ご注文はうさぎです! (兎丸)
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ラビットハウス

ごちうさに影響されて書きました!

どうぞ見ていってください!


 木組みの家と石畳の町。

 この落ち着いた雰囲気を見せる町には、ついこの間引っ越してきたばかりだ。

 高校入学の際、下宿先も決定したのだが――――場所がまったくわからない。

 

 「母さんの奴、せめて地図くらいよこしてとけよな......」

 

 よく分からない町に放り出された挙げ句、地図すらも渡してもらえない始末。

 こんな同じような建物が並ぶ町中で、下宿先を見つけるなんて無理な話だろ。

 

 かれこれ一時間はこの町をさ迷っている。同じ景色だって何度見たことか。

 

 というか、これってグルグル同じところを歩いてきてるんじゃない?もしかして俺、帰り道すらも分からなくなったんじゃない?

 

 不安と疲労で、生きるために必要な筋肉しか兼ね備えてない俺の足は、すでに限界を迎えていた。

 

 「腹減った......何処かで一休みしたいな......」

 

 どこか休めるような所を探していると、近くに『ラビットハウス』と書かれた看板がある店を発見。

 休憩がてらそこで小腹でも満たそうと考え、木で作られたさわり心地のよいドアを開ける。

 

 店内は穏やかな雰囲気に包まれており、コーヒーの良い香りが鼻をくすぐる。もしかしたら、この店は当たりだったかもしれない。

 

 「いらっしゃいませ」

 

 青く、長い髪が特徴の少女が俺をもてなしてくれる。頭の上には、見たことがない珍しいうさぎを乗っけている。

 

 すごく触りたいという欲求にかられてしまう。それほどさわり心地のよさそうなうさぎだ。

 

 いや――――そもそもアレはうさぎなのか?

 

 適当な席に腰を下ろすと、俺はコーヒーと軽い軽食を頼んだ。

 

 せっせとカウンターまで向かい、コーヒーを淹れる少女。見たところ年齢はまだ中学生位だろうか?

 親の店の手伝いかは知らないが、よく働く良い子だという印象が根強く染み付いた。

 

 というか、ここの店長らしき人が見当たらない。

 まるで彼女が一人でこの店を切り盛りしているようなものじゃないか。

 

 座りながらのんびりとコーヒーが出来るのを待つ。思えば、母さんもコーヒーには精通していた記憶がある。そのせいで色々とコーヒーのことを仕込まれたな......。

 

 まあ、そんな昔のことはとっくに忘れてしまったが、何かを必死になったのはそれだけかもしれない。

 

 「お待たせしました」

 

 テーブルの上に、コーヒーとサンドイッチが乗った皿が置かれた。

 

 コーヒーに口をつけると、香ばしい匂いとほどよい苦味が染みでる。癖になってしまいそうな味だ。

 彼女は本当にコーヒーを淹れるのが上手い。そうとう仕込まれたのだろうか?

 店を任せられているのも、これなら納得がいく。

 

 俺がコーヒーを嗜んでいると、店内の扉が開けられる音が聞こえた。

 

 扉の先には、目をキラキラと輝かせる少女が佇んでいた。

 

 




ここまで読んで頂きありがとうございます!

誤字脱字などありましたら、是非ともご報告おねがいします!


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1 ひと目では尋常じゃないもふもふだとは気付けなかったよ

よっし、早めに更新できたぁ!!
是非見ていってください!徹夜したんでみてくださぁぁい!!お願いします!


 「いらっしゃいませ」

 

 青髪の少女が、キラキラと目を輝かせる少女をもてなす。半分の花の形の髪飾りがトレードマークが印象の少女だ。

 外見から見ても、どこか落ち着きのないように見えるのは俺だけじゃないはず。

 

 「うっさぎ、うっさぎ~」

 

 テンションが高く、店内をウロウロと何かを探しながらさ迷っている。カウンター席の下を見たり、キョロキョロと辺りを見渡したり。

 

 まさかとは思うが、うさぎを探しているんじゃないだろうか?

 

 「うさぎがいない!?」

 

 案の定、うさぎを探していたらしい。

 

 店の名前がラビットハウスだからと言って、うさぎが店に放し飼いされてるわけないだろう。常識的に。

 

 青い髪の少女も、なんだこの客?という視線を送らせている。

 

 ハイテンションな少女は店内をじっくりと見ながら回ったあとに、俺の座る席の向かい側に腰を掛けた。

 

 え......?な、なんで?

 どうしてわざわざ俺と同じ席に座ってきた?

 

 「この町、とても楽しそうで良いですねっ」

 

 「へ?あ、ああ!そうでひゅね!」

 

 少々混乱している俺をお構いなしといった風に話しかけてくる。驚きを隠せず、ワンテンポ返事が遅れてしまった挙げ句、変に噛んでしまった。

 

 彼女の笑顔は純粋そのもの。きっと穢れを知らないのだろうな、などと感想を心の内で述べる。

 青髪の少女が水を持ってくると、頭の上に乗っている白い生き物に興味を示す。

 

 「モジャモジャ......?」

 

 「これですか?これはティッピーです。一応うさぎです......」

 

 「う、うさぎ!?」

 

 髪飾りの少女が、うさぎと聞いて嬉しそうに食い付く。

 

 「えっと、ご注文は?」

 

 「じゃあそのうさぎ!」

 

 「非売品です......」

 

 即座に却下する青髪の少女だが、髪飾りの少女も簡単には食い下がらず、もふもふしようとおさわりをご所望のようだ。

 コーヒー一杯で一回もふもふ可能みたいだが、髪飾りの少女はなんと三杯もコーヒーを注文した。

 

 流石にそれには青髪の少女も驚いていた。

 

 注文をうけた少女は、例にならってコーヒーを淹れ始め、それをうさぎが隣で眺めている。こう見てると、非常にシュールな眺めだ。

 

 「そう言えば、君のお名前は何て言うの?」

 

 彼女がコーヒーを淹れているのを待っていると、名前を唐突に聞かれた。

 隠す必要もないだろうと思い、本名を教える。

 

 「え?お、俺の名前?えっと......ジン、芹沢 ジン。そっちは?」

 

 「保登 心愛だよ~。ココアでいいよっ!よろしくねっ!ジンくん!」

 

 「ココア......ね、まあよろしく」

 

 社交性が高く、テンションも高いこの少女の名前はココア。女の子と友達同士になるなんて思ってもいなかった。けどまあ、これっきり関係だろうがな。

 

 ただ同じ店に入ったってだけのよしみだ。

 

 「お待たせしました」

 

 コーヒーがテーブルに三杯置かれる。どれを見ても旨そうだ。旨そうだが――――む、無理だろ......これ全部飲み干すとか腹が持たねぇだろ............。

 

 「コーヒー三杯頼んだから、三回触る権利を手に入れたよ~」

 

 「冷める前に飲んでください」

 

 「あうぅ!そ、そうだね!」

 

 頭のうさぎに手を伸ばすと、先にコーヒーを飲むよう青髪の少女から制止を受ける。

 

 俺の心配をよそに、コーヒーを一つずつ啜っていくココア。

 

 一杯目。

 

 「この上品な香り、これがブルーマウンテンか~」

 

 「いいえ、コロンビアです......」

 

 ココアの奴、ドヤ顔で外しやがった。

 

 お次は二杯目。

 

 「この酸味、キリマジャロだね」

 

 「それがブルーマウンテンです......」

 

 そして三杯目。

 

 「安心する味!これインスタントの――――」

 

 「うちのオリジナルブレンドです......」

 

 「え............?」

 

 「銘柄知ってんのに何で全部外した!?」

 

 思わず慣れないツッコミをいれてしまった!クッソ少し恥ずかしいぞ......これ......!

 

 「で、でも全部美味しい!」

 

 あの銘柄当てゲームは何だったんだ......。

 

 約束通り、三杯コーヒーを頼んだココアは、うさぎを受け取り、幸せそうな顔をして撫でている。結構だらしない顔になっているが、あえてここは指摘しないでおこう。

 ただ単純に見ていたいだけだ。邪推な心ではない。

 

 「ハッ!いけない、ヨダレが......」

 

 言って口元を拭うココア。

 

 「ノォォーーーーーーー!」

 

 刹那、急にココアの手の中のうさぎが暴れ始めた。ココアと俺は驚きで目を丸くしていると、気のせいだと青髪の少女がごまかした。

 

 「それにしても、この感触クセになるな~」

 

 うさぎを頬擦りしたり、抱きしめたりするココア。何だか、うさぎも表情から嫌々撫でられているように見える。

 青髪の少女がもう返すよう言っても、ココアは聞く耳持たずにうさぎを撫でまわしている。

 

 「えぇぇい!早く離せこの小娘が!」

 

 「ふぇ!?なんだか、このうさぎにダンディーな声で拒絶されたんだけど!?」

 

 また暴れだしたうさぎ。今のはしっかりと聞いていたぞ、明らかにこのうさぎが喋った。 

 

 「それは私の腹話術です」

 

 「「え!?」」

 

 ココアと二人揃って驚きの声が出てしまう。

 この子、腹話術もできるのか!?今の若い奴は末恐ろしいぜ......。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「私、春からこの町の学校に通うことになったの~」

 

 「奇遇だな。俺もそうなんだよ......けど、下宿先探してたら迷っちまって......香風さんって人の家なんだけど......」

 

 「えぇ!?そうなの!?私もだよ!引っ越してきたばかりだから、道分かんなかったんだ!」

 

 いや、そんな強調して言うような台詞じゃないよね?

 

 ココアの様子を横目に、コーヒーを一気に飲み干す。ココアがうさぎを撫でているのを見ていて、自分のコーヒーを飲むのをすっかり忘れていた。

 

 ............というか、ココアと下宿先一緒かよ。

 

 ココアもこちらに引っ越してきたばかりの人間なら迷うのも仕方ないとは思う。ポケットから地図らしき物がはみ出て見えるのはきっと気のせいだ。

 

 「香風はうちです......」

 

 チノが香風という言葉に反応して口を動かす。

 

 「「うえぇ!?」」

 

 本日、三度目の驚き。まさか、こんな偶然に辿り着けるなんて......偶然を通り越して奇跡だな。

 ココアは青髪の少女の手を握り、運命だのなんだのと喜んでいる。

 

 「私はチノです。ここのマスターの孫です」

 

 「よろしくねっ、チノちゃん」

 

 「はい、よろしくお願いしますココアさん。それと、ジンさん」

 

 「お、おう......よろしくな」

 

 いや、本当......奇跡的にも辿り着けたことを心から感謝する俺であった。

  

 

 

 




ここまで、読んで頂きありがとうございます!

お次はリゼちゃんですね。

誤字、脱字などありましたらご報告おねがいします!
勿論、感想も心よりお待ちしてますよ!


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2 ひと目では尋常じゃないもふもふだとは気付けなかったよ

ガンガン投稿して行くぜ!

それにしても、文章が短くて申し訳ないです......


更衣室で、チノから渡された制服を受け取る。

 

 この制服は、ここの先代のマスターが着ていた物を着させてもらっている。少し俺には大きいかもしれない。先代のマスターは中々身長が大きかったのだろう。

 

 俺自身はそこまで身長が高いわけではないが、小さいというわけでもない。

 

 あとよく目付きが悪いとか言われるが、そこは全く気にしていない。というか、もう開き直って、これが俺のチャームポイントだということにしている。

 

 「にしても、お姉ちゃんって......」

 

 ココアの奴、チノが寂しそうに見えたみたいで、お姉ちゃんになるとか言い出しやがった。挙げ句の果てには抱きつきもしたし......よく初対面の人間にあんなことできるな。

 

 若干チノも嫌そうな顔をしていたが、まあ当然と言えば当然だろう。

 

 着替えを終えさせ、更衣室から出るとココアも着替えが終わったようで更衣室から出てくる。

 

 「あ、ジンくんの制服似合ってるね!」

 

 「そうか?ちょっと堅苦しい感じがするけど......」

 

 ココアの制服もよく似合っていると思う。けど、個人的にはチノの制服姿の方が好きだが。

 

 ココアの後からチノともう一人知らない少女が更衣室から出てくる。制服を着ているあたり、彼女も同じバイトなのだろうか?

 

 「あ、紹介するねジンくん。この人は、ここのバイトのリゼちゃんだよ~」

 

 「ジンとか言ったな。同じバイトとしてこれからよろしく頼む」

 

 「えっと......よ、よろしくな」

 

 ツインテールと紫色の髪に、容姿端麗でスタイルがいい。一言で言うのなら美少女。

 

 彼女のような人と同じ職場で働けるなんて光栄だ。主に下心が中心的に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「それじゃあ、まずはこのコーヒー豆が入った袋をキッチンまで運ぶぞ」

 

 俺達は、コーヒー豆を運ぶべく倉庫の中に入る。

 

 コーヒー豆が置かれる倉庫は、それ以外にも色々と置いてあるが気にする必要はないだろう。

 

 「お、重い......!これは普通の女の子には無理だよぉ~!」

 

 ココアが袋を一つ持つと、重そうに声をあげる。俺も一つ袋を持ってみるが、持てないことはなくとも結構重い。

 

 (リゼも持つのはキツいだろうな......)

 

 と、リゼの方を見てみると、軽々しく持ち上げるリゼの姿があった。

 

 俺と目があった瞬間、すかさず袋を下ろして一言。

 

 「あ、あぁ!確かにキツいな!普通の女の子には無理だ!普通の女の子には......」

 

 いや、無理があるだろ。

 

 見たぞ、軽々と袋を持ち上げるたくましいお前の勇姿を。

 

 それを見た俺は、一体どう反応すればいいんだ?

 

 とりあえず、見なかったことにして、リゼとココアの二人は、小さい袋へと手をかける。

 

 「小さい袋も重いぃ......!一つ持つのでやっとだよぉ......!」

 

 小さい袋も、どうやら普通の女の子には重たいらしい。

 リゼは軽々と持ち上げてるけどな。二つ。

 

 案の定、リゼはその袋も重たそうに振る舞い始めたが、時すでに遅しというやつだ。

 

 やめてくれ.......こっちを見るな。

 お前が普通の女の子だということは分かったから、「何も見なかったことにしろ」なんて視線を送るんじゃない。

 

 視線だけで殺されそうだ......。

 

 「とにかくこれ、運ぼうか......」

 

 目の行き場を無くした俺は、俯きながら小さく呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 袋をキッチンへと運び終えた俺達は、カウンターでメニューを覚えさせられた。

 

 「二人とも、メニュー覚えとけよ?」

 

 そう言って、リゼからメニューを渡される。

 

 コーヒーの種類が多すぎて、覚えるのがややこしそうだ。

 暗記は得意な方だが、ここのメニューは名前も地味に難しく量も多い。

 

 「コーヒーのメニューが多くて難しいね.....」

 

 「そうか?私は一目で暗記したぞ?」

 

 「ひ、一目で!?これをか!?」

  

 俺は思わず声をあげて驚く。

 

 全部を暗記するにも数日以上は必要そうなのに、これをたった一目で暗記だって?

 

 「訓練されているからな」

 

 「く、訓練?」

 

 「リゼちゃんはね、お父さんが軍人さんなんだよ~」

 

 成る程。

 

 色々と仕込まれているせいで、あの重たい袋も持ち上げられたんだな。

 

 にしても、父親が軍人って。ウェイトレスというよりも用心棒の方がしっくりくる。

 

 「チノなんか、香りだけで銘柄を当たられるし」

 

 「私より大人っぽい!」

 

 「ただし砂糖とミルクは必須だ」

 

 「なんか今日一番安心した~」

 

 持っているノートで顔を隠しながら照れている。年相応なところもあるらしい。

 まあ、俺も砂糖がないと、とてもじゃないが苦くて飲めん。

 

 逆にコーヒーをブラックで飲むことができる人間は味覚がおかしい。どうしてあんなに苦いものを美味しそうに飲めるんだ?

 

 角砂糖は四個でも入れないとな。

 

 「リゼちゃんやチノちゃんみたいに、私も何か特技あったらな~」

 

 二人が羨ましそうに頬杖をするココア。

 

 俺もこれといった特技があるわけでもないので、チノとリゼが羨ましい。

 

 「そういやチノ、そのノートなんだ?」

 

 チノが手に持っていたノートが気になったので聞いてみる。

 

 「春休みの宿題です。空いた時間にこっそりやっています」

 

 「宿題やりながら仕事とか、キツくないか?」

 

 「いえ、やりたくてやっているのですから、へっちゃらです」

 

 そう言ってノートを開いて中身を見せてくれる。

 

 えぇ......仕事もこなしつつ勉学にも励む。なんて偉い子なんだよチノは。

 

 「その答えは128で、そのとなりは367だよ~」

 

 ココアがチノのノートを覗き、分からない答えの計算を暗算で解いた。

 

 待てよ、今の問題計算式が少し複雑だったぞ?

 

 リゼも気づいたのか、試しにココアに問題を提示する。

 

 「こ、ココア。430円のブレンドコーヒーを29杯頼んだらどうなる?」

 

 「12470円だよ~?」

 

 ココアはなんなくその問題も暗算で解いた。

 

 「私も何か特技あったらな~」

 

 な.........!こ、コイツって意外な特技を持っているんだな......。

 

 いやいや、ちょっと待てよ。

 本格的に特技がないのは俺だけなんじゃないか?

 

 「こ、ココア......!お前だけは仲間だと思ってた......!!」

 

 拳を握りしめ、悔しそうに歯を食い縛り遺憾の意を表する俺を、三人は不思議そうに見つめていた。

 

 早くも心が折れそうな時、店内の扉を開ける音が店内に響く。

 どうやら早速お客さんが来たみたいだ。

 

 客に早足で近づき、接客をするココアは手慣れたように感じた。ココアのような性格なら、接客業はもってこいかもしれない。 

 

 客を席へと案内し、こちらへと興奮した様子で戻ってきた。

 

 「やったぁ~!ちゃんとご注文とれたよ!」

 

 「偉い。偉いです」

 

 喜ぶココアへと、小さい拍手で誉めてやるチノ。

 

 俺も不本意ながら、ココアの功績を拍手で讃えてやった。

 

 俺も早く何かやらないと............!




なんだか不自然なところがあったらご報告おねがいします!

誤字、脱字、意見も含め、こうしたらいいんじゃないか?といった具合で、感想のほどお待ちしております!


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3 ひと目では尋常じゃないもふもふだとは気付けなかったよ

焦って書いていたので、文章がところどころおかしいかもしれないです......。

やっと一話終わらせることが出来ました......。


 「ところでチノちゃん、この店ってラビットハウスでしょ?ウサミミ付けないの?」

 

 昼頃、急にココアがチノに尋ねてきた。

 

 「ウサミミなんて付けたら、違う店になってしまいます」

 

 確かに。そうしたら既に喫茶店ですらなくなってしまうじゃないか。

 しかし、バニーはバニーで捨てがたいと思うけどな。

 

 「リゼちゃんとかウサミミ似合いそうなのにね」

 

 ど、どうだろう?

 

 あのたくましい姿を見てから、リゼを普通の女の子として見れなくなってしまっている。

 り、リゼだってれっきとした女の子なんだ。それ相応に扱ってやらねば。

 

 「んなもん付けるか......ろ、露出度高すぎるだろ!」

 

 何を想像したのか、顔を真っ赤にして叫ぶ。

 ウサミミの話をしていたんだけどな。チノもチノで顔を赤く染めている。

 

 いや、だから何を想像したんだ?

 

 ......もしかして!いかがわしいこと!?

 チノがバニーガールになって接客するの!?

 

 「チノ!!そんなことさせないからな!」

 

 「じ、ジンさんはジンさんで一体何を想像したんですか......?」

 

 「え?チノがバニーガールになる話じゃないの?」

 

 「意味分からないし、ドン引きです」

 

 理由がよくわからないまま、チノのひどく冷たい視線が俺に突き刺さる。

 しかし、これくらいじゃあへこたれない俺の鋼メンタル。

 

 むしろもっとちょうだい!

 

 なんて口には出さねぇよ?

 けど、だったら一体ラビットハウスの由来ってなんなのだろうか?

 

 ココアが改めてリゼに聞いてみると、どうやらティッピーがこの店のマスコットだからみたいだ。

 

 忘れてた......コイツうさぎだったっけ?

 

 「でもさぁ、ティッピーってうさぎっぽくないよ?もふもふの塊みたい......」

 

 「なら、なんて名前つけるんだよ?」

 

 「ズバリ!もふもふ喫茶!」

 

 うわぁ、スゲーまんま過ぎる名前になったな。さすがにその名前は――――

 

 「もふもふ喫茶......!」

 

 目をキラキラと輝かせるチノ。

 どうやら、その店の名前が気に入ってしまったらしい......。

 

 それこそ別の店になってしまう気がするんだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ん?リゼちゃん何やってるの~?」

 

 「ミルクの泡でラテアートを作ってるんだろ?」

 

 「よく分かったなジン。そう、この店ではサービスでやってるんだ。描いてみるか?」

 

 ラテアートとは、コーヒーにミルクを使って絵を描くことだ。結構難しいが故に、ラテアートを上手く描ける人は滅多にいない。

 

 俺は絵が絶望的に下手くそだがら、ラテアートは絶対に出来ない。

 

 「俺は......遠慮する......」

 

 「絵なら任せて!こう見えても金賞貰ったことあるんだ!」

 

 自信満々に胸を張るココアだが、本当に金賞を貰ったのかもどうか怪しいな。

 

 「町内会の小学校低学年の部、とか言うのはなしな?」

 

 「うっ......!」

 

 「なあリゼ、一個手本として作ってみてくれよ」

 

 「仕方ないな、特別だぞ?やり方もちゃんと覚えろよ?」

 

 ミルクを持ち、コーヒーの中へと注ぐ。

 

 いや、カップ一回転させる需要はどこにあるんだ?というか、これラテアートですよねぇ!?

 

 なんで手からコーヒーの入ったカップを手放す!?危ないだろ!? 

 ミルクを注いだ後に、そこから上手い具合にかき混ぜていくと、戦車の絵が浮かび上がってきた。

 

 「スゴ!?え!?なんでこうなった!?」

 

 「全くそんな上手くないって!」

 

 「いや......上手ってレベルじゃないよぉ......!」

 

 ココアの声が震えている。

 

 もはや芸術並みの上手さなんですけど......。

 

 「よっし、私もやるぞ~」

 

 意気揚々とコーヒーにミルクを注いでいくココア。

 完成した物を見てみると、ティッピーを描いたのだろうかうさぎの絵が浮かび上がってきた。

 

 上手いと言うわけではないが、しっかりと形にはなっている。俺じゃあ原型もとどめてくれないだろうな。  

 

 にしても、案外可愛い仕上がりになっている。

 

 リゼが口を押さえながら顔を赤くして震えているのは、きっと可愛いという言動を外に出さないためだろう。

 

 「わ、笑われてる!?......もぉ、チノちゃんも描いてみて?」

 

 「私もですか?」

 

 その様子を見て、笑われたと思ったココアはチノにもなにか描いてみるよう促す。

 

 「どんなのが出来るか楽しみだね~」

 

 「なんか、スゲー予想だにしないような絵を描いてたりしてな」

 

 淡々とラテアートを作るチノの後ろで、どんなのが出来上がるか予想する。

 

 「出来ました」

 

 言われ、チノが作ったラテアートが差し出される。

 

 「............えっと......え?」

 

 それは予想のはるか斜め上を行くラテアートだった。角度を変えれば、別の絵のようにも見えてくる。まるであの有名な画家、パブロ・ピカソの絵に酷似したラテアートだ。

 

 ココアは単純に下手だと受け取ったのか、チノと手を合わせて仲間だとか勘違いしている。

 

 いやー.......こういう絵は凡人と比べちゃならない気がするんですが......。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 店も閉店し、着替えも終えた俺は部屋でのんびりとしていた。リゼはバイトが終わり家に帰ったみたいだ。

 ココアとチノは、二人で夕飯を作っているみたいで出来上がったら呼びに来るとのこと。

 

 ベットに身を投げ、そのままゴロゴロとベットで暇そうに転がる。

 

 携帯を開いてみると、母さんからメールが一通届いていた。今朝、地図を渡さなかったことを詫びたメールだったが、なんとかたどり着けたと報告。

 

 携帯を適当な場所において、そのまま目を閉じると知らずに疲れていたのか眠気が襲ってきた。

 そして俺は、そのまま深い眠りへとつくことになった。

 

 

 

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございます!

すみません、主人公とラビットハウスの面々とまったくイチャコラがないですね。
というか主人公のキャラでどうイチャコラさせようか迷います.......。

誤字、脱字等ありましたらご報告おねがいします!
厳しい意見を含め、感想のほどもお待ちしております!


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1 学園生活をエンジョイするのも楽じゃないが、パン作りも楽じゃない

今回は千夜登場です

あとタカヒロも前の話で出せなかったので出しちゃいました。


 体を誰かに揺さぶられている。

 そうだった......確か昨日疲れてそのまま寝たんだった。夕飯も食わないまま寝ちまったせいで、チノを怒らせてないといいんだけど。

 

 それはそうと、先程から俺の体を揺さぶっているこの手は誰のものだろうか?ココアが起こしに来てくれた?それともチノが?

 

 重い瞼を開けると、そこには知らないダンディな男性の姿があった。

 

 「............誰!?」

 

 ベットから飛び起きて、慌てて隅へと身をくるめる。

 

 (まさか泥棒?だとしても何故ウエイトレスの格好を?ん?ウエイトレス?)

 

 ここまで考え、ようやく理解が追いついた。たぶん、この下宿のマスターでありチノの父親.....もとい、香風タカヒロさんだろう。

 

 母さんから、これからはこの人にお世話になるって聞かされたのを思い出す。

 

 タカヒロさんは俺の怯える様子を見て苦笑している。恥ずかしい。これから世話になるというのに、これじゃあ先が思いやられる。

 

 「君がジンくんだね。これからよろしく」

 

 「は、はい、よろしくお願いします。えっと......わざわざ起こしに来ていただいてありがとうございます」

 

 ベットから降りて礼を言う。

 

 「ココアとチノはもう起きてますか?」

 

 先に気になっていたことを尋ねる。あの二人はもう朝食を食べ終えたのだろうか?

 もし俺が起きるのが遅くて待たせてしまっているのなら申し訳ない。

 

 ふと、タカヒロさんの様子がおかしい事に気がつく。何か言いたそうな表情をしているが、一体どうしたというのだろう?

 俺が首をかしげ、不審がっていると不意にタカヒロさんが口を開く。

 

 「ココアちゃんとチノなら、もう学校に行ってしまったよ?」

 

 「..................へ?」

 

 タカヒロさんの発した言葉と共に、腑抜けた情けない声が出る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「俺のこと忘れていくなんて、一体どういう了見だ............」

 

 あれから急いで身支度を済ませ、朝食を取る暇もなく店を出た。何故二人が俺を置いていったか定かではないが、見つけたらココアを追求しよう。

 同じ下宿生の存在を忘れるとか......アイツ、チノの事しか頭にないんじゃねぇの?

 

 不貞腐れながらも学校までの道のりを歩く。この町を歩いてみて気づいたのだが、結構建物も多く道がいりくんでいる。

 地図がなくて迷うのも当然だ。俺がラビットハウスに辿り着けたのは奇跡なんじゃないか。

 

 というか、地図があるのに迷ってたココアは大丈夫か?一人で学校まで辿り着けるのだろうか?いまさらだが、非常に心配になってきた。

 

 よぎる不安を押し込みながら早足で歩いていると、うさぎが二人の少女に集まっているのが見える。

 

 一人は着物を着た古風な雰囲気を感じさせた少女で、もう片方は俺が探していたココアだった。うさぎを抱えながら羊羮食ってやがる。

 

 「ココア......何故俺を置いてった......?」

 

 「あ、ジンくんおはよ~」

 

 「おはよ~じゃないだろ」

 

 幸せそうに羊羮を頬張るココア。何だか怒る気も失せてくる。朝食を食べたばかりだというのに、よく腹の中に入るよな。

 俺は朝飯すら食ってきていないというのに、見てると余計腹が減ってきた。

 

 それにしても、先程からニコニコと俺達の会話を見ている彼女は一体何者なのだろうか。というか、何で着物を着てるんだ?

 

 ココアは羊羮に夢中で紹介してくれないし、自分で聞いてみるしかない。

 

 「もしかして、ココアちゃんのお友だち?」

 

 「え?あぁ、んまぁそうだな。友達って言うか、バイト仲間?」

 

 ココアを友達だと言う認識があまりなかったために、曖昧な答え方となってしまった。

 着物を着ているせいか、上品なイメージが漂う。チノやココア、それにリゼと違って女性として意識してしまっている。

 

 「私、千夜って言うの。貴方のお名前は?」

 

 「ジンだ。芹沢 ジン。ラビットハウスってところで下宿させてもらってる」

 

 結構フレンドリーな人だ。そういえば、ココアとも話していたみたいだし、コイツに合わせることが出来るってことは中々の強者だな。

 けど、ココアや彼女みたいな人間は、人見知りな俺にとってはありがたい。

 

 高校の面接の時なんかも固まっていて、入学希望さえまともに話せなかった。テストの点数もギリギリで、入れたのもまぐれに近い。

 

 そうそう、俺の通うことになる高校はココアと同じなんだが、去年までは女子高だったらしい。今年から男子生徒の入学が実施され、親が入れと言うのでこの高校にきた。

 

 「てかココア!時間!遅刻するぞ!」

 

 「ああ!?本当だ!千夜ちゃん、行こう!」

 

 広場にある時計を見てみると、すでに長い針が8時を回っていた。入学式に遅刻するなんて洒落にならない。

 

 ココアも焦りだし、千夜の手を引っ張って走り出す。俺は後ろから二人のあとを追う。

 

 しばらく走っていると、またもとの場所へと戻ってきた。

 

 しくじった!ココア方向音痴なのに!俺が前を走ればよかったんだ!

 次は道を間違えぬよう走り出そうとした時、千夜が息切れしながら一言。

 

 「きょ、今日は......学校お休みなの......」

 

 「「............へ?」」

 

 俺とココアは、二人揃って間抜けな声が出てしまった。




ここまで読んで頂きありがとうございます。

誤字、脱字等がありましたら是非ともご報告お願いします!


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2 学園生活をエンジョイするのも楽じゃないが、パン作りも楽じゃない

文章短けぇ...............


