できるだけ無欲で生きていきましょう (タクロス)
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生前
無欲転生


性懲りもなく書き始めました。

一作目に関しては一度こちらをメインにして文がまとまったら書いていきたいと思います。

並行して書ける気がしないです(小並感)


6/23 加筆とルビ振りしました


ああ、今思えばとてもくだらない人生だった。

夢もなくサラリーマンになり、上司の横暴な態度に嫌気がさしながらも自分はこれ以外はできないと決めつけて会社に出社する日々。後輩ができても仕事はろくにできず、それを部下への教育不足だと自分の責任へと押し付けられ、その部下は悪びる様子もなくへらへら笑いながら周りへのご機嫌取りし、自分が仕事ができないのは俺のせいだと誤解を加速させるようなことばかりをほざき、なぜかそれを周りは信じてしまい弁明しようともだれも聞かなかった。それによって会社からの信用はなくなり、仕事はまわらず周りからは蔑むような視線やはやく消えろよみたいな視線や遠回しな言い方をされ荒んでいく心。そして、社長から言い渡されたものは

 

解雇

 

の二文字だった。

 

そこからは荒れに荒れた。退職金や今まで貯めた貯金を使って酒をヤケ飲みし続ける毎日。次の仕事先を見つけようにもどこも雇ってくれるところはなく、そのストレスをなくすようにまた酒を飲むのエンドレス。さらには女に目がくらみ風俗店にも行った。そこでチヤホヤされては女に金を貢ぎ、気づけば金はすっからかん。金が欲しくなった俺は闇金業者から金を借り、博打につぎ込んだ。なかなか成功はしなかったが、うまくいくときは一度に300万もの大金を得た。だがそれも女と酒に消え博打も当たらなくなり、借金は増えていった。そして最後には今のアパートから追い出されホームレスにまでなりさがってしまった。欲に目がくらんだ結果がこのザマだ。何も言えねぇよな、バカらしくて。

そして俺は

 

死んだ

 

人生最後ほどあっけないものはなかった。気晴らしに夜の路地裏をふらついていたら、何かをぶつくさとつぶやいてる男が目の前から近づいてきた。男がだんだんと近づいてきて、つぶやきが聞こえるようになったのと突然取り出した包丁が、俺に刺さったのは同時だった。金をよこせ、金をよこせ、という声に返したのは

 

「金なんかもうねぇよ、くそったれが...」

 

という、相手への怒りの言葉と、自分への懺悔の言葉であった。

 

 

 

 

 

「ねえ」

 

どこからか声が聞こえてきた。幻聴だろうか。死人に口無しとはよく言うが耳はあるもんなのかねぇ、なんてバカなことを考えているとまた、

 

「ねえ」

 

と、声が聞こえた。まあ、一度あることは二度あるということわざもあるくらいだし、また幻聴が聞こえてきたんだろうと決めつけて無視をすることにした。

 

「ねえ、聞こえてるんでしょ」

 

二度あることは三度あるというやつだと思いたい。

 

「ねえ」

 

四面楚歌

 

「ねえ」

 

五十天命

 

「ねえ」

 

六根清浄

 

「ねえ」

 

七言絶句

 

 

 

 

 

八王z..

 

「いい加減にしなさい」

「ぐはっ」

 

唐突に腹部に強い痛みが走る。だがしかし、その部分を抑えようとするが腕は動かない。それどころか、まず体の感覚自体がない。

瞼は開かないし、鼻で息を吸おうとするが鼻がないためできない。声が出たことから口があるのはわかったがそれ以外は何もないこともわかった。死んだのにまだ痛いなんてここは地獄かなんかか?なんて考えていると、突然痛みがなくなった。

 

「ようやく目を覚ましましたか。あまり手を煩わせないでください。めんどうです。」

「それが人を殴って目を覚まさせたやつの態度かよ......」

「やつではなく神です。間違えないでください」

「はっ、冗談きついぜ。神なんているわけねえよ」

「別に信じて欲しいわけでもないので構いません。それよりめんどうなので単刀直入に言わせていただきます。あなたにはとある世界に転生していただきます」

「何言うかと思えばそんなくだらない冗談かよ。死んだと思ったらその先にはくだらないことしか言えない自称神か。死んでもこれとは本当に俺はついてないな」

「もう何も言いません。あなたにはその世界に特別な力や物などを持って転生させることができます。ですがそれには対価が必要です。例えば最強の力が手に入る代わりにその力は永遠に制御することができなかったり、万物を切る剣が手に入る代わりに自分の片腕がないなどです。所謂等価交換です」

 

さっきから話を聞いてればやれ神だの、やれ転生だの。なんだよ最強の力って、そんなもんあったって使い方が間違えばそんなものはただの暴力にしかならない。制御できないなら尚更だ。万物を切る剣?そんなもの持ってたってそれを持つ資格がなければ銃刀法違反で捕まるだけだ。それこそファンタジーでもない限りな。というか何故俺はこんな話を本当のことのように聞いてるのやら。バカバカしいったらありゃしない。だが、

 

「それがもし本当だって言うなら俺の願いは一つだけだ」

「なんでしょうか、できれば早く言ってください」

「わかったからそう急かすな。俺の欲しいのは

 

俺の中にある108の煩悩。つまり欲を全て消し去って欲しい。」

 

俺の人生はあの会社に入るまでは普通だった。彼女とかはいなかったが、厳しかった父親と優しかった母親がいた。それも俺が働くようになってから一年もたたないで薬中が運転する車の交通事故に巻き込まれ死んだ。そして、理不尽な上司に関してはまだよかった。だが、あのクズな後輩。あいつさえ来なければまだ嫌々ながらもあの会社で働くことができたし、こうして死ぬこともなかっただろう。だが、それも死んでしまうとどうでもよくなった。一番の原因は欲に溺れてしまったことだ。酒に溺れなければ、もしかしたらだが再就職のチャンスもあったかもしれない。女に溺れなければ、金がなくなるまで貢ぐなんてこともなかっただろう。金に溺れなければ、博打で悲惨な目に会うこともなかっただろう。だから、

 

「俺は次の人生では、絶対に欲に溺れたくない。もし欲の1ミリでもあればそれに流されちまうかもしれないからな。もうそんなことはこりごりなんでね。だから、俺は自分の欲を全て消し去って欲しい。財欲、性欲、睡眠欲、独占欲、生存欲、などなどなどなど。ぜんぶ俺の中から消し去ってくれ」

「わかりました。では対価はなんでしょうか?」

「それは俺の記憶だ。俺の中にある記憶は欲に溺れて得た快楽が残っちまってる。そんなものは次の人生には必要ないんでね」

「ふむ、そうですか。ならあなたのほとんどの欲をを消します。ですがさすがに食欲や睡眠欲などの生きるために必要な欲に関しては残させていただきます。そして対価にあなたの記憶を消させていただきます。ですが、あなたの回答は、今までの転生者の中で一番面白い。ですからサービスしてあげます。内容はあなたの知識記憶の一部を残してあげましょう。と言っても残すのは中学生くらいまでの学習知識と生きてきた中でこれは受け継いでも構わないという程度の知識のみです。ちなみに学習知識は、年を取っていくたびにだんだんと思い出せれていきます。」

「へえ、なかなか神様もサービス旺盛だねぇ。いいぜ、それで構わない。

 

なんてな。芝居に付き合ってくれてサンキューな。あんたのおかげで少し気が楽になったよ。さあ、天国だろうが地獄だろうがどこへでも連れて行っておくれ」

「わかりました。では転生の準備を開始します」

 

冗談を言ったつもりだった。だがしかし、自称神が言葉を言い切ると同時に体の感覚がないにもかかわらず浮遊感に包まれた。

 

「おい、マジかよ!ありゃ冗談じゃなかったのかよ!?本当に俺は転生するのか!?」

「言いましたよね私は神であると、ですから私はあなたの言葉を聞き入れ実行してあげているのです。もう戻れませんよ。あなたは希望(ねがい)と対価を決めてしまいましたから」

「くっそ! おい、あと転生するまでどれだけ時間がある!?」

「あと10秒ですが、何か言いたいことでも?」

「ああ、あるね!最後に一つだけ!

 

 

ーーーありがとうな!こんなおれの希望(ねがい)を聞いてくれて、スッゲー嬉かっぜ!」

 

全力で叫ぶと同時に俺は顔とかはないが、生きてきた中でも子供の頃にしか出なかったような、最高の笑顔を浮かべたつもりでいた。

 

 

そして、おれの意識と魂は希望(ねがい)と対価を連れて次の世界へと消えていった。

 

 

 

 

 

「初めてですね。転生させるにあたって感謝をされたのは。今まで99万9999人の人間の魂を転生させてきましたがあんな笑顔を見るのは初めてでした。

 

あなたの新たなる人生に幸あれ」

 

そう独り言を言い始めた女性は微笑みながら最後にそう呟きを残すと、フッ、と姿を消した。

 

そしてその空間には何もない真っ白な空間へと変わっていった。

 




2話目以降からは主人公のしゃべり方が全く変わりますのでご注意を。


毎日更新してる人ってすごいと思った(小並k(ry)


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転生 出会い編
異端児


異端児なんて書いてありますが、そんなに異端児してないです(感覚マヒ)

1話は3000文字も書けたのに2話になった途端に1000文字くらいしか書けなくなった作者無能


 

「お父さんこれはなんと読むんですか?」

「ああ、それはフランス語でおはようと読むんだ」

「なら、これはなんですか?」

「それはドイツ語でのおはようだな」

「うふふ、新人(あらと)は勉強熱心ね」

「ああ、そうだね。もしかしたら将来ぼくたちよりもすごいことを成し遂げてくれる気がするよ」

「お父さん次は...」

「よ〜しどれだ?言ってみなさい、お父さんなんでも答えちゃうからね」

「これです。これはなんと読むんですか?」

「ふむ、それは中国語てありがとうと読むんだ」

「でもこれが始まると止まらないのはなんとかしないといけないわね〜」

「そうだな......よし!新人。新人にこれをあげよう。これからは他人に聞くのもいいが自分で調べてみるといい。いずれ自分のためになるからな」

 

そう言って渡されたのは、英語、中国語、ドイツ語、フランス語、ロシア語の初心者用の本である。中は()()()()の言葉で埋め尽くされている本である。これは、まだ()()れて()()()()()の子供には不相応すぎる代物だろう。ここに第三者がいるなら確実に指摘されるであろう事案だ。だが、ここにそんなものはいない。彼が異常であることに気がつくものはここにはいない。

彼、天下(あました)新人(あらと)()()()である。

ここまで聞けばよくある、チート持ちの異世界転生と切り捨てられるだろう。だが、彼は違った。彼は食欲(・・)睡眠欲(・・・)好奇心(・・・)などの生きる上で必要である()しか持たずに転生するという、珍しい転生の仕方をした。そして、転生の一番の利点、記憶の引き継ぎをしていないのである。(正確には憶が年を重ねるたびに知識記憶のみが一部ずつもどっていくのであるが)

これによって彼は生まれて半年も経たずに言葉を覚え始め、半年が経つ頃には一人で立ち、九ヶ月が経つ頃にはペンを持って日本語の読み書きを覚え始めた。そして現在は日本語の常用漢字は完全にマスターし、外国語に移っているところである。

 

「ありがとうございます。お父さん。あとは自分で調べてきます」

 

そう言って新人はリビングを出て自分の部屋へと向かった。本来この時期の子供ならまだ親に構って欲しくて色々としでかすだろう。だが、彼に関してはそんなことはなかった。

 

「なあ、新人はあの本を理解できるだろうか?思いつきで渡してしまったが」

「大丈夫ですよなんたって私とあなたの子供なんですから」

「ん、そうだね」

 

少しズレている親も親だが。

 

まあ、こうして彼は少しずれた親の期待に応えてしまい、生まれてから四年(・・)半年(・・)で、日本語を含めた7カ国の言葉を覚えてしまった。

 

ちなみに、好奇心旺盛すぎて幼稚園の先生にまで聞いたりして困らせてしまったのはまた別の話である。

 

 

 

そして、新人が五歳になった頃

 

「新人、フランスまで行って見る気はないか?」

 






感想を書いてくれたソルディオス・オービットさん、ありがとうございます。マイページ開いたら感想が来てると書いてあってニヤニヤが止まりませんでした。

お気に入り登録してくださった、村木さん、留守番さん、ソルディオス・オービットさん、ありがとうございます。お気に入り登録とかしてもらえるととても励みになります。

次回も早く書けるように頑張ります



ちなみに、新人の両親は二人とも学者で世界中を飛び回っています。そのため、次のフランスへの旅に新人を連れて行こうということでこうなりました。




次回はフランスに行ってあの子との遭遇です



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異郷の地フランス 〜迷〜

タイトルの時点で察しがつく今話。
1日で3話も投稿して辛い作者です。何やってんだろね。もう再来週の頭には期末試験だというのに。


それとすみません。フランスのあの子は次回になりました。

多分、明日か明後日には出そうと思ってるのでもうしばらくお待ちを。




「ここがフランスの街ですか。空港の時もそうでしたが人が多いですね」

「まあ、新人(あらと)は幼稚園に行く時以外はあまり都会側にはいかないからな。こういった人混みを見るのは初めてだろう。はぐれないようにしっかりと母さんと手を繋いでるんだよ」

「さ、新人。手を繋ぎましょ」

「わかりました母さん」

 

天下(あました)一家は現在フランスの都市、パリの中にいる。ここにいる理由は、新人の両親の仕事、というのが表向きで本当のところは、旅行のついでに依頼された仕事を終わらせようという二人のちゃっかりしたところが理由の旅行である。

ちなみに仕事とはソルボンヌ大学への地質学の講義である。といってもそれも一日だけなので、終わったら新人と一緒にフランスを回るのが一番の目的だ、とは口が裂けても新人には言えないことらしい(父親の尊厳にかけて)

 

「父さん、バスに二階があります。あっちのバスは天井がありません。なぜですか?」

「よぉっし、すぐにホテルへ行くぞ〜!すぐに行くぞ〜!」

「父さん、話をそらさないでください」

 

新人も三年間の間に成長していた。まず両親の呼び方が、お、が抜けて父さんと母さんと呼ぶようになっている。そして、今回フランスに行くということで、お金の使い方と携帯の使い方、現地のマナーなどを教えてもらっている。他にも、父親の友人に男は体が資本だと言われて言語の読み書きの習得が終わり、フランスに行くまでの半年間週三でジムに連行されていたためそれなりに体力や力はついた(中一程度)と本人は思っている。

「仕事は明日の予定だし、新人も初めての飛行機で疲れてるだろうしまずはホテルに行くか」

「わかりました」

「なら、ホテルへレッツゴ〜♪」

 

そんな母親の声を号令に宿泊先のホテルへと移動する一家三人。道中、新人のいつもの癖(もう病気のようなもの)が発動しながらも無事にホテルへ辿り着いた。

そして、ホテルの部屋の鍵をもらい、鍵を使って部屋のドアを開ける。

ホテルに泊まるのが初めての彼は表情はあまり変わってないように見えるが、とてもワクワクしているように見えるのが、二人には感じられた。

その部屋はまさにスウィートルームというやつで、かなり広くテレビやソファー、キッチンまでもが備わっており、特にベッドはとてもフカフカだった(小並感)

 

「よし、じゃあ荷物をだそうk(トントン)ん、どうした?」

「静かに、もう寝ちゃったみたいねあの子」

「本当だ。やっぱり疲れてたんだね」

「起こすのもかわいそうだし、明日の支度だけ、すませて今日はもう寝ましょ?」

「そうだね。明日は仕事だから新人は暇になるかもしれないけど、また新しくポルトガル語とスペイン語の本物渡しておいたし、それで暇をつぶしてくれるだろうしね」

 

そう言うと二人は、仕事用のカバンをキャリーバックから取り出すと、明日の講義に使う資料だけを入れて、ダブルベッドに体を預けるとスヤスヤと寝息を立て始めた。

 

 

こうして、天下一家のフランス旅行の1日目がおわーーー

 

 

 

 

 

「父さんと母さんは寝ましたか。作戦通りです」

 

ーーーってはいなかった。

 

「本当にこれでうまくいくとは思っていませんでした。下園くんはすごいですね。天才か何かでしょうか?

まあ、とりあえずお金と携帯を持って行きましょう。初めてのフランスは楽しみです」

 

彼は幼稚園の友人の下園くんに教えてもらった秘技、寝たふりを使って部屋から抜け出す計画を立てていたのだ。作戦は見事成功。無事に、部屋から出ることができた。

ちなみに下園くんはこれを使って親から隠れてゲームをしているらしい。この前見つかってゲームは没収されたらしいが。

 

さて、話は変わる。ここで問題だが、初めて来る場所に好奇心の塊のような子が来たらどうなるか。

 

答えは探検だ。

 

「地図は一番下の入り口のところにありますし、それを見ながら行けばなんとかなるでしょう。とてもワクワクします」

 

こうして、彼はロビーにある無料で配布されているホテル周辺の観光案内地図をもって、異郷の地フランスへと旅立って行ったのだった。

 

 

 

彼は、記憶がないとはいえ転生者だ。前世で五歳までに覚えたことはすでに、特典により知識記憶としてすでに頭の中に入っている。

 

 

 

 

 

だが、考えてみてほしい。五歳児なんかが地図を読めるのだろうか?それこそ、自分の知らない土地のものを、だ。それはとても難しいだろう。そして、彼の前世において五歳児のときに地図を読めるようになっていたのだろうか(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?)

そして、彼の父親はまだ彼に地図の読み方を教えてはいなかった(・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

 

 

もうこの時点で察しはつくだろう。

 

 

「ここは・・・どこでしょうか?」

 

 

 

彼は異郷の地フランスにて人生初の迷子を成し遂げていたのだった。

 

 

 

 




FGOで星4以上が出ない悲しみに包まれています。先日、同じ部活の友達は酒呑童子イベの際に、酒呑童子をてにいれ、最近だと諸葛さんを手に入れるとかいうね。もうなんなんだろね。私サーバントに嫌われてんのかね?



失礼しました。今度ストレス発散のためにゲーセンでグルコス(Garakutaを20回くらいやってアイテムありでようやくランクAのフルチェイン程度の腕前)とか、ガンスト(始めたばかりの初心者)やりにいきたいです。

そして、新しくお気に入り登録してくださった方々ありがとうございました。3人から突然16人まで増えていてびっくりしました。
次もできるだけ早く出せるようにします。

それと、感想を書いてくださった秋野夜永さん。ありがとうございます。ですが、作者は馬鹿なのであまり期待しないでいただけるとありがたいですorz


転生後の方が優秀すぎて、記憶がもどる能力が意味をなしてないと思う今日のこの頃。


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異郷の地フランス 〜遭遇〜

今話は会話が多いです。それによって珍しく3000文字までいきました。これが原作ヒロインの力か...恐るべし

そして、ついにあの子との遭遇です。


書くのを忘れてました。「」内の文は日本語で『』内の文はフランス語での会話です


彼は今、迷子である。

場所はどこかもわからない路地裏である。

地図の読み方もわからないという絶望的な状況でも彼は落ち着いていた。

 

「どうしましょうか、さすがに勝手に抜け出してきたので親に連絡したら...何を言われるかわからないですね。連絡したとしても寝ている場所と携帯の置いてある場所は違ったはずですし。これなら、地図の読み方も習っておくべきでした。

とりあえず現地の人を探してホテルの場所を聞くことにしましょう」

 

なんとも、精魂たくましい男である。

しかし、ここは路地裏。下手に歩くと土地勘がなければ迷うような現代の迷宮でもある。だが、彼はそんなことも気にせずに適当な方向へと歩き始めた。

 

「ここは右ですね。次は左。ここはまっすぐ進めばいいでしょう」

 

もし、知らない人が見たら、適当に歩いては大丈夫なのか?と思うだろう。だが、現地の人間が見れば、なぜあいつは何も知らないのに大通りへの道を的確に歩いているんだ、と言うだろう。なんと、彼は勘だけで知らない道の正規ルートを進んでいたのだった。なんとも末恐ろしい男だ。

 

そして、大通りへはあと一つ曲がれば出られるというところで、綺麗な金色の髪の毛の女の子がうずくまっているのを見つけてしまった。無視する人もいるだろう。最初は彼もお腹が痛いのかな?と思ってさすがに体調の悪い人に道を尋ねるのはよくないし、自分と同じくらいの子だから地図も読めないだろうと思っていた。だが、近づいていくと「ひっぐ、えっぐ」と、少女の嗚咽が交じった泣き声が聞こえた。彼は、無慈悲にも路地裏のゴールへと歩を進めてーーー

 

 

 

 

ーーーは行かず少女の前に立ち止まった。

 

それはそうだろう。こんな小さな女の子がうずくまって泣いているのだ。これを無視するのはクズか外道のようなやつだろう。彼は、たまたま後ろポケットに入っていた未使用のハンカチを取り出しながら、フランス語で少女に語りかけた。

 

『お嬢さん、泣いてるならこれをどうぞ。これを使って涙を拭いてください。そして、よろしければですが泣いてる理由も教えてはくれませんか?』

 

と、言ってハンカチを差し出しながら、いつも自分をジムへと連行する父の友人の言葉を思い出していた。もし、困っている人を見かけたらできるだけ助けなさい。泣いている人がいたら優しく語りかけなさい。そして、できれば泣いている理由を聞いて力になってあげなさい。いついかなる時でも紳士でありなさい、と。

彼はまさに紳士であった。

少女は、少し顔を上げるとその顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっており、目の周りには確実に泣いていたことを証明できるほど泣きはらした跡と、こすった跡が残っている。

少女は彼と差し出されたハンカチに何度も視線を往復させると、『使ってもいいの?』と、震えた声のフランス語で聞き返す。それに対して彼は、『ええ、構いませんよ』と、表情を変えることなく、とても流暢なフランス語で返した。

 

 

数分後

 

 

少女が自分のハンカチを使って顔を拭き終えると、そこには涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっていた顔はなく、年相応の幼くプニプニとしてそうな顔に、ピンク色の唇、整った鼻、そして、綺麗なアメジスト色の目をしており、100人中100人全員が可愛いと答えるくらいの美少女が彼の目の前にいた。まだ、目の周りには泣いていた跡が残っているが。

 

『えっと、その、ごめんなさい。ハンカチを汚しちゃて』

『いえいえ、構いませんよ。それよりも、こういう時は謝るよりもありがとうとひとこと言ってくれた方が相手は嬉しいものですよ。お嬢さんのような可愛い子には特に、ね』

 

少女は、彼の口説き文句により顔を朱く染め上げていた。それは、先ほどまでは泣いていたから少し恥ずかしいと言う理由で朱かったのだが、彼の言葉に嬉しさと泣いていた時よりも恥ずかしくなってしまったせいである。しかも、彼は無表情ではあるが整った顔をしており先ほどの紳士のような態度と相まって、少女にはとてもかっこよく見えていたのだ。しかし、その朱さらに濃い朱にに変わることになる。

 

 

何を勘違いしたのか彼は、唐突に少女の額に自分の額を押し当てたのだった。これは前世の彼の親が五歳の頃に風邪をひいて熱を出してしまったその時に相手の額に自分の額を当てて体温を測るということをしていたのだ。それを特典によって思い出してしまっていた。そして、顔が赤くなっていた少女が熱を出してしまっているのでは、と勘違いしてしまったが故に起こってしまったのである。

 

『ッ〜〜〜〜」

『熱はないようですね。よかったです。それでは、泣いてる理由を話してもらってもよろしいですか?』

『は、はい。えっと、あの、その...』

『ああ、そう言えばまだ名前を言っていませんでしたね。自分の名前は天下新人(あましたあらと)と言います。お嬢さんは?』

『えっと、わたしの名前はシャルロット・デュノアって言います。・・・あの、もしかしてアマシタさんって日本人ですか?』

『ええ、そうですよ。まだ五歳の日本人です』

『えっ、五歳なんですか?話し方とか丁寧だったし、身長も高いからてっきりもっと年上かと思ってました。でも、同い年って聞いてなんだか安心しちゃった』

『そうですか、それならよかったです。

では、話を戻して...どうして泣いていたか話してもらっても?』

『はい、大丈夫です。

えっと、実は、その、わたし、お父さんとあ母さんとはぐれちゃって、一人になって寂しくなってそれで......』

『ふむ、つまりは迷子ですか。自分と同じですね』

『うぅ、それは...ってアマシタさんも迷子なんですか!?』

『はい、実は言うと自分も迷子でして困っていたんですよ。地図はあるんですけどまだ読めなくて』

『そうなんですか...わたしも地図は読めなくて』

『いえ、別に構いませんよ。自分だって読めないわけですからお互い様ですよ』

 

彼らはお互いの自己紹介と現状確認を済ませる。そして、これから先どうすればいいかを考え始める。少し時間が経つと少女ことシャルロットの表情は先ほどの余裕もなくなってきていた。それを見た彼は彼女に一つの提案をする。

 

『よし決めました』

『えっと、何か決まったんですか?』

『ええ、まずはデュノアさん、あなたの両親を探すことから始めましょう』

『えっ、でもいいんですか?アマシタさんも迷子なんですし無理にわたしのために頑張らなくても......』

『ですが不安そうなデュノアさんの顔を見ていたくはないので、先にデュノアさんのお父さんとお母さんを探しましょう。大丈夫です。心配しなくてもなんとかしますから』

『本当にごめんなさい。わたしのためにこんなことをしてもらって』

『ですから、こういう時は謝るよりも感謝された方が嬉しいんですよ』

『えっと、それじゃぁ。ありがとう・・・ございます』

『どういたしまして。さあ、いきましょう』

 

そう言って彼はシャルロットの手を優しく握ると、大通りへの道へと歩き始めた。だが、唐突に後ろから「ぐぅ〜」という音がなる。振り返ってみるとそこには、少し俯いて頬を赤く染めたシャルロットが立っていた。携帯を確認してみると時刻はすでに正午を超えて13:30と表示されていた。

 

『そう言えばもうお昼でしたね。ちょうどお腹もすいてきましたし、どこかで食べてからお父さんとお母さんを探しに行きましょうか』

(コクコク)

 

こうして、彼らは少し躓きながらもフランスの街へと足を進めていくのであった。

自分のことはほったらかしにして




新人のイメージ

年齢 五歳
身長 120cm
体重 26kg(筋肉込みで)
インナーマッスルでしなやかな筋肉

頭髪 黒色 長さは前髪が眉毛あたりにギリギリ掛からず、後は首の真ん中くらいまでの長さ

目の色 黒 しかし光があまり宿っていない感じである

感情 希薄であまり表に出ることはない。希薄な理由は転生による欲の消失による副作用と表情筋のせいである

表情 いつも無表情。だが実際のところは表情筋が固すぎでろくに笑えなかったりするため表情を読み取るには長い歳月が必要となる

喋り方 基本敬語 女性の前ではだいたい紳士的 ときたま天然の毒を吐く

自分の呼び方
自分もしくは、僕or私

他人の呼び方
親 父さん 母さん
知り合い 苗字+さん、くん
友達や親友 名前+さん、くん
例外 下園くん

なのでまだシャルロットはまだ名前呼びにはなりません。

以上が作者のイメージする現在の新人君です。
例外の下園君に関してはいずれわかります。

ようやく、原作キャラを出せました。と言ってもまだ一人ですが。これからあと、3人くらいと出会う予定なので出会い編は少し長くなりそうです。それと、シャルロットの一人称がなぜ私なのかというとまだ原作のように男装の訓練を受けておらずただの五歳児だからです。


そして、感想を書いてくださった5O5O9eoさん(略してゴオーさん)
非ログインユーザーながらわざわざこんな小説に感想を書いていただき、ありがとうございます。

さらに、お気に入りが16人から19人になりました。新しくお気に入り登録してくださった皆様、感謝しております。

UAも1000件を超えとても嬉しい限りです

2017.1.14誤字修正、報告ありがとうございます

フランス編はあと2話で終わらせる予定です


紳士だったかなあれ?すごく心配です。


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異郷の地フランス 〜再開〜

明日提出のレポートにどうやってケリをつけようか考えている作者です。

今話は約5000字もあります。人が多くなると会話が増えてその分量が増えてしまいます。

今回も「」内の文は日本語で『』内の文はフランス語でしゃべっていると考えてください。

それと、今更ですが「」で囲われてない部分と、〜〜のように◯◯は思った、以外のところの文は作者の語り(第三者視点)であって、新人君が考えていることではないのでご注意ください。感想欄を見て勘違いをさせてしまっていることに気がつきました。もし他にも勘違いをしてしまった方がいらしたら申し訳ないです。作者の技量不足でしたorz

ですので、誰かの思考を「」()表記なしで文に表すときは、〜〜のように新人は思っていた。 のように書いていきますので以後よろしくお願いいたします。


夜遅くに書いたため少し文が変になってしまってるかもしれません。おかしいところや誤字があったら報告お願いします。


彼らは喫茶店で微笑ましいといった感じの視線を受けながら食事をすませると、パリの街へと繰り出した。喫茶店の会計の際にお金に関してシャルロットが申し訳なさそうな顔をしていたが、『こういったときは男の人は自分で払いたくなるものなんですよ。所謂かっこいいところを見せたい、ってやつですね』と言って新人(あらと)が全額払っていた(親から渡されたお金はかなりの量があるのでまだまだ余裕だったりする)。そのときに、他の客がヒューヒューと指笛を鳴らしたり、さらに微笑ましい視線を送ってきたためシャルロットが新人の手を掴むと急ぎ足で店を出て行った。ちなみにこのあと店の中では、あの二人はどういった関係なのか、あの二人は今後どうなるのかといった下世話な話で小一時間盛り上がっていたらしい。そのときの店の売り上げは過去最高額となり、店の従業員のほとんどがあの二人は商売の神様か何かなんだと崇め讃えていたのは別の話である。

 

さて、二人のシャルロットの親探しの道中をダイジェストでお送りしよう。

 

まず最初は新人が自分の泊まっているホテルに気づかずスルーしてしまった。そのあとは子どもに当たり屋行為をするクズを周りが逆にかわいそうと思うくらい正論によって新人が論破したあと、新人によって説教を食らっていたり(その際石畳の上に正座をさせられたフランス人はしばらくまともに歩けず、周囲から嘲笑の視線を受けたとか)、その際に怪我をしてしまったシャルロットに、例の連行おじさんに押し付けられていた消毒液、ティッシュ、絆創膏を使って処置をするも痛みでうまく立てず、三十分くらい新人におんぶしてもらいながら移動したり(あまりに意識しすぎたせいでシャルロットはあまり役に立たなかった)、途中で日本の駄菓子屋があるのを新人が見つけてしまい、アメ(リンゴ、ブドウ、桃、パイン味)やシガレット(ココア、コーラ、ソーダ、オレンジ味)などをそれぞれ四個とニ箱をずつ買い(まあ、新人の自腹だが今回に関しては自分が欲しいと思ったからであって気にする必要はないといった感じであらかじめ説明しておいた)それを二人で分け合ったり、などほかにも色々あったりしたが今回は割愛しよう。

二人が探し始めて約二時間が経過した頃である。すると後ろから当然『シャルロット!』という声がした。振り返ってみるとそこには金髪の若夫婦がいまにも泣き出しそうな顔をして立っていた。多分あれがシャルロットの両親なのだろうと新人が思っていると、それを肯定するように隣にいたシャルロットが『お父さん!お母さん!』と言って若夫婦に向かって走り出していた。

 

『お父さん!お母さん!』

『どこにいたんだシャルロット!すごく心配してたんだぞ!もしシャルロットが誘拐でもされていたらどうしようかと思って町中走り回ったんだからな!!』

『本当に心配してたんだから!いつの間にか居なくなって二人で探して。でも本当に良かったわ』

『おどゔざん、おがあざん、ごめんなざい〜』

 

シャルロットの両親は泣きながらシャルロットを抱きしめ無事ていたことを喜び合っていた。シャルロットの方も最初はお父さん、お母さんと呼べていたが次第に涙声になりまともに呼べなくなっていたが二人は泣きながらも嬉しそうな顔をして何度もシャルロットの名前を呼んでいた。一方蚊帳の外であった我らが新人は、シャルロットの両親が見つかったことを心の中で喜んでいた。相変わらず表情筋は全く動かず、周りから見たら泣いてる親子を冷ややかな目で見ているようにしか見えないが。

時間も経ち次第に落ち着いてきたシャルロットの両親は、シャルロットが先ほどまで隣にいた新人のことを指差しシャルロットに尋ねた。

 

『シャルロット、彼は一体誰なんだい?さっきまでシャルロットと一緒歩いていたようだが』

『シャルロットことだから悪い人ではないと思うんだけど、一体誰なのかしら?教えてくれないシャルロット』

『うん、あの人はね・・・』

 

シャルロットが彼のことを紹介しようと涙をぬぐいながら振り返ると、すぐそこにはなんとなく自己紹介をした方が良さそうだと思っいた新人が立っていた。

 

『初めまして、シャルロットのお父様、お母様、私の名前は天下新人(あましたあらと)と申します』

『お、おお。これは丁寧にどうも。私の名前はアラン・デュノアという』

『私の名前はアリア・デュノアといいます』

『えっとね、お父さん、お母さん。天下さんはね、迷子だったわたしを助けてくれたんだ』

 

シャルロットが彼を紹介する前に左手を胸に当てきっちり45°の角度でお辞儀をしながら自己紹介をする新人。それに対してアラン(シャルロットの父親)は明らかにフランス人でもない子どもがとても流暢にフランス語を使うことやこんな小さな子どもが紳士的な態度をとったことに驚きながらも自分の名前を彼へと返す。それに続いてアリア(シャルロットの母親)も同じように彼に名前を告げた。

先ほどはシャルロットを抱きしめながら涙を隠すようにうずくまっていたために見えなかったが、シャルロットの両親は二人共優しそうな雰囲気と顔をしており特に母親はシャルロットと目の色や髪質などが似ていた。ああ、親子なんだなぁと新人が思っていると、シャルロットが自分が彼女のことを助けたと両親に伝えているところだった。

 

『彼が助けてくれたのかい?なら、本当に感謝する』

『私からもお礼を言わせてもらうわ。ありがとうね。

 

小さい子にしてはさっきから言葉遣いから細かい動作まできっちりしてる。本当に子供なのかしら?』

『うん、そうだよ。それにアマシタさんはまだ五歳なんだって』

『『五歳!?』』

 

礼の言葉を彼に伝える二人。アリアに関しては彼のこと異常さに対して考え始めるが、町中を走り回って疲れていたのか無意識に考えていたことをつぶやいてしまい、それをシャルロットが聞いてしまった。平然と返すシャルロットだが、五歳ということに驚く二人。確かに彼は身長はそこらの五歳児と比べたら確実に彼の方が大きく、この歳でこの大きさということや、先ほどまでのことを五歳児がやっていたということに二人は驚愕を隠せないでいた。

先に現実に戻ってきたアリアがシャルロットにもう一度尋ねる。

 

『本当なのそれは?』

『本当ですよ。自分は20XX年の4月23日に生まれましたので』

 

アリアの質問に答えたのは新人であった。

そして、遅くながらも現実に戻ってきたアランが彼の異常さに対して考え始めるもシャルロットの言葉によって遮られる。

 

『ねえ、お父さん。アマシタさんにお礼がしたいんだけど・・・』

『ん、確かにそうだな。アマシタくん何か欲しいものがあれば言ってみたまえ。私はデュノア社の息子なのでね、大抵のものなら用意できるぞ』

 

無表情ではあるがアランの言葉に少しだけ考える新人。だが、すぐに欲しいものが決まったのかアランの顔を一瞬だけ見ると、無表情のままシャルロットのほうへ歩いて行き、彼女の正面で止まった。そして、彼女のことを見つめ続ける。彼女が恥ずかしくなって朱くなった顔を背けた瞬間、

 

『まさか、シャルロットが欲しいと言うのか!?ダメだ!シャルロットは絶対に渡さないぞ!!』

『唐突に叫ばないでください。周りの人の迷惑です』

『しっ、しかしだなぁ!』

『あなたのそのシャルロットが絡むと途端にダメになってしまう性格がなければ良い父親なんですけどねぇ。ハァ』

 

アランが親バカっぷりを見せた途端に、冷めた視線と言葉をアランに送るアリア。弁明しようとするアランだが、アリアは取り合わずまるでいつも言っているかのようにスラスラとアランの親バカな性格にダメ出しをすると、額のあたりに手を当てながら下を向いてため息をつく。

そして、まだ朱いままの顔を新人に向けると『本当に私が欲しいの?......別にアマシタさんならいいけど』と、最後の方はか細い声となって彼には届かなくなったが彼にたずねると『違いますよ?』と、答えた。その瞬間『えっ』という二人の声とともに空気が凍った。もちろん二人とはアランとシャルロットである。

そこに、空気を変えようとするためにアリアが彼に尋ねる。

 

『なら、シャルロットに近づいたのはなんでかしら?理由を聞いても?』

『ええ、構いませんよ。少し恥ずかしいですが』

 

と、彼は表情は全く恥ずかしくなさそうに言うと、いつもの無表情のまま本命を言い始める。

 

『実は言うと、僕は初めてフランスに来たのでまだ友達がいないんですよ。ですからできればシャルロット(・・・・・・)さんと友達になりたいな、思っていたんですよ』

 

シャルロットは先ほどよりも顔が朱くなったが、新人をしっかりと正面に捉えて少し吃りながら新人に答えを返す。

 

『う、うん。()アラト(・・・)がいいなら、わたしも、いいよ?』

『本当ですか?それならシャルロットさんは僕のフランスでの初めて(・・・)の友達ですね』

『わ、わたしも、ア、アラトが初めて(・・・)の、お、お、男の子の友達だよ』

『そうなんですか。なら(ぼく)たちは少し違いますけどお揃い、ということですね』

『そ、そうだね。えへへ』

 

そう言って、幸せそうな顔をするシャルロット。だが対照的にアランの顔はシャルロットの幸せそうな顔をまた途端にまるでこの世の終わりのような顔をしていた。そこには本人は気づいていないみたいだが涙が流れていた。そんなアランを見たアリアは、『ほら娘の初めて(・・・)なんだから泣いてないで祝ってあげなさい』と、アランに対して追撃をしていた。アランの涙の量が増えた。

 

そんな感じでシャルロットの両親探しの旅(三時間程度)は終わった。

 

だが唐突に、「ピロロロロロロロ」という電子音がなった。どこから出ているのか辺りを見回すと音の発信源は新人であった。

すみません、と言ってその場から離れる新人。少し待つと帰ってきたはいいが、先ほどより様子が変わっており、顔は無表情のままだが青ざめており、その体は僅かにだが震えていた。三人は唐突な新人の変化に驚きどうしたんだ?と聞くが答えは『母さんから電話がきました』とごく一般的なものだった。ならなぜ彼がここまで震えているのかわからないでいると、そういえばと、シャルロットが切り出した。

 

『アラトって迷子だったよね』

『はい、そうです。両親に無断で出てきてしまったのです。それで母さんが怒っているんですよ。母さんは普段はおっとりした優しい人なんですが怒ると、とても怖いんですよ』

『怖いって、どのくらいなの?』

『それは、まるで鬼のようで......』

「へえ〜、誰が鬼なの?新人?」

「か、母さんこんにちわ」

「ええ、こんにちわ新人。それで誰が鬼のようなのかしら」

「そ、空耳ではないでしょうか?」

「そうかな〜?私は新人の口から聞こえてきた気がするんだけどなぁ?」

「そ、その、すいませんでした」

「まあ、今回は油断していこっちのせいでもありますし、いいですが次はないですからね?」

「ありがとうございます、母さん」

「それで、そちらの家族は一体誰なんでしょうか?教えてくれませんか新人?』

「はい、母さん。あの人たちはーーー」

 

唐突にやってきた新人の母親に驚きが隠せないシャルロットであったが、日本語でしゃべっているにもかかわらずなんとなく、アラトでもお母さんに怒られることってあるんだなぁ、と思って見ていたとか。そんなこんなで、新人が新人の母親に今までの経緯や事情を話すと、うんうんと頷いて『よく頑張ったわね〜、偉いわ新人』と手のひらを返すように褒めていた。今度はフランス語でだが。

この後は、お互いの親が少し世間話をした後今後ともよろしくといった感じで終わり、それぞれの帰路についていった。ちなみに世間話をしている間に、二人はまた明日会おうねということで、新人が指切りげんまんを教えて二人で約束をしていた。とても微笑ましい光景である。

 

 

こうして、新人の異郷の地フランスでの長い長い一日は終わりを告げていったのだった。

 

 

 

 

「おーい、新人!どこだぁー!!」

 

 

 

 

父親が帰ってきたのは十一時頃だったそうな。




追加の設定
新人君の好物ですが、お菓子の中では高価なものよりも駄菓子といったものが特に好きだったりします。特に好きなのはシガレットですね。作者も好きです。特に某星座の名前の会社が作っているコーラシガレットが好きです。
それと、友達の前だと自分のことを、自分だったり紳士的態度の時のように私と呼んだりせず、僕と呼びます。これは、信頼してるかしてないかで決めているだけなので(深い意味は)ないです。


