超次次元ゲイムネプテューヌRe:birth2~黒き魔女の転生記~ (佐久間 優)
しおりを挟む

序章:終焉のプレリュード
プロローグ


 

「綺麗な…空だな…」

 

「うん…そう…だね…っ」

 

隣で私を見守る少女は泣きそうになるのを隠そうとせず、涙目で答える

 

「お前には…感謝しているぞ…ネプテューヌ、こんな穏やかな最後を迎えられて……」

 

「やだ…っ、マジェコンヌ…死んじゃやだよっ!もっと一緒に居たいよ!まだまだ教えて欲しい事いっぱいある…っ!」

大粒の涙を拭うのも忘れ、少女…ネプテューヌは叫ぶ。全く…女神とあろうものが情けない

 

「ネプテューヌ…人はいずれ寿命を迎える…これは抗えぬ事だ…悲しむなとは言わん…こんな私のために悲しんでくれてありがとう……」

 

「マジェコンヌ……っ」

 

「ただ…泣き顔ではなく笑顔で送ってくれないか…私が好きなお前の笑顔でな……」

 

「…こう…かな…?」

 

涙を拭い、彼女は笑う。太陽のような…私の愛した笑顔で

 

「あぁ…やはりお前は笑顔が一番似合う。泣き顔よりずっとな……これから先、辛いことや悲しいことがあっても……その笑顔だけは忘れるな……約束出来るか?」

 

「うん…約束する…私、頑張るから…っ」

 

「それで…良い……さよならだ、ネプテューヌ……」

 

その言葉を告げ、私は永遠の眠りに就いた

 

 

 

 

 

 

「……筈なんだが、何処だ?ここは」

 

気が付くと真っ白な空間に佇んでいた。何故?というか死んだのに意識があるのも可笑しい

 

「それは…私が呼び寄せたからです」

 

「お前は……イストワール!?」

 

紛れもなくそこに居たのは私を支えてくれたイストワールだった…だがどことなく違和感がある

 

「本当に…イストワールなのか?」

 

「はい、私は間違いなくイストワールです。ですが貴女が知る私とは少し違います。別次元のイストワールとでも言っておきますね」

 

そう言ってイストワールは悪戯っぽく笑う。……どうみても私の世界のイストワールにしか見えんが…

 

「それはそうと…何故、私を呼んだ?何か理由があるのだろう?」

 

そう尋ねるとイストワールは真剣な表情をして語り始める

 

「はい…私達の世界を救う手伝いをして欲しいのです!」

 

「は……?」

 

「無責任な事を言っているのは承知しています。でも女神達が捕らえられた以上、こうする以外に手立てが無いのです。お願いします!」

 

「……事情は分かった、だがどうして私なんだ?私は…力に溺れて1度は世界を「滅ぼそうとした…ですよね?」…何故、知っている」

 

私達(イストワール)はネットワークで繋がっていて、ある程度の記憶の共有をしています」

 

「そうなのか…意外と高性能なのだな」

 

「む…意外は余計です!…コホン、とにかくそんな貴女だからこそ適任だと思ったんです」

 

1つ咳払いをして彼女は続ける

 

「貴女なら闇に堕ちそうな人に手を差し伸べて救ってくれると思ったんです」

 

「…逆に引き込んでしまうかもしれないぞ?」

 

「それは有り得ません。だって貴女はとても優しい方ですから♪」

 

「はぁ…全く、お前には敵わんな……良いだろう。その願い引き受ける」

 

「ありがとうごさいます。そう言ってくれると思っていました」

 

心底嬉しそうに微笑むイストワール。やれやれ…こいつといい、ネプテューヌといい、もう少し人を疑えと言いたくなるな…まぁ、そこが良いところでもあるのだが

 

「さて…名残惜しいですが、そろそろ転送しますね?女神救出部隊を向かわせるので、合流して下さい」

 

「あぁ…分かった」

 

「では…また彼方の世界で会いましょう!」

 

 

そう言うのと同時に私は光に包まれ、意識が途切れた

 

 

1度、失った命、再び女神の為に使えるのならば喜んで差し出そう……

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第1話 似て非なる世界

お気に入り登録、感想ありがとうございます。これを励みに頑張って行きたいと思います。では本編の方をどうぞ!


「ん……此処は?」

 

目が覚めるとガラクタが積まれた廃墟とも墓場ともとれるような場所に居た

 

「此処に女神が捕らわれているのか……凄まじい悪意が漂っているな……気を抜いたら狂いそうだ…」

 

女神とはいえ、かなり消耗している筈だ…

 

「さっさと救ってやらねばな……だがその前に……っ!」

 

“ガキィン!”

 

「ち…気付かれた…!」

 

殺気を感じ、愛用の槍を後方に振るう。金属がぶつかり合う音がした後、何者かの舌打ちが聞こえた

 

「やれやれ…いきなり襲われるとはな…」

「コンパ、あいつの気を引くから先に行ってて!」

 

「はいです!あいちゃん、気を付けてくださいです!」

 

ん…?コンパ…あいちゃん?まさか

 

「ちょっと待て、お前達の名前はアイエフにコンパか?」

 

「何で犯罪組織マジェコンヌが私達の名前を知っているの?」

 

別次元での知り合いだと言っても信じないだろうな…というより犯罪組織が私の名前同じとは。何処へ行っても悪役か…まぁ良い、まずは誤解を解くのが先か

 

「そうか、お前達が……私は犯罪組織の者ではない。私は…そうだな”ストレガ“とでも名乗っておこう。お前達と女神を救出してくれとイストワールに依頼された」

 

自分の名前を偽るのは抵抗があったが、本名を名乗るとややこしくなるからな……

 

「協力者…ねぇ。こんな所に一人で?逆に怪しいわね」

 

「疑り深い奴だな…まぁ当たり前か。別に信じなくとも良い…私は勝手にやらせてもらうからな」

 

「ちょ、待ちなさいよ!まだ話は終わって…!」

 

「二人とも、今…声がしませんでしたか!?」

 

「え…?」

 

“う……”

 

耳を澄ますと微かに呻き声が聞こえる。捕らわれている女神だろうか

 

「此方か……待っていろネプテューヌ…」

 

「あ、ちょっと待ちなさいよ!」

 

声の方へと向かうと、そこにはコードが全身に巻き付き、力を奪われた女神達が居た

 

「く…(むご)い事を…はぁっ!」

 

 

女神達を戒めているコードを切り裂こうとするが、見た目以上に硬く刃が通らない

 

「くそっ…!」

 

「う…だ、れ……?」

 

「ネプテューヌ!待っていろ、今助けてやる…!」

 

「だ、め…逃げ、て……」

 

「何……っ!?」

 

悪寒が走り、後方へと飛び退く。巨大な戦斧が地面にめり込んでいた

 

「く…一体何だ…!?」

 

「フハハハ!獲物だ、久々の獲物だぁぁぁ!」

 

暗闇から漆黒の巨人が現れ、私を見つけると狂ったように笑い出す。

 

 

 

「な、なんなのコイツ!?」

 

追い付いてきた二人もその巨人に驚愕する

 

「番人、といった所だろう…お前達、女神を救う手はあるのだろう?」

 

「…有るわ。でもこの状況じゃあ」

 

「ならば此処は私が足止めをする。その隙に女神を救え!」

 

「分かったわ…行くわよ、コンパ!」

 

「はいです!」

 

「何をゴチャゴチャ言っている!さっさと掛かってこい!早く戦わせろぉぉ!!」

 

そう叫びながら、なりふり構わず、戦斧を振り回す。少々骨が折れそうだ…だがやるしかないだろう

 

「焦らずとも私が相手をしてやる」

 

「貴様が相手か!クハハハ!せいぜい俺を楽しませろおぉ!」

 

叫びながら戦斧を振り降ろす巨人。それを回避し槍を突き出し攻撃するも、思い切り弾かれ、後退する

 

「フハハハ!そんなもの痒いだけだぁ!」

 

「ち…見た目通り硬いな…ファイガ!」

 

右手に魔力を集中させ、巨大な炎をぶつける

 

「ぐおぉぉ!?」

 

直撃を受けよろめく巨人。よし効いて…!?

 

「クク…ヒャーッハッハッハッ!そうこなくてはなぁ!!」

 

ダメージを負っているにもかかわらず、笑い出す。く…少々まずいな

 

「く…あいつらはまだか!?」

 

アイエフ達に視線を向けると、漸く1人を助けた所だった

 

「戦いの最中に余所見をするなぁぁぁ!!」

 

“ドゴッ!”

