の硬直をよりはしたないものへと変えていく。

 座りながらも落ち着かない様子で内股を擦りつけていた彼女はやがて、その間に手を伸ばそうとして──。

 

「駄目だよ。オルトはオナニー下手くそでいつまで経ってもイケないんだから」

 

「んくぅ……へたくそではありません」

 

「俺が後でちゃんとしてあげるから、今は我慢ね」

 

『オルト』と、幼馴染特有の親しみある呼び方で彼に咎められてしまう。

 膨れ上がった性的欲求を収めたい気持ちはよく分かるが、弱い刺激でいつまで経っても秘裂の入り口を擦り続けるオルトリンデの拙いオナニーに任せていては()()に遅刻してしまうことはわかりきっている。

 

 幼馴染の彼には今までおはようからおやすみまで全てを介護し続けた自負がある。いわゆるオルトリンデちゃん係というやつだ。

 それにはもちろん性的奉仕も含まれている。時間をいたずらにかけず、スマートにオルトリンデを性的にスッキリさせるのは彼にしか出来ない仕事だから。

 

「お目目に入るからちゃんと瞑って──はい、ばしゃ──」

 

「ばしゃ──」

 

 言われた通り、ぎゅっと目を閉じているオルトリンデの髪を洗い終われば、今度は体へ。

 丸めた手で水と空気を上手く入れつつボディーソープを泡立ていく。彼はこれまでずっとオルトリンデの体を素手で洗ってきた。

 

 何でも彼女曰く、自分の肌は繊細でボディタオルだと痛めてしまうから嫌だと、彼の手じゃないと駄目だと断固として聞かない。

 桃色髪の四女は「どうして()()()限定なのかな?」と感情が無い目で問い質したようだが、オルトリンデは譲ることはなかったようだ。

 

 そして泡立てた手でオルトリンデの体を洗っていく彼の手捌きはもはや熟練の域に達していた。

 首、肩、腕、脇、胸、腹、太股、足、尻とRTA走者よろしく無駄なく効率的に、そして手足の指の間、爪という末端の部分も洗い残しなく、完璧に自身の腕で彼女の裸体を隅々、洗い尽していく。

 

 艶めかしくオルトリンデの肌の上を這いずり回る逞しいの腕。どう見てもソーププレイにしか見えないが、彼からすればこれは介護と変わらず清らかな奉仕の気持ちで行っているものらしい。

 

「んぁっ……あぁっ、きもちぃぃいっ♡」

 

 当然、この裸体キレイキレイPARTではオルトリンデの性的興奮をしっかりと治めるノルマもこなさなければならないが、数多に繰り返された介護の中で彼の指達は本人が意識するまでもなく、彼女が最も気持ち良い動きを自動的に行う。

 

 まさに無念無想の境地──『洗術無双・健全逝如』なり。

 

「ふぁっ、あぁっ、そこっ、だめっ♡」

 

 彼女のシミ一つない白い肌の上をさらに白い泡が塗りたくり、マッサージの如く胸の膨らみを揉み洗う。

 彼の指全てがまるで意思を持ったかのように巧みに動いて、乳輪を円状になぞり、硬直した乳頭を指先が小さくかつ細かく連続で弾く。

 

「あっ、やっ♡んあぁっ……ちく、び、すごっ♡はぁっっ──!!」

 

 まずは胸で一回イかせる。

 だが、オルトリンデの欲求不満はこれだけでは完全には収まらない。

 彼の泡手が唯一洗い残していた秘部へと伸びる。

 

「んぉっ──♡」

 

 わしゃわしゃぐちゅぐちゅとそれはボディーソープの音か、はたまた別の液体の音かはもう区別がつかなかった。仰け反って椅子から転げ落ちそうになるオルトリンデを慌てることなく背中から抱きとめた彼は空いた右手で女陰を弄り洗い続ける。

 

「あっ、あぁっ♡だめっですっ♡……ひぁっ、これ、すぐイッちゃぁっ──……」

 

 鏡に映った彼女の股間は泡で隠され、彼の指にどのように弄られているのかは視覚では分からない。

 もはや触覚と快感でしか、彼の指が自分の秘口あるいは膣内をどのように触れているのか判断がつかない状況にオルトリンデの感度はより一層鋭くなっていく。

 

 オルトリンデはGスポの所をトントンとしつこく突かれるのがお気に入りであるのは既に把握済み。

 怪我をしないように細心の注意を払いつつ、彼女を抱きとめたまま挿入した指二本で卑猥な音を響かせれば、もう蕩けた瞳で天井を仰ぎ見ることしか出来ない彼女の限界はすぐ傍まで来ていることが分かった。

 

「はぁっ、あっっ♡んあぁっ、あぁっ♡い、く、イッちゃいますっ♡あっ、あっ、あっ♡イく、イく、イッっぁぁぁあああっ──♡」

 

 大きくピンと伸ばされた両脚の間から液体が連続で噴き出される痴態はオルトリンデが盛大に絶頂を迎えたことを如実に語っている。彼の胸板を背もたれにぐったりした彼女はゆっくりと呼吸を整えていた。

 

 これが毎朝の彼の日課である。中学生の頃から2千回近く行われたルーチンワーク。

 だが、介護疲れの悲壮感もどうしようもない幼馴染に対する怒りもまるで無かった。

 

 そこにあるのは使命感。そして──それだけではない。(よわい)十七にして、この生活をオルトリンデの生ある限り続けること、絶対に彼女を残して死なないという覚悟。まさしく自らの生涯を彼女へと捧げるというあまりにも重い愛とも言えた。

 

 オルトリンデは彼がいなければ生きてはいけないだろうし、彼もオルトリンデには自分がいないと駄目だということは骨の髄まで染みている。

 

 余人が見れば、その共依存っぷりにいい顔はしないだろうが……それでも──。

 

「んっ、あっっ、あっ♡」

 

 未だ絶頂の余韻が抜け落ちず、洗い落としているシャワーが敏感な部分に当たって悶えるオルトリンデとその様子を微笑ましそうに眺める彼は誰かの介入の余地がないほどに幸せで完結していた。

 だから、彼ら2人からすればまるで問題ないのだ。お互い愛し合って幸せなら、他に何を望むというのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──AM.7:10──

 

 スウェットすら脱げないオルトリンデが制服なんて複雑な(彼女にとって)衣服を着れるわけもなく……彼女の髪を乾かし、軽めの化粧、そして下着から紺色のスカートにシャツとクリーム色のセーラージャケットと全ての身支度を彼が完遂すれば、後は朝食の時間。

 

 ふりかけをかけた白米。から揚げに野菜スティック。鮭は骨が危ないのであらかじめ彼が全ての骨を取って一口サイズに分けてある。オルトリンデを起こす前から彼が仕込みを終えていた朝食がすぐに食卓に並んでいる。

 

「オルト、あ──ん」

 

「あ──ん」

 

 至極当たり前の如く、食事も全て彼が食べさせている。

 食卓テ―ブルに座り、悠々自適に指一本動かすことなく三大欲求を満たしているオルトリンデ。

 彼女がつけているハート型の前掛けには嫌そうなジャンヌ・オルタの顔がプリントされている。敬愛すべき姉でもある次女から贈られたものを嫌がることなく使い続けているのが何とも彼女らしいというべきか。とりあえず非常にシュールな光景ではある。

 

「ちゃんと三十回噛んで──」

 

「もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ」

 

「はい、ごっくん」

 

「っぐん……」

 

「よぉし、えらいぞぉ。じゃあ次はマヨネーズをつけた野菜スティックだ」

 

 マヨネーズは隠語ではないし、ぶっとい野菜スティックだよぉ……など卑猥なプレイには走らない。彼が手に持った野菜スティックを端からサクサクと食べ進んでいく。

 うさぎに餌をやる飼育員ってこんな気分なのかな……と思いつつ、嬉しそうに頭の羽根をぴこぴこ動かしながら食事をするオルトリンデにほっこりしている彼であった。

 

「んちゅ、ちゅぷっ、はむはむっ」

 

「はっはっはっ、こらこら、俺の指は食べ物じゃないんだぞぉ」

 

 人の指を唾液塗れにしても、彼は決して怒らない。

 育児・介護の基本。ちょっとした悪戯程度で頭ごなしに怒らない。むしろどんな些細なことでもよく褒めて伸ばすのが彼のスタンス。

 現にただ口に入れられたものを食べていただけに過ぎないオルトリンデにも──。

 

「今日も残さず朝食を全部食べれてえらい! オルトは食事を無駄にしないイイ子だねぇ、もう天使だよマジで」

 

「そんな……褒めすぎです。私、大したことしてませんから……」

 

 謙遜ではなく、ほんとに大したことはしていない。むしろ自分でご飯を食べられないのだから平均以下、幼児レベルの高校生である。

 

「では、その……頑張ったご褒美に……いつものを」

 

 にも関わらず、このバカが冠位(グランド)レベルでオルトリンデを甘やかし続けてしまったおかげで他人がくれたご飯を食べられただけで見返りを要求する駄目女と化してしまった。

 

「んっ、ちゅっ……♡」

 

 というわけで先ほど浴室で軽く終わってしまったキスの続きをオルトリンデはねだった。

 

 椅子に座っている彼女の顎に優しく手を添えて、唇が隙間なく重なる。

 先ほど食べた朝食の味が彼の唾液にどんどん上書きされるように二人の舌が深くねっとりと絡み合った。

 口蓋や歯茎の裏を彼の舌先が滑らかに這いずり回れば、オルトリンデの全身に耐え難い官能の痺れが襲う。

 

 卑猥な水音と椅子が軋む音を響かせてされるがまま──脱力し、自分の舌も差し出してここでも自ら動くつもりのない彼女は彼から与えられる快楽を黙って受け入れるニートと化している。

 

「れぇぁっ、ちゅぁっ♡……んむっ、ちゅぁっ……っぷふぁっ♡」

 

 実は1日だけ、彼の介護の様子を彼女の実家でも披露したことがある。

 当然、食事の最中にこのご褒美キッスも炸裂したわけで、五姉妹の長女も「困ります……」とお決まりの文句も言えずに口と目を見開いて絶句していた。

 

「んれぇぇっ♡んっぷふぁぁっ……!」

 

 10分ほど経っただろうか。

 最後の仕上げとして脱力した彼女の舌を強めに吸い上げ、絶頂させてから彼の唇が離れていく、二人を繋ぐ銀の糸がやけに艶めかしく途切れて、ようやくディープキスは終わりを告げた。

 

「んはぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ──♡」

 

 蕩けた瞳で呼吸を荒げたままぼっ──としているオルトリンデが正気に戻るまでに、彼は彼女の口の周りをハンカチで拭うと、手早く食卓の上にある食器を全て片付け、食器洗浄機へ。毎朝5時起きの彼はオルトリンデを起こす前に朝食も含めてほとんどの身支度を終えている。子持ちのお母さんかな? 

 

 未だ意識をヴァルハラへ(いざな)われているオルトリンデの元に洗面器と水の入ったコップを持ってきたら、だらしなく開いた口へ歯ブラシを突っ込む。

 

「おごっっ」

 

 時間の有効活用。

 お互い学生の身である為、朝にそこまで悠長にしている時間があるわけでもない。

 彼は洗い残しが無いように歯科医さながらの歯ブラシ捌きで彼女の口内を磨き上げ始めた。

 

「おっ、ぉっ♡ぁっ♡ぇっあぁっ♡」

 

 先ほどのキスの絶頂で敏感になっている所への追い打ちの如く、歯ブラシによる毛先タッチ。シャカシャカと歯茎に擦れる度に彼女の体がはしたない声と共に痙攣する。朝起きてから、ここまでいったいオルトリンデは何回イクのか。

 

「お口に水入れて、くちゅくちゅー」

 

「くちゅくちゅ」

 

「洗面器にぺっ」

 

「ぺっ」

 

「はい、よく出来ました。オルトはイイ子、イイ子」

 

 5分ほどで歯磨きは終了。オルトリンデが賢者モードに浸っている間にぐっしょりと湿ってしまった下着を脱がせてようやく朝の準備が終わる。

 

 

 

 

 

 ──AM.8:05──

 

「じゃあ、行ってくるね」

 

「はい」

 

 オルトリンデにお昼のお弁当を渡せば、彼はこれから学生の本分を全うする為に学校へ行く。

 

 さて、今のオルトリンデの現状を見た方々ならとてもじゃないが真っ当な学校生活が送れるレベルではないと思っただろう。

 

 だがそれは世界に名高い『(セイント)カルデア学園』。通信教育、オンライン授業の設備も完璧。学校に通わずともオルトリンデのような特殊な生徒も卒業できる教育制度は整っているのだ。

 

 なのでこれから学園に行く彼とオルトリンデはここで一旦お別れ。

 授業である以上、通信教育だろうと制服は義務の為、例えオルトリンデが登校しなくとも制服は彼が毎日着替えさせる必要がある。

 

 介護必須の惨状を知らなければ、正統派制服美少女に見えるオルトリンデは2階にある彼の部屋のパソコンの前に座っている。ここからオンライン授業を受けているわけだ。ちなみにここまで当たり前のようにお姫様抱っこで連れてきてもらっている。ノーパンのお尻が腕に触れて、恍惚とした表情を浮かべていたそうな。

 

「インターホンが鳴っても?」

 

「印鑑の押し方がわからないので、出ません」

 

 

「知らない電話番号からは」

 

「怖いので、出ません」

 

 

「オンライン授業が繋がっている時は?」

 

「今、ノーパンなので立ち上がりません」

 

 

「何かあった時は?」

 

「携帯ですぐにあなたを呼びます」

 

「うん。30秒で飛んでくるから」

 

 毎朝、絶対に下着を駄目にしているのでそもそも朝シャンの後に下着を穿く必要はあるのかと問われれば、オルトリンデは断固として「YES!」と答える。

 好きな男手ずから下着を穿かせてもらうのは、その後濡れた下着の始末をしてもらうのもプラスして背徳感がヤバくて興奮がラグナロクらしい。大神(オーディン)さん、おたくの商品壊れちゃってるよ。クーリングオフは出来ないらしい。

 

「じゃあ行ってくるから、授業頑張ってね。いや……疲れたら、少しはサボってもいいよ。オルトはいつも頑張ってるから偶に休んでもバチは当たらないもんね」

 

「はい、無理しない程度に頑張ります」

 

 お前はもうちょい頑張った方がいいと思う要介護認定のオルトリンデを心配そうにチラチラ見ながら部屋からと出ようとする彼。

 オルトリンデも頑張りますと口では言うけれども彼が離れていく度に不安気に追いすがるように何度も手を差し出そうとしている。

 

 まるで飼い主が外出するのを悲しげに見送るペットのような様子に耐えきれなくなった彼は戻ってきてオルトリンデを強く抱き締める。

 

「絶対に、絶対に君の元に帰ってくるからっ!!」

 

「はいっ! はいっ……!」

 

 彼は外出する前に必ずこの茶番を3回ほど挟む。感極まったように抱き締め返しているオルトリンデもとっくに手遅れなので誰も止める人はいない。さっさと登校しろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──PM.12:30──

 

 

 

『アカシックレコード』

 

「マハトマ」

 

『インド』

 

「マハトマ」

 

『アトランティス』

 

「マハトマ」

 

『ハイアラキ! (素晴らしいの意)』

 

 世界史の講師が軽快な音楽に合わせて4つの小型UFOと共に首を動かしてparty parrotしていると授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。

 

『今日はここまでっ! 次回は一万四千年周期で現れる巨大彗星の話をするわね』

 

 ピッと可愛らしく敬礼した小柄な教師がモニターからいなくなるとオルトリンデもタブを一度閉じて、一息つく。

 

 ──ぐぅっ~~。

 

 両腕を大きく伸ばしているとお腹の鳴る音が聞こえた。この部屋には他に誰もいない以上、音の発生源は自分以外にいない。4限目も終わり、学生は皆、お昼休み。時間的には小腹が空く頃だろう。

 

 彼から渡されているお弁当をデスクの上に置く。女性が食べるには平均的なサイズ。既にもういい匂いが彼女の食欲を刺激する。

 だがオルトリンデは自分のお腹を擦り続けるだけで、お弁当箱のふたを開けるわけでも、何かしら口に運ぶこともなかった。

 

 30秒ほどしてから、下の階からドアの音とドタバタ何かが近づいてくる気配がするとさっきまでへたっていたオルトリンデの耳が分かりやすいぐらいにピンッと立った。

 

「お待たせ、じゃあお昼にしよっか!」

 

 ドアを勢い良く開けて彼が帰ってきた。貴重なお昼休みをオルトリンデにお弁当を食べさせてあげる為だけに学校からわざわざ戻ってきたのだった。その右手には購買部であまりの上手さにあらゆる味覚を破壊すると噂のデザート、三色のデコレーションが可愛らしいフルーツケーキ、その名もマルスイーツ(軍神の甘味)が。

 

「おっ、今日はちゃんと自分でお弁当を出せたんだね。えらいぞ、よしよし」

 

「えへへへへへへへへ」

 

 もはやそれすら出来ないと馬鹿にさえされているような発言とも思えるが、もうズブズブと彼に甘やかされ続けた温室育ちの引きこもりは単純な褒め言葉と頭ナデナデだけで耳をパタパタといとも簡単に喜んでしまう。

 彼が頭を撫でる度に彼女のキャラと神性が溶けていっているような気もするが。

 

 

 ご飯を食べさせたこの後、午後の予鈴が鳴るギリギリまで二人で抱き合いながら滅茶苦茶イチャイチャした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──PM.4:50──

 

「ウワサ通りいい勇士です。私の島に連れていきましょう!」

 

 授業が終わったオルトリンデは自室に戻ることなく、幼馴染のベッドの上に寝転んでいる。

 島の住民をプレイヤーの采配で追い出したり、略奪したりするスローライフなゲームをしながら、ご機嫌な様子だ。

 時折、彼の枕に顔を埋めて深呼吸するのも、腰が怪しく擦り付けるように動いているのも、ここでは見慣れた光景だった。

 

 無遠慮に動くものだから、スカートの中のまっさらな下半身が何度も覗かれてしまう。

 

「着替えてからじゃないと、制服シワになっちゃうよ」

 

 学校から帰ってきた彼はオルトリンデのサービスシーンに苦言を呈しながらも、寝転んだままの彼女の制服を手際よく脱がしていく。毎日こうして制服を洗濯したり、アイロンにかけたりするのも彼がこなしてきた日課であった。

 

 ベッドの上で服を脱がしているというのに、何とも色気がない。

 

「いやー、犯される──」

 

「ほら、寒いでしょ。着替えないと風邪ひいちゃうよ」

 

 軽口を叩きつつもオルトリンデは抵抗は一切しない。ブラジャーだけ残して、真っ白で男なら思わずむしゃぶりつきたくなるような裸が露わになる。黒いブラとのコントラストがより一層興奮を煽るような光景。

 それでも彼女はゲームから手を離さず、うつ伏せのままであった。

 

「それなら暖めてください。私は今、島中の魚を釣りつくすのに忙しいので」

 

 脱がせた制服をハンガーにかけていた彼に向けてオルトリンデはおしりを上げて挑発していた。

 丸く整ったお尻。汁で光沢ががっている陰部。彼女が言う暖める方法とやらが何を指しているかは一目瞭然であった。

 

「いつも良くしてくれているあなたに私が出来ることはこれぐらいですから。どうぞ、オナホのようにお好きに使ってくれて構いません。まぁ、私はゲームに忙しいのでマグロでも良ければですが」

 

 言葉だけなら、私は別にエッチとか全然したくないんだけどなぁ──と冷めたものだったが、足を開き愛液まみれた陰唇を見せびらかしてチラチラとこちらの様子を紅潮した顔で窺っているとまるで説得力がない。

 

 そもそも彼の匂いが充満している部屋にいてムラムラしっぱなしだったオルトリンデ。オンライン授業中もずっと股を擦り合わせ続けていたのだから、もう我慢の限界だったのだろう。

 それなら、彼の部屋ではなく自分の部屋で授業を受けた方が集中力的な面で良いのではと思われそうだが、単純に彼以外の部屋で勉学に励むやる気が出ないとのこと。それでテストでは学年トップクラスの結果を出しているのだから誰も文句は言えなかった。

 エロはモチベーションの大きな燃料となる。

 

「あなたはきっと、幼馴染のあられもない反応を期待しているようですが、それに応えることはできません」

 

 お尻をフリフリして頭の沸いたことを(のたま)っているオルトリンデを見て、彼は"あぁ、今日はそういう感じなんだな"と手慣れた反応だった。

 

 放課後は絶対に性欲が猿並に溜まっているオルトリンデは毎日のように家に帰ってきた彼をあの手この手で誘っている。

 ストレートに甘えてきたり、全裸で寝たフリをしている睡姦プレイだったり、いきなり襲いかかってくる逆レ展開だったり、彼が部屋に入ってきた段階で自らの全身を拘束具とバイブやローターで辱めているハードプレイだったり、普段は何も出来ない引きこもりの癖してエロに関しては大分積極的に動いてくれるのだ。

 

 今回は言うなれば、クールでマグロな幼馴染が好き放題ザーメンを扱き捨ててあげる的コンセプト。

 

「どうしました。興奮できませんか? 演技でもいいなら、喘ぎ声を出してあげますがぁあんおぁぁっ──♡ちょっと……いきなりぃぃぁぁっ♡」

 

 しかしそのプレイをするにはオルトリンデはあまりにも糞雑魚ワルキューレだった。

 

 躊躇なく挿入される彼の逸物。いつの間にか彼も生まれたままの姿になっていた。逞しい剛直をバックから受け入れた彼女は情けない声を上げて背筋を震わせた。高く上がっていたお尻は彼女の挑発を窘めるように抑え付けられ、ベッドを軋ませる。

 授業中もずっと妄想していた男根が膣内に侵入し、悦びに打ち震える肉襞達が絶対に離さないように蠢き始める。

 

「ん、ゲームの手、止まってるけど止めた方がいい? 後にする?」

 

「んぁっ♡い、いえ……それには全く、及びませんんんんんっっ♡全然、ゲームをするのには支障なんてこれっぽちもぉぉおおっ♡あひまへんかりゃぁぁっ♡」

 

 浅く細かく腰を動かして彼女の愛液を掻き出す彼。ぱちゅっ、ぱちゅっ、と水音と肉を叩きつける音がリズミカルに鳴る。

 ゲームのプレイには支障は無いとアピールするオルトリンデだったが、ゲーム内の彼女のアバターは挙動不審に動いたり、メニュー画面を何度も開いたり閉じたりするばかり。

 

「あぁ──あ、また魚に逃げられちゃったね。もしかしてオルト、ゲーム下手になってない?」

 

「んぅっ、んふっ♡そんなことはっ、ありませっんぅっ!? んんっ♡──♡んっんっんぅぅぅっ♡」

 

 寝バックの姿勢で後ろからゲーム画面を覗いていた彼のからかいに反論しかけたオルトリンデだったが、うなじを指先で文字を書くようにくすぐられ、挿入とはまた別種の快感を与えられるとそれ以上言葉を紡ぐことも出来ない。

 

「んんんっ♡んぅっ……んふっ、んんっ♡ん゛ん゛んっっ♡」

 

 もはやゲーム画面を見ることすらできなくなった。くすぐるついでにブラは簡単に外され、剝き出しになった背中をいやらしい手付きで縦横無尽になぞられていく。依然として腰のストロークは止まることなく、オルトリンデは枕に顔を埋め、必死に喘ぎ声を押し殺していた。

 

 だがその抵抗もより一層彼の情欲を燃え上がらせ、抽送を早めさせただけに過ぎなかった。何せ外見麗しい幼馴染がベッドの上で自らのペニスに突かれ、くぐもった嬌声をあげている。これでいきり勃たないのは男ではない。

 

(あっ、やばっ、彼の匂いに包まれて、頭がっ♡おかしくなりそっ♡)

 

 彼の枕に顔を埋めたのは悪手だった。何せ彼がいない常日頃から、このベッドでオナニーに耽ているオルトリンデ。そんなものの匂いを至近距離で濃厚に吸い込んでしまえば媚薬に犯された淫売の如く、条件反射で彼女が潮を連続で噴いてシーツを汚してしまうのは自明の理。

 

「オルトはオナホのように使えって言ったけどやっぱり大事な幼馴染だからさ──」

 

 毎日ベッドのシーツを変えている彼からは叱咤の言葉は飛んでこない。そもそも彼がオルトリンデにかける言葉は全てが甘く慈しみに満ちた声。少しでも気をやってしまえば逆らえない沼。

 

「やっぱり顔を見ながら、エッチしたいな。今こっち向いてくれれば、朝よりも凄いキスたくさんしちゃうけど」

 

 耳を舐められながら、ASMRよろしく囁かれてしまえばオルトリンデが逆らえるワケがなかった。

 背中から犯されたまま、振り向いて涙と涎でぐじゅぐじゅになった雌の顔を彼へと向ける。口からはみ出ている舌と荒い呼吸、マグロなんてとんでもない立派な発情猫が出来上がっていた。

 

「きしゅ、いっぱい、して────んんっ、ちゅっ♡」

 

 いつもの敬語ではなく、砕けた言葉で懇願される。様々なプレイを彼女なりに考えるが結局いつもイチャラブセックスになってしまうのだ。彼が触れるだけでAlwaysグングニル受け入れOK状態になってしまうオルトリンデは心配になるレベルでチョロい。

 

「れろっ、ちゅ、ちゅむっ♡んぅっ♡ちゅっ♡じゅるるっ……れぁっ♡んむっ♡」

 

 オルトリンデの駄目人間っぷりに彼が奴隷のように介護しているような関係だが、彼がオルトリンデを自分がいなければ生きていけないように調教しているという見方も出来るかもしれない。より支配している方が相手を愛しているというのなら、主導権は恐らく彼が握っている。

 

 首を後ろに回して、朝の時とは異なり今度は自ら貪欲に舌を動かしているオルトリンデ。互いの舌が艶めかしく動きながら、男の腰の動きはどんどん加速している。うっとりとした瞳で嬌声と吐息と唾液を漏らし続ける。もうゲームからは手が離れてしまっていた……。

 

「らしてっ……♡もう、耐え切れないからぁっ、んちゅっ、私のアソコにぃっ……らしてぇっ♡」

 

 パンパンパンパンッと彼女の懇願に応えるべくストロークがラストスパートを迎える。男根だけではなく、連続で尻肉に叩き付けられる下腹部にも快感を得ている彼女はいつもオカズに使っていた彼の枕を思いっきり抱き締める。

 

「あぁっ♡あっんあぁっ♡あぁっ、あぁっ♡しゅごっ、これっ……はげしすぎっ♡はぁっ、んぁっ、んぉっ、きしゅっもできなぁぁっ♡んひやあぁっ♡」

 

 素早く打ち付けられるペニスに全身の神経が焼き切れているような感覚に陥ったオルトリンデはもう顔を上げてられなかった。頭がおかしくなってしまわないように枕を顔を埋めているが、それはさっきのようにより自分を追い詰める愚策でしかなく、キスをする必要がなくなった彼は無防備になった耳に甘く嚙みつく。膣内だけではない、鼻と耳からもオルトリンデをイキ殺す快楽が送り込まれる。

 

「んんんんんッッッ────♡」

 

 嗅覚、聴覚、触覚、彼の汗が染み込んだ枕に嚙みついているから味覚もあるかもしれない。閉ざされた視覚以外の敏感になった四感全てで犯されているオルトリンデは言葉にならない悲鳴を上げ続けている。

 

(ぴちゃぴちゃって耳が凄くてっ、息を吸えば彼の匂いがいっぱいでっ、枕に嚙みつくのも止まらなくて、でも一番はっ彼にアソコで……! あぁっ──っ、もうすごすぎて馬鹿になるっ──♡あっ、あっ、イクッッ──!!)

 

「ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ふぅっ────っ♡」

 

 組み伏せられたまま、精液が吐き出された。子宮口に熱烈なキスをしたままドロドロの欲望が子袋の中へと流れ込んでいく。重なり合った二人の熱は上昇し、寒さなど感じるはずも無い。オルトリンデの体は中も外も情欲の熱で燃え上がり、汗が浮かんだ彼女の肢体は白濁液が注入される度にビクビクッとイキのいい魚の如く跳ね続けていた。

 

「んぁぁあああっ~~♡」

 

 ずるずるっと竿を抜けば、乱れ狂った雌猫の鳴き声が部屋に響き渡る。

 綺麗なピンク色の具を覗かせていた割れ目は滾った白い欲望に汚され、滝のように零れていた。絶頂の余韻から抜け出せないのか、潮と一緒に精液をプシュップシュッと噴き続けている光景は淫靡極まりない。

 

「少しは暖まった?」

 

「は……はひっ……♡あの続きは……」

 

「ん──……。まずはお風呂に入ろっか。夕飯の準備もしなくちゃだし」

 

「きゃっ♡」

 

 脱力した彼女を抱いて、朝と同じく浴室へ。体を洗うだけでは終わらないことは百も承知。明日は週末で学校も休みなので気兼ねなく、肉欲に溺れることができる。汗だくの全裸で彼の腕にいるオルトリンデは心底幸せそうだった。

 

 

 

 

 ──PM.5:40──

 

「運動不足だと体が鈍っちゃうよ。偶には自分から動かないと、ほら、がんばれ♪ がんばれ♪」

 

「こっれ♡奥、深くてぇっ……あひっ、ひにぁやっ♡う、まく動けなぁぁっ♡」

 

 浴室で頭と体を綺麗さっぱり洗えば、膣内の洗浄も行わなければならない。

 マットに寝そべった彼の上に跨り、肉のお掃除棒で一生懸命膣をゴシゴシするオルトリンデ。

 洗い残しがないように亀頭から根元まで全てを使ってたっぷり洗う。腰を上下にヘコヘコと動かしているオルトリンデを応援する彼。

 

「んあぁっ♡あああぁっ♡はっ、はっ、ああああぁっ──♡ま、た出てるぅっ♡」

 

 膣内にびっしり注がれた精液を洗い流す目的だったが、不思議なことに何回やっても白濁が彼女のナカから無くなることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 ──PM.8:00──

 

「あっ♡はぁぁっ♡おっぱい、もっと……揉んでくださいっ♡んっ、ちゅっ……♡」

 

 夕飯の時間、今度は背面座位の体勢で食べさせてもらったオルトリンデ。女性器に入っている硬い感触にムズムズしながらも完食。食事が終われば、今度は時間もたっぷりあるので本格的に彼の腰が動き始める。寝間着の下のおっぱいをいやらしく揉みしだくと自然と彼女のストロークも彼の動きに合わせて早くなっていった。

 椅子の上で跳ねながら彼の唇を貪るオルトリンデに今度は下の口からたっぷりとできたてホクホクのご馳走を食べさせられている。

 

「あああああぁぁっ……♡はああぁっ──……んあぁっ、もう、お腹いっぱい♡」

 

 食欲と性欲を同時に満たした彼女は満足気に自分のお腹を撫でていた。

 

 

 

 

 ──PM.11:00──

 

 次の日が学校が休みなら、二人とも一緒のベッドで寝るのが長年の決まりごとだった。

 掛布団の中でイチャつきながら互いの性器を触りっこ。今日一日で10発近く出した彼のペニスも未だ萎えることなく臨戦態勢。彼女の女陰も指で撫で上げれば、面白いぐらいに蜜が溢れていやらしい反応が返ってくる。

 

「もう、挿れたいですか?」

 

「オルトも挿れて欲しいんじゃないの」

 

「私はもういいかなって感じです。スケベな幼馴染を持つと苦労します、体が持ちません」

 

「ふ────ん」

 

「まぁ、あなたがどうしてもと言うのならぁっあああああぁんぅっ♡」

 

 お約束。

 何かが入り込むような水音の後に、ギシギシと軋む音と甲高い声が吐息交じりに聞こえてくる。

 二人を包んだベッドの膨らみは上下に揺れ続け、朝陽が昇り始めるまで止まることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 ──AM.8:00──

 

 柔らかくかつ良い匂いがして、心地良い感触の中で彼は目覚める。オルトリンデという肉布団に抱き締められ、竿も湿って温かい膣襞に包まれている。繋がりあったまま眠りについたのだろう、美女の裸に包まれながらという最高の起床を決めた彼はオルトリンデのおでこに小さく口付けをする。

 

「んふふふふふ……」

 

 彼女はまだ夢の中か、とても幸せそうな顔だった。手の平を顔の近くにもっていけば無自覚か頬をすりすりとしてくる。

 炊事、洗濯、お掃除、買い物、セックス。休日だろうとオルトリンデちゃん係として彼がやるべきことは盛りだくさん。

 それでも──手のかかる幼馴染の顔を見るだけで無限に活力が湧いてくるのだから、チョロいのはもしかしたら自分なのかもしれないと彼はクスリと笑うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 Tytle【甘やかし介護はいい文明】

 レビュアー:オルトリンデ

『私達の性質とは正反対のプレイを』
 大神に鋳造された我々ワルキューレの役目には神に仕え、勇士をヴァルハラへと連れていき、奉仕するという面もあります。
ですので、私達が知り得ない感情を学ぶにあたってワルキューレとは正反対の方向性を求める必要がありました。
 そこで『性交履歴』にあった「アルテラ」という方が何故か他人とは思えず心惹かれてしまったので彼女のプレイを参考に今回は臨ませて頂きました。
 感想としては彼女のプレイを選択した私の目に狂いは無かったと。怠惰、堕落、退廃の集大成。全てを男――マスターに委ね、ありとあらゆる事を彼に行ってもらう。私が仕えられる側だというのは非常に新鮮でした。
 あまりに心地良過ぎる時間だったので、逆に私の防衛本能が危険信号を上げるほどでした、これ以上このプレイを行うと戻れなくなるぞ――と。
 もう少し甘やかされていたら、ワルキューレとしてのアイデンティティも失われていたのかもしれません。
 感情即ち愛。その危険過ぎる心地良さを学ぶ良い勉強になりました。
それでカルデアではマスターが起こしにきたり、ご飯を食べさせてくれるのでしょうか?





【他アルテラの『性交履歴』の参考者の声】

レビュアー:マタ・ハリ
 やばい。マジでやばいわ。
 あれは女として駄目になるわね。一応女スパイとしての矜持はあるし、駄目よと思いつつも気付けばフラフラってこのプレイを選んでしまうのよね。依存症の人達の気持ちが分かったわ。だってあんな優しそうな顔で何でもしてくれるし、甘やかしてくれるのよ!あぁ、駄目駄目! 彼という男に溺れてしまうわ。いや、もうとっくのとうに溺れていたわね。


レビュアー:刑部姫
 姫は微妙にコンセプトが違ってマーちゃんをアシスタントに同人してるって感じ?スキャンとかトーン貼りとかペン入れとか、姫いる? ってレベルで滅茶苦茶手伝ってくれるし、夜食とかもそうだし、身の周りの掃除もしてくれて、後はまぁ……オナニーとかしたくなった時も手伝ってくれて、アダルティな漫画に出てくる執事を侍らせてるみたいで非常に滾りましたハイ。
しかもだよ、姫が一日でちょっとしかページを進めることしかできなくても「さすがだぞ!昨日よりも白紙の部分をこんなに減らすことができたんだな!」って曇りなき瞳で褒めてくれるから、自己肯定感がドバドバよ! 駄目になりたい姫が逆に罪悪感を抱く甘やかしっぷりだったわ!


レビュアー:アタランテ
わたし、ますたぁのこどもになるぅ!





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戦乙女レビューアーズⅣ(ヒルド)

ボイジャーといい感じに別れてカルデアで心機一転頑張ろうとしていきなりラスベガスに連れてかれるエリちはかわいいですね。

カルデアコレクションにて宇津見エリセ、鬼女紅葉、ボイジャー更新。





横乳のランサー「アーサー王に首輪をつけて虐げ、皆の憧れの牛若丸を犬のように飼って、ギリシャの狩人を幼くして尊厳を奪い、可憐なフランス王妃に侍女の格好をさせて不貞行為に耽させて、京を守護した源氏の武将の肌を叩いて悦に浸り、あのフランシス・ドレイクにまで花嫁衣装なんて着させて手を出すなんて……け、け、け、けだものっっ!! 変態!! 鬼畜外道!! 色欲魔人!! カルデアのマスター、どこまでおぞましいの!!」

(一応は事実だから、言い返せねぇや)





《その後、何やかんや和解して、カルデアへ加入したエリち》

「色々誤解はあったけど、うんまぁ、ここでも上手くやれそうかな……。マスター、ちょっと邪魔する――」


――あぁんぅっ♡あああぁぁっ♡あぁっ♡すごい♡素敵よっ♡ますたぁ♡(マイルームのベッドの上でマスターに騎乗しながら、滅茶苦茶ヴィヴ・ラ・フランス♡してスターを出しまくってるフランス王妃)


「神聖な英霊に……嫌っ……けだもの……!」

「あら、せっかくだし、エリセもご一緒にいかが?」

「ひっ! 私……素人ですから……! 足手まといになるだけですので……!」

このあと滅茶苦茶アメノサカホコした。





今回で去年のエロ回の新規の人数は超えたよ。褒めて。







『Case3:ヒルド_Tytle【北風でもあり太陽】』

 

 

「んっ……」

 

 瞼を開ければ、ぼやけた視界がはっきりし始めた。

 薄暗い空間の中で意識を少しずつ覚醒させていく。自分は何者なのか、ここはどこなのか、一体何が起きたのか、一つずつ改めて確認していく。

 

 そう、あたしの名前はヒルド・ファムルソローネ。

 

 クリプターの一人にして、ワルキューレのデミサーヴァントだ。

 

 あたしが目覚めた空間は殺風景な部屋だった。いや……部屋というよりは牢屋という印象を受けた。窓はなく、何の仕切りもない剝き出しのトイレにシンプルなベッドと立ち鏡。電子パネルが隣についたドアが唯一の出入口。部屋について特筆すべきものはそれぐらいしかなかった。

 

 身じろぎをするが体に力が入らない。両手首を背後でまとめて拘束している鉄枷のせいか、足は自由だが上手く立ち上がるには時間がかかりそうだった。

 

 デミサーヴァントのあたしの力を上手く封じている。鉄枷の力かあるいはこの部屋そのものに魔術的な結界を施しているのか。どうやら今のあたしはこの身に宿る英霊の力を十全には扱えないようだ。

 

 そして、どうしてこんな状況になったのか、混濁した記憶の糸を何とか手繰り寄せていると部屋の行き来を唯一可能とする扉が開いた。

 

「やぁ、居心地はどうかな」

 

「うん。最高だよ」

 

 入ってきた男の顔を見ながら、皮肉を返してようやく全てを思い出した。

 

 カルデアのマスター。現在進行形でクリプターと敵対関係にあり、あたしに敗北を味わわせた男。

 そして自分が生きてここにいる理由も察した。何も別段珍しいことはない、あたしは捕虜として囚われているというだけの話。他のクリプターのデータを知る貴重な情報源として。

 

「みんなの事は何も喋れないよ。そもそもそこまで交流も無かったし」

 

「察しが良過ぎるね。まだ俺何も言ってないけど」

 

 貼り付けたような笑顔でおどけるとあちらも困ったように頬をかいていた。まぁ、これで納得してくれるなんて到底思ってもいないけど。

 

「どうする? 体にでも聞いてみる? あんまり痛いのは好きじゃないなぁ」

 

 敗北はしたが、それでもあたしはクリプターの一人。我が身可愛さに仲間の情報を売るつもりなどなかった。

 まぁ、それに自分ならどんな拷問だろうと耐えられる自信もあった。

 

白鳥礼装(スヴァンフヴィート)』。

 

 ワルキューレのデミサーヴァントとなった私が得た白鳥の衣。

 

 Bランク以下の物理攻撃を弾き、精神に影響を与える魔術や能力の類も受けない。

 

 もはやあたしの肉体の一部といってもいいこの宝具の前では尋問や拷問など意味を成さない。

 

 捕らえられたあたしが未だにこうして自我を保っているのが答えだ。本来なら、意識を失っている間に知っている情報を全て話すように暗示でもかける目論見だったのかもしれない。

 だが、それが不可能だと分かったから、精神ではなく肉体の力を封じるこの鉄枷ぐらいしかかけられなかっただろうと推測できる。

 

「この部屋にはあんまりそういう物騒なのが見えないし、君も何か持っているように見えないね。あ、もしかして誰か霊体化してるサーヴァントがいたりする? こういう拷問が得意なサーヴァントとか?」

 

「いや、ここには俺一人だよ。それに安心して欲しい。今回はそういうバイオレンスなのは無しだ。国際法ってやつ? 捕虜に対して不条理な暴力的行為は許されないでしょ」

 

「その国際法を敷く世界もないのに面白いこと言うんだね」

 

「世界が滅ぼうとも人が築いたものは無くならないさ。それを覚えている者がいる限りね」

 

 あたしの言葉の刃も刺さらない。微塵も敵意を感じず、どうにも調子が狂う。自分が守った世界を滅ぼした要因とも言える者が目の前にいるのだから、もう少し怒りや憎しみを表に出してもいいだろうに。

 彼は本気であたしに暴力手段で訴えるつもりはないようだった。

 

「それに痛みだけじゃないでしょ。体に聞く方法ってさ」

 

 …………あぁ、なるほど。

 

 怪しい口ぶりであたしに近づいてくる様子を見て察した。

 

「1日ぐらいは時間もらってるから、ま、気長にいこう」

 

 男と女が密室で二人きり。女は逃げることも抵抗することも許されず、男には女を好き放題する大義名分がある。

 

 人理の守護者など持て囃されているカルデアのマスターとやらも所詮は下劣な欲望を身に宿す男に過ぎないってわけね。

 鼻で笑いそうになるのを何とかこらえた自分を褒めたい気分だ。……何ともくだらない。

 

「どうぞ、ご自由に。多分、無駄だと思うけどさ」

 

 へらへらと笑顔の仮面を被る。Aチームにいた時と変わらない。

 いつだってあたしは心で何を思おうとも表情は人の好い笑顔を浮かべている。その顔しかできない壊れた人形のように。

 

 面白い反応も期待できないあたしの体を嬲って何も得るものはないだろうにと、一種の憐みさえ覚えていた。まぁ、きっとすぐ飽きて諦めるんだろうね。

 

 あっ、なんなら演技でもいいなら少し声を上げた方がいいかな? 調子に乗らせた方がこれから色々とやりやすそうだし。

 

 これから犯されるであろうというのに、心に何一つ荒波が立たないあたしの体にカルデアのマスターの手が触れられた──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んぅ、ぁっ、はぁっ…………っく、っぁあっ」

 

 ……じゃない。

 

「はっ、ぁっ、っやぁっ、っに、これっ」

 

 ……演技じゃない。

 

「んぁっ、はぁっ、まって、おかしっ、こ、れっ……なんでっ、ふわぁっ♡」

 

 演技じゃない。演技じゃない。演技じゃない。

 今、あたしが出している女の性をこれでもかと凝縮した浅ましい声は演技で出せるものじゃない。

 

 捕虜に座らせるにしては上等なキャスター付きの椅子の上であたしは体を悶えさせて、この全身を襲う痺れから逃れようとしていたが、体に触れているカルデアのマスターの手がそれを許さない。

 

 触れているのは乳房、下半身といった、いやらしい場所ではなく──頭。

 

 彼は背もたれの後ろからあたしの頭をマッサージしていた。

 

「催眠、魔術、薬物──不粋だと思わない?」

 

 背後でカルデアのマスターが何かを言っている。10本の指全てを駆使して頭皮を刺激される快感とそこからつま先まで走る──まるで神経そのものが(くすぐ)られているような感覚。椅子を軋ませ、身をよじるぐらいしか出来ない。

 

「人の体はそんなもの使わなくても、気持ち良くなれるように出来てるのにさ」

 

 彼の行為そのものは卑猥なものではない。頭のマッサージなんて美容室などで極々普通に行われるものだ。それなのにどうしてこんなにも気持ちが良い? こんなにも恥ずかしい声が止まらないの? 

 

「まぁ、マンネリ化を避ける為にスパイスとして使う遊び心は否定しない。エロに対する果て無き探求心は素晴らしいものだし、でもそれだけに頼りっきりってのはね……。男女の営みの間はそういう不純物がないのが一番気持ち良いってのが逝き着く所だと思うよ」

 

「おっ、あぁっ、っくっ……はっ、ひゃあぁっ♡」

 

 手は封じられているから口を抑えられない。必死で閉じてもすぐにだらしなく開いて、自分でも初めて聞く声が漏れ出してしまう。

 

白鳥礼装(スヴァンフヴィート)』は問題なく、作動している。

 なら、今のあたしの体を襲っているのは単純な肉体同士の接触による刺激だけだというの? 

 薬物も魔術も特殊な宝具も使用せず、頭皮と指が触れあっただけであたしはこんなにも悶えてしまっているというのか。

 

「お客様──。残りのクリプターの情報を何かご存知でしょうか──?」

 

「しっ、しらっなっ……いっ♡あたしっ、んふっ♡しらなひっ……あっ、はぁっ♡」

 

「ほんとぉ?」

 

「んぁっ、ぁっ♡ひっ……いわにゃいっ……あ、たし、んぁっ♡はぁんんぅっ……」

 

 クリプターの矜持として何とか抵抗の言葉だけは口にする。それでも我ながらその言葉はとてもじゃないが抵抗と言える代物ではなかった。誰が聞いても男に媚びた淫らな鳴き声。

 

 髪を労わるように梳いて、頭皮をてっぺんから滑らせるように撫でられると全身から力が抜け落ちてしまいそうになる。

 

 こんな筈じゃなかったのに。デミサーヴァントとしてワルキューレの力を得たあたしは『白鳥礼装(スヴァンフヴィート)』で外界の攻撃から身を守られる筈なのに。どうして。

 

「Bランク以下の物理攻撃を無効化にするんだっけ、その宝具。しかもデミサーヴァントである君の意思がない限り他者が脱がすことはできない。逸話的にも隠されるだけでお嫁に行かなくちゃならなくなるんだから、大事な物だってのはよくわかるよ」

 

 あたしの心を読んだように彼が耳元で囁きかける。

 その通りだ。この身に纏った白き鎧と衣。敵に囚われてなお、余裕を崩さなかった私の源でもあった。けれど今はその頼りの綱がまるで役に立っていない。何であたしは敵の男の前でこんな嬌声をあげてしまっているのか。

 

「でもそれって無効化するのはあくまで()()だけだよね? じゃあさ、敵意も悪意も害意も微塵も含まない行為に対してはどうなるのかな?」

 

「ひっ、はあぁっ、なんてぇっ……んくぅっ♡」

 

 確かに理論上はそうなる。

 では何か? 彼はクリプターであるあたしの尋問を行っているがそこには一切の嗜虐心は無いというのか。

 否定したいが、彼の手管を身をもって体験しているあたしは納得してしまった。彼の手付きからはあたしを辱めようとする意図が感じられなかったことを。純粋にあたしの体を気持ち良くしようとする()()しかないことを。

 

 だからあたしは心底恐怖した。一切の悪意がない真心が籠ったともいえる愛撫から与えられる快楽がこんなにも凄まじいものだと。

 

 敵意なら戦う。悪意なら逆らう。害意なら抗う。

 

 でも、純粋に相手のことだけを想っている()()にはどうすればいい。

 本来ならこんな独善を相手しなくても逃げればいいのだけれど、今のあたしには逃げる場所なんてない。

 

「はい、それじゃ、頭の羽根も気持ち良くなっちゃおっか」

 

「やめっ……ひぅっ! あぁっ、それだめ、ほんとにだめぇっ、ひゃ、あっあっあっ……はああぁっ♡」

 

 ワルキューレのデミサーヴァントになって頭から生えた本来人間にはない筈の感覚器官を弄り回される。

 外界の些細な変化を感じ取るほど優れた触覚を持つ頭の羽根はさながらセンサーのような役割を持ち、非常に敏感なのだ。

 

 自分でも普段は極力触らないようにしている場所を頭のマッサージだけであれだけの快楽を生み出していた彼が本格的に弄り始めてしまえばどうなるか考えるまでもない。

 

「あああぁぁぁぁっ♡あぁぁぁっ♡んあぁぁぁあっ♡や、やめっ、おねがぁっ……♡んくぁぁあっ♡」

 

 目の前の立鏡に馬鹿みたいに口を開けて、淫らな声をあげ続ける女の姿が映っている。自身の痴態をまざまざと見せつけられ、性感が高まっているような気さえした。

 

 それぞれ左右の羽根を人差し指と中指で挟まれて、根元から先まで往復するように何度も何度もしつこくとかし続けられる。その指の動きはいやらしいものを扱くような淫靡さで──腕の自由を奪われているあたしは全身に送られる快楽信号を少しでもごまかすように下半身を必死にもじつかせていた。

 

「やぁぁぁっ、あっ、あっ、あっ♡あっ♡あっ♡はぁっ♡はね、しこしこしないでぇっ♡」

 

 それでもあたしの足掻きは焼け石に水、何の意味も持たない。

 抵抗する為に身をよじらせている動きもだらしなく溢れ続ける甘い喘ぎ声のせいで、まるで男を誘惑しているようだった。

 

 鏡に映る涎を垂らして馬鹿になっている自身の姿をこれ以上見たくないあたしは目を瞑ったが、それは逆効果だった。

 

「んくぅぅ~~~~っっっ♡」

 

 自ら視覚を封じた事で羽根から来る刺激がより鋭敏になった気がした。いや事実、より一層気持ち良くなっていた。

 これなら、まだ自分の痴態に羞恥心を覚えていた方が刺激を抑えられるかもしれない。

 

 けど、そう考えて目を開けたところで──。

 

「んぁっ、はぁっ、ひゃっ♡あああぁぁっ──♡」

 

 結局、嫌でも目に入ってきてしまう痴態はどんどんあたしの感情を呼び起こしていく。目を開けても、瞑っても八方塞がりだった。

 

 ──あたしってば、こんな顔が出来たの? 

 

 笑顔なら得意だった。喜怒哀楽の喜と楽しか知らない女とも思われていたかもしれない。でもそうやって人懐っこい仮面を被り続けて、本心を見せずに色んな人達を油断させて取り入ることができた。処世術の為につけた仮面はやがて外せなくなり、心の奥底に沈めた感情の取り出し方はもう忘れてしまった。

 

 

 ヒルド・ファムルソローネという女は死ぬまで壊れた仮面を被り続けるんだと自分でも思っていた。

 

 それなのに──。

 

「羽根の先っぽの硬い所をコリコリされるのがお好きみたいだね、うりうり」

 

「ひぃぃぃぃぃぃいいぁっ♡い、くぅっ♡あぁっ……やめてぇっ♡あたま、おかしくなるからぁぁっ♡」

 

 鏡に映っている女は誰? 

 

 敵の男に羽根を触られただけで嬌声を奏でている女は誰? 

 

 壊れた仮面をいとも簡単に引き剥がされた先にあったのは雌の本性。

 息を荒げて乱れる姿は自分なのに初めて見るもの。彼の手淫によってあたしの理性も嘘も掻き消されていた。

 あぁ……随分と長い間取り出し方を忘れたありのままの自分を曝け出されて、あたしは酷く羞恥心を覚えている。

 

 初めて味わう快楽と羞恥心はさらにあたしを追い詰めた。

 

「んんっっ!?」

 

 ぴちゃんと──。水面に一滴落ちた悪寒。

 

 やばい……すごくおしっこしたい……。

 

「まっ、てぇっ……ちょっ……まってぇぁああんぅっ♡」

 

 絶えず与えられる刺激は逃げ場のない袋小路へと追い込んでいく。

 太ももを摺り合わせて、何とか尿意をやり過ごそうとしたが収まる気配は無い。むしろ頭を愛撫されている以上、加速するばかり。

 

 どうしよう、どうしよう。ここで素直にトイレに行きたいと言っても聞いてもらえるわけがない。むしろ、それを利用されてより激しい尋問をされるかもしれない。

 部屋の隅に備え付けられているトイレに自然と目が行ってしまう。今のあたしにとっては砂漠のオアシスに匹敵する存在だった。なりふり構わず、あそこに行きたいが……この男の手から逃れる術がない。

 

 あたしもおしっこしたさで仲間を売るつもりはないけど、ないけど……。いくらなんでも敵の男の前で失禁は抵抗を覚えるに決まっている──。あぁ、でももうこれは無理。

 

 

 全身に冷や汗が浮かんで、焦燥感に駆られるばかり。やばいやばいやばいやばいやばいやばい。

 

「ん?」

 

【ヒルド・ファムルソローネ漏らすまで後──秒】というカウントがあたしの脳内に浮かび上がったその時、突然彼の手が止まった。

 

 先ほどまでとは反応の毛色が変わったことを訝しんだのか。あたしの様子をじっと観察している。

 

「なるほど。これは気づかずにごめんね」

 

 目の前に回り込んだ彼は迷いなく流れるような動作であたしのパンツを脱がした。

 

「にゃああああああぁっ!? なにしてるのっ!?」

 

「さすがにまだ手枷は外せないから、自分じゃ脱げないでしょ?」

 

 脱がされた桃色の薄布はガンマンの如く彼の人差し指で数回転して、ベッドの上へと放り出された。

 大事な所を見られまいと足を閉じたが、それも意味があるのかわからない。動揺でもう尿意が限界に達しているあたしはいつ粗相を起こしてもおかしくないのだから。

 

 嫁入り前なのに男の前で漏らすという特殊プレイを経験するしかないのかと絶望に諦めかけた時、彼はキャスターを転がして、椅子ごとあたしをトイレの前まで連れて行ってくれたのだ。

 

 ……ははっ、そういうこと。さすがこれから尋問される場所に漏らされるのは汚いと思ったわけね。

 トイレで排尿するあたしの姿を余すことなく眺めて自尊心を折ろうってところ? 

 

 上等だよ。もうあたしも覚悟を決めた。おしっこの一つや二つ見られた所で──。

 

「じゃあ、10分ぐらいしたら戻るからその間に済ませちゃってね」

 

「え?」

 

 そんな決死の覚悟を嘲笑うかのように彼は本当に部屋から出て行ってしまった。

 どういう思惑なのか推測したい所だったが、決壊寸前まで来てる膀胱に余裕はなく、あたしはすぐさま用を足すことにした。

 

「ふぅわぁ──…………」

 

 ──ジョボボボとそこそこ強い水音と共に安堵の溜息を漏らす。溜めに溜めた尿を一気に吐き出す開放感と結果的に恥辱を受けずに済んだ安心感がまるでさっきまで受けていたものとは別種の快感を生み出している感じで──あぁ! 違う違う! なんでおかしな性癖を開拓しようとしているのあたしは! 

 

 洋式トイレへ座りながら、出ていったカルデアのマスターのことを考える。

 

 体に聞くと行っておきながら、女性的な所は触るわけでもなく頭のマッサージのみ。いきなりパンツは脱がされたけど、それもあたしが一人で用を足せるように配慮する為であって……。そもそもこの部屋に監視カメラの一つすらついていないのもおかしな話だ。

 もし監視カメラがあったら、一人きりだろうが、排尿にはもう少し抵抗を覚えた筈だから。

 

「ていうか、これじゃあ拭けないよね……」

 

 はぁ、と出すものを全て出しきって縛られている腕に恨みがましく視線を送る。自身の秘部が尿以外の液でも濡れている気がしたがそれには一度目を瞑ることにした。

 

 あのマッサージの快楽は確かに凄まじいものだったが、暴力手段に訴えない所といい、トイレなんて捕虜が逃げ出す典型的なパターンだというのにそれから目を離す生温いやり口といい、もしかするとカルデアのマスターは本当にそこまで非道な尋問行為で情報を聞き出すつもりはないのかもしれないとあたしは()()()()()()()

 

「ただいま、もう済んだみたいだね」

 

 椅子に戻り、足で蹴ってトイレから離れてから、すぐに戻ってきた彼を見てそんな事を考えていたあたしは多分、さっきのマッサージというのもおこがましい手淫で頭がやられていたのかもしれない……精神的に追い詰められていたのかもしれない……。これ以上のことはされないだろう……なんていつもなら絶対しない甘い考えがあたしの致命的な隙を作った。

 

「よいしょっと」

 

「…………は?」

 

「うん、ツンと少し鼻につく匂いがする」

 

「………………え?」

 

 だから、自分が今何をされているのか気付くのに数秒かかった。

 

 どうせこの後も触られるのは頭だけだろうと、根拠もない希望的観測に縋った愚かな女の脚がはしたなく開かされて、残尿で汚れた陰部を男の顔の目の前に余すところなく曝け出している画が立鏡に映し出されていた。

 

「いやああああああぁっ!?」

 

 自分の中にまだこんな女の子らしい悲鳴が残っていたことに驚いた。

 不意を突かれたあたしの思考回路は混乱と羞恥でショート寸前、排尿したばかりの局部を覗かれるという逃避したい現実は頬の熱を加速させていく。

 

「れろっ……ちょっと、塩味……」

 

「やああああああぁっ!? 変態っ! 変態っ!! うそでしょっ……! ちょっと、やめてってば……んぅっ、ねぇ、きいて、んぁあっ」

 

 生暖かく湿った未知の感触があたしを襲った時、僅かに残っていた余裕も霧散してしまった。

 

 信じられないことに彼は見るだけに留まらず、あたしの陰唇に舌を這わせ始めた。汚れている淫裂の上をべっとりと舌が上下に動く。付着している液を掃除するように何度も何度も執拗に。当然、あたしの残尿とさっきの責めで溢れ出ていた愛液はそのまま彼の喉を潤すことになる。

 

「ひっ、やぁっ……あっ、はぁっ♡や、やだっ……こんなので気持ち良くなりたくなっいぃっ……んひぁあっはぁっ♡」

 

 舌先がツンと膨れた陰核に触れるだけで、また体全体が痺れてしまう。頭をマッサージされた時と同じ感覚、あるいはそれ以上。

 最初は犯されることなんて、大したことじゃないと強がっていたのにこんなおしっこをしたばかりのアソコを舐め続けられるという変態プレイで気持ち良くなっている自分が情けなくて思わず泣きそうになってしまう。

 

「はっ、はあぁっ……♡くぅっ、あぁっ、あぁぁっくぅぅっ♡ひやああぁっ……♡」

 

 けれど溢れる涙は悔しさからではなく、快楽からくるものだった。四肢に力が入らず、脚も閉じられないあたしは上半身を子供のようにイヤイヤと左右に揺らし続けることしか出来ない。

 

 事実、『白鳥礼装(スヴァンフヴィート)』に頼れないあたしなんてカルデアのマスターからすれば子供のようなものなのかもしれない。あまりにも彼から与えられる性的快楽に対して無力だった。

 

 じゅるるぅと卑猥な音が耳朶を震わせ、膣と尿道を舌先が艶めかしく舐め回す。唇でクリトリスを甘嚙みされ、大陰唇に何度もキスをされる。丸出しの股に男の頭があり、おしっこしたての性器を口淫されている光景はまるで現実感が無い。

 

「んあぁっ……はぁっ、あっ、あぁっ……はぁっ、あぁんぅっ♡」

 

 しかもたちが悪い事にこの口淫から与えられる快楽はさっきのマッサージと同じタイプのものだった。凌辱ではなく、本当にあたしを気持ち良くさせることしか考えていない愛撫。

 鋭い絶頂はなく、甘く優しい絶頂が一定のリズムで訪れる。まるで半身を丁度良い温度のお湯に浸かっているような心地よさ。

 彼のクンニはさながら(しもべ)が主人の足に口をつけるか如き、一種の奉仕精神のようなものを感じられた。だからあたしは秘部を舐められるという行為に対して嫌悪感をやがて覚えなくなって──。

 

「あぁっ、あんっ、はぁっ♡ふぅあ……んわぁっ♡はぁっ、んぁあっ♡」

 

 顔はどんどん蕩け、この心地良過ぎる快楽に身を預けるようになってしまった。

 拒絶の言葉をあげる気力も失い、ただ喘ぎ続ける女と化したあたしはそれでも思っていた。彼の目的はあたしにクリプターの情報を吐かせることの筈。

 

 ならばどこかで、タイミングがある。「これ以上、されたくなかったら」とかあるいは逆にあたしを快楽漬けにして、もう彼の愛撫無しではいられない体にして、再び情報を吐かさせようとするタイミングが。

 

 あたしはそれに沈黙を貫き通せばいいだけだ。「1日ぐらいなら時間割けるから」というカルデアのマスターの言葉を信じるならタイムリミットはそこ。

 虜囚から得られる情報という名の期待値と貴重な時間を浪費するデメリットの天秤が傾く分岐点とも言える。1日──1日耐えれば、これ以上は尋問するメリットはないとあちらも諦めるだろうという希望があった。

 

 ならば今のあたしにできることはこの溶けてしまいそうな気持ち良さに耐え続け、彼からのアクションを待つだけ。苦痛ではなく、委ねてしまいそうになるこの快楽と戦う時間が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 けれど、あたしの予想とは裏腹に彼はそれからクリプターの情報について問い質すことを全くしなくなった。

 

「んああぁっ♡っくぁあっ♡はぁっ……ねちっこいっ……ひやぁあぁっ♡」

 

 陰部をふやけるぐらいに舐め続けたかと思ったら、再びあたしの背後に回って頭のマッサージを始める。マッサージがひと段落ついたら、また性器を舐め出す。そしてまた頭への繰り返し。

 もしかして、あたしの体に夢中になり過ぎて本題を忘れているのでは? と馬鹿な考えもよぎったが、そう思ってもおかしくないぐらい、彼はあたしの体への奉仕(尋問)を止めることは無かった。

 

 頭を指で解し、性器を口でねぶる。延々と繰り返される上半身と下半身からの二方向の悦楽は理性を酷く揺さぶってくれた。もう被れる仮面なんて欠片も残っていない。

 

 合間に合間に食事を挟み(拒否したら、口移しで無理矢理食べさせられた。しかもその時のキスもまた気持ち良過ぎてヤバいやつだったので、素直にあ──んで食べさせられることを許容したけど)、あたしは何時間も密閉された空間で自分の体を気持ち良くされ続けた。

 

「はああぁっ──♡はぁぁぁっ──♡あぁぁぁっ──♡」

 

 自分が何でここにいるのか、そもそも何でこんなことをされているのかすらも分からなくなりそうだった。情報を吐かさせようともせず、ただ性的接触しかしてこないカルデアのマスターの思惑が分からないのが怖かった。ゴールが見えない中、自分の体と精神だけが造り変えられているような錯覚さえ抱く。

 

 

 

 

 

 

 

「…………っぁ、はぁっ…………~~っぁっ♡」

 

 

 どれだけの時間が経ったのだろうか。時計がないこの部屋では時の流れも明確に分からない。

 

「24時間の長丁場、お疲れ様」

 

 小休止として、ベッドに腰かけている彼の言葉を信じるならあたしは1日も彼の天国(地獄)のような責め苦から耐えきったことになる。

 

 ビクッビクッと痙攣し、脚を閉じることも忘れてあらゆる液で濡れた股を曝け出し、舌をだらしなく出しながら息を荒げている自分の姿は胸を張って耐えきったとは言えない……。愛撫され過ぎて頭と性器が無くなってしまったような気さえした。

 

 本当に限界ギリギリだった……。後少しでも長く続いていたら心が折れてしまってもおかしくなかった。それでもあたしはギリギリの瀬戸際で踏み留まることができた。

 結局彼はあたしにクリプターの情報を吐かさせることはなく、終始ただ体をペッティングするだけ──24時間中ずっと、ずぅっと──。

 

 この尋問には終わりなんてないのでは? という疑問がよぎって、絶望に屈しそうになった時もあった。

 それほどまでに彼の性技はあたしの精神を常にギリギリの所まで追い詰めていたから。

 

 あぁ、けどあたしは耐えた。耐えきった。理性を繋ぎ止めている糸はあと一本だったけど、勝利したのだ。恐らくカルデアのマスターが情報を聞いてこなくなったのはあたしの様子を見て、無駄だからと悟ったのかもしれない。

 

 

 

 これでようやく諦めて──。

 

 

 

 

「じゃあ、第二ラウンド行こうか」

 

 

 

「………………………………へ?」

 

 耳を疑う言葉に間抜けな声が口から出ていた。

 

「え、1日って。これで終わりじゃ……」

 

 そもそも敵の言葉を素直に信じているあたり、あたしは相当弱っていたのだろう。

 まさしくフルマラソンを走り終えてゴールテープを切ったと思ったら、またそこから同じ距離のコースが用意されていた気分。

 

 もしかして、彼はあたしが自分から情報を吐くことを待っているんじゃ……。

 

「あぁ、一応言っておくけど、情報とかは吐かなくてもいいよ、最初のは冗談。そもそも君が本当だと思っている情報が正しいとの確証もこっちは取れないからさ。それに仲間を裏切るなんて辛い真似させられないし」

 

「じゃあ、君は何の為に……」

 

「え? 純粋に君の体を気持ち良くしたかっただけど? 最初会ったときから凄く疲れた顔してたし」

 

 何を当たり前のことを──と首を傾げる彼に解放される為の希望(自白)さえもどうでもいいと切って捨てられたあたしは頭が真っ白になっていた。カルデアのマスターの思考回路が理解できない。彼にとって敵であるあたしを殺すことよりも、情報を吐かせることよりも、あたしの体を気持ち良くさせることの方が優先順位が高かったらしい。

 

「それと1日で終わりっていうのはあくまでこの部屋の外の時間ね。多分魔術結界が張られているのは何となく気付いてると思うけど……シンプルに言っちゃうとこの部屋と外の時間の流れは異なっているんだ」

 

 あたしはようやくここで察した。

 

 自分がギリギリの所で耐えていたなんて思い上がりも甚だしい。彼はあたしが壊れてしまわないようにギリギリの所で加減していただけだった。

 頭への愛撫も秘部への口淫も徹頭徹尾あたしを気持ち良くさせようとする善意のみ。あたしが快楽で壊れてしまう一歩手前で手を緩めていたのだろう。

 

「現実の1時間はここでは約1日。だから、あと1ヶ月近くは退屈させないよ」

 

「は、はは…………」

 

 プツンと糸が切れた気がした。

 

 もう無理。絶対に耐えられない。

 これならいっそ、滅茶苦茶に凌辱して壊してくれた方がマシだった。なまじ理性がある状態で快楽漬けになるのをこれからまだ1ヶ月も? 

 無理無理無理、1日程度で息も絶え絶えだったあの緩やかな快楽をこれからまだ受け続ける……? やだ、やだ、やだ、やだ、やだ、やだよ、お願いそれならいっそ──。

 

 けれどあたしにはゴールがない。何をしようが彼は意に介さない。あっちにとってあたしが吐く情報とかはどうでもいいと。この尋問を行っている時点で彼の目的は達成されていると……ならばもうあたしが出来ることは何もない──。

 

「はは、ははは…………」

 

 いや出来ることが何もないことは無かった。彼があたしを壊してくれないなら。

 

 自分から壊れてしまえばいいだけじゃない。

 

 もう()になりたい。解放されたい──。そんなあたしの望みを汲んでくれたのか、『白鳥礼装(スヴァンフヴィート)』が光の粒子となって消え去っていた。

 

 白き鎧と外套を脱ぎ捨てたあたしはもう纏う物が一切ない生まれたままの姿を彼に曝け出していた。

 今あたしが浮かべている笑顔は造られた人形の笑顔ではなく、完璧に壊された本物の笑顔。

 

「ねぇ──」

 

 椅子から立ち上がり、ふらふらと彼がいるベッドまで歩を進める。

 全身に汗を浮かばせて生々しい匂いがする素肌を彼に擦り付ける。乳房や敏感な部分が擦れるのに抵抗感も無くなっている。

 

 あぁ、もういい。どうでもいい。クリプターの矜持とか、デミサーヴァントとしての自負とか、彼に抱いている敵愾心とか、全部がどうでもいい。

 

 仮面を被り続けるのはもう疲れた。全部、全部投げ出してやる。

 

 ふと頭の片隅にイソップ寓話の「北風と太陽」が思い浮かんだ。この場合、彼はどっちなんだろうね。

 

 彼の上半身にしなだれかかり甘く囁く。それは演技ではなく、あたし自身が望んだ本性の声。

 

 

 

「もっと無茶苦茶にして」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ベッドに放り出されたあたしは鉄枷を外され、自由の身になっても逃げ出す気が微塵も湧いてこなかった。

 

 扉なんて目に入らない。これからあたしを滅茶苦茶にしてくれる男の体と雄々しくそそり立つ怒張に釘付けだった。

 今まで散々あたしを狂わせてくれた指や舌よりも太く熱いモノ。女を犯す槍。

 

 仰向けに寝転がり、脚をはしたなく開いて、尿や愛液や唾液まみれのグチョグチョの性器を曝け出す。

 

「は、やく……」

 

 前戯をこれ以上ないぐらいに行われた秘部は男のモノを求めて涎を垂らしている。

 原初から変わることのない生物の愛情表現を今か今かとあたしは待ちわびていた。

 あぁ、この挿入を受け入れられた一体、どれだけ気持ち良くなってしまうのか、イカれてしまうのか、あたしは楽しみで仕方がなかった。

 

 お互いに全裸、無言のままゆっくりと性器が交わる。

 

「んっくぁああぁっ──ッッ♡」

 

 あたしの膣内が意思を持ったかのようにどんどん男根を飲み込んでいく。

 初めては痛い? 嘘もいい所だ。痛みとはかけ放れた感覚しかない。あぁ、こんなにも気持ち良いことをあたしは知らなかったのか。彼のペニスが進む度に脳内の快楽物質が弾けて、腰が自然と浮いてしまう。

 

「お゛あ゛ぁぁあああぁっ♡」

 

 気持ち良い、気持ち良い、気持ち良い、気持ち良い、気持ち良い、気持ち良い、壊れちゃう、壊れちゃう壊れちゃう、壊れちゃう、壊れちゃう。

 あたしが今まで受けていた快楽なんてまるでお遊戯と言えるレベルの衝撃が流れ込んでくる。

 

「あ゛ぁ゛っ♡あ゛ぁ゛こ、れぇっす、ごぉぇぁぁあ゛あ゛ぁっ♡」

 

 二種類の水音が奏でられる。

 

 亀頭があたしのナカの行き止まりに到着した瞬間に腰を大きく浮かせてブリッジした状態で盛大に潮とおしっこを漏らしてしまった。

 

「あ──あ、随分とお股が緩くなっちゃったね」

 

「らってぇ……こんなのぉっ、ぉ゛っっ、お゛っ♡むりぃぃっ……っ♡」

 

 股座から噴き出し続ける淫液は彼の下腹部も汚してしまう。なんて無様な姿か。でも今のあたしには屈辱も羞恥心も存在しない。頭をからっぽにして快楽に浸り続けることの何と心地良いことか。

 

「いいよ。好きなだけ漏らして、好きなだけイッちゃいな」

 

「いああぁっ♡んあ゛あ゛ぁ゛っ……腰、パンパンっ、されるとぉぁっ♡頭がああぁあっ♡」

 

 あたしの両太腿を持った彼が本格的にストロークを始める。

 小気味よく肉同士がぶつかり合う音。膣襞全てが欲望のまま快楽を貪る為に彼のペニスをぎゅうぎゅうと締め付け続けた。

 

 もう抵抗する必要はない。あたしは誰に遠慮することもなく下品な嬌声を叫び続ける。

 ぬちゅぬちゅと彼に突き上げられる度に襲いかかる快楽の奔流があまりにも凄まじいので頭を掻きむしっていると違和感を感じた。

 

 頭の羽根が無くなっている──。

 

 それだけじゃない、もう我が身にはワルキューレという英霊の力が完全に消え去っていることに気付いた。

 自ら『白鳥礼装(スヴァンフヴィート)』を放棄したせいなのか、あたしはワルキューレのデミサーヴァントから、ただの魔術師に堕ちたということ。

 

「ひぃあ゛あ゛ぁっ♡あ゛あ゛ぁぁっっ♡きもちぃぃっ……きもちぃいいいよぉあ゛ぁ゛っ♡」

 

 いやもうそれどころの話じゃない、デミサーヴァントも、クリプターも、魔術師も、ありとあらゆる立場を捨て去った先に残ったのは淫欲に溺れるただのヒルドという一人の女。

 

 でも今はそれが酷く気持ち良い。仮面を被って偽る必要も、矜持や理性を頑なに持ち続ける必要もない、雌の本能としてこの雄に屈服して自ら壊れることを望んだ先に得たものは真の意味であたしを解放してくれるものだった。

 

「いいよ、だしてっ♡だしてっ♡たくさんだして♡」

 

 四肢で彼に抱き着き、白濁の欲望を求める。もう二度と戻れないぐらいにあたしを君の肉奴隷だということを刻み込んで欲しい。

 

 子宮が膨れて破裂するぐらいに重厚な精液を注ぎ込んで欲しい。

 

「こんなに気持ち良いことがあるならあ゛ぁぁっっ♡……我慢しないでもっと早く負けてれば良かったんだぁぁっ♡」

 

 えぐいカリ高が膣襞を高速でえぐり続けて、大きな絶頂の予兆を感じた。ただでさえ大きいペニスが膨らみ、あたしに期待させてくれる。彼の下腹部とクリトリスが擦れるだけで簡単にイッてしまう。

 

「もっと♡もっと♡もっとぉっ♡こわしてぇぇっ……♡ぐちゃぐちゃになるぐらいまでぇああぁっ──」

 

 射精の瞬間、あたしの華奢な体を彼がぎゅっと抱き締めてくれた。一滴も無駄打ちはしないという意思表示、あらゆる精子が卵子を犯そうと放出される。

 

「んっ──」

 

 あたしは堕ちた証として唇を自ら重ねた。それと同時に体の中が真っ白に染め上げられた気がした。

 

「ん゛ん゛ん゛ん゛むう゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛ぅぅッッッッ────♡」

 

 キスをしている状態でさえ、隠し切れない絶頂の嬌声。彼の喉から自分の喘ぎさえも奪われている気がしてさらに興奮が増す。

 

「んぱぁっ──はぁっ、んへぇあ゛ぁっ──♡あぁぁっ……♡」

 

 口からは粘っこい銀のアーチ、性器からは白濁ドロドロのアーチ、一度竿を抜かれたあたしは今度はうつ伏せにさせられていた。

 

 性器からは滾った欲望の残滓が入り切らず溢れ出しているのは見なくても分かる、そして彼が一度きりの射精で収まる筈がないのも確認しなくても分かる。

 

 

「んお゛お゛お゛ぁぁぁっ──♡」

 

 再び挿入はされたが先ほどとは違う感覚。圧迫感と解放感が交互にやってくる。精液と膣液がいい滑りになって、腸道への抽送が始まる。組み伏せられた状態で逞しいモノにパンパンとアナルを突かれまくっている感覚に性感が高まっていく。

 

「おしりぃぃで、おっ♡おっ♡んほお゛ぁぁっ……♡まだぁ、犯してくれるんだあぁぁっ♡」

 

「そんな物欲しそうな顔されたら、答えたくなっちゃうでしょ」

 

 なんて素敵なんだろう。アソコだけじゃ、飽き足らずこれから君はあたしの体全部を満遍なく汚してくれるんだね。

 

 獣のような声をあげて交尾をする男女。デミサーヴァントでもクリプターでも魔術師でもない、あらゆる肩書きを捨て去ったありのままのあたしを、取り繕う仮面もない壊れた人形を、ここまで強く求めてくれている人がいる現実があたしに安心さえ抱かせてくれる。だって自分はもう何も考えなくていいのだから。

 

 

「はぁぁっ──……♡あぁっ──……♡んぁっぁっ──……♡」

 

 

 その後何日も何日もかけて、アナルに、口内に、顔に、胸に、臍に、背中に、髪に、再び子宮に、体の内も外もありとあらゆる所を彼のザーメンで染め上げられたあたしは白濁の海に溺れていた。正真正銘、彼の肉奴隷に堕ちて、うっとりしたように至福の溜息を吐き続けている──。

 

 

 あたしの名はヒルド。他に語ることはないただの女。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──now loading…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 淫蕩の宴からマイルームの隠し部屋『マテリアルボックス』に帰ってきた彼女達。

 

 三騎とも絶対の自信を持って、プレイ内容には相違は無い、全員の選択は一致している筈だと同期を開始した……してしまった。

 

 スルーズの王道イチャラブプレイ。

 オルトリンデの奉仕介護プレイ。

 ヒルドの虜囚肉奴隷プレイ。

 

 長期間に渡る濃厚な多種多様のプレイを実体験の如く、インプットしてしまった

 

 自身のプレイだけでもいっぱいいっぱいだった彼女達が同サイズの容量を持つエロメモリーをさらに二つも受け入れることが出来るわけもなく。

 

『ッッッ~~~~~~~~~♡』

 

「あちゃ~~」とこの展開が予想できたBBとマスターの前で仰け反りながら、全身を痙攣させ、まさしくアヘ顔としか表現できない表情を晒し、股座から潮を噴き出し、言葉にならない絶叫をあげてしまった三騎のクソ雑魚ワルキューレ。

 

 

 しかし、不幸は連鎖する。統率個体である三騎だけに同期を留めておけばいいものを。彼女達はあまりのショックについこの記憶を全てのワルキューレ達にも同期してしまった。

 

 

 

 

 

 

 1:Maspro58

 今日も北欧は平和です。異常ナシナシ。 

 

 2:Maspro55

 住民の方々もバニヤンさんから祝福を受けて、ピッケル片手にインフラ整備しまくまってます。

 

 3:Maspro18

 ちょっと木材足りてないよ~~。もっと回して~~。

 

 4:Maspro120

 平和過ぎてお暇。ラブロマンスが欲しい。愛のままにわがままに僕は君だけを傷つけない。

 

 5:Maspro111

 私達が真面目に働いているのに統率個体共は男とイチャイチャですか。

 

 6:Maspro45

 見事に同期も切られてるし、許せねぇぞオイ。

 

 7:Maspro98

 労組に駆け込むしかねぇなぁ。

 

 8:Maspro56

 北欧(ウチ)にはないよ、そんなもの。

 

 9:Maspro42

 どブラックじゃないですか、やだー。

 

 10:Maspro7

 ですが、これも我々の役目ならばその務めをしっかりと果たしましょう。

 

 11:Maspro99

 あん? 何いい子ちゃんぶってるんだコイツは。

 

 12:Maspro13

 そういうのは求めていない。

 

 13:Maspro69

 ちぃ、知ってる。量産個体7号はこの間デアー様とお茶(抜け駆け)をしたので浮かれていると。

 

 14:Maspro21

 は? 

 

 15:Maspro13

 お? 

 

 16:Maspro69

 どうやら死にてぇみたいだな。

 

 17:Maspro15

 さすがに槍も生えませんわ。

 

 18:Maspro22

 おかしいねぇ~~。私達と記憶が共有されてないぞ~~? 

 

 19:Maspro90

 同期はよ、同期はよ。

 

 20:Maspro7

 い、嫌です……。 

 

 21:Maspro56

 ふざけんなっ! 

 

 22:Maspro17

 150騎もいるんだから、1騎ぐらい消えてもバレへんか……。

 

 23:Maspro69

 後、なんか首飾りとかもプレゼントされてたゾ。

 

 24:Maspro120

 ギルティ。

 

 25:Maspro100

 吊るせ! 吊るせ! 我々量産個体から裏切り者が出たぞ!! 

 

 26:Maspro

 絶対に逃がすな!! 

 

 

 

 

突如、ワルキューレ達の脳内に溢れ出した

 

 

 

 

 27:Maspro16

 ん? 

 

 28:Maspro102

 何ですかこれは? 

 

 

 

 

()()()()()快楽

 

 

 

 

 29:Maspro7

 え、ちょっと待って何これぇぇぇえええっ、しゅごぉいのぉぉっ♡

 

 30:Maspro44

 一体、何がぁっはああああああぁんんうぅっっ♡

 

 31:Maspro100

 んおあああっ♡

 

 32:Maspro147

 あぁぁぁっ♡

 

 33:Maspro19

 ひぃぃっあああぁっ、イク、イクっ♡イクのぉぉ♡

 

 34:Maspro69

 あへぇぇぇっ♡あぁぁっ♡やぁぁっ♡孕む♡戦乙女なのに孕んじゃぁうぅぅっ♡

 

 35:Maspro2

 おっ♡おっ♡おっ♡ぁぁぁああっ♡

 

 36:Maspro111

 無理無理無理、そんなぶっといのはいらなひぃぃぃっ♡

 

 37:Maspro99

 んお゛あああああぁぁああぁっ♡

 

 

 

 問題が発生したため、ワルキューレネットワークを再起動する必要があります。

 エラー情報を収集しています。自動的に再起動します。(0%完了)

 詳細については次のエラーを後からオンラインで検索してくださいdosukebe.walkure1919sex

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日、北欧中の至る所でそれはそれは綺麗な噴水が見れたそうな。

 

 

 

 




「皆(性的に)死んでしまった……。俺のアソコはいつもそうだ、触れてしまうもの全て壊してしまうッ」

「彼女達の自業自得感も否めないですけどねぇ。ていうかセンパイ、ゲルダさんの時みたく、ワルキューレの方々には加減しなかったんですね」

「12歳の処女に無茶なセックスできるワケないだろうがぁ!!」

「急に非常識なことを常識的に語らないでくださいよ……非常識ですよ」







 Tytle【北風でもあり太陽】

 レビュアー:ヒルド

『多分これが一番まともなプレイだと思います』
今は丸く収まっているからスルーズもオルトリンデも忘れてるかもしれないけど、あたし達とマスターは元々敵同士だったわけだよ? それをパートナーとして人理修復とか、幼馴染だとか一体どの顔で言っちゃってるの? もう少し恥とか知った方がいいんじゃない?
その点、あたしは一番違和感がないように配慮出来たんじゃないかな。
やっぱり男の子は澄まし顔の女の子を屈服して無茶苦茶に犯したい欲望は持ってると思うんだよねぇ。
うん、異聞帯のサーヴァントというよりはクリプターの方が設定として練りやすかったから、オフェリアのファミリーネーム借りたけど、彼女からデミサーヴァントの話とかも聞いてたし、それを活かしてワルキューレ要素も加えてたよ!
え? オフェリア本人からの許可? 取ってないよ? 何か問題あったかなぁ。
いやぁでもあたしも結構頑張って耐えた方だと思うよ、他の二人なら絶対頭の羽根弄られた段階でもう「神性剝がれ落ちましゅぅぅううっ♡」ってアヘ顔潮吹きENDだったと思うから。
あっそれで実は続きのプレイ内容も考えてて、実は同じクリプターで姉妹でもあったスルーズとオルトリンデも結局、マスターに負けちゃってカルデアに連れてこられるんだけど、そこには死んだと思っていた姉妹が変わり果てた姿で敵である男に寄り添っていて、それでマスターが言うの「姉妹は一緒の方がいいよね」ってさ。頷いたあたしは二人に――。



スルーズ(私が一番まともでしょう)
オルトリンデ(私が一番まともだと思います)
ヒルド(あたしが一番まともに決まってるよね!)






ブック・オブ・ジ・セックス。挟んでおいたよ。
次回、反省会&ワルキューレ4P回。












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君のことが大大大大大好きな153人の戦乙女+α前編(ワルキューレ)

お久しぶりです。後期OPとか、五周年とか、水着とか、人権過労死確定アルトリアとか、爆破テロから水着で復活したパイセンとかのおかげで体調回復しました。

更新滞っている間も、感想・評価・誤字報告に額を地につけて感謝している毎日です。あったけぇなって。ほんとゴメンね。



カルデアコレクションにて、キャスター・アルトリア更新。



 

「ではでは! 彼女達のフォローはセンパイに任せてBBちゃんはおいとましま──す♡シミュレーション世界で散々ヤリ散らかしたんですから、現実(こっち)でもさっさとキョダイマックスでブスりと一発決めちゃって下さいね♪ 芋づる式でモブキューレも150羽ほどGETできそうですし、彼女達の力は()()必要になりますから☆さすがはセンパイのマスターボールならぬゴールデンボール。♀サバモンの捕獲率は100%ですね!」

 

 ワルキューレ三姉妹が華麗な自爆を決めてしまったその後、BBは後始末は俺に任せて立ち去ろうとしていた。彼女達が同期をキメてしまう前に一度止めに入ったことといい、BBにしては珍しく()()()に対しては今回は善意しかなかったのだろう。

 

「私はこれから悪巧みの準備がありますので♡」

 

 悪巧みって。

 普通、マスターの前で宣言する? 