そしてついに、お気に入り件数が二十件を超えました。とても嬉しいです。お気に入り登録をしてくださった皆様に多大なる感謝を。

そして、今回も感想を書いてくださったゴオー(5O5O9eo)さん、ありがとうございます。シャルロットの父親ですが親バカでした。それに母親の方も生きています。ここから、独自設定とタグにつけている通りに原作とは違う方向に進んでいきます。そして、前書きににも書いてありますがもう一度。作者の技量の低さによって新人の考えていることと第三者視点の語り手の人の考えが混じるという勘違いをさせてしまい申し訳ありませんでした。次はこういったことがないように書かせていただきます。


そろそろ新人の両親の名前決めなきゃ。え?父親の友人? もう連行おじさんでいいや。
ちなみに(デュノア夫妻に関しての名前はよくあるフランスの名前集から適当にとってきたので深い意味は)ないです。

次回でフランス編は最後です。ですが、作者は来週には期末テストということで勉強期間に入るため更新が遅くなる可能性が大です。
できる限りテスト前にフランス編は終わらせたいので、頑張りますがあまり期待しないで気長に待っていただけると幸いです


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異郷の地フランス 〜帰〜

書いていて糖分過多になりそうな作者です。フランス編だけで少し辛くなりました。さらに自分でその様子を想像し、文に起こしているのでダメージが結構デカかったり。でも、これがあと二、三回残ってるからIS学園編に入る前に力つきるかもしれません。


それと、前話でも書きましたが、テスト期間前なので今話で一度更新をストップさせ、テスト勉強に集中したいと思います。小説書いていてろくに点数取れないなんて真似だけは絶対にしたくありませんので。




タイトルどおり今話で日本に帰ります。ここで切るためにシャルロットには犠牲になってもらいます。それと、第三者視点の語り手さんにときどき作者の思考が入ったりしてますが気にせず見ていただいてくれると嬉しいです。


 

天下一家は仕事をすませた翌日に、パリの街へ観光に出かけた。その時は、シャルロット達デュノア一家を交えていろいろなところを観光した。エッフェル塔やエトワール凱旋門などなどの名所観光やシャルロットの希望でシャンゼリゼ通りで買い物をしたり、といった感じだ。観光をすませた後はデュノア家に招待され、シャルロットを助けてくれたお礼ということでパーティを開いた。新人に関しては、別にお礼はもうもらったから構わないと言おうとしたがシャルロットが涙目で『参加しないの?』と聞いてきたために断るに断れず、参加することになった。パーティと言っても会社などが行うような壮大なパーティではなく、少人数でやるための小規模なものだった(アランはシャルロットに頼まれたためデュノア社の現社長であるアランの父に会場の用意やコックなどへの依頼を頼もうとしたがアリアによって阻止された)。親は親どうしで話し合い、子どもは子どもはどうしで楽しく話したり、パーティに出された食事を美味しく食べていた。

 

先ほどまではフランスに来てから三日間の出来事であり、本来はあと四日も残していたのだが、新人の母親の方に仕事の依頼が回ってきてしまったのであった。それをシャルロット達に伝えると、『帰っちゃうの?』と聞かれてしまう。さすがに仕事は断ることはできないため新人の母親が申し訳なさそうな顔をしてシャルロットに謝ろうとするが、そこに新人が、

 

『大丈夫ですよ、シャルロットさん。僕たちはもう会えなくなるわけではありません。確かに遠く離れたところに行ってしまうのは変わりませんが、今は電話や電子メールといった遠く離れていても会話ををしたり手紙のやり取りをすることができます。時差があるために手紙や電話を受け取ることができない可能性もありますができる限りすぐに返信しますので。それに、世界は広いようで狭いとも言います。僕たちがフランスにまた来ることもあるかもしれませんし、もしかしたらシャルロットさん達が日本に来ることがあるかもしれません。ですから、もう会えないということはないんです。だから安心してください』

 

と言いながら途中からシャルロットの頭を撫で始めて説得をする。シャルロットは顏を朱くしながら『う、うん』と答えるとそのまま縮こまってしまった。どうして縮こまったのか新人にはわからなかったがとりあえず説得が成功したのはわかったようだ。

その後ろでは、新人がいつの間にか女たらしになっていると、泣きながらどこで育て方を間違えたのか思い出している父親と、あらあら、新人は何人のお嫁さんと結婚するのかしらと、微笑ましそうに見ている母親の姿があったそうな。

 

そんなこんなで帰省当日。天下一家を見送るためにデュノア一家も一緒空港へと来ていた。しかし、そこには昨日説得したにもかかわらず泣いていたシャルロットがいた。それを見た新人は周りに大勢の人がいるにもかかわらずシャルロットを優しく抱きしめた。本人がこうすれば小さい子は泣き止むと、いつもの前世知識を働かしてしまったためである。それを機に空港は大盛り上がり。別れてしまう二人が将来どうなるのかの話で盛り上がった。この中には先日訪れた喫茶店にいた人もおり、彼らを見つけると周りの人にこの二人は既にできてる、といったことを言いふらしていた。全くもって下世話な奴らである。さて、話を戻そう。そんな感じに周りが湧いていることを知らない二人は、どうしてるかというと、

 

『ね、ねえアラト。わたしのこと次からシャルって呼んでくれないかな?』

『別に構わないですがどうされたのですか?』

『わたしね、もっとアラトと仲良くなりたいなって思ってて、それで、あ、愛称で呼び合うのって仲が良くないとできないってお母さんが言ってたから...その...ア、アラトにそう呼んで欲しくて・・・』

『わかりました、シャルさん』

『う、そこはさんは外して欲しかったかな』

『すみません、こればかりはもうどうしても抜けない癖のようなもので、どうしても治らないんです。ごめんなさい』

『う、ううん。別にいいんだ。シャルって呼んでくれればそれで......それでアラトはなんて呼べばいいかな?』

『僕ですか?う〜ん、それなら新人からあを抜いてラトでどうでしょうか?』

『ラト!』

『はい、なんですか?シャルさん』

『うん、いいと思うよ。ラトって。覚えやすいし、それにすごく似合ってると思うな』

『そうですか。それはありがとうございます』

 

誰か塩をください、さすがに何回もこれ見せられてると口の中がががががが

 

ふう、失礼。取り乱しました。こうして、糖分たっぷりな空間を作っている間にも時間は過ぎ去っていき、新人の母親からもう時間だと告げられる。すると、シャルロットはあらかじめ用意しておいた紙をポケットから出して新人に渡していた。

 

『これ、わたしの家の電話番号だから、その、日本に着いたら一番にかけてね?』

『はい、わかりました。日本に着いたらすぐさま連絡しますよ』

『うん、それじゃラト』

『はい、また(・・)会いましょうシャルさん。お元気で』

『うん!またね(・・・)ラト!』

 

 

 

 

こうして天下一家初のフランス旅行は終わりを告げた。日本に着いて空港を出た後、新人はすぐにシャルロットへと電話をかけた。シャルロットは少し空港であった時より元気のない声ではあったものの、新人が、そういえば自分から抱きしめたのはシャルさんが初めてですね、というと慌てたような声をしてシャルロットが電話を切る旨を伝えると、電話は切れ、その後に電話がかかってくることはなく新人たちは家に着いたらしい。電話の時に新人が初めての件に関して話していた時にシャルロットは顏をまた朱く染めており、電話が終わった後もその場にへたり込んで顏を綻ばせながら、アラトの初めて、またアラトの初めて、うふふふふふふふ、なんて言っていたらしいがそれを本人以外は知る由もなかったという。ちなみに、何故シャルロットが初めてなんて言葉に敏感になったかというと、シャルロットの母親が初めての意味と重要性を教えてしまい、シャルロットが新人の初めてが手に入ることを喜ぶようになってしまったらしい。まさに大人階段を上る、というやつである。

 

まあ、こうしてフランスでの幕は閉じられた

 

だが、日本に戻っても、新人の奇妙な運命は続くどころか始まったばかりなのだと気づかせられるのはもう少し後になる





新人君、空港にて大胆な行動に出ました。仕方ありませんね。まだ彼も子供ですから。ですが作者の口に砂糖の塊を放り込むのは遠慮していただきたいですね。ま、このあともこんな展開が続くのですが


そして、UAが2000回を超えました。皆さんがこの小説を読んでくださっているというのがわかってとても嬉しいです。

お気に入り登録も増えてきていますし、ありがたいことです。




次回は珍しいあの人との遭遇を書こうと思っています。


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日本人と中国人 〜転校生〜

木曜にテストが終わってから一週間。ようやくあげれました。時間がかかった理由は、FGOしてたり新作カルドやってたり、steamで400円で買えたL4D2してたりしていたせいです。待ってくれていた方がいらっしゃったら申し訳ありません。

他にも書いた話が主人公の性格上こうならないと判断したり、この話いらないなってなって、二回くらい書いた話を没にして今話ができました。


?「前話では珍しいあの人との遭遇と言ったな」
作者「ああ、そうだ。でも話の都合上仕方なかったんだ!俺は悪くねぇ!」
?「そうか(作者の頭をつかむ)」
作者「な、なにをするきだ!?は、はなせ!」
?「貴様は最後に殺すと言ったな」
作者「あっ(察し
?「あれは嘘だ(掴んでいた手を離す)」
作者「うワァァァァァァァァァぁぁぁぁぁぁ


茶番すいませんでした。そして珍しいあの人との遭遇も無くなりました。すいません
今話はタイトル通り日本人と中国人との出会いです。
前と同じように『』内の会話は中国語で話しています


白騎士事件

 

新人たちがフランスから帰ってきて4年経って新人が小学3年生になろうとする春休みのことである。小学生になりおとなしくなってきた(かわりに食欲が増大)新人が両親と北海道へと旅行に出かけていた時のことである。

 

とある十二カ国から日本に対して2341発のミサイルが発射された

 

それを白騎士というISーーー篠ノ之束が開発した、インフィニット・ストラトスというパワードスーツが全て撃墜

 

被害者ゼロ(・・・・・)という功績を残して姿を消した

 

ここまでが一般人に公開された情報である。2341発のミサイルを全て撃墜し被害者ゼロを成し遂げた白騎士は今ではものすごい人気を誇り、たまたま写真を撮った人たちからの情報を搔き集めてプラモまで作られるほどだ。

だが、それは何も知らない人たちの反応であり実際は、家屋にミサイルの破片が直撃したり、学校の校庭に突き刺さっていたりと知らないところで被害は出ているものである。その中に新人たちも含まれており、帰ってきた新人たちを迎えたのは、ミサイルの破片によって縦に真っ二つになっていた、い/え、だった。そのため、祖父母の家に引っ越すことになった新人は下園くんやその他学校の仲の良かったメンバーに別れを告げて、祖父母の家に引っ越した。なお別れを告げてきたメンバー曰く、「新人だったら引っ越し先からここまで走ってこれるだろ」「まあ、いつも学校来るのに4キロ走ってきてるからな」「しかも最初は辛そうにしてたけどいつの間にか平気そうになってたし」「ちくわ大明神」「だれだいまの」といった感じで、別段別れを惜しむことなどなくそれどころかボケをかますくらいである。下園君は「別に今生の別れってわけでもないし、電話とかで会話もできるしな。別に気にしてないわ。ただ、うちのは安全だったけど、違うところに行くと面倒な奴とかいるだろうから気をつけろよ」と、あの隠れてゲームをして親に見つかった人間とは思えないほどの成長っぷりである。

 

そんな感じで

 

「二重ノ私立極小学校からきました、天下新人と言います。趣味は色々な食べ物を食べることと、走ることです。これからよろしくお願いします」

 

パチパチパチパチ

 

「新人くんの席は真ん中の一番前の席ね。あともう一人転校生がいるんだけど遅れてるみたいね。少し待ちましょうか」

 

コンコンコン

 

「あら、来たみたいね。入っていいわよ」

 

ガラガラガラ

 

全員が開けられた扉に視線を向ける。そこには茶髪のツインテールで周りの生徒よりも少し背の低い少女が立っていた。が、その表情は緊張のせいかあまり良くなく、まさに困ってますといった感じの表情をしていた。

先生の手まねきに気づいて教室に入ってくるも表情は優れないまま、どうすればいいの?と視線がさまよっていた。

 

「それじゃあ、自己紹介してくれる?」

「ハ、ハイ。ワカリマシタ・・・・・・

中国カラキマシタ。(ふぁん) 鈴音(りんいん)ト、イイマス。アマリ、ニホンゴシャベレナイケドナカヨクシテクダサイ」

「はい、ありがとう。今言った通り鈴音ちゃんは中国人で日本語をうまくしゃべれないけど仲良くなれないわけではありません。ですのでみんな、仲良くしてあげてね」

 

ハーイ

 

「よろしい!それじゃ、鈴音ちゃんはちょうど空いてるし新人くんの席の隣の席に座ってね」

「あ、ハイ」

 

新人の隣の席に座った鈴音は、新人に対して軽く会釈をすると新人は、

 

『天下新人と言います。これからよろしくお願いしますね、鈴音さん』

 

中国語で返事を返す。すると、鈴音の顔は少し驚いたような表情をして新人に尋ねる。

 

『もしかして、あなたも中国人なの?』

『いえ、自分はある程度中国語を喋れるくらいで日本人ですよ』

『すごいのね。この歳で中国語も喋れるなんて』

『鳳さんも、すごいと思いますよ。海外の人からは日本語はとても難しいと言われてますが、カタコトとはいえしっかり話すことができる人ってあまりいませんから』

『そうなの?それを聞いて少し安心したわ。ありがとね』

 

周りの生徒や先生を置いていって会話を続ける二人だが周りの視線に気がつくと会話をやめて先生の方を向いた。

 

「新人くんすごいのね。中国語を話せるなんて」

「いえ、少し齧った程度なのでまだまだうまく話せないですよ」

「それでも鈴音ちゃんが言ってることがわかるのはすごいことよ。 ・・・そうだ、天下くん、鈴音ちゃんの通訳を頼んでもいいかしら?彼女もまだ日本語を聞いてもわからないと思うから」

「はい、わかりました」

『ちょっと、さっきから何を話してるの?』

『鳳さんがまだ日本語に慣れてないので先生に、通訳をしてサポートしてくれと言われました。ですので鳳さんが日本語に慣れるまでの間は二人で行動することになると思います。必要ないなら先生に伝えますが』

『いや、お願いするわ。まだしっかりと喋れる自信がないから』

 

自己紹介なども終わって休み時間。新人と鈴音に近づいてくる二人の人がいる。2人は日本語で話すときはどうするか、ということで話し合っていたのだが二人が近づいてくることに気づくと、体をそちらに向ける。

 

「なあ、ちょっといいか?」

「ええ、構いませんよ。それでなんのご用でしょうか?」

「ああ、自己紹介しないとな。俺は織斑一夏(おりむらいちか)って言うんだ。よろしくな」

「そんで俺が五反田弾(ごたんだだん)だ。今日から同じクラスメイト同士仲良くしようぜ」

「そういうことですか。では改めて天下新人です。今日からよろしくお願いします」

「エ、エット?鳳鈴音デス。ヨロシクオネガイシマス」

「おう、よろしくな!」

 

こうして、新人は鳳鈴音と織斑一夏と五反田弾の三人と知り合いになっていった。

 

 

 

 

そして、転校してきてから約一週間がたった放課後のことである。新人が日直の仕事を済ませに職員室まで行き、教室に荷物を取りに行こうとしたときである。教室の中から三人くらいの男子の声と、涙声のような女の子の声が新人の耳に入ってきたのは。




FGOで星4サバ以上をひけない呪いにかかっている作者です。タマモキャットが霊気再臨三段階目までいきました。

最近まったく書いてなかったので新人くんをしっかりかけているか心配だったりします。それと小学校の名前に関しては完全にネタです。

こんな時間に書いたので誤字とかなんかおかしい部分があるかもしれませんがあったら指摘してくれると嬉しいです


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日本人と中国人 〜イジメ〜

どうもFGOで初めての星4以上確定演出を見て茨城童子さんが来た作者です。とても嬉しかったです。

FGOのイベントで討伐対象の残り時間が今日までというのを見て急いで討伐ポイントを集めて最後まで集めてギリギリ終わったと思ったらただ、二週目が始まるからいったん仕切り直しになるだけと知って、えぇ〜となったのは内緒です。

それと、ネタで淫夢語録?でしたっけ?そんな感じのセリフが入ってしまっているのでもし、(淫夢とかいら)ないですとか、邪魔すぎる・・・修正が必要だ...という人がいれば消して欲しいみたいなことを誤字報告とかで報告してくれれば修正します。


今回は鈴さんのあのシーンの話です
前回と同じで『』内は中国語となっております


 

「パンダのりんりんちゃんはなんで日本にきたのかなぁ?日本語も全然話せないくせに」

「パンダは早く中国が動物園に帰りなよ」

「そうだゾ(便乗)帰ってどうぞ」

「う、うぅ」

「おっ、パンダが泣いたぞ。俺初めてパンダが泣くの見た」

「もっとやれば大泣きになるかもね」

「おっ、そうだな(便乗の二乗)」

 

教室の中では男子三人が鈴音に対してパンダだの中国に帰れだのと言って鈴音をいじめて楽しんでいる。鈴音は少しばかり日本語に慣れてきたために彼らの発言の意味を理解してしまっている。それがまだ日本に来てそれほど経っておらず、慣れない生活や文化によるストレス、家族と新人以外の人間との会話がうまくできない不安感。そして、そんな不安定な状態の鈴音に三人のうちの一人が放った言葉は深く突き刺さる。

 

「もしかしたら、あの新人とかっていうやつもめんどくさいとか早く消えねぇかななんて思ってんじゃねえの」

 

その言葉に焦りと不安の感情で押しつぶされそうになる。もし、新人が本当にそんな風に考えていたらどうしようという、考えが頭の中を何度も回り続ける。幼いがゆえに未成熟な精神と思考を今までの男子三人組の発言とストレスがすり潰そうとしてくる。いい返そうにもなにもできず、鈴音の表情は悔しさと不安によってさらに歪んでいく。それをみた三人組がさらに鈴音に追い打ちをかけようとしたその時である。ガラガラガラと教室のドアが開かれる音がなった。先生か!?、と振り向く三人だが開けられたドアの場所には先生ではなく新人が立っていた。鈴音は新人があらわれるもまったく安心できず、それどころか不安はさらに倍増した。先生ではないことに安心すると、新人に鈴音が勝手に泣き出したから慰めようとしたけど泣き止まなくて困っていると嘘をついた。鈴音はそれを否定したかったが先ほどの言葉に、新人が本当は迷惑だと思っていると思い込んでしまい、新人に対して声をかけれなくなる。来ないで欲しい、そんな鈴音の気持ちとは裏腹に新人は、そうですかと呟くと鈴音のもとに近づいていく。

新人は鈴音の前に立つ。鈴音は泣き続けている。そして新人は

 

「えっ?」「「「は?」」」

 

あの時(・・・)のように鈴音を抱きしめていた。

 

『大丈夫ですよ。自分は鳳さんの味方ですから。困ったことや辛いことがあったら話していいんですよ。頼っていいんですよ』

『ほんどゔに?』

『はい、ですから泣き止んだらでいいので泣いていた理由を聞かせてくれませんか?話してくれれば少しは少しは楽になると思いますから』

 

新人はそう優しく言って鈴音が泣き止むように語りかける。鈴音は思いの外すぐに泣き止んでいた。が、その心の中はまだ新人が面倒と思ってないかという疑いが晴れないままである。

 

『ねえ、新人』

『はい、なんでしょうか?』

『新人はわたしのこと迷惑だとか、めんどくさいとか思ったりしてない?正直に言って欲しいの』

『いえ、そのようなことはまったく考えたことはありませんよ。それどころか、新しく転校してきた場所で友達を作れるか心配してましたけど鳳さんや織斑くんたちが友達になってくれましたので鳳さんには感謝しているんですよ。この学校での初めての友達ですから』

『そ、そう。ならいいんだけど』

 

いつものように無表情で感謝の言葉を告げる新人。その言葉に鈴音は少し顔を赤らめながら、戸惑いを含んだ声を返す。その心の中では、初めての友達や先ほどの抱きしめられたことで埋め尽くされ、新人が面倒伝々の話は完全に消え去っていた。だが、後ろの三人がここで新人の突飛な行動にフリーズしていたが復帰し、二人の空間を邪魔するかのように新人を指差しながら大声を出してくる。

 

「な、なんだよお前ら。付き合ってるのか!?お前そこのパンダのことが好きなのかよ!?」

「こいつはケモナーですね間違いない」

「せやな(適当)」

 

一人は失言をしながらまるでスクープを見つけたマスゴミのようなゲスい顔をし、他の二人はよくわからない適当なことを言っていた。それを聞いた新人は三人の方を向いてリーダーっぽいに問いかける。

 

「パンダとは誰のことですか?」

「お前のすぐ後ろにいる奴のことだよ!お前、そいつのこと好きなのか?」

 

リーダー格っぽいやつがゲスい顔をしながら人をからかうのが好きな小学生のようなことを言ってくる。それに対する新人の答えは、

 

「ええ好きですよ」

「「「「!?」」」」

 

まさにラブコメ主人公のようなセリフをあいも変わらずの無表情で言った。もちろんこれは鈴音にも聞こえており、意味を理解して顔を朱く染め上げる。そして新人はこれに気付かない。三人組はまたもぽかーんとした顔になるが今度はすぐに復帰し、

 

「お前何言ってんだ!?パンダだぞパンダ!それなのに好きなのかよ!?」

「まさかガチのケモナー?」

「これもうわかんねぇなあ」

「なぜ鳳さん=パンダなのかは知りませんがいいじゃないですか、パンダ。自分は可愛いと思いますけど」

「「「・・・」」」

 

もう、三人は何も言えなくなっていた。まさしく絶句といったところだろう。鈴音もパンダや可愛いと言ったことはことだけはなぜか都合よく聞こえており少し治まりかけていた顔の色がまた朱く染まっていた。もうパンダでもいいかもしれないと思いかけてしまっていたが、さすがにパンダは嫌だなぁと一人微妙な心境にもなっていたりした。

「三人は帰らなくてもいいんですか?そろそろ下校時間を過ぎてしまいますよ?」

「ち、ちくしょー!覚えてろよ〜!」

 

と完全に負け犬のセリフを吐きながら教室から出て行くリーダー格っぽいやつ。それに続いてあとの二人も教室から出て行く。彼らは次の日にカバンを学校に忘れたバカと学校中に広まったとかなんとか。それを見て、自分たちも早く帰りましょうかと言って鈴音の方を向く新人。鈴音はすでに顔の赤みは治っており、それに対してう、うんと言うと二人は荷物を持って下校していく。

 

下校している途中で鈴音は新人にね、ねえと声をかける。どうかしましたか?と新人が言うと、つ、次からわたしのことり、(りん)って呼んでくれないかしら?と少し俯きながら話す鈴音。では、鈴さんでいいですか?と新人が尋ねると、顔をこちらに向けて嬉しそうな顔をしながらうん!と答える鈴がいた。

 

この後、一ヶ月も経たないうちに鈴が日本語を上手に扱えるようになって、織斑たちや他の生徒とも仲良くなっていった鈴がそこには居たそうな。





なんか前と似たようなことを書いた気がする。あれデジャビュかな?使い回し乙とか言われそう。

UA見たら4000回を超えててお気に入りを見たら60人超えてて驚きました。いつも読んでくださっている方ありがとうございます。この作品を読んで楽しんでいただけたら幸いです。

そして今回初めての感想を書いてくださったマス大地さんありがとうございます。楽しみにしていると書かれていて一夏さんのところからは七人中三人が新人くんの方に行きます。というか三人も抜けてまだ一夏さんの方が人数多いってどういうことなの?まるで意味がわからんぞ!次の話でそのもう一人に会いに行く予定です。

そして、原作ファンの方には申し訳ないですが原作主人公を出したはいいけど完全に空気になってますね。これは作者の実力不足です。申し訳ないです。本当はもう少し会話させようと思っていたのですが、なんか俺の中のシュタインズゲートがださんでええやろなんて選択はをとったんや。だから俺は悪くねえ!!(大矛盾)

ごめんなさいほんと冗談です許してください次話をできるだけ早く投稿しますから!

深夜テンションでネタのオンパレードになってるような希ガス。まあ、それより今回アンケートを取りたい事案があるので活動報告にてアンケートをやります。内容は活動報告の方を見てください。これによって本編が変わりますが適当に答えてくれて構いません。


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モンドグロッソ 〜相談と誘拐〜

ようやく投稿できました。今回は構想練るのにかなり時間をかけてしまいました。ああでもない、こうでもないを何回もしてました。

今回は時間軸上、鈴さんとの別れではなくドイツに行くことになりました。

そんなわけでドイツのあの子が登場です。
今回も『』のなかは外国語(ドイツ語)になっています。


 

(りん)のイジメがあった日からまた三年が経った。その間に新人(あらと)たちは小学六年生になり、新人たちが四年生のときにISの世界大会、第一回モンド・グロッソが開催され新人の友人である織斑一夏(おりむらいちか)の姉、織斑千冬(おりむらちふゆ)が覇者としてブリュンヒルデの称号を獲得していた。それよりも前に新人の祖父母の家と織斑家はお隣さんだという事実が発覚したり(発覚するのが遅れたのは新人が一夏より早く登校し日直の日以外では一夏より早く帰っているから二人とも相手の家の位置を知らなかったためである)、鈴が日本語でしっかり会話することができるようになったり、長期休みに下園くんたちに会いに行ったり、そのときに一夏たちと友達になったことを下園くんに伝えたら驚かれたり、体を鍛えたり、シャルロットと電話したり、鈴や一夏たちと遊んだり、一夏とその姉の千冬に剣道を勧められたが断ったりと色々あった。

その三年間で、特に目立つのは第一回モンドグロッソで織斑千冬が優勝してから世界的に大きくなった女尊男卑思考、そしてそれを広げようとする女性利権団体である。ISを唯一扱うことのできる女は偉い。男なんかより遥かに尊い。女が男に命令し男はそれに従わなければならないのは当たり前。そういったことをまるで当然のように謳い、日々信者を増やしていっている団体で、新人たちのクラスにもそういった人間が増えていっているのである。ただ、鈴はそういった思考は好きではなく逆に嫌いだと言って変わらずに過ごしている。

 

そして唐突だが、今日は第二回モンドグロッソの決勝戦である。一夏は応援できて欲しいと鈴たちに頼んだのだが用事があると言われ、そこで新人に白羽の矢がたったのであった。頼まれた新人は一言、いいですよと言って了承した。そのあとに、電話で下園くんに今度のモンドグロッソに行くかを聞かれ、新人が今決まったことを伝えるとすぐに家に来てくれと言われた。下園くんと話をして帰った後、新人は親にドイツに行くことを伝えると、まあ大丈夫だろうとなって、ドイツへ行く準備をして一回戦と二回戦の試合前日に到着。そして、見事一回戦、二回戦と準決勝まで快進撃を続け、今に至る。

 

「一夏くん。僕は試合まで時間があるので少し散歩してきますが、一夏くんはどうしますか?」

「ん〜、俺は千冬姉のとこに行こうかな。最後の試合前だし、その後は会場で待ってるよ」

「そうですか。では試合5分前にはそちらに着くように行ってきます」

「おう、遅れんなよ」

「大丈夫ですよ。それよりも渡したお守り落とさないでくださいね」

「わかってるって。そんじゃまた後でな」

 

そう言って新人はドイツの街に繰り出す。街はISの登場やモンドグロッソの開催地になっているため日本語でしゃべる人や案内板が作られている。まだ朝食を食べてない新人はそこらへんにある飲食店の出店で朝食を買うとベンチに座って買ったものを食べ始める。なかなかに美味しかったのでもう一個買ってから、公園へと向かう。公園にはモンドグロッソの決勝戦があるせいか人がほとんどおらず、銀色の髪(・・・・)をした少女が一人だけ俯いてベンチに座っているだけだった。

 

『失礼、お隣よろしいですか?』

『あ?あ、ああ、どうぞ』

 

少女になんだこいつは、みたいな目で見られるも新人は特に気にすることはなく座ると、少女もすぐに視線を下へと落としていった。少しの間沈黙が流れる。そして、

 

『なにか悩み事がおありですか?』

『・・・・・・』

『もしよろしければ話してみてはどうですか?悩み事は知らない人に話してみるともしかしたら解決したり、少しくらいですが気が楽になったりしますよ』

 

新人が口を開く。唐突にあなたには悩みがあるなんて言われてもなに言ってんだこいつ、としかならない。この女尊男卑の世界となった今では特にそうだ。だが、少女は

 

『本当に悩みが解決するのか?』

 

あまりにも純粋すぎた。まるで、おじちゃんについてきたら飴ちゃんをあげるよと言われそのままついて行ってしまう子供のように。

 

『絶対に解決するというわけではありません。ですがもしかしたら解決の糸口やなにかを発見することがあるかもしれませんよ』

『そうか……なら、私の話を聞いてくれないか?』

『はい、よろこんで』

 

彼女の話はこうだ。彼女は少し特殊な環境で育ったために軍に所属している。そこではいつもトップの成績をおさめ、優秀な兵として活躍してきた。だが、二年前にISが軍の中で主流になってから彼女はとある手術を受けた。それを受けてから、体力は手術前から圧倒的に落ち、反射神経なども格段に落ちた。そしていつの間にか成績は一番下になっており、周りからは無能の蔑まれるようになった。彼女の育ての親は軍の中でかなり偉いらしくその人のおかげで何とか軍に居られるがそれも時間の問題らしい。育て親のためにも、訓練を頑張っているらしいがなかなかもとの体力には戻らず、連日続けで心配になった育て親の人が休暇を出したらしい。少し休めとのことだった。ついでに近々モンドグロッソが開かれるからそれを見て参考にでもしなさいと言われたらしい。そして、それを自分に相談して今に至るとのこと。

 

『ふむ。難しい問題ですね。少し待ってくださいね』

『いや、わからないなら無理に答えを出そうとしなくてもいいさ。私としても悩みを話せて少し気が楽になった。ありがとう』

『すみません。自分から相談してみてはと言ったのにこんなザマで。自分の親友ならもしかしたらこの相談に最的確な答えを出してくれると思うんですが』

 

と、悔やむ新人。だが仕方のないことでもある。ただの小学六年生がこんな質問に最的確な答えを出せるはずがないのだから。新人が、悔やんでいると新人のポケットから「ピロロロロロロロ」と携帯の着信音が鳴る。失礼します、と言って少しベンチから離れて携帯の着信にでる新人。そこからは先ほどの話に出ていた親友の声が聞こえてきた。

 

「おい、新人。今どこにいる?」

「どこって、ドイツのモンドグロッソの会場がある街にいますが」

「そういうことじゃない。その街のどこにいるかを聞いているんだ」

「えっと、会場から少し離れた公園ですね。人はほとんどいませんが」

「そうか、なら話しやすいな。いいか新人、よく聞いてくれ。

 

織斑一夏が誘拐された」

「それは本当ですか?」

「ああ、ほんとのほんとだよ。今会場から車で移動してるっぽいな。かなりの速さでどこかへ向かっている」

「なぜそれを下園くんが?」

「お前に織斑一夏に渡しておけって言っておいたお守りがあったろ、あれの中にGPSの発信機を入れておいた。何となくだけどこうなることは予測できたからな」

「そうですか、それでどこに行けば?」

「はぁ、お前誘拐犯に一人で立ち向かう気か?さすがにそれは無謀すぎる。確かに俺たちくらいの歳じゃ、いたずらかもしれないって切られるかもしれないし、会場警備で忙しいとか言われて無視されるのがオチだろうな。信用やそういった関係のコネもないし」

「ですから一人で…」

「行かせると思ってんのか?周りに誰か頼れる人はいないのか?」

 

頼れる人、そういえば彼女は軍に入っていると言っていたのを思い出す新人。しかも、偉い人と繋がりがあると言っていたからもしかしたらと、彼女に話しかける新人。

 

『すいません。少し唐突ですがよろしいでしょうか?』

『どうかしたのか?私でよければ力になるが』

『会ってすぐの人にこう頼むのもおかしいと思いますが、お願いします』

 

そう言って、事情を話す新人。彼女は真剣にその話を聞いてくれた。

 

『事情はわかった。少し待ってくれ。あの人に頼んでみる』

『本当ですか。ありがとうございます』

 

表情も声色も変わってはいないが新人は深く感謝をしていた。彼女は自分の携帯を取り出して電話をかける。そして何回か喋っていると、彼女が誘拐された人物の名前を聞いてきた。新人は織斑一夏ですと答えると、少女は電話の相手に同じように伝える。すると、何秒か経ってから突然少女は驚いた顔をしてこっちを向いてきた。

 

『な、なあ。もしかして織斑一夏ってあの織斑千冬の弟のことか?』

『はい、そうですが』

『な、なら今すぐ織斑一夏の場所を教えろとのことなんだが』

『えっと、すいません。少し待ってください』

 

と言ってから、新人は下園くんに位置情報を送ってくださいと頼む。データはすぐに送られてきてそれを少女に伝える。少女は電話の相手に位置やまだ動いてることを伝えると携帯を耳元から外してこちらを向いた。

 

『協力感謝するとのことだ』

『そうですか。では』

 

と言って走り出そうとする新人。だがその手をすぐに掴まれて動くことができない。

 

『どこへ行くんだ?これ以上私たちにはできることはない。足手まといになるだけだ』

『一夏くんの動きが止まりました。つまりそこに捕まっているわけです。ここからなら走って十分もあれば、すぐにたどり着けます。軍の人を待つよりも早く行けます』

『お前一人が言って何になるんだ!子供一人が大人相手にかなうはずがないだろう!』

『ですが見過ごすことはできません。大切な友達ですから』

『装備もなしに突っ込んでいって犬死したいのか貴様は!』

『別に構いません。一夏くんを助けられるならそれで』

『くっ…この分からず屋!』

『それでは、さよならです。あまり悩みの解決を手伝えなくてすみませんでした』

 

そう言って走り出そうとする新人であったが、『待て!』と大きな声で後ろから呼び止められた。

 

『私は軍人だ。一般市民が一人で誘拐犯に立ち向かおうとしているのを黙って見過ごすわけにはいかない。私もついて行くぞ』

『そうですか、ありがとうございます。では行きましょう』

『待て、これから誘拐犯のところに行くのにお互いの名前も知らないんじゃ連携も取れない。お前の名前を教えてくれ』

『自分の名前は天下新人(あましたあらと)といいます。貴女は?』

『ラウラ・ボーデヴィッヒだ。行くぞ新人』

 

そう言って二人は一夏がいるであろう場所へと向かっていった。





というわけでラウラさんの登場です。正直話し方がこれで合っているのか不安になってます。

そして、新人くんがいつもなら取らないような行動(作者の中では)を取っています。これは新人にもまだ焦りや心配などの感情が残っていることを表すためです。彼は表情や声色に変化がないだけで実際のところは一部感情などはしっかりと残っています。フランス編ではそれが少しは出ていると思っています。下園くんに関してはどうして発信機なんか持ってんのかとかの疑問がわくと思いますがこれは、IS学園に入ったらわかります(正確には福音戦あたりで)
突っ込みどころはそれ以外にもあるかもしれないですが感想とかで書いてくれると嬉しかったりします。


UA五千越え。お気に入り70件越え。そして、いつも読んでくださっている皆さまに感謝を。


次回は一夏のくん救出です。

ワンサマ「また俺の出番少ないな」
作者「ごめんなさい。たぶんIS学園に入ったら出番増えるからもう少し待ってください」
ワンサマ「出番あるならいいけど早くIS学園編まで書いてくれよ」
作者「あ、それは無理です。この後初めて戦闘シーンとか書いたり他の話も書かないといけないんで」
ワンサマ(そっと雪片弐型を構える)
作者「ま、まて。話せばわかる!交渉を!


アッーーーーーーー!!」

くだらない茶番申し訳ないです。次回も早く書けるように頑張ります。


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モンドグロッソ 〜発見と接敵〜

キリがいいところ?まで書けたので投稿。

少し糖分が不足した状態で書いたので違和感があるところがあるかもしれませんが、もしよければ感想などで指摘してくださると幸いです。

今回だけじゃ一夏くん助けれなかったよorz
ふがいない私を許しておくれ


 

公園から約5km離れた廃工場

 

「うっ、ここは・・・どこだ?

