バカと冬木市と召喚戦争 (亜莉守)
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人物紹介

簡易人物紹介は撤去させていただきました。


【主人公】

 

衛宮 明久(旧姓:吉井 明久)

他称:便利屋

筋力:C 耐久:C 敏捷:B 魔力:A 幸運:A++

 

十年前、冬木で起こった人災に巻き込まれた少年 色々あって衛宮家に引き取られている

実の両親も(実は)健在だが魔術関係で色々とごたついていたため、そのまま衛宮家の息子として迎え入れられている。衛宮家の常識人、基本ボケ集団の衛宮家(含むアーチャー)にツッコミを入れるのは彼の担当だったりする

特技はクレー射撃や弓道といった「的に当てること」お祭りの射的屋では根こそぎ持っていくブッラクリストの上位者、魔術師としての才能はかなり高いが本人はそこまで興味がない、とはいえ魔術関係にはよく巻き込まれる 趣味は家事とガラクタ弄りに魔術研究、それから意外にも読書

勉強は嫌いではないが積極的にする気もない。普段ならDかC程度が限度、補習は嫌いなので一応真面目には受けている。鉄人には多少目を付けられているがそこまでではない

運が基本的に良い、ただしその幸運に甘えないだけの気丈さを持ち合わせている。

 

 

言峰 明乃(旧姓:吉井 明乃)

他称:問題児

筋力:B+ 耐久:EX 敏捷:A 魔力:D 幸運:-

 

十年前に起こった人災に巻き込まれた少女 色々あって言峰家に引き取られた

実は明久の双子の姉 魔術関係で色々とごたついているせいで言峰家の次女として迎え入れられた。言峰の意向で髪を伸ばしている。言峰家の中では比較的善人で外道行為に走ろうとする義理の父と居候には手厳しい。一応丁寧な態度をしているがキレるとドロップキックが飛んでくる。

特技は投擲、物を投げればほぼ100%の確率で命中もしくはシュートが決まる。黒鍵を投げれば急所に命中させることが可能。代行者になる気はほぼ無いが義理の父に色々と教わっている。あと八極拳も、ついでに言うなら浄化系の魔術が得意。趣味は体を動かすこととトラップ製作

勉強は特に苦手でもないし好きでもない。普段ならBの下あたりが限度、補習は別に嫌ではないが体を動かす時間が減るからということで真面目に受けている。教師からの評価は真っ二つに割れている

Fクラス代表となることになった坂本悠里とは中学時代からの馴染みだったりする

無駄に悪運が強い、基本的に運が無い。でもそれにへこたれない強さを持っている

 

 

【サーヴァント】

 

アーチャー

真名:エミヤシロウ

筋力:? 耐久:? 敏捷:? 魔力:? 幸運:A 宝具:?

 

第五次聖杯戦争にアーチャークラスで呼ばれたサーヴァント、マスターは明久

アーチャークラスを冠しながらも基本的戦闘は投影した剣による白兵戦、今回の聖杯戦争ではまず戦闘になること自体が薄いが一応説明

普段は一人暮らししている明久の家で家事を担当している。その味は一級品それなりに自信のあった明久の料理を軽々と超えた。明久の当面の目標は打倒アーチャー

趣味はガラクタ弄り、最近は明久が拾ったものの流石に修理できないなぁと放置した代物を弄るのが最近の平日の過ごし方

明久にツッコミを入れるのは彼の担当であるが彼も結構なボケ体質、摩耗は多分どこかへ置き去りにしてきた

 

 

ランサー

真名:??・????

筋力:B 耐久:A+ 敏捷:A- 魔力:C 幸運:- 宝具:?

 

第五次聖杯戦争にランサークラスで呼ばれたサーヴァント、マスターは明乃

青い装束に赤い槍を持ったサーヴァント、真名はまだ不明

今回は監査役代行にしてとある令呪の臨時保管者であった明乃に偶然呼び出された

聖杯に掛ける願いは特になし。強い人物と戦うことを望んでの参戦である

明乃に呼び出されて幸運が消えた。とは言え明乃との相性は割といいみたいで今のところ悪運が発動もしないで平穏に過ごせている

服のセンスに関しては何故かアロハを着てることもあり、明乃にセンスなしとみなされている。最近は明乃が選んだ服ばかり着させられている

 

 

【Fクラス】

 

坂本 悠里(ゆうり) [元キャラ:坂本雄二]

他称:文武平等

筋力:B+ 耐久:C 敏捷:B 魔力:E 幸運:C

明乃の親友であり、相棒 長い赤毛で前髪をカチューシャで上げている

明乃とは中学時代からの馴染みであり、彼女にとって明乃は恩人だったりする

幼馴染である霧島翔子とは昔に色々あって疎遠となったままになっている

教師の生徒への態度を見てこれはおかしいのではないだろうかと考えFクラスによる下剋上を画策した

 

 

土屋 神海(こうみ) [元キャラ:土屋康太]

他称:寡黙なる情報屋

筋力:C 耐久:D 敏捷:A 魔力:E 幸運:A

明乃の友人で諜報担当、ムッツリ―二をそのまま女の子にした感じ髪型はツインテ、三人娘の中では実は一番スタイルがいい

趣味は人間観察と人体研究 保体の天才でその他の科目はそこまで重要視していない

盗撮屋はやっていないが代わりに情報屋として動いている。そこまで目立っていないはずだが、噂が一人歩きをしている

 

 

木下 秀吉

他称:第三の性別『秀吉』

筋力:D 耐久:B 敏捷:C 魔力:E 幸運:A

明久と仲がいい。演劇馬鹿で演劇にかける情熱は人一倍ある

本人としてはこの他称は不本意なので取り消しを願いたいところ

「そんなんじゃいつまでたっても男に見られないよ」という明久の一言とアーチャーの男前さを見たのがきっかけで髪をオールバックにしてみた。そこまで効果は無かった。現在はどうやったら男らしくなれるか悩んでいる

 

 

島田 (みなみ) [元キャラ:島田美波]

他称:―――(特になし)

筋力:B 耐久:C 敏捷:B 魔力:E 幸運:B

明久と仲がいい。明乃のことが好き、恋に生きる一途な少年……なのだが持ち前のツンデレと照れで大体誤解されまくっている

スポーツ系男子で実はモテる。本人としては明乃一直線なので気にしていない

 

 

比奈丘 彩夏(さやか) [転生オリキャラ] CV:ゆかな

他称:―――(特になし)

筋力:A 耐久:A 敏捷:A 魔力:S 幸運:E

明乃と仲がいい。クール系女子、基本的に面倒ごとに関与することは無い

黒髪を姫カットにした青い目の美少女、ただし目は眠たげに半目になっている

身体能力は異常なほどに高いが運が無く面倒ごとへの巻き込まれ率は異常

実は別世界からの転生者

とあるドラゴンに襲撃された東京で世界を救うためにドラゴンと戦っていた

世界を救った後、事情があって人類戦士と戦って辛くも勝利を収めた後その時の怪我が原因で死亡、転生した。職業は「サイキック」と「サムライ」適正的にはサイキックの方が上

 

 

日向(ひなた) 海人(かいと) [ベース:岸波白野(男)]

他称:転校生

筋力:C 耐久:B 敏捷:B 魔力:A 幸運:B

今年度より学園に入ってきた交換入学生、正確には転校生ではないのだがこの呼び方が定着している

髪色はこげ茶で目はハニーブラウン、服装は大体学ランもしくは学園の制服、文月学園の男子制服のあの見た目は性に合わなかったらしい

最近現れた最新の魔術師(ウィザード)の一人で、多くのウィザードが通う月海原学園(つくうみはらがくえん)の生徒会庶務、召喚獣のシステムを学ぶために生徒会長によって強制的に転入させられたのは一部の人間しか知らない

基本的にぼおっとしていることの方が多い、何をやるにも他人任せ、なのに知らない間に巻き込まれているのがデフォ、自分で動くことがあったとしたらそれはきっと大切な人の危機である

 

 

日暮(ひぐらし) 広夢(ひろむ) [ベース:EXTRAに登場する親友]

他称:転入生の親友

筋力:B 耐久:B 敏捷:A 魔力:B 幸運:D

今年度より学園に入ってきた交換入学制その二、基本的に海人と一緒におり、海人を親友と呼ぶことからこのあだ名が定着した

髪色は黒でベリーショート、服装は基本的には月海原学園の男子制服か青いジャージ、こんな恰好ながら実は女性、理由は転生した際にアバター姿で転生したため

最近現れたウィザードの一人で、海人と同じく月海原学園の生徒会庶務、こちらも生徒会長に強制的に転入させられた

一人で行動するよりは二人で行動することを好むが、「自由」を束縛されるのが大嫌いさしずめ『自由厨』とでも言おうか

特技はゲリラ戦法、多分明乃とは気が合う

 

 

 

夢路 恵理 [転生オリキャラ]

他称:―――(特になし)

筋力:E 耐久:D 敏捷:E 魔力:E 幸運:A

Aクラスに入れるほどの実力を持つ少女、なのにFクラスへとやってきた

男に媚びるような性格で打算的

観測世界からの転生者、この世界を現実と思っていない節がある

 

 

【教員】

 

西村 宗香(そうか) [元キャラ:西村宗一]

他称:鉄人

筋力:A 耐久:A 敏捷:A 魔力:E 幸運:D

文月学園の生活指導教員、女性にあるまじき身体能力を持っている。そのせいで鉄人というあだ名がついてしまった

容姿は日焼けか何かで浅黒い肌で黒い髪をポニーテールに纏めている。身長はかなり高い、それから筋肉質、無駄な肉がない。スレンダーな美女

 

 

【衛宮家】

 

衛宮切嗣

他称:―――

筋力:D(C) 耐久:C(C) 敏捷:B(A) 魔力:B(A) 幸運:B(D)

衛宮家大黒柱、現在は衛宮邸で穏やかに過ごしている

その昔には「魔術師殺し」という名前で世間に有名だった。第四次聖杯戦争にアインツベルンのマスターとして参戦している。ステータスの()書きは当時の身体能力

聖杯に不備が見つかり、結局のところ夢は叶わなかった

セイバーと出会いがしらに夕日を背景にするような殴り合い(セイバー談)をやったらしい、そのおかげでサーヴァントの中は割と良好

四次終了後に起こったとある人災の際に大怪我を負って以降全盛期の力が出せなくなっている。ただし、外道は健在、割と素直に物事飲み込む長男が時々外道なのは彼のせい

天敵は言峰綺礼、出会えば逃げ出す。追って来れば全力投球で逃げる。そんな関係

 

 

セイバー

真名:アルトリア・ペンドラゴン

筋力:B 耐久:A 敏捷:A 魔力:A 幸運:D 宝具:A++

第四次聖杯戦争に呼ばれたセイバークラスのサーヴァント、マスターは切嗣

呼ばれた当初に夕日を背景にするような殴り合い(セイバー談)を繰り広げたとのこと

そのおかげでかマスターとの仲は良好である

最終的には聖杯戦争では聖杯を手にすることなどなかったが、色んな意味で区切りを着けた。多分、この現界が終わったら正規英霊化するかも

ちなみに彼女は第五次聖杯戦争のセイバーではない。一時的にパスを偽造して五次聖杯戦争のセイバーであるかのように見せかけただけの偽物である。したがってマスターは切嗣のまま

 

 

衛宮 士郎

他称:穂郡原のブラウニー、ばかスパナ

筋力:C 耐久:B 敏捷:B 魔力:C 幸運:D

衛宮家次男、アイリと切嗣の義理の息子でイリヤと明久の義弟

十年ほど前に起こったとある人災で明久と切嗣に救われた過去を持つ

現在高校二年生、頼まれごとを何でも引き受けてしまうお人よしな性格のせいというかおかげというかでブラウニーの称号を持っている。現在弓道部所属、慎二とも少々諍いが生じたがそれでもやめることなく所属している。弓の腕なら部活一、本人的には明久には勝てていないのでまだまだとのこと

衛宮家の家事担当で明久不在時のストッパー、明久がいると家族に混ざって暴走するので注意。アーチャー共々明久から「女誑し」と言われて若干凹んでいるそれから割とブラコン 優先順位は兄>家族>>>知り合い>>(壁)>>他人となっている。サバイバーズギルドどこに行った

第五次聖杯戦争、セイバーのマスター(仮)令呪持ちなだけだけど

 

 

アイリスフィール・フォン・アインツベルン

他称:―――

筋力:E 耐久:D 敏捷:C(A+) 魔力:A+ 幸運:C

切嗣の妻でイリヤの実の母で明久と士郎の義理の母

性格は温厚で天然、それから何事においても聡明な女性である

第四次聖杯戦争においてアインツベルンの偽マスターとして参戦、まあ結果は切嗣のところで述べたとおり汚染の影響で停戦になった

母は強しをその身で体現する人、多分家庭内ヒエラギーの頂点に君臨している。本人は全く自覚してないだろうけど

後、飯マズは健在。アイリさんはキッチンに立たせるなと義理の二人の息子と夫が暗黙の了解にしている

ちなみに敏捷のところに()が付いているのは彼女が車を運転した場合のことを言う

 

 

イリヤスフィール・フォン・アインツベルン

他称:ジェノサイド姉(明久の心の中でのみ)

筋力:C 耐久:C 敏捷:D 魔力:A+++ 幸運:A

切嗣とアイリの実の娘で明久と士郎の義理の姉

性格は自由奔放で外見年齢相応、ただし姉としてふるまうときには聡明で冷静

第五次聖杯戦争のバーサーカーのマスター、彼を完璧に使いこなしているのは実力

四次の頃には留守番をしていたのだが、父親が電撃帰宅、そのまま資料とともに冬木へやってきた

 

 

久宇 舞弥

他称:―――

筋力:B 耐久:B 敏捷:B 魔力:C 幸運:E+

切嗣の元愛人兼部下、現在ではケーキショップの店長をしている

四次聖杯戦争に切嗣の協力者として参戦、停戦の折に切嗣に「何か叶えてほしいことあるかい」と聞かれ「子どもに会いたい」と答えた。その後、切嗣が伝手とか色々と使い込んで子どもを見つけてきた。しばらくは衛宮邸で暮らしていたがその後自立、ケーキ屋の店長をやっている。彼女のケーキは美味しいと評判、おかげで楽しみにスイーツ探索が出来なくなってきて凹んでいる

明久とは甘党仲間、家族というよりは友人関係である

 

 

ナタリア・カミンスキー

他称:魔術師殺し

筋力:B 耐久:A 敏捷:B 魔力:B 幸運:C

切嗣の師匠

とある魔蜂使いを仕留め損ねて、ジャンボジェットの乗客がほぼすべて死徒化し、その被害を考えた切嗣によってジャンボジェットごと吹き飛ばされたはずだったのだが何故か生きてた。四次聖杯戦争が終了した後にふらりと現れて切嗣をぶん殴って説教した(色々と思うところがあったらしい)

なぜ生きてたのかの問いに関しては「正義の主人公に出くわした」としか教えてくれない

たぶん主な原因はどこぞの姉御だと思われる

 

 




まだ増える予定


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除幕
第一幕


後720時間






 

それはある冬の日のことだった。特に意味は無いけれども弟が割とよく使っている実家の蔵の掃除をしていた。理由としては弟がかなり散らかしまくったのが原因なんだけれども、弟にしてみればどうでもいいらしく蔵の中は割と雑然としていた。ある程度掃除が終わった頃、僕は一つの古い本のようなものを見つけた。

 

「なにこれ」

 

紙が破れないように慎重に開いてみた。よく見てみれば何か文字のようなものが書かれている。日本語だし読めるとは思うけど無駄に達筆だなぁ。

 

「えっと、素に銀と鉄。礎に石と契約の大公?」

 

つっかえつっかえながらもとりあえず読んでみた。厨二な文章だなこれ

 

「抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ……なにこれ?」

 

最後の行を呟いた途端に蔵の屋根にものすごい衝撃音が走った。まるで何かが落下してきたようなそんな音だ。

 

「えっ、何事?!」

 

慌てて外へと出てみれば白い髪に赤い外套を纏った20代くらいの男がうつぶせになって倒れていた。

 

「え、ちょ なんでさ」

 

その倒れていた彼を揺すってみるけど、なにも反応がない。とりあえず、家まで引きずることにした。でもさ、今の家かなり遠いんだけど

 

                     ☆

 

暖かな、穏やかな夢を見た。家族の声がした気がした。懐かしい声がした気がした。俺は……俺は……

 

「……ん?」

 

気が付けば知らない天井、ここは何処だ?

朝の陽ざしが差し込む部屋の中、俺はベットに寝かされていた。少し鈍った頭がはっきりとしだす。そうだ、私は聖杯戦争の場に呼ばれたのではなかったか?

 

「すぅ……すぅ……」

 

部屋を探してみればソファで丸くなって眠っている一人の少年を見つけた。毛布も何も掛けていない。とりあえずベットにかかっていた薄手の毛布を掛けてみる。ここは何処で彼は何者なのか、それを確認したくてしょうがなかったが眠っているのを起こすのは流石に無粋だろう。

 

「さて、どうしたものか」

 

                      ☆

 

随分と美味しそうな匂いにつられて目が覚めた。そういえば今日は……

 

「うわぁぁぁ、学校ぅぅぅ」

 

ガバリと起き上ってから慌てて自分の制服に着替える。壁にかけた時計を見ればもうすでに遅刻ギリギリの時間、今日はもうしょうがない、朝ごはん抜きで行かないと。

 

「おはよう、ようやく起きたのだね」

「おはよう。士郎、今日の弁当は?」

「?! いや、ここにあるが」

 

差し出された弁当を持って鞄を背負って走り出す。

 

「さんきゅー、いってきまぁぁぁす」

 

全力投球でつっぱしって、チャイムが鳴り響く前に校門を通り過ぎてから違和感に気が付いた。

 

「あれ? 何で士郎がウチに居るの?」

 

高校が別になったから僕一人暮らししてるのに

 

「明久、おはようなのじゃ」

「あ、秀吉おはよう」

 

親友である木下秀吉と玄関で会って、話し始めたときにはもうその違和感は消え失せていたものの、お昼休みになって唐突に思い出す羽目になった。友人たちと屋上に上り、弁当を食べる。

 

「…………負けた」

 

思わず崩れ落ちそうな気分になる。何この美味しさ、常日頃から家事やってる身としては本気で何でって言いたくなるくらいに美味しいんだけど。

 

「?! 何事じゃ」

「アキヒサ? どうした」

 

もう一人の親友島田(みなみ)が僕を心配そうに覗きこんだ。

 

「うん、料理に関しては一応自信があったんだけどさ。負けた」

「そんなにおいしいの?」

 

そう言った南が一口食べて目を見開く。

 

「何だよこの美味しさ」

「でしょ、ここまで美味しく作れるとか普通じゃないよね」

 

そういえば弁当渡してきたあの弟はなんだったのか、疑問がそこに集約されたのだった。

その日の夕方、念のために弟に電話を入れてみた。数回のコールの後に弟が電話に出た。

 

「あ、士郎? 今大丈夫?」

『ん、気にしないけどどうかしたのか?』

 

よかった。いつもの通りみたいだ。

 

「今日さ、僕の家来た?」

『いいや、あ そうだ。蔵掃除してくれたのか?』

「んー、やったよ」

『そっか、ところで蔵の屋根の一部が剥がれおちてんだけど心当たりある?』

 

それ、確実に拾ってきたあの人のせいだよね。あ、そうだった。人拾ったんだった。

 

「い、いや、無いけど」

『……そうか、とりあえずじーさんと二人で直すか』

「頑張ってね」

『おーう』

 

うん、とりあえずあの謎の弁当は拾った人ってことでいいか。あ

 

「今日セールの日じゃん」

 

まずいまずい、間に合わなかったら今週の食費がヤバいことになる。

 

「あれ、アキヒサ?」

 

校門のところで電話をかけていたので先に分かれたはずの南とまた会ってしまった。

 

「あ、南」

「どうかしたの?」

 

駆け出す寸前だった僕を見て驚いた表情をする。まあ、そうなるよね。

 

「今日セールの日というわけで急ぐね!!」

 

走り出すと南も並走してきた。

 

「あ、俺も行く。お母さんに頼まれたから」

「おk」

 



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第二幕

後703時間


 

重大な戦争(タイムセール)を無事に勝ち抜いた僕は戦利品をスーパーの袋に入れて家へと帰ってきた。

 

「ただいまー」

「ようやく帰ってきたか」

「んー、とりあえず今日の料理当番は僕だったから……って、あ」

 

つい弟が遊びに来ているような感じで喋ってからおかしいことに気が付いて前を見れば、白髪に焼けた肌、服装は黒のインナーとズボンに赤い外套の拾った人がいた。僕がぽかんとしてしばらくして彼の方から尋ねてきた。

 

「どうかしたのかね?」

「いや、目 覚めたんですね」

 

いやー、よかった。どういう経緯かなんて知らないけど蔵の屋根に激突して地面に叩きつけられていたみたいだから目を覚まさないかと思ったよ。

 

「いや、いきなり何を言い出すんだね。私の正体を看破しておいて」

「?」

 

僕が首を傾げれば彼が驚くようなことを言った。

 

「だから私がエミヤシロ……」

「え、士郎なの?! え、魔術かなんか使ったの? でも、士郎の魔術は投影だけだし外見が変わるような品じゃないし、投影焼けくらいなら考えられるけどそれなったら元には戻らないし、昨日は普通だったよね?」

「…………」

 

墓穴を掘ったと言わんばかりの顔をした彼を見て何かあるなって思った。

 

「……とりあえず説明を求めます。はぐらかさないでね」

「ああ」

 

                    ☆

 

「ふーん、つまり貴方は士郎の未来の可能性の一つってことですか?」

「ああ、そう考えてくれるとありがたい」

 

まるでゲームのような話だと思った。たくさんある選択肢で未来が変わる、まるでマルチエンディング形式のゲームだ。僕も一緒に分岐点に立たされている気分なんだけど。

 

「で、自分のような未来になってほしくないから殺すと」

「ああ」

「それ、矛盾してません? 貴方が士郎を殺したとしたら貴方の存在は消えてしまう。なのに士郎は貴方に殺されている。おかしいですよね?」

 

何時か家族と一緒に見た映画を思い出した。一人の青年がタイムマシンを開発した科学者と一緒に過去へ行ってしまう話、青年の母が本当なら父親に惚れているはずなのに、なぜか青年に惚れてしまい過去が変わってしまうという科学者と青年の会話のシーンがあったはず。

 

「…………確かにそうかもしれない。しかし」

「でももしかしもないよ。あんた馬鹿じゃないの? 殺す以外にだって選択肢はあるはずだ。士郎がここで死んだらどうなる。遠い将来に士郎に救われる人たちが救われなくなるかもしれない。僕はだからと言って世界の抑止力になれなんて士郎に言うつもりはないよ。『正義の味方』に憧れて何が悪い………ごめん、自分勝手な意見だったね。うーん、とりあえず殺すって考えるのは止めようよ。多分さシロウは疲れてるんだよ。少しくらい休んだって誰も文句は言わないよ? しばらくのんびりしたら? そうすれば答えが見つかる……かもしれないじゃん」

 

そこまで言ってから僕はちょっと後悔した。士郎は『正義の味方』なんて真面目に目指していないって勝手に思い込んでいたけどそれは間違いだったのかもしれない。

 

「………マスター」

 

目から鱗が落ちたかのような顔をして、士郎の未来の可能性だと名乗る彼は僕を見た。

 

「え? マスターって何?」

 

別に何か契約するようなことしたっけ?

 

「む、知らないのか?」

「えっと、別に使い魔召喚したわけないんだよね。しかも英雄と………英雄? ……英霊、聖杯戦争、サーヴァント、マスターえっと………?」

 

じーさんこと養父である衛宮切嗣や養母のアイリさん、サーヴァントであるセイバーなどの話が頭の中でぐるぐると回る。えっと、何だっけ………?

 

「そこまで単語を知っているなら大丈夫だと思うがね」

「あー、思い出した。あれか、街中で夜にやる傍迷惑戦争」

 

そうだよ これだ。九年前に行われたって言う冬木市を舞台に聖杯という名の願望機の奪い合い。結局その願望機は重大な欠陥が発見されて聖杯戦争は停戦となった……だったはず。

 

「私としてはその解釈に驚いたのだが」

「そんなものでしょ。大体さ、魔術の秘匿とか根源とか面倒だし。自分の研究が出来ればそれでよし、お上の目に留まらない程度に頑張りますか これがポリシーだから、それに僕はただの魔術師だし」

 

魔術師ってどうして人間を人間とも思わないような行動がとれるのか不思議でならないよ。大体魔術にそこまで興味ないし。

 

「そこまで割り切る魔術師も珍しいと思うがね」

「まー、生家は緩い家系だったし。引き取り先はむしろ魔術には触れさせてくれなかったしね。『普通』の価値観はあるつもりだよ? むしろがっちがちの魔術師が理解できないね」

 

彼に笑いかければ彼も苦笑した。彼も魔術師に苦労させられた身なのだろうか?

 

「まあ、凛の奴に言うと怒られるけど」

「ん? 遠坂凛を知っているのか」

「幼馴染だよ。どっちかっていうと弟か姉さんの方が仲いいけど」

「そうなのか」

 

一応『士郎』なんだし凛のことも記憶にあるんだろうなぁ。ま、とりあえず

 

「今日の夕飯作らないとね」

「その程度であれば私がするが?」

 

お昼の弁当で負けてるので意地でも作りたいんだけど

 

「今日は僕が作るよ。あ、そうだ 何て呼べばいい?」

 

流石にシロウって呼ぶわけにもいかないだろうし。

 

「ああ、忘れていたな。私はアーチャーのクラスだ」

「了解、じゃあ聖杯戦争が終わるまでよろしくね。アーチャー」

 



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第三幕



後528時間


 

 

今日も今日とて学校なので出かけることとしよう。

 

「おはよう、アーチャー」

 

朝、目が覚めると美味しそうな匂いが漂っていた。制服に着替えてキッチンに居るアーチャーに声をかける。

 

「おはようマスター、朝食の用意は済んでいるぞ」

「ありがと、弁当は?」

 

弁当用意する時間が必要ないってすごく楽なんだよね。

 

「そこに用意済みだ」

「さんきゅ」

 

青いバンダナに包まれた弁当箱を鞄に入れる。これが最近の僕の日常になりつつあった。令呪に関しては既に手から別の場所に移しておいた、じーさんの話聞くと令呪って腕切られた場合には相手に渡る危険があるからね。

 

「いってきまーす」

「ああ、行ってくるがいい」

 

                    ☆

 

昼休み、今日も屋上で昼ご飯となった。

弁当箱を開けてアーチャーの料理に舌鼓をうっていると秀吉が弁当箱を覗き込んで言った。

 

「それにしても、毎日うまそうなものを食べておるのう」

「まあね、毎日食べたときの敗北感半端ないけど」

 

このレベルは絶対に無理な気がする。

 

「美味しいことはいいことじゃないのか?」

「…………料理しない人間にはわからないよ」

 

そんな話をしていると屋上の扉が開いて華やかな声がした。

 

「今日は屋上で食べよう!」

「……明乃、はしゃぎ過ぎ」

「ちょっとは落ち着きなさい」

 

ブラウンのロングヘアに琥珀色の目のスレンダーな女の子と赤い長髪をオールバックにした赤い目の女の子と濃い青の短い髪をツインテにした鴉色の目の女の子の三人だ。ブラウンの髪の女の子と目が合う。

 

「「あ」」

 

とある事情で別の家に引き取られた僕の姉、旧姓吉井明乃、新姓言峰明乃だ。学校ではあんまり鉢合わせしたことがないんだよね。それから学校一番の問題児であり、学園の事件解決人(トラブルシューター)だ。教師からの評判は真っ二つに分かれている。

 

「あら、木下に島田じゃない。どうしてここに?」

「………偶然」

 

姉さんの親友である坂本悠里(ゆうり)さんと土屋神海(こうみ)さんだ。姉さんとはよくワンセットで数えられている。

 

「そうじゃのう、お主らはよく教室で食べておるではないか」

「大体そうだよな」

 

教室でわいわいと食べてるイメージが確かに高い。まあ、今はそれどころじゃないんだけど

 

「姉さん、大丈夫? 顔色かなり悪いけど」

 

目元にクマできてるし、目も若干死んでる。ここ最近忙しいのかな?

 

「だ、大丈夫だよ?」

「いや、ぜっっっったい大丈夫じゃないよね?!」

 

姉さんは嘘が凄く下手だ。いや、嘘つこうと思えばつけるんだろうけど ああ、嘘ついてるなぁってすぐわかる。

 

「……だ」

「?」

 

ボソリと姉さんが何か言った気がした。

 

「もういやだぁぁぁぁ」

「?!」

 

いきなり大声出した?!

 

「何で三食ほぼ麻婆なんだよ! ぼくに仕事押し付けてくるのさ!! いい加減にしろよバカ親父ぃぃぃぃぃぃぃ」

 

姉さんの魂からの叫びはドップラー効果のように空の彼方へ消えて行った。

 

「魂からの慟哭ね。そこまで苦労してたの?」

 

坂本さんはドン引きしてる。

 

「三食麻婆って………」

 

南もうわぁって感じでこちらを見ていた。

 

「………栄養バランス的にも悪い」

 

土屋さんが冷静にツッコミを入れた。

 

「大丈夫かの?」

 

秀吉も心配になったらしくこっちを見てきた。麻婆ってことはあの激辛だよなぁ。多分、あ それよりも。

 

「てか、神父さん またなの?!」

「うぅ、ここ最近はさらに忙しいとかで色々丸投げしてくる。もう嫌だ。アキの家行く」

 

ぎゅううううと姉さんが僕を抱きしめる。ここまで来てるってことはかなりだよね。

 

「あー、はいはい 別に僕はか………」

 

ふとアーチャーの存在を思い出した。やばいやばいやばい、バレたら色々とヤバいよ。

 

「ん?」

「いや、じーさんに相談しよう? じーさんは役に立つか不明だけど、他のメンバーに話が回ればどうにかなるだろうし」

 

じーさんの天敵は神父さんだからなぁ。

 

「さりげなく酷いのう」

「衛宮さん可哀そうに………」

 

僕のじーさんの扱いは傍から見たら酷いものらしい、でもさ神父さん見ただけで怯えまくるじーさん見たら会わせない方が賢明って感じがするよ。

そんなわけで、急きょ実家に帰ることになった。

 





※多分、ドップラー効果ではなくやまびことかの方が正しい


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第四幕


後511時間


 

放課後、姉さんと一緒に実家へ向かう前に携帯電話でアーチャーに連絡を入れる。マスターとサーヴァントなら念話って言うのもできるらしいけど妨害されたり察知されたら敵わないから僕のお古の携帯電話で手を打ってもらった。

 

「あ、シロウちょっといい?」

 

誰かに聞かれてたらまずいので一応弟に電話を掛けるふりをしてみた。

 

『その名前で呼ぶなと……どうかしたかね。マスター』

「あー、今日野暮用で帰れないんだよ。家のことよろしく、それから実家の方来たら明日の夕飯麻婆豆腐にするから」

『………了解した。実家にはいかないことにしよう』

 

言葉の裏にあった単語を全部読み取ってくれたらしくすんなりと交渉は終了した。

 

                   ☆

 

姉さんと合流してから実家へと向かった。そこにはあかいあくまや後輩などの弟目当ての女の子がいっぱいいた。まあ、いつも通りの光景って言えばそうだけど。

 

「え、またなの?」

 

あかいあくまこと遠坂凛が姉さんの愚痴を聞いて一番にそう言った。ま、これもいつもの光景だし。

 

「うん、最近だとさー。君のお父さんまで丸投げしてくるんだけど、現代日本に貴族なんてものは無いんだけどなー」

「本当にごめんなさい」

 

姉さんが口を尖らせていえば、凛はすぐに謝った。さて、凛のお父さん今回はどんな目に遭うのやら。その光景を見ていたじーさんが姉さんに笑いかける。

 

「明乃ちゃんしばらくウチに泊まるかい?」

「本当ですか衛宮さん! ありがとうございます!!」

 

じーさんに姉さんが抱き着く、こっちも見てて心温まる光景だけどここに口をはさむのが一人、

 

「ちょっと、アキノ 何キリツグに抱き着いてるのよ」

「まあ、いいじゃない」

 

義理の姉であるイリヤスフィール・フォン・アインツベルンと義理の母であるアイリスフィール・フォン・アインツベルンだ。イリア姉は現在ちょっと複雑な時期……まあ、俗に言う思春期ってやつ? そんなわけでじーさんに関してだけはツンデレなんだよねー。いろんな意味で

そんな居間の光景をちらちら見ながら今まで切っていた野菜が切り終った。

 

「士郎、こっちの準備終ったよ」

「おー、兄さんありがと」

「先輩、こっちも準備終りました」

 

通い妻の如くウチにやってくる後輩、間桐桜ちゃんも今まで用意していた具材を準備し終わったらしくこちらに声をかけてきた。

そんな横からくいくいと士郎の袖を引っ張る腹ペコが一人、

 

「シロウ、ごはんはまだですか」

 

じーさんのサーヴァント セイバー、真名はアルトリア・ペンドラゴン 伝説のアーサー王と呼ばれたその人だ。我が家ではもうただの腹ペコな女の子にしか見えないけど。

 

「セイバー、これ机に運んで」

「あ、はい わかりました。アキヒサ」

 

働かざる者食うべからず、これが我が家の家訓です。例外はじーさん、下手やると体壊すから

 

                   ☆

 

マスターから今日は不在になると連絡を受けてからしばらく経った。マスターが大体帰宅する時間になっても戻ってこないことで改めて実感した。

 

「マスターが居ないだけでここまで静かなのだな。この家は」

 

自分だけしかいない状態で改めてこの部屋を見やる。すると一つ気になる写真立を見つけた。なぜこれだけは倒されているのだろうか?

 

「ん? これは………」

 

マスターとマスターによく似た長い髪の少女が仲良く腕を組んでいる写真だ。それ自体は特におかしくもないのだが、その周囲がおかしい。

 

「……………なんでさ」

 

その背後では和服姿のわが養父衛宮切嗣と誰かは知らないマスターによく似た女性がどこぞの麻婆神父を吹っ飛ばしていた。

 

                   ☆

 

鍋が凄い勢いでなくなってその後、

 

「「「「ごちそうさまでした」」」」

「「「お粗末さまでした」」」

 

いつもの通り、食事の挨拶はちゃんとしないとね。

 

「鍋は久々だったけどおいしかったなぁ」

 

一人だとあんまり食べる機会ないし。そうだ、アーチャーと二人で今度なんか作ろう。

 

「アキヒサ、今日は泊まっていくのかしら?」

 

アイリさんがこちらに聞いてきた。でも………

 

「あ、今日はもう帰るよ。明日も学校だし」

「そうですか、ではまた休日に」

 

セイバーの言葉を聞いて休日と言えばと思い出した。

 

「そういえば蔵の屋根直った?」

「大丈夫だったよ。危うく落ちかけたけど」

 

そこ! それを心配してたんだけど?!