 

「しまっ…がはぁっ!!」

 

怒りの声と共に迫ってくる戦斧をぎりぎりでガードするが、勢いを殺しきれず地面へと思い切り叩き付けられる

 

「終わりか?ならば…死ねぇぇ!!」

 

「させませんっ!」

 

突然、響いた声と共に白い影が私を抱え離脱する。

 

「大丈夫ですか?」

 

「すまない、助かったよ。お前は…ネプギアか?」

 

記憶が正しければネプテューヌの妹の筈だ。

 

「はい…えっと貴女は?」

 

「私はストレガ。お前達を救いに来たが、逆に助けられてしまったな」

 

 

「女神…貴様、逃がさんぞ…!」

 

「ふぅ、しつこい奴だ。病み上がりだがいけるか?」

 

 

「はい!私も一緒に戦います!」

 

強い意思の籠った瞳で巨人を睨み付ける。ふ…流石は妹だ。良く似ている

 

「良い返事だ……だがあやつの装甲はかなり硬い…どう突破する?」

 

「出し惜しみはしません、一気にいきます!マルチプルビームランチャー、オーバドライブ!」

 

 

そう宣言したネプギアはオーラを纏い、巨人へと突撃、それを迎え撃とうと戦斧を振り上げる。

「させるかっ…ブリザガ!」

 

「ぐおっ!?腕が…っ!」

 

「邪魔はさせん、やれネプギア!」

 

「はあぁぁぁ!!全力で斬り抜いて…!全力で撃ち抜きます!」

 

巨人の周りを高速で飛び回り斬撃を連続で浴びせ、距離を取り銃弾を浴びせる。

 

「これで…終わりですっ…いっけぇぇ!」

 

最大出力の極大のビームが巨人を飲み込み大爆発が起きる

 

「はぁ…はぁ…」

「…倒したですか?」

 

「これで倒せてなかったら…絶望的だな………!?」

 

「その程度か……本当にその程度なのかぁぁぁ!」

 

土煙が晴れると、そこにはほぼ無傷の巨人が怒りで荒れ狂っていた。く…本格的に不味いぞ

 

「全く効いてない……く、アイエフ!コンパ!他の女神達はまだなのか!?」

 

「今やってるわよ!だけど全然、目覚める気配が無いのよ!」

 

く…どうする、このままでは……!

 

「そんな…私、また負けちゃうの…?」

 

「気をしっかり保て!諦めるなっ…!」

 

とはいえ…手段など……そうだ!

 

「コンパ!そのクリスタルをネプギアに渡せ!」

 

「ふぇ!?はいです!」

 

「これは…シェアクリスタル…!この力を使えばっ!」

 

「死ねぇぇ!」

 

「お願い、間に合ってぇぇ!!」

 

ネプギアの叫びに呼応するようにクリスタルから眩い光が溢れ出し、辺り一帯を包み込む

 

「ぐあぁぁ!?何だ…この光は…っ。目が!目がぁぁぁ!!」

 

「はぁっ…はぁっ…う……っ」

 

力を使い果たし、女神化が解けネプギアはその場に倒れ込む……潮時だな

 

「コンパ、アイエフ……退くぞ。これ以上此処に留まるのは危険だ」

 

「……分かったわ」

 

一瞬、悔しそうな表情を見せ了承する。私とて悔しいさ…だがもう出来ることは何もない

 

「急げ!奴の動きが封じられているうちに!」

 

気を失ったネプギアを抱え走り出す。それに続いてコンパやアイエフも撤退する

 

 

「貴様等、許さんぞ!目が戻ったらぶっ潰してやる!」

 

 

巨人の叫び声を背に受けながら、その場から離脱した……

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうやら追ってくる様子は無いようね……」

 

「はぁ…ひぃ…もう動けないですぅ……」

 

「…救えたのはこの子だけか。それと」

 

「割れちゃいましたね、シェアクリスタル……」

 

ネプギアの手の中の割れたクリスタルを見てコンパが呟く。

 

「…戻りましょう。ネプギアを休ませなきゃ。それと…」

 

一端、言葉を切り、此方を向く。何を言いたいかはだいたい予想は付く

 

「分かった、私の事も話すとしよう……信じてもらえるか分からぬがな……」

 

「じゃあ戻りましょう。こんな陰気臭いところさっさと出ましょ」

 

アイエフの言葉に頷き私達は墓場を後にした……

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第2話 帰還、地上へ

お気に入り10件、UA400突破!とても嬉しい限りです!

今回はちょっと短めです、ではどうぞ!


「アイエフさん!コンパさん!ご無事ですか!?」

 

教会に着くなり、小さな妖精のような人物が飛んでくる。あれは此方の次元のイストワールか……少し大人びているような感じだな

 

「はい。でも結局救い出せたのはネプギアだけでした……」

 

「構いません。一人だけでも救えれば充分です……貴女も無事で何よりです、マジェコンヌ」

 

 

「イストワール様、今なんと…?」

 

「聞き間違えじゃなければ、マジェコンヌって聞こえたです」

 

アイエフとコンパ、それぞれが私に敵意と恐怖の視線を向ける。その様子を見てハッとなるイストワール。やれやれ…

 

「此方のお前もしっかりしているようで抜けているな」

 

「うう…すみません」

 

「まぁ、良いさ…こうなった以上、事実を話すとしよう。まず先程も言ったが私に敵意は無い」

 

「…信じて良いんでしょうね?」

 

未だに警戒したまま此方を睨み付けるアイエフ

 

「あぁ。もし裏切るような素振りを見せたら、何時でも切り伏せても構わん」

 

「…分かったわ。」

 

「あぁ…今はそれで良い、少々長くなるが…構わないか?」

 

「えぇ、構わないわ」

 

 

「では……先ず単刀直入に言おう。私はこの次元の人間ではない」

 

「それが事実だとして…どうして私達の事を知っていたの?」

 

「ふむ、私が居た次元もゲイムギョウ界だからだ。その次元にもお前達が存在していた……もっともその時は敵対していたがな」

 

「……」

 

「その時は、と言っただろうに。そんなに睨むな……まぁ良い、私は身に宿した力に蝕まれ、女神達を亡き者にし世界を滅ぼさんとしていた……そして女神に敗れ私は消滅する筈だった……」

 

「じゃあ、その時にこの次元に来たですか?」

 

首を傾げてコンパは尋ねる。相変わらずコイツが喋ると気が抜けるな…

 

「いや、そうではない。私は天寿を全うしてからこの次元に来た………話を戻そう。女神達は私が力に固執した理由を知り、全員が祈った…私が救われるようにとな」

 

「それって……言い出したのはねぷ子?」

 

「良く分かったな…その通りだ」

 

「やっぱり…あの子はこうと決めたら絶対に曲がらないもの」

 

呆れたようだが、どこか嬉しそうにアイエフは言う

 

「ねぷねぷは優しいですからねぇ…そんなねぷねぷの事をあいちゃんは大好…ムグムグっ!?」

 

「よ、余計なことは言わないで!ほら、さっさと続きを話して!」

 

慌ててコンパの口を塞ぎ、捲し立てるアイエフ。この場にネプテューヌが居たら間違いなく茶化していただろうな……そんな様子に苦笑しつつ、話を続ける

 

「そして祈りは通じて私は元の姿へ戻ることが出来た。命尽きるまで二度と私のように力に溺れる者が出ないよう…それとおこがましい事だが女神達が道を踏み外さないように見守る事を贖罪として生きることを誓ったのだ」

 

そこで一旦、言葉を切る。二人は真面目に話を聞いていた

 

「そして…私は寿命を迎え、眠りに付く所でそこに居るイストワールに呼ばれたと言うわけだ」

 

 

そう言うと二人はイストワールの方へと向く、彼女はただ頷くだけだった。だが二人は納得したのかそれ以上、追求はしなかった

 

「そう…まぁイストワール様が言うならそうなんでしょうね…一つ良いかしら?」

 

 

「あぁ…何だ?」

 

「あんたの使っていた魔法、見たことないんだけどあれはそっちの次元にしか無い魔法なの?」

 

 

「あぁ…そうではない。あれは私の次元の古い書物に記されていた、また異なる次元の魔法だ。何故私が使えるのか分からんが」

 

「…あんた、何者?」

 

「さぁな…まぁあちらでは魔女と呼ばれていたがな。さて他に聞きたいことはあるか?」

 

「…無いわ。一応信用するけど、完全に信用した訳じゃ無いからね」

 