入学日を間違えて赤っ恥をかいた後、千夜が高校まで案内してくれるとのこと。

 広場から歩くこと10分程度のところに、俺たちが通う高校があった。思ったほど大きい。

 

 この大きさなら全校生徒で800は越えると思う。桜の花びらが俺の頭にのる。それを払いながら、高校生活への期待に胸を膨らます。

 

 「ここが私たちの通う高校か~。友達と笑って、泣いて、時には喧嘩して!」

 

 ココアも期待で胸が踊る。

 

 俺も年甲斐なくはしゃいでしまいそうだったが、ココアと同じに見られたくないのでここは我慢。

 

 ふと、静かな千夜に目を移すと、なにやら言いたそうな表情で学校を見ていた。どうしたのか理由を聞いてみたいが、嫌な予感がする。

 

 「............何か含みのある顔だな千夜、何か言いたいことがあんなら言ってみろよ」

 

 「ここ、卒業した中学校だったわ。すっかり忘れてたみたい」

 

 「おい............」

 

 ココアの耳には入っていないようだ。

 どうすんだ。隣ではしゃいでるやつ、これからここに通おうとしてるんだぜ?高校生なのに。

 

 しかし、黙っていたらそれはそれで面白そうだ。

 

 俺は千夜に、人差し指を鼻の前まで持ってき「ナイショにしようぜ」のジェスチャーをする。

 

 千夜も俺に合わせ、小さく首を縦に振ってくれた。

 俺を起こさずに置いていった罰だ。慈悲はない。

 

 「ジンくん!高校生活楽しみだね!」

 

 「ああ......そうだな!」

 

 俺は今日一番の、とびっきりな笑顔でそう答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 高校が休みな俺たちは、家にいても暇なだけなので店の手伝いをしていた。

 

 テーブルを拭いたり、注文を受けたり、コーヒーを淹れたりとなかなかに忙しい。因みにコーヒーは俺が淹れていた。タカヒロさん直々に俺に淹れ方を教えてくれたのだ。しかし、それでもチノに比べたらまだまだ。もっと上達しなくては。

 

 ココアは注文された飲み物や食べ物を運ぶことに専念していた。

 自分がコーヒーを淹れるのは無理だと自覚しているらしい。

 

 「ただいまです......」

 

 カランとドアの鈴の音が鳴る。

 どうやらチノが帰ってきたみたいだ。俺はさっさとテーブルを拭き終わらせる。

 

 チノが近くにいたココアに、今日の高校はどうだったかを聞いている。ココアは、あれこれ取り繕っていたが、チノもチノで失念に高校の事を聞いてくる。 

 

 そりゃあ、今日は高校お休みでしたー、なんて恥を晒すのはごめんだ。

 

 「なあチノ............」

 

 「はい、なんでしょうか?」

 

 助け船を出してくれた。

 そんな表情で俺の顔をみるココア。

 

 「今日は高校お休みでした~!」

 

 「ジンくん!それはないよぉ!!」

 

 共に俺たちは、隠してもしょうがなかったんで自爆した。

 

 「ところで、チノは中学校どうだった?」

 

 よく見ると、チノは中学校の制服姿だ。いつでも頭にティピーが乗ってると思うが、ティッピーは俺の頭の上だ。流石に学校までは連れてかないよな。それに、コイツ頭に乗せたままだと、結構バランスとるのが難しいんだな。

 よくチノは平気で歩いているよな。普通に凄いと思う。

 

 「いつも通りでしたよ。楽しかったです」

 

 「そっか、良かったな」

 

 当たり障りのない会話をしたあと、チノもすぐに仕事へと戻った。

 

 

 




ここまで読んでくださりありがとうございます!
ちょっと文章短いな、と思ったのから言っていただけると幸いです!

誤字、脱字等がありましたらご報告お願いします!


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3 学校生活をエンジョイするのも楽じゃないが、パン作りも楽じゃない

ごちうさのメンバーの中だと、ティッピーが一番可愛いと思います。

よっしゃ!張り切って見ていってください!


石畳の上を、ココア、千夜、俺の三人で歩く。今は高校へと向かっている最中だ。

 ココアと千夜は同じクラスみたいだが、俺は二人と別のクラスになってしまった。女だらけのクラスの中に、男一人だけで知り合いがいないのはキツい。

 

 前にも言ったが、俺が通う高校は去年まで女子高だったせいか女子が多い。そしてもう一つ衝撃な事実を知らされた。

 

 この高校に受かった男子生徒は俺だけ。

 

 いや、なんのラノベだ。というか、この高校受けた男どもはそんなに馬鹿だったのか?

 さほど偏差値の高くない俺でも入れたんだぞ?下心で入ろうとしたのだろうか?

 

 いやぶっちゃけ、俺の入学動機は全て下心だ。

 

 しかし、いざ受かって通ってみると、すごく気まずい。周りが女子しかいないと、話の話題にまったくついていけない。

 

 「良い匂いがするね~」

 

 「パン屋さんの匂いかしら」

 

 途中、鼻をスンスンと動かすココア。確かに良い匂いがする。

 香りの正体は、近くにあるパン屋の匂いだ。

 

 ガラス越しのケースに、動物を模したパンなどが置かれている。俺たち三人は、その店に誘われるよう近づいていく。

 

 「最近作ってないな~」

 

 「へ?お前パンとか作れるのか?」

 

 「うん。実家がパン屋さんでね~。お手伝いしてたから、ちょっとね」

 

 知らなかった。

 ココアがパンを作る姿とか想像できないんだけど。材料の分量間違えて爆発とかしそうだな。

 

 「そういえば、千夜は駄菓子屋なんだよな?やっぱり駄菓子は千夜が作るのか?」

 

 「ええ、だけど一番駄菓子に名前を付けることが好きなの。このパンも見てると、どんどんアイディアが浮かんでくるわ」

 

 ニコニコしながらパンを見つめる二人。

 二人には似た趣味があるもんだな。こういう趣味の話とか見てると、二人とも女の子って感じがする。

 

 考えてみると、この町に来て友達が出来たのって、若干ココアのおかげかもしれない。

 

 少しパン屋で足を止めた後、俺たちは再び歩みを進めた。

 

 

 

 

 

 

 「と言うわけで、パンを作りたいんだけど大きめのオーブンとかないかな?」

 

 高校から帰宅し、店で仕事をしているとココアが朝の話をチノに持ち出す。

 

 「大きいオーブンならありますよ。昔おじいちゃんが調子のって買ったやつが」

 

 そこで何故ティっピーが頬を染めるんだ?

 

 というか、ティッピーって人間よりも人間らしく感じる。

 大きめのオーブンということは、結構な人数で出来るな。

 

 「ほんとー!?なら今度の休みの日、みんなで看板メニュー開発しない?焼きたてパン美味しいよ~」

 

 「喋ってないで仕事しろよ」

 

 リゼが食器を運びながら、仕事を専念するよう口をはさむ。と、リゼから腹の虫が聞こえてきた。

 食べ物の話をしていたから腹が減ってきたのだろう。なんだか俺も減ってきた......。

 

 リゼが顔を真っ赤にしてるところへ、追い討ちをかけるかの如く、ココアがパンの魅力を語る。

 すると、またリゼの腹の虫が鳴った。

 

 もう勘弁してやれよ......リゼの顔から火が吹き出そうだぞ。

 

 「んじゃ、今度の休みは皆でパン作りか?」

 

 「そうだね~。あ、ジンくん!ジンくん!頼みたいことがあるんだけど......いいかな?」

 

 「ん?別に......いいけど............?」

 

 俺はこのあと、パンの材料を買うために、おつかいへと駆り出されたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「同じクラスの千夜ちゃんだよ~」

 

 「千夜です。今日はよろしく」

 

 「誠にどうでもいい話だが、入学式当日、ココアは千夜が卒業した中学校に行っていました」

 

 「本当にどうでもいい話だよ!?あれは二人が騙したのが悪いよ!」

 

 いつ言おうか迷っていたので、とりあえず知り合いが集結したこの場を借りて言ってみた。

 

 「よろしくです......」

 

 「よろしく~」

 

 そう言ってチノが頭を下げると、ティっピーが落ちそうになる。慌ててそれを押さえるチノ。

 

 「あら?そのワンちゃんは?」

 

 「ワンちゃんじゃないです......」

 

 「この子はただの毛玉じゃないんだよー」

 

 「確かに。ティっピーってなんか美味しそうだよな。焼けば食えるんじゃないか?パンと一緒に」

 

 「てぃ、ティっピーは食べ物じゃないです!怖いこと言わないでください!」

 

 頬を膨らませて怒るチノと、顔面が蒼白になっているアンゴラうさぎ......この絵は中々に希少なものだと思う。

 一生に一度見れるかどうかだぞ。

 

 (誰かアンゴラうさぎって品種だって説明してやれよ......)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 腕をまくり、自分の指定された台に立つ。

 パン作りは初めてだからワクワクするな。

 

 始める前から、どんなパンを作ろうか想像してしまう。

 

 台の上にパンの材料が並べられる。

 どれも俺が買い出しに頼まれたものばかりだ。この材料を一人で持ち運ぶのは本当に大変だった。

 

 途中、見知らぬ女性の方に少し手伝ってもらいもした。本当に情けなくて、申し訳なかった......。

 

 名乗っていたけど、名前を思い出せない......確か、青山ぶ、ぶるー......まあいいか。

 考えるのを早々に止めることは、自分のなかで得意な事だと認識している。

 

 誰だ、記憶力ないとか言った奴。

 

 「それにしても、ココアがパン作り出来るなんて意外だなー」

 

 「えっへへ~、でしょ~?」

 

 照れながら応答するココアだが、それは褒めてる訳じゃないと思うぞ。

 

 「パン作りを舐めちゃいけないよ、少しのミスが完成度を左右する戦いなんだからねっ!」

 

 調理器具を片手に、珍しく燃えているココア。

 

 それにリゼと千夜も同調して、なんだか暑苦しい雰囲気になってきた。現にチノが暑苦しそうに三人を見ている。

 

 「んなことより、お前らパンの中身とかなに持って来た?」

 

 全員に、パンの中身を聞いてみた。

 

 「私は新規開拓に焼きそばパンならぬ、焼きうどんパンを作ろうと思うよ!」

 

 「私は自家製の小豆と、梅と海苔を持ってきたわ」

 

 「冷蔵庫にイクラとサケと納豆とゴマ昆布がありました」

 

 「これ......パン作りだよな?」

 

 イチゴジャムとマドレーヌを手に持つリゼと、バターとハチミツを手に持つ俺達二人は困惑した。

 

 コイツら、一体何を作るつもりだったんだ?

 

 たとえそれを具材にして作ったとしても、絶対食べないだろ......。

 

 とりあえず、パン作りを始めるココアの真似をして、次々にボウルの中に粉を入れていく。

 いや、すまん。材料の名前が分からんから粉って言っちゃった。

 

 一通りの手順を踏まえ、次はパンをこねる作業に入る。中々に力を使う作業だ。

 

 「パンをこねるのって、すごく体力がいるんですね......」

 

 「腕が......もう動かない......」

 

 苦笑いしながら、肩をくるくると回す千夜。パン作りは長時間こねることが必要であるため、男性でも苦労する作業だ。

 

 と言っても、リゼはまったく疲れを見せていない。コーヒー豆の時から思ってたけど、コイツ一体何者?

 

 「リゼさんは平気ですよね」

 

 「............何故決めつけた......!?」

 

 その様子を見ながら、俺も必死にパンをこねる。結構キツい。腕がつりそうだ。

 

 「大丈夫?千夜ちゃん。手伝おうか?」

 

 「ううん、大丈夫よ」

 

 「頑張るな~」

 

 (ココアちゃんの足を引っ張るわけにはいかないわ。みんなについていけるってところ見せなきゃ!)

 

 「ここで折れたら武士の恥ぜよ!息絶えるわけにはいかんけい!」

 

 「なんでパン作りで命懸けてんだよ」

 

 千夜の世迷い言にツッコミを入れながらこねること数十分。そろそろ固まってきたパンを1時間程度ねかせる。

 

 1時間ねかせた後は、パンを自分達の好きな形に作っていく。みんなよりどりみどりだ。

 

 「チノちゃんはどんな形にしたの?」

 

 チノのパンを見てみると、どこか老人のような顔をしたパンを作っていた。

 

 「おじいちゃんです。コーヒーを容れる姿には尊敬していました......ではこれから、おじいちゃんを焼きます」

 

 よく分からないが、ティっピーが何か嘆いているな。

 

 む......むごい............。

  

 後に、出来上がったパンをみんなで試食してみたが、ココアの作ったティッピーパンが美味しかった。ただ、中にジャムを入れていたせいか、なんかエグいことになっていたのはご愛嬌。

 

 そして、パン作りの後は皆で千夜の店に向かったみたいだけど、俺は行かずに一人で部屋に篭り、新しく購入したテレビゲームを堪能していた。




文章は少し大めにしたと自分は思っております。なにとぞご慈悲を......!

少しはしょってしまいすみません......。じ、次回からはちゃんとやるんでぇ!

誤字、脱字等がありましたらご報告お願いいたします!感想の方もお待ちしております!


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ジンの当たり障りない一日

シャロ回だと思ったか!?
残念!メグ回だ!


時計の目覚まし機能によるけたましいサイレンが部屋中に響く。

 手探りで時計を探し、アラームを止める。

 

 時刻は七時半。

 

 ベットから、まだ重いまぶたを擦りながら立ち上がり、かけていた制服を手にとって着替える。

 毎朝毎朝この繰り返しだ。朝は本当に体が重い。

 

 髪は短く切り揃えているので、大して寝癖がついたりはしないおかげで、さほど気にしなくても大丈夫。

 

 下に降りていくと、チノがすでに朝食を作り終えてテーブルに並べているところだった。

 まったく、彼女は本当に優秀だ。

 

 「おはようございますジンさん。ココアさんはまた寝坊ですか......しょうがないですね。ちょっと起こしてきます」

 

 「みたいだな......って、いつもチノが起こしに行ってるのか?」

 

 「はい、学校にココアさんが遅刻してしまうので。ジンさんは先に食べてても大丈夫ですよ?」

 

 「いーや二人が来るまで待ってるよ」

 

 「分かりました。それでは、私はココアさんを起こしてきます」

 

 チノが小走りで二階へとトタトタ駆け上がっていくと、先に椅子へと座っておく。

 あんなにココアの事を嫌そうにしていたのに、やはり彼女は優しい。何故か俺の時は起こしに来てくれなかったけどな。

 

 べつに気にしてねぇよ?

 

 ともかくだ。これからココアが自力で起きれるようになってほしいものだ。

 

 並べられている朝食を眺める。どれもチノの手作りで上手そうだ。

 初めてこの店で食べたサンドイッチもチノのお手製だったらしい。非常に美味かった。

 

 しばらくして、腹が空いてきた頃に、眠そうにしているココアを引っ張ってチノが降りてきた。

  

 「それではいただきましょうか」

 

 「眠いよぅ......」

 

 「永遠に寝かしつけてやろうか?」

 

 「女の子に冗談でもそゆこと言っちゃダメだよ!?」

 

 「安心しろ、お前は特別だよ。他の人になんて言わないって」

 

 「全然嬉しくない!」 

 

 ココアも目が覚めたみたいだ。

 溜め息を吐きつつもチノが手を合わせ、食事の挨拶をしてからパンへと手をつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 一日最後の授業も終え、いざ帰宅しようと鞄を持ち上げる。

 

 この前に買ったゲームがもう少しでクリア出来そうなんだ。さっさと終わらせて、また新しいゲームを買わねば。

 さっさと校門に向かい、早足でラビットハウスへと歩を進める。

 

 と、途中でなにやら木から降りられなくなった子猫が目に入った。可哀想だが、誰かが下ろしてくれるだろう。

 

 哀れだとは思いながら、その場をそそくさと立ち去ろうとした瞬間に子猫と目が合う。 

 

 

 

 

 

 「ニャ~ン............」 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「..................さて、どうやって助けるか」

 

 

 

 

 無理。あんな目で見られたら助けるしかないだろ。

 

 しかし、助けると言っても俺は木登りなんて出来ないし、二人で肩車をすればいけるだろうが、周りには人がいない。

 

 ここは携帯でココアかリゼに助けを求めた方が最善だろう。

 

 

 十分後。

 

 

 「............繋がんねぇ......」

 

 二人に折り返し何度かかけてみたものの、まったく繋がる気配がない。猫もあの木にずっと乗ったままだ。

 

 いよいよどうするかと迷っていたところに、一人の少女が近付いてくる。

 

 「あの......どうしたんですか?」

 

 赤い髪が特徴的な少女。チノと同じ年代の子だろうか?チノと着ている制服が同じだ。

 

 「いやー、子猫があの木から降りれなくて困ってんだよ。俺が肩車でもして、誰かが下ろしてやれればって思っててさ」

 

 人一人を肩車してやれるくらいの筋力はある。

 流石に重すぎる人間は無理だが、男一人くらいはなんとか行ける。

  

 と言っても、協力者がいない以上はどうやってもあの猫を助けてやれない。

 

 「それなら、私も手伝いますっ!あのままじゃ猫さんが可愛そうですから!」

 

 懸命な表情で協力を申し込んでくれる少女。

 

 この行動で、彼女が優しいという印象が根付いた。

 

 「えっと......名前を聞いても?」

 

 「メグって言います。お兄さんのお名前は何て言うんですか?」

 

 「俺は芹沢ジン。ジンでいいよ。早速だけどメグ、俺がメグを肩車するからさ、猫を助けてやってくれ」

 

 「はいっ、分かりました!」

 

 俺がその場にしゃがみこむと、彼女が片足ずつ乗り掛かる。メグは想像以上に軽く、持ち上げるのが非常に容易い。

 

 「お、重たくないですか......?」

 

 「ああ、全然余裕だよ。むしろ軽すぎるかな?」

 

 肩車をしながら木に近付いていく。

 この高さなら届きそうだ。必死にメグが手を猫に伸ばして抱き上げる。

 

 メグを下ろして、助けた子猫を離すと何処かへと走り去ってしまった。

 

 「お礼の一つぐらいしろよなー」

 

 「だけど、助けられて良かったです」

 

 ニコッと笑顔でそう答える。

 彼女は本当に優しい。切実に願う。彼女を妹に欲しい。 

 

 まあそんな欲望は置いといてメグにお礼を言う。

 

 「ありがとなメグ。お前が来なかったら、諦めてあの子猫を見捨ててたかもしんない」

 

 「そうですか?ジンさんは、誰かが来るまでずっと待ってるって雰囲気が出てましたよ?」

 

 「褒めてくれるのか?ありがとな。けど、流石に夜までは待てないだろうな~」

 

 人をおだてるのが彼女は上手い。

 

 その後、メグとは別れていつものようにラビットハウスへと帰宅して働いた。

 

 




次はシャロちゃんですね。
そしてすみません。
今回はしょりすぎてしまいました。

誤字、脱字などがありましたらご報告お願いします!
また、感想のほども心よりお待ちにしております!


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1 リゼの後輩の様子がちょっとおかしいんだが?

最近投稿が遅くてすみません




お昼頃。

 

 俺たちラビットハウスの従業員4人は、軽くティータイムと洒落こんでいた。飲んでるのはコーヒーだけど。

 

 「美味しい......」

 

 「美味しいね~。チノちゃんが淹れたコーヒー飲んでから、癖になっちゃった。なんでだろうね?」

 

 「......ココアさんは銘柄を当てられるようにしてください。それじゃただのカフェイン中毒です」

 

 「中毒扱いされちゃった......」

 

 「ほら、そろそろ開店の時間だぞ」

 

 「は~い」

 

 開店前に全てのテーブルを綺麗にしておく。

 我ながら完璧なる出来だ。高級店のテーブルみたいに輝いてる。

 

 というか、雑用は全て神がかった仕事っぷりな気がするぜ。

 

 ふとココアが、チノと自分のカップを手にとって首を傾げる。

 

 「ラビットハウスのカップってシンプルだよね」

 

 「シンプルイズベストです」

 

 「もっと色んなものがあったら皆たのしいよっ。この前、おもしろいカップを見つけたんだ~。皆で買いに行かない?」

 

 「へぇ~。どんな?」

 

 「えっとね......ロウソクの火が揺れて良い匂いがするの」

 

 「それ、アロマキャンドルじゃないか......?」

 

 ココアはアロマキャンドルとカップの見分けもつかないのか。残念な奴だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 というわけで、俺達は今、カップが売ってある店へと来ていた。色々と見ながらはしゃぐココアに不安を覚える。

 それは俺だけじゃなく、リゼとチノもあの表情を見る限り一緒だろうな。

 

 「あんまはしゃぐなー」

 

 そうリゼが言った途端だった。

 

 足をつまずかせ、商品が飾ってある棚に頭を激突させ、棚の上の写真飾りが落ちてくる。

 

 ((予想を裏切らない!!))

 

 リゼがココアを支え、チノが落ちてきた写真飾りをキャッチ。良い連携だ。

 流石は長いこと一緒にバイトしてきた二人だ。だてに働いてる訳じゃないんだな。

 

 「えっへへ......ごめんね~」

 

 ぶつけた頭を擦りながら二人に謝罪するココア。

 そしてすぐさまチノがキャッチした写真に食い付く。

 

 カップに入った小さいウサギが写っている写真だ。

 

 「可愛い~、ティッピーもカップに入ったら注目度アップだよ!」

 

 「ティッピーが入れるほど大きなカップはないだろ?」

 

 確かに。この写真のウサギは小さいから入れるけど、ティッピーのサイズじゃあ入れるカップなんて......

 

 「ありました......」

 

 「............あるんかい」

 

 チノが両手でやっと持てる程の大きさのカップだ。こんなのなんで売ってるんだ?

 というか、このカップに使い道なんてあるのか?

 

 疑問は残るものの、とりあえずカップにティッピーを入れるチノ。

 

 四人で見てみるが、すごい違和感を感じる。

 

 「............なんか違うね?」

 

 「ごはんにしか見えないです......」

 

 「いや、逆にご飯って言われてしっくりきた」

 

 ティッピーをカップから出して、改めて四人で良いカップを探していると、ココアと金髪のセミロングの少女と手が触れ合う。

 

 よく少女漫画とかである展開だな。

 

 「こんなシチュエーション漫画で見たことあります」

 

 「よく恋愛に発展するよな」

 

 「いや......男と女ならまだしも、あれ同姓だから」

 

 ココアはココアでなんか相手を意識してるし。

 

 「なんか意識されてる......!?」

 

 リゼが知り合いだったようで声を掛けた。

 

 「あれ、シャロじゃん」

 

 「り、リゼ先輩!?どうしてここに......?」

 

 「お二人は知り合いなんですか?」

 

 「シャロは高校の後輩だよ。ココアとジンと同い年」

 

 「「え?」」

 

 今すごく衝撃的なこと聞いたんだけど。

 

 まさかな?そんなまさかな。

 

 「リゼちゃんって年上なの?」

 

 「今さら!?」

 

 「え!そうなのかよ!?」

 

 俺は、今日始めて彼女が年上であることを知らされた。いやいや、何で教えてくれなかったんだよ......チノ。

 

 チノに視線を送る。

 

 「面白そうだったので黙っておきました」

 

 「うぉぉい!せめて俺だけには教えて!ココアはいいから!」

 

 「なんで私だけ!?」

 

 金髪の少女が、俺達二人の会話を変な人って感じの目で見てる。

 やめて。ココアと一緒にしないで。

 

 「先輩はなんでここに?」

 

 「バイトの喫茶店で使うカップを買いに来たんだよ。シャロは買ったのか?」

 

 「いえ、私は見てるだけで十分なので」

 

 「見てるだけ?」

 

 リゼが首を傾げ聞き返す。

 

 金髪の少女が一つのシルクを手に取り、恍惚とした表情で眺めている。

 

 「それは変わった趣味ですな~」

 

 「おまえが言う......?」

 

 

 

 




ここまで読んで頂いてありがとうございます!

やっとシャロまでこれましたよ......誤字、脱字ありましたらご報告お願いします!


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2リゼの後輩の様子がちょっとおかしいんだが?

徹夜して書いたので、ちょいと文章が変なところあるかもしれないです......


 

「二人は学年が違うのにどうやって知り合ったんですか?」

 

 「それは......暴漢から助けてくれたの」

 

 「へぇ~。カッコいいなリゼ」

 

 「ち、違う!野良ウサギがシャロの邪魔してたからどけてやっただけだ!」

 

 ジー......。

 

 チノとココアの二人がシャロを無言で見る。ついでに俺も。

 

 「う、ウサギが怖くて悪い!?」

 

 悪いことじゃない。誰だって怖いことはある。

 

 実際、俺は未だに謎が多いティッピーが怖い。

 いつもこっち見てるし......。

 

 カップに入ったティッピーは無害そのものかもしれないが、俺からしてみたら息を潜めている虎にしか見えない。

 

 「こ、このティーカップなんてどう!?」

 

 「話をごまそうとしてますね」

 

 「ち、違うの!ほら見て、この形香りがよく広がるの」

 

 シャロがチノとココアにカップの良さを説明している。

 

 コーヒそのものだけじゃなく、器にも楽しむ秘訣があるんだな。一つ良いことを学んだ。

 それにしても、シャロは本当にカップに詳しい。言ってしまうのもなんだが、こういう商品に詳しい人間なんてそういない。

 

 俺も俺で近くの棚から一つカップを手にとってみても、どのカップが良いかなんてまったく見当がつかない。

 

 俺は丈夫で柄がいいのだったら何でもいいと思う。そもそもコーヒーや紅茶は自販機で買ったものを飲む俺には、カップなんて生涯必要ない。

 

 俺の手の中にあるカップ。どことなく俺に似てるような気がしてならない。というのも、柄が一切描かれてなく、持ち手にはなんの工夫もされてない寂しいカップ。

 

 俺の心みたいに空っぽだ。

 

 「ジンくん?ボーッとしてどうしたの?」

 

 ココアに声をかけられ、ハッとしてすかさずカップを元の場所へ置く。

 

 適当に取り繕うとしたが、渇いた笑みが顔から剥がれずに張り付いたままだ。ココアは不思議そうな表情で俺を凝視すると、手に持ったカップを笑顔で見せびらかす。

 

 「これっ、取っ手の部分がすごく気持ちいいんだよ~」

 

 言われてカップの取っ手を撫でるように触る。

 

 確かに滑らかですべらかな良いさわり心地だ。

 

 「けど、うちは喫茶店だからコーヒー用のカップじゃないと意味がないんじゃないか?」

 

 どうやらシャロが勧めたカップは紅茶専用の物だったらしい。まあリゼの言う通りだ。

 喫茶店に紅茶用のカップを置いてちゃあ、そこにあるだけで不自然だからだ。悪いがシャロの勧めてくれたカップは買えない。

 

 「そうなんですか!?リゼ先輩のバイト先行ってみたかった......」

 

 「もしかして、コーヒー苦手なの?砂糖とかいっぱい入ったコーヒーもあるよ?」

 

 コーヒーが飲めないのはシャロだけじゃなく、チノも砂糖が入ってなきゃ飲めなかった気がする。

 

 が、コーヒーの味自体が嫌いなわけではなく、シャロの体質がコーヒーを受け入れないみたいだ。つまり、シャロはカフェインを大量に摂取すると、ハイテンションになってしまうようだ。

 

 カフェイン酔いというやつだろう。

 

 カフェインに酔うこと自体は珍しいが、うちの母親もカフェインを摂取するとテンションが荒ぶる。まあ、テンションが高くなるだけのシャロの方がマシか。

 

 「飲めなくてもいいから遊びに来なよ」

 

 リゼの言葉にありがたそうに礼を言うシャロ。

 どうやらシャロはリゼに相当なついているみたいだ。いや、この際リゼ先輩と言った方が良いのだろうか?

 

 もうリゼでいいや。

 

 前にも言ったが、考えるのを止めるのが早いことが俺の取り柄だ。

 

 リゼの言葉を受けたシャロは、明らかに性別の壁を越えたような、頬に赤みがかった笑みを見せた。

 いや、明らかにその気とかあるだろ............。

 

 「あ、このカップオシャレだよ~......と思ったら結構高い......」

 

 ココアがオシャレだと指差したカップは、値段がバカにならないくらいに高かった。

 

 いや......高すぎるだろ......。

 

 「高いのはだいたいそんなもんよ?」

 

 「あ、これ昔的にして撃ち抜いたやつだ」

 

 リゼのその一言で、皆驚愕の表情を浮かべる。

 

 ふざけんな。

 

 五万円のカップを的にするお嬢さんがどこにいるよ。きっと世の中探してもお前くらいだぞ、リゼ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「チノちゃん、お揃いのマグカップ買おうよ~」

 

 「私物を買いに来たんじゃないですよ......」

 

 チノとココアの二人が、お揃いのマグカップを買おうとしている。主にココアの意向でだが。どうやらココアはここに来た本来の目的を忘れてしまっているようだ。

 二人の会話を羨ましそうに眺めるシャロが、お揃いのマグカップを手に取る。

 

 って、それ恋人用。

 

 やはりシャロにはそういう気があるのか......。

 

 シャロ自身も、そのカップが恋人ようだったのに気付いたのか頬を赤く染める。何故手に取った際に気づかなかったんだろうか。

 

 しかし、リゼはそれを気に入ったようで購入する気でいる。

 

 「よし買うか~。片方シャロにやるよ」

 

 「あ、ありがとうございます!」

 

 満面の笑みで答えるシャロ。

 

 「シャロちゃんって、高いカップにも詳しくてお嬢様って感じだね」

 

 「お嬢様!?」

 

 「その制服の学校は、秀才とお嬢様が多いと聞きます」

 

 「おまけに美人さんだし、完璧だね~」

 

 「そ、それリゼ先輩に言いなさいよ!」

 

 おこがましいと思えたのか、若干震えながら自分よりもリゼにその言葉が合うといった風に評価するが、俺自身シャロは美人だと思う。

 

 しかもリゼと肩を並べる金持ちだなんてな。

 

 「このカップも、シャロにとったら小物同然なんだろうな」

 

 苦笑しながら、カップに視線を落とす。

 

 いや、お前がそれ言うか?

 

 とまあ、そんなことはさておき。

 金持ちは普段どんなもんを食べているのだろうか?やはりキャビアとかか?

 

 すごく気になる......そういや、リゼはこの前ジャンクフードをよく食べてるとか言ってたな。いや、レーションのサンプルだったか?

 庶民じみた食事......とは別の意味で程遠いが、金持ちだからといってそんな大層なもんを食べてるとは限らないか。

 

 「シャロは普段どんなもん食ってるんだ?」 

 

 「私は......その、卵かけご飯とか」

 

 「あ、いいよなぁ。食べやすくて」

 

 シャロは卵かけご飯をよく食べてるみたいだ。

 

 手頃で食べやすいのは俺も同じ気持ちだ。お茶漬けとか、食べ物としても普通に美味しいと思う。それに、腹の中へかきこみやすい。

 

 シャロの卵かけご飯を、キャビアかけご飯と勘違いしてる庶民二名。

 

 けど、お嬢様ってほどだ。

 キャビアとか食べてそうだな。

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 




ここまで読んで頂きありがとうございます!

誤字、脱字等がありましたらご報告お願いします!
感想のほどもよろしくお願いいたします!

それにしても、最近ジンをあまり喋らせてないですね......。


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3リゼの後輩の様子がちょっとおかしいんだが?

やっと復帰ぃ!
永らくお待たせしましたぁ!
大したことではないのですが、肋骨を複雑骨折してしまい入院してました。
ようやく投稿できます!