 

「じーさん、体弱いんだし気を付けなよ?」

「心配してくれてありがとう明久」

 

ぐしゃぐしゃと頭を撫でられた。

今いるメンバーにあいさつを済ませ玄関先へ向かう。玄関まで見送りに来てくれた士郎へ最後に挨拶をした。

 

「じゃあ、『いってきます』」

「行ってらっしゃい、兄さん」

「うん」

 

さて、帰って明日の支度しないとね。

 





連載が変わっても奴の気配は消すことができませんでした。orz

ここでの彼女は別にマスターでもなければ聖杯戦争参加者でもありません。四次聖杯戦争の停戦はちょっとした違いによるものでした。まあ、結果として『停戦出来た』ということは事実です。

それから、第四次聖杯戦争での死者は0です。まあ、唯一の犠牲者というのであれば間桐の老害だけでしょうかね。


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第五幕


後326時間


―――四幕より一週間とちょっと


 

街中をスーパーの袋片手に歩く士郎がふと目をやると見覚えのある人物が同じようにスーパーの袋片手に歩いていた。

 

「あれ、兄さん?」

 

衛宮家で唯一一人暮らしをしている兄明久である。

こんなところで会うとは偶然だなと思って、声をかけようとするが、それよりも前に白髪オールバックで褐色の肌、服装は黒いシャツとズボンの青年が明久と合流して並んで歩き始めた。

 

「……誰だあいつ?」

 

その疑問はごもっともだろう。

 

                    ☆

 

「ふぅ、アーチャーが来てから買い物が本当に楽になったよ。てかアーチャーってクラス本当にアーチャーなの? 執事(バトラー)の方が合ってる気がするんだけど」

 

今日は運よくセールの日に早めに来れたんだけどアーチャーのおかげで普段なら絶対に取れないような品物までゲット出来た。アーチャー様様だよね。そこら辺の主婦になんて全く負けてないし、何度主婦の人に飛ばされたことか。タイムセールは戦場だよね

 

「はぁ、言いたいだけ言うがいいさ」

 

呆れたようにため息をついたアーチャー、そういえば士郎のなれの果て……なんだっけ。

 

「まあ、あれがこれになるんだから納得の結果か」

「………」

 

衛宮家の主夫は世界が変わっても主夫らしい。

 

                    ☆

 

兄と謎の人物を見かけてから、士郎はこっそりと後を付けていた。ちょっと物陰に隠れたときにいきなり肩を叩かれた。

 

「衛宮君何やってんの?」

 

幼馴染で腐れ縁の遠坂凛である。学校帰りだったようで特徴的な赤い服ではなく制服姿だ。

 

「うわっ、遠坂か アレ見てくれ」

 

幼馴染だったことに安心しつつ、士郎が明久と謎の人物を指さす。凛が指の先を見てみれば………

 

「んー? ……え、誰よアレ」

「だろ?」

 

凛も知らない人物だったらようだ。あんな知り合い居たかしらと考え込む。

 

「本当に何者?」

「どうしたの? 二人そろって珍しい」

 

さらにもう一人声をかけてきた。

 

「あら、明乃」

「アレを見てくれ」

 

明久の姉で今は言峰家次女の明乃だ。一度家に寄ってから来たらしく、私服姿だ。

明乃も士郎に従ってみてみれば弟と知らない人物が居た。

 

「………アレ誰?」

「だよな」

 

あんな知り合い居たっけ? と士郎と凛が首を傾げていると冷静に知らない人物を観察していた明乃が呟いた。

 

「うーん、彼からもアキからも魔力の残滓を感じるけど魔術師ならぎりぎり残すか残さないかの範囲だなぁ」

 

その言葉に凛が返す。

 

「あら、そう? アタシは何も感じないけど」

 

魔術師としては見習いの明乃が気が付けるのであれば自分も気が付けるのではと凛が返す。

 

「それはアキの霊装が優秀だからね。魔術隠蔽に関しては天才級だよ。マジで ぼくも身内だからこそ肌でギリギリ察知できるくらいだし」

「へぇ、そうなのか」

 

                    ☆

 

僕はアーチャーと帰り道を歩きながらアーチャーに念話を入れた。

 

「(あのさ)」

「(何だねマスター)」

 

聞きつつも気づいているみたいだね。

 

「(つけられてる?)」

「(まあ、結果的に言えばそうだな。で? どうする)」

「(とりあえずはサーヴァントとばれなければそれで良しだね)」

 

下手にマスターだってバレるのは避けたい。そんなことを考えて歩いていたら後ろから知り合いの声がした。

 

「おや、明久ではないか」

 

秀吉だった。手には何やら大きい袋を抱えている。

 

「あれ? 秀吉じゃないか、どうしたのこんなところで」

「うむ、演劇の備品の調達にの……む、誰じゃ? 明久の知り合いかの」

 

まあ、アーチャーの恰好って目立つよね。服装的な意味じゃなくて髪の色とかその辺で、服に関しては本人が何処からか調達してきた。どうやったんだろう?

 

「あー うん、知り合いなんだ」

「まあ、よろしく頼む」

「こちらこそじゃ」

 

秀吉がアーチャーを見る目がなんか憧れを見つけたみたいな目をしてるけど大丈夫かな?



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第六幕

後141時間

―――第五幕より一週間後


 

学校と外出から帰ろうとしたところで一時的に家に呼び出されたぼくは義理の父の親父こと言峰綺礼の言葉に驚いた。

 

「………はい?!」

 

何言いだしたのこの人?!

 

「だから、先ほども言った通りだ。とある魔術師に令呪が出現、聖堂教会が回収、我々の管理下に置けとの指示だ。私にはアサシンの令呪があるため管理ができない。そこで候補に挙がったのがお前だ」

「いやいやいや、カレン姉さんに回せばいいでしょ?」

 

義理の姉であるカレン姉さんの方がこういったことには強い。まずぼくに白羽の矢を立てる時点で色々と間違っている気がする。

 

「見習いとはいえお前も魔術師だ。代行者であるカレンよりも適性があると判断された」

「はぁぁぁ、他の候補は?」

 

どうせ、いないんでしょうね。聖堂教会は一応魔術師とは敵対している立ち位置にあるし魔術的才能のある人間なんてほとんどいないんだろうけど。

 

「特には上がっていないな」

「そうですかい、じゃあ条件一つ。この仕事を引き受ける代わりに普段の仕事は休ませてもらうよ。あー、それから偶然呼び出したらすみませんでしたってことで」

 

これくらいの報酬は本気でほしい。最近只ですら忙しいんだし。

 

「ふむ、お前が居なくなると作業効率が著しく下がるのだがな」

「愉悦を求めにどこかのスナイパーさんと当主様をストーキングするのを止めればいいかと、いいじゃないですかたまには縛りプレイってことで、では失礼します」

 

とりあえず令呪を受けとり、ぼくは部屋を後にした。

 

                    ☆

 

「はぁぁぁ、何で引き受けたんだろう……めんどい」

「おや、明乃さんどうかされたんですか?」

 

あれ、今日は小さい方のギル様なんだ。

我が家の居候ことウルクのギルガメッシュは何故か年齢を変えることができる。個人的にはこっちのギル様の方がとっつきやすくてありがたいんだよね。

 

「あー、ギル様 人生ってままならないですね」

「おや、珍しいですね。貴女が弱音を吐くなんて」

「色々あったんですよ。それでは失礼しますね」

 

情報収集のためにも出かけることにしよう。

 

                    ☆

 

教会の建物から出てみたら、親父のサーヴァントであるアサシンさんが庭仕事をしていた。

 

「アサシンさん今日もお疲れ様」

「明乃様、お疲れ様です」

「明乃殿はどちらへ?」

「まあ、とりあえずちょっと出かけてきます」

「「行ってらっしゃいませ」」

 

我が家の癒しってこの人たちとお爺さんだけなきがする。

 

                    ☆

 

とりあえず、間桐家に行ってみる。御三家の一角だし、令呪のシステムの担当だったらしいから多分何かわかるはず。

 

「……ってわけなんですけど、これ召喚した方がいいですかね」

「うーん、一概には言えないかな。戦争に参加する気がないならしない方が無難だね」

 

間桐雁夜さんは現在の当主、先代の当主がとてつもない外道だったらしい。その外道を蹴落として当主の座に就いたそうだ。

 

「参加じゃなくって、これを安全に管理したいんですけど」

「ごめんね、話がそれてた」

 

申し訳なさそうにしてる雁夜さんをしり目にしれっと言ってみる。

 

「一方で自分が召喚したらどんな英霊来るのかなって気になってるんですけど」

「一番ずれてるよね?! とりあえずウチの書斎確かめてみるよ。今日はもう帰って」

「はーい」

 

さて、もう帰ろうか

 

                    ☆

 

普通に帰るつもりではあったんだよ。まさかこんなことになるとは

 

「何でこんな状況になるのかな……もう面倒なんだけど」

 

一面に広がる黒、黒、黒、染みのような生き物たち、聖杯が汚染されている影響で生まれてきた新種の化け物たちだ。この辺には出ること無いって高をくくっていたのがまずかったらしい。

 

「っ」

 

手持ちの黒鍵がきれてしまった。それでも迫ってくる黒い化け物たち、打つ手はないかなと思い始めたその時、渡されていた令呪が光った。目の前に謎の魔法陣が広がる。ぼく書いたっけ?

 

「え?」

「よっ、あんたが俺のマスターか?」

 

青髪のオールバック、長い後ろ髪を一本に結んだ赤目のぼくよりも何歳か年上そうな男の人が出てきた。それを見て一番に感じたことは………

 

「………2Pカラー?」

「?!」

 

だって悠里になんか似てるんだもん

 





ランサー召喚
ランサーのデフォメ見るとたまに雄二に見える気がするんだ。



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第七幕

後140時間26分


―――第六幕より34分後


 

とりあえず手に持った槍で化け物を追い払ってくれた2Pカラーさん(仮)にお礼を言って、事情を聞く。すると聖杯の招きによって呼ばれたとのこと……つまりさ

 

「えーっと、つまり貴方はぼくのサーヴァントってことですか?」

「そうだぜ」

 

あっさりと答えられた。特に何もしてないのに呼べるって一応奇跡らしいよ?

 

「ちなみにクラスは?」

「ランサーだ」

 

三大騎士と呼ばれるクラスの一角 槍兵(ランサー)、確か他のクラスの追随を許さない最速の騎士と呼ばれるスピード重視のクラスだ。

 

「そうですか。ではランサーさん、聖杯に掛ける願いは?」

 

下手に願いがあったら不味い、ここの聖杯は汚染されて人を傷つけることしかできないんだから。

 

「特にないな。強いて言うなら強い奴と戦いてぇ」

「良かったようなよくないような………」

「ん?」

 

ランサーさんがぼくの呟きに首を傾げた。不仲は最大の死亡フラグ、家でのことも踏まえつつきっちりと事情説明をしなくては。

 

「えー、とりあえず自己紹介から始めたいと思います。ぼくの名前は言峰明乃、とある事情で教会の監査役として冬木にある聖堂教会の支部に住み込みをしてます。で、とある事情というのがですね……………」

 

聖杯の汚染のことを伝える。彼は半信半疑だったけど監査役として培ってきた交渉術が物を言った。

 

「ふぅん、まあ俺としては強い奴と戦えるならそれで文句は無いぜ」

 

ランサーさんの回答にホッとして思わず本音が飛び出してしまった。

 

「はぁ、サーヴァントが全員そういう人だとありがたいなぁ。今回の聖杯戦争、それからランサーさんにも一つ忠告します。決してサーヴァントや一般人を倒したり、殺さないこと、聖杯の泥を溢れさせるわけにはいきませんから、それに秘匿のために目撃者消すの本当に面倒なんですよ。いい加減にしてほしいってーの」

「そうか、わかった」

 

話を聞いてくれるだけいい人なのかもしれない。ウチのウルクの慢心王は全くもって人の話を聞かないし。

 

「ちなみに破ろうとしたら速攻で令呪使いますのでそのつもりで」

「おう、ところでだがその敬語どうにかなんないのか? どう考えたって素じゃないだろ」

 

英霊相手に下手に出るのはいつもの癖だ。下手にやらかして死にかけるとか勘弁してほしい。

 

「……お望みとあらば? 本当にいいんですか? いきなりバビったり(ころそうと)しません?」

「誰が嬢ちゃんみたいな奴を殺そうとすんだか」

 

その疑問はもっともだよねランサーさん、だけどさ

 

「我が家は理不尽の巣窟なんだよ」

「そうか」

 

ぼくの遠い目で大体を察してくれたらしい。ぼくは頭を撫でてもらった。

 

                      ☆

 

とりあえず御三家……と言うよりは雁夜さんか切嗣さんかアイリさんに事情を説明しようと思い立ち歩き始めた。その道すがらランサーさんが聞いてきた。

 

「そういえば俺のステータスってどうなんてるんだ? マスターならだれでも見えるはずだぞ」

「ステータス?」

 

えっと、それはなに?

 

「まあ、サーヴァントの強さのパラメーターみたいなものだな」

「へぇ、見ようと思えば見れるってこと?」

「おう」

 

指示された通りに見てみるとランサーさんの傍に文字が現れた。

 

「えっと、筋力がB……耐久がAに+? それに敏捷がAの- 魔力がCえっと幸運……あれ?」

 

なんでかな?

 

「どうしたマスター?」

「幸運だけ読めなくなってる」

「は?」

 

ランサーさんが驚いて固まった。それからもう一回見てみる。

 

「うん、塗りつぶされてるっていうのかな?」

「そんなことってあるのかよ」

 

他に変なところないよね、と他の項目(多分スキル欄?)を見てみると、とんでもないものを発見してしまった。

 

「………あ」

「ん?」

「スキルのところに悪運、EX? があるんだけど、元々もってる?」

 

まず悪運が強い英雄って何だよ。

 

「んなスキルしらねーよ」

「………うん、ごめん。多分メインぼくのせいだね。基本的に運ないもんなぁ、ぼく」

 

本当に申し訳ございませんでした。

本当に基本運がないんだよね。ぼく 間が悪いって言うか、何というべきか死にはしないけど、ろくでもない目に遭いやすいっていうやつかな

 

「ま、嬢ちゃんのことは守ってやっから」

 

わしわしと頭を撫でられた。





ランサーステータス

クラス:ランサー
属性:秩序・中庸

筋力:B 
耐久:A+ 
敏捷:A- 
魔力:C 
幸運:-
宝具:?

保有スキル
対魔力:B
戦闘続行:A+++
仕切り直し:C
神性:B
ルーン魔術:B
矢避けの加護:B
※悪運:EX

青い装束に赤い槍を持ったサーヴァント、真名はまだ不明
今回は監査役代行にしてとある令呪の臨時保管者であった明乃に偶然呼び出された
聖杯に掛ける願いは特になし。強い人物と戦うことを望んでの参戦である


※悪運
 死ぬギリギリを通りながらも死なないスキル
 本来であれば(召喚者にとって)厄介なスキルであるが、この陣営の場合ランサーの持つ「戦闘続行」の効力を著しく上げ(対戦者とって)厄介なスキルとなっている(そのため戦闘続行のランクが著しく上昇)

※※このスキルはオリジナルなので注意


多分このコンビは幸運Eあたりが引き金になって呼べた気がする。
えー、サーヴァントステータス本家風ですが、あくまで風ですので注意


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第八幕


後140時間20分

―――第七幕とほぼ同時刻


 

ぱら ぱら と紙をめくる音だけが部屋の中に響き渡る。

 

「……んー、見れば見るほどどれだけずさんな管理をしてるかが丸わかりだなぁ」

「マスター、夕食が……マスター?」

 

アーチャーが珍しく任された夕食の支度を終えて主である明久の部屋へ向かい、扉を開けてみると。明久が本を読んでいた……確実に日本語ではないなにかで書かれたハードカバーだ。

 

「あ、アーチャー? ごめんごめん」

 

謝りながらも本にしおりを挟み閉じる明久、その後眼鏡も外しケースへとしまった。普段眼鏡をかけている姿など見たことが無かったアーチャーは疑問に思ったことを尋ねた。

 

「視力が悪いのか?」

「ううん、何とはなしに掛けてるだけ……これも一応礼装だけどね」

「そうか、ちなみにどういった機能が?」

 

こういう代物であれば魔眼殺しか何かか? と考えながら尋ねるが明久の返答は全く違っていた。

 

「簡単な翻訳機だよ。流石にドイツ語は読めないし」

「それはまた便利な品だな」

 

普通の魔術師はそんなものを作らないと内心ツッコミをくわえる。それに何語だったら読めるんだよと実は過去に明久の義弟も同じことをツッコんでいることなどアーチャーは知らない。

 

「そうでもないけどね。さて、今日は夕飯任せてごめんね」

「構わないさ」

 

むしろなぜ毎晩自力で作っているのかを尋ねたいアーチャーだった。

その日、明久は笑顔で夕食を食べきった後、自室で何であんなに美味しいの? と嘆いた。

 

                   ☆

 

いつも通りの日常の一場面、そのはずだけど今日はちょっと違った。

 

「おはようなのじゃ」

「おはよ……う?」

 

普段通りに声をかけてきた親友の髪型は普段とは全く違っていた。何故かヘアピンではなくカチューシャで前髪を上げていた。

 

「秀吉? その髪型どうかしたの?」

「うむ、お主が一緒におった知り合い殿のマネなのじゃが……何か変かの?」

 

あー、そうなんだ。アーチャーのマネ……ねぇ

 

「ううん、珍しいなぁって思ってさ」

 

というよりも毎日ほぼ同じ髪型だよね? 髪型変えてくるのって初じゃない?

 

「そうかの? ワシとしては男らしくしてみたいのじゃが」

「せめてカチューシャを止めることを勧めるよワックスの方がいいと思う」

 

カチューシャはさらに女の子らしさを引き立てていた。多分お姉さんから借りたのかな?

そういえばアーチャーの髪型ってどうなってるんだろう? 多分士郎とおんなじ感じなのかな。そんなことを考えているなんて秀吉は露知らず僕のアドバイスを真面目に考えていたらしい。

 

「なるほどの」

 

そこへもう一人の親友の南があくびをしながら入ってくる。随分と眠そうだ。昨日も夜更かししてたのかな。

 

「おはよー………ってヒデヨシ?!」

 

秀吉のイメチェン(?)に驚く南………うん、やっぱりそういう反応になるよねー

 

「おはようなのじゃ」

「どうしたんだ? イメージチェンジか?」

「そういう所じゃ」

 

胸を張る秀吉、その様子を見ながら南は僕にアイコンタクトで話しかけてきた。

 

「(あれはどういうわけ?)」

 

ごもっともだと思う。正直何があったのかって聞きたくなるレベルだし。

 

「(強いて言うなら「男らしさ向上のための努力」ってところかな……女の子らしさを向上してるようにしか見えないけど)」

「………(ホロリ」

 

正直に答えれば、親友の努力(?)に南は涙を隠せないようだった。

 

                    





多分明久が読んでいたのは聖杯戦争の過去の記録、三回戦と四回戦のデータが中心、そのはずだったんだけどむしろ聖杯そのものの観測データに目が行っていたようです。

明久的には「翻訳こんにゃく」とか本気で作れないかなぁとか考えている……かも?
部屋はゲームの代わりに魔術礼装で埋め尽くされてる……かも?

アーチャーのステータス公開はかなり後になります。


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第九幕


後131時間

―――第八幕から次の日の朝


 

言峰明乃、本日は絶好調!

 

「おはよう!」

 

ご機嫌であいさつすれば悠里がふわりと笑った。

 

「あら、明乃 久しぶりに元気そうね」

「まあね。久方ぶりの仕事のない平日が過ごせたし、衛宮さんは相変わらず優しいし、いい人に会えたし文句なし!!」

「ん? いい人?」

 

悠里が怪しんだようすでぼくを見る。あー、説明不足だったか

 

「あー、悠里の2Pカラーみたいな人」

「いや、なによそれ」

 

くすりと悠里が笑った。まあ、そうなるよねー

 

「まあ、いい人だよ」

「そう、あんたがそういうのならばいい奴ってことね」

 

ぼくと悠里が笑っていたら、

 

「……もうそろそろで授業」

 

神海がいきなり後ろから声をかけてきた。アサシンさんも絶対にびっくりだと思う。

 

「「わっ」」

 

                      ☆

 

放課後、ぼくが帰りの支度をしていると同じクラスの女の子がそろそろとこちらへ寄ってきた。どうかしたのかな?

 

「あれ、どうしたの?」

「あ、明乃ちゃん実はね」

 

彼女が言うには校門のところにチンピラみたいな人が居るらしい、それで「嬢ちゃん」を探しているそうなのだがその特徴がぼくにそっくりなのだそうだ。

 

「チンピラって………わかった。帰るついでにぼくが見に行くよ」

「ありがとう!」

 

それにしてもチンピラって何だ? 知り合いにそんな人いないし……強いて言うならギル様か、そんなことを考えながら校門に行ってみたら

 

「チンピラってあんたのことかい!」

「お、嬢ちゃん」

 

見まごう事なきチンピラが居た。ランサーさんだ。アロハシャツを着崩していて、若干狂暴そうな狗を思い浮かべるその風貌と相まって、本当にチンピラのようにしか見えない。

 

「あーもう、何チンピラみたいな格好してるのさ」

「?」

 

ぼくがそういえばランサーさんは首を傾げる。まあ、しょうがないか

 

「しょうがない、今日空いてる? 服買いに行くよ」

 

ぼくはランサーさんを引っ張って学校から出た。

 

                   ☆

 

「あら? 明乃……って誰よあいつ」

「……知らない」

 

用事があって先に帰ろうとしていた悠里と神海は親友がアロハシャツを着た青髪の青年を引きずって歩くのを見て固まった。

 

「あ、悠里さん 神海さん……あれ、姉さんは?」

 

そこに偶然通りかかった明久が声をかける。

 

「あら、明久」

「……さっき謎のチンピラと一緒に歩いていった」

「チンピラ?」

 

流石にチンピラの知り合いは居ないはずだけど、と明久が返せば。

 

「まあ、そう見えたってだけかもしれないけど」

 

悠里も今回ばかりは見間違いよねと笑った。

 

                   ☆

 

駅をちょっと裏に入った所にある服屋へぼくはランサーさんを引っ張っていた。

 

「全くさー、そんな恰好してたらチンピラに間違われるのもしょうがないよ」

「なんか俺の恰好に文句あるのかよ」

 

がるがると地味に怒ってるランサーさん、まあ自分のセンスにケチ付けられるのは誰でも嫌だよね。でもさ、

 

「あるさ、もちろんあるとも! 大体あんたは素材がいいんだからもう少しくらいいいもの着たって誰も何も言わないよ。てかぼくが普通に見繕えばよかったかなぁ」

 

ぼくは周囲の目線なんて気にせずに歩いていた。

 

「(……あれって、アキノ?)」

「(そのようじゃの)」

「(え、隣にいる奴 誰?)」

「(うーむ、明久なら知っておるかもな)」

 

服屋に着いてさっそくぼくは服を選んだ。元々来ていた服が青だったせいか何とはなしに青色を選んでいた。

 

「よし、これに着替えてきて」

「だからな「嫌だなぁ。こっちの顔を立てるって名目もあるんだから、下手に目立たれるのはヤバいんだから色々と」……っ、しょうがねぇな。着替えてきてやるよ」

 

やりぃ、上目使い成功! こんな手我が家で使ったところで笑われるだけだしね。

他の服も選んでおこう。

 

「よし、後これと……これもでいいかな」

 

ランサーさん普通に見た目いいんだからあんなチンピラみたいな恰好しなくてもいいのになぁ。

ぼくはウィンドウを覗く知り合いには全く気が付いてなかった。

 

「(いいなぁ。アキノのコーディネートって)」

「(お主の場合はその前に明乃殿に気持ちを伝えることから始めんか)」

「(あれ、秀吉に南?)」

「(明久! アレ誰?)」

「(あれって……?)」

 

あ、ランサーさんが出てきた。青を基調としたシンプルな服装だけどうん、ぼくの目に狂いは無かったねー。アロハよりはよっぽどいいね。

 

「着替えてきたぜ」

「うん、僕の見立ては間違ってなかったね」

 

                    ☆

 

ウィンドウの中を眺めながら僕と親友二人はこそこそと会話をした。

 

「(マジで誰?)」

 

あんな青い髪の知り合い居ないよ?

 

「(お主も知らぬのか)」

「(彼氏……は無いか。タイプが違い過ぎる)」

 

タイプって言葉に反応した南がぐっと詰め寄ってきた。いや、なんでさ

 

「(え、好きなタイプとかあるの?)」

「(んー、一応聞いたことがあるのは和服が似合う包容力のある人だっけ)」

 

まあ、あれだよね。急に聞かれたからとっさに答えただけなんだろうけど

 

「(そ、そうなんだ)」

「(明乃殿も案外乙女なのじゃのう)」

「(該当しまくりな人が約一名いるけどね)」

 

うん、多分そうだよね。

 

「(誰?!)」

「(ウチのじーさん、普段から和服だし姉さんいつも甘やかしてるし多分とっさに出てきたのがじーさんだったって話だと思うよ)」

 

南が本当にorzって体勢になった。大丈夫かな?

南をちょっと心配してたら後ろから声がした。

 

「何をやってるのだね君たちは」

「?! ……ってなんじゃ知り合い殿か」

「どうかしたの?」

 

何だアーチャーか あれ、こんな所に来るようなタイプだったっけ?

 

「そんなところで君たちのような男子学生が溜まっていたら衆目も集まるぞ。かなり目立っているので声をかけたわけだが」

「あー、ごめんごめん。じゃあちょっとお暇……って南?」

 

見てみれば南が体育座りになってぶつぶつと何か言ってた。怖いよ?!

 

「恋する乙メン(おとこ)は大変じゃのう」

 

そうつぶやく秀吉、恋って誰に?

秀吉とは対照的にアーチャーはウィンドウの中の二人をじっと眺めていた。

 

「………」

「(アーチャー、どうかした?)」

 

念話で確認を取る。なんかあったら不味いし

 

「(いや、なんでもないさ)」

「(ならいいけど)」

 





もうこれは明乃さんCP確定でいいですかね? 正直このコンビで書くのが楽しい

まあ、一応南√もありますけどねー



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第十章

 

遠坂家の魔術工房、そこに遠坂凛が居た。中央に置かれたのはなんも変哲もないような木の枝、その周囲には宝石を溶かして書かれたと思われる魔法陣がある。

 

「――――告げる。」

 

彼女の目は真剣だ。

 

「抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」

 

魔法陣から光があふれ、消えた後、魔法陣の中央には緑のマントを纏った青年が居た。

 

「あんたが俺のマスターか?」

 

                   ☆

 

冬木教会の書斎にぼくは居た。親父に呼び出されたのだ。

 

「娘よ、最後のサーヴァント召喚が確認された」

「はぁー、いよいよですか。了解しました」

 

サーヴァントが全機揃った。つまり、聖杯戦争開幕の合図がもうすでに鳴ったことを示している。

 

「まあ、好きなようにするがいい。監査役代理殿」

「ギル様に参戦しないように釘刺しておいてくださいね。あなた方が下手に乱入するようなら……全力投球でボコりますので」

「フフフ、楽しみにしてるがいい」

 

人の悪そうな笑みを見せるな糞親父、これだから外道は……まあ、とりあえず

 

「だが断る」

 

                   ☆

 

僕はじーさんから借りたアインツベルンの聖杯戦争のデータを読んでいた。僕の耳が花火のような音を捕らえた。

 

「あ」

「どうしたマスター?」

 

この音って確か……思わず教会に使い魔を送り出す。

 

「教会から連絡みたいだ。マスターとサーヴァントは全員集合……ってマジ?」

「どういうことだ?」

 

使い魔から来たのは意外な内容だった。仮にも戦争中なのに全陣営集合って……

 

「顔合わせらしいね。どうするつもりなんだ」

「一応四次聖杯戦争は停戦しているのだろう? それを考えたら、なるべく穏便に済ませようとするのは当然の話ではないか?」

 

あ、それもそうだよね。

 

「あー、なるほどね。じゃあ支度してから行くか」

「了解した」

 

                   ☆

 

「今回の教会の監査役は無駄に迅速ね。行くわよ、アサシン」

「へいへい」

 

                   ☆

 

一方、間桐家 実は桜がライダーを召喚済みだったのだ。

 

「あの、おじさん行った方がいいんでしょうか?」

「うーん、監査役の明乃ちゃんのこと考えると行った方がいいね。多分停戦宣言か何かだろうし」

 

雁夜の意見を聞いた桜が立ち上がる。

 

「わかりました。行ってきます。ライダー行きましょう」

「はい、サクラ」

 

                   ☆

 

連絡用の花火を撃ち終えた後、ぼくは今回一番面倒なことを片付けることにした。

 

「ふぅ、よしキャスター迎えに行くか」

「は?」

 

ランサーさんが驚く。まあ、そうだよね。普通はそんなこと考えない。

 

「地味に使い魔に調べさせたんだけどキャスターが自分を召喚したマスターから令呪を奪取、一般人に保護されてることが判明したんだ。はぁ、先に気が付けたからマスターが死んでるなんてことは避けられたけど一応説明とかバックアップとかしておかないとヤバそうだからね」

「ほう」

 

ランサーさんの目が「どうしてそこまでするのか」と訴えかけているような気がした。

 

「今回のぼくの目標はいかに問題を出さずに聖杯戦争を停戦させるかなんだよね。というわけでとっとと終わらせようか、ランサー ついてきて」

 

いつものその人を呼ぶための呼称ではなく、主人(マスター)として従者(サーヴァント)に呼びかける呼称でぼくは彼に呼びかけた。ぼくの目を見た彼はにっと笑って……

 

「……了解」

 

それからは何も言わずについてきてくれた。

 

                   ☆

 

ぼくは中学時代の旧友である一成の下宿先に来ていた。マスターの元を離れたサーヴァントキャスターがここに身を寄せているからだ。一成に断りを入れておいたので割とすんなりキャスターに会うことができた。防音のルーン魔術をランサーに行使してもらい、早速事情説明に入る。

 

「と言うわけなので教会へご同行お願いできないでしょうか」

「なるほどね、でもそれが真実であるという証拠は?」

 

やっぱりそうなるよね。キャスタークラスで呼び出されるほどの魔術の使い手だ。これくらいは覚悟していた。

 

「これをご覧ください、第三次聖杯戦争から第四次までの霊脈の観測データです。それから、第四次聖杯戦争以降の霊脈のデータもどうぞ」

「これは……」

 

稀代の神童ロード・エルメロイを驚愕させ、「由緒正しい魔術師」遠坂時臣の顔を蒼白にしたデータ群をキャスターに見せる。

 

「魔術に関わるものであればすぐにこの危険性がわかるはずです」

「……了解したわ。それから先ほどの交換条件わかってるわよね」

 

魔術は等価交換が原則だ。それでなくても割に合わないことは人間誰だってしたくない。

 

「はい、キャスターさんの魔力維持はこちらが賄うことは可能です」

 

これがぼくが出した条件だった。彼女の仮マスターである人は魔術的なことには一切関わっていない。サーヴァントを維持するための魔力は無いんだ。だからこそ、この「仮マスターの代わりに魔力を用意する」この条件が可能になるのだ。ま、聖杯から直にもらえるように改造するわけですが。

 

「一つ付けたさせて頂戴」

「はい?」

 

キラキラした目で彼女はぼくを見た。一体なんなんだ?

 

「あなたに着てもらいたい衣装があるのよ。それで応じるわ」

「あ、はぁ……とりあえずありがとうございます」

 

                   ☆

 

衛宮邸の前にかなり大きな大男がいた。その肩には衛宮家長女イリヤが乗っている。

 

「バーサーカー行くわよ」

「grrrrrr」

 

その横には士郎とセイバーが居る。

 

「じゃあ、行ってくるぜ」

 

切嗣が見送りに来ていた。アイリスフィールはいざという時のために回復用魔法陣で横になっている。

 

「行ってらっしゃい。セイバー、士郎とイリヤをよろしく」

「はい、わかっています」

 

                   ☆

 

住宅街を魔術で一時的に染めた黒髪、黒シャツに黒スーツに黒い革靴、黒コートの黒尽くしの僕と赤い外套を纏ったアーチャーが歩いていた。

 

「はぁ、面倒だなぁ」

「ところでだがマスター、なぜその恰好なんだ?」

 

まあ、普通の学生がするような恰好ではないよね。一応意味はあるけど

 

「一応、吉井の家の魔術師の正装は『黒』って決まってるからね。それから昔じーさんがこういう格好してるのがなんとは無しにかっこいいって思ったから」

「それで、その一見すると煙草のようなものは?」

 

タバコは20過ぎてから。それは常識でしょうが、これは

 

「認識阻害用の魔術です」

「そうか」

 

僕の礼装にツッコミを入れてこなくなったアーチャーだった。まあ、認識阻害用って言うのは本当だし問題ないんだけどさー。最近アーチャーが順応しきってる気がする。

 

                   ☆

 

冬木教会に各マスターが集まったのはいいのだが………

 

「あれ? 遠坂?」

「衛宮君?! それにイリヤまで」

「あ、先輩、姉さん!」

「あら、サクラじゃない」

 

全員が知り合いという状況になっていた。

 

「よー、お忙しい所 集まりいただきありがとうございます」

「明乃?! って、後ろのは……?」

 

フードを被ったキャスターに注目が行く。

 

「マスターが事情で来れないので一人でお越しいただいたキャスターさんとぼくのサーヴァント ランサー。さて、セイバー、バーサーカー、アサシン、ライダー……後はアーチャーか」

 

そこで教会の扉が開いた。黒尽くしの明久が入ってきた。

 

「………え?」

「に、兄さん?!」

「アキヒサ?!」

「本当に?」

 

周囲の目線が明久にくぎ付けとなる。明久は少々困惑しながら言った。

 

「……えっと、アーチャーのマスターの衛宮明久です。本日は遅れてしまい申し訳ありませんでした?」

 

                   ☆

 

さて、意外なことがいろいろと判明したけどいいか、サーヴァントは全部そろった。

 

「えー、本日はお集まりいただきありがとうございます。各自家の方々から聞いているとは思いますが聖杯はバグってて使えません。そういうわけですので」

 

――― 聖杯戦争停戦しましょうか?

 







後0時間



――――聖杯戦争 停戦。


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※ザビエル道場


※メタ発言いろいろ注意


 

???:ここで終わると思った?

??:そんなわけないだろってことで

 

 

『ザビエル道場!!』

 

 

???:えーっと、本編からフライング登場となったザビエルことザビ男

??:同じく、俺はザビ男の親友だ。よろしく

ザビ男:そんなわけでここは閑話休題のための時間かせゲフンゲフン癒し空間、ザビエル道場!

親友:ぶっちゃけ舞台裏なのでメタ発言多めで行くぜー

ザビ男:うん、大体なんでザビ男なんだか

親友:まあ、しょうがないじゃん、中の人(さくしゃ)がCCCプレイしてて安定のザビエルだったことでもうザビ男でいいやってなったんだし

ザビ男:ぶっちゃけ中の人(さくしゃ)CCCまだ一周もクリアしてないよね?

親友:まあ、いいじゃねーか気にすんな

ザビ男:というより紅茶の出番最早ないよな。モデルとなった彼いるし

親友:ああ、あの記憶摩耗()か

ザビ男:お前紅茶にだけは厳しいな

親友:さて、何のことだ?

ザビ男:(相変わらずか)とりあえずサクッと停戦しているが突っ込みどころが多すぎないか?

親友:あー、特にあれだよな。遠坂凛が使ってる聖遺物『原作』だと用意できなくてあのペンダントになったわけだし

ザビ男:ここで中の人より回答。『多分遠坂家伝来のうっかり発動じゃないかな? それかもしくは元々アーチャーを呼ぶつもりだったかのどっちか』とのこと

親友:なるほど。まあ、どのクラスが呼ばれてるのかは把握できそうなのはきょうか……あれ?

ザビ男:『教会なら把握可能だろうけど、今回の監査役は代行とはいえ明乃だよ。確実に中立を取りに行くよね彼女なら』だとさ

親友:あー、明乃は確かに真面目に職務をこなしそうだな

ザビ男:明乃の真面目かつ常識人な様はウチの女性陣にも見習っていただきたいものだ

親友:まあ、そうだよな。個性が豊かすぎるのも考え物だ。だが、それを落としまくったお前もお前だよな

ザビ男:自分は何もしていないんだが

親友:これだから気づかずに世界を救っている凡庸型救済系主人公はエロゲ主人公並に女性とフラグ立てておいてしらばっくれるつもりかよ

ザビ男:正直巻き込まれてるだけなんだが

親友:はぁ

ザビ男:(ため息つかれた―――?!)

親友:さて、もうそろそろ(文字数的な問題も解決したし)お開きにするか

ザビ男:そんなわけで除幕(誤字にあらず)も終了、次回から本編に入るぞ

親友:俺たちの出番早めだといいな

ザビ男:そうだね

 

??:ちょ、こんな空間があったなんて何で教えてくれなかったんですかセンパイ

 

親友:やべ、見つかった。ずらかるぞ

ザビ男:OK!!

 





※後輩ちゃん()の出番はぶっちゃけないです
※※最低1000文字って始めて気が付いたよ。おかげで(色んな意味で)ザビエル道場伸びたよ

※一応、紅茶の名誉のために言いますが、中の人は別に紅茶嫌いじゃないです。親友さんは紅茶を容赦なくdisりますが、ただの愛情表現の一種と思ってください
※除幕は誤字にあらず。大切なことなんで二回言いました


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第一次試験召喚戦争
第一問


 

 

目覚ましが鳴った。止めてみてみれば完璧に遅刻の時間だった。

 

「……うん、遅刻か」

「いや、嬢ちゃん。悟ったような表情してねぇで支度しろ」

 

ランサーさんにツッコミを入れられる。いや、もう時間的に無理が……

 

「えー、どうやったって間に合わないじゃないか」

「はぁ、俺が送ってやっから」

 

え? いやいやいや、この人何言ってるの?!