 

「私は難しい事は分からないです…でもストレガさんが嘘を吐いてるようには見えないです。だから私は信じます。ぎあちゃんも助けてくれたです」

 

「ありがとう……」

 

「…皆さん、今日はもう解散しましょう。色々あってお疲れでしょうから」

 

「そうね…戻りましょコンパ」

 

「はいです。ストレガさん、また明日」

 

礼儀正しくお辞儀をして去っていくアイエフの後を追って出ていった

 

 

「マジェ……ストレガ、貴女はこれからどうします?」

 

「うむ…この国のギルドは何処だ?」

 

「ギルドですか?それならば教会を出て直ぐの場所にありますが……」

 

「そうか、ありがとう」

 

「何をする気ですか?」

 

「そんな疑うような目で見るな、クエストをこなしてシェアの回復ついでに体を慣らして来ようと思ってな」

 

転生して体が慣れていないのもあるのだろうが、上手く立ち回れなかった。先の戦闘で痛感した。相手が格上だったのもあるのだろうが…

 

「そうですか……でしたら一つ頼みたいことがあるのですが、良いですか?」

 

「構わないが…教祖直々とは余程の事なのか?」

 

そう聞き返すと声を潜めて話始める

 

「最近、バーチャフォレストでモンスターが異常発生しているんです。その調査を頼みたいのですが」

 

「ふむ……分かった。次いでにそのモンスターの駆逐もしてこよう」

 

「ありがとうございます……1体1体は弱いのですが、纏まって来ると厄介ですので、気を付けて下さいね」

 

「あぁ、ありがとう…では行ってくるよ(モンスターの異常発生か……まさかな)」

 

頭に1つの可能性が浮かんだが、あり得ないと結論付けて歩き出した。……後にこの可能性が当たっていた事を思い知らされることになる

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第3話 忍び寄る影

マジェコンヌの口調と性格が合っているか少々不安な今日この頃。1週間位おきに更新できているのでなんとか維持できるよう頑張ります。

では本編をどうぞ!


「これは……かなりの数だな」

 

 

指定された場所へと辿り着くと、スライヌなどの雑魚モンスターからフェンリルなどの危険種が森の中を蠢いていた

 

「はぁ…安請け合いしたのを今更後悔するよ。先ずはコイツらを片付けねば、調査どころでは無いな……サンダガ!」

 

右手に電撃を纏いモンスターの群れ目掛け放つ。半分以上が今の1撃で粒子となり消えた

 

「さて、残りもさっさと片付けるか」

 

槍を構え、残りの群れの掃討に掛かった

 

 

 

 

 

 

 

数十分後

 

「ふぅ、大分片付いたな……後は」

 

“グルル…”

 

残りはこのフェンリル1匹、だが中々に手強い。他の狼型のモンスターとの連携も取れていた……リーダー格だったのだろうか

 

「まぁ…1匹になった今は関係無いか……はぁっ!」

 

フェンリルへ向けて鋭い突きを放つ。それを後ろに下がり回避し、噛み付こうと牙を剥き出しにし、外れんばかりに口を開き、飛び付いてくる。直撃は免れたが鋭い爪が腕を掠める

 

「ち……やはり鈍っているな。この程度で苦戦するとは…」

 

“ガアァァ!!”

 

「く…先ずは動きを止めねばな…ブリザガ!」

 

両手に纏った魔力を放つ。冷気が対象を凍りつかせ、動きを止める

 

「止めだ!レイニーラトナピュラ!はぁっ!」

 

拘束から逃れようともがくフェンリルへと連続突きを見舞う。為す術もなく直撃し倒れ、粒子となり消えた

 

 

「ふぅ……やっと片付いたか。やはり力が落ちている…取り戻すには時間が掛かりそうだ」

 

全盛期であればフレアスターやトルネドで一掃できたものを……まぁ、ぼやいても仕方ない

 

「今は調査が先か……?」

 

辺りを見渡すと、何かが光っているのが目に入る。どうやら何か落ちているようだ

 

「こ、これは……!」

 

その物体を目にし、驚愕する。最悪の可能性が当たっていた事を意味するからだ

 

「何故…エネミーディスクが此処にある…!?」

 

私が世界の敵だった頃に使っていたディスク型の召喚器が散らばっていたからだった

 

「とにかく報告しなければ…!」

 

落ちている物を2、3枚回収し教会へと急いだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、お帰りなさい。どうでしたか?」

 

「イストワール、これは単刀直入に言う。この異常発生は人為的なものだ」

 

「…どういう事ですか?」

 

「これを見てくれ…私の次元のイストワールと記憶を共有しているなら分かるだろう?」

 

「これは……何故こんなものが此処に」

 

先程のディスクを差し出すと、彼女も驚愕していた。

 

「私にも分からんが……異常発生の原因は十中八九これがばらまかれていたことだろう」

 

「そうですね……冒険者や兵士の皆様にも注意を促した方が良いですね」

 

「そうだな。もし発見した場合は即座に破壊するように伝えろ。そうすればコピーされた魔物は現れぬ筈だ」

 

「分かりました、そのように伝えておきます……ありがとうございます、ストレガ」

 

「なに、気にするな。私とお前の仲だろう?」

 

「そう言ってくれると助かります」

「さて…流石に疲れた。私も休むとしよう」

 

「お疲れ様です。客間が空いてますので自由に使って下さい…案内しますか?

 

「いや、大丈夫だ。大体あちらの教会と構造は一緒だからな」

 

「そうですか、ではまた明日」

 

「あぁ、またな」

 

挨拶を交わして、部屋へと向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ…」

 

なんなく辿り着いた客間で一息つく。1日で色々な事が有りすぎた…魔力の使いすぎで少し気怠い

 

「こんな姿を見たらおばさんみたいだって言うのだろうなアイツは……」

 

そんな事を思い苦笑する。やはりアイツが居ないこの国は寂しいな……

 

「必ず救い出す…何があろうと、この命に代えても…な」

 

 

 

このプラネテューヌの女神に思いを馳せ、決意するのだった

 

 

 

 

終焉のプレリュードend……next“女神のオラトリオ”

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第1章:女神のオラトリオ
第4話 トラウマ


第4話投稿です。いつもより少し長めになってます。この先も多分このくらいの長さになると思います。

では本編をどうぞ


“目が覚めたか?ネプテューヌ”

 

“…どちら様?”

 

“ぷっ…あはははっ!”

 

“ねぷっ!?初対面の人に思い切り笑われた!?”

 

“初対面か…先程まで命の取り合いをしていたのに…寂しいことを言うな?ネプテューヌ”

 

“へ……?まさか…マジェコンヌ!?”

 

“あぁ、そうだ。お前達の祈りが奇跡を起こしたんだ”

 

“そっか…良かった、私ちゃんとやれたんだね”

 

“あぁ……ありがとうな。ネプテューヌ”

 

“気にしないでよ、私がやりたくてやった事だし。それに…いーすんに悲しい顔させたくなかったし。まぁみんなのおかげでもあるんだけどね…さて帰ろうか”

 

“…帰る?何処にだ?”

 

“みんなの所にだよ!勿論、マジェっちも一緒だよ!”

 

“…あぁ、そうだな”

 

差し出された手を握り返して私は微笑んだ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん…夢か…」

 

随分久しい夢を見たな……あの時、消滅する筈だった私を女神達の祈りによって救われた……ならば次は私が彼女達を救う番だ…ネプテューヌ、ノワール、ブラン、ベール。待っていてくれ、必ず助けてみせる……

 

 

“コンコン”

 

「誰だ?」

 

「あ、ストレガさん。起きてたですか?ぎあちゃんが目を覚ましたので来て欲しいっていーすんさんが言っていたです」

 

「分かった。直ぐに行くと伝えてくれ」

 

「はいです」

 

「さて…行くか。アイツにも色々聞きたいことがあるしな……辛い思いをするだろうがな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

教会・執務室

 

「やっと来たわね。 遅いじゃないの」

 

「すまんな、まだ体が慣れてなくてな」

 

「お早うございます、ストレガさん…ですよね?助けて頂いてありがとうございます」

 

ネプギアが此方に気付き、礼を言って頭を下げる。姉とは違って礼儀正しい子だ…まぁ、アイツはアイツなりの感謝のしかたがあるが……

 

「気にするな…私も助けられたのだからおあいこだ」

 

「そうそう、あんたの事情も話しておいたわ」

 

「うむ…そうか。説明する手間が省けた。助かる」

 

