異能者の少女は彼を救う。 (black cat☆)
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彼女は彼を救う。

げ、現実逃避なんかじゃないからね!


今、俺は自分の部屋で包丁を持って、自殺しようと思う。いきなりそんなことを言われてびっくりするだろう。だが、俺はもう、限界だった。

 

――『比企谷君、もう部活来なくていいわ』

 

それが雪ノ下からの最後の通告だった。もう、俺達は戻れない。なら、俺はどうするか。あの居場所を追い出された俺は何が出来る?

 

修学旅行での嘘告白により俺へのイジメが始まった。もう、耐えられない。遺書は書いた。そして警察にも遺書を送った。せめての足掻きだ。あと俺がやることは包丁を首に刺して死ぬだけ。

そう思い、包丁を自分の首に当てる。金属が異様に冷たい。ああ、これから死ぬんだ。

ごめんな、小町こんな兄で…

今まで悪かったな、雪ノ下、由比ヶ浜…

 

そして、俺は包丁を少し首から離してから勢いよく、振りかぶった。

 

――はずだった。

 

「ぐえっ!」

 

当たったのは俺の手だった。いつの間にか包丁はなくなっていた。あれ、俺もしかして包丁にも嫌われてるの?

 

「危なかった危なかった〜」

 

声の方を振り向くと、そこには包丁を持って床から『浮いていた』ポニーテールの少女がいた。

 

***

 

さて、私の名前は柊桜。どれも一文字だけっていうね。いきなりだが私には他人とは違う力を持っている。物を出したり、動かしたり、傍は人を作ったりすることだって出来る。―人を作ったりってのは深い意味はないからね?―さらには飛ぶことも出来る。え?チート?うん分かってるよそれぐらい。オマケにその異能の力のせいでやることがない。成績トップ。運動もトップ。容姿どうでも良い。それで暇つぶしにどこかの家の中に入って私の姿を見せなくしてたら、目が死んでる男子高校生がいきなり包丁を持って自殺をしようとする。この時私はなぜ彼を助けたのか分からなかった。けど、彼は助けなきゃって思った。そう思ってたら勝手に体が動いて包丁を彼の手から私の手に移動させて、彼の自殺を止めた。私は安堵しながら姿を現した。

 

「危なかった危なかった〜」

 

***

 

俺は今有り得ないものを見ている。人が、宙に浮いている。八幡これでもう頭が混乱したぜ!?

ふえぇ…怖いよぉ……

うん、キモイ。てかマジで人が飛んでいる。だが、これを考えると、自殺を止めたのはこの子のようだ。

 

「……なんで止めた」

 

自分でもびっくりする程低い声が出た。だが少女はそれをものともせず話してきた。

 

「なんでか分かんないけどなんか止めなきゃって思ったの。私はあなたを助けたいの」

 

俺を、助けたい?

 

「はっ、そんなの嘘に決まっているだろ。俺はもう信じない」

 

「……酷いね」

 

ああ、そうだ。これでいい。もう関わってこないで――

 

「あなたが信じた人達って酷いね。結局はあなたに任せたのに裏切った。その嘘告白をしなかったらそのグループは壊れたのに、酷いね」

 

……は?今なんて言ったこいつ?嘘告白?俺には修学旅行の件しか思い付かない。

 

「……文化祭でもその実行委員長は最低だね。自分のことを棚に上げるなんて」

 

「ちょっと待て!?なんでお前がそれを知っている!?」

 

「私はね、生まれつき異能の力があるの。だからあなたの記憶を見たの」

 

「………は?」

 

もう俺の頭はオーバーヒートしそうだ。もう追い付けれない。

 

「そして、あなたへのイジメが始まった。周りは無視して、彼女達はそんなことを知らず、あなたを傷付けた」

 

もうやめてくれ。そんなこと聞きたくない。

 

「けどね……」

 

だが俺は彼女が次に言う言葉に救われた。

 

「私はあなたの側にいるよ。ずっと」

 

そう言って彼女は、俺を抱きしめた。

懐かしい温もりに、俺は涙を流しながら、意識がなくなった。

 

***

 

「私はあなたの側にいるよ」

 

そう言って彼を抱きしめる。

……私なにやってるのぉぉぉぉ!!!???

ひとまず落ち着こう!!

スーハースーハー

 

……ふぅ。どうやら彼は泣き疲れて寝たみたいだね。彼の寝顔を見ると大人びている顔が幼く見えた。

 

「あなたは耐えた。もう、我慢しなくていいからね」

 

私はどうやら彼を気に入ってるみたいだ。なら、私は私の力を使って、彼を支えよう。あれ?もしかして彼と一緒に暮らすことになる?