 

「いや、いいって自業自得だし」

「へいへい、早くしろよ」

 

頭をくしゃりと撫でられた。まあ、いっか

 

「ご厚意にあずからせていただきます」

 

                  ☆

 

目覚まし時計を止めてみたら結構ヤバい時間だった。慌てて着替えて部屋から飛び出す。

 

「わぁぁぁ、遅刻?!」

「落ち着けマスター、まだ間に合う時間帯だ」

 

アーチャーが鞄を手渡してくれた。気が利くなぁ。

 

「そうだよね。アーチャー弁当は?」

 

鞄に入ってる気配がないんだけど。

 

「ここにあるぞ、では行ってくるがいい」

「サンキュ――――」

 

僕は全速力で家を飛び出した。

 

                  ☆

 

学校の校門の前、ぼくたちは偶然にも一緒になった。

 

「あ」

「あ」

「「おはよう」」

 

とりあえず、挨拶をして校門を一緒にかけぬけようとした。

 

「あなたた「「遅刻するんで失礼させてもらいます!!!」」

「待ちなさい!!」

 

そう言ってぼくらに声をかけたのは西村宗香(そうか)先生、生徒指導教員だ。他の在校生たちからは「鉄人」などというあだ名で恐れられているが、どんな生徒でも公平に接するため、ぼくたち問題児にとってみればいい先生なのだ。

 

「はぁ、あなた達クラス分けよ。大体何で振り分け試験に出なかったのかしら?」

「振り分け」

「試験……?」

「「あ」」

 

そういえばそんなこともあったようなないような。

 

「あなた達、本気を出せば普通のクラスに行けるのに惜しいことしたわね」

「あー、身内内でごたごたが」

「右に同じく、すっかり存在を忘れてました」

 

聖杯戦争停戦のごたごたですっかり忘れてたよ。色々と大変だったよなぁ。主に親父以下愉悦部が

 

「忘れるってあなた達ねぇ……まあいいわ、行きなさい。あなた達のクラス凄いことになってるから」

「「?」」

 

                   ☆

 

Fクラスに来てみたら。そこはボロ屋だった。とりあえず人が生活できそうなギリギリの環境ですね?!

 

「おはよー」

 

見知った顔が複数いるわけだし声をかけておこう。

 

「あら、おはよう明乃、やっぱりあんたもFクラスよね」

「……同じクラス」

 

うん、でもさ悠里って割と成績良くなかったっけ?

アキも普段のメンバーに声をかけてるなぁ。

 

「おはよ、秀吉 あれ? 南まで?」

「おはようなのじゃ」

「おはよう、アキヒサ、まさかの問題文が読めないとか……読めないとか」

 

島田君に一体何が? 結構凹んでるみたいだし、どうしたのかな?

 

「うん、何となく理由は察したよ」

 

いや、何があったのさ

とりあえず、気になるけど他のことを考えるためにクラスの中をざっと見渡す。やっぱり酷すぎでしょ。これ

 

「それにしても酷いねこのクラス」

「ええ、予想以上ね」

「……去年はここまで酷くなかった。これ証拠画像」

 

神海が見せてくれた画像にはそこまで汚れていないFクラスと思わしき和室が写っていた。うーん、あれがこれになるって可笑しくない?

 

「あ、本当だ」

「やっぱりね。誰かが裏で糸を引いているのかしら」

 

悠里と神海が会議を始めたので別のところを見てみればアキたちも何やら会話をしていた。

 

「明日くらいに環境改善するべきかな。許可取れるといいなぁ」

「ワシも手伝うぞい」

「俺も、流石にこれは……な」

 

そこに教室の扉が開いて先生が入ってきた。

 

「えー、おはようございます。二年F組担任の福原慎です。よろしくお願いします」

 

またずいぶんとよれた感じの先生だなぁって先生の悪口はダメか

先生も来たことだし席着かないとね……どの席も物凄いことになってるけど

 

 





本編ようやくスタート。あれは全部除幕式だったのだ。

人物設定変更しました。


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第二問

 

「皆さん全員に卓袱台と座布団は普及されてますか?不備があるなら申し出て下さい」

 

いや、さっき確認したら不備だらけだったよ。あ、何人も手を挙げてるし。

 

「先生。俺の座布団に綿がほとんど入ってないんですけど」

「我慢してください」

 

え、ちょ

 

「隙間風が寒いんですけど」

「我慢してください」

 

まあ、しょうがない……わけあるかぁぁぁ!! いやいやいや普通、隙間風とかあるの? ここ一応新設校だったよね?! 建築から六年で隙間風のする学校とかないでしょ?!

 

「卓袱台の足が折れているんですけど」

「我慢してください」

「無理でしょ」

「はっはっは。冗談ですよ」

 

そう言って福原先生が取り出したのは木工用ボンド。せめて、釘とトンカチくらいはほしいよ……親父でも普通に釘とトンカチは寄こすぞ

 

「必要なものがあれば極力自分で調達するようにしてください」

「先生、それ本当ですか?」

「はい、自力であればとりあえずいいですよ」

 

よし、言質は取ったぞ。悠里を見てみればこっちに向かってぐっとサムズアップしていた。神海がOKサインを出している。やりぃ

 

福原先生はホームルームを進める。

 

「では、交換入学生を紹介しましょうか」

 

ん? そんな話始めて聞いたけど、そういう制度今年から始めたのかな?

 

「では、二人とも入ってきて下さい」

 

福原先生が教室の扉の方へ声をかける。すると、こげ茶の短い髪に綺麗なハニーブラウンの目をした黒い学ランの男の子と黒髪のベリーショートにエメラルド色の目をした同じく黒学ランの男の子が入ってきた。クラスメイト達は女子じゃないことに落胆してる。小学生かお前らは

 

「では、自己紹介をお願いします」

 

福原先生が促すとこげ茶の髪の男の子がコクリと頷いて、自己紹介をした。

 

月海原学園(つくうみはらがくえん)から来た日向(ひなた)海人(かいと)。よろしく」

 

教室から軽く拍手が起こる。月海原学園……聞いたことないなぁ

さて、次は……と期待した目でみんながもう一人の方の入学生を見る。どんな人なんだろう?

 

「俺は日暮(ひぐらし)広夢(ひろむ)日向(ひむかい)の親友だ。こいつと同じく月海原学園の生徒、好きなことは遠出とトラップ開発 よろしくな!」

 

うーん、彼とは仲良くできそうな気がする。教室からは先ほどと同じく軽い拍手が起こった。

 

「二人とも好きな席に座ってください」

 

福原先生が席に着くように言った。てか、席も決まってないの?!

 

                  ☆

 

「では、次は廊下側の人から自己紹介をおねがいします」

 

入学生のことも済んだので福原先生が今度はクラスの中の人に声をかけた。

 

「木下秀吉じゃ。演劇部に所属しておる」

 

 

独特の言葉遣いと小柄な体。いつもの通り安定の秀吉だよね。まあ、でもオールバックにした甲斐あってかちょっとは男らしく……

 

「先に言っておくがワシは男じゃ」

「「「そんな馬鹿なぁぁぁぁ」」」

 

ナッタノニナー

 

「………土屋神海、特技は隠密行動」

 

男が勝手に叫んでいる間に神海さんの自己紹介が始まっていた。それ、自慢するべき特技なの?

 

「俺は島田南 海外育ちで、日本語は会話はできるけど読み書きは苦手だ」

 

あ、南の番だったんだ。知り合い率高いなぁ

 

「趣味は邦画鑑賞、よろしく」

 

南って意外な趣味してるんだなぁ。今度映画のチケットでも手にはいったら誘おう

また何人か自己紹介をしていく、冗談交じりな人がほとんどだ。彼女募集中とか言ったところでウチの女子全員ガード固いよね。神海さんに悠里さんに姉さんのアクの強い三人娘が(多分)筆頭だし。

さて、次は僕の番か

 

「──コホン。えーっと、衛宮明久です。苗字は違いますが言峰さんとは双子の姉弟なのであしからず、特技はガラクタ弄り よろしく」

 

うん、無難にまとめたぜ。よーしとか思ってると「ダーリンじゃないのかよ」とぼそりと聞こえた気がした。あれ?

 

                    ☆

 

自己紹介も終盤に差し掛かったけどもう何かカオスってる気がする。ウチのクラスは妙に女子の数が少ない。ぼくも含めて6人とか悲惨過ぎない? まあおなじみのメンバーは置いておくとしまして、鈴原晴日(すずはらはるひ) 学園では割と有名人だったりする……色んな意味で、それから比奈丘彩夏(ひなおかさやか) クール系のボーイッシュな女の子、意外と気が合う。夢路恵利(ゆめじえり)、色々とそりが合わない。鈴原さんと夢路については男に媚びる系の女子でぼくはあまり好かないんだよねー。彩夏に関しては一悶着あったもののそれ以来の仲は良好だ。とりあえず知り合い以外は聞き流した自己紹介の最後、ぼくの親友坂本悠里はとんでもない爆弾発言をかました

 

「さて、みんなに一つ聞きたい」

 

悠里の視線は教室内の各所に移りだした。

 

かび臭い教室。

古く汚れた座布団。

薄汚れた卓袱台。

 

何度見ても酷い設備だよね。しかもこれがもしかしたら悪意のある人間の仕業かと思うと虫唾が走る。

 

「Aクラスは冷暖房完備の上、座席はリクライニングシートらしいけど―――――」

 

一呼吸おいて、

 

「――――不満はないかしら?」

 

「「「「大ありじゃぁっ!!」」」」

 

二年Fクラス生徒(一部を除く)の魂の叫び。ちなみに参加してないのは鈴原さんと夢路、それから日向君の三人だけである。日暮君はノリノリで叫んでた

 

「でしょう?あたしだってこの現状には大いに不満だし。代表として問題意識を抱いているわ」

「そうだそうだ!!」

「いくら学費が安いからと言って、この設備はあんまりだ!改善を要求する!」

「そもそもAクラスだって同じ学費だろ?あまりに差が大きすぎる!」

 

堰を切ったかのように次々とあがる不満の声が上がる。まあ、悠里的にはこれを狙ってたんだろうけど

 

「みんなの意見はもっとも。そこで」

 

坂本悠里は自信に満ち溢れた顔に不適な笑みを浮かべ、

 

「これは代表としての提案なのだけど……」

 

あ、これはなんか悪巧みしてるなぁって心底思った。

 

「──FクラスはAクラスに『試験召喚戦争』を仕掛けようと思う」

 

(ぼくは知らなかったが)我らがFクラス代表、坂本悠里は戦争の引き金を引いた。

ようやく身内の戦争が終結したと思ったら今度はこっちかい、ぼくの心境は正直こっちだった。

 






※この小説にはモブですが転生者要素入ってきます。ちなみに比奈丘さんは「Sクラス」とは全く関係ございません


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第三問


※しばらく(多分)原作沿いの展開です。


 

Aクラスへの宣戦布告。

それはこのFクラスにとっては現実味のない提案だとおもう。まあ、底辺底辺言われればしょうがないよねぇ。ま、正直その扱いこそが今回の戦争の原因だったりするわけだけどそれがわかるのは後の話

 

「勝てるわけがない」

「これ以上設備を落とされるのは嫌だ」

「夢路さんがいたら何もいらない」

 

そんな悲鳴が教室のいたるところから上がる。ところで最後のそれは違うよね?

まあ、確かに誰が見てもAクラスとFクラスの戦力差は明らか、この状況で悠里がこんなこと言いだすなんて思いもしなかった。

 

「そんなことはない。必ず勝てる。いや、あたしたちが勝たせてみせる」

 

悠里は自信満々にそう宣言した。こういう時の悠里って、まあ性質が悪い。親友でさえなければ関わりたくもない……それくらいには

 

「何を馬鹿なことを」

「できるわけないだろう」

「何の根拠があってそんなことを」

 

否定的な意見が教室中に響き渡る。それがもっともだよね。いきなり勝つって言われても

 

「代表、その自信がどこから湧いてくるのか聞かしてもらえるか?」

「いいわよ。それを今から説明してやるわ」

 

相変わらずの不適な笑みを浮かべ、壇上から皆を見下ろす。そして神海の方を見た。あーなるほど?

 

「神海、紹介するから前に来て」

「……はぁ」

 

珍しく神海が嫌そうな顔してる。あ、目立つの嫌いだもんねぇ

 

「土屋神海。こいつはあの有名な、寡黙なる情報屋よ」

 

寡黙なる情報屋いう言葉を聞いて、クラス中が騒ぎだす。有名人っていうか有名すぎるあだ名って言うべきか、きょとんとしてるのは入学生二人とこういう話題に縁のない夢路と興味のない彩夏だけだ。

 

「情報屋だと……?」

「馬鹿な、ヤツがそうだというのか……?」

「情報屋って確か教師の弱みを握ってるって噂の?」

「たしか学園長の弱みも握ってるって話だ」

「こえー」

 

ごめん、神海はそこまでじゃないんだけど、あの子、只単なる人間観察好きの気配遮断EXな女の子だし。勝手に勘違いしてるようで、ざわざわとした声がさらに広がっていく。

 

「えっと、有名人なのか?」

「まあね。正体は今の今までほとんどの人が知らなかったけど」

 

うん、正直ぼくら以外には情報提供とかしてない……よね?

 

「夢路と鈴原のことは説明する必要もないでしょ? 皆だってその力はよく知っているはず」

「えっ?わ、わたしですかぁ?」

「えっと、それは喜ぶべきかしら」

「ええ。ウチの主戦力よ。期待しているわ」

 

相変わらずながら猫かぶりって言うべきか癪に障るタイプというべきか……はぁ、ぼく一人で独り相撲取ってもしょうがないよね。とりあえずクールになれクールになれ。

 

「そうだ。俺達には夢路さん達がいるんだった」

「彼女たちならAクラスにも引けをとらない」

「ああ。彼女さえいれば何もいらないな」

 

……さっきから夢路にラブコールを送っているのは誰だろう? まあ、どうでもいいけど

 

「それに島田南だっているわ、数学と英語だけならBクラスレベルは固いもの」

 

あれ、島田君って勉強できないんじゃ……いや、偏見を持っちゃダメだよね。そういえばさっき問題文がとか言ってたけど、もしかして問題文が読めないだけ?

 

「当然あたしも全力を尽くすわ」

 

中学時代から人を率いるのは上手だった悠里が大将なのだ。そんな過去を知らないクラスメイト達も悠里は信頼のおける大将であると本能的に感じ取ったらしい。

クラスの士気は今、最高潮になっている。

ここでぼくの名前とか出すなよ悠里……とか思ってたわけですが。

 

「それに、言峰明乃と衛宮明久だっているわ」

 

―――シーン………

一気に士気が下がった。だから言うなよって思ってたのに

 

「誰だよ、衛宮明久って」

「聞いたことないぞ」

「言峰……ってまさか」

「悠里、こうなること予想して言ったのかな? それとも天然?」

「あら、あなた達二人は頼りになるって知ってるからよ」

 

まさかの天然説有効?!

 

「そう。知らないようなら教えてあげる。この二人の肩書きは『観察処分者』よ」

 

一気に教室の温度が下がった。うん、そうなるってわかってなかったの悠里? 思わず泣きたくなった

 

「観察処分者ってあの……」

「極限にバカなヤツに付けられるっていう代名詞か?」

 

それだけは断じて違う。ああああ、やっぱあの糞ババアに名称変えるように言えばよかったっ!!

 

「正確に言うと学園側の実験を手伝う代わりに特典を受けることができる生徒のこと、名前のせいで変な噂立ってるけど関係ないから」

 

アキがぴしゃりと言い切った。よくやった!!

 

「ついでに言うならぼくらが初の『観察処分者』なのは主に名前のせいだから、もっと普通の名前つけてよ……はぁ」

「特典って何なんだ?」

 

誰かが聞いてきた。アキに全部丸投げしよう

 

「うーん、とりあえずフィードバックシステムによる操作性の向上が主かな。それから召喚獣の腕輪を通常時でも使用可能にしたりとか……まあ、過剰不等価な気がしてしょうがないんだけどねぇ」

「正直労働と特典が釣り合ってねーよって話だよね。はぁ」

 

今更ながらに面倒なことに巻き込まれているなぁと実感する。大体なんであの時ぼくはあの悪魔の誘いに乗ったんだろうか……とりあえず今は思考回路も無しにしたい。脳裏にはあのババアによる実験の数々が駆け巡ってきた……地味に泣きたくなってきた

 

「さて 皆、この境遇には大いに不満でしょう?」

 

そんなぼくなんて無視するが如く悠里が全体に向けて声をかける。

 

「「当然だ!!」」

「ならば全員(けん)を執れ!出陣の準備よ!」

「「「おおーーっ!!」」」

「あたしたちに必要なのは卓袱台ではなく!Aクラスのシステムデスクだぁ!」

「「「「うおおーーっ!!」」」」

 

うん、悠里も悠里だけどこのクラスはどうしようもないくらいにノリがいいらしい。それを改めて感じた。

 

                 ☆

 

「さーて、明乃 Dクラスに宣戦布告よろしくね」(いい笑顔でサムズアップ

「やっぱりいうと思ったよバカユーリっ!!」(そのまま教室を出ていく

「(ご愁傷様です。Dクラスの人たち)」(なむ

 

その後一分もしないうちにDクラスから悲鳴が聞こえてきた。

 





明乃さんの戦闘能力は35万だ!!……これの元ネタって何ですか?

多分明乃さんは普通に穏便に済ます予定だったはずだよ。基本的に殴られそうにならなきゃ反撃しない人だしね!!

ところでですが設定とプロット練っていった結果、転生キャラがちらほら動き回るようなのですが大丈夫でしょうかね?
まあ、「Sクラス」みたいに全部の敵が転生にはならない………はず


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第四問

 

姉さんがDクラスと(物理的に)交渉した次の日、チャイムと同時にDクラス戦が始まった。

今現在前線にいるのは秀吉率いる先行部隊で、そことFクラスの間あたりに南と僕が部隊長の中堅部隊が配置されている。

全員初陣とだけあって気合が入っている。どれくらいかっていうと殺気が感じられるくらいには、いや純粋に戦いに興奮している人もいるし、どこかおかしな思考回路の人もいるようだ。まあ、迷惑さえなければどうでもいいけど

 

「アキヒサ!ヒデヨシたちがDクラスの連中と渡り廊下で交戦状態に入った!」

 

南が向こう側から走ってきた。よし、気合入れないとなぁ。とりあえず僕は耳を澄ませて、前線部隊の様子を聞き取ってみた。

 

『さぁ来なさい!この負け犬が!』

『て、鉄人!?嫌だ!補習室は嫌なんだっ!』

『黙りなさい!捕虜は全員この戦闘が終わるまで補習室で特別抗議よ!終戦まで何時間かかるかわからないけど、たっぷりと指導してあげるわ』

『た、頼む!見逃してくれ!あんな拷問耐え切れる気がしない!』

『拷問?そんなことはしないわよ。これは立派な教育よ。補習が終わる頃には趣味が勉強、尊敬するのは二宮金二郎、といった理想的な生徒に仕立て上げてあげるわ』

『お、鬼だ!誰か、助けっ──イヤァァ──(バタン、ガチャ)』

 

西村先生、それを世間一般では洗脳と言います。てか正直魔術師より性質が悪いとか思っちゃったよ?! うわぁ、負けたらこれか………

 

「南、中堅部隊全員に通達」

「ん、なに?作戦?何て伝えんのか?」

 

うん、これはすごく大切な指示さ。

 

「点数がヤバくなったら即退散、ギリギリまで粘るよりも生きて教室に戻ることを優先するように、下手に人数減らされるとまずいからね」

「おう、わかった」

 

南が中堅部隊のみんなに僕の指示を伝えに行く。さて、どうしたらいいかな。僕は姉さんみたいに凄い身体能力があるわけでも悠里さんみたいに指揮能力があるわけでもない、でも任された部隊くらいは守らないとね。

それからしばらくして、待機していると南と僕のところに報告係がやってきた。

 

「島田、前線部隊が後退を開始したぞ!」

「了解、お前らさっき言った指示を忘れるなよ!!」

「「「おうっ!!!!」」」

 

よし、来やがれDクラス!!

………そう思ってた時期が僕にもありました。

 

                  ☆

 

教室で待機してたら神海が少し慌てた様子でやってきた。屋根裏からくるあたりもう君は忍者の子孫か何かなんじゃない?

 

「えっと、中堅部隊が襲撃?」

「……うん、このままだと危ない」

 

神海の意見を聞いて悠里がぼくのことを見てきた。あー、やっぱり?

 

「うーん、明乃ちょっと遊撃してきて」

「了解」

 

だよね。まあ、アキたちが心配だし行きますか

 

「あ、面白そうだから俺も混ぜてくれよ。どうせ雑魚だし」

「自分から雑魚って言うのはどうかと思うけど、ヒロは十分に強いと思う」

「はぁ、じゃあ日暮あなたもよろしく」

「了解だぜ」

 

ぼくらは急いで現場に向かった。そこには島田君と彼とオレンジ色の髪をツインテールにしてその先を縦ロールにしたドリルみたいな髪型の女の子が対峙していた。女の子の方が恍惚とした表情で喋りだす。

 

「お兄様に捨てられて以来、美春はこの日を一日千秋の想いで待ってました……」

「ちょっ!いい加減俺のことは諦めろよ!」

 

……二人になにがあったのさ? 捨てたってことは元カノとか?

 

「ところで島田君、お兄様って―――」

 

うん、そこ大切。凄い大切、まるで百合小説のようだけど

ぼくの存在に気が付いてなかったみたいで二人はまだ会話する。

 

「嫌です!お兄様はいつまでも美春だけのお兄様です!」

「来るな!俺は普通に好きな子がいるんだよ!」

 

会話がかみ合ってない気がする。あ、でもちょっと意外かも? 島田君って好きな人いるんだ。彼女は島田君の言った言葉を聞いてすぐに反論した。

 

「嘘です!お兄様は美春のことを愛しているはずです!」

「このわからずや!」

 

……うん、ストーカーって大変だよね。変な偏見もってこっちに向かってくるし。

島田君がようやくぼくの存在に気が付いたようだ。若干目に涙を浮かべて叫んだ。

 

「アキノ、助けて!!」

「うん、もちろんじゃないか。先生召喚許可を」

「はい、許可します」

試獣召喚(サモン)っ!!」

 

召喚陣からぼくの召喚獣が呼び出される。何故か中華服を着て狼のような耳と尻尾が生えた姿だった。手には黒鍵を持っている。

 

「何でチャイナなのさ、カソックがよかったぁ」

「へぇ、これが召喚獣か、何かアバターみたいだな」

「殺します……美春とお兄さまの邪魔をする人は、全員殺します……」

 

うわぁ、殺気が酷い。あれか、ヤンデレか、しかも相手じゃなくって周りに向かう性質の悪いタイプ、ヤンデレストーカーとか面倒なだけじゃないか

 

「邪魔者は殺します!」

 

こちらに召喚獣が向かってきた。そういえば点数………

 

化学

Fクラス 言峰明乃 134点

      VS

Dクラス 清水美晴 94点

 

何時のテストを基準にしたんだろう。確か振り分け試験は休んだはずだけど、あれ?

 

「隙あ「るわけないじゃないか」

 

一瞬思考回路を点数に取られたけどそれは一瞬でいい、突っ込んでくるものはいなせばいいのさ!! いやぁ、こういう時にはあの親父の直感型戦法が役に立つってもんでしょ

 

「こっんの、当たれ! 当たれっ!!」

「そんな大振りで当たったら奇跡だよね」

 

伊達に代行者の真似事してないし、負ける気がしないね。さて、もうそろそろいいか

召喚獣の手に握られた黒鍵をこちらに向かってくる彼女の召喚獣に投げつける。それは上手いこと急所に命中した。

 

Dクラス 清水美晴 DEAD

 

「戦死者は補習っ!!」

「お兄様!! このまま無事に卒業できるなんて思わないで下さいね!」

 

ストーカーって怖い、改めてそう思った。ついでに言うならバカ親父をますます止めないとって気になった。ついでに言うなら島田君に同情した。

 

「島田君、大丈夫?」

「アキノ……怖かったぁぁぁぁ」

「にゅおぁっ?!」

 

いきなり抱きつかれた?!  なんか周囲の殺気が上がってる?!

 

「えーっとあれどうするんだ?」

「……姉さん、そのまま南連れてって」

「あ、うん」

 

                   ☆

 

明乃が教室へと帰ってきた。何故か島田を姫抱きしながら。

 

「おかえりなさ……どうしたのそれ」

 

姫抱きしていることにはツッコミは入らなかった。

 

「強いて言うならストーカー怖いかな、そうそう、日暮君はこのまま島田君の代わりに戦闘に参加するから帰ってこないよ」

「わかったわ、それにしてもストーカーって………」

「あれだね。世の中には知らない方がいいこともいっぱいあるんだよ。うん」

 

明乃の目は妙に悟った目をしていた。ちなみに島田は降ろされている。

 

                   ☆

 

姉さんと別れた後、また僕率いる中堅部隊は前線と合流するために進んだ。

 

「さて、とりあえず合流しないと」

「まだ合流してなかったのか?」

 

姉さんと一緒にやってきた日暮さんが僕に尋ねてきた。

 

「さっきのあの子が僕らのこと見つけてきて奇襲掛けられたんだよね。全部どうにか伸したけど」

「他の奴はのしたってことか?」

「うん、あの子だけ無駄に操作が上手くって」

 

姉さんはサクッと倒してたけどあの子だけ無駄に上手かった。

 

「ふぅん」

「明久、援護に来てくれたんじゃな!」

 

あ、秀吉だ。周りにも何人かいるけどやっぱり人数は少なめ、補習室(じごく)かな。

 

「秀吉、大丈夫?」

「うむ。戦死は免れておる。じゃが、点数はかなり厳しいところまで削られてしまったわい」

 

やっぱりもう少し早く来ればよかったかな。奇襲がここまで計算されてるとしたらDクラスも侮れないなぁ

 

「そうなの?召喚獣の様子は?」

「もうかなりヘロヘロじゃな。これ以上の戦闘は無理じゃ」

「そっか。だったら早く戻ってテストを受けた方がいいよ」

「そうじゃな。全教科を受けている時間はなさそうじゃが、一、二教科でも受けてくるとしよう」

 

そう言って秀吉は教室に向かって走っていった。前線のメンバーが全員離脱したことを確認した後、目の前のDクラスの前線メンバーと向かい合った。それなりに点数は削られてるらしく、50点以下が目立つ、秀吉たち頑張ってたんだなぁ。よし!

 

「みんな、相手は手負い、すぐに片づけるよ!!」

「「「おう!!!」」」

 





ストーカーダメ絶対。
清水さんファンの方いましたらここでお詫び申し上げます。

ちなみに明乃の中華服は趣味です。八極拳やってるって設定だとアサシン先生を思い出すんだ。

しばらくFate要素が抜けるかもしれません



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第五問

 

戦闘は佳境を迎えた。悠里自ら前線へと出張ってくるとはね。悠里の周りには(クラスでは)割と成績のいい人たちが配置されている。まあ、A、Bレベルは隠しているわけだけど。

 

「上手く取り囲んで多対一の状況を作りなさい!」

 

悠里の声が響き渡る。よし、ぼくもぼくで動くか

 

「悠里!ぼくは塚本を殺ってくる!」

「ええ、任せたわよ!」

 

ぼくは戦闘をしている人たちにまぎれて戦場を駆け抜け、部隊指揮者の塚本の所まで行った。近くまで来たところで召喚獣勝負を挑む。

 

「Fクラス、言峰明乃。塚本哲史に現国勝負を申し込む」

「くっ、試獣召喚(サモン)っ!!」

試獣召喚(サモン)

 

さっきも見た、中華服を着たぼくの召喚獣が現れる。

そして、遅れて点数が表示された。

 

現代国語

Fクラス 言峰明乃 245点

       VS

Dクラス 塚本哲司 102点

 

「なんだ、その点数は?!本当にFクラスか?!」

「いや、普通にFクラスですが何か、よそ見してる場合?」

 

動揺している塚本の召喚獣を黒鍵で刺し通した。

そして、西村先生が恒例の補習の為に塚本を補修室へ連れていく(他にも三人の生徒が引きづられていった)

 

「Dクラス塚本! 討ち取ったり!!」

 

高らかに宣言すると、士気がさらに上がった。

そこによく通る声が響き渡った。

 

「援護に来たぞ!もう大丈夫だ!皆、落ち着いて取り囲まれないように周囲を見て動け!」

「Dクラスの本隊だ!ついに動き出したぞ!」

「本隊の半分はFクラス代表坂本悠里を獲りに行け!他のメンバーは囲まれてる奴を助けるんだ!」

 

本隊がやってきたらしいDクラスの士気が戻っていく。

 

『おおー!』

 

Dクラス代表、平賀君の号令でぼくもDクラスの生徒に囲まれた。

 

「まずはコイツから討ち取るぞ! 試獣召喚(サモン)!!」

 

Dクラスの一人がそう言うと、次々と試獣召喚された。

ぼく狙いか……まあ、戦えればそれでいいんだけど

 

「何、笑ってんだよ。行くぞっ!!!」

「ま、その時にはぼくが君らを倒しているわけですが」

「「「なん……だと……」」」

 

ぼくがそう言った時には全ては終わっていた。全部の召喚獣の頭や足に黒鍵が深々と刺さっている。驚いた顔してるなぁ。愉悦愉悦……おっと、まずいね。これは

 

取り囲んでいたDクラス生徒を倒した、ぼくの目に写ったのは・・・

 

「ごめんなさいねぇ」

 

(一応)謝罪しながらDクラス代表の平賀君を下した夢路の姿だった。

とりあえずここに、Fクラスの勝利が決まった!

 

                  ☆

 

交渉は悠里さんに任せて、僕は帰宅の途についた。明日は補充テスト、正直面倒なんだけどね。そういえば鞄が微妙に軽いような気がする。

 

「あ、教科書忘れた」

 

確認してみたら教科書をごっそり忘れていた。あっちゃあ、うっかりも程がある。どうしようかな。まあ、でもノートはあるし大丈夫か。そんな感じで道路でちょっと立ち往生していたら、アーチャーと合流した。

 

「マスター、何をしているのかね?」

「アーチャー、うーん、そこまで重要事項ではないよ。買い物帰り?」

「ああ、今日はひき肉が安かったのでな」

「そっか、そういえばピーマンもあるしピーマンの肉詰めでも作ろうか」

 

ウチのじーさん意外と子供味覚で苦いの苦手だからなぁ。家じゃあ僕は滅多に作らないし。まあ、じーさんは士郎が作った物は残さず食べようとするから苦手でも食べるけど。

 

「やはり思うのだが私が夕食も作ればいいのではないかね」

「お断りします」

 

誰がうれしくて敗北感半端ない食事を毎食食べなきゃいけないのさ。そんなこんなで今日は終わった。

 

                   ☆

 

なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで

なんで『彼』が教室に戻ってこないのよ。私が、『彼女』なのに、なんでっ!!

 

 





さて、転生を敵役にしないと言ったはずなのに……どうしてこうなったorz

軽い気持ちでアンケート、閑話休題編

・どきどきデート大作戦((多分)メイン 士郎と海人)
・ブロッサム先生パロ (メイン アーチャー以下サーヴァント)
・トラぶる超時空パロ (メイン 衛宮家と言峰家)
・他アイデアあったらご自由に



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第六問

 

次の日、僕らは授業を全部使って削れた点数の補充を行った。

大方のテストが終わった後、いつものメンバーでちゃぶ台を囲む。

 

「テスト終った………」

 

南はちゃぶ台に突っ伏している。よっぽど疲れたに違いない

 

「そうじゃのう、未だに頭が痛いのじゃが気のせいかのう」

「知恵熱じゃない? 二人とも勉強してるの?」

 

僕の言葉にいち早く反応したのは南だった。

 

「アキヒサ、俺の場合問題文が読めないだけなんだからな!!」

「その言葉が耳に痛いのじゃ。昨日ばかりは勉強しようと思ったのじゃが、つい台本に目が行ってしまっての」

「そっか、演劇熱心なのはいいけど勉強もね。秀吉、英語出来るの?」

「特には出来んのじゃが」

「そっか、英語とか古典とかできたらできる役が広がりそうな感じしない? 英語をすらすら言えたら帰国子女の役とか、古典を知っていればその役だってできるだろうし」

 

何とはなしに考えただけなんだけどねと言おうとしたら秀吉は真面目に考え、はっとした表情になった。

 

「! その点は考えてなかったのう」

「……俺には縁のない話だよ」

「いや、南もそこまですらすらと喋れるなら今度は読み書きもやろうよ……こっちで生活していくなら読み書き重要だよ?」

「うっ」

 

南の表情が苦虫をつぶしたような感じになった。でもさ、南って書類とかちゃんと書けるのかなって本気で心配してるんだけど。入学式の時は「鳥田卥」とか書いてたもん。ちなみに卥って本当にある文字なんだね。思わず辞書引いちゃったよ。

そこに少し疲れた表情をした姉さんがやってきた。

 

「あれ? 何の話してるの」

「あ、姉さん。語学勉強は大事って話」

「あー、確かにね。イギリスとか嫌だ」

「そういえば高校卒業したら一年間イギリスだっけ?」

 

確かこの前そんなこと言ってた気がする。

その言葉を聞きつけた南が食いついた。

 

「え、そうなのか?!」

「そうなんだよね。勝手に決めやがって」

「やっぱりか、姉さんが海外行くなんて変だと思った」

 

言峰さんが決めたか、言峰さんのお父さんが決めたかどちらかかな?