「ネプギアさん、起きて早々で申し訳無いのですが…3年前にギョウカイ墓場で何が起きたのか」

 

「はい……」

 

ネプギアがゆっくりと重い口を開く。その内容は驚愕の一言で済まされるものでは無かった……

 

「嘘…女神達がたった一人相手に負けたっていうの?」

 

「信じられないです…あんなに強い女神さん達が負けるなんて……」

 

「相手の力量も上だったのもあるだろうが…一番の原因はシェアだろうな。幾ら女神といえども、力の源が無ければ負けてしまうのは当然だろう…」

 

「そうですね、それを知りながらネプギアさん達には無謀な戦いを強いてしまいました……すみませんでした」

 

 

「そんな、いーすんさんが謝ることじゃ。それで…あれからゲイムギョウ界はどうなっちゃったんでしょうか…私達が負けてから3年も経っちゃったんですよね?」

 

不安な表情でイストワールに問い掛ける。言うべきか悩む一同、やれやれ…変に気を遣うよりは真実を話した方が良い。今が正にそうだ

 

「事態はかなり深刻だ…犯罪組織の名を知らぬ者はもう居ない…コピーツールやマジェコンの普及率は8割以上、子供も普通に扱っている」

 

「ちょっと…ストレガ!」

 

「下手に嘘を吐いたところで気休めにもならんだろう…街に出れば直ぐに分かることだ。それに無用な優しさは逆に人を傷付けるぞ」

 

「……っ」

 

「続けるぞ?人々が犯罪組織を信仰する分、女神の信仰は失われるばかりだ…」

 

「信仰するべき女神が捕まってるから、仕方ないっていえば仕方無いけどね。救出も失敗したし」

 

「そして、マジェコンヌの目的は、おそらく犯罪神の復活…このままの状況が続けばそれも時間の問題かと…」

 

犯罪神か…私が生み出したユミニテスとは比べ物にならないだろうな。墓守ですら尋常ではない邪気を放っていたからな…もし復活しようものなら、今のままでは滅びを待つしか出来ないな……

 

「…もう、どうしようもないんですか?」

 

あまりに凄惨な世界の状況を聞き、諦めにも似た呟きを溢すネプギア

 

「諦めるのは早いぞ。策はあるのだろう?イストワール」

 

「はい。まだ世界には女神達の妹…女神候補生が居ます」

 

「私以外にも…女神に妹が?」

 

「成る程な、候補生達にシェアを集めさせ、犯罪組織の弱体化を図る、という訳か」

 

「はい、そしてもう1つ。各国にいるゲイムキャラの協力を仰ぎ、その力を借りるのです」

 

「ゲイムキャラ?」

 

疑問符を浮かべ、問いかけるアイエフ。ふむ…私も聞いたことが無いな

 

「古の女神達が生み出した世界の秩序と循環を司る存在です。各国の土地に宿り、繁栄をもたらし続けています」

 

「それで…有事の際には女神に手を貸し、悪を共に滅ぼす…と言ったところか?」

 

「そんな方達が居たんですか…知らなかったです」

 

「ですが、正確な所在は私でも掴めていません。今もプラネテューヌのゲイムキャラの行方を追っているのですが……」

 

申し訳なさそうにイストワールは言う。まぁ直ぐには見つからんだろうな

 

「所在が特定したら連絡してくれ。その間にこの国のシェアの回復をしておこう。彼女のリハビリにもなるだろう」

 

「そうね、3年も捕まってたんだし、少しは体を動かさないとね……って、聞いてるの?ネプギア」

 

「え?あ、はい。聞いてます!」

 

何か考え事をしていたようだが……まぁ大体の予想は付くが……

 

「ではお願いします。とこれを渡しておきますね?」

 

「これは?」

 

「Nギアです。便利な機能が満載の万能デバイスなんですよ。きっと冒険の役に立ちます。持っていて損はありませんよ?」

 

「ありがとうございます」

 

「じゃあ早速行きましょうか」

 

アイエフの言葉に同意し、皆が部屋を出た

 

 

 

 

 

 

 

「という訳でギルドに来たが…」

 

 

「1つしかないわね。えーとスライヌ討伐依頼。増殖し凶暴化したスライヌが旅人を襲っている。至急対応せよ……場所はバーチャフォレストね、よし、これくらいなら肩慣らしに丁度良いわね」

 

「出来るかな…私に」

 

「何言ってるのよ、シャキッとしなさい」

 

「は、はい。ごめんなさい」

 

「上手く戦えなくても気にするな。私達でちゃんとフォローする」

 

「はい…頑張ってみます」

 

「よし、では行こうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バーチャフォレスト・入口

 

 

 

「あ、居た居た。サクッとやっちゃいましょ」

 

現地に着いてすぐ大量のスライヌが蠢いていた。むぅ…ちょっと気持ち悪いな

 

“ヌーラー!”

 

「お前達に恨みは無いが……はぁ!」

 

縄張りを荒らされたと思ったのか、スライヌ達が一斉に此方へ向かってくる。武器を構え迎撃、数を確実に減らしていく

 

「はぁっ!えいっ!」

 

ふむ…ちゃんと戦えているようだな、これなら大丈夫…む?

 

“ヌヌ…ヌーラー!”

 

不意にスライヌ達が一ヶ所に集まりだす。不味い…!

 

“ヌゥーラァー!”

 

「でっかくなったですぅ!?」

 

「面倒ね…ネプギア、女神化してパパっとやっつけちゃいなさい、ほらこれもリハビリよ」

 

「あいちゃん、絶対自分が楽したいだけですぅ……」

 

「女神化して戦う……うぅっ…ダメ、出来ない…怖いよぉっ……」

 

何かに怯えるように呟き、ネプギアはその場に(うずくま)ってしまう。それを好機としたか合体したスライヌ―キングスライヌ―がネプギアを押し潰さんと迫る

 

「ちっ…!ブリザガ!」

 

”ヌラッ……!“

 

「砕けろ!竜剣!」

 

竜の気を纏った一撃を見舞う。直撃を食らい、粉々に砕け散った

 

「大丈夫か?」

 

 

「ごめんなさい…私…」

 

「気にするな。無事ならばそれで良い…ともあれクエストは完了した。まずは報告に……」

 

”ピピピピ!“

 

電子音がけたたましく鳴り響く。発信源は先程、渡されたNギアだった

 

「はい」

 

『ネプギアさん?ゲイムキャラの所在が判明しました。至急向かって欲しいのですが』

「本当ですか!場所は何処ですか?」

 

『バーチャフォレストの深部にいるようです』

 

「そうですか。分かりました」

 

「イストワールか?」

 

「はい、ゲイムキャラがこの森の奥にいるそうです」

 

「本当に?なら早速行きましょう。報告は後回しよ」

 

「そうだな。犯罪組織が感付いていないとも限らん」

 

エネミーディスクが大量に散らばっていた場所でもあるしな……杞憂であれば良いが…

 

 

一抹の不安を抱えながら森の奥へと急いだ……



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第5話 覚醒

バーチャフォレスト・最深部

 

「この森の何処かにゲイムキャラが……」

 

「何処から探せば良いんでしょうか…」

 

「そうね…これだけ広いとね」

 

「まぁこういうのは奥深くに居るのがお決まりだろう……待て3人共!魔物の様子がおかしい」

 

目の前の花型の魔物を黒い障気が包み込み黒く染まり、凶暴化する……成る程

 

「汚染…か」

 

「えぇ…そうよ」

 

「あの…これは一体」

 

「モンスターはね、犯罪神の信仰の力をもろに受け易いの」

 

「見ての通り、あんな風に凶暴化する。場合によっては手も付けられん程にな」

 

まぁ、あの程度ならば問題ないがな

 

 

「私達はあれを汚染って呼んでます」

 

「強さも段違いだからね。気を付けt「ファイガ!」

 

アイエフの言葉が終わる前に豪炎を放つ。魔物を飲み込み焼き尽くす

 

「ふむ、こんなものか……どうした?」

 

唖然としたまま動かない3人に問い掛ける。

 

「汚染したモンスターさんを一撃で……」

 

「凄い……」

 

「あんた何者よ……」

 

三者三様の答えが返ってきた。これくらい普通では無いのか?