 

「えぇ──♡だってセンパイってば結局いつも私が何か仕出かした後にしか動かないじゃないですか──。私が悪巧みするって分かっててもそれを事前で防ぐとかはしなくて、一度は見逃してくれますものね? そういう後輩に甘い所は高得点ですよセ・ン・パ・イ♡これも私がセンパイの周りの女性の中で一番可愛くてデビルシュガーにビューティーだから……センパイがデレデレで私を依怙贔屓してしまうのも仕方ないこ、と……あ──ちょっとやめて! 止めてくださいっ! 左右のコートの袖を固結びで縛るとか嫌がらせが地味過ぎません!?」

 

 彼女の上着をエセ中国人みたいな格好にして部屋から叩き出す。ドアの向こうから『酷い! 新しい女が出来たら私はお払い箱なのね! 全体ランサーなんてカルデアに腐る程いるじゃない! ムーンキャンサーなんてオンリーワンなクラスはBBちゃんしかいないのに!』だの妄言が聞こえる。

 

 ま、本当はこういう気安い馬鹿みたいなやり取りはお互い楽しんでたりするんだけど……。

 親友とは違う、悪友的なポジション。さすがにメイヴちゃんの枠に入ろうとしたのは調子に乗り過ぎなのでお灸をすえたが、彼女と一緒にいて退屈しないのは俺の本音。

 回りくどさの化身、生粋のトラブルメーカーではあるが、彼女が本気で俺を害そうとしたことはないのだから。

 

 とりあえず、そんな愛すべきお馬鹿な後輩が気を利かせてくれたワケなので、戦乙女達の介抱から始めるとしましょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マイルームのベッドで寝かせていた戦乙女達が目を覚ますのは予想よりも早かった。

 

 

「スルーズ、まさか彼女から攻略するのですか? 相手は名家の当主。主人公とは身分も立場も違い過ぎるでしょう。いきなり挑むのは無謀では?」

 

「臆病が過ぎますよオルトリンデ。恋愛も戦と同じ、戦う前から敵に臆する馬鹿がどこにいますか」

 

「金髪で感情移入がしやすいという理由ではないのですね?」

 

「…………」

 

「こっちを見てくださいスルーズ」

 

 

 ピコピコと羽根を動かして、コントローラー片手にモニターと睨めっこしているスルーズとオルトリンデが俺の目の前にいる。

 目覚めてからの彼女達はなお人間の感情、愛や恋を学習する事に対して貪欲だった。『HBシミュレーション』だけで満足することはなく、俺に教えを乞い始めた。

 今度は性交という実技ではなく、座学として男女の恋愛感情における機微を学びたいと。

 

 それならば教材ということで、恋愛シミュレーションゲーム(R-18)をやらせることにした。

 

 いつの日かダ・ヴィンチちゃんと深夜テンションで作ってしまったゲーム……。

 タイトルは『抜きゲーみたいな設定で世界を救わなきゃいけない貧乳(わたし)はどうすりゃいいですか?』

 

 タイトルと設定は色々と狂った代物だが、我ながらシナリオが高クオリティで仕上がり、EDではダ・ヴィンチちゃんと一緒に涙ぐんでしまったのは良い思い出。

 刑部姫、巴さんを筆頭にカルデアのゲーマー組からは神バカゲーとの評価を頂いている。

 

 今はスルーズが丁度、攻略しようと躍起になっているヒロインと接触しているシーンだった。

 

 →【彼女の容姿を褒めたたえる】

【「ウェーイ!! テンション低いぞぉ♪」と彼女の背中を慣れなれなしく叩く】

【耳元で「今日の夜、俺の部屋でベイブレードでもしないか?」と囁く(ねっとりボイス)】

 

「ふっ、さすがに舐めすぎでしょう。これは下二つは論外、一番上しかあり得ません」

 

【…………そうか、ありがとう(スンッ】

 

 ──一見、言葉では感謝を述べているようにも思えたが、彼女が心から笑っているようには見えず、顔色からは感情の変化が何も伺えなかった。今まで耳にタコができる程に聞き飽きた退屈な賛辞だったのだろう。

 

 デデローン⤵と好感度が下がった音が聞こえる。

 

「何故っ!?」

 

 自信満々だったスルーズが憤慨している。

 

「正解は一番下だね」

 

「どこに好感度が上がる要素が!?」

 

 絶賛困惑中のスルーズに「まぁ、そういうキャラだから」としか答えようがない。ちゃんと正解を選んだら「ゴーシュッート!」ってキラキラした瞳で遊ぶヒロインのスチルが回収できたのになぁ。

 一体、製作中の俺とダ・ヴィンチちゃんは何を思っていたのやら。それでも結構魅力的なキャラではあったりするんだよね、この外見はキリっ! 中身はフワフワ天然の金髪ヒロイン。

 

 ちなみに真ん中の選択肢でも好感度が上がるが、背中を叩いてたシーンを見ていた金髪ヒロインのシンパでもある眼帯ヒロインにその日の夜に襲われ(物理)、バトルパートに突入します。負けたらBADENDだし、勝ったら勝ったで今度は高確率でそこから眼帯ヒロインのルートに入ってしまうからオススメはしません。

 

「人の感情は複雑怪奇……我々はまだまだ勉強が足りないということなのでしょうか」

 

「だからこそ学習のし甲斐があります。さぁ、諦めずコンティニューしましょうスルーズ」

 

 めげずにセーブポイントから再開する彼女達をベッドに腰かけたまま微笑ましく見守っているとスルーズとオルトリンデの背後、つまりは俺の隣にいるヒルドが二人に聞こえない声量で声をかけてきた。

 

「ねぇ、この後二人で抜け出しちゃおっか♪」

 

 それはさながら大学のコンパで好みの男性を標的とした肉食系女子のような誘い文句ではあったが。

 

「だめです」

 

「ちぇ──、なんてね冗談だよ冗談。っていうかあんなゲームで恋愛の参考になるのかなぁ?」

 

「参考になるとも言えるし、参考にならないとも言える」

 

「え──と、どっち?」

 

 まだまだ心眼が足りぬか……。

 世界は広いから、ゲームのヒロインそっくりな女の子といつかばったり出会うこともあるかもしれないし、その時は助けになるんじゃないの? 

 まぁ、キャラクターの設定に関してはダ・ヴィンチちゃん担当なので、彼女が実在する誰かをモデルにしたかどうかなんて俺のあずかり知らぬ所ではある。

 

 そもそも『HBチャンネル』で濃厚な実技を行った後にエロゲで座学しましょうなんて俺も本気で思ってないし、単純に俺とダ・ヴィンチちゃんの子供(神バカゲー)を布教したかっただけなんです。

 やっぱり可愛い女の子がゲームで一喜一憂している様は最高やなって。スパチャしたくなりますよ。

 

「別のヒロインも行ってみませんか。ほら、あの本から目を離さない大人しそうな少女とか」

 

「文学系ヒロイン……地味そうですね……。ですが本命(金髪ヒロイン)に挑むにはまだ戦力が足りないのも事実。比較的、堕としやすそうな彼女から攻略して経験を積み………………………………あのオルトリンデ、選択肢を選んだら急に眼鏡ヒロインが爆発したのですが

 

「はい。画面には見事なBADENDの文字が。もしかしなくても主人公は死んでいますね」

 

「ど・う・い・う・こ・と・な・の・で・す・か・あ!」と髪を振り乱しているというスルーズ。

 残念、その文学系ヒロインは全ヒロインの中で攻略最難関。一回でも選択肢を間違うと爆発してゲームオーバーになるゲームの中で最も主人公を殺す回数が多いキリングガールなのだ。

 

 BADEND後に見れるヒントコーナーが現れ、どこかジャガーマンとイリヤに似ている二人が謎空間の道場で非常に為になる助言をプレイヤーに授けてくれる。

 

『いきなり知らない人から話しかけられて、つい怖くなって爆発しちゃうの……。そんな小動物みたいに守ってあげたいか弱い女の子、男子諸君ならメロメロ間違いナシ!』

 

『押忍! 師匠! 小動物どころか、ライオンより危険だと思います! 誰か爆発物処理班を呼んで!』

 

『YOUに足りなかったのは【かもしれない攻略】! 「話しかけたヒロインが突然爆発するかもしれない……」と注意していればこんな事にならなかった……かもしれない! 次回からはその辺、肝に銘じとけ!』

 

 

「そんなヒロインいてたまりますか!!」

 

「ゲームよりもシミュレーション世界でした時みたく、たくさんエッチした方が勉強になるってあたしは思うんだけどなぁ」

 

 

 さて黒と金の戦乙女は怒りの連続コンティニューするほどゲームに夢中になってくれているが──。

 

 俺の隣にいる桃色の戦乙女は少々雰囲気が異なる。怪しく口角を上げたヒルドは俺の二の腕に寄りかかり、耳を小さく甘嚙みし始める。絹のように滑らかな手は太腿の辺り、股間ギリギリの所を挑発するようにスリスリと擦ってくる。

 ゲームに夢中になっているスルーズとオルトリンデが気付く事はない。時折、二人がこちらを振り返るが、ヒルドは素早い変わり身で俺から距離を取り、何事もなかったかのように振る舞っている。だが再び彼女達がゲーム画面に注視すれば、過度なスキンシップが再開される。

 このスケベワルキューレめ。

 

「頑張れ~~♪」

 

 声色は天真爛漫。邪気なく姉妹達を応援している可愛らしい女の子のように思えるが、うん、距離が滅茶苦茶近い。猫のように頬を擦り合わせてくるし、もう手なんて太腿どころか股間を完全に愛撫し始めている。「あは♡おっきしてるね♡」と耳元で甘い吐息交じりの囁きが鼓膜を震わせていた。

 

 やけにアグレッシブなヒルドの行為に対して頭にはあるワードが浮かんできた。

 

()()()()

 

 そう、素人童貞ならぬ素人処女。

 風俗などで童貞あるいは処女を捨てた人のことを指すが、今回の場合だど現実世界ではなく、シミュレーション世界などの仮想空間で初めてを経験してしまった女性に当てはまる(と決めた)。

 確かに挿入された経験はあるのに肉体は未だ処女。

 素人処女の傾向としては例え肉体に処女膜があろうとも現実世界に帰ってきた時、まるで百戦錬磨、経験豊富なお姉さんのように振舞い出す。

 何せ、現実では出来ないようなシチュでセックスを何十日単位で行ってきたのだ。そりゃあ自信もつくだろう、性に対してアグレッシブにもなるだろう。

 

 まぁ、ヒルドの場合元々他の姉妹に遠慮するような性格の筈だったが、俺とのファーストコンタクト時に思いっ切り『白式官能』をキめられてしまったせいか、優等生の仮面も粉々に砕けてしまっている。

 

「ねぇ、しちゃお? あたしもう、我慢出来ないよ」

 

 俺の太腿に跨り、艶めかしく腰を動かし始めたヒルドはきっと頭の中で妖艶な自分をイメージしているのだろう。エロいのは否定しないが、俺としてはどちらかと言えば微笑ましいという印象の方が強い。

 

 そしてここで重要なポイント。こちらに迫ってきた素人処女に対して拒絶は絶対にNG。

 

 ましてやヒルドは今までの振舞いからは意外とも思えるかもしれないが、こうした人の愛情表現においては大分繊細な心を持っている。

 今甘えてくれているのも、俺なら受け入れてくれるという信頼があるから出来る行為。そんな彼女に対して──……。

 

 ──あ、ごめん……。仕事で抱いたんだけど、まさかプライベートに持ち込むまで本気にするとは思わなかった。

 

 みたいな台詞を吐こうものなら他の姉妹を骸にして、最後は泣き笑いながら自害する彼女、命名するなら『皆壊れてしまえばいいんだ』BADEND直行間違いナシ。素人処女の心の耐久はE-、言葉のナイフは簡単に刺さってしまうのだ。

 

「…………だ、めかな?」

 

 故に未だアクションを起こさない俺に対してようやく不安になってきてしまったヒルドに取ってあげる行為は一つだけ。

 それに彼女自身も俺と交わりたいという欲望()()()()()()()()()ことは分かっていたので、その誘惑に乗ってあげる事にする。

 

 急接近する二人の距離、長い睫毛と人形のような整った彼女の顔が視界一杯に拡がる。

 そして、俺は迷うことなく、顎を持ち上て、唇を奪った。

 

「んっ、ちゅっ、んはぁっ……うれしっ♡あむっ……」

 

 一瞬の驚きを見せた後、顔は喜色一色に染まり、瞳を蕩けさせ、互いに舌を絡め合う。香水の匂いなどなく、彼女本来の体臭が脳をクラつかせる。

 ヒルドは寂しがりやの子どもだ。甘えてきた時はお姫様のようにあやしてあげるのが正解。

 

「はぅふぅっ、ちゅっ、んちゅっ♡ちゅっ……♡すき、すき、だいすきだよっ♡」

 

 劣情を抑えきれなくなったヒルドはゲームのプレイ音が静かになったのも気にせず、俺をベッドへと押し倒し、キスの雨を降らしてくる。何度も何度も唇が重なり、お互いの舌を啄み合う。心の底から嬉しそうにうっとりとした表情の彼女はこのまま、行き着く所まで行くつもりだろう。

 

 だが、後ろの二人がそれを許してくれるかどうかは不明だ。

 

「何をしているのですかヒルド(淫乱娘)

「さすがにそれはないですヒルド(発情娘)

 

 背後からの殺気に気付いたのかヒルドは一度、後ろを振り返り。

 

「ん? ん──……………………んぅっ♡ちゅっ、んちゅっ♡れろぉぁっ♡」

 

「「いや再開するな!!」」

 

 そのままディープキスを続行しようとしたが、頭の羽根を掴まれて引き剥がされてしまう淫乱ピンク。

 

「えぇ──、もう邪魔しないでくれるかなぁ? 恋愛偏差値がお子様レベルの二人はさ、あたし達のことを気にせず、座学(笑)に勤しんでていいよ。あたしとマスターは後ろで実技してるから」

 

「オルトリンデ、統率個体がこれから一騎減ることになりますがよろしいですね?」

 

「えぇ、そう言えば元々我々は二人姉妹だった気がします」

 

「へぇ、パートナーサーヴァントだとか、要介護幼馴染だとか、恥知らずなプレイに走った女にできるかな?」

 

「「貴女(あなた)に言われたくありません!」」

 

「そもそも今まで敵対していたのに相棒サーヴァントとかちょっと面の皮が厚すぎない?」「貴女こそ、オフェリアに色々と謝るべきプレイ内容だとお互いの思うのですが!」「もういっそ全員半身不随になってマスターに介護されれば、ハッピーエンド」などなど三者三様の主義主張がぶつかり合い槍を構えて臨戦態勢。

 じゃれ合いならともかくこんな狭い所でガチ戦闘されるのはちょっと勘弁して欲しい。

 

 いざ彼女達の争いを止めると決心した俺の行動は早かった。服を脱ぎ、生まれたままの姿をさらけ出して戦乙女の光槍よりも強靭な肉槍を披露した。

 

「はい、注目~」

 

『? ……な、何故全裸!?』

 

 股にグングニルをそそり立てて、仁王立ちしている俺の姿を見た三人は戦意が削がれたようだった。赤面し、手も震え、光槍を落としてしまうレベルで。

『白式官能』で止めることもできたけど、また気絶されるのもあれなのでこっちの方がいい。喧嘩を止める方法は横っ面から思わぬ刺激を浴びせるのが一番。

 服を脱ぐだけで争いを止める事が出来るとか、もしや自分は救世主あるいは聖人の素質があるかもしれない。

 ガンジーやキング牧師に次ぐ非暴力主義者となった俺はキメ顔である提案をする。全裸で。

 

「セクシュアリティに関する対立はやっぱりセクシュアリティで解決すべきだと思わない?」

 

「つまり我々の中で」

「一番マスターを満足させた者が」

「正しいってことだね!」

 

 意思疎通が取れてて結構。

 要するに言いたいことがあるなら戦場じゃなくてベッドで平和的に語りましょうや。

 

 …………自分から提案しておいてあれだけど、理解がちょっと早過ぎない? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とまぁセックスで優劣を競うみたいな事を言ってはみたが、実はそんな気はサラサラなく、そもそも俺が女の子をベッドの上で格付けなんて事は死んでもする事はない。皆違って、皆いい、彼女達は誰もが世界に一つだけの花だもの。小さい花や大きい花、一つとして同じものなんてないもんね。

 

 単純に俺がこの方法を提案したのは複数プレイで床を共にした女の子達は例え普段いがみ合っていたとしても、その後は諍いの回数が激減する傾向があったから。

 つまりはまぁ、乱交セックスは(膣内)直りに非常に便利な手段なのである。

 

 俺を慕ってくれている彼女達も英霊であった以上、生前の因縁、禍根は当然として存在する。皆聞き分けの良い娘なので、問題になるレベルでそれを表に出す娘はほとんどいない。

 

 それでもゼロではなく、ここ(カルデア)で最たる例として出してしまえば、頼光さんと酒吞。

 最初の頃なんてのは殺し合い一歩手前になる事は何度もあり、その度に俺の角コキと乳スパンキングで場を治めるのだが、それ以降は何だかそのお仕置きに味を占めてわざと喧嘩を起こしているふしも見られる。

 

 それはそれで仲が良いのでは? と思えるが、ある一部の層からは喧嘩をすればマスターからのご褒美(お仕置き)を合法的に頂けるという噂が広まった事を聞き、これはカルデアの秩序的にもよろしくないと本格的にあの二人の対処に本腰を入れたワケだ。文字通り、()を。

 

 

 ──おっ♡おっ♡お゛っ♡かんにんっ♡かんにんやっ♡旦那はんぅぅっ♡二人っきりならいくらでもええからぁっ♡牛女の前でぇっ、こないな格好で犯さんといてぇぇっ♡

 

 ──えっ? 冗談ですよねマスター? こんな虫と接吻しながらなんてっ、んお゛ぉっ♡お尻ぃっ♡はやめぁぁっっお゛ほぉっっ♡しますぅっ、しますからぁぁっ♡んっ、んちゅっ、ちゅっ、ちゅむぅっ♡

 

 ──むぅっ!? んんぅっ、ちゅぅ、ちゅるぅっ♡ほんま、へたくそな口吸いやぁっ♡ああぁっ旦那はん、腰とめてぇなぁっ♡今動かれるとけったいな気分にぃっ、えっ口吸いは続けろって、もぉっ、鬼畜やわぁっ……なんでうちがこないなことを……あぁっもう胸の脂肪がうっとしいねん……ちゅむぅっ、れろぉぁっ♡

 

 ──んっ、んふぅっ、だ、まりなさいっ……♡はむぅっ、んちゅっ♡あぁっ、やだ、私、どうしてこんな、んむっ、ちゅ、ちゅっ、汚らわしいのに、なんで気持ち良くっ……んむぅ゛ぅ゛っ♡ち、くびが擦れてぇぇぁぁあっあぁぁあっ♡

 

 

 腰振ってチンコが固まり、雨降って地固まる。

 常に二人を重ねたままの状態で三日三晩犯し続けたら……まぁ、前みたくガチシリアスで殺し合う事は無くなった。もうお互い、これ以上ないぐらいの乱れっぷりと痴態を絡み合ったまま見せ付け合ったのだから、妙な連帯感というか親近感というか、自覚がない仲間意識が生まれてしまったのかもしれない。うん、やっぱり仲直りックスは万病に効く特効薬ですね。

 

 話を戻すと──。

 

 今の俺とワルキューレ達のようにお互い生まれたままの姿となって、裸の()き合いをしてしまえば、最終的には喧嘩の理由などどうでもよくなる。ベッドを共にした女の子達同士は仲良くなる法則。それがカルデアで俺が学んだかけがえのないもの、アヘ(ラブ)&ピース。

 

「うわぁ……マスターのリアルおちんちん」

「別に見るのは初めてではないでしょう」

「いえ、実物という意味ではこれが初めてです。言うなればテレビ越しでしか見れなかった推しのアイドルの握手会に来てしまった限界ファンの心境なのでしょうか……」

 

 手コキとアイドルの握手会を一緒にするのはどうかと思うよ? 

 

 ベッドに寝そべった俺の剛直を興味津々な様子で顔を近付ける3姉妹。オルトリンデが俗世にまみれてしまってるのは『HBチャンネル』内でのプレイ内容のせいだろう。もう神性とか無くなってない? でも頭の羽根はまだ全員あるんだよなぁ……。

 

「俺はマグロ状態で動かないつもりだから、今は全部、君達に任せるよ。シミュレーション世界で学んだ性技を是非実践してくれ」

 

 ゴクリと俺の言葉に彼女達の誰かがあるいは全員が唾を飲み込む音が聞こえた。

 なるほど、オルトリンデの言う通りシミュレーション世界では幾多も触り、扱き、舐め、吸い、挿れられた逸物ではあるが、現実という壁が彼女達を尻込みさせているのか。

 

 けれど、顔面偏差値の高い美女×3にこうして局部を囲まれているとまだ触れられていないというのに我が愚息はさらに膨張し始める。

 

「おぉ──」と興奮と恥ずかしさが入り混じった歓声をあげるワルキューレ達。ツンツンと指で突き、男根がピクピクとする度に「うわっ凄い動きましたよ」「生きてるねっ!」と年頃の女の子のように姦しく騒ぐ姿が何とも微笑ましい。あとは吐息がくすぐったい。まぁ、目の前にあるのはチンコなんですか。ていうか生きてて当たり前だわ。

 

 始まって早々、もうつい先程前まで槍を構い合っていた険悪な雰囲気は霧散していた。エロはやっぱり世界を平和にするんだなとしみじみと感慨に耽ていると、スルーズがワルキューレ達を代表するかのように意を決して動き出した。

 

「はぁむぅっ、ちゅっ、んむぅっ……ちゅ、ちゅぷぅっ……」

 

 口を大きく開き、赤く腫れた亀頭をパックリと咥えるとまるでおしゃぶりのように吸い付き始める。竿全体を口淫するようなディープストロークではなく、ひたすら男根の先端だけをその唇と舌で愛撫していた。

 

「れろぉぉぁっ……♡れあぁっ……♡」

 

 ならばと空いている陰茎部をヒルドが艶めかしく、舌を這わせ始める。舌の付け根までべっとりつけるようないやらしい舐め方。上下に、そして周回するように陰茎部全体に唾液をまぶしていく。時折、スルーズの唇と触れてしまうがお互いそれを気にする事は一切なく、ペニスへのご奉仕を続けていた。

 

「んむぅっ、あむぅっ♡んちゅ、んふっ、んちゅっ♡」

 

 では最後となったオルトリンデが手をいや、口を出したのは陰嚢。

 子種袋をキャンディのように口に含ませて、もにゅもにゅちゅぱちゅぱと転がしていく。彼女の小さい口の中で舌で陰嚢が遊ばれている、それはたくさん精子を作ってとおねだりしているようにも思えた。

 

 三者三様の口淫。だが、唯一共通している事が一つある。それは三姉妹の彼女達誰もが俺の顔から視線を逸らさないのだ。ちゃんと気持ち良くなってくれているだろうか? 自分達は間違った愛撫をしていないだろうか、上目遣いでこちらの表情を伺っているのだ。

 

 まったく、その不安気な様子さえも俺の中の雄を昂ぶらせてくれることは理解しているのだろうか? 

 見目麗しい美女達が自身のペニスを舐めている光景だけで男は簡単にどうにかなってしまうのは言うまでもない。

 

「あぁ、死ぬほど気持ち良いよ。油断していると簡単に出ちゃいそうだ」

 

 でも言葉に出すから意味があるものもある。

 彼女達を褒め讃えて、全員の頭を撫でるとキラキラと目に見えて分かるように表情は明るくなり、より一層口淫が激しくなった。手持ち無沙汰だった手は俺の太腿やら下腹部を性感を高めさせるかのようにフェザータッチで擦り出していた。くすぐったいその感覚も射精欲を促す極上のスパイスになる。

 

「はぁ、どうか我々に……んちゅ、んじゅっ、んぶっ♡じゅぶぶぅっ♡」

「いっぱいだしてぇ、れろぉっ♡れむぅっ、ちゅぅぅ、んじゅるぅぅっ♡」

「汚してくださいっ♡はむぅぅっ、じゅぶりゅぅぅぅっ、んんぅっ♡」

 

 スルーズは頭を細かく前後し、亀頭部分へのフェラチオの刺激をより激しくしていった。鈴口の割れ目に舌を這わせることも忘れない。

 ヒルドは舌先も駆使して、あらゆる角度から竿全体をくすぐり出す。スルーズの口の中から時折、露になるカリの部分も隙あらば、舐めるのを忘れない。

 オルトリンデは舌だけではなく、頬も使って玉袋を口内全てを駆使して愛撫を続けている。

 

 現実での性経験は初めてではあるが、シミュレーション世界で得た経験は決して無駄になっていないレベルの口淫。3人とも欲望のままに肉棒を貪っているようにも見えるが、互いが互いに邪魔にはなっていない。彼女達の真価はまさしく、単体ではなく、コンビネーションで発揮されるとベッドの上でも証明されてしまった。

 

 俺の男性器で彼女達の唾液でまぶされていない所が一つも無くなった時、サキュバス達の口技で膨張した男根は溜まりに溜めた欲望をようやく吐き出す事になった。

 

「きゃっ……!」

「わぁっ♡」

「あぁっ、すごぃっ♡」

 

 その出口を散々咥えていたスルーズは独り占めするつもりはなかったのだろう。射精の瞬間に口を放せば、暴れ馬の如き肉のホースから濃く濁ったドロドロの精液がワルキューレ達の顔を均等に汚していった。

 

 淫靡に口を開け、さらには目を細ませてうっとりしている顔に白い欲望がどんどん付着していく。

 彼女達はそれぞれ、口の周りについた精液を舐め取っていたが、舌が届かない部分があるとお互いの顔を見合わせると──。

 

「あぁ、まだ、ちゅ♡」

「こんなにいっぱい……んれぇぁっ♡」

「もったいないです、ね……じゅるぅっ♡」

 

 むせ返る性臭で蕩けてしまった彼女達は一切の抵抗も嫌悪感もなく、互いの顔を舐め合って精液を拭き取り始めた。

 

 ──ちゅむっ、ちゅ、んぁっ、はぁっ、もっと♡れむぅっ、じゅるぅっ、んちゅ、んむぅっ、れろぁっ♡んぁっ、はぁ、はぁっ♡んむぅっ、んじゅりゅっ♡んふぅっ♡あぁっ……♡ちゅ、ちゅむぅっ、んふぅっ♡んちゅりぅっ……ちゅ、んじゅぅっ♡

 

 やがてそれがお互いの舌が絡め合うディープキスとなっても意に介さず、3人の顔から白濁の汚れが亡くなるまで掃除は続き、漏れ出す甘い吐息と声と水音は混ざり合ってもう誰がどの音を出しているのか分からなくなる程だった。

 

 ワルキューレ達の顔からようやく精液が無くなり、代わりに唾液まみれになった時、彼女達は興奮した様子で俺に問いかけた。

 

『誰が一番気持ち良かった(ですか)?』

 

 

「うん、そうだね……」

 

 俺は彼女達の期待するような瞳に──こう答えるしかない。

 

「う──ん、フェラチオだけじゃ、まだ何とも言えないなぁ」

 

 この後に続く言葉は彼女達も大方予想はついてる筈。

 だが、俺からは言わない。彼女達側からその行動を引き出す。

 

「……たしかに、やはり女性の真価はここで問われるもの」

「うん、もう準備はバッチリだから……」

「えぇ、これは白黒ハッキリつけるために必要なことですから」

 

 期待した瞳で全員が自身の秘部へと指を這わせていた。姉妹そっくりな発情した顔。

 クチュクチュと肉と水を卑猥にかき混ぜるような音はもう目の前にいる戦乙女達が最初の目的を徐々に忘れかけている事を教えてくれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




『抜きゲーみたいな設定で世界を救わなきゃいけない貧乳(わたし)はどうすりゃいいですか?』
◇ジャンル:ノベルRPG ◇年齢対象:18歳以上

【あらすじ】
変態科のロードにして南極に設立され、いずれ今後の世界の展望を握るファクターになる施設の創設者となるマラスビリー・アナルスフィアは2004年の聖杯戦争において、ある真理を得た。

「我ら変態科を司るアナルスフィアは独自のアプローチで根源に至らなくてはならない」

彼は聖杯に願った莫大な富を。その富を使い、疑似子宮環境モデル・ウテルスを動かす為の燃料を。
南極に作られたその施設の名は『珍理継続保障機関ペニス・ウテルス』。

「古代から脈々と続く人類は一体、どうやって繁栄してきた? 我々魔術師はどうやって魔術刻印を受け継ぐ為に子孫を残してきた? 聖杯戦争において最も効率の良い魔力供給とは何か? 我々が先祖代々引き継いできた根源という名の到達点、そこへ手を伸ばす為の方法が」


――そうドスケベセックスだ


聖杯戦争から帰ってきたマラスビリーの瞳に一切の曇りは無かった。


「兄ぃ、やっぱこの組織ヤバいよ……」
オレンジ色の髪を一房束ねた妹を連れた主人公は大事な妹の貞操と自身の誇り高き童貞を襲いかかってくる英霊達から、性交を強要させるイカれた組織から守り切る事が出来るのか!?
名門一族の当主であり、今まで千人斬りを果たしたドスケベビッチだと恐れられているが、実はまだ一度も異性と手を握った事がない金髪天然ヒロイン。
その金髪ヒロインを異常なまでに慕い、男に奪われるぐらいなら、自分が――と画策するレズ臭がするポンコツ眼帯ヒロイン。
比喩表現無しで爆発するので文字通り地雷ヒロインでもあるが……実は未亡人という隠された秘密がある文学系ヒロイン。
主人公に懐き、一番常識的に見えるが、何故か常に主人公の下着の色を把握していたり、油断ならない眼鏡後輩系ヒロイン。
などなど個性豊かなヒロインも登場。

「俺がこのふざけた珍理を焼却させる――!!」

※この物語はフィクションであり、作中に出てくる人物・団体は実在の物と一切関係ありません。






エイプリルフールで書くつもりだったネタをここで消化。
前編の1.5倍ぐらいある本番回の後編は近日公開します。もう1~2ヶ月とか間開けないから(多分)。




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君のことが大大大大大好きな153人の戦乙女+α後編(ワルキューレ)

近日公開とか言っておきながら投稿が遅れて猛省しております。

カルデアコレクションにて殺生院キアラ更新(ただし本編でエロを書くとは言っていない)。

人妻とロリ水着によるパラダイスとか、エリちゃんよりアイドルしてるマシュとシャンシャンを堪能してたら一ヶ月経ってました。いやぁ、まさか水着イベの最後にふじのんとの和室でインモラルなエロパートが追加されるとは思いませんでしたね。
徐福ちゃん、もしここの主人公の記憶読み取ったらおめぇとんでもねぇ事になるぞ。











 手っ取り早く本番行為で誰が一番雌として優れているのか、雌雄を決することにした彼女達は誰が最初に挿入されるか順番を決めていた。じゃんけんという極めてシンプルな手段で。

 

 結果は「最初はパー! やった!! あたしの勝ち!」と喜んでいたヒルドが審議により脱落。

 その後、オルトリンデとスルーズの一騎打ちだったが、「グーチョキパー! これが全ての手に勝てる私の最強の手です!」とオルトリンデがドヤ顔でピストル擬きの手を披露。

 残念ながら、世界じゃんけん協会にそんな手は認められていないので、反則。結果的にスルーズが勝利してスルーズ、オルトリンデ、ヒルドの順番で挿入行為をすることとなった。

 スルーズ以外真面目にじゃんけんしてない……。

 

 

「では、失礼致しますマスター。どうか存分に戦乙女の蜜壺を味わって下さい」

 

「ほほう、騎乗位ですか……大したものですね。性経験は圧倒的に勝っているマスターに対して女性主導の体位で挑むとは」

「オイオイオイ、(性的に)死ぬわスルーズ」

「黙っててもらえますか」

 

 バグり出した二人のワルキューレは置いておいてスルーズは月光のように美しい長髪を揺らして、ベッドに仰向けで寝そべっている俺の上と跨ろうとしていた。一糸纏わぬその姿は薄桃色のいやらしい膣内を指で開いては見せ付け、積極的に性行為に及ぼうとしているが、未だ羞恥心が取れないのか火照った体と頬も相まって非常に扇情的に見えた。

 

 先程のフェラチオで既に女陰は十分に濡れそぼっているが、スルーズが腰を降ろす前に俺はある事を提案してみる。

 

「ちょっと三人とも今から同期してみない?」

 

 気絶した後に切ったであろうワルキューレネットワークを統率個体限定でまた繋げてみないかと三人に投げかけた。

 俺の提案の真意が分からないのか、全員が同じ方向に首を傾げていた。可愛い。

 

「俺の口から誰が一番気持ち良かったっていうよりも三人が感覚を共有した方が俺のアソコの反応が手っ取り早く分かるよね。どの娘の時が一番喜んでたっていう感じでさ」

 

「なるほど確かに私達だからこそできる優劣のつけ方」

「まぁ、嘘はつけないよね──」

「へっへっへっ、体は正直じゃないかというやつですね」

 

 ヒルドばっかりに注視していたけどオルトリンデもちょっと言動がおかしくなってきてる。『HBチャンネル』でやったプレイ内容のせいなのかな? 

 

 とまぁ、彼女達は俺の()()()()()()()()()を信じ、その提案を呑んでくれた。

 いやだって普通に考えてチンコの反応で誰のが一番良かったかなんて……ついこの間までおぼこちゃんだった彼女達がしかも性交中で前後不覚になっている状態で把握できるワケがないのだ。

 そもそも俺の息子自体、彼女達を差別して射精するような贅沢なモノではなし、「皆ナンバーワンだよ」という反応しか返ってこないのでこんな提案を受け入れた所で決着という言葉自体存在しない。

 

 だからこの提案にはもう、一人分の快楽でいっぱいいっぱいだった彼女達を同期状態で犯って、手っ取り早く快楽で全員をずぶずぶぬるぐちょあへあへのヘブン状態にしてしまえば、さっきの諍いも有耶無耶に出来るかなぁという俺のインテリジェンス溢れる真の目的が隠されているわけである。

 

「同期ですか……ならば、私が挿入されている間、他の二人には」

「そうだね、時間の有効活用って事でさ、それぞれ違う責め方してもらった方がいいよね」

「はい。性器の挿し入れだけが性交にあらず、五体の全てを駆使して愛する者と交わることこそがセックスの極意だとマスターから学びました」

 

 あぁ、うん。

 彼女達の聞き分けが良過ぎるというか欲望に対して忠実過ぎてだんだん騙している感じも無くなってきた。実はもうさっきまでの喧嘩とか忘れてるでしょ、女としての優劣とかどうでもよくなってない? 

 

 

 

 

 スルーズに続いて、残りの二人も未だベッドの上で仰向けになっている俺の上に跨ってくる。

 オルトリンデは俺のお腹の上、丁度手マンがしやすい位置でスルーズと向かい合うように。

 ヒルドは俺の顔の上と騎乗の準備を進めていた。アソコを舐められるのが随分とお気に入りになったらしい。

 俺一人の肉体に三人分の体重が圧し掛かる。

 

「あのマスター……三人も乗って重くないですか?」

 

「羽根のように軽いから心配しなくてもいいよ。後、150人程増えても大丈夫」

 

「何ですかその具体的な数字は……」

 

 何せ俺は4tあるメカエリチャンと騎乗位が出来る男。ベッドの上で女性の重さを苦しいと思うことがまずあり得ない。

 不安気なスルーズの声に親指を立てて心配ないと返答する。もう目の前には香しい匂いを漂わせているヒルドのおまんこしか見えないので彼女の顔色は窺えないが。

 

「ふふ、嬉しいこと言ってくれるねマスターは。それじゃあ、その口であたしの性器を」

「その手で私の性器を」

「その立派なモノで私の性器を思う存分楽しんでくださいっ──っぁあ゛っ♡」

 

 ヒルドには口、オルトリンデには手、スルーズには男根と──戦乙女達の蜜壺へ三者三様の責めを開始する。

 

「んふぅっ──! くぅぁっ、あ゛♡おおきぃっ──♡」

「はっあぁっ♡指ぃっ……とんとんってぇ♡きもちぃっぁっ♡」

「いやぁっ♡舐め方がぁっ、はああぁっ♡いやらしいって♡」

 

 下半身から上半身にかけて、柔らかく湿っていてそして心地よい暖かさがあるモノに包まれた感触。

 スルーズは狭く蠢く膣を何度も上下に腰を動かし、必死に快感を貪ろうとしている。

 俺のお腹にはオルトリンデの可愛いお尻の感触、陰部を手探りで撫でつつ、Gスポットの辺りを指でリズム良く突いてあげれば、ビクビクと震えているのが彼女のお尻を通して伝わってくる。

 そして辛抱がないのか、もう俺の顔面を愛液で汚しているヒルドの局部は舌を膣内で侵入させれば、面白い程に愛液が溢れ出し、クリトリスの辺りを口付けしてあげれば、鋭い嬌声と潮が返ってくる。

 

「あ゛ぁっ♡あ゛ぁっ♡マスター♡腰がっ、止まりませんぅっ♡あの世界でやった時よりももっと凄くてぇぇっ♡」

「アソコの撫で方がぁぁっ♡いやらしいですっ♡はぁぁっ♡こんなの、我慢できるワケがにぁやあぁっ♡」

「お願い、お願いぁっ♡もっと飲んでぇぇっ! あたしのぉっ、おぉっ♡おっ♡おっ♡いやらしいおつゆぅぅっいっぱいのんでぇぇっ♡」

 

 俺の体の上で三者三様に戦乙女達が淫らに跳ねている。

 普通の4Pであれば、これで満足かもしれないが彼女達戦乙女の淫行はこれからさらに次の段階に進む。

 ようやく同期の影響に脳が追い付き始めたのだろう。三者三様だった筈の快楽が今、一つになって全員に共有される。

 

「あはああぁっ♡あ゛ぁっ、ぁっえぇっ? なぁんですかぁっ、これぇぇぅっ♡はあぁっ、あぁっあっ、すごぉっ♡すごぉいですぅっ♡アぁ゛──♡」

「皆の快感がぁぁっ♡いっぱいきてぇぇっ♡あぁっ、むり、むりむりむり、こんなの無理ですっ、勝負とか、そんなのにきにしてられなぁぇぃ、ひぃぁあああぁっ♡」

「あ゛ぁぁっ♡あ゛ぁぁあっ♡すごい、すごいよマスターぁっ、おちんちん挿れられながら、おまんこの中も指でほじくり回されて、舌でべろべろに舐めつくされてるよぉっ♡全部が、全部がぁっいっぱいきてぇ、すごっ♡しゅごぉっ♡」

 

 膣奥まで突かれる鋭い快感、指で丹念に膣壁を弄られる繊細な快感、唾液で溶かし尽くすようなねちっこい快感、三種の快感が今、彼女達の脳を埋め尽くしているのだろう。顔だけ見れないのが非常に残念だが、三人の声が混ざり合ってまるで一つになったかのような喘ぎ声が耳朶を震わしてくれて非常に心地良い。

 

「はああぁっ♡あ゛あ゛ぁぁっ♡マスターぁっ♡マスター♡マスター♡」

「んあぁっ♡♡マスターぁぁ♡マスター♡マスターぁっ……んああぁっ♡」

「ああぁぁっ♡マスター♡好き、好き、すきぃっ♡すきぃ♡あっ、あっあっ♡」

 

 彼女達が感覚を共有している以上、誰か一人でもイキそうになれば、その感覚に引っ張られて他の二人も必然的に同時に絶頂を迎える。膣がきゅうきゅうと締まり、彼女達の動きが痙攣と共に激しくなってやがて来るべき時が来た。

 俺がスルーズの膣へと溜まったザーメンを吐き出す瞬間、彼女達も快楽の極致へと誘われる。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁああっ──♡でてる、でてるっ、初めてのっ本物のっマスターの精液ぃ♡子宮が犯されてぇっ♡」

「んはあああぁっ──♡ああああぁっ♡ひゃあああぁっ♡あつくて、濃厚でっ♡」

「おっ♡あああぁっ♡はああああぁっ♡おっぉっ♡うれしい、こんなにいっぱい出してくれてるよぉっ♡あたし達の体がそんなに気持ち良かったんだぁぁっ♡」

 

 射精と絶頂によって洪水のように噴き出した戦乙女達の愛液はまるで俺を溺死させてしまうぐらいに凄まじい量だった、俺を越えて、ベッドに大きな染みをつくってしまうほどに。

 

 俺が直接的に吐き出したのはスルーズの膣内のみだが、オルトリンデもヒルドもまるで自分の子宮にたっぷりと精液を注がれたかのような反応をしていた。いや脳内を同期化している以上彼女達の反応は正しい、実際に中出しはしていないが本当に妊娠してもおかしくはないぐらいに彼女達の乱れっぷりは真に迫っていた。

 

 息も絶え絶えになった彼女達は俺の上から崩れ落ちていく。ようやく目にする事が出来た顔はとてもじゃないが神の僕として役割を全うする機械人形などではなく、性に溺れる女にしか見えなかった。

 

「じゃ、次はオルトリンデの番だね」

 

 まるでもう一仕事終わったかのような様子の彼女達は俺の言葉にビクンと肩を揺らした。こちらに振り向いた彼女達の顔に浮かんだのはこれから今までの戦乙女としての自分達が完膚なきまでに壊されるであろう予感。けれど誰一人として恐怖はなく、三人ともが淫らに染まった期待感のみで俺の体を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 男性に主導権を委ねる受けがお気に入りなオルトリンデは極力自分が動かずに済む、正常位を希望した。火照った体をベッドの上に投げ出して、汗と愛液で汚れてなお可憐な全身を余すことなくさらけ出していた。四人分の体重がベッドを軋ませる。

 

 スルーズとヒルドは俺を挟むように膝立ちの状態で左右を陣取っている。先程の絶頂の余韻を表すかのような吐息がステレオでかけられると愚息が行き場を求めてビクビクと震え出す。

 

「くっ、こんな左右から挟まれると、俺まで戦乙女になっちゃうよ……」

 

「オセロじゃないんですよ?」

 

 女の子特有の香りに加えてスベスベの柔肌に包まれているような多幸感にいつまでも浸りたくなり、出る言葉のIQも下がっていっているようだった。

 そして目の前にはおあつらえ向きなオルトリンデのいやらしい雌穴が──。

 

「はああ゛あ゛あ゛ぁぁぁっ──っ♡」

「んぁあぁっ♡」

「ひぁああっ♡」

 

 オルトリンデの両手をぎゅっと恋人繋ぎにすれば、ずぶ濡れの彼女の穴は肉棒を簡単に奥まで誘い込む。挿入の瞬間、両サイドにいる二人も痙攣し、鋭い嬌声をあげた。

 同期でつながり合っている以上、俺の腰の動きによってスルーズとヒルドも面白いぐらいに淫靡な反応を返してくれる。俺はオルトリンデ以外の体にはまだ触れていないというのに。まるでローターのリモコンで彼女達の体を遠隔操作しているようだった。

 

「はあぁっ、オルトリンデはっ♡このように感じているのですねぇぇっ♡あっ、あっマスターのアソコが荒々しくて激しぃっ♡ちゅ、ちゅぶぅ、じゅるぅっ、マスターも、んちゅ、我々の体でもっと気持ち良くなってください♡」

 

 スルーズはさっき挿入されていた以上、肉棒の感触をはっきりと覚えている。だが同じ肉棒でもオルトリンデと彼女では感じ方も異なる。

 同じ料理でも食べる人が異なれば、感想が変わるように……戦乙女に備えられた同期によってスルーズとヒルドは自分の体だけでは絶対に得られない快楽を享受しているのだろう。

 

 性感が高まってきたであろうスルーズは生々しい喘ぎ声を上げている唇を俺の左耳へと近づけ、その穴の中に舌を潜り込ませた。左手はそっと優しく乳首を指先でカリカリといじり出す。

 

「あっ、はぁっ気持ち良いっ♡すごっ同期ってこんなにエッチなんだぁぁっ♡んおぁっ♡マスター、キス、いっぱいキスしよっ♡んっ、ちゅぶっ、ベロもいっぱい使ってぇぇっ……んぱぁっ、ちゅむぅっ♡」

 

 ヒルドも完全に発情した顔で右サイドから俺の唇を奪った。艶めかしく貪欲に唾液をボタボタと垂らし続ける彼女の舌がえげつない程に卑猥な音を立てて、口内を縦横無尽に這い回る。スルーズの奉仕を踏襲するかのように右手で空いた乳首を繊細な指使いでくすぐってくる。

 

 両サイドから柔らかくいい匂いがする戦乙女の裸体に包まれ、肉棒、口、耳、乳首と男の性感帯をこれでもかと責められ、快楽の海に脳内を浸らせながらも……あぁ、なるほど確かにこれは神話や創作物で語られているように勇士を死者の館にて歓待するに相応しいご奉仕ぶりだと感心していた。

 オルトリンデの膣内にある愚息はより一層興奮し、海綿体を膨張させていた。

 

「んああぁっ♡あぁっ……スルーズもヒルドも、そんなに昂ぶらせてっ、はぁっ♡どれだけ、マスターのこと、好きなのですかあぁっ♡同期している私が恥ずかしくなってしまいましゅよぉっんおあぁっ♡」

 

 そして何も共有しているのは快感だけではない。彼女達が脳内をリアルタイムで同期している以上、スルーズとヒルドがどういう感情を持って俺の肉体に縋っているのかオルトリンデは鮮明に感じ取っている筈。

 羞恥により、頬の赤みは濃さを増し、何も触れていない筈なのにオルトリンデは口を開き、涎を垂らしながら艶めかしく舌を動かしていた。まるでそこに誰かの舌があるかのように。ぱちゅぱちゅと腰を早く小刻みにぶつければ、はしたなく乳房が揺れると同時にぷしゅっぷしゅっと潮も吹き出している。全身で男に卑猥な様を見せ付けてくれる彼女の痴態は俺の射精欲をあっさりと高めてくれた。

 

「あっあっあっ♡気持ちいいっ♡きもひぃっ♡三人分の快楽でぇぇっ♡頭がばかににゃりぅゅっ♡あぁっ、二人の奉仕でマスターのおちんちんがさらに大きくなっているのがわかりますぅっ♡らしてっ、たくさんらして下さいっ♡あなたに仕えるサーヴァントなのに自分から全く動こうとしない、だらけきった戦乙女をたくさん躾けるようにらしてっ♡」

 

「ちゅ、ちゅぷっ、じゅるるるぅ、れろぉっ♡はぁっ、マスターの乳首もコリコリに固くなってますね♡すごく興奮しているのがぁっ、あんぅ♡よく分かりますぅっ♡はいっ、今や私達の膣内は全て繋がっているとも言えますっ♡一回の射精で三人分の子宮を犯せますよ♡ひぁあぁっ♡オルトリンデに入ったペニスがまた膨らみましたぁっ♡だしてくださいぃっ、だしてくださいぃっ、精液ぃだして♡だして♡だして♡」

 

「んむっ、んぶっ、ちゅぅっ、んぱぁっ♡マスターぁっ、めちゃくちゃエッチな顔してるよぉっ♡あはぁっ♡まぁ、あたし達もだよねきっと♡んっ、くぅぁあっ……あっ、いいぁっ♡いいよっ♡あたし達、戦乙女はみーんな、マスター専用のザーメン扱き捨てメス肉便器だからぁっ、好きなだけ出していいんだよぉっ♡キスしながらぁあっ、愛を知らない戦乙女のまっさらヴァギナにらしてぇぇっ♡男を教えてぇぇっ♡んむぅっ、んじゅぅぅぅぅっ……♡」

 

 

 麗しい戦乙女に囲まれた状態で行うストロークは気が狂う程気持ちが良く、喘ぎ混じりの卑猥な言葉を三人から何度も挑発するかのように投げかけられてしまえば、俺の肉棒はそれに耐える程、天邪鬼ではなくお望み通り、オルトリンデの中に、いや──彼女達三人の膣内へと射精する。

 

 ──びゅるるるるるるるぅぅぅっっっっ!! 

 

「はあああああぁっ♡ああああぁっ──! 奥にぃ、奥にぃっ、きてりゅぅっ♡はっあああぁっ♡子宮に入りきらなぁっ♡」

「んおあああぁっ♡おぉぁっ、おっ♡おっ♡す、すごひぃっ♡オルトリンデの絶頂が私達にまでぇっ♡あぁっ、んはぁっ♡こんなの同期だけでぇっ、妊娠してしまいますっ、はぁっあっあっ♡あっ♡あっ♡」

「んんんんうぅっ──♡んむぅぅぅぅっ♡んぷぅっ、ちゅぱああぁっ―♡はあぁっ、あぁっ死んじゃうっ、あへぇっしんじゃうよぉ……♡ふふっ、ぁぁ、でもマスターにならこんな殺され方でもいいかなぁっ、はぁっ♡んあぁっ♡」

 

 爆発した白い欲望は繋がり合った戦乙女の同期回路を通るように三人全てに平等に絶頂を与えていた。

 足をピンとさせているオルトリンデの腰を打ち付け、みっちりと膣内いっぱいに肉棒を埋めた状態で射精を続ける。

 脳内を染め上げている快感は同一だが、反応は様々。けれど、頭から生えた羽根の痙攣のし方だけがそっくりで何だかそこだけは思わず笑みが零れてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目の前に三つのお尻が並んでいる。今度はベッドの上ではない。

 

 金色、桃色、黒色とバラバラの髪色をした三人の戦乙女達が壁に手を添えて、こちらにお尻を突き出していた。全員の女陰からは夥しい程に愛液が垂れ始め、まるで躾のなっていない犬が「待て」をされて出している涎のようにも思えた。

 

「やっぱりさ、ペット(サーヴァント)飼い主(マスター)なんだから、この姿勢で犯されるのが一番しっくり来ると思うんだよねぇ」

 

「わんわんわん♡」

 

 楽しそうに笑うヒルドが所望した体位は後背位だった。後ろから道具のように扱って、獣の如く犯されたいらしい。オルトリンデもノリが良い、牛若丸と仲良くなれそう。

 

 スルーズとオルトリンデの時とは異なり、真正面から向かい合っていない体位ではあるが、ヒルド以外の二人も『HBチャンネル』でバックは経験済みである。現に今も期待するように艶めかしくお尻を揺らしている。

 

「絶景かな」

 

「ひゃん♡」

「あんぅ♡」

「んひやぁっ♡」

 

 男を誘惑する肉の球体がふりふりと目の前で踊っているものだから、思わず小太鼓のようにリズム良く彼女達の美尻を叩いてしまった。

 だが抗議は一切返ってくる事はなく、嬉しそうな悲鳴が部屋に反響するだけだった。三人の乱れっぷりから、もうこれでも気持ち良くなってしまうぐらいに体は出来上がっていた……。

 

 パシン、パシン、パシン、パシン、パシン、パシン、パシン……──。

 

「あぁっ、はぁっ♡あんっ♡だ、誰ですかっ♡お尻を叩かれて気持ち良くなっている変態はぁっ♡」

「わ、私じゃぁっ、ありませ、はひぃっ♡絶対、ヒルドですっ、はぁっ♡あんぅっ♡ひぅっ♡」

「うそ♡皆、気持ち良くなってるのぉっ、んぉぁ♡ひゃぁっ♡バレバレだからぁぁっ、はぁんぅっ♡……お願いマスター焦らさないでぇ……はぁっ♡これもイイけど、もっと刺激的なのが欲しいぃなぁっ♡」

 

 このまま尻スパンキングでイかせる事も可能だが、さすがに直の挿入を求めているヒルドにそれをするのも鬼畜なので彼女の望むままに膨れ上がった陰茎を桃色娘の蜜壺へと──本日リアルでは三度目の戦乙女への挿入。ずぶずぶじゅるぅっと卑猥な音を立てて、いともたやすくヒルドのヴァギナは逸物を飲み込んでしまった。

 

「んくぅぁあああああっ──♡おっきいのぉきたぁっ……♡あっ、はぁっっ……♡ずんってぇっ……子宮に響くのぉっ♡」

「あ、頭の中に入ってくるぅっっ……挿入されてないのにぃぃ……脳みそがマスターのおちんぽで犯されてぇぇっ……あぁんぅっ、はああぁっ♡これだけでイッちゃいますぅぉっ……!」

「すてきですますたぁっ……♡あっ、あっ、んぁあっんぅっ♡ヒルドもスルーズも皆、ワルキューレ全員を狂わせてくださひっ♡」

 

 ずんずんとヒルドの肉壺を奥まで突き続ければ、両隣にいるスルーズとオルトリンデの女陰からも触れてはいないのに、愛液と潮が面白いぐらいに溢れている。

 たった1本の竿で三人の戦乙女全員を犯す事ができる新感覚とも言える性行為。

 

 このまま挿入行為だけでも三人まとめてイかせる事は容易いだろう。

 

 だが、せっかく同期しているのだから肉棒だけではなく、他の愛撫もしっかりと味わって欲しい。

 

 俺の眼に綺麗な皺が並んでいるピンク色の窄まった穴、物欲しそうにヒクついている二つのアナルが飛び込んできて、ふと思った事が口に出てしまった。

 

「あぁ、そういえばスルーズとオルトリンデはこっちはまだ未経験だよね?」

 

 

 指先をほんの少し不浄の穴に沈ませると情けない声と過剰な反応が返ってきた。

『HBチャンネル』でもヒルドと比べるとソフトで甘いセックスだった二人にとってここの異物感は未経験だろう、いきなり快感だけを得るのは難しいかもしれない……だがここにはヒルドがいる。彼女達と二人と同期したヒルドが──クリプター虜囚プレイで()()()()()()()()()()()()()()ヒルドがいる。

 

「おっ、んぉっ♡あぁっ、マスターぁぁっ、もうっ欲張りなんだからぁっ、そっちの穴もんぉぉおぉぉっ♡犯したいんだぁああっ♡」

「んひぃっ! ひゃぁっ、おっ、おっぉっ♡待って、待ってくださひぃぃぃっ♡間違っていますマスターぁああっ、そ、そこは違う穴、んおぉぉっ♡あ゛あ゛ぁぁぁっ──っっ♡」

「んほぉぁっ♡な、なんで私、初めてなのに、こんな気持ち良くなって、んおぉぉっ♡おっ、おっ、おっ♡おっ♡……ひ、ヒルド、やっぱりあなたは変態でしゅぅぅぅううううっ♡」

 

「へぇっ? にゃに言ってるのぉっ……? いいじゃん、もっと墜ちる所まで堕ちちゃおうよぉ……恥ずかしい所全部曝け出したら、もっともっと気持ち良くなれるしぃ……愛も学べるでしょっ……んぉあああぁっ♡んくぅっ、はひっ、あぁぁっ、あああぁっ──♡だから皆で仲良くさぁあっ、マスターに溺れちゃおっ♡」

 

 今まで二人に対して憎まれ口を叩いていたヒルドからようやく本音が零れる。

 

 元々、俺とヒルドの思惑は一致していた。

 

 最初の行動からおかしかったのだ。スルーズとオルトリンデがゲームをしている真後ろで俺を押し倒し、ディープキスをかます。二人が気付かないわけがない。姉妹思いのヒルドがあんな風に自分だけ抜け駆けしようとするか? いや、むしろ逆だ、彼女は嬉々として二人を巻き込んで4Pに持ち込むタイプだ。

 

 ヒルドからすればやきもきしたのだろう、シミュレーション世界であれだけ体を重ね合わせたのだから予行練習は十分、現実世界に帰還した時点で座学とか男女の恋愛の機微とか眠たいこと言ってないでさっさと誘えと──。

 

 スルーズもオルトリンデも体は間違いなく堕ちていたが、まだ一欠片の羞恥心が残っていたのだろう。『HBチャンネル』のように設定という後押しが無い、まっさらな自分でどうやって性交に持っていけばいいのか分からなかったのだ。

 

 だからその最後のひと押しをヒルドが行った。挑発という形で発破をかけたのだ。後、ほんの少し踏み出すだけでいい二人の背中に手を当ててあげたのだ。

 

 結果はこの通り。

 

 もはや誰が一番優れた女なのかという馬鹿げた建前も霧散して、同期という性交において最高のアイテムを駆使している戦乙女達は仲良く肉欲に溺れる事になったのだから。

 

「ああぁっ♡やぁっ、おっ、んぉっ♡だ、だめですますたぁっ……おしりも、おまんこも馬鹿になってしまいますからああぁっ、お゛お゛、んほお゛お゛お゛ぁああああっ──♡」

 

 ずぶずぶと中指を小刻みに曲げながら、どんどん腸道を奥へ奥へと侵入していけば、三人の中でも人一倍下品な声をあげてスルーズが髪を振り乱していた。うなじに浮かんだ汗も飛び、淫靡──けれど、荒ぶる金の川がそれ以上に美しさを醸し出していた。

 

「あ、あ、あ、あんぉっ──♡おっ、ほっ、あぁっ、んあぁああっ──、だめ、だめ、だめ、他の二人がどんどん気持ち良くなって、お尻ひろがってぇぇっ……私も気持ち良くなって、あぁっ、おっ♡おっ♡また気持ち良くなって♡むり、これむり、止まらなひぃっ♡」

 

 鋏みたく中指と人差し指をオルトリンデのアナルの中で拡張するかのように開き、腸壁を撫でまわす。耐え切れないのか彼女の頭はどんどん低くなっていく。体を支える為に壁を押さえていた手もプルプルと震え、いつ頭から倒れこんでもおかしくない。

 

 現にスルーズはもう、地べたに土下座するかのように倒れ伏しており、突き上がったお尻だけは未だ俺に嬲られ続け、ビクンビクンと震え続けているのが何とも情けなく可愛らしい。

 オルトリンデもいつの間にかスルーズと同じ体勢、真ん中にいるヒルドだけは足をガクつかせながら肉をぶつけ合う激しいストロークに何とか耐え抜いていた。

 

「あっはぁっ♡んぁっ……♡だ、めだよ、二人ともこれぐらいでへばっちゃぁっ♡これからもっともっと凄いことされるんだからぁっ……ぉっ、あぁっ、んひやぁあっ♡まだ、まだ、頑張らないとぉぉおおっ……♡」

 

「ま、まってくだしゃ、マスター、マスター、立ちますっ、立ちますからぁあっ……おっ、おっ、んあぁぉおぉおっ♡おほっ……♡ひっ、ひぎぃっ……♡指、一回、とめてぇぇっ……おぉあぉぉっ♡」

「無理ですよ……スルーズ、もう私は立てまへんぅっああぁっ♡おっ、んぉおあぁっ……♡この無様な格好のまま、マスターに犯されたひですぅううっ……♡あっ、あっ、お尻しゅごぉっ……♡」

 

 

 俺は屈伏したスルーズとオルトリンデへの愛撫の手を止める事はない。両手でそれぞれ器用に彼女達の菊門をほじくり回して、ヒルドへの抽送を続行する。

 これまでの交わりの中で何度も出した射精、潮吹き、零れ出る愛液に汗、飛び交う嬌声、いつものことながら俺の部屋はむせ返る性臭と淫気で満ちていく。

 指と男根をぎゅうぎゅうと締め付けてくる彼女達の肉の感触に俺の興奮もせり上がってきた。

 

 もう嬌声以外の言語を忘却してしまったかのような彼女達の痴態を眺めていると、彼女達の頭に生えている羽根が激しく痙攣していた。

 

 かつてブリュンヒルデからこんな話を聞いたのを思い出す。

 

 大神に鋳造された戦乙女達は神々に与えられた大命を忘却してしまう程に強烈な感情を得た時、神性は剝がれ落ち、神霊という格から零落し、戦乙女の象徴とも言える羽根は消え去ると──。

 シンプルに言えば、(ヒト)になるということだ。

 

 今、俺は目の前で完全に天から引き摺り落される戦乙女達の瞬間を目の当たりにしているわけで、このまま眺めていれば数秒も経たずに彼女達は戦乙女としての機能を完全に失うのだろう。

 

 だから、俺は『白式官能』を発動して、白い六つの魔手で彼女達全員の羽根を扱き始めた。

 

「くひぃいいいいいっ!? んぁあああっ♡あぁっ、だめだめだめだめだめだってばますたぁっ……♡どうして、あたし達、完全に今堕ちかけていたのにぃ……♡」

「あっ♡あっ♡あっ♡あっ♡あっ♡あっ♡あっ♡あっ♡あっ♡あっ♡あっ♡あっ♡あっ♡あひぃっ、あ、頭ばかになりゅぅぅぅっ……♡」

「イッてるぅっ、もうイッてますからぁああっ…♡あぁっ、んああっ♡おっ、おっ、んほぉっ……♡死んじゃう、死んじゃいまひゅんぅっ……♡」

 

 ヒルドのうなじに舌を這わせた後に耳元で囁く。他の二人はもう話を聞く余裕も無いだろう。同期しているのだから後でヒルドのメモリーから覗いて欲しい。

 

「俺は別に人間に堕ちなくても今のままの君達を愛するつもりだったんだけど」

 

「へぇっ?」

 

「だって勿体ないでしょ、これ(羽根)無くなったら、もうこんなプレイも出来なくなっちゃうよ?」

 

「そ、そんな理由でぇぇぇっ──♡あ゛あ゛あ゛ぁぁっぁっ──♡ひぃぃああぁァァっ──♡シコシコまってぇぇぇっ──♡脳、やききれちゃふぅぅうっっ──♡」

 

 ついにバックの体位から崩れ落ちたヒルドだったが、『白式官能』の触手が彼女の肢体に巻き付き、その肢体を無理矢理支える。全身を這いずり回る『白式官能』、三人分の羽根を愛撫され、さらには膣とアナルももう俺専用の形になるまで男根と指で出し挿れされている。

 

 竜角、鬼角、獣耳──頭から生えたその感覚器官も立派な個性、それを消すなんてとんでもない。彼女達の体に羽根があればこんなに気持ち良くなれることを体に教え込む。

 

「そもそもこの俺がワルキューレだの、人間だの今更そんな小さい事気にするような男に見えた?」

 

 英霊、反英霊、神霊、ロボット、本、鬼種、竜種、俺は一度だって彼女達が人間だったらいいなと思った事はない。

 

 例えば、愛し合った怪物と人間がいたとして、お互い同じ種族にならなければハッピーエンドじゃないと一体誰が決めたのか。寄り添えるのなら、怪物と人間のままでも上等だろう。絶対的な相互理解がなければ、共に生きれないなど、それこそ幻想だろう。

 

「俺の願いは只一つ。そのままの君達でいいから、共に家族として添い遂げて欲しい、それだけ」

 

「あぅ♡」

「はんぅっ♡」

「んふぁっ♡」

 

 まぁ、君達が英雄シグルドと恋に落ち、人間へ凋落した長姉でもあるブリュンヒルデのシチュエーションに憧れを抱いていたのは良く分かった。シミュレーション世界でもその傾向はあったし、そのフラストレーションを発散させる機会は今後必ず与えよう。

 

「だけど、今この瞬間はありのままの君達を犯させてもらうよ」

 

 ラストスパートに向けて、ピストン運動を速める。両指のアナルをほじくり回す動きも、淫靡に彼女達の反応が大きい箇所を見極めて、一層洗練されていく。三人の肢体に絡み付いている白い魔手も羽根を扱き倒すだけでは収まらず、平均以上の胸部や膨れ上がっているであろうクリトリスまで伸びていく。

 

 頭よりも高く尻を突き上げて、愛液をまき散らし続けるオルトリンデもスルーズも、『白式官能』に縛られ、前屈みのまま膣奥を突かれ続けているヒルドも先程から何度も絶頂している事だろう。失神すらしているかもしれない、だが、同期で繋がり合った彼女達の脳内は何度も別の快楽を繰り返し、決して意識が落ちる事を許さない。

 

「あ゛あ゛ぁぁあっ──♡んおあ゛あ゛あ゛っっ♡頭バチバチになってぇええぇぇぇっ……♡はひ、しんじゃうぅぅっ……♡もうしんじゃうぅからぅぅっ──♡」

「あ゛あ゛くうぅぅっ──おっおっ、んぉぉお~~ッッ♡ひゃあ゛あ゛あぁっ、アぁあァ゛あ゛ッッ♡」

「い、くぅっ、イくぅっっっ♡あ♡あ♡また、イくっ♡イくっ♡イクッ♡イ゛ぐぅぅううっ~~ッッ♡」

 

 

 膣道と腸道を同時にほじくられている快楽によってヒルドは下の口でより一層愛おしそうに男根をを締め付けている。無限に湧き出る愛液は激しいストロークの滑りになって、生きているかのように蠢ている肉襞は彼女達の欲望そのものを表していた。

 

 

 今まで数多の女英霊の胎に吐き出された俺の精液は彼女達の体を構成している霊基を別次元の肉体へと昇華させた。それは単純に受肉したという結論だけでは片付けられないらしい。

 

 

『貴様のそれは願いの発現だ。本質は我々、聖杯と変わらない』

『あなた自身と彼女達の深層意識の中にある「この人と共に添い遂げたい」という願いが結び付いたというべきかしら~?』

『その結果が……魂の物質化ならぬ、霊基の物質化となったとも言えるわね……』

『さ、サーヴァントの時よりも、出鱈目が通せる体になった……彼女達の体が次のステージに進んだとも、言え、るわ──』

『そうね──。雑だけど、あなたの精液は大体の無茶は叶えられる聖杯もどきみたいなものだと捉えておけばいいんじゃない? うん、久々にたくさん喋れた気がするわ♪』

 

 少し前、ここ最近出番が少ない事を悩んでいる四元素と黒アイリにそんな話を交わした事があった。

 

 もし()した側と()された側の願いが結び付くなら、サーヴァントではない神代から今まで生き続けてきた戦乙女達の体は一体、この後どうなるのか。

 

 人になるのか、戦乙女のままになるのか。

 

 ヒルドは長姉ブリュンヒルデのように人に堕ちる事を望んでいた。他二人の様子を見る限り、堕とそうと思えば簡単に堕とせるだろう。神性も勇士の魂を運ぶ戦乙女としての本質も何もかも忘れさせてただの女にする事も出来るのだろう。

 だが、俺は別に人の身に拘る必要は無いと語った。俺と家族になってくれるのなら、今の戦乙女という存在のままでも構わないと言った。だから後は彼女達次第だ。それでもやはりブリュンヒルデのように人に堕ちたいというのなら、俺は喜んでその答えを尊重し、生涯愛し抜く事を誓う。

 

 彼女達の答えはきっとこの後すぐに分かるだろう。

 

「んあ゛ぁぁっ♡子宮のぉっ♡入り口がおちんちんとくっついてぇぇっ……♡おっ、んぁっ♡はなれにゃぁっ♡ひっ、ひぁあぁっ、あ、あ゛あ゛ぁっぁっぁぁッッ──♡でてりゅ、中出しされてりゅぅぅう゛っ──♡」

「おっ、ん゛お゛ぁぁぁああっ♡あぁっ、ひぅやあ゛ぁ゛ぁあっ……♡ぁあぁぁあっ♡お尻ほじくられながら、イキまくってぇっ♡お、んお゛ぁぁっ♡あ゛ひい゛ぁぁぁああっ♡」

「待って、まってくださぁぃっ♡あ゛ぁぁっ♡んにぁやぁ゛ぁっ♡ほお゛っっ今、股が変な感じでぇぇえっ……♡で、でちゃう、何か出ちゃいますぅっ、ん、んあ゛っっっ────ッッ♡」

 

 ヒルドの尻肉と下腹部を密着させて白濁の種を吐き出す、射精しながら子宮口を亀頭でねちっこく押し込んでいけば繋がり合った三人のワルキューレは何度も何度も絶頂を繰り返した。

 ヒクついているヒルドのアナルの反応からも分かるように射精している間も手を緩める事なく、スルーズとオルトリンデの腸道を責めていた。指を馴染ませるように緩やかに上下左右へと動かし続ける。

 産まれたての小鹿のように震えている三人の脚の間からは滝のように愛液、さらには潮が吹き出して──。

 

「あ、あ、ぁぁぁぁぁっ────…………」

 

 それは誰の声だったか、多分スルーズかオルトリンデのどちらかだろう。

 取り返しのつかない粗相をしでかしてしまったような、けれど気持ち良さが隠しきれていない溜息のような湿っぽい叫びだった。

 

 ツンと鼻につくアンモニア臭がするなと思ったら……──じょろじょろじょろじょろ……と愛液でもない、薄黄色の液体が彼女達の秘部から湯気と共に漏れ出ていた。

 

「あ、ひ、とまって、とまって、とまってっぇぇぇ♡こ、こんなありえないっ……はぁ、ぁぁっ……私、どうして、これでも気持ち良くなってぇぁぁああああっ、はあああぁっ────……♡も、申し訳、ございません……ますたぁっ……こんな醜態をぉっ♡」

「あ、あ、やだやだやだ、でちゃう、でちゃうぅっ……♡あ、ひぁっ♡ヒルド……あなた、こんな事で気持ち良くなっているなんてぇぇっ──……♡」

「ごめんってばぁっ♡でも、もう癖になっちゃったんだもんっ……でもっ♡ますたぁにぃ、おしっこしている所見られてぇ、皆もイキまくってるじゃんぅ♡」

 

『白式官能』を解除して、地べたに顔を擦り付けたまま、失禁しながらイキ続けている三人の戦乙女達、余人が見れば、無様と思うかもしれない姿が俺にとって艶めかしくて、愛おしさが止まらなかった。

 ヒルドの膣肉の感触をたっぷりと堪能した後に、剛直を引き出す。射精によってほんの少し失われた硬さは彼女達の艶姿によって簡単に硬さを取り戻した。

 スルーズ、オルトリンデ、ヒルド、局部から精液と愛液と小水を垂れ流し続ける彼女達の臀部を前に俺はこのまま延長戦へ移行するべきか悩んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……アイツが貸すゲームだったし、冒頭のナレーションからイカれてたから警戒してたけど、うんまぁ、褒めてあげてもいいぐらいの出来だったわ。次回作とか無いのかしら?」

 

『ドキドキ文芸部』の後に『君と彼女と彼女の恋』、さらには『沙耶の唄』をマスターから貸してもらったジャンヌ・オルタこと邪ンヌはもう二度とアイツの貸すゲームは信用しないと心に誓っていた筈だったが、マスターからの強い推しを断り切れずにまた別のゲームを借りていた。チョロい。

 

 何でも、それはそのマスターとダ・ヴィンチにおける自作ゲームらしく、最初は一通りプレイしてクソゲーねと嫌味と共に突き返すつもりだったようだが、思いのほかハマってしまったようだった。

 全てのヒロインを攻略し、グランドルートまで完走するぐらいには。

 

「むむ、また夜遊びですかオルタ。そんなにいつも引き籠ってゲームばかりしていたら、刑部姫さんみたく夏の季節が迫ってあわてんぼうのサンタクロースですよ。『サーヴァントだから太らないもんね──』はもう私達には適用されないんですから」

 

 ゲームを返す目的でマスターの部屋に向かっていると途中で絡んで来たジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィも何故か付いて来ていた。これ以上、姉妹が不摂生な生活をしないか監視という名目らしい、まだ洗脳が解けていないようだ。

 

「私は刑部と違って、アウトドアもするから太りませ──ん。そもそもあの絶倫バカ(マスター)に抱かれているんだから、カロリー消費を心配する必要はないでしょ私達」

 

「確かにトナカイさんとの愛の共同作業(セックス)はこれ以上ないくらいにいい運動です! 心はポカポカ、プロポーション維持、お肌はツヤツヤに気持ち良い! いいことづくめの一石四鳥ですね!」

 

 話を振ったのは自分だが、こんな台詞を吐いている幼い自分の将来が邪ンヌは不安にもなった。受肉した以上、この幼きビキニサンタはこれから心身共に成長していくわけで願わくば、あの狂ったイルカ女にはならないで欲しいと切に願った。

 

「ていうかオルタの私がオリジナルにならないでって思うの冷静に考えておかしいわよね。普通逆でしょ」

 

「何か言いました?」

 

「何も言ってないわよ、チビガキ」

 

「あぁ──っ! 汚い言葉使いました──っ! お姉さんに言いつけますからね!!」

 

 マスターにゲームを返した後は深刻なレベルで洗脳されているリリィの正気を取り戻さなければならないと真剣に悩み始めた邪ンヌは勝手知ったる他人の家の如く、マスターの部屋を開くパネルへと指をかけた。

 

 ──開けてはならぬ。

 

(……?)

 

 ──絶対に開けてはダメだ。

 

 後少し指を動かせばマスターへの部屋へと続く扉が開こうとするその瞬間──何故か邪ンヌの脳内に冷酷女と揶揄するポチタではなくオルタ(黒王)の声が聞こえた気がした。

 だが、邪ンヌはただの幻聴の類だろうと重く受け止めず、扉を開けた。開けてしまった。

 

「ハイ、マスター、お邪魔す……ッ!?」

 

 鼻腔をくすぐったのはむせ返る程に生々しい性臭、だがそれはあまりにも嗅ぎなれた香りでもあった。邪ンヌの脳裏に浮かんだのはマスターにベッドの上で目隠しに猿ぐつわ、四肢をまんぐり返しの体勢で縛られ、どれだけ泣こうが、潮を噴こうが、漏らそうが、イかされ続けたかつての想い出。

 

 部屋の奥にいた全裸のマスターの足元に無様な女体が三つ転がっていた。

 

(あ、これヤバいわ)

 

 こちらを振り返ったマスターの眼光を見て、邪ンヌは悟った。完全にスイッチが入っている状態だと。そんな飢えたケダモノの前に誘い受けM寄り色白美少女がまんまと現れてしまったのだ。

 野生の熊と遭遇した時、決して背中を見せて走り出してはいけない。対象を刺激しないようにゆっくりと後ろ歩きで視界から消えるように離れる必要がある。

 

 ぽよん――と、後ろへ下がった邪ンヌの背に逃げ道を塞ぐ柔らかい感触があった。

 

「興奮します。私の知らない所でオリジナルの妹達がマスターと親睦を深めている事が。さぁ、お姉様もあの楽園へと飛び込み、私にさらなる疎外感を与えてより甘美な興奮をっ!」

 

 トチ狂った妹分が何故ここにいるのか理解が出来なかった。

 

(オルタ)を姉と慕うブリュンヒルデさんの妹達……。何ということでしょう、つまり私はワルキューレだったのですね……!あぁ、まさか私にこんなにもまだ見ぬ妹達がいたなんて!」

 

 頭のおかしい元聖女(ホラー)が何故ここにいるのかも理解出来なかった。

 

「ということは私にも戦乙女の素質が! ワルキューレサンタっ、今年のクリスマスはそれで決まりですね!」

 

 仮にそうだとしてもそれはお前ではないという突っ込みを邪ンヌはグッと飲み込んだ。

 

 頭のおかしい部外者×2の乱入により逃げるチャンスを失ってしまった竜の魔女。ニヒルに諦めの笑みを浮かべて、こちらへにじり寄ってくる狂化したマスターへ遺言を遺した。

 

「せめてシャワーは」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後の話というか、今回のオチ。

 

 今日だけで戦乙女何人抱けるかギネス記録に挑戦したマスターはマイルームでジャンヌ三姉妹+ブリュンヒルデ(オルタ)をリーヴスラシル(隠語)した。少なくとも彼女達で戦乙女のカウントが増える事はない。

 

 そしてこの展開を予知していたのか、実はBBは姿を消した後に北欧の量産型ワルキューレ達に特大型『HBチャンネル』を売りつけていた。

 ハイになったテンションのまま、全員を連れて再び『HBチャンネル』へと突入したマスターは統率個体達のピンクデータを同期し、完全に体が火照り上がっていた量産型ワルキューレ総勢150騎とマッチング。

 そのまま153騎+αと大乱交ラグナロクが勃発。

 天上の宮殿、ヴァルハラをイメージとさせるような大広間の神殿で数多の女体と一匹の獣が交り合った。

 

 

 後に邪ンヌは語る。

 

 

 ──150人以上もの女性を一人の男性が相手をするのは常識的に考えて不可能では? 

 

「アイツを誰だと思ってんのよ。その気になればカルデア中の女サーヴァント達を同時に相手出来るんだから。性経験も碌にないお人形(量産型)が何百騎いようが相手にならないわよ」

 

 

 ──『白式官能』で触手プレイですか? 

 

「ホントそれで適当にイカせてやれば、手っ取り早く終わる筈なんでしょうけど……。なんていうか、ああいう所がアイツのマメな所というか、女に対してマジメというか。はぁ……あの馬鹿、150騎一人一人、素の肉体で相手してたのよね……。辛抱堪らなくなったワルキューレ達がアイツにドンドン群がっていくのよ、全裸で。……あの光景を見てるとなんかアレ思い出したわ、こう大勢の蜂が一匹の敵に群がって、熱で殺すってやつ」

 

 

 ──熱殺蜂球ですね。

 

「そうそれ。でも殺されるのは群がった方だけどね、女体の球体からポトリ、ポトリ……って一匹一匹ずつ戦乙女が汁塗れになって剝がれ落ちてくワケ、球体はどんどん小さくなって、全員抱き終わった頃にそこに立っているのは男のアイツだけ。女体の丘で男は勃つってね…………私さっきから何を言ってるのかしら?」

 

 

 ──急に冷静にならないで下さい。

 

「いきなり自分をお姉様って慕う女が150人も増えた日には素面じゃ、やってられないわよ」

 

 

 ──貴女はどうしてたのですか? 

 

「は? 普通にアイツに好き放題弄られて死んでましたけど? 脳姉もちっこい私もブリュンヒルデも全員似たようなもんね、ざまぁみろ。…………だからまぁ、こんなプレイ内容聞いても何の参考にはならないと思うけど、香子。情緒の欠片も無いもの、ファンタジーの域よ」

 

 

 ──いえ、これはこれで。色々とやる気がもりもりと。

 

「チッ、これだから作家系サーヴァントは」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 


――数日後 






 1:Maspro12
 すごかった。
 
 2:Maspro43
 すごかった。
 
 3:Maspro24
 すごかった。
 
 4:Maspro139
 すごかった。
 
 5:Maspro111
 すごかった。
 
 6:Maspro45
 語彙力。
 
 7:Maspro69
 やっぱ妄想よりリアルのえっちがナンバーワン。
 
 8:Maspro99
 オマエもこんな機会をくれたBB様最高と叫びなさい!
 
 9:Maspro15
 BB様最高! BB様最高!
 
 10:Maspro100
 イェイイェイ! ラブラブえっち最高! ラブラブえっち最高!
 
 11:Maspro2
 何がびっくりってデアー様、あの乱交の中でも私達全員の区別がついてるっていうね。
 
 12:Maspro6
 「ろーちゃん」って耳元囁かれた時はほぼイキかけました。
 
 13:Maspro37
 私は「みな」。
 
 14:Maspro117
 私は「いいな」。
 
 15:Maspro58
 「ごーや」でち!
 
 16:Maspro24
 何か語尾おかしいのいたぞ。
 
 17:Maspro7
 デアー様直々に名前をもらうとかこれはもう統率個体よりも寵愛を授かっている証拠では?
 
 18:leader2
 …………過去最低の態度だぞオマエ。
 
 19:Maspro90
 ヒエッ
 
 20:Maspro78
 不用意な発言は控えろというのに。
 
 21:Maspro56
 これだけあの人にまいっちゃうと頭の羽根とかいつ消えてもおかしくないよね。
 
 22:Maspro132
 でもここでの戦乙女としての仕事も残ってますから。
 
 23:Maspro69
 さすがにスカディ様をお一人にはねぇ、できないっす。
 
 24:Maspro149
 男を取るか仕事(使命)を取るかで悩まされる事になるとは。
 
 25:Maspro99
 でも人間に堕ちたら、羽根コキプレイも同期プレイも出来なくなっちゃうよ。

 26:Maspro112
 それな

27:Maspro12
 けれど私はブリュンヒルデお姉様のように、人に堕ちての恋人風イチャラブセックスも捨てがたいのです。我が愛とか言われてみたい。

28:Maspro112
 それな

29:leader1
 では両方取れば良い話では?

30:Maspro23
 ?

31:Maspro10
 ???
 
32:Maspro107
 はい?

 33:Leader3
 人になりたい時は頭の羽根をもぎ取って、戦乙女になる必要がある時に付け直せばいいでしょう。

34:Maspro45
 ????????????????

35:Maspro148
 理解が追いつかない。

36:Maspro90
 先輩方もしかしてヤリ過ぎてバグってらっしゃる?

37:Maspro23
 そんな果物をもぐみたいに取れるわけ。

38:Maspro100
 イケたわ。

39:Maspro56
 本当だわ。

40:Maspro48
 えぇ……。

41:Maspro29
 えっと……この取れた羽根は?

42:Leader2
 クローゼットにでも入れておけば?

43:Maspro:105
 そんな扱いでええんか。

44:Maspro61
 オーディン様ぶちキレそう。

45:Maspro36
 いやむしろ爆笑するかと。

46:Maspro76
 戦乙女のシステムが狂っちゃうぅ。

47:Maspro45
 もう割と前から狂ってる定期。

48:Ane
これからは姉妹仲良くやっていきましょう!

49:Maspro7
 そうですねお姉様。

















次回のスカディ様はストレートな純愛寄りで行こう。





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スカディ様は愛されたい(スカサハ・スカディ 前編)


《ネタバレがない地獄界曼荼羅 平安京 予告編(大噓)》


『ンンンンンッ――しつこい』

『あなたたちは本当にしつこい 飽き飽きする 心底うんざりです』

『口を開けばクリスマス 鈴鹿サンタ 黒ギャルおっぱいと馬鹿の一つ覚え』

『拙僧が実装されたのだからそれで十分でしょうに』

『アーゲードで3D黒ギャルサンタおっぱいと乳繰り合えるから何だと言うのです 自分は幸運だったと思いマイルームで拙僧を突き続ければ済むこと』

マスター「お前何を言ってるんだ?」

『拙僧は拙僧の責務を全うしましょうぞ』

『何も 難しく考える必要はありません。初めての相棒サーヴァントとして共に人理を修復し、苦楽を共にした拙僧を陳宮殿の弾にするなどそんな極悪非道な真似をする者はいない』

『オタクに優しいギャルなど存在しないのです いつまでもそんな妄想に縋ってないで ログボで聖晶石を稼いで静かに暮らせば良いでしょうに』

『殆どの人間がそうしている 何故あなたたちはそうしない?』

『理由は一つ カルデアは異常者の集まりだから』

『異常者の相手は疲れました。いい加減終わりにしたいのは拙僧の方ですぞ』


マスター「リンボ……お前は 存在してはいけない生き物だ」

そして、命の価値に区別なく――
次号、地獄界曼荼羅 平安京で
自爆開始(掎角一陣)!!!





カルデアコレクションにて、卑弥呼、織田信勝、ゴッホ、ネモ、伊吹童子更新。


Q:カッツは男では?
A:雌にして、姉上共々抱いてしまえば関係ありません。

Q:ネモシリーズにはまだ性別が確定していない娘がいますが?
A:関係ない。むしろ興奮する。

Q:アーケードはやらないの?
A:据え置きで出してくれれば、課金要素があっても100%買うから。

Q:前回投稿から3ヶ月経ってますが。
そ れ は ご め ん。




ポンコツ女神様、スカサハ・スカディ回になります。




 元北欧異聞帯、現スカンディナヴィア半島南部。

 3000年以上冬が続いたその地にはようやく春が訪れていた。

 雪解けと共にうららかな陽ざしが大人になれなかった子ども達を照らしている。

 

 さらに付け加えれば、『春が訪れた』意味はもう一つあった。

 

 戦乙女達にも春が訪れたということ、そう今や北欧中全ての戦乙女達は浮かれていた。

 

 

 

 春、それは恋の季節。即ち、色ボケ。

 

 

 

 女王スカディの命令を機械的にこなすだけの存在だった彼女達が初めて得た『恋』『愛』『快楽』の概念。

 北欧中で人間達の守護、土地の調査、インフラ整備を行いつつも、飛行している彼女達は何かこうほわほわしていた。物理的にも精神的にもふわふっわしていた。

 

 ──もうウチの彼ピが可愛すぎて──。

 ──起きるまで頭ナデナデされたい──。

 ──見て見て、彼にもらった首飾りぃ、なんか千年生きたヤドカリの貝殻でつくったんだって──めっちゃエモくない? 