そう思ってると顔が熱くなる。

あ〜れれー?おっかしいぞぉ〜?

……もしかして、私、彼に一目惚れしちゃったの?

ワォ、なにこれ珍百…何でもないですごめんなさい。

けど、多分これは恋なんだと思う。彼を守りたい。彼とずっと一緒にいたい。そう思ってしまう。なら私はそれに従おう。けど、まだこの気持ちを言うには時間が足りない。少しずつ彼と一緒にいて、心を開かせたい。

ならまずすることは今彼を取り巻く環境は駄目。彼の両親は放任主義だから希望するのは無理。それに妹さんにも迷惑がかかる。そこで私はふと思い付く。

 

――彼を死んだことにして私の家で一緒に暮らす。

 

幸い、私は一人暮らし。なら、それにしよう。

私は彼の服を少し上げ、お腹を出させる。よく見ると所々傷がある。

……彼を傷付けた人は許さない。

はっ!今はそんなこと考えちゃ駄目。

私は力を使って彼が痛みを感じないようにして、一瞬躊躇ったが彼の腹に包丁を刺した。包丁を抜いて、床に血を出させる。ある程度出させたら傷を治した。そして次に彼の体を作ろう。そして自ら刺したかのように見せる。よし、これで完璧!

 

私はまだ眠っている彼を起こさないように、私の家へ移動した。今は夜、彼をベッドに寝かせてる。けど少し不安だから彼が眠っているベッドに私も入る。

 

「おやすみ、八幡……」

 



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彼は彼女を許す。

目を開けると俺はベッドで寝ていた。

 

「知らない天井だ……ってあれ?」

 

確か俺は自殺をしようとしててそれで……

 

「……結局、止められたか」

 

そんであのまま俺は彼女の言葉を信じ、眠った。彼女の言葉は信じてもいいと思えた。そして起きようとすると、俺は隣を見る。そこには俺の自殺を止めた彼女がいた。

 

「…………は?」

 

いやいや!?ちょっとこの娘なにやってるの!?

 

「むにゃ…八幡……抱っこ………」

 

そしてなんちゅう夢見とんじゃ!!俺の理性がゴリゴリ削られるっての!!

 

「……異能って本当にあったんだな」

 

いやまぁ、あれを見せられたら疑うことなんか出来ないよ。

さて、ここは俺の部屋じゃない。つまり彼女の家って言う可能性が高い。俺は不思議に思う。

 

「……なんで助けてくれたんだろう」

 

そう、そこが気になった。俺と彼女は初対面。恨まれるなら分かるが助けられることはない。起きたら聞いてみるか。てか寝顔可愛いから起こしたくない。

 

「けど、どうする……これだと起きるに起きれないな……」

 

仕方ない。罪悪感があるが起こそう。

 

「おい、起きろ」

 

起こそうとするとあら不思議!俺の腕を抱き枕のように抱きついてきた!

ってやばいやばい!!いい匂いじゃなくて理性がやばい!!

 

「おい、マジで起きてくれ」

 

ゆさゆさと揺らすと、ようやく起きた。

 

「ふぇ……?」

 

「ふぇってなんだよふぇって。そろそろ起きてくれ」

 

「……あ、ご、ごめん!!」

 

そうして離すと彼女は顔を真っ赤にした。俺も真っ赤だろうな。

 

「……良かった。自殺しなくて」

 

俺は疑問に思ったことを言った。もしかしたらなにか裏があるかもしれない。

 

「……なぁ、なんで俺を助けた?」

 

「なんでって言われても……」

 

彼女は言い淀む。やっぱりなにかあるに……

 

「……助けるのに、理由なんてある?」

 

「……!!」

 

俺は驚いた。彼女は嘘はついてないようだ。つまり彼女はその言葉どうり俺を助けた。

 

「え…ちょっとなんで泣いてるの!?」

 

彼女の言葉で気付いた。顔を濡らしてるのは涙だった。なぜ泣いてるのか。理由が分かった。

 

「嬉しくて…な……」

 

暫く、俺は泣き続けた。

 

***

 

彼の過去を見ると、彼が泣いた理由が分かった。私は嬉しかった。他の人のように泣いたり出来る彼を見て。彼が落ち着くと私は自己紹介してないことに気付いた。

 

「ごめん、忘れてたけど私は柊桜。よろしくね」

 

「比企谷八幡だ……ってもう分かってるか」

 

あれ、適応早くない?

 

「……あなたは私の力を恐れないの?」

 

「恐れるもなにも俺は実際に見たし、ここまでしてくれる恩人にそんなことは失礼だしな」

 

彼はそう言って笑う。笑顔の仮面を付けてない笑顔。私はそれにドキッとする。危うく告白しそう。

 

「う、うん、ありがとう」

 

こっちも笑うと彼もドキッとしたみたい。やられたら、やり返す。倍返しだ!