 私には好意を寄せている女性がいる。

 イケナイことなのかも知れないけど、それでも私は彼女が好き--。

 だけどもし彼女に好きな人がいると思うと、胸が痛くて耐えられない。

 

 今日買ったカップもお揃いで買ったもの。嬉しかった。けど、その端で心のなかでざわめきも起こった。

 彼女は私を後輩として見ている。それが当たり前のことなのに、ずっと頭から離れない。

 

 「リゼ先輩、好きです......」

 

 そんなことを呟いてみる。私は何を言ってるんだろう。恥ずかしさで自分の頬が真っ赤になっているのが分かる。

 

 手でパタパタと顔を扇ぎながらカップに視線を戻す。ところであの店に来た三人は、リゼ先輩とどういう関係にあるのかすごく気になってしまう。

 

 仲良くお話もしてたし、すごく羨ましかった。

 私もああやって気兼ねなくお話がしてみたい。よし、後であの目付きが鋭いジンとか名乗ってた男子に聞いてみよう。先輩と仲良くなる秘訣を。

 

 もう時間も遅いし、今日は寝るとしよう。夜更かしはお肌に悪いから。少しでも顔色をよくして先輩に会いたい。

 

 電気を消して、安らかな眠りへと落ちていく。

 

 

 

 

 

 

 「いってきます」

 

 「.......シャロちゃんそれはなに?」

 

 「今度バイトで配るチラシよ」

 

 今日は休みだけど、バイトで出勤しなければいけない。 

 

 家を出るとき、幼馴染みである千夜に声をかけられる。言い忘れていたけど、私は千夜の店の隣にある物置に住んでいる。

 

 リゼ先輩だけには絶対に知られたくない。

 特待生で入学できたのはいいものの、お嬢様学校は私が通えるようなところじゃない。

 

 そこには必死に勉強したお陰で入ることができた。

 

 「私にも一枚下さいな」

 

 仕方なく、チラシを一枚千夜に渡す。

 

 「こ、これは......!」

 

 受け取った千夜の表情が、何故か強張っていたけど聞くのが面倒くさい。

 そのまま千夜を無視してバイトへと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 眠い、非常に眠い。

 

 「ジンくん、凄く眠たそうだね?夜更かしでもしたの?」

 

 「早起きは三文の徳だぞ?夜遅くまで何やってたんだ?」

 

 ココアとリゼから質問を受けるが、それに答える理由が見つからない。

 しっかりと寝たはずなんだが、寝足りないというのだろうか?とりあえず早めには寝た。

 

 「わからん、夜更かしは少なくともしてないんだけど......」

 

 ここまで眠い理由がら大して分からない以上そう答えるしかない。

 

 というか、平日眠そうにしてる二人は、休みの日に限って朝に強くなるみたいだ。羨ましい。いや、ココアは単にチノに起こしてもらってるだけだろうがな。

 

 チノはいつでも早起きして、朝食やらを作ってくれる。あとはココアを起こしたり。

 よく考えてみれば、チノは下手な主婦よりは働いてるぞ。

 

 「シャロちゃんが大変なの~!」

 

 店の扉の鈴輪を鳴らして、千夜が慌てた様子で入店してくる。

 

 「「なにごと!」」

 

 「息ピッタリですね」

 

 ココアとハモってしまった。最悪だ。

 

 「今ジンくん心のなかで毒づいたよね!?」

 

 「そんなわけないだろ?俺たちは仲がいいなって思っただけさ」

 

 「絶対嘘だぁ~!」

 

 泣きながら首を振るココア。

 段々とコイツの扱い方が分かってきた気がするぞ。

 

 とまあそれはさておき、どうして千夜は慌てているのだろうか?手にはどこかの喫茶店のチラシが握られている。

 

 「シャロちゃんがこんなチラシを持ってきて!きっと、いかがわしい店で働いているのよ!」

 

 「なんと!」

 

 ココアがチラシを受けとって皆に見せる。

 フルール・ド・ラパンって、確か喫茶店だったような気がするが、ここに引っ越してきてからものの数日しか経っていないので確証はない。

 

 にしても、何故わざわざこっちに持ってきたんだ。

 

 「どうやって止めたらいいのかしら......」

 

 え、止める気なの?バイトなのに?

 

 「お店が終わったらちょっと見てみようよ」

 

 「潜入ですね」

 

 「潜入............!?」

 

 どうやらチノの一言のせいでリゼを焚き付けてしまったらしい。これは、面倒なことになるぞ。案の定なんか燃えてるし。

 

 というか、やはりリゼは普通の女の子じゃあないと思います!

 

 「お前ら!潜入を舐めるなよ!」

 

 「「サー!」」

 

 ココアと千夜に関してはやたらとやる気が出ているし、これは流石に不味いぞ。

 

 さっさと部屋に戻ろうとしたところで、チノに肩を掴まれる。

 

 「今日はジンさんにも付き合ってもらいます」

 

 「............はい」

 

 ダメだ。目が怖い。

 これは付いていかざるをおえなくなったな。

 

 




いやぁ、久しぶりの投稿なのにこんなに短くて本当にすみません。
書き貯めすることもできたのですが......ほら、面倒くさいじゃないですか?
いや、すみません、ずっとごちうさを周回で見直してました。

なのでこれからは遅れたぶんを取り戻していきたいと思います!


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4リゼの後輩の様子がちょっとおかしいんだが?

投稿させていただきました!

が、しかし!お泊まりは次になりそうです......すみません......


フルール・ド・ラパンの店まで来てみたのはいいものの、これじゃあまるっきし不審者じゃないか?俺達。

 

 窓の外から、中を覗いてみたところシャロの姿はまだ見当たらない。他のバイト達の制服を見ると、別にいかがわしくは見えないんだが......。

 

 「というか、シャロと千夜って幼馴染みなんだな」

 

 「そうなの、家を出るときにチラシを貰ったから心配になっちゃって......」

 

 千夜とシャロはどこか対照的だと思っていた。

 海外と、日本みたいな?俺は断然、千夜派だ。

 

 しばらく覗いていると、目的のシャロが接客しに出てきた。可愛らしい制服に身を包み明るい笑みを浮かべている。

 器用に注文を消費していく、なんて器量のある少女なんだろう。

 

 「いらっしゃいませ~」

 

 活気のある声で接客している。が、段々と笑顔が消えていき、最終的にシャロも視線に気付いたのか、俺達の方に視線を向けてきた。

 

 「なんでいるのよっ!」

 

 あ............バレた。

 

 

 

 

 

 

 観念して店の中へと入っていく。

 結構広い店で、コーヒーとは違うハーブの良い香りがする。

 

 「なんだか、ハーブの匂いがするな」

 

 「なんせここは、ハーブティメインの喫茶店なのよ。それに、ハーブは色んな効能があるの」

 

 ハーブティ専門の喫茶店はあまり聞いたことがないよな。コーヒーならまだしも。少し興味をそそられる。だが、潜入早々発見されるってどういう事だ。

 こんなんじゃあ、某伝説の傭兵さんに叱られちまうぞ。

 

 「だいたい勘違いしたの誰......」

 

 チラシを見ながらワナワナと手を震わせるシャロ。

 

 「私たちはシャロちゃんに会いに来ただけだよ~」 

 

 「いかがわしいお店ってどういうことです......?」

 

 「こんなことだろうと思ったよ......」

 

 「まあ、予想はしてたけどさ......」

 

 四人全員の視線が千夜に注がれるが、別に気にしていない。気にしていないと言うか自覚がないみたいだ。マジか、コイツ。

 

 ニコニコと穏やかな笑顔でシャロの手をとる千夜。

 

 「その制服素敵っ」

 

 (コイツか......!)

 

 それにしても、その制服はなかなかに似合っている。ラビットハウスもこんな感じの制服にすれば良いのに。

 

 まあ願望としてはチノだけで良いんだけどな。もはや男のロマンだろ。

 

 いや、待て待て。たとえ願いが叶ったとしても、来る客の層が変わってしまう。それはマズイ。

 首にカメラぶら下げた、チェック柄のシャツを着た奴しか来ない気がする。それだけは阻止しなくては。

 

 「でもシャロちゃんの制服可愛い~」

 

 「て、店長の趣味よ......」

 

 うさみみの形を模したカチューシャを手で隠しながら、千夜の後ろに回るシャロ。リゼの視線が気になったのか、どこか表情を暗くしている。

 

 まあ、シャロは軽蔑されてると思ってるだろうが、案外リゼの奴は可愛いこと考えてるからな。

 どうせロッププイヤーも良いな、とか考えてるんだろう。

 

 (ロップイヤーも悪くない......)

 

 それに、急いでいたせいか皆制服だ。俺以外はな。実は俺だけ着替えてきたのだ。急いでいたにしろ、制服で町中歩き回るのは恥ずかしかった。

 

 いや、百歩譲ってタカヒロさんの制服ならまだしも、この前新調したばっかりで、俺の制服も女性用のデザインに近い作りになっている。

 

 流石にスカートではないが、どちらにせよ客には『可愛い』という印象が根強く残されるだろう。

 

 現に一度、「その制服可愛いね」なんて女性客に言われたことがあり、俺が照れているのを見てココアがニヤニヤしてやがったので、軽くだが腹パンを食らわせてやった。

 

 「店員さん、注文頼める?」

 

 「こっちもおねがーい」

 

 「「ただいま~」」

 

 客の応答に答える千夜とココア。

 

 「おい、あの人達はフルール・ド・ラパンの客だぞ............」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 立ち話もなんだし、折角だからお茶をしていくことになった。一人一人席に座る。

 

 「折角だからお茶していっても良いかなシャロちゃん」

 

 「しょうがないわね、はい、これがメニュー表よ」

 

 シャロからメニューを受け取り、一通り目を通してみるが、紅茶の種類はよく分からない。そもそも母さんが紅茶を飲めず、俺も飲ませてもらったことがないのだ。

 

 他のみんなもメニューを見ながら難しい顔をしている。ココアと千夜を抜かして。

 

 「紅茶って、何を頼めばいいか分からないよな」

 

 「やっぱりダンデライオンだよねっ!」

 

 メニューを決めたのか意気揚々と注文するココア。確か名前の通りタンポポを使ってるんだよな?

 

 というかコイツ、何か分かって言ってるのだろうか?

 

 「飲んだことあるのか?」

 

 「ライオンみたいに強くなれるよ!」

 

 「オーケーわかった、お前がたんぽぽの意味を分からないことがな」

 

 そんなことだろうと思ったよ。

 

 「なら、私がそれぞれにあった紅茶を注文してあげるわよ」

 

 それは助かるが、シャロの仕事を増やしてないだろうか?そもそも、いかがわしいかどうか調べにきただけなのに。

 

 けど、折角俺達にあったハーブティを注文してくれるんだから、断ったら逆に悪いか。一人一人にあったハーブティーを教えてくれるシャロだが、よくここまで詳しくなったものだ。

 

 「ティッピーには腰痛改善と、老眼防止の効果があるものをお願いします」

 

 「ティッピーってそんなフケてんの......!?」

 

 あんな機敏に動いてて、けっこうなお年寄りなんだな。つうか、メスだってこともこの前初めて聞いたし。 

 

 「あー、シャロ。俺は普通のハーブティーで頼む」

 

 「いいの?ジンくん、折角なんだし選んでもらったら?」

 

 「いや、出来るだけ安いのを頼みたい」

 

 「ケチくさいですね......」

 

 なんかチノからブーイングを受けたが、金は無駄なところでは使わないようにする性分なんだ。

 みんなはそれぞれにあったハーブティーを注文し、俺は普通のハーブティーを頼んだ。

 

 シャロが注文を受け、ハーブティーを淹れに下がっていった。その間、しばし沈黙が続く。

 

 「ジンくんって、一体どういう女性が好みなのかしら?」

 

 そんな千夜の唐突な質問によって沈黙が破られる。他のみんなも興味があるのか、俺に視線を集中させてくる。

 

 好きな女性のタイプと聞かれても、大して考えたこともなかった。

 

 「まあ強いて言うなら、気品があって、力強く元気な将来性のある人かな?」

 

 (気品があって......)

 

 (力強い......)

 

 (元気な人かぁ......)

 

 「将来性がある......ジンさんってけっこう欲張りなんですね」

 

 「まあな、すこし欲張りすぎたとは思うけど」

 

 「本当よね、私達全員が好みだなんて......ジゴロね」

 

 「......ん?いつそんなこと言った......!?」

 

 なんか分からんが皆の間であらぬ誤解を受けちまったぞ。俺は一体いつジゴロ発言をした。例えジゴロ発言をしたとしてもココアだけはないな。

 

 ......うん、絶対ない。

 

 「ジンくん今失礼なこと考えなかった!?」

 

 「おいおい、心の中を読むんじゃねぇよ」

 

 「ヒドイ!考えてたんだ!」

 

 ココアと茶番を繰り広げていると、シャロがハーブティーを持って戻ってきた。ハーブの入っている容器にお湯をいれると、赤く変色した。

 

 ハーブによって色が変わるとは、これまた面白いな。ココアも夢中になって見ている。

 

 チノのハーブティーはレモンを淹れたら、青からピンク色に変色する。これはハーブティーの知識を取り入れるのも悪くなかもしれない。

 

 「あの、ハーブを使ったクッキーはいかがでしょう?私が作ったんですが......」

 

 「シャロが作ったのか~」

 

 香ばしい匂いが癖になりそうなクッキーだ。アーモンドと一緒に焼いて作られてある。リゼが一つとって口に運ぶ。どうやら美味しいみたいだ。

 

 その様子に喜ぶシャロの表情を見てみると、まるで恋でもしてるかのように真っ赤になっていた。

 

 (シャロちゃんが真っ赤だぁ)

 

 (こっちの方が見てておもしろいっ)

 

 ココアも一つ手にとって一口かじる。

 

 「あれ?このクッキー甘くないよ?」

 

 「そんなこと無いわよ?」

 

 俺も一口食べてみる。

 うん、確かに控えめではあるが甘さはある。それでいてハーブの香りが効いていて、コーヒーと合いそうだ。

 

 「ココア......お前、頭だけじゃなく味覚までおかしくなっちまったか......」

 

 「元から頭はおかしくないよぉ!」

 

 「んっふ、それはギムネマ・シルベスタを飲んだからよっ!」

 

 「うえっ!?」

 

 「ギムネマとは、砂糖を壊すことの意......それを飲むことによって一時的に甘さを感じなくなるのよ!」

 

 「そ、そんな効能が......!」

 

 それにしても、甘さを消して何かメリットになることはあるのだろうか?普段甘くて美味しく食えてるものが、一時的に甘さがなくなるなら......

 

 「シャロちゃんはよくダイエットで飲んでたわよね」

 

 「い、言うなばかぁ!」

 

 ああー......確かに甘さがなくなるなら食べる気も失せるしダイエットになるから効率的だ。

 

 「けど、シャロは普通に可愛いんだし、それ以上自分を磨く必要なんてあるか?」

 

 と、シャロの頬が真っ赤に染まり始める。

 

 「か......かわっ...へ、変なこと言わないでよっ!」

 

 「流石ですジンさん、シャロさんも手中におさめようっていうんですか」

 

 「ヒド過ぎるよジンくん!」

 

 「わ、私達とは遊びだったのね......!」

 

 誉めたつもりが何故かブーイングの嵐。解せぬ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「結構飲んじまったなぁ~」

 

 「お腹に花が咲きそうだよ~」

 

 その場合、ココアの口から蕾が突き出てきている、結構グロテスクな光景になるのだがこの場で言うのは控えよう。

 

 「何か手伝えることがあったら言ってください」

 

 「ありがとう。チノちゃん、年下なのに偉いのね~」

 

 食器を片付けているシャロに進言するチノ。その頭を優しくシャロが撫でる。気持ち良さそうに撫でられるチノ。

 

それを隣で不満そうに見ていたココアが急に立ち上がって言った。

 

 「チノちゃんは私の妹だよっ!」

 

 「何言ってるの......」

 

 「そうだぞココア。チノは俺の妹なんだからよ......勝手に取らないでくれません?」

 

 「そういう問題じゃないわよ!あとどうして敬語!?」

 

 俺達二人のやりとりにわざわざツッコミまでいれてくれるとは。こりゃあ優秀な人材を発見したかもしれない。

 

 それに、みんなハーブティーのお陰でリラックスできたみたいだ。

 流石にプラシーボ効果だとは思うが、それとは別にクッキーもハーブティーも美味しかった。

 

 「また来ても大丈夫か?」

 

 「ええ、歓迎するわよ」

 

 「ところで、ハーブって自分で作れたりするものなのか?」

 

 今日、この店でハーブティーを味わってみて分かったことが一つ。ハーブティーもなかなかに奥が深くて面白い。

 

 というわけで、自作したハーブティーを飲んでみたくなったのだ。

 

 「そうね、自家栽培する人もけっこういるわよ。興味があるの?」

 

 「まあな、暇があったら作ってみたいと思う」

 

 「それは何よりだわ」

 

 少し嬉しそうな表情で笑うシャロ。

 うん、やっぱり美少女だよな、シャロって。

 

 「さてと、そろそろ帰ろうか」

 

 「ああ、帰りたいが......コイツは誰がおぶっていくよ?」

 

 ココアが机に突っ伏して熟睡していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数日後。

 

 「ジンくん!ハーブティー作りたいって言ってたよね?これで作ろー!」

 

 ココアが何やら店に持ってきた。片手に握られているものは明らかにハーブではない。誰が見ても理解できる。

 

 ため息を一つ吐いて、ココアに近付いていく。

 

 「ココア、お前が右手に持っているそれは何だと思う?」

 

 「ふぇ?ハーブだよ!」

 

 

 

 

 

 

 「違う..................雑草だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございます!
誤字、脱字等がありましたご指摘していただけると幸いです!
他にも、批評、意見や感想なども気軽にお願いします!



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5リゼの後輩の様子がちょっとおかしいんだが?

はい、今回は早めに書けました。
どうぞ読んでいってください。

あと、ココアファンは覚悟して下さいませ


鬱々とした雨の日、俺はデパートへと買い出しに来ていたんだが傘を持ってきてないがために帰ることが出来ないでいた。

 

 パンの材料が切れたと思ったら、今度は大雨かよ。来るときは晴れていたのに、急に降ってくるなんて本当にツイてない。

 

 雨が止むまでデパートで暇潰しでもしていようか?

 いや、それだとラビットハウスの面々に心配をかける。もう濡れること覚悟で走るか......。

 

 諦めて濡れながら帰ることにした時、聞いたことのある声に名前を呼ばれた。

 

 「あのぉ......ジンさんですよね?」

 

 声の方に振り向くと、傘を持ちながら首を傾げたメグが立っていた。片方の手には食材が入ったビニール袋が握られている。

 

 何故こんなところに?中学校の制服は着ていない。

 

 「メグか。こんなところで何してたんだ?」

 

 「夕飯の買い出しに来てたんです~」

 

 「買い出しか。偉いなぁ~メグは」

 

 チノみたいによく出来た娘だ。俺の中学校の頃なんて、今みたいにお使いなんてしたこと一度もないぞ。ましてや家事の手伝いも全くしていなかった。

 

 ヤバイ、中学生のメグにスペックで負けた......。

 チノにも負けてるけど。

 

 「帰らないんですか?」

 

 「実はさ、傘持ってきてなくて、もう走って帰ろうかな、なんて思ってたところなんだよ」

 

 行く前に午後の天気を見ておけばよかった。そしたら傘を持ってきていたのに。後先考えずに行動するのは駄目だよなぁ......。

 

 自己嫌悪に陥っていると、メグが傘を俺の方に傾ける。

 

 「だったら一緒に入っていきます?」

 

 「え、いいのか......?」

 

 「遠慮しないで下さい、猫を助けた仲じゃないですか」

 

 ニコニコと屈指のない笑顔で傘に入れてくれるメグ。ダメだ、天使に見えてきた。ありがたく傘に入れてもらう換わりに、メグの荷物を俺が持つ。

 

 遠慮するメグだが、入れてもらうだけなんてカッコ悪い。

 

 そのまま雨の中を二人で歩き出す。

 端から見たら、仲の良い兄妹に見えるだろう。

 

 まさか中学生に借りを作ってしまうなんて。

 

 少し歩いて、ラビットハウスに続く裏路地にさしかかった。ここから走っていけば多少は濡れるが、ずぶ濡れにはならないだろう。

 

 「メグ、ここらで大丈夫だ。ありがとな、傘にいれてくれて」

 

 「だ、大丈夫ですか......?」

 

 「全然大丈夫!こっから近いし、走ればすぐつくよ」

 

 メグは少し残念そうな表情をするが、すぐに笑顔に変わる。

 

 「それじゃあまたな、メグ」

 

 「はい、さよならです」

 

 傘から飛び出て、ラビットハウスまで全速力で走っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 「た、ただいま......」

 

 「びしょ濡れですね、これ使ってください」

 

 近いところから走ってきにも関わらず結構濡れた。チノからタオルを渡され、それで濡れた髪の毛を拭く。

 チノが使っている物だからなのか、柔らかくて良い匂いがする。

 

 そのまま堪能していたかったが、流石に拭く以外の目的で使ったらただの変態だ。さっさと拭いてチノにタオルを返すと、さっきから気になっていたことを口に出す。

 

 「どうしたの、コイツ......」

 

 シャロのテンションがやたらと高くなっていた。確かカフェイン酔いするって前に聞いた気もするが、飲んだのか?コーヒーを。

 

 チノに抱きついたり、ココアとなんだかよく分からずに盛り上がっている。

 

 「イェーイ!お帰りジーン!」

 

 「うん、ただいま......」

 

 ダメだ、このテンションにまったくついていけない。まるでココアが二人になったみたいだ。面倒なことになったな。

 

 と思ったが、しばらくして疲れたのか眠りに落ちる。嵐のような出来事だった。

 

 「外は大雨だし、家から迎えに来させるよ」

 

 「大丈夫よ!私が連れて帰るわ!」

 

 ご丁寧にリゼの奴が迎えを呼ぼうとしているが、何か不都合でもあるのか千夜が送っていくと言い出した。この雨のなか、人を担いで帰れるのか?しかも女の力で。

 

 シャロを担いで、店から出ていく千夜。ヨタヨタと不安定ながらも歩いていく。

 

 だが、案の定店から20メートルもない地点で力尽きてしまった。

 

 「ち、千夜ちゃ~ん!!」

 

 ココアと俺で急いで二人を店の中へと戻した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ったく、無理なら無理と言えよ......」

 

 「ごめんなさいね」

 

 二人は今日ここに泊まっていくらしい。風呂に最初に二人を入れないと、ずぶ濡れでかなわない。チノと二人で風呂場に案内すると、チノの部屋へと戻る。

 

 そうそう、実はというとチノの部屋に入るのは今日が初めてだ。

 

 「チノの部屋って、チノって感じだよなぁ」

 

 「なあココア、この制服着てみろよ。似合うんじゃないか?」

 

 「チノちゃんの制服?ちょっと着てみよっかな?」

 

 俺が部屋にあったチノの制服に指差すと、意気揚々と着替え始めた。

 

 しかも男である俺の目の前で。しかも三人とも気づいていないのか、特に咎めてこないので反応に困る。

 とりあえずココアに背を向けて着替え終わるのを待つ。なんだこれは?何故だれもツッコまない?

 

 ココアが脱いだ服が落ちる音によって耳が刺激される。

 

 落ち着け俺。ココアはただの友人......そう、悪友だ。変なこと考えるなよ......!

 念仏を唱えるように「落ち着け」と心のなかで連呼する。

 

 「えっへへぇ~、どうかな?似合う?」

 

 着替え終わったのか、感想を求めてくるココア。俺も恐る恐る後ろを向くと、しっかりと着替え終わっているココアがいた。

 

 ホッとしたと思ったらココアの脱ぎ捨てられた下着が目に入った。

 

 もう手遅れな気もするが、見て見ぬ振りをして乗りきろう。それでしか平常心を保ってられない。

 

 「そのまま中学校に行っても違和感ないな」

 

 「そお?ちょっと行ってくるよ!」

 

 「待ってくださいココアさん、外は大雨です」

 

 「いや、そういう問題じゃないだろ......」

 

 何か茶番をやっているみたいだが、もうそれどころではない。さっさとこの部屋から出ていかないと。俺の理性が持たない。

 

 「ん?どうしたんだジン」

 

 「ちょ、ちょっと具合悪いから先に寝てる......」

 

 「大丈夫ですか?雨に打たれたから風邪引いたんじゃ......」

 

 「だ、大丈夫だから......!」

 

 彼女たちの心配をよそに、急ぎ足で部屋から出ていく。

 

 廊下に出て一息つく。

 よく考えてみれば、女子と同じ屋根の下で寝てるんだよな......不健全すぎるだろ、俺。

 

 ココアもココアで無防備過ぎるし。

 

 もう変なことは考えないでさっさと寝よう。たぶん今日は疲れてるんだ。明日になったらこの説明しようのない感情もキレイになくなってるはずだ。 

 

 頭の中で必死に忘れようと考えながら部屋へと戻っていく。

 

 「明日どんな顔して会おうか......」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ラビットハウスの店内。チノちゃんの制服を来たままカウンター席に座って口を尖らせる。

 

 「ジンくん、いつも通りだったなぁ......」

 

 あまり私には魅力がないのかな?

 ジンくんは私を女として見てくれてないのかな?

 

 わざわざ目の前で着替えたと言うのに、まったく見向きもしてくれない。やっぱり私じゃなくて、千夜ちゃんみたいな気品が大事なのかなぁ......。

 

 「言えないよぉ......ジンくんに一目惚れだなんて............」

 

 あの日、初めてジンくんと会ってこれが恋なんだって言うことを知った。

 

 私に凄く意地悪で、厳しいけど、ちゃんと女の子として扱ってくれる。おなかにパンチされたのはいただけなかったけど......。

 

 さりげなく気遣って、私にお使いに行かせないようにしてたのも、いつも陰でチノちゃんに私の良いところを言っていてくれたことも全部知ってるよ。

 

 だから私は彼をもっと好きになれた。

 

 「よしっ!明日っからたくさんアタックしよう!私が好きだってこと気づかせてあげるんだから!」

 

 恋はいつだって戦争なんだよっ!頑張れ私!

 

 

 

 

 

 

 

 




というわけで、シャロも登場して役者が揃ったって感じですね。

そして、なによりもココアの一目惚れ急展開!

たぶんだれも予想してませんでしたよね、すみません
次回からは物語が大きく動き出しますよ!
まあ基本は原作沿いですがね!

質問や意見などがありましたら気軽にお申し付けくださいませ!あと誤字、脱字も!


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主人公紹介

今回はおまけみたいな回です

次回からまた本編が始まります!


芹沢 神

 

年齢 16歳

身長 169cm

体重 58kg

 

B:80 W:60 H:82

 

容姿

若干短く切り揃えられた黒髪に、鋭く死んだ目をしている。体格は中骨中背。

いつも制服の中にパーカーを着ていて、寝間着や私服においても普段からパーカーを着用している。服を脱ぐと中々に筋肉質で、着やせしていることが分かる。オシャレには全く気を使わず、着ている服は殆ど父親や母親のおさがりで、自分で服を選んで買ったことがない。そのせいか、出掛けるときも制服で出掛けることがある。

 

 

性格

ぶっきらぼうで口が悪いが、根は優しくノリが良い。よくココアの天然ボケにもノッてきている。

大して頭が良いと言うわけでもなく、運動が得意と言うわけではないが、身体能力は高く初見のスポーツでもすぐに人並み以上に出来てしまう。至って本人に自覚はない。反面思考は固く、常識にとらわれてしまってよく物事において大切なことを見落としてしまう。決して頭が悪い訳ではない。年下には非常に優しいが、ココアやリゼのような同年代、年上に対しては厳しい態度で接する。

 

余談

ジンには神という漢字表記があるが、これは名前にコンプレックスがあるためジンという表記にしてある。

母親の影響で、コーヒーには多少詳しく、味を見ればどんな銘柄か当てることが出来る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「......ジンくん可愛い......!」

 

 アルバムを開いて、幼いジンくんを堪能中。

 

 何故私がジンくんの部屋で、ジンくんのアルバムを鑑賞しているかというと、お掃除と称して忍び込んじゃったのです!

 

 ジンくんだって年頃なんだから、そういうエッチな本とかあると思ってたけどなかなかに見付からない。どんな女性が好みなのか参考にしようと思ってたのに......。

 

 だけど!それよりも価値がある物を私は見つけたのです!

 

 そう――――ジンくんの小さい頃のアルバム!たまたま見つけちゃって開いてみたら小さいジンくんが写っていた。

 

 こちらにピースをしながら満面の笑みを浮かべている。今と違って、天真爛漫といった感じの男の子。ジンくんがこんなに笑ってるところは見たことがない。

 

 「はぁ~......癒されるなぁ~」

 

 好きな男の子の幼い写真を見れる機会は滅多にない。だから今のうちに目に焼き付けておこう。あと匂いも嗅いでおこう。

 

 あれ?私なんか変態さんっぽいかな?たぶんそれほど好きってことだよね!

 

 とりあえず、このジンくんが小さい頃の写真だけ抜き取っておこう。そして財布に入れてお守りとして使おう!

 

 思い立ったが吉日。スッと写真を抜き取って、アルバムを元の位置に戻すと部屋から立ち去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ん?アルバムってこんなとこに出してたっけ?............ま、いっか」

 

 ジンはまだ知らない。

 

 今頃写真をお守りとして使われていることを。

 

 

 

 

 




ジンくんに何か質問のある方はどんなことだろうと受け付けます!

そのうちアンケートへの返事をする回とかやってみたいです!


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1大きくなりたい?チノはそのままで大丈夫

永らくお待たせしました

いやー、もしかしたら新キャラが出るかもしれませんよこれは

というか、出すしかなくなってきました(白目)


「う......ん、ど、何処だここ?」

 

 ふと目が覚めると、光のない暗闇が広がっていた。目を開けているという感覚はあるが、それ以外は何も分からない。

 動こうにも縄か何かで、体が椅子にくくりつけられている。

 

 落ち着いて昨日の記憶を辿る。確かシャロが家に泊まっていって、俺は自分の部屋ですぐに寝たはず。なんでこんなところに......

 

 「あ、ジンくん!起きてたんだね、おはよ~」

 

 暗闇に光が射し込む。目が刺激され、薄目で開いてその人物を確認すると、それは予想を裏切る人物だった。

 

 「こ、ココア......?おま......な、何してるんだ?」

 

 いつもの健気な笑顔のココアだった。俺はココアを見て背中に背筋に悪寒が走った。彼女はいつものココアだ。

 

 だが..................どうして血が付着した包丁なんか持っているんだ?

 

 「な、何してんだよお前......」

 

 「ああ!これ?これはね、ジンくんに近寄る悪い虫を駆除してきたんだよ~。偉いでしょ?偉いよね?」

 

 恍惚とした表情を浮かべながら包丁の側面に頬擦りする。そのままゆっくりと近付き、俺の膝に座ると頭を胸に預けてきた。

 

 おかしい――おかしいおかしいおかしい!コイツはココアだけどココアじゃない!

 

 「ほ、ほどいてくれ!ここから出せ!」

 

 暴れながら縄をほどこうとした途端、彼女の持つ包丁が膝に突き刺さる。

 

 「――――ッ!!」

 

 「大丈夫だよ~、私がずっとジンくんのお世話をしてあげる。ご飯もおトイレもお風呂もぜーんっぶ、私が面倒見てあげるから」

 

 彼女の言ってることに対して意見できない。

 膝に刺された包丁をグリグリと抉られているせいで激痛が走る。何か言おうにも痛みでそれどころじゃなかった。

 

 「ずっと、ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずぅ~と.......私だけ見てれば良いんだよ?」

 

 打って変わって、彼女の笑顔は狂気に染まっていた。もうコイツは......ココアなんかじゃない。

 

 

 

 

 

 

 「嘘だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 「ひゃあ!?」

 

 布団から飛び上がるように起きる。いや、実際に布団から飛び上がった。汗で服はグショグショになっていた。

 

 ベットの隣にはココアが立っていた。

 思わず身構えてしまう。

 

 「び、ビックリしたよ~。ごはんできたから起こそうと思ったんだ」

 

 膝に急いで目を落とすと、傷はどこにも見当たらない。どうやら夢だったらしい。

 

 よりによって何であんな夢を?

 

 妙にリアルだった上に、ココアがヤンデレというオチとは......最悪すぎる。

 

 ともかく流れる汗をシャワーで洗い流したい。

 

 「夢でよかった......」

 

 心の底から安堵したのはいつぶりだろうか?

 

 ココアは俺の表情を見ながら疑問符を浮かべていた。

 

 

 

 

 今日を除いて、最近朝は心地よく起きることが出来る。よく分からないが、することがなくて早めに寝るからであろう。その反面、俺の高校生活きは全くもって華がない。

 

 制服に着替え、朝食を摂りに下へと降りていく。今日の朝食はタカヒロさんが作ってくれたみたいだ。クロワッサンとベーコンエッグに、セロリとトマトジュース。健康的な朝食だ。

 ココアが旨そうにクロワッサンを頬張る姿を見ていたらこちらまで腹が減ってきた。

 

 俺もクロワッサンを一口頬張る。焼き加減が上手く非常に美味しい。

 

 少ししてココアとチノの異変に気づく。異変って程ではないが好き嫌いの類いだろう。ココアはトマトジュースが苦手で、チノはセロリが苦手だ。

 一緒に過ごしていると嫌でもその人間の特徴が分かってきてしまう。

 

 確かにセロリもトマトジュースも好きと言うわけではないが、嫌いと言うわけでもない。そもそも俺には好き嫌いと言う概念が存在しない。

 

 セロリも食べ、トマトジュースを一気飲みして朝食を食べ終えるとココアとチノは諦めたのか、それぞれ嫌いなものを残したままだ。ティッピーが二人を交互に見ながら溜め息を吐く。ティッピーの気持ちは分からんでもない。いや、ウサギの気持ちって何だ......?