僕らがそんなやり取りをしていると南が唐突に言いだした。

 

「俺、英語がんばる」

「いや、南はそれよりも日本語がんばりなよ。テストの点低すぎると留年とかあるし」

「うっ」

 

もう一回苦虫をつぶしたような表情の南を見て姉さんはクスリと笑っていった。

 

「まあ、島田君がんばれ?」

「お、おう」

「………これだけあからさまなのに気づかんのかお主ら」

 

                     ☆

 

次の日の朝、悠里さんが僕に言った。

 

「それじゃあ、明久Bクラスに宣戦布告してきて頂戴」

「あれ? 僕なんだ。てっきりまた姉さんかと」

 

姉さんなら例えBクラスの人が相手でも(物理で)勝てるはずだよね。

 

「明乃に関しては別の作戦のために取っておきたいのよ。Bクラスの代表が誰か知りたいし、あなたなら大丈夫でしょ?」

「うーん……了解」

 

渋々僕はBクラスに向かった。教室の前でちょっと躊躇する。

 

「いまさらながらに思った。安受けあいするべきじゃなかった」

 

そうだよね。姉さんが暴れて治まるような仕打ちが待っているわけで、武闘派じゃない僕としてはやめたい気持ちに押しつぶされそうになる。

 

「ま、考えすぎてもしょうがないか。失礼します」

 

ほぼヤケクソでBクラスに入った。いきなり入ってきた僕にクラス中の目線が集まる。逃げたくなるのをこらえて、言った。

 

「2-Fクラスの衛宮明久です。Bクラスの代表はいらっしゃいますか?」

「ここだけど。何か用事?」

 

赤紫の髪に黒の目のショートヘアの女の子がこちらへ来た。あ、サバ研の根本泰子(きょうこ)さんだ。勝負事ならどんな手でも使う外道とか言われてるけど………

 

「はい、2-Fクラスは2-Bクラスにしけ「ふざけんなよ」おっと」

 

いきなり僕に殴りかかろうとした人を避ける。その人は派手な音を立てて黒板に激突した。

 

「あー、大丈夫?」

「つまりウチのクラスに試召戦争を申し込みに来たってわけね」

 

根本さんがさらっと言う。意外だ。こういう時って上手く戦争を回避する方法を探しそうなイメージがあるのに。

 

「まあ、そういうことで」

「はぁ、気は進まないけど上位クラスの宿命か。受けてたつわ」

「ありがとうございます」

 

あっさりと交渉は終了した。ホッとしつつ教室を出ると数人のBクラスの男子生徒に囲まれた。

 

「おい、ちょっと待てよ。てめぇはここでボコボコにされるのが常識だろうが」

「おう、ちょっと面かせや」

 

なんか今、頭の中でぷちっと音がした気がする。ふぅん、この人たちも『由緒正しい』魔術師と同類なんだ。そうなんだ

 

「ふーん、底辺クラスの人間には人権はないって言うことかな。そっかそっか、Bクラスってそういう社会的な常識がない人間の集まりなんだ。へぇー」

 

僕が挑発するように言えば取り囲んでいる人たちは顔を真っ赤にさせて叫ぶ。

 

「んだと」

「どういう意味だよ」

 

言った通りの意味じゃないか

 

「大体さ、自分たちに不合理なことが起こったからって末端である使者をどうこうしたところで意味あるの? あ、そっか。ストレス発散のためか。そうなんだぁ。ま、僕にはそんな気はぜんぜんありませんが? 君たちのところの代表は竹を割ったような性格してて結構いい人って思ったけど下にいるのが君たちみたいな人じゃねぇ。それに普通にこれマスメディアとかに持っていけば大騒ぎだ。問題が露呈しないように工作するなら、まず問題を起こすなって話だよね、普通は。ま、別にこの学校のあり方に文句つける気はないけどさ。それでもここにいる人のあり方には文句をつけたいよ。一般常識くらい守れよ、お前らは人間なんだからさ。それとも人の皮を被った別の種族だったり? 成績がいいってことが正義だと思うなよ」

「「「………」」」

 

むかついた僕はそのままそこを去った。

 

                    ☆

 

Fクラスへ向かう廊下をとぼとぼ歩く。あーあー、やっちまった。と後悔しているところで肩を叩かれた。

 

「よ」

「日暮さん?」

 

そこには新学期から一緒の学年になった日暮広夢さんが居た。僕の顔を見てにやにやと笑っている。

 

「さっきの啖呵俺としては格好良かったぜ?」

「そんなことないよ。思ったことそのまま言っただけだし、ぜんぜん理論とかない感情だけだから」

 

本当に只、感情をぶちまけただけなんだよね。多分、論理的に矛盾しているところを見つけるのなんて簡単だと思うし。

 

「そこがいいんじゃないか? 『成績がいいことが正義じゃない』あれはこの学校の連中にとっては驚きというか盲点じゃないか。俺みたいな外部の人間は普通にそう思うけど、昨日一昨日、学校を見せてもらったがこの学校はそういう風に考える人間が大多数だろ。それを考えたらお前の発言が一石を投じたと言ってもいいんじゃないか?」

「どうも、とりあえず行こうか」

 

立ち話もなんだしと二人で廊下を歩く。日暮さんはにっと笑っていった。

 

「おう、俺、実は代表に頼まれてお前の様子見にきたんだよ。下手やって怪我してないか確認してこいだとさ」

「それはどうも、そういえば日向君って何してるの?」

 

日暮さんとはよく喋ってる気がするけど日向君とはあんまり喋ってない気がする。

 

「まあ、色々か 向こうの生徒会の仕事も忙しいみたいだからなー」

「え、日向君って生徒会なの?」

「おー、俺もな。雑用係だけど」

「へぇ、そうなんだ」

 

それは凄いことだと思うんだけど。

そういえば、ウチって生徒会とか……ないな

 

                     ☆

 

キーンコーンカーンコーン

その日の午後、昼休み終了のベル。すなわちBクラス戦開始の合図。

 

「よし、行ってきなさい!目指すはシステムデスクよ!」

「「イェス マム!」」

 

今回の作戦はまず敵を教室に押し込むことが目的なので、渡り廊下戦は絶対に負けられない。僕達は廊下へと駆け出した。

 

「Bクラスの連中は生きて返さないように!」

「プランAで行くぞ」

「「了解!!」」

 

今回、僕と南は前線部隊隊長だ。前回の戦闘結果と今回の教員の配置的問題でこうなったらしい。

渡り廊下に着くと、戦闘が開始される。

Fクラスのは勢いはいい。でも、戦力差が半端じゃなく、第一陣がことごとくやられていく――――ことは無かった。

 

「何で攻撃が当たらないんだよ」

「ちょ、なにやってんのよ。それあたしの召喚獣よ!」

「あ、俺の召喚獣が戦死した?!」

 

プランA 『相打ち』 つまりは敵の攻撃をかわして、別の敵に当てる。HP(てんすう)が低いなら、操作技術(テクニック)で補え。それが今回の戦闘のコンセプト……らしい。提案者は日向君、提案した後に「金の恨みは恐ろしいからな」とか言ってたけどお金関係ないよね? 日暮さんが苦笑いしてたけどあれはなんだったんだか。

 

                  ☆

 

Fクラスの教室にて、ぼくは暇を持て余していた。

 

「あー、暇?」

「何でそこで疑問形なんだ?」

「うーん、ちょっとね」

 

何となく嫌な予感がするから。よこしまな気配を感じて、日向君を引っ張り掃除用具入れの中に隠れた。その直後、誰かがどかどかと入ってくる音がした。

 

「?!」

『おー、やっぱり誰もないな』

『早くやっちまおうぜ』

 

どう考えてもウチのクラスの奴じゃないな。そう考えていると教室をごそごそと弄る音が響いてきた。やっぱりか

 

「(言峰、これは?)」

「(あー、やっぱか。Bクラスの代表はあくどい手段でも普通にする外道と評判だからな。あ、外道っても勝負事の世界においてのみだけどね)」

 

日常生活においてまで外道な親父とは全然違うよなぁ。

 

「(このまま好きにさせていいのか?)」

「(何で? ぼくと日暮君が対策を講じないとでも?)」

 

日暮君とは昨日一昨日でトラップについて語ることによって同士となったのだ。いやぁ、いつも語れる人が居ないもんだから肩身の狭い思いをしてたよ。あー、そういえば凛のとこのアサシンともよくそういう会話するなぁ。

そこにクラッカーが鳴る音がした。よっしゃ、成功!

 

「(えっと………)」

「(物理には物理でしょ。トラップなんざ常識だね。一部のメンバーに事情説明してカバンの中身を変えさせてもらったんだよ。見事に引っかかるとは)」

『おい、今なんか物音が………』

 

あ、彩夏が帰ってきた。

 

『げ』

『いや、相手は一人だ。やっちまえ!!』

 

いや、一応人への物理攻撃って禁止じゃぁ?

 

『………はぁ、試獣召喚(サモン)。お前らも早く召喚しろ、召喚しなければ敵前逃亡になるぞ?』

『ぐっ、試獣召喚(サモン)っ!!』

試獣召喚(サモン)っ!』

 

召喚獣が召喚されたようだ。召喚獣勝負になるのかな? と思っていたら。

 

『落とすぞ』

 

いきなり雷が落ちたような音がした。何事?!

 

「「((?!))」」

『ぎゃんぎゃん煩いぞおまえら』

『補習っ!!!』

『『ぎゃああああああ』』

 

見事に教室を荒らそうとした不届き者は補習室送りになった。掃除用具入れの前に誰かが立つ気配がした。

 

『明乃、そこに居るだろ?』

「さっすが彩夏だね」

『……ここか?』

 

掃除用具入れの扉が開く。ぼくらの姿を確認した彩夏がちょっと絶句した。おお、意外だね。

 

「………何やってんだ?」

「うーん、逃げ込んだらこの状況?」

 

現在ぼくと日向君はすし詰めみたいな状態になっていた。その様子を眺めて彩夏が一言

 

「はぁ、悪いな。日向、こいつが絶壁で」

「「え?」」

 

いや、何で? 絶壁が何か関係あるの?

 






えー、アンチ誠に申し訳ありませんでした。文月学園の存在や規則(ルール)は構わないけど、人個人の在り方には文句を言いたくなった……って感じですかね。

上位クラスの人間は下位クラスの使者をフルボッコにしてもいいなんて暗黙の了解にツッコミを入れてみました。

それから、根本はTS組の一人です。別にオリキャラでも何でもなくTSです。まあ、キャラがそこそこ違いますが


軽い気持ちでアンケート、閑話休題編

・どきどきデート大作戦((多分)メイン 士郎と海人) 一票
・ブロッサム先生パロ (メイン アーチャー以下サーヴァント)
・トラぶる超時空パロ (メイン 衛宮家と言峰家)
・他アイデアあったらご自由に


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第七問

 

「えっと、みんな取られたものとかないかしら?」

 

悠里が確認作業に入った。そうだよね。万が一盗まれてたらまずいし。

 

「特にはなさそうだね。まあ、一番に狙われそうな人のカバンの中身はすり替えてあったし大丈夫でしょ」

 

とりあえず代表である悠里や割と高得点保持者である夢路や鈴原さんなどのカバンの中身は本人の了承の下、トラップへとすり替えてあるし

 

「ならいいわ。それにしても根本って本当に手段を択ばないのね」

「うーん、ぼくにしてみれば、ある意味手段的には間違ってはないと思うよ? 一応『戦争』って銘打っているわけだし」

 

色なし恋無し情け有、私情の持ち込みは禁物だとおもうけど。今何故か脳裏にそんな言葉が駆け巡った。でもさ、恋とかどうやって持ち込むんだ?

 

「……(トントン)」

「あら、神海どうしたの? ……え、Cクラスが動いている?」

「………(コクコク)」

「漁夫の利を狙おうって感じかな。でも無駄にタイミングが良すぎる気がしなくはないね」

 

BとCが同盟組んだとか? いや、なくは無いんだよなぁ。神海にその辺を洗い直すように頼めばまたさっと姿が消える。やっぱり忍者なんじゃないの彼女。

別のところでは日暮君とアキが話していた。

 

「ふぅ、それにしても教室荒らそうとか流石根本さんって言うべきか」

「根本って……Bクラスの代表か?」

「うん、その人。サバイバル研究部略してサバ研の部員でエース、勝負事には全くもって抜かりがない人ってことで有名なんだよね。一部じゃ卑怯とか言われてるけど僕としては話した感じ竹を割った性格でいい人かなって思った」

 

アキがそういうならそういう人なんだろうなぁとか思っていると日暮君がちょっと考えた後に口を開いた。

 

「ふぅん、まあ話してる印象だけで人を判断するのはどうかと思うがな」

「それはそうなんだけどねー」

 

ま、確かにそうか。ランサーさんは服装がアロハだったときはチンピラみたいだったけど別にチンピラでもなかったもんなぁ……ってこれは何か違う気が

 

「さて、どうするの。代表」

「Cクラスは放っておいても平気そうね。連戦……はきついけど、どうにかなりそうだからいいわ」

「了解」

 

Cクラスの件は見逃しということになった。

 

                    ☆

 

とある空き教室に数名の生徒が集まっていた。机の上に何やらノートなどが広がっているが、勉強ではないらしい。

 

「どうなってんだよ。Fクラスが乗り込んでこねぇだと」

「原作からずれてきてんじゃねーか」

「どうするんだ」

「私に一つ考えがあるんだけどいいかしらぁ」

 

男子が多い中、一人の女子が言った。

クラスに居る時には絶対に見せないような下種な笑顔で女子生……夢路恵利はこう言った。

 

「無理矢理その状況に持ち込めばいいのよぉ」

 

                    ☆

 

「ドアと壁をうまく使うんじゃ!戦線を拡大させるでないぞ!」

 

秀吉の指示が飛ぶ。

午前九時より昨日中断されたBクラス前という位置から進軍を開始した。

今回の指示は『敵を教室内に閉じ込めろ』とのこと。

この指示を遂行しようとしてはいるものの、夢路さんが戦争に参加する気配がない。どうかしたのかな?

 

「勝負は極力単教科で挑むのじゃ!補給も念入りに行え!」

 

夢路さんの代わりにいまは秀吉が指揮をとっているけど、夢路さん本当にどうかしたのかな?

 

「左側出入り口、押し戻されています!」

 

やはり戦力差がきついな。どれだけ相打ち狙いとはいえスペースが狭いから上手いこと行かないことだってあるし、強力な個人戦力で流れを変えないと突破される可能性がある。

 

「夢路さん、左側に援護を!」

「あ、えと、そ、そのっ……」

 

夢路さんが泣きそうな顔でオロオロしている。本当に何かあったの?

 

「何かあった?」

「いえ……」

「左入口突破されそうです」

「! 行きます」

 

でも、夢路さんは急に動きを止めてうつむいてしまった。どうしたんだ? 夢路さんの見ていた方を見てみる。その先には窓際で腕を組んでこちらを見下ろす知らない男子生徒の姿があった。見えにくいけど、目を凝らして観察してみると、彼の手には何の変哲もない封筒があった。

 

「あー、なるほどね」

 

あれは夢路さんにとっては大切なものなのか、それを人質に取られた……と、でも根本さんの指示っぽくないな。とりあえずはっと

 

「夢路さん、体調が悪いなら保健室に行った方がいいよ」

「でも………」

「試召戦争はこれで終わりじゃないんだから、体調管理には気をつけてもらわないと。それにウチのクラスが夢路さんが抜けただけで負けるような軟なクラスじゃないよ。僕らを信じて……ね?」

「……ありがとう」

 

夢路さんは去っていった。よし、それじゃあ始めるか

 

「さて、須川君」

「何だ。衛宮?」

「ちょっと頼まれてくれない?」

 





裏では何かが起こっている模様


軽い気持ちでアンケート、閑話休題編

・どきどきデート大作戦((多分)メイン 士郎と海人) 二票
・ブロッサム先生パロ (メイン アーチャー以下サーヴァント)
・トラぶる超時空パロ (メイン 衛宮家と言峰家)
・他アイデアあったらご自由に


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第八問

 

待機中のFクラスの教室に紙飛行機が飛んできた。

 

「?」

「どうしたんだ」

「弟からだ」

 

紙飛行機を開けば案の定、アキからだった。これって使い魔の一種だっけ。

 

『あ、姉さん これ見てる? 見てたらちょっとばかし手伝ってほしいんだけど』

「……あのさ、この紙飛行機どうやって飛んできたんだ? 物理的な法則が無視されてる気が」

「まあ、よくあることだから気にしないで。それにしても急にどうしたのさ。なにしろと?」

 

問いかければ文字が変わる。

 

『スナイプしたい馬鹿が居るのでBクラスを遊撃してほしいなぁ……とかだめ?』

「ふむ、まあいいか。彩夏、ちょっと手伝って」

 

教室の端で本を読んでいた彩夏に声をかける。

 

「急にどういう風の吹き回しだ?」

「ま、抜けた穴は埋めるべきでしょ」

「ふん、そういうことか」

 

                   ☆

 

「くっ」

 

いくらかわしているとはいえ、長期戦ともなれば疲労も溜まってくる。かわすタイミングを逃し、止めを刺されそうになっているFクラス生の召喚獣、召喚者は諦めかけていた。その諦めを吹き飛ばすような声が響いてきた。

 

「言峰明乃、召喚勝負を申し込む! 試獣召喚(サモン)っ!!」

「比奈丘彩夏、同じく 試獣召喚(サモン)

 

そこにやってきたのは二人の少女だった。二人とも自信に満ちた笑みを浮かべている。

 

「よう、お前ら 援護に来たよ?」

「はぁ、点数の低い奴らは教室に戻れ。ここはあたしたちが引き受けた」

 

古典

Fクラス 言峰明乃 226点 & 比奈丘 彩夏 426点

 

              VS

 

Bクラス×16 平均124点

 

表示された点数にBクラス生徒は驚いた。

 

「「「なっ」」」

「さて、始めるとするか」

「底辺舐めるなよ」

 

                   ☆

 

Bクラスから少し離れたところに僕はいた。

 

「わー、やってるなぁ。姉さんたち」

 

クラスの様子はわからないけど、聞こえてくる音が姉さんが何をやっているのかを教えてくれる。

 

「衛宮君、こんなところで何を?」

「あ、先生ご足労ありがとうございます。召喚許可貰えますか?」

「えっと、ここでですか?」

 

まあ、驚くのも無理ないよね。ここには僕しかいないし。

 

「はい、試召戦争に必要なんで」

「まあ、そういうことなら」

「ありがとうございます。試獣召喚(サモン)!!」

 

ごり押しでどうにかなったことに安堵しつつ、全感覚を研ぎ澄ます。僕の召喚獣は弓を引いた。

 

「ふぅ、集中しろよ」

 

                   ☆

 

Bクラスの中を動き回るぼくの召喚獣が敵を一体一体と減らしていく。射ち漏らしは残ったメンバーがせっせと片付けてくれた。

 

「っ 試獣召喚(サモン)!!」

「ふっ、近衛がざまあないね」

 

近衛兵がみるみる間に減っていく。まあ、召喚獣と言えども急所に当てられてしまえばしょうがないよね。

 

「ふざけんなよ。笹原が勝負を挑みます。試獣召喚(サモン)!!」

「お」

 

背後から奇襲されたと少し慌てたけれどもそれよりも先に……

 

「え?」

 

相手の召喚獣の頭に矢が刺さった。ひゅー、アキってば凄い。

 

 

Bクラス 笹原和也 DEAD

 

 

近衛兵団は全滅した。

さて、話は変わるけどウチの学校の教師にはそれぞれ個性がある。

例えば、数学の木内先生は採点するスピードが早い。

例えば、世界史の田中先生は点数のつけ方が甘い。

例えば、今明久たちと一緒にいる英語の遠藤先生は、多少のことには寛容で見逃してくれるなど(アキ談)。

では、保健体育は?

保健体育は採点は早くも遅くもないし、召喚可能範囲が広くも狭くもない。

保健体育という教科の特性。それは、教科担当が体育教師であるが為の──

 

ダン、ダンッ!

 

突如現れた生徒と教師、二人分の着地音が響き渡る。

ぼくが大立ち回りをしながらこっそりと開け放った窓。

そこから屋上よりロープを使って二人の人影が飛び込み、根本の前に降り立った。

そう。保健体育の特性。それは、教科担当が体育教師であるが為の──並外れた行動力!

 

「……Fクラス、土屋神海」

「あなたまさか!」

「……Bクラス根本恭子に保健体育勝負を申し込む」

「! 寡黙なる情報屋」

 

近衛は大体ぼくらが倒した。王を守る兵士はいない。

 

「―――試獣召喚(サモン)

 

 

保健体育

 

Fクラス 土屋神海 441点

      VS

Bクラス 根本恭子 203点

 

 

Bクラス VS Fクラス、その戦いの決着がついた。

 

                  ☆

 

Bクラスとの戦争は終了した。でも交渉している雰囲気はいたって穏やかだ。

 

「はぁ、負けたわね」

「あら、あなたの指揮もなかなかのものじゃない」

 

お互いを褒め合う二人には何のしこりもないように見える。

 

「で、悠里 今回の戦争どうするのさ」

「ん? もちろん条件は飲んでもらうわよ」

 

勝つために戦争してたんだしと悠里がウインクをした。

 

「やっぱりね。そんな気はしてたわ」

「あ、なら 一つ僕から」

 

あれ?

 

「あれ、アキがこういう現場に残るなんて珍しい」

「まあね。そこにいる笹原君だっけ? 彼がやらかしたことを公開しようかと」

「?」

 

アキはそういうと笹原(近衛の一人)に笑った。妙に外道臭がするのは気のせいだと思いたい。てか、本気モードの衛宮さんに近い気がするんですけど?!

 

「いやぁ、お見事お見事。まさか代表の目を盗んで色々と卑怯なことやるとはねぇ」

「は?」

 

笹原がぽかんと口を開けた。

 

「えー、教室襲撃にCクラスへの協力斡旋、主戦力への脅迫 これ、全部君の仕業でしょ? あ、証拠はちゃんとあるからね」

 

神海に頼んで情報収集をしていたらしい。色々と証拠がゴロゴロ出てきた。

 

「………笹原、あなた」

「何でだよ。卑怯はお前の代名詞「バカ言うんじゃないわよ!! ふざけないで」

 

笹原は何を言っているんだか。彼女は確かに外道とか言われてるけどそれはサバ研での話であって日常とかの意味じゃない。それに卑怯と外道は違う気がするし。

 

「こいつがすまないことをしたわね」

「いや、構わないよ。この人の人間性を疑うだけであってあなたについては何とも思わないし。どう考えたってこいつが悪いし」

「はぁ、戦後対談以前の問題ね。これ」

 

今回の対談は長引きそうだ。

 





全盛期衛宮さんは安定の外道だと思う。


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第九問

点数補給のテストを終えた二日目の朝。悠里がみんなを集めた。

 

「まずは皆に礼を言うわ。周りの連中には不可能だと言われていたにも関わらずここまで来れたのは、他でもない皆の協力があってのこと、感謝しているわ」

「あれ、最終目標(だとうAくらす)も終わってないのに言うなんて悠里らしくない」

「そうかもね。自分でもそう思うわ。でも、これは偽らざるあたしの気持ちなの」

 

確かにFクラスがここまでくるとは誰も予想してなかったろうけどさ。てか、これって死亡フラグじゃないの?

 

「ここまで来た以上、絶対にAクラスにも勝ちたい。勝って、生き残るには勉強すればいいってもんじゃないという現実を、教師どもに突きつけるのよ!」

「おおーっ!」

「そうだーっ!」

「勉強だけじゃねぇんだーっ!」

「皆ありがとう。そして残るAクラス戦だけど、これは一騎打ちで決着をつけたいと考えているの」

 

事前に聞いていたメンバー以外はかなり驚いたらしく、教室にざわめきが広がった。

 

「どういうことだ?」

「誰と誰が一騎打ちをするんだ?」

「それで本当に勝てるのか?」

「落ち着いてちょうだい。それを今から説明するわ」

 

悠里が机をバンバンと叩いて皆を静まらせる。静まりきったところで悠里は口を開いた。

 

「やるのは当然、あたしと翔子よ」

 

クラス間の戦争を代理で行うんだから当然だけど……

 

「実力的に大丈夫なの?」

「あたしを舐めないでちょうだい」

 

悠里はいつものように笑う。でも、その笑いは何処か無茶をしているような気がした。

 

「まぁ、明乃の言うとおり翔子は強いわ。まともにやりあえば勝ち目はないかもしれない。でもね、それはDクラス戦もBクラス戦も同じだったでしょう?まともにやりあえばあたし達に勝ち目はなかった」

 

確かにそうだ。しかし現にぼく達はこうして勝ち進んできている。

 

「今回だって同じ。あたしは翔子に勝って、FクラスはAクラスを手に入れる。あたし達の勝ちは揺るがない」

 

悠里の無理なことに思える話を否定するヤツはもうこのクラスには居ない。だって悠里はその不可能を全て可能にしたんだから。

 

「あたしを信じて任せてちょうだい。過去に神童とまで言われた力を、今皆に見せてやるわ」

『おおぉーーーっ!!』

 

確認するまでもない。ぼくを含めた全員が悠里を信じている。

 

「さて、実は宣戦布告と交渉終わらせてあるのよね」

 

何時の間に?! いや、早すぎでしょ?!

 

「おかげで一騎打ちが団体戦になってしまったの。そういうわけだから頼んだわよ。みんな」

 

……マジですか。悠里ってたまに天然だよね……わけわかんなくなるくらい。さっきまで一騎打ちって言ってたのに急に団体戦になるし。

 

                   ☆

 

そんなこんなで解散となって、明日は一応登校するけど何とはなしに帰りたくなって家へと帰ってきた。ちなみに姉さんはしばらく前から教会の方へ戻っている。

 

「へぇ、一週間でそんなことがあったんだ」

「うん、今更思い出したけど新学期が始まってまだ一週間なんだよね」

 

もう何か二週間以上たっている気がしていたよ。こう、なんていうか凄く濃い時間を過ごした気がする。

 

「兄さんの学校って結構ハードなんだな」

 

うん、毎日疲労感は半端ないよ。特に普通の日、FFF団とかいう変な組織があるし。

 

「面白そうよね」

「召喚獣、一度でいいから見てみたいわ」

「シロウ、おかわりはありますか?」

 

あれ? そう言いながらお茶碗向けてるのアーチャーなんだけど。

 

「なぜ彼の名前を呼びながら私に茶碗を差し出すのかね。ほら、大盛りにしたぞ」

 

アーチャーも満更でもない顔してる?!

 

「ありがとうございます」

 

我が家は平穏でありがたいなぁ。うん、ウチの学校が無駄に濃いだけなんだろうけどね。

 

                   ☆

 

夕食も終わって自室で一息ついたぼくは明日の試召戦争について頭をめぐらしていた。

 

「うーん、どうもぼくは一対一が苦手なんだよねー」

「どうした、嬢ちゃん」

 

霊体化していたランサーさんが表に出てきた。

 

「はぁ、明日の試召戦争が団体対抗戦になってさ。どうも一対一って性に合わないんだ」

 

正直、一対大勢で不意打ちする方が得意なんだけどなぁ。

 

「ふぅん、まあ頑張れよ」

「うわっ」

 

がしがしと頭を撫でられた。まあ、うれしかったのも事実なわけですが。

 

「うん、まあ頑張るか」

 

明日はいよいよ正念場だ。

 






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第十問

 

「では、両名共準備は良いですか?」

 

Aクラスとの最後の戦いが始まった。立会人はAクラス担任かつ学年主任の高橋先生が務める。

 

「ああ」

「……問題ない」

 

団体戦の内容は五対五で教科の選択はこっちが三にあっちが二ってことになってる。

一騎打ち会場はAクラス。ボロいFクラスでは締まらないからね。

 

「それでは一人目の方、どうぞ」

「アタシから行くわ」

 

向こうからは秀吉のお姉さん。対するこちらは、

 

「ワシがやろう」

 

秀吉だ。実のお姉さんが相手なんだ。苦手科目や集中力の乱し方を知っているはずだし。

 

「……では、教科は何にしますか?」

「悠里、科目はどうするのじゃ?」

「科目選択権は使わないで、あとに残して起きたいの」

「では姉上、科目選択をしてほしいのじゃ」

「高橋先生、数学でお願いします」

 

高橋先生が機械を操作する。あれ、秀吉って数学できたっけ?

 

数学

Aクラス 木下優子 376点

      VS

Fクラス 木下秀吉 231点

 

意外と出来てた。古典や英語は気合入れてたから知ってたけど本当に意外だ。

 

「うそ、ここまでできるの?!」

「ワシだってFクラスの一員じゃ! 皆が頑張っておるのにワシだけが努力をしないわけが無かろうに。姉上、いざ尋常に勝負じゃ!!」

 

薙刀に袴姿の秀吉の召喚獣が鎧にランスを持った秀吉のお姉さんの召喚獣に向かっていく。戦況は秀吉の方がやや優勢かな?

 

「このっ」

「……」

 

秀吉のお姉さんはちょっと焦っているようだ。まあ、そうだよね。いつも格下に見てた弟がここまでやるようになってるんだから。

 

「!」

 

秀吉の召喚獣が勝負に出た。負けじとお姉さんがランスを振りかざして……

 

数学

Aクラス 木下優子 DEAD

      VS

Fクラス 木下秀吉 DEAD

 

同時に戦闘不能になった。初戦から白熱した戦いだ。両者ともに譲らないバトル、見ていた他の人たちの熱気も上がる。これは引き分けってことかな。

 

「では、初戦は引き分けです」

 

秀吉がとぼとぼと帰ってきた。どうしたんだろう?

 

「お疲れ様 秀吉、凄いじゃないか、Aクラスの人相手にあそこまでの立ち回りするなんてさ」

「明久か。いや、ワシは姉上に勝てなかったのじゃ……」

「勝った負けたじゃないと思うけど」

「しかし、ワシは!」

「次の方どうぞ」

 

あ、もう次なんだ。

 

「私が行きます。科目は物理でお願いします」

 

Fクラスからは・・・

 

「よし。頼んだわよ、明久」

 

え、なんでさ。

 

                  ☆

 

「えっと、僕?」

 

アキは凄く驚いた表情をしていた。まあ、いきなりの指名だもんね。

 

「頼んだわよ」

「えー」

「早くしてください」

「あ、はい……あ」

 

条件反射で返事をしたらしい。アキらしいと言えばアキらしいけど、それでいいの?

 

「勝たせてもらいます! 試獣召喚(サモン)!!」

「はぁ、なんでさ。試獣召喚(サモン)

 

互いの召喚獣がフィールドに出現した。Aクラスの人の召喚獣は割と普通の装備だね。対するアキは……え?

一瞬目を疑ってしまった。前の時は学ランに木刀というチンピラみたいな恰好だったのが黒コートに赤いマフラーという謎のスタイルに代わっている。それに肩に引っ掛けてるのは和弓? いや、弓のような形をした何か? とりあえず何なんだアレ

 

「じゃあ、よろしく」

「負けませんよ!」

 

物理

Aクラス 佐藤美穂 389点

      VS     

Fクラス 吉井明久 279点

 

点数自体はアキの負けだけどアキが負けるって正直あるのかな? そんなことを考えている間に戦況は動いた。

 

「てやっ」

「……召喚獣でもさ」

 

ドスっと何かが刺さる音がした。

 

「……うそ」

「頭とか首とかは急所になるらしいよ?」

 

物理

Aクラス 佐藤美穂 DEAD

      VS     

Fクラス 吉井明久 269点

 

勝負は一瞬でついていた。Aクラスの人の召喚獣の頭に矢が突き刺さっている。すなわち即死だ。アキって昔から射的とか「的に当てる」ことが得意だったけどここまでとはね。

 

「ありがとうございました」

 

静まりかえった教室にアキの声だけが響いた。

 

                   ☆

 

「まさかここまでとはね。正直予測してなかったわ」

「ん? そうかな」

 

とりあえず勝負を終えて帰ってきたのはいいんだけどなんかメンバーの空気が重い。

 

「Fクラスの勝利ですね。では三番目の方どうぞ」

「……………(スクッ)」

 

神海さんが立ち上がった。

 

「じゃ、ボクが行こうかな」

 

まぁ誰が来ても神海さんには勝てないだろうけど。

 

「一年の終わりに転校してきた工藤愛子です。よろしくね」

「教科は何にしますか?」

「…………保健体育」

「土屋さんだっけ?随分と保健体育が得意みたいだね?」

 

神海さんの噂ってここまできてるの?

 

「でも、ボクだってかなり得意なんだよ?……キミとは違って、実技で、ね♪」

 

色んな意味で問題発言だ!!

 

「そっちのキミ、吉井君だっけ? 保険体育で良かったらボクが教えてあげようか?もちろん実技で」

「あー、姉がジェノサイドるんでお断りします」

 

イリア姉さんは色んな意味で怖いからなぁこういうもの関連に関しては、一回士郎のエロ本が見つかった時の騒動と言ったら……思い返したくもない。

顔色が悪い僕を見て地雷だと感知してくれたらしく工藤さんはそれ以降話題に出してくれなくなった。よかった

 

「そろそろ召喚を開始して下さい」

「はーい。試獣召喚(サモン)っと」

「………試獣召喚(サモン)

 

神海さんの召喚獣は忍装束に小太刀の二刀流。

一方工藤さんは・・・

 

「なんだあの巨大な斧は!?」

 

武器は破壊力のありそうな巨大な斧。加えて腕輪までしている。

 

「実践派と理論派、どっちが強いか見せてあげるよ」

 

腕輪を光らせて巨大な斧に雷光をまとわせ、ありえないスピードで神海さんの召喚獣に詰め寄る。

 

「それじゃ、バイバイ。情報屋ちゃん」

「神海っ!」

 

斧が召喚獣を両断する──

 

「…………加速」

 

直後、神海さんの腕輪が輝いて召喚獣の姿がブレた。

 

「………え?」

「…………加速、終了」

 

ボソリと、神海さんがつぶやく。

一呼吸置いて、工藤さんの召喚獣が全身から血を噴き出して倒れた。

 

保険体育

Aクラス 工藤愛子 446点

      VS

Fクラス 土屋神海 572点

 

100点差か。流石神海さんだね。

 

「そ、そんな……!この、ボクが……!」

 

工藤さんが床に膝をつく。相当ショックみたいだ。

 

「……それから一言、私は別に保健体育に興味があるわけではなく人体や人格に興味があるだけ。勘違いはほどほどに」

 

神海さんが淡々と言って〆た。

 

                  ☆

 

「これで二対一ですね。次の方は?」

「あ、は、はいっ。わ「あたしだけど?」

 

こちらからは彩夏が出る。夢路は今回不参加のはずなんだけど?

 

「それなら僕が相手をしよう」

「やはり来たわね、学年次席」

 

あれが久保利光か。久保君は夢路に次ぐ学年総合三位の実力の持ち主で、振り分け試験を夢路とか彩夏とか鈴原さんがリタイアした今、二年で次席の座にいる男……実質学年四席? まあ、彩夏は興味のない科目の手抜きがなくなったらもっと上行くんだろうけど。

 

「ここが一番の心配どころね」

 

久保君と彩夏の実力はほぼ互角。負ける可能性は否定できないわけで。

 

「科目はどうしますか?」

「総合科目でお願いします」

「ちょっと待った!何を勝手に―――」

 

思わず突っ込みを入れてしまった。まだこちらは一科目しか選んでない

 

「構わねーよ」

「彩夏?」

 

大丈夫なの?

 

「それでは………」

 

高橋先生が前と同じように操作を行う。

それぞれの召喚獣が喚び出されて──一瞬で決着がついた。

 

総合科目

Aクラス 久保利光 3997点

       VS

Fクラス 比奈丘彩夏 5409点

 

「マ、マジか!?」

「いつの間にこんな実力を!?」

「この点数、霧島翔子を越えているぞ?!」

 

点数差1000オーバーか。やるねぇ、彩夏

 

「ぐっ……!比奈丘さん、どうやってそんなに強くなったんだ……?」

 

久保が悔しそうに彩夏に尋ねた。最近まで拮抗していた、いや下だったはずの実力がここまで離されたんだ。気になるだろう。

 

「どうやってって……ま、下剋上も悪くない。それ以下でもそれ以上でもないさ」

 

彩夏、かっこよく締めてるところ悪いけどそれ説明になってないんじゃ……ぼくのツッコミは空へと消えた。

 

                   ☆

 

「弱りましたね。まさかこうなるとは」

「「………」」

 

立会人だった高橋先生と代表二人が押し黙る。3勝1引き分けでFクラスのコールド勝ち。こっち的にはありがたいんだけどなぁ。

Fクラスの面々は嬉しそうにしている。だけどあの環境にAクラスの人を置いておいたら絶対に大変なことになりそうな気がするんだけど………

 

「どうするのさ、勝つには勝ったけどあれはちょっと……」

「まさかコールド勝ちできるなんて考えてなかったんだけど」

「……あれ、と言うのは?」

「あー、高橋先生はFクラスの学級環境を知らないんですか?」

 

学年主任はこの人だよね?

 

「いいえ、そう言ったことは教頭に全任しているので」

「だったら論より証拠です。ぼくたちが試召戦争起こすきっかけを見せますよ。神海」

「……準備は万端」

 

神海がAクラスのスクリーンにFクラスの写真を撮った画像を映した。あからさまに酷すぎる教室にAクラスの生徒の口からはFクラスはよくあんな環境に居られるなという声が出ていた。

 

「えー、実はですね。これ、意図的なんです。神海、比較って出せる?」

「……もちろん」

 

去年の写真と今年の写真、見比べてみれば環境が著しく変化したのは一目瞭然だ。

 

「これは……すぐに職員会議を招集します!」

「うーん、とりあえずなんですけど。AとFが入れ替わるとしたら、多分それは当然の結論だと思います。これはもう学習する環境なんかじゃないんですから」

「ええ、どちらにしても教室の改修は約束しましょう」

 

うし、言質再度ゲット!

こうして、第一次試召戦争は閉幕した。

 




怒涛の展開ですみません。


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※ザビエル道場


※メタ発言多々注意


 

??:ここからが本題? いえいえ、蛇足です

??:そんなわけで閉幕恒例……にしたい

 

『ザビエル道場!!』

 

ザビ男:どうもー、本編あまり絡まなかったザビ男だ

親友:同じく絡んだか? と聞かれると少し首をかしげたくなる親友だ

ザビ男:いや、親友は普通に絡んでたよ。主にBクラス戦前とか

親友:そうか? それだったらAクラス戦に混ざってもいいと思う

ザビ男:まあ、普通のオリキャラは絡んでなんぼだしな

親友:ま、ぶりっ子出しゃばりとか中二予備軍なクール系女子とか絡んでたけどな

ザビ男:俺たちの出番は薄いってわけか

親友:そういえば名前だけでてきたけど表だって動いていない奴らも多いよな

ザビ男:本編では絡みづらいからじゃないのか? 文月学園内はFate要素入りづらいし

親友:多分そういうことだろうな。では、話題をがらりと変えまして閑話休題編アンケート結果発表!!

ザビ男:アンケート協力ありがとう。結果は「どきどきデート大作戦」が三票、「ブロッサム先生」が一票、「トラぶる超時空」が零票で追加の数字のほうは3が一番だ

親友:途中で入った妙なほうにも投票してくれてありがとうな

ザビ男:この結果をもとに閑話休題編が出来上がるのでよろしく

親友:そして我が親友の修羅場がここに決定されたわけだ

ザビ男:修羅場断固反対!! 俺は普通にデートをする

親友:CCCのヒロインほとんどを落とした奴が何を言うか。あ、中の人(さくしゃ)CCCの嫁王√クリアしたそうだ

ザビ男:ようやく感も否めないけどまあいいか、それにしてもクリア後すぐにななぞぞに浮気するとは

親友:まあ、ちょうどクリアした前の日が発売日だったんだよ。元々ななぞぞはファンなんだから大目に見てやれ。それに実は地味にクロスオーバーってるんだからdisるな

ザビ男:ま、俺としては嫁王√が見れただけで大満足だけど

親友:そうかいそうかい

ザビ男:そんなわけでFクラス代表とAクラス代表のしこりは残ったままだが、無事に試召戦争は終了。Fクラスの環境も改善……されるのか?