 

「あ、そういえばあなたこれからどうする?」

 

「あぁ……どうしようか……」

 

「……八幡、聞いてくれる?」

 

そう言って私は八幡が死んだことにさせてひっそり暮らそうと言うことを伝えた。私はやっぱり覚悟が足りない。けど、八幡には傷付いてほしくない。だからこれを伝える。

 

一通り言い終わると私は気付いた。私は泣いていた。すると彼は私の頭を撫でてきた。

 

「ふぇ!?」

 

「感謝するぜ、柊。そうしないと、俺はまた自殺しようって思ってしまった。けど柊がそれを止めてくれた。ありがとう」

 

「うん!」

 

私は思いっきり彼に抱きつく。彼は顔を真っ赤にして焦ってる。私だって恥ずかしいのに。

私は彼に許された。だから私は彼を守ろう。そして、いつか……

 

この気持ちを伝える。

 

 



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彼女らは後悔する。

ちょっと短いけどご了承ください。


小町side

 

修学旅行の後からお兄ちゃんの様子が変です。何があったのか聞いても『お前には関係ない』って言ってくる。

あんなのお兄ちゃんらしくない。それに私は腹が立ち口論してしまった。それからある日洗濯機の中にあるお兄ちゃんの服をふと見ると、所々血がついていた。小町は分かった。お兄ちゃんがイジメを受けていることを。けどお兄ちゃんはそれを隠している。私は、お兄ちゃんをイジメている人達を許さない。だから今日こそはお兄ちゃんに謝ろう。そう思いお兄ちゃんの部屋の前に来た。少し緊張してしまう。玄関にお兄ちゃんの靴があったから帰ってきているはず。けど嫌な予感がしてしまう。私はそれを感じながらノックをする。

 

「お兄ちゃん、入る……よ………」

 

正直、入るんじゃなかったって思ってしまった。なぜなら、そこにはお兄ちゃんが首に包丁を突き立て、死んでいたから。

 

***

 

今家の中に警察の方がいる。正直、小町はこれは夢だと思ってしまう。けど、お母さんやお父さんが泣き崩れている様子を見ると、本当に、お兄ちゃんが死んだことを表していた。あの時、小町がお兄ちゃんと喧嘩しなければ、あの時、お兄ちゃんに無理矢理にでも話を聞こうとしていれば、こんなことにならなかったはず。小町は、これからどうすればいいの………

 

***

 

雪乃side

 

「もう部活来なくてもいいわ」

 

私は、何を言っているの?なんで、折角由比ヶ浜さんと私達の想いが通じ合ったはずなのに、なんで私はこんなことを言ってしまうの。

 

「……そっか」

 

彼のその笑顔は仮面だった。彼はそのまま、私達から離れていった。そして、彼が自殺したことを聞かされた。私は最低なことをしてしまった。どうやっても、彼はもう……私達の前には現れない。私は、これからどうすればいいの………

 

***

 

平塚side

 

私は、一体何をしていた。彼を、比企谷を死なせてしまった。彼の精神状態を顧みず、色々と仕事をさせてしまった。こんなことなら、彼を奉仕部に入れなければ良かった。私は彼なら雪ノ下を救えると思ってしまった。だが結果はどうだ。彼はもう耐えきれず、自殺してしまった。私は、私は…………

 

「ちくしょう……!!!!」

 

私の胸が痛い。握り締めている手が痛い。だが彼が受けてきた痛みはこんなものではない。私は、分かっていたつもりだった。私は、これからどうすれば……

 

***

 

由比ヶ浜side

 

ヒッキーが自殺してからあたしはまるで空っぽのような感覚にいた。優美子と話してても、姫菜と話してても、どこか足りない。あたしは、なんであの時、強引にでもヒッキーと一緒に帰ろうとしなかったんだろう。そうすれば、ヒッキーは死なずにすんだはず。私は、もう……耐えれない。目が霞んでくる。頬に冷たいのが伝わる。

 

「結衣!?大丈夫!?」

 

「……………ない」

 

「え?」

 

「大丈夫じゃ……ない……ヒッキー………」

 

あたしはとうとう泣き崩れた。二人はあたしのことを心配して近付いてくる。けど、今は一人になりたい。あたしは、もう、どうすればいいの……ヒッキー………

 

***

 

彼女らからは後悔が感じる。そして彼と関わってきた人からも少なからず、後悔の念が感じる。けど、私は八幡を傷付けた奴らを許さない。彼女らがどう動くか、今はまだ監視していよう。

 



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彼と彼女の日常。

急展開ですが、気にしないでください。

それとアルスDQさん、ありがとうございます!!