 

 統率個体、量産個体問わず、彼氏いない歴=稼働年数である彼女達がキャラ崩壊するレベルでバグり出していたのだ。もうピコピコしている頭の羽根からハートマークを飛ばしまくっている。隙あらばラブコメ臭を撒き散らしている。

 そんなボケボケ状態の戦乙女達が現在、北欧の至る所で目に出来る。加えてその空気に感化され、いつも以上にイチャついて困り刺されて、血を撒き散らしている(ガッツが無ければ即死だった)シグルド&ブリュンヒルデもいたがそれはいつものことなのでスルー。

 

 まさに今の北欧は空前のラブブーム。どいつもこいつも甘ったるい電波を垂れ流しているのであった。

 

 けれど、そんなシュガーな空気に乗り遅れてしまった者もいる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──オスロ・フィヨルド北部、氷雪の城。

 

 

「いいの?」

 

 大広間で年頃の娘のように氷でできたテーブルに頬杖をついてスマホを弄っている少女がいた。

 ──アイヌの少女英雄シトナイ、北欧神話の女神フレイヤ、フィンランド神話の魔女ロウヒの三柱がある聖杯戦争において最高の出来と謳われたホムンクルスであった少女と融合し、アルターエゴとなった存在。

 

 ここでは便宜上、そして彼女自身がそう定めている以上、『シトナイ』と呼称しよう。

 

「本当に良かったの、お義母さん?」

 

 シトナイは態度こそはどうでもよさそうに見えるが、その声色だけは心配そうに汎人類史において自身の中にいるフレイヤの義母にあたる人物──否、神である女性、北欧異聞帯の女神──スカサハ・スカディに声をかけていた。

 

「何がだ?」

 

「何がって……わかってるでしょ。あの娘達(戦乙女)みんなに先越されちゃってるけど、このままでいいのって意味で聞いてるの」

 

「…………ふふ、何の話か分からぬな」

 

 ここに来てまだ白を切るスカディにシトナイは大きく溜息を吐かざるを得なかった。

 いずれ役割を失うであろう戦乙女達にカルデアのマスターという再就職先(嫁ぎ先)を用意したのは彼女だ。それは3000年もの間、彼女達を北欧存続の使命に縛り付けてしまった罪滅ぼしなのか、感謝なのかは本人しかあずかり知らぬことだが、結果として女王スカサハ・スカディは空前絶後のラブブームに取り残された形となったのだ。

 

「時にフレイヤよ。おまえが先程から手慰みにしている薄い板は何だ」

 

「スマホよ、スマートフォン。カルデアのお兄さんにもらったの。凄い便利ねこれ、この肉体が生きてた頃はなかった代物だけど、今や戦乙女達だけじゃなくて、人の子達もみーんな持ってるわ。お義母さんの分ももらってるけど──いる?」

 

「戯け。斯様な汎人類史が造った玩具に惹かれるものか。それに私は名称ではなく、どのような用途で使うのか聞いて──」

 

「これがあれば、いつでも遠く離れたデアーお兄さんと通信できちゃうけど」

 

「もらうっ」

 

 シュバババッと目にも止まらぬスピードでシトナイが取り出したもう一つのスマホを奪い去るように手に収めるスカサハ・スカディ。瞬く間にえぐい指使いで文明の利器の使い方を理解する、ポンコツ臭はするがこれでも北欧神代及びルーン魔術の深淵まで網羅する女神。一を見て百を理解する彼女からすればスマホの使い方程度マスターするのに秒で十分。

 ただ何を妄想しているのか、ニマニマ顔でスマホを弄り回している推定年齢ウン千歳な義理の母にはシトナイも白い目を向けるしかなかったが。

 

「その態度でよくもまぁ、誤魔化せると思ったよね」

 

「ち、違う……違うのだ。これは別にだな床に就く前にデアーと言葉を交わしたいとかそういうのではなくてだな……。北欧を守る為にも今後カルデアとは協力体制は必須でその連絡手段として」

 

「あぁもう、そういうのいいから」

 

「娘が冷たくて、母はつらい」

 

 杖とスマホ、それぞれ握った両手をあたふたシェイクしてテンパリまくっている姿。ご覧あれ、これが異聞帯の北欧神話において最後まで生き残った神様である、まるで家族に「好きな人できたでしょ?」と指摘される女子中学生ではないか。威厳? 彼女にはないよそんなメニュー。

 

「もう意地張る必要なんてないじゃん。このままだと本当に行き遅れで売れ残りだよ? 周りの戦乙女達がラブコメ臭撒き散らしている中で『男共は見る目がないっ!』とか言ってチキって拗らせて飲んだくれているお義母さんの介護生活なんて私ごめんだからね」

 

「あ、あの……フレイヤ、もう少し手心というものをだな……」

 

 あまりに辛辣な言葉にスカディは涙目だった。

 

「ブルチキハートの女にそんなものはないわ! 好きなんでしょ! 生まれて初めて3000年の自分の努力を労われて、敵対していた立場だったのに心の底から守りたかった(世界)も救われて惚れちゃったんでしょ! だったら遠回りな事してないで、ちゃちゃっと告白でもしちゃいなさいよ!」

 

「だ、だが……」

 

「だがもへちまもないの! 前まではあんなに『愛そうか』なんて、これ見よがしに慈愛を振り撒いてた癖に一人に向けようとした途端に縮こまるのはもうやめる! いい!?」

 

 今のシトナイの様子はまるでバツイチの母を心配して何とか良さげな男とゴールインさせようとヤキモキしている娘に見える。厳密に言えば、スカディは結婚歴は無いのでバツでも何でもないのだが。

 だがそんなシトナイの発破でもスカディは後一歩踏み出すことができない。それは伴侶がいなくても生きてこれてしまった孤独な半生が彼女を臆病にしているのだろう。

 

「よいのだ。あの男には、デアーには私などが愛を囁かずとももう周りに十分過ぎる愛が溢れている。今更、私が奴に歩み寄った所で重みにしかならぬ。いやまぁっ、例えばの話だぞ、私がそんな、生娘のようにあれに言い寄るなどそんな事あるわけなかろう!」

 

「いやいきなりそんな顔をクワァッ! ってされた所でさぁ、照れ隠しが下手糞過ぎる……。ハァ、あくまで認めないのね」

 

「認めるも何も、無いものは無いのだ。つーんッ!」

 

「つーんじゃないのよ、このポンコツ女神。じゃあ、デアーお兄さんから求愛されたらどうするのさ」

 

「デアーから、だと……!」

 

 スカディは想像する。毎ターンクリティカル100%を叩き出すレベルでキラキラしているデアーを。具体的にはかつてオフェリアの前でキャストオフした全裸をイメージし、ワールドワイドな姿で熱くスカディを口説くデアーの姿を。

 

Ti amo(愛してる)……』

 

 現在、頭が沸いた妄想をしている彼女だが、それでもかつては神々に愛され、求婚され続けた女神。だが、『神々の花嫁』と呼ばれた彼女は誰に応える事もなく、そのまま取り残されてしまった。

 そんな北欧世界最後の神が、自身と自身を取り巻く世界を救い、誰に打ち明ける事が出来なかった艱難辛苦から解放してくれた男が──憎からず想っており、本心では心惹かれてしまっている男が自身に愛を囁いてきたら──? 

 

(なんだ……? この胸の痛みは?)

 

 彼女の胸に宿ったのは初めて知る感情。痛いのに、不快じゃなくて、心臓が不安と喜びが混ざり合ったような動悸を刻んでいた。デアーの姿を思い浮かべるだけで、胸が張り裂けそうになって、でも止める事が出来なくて──切ないのに、彼の事を考えるのが止められない。

 

 3000年間使う事がなかった感情に思考を委ね、巡り回り、それは熱い炎を産み出す。

 

 そのまま思考の渦から抜ける事が出来ずにやがて、北欧の女神は胸を抑えたまま、苦し気に氷の床へ倒れてしまった。

 

「え……? ちょっと……お義母さん!?」

 

 

 それは女神が生まれて初めて罹った病であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「急患です! 道を開けなさい!!」

 

 

 カルデアの廊下を時速80kmで白衣の天使が爆走していた。

 事の発端はマスターのスマホから連絡されたシトナイのSOS。

 

『お義母さんが倒れて……! 胸を抑えたまま苦しそうにしてて、私も色々調べたんだけど、魔術とか呪いとかおかしなものはかけられているようには思えなくてッ──』

 

 電話の向こうから伺えるシトナイの様子からして、事態は急を要すると判断したマスターはすぐさまどこでもドア(アビゲイル)を連れて、スカディをカルデアへと搬送した。

 

 神すら犯す原因不明の病──。

 

 ベッドごとナイチンゲールに担がれたスカディは緊急治療室へと運び込まれる。手術チームはフローレンス・ナイチンゲール、メディア、ヴァン・ホーエンハイム・パラケルスス、シャルル=アンリ・サンソンの計4人。医術、魔術、錬金術、あらゆるジャンルから人体に精通したカルデアのエキスパート達がこの前代未聞とも言える病に挑もうとしていた。

 

 その戦いの場に部外者が立ち入る事は許されない。集まったマスター、シトナイ、3人のワルキューレ達は赤く点灯した『手術中』のランプを見つめ、ただ彼女が無事であることを祈ることしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──峠を越え、ようやくスカディの容態が落ち着いた頃。診察室の空気は重かった。

 

「…………生まれて初めてなのだ。突然、心臓が激しく鳴り出し、死んでしまうのかと思う程に胸が痛みを訴えたのだ。まさか、神すら臥させる病がこの世に存在するとは思ってもみなかったが」

 

 診察室で憂鬱そうに語るスカディの話をナイチンゲールを含む、手術メンバーが真剣に耳を傾けていた。

 マスターの姿は無い。命にかかわる病である以上、これはデリケートな話題。部外者が容易に関わる事を現段階においてナイチンゲールはまだ許さなかった。今現在スカディと共にいるのが許されたのは医療メンバーを除けば家族であるシトナイだけである。

 

 彼女も倒れた義母に対して、何も出来なかった無力感に打ちひしがれているのかもしれない、スカディの後ろで不安気に手を握っていた。

 

「神代には発見されなかった病、私が生きた北欧では存在し得なかった病原菌。お前達が我らが地(北欧)を救う為に連れてきてくれたこの星の空気は余程、私の肌には合わなかったのだろう」

 

 スカディは冷静に分析する。何千年も生きて病などに罹った事はない自身が急激に体調を崩したというのならば、その要因も同様に急激に変化した外的要因に絞れると。魔術や呪いの類ではないのはシトナイが証明済み。そもそも神たる自分にはそういったものが通用することはまずあり得ない。

 

 ならば、可能性としてあるのはデアー達が連れてきてくれたこの外宇宙の地球に存在していた病原菌が女神スカディとの相性が極めて悪かったこと。

 

「このような事を頼める立場ではないのは重々承知である。だがどうか頼む。私の命はどうなってもよい、あの地(北欧)に生きる愛し子達は、我が娘(ワルキューレ)達はどうか、私を犯した病からは救ってはくれぬか」

 

 だがスカディが恐れたのは自身の死ではなく、この病の魔の手が大切に想う者達へとのびる事。

 己は死んでもいい。むしろサンプルとして隅々まで有益に使って欲しいと願った。

 

「あらゆる地獄を経験し、最も進化の可能性を抱えている汎人類史(お前達)ならば何とか出来るであろう?」

 

 それはスルトを打倒し、北欧異聞帯を丸ごと救ったという奇跡を成し得たカルデアに対する絶対的な信頼でもあった。

 まるで自身の死期を悟ったかのようなスカディの発言に室内の空気がより一層冷たく、重くなったような気がした。しかし、そんな空気に臆する事なくナイチンゲールは患者と向き合い必要な事を伝える。さらに付け加えると後半からのスカディの覚悟の懇願に関しては一切耳に入れていない。

 

「診察の結果、大体の所はわかりました。ミス.スカディ、いいですか? 慌てずに聞いてください」

 

「あぁ、覚悟は出来ておる……残り短い私の命、有意義に使うことを許そう」

 

 スカディの背後からシトナイの息を呑む音が聞こえた。

 

 

それは恋の病です

 

 

 もう一度、スカディの背後からシトナイの息を呑む音が聞こえた。

 

 

「…………………………………………………………………………それは、そういう名称の病があるのだな、コイノ・ヤマァイ的な」

 

「いえ、正式名称は現在の所ありません。好きな人にドキドキする感情の事です。心身症の一つだと思っていただければ」

 

「ふ、ふふ、鉄仮面のような顔で冗談を言うのだな」

 

「冗談ではありません」

 

「ならば何だ!? 私は恋のドキドキとやらでここまで(カルデア)まで運ばれてきたというのか!?」

 

「はい、では話を整理しましょう」

 

 ナイチンゲールはとても先程『恋の病』など口にした者とは思えない至極真面目な顔で叫喚しているスカディと向き合った。全ての患者を拳で黙らせてベッドに縛り付けて、治る(死ぬ)まで治療行為を続けていそうなイメージを抱かれがちな白衣の天使ではあるが、それはケースバイケースである。

 デリケートな()の病であれば、まずは対話から試みるのも別段、珍しい話ではない。患者が言う事を聞かないと分かればその限りではないが。

 

「特定の人物のことを考えると鼓動が早くなると」

 

「あぁ、そうだ」

 

「さらに司令官(その特定の人物)から求婚された姿を妄想したタイミングで胸に突然キュンキュンとした痛みが走り……息も出来なくなると」

 

「だからそう言っておる!」

 

 ナイチンゲールは部屋にいたメディア、サンソン、パラケルススに無言で視線を合わせた後に今一度真剣な顔で北欧の女神と向き合った。

 

それは恋の病です

 

「違うと言っておるだろうッ!! 何千年も生きて、ここまで胸が苦しくなったのは初めてなのだ!!」

 

「では初恋ですね」

 

「わからぬやつめ!!」

 

 どれだけ女神が激昂しようと、ナイチンゲールは淡々と事実を述べる。カルデアの医療トップとして従事している彼女の口から「恋の病」と告げられた以上、たとえ女神いえども、いくら否定した所でそれは絶対の事実として認めなければならない。

 

 事の成り行きを黙って見守っていたシトナイがようやく口を開いた。

 

お義母さん……私、外で待ってるから、終わったら呼んで

 

 それは快活な彼女にしてはか細く震えた声だった。頬はこれ以上ない程に紅潮し、涙目になった瞳は誰とも合わせられず虚空を見つめていた。

 

もう耐えきれない……私、彼に滅茶苦茶シリアスムードで助けを求めたのに、もう二度とカルデア(ここ)に来れないじゃない、マジ最悪

 

 必死の想いでカルデアのマスターと連絡をして、手術が終わるまで義母の無事を祈っていた自分がまるで馬鹿みたいじゃないかと顔を手で覆ったままシトナイは嗚咽を漏らした。その気持ちは良く分かる、しかもついぞさっきまでは「私の命はどうなってもいいから他の者達は救ってやってくれ(キリッ」とかやってた義母の存在が羞恥心に拍車をかけているのだろう。今だけ、フレイヤの神核をどこかにやりたい気持ちに彼女はなっていた。

 

「なっ、なんなのだ……」

 

「よろしいですか。ミス.スカディ。どうやら貴女は自身の病を軽く見ていらっしゃる」

 

「軽くとは、そもそも恋の病など馬鹿げた──」

 

「その認識を今すぐ改めるように。恋の病は立派な病の一つ。人が恋をする時に放出されるドーパミンはご存知ですか? 量が適正であれば心身共にプラスの働きをしてくれる脳内物質ではありますが、それも過剰となれば、睡眠不足、食欲不振、呼吸困難、心不全と多くの症状を引き起こし、さらには心の安定を図ってくれる神経伝達物質でもあるセロトニンも減少し、多大なストレスを抱え、脳や心を不安定にし、死すらも引き起こす。恋の病というのはそれほどまでに恐ろしい病なのです」

 

「お、おぅ……」

 

 息継ぎも瞬きもせずにゼロ距離でまくし立ててくるナイチンゲールにスカディは圧倒されるばかりだった。医の道を極めた人間にこうまで強く断言されると本当に自分が重い病に罹った気さえもする。恋の病、こわいなぁ。

 

で、ではっ! 私は倒れるほど、奴の事が大好きという事になるではないか!! 

 

「初めからそう言っているでしょう。恋する相手と結ばれない不安、悲しみ、寂寥感が症状を引き起こしているというのなら、治療法としては至ってシンプルです。恋の相手(司令官)と結ばれればいい。本来なら、今すぐに貴女と司令官を集中治療室(セックスしないと出られない部屋)に叩き込む所ですが……」

 

「セッ……!」

 

 解決方法がアマゾネス過ぎる。コイツ本当に医者かとスカディは耳を疑った。

 

「ですが、この病の治療には患者の自主性が最も尊重されるのは私も理解はしています」

 

 どうやら今からデアーと一発犯ってこいという展開にはならなさそうだと、スカディは安心しかけたが、「歩く陸軍省」、「善意のタランチュラ」と呼ばれた彼女がここで終わらせるワケもなく──。

 

「ですので猶予はしっかりと与えましょう。本日中に司令官と治療行為(セックス)を行い、パートナーとなること。1秒でも日を跨げばお二人を集中治療室(セックスしないと出られない部屋)へとご案内するだけなので心配の必要はありません。もちろんベストなのは患者(貴女)の自主性ですが」

 

 残念な事にカルデアには神代の女神でも脱出不可能な面白空間を造るのに長けた変態が何人かいる。肉体は未だ処女な万能な天才とか、宝具を解放すればナース服になる小悪魔後輩とか。

 恋愛偏差値がおこちゃまレベルなスカディには酷すぎるミッションではあるが、この婦長が行けといえばイケなのだ。もう彼女の未来は二つに一つ。自ら抱かれに行くか、無理矢理抱かれるか。北欧の女神は顔を真っ赤にして泣きそうだった。

 

「あ、あの、その、だからな、わ、私は、あやつの事を……。誰か……誰かいないのか……? 私を、助ける者は……?」

 

 今にも光の粒子になって消えそうな彼女の声にサンソンもパラケルススも沈痛な面持ちで首を横に振るだけだった。ナイチンゲールは表情筋が1ミリも動いていない。シトナイはもう部屋から出て行っている。唯一メディアだけが聞き分けのない生徒を諭すか如き慈愛に満ちた表情でスカディの肩に手をのせていた。

 

「ちなみに言っておくけど、彼女(婦長)の手で集中治療室行きになった場合は最初(前戯)から最後(ピロートーク)まで余すところなく、モニタリングされる事になるわ。初めてがそんな悲惨な特殊プレイになるのは100キルケー(叔母様)レベルで憤死ものだから自力で頑張ることね」

 

「それはどういう単位なのだ……?」

 

 北欧から遠く遠く離れた南極。ここにスカディの味方はいなかった。

 愛する男との営みを資料映像として、あるいはこれからのマスターの子供達用の保健体育の教材として残される未来を否定する為には自ら婚活する以外の選択肢は示されていない。

 

 おぞましや汎人類史。おぞましやカルデア。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 スカサハ・スカディが集中治療室(セックスしないと出られない部屋)に叩き込まれるまで、残り11時間。

 

 

 

 スカディは食堂のテーブルで頭を抱えていた。何か目的があって今ここにいるわけではない。何をどうすればいいのか分からなくて彼女はここにいる。人を遥かに超越した頭脳をもつ女神たる彼女ですら頭を抱えるしかない、それほどまでに混乱の極致にいるのだ。

 

 

 時系列を戻すと、診察室から出たスカディを心配そうに出迎えたのはスルーズ、ヒルド、オルトリンデの統率個体達。話によるとデアーもスカディの容態が安定したと聞くまで寝ずにここにいたようだった。

 

 ──ご無事で何よりです、女神スカディ。本来ならここでマスターと喜びを共にしたかった所ですが。

 ──まぁ、仕方ないんじゃない? マスターも色々忙しそうだったし、何だっけ? 刑部姫とかいう極東のお姫様が聖杯で微小特異点だかに引き籠ったって。

 ──我々の代わりに量産個体達と向かったので大事にはならないでしょう。……女神スカディ? お顔が少々緩くなっているようですが? 

 

 まだ覚悟も出来ていないのに、いきなり想い人とエンカウントするような事態にならなくて安心反面、少し寂しい気持ちもほんの少しあるけれど、彼が自分を心配して寝ずにいたという事実で喜色満面、口角が上がりに上がってしまう表情を表に出すのを抑える事が出来なかったようだ。

 

 話を聞くと、デアーは現在、量産個体のワルキューレ達50騎と微小特異点に向かったそうだ。

 具体的に原因を述べれば、一つ目の異聞帯──すなわちロシアでイヴァン雷帝をロボットと化した城の中でマスター&アナスタシアと3Pしながら倒したという字面にすると理解不能な黒歴史というか桃色歴史がフラッシュバックしたそうな刑部姫が錯乱状態になり、偶々あった聖杯で微小特異点に引き籠るといういつもの如く小規模イベントを起こしたという感じである。

 アナスタシアの方はケロっとしているというのに、今更になってあの羞恥に耐え切れなくなったようだ……これが姫力1ケタと5ケタの差。取り敢えず、スナック感覚で聖杯が使われてしまうここ(カルデア)の危機管理意識はちょっとガバガバ過ぎない? 

 

 ともあれ、今この場にデアーがいないのはスカディにとって好都合だった。

 強大な敵(想い人)に一人で立ち向かう必要はない。有能な仲間(パーティ)を集って、挑むのも悪くはない。

 このワルキューレ達をデアーの元に向かわせて、まだほんの数日。だが他のワルキューレ達の浮かれ具合を観察する限り、間違いなく自分よりは親交を深めている筈とスカディは予想した。ならばデアーと自分の橋渡しとして、偉大なる先達として、彼女達の力を借りるのも有用な一手となる。

 

 スカディは参考がてらに、ここ(カルデア)に来てからのデアー(マスター)との馴れ初めについて問うた。

 

 

 

 ──そうですね私はお互い服を脱ぎ合い、舐め合い、触り合いながら、寝所までに情欲を高め合ってベッドに辿り着いた瞬間に昂った性器をそれはもう獣のように出し挿れをして、汗と愛液と性臭で部屋中をしっかりとマーキングするような……。

 ──陰部を丸出しにして、自分から動くつもりがない私を玩具(オナホ)のように扱って、けれど人形(マグロ)に徹するつもりの私は嬌声をあげずにはいられなくて、そしてマスターは私をとても大事にしてくれて、衣食住性、全てを彼に捧げる退廃的で怠惰な快感は一度味わってしまえば抜け出せない沼の如き……あぁ、はぁ♡。

 ──あたしは感覚器官の羽根をいやらしくシコシコされて、排泄したばかりのアソコもべっとり舐められちゃって、ギンギンにおっきしたマスターの棒でお尻の穴も好き放題されて、あぁ、お漏らししながらイッてるのを見られた時はヤバかったかなぁ……♡

 

 

 

「こいつら交尾したんだ!!」と号泣しながらスカディは女神の全権能を駆使して、その場から逃げ出した。

 ついでにその流れでカルデアからも脱出しようと目論んだのだが……。

 

 ──きゃああああああ!? うわ待って、なに、何だ何だ、怖い怖い怖いぃ! いやぁぁっぁぁぁっ──…………。

 

 ナイチンゲールがスタンバらせていた。宝具『境界無き病棟(ボーダーレス・ナイチンゲール)』の使い魔、『白き貴婦人』達、数騎に捕獲される。のっぺらぼうのナース服が四足歩行で弾丸のように追いかけてくる様は中々にSAN値が削れる光景であり、DEX判定をファンブったスカディ様は泣きながら御用となって引きずられていく事となった。女神に対する扱いが雑過ぎる。

 

 結局の所、スカディが現在食堂(ここ)にいるのも、既成事実を成すまでカルデアから脱出が不可能だという事を身をもって分からせられ、フラフラとさまよった先に行き着いたのが偶々ここだったというだけの話。

 

 

「デアーと愛を結べばよいと寄越したのは確かに私が、いくらなんでも早過ぎるであろう……。ふ、ふふふ……光の速度で置いていかれてしまったな、いつだってそう、私はいつも取り残されていく、フフフフフフフ」

 

 ワルキューレ達のノロケを最後まで聞かずに逃げたのは英断だった。最後まで拝聴していたら、女神いえども精神が汚染されていたかもしれない、ピンク色に。

 

 机に突っ伏して、陰鬱な空気を撒き散らしていると目立ちそうなものだが、生憎ここは人外英雄のサラダボウルでもあるカルデア。古今東西神様から良く分からないナマモノまで英霊達が闊歩しているので、スカディの存在は雑踏に埋まっていた。

 

 しかし、それでも捨てる神あれば拾う神があるというのなら。

 捨てられている神を拾う良い女がいても良い。

 

「げっ……スカサハ。何よ、その格好、もうバニー姿は飽きたのかしら?」

 

 スカディが顔をあげればそこには美と自信をこれでもかと体現している美少女がいた。

 ドレスと鎧と下着が複合した扇情的な白き戦装束を纏っている女の名は女王メイヴ。

 うんざりした顔でスカディを見るメイヴは彼女を「次は、私がマスターの子を孕んでやるぴょん!」とうさぎ跳びでトチ狂った事を言いだしたあのケルトバニーと誤解しているのだろう。

 

 ヘルシーなフルーツサンドをトレイの上に乗せている彼女は偶然にも空いていたスカディの目の前の席へと腰を落ち着かせる。

 

「お、おまえ……こんな往来の場で肌を出し過ぎではないかっ?」

 

「えっなにその反応。不覚にもキュンってしてしまったって事は、あなた……スカサハじゃないわね」

 

「?」

 

 判断が早い。そして判断基準が酷い。

 だが確かに刺し穿つバニー姿でマスターの腰の上でうさぎ跳びをしているようなケルトのヤバい奴(スカサハ師匠)がメイヴの今の姿の露出程度でこんな初心な反応をする筈がないのだ。

 

「あぁ、はいはい把握把握。あなたが北欧の女王とやらね。親友(マスター)から話は聞いてたけど、()は本当にスカサハそっくりね……」

 

「むぅ、な、なんだ。そう不躾に我が顔を覗くではない、不遜だぞ……」

 

 じっとりと見つめられ、恥ずかしそうに顔を俯けるスカディの反応にメイヴは恋愛的な意味とは別に心が乱された。まるで生後生まれて間もない子猫がまだ満足に歩けなくて、コテンと転ぶ姿を見たような……そう、それは()()()。少なくともメイヴが生涯スカサハには抱くことはない感情だった。

 

「顔はスカサハなのに、反応はアレとは正反対。なにコレ、スカサハなのに可愛いとか意味分かんないだけど………………。ふむふむ、素材はいいわね。よし、ちょっとあなた今何か用事はある? 無いのなら、これから私の部屋に来てもらってもいいかしら」

 

 即断即決。フルーツサンドを素早くかつ上品に胃に送り込んだメイヴはスカディの手を取る。ナンパ師のような口上だが、我が道を行くメイヴが一応とはいえ用事を訊ねるなどと他人に配慮しているのは非常に珍しく、それだけこの小動物のような女神様が何か琴線に触れたのだろう。

 

「待て待てっ! 急になんだおまえは……私にはこれから──」

 

 同性とはいえ、いきなり見ず知らずの他人の部屋に連れ込まれる暇などそもそもスカディにはなく、断ろうとしたが、上手く言い訳が思い付かず言葉に詰まる。彼女が正直に「これからお前達のマスターと本日中にベッドで一発キメていかないといけないのだ」などと口に出来るわけもなく(それをするぐらいなら死んだ方がマシだろう)、困り切っていたが、彼女の目の前にいるのはこと恋愛戦においては殿堂入りを果たしていると言ってもいい恋多き女。

 スカディから醸し出されるラブ臭を嗅ぎ取ったメイヴは察しが良かった。

 

「あなた、悩みがあるわね。ズバリ、恋の悩み──!」

 

「な、何故バレたッ……」

 

「当然よ。あなたの目の前にいるのは過去現在未来はては並行世界までフラグを回収し、恋愛においては生涯無敗と呼ばれた女よ。ふふ、運がいいわねあなた、この私の教えを受けて堕とせない男なんていないわ!!」

 

「な、なんと──! …………では、その、で、デアー……おまえ達のマスターもお、おとせるのか?」

 

Excellent(素晴らしいわ)!! 私の超親友(マスター)に目をつけるなんてセンス◎よ。私に万事任せれば、今日中に初夜どころか結納まで済ませられるわ。ここだと人目がつきそうだから、さっさとメイヴちゃんルームにGoよ!」

 

 何も知らぬ幼女の如きポカーンとした様子でメイヴの手に引かれていくスカディ。メイヴはメイヴでテンションがどんどん上がっていた。異性の初めての友がマスターなら、同性の初めての友がもしかすれば、このスカサハ・スカディになるかもしれない……そんな予感がしていた。

 可愛がり甲斐がある女友達と超絶親友(マスター)について恋バナをするというのはメイヴの密かな夢だったりもする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 性懲りも無く発生した微小特異点、その中心に鎮座するチェイテピラミッド姫路城にマスターが入れば、中は惨憺(さんたん)極まる状況だった。あらゆる物が乱雑に散らかっている部屋の奥に何かの気配を感じる。

 

「入るぞ、おっき-。大丈夫だ、俺一人だ。武器も持っていない。おっきー、終わりだ。もう逃げることはできない、ランサークラスのワルキューレ達が50騎狙っている。見ろ、この騒動を。ここはロシアじゃない、カルデアだ。戦争は終わったんだ!」

 

「なにも終わっちゃいない! なにも終わっちゃいないんだ!! 姫にとって戦争は続いたままなんだ!」

 

 カラフルなミリタリー装備で全身を武装し、アーチャークラス(水着姿)となった刑部姫が鬼気迫る表情で現れた。

 

「マーちゃんとアナちんにノせられてセックスで巨大ロボを動かした。姫も確かにちょっと興奮してたけど……。カルデアに帰ってくれば、おスケベ姫だの、マスターの操縦桿を膣で動かす女だのみんな好き放題に言いやがる。あいつら、なんなんだ!! 何も知らないくせに!!!」

 

「間が悪かったんだ」

 

「悪かった!? 姫の時代はいつ来るんだ!! ……本当は期待してた……クイック版タマモッチとしてサポートの人権になるって! でも宝具強化はバスター強化だった! 公式がむさかべを押してくるっ!!」

 

 持っていた銃を力の限り叩き付けた刑部姫は、しばらく怒りを鎮めるかのように肩を大きく上下させていると先程までの激昂はどこへやら、その場にへたり込んでしまった。手のひらで抑えられた顔は悲嘆に染まっている。

 

「自称オタサーの姫がこんなところで死ぬのか?」

 

「姫……、イベントで結構出番があるから人気キャラだと思ってた。でも、戦闘モーションで蝙蝠出す時に『臭そう』とか、水着になっても『腹をひっこめるな』とかいじられる。お外に出るんじゃなかったぁ……。ちやほやされたかった……ジャックちゃんみたいに……もう恒常星5アサシンのガッカリする方だなんて言われたくない……。だけど、引き返せないとこまで来ちまったんだ。あたしゃバラエティ英霊だよぉ……」

 

 さめざめと涙を流す刑部姫の隣へマスターは座った。彼女は体が触れ合うその距離に苦しみが幾分か救われるような気持ちになった。

 

「毎日夢を見るんだ……。SAN値が下がりそうな暗い海に何度も射出される夢……」

 

「なんか正夢になりそうだね」

 

「あと、姫の宝具に全体スキルチャージと宝具OCチャージとNP20チャージが追加される夢を……」

 

「それは欲張りが過ぎる」

 

「サポートサーヴァントの筈なのに何故か一人ぼっちで戦わされる……」

 

「ぶっちゃけ単騎の方が向いてる説ある」

 

「陰キャだからか!? そんな所で(性能まで)キャラに寄せてくれなくていいんだよ! ……最初のエリちゃんとずっ友だった設定はどこに行ったんだ! 最近まるで絡みがないじゃん!!」

 

アイドル貴族(陽キャ)と引きこもり姫(陰キャ)の差が露呈してしまったんだ……」

 

 あまりの残酷な現実に刑部姫は泣きながら、懐から聖杯を取り出した。マスターはそれを奪う事はせず、無言で彼女の頭を胸元に抱えた。その優しさが今の彼女にはひどく応えた。

 

「この聖杯では姫は生まれ変わるんだ……。真の陽キャになって、マーちゃんとの絆Lvが15ぐらいまでになる人権サポートになって……ゆくゆくはギャルゲの如く一枚絵をもらってメインヒロインになるんだ……」

 

「そうだね、もしおっきーがそうなったら孔明先生も少しは休めそうだもんね」

 

「………………………………」

 

「いやぁ、出不精のおっきーにそんな社畜精神が宿ってるとは思わなかったよ。武蔵ちゃんも喜ぶんじゃない? あ、ちなみに金リンゴと虹リンゴどっちが好き?」

 

 刑部姫は聖杯をマスターに預け、スッと立ち上がった。その顔に涙はなく、全てを悟った表情だった。

 

「やっぱり姫はありのままの自分を認めてあげることにするよ」

 

(部屋)に帰ろう……」

 

 彼女はワーカ(周回)ホリックになるつもりはなかった。

 

 

 ──閑話休題

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いい? このままだとあなた、クハハうるさいアヴェンジャーとかアーサーアーサーうるさいバーサーカーとか、子ども子どもうるさいアーチャーにひたすらバフとNPを配るだけの女になるわよ。毎日毎日『ど・れ・に・し・よ・う・か・な』ってノイローゼになるまで杖を振るわせ続けられちゃうの!」

 

「お、おう」

 

 本来殺風景極まりないカルデアの一室を上品さと美しさと可愛さを黄金比でリフォームした自室でメイヴちゃんは熱く語っていた。

 雰囲気からして目の前の美女が自身と同じく王の位置に座する存在なのはスカディも察していたが、王と女の子である事を両立させかつ、誇りとして主張しているような彼女の部屋の内装と立ち振る舞いに圧倒されるばかりであった。それは北欧でも出会った事がない新鮮なタイプであったがゆえに。

 

「それで散々酷使されたあげく、今度は全クラス制覇しにきた金髪碧眼の小娘がきて、やっぱ時代は(クイック)、より(アーツ)だってポイってされちゃうわよ!? 分かってるの?」

 

「だが……デアーが私の力を欲してくれるのなら、それでも。捨てられるまでの間、傍にいれるのなら」

 

「私の超絶神親友(セックスフレンド)がそんなことするわけないでしょぉお!!」

 

「ど、どうした? 情緒不安定か?」

 

「私はあなたのそういう消極的な所を心配しているの。いいかしら? 男に都合の良い女になっては駄目なの。飯炊き女なんてそれはもう伴侶じゃなくて、オカンよ。まぁ、母親ポジでもいいとかいう連中はここにもいるけど、それは特殊な例だから割愛するわ」

 

「消極的にもなろう。奴にはもう女として私が及ぶべきもない魅力的な者達が侍っておる。今更、行き遅れの古臭い神が座れる席などないであろう」

 

 女として魅力的──きっとそれは彼女の娘達(ワルキューレ)の事も指しているのだろう。ワルキューレ達全てがデアーに喰われたと知った時は確かに取り乱したが、デアーとの逢瀬を語る彼女達の表情はスカディが今まで見たことがない程に生きた表情だった(内容は酷かったが)。同性である彼女すらも可愛らしいと表現できるレベルの彼女達の感情を目の当たりにした現実。さらにはそれをほんの少しでも引き出すことができなかった負い目があるからこそより一層魅力的に見えてしまったのだ。

 

 自分がデアーに擦り寄るのはそんな彼女達の幸せを崩す事にも繋がるのでは? 

 スカディが足踏みをしている理由は恥ずかしさもあるが、ワルキューレ達への負い目が生まれたからでもあった。北欧が平和になったから生まれた負い目。

 

 そんなスカディの内心を知って知らずか、彼女の悩みを些細なものとして吹き飛ばすようにおでこを指で弾くメイヴ。

 

「あうっ」

 

「馬鹿ね。私の冠位超絶神親友(グランドセックスフレンド)がそんな甲斐性なしなわけないでしょ。一人の女を愛するのにいっぱいいっぱいになるその他凡百とは一線を画すわよ。親愛なる冠位超絶神親友(ブラザー)は心から愛する者がいるのなら、たとえそれが何百人、何千人になろうとも全身全霊、身も魂も燃やして彼女達に愛を捧げるわ、例外なくね。今更、敵対してた神様が一柱増えた所で些事よ些事」

 

 まるでそれが世界の理だと断言するかのようなメイヴの自信にスカディはただただ飲み込まれるばかりであった。メイヴといると自身がウジウジ悩んでいた事全てが取るに足らないものだと本当に思ってしまいそうになる。

 

「スカサハ・スカディ。あなた、まだここ(カルデア)に来てからマスターに一度も会ってないでしょ」

 

「あ、あぁ……そうだが」

 

「自分の国を助けてもらったのなら直接顔を見て、まずはお礼ぐらい言っておきなさいな。それとも北欧の女王様となってしまうとありがとうも知らない礼儀知らずだったりするのかしら?」

 

「む」

 

「愛だの恋だの言う前にまずは最低限の義理は果たしなさい。それが終われば私がすぐに百戦錬磨の恋愛ノウハウを授けてあげるわ」

 

「二言はないな」

 

「えぇ」

 

 マスターを堕とせる恋愛ノウハウを授けるなどは言ったがメイヴにはそんなつもりはサラサラなかった。

 というより、その必要がない。

 そもそも、事が拗れている一番の原因として挙げられるのが、スカディが直接デアーと会うのを避けていること。

 ならばこの堅物女神が自らマスターと会いに行くに足るもっともらしい理由を作り出し、発破をかければいいだけ。

 男の方が純朴な草食系童貞というのなら、スカディもまとめて一線を越えれるようなシチュを用意してあげるのも吝かではないが、マスターであるというのなら心配はない。彼とスカディを会わせた時点でミッションはコンプリートされると言ってもいい。

 たとえどんなに面倒くさい喪女が来ようとも、パーフェクトコミュニケーション、『よし、楽しく話せたな(犯せたな)』を叩き出す唯一の神友(マスター)にメイヴは一ミリの陰りもない全幅の信頼を寄せていた。

 

「この時間なら、マスターは自室で暇をしている筈だからさっさと行っちゃいなさい」

 

 カルデアのマスターのスケジュールは常に逼迫している。

 人類悪としての第三宝具『竿繋ぎの多元性交(パラレル・セックス)』で十体の自己を並列存在させていても、女性達と蜜月の時を過ごす場合は当番表として厳密に誰がどの時間に過ごすのか管理されている程に。

 ゆえにマスターが暇をしている時間など、ほぼあり得ない。

 

「世話になったな……その──」

 

「メイヴ。女王メイヴよ。全く、名前も知らない女の部屋にホイホイついてきたの?」

 

「張本人のお前が言うのか……。だが、メイヴ、メイヴ、メイヴとな。分かった、覚えた。もう忘れぬ。また後でな」

 

 メイヴが言った「この時間なら自室で暇をしている」という台詞。本来なら、メイヴは今頃マスターと部屋で戯れている筈だった。この時間というのは、当番表に従ってメイヴに割り振りられた貴重な時間。

 だが、その時間をどう使うのも本人の自由。ならば気まぐれで恋に臆病になっている女の子に少し恵んであげても文句を言う者などいない。

 

 ▲▲▲

 

 メイヴ

【ちょっと今日、遊びにいけなくなったわ】

 

 

 マスター

【なんかあった?】

 

 

 メイヴ

【体調が悪いの。察しなさい】

 

 

 マスター

【りょ】

 

 

 メイヴ

【代わりに私の友達がそっちに遊びにいくから】

 

 

 マスター

【メイヴちゃんに俺以外の友達? 妙だな……。さてはエアとも?】

 

 

 メイヴ

【ころすわよ♡】

 

 

 マスター

【(´・ω・`)】

 

 ▲▲▲

 

 スマホから自室にいるであろうマスターに手早くメッセージを送ったメイヴは部屋の出口で何やら必死に杖を振りながらまごついているスカディに声をかけた。

 

「まだいたの」

 

「『平常心のルーン』と『魅了無効のルーン』と『体温維持のルーン』と『自己暗示のルーン』と『気絶無効のルーン』をかけて、あぁ、後は後は後は、『発汗抑制のルーン』も……」

 

「はよいけ」

 

 






いずれ、満面の笑みで笑うマスターとスカディの写真を入れたペンダントを身につけるようになるメイヴちゃん。


次回は後編(エロ)。






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スカディ様は溶かされたい(スカサハ・スカディ 後編)



許されよ。許されよ。
投稿を3年近くも空けた、我の罪を許されよ。

2万文字以上あります。時間がある時に読んでいただければ。



《前回のあらすじ》

ナイチンゲール「(マスターに)抱かれろ」

スカディ「っ…!カルデアっていつもそうですね…!北欧の女神のことなんだと思ってるんですか!?」

おっきー「そのネタ、旬を過ぎてるってレベルじゃないよ」




「ふぅ……」

 

 メイヴに教えられたデアーの部屋の扉の前で息を整える。

 

 うろたえるんじゃない……女神はうろたえない。

 別段何も特別な事をするわけではない。顔を会わせて、北欧を救ってもらった礼を尽くすだけ。

 あの「婦長」と呼ばれていた赤いバーサーカーが言っていたことは今は忘れよ……私がその、デアーとセッ……!をしなければならないという話は後回しだ。

 メイヴの言う通り、私は女神として当たり前のことを行うだけ。大丈夫だ、問題ない。既にこの身にはルーンを十重二十重に重ね掛けした。

 完膚なきまでに万全である北欧の唯一神である私に油断も慢心も一切ない。さぁ、開けるぞ、扉を開けるぞ、今開けるぞ、すぐ開けるぞ────。

 

「扉の前に気配ッ!!何奴ッ!」

 

「ぴゃいっ!?」

 

 扉開いた!?何故!?あっ、あっちから開いたからか!そっかぁ……ってデアーがおるではないか!うわ近い近い近い、どうしよぉ。あぁ……顔が良い。あれこんなにもキラキラしておったか?滅茶苦茶輝いていないか、いや輝いてる間違いない。頬とか熱いし、頭もフラフラしているが私は至って正常だ。うむ、デアーのこの輝きはもはやバルドル(光神)も超えていると言っても過言ではないのでは?いかん、いかん、いかん、何かこう形容し難い尊さ的な感情が……駄目だ直視できん。

 

「む?」

 

「ひゃん」

 

 やばい、こっち見た。あ、私の顔がデアーの瞳に映ってる。蒼穹色の美しい瞳に私が入り込んで、まさに一心同体。これはもう結婚と言っても良いのでは?

 

「スカディ……」

 

 ふぅわぁあああぁぁぁっ!?肩掴まれた!?顔がさらに近づいて!これはもうそういう事なのか?ゴールという事でいいのか?私は幸せになってよいのか?女としての幸せを掴んでしまってもよいのか?あぁ、だがここは人目がある……。おこがましいかもしれぬが初めてぐらいは二人っきりで真っ当な睦みあいを──せめて、お前の部屋で肌身を預けたいっ。しかし、挨拶代わりに接吻までなら……今、この場で受け入れる覚悟ぐらいは出来ておるっ!デアー、お前が望むというのなら私は──ッ!

 

 羞恥で震える体を覚悟とルーンで抑えつけ、目を閉じる、待望の瞬間を掴むために──。さぁ、こいデアー!愛そうか、愛そうか。私の返答はYes or Yesじゃ!

 

「体調は大丈夫?」

 

「はいっ!」

 

「そっか、本当に良かった」

 

「………………はい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、よかった。フローレンスから命に別状はないって聞いてたけど、自分の目で直接確認したかったからさ。うん、元気そうで何より」

 

 隣から快活に笑うデアーの声が聞こえる。ただ純粋に我が身を心配してくれた男を前にして、色事に狂った妄想をしてしまって自己嫌悪が止まらない。ふふふ、なんだ?行き遅れが過ぎて、まさかここまで桃色脳になっていたとはな……。ルーンがなければ即死だったぞ。

 

 さて、気付けば部屋へと誘われてしまったが……男女二人っきりの密室に寝具の上で隣同士腰かけとは些か性急過ぎるというか、心の準備が出来ていないというか──……あぁ、いかんいかん。また思考が桃色寄りになっておる。我が娘(戦乙女)達の電波(惚気話)をくらってしまったせいだなこれは。

 しかし……うぅ、なぁぁっ~顔が熱い……『体温維持のルーン』よ仕事しろ。

 

「ちょっと部屋暑いね。冷房でも入れよっか」

 

……すき

 

「なんて?」

 

「な、何も言っておらぬ!私も暑いと思っておった所だ!」

 

 私が自ら言い出す前に顔色の微小な変化から気付き、さらには気を遣わせまいと自分が暑いという事にして自発的に我が体調に心を砕いてくれる優しさ、何だ気遣いの神か。

 駄目だ、さっきからデアーの些細な行動全てを好意的に捉え、好感度の上昇が留まることを知らぬ。心臓が爆発四散してしまいそうだ。

 浮足立つ心を落ち着かせる為に別の話題を探そうとデアーの部屋を観察する、メイヴの部屋はこれ以上ない程に奴の個性で現れていたが、この部屋はやけに整理整頓されている……悪く言えば簡素な内装であった。無個性ではないが、オフェリアの前で急に全裸になるという愉快な性格をしている男の部屋にしては些か落ち着き過ぎているようにも思えた。

 

「メイヴのようにあまり部屋を飾り付けるタイプではないのだな」

 

「あぁ、ここ(カルデア)って結構イベントごとには事欠かないからさ、その度に自室も色々と模様替えするわけで。まぁ、だから最初からシンプルの方が手間も省けるかなって」

 

 汎人類史の人理を取り戻すという使命(オーダー)があるにも関わらず、祭事にかまけるとは何事だと……とてもではないが、我が口からは言えなかった。

 異聞帯の王であった私の台詞ではないが、人理修復という壮大な責務を今まで請け負ってきた彼等にほんの少しの憩いも与えぬというのはあまりにも酷であろう。あれほど多種多様な英霊達がいるカルデアだ、きっと壮大で華やかな祭りなのだろうな。

 

 むしろ、そういう余分が我が北欧に足りなかったのだ。

 こやつ(デアー)は──カルデアは人理修復(使命)それ以外(余暇)に対しても等しく本気だったのだろう。だから様々な者が集まり、多種多様な解決策も取れる。

 現状維持を選ぶことしかできなかった、異聞帯となった道を辿らせてしまった己が無能をどうしても嘆いてしまう。

 

「メイヴちゃんが言ってた友達ってスカディのことだったんだ」

 

 暗い方向に沈みかけた思考をデアーの声が呼び戻す。

 

「ん、友……?メイヴのやつが私のことを?」

 

「うん。友達が遊びにくるから、よろしくって」

 

 最初からお膳立てするつもりだったのか、まったくあやつめ。どうして、会ったばかりの私にここまでよくしてくれるのだ。

 多くの神々に粉をかけられては誰一人としてその求婚に応える事がなかった私、ラグナロクの果て、永きにわたってたった一柱の神として生きてきたせいか、友というものが分からぬ。

 だが、メイヴが私を友と呼び、その友が恋路を応援してくれるというのは……なんというか、悪くない。

 

「でもメイヴちゃんが自分から友達って言うぐらいなんだから、よっぽどスカディのことを気に入ったんだろうね」

 

「随分と親しげだが……メイヴも、お前の(つがい)の一人の内なのか」

 

「あぁ、違う違う。メイヴちゃんはただの親友(セックスフレンド)だよ」

 

「む?そうなのか」

 

 あのデアーが同性である私から見ても良き伴侶になりそうなメイヴに手を出していないのは些か驚いた。

 親友、親友か……まぁ、男女の関係全てが色事になるとは私もさすがに邪推はせん。むしろ私とデアーに共通の友がいるということは喜ぶべきことだ。

 うむ、デアーと私の今後の関係をより一層相談しやすくなったのではないのか。

 

「しかし、あの女は些か強引であるぞ。初対面で、しかも女神である私をいきなり部屋へと引き込んでくるのだから、あやつ、私が異聞帯の女王だったことを知らぬのではないのか?」

 

「昨日の敵が、今日の友になるのなんてカルデアでは割りと日常茶飯事だから別に気にすることはないと思うけど。多分、スカディのことをよっぽどほっとけなかったんだろうね。本人は否定するけど、大分世話好きな娘だから」

 

「うむ……それは十分身に染みた」

 

 あぁ、そうだ。普通にデアーと会話が出来ている喜びに忘れかけていたが、私はそもそも目的があってこの男に会いに来たのだ。

 北欧異聞帯の代表として、我が地に住む愛しき子達を救ってくれたデアーに礼を尽くすために。

 

「デアーよ」

 

 腰かけていた姿勢からヒールを脱ぎ、ベッドの上へあがる。頭の上にあるティアラを消し、重ね合わせた両手に額をつけるように平伏する。女王たる私がデアーに全てを捧げるが如く服従の体勢。

 

「我が北欧と、愛しき子達を救ってくれたお前に…改めて多大なる感謝を」

 

 土下座────この部屋に来る前に偶々、戦乙女(ヒルド)と出会ったときに教えてもらったデアーが住む国における最上級の感謝の意を示す礼式のようだ。

 

 ──ちなみに全裸で土下座して頭を踏みつけられるまでが汎人類史におけるスタンダードかな。そのあと足の裏で羽根をグリグリされたらぁっ、あぁ♡想像しただけでやばぁ♡今度マスターに頼んで……

 

 その後急に悶え始めた戦乙女(ヒルド)を捨て置いてこの部屋まで辿り着いたわけだが、さすがに全裸は無理だ、無理に決まっているであろう、馬鹿か。髪だけでなく脳まで桃色になったのか。

 異性に初めて肌を晒すのなら私はもう少しムードがある時を求める。

 ただまぁ、服を着た状態であれば頭を踏まれるという屈辱を甘んじて受けよう。さすがにあやつのように性的興奮を覚えることはあり得ぬが、そもそもあれ(ヒルド)はどうしてあぁなった?故障か?

 

「我が真名はスカサハ・スカディ。デアー、いや我がマスター()よ、北欧世界最後の神となった我が力をおまえに捧げることをここに誓おう」

 

 もはや北欧異聞帯の女王ではなく、従者としてこの男に仕えることに一切の躊躇いは無かった。私が受けた恩はそれほどまでに大きい。

 

 まぁ……ここで()()()を捧げると言えないあたり自身の臆病さに呆れてしまうがな……。

 それにあの凄みがあるバーサーカー(ナイチンゲール)に告げられた恋の病のことなど伝えるつもりは毛頭ない。私とて女のプライドはあるのだ。

 というよりも張本人におまえが好き過ぎたせいで倒れたなど言えるか阿呆。

 

「顔をあげてスカディ」

 

 言葉に従い、目に入った彼の顔は慈愛に満ちていた。

 それは我が居城で初めて直接顔を会わせた時、私の髪を撫で、労わってくれた時と全く同じ表情。

 だが一つ、あの時と異なる点を挙げるならば、今、私はマスターの表情に父性だけではなく、どうしようもなく男を意識してしまっている。

 

「お礼を言うのはこっちの方だよ。貴女がずっと持ち堪えてくれていたから──助けることができた」

 

 あぁ、違う……違うのだ。私はそんな言葉をかけられる資格はないのだ。

 ラグナロクの戦火より数多の神々から託された私は3000年もの月日をかけても北欧を救えなかった。

 人類史から下された未来無き(剪定されるべく)世界であるとの決定を覆すことができなかった。

 数え切れないほどの愛し子たちの命が私の手から零れ落ちてしまった。

 私だけの力では自らの国(北欧)を暖かき未来へ導くことはできなかったのだ……。

 

「貴女が諦めなかったからだよ。だから改めて、もう一度俺からお礼を言うよ」

 

 だというのにお前は、同情でも慰めでもなく──。

 

「ありがとう。あの世界(北欧)を助けさせてくれて」

 

 心の底から、迷いなく私に感謝してくれるのか。

 

「悪い男だお前は。弱っている女にそんな言葉をかけて……どうなっても知らぬぞ?」

 

 傍に寄り添い、縋りつくようにマスターの服の裾を掴んで吐いた私の言葉は神の威厳の欠片もない弱々しいものだったが、どうしてだろう……そんな弱さをこの男へ見せるのは、全く抵抗がなくなっていた。惚れた弱みと言うべきか。

 しかし、その言葉の弱々しさとは裏腹に我が心臓の鼓動は騒がしい程に鳴り響いている。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。何でか分かんないけどさ。それと──」

 

 なんだ?これ以上言の葉を重ねて私をめろめろにしても、我が好感度は上限突破しておるのだが。

 

「ベッドの上で男と女が二人きり。どうなっても知らないのはこっちの台詞だけど、覚悟は出来てる?」

 

 ………………ふふ、事前に気絶無効のルーンを10回ほど重ね掛けしておいて正解じゃった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 北欧世界に唯一の神として君臨し続けた女神スカディは誰しも一目見れば、神として相応しい超然たる風格を持っているとわかる。

 原初のルーンを自在に操り、気候・自然そのものに影響を及ぼす規格外の魔術にはその道に通ずる者であれば、畏怖・畏敬を持って心が折れる力の差を感じるだろう。

 まさに格・能力ともに神と呼称されて然るべきである存在。

 

 だが、そんな女神でもあり、王でもある彼女は──。

 

「あわわわわ……」

 

 それはもうテンパっていた。

 マスターとベッドの上で並んで座り、肩を優しく抱かれているスカディはまるで初めて風俗にやってきた童貞が如くガチガチに緊張していた。

 

 かつてはいわゆる神々の花嫁として、まだ存在していた他の神々に粉をかけられていたものの、結局それも恋のさや当て止まりとなり、本格的な交際に発展したことはない。

 まさに何千年熟成された処女であり、ようやく春がきた生娘でもある。

 

 ルーンの重ね掛けで精神の弱体耐性を極限まで高めてなければ、とっくにキャパオーバーになっていた。

 

「うーむ」

 

「な、なんだ?」

 

 そんな深紅の瞳に負けないぐらいに顔を紅潮させ、小動物が如く緊張しているスカディを間近にマスターは得心がいったかのように頷いていた。

 

「いや、北欧の神様たちがスカディを大事にしていた理由がよく分かったって感じ。庇護欲が半端ないわ」

 

「……?」

 

 ケルトの女戦闘民族・ナチュラルバーサーカ──―汎人類史のスカサハと外見はそっくりだが、その中身は全くの別物であった。

 端的に言えば、スカサハ・スカディは精神的幼女(ロリ)。マスターの脳内では何かこうスイカバーを片手に口を半開きにしてぬぼーっと立っているのが凄く似合っている彼女の姿がありありと浮かんでいた。

 

 確かにスカディの色事に関する耐性はこの間マスターにしっかりといただかれた現地民ゲルダよりも大きく劣っている。

 12歳の彼女(ゲルダ)よりも男性経験が無いというのならば、これはもうまさしく真性幼女と言って差し支えはないだろう。

 

 ともあれ、○千さいのスカディちゃんは先ほどから自身の体に仄かに宿っている熱に困惑していた。

 神々を滅ぼし、黒き太陽──北欧を苦しみ続けたスルトという存在の弊害か彼女にとっては炎、そして熱というのは忌避すべきものであり、好ましくないものの筈だった。

 故にそういった熱を生み出すような羞恥や恋慕の感情は出来るだけ起こさないようにしていた。

 肌は出来るだけ露出せず、異性には長く見つめられるのを避けるように。

 

(いったい、私の体はどうしてしまったというのだ……?)

 

 だが、好いた男によって生み出されているこの熱には全く不快感がなかった。確かに羞恥の感情はある、逃げ出したい気持ちさえも。けれどもそれ以上に心地が良い。デアーの隣にもっといたい。触れ合いたい。自身でさえも理解できない矛盾した感情が渦巻いていた。

 

「スカディ、こっちむいて」

 

「は、はい……」

 

 隣の男に乞われれば、神らしからぬ弱々しい声で素直に応じる。

 頬の手を添えられ、互いの息がかかる距離でデアーの顔を真正面から見つめるスカディ、耳まで赤く染まり、瞳はトロンと潤んでいる。まさに恋の病の罹患者に相応しい乙女の表情をしていた。

 

「あっ、その……」

 

「こうしているのは嫌?」

 

「い、いやではない……だがな、こうも見つめられると」

 

「じゃあ、落ち着くまでこうしてよっか」

 

「そ、そうさな……それが、んっ!?」

 

 スカディから動くことは当然不可能、そして「これからキスするよ」と身構えさせるのも少々酷かと思ったマスターが彼女を気遣い、不意打ちのキスを行った。

 瞬間──襲われる唇への暖かく柔らかい感触に眼前に拡がる好いた男の顔。女神様は自身に起きた現実を明確に理解できなかった。

 

「んっ、んふっ、ん、まて、そんな…んっ、いきなり……んちゅ、何度もぉ、んっ、んっ、んちゅっ♡」

 

 ようやく小鳥が啄むような優しいキスの嵐を唇に降らされていることを把握した所で恋愛経験値がイクラ種火レベルの彼女に出来ることはなく、ただマスターに少しずつ唇を捕食される毎に増していく全身を駆け巡る熱に困惑するしかなかった。

 

 だがその困惑に不快感はなく、キスの数を重ねれば重ねるほど侵食していくその熱はある意味病人であるスカディにとっては一番の処方箋であり、唇から漏れ出る声にどうしようもなく甘い声色が混ざり始めるのもそう時間はかからなかった。

 

「んっ、ちゅ♡んぅ、んむっ♡ますたぁ、お前は私に、んちゅっ♡んっ、んはぁっ♡何かしたのかぁ、んっ♡おかしいんだ、体がっ♡さっきから、熱い、熱くてぇ……♡」

 

 いやらしい水音を響かせて交わす接吻を続けながら、スカディは徐々にベッドへ押し倒されていく。

 男の湿った唇の感触、自身の熱いを唇を啄まれる快感に夢中になってしまっている彼女は既にベッドの上でマスターに覆い被さられて、逃げ場を失っていることにまだ気付いていない。

 

(あっ♡うそであろうっ♡マスターの舌が口の中にれろって入って♡キスとはこんなイヤらしいことまでするのかぁ♡)

 

「れろぁっ♡んじゅっ♡ちゅぱぁっ♡んぁ♡じゅむぅっ……んれぁっ♡んんっ……んぱぁっ♡はぁっ……だめ、だめだマスタぁっ♡あつい、あついのだぁっ…ちゅっ、ちゅむぅっ♡体が溶けてしまうっ……んんっ♡」

 

 両手は恋人繋ぎで拘束され、マスターと上下に重なっている彼女は自身が籠の中の鳥である事に気づかぬままディープキスを受け入れていた。最初のバードキスで既に蕩かされ、全身がゆるゆるになってしまった幼女神に口腔に入ってくる男の舌を防ぐ手段もなく、幾重にもかけた精神耐性のルーンはもう全て吹き飛んでいた。

 接吻未経験である処女舌を巧みに絡めとり、唇で吸い上げ、歯も歯茎も舌先で丹念に擽り、何度も何度も優しくけれど深く淫らにスカディの唇は奪われ続けていく。

 

「ちゅむぅっ♡じゅっ、ちゅむぅっ、んぅっ、れぁっ♡はぁ、ぁっ♡えっち、すごくえっちだぞぉ、ますたぁ♡このキスはぁっ、だめっ、だめだぁっ♡」

 

「んぅっ…………だめ?じゃもうやめよっか」

 

えぇ……?」

 

 いやらしい銀の橋が途切れて、突如としてマスターの捕食から解放されたスカディの吐息は切なく、寂し気だった。

 確かに拒絶の言葉を吐いたが、それは快楽に漬けられ、混乱した精神が条件反射で漏らした言葉であり、全く本気ではない。それは当然マスターも分かっている。スカディが初めてのキスに夢中になり過ぎてしまっていることも含めて。だからこそ──

 

「このままだと、スカディがキスだけで駄目になっちゃいそうだったから、次のステップに進もうかなって。これからもっと凄いことになるし」

 

「もっと、凄いことをって……あれ、私いつベッドに押し倒され……?え?ふぇぇぇっ……!?っていつ脱がされていたのだ私は!?」

 

 知らぬ間にマスターの腕に挟まれ、胸の下にいることも当然驚くべきことだが、それよりも自身の姿が深紫のドレスではなく、下着姿になっていた驚愕は肌を多く晒してしまっている羞恥を一瞬忘れさせる程のものであった。

 

「ベッドの上で好きな女性の服を意識させないで脱がせるのは、男なら誰でも持っているスキルだよ」

 

「そ、そうなのか、凄いな汎人類史の男は……」

 

 女神の魔力で編まれたドレスという魔術師からすれば、極上の垂涎物をエッチ目的で消失させる男は少なくとも汎人類史においてはこの男しかいない。

 

 マスターの世迷言はさておきスカディが今、身に纏っている下着は胸元が程よく露出され、谷間が強調されているプランジブラジャー。そして股回りのカットが高い位置にあり、付け根まで露出しているハイレッグショーツ。

 イマジナリーメイヴが「私からすればまだ地味すぎるぐらいよ!もっと太腿とかにガーターベルト巻くとかね!」等、後方相棒面で言いそうだが、「セックス」という単語すら満足に言えないか弱き女神からすれば、大分攻めた下着とも言える。

 

 というよりこの女王、自身が作成した戦乙女達には下着を装備させていない癖に自身はちゃっかりと男を堕とすモノは用意していたワケである。

 

「んっぅぅぅ……なんだ黙ったままこちらをじっと見つめて、何か言えばよかろう……」

 

 二の腕で胸を抱え、そわそわと落ち着きがないように内股のまま太腿を擦り合わせている彼女のそれは、恥ずかしい場所を隠す為にした何気ない行動だったが、如何せんその無意識がより一層目の前の男の欲情を煽った。

 

「ごめん、言葉を忘れるぐらいに見惚れていた(は?今まであんなに可愛らしい処女ムーブしておきながら、一皮剥いたらそんな自身のポテンシャルの限界値ぴったりの下着を用意しているとか何?俺だけの傾国の美女なの?しかも何だい?そのしおらしい態度は?誘い受け検定1級資格者か?もう許さん犯す。俺との交尾しか考えられないくらい抱きつぶしてアソコを子種で埋め尽くして、全身マスター専用お嫁さん肉奴隷になるまでラブラブセックスするからな一晩で終わると思うなよ)」

 

 スカディの態度にBBやクロエあたりのメスガキ要素が1%でも含まれていれば、GRANDSEX LAST BATTLE(※BGM「運命 ~GRAND BATTLE~」)が始まっていたが、ここは歴戦のマスターぐっと堪えた。

 

「そうか……ふふ、容姿を賛美されるなど、幾度もあったが、そのどれよりも嬉しいな。言の葉を放つ者が変わるだけで、こうも違いか……不思議なものだ恋というのは」

 

 たおやかに微笑みをこぼしたスカディは両手を拡げてようやくマスターを迎える決心をする。

 彼女の許しを得たマスターは腕から解放された豊満な乳房を下着越しに優しく愛撫する。両手で下からその重みを堪能するように持ち上げ、指の腹で弧を描きつつマッサージを行う。

 

「んっ、あぁっ、はぁっ♡」

 

 既に先ほどのキスで出来上がっている彼女の口からはいとも簡単に甘い啼き声が漏れ出してしまう。

 ブラの下から主張している中心の突起にはまだ触れないように、確実に女の快楽というものを体に教え込んでいく。

 

「あっ、ひゃんぅっ♡くすぐったいのに、それ、とても、気持ちいいっ♡んっ、ふぅ♡先ほどの接吻といい、何か私に魔術でもかけたのか?……あんっ♡」

 

 胸部を揉みこんでいる右手を残して、空いた手を太腿へと伸ばす。

 神々の花嫁として存在していたせいか、戦士としての性質が強いケルトのスカサハよりもやや肉付きがいいむっちりとした太腿の触り心地をマスターは楽しんでいた。膝裏から上へと五指と手のひらを駆使してせり上がり、余すところなく鼠径部まで到達する。鼠径部を伸ばしつつも、湿ってしまったクロッチの箇所にはまだ指は這わせない。

 

「んっ♡あっっ♡はぁっ♡あつ、いぃっ……♡触られたところが、どんどんっぅ♡はぁ、ぁっ、ふゎぁっ♡マスターのいやらしい手で私の体がつくりかえられていくぅっ♡」

 

 マスターの指先によってスカサハ・スカディは調律されていく。

『女王』『神』『支配者』『北欧の母』あらゆる仮面が剝げ落ち、只の女であるスカディの姿が。

 ベッドの上で喘ぎ、悩まし気に体をくねらせ、甘い吐息を漏らし、目の前の男に情欲を宿した視線を向ける。乳首が興奮してどうしようもなく勃っていることも、陰部が下着越しにはっきりと分かるぐらいにぐしょぐしょに湿っていることも彼女には一切の自覚がない。

 

「はぁっ──♡はぁっ──♡」

 

 荒い呼吸に顔ほどサイズのある胸部が上下へと動いている……もう既にブラへ指がかけられ、ぷるんっ♡と弾力のある乳肉が露わになってしまった。ここで自らを守っていた最後の砦が一枚ずつ剥かれてしまっていることに気づいた所でスカディは全身を赤らめたまま、固まるしかなかった。

 

「逃げちゃだめだよ」

 

 当然、逃げる気力も意志も無い。死ぬほど恥ずかしいが彼女は心の奥底で期待してしまっている──元来、人の熱というものを嫌っている筈の自身の心の変化を。腰のあたりからショーツへ指を通し、ゆっくりと下ろし脱がしていく男にこれから、自分の体はどうされてしまうのかと。

 

「わ、私だけは、フェアではないだろう……お前も──」

 

 か細く、絞り出した言葉は僅かながら残っていた女王の維持。

 再び、腕と脚で胸部と局部を隠したままの為、威厳の欠片もないが、それでもマスターへ服を脱ぐことを促したのは大きな勇気であった。

 

「あぁ……確かに、気の遣い過ぎも良くなかったね」

 

(ふっ、まぁ……私は一度北欧でお前の全裸を目にしている。いわゆる経験者というやつだ。今更男の裸程度で………………………………ふぇ?なぁにあれぇ?グングニル?

 

 かつて北欧異聞帯にて、オフェリアの前で『人類悪・キャストオフ』をかました時、魔力構成された雪を通して、一瞬とはいえスカディもマスターの全裸は目にしていた。だが彼女が視たのは通常時。

 オフェリアが「輝いている様を見ているっ!」と錯乱するほど、ワールドワイドだったとはいえ、現在絶賛スカディの顔面に見せ槍をかましている一品とはモノが違う。

 そもそもあれ程までに男の情欲を煽る反応をされてしまった以上、脱ぐ前からマスターの剛直はズボンの下からお前をマジで犯すと言わんばかりに膨らんでいたのだ。

 嬌声をあげ続けて、それ所では無かったスカディは気付くことはなかったが。

 

「……これ、わたしに、はいるのぉ?」

 

 幼女退行してしまったスカディにマスターは優しく答える。

 

「大丈夫。入るだけじゃなくて、もうこれじゃないと満足できないぐらいにしてあげるから」

 

「わぁ、こわぁい」

 

 自身の顔よりも長く、怒り狂ったかのように血管が浮き出ている剛直に怯えも少なからずあるはずなのに、何故か目が離せない。今まで鼻腔に入ったことのない雄の匂いに、呼吸をする度に陰部から分泌される愛液の量が増している。

 女を犯し、堕とし、番いとする獣の逸物。初めて見るそれに自分はどうしようもないくらいに魅了されてしまっているのだと。

 それでも何とかギリギリの瀬戸際で正気を取り戻したスカディは逃げるようにうつ伏せになり、マスターの肉棒を視界から外した。

 

「そ、そのだな。まだ面と向き合っての睦事は、ハードルが高くてな……」

 

 まるで幼子が注射を刺される瞬間にそこから目を離すような微笑ましさがあった。

 注射というにはあまりに可愛くないサイズではあるが、スカディの可愛らしい抵抗をマスターは特に止めさせるつもりはなかった。

 ──寝バック、それもまたヨシと。

 

 ただ、興奮状態の男性器を目の当たりにしたショックで今までの快楽で蕩けきっていた体が若干こわばっているのはよろしくない。

 マスターは挿入前に──むっちりとした彼女の尻肉を弧を描くように撫でつつ、空いた指で大陰唇をほぐし、指を湿らせた汁を潤滑油に膣へと指を進ませていく。

 

「んひぃっ♡」

 

 みっちりと閉じていた筈の淫裂は、マスターの指をいとも簡単に受け入れてしまった。ナカをかき混ぜ、膣壁を小刻みにくすぐってあげれば、いとも簡単に声が溢れ出てしまう彼女の体はこれ以上ないほどに扱いやすい楽器であった。

 

(ゆ、指だけで、こんな醜態を……まずい、一度を呼吸を整え……んぉっ♡これ、マスターの匂いっ♡あ、頭に入ってくるぅ♡)

 

 ドジっ娘ぽややん女神様の誤算、うつ伏せでガッツリ顔をうずめてしまったのはスカディが来室するまでマスターが使っていた枕。肉棒ほど濃い匂いではないが、手淫されながら恋してやまない男の残り香をダイレクトに嗅いでしまった彼女の全身の感度は跳ね上がってしまう。

 

「んっ、んんぅつ♡んはぁっ♡ますたぁ、ますたぁっ♡これはまずいっ……♡ゆび、ゆびが気持ちよすぎへぇっ……あっ、あっ、なかグチュグチュって、だめぇっ♡ひんぃっ♡へんになるっ、へんになるっ、腰なくなっちゃぅっ、んひゃあああぁっ♡」

 

 徐々にお尻も上がっていき、情けなく下半身は震え、漏れ出す愛液はシーツに幾つもの染みをつくっていた。

 マスターの二本指によって器用に掻き混ぜられている膣からはグチョグチョとはしたない音を奏でていた。

 

「イキそうになったら、ちゃんとイクって言うんだよ」

 

 言葉の意味も理解せず、ただ「イク」という言葉をマスターに乞われるがまま何度も何度も口にする度に自身の体の興奮がより一層高まっていくような気がした。

 

「ん゛ぅっ♡んぁっ♡はぁっ、ぁっ♡い、くっ?いくっ、いくっ♡いくいくイくぅっ──♡」

 

 ぶしゃぁぁぁっ──とガクガクと震えている股からダムが決壊したかのように潮が勢いよく噴き出してきた。

 

「あぁっ──♡はぁっ──♡はあっ──♡(これが、絶頂♡これが、セッ……クス♡本当に体が、なくなると思ったぞ……♡)」

 

 ぎゅっと縋るようにマスターの枕を抱きかかえ、スカディはゆっくりと呼吸を整えていた。

 もう彼女の中では「これでようやく私も経験済みの立派なレディだなっ」と達成感のようなものがあったが、ここまでが前戯であり──

 

「大分ほぐれてきたかな、これなら痛みはないよ。気持ちよさで死んじゃわないように気を確かにね」

 

「ほえ?」

 

 ここからが本番であるということを自身の膣口にあてがわられる堅く熱いモノの感触でようやく理解させられた。

 生まれたての小鹿のように震えている足腰では逃げることも抗うことも叶わない。ベッドの上でうつ伏せのままお尻を突き出しているスカディの体勢は図らずもヒルド頭淫乱が口に出した全裸土下座と同じ、いやそれよりも卑猥な格好であった。

 

「んお゛ぉっっ──♡」

 

 生まれて初めて男を受け入れるスカディの肉壺は丹念なペッティングのおかげか、ブレーキがかかることもなくマスターの男根を根元まで飲み込んだ。難なく肉体は処女を卒業したわけだが、彼女の精神はそれどころではなかった。

 

(っっ──♡指でされたときでも、頭がおかしくなりそうだったのに……よもや、それ以上があるとは──♡)

 

 挿入を完了したマスターはまだ腰を振り始めることはなかった。

 彼女の膣壁が男根を隙間なく包み込むように変形している心地良さに浸っている。女の園を自身専用のモノへと変貌するのを楽しんでいるようでもあった。

 

 衝撃、快楽、混乱、目まぐるしく変わる感情の荒波によって白目をむきかけたスカディの背中に全身をくっ付けるように覆い被さり、そして二人の体を掛け布団で上から隠す、ベッドの中から二人の顔だけが出ている状態、汗だくなまま密着しているお互いの体はまるで境目がなくなってしまったかのようだった。

 スカディの耳元でマスターが吐息をかけながら、囁く。

 

「あ、つい……♡ちかい、ぞマスター♡」

 

「ふぅ……ちょっとずつ、スカディのナカが俺の形になっているのわかる?」

 

「ひゃぁっ♡あっ、マスター、それだめっ♡耳もとで囁くの、やめよっ♡あんぅぅっ♡」

 

「今から10秒カウントしたら、動くからその間に心の準備は済ませておいてね、10──」

 

「10秒!?無理だ、そんな短い時間でなにをぉおんぅっ♡」

 

「6、5、4──」

 

「あっ♡あっ♡はっ♡はぁっ♡はぁんぅっ♡むり、むりぃ♡」

 

 繋がった状態のまま、催眠音声の如く耳元でカウントされてしまうだけで、スカディは全身をヒクつかせ、脳みそがトランス状態になり、頭が馬鹿になってしまう。

 囁かれる数字が小さくなる度に指の先まで駆け巡る快楽が高まり、喘ぎ交じりの呼吸が荒くなっていく。

「1」の時にはもう、これから自分がどうなってしまうのか期待しかないぐらいに頭は淫乱一色になっていた。

 

「はやく♡はやく♡はやく♡もう、動いて──♡」

 

「ゼ、ロ──」

 

「ん゛お゛ぁあ゛あ゛あ゛あっ♡あああぁっ♡あ゛ぁぁぁあ゛っっ♡んひぃい゛い゛い゛っ──♡」

 

 ばちゅんっ♡ばちゅんっ♡ばちゅんっ♡

 腰が動き始めれば、スカディは仰け反り、電極を脳みそに突っ込まれたかのような甲高い嬌声を叫んだ。

 

 まずは小刻みにトントンと一定のリズムで彼女の子宮がノックされる。

 初めたてのキスのように亀頭が子宮口へ何度も何度もバードキスをして、これからお前は男の精をたっぷりと飲み込むんだぞといった教育をヴァギナに行っているようだった。

 

「お゛ぉっ♡お゛っ♡お゛ぉぉっ♡」

 

 掛け布団に包まれている為、二人の肢体がどうなっているか傍から窺うことはできないが、蠢いている布の皺と影によって、中が見えなくともどんな動きをしているのか想像力を搔き立て、布越しに重厚感ある肉がぶつかり合う音とぐちゅぐちゅと体液を掻き出す水音が聞こえてくるのがあまりにも卑猥であった。

 

 スカディの体から快楽を逃さないようにマスターは後ろからぴったりと密着したまま両手も恋人繋ぎでしっかりと拘束を行い、巧みに腰を打ち続けていた。

 

「ん゛ぅうっっ♡ん゛くぅ゛っ♡う゛ん゛ぅっ♡ん゛ん゛ぅううっ♡」

 

 自身のナカを熱く堅いモノが行き来する感触、子宮口を突かれる快感、カリで膣壁を掻かれるくすぐったさ。全身に浮かぶ汗と忌避していた筈の人の熱。スカディにとっては身を襲っている全てが3000年以上生きてなお経験したことのなかった未知の世界。

 

 口からあまりにもはしたない声が漏れ続けるものだから、枕に顔を埋めて嬌声を押し殺していたが、弱体耐性として備えていた原初のルーンはとっくに砕け散っており、アホの娘と化したスカディは先ほどの焼き直しでマスターの匂いを吸い込み再び仰け反ってしまう。学習能力がまるでない、これが神代の女神の姿か?

 もう顔中は涎と涙で蕩けきり、頭の周りには♡と?マークが飛びまくっているようだった。

 

「ん゛はあ゛ぁっ♡あ゛あぁ゛っ♡ああああぁっ♡んぁおぉ゛っっ♡」

 

 小刻みに素早く腰を動かした次は、長く膣襞をえぐるようにじっくりとねちっこいストローク、そしてしばらくするとまた小刻みな抽送に戻り、緩急つけた交尾のサイクルを繰り返す。

 

「あ゛っ♡あ゛ぁ゛ぁっ♡とけりゅっ♡とけひゃうぅっ♡とへてなくなちゃっぅっ♡」

 

 激しい性交によってシーツの中はどんどん蒸していき、スカデイはこのまま自分が液体になって寝具に染み込んでいってしまうような錯覚にさえ陥っていった。

「自分はこのままマスターのベッドと化して、一生マスターとおはようとおやすみを共にしてしまう寝具になるのだと……いや、それはそれで悪くないのでは?」と朦朧とした意識の中で知性の欠片もない事を考えてしまっていた。

 

「あついっ♡あついのは嫌な筈なのにぃっ♡お前の熱がもっと欲しくてっ♡あ゛っ♡あ゛ぁっ♡ん゛あ゛ぁっ」

 

 ベッドが軋む音はより一層激しさを増し、膣内でより膨らんでいく肉棒の動きはラストスパートへと移る。もうゆっくりとしたストロークは無く、子宮口に密着した状態のまま決して離さず、腰を震わせ続けていた。

 先ほどまで亀頭で突き、カリ首で膣襞を掻くといった肉の感触で犯していたが、今度は下腹部を振動そのもので犯していた。子宮全体を揺さぶられ、脳髄まで快楽信号が行き渡り、もうスカディは何度もイッている。彼女の頭はセックスの事でいっぱいだった。

 

「あっ゛あぁ♡お゛ぉっ♡んお゛っ♡はぁ゛っ♡はぁっ──♡らめっ♡やめっよぉっ♡その腰の動きかた、しゅごく、えっひだからぁっ、りゃめぇっ♡」

 

「何を今更っ、さっきからずっとエッチな事しかしてないよ。本当に初心で可愛い娘なんだから、スカディは」

 

「やぁっ♡あっ♡耳元へかわいいって、ささひゃくのぉ゛♡禁止っ♡もう頭の中、お前だへになっちゃうかりゃぁっ♡」

 

「いいよ、なって。俺も今、スカディの事しか考えてないから」

 

「あ゛っ、はぁっ、ますたぁっ♡んっ?んむっっ!んぐぅっ──♡んふぅっぅ゛っ──♡んむぅっ────♡」

 

 性交に関しては右も左も分からない精神的幼女のあごを上げさせて、唾液が端から零れるくらい情熱的な口づけを交わした瞬間、下の口に濃厚な男の精を注ぎ込む鬼畜的な所業、だが全身を痙攣させながら射精を受け入れるスカディの表情は幸せそうにも見えた。

 その証拠に彼女は気を失う瞬間まで、甘えるようにマスターの口内で舌をたどたどしく動かし続けていたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 初めてを後ろからというのは、些かハードルが高かったのかもしれん、終始私は翻弄され、文字通りされるがままであったしな。

 まぁ途轍もなく気持ち良かったし、文句などある筈ないのだが、こうして恋人、いや夫婦になったのだから……もっとこう……イチャイチャしたい気分なのだ。

 

 あの衝撃的な性交から目が覚めた私は正面から抱き合うことをマスターに所望した。

 胸の谷間に水溜まりが出来るほどに全身汗だくなのは少々恥ずかしかったが、気にしないことにした。

 目の前にいるマスターも汗だくだったのがお揃いのような気がして、悪い気はしなかったというのもある。既に醜態はこれ以上ないほどに晒しているわけで、それなら余計なことはせず、あるがままにマスターともっと交じり合いたくなったのだ。

 

「はい、スカディ……ぎゅ──」

 

「むふふ、ぎゅ──♡ますたぁ、ちゅーして、ちゅー♡」

 

「はいはい、甘えん坊さんだね。スカディは……んっ」

 

「んっ、んちゅ♡ちゅぱぁっ、あっ、すきっ♡これすきぃっ♡んっ♡ちゅぅっ♡」

 

 さきほど、イキ続けた弊害か頭の中がふわふわする。普段なら絶対に出さないような媚びた声色でマスターに甘える。

 正面から腕を背中に回し、唇を交わす。マスターの涎を啜り、自らの涎もまた吸われる。お互いの汗が交じり合い一つになったような感覚。もう一生マスターの吐息だけ呼吸できそうになるぐらいに夢中になっていた。

 

「スカディの体はどこも柔らかくて、スベスベで、凄くエッチだね。ずっとこうしていたいぐらいに」

 

 は?マスターの体の方がエッチだが?引き締まった体に黄金比のようにバランスの取れた筋肉、けれどもこちらを威圧するほど強大ではなく、滴る汗玉からの光沢など、喉を鳴らすほどスケベである自覚があるのか?そもそもさっきから私の下腹部を押し付けている堅いソレが一番エッチであろうが、ふざけているのか?