親友:大丈夫だろう。教師も味方に入れたわけだし、これでだめだったら対外的に訴えるしかなくなるな

ザビ男:そんなことにならないことを祈るよ

 

??:あ、またセンパイたちだけでずるいです!

 

親友:! また感づかれたか。逃げるぞ!!

ザビ男:わかった

 

??:センパイたちなんで逃げるんですか? それにデートの修羅場お断りとか贅沢ですねぇ。うふふふふ

 

ザビ男:はっくし

親友:大丈夫か? 風邪か?





※アンケートご協力ありがとうございました。これをもって締め切りとなります。

※次回からは閑話休題です。


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閑話休題
第一問


 

その日、たまたま商店街の福引券があったので、引いてみたら……金色の球が出た。慌てて景品の表を確認して見たら。

 

「あ、特等」

「え?」

 

カランカランカランと受付の人が大きく手持ちの鐘を鳴らして周囲に聞こえるような声で言う。

 

「大当たりぃぃ、おめでとうございます。特等『温泉ペア宿泊券』です」

 

僕とアーチャーは互いの顔を見た。うん、正直二等の圧力鍋か三等の食材セットが欲しかったのに……なぁ。

 

「「なんでさ」」

 

同時に言った僕らは悪くないと思う。

 

                 ☆

 

それはいきなりのことだった。今は交換入学で他の学校に行っているため、あまり会えない友人たちから怒涛の電話による約束の取り付けが起こった。しかも全員同じ日なんだけど。

 

「え」

『だから、来週の土曜日 出かけるわよ』

 

その台詞は七回目くらいなんだけど……

 

「いや、俺 その『文句は聞かないからね!』

 

ブツッと電話が切られてしまった。受話器を持って呆然としつつ呟く。

 

「……なんでだよ」

 

もうどうしたらいいんだ……考えてもいいものが思い浮かばなかったのでちょっと出かけることにした。

 

                 ☆

 

ここはアーネンエルベ、そこで一人が頭を抱えて悩んでいた。

 

「一体どうしたら……」

 

彼は衛宮士郎、諸事情は特殊だが割愛、とりあえず衛宮士郎は悩んでいた。

そこへ猫耳の生えた謎の生物がやってきた。どうやらウェイターのようだ。

 

「お客様、相席よろしいですか」

「あ、はい」

 

目の前に誰かが座る。そして士郎の顔を見て呟いた。

 

「あ、エミヤシロウ」

「?!」

 

慌てて顔を上げる士郎、そこには茶髪にハニーブラウンの目をした学ラン姿の少年が居た。

 

                 ☆

 

えー、ここは冬木教会の懺悔室。本来ならカレン姉さんか親父かお爺さんが居るはずなんだけど今日はちょっとばかし事情がありぼくと相談者が居座っている。

 

「えー、つまり? とある男子の気を引きたくて、その人の弟をデートに誘ってみたけどその人からは何の音沙汰もなしと」

「うん」

 

しょんぼりしているところ悪いけれども、色々とツッコミ待ちですかそれ?!

 

「その前に気を引く方法をもうちょっと考えた方がよかったと思うんだけど」

「うう、だってしょうがないじゃない! 告白したところで完璧スルーなんて分かりきってるし!!」

 

問題はそこじゃないと思うんだけど。本気で呆れつつツッコミを入れる。

 

「いや、これスルー以前の問題でしょ。もうちょっと考えてみなよ、どう考えたって君が好いてるのは弟って勘違いされるフラグじゃないか」

「あ」

「先祖伝来のうっかりここに極まれり」

 

死に至るうっかりを持つ一族こと遠坂家の長女、遠坂凛 彼女は肝心要なところでうっかりをやらかしたようだ。それ完璧に勘違いされてるか、もしくは全然知らされてないかすると思うんだけど。

 

                ☆

 

衛宮邸にて

 

「え、温泉旅行?」

 

商店街での買い物を終えて帰ってきた僕はじーさんに温泉のチケットを渡してそう言った。じーさんは目を丸くする。

 

「うん、じーさんとアイリさんの二人で行ってきたら」

「でもいいの? 貴方が当てたんでしょう?」

「普通に学校あるし、それにたまには親孝行させてよ」

「「………」」

 

いつも色々とお世話になっているのに、こんなことでしか親孝行できないしと言うと二人が顔を見合わせた。

 

「え、うわっ」

 

急に二人が抱き着いてきた?! 抱きしめたまま二人が言う。

 

「うん、うん、行ってくるよ。お土産いっぱい買ってくるから」

「ええ、私こんなにいい息子が持てて幸せ者ね」

 

抱きしめてくれるのはすごくうれしいんだけど………

 

「(首が締まりそう)」

 

                ☆

 

アーネンエルベにて、衛宮士郎と偶然相席になった俺、日向海人は初対面(俺は一方的に知ってた。事情は割愛)にもかかわらず話が弾んで、何で衛宮士郎が悩んでいるのかという話になった。

 

「えっと、つまり……デートが重なったと」

「うん、そういうことなんだ」

「そっか、俺も何故か出かける用事が重複してて……せっかくのデートが……」

 

せっかく彼女の好きそうなオペラのチケットを取ったのに……

 

「もうどうしたらいいんだろう」

「腹をくくるしかないのかな」

 

色々怖いけど、トオサカとかエリザとかメルトとかリップとか……あれ? 死亡フラグしか見えないんだけど?! 何故か自分の惨殺死体を幻視した気がした。

 

「くくるしかないのか」

 

衛宮士郎も似たような表情をしている。うわぁ………

 

「下手に断って酷い目に遭うのも勘弁……」

 

いや、日付さえ変えてもらえればそれでいいんだよな。うん、そうなんだけどそれが一番大変なんだよな。

 

「じゃあ一体どうすればいいんだよ」

「こうなったら」

 

 

1.全員とデート

 

2.メインヒロインとデート

 

3.誠心誠意をこめてお断りする ←





アンケートありがとうございました。
うん、まさかマジでこうなるとは思わなかったんだよ。普通に1か2が来ると思ってた。

ちなみになのですが、まだカップリングは(海人を除き)色々と決まってません。恋愛要素入れるにしても緩くなること請け合いですが希望のカップリングとかあればどうぞ。


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第二問

※メタ発言注意


 

アーネンエルベの一席、そこでフラグメイカーたちの邂逅が行われていた。先に決意をしたのはシリーズ内一番まともな主人公と呼ばれたイケメン魂EXの彼だった。

 

「……俺、やっぱり断ってくる」

 

目に決意が満ちている。それを見てエロゲ主人公の方は驚いた。

 

「え、なんでだ?」

「……どれだけ修羅場になろうとも大切な人とのデート潰したくない。色々話聞いてくれてありがとうな、エミヤ」

 

颯爽と去っていく海人、その背中がすべてを物語って……いるといいなぁ。

 

「あ、うん……」

 

普通に返事をしてから違和感に気付く。

 

「俺、名前 名乗ったっけ?」

 

                   ☆

 

アーネンエルベを出た俺はすぐに一番交渉が楽そうな人物に電話をかけた。

 

「あ、トオサカ 今、時間ある?」

 

トオサカリン、生徒会の副会長であり滅多なことでは暴走し……ないはずの常識人? 特技はゲリラ戦法とハッキング、強力なファイヤーウォールほど燃える根っからのハッカーだ。ついでに言うなら拝金主義者、お金とかで意外と釣れる……地味にちょろい。

 

『ん? どうしたのよ。あ、もしかして土曜日の件?』

「うん、その日彼女と約束があってさ……日にち変えてもらえないか?」

 

流石トオサカ察しがいい。このまま交渉成立するといいのだが……

 

『あー、流石ウミ 嫁のためならえんやらこんやってやつ?』

「まあ、そういうことで」

 

と言うよりもこっちに来てから初デートなんだけど。

 

『わかったわ。しょうがないわねー。ま、勢いで話しちゃったあたしもあたしね。生徒会のメンバーにはあたしから伝えるわ』

「え、どういうこと?」

 

生徒会メンバー全員か? でも普通にレオとかラニとかユリウスとかから連絡きたけど……まさか

 

『ん、言ってなかった? 生徒会のメンバーで遊びに行きましょうって話だったんだけど』

「……トオサカ、全然それ聞いてない。全員から連絡来て、それぞれ別の話だと思った」

『あ、そうなの? はぁ、だから誰かが代表すればいいって言ったのに』

「そういえばリップとかメルトとかエリザとかから連絡来たんだけどそれもか?」

 

このまま一挙解決も夢じゃないのか?! でも、物事がそう簡単に俺の期待通りに事は進むわけもない。

 

『え、なによそれ知らないわよ?!』

「そっか……トオサカ、俺逝ってくる」

 

惨殺死体になりかけたとしても、とりあえずデートには行きたいな。

 

『ちょ、誤字半端ないわよ?! ウミ?! ウミ!!』

 

                   ☆

 

アーネンエルベに独り残された衛宮士郎の携帯が鳴り響く。士郎が出てみればそれはデートに誘ってきた一人、遠坂凛だった。

 

『あ、もしもし衛宮君?』

「ん、遠坂か?」

『今ちょっと時間あるかしら』

「おう、大丈夫だぞ」

 

基本的にお人好しの士郎は普通に返事をする。

 

『今度の土曜日の件なんだけどね』

「あ、あれか……」

 

今、絶賛悩み中の所を突かれて思わず暗くなる士郎、しかし凛の発言に驚いて冷静になる。

 

『ちょっと事情があるから無かったことにしてほしいの』

「あれ、どうしたんだ?」

『うぅ、い、色々とあったの!! そういうわけだからもう切る!!』

 

ブツッと乱暴に電話が切れた。切れた携帯を眺めながら士郎は呟く。

 

「……なんだったんだ?」

 

                  ☆

 

教会の懺悔室、凛がぼくの携帯を使って士郎に連絡を取っていた。ちなみに凛の携帯は買った初日に爆発したらしい。なんでかな? ぼくの携帯は爆発しなくてよかった。連絡が終わったらしく凛がテーブルに突っ伏した。

 

「……はぁ」

「よくできました。てか、凛ってテンプレ的なツンデレだよね」

「何よそれ!」

「いやいや、何でもないよ。で、好きな人をデートに誘ってみるの?」

 

好きな人が誰かようやく分かったよ、と言うよりもどれくらい前から好きだったのさ。

あーうーとかやってる凛を見ながら若干にやにやしているとそこにノックもしないでランサーさんが入ってきた。

 

「よー、嬢ちゃんたち何話してんだ?」

「あ」

 

何という間の悪さ……いや、運の無さか。うん、そうだったよね。幸運のステータス塗りつぶされてたし。凛は会話を聞かれたと勘違いして顔を真っ赤にさせている。

 

「この、間が悪すぎよっ!!!」

「うぉ?!」

 

あ、ガトリングガントが飛んだ。ランサーさん上手く避けてるけど、うわぁ廊下が……誰が修理すると思ってるのさ。

 

「……教会で暴れないでよ」

 

ぼくの呟きは空へと消えた。

 





『遠坂凛』編終了

ザビ男こと日向海人は上手くデートてか誘いを断ってデートにこぎつけられるのか、はたまたキレた女子に惨殺死体(と言う名の再起不能なまでのベコベコ)にされるのか、こうご期待。

士郎に関してはどうしたらいいのさ。士桜も捨てがたいし士剣も捨てがたいんですけど

弓凛も好きですが今作では無いかな。うん、無いんです。

どうでもいい話、中の人的には主剣とか主狐とか主桜とかも好き。弓女主は微妙なんだよね。ま、本命は主剣ですが

何が言いたいかって? こっちが優柔不断なのでカップリング希望募集します。そういうことです。


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第三問

 

とあるファーストフード店にて、俺は長い淡い紫色の髪と赤いリボンがチャームポイントの後輩と一緒にテーブルについていた。

 

「えっと、悪いな。サクラ」

「いえ、全然構いませんよ。先輩」

 

後輩の名前はマトウサクラ、一番交渉が難しそうな『彼女たち』との交渉のために手伝ってもらおうと思って呼びだした。

 

「うん、日にちさえどうにかなればいいんだ。日にちさえ」

 

うん、出かけること自体は問題じゃないんだ。そのことを説明するとサクラは納得したらしく頷いてくれた。

 

「そうだったんですか、じゃあBB達には私から説明しておきますね」

「本当にお願いします」

 

机に頭をぶつけそうになるくらいまで頭を下げる。正直土下座してもいいと思うんだ。これで済むなら一番安い。

 

「そ、そこまでしなくても大丈夫ですよ。私と先輩の仲じゃないですか」

「本当にごめんな。埋め合わせはきっちりするつもりだから」

 

いつもの癖でサクラの頭を撫でる。心なしか彼女の頬が赤い気がするけど まあ、気のせいだろう。

 

「うぅ……だから誑しなんて言われちゃうんですよ」

「?」

 

                  ☆

 

大乱闘(と言う名の一方的な攻撃)のせいで冬木教会の廊下は穴だらけになってしまった。そこへ桜ちゃんがやってきた。雁夜さんが有名和菓子店の和菓子を手に入れたのでおすそ分けしに来てくれた。うん、和菓子食べるの基本的にぼくだけだからぼくしか得をしないんだよね。それから、廊下の惨状を見て目を丸くする桜ちゃんを引っ張って無事だった懺悔室に入る。

それからとりあえずお茶を入れて事情を説明した。

 

「えっと、それであんな状況に?」

「うん、今ランサーさんと凛に修復やってもらってるところ」

 

うん、主な原因は凛だよね。あれ

 

「そうなんですか、それにしても姉さんの好きな人がまさか先輩じゃなかったなんて」

 

事の経緯を伝えるうえで大切だったので彼女にも伝えた。桜ちゃん的には恋の鞘当ての相手が減って万々歳ってところかな?

 

「だよね。絶妙なツンデレで気が付かなかったよ」

「正確に言うとうっかりとか間が悪いとかじゃないですか?」

 

桜ちゃんが的確なことを言ってきた。そうだけどさ、ちょっとくらい気は使おうよ。

 

「かもね。そういえば桜ちゃんは士郎とデートとかしたくないの?」

 

からかい半分言ってみれば桜ちゃんがちょっとぐぬぬって感じの顔をした。お、図星かな?

 

「うぐ、確かに先輩の周りには素敵な女性がいっぱいですからね」

 

うん、士郎の周りの女子率は異常だよねー。

 

「ま、とりあえず気が付かせるのが当面の目標とか?」

 

それくらいかなーなんて思って質問してみれば桜ちゃんは笑ってさらっと言った。

 

「いえ、今度の土曜日に出かける予定です」

「え?」

 

思わずお茶を飲もうとしていた手が止まる。今なんて言った?

 

「こうなったら外堀埋めて行こうかなって」

 

……うん、あのさ。

 

「流石マキリの一族、初恋拗らせるか、黒くなるかの二択なのか」(ぼそっ

「? 何か言いました」

「ううん、何でもないよ」

 

                  ☆

 

ファーストフード店を出て帰り道を歩く。どうにか『彼女たち』への交渉は出来そうだ。安心しながら一緒の方向に帰るサクラと談笑していると。

 

「「あ」」

「あ、センパイじゃないですか」

 

サクラの双子の妹、本名は秘密だがあだ名がBBなのでBBと呼ぶことにする。BBと遭遇した。ヤバイ、交渉も何もやってない状態でこうなるなんて……

 

「何で顔をひきつらせてるんです?」

「(終わった)」

 

軽く絶望していたけど。この後、サクラのおかげで何とかなった。サクラには本当に感謝してもしきれないよ。

 





『間桐桜』編、終了?

ごめんBB、キャラを完璧に読み込めてないんだ。それからリップとメルトは出番あるのかな……orz せっかくCCC設定なのに色々と残念すぎる



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第四問

 

実家の簡易研究室で僕はちょっと考え込んでいた。

 

「ふむ、どうしよう」

「マスター?」

 

紅茶を淹れてきてくれたアーチャーが僕の呟きに反応した。うん、正直聞いてほしかったんだよね。

 

「えっと、ここに試薬AとBがあります。どっち混ぜよう」

 

悩みどころはそこだった。Aを混ぜてもBを混ぜても(多分)何らかの効果は得られそうだけど、気まぐれで決めるわけにもいかないし………幸運Aならどうにかできるって思ったんだ。

 

「それは自分で決めるべきではないのかね?」

「………正論ありがとう」

 

そんな話をしていると襖を叩く音がした。

 

「?」

 

                  ☆

 

さて、相談を持ちかけてきた士郎にアーチャーがお茶を入れてくるとのことで離脱、基本的に相談なんてしてこない士郎が何の相談かなって思ったら。

 

「どうしろってんだよ」

「士郎、正直に言わせてもらうけど……自業自得だよね。あれほどNOと言える人間になれってあれほど言ったよね?!」

 

うん、男としては羨ましいけど、兄としてはちょっとへこみたくなる相談だった。いや、普段からちゃんと断るように教えてきたはずなのに僕の苦労はなんだったのか。

 

「いや、だって……」

「ウチに関わる女子って無駄に押しが強いことは認めるけどさー、少しぐらい断る努力しなよ。で? 誰と約束してるの?」

 

詳しいこと知らないと対処できないし、って何で僕は協力しようとしてるんだろう。

 

「あ、えっと桜とイリヤにそれから藤ねぇとセイバー、あと……遠坂はさっき断られて……っと」

「……ふーん そっか、とりあえず要件は?」

 

何か凛の名前が出てきたときにちょっとむかついたけどとりあえず置いておこう。と言うよりも多いな?! 普通に二人か三人だと思ったよ?!

 

「桜が映画見に行きたいでイリヤは買い物でセイバーは最近できたビュッフェ食べに行きたいって、藤ねぇは……爺さんに何か買いたいと」

 

大体の状況は把握……できているわけじゃないけどどうにかできそうなメンバーはわかった。

 

「じゃあ、とりあえずタイガーは後回し、父の日に何か買おうって話を付ければ大丈夫でしょ。イリア姉についてはこっちでどうにかするよ。ビュッフェは……ランスロットさんにでも回すか」

「いや、二人でいくから俺が見張り役」

 

何で円卓の騎士って腹ペコが多いんだろう。伝記とか見てるとかっこいいのになぁ。円卓の騎士

 

「……あちゃあ、じゃあ……気の毒っちゃ気の毒だけど雁夜さんに応援頼むか。てわけで後輩(さくら)ちゃんと出かけてくればいいんじゃ?」

「でも……」

 

士郎が渋る。他の人の約束を無下にするのに罪悪感があるらしい。

 

「でももしかしもあるか!! この女ったらしは!!」

「うぅ」

 

何でウチの弟は女の子に好かれるのでしょうか?

 

                   ☆

 

俺が兄さんに怒られていると兄さんのサーヴァント アーチャーが入ってきた。手には俺の湯飲みと兄さんの湯飲みを乗せた盆がある。

 

「マスター、もうそろそろいいんじゃないか?」

「うるさいな。最終進化形が 最近近所のお姉さん方から人気だそうじゃないか」

 

アーチャーが割って入ろうとすると兄さんは切れてたらしく、いい笑顔(こういう時は無駄に爺さんそっくりになる)でそう言った。兄さんの発言でアーチャーが慌てる。

 

「っ マスター、それをいったい何処で」

「いやぁ、ごみ出ししてたら色々と噂がねー フェミニストなのもいいけど少しは自重しろっての」

 

あ、違う。兄さん、普通にちょっと(色々と)嫉妬してるだけだ。怒ってすらないし……アーチャーはズルイな。兄さんが普通に感情向けてくるのって珍しいし。

 

「………」

「衛宮士郎、なぜ貴様まで私を睨む」

「いや、なんでもないけど」

 

そうやり取りしてると兄さんが俺とアーチャーにびしっと指を向ける。兄さん、

 

「とりあえず、彼女なしにとっちゃものすごく羨ましい環境だよね二人とも、リア充マジで爆散しろ」

「マスター?! なんでさ」

「兄さん?! なんでさ」

 

俺がこいつと声が重なってしまったのも無理はないだろう。

 

                   ☆

 

「ってわけなんだけど、悪い この通りだから日にちだけでもずらせないか」

 

サクラと別れてしばらくして、偶然にも最後の交渉相手と鉢合わせした。

自称『学園のアイドル』エリザ、学校内きっての二大ドSで有名……本人は知らないけど。

これはついてると思って事情を説明したわけだが、彼女の印象は悪かったようだ。

 

「何よそれ、結局アンタにとって幸せなだけじゃない」

「っ だけど!」

 

何時も右も左もわからない世界で一緒に居てくれた彼女、彼女と一緒に居ることが俺にできる一番のことだから……諦めたくないんだよ。そうエリザに伝えれば頬を少し赤くして彼女は言った。

 

「……ふんっ、いいわよ。でも」

「?」

 

俺の目を覗き込む。?

 

「日にちは今週の土曜にするわ」

「? それでいいなら」

「そう? なら交渉成立よ」

 

 





ザビ男、それをフラグって言うんだよ。うん、さて『彼女』と無事にデートできるのか

それから士郎が微妙にブラコン化した件、なんでさ
あとアーチャーの幸運が判明、Aです。EじゃなくてAです。たまには運のいいアーチャーが居てもいいと思うんだよね。

ランサー? 彼は悪運EXじゃないですか、マスターが麻婆じゃないだけましな気がするし


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第五問

 

その週の土曜日、ちょっとした用事でアーチャーと一緒に出掛けていたんだけどふと聞き覚えのある声がした気がして横を向けば、

 

「で? 何処に行くんだ。エリザ」

「もちろんカラオケよ。アタシの美声とことんまで見せつけるんだから!!」

「………」

 

茶色の髪にハニーブラウンの目、それに見覚えのある学ラン、日向君だ。隣にはピンクの髪に赤い服が特徴的な女の子が居る。彼女とか?

 

「あれって……」

「ん? どうした、マスター」

「いや、学校の友達だと思ってさ」

 

日向君って彼女いるんだなぁとか思ってたら聞きたくない声がした。

 

「諸君。ここはどこだ?」

「「「「最後の審判を下す法廷だ」」」」

「異端者には?」

「「「「死の鉄槌を!」」」」

「男とは」

「「「「愛を捨て、哀に生きるもの!」」」」

「宜しい。これより、FFF団による異端審問会を開催する」

 

ナニヤッテンダヨ。

Fクラス名物のFFF団が現れた。一応今日休日だよね?!

 

「何だこいつら、エリザ逃げるぞ」

「え、ちょっと きゃっ」

 

ピンクの髪の彼女を引っ張って日向君は去っていった。

 

「アレも級友か?」

「……ソンナワケナイダロー」

 

あんなのがクラスメイトとか……泣きたい。

 

「大丈夫か? マスター」

 

                    ☆

 

一週間過ぎて、次の土曜日 僕らは双眼鏡片手にちょっと高い所に居た……正確に言うと二階建てのビルの上ね。

 

『えっと、待ったか 桜』

『そんなことないですよ。先輩』

 

双眼鏡で見ながら姉さんが呟く。私服姿ではなくカソック姿なのは戦いを予見してるからかな?

 

「何が楽しくて人のデート監視してるんだろうなぁ。ぼくら」

「うん、それは言わない方がいいよ。まさかのFFF団襲撃の可能性ありとか……いい加減にしろ」

 

結局あの後、日向君デートできたのかな? ちなみに僕も弓武装済みだよ。なんだろう、普通に奴らが嗅ぎ付けそうで怖いんだよね。

 

『あ』

『奏者よ、待たせたな。うむ、参ろうか』

『うん』

 

ちょっと違うところからさらに見知った声と姿を見つけた。

 

「あれ? 日向君だ」

「そうなんだ。あの子、彼女かな?」

「だったらこの前のピンクの髪の人誰だったんだろう?」

 

そうこうしていると路地裏に見覚えのある覆面集団を発見した。うわぁ、やっぱり出たよ。

 

『諸君。ここはどこだ?』

『『『『最後の審判を下す法廷だ』』』』

『異端者には?』

『『『『死の鉄槌を!』』』』

『男とは』

『『『『愛を捨て、哀に生きるもの!』』』』

『宜しい。これより、FFF団による異端審問会を開催する』

 

武器を持ってそのまま日向君やその辺に居るカップルへと突撃しようとするFFF団

 

「「あ」」

 

これはヤバい、色んな意味で。僕と姉さんは顔を見合わせた。

 

「「よし、片付けますか」」

 

                 ☆

 

覆面被ったクラスメイト達とバトっていると偶然通りかかったであろうランサーさんがこちらへと声をかけてきた。ナイスタイミング……とは言い切れない気が凄いする。

 

「お、嬢ちゃんじゃねーか何やってんだ?」

「あ、ランサーさん! 危ない!!」

 

ぼくと喋っているのを見たせいだろう奴らの殺気は半端ないものへとなっていた。

 

「「「「死死死死死死」」」」

 

ランサーさんに特攻をかけてくるがすぐにいなされる。

 

「っと、何だ?」

「理由なんて話すのは後! これ使って!!」

 

アキからもらった如意棒(もどき)をランサーさんに投げる。ボールペンほどの長さだったそれはランサーさんの手に収まった瞬間、槍ほどの長さへと変わった。

 

「お、結構いい得物じゃねーか」

「とりあえずこいつらぼこってからね!! ランサー、頼んだよ!!」

「了解した!」

 

                 ☆

 

ビルの屋上から状況を観察する。姉さんはうまい具合に立ちまわってくれているようだ。

 

「マスター、こんなところで何をやっているのかね?」

「狙撃、それ以上に何か?」

 

何故かここにやってきたアーチャーに言い返す。なんていうか何でここに居るの?

 

「いや、私が言うのもなんだが弓で射れる範囲なんてたかが知れているぞ」

「大丈夫だよ。どうにかなるから」

 

どうにかしないといけないだけだけどね。伊達に特技射的とか名乗ってないよ?

 

「それでどうにかなったとしたら驚きだぞ」

「どうにかしなくちゃなんだよね。級友が近隣住民に迷惑かけないためにも、待ち合わせに遅れないためにもね」

 

僕は今イリア姉さん待たせてるんだよ。とっとと終わらせないと

 

                 ☆

 

路地裏に転がる死屍累々(死んでないけど)を眺める。下手な化け物よりも強かった。

 

「ふぅ、どうにかなった」

「派手に暴れたな。嬢ちゃん」

 

お疲れさんとぼくの頭を撫でてきた。最近よく頭を撫でられる気がするけど気のせいか。

 

「お疲れ様、ランサーさん」

「どうってことねーよ。ところで嬢ちゃんこれから暇か?」

 

暇……そういえば悠里たちと遊ぶ約束も仕事もないかな。

 

「? まあ、特に予定はないけど」

「何か奢ってやるよ」

「あ、本当?」

「おう」

 

やったね。そうなったら茶房に出発だ!

 

                 ☆

 

某ショッピングモール、そこに白い髪に赤い目の見た目は幼い女の子がすでに居た。僕の姿を見つけると、駆け寄ってきてちょっと怒りだした。

 

「遅いわよ! アキヒサ」

「ごめんごめん、イリア姉さん待った?」

 

顔を膨らませて、イリア姉は怒っていた。

 

「待ってるに決まってるわよ! 淑女(レディー)を待たせた代償はどうするつもりかしら?」

「……はぁ、申し訳ございませんでしたお嬢様(レディー) 何なりとお申し付けくださいませ?」

 

イリア姉さんの機嫌取りが先かな?

 

「よろしい、あっちに行くわよ!」

「はい」

 

                 ☆

 

俺は桜と映画を見て、映画館から出てきた。それにしてもツッコミどころの多い映画だった。

 

「桜、映画面白かったか?」

「はい、先輩は?」

「あー、楽しむよりも先に何かツッコミの方が……」

「ふふっ、確かにあの奇抜な設定は突っ込みどころ満載ですよね」

 

普通に恋愛物かと思ったらホラーにもなって、バトルアクション物にもなって、何であんな映画選んだんだろう。人気だからって選んだのが間違いな気がする……

 

「だよな。そういえば何となく兄さん思い出したんだよな。主人公が町の中を誰かを探して走るシーンとか……」

 

ふと、昔のことを思い出した。火事で崩れていく家、それを呆然と眺めていた俺を引っ張ってくれたのは兄さんだった。誰かを探すように必死に声を上げてた。今なら誰を探してたのかわかる気がする………俺を見つけたせいで兄さんは後悔してないだろうか

 

「先輩?」

「うん?」

 

あ、まずい。意識飛んでた

 

「何か考え事ですか?」

「あー、ちょっとな」

「?」

「なんでもないさ」

「………そうですか」

 

                 ☆

 

すっかり日の暮れたの街、俺は彼女と一緒に歩いていた。無事に一緒にオペラを見れた。よかったよ

 

「……奏者よ。今宵は楽しかったぞ」

「そっか、よかった」

「だがしかし、余は寂しい」

 

彼女は拗ねたような顔をする。俺は何かやらかしていただろうか?

 

「?」

「なっ、気づいていなかったのか。奏者よ、先週の土曜日にランサーと出かけていたではないか! この浮気者っ!!」

「っ あれは」

 

説明しようとする前に彼女の方が口を開く。

 

「いくら余が寛大であるとはいえ、度が過ぎるぞ!!」

「ネロっ」

 

それまでの経緯を説明した。約束がいきなり降ってわいたかのようになって、約束を守れなくなりそうになったこと。それをどうにかするために交渉してたこと、その過程で先にエリザと出かけることになったこと。それでも彼女との約束を守りたかったこと。俺が言い終って彼女の表情を見てみたら彼女は顔を真っ赤にしていた。

 

「っ その目はずるいぞ」

 

? 俺は何かしただろうか?

                 ☆

 

買ったものを片手に持ちながら片方の手をイリア姉とつなぐ。イリア姉は買い物中も手をつなぐことを要求してきた。これ、学校の人に見られたらまずいかもなぁとは思いつつも普通にできていることに家族ってこういうものだよなぁとかちょっと感動した。

 

「イリア姉さん、楽しかった?」

「ま、アキヒサのエスコートにしては上出来ね」

「それはよかったよ。士郎と一緒に来れなくて残念だった?」

「そうねぇ。まあ、イリヤはお姉ちゃんなんだし、その辺は我慢するわよ」

 

澄まして言ってるけど、嘘なのバレバレだよ?

 

「そっか、本音は?」

「彼女とか士郎にはまだ早いわよ!! ってところかしら」

 

イリア姉の意見に少し笑ってしまう。確かにかな?

 

「ふふっ、僕もちょっと同感だなぁ。何人ひっかけてくれば気が済むのやら」

「その辺は士郎に任せましょう? だってアタシたちはお姉ちゃんとお兄ちゃんなんだし」

「それもそっか」

 

見守ってあげるのも「きょうだい」の役目よねーと言っているイリア姉が僕の顔を見て言った。

 

「そういえば、アキヒサって気になる女の子とかいないの?」

「うーん、特には居ないかな。僕のことを好きになってくれる優しい人なんて、居ないだろうし」

 

そんなすごい人、一生いないと思うなぁ。

 

「えー、つまんないの」

「居てくれたとしたらそれは凄いと思うなぁ」

「そこまで言っちゃう?」

「うん」

 

だって僕はモテるわけないじゃん。そう言ったらイリア姉の顔がちょっと驚いたようになった。

 

                  ☆

 

夕暮れの街を歩く。今日はランサーさんと一緒に色んなところを回った。この町に来て数か月しかたっていないはずの彼は、ぼくらでも知らない穴場を結構知っていて見るところ見ることろ新鮮で仕方がなかった。

 

「ランサーさん、今日は楽しかったよ。ありがとう」

「そりゃよかったよ」

 





怒涛の展開ですみませんでした。

デートの中身? それは妄想で補っておいてください。甘い展開なんて自分では書けないです。
そういえばプラズマ・イリヤの脚本、井上さんでしたね。

プライリ×バカテスとか変な妄想しました。でもプライリ真面目に知らなかったんだぜorz


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※ザビエル道場

※メタ発言注意


??:えっと、デート無事に終了したよ?

??:そんなわけで毎度おなじみ

 

『ザビエル道場』!!

 

長男:えっと、何故か謎空間に放り込まれた長男だよ? どこの家の長男かはご想像にお任せします

親友:ザビ男呼んでくるつもりだったのにうっかり長男呼んじまった親友だぜ

長男:ぶっちゃけ今回サブキャラじゃ無かったけ? 僕

親友:いや、影で活躍するヒーローだったぜ? それに幸運A+も仕事してたし

長男:いやいや、それでもザビエル道場の名に偽りありだよねこれ?!

親友:まーいいじゃねーか、今回見事に女たらし共の後処理って感じだったし?

長男:それ言われると痛いなぁ。弟、何であそこまで女の子ひっかけてくる天才なの?

親友:だよなー。俺の親友もそうだしというより実はお宅の弟よりも性質が悪いし

長男:どうして?

親友:本命居るのにホイホイ色んな女の子ひっかけてくるとはなー

長男:親友さんは?

親友:えー、ナイナイ 悪いけど俺にとってはあいつは親友以上の何物でもないし

長男:そっか

親友:おたくは?

長男:えー、僕が女の子に好かれるわけないじゃないか

親友:それなりにイケメンだと思うけどな?

長男:えー、人付き合いよりは魔術研究に没頭する系男子が人に好かれるとでも?

親友:普通にありだと思うぜ? 正義の味方目指してる系男子よりはましだ

長男:それって何か赤弓や義父や弟に恨みでもある?

親友:いや、無いけど?

長男:正直恨みがあるようにしか見えないけど………

親友:俺が恨みあるのは紅茶だけだから気にするな

長男:どっちにしろじゃないか?!

 

??:うあぁあああああ

 

親友・長男:?!

 

べしゃ

 

??:いたたた……ここどこ?

長男:ねえさああああん?!

親友:何でいるんだよ

次女:あれ? 二人とも何でいるの?

親友:こっちの台詞だ!

長男:同じく、ここに来れるのって一応参加資格のある人だよね?

親友:ああ、俺と親友と今回臨時のお前しか無理のはず

次女:?? なんかさっきブロッサムちゃんにそっくりな人に背中を押されて空中ダイブしたんだけど

親友・長男:………

親友:とっとと終わらせるぞ

長男:あい

次女:???

 

長男:姉さん自己紹介

次女:えっ?! あ、えっととある神父一家の次女だよ。経緯はさっきの通り落とされました。ぼくなんかやらかしたかな?

親友:どう考えたってあんたのせいじゃないから安心しな、あの真っ黒娘ェ

長男:字数稼ぎもう少しなんだけどなぁ

親友:それじゃあ、ここでお開きにするってのはどうだ

長男:ん? それもいいかも

次女:いや、それぼく落とされ損だよね?!

長男:じゃあねー

親友:悪いな。俺は一目散に逃げたいんだよ

 

 



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清涼祭編
第一問


 

桜色の花びらが坂道から徐々に姿を消し、代わりに新緑が芽吹き始めたこの季節。

僕らの通う文月学園では、新学年最初の行事である『清涼祭』の準備が始まった。

お化け屋敷の為に教室の改造を始めるクラス。焼そばの為に調理器具を手配するクラス。『試験召喚システム』について提示を行うクラス。学園祭準備の為のLHRの時間は、どの教室を見ても活気が溢れている。

そして、我らがFクラスはというと──

 

「いくぞ、近藤っ!」

「勝負だ!」

 

校庭で野球をして遊んでいた。それを教室から眺めながら一言、

 

「真面目に会議しようって気ないのかな? せっかくここまで良い設備なんだし」

 

Aクラスに勝利をおさめた僕らFクラスは設備の交換を実行した。ちなみにだけど元Fクラスの教室は完全に改修したらしい、それから今回の騒動で色々と確認してみたら教頭の周囲がキナ臭かったらしく、洗ってみたら色々と酷いことになっていて、結局教頭がクビになったそうだ。まあ、あんまり僕たちには関係は無いけど。

 

「はぁ、バカは放っておいて勝手に会議始めるわよ」

「そうしようか」

 

会議は粛々と進んでいく。基本的にふざける人は全員外に行ってるしね。

秀吉から劇という意見が出て、夢路さんから喫茶店という意見が出た。黒板に並べて書いてから悠里さんと姉さんが悩みだす。

 

「ふむ、喫茶店か……何か付加価値つけないと売れないわよコレ」

「だよね。演劇は正直無理だし」

「なぜじゃ?!」

 

秀吉からツッコミが入った。でもさ、

 

「秀吉はともかく、他は演劇慣れしてる人なんて居ないんじゃない?」

「むっ」

 

多分居ないと思うんだけど。後ろで話を聞いてた日暮さんが僕の肩を叩く。

 

「ところでだけどさ」

「どうかしたの日暮さん」

 

日暮さんの方を向いて聞いた。何か割と真面目な表情だけどどうしたんだろう?