俺が偽の自殺をしてから一週間が経った。桜はずっと俺と一緒にいた。俺はそれが嬉しかった。俺はテレビをつける。するとニュースがやってた。そこに映っていたのは俺の家だ。

 

「あー……やっぱこうなるか」

 

俺は警察に遺書を送った。多分イジメに関してのことでニュースに取り上げられたんだろう。それを見続けると、泣き崩れている両親、虚空を見つめている小町が映った。

 

「っ…………」

 

胸が締め付けられる。小町を一人にしてしまった罪悪感で胸が痛い。両親を泣かしてしまって胸が苦しい。すると俺の背中が心地よい温もりに包まれた。

 

「大丈夫」

 

「え……」

 

「ほとぼりが冷めればまた会えるよ。けど今は休もう?今会ったら、またあなたは……」

 

「……悪いな、桜」

 

「ううん、大丈夫。それとさ、もう少しこうしてて良い?」

 

「…頼む。今離れられるとどうにかなりそうだ」

 

「了解♪」

 

ニコリと笑う彼女が眩しい。けど、見れない訳ではない。

誰かにこんなこと頼むのは初めてかもしれない。彼女の言葉は信じれる。こんなの初めてだ。彼女なら……

 

「……なぁ、桜」

 

「ん?なに?」

 

「……俺と友達になってくれないか?」

 

***

 

「……俺と友達になってくれないか?」

 

彼から発せられた言葉に胸が熱くなる。嬉しいのと少し残念と思ってしまった。どうせなら、告白してもいいのに。けど今は彼の心の傷を治してから。だから。

 

「うん、いいよ!」

 

私は、飛びっきりの笑顔で、答えるんだ。彼の為に。自分の為にも。

 

***

 

「そういえば、服とかどうする?」

 

彼女からそれを言われ、気付く。替えの服がないことに。

 

「……どうする」

 

「うーん…今出歩くと駄目だからね……せめて後一週間経てればなぁ………」

 

「ま、そこは桜がなんとかするだろ。異能を使えばいいし」

 

「当分はそれだね。けど、流石にサイズはあれだから、ほとぼりが冷めたら買いに行こ?」

 

「分かった。それと飯はどうする?」

 

「それなら大丈夫!!」

 

ポンッと色んな食材が出てくる。肉だったり魚だったり。

 

「異空間で育ててるからモーマンタイ♪」

 

「……ほんとチートだな」

 

それから風呂はどちらが最初に入るか論議して、桜が夕飯を作ってくれて感謝しきれない。だがな、桜。寝るときは別に一緒に寝なくてもいいからな!?

 

***

 

隣を見て、桜は規則正しい寝息をしている。俺は起こさないようにそっとベッドから出る。部屋からベランダに出て、深夜の街を見る。

 

「……なんで、俺は桜のことは信じれるんだろうな」

 

それが気になった。俺は特別なにもないのに彼女は俺を助けた。救ってくれた。感謝しきれない程だ。そして裏切られる心配など微塵も感じない。俺は、もしかしたら………

 

「いやいや、おかしいだろ」

 

流石にこれはない。こんなの勘違いだ。例え俺が良くても桜が駄目だ。

 

「どうしたの?」

 

後ろから声がかけられる。

 

「……いや、何でもない」

 

彼女を見るとほんの少し頬を赤く染めていた。なにか変な夢でも見たんだろうか?

 

「……ねぇ、今まで告白されそうになった時、勘違いで済まそうとしてたよね」

 

「……また記憶覗いたのか」

 

「ごめん、けど、これだけは言いたいの」

 

そう言って桜は俺に抱き着く。

 

「逃げないで。ちゃんと、受け止めよう?」

 

彼女の声はどこか悲しく聞こえた。俺は、それに応えるように、桜を抱き締める。

 

「ふぇ!?」

 

「……分かった。ありがとな、桜」

 

「……うん♪」

 

彼女だけは失いたくない。早すぎじゃないかって言われても、俺はそんなことどうでもいい。

 

俺は、桜が好きだ。

 



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彼らは偶然にも出会ってしまう。

一ヶ月が経ち、俺のステルスヒッキーが常時発動しているおかげか、外に出てもなにも騒ぎは起こらなくなった。まぁ、桜はそれが嫌なのか不機嫌になっているが。

 

「……この世界壊そうかな」

 

「いやいや!?なに冗談言ってるの!?お前が言うと冗談に聞こえないぞ!」

 

「冗談四割、本気六割」

 

「本気が勝ってる!?」

 

「だって八幡のことを存在してないようにしてるんだもん!」

 

「いや、たった一高校生で騒ぐか?学校ならまだ分かるけど」

 

「本当ありえない!!」

 

どうやら学校の方はなにも騒ぎがないらしい。あれれ〜?ちゃんと遺書送ったよね〜?