 

「じゃあ、もっとぎゅーってして♡ぐちょぐちょにしてっ♡いっぱいちゅーしてっ♡ちゅ、んっ、んちゅっ♡」

 

 一言申したい気持ちになったが、やはり口からは頭の悪いほどに甘ったるい言葉しか出てこない。だってマスターとのちゅう♡が気持ち良いだもん、仕方ないであろう。

 

 あっ♡今度はマスターの唇が私の体に這っていく……喉から、鎖骨、胸元へ舌先で表面に浮かんだ汗を丁寧に舐めとられていく。

 

「舐めると美味しいね、スカディの体は。汗いっぱいなのに甘くてアイスみたいだ、こことか、特にね──はむぅっ……」

 

「ひぅっんぅ♡あぁっ♡胸のさきっぽだめぇっ……あっ♡あんぅっ♡ふぅっ♡私のおっぱい、マスターにたべりゃれてぇぇ……んひあぁぅぅっ♡」

 

 大きく開かれたマスターの口は私の左乳房の先端に乳輪ごとかぶりついた。齧るのではなく、唇全体で卑猥な音を立てながら吸い上げられていく。腰を浮かせた私はそのまま乳がマスターに吸い込まれて、食べられてしまう感覚にも陥った。

 今の私は氷菓子だった。マスターにねぶられる度に全身がトロトロになって溶けていき、啜られ、吸われ、口に収まっていく。

 

「はぁっ♡あぁっ♡マスターっ♡あんぁっ♡はっ、あつぃい、あついのだぁっ♡ますたあっっ♡あぁっ♡もっと、もっとぉっ♡」

 

 あぁ、自分を溶かし、蕩かし、犯す、この熱が堪らなく心地良い。

 

 ベッドの中で相も変わらず、抱き合っているため、体温はどんどん上がっていく。だが、この閉じた空間で熱に浮かれたように裸で求め合うのは堪らなくイイ。かつての自分ならあり得ない感情──。

 なるほど確かにこれは『恋の病』だ。今も胸の高鳴りは止んでいない、だがこの動悸は切なく苦しい痛みではなく、暖かいものだ。

 熱きものが好きになったわけでもなく、人の熱は依然苦手である。ただ例外ができただけの事。

マスター好いた男から与えられる熱はたまらなく愛しくなってしまった。いっそ溶かしてほしいと願うほどに。熱いのに暖かい、狂おしいほどに、愛おしい。恋というのは、愛というのは誠に不思議なものだ。

 

「マスタぁ……」

 

「うん、いいよ」

 

 股座を開き、秘所を押し付けるだけで彼は察してくれた。吐き出された白濁液と噴出した愛液でグショグショにみっともなくなっている筈の我が陰部を嫌がる素振りなど見せず、陰茎をあてがってくれた。初めに見せてくれた時より、いやそれ以上に勃起している巨根が、私の体に興奮してくれているということを証明してくれて、どうしようもなく嬉しくなってしまう。

 

「あぁあっっ──♡入ってくるぅっ──♡」

 

 ぬちゅ、ちゅぶっと卑猥な音が断続的に耳に入ってくる。

 一度目は後ろからだった。だが、今は真剣で、どこか親愛に満ちた表情のマスターを間近にしたまま挿入されている。

 これは……マズい、非常にマズいな。マスターの顔が良すぎる。え、私これほどまでにチョロかったか。

 いやだが、冷静に考えてみると、顔も良くて、性格も良くて、体も良くて、強くて、エッチが滅茶苦茶な上手な男とか他にいないだろう、加えて自らの国を救ってもらった恩義もある。これほどまでの良物件に抱かれて冷静でいられるか?うむ、私はチョロくない。

 

「あ゛ぁっ──♡んぁっ♡はあ゛ぁっ──♡きもちぃっ♡」

 

「よしよし、今度は優しく動いてあげるからね」

 

「ひゃぁっ♡あっ、頭もっ♡ナカもっ、なでなでされるとぉっ♡お゛ぉっ♡んあ゛ぉっ♡馬鹿になりゅっ♡」

 

 両手両足で抱き着く私の頭を髪を指で梳くように優しく撫でてくれた。膣内で蠢動している肉棒も加えて、上から優しく暖かい快楽、下から鋭く熱い快楽、毛色の違う快楽信号に挟まれて、脳内がマスターとのセッ……クスで埋め尽くされる。

 私に許されるのは幼子の如くマスターにしがみつき、享楽に耽ることだけ。

 

「んぁあ゛っ♡お゛っ♡あ゛っ♡ひぃい゛んぅっ──♡あっ、あっ、また、またくるぅっ♡さっきのがぁっ……あっ、い゛っ──♡」

 

 指の先まで全身が痙攣し、精神が体から吐き出されてしまうような感覚、私のナカにあるマスターのモノの動きが、後ろから挿入された時と一緒だと気付く。

 また私に熱く滾った精子を吐き出してくれるのだろう、先ほどまでゆっくりであったストロークが少しずつ早くなっていく。

 だらしなく舌は出て、肺から全ての空気を出してしまうほどに余裕はなく、軽い絶頂は数え切れないぐらいに訪れて、いつ気を失ってもおかしくない。それでも全神経、魔力、神性を駆使して意識を保つ。

 

「お゛ぁっ♡んあぉ゛っ♡溶かして、くれぇっ♡マスターぁっ♡わ、たしをあなたの、精液でぇっ♡体の中かりゃぁっ♡女王じゃないぃっ、あなただけの花嫁にしてぇぇっ──♡」

 

 今度はちゃんとマスターの顔を見ながら──正面から、この男の子種を受け止めたいのだ。

 己が彼の花嫁になったという実感をもって、果てていきたいのだ。

 

「あ゛んぅっ♡くるっ♡何かがくりゅぅっ♡はぁあっ♡あ゛んぅ゛んぅっっ♡ひぁ゛あ゛あっ♡んむぅう゛う゛──♡」

 

 肉棒の天辺が膣奥へ熱いキスを行い、子宮へ白き炎が注ぎ込まれていく。

 喘ぎ交じりの熱が籠った息を吐きだしていた口は彼の唇に塞がれて、お前は俺の花嫁だとプロポーズされているようだった。

 脚を彼の腰に絡め、後頭部へ手を重ねるように抱きしめ、下腹部を押し付け、合わさった口の中で不細工に舌を動かし、中へ出されている実感に酔いしれる。

 抱かれ始めてから、いつもの自分なら絶対に出来ないような行動、言動、反応ばかりだった。

 きっと後で一人になった時、思い出して恥ずかしさのあまりのたうち回ってしまうかもしれない。

 

「ん゛ぅっ♡んむぅ゛っ──♡んちゅぅっ──♡ちゅっ♡ん゛んぅ゛っ♡」

 

 それでもどうか──この熱が決して冷めないで欲しいと願い、私はいつまでもマスターの体温をその身に刻み込んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──スカディがマスターに初めてを頂かれた日から数日後、北欧、氷雪の城にて

 

『斯くして、獣の猛き炎は花嫁が纏った女王という氷を溶かし、二人は末永く結ばれましたとさ……』

 

 幸せそうな表情で男に抱き潰されているスカディが描写されている最後のページにはそんなナレーションが記載されていた。

 何とも言えぬ表情でスカディから渡された本を閉じた少女の名はシトナイ。

『恋の病』で緊急搬送された時に義母に付き添い、一度はそのふざけた病名の恥ずかしさのせいで姿を消していた彼女だったが、今は何かに耐えるよう小刻みに震えていた。

 

「どうであった?」

 

「『どうであった?』え、私の聞き間違いかな?カルデアから帰ってきたと思ったら何日も私室に籠って、それで出てきてから有無を言わせず、義母の情事を読まされた私に感想を求めたの?」

 

 後半からはページのほとんどが肌色成分だった薄い本(全215P)にはマスターとの出会いから初体験が女王スカディ本人の手によって多少脚色はあるが描かれていた。スカサハ・スカディ先生による生もの同人のデビュー作品である。いや、このページ数はもはや薄い本とは言えないが。

 頭が痛いと額を指で抑えているシトナイの頬が紅潮しているのは怒りか、はたまた別の理由か。とりあえず事実としては無駄にクオリティが高かったせいか、最後までしっかりと読んでしまったということ。

 

「いったいどこで、こんな技術を習得したのさ」

 

「原初のルーンでな」

 

「ルーンって言えば何でも許されるわけじゃないからね」

 

 だが事実マスター粒子を注入されてから、原初のルーンで出来る事が増えてしまったのだから仕方ない。

 現在のスカディのステータスを確認すれば『原初のルーン(−)』から『原初のルーン(性火せいか)(EX)』に変化してしまっているだろう。

 

「何そういうプレイ?娘の私を巻き込まないでもらえる?」

 

 スカディがマスターとの至福の一夜を過ごしてから、確かに胸を裂くような切ない痛みは治まったが、今度は胸を焦がすような熱が灯ったのだ。何かぶつけたい、発散したい、そういった欲望が止まらない……自分でも言語化できない持て余してしまう感情。

 マスターに日を置かずに同衾を願うのは、はしたない女と思われそうでNG。

 ナイチンゲールを頼るとまた面倒な事になる(結果的に今回の件は感謝しているようだが)。

 そんな彼女がカルデアをさまよっている時に出会ったのが、贋作英霊こと愛しのお姉様ジャンヌ・オルタと執筆活動に明け暮れているブリュンヒルデ・オルタ。

 

「曰く、マスターの女達は己と彼のまぐわいを書物にしたため、お互いに共有し、高め合っていると」

 

「やばぁ」

 

 その話を聞いて、スカディは天啓を得た。北欧へ帰り、マスターへの想いも愛も恋も憂いも涙も血も熱も全てをインクとして、紙に込め続けた。

 まさしくラブイズハリケーン、今のスカディは正気では無かった。ランナーズハイか如く眼もキマっている。これはまたカルデア医療室コースですかねぇと初恋が実って浮かれポンチになっていた義母を前にシトナイは悟りの境地にあった。

 

「で、どうであった。荒削りな所があるのは認めるが我ながら結構な大作が出来たと思うのだが」

 

「あ────うん。ここで口頭で伝えちゃうには勿体ないレベルの作品だったから、後でメールで送っていい?お義母さんも感想は見返せる方が嬉しいでしょ」

 

「おぉ、そうかそうか……そこまでか、これは他の者達からの感想も楽しみだ」

 

「……………………ちなみに私以外には誰に送ったの、この本」

 

「我が友メイヴに、ワルキューレ153騎、それとオフェリアである。安心するがいい、これ以上は他の者に読ませる気は今の所はない」

 

 正気に戻った瞬間♪終わったわ♪

 

 シトナイは未来の義母を想い、心で泣いた。これが恋の病を荒療治で治した後遺症とでも言うのか。わくわくと携帯端末を手にしている義母にかける言葉が見つからなかった。

 

 だが、感想はちゃんと送ろう。あれだけ楽しみにしているのだから、それが例え死体蹴りになったとしても。

 どんな形であれ、始めての創作品に感想を貰えるのはきっとドキドキで嬉しいことだろうから。出来るだけ早くと、義母が熱に浮かれている内にシトナイはその場を後にした…………取り敢えず後でカルデアのマスターは一発殴ろうと心に誓って。

 

 

 後にオスロ・フィヨルド全域にて、それはそれは盛大で情けない女神様の泣き声が聞こえたそうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──同じく数日後、メイヴの部屋にて

 

「結構、気に入ってたんだね。スカディのこと」

 

「まぁ……お堅い真面目ちゃんかと思ったら、光る所があってね。やることなすこと可愛らしいし、顔がスカサハだから余計にギャップでやられたわよ」

 

「てっきり、「私も入れてよ」って混ざってくると思ってた」

 

「ふぅ……それも考えなかったといえば嘘になるわ」

 

 白トレーナーにミニスカコーデ、簡素なルームウェアで惜しみなくマスターにパンツを見せつけながら、ベッドの上に横たわっているメイヴは先ほどまでページを捲っていた本を見せつける。

 スカディが発破をかけてくれた友へのお礼として、メイヴにくれた本の名は『異聞カルデア寝物語(原作・作画:スカサハ・スカディ)』。

 

「でもこれを見て、私が行かなくて正解だったと確信したわよ」

 

「何かご不満だった?」

 

「不満がないからこそよ。私がこんなスカディを目の前にして正気を保ってられると思う?」

 

「あ──」

 

 マスターはここで得心した表情を見せた。

 メイヴがどうして、スカディの初夜に参加しなかったのか。

 

「あなたも私も、こと情事に関してはペダルガン踏みのタイプでしょ?はい、お互いブレーキが利かないセックス熟練者。ベッドの上には、いたいけでサイコーに可愛い処女が一人。導き出される答えは?」

 

「玉突き事故、スカディがぶち壊れちゃうか」

 

「突くのは玉じゃないけどね。1日じゃ終わらせないわよ。BBのシミュレーター使って、少なくとも1ヶ月コースはイクわ」

 

「Oh、ケルトチック」

 

「あなたも人のこと言えないでしょうに」

 

 何せマスターもメイヴも互いを親友と呼んで憚らない相性の良さ。特にそのコンビネーションは寝所でより一層発揮される。

 

「スカサハの顔であんな乙女の表情見せられたんだもの、私だって気ぐらい遣うわよ。無理させて『メイヴの馬鹿、嫌い!』って言われたら普通に死ねるわよ私」

 

「あのメイヴちゃんが自身の欲望より、優先させる可愛さ……スカディってば恐ろしい娘」

 

「でもいつか、スカディの娘と母娘丼する時は私も呼んで、親友からの一生のお願いよ」

 

「段階を飛ばしすぎている。気が早いってレベルじゃない」

 

「憧れは止められないの」

 

 ブレーキが壊れていると自覚がありつつ、平常運転なメイヴ。

 そんな彼女が目の敵にしているスカサハと同一の容姿を持つスカディと親交を深めているのに不思議な気持ちになったマスターはつい口からこんな言葉を漏らしてしまった。

 

「いつかメイヴちゃんにもそっくりな娘と出会ってたりして」

 

「ハッ!あり得ないわねっ!」

 

 寝転んでいた姿勢から体操選手よろしく綺麗に回転し、ベッドの上へ着地&眼の横でダブル裏ピースをキめるメイヴ。まさに誰もが目を奪われていく黄金比のプロポーション。

 

「私は完璧で究極のクイーンであって、金輪際現れない唯一無二なの。もし、そんなのがいたら幼女化して、アタランテと一緒にオギャバブランドを開園してやってもいいわよ!」

 




【『カルデア寝物語』に関する追記事項】
 始まりはサーヴァント達とマスターの睦事を万能の天才レオナルド・ダ・ヴィンチが漫画として描き出したこと(当の本人はまだ抱かれていない)
 依頼を受け、執筆し、完成した品は依頼者の元にしか渡らないものだった。
 だが、いつからかマスターのハーレム内でシェアが始まり、やがて自ら筆を取り始める者達も現れ、謂わば彼女達だけによる即売会が始まった。
 好奇心からか、参考にする為か、純粋な性欲か、あるいはマウントを取る為か、様々な理由で彼女達の濡れ場は円環の理に導かれ、強大なネットワークを築き上げる。

 歴史書は時を超え過去を伝え、漫画は海を超え国が違う人々を感動させ、同人誌は理性を超え触れた者を熱狂させる。
 いつの世も書き物というのが余人に影響を与えるならば、人知を超えた彼女達と彼の交わりが記されたこの書物が概念となり、宝具となるのもおかしな話ではない。
 『カルデア寝物語』とはカルデアのマスタービースト0/デアーと女達の色事をコミカライズした全ての作品を指す。(※便宜上、作画がダ・ヴィンチではない場合は「異聞」とつく)

 『カルデア寝物語』この名を冠する書物を手にする時は心するといい。深淵をのぞく時あなたがその深淵に取り込まれない保証は無いのだから――。







 投稿空いた間も多くの感想ありがとうございました。返せてはいませんが、全て目を通しています(ありがてぇ&申し訳ねぇ)。


Q:何故、今更になって投稿?
A:転職ガチャSSRを引いたから

Q:次回は?
A:需要があれば。



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白のビースト編
ビーストウォーズ①(Fate Apocrypha編)


あけましておめでとうございマ!

本編だと思った?残念、200万UA記念&アポアニメ完結記念の特別編なのじゃ!

綺麗に終わったアニメに聖杯の白い泥を塗りたくっていくスタイルぅうっぅぅ!









0話にて、葛飾北斎更新。


 ifの世界、並行世界……あるいは剪定事象と呼ばれる物がある。

 

 

 

 可能性の数だけ、ifの数だけ、世界は分岐していく。大樹から分かつ多数の枝のようにどこまでも。

 

 

 

 だが、あまりにも枝が多いと栄養を吸われ続けた大元の樹は枯れはててしまう。正史とも呼ぶべきメインのルートが、いや世界そのものが増え続ける分岐の量に耐え切れず崩壊するだろう。

 

 故に、その世界の先がどん詰まり……わかり切った結末。すなわち未来が良い意味で悪い意味でも完全に定まってしまった世界は剪定されなければならない。不要な枝は切り落とされるのが運命。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 遠い遠い、どこかの世界――――。

 ルーマニアにて、黒の陣営と赤の陣営に分かれて起きた大規模な聖杯戦争があった。

 

 赤の陣営のマスターでもあるシロウ・コトミネこと天草四郎は大聖杯を使い、ある悲願を成就させる為に戦った。

 

『全人類の救済』

 

 全ての人類を不老不死という新たな存在に書き換える……魂の物質化。個人の欲望と争いを無くし、万人が善性で万人が幸福である世界。

 

 成程、確かに未だ誰も為し得た事のない未知の領域であろう……その世界は――――。

 

 もしかしたら、天草四郎の理想通り、全ての人間が幸せになれるかもしれない。

 あるいはその方法でも彼が思い描いた救いは全人類に訪れないかもしれない。

 いや、完成しきった世界として剪定される可能性もあるか。

 

 どちらにせよ、彼の願いはその聖杯戦争で果たされる事は無かった。

 

 天草四朗が聖杯戦争の勝者となり、全人類に救済をもたらす歴史は敗れ去った。

 星からすれば、それは繁栄なき、過った選択肢で作り上げられた『異聞帯(ロストベルト)』なるものか――――。

 

 

 

 天草四郎の夢を阻んだ一番の要因に上げられるのが名も無きホムンクルス……竜殺しの英霊の心臓を授けられ、後に自身の肉体を英霊と化して戦う術を得た『ジーク』という名のホムンクルス。

 

 

 彼がこの群像劇とも呼ばれる聖杯戦争で重要なピースの一つだったのは言うまでもない。

 

 魔力供給の糧とされる一ホムンクルスでしか無かった彼が自我を得て、魔力供給槽から脱出し、黒のライダーから助けられる所から物語は始まったと言ってもいい。

 

 

 だが、もしも――――『ジーク』なる少年がいなければ?

 

 

 

 もしも、黒のライダーがたまたまそのホムンクルスが倒れた所に出くわさなかったら?

 もしも、他のホムンクルスの捜索の手が偶然にも早く彼まで届いてしまったら?

 

 捕らえられ、供給槽に連れ戻され、魔術回路を駆動させたとして、黒のキャスターの宝具の炉心として彼の短すぎる人生は終わりを告げるだろう。

 

 そして、全ての人類救済を願った聖人の願いを果たすのに邪魔な最大の障壁は歩き出すことすらなく消える事となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……! はぁっ…………! はぁっ……!」

 

 

 現に今、()()()()において、生まれたままの姿で城内を這いずり回っていた彼に都合の良い救いの手が伸びるとは思えない。

 

 肩まであるウェーブがかった薄茶色の髪を乱し、筋肉が殆どついていない線の細い体へ必死に活を入れて逃げる。

 

 だが、もう捜索中の他のホムンクルスの足音が近くまで迫っている事がわかる。

 彼らはただ単に創造主の言う事を聞いているだけ、そこに感情の有無は存在しない。言われたままに逃げたホムンクルスを捕えるだけ。

 

 

「……い、いやだ……」

 

 性差を感じさせない、整った顔を歪ませて彼は体を動かし続ける。

 

 

(わ、わからない……自分がこれから、何をしたいのか、どうして、こんな事をしているのか……)

 

「見つけたぞ! あそこだ!! 」

 

(でも、一つだけわかる事はある…………自分はまだ、死にたくない……生きていたい……!)

 

「いやだ…………!」

 

 すぐ傍までにじり寄ってきている希望も無い未来に駄々をこねるように彼は涙し、拒絶する。

 

(だって……だって……!まだ、何もしていない……!こんな所で、終わりたくない……!)

 

 数人のホムンクルスの手が遂に彼の体を捕らえた。

 

「いや、だ……! いや、だ……! いやだ! は、なして……! は、なして、くれ…………!」

 

 駄々をこねる子供のようにその手を振り払おうと、必死にもがく。だが、他のホムンクルス達の手は離れる事はなかった。

 消えかけた灯火。彼の命運は今、尽きようとしていた。

 

(だれ、か……たすけて!!)

 

 現実は非情である……。弱々しくも必死な抵抗も、そのか細い願いもこの世界の耳に誰にも届く事は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(だれでも、いい……! お、ねがい…………!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?今、誰でもいいって言った?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

「え?」

 

 

 

 

「なっ……!?」

「だ、だれだ……!?」

「侵入者……!」

 

 

 異なる世界の狭間の扉は開かれた――。それは橙色の少女の想いに応じて、サーヴァントとして召喚された男ではなく一匹の獣として君臨する。

 

 

 ここは分岐点。本来ならば物語の主人公になる筈だった少年の大きな分かれ道。何者にもなれずに道具として死ぬ彼の未来は今、消えた。

 

 

 暴れる彼を押さえつけていたホムンクルス達はまるで最初からそこにいたように語りかける()()かを目にした瞬間、自らの使命、捕らえていたホムンクルスの事さえ忘れて距離を取った。

 純粋な人工生命体故か、この侵入者は駄目だと悟っていた。自分達が億単位の束で立ち向かおうとも、絶対に敵う事はない。

 

 比べるのが馬鹿らしくなるほど、生き物としてのスペックがあまりにも違い過ぎると。

 

 何よりも―――。

 

 何よりも一番恐ろしいのは、それ程までに力量差があるというのに、何故か自分達が目の前の存在にそれ程、恐怖や嫌悪感を抱けない事。

 

 

「ショタショタしい全裸の美少年を数人で捕縛しかかるとか、どう見ても薄い本案件じゃん。おっきーあたりが喜びそうじゃんよ」

 

 あぁ、だが……その分岐点に乱入した異分子は、枝どころか大樹さえも枯らしかねない劇物。

 

 

「だがここは現実、そんな抜けない展開はヒュー!とばかりにブレイクさせて頂きます」

 

 倒れていた美少年を突如としてこの世界に現れた訪問者は抱き起こす。抱えられていた彼は落ちかけている瞼を何とか開き、その風貌を瞳に入れる。

 

 

 

 所々乱雑に跳ねている腰まで伸びたその長い黒髪は獣の如く。

 

 腰に巻かれた白き外套。その獣が服として纏っているのは下半身のそれぐらいだった。

 

 ありのままの上半身、その肉体は筋骨隆々とまではいかないが、かといって痩身でもない、バランスの良い肉付きをしている平均的な体付き、なのに眼を離せずにはいらせない幼さと色っぽさといった相反する物が両立している魔性の魅力……。

 

 剥き出しになった上半身の至る所に令呪らしき、赤い刺青のような物が浮かんでいた。まともなマスターが見たらまず卒倒する出鱈目な画数。そして、少年の瞳には映らないが……その刺青は背中まで伸び、ある紋様を形作っていた。

 

 それはこの世界には存在しない……時計塔の天体科に所属している貴族でもあるアニムスフィア家が管理している『人理継続保障機関カルデア』のマークと酷似していた。

 

 

 

 助けられたであろう名も無きホムンクルスは朦朧した意識を踏みとどめ、振り絞った力で問いを投げかけた。

 

 

「あなたは……いったい……?」

 

 

「ふむ、ショタショタしい少年よ……。問われたのなら答えよう……そうさな。どうせならこの聖杯戦争の流儀に沿おうじゃないか」

 

 

 ホムンクルスを抱いていない方の手で、ギラ゛ン゛ッッ☆と横ピースを決めたその獣は言葉を続ける。トゥリファス……ユグドミレニア一族の本拠地たる城で何一つ慌てる事なく、ありのままで。

 

 

「ていうか、前から思っていたんだが、赤と黒があるのに、あの色が無いのもどうかと思うんだ。紅白歌合戦然り、オセロ然り」

 

 

 その存在の何もかもが異質、異常、異端。異分子なる『彼』が纏う空気を正しく感じ取っている他のホムンクルス達は逃げる事も、戦う選択肢も取れない、許されるのは只、呆然と立ち竦む事だけ。

 

 

 だが、助けられたそのホムンクルスは……。

 

 

「うん、やっぱり何だかんだでこの色が俺にはぴったりだと思うんだ。未来はいつだって『白』紙。諦めない人間がいる限り、どんな色にでも染まっていくだろう」

 

 

 ―――心臓の鼓動が高まるのが止まらない。

 

 

 本来なら物語の主軸たる役割を与えられる……『ジーク』と呼ばれる筈だったそのホムンクルスは同族達とは全く正反対の印象を抱いていた。

 端的に言えば、見惚れていた。眼が離せなかった。助けられたそのホムンクルスは今、胸の中にある熱い感情が何なのかわからなかった。

 だが、その者はずっと供給水槽の中にいた彼が()()()()()()()見た『人』だった。

 

 

「故に! ここに! このルーマニアにて行われる大聖杯戦争に!! 第三勢力として!! 『白』の陣営として参加する事を表明しよう!!」

 

 

 ―――この動悸はきっと恐怖からではない……じゃあ、なんなのだろう…………?

 

 わからない……。けど、知りたくてしょうがない。もっともっとこの『人』を見たくて仕方ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 これはサーヴァントの物語ではない。

 

 これはマスターの物語ではない。

 

 これは聖人の物語ではない。

 

 

 

 

 

 ――――あぁ、それにしても、なんて。

 

 

 

 これは、人間(ヒト)が願いを叶える物語でもない。

 

 

「親しみを込めてこう呼ぶがいいさ! 『白のビースト』と!!」

 

 

 ――――なんて、綺麗な『人』なんだろう…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これは全てを台無しにする物語である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ぐっぅ………! 我が居城に、土足で踏み込む命知らずがいるとは……」

 

 同時刻、『白のビースト』と名乗ったナニかがユグドミレニアの一族が保有するミレニア城塞に現れた時、当然のことだが、玉座の間にいるユグドミレニアの主たるダーニックと、そのサーヴァント、黒のランサーも何者かがこの城へ侵入した事は気付いていた。

 

 余りにも強大で異端な魔力を感じ取った黒のランサーこと、ヴラド公は玉座からよろめきながらも、威厳を失いまいと、ダーニックに出処を調べさせていた。

 同様に蒼白になりつつも、彼もユグドミレニアの主……。醜態は晒せまいとホムンクルス達を動かしていたが―――――。

 

 

「ハァッ……ハァッ……赤のサーヴァントでしょうか……」

 

「白々しいぞ……ダーニック、それとも余に否定でもして欲しいのか?」

 

「ならば……」

 

「あぁ、この気配はサーヴァントではない。かといって魔術師でも、只の人間でもない、我々の想像外の化生の類であろう……」

 

 忌々しそうに、そう呟く王。

 

 

 正確に言えば、侵入ではない、城を取り囲んでいる結界にも反応せず、あらゆる魔術的な監視の眼を掻い潜り、この城に現れたのだ。それは気配遮断のスキルを持っているアサシンのクラスであったとしてもそんな真似が出来るかどうか……。

 平常を取り繕っている黒の槍の主従の二人に冷汗が浮かぶのも致し方無い事。もし、そんな存在が赤の陣営にいたら、自分達マスターに安息の地はないという事になるのだから。

 

 その何者かが現れてから、黒の陣営全員を覆う形容し難い重圧。強大な敵を目の前にした恐怖ではなく、得体の知れないナニかがいるという未知そのものが覆っていた。

 

 人間だろうと、英霊だろうと、全ての生き物にとって最も忌避すべき恐怖は「未知」である。

 どんなに強大であろうとも、戦力差が絶望的であろうとも、わかる脅威、理解できる恐怖なら、挑む事は出来る。対処も出来る、何かをしようと具体的な行動が出来る。

 ただ、人はナニがいるのか、わからない。何のかすらわからない……底すら見えない真っ暗な「未知」があると、途端に進むべき方向がわからなくなってしまう。理外というのはそれだけで人を縛る鎖になる。

 

 だからこそ、人はその「未知」を消す為に、学び、進み、理解する。自分の世界から理解不能な物を消そうと、せめて何かしらの答えを得ようと。

 

 

 

「だが、何が来ようとも、理外のナニかであろうとも、余が侵略者を前に狼狽する事はあり得ぬ」

 

 ダーニックも黒のランサー、ヴラド公もこれはサーヴァントではないと断言出来た。

 だが、それは現段階で自分達が計る事が出来ないナニかの接近を許している事になる。どこにいるのかも何者かすらも……。

 

「僕のゴーレムでも、向かわせるかい……」

 

「いや、まだよい。狭い城内でいたずらに貴様の宝具を使っても二次災害に繋がる可能性が高い。まずはホムンクルス共に、下手人の正確な居場所と正体を掴めさせるとしよう」

 

「あ、あぁ!! そ、そうだ!全く! たかだか、侵入者一人を報告するのに一体どれだけの時間がかかっている!! 赤のバーサーカーもやって来ているのだぞ!!」

 

 未知の恐怖を紛らわすかのように、黒のセイバーのマスターであるゴルドがその肥満体質な体を揺らして、ホムンクルス達の製作者として癇癪を起し、が鳴り声を上げる。

 赤のランサー戦で何も成果を上げる事が出来なかったせいもあるか苛立ちを隠そうとしない。

 

 その後ろに控える黒のセイバーは何も語る事はしない。この城にて現れたであろう驚異に戦意を滾らすだけ。

 

 いま、この玉座の間にいるのは槍の主従、剣の主従、黒のキャスターの計5名。

 

 

 

 

「先生ッ! 先生! 大変です!!」

 

 そして、そこへ慌ただしく、癖っ毛の小柄な少年……黒のキャスターのマスターであるロシェが彼らしからぬ血相を変えた顔で飛び込んできた。

 

「どうしたロシェ。侵入者の正体が掴めたのかい……?」

 

「違うんです……違うんです……ホムンクルスが、ホムンクルス達がッ……!!」

 

 呼吸を整え、その続きを話そうとするロシェに、師でもあり、サーヴァントでもある黒のキャスター、アヴィケブロンが促す。どうやら吉報ではなさそうだが……。

 

「ちっ……! 返り討ちにあったというわけか!! 所詮は人形か!!」

 

「やはり、余達、自ら赴かねばなるまいか……」

 

 

 

「違うんですっ……! ホムンクルス達が全員、消えたんです!! 忽然と!!」

 

 腰を上げた、ヴラド達を制するようにロシェは叫ぶ。自分自身も信じられないと取り乱すように。

 

「警備に当てていたホムンクルスも! 捜索に向かわせたホムンクルスも! 供給槽に入っていた全てのホムンクルス達も! ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!! まるで神隠しにあったみたいに!!」

 

「は?」

 

 ポカンと珍しい間抜け顔を晒すダーニック。

 

「ファアアアアアアッ!?」

 

 そして状況を理解するのに数十秒有したゴルドは、奇声を上げて、泡を吹きながら失神した。

 そんなマスターを何も言わずに支えてあげる黒のセイバー、まじすまないさん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ミレニア城塞にて、全てのホムンクルス達が消えたのを、時同じくして樹々が生い茂るトゥリファスの地でもう一つの城が突如として現れた。

 

 

 その城はミレニア城塞よりも強大で堅固であり――。

 

 しかし、ルーマニアの地にはそぐわない和の作りであり―――。

 

 日本の城マニアがいれば、「お、姫路城か!」と一瞬気づき、全貌を見て「いやナンダアレ?」と吹き出す事必至――。

 

 

 

 異文化交流、違法建築上等なその城のかつての名は『チェイテピラミッド姫路城』。

 

 

 

 しかし、当時のように継ぎ接ぎかつ無理矢理な造りではない。

 何ということでしょう――。姫路城の和のイメージを乱さない為に、瓦と石垣で下にあるチェイテ城とピラミッドが形作られているではありませんか。

 かつては色もバラバラちぐはぐだったトンデモ建築物は完全に一つとなり、姫路城と同じ「白」のカラーで統一された城と化けました。

 三つの城を完全に一つとして同化させた匠の技に感嘆の溜息が漏れてしまいます。

 

 まさにルーマニアに現れた至高の芸術。

 

 そしてその異物なる城に異界から訪れた『白のビースト』は初めに助けたホムンクルスを始めとした全てのホムンクルス達を連れ込んだ。

 

 この城、宝具の名は『三白城の性鬼深愛獣様』

 

 

 

 

 

「あ?」

 

「な、んだ……あの奇怪な城は……? いや、城なのか、アレは……?」

 

 シェイクスピアの口車に上手く乗せられていたスパルタクスを監視する命を受けていた赤のサーヴァント、赤のアーチャー……アタランテ。赤のライダー……アキレウス。

 木々の間を駆け抜けていた二人の足が思わず止まってしまった。突如として現れた奇妙すぎる巨大な城に。

 そして、その城に目が引かれたのは二人だけではない、笑顔が絶えない強健なマッスル。

 

「お、おぉぉぉ!!圧制者!!あっせいしゃ!!アッセイシャ!!あの城に世界そのものを押し潰しかねない、人類の圧制者がいる!!アハハ、ハハハハハハハハ!!ア――――ハッハッハッ!!素晴らしい!!我が愛を示すのに、これ以上無い程に相応しい!!凱旋の声を上げる為、いざ征かん!!ハハハハハハハハハ!!!」

 

 それは反逆者の英雄である彼の本能か、この戦争における最も強大で凶悪な者の反応を嗅ぎ取ったのかもしれない。

 赤のバーサーカーである、スパルタクスは。ミレニア城塞を目標にしていた進路方向を突然変え、白き城へと走り始めた。

 

「ま、待て! スパルタクス!!」

 

「チッ、一体なんだってっんだよ!!」

 

 

 目まぐるしく変わる状況、制御が効かないスパルタクスを追って二人は巨大な白城へと近付く。

 城門まで迫ればわかる……見上げる程に巨大な城。外見と構造も含め、異様な佇まいに思わず、ギリシャ神話を代表する二人の英雄は息を飲んだ。

 

「これは……月にまで届きそうだな……」

 

「姐さん、この馬鹿でけぇ城は黒のやつらの宝具か?」

 

「それしか考えられまい。吾等の陣営でわざわざこのタイミングで宝具を使う者などいないだろう。あの女帝もこんな奇抜な城は作りはせん。黒の陣営が本拠地に責められるのを嫌がり、サーヴァントの宝具でこっちへ誘導した可能性が高い」

 

「だろうなぁ。バーサーカーの野郎は気にも留めてねぇか。どうせ聞く耳持たねぇなら、斥候役としてド派手に突っ込んでもらうかね」

 

「アーハッハッハッハッ!!! イクぞ!! 我が愛で圧制者を打ち滅ぼすべしぃ!! ハハハハハハハハハ!進め!! 進め! 進めぇ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいえ、それ以上、先に進む事はまかり通りません、トラキアの剣闘士よ。どうかお帰りを。ここで引くのなら、命までは取りません」

 

 これが黒の陣営の宝具だと、致命的な誤解をした二人とバーサーカーの前を阻む者がいた。

 白き城、かつてのチェイテ城にあたる城門が見えた時、そこを守る一人の金色の長髪をたなびかせる純白の剣士が。

 

 下着が見えそうで見えない丈がギリギリなスカートを穿き、纏うは純白のドレス、まるで闇と光が交じり合った黒と金の粒子に包まれた剣を大地に突き立て、仁王立ちしている剣士がいた。

 

 一見すると穢れを知らない少女のように見えるせいだろうか?()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()はやけに生々しかった。

 

 

 その者の名前が『白のビースト』と名乗った訪問者の名前とはここにいる赤の陣営は知る良しも無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――もう、姫のお城は託児所じゃないんだけど――――。いきなり、異世界ダーツの旅始めたと思ったら、魔術師のホムンクルスを大量拉致とか、マーちゃんはいつからテロリストになったのかにゃー? え、テロリストじゃなくて、ビーストだって?アッハイ、そういう事言ってるわけじゃないんだけどね。

 

 

 

 声が聞こえる。

 

 自分はどうしたのだろうか。

 

 酷く記憶が曖昧だ。

 

 

 

 ―――さすがにこの『三白城』の最上層。姫のマイルームには全員は無理だよ。マーちゃんがわざわざ連れてきた腐なお嬢様方か、あるいは男の娘スキーな大きいお友達の大好物になりそうなショタンクルスちゃん以外は、チェイテ層とピラミッド層の所で療養中です。まぁ、突然、誘拐されたんだから、困惑状態だけどね、皆。

 

 

 

 自分が何者なのか、何をしていたのか。

 

 自己の情報を構成する最低限必要な物さえ、簡単に出てくれない。

 

 俺は…………俺は――――。

 

 

 

 ―――うえ? ゲームと漫画、テレビに、小説に、スポーツ用品も与える?まずはこの世界にある物、ホムンクルスとしての生き方だけじゃなくて、ありとあらゆる生き方に続く娯楽の入り口を教えると?ほぉー、ほぉー、ま、あの子達は生まれたての赤ん坊みたいなもんだからね――、いいんじゃないの? 姫は認知しないけどー、自分の子供の事で手一杯ですもん。

 

 

 

 聖杯戦争……。

 

 そうだ、その戦争の為の消耗品として俺は、水槽の中にいて……。

 

 そこから、そこから…………死にたくないと願って、魔術を使って、逃げて、そこから、そこから――――。

 

 

 

 

 

 

 

「おや、目が覚めたかい?」

 

「あ…………」

 

 

 蒼空のような綺麗な瞳、荒々しい黒髪に、燃え滾るような上半身の紅い刺青。

 そうだ。今、目の前にいるこの人に俺は救ってもらったんだ。

 自分ではどうしようもない状況だったのを、突然現れて、まるで英雄(ヒーロー)みたく。

 

 そうだ、まずはお礼を。助けてもらったのだからお礼を言わなければ、世間知らずのホムンクルスだが、それぐらいの事は知っている。今、目の前にいるこの人に礼儀知らずと思われたくない。

 

「あ、あり……あ……ありが…………」

 

「慌てなくていいよ」

 

「あ……」

 

「あんな体で城中を這っていたんだ。それに今は俺が与えた聖杯も完全に馴染んでいない、ゆっくりでいい。深呼吸して、落ち着いて、目を閉じて、開けて、繰り返して、俺はここにいるから」

 

 震えていた手をギュッと握り締められる。

 焦っていた自分の心を溶かしてくれるような暖かい手が両手ごと包んでくれていた。心地良くて、なのにどうしてか恥ずかしくて、振り払いたい気持ちもあって…………。けど、今は言葉を、言葉を伝えないと。

 

 

 ―――ありがとう。

 

 

「助けてくれて……ありがとう……」

 

「うん、どういたしまして」

 

 

 やっと、やっと。この人ときちんとした形で言葉を交わせた気がする。

 

 

「ちょっと――、ここにあらゆる草食系オタクがほっとかない姫がいるんですど――、その姫をほっといて何をイチャコラしてんだ、こらー」

 

 声のかかった方向を見ると、テーブルと寝具が一体化した不思議な家具の中に入ってリラックスしている一人の女性がいた。

 眼鏡をかけた黒髪の女性、袖の無いゆったりとした上着を羽織っている。外見からもこの国の人間には思えなさそうだが…………。

 そう言えば、さっきからこの人の瞳に夢中になっていて気付いていなかったが、どうやらもうミレニア城塞ではないどこかに自分は連れてきてもらったらしい、色彩鮮やかで派手な絵が描かれた貼り紙が壁の至る所に、整った男女が色んなポーズを取っている人形達、それに見た事がない機械がたくさん。

 

 自分はそんな部屋に敷かれた寝具の上で眠っていたらしい。既に全裸ではなく、白く薄いローブのような物を着ていた。気を失っている間に誰かが着せてくれたのだろうか、何から何まで本当に申し訳ない。

 

「サー、ヴァント……?」

 

「ぶっぶー、残念ながら違うのだー。もはや姫はサーヴァントなど、格の低いカーストからツーランクぐらいアップした勝ち組へと昇格したのであーる。今、この場においては『白のアサシン』様と呼ぶがいいさ! あーはっはっはっはっ!」

 

「いいね、その小悪党臭。おっきーぽいよ」

 

「マーちゃん、失礼」

 

『白の陣営』、『白のビースト』、『白のマスター』…………何となくだが、繋がってきた。今、自分がどういう状況にいるのかが。

 黒の陣営に使われる道具として、俺にもこの聖杯戦争における最低限の知識は備わっていた。

 俺が……そして俺と同じ同胞達が所属していた黒の陣営と赤の陣営。

 

 だが、俺の知識の中には白の陣営なる存在は無かった。

 元々、この戦争は黒と赤の二つの陣営に別れて、勃発した戦争。そこに本来第三勢力が出る事は無い筈だ。ならば、どうして――――。

 

 

「さてと、じゃあ、俺はそろそろ大々的な宣戦布告に行ってきますかねー。おっきー、準備はいい?」

 

「はいはい、出来てますよーっと。全く、姫の配信チャンネルは戦争の道具じゃないんだけどー、と文句を言いながらもマーちゃんに頼られるとついついキャラ崩壊をしてしまう程に働いてしまうわたしのぶれっぷりよ。あるてらっちの方がうまく引きこもりライフを過ごしている気がするの――」

 

 ――グイッ……。

 

 パソコンのキーボードを目にも止まらぬ速さでカタカタと打ち込むおっきーと呼ばれた女性。そんな彼女に一声掛けて出ていこうとするあの人の服を俺はつい、掴んでしまった。

 

 

 

「ん? どうした?」

 

「いや、あの…………こ、れから戦いに行くの、ですか……?」

 

「ふふ、慣れないなら敬語は使わなくていいよ。話しやすい言葉ではなしな」

 

「貴方が何者なのか、まだ分からないけど、俺を助けてくれた事だけはハッキリとわかる…………けど、けど、その為にこれから戦いに行くのは…………」

 

 

 もしかしたら、自分を助けたからこの人はこれから戦争の場に赴き、傷を負いに行くのではと、ついそんな自惚れた事を考えてしまった。

 万が一にもそれが本当だとしたら。

 

 

「なんで」

 

「?」

 

「なんで…………なんで、俺なんかを助けてくれたんだ? 俺は何も持っていない……俺は、お、れは貴方に返せる物が……何もない……なのに、どうして?」

 

 さっきの『ありがとう』も本心からだ。今、自分がこうして生きている事も心から喜んでいる。あのまま捕まって良かったなんてこれっぽちも思ってない、だけど、それと同じぐらいに疑問があった、こんなに強い『人』がどうして自分()()()を助けてくれたのか。

 申し訳無さすら感じていた……こんな凄い人に自分のような、まだ名前すら無い空っぽの人形が救ってもらって良かったのか。

 

「親切心が不安なら理由をつけようか?」

 

「わわっ!?」

 

 両脇を掴まれ、持ち上げられる。幼子をあやす親のように。

 頬が熱くなり、さっきはあんなに見たかったこの人の瞳から急に眼を逸らしたくなった。あぁ、もしかしてこれが恥ずかしいという感情なのか?

 

「使い古された言葉だが、『気付いたら体が動いていた』っていうのがあって、これは案外、真理を突いていると思うんだよ。他者、モラル、理性、自身の行動によって起こる結果、影響、因果、打算、ある瞬間、そういった物を全て取っ払ってただ一つ自分がヤりたいと思う行為だけが残る事がある。それしか頭に浮かばない事がある」

 

 高い高いされながら、俺はこの人の言葉に耳を傾けた。

 

「人はそれを『本能』と呼ぶ。俺が君を助けたのは、それに従っただけの事。理由を答えるのなら『助けたいから助けた』なのさ。君だって『生きたい』というその願いは誰かに決められたわけじゃないだろう?何で生きたいのって聞かれたら、『生きたいからさ』としか答えようがないじゃん」

 

 確かに……。

 あぁ、そうだ。俺がどうしてか、供給水槽から魔術を使ってまで脱走し、碌に歩き方も知らない体で逃げ回っていたあの時、ただ、頭の中には『死にたくない』『生きたい』という想いだけが鳴り響いていた。この願いは確かに誰か言われて決めたものじゃない。

 

「少年、君のその願いは誰に憚られる事なく、口にして良い純粋な願いだ」

 

「俺は…………生きてていいのか」

 

「当然だとも、それは君の『本能』だ」

 

「俺は、貴方に……助けられていい、のか……?」

 

「モチのロン。むしろもっと『助けてー!』って甘えてくれてもいいんだぜ」

 

「はは、ははは」

 

「おぉ、やっと笑顔を見せてくれた。ちょっと半泣きだが、実に良い。グッドな表情だ」

 

 

 緊張の線と涙腺が緩み、眼に少しだけ涙が浮かんでしまった。みっともない顔を目の前にいるこの人に見られたくなくて、すぐに拭う。というかそろそろ降ろして欲しいのだが、確かに貴方からすれば赤ん坊のようなものかもしれないがその……いつまでも子供扱いは恥ずかしい。

 

 だけど、自分の『生きたい』という願いが間違いじゃないって他でもないこの人に認められたのは、自分がこの世界で得た初めての宝物、そんな気がした――――。

 

 

「そういえば、いつまで経っても君とか、少年呼びだとアレだな。ふむ、ショタキュートな少年、君の名前は無いのかい?」

 

「名前……?」

 

 名前か……。

 ずっとあの魔力供給槽にいた時も、「あれ」だの「これ」だのしか指されることしか無かった。便宜上、識体番号のようなものはあるが、これは彼が尋ねている名前の事ではないだろう。

 

 名前、俺の名前――――。

 

 

 

 ―――未来はいつだって『白』紙。諦めない人間がいる限り、どんな色にでも染まっていくだろう。

 

 ―――『白』の陣営として参加する事を表明しよう!!

 

 ―――親しみを込めてこう呼ぶがいいさ! 『白のビースト』と!!

 

 

 

「しろ……」

 

「ん?」

 

「シロ、俺の名前だ……『シロ』。貴方にはそう呼んで欲しい…………だめ、か?」

 

「いや、君にぴったりな名前だ。ようこそ、『人』が生きるこの世界へ。ハッピーバースデーだ、シロ」

 

 

 あぁ――――。

 

 

 自分の名前を呼んでくれる人がいる。自分という存在を認め、語り、微笑みかけてくれる人がいる。生まれてはじめ見たこの『人』をもっと見たいと、もっと知りたいと思った。

 

 

 ――――彼の事を知る。それは俺が『生きたい』という想いの次に浮かんだ確かな願いだった。

 

 

 

「むむ、むむぅ―――? 何だかラブコメ臭がするんですけどぉ――、姫空気になってない?もしも―――し?」

 

 

 

 

 




《その後、白のビーストが姫ルームを出てから少し経った後――――》


「そういえば、俺の髪……」

「ん? 今頃気付いたの? マーちゃんが聖杯を注入したからねー。有り余る生命力の影響でキューティクルロングヘアーになってもおかしくないよね。まぁ、君ってば体の線が女の子みたいに細いから結構似合ってんじゃない?」

「…………あの人は……()()()長い方が好きだろうか……?」

「ぶふぉっ……兄様ぁ?」

「む? 何かおかしい事を言ったか?敬愛すべき目上の男性にはこういう呼称をすべきだと、貴女が保有していた書物にも記されていたのだが」

「いやぁ――、あんまりその類の本を参考にしないで欲しいというか……。ってかわたしの本、勝手に読むんじゃねぇえええ!!」





『三白城の性鬼深愛獣様』
ランク:A++
種別:対城宝具(家族)
使用者:刑部姫(白のアサシン)

日照権なんのその、白く染められた元チェイテ城なる第一層、白き石で積み上げられた元ピラミッドなる第二層、そして、元姫路城なる六層からの計八層構成からなる違法建築物。姫路城のミニチュアどころか、その本家をさらに魔改造してしまった超魔術。
その防御性は下手をすれば、かの後輩の白亜の城とタメを張れてしまうほど、防御性に関しては刑部姫自身が「どうぞ―――」とウェルカムしない限りは何人たりとも通さない鉄壁の引き篭もり城…………いや、今はマスターと部屋ックスをする為の宝具。かつての妖怪であった彼女を祀る城ではなく、ビーストでもある彼との性交を存分に祀る為に建てられた城とでもいうべきか。
ちなみに過去に一度、中々城から出てこず、イチャイチャし過ぎたせいでブチ切れた武蔵ちゃんが城ごとぶった斬っている。












•白のビースト

マスター:無し
真名:■■ ■■
クラス:ビースト■
理:■■



ステータス
筋力:A
耐久:A+
敏捷:B
魔力:EX
幸運:A
宝具:EX

クラス別スキル
獣の権能:C
単独降臨:A
それは時空どころか、世界、宇宙の壁さえ超えてしまう在り方。いつ如何なる時も気を抜く事なかれ、獣と成った彼はふとした時に隣に――――。


保有スキル
ネガ・■■■
――――――。
――――――。
――――――。




《白の陣営》
白のマスター:白のビースト
白のセイバー:――――
白のアーチャー:――――
白のランサー:――――
白のライダー:――――
白のキャスター:――――
白のアサシン:刑部姫
白のバーサーカー:――――
白のルーラー:――――




黒のサーヴァント:残り7人
赤のサーヴァント:残り7人











まーた本編ではなく、特別編を書くやーつ、ま、お年玉という事にしておいて下さいな。けど、何でしょうね。本編、英霊編、アポ編と、これってもう連載を3本抱えているみたいなもんじゃないですか?リアル忙しい、リアル忙しいと言っておきながらいよいよ自分ってもしかしてドMなんじゃないかなと思ってきました。まぁ、アポ編の需要があるかどうかはわかりませんが、だってあんなに可愛い女の子がたくさんいるのに、それら全て差し置いてジーク(元)きゅんがヒロイン枠みたいな感じになってますからね今話、このリハクの目をもってしても以下略。
後、白の陣営のメンバーが何人か隠す意味なくね?ってツッコまれそうですけど、本編で正式に正体がわかるまでは感想でこの人だよね?って聞かれても濁しますんで(多分、大体それで当たってます)。



あ、自分はすまないさんの心臓をもらう前のショタっぽいジークきゅんが好きです(聞いてない)。
今回の『シロ』君の見た目は初期のショタジークをロングヘヤーにした感じだと思って下さい。

え、全裸のシロ君に服を着せてあげたのは誰だって?そりゃあ、助けた人がちゃんとしっかりと責任を持ってじっくりねっとりと下着まで着させてあげましたよ。




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ビーストウォーズ②(Fate Apocrypha編)

眠い。













令呪を持って我が肉体に命ずる、俺に性なる勝利の輝きをぉおおおおお!!




 奮い立つ筋肉、この戦争における圧制者の頂点を求めて、『三白城』への入り口へと歩を進める。

 だが、その赤のバーサーカー、スパルタクスに一人の姫騎士が立ちはだかっていた。

 

「ひゅぅっ♪こりゃあ、上玉だな」

 

「軽口を叩くな、ライダー」

 

「何だい姐さん、嫉妬かい?」

 

「…………」

 

「無視は寂しいなぁ」

 

 美しき容貌を損なわない、騎士としての強さを感じさせる凛としたその佇まい、こちらに向けられる戦意に狂戦士は滾る。

 

「おぉっ……! 圧制者の走狗、よ…………?」

 

 圧制者の居城にて我が進行を阻む者、それ即ち、圧制者の走狗。実にわかりやすい理論でスパルタクスは剛腕からその剣を振るおうとしたが…………。

 

「その首輪は…………」

 

 白き騎士の首に付けられた黒い首輪を目にして、バーサーカーの腕が止まる。

 

「えぇ、『彼』からの賜り物です。いいでしょう?」

 

 微笑む姫騎士の顔はその瞬間だけ、戦士だけではなく、一人の乙女としての顔を見せていた。愛しい人の肌に触れるように首輪を撫でる。その根本は普通の恋愛感情とは言えない程に歪んでいるとも言えるが、外見だけでそれに気づく者はそうはいない。

 

 だが、相手は会話が成立しない事に定評があるスパルタクス。

 

「おぉ……!おぉっ……! 何という事だ!! 君も、圧制者に虐げられた剣奴の一人だったのか!!」

 

「はい?」

 

「だが、もう安心するがいい! 私が来た以上、不条理に苦しまれる事はない。今すぐにその枷から解放してあげよう!!」

 

 白騎士に付けられた首輪を見て、彼女をこの城にいる圧制者に繋がれた剣闘士奴隷だと致命的な誤解をしてしまったスパルタクスは微笑む。

 

「奴隷……確かに、そういったプレイを致した事もありますし、私の好みでもあります……」

 

 だが、目の前にいる歪みに歪んだリリィは自ら望んでこの首輪を付けている。勝手に虐げられていると同情される謂れはない。

 そして、この首輪()に手を出そうというのなら、誰であろうと生かしておけない。

 

「彼に……マスターに、今この瞬間も生殺与奪の権利を握られている悦び……貴方達にはわからないでしょう」

 

「ヌゥゥゥッッ!!?」

 

「バーサーカー!?」

 

 前もって警告はした。これ以上進むというのなら、その身無事では済まないと思え。

 慈愛の笑みを浮かべていたスパルタクスの右腕が肩から斬り落とされていた。

 明確な敵対行動、今まで静観していたアタランテも反撃とばかりに弓を放つが。

 

「なっ!?」

 

「おいおい嘘だろ……? 姐さんの矢だぞ?」

 

 姫騎士はその攻撃に一切の防御体勢を見せる事は無かった。心の臓に放たれた矢はその衝撃すらも消滅したかのように消え去り、彼女の柔肌に一切の傷を負わせる事は無かった。

 

「はぁぁっ!!」

 

 連続で射出される狩人の矢、だが全くそれを意に介さない姫騎士。アタランテの射撃は正体不明の白の騎士にほんの少しのダメージすら負わせる事が出来ない。

 

 さすがに疑問に思った彼女は小さな声で隣にいるアキレウスに問い掛ける。

 

「まさか、汝と似たような宝具の類か?」

 

「可能性はあるかもな。ただまぁ、不死の肉体というよりはあれは攻撃そのものを無効化してるって感じだぜ」

 

 アキレウスは今、この戦いに参戦する気はない。

 相手が女性かつ、既にバーサーカーとアーチャーという二体を相手している点もあるのだろう。さらに多対一の状況にするつもりはない。彼がこの戦いに手を出すとしたら、アタランテの身に危険が迫った時だけ――――。

 

 そして、腕を斬り落とされた肝心の赤のバーサーカーは。

 

「なんと、なんとぉぉぉ、嘆かわしいぃぃぃ!! まさか、そこまで手遅れだったとは……そこまで圧制者に心酔してしまっているとはぁ……! そこまで、反逆の牙を折られ、飼いならされてしまっているとはぁっ!!」

 

「飼育プレイですか、フフッ、それもいいですね」

 

 

疵獣の咆吼(クライング・ウォーモンガー)』。

 スパルタクスの宝具、与えられたダメージを魔力へと変換し、力に転換する宝具。与えられたダメージが大きければ大きい程、その力は増大する。

 吼える反逆者、白騎士に斬り落とされた右肩から、肥大した悪魔のような腕が生え、華奢な姫騎士に振り落とされる。

 

「せめて、我が抱擁にて眠るがいいぃぃっ!!!」

 

「いいえ、私が抱擁を望むのは後にも先にも只一人だけです」

 

 ――――ゴァァッ――……!

 

 何とも現実離れした光景だった。怪物染みた異形の剛腕が、少女の頭蓋で止まり、ピクリともしていない。

 先程のアタランテが放った矢と同様に本来、ある筈のダメージも衝撃も全てが霧散していた。

 

「我が名は『白のセイバー』。この聖杯戦争において白のマスターに仕える剣として名乗りましょう」

 

 追撃とばかりに襲い来る。矢も反逆者の剣も拳も、気に留める事もなく、言葉を紡ぐ。

 

「我が肉体は主の許可無くして傷付く事を許されず、我が肉体は主の許可無くして死ぬ事も許されず。主が死するその瞬間、私もその黄泉路を共にします」

 

 愛しき人を想起し、首輪を撫で続ける『白のセイバー』――――王になる前のアルトリアのイフ、そのイフが一体誰のせいなのかこうなってしまった…………セイバー・リリィ。

 

『白のビースト』のサーヴァントとして、ここで戦う彼女のが身に付けている首輪、いやその宝具の名は――――。

 

 

我が寄り添いし理想郷(アヴァロン・オルタ)』。

 

 白のビーストとセイバー・リリィの肉体の一部を素材に形作られたその首輪を付けている間、セイバー・リリィの肉体はAランク以下の攻撃を全て無効化する。

 スパルタクスの宝具も、アタランテの攻撃も彼女に届く事はない。

 

「私を痛み付けて(愛して)くれていいのは、マスターだけですから」

 

 光と闇の奔流。

 彼女が手にし、聖剣が幾合も振るわれる。

 切り刻まれる青白の筋肉。だが恐るべし耐久EX、この状況でも笑みを絶やさないのはさすがと言うべきか。

 

「オォォッ……オォォォッァッ!」

 

 スパルタクスの体を宝具を使用する暇さえ、与えない程の連撃。まるでオルタ化したセイバーの黒き聖剣解放のような熾烈さ。

 そして、その剣が伸びる幾重もの光の筋は全て束ねられ、スパルタクスの体、ある部分に向かって放たれる。

 

「『勝利すべき黄金の去勢剣(エクス・カリバアァ――ーン)!!』」

 

「アアアアアアアァァァッ――――――――…………!!」

 

 男である以上避ける事は出来ない弱点。そこに宝具の光が乱打で叩き込まれたのだ。

 キャパを越えたダメージ、もう復活する事も、微笑む事もなく、その筋肉は絶叫を上げ、股間からゆっくりと光の粒子となった。

 何故か彼女の放つ聖剣の光は男性の股間に収束する因果がある。究極の男殺しの宝具。

 

 アキレウスはスパルタクスが消える瞬間を目の当たりにして股間をキュッとさせた。

 神性を帯びてなかろうが、あの攻撃だけは絶対に受けたくないと。まだ踵の方がマシだと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 黒の陣営の居城たるミレニア城塞にて、ホムンクルス達が忽然と消えるという異常事態から1時間弱。なんとか体裁は落ち着きを見せていた黒の陣営だが――――。

 

「ん――?何だろう、あれ?」

 

 アストルフォの呟き、向ける視線の先に、一つの異常があった。

 トゥリファスの地、月が輝く夜空にて、随分と不似合いな電子によって構成された近未来なモニターが浮かんでいた。

 

 

 白のアサシン、刑部姫のネット配信技術、サバチャンネルによる生放送。『三白城の性鬼深愛獣様』から投射された巨大モニター、そこに映し出された一人の『男』の姿。

 

 黒の陣営だけではない、そこから離れた赤の陣営がいる教会からも、聖杯戦争の関係者殆どの目に入るようにその画面は映し出されていた。

 

『あ――、テステス、マイテス、マイテス、うん?映ってる?ちゃんと映ってるのかなーこれ?』

 

 黒く乱れた長髪、人当たりが良さそうな笑み、だが両陣営を一番驚かせたのはその体に浮かんでいる夥しい令呪の数。聖杯戦争において重要なファクターとなる令呪の画数が3桁にも及ぶなど、全てのマスターにとっては卒倒しても可笑しくない案件なのだから。

 

 

『あ――コホン、どうも初めまして人類悪です』

 

 

 そして、さらにもう一個の爆弾をブチ込みやがった。

 

 真偽はどうあれ、人類悪という言葉の意味を正しく理解している面子は表情を歪めさせた。特に人類救済を目論んでいる一人の聖人は。

 

『夜分遅くに、お知らせもなくこのような形でのいきなりの挨拶、大変申し訳無く思っています。特にユグドミレニアの方々には大事な大事なホムンクルス達を全員誘拐するという大悪事を致してしまい、心を痛めている所であります』

 

「おまえかあああああああああああ!!」

 

 ゴルドおじ様は吼えた。

 

『ですがまぁ、一度手を出したら、最後まで手を出して台無しにするのが俺の所存でございます。中途半端はよろしくない。ヤリ逃げ、ダメ絶対』

 

 こいつは一体、何を言っているのだろうか。

 

『というわけで、この度、第三勢力『白の陣営』、及びそのマスターとして参加する事を表明します。もちろん他の陣営と同じように7クラスで構成されてますよ。あぁ、けどそっちにルーラーが二人いるし、特別枠としてこっちにもルーラー枠参加させてるけど、いいよね?』

 

「――っ!」

「なっ!?」

「おぉっ!」

 

 シロウ神父、アサシン、キャスターに反応があった。

 赤のマスターであるシロウがルーラーである天草四朗だと、あの『ビースト』を騙る何者かは正しく理解している。

 

『人類悪がここにいる以上、世界滅亡待ったなしというわけです! サーヴァントならば頑張って討伐しないといけませんね! ですが、もうそういう慈善事業も古い。救済活動にも報酬があるべきだと俺は思うわけなのです! 只働きは悪い文明だと、俺の奥さんも言っていました』

 

 コイツ、結婚しているのか……。何人かの心の呟きが一つになった。

 

『な の で。根源に至る為の願望機、多くの魔術師とサーヴァントが求めた聖杯を報酬にすべきだと、わかりやすい報酬があった方が皆さんのモチベーションが上がるよね!』

 

 多くの者がその言葉の真意を図りかねて首を傾げていたが、ダーニック・プレストーン・ユグドミレニアがその宣言を聞いて、途轍もなく嫌な予感に全身を汗で濡らしていた。

 あれだけいたホムンクルス達の拉致を一瞬で行った奴だ、ならば、ならば――――、『アレ』を奪うのも造作も無いのではと……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ミレニア城塞の地下に眠る大聖杯。

 ダーニックが第三次聖杯戦争にてやっとの思いでここに隠匿した聖杯が眠っている。

 

 その聖杯に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 巨大な巣にも見える大聖杯は得体の知れないナニかに捉えられていた。引きずられる先には門が開いていた。

 門は繋がっている、白の陣営の居城たる『三白城』の天辺、頂上たる屋根に上り、笑いながら鍵を回す少女がいる場所へと。

 

「いあ、いあ! ふふ、うふふふふふ、悪い人、座長さんは悪い人だわぁ……。ホムンクルスさん達を全員誘拐した次は、大聖杯を奪ってだなんて」

 

 あらゆる領域を繋げる窮極の門。そこから伸びる『外なる神』の一部が大聖杯を引きずり込む。

 ミレニア城塞の地下と『三白城』の頂上を繋げる門。ダーニックが今生、大事にしていた悲願とも言える大聖杯はいとも簡単に奪われてしまった。

 

「あぁ、けど……いいわよねぇ。だって今の私は『白のキャスター』ですもの。ビーストになった座長さんの傍らで暗躍する悪い魔女ですもの。この間、ラヴィニアと読んだ本に書いていた悪の女幹部みたいね……ふふふふ、座長さんとならいくらでも悪い子になってもいいわ…………」

 

 ダンスするようにクルクルと回る異界の門を開ける鍵となる少女。

『白のキャスター』――アビゲイル・ウィリアムズは白の陣営に相応しき、色素が薄いその肌を火照らせていた。纏う海藻のような衣類も彼女の感情に呼応するかの如く、揺れ動く。

 

「次はどんな悪い事をすればいいのかしらぁ、座長さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『我が白の陣営が構える三白城、八層で構成されるその城は、それぞれの層に白のサーヴァントが待ち構えています。そして、八層目、最上階にて鎮座する大魔王こと『白のビースト』を倒した暁には大聖杯がその者の手に!うん、やっぱり物事はわかりやすい方がいい!群像劇とか、三つ巴の乱戦とか非常に面倒くさいもん!!』

 

 

 居を構える美しき『三白城』。その天辺にユグドミレニアが保有している筈の大聖杯があった。

 巨大な球体、亀裂からは金色の女性らしき像が何体も覗かせている。頂上からずり落ちないように、それは聖杯を囲むように開かれた門から伸びる異界の神たる触手で固定されていた。

 

 まさに大魔王に相応しき絵面。

 急過ぎる事態、両陣営共についていけている者は何人いることやら、ただ一つ確かにわかる事は、この戦争における最大の報酬は急に出てきた第三者に奪われてしまったという事。

 

 

『混じりっけ無しモノホンの大聖杯です。両陣営は俺を討伐し、誰かがこれを手にする。『白の陣営』はそれを防ぐ。いわゆる防衛戦的な構図ですね。戦いはシンプルに余計な被害を出さずにするべきだと思うのです』

 

 誰もが求めた聖杯をこうも容易く奪取する。それだけで、今自分達の目の前に映っている存在がどれだけ異常なのか思い知らされる。

 だが、かつて数え切れない程の特異点を修復し、結局そこで手に入れた聖杯の数も3桁に及んでしまった『白のビースト』にとっては今更、聖杯の一つや二つを手に入れた所で特に思う所は無いのだった。

 それこそ、シロの寿命を真っ当な物にする為にホイホイ投入してしまうぐらいには。

 

 まぁ、『白のビースト』の奥方達を見ればわかるが、彼の精液の方が聖杯よりも生命力を強固に出来るのだが、さすがに幼気なホムンクルスを睡姦するほど、まだトチ狂ってはいなかったらしい。

 

 

『君達が止まらない限り、その最上層()に俺はいるぞ! さぁ、手加減してあげるから本気でかかってきなさい!!』

 

 左の人差し指を掲げたのを最後に、モニターは消え、『白のビースト』の……『白の陣営』の宣戦布告は終了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ――――、なるほどな……道理で俺と姐さんを呼び戻したわけだ」

 

「…………えぇ、二人を無策であんな得体の知れない城に飛び込ませるワケにはいきませんでしたので。バーサーカーの事は残念でしたが」

 

「あれは仕方ねぇわ。言っても止まる性質じゃねぇだろ、むしろそれを難なく屠ったあの嬢ちゃんが問題だがな……」

 

「白の騎士……彼女は間違いなく自身を『白のセイバー』と名乗っていたのですね?」

 

「あぁ、そして使っていた宝具から、あれは間違いなくアーサー王だ」

 

 スパルタクスが倒されてから、赤のマスターとして、シロウの撤退を受け取った二人、代理とはいえマスター命令という事で正体不明のセイバーから背を向ける形で教会まで戻った後に待っていたのは、先程の映像。

 

 間近に宝具を見たアタランテの言葉、『白のビースト』と名乗る異分子にかの有名なアーサー王が従っているという事実。

 アキレウスは、スパルタクスが消滅した光景を思い出したのか、股間を少し押さえていた。

 

「ふっ、ブリテンの王がまさかただの小娘だったとはな」

 

「ただのってレベルじゃねぇよアサシン。スパルタクスの宝具も、姐さんの矢もまるで効いちゃいなかった。アーサー王ってのは不死の肉体でも持っていた逸話でもあったのかね?」

 

「『ひとは微笑みながら、(That one may smile, and smile) 悪人に なることが出来る(and be a villain)』。人畜無害を装うビーストを名乗る御仁の手によって作り変えられた線も考えられるかもしれませんがね。くくく、フハハハハハ!!7騎と7騎の聖杯大戦争と思いきや、今度は自らを人類悪と称する謎の『白の陣営』!ここまで来たらもう何が起きてもおかしくない!!ありとあらゆる可能性を考慮すべきなのでは? あぁ! 彼等の陣営には一体、どんな奇天烈な英霊達がいるのでしょうか!!」

 

 この状況でまだ心底愉快に笑える者がいたとするのなら、この赤のキャスター――ウィリアム・シェイクスピアしかいないだろう。人類救済を願う我がマスターが挑む聖杯戦争、それだけでも書き甲斐がある物語だったというのに、ここに来て、よりにもよって人類救済を望む聖人に人類悪である獣が立ち塞がる! これほど混沌とした展開があろうか! あぁ、歓喜を! 感謝を! この戦いを観覧し、執筆出来る幸運に!!

 

「しかし、他の英雄の皆様方は随分と大人しい。これほど、後手に回されてしかも最後には『さぁ、手加減してあげるから本気でかかってきなさい!』という侮辱にもつかない挑発の台詞。吾輩としては今すぐにでもここを飛び出してもおかしくないと考えていたのですが……」

 

「あぁ、確かにその通りなんだが……」

 

 頭をかきながら、アキレウス自身すらも疑問を抱えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「敵意や嫌悪感を抱けない?」

 

 黒のアーチャーのマスター、車椅子に乗る可憐な少女、フィオレ・フォルヴェッジ・ユグドミレニアは賢者の言葉を聞き返していた。

 

「はい。マスター自身も疑問に思っている筈です。『白のビースト』と名乗った彼が為した事に対しては脅威を抱けても何故か、彼自身に敵意や嫌悪感、その類の感情を持つ事が出来ないと」

 

「確かに、言われてみれば……」

 

 大賢者でもある黒のアーチャー――ケイローンは事細かに、事態を推察する。

 一度、この城に現れた莫大な魔力、それに対しては脅威を感じる事は出来た、だが……こうしてモニター越しにその姿を目の前にした時、何故か姿を見せなかった時よりも脅威の感情が萎んでしまっている。

 

「魅了といった不自然な好意を急に植え付けられるわけではない。むしろそれよりも厄介かもしれません。恐らく彼が今すぐに目の前に現れても、即座に戦闘体勢を取る事が出来ない可能性があります。好意を抱くのではなく、敵意を抱きづらい。よっぽど人格が歪んでいない限り、只の隣人に敵意を向ける者はいないでしょう。スキルか何かは不明ですが、彼はそういう在り方なのかもしれません。わかりやすく言えば、『毒気が抜かれる』とでも言うべきでしょうか」

 

「ならば、奴がわざわざこうして余達に挑発をしかけてきたのも……」

 

「えぇ、よっぽど我々に、いえ……黒、赤両陣営に攻めてきて欲しいのでしょう。たとえ彼そのものに敵意を抱けなくても、彼の言葉に戦意を滾らせる事は出来ます。ホムンクルスを拉致した事実に怒り狂ったゴルド氏のように。ですが、『手加減』という言葉も挑発として使ったとはいえ、真実でもあるのでしょう」

 

「ほう」

 

 黒の陣営の参謀でもあり、数多の英霊を育てた男の言葉、信頼も厚いケイローンに皆が耳を傾ける。

 

「現に我々がこうしている状況こそが彼にとって『手加減』されているとも言えます。そもそも、大量にいたホムンクルス、そして大聖杯……それらをこうも容易く奪取出来るのなら、我々の生命線でもあるマスター達をいつでも攫う事が出来ると思いませんか」

 

「おいおい、ゾッとする事言うなよ」

 

 フィオレの弟、黒のバーサーカーのマスターであるカウレス・フォルヴェッジ・ユグドミレニアは頬を引き攣らせる。先程の大聖杯が『三白城』の頂上に移されたかのように、突如として現れた触手に自身が取り込まれるSAN値が下がりそうな想像をしてしまったのだろうか。

 

「ならば、よっぽど僕達に攻め込んで欲しいみたいだね」

 

「えぇ、その思惑は不明ですが……まず我々に出来る事は――――」

 

「赤の陣営との同盟か……」

 

 現段階で取れる一番、現実的な案に思考を巡らせる。

 深く息を吐き、玉座に寄りかかるヴラド公。

 奪われたホムンクルス達、大聖杯。突如として現れた『白の陣営』……その主たる『白のビースト』を騙るナニか。

 この聖杯戦争は赤と黒に分かれての戦争では無かったのか、余を誑かしたのか、言いたい事は多々あったが、さすがに、大聖杯が奪われてから白目を向いて失神した自身のマスターを問い詰める程、ヴラド三世は鬼では無かった。

 

 

 

 

「ほえ――、なんだか凄い事になっちゃったねー、マスター……マスター?」

 

 隣にいた黒のライダー――アストルフォが語りかける。それに全く反応を示さないライダーのマスターであるセレニケ・アイスコル・ユグドミレニア。この聖杯戦争が始まってから、散々アストルフォをprprしてきた彼女が反応を示さないのはあまりにも不自然だった。

 覗き込んだアストルフォが見た物は――――。

 

「うわ」

 

「……はぅ」

 

 何故か今まで見た事ないような、似合わないマジで似合わな過ぎる乙女フェイスをしていた黒の魔術師の姿だった。

 ケイローンの言う通り、『白のビースト』に不自然な好意を植え付ける魅了は無い。

 だが、それでも彼が未知の領域から訪れた異界からの訪問者である事は事実。その未知の領域の一端を感じ取ってしまったら?『白のビースト』の瞳を目の当たりにした時、何故かセレニケは自身の中にある猟奇的な嗜虐心、その根底にある歪んだナニかを引きずり出されそうな気分になった。自身の奥底に眠る真なる性癖を暴かれたくて仕方ない気持ちになった。

 

「…………すき」

 

 端的に言えば、それは一目惚れだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ランサー、一つ尋ねます」

 

「答えよう」

 

 場面は再び戻って赤の陣営。

 天草四朗は、赤のランサー――施しの英雄、あやゆる欺瞞や虚飾を見抜くカルナに問うた。

 

「彼が……、『白のビースト』を名乗る何者かが、自身を『人類悪』と語ったのは事実ですか?」

 

「あぁ、それに虚偽は無い(奴が語った世界を滅亡させかねない人類悪とやらが自身の事を指しているわけではないが)」

 

「そう、ですか」

 

 眉間を押さえ、天を仰ぐ天草四朗。

 カルナの言葉に誰もが衝撃が走る。人類悪という言葉、その意味の一端でも知る者にとっては、施しの英雄が語った。「あの人類悪は本物だ」という言葉が何を指すのか。

 

「これはこれは聖杯戦争どころでは無くなりましたなぁ……マスター! いやぁ、吾輩も途轍もなく心を痛めておりま、あぁぁっ痛い痛い痛い!! 体が痛い! 女帝殿!鎖による緊縛プレイは勘弁願いたい!!」

 

「人類悪……人類史の澱み……。より良き未来を望む心こそ、人を守ろうする願いそのものが人類悪か……」

 

 苦節60年、ここまで準備に準備を重ねた天草四朗は呟く。

 何の因果か、全人類の救済を目論む自身の邪魔をするのがよりにもよって人類悪(人類愛)とは……。

 皮肉な話だ――。どうやらこの世界はよっぽど自分を嫌っているらしい。

 

「邪魔をするなビースト。()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい! もっと飛ばせねぇのか!? マスター!?」

 

「無茶言うな! これで全開だ!!」

 

「今度はもっと良い車用意しろよな!!」

 

 トゥリファスの森林、舗装されていない獣道を乱暴に走る鉄の馬があった。

 既に木々に砂利に岩に何度も当たり、ボロボロになっているアメ車に一組の主従が乗っていた。

 

 運転席で自身のサーヴァントに煽られるまま、白き巨大な城へ向かうマスター、獅子劫界離。

 その助手席で束ねた金髪を揺らし、窓から身を乗り出している赤のセイバー――モードレッド、二人は件のモニターによる『白の陣営』からの宣戦布告から数分、直ぐに敵の居城まで駆けていた。

 

「なにが『手加減してあげるから』だ!舐めくさりやがって!偉そうに建っている馬鹿でけぇ城も気に喰わねぇ!」

 

「いきなり突っ込むって話になったが、策はあるんだろうな!?」

 

「あぁ!? んなもん着いてから考えるわ! 一番乗りは騎士の誉れだろ? それに上手くいけば、あの上にある聖杯も他の奴ら出し抜いてオレ達が奪えるかもしれねぇしよ!!」

 

「要するにノープランって事か! 上等だ! もうここまで来たらヤケだ!」

 

「おうよ!! そろそろ見えてきたぜマスター!!」

 

『三白城』の門。喧しいエンジン音を響かせ、『白の陣営』の入り口へと近づく赤の主従。

 車を止め、辺りを警戒しながら降りる二人。

 獅子劫はショットガンを、モードレッドは既に全身を鎧兜に包み、戦闘体勢に入っていた。

 

「さてさて、ここまで何事も無く、退屈に着いちまったが……」

 

「油断するなよ、セイバー」

 

「するかよ。オラ! 白のサーヴァント共、誰もいねぇのか!! このまま門ごとぶった斬ってもいいんだぜ!」

 

 

 

 

 

「それは困ります。仮とはいえ、今は我がマスターの住まい。徒に傷を付けられたら、私も処分せざるを得ないですよ」

 

「なっ――――」

 

「セイバーと、同じ顔……!?」

 

 その時、意気軒昂と乗り込んでいたモードレッドの歩みが止まる。白のビーストの言葉に戦意を昂らせていた彼女の雰囲気が変わる。何故、何故、何故と理解出来ない現実を目の当たりにした子供のように。

 

「今宵は随分と客人が多いですね」

 

「何故だ――――」

 

 モードレッドの悲痛な叫びが、響き渡る。

 

「何故だ!! 何故、貴方がここにいる!! アーサー王!!」

 

「知れたこと。私がマスターの剣であり、伴侶だからですよ」

 

 

 

『三白城』門の番人……『白のセイバー』。

 

 

 王になる前のイフ、性癖が歪んでしまったアーサー王 VS 叛逆の騎士 モードレッド 

 

 

 開幕。

 

 

 

 




《白のビースト、姫ルームに帰宅》

「ふぃ――、結構、緊張するもんだね、生放送って。ただいまーっと」

「お帰りなさいませ、兄様」

「!?」

襖を開けたすぐそばに、三つ指をついてお辞儀をしていたエプロン姿のシロがいた。
白のショートパンツに白の半袖ポロシャツ、ボーイッシュな格好の上から着られているキュートなフリフリのエプロンがシロの性別を混乱させる倒錯的な魅力を振り撒いていた。

「ご飯にしますか? お風呂にしますか?……それとも、そ、れとも……そそ、それとも、お、おれ…………」

「お腹空いたし、ご飯にしよっか?」

「はいっ!」

顔を真っ赤にしてどもりながら後の言葉を続けようとする彼に助け舟を出すマスター。
嬉しそうに表情を輝かせ、キッチンに向かうシロ。
それとは対照的に、炬燵でぐったりしていた刑部姫。

「弟キャラか……それはそれでイイ。で、おっきー?」

「さぁ――?姫は何も吹き込んでいませんよ――。何か、仕事を終えた男性を迎える正しい仕草を頑張って覚えていたらしいよ?むしろ、裸エプロンになろうとした彼を止めた姫を褒めて欲しい」

「何故、止めたし」

「そしたら、お前らここでおっぱじめるだろうがぁ!! 何が楽しくて自分の部屋で始まる旦那とショタの濃厚R18なシーンを見せられないといけないんですかぁ!? そして一番悔しいのが、多分それを目の当たりにしたら次のコミケの新ネタとして筆が止まらなくなってしまう姫自身!」

「悔しい! でも書いちゃう! みたいな」

「ダマレッ!!」

「え――っと最後の調味料は『愛情』……。指に包丁の刃を当てて、血を」

「だから、シロ君も薄い本を参考にするのやめろっつってんだろ!!」










我が寄り添いし理想郷(アヴァロン・オルタ)
ランク:EX
種別:対人宝具
使用者:セイバー・リリィ(白のセイバー)
自身の愛液、マスターの精液、自身の血、マスターの血で構成された首輪。メディア・リリィに頼んで作ってもらった特注品。首輪のマスターの名を示す刺繍はマスターとセイバーリリィの髪の毛で編まれている。汚れる事も、劣化する事もない首輪。セイバーリリィは肌身離さず、永遠にこの首輪を付け続けるだろう。マスターの生命活動が終わるの同時に首輪が彼女の命を奪うその時まで――――。セイバーリリィ、彼女にとっての『理想郷』とは一体、何なのだろうか……うーん闇深。
この首輪を付けているセイバーリリィの肉体はAランク以下の攻撃を全て無効化する。A+以上の攻撃においても、それを差し引いた分の防御性を発揮する。ただし、マスターからの攻撃(愛撫)に関してはその全てにおいて過分にダメージを負うように設定されている……うーん性癖歪。


勝利すべき黄金の去勢剣(エクスカリバー)
To Life(セイバー・リリィ)回参照。












•白のビースト

保有スキル
ネガ・■■■

魅力(ゼロ):A+
ビーストとなった彼のスキル。
他者にいきなり好意を与えるのではなく、負の感情をゼロにする。敵意や害意、嫌悪感を抱きづらいスキル。人畜無害、人当たりの良さの極致。絆ゼロスタート。隣人の如き平凡な雰囲気に惑わされ、不用意に近づいたら最後、もし彼のお目に適ってしまったら、そこからギュイーンと絆Pが溜まり、人たらし、たぶらかし、口説き、愛撫、ズブズブと最後まで絡め取られてしまう。これに対抗し、彼に敵意を抱くには、それを凌駕する程の大望と意志……それこそ世界に匹敵する想いを抱かないといけない。

――――――。
――――――。






《白の陣営》
白のマスター:白のビースト
白のセイバー:セイバーリリィ
白のアーチャー:――――
白のランサー:――――
白のライダー:――――
白のキャスター:アビゲイル・ウィリアムズ
白のアサシン:刑部姫
白のバーサーカー:――――
白のルーラー:――――




黒のサーヴァント:残り7人
赤のサーヴァント:残り6人







投稿、はやくなぁい?何故か続いてしまった第二話。どうせ皆 台無しに なる。
はい、次回は大人しく本編(エロ)に戻ります。





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ビーストウォーズ③(Fate Apocrypha編)

ある層に何故か人気があるApo編を2ヵ月ぶりにしれっと投稿。原作に負けないぐらいのシリアスと真面目さでがんばるぞい。

いつも感想、お気に入り、誤字報告ありがとうございます……。特にコメ付きの評価を頂くとハサンダンスをするぐらいに嬉しくなります。この評価は他愛なくないよぉ……。
















《ある白のアーチャーと白のランサーの一幕》

「子供は?」

「宝」

「我らは?」

「仲間」

「マスターは?」

「旦那」

「汝は?」

「哪吒!」

「私は?」

「アタ!」

「YES! ロリータ!」
「拒否! 鬱展開!」

ピシガシグッグッ








「届きません」

 

 赤のセイバーは縦横無尽に駆ける。

 白のビーストの居城たる門の前で立ち塞がる白のセイバーの周りを。

 

 猫のようにしなやかに、獅子のように獰猛に、全くその場から動こうとしないアーサー王を牽制しつつ、あらゆる角度から攻撃を仕掛ける。

 赤雷を奔らせた剣を振るい、時には騎士らしからぬ、拳と蹴りをお見舞いにする。

 

 一見、モードレッドからの一方的な攻勢に見えるが、当の本人の表情は焦燥と不可解さで歪んでいた。

 

「届きません」

 

 それもそのはず、数分前からモードレッドの攻撃一切が白のセイバーに傷一つすら負わせていないのだ。

 

「アアアアアァサアアアアッッッ!!」

 

 子のじゃれ合いのように白のセイバーはモードレッドの攻撃を歯牙にすらかけていない。

 自分の武力がまるで通用していない、しかもその相手がずぅっと背中を追い続けていた父上であるモードレッドの胸の内は激情が駆け巡っていた。

 

 それを誤魔化すように、あるいは自身を鼓舞するようにモードレッドは吠える。

 

 魔力を放出したクラレントをジェット噴射のように加速させ、上段からアーサー王の頭蓋目がけて、思いっ切り剣を振り下ろす。だが――。

 

「まるで届きません、モードレッド」

 

「ッッチィィッッ……!!」

 

 防ぐ姿勢すら見せず、白のセイバーはその凶刃を受け入れる。それでも彼女の体に傷を付ける事は叶わない。

 モードレッドはやっと怒涛の剣戟に一度、小休止を置き、距離を取った。

 

(舐めくさりやがって……!オレの攻撃なんか、防ぐにすら値しねぇってか……!くそっ、クソォッ……!!)

 

(焦るなセイバー、きっとお前さんの攻撃が効かないのも宝具の類が)

 

(ちげぇ!!あり得ねぇんだ!!オレの剣が届かねぇなんて事は!!あの時は、あの時は、オレの剣も届いていたんだ……!アーサー王に、父上に、こんな理不尽な宝具は無い!…………筈なんだ……!)

 

 離れた場所、茂みから顔を覗かせながらモードレッドの邪魔にならない所で獅子劫界離は念話を繋げ、戦いを見守る。

 サーヴァント同士の超級クラスの戦い、一介の魔術師程度が手を出す事は出来ないが、それでも突破口は無いかと彼は観察する。人類悪を名乗るあの男の下に付く白のサーヴァントを打破すべく。

 

(ステータスがまるで見えねぇ……いや、そもそも俺達が相手してんのは()()()()()()()()()()()()?)

 

「何故だ……。何故反撃しないアーサー王!!オレは敵だ!赤の陣営のサーヴァントだ!一度、貫いた敵はもう眼中にねぇってか!!?答えろ!アーサァァ――!!」

 

 モードレッドは激情を隠すこと無く吠える。この瞬間まで自分は本気で剣を振るった。殺すつもりで攻撃を仕掛けた。しかし、セイバーリリィからは反撃がまるで来ない。一度も傷を付けられない我が叛逆の剣……熾烈に繰り出された剣技も乙女の如くシミ一つ無いセイバーリリィの柔肌にまるで弾かれているようだった。

 

 勝負にすらなっていなかった。

 

 父親に遊んでもらえない泣きじゃくる子供のようにモードレッドは目の前の白き父を睨み付ける。

 並の人間がその視線に晒されれば、気を失う程の殺気を受けても白のセイバーは動じる事が無かった。

 

 むしろ困ったようにはにかんでいた。戦場にはまるで不似合な花咲く白百合のように。

 

「よくよく考えてみると、先のバーサーカーの時と同様にここで私が貴女を一方的に斬り捨てる事は如何なものかと思いまして……。他の私だったら、特にX師匠あたりなら即カリバーを放つかもしれませんが」

 

 今目の前にいるのはマスターの元にいるモードレッドとは違う。

 王となった自分に対しての歪んだ憧憬と憎悪を持て余している捨て子のようなものだ。

 セイバーリリィは思案していた……。

 赤のバーサーカーを打ち破り、門番としての役目を果たしたとしてマスターからもらえるご褒美の事に脳の容量を使い、残った1%の事でモードレッドの事を考えていた。

 

「まずは誤解を解かないといけません。モードレッド……厳密に言えば、私は貴女の知る父上でも無ければアーサー王でも無いのです」

 

「……どういう意味だ」

 

「今、貴女の目の前にいるのは王になったアルトリア・ペンドラゴンではなく。王になる前の修行中の身であった未熟なアルトリア・ペンドラゴン。イフの幻想から生まれた英霊なのです。だからきっと私は貴女にアーサー王と呼ばれるべきではないのでしょう」

 

「……んだよ、それ……」

 

 モードレッドには理解が出来なかった。

 父上は完璧だった。王としても、騎士としても、その父の未熟な時期など想像も出来ない。

 あぁ、成程確かに王になる前のアルトリア・ペンドラゴンとして英霊になった彼女なら、自身に激情をぶつけられても困るかもしれない。それでも……今、我が瞳に映っているのは確かにアーサー王で……。

 

 だが確かに王ではない、自分が今まで見たことが無いどこまでも人間らしい表情をしていた。

 

 モードレッドの頭の中はグチャグチャになっていた。

 

 思い焦がれた父上との対峙、絶望的なまでの戦力差。そして、自身の知らない父上という存在。

 行き場の無い葛藤はいつまでもグルグルと回り続ける。

 

 そして、意図せずともセイバーリリィは固まってしまったモードレッドにトドメを刺してしまう。

 

「まぁ、今は『白のセイバー』として、()()()()()()()()()として第二の生を謳歌しているわけですが」

 

 

「…………………………は?」

 

(…………妻?つま?ツマ?今、父上は妻って言ったのか?ツマ?ツマってなんだ?ツマってあの妻か?野郎と結婚して、腰振って、ガキこさえて、ニヘラニヘラと生温い家庭でひたすら男の世話をし続けるあの?)

 

 ここでモードレッドは今頃になって白のセイバーと初めて相対した時の言葉を思い出す。あの時は父上と相見える事が出来た事実だけで心が一杯になっていた為、気にする余裕は無かったが。

 

 

『何故だ!! 何故、貴方がここにいる!! アーサー王!!』

 

『知れたこと。私がマスターの剣であり、()()だからですよ』

 

 

(伴侶、伴侶、妻、妻…………アイツか?アイツなのか父上?)

 

 白のビーストと名乗っていたあの男を思い出す。

 

(貴方が愛おしそうにつけているその首輪もアイツがつけたヤツなのか……?)

 

 ギリッと砕けそうになる程の力を込めて、歯を喰いしばる。

 かつてモルガンにブリテンの王たれと生み出されたモードレッドにとって紆余曲折した経緯と感情はあったが、彼女にとっての世界とはアーサー王だった。

 

 白のビーストが持つ『魅了(零)A+』のスキルによってかの叛逆の騎士も今、この瞬間までは彼には殺意は抱けなかった。

 

 だが――。

 

(あの男なのか?王を……父上をそんな風に(誑かした)のは?)

 

 クラレントの柄を握る力が込められる。くじけそうになっていた心に殺意が湧いてくる。

 赤のセイバーとして召喚されたモードレッドにとってアーサー王に対する想いは、今この場では白のビーストのスキルを凌駕する。

 

(殺してやる……)

 

 その言葉は目の前のアーサー王には向けられていない。

 

(ころしてやる)

 

 その後ろにある白城、恐らく最上階にいるであろうあの男に向けられている。

 

「ブッコロシテヤルッッ!!」

 

(そうだ……モードレッド、まだ負けじゃねぇ。勝機はある。相手が王になる前だろうが、アーサーだっていうなら、お前さんの宝具なら……!我が麗しき父への叛逆(クラレント・ブラッドアーサー)なら届く可能性はある……!)

 

 かつて王を貫いた叛逆の剣の殺意は不敬にも王を誑かした不埒者へと向けられる。

 

 赤雷を帯びた魔力を全身に迸らせるモードレッド、赤の剣の主従はまだ諦めていなかった。

 確かに、白のセイバーの宝具『我が寄り添いし理想郷(アヴァロン・オルタ)』はAランク以下の攻撃の無効化。A+のランクかつアーサー特攻がつくモードレッドの宝具なら届きはするだろう。

 

 

 だが、この主従は気付かない。

 

 

「貴様……」

 

 

 モードレッドの今の一言が、白のセイバーの地雷を踏み抜いたことを。

 

 

「今の言葉、()()()()()()()()?」

 

 

「ヒッ……!!」

 

(ッツゥゥッ!!)

 

 氷海に叩き込まれたような悪寒が二人を襲う。

 

 豹変した白のセイバーの言葉遣い。そして、あらゆる情を削ぎ落とした能面のような顔にドラゴンの如き黄金の瞳がモードレッドを射抜いた。

 

 今まで構える事すら無かった聖剣が極光に染まり、しっくりと来るしか言いようがないぐらいに綺麗に剣先を向けていた。

 

 先のモードレッドの殺意が可愛いと思える程の圧力。

 モードレッドからは彼女らしからぬ悲鳴、獅子劫は太腿に短刀を刺し、気絶しそうになった自身を何とか踏み止めさせる。

 

 

「答えろモードレッド卿、貴様の殺意の先には誰がいる?」

 

 

「マスタァァァアアアアアア!!」

 

「令呪を……二画以って命ずる!!自身の限界を超え、全身全霊全ての力と魔力を込め、『我が麗しき父への叛逆(クラレント・ブラッドアーサー)』を解放しろぉぉぉぉっ!!」

 

 ――グオオオオオオオオオォォォォッッ……!!