なんで俺はこんなところに、っ!」

 

一夏は目を覚ます。だがそこは大会の会場の中という雰囲気はなく、錆びれた地下のような場所だった。薄暗く人の気配もない。一夏が立ち上がろうと手を動かすとジャラン、と金属音がなった。手に視線を動かすとそこには、手首の部分に腕輪のようなものが付いていた。そこから鎖が後ろへと伸びており一定の範囲しか動けないようになっていた。

 

「なんだこれ、どうなってんだよ。

だれか、だれかいませんか!」

 

一夏の叫びは虚しく室内は静寂を保ったままだ。一夏はどうしてこうなったのかを思い出す。

たしか、新人と別れたあとに千冬姉に会いに行ったんだ。そのあとは会場に行って時間があったからトイレに行って、そこでいきなり後ろからハンカチで口を塞がれだと思ったら急に眠くなったんだったよな。あれ?これ、誘拐されてね?流石に今まで弾や新人に鈍感って言われてたけどこれは流石にわかるぞ。なんか鎖も付けられてるし。やばいなこれ、どうしようか。一応鍵穴があるからだれかが鍵を持ってるんだろうけど今の俺じゃ何もできないし。だれかが助けてくれるのをただ待つのはごめんなんだけどなぁ。

一夏がそう考えていると、ザァーと部屋の扉が開けられだれかが中に入ってきた。

 

「なんだ、ガキ。起きてたのか」

「なら寝かしといてやるか。その方がうるさくなくて済む」

「な、なんだよあんたら。俺をどうする気なんだ?!」

「はあ、やっぱりか」

「うるさいぞガキ。少し寝てろ」

 

そう言われ一夏は抵抗する間もなく首に何かを押し付けられると、バチィという音とともに意識が刈り取られうつ伏せに倒れた。

 

 

 

 

 

『着きましたね。ここに一夏くんがいるはずです』

『そ、はあ、そうか、はあ、なら、はあ、はやく、行くぞ』

『だから途中で無理しないでくださいと言ったじゃないですか』

『う、うるさい、はあ、まさか、ここまで、体力がないとは、思ってなかったんだ』

『これから敵地へと潜入しますけど大丈夫なんですか?』

『弱っていても私は軍人だ。それくらいこなしてみせる』

『そうですか。ならはやく行きましょう。一夏くんが心配です』

『まあ待て。何も作戦を立てずに行くのは自殺行為だ。最低限ハンドサインや万が一私とお前が分断されてしまった時の行動パターンを決めよう』

 

二人はおよそ10分かけてハンドサインなどの作戦を決めると工場の裏口からゆっくりと中へと侵入していく。中は薄暗くドアのガラス越しに入ってくる光以外の明かりがない。二人は慎重に歩を進めて行く。途中でたまたま落ちていた鉄パイプを拾い、何度か誘拐犯の仲間たちをやり過ごしながら奥へ奥へと進んでいく二人。そして二人には扉が開いている部屋から男性二人の声がするのが聞こえてきた。

 

「にしてもこのガキはどうするんだ?あの女の弟とか言ってたけど人質としての価値がなくなったら邪魔にしかならん」

「別に殺していいんじゃないか?ドイツの国の連中も自分の首を自分で締めるなんてことはしないだろうしな」

「まっ、とりあえずこいつは用済みになったら殺すでいいんだな?」

「ああ、それで構わん」

 

新人たちはこっそりと部屋の中を覗くと、薄暗く二人の人が部屋の奥の方を見ながら一夏の処分について話していることがわかった。声から男だということと一夏がここにいることもわかった。

 

『どうしますか?助けるにも二人の見張りがいますが』

『ああ、後ろから奇襲を仕掛けて鉄パイプで一撃で仕留めたいが成功させれるかイマイチだな。確実に気絶するとも限らないわけだしな』

『ボーデヴィッヒさんは銃などは持ち合わせてはいませんよね?』

『生憎だが私は銃やナイフは休暇中で持ってない』

『そうですか。ならボーデヴィッヒさんはここで見ていてください。自分がやられたらすぐにここから出てドイツ軍の人たちが来るのを待っていてください』

『なっ!貴様一人で戦う気か!』

『ええそうです。自分一人なら行けば成功で無事救出、失敗なら人質か死体ができるだけでボーデヴィッヒさんが生き残りドイツ軍の方々に正確な情報を伝えることができます。ですが二人で行って失敗した場合、自分はともかくボーデヴィッヒさんがどうなるかわかりますか?』

『ど、どうなるんだ?』

『まずはひどい暴力を受けますね。そこから性欲のはけ口にされます。相手が紳士なテロリストならそんことはしないと思いますが、可能性はゼロですね……といってもこれは自分の友人からの受け売りなんですが』

『そ、そうか…だが私は軍人だ。一般人だけに任せてはおけない』

『わかりました。では自分が一人で先行して一人を奇襲で潰します。そうしたらもう一人はこっちに意識が向くか一夏くんの方へと意識を向けると思いますのでその間にボーデヴィッヒさんは部屋の隅に隠れて隙を窺ってください。三撃以内で相手を詰みにします』

『何を言ってる!そう言うのは私のしごーー』

『行きますよ。二人目は頼みます』

 

そう言って返事も聞かずに飛び出す新人。そして、音を立てずに相手へと近づき鉄パイプを勢いよく振るう。ゴンと鈍い音をたてテロリストの一人を床に沈める。もう一人は突然の事態に驚くもすぐに落ち着きを取り戻す。しかし、突然の襲撃者を見て彼は油断してしまった。子供だからである。不意打ちだからたまたまあいつを倒せただけだ。銃を見せればすぐにビビって何もできなくなる。そう考えてしまったが故の油断。テロリストが胸から銃を取り出した瞬間、その手に鈍い衝撃が走る。テロリストの目の前には鉄パイプを振るい切った新人と素手の自分の手があり、銃がなくなっていた。そして二度目のゴンという音ともに強い衝撃を受けテロリストは気を失った。

 

『ふう、なんとかなるものですね』

『馬鹿か貴様は!もしあのまま銃を撃たれていたらどうなると思っているんだ!』

『いえ、大丈夫だと思っていましたが』

『ふざけていているか!』

『いえ、ボーデヴィッヒさんが確実に仕留めてくれると思っていましたし、実際どうにかなりました』

『確実に仕留めるなんて何を根拠に言っているんだ!私みたいな弱い奴のどこでそんな確証を持てるんだ!?』

『信じていましたから』

『は?』

『信じていたからですよ。周りからなんと言われても諦めなかったあなたを』

『たったそれだけのことで私を信じたと言うのか?この弱い私を』

『弱くなんかありませんよ。ボーデヴィッヒさんは十分に強い人です。心が強い人なんですよ』

『心が強い?』

『そうです。たとえ手術のせいで体が弱くなってしまったとしても、心が折れることなく今まで頑張ってきたあなたはとても強いです』

『そんなものなのか?』

『強さの価値観は人それぞれですが自分から見たら今のボーデヴィッヒさんは十分強く見えますよ』

 

いつも通りに無表情で言う新人にそうか、とボーデヴィッヒは呟く。近くでは一夏を起こしながら一夏につけられた手枷に鍵穴があるのを見つけ、テロリストが持っていた銃と一緒に鍵を見つけて鍵を開ける新人がいた。一夏くん起きてくださいと起こそうとするが反応はなく、仕方ないと一夏を背負う新人。

 

『ボーデヴィッヒさん、銃が二丁あるので両方使ってください。自分は一夏くんを背負って手が離せないので』

『わ、わかった』

『それではいきましょう…っ!』

 

突然、新人がボーデヴィッヒを巻き込みながらコンテナが積まれている左側へと飛び込む。瞬間、パンという乾いた音が部屋の中に鳴り、次にガンと何かが強くぶつかる音が鳴り響いた。倒れこんだボーデヴィッヒは音から銃の銘柄はわからないが、ハンドガンであることはわかった。そして倒れた新人を見ると、無表情のままではあるが腕を怪我しているのがわかる。新人はすぐにかすり傷だから大丈夫ですと言うが出血量はかすり傷にしては多く、深い傷なのは明白だった。

 

「なかなかヤルじゃないか、ガキのくせに。少しは楽しませてくれよぉ、この私をさぁ。

アハハハハハハハハハハッ」





UAが七千越え一歩手前、お気に入りは八十件越え、読んでくれている皆さんに感謝の心は忘れずに頑張ります。
そして、感想を書いてくださった、wwwさん、ゴオーさん、マス大地さんありがとうございます。感想は作者の励みになります。
さらに、評価の8をくださったカザミドリさんありがとうございます。前は評価1という手厳しい評価がつけられていて、少し気持ちが沈みかけていました(気がするだけ)。ですがなぜかその評価がいつの間にか消えていてなんだったんだろうと思っていました。それは置いておいて、高い評価をもらえて作者はとても嬉しいです。

今回は書くのが少し難しかったです。糖分不足によって作者の働かない頭がさらに働いてない状態で書いたのでおかしいところが多々あるかもしれません。ラウラさんの原作前の性格ってどんなかなって考えて書いていて、これも書けているか心配です。もしかしたら消して書き直すかもしれません。

次回の投稿は夏休みの宿題(読書感想文など)を終えてから書こうと思っているのでかなり遅くなります。

次回こそはようやく救出です


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モンドグロッソ 〜敗北と撤退〜

ゲーセンに行ってチュウニやろうとして財布確認したらアイミーが亡(無)くなってた作者です。マスターを何曲か解放したのとログボキャラと通常解放キャラしかいなかったのがある意味救いでした。まだやり直せる範囲なので。チュウニのかわりにガンストやってきました。エンジョイ勢という名前でトオル使ってたら自分かもしれません。

忘れていたのですが前回で十話ですね。飽き性な自分がよく続けれたなぁと思います。これも読んでくださっている皆さまのおかげですありがとうございます。

今回は初めてのまともな?戦闘描写を書きました。個人的な感想はこれで大丈夫かなぁ?といった感じです。多分わかりにくい。

いつものごとく『』内の会話はドイツ語になってます。

追記、宿題まだ終わってないorz
追記2、アラクネの脚の本数が8本だったので修正


『くっ、すまない助かった…!?

おい、大丈夫か?さっきのでやられたのか…かなり傷が深いぞ』

『ええ、少し血の出る量が多いだけで大丈夫です。それよりもあいつをなんとかする方法を考えましょう。様子からして相手は出入り口から動いた気配はありません。ですがこのまま動かないままだとあちらから動いてきそうです』

 

右の二の腕に深い傷を負いかなり血がでている新人。敵の狙いはボーデヴィッヒの心臓だったらしく、もしも新人の行動が少しでも遅れていたらどちらかの致命傷は避けられなかっただろう。一夏も庇うように避けたため、正面から弾丸が二の腕に掠っていったのだった。ボーデヴィッヒは自分の服の袖を破ると新人の怪我をした部分に応急処置を施す。

 

『どうする。正面は陣取られているから囮は意味がない。正面突破しようにも相手の銃の銘柄がわからんから装填弾数も予測できん。改造の可能性も考えるとキリがない』

『ボーデヴィッヒさん、銃の片方を貸していただけますか?』

『ろくに訓練もせず、それどころか怪我をしているお前が使えるのか?ハンドガンだからといって初心者がそんな簡単に使えるものではないぞ』

『怪我は大丈夫です。それと一応ですが策はあります。危険ですがこのままというわけにもいきませんので』

 

 

『ーーーそうか、ならば私がリスクが大きい方をやろう。先ほどから助けられてばかりだ。借りは返す』

『申し訳ありませんがよろしくお願いします』

 

ーーガン

 

女と思われるテロリストが引き金を引く。新人たちのいるコンテナに向かって弾丸が突き刺さる。貫通はしないものの普通の人間ならこれだけで恐怖に陥るだろう。そして、女は甘ったるい声で物騒なことを言い始める。

 

「早く出てこいよぉ〜、私は待たされるのが大嫌いなんだ。早く殺されに来た方が楽だぜぇ」

「生憎だが死ぬのは貴様だ」

 

カン、という金属音ともにコンテナから銀色の髪をたなびかせボーデヴィッヒが飛び出し、飛び上がりながら片手で銃を構え、女に向けて引き金を引く。女は弾丸を前転で回避するとすぐにボーデヴィッヒに向けて銃を向けるがそこにボーデヴィッヒの影はなかった。女は驚くもすぐに体勢を立て直し周囲に目を向けるが、工場内の暗さでボーデヴィッヒの姿は見つからない。

 

「どこ行きやがった、姿を見せろ!そして私に苦痛に歪む顔を魅せてくーーカランーーそこか!」

 

音がなる方向へ向けて銃を撃つが聞こえてくるのは放たれた弾丸が工場のコンクリートの床を砕く音がなり響くだけだった。

 

「鉄パイプだと?くそっ何処にーー」

「くらえ!」

 

女がもう一度探そうとした瞬間、部屋の上に張り巡らされている鉄骨の支柱から落下しながらボーデヴィッヒが女を勢いよく蹴り飛ばしーー所謂ライダーキックであるーー床に着地する。女は蹴り飛ばされるがすぐさま体勢を立て直し銃を撃つ。弾丸はボーデヴィッヒの頬を擦り工場の壁へと突き刺さる。女が二発目をボーデヴィッヒに撃ち込もうとした瞬間、パンッと乾いた音がなった。そして女の肩に赤い染みができる。撃ったのは新人だった。カランと女の手から滑り落ちた銃が音を鳴らす。ボーデヴィッヒはすぐさま新人の方へ銃を蹴り飛ばし自分の銃を構える。

 

「チェクメイトだ。これ以上抵抗するなら貴様を殺す」

「・・・・・・」

 

女は先ほどから身体を震わせている。ボーデヴィッヒは痛みによるものだと思っていた。が、

 

「私のか・・傷つけ・・・・スコー・・・のための身体が?」

「?」

 

何かを呟いているのは聞こえてるのだが一部しか聞き取れず戸惑うボーデヴィッヒ。そして女はボーデヴィッヒの警告を無視して立ち上がる。

 

「貴様、抵抗するなら殺すとーー」

「黙れ、クソガキ」

 

引き金を引くボーデヴィッヒ。だがその弾丸は女の少し手前の何もない空間で弾かれた(・・・・・・・)

 

「何!?まさかISを持ってーー」

「死ね」

 

ボーデヴィッヒは女が身につけたISを見たことがなかった。新しい機体なのはわかるがどうしてテロリストが、と混乱しているうちに女はボーデヴィッヒの首を掴むとそのまま持ち上げ新人の方へと投げつけた。一瞬固まるも飛んでくるボーデヴィッヒを受け止めるために構えるが、勢いが強くそのまま後ろへと吹き飛ばされ部屋の壁に打ち付けられる。後頭部を強かに打ちつけ気絶しかける新人だが日頃の身体を鍛えていた成果が出たのか気を失うことはなかった。が、気を失わなかったが意識は朦朧としている。ボーデヴィッヒは新人がクッションになったため怪我はないものの先ほどまでの戦闘の肉体的、精神的疲労が祟ってか今の衝撃で気絶してしまった。コツコツコツと近づいてくる音がする。新人が視線を上げるとそこには、8本の脚のようなものがついている毒々しい紫色の機体がいる。ボーデヴィッヒの発言からなんとなくISだということはわかった。だがこの状態ではどうすることもできないだろう。残り距離約5メートル、4、3、2、1、

 

「死ね」

 

鮮血が飛ぶ。周囲一帯に血を撒き散らす。周りは赤く染まり、血の池がだんだんと広がっていく。どちゃぁと、地面にナニかが当たる音と液体が跳ねる音がなる。倒れ伏したのはこの血の池を作った新人(・・)、そして、先ほどの戦闘で負った頬の怪我しかない(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)ボーデヴィッヒだった。

女は胸の真ん中ーー心臓を狙ったはずだったが、寸でのところで新人は奇跡的に回避することができた。代わりに背中に深く大きな傷をつくり、血の池の製作者本人になってしまった。そして、今の一撃で完全に気を失ってしまった。長くは持たない。出血量から後10分もすれば出血多量で死に至るだろう。

だが、その10分を待たずして新人たちを狙う者がここには居る。もう女を邪魔をする者はこの場に居ない。女は背中の8本ある脚のうちの一本で新人たちが逃げれないように壁と脚で挟む。そして残りの脚で全身を串刺しにするために脚を振り上げーーー

 

 

 

 

振り下ろされることはなかった。

女はISを待機状態に戻すと撃たれた肩を抑えながら工場の暗闇の中へと溶けていった。

そして、女が消えた直後に

 

がらがらがらがら

 

と何かが崩落する音が聞こえた。

工場の壁が破壊されたのだ。その犯人は、

 

「一夏!どこだ!?どこにいる!」

 

世界最強、織斑一夏の姉、

 

織斑千冬だった。




まず最初に、UA8000突破、お気に入り100人突破、いつも読んでくださっている皆さまに感謝を。ゴオーさん、マス大地さん感想いつもありがとうございます。感想の返信はこれの投稿後にします。そしてまた評価をいただきました。
ふにさん、satakeさん、表裏一体さん、ガブキングさん、評価をしていただきありがとうございます。1や2の厳しい評価もあれば8や9の良かったという評価もあるので、ここから評価をどう傾けさせることができるかが作者の(ない)腕の見せ所です。

そして、

ごめんね新人くん。最初はね、新人くん無傷で帰ってもらう予定だったんだよ。でもなんか書いてるうちにテンション上がって最初の構成とは180度方向性が変わってしまったよ。正直すまんかった。

それと少し解説。どうして新人くんが一回しかテロリストの女を撃たなかったかの理由を。単純に弾が無かったからです。マガジンはラウラさんに預けて最初から装填されていた一発しか残ってなかったからです。渡したタイミングは作戦時です。本当はラウラさんがリロードする描写を入れようとしたのですができませんでした。それと鉄パイプは新人くんが投げました。相手がISを持ってなければこれで、抵抗なら射殺、何もしなければそのまま凶器だけを奪って一夏くんが捕まってた手枷で捕まえる、で終わったのですが人生甘くないです。

最後にテロリストの女の人の説明を。まあ、ほとんどの人が知っていると思いますが作者の知識が偏っているため多分原作と変わってると思いますので。

名前 一応まだ伏せます
性格 人を残酷な目に合わせてその絶望した時の顔が好きなどS?
上司LOVE
好きなもの 上司
嫌いなもの 生意気なガキ
今話で最後に帰った理由 上司最強さん(千冬さん)が来るから撤退しろと言われたため。(タイトルの撤退はここから)


次回はドイツ編最後になります。ラウラさんは主人公に落とされるのか否か?


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モンドグロッソ 〜答えと友達〜

宿題はやっぱりギリギリまで引っ張る癖のある作者です。最近寝不足(完全なる自業自得)で眠いです。夏休みは怖いですね。人をダメにしますから。

なんかすごく強引な気がするのは気のせいだと思いたい。前回からなんか話の展開がひどい気がするけど、気のせいだと信じたい

今回でドイツ編は最後。
みんな日本語でしゃべってます。


 

新人は目を覚ます。だがそこは知らない天井というやつがあった。工場でもなければ泊まっていたホテルでもない。ホテルよりは少し硬いベッド。起き上がろうとするが唐突に背中に痛みが走り体を起こせなくなる。そういえばと記憶の最後にはあのISの一撃を避けようとして背中を切り裂かれていたと思い出す。あの後どうなったかを聞ける人物はここにはいない。新人以外に人がいなかった。仕方ないので胸ポケットから音楽プレイヤーを取り出そうと胸元を探るも胸ポケットは無かった。片方の腕を上げ布団をめくるとそこには明らかに病院服といった感じの服が着させられていた。ここは病院なのかと周りを探るもあるのは照明とベッド、出入り口の引き戸、そして備え付けであろう机と椅子だけである。完全に暇になった。そう思いながらもう一度眠りにつこうとした新人だったが目を閉じた瞬間に、引き戸が引かれる音がした。目を開け視線をドアへとやるとそこには、今回の騒動の原因である織斑一夏と、今回も(・・・)ブリュンヒルデになったであろう織斑千冬が立っていた。

 

 

 

 

 

「そうですか、気絶した後にそんなことが…ところで一夏くんは怪我は無いんですか?」

「あ、ああ。お前のおかげで怪我は一つも無い。・・・・・・悪いな、俺のせいで治らない傷を作らせちまって」

「いえ、人を守るために負った傷ですし、これはもともと自分が勝手にやったことですから一夏くんが気にやむことは無いですよ。それに自分の力だけではありませんでしたし」

「ボーデヴィッヒのことだよなあいつにも礼は言ってきたよ。あいつも自分が勝手にやったことだ、って言ってたけどな」

「そうでしたか。そういえばボーデヴィッヒさんの怪我はどうでしたか?大きい怪我を負ってなければいいのですが」

「お前は少しは自分の心配をしたらどうだ?お前らしいと言えばお前らしいが、周りの人にも気をつかえ。お前が倒れると悲しむやつがいるんだ。少なくともお前の家族はそうだし私もそうだ。それとお前の心配しているボーデヴィッヒだが幸い大きい怪我はなく、顔についていた傷も跡なく治ったそうだ」

「そうですか。以後気をつけるように頑張ります。それとボーデヴィッヒさんのことを教えていただきありがとうございました。一夏くんも無事でよかったです」

 

新人は一夏と千冬からあの後何が起こったかを聞かされた。ここが軍の病院であること、軍の人間から情報を受け一夏を助けに行ったら血だまりを作っていた自分がいたこと、自分の怪我の跡が残ること、一夏をさらった犯人で男二人を捕まえたが女は捕まえれず、その男二人もただの雇われで手がかりもなかったこと、そして千冬がモンドグロッソを辞退した(・・・・・・・・・・・・・・・)こと。最後に関しては意外すぎて声を上げてしまったことだ。と言っても、へぇと気の抜けた声だが。まあブラコンの姉として弟を助けに行くことは当然なのだろうが、新人は千冬がブラコンなのを知らず、ただの家族愛なのだと勘違いしているだけである。そして、もう一つ驚いたことは、千冬がここに残って一年間軍のIS乗りや志願者の訓練をするらしい。なんでも情報提供した代わりに是非と言われたらしい。そこは国単位で謝罪や慰謝料を払ってもらうところでは?と新人が聞いたが、なんでも国の偉い人がわざわざ来て、今回の不祥事をなかったことにして欲しいと土下座されたらしい。代わりに弟の一夏が生活が困らないように毎月の直接五十万、口座に四百五十万円が毎月振り込まれるらしい。そして、ドイツ滞在中は最高級ホテルのロイヤルスイートに泊まらせてもらえるらしく、食事は毎日豪華なものが運ばれてくるらしく、酒も飲み放題とのこと。しかも訓練もやりたいと思った時だけやってくれればいいと言っていたらしい。そこまで隠したいのか国の重鎮さんよ。そして、話している途中で唐突に新人が頭を押さえて苦しそうにしだした。それはすぐに治まり、本人は多分貧血だと思うと言った。医者を呼ぼうか?と千冬に聞かれるが別に構いませんと答える新人。一夏は心配そうに新人を見るが大丈夫です、といつもの無表情で答えるとそうか、とあまり納得してないようなそんな微妙な顔をした。一夏は立ち上がると、そろそろ戻らないとなと言って、千冬と共に病室から出て行った。また一人になったと思った束の間、入れ替わるように今度はボーデヴィッヒが入ってきた。表情はあまり良くなさそうではあったが。

 

「無事だったんだな」

「はい、おかげさまで。なんとか生きて帰ってこれました」

「そう、か。なあ「あまり気にやむ必要はありませんよ」・・・」

「今回、ボーデヴィッヒさんが居なかったら多分、死んでいました。ですから「でも!」?」

「守れなかった。本来守るべき市民に守られ怪我を負わせてしまった。これは、弱かった私の責任だ」

「・・・前にも言いましたがボーデヴィッヒさん、あなたは弱くなんかありませんよ「しかし!」誰かのために自分から動くことができる。それも立派な強さの一つです。前は心、と言いましたがそれもしっかりとしたボーデヴィッヒさんの強みです」

「・・・・・・」

「自分をあまり卑下しないでください。ボーデヴィッヒさん、あなたは自分が思っているよりとても強い人です。自信を持ってください。傲慢や慢心は自分の力にはなりませんが自信は自分を強くします。自分を信じることも強さの秘訣ですよ。そうですね、これが僕からの答えです」

「え?」

「忘れましたか?ボーデヴィッヒさんから受けた相談の答えですよ」

「ああ、そうだったな。・・・自分を信じる、か。そうだな、今まで通り、いや今まで以上に頑張ってみる」

「なら僕は応援しますよ、一人の友達として」

「とも、だち?」

「そうです。友達です」

「ともだちとはいったいなんなんだ?」

「そうですね…僕の意見ですが信頼できる人、それが僕の中での友達の定義ですね」

「信頼できる人、か。そうか。私もお前を信頼しているぞ、新人」

「それは、嬉しいですね」

「んっ!?新人は笑うことができたのか!」

「確かに僕はいつも無表情ですし、表情筋が固いからあまり表情が変わることはありませんが笑うときは笑いますよ」

「すまないな。少し意外だったから、つい」

 

新人の表情筋が珍しく動きラウラに微笑みを見せる。もしこの場に家族や日本にいる新人の友人たちがいたら驚くだろう。あの新人が笑った表情を見せたのだから。家族ですらまだ数回しか見たことのないからだ。

 

「まあ、いいでしょう。千冬さんに頼んでラウラさんの訓練量だけ増やすように頼んでおきますから」

「ふむ、ならばっちこいというやつだ。今の私ならなんでも出来る気がするぞ。もう何も怖くない!」

「親友がそれは確か、死亡フラグだと言っていましたが大丈夫でしょうか?」

 

この後ラウラは少し雑談をしたら帰っていった。翌日にボロ雑巾のようになった銀髪の少女が軍の訓練所で見つかったらしいがそれはまた別のお話。

翌日。一夏は学校があるから帰らなければならなくなり、ドイツの護衛と一緒に日本へと帰って行った。時間の余った新人は暇つぶしを考えていたが、病室の扉にノックする音が響く。どうぞ、と一言告げると入ってきたのはラウラを保護していた軍の上官と護衛を連れてきたドイツの大統領だった。

大統領の話の内容をまとめると千冬と同じように自分にも口止め料を払うから今回の不祥事をなかったことにしてくれとのこと。新人は簡単に了承をした。曰く、自分から首突っ込んだんだから別に構いませんとのこと。大統領はそれが済むと、すまないが急ぎの用事があるからこれでと言って病室から出て行った。だが、護衛の一人としてきていたと思っていたラウラの保護者である、マクシミリアン・シュナイダー大尉は残ったままだった。

 

「君に言いたいことがある」

「なんでしょうか?軍の偉い人に礼を言われるようなことはした覚えがないのですが」

「君のおかげでラウラは前のような活力を取り戻せた。ありがとう」

「いえ、自分はほとんど何もやっていませんよ。ただ、ラウラさんが本来自分で見つけられた探し物の手伝いをしただけですから」

「それでもだ。今の彼女はとても生き生きとしている。君と会わなかったらあのままだったかもしれない。本当にありがとう」

「そうですか」

「それで君にお礼をしたいんだ。何か言ってくれ。可能な限りなら力になろう」

「なら貸し一つでお願いします」

「貸しか、それなら今すぐ決める必要もないし、本当に必要な時に頼まれることもできる。それで手を打とう」

「わかりました(本当は大統領のときと同じで別に欲しいものがないから、このまま使わずじまいにしようとしているのは秘密にしておこう)」

「では、私はこれで。何度も言うが本当にありがとう。ラウラは娘みたいなものだからとても大事なんだ。君のおかげでもう少し軍を続けられそうだよ」

「そうですか。それではさようなら」

「ああ、さようなら」

 

 

 

この後は入院中は、怪我をしたと聞いて両親がわざわざ来たり(来る前に普通の病院に移された)毎日ボーデヴィッヒが目を輝かせながら今日の出来事を報告してきたり、ときどき千冬が見舞いに来たりと充実な一週間を過ごした新人は無事、日本に帰国。遅れた分の授業は前世知識や鈴が貸してくれたノートなどのお陰で特に困ることもなく、怪我のことなどの心配をされながらも日常に戻ることができた。なんとなく春休みにはフランスとドイツに行こうと思った新人だった。

 

 

一人旅は危険だと言われ親同伴になったが。





おまけ

ラ「なあ新人。新人は私にとって、その、初めての友達というやつなんだ」
新「そうなんですか。それは嬉しいですね」
ラ「それでだ、初めての友達ということで他とは区別をつけたいというかその、特別というやつにしたいんだ」
新「そうですか。ですが僕にはいい案はありませんね」
ラ「ふっふっふっ。こんなこともあろうかと案は考えてきてあるのだ!(ドヤァ)この中から選んでくれ。徹夜して頑張って考えた自信作だ(ドヤヤァ)」
新「 わかりました。うーん、悩みますね。ですがここは下手にこだわりすぎて逆にダメになるのは嫌ですし、無難にベストフレンドでどうでしょうか?」
ラ「いいかもしれないが少しありきたりだな。やっぱりここはインパクトのある、アラトマイフレンドとかはどうだ?」
新「そしたら僕はラウラさんのことをなんと呼べば?」
ラ「ラウラマイフレンドでいいだろう。だが、やはりこれはダメだな。よくわからないけどダメだ」
新「そうですね…ならこれでどうでしょうか?」
ラ「戦友か、確かにいいかもしれない。響きも格好いいし私たちはすでに一緒に戦場を仲間と言っても過言ではないからな。よし、決めた、これにしよう!今日から私と新人は戦友だ!うんうん!カッコ良いいし、なんだか気分がいいぞ!今ならなんでもできる気がする!!」
新「あっ、それを言ったらまた……」
千「ほう、それは良いことを聞いた。ならお前だけは明日の特訓は三倍にしてやろう。なんでもできる今のお前なら楽勝だろう」
ラ「お、おっ、おおおお、織斑教官!?なぜここに!?」
千「弟の友人の見舞いに来るのが何か珍しいことか?まあいい。それよりも体調は大丈夫か?」
新「はい、だんだん良くなってきています。もう立って歩くこともできますし、さすがに走るのはまだ無理ですが多分大丈夫でしょう」
千「そうか、ならいい。じゃあな新人。 明日が楽しみだな」
ラ「戦友よ、助けてくれ。お前のパートナーがピンチなんだぞ」
新「ごめん、さすがに千冬さんを止めるのは無理です。諦めて明日に備えてください」
ラ「せっ、せんゆ〜う!」


UAが一万を超えました。読んでもらえてると感じることができて嬉しい限りです。お気に入りも120件越え。いつもこんな駄文にお付き合いいただきありがとうございます。そして、感想を書いてくださったゴオーさんいつもありがとうございます。


次回はチャイナリターンです。
おまけ長すぎて後書きが千文字超えてしまった


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日本人と中国人 〜説教と帰国〜

どうも、冷凍庫の中に入っていた犬用のアイスを間違えて食べてしまったことのある作者です。味があったのですが薄かったです。親に言われて初めて気付きました。これからはしっかりとパッケージを確認して、間違いの無いようにしたいです。

前回の投稿から一ヶ月近く経ちました。
その間、他のことに気を取られすぎて全く手付かずになってしまっていました。うまく文字にできないと執筆の手が進まず、不定期投稿とはタグに着けているとはいえ、ここまで投稿が遅くなったことを謝ります。申し訳ございません。

それでも、もしまだお読みになってくださるのならとても嬉しい限りです。次は早めに投稿できるように頑張ります。


今回はタイトル通り帰国します


 

「私ね…中国に帰ることになったの…」

「そうですか…」

別れとは非情なまでに唐突である。

 

数十分前

 

「あ〜、今日も疲れた。早く春休みにならねぇかな」

「まあ、春休みまであと少しだし頑張ろうぜ」

「そうだぜ、弾。春休みになるまでの辛抱だ」

「まあ、僕も早く春休みになればいいとは思っていますが」

「「「ん?」」」

「珍しいな新人、お前が休みが早く来て欲しいなんて」

「意外だな、俺はそういったことは口にしないと思っていたんだが、もしかしてコレか?」

中学からの新しい友達の御手洗数馬(みたらいかずま)が右手の小指を立てる。

「いやいや新人にコレはないだろ」

「コレの意味は知りませんが、ただフランスにいる友達に会いに行くだけですよ」

「友達?男か?女か?」

「なぜそこまで気にするんですか?」

「いや…お前って言いにくいこととかズバズバ言うから、俺ら以外の友達をあまり見たことがないっていうか」

「まあ、友達と呼べる人が少ないのは認めましょう。ですが、皆さんだけというわけでもないので」

「ああ、悪かったな。勝手に決めつけて」

「まあ、大丈夫ですよ。気にしていませんし」

 

そんな感じに新人たちが会話をしていると、ガラガラと教室のドアが開かれる音がなる。視線をそこに向けるとそこには(りん)がいた。日直の仕事をしてきたらしく、その手には当番日誌が置いてある。

 

「おはよう」「「「「おはよう(ございます)」」」

「何話してたの?」

「早く春休みがこねぇかな、って話」

「弾はどうせ春休みもナンパしに行くんだろ?」

「いや、俺はもうしねぇよ。なんせ新人に教えられたからな。恋愛は高校生から、ってね」

 

意外だという顔をする数馬と、少し頬を引きつらせた鈴が言葉をつなげる。

 

「へえ〜、そんなこと言ってたんだ」

「ところで何で高校生からなの?」

「くだらないことにかまけているくらいなら、いい高校に行ってその後に続くような生き方のほうが確実に良いと思いまして。といっても所詮は持論ですからお気になさらず」

「ふ、ふ〜ん」

 

鈴以外は納得といった感じだが鈴だけは微妙そうな顔をしていた。

 

「新人らしい答えだな」

「まあ、いい高校に行くことに関しては賛成だな。そのほうがいい女とも出会えるかもしれないし」

「そういうことだぜ」

「そういった意味で言ったわけではないのですが」

「アンタ案外下衆なこと言うわね」

「いや〜、それほどでも」

「褒めてないわよ!」

 

鈴は数馬をツッコミ程度の威力で叩くと周りは笑い出す。殴られた本人は少し痛そうだが。

鈴は周りが笑っているのにつられ自分も笑い出すが、だんだんとその表情は悲しげな表情へと変わっていった。

 

「ん、どうした?具合でも悪いのか?なんか辛そうな表情してるけど」

「もし、悩みがあるのでしたら聞くだけでもできますよ。もしかしたら何か解決するかもしれませんし。無理して話す必要はありませんが」

 

そして、冒頭へ

 

「鈴、どうしたんだよいきなり中国に帰るって。何があったんだ?」

「・・・・・・」

「えっと、親が喧嘩してそれで、離婚するって言って、お父さんが私を引き取って中国まで行くって…」

鈴はかなり動揺している。たどたどしく紡がれた言葉はだんだんと弱々しく、小さなものになっていく。

「何とかできないのか?父親と行くんじゃなくて、母親と一緒に行くとか」

「もう無理よ、既にお父さんと行く事は決まっちゃってる。それにお母さん、もうどこかに行っちゃって、どこにいるのかわからないし…」

「なら、うちに来るとか、どこか他のところに泊めてもらうとか・・・」

「そんなことできるわけないじゃない……」

「だったらこれならーーー」

 

一夏がいろんな意見を出していくも全て否定され、鈴の顔はだんだんと俯いていく、いつもの鈴の明るさはそこにはなかった。当然と言えば当然だが。

 

「それなら、弾君の家で送別会でもしましょう」

 

唐突に一人だけ全然違う事を言う奴はどこにでも居るものだ。もちろんここにも。

 

「おい、新人!それはいくら何でもあんまりじゃないか、鈴が居なくなっても良いって言うのかよ!」

「誰がそんな事を言いましたか?言い切りの形で言ってしまったの悪いとは思っていますが。まあそれは置いておいて、

正直、鈴さんの転校というか帰国はどう足掻いても防ぐ事はできません。ですが終始暗い顔なんかされても鈴さんは困ると思うので、送るときは笑顔でいてあげようという事です。一夏君だって転校するときに見送りがみんな暗い顔してたら嫌でしょう」

 

防ぐのは無理と言ったところで、鈴の肩がビクッと跳ねる。だが、新人の言葉を聞いているうちに表情は少しだけだが和らいでいった。一夏は不満げな表情をしたまま納得できないといった顔をしている。

 

「織斑君」

 

その瞬間一夏の表情が驚愕に変わる。他男子二人も新人が織斑君、と呼んだだけなのになぜか顔が強張っている。事情を知らない鈴は二人に聞くと、

 

「まずい、新人が一夏のことを苗字で呼びやがった」

「このままだとアレが始まるぞ…」

「あ、アレって何なのよ」

 

まだ暗かった鈴の雰囲気がいつもの状態に戻りつつある中、新人と一夏の間に剣呑な雰囲気が現れる。弾と数馬の二人は同時に同じ言葉を放つ。

 

「「新人の説教が始まってしまう!」」

「はぁ…?」

「織斑君、今までそういった機会がなかったので言う事はなかったのですが、この際言わせていただきます。

 

 

 

君は馬鹿ですね

確かに鈴さんの帰国を阻止しようとするのは良い事かもしれません。ですが鈴さんは助けてほしいと一言でも言いましたか?

言ってもないのにそういった事をしようとする、押し通そうとするのはただの一人よがりです。

さらに言えば家庭内の問題に対して僕たちが口出しする権利、もしくは理由なんて持ち合わせていません。なのに勝手にあーだの、こーだの言うのはお門違いですよ」

 

無表情なまま淡々と説教を続ける新人。一夏は最初は反論しようと試みるが、新人の無表情の威圧感と早くもない説教に押され言うタイミングを失ってしまう。

一瞬これで終わりか、と後ろの二人が安心しかけたが、まだ新人の説教は続く。

 

「もう一つ言っておきますが僕たちはまだ子供です。言ってしまえば無力なんです。何かを変える力なんて持ち合わせてはいません。自分が何かすれば何かが変わる、変えられるなんて夢を見るのは勝手ですが来年には僕たちは高校生になり、社会人の一歩手前、もしくは就職して社会人になる人もいます。いつまでも子供のままでもいけないんです。自分で考え、自分のできること、できないことの区別くらい付けれるようにならないと将来、痛い目にあいますよ。

 

所詮これは僕の経験談ですが」

 

教室の空気が凍りつく。新人たち以外の生徒は、なんで朝からこんな話を聞かされなければならないんだ、と視線を送るが当の本人は気付かず、鈴たち三人は途中からもう悟ったような顔をして話を聞きいていた。説教の対象だった一夏はもう涙目になっていた。自己の完全否定をされたようなものなので何も言い返せないでいた。心に大きな傷を作ってしまったのだろう。そしてそれを行った張本人の新人は、経験談のところを言った時は少し俯いていたような気がしたが、特に感慨もなくといった感じにいつも通りの無表情だった。だが、ゆっくりと口を開くと、

 

「ですが、優しいところは一夏君の一番良いところです。さっきは一人よがりだのなんだの言いましたが、それはできないことを頼まれてもないのに勝手にやろうとした姿勢に対してですので、人に気遣いをできる優しさや、人のことを大切に思える気持ちは僕にはないものです。ですから素直に羨ましいと思いますし、憧れもします。ですから僕は一夏君と友達であることを誇りに思っています。

 

それとひどいことを言ってすいませんでした」

 

出てきたのは賞賛の言葉。否定はあくまでも悪い部分であってそれを直すべきと言う、良いところは良いとこなのだと褒める。それが新人の持論(やりかた)である。

それを聞いた一夏のは涙を拭うと震えた声で、

 

「確かに・・・そうだな。ありがとな新人。俺は馬鹿だったって気付けたよ。多分言われてなかったらいつか痛い目にあってたかもしれない。大きな間違いをしてたかもしれない……だから、ありがとう」

「僕としては、怒られる理由はあれど感謝されることはないと思っていたのですが、そうですか…なら僕はそれを受け取ることはできません。ですからもう一度言います。ごめんなさい。僕は一夏君のことを完全に否定してしまいました」

「ああ、別にいいぜ。ならそれで今回のことはチャラだ。俺はここから変われるように頑張るよ」

「なら僕は一夏君を応援します」

「ああ、頼む。これからもよろしくな」

「はい、よろしくお願いします」

 

最後には声は震えておらず、しっかりと一夏の声が放たれる。新人は差し出された一夏の手を掴み、お互い強く握手を交わす。まるでマンガのような光景だが本人たちにとってはとても大事なことなのである。

そんなこんなで、鈴の転校兼帰国の話から壮大に話しがずれ、教室中の視線を浴びながら仲直りをした二人は学校が終わると、五人で送別会の内容について話しながら仲良く帰って行った。

 

 

 

そして、送別会を終えた次の日

 

鈴の帰国の日である

 

 

 

たくさんの人がいるゲートの近くには四人の中学生がいた。帰国する鈴を見送りに来た一夏、弾、数馬の三人、そして見送られる鈴の四人である。そこに本来いるべき新人の姿はない。

 

「新人はまだ来ないのか?出発までもう20分くらいしかないのに」

「新人が大事なことを忘れるなんて絶対にない、何かが原因で遅れてるんだろうけど。・・・おっ、一夏だ。連絡ついたか?」

「ダメだ。家にはいないし、前に教えてもらった携帯の電話にも繋がらない。新人は一体どこにいるんだ。鈴だって来なくて不安なのに」

 

三人は一旦鈴のところへ向かうと、まだ来てないけどすぐに来るさと伝える。うん、と笑って返すがその表情はすぐに曇ってしまう。三人がもう一度電話をかけてみるかと、もう一度公衆電話のあるところに向かおうと振り返った。すると、少し遠くの位置に紙袋を持ってこちらに向かって走ってくる一人の少年の姿が見える。だんだんと近づいてくるその少年に三人は声をかける。

 

「「「遅すぎるぞ、新人!」」」

「すいま…せん、皆さん、遅れてしまって」

「俺たちのことはいいから早く鈴に会ってこい」

「あいつお前が来ないからってすごい不安そうにしてたからな」

「後10分だ。それまでにしっかりとできることやっとけよ」

「はい、ありがとうございます」

 

肩で息をしながら来た新人に鈴のところに早く行けという三人。新人は頷くとすぐさま鈴の元へと走っていく。

 

「新人!来て…くれたのね」

「ごめんなさい鈴さん。遅くなってしまって」

「いいわよ別に、来てくれただけでも嬉しいんだから」

「ありがとうございます。それと、これをどうぞ」

「これって昨日言ってたプレゼント?」

「はい、これを作ってたいたら案外手間取ってしまって、あまり上手に作ることができませんでしたが受け取ってくれると嬉しいです」

 

そう言われて、紙袋を開ける鈴。その中に入っていたのは、

 

「去年の冬は着けていましたが、今年は着けているのを見なかったので。寒くならないようにと思って作ってみました」

「手袋と・・・マフラー・・・」

 

去年の冬、というより12月の時期には鈴はマフラーと手袋を着けていたが、今年の元旦の初詣の時には着けておらず、学校が始まっても着けている姿を見なかった新人が祖母に教えてもらいながら自分で編んだ一品だ。本人はあまり上手に作れなかったと言っているが、初心者にしては十分な出来である。

 

「どうでしょう…か。自信が無いので本当に渡すべきなのか迷ってしまって」

「うん、すっごく嬉しい。ありがとね新人!」

「喜んでいただけて良かったです。正直ホッとしています」

 

受け取ってもらえたことに喜ぶ新人。表情には出ないが嬉しいのである。一方鈴は受け取ったマフラーと手袋を大事そうにしまうと、頬を朱く染めながら新人に話しかける。

 

「ねえ、新人。突然だけど、いい?」

「何でしょうか、お答えできるものなら可能な限り尽くしますが」

「そ、そう。それじゃ、言うわね。

料理が上達したら、毎日あたしの酢豚を食べてくれる?」

「鈴さん…」

「な、何よ…」

「さすがに毎日酢豚は厳しいものがあるので、たまには他の中華料理や味噌汁を頼んでも良いでしょうか?」

盛大にコケる鈴だったが、すぐさま立つと、

「そ、それって、OKってこと?」

「そうですね。たまには自分で料理をしたい時もありますから毎日とはいけませんが」

「本当に?」

「はい」

「ほんとに本当?」

「はい」

「ほんとのほんとに本当?」

「ほんとのほんとに本当です」

「本当に、食べてくれるの?」

「はい、作っていただければ、僕でいいのなら喜んで食べさせていただきます」

「そっか、そうなんだ……フフッ」

『イッチャイナライン972便、香港行きが出発10分前になりました。お乗りになられるお客様はお急ぎくださいませ』

「時間ですね」

「ええ、そうね」

「こういう時はサヨナラではなく、またねというべきなんでしょう」

「うん…」

「じゃあ、俺らも言わなきゃだな

鈴、またな」

「鈴、ちょくちょく電話かけるからそっちに着いたら電話かけてくれよ。絶対出るからさ。あっ、そん時にそっちの電話番号教えてくれよ。こっちからも電話かけるからな」

「鈴、楽しかったよ。お前と一緒に学校生活できて。五人でバカやって騒いで、遊んで、飯食って、すごく楽しかった。すこし遠いところに行っちゃうけど俺たちは親友だからな!」

「では、最後に。鈴さんまたどこかでお会いしましょう。その時にでも料理をふるまってください。楽しみに待っています」

「うん!またどこかで会えるわ、絶対に!