 

「なんかいたずらだと思ってすてられたみたいだよ。本当にありえない」

 

「マジか。てか異能使って心読むな」

 

「仕方ないじゃん。……不安なんだし……」

 

後半なにも聞こえなかったが、まぁいい。

 

「はぁ……」

 

「なんで溜息をつくんだよ桜」

 

「……鈍感」

 

「俺のどこが鈍感だ。むしろ過敏まである」

 

「はぁ……それが鈍感なんだよ、八幡。由比ヶ浜って言う女子の気持ちが分かるなぁ……」

 

「………」

 

「あ……ごめん……」

 

「いや、今はもう大丈夫だ。だから気にするな」

 

そう言って桜の頭を撫でる。髪サラサラしてるから気持ちいいなぁ……

 

「………/////」

 

まぁ、本来なら俺はこれは勘違いって思ってたけど、今は勘違いじゃないって気付いている。そして気まずいから話を変える。

 

「なぁ、今日、い、一緒に、でで、出掛けないか?」

 

うん、キモい♪てかなんで俺こんなにテンパるんだよ。

 

「え!?うん!分かった!」

 

桜は嬉しそうに笑って応える。この笑顔守りたい。そして側に居させたい。

 

「それじゃ、行こ?」

 

「おう」

 

そうして、ららぽーとに向かう。

 

***

 

「………」

 

「あ、あの〜?桜さん……?」

 

「………なに?」

 

「いえ、何も」

 

ふぇぇ……怖いよぉ……

いや際限無しに怖いんだけど。いやまぁ分かるけどさ。俺死んでることになってるから、ららぽーとに来たら流石に騒ぎになるだろうと思っていたら、全然騒ぎにならない。俺のステルスヒッキーすげぇ。

 

「……はぁ。行こ?」

 

「お、おう」

 

……ようやく諦めがついたみたいだ。

 

***

 

それから色々と必要な物を買っていったが、後から気付いた。

 

「異能使えば別に買わなくてもうちからやれば………」

 

「………あ」

 

……俺達、なんで気付かなかったんだろう。

 

「……けど、なくなってることに気付かれたらどうするの」

 

「……それもあるから買ってて良かったか」

 

「だね」

 

それから伊達だが眼鏡買ったりした。眼鏡つけた際、桜がめちゃくちゃ赤かった。

 

***

 

「ふぅ………ある程度買ったから帰る?」

 

「……あ、あぁ。なぁ桜」

 

「ん?」

 

「……お前どんだけ金持ってんだ?」

 

今持っているだけでも袋が十はあるぞ。それに異次元にまだあるし。どんだけ金持ってんだ?

 

「あ〜、両親の遺産なんだ」

 

「……それ使って良かったのか?」

 

「うん、あまり使い道無かったし。それに、使った方が、母さん達は喜ぶと思うんの」

 

「……そうか。悪い、変なこと聞いて」

 

「ううん、大丈夫」

 

「そう……!?」

 

俺は反応しようと思ったが、あることに気付いた。

 

「どうしたの?」

 

「……桜、異能使って俺を見えなくしてくれ」

 

「……誰かいたんだね」

 

そうして俺は周りから見えなくなった。すると、声が近付いてくる。この声は……

 

「小町ちゃん、大丈夫?」

 

「大丈夫だよ」

 

「今日はパーと遊ぼう!」

 

「うん」

 

小町と小町の友達が来ていた。俺と桜はその一行とすれ違う。異能を使っているため、大丈夫だと思った。だが、俺は侮ったいた。小町のことを。

 

***

 

今日は友達と気晴らしに遊びにきた。皆は優しくて、お兄ちゃんのことを悪く言わない。そんな友達を持って良かった。

 

「小町ちゃん、大丈夫?」

 

「大丈夫だよ」

 

「今日はパーと遊ぼう!」

 

「うん!」

 

一緒に歩いていると、前からポニーテールの女の子が歩いてきた。小町はその人が何故か気になった。すると、周りに、お兄ちゃんがいると思ってしまった。

 

「お兄ちゃん!!」

 

後ろを振り向き叫ぶが、もう女の子はいなかった。女の子の側に、お兄ちゃんがいた。小町は探す。絶対に。

 

「お兄ちゃん!!どこ!?返事して!!」

 

お兄ちゃんなら小町の声に反応してくれるはず。だから、小町は叫ぶ。

 