 

 朝食も食べ終えて支度を終えた後でラビットハウスを出た。

 

 

 

 

 

 

 

 「チノちゃん、好き嫌いしちゃダメだよ?」

 

 「ココアさんだってトマトジュース飲んでないじゃないですか」

 

 登校中、二人が今朝の残飯について言い合っている。あの後、二人とも残すもんだから俺が美味しく頂いておいた。

 

 「でもチノちゃんの方が好き嫌い多いよ?ちゃんと食べないと大きくなれないよ?」

 

 「大丈夫です、ココアさんよりは大きくなりますから」

 

 出来ればチノにはそのままでいてもらいたい。

 成長して大きくなったチノなんて想像できない。

 

 ......待てよ?

 

 チノが大きくなって、姉になるってのもありかもしんない。

 

 「それでは、私はこの辺で」

 

 チノと俺達二人は通学路が違う。そのため、途中で別れることになるのだ。

 

 「それじゃあ、またなチノ」

 

 「バイバイ!チノちゃん!」

 

 チノに別れを告げた俺達は、途中で千夜と合流してから学校に向かった。

 

 校門を抜け玄関で靴を履き替える。

 階段を昇りながら、特にこれといった話題もなく歩いていく。

 

 因みに俺は二人とクラスが違う。根も葉もない噂が流れているのは、千夜が根も葉もない噂を流しているからに違いない。いや、天然ゆえに何か口を滑らせてるだけかもしれないが......。

 

 「それじゃあまたねジンくん!」

 

 「今日も一日頑張りましょ~」

 

 二人とも俺に手を振りながら自分のクラスへと入っていく。こちらも軽く手を振り返して教室に入る。

 

 教室に入ると、真ん中まで行って椅子に下ろす。特に知り合いや友人がいるわけでもなく、HRが始まるまでボーッとしている。

 好きで友達を作っていないわけじゃない。入学して、気付けば周りは女子同士であるためすぐに打ち解けていた。

 

 男子である俺には居場所もなく、ただこうして静かに過ごすしかないのさ。

 

 ずっとボーッとしてるのもアレだな。

 取り合えず読書でもしよう。鞄に手を伸ばそうと腰を屈めると、机の中に一枚の手紙があるのを見つけた。これは一体なんだろう?気になって手に取ってみると、それはあり得ない物だった。

 

 「な、なんだこれ......?」

 

 その手紙はハート型のシールで封がされてある。とある一種の答えが浮かんだが、その可能性は非常に低いだろう。

 

 例えこれがラブレター出会ったとしても、俺はこの学校に友人と言える女子が居ないからだ。

 正確には二人いるが、ココアと千夜が俺にラブレターを出すわけがない。

 

 まずは開けてみよう。

 封を破り、中の紙を取り出しす。それは――

 

 

 『放課後、屋上で待ってます』

 

 

 とだけ書かれた文面の手紙だった。




ココアのヤンデレって地味に想像しやすかったです
もしリクエストがあれば他のキャラのヤンデレもだせますよ?

まあいないと思いますがね!

ここまで読んでいただき有り難うございます!
誤字、脱字がありましたらご報告していただくと幸いです!


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2大きくなりたい?チノはそのままで大丈夫

えー、喫茶店でバイトがしたいと思う作者です

現在はもう少しで冬だと言うのに、物語の季節は夏です。

それでは15話目をどうぞ!


 放課後。

  

 俺は手紙の通りに屋上へと来ていた。

 屋上に出る扉の前で身だしなみを整えると深呼吸をする。まだ告白と決まったわけじゃないが、少しくらい期待してもいいだろう。男の子なんだし。

 

 扉に手をかけ、ゆっくりと扉を開いて屋上に出る。刹那、眩い光が俺の目を照らす。それと同時に瞳を閉じる。

 一瞬の出来事に理解が追い付かず、頭の中でグルグルと思考が混濁する。

 

 ゆっくりと閉じた瞳を開けると、驚きの光景が飛び込んできた。

 

 「やっと会えたっスね!芹沢ジンさん!」

 

 「......殴ってもいい?」

 

 「いきなりレディに酷くないッスか!?」

 

 カメラを首に下げ、ニコニコと満面の笑みを浮かべた少女が立っている。

 

 金髪にツインテールといったテンプレをそのまま具現化したような奴だ。この時点で、俺ははっきりと悟った。これは愛の告白の為に呼ばれたんじゃなくて、新聞部の取材の為に呼ばれた――と。もう殴るしかないだろ。

 

 「そもそも、どこで俺の名前を知った?」

 

 「新聞部なら知ってて当然ッスよ!」

 

 「新聞部なら当然なんだ......」

 

 ガックリと項垂れて膝を床につく。期待で高揚していた俺の心情は今ハイパーゲンナリだ。名前も顔も知らない人間を殴りたいと思ったのはこれが初めてかもしれない。

 

 「まあまあ、そんなことより自己紹介ッス!ボクは新聞部所属の花深 由々亜っていうッス!」

 

 やけにテンションの高い女だ。何がそんなに嬉しいのか、ニッコリとした笑顔を見せている。ビジュアルは十分にいいと思う。普通に美少女ってヤツだ。

 

 しかし、俺はおしとやかで清楚な娘が好みだし、コイツはただのビッチにしか見えん。

 

 「ではでは!早速ご質問よろしいッスか?」

 

 「いいぜビッチ、答えられる範囲ならな」

 

 「ビッチじゃないッス!」

 

 わざわざ俺のボケにツッコミを入れると、胸元からメモ帳とペンを出して質問をしてくる。

 

 「それでは芹沢さん、この高校唯一の男子生徒としてどう思いますか?」

 

 ペンをマイクのように俺に向けてくる。

 

 どう思ってると言われても、全然得しないハーレムとしか言えない。むしろ生き地獄だろこんなの。気まずい環境であと約二年過ごさなきゃならないんだぞ?まったくもってふざけるなだ。

 

 だがしかし、体育で行われる水泳の時間だけは得したと言ってもいい。男は俺一人しかいないという事もあって女子と混合してやらせてもらっている。

 

 おかげで水着姿のクラスメイトをいくら視姦しても犯罪にはならない。最高じゃないか。時折こちらを見るクラスメイトの視線が痛いのを除けばな。

 

 「損することもあれば、得することもあるんだなぁと思いました」

 

 「ほうほう......何かを悟った表情をしていますね」

 

 メモにペンを走らせると、またペンをマイクのようにこちらへと突き出す。

 

 「では次の質問ッス!今、この学校に好きな女性はいますか!?」

 

 「いない」

 

 「え!?即答!?」

 

 当たり前だ。

 

 むしろ好きな人が出来る方がおかしいだろ。

 

 今の俺の状況を見て想像しろ。

 周りは女しかいないため誰とも話が出来ず、気付けば学校が終わる毎日を。

 

 ......誰に好意を持てばいい?

 

 てなわけで答えはノーだ。

 

 「もういいか?いいだろ?帰るわ」

 

 「ええ!?ま、まだ聞きたいことが......!」

 

 「アリーヴェデルチ......!」

 

 身を翻して扉を蹴破るように開けて疾走する。

 これ以上コイツに付き合ってると自分で自分の心を抉る羽目になる。

 

 さっさと帰ってチノの匂い嗅ぎながらコーヒー飲みたい。変態っぽく聞こえるだろうが、こんな生活送ってると嫌でも腐るわ。心が。

 

 「あ!芹沢さん!......って、行っちゃった............」

 

 屋上に一人取り残された花深。ペンとメモ帳を仕舞うと、スカートのポケットから一枚の写真を取り出す。それは、泣きじゃくる女の子の頭を優しく撫でてあげるジンの姿が写る写真だった。

 

 入学式から少し経った頃の話。

 

 迷子になってしまったのであろう少女を通行人が見て見ぬフリをする中、ジンはその少女に駆け寄っていった。その時、安心させようと頭を撫でる所を撮影したものである。

 

 「優しいッスね、芹沢さんは......迷子の女の子も助けて、私みたいなうるさい奴にも付き合ってくれるなんて......」

 

 写真に写るジンの顔をなぞりながら呟く。

 

 「良かったッス、君に好きな人がいなくて......」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あら?ジンくんも帰るところなの?」

 

 「ああ、まあな。......って、あれ?ココアは一緒じゃないのか?」

 

 花深から逃れ、帰宅している途中に千夜とたまたま遭遇した。珍しいことにココアの姿はなく、千夜一人で帰宅していたみたいだ。

 

 「ココアちゃんは先生のお手伝いで、「先に帰ってても大丈夫だよ!」って」

 

 「なるほどね、どおりで珍しいと思ったよ」

 

 「それじゃあジンくん、良かったら家までお供してくれないかしら?」

 

 「喜んで、千夜様」

 

 「ふふっ、頼りにしてるわナイト様」

 

 そんな会話をしながら千夜と一緒に帰宅する。

 

 歩く度に長い千夜の髪がなびいて良い香りが漂う。そんな千夜の香りを堪能しながら歩いていると、遠くにチノの姿が見える。

 

 「なあ、あれってチノじゃないか?」

 

 「あら?本当ね、何をしてるのかしら?」

 

 なんだろう?

 

 スキップして前進している。

 あんなに機嫌の良いチノは初めて見るかもしれない。

 

 「何か良いことでもあったのかしら?ほほえま~」

 

 「うん、微笑ましいな」

 

 敢えてツッコミは入れなかった。

 

 二人でチノを観察していると、お次はスキップからジャンプにかわった。どうやら赤い石畳の上だけ飛んでいるみたいだ。

 

 ピョンピョンと跳ねるチノの横を、同じように跳ねるウサギが現れた。それに目を奪われたのか、よそ見をしてしまったせいで電柱に頭をぶつける。

 痛そうに額を押さえてしゃがみこむチノ。まさか、熱さのせいで頭がおかしくなってしまったのか?

 

 いや、きっとウサギに目を取られたのだろう。

 少しして、ウサギを抱き上げると何事もなかったかのように歩き始めた。

 

 ――――え、そのウサギどこに連れてくの?

 

 「なんか不安だし、ちょっとチノのところ行ってくるよ」

 

 「ええ、私は甘兎庵で仕事があるからチノちゃんのことよろしくね」

 

 「おう、任せとけ」

 

 グッと親指をたてて、チノの方へ走っていこうとすると、また千夜に止められる。

 

 「あ、ジンくん、空いてる日とかってあるかしら?」

 

 「空いてる日?今週なら暇だけど?」

 

 「それなら、土曜日にココアちゃん達と図書館に行きたいの。ココアちゃんと勉強しようかなって思って」

 

 「ああ、別に構わないぞ?それじゃあ今週の土曜日は開けとくよ。また明日な!」

 

 「ええ、楽しみにしとくわ~」

 

 千夜に別れを告げると、今度こそチノの方へと走っていく。

 

 

 

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございます!

ついに出しちゃいましたよオリキャラ.......

あと、自分で書いてても思ったのですが、千夜の行動がイチイチ書きにくい......!まあ黒髪ロングは好きですけどね

誤字、脱字などがありましたらご報告お願いいたします!



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3大きくなりたい?チノはそのままで大丈夫

いやー、タカヒロさんって男として憧れの的ですよね
女性の方はあんな男性を好きになるのでしょうか......妬ましい!!




 誰かの耳に吐息がかかりくすぐったい。

 

 ベットに寝ているのは俺一人の筈なんだが、どうして寝息が隣から聞こえてくるのだろうか?見るのが少しだけ怖い。が、勇気を振り絞って隣に寝てるであろう人物の顔を確認。

 

 そこで寝ていたのは――――テイッピーだった。

 

 「なんでだよ......!」

 

 思わずティッピーにチョップでツッコミを入れてしまう。しまった、ティッピーって結構老けてるんだったよな?

 呻き声を上げるテイッピーの頭を撫でてやると、また気持ち良さそうな寝息が聞こえてきた。

 

 可愛くて抱き締めたくなる衝動に駆られるが、絵面的に誰得でもないので自重する。

 

 しかし、一体どうしてティッピーがここで寝ているのだろうか......?

 寝起きでぼやけている頭に思考を巡らせていると、ふとあることに気づいた。

 寝息は一つだけじゃない。ティッピーを向いた俺の後ろから、もう一つの寝息が聞こえてくる。

 

 予想からしてチノなんじゃないだろうか?

 

 チノはティッピーをいつも頭に乗せている。それで俺を起こしに来たけど、布団に入ったら居心地がよくてそのまま寝てしまったのでは?

 

 膨らむ期待を胸に、ゆっくりと後ろに寝返る。

 

 と、そこには、渋い髭が似合う一人のハンサム――――もとい、タカヒロさんが、普段見せたことのない心地良さそうな寝顔で眠っていた。

 

 「なんでだぁぁぁぁぉぁぉ!!」

 

 ガバッと布団から勢いよく起き上がると、こちらの様子に驚くタカヒロさんが、俺を起こしに来てくれていた。

 

 ゆ、夢......だったのか?

 

 「大丈夫かい?変な夢でも見たかな?」

 

 心配そうに声を掛けてくれるタカヒロさん。その優しい瞳が、今は何故だか見たくなかった。すみませんタカヒロさん......。

 

 「だ、大丈夫です......ありがとうございます......」

 

 きょ、今日も一日頑張るぞい......。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「おはようジンくんっ!」

 

 制服に着替え、店に降りていくとチノとリゼとココアの三人が既に働いていた。

 最近寝坊が多くてマズイ。これじゃあ、いつかラビットハウスから追い出されかねない。

 

 そんな不安をよそに、三人はなにやらコーヒー占いをしているみたいだ。ココアがチノとリゼを占っている。

 コーヒー占いとは、コーヒーを飲み終えたカップの底にできた模様で運勢を占うといったもので、母さんも俺が小さい頃よくやっていた。

 

 不幸体質である俺への占いは、今日もツイてないの一言で片付けられていたが。

 

 「丁度良かった!ジンくんも占ってあげるよ~」

 

 「じゃあ折角だし頼んでみようかな?」

 

 カップに注がれたコーヒーを飲み干して、それをココアに見せるとココアの顔が急に険しくなった。俺の顔とカップを交互に見ながら。

 

 「ど、どうした?なんかマズイことでも?」

 

 「じ、じじじじジンくん!大変!ナイフが飛んでくるよ!頑丈なものを持っていかないと!」

 

 「お前マジメにやったんだよなぁ!?」

 

 ナイフが飛んでくるって、俺は今から戦場にでも行くのか?

 

 それはそうと、ココアの運勢占いは全く役に立たないことが分かった。

 

 「ん?ティッピーどした?」

 

 「ティッピーも占いたいみたいです」

 

 「............占えるのか?」

 

 ココアの下らない占いを受けている俺の隣で、チノの頭でそわそわ落ち着きなく動いているティッピー。ココアが占っているのを見て占いたくなったのだろうか?

 

 いや、うさぎに占うことが出来るのだろうか?

 細かいことを気にしたら負けだというのも分かっている。けどこれにはツッコミたかった。

 

 「占えますよ、ティッピーですから」

 

 チノの言い分は少しおかしい気もするけど、チノが言うならそうなんだろう。みんなでティッピーにもカップを見せてみる。

 

 「ココアは雨模様、というよりかは水玉模様。正直外出しない方が吉じゃな」

 

 「............だって」

 

 「いや、お前の運勢だから」

 

 お次はリゼの運勢をみる。

 

 「リゼは、将来器量のある良き嫁になるじゃろう」

 

 「私が?まさかぁ~!」

 

 良い嫁と聞いて照れたように謙遜しているが、リゼはきっとそうなると俺は思う。

 力も強くて、守ってくれそうで心強い嫁にもなるだろう。女性の褒め言葉にはなってないけど。

 

 それに、リゼの占いは良いことばかりでもなかった。

 

 「昨日は食後のティラミス一つだけじゃ飽きたらず、キッチンに忍び込んだ」

 

 「うっ......」

 

 ギクッとするリゼ。

 どうやら図星みたいだな。けど、確かに女子ならばやりそうだ。ココアも以前にやっているところを目撃したことがあるが、俺も一緒に食ってしまったのは咎めないでほしい。

 

 「実は甘えたがり、褒めると調子に乗りこおる。適当に流すのが無難」

 

 「ええい!ただの性格診断じゃないかこの毛玉めぇ!」

 

 「ギャー!」

 

 「当たってんのか......」

 

 容赦ないリゼのチョップがティッピーに炸裂する。あれは絶対痛い。ティッピーの頭が変形するくらいの威力だしな。

 

 そしてお次は俺の番だ。

 

 実はというと、俺は占いというのはあんまり信じない主義なのだが、ティッピーの占いはリゼの様子を見る限り中々期待できそうだ。

 

 「ナイフが飛んでくるようじゃな、硬く身を守れるものを持っていった方が良さそうじゃ」

 

 「真面目にやれよぉぉぉ!!」

 

 「ギャー!」

 

 リゼと同じく、容赦のないチョップをティッピーへとかます。

 

 なんだこのデジャヴは......。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「............今日はなんだかツイてない気がする......」

 

 「本当に飛んでくるとは......」

 

 「そ、そんな日だってあるわよ~」

 

 今日も一日を終え、ココアと千夜の二人と帰宅している。ココアは胸元に甘兎庵のマスコット、通称あんこを抱き抱えている。

 

 ココアは昼飯の最中に、空からカラスに拐われていた黒ウサギ――通称あんこが弁当に落下。

 昼飯の代わりにコロッケパンを買ったが、自分の下着を晒していたことに気づかなかったことによりショックを受けて、コロッケパンを床に落として台無しとなる。

 

 俺はというと、調理実習中にナイフを持って歩く女子が転んで、その勢いのままナイフを手放したせいでこちらに飛んできた。

 たまたま近くのまな板で防げたからよかったものの、下手したらお陀仏してた。ツイてないとかのレベルじゃない。

 

 二人でブルーになりながら歩いていると、上から水の入ったじょうろがココアに落下してくる。

 

 水がココアにかかり、落ちてきたじょうろが千夜に落ちてきた。それを防ぐため、千夜を退かすが上を見ていた俺の目にじょうろが直撃。

 

 「こ、ココアちゃんっ!?ジンくんっ!?」

 

 「め、目がぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 「あんこが濡れなくてよかったぁ!......ってジンくん!?大丈夫!?」

 

 のたうち回る俺を心配して二人が近付く。痛みが引いてくると、そっと立ち上がって涙目であるのを隠すために目を拭う。

 

 い、痛かった......腫れてないよな?

 

 千夜がハンカチで濡れたココアの髪を拭いて、俺の目に怪我がないかどうか確かめてくれる。どうやら軽傷すら負っていないみたいだ。

 なんかオーバーリアクションしたみたいで恥ずかしいぞ。いや、本当に痛かったからな?

 

 「二人とも、ありがとう。お礼と言ってはなんなのだけど、シャロちゃんのお店でご馳走するわ」

 

 「本当!?やったねジンくん!」

 

 「いいのか?千夜」

 

 「ええ、私のナイト様が体を張って守ってくれたんですもの。ご奉仕しないわけにはいかないでしょ?」

 

 「ははっ、確かに。違いないな」

 

 この前のやりとりのように、二人でクスクスと笑いながら会話をする中、納得がいかないといった様子のココアが割り込む。

 

 「ち、千夜ちゃん!?な、ナイト様ってどう言うこと!?」

 

 「悪いなココア、それは俺達だけの秘密だ。許せ」

 

 「そうなの、ごめんなさいねココアちゃん」

 

 「ふぇ~!二人ともひどいよぉ!」

 

 「ほら、さっさとシャロのとこ行こうぜ~」

 

 そのままシャロの店へと向かい、千夜にご馳走してもらった。その間、ココアはずっと膨れっ面でいた。

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございます!

書いてて思ったのですが、ジンのイメージキャラボイスって誰だと思いすかねぇ?書いててまったく想像できないです

ではでは!誤字、脱字などがありましたらご報告お願い致します!


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4大きくなりたい?チノはそのままで大丈夫

遅くなってしまい申し訳ありません!
続きをどうぞぉぉ!!


 「でっか......」

 

 今日はココア、シャロ、千夜の三人と一緒に図書館に来ている。

 この町の図書館は非常に大きく、俺の地元にもこれほどに広い図書館はなかった。

 

 ココアが外の景色がよく見える席を選ぶ。

 そこにチノとシャロが隣同士、千夜とココアが隣同士で向かい合うように座る。

 

 俺はそれに挟まれた真ん中の席に腰掛ける。

 

 「ここ、景色が見えるから良いねぇ~」

 

 「勉強しに来たんじゃないんですか?」

 

 教材をトントンっと揃え勉強を始めようとするチノに対し、俺はこの席に来る途中に持ってきた本を開く。

 

 内容はなんでも出来る天才が、落ちこぼれと呼ばれる少女との恋に落ちてしまうといった中々に面白そうなものだった。

 

 だが、ページ数が異様に多くて全部読み切るのに徹夜しても四日は掛かるだろう。

 

 「チノは確か、読みたい本を探しに来たんだよな?」

 

 「はい。正義のウサギさんが、悪いウサギさんを退治するのですが、周りの関係ないウサギまで巻き込んでしまって大変なことになるお話です。けど、テストも近いので私も勉強をします」

 

 「偉いなチノ。なら千夜とココアと一緒に勉強するのか......こりゃ暇そうになるな」

 

 持ってきた本を開き、四人が勉強をするのをよそに読書を始めようとするするが、千夜に止められる。

 

 「ダメよジンくん。ジンくんにはココアちゃんがサボらないようにしっかり監視しててもらわないと。私にちゃんと勉強教えててくれるか見ててね」

 

 「う、うぅ、私サボらないよぉー......」

 

 千夜からの信頼が全くないなココア。

 

 それなら、ココアを監視するとしよう。俺は勉強道具を何一つ持ってこなかったから、ただ見てることしか出来ないしな。

 

 「って、ん?ココアが教える?逆じゃないか?」

 

 千夜の言っていることに疑問が生じる。あのココアがどうして千夜に勉強を教えられるのか?何かの間違いだろ?

 

 「違う違う、私が教えてもらうの~」

 

 「嘘でしょ......!?」

 

 シャロもそれを聞いて信じられないといった表情に変わる。しかし俺はココアが数学と物理が得意なことを知っていた。

 暗算での計算処理が異常に速い上に、電卓を使わないとややこしい問題も暗算で解くことが可能だ。

 

 俺はココアの計算速度だけには肝を抜かれた。それ以前から、ラビットハウスで下宿を始めた最初の頃にその片鱗に触れていたのだが。

 

 「それなら、ココアがチノちゃんに勉強を教えてあげたら?」

 

 「私、総合順位でいえば平均くらいだから......」

 

 「そんなに足を引っ張っている科目があるの?」

 

 「これ......」

 

 哀しいかな、所詮ココアはココアだ。

 

 いくら計算が出来てもアホの子だと言うことには変わりない。であって、文学系統の成績は終わっている。

 

 「文系が絶望的......!」

 

 足を引っ張る科目をシャロに聞かれて答案用紙を晒すココア。その点数に目を丸めるシャロだが、それは俺も同じだった。

 

 いや、流石にここまで悪いのは予想外だった......。

 

 「それにココアさんの教え方はアレなので頼りにならないです」

 

 「あれぇ......!?」 

 

 残念だなココア。

 千夜に教えるのが上手くても妹(仮)に教えてやれないのんてな。

 

 因みに俺も教えるのは苦手だ。

 

 前に一度チノに勉強を教えてやったが、「分かりにくいです」の一言で撃沈。俺には人に何かを教えるのは無理だったんだ......。

 

 思い出しただけで悲しくなる。

 ニヒルな笑みを浮かべながら外の景色に視線を移すと、カリカリと筆を走らせる音が聞こえてきた。

 四人とも勉強を開始したみたいだ。

 

 千夜がココアに文系を教えたり、反対にココアが千夜に理系を教えたりしている。

 

 シャロとチノの方は上手く勉強をしていた。シャロの説明の仕方が上手いのか、チノも頷きながら問題を解答していく。

 その間、暇ではあったがココアの見張り役と言う千夜の命のもと、本を手放してココアの監視に徹した。

 

 それから長い間そんな空間に縛られていると、意外にも千夜が口を開いて無駄話を始める。

 

 「そういえば、チノちゃんはシャロちゃんの学校と私達の学校、どっちに行きたい?」

 

 「チノちゃんはセーラー服が似合うよ!」

 

 「ブレザーの方が絶対可愛いわよ」

 

 「袴姿も似合うと思うの~」

 

 「やっぱりメイド服っしょ!」

 

 口々にチノに似合いそうな制服を並べていくと、困ったように悩むチノ。すると、

 

 「袴はともかく、そろそろ決めないといけませんよね、悩みます......ジンさんは死んでください......」

 

 あれ?今、俺にサラッと毒吐いた?

 

 「将来の夢を決めるのは、難しいことよね」

 

 あれれシャロさん!?スルーっすか!? 

 

 「将来の夢かぁ......」

 

 うーん、とココアは頭を悩ませている。

 

 「私はパン屋さんか、弁護士さんになりたいな~」

 

 「べ、弁護士って......まあ努力すればなれるだろうけどさ」

 

 なんだか弁護士の格好をしたスーツ姿のココアが頭を過る。しかし、中々さまにはなっているせいかタチが悪い。

 

 仮にコイツが弁護士になったとしても、俺は弁護してもらいたくないな。

 

 「立派な夢ね、ココアちゃん」

 

 「えっへへ~」

 

 手を合わせて微笑み合う二人。

 

 「んじゃあ、千夜の夢ってなんだ?」

 

 「私は、甘兎庵をもっと繁盛させるのが夢」

 

 「わ、私も......」

 

 割り込むように夢を語り始めるチノ。

 

 そういえば、チノの夢ってあまり想像がつかない。直感的に考えて、チノも店の繁盛か?

 

 「家の仕事を継いで、立派なバリスタになりたいです」

 

 「バリスタか......なんかカッコイイな」

 

 「そうだね~。あ、なら私、町の国際バリスタ弁護士になるよ!」

 

 「とりあえず、町の国際から離れろ......」

 

 そんなこんなで、日が暮れるまで俺達は無駄話に興じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「見当たんねぇな......」

 

 勉強も一段落――――というよりか無駄話をしていただけだったが、今はそれも終えてチノが読みたがっている本を探している最中だ。

 

 ココアとチノは、遠目だが見える範囲にいる。

 向かいの本棚の方で、ココアがチノの手を引いて楽しそうに歩いている。

 遠くから見ると、やはりココアも女の子で微笑ましい。

 

 少し二人に夢中になっていてハッとする。

 こっちはこっちで探さなくては。

 

 そう思い立って本棚を探し始めるが、タイトルも分からないため、一冊一冊中身を覗いてみないと探せない。

 

 一冊手に取り、少しページをめくる。しかし、チノの言う内容とは一致せずに本棚へと戻す。これの繰り返し。もう数十分と調べてはいるが、それらしい本は見当たらない。

 

 それから、さらに時間を重ねて調べてみるが、見付かる気配はまるでなく、気になった本を取って立ち読みしてしまう始末。

 

 そんな俺にココアが歩み寄ってきた。本は見付けたのだろうか? 

 

 「チノちゃんがタイトル思い出したみたいで、探してくるからジンくんと先に下に降りててだって~」

 

 「思い出したのか......」

 

 溜め息を一つ吐いて本を戻す。

 なら俺達が今まで探してきたこの時間は一体何だったんだろうか。

 

 まあ良いだろう。

 借りてた本は、家に帰ってからゆっくり読めばいい。

 

 と、その時、ココアが目を見開いた。

 

 「じ、ジンくん大変......け、怪我してるよ?」

 

 ココアに言われて気が付いた。

 人差し指から血が出ている。本を読んでる時にでも紙で切ったのだろう。

 全然痛みが襲ってこなかったせいで分からなかった。

 

 「こんなん大したことないって、消毒しとけば治るだろ?」

 

 「うぅ......で、でも消毒液なんてないし......そ、そうだ!」

 

 「な、何して......」

 

 ココアの手が俺の指を掴む。

 そのまま自らの口に運ぶと――――それをくわえた。

 

 「――――――――!?」

 

 「はむ......んちゅ...........」

 

 気付けばココアの口の中で、舌で、俺の指が蹂躙されていた。

 傷を撫でるように舐められ、ココアの舌の感触が俺の脳を刺激する。

 

 唐突な状況にも関わらず、情けない俺はこの状況に少なくとも興奮していた。

 

 「んむ......ひゃんほひょうろくひないほ......」

 

 くわえながら言葉を話す。

 官能的で妖艶なココアの声に、鼓動が早くなるのが分かる。それにつれて俺の顔は紅潮していく。それは自分でも分かるほどだった。

 必死に俺の指を舐めるココアにゾクゾクしてしまう。だいぶ変態だな......俺。

 

 ゴクリ、と固唾を飲む。

 

 こんなに色っぽいココアは今まで見たことがない。

 

 「ぷはぁ......血は止まったね。痛くなかった?」

 

 「い、痛くなかった......」

 

 やっと指から口を離した。

 

 俺はそう一言を返すので精一杯だった。緊張で声が震えているのが分かる。

 

 俺の言葉に俯くココアだが、すぐに顔を上げるココアも顔を赤くしていた。

 

 「もう一回......じ、ジンくんの指......消毒していい............かな?」

 

 「だ......大丈夫だ!もう十分!......うん、もう十分......!」

 

 ココアから妙なフェロモンが出てるのを感じ取った俺は、慌てて遠慮の言葉を口に出す。

 こんな風に女の顔をしているココアを見るのは初めてだ。

   

 俺の返答を聞いてココアは、残念そうな表情を浮かべた後に、にへらと笑った。

 

 「ジンくん、顔赤いねっ」

 

 「そ、それはお前もだろ......!?」

 

 変な沈黙が流れる。その沈黙を破るように口を開いたのは俺だ。

 

 「ありがとな、しょ...消毒してくれてさ」

 

 ココアの行動に驚きはしたが、少なくとも善意で俺の指を消毒してくれたんだ。

 

 素直にココアに礼を言わないとな。

 

 「あ......う、うんっ!言ってくれればいつでもするよ!」

 

 「調子に乗んなっつの......」

 

 いつものように、ビシッとココアの頭に軽くチョップをかます。イテッと言って笑うココア。

 

 「ココア~、ジーン、何してるのよ~?もう行くわよー」

 

 下から声が聞こえる。シャロの声だ。

 降りてくるのが遅い俺達に声を掛けたのだろう。

 

 「は~い、今行くよ~。ほらジンくん、行こっ」

 

 まだ顔が赤いココアが、俺に手を差し出す。

 いつもなら、適当にあしらって流す俺だったが「そうだな」と言って、出されたココアの手を握る。

 

 階段の方へトタトタと小走りで駆けていくココアに合わせて足並みを揃える。

 俺の手を引くココアは、何かを達成できたような充実したと言わんばかりの笑顔を浮かべていた。

 




最近、朝マックにハマっていましてね~
聞きたくない?すみません調子に乗りました。

そして!読者の皆さま方のおかげでお気に入り50を突破いたしました!本当にありがとうございます!!
この先も、色々と至らないこの小説をどうぞよろしくお願いいたします!!