 

「別次元からの転生者だが?」

 

「そういう意味じゃないわよ……まぁ良いわ。先を急ぎましょ」

 

 

「そうだな……む?」

 

「ストレガさん、どうしました?」

 

「いや…人の気配がしてな」

「は?こんなところに誰が何の為に…まさか!」

 

「犯罪組織の人間…?」

 

「だとしたら大変です!」

 

「ストレガ!何処だか分かる!?」

 

「ふむ…奥の方から気配がする…こっちだ、付いて来い」

 

気配のする方へと駆け出す。間に合うと良いが…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「此の辺りの筈だが…」

 

「ねぇ、彼処に誰かいるわ!」

 

アイエフの言葉に振り向くと、鼠色のフードを被った少女が何かを壊しているように見えた

 

「貴様、何をしている!」

 

「ああ?誰だテメェら、邪魔すんじゃねぇよ!」

 

「それは此方の台詞です!ゲイムキャラさんをどうする気ですか!?」

 

「消すに決まってんだろ!こいつは我々マジェコンヌにとって邪魔らしいからなぁ!」

 

く…どうして私の勘は嫌な方にばかり働くのだろうか

 

「あんた…犯罪組織の一味なの?」

 

「へっ、教えてやる義理はねぇが……まぁ良い、教えてやるよ!」

 

そこで一旦、言葉を切り再び口を開く

 

「犯罪組織マジェコンヌが誇るマジパネェ構成員、リンダ様たぁ……」

 

「構成員?てことは……下っ端?」

 

「下っ端ですね」

 

「下っ端さんです」

 

「ふむ……下っ端だな」

 

「なっ……!?誰が下っ端だ!誰が!」

 

「貴様以外に誰がいる?大体、幹部クラスの人間がこんな辺境の森に居るわけ無かろう」

 

「そういうこと、ほらさっさと退きなさい。下っ端の癖に生意気よ」

 

「ぐ…貴様ら、下っ端下っ端連呼しやがって……もぅ我慢できねぇ!下っ端呼ばわりしたこと、後悔させてやらぁ!!」

 

手にしていた鉄パイプを振り上げ、目にも止まらぬ速さでネプギアに接近、気付いたときにはネプギアが吹っ飛んでいた

 

「きゃあぁぁぁ!?」

 

「ネプギア!?」

 

「おらぁ!余所見してんじゃねーよ!」

 

「がはっ…!?」

 

「あいちゃ…きゃあっ!?」

 

「最後はてめぇだ!」

 

「くっ…ぐぁっ!?」

 

鉄パイプをギリギリで受け止めるも、あり得ないほどの怪力で押し負け吹き飛ぶ。くっ…シェアの加護というのは厄介だな…!

 

「何だぁ?散々バカにした割りには随分、呆気ねーな。さて、そんじゃ一人ずつぶっ殺してやるか…まずは」

 

「ひっ……」

 

邪悪な瞳がネプギアを捉える。まずい、このままでは!

 

「いや…私、また何も出来ないで…」

 

「死ねぇ!」

 

”ゴスッ!“

 

「がはっ…!」

 

「ストレガさん…!?」

 

間一髪、ネプギアと下っ端の間に割り込み庇う。防御する暇など無く直撃を貰ってしまう

 

「何で…私なんか庇って…っ」

 

「お前は…この世界を救う希望の光だ…そんなお前を守るのは私の役目だ…」

 

「でも…私は…っ」

 

恐怖に震えるネプギア、そんな彼女を宥めるように頭を撫でる

 

「恐れるな…お前ならやれる。姉を…ネプテューヌを救うのだろう?こんなところで立ち止まってる場合では無いだろ?思い出せ…お前が力を欲したときに…強く想ったことを……」

 

「私の…想い…」

 

「おーい、茶番は終わりか?だったら纏めて死にやがれ…!?」

 

「…それは!皆を…世界を守ること!」

 

ネプギアが叫ぶと同時に彼女の体がシェアの(まばゆ)い光が包み込む。光が収まるとそこには強い意志を瞳に宿し、女神化したネプギアが居た

 

「なっ…!?てめぇ、女神だったのか!」

 

「覚悟して下さい…貴女は私が倒します!」

 

「ち…やれるもんならやってみやがれ!」

 

”ガキィン!“

 

「なっ…!?」

 

全力で降り下ろした鉄パイプを易々と受け止めるネプギア、それに動揺した下っ端に一瞬の隙が生じる

 

「私は負けません!ミラージュダンス!」

 

下っ端を弾き飛ばし、舞うように連続で斬撃を見舞う

 

「これで決めます!マルチプルビームランチャー!」

 

「ぎゃあー!?覚えてろぉー!!」

 

武器から放たれたビームに飲み込まれ、下っ端は吹っ飛んでいった……使い古された捨て台詞を吐きながら

 

「勝てた…私…やれた…そうだっ!ゲイムキャラは……あっ」

 

呆然とするネブギア。目線の先にはボロボロに壊されたゲイムキャラだった物があった……

 

「間に合わなかった……」

 

“大丈夫ですよ、女神候補生”

 

「えっ?誰……まさかっ!」

 

声と共に淡い紫の光が現れる。これは……

 

「お前は…ゲイムキャラか?」

 

「はい。眠りについている間に破壊されてしまうとは…不覚です」

 

「大丈夫なのか?壊されたのだろう?」

 

「大丈夫、とは言い難いですが…力の一部を逃がすことができました。この力を貴女に託します」

 

「これが…ゲイムキャラの力…」

 

「今、この時代で何が起きているのか、眠っていた私には分かりませんが、貴女ならこの力を正しく使ってくれると信じています」

 

そう言い残し、ゲイムキャラは消えていった…やれやれ

 

「良くやったな…ネプギア。上出来だ」

 

「ストレガさん!動いて大丈夫なんですか?」

 

「あぁ、あれくらいの打撃など何とも……っ!?」

 

“何ともない”そう続けようとしたが激痛が走る。振り向くと呆れた顔をしたアイエフが背中を突っついていた

 

「なに強がってんのよ、真っ赤に腫れてるじゃないの」

 

「ぬぅ…だからとて突っつくな」

 

「ありがと、ストレガ…ネプギアを守ってくれて」

 

「気にするな…それが私の役目だ」

 

「それと…疑ってごめんなさい。あんたを仲間として認めるわ…」

 

「ありがとう……改めてよろしくな、アイエフ」

 

「えぇ、こちらこそ」

 

差し出した手をアイエフは握り返し、微笑む

 

「アイエフさんとストレガさんが仲直りしたことですし、いーすんさんに報告に行きましょうか」

 

「仲直りって、別に仲違いしてた訳じゃ……まぁいっか、そうしましょ」

 

無事にゲイムキャラの協力を得ることが出来た。反撃への第一歩を踏み出したのだった……



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第6話 炎の魔神

投稿が一ヶ月以上遅れてしまいました。楽しみにしていた方々には申し訳ない気持ちでいっぱいです。週一更新に戻れるように努力しますので暖かい目で見守ってくれると有り難いです。では第6話投稿させて頂きますm(__)m


「はい、これで終わりです。あまり無理しないで下さいです」

 

「すまない…肝に銘じておくよ」

 

「すみません…私が不甲斐ないばっかりに」

 

「気にするな…勝手にやったことだ。それに私の負傷のみで済んだのだから良いではないか」

 

「良くありません、貴女はもう少し自分を大事にしてください」

 

不機嫌を隠そうとせずにイストワールは呟く。あちらのイストワールや四英雄達にも良く叱られていたな…懐かしい

 

「…善処するよ」

 

「善処ではなく、遵守してください」

 

真剣な顔で少々威圧を籠めて、彼女は言う。やれやれ…こちらのイストワールもかなり頑固なようだ

 

「…分かった、約束しよう」

 

こうなった彼女は絶対に折れないのを知っているので、此方が折れる他ない

 

「あの…ストレガさん」

 

「ん?どうしたネプギア」

 

「お願いします、私を鍛えて下さい。もっと強くなりたいんです!」

 

そう言い頭を下げるネプギア。ふむ…どうしたものか

 

「…強くなりたいのは心か?それとも力か?」

 

「どちらもです…心だけでも力だけでも本当に守りたいものは守れないって思ったから」

 

「…良いだろう。但し私は厳しいぞ?」

 

「はい、よろしくお願いします!」

 

元気良く返事をし、頭を下げるネプギア。さてこいつは何処まで強くなるだろうか……

 

「さて、時間も惜しい…早速始めるとするか」

 

「へっ!?あの…大丈夫なんですか?」

 

「このくらいの傷、なんて事はない。行くぞ」

 

「あ、待って下さい!」

 

そう言い、教会を出る私の後を慌ててネプギアは追い掛けてきた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バーチャフォレスト

 

 

「ふむ…ここなら周りに迷惑は掛からんだろ。さて始めるぞ」

 

「あの…ストレガさん、本当に大丈夫なんですか?」

 

「ふ…手負いの状態ならば、充分なハンデになる。さぁ掛かって来い…」

 

「分かりました…行きますっ!」

 

大地を強く蹴り、真っ直ぐ此方に向かってくる。ふむ…臆せず向かってくるのは褒めよう。だが……

 

「甘い!」

 

“ガキィン!”