「お兄ちゃん!!お願い!!出てきてよ!!」

 

周りに人が集まってきた。けど、そんなの知らない。小町はお兄ちゃんを探す。

 

「お兄ちゃん!!お願い……!!出てきてよ…………!!!!」

 

けど、お兄ちゃんは出てきてくれなかった。

 

***

 

「お兄ちゃん!!お願い……!!出てきてよ…………!!!!」

 

小町の声が聞こえる。けど、今はまだ、あいつの側にいられない。

 

「……出なくていいの?」

 

「……まだ、その時期じゃない。俺だって辛いんだ」

 

「……そうだね」

 

それから、俺は自分を罵りながら俺達の帰る場所に帰った。

 

 

小町、ごめん

 

 



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彼らは動く。彼の為に。

短い……
ネタが切れてきたよ!!


戸塚side

 

皆は、なんで八幡が死んだのに平然としているんだろう。僕には考えられない。なんで、八幡がいなかったことにされているの。なんで、なんで、なんでなんでなんでなんで………

 

「なんでなの!!!!」

 

周りの音が消える。僕がいきなり大声を出したから。けど、そんなの知らない。もうこんなクラスいたくない。でも、八幡のように一人になる勇気はない。

けど、もう沢山。友達が傷付いたままのは。

 

***

 

八幡が死んでから一週間過ぎた。そして、僕は知った。八幡がこのクラスの男子からイジメられていたことを。八幡はそれを教えてくれなかった。なんで、八幡はそうやって一人でやろうとするの。僕は、このクラスが憎い。こんなクラス、壊れちゃえば、いいのに。

 

***

 

川崎side

 

一週間が経った。私は、ここ最近心に穴が空いた感じがしてならない。あいつ、比企谷が死んだからかもしれない。私は、あいつが好きだ。だから、そのせいだ。

 

「……会いたいな」

 

例えそれができたとしてもどうする。告白?そんなの無理だ。だったら、私は何をすればいいんだろうか。

 

「ねぇ、川崎さん」

 

「……戸塚?どうした?」

 

「ちょっと手伝ってほしいことがあるんだ。だから、少しハナソウ?」

 

この時、私は戸塚から言われた『手伝ってほしい』ことを私はゾッとした。そして、これでなにかが変わるかもと思っている自分がいた。

 

***

 

「それで、なんでこんな人気のない所に来たの」

 

何故か戸塚は人気のない屋上に来ていた。戸塚はここ最近暗かった。前に叫んでたところを見るとかなりショックだったはずだ。

 

「実は、このことはあまり他の人には聞かれたくないんだ。それに、八幡のことだし」

 

「……話して」

 

「……いいよ」

 

戸塚はニコリと笑い、話した。比企谷がイジメられていたこと。比企谷がしてきたことを。私は、文化祭の時あいつを軽蔑していた。けど、もうそんなことは出来ない。私は、比企谷の真意を知ったから。

 

「……それでさ、復讐をしようと思うんだ」

 

「復…讐………」

 

「うん♪だから、手伝ってほしいんだけど……?」

 

「やる」

 

「……本当に?」

 

戸塚の目はゾッとする程冷たい目をしている。だけど、もう決めたことだ。

 

「うん、本当。もう決めたことだし」

 

「……良かった」

 

戸塚の言葉に続けようしたら、次の言葉になにも反応出来なかった。

 

「もし、嘘だったら八幡が受けたイジメを体験してもらう所だったよ」

 

この時の戸塚は、怖かった。ただただ怖い。それだけだった。

 

 



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彼女は復讐を手伝う。

みじけぇ……
ネタがぁ…ネタがぁ……!!!!


「で、どうやって復讐するのさ」

 

私はある疑問を投げる。

 

「まずは証拠を集めようと思ってる。それにはまず人手がほしい。あと一人いた方がいいんだけど……」

 

「我にも手伝わせてもらえないだろうか、川崎嬢、戸塚殿」

 

上を向くと、給水塔に寄りかかっている痩せた男がいた。その目は怒りに満ちていて。

 

***

 

僕は久しぶりに材木座君を見た。まるで別人のようだ。前までは大きかった身体が今は細くなり、顔が痩せている。いつも着ているコートはなく、一瞬誰だか分からなかった。

 

「材木座……君……?」

 

「うむ、左様である。それと初めてだな川崎嬢」

 

「……初めまして。それとなんで私の名前を知っているのさ」

 

「ふむ、少し野暮用があって総武高全教員、全生徒の顔と名前を知っていたのだ」

 

これには驚いた。そして僕は理解した。彼は僕達と同じく復讐することを。

 

「……材木座君、なんで八幡がイジメられていたのか、分かる?」

 