それでは感想や誤字、脱字等のご指摘、心よりお待ちしていますね!


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起こりうる幸せな可能性のお話

悩みに悩んだ結果、とりあえずifの話を出してみました

どうぞ最後までご覧あれ!


 雪がしんしんと降りだしてきたある夜の事。

 

 今日は娘を早く幼稚園から帰宅させた。

 

 なんせ今日は彼女にとっても、私達にとっても特別な日なのだから。

 

 「ははうえ、まだよるごはんのじゅんびはよいのですか?」

 

 「うん、まだあの人が帰ってくる時間じゃないからね。もうちょっとしたら支度するよ~」

 

 娘がこんな口調になってしまったのは、きっと生真面目なあの父親のせいかもしれない。

 

 けれど私は、必死に女の子らしくしようと試みてるのだが、それも上手くはいかず、結局この口調に戻ってしまうのだ。

 

 仕方ないか。娘が好きでこんなしゃべり方をするのなら、止める必要もない。それに、好きに生きて欲しいなんてあの人が言うものだから......全く。

 

 「もし、じゅんびをするのであればおもうしつけください。わたしもてつだうゆえ」

 

 されど礼儀をわきまえ、作法を心得る。

 ずっとあの人が娘に言い聞かせてきたことだ。

 

 男の子じゃないのに。堅苦しすぎるよ。

 

 今のところ準備がないと知って、暇そうに算数ドリルを開き始めた。

 

 え、我が娘ながら真面目すぎないかな?

 

 「ちょっとユマ、そんなに根詰めすぎないのっ」

 

 問題を解こうとする娘の手を止め、開かれた算数ドリルを閉じる。娘は複雑な表情で私から視線を外す。

 努力家なのは良いことだが、ここまでとは思いもしなかった。

 

 「し、しかし、つぎのテストではもうすこしよいけっかをだしたくて......」

 

 テストとは、幼稚園のレベルに合わせた簡単な筆記テストの事。

 

 この子は毎回100点満点の記録を叩き出していると言うのに、それ以上とはどういう事だ。ここまで出来た子に育つとは予想外だ。

 それも昔の私が裸足で逃げ出すレベルの優秀さだ。別に私がポンコツな訳じゃないよ?

 

 さて、娘は算数ドリルという手を封じられて、余程暇なようだ。ここは母親である私が先手をうとう。

 

 「ねぇねぇ、ユマ。どうしてそんなに頑張るの?もしかして、好きな人に認めてもらいたいとか~?」

 

 「ふみゅっ!?そ、それはぁ......」

 

 顔を赤くして縮こまる超絶可愛い娘。

 

 ビンゴ!これはきっとそうに違いない!この子は恋をしているよ!絶対だよ!私の長年の経験がそう告げている......!

 

 変だとは思っていた。

 

 いつも率先して勉強したりしてはいたが、最近の娘の頑張り具合には疑う点が多すぎた。

 

 まさか、その原因が『恋』だったとは。

 

 「ユマは誰が好きなの?お母さん気になるな~。タカくん?あ、ケンジくんもカッコいいよね!」

 

 幼稚園内ではトップクラスにモテる二人の名を上げてみたが、娘は首を横に振った。

 

 「ちがいますははうえ。わたしのこいは、きっとかなわぬものなのです......まだ、おふたりのことをすきになっていたほうがよかったかもしれません」

 

 なんだか落ち込み気味の娘。

 言葉の意味はよく理解できないが、たぶんそれは手が届かない人の事を言っているのだろう。

 

 例えば、年上の人に恋をしちゃったとか。

 どうしよう、そんな恋愛漫画の主人公みたいな娘に倍増しで萌えちゃう。

 

 娘の可愛さに悶絶寸前の私は、そっと手を握りしめて言った。

 

 「大丈夫だよユマ、この世に叶わない恋なんてない。私だって、お父さんのハートを掴むのには苦労させられたよ~。でもね、頑張ればなんとかなる!」

 

 彼には本当に苦労させられた。乙女心をあんなに理解していない男の子が本当にいるなんて......もう絶滅危惧種だよあの人は。

 

 「ありがとうございますははうえ......わたし、ガンバってみます!」

 

 娘の瞳に闘志の炎が燃えている。メラメラと燃えたぎっている。

 

 何度もゴメンね?娘が超可愛い。

 

 不意に玄関の扉が開く音がリビングにまで届く。

 

 「ただいま~。うぅ、滅茶苦茶寒かった......」

 

 いつのまにか話に熱中していたのか、気付けば夫が帰宅してきてしまった。

 刹那、リビングまで歩いてきた父親目掛けて娘が抱きついた。

 

 「うおっ!?ど、どうしたユマ?」

 

 「ちちうえは、ユマのことスキです?」

 

 「ん?あったりまえだろ?ユマ以上に可愛い娘、世界のどこ探したって居ないぞ?」

 

 「ははうえとユマ、どっちがスキです?」

 

 「え?そりゃあ、どっちも同じくらい愛してるよ」

 

 愛してる。その言葉は私にも向けられていることを理解し、頬が赤くなってしまう。

 

 しまうのだが......まさか!

 

 「では、わたしのこいがかなう『かのうせい』はあるということですねっ」

 

 満面の笑みを浮かべながら私の夫に頬づりをし始めた。

 

 なんてこったい......我が娘ながら、同じ人を好きになってしまうとは......!

 

 「うぅ!ユマ!じ、ジンくんは私の物だよぉ~!」

 

 「いえ、ふたりのものです!」

 

 負けじと張り合う娘。可愛いが、それだけは認めない!ジンくんは渡さないもん!娘だろうと関係ないもん!

 

 「こ、ココア!?だ、抱きつくなって.....二人とも!?ど、どうしたの!?なんか今日は変だぞ!?」

 

 バタバタした昔みたいな日常。

 私には夫がいて、娘がいて、愛する者がたくさん増えた。

 

 

 

 

 

 私、保登 心愛は今――――とっても幸せです!   

 

 

 

 




今回は二人が結婚したら、どんな家庭になっていたのだろう?という私の妄想話でした。はい、すみません

ここまで読んでいただきありがとうございます!
また、誤字脱字がありましたら報告、お願い致します!

そして皆様、遅くはなりましたが、新年、明けましておめでとうございます!

良いお年を!


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1 ジンと悪意なき告白

イヤッハー!!
書き上げたぜぇ!

寝てないからだったからテンションがおかしいぜぇ! 

どうぞぉ!!


「いくよ!えいっ!」

 

 手で弾かれた事によって、斜め下へと急加速していき、地面に落下してくるバレーボール。

 今、俺達は学校で行われる球技大会の練習をしていた。練習というよりかは、体育の授業なのだが。

 

 「芹沢くんっ!トス!」

 

 味方のチームがこちらへとトスをする。

 ボールの動きに合わせ、俺もネット際の方へ高くボールを上げると、それを最後にスパイクで決めようと高いジャンプを決める女生徒。

 

 彼女の高いジャンプから繰り出されるスパイクは、誰もボールをとらえることが出来ずに地面に落下した。

 

 半端ねぇ......。

 

 彼女はバレー部のレギュラーらしく、エースとして活躍している。名前は如月 冬子。短く切り揃えられた黒髪に、チャーミングポイントらしき八重歯。

 

 身長は174cmと女子にしてはやたらデカイ。スリーサイズは上から80・57・62、頭の出来はココア並み。

 

 なぜスリーサイズを知っているかに関してはノーコメント。

 

 「いや~!ナイストスだったよ芹沢~。お前バレーでもやってたのか~?」

 

 綺麗にスパイクが決まって気持ち良かったのか、笑顔で近付いてくると、背中をバシバシ叩き始めた。

 

 「いや別にやってたわけじゃ......って痛い痛い!」

 

 強く叩きすぎだバカ野郎!

 この女は手加減を知らないのか!?

 

 絶対背中に手形出来ただろ、これ......。

 

 「だとしたら、お前なかなか動けるんだなー。バレー部入らね?」

 

 「なに言ってるんスか!芹沢さんは新聞部に入れるんスよ!」

 

 「おい待てや花深、コイツはスポーツの道に生きるべきだ」

 

 新聞部に所属する彼女の名前は、花深 由々亜。この間、屋上に呼ばれて取材だのと言われ色々聞かれたが、それ以降もしつこく付きまとってきている。本当に鬱陶しい奴だ。

 

 二人が言い争ってる内に、また相手側からスパイクが打たれた。

 そのボールに反応した俺は、先程のようにトスを上げると、反応した別の女生徒がスパイクを決めてくれる。 

 

 「ほら、集中しろ。仮にも授業なんだからよ.......」

 

 「そうですね。それではこの話は保留としましょう如月さん」

 

 「いいぜ。まずはキッチリ授業を受ける。話はそれからだ」

 

 本当に何を話しているのやら......。

 

 やるせない、そんな心持ちで次のサーブに備えて構える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 体育が終わり、俺は一足早く誰もいない教室で着替えていた。

 

 この学園は今年から共学だということもあり、一応男子生徒用のトイレや更衣室を備え付けたらしいのだが、男子生徒が俺だけというのもあり、なんだが俺専用みたいになってる。

 

 からして、あまり男子更衣室を使う気にはならない。そもそも使う必要がない。

 

 女生徒がいない今の教室は貸しきり状態のようなものだ。なら、そこで着替えた方が移動の面倒も少ないと考え、ここで着替えている。

 

 授業終了のチャイムが学園中に響いた。

 

 ということは、次は昼休み。他の女生徒達が帰ってくる前にとっとと着替えてしまおう。

 

 上着を脱ぎ、下も脱ごうと手をかけたときだった。

 

 勢いよく扉が開かれる。

 

 「ジンくん!ご飯一緒に食べ......!」

 

 「......」

 

 「あら、まあ......中々に締まった体をしているのね~」

 

 開け放たれる扉の向こうには、ココアと千夜が弁当を持って、意気揚々と俺を誘いに来ていた。

 

 暫しの沈黙、そして「カシャッ」とシャッターを切る音が鳴る。

 

 「テメェ!ココアぁ!写真取ったな!?」

 

 「ハッ!つい条件反射で!」

 

 一体どんな条件が整えば、俺の裸体を収めようとシャッターを切るんだよ。いやまあ、チノの寝顔をうっかり録ってしまう俺が言うのもアレなんだが。

 

 おっと、勘違いしないでもらいたい。

 

 たまたま早起きした俺が、起こしてやろうとチノの部屋に入っただけで、やましい気持ちは一切ない。

 

 と、不思議そうにこちらを凝視するココアと千夜の二人。流石に見られ過ぎると恥ずかしい。というか死にそう。あまり自分の体には自信がないからな。

 

 「あの......少しジロジロと見過ぎでは?」

 

 「「下は脱がないの?」」

 

 「言っとくがそれ、セクハラだからな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 球技大会も近い。だからと言ってバレーの練習なんて面倒な真似はしない。

 というのも、メグとバトミントンの練習をする約束を取り付けているのだ。

 

 学校が終わると、一旦ラビットハウスへ帰宅して動きやすい服装に着替える。パーカーにスエット、これは運動をするときに最適な格好だと思う。

 

 体育館の前で待っていると、遠くからメグが手を振って走ってくるのが見える。こちらも手を振り返すと、一層笑顔を輝かせて俺の元へ辿り着く。

 

 「すみませんジンさん、待ちましたか?」

 

 「待ってないよ。俺も今来たところ」

 

 俺がそう言うと、クスッと笑うメグ。

 

 「なんだかこの会話って、デートの待ち合わせをするカップルみたいですねっ」

 

 「デートかぁ......なんなら、このまま俺達付き合おうか?」

 

 「ふぇっ......!?」

 

 メグに顔を向けずに、そんな冗談を言ってみると、顔を真っ赤にして慌てふためく予想通りの反応をしていた。

 

 「ははっ、冗談だって。メグの貴重な時間を費やしてんだから、練習にちゃんと付き合わないとな」

 

 「も......もうっ!からかわないでくださいっ!」

 

 膨れっ面でそっぽを向くメグ。

 あ、可愛い......これは超絶可愛い。

 

 どれくらい可愛いかと言うと、写真に納めてアルバムにしたいくらい可愛い。

 

 そんなやり取りを二人でしながら体育館の中へと入っていく。

 中は少々熱気がこもっていて、外に比べるとだいぶ温度が高い。

 

 これは良い汗がかけそうだ。

 とは言ったものの、人が多くてバトミントンをするスペースがない。これはどうしたものか。

 

 「うわぁ......人多いですねぇ」

 

 「そうだな、これだとバトミントンの練習がままならないぞ」

 

 バトミントンのラケットをクルクルと回しながら辺りにやると、ギリギリ二人分運動できそうなスペースを発見。あそこなら二人でバトミントン位は出来そうだ。

 

 「んじゃあメグ、あっちの空いてるスペースでやろうか」

 

 「あ、ハイっ。分かりました」 

 

 俺達二人は空いているスペースに移動して、バトミントンを始めた。

 

 バトミントンの練習を始めると、意外なことにメグは結構上手いことが分かった。

 

 しかも、時間を重ねていくと、指導の必要が全くないくらいに上達していって、最終的には俺より上手くなったかもしれない。

 

 しかし、問題は体力だ。

 1時間は経っただろうか?

 

 メグは息を切らして座り込んでいた。

 俺も少し際どいところに打ち過ぎたせいで、メグは移動して打つ頻度が多かったと思う。

 

 けど、少女が息を切らして疲れている光景ってなんだが興奮してくる。そう思っている俺は末期なのかもしれない。

 

 ともあれ、息切れしているメグに近付いていく。

 

 「メグ凄いなぁ。上達するのが本当に早い。素質あるかもな」

 

 「ハァ......ハァ......ほ、本当ですか?嬉しいです......!」

 

 息を整えると、ニッコリと天使のような笑顔で笑う。うん、やっぱり可愛い。

 

 「んでも、今日はそろそろ終わりにしよう。疲れてる上に無理に練習したって良くないからな」

 

 「あ......そ、そうですか......そう......ですよね......」

 

 俺の言葉を聞いて、シュンっと落ち込むメグ。

 もしかしてまだやりたいのだろうか?

 

 とは言っても、メグの体に無茶をして欲しくない。彼女が何て言おうと、ここは止めさせるべきだろうな。

 

 (もう少し、一緒に居たかったなぁ......)

 

 「ん?何か言ったか?」

 

 小声でメグが何かを言ったが、聞き取れずに聞き返す。

 

 「あ!い、いえ!なにも言ってませんよ!」

 

 今度は顔を赤くさせて、手をブンブンと振って否定する。

 

 「お、おお、そうか?ならいいけど」

 

 そう言えば、メグとはいつもたまたま会うだけで、連絡先とか交換してなかったな。

 良い機会だし、ここで連絡を交換しておくってのもアリか。

  

 俺はスエットの中から携帯を取り出して、

 

 「メグ、今携帯持ってるか?」

 

 「携帯ですか?それならリュックのポケット に......」

 

 メグは近くに備え付けられているベンチに置いてあったバックから携帯を取り出すと、疑問符を浮かべながら戻ってくる。

 

 「よし、んじゃあ、連絡先交換しようか」

 

 「.....................えぇぇぇ!?」 

 

 オーバーなリアクションで驚くと、震えた声で俺に尋ねる。

 

 「あの、その......い、いいんですか......?わ、私なんかと......」

 

 「交換したいのは、メグだからだけど?もしかして、何かマズかったか?それならスマン......」

 

 「ぜ、全然悪くないですよ~!こ、交換しましょう!是非!」

 

 ずいっと俺に迫ってくるメグ。

 な、なんだかいつになく必死な気がしなくもないが、断られなくて良かった。

 

 そうして、メグとの連絡先を交換。

 

 (これで、いつでも連絡が取り合える~!やったぁ......!)

 

 なにやらメグが、携帯で口元を隠しながらぴょんぴょんと跳ねている。

 

 何がそこまで彼女を上機嫌にさせているのかは知らないが、最近メグが色んな表情を見せてくれるので、こちらとしても頬が緩んでしまう。

 

 「それじゃ、着替えて帰るか~」

 

 「はいっ、そうしましょう!」

 

 俺達は着替えを済ませた後、帰路について千夜の店の前で別れた。 

 




ここまで読んでいただきありがとうございます!
また、誤字脱字がありましたら報告、お願い致します!

シャロとジンの絡みがなさすぎて泣ける......!


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2 ジンと悪意なき告白

やっと彼女を出すことが出来ましたよ
いやー、長かった......



「プレゼント?」

 

 俺とチノは休憩時間に、ちょっとした世間話をしていたところ、チノが父の日にタカヒロさんにプレゼントを渡したいと言い出した。

 

 ココアとリゼはまだ学校みたいだ。

 というかココアの奴、また千夜と駄弁ってやがるな......。

 

「はい。同じ男性であるジンさんなら、ネクタイよりも、もっといいプレゼントが思い浮かぶと思って......」

 

 チノはタカヒロさんに手作りのネクタイをプレゼントしようとしているらしい。

 この歳で手作りのプレゼントを作って渡すなんて、相当出来た娘だな。

 

 それに、良いプレゼントと聞かれたところで、あまり良い案は出せない。

 何故なら、タカヒロさんはチノが作った物ならなんでも喜びそうだからだ。

 

 もし俺に娘がいたとして、それが手書きの肩叩き券だったとしても泣いて喜ぶだろう。それほど気持ちというのは大切なものだ。

 

 「別にチノが作ったものなら何でも喜んでくれるだろ。そもそも、父の日に何かをプレゼントしようって考える人の方が少ないからな。チノは父親想いの良い娘さんだな」

 

 「そうですか......そ、そうですよね。ありがとうございますジンさん。私は私なりにプレゼントを作ってみたいと思います」

 

 チノがプレゼントを決めたところでさっさと、仕事を終わらせにかかろうとした時、リゼが勢いよくドアを開け放って入ってきた。いつになく深刻な表情をしている。

 

 「どうしたリゼ、そんなマジ顔で......」

 

 「今日から他の店でもバイトをすることにした!」

 

 「「な、なんだってー!」」

 

 って、一体どういう風の吹き回しなのだろうか?

 理由を問い詰めるべく、先に口を開いたのはチノだった。

 

 「何か理由でも?どうしたんですか?」

 

 「実は、パトリオットサーブの練習をしてたら親父のコレクションにしてたワインを割ってしまって......」

 

 「なるほど。つまりそのワインを買うために他のお店でもお金を稼ごうと言う魂胆ですね」

 

 「語弊がある気がするのは私だけか......?」

 

 そもそもパトリオットサーブって何ぞや?

 

 というか、リゼってお嬢様学校なんだよな。ということは、家もそこそこ良いところって訳か。

 だとしたら、そこの主人――もとい、リゼの父親が飲むワインは高いだろうな。

 

 「プレゼントならワインは学生でも買うだけなら出来るからさ。シフトも少し変えてもらったからよろしく」

 

 なるほど、だからあんな事を言っていたのか。

 話を聞いた今なら、それにも納得できる。

 

 リゼも制服に着替えに行き、俺達も仕事を終わらせるべく手を動かし始めた。

 

 「ところでジンさんは、自分の父親へ送るプレゼントとかは考えてないんですか?」

 

 「あー。俺さ、親父いないんだよね。俺が小さい頃、死んじまってさ」

 

 まだ俺が小学校へ通っていた頃だったと思う。まだ物心つくまえだった俺は、死んだ父親に大して悲しみはしなかった。いつも家を空けることが多く、父親らしいことをしてもらった記憶が一切ない。

 

 あの時に死んだ父親は、本当に俺の父親だったのだろうか?母さんはえらく評価していた。

 

 「そ、それは......すみません......」

 

 暗い顔をして俯くチノ。

 彼女が悪いと言うわけでもないのに、頭を下げている。

 

 「なんでチノが謝るんだよ。別に母子家庭なんて珍しくないだろん」

 

 「い、いえ、お父さんと呼べる存在がいないのは、寂しいんじゃないかなって思って......」

 

 寂しい、そう思ったことは一度だってなかった。俺は軽薄な人間なのだろうか?普通は寂しいと思うものなのだろうか?分からない。

 

 たぶん、俺とチノの差は、父親と触れあった数だと思う。その分だけチノは、タカヒロさんに愛されているんだ。その分だけチノは、タカヒロさんを愛しているんだ。

 家族愛ってのはそう言うものなんだと思う。父親と触れあったことがない俺は、父親の大切さがわからない。

 

 まあ、こんな話題はどうだって良いとして、今は仕事を終えることに専念しよう。

 

 「さて、仕事仕事。とっとと片付けないとなー」

 

 寂しそうな目で俺を見ていたチノの方を、俺は決して振り向きはしなかった。もし振り向いてしまったら、俺はきっと父親が欲しいと認めてしまうような気がしたから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして今はおつかいに至る。あの後すぐにココアが帰ってきて、パンの材料が足りないみたいなので買い出しに行くことにした。仕事も大して残っていなかったしな。

 

 今回は小麦粉と、パンの具材を買えば良いだけだ。具材はしっかりとメモに記してありココアから受け取っている。

 

 小豆に、ジャムに、焼そば......ん?焼そば?

 

 これ具材じゃなくて料理じゃねぇか。まさか、焼そばパンでも作ろうってか?まあ、俺は焼そばパン好きだけど。

 

 店に到着して、いざ入ろうと言う時にチノよりも背の低い少女が視界に入った。

 何やら探し物をしているみたいだ。八重歯が特徴のショートカット。着ている制服は、チノと同じ中学の物と同一である。ざっと容姿を纏めるとこんなものだろう。

 

 「おーい!出てこいよ~!」

 

 それを無視して店に入ろうとすると、服の袖を引っ張られた。

 

 「お兄さん、今暇でしょ?」

 

 「暇に見えるか......?」

 

 なんて失礼な人間なのだろうか。

 この娘には、手に持つエコバックが目に写っていないのか?

 

 というか、何で呼び止めた。

 

 「暇だって~!一緒にウサギ探してくれよ~」

 

 なんだかココアみたいな奴だ。それはそうと、俺にそんな暇はない。さっさと買い出しを済ませないと日が暮れてしまう。

 彼女を無視して店に入って行こうとすると、制服から垂れ下がるパーカーを引っ張ってくる。

 

 「ぐぇっ!?く、苦しいってバカ......!」

 

 「手伝ってくれよ~!」

 

 あ、ヤバイ。昇天する。窒息するぞこれ。

 少女とは身長差があるせいで、思いっきり引っ張られてしまう。

 

 「わ、わがった!手伝うから離せぇ!」

 

 「おお!本当!?」

 

 パッと手を離す少女。俺は解放されたことにより、床に膝をついて、首を押さえながら咳き込む。死ぬかと思った。

 

 少女の方は悪気こそはなかったのかもしれないが、俺が窒息死していたら、危うく殺人犯だぞ。

 

 「んで......そのウサギってのは、君が飼ってるウサギなのか?」

 

 「んー?全然違うよー」

 

 違うんかい。

 

 なら、どうして探す必要があるのだろうか?たぶん、興味本意で探してるだけなんだろうな。それこそ、俺が付き合う道理なんてない。けど、もう一緒に探す気満々だしな。仕方ないか。

 

 「ここで怪我したウサギがいたから、薬持ってきたんだけど、いなくなってたからさぁ。どこ行ったんだろ?」

 

 「怪我......?それで探してたのか......もしそうなら、さっさと探そう。怪我してんならそう遠くには行けない筈だ」

 

 口元に手を当てて、考えてみる。

 どれ程の怪我かは見ていないから分からないけど、薬が必要となるなら少なくとも自由に動けない。

 

 さて、何を手掛かりに探そうか?

 手当たり次第に手分けして探そうしてみるのもいいかもしれない。

 

 「そのウサギの色とかは見たか?」

 

 「白一色!」

 

 「さいですか......」

 

 よりによって埋もれやすい色かよ。他のウサギと分別つかないんじゃないだろうか?いや、白ウサギだとしても、怪我をしてるウサギを探せば良いのか。

 

 「そいじゃ!手分けして探そう!アタシあっち見てくる!」

 

 気付けば既に50m先まで走っていっていた。行動が早い子だ。名前、聞いておけば良かった。

 俺もウサギを探すべく、逆方向へと歩き出す。

 




ここまで読んでいただいてありがとうございます!

はい、というわけで皆様ご察しの通り彼女でございます。名前は次でわかりますよ!

誤字、脱字などがありましたらご報告お願いします!
前回、誤字を報告してくれた方々はありがとうございます!



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3ジンと悪意なき告白

失踪かと思いました?残念でした~!

あ、いやすみません。
遅れて本当に申し訳ありません!


 さってと、探すのは良いんだが、手がかりもなしにどうやって見つければいいと言うんだ。

 それに、あの活発な少女と、どこで待ち合わせるかも話し合わなかった。

 

 まあ、見つけたら保護施設にでも連れていけばいい話か。あの女の子は......放っといて大丈夫だよな。

 

 とにかく、だ。とっとと見付けて、頼まれているおつかいを済ませなくてはならない。

 

 とりあえず公園方面に来てみたが、ここはウサギが多すぎる。

 確か特徴は真っ白だとか言っていた。この中から、そのウサギを見付けるのは藁の中から針を探し出すようなもの。せめて、大きさとか、耳の形とか、具体的な情報が欲しかった。

 

 だがまあ、怪我をしているなら、この中から見付け出すのも不可能ではないはず。

 

 俺は公園に集まっているウサギの中から、怪我をしているウサギを探し始めた。

 

 一匹一匹抱き上げて確認してみる。

 怪我していそうなウサギは見当たらない。

 

 「んー......一匹狼タイプか?いや、そもそもウサギって群れたりすんのか?」

 

 動物に詳しいわけでもない俺は、ウサギの習性が全く分からなかった。誰かウサギに詳しい人間でも居ないだろうか?

 

 などと考えていると、近くでシャッター音が聞こえてきた。音のする方へ目を向けると、そこには見覚えのある顔。花深だった。

 

 「奇遇っすね芹沢さん!」

 

 奇遇だろうがなんだろうが、休みにクラスメイトと鉢合わせるのは何故だか緊張する。それに花深は私服を着ていた。初めて見る花深の私服。

 

 う~ん......グッジョブ。

 

 ショートパンツにタンクトップといった、季節感ブレブレのラフな格好だが、それがまたいい。

 

 手を振りながらこちらに近付いてくる花深。

 

 「芹沢さん、まさか休みでも制服着てるんッスか?つまんないッスね」

 

 「余計なお世話だ」

 

 近付いてくるなり、いきなり失礼なことかますなコイツは。

 

 「なにウサギと戯れてるんッスか?ウサギ、好きなんスか?」

 

 「これが戯れてる様に見えるか?ただ怪我してるウサギを見付けてほしいって頼まれたんだよ......」

 

 「誰からッスか?」

 

 「それは......知らない女の子から......」

 

 「芹沢さん、ソレお人好しってレベルじゃあないッス......」

 

 それは分かる。

 だがしかし、俺だって好きで受けた訳じゃない。

 

 かといって、無視するのもあれだと思ったから協力することにしたんだ。というか、協力せざる終えなかった。

 

 「それで?まだ見付からないんッスよね?」

 

 「悔しいけど、その通り」

 

 探し初めてまだ数十分しか経っていない。

 まさか、そんな短時間で見付かるはずもなく、只今苦戦中だ。

 

 「それなら!私も手伝うッスよ!」

 

 花深は、えっへん!とない胸を張る。

 

 「ありがたいけど......いいのか?貴重な休みを使うことになっても」

 

 「実は私も暇だったんスよ~。だから、この時間をより充実したものに!ってなわけで、芹沢さんに手を貸すッス!」

 

 「んー、お前が良いなら手を借りるとするか。頼むよ、花深」

 

 「はいッス!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「で、手伝うんじゃなかったのか?」

 

 俺がウサギを探している間、花深の奴はというと、

 

 「いいッスねぇ~芹沢さん!ウサギと戯れてる無表情男子!これは売れる......!」

 

 ウサギを探す俺の姿を激写しているだけだった。

 

 「おいィィィ!売るってなんだよ!?」

 

 さっきからこんなやり取りを続けている。

 この様子じゃあ、きっと日が暮れてしまう。

 

 お使いだってまだ済ませてないっていうのに。

 これじゃあリゼに怒られちまう。いや、リゼだけじゃなくてチノからにだって小言をもらう羽目になる。

 

 「にしても、全然見つからないッスね~」

 

 「お前、写真撮ってばっかだもんな」

 

 探していないやつがよくそんな台詞を吐けたな。

 

 「仕方ないじゃないッスか!勝手に指がシャッターを切ってしまうんッスから!」

 

 「どんな理屈だよ......」

 

 ここでそんなカメラマン魂を発揮されても迷惑なだけなんだが。

 

 そんな下らない事を続けているせいか、時間も結構経ってしまい辺りは薄暗い。いよいよ諦めるしか無さそうだな。

 

 そう考えていた矢先、金髪を靡かせながらウサギを抱えた少女が俺に話し掛けてきた。

 

 「ジン?こんな時間に何してるのよ?」

 

 シャロだった。

 

 しかも彼女の腕に抱えられているウサギは、俺達が必死に探していた怪我ウサギだ。足には包帯が巻かれている。おおかた、シャロが処置を施したのだろう。

 

 「あぁぁーー!!そのウサギ!」

 

 「な、なによ!?急に大声なんか出して......!」

 

 俺の声に焦るシャロ。

 おもわずウサギを落としそうになる。

 

 「そ、ソイツ、どこで拾ったんだ?」

 

 「えっと、家の近くでずっと震えてて可哀想だったから、保健所に連れていこうと......」

 

 神かコイツは。

 

 たぶん、傷口が開いて、シャロの家の近くでたまたま動けなくなったんだろう。このウサギは。

 これで一件落着だな。後はコイツを動物の保護施設に届ければ終わりだ。

 

 「ジンさんジンさん」

 

 「ん......?」

 

 後ろでずっと黙っていた花深が、俺の袖をクイクイと引っ張る。

 

 「そこの美少女さんを私にも紹介してほしいッス」

 

 「び、美少女!?」

 

 「あー、コイツは......まあ、ただの知り合いだ」

 

 花深の言葉にオーバーなリアクションをとるシャロを無視して、紹介をする。

 そこで花深が、とんでもない言葉を口に出した。

 

 「もしかして、彼女さんッスか?」

 

 「ち、違うわよ!なんでワタシがこんなのと付き合わなきゃならないのよ!」

 

 「うぉい!『こんなの』は言い過ぎなんじゃない!?」

 

 何てやつだ。

 せっかく感謝をしていたというのに、一気にコイツの評価が下がったぞ。

 

 だがまあ......確かに俺とコイツはありえないほど釣り合わないな。

 

 「そうなんッスか~。つまりジンさんはフリーだと?」

 

 「悪いかよ......」

 

 改めて言われると傷付くなちくしょう。

 女子高に男一人だけでハーレム、だとか浮かれすぎてたわ......。

 

 「まあ当たり前ッスよね」

 

 「遠慮ねぇな、お前」

 

 「そんなことより、早くこの子を連れていきましょ?日も暮れてきてるし」

 

 やれやれといった様子のシャロが言う。

 

 「それに賛成だ。さっさとコイツ連れて......って、ああーーーー!!」

 

 「今度はなに!?」

 

 おつかいの事をすっかり忘れていた。

 ウサギを探すのに夢中になりすぎたのか。

 

 ちくしょう!このままだとリゼのパトリオットサーブをお見舞いされちまう!

 

 「悪い二人とも!あとの事はよろしく頼む!」

 

 そんな俺に二人が何を言っていたのかは知らないが、俺は二人を置いて急いでおつかいへと向かった。店が閉まっていないことを祈りながら。

 

 

 




少し焦って書いたので短いし内容は薄いです。
すみません。

誤字、脱字などがありましたらご報告お願いします!
感想もお待ちしております!