 

 狂乱したかのようにモードレッドは叫び、自身のマスターの令呪のサポートを受け宝具を放つ。

 作戦も何もない、凶暴な猛獣に遭遇し逃げる捕食者のように、自然災害を前に為す術なく逃げる人間のように、ただ条件反射で宝具を放った。

 

 しかし、それは逃げるよりは概ね、最適な解であった。即座に宝具を放つ決断をしたモードレッドも、令呪二画分でサポートした獅子劫も。

 

 津波の如き、禍々しい赤雷が通常の3倍以上の大きさに膨れ上がり、直線上に放たれる。後ろにいた獅子劫が風圧で吹き飛ばされる程の威力。

 その赤雷は白のセイバーごと飲み込み、白城まで届いたが、かの城は微動だにしない。

 

 そもそもモードレッドは城の状態など、気にする余裕は無かった。

 彼女にあったのはあらゆる負の感情を敷き詰めたような顔になったアーサー王のあの顔を見たくないという想いだけ。

 

 

「ハァ、ハァ、ハァ……頼む、ここで倒れて……」

 

「コタエヨ、ダレニサツイヲムケタ?」

 

「ガハッ……!!」

 

 刹那の瞬間、宝具を放った後の立ち込める土煙から影が飛び出す。

 気づけば、モードレッドは白のセイバーに剣を握っていない方の手で首を掴まれていた。

 

 万力の如き力で体を持ち上げられ、意識が朦朧とするモードレッドが目にしたセイバーリリィの姿……。

 令呪を二画分も使用して、放った自身の最強の技。アーサー王を屠る為の最強と自負していた宝具。

 

 もう二度出す事は難しいといえる最上の攻撃。それが与えた効果は如何ほどか……。

 

「アァ、なんということでしょう……。彼の許しなく傷を負ってしまうとは……。マスターの剣、失格のこの醜態……。どうやって償えば……。いえ、いえ、いえ、贖罪の方法を自分一人で勝手に考えるなど、それこそ愚の骨頂でしょう」

 

 

我が寄り添いし理想郷(アヴァロン・オルタ)』の無効化条件をモードレッドの宝具はクリアしている。しかし、アーサー特攻と令呪二画分のブーストがあったとしてもリリィの宝具分で差し引かれた攻撃力では彼女の討伐には到底及ばない。

 

 ましてや、片やサーヴァント、片や人類悪の彼によって受肉したナニか。肉体のスペックがそもそも違う。

 

 英霊であったリリィにとって傷と言うにはあまりにも()()()()()()()()()。モードレッドの本気が与えられたダメージはこれが全てだった。

 

「躾、お仕置き、折檻…………フフ、一度、彼の元に帰る必要が出てきました。丁度いい、モードレッド、貴女も来なさい。自分が誰に殺意を向けたのか今一度、わからせてあげないといけません」

 

「や、やだ……」

 

 無理だろうとわかっていてもモードレッドは弱々しく首を横に振る。

 あんなに待ち焦がれていた父親との再会も、もはやリリィに対しての恐怖心で塗りつぶされていた。

 

 今、自分の目の前にいる父上が怖い、こわい、コワイ。逃げたくて仕方がない。

 親の叱責を初めて受ける幼子のようにモードレッドの心は萎み切っていた。

 

「ますたぁっ……!」

 

 自身の主に助けを求めるぐらいまで。だが、その願いは届かない。

 

 

 そのまま猫を扱うようにモードレッドの襟を掴んだリリィはもがく彼女を引きずり城の中へと消えていった。主からのご褒美(折檻)を求めて。

 

(令呪はまだ一画残っているがっ……どうする?これを使って転移させるか……?だが、あの化け物共の城の中で令呪の効力が効く保証はねぇ……!クソッ!一気に二画使ったのは愚策だったか……!?)

 

 モードレッドの悲鳴を掻き消すように無情にも門が閉まった。

 

 獅子劫は結局、令呪を使用する手段は取らなかった。

 その選択は正しい、かの白のアサシンが建てた城は魑魅魍魎が跋扈する魔城、魔術師が作ったシステム程度が通用する世界では無いのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――助けて、助けて、助けて、助けて。

 

 ――ねぇ……ご飯は?もう、三日も何も食べてないよ……お腹が空いたよ……。

 

 ――痛い、辛い、苦しい、熱い、やだやだやだ、死にたくない。

 

 ――どうして、どうして、どうして、どうして、私達がこんな酷い目に遭うの?

 

 ――俺達だって、暖かい世界で、平和な世界で生きていたい。ただ、それだけなのに……。

 

 ――そんな願いすらも叶えられないの?

 

 ――憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、妬ましい。

 

 

 

 

 あぁ、まただ。

 

 また失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した。失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した。

 

 

 

 

 

 

 また届かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~赤のセイバーが敗れてから数時間後。

 

 

「ついたぞマスター……既に黒の陣営は揃っているようだな」

 

 赤のアサシン、セミラミスの声に伏せていた視線を上げる天草四郎。

 彼の周りには霊体化を解いている赤のサーヴァント達が5騎。

 

 陽は昇っている。初めに赤のバーサーカーが突貫してきた夜から目まぐるしく事態は急変した。

 あり得ざる第三の陣営。人類悪を名乗る『白のビースト』なる存在。奪われたホムンクルスと大聖杯。

 

 木々が一切無い見晴らしの良い荒地にて彼等は集まっていた。

 そこには黒のアーチャーのマスター、フィオレと黒のサーヴァント6騎。

 

 赤の陣営からの同盟の誘いをヴラド公……黒の陣営は飲む事にした。

 場所はミレニア城塞から離れた何の変哲も無い荒野。同盟を結ぶにはテーブルも椅子も無い寂しく殺風景な光景。

 

 だが、これでいい。彼等は決してお茶会をしに、こうして同盟の場所に集まったわけではないのだから。

 

 暗殺の危険も無い、平らな大地。この地こそが同盟を結ぶ場所に相応しい。

 

 

 

 

「同盟の要求は飲んでくれましたが、ユグドミレニアの長がそう簡単に出てくる程まだ我々に襟を開いてくれるわけではないですか……。いえ、それはトップとして正しい選択なのでしょう」

 

(ダーニックおじ様はまだ気絶したままなだけなんですけど……)

 

(それを馬鹿正直に言う必要も無し、あちらが勝手に勘違いしてくれるのなら構わん……。全く我がマスターながらなんと情けない)

 

 お互いの陣営で今この場にいるマスターはシロウ神父とフィオレの二人のみ。

 しかし、両陣営のサーヴァント達は余す事なくここに揃っている。

 

(先生……)

 

(何の因果か、またここで出会うとは。いえ、今は共闘出来る幸運を喜びましょう)

 

「ほへ――、何だか強そうな英霊がたくさんだね!ねぇ、ねえ!ジ……じゃなかった……セイバーは誰が一番強いと思う?」

 

「…………」

 

(黒のセイバー……)

 

 

「互いにマスターを一人ずつしか連れてきていないという事は、自己強制証明(セルフギアス・スクロール)で縛り付けるつもりは無いという事でいいのでしょうか?」

 

「えぇ、ルーラーを襲った貴方達をそこまで信用はしていません。しかし、事は急を要します。敵の理不尽さはご覧になっていると思います」

 

「貴様等もわかっているのだろう?これはもう腹の探り合いなど行っている場合ではないと。足並みを揃える事が出来ねば、余達に待つのはあっけない消滅のみだと」

 

 フィオレとヴラドの問いに微笑むシロウ。黒の陣営もビーストという言葉の真偽はともかくとして、英霊としての魂が告げているのだろう。宣戦布告した、あの『白のビースト』の異質さを。

 正直な所ここにいる一騎当千の英霊達が揃っても勝負になるかどうかすらも怪しい。だが、この場で小競り合いをしていたら、その勝負のステージにすら立てないのだ。それはここにいる誰もが確信している。

 

 憂いは断つべきなのだろう。

 

 

「互いのサーヴァントを隠す事なくここに連れてきたのも……」

 

「味方の顔もわからず同盟などと言ってられないでしょう。そして今回の戦いにおいてマスターの出番は無いに等しい。もはや聖杯大戦とは言ってられません。あの人類悪を倒さなければ、世界は救われないのですから……」

 

(世界が滅ぶではなく、()()()()()()()()……なんとも気になる言い回しをしますなマスター)

 

「聖杯奪還戦……いえ、白獣討伐戦と言うべきでしょうか。既に我が陣営も2騎、白のセイバーに敗れています……もう猶予も無いでしょう……。アサシン」

 

「あぁ」

 

 セミラミスの使い魔が映し出した映像には、白きドレスに纏ったセイバーに鎧袖一触、傷一つ付ける事なく消滅させられた赤のバーサーカー。

 そして、激昂しながらもそれを上回る殺意をぶつけられて、戦意を失い城の中へと引きずり込まれる赤のセイバーの姿。

 

 どちらもとてもじゃないが戦いになっているとは言えなかった。

 

「わぁーお、おっかないねぇ……。あれ本当にセイバー?実はバーサーカーとかじゃないの?」

 

おお、仲違いする愛、愛し合う憎しみ(O brawling love!O loving hate!)。かの叛逆の騎士が求めた騎士王は遥か遠くの所へ!もはやその剣も憎しみも届く事は無し!オイタをした子供は悪魔の口に飲み込まれてしまったのでしょう……。いやはや愛というのは恐ろしくて、実に愉快な代物ですなぁ」

 

「ブリテンに名高き騎士王が今や人類悪の先兵とは……。哀れな事よ、サーヴァントの身である弊害というべきか」

 

「いや、黒のランサーよ。あの姫騎士は紛うことなき自らの意志で白のビーストの元で戦っている。狂気の域に至る程の純粋な愛。彼女が自身のマスターに向ける感情は偽りなく真っ直ぐだ。そしてそういった想いを燃料に戦う者はいつの時代でも厄介極まりないぞ」

 

「ハッ!愛と来たか……」

 

 カルナの言葉に吐き捨てるように反応する女帝。本人の意思がどうあれ、彼女にとって男にいいように使われている女は唾棄すべき存在なのだ。ましてや首輪を付けて悦に浸っている女、理解し難いだろう。

 

(そうでしょう!やっぱり首輪は付けられるより付けるべきですよね!?)

 

「誰だお前は!?」

 

「……どうしました、アサシン?」

 

「い、いや、馬に乗った金髪女の幻覚が見えたような気がしてな……」

 

 もう一人の性癖が歪んでしまったアーサー王はカルデア島にハウス。

 

 

「しかし、マスター。もしかしたら、連絡がつかないアサシンのマスターも」

 

「相良豹馬ですか……あり得ない話では無いでしょう。この状況ではもう討ち取られている……いえ、霊器盤には脱落した様子は無いので、敵の手に落ちた……あるいはそれに近い形になっていると考えた方がいいかもしれません」

 

 

 白の陣営には、ユグドミレニアのホムンクルス達全てと大聖杯を強奪する能力を保有している。こうして悠長に同盟を結んでいる様子も見られているかもしれない。

 

 遊ばれていると言っていいほどの実力差。だが、それでも彼等は歩みを止める事は無い。ここで諦めていたら、彼等は英霊なんて存在にはなってなかったのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 六導玲霞は考える。

 

 

(………………これはどういう状況なのかしら)

 

「うわぁぁあっ……おいしそう!これがアビーの言ってたパンケーキ?クリームがふわふわでケーキがふかふかだね!」

 

「こら、行儀が悪いわジャック。せっかく哪吒が作ってくれた料理よ。食べる前にありがとうのお礼と、お祈りの言葉が必要でしょ?」

 

「気遣い 不要 あびぃ、じゃっく。二人の笑顔 最高の報酬 沢山 食べて」

 

「しかし、花嫁修行の成果が出たとも言えるな哪吒。見た目にも随分と凝っている。召喚当初はあれだけ女扱いを拒否していた頃が懐かしいな」

 

「あたらんて 黒歴史 思い出不 過去の己 未熟」

 

「今はアタちゃんと呼ぶがいい。哪吒お姉ちゃん」

 

「了解、アタちゃん。ボク出来る娘 アタの幼児化 華麗にスルー」

 

 仮の住まいでもある無人の宿の下の階から聞こえるジャックと少女達の楽しそうな声に特に心配する必要は無かったかもしれないと安堵する六導玲霞。

 

 

 襲いかかる協会からの魔術師達、暗殺部隊。その全てを斬殺し、ジャックの餌にしてきた。

 彼女の願いを叶える聖杯を求めて、ブカレストからシギショアラへと北上。

 

 

 

 住処も確保し、これからの方針を決めようとした先に『白のビースト』と出会った。

 

 

 

 ――こんばんわ、いや……もうおはようの時間かな?

 

 幾人の少女達を連れて現れたその男を前にした瞬間、彼女の頭の中には戦うという選択肢はまず消去された。玲霞の類い稀な理解力と洞察力が痛感させた。

 

 目の前の存在には何をしようとも勝てない。逃げる事も無理。

 

 だが、未だ事態を理解していないのか、それとも『白のビースト』を脅威と感じていないのか、隣で緑髪の幼女と追いかけっこして遊んでいるジャックを守る為に彼女は出来る手段の全てを取ろうとした。

 

 ――ねぇ、お兄さん……ちょっと私とお家でお話していかないかしら?

 

 戦闘も逃避も許されない自分に残された最後の武器はこれしかない、今まで散々娼婦として使ってきた女の武器。

 この理外の存在に取り入ってジャックを守ってもらうしかないと彼女は思考する。

 

 艶っぽく息を吐き、彼の体に寄り掛かる。多くの男達が夢中になってきた乳房を押し付けながら、手を取り、家へと誘う。

 自分に夢中にさせるとまではいかない……。せめて、せめて、こちらに情が湧いてくれるぐらいまでには肉体関係を結ばないと……。

 

 そう思っていた筈なのに。

 

 

 

 横になった彼女を今まで感じた事のないような温もりが包む。

 

(まぁ、あの娘があんなにも楽しそうにしているのなら悪いようにはならないでしょう。周りの娘達も敵意も害意もまるで無い……。サーヴァント?だったかしら……。そもそも私達を騙すメリットが無いわ。普通に戦うだけであっけなく殺されてしまうぐらいの力量差はあるもの……あぁ、それにしても)

 

 六導玲霞は考える。

 

(何で私は彼に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?)

 

 アダルティな時間になると思って、わざわざ二階の別室を取ったというのに、この『白のビースト』がした事と言えば、ベッドに腰かけ、自身の膝に玲霞の頭を置いてひたすら撫で続ける事だけだった。子供のようにポンポンとあやしながら。

 

(一体、何を考えているの?)

 

 玲霞自身も何故かそれに抵抗する気が一切起きないので、身を任せているが。

 

(ふぅ……こうして、誰かに身を預けて、頭を撫でられるなんていつぶりかしら……)

 

 娼婦としても、プレイによっては甘えてくる男達に膝枕をした事はある。だが、こうやって甘やかされるような体験は初めてだった。

 それも致し方無いといえば致し方無い……。六導玲霞という女の色気を目の当たりにすれば、少なくとも童のように扱おうとする男は普通は出てこない。誰もが自身の欲望を好き勝手に彼女にぶつけた。少なくとも彼女が娼婦として働いてきた時は、そういう手合いしかいなかった。

 

(あぁ……駄目、このままされ続けていたら、ずっとずぅっと出さないでおいた自分の奥底にある大切なナニかが溢れちゃいそうで)

 

 

 ふと、滴が目元をつたった気がした。

 親が交通事故で亡くなる前の幼き頃、もしかしたら……こんな光景もあったのかもしれない。

 だが、もう思い出せない程に波瀾万丈過ぎたのだ、両親を失ってからの彼女の転落人生は。

 

(初めてよ。私から誘っておきながら、こんな子供扱いする人は……。それとも汚れ切った女の体だと抱く気は起きないのかしら?)

 

「いや、玲霞ちゃんの体は綺麗だよ。そういう展開も非常に魅力的だけど、今の君にはこうしたいって俺自身がそう思っただけ。嫌だった?」

 

「別に嫌じゃないわ。それに玲霞()()()って……」

 

「フフン、こう見えても君よりは結構年いってるんだぜ?それに子供にちゃん呼びは別に変でも無いでしょ?」

 

「私が子供?」

 

 白のビーストの鼻歌と共に撫でられ続ける頭、玲霞は少し硬い膝なのに今まで寝てきたどんな枕よりも心地良く感じていた。

 

(あぁ……そうね、そう言えばあの時から何も子供らしい事はしてこなかったわ、もう親の顔を思い出せないけど……)

 

 

「遊具開封 桃園仙術式目 三幼飛んで八面六臂! これ即ち火炎車! 回転!」

 

「すごいわぁ!哪吒!炎でグルグル回って、こんなメリーゴーランド始めてよ!!」

 

「あはははっ!めがまわるよ!すごいすごい!あはははははっ!!」

 

「幼児となって、哪吒の腕を掴みはしゃぐ幼き者達の笑顔に包まれる……あぁ、ここが私のアヴァロンだったのか……」

 

 

 我が子のように大事な(ジャック)の笑い声が下から聞こえる。ついさっきまであんなに殺伐とした行程を終えたとは思えない程の穏やかな時間……。とても聖杯戦争に臨んでいる身とは思えない空気。

 遠い遠い昔、彼女の中で止まっていた時間が動き始めたような気がした。

 

「君には誰か頼れる人が必要だった。甘えられる時間が必要だった。誰もが生まれながら与えられる筈の当然の権利が無かった。目の前で疲れ切った子供がいたなら手を差し伸べるのは当然だろう?」

 

 ――これは俺が勝手にしたいと思ったことだ。打算も思惑も何もない。だから、君は今は……ただおやすみ……。

 

 自身を愛撫する優しい声がする。

 

 どうしようもない平穏と安心感がそこにはあった。この人ならジャックの願いを叶えてくれると、そして自分を助けてくれると、根拠はなくとも、揺らぎようがない確信を玲霞を抱えたままゆっくりと瞳を下した。

 

 その寝顔は彼女がこれまで生きてきた中で一番、穏やかのように見えた……あどけない少女のように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ、おかあさん寝ちゃったの?」

 

「あぁ、ちょっとお疲れだったみたいだからね」

 

「ふぅ――ん、けどおかあさん、凄く気持ち良さそう。ねぇねぇ、わたしたちも一緒に寝ていい?」

 

「あぁ、膝はもう一個空いてるから。おいで」

 

「わぁ――い!!……………………すゃぁっ……」

 

「早ッ! 即寝!」

 

「ふふふ、マタ・ハリさんという百戦錬磨とも言える女スパイも誑し込む、父性&母性を持った座長さんの甘やかし術……これで黒のアサシン主従も座長さんの手に堕ちたのね……フフフフフフ」

 

「あびぃ、また 悪女化 言い方 人聞き 悪し」

 

「親の愛情を忘れてしまった女性と親の愛情を知らない幼女をあやし、膝枕するマスターの絵面、尊過ぎて、混ざりたくなる気持ちすら浄化されるな……取りあえず、写メっとこう」

 

「アタ 撮る前 鼻血 拭く」 

 

 

 

――prrrrrrrr

 

 

 

 

 

 

 




《同時刻……三白城、姫ルームにて》


「はいもしもし、マーちゃん? 姫だけど。いや、姫姫詐欺とかじゃないから。…………なに? 姫にはいつもエロエロと白いのを振り込んでるから? …………ウン、ちょっと黙って」

「兄様の声が! その板から兄様の声がした!」

「は――い、シロ君。今ちょっと姫お話中だから離れようね~~。うんうん、ごめんね。それでちょっとリリィちゃんがさー。そうそう第一層で門番をしていた筈なんだけど」

「すまーとふぉん……ぱけほーだい、そういうのもあるのか……」

「何故か泣きじゃくって幼児化して会話にならないモーちん、そう……赤のセイバーの方ね。その娘を連れてきてさ。『マスターの剣として不覚を取った雌にこの不届き者ともども罰を』の一点張りでさ。ちょっと隣にいるモーちんが可愛そうになるレベルで、顔がやんべーから、ちょっと戻ってきてもらえる?」

「家族割り……兄様と家族割り……家族……」

「あぁ、何? ちょっと黒のアサシンとそのマスター引っ掛けた? 別に今更二人増えたぐらいどうって事ないですよ。むしろマーちゃん通常運行みたいな? とりあえず、あのリリィの法則を乱す騎士様の扱いは任せたからね~~。ちゃお。ふぅ………………で、シロ君は耳を塞いで何をしてるのかな?」

「兄様の声を鼓膜の中に保存している」

「うぇええい、もう姫突っ込み役するの疲れたぁぁぁっ……! もう少しこの陣営、常識人が欲しいんだけどぉぉぉっ!」















《白の陣営》
白のマスター:白のビースト
白のセイバー:セイバーリリィ
白のアーチャー:アタランテ
白のランサー:哪吒
白のライダー:――――
白のキャスター:アビゲイル・ウィリアムズ
白のアサシン:刑部姫
白のバーサーカー:――――
白のルーラー:――――



黒のサーヴァント:残り6人(アサシン主従、戦闘続行不可により)
赤のサーヴァント:残り5人(赤のセイバー、戦闘続行不可により)















性癖歪んだお父さんの地雷を踏んで、恐怖のあまり幼児化してしまった号泣モーちゃん。
白のビーストから母性&父性を感じる玲霞ちゃん。
ちょっとずつ人らしい感情を学んでいくシロちゃん……これぞ群像劇!(違う)。


少しだけ注意事項、感想欄でこれからのストーリー展開的な予想とか実はこうなんじゃね?みたいな根幹に関わりそうな事についての返信はお茶を濁すか、ノーコメントとさせて頂きます。これがストーリーものの弊害か、ぐぬぬ。まぁ、このアポ編で大真面目にストーリー展開を考えている人が作者を含めて(おい)いるかどうか怪しいものですが。







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ビーストウォーズ④(Fate Apocrypha編)

引き続き、アポ編です。
アポ編を更新する時は2話続けてという自分ルール。

毎度の事ながら、感想、誤字報告、評価ありがとうございます。辛い社会での癒しになっております。
















 《巨大モニターから『白のビースト』が両陣営に宣戦布告していた頃》

 

 

「第三勢力、『白の陣営』……。人類悪、『白のビースト』……」

 

 夜空に映ったモニターが消えた後、蠢く触手で大聖杯を抱えている三白城を見て、この聖杯戦争に召喚された本来のルーラーであるジャンヌ・ダルクは茫然としていた。

 

「黒と赤の七騎同士による大規模な戦争、それを監視する為に私は召喚された……。そう思っていましたが」

 

 聖杯戦争を見守る調停者として、自身の知識の中には『白の陣営』なる者達の情報は何も入ってこない。

 故に彼等が正式な参加者ではなく、イレギュラーである事は明白。

 

「私が召喚されたのも彼等の乱入の所為?しかし、もし彼の人類悪という言葉が真実なら、もはや一サーヴァントでどうにかなるレベルを超えています……ふぅ、ともあれ情報が足りません。白の陣営が何を考えているのも不明ですし……陣営に属している誰かと接触出来ればいいのですが」

 

 まずはあの分かりやすい程に巨大な彼等の居城を訪ねるしかないかとジャンヌが歩き出した時、その背後に近づく者の気配が……。

 

 

「何者ッ!…………なっ!?」

 

 

 ピンク色のブレザーに丈ギリギリのミニスカート。その格好は紛うことなきJK!ルーラーの顔が驚愕に染まる。それもその筈、自分と瓜二つの顔をした女性がそこにいたのだから。

 

「コウノトリはどうしたら、私に赤ちゃんを連れてきてくれるのでしょうか?」

 

「…………はい?」

 

 

 ジャンヌ・ダルク……白のルーラーでもあり、自分と同じ顔で何故かJK姿ではっちゃけているもう一人の自身と邂逅する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁぁっ、おっきいお城だね!おかあさん!」

 

「ここまで大きい城は見るのも入るのも初めて……それに人もこんなにたくさん。けど、皆似たような顔をしているわね」

 

「おじいちゃんのお家って大家族なのかな?」

 

「ジャック、その()()()()()()というのは……?」

 

「え?ビーストおじいちゃんだよ!だっておかあさん、寝ながら『パパ……』って言ってたから!おかあさんのパパなら私にとっておじいちゃんだよね!?」

 

「そう……ね、ふふ、恥ずかしい所、聞かれちゃったわ……」

 

「おかあさん、顔まっか――」

 

 三白城の第一層、元チェイテ城フロア。

 何一つ疑う事なく、自然な形でこの城に連れて来こられた玲霞とジャックは自分達に宛がわれた部屋へと向かっていた。

 長い廊下、いくつもある部屋、埃一つないカーペット。そして、さっきから何度も何度もすれ違うホムンクルス達、数多ある部屋の内のいくつか開いたドアから彼等の楽しそうな声が聞こえる。

 

「あっ!バーチャル礼拝の時間だ!」「あっ、ごめん。ちょっとフェイルノートトリスタンの事、考えてた」「はぁ――、ほんま激運チケットつっかえ……。竜玉の一個も持ってこれないの?やめたらこの仕事?」「尊い……白のビースト×ラーマきゅんのこの同人誌……尊過ぎるよ……」「もう、只の魔力タンクとして魔術師共の道具になる時代は古い!時代は仮想通貨や!見とけよ~、このビットコインで一儲けしたるからなぁ……」「俺、マクドナルドの教祖様になって世界をハンバーガーで平和にするよ」「よし、出来た……!トラックで死んだ現代人がファンタジーの世界で無双する斬新な小説が!これは……これはもしかして、大ヒットしてしまうんじゃないか!?」

 

 ユグドミレニアから拉致された大勢のホムンクルス達。その誰もが、方向性はバラバラであったが、現世の娯楽を楽しんでいた。最初は突然変わった環境に困惑していたが、空っぽだった無垢故かもう既にこの環境に適応していた。

 

「随分と賑やかね……」

 

「あっ、あっちからおじいちゃんの気配がするぅ!」

 

「こらっ。もう、ジャックたら……」

 

 

 走り出し、勝手にドアの一つを開けるジャックの後を追って、部屋へと入っていく玲霞。

 

「ヒッ……なっ、なにっ……!?」

 

 そこにはベッドで横になる憔悴しきった金髪の少女と隣で椅子に座り、その手を握る白のビーストの姿があった。

 窓の外からは『私は息子にトラウマを抱かせた悪い父親です』と立て札を掛けられ、全身を縛られ、恍惚とした顔でプランプランと吊るされているセイバーリリィの姿が覗かせていた。

 

 縛られ、揺れるセイバーリリィの姿が目に入る度に小さな悲鳴を上げ、体を震わせる赤のセイバー、モードレッドの姿。

 小さく溜息を吐き、その姿が見えないようにカーテンで隠す白のビースト。

 

 ――放置プレイは嫌いですけど、この縛られる痛みと心地良さもマスターからの愛と思えば結構イケますね……。

 

 ――パチンッ

 

 ――あゥンぅっ……!

 

 彼が手を振るえばまるで見えないスパンキングが外に届いているように紐に繋がられた恍惚の声を上げるリリィの体は揺れる。

 

 そのリリィの嬌声が聞こえる度に体をビクつかせるモードレッド。

 

「ふぅ、元凶たる俺がこうして慰める側に回るとは……マッチポンプもいい所だよ。このままストックホルム症候群とかになっちゃいそうだな。はいはいよしよし、赤のモーさん、大丈夫だからね――。怖いお父さんは幻だから、起きたらもう何も無いいつも通りの日常が来るからねー」

 

「あ、あぁぁぁ……あっ、あっ、ん、あぅ…………すぅ、すぅ……」

 

 握られていない方の手で玲霞の時と同様の慈愛に満ちた表情でモードレッドの頭を撫で続ける。本来なら仇敵であるその男の手を彼女は受け入れてしまう程に弱り切っていた。

 

 セイバーリリィと対峙していた時の殺意はとうに吹き飛んでいた。この叛逆の騎士がここまで幼児退行してしまうとはこの男が帰ってくるまで、白のセイバーは一体何をしていたのか想像もしたくない。只一つ言える事は愛って怖いな――って事だけ。

 

 やがて、潤んだ瞳は瞼に隠され、落ち着いた寝息が部屋へ響く。

 

「ちゅぅ……ちゅぅ……」

 

「リリィ以外の娘達にも言える事だけど、ちょっと俺に向けられる殺意とか敵意に対して敏感過ぎる娘達が多過ぎるんだよなぁ。それだけ想われているのはありがたい事だけど、やり過ぎはよくない。聖人君子だろうが、誰からも好かれる人なんているわけないんだからさ」

 

 寝付いた後も赤子のように彼の親指に吸い付いてくるモードレッドを引き剥がす事なく、彼は独りごちた。

 

「このおねえちゃん、どうしたの――?」

 

「あぁ――、ちょっとね。お父さんにこっぴどく怒られて泣き疲れちゃったんだ。そっとしておいてあげて」

 

「そっか――……。それは嫌だね。わたしたちもおかあさんに怒られたら悲しくなっちゃう……」

 

 シュンとしたジャックはその後、羨ましそうに撫でられるモードレッドの顔を覗く。

 その様子を見て、ポンポンと自身の膝を叩いた白のビーストの意図を察したジャックは「わーい」と嬉しそうにその膝へと飛び込んだ。

 

「この城にいた。似たような顔をしていた彼等は……」

 

「まぁ、聖杯戦争の関係者といえば関係者なのかな?ユグドミレニアが保有していたホムンクルス」

 

「それをどうして貴方が?」

 

「ちょっとワケがあってさ。酷い目に合いそうだった一人のホムンクルス君を助けてね。一人助けたんだし、ついでに残り全員も拉致ってみようかなぁってノリで」

 

「ノリで」

 

「そうノリで」

 

「けど、ここまで来る彼等は皆、幸せそうにしていたわ。きっと事情はどうあれ、貴方が助けてくれた事に感謝しているのではなくて?えぇ、貴方がその気になれば、世界中の人達を幸せにする事だって出来るかもしれないわ」

 

『私とジャックを救い上げてくれた貴方なら……』と玲霞は冗談めいて笑う。

 

「まさか。全ての人間を幸せにする方法なんて無いよ」

 

 そんな戯言を白のビーストは小さく笑い、一蹴する。

 

「俺が助けるのは俺の周りの世界。俺が守りたい世界、()()()が届く範囲での世界さ。それ以上の事はすべきじゃ無いし、する気も起きないよ」

 

 

 玲霞の瞳には一瞬だけ――――彼の背後から、神々しく光る数多の白い魔手が見えたような気がした。

 

 

「ねぇ、おじいちゃん。なんか面白いお話してー」

 

「しょうがないなぁ、ジャックは……じゃあ――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 三白城の第5層。元姫路城フロアにて。

 

 刑部姫の三白城、かつてマスターとのヤリ部屋にも何度も使われたこの宝具の中は結構好き勝手に内部の様相や空間を弄る事が出来たりする。色んなシチュエーションに応える空間。正に性鬼深愛獣様に捧げるに相応しい宝具。

 

 そしてそんな城の中、和風の外装からは似ても似つかない学生の学び舎、教室の机を挟んで二人のジャンヌは相対していた。

 

「え、えぇ……あのですね。で、ですから、その赤ん坊というのは神様の授かり者であって。こればっかりは運というか天の御心のままというか」

 

「何をかまととぶっているのですか。同じ私ならどうすれば子が出来るかなんて知っている筈でしょう。おしべとめしべが濡れ濡れでドッキングする以外に無いでしょう、子を授かる方法なんて」

 

「貴女が最初に言い出したのでしょう!?コウノトリがどうとか!そもそも、表現が生々しいんですよ!!」

 

「これでもオブラートに包んだつもりなのですが……。あぁ、ならおちんp」

 

「あっ――!あっ――!き、こえませんぅぅぅっっ!!同じ顔した私からそんな言葉聞きたくありませぇぇぇんぅぅっ!!」

 

「お静かに。人様の家で奇声を発するなんてマナーがなってませんよ」

 

「いきなり、保健体育の話をぶち込む貴女に言われたくありません!」

 

「保健体育大事じゃないですか。そもそもそれが無いと人類は存続されないのですから。私、学んだんです。人生においてエロスは大事だって。何度も不適切だ不適切だって規制する人達の方がよっぽど不適切だと思います」

 

 片やサーヴァントの服装を解除したレティシアの私服姿のジャンヌ、片やブレザー姿のJKジャンヌ。傍から見れば、仲睦まじい姉妹にしか見えない。会話内容に耳を塞げば。

 

「………………あぁ、頭が痛い……。もういいです。そんな話をしに、貴女の誘いに乗ったわけではありません」

 

「私にとっては超重要な話なのですが。妹同然の二人には先を越されて、やっと自身の精神から出ていって独立したもう一人の魔法少女化した自分にも先を越されて、もし、これでピンク髪の男の娘にすら先を越されてしまったら、いよいよ悪堕ちしてもおかしくないんですから」

 

「はぁぁ…………これではっきりしました。私と貴女は顔と名前が同じの只の別人だって。私に妹はいませんし、魔法少女とかに到っては意味が分かりません」

 

「何を今更分かり切った事を。進むべき軌跡が違えば、例え元は同じ存在だとしても、別人たるのは当然の事じゃないですが」

 

()()……ですか。やはり、貴女もかつては私と同じく聖杯戦争で召喚されたサーヴァントなのですね?」

 

 ようやく、話したかった路線へと戻したジャンヌは白のルーラーに問い質す。

 白のサーヴァントを名乗る彼女も最初は別の手段によって召喚された英霊の一人だと思っていた。

 だが、違う。目の前にいる存在は。英霊などと言う影法師ではなく、確固たる一つの命としてこの地に存在していた。

 今、こうして相対しても彼女は理解していた。目の前にいる白のルーラーを名乗る何者かはサーヴァントとは比べ物にならない程のエネルギーを有していると。英霊が受肉した……いや、それ以上のナニかだと彼女の啓示が告げていた。

 

 だからこそ、知らなければならなかった。自分と同じジャンヌ・ダルクを名乗る者の正体を。『白のビースト』、人類悪を騙る者の正体を。そして白の陣営の目的を。

 

「そうですね。遠い遠い、昔の話です。私もこことは毛色が違う聖杯戦争に呼び出された英霊の一人にしか過ぎませんでした」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マーちゃんの事を知りたい?」

 

「あぁ。どうしてそんなに身構えるんだ?」

 

「そりゃあ、これまでの自分の行動を省みて欲しいね。順調に病み路線に行こうとしているショタムンクルス君にもう胃がキリキリしているんだから」

 

「済まない……。迷惑をかける」

 

「はぁ――……。マーちゃんが関わらない所ではまともなんだけどな――。ま、いいけどさ……。正直、姫よりも初期から付き合いがあるマシュとか、ダ・ヴィンチ先生とか黒王様辺りの方が詳しく教えてくれると思うけどね――」

 

 そう言いながらも、律儀な刑部姫は断れず、自身の本棚を漁る。そこから取り出す本・本・本・本の山。

『カルデア国物語』『カルデア国物語 第二部』『カルデア国物語 ep3』『帰ってきたカルデア国物語』『カルデア国物語 改』etc……。挿絵はあの芸術家が担当したアンデルセン著作の全年齢対象の冒険譚がシロの前へと積み上げられる。当然、R18な方は『カルデア寝物語』が担当なので、全て削除されている。

 

「私が口で語るより、本を通した方がわかりやすいと思ってね。あのショタ作家様が『ふざけるな!引き延ばしにも程があるだろうが!後、何回終わる終わる詐欺をするつもりだ!完結所を見失った品程無様な物は無いというのに……』と文句を言いながらも最後まで書き続けてくれた渾身のシリーズ物だよ。心して聞くように」

 

「これ全部が兄様の物語……」 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 大昔から続いていた人間達の織り成す物語。その名は『人類史』。

 

 だれもが続くと思っていた当たり前の日常。そんな日々がある日忽然と失われてしまった。

 

 2017年、『人類史』を焚書し、新たな物語を作りだそうとした悪者の名は『魔術王』、我々人類にはもう為す術が無いと思われました。

 

 しかし、そんな絶望的な状況の中でも立ち上がった者達がいたのです。

 

 彼等が所属する組織の名は『人理継続保障機関カルデア』。数も力も少ないですが、滅びに抗おうと必死にもがいたのです。

 

 人理を救う果てしない旅、その主軸になったのはどこにでもいる平凡な少年。彼は人類最後のマスターとして、多くの英霊達と契約をしました。

 

 彼と同じマスター枠だったデミサーヴァントの少女も寄り添い、支え、数多の特異点を超えていきました。

 

 時には召喚に応えた英霊達の主従の垣根を超えた、恋と愛の物語もありました。

 

 心を躍らせる冒険が、決して断ち切られる事のない絆がそこにはあったのです。

 

『魔術王』の正体。『人類史』という物語を打ち切りにしようとする悪しき編集長の名はゲーティア。魔神柱アンケートという身内だけの勝手なアンケートで人類を終わらせようとする編集の風上にも置けないヤツです。

 

 ゲーティアを倒しても、物語は終わりません。

 

 魔神柱の残党。不要の者として切り捨てられた敗北者達の歴史。遊星からの使者。黙示録の獣……etc、人類史はもう笑える程に何度も燃え、凍結され、滅ぼされそうになったのです。

 

 それでも彼等は戦いました。何度も現れる幾つもの人類悪を相手に。

 

 ――違う、違う。こんな終わりは認めない。こんな結末で終わっていい物語ではない。そもそも人類史という読み物を誰か一人の手で決める事なんて出来ないだろ。

 

 ――俺が守る世界は、この両手で抱えられるだけの『家族』だけ。始めから全ての人間を救ってやろうなんて大それた事を考えた事は一度も無い。それに……たった一人の手で救える程、人類は弱くない。

 

 ――俺は彼女達と一緒に目指す未来が、結末が、ゴールが、夢があるんだ。そこにいくまではあぁ、こんなとこじゃ、終われない。終わって(死んで)やれない。

 

 

 人理修復達成。

 

 

 訪れた平穏。安穏と平和を満喫する人々。その影には何度も人類の危機を救った貢献者がいました。

 

 ですが、人類史を脅かす程の敵を何度も退けた者が普通でいられるでしょうか。どこか外れてしまったその者を皆が放っておくでしょうか?

 

 英霊は兵器であり、人知を超えた化け物である。そんな存在を受肉させ、家族として囲う者に平和を愛する無垢なる人々の矛先が向けられないとどうして思うのでしょうか。

 

 無知は罪であり、未知は恐怖でもあります。

 

 

 ――封印すべきだろう。

 

 ――いや、危険過ぎる。速やかに始末すべきだ。

 

 ――あれは一人が抱えるべき戦力のレベルをとうに超えている。

 

 ――だが、利用価値はある。

 

 ――カルデアのマスターの体は我々にとって神秘の結晶であろう、我々の悲願へのアプローチとして、間違いではない。いやもしかすれば根源への道が。

 

 ――あれは化け物よ!この世界にいてはいけないわ!

 

 ――怖い、怖いよ……。早く誰か殺してよ……。

 

 

 誰かが言いました。あのマスターこそ、最後の人類悪なのではないか……?と。

 

 誰かが言いました。次はあの者が人類を滅ぼすのでは?と。

 

 今までのようにわかりやすく強大な敵でもない。だが個の力は弱くとも、その数は甚大。

 

 ここまでの旅路で守ってきた人類そのものが彼等に牙を剥いたのです。世界の敵意と悪意が彼等に襲いかかろうとしたのです。

 

 

 ですが――。

 

 

 彼は特に悲しむわけでもなく、特に怒るわけでもなく。

 

 

 ――よし。じゃあ、皆で逃げよっか?

 

 

 そう、いつもと変わらない笑顔で言ってのけたのです。

 

 まるでこれを予期していたかのように準備されていた巨大な豪華客船のような宇宙船が宙へと飛び立ちます。

 

 人類初の偉業を成し遂げた女船長、人類最後のマスターだった男の後輩、ビテオカメラ片手に楽しそうにその様子を撮る自称デビル後輩を始め、彼の『家族』となった娘達はいざ新天地へと夜天の向こう、宇宙の先へと。

 

 

 ――ふっ、ふっ、ふっ、やるじゃないか、この獣を追い出すなんて。君達には負けたよ。覚えてろよ~~。バイバイキ――ン。

 

 

 こうして、彼等は……星見のカルデアは正真正銘、遠い遠い星そのものになったのです。

 

 人類に滅ぼされる悪になる前に彼はこの地球から去っていきました。

 

 地球外へと飛び立った獣には人類の討伐の手は届きません。

 

 

 存在せざる人類悪。故に『ビースト0』。

 

 

 ――もし、またどうしようもない事になったら……。足掻いて足掻いて、どうしようもない絶望を前にしても諦めない人がいたら、俺はまたこの星に戻ってくるかもね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………貴女は――」

 

「はい?」

 

「もしかしてその彼をかつての自分と重ねてしまったのではないのですか?欲望と悪の果て、さらには善を成そうとした人々の紅蓮の炎で処刑された自分を」

 

 最後まで話を聞いたジャンヌは白のルーラーへと問い掛ける。

 フランスを救いながらも最後は異端者として、魔女として火刑に処された自分と……人類を救いながらも最後はその人類そのものにあらゆる悪意を向けられた『白のビースト』。ジャンヌ自身も思う所が無いわけじゃない。白のルーラーがした話はあまりにも壮大。だが、彼女には微塵も嘘だとは思えなかった。

 

「ははっ、妹にも似たような事を言われましたね。嫌味ったらしい顔で……。まさかですよ。もし彼が私の立場だったら処刑場を壊し、自身を慕う全ての人を攫い、遠く遠くどこかの地へ逃げていきますよ。私は、自身の死によって少なからず悲しんでくれる人間がいる事を当然知っていました……それでも一片の後悔も無く、あの結末を良しとした私と彼を同一視なんて出来ませんよ」

 

 白のルーラーは天高く、遠い星を想起するように頭上へと手を伸ばす。

 

「サーヴァントは影法師。あくまで座から分かれたただの一コピーにしか過ぎません。それでも彼は、サーヴァントだろうが、紛い物だろうが、今()()()()()()()()()私達に傍にいて欲しいと。心からそう願ったのです」

 

 そう語る瞬間だけ彼女は聖女ではなく、一人の恋する乙女の顔をしていた。

 

「恋をしてしまったのです。自身の身が人から外れようとも獣の域に行こうとも変わらず進み続ける彼の姿に。体と心、文字通り、全身全霊で愛されてしまったのです。それこそ、サーヴァントの身から一つの個として転生されてしまうぐらいに。ここまでの情を向けられたのなら折れるしかないでしょう?『死者は生者を導いてはならない……なら生者になれば問題ないでしょ?』と彼は笑っていました」

 

「『白のビースト』がこの世界に来たのは……」

 

「復讐なんてナンセンスな事を彼がするワケないでしょう。しかも別世界になんて八つ当たりもいい所です。彼にルーラークラスの適正が無いのと同じようにアヴェンジャークラスの適正も無いのですから。復讐者たる彼女達は若干不満そうな顔をしていましたけど」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マーちゃんはそれはそれで良しって言ったよ。自分に向けられたあらゆる悪意を前にしても怒りも悲しみも無く。特に否定する事も無く。『それでいい。君達は好きにすればいい。代わりに俺達も好きにするさ』ってさ。それがまさか、宇宙へのハネムーンとは思わなかったけどね」

 

「なんでだ……?」

 

 シロは震えていた。『白のビースト』の最初の冒険譚を聞いてた時、憧れの人の活躍に心を震わすような幼子の如き反応はもう鳴りを潜めていた。彼の結末を聞いた時、ホムンクルスである彼の心に宿ったグツグツと燃え滾るような暗い感情……まさしくそれは『怒り』であった。

 

「何故、兄様は笑ってられる……。人間の事は疎い俺でもわかるッ……。善行を成した者にはそれなりの対価が、報酬があるべきではないのか?何度も救われた人類が兄様に返した恩がこれなのか……!?こんな、こんな結末が、こんな仕打ちがあっていいのか……!?兄様はっ、兄様はぁっ……!何も無い俺をも助けてくれたのに……!そんな優しき兄様をぉ……!!」

 

 人形のように整った顔を歪ませて、悔しさで涙を流していた。

 最愛の兄を受け入れなかった人類を……人々をどうして?どうして?と嘆いていた。

 

「兄様なら、全ての人達に愛されてもいい筈だ。いや、そうあるべきだろう……」

 

「さてね、マーちゃんは一度たりとも、自分が世界を救おうだなんて思った事は無いからね。本人は只、こんな所で死にたくなかっただけだよってね」

 

 その言葉に、刑部姫はおもむろに『カルデア国物語』の最終巻、最後のページ、作者の後書き欄を彼に見せた。

 涙を拭ったシロの瞳にはこう記されている。

 

 

『どんなに高名で優れた書物だろうと、どんなに愉快で世界中で売れている物語だろうと、必ずそれを嫌う者は出てくる。アンチというヤツだ。まぁ、それは別段珍しい事でもない。

 全ての人間に愛される物語が無いように、また全ての人間に愛される存在など無いのだからな。どんなに性格が良い聖人君子でもだ。人類最後のマスター……シンプルに言えば、ヤツはやり過ぎた、その一言に尽きる。

 力なき大衆にとってヤツは異様の存在に見えたのだろう。畏怖すべき怪物に見えたのだろう。当然の帰結であり、当たり前の結果でもある。もはやこの人類は世界に匹敵する程の劇物を受け入れる程の度量は無くなったのだから。きっとそれが正しき世界の在り方というやつなのだろうな……。

 

 だが、そんな化け物を愛する物好きも中にはいる。笑える事に結構な数がな。

 

 故に俺は凡愚たる悪意や害意とまともに取り合わず、自分の大事な物を抱えてさっさとトンズラこいたあいつの選択肢を…………

 

 

 

 ――――心から賞賛する。』

 

 

 

「――――」

 

「姫もぶっちゃけ、マーちゃんの選択肢には賛成だったかな。『ぬっころせ!』とかいう過激派な娘達もいたけど。そりゃあね?あの時の私達とかマーちゃんを筆頭に星の一つや二つを壊せる戦力はあったよ。けど、それが何?って話なワケよ。『不毛な蹂躙劇より、俺は奥さん達とイチャラブ子作りをしたい(キリッ』って言ってくれてわたしもマジで安心したし」

 

「わからない……兄様は『人』だ。化け物や怪物なんかじゃない……俺が供給槽から見てきた魔術師達よりも『人』だった。それこそ、兄様を迫害した人達の方がよっぽど化け物じゃないか……」

 

「『本当の悪魔とは巨大に膨れ上がった民意だよ』って誰の言葉だったかな――?ま、いいや。未だ世界を知らず、マーちゃんに向ける好感度がカンストしているシロ君には結構酷な話だったかもしれないけど。それでも今のマーちゃん見てみなよ?悲壮感の欠片も無いでしょ?」

 

「おれは……俺は全然、兄様の事をわかっていなかったのか……。それなのに、あんなにベタついて……もしかして、め、迷惑に思われて……」

 

「いやいや、マーちゃんは寂しがりやだから、そこはドンドンしていいと思うよ」

 

「わかった。そうしよう」

 

「切り替えはやっ!」

 

 ――初めは只、『生きたい』。それだけの願いしか無かった。

 

 ――あの人に助けられて、あの人の姿を目にして、もっと知りたいと、もっともっと見たいと願った。

 

 ――けど、今は知るだけじゃ、見るだけじゃ足りない。兄様の隣で、兄様と同じ目線で、兄様と同じ時間を生きていきたいと……。

 

 ――そう願う事は『悪』なのだろうか……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そもそも、貴女は何故、こうして自陣営の情報を私に話してくれたのですか?」

 

「当然、貴女が外れクジという名の聖杯戦争の管理者を全う出来る為の計らいですよ。私は今はバカンスみたいなもんですから。白のルーラーも名だけですよ、気が楽です」

 

「ルーラーを何だと思っているのですか、貴女は……。そして、もう一人のルーラー、シロウ神父……天草四郎時貞……」

 

「さすがにもう赤のランサーをけしかけて、抹殺とかはしないと思いますよ。あちら側にもそんな余裕は無いと思いますし、よっと」

 

 黒板の前で、ジャンヌ、マスターの相合傘をチョークで書く白のルーラー、それを真っ赤な顔で消すジャンヌ。

 

「……ふぅ、ふぅ……。わかりました。まだ貴女達、白の陣営がどうして聖杯を奪い、両陣営を挑発した目的は聞いていませんが、本日はこの辺りで帰らせて頂きます。これ以上貴女を前にしているとストレスで座に帰ってしまいそうですし」

 

「はい、どうぞ。部外者の入城は非常に困難ですが、帰りは容易いのがこの城の利点ですよ。もうこの教室の扉を一層の入り口に設定してもらったので」

 

「出鱈目な宝具ですね……。それで一つ聞きたかったのですが、どうして貴女は学び舎の制服を着ているのですか?」

 

「こう、新たな土地、いつもと違う服。新鮮なシチュエーションでマスターにしこたま仕込んでもらえば、子宝に恵まれるという私の名案が」

 

「帰らせて頂きますッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すぅ……すぅ……すぅ」

 

「あらら、ジャックはおねむですか」

 

 第一層、チェイテ城フロア。二人の子供は既に夢の世界へと旅立っていた。

 最後まで白のビーストの話を聞いていた玲霞。それこそ夢物語のように途方もない話だったが、疑う事なく、彼女も最後まで真剣な面持ちであった。

 

 気づけば、ジャックと同じく彼の空いている方の膝を枕にしていたが。

 

「……貴方は、そんな状況でありながら最後の最後に幸せを掴んだのね。流されるだけの私とは違って……」

 

「あはは、最後だなんて。まだまだ中盤もいい所だよ俺は。最高の過程(家庭)に、幸せな旅路を歩んでいる途中。目指すべき到達点に到るまでは、これから色んな物を家族と面白おかしく積み上げていくのさ」

 

「そう言えば……貴方の目指す夢って何なのかしら?もうここまでになれば、手に入らない物なんて無いと思うのだけれど……」

 

「ほっほー、知りたい知りたい?この俺のあまりにも壮大過ぎるビッグドリームを……。そんなに見つめられたら答えざるを得ないじゃないか」

 

 

 白の獣は語る。己が夢を。自身の『人』生の集大成ともいえるゴールを。

 

 

 あぁ、それは何て困難でありながら、いつ叶うのかも想像出来ないぐらい途方も無く、とても人類悪の口から出た夢とは思えない。

 

 

 だが、それは馬鹿らしい程に微笑ましく、暖かくて、穏やかで、希望に満ちていて――――。

 

 

「貴方……パパらしい夢だわ……」

 

 彼の語る未来に自分とジャックもいたらいいなと玲霞は頬を緩める。

 きっとそこには絶対的な安心と愛があるのだから。

 

(私とジャックも家族にしてくれないかしら……?)

 

 陽は沈んでいく。白のビーストは3人の子供に囲まれながら、安穏を過ごす。時たま、手を振るい外にいるペットに躾をしながら。

 それでも時は残酷にも過ぎていく。人間だろうが、英霊だろうが、ホムンクルスだろうが、人類だろうが、無情にも。

 

 

 赤黒陣営がこの城に攻め込んでくるまで、残り26時間。

 

 

 

 

 




《あっ、バーチャル礼拝の時間だ!》

「こんにちは、シロです。今日はバーチャルYouTuberの頂点に立つ。バーチャル親分こと、BBアイさんが来てくれています。パチパチパチ~~。…………俺はこんな所で何をしているんだ?」

「ちょっと、テンションが低いですよ、新入りさん! 貴方には、アマゾネスCEO、籠城姫、バーチャルTS魔法ネットアイドルYouTuberロクデナシに次ぐ、人気バーチャルYouTuberになってもらうんですから! さぁ、四天王を目指してレッツ、トライ!」

「とは言われても、俺は別にバーチャルでもないから……」

「細けぇこたぁいいんですよ! 一般人にとって私達の存在なんてバーチャルみたいなもんなんですから! いいんですか? これで人気バーチャルYouTuberになって愛しの兄様に『シロの動画は為になるな~』って頭とかアソコとかよしよし♡されたいと思わないんですか?」

「BBとやら俺は何をすればいい?」

「切り替え早っ……。そうですね。今回はちょっと出たセンパイの人類悪の情報について、本編で語られなかったら補足説明回と洒落こみましょう!シロさんには相槌役やら、質問役を。新鮮なリアクションをお願いしますよ?」

「あぁ、兄様の情報ならそれをオカズにご飯は3杯いける」

「順調に狂っている無垢なホムンクルスから目を瞑り、BBちゃんは本題に入ります」


【ビースト0について】


「そもそも今までのビーストの表記にも使っていたⅠ~Ⅶまでのローマ数字にゼロという表記はないんですよ。ローマ数字にゼロの概念が無かったとも言えますけどね」

「だから存在せざる人類悪と。表記されていたのか」

「ゲーティアさんがサーヴァント化したセンパイを前にして言った台詞から、彼もセンパイが普通の人類悪とはまず成り立ちが違うと概ねわかっていたのではないのでしょうか?まぁ、その後にゼパってしまった悲しき結末には黙とうです。おっとこの話は今の段階では未来の話でしたね、自重自重」

「少し、気になっていたのだが、兄様にはスキル『魅力(零):A+』があった筈。なのにどうして、そんな大勢の人間から敵意を向けられたのだ? 彼等に赤のセイバー程の想いがあるとも思えないが……」

「良い質問ですね~~(池○彰風)。ざっくり言うと。今ここで白のビーストを名乗り、人類悪として顕現している彼と宇宙へトンズラしたカルデアのマスターだったセンパイとは、ちょっと状態が違います。厳密に言えば、後者の方は人類悪と完全に羽化していないというか、その選択肢を取らなかったというか……。
まぁ、センパイの人類に対する好感度が低かったor何かの間違いで私達がいなかった時はセンパイが別の人類悪になり、地球というステージを舞台に、現れるであろう抑止力だったり、グランドサーヴァントとドンパチするルートもあったという事です。まぁ、そこら辺はifルートだったり、正史とは違う偽譚を書き連なったデュマさん作の『カルデア 偽物語』でも読んで下さい。少々、癪なのがセンパイがそのまま星に残って人類悪となったら高確率であのいけ好かないエロ尼さんの片割れになっていた事なんですけどね」

「この『カルデア 寝物語(刑部姫編)』は?」

「どうぞどうぞ、お好きに読んで下さい。むしろ本人の前で朗読してあげた方が喜ぶと思いますよ!」

「そうか……。彼女には色々と苦労をかけたし、これが恩返しになればいいが……」

「さてさて、少々脱線しましたが。話を戻してと。では今この白のビーストを名乗っているセンパイは何者なのか? カルナさんが偽り無しと名言している以上、この白赤黒の大戦争にいるセンパイが人類悪なのは明白です!その理由とは一体……!? 残念ですが、そこは英霊編、さらに突っ込んで言えばセンパイの第七宝具にも関係するので、BBちゃんはここで口をチャックするのでした~~♡ ネタバレは許されざる悪ですよ」

「『もう、マーちゃんったら、本当に鬼畜……。炬燵の中で好き放題出してさ……。もう汗でぐちょぐちょ……あっ、ひゃん! こらぁっ、もう姫のおまんこ、馬鹿になっちゃうってばぁぁ……あひぃっ!!』うわ、うわ……すご、すごい、これが兄様の性器。人間の性交……。あれを股に入れてもらって……」

「………………よし、動画の主役である筈の男の娘が遥か未来の方に飛んで行ってしまったので今日はここで閉廷です! また次回!」










《白の陣営》
白のマスター:白のビースト
白のセイバー:セイバーリリィ
白のアーチャー:アタランテ
白のランサー:哪吒
白のライダー:――――
白のキャスター:アビゲイル・ウィリアムズ
白のアサシン:刑部姫
白のバーサーカー:――――
白のルーラー:ジャンヌ・ダルク



黒のサーヴァント:残り6人
赤のサーヴァント:残り5人
















2話連続、更新という事でまたエロ本編に戻ります。

どうして白のセイバーが、マスターに向けられる悪意とか敵意にあそこまで敏感なのか今回の話でわかってもらえればなぁ、と思います。
ふぅ、わい、どうしてエロ小説に真面目にプロット練っているんですかねぇ……(苦笑)。






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ビーストウォーズ⑤(Fate Apocrypha編)


第二部二章感想:つらい。

なんとなーく、二章のネタも思い付いてはいますが、その前にアポ編とどうしても一部のエロ本編の方を進めたいので、すぐには投稿しません。そして、感想で「こういう展開、どうっすかね?」とか言われても多分、『オーララ、ノーコメント!』としか返せないです(感想自体は勿論、嬉しいのよ)。私、今までもこれからも、好き放題に書いてますから!ぴょーん!




というわけで久々のアポクリファ編。











【これまでのあらすじィ!】
その1:ビースト0顕現。ショタホムンクルスを拉致る。ついでに他のホムンクルス達も全員拉致る。
その2:チェイテピラミッド姫路城がトゥリファスにど――ん!!
その3:大聖杯も触手悪ロリに強奪。ダーニックのSAN値がど――ん!!
その4:黒のアサシン主従も白のビーストに強奪。六導玲霞がとろーん!!
その5:白の陣営の宣戦布告により、赤と黒の陣営の同盟が成立。
その6:赤のバーサーカー、白のセイバーによって消滅。
その7:赤のセイバー、白のセイバーによってPTSDにかかり、白のビーストによって心療中。
その8:シロ君、おっきーから兄様の昔話を聞き、ややオコ。









 《赤黒陣営が三白城に攻め込むまで残り20時間――:ミレニア城塞にて》

 

 

「とんだ醜態を晒した……」

 

 焦燥し、ややおぼつかない足取りで城内を進んでいたのはダーニック・プレストーン・ユグドミレニア。

 第三勢力、白の陣営として参加し、赤黒の両陣営に宣戦布告した『白のビースト』を名乗る男によって自身の大願を叶える為の重要なキーでもある大聖杯をたやすく奪われて、絶賛失神中だったユグドレミア一族の長。

 

「しかし……赤と黒の同盟か」

 

 彼が気を失っている最中に黒のアーチャーのマスターであるフィオレ・フォルヴェッジ・ユグドミレニアが暫定的な黒のマスター達の代表として結んだ約定。ギアスロールを使ったわけでもないので、特に強制力も無い口約束程度の同盟だが。数多の英雄達の前で結ばれたというのなら、彼等の性質上、いきなりそれを反故にする者はいないだろう。

 

「私が気絶していたのはある意味、僥倖だったか……」

 

 赤の陣営……魔術協会と完全に袂を分かち、宣戦布告をした自分がそうやすやすと同盟の場には顔を出せないだろう。ましてや、彼自身も積もり積もった協会に対する恨みと憎しみがある。かつて栄光の道、根源への夢を閉ざされた汚辱が。だが、それでも彼は同盟を結び、城へと帰還した黒のサーヴァント達とフィオレに不服を申すつもりは無かった。そもそも無様にも気絶していた身でどうして更なる醜態を重ねれるだろうかと。

 

 

 ――我々は此度、白の陣営を殲滅するまでの間に限り、赤の陣営と同盟を結ぶ事にした。異論はあるか、ダーニック。

 

 ――まさか。英断だと存します……領王よ。

 

 

 それに第三勢力に大聖杯を奪われている現状で赤と黒の陣営で争っている場合ではない。ダーニックはあの人類悪と名乗った存在を間接的に目にした瞬間に感じた。アレの異常性を。魔道に100年どっぷり浸かった男だからこそその異常性を正確に感じ取れた。

 

 人間ではない、英霊でもない、化け物、怪物……その言葉も正確ではない、ただダーニックにとっては理解出来ない集合体。ありとあらゆる神秘を追求してきた魔術師が理解する事すら放棄してしまいそうになる生命体。

 

 だからこそ、復讐心を飲み込んで赤の陣営との同盟も承諾したのだ。あれに大聖杯を預けているという危険極まりない現状を今すぐに打破する為に。

 

「突入は明日の夜か……」

 

 マスター達はあの奇天烈極まりない城への侵入へ同伴する事はない。

 赤のセイバーと赤のバーサーカーを簡単に屠れるサーヴァント達が8騎。城内へと視察に向かわせた使い魔も全て消失している。人類悪を呼称する男の根城ならば、その中は一体どんな結界、魔術的トラップ、魔獣が仕掛けられているかわからない未知の異界となっていてもおかしくない。

 

 もはや、只の魔術師では足手まといにしかならないのだから。

 

 それでもダーニックは大聖杯奪還をサーヴァント任せにしていいのか悩んでいた。だからこそ、こうして突入までの時間を無駄にせず、策を巡らせている。理想は大聖杯を奪い返した時に黒の陣営が一騎でも存命の状態で赤の陣営が壊滅している事。まぁ、事はそう上手くはいかないだろうが。

 

 そして策の一つとして彼は今、黒のキャスターの宝具『王冠:叡智の光(ゴーレム・ケテルマルクト)』を発動させる事を決心していた。

 

 黒のキャスター、アヴィケブロンのマスターである()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「白獣討伐戦において、マスターの重要性はそこまでない。ならば戦える者達の戦力向上として糧にするのは当然の摂理」

 

 気まぐれか、何か考えがあるのか、大聖杯とホムンクルス達を簡単に拉致った白の陣営はあれから幸いな事に黒の陣営のマスターの誰かを攫うそぶりは見せなかった。

 

 魔力タンクでもあるホムンクルス達も奪われ、多数のゴーレムを長時間起動させる動力もない。

 

 魔術師としての能力的な優劣で言えば、バーサーカーのマスターが最適解だったのかもしれないが、それはフランケンシュタインが間違いなく抵抗する。他の黒のサーヴァント達も英雄の矜持として、自身のマスターが炉心になる事をよしとはしないだろう。ダーニック自身も悲願を叶える前に命を燃やすのは御免だ。

 

 そして、話を通した時、アヴィケブロンは自身のマスターを炉心にする事に何の躊躇いも無かった。アヴィケブロンにとってもロシェからの敬意は心地の良い物だったのだろう。だが、今はそれよりも優先すべき物があるだけの話。

 

 まぁ、人類を救済しようとするアヴィケブロンにとっては人類悪などが目の前に現れた日には心穏やかにはいられまいか――、残酷な程に理知的で魔術師らしい男だとダーニックはほくそ笑む。

 

「そんな、そんな!止めて下さい、先生!どうして!?」

 

 キャスターの魔術工房に近づくと、幼い少年の悲痛の声が聞こえた。

 聞き間違える事なく、ロシェの声であった。「ふっ、私が来るまで待ちきれなかったのか」と、炉心に取り込まれる彼を想像しながら、ダーニックは工房への入り口へと足を踏み入れ――。

 

 

 地獄を見た――。

 

 

 

「見るがいい黒のキャスター!これこそ、1/1スケールで忠実に再現されたワルキューレフィギュア!モデル:オルトリンデ、ヒルド、スルーズ!コンパチではなぁい!この俺が実物を元に髪、顔、太腿、腰、胸部、局部を忠実に再現したそれぞれが独立して造り上げられている至高のフィギュアよ!!」

 

「なるほど、北欧神話の戦乙女、大神の娘達……勇士達をヴァルハラへと導く御使いか……。その神々しさ、現代を生きた者達では表現は不可能……。ふっ、感服したよ白のビースト。君が一体、いつの時代を生きた人間なのか、気になる所だが」

 

(何だ?これは何だ――?)

 

「だが僕はあえてその神秘に対して、人間の叡智で挑もう。括目せよ、白のビースト。戦乙女達の尊厳なる美しさは強過ぎて、万人の瞳を潰しかねない。故に僕は声高く主張する!人が求めているのは暖かさ、毛布のように包み込み、安らぎをくれる平穏だと……!それは何か?…………メイドだ!!」

 

 仮面に隠れた興奮を隠さず、アヴィケブロンは二体のゴーレムを披露する。二体とも赤髪、白いエプロンをつけた奇をてらわないシンプルなメイド衣装。片や白いフリルをつけたカチューシャ、片や青いリボンと、それぞれ頭につけている。異なる瞳の色からしても、このゴーレムが別々の個体であると造り主が意識しているのはわかる。

 

「メイドだ、と……!ここで王道のカードを迷わず切るとは……!しかし、わざわざ、二体……ま、まさか!?」

 

「そうだ。察しが早いな、我が好敵手よ。見てわかる通り、彼女達は姉妹!そしてそれぞれがメイドとして致命的な欠点を抱えている。姉は料理は完璧。だが、掃除、洗濯は壊滅的。しかし、その欠点は妹が補う。料理が絶望的である妹が……!」

 

「お互いの欠点を補い合うメイド姉妹設定だ、と……!メイドは完璧でなければならない……。だが完璧過ぎる者に対して人は親近感を覚えづらい……。ドジっ娘メイドに萌えるように欠点ありきのメイドに焦がれるのもまた真理!」

 

「そう。だが二人なら、この姉妹設定ならば、その矛盾を解決出来る。一人では不完全なドジッ娘メイドゴーレム。それも良し。そして二人ならばお互いを補完し合える完璧コンビメイド姉妹ゴーレム、それもまた良しだ」

 

 人型のフィギュアとゴーレムを並ばせて、白のビーストとアヴィケブロンはお互いの作品を鑑賞し、熱く議論を交わしていた。

 

 そして、そんな地獄を見ていたダーニックは工房に足を踏み入れる事は出来なかった。彼等が何をしているのかもわからなかったし、わかりたくもなかった。アヴィケブロンの言葉も自身が知っている黒のキャスターから出た言葉とは思えず、まるで異星人達のやり取りのようにも思えて。

 

(何だ……?私は何を見ている。何を見せられている……!?幻覚の魔術でもかけられていたのか……!?)

 

「しっかりして下さい先生!先生の製造術はこんな低俗な物の為に使うべきものではありません。先生のゴーレムはもっと高尚な物!この悪魔に惑わされないで下さい!」

 

(そ、そうだ!いいぞロシェ!キャスターを正気に戻せ!この悪夢を覚まさせてくれ!お前を炉心にする事を考え直してもいい!)

 

「低俗とは言ってくれるじゃないか、ロシェ君や。ならば残念だ。この秘蔵のフィギュア達は二度と、君の目に留まらないように秘宝庫に仕舞う事にしよう」

 

「あっ」

 

(待て待て待て!何故、そこで名残惜しそうな顔をする!?冗談だろう?冗談だと言ってくれ!?)

 

「わかるさ、わかるとも。君ぐらいの思春期真っ盛りの年になると、こういった事には興味はある……。でも馬鹿正直に食い付くのも何か恥ずかしい、そんな複雑なお年頃」

 

 ワルキューレのフィギュアを見せびらかし、災厄(最悪)の獣は無垢なる少年を誑かす。ロシェは若干、顔を赤らめ、白のビーストとアヴィケブロンが造り出した美少女人形に恥ずかしさそうにチラチラと視線を送っていた。

 ダーニックは願う。その悪魔の誘いを断ち切ってくれと、これ以上、自身の精神を苛む要因を作り出さないでくれと。私は何も出来ない。というか関わりたくない。

 

「だが、何を恥じる事がある。ロシェ少年。君はゴーレムが好きなのだろう?」

 

「た、確かに好きだけど……。僕がゴーレムに求めているのは正確な式と石と土で造られた性能の優良さで……。そんな造形とか求めてなんてないし、わざわざ美少女にする意味がわからないよ……。ゴーレムに性的な何かを求めるなんて不純じゃないか……」

 

「ロシェ、それはよろしくない。自分の好きなものに対して何かを取り繕うのは。それは人生の幅を狭めてしまう愚行だ。何が嫌いかではなく、何が好きかで物を語るべきだ」

 

(何故貴様がそっち側に立っているキャスタアアアアア!!)

 

「想像してごらん。幼き君は親に放任され、ゴーレムに育てられていたと聞く。例えば、もしそれが今ここにいる目麗しいメイドゴーレムだったら?」

 

「な、何も変わりません。ただ、外見が変わっただけです」

 

「あぁ、そうだな。だが長年甲斐甲斐しく、育て、教育し、傍にいてくれるゴーレムに君も情が湧かないわけではないだろう。例え、交わされる言葉が挿入された魔術によって造られたアルゴリズムだとしてもだ。そして最後の別れの日、君が一人前になり、刻印を受け継ぐ日。出立する君にメイドゴーレムが言葉を震えながら投げかけるのだ。本来土くれが流す筈のない涙を見せて」

 

 ――立派になりましたね、ご主人様。と。

 

「すごく……いいです」

 

(ロシェエエエエエエエエエエエ!!)

 

 ダーニックの心の叫びは届かない。

 

 肉親からまともな愛情を注がれた事の無かった少年にとって敬愛すべき師から語れるその想像は甘美な物だった。あぁ、あぁ、どうして僕の教育係は美少女ゴーレムではなかったかと悔やむように胸を抑え付けていた。こうまでも違うものなのか、ゴーレムの外見が変わるだけで、そこにちょっとしたドラマが付け加えられるだけで。

 

「そう、本来は感情を持ちえないゴーレムが長年の人の関わりによって情、愛に目覚める。ここがミソだ。冷たき土塊が心を持つ。ゴーレムの造形も付随する物語もゴーレム道をより滾らせる重要なファクターとなる。君がこの工房に来る前に僕は諭されたのだよ、白のビーストに」

 

 語り出す黒のキャスター、吐きそうになるダーニック。

 ダーニックの耳には星屑的な清廉なBGMが聞こえた。

 

(なんだこの曲は……。おのれ、幻聴まで聞こえて――)

 

「先生は多くのものを失ったように見えます」

 

「それは違う。何も失わないように意地を張ったから僕はここにいる。何も失ったものはない。でも確かに、1つ忘れてしまったものがあったのだ」

 

(うッ……がッ――)

 

 ダーニックはもう自分の正気を疑っていた。目の前にある光景に現実感がない。これは今、現実に起きていることなのか……と。

 

 彼の瞳には橙色に染まった丘が映っていた。ガレージキット、ドール、アクションフィギュア、数多の人形達が足元から突き刺さっていた。フィギュアだけではない、数多の幻霊のような何かがその墓標達に張り付いていた。グッドスマイルをするアルターエゴ、金髪碧眼騎士に恍惚とする魔女、無心で女海賊の型抜きをする黒髭。

 

(どいつも、こいつも、何故この状況で平静を保っていられる!?私か?私がおかしいのか!?)

 

 語るアヴィケブロンもそれを見守るロシェも白のビーストも急に出てきた固有結界に対して慌てる事なく当然のように受け入れていた。

 心をまだ色を放ちそうな歌がダーニックをさらに錯乱させる。

 

「疫病を見た、内乱を見た、人間の醜さを見た。僕は何の為にあの地獄を生き延びたのか」

 

「おい、その先は地獄だぞ」

 

 人形の丘を歩き続けるアヴィケブロンの背中に白のビーストが声をかける。

 

「これが僕の忘れたものだ。確かに始まりは迷える民を救いたい、人々を導きたいという救済だった……。けど根底にあったのはきっと、燃え(萌え)だったんだ。人々の心に灯火を宿すような性癖震わすフィギュアを作りたかったのに結局何もかも取りこぼした男の果たされなかった願いだ」

 

 丘を登り続けるアヴィケブロンはやがてたどり着く。その空間の象徴のように鎮座している()()()()()()()()()()()()()()()()()()に。まるで目指すべき頂きにたどり着いたかのように彼はそのゴーレムに触れた。

 

「例え、その人生が批判と葛藤に満ちた地獄だったとしても……僕は美少女ゴーレム製造師を張り続ける!」

 

 アヴィケブロンから固有結界中に光が満ち溢れた。その光はようやく美少女ゴーレム製造師として入り口に立った彼を祝福するようで。無限の星屑の軌跡を描く。

 

 

 ダーニックの願いの破片は届かなかった。灰は灰に塵は塵に、精神が崩壊したダーニックのStardustは彼方へと舞い上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ダーニックの意識が砕けちった頃……。

 

 まさか『気配遮断』で再びミレニア城塞に忍び込んだ白のビーストがアヴィケブロンとグッドスマイルをしているとは露ほども思っていない黒のバーサーカーのマスターであるカウレスは自室でキーボードの音を鳴らし、パソコンとにらめっこをしていた。

 

 ユグドレミアの一族の中ではおおよそ魔術師らしからぬ程に文明の利器を使いこなしているカウレスは頭を悩ませていた。

 

「白のセイバーはアーサー王ってのはわかった。なら、あの真っ白な城も白の陣営の誰かの宝具の可能性は高いよな……」

 

 白のビーストが言った『三白城』らしき城は存在しなかった。まぁ、あんなぶっ飛んでいる建築物がそうそうあって堪るかだが。

 外見から予想しててっぺんのあれはジャパニーズ……日本の城だという事は推測出来た。『日本、城、真っ白』で検索のヒットで恐らくあれは姫路城なのだろう。

 

「姫路城ってわかっても作った奴、改修した奴、籠城した奴、関わっている奴が結構いるな……その中でも英霊になりそうな逸話を持っているとなれば……あぁ――わからん!そもそもピラミッドの上に乗っかっているってのも意味不明過ぎる!ツタンカーメン?ラムセス2世?一番下のは何の城だよ!?」

 

 さすがに白化したチェイテ城まではわからなかったようで、モニターの前で髪をくしゃくしゃにして、悶えるカウレス。

 

「俺は何してんだか……。姉ちゃんとアーチャーの言う通り、今回の戦いはもうマスターが手を出せる領域じゃないってのに……」

 

 それでも知らんぷりで何もせずバーサーカーを死地に送り込める程カウレスは図太くは無い。せめて、あの『白の陣営』の正体の手掛かりでも掴めたらとこうして電子機器で調べていたわけだが。

 

「あ、なんだこれ……『Amazones(アマゾネス).com』?誤字じゃないよな……」

 

 集中力も切れ、視線がまばらになっていた頃……サイトの広告の所に目が付いた。『通販業界に暴力的なイノベーションを!』『我が社のガバレッジエリアは世界すらも超える!』と白髪の眼鏡を掛けたスーツ姿の女性が映っていた。

 つい、気になってフィッシングの可能性も無視して、クリックしてしまう。

 

「うぉ、アマゾンのパチモンの割には本家に負けず劣らず結構な品揃え……。っていうか、この竜種の牙とかデミゴッド(蛮神)の心臓とか嘘くさいな……偽物だよな、さすがにな?うん、巨大ロボのパーツとか俺は何も見てない」

 

 ツッコミ所は満載過ぎるサイトだったが、もしあの『三白城』からの念話も阻害された時の場合も考慮して、トランシーバー辺りの魔術以外の通信手段も用意しておいていいかもしれないと、カウレスは3ペアセットのトランシーバーの注文ボタンをクリックしてみた。手数料、送料も無料という痒い所に手が届くサービス。

 

「って今、この城に配達頼んだら駄目だろ!何を躊躇いなくクリックしてるんだ俺は!」

 

 まるで暗示の魔術にかかったかのように自然な流れで注文をしようとしたカウレスの部屋の扉からコンコンとノックが響いた。

 

「アマゾネスドットコムである!配達に来た!」

 

「嘘だろ!?住所も何も書いてないぞ!」

 

「注文ボタンをクリックしただろ?その瞬間にどこの端末から来たのかこちらから逆探知し、お届け先まで時間をかけずに自動召喚。コストパフォーマンスに優れた我が社の配送技術は世界の壁すらも容易に超えるぞ」

 

「こえぇよ!」

 

 有無を言わさず、ドアを開け、注文の品を届けに来たのは先程、サイトの広告にもいた女性と同一人物だった。

 腰まで下ろされた白色の長髪にキャリアスーツの上からも見てわかる女性らしい体つき、さらには眼鏡と一見、知性的な印象を与えるが、どこか脳筋なイメージも拭えない。そんな格好。

 

「ちょ、あんた、勝手に入って」

 

「お届けの品だ。値段は200QP。ドル、ポンド、レイ、円、あらゆる通貨で換金可能だ。グローバリズムだからな」

 

「いや、だから……。わかった、わかったよ、払うから。ポンドでいいか?」

 

「ちなみに円換算なら1QP=100円」

 

「ポンドで教えてくれよ……」

 

 眼鏡ガラスの向こうに光る視線の強さと平服しそうになってしまう程の強い威圧感で折れたカウレスはわけがわからないままお金を出し、サインを書いた。根拠は無い勘だが、多分コイツ白のサーヴァントだとカウレスは感じていた。だが、彼は何も言わずお帰りになってもらう事にした。突っ込んだら、負けだと。

 理解不能な事態に直面した時、精神衛生を保つ為には心を無にし、流れに身を任せる事。カウレスはそこの所を良くわかっていた。

 

「うむ確かに受け取った。それとCEOたる私が直々に配送に来たのは、このルーマニアに我が夫が来ているからであり、いつもは全ては部下に任せてある」

 

「あっはい」

 

 そういえば、白のビーストも嫁さんがどうのこうの言ってたよなぁ……とカウレスは思い出さなくてもいい情報を反芻していた。

 

 ちなみに配送の段ボールの中には『この顔にピンと来たらアマゾネスドットコムまで!』と緑髪の男が描かれたチラシが入っていたそうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぉっ、なんかゾクっと来た」

 

「武者震いという奴かライダー」

 

「おうよ!何せ、赤のバーサーカーと赤のセイバーを簡単に蹴散らすサーヴァントが七騎、いや八騎か。それに加えて、世界を滅ぼし得るビーストと来た!不謹慎かもしれねぇが、ここで燃えない英雄はいねぇぜ姐さん」

 

 教会にて、決戦の時を今か今かと待ち構える赤の陣営。

 意気軒昂に槍を振り回す赤のライダー、アキレウスは興奮止まない状態だった。

 

「吠えるのは結構だが、それで叛逆の小娘のような醜態であったら目も当てられぬぞ。ライダーよ」

 

「随分とご機嫌ななめだな。女帝サマはよぉ。自分のマスターから戦力外通告されたのがそんなに気に障ったのか?」

 

「貴様……」

 

 赤と黒の陣営の同盟を結んだ場において、天草四郎は日が明け、再び夜になった時――24時間後に白のビーストの居城に攻め込むと提案した。

 すなわち、それは儀式に三日要する赤のアサシン、セミラミスの宝具『虚栄の空中庭園(ハンギングガーデンズ・オブ・バビロン)』の完成を待たないという事。

 

 あまり多くの時間を白のビーストに与えたくないのか、あるいはセミラミスの宝具を持ってしてもあの『三白城』にはダメージが与えられないと啓示が出たのか定かではないが、同盟の後、女帝は天草四郎にこう言われた。

 

 ――アサシン、マスターとして貴女には待機を命じます。元々、赤のサーヴァント全てをあの魔城に突撃させる無謀を行うつもりはありませんでした。私達の誰もが無事である保障はありません。保険はかけておく必要があります。白の獣を討伐し、大聖杯を奪った際に黒の陣営との戦いが再開となった時の決め手も用意しておく必要があるでしょう。どうか、貴女にはここで宝具の準備を行っていて欲しい。

 

「ふむふむ、想い人の力になれないというのは心にぬぉぉぉぉおおおおっ!?」

 

 余計な事を喋ろうとした劇作家は鎖に巻き付かれ、窓からダストシュートされた。

 今ここにはいない神父を複雑な心境で女帝は想う。

 

「男に首輪をつけられて悦に浸るような雌がサーヴァントだぞ……。その主たる男も程度が知れていよう。一体、何を警戒しているマスター……。フッ、まぁいい。野蛮極まりない他の匹夫共のように我があせくせ攻め込む必要も無い。お前達がもがく様を高みの見物といこうではないか、それがマスターの望みであればな」

 

(……神父の言った台詞に偽りは無い。だが、それだけが本質というわけでもない。赤のセイバーが泣け叫びながら引き摺り込まれたあの魔城に憎からず思っている自身のサーヴァントを連れていきたくはないという想いがその台詞に無意識ながら込められている事をアッシリアの女帝は気付いていないだろうな)

 

「何か言いたい事があるのか、ランサー」

 

「いや……何も無い(俺から言うのも野暮だろう)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでダーニック叔父様の容態は?」

 

「えぇ。外傷も特に無し、命に別条はありません。ただうわ言のように『 I am the bone of Pretty figures……』と呟いていましたが」

 

「本当に大丈夫かしら……」

 

 ミレニア城塞の玉座の間にて、ヴラド公とフィオレ、そして今しがたそこへ戻ってきたフィオレのサーヴァント、ケイローンの3名がいた。

 

 ヴラド公は呆れたかのような仏頂面。フィオレは何とか取り繕ってはいるが不安な表情は隠しきれていない。

 何故かアヴィケブロンの工房の前で倒れていたダーニックを発見し、安全な寝室まで連れていったケイローンは思案顔だった。

 

「『白の陣営』による攻撃か?」

 

「それにしては意図が不明過ぎます。意識は失っているとはいえ、令呪を含めた五体は無事。そして何より工房にいたキャスターとロシェに特に異常は見られませんでした。むしろ戦いに向けてのゴーレム作成にいつも以上に熱意を燃やしているぐらいでしたよ」

 

「それは結構。だが、賢者よ。貴殿がそこまで考えても敵の思惑がわからないのであれば、それ以上の思考は労力の無駄遣いであろう」

 

 さすがのケイローンも白のビーストがアヴィケブロンとフィギュア談義で盛り上がり固有結界(幻覚)を発動して、ダーニックの胃にカラドボルグしましたよーなんて夢にも思わないだろう。普通は想像出来ない。出来てたまるか。

 

「何せ、人知の外側にいる化け物だ。余達の想像が及ばないのも摂理だろう。一つわかっている事はあの白獣が我らを舐め切っている事、ならばその慢心に付け込もうではないか。アーチャーのマスター……フィオレ・フォルヴェッジ・ユグドミレニアよ……我がマスターがあの様である以上、黒の陣営のマスターは貴様が束ねる事になる。例え、此度の戦いがマスターの重要性が低い物になろうともだ……。覚悟は出来ているな」

 

「えぇ、勿論です領王よ。覚悟なんてこの聖杯戦争に参加した時から出来ています。例え相手が人類悪だろうとも」

 

 浮かんでいた汗と共に不安も拭う。

 その凛とした佇まい……という表現は彼女にはふさわしくないだろうが、下半身が不自由であり、車椅子に座っている身であろうとも、あのダーニックが才能を認め、次期後継者として尊重している程には彼女も魔術師として、一族を代表する者としての自覚はある。

 

 貴人の如く前を見据えている彼女は例え、これからどんな困難が立ち塞がろうともその歩みを止める事は無いだろう、きっと。

 

 

 ――バタンッ!!

 

 とそんな3人の元にゴルドが飛び込んで来た血相を変えた様子で。

 

「おい!セレニケの奴が『恋はいつでもハリケーンなのよ!』と叫びながら、ライダーと窓から飛び出しおったが、あれはほっといていいのか!?」

 

 

「……アーチャー、私もダーニック叔父様みたく倒れてもいいかしら」

 

「……もう少し、頑張りましょうマスター」

 

 

 

 

 《赤黒陣営が三白城に攻め込むまで残り18時間》

 

 

 

 

 

 

 




「あ――、マーちゃん、マーちゃん、11時の方向からグリフォンに乗ったアストルフォ君と銀髪メガネのマスターらしき女が向かってきてま――す。迎撃しちゃいます?」

「いや、様子を見る限り、こっちに敵意は感じないし、何か面白そうだから中に入れちゃってもいいよ」

「え?  マジ?マスターらしき方が恍惚としたヤベェ顔になってますけど」

「コミケでオキニにの薄い本を見つけたおっきーみたいな顔?」

「姫はあんな顔しませーん!!  ……ないよね……?してないよね?冗談だよね?」

「兄様、薄い本とは刑部姫が表紙になっている『カルデア寝物語』の事か?」

「えっ、ちょ」

「おぉ――懐かしい。炬燵ックスで何Pまでいけるか挑戦した事もあったっけか……」

「炬燵とは暖を取る以外にもそういう使い方があるのか……。蒸れ蒸れックスで愛を深める炬燵道……。勉強になる」

「勉強しなくていいから! もうちょっと気遣いを学んで欲しい! 主に姫の心に対して!」








《白の陣営》
白のマスター:白のビースト
白のセイバー:セイバーリリィ
白のアーチャー:アタランテ
白のランサー:哪吒
白のライダー:――――
白のキャスター:アビゲイル・ウィリアムズ
白のアサシン:刑部姫
白のバーサーカー:ペンテシレイア
白のルーラー:ジャンヌ・ダルク



黒のサーヴァント:残り6人
赤のサーヴァント:残り5人















黒の陣営、どうして足並み揃ってくれないのん?