 

「あいつら帰ってくるまでに決めていいのか?」

「いいのよ、やる気のない馬鹿は放って置けば」

 

悠里さんがばっさり切り捨てた。うん、正直参加する気がない人は参加させない方がいいかも?

 

「だったとしても多数決とかどうするんだ?」

「大丈夫だよ。日暮さん たぶんもうそろそろ帰ってくるし」

 

たぶんもうそろそろ西村先生に連れ戻されるだろう。

 

「他に意見はない?あ」

 

悠里さんが他の意見を出させようとしたら近藤君達がゾロゾロと帰ってきた。

野球は終わったのかな?

 

「思いの外早かったわね。どっちが勝ったの?」

「いや、途中で鉄人が来て。中止になって帰ってきた」

「そう」

 

全員が座ったのを見て、悠里さんが再度呼びかけた。

 

「まだ意見がある奴は居る?」

 

意外なところから手が上がった。帰ってきた須川君だ。

 

「須川」

「和風喫茶も良いが、ここは味勝負で中華喫茶はどうだ? 本格的なウーロン茶や簡単な飲茶を出したりするんだ」

「ふーん、アンタからそんな意見が出るとは思わなかったわ」

 

黒板へさらに意見が増えていく

 

・喫茶店

 中華喫茶

・劇

 

「他に意見は?」

 

南が手を挙げた。

 

「島田」

「せっかくここまできれいなんだし洋風の喫茶店にした方がいいんじゃないか?」

「なるほどね」

 

・喫茶店

 和風喫茶

 カフェスタイル

・劇

 

「他ある?」

「どう、はかどっている?」

 

書き足された後に、悠里さんがみんなに聞いているとがそこに西村先生が入ってきた。

 

「今、意見を集めているところです」

「ふむふむ・・・・結構。ちゃんと進行しているようね」

 

西村先生が黒板に書かれている内容を見て、納得した表情になる。

 

「そろそろ出す物を決めなさいよ? 後の方にも突っかかってくるからね」

「わかりました」

 

ただ様子を見に来ただけのようだ、そのまま西村先生は去っていった。

 

「じゃ、そろそろ採決にするわよ」

 

投票の結果

 

「中華喫茶に決定ね、全員協力するように」

「「「了解です。姐さん!」」」

「(何か妙なものに担ぎ上げられたわね。)じゃあ、次にホール班とキッチン班に分けるわよ。ホール班は明乃、キッチン班は須川の方に行って」

 

悠里さんの指示で僕たちは各々違う方に別れる。僕はもちろんキッチン班だ。

 

「あれ、神海さんもキッチン班? 料理できるの?」

「……たしなむ程度には」

 

へぇ、ちょっと意外だなぁ。

 

「あれぇ?私はホール班ですかぁ?」

「当然だよ、女子はただですら少ないんだよ?ホールでがんばらないと」

 

夢路さん、この物凄く男子の多い環境に置いて女子って大切だよ?

まあ、言ったところで分かってもらえないだろうけど。あ、南が迷ってる。

 

「みなみー、こっち来る?」

「あ、いいのか? 料理できるかって言われたらそれなりにしかできないし……」

「いいんじゃない? 僕だってそれなりにしかできないよ?」

「………ソウダナ」

「?」

 





お前の料理の腕はそんじょそこらじゃねーよ。多分、南の内心はそんな感じです。士郎もそんなツッコミを入れてくれるでしょう。
実力的には アーチャー>>>>>明久>>(壁)>>士郎>>>南くらいだと思う

始まりました。清涼祭編、ただひたすらに文月学園に乱入するFateキャラを書くだけの簡単な作業………なるのか?


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第二問

緊急放送で呼び出された僕たちに意外な言葉が告げられた。

 

「「は? テストモニター?!」」

「悪いけど頼んだよ」

 

何言ってるのさ、この人。学園の最高責任者にしてシステム開発の長、藤堂カヲルはそう言った。姉さんが驚く。

 

「いやいやいや、()()テストモニターですか?」

「お前さんたちを呼んでるんだよ。召喚獣に決まってるさね」

「それ、去年からお断りさせていただいてるのにですか?」

 

聖杯戦争の影響でこっちとしては断割らないといけないくらいになっているほど忙しいのに。

 

「……聖杯戦争の件だね。それでも緊急で頼める教師が居ないんだよ」

「はぁ、しょうがないですね。これまでの分も含めてかなり吹っかけますけど?」

 

真面目に等価交換とか考えたらあれじゃあ労働に見合わないよ。

 

「………背に腹は代えられないさね。報酬については終わったら検討させてもらう、頼んだよ」

 

                  ☆

 

「で、どうなんったんだ?」

「どーもこうもあるか! いい加減にしてほしいよただでさえ召喚獣って操作が難しいの分裂とかありえないよ。大体さ、ふざけてるよね。令呪の影響も懸念されるからテストモニター解除してもらったのにいきなり話吹っかけてくるんだよ。あー、そのせいで召喚獣凄いことになったし」

 

一人暮らし(いまは二人暮らし)の部屋での夕食、僕は思いっきり不満をぶちまけていた。

僕の最後の言葉にアーチャーが反応する。あ

 

「凄いこととは?」

「あ、いや何でもないんだ。一応口外禁止だから」

 

一応こんなざるでも情報統制とかあるしね。

 

「そうか、ところでだが学園祭は何時なんだ?」

「後三日くらい先? 四日間もやるから準備で手一杯だよ」

「随分と長いんだな」

 

普通の学園祭って二日くらいが基本だよね。

 

「まあね、技術お披露目の場でもあるし、ついでに言うなら各国のお偉い方が初日に来るからそこは生徒にも非公開なんだよね。僕たちにあるのは三日間だよ」

「各国とはそれはまたすごいな」

「それだけウチの技術は凄いってこと……だね。使い魔(ファミリア)をあんな機械だけで再現とか魔術師が黙ってないよ」

 

実際魔術師系の研究職もこっそり紛れ込んでいるって噂だしね。

 

「そうなのか、いずれ封印指定とかにでもされるのではないか?」

「ムリムリ、日本政府が囲っちゃってるし。下手に手を出せないんだよね」

「なるほどな」

 

国家権力様様……と、そうだ。

 

「アーチャーも来なよ。じーさん達も来る予定だし一緒に来たら?」

「だから私はもう「いいじゃん、僕らは同じ『衛宮』なんだからさ」……っ」

 

家族は一緒でなんぼでしょ。

 

                  ☆

 

冬木教会の自室、ぼくは帰ってすぐにベットにうつぶせた。

 

「はぁ、今日もつかれた」

「お疲れさん」

「あー、そこ」

「ほい」

「うー、何でここ最近きついんだろう」

「さあな」

 

控えめにノックの音がしたかと思うとカレン姉さんが入ってきた。

 

「妹、食事の支度………何をしているのかしら?」

「マッサージ、結構効くんだよね。これが」

 

ランサーさんは何故かツボも知ってた。聖杯知識らしいけど

 

「そう、とりあえず食事の支度が済んだそうよ」

「了解、ランサーさんありがとう」

「どういたしましてっと」

 

さて、夕飯にありつくことにしよう。

 

「……そこの駄犬」

「あ?」

「私の妹に手を出すようなことがあれば………」

「はぁ、そんなカリカリすんなよ」

 





無駄にオリジナル設定が混ざってます。
ランサーと明乃が何をやっていたのかは雰囲気でお察しください。



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第三問

 

「いつもながら坂本の統率力って凄いよな」

「ホントだよね。最終的に内装一日で全部仕上げるなんて」

「流石代表じゃな」

 

清涼祭二日目の朝、僕らの教室は装飾を一新して、中華風の喫茶店に姿を変えていた。

ふと気が付いたんだけど女性陣が居ない。普段なら目立っている三人娘も端の方で本読んでるか寝てるかしてる比奈丘さんも居ない。

 

「あれ、姉さんたちは?」

「そういえばおらんのう」

「どうしてだ?」

 

さっきまでは居たよね?

 

                 ☆

 

Aクラスに設けられている仮眠室、そこにFクラス女子が集合していた。

目の前にあるのは鮮やかで手触りのいい布が六枚ほど。

 

「……これマジ?」

「んー、まあ集客ってことで 別に露出度高くないじゃない」

「……本当、ちなみにウェイターの男子の分もあり」

「あたしまで巻き込まんでも……」

「サイズがきっちりピッタリなところにツッコミを入れていいかしら」

 

うん、色々とツッコミを入れたいんだ。イロモノじゃないって話だったよね? 普通学園祭ごときでここまでするの?

 

「はぁ、今日みんな来るのに……絶対からかわれる」

「あら、ご愁傷様ねぇ」

 

夢路がぼくをからかうように言ってきた。いや、そう聞こえているだけかもしれないんだけどね。どうにもこうにも神経が逆なでされるっていうかさ。ついついきつい口調になる。

 

「どうも、ぼくってこういうのに合わない体型なんだけど」

「気にするな」

 

彩夏がサクッと言った。そこまでバッサリいかれるとまあいいかって感じがしてくる。

まあ、もうなるようになっちゃえ。

 

「そうかいそうかい」

 

                 ☆

 

姉さんたち居ないし今のうちにできることをしてみた。

鞄を漁って、タッパーを取り出す。

 

「さて、試しで作ってみたんだけど胡麻団子」

「食べてよいのか?」

「うん、試食だよ」

 

タッパーに詰めておいたのは試作品の胡麻団子、結構調子に乗って個数を作っちゃったんだよね。しかも作ったの昨日だから下手にお店に出せないし。

 

「ではいただくのじゃ」

「あ、ずるい。俺も!」

 

秀吉と南が我先にと食べた。感想言ってくれるかなって期待してたけどそれ以上にトリップしだしたことにびっくりなんだけど。トリップって女子の特権だと思ってた。

 

「お、美味そうだな」

 

そこにやってきたのは今回の喫茶店の裏方リーダーの須川君、あの泰山でアルバイトしているらしい。

 

「あ、須川君 胡麻団子これでいいかな?」

 

僕が作った胡麻団子をひょいと口に入れる須川君、調子に乗って作ったのにアウトだったら僕としてはものすごく気まずいんだけど……

 

「んー……うん、美味いな。これなら大丈夫じゃないか?」

「よし、中華ってちょっと苦手だからさ」

「へぇ、衛宮にも苦手な料理ってあるのか」

「知り合いが中華だけは美味いんだよね。下手な料理屋行くよりそっちの方が格段に美味しい」

 

凛の中華は美味しい、士郎とかよりよっぽど美味しいんだよね。そういえば凛って何で中華得意なんだろう?

 

「ふぅん」

「物は試しでもう一品作ってるんだけど食べれる?」

「何だ?」

 

冷蔵庫に入れておいた品を出す。それはこの世のものとは思えないほど赤く、ラップを外すと刺激臭が溢れだす。

 

「……これは」

「泰山の麻婆……味的には多分」

 

須川君の顔が蒼白になる。まあ、そうだよね。多分お店で撃沈する人大勢見てるのだろうし。

この麻婆豆腐ただの麻婆と侮るなかれ、とりあえず普通の人には食えない代物だったりする。僕が何でこんなものを作ったのかって? ……一瞬の気の迷いだったんだ。居ないとは思うけど営業妨害相手に出そうかなって思ったんだ。とりあえずは早朝のテンションはおかしいよねってことで。

 

「これは人類の食えるものじゃないよな?! これ食えるとしたらよっぽど人外だよな? 某常連の神父以外居ないぞ……いや、あの和服のおっさんや学ランもか」

 

和服と聞いてちょっとあれって思った。嫌な予感がする。

 

「ちょ、和服のおじさんってどういうこと?! もしかして目が死んでる?」

「ああ」

 

まさかの肯定が来るなんて、そこは否定してほしかった。じーさん何をやってるのさ。

 

「……なに食いに行ってるのさ。あれだけ体に悪いから刺激物は辞めろと……あ、ごめん。家庭内事情だった」

「……そうか、衛宮も苦労してるんだな。そして俺はこれ食えないんだが」

「そう? バイトしてるんだし味大丈夫かどうか聞こうと思ったんだけどね」

 

バイトの須川君に頼めないとなるとどうしよう。そこに意外な人から声がかかった。

 

「何話してるんだ?」

「あ、日向君」

「……それ、食べていいか」

 

キラキラした目で見つめられた。物凄く期待に満ち溢れている。

 

「「………」」

 

その目線に耐えきれなくなって、思わず須川君と顔を見合わせた。

 

「い、いいよ。食べれるの?」

「うん、好物だし」

 

そのまま麻婆を持って日向君は去っていった。何だろう、周りに花が見えた気がしたけど気のせいだよね……うん、気のせいだ。

 

「ここにも猛者が居た」

「同感だよ」

 

あれを食べれるのなんて言峰さんか姉さんかじーさんだけだと思ってたよ。

あ、僕? 食べれるには食べれるけど積極的には食べたくないタイプです。

 





一度はやってみたかったんだ。中華喫茶で泰山の麻婆ネタ
明久が作った理由は早朝のテンションです。他意は全く無い

アレを食べれるザビーズは凄いって思った。

須川君がバイトなのは単なるネタです。何で中華なんか提案したのだろうと思って考えた結果がこれだよ。


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第四問

とりあえず一通りの試作品がみんなの胃に収まった頃、後ろから姉さんの声がした。

 

「あ、アキ?」

「んー、姉さんどう……ったの?」

 

思わず間を開けるくらいには衝撃的だった。姉さんは何故か黒に金糸で刺繍がされたチャイナ服(露出は控えめ)を着ていた。なんでさ。

僕の反応を見て姉さんがむくれる。

 

「やっぱその反応か! どーせ、似合うわけないですもんねーだ!!」

「いや、だから 似合う似合わない以前にどうしたのさそれ、召喚獣のコスプレ?」

 

それだったら納得いくかな? 学園祭だし仮装する人は居るし、でも姉さんの返答は違った。

 

「……客寄せだとさ」

「悠里さん本気で稼ぐ気だね」

 

悠里さんがこういうの提案するとは思ってなかったよ。

 

「うん、正直この商魂逞しさに親友であるぼくもちょっと引いたよ」

「そっかー、ところでだけど姉さん似合ってるよ」

 

僕は素直に思ったことを口に出したけど、姉さんのふくれっ面は直らない。

 

「お世辞はどうも」

「ううん、素直にそう思うけど」

「そう?」

 

姉さんが確認するように聞いてくる。

 

「うん」

「嘘ついてない?」

「姉さんに嘘つくと思う?」

 

必要もないし、よっぽどのことがなくちゃする気もないよ。

 

「……そっか、アキ ありがとう」

「どういたしまして?」

 

                    ☆

 

姉さんがちょっと向こうへ行った後、思いっきり顔を赤くした南が話しかけてきた。

 

「あ、あき、アキヒサ あれ、あれ、あれ」

「ごめん南、せめて主語言って頼むから」

 

流石に僕はあれって言ってわかるような人間じゃないよ。

 

「いや、あのアキノ」

 

あ、そのことか、多分何であの恰好してるかってことだよね。

 

「あー、客寄せ用だってさ。結構可愛いよねー」

「あ、うん………」

 

南がうつむいてぶつぶつ言っている。どうしたのさ、それを僕が聞こうとする前に他のところから声がした。

 

「あ、島田くぅん!」

「お、夢路も着替えてるのか」

 

夢路さんはピンクに白の刺繍だ。夢路さんは南に向かって言った。

 

「召喚大会の一回戦、始まるわよぉ」

「あれ、南って召喚大会出るの?」

「は? そんなわけないだろ」

 

だよね? 南が出るっていうなら僕か秀吉に声かけるだろうし。

 

「え、でもぉ 対戦表に名前あるわよぉ?」

「え、は?」

「……ほんと………はい?」

 

僕の名前がある気がするんだけど……なんでさ。

 

「アキヒサも出るのか?」

「出るわけあるかぁぁぁ。シフトあるのに?!」

「これ、運営の手違いじゃないのか?」

 

名前欄を見直してさらに驚いた。僕のペア悠里さんじゃないか。

 

「だよね。シフトがヤバいよ。悠里さんと僕が抜けるとか……厨房はどうにかなるとしても接客が………」

「行きましょう。一回戦、もうすぐよぉ」

 

夢路さんが南の腕を掴んで引きずっていった。何だろうドナドナが流れてきた気が……

 

「え、ちょ アキヒサ助けて!!」

「…………どうしろと」

 

                   ☆

 

とりあえず悠里さんに確認を取りに行く。悠里さんがやるとは思えないけど一応ね。

 

「は? 試験召喚大会? 何でよ」

 

やっぱりその反応だよね。ちなみに悠里さんは赤色の布地に暖色系の刺繍のチャイナ服(露出は控えめ)だ。普段は上げている前髪を下したり、後ろ髪を結ったり色々と新鮮だね。

 

「だよね。勝手にエントリーされてるんだけど」

「本当?」

 

悠里さんが本気でびっくりする。僕も正直驚いた。悠里さんとコンビなのは姉さんだし。

 

「うん、それに僕と悠里さんとか異色すぎでしょ」

「はぁ……あ」

 

対戦表から目を離さずに悠里さんは言い出した。

 

「明久、悪いんだけどちょっと付き合ってくれる?」

「はい?!」

 

いきなり何を言い出すのかな?! FFF団に目を付けられそうな台詞言わないでよ?! 何か背後が怖くなってるよ。処刑とかぶつぶつ聞こえるし。そんな背後の様子なんて悠里さんが気が付くわけもなく、真剣な表情で言った。

 

「……決着をつけたいのよ」

「あ、霧島さんも出るんだ」

 

名前表を確認してみたら霧島さんも出てた。

 

「うん、あたしのわがままかもしれないけどいい?」

「別にかまわないよ。悠里さんがわがままとか珍しい気がするし」

「………ありがとう」

「じゃあ、今回はよろしく」

「ええ」

 

僕らはハイタッチをして会場へと向かった。

 

                   ☆

 

「えー。それでは、召喚大会一回戦を始めます」

 

僕らは校庭に作られた特設ステージにたどり着いた。ここで召喚大会が催されるんだけど、広いなぁココ

 

「三回戦までは一般公開もありませんので、リラックスして全力を出してください」

 

今回立会いを務めるのは数学の木内先生。当然、勝負科目は数学となるわけでして

 

「頑張ろうね、律子」

「うん」

 

対戦相手の女子二人がうなずき会う。微笑ましい光景だね。

 

「「試獣召喚(サモン)っ!」」

 

相手の二人が喚び声をあげると、お馴染みの魔法円が足元に現れて召喚者の姿をデフォルメした形態を持つ試験召喚獣が喚び出された

 

数学

Bクラス 岩下 律子 179点 &菊入 真由美 163点

 

「あー、やっぱBクラスだし高いね」

「そうね」

 

「「試獣召喚(サモン)」」

 

魔法円から現れる僕らの召喚獣

僕の召喚獣は赤のロングコートに黒のインナーとズボンにブーツと前回とは全く違った装いだ。ぶっちゃけて言うけど令呪の影響でカラーリングも変わってるんだよね。肌の色は普通なんだけど髪が白くなった。ついでに言うなら目は金色に近くなった。うん、見事にアーチャーです。ちなみに姉さんは青を基調としたカラーリングに槍を持ってた。

悠里さんの召喚獣は……

 

「何よ?」

「……スケバンか何か?」

「……はい?」

 

髪の毛は前髪が下してあって服装はちょっとボロっとしたセーラー服だ。おまけに装備がグローブなんだけど。

 

「(スケバンは違うわよ)」

「(あ、うん そっか、ごめんなさい)」

「何を話してるのか知らないけど、行くわよ。Fクラスコンビ」

「そうよ、Fクラスなんだし楽に倒せるわ」

 

Fクラス 

数学 衛宮 明久 184点 &坂本 悠里 473点

 

「な、なんなのよ その点数!」

「悠里さん、寝てた?」

 

悠里さんの点数が意外と低い、姉さんが言うには数学は500点以上行くって話なのに。

いや、でも意外と真面目な悠里さんがそんなことするわけ……

 

「ええ、眠くて死にそうだったから適当に解いて寝たわ」

「嘘でしょ……」

 

遅れて僕らの点数が表示される。やっぱりびびるよね。まさか「あの」Fクラスの代表がこの点数って言うのはね・・・・でもさ

 

「確かに僕らはFクラスだけど、Bクラスにも勝ったんだよ。戦後対談だってしたのに」

「「あ」」

 

二人が顔を見合わせた。忘れないでよ

 

「では、始め!」

「うっ、そうだったとしてもあたし達のコンビネーションには追いつけないわよ 律子!」

「真由美!」

「「行くわよ!」」

 

向こうの二人は名前を呼び合って頷き、僕らを挟みこむように移動してきた

 

「へぇ~、なかなか息が合っているね」

「そうみたいね。とりあえず後ろは頼んだわ」

 

悠里さんの召喚獣が構える。僕は召喚獣をその間に移動させた。気がつかれないかって? 僕、気配消すの意外と得意なんだよね。

 

「ちょっと卑怯ですが」

「悪いわね」

「「はぁっ!」」

「今よ!!」

 

悠里さんの召喚獣が上手く相手をかわして、相手の召喚獣同士がぶつかり合う

 

「ええっ」

「うそぉ」

「隙あり!!」

 

僕の召喚獣の矢がぶつかり合ったことで操作できなくなっている二人の召喚獣を貫いた。

 

「勝者、衛宮・坂本ペア」

 

木内先生は勝者の名を告げた。とりあえず一回戦は突破することに成功、ちょっと卑怯な気もするけどまあいいか。

 





暗躍者が居るようだ?

召喚大会に出る意味がなくなったはずだったのに何故か巻き込まれたのでした。

恒例?閑話休題アンケート

『明久が実験で試薬を混ぜようとしています。どっちを混ぜる?

 試薬A

 試薬B

                              』


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第五問

 

帰る道すがら気になっていたことを尋ねた。

 

「それにしても悠里さん強いね。ケンカ慣れしてるの?」

「ん? まあね。少なくともケンカしたことないとは言い切れないくらいかしら」

「そっか」

 

教室まで戻ってみれば、担架に乗せられて運ばれていくモヒカン頭の上級生と坊主頭の上級生が入り口を通ろうとしていたところだった。

 

「「……え?」」

 

なにがあったの?!

 

                   ☆

 

営業妨害しているのは2人。いずれも男だ。1人は一般的な体格と小さなモヒカンという非一般的な髪型をしている。もう1人は普通の体格で、こちらは丸坊主だ。二人とも三年生だな。ウチの学校のモラルってどうなってるんだよ。

 

「なんだ!?このまずい料理は」

「こんなものを出すなんて信じられねぇよ」

 

とクレームをつけていた。いい加減にしてくれよ。

 

「……どうするんだ? 須川」

「しょうがないか、衛宮が作ってた最終兵器を出す羽目になるとはな」

「最終兵器?」

「まあ、俺に任せておけ」

 

衛宮からレシピは聞いている。これなら俺でも再現することが可能だ。

 

「まったくここの責任者は誰いないのか!ここの責任者を出せ!!」

 

モヒカンが何かわめいているが俺には関係がない。しれっとした顔で用意した品を出す。

 

「お客様方、お待たせしました。麻婆豆腐です」

「は? 俺らはそんなものたの……なっ」

「これを食してからお帰りください」

 

うん、よし。完璧だ。泰山流迷惑クレーマーの追い出し方、(気絶して)お帰りください。

ちなみにこれは泰山では暗黙の了解なので逆らう奴には常連のきつい仕置きが待っている。まあ、麻婆がそれ用とかってわけじゃないことの方が問題だと俺は思うがな。

坊主もモヒカンもこんな物食えるか! と言おうとしたが泰山常連の殺気に押される。これは連中が(気絶して)去るのも時間の問題だな。

 

「よし、他のメニュー作るか」

 

そうこうしている内に連中が倒れる音がした。成功だな。

 

                    ☆

 

厨房に戻ってしばらくして、ちょっとお客さんが減った(全員で接客しなくても大丈夫な程度って分で)のでだべりに来た悠里さんと調理をしながら話す。

 

「……あれはさ、もう……兵器だよね」

「うん、正直そう思ったわ。麻婆豆腐恐るべしね」

 

須川君から事情を聞いた僕は戦慄した。泰山って料理美味しいけど、そんな暗黙の了解があったなんて驚いたよ。うん、泰山では騒がないようにしよう。

 

「ところでだが代表たちは一回戦勝ち抜いたのか?」

「ええ、これくらい余裕よ」

「まあね。目標が目標だし勝ち抜く必要があるからさ」

 

悠里さんはそこでまた接客に戻ってしまった。

僕らは商品目当てとかじゃなくって霧島さんと戦うだもんなぁ。霧島さんは強いんだし多分準決勝くらいまで勝たないと戦えないはず。僕の発言を聞いてから少し考える様子だった須川君が急に言い出した。

 

「へぇ、誰と行くつもりだ?」

「はい?」

 

どこに?

 

「いや、目標って遊園地のチケットだろ」

「ううん、全然別だけど。てか遊園地のチケットって何?」

 

確か優勝商品って召喚獣を強化できる特別なアイテムだったはず。

 

「え、知らないのかよ。副賞が今度出来る遊園地のペアチケットなんだよ」

「えー、ペアなの?」

 

僕の不満げな様子に須川君は驚いたようで、鍋を振る手が少しだけ止まる。

 

「何だよペアで不満なのか?」

「いや、できれば家族用のチケットがよかったなぁと」

「家族用?」

 

須川君が首を傾げる。こういうのの商品で家族用って多分ないよね。

 

「うん、僕さ 親のすね齧って生きてるし家族孝行とか全然できてないからさ」

 

一人暮らしさせてもらってるし、色々わがまま聞いてもらってるなぁ。ホント

しばらくポカンとしてた須川君が唐突に言った。

 

「衛宮って凄いんだな」

「え? なんでさ」

 

凄いって?

 

「何ていうかさ、眩しいよな」

「へ?」

 

いや、何で? 首を傾げている間に須川君はさらに続ける。

 

「俺は絶対にそんなこと考えられないな。俺だったら家族に何かするっていうのよりも自分が幸せになるってことを考える。例えばさっきのペアチケットだったら彼女誘って二人でデートとか考えるな。まあ、彼女が居ないわけだが」

 

え、いやいやいや。

 

「そう? それでいいと思うけどね。僕だって普通に彼女とか欲しいなぁって思うよ。でも僕みたいなダメ人間、好きになってくれる人なんて居ないと思う。だから大切にしてくれる家族のために頑張りたいって思うわけだし」

 

それくらいでしか自分の価値がないっていうかさ、そんなことを内心考えたけど口には出さないでおくことにした。

 

「衛宮は全然ダメ人間なんかじゃないさ。俺なんかよりは絶対にいい奴だと思うぜ?」

「そんなことないさ。須川君だって十分に好物件だと思うけどねぇ。まあ、嫉妬深い所とかどうにかしないとダメだろうけど」

 

料理できて、話すと面白くて、顔はそこそこ? 普通に彼女いてもいいんじゃない?

 

「む、確かにそうかもな。だけ「そんな感じで暴走しているから彼女出来ないんじゃないの? Fクラス男子は凶暴だって印象を持たれているから女の子よってこないんだろうし」

 

最後の方は茶化すように言ったつもりだったんだけど須川君は真面目になんか考え始めた。どうしたんだろう?





須川君がかっこよくたっていいじゃないか。
うん、とりあえず今回はそんなノリです。須川君ってまともだったらそれなりにモテるって信じてる。


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第六問

 

「ただいまー……って、あんまりお客さんいないなぁ……」

 

あ、アキが帰ってきた。

 

「衛宮か。どうだった?」

「無事勝ってきたよ」

「それは何よりじゃ。ところで、悠里の姿が見えんが?」

「うん。トイレに寄ってくるってさ。それより秀吉、これはどういうこと?お客さんがいないじゃないか」

「……むぅ。ワシはずっとここにおるが、妙な客はあれ以降来ておらんぞ?」

 

 

秀吉が首を傾げる。そう、ぼくらFクラスは現在開店休業中と言えば聞こえがいいような状態になっていた。つまりお客さんが来ないのだ。神海に頼んで調査はしておらってるけどそれが終わるのはすぐってわけにはいかないだろうし。

 

「教室の外で何かが起きている?」

「かもしれんのう」

 

そうやってみんなで考え込んでいると、

 

『お姉さん、すいませんです』

『ありがとうね』

『いや。気にしなくていいわよ。お嬢ちゃん達』

『お嬢ちゃんじゃなくて葉月ですっ』

『子ども扱いしないでちょうだい!』

 

悠里と小さな複数の女の子の声が聞こえてきた。

 

「悠里が戻ってきたようじゃな」

「あ、うんそうみたいだね」

「なんか子供の声も聞こえたような?」

「妹とか?」

 

いや、居なかったと思うけど。あー、うん。居なかった。

 

『んで、探してるのはどんな人なの?』

 

ガラッと音を立てて扉が開き、悠里が入ってくる。話し相手はちいさいらしくて、悠里の影になって見えない。

 

『お、坂本。妹か?』

『可愛い子だな~。ねぇ、五年後にお兄さんと付き合わない?』

『俺はむしろ、今だからこそ付き合いたいなぁ』

 

二人はあっという間にクラスの野郎どもに囲まれてしまった。

ところで一人犯罪みたいな発言があった気がするんだけど?

 

『あ、あの、葉月はお姉ちゃんを探しているんですっ』

『あたしは弟を探してるの!』

 

どうやら女の子は人を探していて悠里に声をかけたみたいだね。

悠里はなんだかんだ言って面倒見がいいからなぁ。

 

『お姉ちゃんと弟? 名前はなんていうの?』

『あぅ……。わからないです……』

『家族の姉じゃないの? それなら、何か特徴は?』

『えっと……真っ黒なお姉ちゃんでした!』

 

なんか凄い特徴だ。

 

『黒いお姉ちゃんなら……何人かいるんだけど?』

 

否定できないか。鈴原さん黒髪だし、彩夏も黒髪だ。

 

『あ、あの、そうじゃなくて、その……』

『うん? ほかに何か特徴があるの?』

『その……すっごく真っ黒なお姉ちゃんだったんです!』

 

それは特徴の追加になってない気がするよ? 悠里も困ってるしこれは時間かかりそうだね。それを眺めていたらアキにちょいちょいと肩を叩かれた。

 

「ところでなんだけど姉さん」

「どうしたの、アキ」

「片方の声物凄く聞き覚えがあるんだ」

「はい?」

 

聞き覚えがあるって?

 

「あ、アキヒサ!!」

「やっぱりか」

 

そこに居たのはアキの義理の姉であるイリヤスフィールちゃん(いや、さん?)だった。

アキの姿を視止めるとこちらへと駆け寄ってきた。

 

「イリア姉さん、何でここに居るの?」

「キリツグ達と一緒に来たのよ! でもはぐれちゃって」

「そっか、イリア姉さん一人で来るわけないよね。じーさんと連絡取った?」

「とれていないのよ」

「そっか、じーさんが心労で倒れる前に連絡入れとかないとね」

 

アキはそう言って携帯電話を取り出して、どこかへ連絡を入れた。ふむ、切嗣さんたち来てるんだ……接客頑張ろう、うん。

 

「あ、真っ黒なお姉ちゃんだ!!」

 

決意を固めたその時に背中へと衝撃が走った。何事かと思ったらツインテールに勝気な感じの緑色の目の女の子がぼくに抱き着いていた。えっと、誰?

 

「えーっと、誰?」

「え?お姉ちゃん……。知らないって、ひどい……」

 

女の子の表情が歪んだ。やばっ

 

「真っ黒なお姉ちゃんのバカァっ! 真っ黒なお姉ちゃんに会いたくて、葉月、一生懸命真っ黒なお姉ちゃんを知りませんか?って聞きながらきたのに!」

 

それでよくこのクラスにたどり着けたね……って、そっか今着てる服黒いもんね。あ

 

「もしかして、あの時のぬいぐるみの?」

「思い出してくれたんですか!」

 

あー、あの時の子か。ぼくが観察処分者やるきっかけになった子、そういえば。

 

「お兄ちゃんと仲直りできたかな?」

「はい! お姉ちゃんのおかげです」

「そっか、それはよかったよ」

 

そうだ。兄妹喧嘩して、中々仲直りのきっかけが作れないからお兄さんの好きなもの買ってプレゼントにして仲直りしようとしてたんだよね。

 

「ちょっと、葉月……ってアキノ?」

「ん? 島田君どうしたの?」

「いや、ウチの妹と知り合いなのか?」

「うん、ちょっと縁があってね」

 

                    ☆

 

悠里さんが周囲を見渡して眉をひそめた。

 

「何でここまで客が居ないのよ」

「うーん、僕が戻ってきたときにはこの状況だったよ?」

「あ、アタシ知ってる!」

 

イリア姉さんが手を挙げた。

 

「? 何か噂とかあったの?」

「Fクラスの中華喫茶は殺人料理を出すって」

「「……」」

 

事実……ではあるんだよね。クレーマー対策だし

 

「とりあえず何か噂流しましょう。神海」

「……了解」

 

神海さんは一瞬現れたと思うと瞬きの間に姿を消した。

たまに思うんだけど神海さんって忍者?

 

「凄い! あれが本物の忍者なのね!!」

「イリア姉さん、言いづらいけど違うから」

「え、そうなの?」

 

イリア姉さんが残念そうになる。だけど言っておかなくちゃいけない。

 

「うん、彼女はただ単に気配遮断EXと敏捷Aを兼ね備えた一般人だよ」

「そっか、普通の人なんだ」

「それ普通じゃないよ」

 

姉さん、ツッコミは勘弁願います。





土屋って普通にアサシンとして召喚されそうなイメージがある。
……鼻血と言う呪いはあるけど。


葉月ちゃんが真っ黒と称してた理由は明乃がその日カソックを着てたからです。


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第七問

 

ふと教室の時計を見てみればすでに三回戦に近い時間帯になっていた。

 

「あ、三回戦だ」

「あら、行かないとね」

「あれ、アキヒサ何か大会に出てるの?」

 

そういえばウチの家族には何も言ってなかったような。

 

「まあね、知らない間に出させられてるんだけどさ」

「それって変じゃない?」

 

まあ、それが正論だよね。僕も普通に棄権しようと思ったし、でも。

 

「変でも何でもいいのよ。あたしにはやりたいことがあって明久にはそれに付き合ってもらってるの」

「ふぅん、アキヒサ 勝負するなら絶対に勝ってきなさいよ!」

「うん、わかってるって。じゃあ、いってきまーす」

 

イリア姉らしい激励に見送られて僕らは三回戦の会場へと急いだ。

 

                   ☆

 

会場に行ってみれば見覚えのある赤紫色の髪の女の子と知らない茶髪の女の子の二人が対戦相手だ。相手も僕らに気が付いたらしく声をかけてきた。

 

「あら、Fクラスの」

「やっぱり、根本さん?」

 

根本泰子さん、試召戦争の際に戦ったBクラスの代表だ。卑怯上等な人かと思ったら意外と公正明大なタイプだったことは僕の記憶に新しい。

 

「あら、Bクラスの代表じゃない」

「なによ 泰子、知り合いなの?」

 

茶髪の人が根本さんに尋ねる。誰?

 

「えっと、そっちは?」

「Cクラスの代表ね。確か小山だったかしら?」

「ええ、私はCクラス代表の小山友香よ」

 

へぇ、Cクラスの代表も女の子なんだ。代表が女の子の率高いなぁ。

 

「そろそろ三回戦を始めますがいいですか?」

「あ、はい」

 

お互いに向かい合う。悠里さんと根本さんが火花を散らしているように見えるのは気のせいだと思いたい。

 

「この前の借り、きっちり返させてもらうわ」

「そういうわけなの。ま、よろしく」

 

小山さんはさらっと言った。ちょっと鼻にかけたような感じもしなくは無かったけど割といい人かもしれない。

根本さんの台詞に悠里さんはあくどい笑みを浮かべて言った。

 

「はんっ、十倍返しにするわよ!」

「あはは、うわぁ……まあ、勝ちに行くのは本気なんでよろしくね」

 

全員の目が真剣だ。そしてみんな同時に召喚の言霊を紡ぐ。

 

「「「「試獣召喚(サモン)っ!」」」」

 

 

英語

Fクラス 坂本悠里 334点 & Fクラス 衛宮明久 196点

             VS

Bクラス 根本泰子 294点 & Cクラス 小山友香 179点

 

 

「あら、結構点数高いじゃない」

「当然でしょ?」

 

悠里さんと根本さんがお互いの点数を見てそう言った。

小山さんの点数も高いし、僕と同じレベルか。

 

「意外に高いわね。流石、Aクラスに勝っただけの実力ってところかしら」

「どうも、悠里さん!」

「わかってるわよ」

 

悠里さんと僕は慣れてきた前衛後衛のポジショニングで相手を迎え撃つ。

これまでの対戦者とは違って二人はこちらに下手な攻撃を仕掛けてこない。やっぱ代表ともなると手ごわいかな?