「無論だ。そして、原因が葉山グループだということもな」

 

「は……?葉山グループ!?あいつらそこまでしないはずよね!?」

 

また驚いた。まさかそこまで知ってるなんて。

 

「それ以外にもいろんな情報を持っておるぞ。……それで、手伝わせてもらえないだろうか」

 

「……いいよ。これで人手は揃った。情報も手に入れれる。後は……作戦だけ」

 

こうして、情報をもらい、川崎さんと材木座君と作戦を立てていった。

 

***

 

放課後、僕達は八幡の家に来ていた。インターホンを鳴らす。出てきたのはやつれていて、元気がない小町ちゃんだった。僕と材木座君は目を見張った。川崎さんは弟の大志君に聞いてたのか少なくとも僕達よりは驚いていなかった。

 

「あ、戸塚さんと中二?先輩と……大志君のお姉さん?」

 

「ん、久しぶり。ちょっと上がってもいい?」

 

「……はい、いいですよ」

 

小町ちゃんは優しく微笑む。けど、それはいつもの小町ちゃんではないと言う証拠。

 

「……うん、ありがとう小町さん」

 

「すまないな。小町嬢」

 

「えっと……本当に中二先輩……ですか?」

 

「それ以外に誰である?我の名は剣豪将軍材木座義輝だ」

 

「……別人のようです」

 

小町ちゃんは信じられないようだ。最初こそ僕もそうだった。そうして家に上がり込む。リビングに入ると、そこには八幡の仏壇があった。

 

「お兄ちゃん、中二先輩と戸塚さんと沙希さんが来たよ。良かったね、友達が出来て」

 

まるで八幡がいるかのように喋っていく。僕達は、とても見ていられなかった。

 

「あの……小町さん、少し話したいことがあるんだ」

 

「話ってなんですか?もしかしてお兄ちゃんのお嫁候補のことですか?」

 

「違う。比企谷についてだ」

 

途端、小町ちゃんは固まり、震える。

 

「………どうぞ」

 

「……実は……」

 

そこから、僕達は八幡がイジメられていたこと、いろんなことを教える。そして、それを聞いている小町ちゃんの表情が無かったのが、僕は怖かった。

 

***

 

「……そう、ですか……」

 

「……ごめん。僕達が早く気付いていればこんなことには……」

 

「いえ、大丈夫です。薄々、気付いてましたので」

 

「………どういうこと?」

 

「ここ最近、洗濯をする際お兄ちゃんの服が泥だらけだったり、血がついていたりしてた理由がようやく分かりました」

 

小町ちゃんは無表情に、そして静かに怒りを声に表していた。

 

「……だから、小町ちゃん。僕達と手伝ってほしいことがあるんだ」

 

「なんですか?」

 

「……復讐を僕達はしようと思う」

 

「………」

 

小町ちゃんは静かに聞いている。

 

「僕達は、もう我慢出来ない。今のクラスはもう嫌だ。だから、僕達は壊す。今の環境を。クラスを」

 

「………」

 

小町ちゃんは静かに、聞いている。

 

「……お兄ちゃん、この三人はお兄ちゃんの『本物』になれたかもね」

 

小町ちゃんは静かに呟く。

 

「……分かりました。微力ながら、小町、いや私にも手伝わせてください」

 

「……ありがとう、小町ちゃん」

 

こうして、僕達は動き出す。彼の為に。

 



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彼女は出会い、彼は決意する。

無理矢理感ハンパねぇ……
まぁ、ネタがないせいだな。(嘘)


さて、今俺と桜は雪ノ下さんとカフェにいる。何故だ?桜も困惑している。いや、俺もだけどさ。

 

「……で、なんで死んだふりをしてたの?」

 

こええぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!

なに!?なんでそんなに低い声出せるの!?怖いよ!?後怖い!!ほら桜だって震え上がってるよ!?異能者を怖らがせるってなに!?

 

「い、いや、あ、アレですよアレ。そうアレです」

 

「……そんな嘘が通用すると思ってる?」

 

怖いよ!!この人こんなキャラだったっけ!?マジで怖っ!!