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ビーストウォーズ⑥(セレニケ編)

感想、評価、誤字報告、いつも本当にありがとうございます。仕事から帰って来て、ポチポチワルキューレの城と宝物庫を周回してそのまま寝落ちする毎日ですが、頑張ってます(小説書け)。




カルデアコレクションにて、ワルキューレ、スカサハ・スカディ更新。











最近、この作品がエロ小説だという事を忘れかけている気がするので(初心に帰る)。










 白のアサシン、刑部姫の宝具『三白城の性鬼深愛獣様』。第一層にて、ホムンクルス達が現代の娯楽を謳歌しているように、または白のルーラー、ジャンヌ・ダルクが教室プレイに胸を膨らませているように、内部の空間においてはある程度の自由が許されている巨大城型宝具。

 

 この宝具の特筆すべき所は頑強さ以外にも、内部の空間処理において非常識な融通が利くという点。

 

 城主である刑部姫次第ではプライベートな私的空間のみで構成される『三白城:表面』と。

 対敵が侵入してきた時、あまりだらけきった姿を見せたくない時になるシリアス空間、『三白城:裏面』が存在する。

 

 表面の状態で城内に入った者は裏面にいる者達に干渉は出来ない。

 同様に裏面の状態で入った者も表面にいる者達に干渉は出来ない。

 

 

「あ――、これはヤバいよねぇ……もっと死ぬ気で令呪に抵抗しとけば良かったかな――……」

 

 つまり、こうして暴走したセレニケによって三白城の最上階に招かれた黒のライダー主従には目には表面にある刑部姫のオタク部屋など存在せず、木目の床と屋根を支える為の木の柱が周囲に建てられている殺風景な光景しか無かった。

 

 ある意味、この無味無臭な空間こそが白の陣営のラスボスが居座る場所として相応しいのかもしれないが。

 部屋の奥の玉座にて、足を組み、先程からこちらを見たまま微動だにしない白のビーストを前にアストルフォは現実逃避をしたくなった。

 

 どうしてこうなってしまったのだろう――と。

 

 

『えっ、ちょ、マスター本気!?赤と黒の陣営で足並み揃えてから突撃するって話だったんじゃん!そもそもマスター達は危険だから城で待機だって!』

 

『無理よ!待った!!私にしてはもう何時間も待ったわ!!もうこれ以上、焦らされるなんて無理!マスターはお留守番?冗談じゃないわ!!あの人のご尊顔を見た時から、股からこみ上げそうになる熱情を抑えるのにどれだけ我慢したと思ってるの?聖杯戦争とか、世界が滅びるとか、そんなのはどうでもいいの!!私は、私は、あの人に会いたいの!会いたいの!会いたくて会いたくてアソコが震えているの!』

 

『うへ――。何、あのビーストくんとやら、魅了の魔術でもかけてたのかい?うぅむ、けどそれにしてはフィオレとかバーサーカーとかは特に何ともないし、ピンポイントでボクのマスターだけを狙い撃ちしたのなら、ちょっと趣味が悪過ぎるとしか言えないよ……』

 

『ライダー、ヒポグリフを出しなさい。今からあの人のいる城まで飛んでくわよ』

 

『へ?いやいやいやいやいや、冗談でしょ?さすがに理性が蒸発しているボクでもそんな命令を受け入れるワケ――』

 

『令呪を以て命ずる――』

 

『嘘でしょ――!?』

 

 

 で結果、このザマ。

 

 ヒポグリフに乗って、飛んでいる最中に突如として目の前に開いた形容し難い穴に飲み込まれたと思ったら、この部屋にいた。

 

(ボクってばマスター運、悪過ぎやしないかな?)

 

 召喚されてから、自身のマスターであるセレニケにしてもらった事と言えば、ただただペロペロされていたぐらい。コイツは聖杯戦争を真面目に戦う気があるのだろうかと、あのアストルフォですら疑問符を浮かべてしまう程。

 

 しかも、アストルフォに令呪を使ってまでこの城に特攻された張本人はどうしているかというと。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、やべぇ、生ビースト様、やべぇ、無理無理無理、尊みがやばい、心の準備が出来てないわ……ってか上半身裸って!駄目駄目、そんなの見せちゃ駄目よ!!はぁ、はぁ、はぁ、私で隠さなきゃ……!」

 

 部屋の隅にある柱の影でモジモジしながら、桃色電波を垂れ流していた。

 恋する恥ずかしがりやの乙女のような振る舞いは漏れ出ている言葉で相殺というよりもマイナス方向に振り切っている。

 

(アレは何をしてるんだろう)

 

 アストルフォは一回、あの馬鹿(セレニケ)をぶん殴りたくなった。

 

(まぁ、仕方ないっか……!いきなり、ボスの前までショートカット出来たと、ポジティブに考えよう!)

 

「それで、あまり敵意は感じなかったから、ここまで連れて来たけど、一体何のようかな?」

 

 だがそれでも英霊。弱小サーヴァントと言われようともシャルルマーニュ十二勇士が一人である騎士は高らかに槍を構える。

 国ではなく、世界を滅ぼし得る危機に立ちむかった経験など無きに等しいが、この程度のピンチなど乗り越えて来たと彼?は虚勢を張って笑う。

 

「ふふ、当然……!君を倒し、奪われた聖杯を取り返して、この聖杯戦争を正常な物に戻す為さ!!ボクを弱小サーヴァントと侮って、ここに誘い込んだのが運のツキだよ!」

 

 目の前にいる男と自分のスペック差などとうに理解している。

 例え、自分が数百体いても敵わないだろう圧倒的な戦力差。だが、それで恐れをなして逃げるぐらいなら、彼は最初から英霊などやっていない。それにどうせこの白のビーストも逃がしてくれないだろう、ならばせめて一矢報いてやろうと、アストルフォは全身に力を込める。

 

「座したまま、動くつもりがないというのなら、それでもいいさ!我が名はシャルルマーニュ十二勇士が一人、アストルフォ!!世界を滅ぼすビースト、何のその!!その玉座ごと、貫いてくれる!!」

 

 宝具『この世ならざる幻馬(ヒポグリフ)』展開。英霊としての地力は低くとも、アストルフォの真価は豊富な宝具と意表を突く斬新な効果。

 

 勇ましく突撃すると見せかけて、白のビーストの背後に次元跳躍したアストルフォの槍先はその肉体を貫く――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほへぇ――!!」

 

 ことはなく。音を置き去りにした『白式官能(白触手プレイ)』に絡め取られてしまった男の娘はやっぱり、ビーストには勝てなかったよ……。とあられもない格好で可愛らしい馬上槍から白濁ミルクをピュッピュッしていた。

 

「あっ、あっ、あっ……ほへ、んへぇぇ、あっ、あぁぁっ……ひ、ひぃっ……にゃ、にゃんでボクのアソコ、こんなちっちゃくなってぇ……あ、あ、や、やめぇ……それでボクのアソコをこれ以上、シコシコしないでぇぇぇっ……!!」

 

 男の娘系サーヴァントをメス化させる事に定評のある白のビーストのセクハラ術。触手によって宙に浮かされたアストルフォは服を裂かれ、その肢体を惜しげもなく披露し、痙攣させ、敵の首魁の前でその痴態を見せ付けていた。

 

 そして、自身のサーヴァントがヤられてしまったにも関わらず、慌てる事なく、夢遊病患者のようにフラフラと白のビーストに近づく女がいた。

 

 セレニケの瞳には白触手によって蕩かされるアストルフォと白のビーストの二人が映っていた。この人類悪を知る前の彼女なら、今のアストルフォの惨状を見て、オーガズムを3回ぐらいは感じてしまいそうだが、今の熱に浮かされた彼女にあったのは羨ましさだけ。

 

 歪んだ形であれ、白のビーストと交わっている自身のサーヴァントを見て、羨望を感じた彼女はやっと彼の前に姿を見せた。

 

「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ……!」

 

 さらに荒くなる呼吸。むず痒くなり、切なくなったアソコを掻きむしりたくなってる気持ちを必死に抑えて、セレニケは親愛の獣と相対した。

 

「結局、君は一体全体何をしにきたの?」

 

 宝具で黒のライダーを犯し続けている白のビーストは玉座から動く事なく、「う――ん、今の俺ってば凄く悪役っぽい!」と何故か心の中で自己賛美しながら、セレニケに問い掛けた。

 

「一目、貴方様を見た時から、感じてました――。あぁ、あぁ……親愛なる我が君……私に、私に――」

 

 セレニケ・アイスコル・ユグドミレニアは異常者である。外道である一般的な魔術師ですら眉を顰める程の破綻者である。

 

 ドS、シリアルキラー、少年愛者のハットトリックである彼女は黒赤両陣営に宣戦布告したあのビーストの姿から一体、何を見出したのか。

 

 それは精通すらしていない少年がエッチな本を見てしまったかのように。

 今まで品行方正に生きていた優等生が放蕩に好き勝手生きる味を知ってしまったかのように。

 

 自分が今まで知らなかった世界を、娯楽を初めて感じた時の衝撃は計り知れない物がある。

 

 黒魔術使いとして育ってきたセレニケは生贄である人間を虐げ、拷問し、殺戮して得られる悦楽を女としての部分で享受し、情欲を得ていた。

 

 彼女に真っ当な愛を教える者も、捧げる者も、誰一人としていなかった。だからこそ、彼女はここまで歪んでしまった。

 

 そこに『人類()』が顕れた。一目見た時から、彼女の肢体に雷撃のように痺れが奔った。黒の陣営の中で最も欲望に忠実に生きている彼女。

 

「愛を教えて下さい――」

 

 セレニケはあの時、あのモニターを見ていた両陣営の中で一番、鋭く感じていた。彼の起源を、理を、『親愛』の奥底に隠れたドロドロとした数多の愛を。自分に持ってない宝物を。誰も教えてくれなかった欲望を一番大きく持っている男が白馬の王子様のように駆けつけて来てくれたのだ。

 

「はは、ハハハ、はぁっ、はぁっ、はぁっ――」

 

 手にしたナイフで自身の服を裂き、その下の肌も切り裂き、血を流す。突拍子の無い自傷行為。

 

 だが、仕方がない。セレニケはまともな愛も恋も知らない。26歳、独身。シリアルキラーかつペロリストの彼女がまともな男女交際の始め方など知る筈も無く、意中の相手のアピールの仕方がよりにもよって、「自分は今まで、こうやって他者の傷で悦んできたから、それと同じ様に私も傷付けば、彼も悦んでくれる、私に注目してくれる」なんてイカれた思考から生まれたものなど、誰が想像出来るか。

 

「あ、あぁっ!い゛い゛ッ!は、はぁんぅっ……だめ、だめ……よろこんじゃ、駄目……そう、そうよ。私だって、苦しむ様で悦んでいたじゃない、だから私ももっと痛がらないと、苦しまないとッ!いぎぃぃぃ゛っっ!!」

 

 木製の鞭で太腿を叩く。呪術用の釘で手に平を突き刺す。もっと、残忍な嗜虐を!醜悪な傷を!彼が私に注目してくれるようにと、セレニケは狂信者のように自身の体に傷を増やしていく。いっそ、臓物も垂れ流した方がいいかと、ナイフを腹部に突き刺そうとした瞬間――。

 

 待ったをかけたかのように、彼女の四肢を白触手が捕らえ、そのまま座っている白のビーストの所まで引き寄せた。

 

「はぅ」

 

 先程までの狂喜に彩られた表情はどこに消えたのか、上半身裸の彼に抱きすくめられたセレニケの顔は初心な生娘のように真っ赤に染まった。

 

「あぅ、あぅ、あのあの私は……」

 

「俺の獣性にあてられてしまったのかな、可哀想に」

 

 向けられる憐憫の相。だがセレニケはそれどころじゃない、目の前に来るのだって一苦労だったのに、こんな息がかかる程、近くで肌が触れ合って、流れ出る血が彼の体に――。

 

「あ、あぁ、あぁっ!申し訳ございません……、わ、私の血が貴方様の体を汚して――」

 

「どうして隠すの?見てもらいたくて、自分でつけたんでしょ?ほら、もっと見せて、じゅるぅっ……」

 

「はひぃぃぃっ!!?」

 

 ここに来て、ヘタれてしまったのか恥ずかしさで傷を隠そうとするセレニケの手を無理矢理広げさせる。ボロボロになった衣服の下から滴る血に傷。まるで強姦されていた女のような有り様だった。

 

「愛そうか、イカそうか――」

 

 そして有無を言わさず、白のビーストはセレニケの傷に口を付け卑猥な音を立てて、血を吸い上げた。

 

「んんんぁあ゛あ゛あ゛っっ!!はっ、はぁっ……!すご、すごぉ……は、はぁっ!いきなり、こんなご褒美ぃぃぃっ!!あぁぁっ!!これだけでイッちゃああああぁっ!」

 

 吸血されたその瞬間、セレニケは5回達し、あまりの絶頂に尿を漏らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あはぁっ……!だめ、だめ、だめぇっ……そんな所、吸わないでぇ……!飲まない、でぇっ!んひああぁっ!!」

 

 その中身はねじ曲がっていようとも、外見は大人の女性として整ったプロポーション。ズタボロになったユグドレミア一族の制服も脱がされ、聖杯戦争など関係無い一人の女として、セレニケは犯されていた。

 

 隠すものもなく、臀部をビーストの顔まで高く突き上げられた状態で抱えられていた。血を吸われた快感で今度は股から漏れ出てしまった小水を吸引されている。尿道口から響く官能、求めに求めた愛しき人が自分の汚物を飲んで下さっているという現実。

 

 セレニケは感涙していた。白のビーストの上で無様に犬のような姿で口淫されている彼女の股から今度は尿ではなく、愛液が止めどなくあく溢れ続けていた。そして、それも当然の如く、舐められ、吸われ、飲まれ続けている。

 

「んぉあああぁっ!はひぃっ!!あひぃっ!あっ、あっ!!あぁぁっ……!!すご、すごしゅぎぃ、しらにゃ、こんなの今まで知らなかっらぁっ!!誰もおひえてくれにゃかったぁぁっ……!!」

 

 淫らかつ入念な舌が彼女の女陰の中に入り込み、大洪水中の女の園を蹂躙する。尻を撫でられているだけで、もう達してしまいそうになっているセレニケは舌が蠢く度にエクスタシーへと導かれている。

 

 小水と愛液が混ざった淫液が彼の腹部に水たまりを作っている。

 舌を出し、喘ぎ続けるセレニケの恍惚とした顔は今まで他者を嬲って得ていたものとは別種の顔。全てを捧げるに足る超常的な存在が一挙手一投足、自分の体を愛してくれていると実感させてくれている。

 

 止まらない官能、押し寄せ続けてくる悦楽。

 

 自分が今まで得ていた性的興奮など、まるで児戯だとセレニケは痛感する。

 

「あぁ、あぁ。敵の前でこんな情けなくお漏らししちゃって、恥ずかしいと思わないの?」

 

「んひぃぃっ!!ごめんなさぁいぃ、ごめんなさぁいぃ!恥ずかしい女で、浅ましい女でごめんなさぁいぃ……!!んぉ、んおおぉあああっ!」

 

 蔑むような台詞で軽く尻を叩かれるだけで溢れる愛液が尋常じゃない量になる。

 そのサディスティックな振る舞いも今のセレニケにとっては甘美かつ暖かな刺激。ガクガクと震え続ける四肢で何とか気を失わないように堪える。

 

(最高よ、聖杯戦争……!こんな、こんな出会いをもたらしてくれるなんて……!参加して正解だったわ……!はははは、私はこれから彼にペロペロされるだけの女として生きる……!ふふ、見ているかしらメル友のAちゃん……!私は遂に女としての幸せを手に入れたわ!)

 

 聖杯戦争は別に出会いを求める婚活パーティーではないのだが……だがセレニケにとっては元々希薄だった一族の悲願とか、聖杯に対する想い等はとっくのとうに霧散している。こんなのをマスター枠の一人として呼び寄せたダーニックは今、どんな気持ちだろうか。

 

「んぉぉっ……!おっ、おっ……や、やめぇ、そんなそっちの穴はだめだって……んあおあぁぁっ!!お、おひりぃぃっ!!」

 

「あっ、あはぁっ……!ビーストさまぁっ……私も、私にも、慈悲をぉぉっ……お尻の穴でぇぇっ……んんおおおおおおぁっ!!」

 

 背後で白触手に菊門を弄られているアストルフォの嬌声をBGMに黒のライダー主従の淫蕩な宴はまだまだ続く。そして、それに釘付けになっている無垢なる者もいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 白のビーストに命を救われ、彼の自前の聖杯で真っ当な寿命を手に入れたホムンクルス、シロ。

 実は隠れて、この『三白城』最上階の裏面に付いてきてた彼は柱の影から、3人の交わりを目に焼き付けていた。

 

 生殖行為も知識としては知っている。刑部姫の同人誌で絵とはいえ、そういう営みも目にはした。だが、実際に、現実で目の当たりにするとこうも違うものなのか。

 

 いつも自分を気にかけて、優しくしてくれた兄様。

 

 彼の太陽のような笑みはシロの不安を掻き消してくれる。

 

 だが、今浮かんでいる笑みはそれとはかけ離れたもの。万物を蕩かしそうな蠱惑的な笑み。

 彼の体から伸びている白い魔手は未だ啼き続けている桃色の髪をした少年(?)の体の上を這い回っている。

 

 シロはそれを恐怖ではなく、羨望の瞳で眺めていた。

 

『白式官能』で犯されているアストルフォはシロと同タイプの体。だからこそ、シロはアストルフォに自身を重ねて、懸想し、股座へと手を伸ばしていた。

 

「あっ、ひっ、ひぅぅっ!もう、やめぇっ……アソコぉ、とれちゃぅっ……!!あ、あ、あぁっ!!」

 

 数多の触手でツンと勃った乳首はこねくり回され、雌男根は扱かれ、尻穴は穿られ続けている。普通の人間なら、恐れ慄くであろうアストルフォの痴態をシロは目を逸らす事なく、脳裏に刻む。

 

 もし、アソコにいるのが自分だったら、あんなにたくさんの兄様の手から愛を受け取ったら……。あぁ、駄目だ。矮小なる自分の頭じゃ、想像すら出来ない。だから、彼は犯されているアストルフォに自身を投影して、性器を握る。

 

 

(はぁ、はぁ、はぁ、知りたい、知りたい、知りたい、兄様の手を、兄様の体を、兄様の営みを、もっと、もっと、もっとッッ!!)

 

 シロは前屈みになり、雌となりかけたその表情で今度は白のビーストの方へと視線を傾けた。

 

 白手によって両手足を掴まれ、生まれたままの姿を曝け出しているセレニケ。

 赤ん坊のような屈辱的な姿を晒されても彼女の顔には怒りなど1ミリも湧いていない。

 

 操り人形のように持ち上げられなお、その瞳は玉座に座っている白のビーストの逸物に釘付けになっていた。

 

(兄様の肉棒……)

 

 刑部姫の部屋にあったカルデア寝物語なる書物に描かれていたブツも大層なクオリティだが、やはり本物には及ばない。天を目指すその肉の塔はセレニケの子宮すら超えて、貫いてしまう程の大きさに。遠目で眺めているシロが思わず唾を大量に飲み込んでしまうぐらいには太く、硬く、存在感を与えていた。

 

「美しいわ……。私の醜悪な穴に挿れるのが恐れ多いほどに……」

 

「醜悪?俺の事を想って、こんなに綺麗に濡らしている穴が?そんな酷い事を言う口はここかな――?」

 

「あ゛ひぃぃっ!!?あ!あ゛あ゛ぁぁっ!!勿体無き、お言葉ぁああああぁっ……!!」

 

 親指を除いた四本の指が妖しく蠢き、セレニケの蜜壺のナカを蹂躙する。えげつない水音がまた協奏曲を奏で、蜘蛛の巣に絡められた毒蛾は悶え続けていた。

 ビクビクと大きく開脚させられているそれは隠す事も、閉じる事も許されない。

 

 セレニケの胸も局部も彼女のイメージにはそぐわない程に綺麗な桃色の肉を彩っていた。

 

 徐々に降ろされていく彼女の躰。十分過ぎる程に濡れている女陰はいとも簡単に獣の肉棒を飲み込んだ。

 

「んぁお゛お゛お゛ああああぁあぁっ!!!」

 

 ミチミチと生々しい音に、遠吠えのような喘ぎ声。人類悪のペニスを挿入されたセレニケはあまりの暴力的な快楽に気をやり、そしてまたすぐに意識を覚醒させた。

 

 結合部から吹き出し続けている潮と愛液は彼女の肉体を構成する水分全てを脱水するかの如く勢い。

 

「ひぃぃああああぁっ!!あくぅぅっ!!んへぇぇあぁっ!!は、ひぃっ……!!あ、あ、あ、言葉が出てこないぃぃぃっ……!!これを表現する言葉がないのぉぉっ……!!」

 

 彼はセレニケの太腿に手に添え、優しく腰をシェイクする。セレニケの荒々しい乱れ方とギャップがある緩やかなストローク。だが、今の彼女にとってその優しさこそがクリティカルだった。

 

 セレニケは困惑する。肉棒そのものから与えられている快楽は人知を超えた獣のもの。

 だが、彼の腰の動き方は私を労わり、慈しみ、愛でてくれる愛溢れたもの。

 

 獣性と愛性がドロドロに混ざりあった白のビーストのセックスがセレニケの脳を焼き切る。

 一突きされる度に魔術回路が作り直され、生まれ変わっていくような感覚。

 

「んぁおぁっ!おぉっぁっ!!あぁぁぁんぅぅっ!!」

 

 恍惚とした顔で突かれ続ける。

 彼の動きによって自然と卑猥な啼き声が出る今の現状が幸せで仕方がない。まるで自分はこの人と出会う為に生まれた来たのではとさえ、思ってしまう。

 

 今になって、白のビーストの背後で白触手に全身を撫でまわされているアストルフォがセレニケの目に入った。

 

 こうして白のビーストに出会う事が出来たのも、黒のマスターとして、アストルフォを召喚したからだろう。セレニケは心から純粋な気持ちで感謝した。恋のキューピッドとして、ここに連れて来てくれてありがとうと。今までの歪んだ接し方も謝りたいぐらい程に胸が一杯になっていた。

 

「あへぇ、はぇぁぁっ……!あっ、はひぃっ!ああ、ははっ……お月さまがぁ、みへるぅっ……んぉあっ!」

 

 ただ、そんな感謝も謝罪も現在進行形でアヘりまくっているアストルフォにされた所でどうしようもないし、堪ったものではないだろう。

 

「そういえば、眼鏡のきれーなお姉さん。あなたの名前を教えてもらってもいいかな」

 

「なま、へ?……ぁっ、き、きいてくれるの?」

 

「だって、自分の子種を吐きだす相手の名前も知らないなんて、そんな礼儀知らずな真似はしたくないからね。それとも答えたくないかな?」

 

「セレニケェ!セレニケ・アイスコル・ユグドミレニアですぅ!セレニケとぉ……呼んで下さいぃぃっ……!貴方様の精子袋になる女の名前ですぅ……!あっ、ああっぁぁああぁっ……!!」

 

「そっか。じゃあ、いっぱい出してあげるよセレニケ」

 

「はひい゛い゛ぃぃぃっ!!」

 

 惚れた男に名前を呼ばれ、子を宿す部屋に欲望の塊を注がれる。愛しき人が自分の体に興奮を覚え、欲望の赴くままに蹂躙してくれる。あぁ、私は今まで何をしていたのだろうとセレニケは思い返す。自分好みの少年達を生贄として、捕まえ、痛み付け、凌辱し、嗜虐の涙を舐める。あんなもののどこに快感を感じていたのかと。いくらなんでも寂し過ぎる、あんなのは自慰と変わらない。

 

 普通の男女のように対面座位で交じり合うものにどうしてここまでの心地良さを感じているのか。ただ一つわかるとすれば、自分は愛されているということ。会って間もないのにいきなり目の前で体に傷を作り、悦に浸るヤバい女をこの男は何一つ嫌悪する事なく受け入れ、抱き締めてくれる。

 

「あふぅぅっ……あ゛あ゛あ゛ぁぁぁっ!!おっぱいぃぃぁっ……すっちゃぁぁっ、んやぁっ!」

 

 揺れる乳房を抑え付けるように甘く噛まれる。コリコリとした感触を楽しむように動く白のビーストの唇の動きに全力で仰け反り、歓悦の涙を流す。自分の中にあるワケがないと思っていた母性さえ、湧いてしまいそうで。

 

「んぉぉおっ!おぁぁっ!おほぉおぉっっ……!!はむぅっっ、ちゅっ、ちゅぅぅっ……んじゅぷるぅぅっ……!」

 

 普通の人間ではまず出来ないプレイ。アストルフォを犯している魔手がセレニケの尻穴と口に伸び、その内部を穿り繰り回す。彼女はジュブジュブと涎を垂らし、その白手を口内で舐めまわす。穴という穴を好き放題にされてもなお、彼女の頭の中にあるのは屈辱ではなく、悦び。ドSだと思っていた自分が実はMだったのではと思ってしまうぐらいに体は良く反応している。

 

 彼に何をされても嬉しがってしまうぐらいに開発されている。もう、前の自分には戻れない。だが元から、戻るつもりも無かった。彼女はいついかなる時だって欲望に忠実に生きてきたのだから。

 

 そして、ラストスパートとして畳み掛けるように獣の滝が放出される。流れるおたまじゃくし一つ一つがセレニケの膣を開発しようと注がれ、子宮へと侵入する。

 

「んんんぶぅぅぅぅぅぅぅっ……!!!!」

 

 白手に口内を挿入された状態での射精中イキ。歓喜と快楽の暴力でセレニケの瞳は潤み蕩け、全身は面白いぐらいに痙攣していた。

 射精してもなお、動き続ける白のビーストのストローク、アナルも未だこねくり回されているセレニケは終わらない絶頂に再びを尿を漏らしていた。

 

 後ろにいるアストルフォの絶頂から放出された白濁液が祝福するホワイトシャワーのようにセレニケの淫奔な躰に降り注ぐ。

 

 女としての尊厳を損なってしまうぐらいに嬲られたセレニケはこの戦争に参加しているマスター達の中で一番幸せを感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「最低だ、俺って……」

 

 白のビーストとの狂淫の宴を最後まで見届けたシロは罪悪感と悶々とした気持ちで三白城の廊下を歩いていた。

 彼から逃げるようにその場を後にしたシロは自分がどこの階層にいるのかもわかっていなかった。

 

「うっ……早く、下着を変えないと」

 

 刑部姫に用意してもらった白のショートパンツの下に穿いてある下着……ボクサーパンツ内のドロッとした感触を持ったまま足を進めていた。

 

 そもそも今、穿いているのがその兄様のおさがりでもあるという事実がよりシロの興奮を煽っていた。

 

(はぁ、はぁ、はぁ……兄様の下半身を覆っていた物の中で俺の下半身が性的興奮を覚えて……それで、それで……こんなっ……あぁっ!)

 

 油断すると再び自慰に耽けてしまいそうになる体を自制する為に血を流す程、唇を噛み、痛みで欲望を抑え込む。刑部姫は色々と心配はしていたが、このホムンクルスはもう色々と手遅れだろう。諦めて。

 

「俺は……一体、兄様とどうなりたいんだ……?」

 

 ペタペタと膨らみの無い胸を触りながら、シロは自分自身に問い掛ける。

 今まで、彼を慕い、擦り寄ってきたが、それは助けられた事による恩義なのか、この好意は生まれた間もない自分へのヒヨコの如き、刷り込み効果によるものなのか。

 

 散々、欲望まみれな振る舞いをしておきながら、後一歩は踏み込めない。最後の一線は超えれない。そんな臆病な自分をシロは自嘲する。

 

 もし、先程のあの眼鏡の女性のように振り切れれば、どれだけ幸せなのだろうか。

 

「あぁ、うん。そうだな……俺は知りたいんだ。兄様の事を。あの人の過去も、想いも、趣味も、思考も、体も、見えている世界も。俺を外の世界に連れ出してくれた……俺が初めて見た『人間』にもっと触れて、もっと繋がり合いたいんだ……兄様の傍で、隣で」

 

「じゃあ、デートすればいいと思うわ」

 

「うわぁっ!?」

 

 突如として背後から声をかけられ、驚き、振り返るとそこには真っ白な肌に蝶が連結したような服の体を成していないナニかを着ている少女が空間に開いた穴から逆さまにぶら下がっていた。額にはこの世ならざる瞳がシロの事を見据えて――。

 

「あ、あれ?」

 

「どうかしたのかしら?」

 

 と思えば、いま目の前にいるのは可愛らしい黒のワンピースを着ている普通の肌色をした金髪の少女がキチンと二足で立っている。

 見間違いかと、シロは目を擦った。

 

「いや、何でもない……で君は?」

 

「ふふふ、自己紹介が遅れたわね。こんにちは!私の名前はアビゲイル!アビゲイル・ウィリアムズ!この聖杯戦争に白のキャスターとして参加しているわ。あなたのお兄様のサーヴァントでお嫁さんよ」

 

「そうか……。俺の名前は」

 

「シロ君でしょ、知ってるわ」

 

 見た目とそぐわない蠱惑的な笑みを浮かべて、アビゲイルは笑っていた。シロは名乗ったつもりなどなかったが、きっと兄様が教えてくれたのだろうと特に疑問には思わなかった。それよりも愛しい人が別の所で自分の名前を出している事に喜んでいた。

 

「シロは座長さんと、もっともっと深い関係になりたいのでしょう?」

 

「あぁ、それでさっき言っていたデート、とは?」

 

「シロはまだまだ子供、セイレムにいた私やラヴィニアみたいに外の事なんて全然知らない。なら、こんなお城に閉じこもっていないで、座長さんと一緒に外の世界を見るべきだと思うの!今は聖杯戦争中で遠出は出来ないけど、おめかしして、手を繋いで、食べさせ合いっこして、二人で同じ景色を見て、違う感想を語り合うの!とっても素敵な事だと思わない?」

 

「いい……。ハッ……!けど、その俺の性別は男だ……兄様に気味悪がられないか……?同性の域を超えたスキンシップは……」

 

「大丈夫よ、シロってば女の子に負けないぐらいに可愛らしいもの!性別なんて些末な問題でしょ?今のあなたなら()()()()()()()()()()()()()。まぁ、どっちで愛されたいかはあなたが決める事でしょうけど」

 

 ツンとアビゲイルはシロの心臓の部分を指で突く。恐らく白のビーストが授けた今のシロの体内に眠っている聖杯を指しているだろう。

 アビゲイルは赤髪の女装をした少年が淫猥な格好をしている薄い本を握らせて、シロの手を引く。

 

「不安がる必要は無いわ、デートのノウハウ、シロに合った男性に喜ばれる可愛らしい服、無知と無垢を生かしたベッドへの誘い方まで私がキチンとレクチャーしてあげる、経験豊富なお姉さんとしてね」

 

「あ、そのすまない。会ったばかりの俺に、そこまで気を遣ってくれて――」

 

 申し訳なさよりも兄様とのデートという餌が勝ったシロはやや困惑しながらも、アビゲイルの後を付いていく。

 彼の脳内にはいつも以上にキラキラしている白のビーストとの逢瀬がもう既に繰り広げているのかもしれない。

 

 「いいのよ、私も……特に座長さんは、あなたに大きな、大きな恩があるのだから」

 

 アビゲイルの小さな呟きはシロの耳に届く事は無かった。

 

 

 

 《赤黒陣営が三白城に攻め込むまで残り15時間》

 

 

 

 

 

 

 

 

 




《白の陣営》
白のマスター:白のビースト
白のセイバー:セイバーリリィ
白のアーチャー:アタランテ
白のランサー:哪吒
白のライダー:――――
白のキャスター:アビゲイル・ウィリアムズ
白のアサシン:刑部姫
白のバーサーカー:ペンテシレイア
白のルーラー:ジャンヌ・ダルク



黒のサーヴァント:残り5人(ライダー主従、アヘ顔触手ダブルピース堕ちの為)
赤のサーヴァント:残り5人






セレニケおばさん原作と同じく欲望の赴くまま好き放題して、幸せをゲット。とばっちりアストルフォ君、本当、可哀想。なんか、どんどん数減って、城に攻め込む前に全滅しそうなんですが。


後、最後アビゲイルが伏線っぽい事言ってましたが、これが明らかになるの当分先になるんで忘れてもらってもいいです。何か、伏線って使うとまともな作家気分を味わえる気がする(馬鹿)。




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ビーストウォーズ⑦(Fate Apocrypha編)

ハワイ島でバカンス&同人イベ楽し過ぎてヤバい。やっぱりたくさんのサーヴァントがワイワイしているイベントは正義ですね。ろこもこ、ろこもこ。

水着邪ンヌが可愛すぎてアソコがデュヘインしそう。中二病っぽくなってるけど、どこかまだ爪が甘い所とか萌え殺す気か。黒ネコがニャンと鳴くって、鳴くって、お前を鳴かせたいわ。何だよ、ベッドで寝ている時に可愛らしい悪戯とか、お前等、絶対ループの中で何発かヤッてんだろ、オォン!? あんな笑顔見せられたら、もうネタ集めで実体験R18パーリナイするしかなじゃないか! お前が!薄い本!になるんだよ!!

そもそも邪ンヌも含めて、今回の水着鯖は皆、アソコに悪い。思わず英霊諭吉7枚勝負するぐらいには本気を出してしまったよ。

XXのおっぱいが大きくなってね、聖槍の影響だろうけど、マスターの事を『マスター君』呼びして、年上OL属性になってるとか素晴らしいなおい。どうしよう、当作品でヒロインXとは別キャラとすべきか悩み中……。キャラ分け出来そうだしね。くたびれたOLで専業主夫の旦那様に癒されプレイとかマタ・ハリやペンテシレイアと仲良く出来ると思うんだよね。後、ヒロインXXの最終再臨は最高だぞ。今年No.1の最終再臨だ。フォーリナー!

褐色ペレBBも良かった。アソコがCCCされてしまうぐらいには。第一再臨の黄色パーカー&トップレスおっぱいぷるんぷるぅんも白濁が似合いそうな褐色のイケイケギャル風味もいつもの肌白BBの印象があるからこそのギャップが映えてね、いやー素晴らしい素晴らしい。思わずBB$札を谷間に入れたくなるぐらいには。ありがとう、ありがとう。あんな開放的な常夏の島で同人&終わらないループとかエロネタには持って来いの公式供給、本当にありがとう。取りあえず、BBちゃん、お礼にウチのグダ男君と白触手ファックプレイに勤しんでもいいぞ。そっちも触手使うからいいよね?(支離滅裂)。

新礼装の褐色立香ちゃんもエチエチ過ぎる……。染まっちゃったんだ、隣にいるイケイケ薄い本の寝取りウェイ系と化した日焼けグダ男君に染められてしまったんだ……おっぱいも大きくなってるし……。

ともかく溢れるパトスが弾けるぐらいには神イベだったよ2018水着イベ!この回も書きたいけど、先に一部のメイン回で書きたい鯖もいるし、剣豪編も書きたいし、二部二章も書きたいから筆が追い付かないの! 誰か5億円頂戴! そしたら仕事辞めて、執筆に専念するから!!

















頭の悪そうな前書きは無視して大丈夫です。本編には関係ありません。アポ編続きです(賢者モード)。




 《ルーラー:ジャンヌ・ダルクと白のルーラーの別れ際のやり取り》

 

『白のビーストの所までは連れていってはもらえないのですね……』

 

『えぇ、彼が勝手に接触する分には私達は止められませんが。私から案内する事はありません。もし、彼の真意を聞きたいというのなら、両陣営と同じようにこの城を登っていく事をオススメします』

 

『一つだけ、答えて下さい。彼は……白のビーストはこの世界を滅ぼすつもりはないのですね』

 

『ありません。神に誓って』

 

『わかりました……。世界は変われども、同じジャンヌ・ダルクの言葉です。信じましょう』

 

『あ、それはそれとして、せっかくですし、先程、私が話したカルデア国物語の漫画もどうぞ持っていて下さい!異なる世界での布教もまたオツなものです。さぁ、さぁ、さぁ!持ちづらいというのなら袋にでも入れておきますから!』

 

『ちょ、ちょっと急にそんなにたくさん押し付けないで下さい!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 白のビーストが根城にしている三白城で若干ピンク脳になったもう一人の自分との邂逅したルーラー、ジャンヌ・ダルク。JKプレイに夢中になりつつある白のルーラーから胃を痛めながら、白のビーストなる男の話を聞く。

 

 この世界の外。似ているようで別の世界――。そこで魔術王によって行われた大偉業、人理焼却。それを修復する為に立ち上がった人理継続保障機関フィニス・カルデア。

 

 そのカルデアにて唯一・最後のマスター。数多のサーヴァント達と歩み続けた少年。

 

 何度も何度も続く、世界の危機、崩壊しかける人理、奪われる平穏。

 

 戦い続けた少年。異形なる英霊と交わり続けた少年は人の道を外れ、羽化する。

 

 共にあり続ける為の『親愛』の人類悪。カルデアから始まった人理修復の旅によって作り上げられた存在せざる獣。ビースト0。デアー。

 最後は愛すべき者達と星から飛び立ち、遠い宙の果てへと消えていった筈の彼が何の因果かこうして、聖杯大戦の地に降臨した。

 

 

 三白城を後にしたジャンヌ・ダルクは黒の陣営の本拠地。ミレニア城塞へと足を踏み入れた。

 異常事態も異常事態。お互いの情報を共有する為にヴラド、ケイローンは聖女を迎え入れた。ダーニックは絶賛失神中。いきなり飛び出したライダー主従に胃を痛めているフィオレを加えて、4人が集まる。

 

 

「成程、つまりかの白の獣は我々が生きる世界ではない、外宇宙からやってきた降臨者だと」

 

「しかし、アーチャー。にわかには信じ難い話です。魔術王による人理焼却。フィニス・カルデアなる組織も聞いた事がありません。しかも、英霊を一騎ではなく、複数、いえ、軍に匹敵する程の数を使役するマスター。聖杯を使わず、任意のサーヴァントを受肉させる特異体質、そんな事があり得るのでしょうか?」

 

 受肉させる手段がセェェックスッッ!!という事はジャンヌは当然ぼかした。聖女だって空気ぐらいは読む。

 

 聖女から白のビーストの成り立ち、その詳細を語られた彼等の反応は三者三様だった。フィオレは若干懐疑的。いくら高ランクの『カリスマ』と『聖人』スキルを持つジャンヌの言葉でも全てをいきなり信じるには突拍子も無さ過ぎた。

 

 そんなマスターに対して、生徒に諭すような言い方でケイローンは言葉を返す。

 

「そもそも外の世界からの来訪者ですからあまり我々の常識を当て嵌めない方がよいのかと。現に黒の陣営は大聖杯もホムンクルス達もあっさり奪われている現状ですから」

 

 ケイローンはあっさりと白のビーストなる男の成り立ちを受け入れる。それは神々に翻弄される勇者達が当たり前として存在したギリシャ世界を生きた賢者故の見識か。

 話を聞いた上で人類悪の素質があった少年は本来は開花する筈のなかったそれをカルデアとの人理修復事業によって目覚めさせたのだろう。それが幸か不幸かは置いておいて。

 

「どうあれ、全ての物事には必ず理由があります。白のビーストが我々の世界に、聖杯大戦に乱入した原因となる発端が。彼に直接会ってその真意を知る事こそが今回の事件を解決する要因、ひいては我々が正常に聖杯大戦を再開出来るきっかけになるかと」

 

「倒すのではなく?」

 

「この際ですから、隠さずに伝えましょう。彼を本当に人類悪だと仮定して、マスター、ランサー……私はあの白のビーストを倒すのは不可能だと考えています」

 

「そんな!」

 

「それは戦わずして、恭順しろと?ワラキア公国の王である余によりにもよってこの地で頭を垂れろと。そう言うのか、アーチャーよ」

 

 ヴラド公の眼が細まり、その眼から決して仲間に向けるものではない殺意の圧力がケイローンに向けられた。もしこれ以上戯言を並べるのならば、串刺しにすると語っているようだった。自身に向けていられないとはいえ、サーヴァントの本気の殺気を目の当たりにしてフィオレは小さく悲鳴を漏らし、気絶しかける。

 

「いえ、我々は本気で挑み、あの城の攻略を目指すべきです。ですが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。彼は本気で我々を滅ぼすつもりはありません。彼が真っ当な人類悪だとしたら、そもそもここまで回りくどくかつ悠長にしている筈が無いのですから」

 

 簡単に城内に侵入し、数百にも及ぶホムンクルス達を強奪出来る能力。本来ならばその能力でマスターを全員殺害されてしまえば、もはや勝負にすらならない。ただでさえ、サーヴァントとビーストという絶対的なスペックの差もあるのに。

 

 にも関わらず、黒赤陣営が攻め込むのを待っているのは人類を滅ぼす事が目的でも、聖杯が目的でもないという事。では何が目的か?それを知る為にもケイローンは赤黒との同盟で突入する事については反対しなかった。

 

「彼を滅すべき悪として断定し、突き進んでしまえば大切な何かを見失う事になります。ランサー、打倒や殺害を目的ではなく、わかり合う事を目的として戦う事もこの世にあるのだと、どうか知って欲しい」

 

「大層なご高説だ。分からぬよ……。人々の為に戦っておきながら、結局は拒絶され、それでもなお、何も恨まず、妬まず、憎む事のない獣の心など」

 

 相手を知るという論理的とは言いづらい説得ではあったが、極めて誠実なケイローンの返答にウラド公の殺気は萎んだ。不快だと大きく溜息を吐くと、席を立った。

 

「どちらへ」

 

「寝る。どちらにせよ、あの城に攻め込む事に変わりないというのなら、後の話は貴様達で進めておけ」

 

 部屋から出たヴラド公を見送り、残される3人。フィオレは解放されたかのように大きく肩の力を抜いた。

 

「あの大丈夫ですか、アーチャー?ランサー、物凄く不機嫌そうでしたけど……」

 

「いえ、あれでも私の考えに対しては一定の理解を得てくれていると思いますよ。ただ、人の為に戦っておきながら、結局、世界を滅ぼす危険物として拒絶されてしまった白のビーストに何かを重ねてしまったのかもしれませんがね」

 

 白のビースト本人なら、見ず知らずの人の為に戦ったわけじゃないと否定しそうだが、結果的にはその行為は世界を救う行為だったのだろう。国を救う為の行いが串刺し公という不名誉の烙印を押されてしまったヴラド公がそこに何を思ったかは本人しかあずかり知らぬ事だが、ケイローンも個人の事情にそこまで深く踏み込むつもりはない。

 

「あっ!もしかして、セレニケとライダーがあの城に向かったのも先んじて白のビーストを知ろうという思惑が……」

 

「それはないです」

 

「うぅ、ぽんぽんいたい……」

 

 彼等の話し合いを見守っていたルーラーは考える。宣戦布告していた白のビーストの姿を。直接ではないとはいえ、彼からは人類に対する敵愾心というのは一切感じなかった。やっている事は人類悪の名にふさわしくはた迷惑極まりないものだが……それでも彼は何も恨んではいないのだろう。

 

(愛する者が傍にいるから満たされているというのでしょうか……)

 

 幸せそうに頬を染めるもう一人の自分……白のルーラーと白のビーストのそういった光景を想像してしまい、上がってしまった顔の温度を下げるように首を横に振る。

 

「ルーラーから白のビーストの情報を聞けたのは僥倖でした。欲を言えば、資料のような形であればなお良しだったのですが……」

 

「そういえば……」

 

 ケイローンの言葉から三白城を去る際に押し付けられた本達を袋から取り出したジャンヌ・ダルク。童話作家の手によって全年齢版向け、健全コミックとして彼の半生を綴った『カルデア国物語』をテーブルの上に何冊も積み重ねていく。

 

「この書物は?」

 

「カウレスの部屋で良く見た事があります。絵本の文字を多くした娯楽本。確かコミックなる書物……ですが、ルーラー、これは一体?」

 

「白のルーラーに押し付けられたのですよ。私達が知る必要がある『彼』の物語がそこに記されていると。まぁ、内容自体は私が先程話した事とそこまで大差は無いですが……」

 

 もしかして、自分が黒の陣営に行く事も見透かされていたのだろうか。あの脳内桃色性女の手の平の上にいるのは癪だったが、ここで隠す理由も無いのでジャンヌ・ダルクはパラパラとページを捲る二人を見守っていたのだが。

 

 いたのだが――。何やら様子がおかしい。顔から湯気が出るぐらいに真っ赤にしているフィオレと興味深そうにふんふんと頷いているケイローン。

 

「はうにゃぁっ!?ふぇ、えぇぇ……血は繋がってはいないとはいえ、姉弟でそれは駄目でしょう!あっ、あっ、あっ、そ、そんな4人でだなんて……!」

 

「ほうほう、品行方正だが、どこか猪突猛進で人の話を一切聞かない長女に、素行不良と思いきや、一番常識力があり、何かと弟を慮る次女、そして外見的には妹にしか思えないのに何かと姉ぶろうとする三女。そんな3人の義姉と日常で絆を深めながらの濡れ場……。丁寧でいながら、テンポの良い物語展開。90点を上げましょう。近親相姦?大丈夫です、ギリシャでは日常茶飯事です」

 

 おかしい、その反応はおかしい。何故、アーチャーのマスターはそんな見ちゃ駄目だけど、興味が無いわけじゃない的な反応で手の平で顔を隠しつつも、指の隙間からチラチラと中身を伺っているのか。

 

「ちょっと失礼します!」

 

 嫌な予感がしたジャンヌは二人が釘付けになっていた本を奪い取り、その中身を確認する。

 大丈夫、『カルデア国物語』の中身は私も確認した。思わず、読み耽てしまう程には面白かったけど、そんな不健全な内容は無かった。王道物の冒険記譚だった筈だと自身に言い聞かせて、表紙を確認した聖女。

 

 そこには金髪ポニーテールに眼鏡をかけた自身の姿(白のルーラー)と自分とそっくりの顔をした学生服を着崩した不良のような少女に、白いフワフワのワンピースを着た、またまた自分の面影がある幼女の3人に『聖女×聖女×聖女 ~三姉妹とのドキドキ共同生活~』と書かれたタイトル。

 

 原作:ジャンヌ・ダルク。作画:ジャンヌ・ダルク・オルタ。アシスタント:ジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィ。

 

「な、な、な、なぁっ!?」

 

 当然、内容は一人の少年と三姉妹による性感看破(隠語)で性人(隠語)な物語。

 

 ――あっ、ごめんなさい。間違って関係ないのも入れてしまいました、てへっ。ま、サービスという事で主もお許しになるでしょう。

 

 ペロリと舌を出している白のルーラーの姿を幻視した。

 

「あ・の・女・はああああああっ!」

 

 持っている本を今すぐ破り捨てたい気持ちに駆られたが、無駄に高い物語構成と作画クオリティがそれを許してくれなかった。御禁制極まりないのに面白いのが腹が立つ。

 

『聖女様、聖女様……ページを捲るのが早いです……もそっとゆっくり……』

 

「レティシア!?」

 

「えっと、その……えっちなのは良くないと思います!」

 

「あぁ、違います!これを見せたかったわけではなくて、そんな眼で私を見ないで下さい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなで淫本に二人の純朴な少女達が魅入られてしまいかけている中、淫獣に魅入られてしまったシロ君はというと……。

 

「うん!バッチリだわ!ありがとう、CEOのお姉さん!リクエスト通りのドレスを持ってきて下さって!」

 

「問題無い。それに今はもうプライベートだから、いつも通りペンテシレイアで構わないぞ」

 

 三白城にてアビーが寝泊まりしている部屋。比較的広く、いくつもの衣服が床に散乱している中、立ち鏡の前でシロは困惑しながらも、変身した自身の姿に釘付けになっていた。

 

 腰まであった薄茶色のキューティクルは白薔薇のついたリボンで一つに結られて、白いドレスの丈は膝まであり、太もものみならず、鎖骨と二の腕もバッチリと露出している。それは普段、ボーイッシュな格好をして性差を感じさせない彼を完全に女性寄りへとドレスアップさせていた。

 

 ちなみに白薔薇の花言葉は「尊敬」「純潔」「無邪気」「恋の吐息」

 

 白のソックスとスカートの丈にある彼の太腿、瑞々しい純白の肌。愛すべき者以外、触れる事を許されない絶対領域をチラチラと気にしているシロ君を見て、誰が生えていると想像出来るか、いやこんな可愛い子が生えているからよりグッドなのかもしれない。

 

「これが……おれ?」

 

「うむ、生まれて間もない子供がおめかしをし、感情を揺さぶられている光景……大変結構。姿ではない、ホムンクルス達もまだ精神的に育ちきっていないのなら、彼等もまた庇護すべき子供達であろう……」

 

「むぅ、下がすーすーする」

 

「おぉう。頬を赤らめ、ぎゅっとスカートの裾を掴むその仕草。萌えの神髄をクリティカルに捉えているね……マーちゃん関連でトチ狂わなければ普通に可愛い男の子(女の子)なのになぁ……」

 

 アビゲイル、ペンテシレイア、アタランテ、刑部姫、ジャンヌ・ダルク、哪吒。

 白のビースト、白のセイバー、白のライダーを除く、白の陣営達がアビゲイルの女の子らしい部屋に集結していた。シロのドレスを調達してきたアマゾネスCEOを除いて、他の白の従者達は姦しく、シロのデートの為の服選びに精を出していた。

 

「ふぁっきんキュートよ、シロ!後はそれで、間違ってお酒を飲んで、胸元をちょっと開きながら、『兄様、体があつい……つらい……たすけて……』ってベッドにお誘いすれば、いあ(隠語)!いあ(隠語)!よ!!」

 

「無垢なる少年を更なる深淵に引き摺り込もうとするアビィちゃん……これはセイレムの魔女ですわ」

 

 しらーと今回はもう事の顛末を傍観する方向にシフトした刑部姫。ロリ化しているアタランテは「悪女ロリ……それもありだ」とうんうん頷いている。

 

「だが、こういう事に疎い俺でもわかるぞ……。さすがに男がこんな格好するのは正しくないと……」

 

 散々、マスターを三つ指を立てて、エプロン姿でお出迎えした君が言える事なのだろうかと刑部姫は野暮な事は言わなかった。きっとシロ君も自我と複雑な思春期が目覚めつつある微妙なお年頃なのだろう。彼にだけしか分からない微妙な乙女心があるのかもしれない。

 

「性別?年の差?種族の差?血の繋がり?ノープロブレムです!愛があれば、皆、家族ですから!!シロ君、ポニーテールは大正義ですよ!!せっかくなのでこちらの眼鏡もかけてみませんか?」

 

『私が姉なるもの』とデカデカ書かれた旗を片手に今度は白のセーラー服かつイッてしまった眼で大興奮しているジャンヌ・ダルク。

 

「あれでルーラー名乗っているのが姫的にはとっても頭が痛い」

 

「ルーラーとはこの世で最も我が儘なクラスの事では?私がルールだ。的な」

 

 ペンテシレイアの頭の中にはグラップラー・マルタが想像されていた。まぁ、ホームズしかり、天草しかり、ルーラークラスって調停者の癖にゴーイングマイウェイを行く者が多過ぎるのもまた事実。ジャンヌは白の淫獣に蕩かされ、若干それが桃色方向に寄ってしまっただけ。もうアストルフォの事、とやかく言えないと思うのですが。

 

「ぽにてに眼鏡 疑問」

 

「ルルハワ島での姉ムーブがまた再燃したらしいぞ。まぁ、魔法少女化した自身に先を越されて、色んな意味で焦っている哀れな聖女の成れの果てだ、笑ってやれ」

 

 

「マスターを兄様と慕うのなら、私にとっても弟です。さぁ、さぁ、さぁ、想像するのです、シロ君。兄に褒められそのドレスを一枚、一枚、剥かれながら、愛を囁かれて身も心も全て彼に預ける甘美なる未来予想図を!心が女の子になってしまった弟を色んな意味で手解きする兄!美しきかな兄弟愛!」

 

「兄様……駄目だ、俺は、私は……あ、あぁ……ぁっ!」

 

「いけない子だわ、いけない子だわ。ドレスの下には薔薇の刺繍が施されたレースのスケスケ下着。女の子の体になっても、男の子の体になっても大丈夫のようにちゃんと大事な所には穴を開けてあるわ。あぁ、シロのいけない所が座長さんに食べられてしまうの……それとも食べてしまうの?」

 

 悪魔みたいな聖女と邪神みたいな幼女にどんどん仕込まれていくシロ君。刑部姫の部屋で読み漁った薄い本あるいはセレニケとアストルフォが犯されていたあの光景を想像していたのか、身をよじらせ、悶えるシロ。

 

「今度の新刊のネタは決まったか、刑部姫(お得意さん)。エナドリならいつでも配送してやるぞ」

 

「あぁ――うん。シーちゃんとガレっちに相談してからね。もう姫は二次元に逃げま――す。ツッコミ疲れたし、マーちゃんならうまくやるでしょ、多分」

 

 自分の眼の届かない所でおっ始めてくれるのなら、干渉するつもりは無い。ラーマ、アストルフォ、デオン、哪吒、カッツもホイホイ喰ったマスターなら、まぁ、色んな意味で上手くヤるだろうと放置の方向で行く事にした。ただし、次の新刊のネタにはする。

 

「しかし 命を得た幼子 シロよ おまえには選択の道がある」

 

 まだまだありますよーとジャンヌとアビィによって着せ替え人形となっていたシロに哪吒が真剣な面持ちで語りかけた。

 

「選択?」

 

「男の体 女の体 両方で(マスター)と交わってから選択すべき どちらの状態で(マスター)の隣にいたいのか。お前はまだ 子供 体ではなく精神が 無垢也 純粋也 何色にも染まる可能性」

 

「どちらの体か――」

 

「故に両性経験 どちらが良いか しっかり吟味すべき」

 

 中壇元帥・哪吒太子。召喚されるまでは男の精神性だった筈だが、その出自と製作者の哪吒に対する性別の無頓着さ故、彼女はカルデアで体は女性の状態で召喚された。そのせいでマスターと一悶着あったのだが、それはまた別の話。一つ言える事は精神は体に引っ張られる。こと快楽においては。

 

「汝が言うと説得力があるな、色んな意味で」

 

喧噪(うるさい)

 

 かつて童子のように二つに束ねていた髪は解かれ、艶のある栗色の髪は女性らしく腰までの長さに伸びていた。膨らんでいる胸と尻、見るだけ母性を感じるまでに成長した白のランサー、哪吒はその姿に相応しい振る舞いでシロの頭を撫で、諭す。

 

「『どう在りたいか』 此、最重要事項。恐怖 必要皆無 どちらの体だろうとも (マスター)なら優しくする」

 

 女の体でマスターとの子供を授かり、子供に優しくあろうとする善神ではなく、一人の母として子どもを導く哪吒の姿がそこにはあった。

 

白のランサーだけではない。

 

白のビーストには聖杯と命を、白のアサシンには薄い本によって性知識を、白のバーサーカーからはドレスを与えれ……白のキャスターには誑かし方を、白のルーラーからは愛情の示し方を教わっている少年(少女)は確実に染まっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『違いますから!違いますからね!決して、貴方達にあんな本を見せたかったわけじゃないですから!性女とかじゃないですから!ちーがーいーまーすーかーらー!』

 

 健全版の『カルデア国物語』は置いて、不健全な方は責任を持って回収したジャンヌ・ダルクはドップラー効果たっぷりの弁明を叫びながら黒の陣営の本拠地を後にした。

 

 その姿を何とも言えない顔で見送ったフィオレとケイローン。

 フィオレの頬の熱は未だ冷めない。そういう事は知識と知っていようともまさか、ああいう形で閲覧する事になるとは夢にも思っていなかったから。げに恐ろしきは英霊の表現力。繰り返されるハワイでのコミケで淫宴に耽ながら執筆し続けたジャンヌ3姉妹の書物は漫画といえども、未通の女性(フィオレ)に大きな性の衝撃を残していった。

 

「アーチャーは落ち着いていますね……」

 

「そうですね。媒体は何であれ、白のビーストの情報となる書物が残されたのは僥倖です。それが敵方からお膳立てされたものとしても……。今回の戦においては必要最低限相手の思惑には乗る必要があると思います。それにこっちはギリシャですから、あれぐらいで照れるような可愛い精神性はとうに卒業しましたよ、マスター」

 

「ギリシャ……便利な言葉ですね」

 

 創作の中の物語とはいえ、自分とそこまで年に違いのない男の子がああもベッドの上で複数の女性を責め込んでいる絵は温室育ちのお嬢様の頭の中に未だ繰り返されている。おのれ、ジャンヌ・ダルク。

 

(予想するにあの物語の主人公が人間だった頃の白のビースト……。いえ、あれはフィクション上の話で……あぁ、けどもしかして、今もあの城の中で似たような事を……いけません、駄目よフィオレ。余計な事を考えては……今は目の前の事に集中、集中、あんな破廉恥極まりない事は許しては……)

 

 ダーニックが使い物にならない以上、現状においてユグドレミア一族のトップとなるのはフィオレ。その責任と重圧がか細い肩に押しかかるだろう。そんな中、人生初めての薄い本で悶々としていたフィオレに影が差す。頭上からバサバサと大きい羽根が羽ばたく音が聞こえた。

 

「あら?何、一丁前に雌の顔をしているのかしら、フィオレ」

 

「そんな顔してません!ってセレニケ!?」

 

 胃痛の要因その2。『三白城』へ向かったとの知らせを受けていたセレニケが何食わぬ顔でヒポグリフから降りて来ていた。後ろにいるアストルフォがバツの悪そうな顔をしている。

 

「一体、どうゆう事ですか!?無断で敵地に突撃するなんて!」

 

「戻ってきたからいいじゃない。そう喚かないでよ」

 

「ライダー?」

 

「あぁ、うん。何というかな、あれだよ、白のビーストを見てしまった事でマスターの黒魔術的なリビドーが刺激されちゃったって事にしておいて……ボクだってまさか令呪を使われるとは思っていなかったんだから。なんでこうなったのかボクが聞きたいぐらい」

 

「『親愛』の理を持つ獣の在り方が黒魔術使いである彼女の心底を魅了した……?しかし、こちらに帰す理由が無い……。いや、やはりあちらは敵対が目的ではない……?」

 

 恐らくまともな返答が期待出来ないセレニケをスルーしてケイローンはアストルフォの方へと事情を尋ね、真剣に考察する。

 ただ、アストルフォとしてもセレニケが白のビーストに一目惚れしてアソコがブレイクしそうになったので城に突撃しました。マスターは抱かれました。ついでに自分は白触手にほへー!されましたと馬鹿正直に言うべきか悩み所ではあったが。

 

「大丈夫よ。もうサーヴァントを連れて突撃なんてしないわ。さっさと城に戻りましょう」

 

「……わかりました。ただし、事情はちゃんと説明してもらいますからね」

 

「事情ねぇ……。お子ちゃまの貴女に説明してもわかるかしら?大人の世界を……」

 

「お、大人の世界ぃ!?一体、あの城でナニしてたんですか……!?」

 

 フィオレの頭の中でまたあの聖女が書いた薄い本の内容がフラッシュバックされる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そ、そんな!?城に戻れと!?私を捨てると言うのですか!あれ程の悦びを与えておきながら!!」

 

 セレニケがミレニア城塞に帰ってくる数十分前……。三白城の最上階、先程まで一人の女と性別アストルフォが存分に蕩かされていた部屋で服を纏わないまま彼女は白のビーストに縋りついていた。

 

「人聞きの悪い事を言わないで欲しいな。ちゃんと手を出した娘に関しては最後まで面倒を見るよ。ただ、一つ仕事を頼みたくてさ」

 

「あぅ、んぁ、ひゃ、ひゃい」

 

 唇をプニプニと弄べば、悲痛な顔は消え、すぐに蕩けた顔になる。セレニケの顔にはまるで甘い言葉でヒモ男に騙されて財布から喜んで札を差し出す女の表情が浮かんでいた。

 

「黒の陣営、赤の陣営、マスター、サーヴァント限らず、この聖杯大戦に参加している者達に俺は出来る限り接点を持ちたい。けど、ちょっとアヴィ先生とロシェ君の事でちょっとね、俺が積極的に動くのはよろしくないなーってちょっと反省したんだ」

 

 ミレニア城塞にて黒のキャスター主従と人形の型製でアンリミデッド・フィギュア・フィーバーした事を彼なりに少し反省しているようだった。結果的にそれはロシェがゴーレムの炉心となる未来を避け、この世界のアヴィケブロンが新たな(オタク)道を見つけた結果となったが。

 

 失神したダーニックを見て、外の世界からの訪問者たる自分は魔術師に与える刺激が少々強すぎると彼は思い立った。こうして、股を濡らしながら突貫してくる女まで出て来てしまった以上、あまり表舞台には出てこない方がいいのかもしれないと。セレニケに関しては割と特殊なケース過ぎるが。

 

「参加者の事を知りたい?それはどういう思惑があってなのかな?」

 

 触手レイプから解放され、肌の艶が良くなってしまったアストルフォは白のビーストの玉座の背もたれから彼に問いを投げかける。さすがにもう攻撃を行おうとは思っていない理性が蒸発しているとはいえ、学習能力ぐらいはある。ほへー!の焼き直しはごめんなのだ。

 

「今は答えられない。ホームズ風に言えば、『今はまだ語るべき時ではない』っていうやつかな。だから黒の陣営のマスターであるセレニケにそれとなく両陣営の事を探って俺に教えて欲しいんだ。まぁ、サーヴァント達は何もしなくてもこっちに向かってくるから、まずはマスター優先かな?無理のない範囲でいいからさ」

 

「ふ――ん、無事に帰して欲しければってやつ?悪いけど、ボク達がそれに素直に従うとでも」

 

「頑張ってくれたら、今度はもっと凄い事してあげるよ」

 

「令呪をもって命ずる『ライダー、黒の陣営に戻ってきた私の目的に関して黙秘する事』」

 

「この(アマ)ァ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そういう理由で白のビーストから仕事を与えられた瞬間に流れるような動作で着替えたセレニケはアストルフォと共に三白城を後にして、ミレニア城塞へと戻ってきた。

 

 令呪で縛られている以上、アストルフォは余計な口を挟む事は出来ない。ただまぁ、白のビーストはあくまでやろうと思えば、自分でも出来る事をセレニケにお願いしているだけ。

 

 ただ単にマスター達の事を教えて欲しいというだけの理由なら、案外そこまで危険視する必要も無いのかなーっとアストルフォは考えていた。

 

 そんな悩みを他所に城へと戻るセレニケの瞳には魔術師でありながら、足が不自由であり車椅子を使用しているどこか庇護欲を駆られそうな可憐な少女の背中を捉えていた。

 

(大丈夫ですよ、白のビースト様……。私はただ与えられた指示をこなすだけのつまらない人間ではありません。期待をかけられたのなら、120%の結果を出しましょう)

 

 ペロリと舌を出し、獰猛かつSな性根が見え隠れする。

 

(魔術師としての潜在能力はあのダーニックをも上回り、ユグドレミア一族でも随一。けれど、どこか魔術師としての非情さにはなり切れない面もあり……魔術礼装を駆使する彼女は下半身のハンデも感じさせない程の戦闘力も有している)

 

 白のビーストのミスは仕事を任せた人選。

 

(あぁ、こんな清廉かつ気高くあろうとするお嬢様から礼装も車椅子も取り上げて、何も出来ない状態で白のビースト様の前に差し出したら……?お好みかしら、こういうタイプの女も。ふふ、悦んでいただけるかしら……お褒めの言葉を頂けるかしら……ふふ、フフフフフフ)

 

 

 白のビーストからの期待に大いに応えようとしたやる気が空回りし、曲解して捉えてしまったセレニケは一体何をしだすのか。多分、近い未来、白のビーストはこう言うだろう。

 

『いや、違う。そういう事じゃない』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《赤黒陣営が三白城に攻め込むまで残り14時間》

 

 

 

 

 

 




「さってと彼等が攻め込んでくるまではしばらく、大人しくしてるかなー……ん?」

セレニケとアストルフォがこの城を去ってから、背中をぐぅーっと伸ばした白のビーストは虚空に開いた名状しがたい穴から手紙がポソッと落ちて来た事に気付く。

恐らくアビーの仕業だろうと予測して、その手紙の中身を確認した。


『拝啓 兄様へ。
お忙しいところ、このような手紙とお誘いをする事を大変心苦しく思っています。
時間の都合が合えばでいいので、本日の午前、10時ごろ、シギショアラの旧市街地北部の白亜の教会前に来て頂けると助かります。兄様と外の街を一緒に歩きたいという弟、あるいは妹のような者からのお願いです。返事の必要はありません。私は待ち合わせ場所で待っていますので、来れなかったとしてもどうか気に病まないで下さい。 
敬具』

随分と堅苦しいお手紙だなと白のビーストは笑う。彼の選択肢は決まっている自分を慕ってくれる者、自分が愛している者のデートの誘いは絶対に断る事は無い。時間が足りないなら、物理的に作ればいい、体が足りないなら増やせばいい。ただそれだけの事。

「最初はただ、本能的に君を助けた。俺も気付いてなかった。けど、もしかして、()がそうだったのかな?」













『聖女×聖女×聖女 ~三姉妹とのドキドキ共同生活~』

原作:ジャンヌ・ダルク。
作画:ジャンヌ・ダルク・オルタ。
アシスタント:ジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィ。
「お前も家族だ」
聞き分けの無い妹達は聖女パンチ、時々イルカファンネルで黙らせる若干、サイコパスの気がある長女を始めとしたドキドキイチャラブエロコメディ。
キラウエア火山の大噴火によって家を失ったある少年は両親の縁で3姉妹の家に預かられる事になる(エロ系物語特有のいつもの)。一つ屋根の下、3姉妹と義弟……何も起きない筈も無く――。
『カルデア寝物語』に触発された聖女様がルルワハ島のコミケにおいて、邪ンヌとジャンヌ・リリィを巻き込んで「本を作りましょう……! サークル名はファイアー・バスターズで!」と自虐っぽいサークル活動としてループする執筆活動の中、突如として現れた謎のサークル『神風魔法少女サイト』に勝つ為に「やっぱり肉体取材が一番糧になります! というわけでマスター、いえ弟君! 私達に力とアソコを貸して下さい!」と1ループを使うという大暴挙。3姉妹共々、体を張ったネタ収集によってあまりにも生々しい同人が完成した。精神を強く持たないと桃色聖女の電波にあてられる。ダイスどうぞ。







《白の陣営》
白のマスター:白のビースト
白のセイバー:セイバーリリィ
白のアーチャー:アタランテ
白のランサー:哪吒
白のライダー:――――
白のキャスター:アビゲイル・ウィリアムズ
白のアサシン:刑部姫
白のバーサーカー:ペンテシレイア
白のルーラー:ジャンヌ・ダルク



黒のサーヴァント:残り6人(ライダー主従、一応復活。ただし戦力として数えるべきか不明。特にマスター面で不安大)
赤のサーヴァント:残り5人










イイ所で一回、一部のメイン回に戻ります。
















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ビーストウォーズ⑧(Fate Apocrypha編)

9か月ぶりのアポ編。はぁ、遅すぎ、止めたらこの投稿?


実は当初の予定では白のライダーはヒッポリュテにするつもりでした。でもギリシャ関係者多過ぎるし、まだキャラも正確に掴めてないんで断念。
今後の展開考えると彼女にして大正解だったわん。













 

 地平線から陽が顔を出し、朝が始まる事を告げる。陽の光を浴びている『三白城』はそのぶっ飛んでいる造形に眼を瞑れば、その美麗過ぎる白が煌めき、理の外に存在する神秘さすら表していた。

 

「美しい光景だ。急遽、刑部姫に拵えてもらった部屋だが中々どうして悪くないじゃないか」

 

『三白城』の第七層。朝陽が徐々にトゥリファスの樹々を照らしていく光景を一望出来る窓から優雅に湯気を立てている紅茶とスコーンを口に運んでいる一人の女性は満足気にモーニングタイムを楽しんでいた。

 

 アンティーク染みたテーブルに古めかしい匂いが立ち込める本棚。暖炉で快適な気温が維持されているその部屋はまるでこの空間だけでロンドンの一室かのように切り取られている。

 

 素肌の上からバスローブを軽く羽織っている金髪の女性は朝食を楽しみながらも腰まで届くその髪をメイドに梳かさせていた。

 

「世界中で大小関わらず、聖杯戦争が起きている世界か……。まるで聖杯戦争のバーゲンセールだな。一人につき一騎の英霊が召喚されているなんて世界も遠い未来にあるかもしれないな」

 

 柔らかな態度で彼女は同室している男に語り掛ける。本来余人に対して隙を見せる事がほとんどない彼女が無条件で素を曝け出してしまう数少ない相手しかここにはいなかった。

 

 かつての名はサーヴァント、ライダー:司馬懿。

 

 またの名をライネス・エルメロイ・アーチゾルテ。

 

 時計塔に君臨するロード。それを排出する十二の家系の一つ、エルメロイ家の次期当主。肩書きからもわかるように魔術の世界においてはそれなりに名が知れている彼女だが。決して、英霊として人理に刻まれるような人物ではなかった。

 それが何の因果か中華大陸の三国戦争の時代を終わらせ、晋という新しい時代の始まりともなった軍師『司馬仲達』の疑似サーヴァントとしてカルデアに召喚される事となったわけで。

 

 紆余曲折ズコバコ孕めオラァあって、白の陣営最後のサーヴァント、白のライダーとしてここにいる。

 

「ふぁぁ、さてと馬鹿弟子の性欲を抑える為に随分と身を犠牲にしてしまったのでね、私は体を清めた事だし、ひと眠りさせてもらうとするよ。それで君は……あぁ、みなまで言わなくてもいい現地妻とデートだろ?」

 

 可愛いあくびの後、意地悪く口元を三日月に歪めたライネスは散々自分と肌を重ねた男に皮肉を届ける。既に身支度を終え、エチケットとして自身の肌についた性臭を落とした彼は白のTシャツの上から黒のコーチジャケットとシンプルながらもカジュアルな格好。乱雑に伸びていた髪も清潔感漂わせるように後ろで一つに束ねられていた。

 

「あぁ、なんて酷い! 私とトリムを寝台の上であれだけ好き放題蹂躙しておきながら、自分が満足したら次の女に走る……。捨てられた私達は互いに虚しく慰め合うしかないというわけか……およよ」

 

 芝居染みた口調で交わった相手──白のビーストを責め立てる。背後のライネスの従者であり魔術礼装でもある()()の水銀メイドこと、トリムマウも主に悪ノリして目元を両手でこすり泣き真似をしていた。

 別に彼女がヒステリックを起こして本気で喚いているワケではない。これはライネス・エルメロイ・アーチゾルテの病気であり、性癖でもある。

 

「わかっているとも、臓器全てがドス黒のような性悪女よりも雛鳥の如き無邪気に背中をついていくホムンクルスの方がいいのだろう? 何、どっちを選らべといえば、私だって後者を選ぶさ。私は何も怒ってはいない、君が今日の交わりにおいてどちらかといえば、トリムの方に熱を入れた事に対しても個人的な感傷は一切無いと思っていただこう」

 

 白のビーストは数多ある乱交において、誰かを贔屓する事は絶対に無い。愛し方の区別はあれど捧げる熱量は変わらずにという繊細なモットーの元に複数姦を行う。

 ただ先日、黒のキャスターことアヴィケブロン先生に珠玉のメイドゴーレムを魅せられて、同じくメイドゴーレムであるトリムマウに本人も気付かない無意識のレベルで若干熱が入ってしまっていた事も事実と言えば、事実。

 かつて彼女の中に存在した中華大陸随一の軍師の見識眼の力と権謀術数渦巻く時計塔の派閥争いを生き残った彼女自身の眼がそれを見抜いた。

(嘘だゾ。個人的な感傷しかないゾ。お嬢様思った以上に面倒臭いゾ)と大分人間らしくなったトリムマウは口に出す事は無かった。

 

 そんなライネスの悪癖に白のビーストは開き直るわけでも咎めるわけでも言い訳するわけでもなく、初心な青年の如く申し訳なそうに心底困った顔をしていた。

 

「……ほんと、ごめんね」

 

(あっ♡)

 

 ライネスは彼のそんな顔を見ると子宮が二段階程下りた感覚を得る。

 白のビーストがその気になれば、生意気を言うライネスを今、その場で性的に黙らせる事も出来るだろうが彼はそれをしない。ライネスの言う通り、これから自身が拾ったホムンクルスとデートしにいくのは事実なので彼女の罵詈雑言は甘んじて受けるつもりだった。

 

 世界そのものを滅ぼす力を持っておきながら、当たり前の人のようにライネスを愛し、当たり前のように彼女の為に狼狽する弟子がライネスの性癖にガン刺さりしている。

 

「知っているとも、君が惚れやすい性質なのも。自分が持つ全てを犠牲にしてでも好きになった人を愛せずにはいられない獣性を持っているのも。ふふふ、口を開けば毒しか吐かない女よりはあどけない人造人間の方が君も気が楽だろ?」

 

「でも師匠はその分、ベッドでは借りてきた猫みたいに可愛いから。そのギャップも含めて全部好きなんだけど」

 

「……ばか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時は遡り──赤のセイバー、モードレッドが白のセイバーによって三白城まで連れ去られて半日。

 モードレッドのマスターであった獅子劫界離はこの聖杯戦争を諦めたワケではなかった。

 サーヴァントも連れず、魔窟である白き城に潜入する程、命知らずでも無かったがそれでも現段階で出来る事は全て全うしようとしていた。

 

「くそっ! さっきから何が起きてやがる!」

 

 真偽はともかく、サーヴァントを八騎連れた人類悪を名乗る謎の男。もはや通常の聖杯戦争の領域をとうに超えているこの状況を報告する為に獅子劫に聖杯大戦の参加を依頼した時計塔の召喚科学部長であるロッコ・ベルファバンとの連絡の架け橋となっている同じく時計塔の魔術科学部長、ロード・エルメロイ二世に携帯で連絡を入れようとしたが、一切通じない。アンテナも立っておらず、魔術的連絡手段ならばと試してみたがそちらも残念ながら不発。

 

 

 

「おいおい、さっきまでは問題無く使えただろ……」

 

 時、同じくして自室のパソコンから何とか白のサーヴァントの拠点を調べようとしていたカウレスも突然ネット回線が切れ困惑する。その後、何度もルーターを付け直しても変わらず、気の迷いでブックマークをつけた『Amazones(アマゾネス).com(コム)』だけは何故か問題なく使用出来たが完全に外部から断絶された状況になっている事に気付く。

 

 

 赤の陣営、黒の陣営それぞれ魔術師として科学機器を使う事に一切の躊躇いの無い二人がこの異変に気付く。

 白のビーストと名乗る超常的存在が顕れた事と比べれば、小さな異変だった。むしろ当然の如くこれも白の陣営の策略かと結び付けるだろう。

 

 だから彼等はこのルーマニア地から出る事は無い。変わらず聖杯大戦を継続させようとするだろう。たとえ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()そこには気付かず……聖杯大戦に参加している魔術師もサーヴァントも何も知らない住民達も本筋から外れた行動は決して取らない。全ては聖杯大戦の為のキャラクターとして相応しい行動しか取らない。それが強制されたものではなく、自分達の意志から出た行動だと信じて疑わない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だが残念。この状況を生み出したのは我々じゃない」

 

 再び紅茶で口を湿らせて、ライネスは語る。

 今まで表に出ていなかった彼女はここに呼び出された時から、この聖杯大戦、ルーマニアの異常を調査していた。

 

「君は何故この地に顕現した? 自我に目覚めたホムンクルスを救う為か? いや、それは弱い。あまりに動機として弱すぎる。世界を越えて人類悪が顕現する程のものではないだろう? 全ての事象には理由(動機)がある。ホワイダニット……。存在せざるビースト0よ、終わりでもあり、始まりでもある人類悪よ、そして親愛なる我が弟子よ。君が観測して顕れたからには必ずその因果を引く者がいるのさ」

 

「さぁて、これまで色んな所に出てきたし、色んな事してきたからね、過去か、未来か……。どこで恨みを買ってるのか皆目検討がつかないさ」

 

「君の『魅了(零)A+』を飛び越えてまで何か仕出かす者などそうそういないだろう。大層な事を言ったが、私のはあくまで憶測だ。兄上みたく探偵の真似事は出来ないのでね」

 

 パチンとライネスが指を弾くと意図を察したトリムマウが今まで閉じていた眼を開き、光が照射される。何もない壁に映ったのはルーマニアの地図。

 

「お嬢様の命により、判明した事が一つ。トゥリファスを中心として、このルーマニアの地が何らかの結界か、それに準ずる物で隔離されています」

 

 引き続き、照射されたのは赤いライン。トリムマウが言った通り、トゥリファスを中心に円状でルーマニアの地ほぼ全てを囲っていた。

 彼女が語るにその結界は把握出来るような外見を持っておらず、視覚からは異変に一切気付かない。境界線に近づいて初めて無意識に踵を返してしまうと。その異変を全て辿っていたら最終的に地図で見せている赤いライン上のようにルーマニアの地を囲っている。

 

「よくこんな短時間でここまですぐ調べられたね、凄いよ」

 

「本日までご主人様(マスター)に注がれた射精回数1919回。その量59.4545リットルは全て私の魔力の糧となり、魔術礼装の限界を超えた存在として昇華されました。今では空中飛行の魔術も容易となり、お嬢様共々私に寵愛を授けて事には感謝を」

 

「あっ、あ──ゴホンッ! そういう生々しい話はまた別の機会にしておくれトリム。で、その結界とやらはお前でも破る事は出来ない代物だったのか?」

 

「はいお嬢様。ルーマニアの地を囲んでいる結界に関しては物理的な障壁といった類の物ではありません。これ以上は先に進めない。ここから先は()()()()。お嬢様の命を受けた礼装である私にすら訴えかけ、歩みを止め得る代物、暗示の類だとしても異常かと」

 

「……近辺の住人に異変は?」

 

「何もありませんでした。誰一人として結界から出る者もルーマニアの地に入ってくる者も存在せず、そしてそれに疑問を持っていた者もいませんでした」

 

「成程、それは確かに異常だ。暗示の魔術にしては大規模過ぎるしな。薄気味が悪過ぎる」

 

「まるで特定の場所で特定の役割しか与えられてないゲームのNPCみたいだね、役割を越えた行動は出来ないみたいな」

 

「……ロールプレイというやつか? ふむ、ふむ、ふむ…………」

 

 テーブルの上に肘を置き、顎に手を当てライネスは今までの情報を反芻する。

 この世界にいる者全てが何者かが用意したという『人形理論』。だがそれはあまりしっくりこなかった。白のビーストが顕れてからの凡その事情を安楽椅子探偵よろしく把握している彼女はそれにしては赤の陣営、黒の陣営の全てのキャラクターが濃く、一人一人生きた人間として何らかのバックボーンがあると感じたのだ。

 

 特に黒のキャスターなんて彼と同調してフィギュア作りに熱中する始末。NPCにしてはアドリブがききすぎている。

 

 聖杯大戦に参加している者達全てはそれぞれの思惑、背景があってここに辿り着いたのだろう。各々が確固たる過去を持っている筈だ。

 ルーマニアの地を隔離したのが我々ではないのは確実だとしても、白の陣営というよりは白のビーストがここに来た事が要因である事も推測される。あそこが何かしらの分岐点だった筈。

 

「だがまぁ、世界五分前仮説なんてある事だ。これ以上考えても埒が明かない。だから君は聖杯大戦に参加している者達を知ろうとして、サーヴァント達をこの城におびき寄せようとしているのだろう?」

 

 正直な所、その気になれば白のビースト:デアーはわざわざ相手の土俵に合わせて、英霊を八騎といわず、第四宝具『通い妻オーバーラン』で百騎レベルで召喚し、物量で押し潰す事が出来る。

 そもそもビーストとサーヴァントの霊基は次元が違う。本来ならグランドクラスか、あるいは入念な準備かつ複数の奇跡が重なってようやく勝負になるレベルなのだ。

 

 だが白のビーストはそのような終わりを望まない。これは決して手を抜いているわけでも相手を舐めてかかっているわけでもなく、自身が望む最良の終わりの為に最善を尽くしているだけ。異聞帯という名の数多の剪定事象をその世界から消し去った時同様、彼は己のルールに従った結果、ビーストとしての役割を行っただけの話。

 

 本気で遊び、そして女を引っ掛け、蕩かし、犯し、愛し、親類にする。性質(タチ)が悪い事には変わりはないが、彼が訪れた世界は決して破滅に向かっているワケではない。

 

「わかってはいると思うが、もうあまり両陣営の魔術師と直接的な接触はもたない方がいいぞ。()()()()()を考えれば当然だが、特に真面目に根源を目指している魔術師らしい魔術師には君という存在はいささか刺激が強すぎる」

 

「了解了解。もう単独顕現で勝手にあっちの城塞にお邪魔したりはしないよ。だからああしてセレニケさんに協力をお願いしたワケだし」

 

「アレ、大丈夫なのか?」

 

「無問題無問題。話(ピロートーク)した感じだと、魔術師としては割りと柔軟性ある娘だったし、ちょっと趣味がアブノーマル寄りだけどちゃんと俺が託した仕事は行ってくれると思うよ」

 

「……だと、いいがな。君は100回に1回ぐらい、大ポカをやらかすからな」

 

「だがそんな抜けている所も愛おしいと思うお嬢様なのであった」

 

「お前はホントイイ性格になったなトリム」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 再び、時は戻り──。

 

 

「おじ様……本気ですか?」

 

 大聖杯を奪われ、さらには黒のキャスターとイカれた固有結界を造り出した白のビーストを目の当たりにするという二度の気絶から眼が覚めたダーニックの顔は一度めの気絶とはうって変わり、焦燥感の欠片も無く、天啓にうたれた学者のように爽やかな表情になっていた。

 

 ダーニックが玉座の間で開口一番に「ユグドミレニアの長として、黒のランサーのマスターとして、両陣営のサーヴァントと共に白の陣営の城に踏み込む」と出した言葉はフィオレを始めとして、黒の陣営の困惑を引き起こした。

 

「き、気が狂ったかダーニック! 大聖杯と我がムジーク家のホムンクルスを一つ残らず強奪するような連中だぞ! サーヴァントに任せておけばよかろう!」

 

「だから我らのサーヴァント達が白の陣営を駆逐するのを神に祈りながらここで待てと? 白のビーストは何処にも顕れる。どこにいても危険に変わりないというのなら、私は長としての責務を果たす為に白城へと向かうとも」

 

「ならば、おじ様……私達も」

 

 それならば私達もとついて行くべきなのではというフィオレをダーニックは手で制する。あくまでマスターとしてついていくのは自分一人で十分、自分に何かあった時に一族を導くリーダーが必要だと。それをフィオレに託すつもりだったのだろう。

 ダーニックの瞳は決して譲らないと物語っている。そもそもユグドミレニアのトップである彼にそこまで強く進言出来る者はいないわけなのだが。

 

「死ぬ未来しか待っておらぬかもしれぬぞ?」

 

「この聖杯大戦を画策してから、それはとうに覚悟の上です」

 

「ならば、好きにするがいい」

 

 ダーニックを駆り立てるのは大聖杯と黒の陣営の貴重な魔力の糧であったホムンクルスを奪われた事による復仇心かあるいは長としての責務か。今までの醜態の返上か。その内のどれかだろうと他のマスター達は察したが……。

 

 最後にダーニックに忠告した黒のランサー、ヴラド三世だけは悟られる事なく猜疑心に染まった瞳を向けつつも黒の陣営を鼓舞する。

 

「この地に集いし英雄達よ! 再び、月が昇る時が我が領土に恥知らずにもふざけた城を建てた蛮族共の最期である! 英気を養い、各々、決戦まで備えるがいい」

 

(アーチャーよ……)

 

(はい、ダーニックからは眼は離しません)

 

『八枚舌』と呼ばれるだけあって派閥抗争を勝ち上がってきたダーニックの面の皮の厚さは心内に暴れ狂っている歓喜の二文字を表に出す事は決して無かった。察しの良いサーヴァントなら違和感ぐらいは抱いたかもしれない。しかし、今ここにいる黒の陣営の中でダーニックの感情を正確に理解しているものはいなかった。

 

(ふふ、ふはははははは、アーハハハハハハハハハッハッハッ!! 私はなんと愚かか! 本質を見抜けぬまま、()()もあの奇跡を逃してしまうとは! 気付くべきだった白の獣の御身に浮かぶ夥しい程の令呪! 一体、どれだけの魔力が内包されているのか……あぁ、まさに愚物とは私の事を指すのだろう! だが、だがぁっ!!)

 

 胸元を掻きむしりながら、雄叫びをあげて転がり回ってもなお足りぬ激情が渦巻いていた。鋼鉄の理性がそれを無理矢理抑え付けていた。

 

(苦汁を舐め、早80年。全てはこの時の為だったのか!! 聖杯大戦? ホムンクルス共の強奪? 大聖杯の強奪? 些末!! あまりにも些末!! もはやそれらなどどうでもよい! 我が大願が降り立ってくれた事……それ以外に思索するべき事はなに一つ無く!)

 

 ライネスの懸念通り、魔の道にどっぷり浸かっている者ほど白のビーストの存在にあてられてしまう。セレニケとはまた別ベクトルにダーニックもまた狂っていた。いや正確に言えば、彼はセレニケと異なり、初志から何か変化があったわけではない。正常というギアが壊れる程にフル回転しているだけであった。

 

(人類を滅ぼす悪。世界を終わらせる破滅機構。()()()()()()()!! その程度で私の足が止まるものか! あらゆる魔術師達が夢見た果てがこんなにも近くに……くぅっ、くぅぁっ、駄目だ、まだ笑うなぁ。何の為にあの城への突入を志願したと思っているっ……!)