 

「「……」」

 

にらみ合いが続く。お互いにタイミングを見計らっているのだろう。でも、これはチャンスかも? 僕の召喚獣が弓を引く。その瞬間、悠里さんと根本さんの召喚獣がほとんど同じタイミングで走り出した。

 

「はぁっ」

「てやっ」

 

お互いの得物(悠里さんは拳だけど)がいい音を立ててぶつかった。お互いに飛びずさる。

 

「貰った!」

「あ」

 

二人に気を取られている隙に小山さんの召喚獣が武器をこちらへと投げ飛ばした。小山さんの召喚獣の武器が僕の召喚獣に当たろうとするけど、そうはいかない。

 

熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)

「なっ」

 

僕の召喚獣が投影した神秘の盾が小山さんの召喚獣の武器を防いだ。僕の召喚獣は元々持っていた能力が一切合財消える代わりに自分の契約しているサーヴァントの能力が反映されているのんだよね。これを知ったのは二日ほど前、おかげで今までのスタイルで戦えなくなって凄い苦労しているだよね。扱い慣れてないし。

 

「……赤原猟犬(フルンディング)

「え、あ」

 

 

Fクラス 衛宮明久 106点

      VS  

Cクラス 小山友香 DEAD

 

 

それでもまあ、これくらいはできるけど。

 

「そういえば」

 

悠里さんたちどうなってるんだろう?

様子を見てみたら相打ちになってた。もしかして

 

「衛宮・坂本ペアの勝利です」

 

気が付かないうちに勝ってた?!

 

                    ☆

 

さて、どうしようかとぼくは考える。

 

「………」

「おいおい、この嬢ちゃんが怪我するようなことになりたくないなら大人しくついて来いよ」

 

ここは校内でも割と人気のない路地のようなところ、目の前に居るのは態度の悪いチンピラ、それと彼に捕まったイリヤちゃんだ。どうやら彼女を人質にぼくや他の女子を誘拐しようとしているらしい。何故なのかはわからないけど。イリヤちゃんが小さな声で何かを呟いている。

 

「……ちゃえ……チャー」

「ん?」

 

チンピラが彼女の方を見る。その背後に見覚えのある白髪に褐色の肌の男の人が居た。あ

 

「やっちゃえ! アーチャーっ!」

「承知した」

 

イリヤちゃんの号令と同時に、アキのサーヴァントであるアーチャーさんがチンピラを殴りつける。ケンカ慣れしているチンピラであろうとも英雄である彼に勝てるわけなんかなくって、一発で伸びた。

 

「ぐはっ」

「あー、やっぱか」

 

こうなる感じは正直してた。バーサーカー来なかっただけよかったよ。

安堵している間にアーチャーさんがイリヤちゃんに尋ねる。

 

「大丈夫かね? イリヤスフィール」

「当然でしょ。淑女(レディー)はどんな時でも落ち着いているものよ」

「そうか、さてこの賊はどうしたものか」

 

本当にね。そこにさらに聞き覚えのある声がやってきた。

 

「おい、急にいなくなるなよ……って何だそいつ」

 

士郎だ。目の前の状況に目を丸くしている。

 

「ふんっ、淑女(レディー)を人質に女の子を誘拐しようとする不届き者よ」

「まあ、イリヤちゃん人質にしてぼくら誘拐しようとした間抜けってことで」

「ええっ?!」

 

士郎は驚く。まあ、そうだよね。(一応)平和な学校内で誘拐とか普通は無いし。

そこへパタパタと足音がして、ひょっこり覗いてきたのは、

 

「士郎、それにアーチャーもきゅ……ってどうかしたの?」

「あ、切嗣さん!」

 

切嗣さんにも事情を説明する。

 

「へぇ……誘拐……ね」

 

わぁ、結構いい笑顔してるよ。後ろではアーチャーさんたちがアイコンタクトで会話していた。

 

「(爺さんが怖い、兄さん以上に怖い)」

「(こんなキリツグ久々に見たわ)」

「(さて、どう出ることか)」

 

まあ、そんなの関係なくって。ぼくはぼくで動くわけだけど。

 

「切嗣さん落ち着いてください」

 

ぼくが切嗣さんに声をかけると再度士郎とアーチャーさんが目配せをした。

 

「(明乃って意外と勇気あるんだな)」

「(いや、待て)」

 

誰が止めるとお思いで?

 

「こういう時にはしかるべき機関に任せましょうよ。下手に物理よりも司法に任せた方がいいですし。それに末端潰しても意味ないじゃないですよ、末端から辿って親玉叩いた方がよくないですか?」

「あ、確かにそうだね」

 

うん、よかった。これでこいつだけボコっても目的がわからないままだから対処しようがなくなっちゃうよ。

 

「(……何か今明乃のイメージがガラッと変わった気がする)」

「(どうあがいてもあの神父の娘であるってことだな)」

 

そこにさらに誰かやってきた。

 

「あれ? 姉さんにイリア姉さんに士郎たちにじーさん?」

「あれ、アキ 試合終ったの?」

 

もう三回戦終わったんだ。

 

「うん、どしたの?」

「何でもないよ」

「うん? わかった」

 

アキには内緒にしておこう。色々と頑張ってるみたいだしね。

 





幸運Aは仕事をしまくっていると思う……色んな意味で
言峰家がなかなか出てこないんだぜ。どうしよう

衛宮家は実は息ぴったりだと(中の人(さくしゃ)的に)楽しいんだ。


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第八問

教室に戻ってみれば、ランサーさんが悠里を口説いていた。思わず怒鳴りこもうとするけど、待て待てと冷静になる。そのままカウンター(料理の受け渡し所)に向かい、カウンター越しにこう告げた。

 

「………須川君」

「な、何だ。言峰」

 

ぼくの様子にびくっとなる須川君、まあどうでもいいけど。

 

「アレある?」

「お、おう」

 

最終兵器のご登場ですよ。それをお盆に乗せたままスタスタとランサーさんたちの席へと向かう。

 

「お客様」

「お、嬢ちゃんじゃねーか」

 

声をかけたらようやくぼくの存在に気が付いたらしく、声をかけてきた。それを無視して話を進める。

 

「ご注文の品をお持ちしました」

「? 俺なんか頼んだか?」

 

コトリとテーブルの上にソレを乗せた。

 

「……?!」

 

ランサーさんの顔が驚愕に染まる。うん、やったね。

 

「麻婆豆腐です。お召し上がりになってからお帰りください」

「お、おい嬢ちゃん?!」

 

止めようとするランサーさんに念話で語りかけた。

 

「(人の親友を口説くなよ。この狗が)」

「(誰が狗だ?!)」

 

えー、あんた親父によく犬って言われてるじゃん。そう思ったら実は傍に居た親父が声をかけてきた。

 

「おい、ウェイトレス」

「何でしょうか、()()()?」

 

思わず厭味ったらしくなるけど親父は気にしないらしくそのまま続ける。

 

「これと同じものを用意してもらいたい」

「はぁ、承知しました。金額は400円かかりますがよろしいでしょうか?」

「構わないさ」

 

カウンターに戻る。ちょっと疲れた気がするけどまあ、頑張ろう。

 

「はぁ、麻婆追加」

「ええええ?!」

 

須川君の驚きももっともだよね。

 

                   ☆

 

今僕らは文化祭の校内を歩き回っていた。

 

「それにしても何か裏で色々起こってる気がしてならないのは気のせいかな」

「さあな、しかしいいのか? 私たちを案内して」

「大丈夫だよ。召喚大会はもう明日だし、シフトについては普通に今空いてる時間だからさ」

 

うん、どうにかシフトを組み直して作り上げた休みだもの、家族と一緒に過ごしてもいいじゃないか。

 

「ならいいけど、兄さん無茶してないか?」

「大丈夫 大丈夫」

「あ」

 

じーさんが一つの店の看板の前で立ち止まった。

 

「じーさん行きたいの?」

「あ、いや そういうわけじゃないんだけどね」

「いいよ。行こうよ 考えてみれば僕、お昼食べ逃してるし」

 

気が付いたら麻婆とか家族が来たとかで食べてない。ちょっとお腹が鳴りそうなのもしょうがない。

 

「え、そうだったのか?」

「そうだったの?」

「まあ、別に食べなくてもいいし」

 

そこへ主夫のツッコミが入った。

 

「いや、そこはしっかり食べたまえ」

「え?」

「「え?」」

 

いや、なんでさ。

 

「気を取り直して行こうか」

「はぁ」

 

誤魔化しているのがバレバレだったみたいで、念話で「説教だ」と来た。解せぬ。

 

「あー、うん。そうだな」

「本当にいいの? 明久の行きたいところに行っていいんだよ?」

「ううん、じーさん行きたいんでしょ? だったらそれでいいよ」

 

こうして僕らは2-Aクラス「和風茶房 鶴屋」ののれんをくぐった。

 

                   ☆

 

入って最初にウェイトレスの人が来た。

 

「いらっしゃいませー……って、あ」

「あ、佐藤さん」

 

この前の試召戦争で対戦した佐藤さんだ。僕の発言に士郎が首を傾げる。

 

「兄さん知り合い?」

「っと、とりあえず何名様ですか?」

「えっと、5人です」

「かしこまりました」

 

すぐに席へと案内された。

 

「それにしても結構いい設備だね」

「うん、ちょっと前まで悲惨だったよ」

 

畳腐ってるし、クモの巣張るし、座布団紙だし、ちゃぶ台にいたっては折れてるのすらあった。それから比べたら本当に格段にいい設備になってるよここ。教室中の物が新品だし、いい匂いもする。

 

「は?」

「まあ、色々とね。ところでだけどアイリさんとセイバーは? それに舞弥さん」

 

じーさんのことだし普通に連れてくるって思ったのに。

 

「ああ、舞弥はちょっと予定が重なってね。セイバーとアイリは別行動なんだ」

「え、大丈夫なの それ?」

「ん? どういう意味だい?」

「ナンパとか」

 

アイリさんもセイバーも美人だし可愛いし、言い寄ってくる男多そうだよね。

 

「うーん、正直セイバーが一緒に居るから大丈夫かなって」

「そっか、ところで何食べるか決めた?」

 

僕が話を振ってなんだけど話題を変えるためにみんなに注文を聞いた。

 

「アタシ、豆大福食べたい!」

「俺は団子でいいや」

「私は特に「いいから いいから」……では蓬餅を貰おう」

「じーさんは?」

「あー。僕はお汁粉かな」

「了解、すみません。注文お願いできますか?」

 

そこに佐藤さんがやってきた。妙に縁があるなぁ。

 

「注文をどうぞ」

「豆大福と三色団子に蓬餅、それからお汁粉と葛餅全部一品ずつ、後お茶全員分で」

「かしこまりました」

 

それからちょっと雑談をしていると佐藤さんがお茶を持って来てくれた。

 

「先にお茶をお持ちしました」

「あ、どうも」

 

あ、美味しい。ちらっと見てみればアーチャーもちょっと唸ってる。この味再現できるように頑張ろう。

そこにうるさい声が入ってきた。

 

「?」

 

モヒカンと坊主頭の先輩が中央の席に胡坐をかいて座る。何か妙に行儀悪いなぁ。そう思ってたらその先輩たちは大声で話し始めた。

 

『それにしても、この喫茶店は落ち着いてて良いな!』

『そうだな。さっき行った2-Fの中華喫茶は酷かったからな!』

『だよな。あんな殺人料理を出すなんて普通じゃねーよ』

 

うわぁ、こいつらが噂の元凶なんだ。いい加減にしてよ。一応あれって泰山的には暗黙の了解だし、普通に提供してる麻婆豆腐なんだけど。

 

「……あれ、営業妨害だってわからないのかな」

「殺人料理と言うのは何のことかね」

 

アーチャーが尋ねてきた。それなら一言で答えよう。

 

「いやだなぁ。地元民ならだれでも知ってる中華食堂のアレだよ」

「「あれか」」

 

士郎とアーチャーが同時に言った。何だかんだで息合ってるよね二人とも、じーさんとイリア姉はわからないらしくて首を傾げていた。

 

「それって何のことだい?」

「じーさんは普通に食せるタイプの人間だから分からないよ」

「「?!」」

 

その時士郎とアーチャーに衝撃が走った。

ふと、連中に目を戻せば佐藤さんがお茶を持って行っていた。

 

『お客様方、お茶をお持ちしました』

『お、気が利くじゃねーか』

『ありがとよ』

 

二人がお茶を飲む……そして、

 

『ぶっ、に、にが』

『おい、ウェイトレス どうなってやがる?!』

 

そのお茶はとてつもなく苦かったらしい、モヒカンの方が掴みかかろうとするけど周囲の目線を気にして止めた。

佐藤さんは後姿からも確認できるくらいに真っ黒なオーラの背負って言った。

 

『それ飲んでとっととお帰りください』

 

多分、浮かべているであろう笑顔は某神父にも勝るとも劣らないほど怖いんだろうなぁって想像がついた。

 

「……すご」

 

佐藤さんってああいうことできるタイプの人間なんだ。

 

「いや、あれはいいのか?」

「まあ、それより先にどうにかなりそうだけど」

「そうだね」

 

あ、鉄人来た。相変わらずの筋力ですね。ハゲとモヒカンを担いで何処かへと消えた。

 

「誰だあれ」

「ウチの生活指導教員」

 

みんな驚いた顔をする。まあ、そうだよね。あの人の場合は体育教師の方が似合うって思うし。

その後、ハゲとモヒカンを見た者はいなかった。

 





坊主先輩とモヒカン先輩はこれにて退場です。ファンの人いたらごめんなさい
佐藤さんには無限の可能性があるんだ。須川君みたいに外見が安定しているわけでもないし、これと言って本編に絡んでないからこそのもう(ry


……無駄にあらぶりました。すみません


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第九問

さて、そんなこんなで次の日、悠里さんは教室の中央に立ってクラスの気合を入れていた。

 

「さて、今日は模擬店に関しては最終日よ。みんな気合入れるわよ!!」

「「「おうっ!!!」」」

 

最終日は部活の発表会みたいなものなので模擬店自体は二日間で終了だ。僕の隣の姉さんが伸びをする。今日もチャイナ服だ。

 

「さーて、頑張りますか。親父たちまた来るらしいし」

「え、そうなの? 僕の方はじーさんたちは来なくて幼馴染たちが来るそうで」

 

じーさん、僕の文化祭があるからって無理して出かけてたらしい。うれしいけど無理しないでほしかったなぁ。

 

「そっかぁ、ちょっと残念かな」

「そういえば、雁夜さん取材に来るって」

 

確か雁夜さんライターの仕事が入ったとかでウチの学園祭見に来るって言ってた気がする。

そのことを言ったら姉さんの顔が嬉しそうになった。

 

「よし、頑張るか」

「変わり身早すぎだよ」

 

姉さんのタイプって着物が似合って包容力のある人だもんね。完璧に当たってるや。

 

                   ☆

 

午前中は僕らのシフトだ。準決勝の相手は何故か居なかったため不戦敗ってことになった。なんでだろう? そこに士郎がやってきた。

 

「兄さん」

「お、士郎いらっしゃいま……せ」

 

後ろを見て思わず固まった。

 

「何で固まってるのよ?」

「どうかしましたか?」

「アキヒサ、どうしたの?」

 

凛に桜ちゃん、それにイリア姉も居た。うん、なんと言う女子ハーレム、羨ましいなって思ったりもするけどそれ以上にマズイって感じが物凄くした。ちょっと胃が痛くなりそう。

 

「……士郎、悪いこと言わないからウチのクラス入っちゃダメ」

「は?」

 

士郎がぽかんとする。まあ、その反応が正しいんだけどさ。

 

「うん、みんなと他の出し物見てきなさい」

「いや、何でだよ」

 

説明しようかどうしようか悩んでいた時に、FFF団(ヤツラ)の声が響き渡った。

 

『『『『異端者だぁぁぁぁ』』』』

 

どうやら女の子と仲良くしているクラスメイトが居たらしい、お前らいい加減にしてほしいんだけど? 昨日は結局、回転の問題であまり稼げなかったから悠里さんが凹んでたって言うのに。

 

『なんでこうなるんだ』

 

あ、日向君か 確か彼女いたはずだし、それかな? その後ろから数名の男子が出てくるんだけど一人子供混ざってる?!

 

『なあ、何の騒ぎだよコレ?! 日向、お前いっつもこういう目に遭ってるのか?!』

『あはは、面白いですねー』

『レオ笑い事じゃないぞ』

 

それを追いかけていく覆面集団、ウチのクラスの男子の評価って一部を除き最底辺な理由が丸わかりだよね。

 

『奏者?!』

『『センパイ?!』』

『ちょ、どうなってるのよこの学校?!』

『理解不能です』

『マジでごめんな』

 

多分、彼らの連れであろう女子の声がした。とりあえず、と士郎たちの方を向く。

 

「……わかってもらえたかな?」

「あ、ああ」

 

分かってもらえてなによりだよ。マジでこの学校はリア充にとって危険地帯なんだ。

 

「てか、どうなってるのよこの学校」

「さぁ?」

「ごめんね……色んな意味で」

 

あんなのがクラスメイトとか泣きたくなってきた。

 

                   ☆

 

シフトで教室で接客していると見知った人が声をかけてきた。

 

「あ、明乃ちゃん。遊びに来たよ」

「あ、雁夜さん! いらっしゃいませ」

 

今日はパーカーなんだ。逆に新鮮だなぁ。

 

「うわぁ、結構いい設備だね」

「まあ、Aクラスですし」

 

元々はね、それをぼくらがぶんどったわけですし。

 

「そっか、でもここまで設備が違い過ぎると苦情とか出ないの?」

「あー、出ましたね。てか、出しました」

 

事の顛末はこの前遊びに行ったときに話しているので割愛させてもらった。

 

「そうなんだ。ところでおすすめとかある?」

「なら胡麻団子とかおすすめですね。おいしいですよ。今ならセットもありますよ」

「じゃあ、それで。あと、花巻と杏仁豆腐と月餅に……」

 

次から次に注文が入る。早っ、てか多いよ?!

 

「雁夜さん、どれだけ食べるつもりですか?」

 

思わずそう言ってしまった。雁夜さんはきょとんとなる。可愛いけどこれとそれは別問題なわけで

 

「え? ああ、昔ちょっと流動食しか食べられなかった反動かな。食べれるときに食べたいなと」

「そうですか、とりあえずお茶お持ちします」

 

そういえば、雁夜さんは苦労してたんだよなぁと思いだしたぼくだった。

 

                   ☆

 

士郎たちをどうにか魔窟から離れさせた後、今度は意外なお客が来た。

 

「あれ? 何できてるの」

 

僕のサーヴァント アーチャーだ。昨日もきてたよね?

 

「いや、そういえば君の模擬店には行っていなかったなと思ってね」

「そうなんだ」

 

内心冷や汗が出る。これで不味いとか言われたらおしまいだ。頼まれていたセットを用意してアーチャーが座っているテーブルへと向かう。

 

「胡麻団子のセットお持ちしました」

 

どう言うのかが気になってそのままアーチャーが食べるのを見ることにした。

胡麻団子を食べ、お茶を飲んで一言、

 

「ふむ、中々の味だな」

 

よっしゃあああと思ったのも一瞬だけでした。

 

「しかしだね……」

 

物凄いダメ出しを食らった。うぅ

 

「どうかしたのかね?」

「うぅ、なんでもないさ。何でウチのサーヴァントはアーチャーなのさ」

 

もういっそのこと執事(バトラー)にクラスチェンジを要求したいです。

 

「!?」

 

                   ☆

 

さて、午後一番 僕は内心物凄く憂鬱な気分で召喚大会の会場へ向かう廊下を悠里さんと歩いていた。

 

「……はぁ、何で参加してるんだろう僕」

「急にどうしたのよ」

「いや、これから起こる頭を割るような、なんでさに耐えられるかなって思って」

「なんでよ?!」

 

アーチャー見たら絶対驚くんだろうなぁ。そんでもって頭にガツンと響くレベルの念話で「なんでさ」って言ってくるんだよ。それを憂鬱に思わないで何を憂鬱に思えと?!

 

「うん、僕だって好きであの召喚獣使ってないんだよ? でも絶対になんでさってくる気がしてしょうがないんだもん。それにさぁ……」

「とりあえず帰ってきなさい」

「わっ」

 

悠里さんに背中を叩かれてちょっと現実に戻る。あ、鬱になり過ぎだった。

 

「あたしとしては翔子と決着つけられればそれでいいの、明久は木下の姉をよろしくね」

「あ、うん。じゃあガンバろっか」

「当然でしょ。あたしは翔子に勝つんだから!」

 

僕と悠里さんはハイタッチをした。よし、とりあえず念話は切っておこう。

 

                   ☆

 

中華喫茶のにぎわいもちょっと薄れてきた。

 

「あー、そういえばこれから最終戦か」

「あ、忘れてた。アキヒサ出てるんだよな」

「そういえばそうじゃのう、見に行きたいがシフトの関係上不可能じゃし」

「……そんなあなた方に朗報(クイクイ」

 

いきなり袖を引っ張られた。

 

「!?」

 

Aクラス自慢の巨大モニターに召喚大会の会場がきっちりと映し出されている。

 

「……中継、つなげてみた」

 

流石神海だね。これなら仕事しながらでも見れるや。

 

「おお」

「凄いのう」

「これなら普通に応援できるな」

 

悠里とアキが立っているのが見える。ああ、なんて言うかさ。

 

「最終戦か……ちょっと出てみたかった気もするなぁ」

 

                   ☆

 

最終戦の会場で僕らは向かい合っていた。実況の人が何やら言ってるけど僕たちには関係ない。

 

「……奇遇?」

「そうかもね、翔子」

 

悠里さんと霧島さんは妙にずれた会話をしている。

 

「はぁ、何でこんなことに」

「同情はするよ。木下さん」

 

でも手加減する気は無いけどね。悠里さんにも頼まれてるし。

 

「……悠里、一つお願いがある」

「ん? なによ」

「……私が勝ったら言いたいことがあるの」

「?」

 

どうしたんだろう? 聞いてみようかと思ったけど、それ以上に、

 

「……(じゅるり」

「?!」

 

妙な悪寒を感じた。なんでだろう?

そんな僕はさて置き、先生がこちらを見てくる。

 

「それでは両チーム準備はよろしいですか?」

「はい」

 

僕は答えた。頑張らないとね。

 

「ええ」

 

悠里さんも答えた。悠里さんの言い方には決意があった。

 

「……大丈夫」

 

霧島さんが答える。どこか、自分に言い聞かせるような言い方だった。

 

「大丈夫です」

 

木下さんが答えた。そう言った彼女の目に迷いは無かった。

 

そして全員が同時に召喚の言霊を紡ぐ。

 

 

「「「「試獣召喚(サモン)っ!!」」」」

 

 

世界史

Aクラス 霧島翔子 467点 & Aクラス 木下優子 287点

 

 

「やっぱりAクラス、点数高いね」

「そうね。とはいえ負けられないのよ」

 

 

世界史

Fクラス 坂本悠里 346点 & Fクラス 衛宮明久 578点

 

 

点数が表示された途端、他の全員が僕を見た。なんでさ

 

「「「え?!」」」

「あ、言ってなかったっけ? 僕、歴史だけは得意なんだよ?」

 

世界史と日本史は得意中の得意です。それにテスト受けるギリギリまで復習してたもんね。

 

「得意とか言う点数じゃないわよそれ」

「いや、悠里さんも取れるよね一応」

 

そんな会話をしていると木下さんの召喚獣が突っ込んできた。

 

「はぁっ!」

 

僕は召喚獣をバックステップでかわさせる。

 

「っと、悠里さんは霧島さんよろしく!」

「わかってるわよ」

 

さて、始めるとするか!!

 

                   ☆

 

投影した双子剣を使いながら木下さんの召喚獣の攻撃をいなしていく。でも一つ一つのダメージが大きい、風圧だけでどうしてそこまでの点数削れるのさ。だけど、召喚獣勝負には慣れている僕が負けるわけにはいかないし。

 

「強い」

「当然じゃない。伊達に観察処分者やってないよ?」

「観察処分者? バカの代名詞じゃないそれ」

 

あ、木下さんもそんなこと言うんだ。いい加減にしてほしいよなぁ。そういう人、昔からいたよ。僕はバカだって決めつける人とか、それを思い出したせいかな。ちょっとイラッときてキツイ言い方になってしまう。

 

「は? なんでさ、噂で人を判断するとか天下の優等生様もただの人ってやつだね」

「なによ! だったら、観察処分者って何なのかを説明できるの?!」

 

あれか、バカには説明できないはずとか思ってるわけ?

 

「はぁ、学校の実験に付き合う代わりに特殊能力を持った召喚獣を使役できる特殊称号、これで分かる?」

 

分かりやすく説明しましたが何か? 木下さんは驚いた。

 

「うそ、そんな内容だったの」

「うん、名前だけで避けるような貧弱には興味ないんだとさ。さて、もうそろそろ畳み掛けるとするかぁっ!!」

 

ちょうどよく投影精度も溜まったしね。木下さんの召喚獣のランスを双子剣で弾き飛ばす。

 

「え、あ」

「鶴翼三連っ!!」

 

 

Fクラス 衛宮明久 408点

      VS

Aクラス 木下優子 DEAD

 

 

「どうだっ!!」

 

召喚獣が負けて木下さんは呆然としている。

 

「負けた………」

「当然でしょ。一年間の雑用は無駄じゃなかったんだから」

 

僕の労苦は無意味なんかじゃないさ。

 

                   ☆

 

一方、こちらは坂本悠里対霧島翔子

 

「……っ」

「はっ」

 

戦闘面に置いては一日の長がある悠里が少しだけ有利なようだ。

追い込まれつつも霧島は悠里を見据えて一つ尋ねる。

 

「……一つ、聞いてもいい?」

「なによ翔子、心理戦でもするつもり?」

 

悠里がいぶかしげに彼女を見た。そんな悠里を見て、霧島は首を横に振る。

 

「……違う、悠里今幸せ?」

「ええ、当然でしょ」

「……そう」

 

悠里の召喚獣が止めを刺そうとするが、霧島の召喚獣は抵抗をしない。すると、急に悠里の召喚獣の動きが止まった。

 

「ま、でも」

「?!」

 

そのまま悠里の召喚獣は後ろへと飛びずさった。悠里が笑う。

 

「アンタも一緒に居てくれたらもっと幸せかしら」

「!」

 

悠里と召喚獣の動きが完璧にシンクロしている。悠里も悠里の召喚獣もにやりと笑った。悠里が叫ぶ。

 

「来なさい。翔子! 今は過去も関係ない、あたしは正々堂々勝負したいのよ」

「……うん!!」

 

拳と刀による一進一退の攻防が続く、しかしそれもずっと続くわけでは無かった。霧島の召喚獣が突き出した刀を悠里の召喚獣は横に避け、そのまま刀を横から叩き、霧島の書簡中のバランスを崩した。

 

「これで、最後ぉっ!!」

「……!」

 

悠里の召喚獣の拳が霧島の召喚獣に突き刺さった。

 

 

Fクラス 坂本悠里 3点

      VS

Aクラス 霧島翔子 DEAD

 

 

こうして試験召喚大会は衛宮・坂本ペアの勝利で終わった。

 





がんばったよね……ぱとらっしー(ヽ´ω`)

うん、正直怒涛の展開過ぎたんだ。もう少し余裕を考えてやれば良かったなと思った。ぶっちゃけ後悔済みだよ。
ちなみにネタの時点ではUBWっぽい何かが発動してたはずだった。なのに普通の技になったんだぜ。なんでさ
個人的にはあの技のモーションは好きだよ。でも自分、EXTRAもCCCもアーチャー√真面目にプレイしてないんだ。すまん、アーチャー



閑話休題アンケート
『明久が実験で試薬を混ぜようとしています。どっちを混ぜる?

 試薬A 四票

 試薬B 一票

                              』


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第十問

 

召喚大会も無事に終わり、学園祭の一般公開も終了した。

お客さんが居なくなった中華喫茶のテーブルの一つにみんなが集まる。目的はそのテーブルの上に置かれた腕輪とタブレットだ。

 

「で、これが優勝賞品というわけか」

「どんな能力があるんだ?」

 

転入生の二人が興味深そうにそれを眺めている。一番食いつきがいいのがこの二人だったりする。

 

「あたしのは召喚フィールドを出せるようになるものよ」

「僕のはとりあえず分裂はなしになって。その代わりに外見を変えることができる特殊端末なんだって」

 

うん、あのアーチャー仕様をどうにかできるものを欲しいって依頼して正解だったよ。ちなみに本来の優勝商品じゃないよコレ。

姉さんがすこしタブレットをいじりながら言う。

 

「へぇ、ある意味でボーナスだね」

「アバターの改造用ってわけか」

「特定の一個人用なのか?」

 

日向君と日暮さんが口々に尋ねてきた。本当に食いつきいいなぁ。

 

「ううん、何人か登録も可能みたい」

 

ならぼくも登録してと姉さんが言った。そうだよね。使い慣れて無い槍とか勘弁して欲しいよね。

わいわいとやっているとそこに神海さんと南がやってきた。

 

「……喫茶店の売り上げ計算終わった」

「ついでにウェイトレスとウェイターの集計も終わった」

 

は?

 

「え、そんなのやってたの?」

「知らなかったんだけど」

「ほら、お客さんに紙配っただろ。あれがアンケート用紙」

「へぇ、そうだったんだ」

 

あの紙にそんな意味があったとは知らなかったよ。

神海さんが悠里さんにノートを見せていた。

 

「……これくらい」

「うーん、まあ喫茶店の売り上げにしては良しか……あの営業妨害さえなければねぇ」

「まあまあ、というか売上どうするのさ」

「クラスの備品でも買うのか?」

「いいえ、普通にお金儲け(こういうさぎょう)って楽しいじゃない」

「「………」」

 

いや、いい笑顔で言われても。なんて返したらいいのかわからないよ?

 

「拝金主義者よりも酷いものを見た」

 

日向君が呟いた。拝金主義者って……凛じゃあるまいし。

とりあえず話題を変えよう。

 

「で、売り上げはどうするのさ」

「うーん、打ち上げの代金にでもする?」

 

悠里さん、首かしげても分からないよ?

 

「無駄遣いしないで取っておいたら? お金ってあるほうがありがたいし」

「ま、それもそうね。打ち上げといえば、どうする? お店でも取る?」

 

姉さんが尋ねたことにもう一回悠里さんは首を傾げた。

 

「え、なに言ってるの?」

「はい?」

 

                   ☆

 

それからちょっとして、それなりに片付いたFクラスの教室内ではどんちゃん騒ぎが起こっていた。

 

「まさかこうなるとはね」

 

せっかくいい設備なんだから使わないと損でしょ? という悠里さんの意見により、教室のキッチンで料理とか作って打ち上げをすることになった。

 

「といういか教室で騒いで平気なのかな?」

「まあ、今日は無礼講(ぶれーこー)ってやつでしょ」

 

姉さんの言うことも一理あるかな?

 

「それもそっか、姉さんこれ飲む?」

「お、さんきゅー」

 

缶ジュースを投げれば姉さんは見事にキャッチする。もう一本頂戴とか言われたけどどうするつもりなんだろう?

 

                    ☆

 

「はぁ、どうにか終わった」

「お疲れ様だね。島田君」

 

ちょうどよく島田君を見つけた。机に突っ伏してちょっとぐったりしている。

ジュース貰ったのはいいけど誰に渡すか決めてなかったんだよね。

 

「え、アキノ?!」

「アキからジュース貰ったんだけど飲む。はい」

「わっ」

 

島田君の首筋にジュースをぴたっと当てれば、物凄い勢いで慌てだした。

 

「慌て過ぎだって」

 

その反応が面白くてついつい笑ってしまった。

 

「笑うなよ」

「ごめんごめん」

 

                  ☆

 

僕がテーブルに座って(行儀悪い? 気にしない気にしない)いると彩夏さんがやってきた。その手にはジュースの缶がある。彩夏さんは姉さん達の方をみて呟いた。

 

「ふむ、いらんところでフラグを立ててるのは気のせいだよな」

「ん? どうしたの」

 

普通に仲良くしてるだけじゃん。

 

「いや、友人の旗立屋(フラグメイカー)っぷりをみてふと思う」

「?」

 

言っていることがよくわからなくて、首を傾げていると秀吉がやってきた。

 

「明久よ。料理がなくなってしまうぞ」

「あ、え? ホント?! 結構作ったのに……今食べに行く!」

 

食べ逃すのだけは勘弁して欲しいなぁ。

 

                   ☆

 

一方、校舎裏の人がほとんど来ないところに悠里と霧島が居た。お互いに正面から向かい合っている。霧島が意を決したように口を開いた。

 

「……悠里」

「はぁ、翔子 一応勝負に勝ったらって約束じゃなかったかしら?」

 

悠里は肩をすくめる。確かに試験召喚大会の時の約束はそうだった。

 

「……でも、今の内に言いたかった」

「で? どうしたのよ」

 

霧島は泣きそうな顔で言った。

 

「……私、悠里とまた一緒に居たい。今度は逃げないから、お願い、一緒に居させて?」

 

霧島の言葉を聞いて悠里は少しだけ苦しそうな顔をした。彼女にも思うところがあったのだろう。

 

「そこまであたしはあんたのこと縛ってたのね。ごめんなさいね、翔子」

「……ううん、そんなことない。悠里と一緒に居たかったのは私のわがままだから」

 

霧島の言葉を聞いて悠里が苦笑した。そして言った。

 

「バカね、もちろんよ。翔子、あたしにとってあんたは大切な親友の一人なんだから」

「……いいの?」

 

霧島がちょっと呆然とした表情で悠里を見る。悠里は霧島の目をじっと見ながら言った。

 

「ええ、あたしはあの時はまだ本当に子どもだった。あんたのこといっぱい傷つけた。それでも一緒に居てくれるんでしょう? なら、あたしはなにも文句なんてないわよ」

「……悠里っ!」

 

悠里はにっと笑って告げた。

 

「Fクラスに遊びに来たかったらいつでも来なさいよ。あ、今度から弁当でもいっしょに食べる?」

「……もちろん!」

 

霧島はとびっきりの笑顔で答えた。

 





清涼祭編終了です。
ちなみにですが別に百合っプルじゃないです。初めに言っておきます百合じゃないです。

一応設定としては 悠里と霧島は小学時代に仲が良く親友だったのだけれども、バカテスの原作派(雄翔好き含む)が原作の通りにしたくて、五年を過ぎた頃から苛められるようになり、霧島の家の人が心配、霧島自身も限界に近かったので、彼女を私立のお嬢様学校に入れてしまうみたいな設定が裏にあった。うん、説明しないと訳ワカメだよね。

ついでに悠里は中学に入るまでにかなり精神がスレてて、それをどうにかしたいから格闘技に手を出すようになった。って設定まで考えて小説にするのをあきらめた。本当は悠里と明乃の出会いがプロローグの予定だった。

閑話休題アンケート
『明久が実験で試薬を混ぜようとしています。どっちを混ぜる?

 試薬A 五票

 試薬B 一票

                              』


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※ザビエル道場

 

??:文化祭も無事終了!

???:毎度のことながら新章の前のお約束!

 

『ザビエル道場』!!