 

「くぅっ…!?」

 

槍で軽く受け流し、流れるように蹴りを入れる

 

「どうした?遠慮せず掛かって来い!」

 

「まだです!ラジカルセイバー!」

 

高く跳躍し、落下速度を利用した斬り下ろしを放つ……だが易々と受け止め弾き返す。

 

「どうした?もう終わりか?なら此方から行くぞ!ヘイスト!」

 

時を早める魔法を唱えネプギアへと迫り、絶え間なく攻め続ける。何とか反応し捌き続けるが徐々に押されていき、弾き飛ばされる

 

「あぅっ……!」

 

「どうした、その程度で世界など救えぬぞ」

 

「まだまだ…っ!」

 

目を閉じ、集中しシェアの光を纏い、女神化する

 

「ふ…さぁ来い!」

 

「おーおー、面白れー事してんな、俺様もまぜろよ!」

 

はぁ…この不快な声は

 

「また貴様か…面倒な奴め。ネプギア…一時中断だ。奴を片付けるぞ」

 

「はい!」

 

「けっ!前回は油断してたが今回はコイツがあるからな!」

 

そう自信満々で言い、懐から数枚のディスクを取り出した……あれは!

 

「エネミーディスク!? 何故貴様がそれを持っている!」

 

「ほぉー、コイツを知ってんのか?ならこれから何が起きるかも分かるよな!」

 

「くっ…ネプギア、構えろ!来るぞ!」

 

「はいっ!」

 

下っ端がディスクを高く掲げる。禍々しい光を放ち、灼熱の炎が吹き上がり深紅の魔神が姿を現した……コイツは

 

 

「見たこと無いモンスター…これは一体」

 

「イフリート…炎の魔神。過去に私と共に戦った召喚獣だ」

 

「じゃあ、呼び掛ければ応えてくれるんじゃ…」

 

「残念だがそれは無理だ。召喚士が死ぬとその契約は切れる。倒すしかないな」

 

「そんな…」

 

まぁ、再契約し直すという手もあるが…正気を保っていない状態では失敗するリスクが高い…!

 

「どうした!?ビビって声も出ねーか!じゃあそのまま死にやがれ!行け、イフリート!」

 

”グオォォッ!!“

 

雄叫びを上げ、拳を振り下ろす。ギリギリまで引き寄せ、後ろに飛び回避する。先程まで居た場所にはクレーターが出来ていた

 

「チッ…相変わらずの馬鹿力め……ブリザガっ!」

 

“…っ!”

 

「そんな…っ」

 

「ちぃ…っ!」

 

魔力で出来た氷塊を飛ばすも片手で止められ、そのまま握り潰される。くっ…魔力が足りん…っ!

 

「はーっはっは!その程度かよ!さて、そろそろ止めを刺しちまいな」

 

イフリートが高く飛び上がり、目の前に巨大な火球を作り出す…まずい地獄の火炎か…!

 

“ガアァァァッ!!”

 

咆哮の後、力強く拳で火球を叩き付け真っ直ぐ此方に飛んでくる……くそっ!

 

「ブリザガ!」

 

自身の槍にブリザガを放ち、冷気を纏わせ火球を受け止める

 

「ぬぅぅっ…!はぁぁっ!」

 

ギリギリ打ち消すことが出来たが、槍が燃え尽きる。くぅ…まずいな

 

「だったらもう一度……おい、なんで動かねーんだよ!」

 

「当たり前だ…あれほどの大魔法が連続で使える訳が無いだろう」

 

「ち…役立たずが!」

 

「…っ!」

 

役立たず…だと?今、コイツは何て言った?

 

「…ふざけるな」

 

「あ?何か言ったか?」

 

「ふざけるな!私の戦友(とも)を侮辱することは許さん!」

 

先程の火球で負った火傷が痛い…体もフラフラだ。だがかつて共に戦った仲間を侮辱されて黙ってなどいられなかった……アイツは、アイツは…!

 

“トモ…?…グォ…ウォォォッ!!”

 

「苦しみだした…?」

 

「ストレガさんっ!あれをっ!」

 

ネプギアの指差す方へ視線を向けると、角に小さなリングが付いているのが目に入った…なるほどな。

 

「操りの輪か……ネプギア」

 

「分かってます。あの魔神を助けたいんですよね?私が下っ端を引き付けます、その間に!」

 

そう言うとネプギアは下っ端と戦闘態勢に入った。

 

「すまない……待っていろイフリート。今救ってやる!」

 

痛む体に鞭打ち、立ち上がり真っ直ぐ見つめる

 

”グゥッ…ウォォォッ!“

 

「がはっ!?」

 

苦しみから逃れようと暴れまわり、振り回した腕が体に直撃する。倒れそうになるのを堪え、踏み止まる

 

「倒れるものか……お前を救うまでは!思い出せ、私だ!契約者にして、唯一の友、マジェコンヌだ!」

 

“マジェ…コンヌ……ニゲロ……!”

 

「くっ…誰が逃げるか!他人から疎まれていた私を…初めて受け入れてくれたお前を…見捨てたりしないっ!」

 

迫り来る拳をギリギリで回避しながら、少しずつ…だが確実に近付いていく

 

「く…あと少し……届いた!イフリート、今解放してやる!あの時、私を救ってくれたように…今度は私がお前を救ってやる!」

 

パキィィン!

 

槍を振り上げ、イフリートを戒めている操りの輪を破壊する。これで洗脳は解ける筈…!

 

“グゥ……全く、相変わらず…無茶をする…おかげで助かった”

 

「ふ…無茶をするのはお互い様だ。また…共に戦ってくれないか?」

 

“あぁ…俺でよければな”

 

「ならば、契約の儀を……」

 

「ち…させるかよっ!」

 

再契約を行おうとするが、下っ端が新たなディスクを投げつけ再び魔物を呼び出す。く……っ!?

 

「魔界粧・轟炎!」

 

地面から突然、炎が吹き上がり魔物を飲み込んだ。一体何が……

 

 

「バーチャフォレストから火柱が見えたから何かと思えばとんでもない事になってるわね……」

 

「アイエフ…!?」

 

「さて…状況が良く分かんないけど、何かするならさっさとしなさいストレガ!」

 

「助かる……どうした?イフリート 」

 

“ストレガとは今のお前の名か?”

 

「あぁ…訳あって1度死んでからこの世界に転生した……それがどうした?」

 

“否、相変わらず中二臭いなと思ってな”

 

「う、うるさい!咄嗟に思い付いたのがそれだったんだ!そんなことより再契約が先だっ!」

 

“ふ…そうだな。昔話はそれからだな…”

 

全く、緊張感の無い奴め…まぁ良い。一呼吸置き、魔方陣を展開する

 

 

「我は魔女ストレガ、汝と契約を望む者…我にその資格はあるか?」

 

”汝、我が灼熱の炎を受け入れる器なり。お前になら喜んでもう一度力を貸そう“

 

そう宣言し、イフリートは頷く。さて反撃と行こうか!

 

「ち…こうなったらありったけ使ってやらぁ!行けぇっ!」

 

自棄になった下っ端がディスクを大量にばら蒔く。次々と光り出し魔物の群れが現れる

 

「ふぅ…多いな。イフリート、行けるか?」

 

”甘く見るな…この程度、造作もないわ!“

 

頼もしく答えると、魔物の群れへ突撃しあっという間に一掃する

 

「いっ!?嘘だろ!?」

 

「凄い……」

 

「本当、あんた何者よストレガ。こんな力を持った魔神を従えるなんて」

 

「言っただろ?ただの転生者だとな……さて残りは貴様だけだぞ?」

 

「ち……此処は逃げるが勝ちだ!覚えてやがれー!!」

 

またもや捨て台詞を残して下っ端は逃走していった…ふぅ、終わったか

 

「相変わらずの逃げっぷりね…」

 

「あはは… ストレガさん、大丈夫ですか?」

 

「すまん…もう…限界…だ……っ」

 

「「“ストレガ(さん)!!”」」

 

 

気力も尽き倒れる。皆の悲鳴に似た叫びを最後に意識は闇に沈んだ……



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第7話 マジェコンヌの過去

ネタが浮かばず放置していたらいつの間にか2ヶ月経ってしまった 漸く書き終えたので投稿します


“ひっく…うぇっ…ひぐっ”

 

“娘よ…何故泣いている?”