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4ジンと悪意なき告白

ね、眠い......徹夜で書き上げてやったぞい!

それでは本編どうぞ!



 「ゼェ......ハァ......あっぶね、ギリギリ間に合った......」

 

 買い物袋を両手にぶら下げながら荒い息遣いで帰路につく。

 あれから、他はシャロと花深に任せて猛ダッシュした結果、なんとか店に間に合った。人間、死ぬ気になれば何でも出来るんだな。

 

 このおつかいを忘れていたらとんでもないことになっていた。たぶん、リゼのジャーマンスープレックスは確定だったな。本当に危ねぇ。

 

 「あれ......?」

 

 安堵とともにゆっくりとした歩幅で歩いていると、ウサギを未だに探している少女の姿があった。

 辺りはもう暗いというのに、まだ探しているのか。

 

 俺は彼女に近付いて声をかける。

 

 「もしもーし」

 

 「んー?......あ!お兄さんじゃん!」

 

 広場の噴水をウロウロしている少女は、こちらに気付くと小走りで近付いてくる。

 

 「どう?見付かった?」

 

 「ああ、見付かった。今ごろ保護施設に届けられてると思うぞ」

 

 「そっか~......よかったぁ......」

 

 安心したのか、彼女の頬が一気に緩む。

 

 「お兄さん、見た目によらず優しいんだなっ」

 

 それは一体どういう意味だ。

 

 いや、まあ確かに目付きが悪いとはよく言われることはあるが、いくらなんでも失礼じゃない?

 

 「見た目によらず、は余計だ......」

 

 「えっへへ~」

 

 チロッと下を出しながら笑う。

 そんな顔をする彼女を憎めるわけもなく、俺は倦怠感とともに彼女を家まで送るなんて愚かな考えをしていた。

 

 お節介にも程があるだろ。

 けど、やはり放ってはおけなかった。

 

 「ほら、帰るぞ」

 

 「へ?もしかして、送ってくれるの?」

 

 「嫌なら一人で帰るけど?」

 

 「嫌じゃない!嫌じゃない!ありがたく送ってもらう!お兄さん、見た目によらずジェントルメンだな!」

 

 「だから見た目によらず、は余計じゃない!?」

 

 出会って間もないというのに、ここまで親しく話せるのは彼女の良いところなのだろう。

 そのまま、俺たち二人は歩き出す。彼女は疲れた俺のことを考えているのか歩幅を合わせてくれている。

 

 「そうそう、お兄さんのお名前は何て言うの?」

 

 「んー?俺か?俺は、芹沢ジン。そっちは?」

 

 「マヤだよ~。記憶したかー!」

 

 「お前みたいに印象的なヤツ、忘れたくても忘れられねぇよ......」

 

 騒がしい彼女だが、不思議と疲れない。

 それどころか、逆に楽しかった。

 

 そこで俺は、ふと疑問が沸き上がり、それを彼女にぶつけた。

 

 「なあ、どうしてそこまで必死になれた?」

 

 「ん?」

 

 「あの怪我ウサギ、別にお前のペットなんかじゃないだろ?なのに、どうしてあそこまで必死になって探してたんだ?」

 

 何もこんな時間まで探す必要はない。

 そう考えていた俺は、だいぶ心が汚れていたことに自覚した。彼女の一言で。

 

 「そりゃあ、可哀想だから」

 

 「かわいそう......?」

 

 「お兄さんは、誰かが困ってるとき、手を差し伸べないの?それが例え動物でも代わりはないよー」

 

 死ぬほど恥ずかしかった。

 

 ウサギだから、じゃない。

 それはもう人間としてのモラル以前の問題。

 

 どれだけ俺は下卑な人間なんだ。

 

 誰かがじゃなくて、困ってるヤツは動物だろうが人間だろうが植物だろうが、手を差し伸べるのがヒーローってもんだろ。

 

 本当にカッコ悪いな。俺は。

 

 「だけど、お兄さんは良い人って分かるぞ。だって、こんな時間までウサギを探してくれたんだからな!」

 

 彼女は本当の意味での笑顔で、優しい言葉を俺に向けた。いや、向けてくれた。

 

 「いや、ただ俺はマヤが困ってたから......」

 

 「いいや違うね。だってお兄さんって、木から下りれない猫を助けてあげたんでしょ?」

 

 「えっ、どうしてそれを――――」

 

 「それは置いといて。たぶん、アタシが頼まなくても、お兄さんはあのウサギを助けてあげようって考えてたよ」

 

 「............ありがとな」

 

 「いえいえ~」

 

 何を年下の女の子に励まされているんだ俺は。

 

 だけど......凄く嬉しいな。

 

 自信がない俺に、少し自信をつけさせてくれた。

 それに なんだか、今日は俺らしくない気がする。

 

 「おっと、ここまでで大丈夫だよ。送ってくれてありがとなお兄さん。それじゃ、またいつの日か!」

 

 「ああ、またな」

 

 何故だかマヤとはまた出会う気がした。

 だからさよならは言わなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 ラビットハウスに帰宅すると、リゼは他のどこかでバイト中なのか店内に姿がない。

 その上、ココアも何故かおらず、チノだけが店の掃除をしていた。

 

 「おかえりなさいジンさん。おつかい、結構時間掛かりましたね」

 

 「まあな......ちょっとしたいざこざにあってさ」

 

 「ココアさんは少し買い出しに出てたのでいませんよ。父へ送るためのネクタイの材料を買いに行ってます」

 

 「そうか......」

 

 ココアのヤツ、チノと一緒にタカヒロさんへの贈り物を作るのか。俺も俺で何か送りたい。あの人には結構世話になってる。

 

 とは言うも、何を贈るべきなのか。

 

 「なあチノ、タカヒロさんに何をプレゼントしたら喜んでくれるかな?」

 

 丁度店内の掃除が終わったのか、俺が座るカウンター席の前に来るチノ。

 

 「そうですね、父は気持ちが込められている物であれば、なんでも喜ぶと思いますよ」

 

 「なるほど......」

 

 気持ちが込められていれば、か。

 そうだとしても悩む。

 

 「............ジンさん」

 

 タカヒロさんへ送るためのプレゼントを考えているところで、不意にチノから声をかけられる。

 

 「ん?なんだ?」

 

 「えっと、その......今朝は、その......すみません」

 

 「ど、どうしたよ急に」

 

 何故かチノに謝られた。

 いや、チノに謝れるようなことはない。

 

 むしろ、毎日世話になってる俺が謝罪するべきでは?

 

 あとココア。

 

 しかし、どうも納得ができないので理由を問う。

 

 「チノは別に何も悪いことした訳じゃないだろ?」

 

 「いえ、その、朝......ジンさんにお父さんが居ないって聞いて、分かった風な口を利いてしまって......」

 

 そ、そんなことか。

 彼女は優しい。

 

 だからこそ、今朝、俺に父親が居ないってことをずっと気にしてたんだな。

 

 「チノ、別に気にしちゃいないし、怒ってもいない。むしろ、気遣ってくれてありがとな」

 

 「......」

 

 「ていうか、俺の方こそゴメン。なんか素っ気ない態度とって」

 

 「じ、ジンさんは何も悪くないです......」

 

 こうは言ってくれるが、実際に、俺は俺で大人げなかった。

 

 ホントは父親がいなくて寂しいんだ。

 けど、それを年下の少女に察されたのが気に食わなかっただけ。ただ、俺がムキになってただけなんだ。

 

 「うん。やっぱ寂しいわ。チノとタカヒロさん見てると、スゲー羨ましい」

 

 「ジンさん......」

 

 そろそろ俺も認めないとな。

 

 「だからさ、ありがとな。チノが気遣ってくれたの、スゲー嬉しい」

 

 久々に晴れやかで、穏やかな表情を浮かべて礼を言う。目の前の小さくて優しい少女に。

 

 「あー!吐き出したらなんかスッキリした!」

 

 ぐーっと背伸びをしながらいつもの調子を取り戻す。昔のことを気にしてちゃあ始まらない。

 

 俺は、今ようやく親父のヤツにさよならを言えた気がした。全部チノのおかげだな。

 

 「ジンさんは少しストレスを溜めすぎなんですよ」

 

 「かもな~」

 

 「私が癒してまげますか?」

 

 彼女の言葉に耳を疑い、少し俺の動きが停止する。

 

 「な、なんか、チノがそういう冗談言うのって珍しいな......」

 

 「じょ、冗談じゃ......!」

 

 顔を耳まで真っ赤にさせ、俯くチノ。

 いつも罵倒されていた記憶のせいで、倍増しで衝撃的な一言だった。

 

 「けど、大丈夫だよ。俺はチノに世話になってるからな」

 

 仕事のいろはを教えてくれたり、朝食を作ってくれたり、家政婦張りの事をしてくれている。むしろ、俺がチノを癒してやりたいくらいだ。

 

 「そ、そんなことないです。ただジンさんは、少し謙虚過ぎなだけだと思いますよ?」

 

 「んなことないよ。それに、俺よりもココアを癒してやりなって。アイツはアイツなりに頑張ってるし、バカなりにスゲー良いヤツだしさ」

 

 (それを本人の前で言ってあげたら、どれほど喜ぶんでしょうか......)

 

 「なんか言った?」

 

 「いえ、ジンさんが鈍感無気力系主人公だということが分かっただけです」

 

 「ごめん、言ってることが1ミリも理解できない」

 

 なんだよ。

 鈍感無気力系主人公って......。

 

 「そろそろココアさんが帰ってくる頃ですね」

 

 「そうだな......」

 

 「ただいま!」

 

 噂をすればなんとやら。

 

 「あ、ジンくん帰ってたんだね!おかえり!」

 

 「ああ、ただいま。ところで、どんなネクタイの素材買ってきたんだ?」

 

 「それがねぇ~......迷ってお店にたどり着けなかったんだ!」

 

 どれだけ今日が俺らしくない日でも、ココアはココアで少し安心した。 

 

 

  

 

 




ここまで読んで頂きありがとうございます!

誤字、脱字等がありましたらご報告お願いします!

えっと、最近更新スペースが極端に遅くて申し訳ありません。少しでも早められるよう頑張りたいと思うので、これからもご愛読お願いします!


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1綺麗になりたい

皆様、投稿が遅れてしまい誠に申し訳ありませんでしたぁ!

ごちうさの映画を観賞している際に「あ、小説投稿してねぇ」と思い出しましたぁ!

ほんっとうに申し訳ありません!!


 今年の春からうちの店でバイトさんが三人入りました。

 

 腕っぷしが強く、頼りになるリゼさん。

 

 いつも元気で、少し強引なココアさん。

 

 そして生真面目で、優しいジンさん。

 たぶん、私にお兄さんがいたなら彼みたいな人だったのでしょう。

 

 「あれ?リゼは?」

 

 物置から出てきたジンさんが、リゼさんの居所をココアさんに聞いています。何か頼み事でもあるのでしょうか?

 

 「リゼちゃんはさっき、お客さんの言った可愛いの一言が自分に向けられたのかティっピーに向けられたのか分からずにお手洗いで苦悶してるよ」

 

 「なるほど、やけにめんどくさくなってると言うことだけは分かったよ。じゃあ、アイツがトイレから出てきたらコーヒー豆運んどいたって伝えてくれ」

 

 「アイサー......って、あれ全部運んだの!?」

 

 「そりゃあ......仕事だからな」

 

 「ジ、ジンさん、無茶だけはしないでくださいね?」

 

 「ど、どうしたんだチノ。前まで「全て運び終わるまで休憩はナシです」とか言ってたSっぷりはどこにいったんだ?」

 

 「そ、そんなこと言った覚えはありません......!」

 

 「冗談だよ。明日は休みだし、ゆっくり休むから今日は頑張りたいんだ。って、なんだ?心配してくれるのか?」 

 

 「そうじゃないです!は、早く仕事に戻ってください......!」

 

 「はいはーい」

 

 そう言うとジンさんはお客さんに注文を取りに向かいました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ねっむ......」

 

 朝の日差しに瞼を刺激されて目を覚ます。

 ぐっすり寝たせいか起きるのが久々に感じる。

 

 上体を起こして、半開きのカーテンを一気に開く。窓から放たれる光に当たり、意識が完全に覚醒する。

 

 おもっいきり背伸びをするとベットから降りる。

 

 「今日はホントに良い天気だな。こんな日はゲームをするのに限る」

 

 うん、ホントに良いゲーム日和だ。

 

 早速ゲーム機に電源をつけようとすると、自室のドアが誰かによって開かれる。

 

 「ジンくん!お散歩行こっ!」

 

 「ココア......頼むから、休みの朝くらいは静かにしてくれ」

 

 「ご、ごめん。けど、良い天気だからお散歩行こうよ!」

 

 「なんでわざわざ外に出なきゃ......」

 

 丁重にココアの誘いを断ろうとしたのだが、ドアの入り口から顔を覗かせるチノが目に入った。

 

 ああチノ、お前も誘われたクチか。

 

 一緒に行きましょうというチノの視線が俺に向けられる。

 

 「......はぁ、分かったよ。着替えるから外で待っててくれ」

 

 「やったぁ~!それじゃ、チノちゃんと外で待ってるからねっ」

 

 それだけ言って二人は部屋から出ていく。

 

 寝巻きから私服に着替えるべく、クローゼットを開ける。適当にパーカーとカーゴパンツを手にとって着替えようとしたときだった。

 

 ふと目覚まし時計が目にはいる。

 

 短い針は既に12時を過ぎていた。

 

 「......どんだけ寝てたんだ、俺」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「お待たせ」

 

 「ジンくんも来たことだし、早速行こっか~」

 

 そんなココアの隣で気まずそうな表情をしたチノ。朝から珍しいことに挨拶もなかったので話しかけてみる。 

 

 「よっ、チノ。おはよう」

 

 「あ、おはようございます。ジンさん」

 

 「なんだか浮かない顔をしてるけど?」

 

 「いえ、その......休みの日だっていうのに、ジンさんまで付き合わせてしまって......その......」

 

 なんだ。

 

 それを気にしているのか。

 

 「チノだってアイツに付き合わされてんだろ?だからお前が謝る必要は微塵もないと思うけど?」

 

 「......そう言って貰えると助かります」

 

 「それに、たまには外に出て少しでも体を動かすことに慣れておかないとな。俺もチノも、インドア派だしな~」

 

 「私はインドア派でもスポーツ万能です」

 

 「え、そうなの?」

 

 いつも部屋でボトルシップとか製作してそうなイメージがあったんだが......これを口に出したら、言葉のナイフが飛んできそうだから黙っておこう。

 

 「二人とも!歩くペースが遅いよ!」

 

 「俺達はお前みたいに全身筋肉で出来てるわけじゃないんだよ」

 

 「ヒドイ!私だって年頃の女の子だよ!?」

 

 「ほぅ、そうか」

 

 「適当に受け流された......!」

 

 速いペースで歩くココアの後ろを俺とチノでゆっく付いていく。

 

 途中で町が一望できる高台まで来ると、ココアが急に二人乗りの話を始めた。

 

 「自転車があったら、チノちゃんを後ろに乗せて滑走するのっ」

 

 「二人乗りはダメですよ」

 

 「あっ、その前に自転車に乗れるよう練習しないと」

 

 「「ええ~~!」」

 

 自転車に乗れないというココアの発言に衝撃を受けたのか、チノとティッピーが驚いている。

 まあ、この歳になって自転車に乗れないってのは別に珍しいことでもないと思うが。 

 

 「あ、やっぱりジンくんの後ろに乗せてもらおうかな~?」

 

 (コ、ココアさん!結構攻めますね!)

 

 「チャリは持ってないけど、まあ機会があるとしたら良いけど?」

 

 「ふぇ!?や......その、ありがと......」

 

 (ま、まさかのお返事......!ココアさん、そんなに顔を赤くしてると怪しまれますよ!)

 

 「......?」

 

 何故かココアに顔を逸らされた。

 なんかマズイことでも言っただろうか?

 

 そんな他愛もない会話をしながら歩いていると、俺達は見知った顔を見つけた。

 

 リゼだ。 

 

 「なぁ、二人とも。あれってリゼだよな?」

 

 服を両手に持ってにらめっこをしているみたいだが、どちらを買うか迷っているのだろうか?

 

 「ホントだ~」

 

 「なんだか、いかにもリゼさんっぽい服ですね」

 

 「言われてみればそうだな。二人はあまり着ない系統の服だし」

 

 リゼの着る服は少し大人っぽい。

 背が高くてモデルみたいにスラリとした体型のリゼには似合うのだろう。

 

 「なんかジンくんでも似合いそうな服だね」

 

 「それ、誉め言葉?」

 

 「誉め言葉だよ~」

 

 レディースはそもそもサイズ的に無理だと思うんだが......。

 

 「って、今度はなにやら葛藤しているな」

 

 「そっとしておいてあげましょう」

 

 「そうだね~」

 

 俺達はそんなリゼを、そのままやり過ごした。

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 




今回はウォーミングアップがてらに短めです。
いつも短いって?すみません.........!

ともあれ、ここまで読んで頂きありがとうございます!

誤字脱字等ありましたらご報告お願い致します!


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2綺麗になりたい

どんどん投稿していきますよ~!

遅れを取り戻さなくては!


 俺達三人は、リゼを無視した後に少し歩いた所のベンチで日向ぼっこをしていた。

 暖かい春の日差しが疲れを癒してくれているみたいで本当に気持ちいい。

 

 このままじゃうっかり寝てしまいそうだ。

 

 「ポカポカして気持ちいいね~」

 

 「はい、なんだか甘い香りもしますし」

 

 確かに、言われてみれば甘い匂いが先程から漂っている。

 

 気になったココアが辺りに目を配らせていると、近くにクレープ屋を見つけた。甘い香りの正体はあれだったのか。

 

 「クレープ屋さんだ!チノちゃん、お姉ちゃんがごちそうするよ!」

 

 「いいんですか?」

 

 「もっちろん!お姉ちゃんにまかせなさい!ジンくんにもごちそうしてあげる!」

 

 「その申し出はありがたいんだけど、俺はいいよ。甘いものは得意じゃないからさ」

 

 「そっか~......それなら仕方ないよね」

 

 俺達はベンチから立ち上がると早速クレープ屋の方へと向かう。なんだか、店員がまた見覚えのある顔だな。

 

 「あれ?シャロちゃん?」

 

 案の定、俺達が知っている奴だった。

 

 シャロ、色んなところでバイトしてるが大変じゃないのだろうか?

 

 「こんなところでバイトしてるなんて、シャロちゃんって多趣味?」

 

 「そ、そうよ!多趣味よ!悪い!?」

 

 「しゃ、シャロ!クリーム!クリーム!」

 

 手に力が入り、クリームが入った容器を強く握りしめているせいですごい勢いでクリームが飛び出している。

 

 「はい、クレープ二つ」

 

 「ありがとっ、シャロちゃん」

 

 シャロからクレープを受けとった二人は、早速クレープを口にする。

 

 「んん~!甘くておいしい~。はい、シャロちゃんもっ」

 

 言ってクレープをシャロに差し出すココア。

 

 「私、仕事中よ......?」

 

 「まあまあ、そう言わずに~」

 

 「そ、それじゃあ一口......」

 

 と、シャロがクレープを受け取ろうとした時だった。一瞬の出来事だった為、俺もかろうじて状況を把握できた程度だ。

 

 ココアのクレープの上に見覚えのない黒ウサギが空から落ちてきた。

 

 そのせいで飛び散ったクレープが俺の目にクリーンヒット。

 

 「ぐおぉぉぉぉぉ!!目がぁぁぁぁぁ!!」

 

 甘い!甘ったるくて涙がぁ!

 

 「じ、ジンくん!?大丈夫!?」

 

 「なんだよこのウサギ......!」

 

 目を擦り、ようやく回復してきた視界に黒ウサギの姿がハッキリと映る。

 なんだか全く可愛いげのない顔だ。つか、ウサギというよりかヌイグルミに近かった。

 

 ブッサイクな面してんなぁ......。

 

 そして、苦しむ俺を置いてクレープを潰されて落ち込むシャロ。

 

 な、なんでココアよりショック受けてるんだ?

 

 「まって~!」

 

 どこからか聞き覚えのある声が近付いてくる。

 

 「やっと......追い付いた......」

 

 「千夜ちゃん、またカラスにあんこ拐われちゃったの?」

 

 「あんこ......?」

 

 「あ、ジンくんはまだ知らなかったんだよね。あんこは甘兎庵のマスコットなんだよ~」

 

 「てことは、ラビットハウスのティッピーみたいな感じか」

 

 「そうそうっ」

 

 未だに息を切らしている千夜に目を向けると、ちょっとした違和感に気が付く。

 

 「千夜、いつもと制服が違うな」

 

 「......あ、気がついたかしら?今月はレトロモダン月間なの」

 

 「その内、甘兎庵もフルール・ド・ラパンよりいかがわしい店になるんじゃない?」

 

 その言葉を受けた千夜が頬を赤らめながら、

 

 「そう......なら、脱ぐわ」

 

 「ここで脱がないでよ!」

 

 いつものやり取りに俺は安心した。

 

 「何で微笑んでるのよジン!」

 

 「最低ですジンさん」

 

 「そんな......ジンくん......!なら私も脱ぐ!」

 

 「私とは体だけの関係だったのね!」

 

 「あの、ちょっとツッコミ切れないから順番に来てくんない?」

 

 俺は聖徳太子でもM1グランプリ王者でもないんだ。そんな軽機関銃みたいにボケを乱射されても反応しきれないわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの後、二人と別れ俺達三人はウサギに囲まれたモフモフ天国にいた。

 

 「うさぎさんがいっぱぁ~い!モフモフ天国最高~」

 

 「良いんですよ......私にはティッピーがいますから」

 

 動物があまりなつかない体質なのか、チノの周りには一匹としてウサギが寄り付かない。

 

 それに対し、俺の周りはウサギで埋め尽くされていた。

 

 「きっとチノちゃんは、口とか毛並みが似てるから同族嫌悪されてるんだよ」

 

 「意味分かって言ってます?それ」

 

 「じゃあ、私がチノちゃんをもふもふすれば問題解決だねっ」

 

 「か、解決になってないです......」

 

 と言ってココアがチノに抱きつく。

 照れながらそっぽを向くチノ。

 

 うん、良い。

 百合は画面越しで見るよりもリアルタイムで見るに限る。

 

 と、二人のほのぼのとしたやり取りに目を奪われていると、俺の携帯が急に鳴り出した。

 

 メールだ。

 

 一体誰からなのか、確認すべく携帯の画面を開くと可愛いらしい文面でこう綴られている。

 

 『今日はお友達と映画館に行ってきましたっ!ジンさんは忙しかったでしょうか?』

 

 メグからだ。

 

 忙しかった?どういう意味だろう?

 思考を巡らせていると、ある衝撃の事実に気がついてしまった。

 

 着信履歴 1。

 

 メグから着信が来ていたのに気付かなかったのだ。な、なんて愚かなことをしてしまったのだろうか。あの純粋で健気なメグからの着信を無視するとは......。

 

 誰かいっそ殺してくれ......!

 

 「あれ?チノじゃん!」

 

 罪悪感に苛まれていると、近くからチノの友達であろう二人が近寄ってくる。

 

 ん?あれ?二人とも俺が知ってる顔なのは気のせい?しかも片方は着信無視をしてしまった張本人だよね?

 

 「あ、メグさん、マヤさん」

 

 「すみませんっしたぁぁぁぁ!!」

 

 「ふぇぇぇ!?」

 

 メグが視界に入るやいなや、俺は今年で一番見事なスライディング土下座をメグにかました。

 

 「って、え!ジンさん!?」

 

 多少こちらの奇行に戸惑いはしたが、俺だと気付いたメグ。

 

 「あれ?ジンもいる!」

 

 「マヤちゃん、ジンさんと知り合いだったの?」

 

 「そーだよ。前に怪我したウサギを遅くまで一緒に探してくれてたんだよ。な!ジン!」

 

 「メグ!ほ、本当にすまん!まさかこんな俺にメグが連絡をしてくれてるとは思いもしなかったから!」

 

 「私無視されてる!?」

 

 マヤが何かを言っているが、それどころじゃない。今は早急にメグからの情けと慈悲と許しを貰わねば......!

 

 「も、もしかして電話の事ですか?だとしたら気にしないで下さいね?朝早くに掛けた私が悪いんですからっ」

 

 ニコッとしているが、メグも申し訳なさそうにしている。

 

 ああ......天使ってこんな風に笑うんだな。

 

 「って、無視するなぁぁぁ!」

 

 「ああ、すまん。居たのか」 

 

 「居たよ!私の存在かんっぜんに空気だったでしょ!?」

 

 「いや、単純にメグの隣に居たことを認識してなかった」

 

 「尚更ひどい......!」

 

 俺達が下らないやり取りをしていると、チノが首をかしげながら、

 

 「お二人は、ジンさんとは面識があったんですか?」

 

 「そうだよ~」

 

 「そうそう。さっき無視されたけどな!」

 

 一人はまだ納得がいっていないみたいだが、俺達三人は知り合いだということをお互いに初めて知った。

 そもそも俺も、この三人が知り合いとは思いもしなかったからな。

 

 「えっと、三人は知り合い......だよな」

 

 「はい、同じ中学のクラスメイトです」

 

 そっか~。

 いくらインドア派だからと言っても友達はちゃんといるんだなチノ。お兄ちゃん安心したよ。

 

 「ジンさん、今すごく失礼なことを考えていませんでした?」

 

 「は、はいぃぃぃ!?そそそそ、そんなことないよ!」

 

 「怒らないので正直に言ってください」

 

 「チノって友達いたんだな」

 

 「父に頼んで、ジンさんの部屋を物置に移し変えてもらいます」

 

 「ごめんなさい!正直に言いすぎましたぁ!」

 

 あんなとこで寝泊まりしてたらコーヒーの匂いが染み付いちまう......!

 しかもタカヒロさんはチノの頼みなら何でも叶えてしまいそうで怖い......。

 

 「クスクス、なんだか二人とも兄妹みたい~」

 

 「出来ない兄と出来る妹だね~」

 

 「どちらかと言うとジンさんは弟です」

 

 「コーヒーをブラックで飲めない娘に弟扱いされた......」

 

 「~~~~っ!」

 

 コーヒーの件を出した途端、顔を膨らませてポカポカと俺を殴ってくるチノ。

 

 あぁ、チノも可愛い......。 

 

 「仲良しだなぁ~二人とも。メグはジンが弟だったらどうする?」

 

 「え!?そ、それは......」

 

 「メグがお姉さんだったら、俺はきっと甘えちゃうだろうな」

 

 「よ、喜んで!」

 (わ、私じゃあジンさんのお姉さんにはなるには力不足ですよ~)

 

 「メグ!メグ!本音と建前が逆になってる!」

 

 四人でわいわいと仲良く話していると、そこである違和感に気付いた。

 ココアが妙に静か過ぎる。

 

 いつもならとっくに自己紹介を始めて、「お姉ちゃんって呼んで!」とか言っている頃だ。

 

 嫌な予感がしてココアがいるチノの隣の席を振り返ってみると――――、

 

 「......ココア?」

 

 案の定、ココアは姿を消していた。

 

 




えっと、特に言うことありません!
すみません!!

ここまで読んで頂きありがとうございます!

誤字脱字等ありましたらご報告お願い致します!


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3綺麗になりたい

今の今まで失踪していて申し訳ありませんでした。
色々とごたついていて中々投稿する暇がなくて、読者様には多大なる迷惑をお掛けしました。

また投稿を再開させて頂きます!
これからもどうぞよろしくお願いします!


「ココアのやつ何処まで行きやがった.........」

 

 この炎天下の中、アイツを探し回るのは流石に骨が折れる。

 

 ココアが消えてから俺はチノ達を待たせて、一人であの馬鹿を探していた。

 

 なんで一言も言わず消えるかなぁ、アイツは。まあいいさ。見つけたらアイスの1つでも奢らせてやるかな。

 

 「ココア~!チノが心配してるぞ~!お姉ちゃんなんだろ~!側に行って安心させてやれよ~」

 

 返答はない。

 この方法じゃ駄目か。

 

 どうする?

 

 いっそ探すの諦めちまうか?

 

 アイツならその内ひょっこり帰ってくるだろ。けどチノが心配してるのは本当だしなぁ。頑張って探しますか。

 

 「って、ココア?」

 

 「あ!ジンくん!」

 

 ベンチに見知らぬ女の人と座り、陽気にこちらの存在に気付き、手を振ってくる。

 

 俺は怒る気力もなくし、やれやれと近付いていく。

 

 「お前、チノが心配してたぞ?」

 

 「ジンくん、私は町のバリスタ国際弁護士として、パンを作りながら小説家の道を生きることにしたよ!」

 

 「この暑さに脳をやられたか。御愁傷様..........」

 

 「やられてないよぉ!」

 

 この小娘、またおかしな事を抜かしおる。おかしいのは今に始まったことじゃないが。

 

 「クスクス。仲がよろしいんですね」

 

 俺達のやり取りに微笑む女性。何だか、いかにも大人って感じの人だ。というか、何処かで見たことあるような........ないような........。

 

 (この男の子、何処かで会ったような........ないような.........)

 

 今、なんかすれ違いを感じた。

 

 「って、チノ待たせてるんだから早く行くぞ。すみません、なんか付き合ってもらって.........」

 

 俺は女性に軽く頭を下げる。

 

 本当に申し訳ない。ココアの奴が変なこと抜かしてないか不安になる。

 

 「いえいえ。こちらもお話が出来て良かったですよ。またお会いしましょうね」

 

 「はいっ!今度は小説のお話も聞かせてくださいっ!」

 

 「勿論ですよ。では、またさ迷ってきます~」

 

 「行ってらっしゃい!」

 

 「あの人、小説家なのか?」

 

 「そうだよ~。作品が映画館にもなってるんだって!」

 

 「いや、めっちゃ凄い人ぉ......」

 

 ただ、なんとなくだけど、ココアと同じ匂いがするな、あの人。物理的な意味ではなく。なんかこう、天然っぽいとでも言えば良いのだろうか。掴み所がないと言うか......まあ、考えるのは止めよう。面倒くさいし。

 

 「ほらさっさと行くぞ。あまりチノを待たせたくないし」

 

 「は~い」

 

 抜けた返事をするココアと俺は少し駆け足でチノの居るところまで戻った。




ここまで読んで頂きありがとうございます!

いつもさることながら、非常に短いですけども。

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4綺麗になりたい

チーズと牛乳って意外と合いますねぇ!

よっし、投稿していくぜ!


 ココアを探し出して、チノのところへ戻ってくる。

 

 「ただいまチノ。って、あれ?メグとマヤは?」

 

 「お二人は先に帰りましたよ」

 

 「おお、そっか」

 

 出来ることならもう少しメグとマヤと話がしたかった。学校でのチノをたくさん聞き出そうと思ってたんだけどな。

 

 それもこれもココアが勝手にいなくなったせいだ、ちくしょう。

 

 「ココアさんは何してたんですか?」

 

 「小説家さんと世間話してたんだよっ!」

 

 「しょ、小説家さんとですか?」

 

 驚きの表情を見せるチノ。確かに凄いよな。中々話が出来るもんじゃないぞ。

 

 「ココアさんは知らない人と気軽に離せるんですね」

 

 「チノちゃんも喫茶店のお客さんと話せてるよ?」

 

 「いきなり世間話はしませんし、話すのは得意じゃないです......」

 

 「でも、さっきの友達とは楽しそうに話してたよ」

 

 「あの二人が積極的に話しかけてくれなければ、友達になってなかったです」

 

 「そんなことないよ!」

 

 「え............?」

 

 「チノちゃんの腹話術が私にもあれば、世界を狙ってたのに!」

 

 「頑張ってください.......」

 

 呆れたように返答するチノ。なんか良いことでも言うかと思って真剣に会話を聞いてしまっていた。恥ずかしい。

 

 

 

 

 

 

 

 「チノちゃん、ジンくん、次は何処に行く?」

 

 「そうですね......」

 

 あれから、いろんな所を三人で回った。筆記用具見たり、お茶したり、服見たり。

 

 思えば、久しぶりに休日を満喫してるかもそれない。今まではゲーム一択だったけど、こうやって何処か出掛けたりするのも楽しいもんだな。連れ出してくれたココアには少し感謝してる。

 

 三人で仲良く次の行き先を決めようとしていると、向こうから見覚えのある顔の女が歩いてきた。すれ違い様にチノがその知り合いであろう女の名前を呼ぶ。

 

 「リゼさん......?」

 

 女はビクッと肩を強張らせ、震えた声で返事をする。

 

 「はい!?」

 

 こちらを振り向くリゼ。服も髪型も昼に見た時とは違う。一目見ただけじゃ分からないな。

 

 「人違いでした。失礼しました」

 

 え、嘘だろチノ?