 

「惚けたって無駄だよ。前に小町ちゃんが泣いている時に君がいたところ見たんだよ。……私がどれだけ悲しんだか知らずに…別の女の子といるし…………」

 

最後辺りは聞き取れなかった。桜は聞こえたようで、眉がピクッと動いた。

 

「……教えて。何があったのか」

 

だが、こんな雪ノ下さんを見るのは初めてだ。こんなにも真剣な表情を見たのは。

 

「……まぁ、いいでしょう」

 

「八幡……いいの?」

 

「ああ、どうせ雪ノ下さんはあらかた調べてそうだし」

 

「……比企谷君……ありがとう」

 

なんでこんな時に、仮面をつけてないのだろうか。桜がいながら、ドキドキしてしまったぞ。

俺は、今まであったことを話しながら、雪ノ下さんと会うまでのことを思い出していた。

 

***

 

朝食を桜と食べていた。てか桜の料理うめぇ。

 

「………あ、そういえば」

 

俺はふとあることに気付いた。スマホを持っていたままだった。

 

「ん?どうしたの?」

 

「いや、スマホ持ってたままだったなって」

 

「あ〜……けど、もう解約されてるんじゃない?」

 

俺はそれを確認するために桜から充電器を借りて、充電をしながら起動させる。

 

「………え?」

 

確認した結果、解約されていませんでした。わーいぱちぱち……じゃなくて!?

 

「なんで解約されてないの!?」

 

「……解約されてないね。どうする?」

 

「……触らないのに一票」

 

「賛成」

 

それから外出し、前に買い忘れていたものを買いに行く。この時、スマホを持っていた。

それから数時間後、カフェに入り、カウンター席で一休みしていた。

 

「ここのカフェ雰囲気いいね」

 

「そうだな。たまに来るか」

 

「うん」

 

桜の笑顔が眩しい……

いつ告白するのか、まだ検討はついていない。だが………

 

「遅くならないようにしないとな……」

 

「ん?」

 

「いや、気にするな」

 

「へぇ〜♪気になるね♪」

 

「え?」

 

後ろから聞き覚えのある、てかあまり会いたくない人の声が聞こえた。てか、雪ノ下が本気で怒った時よりも寒く感じるんだけど。俺はおそるおそる後ろを振り向く。そこには、笑顔が素敵だが、目が笑っていない雪ノ下陽乃さんがいた。

 

***

 

「と、言うことがありまして、今は絶賛隠居中です」

 

若干ポカーンとしている雪ノ下さんに説明し終わる。まぁ、信じられないと思うけどな。

 

「へ、へぇ〜……あの人が言ったことはあながち間違ってなかったのか」

 

「あの人とは?」

 

「君の偽物遺体を見た刑事さんだよ。あの人曰く、まるで作りものだって」

 

……すげぇ。その人ベテランだ。

 

「てかどうやって俺の居場所が分かったんですか」

 

「君のスマホのGPSを使ってだよ♪」

 

こ、こええぇぇぇぇ………

起動させたのが駄目だったか。

 

「……ごめんね、比企谷君」

 

「何がですか」

 

「雪乃ちゃんのせいで、自殺にまで追い込ませちゃって」

 

「いえ、あれは俺が悪いことなんです。あいつにちゃんと相談しなかった俺が」

 

「………君が死んだことを知らされた雪乃ちゃん、今にも死んでしまいそうなんだよ。それに、戸塚君に追い詰められているし………」

 

「戸塚が追い詰めている?」

 

俺はありえないことを聞いた。

 

「……君が死んでから彼ともう二人と組んで、君をいじめていた人達を糾弾してたよ」

 

「は?」

 

なんで、戸塚がそこまでする?それにあと二人?誰だ?

 

「信じられないって言う顔だね。でも本当だよ」

 

「……けど、もう俺には関係のないことです」

 

「八幡………」

 

桜が心配そうに俺の手を握る。俺はこの温かさに救われた。

 

「それに、俺には桜がいます。俺にとって大切な人です」

 

「………そう、だよね」

 

「……すみません。こんなわがままを言って」

 

「……ううん、いいよ。それに、雪乃ちゃんのは自業自得だし……それに、君に会えたし」

 

「………すみません」

 

「……じゃあね。また会えれば」

 

「……内密にしてくれれば」

 

「うん、分かった」

 

そう言って雪ノ下さんはカフェを出ていった。後ろ姿は悲しそうに。

 

「………/////」

 

「どうした桜?」

 

「……八幡、自分が言った言葉思い出してみて」

 

「え?えーと……………………!?」

 

俺なにちゃっかり言っちゃってるの!?やばい!!恥ずかしい!!

 

「……嬉しい、よ。私は……」

 

「……え?」

 

「……ねぇ、八幡。八幡さえ良ければ……私と………」

 

ここからは俺が言いたい。桜が言うのを止める。

 

「桜、俺から言わせてくれ」

 

「……うん」

 

「俺は、桜が好きだ。付き合ってくれないか?」

 

「はい、喜んで」

 

彼女の笑顔は眩しい。だが、今は見れる。そして、俺はある一つの決意が芽生えた。

 

 

総武高に行って、何が起こっているのか、知らなくちゃ、と。

 



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