 

声の方を見ると巨大な魔神が不思議そうにわたしを見つめていた。

 

“みんな…わたしを怖がるの…化け物って…”

 

”何故だ?普通の人間にしか見えぬが……“

 

そう言う魔神に触れ、私の体が光に包まれ魔神と同じ姿になる。そして直ぐに元の体に戻る

 

”わたしはね…誰かに触れるとその人に変わっちゃうの…だからっ…パパもママもわたしを捨てたの……っ“

 

”そうか……だがお前は化け物ではない“

 

”え……?“

 

”それは立派な個性ではないか“

 

”個性…?“

 

”あぁ…お前だけの力だ“

 

そう言って目の前の魔神はニカッと笑った。怖がらず受け入れてくれた……今までみんな怖がっていたのに…

 

”だから胸を張れ。どうだ羨ましいだろって自慢してやれ、お前を疎む奴が居たら俺が追い払ってやる。だから元気を出せ!“

 

”ありがとう……貴方の名前は?“

 

“俺か?俺は炎の魔神…イフリートだ”

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…っ!」

 

目が覚めると見慣れた客間に居た。今のは夢か……

 

「あいつと初めて会ったときの……懐かしいな」

 

 

あれ以来、忌み嫌っていたあの力を受け入れる事が出来た……まぁ、それはさておき

 

「倒れたんだったな……はぁイストワールに会いたくないな」

 

「誰に会いたくないんですか?マジェコンヌ」

 

呟いた瞬間、地の底から響いたような声が聞こえた……振り向きたくない。そんな心境を読んでいたかのように、イストワールは私の目の前へと飛んできた

 

「全く、貴女という人は!無茶をするなと言ったばかりだというのに、大怪我をして!どれほど心配を掛ければ気が済むんですか!」

 

「すまない…」

 

「謝るんだったら約束の1つくらいちゃんと守ってください……っ」

 

ジッと私を見つめ、イストワールは言った。心の底から案じているのを感じさせる眼差しをしていた

 

「分かった。約束は2度と違わないと誓おう。お前の泣き顔は見たくないからな……」

 

「な…泣いてなんかいません!私は今怒っているんですよ!」

 

顔を真っ赤にして否定するが瞳にはうっすらと涙が溜まっているので説得力は皆無だ

 

「ふ…相変わらず嘘が下手だな、イストワール」

 

「私は嘘を吐かない主義ですから」

 

零れ落ちそうな涙を指で拭い語り掛ける。恥ずかしいのか顔を背け、拗ねたように言葉を紡いだ。そんな彼女を愛しいと思う

 

「それよりイストワール、あれからどれくらい経ったんだ?」

 

 

「3日です。全く無理し過ぎですよ」

 

「そうか…あれから犯罪組織に動きはあったか?」

 

「ここ3日間、目立った行動はしていないわ。別な国で活動している仲間からも今のところ大人しいって聞いたわ」

 

扉が開き、声が聞こえる。アイエフ、コンパ、ネプギアの3人が部屋へと入ってきた

 

「アイエフ…」

 

「目が覚めたみたいね。全く急に倒れるんだもの……吃驚したわ」

 

「すまん…迷惑をかけた」

 

「まぁ良いんだけどね……」

「それにしても3日で殆どの怪我が治るなんて…吃驚したです」

 

「ストレガさんがあの魔神…イフリートでしたっけ?あんなのを使役していた事の方が吃驚ですけどね。随分親しげだったけど、どういう関係なんですか?」

 

「気になるか?」

 

「え?まぁ……はい。でも無理にとは言いませんけど」

 

「良いだろう…その前に私の能力について知ってもらわないとな……ネプギア、ちょっと姿を借りるぞ?」

 

「はい……え、姿って?」

 

困惑するネプギアに触れ、体が光に包まれる。久しぶりだな…この感覚

 

「一体何が……え」

 

「ぎあちゃんが…2人居るです」

 

 

「これが私の能力。他人の姿や力を複製し自身の力として使える…言わばコピー能力だな。この力の所為で幼い頃、化け物扱いされてな」

 

「そんな…ひどいです」

 

「まぁ、普通は気味悪がって当然よね」

 

「そうだな、人は自分の理解を越えたものに遭遇した時、大抵は理解より拒絶するからな……。気が付いたら私は孤立していた。友達どころか親にすら見捨てられて途方に暮れて泣いていた。そんな時さ、イフリートに出会ったのは」

 

“あの時のお前は何かあるとすぐ泣き出したな”

 

「…イフリート、勝手に出てくるな。そして余計なことは言わなくて良い」

 

全くコイツは…デリカシーというもの知らんのか

 

「まぁともかく、その時に私とイフリートは契約を交わした」

 

“契約内容がまた可愛くてな、確かずっと

側に居て欲しいって…あだだ!?”

 

「余計な事を喋るのはこの口か!?」

 

“すまん!もう喋らんから止めてくれ!”

 

渋々、イフリートの頬を引っ張っていた手を離す。次に余計な事を言ったらどうしてくれようか

 

「お前は少しプライバシーというものを知れ」

 

“むぅ…冷たいな。まぁ良い。病み上がりのお前の魔力を消費するのも悪いしな、時に女神候補生よ”

 

「あ、はい。なんでしょうか」

 

“意地っ張りで淋しがり屋の愛しい娘を…頼んだぞ”

 

「な…イフリート!」

 

そう言い残しイフリートは消えた。最後の最後に余計な事を……

 

「え?娘…?」

 

「誰の事ですか?」

 

「……私しかいないだろ」

 

「「「えぇぇっ!?」」」

 

イストワール以外の3人が驚き、声をあげた。驚き過ぎではないか?

 

「やはりお前は知っていたか、イストワール」

 

「えぇ、貴女の次元のイストワールとは記憶を共有していますから。まぁ最初は驚きました。魔神が人の子を育てたなんて聞いたこと無いですから」

 

「まぁ普通はそうだ。泣いている私を放っては置けなかったらしい。だからアイツには感謝しているんだ……今こうして『人』として生きていられる事をな…」

 

 

「そうだったんですか…何だか素敵ですね」

 

「その言葉、イフリートには直接言ったことは?」

 

「有るわけないだろ……」

 

「駄目ですよ、感謝の気持ちはちゃんと伝えなきゃいけませんよ」

 

「だが今更な気もするし……それに」

 

「それに……なんですか?」

 

「面と向かって言うのが恥ずかしい……」

 

「ぷっ…」

 

「……笑うな」

 

「ごめん、ちょっと安心しちゃって」

 

「は…?」

 

「ちょっと変わった力があるだけで私達と何も変わり無いんだってね」

 

「…気味が悪いとは思わなかったのか?」

 

内心は嬉しいのだが、素直ではない私はひねくれた言葉を吐いてしまう

 

「そんな事無いです、凄いなって思いました。ストレガさんは初対面の私を助けてくれた、そんな人をそんな事くらいで嫌ったりしません」

 

そんな私に対してネプギアは真っ直ぐ私を見つめ言う…臆面なくそう言えるのはアイツと同じか。流石、姉妹だな…

 

「イフリートが言ってたように意地っ張りみたいだけどね」

 

「五月蝿い…放っておけ」

 

茶化すように言うアイエフの言葉に、顔が熱くなり、顔を背けた……だが嫌な気分では無い。やはり人との繋がりは暖かいな

 

「ストレガさん 」

「どうした、ネプギア」

 

「あの…迷惑掛けたり、足引っ張ったりするかもしれませんけど…これからもよろしくお願いします!」

 

私を見つめ真面目な顔でネプギアは言った。全くどこまでも律儀だな

 

「あぁ、私の方こそよろしくな?ただ…」

 

「みにゃっ!?ふぁにふるんれふかぁ…」

 

「もう少し肩の力を抜いた方が良いぞ?」

 

そう言い、ネプギアの両頬を摘まんでいた手を離す。全部とは言わんが少しは姉を見習った方がいいな

 

「そうね、あんたはちょっと頑張りすぎるきらいがあるからね……あ、電話だ。もしもし…え?本当に!?うん、分かった…気を付けて」

 

「どうしたんですか?」

 

「ラステイションで下っ端らしき人物を見かけたった仲間から連絡が入ったの」

 