 

 「さっき見掛けた時とは服も髪型も違うもんね」 

 

 お前もかココア。

 

 確かにさっきとは格好変わってるけど......いや、リゼだよリゼ!声とかモロそうだろ!何故気付かない!

 

 つか!さっきガッツリ返事してたろ!

 

 「あれ?でもリゼちゃんって呼んだら振り向いたよ?」

 

 「その......間違えてしまいました。私、ロゼと言う名前なので.....」

 

 顔を鞄で隠しながら下手な嘘を付く。

 

 それは流石に無理があるだろ.....。

 

 「そうですか.....でも、ビックリしました。ロゼさんとよく似た方がうちの喫茶店にいるので」

 

 「ほ、本当?是非行ってみたいわ」

 

 そんな慣れない言葉遣いまでしてバレたくないのか。

 

 「はい。ラビットハウスと言うお店です。お待ちしています」

 

 「え、ええ。いつか必ず。じゃあ.....」

 

 踵を返して逃げるように帰っていく。歩く後ろ姿までは誤魔化すことが出来ないみたいだな。完全にリゼだよ。アレ。

 

 「私、人見知りするんですが、何故かあの人とはいきなり会話が出来ました」

 

 「よかったねっ。チノちゃん」

 

 いきなり......つうか、いつも店で会話してるからな......。

 

 (もしかして、これはココアさんの影響......!)

 

 髪型は知らんが、買った服をすぐ着たくなったなんて言えない、とか考えてるような顔してたもんなぁ。

 

 「ジンくんはああいう女の人ってどう思う?」

 

 「何だよ藪から棒に......」

 

 「いやぁー、綺麗な人だったからジンくん的にはどうなのかな~って......」

 

 つまり、男目線の感想が聞きたいって訳か。

 

 「そうだなぁ......まあ綺麗な人だと思うぞ」

 

 ココアとチノの二人は彼女をリゼだってことを知らないから良いものの、改めて綺麗って言うと恥ずかしいな。

 

 「そっか~。ジンくんはあんな感じの人が好みなんだね…‥.」

 

 「別にそこまでは言ってないし、なんでそんなこと聞くんだ?」

 

 「べっつに~。ロゼさんのこと目で追ってたから」

 

 珍しいことに、少し不機嫌そうなココア。

 

 ロゼ.......じゃなくて、リゼを見てたのは別人みたいに変わってるのに驚いてただけで、下心で見てた訳じゃないわ。

 

 てか、何でそこでココアが不機嫌になる必要なある?

 

 「ジンさんは少し乙女心を学んでください」

 

 「アレ?俺怒られてる?」

 

 い、一体何故だ…‥?

 

 

 

 

 




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1お話をするお話とお話

なーんか最近雨続きでどんよりしてますね~。
が、そんな気分はこの小説を読んで吹き飛ばしちゃいましょ~!






 「ふぅ。休日だってのに疲れたなー」

 

 風呂に入り、寝巻きに着替えベットにダイブし、仰向けに寝転がって今日を振り返る。

 

 ここに来てからと言うもの、疲れてばかりだ。だけど、とても充実してる気がする。中学の頃はいつも一人で遊べるような事に没頭していたし、友達だって多い訳じゃなかった。

 

 「居心地が良い場所か…‥…‥」

 

 母親が昔言ってた。

 

 いつかは自分が居心地が良いと思える場所に出会える。そうしたら、その場所が壊れないよう努力しなさい。守りなさいって…‥…‥。

 

 ラビットハウスやこの町は、俺の居心地が良いと思える場所と言えるかもしれない。

 

 そんなことを考えていると、携帯が鳴り出す。画面を見るとよく知ってる人物からの着信だった。出るのにしばらく迷ったが、鳴り止まない着信音に嫌気が差して通話の欄を指でタッチする。

 

 

 

 

 「……もしもし」

 

 

 

 

 『アンタが電話に出ないのを私が諦めると思った?』

 

 一言目から核心に触れるようなこと言ってくるなこの人は。

 

 「ちゃんと出ただろ、母さん(・・・)

 

 そう。

 

 携帯の向こうから少し怒り気味の声色で話すのは、俺の母親だった。

 

 『そっちではちゃんとやれてる?下宿先の人に迷惑かけてないでしょうね?』

 

 「大丈夫、迷惑なんかかけてないよ」

 

 『本当に?アンタ、ぶっきらぼうで不器用で偏屈な人間だから母さん心配よ』

 

 実の息子にそこまで言うか?

 

 まあ、否定はしないけど。

 

 「何も心配かけるような真似はしてないよ」

 

 『本当にぃ?』

 

 「ホントだって!」

 

 まだ納得しきってない母さん。頼むから息子を信じてくれ…‥。

 

 「んで、何か用事があって連絡してきたんでしょ?何?」

 

 『別に?何かバカやらかしてないか確認しただけ』

 

 「わざわざそれだけのために連絡を!?」

 

 どんだけ信用ないんだ俺……。流石に傷付く。

 

 『喧嘩も止めなさいよ』

 

 「しないって……」 

 

 『まあいいわ。とにかく、やらかすのだけは勘弁してちょうだいね。じゃ』

 

 そう言って問答無用にあちらから通話を切られた。やれやれ…‥。少しの間だったけど、やっと嵐が通りすぎて行ったな。さて寝るか。

 

 明日に備え、就寝する為に部屋の電気を消そうとした時だった。部屋の扉を誰かがノックする。

 

 「はーい?」

 

 「ジンくん、起きてる?」

 

 扉を少し開けて顔を覗かせるのは寝間着姿のココアだった。

 

 「ココア?何か用か?」

 

 「あのね、今からチノちゃんとリゼちゃんから借りたDVDを見ようと思ってたんだけど……一緒にどう?」

 

 ココアの手にあるDVDには「うさぎたちの沈黙」と言う名のタイトル。微塵も会話が弾む気がしない。普通みんなで見るって言ったらワイワイ出来るような、もっとこう……相応しいヤツがあっただろ。

 

 まあでも、折角の誘いだ。いつもいつもココアの誘いを無下にする訳にはいかないか。一緒にそのDVDを観賞させてもらうとするか。

 

 「いいね。俺も見るよ」

 

 「やった~!それじゃあ私の部屋いこっ!」

 

 ま、たまにはこう言うのも悪くないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ふぁ~……」

 

 学校の授業終了のチャイムと共に大きなあくびが漏れる。昨日、ココアとチノに遅くまで付き合ったから寝不足だ。1日の授業も全て終了したし、後は帰宅してラビットハウスの仕事だ。

 

 「なんだよ。そんな大きなあくびして。寝不足か?」

 

 「久々だなお前」

 

 「おっかしなこと言うなぁ。同じクラスなんだからいつも顔合わせてるだろ」

 

 俺に声を掛けるのは、バレー部所属の如月 冬子。登場回数が少ないせいか忘れられてると思うが、コイツを知らない人は『1ジンと悪意なき告白』を参照してくれ。

 

 てかお前クラスメイだったんかい。

 

 「で、昨日も夜遅くまでゲームか?」

 

 「別に。お前には関係ないだろ」

 

 「ツレねぇなぁ~!おんなじクラスメイトだろ!」

 

 ガシッと俺の首に腕を巻き付けてじゃれてくる。彼女はふざけてやってるのかもしれないが、コイツは自分のパワーを自覚してない。やられる方の身にもなってみろ。スゲー苦しいんだよ。

 

 「お、おい、苦しいって……」

 

 「おお?悪い悪い」

 

 パッと俺の首から腕を離す如月。

 

 「ったく……こんなことしてて良いのか?部活に遅れちまうぞ?」

 

 「あ!いけね!また後でなジン!」

 

 時計を見て慌てる如月は、鞄を持って教室から出ていった。忙しない奴だな。

 

 俺も鞄を持って帰ろうとした矢先、ココアがわざわざ迎えに来た。

 

 「ジンく~ん!一緒に帰ろ~!」

 

 教室の扉の前で手を振りながら大声を出すココア。その隣には小さく手を振る千夜の姿も見える。恥ずかしいからそんな大きな声出さないでくれ……。

 

 「いつも元気だなお前……」

 

 「えへへ~」

 

 「誉めてはいないんだよなぁ」

 

 俺とココアのやり取りを見て、まだ教室に残る生徒らがヒソヒソし始める。

 

 「あそこの二人ってスゴく仲良いよね」

 

 「もしかして付き合ってるのかな?」

 

 「そうかも~。いつも一緒に帰ってるみたいだし」

 

 「しかも一緒に住んでるって噂で聞いたよ?」

 

 「この歳で同棲?法律的に良いの?」

 

 あの、全部聞こえてるんですが……。

 

 「ホント、女ってこういう話題好きだよなぁ。ココア、別に気にする必要は……」

 

 ココアの様子を伺うと、顔を真っ赤にして俯いている。

 

 コイツがこんなことで恥じらうなんてあり得ない。もしかして、風邪でも引いたか?

 

 「ココア、お前熱でもあるのか?」

 

 「ふぇ!?そ、そんなことないよ!」

 

 「本当か……?」

 

 自分の手をココアの額にあてがって熱がないか確認する。

 

 「じ、ジンくん!?」

 

 「んー。確かに熱っぽくはないけど、念の為だ。チノに言って今日は仕事休めよ」

 

 「だ、だだだ大丈夫だよ!全然!ほら!早く行かないとチノちゃんに怒られちゃうし、行こ!」

 

 未だに顔が赤いココアが俺と千夜を急かして帰ろうと先に歩き出す。本人がそう言うなら深く問い詰めはしない。ただ、一応はアイツも友人だし、無理だけはしないで欲しい。

 

 「帰るか、千夜」

 

 「そうね~」

 

 ココアの背中を追うようにして俺と千夜も歩き出す。

 

 「本当に大丈夫か?アイツ」

 

 前を歩くココアの背中を見ながら不安を言葉にする。

 

 (ジンくんってば、無意識にやってるのかしら?だとしたら相当な強者ね~)

 

 千夜は何故か柔らかい笑みを浮かべ、機嫌が良いことが分かる。

 

 ………でも、何で?

 

 

 

 




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それでは、アディオス!


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2お話をするお話とお話

どうも~!
今回はジンくんのイメージイラストを頑張って描かせてもらいました~!

下手くそな絵ですけども……
イラストは最後に!


 途中で千夜と別れた俺とココアは、ラビットハウスの裏口からおのおの自分の部屋に戻り制服に着替える。

 

 学校を出るときにはココアもいつもの様子に戻っていた。熱がないようで安心したけど、学校でのアレはなんだったんだ?

 

 ま、これから仕事だし些細なことは気にしないようにするか。

 

 着替えが終わって部屋を出ると、ココアが不思議そうな顔して制服のまま部屋から出てきた。

 

 「ココア、お前制服は?」

 

 「それがロッカーから消えてて……」

 

 「どういうこと……?」

 

 とりあえず二人で一階に降りていく。学校でいざこざかあったせいで少し仕事に遅れ、ココアが先にカウンターに出ていってチノに謝罪する。 

 

 「遅れてゴメン、制服がなかったんだけど……あれ?」

 

 「あ、お帰りなさ~い」

 

 そこには何故かコーヒーを運ぶメグの姿が。しかもココアの制服を来て。

 

 「私の制服!もしかして私リストラ!?」

 

 つ、ついにチノに見限られてクビになったかココア。

 

 「おーいチノ~。このモコモコしたの可愛いなぁ。倒したら経験値とか入りそ~」

 

 「リゼちゃん!?いつの間にこんなにちっちゃ……」

 

 「ちっちゃ……!?」

 

 「あれ?よく見たら違う……」

 

 マヤまで……?一体何がどうなってる。

 

 「リゼって、この制服の持ち主?クローゼットにこんなもの入ってたけど、その人裏の仕事も引き受けてるの?」

 

 マヤが制服のポケットから拳銃を取り出す。

 

 オイ、リゼ………。

 

 「リゼちゃん大変な物置き忘れてるよ~!」

 

 「マヤさん、ティっピー返してください!」

 

 チノの声に反応してココアが謝る。

 

 「あ!チノちゃん、遅れてゴメンねっ。ところで二人は……」

 

 「私のクラスメイトです。手伝ってくれてるんですよ」

 

 「マヤだよ~!」

 

 「メグです~」

 

 成る程ね。だから二人がここで仕事してるのか。

 

 「そうなんだ。ありがとね、二人とも」

 

 「お礼なんか良いって~。ねっ?メグ」

 

 「楽しいし、制服も可愛いしね~」

 

 「二人とも、スゴく似合ってるよっ!あと二色揃えば悪と戦うのも夢じゃないよっ!」

 

 「マジで~!?私ブラックが良い!」

 

 「私ホワイト~」

 

 「何と戦うんですか?」

 

 「ライバル店かな?」

 

 「ただの営業妨害じゃないですか……」 

 

 一通りやり取りを見て、俺もカウンターに出てチノに謝罪する。

 

 「遅れて悪いチノ」

 

 「大丈夫です」

 

 問題ないといった様子のチノ。優しい子で良かった。

 

 「ジンじゃん!オッス!」

 

 「ジンさん、こんにちは~」

 

 俺の存在にメグとマヤが気付いて挨拶する。

 

 「よ、二人とも」

 

 二人に挨拶を返すと、メグが俺をジーっと凝視してくる。

 

 何だ?何か顔にでも付いてるか?

 

 「メグ?どうした?」

 

 「へ?あ、いや!その!ジンさんの制服姿見るの初めてで…………その、カッコいいです!」

 

 マヤがその様子に気付いてメグに声を掛けると、途端に顔を赤くしながら俺の制服姿を賞賛してくれる。

 

 カッコいい……凄く良い響きだ。

 

 俺も負けじとメグの制服姿を誉める。

 

 「ありがと。メグもその制服似合ってて可愛いよ」

 

 「えへへ~。ありがとうございます~!」

 

 健気に礼を言って照れ笑いするメグ。この笑顔に汚れた俺の心が浄化されていく。

 

 「ジン!ジン!私は?」

 

 「まあ、似合ってるんじゃないか?」

 

 ピョンピョン跳ねながら感想を求めるマヤに、素っ気なく感想を述べる。似合ってはいるけどメグほどじゃないな。けど青を選んだ辺りセンスがある。いかにもマヤって感じの色だ。

 

 「って、アレ?ジンくんは二人と知り合いだったの?」

 

 「まあなー。ちょっと縁あってさ」

 

 そういや、昨日二人に会ったときはココア居なくなってたっけ?

 

 「ジンくんって、目付き悪いのに結構知り合い多いよね~」

 

 「バカにしてんのかお前」

 

 「えっと……ココアさん?」

 

 「あ!私のことはお姉ちゃんって呼んでね!はい、チノちゃん!お姉ちゃんって!」

 

 「どうしてこの流れで呼んでもらえると思ったんですか」

 

 メグの呼び掛けに目をキラキラさせながら自身の呼び名を指定するココア。手本としてチノにお姉ちゃんと呼ばせようとするが、チノは頑なにその言葉を発しようとしない。

 

 「って、そういやチノ。コーヒー豆の在庫仕入れたんだよな?俺、整理してくるよ」

 

 今まですっかり忘れてたけど、倉庫に新しく入荷したコーヒー豆の在庫を豆の種類別に分けなきゃならない。こういう仕事も率先してやらないとな。

 

 「あ、いえ、無理なさらずとも大丈夫ですよ。重いし、一人じゃキツいですし」

 

 チノは大丈夫だと言ってくれるが、後で皆でやるより俺が先に、時間ある内に片しといた方がいい。

 

 「大丈夫大丈夫。いつかやんなきゃいけない事だし、力仕事は男の仕事だからな」

 

 「あ、じゃあジンくん、私も手伝うよ?」

 

 「いや、ココアは折角だし、メグとマヤの二人に仕事でも教えてやってくれよ」

 

 「でも……」

 

 「任せとけって」

 

 「う、うん。無理はしちゃダメだよ?」

 

 「ジンさん、疲れたら好きな時間に休憩してても構いませんからね?」

 

 「了解だ」

 

 俺は服の袖をまくりながら倉庫の方へと歩いていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「1日掛かってしまった」

 

 コーヒー豆の整理につい熱中してしまい、一日使ってしまった。少し休憩をとったとは言え、流石に疲れる。カッコ付けないでココアかリゼに手伝ってもらえば良かったかも。

 

 倉庫から店に戻ると、後片付けをしているリゼの姿しか見えない。

 

 「あれ?リゼ、皆は?」

 

 「ココアとチノなら買い出しに行ったぞ。手伝いに来てたチノの友達は帰ったみたいだ」 

 

 「悪いことしたな。買い出しは俺の仕事なのに」

 

 「お前は一日中力仕事だったんだろ?ココアとチノが気にするなって伝えるよう言ってたぞ。少しは甘えろよ」

 

 「……それもそうだな」

 

 折角だし、ここはチノとココアの厚意にあやかるとしよう。でも、後片付けぐらいはするか。

 

 「あ、リゼ。昨日の服、どこで買ったんだ?」

 

 「なっ!お前気付いてたのか!?」

 

 コイツ、アレで騙し通せたとでも思ってるのか?

 

 流石に俺でも気付くわ。チノとココアは気付いてなかったけど……。

 

 「まさかバレていたとは……」

 

 「別に隠すことないだろ」

 

 「買ったばかりの服をすぐ着たがってるっていうのも恥ずかしかったし……私にああいう女の子らしい服は似合わないと思って…………」

 

 リゼは少し気恥ずかしそうに言った。そんな下らない事を気にしてたのかコイツは。

 

 「買った服をすぐ着るかどうかなんて買った本人の勝手だし、あの服、お前にスゲー似合ってたぞ?」

 

 「そ、そうか……?」

 

 「ああ。正直、スゲー可愛かった」

 

 「かわっ……!?」

 

 俺の言葉に顔をリンゴみたいに真っ赤にさせて口をパクパクさせている。フッ。魚みたいで面白いな。

 

 「堂々と恥ずかしいこと言うんじゃない!」

 

 「ちょ、リゼ落ち……ゴえぇぁ!?」

 

 何故かグーで腹を思いっきり殴られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 




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あ、因みにこれがジンくんです。

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3お話をするお話とお話

ごちうさ、アニメ三期やるんですか?

え……?は……?え?歓喜


 学校帰り。先生からプリント類を大量に運ぶよう頼まれて、帰宅するのが随分と遅くなってしまった。途中で、前にココアが世話になった小説家の姿を見たが、声を掛ける必要もないので見てないフリをして通り過ぎた。

 

 それは置いといて、ココアには遅れると伝えてあるし、少し甘兎庵にでも立ち寄ってみるか。

 

 石畳の道を数十分歩き、甘兎庵に到着する。開店してると言うことは、千夜はもう仕事中みたいだ。久し振りに甘兎庵の扉を開けると、シャロが勢いよく飛び出してきた。

 

 「リゼ先輩に妹なんて信じないからぁ~!!」

 

 そのまま大声を出しながら走り去って行った。

 

 な、何だったんだ……?

 

 「あ、ジンくん。いらっしゃ~い。今日は随分と帰ってくるのが遅かったわね?」

 

 扉の向こうにはいつもの接客スマイルを浮かべる千夜の姿。

 

 「ちょっと先生に仕事を頼まれててさ」

 

 「頼りになるっていうのも大変ね~」

 

 「随分と他人事だな」

 

 千夜と他愛もない会話をしていると、ふと、あることに気付く。

 

 「ど、どうも……」

 

 律儀に頭を小さく下げ、挨拶をするチノがいた。しかも制服を着て。

 

 「よ、ようチノ」

 

 こっちも返事を返す。

 

 チノが一人でここにいるのは珍しいな。いつもココアがセットでいるせいか、ちょっと違和感を感じつつもチノと向き合う形で席に座る。

 

 「チノが一人でいるなんて珍しいな。何してるんだ?」

 

 「ちょっと、千夜さんに相談を……」

 

 「へー、相談かぁ」

 

 特に興味をそそられる話題でもないので適当に流す。

 

 「では、私は先にお店に行ってます。ジンさんもなるべく早く来てくださいね」

 

 「はいよ~」

 

 チノは俺にそれだけを言い残して、甘兎庵から立ち去っていった。

 

 「千夜、注文良いかな?」

 

 テーブルに置かれたメニュー表を手に取って羊羮と緑茶を注文しようと千夜に声を掛ける。ただ、千夜からの返事がない。メニューから目を離して、千夜の方へ視界を移すと、頬を少し膨らませていた。

 

 たぶん、俺に対してなんだろうけど、千夜の感情が分からない。表情が険しくなってるわけでもなく、ただ頬を膨らませているだけ……。

 

 「えっと……千夜?」

 

 「ジンくん、冷たいのね……」

 

 「え、何が……?」

 

 別にいつも通りにしてたけど、何か千夜の気に障るような事でもしただろうか?

 

 「てっきり、ジンくんならチノちゃんの相談にのってあげると思ってたのに……」

 

 なんだよ。そんなことか。

 

 「モヤモヤしてるのはチノだけじゃないと思うけどなぁ」

 

 「あら?どうしてチノちゃんの悩み事を?」

 

 千夜の態度は先程と打って変わって、驚く様な仕草を見せる。

 

 「そりゃあ、いつもラビットハウスの皆の事を見てるからな。すこし不自然な所があったら直ぐに分かるし、チノの場合は分かりやすかったしな」

 

 最近、マヤとメグが店の手伝いに来るようになって、リゼやココアと仲良くしてるのをチノが見て様子がおかしくなった。まあ、そりゃそうだ。いつも仲良くしてる友達が、別の人達と仲良くしてりゃあ自然と人は不安になる。

 

 「悩み事が分かるなら、尚更どうしてチノちゃんの相談にのってあげないの?」

 

 「相談にのってどうする?俺はチノと一緒に仕事してるけど、まだ彼女の事をそこまで知らない。ただ差し出がましくなるだけだ」

 

 「確かに、それもそうね…………」

 

 俺の言葉に千夜が同意を示す。

 

 「それに、俺は男だ。性別が違えば考え方だって大きく変わってくる。相談に乗るにはもっと適任がいるだろ?」

 

 「ジンくんって、実は結構考えてるのね。感心したわ!」

 

 「な、なんで上から目線……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから少し日が経ち、チノも調子を取り戻してきたみたいで良かった。お兄ちゃん凄く心配だったよ。

 

 チノと二人で皿洗いしながらそんなことを思う。

 

 すると、不意にチノが、

 

 「ジンさんは、悩み事とかありますか?」

 

 「え、急だな………いきなりどうした?」

 

 「いえ、私も悩み事がある時、相談にのってもらって少し心が軽くなったので、良ければジンさんの相談にのってあげようと思って」

 

 いきなり悩み事なんか聞かれてもなぁ。別にこれといってあるわけじゃないし。

 

 「いや、特にないよ。気使ってくれてありがとな、チノ」

 

 「いえ、ジンさんには良く働いてもらってるので」

 

 うっわ、なんて良い子なんだ……感極まって泣いちゃう。

 

 「俺、チノのそういう優しい所が好きだよ」

 

 自分でも驚くほど、自然な笑みが溢れているのが分かった。

 

 「ッ…………!?」

 

 俺の笑顔を見たチノは急に顔を反らして一言も喋らなくなった。

 

 俺のさっきの笑顔、そんな気持ち悪かったか?

 

 良くチノの顔を見てみると、少し赤いような…………気のせいか?

 

 (なんでしょうかコレは……ジンさんの言葉を聞いて、笑顔を見た途端に胸がキュンとして、恥ずかしくて、嬉しくて………この気持ちは何なんですか……!?)

 

 

 

  

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございます!

遂にジンくんの魔の手がチノちゃんにまで迫っちゃいしたね~

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1 Call Me Sister&Brother

なんか最近暑いですよね……

でも皆さん!エアコンのつけすぎにはご注意を!


 ラビットハウスで仕事をするのにも最近慣れてきた。ラテアートもなんとか形には出来るようになったし、注文の仕方やコーヒーの淹れ方も学んだ。仕事をするのが段々と楽しくなってきた今日この頃、なんだかチノの機嫌が悪いような気がする。いつも以上に口数が少なくて、いつも以上にムスッとしている。主にココアに対して。

 

 「チノのヤツ、なんか機嫌悪そうだな」

 

 皿を片付けるリゼが、ふとそんなことを呟く。俺も気になっていたので、リゼの言葉に反応する。

 

 「まあ確かに。ココアに対しての当たりが少しキツいよな」

 

 「何かあったのか?ココアにちょっと聞いてみるよ」

 

 俺とリゼは、テーブルを拭いているココアに声を掛ける。

 

 「なあ、ココア。なんか今日チノの機嫌悪くないか?特にお前に対して……」

 

 「へ?そうかな?いつも通りだよ?」

 

 お前はいつもチノにそんな扱いを受けていたのか。それで良く平然としてられるな。まあそれがお前の凄いところと言うか……。

 

 コレは直接チノ本人に聞くしかないだろう。あまり気乗りはしないが、仕事仲間の仲が悪くなってないか心配だしな。

 

 俺とリゼは互いに顔を合わせ頷く。取り合えずチノを更衣室の前に呼び出そうと、コーヒーを淹れるチノに小声で話し掛ける。

 

 「なあチノ、ちょっといいか?」

 

 「な、なんですか?」

 

 「少し聞きたいことがあるんだ。出来ればココアがいないところで」

 

 「はい……分かりました……」

 

 チノはコーヒーを淹れるのを一度中断して、俺達についてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「今日なんか機嫌悪いけど……ココアと何かあったのか?」

 

 更衣室の前、リゼが何故機嫌が悪いのかをチノに問い詰めると、気まずそうな顔で口を開く。

 

 「この前、二人で遊んでる時にパスルをしてたんですが、お手洗いに行ってる最中にココアさんがパズルを完成させてしまったのです……」

 

 うわぁ……。

 

 「しかも1ピース足りなかったんです……」

 

 うわぁぁ……!ココアやったな!やってしもうたなココア!

 

 パズルが好きな人にとってそれは最悪の仕打ち。ましてやチノは少しそう言うところにうるさそうだからなぁ。

 

 「それで今日あんなに機嫌悪かったんだ」

 

 「はい……気に障るようなことして申し訳ないと思ってます……」

 

 シュンとした表情で俺達に頭を下げるチノ。

 

 「チノが謝る必要はないよ。それに、気に障ってなんかいないし、10対0でココアが圧倒的に悪いよソレは」

 

 「容赦ないなジン……」

 

 「まあココアだしな」

 

 ともあれ、それとなくココアに伝えといてやるか。どうせ本人は分かってないだろうしな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「と言うわけで、チノがおこだ」

 

 早速、俺とリゼはココアにチノが怒ってることを伝えた。

 

 それとなくと言ったな。あれは嘘だ。

 

 「ふえぇ!?チノちゃん喜ぶと思ってたのに!」

 

 「まあ、チノは嫌だったみたいだけどな」

 

 「で、でも、パズルのピースは最初っから無かったよ?」

 

 「無くしたのはココアだとは思ってないだろうけど、楽しみを奪われてショックだろうな」

 

 「そ、そんなぁ!私お姉ちゃん失格だぁ~!!」

 

 悲痛な叫びを上げながらラビットハウスを飛び出るココア。一体どこ行く気だ。

 

 「その前に謝れよ……」

 

 「なんかチノを勝手に妹認定してるし」

 

 俺達二人はココアの奇行に目もくれず、残った仕事を終わらせるために各々持ち場に戻った。

 

 そして、それから一時間が経過。

 

 ココアが帰ってくる気配がせず、流石に心配する一同。

 

 「ココアが帰ってこない……悪気は無かったんだから、許してやったらどうだ?」

 

 リゼがテーブルを拭いているチノに、ココアの所業を許してやるよう催促する。

 

 「あんな態度を取ってしまった以上、普通に話すのが恥ずかしくて……」

 

 ((気付いてなかったけどな))

 

 でも、チノの気持ちは分からなくもない。俺は喧嘩した相手と仲直りするなんて絶対できないし、したくもない。けどチノとココアの事だ。いつの間にか仲直りしてるだろ。 

 

 「チノちゃん!」

 

 ラビットハウスの扉が開けられ、入店の鈴が鳴る。どうやらココアが帰ってきたみたいだ。ココアの手には少し大きめの箱。

 

 もしかしてパズル買ってきたのか?

 

 「新しいパズル買ってきたから、許して~!」

 

 「8000ぴーす!?」

 

 コレ、完成させるのに何日掛かるんだよ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「協力して欲しいって……」

 

 「コレの事?」

 

 「手伝って~」

 

 「良く来てくれた二人とも……」

 

 ココアが買ってきたパズルを四人でやっていたが、どうにも終わる気配がしなかった為、シャロと千夜を応援に呼んだ。人数が増えればそれだけ早く終わる。ただ、二人が来ても今日中に終わるかどうか……。

 

 「一回崩しちゃえば?」

 

 「勿体ないよ~!」

 

 「ここまで来るのにも一苦労したんだからな!」

 

 「それに……今のリゼちゃんを止めることなんて出来ない……」

 

 パズルのピースを持って目を輝かせるリゼを三人で見る。

 

 「た、楽しい……」

 

 「た、確かに……!」

 

 今のリゼにもう一度崩すとか言える空気ではない。言うにしても言える奴が居ない。

 

 「仕方ないわね。手伝ってあげるわよ」

 

 「すまん、助かる……」

 

 「というか、なんでジンはそんなに疲れてるのよ」

 

 「ここまでほとんどジン君がパズルを組み合わせてくれたからね~」

 

 チノはともかく、ココアとリゼはやる気だけであまり役に立ってなかったしな。

 

 「ジグゾーパズルなんて久し振り~」

 

 「はしっこから組み立てていくと良いんだよね!」

 

 皆で互いに組み合わせたパズルを合体させていくが、千夜だけ中々パズルを組み合わせることが出来ずにいる。千夜ってこういうの苦手そうだしな。俺も得意な方ではないけど。

 

 「1ピースも合わせられない役立たずがここにいても良いのかしら……」

 

 「ジグゾーパズルなんかでそこまで思い詰めなくても……」

 

 なんか千夜が一人落ち込んでる。

 

 「そう言えば、ジンがこうやって私達の輪に入ってるって珍しいわね」

 

 「そうか……?」

 

 不意にシャロがそんなことを言った。確かにこう皆で何かをするのはあまり無かったかもしれない。

 

 「たしかにそうだな。いつもは部屋に込もってゲーム三昧の寂しいお前にしては珍しいよな」

 

 「本人を前にしてよく言えたな」

 

 リゼの奴、結構毒吐くよな。

 

 「でもジン君が居てくれて凄く楽しいよ!」

 

 「はい、私もです」

 

 「そうね、ジンくんが居てくれると私も楽しいわ~」

 

 「ま、まあ!私も楽しいけど!」

 

 「そうだな。お前が急に居なくなったりしたら、流石に寂しいよ」

 

 ココアやチノ、千夜にリゼ、そしてあまり絡みのないシャロまでもが嬉しいことを言ってくれる。堂々と言われると少し恥ずかしいが、まあ悪くない。少し照れ気味に「そうか」と俯く。

 

 居心地が良い場所ってのが、俺の中で確信に変わった。

 

 「ま、俺も皆といれて楽しいよ」

 

 「あら?ジンくん少し顔が赤いわよ?」

 

 「照れてるんですか?」

 

 「か、からかうなよ……!」

 

 そんなこんなで皆とワイワイしながら、パズルのピースを組み立てていく。と、そこで重大な事に気付いてしまった。

 

 「ところでコレ、下に何も敷かなくて良いのか?」

 

 俺の一言にその場が凍りついた。次の言葉を誰が紡ぐのか緊張感が漂うなか、

 

 「その、なんか…………スマン」

 

 俺は取り合えず謝罪した。

 

 

 




ここまで読んでくださりありがとうございます! 