 

 

 

「マスターはいいのかい?」

 

「何がよ」

 

「ダーニックに続いて『私もいきゅううう♡』とか言うと思ったんだけど」

 

「淑女としてそんなはしたない真似出来るわけないでしょ」

 

「うん、今ちょっとイラッとした」

 

「私、一つわかったのよ。傍にいるだけが愛じゃないって。離れ離れになっても通じ合える事こそが真の愛」

 

「下腹部を撫でるな。くねくねするな。息を荒げるな。淑女どこいった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 中世を彷彿とさせる石造りの街並み。徐々に日陰の部分が少なくなり、一日の始まりを知らせる光が街を照らしていっていた。

 朝のこういう時間って結構好きだったりする。普通に陽射しを浴びるのが好きってのもあるけど、来て当たり前の物を目の前で実感するってのは感慨深い物があるのだ。当たり前だけど来て欲しい物、そういうのってあると思うんだ。

 

 まぁ、俺の場合だと高確率で毎朝隣に誰かしら裸でいるので。それで朝=スッキリの方程式でパブロフの犬よろしく下世話な感じで朝ってば気が狂う程気持ちええんじゃってなってるだけなかもしれないけど。

 

 さて、30分前行動。親愛なる()からのラブレターを握りしめ、待ち合わせ場所へと向かう。

 

 待ち合わせの時間までの昨晩は慰安と称して白の陣営の仲間達と夜会話にオセッセしてた俺のコンディションはフィジカル・メンタル共にベスト。

 

 

 第一層では白のセイバーことリリィを吊るしたまま空中アナル尻叩き青姦。窓からのモーさんの視線に興奮したのかいつも以上に啼いてた気がする。

 

 第二層ではショタ化した俺と本来のサイズに戻ったアタランテとの神殿フィールドで授乳プレイ。

 

 第三層では高級ホテルの窓際にビジネスウーマンことペンテシレイアの裸体を押し付け、夜景を見下ろしながらのバックこと勝ち組セックス。

 

 第四層では哪吒と彼女お気に入りの心は男・体は女のTS娘凌辱メンタル雌堕ちプレイ。

 

 第五層ではJK姿のジャンヌと教室の隅でカーテンくるまりイチャラブセックス。

 

 第六層ではアビーと触手で絡み合う冒涜セックス。

 

 第七層ではキングサイズのベッドの上での師匠とトリムのスタンダードな3P。

 

 第八層のおっきーとは『カルデア寝物語』朗読再現羞恥プレイ。

 

 

 これは決して、時間を分割して彼女達をはしごしたワケではなく、俺という存在は確かに()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。

 

 ビーストである俺の第三宝具『竿繋ぎの多元性交(パラレル・セックス)』。

 カルデアのマスター時代、人工聖杯を元に造り出した「精神と時の部屋」もどきで現実時間を限りなく引き伸ばし、幾万と彼女達と交わり続けた俺はより彼女達と愛する時間を確保する奇跡を求めた。

 

 その結果がこの宝具『竿繋ぎの多元性交(パラレル・セックス)』。愛を交わした者達との性交の瞬間において俺は並列的に存在する。

 カーマちゃんの『万浴応体』みたく無数の自分を産み出すわけではないんだけどね、違う場所で性交を行っている俺同士は絶対に出会わないし。

 ゲーム風に言えば、多数のエロイベントをモニターと窓を増やして、同時進行してる感じ? 俺の解釈次第では家族と過ごす時間もすなわちセックスと言えるので、ふざけた宝具ではあるが妻や子供とのイベントに駆け付ける際に非常に重宝してたりするのだ。

 My life is for them(我が人生は彼女達の為に)

 

 それと情事の最中に話を聞く限り、シロからのお誘いも彼女達の手引きがあったそうな。

 いつの間にか仲良くなってくれてて結構結構。わりとシロ君って愛され体質とかあると思うんだ。

 

 

 ()ポジからのいじらしいお誘いに乗り、シギショアラの白亜の教会に到着。いかにも古きヨーロッパを再現している古風な白き教会の入り口に一人の少女がいた。

 

「化けたなぁ……」

 

 もう性別不詳とか男の娘とかは言えないなぁ。いや俺が助けた時は確かに可愛らしいおTINTINもついていたし、生物学的には♂なんだろうけど。

 

 だが気もそぞろな様子で周りをキョロキョロ見回すシロは腰まで伸びた薄茶色の髪は白薔薇のリボンでポニテールになるようにお洒落に手入れがされ、鎖骨、太もも、二の腕と露出はしているのにあからさまな媚びは感じず、むしろ神聖さえ感じてしまう。後ろの教会もあいまって白いドレス姿のシロは花嫁にしか見えなかった。何故か眼はちょっと充血しているけど、そんなのは気にならないぐらいパーフェクトな美少女がそこにいた。

 

「結婚しよう」

 

「え……? あ、は、はいっ! ふ、不束者ですが……」

 

 あ、違う。間違った。「ごめん待った?」とお決まりの文句から言うつもりが本音が出てしまった。ていうかシロ君もそこでOK出す辺り、大物になると思う。

 しかし、早めに来たつもりだったのにまさか先にいるとは……。

 

「ごめんねお待たせしちゃって、何分前からいたの?」

 

「結婚、結婚、結婚、パートナぁー…………あ、えーと、楽しみで寝付けなかったので5時間前からずっと待っていっ……ぅええええ!?」

 

 無言で抱き締めておいた。後、滅茶苦茶頭撫でた。もういじらし過ぎてさっきの結婚しよう発言も「ごめん冗談だったわ」とか撤回出来ないわこれ。下手すれば自殺しちゃうよこの子。怒るに怒れないよ。もう責任取るよこんなの。

 

「その……兄様……式、もうあげる……?」

 

 腕の中でしばらく痙攣していたシロはうっとりとした顔で教会を指さしていたが、それはまだ早いとやんわり断る。彼の柔らかく折れてしまいそうなぐらい儚げな手を取り、街の中心部へと向かう。まずはデートから。絶賛戦争中だけどデートからね。

 

 

 

 

 

 

《赤黒陣営が三白城に攻め込むまで残り9時間》

 

 

 

 

 

 

 

 





竿繋ぎの多元性交(パラレル・セックス)

ランク:EX
種別:概念宝具
使用者:ビースト0/デアー
こんなん宝具にしてるとか他の英霊達に恥ずかしくないの君? 英霊ではなくビーストなんで(恥ずかしく)ないです。
本文で述べた通り、同時並行セックスを可能にした第三宝具。
発動条件としては――
1:存在する全てのビースト0/デアーがセックスをしている事が前提。
2:一人でも本人がセックスではないと解釈した行為をしている時点でこの宝具は発動しない。
3:あくまでセックスの基準はビースト0/デアーにおける物なので家族と共に過ごす時間も彼にとってセックスであると解釈されれば、この宝具の発動条件は満たす。
4:仮にこの宝具の発動中、一体だけ討伐しても意味は無く、存在している全てのビースト0/デアーを同時に殺害しない限り、この獣の生命が停止する事は無い。

らしいです。何言ってるかよくわかんないね。
ビースト0/デアーである彼はスキル『一交一生(ワンライフ・ワンセックス)』と同様に一つの人生を全ての彼女達にそれぞれ満遍なく捧げたいからこそ産み出した宝具。やっぱ頭おかしい。
実はこの宝具でカルデア島でも関係を持っている全ての女達と同時多発エロを行ってみた所、島のインフラが一時停止。目も当てられない大惨事になったらしい。ぐっさんパイセンに滅茶苦茶叱られた模様。






人類悪:デアー

第一宝具:『白式官能』
第二宝具:『模倣英霊』
第三宝具:『竿繋ぎの多元性交(パラレル・セックス)
第四宝具:『通い妻オーバーラン』
第五宝具:――
第六宝具:――
第七宝具:――





《白の陣営》
白のマスター:白のビースト
白のセイバー:セイバーリリィ
白のアーチャー:アタランテ
白のランサー:哪吒
白のライダー:司馬懿(ライネス)
白のキャスター:アビゲイル・ウィリアムズ
白のアサシン:刑部姫
白のバーサーカー:ペンテシレイア
白のルーラー:ジャンヌ・ダルク












モーさん、念願のアーサー王に出会ったと思ったら雌になっててさらにボコられてPTSD発症して、そんな父上が窓から縛られたまま見知らぬ男に犯されて悦に浸ってるの見せられるとか一生もんのトラウマなんだよなぁ。

重要な伏線とか情報はギャクやエロで隠しちゃいましょうねぇ~。




シロ君のエロは次回(ネタバレ)。





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ビーストウォーズ⑨(Fate Apocrypha編)

 シロ君本番回のモチベに向けて、ジーク君の可愛い画像を漁ってたら段々普通のジーク君でもマイサンが反応するようになったのでやっぱり人間は罪深いです。眼が乾くなぁ。ハオロさんとasさんのジークイラストはメスリッシュシコリティが高過ぎるので皆も見るべき(ダイマ)。あ、(僕はホモじゃ)ないです。





 俺っ子系男の娘の可愛さに震えろ。 予告はシロ君のエロは次回(大嘘)だったわ。この次にやるよごめんね。








 

 

 

 

 

 

 頬が燃えるように熱い。心臓の鼓動が痛いぐらいにうるさい。握られた手の感触を堪能するよりも手汗で兄様を不快にしていないかが気になってしょうがない。一睡もしていないのに眠気が完全に吹き飛んでいるのに俺は気の利いた言葉を一つも吐く事が出来ずに借りてきた猫のように兄様に手を引かれていた。

 

(「兄様のその服、カジュアルでムーディで色気がムンムンだ。隣にいる俺がその後光に眼すら開けられない」と自然な褒め言葉から会話に繋げるつもりだったのに……)

 

 いきなり抱き締めてプロポーズは無いだろう……。あれで完全に頭が真っ白になった。

 

 いや、わかってる。あれは場を和ませる兄様なりの冗談なのだろう。Beastジョークというやつだきっと。

 

「古い時代の英霊とかなら、この街並みも退屈とかいうかもしれないけど、現代っ子な俺からすると結構新鮮なんだよなぁ。だから観光客とかもいるんだろうし。こんな石の匂いに包まれた街、日本じゃそうそうお目にかかれないしね」

 

 ガチガチに固まっている俺に気を遣ってくれてるのか、せっかく兄様から話しかけてくれてるのに俺は相槌を打つ事すら出来なかった。喉が渇き、口から意味のある音が出てこない。返答の言葉一つ一つが頭の中に浮かんでは消えてしまう。

 

 せっかく白のサーヴァントの皆に服も見繕ってもらって、付け焼き刃だが男の落とし方テクニックも叩き込んでもらった結果がこれだ。

 

 助けてもらった時みたく、ただ兄様と普通に話していたいだけなのに。後ろじゃなくて、兄様の隣で──兄様と同じ目線で同じ景色を見たいだけなのに。やっぱり俺は不出来なホムンクルスなのか? 

 

 盾を持つ勇敢な少女のような、怨嗟の炎を操る黒き魔女のような、鋼鉄の足で踊るプリマドンナのような──本に描かれた彼女達のようにはなれない……。俺はきっと助けられるだけの端役で兄様の隣に相応しいヒロイン(ヒーロー)には到底……。

 

 

「いらっしゃいませ~~」

 

「二名でお願いします」

 

 

 

 気が付くと軽快なBGMが流れるレストランの中、席についていた。何をしているんだ……兄様がせっかくエスコートしてくれてるのにいつまで上の空でいるつもりだ俺は。

 

 

「ごめんね。いきなり抱き締めて『結婚しよう』はセクハラが過ぎたね。距離感見誤ってウザがられちゃったかな?」

 

「ち、違う! 兄様は悪くない。悪いのは全部、俺の心の弱さだ……」

 

 咄嗟に兄様の言葉を強く否定する。俺の到らなさのせいで兄様が落ち度を感じる必要はまるでない。

 

「やっと、こっち見てくれたね」

 

「あっ……すまない」

 

「色々と心がしんどい時は頭を空っぽにして美味しいものを食べればいいのさ。人間、悩みは大小尽きないけれどもお腹いっぱいになれば案外解決するもんだよ。すいません、店員さ──ん、これとこれ、あとドリンクセットも」

 

 俺の分までスムーズに注文をしてくれる兄様。正直な所、今の精神状態で何を食べるのか選ぶ余裕も無かったので助かった。最初から最後まで気を遣わせてもらいっぱなしだ。

 あぁ、しかし……俺はどうしてこんなに固まってしまっているのだろうか。おっきーの部屋に匿ってもらっていた頃は気負う事なく会話は出来ていたのにこれが意識しているという事なのだろうか? 兄様を……()として、そういう関係を求めて、か──。

 

 こういう時はどうすれば……。確かアビーから教わった『男からのお誘いが多くなるワルくてイイ女編その69』では──。

 

「ウェイト。君が何を思って胸元の服を擦り下げようとしているかは何となく察せれるけど、公共の場でそれは控えた方がいい。さすがの俺も産まれたばかりの子にここで露出プレイをおっ始める程、鬼畜じゃないから。何も男女の関係ってのはさ、直接的なセクシャルだけじゃないでしょ? まずは対話から始めようぜシロちゃん」

 

「男女の関係……。兄様は俺の性別を知っているだろう?」

 

「俺にとってはシロは()()()さ。これは君の性別がどうだろうと、君自身がどう思っていようが関係無い所なんだよ。君が自分の事をどうしようもないぐらいに男だと思っていても俺の中で女の子と結論付けてしまったら俺は徹頭徹尾、女として扱うさ。非常に身勝手な主観だと自覚はあるけどね。まぁ、そこは俺の(サガ)だと諦めて欲しい」

 

「そうか……」

 

 ──『どう在りたいか、此、最重要事項。恐怖 必要皆無 どちらの体だろうとも 主マスターなら優しくする』

 

 俺に発破をかけてくれた哪吒の言葉が頭の中で繰り返される。

 二つの選択肢があった。兄様から救われた時に直々に授かった聖杯の力で兄様に出来るだけ愛されるような女の姿になるべきか。それともマイノリティという意味での希少さを生かして、男の体のままでいるべきか。

 

 結局、俺は自身の性別を偽る事はしなかった。凹凸がハッキリとしたグラマラスな美女へ変貌を遂げる、けれどそれは兄様に対しての不義理なような気がして、もしこれから何かの奇跡があって、兄様が抱いてくれるというのなら、決して魅力的な体ではないけど、ありのままの俺で初めてを奪って欲しかった。

 

「デートだからって深く考えて緊張し過ぎない方がいいよ、男女が一緒にお出かけしてお話するだけの事なんだからさ」

 

「心得た……」

 

「ふふっ、まだまだカチカチだね」

 

「眼を閉じるから今の言葉、もう一回言ってくれないか?」

 

「いい感じにおっきーに毒されてて大変結構」

 

 やはり当然の事だとわかってはいたが、俺と兄様では絶対的な経験値が違う。リードされる形で少しずつだが、緊張も解れ、いつも通り話せるようになってきている。

 

 空腹を刺激する香りと共に注文した料理が届き、兄様に紙エプロンという物をつけてもらって食事を始める。

 まだまだ兄様におんぶだっこだが、そろそろなけなしの勇気を振り絞ってもいい頃だろう。

 

「兄様……あ──ん」

 

 野菜に包まれた肉を小分けにして、突き刺したフォークを差し出す。

 俺と一緒にいる時間が兄様の記憶の片隅にでも残ってくれればという願望を込めて。

 

 

 

 

 その後は頬が緩んでしまうのを止められないぐらいに楽しい時間だった。

 料理を口に運び、談笑する。俺は自分から話せる程のエピソードといえば、あの城に匿われてからしかないので、基本的に聞き役に徹していた。

 

 

 ──おっきーの城は実はロシア娘とフィギュアマニアのカバリストの力を借りれば、巨大ゴーレムに変形出来て、チェイテ城の守護神と、着ぐるみ巨大怪獣系少女と、大国で伝説になっている木こりとで長編スペクタクル映画を撮ったら規模が大きくなり過ぎて、世界が滅びかけた話とか。

 

 ──白のセイバーの『マスターに飼われたい派閥』と聖槍を持つ騎士王の『マスターを飼いたい派閥』の論争が飛び火し、『マスターを弟にしたい派閥』、『マスターをお兄ちゃんにしたい派閥』、『マスターの子供になりたい派閥』、『むしろマスターを産みたい派閥』等々、混戦し続けて、収拾がつかなくなった話とか。

 

 ──白のキャスターや極東の武者と一緒に胡散臭い未来の超級AIとやらが作ったTRPGをプレイしたら、笑えない期間、外宇宙を彷徨い続けた話とか。

 

 ──白のルーラーの中にいたもう一人の魔法少女JKが自我を持ったステッキと結託し、有志を集って、『十二姫月』なる組織と共に大規模な魔法少女特異点を造り出した話とか。

 

『カルデア国物語』では語られなかった。壮大で奇妙な冒険の数々を兄様本人の口からたくさん聞かされながら食事の時間を楽しんだ。

 

 

 お腹も満たされ、一段落ついた頃にはもう時計の針はてっぺんを過ぎていた。

 ようやく俺は普通に楽しく兄様と言葉を交わす事が出来ていた。

 

 チップを加えて、多めに料金を払ってくれた兄様と共に店を出る。

 

 

「兄様……お手を拝借してもいいだろうか?」

 

 

 こちらからデートを誘った身なのにいつまでも受け身のままでは俺の立つ瀬が無い。なけなしの勇気を振り絞って、今だけは彼のこ、恋人のように振る舞えたらと思う。

 

 

 

 

 

 それからは馬車に乗りながら中世風の石造りの街並みを気ままに見て回った。

 閑散とした博物館。よくわからない人形が飾られているお土産屋。クオリティが低すぎるドラキュラの物真似でチップの要求をしてくる現地人等々。

 

 時代を感じさせる建造物が多いせいか華やかなデートとは言いづらかったが、それでも兄様が隣にいるだけで俺の眼に映る光景は全てが輝いていた。

 好きな人といるとどこにいてもそこが最高のアトラクションになるのだろうか。

 

 指を絡めて恋人繋ぎで並んで歩く俺達は髪型も揃ってポニーテールで身長差も大きく離れている事から恋人というよりはむしろ兄弟かもしれない。何せ俺が事あるごとに兄様、兄様と彼に擦り寄っているのだから。

 

 

 陽が傾き始めた頃、俺と兄様が辿り着いたのは最初の待ち合わせ場所だった白亜の教会だった。

 俺がトチ狂ってしまったせいで中に入れなかったのを気にしてくれたのか、今は二人で黙ったまま厳かで神聖な雰囲気を感じる内部を見上げている。

 

「兄様は式は……教会式だったのか?」

 

「相手によりけりだったなぁ。神前式もやったし、人前式とか、船の上でした事もあったし、大半は宇宙式だったかな。新天地求めながらのハネムーンって感じで」

 

 

 それは──『カルデア国物語』で書かれていた人類と戦うのを避けて、愛すべき者達共に故郷を捨てて宇宙へと飛び立った事を言っているのだろうか。

 世界を救った兄様への仕打ち、彼も彼女達も納得しているのだろうけれど、俺の心の奥底に眠る鬱屈としたモヤモヤは消えない。

 

 ヒトとは何だ? 人類とは何だ? 俺達ホムンクルスを救い、生き場所をくれた兄様が怪物なのか? 私利私欲の戦争の為にホムンクルスを浪費する魔術師達が人間なのか? 

『理外の力を持っている』それだけの理由で恩も忘れて迫害するような人類の方がよっぽど怪物じゃないのか? 

 

 人類悪だろうが、ビーストだろうが、俺にとっての人間は兄様達だけなのは今も変わらない。

 

「兄様は……恨んでいないのか? 自分を星の彼方へと追いやった者達を」

 

「あぁ、おっきー辺りから聞いたのかな? ……ふぅ、まぁ、あの世界線における俺の役割は終了したんだよ。七つの人類悪はそれぞれの終わりを迎えた以上、もう俺がビーストになる必要も無かったからね。全員に嫌われていたわけでもないし、わかる人にはわかってもらえればそれで十分なんだよ。恨みとかはお門違いさ、むしろ彼女達の出会いのきっかけをくれた全てに感謝してる」

 

「……………………そうだろうな、うん。兄様はきっとそういう人間だ」

 

 なら兄様はどうしてここにいる? 

 役割が終了したというのならば、家族と一緒にカルデア島でずっと暮らしていれば良いのではという疑問がよぎる。兄様の家族の中でそう願う者も必ずいる筈だ。

 どうして俺なんかの為に世界の壁を越えて来てくれたのか。

 

 幾重にも伸び続ける人類史のルートがある限り、人類の不祥事がある度に、何だかんだ言いながら兄様はきっとあらゆる世界に顕れる。

 

 でも俺は兄様には今日のような日常を送り続けて欲しい。

 

「強くなりたいな……兄様を守れるぐらいに」

 

「おやおや大言を吐くようになったじゃないか()よ。うちの嫁さん達に修行でもつけてもらうかい?」

 

 

 

「あぁ、すみません。そこの方、少し道を尋ねたいのですが……」

 

 そんな決意を俺がほのかに固めた時、観光客だろうか? アジア系の顔をした30代ぐらいの特に特徴も無い男が声をかけてきた。

 

 ガイドブック片手に気さくに近づいてくる男に対して、兄様もにこやかに対応する。

 

 俺も兄様も格好が格好なせいか物珍しさで声をかけてくる観光客や現地人がデート中に何人かいた。特筆すべきない日常の一ページ、未だ人に対してわずかな忌避感を抱いてしまっている俺を知ってか、対応は全て兄様がしてくれた。

 

 

 

「は?」

 

 

 

 だから一体誰が想像出来るか。ついさっきまで道を尋ねていた男が一体どこから出したのか鉄の薄い刃で兄様の胸元にいきなり斬りかかるなんて。俺はただポカンと間抜けな声を上げるだけだった。

 

 

 

 あれは確か刀という武器? 

 いや武器なんてどうてもいいだろう。    何故、いきなり斬りかかった? 

 金目の物目当てか?    強盗?   観光客を装って?  眼が虚ろになっている。   化け物染みたうなり声もだ。

 天窓から見える空が赤い。  夕焼けにしては不気味過ぎる。 紅い月?   黒か赤の陣営の攻撃?   

 兄様は無事か?  驚いている。  でも傷は負っていない。  良かった。  いや良いワケないだろう。

 兄様に何を振るっているんだコイツは。   刀だぞ、人を斬る為の物だぞ。   斬るって事は殺す目的だろ? 

 兄様を殺す?   こんなのが兄様を?   殺す?   コロス?   …………コロス、コロス。コロス。命を終わらせる命を終わらせる命を終わらせる命を終わらせる命を終わらせる命を終わらせる命を終わらせる命を終わらせる命を終わらせる。ふざけろにんげん、おれがおまえをさきにころす。

 

 

 心臓が沸騰して──。

 

 

 

 

 ────

 

 

 

「シロ!!」

 

 

「え?」

 

 

 昏くて燃えるような感情に支配されていた俺を正気に戻してくれたのは兄様の声だった。

 複数の白き魔手、宝具『白式官能』が俺の右腕を取り押さえていた。人造人間の手ではなく、白い獣毛が浮かび上がっていた明らかに人外と化していた俺の手を。

 

 兄様に危害を加えようとしていた下手人は外傷は無く、倒れ伏していた。兄様が対処してくれたのだろう、俺だったら間違いなく、殺していたから──。

 

 俺の意識はそこで途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや──驚いた。基本的に自分に害があるものじゃない限り鈍感になっちゃうからさ。たかだか人間に斬りつけられた所でダメージも受ける事はまず無いし、強大な力を持った者特有の慢心っていうやつなのかな? そういうのはAU王の領分だと思うんだけど」

 

 眼が覚めて、ベッドの上で膝を抱えたままじっと動かない俺の隣で兄様は明るい口調で語り続けていた。

 ダブルサイズのベッドが一つ、俺でもそれなりに質の高いとわかる調度品が並べられている。きっとあれから気を失った俺を抱えてホテルにチェック・インをしてくれたのだろう。

 

 ロマンチックな雰囲気な密室に一つだけのベッドに並んで俺と兄様。

 

 本来なら、気絶してしまうぐらいにこれからの展開に心を躍らせてしまってもいい所なのだが。俺はある事が気掛かりでそれ所では無かった。

 

「さっきの暴漢も魔術か宝具か、それに準ずる者で操られていた……あるいは変化させられていたって感じかな? あの紅い空も、何か昔似たような事があったような……」

 

「ご、め、んな、さい……」

 

 うんうんと首を捻る兄様に対して、俺は絞り出すように謝罪をしていた。

 

「ご、めん、なさい……ご、めんなさ、い、ごめんなさい、ごめんなさい」

 

 何が兄様を守れるようにだ。兄様が斬られたとわかった瞬間、俺の頭の中は人類そのものに対する憎悪で埋め尽くされた。余計過ぎる心配だった。俺が何をしなくても兄様は自分の身は自分で守れるのに。

 正確に何が起きたのかはわからない。何を仕出かしてしまったのかもわからない。ただ俺が自我を失って暴走して、兄様に迷惑をかけた事だけは理解出来た。

 

「いいよ、気にしなくて。もしかしたら、俺がよかれと思って君の心臓代わりに埋め込んだ聖杯のせいかもしれないしね。持ち主の感情と呼応して何かを引き寄せてしまったのかな? あの刺客も結局、何がしたいのかよくわからなかったし、俺の命狙いならいくら何でも弱すぎるし、杜撰だ」

 

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」

 

 壊れたレコードのように何度も謝罪の言葉を漏らしている俺の頭を兄様は隣からそっと抱えた。

 とても優しく暖かい感触。だが今はその優しさがとても辛い。

 

 それから何も言わず、兄様はゆっくりと俺ごと横に倒れ、大きな毛布で二人を包んだ。

 広いベッドの中で物言わぬ二人。兄様に抱き締められたまま数分、ドン底に落ち込んでいた筈の俺の心に灯りが徐々にに灯ってきたような気がした。

 

 甘えてしまう。すがってしまう。兄様に自分のありとあらゆる全てを預けて、依存したくなってしまう。

 でもそれをしたら、彼の隣に立てる資格も失ってしまいそうで──。

 

「食欲、睡眠欲、性欲ってね、人間の三大欲求ってあながち馬鹿に出来ないんだよ。俺がレストランで言った通り、食欲を満たせば、悩みは案外解決するし、辛い事があったら目いっぱい寝て睡眠欲満たして、忘れる事だって出来る。さてさてシロ君と俺が今いるのはどこかな?」

 

「……ベッドの……中だ」

 

「ベッドとは一体何をする所かな?」

 

「寝る所……だ……」

 

「あぁ、その通りだ。睡眠欲を満たす場所だ。でももう一個あるよね、人類の繁栄に大事な営み、好き合った二人が行う尊い儀式。もう一個の三大欲求」

 

「性欲」

 

 兄様の顔が視界いっぱいに広がっていた。俺を助けてくれた時と変わらない不敵で底抜けに明るく、誰にも侵される事のない空のような表情。

 心の灯りが今度は燃え盛る炎となって俺の胸を激しく鼓動させていた。餌を求める雛鳥のように口を半開きにしたまま兄様の頬へと手を添える。

 

「辛い事も悲しい事も悩みも、一旦死ぬほど気持ちの良いセックスして頭馬鹿になっちゃってリセットしたいと思わない?」

 

 逃げ場の無い寝具の中、恋い焦がれた人に蠱惑的にそう誘われて断る方法を知っているのなら、誰か教えて欲しい。

 

「兄様は俺と、そういう事をしたいと思うのか……? 人間でもなく、ホムンクルスとしても欠陥品で自身の性別すら簡単に誤魔化してしまう俺を抱いてくれるのか?」

 

「うん、俺はシロの事が好きだよ。産まれて間もないのに諦めず、必死に生きようとして、おっきーの部屋の薄い本に簡単に影響されちゃって、日常の小さな事で一喜一憂する子供みたいな君が大好きだ」

 

 壊れてしまう。心臓代わりに彼に捧げられた聖杯すら壊れてしまう程の衝撃。人類が今まで当たり前に享受してきた、これが『愛』。精神も肉体も何もかも兄様を求めていた。

 

 

「…………して、……ますっ……」

 

 

 今度は自分から強く強く抱き締めて彼を求めた。腕を首に回し、スカートが不格好になるのも気にせず、足も絡める。おっきーの書物にあった親愛の抱擁の最上級『だいしゅきホールド』で兄様の告白へと返事をする。

 

「お慕い、しております……兄様っ!!」

 

 忘れさせて欲しい、溺れさせて欲しい、狂わせて欲しい、俺の小さな悩みも苦しみも劣等感も全て打ち消すぐらいに愛して欲しい。

 

 

 

《赤黒陣営が三白城に攻め込むまで残り3時間》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 表と裏で空間を切り替える事が出来る刑部姫の宝具『三白城の性鬼深愛獣様』。

 

 その第八層。最上階にあたる刑部ルーム。裏のシリアスモードに切り替えられているその部屋は炬燵が鎮座するオタク部屋ではなく、ラスボスたる白のビーストが君臨する玉座。

 

 かつてトチ狂ったセレニケとその巻き添えを喰らったアストルフォが犯されたその空間には真っ黒な長机と背もたれがやけに長い椅子が八個、机を囲むように並べられていた。

 

 一つの空きを除いて、七騎の白のサーヴァントがそこに集結していた。

 

 

「今更なんだけど、八って何か中途半端な数字だよね。七武海にもなれないし、十刃(エスパーダ)にもなれないし」

 

【第八層:白のアサシン】薄い本・挿絵・拠点作成及び突っ込み担当。『刑部姫』

 

 

「え、何ですか。ここに来て、まさかぶっちゃけ白のルーラー要らないよねとか言うつもりですか? そんな! せっかくここの世界の私にも弟後輩との放課後教室カーテンホールドイチャラブセックスを布教しようと思ったのに!」

 

【第五層:白のルーラー】布教、特攻、姉プレイ担当『ジャンヌ・ダルク』

 

 

「この聖女は一体、何しに来たんだ?」

「神の思し召しのままではないでしょうか、お嬢様」

 

【第七層:白のライダー】策謀、調査担当『司馬懿(ライネス・エルメロイ・アーチゾルテ)』

 

 

「ふっ、ジャンヌとセイバー・リリィは白の陣営の中ではイロモノ枠に入るからな。ここは残りの常識枠である我らがしっかりせねば、マスターにも顔向けができぬだろう」

 

【第二層:白のアーチャー】斥候、陽動、幼児プレイ(どっちが幼児でも可)担当『アタランテ』

 

 

「フフフ、そのイロモノ枠からちゃっかり自分を外しているあたり、客観性の欠如って怖いと思うの、アタランテのお姉さん」

 

【第六層:白のキャスター】強奪、触手、SAN値チェック担当『アビゲイル・ウィリアムズ』

 

 

「そもそも貴様は何故、子供の姿のままなのだ」

 

【第三層:白のバーサーカー】広報、営業、販売担当『ペンテシレイア』

 

「はぁ!? 甘やかしたら、甘やかされたくなるだろう! 常にバブみは与えて与えられてのwin-winでなければならないって汝の企業理念にも付け加えておけ!!」

 

「私は何故、怒られているのだ?」

 

 

「放置推奨 いつもの発作 触らぬ狩人に祟り無し」

 

【第四層:白のランサー】戦闘、護衛、精神TSプレイ担当『哪吒』

 

 

 JK制服のままのジャンヌと幼女化しておしゃぶりを咥えたままのアタランテを除き、従者のトリムマウと共に中華風の着物に身を包んでいるライネスに全身の肌は白く変貌を遂げ、外なる神をその身に宿らせたアビゲイルと他のメンバーは本気の戦装束に身を包んでいた。

 

「で、もう数時間すれば、両陣営もこの城に攻め込む手筈になっているそうだな、アビー?」

 

「ええ、ライネスさん。しっかりと盗み聞きしたから間違いないわ」

 

「やっぱ『窮極の門』ってチートだよね。正直な話すると姫達が出張らなくてもアビーちゃん一人で余裕で終わらせられると思うんだけど」

 

 身も蓋も無い話をすれば、それぞれのマスターを門にポーイッ、外宇宙にシュッー! 超エキサイティングッッ!! だけでこの戦いは終わらせられる。

 

 勝利という結果だけを求めるなら、それが正解だろう。

 

「けれど座長さんはそれを求めていない。私もやり過ぎないように釘は刺されているし」

 

「野蛮人じゃないんだ。全員殺してOKなんて時代でもないだろう。トリムが調べてくれた隔離されたルーマニアについても気になるし、先程、ほんの一瞬、世界が切り替わった点についても調査の必要があるだろう」

 

「え、アキレウス殺したらダメなのか?」

 

「そこは君の臨機応変な対応に任せる」

 

「フレキシブルにデストロイだな。了解だ」

 

 ペンテシレイアも結局カルデアでは出会う事の無かった仇敵との出会いにとぐろを回しながら、殺意を高めている。隣にいる哪吒がそっと距離を取るぐらいは殺気立っていたがそれでもアキレウスがいると判明しているにも関わらず、飛び出したりはせずにマスターの言う事を聞いて、彼等が来るまで大人しく待っているのは妻となり、子もこさえた事により丸くなっているのが伺える。

 

「で、その肝心な最初を担当する白き騎士王様は一体どうしてここにいないのかな? もしかして余裕を持ってもう持ち場で待ち構えてくれてたりするのかな?」

 

 ライネスの疑問にコンソールを叩いて、多数のモニターを展開した刑部姫は城内を探し始めた。

 

「正門前には見当たらないね……。第一層の表面。プライベートゾーンの方にいるんじゃないのかなぁ……あっいた、うっっわぁぁぁ……」

 

 声色だけどもわかるドン引きの感情。

 刑部姫の言う通り、第一層、ホムンクルス達を大勢匿っていた部屋の一室に確かに白のセイバーはいた。

 大型の白い円形テーブルの中心で全裸のまま大の字に手足を拡げるように四肢を縛られ、色んな体液まみれで意識をトランスさせている金髪女騎士のどうしようもない姿が。

 

「どういうことだってばよ」

 

あまりのショッキングな映像にキャラ崩壊する哪吒。

 

「成程、首に残った扼痕。みぞおちから下腹部にかけての複数の青痣。そして彼女の全身にかけられた白濁色と淡黄色の液……。初歩的な事だよ、哪吒君。犯人はここで彼女と拘束首絞め腹パン浴尿プレイを愉しんだのさ」

 

「ドヤ顔で推理するようなことじゃないでしょ。むしろ犯人はこのプレイをマーちゃんに懇願したセイバー顔の中でぶっちぎりにやべぇやつじゃないの?」

 

「しかもベッド代わりに円卓を使っているあたり業が深すぎると思うんですけど。一体、彼女はどういう精神状態でこのプレイを求めたんでしょうか……。というか待って下さい、私もしかしてこれと同列扱いされていたのですか?」

 

 空中尻叩きアナルガン責め縛りプレイだけでは満足出来なかったセイバー・リリィ。

 彼女は未だに円卓の中心で体をビクンビクンさせ、正気に戻っていない。半日経ってなお、マスターとのハードプレイの余韻に浸り続けている純白の騎士王は後、数時間程度で目覚める雰囲気はまるで無かった。これは割れるわ円卓。

 

「特殊プレイにも応えなきゃいけないマスターの心労が伺えるな、ばぶばぶ」

 

「ねぇ、アタちゃんブーメランって知ってる?」

 

「あらゆる后のニーズに全て応えてこその真の王よ。ふっ、さすがは私の夫だ。白のセイバーが出陣出来ないというのなら、それはそれでよしだ。急な欠員に対応出来ないようではCEOは務まらん。彼女の有給申請は私がしておこう」

 

 赤のセイバー、モードレッドの『我が麗しき父への叛逆(クラレント・ブラッドアーサー)』から小さな掠り傷を受け、マスター以外の者から傷を受けた罰を求めたセイバー・リリィは自己管理が出来ない程に燃え上がってしまった。とてもじゃないが、後数時間で来る赤と黒の陣営には対応出来るとは思えない。

 

「ここの世界の英霊の皆様もやるのね……。まだ本格的に戦いも始まっていないのに私達の内の一人をもう脱落させるなんて」

 

「だが奴は我々白の陣営の中でもぶっちぎりで頭のおかしい奴」

 

「犯り過ぎで自滅とは白の陣営の面汚しよ」

 

「まぁ、顔射されまくってるから確かに面は汚れているな」

 

「だれうま。お嬢様、こちら座布団です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




白の陣営、1名一時戦線離脱。
残り7名。









次回、シロ君のエロ回です(今回は本当)。


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ビーストウォーズ⑩(シロ編)

カルナさんに「必ず誰かが、誰でもないおまえを待っている」と言われたので初投稿です。

カルデア・コレクションにてガネーシャ、ラクシュミー更新。


コミックでもアニメでもいいのでジークフリートに心臓をもらう前のシロ(ジーク)きゅんを今一度見て欲しい。もう純粋無垢で細くて柔こくって儚さがあってそらもう守りたくもなりますよって。もうショタじゃなくてロリ?いや生後数日ならペドになっちゃうね。ともかくそんな幼女シロきゅんが髪を伸ばして花で結って白いドレスを着てるなんて事になったらバルムンクで疑似子宮をパンパンする以外のルートが剪定されるのは当たり前だよなぁってなるワケで、はいそこめっちゃ早口で言ってそうとか言わない。


















「今ちょっとラーマ様の立ち絵が咥えているバナナにモザイクかけて、頬を赤らめさせて瞳をいい感じに潤ませる修正作業しているので話しかけないで下さい」

「暇か。それよりもあのインド象が姫とキャラ被りをしまくってる件を心配して欲しい。いやプロポーションは姫の圧勝だから全くもって危機感なんて抱いてないけどね。さすがにマーちゃんの守備範囲外でしょ。ウェイトな意味でのダイナミックな駄肉要素は女の子には必要ないのだ!」

「本当にそう思ってます?」

「嘘です。4tあるメカエリチャンとも騎乗位キメれるマーちゃんなら羽毛みたいなもんでしたわ。あ――! やだ――! インドア引きこもり系の親近感抱きやすいオタクサーヴァントという私の唯一のキャラが脅かされるぅぅ!!」

「ねぇ、おっきー。そもそもそのキャラは貴女が来る前からアルテラさんに使われているのでは……」

「え……じゃあ、姫は一体誰なの。何キャラなの?」

「う――ん、二番煎じですか?」

「…………」

「まぁ、あっちは消費側のオタク。おっきーは供給側のオタク。陰寄り、陽寄りのオタクで棲み分けは出来ていると思いますけどね………………って死んでる」








 何の因果か人類悪に命を救われるという数奇な運命を辿った名も無きホムンクルス。

 別世界の誰かのように竜殺しの英雄の心臓をもらったわけでもない『シロ』と名付けられた彼の体格自体は培養器で産まれた時と変わらず、140cmにも満たない小柄で線の細い中性的なものだった。

 

 唯一の変化でもある成長した長髪と、白のサーヴァント達に着せられたシルクの白いドレスがプラスされると100人中100人は女の子だと答えるだろう。

 

 そんな子がベッドの上でその小さな体を縮こませながら男に覆い被されて、真っ赤に震えている姿を見て、まさか性別が男だとは誰も夢には思わない。

 

 ただ、そんな彼を今から抱こうとしている白のビーストにとってはシロは女の子と観測されているので、これからシロは肉体も精神性も完全に女の子として開発されるだろう。コサラの少年王や麗しき仮面武将のように。

 

 シロは今日まで刑部姫の部屋で百近くの薄い文献を予習し、こうなった時の為のシミュレーションを頭に描いてきたが──。

 

「ぷしゅ──」

 

 現実が妄想通りにいかないのは往々にしてあること。白のビーストに押し倒された瞬間、シロの頭の中あった乙女的シチュエーションは全て吹き飛び、本人は煙を出してショートした。

 

(兄様の匂い、兄様の感触、兄様とベッド、うわぁ近い近い近い。ナマモノって凄いなぁ……)

 

 アストルフォとセレニケが犯されていたシーンは彼も影ながら覗いていた。そこから何度妄想して慰めた事か。だが所詮、妄想は妄想。いざ自分の立場になった彼はフリーズしてしまっていた。

 ついさっき「お慕いしております」と全身で抱き着いたのは今の彼に出来る限界値でもあった。後はもうか弱き被食者の如くじっと食べられるのを待つだけ。

 そもそも薄い本がリアルの色恋沙汰の参考になるワケもなく、そこの教育をしてくれる者がいなかったのがシロの不幸だったのかもしれない。

 

 そんなシロを見るに見かねて……というよりはしばらく傍観しながら愛でていた白のビーストがやっと愛しい弟分で妹分をリードする事にしてあげた。

 

 

「まず、何からして欲しい?」

 

「では…………すぅ、はぁ……その……接吻からを」

 

 深呼吸をして、まずは比較的ハードルの低い所から乞うことにした。

 小さく眼を瞑り、唇をほんの少し突き出す。

 

 ポニテールは解け、薄茶色の長髪は柑橘系の女の子らしい匂いを漂わせ、目の前の男の欲情をこれでもかと煽っていた。

 緊張によるシロの震えを抑えるように肩をそっと抱き締めた白のビーストは彼女()と唇を交わす。

 

「んっ……!」

 

 まだお互いの唇を触れただけ、大人のキスからすれば入口もいい所。だが、シロはそれだけで小さく絶頂してしまった。

 

 シロの反応を見て、一度、唇を離す白のビースト。えらいえらいと彼の頭をクシャクシャと撫でまわす。

 

「ぽ──っ……」

 

 たった数秒唇を合わせただけで心ここにあらずとなったシロは何度も唇に指を触れ、その感触を確かめる。

 

(なんだ……これ?)

 

 刑部姫の参考資料にはもっとドぎついプレイが沢山あった。第八層で兄様に犯されていたピンク色の髪のサーヴァントと眼鏡の女魔術師とだってもっとハードな事を目にしていた筈だとシロは思い返していた。

 にも関わらず、唇同士が触れるバードキスだけでこんなにも衝撃があるのかと……。

 

(やはり実際に自分が体験すると別次元だ……。これからもっと凄い事をしたら俺はどうなってしまうんだ…………)

 

 恐怖一割、期待九割。

 シロは次なる未知の快楽を求めて、兄と慕う男に無自覚に媚びる。

 

「……はぁ、兄様、今度はその……舌……を入れる事は……出来るだろうか?」

 

 控え目にたどたどしく自分から求めたシロに対して白のビーストは笑みを浮かべたまま無言で唇を近付ける。

 さっきは眼を瞑ったままだったが、今度は敬愛すべき兄の顔を視界に収めるべく眼を開け続け、その端正なのにどこか愛嬌のある表情を収めようとするが、やっぱり恥ずかしさのキャパに限界が来て、キスギリギリで瞳をギュッと閉じてしまった。

「何だこの可愛い生き物。あっ俺の弟分だったわ」と萌えつつ、白のビーストは今度はより深く生々しいキスを交わすべく唇を合わせる。

 

「んっ……ふぅ……!」

 

(ま、たきたぁ♡)

 

 唇に訪れたのは柔らかく湿っていて、新鮮な感触。シロの心情を視覚化するならきっとパタパタと揺れる犬の耳と尻尾が出て来ていただろう。それぐらいに彼はキスという行為に夢中になっていた。だが今度はこれで終わりではない。

 

「んっじゅるぅぅっ!?」

 

 ──にゅるんと。たかだかお子様のキス程度で喜んでいたおぼこちゃんを大人の世界に引き摺り込む舌が入り込んできた。

 

(えっ、えっ、なに、これは……いきなり、口の中に入って、やっ♡待ってくれ♡兄様、うごいちゃ♡)

 

「んむぅっ!? ……じゅむっっ、んれぇぇっ……んじゅるるるぅっぇ! あぁっ♡ちゅ、ちゅむぅぅっ♡んふぅっ♡」

 

 ワケもわからないまま困惑する彼を正気に戻す暇も与えずに百戦錬磨の獣の舌はシロの子供ベロを簡単に絡め取った。淡紅色で汚れを知らないその表面と裏を舌先で舐め上げたと思ったら今度は翻弄されるがままの舌を唇で吸い付く。

 ちゅぱちゅぱじゅるじゅると唾液をふんだんに使って卑猥な音をたてながら、聴覚でもお前を犯しているんだぞとわからせるようなディープキス。

 

「んっ……ぱぁぁ、んぷっ、ちゅぷぅっぅ♡れるぅっ♡ちゅ、ちゅむ、ちゅむぅっ……んじゅるぅぅっ♡」

 

(はっ、はっ、はぁっ、すごっすごい♡俺のベロを兄様が玩具みたいに♡あぁっ、全身がぞわぞわって♡)

 

 ベッドインしてまだ数分。だがシロの精神はハートマークだらけのメスへと完全開発の段階まで来ていた。たかがキス、されどキス。今ショタ系男の娘をディープキスで犯しているのは古今東西あらゆる女英霊を堕とし尽くしてきた性獣。キスの技術だけでも「魔力供給、お願いね? マスター♪」と挑発する生意気な魔法少女系褐色メスガキを「おほぉ♡」とわからせる事が出来るのだ。

 

 生後、数日といったホムンクルス程度が受けるその衝撃は当の本人すら想像出来ない。

 

「ちゅぷぅ、ちゅぷぅぅ♡じゅぅぅぅぅぅっ、れぁっ……れろぉおっぁっ♡ずゅりゅむぅぅっ、むぅっ……じゅむぅ♡」

 

 バードキス程度で軽く達してしまったシロは先程から連続で絶頂を繰り返している。

 自身の未熟な小さな口の中には未だに獣の淫舌が蠢き続けていた。シロの舌だけではなく、並んだ歯を磨くように一つ一つ丹念に舌先で歯茎ごとくすぐり続け、口蓋、頬裏も忘れずに唾液を擦り付ける。

 

(俺の口は言葉を喋る為のものじゃなかったんだ♡兄様に栓をしてもらう為の穴だったんだ♡)

 

「んじゅうるるるるぅっ……! ちゅぷぅ、ちゅむぅ、ぴちゅぅ……んぱぁっ♡んぐっ♡ごくっ♡んぐっ♡」

 

 唾液は擦り付けるだけに終わらず、溜められた白のビーストの涎はお互い繋がった口腔を通ってシロの喉へと送り届けられる。その唾液が喉壁を擦っていくだけでシロは性感帯を刺激されたかのように更なる快感を得て、腰を浮かし痙攣し続けていた。

 

 肩を抱き締めていた白のビーストの手はいつの間にかシロの両手を恋人繋ぎのように握り、お互いの興奮を象徴するかのように何度も何度も握る角度を組み替えながら、唇を貪り合っていた。

 

「っぷはぁっっ!! っぁぁっ……はぁっ──……♡はぁっ──……♡んはぁっ────……♡」

 

「……──っっふぅ。ご馳走様」

 

 ベッドの上でひたすらえぐい水音を響かせ続けて、二・三十分程。ようやく解放されたシロはキスの間、ほとんど呼吸をしていなかった為か、蕩けて惚けた顔で酸素を吸いこんでいた。唾液まみれの口周り。なのに汚いという印象は抱けない、まるで一つの芸術品のような美しさも伴った淫靡さに満ちた表情だった。

 

 このキスだけでシロというホムンクルスは身も心も雌にされてしまっている。

 

 その証拠に薄いドレスでブリッジ体勢のせいか、服の上からでもわかる()()の小さな突起がシロの劣情を表すように露わになっていた。

 

 ──スゥ──っと、白のビーストが鎖骨から指をなぞって降りてまずは上半身。横に並んでいる二つ突起の内、一つを指で軽く弾く。

 

「んひぃっ!!?」

 

 電極を刺したかのようにシロの体が甲高い嬌声と共に激しく揺れた。キスだけでいっぱいいっぱいだった彼の脳髄にまた新しい快感が登録される。

 おもちゃのレールのようにシロの肢体の上で指を走らせているシロのビーストは両手それぞれの人差し指を使って、ピンと張ってしまったシロのはしたない乳首を服の上から何度も何度も弾いた。

 

「ひぁあっ!? あぁっ! にい、さまぁっっ……! ま、まって、それっ♡なんか……んぁああっ♡変になってぇぇっ♡」

 

 弄るというよりは指先でツツ──……と乳首の周囲を擽って、その指を走らせている愛撫のレールの進行上で指先に乳首をぶつけている。鋭い性感帯である乳首をいつ弄るかは彼の匙加減。焦らされて、擽られて、惑わされて、好みのタイミングでシロの弱い所を突く。まだ彼にとってはこの前戯は前哨戦もいい所だが、シロはもう息絶え絶えだった。聖杯が無い只のホムンクルスの身だったら、白目を剥いて気絶していただろう。

 

「おや、可愛らしい下着。自分で選んだの?」

 

 一度手を止めて、白のビーストがドレスを剥いて出てきたのは同じ色である白い下着。バストからヒップまで繋がっているボディースーツ型。完全に女性物だが今のシロが着てても何一つ違和感は無い。むしろ上下をきちんと隠している貞淑さこそ今のシロには相応しかった。

 少しずつ、自身を守っていた殻を破られている事に興奮と羞恥を覚えつつシロは返答した。

 

「……ひぅ、ぁっ、ぁっ、はぁ……いや……アビーや皆に選んでもらって…………」

 

「アビーは昔からお姉さんぶりたい所があるからな──随分と色っぽい下着選んじゃって……。まぁ、皆とも仲良くなったみたいだし、君がそうやって外の世界の物に一つずつ興味を持ってくれるのは本当にいい事だ。君に良く似合ってる、とっても綺麗だよシロ」

 

「あぁっ……良かった……兄様に喜んでもらって」

 

 口内を犯されて、乳首を弄り回されて、色んな所をおっ勃ててしまっているタイミングだったが意を決して選んだ勝負下着を褒めてもらってシロの喜色メーターは跳ね上がる。

 ならばとじっくりその下着姿を視姦して欲しい反面、布の下で眠る素肌を曝け出して、直に触れて欲しいという欲望があるのも事実だった。

 

 下着は見せる為の物であり、脱がせる物でもあるジレンマ。だがセックスにおいては千里眼EXのこの男。シロの意図を察した白のビーストは肩のストラップを外し、とりあえずは胸の下まで降ろす半脱ぎ状態に留めていた。いきなり全裸に剥いてこなかった彼の気遣いに感謝しながら、シロは助けられた時以来の胸を彼に曝け出す。

 

「直接見るとすんごい勃っちゃってるよシロの乳首。ピンク色のえっちぃのが周りの乳輪も引っ張って膨らんじゃって完全に女の子のおっぱいになっちゃったね」

 

「っんぁ……そんなに詳しく……説明しないでくれ……」

 

 痛いぐらいにそそり立っている乳頭を見て、気恥ずかしさに顔を隠すシロ。だがもうその行為一つ一つが男の欲情を煽っているとシロは気付いていない。

 余計な肉がついていない華奢な上半身にシミ一つない箱入りの白い肌、そこに咲いている蕾に白のビーストが今度は指ではなく、舌で舐め上げる。

 

「んっ♡ふぅぉぉぉっ!!?」

 

 一瞬の感触だったがそれで十分だった。湿っていて指よりも深く生々しく暖かい感触。さっきよりも大きくはしたない声が当たり前のようにあがってしまう。

 今度は指の代わりに舌が出てきただけだが、快感は段違いに駆け上っていた。

 

「はっ! あぁっ……! ひぃ♡くすぐってゃあぁ♡……んああぁっ♡なぞるのぉ……ずるひぃぃ♡んああああぁっ!」

 

 悶えて快楽を逃がそうとするシロだったが両手を抑えられて、それも許されない。拘束されたまま、胸に顔を埋められて、舌という筆で乳首の周りをコーティングしながら、焦らされていた。既に股から湿った感覚がしていたがそっちを気にする余裕も無く、女の子おっぱいをひたすら舐められ続けていた。

 

「お母さんでもないシロの乳首はもう気持ち良くなる為だけに存在するものだからね、死ぬほどよがっていいよ……んちゅぅ」

 

「ンはああああぁぁっ!! あぁぁっ♡にい、さまあぁっ♡吸うのはぁぁあっぁっ♡だめぇええっ……出ないぃ♡おれ、母乳なんてぇ……ひゃひぃっ! でにゃいからああぁっ♡」

 

 そうしてシロの雌乳首の存在意義を証明するように白のビーストは咥え込み、唇で小さく断続的に甘噛みし続けながら、乳腺を掘り出すように吸引していた。兄という存在が赤ん坊のように自分の胸に甘えてきているという倒錯的な状況に混乱しているシロはおっぱいは出ないと、長い髪を振り乱しながら快楽の輪廻に身を委ねていた。

 

 生物学的には女ではないシロのその言葉は確かに正しいが、かつてインドにおいて蓮の花が拡がる湖の前で白のビースト、シータ、ラクシュミーとの4P青姦によって更なる開発を施されたラーマは遂に母乳を吹き出す事も可能になった。好きになった者を女に開発する達人であるマスター、「男の身で女のような生理現象が起きるのは不幸」という解釈で自身の中にある女神の力を行使したラクシュミー、「これはまさに乳海攪拌! ラーマ様をエチエチ罪と理性破損罪で訴えます! 覚悟の準備をしておいて下さい! 近い内に私達の子供も産んでもらいます楽しみにしておいて下さい! いいですね!」と興奮でブレーキが消失しているシータによるコンビネーションプレイの成果とも言えるだろう。コイツらは次のユガは間違いなく迎えられないですね。

 

 精神は人の外面に多大な影響を与えるというのなら、内面がメスに調教され、体つきが女の子のようになったラーマと同じ状態にシロがなってもおかしい事は何一つ無い。

 

 若干、話は逸れたが喘ぎ続ける今のシロにはそれぐらいのポテンシャルは秘めているという事。

 

「ひいぃっ♡あぁっ! んああっぁあっ……! 無理、無理ぃ♡ちくびぃ、とれてしまぁうぅっ♡んぉぉぁっ! 頭ぁおかしくなぁっるぅぅっ♡」

 

 白のビーストはリードする年上として余裕を持った笑みを浮かべながら、弧を描くように舌先でシロの右乳首を舐め回す。空いた左乳首は爪先でカリカリと掻く。上目遣いでシロの反応を逐一堪能しながら、快楽を教育する手を止める事は無い。弄られ続ける乳首もそれこそが至上の悦びだと訴えるようにどんどん膨らみ続ける。

 

「すんごいエッチな顔になってるよシロ。魅力的で眼が離せないや」

 

「ほ、ほんとぉ……? 俺はにいさまぁにぃ……んひやあああぁっ!? ひっ、んぃ……下にももう手を出すなんてぇぇ……んあああぁっ♡兄様ぁ、思考が追いつかないぃぃっ……♡」

 

 兄の言葉に泣き笑いのような顔で喜ぶシロだったが、さっきから痛い程に触りたくてしょうがなかった股間が何かに包まれたとわかった瞬間、さらに淫靡にその表情をくしゃくしゃに崩した。

 

 さっきまで手を抑える為に使っていた白のビーストの右手がお椀のようにしてシロの股間の膨らみを包んでいたのだから。シゴいてるわけでもなく、ただ優しく包んだ手で揉み込んでいるだけ。下着の下で眠る雌棒を慈しむように愛撫する。激しさはこの間のシロの自慰に及ばないのに、その快楽の鋭さは次元が違った。

 

 乳首と股間の3点責め。パチパチと脳神経を快楽が焼き尽くす感覚。シロは今、自分はどんな顔をしているのかも想像出来なかった、けれど兄様ならどんなはしたない様を晒しても受け入れてくれる……そんな信頼もあって素直に快感に身を任せる。

 

 シーツをギュっと掴み、顔も体も隠す事を止めたシロ。腰を浮かして、敏感な部分を嬲られ続ける姿はあまりに目に毒だった。

 

「んぅぅっ! ふぅぅっぁっ♡はぁっ、はぁっ、あああぁっ♡き、もちぃぃ……兄様ぁ、これぇ、スゴくきもちぃぃっ♡もっと、もっとぉぉ……俺に色んな事を……んぁあっっ♡教えてぇぇえっ……!」

 

 人差し指の第一関節ぐらいに膨らんだシロの勃起乳首がそれぞれ歯で噛まれ、強めに指でつねられる。

 だが今までこねくり回され出来上がっていたシロの性感帯は痛みも感じずそれすらも快感として受け入れた。

 

「っ、はぁぁっ♡あああぁっ──……! イ、くっっぅ……────♡」

 

 読み漁った文献では激しい絶頂が訪れた時、自らの口から申告するのがベッドマナーだと学んだシロは股座からも何かを放出し、今日一番のエクスタシーに襲われた。

 ベッドのスプリングを激しく軋ませた後、ぐったりと横たわったシロの口の端から漏れる涎が舐め取られた。

 白のビーストの挙動一つ一つに心と体が敏感に反応してしまうシロはもうこのまま幸せな気持ちのまま眠りたい気分に駆られたがついさっき「色んな事を教えて」と乞われた彼がこんな所で終わりにするワケもなく──。

 

「スケベにも程があるっての。もうこっちも我慢出来ないよ。……そろそろ本番にイッてもいいかな?」

 

「ほ、んばん?」

 

 何てことだ。

 シロは震えた。しかしそこには恐怖は無かった。世界が3回ぐらい生まれ変わったぐらいの衝撃を受けたさっきまでのやり取りは前座に過ぎなかったと──。

 その通りだ。あまりの快楽に頭が白痴になっていたが、男女の営みはもっと先があるじゃないかとシロの口角が上がる。

 

 上半身だけを晒していたボディースーツ型の下着も脱皮のように剥ぎ取られる。

 という事は()()も見られる。

 今まで彼に相応しい()になるべく、振る舞ってきたがここだけは誤魔化しようが無い。ありのままの自分を愛してもらおうと決意した以上、ここを改変するつもりは無いがそれでも一抹の不安がある事は否定出来なかった。

 白の陣営のサーヴァント陣はシロから見れば、一人一人が外見・中身共に彼に愛されるに足る素晴らしい女性しかいなかった。自分のこれは彼女達にはついてない。

 

(最後まで愛してもらえるだろうか……)

 

 産まれて間もない故の自己評価の低さ。そんな彼の内情をシロのビーストも察してはいたが、ここは下手に慰めの言葉をかけるよりは行動で示すべきだと次なる営みに移る。

 

 白いハイソックスを除いて、一糸纏わない姿になったシロは内股になり、恥ずかし気に股間の所に手を当てていた。所作全てがもう女の子にしか見えない。

 白のビーストがやんわりとその手をどければ、男根というには可愛らしい皮を被った蕾が咲いていた。

 

「うぅぅぅっ…………恥ずかしい」

 

 前戯のせいで出してしまったのだろう、皮の先からは透明な液が零れだしていた。勃起しても男性の通常状態の平均サイズにすら満たないそれは肥大化したクリトリスという表現の方が正しいかもしれない。

 細く、筋肉という言葉を一切知らない、火照った白い肌に包まれたか弱き体でピクんと震えているシロの陰茎は女性器が無いのに男の劣情を煽る天性の淫らさを持っているような気もした。

 

「兄様……その、……ソックスは脱がなくてもいいのか?」

 

「それを脱ぐなんてとんでもない!」

 

「そ、そうか……。セックスは奥が深いんだな。語感が似ているソックスは残しておくがマナーだと……あぁ、兄様、そんなにじっと見詰めないでくれ。みっともないだろう……」

 

 話を逸らそうとしたが、欲情籠った瞳で自身の性器を見詰められてシロはつい自虐的な言葉を吐いてしまう。

 

「……みっともないかどうかは俺が決める。シロ、お尻あげて」

 

「あ、あぁ……」

 

 言われるがままうつ伏せになって、素直に小ぶりなお尻をあげるシロ。

 

「にいさま、なに、んぉぉっ!?」

 

 ぞわりと神経全てが荒立ったような感覚。一拍おいて、どこを触られたのか理解したシロ。

 いやこの体で抱かれる以上、そこも覚悟の上だったがまさかこんな心の準備も無しでいきなり触れられるとは思わなかった。止めようと言葉を絞り出そうとするが──。

 

「んぉぉっ! あぁっ♡んぅっ……んほぉぁっ♡」

 

 出てくるのはもはや意味を成さない情けない喘ぎ声ばかり。

 誰もまだ触れた事のない新雪のような菊門。綺麗に皺が並んだその雌穴は汚れが一切なくシロ製の特別な陰唇は白のビーストの指を情婦もようにはしたなく咥え込んでいた。

 

(あぁ、兄様ぁ。そんなきたない所に指を挿れてぇ……はずかしい、死ぬほど恥ずかしいのにそれ以上に嬉しくて気持ちいいっ♡)

 

 唾で濡らした中指を器用に動かして、腸道を拡張していく。動き全てがシロに性的快楽を教え込むものでその穿孔機は進めば進むほど、シロの雌棒も連動して淫猥に揺れていた。

 

「せっかくだから、ここでドライオーガズムとウェットオーガズム一緒に経験しちゃっおっか」

 

「はぇ……?」

 

 既に中指は第二関節まで飲み込み、もう少しで前立腺まで到達するという域。

 お尻を突き上げた状態でメスの鳴き声しかあげれなくなったシロは彼が何を言っているのかもう理解出来ていなかった。まだまだ開発される場所が増えるとは露知らず。

 

「ひやああああぁあっぁぁっ──♡」

 

 視界が真っ白になった。

 

 乳首を咥えられた時と同じ感触、だがその衝撃は桁違い。腰が抜けそうになるのを何とか踏ん張る。

 脳が理解を拒んでいたのかもしれない。自分の情けない性器が敬愛する兄にしゃぶられているなんて。

 

「んんぁあっっ……! おっ♡んぉぁっ♡ひぃっ、あぁっ……! んぉぁっ♡あああぁぅ♡」

 

 ドライオーガズムは射精を伴わない絶頂。ウェットオーガズムは射精を伴う絶頂。もっと端的に言えば、前者はメスイキ。後者はオスイキ。尻穴とペニスを同時に責められているシロはもうじき相反する絶頂を味わうことになる。

 

 指は既に前立腺まで届き、ほぐすように圧迫されている。アナルを責めれられて興奮しているシロの雌茎は白のビーストの中で膨張しているがそれでもサイズはせいぜい指二本分。キャンディのようにコロコロと口腔の中で舐め回されている。

 

「にぃっ♡さまぁっ…♡にいさまぁっ……♡んぉっ、おぉぉっ! ォっはああぁっ♡んひいっぃぁっ……!!」

 

 滑らかなお尻の表面を撫でられ、菊門をほじくり回され、雌茎をしゃぶり尽くされる。シロの性器の先端からは今までの愛撫で出してしまった精液と混じり合った先走りが皮の先端から漏れ出している。精液というにはあまりに薄くて透明な色。むしろ、膣液にも思えるそれは容赦なく彼が吸い出していた。

 

(すわれるぅ……全部、ぜんぶぅ♡体の中ぁ、なかみぜんぶぅ兄様に吸われちゃぅぅ♡死ぬほど恥ずかしいのに、どうしてこんなに顔がにやけてしまうんだぁ……♡)

 

「はぁっ♡ああああぁっ! んぉ、んぉぉっ、んほぉぁっ♡おちんちん生えているのにぃぃっ……女の子になるっ、女にされぇぇっ♡……兄様にメスにぃされてるぅぅっ……!」

 

 自然と卑猥な言葉が零れる程、シロは彼の雌開発に適応していった。

 雌犬のように平伏して、ただ彼からの愛撫を受け入れる愛玩人形。そうなってもいいぐらい、二種類の快楽に頭を毒されていた。

 もう限界が近づいているのもシロは察していた。恥ずかしいとか申し訳ないとか気持ちよりも全てを爆破させたい欲情に駆られる。

 性別は男なのに、女物のドレスでデートを楽しみにして、女物の下着で抱かれて、女の子ように啼かさ続けて、女の子ように彼に夢中になって。

 自然と内股になって、本能が雌として彼に媚びるようになってしまっている。

 

「はああぁぅっ──♡あああぁっ──♡でる、でるぅ……でるぅぅっ……にいさまぁっ♡でちゃぁぁぅぅぅっ──……!!」

 

 ピュルピュルッとまずはオスイキ。潮のような濃度の薄い精液が喉に放出される。舌で絡められているシロの性器から最後の一滴まで搾ろうと吸引音を立てていた。じゅるじゅると魂さえ吸い取るフェラの音が続いた。恍惚としてどこかスッキリとしたシロの顔、終わった気でいるのはまだ早い。

 

「はぁっ、あああぁっ……ぅぅっぁっ、たくさん出てぇぇ……おほぁぁっ!? んぉおっ♡にゃんでぇぇっ……!? 射精ぃぃっ♡しゃせいぃしたのにぃぃっ……まだぁぁっ♡んほぉあぁっ♡」

 

 オスイキに追随するように、オスイキを上書きするように、射精で敏感になっているアナルを白のビーストの指が絶頂まで追い立てる。

 

「はひぃ、はぁっっ……まだぁ、んぉ♡まだ終わってないのかぁっ……!! ひぃ♡おちんちんくわえられたままぁ……アナルいじられてぇえぇっ♡んぉっ、んぉぉぅ! んほぁあっっ!! んぉ♡んほぉ♡んおおぉぁっ♡ほあああぁっ♡いっくぅっ……イ゛くぅぅぅっ!!」

 

 皮の中に舌を入れられながら精液を出し尽させる勢いでフェラを継続され、腸道の中を指が刻むように細かく動いている。ドライオーガズムの瞬間、シロはペニスが無くなり、菊門がマンコになって正真正銘女の子になってしまうような感覚に駆られた。

 

「ん゛ん゛おぉあああああああっぁあぁぁぁぁぁっっ──……!!」

 

 射精が解放された快楽というなら、今のメスイキはこちらを離さないような束縛する快楽。下品な声をあげて、打ち上げられた魚のように痺れ続けるシロはまだ絶頂の拘束から逃れる事は出来てなかったようだ。

 

「んあ゛ぁぁっ♡んぉぁっ、い、クぅ♡いくぅっ♡あぁっ! またイッてぇ♡イッてるぅぅっ♡ああああぁっ……!」

 

 度重なる射精で萎んでしまった男性器とは正反対にケツアクメをキめてしまったシロの体は女性のような絶頂に心捉われたまましばらく快楽の余韻に浸っていた。

 可愛らしい雌棒を解放した白のビーストは薄栗色の長い髪を掻き分けて、うなじに淫靡に浮かんだ汗を労わるように舐め取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(俺は今日一日だけで大人の階段を何段駆け上がるのか……。これが飛び級というやつなのか……)

 

 ベッドの上で仰向けのままボォーっとIQが低くなってしまっているシロは親愛たる兄が目の前で服を脱いでいく様を一挙一動見落とさないように眺めていた。

 

 体中にのびている赤い令呪。痩せ身でありながら、引き締まってかつ整っている肉体。

 そして今まで下半身を拘束していた衣類を脱ぎ去って出て来た圧倒的に雄を感じさせるモノ。

 

「わぁぁっ……」

 

 まるで憧れの英雄を目にしたかのような感嘆の声が自然とシロの口から零れていた。

 自身の何十倍もある男性器。いやこれを男性器と称するなら、自分のモノはせいぜい陰核がいい所だろう。血管が浮き出て鉄串のように興奮している怒張はこれからシロを犯し尽すと語りかけているようだった。

 

「……その触っても?」

 

「どうぞ」

 

 はやる心鐘を落ち着かせながら、愛おしい人の性器に顔を近付ける。宝物のように慎重にかつ繊細に指を這わせる。

 

「わぁぁっ」

 

 再び感嘆の声。

 

「そんなに夢中になられると少し照れるね」

 

「えっ? ……いや、あのそのっ……!」

 

 白のビーストの言葉で自分が無意識にうっとりと肉棒に頬ずりしている事に気付き、アタフタと慌てるシロ。

 

「いいよ、続けて」

 

「あっ、うっ、はい……」

 

 許しをもらっておずおずと今度は匂いを嗅ぐシロ。雌に格の違いを理解させる強烈な雄の匂いが鼻腔をくすぐり、シロの顔つきはさらに色情を増していく。一種の色気を持った雄臭さを十分に堪能しているシロは頭をクラクラさせつつ、両手、頬を擦り合わせるだけでは満足できなくなり、今度は控えめに舌を這わせる。

 

(しょっぱい……。エラの張ったカリ……俺の顔なんて簡単に隠れてしまう、あぁ……本当にスゴい♡俺のと比べてしまう事自体烏滸がましい、これが本物の男性器……♡)

 

「その……こんなに大きくなったのは俺に興奮してくれたという事で……いいのだろうか?」

 

「うん、シロがあまりにもエッチだったから俺のチンポがシロの事、犯したくて犯したくてこんなに育っちゃったんだ」

 

「エッチだなんて、そんな……んぉぉっ!? んひっ♡あぁぁっ、ま、たぁぁっ♡」

 

 これから行う営みの為に白のビーストの指が再び、シロの尻穴をほぐす。桃色に染まっている雌の入り口をグリグリと拡げさせ、入念な準備を行う。

 自分の体にここまでペニスをいきり勃てる程興奮を覚えてくれた兄に対して、シロは自分だけではなく、彼にも早く気持ち良くなって欲しいと願った。獣のような欲望を解放するのにこの体を好きなだけ使って欲しいと。

 

 兄様のペニスをもっと愛でるのはまたの機会にしようと太腿に手をあて、両足を開脚し、おむつを替えてもらうような姿勢に。今の自分の体で一番、兄のペニスを気持ち良くさせる所を曝け出す。

 

「兄様は…………俺を、妊娠させたいのか……?」

 

「そうだね。孕ませて、俺の子供を産んでもらって、家族になりたいぐらいには好きだから」

 

「んんぅっ♡」

 

 ぴたっとガチガチの亀頭をシロの雌穴へと標準を定めて、熱烈な求愛感情を向ける白のビーストに対して、シロはゾクゾクッと存在しない筈の子宮が疼いてしまうような感覚に駆られる。

 焼けるような男根の先端が菊門に触れるだけで達してしまうぐらいに欲情の昂りが止められない。

 

(つくる……つくるっ……! 聖杯の力でも何でも使って……! 子宮でも卵子でも体内につくるっ……! 兄様の子供を絶対に孕んでみせるっ♡)

 

「それじゃあ、挿入れるよシロ」

 

「あぁ、来てくれ兄様ぁぁっんおぁぁぁああああぁっ!!」

 

 体の神経が全て焼き切れたような衝撃。下半身が無くなってしまったのではと錯覚する程の快楽をシロは感じていた。

 

 怒張がシロの初めての異物の侵入を受け入れる。ヌプりと生々しい肉音を響かせて掘削を進めていく。シロの小さな肉体に覆い被さるようなった白のビーストは初物の雌穴の感触を堪能しながら、精を吐き出す肉棒を奥へ奥へと進めていく。

 

「んぉぉっっ♡あぁっ……ひぁああっ♡あぁっ! んあぁあぁっっ! おひりぃぃっ♡こわれちゃぁぁっふぅっ♡」

 

 カリがきわどい角度でシロの腸壁をゴリゴリ削っていく度にほんの僅かに残っていた男の部分も一緒に削られていく、白のビーストとの接触面が増えれば増える程、女性ホルモンがどんどん分泌されていくような気分だった。

 

「凄いねシロのナカ、キツキツで腰を進めるのが止まらないよ。ほら、奥まで進んじゃう」

 

「んおああぁっ!! そんなぁっ……おなかがぼこぉってふくれてぇぇっ♡おぉっ♡んぁぁっ♡もっとぉ、にいさまぁのぉぉおひんひんもっとぉぉぉっ……!」

 

 下腹部に見える丘のように長い膨らみが白のビーストの剛直の大きさ、それを受け入れてなお悦んでいるシロの愛の深さを証明していた。アナルを犯され啼き喘いでいる彼の声は誰が聞いても女の声だった。

 

(はぁっ、はぁっ、嬉しい♡嬉しい♡兄様が必死に腰を動かしてくれている! 俺に興奮してくれている! 肉体も心も繋がっている! これが愛ッ! あぁ、あぁっ♡幸せ、幸せだ、俺は! 兄様と結ばれる事が出来たっ♡)

 

 シロの足は自然に白のビーストの腰に絡まり、彼の抽送を当たり前のように受け入れる。

 

「はぁっ、んあぁっっ!! また、乳首ぃもぉっ♡や、アナルもぉっっ、んおあぁっ♡あひぃぃっ♡くるぅぅっ、くるっひゃうぅっ!」

 

 もう雄としての用途は為し得ないシロの雌棒は愛液を噴き出しながら揺れるだけ、今日の性交の復習とばかりに充血した乳首も指先でこねくり回されながら、ストロークは続く。一突き一突きでシロの理性は融解していく。灼眼は淫らに蕩け、半開きの口からはだらしなく舌が零れていた。そんな無防備な舌もすぐに白のビーストに絡め獲られて──。

 

「んむぅぅっっ! じゅるぅぅっ……♡じゅぱぁっ、はぁっ♡すきぃぃっ、舌でベロベロするキスぅぅっ、ちゅ……ちゅむぅっ♡……ぱぁっ、しゅきだぁっ♡」

 

 乳首を弄られ、ディープキスをされ、圧し掛かるようにアナルをノックされている。種付けプレスの姿勢で盛り上がっている二人にはもう他の者は目に入っていない。孕ませたい者、孕みたい者、単純明快な相互関係で成り立つ獣の交わりはより激しさが増す。

 

「むじゅるぅ、じゅぶぅっっ♡んぱぁっ……あむぅっ、ちゅ♡ちゅぅぅっ♡……っはぁっ、んぉっ♡んほぉっ♡」

 

(すごい……! セックスってすごい! こんなにも気持ち良くて心が暖かくなるものなのか! 人類が何万年も夢中になるのも頷ける……! 俺の体を犯している兄様……俺を女の子にした兄様……! あぁ、格好良い♡格好良い♡)

 

「ちゅ、ちゅむっ……にいしゃまぁっ――――──ってぇ」

 

「っんぅ? どうしたっシロ、もっとっ大きい声で言わないとわからないぞっと!」

 

「んおぉおおっ!! ……あっ、はぁっ孕ませてぇぇっ、兄様の子供産みたいからぁぁっ……あっ、あっぁ♡おっきーの所にあった本みたいにぃっ『孕め! 孕め!』って言いながら子種叩き付けくれぇっ、んぉぁっ♡」

 

 この子を助けてすぐに刑部姫の部屋に匿ったのは教育上失敗だったようだ。ご覧下さい数日前は必死に生にしがみつく為に足掻いていた名も無きホムンクルスが今や精にしがみついて中出しを懇願する女の子にまで成長しました。おっきーの部屋には保健体育の教科書を置くべきでしたね。

 

「たった数日でこんなにドスケベになるなんて、お兄ちゃんは泣けてくるよ全くっ!」

 

「らって、らってぇ……兄様がぁっ……俺をこんな気持ちにさせたんだぞぉっ……んぉっ、あぁっ♡傍にいるだけじゃ、我慢できなくなってしまったんだからぁっ……あんぅぅぅっ♡」

 

「人の所為にするか、コイツめ!」

 

「んぉぉぉぉっっ♡あっ、あっ、あぁっ、んぁっ♡んぉっ♡おく突くのぉっぉ、早くにゃってぇぇっ……はんぁぁぁあっっ!! んじゅぅぅぅっ♡」

 

 パンパンと膝を巧みに曲げ伸ばしして、ストロークを加速させる白のビースト。シロのおねだりもあってお互いの欲情はフルスロットル。出している音と動きは完全に押し倒してる無垢な雌に雄を教え込むモノになっている。舌を舐め合わせ、手を握り合い、密着して腰を叩き付ける。

 

 口からもアナルからも下品な音を響かせて、クライマックスへ駆け上がる。

 

「んじゅ、ちゅ、ちゅむぅぅ、兄様ぁっ、兄様ぁ、兄様ぁぁっ♡んじゅむりゅぅぅっ……じゅぷりゅぅっ!」

 

「ほらっ、出すぞっシロ! 子供ともども一生面倒見てやる! 孕め! 孕め!」

 

「ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ぅぅぅぅぅっ────!!!」

 

 シロがこれまで出してきた薄い射精とは比べ物にならない白濁の濁流、本当の雄の射精。億単位の精子達がシロを身籠らせようと液となって直腸の中でいっぱいになる。

 殺されてしまうとふと頭によぎってしまうぐらいの強さをもった快楽の流れに瞳を限界まで開くシロ。だが舌は貪欲に彼の動きに合わせたまま唾液を求め、足はさらに強く腰に絡み付いている。

 

(来た、来たっ、来たぁっ、来たぁぁっ♡兄様の精液ぃぃっ…………止まらないぃっ、まだ出て、はは♡俺のお腹の中で動き回ってる♡)

 

 あまりに多量な精液が注がれた為、疑似的に妊娠したかのようにお腹が膨れる。射精しながらも絶対に孕ませるという強い意思を持った白のビーストの肉棒は硬さを失わず、まだなおシロの最奥を突き続ける。

 

「ん゛むぅぅっ……じゅっ♡んぉぁっ……! ちゅぱぁぁっ……あぁっ♡ひんぅっ♡兄様ぁぁっ……♡んぉっ! す、ごい量ぉぉ……こんなの受精しちゃぁっ♡んぁあっっ! んぉっ、んほぉっ、おほぉぁっ♡イ、くの止まんにゃひぃっ♡んぉっ♡あぁぁっ、んぁああっ♡んほぁっ♡あ゛へぇっ……! ぇあぁっ♡」

 

 射精した後に何十回のストロークが終わった後、絶頂地獄から酸欠気味のシロがようやく解放された。酒瓶からコルクを外したような音を立てて、尻穴から抜かれたペニスはまだ射精し切っておらず、外に出た勢いでシロの肢体を『白く』染め上げていた。

 

「あひっ、ひぁっ、兄様のシャワーぁぁっ♡れろぉっ、じゅむぅ……おいしぃぃっ……んぉ、あんぅっ♡舐めただけで、イッちゃぁあっううっ……」

 

 ぐったりと脱力したシロの尻は白のビーストサイズに開発された雌穴から白濁液を垂れ流し、ベッドの上に落ちた。腹は中出しされた精液で膨らみ、足はがに股にだらしなく拡がっている、中も外も精液まみれになった姿からまるでレイプされた後のような有り様だったが、全身に掛けられた精液を愛おしそうに指で掬い、口に運んでいる様子からわかるようにシロに悲壮感は一切無い。

 

「お疲れ様、シロ。よく頑張ったね……。とっても気持ち良かったよ」

 

『シロ』と名付けられたホムンクルスは二度生まれ変わった。

 一度目は聖杯戦争の消耗品という運命から逃れる為に自ら生きる決心をした時、人間として。

 そして二度目は自分を人間として救ってくれた男に抱かれたこの瞬間、女として。

 

(兄様の子供……数は野球チームが出来るぐらいの人数が平均的なのか……?)

 

 タプタプしたお腹を妊婦のように慈愛に満ちた顔で撫でるシロは幸せの絶頂期だった。自分が一番『人』だと思っている兄と結ばれて、繋がって、子種を吐き出されて、家族になる事を認められた。同じ景色を見続けたい、共に生きていたいと願った人とのセックスという夢が叶った、それだけでシロはもう心がいっぱいになっていた。

 

「あなたを……もう、どこにも行かせません。愛してます兄様……ちゅっ、んぅっ」

 

 今度はシロからじゃれつくような優しいキス。獣に親愛を注がれたホムンクルスは泣きたくなるぐらいに幸せだった。そして同時に新たな決意、この人の隣に相応しい者になる為に強くなることを──。

 

 

 

 

 

 

 

《赤黒陣営が三白城に攻め込むまで残り30分》

 

 

 

 















半年ぶりのエロ。この小説R18だったんすね……。それがノーマルじゃなくて男の娘とは……いやシロ君はおちんちんがついた幼女。はい復唱。


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ビーストウォーズ⑪(Fate Apocrypha編)

何だかんだで3年もコンスタントにFGOのR18小説投稿しているのって私ぐらいじゃない? (自尊心の塊)
 いつも感想、評価、誤字報告、本当にありがとうございます(感謝の塊)

















《赤黒陣営が三白城に攻め込むまで残り5分》




『三白城』。旧姫路城部分、第八層にあたる屋根の上。瓦の地面を踏み場にして、屋外に出ている七人の女傑達が地上を見下ろしていた。

「来るな」

「来るわね」

「来訪」

「来ますね」

「来るか、アキレウスゥゥゥ……」

「来たか」

「こうやって幹部組が横に並んでるのって少年誌臭がして、すごく絵になるよね」


 一名を除いた白の陣営のサーヴァント陣は不敵に笑い、侵入者達を待ち構える。

「弟子は?」

「幸せそうな顔で寝ているシロちゃん連れてさっき戻って来てたよ。いやーまたシーちゃんと紫式部先輩の創作が捗っちゃいますねぇ」

「残念です。マスターの義弟という事は私の弟にもあたるのに……。どうせなら姉弟3人で仲良くヨスガりたかった所でした」

「性女言動 理解不能」

「それで? マスターは奴らの中に我々がこの世界に来訪した原因があると踏んでいるのか?」

「あぁ。トリムに調査させた隔離されているルーマニアの現状と、一瞬だけ赤い月と空が浮かんだ世界が切り替わったような感覚……。あの弟子がわざわざ世界線を飛び越えて降臨したという事はそれだけの厄ネタがあると踏んでいるのだろう」

 白のビーストは赤の陣営、黒の陣営のどちらか──確率的にはサーヴァントの中にその要因が潜んでいると踏んでいる。だから大聖杯を強奪して、両陣営に喧嘩を売る真似をしたのだろう。だが巧妙に隠れているのか現段階では誰なのかは不明。横からしゃしゃり出て来た部外者なのは事実なので怪しい奴を片っ端からボコしていくという面白味の欠片も無い手段を彼は取るつもりはなかった。

()()()シロの死にたくないという強い意志の発露に惹かれてしまったのも事実だが、白のビースト──親愛の獣、ビースト0:デアーが別世界へ来訪する時にはそれなりの因縁というものが存在する。

 それはこの先の時系列の話だが、彼に恋心を持ってしまった殺生院キアラとの因縁で藤丸立香という少女が人類最後のマスターとして人理修復を行う世界線に召喚された時のように。

 世界の壁を超えるのにはそれなりの理由が必ずある。

「それはそれとして拳を握って挑んでくる以上、私は叩き潰すがね」

「うわぁ……愉しそうな顔してるねぇ、ライネスちゃん。さて最初の出番はアタちゃんだけど、準備はおーけー?」

「ふっ、愚問だな」

「リリィちゃんみたいに身内の恥はもう晒したくないからね、頼むよ? 今度は真面目にやってね。フリじゃないからね?」

「恥の具現化みたいな城を建てている汝に心配されるいわれはない。安心するがいい」

「喧嘩売ってんの!?」






 怨念を絶やすな。恩讐を火にくべろ。幾千と世界が変わろうとも決して朽ちる事のないこの恨みを今この時はあの獣一匹に向けよう。

 

 今すぐにでもこの胸を掻きむしりたい。血涙を流し絶叫したい。この世全ての地獄を再現したい。だが今は耐えろ、耐え忍ぶ時だ。

 

 我が憎悪、復讐を「つまらない」の一言で一蹴したあの男を決して許すな。

 

 あの獣の特性に決して絆される事なく、世界を滅ぼす程に積怨を燃やし続けろ。

 

 まだだ、まだ今は()に浮上すべきではない。真実を見通す英雄もいる。鼻が利く眷属共もいる。直接的な手段を取ってしまえば、すぐに勘付かれてしまうだろう。

 裏の裏、その奥深く……気が遠くなる程の回り道をしろ。至る所に伏線をばらまけ。問題は無い。少しずつだが、私が望む終着には近づいている。気付いた頃にはもう何もかもが手遅れになっているように。

 

 

 あぁ、本当に長い道のりだった──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《赤黒陣営が三白城に攻め込むまで残り0──》

 

 

 

 

 

 

 帳を下し、空に浮かぶは無数の星のみ。今宵は新月、月の姿は無く。この聖杯大戦の本来の参加者達。赤と黒の陣営が白の陣営の魔城の下に集っていた。

 

 黒の陣営からは──。

 

 ジークフリート

 ヴラド三世

 ケイローン

 アストルフォ

 フランケンシュタイン

 

 

 

 赤の陣営からは──。

 

 カルナ

 アタランテ

 アキレウス

 シェイクスピア

 

 そして赤の陣営のマスター。言峰四郎、否、第三次聖杯戦争でアインツベルンが召喚した生き残り、受肉したルーラー、天草四郎時貞。

 

 それに加えて、今回の聖杯大戦の調停役として聖杯に召喚された。ルーラー、ジャンヌ・ダルク。

 

「ふむふむ、ほうほう、いやはや! こうして間近で見ると実に狂った建造物ですなぁ! ぶっちゃけるとご子息は頭がイカれてますぞ(I will be brief : your noble son is mad)的なアレです」

 

「ウゥ……」

 

「えぇ、そもそも重なり合っている建造物自体、時代、構造を考慮してもアンバランスにも程があります。まともな精神性ではこのような宝具は作成出来ないでしょう」

 

 

 時は来た、各陣営、前もって取り決めた時間を違うことなく白の陣営の根城へと。

 

 

 この中で人間である黒のランサーのマスター、ダーニックと()()()()を除き、計11騎のサーヴァントが集結していた。

 

「まさか、あの時の聖杯戦争のサーヴァントがこうして生き残っていたとはな……」

 

「色々と言いたい事はあるでしょう、ダーニック・プレストーン・ユグドミレニア。ですが今は同じ轡を並べる仲間です。話は白の陣営との戦いが終わり次第聞きますよ。ルーラー、ジャンヌ・ダルク貴女もそれでいいですね?」

 

 第三次聖杯戦争において敵同士として面識があるダーニックと天草だったが、白の陣営を前にして同盟を結んだ身。今さら内輪揉めで消耗をするなんて愚を起こすつもりは無かった。確かに先の聖杯戦争でサーヴァントの生き残りがいた事は驚きに値するが、ダーニックはもはや現状において、()()()()()()に意識をとられる容量を使うつもりは無かった。

 

 ダーニックの目的はもはや奪われた大聖杯の奪還ですらない、神秘の塊でもある人類悪、『白のビースト』ともう一度接触する事にあるのだから。

 

「構いません。赤の陣営であるあなた方が再び、私を襲撃するというのなら火の粉を払うだけです。問い質したい事があるのも事実ですが、今すべき事ではないでしょう」

 

「話が早くて助かります。呉越同舟というやつですね。争っていた我々が手を取り、十を超える英霊達が一堂に会しても白のビーストの喉元に喰らい付ける確率は1%がいい所でしょう。だからこそ、私達が取るべき行動は一つ」

 

行動は雄弁である(Action is eloquence)! 過去の遺恨は飲み込んでさっさと攻め込んでしまいましょうという事ですな! 正直、吾輩をあまり数には入れないで欲しいのですがね。ここまでついて来たのも面白そうだから以外の理由なんてありませんし」

 

「汝には少しでも英霊としての矜持は無いのか?」

 

「え──だって吾輩、筋力・耐久共にEのクソ雑魚なめくじですぞ? 期待をされても困ります」

 

「つーか、わざわざ馬鹿正直に正門から突っ込む必要があんのか? 俺らなら宝具を使えば、無理矢理別の所からも侵入出来るだろ?」

 

 アキレウスは至極当たり前の疑問を投げかけた。彼の宝具然り、アストルフォの宝具然り、空へ飛び、窓でも城壁でも突き破って吶喊する事は出来るだろう。

 むしろ、あちらがこちらを悠長に待っているというのなら、宝具の集中砲火を根城に与えてしまえば、堪らなくなった敵も出てこざるを得ないのでは、戦力を集中して、一階から登っていく必要があるのかと。

 

「そうですね。彼の言う通り、それを確かめなかったわけではありません。ですが……」

 

 天草が頭上を見上げた時、この場にはいない赤のアサシン、セミラミスが召喚した竜翼兵が数体、舞い上がり、三白城の高層から侵入を試みようとしていたが──。

 

「おいおい……」

 

 近づいた瞬間に宙から漆黒の穴が現れ、そこから大聖杯を奪った時と同様の触手が竜翼兵達に絡み付き、完全に捉えていた。バキバキッと致命的な程に何かが折れる音を響かせて、そのまま穴の中へと引き摺り込んでいく。

 穴から「竜の牙ゲットよ!」と少女の嬉しそうな声が聞こえたような気もしたが。

 

「あれはやっばいねぇ。ボクも下手をしたら、ああなってたのかな?」

 

 アストルフォの中ではセレニケ(ボケマスター)に特攻を強要された記憶が甦る。もしかすれば、自分達はまだ運の良い方だったのかもしれない。いや結局触手プレイで色々絞られてしまったわけだが。理性を取り戻したアストルフォはその時の事を思い出すと顔から火が出るくらいに赤くなり、股間が熱くなってしまうのを仄かに感じていた。

 

「まぁ、このように、基本的に正規の手段以外は認めるつもりは無いのでしょう」

 

「フン。あの兵を送った女帝は留守か。全兵力を集結させるのでは無かったのか?」

 

「それはお互い様でしょう、ヴラド公。あなた方も黒のキャスターを控えさせているのですから」

 

 両陣営にはそれぞれ一騎、ここには来ていないサーヴァントがいる。

 黒のキャスター、アヴィケブロン。赤のアサシン、セミラミス。防衛に向いているサーヴァントをそれぞれの陣営の本拠地に一騎ずつ残していた。

 その気になれば、数百いるホムンクルス及び巨大な大聖杯を強奪出来る者達ゆえ、サーヴァントを一騎残したからそれを防げるわけはない。

 だからといって警護を誰一人残さないでマスター達を無防備な状態にするつもりも彼等には無かった。彼等にとってはこの同盟も期間限定。白の陣営を倒した後の事も考えなければならない。

 

「全ては白のビーストの匙加減次第になってしまいますね。だからこそ、彼と直接相対し、その真意を知る必要があります」

 

「賢者よ。貴様がたとえ融和を望んでいた所で余はここまで虚仮にしてくれた盗賊共を無罪放免にするつもりは無い事だけは心に留めておけ」

 

 

 数少ない情報からも白の陣営の戦力を正確に理解しているケイローンと黒の陣営が生成したホムンクルス、即ちその主である自身の財を強奪した賊を王として許すつもりは無いヴラド公とでは目指す目的について平行線ではあったが、現時点で戦闘行為を前提としてこの城を攻略するという点では一致していた。

 

 

「細かい話はもういいだろう! さっさと攻め込もうぜ! 恐らく最初の相手はウチん所のセイバーとバーサーカーをものともしなかった騎士王様だろ? 相手にとって不足はねぇ!!」

 

「汝にも匹敵する程の防御力にスパルタクスの耐久も優に上回る破壊力。間違いなく、白の陣営の中でトップクラスのサーヴァントと見ていいだろう、油断するなよ」

 

 そんなアタランテの忠告が耳に入っているのかどうかは不明だが、気合いを入れて手の平に拳を叩き付けるアキレウスの後に続く、赤黒陣営のサーヴァント達。一番後続にはマスターであるダーニックと──。

 

「で、サーヴァントを失った協会の狗が何の用かね」

 

「噛み付いてくんじゃねぇよ。令呪はまだ一画残ってる。パスも多分、切れちゃいねぇ」

 

 ダーニックが不愉快さと怪訝が混じり合った顔を向けるのは赤のセイバーのマスター……ユグドミレニア一族と明確な敵対関係にあるフリーランスの死霊魔術師、獅子劫界離。

 

「足手まといな事には変わりないだろう」

 

「それはお前も一緒だろうが、この戦争において腕に覚えのある魔術師が一体何の自慢になるんだよ。それに気付いてるか知らねぇが、今の()()()()()、随分とキナ臭えぞ」

 

「何?」

 

 傭兵魔術師と王冠(グランド)の階位をかつて持っていた貴族二人に取り巻く不穏な空気を切り裂くようにアキレウスの英雄のお手本のような声が鳴り響く。

 英雄として強者との戦いを真に望む彼は不敵な笑みを浮かべて、高らかに宣戦布告を行う。

 

「我が名はアキレウス!! さぁ白のビーストよ、お望み通り、お前達の根城まで足を運んだぞ! お前の『全力でかかってこい』という言葉の通り、オリンポスの神々に恥じる事の無い戦いを見せよう! 故にお前達も手加減は不要だ! さぁ、姿を見せろ! 白のサーヴァントよ!!」

 

 最上層まで届き得る大気震わすアキレウスの啖呵。その啖呵に気が引き締まったかのように赤黒のサーヴァント達は即戦闘に移れるように臨戦態勢を整えている。

 

「さぁ!!」

 

 …………

 

「……おい」

 

 ……………………

 

「ふむ、誰も出てこぬな。赤のセイバーと赤のバーサーカーを屠り去った女剣士が出てくると思っていたが……む、おい正門の近くに看板があるぞ」

 

 これだけ戦意を昂らせ、率先して槍を構えているのに総スカンは悲しくなる。変な空気で固まっているアキレウスを尻目にアタランテが扉に近付き、最初にこの『三白城』に訪れた時には無かった筈の立て看板に目を通した。

 

 

 

 

 

『直してみよう』

 

【赤黒陣営っちへ

 

 ういっす──! 