だから、またね!」

「「「「おう(はい)またな(お会いしましょう)!」」」」

 

そう言って笑顔でピースを新人たちに向ける鈴。一夏たちも同じように笑顔でピースを返す(新人は相変わらず無表情だが)。

そして、鈴はゲートを抜けて見えなくなっていった。

 

「行っちまったな」

「だけど、また会えるさ」

「新人がよく言う今生の別れってわけでも無いしな」

「帰りますか」

「そうだな」

 

新人たちも空港から消えていった。

 

 

 

 

そして、時はあっという間に経つ。

時間とは無情なるものなのだ




説教7割、帰国3割。

どうしてこうなった(大汗)

どうも、最初に御手洗(みたらい)を他の方の小説を読んでいた時に初見で御手洗(おてあらい)と読んでしまった作者です。数馬君マジゴメス。久しぶりに書いたとはいえこれはひどい。特に新人君の説教部分がかなり強引な展開になっている気がします。SAOのやつなんか書こうとしてるからこうなったんでしょう。文字は多いけどなんかなぁって思ってます。原作前の最終話なので長くなるのは仕方ないと思いたいたい(目を逸らしながら)

SAOのほうの投稿はもしかしたらするかもしれません。ですがこんな作者の作品なので期待しないでください(前書きと後書きの挨拶を見つつ)

そして、書いてない間にUA13000回、お気に入り153件。本当にありがとうございます。こんな不定期すぎる作者の駄文を読んでいただけるだけでも嬉しいのに、ここまでの人に閲覧、お気に入り登録していただけて光栄です。そして、感想を書いていただいた、ゴオーさん、マス大地さん、私は誰だ。さん、ありがとうございます。感想での指摘や、応援はすごく励みになります。さらに評価を新しくいただきました。勇者(という名の魔王)さんありがとうございます。高い評価をいただいても慢心せず頑張らせていただきます。



次回はいよいよ原作に入れるといいなぁって思ってます。


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お話の前のお話 〜受験とIS〜

横浜がCSに行くことができて嬉しい作者です。

前回の二の舞は踏まないように不定期ながらも早めの更新を心がけたいと思っています。

どうでもいい話ですが昨日のFGOのガチャでセイバーピックアップをやっていたので友達にエクスカリバー撃ってみろよと言われてガチャを引いたらアルトリアのオルタが出ました。どうでもいい話ですね。


今回で原作前のお話はラストになります。
短いですが繋ぎのようなものなので勘弁してつかぁさい


13

 

鈴が帰国してから一年後

 

新人は親の仕事の付き添いでフランスやら中国やらアメリカやらを飛び回り、時々実家に帰ったり、テストで満点取ったり、とまあ言ってしまえばいつも通りである。

一夏の方は、姉の千冬に教えてもらいながら剣道に打ち込んだり、将来のために新人に教えてもらいながら勉強をしたり、またクラスの女子を落としていたりと、こちらも大概いつも通りである。

 

だが今日はいつもとは全く違う日である。

 

 

 

受験

 

 

 

誰もが一度は受けるであろう15歳の階段に現れる大きな壁である。新人と一夏は同じ高校を受けた。弾たちは弾たちで同じ高校を受けた。新人たちと弾たちでは受験会場が違うため離れてしまっているが前日にお互いの健闘を祈って最後の仕上げを弾宅で行った。朝から通しで、昼と夜は弾の父親に作ってもらいながら仕上げをしたのだ。

 

結果は上々。新人と一夏は買ってきた問題集を全問正解で終わらせ、弾と数馬も一部は新人と一夏に教えられながらも、だいたいは正解だった。最後に四人で篠ノ之神社というこの町にある神社まで合格祈願を祈りに行った。

 

話は戻って受験当日

 

新人は一夏よりもあらかじめ早くいくことで最後の復習をしていた。彼からすれば楽勝のようなものだが油断はできないのである。そして受験開始五分前。新人は復習を切り上げて周りを見渡すと一夏がいないことに気づく。さすがに五分前に居ないのはおかしいと思ったが時間が来てしまい、一夏がいないまま受験は始まり、終わった。遅れて一夏が参加することもなく誰一人の遅刻者も出ないまま受験は終わり帰り道へ。家に着いてカバンを下ろしてから一夏宅に行くも、インターホンからの応答はなく、二、三時間待っても一夏が現れることはなかった。

 

 

翌日

 

 

目覚ました新人はいつも通り歯を磨いてからリビングに入る。するとそこには新聞を落としたまま固まっている父と、何故かフライ返しを持ったまま固まっている母がいた。何かあったのかと思いテレビを見る。するとそこには、

 

『繰り返します。昨日、政府から初のIS男性操縦者が現れたとの発表がありました。初の男性操縦者の名前はなんと、織斑一夏。あの織斑千冬の弟です。何故彼が突然ISを動かせるようになったのかは不明ですが、昨夜未明にかの天才科学者でありISの発明者である篠ノ之束博士はーーー』

 

テレビでは一夏が初の男性操縦者となったことを知らせる報道が流れていた。新人は興味無いとばかりに他のチャンネルに変えるも、そこでも一夏が初の男性操縦者になったことが報道されていた。そうですかと呟くと同時に、これでは朝一でやっている五分アニメ、ふぇいとDE/GOが見れないと気付くと少し肩を落としながら椅子に座ると味噌汁を啜っていた。

 

「新人、お前一夏君が初の男性操縦者になったて聞いて驚かないのか!?」

「父さん、正直一夏君がIS操縦者になろうとも僕には関係の無いことです。それに僕としては一夏君の安否が確認されたことの方が大事なので」

 

そう、親に告げると白米に手をつけ、卵焼きに手をつけ、味噌汁を啜りを繰り返して食事を終えると日課であるランニング10kmをするためにジャージに着替えると、走りに行ってしまった。

新人が帰ってくると、弾たちから電話があったことを母親から伝えられたので電話をかけると、

 

「一夏がISの男性操縦者になった、って聞いたか!?」

「聞きましたが別に興味無いですね」

 

この二言で会話は沈黙。一分後には電話は切られていた。そして、それが数馬からも正に異口同音の質問をされたので同じように返して同じような反応をして終わった。

 

 

次の日

 

 

土曜日である。が、昨日の一夏の発表が原因で男性IS操縦者を探すために日本中で、ISに反応するかのテストが行われた。新人は興味無いから行こうとしなかったが一応行ってこいという、親からの一言で渋々行くことになった。長い列を待つ間に最近ハマったインドの言葉についての本を読みふけっていると新人の番になる。これで帰れるとISに触れた瞬間

 

 

新人の体はISを装着したままの状態で立っていた。

 

(まずいですね、意識がだんだんと無くなっていくような、まるで魂が抜けていくような気がーーー)

 

ガシャァン

 

新人の意識はここで途切れていた




まず始めに、UA15000、お気に入り件数160件突破。本当にありがとうございます。前回あんなに遅れていたのに見てくださった方がたくさんいてくださったことに感謝を。そして感想を書いてくださったゴオーさん、いつもありがとうございます。感想が書かれているのを見るとにやけてしまうのはなかなか治らないです。


ついに次回で原作入り。どうして新人が倒れたのとか新人たちの恋愛模様は何れ。


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転生 多分一巻のお話編
ISと少年たち 〜夢と学園〜


ようやく原作(読んだことが一度もない)にお話がたどり着いた作者です。正直アニメ版だけ見て書いているのでわからんことだらけです。



最近、ーーー作者です、の前振りが定着してきてるなぁと思っています。別にどうでもいいですが。

今回は原作にようやく入るお話。でも少し原作とは違う部分があったり。


 

夢を見ているのだろう。新人は自分の現状をそう判断した。なぜなら自分がいつも感じている体の感覚が無いからである。

新人の視線の先には一人の男がいた。顔を見ることはできないが体格で男ということがわかった。その男は賭博に溺れ、酒に酔い、女に囲まれる。その姿をいつもの新人が見たのならば、そうですかと一言で興味をなくしただろう。たが新人は目を離せなかった。賭博に負け、酒に堕ち、女に貢ぐ、そして借金まみれになった男の人生に目を背けることができなかった。一瞬の暗転から次に映ったのは借金まみれになった男がフードを被った男に刺されている場面である。刺した男は、金を寄越せと何度もつぶやき、刺された男は口を開いて何かを言っているようだが、新人にはまったく聞こえなかった。次の瞬間にはまた視界が暗転した。そして目の前に現れたのは先ほどの刺された男である。俯いていて顔を見ることができないが、それは此方へと不気味な足取りで近づいてくる。此方まで後一歩、新人より大きい男の顔はなぜか暗くてよく見えない。その男が顔を上げる。そこには

 

 

 

 

自分と同じ顔をした男がーーー

 

 

 

 

 

 

!?

新人は目を覚ます。何か夢を見ていた気がするのだがなんの夢を見ていたのか思い出すことができなかった。新人はすごく気だるいと感じながらも上半身を起こして周りを見渡す。が、カーテンによって周りを見ることはできなかった。わかることは自分が病人がきる服を着ていることである。ここがどこなのか、待てば誰かが来て説明なりなんなりしてくれるだろう。だが新人は気だるい体を動かして床に足をつけると、そのまま立ち上がりカーテンを開く。そこには人はおらず、だがここがどこなのかのヒントがあった。保健室である。二つあるベッドや机だけでは他の施設か何かかもしれないが、その机の上には使用履歴が書かれていた。知らない名前がたくさん書き連ねてあるがどれも3-3や2-2のようにクラスが書かれていた。なぜ自分が保健室にいるのか訳がわからない新人だが、ここに人がいない以上探しに行って事情を聞くしか無いと、保健室を出て行った。自動でドアが開いたことに少し驚いたのは内緒である。

 

ペタペタと裸足で学校であろう場所を探索する新人。どこかに地図があるはずと歩き続けて約30分。近くにあった時計を確認すると8時59分を指している。そして針が動いて9時を指すと、どこからか学校でよく流れるチャイムが鳴る。今いる場所は一階のどこかで教室をまだ見つけていない。下手にこの学校の生徒に見つかって不審者扱いされるのは困ると撤退する新人。気だるさが抜けたので全速力で駆け戻り保健室に入るとまだ人はいなかった。特に息が乱れることもなく帰ってきた新人は一度ベッドの上に座る。そして誰か人が来ないものかと考えたその瞬間、保健室の自動ドアがプシュと空気が抜けたような音を立てて開かれた。新人が顔を上げるとそこには、

 

「む、起きていたのか。久しぶりだな新人」

「ええ、お久しぶりです、千冬さん」

 

久しく見ていなかった織斑千冬が居た。

 

 

 

「気絶、ですか」

「ああ、お前が試験用のISに触れた瞬間、ISを装着すると同時にそのまま倒れてしまってな、気絶していたらしい。そこで病院に運んでもらい検査をしたが異常はなかった。だが一週間程目を覚まさなくてな、本来なら受けてもらわなければならない試験などがあったがその間にすることができないまま、今日まで寝ていたというわけだ」

「そうでしたか、迷惑をかけていたようで申し訳ないですね」

「別に気しなくてもいいさ、既にやれることはやってあるしお前の家族にもこのIS学園に入ることに関しては伝えてある」

「拒否権はありませんよね」

「まあ、そうなるな」

 

家族と会えなくなるのは少し寂しい気もするが、会えないことは無いと新人は気にする様子もなかった。

 

「ここはIS学園の保健室ということですか」

「ああ、そうだ。ついでに言えば今日は入学式の日でもある」

「となると、先ほどのチャイムが終わりの合図ですか」

「そういうことだな。さて、お前には今からそこにある制服に着替えてもらって私と一緒に1年1組の教室に行ってもらう。そこには一夏もいるから周り全員が女子ということは無いから安心しろ」

「まあ、別に気にしませんから大丈夫ですが」

「まあ、お前ならそう言うと思ったよ。さあ、さっさと着替えろ。外で待っている」

「あっ、待ってください」

「なんだ、何か気になることでもあったか?」

「はい、一つだけ。

 

 

 

靴はどこにありますか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

靴を支給され、IS学園の制服を着る新人。サイズはしっかりと合っており、袖長すぎたり、短すぎるといったことはなく、鏡を見てもいつもの無表情な顔とIS学園の制服を着た自分がいるだけである。保健室を出ると目の前に千冬が立っていた。

 

「終わったか、それなら行くぞ」

 

千冬が動くのに合わせて新人も動き出す。道中、学園の施設の説明を簡単に受け、1-1までもう少しといったところで、新人が質問をする。

 

「千冬さんはここの先生なんですよね」

「ああ、そうだな。だからーーー」

「なら千冬先生と呼べばいいでしょうか」

「いや、私のことは織斑先生と呼べ。あまりここで下の名前を呼ばれるのは好かん」

「そうですか、なら織斑先生と呼ぶことにします」

 

そうこうしているうちに、教室の前に着く新人と千冬。千冬は振り向くと、

 

「さて、ここからは私とお前は生徒と教師の関係だ。私情を持ち込んで甘くしてもらおうなどとお前が考えるとは思えんが覚悟しておけ」

「わかりました、これからよろしくお願いします」

「うむ、では私が入って来いと言ったら来るんだ。それまでここで待っていろ」

 

そういって教室のドアを開け中に入っていく千冬を見届ける新人。すると教室の中からは一夏の叫び声や女子の黄色い悲鳴、千冬の罵倒のような言葉の数々が聞こえてくるがここは割愛。そして、千冬が、事情があってくるのが遅れた奴がいる、入っていこい、と言った。それを聞いた新人は教室の扉を開けて中に入る。すると周りからは、男!?、二人目!?、たしか会場でISにーーー、ここに男子が二人なんてーーー、あぁ^~心がーーー、

今すぐ二人の絡み愛をーーー、な、なんでここに新人が、嘘じゃない…よね、などとかなりうるさい。だが、バァンと机から鳴るとは思えない音が千冬によって叩き出されると、教室は一転して静かになった。

 

「馬鹿どもが、こんなことでいちいち騒ぐな。さあ、自己紹介しろ。余分なことは言わなくていい。休み時間に喋ればいいからな」

「わかりました。

 

自分の名前は天下(あました) 新人(あらと)と言います。趣味は読書で最近は料理にも手を出しています。特技と言えるものではないですが、日本を除いて9カ国の読み書きと会話ができます。事情があって皆さんとは一緒に入学式に出ることができませんでしたが、一年間この教室でお世話になるのでよろしくお願い致します」

 

新人が45度の綺麗なお辞儀をすると、ハッとしたのか遅れて拍手が飛んでくる。顔を上げ教室を見渡すとほとんどが日本人ではあるが、中には見知った顔がいた。目の前の先頭の席には一夏が、そして窓際一番後ろには見慣れない金髪の少女の隣に見慣れた金髪の少女の顔を見つける。その少女はかなり驚いていて半ば放心状態となっているが、なんとか拍手を送っているといった感じだろう。

少し経つと自然と拍手がやむ。そこに間髪入れずに千冬が、

 

「お前の席はそこにいる織斑の隣だ。さっさと席に着け。

では、この後のことについて少し話したら授業と施設のガイダンスを行う。寝るような奴がいればIS学園の外周を5週走らせる。いいな」

 

千冬がそう締めくくると、誰も嫌とは言わず、ハイと返事をした。

 




まずはいつものアレを。
UA17000、お気に入り件数190件越え、ありがとうございます。いつも読まれているのを感じて、つい最近友達にこのことを報告してしまいました。普通によかったじゃんと返されましたが。そして、感想を書いてくださった、ゴオーさん、さくら餅@キチガイさん、ありがとうございます。感想があるとやっぱりにやけてしまうのが癖になりつつある作者です。


さて、新人君の視点からどうやら知り合いがいたようですが一体誰なんでしょうか(すっとぼけ)。見当がつきません(大嘘)
誰なのかは次回をお楽しみに待ってください。

待って…くれてます…よね?


|電|ω・')
|信|_ /
|柱|



次回は金髪なあの人が来たりするお話


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ISと少年たち 〜幼馴染と大貴族〜

今回の話を書く際に表現の仕方で、高校生以上(15歳以上)は少女ではないだろうと思ってるググってみたら、一応15歳以下までが少女の範囲だと初めて知った作者です。
一応高校一年生ですので15歳なのですが、まあ使うなら中学生以下の人とか、見た目的に15歳以下の人にしようということになっていますので、この作品ではこれからは女の子と表現していきます。まあ、気まぐれで過去編とかの番外編を書いたら少女の表現が出るかもしれませんが。 正直読んでくださっている皆さんからすればどうでもいいことですね、はい。長文失礼しました。


今回はあの方々が登場します。

9/29山田先生の名前が摩耶になっていたので真耶に直しました。


千冬が話を終えるとHR(ホームルーム)が終わる合図のチャイムがなり休み時間となった。新人は隣の席にいる一夏とお互い何があったのかを話し合っていた。一夏は一時的に政府によって保護されていたらしい。二、三日した後に家に帰ってきたらしいが、その時には新人はすでに病院に運ばれていたのですれ違いになったのである。

そんな風に話していると二人に近づいてくる二つの影がある。

 

「話しているところすまない、少し一夏を借りていってもいいか?」

「ええ、構いませんよ。話すことは学園の中にいればいつでもできますし」

「なっ、新人おまえーーー」

「感謝する。ほら、行くぞ一夏」

「ちょ、引っ張るなよ箒、危ないって!」

 

一夏に箒と呼ばれた少女は、一夏の手を引っ張っていき教室を出て行った。出て行ったのを見送ると振り返って、近づいてきていたもう一人の少女へと体を向ける。後ろから近づいていたので気付かれないと思っていた少女(・・)は、新人が振り向いたことに少し驚きながらも、いたずらが失敗した子どものような顔をして、少し乾いたような笑いをしながら新人に声をかける。

 

「あ、アハハハ、久しぶり新人」

「お久しぶりですシャルさん。前にあったのは去年の四月の春休みの時ですから、ちょうど一年ですね」

「う、うん。覚えてくれてたんだね」

「ええ、まあ。それよりお元気そうで何よりです」

「私としては、新人がここにいることが少し気になるかな」

「僕はたまたまここに来てしまっただけですよ。あまり嬉しくは無いのですが」

「そうかな、男の人からすれば女の子に囲まれるのって多少なりとも嬉しいってお父さんが言ってたよ。その後お母さんに連れてかれたけど」

「囲まれることに何をどう喜べばいいのかわからないのですが、僕は囲まれるならシャルさんのように友達に囲まれている方が嬉しいですね」

「そ、そうなんだ。新人って、その、女の子に興味は無いの?」

 

最初は普通に久しぶりに会う友達同士の会話といった感じだったが、いつの間にか新人の異性に興味があるかの説明にすり替わる。話しかけた金髪の少女、シャルロットは少し頬を染めながら新人に問う。周りの女子はシャルロットの質問をどこから聞いたのか、一瞬にして聞き耳の態勢にはいる。それに対する新人の答えは、

 

「知り合い以外に興味は無いです」

 

一瞬教室の中の空気が8対2の割合で凍り、萌えあがる。

 

「ただ、話さないといった極端なものではなくこの人は一緒に過ごしていて楽しいと思った人はやはり興味が湧きます。何が自分をその人に惹きつかせるのか知りたいので。ですから一概にすべてを否定しているわけではありません」

「へ、へぇー、そうなんだ(少し違うような気もするけど、私にもチャンスはあるってことだよね!)」

 

新人の答えを聞いてクラス中がすぐにグループ毎の会議が開かれる。どうすれば新人に興味を持ってもらえるか、あの無表情でクールな顔をどうすれば歪められるか(いい意味で)、新一(あらいち)のカップリングか一新のカップリングか、といった感じに飢えた女子の会話から、ドs紛いの会話、腐っている会話など様々である。新人はいつも通りの無表情でシャルロットに、そろそろ時間ですよと伝えると、シャルロットはう、うんまた後でね、と言って自分の席に戻って行った。

シャルロットが席に着くと同時にチャイムが鳴り、その瞬間教室に入ってきた千冬の一喝で他の女子生徒も席に戻っていく。そして、両隣の席が空いているのに新人が気づくと同時に勢いよく教室のドアが開かれ、両隣の席の主が現る。

一夏と箒は千冬に出席簿で勢いよく叩かれ涙目になりながら席に戻ってきた。

 

 

 

 

 

「えっと、ここまででわからない人はいますか?」

「ハイッ、全部わかりません!」

「ええっ、そんなぁ〜」

「織斑、自宅に送られているはずのISについての教本はどこへやった?」

「えっと、教本、ですか?」

さっと教本を見せる新人。それを見た一夏は、

「ああ、それか。それなら古い電話帳と間違えて捨てました!」

「そうか。 (バンッ)

ならもう一冊用意してやる。一週間以内に中身を全て暗記しろ」

「いてて。無理だって、ちふーーー(スッ)

織斑先生、こんな厚いの一週間じゃとてもできません!」

「口答えするな、やれ。いいな」

「アッハイ」

最後の織斑先生の声はとてもドスついた声だったと言われている。

 

「ふぅ。さて、ほかにこのバカのようにわからないとほざく奴はいるか?」

 

まるで脅し文句のようなセリフだが先頭席から二つ目の手が上がる。

 

「すいません、織斑先生、山田先生。まだわからないところが多々あります」

「ふむ、天下か。お前は仕方あるまい。それを読む時間は碌になかったのだからな。だが、少しはわかるはずだよな、あらかじめ読んでおけと言ったからな」

「はい、ですが単語とそれの意味がわからないものが多いです。アラスカ条約や代表候補生などは昔の経験で知っていますが教本の中身はほとんどわかりません。

 

今まで興味がなかったので」

「そうか。なら、お前ら二人は放課後教室に残ってみっちり教えてやろう。

 

真耶くんがな」

「ええ!?先輩それはいきなりすぎますよ!」

「できるよな」(チフユスマイル)

「は、はいぃ」(真耶は恐怖に陥った!)

 

以上、一限目の授業風景である。

 

 

 

「はぁ、わけわかんねぇ。全く授業の内容も頭に入ってこなかったし」

「まあ、僕たちは興味がなかったとはいえ少なくともあれらはISに関わる人からすれば常識の範疇なんでしょう。早めに覚えないと授業で置いていかれますから、お互い頑張りましょう」

「ああ、そうだな」

 

二人は授業についての反省をしている。といっても軽く次までにはできる限り知っておこう程度で、深い意味はないものだが。新人と一夏で次の授業に備えようと予習を始めようとしたタイミングで、二人に声がかかる。

 

「ちょっと、よろしくて?」

「ん?なんだ、何か用か?」

「はい、なんでございましょうか」

 

新人は振り向き、一夏は顔を上へと向ける。そこにはシャルロットとはまた違う金色ーーシャルロットが濃い色をした金色とするなら、その少女の色は淡い金色ーーの髪を螺旋状に巻いてる今時でも珍しい髪型の女の子がいた。

 

「そこのあなた」

「ん、俺か」

「ええ、あなたですわ。なんですの、そのぶっきらぼうな返事は。そちらのお方は丁寧なお返事ができていらっしゃるというのに、まったく嘆かわしいです」

「なぜ俺は出会って10秒も経たないうちに貶されているんだろうか」

「まあ、気にしたら負けだと思いますよ」

 

一人だけ貶された一夏は少し落ち込む。慰めにならない慰めの言葉をかける新人。その間にも話は続いており、

 

「聞いてますの?まったく、あなた方は私が誰なのかご存じないので?」

「「はい、まったく」

異口同音である。

「そこを揃えられても困りますわ!

ふ、ふん。いいでですわ、ならお教えしましょう。(わたくし)こそIS学園の入試試験において、たった一人だけ試験官の先生を倒したイギリスの大貴族であり代表候補生、セシリア・オルコットなのですわ!よく覚えておきなさいまし!」

「えーと確か代表候補生は国の代表を選出するために選ばれた人で合ってたか?」

「その通りです。ついでに言えばIS学園に来ているということは、代表候補生の中で外に出しても問題ないとされているレベルの人なので、成績はかなり優秀な人でないとここに入ることはできません。つまりオルコットさんはモンドグロッソ程ではないですが国に選ばれた代表ということです」

「その通りですわ。よくお分かりのようで何よりです」

 

ふふん、と誇らしげに胸を張るオルコット。そのせいでかなり主張の激しい一部分がさらに目立つが、新人はいつもの(無表情)、一夏は少し顔が赤くなるがすぐに頭の中で煩悩退散と三度唱えて落ち着きを取り戻す。少し一夏は睨みつけられたような気がしたらしいが気のせいだろう。

一夏が煩悩退散している間に新人が言葉をつなぐ。

 

「いえ、たまたま知っている知識の範囲での会話でしたので」

「そうですの。

さて、本題に入ってもよろしくて?」

「ん、あいさつに来ただけじゃないのか」

「ええ、先ほどの授業の様子を見ていらしているとあなた方はISに関しては無知のようですが」

「まあ、そうだな。さっきの代表候補生に関してはたまたま覚えていただけだし」

「僕もまだまだ専門知識などはまったくわかりませんね」

「そうでしょう。ですから私ことセシリア・オルコットがあなた方にISなるものをお教えしてあげないこともないですのよ」

「でも、俺たちは放課後にみっちりやることになっちまったから別に大丈夫だと思うが」

「ですが、放課後だけでここの授業に間に合いますか?ここの授業はかなりハイスピードで進みますわよ。あなた方のようなイレギュラーがいたとしても少し遅くなる程度で、どんどん進んでいきますのよ。

ですから放課後の補習が終わった後に私が直々に教えて差し上げようというわけなのです」

「ん〜、そうなるとオルコットさんに教わった方が授業にはついていけるのか。でもそうするとオルコットさんに迷惑がかからないか?ほとんどゼロから教えるようなものだし」

「ふっ、平民が困っていらしたら助ける。それが貴族の役目というものなのですわ(キリッ)(ふふふ、決まりましたわ!)」

「おお、なんかかっこいいな。

で、どうする。二人で受けるか?俺はみんなに追いつきたいし迷惑かけたくないから教えて貰おうと思ってるけど」

「僕としても受けたいですね。専門知識は詳しい人に聞くのが一番だと母も言っていましたし」

「なら決まりですわね。ではそろそろ次の授業なので私は戻らせていただきますわ。では、ごきげんよう」

「ああ、またな・・・あっ」

「はい、また後で・・・どうかしましたか、一夏くん」

「そういえば俺一週間の間は家から登校するんだったの忘れてた」

「僕はまだ聞いてないですから後で織斑先生に聞かないといけませんね」

「…後でオルコットさんに謝りに行くか」

「そうしましょう」

 

丁寧なお辞儀をして自分の席に戻っていくオルコットを見送る二人だった。

 

そして、授業開始のチャイムがなり二限目が始まる。




まずはいつものアレを。

UA18000、お気に入り件数200件突破、本当にありがとうございます。お気に入りがついに200件までいって感慨深くなりました。これもいつも読んでくださっている皆さんのおかげです。本当にありがとうございます(大事なことなので2回言いました)。そして、感想を書いてくださった、ゴオーさん、赤い風さん、ありがとうございます。最近、簡潔に楽しんでいただけているといった旨の感想が書かれていてました。こんな感想もらえて作者は感激です。だからと言ってそれ以外の感想が嬉しくないわけがなく、感想の通知が来るたびに今回も書いてくださったんだと、喜びながら読んでます。作者がエンジンならば、UA、お気に入り、感想は正にガソリンです。次回も頑張って早めに投稿できるように頑張ります(不定期投稿)


ところで、セシリアさんってこんな感じでよろしいのでしょうか?他の作者様方の作品を読んできてイメージを作り、なんとなく作者の裏設定のイメージと合わせてみましたが、それによってほとんどの作品で見かけた「土下座しなさい」関連がなくなりました。ここのセシリアさんは淑女であり、誇り高い貴族ということでお願いします。

それと、オリジナルルートに入りましたので第一回のアンケートは締め切らせていただきます(完全なる遅刻)
ご投票してくださった皆さま、ありがとうございました。
今後、活動報告の方ではまたアンケートをやったり、すこし解説入れたりしますのでよろしくお願いします。


次回はみんな大好き(好きとは言ってない)学級委員決め的なお話。



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ISと少年たち 〜代表と部屋〜

最近寝不足の作者です。

今回は代表決めと部屋についてのお話。


16

 

「さて、授業を始める。

 

と言いたいとこだが、一ヶ月後にクラス対抗の代表者戦が行われる。それに伴ってここのクラス代表を決めなければならない。クラス代表と言っても中学などでの学級いいのようなものだ。ある程度仕事があったり今回のような会議の時や代表者が必要なところで前に出るだけだ。簡単なことだろう?

選出の仕方は立候補と推薦だ。やりたい奴は自分から手を挙げろ。推薦をするならそいつの名前と動機をしっかりと言え」

 

千冬が教室に入ってきて早々クラス代表を決めると言う。それに伴いクラス内は少なからず騒がしくなる。こういったものはすぐに治るものだと思うものだが意外なことに長引くのである。まあ、出会って初日、知らない人間に対してイメージはあまり湧かず、中身がどんな人物なのかもわからないのだから必然的とも言える。新人と一夏は少しだけ考えてお互いに話し合うこともなく騒ぎがおさまるのを待つ。やがて、静かになっていき誰もなにも言わなくなってしまった。だが、それと同時に手を挙げる人がいる。お分かりであろうと思うが新人だ。いつも通りの無表情でピシッと手を挙げている。

 

「どうした天下(あました)。立候補するのか、それとも誰か推薦する奴がいるのか」

「自分はセシリア・オルコットさんを推薦します。理由は先ほどの休み時間に自分と隣の一夏くんに、自分の時間を割いてISのことを教えてくると言ってくださいました。イギリスの代表候補生であるため実力も申し分無く、見ず知らずの他人であった自分たちにも優しく接することができるからです」

 

なんの感慨も無く言い切る新人。後ろの方の席ではセシリアがベタ褒めされて表情はいつもの笑顔のままだが、その頬は恥ずかしさからか少し赤みがさしている。その隣にいるシャルロットは新人に褒められたセシリアを少し悲しそうな表情を混じらせて羨ましそうに見つめていた。

 

「ふむ、そうか。では他に推薦や立候補するものはいないか?」

「はい!先生、私は天下新人さんを推薦します。理由は、えっと…優しそうだからです!」

 

勢いよく新人が知らない女子生徒が新人を推薦する。自分は優しかっただろうかと記憶を辿るが、その間にも他の生徒が新人や一夏を推薦したりする。だいたい半々といったところだろう。一夏は自分が推薦されたことに驚いていたが、少し苦笑いをしているだけだった。大方、セシリアさんが選ばれるだろうと軽く楽観視しているのだろう。だが、もしあの時に新人になにも言われていなかったら、なにも考えずに嫌だと喚き散らしていたであろう。楽観視はしているが少しは成長したと言えるかもしれない。ちなみに最後には、俺もオルコットさんを推薦する、と言っていた。

そんなこんなで、

 

「では、推薦の結果オルコット、天下、織斑の三人から代表を選出する。異論はないな?」

 

千冬の質問に対して言葉を発するものはおらず、そのまま進行していく。

 

「では、選出方法を言うぞ。方法は

 

三人での総当たりによるISの模擬戦、だ」

「ちょっとお待ちくださいませ!」

 

千冬が出した意見に対してすぐに待ったをかけるセシリア。その顔はまさに怒っています、と体言している。

 

「私に、ISに碌に乗ってない初心者と戦えというのですか!」

「何か問題でもあるのか」

「そんなものイジメと似たようなものですわ!国家代表候補生とISの搭乗時間が一日にも満たないISのあの字も知らない二人とやったって結果なんて見えきっているようなものです」

「ほお、そこまで言うか。

で、どうなんだそこの二人は、やるのかやる気がないのか、どう答えてもやらせるがな」

「っ!?」

「俺はもちろんやるぜ。今のうちに上手いやつのやり方を見れるのは今後の経験にもつながるしな、それにあわよくば一発は決めたい。そこまで言われたなら、やらなきゃ男が廃るってもんだ」

「自分はどちらでもかまいせん。ISもまだ動かしたことがないのでできれば乗ってみたいとは思っていますが。まずはそこからなので」

「で、どうするんだ、オルコット?」

「くっ、わかりました。

ですが!やるからには本気で行かせてもらいます。ハンデをつけるつもりもありません、全力で代表候補生の実力を思い知らせてあげますわ!」

「そうこなくっちゃな!楽しみにしてるぜ、オルコットさん」

「よろしくお願いします、オルコットさん」

「よろしくお願い致しますわ、織斑さん、天下さん」

「では試合は来週の月曜日、今から一週間後に第一アリーナにて行う。三者ともにしっかりと準備をしてから試合に臨め、以上だ。授業に戻るぞ」

 

こうして三人の戦いの火蓋が切って下された。三者は一週間後の試合に向けてどんな準備をするのか。そして、オルコットが二人に勉強を教えると約束したことは果たしてどうなるのか。次回をお楽しみに。

 

 

 

(まだ終わってません)

 

 

 

授業が終わって放課後。新人と一夏は先生に言われた通りにみっちり三時間勉強をした。新人はふむ、といった感じでまだまだ余裕が見える。一方、一夏は頭が痛いのかよくわからないのか頭を抱えてうーうー唸っていた。時間が来たので教室から出て先生に報告しに行こうと教室のドアを開けると目の前には副担任である、山田先生が立っていた。

 

「あ、二人ともまだいましたか。ちょうど良かったです」

「どうかしたんですか、山田先生。まだ用事があるんですか?」

「いえ、二人に渡したいものがあるんです。

はいっ、ここの寮の鍵です。二人の部屋は別々になってしまっていますがお隣さんなのですぐに会うこともできますよ」

「えっ、俺は一週間は自宅からの登校って聞いていたんですけど。荷物も家にありますし」

「それなら心配いらん」

山田先生の後ろからぬっと出てくる織斑先生

「あれ、千冬姉ぇ。どういうことなんだ?」

「お前ら二人の荷物は天下の両親に頼んである程度見繕ってもらったものが運んでもらってある。だからお前らは今日からここで過ごすことになる」

「そういうことか、新人の親父さんと母さんなら問題ないか。それで、他に何かありませんか?」

「あっ、それでは私から寮生活に関しての注意事項を幾つか説明させてもらいますね。

まず知っての通りIS学園は女の子しかいません。ですので二人にはしっかりと節度を持って過ごしてください。それと寮は基本一部屋二人の共同生活です」

「では、同居人は」

「はい、御察しの通り女の子になります。これに関しては織斑君しか来ないと思っていた学園側が織斑君の準備だけをすぐに済ませたのですが、天下君が遅れて出てしまったためすでに決められた部屋割りを無理やり変えようとすると既に移動した生徒たちに申し訳ないということでこうなってしまったんです。こちら側不手際によるものなんです。ごめんなさい」

「いえ、山田先生が謝る必要はないと思います」

「それでも、けじめはつけなきゃいけませんから。では、寮生活の説明の続きを。もう少しで終わりますから我慢してください。

ここには大浴場があるのですが使うことができないんです」

「まあ、そうだよなぁ。風呂に入れないのは残念だけど」

「わかってくれて何よりです。先生たちもお二人がお風呂に入れるように頑張りますから。ですのでしばらくは自室のシャワーで我慢してください。だいたいこれくらいでしょうか。織斑先生からは何かありませんか?」

 

千冬は特にない、と告げるとスタスタと去っていった。二人はお互いに鍵の番号を確認する。一夏が1104、新人が1105だった。荷物を手に(新人はバッグなどが無いから文字通り手に持って)、一夏が入学式でもらった地図を頼りに寮へ向かっていた。

 

 

 

 

寮に着き自分の部屋の前に立つ新人と一夏。一夏は緊張しているように見える。そりゃそうだろう。女子と二人っきりなんて人生でそうそう無い経験だ。しかも同居である。緊張するのも無理無い。だが新人の方は全くもって興味が無いのか、じっ、と木製の部屋のドアを見つめ続けている。

 

「そ、それじゃあ、また後でな」

「はい、だいたい七時半に食堂前ですね。同居人との挨拶もありますし、荷ほどきもある程度はしないといけませんからね」

「ああ、そうだな。それじゃあ先に行かせてもらう」

 

一夏は部屋を声をかけながらノックすると中から新人にとってなんとなく聞き覚えのある声が聞こえる。入って良いと言われたのか、こっちを向いて手を上げながら、またなと言って部屋の中に入っていった。新人もノックをして反応を伺う。誰も居ないのか返事が返ってこないのでもう一度、今度は、すみません。同居することになった天下新人と言います。入ってもよろしいでしょうか、と言いながらノックする。すると今度は反応があった。部屋の中から少し人が動くような気配を感じられたのだ。それがドアの前まで来ると、入っていいわよ、と言われる。

新人はドアを開ける。するとそこには、

 

「おかえりなさい!ご飯にします?お風呂にします?それとも、わ・た・し?」

 

そこにはエプロンをつけている薄い青色の髪の毛と紅い瞳の女の子が立っていた。だが、エプロンをつけていると言っても肌の露出度は高く、大きい胸の北半球や太ももなどが丸見えで、まるでエプロン以外をつけていないような格好(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)なのだ。しかもそれをしているのは、百人に問えば百人とも美少女だと答えるほどに整った顔立ちと、出るとこは出てて、出なくてもいいところはしっかりと引き締まった、所謂ボンキュッボンなスタイルの女の子。こんなことを裸エプロンなんかでされたら男は確実に堕ちてしまうだろう。

 

「はじめまして、今日からここで一緒に生活することになりました。天下新人(あましたあらと)と申します。これからよろしくお願いします」

「あ、どうも、こちらこそよろしくお願いします」

 

と、お互い頭を下げた。新人の丁寧さに思わず相手の方もお辞儀をしてしまったのだ。

 

「では、失礼します。友達と待ち合わせをしているので早めに支度を済ませないといけないので、お互いの細かいことは荷ほどきをしながらでも構いませんか?」

「えっ!……あ、うん、いいわよ」

「ありがとうございます。改めましてこれからよろしくお願いします」

 

まあ、ここまでやっても気にしない奴は気にしないのだ。今、ここにいるこいつみたいに。

 

「もしかして、私、スルーされたの?嘘でしょ。そんなはずは無いわ。これはお母様から受け継いだ、絶対に男を落とすことのできる108式の究極奥義なのよ。私みたいな美少女がこんなことしたら絶対に顔を赤くするとかするはずだもん。ありえない。そうよ、きっとそうなのよ、あの子がおかしいんだわ。きっとホモとかそんなんなのよ。でなきゃまるで私に魅力が無いみたいじゃない。だからそう、あの子はきっと織斑君狙いのホモなのよ絶対そうだわ、そうに決まってる」

 

新人に無視されたことによるショックか、頭を抱えながらしゃがみこむ新人の同居人。裸エプロンと思わしき姿のタネはエプロンの下に水着をつけていたのだ。通りでこんなことができるはずである。本気(マジ)でやってたらさすがに痴女と認めなければならなかったからある意味これで良かったのではあるのだが、落ち込ませた本人はまるで聞いていないように荷ほどきを進めている。

 

「すみません」

「な、な、なな、なにかしら?」

「名前を教えてもらってもよろしいでしょうか、今後必要になりますのでできれば早めに教えて欲しいのですが」

更識(さらしき)楯無(たてなし)よ」

「では、更識さん。まずは否定しなければならないのですが、更識さんは魅力が無いわけでは無いですよ。どこから見ても綺麗な美人さんだと思います。それと108式の奥義は忘れたほうがよろしいかと。そして最後に自分は同性愛好者では無いですよ。ただ、興味が無いだけだったでしたから。織斑君にやったら顔を赤くしてくれると思いますよ」

「も、もしかして聞こえてた?」

「はい、聞こえてましたよ」

「う、うぅ、恥ずかしい」

「それと、最後に一つ」

「な、なにかしら?」

「人の好みに対して自分はとやかく言うことはありません。ですが趣味は人それぞれと言いますので、その服を着れるように配慮したほうがよろしいですか?」

「う、うぅ、結構です・・・」

 

こうして、新人の同居人である更識とのファーストコンタクトが終わった。新人が更識の地雷原を容赦なく撃ち抜いて爆破処理し、更識を轟沈させたことによって。




まずはいつものを。
UA20000突破、お気に入り件数220、本当にありがとうございます。ついにUAが20000を超えて嬉しいです。次は30000を目指しながら調子に乗らずに謙虚さを大事にしながら頑張ります。そして、今回も感想をいただきました。マス大地さん、ゴオーさん、感想ありがとうございます。せっかくだしたシャルが空気気味ですが、前話で新人にした質問でみんなに問い詰められていて動けなかったみたいな感じでお願いします。

正直楯無さんドウシテコウナッタ。ギャグみたいにする気はあまり(40%)なかったのに。あまりにひどすぎた。


次回は多分食堂に行ったり次の日の話だったりします。

おやすみなさい


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ISと少年たち 〜ルールと信頼〜

中間テストが関数が問題のメインになっていて発狂した作者です。
爆ぜろ関数、弾けろ二次関数。某塾のCMで微分、積分、二次関数と、叫んでいる理由がようやくわかった気がします。