ジンくんが照れるシーンはニマニマしながら書いてました。彼も可愛いところはあるんですよ。

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2 Call Me Sister&Brother

扇風機が意味を成さない今日この頃。

いっそ水風呂にでも入ろうかなって思ってます。


 パズルを始めてから数時間が経過した。

 

 途中でシャロの腹の虫が鳴き、腹ごしらえにチノとココアがパンケーキを作りにいった。

 

 「あの二人、自然に仲直りしたみたいだな」

 

 言われてみれば。

 

 いつの間にか二人は会話するようになってた。

 

 「ふぇ!?喧嘩してたんですか!?」

 

 シャロが驚きの声を上げる。

 

 「だって、いつも以上にチノの口数少なかっただろ?」

 

 その言葉を受け、千夜とシャロはお互いの顔を見合わせて、

 

 「いつもあんな感じじゃないんですか?」

 

 「チノちゃん、照れ屋だから」

 

 シャロと千夜には二人が喧嘩してる様には見えなかったみたいだ。それに、喧嘩ってほどでもないけどな。でも仲直りしてくれたみたいで良かった。

 

 そうと分かったところで、チノとココアがパーケーキを作ってくれてる間に少しでも進めるとするか。

 

 俺はピースを手に取って作業を再開する。それに、もう少し頑張れば終わりそうだ。出来れば今日中に終わらせたい。

 

 そんなことを考える矢先、階段を駆け上がる音が聞こえてきた。

 

 部屋の扉が勢いよく開けられ、ココアが涙目で、

 

 「チノちゃんが口聞いてくれないよぉ~!」

 

 仲直りしたんじゃなかったのかよ。

 

 「今度は何やらかしたんだ?」

 

 「ホットケーキ宙に浮かして返そうとしたらチノちゃんの顔に……」

 

 「ホントに何やらかしてんの!?」

 

 この女懲りないな!

 

 「自分で何とかしろよ」

 

 リゼの容赦ない一言で、ココアは肩を落としながらフラフラと下に戻っていった。アイツもよく戻れるな……。

 

 「折角仲直りしたのにね」

 

 「これじゃあ振り出しに戻っただけだな」

 

 ココアを気遣う台詞が千夜から聞こえるが、もう気にしてられん。知らぬ間にパズルへと集中力を注いでいた俺は気付けば、そんなことはどうでも良くなっていた。

 

 あともう少しで完成しそうなんだ……!

 

 「大変です!ココアさんがケチャップで死んでます!」

 

 「ケチャップでどう死ねるの!?」

 

 突然部屋に現れたチノに、ツッコミを入れてしまった。

 

 突飛なことを言うもんでつい……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ごちそうさまでした~」

 

 「美味しかったなぁ~」

 

 パンケーキを食べた後、俺は黙々とパズルを進めていた。他の五人はパズルに飽きて会話に興じているし、なんかもうチノもココアも喧嘩した事が嘘だったかのように話をしている。

 

 「この知恵の輪難しいね~」

 

 カチャカチャと知恵の輪を弄くるココア。

 

 「おじいちゃんが作ってくれたんです」

 

 「チノって、パズルゲーム得意なんだな」

 

 「難しくて何度挑戦しても解けなかったんですが、いつか自分の力で解いて、おじいちゃんをアッと言わせて見せます!」

 

 「チノなら近い内に解けるだろ。頭良いし」

 

 「はい、ありがとうございますジンさん」

 

 パズルのピースをはめながらチノを誉めると、嬉しそうな声で俺に礼を言うチノ。

 

 「しかし、最初にやってたパズルのピースは、一体何処にいったんだろうな?」

 

 「そういうのって、忘れた頃に見つかりますね」

 

 「シャロちゃんはランドセルを学校に忘れたまま帰ってきた事があったわ。明日学校行けな~いって泣いて……」

 

 「り、リゼ先輩の前で学校の話は止めてよ!」

 

 千夜の話に割って入り、ついベットを叩くシャロ。すると、その衝撃でベットにいたティッピーが跳ねて、落ちたと同時にティッピーの体から何か小さな物が床に飛び出した。

 

 「ん?ソレ……」

 

 チノが拾い上げると、見たことあるような形をしている。アレだ。パズルのピース。もしかしてチノがやってたパズルの無くなったピースなんじゃないか?

 

 「パズルのピースです」

 

 「良かったねチノちゃん!コレで完成だね~!」

 

 「はい!」

 

 ピースも見付かり、仲直りもして大団円……かに思えたが、ココアが最後の最後にやらかす。

 

 カチャっと金属の音がする。

 

 チノが自分の力で解いて見せると息巻いていた知恵の輪を、ココアが解いてしまった、千夜を除いて皆色を失う。

 

 頬を膨らませて、顔を怒りで真っ赤にするチノ。

 

 「ココアさん……!」

 

 「はい……お姉ちゃんって呼んで────」

 

 「呼びません!」

 

 あ…………パズル完成した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「うぅ…………」

 

 

 チノを怒らせてしまったココアは、何故か俺の部屋に来て頭を抱えている。

 

 「良い加減自分の部屋戻れよ……」

 

 「ジンくん助けてよぉ~!」

 

 「助けてって言われてもなぁ……チノの機嫌が直るまで待つしかないだろ」

 

 「そんなぁ~!」

 

 流石に知恵の輪を解いてしまったのは不可抗力だろうが、それでもチノは大層ご立腹な状態だった。誰がなだめても効果はいまひとつ。

 

 シャロ、リゼ、千夜は既に帰宅した。三人とも気まずそうにしてたな。

 

 イヤ、千夜は少し楽しそうにしてた気がする。

 

 「部屋の前でとにかく謝り続けたらどうだ?チノの事だからいたたまれなくなって許してくれるかも知れないだろ?」

 

 「絶対許してくれないよぉ~!」

 

 「じゃあ切腹したら?」

 

 「嫌だよ!?」

 

 「安心しろ。介錯は俺がしてやる」

 

 「そういう問題じゃないから!」

 

 じゃあ他にどうしろって言うんだ。

 

 というか、俺の部屋で悩む必要なくない?

 

 コイツがいるとゲームに集中できない。さっきから何度もゲームオーバーになってる。

 

 「……ったく、しょうがねぇな。俺からも許してもらうよう言ってくる」

 

 「ホントに……!?」

 

 「いつまでもここに居られちゃあ迷惑だしな」

 

 「恩に着るよ~!」

 

 俺はゲームを一旦中断し、重い腰を上げてチノの部屋へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 「チノ、起きてるか?」

 

 チノの部屋をノックすると中からチノの声が聞こえ、少しだけ扉が開けられ、その隙間からチノが顔を覗かせる。

 

 「その……ココアも反省してるみたいだし、許してやってくれないか?アイツにも悪気があった訳じゃないみたいだし」

 

 ココアの名前が出た途端に、口を尖らせ頬を膨らませる。これはまだ許してないヤツだ。やっぱり口添えしても無駄だったか……残念だがココア、これは諦めるしかない。

 

 「ジンさんが私の悩みの相談に乗ってくれたらココアさんを許してあげます……」

 

 「悩み……?」

 

 チノがそんな交渉を持ち掛けてくる。それくらいならお安いご用だが、別に交渉材料に使わなくてもいつだって相談に乗るのに。

 

 勿論断る理由はないし、ココアも許してくれるなら乗らない手はない。

 

 「分かった。相談に乗るよ」

 

 「では、中へどうぞ」

 

 扉を完全に開けて俺を部屋に招き入れる。

 

 チノの部屋に入るのは始めてだ。それに滅茶苦茶良い匂いがして逆に落ち着かない。しかもチノの寝巻き姿可愛い……。

 

 「好きなところに座ってください」

 

 適当に座るよう言われたのでベットにチノが座ったのを見てから、俺はチノに向かい合うようにして床に座る。

 

 「それで?相談ってのは?」

 

 俺は早速切り出す。

 

 正直、チノの悩みが気になって仕方ない。

 

 するとチノは、

 

 「最近、ある人と一緒にいると胸がポカポカ温かくなるんです……」

 

 なんとか聞き取れる位の声量で、言葉を発した。

 

 続けて、

 

 「でも、()()()が他の女の人と話していたりするのを見ると苦しくもなるんです……これは一体何でしょうか?」

 

 まさかそんな質問が来るとは思ってなかった。

 

 ボトルシップを作成したり、パズルが好きだったりと大人びた趣味を持ってはいれど、チノも年頃の女の子なんだ。

 

 どうしてチノがそんな事を俺に尋ねるのか理由は分からないが、はぐらかさず素直に答えよう。

 

 「それは……恋だと思うぞ?」

 

 「恋……ですか?」

 

 「そっ。たぶんチノは()()()の事が好きなんだな。だから一緒にいると心地が良いって思えるし、他の女と話してる所を見ると嫉妬しちゃうんだよ。暖かくなったり、苦しくなったりするのはそういう事」

 

 「…………私は()()()の事が好き……なんですね」

 

 「ああ、そゆこと」

 

 ()()()への好意を自覚して、顔を赤く染めて恥ずかしそうに兎の人形で顔を隠す。

 

 可愛い……。

 

 が、遂にチノにも好きな人ができたかぁ……。なんか少し寂しい。嫁に行く娘を見る父親もこんな気持ちなんだろうな。

 

 「あの……ジンさんは私の事どう思っていますか?」

 

 「え、俺?」

 

 「はい。教えてください」

 

 「んー…………可愛くて優しい、出来の良い妹かな?」

 

 「クスッ……ココアさんみたいな事言うんですねっ」

 

 顔を赤くさせたまま微笑むチノ。

 

 「そ、そうか?ココアと一緒にされるのは心外だが、チノが可愛いって思ってる点では一緒か……いや、でも俺の方がチノの事可愛いって思ってるから!ココアが思う可愛いの倍可愛いって思ってるから!」

 

 「そ、そんなに可愛いを連呼しなくても良いですから……!」

 

 どんどん顔に赤みが増していくチノは、可愛いを連呼する俺の口を塞ごうとしてくる。まるで本当の兄妹みたいで楽しいな。

 

 それから少し二人でじゃれあった後、ココアを許す約束を頼んでチノの部屋を出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

  

 「良い天気だね~」

 

 「全く、調子の良い奴め」

 

 「こ、今度からは気を付けるよぉ……」

 

 昨晩、チノを再び怒らせたココアは俺のお陰で……声を大にしてもう一度。俺のお陰で!チノから朝に許しを貰っていた。

 

 二人であれやこれや駄弁りながら校門を抜けて学校の敷地に入っていくと、千夜の姿が見えた。

 

 「おはよー!千夜ちゃん!」

 

 「おはよう二人とも~」

 

 ココアが挨拶すると、千夜も振り返って挨拶を返す。

 

 「ココアちゃん、チノちゃんのご機嫌直った?」

 

 「朝になったら許してくれたよ~」 

 

 俺のお陰でな。

 

 「あれ?千夜ちゃん、ストッキングに穴が……!」

 

 指摘された千夜は、穴の空いたストッキングを見ると、渋い顔をする。しかも千夜は肌が白いから尚更目立つ。

 

 「このままだと目立っちゃうね……絆創膏で穴を塞ぐのと、ペンで肌を黒くするの、どっちがいい?」

 

 ココアはバックから絆創膏と黒のペンを取り出して、2択を迫る。

 

 どっちも嫌だ。

 

 「大丈夫よ」

 

 だが、千夜はどちらも断りストッキングを脱いだ。

 

 「「その手があったか!」」

 

 ココアと綺麗にハモった。

 我ながら今日も絶好調だなあオイ。

 

 

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございます!

これでチノちゃんもヒロイン登録ですね。 
チノちゃんにお兄ちゃんって呼ばれてみたいですねぇ。



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1 お金がそんなに欲しい?

今回は久し振りにオリキャラ回です。

すみません、チノちゃん出なくて……


 午前の授業が全て終了し昼休みに突入した。教材やら筆記用具やらを鞄に片付けていると、花深が話し掛けてくる。

 

 「芹沢さん、お昼空いてるっス?」

 

 俺の机に手を乗せて前のめりになる花深。自然に顔が近くなる。何の香水かは分からないが花深から良い香りが漂う。

 

 因みにコイツの事が分からない人は『2大きくなりたい?チノはそのままで大丈夫』を参照してくれ。

 

 「まあ空いてるっちゃ空いてるけど……なんで?」

 

 「ちょっとご相談したいことがあって……」

 

 俺の耳に小声で用件を伝える。

 

 最近他人から相談事をよくされる。

 

 昼は大した用事もないし、相談に乗ってやるとするか。

 

 「別に構わないけど?」

 

 「おお!ありがたいッス!じゃあここで話すのはアレなんで屋上に来てほしいッス~」

 

 「別にここでも良くないか……?」

 

 「あまり人には聞かれたくないんッスよね~」

 

 「…………分かった。じゃあ屋上いこうぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 屋上へ続く階段を登り扉を開けると、花深と俺の髪を靡かせる気持ちの良い風。気温も丁度よく、昼食をもとるにも昼寝をするにも最適な場所だ。今度からココアと千夜とはここで飯を食おう。

 

 丁度良さそうな位置に腰を下ろして、二人で並んでフェンスにもたれ掛かる。

 

 「で、相談ってのは……?」

 

 俺は袋に包まれた弁当箱を取り出しながら、相談内容を聞き出す。

 

 「実は…………私ストーカーされてるっぽいんッスよねぇ……」

 

 ストーカー。

 

 そう呼ばれているような行為は、最初は、著名人を相手にした行為だった。つまり、最初は、現代風に言うところの『追っかけ』であったみたいだ。

 

 追っかけはストーカーの最も基本的な形態であると指摘されている。

 

 追っかけが過ぎて、やがて暴力行為に至ったり、賛美のつもりでやがてはファンがスターを殺害してしまう事例も起こっている。追っかけを行う中には、憧れの対象との間に愛情関係がある、などと勝手に思い込む者も多い。

 

 「最近、知らない男の人が家を訪ねてきたり、ポストに変な手紙を入れたり……」

 

 花深が胸ポケットから小さい封筒のようなものを取り出すと、俺に手渡す。封筒を受け取り、中に入っている手紙の内容に目を通す。

 

 なんか運命の人だの赤い糸で繋がっているだの書いてるな。

 

 「心当たりは?」

 

 「たぶん前にフッた他校の男子生徒さんですね」

 

 「え?告白されたの?」

 

 「まあ一応……」

 

 毛先をクルクル弄りながら恥ずかしそうに答える花深。

 

 「私、結構モテるんッスよ?」

 

 うわぁ……なんだこの敗北感。生まれてこのかた一度も告白なんてされたことないから、女性と言えど羨ましい。

 

 「で、そいつがストーカーなんじゃないかと?」

 

 「まあそうッスね」

 

 「仮にそいつがストーカーだったとして、どうするんだよ?」

 

 「警察に言うと脅してこんなことやめさせるッス」

 

 容赦はないんかおのれは。

 

 「それで、ジンさんにはそのお手伝いをしてほしいんッス!」

 

 「手伝うたって、俺に一体どうしろと?」

 

 「私とデートしてる振りしてくださいッス」

 

 「無茶苦茶なこと言うねぇ…………」

 

 そもそも俺はまだ手伝うなんて一言も言ってないし、デートしてる振りする意味なんてあるのか?

 

 「もう最初っから警察に任せたら?」

 

 「勘違いだったら恥ずかしいじゃないッスかー」

 

 「じゃあ確証が得られるまでほっとけよ」

 

 「ヒドイ!私があんなことやこんなことや淫らな事をされても良いって言うんッスか!?」 

 

 「うん」

 

 「冷たいなぁ……じゃあ、後でご飯奢るッス!」

 

 「俺がストーカーの正体を突き止めてやる……!」

 

 「手首がネジ切れんばかり手のひら返しッスね!現金ッスね芹沢さん!」

 

 バカ言え。

 

 友人が困っているなら手を差し伸べるが世の常だろ。

 

 「で、具体的にどうすんだ?」

 

 「視線を感じるのはいつも下校するときッス。なんで今日は一緒に帰りましょうッス」

 

 「疑似放課後デートってところか」

 

 「そうッスね~。後、少しデート感出すためにちょっと寄り道もしたいッス」

 

 「寄り道ね……オッケ」

 

 じゃあラビットハウスの面々に、今日は仕事を休むって伝えとかないとな。

 

 「じゃあ今日の帰りよろしくね、ジン!」

 

 「分かっ……て、何その口調」

 

 「振りをするなら徹底的に。本当に付き合ってるって感じ出さないと意味ないよ?」

 

 え、ヤダ……全然慣れないし、超違和感。

 

 そこまでする必要ある?

 

 別に一緒に歩いてりゃあアッチから釣れるだろ。

 わざわざそこまでやらなくても良くない?

 

 「じゃあ放課後よろしくね~!」

 

 花深はそれだけを残して颯爽と立ち去っていった。

 

 「まさかずっとそのテンションで今日乗りきるつもり?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ねぇジン~!あのウサギ可愛いねぇ~!」

 

 学校が終わった後、早速二人で放課後デートと洒落込む。

 

 花深校門を出てからずっと俺の腕にくっついている。俺も健全な一人の男子だ。コレは非常に恥ずかしい。ここまでするかよ普通。

 

 しかも何で花深は涼しい顔してられるんだ?

 

 「なあ、少し離れない?」

 

 「えぇ~!照れてるの~?可愛いなぁ~」

 

 「そのキャラ止めない!?すげぇやりにくいから……!!」

 

 というか、さっきから腕に柔らかい何かが当たってる。意識しないように努力はしてるが、勝手に腕へと意識が集中する。

 

 「はぁ…………で、その寄りたい場所ってのはどこだよ?」

 

 俺が溜め息混じりに問い掛けると、少し歩いたところで急に立ち止まった花深がとある店に指を差す。

 

 「ここ!」

 

 その店の看板を見て俺の思考は一時停止した。

 

 ラビットハウス。

 

 不意に汗が身体中から滲み出てくる。

 

 「ここ、結構有名な喫茶店らしいんだ~。一度行ってみたかったんだよね~……って、どうしたの?そんな汗かいて」

 

 「ダメ!!絶対ダメ!ここだけはダメ!」

 

 俺が全力で否定すると、花深が不思議そうな様子で首を傾げている。

 

 イヤ!ホントに!ここだけはアカンって!

 

 「えぇ~!行こうよ!」

 

 「絶対嫌だぁ!」

 

 「もう……ワガママだなぁ~。じゃあいいよ。また別の機会に来るから」

 

 「そうしてください…………」

 

 良かった。何とか難を逃れることが出来た。この状態であそこに入ったら何を言われるか分かったもんじゃない。事情を話したところでラビットハウスの面々が素直に納得してくれそうにはないし。

 

 「じゃあ今度はお洋服屋さんいこ~!」

 

 「はい……」

 

 俺はやるせない気持ちで、ハイテンションの花深に引っ張られていく。 




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2 お金がそんなに欲しい?

どうも!

今回ちょっとシリアス気味です……!


 公園にて、二人でベンチに並んで座る。

 

 日も暮れ始めてきたし、ストーカーは結局現れなかった。俺が一緒にいれば嫉妬やらで突っ掛かってくると思ったんだけどなぁ…………。

 

 「ストーカーなんていなかったんじゃないか…………?」

 

 「いたよ!嘘じゃないもん!手紙だって見せたじゃん!」

 

 もうデートの振りは終わるというのにまだそんな喋り方をしてる。いい加減煩わしいから止めて欲しいんだけど。

 

 それにしても、人がいない公園ってのはこんなに寂しいもんなんだな。いつもは子供たちで賑わいを見せるココも人がいなければただの広場。日も暮れ、辺りが暗くなっているせいか少し気味が悪い。

 

 「なぁそろそろ帰ろうぜ~……」

 

 ベンチにもたれ掛かり、空を仰ぐような姿勢で花深に提案するも返事が返ってこない。

 

 「…………花深?」

 

 気になってチラリと花深の方を見ると、なんだか一点を見つめたまま険しい表情をして固まっている。俺も花深の視線の先に目をやると、どこかの学校の制服に身を包んだ一人の少女が佇んでいた。

 

 「誰だ……?知り合い?」

 

 「ちゅ、中学の頃の……ど、同級生ッス……」

 

 花深から怯えた声が聞こえる。いつの間にか素の喋り方に戻っているのに本人すら気付いていない。聞いたことのない恐怖が混じった声。肩をビクビクと痙攣に近い状態で震わせている。

 

 ゆっくりがこちらに近付いてくる。一歩、また一歩と、彼女が足を動かす度に花深の震えは大きくなっていく。こんな花深は見たことがない。

 

 「こんにちはっ」

 

 俺達の目の前まで来ると、少女は満面の笑みを浮かべて挨拶をした。黒く長い髪に、白い肌。普通ならば愛想の良い少女に見えるのかもしれないが、俺にはそう見えない。この距離で初めて分かったんだが、笑みを浮かべる少女の目は笑っていなかった。

 

 怒りや憎しみなんて生易しいもんじゃない。彼女の瞳には殺気が宿っている。

 

 花深は震えを抑えるのに精一杯で、言葉を発する余裕もない。

 

 「ねえねえ花深ちゃん、挨拶返してくれないの?久し振りに会ったんだから遊ぼうよ~」

 

 感情がのせられていない機械的な発音。

 

 花深と彼女の間に一体何があった?

 

 二人はそもそも何らかの関係があるのか?

 

 「ねぇ…………なんで黙ってるの!?」

 

 ここでやっと初めて剥き出しになる少女の怒り。花深の肩がビクッと小さく震える。

 

 そして少女は続ける。

 

 「花深ちゃん、昔みたいにまたお金持ってそうなオジサン引っ掛けようよ~」 

 

 「も、もうやらないッス……」

 

 「ふざけないでよ!!あの時アンタが私達を売ってなければこんな風には…………!!」

 

 少女は怒りを抑えきれなかったのか、はたまた最初っからそのつもりだったのか、胸ポケットから取り出したカッターを花深目掛けて切りつける。

 

 が、俺は咄嗟に花深を庇おうとしてカッターの刃を握り、それを阻止した。間一髪ってまさにこの事。

 

 刃を握る手から鮮血が滴り落ちる。

 

 「せ、芹沢さん!!」

 

 「痛ってぇ…………」

 

 いや!結構痛い!

 頼むから機能しろ俺のアドレナリン!

  

 「あ…………あ…………そ、そんなつもりは……!」   

  

 怒りで真っ赤にしていた少女の顔は、青く色を失い、カッターを握る手を離す。どうやら自身の行いを後悔しているのだろう。力なくその場にへたり込む。

 

 「コレ、殺傷沙汰だよな…………警察に通報でもされたらアンタの人生半分終了したみたいなもんだな」 

 

 「ご、ゴメンナサイ…………ゴメンナサイ……!ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ……!!」

 

 少し俺が脅しをかけると、呪文のように謝罪の言葉を繰り返しながら頭を何度も下げている。

 

 「…………この事は誰にも言わない。けど、ただじゃない。俺の質問に嘘偽りなく答えろ」

 

 少しして、落ち着きを取り戻した少女は、一言だけ、

 

 「……わ、分かった…………」

 

 そう言ってゆっくり立ち上がる。

 

 「芹沢さん!先に手当てを……!」

 

 「いや、大丈夫だ。俺が付き合わせれた事の顛末をさっさと知りたい」

 

 花深の治療を断り、早速質問をする。

  

 「まず‥……最近、花深に変な手紙を送りつけたり、後を尾けたりしてるのはお前か?」

 

 俺の質問に少女は小さく頷いて肯定した。

 

 ストーカーの正体はこの少女だったか。まさか女だとは思っていなかったが……思い返してみれば、手紙に書かれていた字が妙に綺麗だったもんな。

 

 「次の質問、花深とはどういう関係だ?」

 

 「花深ちゃんとは…………え、援交仲間だったの……」

 

 援交ねぇ…………。

 

 簡単に言うと、女性が金銭等を目的として交際相手を募集し、性行為などを行う売春の一形態で、サイトなどを通じて行われることが多い。高校生や中学生など18歳未満の女性が行っている場合も多々あり、しばしば児童買春の問題として取り上げられる。

 

 にわかに信じがたいが、俯いて唇を噛み締め、何も言わない花深の様子を見る辺り嘘ではなさそうだ。   

 

 「じゃあ最後の質問、なんでそんなに花深を恨んでる?」

 

 「いつもみたいに花深ちゃんに誘われて…………でも、会った男の人に暴力を受けて…………そんな人じゃないって花深ちゃんは言ってたのに…………!!騙せれて…………憎くて!!許せなくて!!」

 

 見てて悼まれない気持ちになる。

 

 けれど、

 

 「だからって、花深に害を及ぼせばアンタが世間から批判される……それでいいのか?」

 

 「今更だよ!!どうせ汚れた安い体なんだ!!どれだけ世間から批判されようがーーーーーー!」

 

 「安くねぇよ……!バカが……!」

  

 「え…………」

 

 心では収まらない想いが声として少女に飛ぶ。

 

 「アンタのその白い肌も、綺麗な黒髪も世界でたった1つのもんだろ……!?安くねぇんだよアンタは………………!」

 

 思わず痛みも忘れ声を荒げてしまった。少女は少し驚いた後、怒りとは真逆の柔らかい笑みを浮かべながら、

 

 「ありがとう。君みたいな人に、もっと早く会いたかった…………もう花深ちゃんには会わないよ。迷惑は掛けないから」

 

 そう言った。

 

 そして、ゆったりとした足取りでそのまま闇に消えていく。

 

 そして沈黙。

 

 今の場にはそんな言葉が相応しい。

 花深も俺も、一言も発せずその場で立ち尽くしていた。ただ、俺の手は変わらず血を流し続けていた。

 

 「早く…………血を止めなきゃッスね」

 

 花深の一言で、再び痛みが襲ってきた。

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございます!

いかんせん、シリアスを書くのは初めての事なので、皆様がどんな反応をするのかドキドキしています!

誤字、脱字等ありましたらご報告お願いします!
良ければ感想の方もお待ちしております!


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3 お金がそんなに欲しい?

いやー、最近夏バテなんですかね?
あんまり食欲ないんですよねー

ところで皆さん冷麺好きですか?


 ベンチに再び芹沢さんと並んで座る。

 

 手の傷は、たまたま持ってたハンカチで止血した。血はもう止まったとは思うけど、念の為にまだハンカチで傷口を押さえている。

 

 芹沢さんも私も、少女が立ち去ってから一言も発せず、ただこうして座っている。

 

 「…………軽蔑したッスか?」

 

 最初に口を開いたのは私だった。顔を俯かせたまま、けれど目だけは芹沢さんの様子を伺いながら。

 

 暫く返答に悩む芹沢さん。

 

 援交自体あまり良いイメージがない。

 

 けれど芹沢さんは否定する。

 

 「…………別に。それより、怪我はないか?」

 

 芹沢さんは顔を上げ、視線を遠くへ飛ばしながらそう答えた。

 

 「芹沢さんが守ってくれたお陰で…………」   

 

 私は変わらず顔を俯かせたまま、小さくはにかんだ。

 

 「芹沢さんは優しいッスね……こんな奴にもそんな言葉を掛けてくれるなんて…………私みたいな、売春奴なんかにーーーー」

 

 「バーカ。お前が援交してようがしてまいが関係ねぇよ。隣で泣いてる女がいたら、優しくするのが男の基本だろ」

 

 泣いてる……?

 

 気付けば、私は自覚せずに涙を流していた。

 

 でもどうして…………?

 

 涙を流す理由なんてどこにもないのに。

 

 友達すら傷付けて、想いを寄せる相手を危険な目に遭わせたから?

 

 それも違う。

 

 じゃあなんで?

 

 思考をグルグル回転させていると芹沢さんが、

 

 「でもホントに良かった。怪我がなくて」

 

 嗚呼…………芹沢さんが気遣ってくれたことが嬉しかったからだ。

 

 「うっ……グスッ…………ひっぐ…………」

 

 途端に涙が溢れてくる。芹沢さんの優しさが嬉しくて、こんな私を友と呼んでくれることが嬉しくて。

 

 まだ私を女と呼んでくれるのが嬉しくて。

 

 ただただ私は泣きじゃくった。そんな私の頭を、芹沢さんは何も言わずに、優しく撫で続けてくれた。

 

 

 

 

   

 

 

    

 「もう大丈夫か?」

 

 「はい。お恥ずかしいところを…………」

 

 ようやく落ち着いた花深は少し顔を赤くしている。花深の泣くところなんて初めて見たから少し驚いている。

 

 「理由は聞かないんッスね……」

 

 「まあ、聞いたところで何だって話だしな」

 

 「…………こんな私でも、まだ友達で居てくれるッスか?」

 

 「愚問だな。お前が何しようと何やらかそうと、俺が俺の判断で友達になろうって決めたんだ。今更友達辞めるなんて言わねぇーよ」 

 

 「ありがとうッス……芹沢さん」

 

 「まだやってんのか?援交」

 

 「こ、高校に上がってからはやってないッス!好きな人が出来たので…………」

 

 そう慌てて否定する花深。

 その好かれてるヤツは大変だな……。

 

 確かに彼女は良くない事をしていた。けど、それを凶弾できる人間なんてこの世にはいない。誰しも必ず間違いを犯し、人に言えない秘密がある。俺だってそうだ。だから、花深が悪い事をしていた人間とはいえ、友達でありたい。

 

 公園にある時計に目をやれば既に8時を回っていた。これ以上帰りが遅くなればチノ、ココア、リゼ、タカヒロさんの四人が心配する。

 

 警察に捜索願い出される前にとっとと帰るか。

 

 「花深、もう帰るか」

 

 「そッスね。ではまた明日学校で」

 

 「ああ、またな」

 

 俺達は別れの挨拶だけして、公園を後にした。

 

 そういや、ハンカチ返すの忘れてたな……後で洗って返すか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あら?ジンくん?」

 

 ラビットハウスへ向かう途中で、買い物袋を手に持つ千夜とシャロに出くわす。

 

 「って、どうしたのよその怪我!」

 

 「いや、ちょっと転んで……」

 

 「転んでそこまでならないわよ!何したの!?」

 

 俺の血で、染みたハンカチを見て大袈裟に驚くシャロ。

 

 あまりこの事に関しては振られたくないな。ただ、誤魔化そうとしてもシャロの奴がぐいぐい事情を聴いてくる。

 

 「……い、いや…………」

 

 「……まあ、言いたくないなら良いわよ。でも、ちゃんと治療しなきゃダメよ」

 

 「わ、分かったって」

 

 「ほら、ちゃんとした治療を施して上げるから付いてきなさい」

 

 「え、いや大丈夫……」

 

 「い・い・か・ら!」

 

 「はい……」

 

 俺はシャロに強引に手を引かれ、連れていかれる。

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございます!  

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