 昨晩から完全にぽんぽん パンパンで

 いとおしみが深いので、

 1日円卓でスヤァしておきます。

 明日はイけたら、イくゥーマンです!】

 

 

 ご丁寧に右上に白のセイバーのアヘ顔ダブルピース付きで貼ってあった。プライバシーを遵守して、黒い海苔が目を覆ってる。

 

 

「ふざけてんのか!!」

 

 アキレウスが蹴り壊す気持ちもよくわかる。まず看板に書かれている言葉の意味がわからない。取りあえず、白のセイバーはいないんだなという事だけは何となく察する事が出来たが。有給ならぬ精給を取った白のセイバーの代わりにわざわざこの看板を作った白のバーサーカー、ペンテシレイアの真意も不明。案外、アキレウスがイラついてくれればいいなーぐらいの気持ちで作ったのかもしれない。

 

「待て。上の『直してみよう』という指示から察するにこの誤りある文を俺達の手で正しいものに修正しろという事なのでは」

 

「真面目に考察する類のものではないでしょう……天然ですか」

 

 変な所で律儀なカルナに突っ込みを入れるジャンヌ。インド神話で知らぬ者はいない大英雄。一度は命を狙われた身だが、こういうキャラなんですね……と苦笑い。

 

 そして守り手が誰一人いない正門が赤黒のサーヴァント達を招き入れるかのようにひとりでに開き出した。

 

「へっ、んだよ。来るなら来いってか。話が早いぜ!」

 

 

 第一層の扉、旧チェイテ城にあたる鉄の門が開かれる。

 城自体は目が眩む程の白だというのに、入り口はこちらを誘い込む悪魔の顎が如き漆黒のようだった。

 だが、ここで躊躇する臆病者は誰一人おらず、全員が城へと入った瞬間に扉は自動的に閉まった。

 

「ありゃありゃ閉まっちゃったねぇ……」

 

 アストルフォのおどけた声と同時に城の内面が明らかになった。

 

「これは……」

 

 誰かの驚く声があがった。

 外見からでも一目瞭然だった巨大な城。当然、その内部も広大で多くのフロアに分かれているものだと探索者達は予想していたが。

 

 彼等の目前にあったのは巨大な階段だけだった。

 

 左を見ようが、右を見ようが、扉も窓も無く、殺風景な石の壁しかない。あの巨大な城にしては、狭過ぎるし、どうにも不自然な造りだった。

 

「私は一度、この城に足を踏み入れています。その時に別の世界の私、ジャンヌ・ダルク……白のルーラーは言っていました。この宝具の内部空間はある程度自由に変化を加えれると」

 

「ふん、分かりやすいな。つくづく我らを一本道に押し込めたいようだ。『余計な策など無用、さっさとここまで登ってこい』と貴様達の主は不敬にもそう考えているのだろう?」

 

 黒のランサー、ヴラド公が槍を向けた先に一人のメイドが立っていた。透き通る白い肌、宝石のように輝く銀髪。整い過ぎて、完成され過ぎて、美し過ぎて逆に人間みを感じられないメイドが階段の脇に傅く者として正し過ぎる姿勢でそこにいた。杭で串刺しにされたかのような冷たい戦意を向けられても、何一つ動じる事のない銀のメイドがそこにいた。

 

「サーヴァント!?」

 

「いや、気配が違う。あの騎士王もおおよそサーヴァントとは言えなかったが、あれは生物としての匂いが希薄だ。うまく……言葉には出来ぬが」

 

 狩人として鼻が利くアタランテがメイドの正体を嗅ぎ分けていた。確かに何かしらの生命は宿っているように見えるが、本質は無機質な物、道具かあるいは宝具の類か。

 この中で最も根源への道を求めているダーニックは目の前のメイドの存在に何かしら勘付いているのか、震えている。

 

「ようこそいらっしゃいませ、お客様方。『まるでそびえたつクソだ! (I didn't know they stacked shit that high)』とこの城には驚きになられたでしょう。私は白のライダー、司馬懿様のメイドとして仕えておりますトリムマウと申します。以後、お見知りおきを」

 

「真名を簡単に晒しますか。ミスリードか、あるいは真名を知られた所で大した問題ではないと貴女の主は思っているのか……」

 

「お客様方が挑む三白城。以前、ご主人様が説明した通り、八層構成のこの城はそれぞれの層に白のサーヴァントが待ち構えています。そして第八層、即ち最上階には最後の白のサーヴァントとご主人様……白のビースト様がいらっしゃいます」

 

 ケイローンの疑問には答えず、トリムマウは今一度、この城についての説明を行った。

 

「わかっておる。大聖杯を返して欲しければ、余達にそれぞれの層のサーヴァントを倒して進んでこいというのだろう」

 

「厳密に言えば、違います。戦闘行為は必ず必要ですが、()()()()という点に関しては打倒は必要ではありません。白のサーヴァントに対して必ず一人以上の対戦相手を用意して頂ければ、残りの方々は上の層に進んでもらっても構いません。『ここは俺に任せて先に行け!』戦法が出来るというわけです。人数面で有利な点を存分に生かしてもらって結構です」

 

「ですが、私達が全員がかりで白のサーヴァント一騎ずつ打倒して進んでも問題は無いのでしょう」

 

「Yes.それも一つの選択肢なのかもしれません」

 

 トリムマウの言うように仮にそれで進んでいったとしても、白の陣営で最強、一番の怪物、人類悪を自称する白のビーストの元へ辿り着いた時に二・三騎程度しか残っていなかった場合、果たして勝ち目というのは存在するのかという点。

 

 ケイローンはこの中で唯一、直接的に白のビーストと相対した経験のあるアストルフォに尋ねる。

 

「アストルフォ、あなたの主観で構いません。白のビーストと戦うにあたって最低限どれだけの戦力が必要になると予想しますか」

 

「あ──、うっう──ん……。ジークフリート、ケイローン、ヴラド、カルナ、アキレウス、まずこの五騎は最低条件かな? これでやっと戦いの土俵に入れるって感じ?」

 

「ほう……」

 

 知名度補正を受けているヴラドを始め、この聖杯大戦で間違いなくトップランクであるサーヴァント五騎。その五騎がかりで()()()ではなく、()()()()()というアストルフォの言葉。

 

 真偽は置いておくとして、その言葉に激昂するのではなく、血気盛んな何騎かのサーヴァント達は好戦的に口角を無意識に上げていた。

 

「まぁ、偉そうに言ってるボクもほとんど戦いにすらなってなかったし、それでも、ウン。いつもならともかく今夜は新月だから今のボクの言葉もそれなり信用して欲しいかな──なんて。あぁ、後……」

 

 アストルフォはチラリとジャンヌ、アタランテ、フランケンシュタインに目を向ける。

 

「絶対に女性サーヴァントは連れていかない方がいいと思う。相性が悪過ぎるから」

 

「白のビーストは女性特攻……異性に対して何かしらの魅了を持っているという事ですか?」

 

「ん────……。マァ、ソンナカンジ、アハハ」

 

「カルナ、彼の言は」

 

「あぁ、嘘は言ってはいない(黒のライダーの目線の逸らし方……。短い接触で白のビーストに何かしら複雑な感情を持ってしまったのだろう……。ふっ、野暮は言うまい)」

 

 理性が蒸発しているいつものアストルフォなら、「いやー、君達が挑んでも二秒で即んほぉ♡ってなって触手プレイでお股グチュグチュ座にリリースになっちゃうよ? 何せ、可愛いけど男であるボクですらおちんちんシコシコされてピューピューされてアヘトルフォになっちゃったし! アーハッハッハッ!」と正直に言う所かもしれないが、幸い、理性がカムバックしている今日のアストルフォは空気が読める子。

 

「仮に吾輩を数に入れたとしても11騎がかりで挑んで、一層ずつ確実に登って行くか。あるいは消耗を避けて、少数精鋭で白のビーストの元まで登るメンバーを決めるか……いやはや悩み所ですなぁ。まぁ、集団リンチのような戦法をよしとしない英雄様方もいらっしゃいますが」

 

「成程……。白のセイバーがここにいないのはそういう理由ですか。モードレッドとスパルタクスの犠牲は無駄では無かったようです」

 

「オイ、セイバーはまだ消えちゃいねぇよ」

 

 天草四郎は納得したように呟く。勝敗関わらず、戦闘を行うサーヴァントを最低一騎だけでも置いていけば、先に進める。そのシステムを信じるのなら、自分達は白のセイバーの領域、第一層を突破する権利は得ていると。

 まさか白のセイバーが白のビーストとの夜の営みという名の拘束首絞め腹パン浴尿円卓凌辱プレイでアヘリタイヤしているとはまともな精神状態だったら想像すら出来ない。

 そしてこのシステムも残りの白のサーヴァント陣が白のセイバーのリタイアのもっともらしい理由を捻り出した故の後付けでしか無いので深い意味は特に無いのである。

 

 ただ、結果的には良かったのかもしれない。倒さなければ先に進めないというシステムなら、100%第六層の白のキャスター。マスターから精の素をたらふく喰い尽した完全体:外宇宙の神を宿す降臨者──アビゲイル・ウィリアムズで詰む。

 彼女もマスターである白のビーストの言葉に従って、本気では殺しには来ないだろうが……。

 

「此度の白のサーヴァントにはお客様方と少なからず因縁がある方もいらっしゃます。時と場合によってはその方からの指名もあるやもしれません。その時の判断はお任せ致します。では私はここで……第七層でお会いしましょう。御武運を──」

 

「あっ! 待て──」

 

 トプンと一瞬で液体化したトリムマウは石床の隙間に入り込み、完全に姿を消した。どうやら説明だけの為にここに現れたらしい。

 

「いいじゃねぇか。逆境、窮地、大いに結構。俺達みてぇな英雄にとっちゃ日常茶飯事じゃねぇか!」

 

「ここでくだを巻いても仕方あるまい。それに話を聞くだけでも白のビーストは女誑しの色情家にも思える。そういう輩は私は好かん。この矢で瞬く間に射抜いてみせよう」

 

「んだよ、姐さんも何だかんだでやる気満々なんじゃねか! そうだよな、美女を好き放題、食い物する奴は許せねぇよな!」

 

「私からすれば、汝も同じ括りなのだかな……」

 

「ひどくね!?」

 

 

 まだ敵も目前にいない状況でこれ以上、推察を重ねていても仕方ないのは他の者達も同意見だった。誰が残って戦うか、進むか、もしくは全員で戦うかは第二層から待ち構えているサーヴァントが何者かによって如何様にも変わっていく。

 まずはこの階段を登っていかなければ、話は一向に進まないのだから。

 

「では、行くとしましょうか」

 

 

【第一層:白のセイバー:王になる前の汚れちまった白百合のアーサー王──突破】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【第二層:白のアーチャー】

 

 

 赤黒陣営がその領域に入った瞬間、反応の差はあれど皆、吃驚した。

 

 そこは自分達が屋内にいる事を疑ってしまう程の大草原が拡がっていたのだから。

 上を見上げれば清涼な青空、見渡す限りの草は風に揺られ、第二層の扉から何処の外へと転移してしまったのではと考える方が筋は通っているかもしれない。

 

 

 

 一つだけ、原っぱの中心にその空間唯一の大樹があった。その樹の下に数人の男女がいた。

 

 いや、一人の男と三人の()()がいた。

 

 

 

「よーしよし、頑張れアタちゃん、頑張れ──、ハイハイとは思えない俊足だ。ウ○イン・ボルトも顔負けだぞぉ、そぉれもう一回行くぞ!」

 

「だぁっ! ばぁぶ、パーパ♪ パーパ♪」

 

「おぉ、また捕れまちたねぇ。えらいでちゅね──、よし、じゃあ捕ったその林檎型のボールをこっちまで持ってこれるかなぁ」

 

「たぁい♪」

 

 穏やかな光景だった。ありふれた親子の微笑ましいワンシーンだった。

 スモックを着ている頭から獣耳を生やした緑髪の女の子が黄金の林檎ボールを片手にハイハイ歩きで父(?)と思われる男に近づこうとしていた。

 

「パーパ♪ ぱぁ……ぁっ、うぅ……」

 

「あっ、小石に転んじゃったのか!? 大丈夫か、アタちゃん!」

 

「う、うぅ……ばぁぶぅ!」

 

「おっ、自分で起き上がったか! 偉いなーアタちゃんは! 本当に強い娘だな! お父さんは誇らしいぞ!」

 

「あーい♪ ばぁぶぅっ!」

 

 

 赤黒陣営はその幼女に既視感を抱かずにはいられなかった。

 ジャンヌ・ダルクから、白のルーラーにもう一人の自分がいたと話を聞いたアタランテは嫌な予感しかしなく、ダラダラと汗を流していた。シェイクスピアはニヤニヤしていた。

 

「……ぐずっ、えぐっ、うぅっ……」

 

「あぁ、ごめんね! ごめんね! 起こしちゃったねぇ! もう怖い騎士王さんはいませんからねぇ──よしよーし、モーちゃんは強い娘ー、モーちゃんは強い娘ー、はんぎゃくー、はんぎゃくー」

 

「あぅ、ばぁぶぅ……」

 

 男が相手しているのは一人だけではない、緑髪の女の子と遊びながらも抱っこ紐で抱えているぐずってしまった金髪の女の子をあやしている。落ち着いたようにまた穏やかな眠りにつく女の子。

 獅子劫は令呪から感じるパスでモーちゃんと呼ばれているその幼女が自分のサーヴァントだと気付いた事実を一度無かった事にした。

 

 

「ぱぱー、ぱぱー、にゃでて──」

 

 一番、意味不明だったのは若葉色の髪をしたグラマラスな美女が大人の体のまま、男に膝枕をされ、幼児退行している点。彼女が本来の黒のアサシンのマスターであった相良豹馬からマスター権を奪った、現黒のアサシンのマスターである六導玲霞である事は彼等は知る由も無く。

 

「もう欲しがりでちゅねー、れいかちゃんは──。ほら、お腹なでなでしちゃうぞー」

 

「きゃっきゃっ♪ きゃっ……」

 

「どうした、れいかちゃん──、ほらカラカラだぞぉ……あっ」

 

 ここでようやく、招かざる客人の存在に気付いたのだろう。子供3人と父親1人の憩いの場は固まった。

 その豊満なバストで涎かけを盛り上げている六導玲霞は完全に終わってしまっている獣耳の幼女と違って、まだ羞恥心はあったのか、不特定多数にバブみプレイを見られ、顔を真っ赤にして汗をダラダラに流していた。

 

 そのまま彼女は「やべっ」と呟いた男──白のビーストと共に逃げるようにその場から姿を消した。

 

 

 よちよち歩きだったアタちゃんと呼ばれた幼女もおもむろに立ち上がり、腕を組んだまま闖入者達に鋭い視線を向ける。スモックの胸元についている『しろぐみ あたらんて』と書かれたおはな型の名札が眩しい。

 

「ふん、招かれざる客人というわけか。白のセイバーの層を越えて、よくぞここまで辿り着いて来た」

 

「いや、無理だろ」

 

 何事もなかったように仕切り直しをする謎(?)の幼女にさすがにアキレウスがツッコミを入れた。

 そして隣にいるアタランテの顔がヤバい。しきりに呼ばれていた「アタちゃん」という名前といい、その名札といい、直視したくない現実がアタランテのボディに響いてくる。

 

「ここは私が残ろう何大丈夫だあの程度の幼子に遅れを取るような純潔の狩人ではないあの敵が一体どこの誰かは全くもってこれっぽっちも見当がつかないがここは吾に任せて先に行け後で必ず追い付くから今すぐ行って頼むから本当お願いだから早く先に行け」

 

「あね……さん?」

 

 超早口で味方に一切目を向けないアタランテが鬼気迫り過ぎて怖い。

 

「おーやっと来たかテメぇら。マスターも来んのがおせーんだよっ、ったくよぉ! ま、この叛逆の騎士モードレッド様がノロマなテメぇらの為に先に偵察をしてたんだからよ、ちょっとは感謝しろよな!」

 

 そして何事もなかったように、自分が幼児化していた事など忘却したようにしれっといつもの姿で赤のセイバー、モードレッドが隣にいるのがマスターである獅子劫は理解不能だった。さっきまで白のビーストにあやされていた幼女は別人か、あるいは幻術か。バシバシ笑いながら肩を叩いてくるモードレッドが怖い。何だこれホラーか。

 確かに連れ去られた以上、無事に帰ってくる可能性は低かったがこれは何か違う。こういうのじゃない。取りあえず、獅子劫は考えるの止めて「おう、せやな」と返事を返した。

 

 

「では自己紹介といこう、第二層を担当する私は白のアーチャー……」

 

「おいっ! ボサっとするな! 早く先に行けと言っているだろう!!」

 

「真名は──」

 

「やめろぉ!! それ以上、口を開くな!!」

 

「アタランテだばぶ」

 

「貴様ァァァァァアアアアアアアアアアアッッ!!」

 

 

 

 

 

 白のアーチャー:バブみ幼稚園 しろぐみ あたらんて vs 赤のアーチャー:純潔の狩人 アタランテ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




「嘘だ、嘘だろ姐さん! 何があった、一体何があったらそうなっちまう! 白のビーストに何をされちまったんだ!!」

「何もかもだああああああああ!!」

「ちょっとマジで面白過ぎるんで吾輩だけ残っちゃ、あ、駄目みたいですね。冗談抜きで頭をブチ抜かれますなこれ」




 黒のサーヴァント:残り6人
 赤のサーヴァント:残り6人(モードレッド復帰、アイデアロール成功。一時的狂気:昏迷)



















 自分vs自分だぞぉ。これは燃える展開だぞぉ。
 何かもうアタランテさん、今すぐにでもカリュドンの皮かぶりそうっすね。

 4話分掲載したのでイイ所でエロ本編に戻ります。順番的にはエロ本編2キャラぐらいやって、第二部編の二章入って、英霊編の第六章やって──、またアポ編かな? 

 シリーズが……シリーズが……多い! (金田一の外伝感)




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没ネタ
これが真の後日談(Fate/extra)



せっかくのお正月なので、第五章の前に遅めのお年玉という名の没ネタを投下。
こういう事してるから話が進まないんじゃね?という正論は俺に効くからやめてくれ。









 平凡な学生生活。変わり映えしない日常。学生の本分として学び舎に通い、日が暮れれば、皆帰路へつく。朝が来ればまた昨日と同じルーチンワークが始まる。

 

 平穏で平和で安穏な生活。

 

 なのに、どこか頭の中で「違う」と警鐘が告げている気がする。

 

 結局、何が「違う」のかわからず、今日も私は日常に埋没する。

 

 

 だから、これは偶然だった。

 

 放課後すぐに帰るのも勿体無い気がして、時間潰しに図書室へと足を運んだ私は一つの『本』を見つけた。それは図書室の隅にある棚の端に誰の眼にも晒されないように隠れている所にあった。

 

 偶々、手に取ったその本。別段読みたいと思ったわけでも、何か意味があって手に取ったわけでもない。

 

千女夜王物語(アルフ・イムラァ・ライラ・マリク)』と書かれた本を気づけば私は利用時間ギリギリまで読み耽てしまった。

 

 かつて心が病み一人の男に救われた死にたくない女の視点で進む物語。

 

 純朴で柔和な外面の中にありとあらゆる混沌を攪拌したような中身を持った男の生涯。

 

 

 壮大な世界を救う物語。その少年を囲む数多の英雄と人間達が紡ぎ出す成長譚。

 

 逸般人、親愛の獣、スペルマスター、性癖グランドビースト、根源より生まれ出しモノ、英霊を喰らいし者(サーヴァント・イーター)、もう一つの座。つけられた異名が数あるこの少年が正直羨ましかった。自分のルーツもはっきり分かっていないのにここまで強烈な個性をもって振る舞える意志の強さが。

 

 小説なんて今まであまり読んだ事の無かった私のページを捲る手が止まらない。

 

 不思議な事にそんなに分厚いワケでも無いのに一日だけでは読み終える事は出来なかった。ページもそこまで進んでいないような気がする。だから、せっかくなので続きは本を借りて家で読もうと受付まで持っていこうと思ったのに……そこからの記憶が無い。

 

 それから何度も何度も、時にはバックに直接入れて受付を介さず、家に持ち帰ろうとしたのだが、やはり学校から出てしまうと本が無い。

 

 仕方ないので毎日放課後だけでなく、休み時間の合間、時間を見つけては図書室に通い詰めてその本を読み続けた。シンジには怪訝な眼を向けられたが。

 

 

 どうしてもその物語の結末を――。彼の結末を――。知りたかったのだ。

 

 決して、思春期の女子高生には刺激が強い濡れ場に惹かれたワケでは断じて無い。

 

 彼の戦い、そして日常ですらも波瀾万丈で想像出来ない程に非現実的だった。普通の存在とかけ離れたナニかになってしまった彼。ならばその展開は当然の帰結ではあった。彼に私のような普通や平穏は決してあり得ないんだろうと――。

 

 漸く、残り僅かになったページを進める。無性に寂しくなった気持ちを抑えて物語の最期を見届ける。

 

 常人より何百倍に伸びた寿命。その旅路の終着。大勢の子供、孫、ひ孫、子孫に囲まれた彼は陽の当たる広い寝室で語り部の女性を傍らに静かに息を引き取った。

 

 彼の物語を看取ったあれだけ絶対に死にたくないと願っていたその女性も役目を終えたと言わんばかりに彼が亡くなった日以降の記述は無い。子孫達の守護は仙女がきっと引き継ぐのだろう。

 

 あれだけ数多の時代や世界で冒険を行ってきた男の終わりが余生を静かに過ごし、老衰からの大往生。

 

 始まりから今まで平凡とは程遠い彼の人生だったけど、その最期だけはとても穏やかで普通の人間のようだった。

 

 私はどうしてかそれが無性に嬉しくて、どこか救われた気持ちになってた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 全く、あんなに人間離れして、滅茶苦茶な彼が暖かくて幸せな結末を迎えたというのに。

 

 彼とはとても程遠いどこにでもいる普通の女子学生の私がどうしてこんな目にあっているのだろうか。

 

『ふむ、君も駄目だったか――』

 

 上から癪に障る厚みのある声が私の最期を告げていた。

 

 あの本を読んでから漠然と抱えていた違和感が大きくなって何かに駆られるように走って、御曹司っぽい転校生の後を追って不思議な空間に導かれた私。

 

 そして眼の前に無機質な敵意を宿す人形、戦えと渡された私の人形は隣で無惨にも砕け散っている。

 

 当然だ。私はあの本の中にいた主人公とは違う。戦う術も力も才能も何も持ってはいない。

 

 後は倒れ伏している私に敵の人形がとどめを刺して終わり。私は周りに大勢横たわっている彼等の一つに加わるだけ。

 

 走馬灯がまさか最近読んだあの本だけとは花の女子高生ながら自分の人生の薄さにびっくりする。

 

 

『さらばだ。安らかに消滅したまえ』

 

 

 目を瞑って、確定した自分の死を後は迎えるだけ。

 

 

 

 ――確定した?本当に?

 

 今の私に戦う術は無い。

 

 ――生きたくはないの?

 

 当然、死にたくない。だけど私には力が無い。

 

 ――力が無い人間は生きていけないの?

 

 そんな事は無い。

 

 ――なら、あなた()はどうしたいの?

 

 ……生きたい。

 

 ――それなら抗わなくちゃ。

 

 

 

 力が抜けていた四肢に活を入れて立ち上がろうとする。消滅するのが怖い。何も残せずこのまま消えるのが怖い。だって私はまだ、何もやっていない。あの本の中にいた主人公のように自身の生涯を自信を持って終えれる程の意味をまだ成していない。

 

 私はまだ、自分の名前しか知らない。

 

 震える手足がやっと言う事を聞いてくれた。

 

『ここに来てまだ足掻くか。君の手にはもう戦う剣は何も無いというのに。その空っぽの手で何を掴むというのかね』

 

 あぁ、そうだ。立ち上がれたから何だというのだ。その声の言う通り私には眼前の人形に対抗する術は無い。

 

 力も無い。才能も無い。知恵も無い。

 

 けど、この『生きたい』という感情だけは誰にも譲れない。

 

 戦う力が無い者は足掻く事すら許さないのか?いや違う。

 

 私は、『岸波白野』は――。

 

 こんな最期を認めない。誰しもが迎える明日を手に入れる為に()()まで戦ってやる!

 

 そんな決心を嘲笑うように人形兵の刃は私の心臓を貫いて――。

 

 

 

 

 

「そうだマスター。生きようとする意志そのものに力の有無は関係ない」

 

 

 

 

『むっ、これはっ……まさか――』

 

 砕け散っていた。あれだけ私の命を脅かしていた恐ろしい敵が飴細工のように粉々になっていた。

 

 

「力があれば戦える?それこそ戯言だろう、本当に賛美されるべきは戦う力が何も無くても戦場に立てる者。俺よりもよっぽど上等だ」

 

 守るように私を背に立っている青年の姿があった。上半身に衣服は纏っておらず、赤い刺青のような……そう、丁度今、私の右手に現れた物と似た紋様が彼の全身に帯びていた。

 

「意思は持った。今から君はダイスを振るう側になったんだ。どんな目を出すかは君次第」

 

 腰まで伸びた乱雑な黒い髪。白い下履きを穿いてるその男は何もかもが桁違いだった。

 

 存在感というか、生命としての在り方が私と何もかも違うような……。現実味が無いのに私が今まで見てきた全ての物よりもはっきりとした存在感を主張していた。

 

 そして名前も知らない彼を見て、私は直感した。この人があの物語の……私が読んだ『千女夜王物語(アルフ・イムラァ・ライラ・マリク)』で語られていた主人公だと。

 

 こちらを振り向くその顔はどこまでも前向きで眩しいぐらいに生きる意志と愛に溢れていた。

 

 

『警告、警告、対象「ビースト0」に警告。人類悪の存在はSE.RE.PHにおいて許容外。対象の存在は認知出来ない。直ちに退去を命じます』

 

 突如として響くアラートに、空間全体が赤く染まっていた。最初の声とは別の本当の意味で感情が無い機械的な声が聞こえる。

 

『ほう、驚いたな。絶対的な客観性を持つムーンセルがこの焦りよう……。しかし、ビーストか。そもそもあり得ない筈なのだがな、この演算器が自身の天敵になる者が召喚される余地を残す事など……』

 

「それはマスターの力かな。この世界で誰にも読まれる事なく眠っていた彼女の本を最期まで読んでくれた君がいてくれたから月の海に本来呼び出される事の無い俺は無理矢理、縁を繋ぐ事が出来た」

 

『成程、その平凡さはカモフラージュだったというわけか。まさか予選の段階で人類悪を呼び出す算段を立てていたとは……喜べ少女よ。君は今、全ての参加者を出し抜いて最強のカードを手に入れた』

 

 ん?ちょっと待って。何か私のせいにされていない?

 

警告(エラー)警報(アラート)警急(バグ)、直ちに退去を。即退去を。退去を退去を退去退去退去退去。処理(フィクサー)修正(デバック)消滅(デリート)

 

「夢を見てた。とても長くて暖かい夢を――」

 

 アラートがさらに大きくなり、現れた赤い光線が鉄格子のように私達を180度包囲していた。バグを完全消去する為に押し潰すように迫って――。

 

「そんな夢に浸っていたら、初めて聞くのにどこか懐かしい声を聞いてね。しばらくは惰眠を貪るつもりだったんだけど、これも何かの縁だ。死ぬほど手を出させてもらおうかムーンセル」

 

 鬱陶しい蝿を叩き払うように手を振るうだけでその檻を粉砕した。

 そう、手。彼の周囲から現れた夥しい程の手、手、手、手。白く蛇のように蠢き続ける数多の手。

 鳴り響くアラートが私にはムーンセルとやらの悲鳴にしか聞こえなかった。

 

「人間の精神を観測するのに128人のトーナメントで殺し合いってのはちょっと視野が狭すぎると思うの。安心していいよムーンセル、後の仕事は俺が引き継ぐからさ、しばらく休むといい。社畜な君への長期休暇という名のプレゼントだ」

 

『停止、停止、停止、ヤメ――』

 

「白式官能 八百万の手」

 

 役者交代の合図となった魔手の群れは彼の体を中心として拡がってSE.RE.PHを犯し、世界を簡単に塗り替えた。

 

 泡のように崩れていく偽りの学び舎の中で私は事態の展開についていけなかった。とりあえず……助かったという事でいいのだろうか?

 

 あぁ、それにしても熱い、熱い、とても熱い。右手に宿った紋様の熱さが私の意識を奪いに来ている。というか……この刺青……?どんどん伸びてないか?肩まで拡がって――。

 

「参ったな。先に説明する前に君の体を何とかしないといけないか。英霊ではなく人類悪の俺と契約を結んだマスターは君が始めてだからな……マスター、自分の名前は言えるかい?」

 

 ――岸波 、 白野

 

「おっけー、よろしくハクノ。俺の事は――……うぅ――ん、デアーもビーストもグダおも使い古されている感じがするから、丁度いいや、セラフ。君は俺の事はセラフと呼んでくれ。絆Lvが15ぐらいになったら本当の名前が解放される感じで」

 

 そう言って倒れかけた私を抱き締めてくれる彼の温もりと優しい顔はつい先程まで命がけの戦いをしていたという事実させ忘れさせてくれる。私は助かったんだ――という実感が消えゆく意識の中で確かな達成感として残っていた。

 

 安心して、彼に身を任せて――。

 

 

「これから月の聖杯戦争を電子世界ごと丸々乗っ取るワケだし、そう名乗った方が適切だよね。さてさて寝起きハイテンションの俺が最高の生存競争を見せてやるZE!魔王になる準備は出来たかい、ハクノ?」

 

 

 は 、い?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 予選を通過し、自らのパートナーとなるサーヴァント達を召喚したマスター達は困惑していた。

 偽りの学園生活から記憶を取り戻し、各々野望や欲望や願望や希望を抱えて、この聖杯戦争に臨んだというのにいつまで経っても聖杯戦争は始まらない。

 

 本来、本戦の控え室代わりとなる筈だった月海原学園で待機していた彼等の疑問に応えるように全ての参加者達の瞳に映るようにあらゆる媒体からモニターが展開された。

 

 そこに映し出されていたのは一組の男女。マスターと見られる月海原学園の制服を着ている栗色の髪の少女の後ろで男は口を開いた。

 

『【聖杯手に入れたけど何か質問ある?】』

 

「いつの時代の掲示板スか……」と施しの英雄を召喚した引き籠りの駄肉眼鏡の呟きがどこがで聞こえた気がする。

 

『勘の鋭い方々は雰囲気から俺が正規のサーヴァントじゃないってのは察して頂いていると思います。そうです、わたすが変なビーストです。方法はどうあれ、俺と我がマスター岸波白野は聖杯戦争が始まる前に聖杯を手に入れるというRTAを成してしまったわけです』

 

 ビーストと名乗った男の後ろで浮かんでいる巨大な結晶体が彼の言葉が虚言の類ではないと教えていた。真っ当なウィザードならその物体が常人の理解の外にあるアーティファクトである事は察せられる。この霊子虚構世界でそんな古代遺物に当たる物は当然聖杯しかない。

 

 ならば、マスター達とサーヴァント達の頭の中にあるのは疑問符、あるいは怒りもあったかもしれない。何割か例外はいるが命の覚悟をして、譲れない望みを抱えてこの戦争に挑んだというのに、何も分からないまま気づけば第三者に優勝賞品を掻っ攫われてしまっていたのだから。

 

 だが、ここで終わりではない。この人類悪はそんな味気ないエンディングは許さない。

 

『とまぁ、完走した感想ですが、俺もマスターもこの聖杯を使用する気はありません。そもそも人生、獣生?を完全謳歌した俺が今更、地球をどうこうするつもりも無いですし、マスターもマスターで謙虚な性格なのでやっぱり聖杯は使わないと来た』

 

 マスターと呼ばれた少女は何も語らない。何も言わない。その瞳は虚空を見詰めて、現実逃避しているようにも見える。

 

『うん、あなた方の気持ちは十分わかる。だから、今ここに宣誓しよう、新たな聖杯戦争の始まりを!』

 

 突然の勝利者の出現。そして更なる聖杯戦争の再開。128……いや、正確に言えば127人のマスター達は誰一人欠ける事なく彼の言葉に耳を澄ませていた。

 

 モニターは拡張し、聖杯を望む者達へ贈られる試練の場が映し出される。ビーストの宝具『白式官能』によってハックされたここは霊子虚構世界というよりもはや精子虚構世界。聖杯が眠る熾天の玉座を目指す為に越えなければならない七天の階層。

 

『トーナメント形式の殺し合い程度で人間を知る?人間を舐めるなバカチンが、殺し合いだけで測れる程、人生ってのは薄くないっつーの。ありとあらゆる視点、角度、ジャンルで……君達の人間力を測ろうじゃないか。これこそ真の聖杯戦争!括目せよ!!』

 

 

 

 ――勇猛名高い英霊諸君にとって一番得意なジャンルだよね?

 

 それは戦い、生命力を競う試練。

 

 第一の檻『死ね!影の国ブートキャンプ』

 

 

 

 ――食べる事とは生きる事。料理の腕に男女の貴賤は無し。

 

 厨房とは戦場である。これこそ真の八熱大地獄。

 

 第二の檻『地獄料理教室閻魔亭(ヘルズ・キッチン)

 

 

 

 ――リア充爆発しろではない。君達自身がリア充になる事だ……。

 

 求められるは待ち時間でもパートナー飽きさせないトーク力、効率的にアトラクションを回るプランニング力。

 

 第三の檻『夢の国 ディスティニーワールド』

 

 

 

 ――遠回りこそが最短の道だった。

 

 約4000kmの大陸横断デッドレース。ゴールに辿り着く事……真実はそれだけよ。

 

 第四の檻『血鬼血鬼マシン鯖レース』

 

 

 

 ――人類の宝の一つでもある創作力。

 

 無限ループからの脱却を目指せ。邪神入り乱れるハワイ島での執筆活動。

 

 第五の檻『常夏多次元同人即売会(サーヴァント・フェスティバル)

 

 

 

 ――ユーモア無き者に幸福は無し。笑いを学べ。

 

 数多現れる笑いの刺客。君達に許されるのはただ一つ――耐える事だけ。

 

 第六の檻『日露合同氷結白鷺城(絶対に笑ってはいけないロシアン姫路城240時)

 

 

 

 ――人生設計は将来だけではなく死後の事まで。

 

 落ちたり、登ったりしろ。最後に立ちはだかるは魂の試練。

 

 第七の檻『冥天複合宮殿(ヴァルハラ・イルカルラ)

 

 

 

『ただ一人の勝利者なんてことは言わない。七天を超えて、俺がいる玉座まで辿り着いた者に誰一人差別なく聖杯の使用権を与えるさ。そして俺は何度でもチャンスを与える。この聖杯戦争において死という概念をデリートした。仮に消滅する目にあっても君達はこの学園からリスポーン出来るようにね。人間は何度だってやり直せるのさ』

 

「随分と甘い聖杯戦争にしてくれるじゃない。聖杯という破格の賞品はそのままに……逆に罠を疑うレベルよ」

 

 西欧財閥に敵対するレジスタンスの一人である黒髪ツインテールのレジスタンスの言葉はごもっともだった。一部ゲーム気分の者達もまだいるが概ね彼女と同意見だった。命を捨てる覚悟を持っているマスター達にとってこの聖杯戦争は温過ぎると。

 

『って思うじゃん?まぁ、第一の檻から挑んでみればいいと思うよ。すぐに普通の聖杯戦争の方が良かったわ!と後悔する輩が続出すると思うから。人生百倍分味わえる娯楽と愉悦と苦難がぎっしり、この聖杯戦争は生存競争ではなく人生競争。コンティニューし放題なら聖杯なんて簡単とかいう考えは今すぐ捨てた方がいいよ?』

 

 校門の所に何十人もの人数が一気に入れるぐらいのゲートが展開される。ここから熾天の玉座まで目指せという事なのだろう。未だ、セラフを取り込み、熾天使(セラフ)そのものとなった男の言葉の真意を掴みかねているマスター達は動き出す事が出来ない。

 

「ビースト……人類悪でしたか、噂レベルでしか聞いた事はないですが、確か人類の自滅機構(アポトーシス)と言われる癌細胞。まさか、月の聖杯戦争でそんな存在と出くわす事になるとは思いませんでしたが」

 

「だがレオ、問題はそれを従えているマスターだ。人類悪と呼ばれる存在がわざわざこんなふざけた聖杯戦争を用意する理由が無い。ならばこれはマスターの意向となる。岸波白野だと?誰もそんなウィザードは聞いた事が無い。無名のマスターがあんなものを召喚したというのか?それに見ろあの女の瞳。ドロドロに濁り切った黒い渦だ。恐らくまともな精神はしていないだろうな」

 

 優勝候補の一人である西欧財閥の王子とその影で動く暗殺者はビーストは当然として、マスターである少女の方にも警戒を強める。

 

「元監督役の上級AIから聞いた話ですが、彼女は予選の段階であの人類悪の聖遺物らしき物を既に手に入れていたらしいです」

 

「ははは、ならばこの老骨も含め、皆あの少女に出し抜かれたというわけか。ふふ、長生きはしてみるものだ」

「いや、笑ってる場合じゃないでしょ旦那!キャンプはまだしもキッチンとか即売会とかオレの役目がどこにあるのってハナシ!」

 

「ちっ、これなら名の知れたウィザードの方がまだありがたかったな。まさか、この為に名を上げずに虎視眈々と「カズ君!カズ君!遊園地とかリゾートとか超行きたくない!?」……頼むから黙っていてくれセイバー」

 

 神父服を来たAIの親切心(悪意)から聞いた情報を口にしたアトラス院のホムンクルス。そこから尾びれが付き、肥大化した噂は「予選の段階で彼女は既にビーストを召喚していた」「この予選自体、岸波白野によって作られたものだった」「彼女は聖杯の噂で集められたウィザード達が足掻く様を見て愉しんでいる」「実は彼女の方が人類悪だった」とクラスで三番目程度の可愛さぐらいしか特筆すべきものが無い彼女は聖杯戦争が始まる前からまるで悪魔のようにマスター達に恐れられていた。

 

 だからマスター達は誰も気付かない。未だに沈黙を不気味に保っていて焦点が合っていない瞳を持つ少女の口が小さく「だれか たすけて」と動いている事に。

 

「上等じゃないっ。こちとら、世界中でサバイバルしてきたテロリストよ。温室育ちのお坊ちゃん共に負けないっての!……ってランサー、お腹抑えたりして、どうかしたの?」

 

「……悪ぃマスター。一つ目の檻から嫌な予感しかしねぇんだ」

 

「ぐぬぬぬ、なんと派手な奴よ。ここまで豪快な聖杯戦争を用意するとは嫉妬を通り越して、羨望さえ覚えるではないか!さすがは奏者と同じ名前を冠するマスターだけはあるな!」

 

「キシナミ、ハクノ――、彼女がいる玉座まで辿り着けば俺も自分が何なのか知る事が出来るのか――?」

 

 闘争に囚われた哀れな平和男でもなく、狂った桜を咲かせる悪魔的AIでもなく、地球を自慰道具に使う淫欲魔神でもなく、此度は濃密な人生と愛を全うした白き獣が織り成すカオスな聖杯戦争。

 

『さぁ、来い!君達の輝きを俺に見せてくれぇっ!ガッチャ!楽しい聖杯戦争(デュエル)にしようぜ!』

 

 今宵、混沌の海に皆が溺れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふぁっく・ゆー。

 

「こら、女の子がそんな汚い言葉遣いするものじゃないぞマスター」

 

 こんな状況になったのだからスラングの一つぐらい許して欲しい。完全に私、ラスボスじゃないか。黒幕じゃないか。助けてもらった事には感謝しているがもう少しどうにかならなかったのだろうか?

 

「癖になってんだ。悪役ムーヴするの」

 

 もう令呪で折檻した方がいいのかなぁ、この駄ビースト。気づけば全身に令呪が延びているし。正確に数えてはいないけど、百画ぐらいはありそう。

 

「何せ、サーヴァントじゃなくてビーストを従えるマスターなんてそうそういないからねー。いや、マスターの魔術回路をビーストを従えれるぐらいに調整するのは一苦労だったよ」

 

 もしかして、令呪が宿った時のあの熱さは私の体があなた……セラフとのパスに適応し切って無かったから?

 

「そもそもビーストをサーヴァント化出来るマスターなんて余程のバックアップが無い限り、化け物クラスしか出来ないから。うん、マスターの命がかかっていた状況でこの手しか無かったとはいえ、正直反省してる」

 

 ……?何でここで視線を逸らす?私はあなたに命を救われた。まぁ、そのおかげで127人のマスターと敵対するワケになったが、それに関しても色々と思う所が無いワケでもないが……特に文句を言うつもりは無い。

 さっきはあぁ言ったが私はあなたには感謝しかないという言葉には偽りはない。

 

「そっか。じゃあ、死にかけたマスターの膣に白式官能で魔力という名の『この世全ての精(ファビアナ・スペルマ)』を注ぎ込んだ事も許してくれるのかな?」

 

 は?

 

 what?膣?ヴァギナ?Vagina?魔力?精?Sperm?

 

「一刻を争う状況だったからさ、一番魔力が効率良く接種出来る場所から注入する必要があったんだ。あくまで宝具だから、セックスはしてないし、マスターの膜は破ってない事は保証するよ。それでも本当に申し訳ない」

 

 ッッッ~~~~…………!!!!ぐぅわっぁぁぁああくkっさdくhdぇいうhlぢうあhぁけhぃうえfへあkfんf;kじゃ;kjdふぁ;えkjんふぇ;kfじゃん;かjん;lkふぇん;fぁk――――…………!!

 

 ……………………………………だ、だ、だ、大丈夫、問題無い。

 

「本当?女の子がしていけない顔してるけど」

 

 何であれ、あの本を読んだ以上あなたの性格も知っているし、彼の能力がソッチ寄りだという事のも知ってる。私の命を助ける為に必要な事だったのも理解している。そもそもあれだけ綺麗な奥さん達がいるセラフが没個性な私に欲情して無理矢理手を出すなんて不義理を行うわけもないだろう。

 

「いや、マスターは普通に美人さんだと思うけど」

 

 令呪パンチ!

 

「ぐわぁあぁっっ!!」

 

 お前、本当そういう所だぞ!

 

 顔面ストレートを受けて転がるビースト、あぁ、一応これ『千女夜王物語(アルフ・イムラァ・ライラ・マリク)

 』を愛読していた私にとって憧れの存在な筈なんだけどなぁ……。

 

 はぁ、夢って儚いね。大人になるって悲しいことなの。

 

 で、私はこれからどうすればいいのだろうか?

 

「勿論、マスターにも七つの試練に挑戦してもらうよ。自分探しでしょ、君の願いは」

 

 ムーンセルを手に入れたなら、そこから簡単に知る事が出来るのでは?

 

「そんなネタバレみたいなやり方は認められないなぁ。自分ってのはそう単純にわかるもんじゃないでしょ。体力、自炊力、女子力、根性、創作力、ユーモア、魂力、諸々鍛えながら、自分を見つけるといいさ。俺は自分探しで旅に出る奴を笑ったりしないタイプの人間なのだよ」

 

 む、む、む……確かにセラフの言う事は一理ある。私とした事が彼に助けられてから、楽に流れようとしていた傾向があったのかもしれない。あの物語で語られていた通り、やる事なす事、百段ぐらいぶっ飛んでいるがそこには私に対する親愛の情があるのは理解出来た。

 

 只の一読者にしか過ぎない私には少々、こそばゆい感情なのだが。

 

「大丈夫。マスターにはそれぞれの階層でパートナーがちゃんといるし、俺も極力表には出ない程度に茶々入れながらマスターのサポートをするからさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふ――ん、リッカといいあの子ったら自分のマスターにするのはモブ顔が好みなのかしら」

 

 第一の檻まで下がっていくエレベーターの中で谷間と臍が露出したおしゃれなスポーツウェアを着ているピンク色の髪の女性が私の隣で呟いていた。私の格好も体育の授業で着る体操服になっている。何故、ブルマ……。アイツの趣味か?

 

 この格好もそうだが、こうしてメイヴと自己紹介された彼女に隣で立たれると女性としての戦闘力の差がはっきりと出てしまう。ふっ女子力たったの2か、ゴミめ。って速攻瞬殺されそうなのだが。

 

 この綺麗な人が第一の檻の私の相棒サーヴァントという事でいいのだろうか?

 

()()()()()()ってのはあんまり正しくないわね。確かに彼に抱かれて受肉する前の私達は英霊の座から召喚されるサーヴァントって立場だったけど。マスターの精子によって一つの個となった私達はもう一段解上の存在になって、その生涯を終えたわ。そして死後、私達の魂が行き着いたのは英霊の座ではなく、マスターの所。そう親愛の獣、彼自身が私達の座になっていたの」

 

 ???

 

「分からないって顔してるわね。まぁ、私達は英霊じゃなくて、彼の精で肉を得た精霊、サーヴァントではなく『スピリット』って覚えておきなさい。サーヴァントと違って私達は彼以外の呼びかけで召喚に応じる事は無いのよ。あの子自身は今回のあなたみたく手を伸ばしてしまう事もあるけどね」

 

 なんか、サーヴァントというより凄い存在って事ですね。ハクノ、覚えた。

 

「面倒臭いからそんな感じでいいわ。それにあなた運が良かったわね。パートナーがスカサハとかじゃなく、私で」

 

 スカサハ……。確か、彼の子供を三番目に産んだ女性だとあの本には書かれていた気がする。自身を殺す存在を望む影の国の女王。彼女の悪口を口に出せば槍に貫かれ、陰口を心に思えば槍が飛んでくると恐ろしい存在として書かれていたが、子供が産まれてからはその性格が嘘のように鳴りを潜め、穏やかな淑女になったとも。

 

「マスターと出会う前は死臭がするゴリラ女、マスターと出会った後はサブカルクソ女。あなたの言う通り、子供が産まれた後が一番マシだったわね。だけど……はぁ、子供も、孫も産まれて大好きな人との生涯も大往生して、色々と解放されちゃったのかしらね。今回召喚されたあの女は色々と吹っ切れてるわよ」

 

 電子音が第一の檻に着いた事を告げた。エレベーターの扉が開き、私達は足を踏み出す。

 

 

 ――いやあああああああ!誰か助けてぇえっっ!!

 ――死ぬ、死ぬぅっ!死んじゃう!!

 ――ごめんなさい、ごめんなさい、ボクは駄目な駄肉です。豚です。パパ、ママ、ごめんなさい!

 ――ランサーが死んだ!このひとでなし!

 

 

 地獄を見た。

 

 

 




時系列
本編(第一部)→番外編(第二部)→アポクリファ編→英霊編→今話



実は正月イベが無かったら、『地獄料理教室閻魔亭(ヘルズ・キッチン)』の代わりに『快楽百重塔(絶対にイッてはいけない百重の塔24時)』が入ってた。キアラさんの独壇場にしかならないので本当に良かった。女将は救世主でち。







《没理由》
これ以上シリーズを増やしたら、投稿が追いつかない(真顔)。







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『乙女転廻演戯 三国識』(エイプリルフールコラボ 恋姫†無双)

マジすいません。三月末が真顔になるレベルで仕事地獄だったので英霊編の執筆何もやってないんだよなぁ。
というわけでいつの日か酒と深夜テンションで書いた没ネタをお詫び投稿します。

今までのエイプリルフールネタって英霊編だったり、ラーマきゅん編だったり四月馬鹿詐欺ばっかりだったので偶にはガチのエイプリルフールネタを投稿しなきゃ。

好き放題書いてます。考えるんじゃなくて、感じてください。響け! アナーハタ!

PS:大奥イベの殺生院さん大好き。でもカーマちゃんの方がエチエチ度が高いんでそっちに溺れていいですか?(ダウナー系桜大好き侍)後、FGOクエスト常設してマジで時間がないの。




















ノッブ「いやいや、あの乱世の奸雄が金髪ドリルでエッチが大好きとか、んなワケ!」
沖田「ははは、諸葛孔明がロリではわわとかあざと過ぎません? 狙いすぎでしょう」
武蔵「えぇ――、美髭公じゃなくて、美髪公? 何でもかんでも美少女化にするのはお姉さんどうかと思うなー」

茶々「茶々知ってる! これ、ブーメランって言うんだよネ!」






 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 三つめの異聞帯。人智統合真国 SINでの戦いから一週間。親愛の獣君とカルデアの愉快な仲間達が束の間、休息を享受していた頃――。

 

 これは第三異聞帯と第四異聞帯の狭間にもしかしたら、あったかもしれない帯。

 

 安寧と調和が続く泰平の大地はこの星から引き剝がされた……白紙化された大地しかない筈の中国大陸に一つの微弱な反応を彷徨海は確認した。

 

 空想樹を切除した異聞帯にまた、新たな異聞帯が出現するというあり得ざる事象が起きたのか、事態を確認する為にマスター達は再び中国大陸へと浮上する。

 

 

 

 

 彼等が最初に目にしたのは一面の麦畑ではなく、どこまでも殺風景な乾いた大地であった。時折、黄砂が吹き荒れる広汎たる地平線。まるで黄色の布を被った野党3人組がいつもの絡みをしてきそうなフィールド。

 

「普通だね」

 

「普通ですね」

 

「…………」

 

 人類悪と兼業中マスターと彼のサーヴァントとして付き従った蘭陵王は先程から隣で黙りこくったままの美女へと視線を向けた。

 

 「何で項羽様がいないのよ!!」

 

 ハイネック眼鏡から露出度の高い霊基第二姿に変貌してしまうぐらいに元クリプター、シン攻略前にマスターから()()()()を持ち掛けられ、あっさりとカルデア側に寝返った愛すべきパイセン、芥ヒナコこと虞美人は吠えていた。

 

「項羽様が颯爽と敵を蹴散らし、原住民共に敬愛の瞳を向けられて、私が隣で『さすがです項羽様!』ってする展開はどこに行ったっていうのよ!あぁ、けどやっぱりあのお方には戦って欲しくないので安心している自分がいるぅぅぅっ」

 

「やっぱ、おもしれぇわこの人」

 

「申し訳ありませぬ。心を許した者の前では結構な頻度で感情が爆発してしまう御仁なもので」

 

 異聞帯に訪れて早々肉体的にも爆発して再生をしている虞美人をもはや見慣れた感じでスルーするカルデアの頭脳陣、ホームズとダ・ヴィンチちゃんはさほど脅威を感じない異聞帯について意見を交わす。

 

『う――ん、けど確かにおっかしいねぇ?出番が無かったと張り切っていた燕青君や呂布、李書文達も一緒に浮上出来るようにした筈なんだけど……』

 

『……シャドウボーダーも浮上出来なかったという点を考えると……。ふむ、ダ・ヴィンチ女史、私とゴルドルフ司令官も含め、男性陣は一度別世界のカルデアに引き戻るとしよう。そこからもう一度シャドウボーダーの浮上を試みてくれたまえ』

 

『それはどういう?』

 

『何、ただの仮説の検証だ。実証されたなら今回のロストベルトにおいて、私はナビゲート出来ないという事になる。もし、そうなった時は後の事は君に任せたよ』

 

 

 

 

 

 ――――

 

 

 

 

「つまり?理由は不明だけどこの異聞帯において女性以外の闖入者は全て弾かれると?」

 

『まー、そうだね。ホームズやムニエル君を始めとした男性陣がボーダー内にいなくなった途端、私達はこの異聞帯に浮上出来たみたいだし』

 

「はぁ――……。アンタ達、本当にカルデアの参謀役?男性陣って……ここにもう例外が出てるじゃないのよ。アホ後輩と蘭陵王はどう説明をつけるわけ?」

 

『現段階では判断材料不足だからマスター君に関しては何も言えないけど、蘭陵王()()()に関しては本人も自覚してるんじゃないのかな?』

 

 顔は見えなくとも声だけで厭らしい表情を浮かべているとわかるダ・ヴィンチちゃんの声に何故か蘭陵王は仮面の上からわかるぐらいに顔を紅く染め、内股になっていた。

 

「あっ(察し)ふーん……そう、女の子になっちゃったのね」

 

「お、お待ちになってください虞美人殿!私の性別は依然、変わらずです!」

 

「そっちの方が大問題よ!親友が一週間で仇敵に男のまま雌にされているとか……長い年月生きてきて初めての衝撃なんだけど!!」

 

「成程つまり性別というよりは心が乙女ならば、この異聞帯では女の子だと判断されると……。まぁ、俺的には蘭ちゃんのすべすべな肢体と乱れっぷりはついていようが完全に女の子判定だけど」

 

「うわーんマスター!止めて下さ――い!!」

 

「聞きたくなーい!!後輩(♂)と親友(♂)の濡れ場なんて聞きたくなーい!……っもしや項羽様もいない絶好の機会として私の体も狙っているわけじゃないでしょうね!?嵌めてくれたわねビースト!まさか異聞帯を使ってまで私に手を出そうとするなんて思ってもいなかったわ!」

 

「いや、さすがに人妻に手は出さないって」

 

 カーミラ、マリーアントワネット、ブーディカ、巴御前、千代女、紫式部、シータ(ラーマと3P)……etc。

 

「マスター、説得力が」

 

「まるでねぇや」

 

「ヤってみなさいよ!項羽様との安息の地をくれたお前に恩はあっても。そこまで許すつもりはないわ!抱かれるぐらいな舌を噛み切って死を選んでやるわ!世界とお前への呪詛を残してね!」

 

 不老不死の貴女にとっては結局いつもやってる事ではというツッコミは置いといて勝手に独りでに感情を昂らせた虞美人は自らの身を守るように両肩を抱き締めていた。私は他の人妻共と違って絶対に親愛のチンポに堕ちたりしないという誇らしい鉄の意志を感じた。

 

『あ――盛り上がってる所、悪いんだけど……』

 

 ダ・ヴィンチちゃんの声に虞美人が顔を上げれば、蘭陵王の白馬に「ま、マスター……そこは掴んではぁっ……んぅっ」とイチャイチャしながら二人乗りをしている彼等の遠く離れた姿が。

 

 安定のスルー。放置されたぐっちゃんパイセンにかける言葉がさすがの天才にも見つからなかった。

 

 そして温和さや淑女さの欠片も無い顔になっている虞美人に声をかける命知らず達が彼女の背後から……。

 

「おい、姉ちゃん。命が欲しかったら身ぐるみ剥いでここに置いてきな」

 

「アニキ、アニキ……!すっげぇ美人ですよコイツ!」

 

「殺すのは勿体無いんだな」

 

 「あ゛ん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その世界は後漢末期。三国志の始まり――。怪力無双の武将達も智謀張り巡らせる軍師達も民を統べる指導者達も強く、賢く、権力を持つ者は全て()である世界。有能な男は存在せず、歴史に名を残すのは全て女。

 

 帝都たる洛陽に突如として生えた巨大な白樹は終わりなく宙を貫いていた。

 

 異常現象に加え、積み重なる重税、満たされる事のない飢え、いくら働こうとも生活は豊かにならず、盗賊共が平穏を脅かす。群雄割拠のきっかけとなる世の乱れに無垢なる民達は救世主を求めた。

 

 その声に応えるように世には相反する二つの噂がまことしやかに囁かれていた。

 

 女の占い師曰く、天から降り立った御使いが洛陽に巣食う悪しき大樹を斬り落とし、天下に平穏を与えんと。

 男の道化師曰く、帝を守護せんとする大樹を破き、天下を阿鼻叫喚に叩き込む妖術使いが堕ちてくると。

 

 こんな荒唐無稽な噂が信じられているのだ。もはや帝に、漢に世を統べる力は無く、この時代は末期を迎えていた。

 

 

 

 

 

 

 ▲▲▲

 

 

「はぇ――、君が董卓……。今まで一番のギャップかも。ほっぺがぷにぷに」

 

「へぅ、へぅ……」

 

「ちょっと月にいきなり何してくれてるワケ!?牢屋に叩き込むわよ!?」

 

 マスター達が出会ったのは彼等の世界で語り継がれていた悪逆の限りを尽くしていた魔王の面影すらない異聞帯の『董卓』。

 

 

 

「もっきゅ、もっきゅ、もっきゅ」

 

「かの騎士王を彷彿させる食べっぷり……この少女がこちらの世界の『呂布』ですか……」

 

「まぁ、俺達がいる世界の呂布もお馬さんだし?それと比べれば」

 

「恋……お馬さんだった?」

 

「自分を呂布だと思いこんでいるケンタウロスもどきの話は止めなさい」

 

 呂布、張遼、華雄、たとえ女といえどもその名に恥じる事はない武力は董卓――月の道を切り開く確かな力となり。

 

 

 

 

「いやぁー、ほんま驚いたわぁ。男でこないに強いのウチ始めて会ったもんなぁ、蘭ちゃんもいい馬に乗っとるし――幽州の白馬なんちゃらにも負けておらへんな」

 

「いえ、私も神速の張遼と馬乗り達の憧れであった貴女と武を競えたのは望外の極みであります」

 

「かったいなー自分。恋人のあの御使いはんみたいにもっとはっちゃけてもええのに」

 

 呂布に馴れ馴れしいとマスターに飛び蹴りを入れた陳宮だったがあっけなく受け止められ、肩車される。そのまま城壁を垂直で駆け上がっていくマスターに泣き叫ぶ陳宮。異分子であるマスター達は少しずつ彼女達に受け入れられつつあった。

 

「いやぁ――。こんな可愛い娘を伴侶にしてるなんてほんま羨ましくて妬けるわ~」

 

「待って下さい……こ、恋人というのは……その、誤解があるかもしれませんが私は女ではなく男であって……いえ、まぁ、主に心身共に雌にされたという点では女なのかもしれませぬが……」

 

「ふぁ?………………………………いやぁ――そっか。大丈夫!ウチはそういうのに偏見は無いで!別段珍しくも無い話やし!?そっかぁ、そっかぁ、そっかぁ――」

 

 

 

 

「ちょ、アンタ本気!?」

 

「それは駄目だ月ちゃん。君が覚悟を決めているのはよくわかった。けど、全てを敵に回すのには君は優し過ぎる」

 

「だからといって、貴方に全てを負わせるなんてッ――」

 

「いいから黙ってやらせておけばいいのよ、董仲穎。コイツ、現在進行形で世界を敵に回している大悪党なんだから。お前よりもよっぽど魔王役に相応しいわよ」

 

 

 それは権謀渦巻く(まつりごと)に飲み込まれながらも大切な者の為に抗おうとする少女、『董卓』の物語。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ▲▲▲

 

 

「世を救う御使い。世を乱す妖術使い。はたして貴方はどっちなのかしらね?」

 

「さぁ?それは君が好きに決めればいい。お得意の勘でさ」

 

 一族の為、密かに牙を磨き続けている江東の麒麟児。小覇王こと異聞帯の『孫策』。

 

 

 

 

「武もあり、奇抜だけど知もある。御使いという名もあるのなら、貴方の種を孫家に入れるのも悪くないわね」

 

「正気ですか姉様!?」

 

「良かったじゃない後輩。お前の一番の得意分野よ。ていうかもう、この世界にいる女全員後輩の手で堕とせば異聞帯攻略完了じゃない?」

 

「面倒臭くなって最低の案を出すのは控えて下さい」

 

「アガルタの焼き直しかな?」

 

 

 

 

「ゲホッ、ゲホッ……悪いが私の体の事は黙っていてもらえるか?孫呉はこれからなのだ、余計な事でその歩みを遅らせるわけにもいかぬ」

 

「周瑜さんはこうおっしゃってますが?婦長さん」

 

「緊急治療です」

 

「おいっ待て!私の話を聞いていたのか!?ちょ、首が締まっ……」

 

「却下です。この世界に病気を治す事よりも優先すべき事項は存在しません。貴方がこの国家のせいで体を病んだというのなら、私が先にこの国を滅ぼします」

 

「落ちたな(物理的に)」

 

 異聞帯にも関わらず、主要な人物は全て女性にも関わらず、彼女達の身に降り掛かるのはマスター達にとって既知感があるものばかりだった。まるで正しいものに戻すように世界が彼女達を殺しに来ていた。

 

 

 

 

「毒矢……?魏の奴らそこまで堕ちたか!?ちょっと■■!?無事!?」

 

「生憎とその程度の毒は効かない体でね」

 

「よくもまぁ、我以外が扱う無粋な毒をマスターの体に入れてくれたものよ。おい暗殺者、さっさと雑兵を始末せよ」

 

「待って下さい……。マスターの毒を今吸い出している所なので……じゅるぅ、ちゅむぅ、んふぅ、あっ」

 

「その必要が無いのは貴様が一番知っておるだろうが!どこで盛っているのだ貴様は!」

 

「いいわよ。もう私が始末している。……それよりも貴女達、一体どこから現れたの?」

 

 異聞たる三国大戦争の地に別世界、数多の歴史から乙女達が親愛の獣によって招かれる。

 

 

 

 

「いえーい!燃え尽きるほどレッドグリフ!こんな大炎上戦争にわしを呼ばないとか!あちちちちち!?……えっ、ちょっと待ってこの船沈んでない?わし召喚される所間違った?取りあえず、親指上げながら水面に沈めばおK?」

 

「抗ってみなさい孫伯符。まがりなりにも項羽様の「覇王」の名を継いでいるのなら、運命に抗ってみなさい」

 

「ヒナコ……貴女」

 

 

 それは歴史の修正力。襲いかかる因果と戦い続ける小覇王、『孫策』の物語。

 

 

 

 

 

 

 ▲▲▲

 

 

 

 

 

 

 

「桃園ブラザーズではなく、桃園シスターズとはなぁ」

 

「お願いします。私達に力を貸して欲しいんです!誰も泣かずに済む、皆が笑顔でいられる世の中にしたいんです」

 

「えぇ――、うっそでしょ。この栄養が全部胸にいってそうな頭お花畑が劉玄徳ぅ?」

 

「ぐびじ……コホン、ヒナコ殿。もう少しおぶらぁとに」

 

 未だ芽吹く事の無き王の才。この乱世で最も弱く儚い姉妹達が抱く理想は多くの者が夢物語だと鼻で笑い、実現困難な道。桃園の三姉妹達は担ぐ神輿は御使いか、あるいは悍ましき悪魔か。

 

 

 

 

 

「えぇ……まったくご主人様は本当に……。桃香様に朱里に雛里に鈴々に星にと……ふふふふ、少々どころの話でなく女癖が悪過ぎるのでは?その性根、今ここで文字通り叩き斬ってあげましょう」

 

「今よ、関雲長!私ごとやりなさい!」

 

「やだ羽交い締め?パイセンってば、俺が詰れる時だけここぞとばかりにノるんだから」

 

 ピコン。

 

【実は一番怒っているのはそこでなく、どうして桃香様の次に付き合いが長い自分には一切手を出してこないのかという怒りと寂しさと悲しみが混ざった複雑な嫉妬心を持て余しているが馬鹿正直にそんな事を言えるワケもなく。軍の規律を守るというもっともらしい事を言って、心の靄を晴らそうとしている愛紗なのであった】

 

「おやおや、青筋立てている顔でそんな愛い事を想っていたとは……。全く、便利な術であるな」

 

「何をニヤニヤしている星?……まさか式部殿!また貴女か!」

 

「はうわ!?申し訳ありません!申し訳ありません!私の『泰山解説祭』が申し訳ありません!」

 

 

 

 

「はわわ、それで御使い様と蘭陵王さんはどちらが受けなのでしょうか?」

 

「マスター。稀代の軍師、諸葛孔明からの第一声がこれとは眩暈がしてきたのですが」

 

「俺は基本的に愛を与える方が好きだから?当然、蘭ちゃんを責める側だよねぇ」

 

「お戯れをマスター」

 

 ピコン

 

【軍師達の言葉に応えなくなったのか太腿を撫でる主の手。そしてそれを払い除けようとする動きだけは見せるが妖艶かつ愛情に満ちた彼の手に触れられてしまうとどうしてもよがり狂う程に啼かされ、喘がされた夜の事を思い出してしまい、拒絶の意が弱まってしまう。ここに幼子達の目がなければ、主の愛欲に溺れるのも吝かではないが……。このような陽が昇る時間から淫行に耽るのは彼の忠臣として相応しい姿とは言えないのでは、だが彼の恋人という側面ではやはり応えるべきという相反する二側面に揺れてしまう蘭陵王なのであった】

 

「だから『泰山解説祭』ぃぃ!!」

 

「すみません!美味しい場面に遭遇してつい暴発してしまいましたぁ!」

 

「はわわわわわわわわわわぁぁあぁぁっ!!!!やっぱり生ものは破壊力が違うね!雛里ちゃん!」

 

「うん朱里ちゃん!この熱量を忘れない内に刑部さんとしぃたさんの所に行こう!式部先生も一緒に!次の新作の発想がもりもり湧いてきた!あわわわわわわわわわぁぁっ!」

 

「ふっ、またこの世界の文明の発展に力を貸してしまった……」

 

「あれが『伏竜鳳雛』……いえ、ここは異聞帯、ここは異聞帯、ここは異聞帯」

 

 決して楽ではなく、民達の為に理想の為に邁進する苦しい戦いではあったが劉備――桃香が望んだ笑顔が確かにあった。彼女は感謝していた……何の力も無い自分に力を貸してくれる仲間達に自分を導いてくれるご主人様に。

 

 

 

 

「ねぇ、ご主人様……。私、最初から間違っていたのかな?曹操さんが言うように私が言う夢は子供が描く絵空事で、私がやっている事はただの偽善のなのかな?耳障りの良い言葉で皆を騙していただけなのかな?」

 

「君がやっている事はその都度、目の前で苦しんでいる人間を助けているだけだ。君が誰かを助けている間に苦しんでいる人は当然いるだろう。全ての人間を救うなんて事はきっと君には出来ない」

 

「…………」

 

「でもそれでいいんだ桃香」

 

「へ?」

 

「目の前にいる他者の苦しみをまるで自分のように共感出来て、手を差し伸ばさずにはいられない。当たり前のように溢れる優しさを分け与えてくれる事が出来るから、今君の後ろにはこんなにも付いてきてくる人がいる。全てを救うなんて事は誰にも出来やしないんだから」

 

「ご、主人、様……」

 

「どんなに助けようとも全ての人間は救えないなんて諦めと同じ憐みを持ったら、君はきっと人間じゃない悍ましい化け物になってしまう。だから、桃香。今、君の中にあるものを数えよう。まだ見ぬ君が救うべき人達じゃなくて、君が助けてあげた人達の事を。君には今、何が残っているかな?」

 

「私……あっ、う、うわああぁあぁぁぁあっ…………」

 

「やっと、泣き顔を見せてくれたね」

 

 それは残酷な戦乱の世を何度も目にして……それでも理想を捨て切れなかった一人の女の子、『劉備』の物語。

 

 

 

 

 

 ▲▲▲

 

 

 

 

「どうやら陳留は百合の国らしい。主である曹操は気に入った女の子はとっかえひっかえ……というわけで女装して潜入したいと思います……蘭ちゃんは――今のままでいいか」

 

「え――嫌よ。そんな気色悪い所に行くわけないでしょ。私の貞操に何かあったらどうしてくれるのよ?」

 

「爆発すればいいんじゃね?」

 

「それもそうね」

 

(そこで納得するのですか……)

 

 マスター達が訪れたのは誰よりもこの国の未来を憂いてる王。三国の姫達の誰よりも強い覇の意志を秘めた曹孟徳が統べる陳留。

 

 

 

 

「そうか……。君も曹操様に仕官しようと。何か考えがあるみたいだね、言わずともわかるさ(黒髪ツインテール美の女神スタイル)」

 

「あ、い、いけません。私には曹操様と……心に決めたお方が」

 

 壁ダァンで逃げ場を失った荀彧――桂花に手っ取り早く曹操と謁見する方法を聞き出そうとする女殺しの獣。彼女の瞳は蕩け、息は甘く荒い物に変貌を遂げる。

 

「そのキュートなフードで隠そうとしても無駄さ。溢れんばかりの王佐の才が俺に教えてくれているよ。君が智謀に長けた人だってことは」

 

「あ、あ、あ――、そんな、駄目よ桂花……。こんな腰の軽い女のような真似、許されるわけが、あぁ、でも流されちゃうっ」

 

 

(顔を隠そうとした所で頭巾を外し、顎くいっからの急接近。さすがはマスター)

(息を吸うように女を落とすわね。やっぱ人類悪だわあの後輩)

 

 

 

 

「結構。かるであだろうが、天の国だろうが、有能な者は私は受け入れるわ。それで蘭陵王、一つ聞きたいのだけれど……あれは何をしているのかしら?」

 

 ――いやぁ――!!放せ!放しなさい!!妊娠するでしょ!馬鹿!!

 

 ――はっはっは、面白い事言うね桂花ちゃん。肌が触れただけじゃ子供は出来ないよ?いいかい子作りというのはおしべとめしべが。

 

 ――本気で言ってるわけないでしょ馬鹿!死ね!精液撒き散らして死んじゃえ!!ていうか真名で呼ぶんじゃないわよ!殺すわよ!!

 

 ――おやおや寂しい事をおっしゃる。あんなに熱く語り合った仲だというのに……。録音もしているから聞いてみる?『あっ、荀彧だななんてそんな寂しい、桂花とお呼び下さい……。御使い様ぁ♡』。

 

 ――あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁっぁあああああっっ!この荀文若、生涯最悪の過ち!!死ぬ、死んでやる!お前を殺して死んでやるわ!!

 

 

「主殿が男とわかり自殺を決行しようとする荀彧殿とそれを止めながらもその醜態さえも愛でている主殿の図です」

 

「止めなさい……」

 

「御意」

 

 金髪ドリルの身長と胸部が若干貧しいが王としてのカリスマは圧倒的な曹孟徳こと華琳はマスター達を受け入れた。彼が御使いだろうが、妖術使いだろうが、どちらでも彼女にとってはさほど問題ではない。清濁呑みこんで扱うだろう。

 

 

 

 

「なんやこれぇ――!?天の国ではこんな絡繰りがあるんかい!!な、なぁ、ちょっとばっかし弄ってもええかな!?」

 

「却下に決まっているでしょう。それと絡繰りではなく、メイガス・エイジス・エリザベート・チャンネル略してメカエリチャンと呼びなさい。胸部装甲が気に食わない女」

 

「めいが……?よくわからんけど、滅茶苦茶凄い事ようわかった。なぁ、何が出来るん?出来るん?その絡繰りで何が出来るん?」

 

「パイロット候補……」

 

「オーダーを与えようメカエリチャン。宝具解放を許可する」

 

「いいでしょう、テイクオフ。……スカートフレア! チャームサイト! ソニックシャワー! ラング展開。『鋼鉄天空魔嬢(ブレストゼロ・エリジェーベト)』! 」

 

「ぴゃああああああああああああああぁぁっ!!」

 

「大変なの!あまりの興奮で真桜ちゃんが女の子が見せてはいけない顔になっているの!」

 

「隊長大変です!めかえりちゃん殿の攻撃が城の屋根を一部削り取ってしまったようで華琳様が血管を切れさせる程の激怒っぷりでこちらに向かっているようです!」

 

「ようし華流出亜隊、退散!」

 

 楽進(凪)、李典(真桜)、于禁(沙和)の3人を曹操から直属の部下として与えられたマスター。都の警護隊、

 華流出亜(カルデア)隊の隊長としてその職務をまっと、まっと、全うして、いる……?

 

 

 

 

 覇王と親愛の獣は月光の下で語らう。

 

「貴方は王ではないわね……。尋常ならざる力と人とは思えない視点を持っている……。稀に私でも圧倒される程の覇気も……。けど、それでも何故か貴方を王とは思えないの」

 

「そりゃあ、色んな王様を今まで見てきたけど……。やっぱり自分はそんな柄じゃない。国よりも背負いたい物があるからね」

 

「へぇ……。じゃあ、貴方は一体、何になりたいのかしら?」

 

「一家を支える大黒柱かな」

 

「ぷっ、はは、あははははは!そう、そうなの!これほど漢を振り回した貴方が!それだけの力を持った貴方が!国よりも家族を背負いたいって……よっぽど重いのかしら?貴方の家族は」

 

「重いというか、たくさんいるからね。だから俺は自分と彼女達の為に絶対に折れない柱になりたいのさ」

 

「そう……。そんなに太い柱なら、私も少しぐらいは寄り掛かっても――いいかしら?」

 

 それは小さな背中で国を背負い、覇王たらんとする少女、『曹操』の物語。

 

 

 

 

 ▲▲▲

 

 

 

 

 

 何度も繰り返される乙女達の三国志演戯。その裏で暗躍する()()の道士達の影。

 

「ンンンン、外史!外史!大変結構!人の葉は言の葉、やがてそれは世界を育てる大樹となる。人の数ほど物語があるというのなら、あぁ――――増えすぎたものは伐採しなければなりませぬよなぁ?」

 

「貴方がたの世界でいう剪定事象ですか……。もはやこの際名称はどうでもいいでしょう。我らは目的を同じにしている。そう捉えて構わないのですね?」

 

「おい于吉、本気でコイツを信用するのか」

 

「仕方がないでしょう左慈。やっと御使いなんて物が存在しない外史が出来上がったと思えば、今度は世界の外側からの来訪者と来ました。しかも不運極まる事に今度の御使いは我らだけではどうにもならない怪物中の怪物。ならば彼と相対した事がある経験者に力を借りるのは道理」

 

「ちっ……」

 

「ン、ふふふふふふふふ、嫌われてしまったようですね。まぁ、そんな貴方様に朗報を、憎して止まない御使いという存在。その決着の場は拙僧が下拵えしてあげますとも」

 

 

 

 

「何故邪魔をする!何故この世界を認める!カルデア!人類最後のマスター!!この世界は根本から狂っている!人形共の茶番劇だ!間違っている!誤っている!壊れている!貴様らと我らはもはや目的を同じとしている筈だ!!そうやって今までも正しくない世界を滅ぼしてきたのだろう!?なのに、何故――」

 

「正しい世界、正しくない世界、そんなもの神様にだって決める事は出来ないだろうさ。なぁ、左慈そんなお題目はいいんだよ。『俺はこの世界が心底気に食わない』そう叫んでくれた方がまだ印象がいいぞ」

 

「き、さま――」

 

「もちろん俺はこの世界が嫌いじゃないから全力で抗わせてもらうが」

 

「あぁ、そうだ!何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も繰り返されるこの世界の管理を任されて気が狂いそうだった!俺は心底!この世界が嫌いだよ!!カルデアのマスター!!」

 

「ほら、入ったぜ。お前の射程距離内に。出しな、左慈。自分が一番信用する武器()を」

 

 

 

 

「どうも初めましてこんにちはお久しぶりです。人間の皆々様方。拙僧の名は『羅漢中』。この異聞なる三国志演戯を書き綴る者。以後お見知りおきを」

 

「嘘つけ、ぜってぇキャスターリンボだろてめぇ」

 

「下総の借りを返しにきましたぞ。親愛の獣殿ぉ。ンンンン、貴方の要望通り、こうして、今度は本体で」

 

 

 

 

「いいから手を伸ばしなさい後輩!このままだとお前がこちらに帰ってこれなくなる!!」

 

 回を重ねる事にシャドウボーダーからの通信が切れる。呼び出せる彼女達の数が減っていっている。カルデアが存在する世界線からの縁がどんどん薄まっていく。それはやがて――。

 

「ここは下総のようにミッシングベルトではなく、かといってロストベルトでもなし。ンンンン、陣営を変え、人物を変え、進行を変え、生き死にを変え、ここは三国志という概念の中でグルグル回っているエンドレスベルト。いつまでも綴られている終わりなき創作地獄。尾を咥えているウロボロスのように!」

 

 だが、単独顕現を持っているビーストたる彼ならここから脱出する事は容易。しかし、それは。

 

「出来ませぬ!出来ませぬとも!出来ませぬよなぁ!ここの乙女達と縁を交わってしまった貴方様にそのような悪行を!主人公たる貴方がいなくなれば、この世界がどうなるか予想出来ますかな?彼女達は完全に別の物語へと移行する。ンンンン――!即ち、貴方が知る、貴方を知る彼女達、死そのものを意味しているのですよ」

 

 ここは異聞帯のように失われているに非ず、ロストベルトよりは強固だが、正史よりは脆弱。続く未来が用意されていないのではなく、未来から過去に戻ってしまう世界を今までと同様に彼が『白式官能』で自分達の世界に強奪してしまった時、どうなるかは誰にもわからない。

 

「この世界。貴方がいた世界。両方の彼女達……選べないでしょう。捨てれないでしょう。諦められないでしょう。それでこそ、天秤の中心に立つ零のビースト。片方に傾く事のない親愛の獣!下総で流石に学びましたよ拙僧も貴方とは……あぁ、ンフフフフフ、馬鹿正直に向かい合うのはもう止めだと」

 

 高らかに肉食悪鬼、悪霊の王。『羅漢中』――蘆屋道満は勝利の嘲笑を大陸中に響かせる。

 

「拙僧がもう手を出す事は無いでしょう。どうかどうかこの世界から出る事なく終わりなき乙女達の淫瀾に浸って下さいな。理を超えた獣の退治方法は打ち滅ぼすのではなく、封印する。定番でしょうな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ、マシュ。俺はやっぱりどんなに多くの人を愛しても代わりがいるから大丈夫だなんて思えないんだ。誰か一人でも欠けちゃったらきっと俺は()()()()()()()()

 

 人類最後のマスター、親愛の獣史上、最大の窮地が訪れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「勝った!勝った!勝った!完全に封じたぞ!親愛の獣!ビースト0/デアー!!貴様がもはや転廻する三国志から脱出する術は無し!この巻物からはその要因が一切排除されている!三国志が滅びる事はなく!巻かれ続けるこのエンドレスベルトはンンンン、もはや強固さだけなら、量子記録固定帯(クォンタム・タイムロック)に相当する!!貴様なきカルデアなど、取るに足らず!!ン、ンふ、フフフフフフフフフ、ふひひひひひひひははははははははははは、ハハハハハハハハ――!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「召喚に応じ、推参した。私の名はライネス……いや、ここは敬愛すべき愚兄が世話になっているカルデアの流儀に沿ってこう答えよう。サーヴァント、ライダー、『司馬仲達』。この三国志を()()()()()()だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




劇場版『おいでよ カルデアの森』

『乙女転廻演戯 三国識』

近日公開。












恋姫夢想、嫌いじゃないんだ。









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