まだ明日もあるんですけどね……


まあ、そんなこんなでテスト期間ですので投稿も遅いし、文も短いですが、ストレス発散と苦手な関数がどうにかできるようになることを願って投稿しました。

今回は部屋のルール決めと食堂前までです。

10/22. 最後のところの呟くのところを唸るに修正



「さて、荷解きも終わりましたし、早速ですが部屋のルールを決めましょう。更識先輩」

「あら、私の学年は伝えてないはずなのに、どうして先輩呼びなのかしら。

はっ、もしやストーカー!?」

 

荷解きを終えた新人が更識にルールを決めようと提案するが、更識はいきなりストーカー呼ばわりしてきたので新人は、

 

「いえ、執着性追跡癖(ストーカー)(勝手に作りました)ではなく単に荷物の中に混じっていたパンフレットに生徒会長と書かれていましたので先輩だと推測したのですが、間違っていましたか?雰囲気的にも今の発言的にも人で遊ぶのが大好きな小悪魔的な年上の人といった感じがしましたので。それと自分たちはまだ初対面ですよ」

「うぅ、ネタが通じないし褒められてるようで貶されるしなんなのよ、お姉さん泣いちゃうわよ」

 

少し涙目になりながらそう言った更識だが、新人は先ほどのように仕掛けられてある地雷を踏み抜きながら、手榴弾(グレネード)を投げる勢いで言葉を放つ。

 

「そういった発言が原因なのですが、それと泣くときは洗面所でお願いします。泣き終えた後も楽になると思いますので」

「本当に泣きそう…虚ちゃん助けてぇ」

「まあ、そんな事より早く部屋のルールを決めましょう。夕食は友達と待ち合わせをしていますので時間までには行きたいんです」

 

そんなことと、一蹴して切り捨てる新人。だが、更識の目には未だ反抗の意志が宿っていた。

 

「そんな事って、もうちょっと優しくしてくれてもいいんじゃないの?ほら、紳士的な方がモテるわよ、もしかしたら私も」

「前はそうしてきました。父の友人の方にそう教え込まれましたので。ですがそうすると相手にいらない勘違いをさせてしまうので、最初はある程度丁寧に話して相手の性格をなんとなく理解してから少しずつ態度などを変えていこうという結論に至りました」

「私は丁寧に話された覚えがないわよ」

「ありましたよ。最初のノックした時です」

「それだけ!?もうちょっと見極める材料は無かったの?」

「いえ、あんな大胆な趣味を持っていてなおかつそれを臆面なく相手に晒し、そして初対面の相手を誘惑してくる人にはこの程度よろしいかと思いまして」

「あぁん、意外と自業自得ぅ」

「それより遊んでないで早く決めましょう。あと20分を切ってしまっていますので」

「はーい」

 

くだらない応酬のあとに、すぐに切り替えていけるのは年の功かそれとも他の何かか、新人は気にせずにルールを決めていく。

 

シャワーは基本的に更識に優先する(なけなしのレディーファースト)。

洗面所の入り口(洗面所の奥にシャワールーム)には簡易的な釣り看板を作りどちらが入っているかを一目で見やすくして、事故がないようにする。

お互いに不純な異性の行為を促すようなことはしない(主に更識)。

遅くまで起きる時にはしっかりと伝える。

部屋に入る時はノックして名前を言ってから入ること。

 

などなど細かいことも含めて10分程度でルールを決める。

 

「さすが、と言うべきでしょうか。なかなか早く決まりました。ありがとうございます」

「いや、いいのよ。私のせいで時間ギリギリになっちゃったわけだし」

「それでもです。少し、更識さんの評価を変えなければいけませんね」

 

考え込むようにして評価を変える新人。因みに彼の中での評価は、趣味が露出癖な変な先輩から、少し頼りにできる変な先輩になった。微々たる変化だが今を知る一夏たちからすれば、早々に信頼を得ることができた更識に驚くだろう。中学に入ってからそれほどに新人の意識は変わっていたのだ。

 

「あら?少しは信頼してくれるようになった?」

「ええ、織斑くんやシャルさんには及びませんが少なくとも信頼してます。同じ部屋で過ごせる程度には」

「そっか、それならいいわ。それじゃあそろそろ行きましょう」

「更識さんも夕食ですか」

「ええ、生徒会の仕事が長引いてね。新人くんが来る少し前に来たばっかりだったのよ」

「そうですか、食事よりも趣味を優先する人は多くいますが、そのままで来る人はやはり珍しいですね」

「お願いだからその話はしないで頂戴な。それとお詫びも込めて案内も、ね」

「わかりました。ではよろしくお願いします」

 

新人の方を向いてウィンクをしながら案内すると言う更識。新人はそのままお願いすると、二人で部屋を出て行く。因みにここは基本オートロックだ。部屋を出る時はしっかりと鍵を持って出よう。

 

 

 

 

食堂間で、あと少しといったところで更識が、今日は友達と食べるんだから私はここで離れるわ、またあとで会いましょう。と言って一人で先に行ってしまった。

そうして、新人が食堂前に着くと人だかりができていた。原因はもちろん一夏だ。ただでさえ世界初の男性IS操縦者ということで注目されているのに、さらに長身でイケメンというコンボで女子生徒たちの心を鷲掴みして行っているのだ。そして、対応の丁寧さから溢れる紳士感も心を惹かせる要因の一つだろう。新人が来るのを待っている間にできた人だかりに困惑していると、一緒に食事をしませんかと周りの女子生徒から誘われたが、先約がいると丁寧に断っていたのだ。そして、その高い身長を生かして新人を見つけると、

 

「おっ、来たか。新人」

「すいません、待たせてしまいましたか?」

「いや、時間までにはしっかりと来てくれたから別に気にしてないさ。それと、一緒の部屋で生活することになった子もいるけど構わないか?俺の幼馴染なんだ。確か、朝の時に少しだけ話してると思うんだけど」

 

そう言って、自分の隣にいる女の子に目配せするが、少し俯いて、むぅと唸ると黙ってしまった。

 

「たしか、織斑くんと話すためにわざわざ言いにきてくれた人でしたか。僕は構いませんよ。織斑くんの幼馴染ならできれば仲良くしたいですね」

「新人なら、そう言うと思ってたよ。それじゃ、行こうか」

 




では、いつものから。

UA23000越え、お気に入り件数240件越え、ありがとうございます。毎回こうやって読んでくださっている皆さまに感謝していますがそろそろ感謝の言葉のネタというかレパートリーが尽きそうになってきました。感謝していることは伝えたいのですが毎回同じになって手抜きみたいにならないか心配です。ですが読んでくださっていることに対しての感謝は絶対に忘れるつもりはございません。そして、感想を書いてくださったゴオーさん、カザミドリさん、ありがとうございます。感想を読む時はいつもテンションが上がります。


中間テスト期間中に投稿するのは間違っているだろうか。


次回は食事中のお話になります。えっ?明日のお話?・・・・・・しっ、知りませんねぇ(遠い方を向いて汗をかきながら)


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ISと少年たち 〜相席と昔話〜

一週間書かなかっただけで前と同じように書けなくなった気がする作者です。
気分屋なので気分が乗った時に書くスタイルなのですが、前話を書いた時と同じ気分で書くことができず、なんか違和感があるなぁとグダグダしてました。テストが終わって文化祭と体育祭が近すぎて生徒会の仕事に追われる毎日です。学生の帰りが10時半なのはこの時期だけにしてほしいと思いました(小並感)

それと、リア友(前に普通に面白いと言った)がこれを読んでくれているのですがそいつがもう一人のリア友(作者とも友達)にこれを紹介しまして、そいつからも面白いと言われました。普通に嬉しかったのですが、その後にラ◯ンでツイ◯ターで拡散するとか言われて直ぐ様やめろぉ!と叫びました。どうでもいいですね。

今回で入学初日が終わります。
それと、先ほども書きましたが違和感がある中で書いたのでもしかしたら書き方が前話と違うような点があるかもしれませんが、もし見つけたら、あぁストレスが溜まってるんだなぁとでも思ってください。


食堂の中に入る。広く、席数は多いが、そのほとんどの席は女子生徒によって埋め尽くされていた。ピークの時間に来てしまったようだ。新人たちは食券を買ってどこか空いている席は無いかと探す。ふと、空いている席を見つける新人。一夏たちに空いてる席があることを伝えると食券を食堂のおばちゃんに渡した。続いて一夏と一夏の幼馴染も食券を渡すと、頼んだものが出来上がるのを待つ。その間に自己紹介を済ませようと新人は一夏の幼馴染の方を向いて軽く会釈をする。

 

「まずは自己紹介を、自分は天下新人(あましたあらと)と言います。あなたのお名前はなんと言いますか?」

 

心の準備もつかないまま話しかけられたせいか幼馴染の女の子は一夏の方をチラリと見る。が、一夏は食堂のおばちゃんたちの料理する姿を真剣に見ている。知らない人が見たなら何を見ているのだろうかと思う、もしくは熟女好きなのかと勘違いをするかもしれない。だが、幼馴染は一夏がおばちゃんたちの料理の腕を真似しようとしているのがわかる。それだけ付き合いが長いのだ。料理が好きで腕を上げたいのはわかるが、と思うところもあるがいつもの一夏を見た幼馴染は安心ゆえか少しクスリと笑ってしまった。それが緊張をほぐしたのだろう。視線を新人に向ける。

 

「私の名前は篠ノ之(しののの) (ほうき)と言う。箒と呼んでくれて構わない。」

「わかりました、では箒さんとお呼びします。これからよろしくお願いします」

「ああ、こちらこそ」

 

お互いに手を差し出しあい握手をする。二人はなんとなく察した。ああ、一夏のことで苦労してるんだなぁと。そんな二人は当の本人に目を向けるが未だ真剣に料理風景を見ている。箒はため息をつく。新人は一夏の肩を軽く叩いて見るが気づかない事を確認すると、少し強めに手刀を一夏の首に打ち付ける。所謂、首トンというやつだ。さすがに急所を突かれて気づかないやつはそうそうおらず、一夏は少し涙目になりながら振り返る。

 

また(・・)、なってたか?」

「ええ、また(・・)なってました」

 

一夏が復帰すると同時におばちゃんたちがメニューができたことを伝える。三人はそれぞれ各々が頼んだ品々を持っていくと、新人先導のもと空いている席へと向かう。しかしそこにはすでに一人の生徒が腰をかけていた。新人はその生徒に声をかける。

 

「シャルさん、こんばんは」

「あ、新人!ど、どうしたのかな?」

「周りの席が空いていませんのでシャルさんと相席したいのですがよろしいでしょうか」

「あ、うん。大丈夫だよ」

「ありがとうございます。一夏くん、箒さんよろしいそうですよ」

「あれ、新人一人じゃないんだ」

「ええ、あらかじめ一緒に食べる約束をしていましたので」

 

シャルは平然とした表情で新人に応対するが、一夏と箒を呼んだ瞬間にちょっと残念だなぁ、と感じてしまう。だが、一緒に食事をするのは一年振りなので嬉しいことには変わらない。今も新人が失礼します、と言ってシャルの隣の席に座ったためかなりドキドキしているようだ。まあ、そんことはおくびにも出さず、平然とした表情を続けられるシャルはすごいものだが。え?新人?……いつもの(無表情)

 

一夏と箒も席に座ると相席に関してのお礼と軽い自己紹介をする。一夏は、多分この子が前に言ってた新人の幼馴染なんだろうと、なんとなく察する。なぜなら、新人の知り合いは少なすぎるからだ。新人がIS学園に入学してすぐに友達を作るなんて到底無理だと理解していた。一夏は、それでも一応とシャルに新人とは幼馴染なのか、と聞くと答えはイエスの返事である。逆に一夏はシャルに新人といつ知り合ったのかを聞かれた。小3の頃に転校してきて今まで色々あったことを、注文した日替わり和風定食を食しながら伝えていく。正直、濃密すぎて割愛せざるおえないが、とりあえず欲張り定食という、様々なおかず全15種類ほどが入った定食を完食し、食後のコーヒーを新人が飲み終える程度には話が長くなっていたことは伝えよう。さすがにドイツの話はしなかったが。

 

「へぇ〜、そんなことがあったんだね。というより新人は無茶しすぎなんじゃ無いかな」

「大丈夫です。夏休みの時に実家に帰ったのですが、僕の先生が山籠りをしようと言って一週間ずっと山で山菜と川魚を取って、自分で火起こしするようなサバイバルに比べたらある程度はいけます」

「俺と一緒にいなかった間にそんなことが…」

「流石の私も山籠りをしたことは無いぞ」

 

シャルはジト目、一夏は苦笑い、箒は呆れた表情をしながら新人に視線を送る。本人は気づいていないが、こんな現代社会において山籠り、ましてや自分の手で火起こしをするなど普通ならありえないのだ。だが、新人はさも当然だと言わんばかりに火を点け、川魚を焼いていたのだから、こいつにできないことはあまり無いだろう思われている。実際話に耳を傾けていたのは一夏たちだけでなく、食堂に居合わせた他の生徒もこの昔話を聞いていたのだ。感想を一つにまとめるなら、信じられない、である。おとなしい雰囲気をチラつかせながら中身は野獣(物理的な意味)で、天然毒舌、料理好きな努力家という、属性盛りすぎてカオスになっている。イメージできないと思う一年女子と少数の上級生たちだった。一方、自分の昔話を話された新人は自分の面白くも無い昔話をして何か意味はあるのだろうか?と、自問自答していた。かなり恥ずかしい話も多々あったものだが、それでも無表情を貫き、動揺も見せない。というよりしてないのである。羞恥心なんてものは生まれる前からすでに無くなっているのだ。

 

「昔話も良いですがそろそろ部屋に戻りましょう。門限は確か十時でしたがもう九時半ですので」

「あ、本当だ。意外と長く話してたみたいだな」

「あまり会話に参加できなかった」

「少し夢中になりすぎたかな、私は楽しかったよ。

それと箒、お互い頑張ろうね」

「なっ!?」

 

新人が時間だからお開きにしようと告げると、いつ間にか食堂に二時間近く居座っていたようだ。シャルから話を聞いた一夏は、昔から相変わらずだな、と考えていた。一方シャルにお互い頑張ろうねと言われ、明らかに動揺を見せた箒は、何故バレたのかを考えるも見当がつかず、そして考えるのをやめた。シャルからすればいちいち楽しそうに話をしている一夏を見ては、赤面してすぐに顔をそらすなんて目の前でやられたら、わからない方がおかしいのである。おかしくても気づく時は気づくらしい。新人までもわかっていたのだから。

 

そして、食堂を出る。シャルは自分の部屋は向こうだからと、新人たちとは反対側に向かおうとしたので、新人はシャルを呼び止めると自分の部屋の番号を伝える。シャルは少し驚く。だがすぐに、私の部屋はと続けて自分の部屋の番号を伝える。新人はときどき遊びに行っても良いかと聞くと、もちろんと即答された。客観的に見て、シャルの反応速度はその時だけ織斑千冬を超えたのでは無いかと思うほどだったと、部屋に戻った一夏と箒は語っていた。そして、おやすみ新人、一夏、箒。また明日、と言ってまた歩き始めるシャル。その足取りはまるで羽のように軽かったであろう。そして、部屋に着いたシャルはルームメイトが部屋に戻ってくるまで自分のベッドの上で枕を抱きしめながらゴロゴロと転がっていたらしいが、新人からすれば知らない話である。おやすみなさいシャルさん、と返事をするとそれに続いて一夏と箒も返事を返す。そして自分たちの部屋の前まで来ると、

 

「それじゃ、新人。また明日な」

「はい、一夏くん。また明日、おやすみなさい」

「あ、新人。また、明日…」

「はい。箒さんも、また明日会いましょう」

 

そう言って自分たちの部屋の中に入っていく一夏たち。新人はそれを見届けると、自分の部屋の扉をノックして自分の名前を告げる。中から返事が返ってきたので入ると、そこには先ほどのようにエプロンを着けた姿ではなく、シャワーを浴びたのか少し髪の毛がまだ濡れているパジャマ姿の更識がいた。

 

「ただいま戻りました」

「お帰りなさい。どうだった?お友達との食事会は」

「ええ、久しぶりに一緒に食事をすることができて満足しました。ありがとうございます」

「それなら良かったわ。さて、私は寝るつもりだけどあなたはどうするのかしら?」

「自分はこの後シャワーを浴びたら少し勉強をしてから寝ます。十二時までには寝ますがお疲れのようでしたら、シャワーを浴びて直ぐに寝ますが」

「大丈夫よ。それより、勉強頑張りなさいね。わからないところがあればお姉さんが手取り足取り教えてあげるわよ?」

「手取り足取りはともかく、わからなくなったら頼らせてもらいます」

「そう、それならおやすみなさい」

「はい、おやすみなさい」

 

更識はウィンクをしながら教えようかと尋ねるが、新人は気にすることなく着替えを持ってシャワー室へ行くと、シャワー浴びて、部屋着のジャージに着替える。部屋に備え付けの机にISの基礎教科書とノートを置いて、椅子に腰をかけると、そのまま勉強を始めていった。

 




いつもの

UA25000、お気に入り件数260超え、いつもありがとうございます。なんやかんやでもうすぐ20話を迎えることができそうです。これも全ては読んでくださっている読者の皆様のおかげです。そして、今回も感想をいただきました。赤い風さんです。純粋に褒めらて嬉しかったです。これからも頑張らせていただきますので何卒、よろしくお願いします。最後になんと、評価をつけてくださった方が居ました。駆け出し始めさんと、らぐな・。・さんに評価をつけていただきました。高評価を貰えて作者は感激です。いつの間にか評価が増えていてファッ!?と驚きました。評価付与していただきありがとうございました。



どうでも良い話を少々。FGOのお話なので興味のない方は飛ばして下さい。

課金せずに星5が出ました。最初は喜びました。星5キターって喜びました。でも、狂女(バーサーカー)はもう勘弁してほしいんです。ただでさえ飽和しているのにこれ以上こられたら、泣くぞと訴えたい衝動にかられました。

はい、どうでも良い話でした。



次回は未定です。もしかしたら試合当日に行くかもしれないし、新人や一夏の訓練風景を書くかもしれません。とりあえずは何書くか考えてません。所詮は見切り発車の作品ということでここはどうか許してヒヤシンス


5/27 誤字修正。報告してくださった方ありがとうございました


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ISと少年たち 〜朝〜

最近まで文化祭やら体育大会やらでごたついていた作者です。

打ち上げで同級生とカラオケとしゃぶしゃぶの食べ放題に行ってきました。楽しかったです(小並感)

今話は朝からスタート


新人は目をさます。時刻は六時。いつも通りの起床である。新人は隣をチラリと見ると更識はまだ寝ていることが確認できる。あまり音を立てないようにベッドから抜け出すと、部屋着からジャージに着替えてタオルを首にかけ外に出る。四月の空はまだほんのりと赤い。この時間に外に出ているひとはおらず、人気はない。新人はいつものメニューをこなすために走り出す。

 

ランニング10km。

 

軽く走る程度で体の調子を確認する。一週間のブランクはそれなりにあったのか、10kmを走り終えるとそれなりに汗をかいていた。一週間とはいえ体力がかなり衰えている事を感じる新人。近くにある時計を確認すると時刻は六時三五分。いつもより五分ほど遅くなったと、新人は明日は今日より一分タイムを縮めると決めると、休ませていた体を起こし、柔軟をこなしていく。体はやはり一週間のブランクのせいか硬くなっていった。だが焦っても仕方ないとゆっくりとほぐしていく。ある程度が終わったところで、今度は100mダッシュ10本。今日のリハビリはこの程度でいいだろうと区切りをつけると、時刻は既に七時。部屋に戻ってシャワーで汗を流して朝食をとって教室に行くまでを二十分でこなし、残りのHR(ホームルーム)までの時間を勉強に当てようと決めると早速実行に移す。流石に七時になると周りの生徒は起きていた。汗を掻いているの新人を見つけて驚く者もいれば、汗も滴るいい男と見惚れる者もいた。新人は周りの視線を気にせず部屋にたどり着くとノックをして、自分の名前を告げ入室の許可を取る。が、返事はなくもう一度ノックをしても反応は無かった。仕方ないのでドアを開けて部屋に入ると、更識はまだ寝ていた。それを確認すると新人は制服と下着の着替えを手に持って、『新人が入っています』と書いてある札を簡易的な立てかけにかけると洗面所に入る。衣服を脱いでカゴに入れると、シャワー室に入りシャワーのコックを回す。出てくるのは水だ。そりゃそうだろう。給湯器だってすぐにお湯を出せるわけではない。お湯を出すために温めるのに時間がかかるのだ。だがそれを気にせず水を浴び続ける新人。ゆっくりとシャワーから出る水の温度が上がっていく。が、ようやく温まってきたのに関わらずシャワーのコックを回してシャワーを止める。そして、シャワー室を出るとバスタオルで体を丁寧に拭き、水気が残らないようにする。そして衣服を着たら、歯を磨く。歯は大事なものだと祖父から教わってから新人は歯を大事にしているのだ。入れ歯を入れる感覚は好きじゃないと祖父が語っていたのを思い出しながら洗面所から出る。ちょうどそこには起きたばかりなのか眠たそうにしている更識がいた。

 

「おはようございます、更識先輩」

「あ、おはよ〜。新人くん。早いわね、私はまだ眠いわ」

 

そう言ってふわぁと欠伸をするのを手で隠す。その姿はまるで良い家のお嬢様のような振る舞いだった。その姿に感心する新人。だが時計を見ると既に十分を回っており急がなければならないことを悟る。

 

「すみませんが急ぎの用事があるので失礼します」

「あら、そうなの。ならまた後でね」

「はい、また後ほど」

 

短く会話を済ませて昨日案内された食堂へと早足に行く新人。スムーズにたどり着くと既にそこには満員席しかなかった。周りを見渡して空席が無いことがわかるととりあえず開くのを待つしかないと、朝食を決める。今日は朝食セットと呼ばれるメニューした新人。注文して数分待つとそこには白米に味噌汁、そして玉子焼きと焼き魚に漬物の五種類である。量は女性が食べることを考えているために少ないが都合がいいと、空席を探す。たまたまカウンター席が空いていたのでそこに座ると、三分後には食器を空にした新人が席を立っていた。もちろんしっかりと噛んでから飲み込み、魚は頭から尻尾まで骨すら残さずに食べ、味噌汁で喉につっかえらないように流すと、締めに熱い緑茶を飲んで食器をおばちゃんたちに返す。食にうるさいとまではいかないが、新人は食べ残さない(食器以外)をモットーにいつもご飯を食べている。それは骨だろうと残さない徹底ぶりだ。

 

周りから座ってから立つまでが早すぎて驚かれているとも知らずに食堂を後にする新人。もう一度部屋に戻って筆記用具などを持つと教室へ向かっていく。新人は歩く途中で周りがひそひそと小声で話している姿を何回も見る。IS学園は大きな声で話すことができないようなことが多いのだろうかと、盛大な勘違いをしつつ教室へ到着。教室の時計を確認すると時刻は七時半ジャスト。ある意味ここまで計画的に動けることに驚きを隠せないが、そこは新人クオリティである。席に着いてISの基礎教科書とノートを取り出すと昨日の続きを始める。約二十分程度経過。順調に進んでいたがここで困ったことにつまずいてしまう。PICに関してよくわからない部分が出てきたのだ。ああでもない、そうでもないと悩んでいると、不意に前から声をかけられる。

 

「おはよう、新人。朝から勉強なんて頑張ってるね」

「おはようございます、シャルさん。

突然ですがよろしいですか?」

 

シャルだった。朝から勉強をしている新人を見て感心している様子。そこに、新人は質問を入れてくる。

 

「どうかしたの?」

「実はわからないところがありまして、そこについて教えてもらいたいのですが」

「意外だなぁ、新人にもわからないことはあるんだね」

「僕は何でも知っているわけではないですよ。実際、ISのことなんて今もほとんど知りません。興味ないことでしたから。ですからこうやって少しずつ知識をつけていっています。いずれのために」

「そうなんだ……それじゃあわからないところ教えてよ」

「ありがとうございます。よろしくお願いします」

 

シャルは教え方がうまく、つまずいていたところはすぐに解決し、残りの時間は先ほどよりも早いペースで進んでいった。シャル様様である。朝のHR前になったのでシャルは席に戻っていく。一夏の席を見るとまだ来ていなかった。箒もおらず、二人して何をしているのかと考えていると、勢いよくドアが開かれる音がしてクラスのほとんど(新人を除く)がドアへと視線を向ける。そこにはゼェゼェと息絶え絶えな一夏と箒の姿があった。一夏は、ま、間に合ったと言いながら自分の席に座る。箒も後に続いて座るがすぐに机の上に伏せてしまう。一夏の所為だぞ、とぼそりと呟いたのが聞こえた新人だった。もちろん一夏に何があったのかを直接聞く新人。一夏は二人とも食後にルールを決めたり、二人でISの勉強をしていたら寝坊してこのザマらしい。熱心なのはいいが、それのせいでミスをしたら本末転倒ですよ、と言っておくと今日から気をつけると言った。それから二、三分で織斑先生がやってきてHRへ、そして一夏に専用機が支給されることになったと告げると教室は騒がしくなる。静かにしろと、千冬が一喝することで教室内はすぐに落ち着きを取り戻す。だが、それなら新人の専用機はどうなっているのか、気にならないはずがなく一人の生徒がおずおずと手を挙げてそのことを聞く。返答はこうだ。

 

 

 

「天下に専用機はない」

「そうですか」

 

 

こっちの方が驚いたよ、一番驚くべき本人が驚いてないけどな!そうですかの一言で済ませられるような問題ではないはずだが新人は気にしていなかった。だが周りは違った。どうして新人の分はないのかを憶測で話し合ったり、新人の心配をする者もいたり、勝負に関しては心配をしている者もいたりと様々だ。

 

「千冬姉ぇ!何で新人のだけがないんだよ、それなら俺は別にいらなーーー」

「黙れ」

 

こちらもまた、千冬の一喝で強制終了がかかる。全員静かになるが一部は不満気な顔を隠せずにいた。

 

「これは既に決定されたことだ。お前らがとやかく言ってどうにかなるものでもない。それに、天下本人が何も言わないんだ。なら、気にしても無駄だ」

 

以上だ、そう言ってHRを終えて千冬が教室を出ようとする。

 

「それと織斑、今専用機が要らないなどとふざけた事を言おうとしたみたいだが、お前は専用機を渡される意味を分かっているのか」

「データを取るためだろ、男のIS操縦者は俺ら二人しかいないんだから。ならーーー」

「そうか、それなら貴様はまだまだだな」

 

千冬の質問に対して答えを返す一夏だが、ダイレクトに未熟だと言われる。それにより言葉を見失いそのまま立ち尽くす。千冬はそのまま教室を出て行った。教室内は沈黙した。ぶっちゃけすごく空気が悪い。そりゃそうだろう。この後また授業のために織斑先生は戻ってくるのだ。一夏の雰囲気がかなり怖い。誰もがこの空気をどうにかしてほしいと願っていると、

 

「一夏くん、気持ちは嬉しいのですが大丈夫ですよ」

 

鶴の一声ならぬ新人の一声だ。

 

「専用機じゃなければ戦えないわけじゃありませんよ」

「それでも新人だけ無しってのは不公平だろ」

「専用機がなければ一夏君とオルコットさんとは戦えないと言いたいのですか?」

「それでも対等に戦えるわけじゃない」

「ひとつ言うなら、対等に戦えるはずがありません。もともとオルコットさんが代表候補生の時点で対等ではありません。それが専用機ごとき(・・・)ひとつでうだうだ言っていたら終わりませんよ」

 

専用機ごときと一言で一夏のアドバンテージになりうるであろう物を切り捨てる。新人の言い分を聞いた一夏は反論の言葉をなくす。いつもこうである新人を言い負かす事が一夏にはできない。さも当然のように言う新人にいつも言葉をなくす。反論の材料が無くなってしまうのだ。だが一夏はでも、と口にしてしまう。それが新人の引き金を引かせると知っているはずなのに。

 

「一夏君は専用機なら自分とは勝負にならない、そう言いたいのですか?」

「な、違う!そういうわけじゃーーー」

「なら、文句は言わないでください。これは勝負です。負けたらそちらの実力がなかった。それだけで済む話です」

 

完全に黙る一夏。余計空気が悪くなってないかと、心配になるクラスメイトたち。一夏はわかったよと、呟く。そして、

 

「新人、絶対にお前に勝つ!」

 

そう指を指して宣言するのだった。




いつもの

UA28000、お気に入り件数290件越え、ありがとうございます。そして今回で20話目です。飽き性な自分が案外長く続けれらていますのは、読者の皆様が読んでいてくれている、感想をくださる、評価をしてくださっているためであり、本当に感謝をしてもしきれません。
次話も早く投稿できるように頑張ります。

2017.1.14新人くんがランニングにて人外になりかけていたので二十分から三五分に変更、ストレッチは二十分に変更。ご指摘ありがとうございました

と言いつつ次回も内容が未定です。新人たちがどんな特訓をしているのを描写するか、そのまま試合当日まで飛ばすか悩んでいます。
どちらかというと特訓描写4、試合当日6なので次回は試合当日まで時間が飛ぶかもしれません


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ISと少年たち 〜意地と誇り〜

お久しぶりです、作者です。

不定期投稿ゆえ、許しは請わん恨めよ。




本当に遅れてすみませんでした(即落ち2コマ)
謝罪(言い訳)はあとがきにて


今回は一週間経った後の試合直前のお話。短いですがどうかお許しを


一夏の宣言から一週間

各々が勝つために特訓を積んだ。それぞれが自分のため、誇りを賭けて闘う決戦の日である。

 

第一試合

 

織斑 一夏(おりむらいちか) VS セシリア・オルコット

 

 

 

西側ピット カタパルト前

 

「大丈夫か一夏、緊張して肩に力が入っているぞ」

「ああ、大丈夫だよ箒。新人に、オルコットさんに負けるつもりはない。俺も強くなったってことをあいつと千冬姉に認めさせる」

 

心配する箒に軽く大丈夫だ、と伝えると静かに、だが強く決意の言葉を口にする。一夏の目にはすでに迷いはなく試合向けての心構えは万全といった表情だ。

ここには一夏と箒の二人しかいない。姉である千冬の姿は見えず、自分のISすらない状態だ。試合開始時刻も刻々と迫ってきている。一夏は落ち着いて待っているが、もう一人の箒の方は一夏の機体はまだなのかと、そわそわしている。本人以上に焦っている状況だ。

二人は今日までのために剣を振るっていた。より素早く、より鋭く、より重くなるように剣を振るった。

箒は会えなかった六年間で剣の腕が鈍ってないか、あの頃よりも弱くなってないかを心配していた。だがそれは杞憂となって終わった。一夏の剣は鈍っていなかった。それどころか最後に打ち合った時よりも重く鋭くなっていた。一夏は箒や姉の千冬がいなかった一年間の間も剣を振っていた。バイト終わりや部活終わり、時間があれば剣を振るう。そんな生活を六年続けていた。もちろん新人や弾や数馬たちと遊んでもいたが、それでも勉強と両立させながら続けていたのだ。

 

待つこと少々ピットの入り口の扉が開かれる。そこから入ってきたのは、一夏がこの一週間で見慣れた緑色の髪の女性である。

 

「お待たせしました、一夏君の専用機が到着しましたよ!」

 

その言葉とともに入ってきたのは真っ白な機体である。何色にも染まらない真っ白な機体が一夏たちの眼のまえに運ばれてきた。

 

「これが俺の機体ですか」

「はい、名前は白式(びゃくしき)だそうです。かっこいい機体ですね!」

「そうですね、山田先生。それより一夏、時間がない。早く白式を着けなければ遅れるぞ」

「あっ、待ってください。その専用機は今初期化(フォーマット)されていて、操縦者登録(フィッティング)しないと機体の性能が落ちてしまいます。到着が遅れてしまって本当は、フィッティングするための時間が無くなってしまったんです」

「その時間はどの程度かかるんですか?」

 

山田先生は一夏の問いに少し言いづらそうにしていた。だが、すぐに決心した表情になると、

 

「10分です」

「試合まであと3分もないんですよ、間に合いませんよ!」

「いや、箒。俺はこのままいく」

 

箒は一夏の声に振り返る。一夏は運び込まれた白式に手を置いていた。だがその視線は箒には向いておらず、白式を見つめていた。

 

「こいつなら行ける気がするんだ。こいつとなは俺も全力で闘える。そんな気がするんだ」

「だが、相手は代表候補生だ。勝てるのか?」

「勝てる勝てないの問題じゃないだよ、箒。

俺は勝つ、勝ってあの二人に認めさせる。俺はいつまでも弱いままじゃない。誰かに守られたままなのは嫌なんだよ。

 

ーーだから」

 

そう言うと一夏の目の前にある機体が白く光る。その光に思わず目をふさぐ箒と山田先生。二人が目を開けるとそこには白式を纏った一夏が立っていた。

 

「山田先生、ひとつお願いがあります」

「えっ、あっはい、なんでしょうか。先生に何でも言ってください」

 

山田先生は白式に見惚れていたが、一夏に呼ばれたことで現実に戻ってくる。そして、一夏の言ったことを頭の中で理解すると、すごく嬉しそうな表情(・・・・・・・・・・)で尋ねてくる。それはまるで飼い主の指示を待つ忠犬のようだった(小並感)。

 

そして、一夏はお願いを告げる。

 

 

 

 

 

 

 

同時刻

 

東側ピット カタパルト前

 

セシリア・オルコットは目を閉じて精神統一をしていた。いまは亡き父母の残したオルコット家。そこにあるのは莫大な遺産と一人娘だけだった。一度に両親を失い、周りの魔の手からオルコットの遺産を守る。そのプレッシャーを幼い頃から背負ってきたセシリアにとって、初心者との試合は別段緊張するものではなかった。他の家系のーー少なくともオルコット家よりも格が上ーーお転婆お嬢様相手にわざと負けるように言われなければ(・・・・・・・)セシリアは負けることはほとんどなく、余裕を持って優雅に戦うことができたのである。少なくとも本国(イギリス)にいた間は。彼女は代表候補生だ。だがそれは家の資産やコネを使ったものではなく、彼女自身の実力で勝ち得たものである。その中には根本的な才能の差や彼女の努力もあるが周りの評価は一概にしてこうだ。

 

 

 

オルコットの家系ならば当然だろう

 

 

それは他の家系から、そして父母の親族から評価された、残酷なことである。

 

彼女はオルコット家に生まれたことを誇りに思っている。それが今回のプレッシャーの一番の原因となっている。もし、負けるようなことになれば、なんて考えたくもないだろう、それも初心者である。もし、本国から代表候補生を取り消され、専用機を返還せざるをえなくなったら、落ちぶれたオルコット家を復興名義で金を狙う他の貴族たちに食い物にされる未来が待っている。それだけは絶対に避けなければならない。絶対に、そう絶対にである。

 

ーーだから

 

「見ていてください、お母様、お父様。

私は

セシリア・オルコットは絶対にオルコット家を守ってみせます

 

貴族は平民のために(ノブリスオブリージュ)

その悲願のためにも、私は絶対に負けません

 

 

行きます!」

 

 

 

僅か0.5秒。彼女の異国での2度目のISの展開は普段より1秒速い展開となった。彼女はカタパルトへ機体を乗せると、カタパルトは発射された。彼女の空のように青い機体は、快晴の空へと飛び立っていった。

 




正直に言うと約二、三週間えたってました。体育大会の仕事や文化祭の仕事(デスクワーク)でこの間は書けず、終わった後も今言いました通り書く気になれず、えたっていたら一月以上経っていてああまずいなぁと言う間に時間は無慈悲に過ぎていき、気がつけばもう年末です。本当に投稿が遅くなってすみませんでした。

今年はもう終わりになりますが皆さんはいかがでしたか?自分は高校に受かりまあなんやかんやで生徒会に入り軽く後悔してますが元気です。でも楽しく過ごせているので問題はあまりないです。

今年が良い年であろうと、良くなかった年であろうと来年が良い年になることを願って、


みな様、良いお年を



謝罪(言い訳)と挨拶を終えたところでいつもの

UA32000越え、お気に入り341件、毎度お読みいただき有難うございます。今回も感想をいただきました。赤い風さん、感想有難うございます。戦闘描写をうまく書けるといいなぁ(白目)

次回は一夏対セシリアです。不定期投稿なりに早く更新できるよう頑張ります


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ISと少年たち 〜試合開始〜

あけましておめでとうございます。遅くなりましたが今年もよろしくお願いします。作者です。


戦闘描写の難しさを痛感していました。構成にも迷っていたり。とりあえず今回も短いですが、どうかよろしくお願いします。

今回で試合開始です


アリーナの観客席は湧いていた。かの織斑千冬の弟であり、人類初の男性IS操縦者である織斑一夏の試合を見ようと、1-1の生徒以外もこっそりと授業を抜け出して来た生徒もいるのだ。その人物たちはあとでこっぴどく怒られることをまだ知らない。

 

東側のピットから青い機体が勢いよく飛び出た。セシリアとその相棒であるブルーティアーズである。彼女は試合開始3分前に戦場(フィールド)に出ると落ち着いた表情で相手()を待つ。その目には絶対に負けないという意思が見え隠れしている。すでに彼女は余分なことを考えることなく相手について考察をしていた。と言っても、話す機会は試合が決まった時点で激減している。そのためあまり細かく性格を読むことは出来ない。だが、卑怯なことを嫌っているのは一週間前の一幕で把握済みだった。貴族なだけあって人への観察眼の能力は高い。早く来ないか、そう感じるが試合まで残り一分。戦場(フィールド)に入ってからまだ二分もたたないが、あの緊張がセシリアをはやし立てる。

そのとき、セシリアが出たピットとは反対のピットからカタパルトの発射音が聞こえた。

来た、セシリアは戦場(フィールド)に入ってくる真っ白な機体に目を向ける。まだ何色も付いてない只々真っ白な機体がセシリア方へと、試合の開始位置へとやってくる。

 

淑女(レディ)を待たせるのは紳士(ジェントルマン)として如何なものでは?」

「悪いな、こいつ(相棒)が来るのに時間がかかってな。それとISにはまだ2回しか乗れてないんだ。少しは見逃してくれると嬉しいね」

「まあ、よろしいですわ。それでは確認します。

私の全力で貴方()を倒します。

試合中に命乞いなんて無様な真似を晒すなんてことはしないでくださいませ?」

「命乞いなんかしねぇよ。俺の目標のための糧にさせてもうぜ。最後まであがいてやる」

 

お互いISのハイパーセンサーで相手の目を捉えながら挑発する。ヤル気は十分、一夏に関して獰猛な笑みまで浮かべちゃう始末。二人が位置についたことで試合開始のカウントダウンが始まる。

 

10

 

一夏は瞼を閉じる/セシリアは愛銃(スターライトmkIII)拡張領域(バススロット)から取り出す

 

9

 

小さく息を吸う/愛銃を両手で構える

 

8

 

小さく息を吐く/銃口を一夏(的/敵)に向ける

 

7

 

あらかじめ取り出しておいた剣を構える/深く息を吸う

 

6

 

いつもの自分をイメージする/息を吸う

 

5

 

眼を開く/息を止める

 

4

 

瞼を開ける/息を止める

 

3

 

視線を相手(セシリア)に固定する/息を止める

 

2

 

雑音が消える/息を止める

 

1

 

意識の全てが研ぎ澄まされる/息を止める

 

 

 

もう相手(セシリア)しか見えない/引き金を引く

 

 

 

試合開始のブザーとともに青い光が一直線に向かって、見えない壁に突き刺さる。観客席とフィールドを分けるためのバリアに溶けていった。

一夏はセシリアが開始のブザーとともに引き金を引く動作を見ていた。故に全力で左にブースターを噴かせた。掠ったせいで少しSE(シールドエネルギー)が減少したが些細なものである。機体が全力のサイドブーストに揺れるがすぐにPIC(慣性制御システム)を無意識に操り姿勢制御が成される。そして、正面にセシリアをとらえたまま一夏はブースターを噴かせる。だが、その速度は先程よりも速く、約20メートルほど離れていたセシリアの機体との間を一瞬で詰める。

 

瞬時加速【イグニッション ブースト】

 

一夏が無意識に行った動作は観客を湧かした。

が、それだけだった。

一瞬で詰め寄り、右上段からの左下段への袈裟切り。それを振るった。決まったと確信していた。だがそこにセシリアは居なかった。いや、いなくなったの方が正しい。セシリアは初弾を避けられた時点で次の動きをを予想していた。

 

後退、近接武器()を使う時点でありえない。

 

特攻、速度次第だが迎撃可能。

 

この選択肢の中で選ばれたのは特攻、つまり予測の範囲内だった。意外だったのは瞬時加速で突っ込んできたことだが、何のこともない。その程度に反応できなければ代表候補生など務まりはしない。戦場(フィールド)では何が起こるかわからない。それに対応できずして何が代表か。

白式の腹部にブルー・ティアーズの蒼と白と黒の三色で構成された綺麗な脚部装甲が突き刺さる。と、同時にバックブースターが、ビュオォォォ、とエネルギーと噴射音を吐き出しながら機体を後ろに下げる。蹴られた衝撃によってできた一瞬の間にセシリアは白式の間合いから離れると、剣を振り抜いたことによる大きな隙を突く。愛銃の引き金を引くと、蒼が白を貫く。ガードするには戻すまでの動作が間に合わない。そんな大きな隙を晒した一夏と白式はレーザーの衝撃をダイレクトに受け、姿勢制御も儘ならぬまま墜落した。今ので白式のSEは約6割まで削られた。対してブルー・ティアーズのSEは蹴った時の自爆ダメージ以外の損傷はなくまだ九割以上残っている。一夏は顔をしかめながら立ち上がると、セシリアを見据える。

 

「先ほどの踏み込みはなかなかでした。初心者にしては良い線を言っていると思いますわ。ですが、

 

その程度でイギリスの代表候補を倒せるなんて思っていませんよね」

セシリアの賞賛と挑発混じりの声に、一夏は獰猛な笑みを浮かべながら答える。

 

「当っ然、壁は高いほうがやる気は出るってもんさ。こいつがどれだけ動けるかわからなかったけど今ので大体わかった。次からそう簡単に当たらないぜ」

「言いましたわね。その余裕、すぐに撃ち砕いてあげますわ!」

 

 

試合はまだ始まったばかりである。




明けましていつもの

UA36000越え、お気に入り390件、ありがとうございます。そして、今回も感想をいただきました。LW6qCYqsさん、感想ありがとうございます。そして、今回なんと新しく評価をして下さった方がいます。izuさん、Eー102ガンマγさん、駆け出し始めさん、田中太郎130232さん、評価していただきありがとうございます。これからも頑張らせていただきますので何卒、この作品にお付き合いのほどよろしくお願いします。

改めまして今年一年も、できるだけ無欲で生きていましょうをよろしくお願いします。

次回は戦闘終了まで書きたい(希望論)

追記、この話の投稿時に評価を下さった人の中で駆け出し始めさんだけ抜けていました。本当に申し訳ございません。


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ISと少年たち 〜一夏とセシリア〜

一か月経つ前にギリギリ投稿できた作者です。

BF1やってました、すみません。

戦闘シーンの描写ってものっそい大変でした。結構書いたつもりが3000字にも満たないとは思いませんでした。特に音の表現で擬音を使うか、文字で比喩にするかで迷ったり、いい擬音が思いつかなかったりで色々漁ってみたりしてました。

今回は試合終了までです


 

一夏は剣を持つ手の力を抜く。リラックスした状態でセシリアを見据える。次の一手を待つ。攻めるだけが脳では無い。それはただの脳筋がする事である。一夏はそこまで愚かではなかった。剣道でも何度かやったことのある待ちの姿勢。その時は待つのがじれったくてすぐに突っ込んでいき、千冬に返り討ちにされた。だが、今は苦にもならない。勝つために、認めさせるために、

 

(さあ来い。セシリア・オルコット!)