「そうか……手遅れになる前にも向かわんとな」

 

「マジェコンヌ……無茶はしないでとは言いません。どうせまた破られてしまいますからね」

 

「すまん…」

 

拗ねたように言うイストワール。事実だから反論できん……

 

「ただ…これだけは必ず約束して下さい。どんなに無茶して傷付いても、必ず此処に……プラネテューヌに帰ってくると」

 

「分かった。決して違わぬと誓おう……必ずお前のもとに帰ってくるよ」

 

「かならずですよ。では…気を付けて」

 

 

「あぁ…皆、行くぞ。手遅れになる前にな」

 

「「「はい!(えぇ)」」」

 

 

 

 

決意を新たに次なる目的地、ラステイションへと目指すのだった……

 

 

 

 

 

 

 

女神のオラトリオend…next”第2章 相剋のインターセプション“

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第2章:相剋のインターセクション
第8話 黒き重厚なる大地 ラステイション


約1年放置してしまったことをまずお詫びします。楽しみにして頂いた読者の皆様、本当にすみませんでした。

第8話投稿させていただきます。こんな作者ですが何とぞよろしくお願いします


「此処がラステイション…うわぁ見たこと無い機械がいっぱい。良いなぁ、見て回りたいなぁ…」

 

ラステイションの町並みを見渡し、ネプギアが目を輝かせ呟く。ふむ…機械好きなのは此方でも一緒か

 

「ちょっと此処に来た目的、忘れてない?」

 

「はっ!そうでした。見てみたいけど…我慢しなくちゃ……うぅ」

 

そうは言うもののチラチラと目が泳いでいた。やれやれ…全く

 

「アイエフ、コンパ。ネプギアと町でも回って来い。その間、この国の情勢を私が調べておく」

 

「良いんですか!?」

 

目を輝かせ、私へ詰め寄るネプギア。ぬぅ…ちょっと吃驚したぞ…

 

「ギアちゃん、嬉しさのあまりに本音が先に出ちゃってるですぅ…」

 

「ちょっとストレガ、そんな事してる場合じゃ…」

 

「闇雲に動いても意味が無い。それに激戦が続いたんだ。息抜きでもしてくるといい…とネプギアの奴、もうあんな所に」

 

「ふぇっ!?ギアちゃん、待つですー!1人で行ったら迷子になっちゃうですよー!」

 

いつの間にか、遠くへ行っていたネプギアを追い掛けていくコンパ。こういう所を姉に似たようだ…

 

「全く…今は非常事態だってのに」

 

苛立ちを隠さずアイエフは吐き捨てる、ふむ…勘違いであれば良いが

 

「…アイエフ、お前は何を焦っている?それとも…後悔しているのか?女神達…いやネプテューヌを救えなかったことを」

 

「……っ」

 

どうやら当たりか…全く

 

「あの状況でネプギアを救えただけでも上出来だ。仮に無理をして助け出したとして、お前が居なかったらアイツは喜ぶとでも…」

 

「分かってるわよ!だけど私は…女神様を…あの子を救えなかった自分が情けなくて…悔しくて…っ」

 

消え入りそうな声で呟き、アイエフは俯いた…全く

 

「…涙を流し、後悔したとしても諦めるな。1人じゃない、お前には仲間がいる」

 

「ストレガ…?」

 

「どんなでかい壁だって力を合わせれば乗り越えられる……昔のツレの言葉さ、今のお前のように悩んで立ち止まりそうになった時に言われたよ。1人で何でも背負おうとするな、お前にはネプギアやコンパが居るだろう?」

 

そう言うと、顔を上げ私を見つめるアイエフ。その瞳からは先程の迷いが消えていた

 

「ありがと、ちょっと焦りすぎてた…もう少し仲間を頼ってみる……それとストレガ、あんたも仲間でしょ?」

 

「私もか?」

 

「当たり前よ、ネプギアを助けてくれた時に言ったでしょ?だから…ちょっとは頼りにしてるから…じゃネプギア達のとこに行くわ。重ねてありがと、ストレガ」

 

そう言いアイエフもネプギア達の元へと走っていった。やれやれ本当に手が掛かるな…まぁ悪い気はしないが

 

「さて、私も行くとしようか…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ラステイション・郊外

 

 

「そろそろ良いか……出てきたらどうだ?つけていたことくらいお見通しだぞ?」

 

大きめの声で叫ぶと、茂みの中から人影が現れた。やはりな…この街に入ってから尾けられているのも私を狙っていたのも分かっていた。アイツらを引き離して正解だったな

 

「ち…気付いてやがったか」

 

「やはり貴様か、下っ端。私を追跡するのなら完全に気配を消すくらいはしなければな」

 

「下っ端じゃねー!リンダだ!ふざけやがって、今日こそぶちのめしてやる!」

 

そう叫び、懐から3枚のエネミーディスクを取り出し投げ付ける。光と共に危険種―エンシェントドラゴン―3体現れる

 

「危険種3体か。少々骨が折れるな……最初からクライマックス……いかん、アイツの口癖がうつったな。最初から本気で行かせてもらう!魔力解放(マジーア・レリース)!」

 

瞳を閉じ、集中し、魔力が体から溢れ出す。同時にローブを体に纏い、大きめの三角帽を被る…あまりこの姿にはなりたくなかったが、致し方ない

 

「さぁ、手加減なしで行くぞ!」

 

地面を蹴り、3体のエンシェントドラゴンとの距離を一気に詰め、近くにいた1体目の急所を的確に貫く

 

“ガァァァァッ!?”

 

雄叫びを上げ、光の粒子となって消え去る。2体目が隙ありと言わんばかりに、巨大な腕を振り下ろす

 

「ふ…遅い!はぁぁ!」

 

それをかわし、腕へと槍を突き刺す。痛みに悶え、後退する。そこへ3体目がブレスを吐く。遠距離ならば勝てるとでも?

 

「甘い!はぁっ!」

 

 

大地を蹴り上げ、空高く舞い上がる。真下のドラゴン目掛け槍を放り投げる。咄嗟にガードしようとするがそれより早く槍が体を貫き、消え去る

 

「さぁ、終わりだ!焼き尽くせ、フレア!」

 

“グギャアアァ!?”

 

 

灼熱の爆炎に包まれ最後の1体も粒子になり、消え去り、同時に私の姿も元に戻る。む…そういえば下っ端が居ないな……逃げたか

 

「まぁ良い……しかし、少々やり過ぎたかな……」

 

“少しどころの話で済むか…ちゃんと制御しろ。馬鹿者”

 

「ぬぅ……」

 

 

イフリートに叱責され、周りを見渡すと所々、地面が抉れており、フレアを放った場所にはクレーターが出来ていた……むぅ、やはりあまり使わないでおこう

 

“しかし、魔力開放するときのあの掛け声はなんだ?”

 

「いやその…ノリというか、なんというか……ああそうだよ、ネプテューヌに影響されたんだ!悪いか!」

 

 

“ふ…良いのではないか、恥ずかしがることは無い。お前は昔から格好良い名前付けるのが好きだったしなぁ?”

 

「イフリート…っ!」

 

「ストレガさーん!」

 

「…ネプギアか。どうした?」

 

反論しようとしたが声が聞こえ、振り向くとネプギア達の姿が見える。平静を装い返事をする。イフリートの奴、いつか締める…

 

「どうした?じゃないわよ!爆音が聞こえたから慌てて来てみればあんたが居るし」

 

「何があったんですか!?犯罪組織ですか!?」

 

「それよりも怪我はないですか!?」

 

「落ち着け、話すから少し離れろ…」

 

三者三様に話し、詰め寄る3人に呆れつつ、引き離す

 

「それで何があったんですか?」

 

「なに、下っ端が襲撃してきたから撃退したまでだ……逃げられたがな」

「…下っ端相手にこれは流石にやり過ぎじゃない?」

 

「むぅ…それについては反省している。正直、ここまで制御しきれないとは思っていなくてな」

 

周りを見渡し、苦笑しつつ言うアイエフ……危険種が居たことは黙っておこう

 

「あんたねぇ。まぁ良いわ…これからギルドに行こうと思うんだけど」

 

「ギルド……成る程な、あそこなら人も集まるからな。情報収集には最適だな」

 

「それにクエストの行き先でゲイムキャラが見つかるかもしれないしね」

 

「そうですね、じゃあ早速行きましょう」

 

「今度は先を越されないように頑張るです」

 

全員の意見が一致し、一路ギルドへと向かった



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。