 

ただ一手を待つ。

 

 

 

(ブルーティアーズ)から蒼が離れた。蒼の翼と思われていた部分、そこが本体から離れ白い機体へ切っ先を向ける。その数、4。次の瞬間、

 

ビュオン

 

セシリアのライフルよりも迫力のない、蒼く細い閃光が一直線で白い機体(白式)へ殺到する。

 

一夏はブルーティアーズの翼が分離した時点で何かを予感していた。あれはやばいと、脳内の警鐘が鳴り響く。少しでも遅れていたら全弾大当たり、の追加にこれよりぶっといのが一夏を貫いていただろう。先ほどの位置には4つの穴が穿たれている。そして、息をつく間もなく4つのビット(ブルーティアーズ)が一夏に近づきながら高速で位置を変え、惑わすように四方八方から細い閃光を放つ。

一発、一発、一機、一機が放っていく。これを見たら多分こう思うだろう、

 

これ、前にガン◯ムで見たやつだ!

 

どう見てもファン◯ルです本当にありがとうございます

 

と。あくまでもコレはビットであり、決しってファン◯ルなどではない。

 

 

それは置いておこう。

 

一夏は最初の斉射を避けた後は、一発、一発放たれる閃光に苦戦していた。それもそうだろう。避けたと思ったらすぐに次が来る。そして、時々放たれる彼女のスナイパーライフル。彼に休む暇はなく、集中力を使い、只々SE(シールドエネルギー)を無駄遣いし、体力も削られる。その時間約十分。たかが十分、されど十分。代表候補生にこれだけ長い時間の間初心者が耐えることができたのは奇跡と言っても過言ではない。しかし、残りのSEはすでに3割を切っている。絶望的だが、その闘志はまだ燃え尽きてはおらず、反撃のチャンスを虎視眈々と狙っている。そしてそのチャンスが今、訪れた。

360度パノラマでいつでも視界を開いているハイパーセンサーが、ビット(ブルーティアーズ)が見せた一瞬の隙を捉えた。それを見逃せるほど甘くもなければ余裕もないのである。白式は一瞬でトップスピードになる。最初にも使った瞬時加速(イグニッションブースト)である。それによってビットの一機に近づく。そして刀を逆袈裟に(左下から右上へ)振り抜いた。

 

 

鉄と鉄のぶつかった金属音、そして小型のダイナマイトが爆発したようなという音と、銃声が、会場内に立て続けに鳴り響いた。

 

 

セシリア・オルコットは少し残念に思っていた。久しぶりに歯ごたえのある相手()と戦えていたのにあっけない最後で終わってしまったことを。閃光の直撃によってフィールドの地面に叩き落とされ、砂塵を巻き上げて見えなくなった場所を見つめる。

彼女が行ったのは、所謂ブービートラップというやつである。隙を見せたり、囮を使うことで相手を誘導し罠に嵌める、簡単かつ単純ゆえに嵌る者も多く、効果も大きい。ビットの一機をわざと犠牲にすることで、ガラ空きな懐に一撃を撃ち込む。一夏はこれで二回スターライトmkIIの直撃をもらった。それ以外にもビットダメージなども含めて、そのSEは尽きている。

 

 

 

ガキィィィィン

 

 

セシリアの中で何かが一つ消えた感覚が流れる

 

鉄と鉄のぶつかった金属音、それが再びアリーナ全体に鳴り響いた。遅れて同じように小型のダイナマイトが爆発したような音が鳴る。

それが、それぞれ2回。

 

砂塵の中から何かが勢いよく飛び出してくる。

セシリアはそれに向けて愛銃(スターライト)を向け、スコープを覗き込む。

それは鉛色の刀身、その()は日の光を反射することはなく、雲のような色をした、死んだ()がフィールドの地面に突き刺さっていた。日本製ISの打鉄の初期武装、【(あおい)】。それが煙の中から出てきた物体の正体である。そして、一夏が今まで使っていた刀の正体でもあった。

セシリアはすぐさまビットを自分の元まで退かせると、ハイパーセンサーを頼りに一夏が居るであろう位置に向けて閃光を放つ。煙の中へ突き進んでいった閃光は見えなくなる。と、次の瞬間、フィールドに噴きあがっていた砂塵が真ん中から裂かれるようにして切り払われた。

 

 

そこには、真っ白な機体が居るはずだった。

 

 

真っ白な処女雪のようだった機体がところどころに青と金の装飾が施されている。右手に握られている剣は葵とはまた別物のようで光を反射して鋼色に光っている。そして、最初は頭部には何も無かったのだが、今では白色の太いサークレットのようなものを着けている。

 

 

操縦者登録(フィッティング)には10分かかります』

 

山田先生の言っていたフィッティングがスターライトの閃光が白式に直撃した瞬間に終了したのだ。衝撃によって地面に叩き落とされたことで舞い上がった砂塵が隠れ蓑となったのだ。そして、二撃目のスターライトの閃光は直撃コースで放たれたのにヒットしなかったのはーー

 

 

「これで決める!」

「っ! させませんわ!」

 

一夏は剣を正面に構えて突っ込んでくる。

セシリアはもう一度愛銃(スターライト)を一夏に向けるとその引き金を引く。銃口から吐き出された閃光は一直線に向かって進んでいき、一夏の目の前で

 

消えた。

 

セシリアは二度目の引き金を引く。

 

 

残り約50m

 

 

閃光はまたも一夏の目の前で消える。

 

 

残り約35m

 

 

三度目の引き金を引く

 

 

残り約20m

 

 

目の前で消える

 

 

一夏は刀身が青く光る(・・・・)刀を振り上げる

 

セシリアは迫って来る刀身をただ見つめていた

 

刀を振り下ろす

 

 

 

 

 

聞き覚えのある音がなった。

 

セシリアのライフルよりも迫力のない(・・・・・・・・・・・・・・・・)

ビュオンという音が鳴った(・・・・・・・・・・・・・)

 

細い閃光が白式と一夏を貫いた。

 

 

ビィィー、という音とともに、

 

「勝者、セシリア・オルコット

試合時間12分37秒

 

両者は次の試合の準備があるため、近くのピットに移動してください」

 

山田先生の声が無情にもアリーナ内に響いた。

 

 

 

 

公式記録

 

織斑一夏(おりむらいちか)VSセシリア・オルコット

 

試合時間12:37

 

先制攻撃 ブルーティアーズ本体による蹴り

 

最終攻撃 ブルーティアーズ【ビット】によるハイドアタック

 

SE(シールドエネルギー)残量(公式試合のルールに則り最大量700)

織斑一夏 白式:0

セシリア・オルコット ブルーティアーズ:592

 





まずはいつもの
UA40000越え、お気に入り410件越え。ありがとうございます。ついにこの小説も40000回UAを突破しました。これもひとえにいつも読んでくれている読者の皆様のおかげです。次は50000回を目指して更新していきたいと思います。そして、今回も感想をいただきました。LW6qCYqsさん(以降ロックさんと略します)、ケモナー兄貴さん、感想ありがとうございます。ケモナーニキの指摘が無かったら新人くんがISよりもオリンピックに出場しなければならなくなってしまうところでした。


ここで最後ところの解説と砂塵の中での一夏くんの補足を

最後のところは一夏くんがセシリアさんに迫って来るまでに4機のうち残っていた一機のビット背後につかせました。そのために視線誘導のために何発も無意味に撃ち続けていました。ミサイルビットもありましたがさすがに自爆で相手をダウンさせるのは気が引けたのと貴族のプライド的な感じでやめました。

一夏くんの方はフィッティング後、持っていた葵てハイパーセンサーのレーダーに映っていたビットのうち、近くにいた一機を切り裂いたあとにセシリアの砲撃を警戒して手元の葵を投げました。葵は綺麗に突き刺さり見事爆発四散。突き刺さっていた葵は爆風をモロにくらい、ビットに溜まっていた分のエネルギーを受け止めたため刃がボロボロになり、フィールドの地面に突き刺さりました。 以上です。


次回は二回戦を開始できるといいなぁ


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ISと少年たち 〜インターバル〜



待たせたな!(蛇男並感)


 

西側ピット

 

全力だった。一夏の全力を持って挑み、そして敗北した。純粋な力の差。搭乗時間、武器の習熟度、機体への信頼、スペックの把握、それ以外にもたくさんの理由があるだろうが負けたことに変わりはない。落ち込むことはない。もともと、この試合に勝てるはずがないのはわかっていた。一夏で例えるなら、今の状態で千冬に挑むようなものだ。糧にできればいいと考えていた。それでも、

 

悔しい

 

これだけはどうにもならなかった。いくら理由をつけたとしても、男として負けたことが悔しかったのだ。近くでは箒が心配そうに一夏を見守る。負けたことに対する悔しさを彼女は理解している。故に、次がある、がんばれ、そんな風に声をかけれないのだ。

 

そんな二人を横目に白式は整備班によって回収され、エネルギーのチャージと修理などが行われる。次の新人との試合に向けて。

 

 

 

 

 

 

南側ピット

 

セシリアは次の試合への準備を行う。専用機故に自分で整備や換装をしなければならないのだ。ビットを補充し、エネルギーを充填し、愛銃の手入れをする。ほっ、と一息ついている暇などない。戦いが終わるまで気を緩めることなどできないのだ。全力で来いと言われた以上、投げられた手袋を突き返すわけにはいかないのだ。確実に勝つ、負けるわけにはいかない。

 

貴族はただ一人、勝利への執念を燃やす。

 

 

 

北側ピット

 

新人は目を閉じ瞑想をする。落ち着き、呼吸を整え、師匠から教わったモノを繰り返し反芻する。イメージでしかないがセシリアに、一夏に勝つためにも怠ることはしない。

扉の開く音がなる。目を開くと彼の前には既視感のある機体が運び込まれる。

 

ラファール・リヴァイブ

 

あの日見て、触れた機体と同じものが運び込まれている。そんな気がした。

 

「天下、これがお前の機体だ。お前の頼み通りの装備を積んである。無様な姿は見せるなよ?」

 

ニヤリと、ラファールとともに入ってきた千冬は言う。

 

「ありがとうございます、織斑先生。と言ってもどこまで戦えるかわかりませんが頑張ります」

 

対して新人は無表情のまま既視感のあるラファールを見つめるだけだ。既に千冬への興味はなく、今回の相棒とも言えるラファールに目を向ける。

カタパルトに乗せられたラファールに触れる。その瞬間、頭に膨大な情報が流れ込んでくる。操作方法、PIC、スラスター出力、武器性能、量子拡張領域、データ化された武器、装甲、機体の細かいスペック、ハイパーセンサー、etc、全てが情報として頭の中に入ってくる。そんなことをされたら頭痛や目眩がするものだが、新人は平然とそれらの情報を吸収、理解する。そして、そのままラファールへと乗り込むと、武器を拡張領域から取り出したりしまったりを繰り返し感覚をつかむ。SE(シールドエネルギー)を確認すると700/700となっている。不備はなく、いつでも行ける態勢だ。

 

「よろしくお願いします。ラファール」

 

機体に呼びかけるが特に変化はない。逆にあったら怖いと思うが。

 

「いつでもいけます」

『了解しました。カタパルト発射態勢に移行します。急に加速するので気をつけてくださいね』

 

管制室から山田先生の通信が飛んでくる。それと同時にカタパルトが動く。

 

拡張領域からハンドガンを取り出し右手に、実盾を左手に装備する。

 

カタパルトによって機体が撃ちだされる。

 

 

 

新人の初のISの試合が始まる。




お待たせしました。期末から書く気になれずリハビリと称してオリジナル書いてたら止まらなくなっていた作者です。

オリジナルのやつは明日から投稿されます。こちらと違って週一です。不定期ではありません(重要)

いつもの、といきたいところですが今回から無しにしようと思います。キリがいいところでやったーとかすると思います。この作品を読んでくださっていることに感謝していることは忘れていないです。感想とかも個別で返していきますので何卒よろしくお願いします。そして、評価してくださった方々、ありがとうございます。高い評価も低い評価も嬉しいです。



こんな不定期更新ですがコンゴトモヨロシクお願いします。


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ISと少年たち 〜セシリアと新人〜

こんな戦闘描写で伝わるのか不安な作者です。


今回はセシリア対新人です


二機のISが空中に浮いている。一方は先ほど試合をしたばかりの青がパーソナルカラーな機体。ブルーティアーズとセシリア・オルコット。対してもう一方はこの会場にいる誰もが見慣れた量産機。デュノア社が誇る汎用型の機体。ラファールリヴァイブと天下新人。会場は先ほどの盛り上がりは見せず、誰もが緊張に声を出せないでいる。織斑一夏の圧倒的敗北。それが浮ついていた彼女たちの気持ちを叩き落とし、楽観視という名の言葉を消した。

 

これが代表候補性の実力

 

織斑千冬の弟だからといって、そんな簡単に初心者が代表候補性を落とせるはずがないのである。一回の被弾もなく、武器へのエネルギーチャージとブースターによる減少しかないバーフェクトゲーム。才能でも性能でも覆すことのできない努力と経験。それが彼女の強さなんだと理解できたのは同じ候補性であるシャルと、他数人のみ。機体の性能と考える者もいれば、初心者なんだからしかたないとまだ甘い考えを持つ者もいる。まあ、そいつらがどうなるかはこれからに期待としよう。

 

ああ、例えばの話だが。初心者でセシリアを落とすなんてのはまさにアニメや漫画、それも努力を嘲笑う神様チートなんていうものがはびこる世界だけだ。現実はそんな人の努力を簡単に踏みにじれるほど腐ってはいない。ぽっとでのやつには現実を見せてやれ。チート(くだらないもの)なんぞに負けると思うなよ、ってね。

え?新人はチートに片足突っ込んでないかって?残念、彼は学者二人の間に生まれた子ども。その遺伝子はしっかりと受け継がれているのだと言っておこう。

 

失礼、話が逸れた。

 

 

 

そんな静かな観客席の中に一人、シャルは新人のことを考えていた。さすがに新人なら勝てるなんて考えてはいない。ただ一言、彼に伝えるのを忘れていたのを後悔しているだけだ。

 

新人、頑張ってね

 

 

 

 

 

試合開始まで残り30を切る。両者は既に相手を倒すことのみを考えている。集中力を研ぎ澄ませ、一人は鋭い眼光を目にやつし、一人は無表情のまま相手を見つめる。

 

 

カウントダウン

 

3

 

2

 

1

 

開始!

 

ブザーとともに両者が動き出す。

 

盾を構えながらセシリアへと特攻する新人。心の中で撃った回数を数えつつ、手に持つハンドガンの弾倉を空にする勢いで撃ち続ける。対するセシリアはまずは様子見か回避を重視する。初心者の数撃ちゃ当たるはランダム故に一夏の特攻よりも対処がしづらい。

12発目。新人はハンドガンを捨てるとショットガンを片手で構え放つ。セミオートで放たれる散弾はセシリアの機体の薄い球形のシールドを掠り、微妙なダメージを与える。

セシリアは盾をどう対処するかを考える。散弾が迫る中、思考を冷静に張りめぐらせる。

あの盾は打鉄に搭載されているタワーシールド。貫くには同じ位置を何度も狙わなければならない。そこまで考えるとセシリアはバックブースターに切り替え、新人に向き合うように機体を反転させ2秒、愛銃の引き金を引くとタワーシールドにレーザーが当たる。セシリアの予想通り撃ち抜くことはできない。が、新人は防御のために撃つと判断した瞬間盾で体を完全に隠し、攻撃を止める。セシリアの攻撃に二度目が来ないと盾から覗こうとした瞬間、

 

新人の背中が爆発する

 

否、爆破された(・・・・・)のである。

 

セシリアのビットには二つ種類がある。4機のレーザービット、そして2機のミサイルビットだ。セシリアはあの盾は視界を邪魔すると判断すると、防御させるためにわざと狙ってから撃ったのだ。新人の視野を潰すと同時にミサイルビットを背後にしのばせるために。

 

そして、新人は爆破の衝撃で武器と盾を手放してしまう。そこに待つのは、狙いの定まったスターライトの銃口。

 

簡単に新人のSEは4割を切った

 

新人は衝撃でぐらつく頭で考える。ここから少しでも報いる方法はないかと模索する。他に積んでいる武器はあとは6つ。賭けに出るには十分と判断すると、手元にあるものを領域から取り出すとピンを抜き、捨てる。次の瞬間、新人の周囲を煙が覆い隠す。対IS用スモークグレネード。効果は煙の中に強力なジャミングを放ち煙の中のISはハイパーセンサーが使えなくなる代わりに、煙の外のISのハイパーセンサーに捉えられなくなるものだ。本来は煙に包まれハイパーセンサーが使えなくなって動揺しているところを、集団で制圧射撃することで相手をリンチにするためのものだが、一対一なら使えるかもしれないと持ってきたものだ。そして、新人は次を取り出す。そして、スコープを覗き込み先ほどセシリアがいたであろう場所へと勘で狙いを定める。もちろんアシスト無しでだ。そしてその引き金を引く。弾丸は煙に穴を開けると、セシリアの機体ギリギリを通り抜ける。もちろん直撃弾ではないがそれでも50は削った。

それの正体はアンチマテリアルライフルの弾丸である。それはアリーナの観客席を守るためのシールドに阻まれると、潔く停止する。

すぐさまセシリアは前の経験を生かして周囲にレーザービットを展開すると、それと同時に何かを抱え込んだ新人がセシリアへと突っ込んでいく。スターライトのレーザーだけを避け、ビットのレーザーに当たろうとも速度は失わず、瞬時加速(イグニッション・ブースト)無しでセシリアへと詰め寄る。

 

残り50m

 

そこでさらにブースターを噴かし、加速をする。そして接敵する。セシリアは加速の時点で間に合わないと推測すると、愛銃を片付け近接のためにインターセプターというナイフを取り出す。いつもの彼女ならこんなすぐには取り出せないが今日は取り出すことに成功する。そして、それを新人に突き刺す。

 

が、新人には突き刺さらずそれは新人の抱えていたものによって遮られていた。

6連式グレネードランチャー(・・・・・・・・・・・・・)によって。

ナイフは弾丸、つまりはグレネードを貫いたわけだが、このグレネードは瞬発信管ーー衝撃によって爆破するタイプの信管ーーが付いている。あとは察しろ。

 

 

 

 

六発分のグレネードの爆発によって試合は幕を閉じた。

 

 

 

 

公式記録

 

天下新人(あましたあらと)VSセシリア・オルコット

 

試合時間3:26

 

先制攻撃 ラファール・リヴァイブのショットガン

 

最終攻撃 グレネードを使用した自爆。

 

SE(シールドエネルギー)残量(公式試合のルールに則り最大量700)

天下新人 ラファール・リヴァイブ:0

セシリア・オルコット ブルーティアーズ:429

 

 




歯が痛い作者です。水曜に歯医者行きます。

次回はまた休憩挟んで新人対一夏です。

5/26 記録の部分でVSの所が新人ではなく一夏になっていたので修正


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ISと少年たち 〜インターバル2〜

今回は試合開始前まで


残るは新人と一夏の試合のみとなった。お互いセシリアに敗北しているが、その経験をどう活かすかが勝負の鍵となるだろう。

 

 

西側ピット

 

一夏は不安になっていた。セシリアに負けた。これは必然とはいえ彼はそのことに気を取られている。もしかしたら新人にも負けてしまうのではないか、自分がもう守られるだけの存在ではないと証明できないのではないか、そんな負のスパイラルに陥りかけている。

 

「大丈夫か一夏?」

・・・・・・

 

箒の呼びかけにも応答せず、黙り続ける。顔は下を向いたままだ。背中は丸くなっていつもより小さくみえる。そこに箒は

 

バンッ

 

全力の平手を一夏の背中にお見舞いする。背中を唐突に叩かれた一夏はいきなりの事態に驚く。すぐに下手人を探す、と言ってもそこに他の人は、今手をさすってる箒しかいないわけだ。

 

()ってぇ!いきなり何するんだよ箒」

「ん?ああ、いつまでもうじうじしているから喝を入れてやったのだ。男とあろうものがたった一回の敗北でしょげてどうする。しかもあれは、剣道初心者が千冬さんに挑むようなものだ。勝てないのも無理ない」

「なっ!?俺が絶対に勝てないと思ってたってことか?」

「まあ、どんなものでも初心者が経験者を打ち倒す、そんなことが起こるのはほとんど無いと思っていただけだ。それにそんな調子で新人に勝つことができるのか?」

「うっ、むぅぅぅ」

「はぁ、一夏。私はなぜそこまで新人を目の敵にするのか知らない。だがな、真剣勝負に余分なモノは持ち込むな。新人はお前が勝たなければ認めないような器量の狭い男か?少なくとも今までを見るからにそんな人物には私は見えなかった」

「箒……」

「勝つことだけを考えてはダメだ。ただ無心に相手に全力をぶつけることだけを考えろ。そうすれば結果は自ずとついてくる」

 

男前なことを言うが箒は女の子だしまだ15の高校生だ。だが、その言葉には不思議な説得力が宿っている。とくに勝つことだけを、に関してまるで経験があったかのようだった。そこを言うときだけ顔をしかめていたので何かあったのだろうが、そこは踏み込まないでおこう。

箒の喝は一夏に効いたようだ。憑き物が落ちた様な顔をしている。顔を下に向けてどんよりとした雰囲気な彼はもう居ない。完全復活といったところだろう。試合まではまだ時間がある。が、彼はすぐにでもカタパルトに乗って戦場(フィールド)に出たい気分だった。元気を出した一夏を見た箒は満足そうな顔をすると、右手を振り上げるともう一度一夏の背中へと叩きつける。

 

「元気が出た様で何よりだ。

 

頑張れよ一夏」

 

「ああ、ありがとう箒。

 

これでいける気がする」

 

 

 

時間が開始時刻まで迫る。箒はすでに観客席の方へと移った。トイレに行こうとした生徒が、顔や耳が真っ赤になってそれを手で隠している箒を見たそうだがそれはまた別のお話し。一夏は白式を展開するとカタパルトの上に乗る。そして、二回目の空へと飛び立った。

 

 

 

 

 

 

東側ピット

 

機体を修理してもらっている新人。さすがに自爆とセシリアのミサイルビットの爆破の衝撃でスラスターやいろいろと破損したので取り替えやらを今行っている。ただぼーっと天井を見つめる。話し相手もいないから暇なのだ。武器は先ほどのグレネードランチャー以外はすぐに用意できるらしいので問題は無い。一夏が思いつめているというのにこっちはとくに何も感じていない様だ。まあ、平常運転なのは良いことなのだが、緊張感が無いのもどうかと思う。一夏に対する作戦を考えるとか、色々時間を潰すことができるものはあるのにとくに何もすることなく、ただ時を待つ。

 

修理が終わり武器の点検をする。先ほどの様に千冬が来ることもなくただ待つだけであった。カタパルトに機体を乗せる。

 

「勝負をする以上、負けるつもりはありません」

 

誰に言うわけでもなく、ただ一人呟く。これを聞くのは意識があると言われているらしいISだけだろう。そんなことは気にせず発射態勢に入るカタパルト。

 

ラファールは勢いよく打ち出され、空を駆る。

 

 

そして

 

二人の戦いが幕をあける




歯医者に行ってきた作者です。神経に近いでかい虫歯がレントゲンの結果見つかり、治療のために歯に穴を開ける際に痛すぎて自然と「あっがぁぁぁ」悲鳴が出ました。めちゃくちゃ痛かったです。

生々しい話をしてしまい申し訳ない。

次回で委員長決定戦は最後。勝利を手にするのはどちらか?


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ISと少年たち 〜決戦と終戦〜

最近不定期とはいえ月一更新ばっかしてる作者です。


お待たせしました。クラス代表決定戦最終戦です。






「ようやく、だな」

「ええ、そうですね」

 

宙に浮かぶ二機のIS。対峙するはISの世界において異常(イレギュラー)と呼ばれる男が二人。

 

「新人に負けたく無い」

「勝負には負けたく無いです」

「だから全力なんてもんじゃ無い」

「だから相手が誰であろうと」

「1%だろうが0.1%だろうが限界を超えてみせる」

「最後まで目を離すつもりはありません」

 

お互いに自分を独白する。無意識の発言なのだ。すでに有意識は互いしか認識しないようになっている。そこに表情はなく、互いを貫くような視線が火花をあげる。

 

「行くぞ、白式(相棒)

 

剣を虚空から引き抜く。

 

「行きますよ、ラファール」

 

拳銃を虚空から抜き取る。

 

 

 

戦いの(ブザー)が鳴る。

 

 

 

 

白式がブースターを最大限まで噴かす。ラファールが弾を吐き出しながら後ろへと下がる。

白式が直撃のみを剣で切り裂く。ラファールは拳銃を白式へと投げ捨てる。

白式は一刀のもとに切り捨てる。ラファールは右手にあるものをよび出す。

 

鋼と鉛がぶつかり合う。

 

金属同士の鳴き声が響く。

 

切り裂く/貫く

 

だが、あっけなく競り合いは均衡を崩す。鉛が白式の顔横を穿つ。鋼は振り抜かれそのまま地へと落ちていく。そして、一方は手から、もう一方は右の背から光を散らし勢いをつけ、

 

振り抜いた隙だらけの横腹に白い軌跡を描く

振り抜いたその隙だらけの正面を足刀で蹴撃する

 

 

互いに吹き飛ぶが、ラファールはフィールドの壁へとすぐに叩きつけられる。だが、すぐに右手の巨大な釘を消すと両手と足を使いあの銃(・・・)を持つ。そして、跳ねた。

 

ーー目を離すつもりはありません。

 

白式への衝撃はまるで乗用車に轢かれたような強さを持って、白式を50mほど吹き飛ばす。ブースターを器用に噴かし体勢を整える。が、センサーが機体左側に何かが接近するのを感知する頃には、左の肩を貫く衝撃と共に地へと空から転げ落ちていく。

 

 

二度の強烈な衝撃。ISは衝撃を吸収せずに操縦者へと圧倒的な暴力として吐き出す。身体中が軋むように痛い。が、立ち上がれる。身体の限界を超える。

 

壁に空いた穴から機体を抜く。視線は変わらず白い敵を釘付けにする。アラートが鳴り響く。機体を回転させたことによって蹴ったため、切られた左の横腹の鈍痛が響く。切られた箇所は装甲が無く。ダメージは致命傷。残りのエネルギーはあの一撃で2割を切った。だが、それらをすべて切り捨て、残りの手札に意識をそそぐ。ーー男の子の意地、負けたくない

 

左の肩の関節が外れていると、白式からの警告を無視する。視界の淵に赤い文字で183と表示される。そんなこと関係ない、左がダメなら右で、両方がダメなら口で戦えばいい。右手で白い鋼を持ち、握りしめる。痛みでぼやけかける意識を叩き起こす。意識の限界を超える。ーー本能が叫ぶ、負けたくない

 

 

 

一歩踏み出すーー

 

二歩目 剣を構える/両手で1mの直剣を構える

 

三歩目 加速する

 

四歩目 走り出す

 

五歩目 ブースターを少しずつ噴かす

 

六歩目 地を蹴る

 

六と半歩 ブースターが息を吸い込む

 

七歩目は無く 四つの口から息がはかれる

 

 

 

「おおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 

加速した二つはお互いを切り裂いた。

 

二つは固まって動かなくなりーー

 

戦いの幕は切って降ろされた。

 

身体から光を散らして(こうべ)を地に墜とした。

 

 

 

 

 

公式記録

 

織斑一夏(おりむらいちか)VS天下新人(あましたあらと)

 

試合時間2:19

 

先制攻撃 ラファール・リヴァイブ、白式腹部への足刀蹴り/白式、ラファールへの逆袈裟斬り(零落白夜使用)

 

最終攻撃 ラファール・リヴァイブ、白式への右下段から左上段への切り上げ/白式、ラファール・リヴァイブへの右上段から左下段への斬り落とし

 

SE(シールドエネルギー)残量(公式試合のルールに則り最大量700)

天下新人 ラファール・リヴァイブ:0

織斑一夏 白式:0

 




短い。あまりに短い。初心者同士のぶつかり合いだから何て言葉無く、どちらも猪になったためにこんな終わり方になりました。
感情起伏の少ない新人君ですが何度も言いますが感情がないわけでは無く、表情が動かないのと感情の振れ幅が極端なだけ(どうでもいいと興味有りの二択)でないわけじゃないんです。負けたくなかったけど思考が狭まってしまったんです。


5/26 タイトルついてないのに気づきました。ああ恥ずかしい
そんなこんなで相打ちに終わりましたアニメ2話まで。ようやっと戦闘シーンからの解放。次からはやっと日常系に戻れると、思いたい。




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ISと少年たち 〜終了と心配〜

久しぶりに月2で、更新できた作者です。
案の定短いですがどうぞ。


実にあっけない試合だった。試合時間は3分を切って決着がついた。1組の生徒たちは唖然としていた。もちろん、シャルや箒もそうだ。モンドグロッソでもこんなに早く決着がつく試合は見たことがない。せめて5分はかかると思いきや、初心者の一夏は候補生相手に10分以上の大健闘。新人は一瞬で終わったが、初心者が取るとは思えないような自爆特攻や対物ライフルのクイックショットを華麗に見せつけ試合を終わらせた。

 

お互い気力尽きたのかフィールドの中心で倒れたまま動けないでいる。どちらも今日が初めての長時間の起動で集中しすぎて緊張の糸が切れた反動が大きかったのだろう。うつ伏せのまま動けないでいる。そこに青の機体、セシリアのブルーティアーズがゆっくりとした速度で二人の近くまで行くと、二人を担いでピットへと飛んで行った。

 

 

「これにて1組のクラス代表決定戦を終了する。まだ校舎では授業が行われているから静かに教室へ戻れ」

 

 

クラス担任の千冬の声で再起動した1組の生徒の大半は教室へと帰っていく。だがその心には静かに興奮と熱狂を孕ませており、早く自分たちもISに触れてみたいというか気持ちがさらに強くなっただろう。この試合は彼女たちにとって甘い現実からの冷水となり、同時にガソリンともなった。彼女たちの将来には期待できるものが多くなったことだろう。

 

 

大半から外れた二人ーーシャルと箒は新人と一夏が運ばれていったピットへと走る。倒れたままの二人を心配してピットの自動ドアの前までたどり着く。開かれるドアの0.1秒にさえもどかしさを感じながらピットの中へと入る。二人は別々のベンチに毛布をかけられた状態で眠っていた。近くには千冬とセシリア、山田先生がおり、開いたドアの音を聞いてこちらへと視線を向けていた。

 

「「織斑先生!」

「教室に戻れと言ったはずなんだが」

「「それよりも新人(一夏)は大丈夫なんですか!?」」

「ほう、私の言うことよりも自分の男の方が心配か」

「「あっ」」

 

シャルと箒は千冬の一言で冷静になる。千冬はニヤニヤしながら、近くでセシリアが少し苦笑いをしていた。千冬の発言と今の状況を鑑みて顔を紅くしながらも顔が引きつった笑みを浮かべるという器用なことをすると、何も言わなくなってしまった。

 

「ふっ、まあいいさ。今日は特別としよう。

二人に関しては問題は特にない。緊張の糸が切れて疲れが一度に出て気絶しただけだ。肩肘を張りすぎだ、バカどもめ」

 

千冬が少し微笑みながら二人の容態を言うと、シャルと箒は同時にホッと息を吐いた。お互いの想い人の近くへと寄るともう一つ安堵のため息を吐く。この後は二人を保健室まで運び体調が戻り次第、寮に返すとのことだった。それを聞くとシャルと箒の二人は、千冬にさっさと戻れと言われたので渋々ながらも帰っていった。

 

 

「それでセシリア、さっきの件なんだが」

「はい、それに関しては請けようと思います」

「すまないな、迷惑をかけるようで」

「いえいえ、あの(・・)Ms.千冬に謝られるなんてとんでもないですよ。それに弱い平民のために少し手助けをしてあげるのは貴族として、私たち(オルコット家)としては当然のことですわ。それにこういう時は感謝の方が相手も嬉しいものでしてよ」

「そう、か。

 

ありがとう」

「気にしておりませんわ。それより、あの二人の成長は少し楽しみなところがありますので、少し気になっております。あの二人の将来が私を超えることができるか、この一年間で見届けさせてもらいます。そうでも無ければーーーーーことなどできもしませんから」

「ああ、二人が成長してくれるのを祈るばかりだ。

さて、そろそろ私たちもこいつらを運んで教室へ戻るとしよう」

「はい、わかりましたわ」

 

 

意味深なやりとりを交わす二人は、新人と一夏を持ち上げるとピットから出て行った。

 

そんなことをまるで空気のように存在して聞いていた山田先生は、

 

「あれ、私一人だけですか!?

お、おいてかないでください〜」

 

 

話すことがなかった故に、喋らずじっとしていたので誰からも気づかれることなく、一人、ピットから出て行くのであった。




せめて二千字を超えたい(願望)


次はようやっとチャイナリターンに入ると思います



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チャイナリターン 〜明けて明ける〜

どうも、夏休みは何してたか思い出したくない作者です。

お待たせしました、4ヶ月ぶりの投稿です。

オリジナルの要素がございますので気をつけてください。


翌日、1組の教室にて前日の試合の結果が発表されることとなった。一部の人はこれに反応を示さず、大半の人は「えー!?」と驚いていた。「アイエー!?」と驚くニンジャヘッズは近くに居た他の生徒に「南無三」され、しめやかに倒れ伏した。

 

「クラス代表に関してだが、私と山田先生によって審議をした結果、オルコットの辞退によって織斑一夏に決定した。異論がある奴は手を挙げろ」

 

そう、余裕の圧勝をしたセシリアでは無くそのセシリアと奮闘した一夏に代表が渡ったのだ。一夏は一番の驚きを示していた。新人はただ一人拍手をして一夏のことを祝っていた。

 

「おめでとうございます、頑張ってくださいね一夏くん」

「ちょ、ちょっと待ってくれ!」

「何だ異論があるなら言ってみろ」

「俺じゃ力不足だろ!?」

「ほう、辞退したオルコットに十分奮戦していたお前のどこが適任で無いと」

「でも、俺はセシリアには一撃も、当てられなかった」

「ふむ、確かに天下はオルコットに対して攻撃を当てることはできただろう。だが、織斑のやり方と天下のやり方は別だ。戦い方(スタイル)が違う。それを加味して山田先生と私で判断した」

「うっ」

「これ以上反論はないな?

なら、これで決定だ。さあ、授業を始めるぞ」

 

国数英、IS科目三時間を終えて放課後。そこには倒れ伏した一夏がいた。隣ではシャルロットと新人がISの理論や設計に関して話し合っている。今は丁度世界の汎用機についての話をしている。教室内に居るのはこの3人だけのようだ。

 

「IS学園にあるのは打鉄(うちがね)だね。高い防御力と耐久力の高いシールドがよく目に付けられる機体だね。近接武器の『葵』とアサルトライフルの『葉桜』の二つを基本型に追加パッケージを入れるとタワーシールドの『紅山(くれやま)』だったり固定砲台型のガトリングを装備できたりするかな。でも防御力に重きを置いている分拡張領域(バススロット)の空きがあまり無いんだよ。でもこの機体を構成する三つで十分結果を出すための材料は揃ってるんだ。だから、残りに弾薬を詰め込んだりするとか、予備の武器を揃えておくのがよく見かけるかな。えっと、これでわかる?」

「はい、丁寧説明していただきありがとうございます。打鉄のシールドはこの前の試合でも使わせてもらいましたがあれはいいものでした。自分が情けないことにすぐに手放してしまったせいでうまく性能を発揮させられませんでしたが、あれは生半可な攻撃を簡単に防いでくれます。あれをセシリアさんのビットみたいに使えたら負けることはそうそう無いと思います」

 

シャルロットの簡略化された説明を聞いて納得するとともに、打鉄のタワーシールドを賞賛する新人。あれはまた機会があるなら使い方について深く考察をしたいと、思いながら次のシャルロットの説明に意識を向ける。

 

「あはは、それじゃあ次はIS学園にあるもう一つのIS、ラファール・リヴァイブだね。昨日の試合で使ってたからわかってると思うけど、ラファールは打鉄とは対照的に固定の武装が無く、装甲が少し薄いんだ。その分だけ拡張領域(バススロット)の空きが大きいからその分戦略性に富んでいる機体だね。武器を多種類持つことは手札を増やすことにつながる。それは相手への牽制にもなる。実際新人がスモークグレネードだったり、対物ライフルを入れたみたいに組み合わせで入れやすいのがポイントかな」

「はい、ラファールに関しては試合前にシャルさんから教えていただいたおかげでなんとか戦うことができました。たしかラファールはシャルさんのお父さんが社長をしているデュノア社が作った機体でしたね。初心者にもたくさんの選択肢を与えられるバススロットの大きさは本当にありがたかったです。あれが無かったらセシリアさんに一矢報いることもできませんでしたから」

「えっと、ここまで長々と語っちゃったけど」

「はい、なんでしょうか」

「ひ、引いたりしない?」

「なぜでしょうか、特にそんな要素はないと思うのですが」

「そ、そうだね。ごめんねいきなり変なこと聞いて」

「それに楽しそうにラファールのことを語るシャルさんを見れて僕も嬉しいです」

「う、うん」

 

楽しそうに笑顔でラファールを語るシャルロットに前日の試合の感想を語る新人。最後に機械に関して嬉々として語るシャルロットは引かれないか心配するも、新人は友人が楽しそうに語る姿を見ることができて満足と伝えると、シャルロットは頬を朱く染めながら俯く。そして、俯きながら、

 

「でも、あんなことはもうやらないでね。すごく、すっごく心配したんだから…」

 

悲しげな雰囲気を含ませた声を新人に向けて放つ。前日の試合にしたセシリアへの自爆特攻の件である。あれは会場の全員が心配していた。それはそうだろう、ISには絶対防御がある。その事前知識があってもあの自爆は会場にいた生徒を青ざめさせた。近くにいた人間が目の前で、しかもかなり大きな爆発だったのだ。ゾッとするだろうし、怖いものだ。

試合後の保健室でも千冬に二度とあんなことをするなと叱られていた。それはもうこってりじっくりと三時間ほど。彼は足掻いた結果ゆえに自分の中では満足していたのだが、周りの人はとても心配していたようだ。それに対して新人は、

 

「ええ、二度とあんなことはしません。あれをするとみなさんを心配させてしまうみたいですし、シャルさんを悲しませてしまいますから」

「だめ、だよ…本当に怖かったんだよ。そんな薄い言葉じゃ、納得できないよ」

 

二度としない、そうは言うがシャルロットにはありきたりで安っぽい言葉に聞こえたのだろう。ついには新人に縋り付くように顔を隠しながら、納得できないと涙声で新人に訴えかける。新人はシャルロットに答える。

 

「では、シャルさんが見ていてください。僕がもうそんなことをしないように、見守ってくれませんか」

 

そんな告白まがいの言葉を

 

「そ、それって?」

 

新人からは見えないが顔を朱く染めながら問いかけるシャルロットの姿がある。コイツチョロイゾ。

 

友達(・・)として見守ってくれませんか。シャルさんは一番僕の中で家族を除くと一番信頼している方なので、見守ってくれたら安心できるな、と」

「そう、なんだ。なら私が新人のことずっと(・・・)見守ってあげるね」

 

「えへへ、一番信頼してるかぁ、えへへへ」

 

友達として、という言葉が聞こえなかったのか聞こえてたのかは定かではないが、一番信頼しているという言葉に顔を綻ばせるシャルロット。そこはかとなく匂うヤンデレ臭とともに、えへへと照れながら新人に背を向けて笑う姿には少し恐怖を覚えそうだ。

 

 

それを隣で見ていた一夏はというと、シャルロットと新人って仲いいんだなぁ、と突っ伏したままクラス代表の現実から目を背けていた。

 

 

放課後過ぎ去って今は夜。食堂へ向かうのは新人と一夏だ。シャルロットは用事があると言って教室での勉強後、どこかへ行ってしまった。今日は何を食べようかと考える新人と何とか割り切って覚悟を決めた一夏が食堂へ入ると、何重もの軽い炸裂音とともに紙吹雪が一夏に向けて放たれる。驚いた一夏はその場でたじろいでしまう。新人はその場に止まって食堂全体を見渡す。目に映るのは様々な菓子、菓子、菓子、これを全部処理したら確実に太りますねと思いつつ、まあ、女性は甘いものが好きな方が多いですからと、結論付けると券売機まで一直線に向かう。そんな新人をスルーしちゃうかー、と1組女子生徒勢。まあ、主役は一夏だと女子生徒たちは一夏に向けて、

 

「「「一夏くんクラス代表おめでとう!」」」

 

1組の生徒他見知らぬ生徒が一斉に祝いの言葉を放った。呆気にとられる一夏はその場に固まったままだ。一つも動かなくなっている。そのままよいさよいさと1組女子に運ばれると目の前にはケーキと突き立てられている幾本かのロウソク。

 

「さっ、織斑くん。ロウソク消しちゃって。主役がやってくれなきゃパーティーは始まらないわ」

「え、えっと、それじゃあ」

 

流されるまま一夏はスー、と聞こえるほど大きく息を吸い込むと剣道やその他運動で鍛えられた肺活量を使って立てられていたロウソクの火をすべて吹き消す。それと同時に拍手が鳴り響き、様々な祝いの言葉がかけられる。その裏で食券を渡す新人は定食を受け取ると、そそくさと何も置かれていない机を見つけ、席に着く。だいたいの生徒が一夏をもてはやす中、一人孤独のグルメをしようじゃないかというところで後ろから声がかけられる。

 

「天下くんは参加しないの?」

 

後ろを振り向くと見知らぬ生徒、つまりは他クラスの生徒が新人を見つけて声をかける。

 

「僕は主役ではないのでひっそりとしている方がよろしいかと」

「そんなことないよ、みんな天下くんのことも待ってるよ」

「では、いただいた定食を食べ終わり次第参加しますので、それでよろしいでしょうか」

「うんうん、じゃあ待ってるからねー」

 

コミュ力の高さと場の雰囲気でさらっと新人に近づく女子生徒。羨ましいくらいだが新人は丁寧に断ると、女子生徒もあっさりと引く。

時刻は19:30頃。パーティも始まったばかりだから参加できないこともないだろうと、いただきますと感謝の念を込めてから定食に手をつける新人だった。

 

 

 

定食を食べ終わり、食器を返すとまだまだパーティは続いている。一夏は居ないかと軽く探すと紙とペンを持った女子生徒に詰め寄られている。なんだかんだで大丈夫そうな一夏を視界の端にやると、何気なく見つけた菓子にへと手を出す。そのとき、

 

「あれ、新人もこれなの?」

 

横から手が伸びてくる。西欧人特有の白い肌と金色の髪の毛、そして幼い頃から聞いてきたこの声色、言わずもがなシャルロットである。ただ、同じものを取ろうとして手が触れ合うなんてドラマチックなことはなく、複数あるうちの別々をとっていく。

 

「はい、久しぶりにこれを食べたくなりまして。今日はパーティですし少しくらいなら大丈夫かと思いまして」

「そうなんだ。なんだか懐かしいね、これを見てると昔を思い出すなぁ」

「そうですね、迷子になっていたシャルさんと初めてあったときにも食べましたね」

「そ、そのことは言わないでよぉ、だいたい新人だって迷子だったでしょ!」

 

昔を懐かしむ2人。出会った当時のことを思い出す。お互いが迷子で歩き回ったときに、シャルロットが疲れて歩けなくなった。そのときにたまたま近くにあった駄菓子屋で買ったものを2人で休みながら食べていた。そのことを思い出せる品、それが、

 

「「おいしいよね(ですよね)、シガレット」」

 

である。

2人は箱を開けると、中に6本入っている袋を破り、それぞれ口にする。シャルロットは小動物のようにポリポリとゆっくり咀嚼していく。ふと、シャルロットは新人の方を向くとそこには、まるで大人がタバコを吸うような仕草(・・・・・・・・・・・・・・・・・)で、口にシガレットを咥えている新人がいた。ときおり、人差し指と親指で軽くつまむと口から離し、少し溜息をつく。そこにはまるで疲れた社会人のような姿が幻視される。

 

「どうしたの、新人?なんだか疲れてるように見えるんだけど」

 

一瞬反応に遅れる。無意識だったのか、まるで本当に疲れているように見える。アニメだったらクエスチョンマークが出てきそうな、生返事を返すとその後、口を開く。

 

「よくわからないんです。ですがなんだかこうしていると、とても落ち着くんですよね。まるでこうするのが当たり前みたいな、そんな曖昧な感じなのですが」

 

シャルロットは疑問を抱いてしまうが、すぐにかき消されてしまう。

 

パシャリ

 

カメラ特有のシャッター音を聞くと慌てて振り向く。そこには先ほど一夏を問い詰めていた女子生徒がいた。

 

「いやー、タバコを咥えてる大人みたいでクールだねぇ。どう?もう一枚撮らない?」

「遠慮します。それと白黒つけられたくないのなら今すぐ盗撮したものを消した方がいいかと」

「あっはい」

 

軽い挨拶と、堂々と本人の前で盗撮をした彼女は新聞部の生徒だったとシャルロットは記憶している。そんな彼女は、新人にさりげなく忠告をされあっさりと頷いてしまうと、ささっと盗撮した写真を消去する。ジャパニーズジョークをマジレスにて返された彼女はそれ以降何も言わなくなると消える様にどこかへといつの間にかいなくなる。

 

そんな感じでパーティは終盤。またもどこからともなくやってきた新聞部の生徒は、みんなで写真撮りましょうと提案する。乗り気なみんなに乗せられた一夏と新人は、中央に押し込まれながら写真を撮られる。頬を朱らめる一夏とあいも変わらずに無表情な新人、さりげなく新人に抱きつくシャルロットと、恥ずかしてくて一夏に近づけずにいる箒、パーティ序盤にはいなかったのにいつの間にか来ていたセシリア、他1組の生徒によって埋め尽くされた写真は後日、今時アナログな学校の掲示板に新聞として掲載された。

 

 

 

 

 

新人たちが写真を撮っている頃、IS学園の敷地内に1人の人影が月明かりによって浮かび上がる。片手にはボストンバッグ、IS学園の制服を着ているそれは、あまり明かりのついていない本校舎へ向け歩をすすめる。バッグについている、鈴の音を響かせながら。




あまりに遅すぎる投稿、待ってくれている方が居たのなら本当に申し訳ないです。正直、エタってしまいそうでした。前に書いた自分のメモ帳にあるものを見てようやく重い腰を上げれました。8割がたは完成してたのですが残り2割がどうしようか悩んでいるうちに忙しくなってしまい、書こう書こうと思いつつもダラダラしてしまいました。

こんな感じで続くと思いますが、よろしければ今後ともお付き合いください。

9/15 誤字修正。誤字報告をしてくださった方、ありがとうございました。


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チャイナリターン 〜あだ名と弁当〜

わたくし、恥ずかしながらも帰ってまいりましたわ!(開き直り)

すまない、また(投稿に期間が空いた)なんだ。まあ、コーヒーでも飲んでリラックスしてくれ。あれ、なんだ。理由もなく書く言葉が続かなくなって、エタりそうだったんだ。そんな時に珍しくこの小説に感想が届いてな、ああ、やらなきゃって、筆を取るのは久しぶりでないが少しは書こうとしてみるかって思ったんだ。

二時間で作れました、本当にすみませんorz


 

一夏の代表就任を祝うパーティの翌日。新人は目を覚ますと顔を手早く洗い、ランニングの支度を始める。まだ隣のベッドで寝ている更識を起こさないようにしつつ、部屋から出て校庭まで移動する。いつものメニューこなしつつ、体力が少しづつ戻ってきているのを感じながらIS学園の外周を走る。鳥のさえずりや波の音を聞きながら走り終えると部屋に戻りシャワーを浴びる。シャワーを終えるとちょうど起きてきたのであろう更識が、目を半開きにしたままで新人と代わるようにシャワー室へと入っていった。

新人は今日の授業の支度と久しぶりに弁当作りを始める。一夏に誘われて始めたのが始まりで、気分で作る日が変わるのがもっぱらである。一夏と比べると出来は粗末なものだが、不味くはないというのが本人の感想だ。将来は自炊出来るようにならないと千冬姉みたいになる、とは一夏の談である。そのあとに千冬に叩かれていたのもワンセットで。

そんなこんなで白米、タコさんウィンナー、卵焼き、青菜の胡麻和え、最後にシュウマイを入れて完成である。卵焼きと胡麻和え以外は冷食を温めるなどして用意したものだが、最近の冷食は侮れないのである。弁当を二つ完成させると、作ってる間にシャワーを浴び終えて下着とワイシャツだけを着ている更識に弁当を渡して朝食へと向かう。久しぶりに弁当を作ろうか考えていたら口に出ていたらしく、是非作って欲しいと頼まれたのだ。

食堂で、今日は焼き鮭定食を頼み15分で完食すると部屋へ荷物を取りに戻り、教室へと向かう。今日の授業でやる部分をマーカーで引きつつ、クラス委員決定戦以降気に入った武装カタログを見る作業をしつつスペックを確認する。ハンドガン、アサルトライフル、ショットガン、パイルバンカー、刀剣類、シールド、ミサイル、グレネード、エネルギー武器系統などなど、気になった武器をリストアップする。そんなことをしていると一夏やシャルロット、箒、セシリアが教室に入ってくる。その他1組の生徒も続々と入ってきて最後に千冬が入ってSHRが始まる。

 

「諸君、おはよう」

「「「おはようございます」」」

「それではホームルームを始める。まずは連絡だが、クラス対抗戦があと二週間後に迫っている。クラス委員の織斑は気を引き締めておけ、無様な姿を見せることは許さんぞ」

「は、はい…」

「次に、2組に転校生が入った。中国の代表候補生だ。中国曰く専用機の調整に時間がかかった、などとほざいている。まあ、君たちには関係のないことだろう。

私からは以上だ。何か連絡がある者はいるか。

いないなら解散だ。次の授業の支度でもしておけ」

 

転校生という言葉にざわめく生徒を無視してSHRを打ち切る千冬。女の子はこの手の話題には弱いのだと理解しているからゆえの行動だと、後ろに控えている真耶と同じことを考えつつ、教室から離れる。一時間目はIS系ではなく普通科の授業だ。

一方、転校生の話題で持ちきりの1組生徒は静かにだが広範囲、具体的にクラスメイトのほとんどが会話に参加していた。

「中国からの使者、チャイニーズウーメン!」「いや、そこは「来たゾォォォォォ!来たゾォォォォォ!(某洋画風味)」「チャイナから来チャイナってね!」「………」

教室の温度が2、3度落ちた気がする。

そんなくだらない会話を横に新人は中国という単語からあの少女のことを思い出す。時々ではあるが直接中国まで会いに行くこともあったがここ1年は行っておらず、相手からも連絡、返信が返って来てないことが心配であった。それを一夏に行ってみると彼も同意見だった。もし今回の転校生が彼女なら喜ばしいことであると、話しつつ数学の支度を始める。

 

「ねえ、新人」

「どうかしましたか、シャルさん」

「今日の転校生ってもしかして知り合い?」

「かもしれない、ですね」

「新人って中国にも友達がいるんだ。

…その子って女の子?」

「ええそうですね、元気で明るくて少し抜けてるところもありますが芯の通っているかっこいい子でしたよ」

 

数学の授業はつつがなく終了し、休み時間。シャルロットが次の授業の支度をしている新人の後ろから話しかける。新人の受け答えに少し頬を膨らませていかにも不満です、という表情をするシャルロット。新人は一夏も混ぜつつ少しだけ思い出話に花を咲かせる。その行動にさらに頬を膨らませるシャルロットは唐突に頬を突かれて、プヒュと間抜けな音を鳴らす。

 

「い、いきなり何するの!」

「ん〜?なんだか不満そ〜な顔してたから〜、ね?」

「ね?じゃないよぉ、布仏(のほとけ)さん」

「あ、覚えててくれたんだ〜。んーとね、本音でいいよー、でっちー」

「でっちーってなに?」

「でっちーはでっちーだよぉ」

「でっちーですか、いいかもしれませんねシャルさん」

「ちょっ、ちょっと待ってよ!それじゃ何がなんだかわからないし、新人はいきなり良いとか言わないでよ、それで広まったらどうすr「おーいでっちー」「でっちー、いいと思うなぁ」「でっちー、嫌いじゃないわ!」……もぉ!」

 

突然横から現れた布仏(のほとけ)本音(ほんね)に頬を突かれたと思ったら、謎のネーミングセンスの元、でっちーと名付けられた挙句、思い出話を花咲か兄さんしていた新人も乱入し、クラス内の耳聡い者共に聞かれすぐに呼ばれる。顔を羞恥に朱くしながら声を上げて抗議の声を上げようとするが、タイミングすらも悪く、キンコーン カン!コーン!、とどこぞのカードゲームアニメばりのSEを途中から流すという、まさに踏まれたり蹴られたりした後に蜂、と言わんばかりに怒涛の運の無さがシャルロットを襲った。

シャルロットはギリギリ席につきつつも、その顔はまだ朱く、うぅホントこんなことばっかり…と呟くのであった。

 

 

時は変わり昼休み、新人は一夏と箒に昼食を誘われるも、今日は久しぶりにお弁当を作ったのでたまには食堂以外で食べてみたいですねと、断る。新人の言葉に反応した一夏は、弁当か、久しぶりに作ってみるのもありかなと言うと、弁当の中身を頭の中て考えつつ食堂へ向かった。箒はと言うと一夏が弁当を作ると言ったあたりで何を考え出したのか固まってしまい、何言わぬ石像のごとくその場に佇んでしまった。再起動は1分後だったそうな。

弁当のあたりでクラスを騒がせた新人は1人、校舎の屋上にあるいくつかのベンチと一本しか木の無い、公園と呼んで良いのか曖昧な場所のベンチで1人、風を身に受けながら食事の用意をする。用意している途中でいきなり目を塞がれる。その後、だーれだ?と聞き覚えしかない声を耳にしつつ目に見えてないにもかかわらず弁当をベンチに展開しながら、

 

「何か御用でしょうか、更識先輩」

「いや、ね。ちょっと見かけたからせっかくだしこっそり付いて来ちゃった☆」

「ただお弁当を食べに来ただけですよ。散歩してた時にここで一度みんなで食事をしてみたいなぁと考えてたのを思い出しましたので。今日は下見ですね」

「へえ、じゃあ私もご一緒して良いかしら?」

「構いませんよ、減るものがあるわけではないので」

「むっ、減るものがあるなら嫌ってことかしら」

「どうなんでしょう、実際には椅子のスペースは減っているわけなんですが」

「あら、それって別に良いってことかしら」

「ご想像にお任せします」

 

更識の相手をしつつ弁当を広げる。途中の受け答えで更識は顔をニヤつかせるも、新人は無表情を貫き通し、温かい緑茶と弁当を喉へと通すのだった。

 




最近は何をしていた?

ダンまち×新世界樹1のクロス小説を書こうとしてました。

何話分だ

さ、3話です…

3ヶ月の間で?

これは全部ゴルゴムってやつのしわz

斬刑(コノメニウー

ウワァァァァァァァァァァ( 'ω' )




茶番もほどほどに、前と変わりなくかけているか心配な作者です。

3ヶ月間またもエタっていたことに反省しつつ前々からできている終わりへの構想へと着々と進めていきたいです(日常回という名のなんの進展もない今話を見ながら)


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チャイナリターン 〜帰還と再会〜

もう、何も言うまい。

彼女はついに帰って来た。


昼食を取り終えた新人は更識と別れると教室へ向かい1人廊下を歩く。階段を降りて1年1組のある階層に着くと、聞き覚えのある声が新人の耳に届いた。

 

「あなたが中国からきました代表候補生ですね。はじめまして、(わたくし)セシリア・オルコットと申します。イギリスの代表候補生を務めておりますわ。今後ともよろしくお願いしますね」

 

一方はセシリアの声、

 

「あら、丁寧にどうも。わたしは中国の代表候補生。名前はーーー」

 

 

「「(ふぁん) 鈴音(りんいん)」」

 

「鈴で構わないわ……ってあれ?」

 

「お久しぶりですね鈴さん。

一年振り、でしょうか…またお会いできて嬉しいです。心配しましたよ、一年間何も連絡がありませんでしたので」

 

聞き慣れた2つ目の声、一年前と相変わらずの身長やら体格やら、でも雰囲気は大人へと少しながら成長を果たしている。そんな親友が新人の目の前に帰ってきたのだった。

 

「あら、新人さん。もしかしてお二人はお知り合いなのでして?」

「はい、小学三年からの親友です。会うのは一年振りですが、元気そうで何よりでーー」

 

セシリアと新人の間を通り抜け、新人へと飛びつく茶色のツインテール。新人はその場で受け止めると何も言わずに抱きついてきた少女を抱き締め返すのであった。

 

「久しぶり……ねえ、約束覚えてる?」

「はい、覚えていますよ。また時間がある時にでも、よろしくお願いします」

「そっか…うん、なら問題なし!」

 

短いやり取りを終えてすぐに離れる二人だが目撃者は二人のやり取りを温かい目で見守っているのであった。

 

「あらあら、新人さん。もしかしてお二人はそう言う関係なのでして?」

 

そう、会話相手がいきなり来た第三者に飛びついても全く動揺しない鋼の心(貴族の心得)を持つセシリアが二人に問いかけるのだった。

 

「え、いや、ちが、いっいい今のはそうよあれよ!えーとそのなんていうかこの」

 

顔を朱く染め上げて当事者は言い訳をしようとするが、久しぶりに親友に会えた喜びと、自分でも理解できない行動に、口早に言って何とかごまかそう(無駄なこと)とするも舌が回らず、脳は完全に真っ白になっていた。だが、そんな相方の状況を察することなく当事者2は言葉を告げる。

 

「そう言う関係、と言うものが何かは知りませんが僕と鈴さんは他より少し仲がいい親友なだけですよ。今のは多分アメリカ式のコミュニケーションかと、前にアメリカに行った時にそういったことをしてる人をよく見かけましたので」

「まあ、詮索をするのは野暮ですわね」

 

新人の回答に呟きで返すセシリア。呟きは新人の耳には届かず、新人の回答に冷静になったのか少し頰が朱いものの、何か残念そうな表情を一瞬だけ見せ、すぐに表情を彼女のいつもに戻すと、

 

「今見たのは他言無用でお願い、ね?」

「構いませんよ。乙女の夢を踏みにじるほど私、悪魔のような人間ではありませんので」

「そ、そう。ならいいわ。ありがとね」

「いえいえ、頑張ってくださいまし」

 

ガールズトークと言う名の交渉を終え、改めて新人と向き合う鈴。

 

「言いたいことはいろいろあるけど、とりあえずこれだけは言わせてもらうわ。

 

 

ただいま!新人!」

 

「ええ、お帰りなさい。鈴さん」

 

 

さて、積もる話をしたい青春少年少女だが、あいにく時間というものはどんな時も一瞬で過ぎていくものだ。あの時のように。

 

キンコーン カン!コーン!

 

昼休み終了と授業開始五分前のチャイムが校舎に響き渡る。3人は、また後で話しましょうと、別れるとそれぞれ進行方向は同じながらも違う教室へと入っていく。

教室にはすでに帰って来ていた一夏が自分の席で次の授業の支度をしているところだった。

 

「おう、新人。結構遅かったな。そんなにいい場所見つけれたのか?」

「ええ、いい場所は見つけれましたので今度皆さんで一緒に食べに行きましょう」

「おう、そうだなって、どうしたんだ新人」

 

一夏は、新人にいつもと違う部分があることに気がついた。

 

「何かいいことでもあったのか?」

「ええそうですね。良いことはありましたよ」

 

無表情を貫く新人の顔がほんの少しだけ、あまり付き合いのない人にはわからないほど微妙な差だが、

 

穏やかな表情をしていた




短いですし、あまり進展してないですが多分こんな感じで年内は終わると思います。多分戦闘回は来年になるんやなって…


連続更新?あいつは良いやつだったよ…


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チャイナリターン 〜成長と調整〜

一年経ちました。
その間に溜め書きしましたが、やはりダメでした。ろくに書けてません。一応3話分は書きましたので時間をかけて投稿します。
完結はさせます。プロット通りに行きますが時間的に予定通りに行くことはまずないです。
こんな作者ですので許さないでください


「午後の授業を始める、その前に今朝に伝えたトーナメントだが優勝報酬もある。クラス全員で取り掛かるもよし、クラス代表の織斑にすべて任せてもよし、お前たちが自分で考え自分たちで行動しろ。積極的でも無関係でも構わん、自由に行動してくれ。

ちょうどいい事にこの時間は山田先生の授業だ。山田先生もこの時間はお前たちのための時間にしていいと言ってくれてな、全員一限分の時間を使ってゆっくり考えてくれ。我々は邪魔にならないよう職員室にもどる。何か聞きたいことがあったら直接に聞きにきても構わないが、他のクラスは授業中だ静かに来るように。

 

では山田先生、後は生徒たちに任せましょう」

 

山田先生は、はい、と笑顔で頷くと生徒たちにも笑顔を向けて、皆さん頑張ってくださいね。織斑先生が言ったとおり聞きたいことがあればお答えしますので、と言うと千冬と共に教室から出て言った。

 

唐突な宣言に騒然とするクラス内で返事をする者は少数だった。

 

 

「えー、さっそくですが今度のクラス対抗戦で優勝するにはどうしたら良いか、意見を出し合いたいと思います。クラス代表としての初仕事だし、俺としては優勝したい。だからみんなの知恵を貸して欲しいんだ」

 

先生二人組が教室から出た後、クラス内は一分間ほど事態を把握することに費やすと、いつも通りのざわつきに戻る。

 

 

いつも通りの騒々しさにようやく頭の追いついた一夏は、自分が何をしなければならなくなったのかを把握する。

 

そしてあの台詞にまで戻ってきたのだが、彼女たちの瞳に宿る意思はこの前のクラス代表決定戦の時とは違い、少し楽観視気味だった雰囲気から真剣なものに変わっていた。彼女らもまた成長するのだ。彼女たちにも彼女たちの物語があり、決して成長しないモブやただここにいるだけの野次馬ではないのである。

 

「まずは他のクラス代表について知ってる人はいるかな?」

「はい、2組と3組の人は私たちと同じでこの学校に入ってからISに触りはじめた、って言ってたわ」

「そういえば4組の代表って誰なんだろ?」

「は〜い、4組の代表はね〜かんちゃんなんだよ〜」

「知っているのか!?のほほん!」

「うん、私の親友でね〜日本の代表候補生なんだ〜」

「なんだって、代表候補生がいるのか!?」

「専用機持ちなの?そのかんちゃんって子」

「んーとね、これ以上は言えないかな〜」

「どうしてだ?何か事情があるのか?」

「うん、そんな感じ〜。どうしても言えないんだ」

 

そうか、なら仕方ないとクラスが納得する中、一夏と一緒に新人は教壇に立ってクラスメイトが発言した内容を必要な分にまとめて、慣れない手つきで仮想型(未来技術のある世界によくある、実体はないけどキーボードの形をしたホログラフィックが出てそれに触れると実際に文字がうてるアレ)のキーボードを使って黒板に映し出す。今の所書かれているのは、先程でた2組3組がIS初心者であることと4組が代表候補生であることだけである。

 

「そういえばおりむー、白式のスペックってどうなってるの?」

「白式のスペック?」

「そーそー、拡張領域(バススロット)の空きとか、基本速度、最高速度、瞬時加速(イグニッションブースト)時の機動性と使用エネルギーの量とか、ワンオフの詳しい性能とか、まずは相棒のことを知ってあげなくちゃね〜」

「お、おぉ。のほほんさんからそんな意見が、しかもあんなにはっきりスラスラとでてくるなんて予想外だったけど、相棒のことをもっと知るってのはいいことだな、うん」

 

布仏からこんな意見が出るとは予想外だったとクラス中の女子が意外そうな顔をすると、む〜、ひどいな〜これでも整備科志望なんだよ、プンプンと、頬を膨らませて私怒ってますと主張する。まあ、普段の態度と雰囲気のせいで全く怖くはないのだが、一夏が意見を採用すると新人はキーボードを打ち始める。

 

「他には何かないかな?」

「なら、一夏さんが剣以外の武器を使えるかのスキルテストをしてはいかがでしょうか?

私と戦ったときは剣しか使っていませんでしたが、他の武器も使ってみて感覚を養うのは良いことだと思いますわ」

 

セシリアの意見を聞いた一夏は剣以外にも興味があることを見抜かれたのかと、少し驚いた。銃、特に新人が使ったアンチマテリアルなんてのはまさに男のロマンである。一夏が採用、と言うとすぐに新人がキーボードで打ちこむ。

 

「なら私たちは偵察班希望でーす」

「偵察班?」

「そうそう、他のクラスの子がアリーナで練習してるのを観察したり、お話ししながらそれとなーく聞いてみたり、そうまさしくスパイってやつですよ!」

「スパイだと他のクラスの中に自然と溶け込みながらの情報収集になるのでクラス替えをしなければならないと思うのですが」

「・・・」

 

新人のマジレスで撃墜されたクラスメイトの1人だが、偵察班自体のやることは至極まともなことなので是非やってほしい、ということになった。新人がキーボードで打ちこむと、一夏が他に意見はないかと伺う。これ以上は特にないようなのでここで会議は終了した。新人がまとめたものはクラス内のフォルダへと保存され、同時に次の作業として誰がどの仕事を担当するかを決めることになった。

セシリアと新人、シャルロットは当然実践練習班、箒も希望したことでこの4人に決まった。布仏率いる計測班は白式のスペックを最大限引き出すためにデータを集める役割だ。整備科希望や興味のあるメンバーで構成されている。最後に偵察班は人脈に強いメンバーや隠密ができるメンバー(?)で構成され、今日の放課後から早速始動するらしい。

 

移り変わって今日の放課後、新人が試合での感覚を忘れないために取っておいたアリーナで早速練習をすることになったのだが、まずは計測班が白式のスペックを調べるため他の3人でやりあってくれということになった。新人はカタログで見たシールドや他のショットガンやハンドガン、実体剣やレーザーライフルなど多種多様の武器を拡張領域に仕込み、今か今かと使う機会を無表情なまま楽しみに待っている。初戦はシャルロットが相手だ。左手に盾、右手にアサルトライフルを構える。シャルロットは両手をシールドで固め、言い方は悪いが新人のサンドバッグになるつもりのようだ。しかし、シャルロットはこれでも代表候補生なのだ。盾を構えればセシリアのときのように意表をついた攻撃をしようとそうそう防御の構えを崩すことはできない。新人は思う存分武器を取り回す。盾を構えながらの射撃や二丁拳銃、ナイフとハンドガンでのどこかの蛇を彷彿とさせるインファイト、徒手空拳による格闘攻撃や間接攻撃、終いにはセシリアが使っているものとは別タイプのレーザーライフルやアンチマテリアルを何度も撃ち放った。結果だけ言えば何度も盾を交換する羽目になったがシャルロットは自前の器用さと洞察力で新人の攻撃をほとんど防ぎきった。唯一通った攻撃は徒手空拳による攻撃のみだった。これは新人が実家にいた頃に習っていた格闘術のおかげと言える。だが、完全に防御に回った代表候補生に攻撃を当てられなかったことは少なからず新人に悔しさと尊敬の念を抱かせた。

 

「やっぱりシャルさんはすごい、一瞬の隙もなく攻撃を防がれてしまった。自分なんかとは比べ物にならない。ここまで完璧に防がれると自信がなくなりますね」

「ううん、新人もすごいよ。大体の武器を使ってたけどどの武器にもすぐに慣れちゃったよね。みんな得意不得意があるけど新人にはそれがなかった。どの武器も扱えるのは強みだと思うな」

「励ましてくれてありがとうございます。でも締めはアンチマテリアルにしたいのですが、そこに持ってくまでのコンビネーションがなかなか思いつきません」

「そこは無理にこだわらなくてもいいと思うんだけど…」

「いえ、とどめの一撃というのはロマンなんです。ここは譲れません」

「あはは…私にはわかんないや…」

 

無表情のままシャルロットを褒め称える新人にすぐさま励ましの言葉をかけるがどうやら悔しさではなく、どうやったらロマン砲で相手をぶち抜けるかを模索していて沈んでいたらしい。それでも悔しさをバネに次こそはもう少し被弾させて見せると、シャルロットに伝えるといつでも挑んできていいよと、返事をする。

さて、次はセシリアとの実戦だが、ここで白式の解析が終わった一夏がピットから降りてくる。一夏はいろいろとわかったことがあるから実戦で体感してみたい、と告げるとアリーナ内の空中にいくつものパネルが表示される。実体はないが的としてはちょうどよい。

一夏はおもむろに飛び立つと速度を切り替えながら自由気ままに機体を操っていく。ロールや急旋回、瞬時加速を使い、切りつけては次の的に向けて機体の向きを変え瞬時加速、ブースターを切り慣性に機体を委ねつつ落下しながら一刀を振り下ろし、着地する前に一瞬だけブースターを吹かし隙を減らす。最高速からの慣性制御で振り返りながら機体を止めて反転攻勢をかけれるようにしたり、零落白夜(ワンオフ)を刀身全体ではなく鋒から中腹まで、切っ先のみに発動できることを確かめたり、それぞれの消費量を確かめたりと、思いついた限りのことを体感し吸収していく。一度ピットに戻ってからエネルギーの補給をすませるとすぐさま飛び出して今度はセシリアと試合をする。零落白夜でレーザーを切り払ったり、試した機体制御を実戦でこなして見たりとしているうちに今日の利用時間が過ぎてしまったため本日は解散となった。

 



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チャイナリターン 〜訪問〜

みんなにお礼を言いながら笑顔で更衣室へ向かう一夏。とにかく楽しい時間を過ごせたと満足が顔に溢れ出ている。更衣室に入るといきなりタオルがふわりと一夏の元へ飛んでくる。そこには既に着替え終わった新人が居た。一夏がセシリアと試合を始めてから今日はもう使えないだろうと先にシャルロットとともに退散しておいたのである。

 

「悪いな新人、アリーナ借りたのは新人だったのにあのまま俺が使っちゃって」

「いえいえ、一夏くんは代表ですからきっちり練習して優勝してくださいね。明日は他のクラスの人が使うので僕たちは使えませんが、箒さんとの剣道の練習もありますし頑張ってください」

「ああ、みんなも頑張ってくれてるし負けるわけにはいかないよな。たとえどんな奴にだって」

 

着替えながら言葉を交わす2人だが一夏がシャワールームに入ると、先に帰ってご飯を食べてますと新人は言って去って行った。

 

 

 

新人は食事を済ませて自室に戻るとそこでは、更識が鼻歌を歌いながら弁当箱を洗っていた。新人はただいま戻りましたと言うと、あら、おかえりなさいと更識は返してくる。それと、お弁当美味しかったわと微笑みながら新人に顔を向ける。無表情のままそれは良かったと返す新人、シャワーは既に浴びているのであとは弁当箱を洗い、明日の献立を考える。折角だから一夏くんを驚かせるため鈴さんを誘うことを考える。久しぶりに鈴さんの料理を食べて見たいなぁ、と思っているところに来客を告げるチャイムが鳴る。

既に弁当箱を洗い終えていた更識が返事をしながら来客の対応へと向かう。

どちら様ですか〜、と言いながら更識はドアを開けるとそこにいるのは、新人の中の噂の彼女、鈴だった。

 

「はじめまして、中国の代表候補生(ふぁん) 鈴音(りんいん)よ。これからよろしくお願いするわね、生徒会長さん」

「あらあら、私もいよいわ有名人かしら。生徒会長を務めている更識(さらしき) 楯無(たてなし)よ。よろしくね(ふぁん)さん」

「そりゃあIS学園のホームページに生徒会執行部にでかでかと載っているもの」

「えっ、私ホームページに載ってるの!?」

「そうよ、知らなかったの?」

「そんな…私の謎の生徒会長(ミステリアスレディ)計画がこんなところで…およよよよよ…」

 

と、噂の人物が噂をしていた人物をスルーして自己紹介からの漫才を繰り広げているのを見ていた。泣き真似をして崩れて行ったが、なんだミステリアスレディ計画って。

 

「計画ご破綻残念だけど、私ここに新人が住んでるって聞いたから来たんだけど知らない?というか、まさか女性と同室なんて無いわよね?IS学園(ここ)の設備や警備は他と比べものにならないはずなんだけど」

「呼びましたか?鈴さん」

「……」

 

フリを振られちゃあ黙ってられない。弁当箱を洗い終えた新人が無表情でこちらへと来たのだ。鈴が散々否定した事実が目の前にあることへのショックが彼女を固まらせた。しかも美人(黙ってれば)との同棲である。が、ここで早とちりして殴ったりしてはいけないと学んでいる鈴は冷静に新人に尋ねる。

 

「ねぇ、新人。せ、生徒会長と変なこととかしてない、よね?」

 

ん〜、と少し考える新人だがちらりと更識の方を見ると、鈴からは見えない位置でどうかアレをバラすのだけは、と合掌した手でサインしていた。

 

「特に何もありませんでしたよ、優しい生徒会長ですのでIS初心者の僕に色々教えてくださってくれるので、感謝していますね」

「そう、ならいいんだけど」

「そういえば、ちょうどいいところに来てくれました。鈴さん今度みんなでお弁当を一緒に食べようと思っているんですがどうでしょうか?久しぶりに鈴さんの手料理を食べて見たいなぁ、と思ってたところなんですよ」

「へ、へぇ…いいじゃない、私も参加するわ、それでいつやるのよ?」

「明後日あたりにしようかと、それと一夏くんとはまだ会ってませんよね?」

「明後日ね分かったわ。それで一夏とはまだ会ってないけど、それがどうかしたの?」

「折角ですからサプライズで鈴さんに登場していただいて、そのままみんなに紹介しようと思ったんです」

「それってセシリアもいるのかしら?」

「ええ、もちろんですよ」

「そ、そう。まあいいわ、明後日ね!腕によりをかけて作ってあげるから覚悟しなさい!」

「はい、楽しみにしてますね」

「じゃあ、今日はここで帰らせてもらうわ。新人の部屋もわかったし、あっそうそう私の部屋は1209号室だから、いつでも遊びに来てもいいわよ」

「ええ時間が見つかりましたらお伺いしますね」

 

新人の部屋を確認しに来ただけだったはずなのに、思いにもよらない展開で、手料理食べたいや一緒に弁当を食べよう、私の部屋に遊びに来てもいいなどなどたくさんのイベントフラグを立たせた鈴は、じゃあね!と元気よく言って去って行った。鈴が帰ってもまだ、およよよよと泣きまねしながら崩れていた更識をチョップで起こし、弁当箱を小さいタイプの乾燥機に入れるとスイッチを入れる。そのあとは勉強をしつつ、今日使った武装のそれぞれの簡単な感想を書いてまとめるといつもより早い時間に就寝に着く新人だった。



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チャイナリターン 〜食事会〜

 

翌日はあっさりと過ぎて行った。偵察班が3組の練習を見ていたが3組には代表候補生やIS操縦に詳しいものがおらず四苦八苦しているそうだ。3組なら楽勝でしょといったムードになるも、意外とそういった人たちの方が強くなれると新人が言うと、油断なんかできないということを一回で理解してくれた。そう、新人がセシリアに自爆特攻を仕掛けたように相手が何をしてくるかなんてのは全くわからないのだ。油断して足元をすくわれないように気をつけなければならない。

一方一夏の方は箒と一対一の試合を何戦も続けていた。一夏も箒もお互いの一閃一閃を見て次の一手で何をしてくるかを注意深く観察する。だが、最後に箒の気合とともに放たれた小手は、一夏の連戦で疲れた集中と反射神経では間に合わず綺麗に叩かれてしまう。8戦3勝5敗、これが今日の一夏の戦績だ。零落白夜は相手のほんの一瞬の隙をつかなければならない。相手の呼吸、視線、指先への力の入れ方や、攻撃ができる範囲を把握しいかにリスクを減らして近づけるか、瞬時の判断と度胸を持って肉薄する。これが今の一夏のやり方である。兜を脱ぐと観戦していた1組の生徒が2人に飲み物やタオルを渡す。

休憩している2人に、失礼しますと聞き覚えのある声が耳に入る。

 

「お疲れ様です、一夏くん箒さん。前に話していたお弁当のお話は覚えていますか?」

「ああ、サンキュ。たしかいい場所見つけたからみんなで一緒に食べようって言ってたやつだろ」

「はい、明日のお昼にしようと思っていたのですが大丈夫でしょうか?」

「ああ、準備はしてあるから大丈夫だ。なっ箒」

「うむ、みんなで食事をするいい機会だ。そうだお前たちもどうだ?少し狭くなるかもしれんが数は多いほうがいいだろう?」

 

新人は道場に入るとこの前の約束の話を一夏に振る。用意は良いらしく箒とともに準備していたようだ。箒はタオルと飲み物を渡してくれた2人にも一緒にどうだ?、と尋ねるが2人は食堂で食べると、震え声で喋っていた。残念そうに箒はそうかと呟く。だが当の2人は弁当は面倒で食堂で済ませる派だった。が、それが災いして男子との交流イベントを見逃してしまう。先程の震え声は心の中の声が出ないよう自制した結果だった。

新人はしばらく2人と会話をすると道場から出て行った。残った2人は休憩をやめると練習を再開する。もう2人はこの情報をクラス中に回すとみんなが、ハンカチを噛み締めながら悔しがっている様子が悠々に想像できる文面で返信が来るのだった。そりゃそうだ、弁当なんてあらかじめ用意してなければ作れないのだから。

 

そんなこんなでそのまた翌日

 

そう、今日はみんなでお弁当を食べる日になった。

 

 

 

「風が気持ちいいね」

「いやー、新人は良くこんな場所見つけれたな」

「ええ、私ここが気に入りましたわ。時間があったらまたここで昼食を食べることにしましょう」

「うむ、悪くないな。私もここが気に入った」

「それは良かったです、シートを引きますので少し待っててくださいね」

 

各々が感想を短く言う。新人は少し離れたところでシートを広げる。そして、屋上からの風景にみんなの視線がいっている隙にスマホから、メッセージを送った。

 

すると、屋上の一つしかない入り口のドアが開く音でみんなの視線が集中する。そこから茶色のツインテールを携え、快活そうな身長が一般平均より明らかに低い女の子が屋上に足を踏み入れる。

 

「へぇー、新人が言う通り結構良いところじゃない。あっ、一夏だ。やっほ〜一夏、久しぶりね」

 

まあ、あえて引き延ばして登場したが隠す必要もない。鈴である。

 

「なっ、鈴?鈴なのか!?

なんでここに…ってもしかして中国からの代表候補生って鈴のことだったのか!」

「そーよ、と言うわけでまたよろしくね一夏!」

「いやぁ、びっくりしたぜ。ところで新人に何も言ってないけどいいのか?」

「ん?ああ、新人とは先に会っててね、このサプライズも新人がしようって言ったのよ」

 

驚く一夏に笑顔でピースする鈴。このサプライズは新人が考えたと伝えながら一夏たちの輪へと入っていく。

 

「そういうわけで、私の名前は(ふぁん) 鈴音(りんいん)よ。新人と一夏たちの幼馴染で中国の代表候補生をやらせてもらってるわ。みんなよろしくね」

 

全員に自己紹介をすると、一夏と新人以外も自己紹介で返した。

 

「鈴と言ったな。私は篠ノ之(しののの) (ほうき)という。い、一夏の幼馴染同士仲良くしようではないか」

「ふ〜ん、箒って言うのね。よろしく。

…それと一夏のこと頑張りなさいね」

「なっ!?なぜそれを」

「わかりやすいのよ、あんた。一夏の幼馴染のところだけ声大きいし、少し噛んじゃってる。あと表情で何となくね、まあ女の勘ってやつよ」

 

箒は、シャルロットに見破られた時と同じように少しニヤニヤした鈴に見破られたことに大きく驚く。そして、そんなに私はわかりやすいのかと、うなだれる。

 

「私はシャルロット・デュノア。シャルロットで良いよ、鈴」

「ええ、よろしくね、シャルロット」

「私も新人の幼馴染でね…その…ま、負けないからね!」

「あら、あんたがいつも新人が言ってた海外の幼馴染なのね、ふーん、可愛いじゃない」

「えっ、あ、うん…ありがとう…」

「…そういうことね、ええ、わかったわ。

よろしくねシャルロット、私も負けてなんかやらないわよ」

「う、うん。よろしくね鈴!」

 

シャルロットの宣言を軽く避け、返しの刃でシャルロットを可愛いと両断する。しかし、こいつは似た者(ライバル)なのだと理解すると、笑みを浮かべシャルロットに手を差し出すとそのまま握手した。

 

「2日ぶりですね鈴さん」

「せ、セシリアじゃない。ええ、2日ぶりね…

 

…誰にも話してないわよね」

「ええ、英国淑女としてオルコット家の名前に誓って」

「そ、そうならいいのよ、うん。

これからよろしくね」

「ええ、こちらこそよろしくお願いします」

 

セシリアとは特に何も無く、セシリアの懐の深さを再確認しただけで終わった。

 

 

 

さて、自己紹介も終わりいまから弁当をみんなでワイワイ食べるわけなのだが、作者の技量不足のようだ。適当な描写しか書かれていない。

 

 

一夏たちは和食系、鈴は酢豚をメインに米などを、シャルロットはデザートと普通食に別けてガレットを、新人は今回は冷凍食品を使わず、卵焼き(少し焦げている)やミニハンバーグ、マカロニサラダにコップ付きの水筒に野菜のコンソメスープと米という本人とっての自信作だ。セシリアは自分では作ったことがなく、流石に不味い料理を食べさせるわけにはいかないと今回は辞退。もっと上手くなってから皆さんと弁当を持って囲みたいとのことだった。

 

結果的に言えばどれも美味かった、である。久しぶりに酢豚を食べた新人と一夏は満足げな顔をしたし、新人のハンバーグは何六等分にして食べたが、不評が出ることはなく美味しくできていたようだ。一夏と箒の方は南瓜の甘煮や、サバの味噌煮を同じように六等分にしてみんなで食べる。シャルロットのジャガイモのガレットとデザート用のガレットは評判が良く、新人に美味しいです、今度作り方を教えてもらえませんかと聞かれ、照れながらうん、と頷くのだった。さりげなく胃袋を掴むことを断念する鈴は、やっぱり手強いわねと改めて思うのだった。

 



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チャイナリターン 〜ブリーフィング〜

 

それから毎日がトントン拍子で進んでいった。朝練、弁当、朝食、予習、授業、昼休み、授業、放課後、特訓、夕食、復習、睡眠のサイクルを繰り返すとあっという間にクラス対抗大会の当日へ針は進んでいった。その間に一夏の動きの改善、出来る範囲での白式徹底調査、他クラスの情報収集など各々の動きにも成果は見られていった。今日はその披露宴となる。

 

場所は変わってアリーナ西側ピット。そこには我らが一組の面々が揃っていた。

 

「織斑くん、試合前のブリーフィングをするよ。体調とか大丈夫?」

「ああ、問題ない。いつでも行けるぜ」

「オッケー、なら確認して行くよ。偵察班の子たちからだけど前にも言った通り、四組以外の代表は未経験者だね。けど今から戦う二組の子は最近転校して来た中国の代表候補生、(ふぁん) 鈴音(りんいん)さんが直接指導しているみたい。それと前に一組だけやったクラス代表決定戦で勝手に来てた他クラスの子から情報が漏れてるらしいわ。一夏くんの攻撃は絶対に受けちゃいけないって、警戒されてるみたいね。鈴音さんが対近接の戦闘訓練をさせてるのを何回も見てるから間違い無いと思う。

だから今回はいかにして相手の隙をつく、または防御を崩すかで勝敗が決まるって言っていいと思う。新人くんと戦った時みたいに葵と雪片弐型(ゆきひらにがた)で一騎討ちとはいかないと考えた方がいいわ。逆にセシリアさんみたいに引き撃ちを多用してくると考えた方がいいね。奇策で自爆だけどまぁ命知らずの馬鹿(新人)みたいなことをする人はほとんどいながら除いても大丈夫だと思うけど、気をつけるに越したことはないわ。

私たちからはこんなところかな。どうだった?」

 

一組のメンバーたちが集めた情報を元に相手の戦闘スタイル、思考、作戦を相手の立場から考えた結果をここで全て吐き出す。情報とは力だ、偉い人の言う通りこの戦いにおいて相手の情報は千両の価値に値する。

クラスメイトからの情報を一夏が頭に叩き込んでいる間に、新人はこの前使った仮想型ディスプレイを利用して今の情報を簡潔にまとめたものを白式へと送信する。

 

「ああ、すごい助かった。正直俺一人じゃ何もできなかったと思う。みんなの頑張った成果が俺を勝たせてくれるんだ。負ける気がしない」

 

笑顔でみんなにお礼を言う一夏。これで負けたら男の恥だと、自分を戒めつつ白式に意識を集中させる。ゆっくりと一体感に包まれながら白式を展開していく。

迷いを消し、戦装束を纏った武士は発射装置(カタパルト)に機体を預ける。

 

「織斑くん、頑張ってね」「応援席から見てるからねー」「おりむーならだいじょーぶだよ〜」

 

各々の声援を受け取ると、彼女たちはピットから出て観客席へと向かって行った。残るは訓練班の四人だけ。

 

「一夏さん、練習と相棒(白式)はあなたを裏切りません、頑張ってください」

「うむ、私としては少し言いたいこともあるが全力で勝ちに行くのは当たり前だからな。相手に失礼のないよう戦ってくるといい。頑張れ、一夏」

「一夏なら負けないよ、だから落ち着いていこうね。焦った時が一番危ないから。あと新人みたいな無茶はしないでね?」

「最後は僕ですか。

う〜ん、そうですね。一夏くん、気楽にいきましょう。せっかくの大会ですし剣道の時みたくお互いを称えあえる試合にして来てください。勝つ負けるは人の判断を鈍らせますから、楽しみながらがいいと思いますね」

 

セシリア、箒、シャルロットそして新人からの声援を受け取る。楽しむ…か、久しぶりに聞いたこの台詞は誰かからの受け売りらしいが、確かに緊張をワクワクに変え楽しもうというのは少し不謹慎と言えるかもしれない。みんなの期待を背負っていると考えると勝たなきゃと思ってしまう。だが義務感より楽しんで行くと言うのは悪くない、中学の時もそうだったと、一夏は中学の剣道大会を思い出す。

決勝前にかけられた言葉は楽しんでこいだった。なんでも新人の師匠は頑張れと言う言葉が嫌いらしい。理由は頑張れという命令に聞こえてしまい、心の何処かに義務感を持って戦うことになるからとか、勝たなきゃいけないという重圧に押しつぶされて焦ったり本来なら出きることでも凡ミスしてしまう、そんな風になる人が世の中に入るし、師匠もそうだったらしい。だから頑張れではなく楽しんでこいなんだそうな。

 

最後の緊張もほぐれ、一夏は振り返ると笑顔で答えた

 

「ああ、楽しんでくる!」

 

 

一夏を見送った四人は各々が自分の行く場所、へと別れて行った。

 

 

 




投稿再開をしてすぐに感想をくださった皆様、ありがとうございます。ありがたい話ですが今の作者は感想(エサ)を与えると喜び(にやけたり)自分を戒める気持ちで板挟み(甘えちゃいけないでもビクンビクン)になってしまうので程々にお願いします

この駄作をお読みいただき本当にありがとうございます


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チャイナリターン 〜弾幕と奇策〜

 

宙に浮かぶ二つの機体、一方は白を基調に金と青のアクセントをあしらった美しい機体、白式

もう一方は緑色と鋼色を半々に交えた無骨だがスラっとしたスリムな印象を思わせる機体、ラファール・リヴァイブ

それぞれの搭乗者は相対し、言葉を交わす。

 

「一年一組代表、織斑一夏、全力で戦わせてもらう。お互い手加減はなしだ」

「一年二組代表、ティナ・ハミルトン、アメリカから留学してきたわ。みんなの期待を裏切りたくないし、鈴にたくさん特訓してもらったんだから、織斑くんだろうと負けたくない」

 

黒と金、日本とアメリカ、明確な違いがあれど戦う彼らは一人の人間だ。誇りと熱意を持って互いに(銃口)を向ける。その意思は絶対に曲がらない。勝ちたいと願う。無欲な馬鹿になんてなれない。闘争本能をむき出しにして、今

 

戦いの火蓋が切って落とされた(試合開始のブザーが鳴った)

 

 

白式は初っ端からブースターを吹かせ全力で突撃をするが、ラファールは右手に物理盾を即時展開し一撃を防ぐ。しかし衝撃を殺すような技術はなく一刀の下大きく吹き飛ばされる。

PIC(パッシブ・イナー・キャンセラー)を利用して姿勢制御をしながら片手でC-50Ranzell(50発弾倉のアサルトライフル)の弾倉を空にするまで撃ち放つ。白式はハイパーセンサーで制圧射撃に対し刀身の腹で必要なものだけを捌きできるだけダメージを減らしてラファールへと再度突撃をする。

アサルトライフルを放り捨て垂直二連式のショットガンを拡張領域(バススロット)から取り出し、スラグ弾をほぼ正確に同じ位置へと放つ。白式はなおも刀身の腹で捌こうとするがほぼ同時に叩きつけられる衝撃に、一発目に耐えれても二発目に耐えれず体制が崩れ仰け反ってしまう。

ラファールはそこからさらに距離を取ると両手の武器を拡張領域へしまい、また両手に新たな武器を展開する。AA-16(対空16連装ハンドミサイルランチャー)を両手に展開し隙だらけになった白式めがけ照準を絞る。白式はロックオンアラートを一夏に大音量でかき鳴らし全力で警告する。

ロックオン完了のサインとともに引き金を引き計32発のミサイルが白式めがけて一同に飛来する。白式はブースターを全開で吹かして一度空へと逃げミサイルを引きつける。ラファールはその隙にSR-98フルメタル(スナイパーライフル)を展開して両手で抱えハイパーセンサーを頼りに固定砲台となる。

白式は引きつけたミサイルが全て背中に回ったことをハイパーセンサーで理解すると、今度は一気に急降下しミサイルもその後を追いかける。そして手に持っていた剣を放り捨てる。そして新たに拡張領域から武装を展開する。だがしかし白式には格納できるものなぞ限られている、白式とほぼ同じカラーリングで構成され、本来白式はこれしか持てないとされている武装、雪片Mk-2。それを左腰へ納刀しラファールへ瞬時加速(イグニッションブースト)で一直線に突撃する。

ラファールは突撃までに一発もカスることなく弾倉が尽きたSR-98フルメタルをまたも放り捨てる。いつのまにかフィールド(戦場)の地上部分には投げ捨てられた銃や剣やらが転がっているがそんなこと御構い無しに次の武装を展開しようとする、が瞬時加速の速度は先程までより断然違い、予想より早くこちらへと到達することを理解すると回避を選択する。

急降下してくる白式が居合い斬りを放つ直前にブースターを全力で吹かし半歩分、音を破る斬撃をなんとか回避した。

白式はラファールが回避して停止したことをハイパーセンサーで感知する。そして左から右へと降り抜かれた反動を利用し、さらに左側だけに出力を割いてブースターを瞬時加速の要領で一瞬だけ吹かせ、体の向きを180°反転させる。そして瞬時加速で距離が離れたミサイルに向けて、空いている左手で腰のスカートアーマーから括り付けたハンドガンを取り出して撃ち抜いた。

ミサイルはちょうどラファールの近くに位置していた。先頭か最尾にあった物か、それとも中間ほどに位置していたのか、どれかもわからない一つに弾丸は破裂した。

 

32のミサイルが誘爆し多大な爆発と閃光、轟音で会場を二重の意味で震わせる。ラファールは爆心地から外れてはいたものの、爆風を大きく受け壁に叩きつけられるまで吹き飛ばされていた。白式は慣性をPICでなんとか制御しようとするが抑えきれず速度を落とせぬまま地上へと叩きつけられた。

瞬時加速や今まで受けた弾丸の分に加え先程の地面に叩きつけられたことでSE(シールドエネルギー)は既に200を切っていた。叩きつけられた衝撃は鈍い痛みとなって全身にまわるがそれを何とか抑えて立ち上がる。これで骨が折れてないのだからISの絶対防御とら末恐ろしい。

ラファールは叩きつけられた壁を陥没させハマっており、そこから動く様子がない。気絶したのかもしれないが試合終了の合図はまだなってはいないのだ。トドメを刺すために白式はゆっくりとラファールへと近付こうとしたその時だった。

 

 

一筋の光が(フィールドバリアの天井)を割った



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チャイナリターン 〜黒点の乱入者〜

3日間の連続投稿です。大晦日まで続きます


 

零落(れいらく) 白夜(びゃくや)ぁ!」

 

一夏が反応できたのは偶然だった。ただあのとき(モンドグロッソ)から危機に対して勘が鋭くなったのは実感していた。感謝したくはないがこの時だけは感謝しよう、そう思わされる一夏がいた。

でなければ死んでいた(・・・・・)。飛来した閃光を火花を散らし、吸収しきれない衝撃によって地面を陥没させながら何とか零落白夜でエネルギーを消滅させ切った。絶対防御を貫通し、帯びた熱で雪片は軽く赤熱し、一夏は表情が痛みで目が細くなり歯を噛みしめる。それでも何とか自然に冷えるまで耐えることができた。

 

空に浮かぶのはISなのだろうか、顔が見えないバイザーに人間が乗ってるとは思えないほど細いウエスト部分、真っ黒に染め上げられた機体は陽の光を吸収し、まるで黒点のような言い知れぬ威圧感と雰囲気を醸し出している。乱入者はこいつだ、無粋な輩はあいつだ。殺そうとしてきたのは奴だ。

一夏は直感的に理解していた。あのビームは絶対防御を破り人を殺せる(・・・・・)と。このISは俺たちを殺しにきたんだと、そう一夏は思ってしまった。

 

 

 

移り変わって会場内 観客席

 

生徒たちはあの黒点のような機体がしたことを理解していた。特に上級生はこの異常事態を何とか受け止めようと努めた。フィールドバリアにはISに搭載されているSEによる絶対防御をさらに強化し、それこそ核でも通さない強度を誇ることを理解していた。故に、この悲劇的な光景は信じていた安心感と絶対という自負のようなものをミンチになるまで砕ききった。一年生たちは乱入者の方に意識が向いておりバリアが破られたことを気に留めてない様子だ。そのとき、

 

『緊急事態発生!観客席にいる生徒は速やかに避難してください!』

 

異常を知らせる声が二度繰り返された。しかし逃げ出そうとする生徒は物理的な壁に阻まれる。

 

「どうして!?どうしてドアが開いてないのよ!」

 

会場と出口をつなぐいくつものゲートは口を結ぶかのように固く閉ざされている。怒りのあまりに握りこぶしを叩きつけるも旧世代の壊れたテレビのように叩いて直るはずもなく、会場は悲鳴が伝播して行くだけだった。

 

 

「織斑先生、聞こえてますか?シャルロット・デュノアです!」

『なんだ、避難命令は出した。貴様もすぐに逃げろ』

『ダメです、織斑先生!出入り口の障壁が閉まっていて誰一人出ることができません!』

『くっ、ハッキングか!だが……もしやあいつか!』

「先生迷っている暇はありません。今すぐに専用機持ちにISの使用許可を!私たちが避難誘導と障壁を強制的こじ開けます」

 

 

悲鳴止まぬ会場で談判の声を上げる。理解しているからこそさらに怖いのだ。銃口を向けられた瞬間、死んでしまう。そんな恐怖に争うように声を強くして言う。シャルロット(専用機持ち)は代表候補生なのだ。国の代表でここへと来ている以上、体裁上は落ち着いて行動して見せねばならない。故に

 

「はやく、決断を!」

 

 

『専用機持ち各員に告ぐ、出入り口周辺の安全を確保し速やかに障壁を破壊、避難誘導をしてください!』

 

一夏、はやく助けに行かなきゃ!

 

ここで友人になった少年に何かが起こる前に、そして

 

新人、お願いだから何もしないでね

 

思い人へ意識を割きつつ、シャルロット(代表候補生)は声を張り上げた。

 

 

 

「一夏!先生今すぐに一夏を!」

「黙れ、ハッキングが解除できない以上援軍は送れん。あいつに任せるしかない」

「ピットは開いていませんの?」

「そっちもダメだ、すでに閉まりかけている。逃すことも助けることもできん…私たちの失態だ」

 

司令室では観戦していた箒とセシリア、教職員数名と山田、千冬のメンバーが揃っている。箒の泣き言をねじ伏せるがセシリアの提案にも頷くこともできず、表情を暗くする。

千冬は焦っている、教師としてもそうだが姉として心配な気持ちを押し殺さないといけない。いますがにだって障壁を切り裂いてあの侵入者を一刀両断したいと、怒りが心のうちに燻っている。だが、今の彼女は教師だ。生徒以上に冷静沈着にせねばならない。

 

故にこの声には藁にもすがる思いだった。

 

『中国代表候補生、鳳 鈴音、甲龍(シェンロン)出るわ!」

 

 

 

襲撃直後、ゆっくりと下がる障壁に嫌な予感がした鈴音はその小さい体を閉まりきる前に滑り込ませ、フィールドへと体を晒す。破られたバリアからゆっくりと降りてくる漆黒の機体は、生気を感じさせない無機質さを露わにしている。

ここには一夏もティナもいる、逃げるなんて鼻っからありえない、だから声を上げるのだ。

 

「中国代表候補生、鳳 鈴音、甲龍(シェンロン)出るわ!」

 

「鈴、なんでここに」

「そんなことはどうでもいいわ!はやくティナを連れて逃げなさい!」

「でも!」

「はやく! 私の大事な友達を殺させたいの!?」

 

迫真の声は一夏に深く届いた。この友達の中にはティナに一夏も加えられてるのだろうと理解したからだ。だから

 

「だったら鈴だって置いていけねぇ!」

「ふざけないで!ボロボロで怪我だってしてるあんたに何ができるのよ!」

「うるさい!そんなことわかってるよ!だけど男だぞ、こんなピンチに逃げれなんかしない!」

「あんたってほんとバカ!信じられない、絶交よ絶交!」

「ああいいぜ、あいつを倒すまで鈴なんか絶交だ!」

 

バカが二人死の危機にある最中、隙だらけの姿勢を晒すが天に佇む漆黒はフィールドに入ってから動いていない。まるで石像のようだ。そんな違和感に気がつくと、二人は漆黒を睨みつける。

 

「あいつ動かないわね、独り言だけど」

「よくわかんねぇけど、作戦でも立てるか?独り言だけど」

「どうして動かないのかを考えればいいのよ、これも独り言だけど」

「自分が危険じゃないから攻撃してこないんじゃないのか、これは独り言だけど」

「攻撃したら反撃してくるってことね、ナメ腐ってるわね」

「だったら俺の零落白夜で仕留めてやるさ」

「エネルギーのないやつの独り言が聞こえてくるわね」

「胸のないやつの独り言が聞こえてくるな」

「あぁ?」

「チャンスは一回だ、それで決める」

「わかってるわ、私が引くからあんたが仕留めなさい」

「いいぜ」

「ティナが危ないからすぐにケリをつける、そんであんたのケツも蹴りつける。

 

いくわよ!」

 

外で二人の少年少女が決意を固めた時

暗い暗い部屋の中、一人の少年は自分の無力さに心の中で悔し涙を零していた。



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チャイナリターン 〜一撃必殺〜

 

漆黒は乱入者である甲龍に対して砲身を定める。とっさに回避行動をとりつつ鈴音は両肩の上に浮遊している一対のユニット、龍砲を牽制目的で撃ち返す。放たれた光は一直線に鈴音のいた位置を焼き尽くし消しとばす。しかし鈴音の龍砲も同じように苦しくも命中することはなく動揺もさせ得ぬ無駄玉となった。

龍砲とはPICを空間に対しての作用させ龍砲の向く方向正面上下左右360°の半円状を射程とし、空気を圧縮させそれに指向性を与え放つ空気の弾丸だ。空気ゆえに射線弾丸は視認できず、音速を超える速さで対象に向かって放たれる。セシリアのスターライトMk IIIのように機体のSEを直接使い放つのではなく、空気中の機体に働きかけるだけなので実質SEでPICを操れるだけ弾丸を生成射出することができるのだ。

だがそれを初見で避けられた、視認不可の魔弾を明確に避けたことを鈴音は確認している。つまり漆黒の機体は目視できないものを認識できているということだ。

 

「鈴!今のってなんだ」

「面倒だから簡略するわよ、正面360°に空気弾を放つどこぞの猫型ロボットの上位互換よ」

「残弾数は?」

「SE分だけ、正直当たらなきゃいいこの場ならほぼ無限よ」

「射出間隔は?」

「一発ごとに1秒、左右の交互打ちでカバー入れれば0.5秒毎。聞くってことは何かあるの?」

「今から考える、観客席側に砲身を向けさせないようあいつの目を俺たちで引き続けながら」

「なら頼んだわよ、私が囮になる。こっちが動かないともしかしたら観客席が狙われるかもしれないし、それとダメは無しよ。あんたの機体ブースター地面に叩きつけられて故障してんだから」

「…すまん、頼む」

「任されたわ」

 

作戦を立てる時間、漆黒は動かず二機をじぃっと見つめる。余裕か慢心か、だが隙であることに変わりはない。鈴は離れた一夏にから離れた位置より龍砲を放ちながら漆黒へと近づく、離れるを繰り返す。愚直に狙われる鈴音はなんとか回避をするが一撃必殺の恐怖、自分の死を隣に感じながら回避を続ける。ふと、ティナは一夏と戦っている時同じことを考えていたのかもしれない。そう思うとさらに回避に意識を割く鈴音。まだこんなところで死ぬつもりはないのだ。ティナも学園のみんなも誰も死なせない。代表候補生として、IS(兵器)を扱うものとして、プライドで恐怖をねじ伏せる。一夏には見せないようにしたが手が震えてメイン武器(近接武器)は使用できないだろう。一人の女の子としては怖くてたまらないのに、でも怖くないと心を鼓舞するために叫ぶ、

 

「一夏ぁ!まだなの!?」

「OK、いけるぞ」

 

 

一夏は意識のないティナの元へ行くと、少し強引だがめり込んだ壁面からラファールとともに救助する。記憶の中からシャルロットと新人の会話を思い出す。

 

『シャルさん、ラファールについているこの装備なんでしょうか?』

『ん?えっとこれはね、SEを送受するためのバイパスケーブルでね、腰部に左右のケーブルが付いててこれが両方とも送受用になってるんだ。これを他機体のバススロットからコアに直接繋ぐことで、ケーブル付近にあるタッチパネルから送信を押せば相手側に受信を選べば相手側からSEを送り受けできるんだ。ただ効率はかなり悪いからそんなに大体4分の1位まで転送中に漏れて無くなっちゃうんだ。今本社で父さんたちが効率のいいやつを開発しようと頑張ってるけどなかなかうまくいかないんだ』

 

記憶の通りに腰部からケーブルとタッチパネルを見つける、これをバススロットから直接コアに繋いで送信を押す。

1分ほどで行程完了の文字が出るウィンドウディスプレイに出るとすぐさま一夏はSEの残り残量を確認する。

 

256

 

なんとラファールはさほどの消耗はしておらず100以上のSEが白式へと送り込まれた。ガス欠ギリギリなので動けないだろう。

 

「一夏ぁ!まだなの!?」

「OK、いけるぞ」

 

1分の奇策をここで披露しよう。

 

 

 

 

「鈴そのまま引きつけてくれ!俺も行く」

「わかったわ、しくじって死ぬんじゃないわよ!」

「上等!ここで終わるようじゃ誰かを守るなんて夢のまた夢だ、必ず成功させる!」

 

ブースターを常に全力で吹かす。これでようやく普段の7割だ。これでどうにか奴を倒す。決心した一夏は鈴音とは反対方向に機体を旋回させお互いがぶつからない位置どりをする。

漆黒はズレて機動する二機に照準を合わせようとするが細かく速度を変える甲龍と白式がその狙いを外させる。そのため両機を狙うのではなく、先程から鬱陶しく動き回る甲龍へと砲身と機体を傾けた。

 

チャンスは一度きり

 

敵の背中を見逃すほど甘い剣士ではない、だから

 

瞬時加速をする

 

ブースターが初速を吐き出した瞬間に爆発四散した

 

零落白夜の出力を最大限に稼働させる

 

狙いは

 

「外さねぇ!!」

 

 

左下からの居合斬りは漆黒の下半身と右腕を見事切り裂き分断、爆散した。

 

下半身(・・・)だけ

 

生きているPICで機体を旋回させ、左砲身で速度を失いエネルギーを枯渇させた白式を捉える。すでにエネルギーの充填は始まっており1秒もしないで放たれるだろう。

ブースターの爆発によって軌道がずれたのだろう、一夏は振り返ることもできず失敗したと心の中で吐き捨てる。1秒が全然進まない、時が止まった中で全身の毛穴から焦りが汗となって吹き出す。

 

(すまん、鈴。ミスっちまった。後はたのーー)

 

 

 

 

次に響くのは空気を焼き切り裂く光の射出音ではなく

 

 

聴き慣れてしまった実弾の乾いた音、そして装甲を引き裂いて爆散する音だった

 

 

「止まってるやつに…外すほど…ノーコンじゃぁ ないのよぉ…」

 

静かに横たわっていたラファールは三角座りの姿勢で、最後の絞りかすのエネルギーによって呼び出されたスナイパーライフルと弾倉を使い、ほぼ静止していた漆黒の左砲身をおぼろげな意識の中撃ち抜いた。

 



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チャイナリターン 〜アフタータイム〜

 

事後処理の話をしよう。

アリーナは今回の襲撃による修理や、バリアの強度見直しを検討されることとなりしばらく各アリーナを一時閉鎖することとなった。また、ハッキングされたことに対する対応不足や以後ハッキングされないようにコンピュータセキュリティの見直しもされている。上への始末書に苦労しそうな話だが、事の次第によっては死人が出かねない大事件ゆえどの部署も躍起になって作業をしている。今回のことをもみ消すために上層部も動かざるおえないからお互い様なのだろう。

 

生徒の方では一部PTSDにかかる生徒もいた。傾向が高いのは特に一年のIS主義者の生徒だ。絶対だと思うがためにその絶対を破壊された衝撃は凄まじかったようだ。他にバリアを破壊されたことで改めてISは兵器なんだと認識し、ISに触れれなくなった生徒もいた。宇宙服も高性能になれば兵器になるとは皮肉なものだ。

 

 

 

 

保健室は窓から夕暮れの赤を取り入れ白いカーテンやベッドがオレンジ色に灼けている。運び込まれた3人の生徒は今日、影の功労者となったものたちだ。

一夏は白式の待機状態である腕輪のある右手を上に向けてかざす。自分は守ることができたのか、みんなを守れたのだろうかと自問自答を繰り返す。怪我をした人はいないが心が傷ついた人はたくさんいた。それを守ったと言い張ることはできないとそう思う。対戦相手であったティナが最後の一撃を決めなければきっと死んでいた。

まだ弱い、人を守るなんてできっこない、自分はまだまだ(・・・・)だ。聞き覚えのある言葉を自分の中で想起し、ふと思う。もしかしたら千冬姉はこれを言いたかったのかもしれない。自分すら守れないからこれ(白式)が与えられたんだ。まだ弱いから守るために送られたんだ。まずは自分が強くならなくちゃいけない、それで強くなったら、今度はお前(白式)と一緒に……

白と青を基調とした腕輪を見やる視線は、疲れからか思考の途中で意識と共にゆっくりなくなっていった。そのまま眠りについた一夏を起こしてくれる者は一人もいない。

鈴音は見ていた。一夏が寝るまでカーテンの端からそっと。新人と共に。

 

「ようやく寝たみたいね」

「ええ、そのようです。骨にヒビが入ってるし疲れているはずなのに千冬さんの手伝いもしてましたから」

「色々終わって一安心、とは言えないわね。外部からこの学校を襲ってくるやつがいるってわかったんだから」

「皆さん大変そうにしてました、ところでティナさんは?」

「初の実戦と自分が撃ったミサイルが自分に向けて牙を向いたんだからかなり疲れてるわね。そこのベッドでもうぐっすり寝てるわ」

 

鈴音ご指差す場所は一夏とは別にカーテンで閉じられているベッドであり、最後の一撃を放ったティナ・ハミルトンが息を引き取ったかのように横たわっている。

 

「僕は何もできませんでした」

「当たり前よ、新人は専用機持ちじゃない。あくまで男ってだけの一般生徒よ」

「一夏くんにはああ言ってしまいましたが、何もできない無力感は辛いものです。僕も専用機が欲しいと思ってしまう」

「専用機持ちになってもいいことなんてほとんどないわよ。めんどくさいことに呼び出されるし、下手したら死ぬわ」

「でも…」

「今は守られてればいいんじゃない?

それでいつかは新人が今日の一夏みたいに誰かを守ってあげればいいのよ」

「くるでしょうか」

「くるわ」

 

 

無念を叫ぶ声は、穏やかな優しさに包まれてゆっくりとその炎を小さくしていった。

 

 

 

だが無念を叫ぶ声は決して一つではない

 

「もしもし、ーーーー」

 

IS学園の敷地内で一本の電話が繋がった




これにてチャイナリターン 編は終了です。
では皆様良いお年を


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転生 ようやく二巻のお話
近況報告 〜ゲームを添えて〜


 

「いやー元気そうでよかったぜ、女子に囲まれてストレス溜まってねえか心配だったんだぜ?」

「絶対思ってないだろ、てかそっちはどうなんだっ、よっと」

「ん?ああ、すべり出しは好調よ。クラスの面子もいい奴らばっかだし、女子もかわい子ちゃん揃いでウハウハだぜぇ!」

「そりゃあよかった、なっ!」

 

 

「器用ですね二人とも、喋りながらゲームしてます」

「そりゃあ結構やりこんでたやつの新作だしな、二人とも体が覚えてんだろーよ。そいや新人の方はどうなんだ。困ってることとかあったりしないか?男同士でしか話せない悩みもあるだろ?」

「いえ、知り合いも学園にいましたし、友達もできて僕は特に問題ないです。優しい変な先輩が勉強も教えてくれてますし」

「なに!?それは聞き捨てならんぞ新人!」

「ふつうにISのことを教えてもらってるだけですが?」

「いや、年上の先輩からだぞ!しかもIS学園はお前ら以外女性はいないんだ!羨ましいに決まってるだろ!」

「おっ、隙あり」

「あ、アァァァァァ!」

 

「よそ見すっからそうなんだよ、弾」

「織斑くんも強くなりましたからね」

「くぅ〜、ちくしょう!次、数馬な!」

「へいへい、久しぶりにやるとはいえ負ける気はねぇぞ、一夏!」

「こい!12連勝の記録、今日こそ塗り替えてやるよぉ!」

 

ここはIS学園の外、一夏と新人が久しぶりに友人に会いたいということで外出申請をしたことで今、弾の家に遊びに来ている。親に元気にしてることを伝えに行かないかと聞かれたら、新人の両親は出張で国外、一夏も家は軽く様子を見て来たから問題ないとなっている。新人の祖父母は家で元気にしてるが、老いぼれより友達と遊ぶことを大事にしなさいと逆に追い出されてしまった。ここには一夏、新人、弾、数馬の四人が揃っており久しぶりにゲームで遊ぶことになったのだ。受験以来ゆえ衰えたかと思いきや本物のISを扱っているゆえか前より実力が上がっているようだ。だが、

 

「あれ、くそっうまくうごかねぇ」

「そこぉ!」

「あっ、くっそー!」

「へへん、まだまだだね」

「うーん、いつもならあそこでうまくいくんだけどなぁ」

「そこはゲームと現実の差異じゃねぇの?感覚が違うのはアタボーよ」

 

ちなみにこいつらが遊んでるのはとある日本の変態企業が作ったゲームソフト、Infinite(インフィニット)Core(コア)Nexus(ネクサス)という3Dロボットアクションゲームだ。チーム主任、というスタジオが作っており、パーツ数は正規非正規(フィクション)合わせて約980種類、現実とは違い部位ごとに違う機体のパーツ、例えばラファールの機体に打鉄のフレームパーツを組み込むこともできる。例えば他国の専用機同士を組み合わせたような夢のような機体も作れる。例えば専用機専用の武装を他の専用機で使うこともできる。そんな非現実的(夢のような)な作品であるからこそ世界中から批判(賞賛)の声が殺到した。意外なことに男女関係なく売れ、すでに次回作の作成に取り掛かっているらしい。

 

そんなことより、一夏は新人とプレイヤーを交代したわけだが様子を見てみよう。

 

「………」

「よっ、ほっ」

「………」

「ほい、カウンター」

「………」

「こいつでとどめっと、ふぅ…」

 

「なぁ、弾」

「ああ、一夏」

「「「相変わらずゲームが下手だな、新人は」」」

「むぐぅ」

「しかもゲーム始めると黙っちまうし」

「集中してるのは知ってるしいつも通りだけどな」

「まぁ、気にしたら負けだな」

「どうもゲームだけは相性が悪いみたいです。いつまでたってもうまくなれる気がしません」

「なんでなんだろうなぁ」

「まぁ、気にしたら負けだな」

「そうですね、気にしたら負けですね」

「それでいいのか?」

「「気にしたら負けだ(ですね)」

「かぶらんでいい」

 

 

「おーい、バカ兄貴。お昼できたよー」

 

流れを断ち切ってこの部屋を訪れたのは弾の妹、蘭であった。

 

「って、一夏さんたちじゃない!なんで来てることを教えてくれなかったのよ!」

「ん、いや伝えなくてもいいかなって」

「もー、どうしてくれるのよ。こんな格好見せたくなかったのに…ごめんね一夏さん新人さん。ちょっと失礼します」

「あれ、俺は?」

「うるさい、バカ二号!」

「うわ、ひでぇ」

 

少し乱れた格好の蘭は一夏たちが来てるのを見ると服装を整えに自分の部屋へ戻っていった。昼を伝えに来た彼女のいう通りに昼ご飯を食べに四人で下の買いに行くことにするとゲームの電源を切り移動をする。

昼ご飯のメニューは白米とかぼちゃ煮と野菜と肉の炒め物、弾の家は定食屋を開いており昔から時々だがここでみんなで飯を食いに来ていた。なつかしい思い出の味に雑談が弾む。箸も止まらなくなっていくのだ。

 

「それにしても、お前ら彼女はできたのか?」

「むぶっ、ゴホッゴホ、おま、いきなり何聞いてくんだよ」

「いやぁ、さっきも聞いたけどお前ら以外女の子しかいないんだ。誰なり彼なり寄って来たりするもんだろ。それがハニトラであれ男性操縦者が目当てであれ」

「なんで悪い方向ばっかなんだよ。てかいねぇよそんなやつ」

「仲の良い友達はいても、恋愛感情まではいきませんね」

「ふーんそんなもんか」

「ていうか、だったらお前らはどうなんだよ」

「俺か?俺はまだ普通に過ごしてるぜ。なんてったって学園系ラブコメってのは先輩後輩がいて成り立つからな。今は先輩とも同級生とも仲良くしてるだけだよ」

「ラブコメってところは否定するが右に同じく。今は高校生活を楽しむことにするよ」

「二人とも成績はーー」

「「その話はするなぁ!」」

「うるせぇぞ、ボンクラども。静かに飯は食えんのか!」

 

弾の家族に怒られてしまい飯を掻き込んで今日はおひらきとなった。だが、思いの外皆元気だったことを確認できたのは十分な成果だったのかもしれない。




あけましておめでとうございます。
今年の四月までにこの作品を完結させるのが今年の抱負です


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たった一人の戦友 〜誕生〜

「貴官にはこれよりIS学園に向かってもらう、それに当たって専用機の貸与と一時階級の剥奪、軍からの仮退役とする。任務頑張ってくれたまえ」

「はっ、了解致しました」

「君を利用するような真似をすることに心が痛む、本当にすまない」

「そんな、頭をお上げください。上官がそんな簡単に頭をおさげになっては」

「お前たちには本来もっと然るべきモノを与えなければならない、然るべき時間を与えなければならないのだ。人として過ごす時間を」

「いえ、貴方のおかげで私たちは人として生きております」

「だが、その眼は…」

「これは私が受け入れたものです。気に病むようなものではありません」

「そう、か…ならこの言葉を送ろう、楽しんで来なさい。一人の少女として人の道を歩んで来なさい。私にできるのはここまでだ」

「ありがたく受け賜ります。彼女たちの分まで私が人になってきます」

「ああ、それでいい。では、下がれ」

 

暗い暗い部屋の中二人の影が話し合う。一人は少女のもう一人は老齢の男だろう。話し方はまるで、いや軍人なのだろう。かしこまった喋り方、それとは裏腹に心配そうに優しげに話す声はまるで娘と祖父の会話を彷彿させる。だが最後に厳格な声を放つと二人は別れ、少女は部屋から退出する。

 

「頼むぞ、少年。彼女を救ってやってくれ」

 

 

「隊長」

「もう私は隊長ではないよ」

「ですが…」

「お前が今日から隊長だ、前からそう伝えてあっただろう。私は…」

「これから一般人です、よね」

「ああ、戻ってくるかもわからん。

もともと産まれなかった私たちだ。人であらざれと作られた私たちだが、どうやら愛されてしまったようだ。人であれと言われてしまったよ」

「あの方ですか」

「ああ、あの人は私たちを孫とでも思ってるんじゃないか?」

「それにしては多すぎでは」

「たしかにな、ハハハハハ」

 

「お気をつけて」

「ああ、後のことは任せた。皆を頼む」

 

 

空港にたどりつくと荷物の点検をあらかじめ済ませて職員に預ける。向かう先のラウンジで時間を潰すようだ、コーヒーを片手に椅子に座って物思いに耽っていた。

 

(全てが変わったのはあの日(モンドグロッソ)からだ。あの人の弟を助け、軍に功績が認められてから、あの人が教官として私たちに技術を教え始めてから、全部あいつに出会ってから変わったことだ。この出来損ない(なりそこない)に唯一の友となってくれたあいつがいなかったらどうなっていたのだろうか。私は成長したのだろうか。実感がないからかよくわからない。だが、あいつに会えるのは久しぶりだ。なんて声かければいいのだろう。久しぶりだな、いや、また会えて嬉しいよ、違う、やはりあれで呼ぶのが一番か、もう呼ぶ機会は巡ってこないものだと思っていたのだが、どうやら運命といのは案外私に優しいのかもしれない。違うな、人となったわたしへの最初で最後の餞別なのだろう。だが、今回ばかりは感謝すべきか)

 

『12:37発、日本、新羽田空港行きに搭乗されるお客様は第12番搭乗口へお越しください。繰り返しますーーー』

 

どうやら搭乗する飛行機に乗れるようになったようだ。冷めてしまったコーヒーを飲み干して、カップをゴミ箱に捨てるとラウンジから退出し搭乗ゲートを通過して機体に乗り込む。

 

「さらば、忌まわしくも愛おしき祖国よ」

 

そう呟いてほとんど人が乗っていない座席から指定の席に腰を下ろす。備え付けの雑誌を手に取り、ここにはいないあいつへと思いを馳せる。

 

(IS学園で待っているといい。再会の時は近いぞ、震えて待っているがいい、

 

我が戦友よ!)

 

 

 




(しかしなぜクラリッサのやつはこんな風に考えるのが日本のツウと言ったのだろうか、日本の文化はよくわからん。というかツウとはなんなんだ?)


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