 

ザビ男:どうも、今回本当に出番のなかったザビ男だ(´・ω・`)

親友:どうもー、ザビ男以上に出番のなかった親友だぜ。そんなこんなでザビエル道場も早、四回目! 思った以上に長く続くな

ザビ男:まあ、本当だったら途中で『ザビエルチャンネル』に変える予定だったらしいが、面倒だったのでこのままだ

親友:頼むからあの腹黒娘は勘弁してほしいんだが、それから紅茶

ザビ男:親友の紅茶disりは健在だな。そんなわけでどうあがいたって二人で話すには尺がありすぎるのでゲストを呼んでみた(指ぱっちん、するといきなり煙が出てくる

 

??:えっと、どうも……てか、前回呼ばれたよね? そんなわけで某家長男だよ

??:マスター、なぜそこまで順応しているのかを教えてもらいたいのだが、私は……え、これを名乗るのか……はぁ、赤弓だ。よろしく頼む、それにしてもなんだか不安感を誘うセットだな(周りを見回す

ザビ男:え、だってこれが本来の形だろ? 死亡フラグの反省とかキンググリムゾンとかのための(サムズアップ

赤弓:そんなわけなかろう(びしっと突っ込みを入れる

長男:わかりにくい人にわかりやすく説明すると、その名の通り道場に僕らはいるよ。赤弓、お茶淹れて 都合よくお茶菓子あるのにお茶ないとか無いよね(´・ω・`)

赤弓:承知した。しかし湯はなさそうだが……(・_・ )キョロ( ・_・)キョロ

ザビ男:あっちに給湯室があるからそこでよろしく

赤弓:わかった(そのまま給湯室へ向かった

 

長男:あれ、親友さんは?

ザビ男:あそこ(部屋の隅を指さす

親友:あれはオリジナルあれはオリジナルあれはオリジナル(隅でガタガタ震えてる

長男:?! 一体何事?! てか、親友さんのキャラが崩壊してる?!

ザビ男:トラウマ発動中なだけ、放置して大丈夫。紅茶が来なくてよかった

親友:正義の味方とか居ないでください、首輪つけられて真綿で絞め殺されるとかマジで勘弁しろください、俺から自由をとるな、(呪詛のように色々とつぶやいている

長男:……放置しておいていいの?(ザビ男を見る

ザビ男:正確に言うと俺ではどうにもできない

長男:そっか、それにしても親友さんなにやったのさ

赤弓:茶が入れ終わったぞ……一体どうした?

 

ザビ男:なんでもないぞ。それにしても赤弓のお茶(゚д゚)ウマー

長男:相変わらずながら美味しいわけなんですよorz

赤弓:マスター?

長男:うっさああああい、赤弓なんてレシピ本出して世の中に功績残して荒谷から退社すればいいんだぁぁぁぁ(全力疾走

赤弓:マスタァァァ?!(追いかける

 

ザビ男:……なんて言うかゲストさん帰っちゃったし、アンケート結果発表! 親友、俺一人だと空しいんだけど

親友:ぶつぶつぶつ(まだ呪詛中

ザビ男:……じゃあとりあえず、圧倒的多数で試薬Aの方が選択されたぞ。中の人(さくしゃ)が幸運A+ってこんなとこでも仕事するんだねと言ってたぞ。じゃあこの辺でお開きだ

 

 





今回無駄にカオスでお送りしました。『ザビエルチャンネル』じつは『ザビザビチャンネル』の予定だったんだ。でもザビエル一人しかいないから止めました。

今回のアンケートにお答えいただいた方に改めて感謝を、次回から閑話休題編です。


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閑話休題
第一問



※ぶっちゃけていいますが、今回好む人と好まない人を分けるような表現が多々ありますので注意。個人的には俺得(`・ω・´)


 

一人暮らしをしているマンションの自分の工房で僕は実験をしていた。

 

「とあるこーふく論者が呪った明日、現実主義者はつまんない」

 

軽く歌いながら、薬品を混ぜていく。何らかの効果が得られることは確認済みだから余計にすいすい進むや。

 

「たーなっぷ、たーなっぷ 意味ふめー言語

 たーなっぷ、たーなっぷ、音信ふつーしんき

 たーなっぷ、たーなっぷ 価値のない日々を

 

 もっと楽しませて?」

 

割とノリノリで作業は進む。えっと、試薬のAを混ぜてっと。

 

「よし、完成!」

 

出来上がったフラスコを持ったまま万歳すれば、手からうっかり飛び出たフラスコが宙を舞う。

 

「あ」

「マスター今日の昼しょ」

 

ちょっと唖然としていると、ちょうどよくドアを開けたアーチャーに宙を舞ったフラスコがピンポイントで激突した。アーチャーに試薬がざばっと掛かった。ああ、3万が……ってそこじゃない!

 

「アーチャー?!」

 

ボムっと音がして、いきなり煙が立ち込める。

 

「けほ、けほ アーチャー?! どこ?」

 

慌てて窓を全開にして、煙を追い出し、アーチャーを探すけど見つからない。ふいに足下でにゃーと声がした。恐る恐る見てみれば白い毛並みに灰色の目の猫が居た。それをみて思わず呟く。

 

「……なんでさ」

 

                   ☆

 

とりあえず、逃げることもせずに大人しい猫を抱き上げ、一応安全地帯であるリビングに向かう。テーブルには出来立ての料理が並んでいた。あれだよね、お昼作ってくれてたんだよね。ごめんね、アーチャー。ソファーに座って猫を膝に乗せる。物凄く大人しいけど大丈夫かな?

 

「どうすればいいのさ、猫飼ったことないよ……ってそこじゃないか」

 

この綺麗な白い毛並みの猫は僕のサーヴァントであり、頼れる主夫、アーチャーなんだ。大体あんなカミカミの召喚呪文で召喚されてくれたとてつもないお人好しで、別世界の弟、さらにはたまに日常生活破綻しかかる僕の健康管理までやってくれている。うん、今僕、物凄く申し訳ない気分になってるんだけど。

 

「かわいいにはかわいいけど、どうしたものか。アーチャー、僕のことわかる?」

 

記憶があるなら少しは上手くいくかなって思ったけど、現実は甘くない。アーチャーは首を傾げた。言葉は理解してるっぽいけど、やっぱりそうだよね。

 

「ですよねー。はぁ、てか明日から普通に学校じゃないか昼間どうしよう……そうだ」

 

                   ☆

 

次の日の朝、割と早くに僕は実家へときていた。

 

「ただいまー」

「あれ、明久どうしたんだい?」

 

じーさんが出てくる。早起きしてるなんて珍しいな。

 

「実はさ、知り合いから猫預かることになってちょっと昼の間だけでいいから面倒見てもらえないかな?」

「まあ、いいけど。猫は?」

「え? ああ、おーいこっち」

 

アーチャーがこちらへとやってきた。驚いたことにアーチャーは記憶が無くても物凄く賢かった。割と言ったことは理解してるし、飲み込みも早い。僕が呼べばすぐに来てくれた。ちょっとしゃがんでアーチャーを抱き上げて、じーさんへと渡す。じーさんはおっかなびっくりだけどちゃんと持ってくれた。

 

「ずいぶんと賢い猫なんだね」

「じーさんそんなわけでちょっとの間よろしくね」

「あ、うん。いってらっしゃい」

 

さて、学校行かないとねー。とか思ってふと気が付いた。もしかして、アーチャーわざとやってるとか?

 

                   ☆

 

「まあ、しばらくよろしね。猫さん」

 

爺さんが私を撫でる。まあ、気分は悪くない。そんなわけでマスターの試薬をもろにかぶった私は何故か猫になっていた。マスターは心底反省しているようなのでまあ、いいだろう。私は爺さんに抱き上げられたまま、廊下を進む。下してくれても構わないのだが……

 

「あら、キリツグ 何を抱えているの?」

 

爺さんの細君であるアイリスフィールがこちらへとやってきた。

 

「ああ、明久が知り合いから預かった猫だよ。昼間は面倒見れないから見てほしいそうだ」

「そうなの。かわいいわね」

 

頭をそっと撫でられた。精神としては何ともないのだが、猫の体は反応するらしくゴロゴロと音を立てる。

 

「おはようございます。切嗣、アイリスフィール」

 

そこへセイバーがやってきた。『正史』と呼ばれる世界では絶対にありえなかった光景がここにある。

 

「ああ、おはようセイバー」

「おはようセイバー、見て見て」

「これは……」

 

セイバーは私の姿を視て目を丸くした。

 

「アキヒサが預かったんですって、可愛いでしょう」

「……はい、しかしこの猫からは僅かながら魔力を感じます。使い魔か何かでしょうか?」

 

おや、と思う。我がマスターは驚くほどに魔術礼装の製作に長けていた。本人のセンスは少々疑うものがあるが、それを抜きにしても至高の一品と言える。猫となった私の魔力を抑えるためにマスターは首輪を作ってくれた。大体の魔術師には私が只の猫に認識されるはずだ。

 

「なるほど、でもセイバーよく気が付いたね。僕は何も感じなかったけど」

「そうですか。ですが、魔力の残滓のようなものがあるのは確かだと思うのですが」

 

多分これは彼女が英霊だからこそなのだろう。そう結論付けることにした。

 

「そっか、まあ、かなり賢い猫だしね。使い魔って可能性もあるね」

 

そこへドタバタとうるさい足音が響いた。見ればあの未熟者が大慌てで制服を着ながら玄関へと向かうところだった。

 

「爺さん、アイリさん、セイバー、おはよう! 悪いんだけど朝ごはん作っておいたから俺抜きで食べてて」

「シロウはいいのですか?」

 

私がアレであった頃は朝食を抜きにして学校へ向かうことなどなかったと漠然と思い出した。さらに未熟者が驚く単語を言った。

 

「今日、部活の朝練なんだよ。いってきます!!」

 

そう言って奴は飛び出していった。部活動、その単語だけで心底驚いたと同時にここは私の知っている歴史をたどっていないのだと納得できた。

 

「いってらっしゃい」

「いってらっしゃいね」

「そうですか、気を付けて」

 

何故だか、もうそろそろ気が付いてほしくなってにゃーと鳴いてみる。すると三人の目線がこちらへと戻った。

 

「んー? どうかしたかい」

「お腹減ってるのかしら?」

 

別にそういうわけではないのだが、それを表現するために首を横に振る。するとアイリスフィールが驚いた顔をした。

 

「あら、そうなの」

「随分と賢い猫ですね」

「そうね」

 

                  ☆

 

それからしばらく、猫の体ではすることも何もない。部屋を移動してみたりもしたのだが、落ち着かなくなってきて縁側へと向かった。

 

「ん? どうしたんだい。膝にのる?」

 

爺さんが笑う。いや、それは少し……と思っていると、足音が一つ聞こえた。

 

「あれ? 何で猫がいるの」

 

イリヤスフィールだ。そういえば、マスターは何故彼女をイリアと呼んでいたのだろうか?

 

「明久が知り合いから預かったらしいんだ。乱暴しちゃダメだよ」

「もちろんできるわよ」

 

世界は変わってもイリヤはイリヤらしい。そう考えていると、彼女の手が私の頭にそっと乗せられた。

 

「ふわふわだ」

 

そのままそっと撫でられる。アイリスフィールに少し似た手つきだ。思わず目を細める。

 

「気持ちいいんだ」

 

その日は只、穏やかに過ぎて行った。





えー、そんなわけで試薬Aの効果は獣化でした。ストーリープロットは「明久がうっかりぶん投げてアーチャーに激突」からスタート。

ちなみにBは性別転換でした。ストーリープロットは「明久がうっかり自分に試薬をかけてしまい、女体化」からのスタートでした。

明久の約束されし幸運A++は仕事をしまくった(`・ω・´)
そのかわりにアーチャーが不憫になるかなって思ったら、そうでもなかった。幸運Aェ
これが言峰家で行われると絶賛不憫になるので自重した。考えただけで不憫とか悪運EXェ

そんなわけで罪悪感MAXの明久と猫アーチャーの温度差半端ない日常編スタート


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第二問

 

さて、大慌てで実家にアーチャーを預けてそのまま学校に来た。とりあえず元に戻れる薬を作るためにノートに材料纏めてるんだけど、このままだと材料的に四万越える気がしてきた。

 

「はぁ、うーん」

 

これは大散財の予感がするよ。でもまあ、アーチャーのこともあるし急がないとなぁ。

 

「明久、何をやっておるのじゃ?」

「え、うわっ」

 

秀吉に声をかけられて慌ててノートを隠す。すると秀吉はジト目で僕を見る。何もやましいことは無いんだけど………

 

「本当にお主何をしておるのじゃ?」

「アハハ……ちょっとね」

 

ちょっと心配そうな顔をして、秀吉は去っていった。

さて、もう一回やろう。それからちょっとして、計算が終わったわけだけど。

 

「なんでさ」

 

最終的に総計六万……もう一回最初からやり直そう。うん、そうしよう。

色んな意味で頭が痛いよ。

 

                   ☆

 

珍しく静か(普段は大方の男子が煩い)な休み時間、ふとアキの方を見てみたら凄く真剣な顔でノートに書き込んでいた。

 

「あれ? なんか珍しい」

「そうか? いつも通りだろ?」

 

偶然隣に居た日暮君がぼくの呟きに反応した。別にノートを書き込んでいるところが珍しいんじゃないんだよ。

 

「いや、アキがあんな難しい顔して学校に居るのが珍しいんだよ」

 

てか、あそこまで真面目な顔する方が珍しいし。あれって魔術系のこと考えてる時か、あとは……

 

「それだと普段は緊張感無く学校に居ることにならないか?」

「違うよ。ああいう難しい顔してる時は切羽詰まってる時なんだよね」

 

そう、なんかしらの要因で精神的に追い詰められているときなんだよね。

 

「切羽詰まってる?」

「うん、自分を責めてる時って言った方がいいかな。ああいうときって大体無茶するから」

 

昔、切嗣さんに引き取られた直後ずっとあんな表情だった頃があった。ぼくはちょこちょこ切嗣さんの家にお邪魔させてもらったけど、なんて言ったらいいのかな。目の光が薄かった。うん、あのまま目の光消えちゃうかなって気がして怖かった。

 

「そうなのか」

「うん、日暮君でよければ気にしてあげてよ」

「おう」

 

これが好プレイを呼ぶわけだけど、そんなことはぼくは知らなかった。

 

                   ☆

 

一旦家に戻ったわけだけど、家には誰も居ない。それが少し寂しかった。はぁ、何であんなことやらかしたんだろうなぁ。

 

「今日は夕飯、適当でいっか」

 

食べてくれる人も無いからなんか張り合いないしなぁ。たまには手抜きでもいいや。そう思った僕は炊飯器のスイッチを入れて、どこかにあったであろう煮干しのパックを探し始めた。

今日の夕飯はご飯とみそ汁と何故か冷蔵庫にあった納豆という質素なものになった。

 

                   ☆

 

部活も終わって、学校から帰宅する。もちろん夕食の買い出しも忘れていない。家の扉を開けたとき、そこには見慣れないものが居た。

 

「ただいまー……ってあれ、猫?」

 

白い猫だ。ウチにこんなの居たっけ?

そこへセイバーが来てくれた。

 

「おかえりなさい、シロウ。アキヒサがしばらく預かるそうなので昼間だけこちらで預かることになりました」

「へぇ、そうなのか……って、あ 爺さん?!」

 

セイバーの説明を聞きながら居間に行って少し廊下に出てみたら爺さんがブランケットをかけられてはいるけど縁側で寝ていた。もう夕方じゃないか。慌てて爺さんを揺らせば。

 

「ん、んぅ?」

 

とりあえず起きた。はぁ

 

「何でこんなとこで寝てるんだよ」

「あー、あれ? 士郎、おかえり」

 

なんでこんなところで寝てたんだろうねぇ。と言いながら爺さんは居間に行った。ブランケットを片付ける。本当に何でそんなところで寝てたんだよ。

 

「たく、セイバー ブランケットかけてくれてありがとうな」

「いえ、それはあの猫が」

「え?」

 

自分の話題が出たからなのか白い猫はこちらへと来た。こいつ、結構人の言ってること理解してるんだな。

 

「この猫、かなり賢いんですよ」

「はぁ、兄さん 何、作ったんだよ」

 

兄さんは礼装系も得意だしその気になればこういう感じの使い魔もいけるか。そう思ったけどセイバーは違うという。

 

「いえ、アキヒサが言うには知り合いから預かったそうです」

「本当に?」

 

思わず眉をひそめてしまった。兄さんの場合、普通に見えても絶対に裏があることが多いんだけど。

 

「ええ、この猫は確かに普通の猫です」

 

セイバーが言うならそうなんだろうけど、何かなぁ。

 

「そっか……それにしても」

 

しゃがんで猫の頭を撫でる。猫が一瞬不機嫌そうな顔をしたけど、それも俺が考えていることを助長させる。

 

「なーんかあいつに似てるよなぁ」

 

兄さんのサーヴァントで無駄に俺には辛口な赤い外套のアーチャー、猫はあいつによく似た雰囲気を持っていた。

 





不穏かつ微妙に歪みだした明久と普通に猫生活謳歌しているアーチャーの日常話です。

明乃の最大の理解者は明久だと思う、だけど明久の最大の理解者は明乃じゃないと思う。何故だかそんなことを考える今日この頃なのだった。
二人の立ち位置が逆だったら多分明乃は普通の子に明久は歪んだ子になったと思う。よく二次創作で見る『言峰士郎』みたいな感じで


……コホン、無駄に変なこと書きましたが一応この小説はシリアルがメインです!


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第三問

 

結局そのまま実家に帰らずじまいで次の日、僕は学校が終わるとすぐに実家へと向かった。

 

「ただいまぁ」

「あれ、兄さん おかえり」

 

ちょうど玄関のそばの廊下を通っていたらしき士郎が声をかけてきた。エプロン付けてるってことはもう夕飯の支度か、

 

「はぁ、疲れた」

 

どうにか削るだけ削って三万に収めたけどそれまでの計算とか材料の交渉とか色々と面倒だったなぁ。

 

「兄さん、大丈夫か?」

「なんでもないさ」

 

心配も掛けたくないのでそのまま士郎の横を抜けて、今に行くとじーさんが新聞を読んでいた。僕の気配に気が付いたらしく、顔を上げて笑う。

 

「あ、明久 おかえりなさい」

 

それと同時ににゃーと声がした。アーチャーはじーさんと一緒に居たらしい。

 

「ただいまー。昨日は迎えに来なくてごめんね」

 

頭を撫でればアーチャーは嬉しそうにゴロゴロと声を出した。そんなアーチャーに癒されていると、後ろから声がかかる。

 

「あら、アキヒサ おかえり」

「おかえり! アキヒサ」

「ただいま。アイリさん、イリア姉さん」

 

アイリさんと一緒にもう一人イリア姉も居間に入ってきた。二人に軽く挨拶をして、自分の部屋に続く廊下へと向かう。すると、反対からセイバーが歩いてきた。

 

「おかえりなさい。アキヒサ」

「セイバー、ただいま。ちょっと部屋行ってくるね」

 

一応こっちに戻ってきたのには理由があるし。

 

「わかりました。シロウにそう伝えておきますね」

 

                    ☆

 

久々の自分の部屋に入るとちょうどよく長座布団があった。確か先週の休みに干して、回収してそのままだったんだっけ?

 

「疲れた」

 

ボスッとその長座布団にうつぶせになる。

 

「ふぁぁぁ」

 

いい具合に眠気に襲われてそのまま眠ってしまった。

 

                    ☆

 

兄さんに話があってちょっと探していたんだが、それはセイバーの一言で無駄足になった。

 

「え、兄さん部屋行ったのか?」

「ええ、随分疲れた様子でしたし仮眠を取るのでは?」

 

そういえば、目にクマできてたな。何か魔術研究やってたのか?

 

「あー、なるほどな。帰ってきたんだし夕食のリクエスト聞こうかと思ったんだけど」

「しかし、アキヒサは基本的にシロウの好きなものでいいと言いますよ」

 

何時もそういうけど俺は兄さんに何食いたいのか聞いてるんだよ。

 

「だからだよ。てか、俺未だに兄さんの好物知らないんだけど」

「そういえばそうですね。アキヒサがこれといったリクエストするなんてことはあまりないですし」

 

そこに猫がにゃーと声を出した。見れば俺がちょっとほったらかしにしておいた料理雑誌のページを開いて、タシタシと叩いている。

 

「どうした? って、パエリア? なんでだ」

 

パエリアの特集ページだ。にゃーにゃーと猫に言われるけど兄さんみたいに猫語翻訳機とか持ってないから何言ってるのかわからん。

俺と猫が会話(?)をしているとセイバーが雑誌のページを見ながら真剣な表情で言った。

 

「シロウ! 今晩の夕食はこれにしましょう」

「待ってくれよ。材料とかいろいろ無いぞ!」

 

俺がセイバーにツッコミを入れてるとガラガラと大きな音がして、玄関から誰か来た。この音は……

 

『こんばんはー!』

 

やっぱり藤ねぇか、藤ねぇは時々ウチにやってきてはご飯をたかっている。それから兄さんとは喧嘩仲間? みたいな関係だ。たまに藤ねぇ相手に勝負を挑んでくる奴らを互いに口喧嘩しながら吹っ飛ばしているそう。

 

『あれ、大河ちゃんいらっしゃい』

『はい! 切嗣さん こんばんは、実は今日商店街で福引したんですよ』

『そうなのかい、何か当たった?』

 

ガサガサと音がして、ゴンと何かを取り出したっぽい。

 

『じゃーん! パエリア用の食材と調理器具一式!! なんであたったのかはよく知らないんですけど、これ見たら切嗣さんのおうちにお邪魔したくなりまして』

『ははっ、そうなのか』

 

爺さんと藤ねぇはのんきな会話をしているが、俺としては都合がよすぎる気がして驚いた。猫も同じような表情をしている。

 

「……なんでさ」

「シロウ、材料も調理器具もあることですし。パエリア食べたいです」

「あ、ああ」

 

幸運EXとかあったらどんなものだろうねー。とか兄さんが言っていたことを思い出した。多分、これが幸運EXなのだろう。

 

                    ☆

 

「……んー」

 

ふと、目が覚める。目を擦りながら体を起こせばブランケットが掛けられていた。

 

「あ、寝てたか」

 

もう夕飯の時間だよね。そう思って廊下に出てみたら美味しそうな匂いがした。

 

「あれ、この匂いって……」

 

実家でこの匂いかぐことなんてないのになぁ、なんて首を傾げながら居間へと向かえばみんな揃っていた。

 

「おはよ?」

 

微妙に違う気がしながらもとりあえず挨拶する。

 

「あら、アキヒサ寝てたの?」

「おはようじゃなくってこんばんはかしら」

「アキヒサ、起きたのですね」

「あ、明久 おはよう。もうそろそろ夕食だよ」

 

みんな口々に挨拶を返してくれた。やっぱり夕飯時だったみたいだ。

 

「そうなんだ。今日の夕食は?」

「パエリアです」

 

その単語に思わず固まる。今なんて言った?

 

「ホントに?」

「はい、タイガがパエリアの食材と調理器具のセットを当てたので」

「……タイガーって無駄に運がいいよね」

 

幸運のステータス付けたらEXとかになりそうだ。藤村大河ことタイガーはまだ帰っていなかったのでボクの独り言に口を挟んでくる。

 

「こらー! タイガー言うな!!」

「喧嘩はそこまで! 騒ぐ奴にはご飯はなしだぞ」

「むむっ」

 

士郎がパエリアの入った大皿を持ってきた。中にあるのは普通のパエリアだ。でも、自分で作ってなくて後光の射さないパエリアは本当に久々だ。自分が作るよりもアーチャーの方が地味に美味しいんだよね。まあ、アーチャーが食べるたびに驚いてくれるのはやったって感じするけど。

 

「……美味しそう」

「あれ、兄さんが珍しいな」

 

士郎が驚いた顔をする。どうかしたの?

 

「そう?」

「ああ、なんて言うか目が輝いているって言うか」

「あ、パエリア好物なんだ」

「!」

 

士郎がさらに驚いた顔をした。何かあったのかな?

 

「どうしたの?」

「いや、なんでもない」

 

そこに、にゃーと猫の鳴き声がした。あ、アーチャーを忘れてた。

 

「そういえば、この子の分のごはんは?」

「あ、忘れてた」

 

士郎が慌てて台所へと向かった。

 

「ほい」

 

浅いお皿に盛られているのは明らかに冷えたご飯と鰹節にちょっとだけしょうゆをたらした日本における伝統的な猫のごはん、猫まんまだった。

 

「……」

 

中身がアーチャーなのかは不問にしておいても、地味にドンマイとか思った僕が居た。

 





衛宮家は幸せになってもいいはずだ。そんなコンセプトでお送りしてます。次点は間桐家。そして、タイガーがご都合主義の便利キャラになってしまったことを反省してます。


疲れ明久と猫ながらに頑張っているアーチャーの日常話です。


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第四問

 

明久が一旦実家に帰ってから二日後、元Aクラス、現Fクラスの教室、衛宮明久が少しふらふらしながらノートに書き込んでいた。見かねた秀吉が声をかける。

 

「む? 明久よ」

「んー」

 

眠そうな目を擦る明久、そしてまだノートを書き続ける。

 

「いや、大丈夫かの」

「大丈夫だよ。うん、だいじょぶ」

 

うわごとのように繰り返しながら明久は作業を進める。

 

「いや、ホントに大丈夫かよ」

「じゃのう、あのような明久は久方ぶりじゃしの」

「どうした?」

 

日暮が声をかけた。明久を気にかけてほしいと頼まれたのも一つの理由だろう。

 

「よ、日暮 今日のアキヒサが妙だって話」

「妙?」

「なんか凄い疲れてるみたいなんだよな」

「そうか、そういえばだがあいつって何処に住んでるんだ?」

 

日暮がいきなり話題を変えた。

 

「ん? 何じゃ、気になるのか?」

「あー、ちょっとな」

「確か、××ってマンションの4階だったはず」

「へぇ、意外と金持ちなんだな」

 

××マンションって結構値が張ったはずだよなーとか日暮広夢は考えた。実はそのマンションは明久の知り合いの持ちマンションで割と安値で暮らしているのだが、その事実を知るわけがない。

 

                    ☆

 

それから放課後、日暮は一人で呟きながら歩いていた。

 

「何で俺はこんなことをやってんだろうな」

 

明久のマンションに向かおうとしているのだ。この前や今日の様子が気になるらしい。

 

「はぁ、なーんか気になるんだよな。アイツみたいに無茶とか無謀とかしそうっていうか」

 

日暮の脳裏に無茶ばかりしていた何処かの青年の姿がよぎった。いやいや思い出すなと頭を振って、ふと横を見ればスーパーだった。

 

「あ、何か買ってくか」

 

店内に入って、籠を取る。それから適当に見渡して青果コーナーを見つけた。

 

「うん、果物とかいいよな」

 

そう呟きながら青果コーナーをちらっと見た日暮は踵を返す。

 

「やっぱ生は高いよな」

 

手持ち的に間に合うか不安だったらしい。ふと見れば缶詰コーナーがあった。その棚を興味深げに見てまわる。

 

「へぇ、缶詰ってこんなのまであるのか」

 

感心しつつ、適当に取ったフルーツ缶とおかず缶×3を手に取りレジへと向かう。そして、スーパーを出た後に気が付いた。

 

「……しまった。買い過ぎた?」

 

後悔先に立たず。まあ、缶詰だからいいかと気を取り直してマンションへと向かった。

 

「へぇ、こんなマンション住んでるのかよ。いいねぇブルジョアは」

 

暗証番号が要るのだが何故か入力することも無く扉が開いた。

 

「えっと。4階か」

 

エレベーターに乗って四階へと向かう。四階についてから気が付いた。

 

「あ、しまった。何号室か聞くの忘れた」

 

そこににゃーと声がした。

 

「ん、猫?」

 

気になって見に行けば、六つほど奥の扉の前で白い猫が鳴いていた。しきりに扉をカリカリやっている。

 

「……どうした?」

 

日暮の姿を見つけたらしい猫はぺしぺしと扉を叩き始めた。

 

「必死だな。どれどれ……え?」

 

名前のところを見れば見覚えのある衛宮の文字、慌ててドアを引っ張った。

 

「開かない」

 

チャイムを鳴らしてみるが、出ない。

 

「ちょ、どういうことだよ。衛宮! 衛宮!!」

 

ドアを思いっきり叩くがそれでも出てくる気配がない。

 

「出ないし……魔術師(ウィザード)舐めんなよ」

 

日暮は自分の持っていた端末を弄り始めた。少しすると、電子ロックの扉はがちゃっと音を立てて開いた。思いっきり扉を開ける。

 

「おい、衛宮!?」

 

そこには床に倒れている明久の姿があった。

 

                    ☆

 

目が覚めた。お腹に何かずしりと乗っている気がする。違和感の中、目を開けると。

 

「よー、大丈夫か?」

「え、日暮さん?!」

 

驚いて起き上がろうとするけどそれに日暮さんが待ったをかける。

 

「おっと、起きるなよ。そいつ起こしちまうぜ?」

 

僕のお腹辺りでにゃーと声がした。アーチャーだ。

 

「う」

 

日暮さんがそんな僕の様子にちょっと笑ってから呆れたような表情をした。

 

「はぁ、寝不足でぶっ倒れるとか何やってんだよ」

「あーぅー」

 

言い訳しようにも何も言えない。

 

「はいはい、とりあえずどうしたんだよ。何か無駄に荒れてるっていうか、乱雑としているっていうか」

 

そういえば、掃除まともにしてない気が。

 

「あははは、まあね」

 

さて、誤魔化しながらどう説明すればいいのやら。

 

                    ☆

 

とりあえず、こいつから話を聞いた俺が真っ先に告げたい言葉があった。

 

「ばっかじゃねーの!?」

「そんなわけないよ」

 

知り合いに間違って自分が飲むはずだった薬ぶっかけて、そいつの服の汚れを落とすために四徹(まあ、実際はそうじゃないらしいが)するとかバカだ。バカの極みだ。てか、一応それで納得したふりしておいたけどこいつ嘘つくのすげぇ下手だ。

そして、真顔でそう言ってくるこいつに少し戦慄を覚えた。罪悪感オンリーでここまでやれる人間が居たら驚きにもなるわ。ふと、あいつの背中を思い出したが今は地味に関係あるが引っ込んでいろって言いたくなった。

 

「はぁ、そういうことかよ。こいつまともそうに見えて地味に拗らせてるじゃねーか、つか歪んでる。あいつよかマシだけど歪んでるし」

「?」

 

まだ人間らしいといえばらしいけど、地味色々とおかしい。はぁーあ、何で俺は破綻者と縁があるのやら。

 

「はぁ、俺も手伝う。神秘の秘匿とか言うなよ俺はれっきとした魔術師(ウィザード)だ」

「ウィザード? メイガスじゃなくて」

 

やっぱりこいつはメイガスか。

 

「まあな。最近開発された魔術回路に頼らない新たな魔術だ。それでも素質は必要だけどな」

「え、何それ 全然知らないや」

 

ま、最近出てきたばっかりだからな。ウィザード知っているメイガスがどこまで居ることやら。

 

「じゃあ、同等交換と行こうぜ? 俺はメイガスの知識を得る、お前はウィザードの知識を得る。これでどうだ?」

「……乗った!」

 

思いっきり起き上がって猫から苦情の鳴き声が聞こえたがそれも気にならないほどに俺の提案は食いつきたくなる話だったらしい。

 

「オーケー、それじゃあ始めようぜ」

 

ついでにこいつの歪み矯正できねーかなーとか思った。

ちなみにおかず缶とフルーツ缶は見事に俺らの胃に収まった。

 





微妙に歪んでるのがバレた明久とどうやってマンションに潜入したのかは不明な猫アーチャーと巻き添えを食らったお人好しのウィザード日暮の日常話

日暮の名前、うっかり忘れかかってたんだぜ。

ウィザードコンビ設定に追加


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第五問

マスターとマスターのクラスメイトに追い出された私は衛宮邸への道を帰っていた。その途中で茶色の髪と緑を中心にした服装の見覚えのある男と出会った。

 

「何だ? 猫」

 

首を掴まれ、持ち上げられる。いきなり何をする!! 私は渾身の力を込めて目の前の男の顔面に前足をぶつけた。

 

「だっ、何しやがんだよ。この猫!」

「ちょっとアサシン、何猫相手にムキになってるのよ?」

 

遠坂凛も一緒に居たようだ。そこに声がかかる。

 

「あれ、凛とアサシンさん?」

 

マスターの実の姉、言峰明乃だ。この辺の事情は複雑らしい。

 

「あら、明乃 どうしたの?」

「僕は普通に通りかかっただけだよ。あ、猫だ」

 

アサシンの手から解放されていた私を見つけた彼女は私の元へ駆け寄り頭を撫でた。

 

「美人さんだねー」

 

美人と言うのは少し違うと思うのだが。

 

「ちっ、女にばっか懐きやがって」

「随分と賢そうな猫よね」

 

そこへさらに別の声がかかる。

 

「あれ? 明乃ちゃんと凛ちゃん?」

 

間桐の現当主、間桐雁夜だ。ここも随分と歴史が違うのだと思い知らされる部分だ。

 

「あ、雁夜おじ様」

「雁夜さん! 見てください。美人さんですよね」

 

彼女が私を持ち上げて、間桐雁夜の顔のそばまで持っていく。

 

「へぇ、確かに綺麗な猫だね」

「あ! こんなところに居やがったのかよ」

「あれ? 士郎の家の猫? 猫飼ってた?」

 

! どうやら未熟者のようだ。

 

「違うんだよ。兄さんが預かってる猫。はぁ、探したんだぞ。急に居なくなるからアイリさんとかイリヤが大騒ぎだ」

 

それはすまなかったな。

 

                    ☆

 

結局そのまま二人して夜遅くまで作業した。とは言え強制的に寝かしつけられたけど。

その関係か普段より無駄に早い時間に起きてしまった。午前5時って貫徹した時しか起きてないよ。

 

「ふぁぁぁ」

「ねむ」

 

客用の布団をひっぱり出してきて、敷いて適当に雑魚寝って形になった。眠いと色々と無頓着になるよね。朝起きても朝食の匂いがしない。やっぱりアーチャーが居ないんだと思わせる一幕だ。

 

「普段だったらアーチャーがご飯作ってくれるんだけどなぁ」

「アーチャーって聖杯戦争のサーヴァントか?」

 

びっくりすることに日暮さんは聖杯戦争についてとてつもなく詳しく知ってた。日暮さんがウィザードとはいえ、神秘の秘匿って何処に行っているんだろうなぁ。

 

「うん、僕のサーヴァント 料理が嫉妬するレベルので美味しいんだよね」

「ふぅん、さぞかし美人なんだろうな」

 

あ、もしかして女の人だと思ってるっぽい?

 

「へ、何言ってるの? アスリートもびっくりな筋肉質の男の人だよ」

「……マジ?」

 

日暮さんの口があんぐりと開いた。

 

「うん、写真あったはず……あった」

「どれど……」

 

携帯に撮っていたアーチャーの写真(僕とのツーショット)を見せると、日暮さんの顔が真っ青に変わる。

 

「え、どうしたの?!」

 

いきなり三角座りになって頭を抱えてがたがたと震えながら何かを言い始めた。

 

「これはオリジナルオリジナルオリジナルオリジナル」

「なんか呪詛呟いてる?!」

 

                     ☆

 

三十分くらいして、日暮さんが復活した。

 

「すまん、取り乱した」

 

潔く謝られた。その潔さにこっちがびっくりする。

 

「そ、そうなんだ。わけとか聞いたらまずい?」

「いや、もう吹っ切るためにも事情説明するわ。前提としてだが俺には前世の記憶がある。このことを踏まえてくれ」

「前世があるってことが驚きだよ?!」

 

そういう人間って本当に居るんだ。ちょっとびっくりした。

日暮さんによると日暮さんも実はルールは違えど聖杯戦争に参加したことがあるらしい、ただその時に起こったバグのせいで月の裏側と呼ばれる無法地帯に放り込まれたのだそう。その時に自分のサーヴァントだったアーチャーがマスターである自分を守るために裏で色々と動いていたそうで、気が付いたら月の裏側の安全地帯から出れなくなっていたらしい。しかもそのことが露呈した後、さらなる異空間に軟禁されたそうな。

 

「いや、ダメだろ。色んな意味で」

「だよなー。俺って割と人に縛られるのが嫌いだから余計にトラウマで」

 

人間トラウマとか嫌だよね。

 

「うわぁ、っていうかそれウチのアーチャーと同じ外見? 真名は?」

「同じ、真名は本人無銘って名乗ってたが奥底にあるのはお前が考えているのと同じだぞ」

 

これで士郎とか嫌だなぁとか思ってたけど当たり?!

 

「……なんでそうなったのさ。シロウ」

 

平行世界とはいえ兄さん悲しいよ。

 

「だよな。なんでああなったんだよバカ馴染み」

 

日暮さんが物凄くいろんな感情を込めた感じで言った。

 

「へ?」

「あ、あー実はな」

 

さらなる事実として、日暮さんは生前のその人と幼馴染だったらしい。その人が処刑されたことを知った日暮さんは人形遣い(こっちにも居る。平行世界って本当に同じ人がいるんだって知った)にかなりの額を出して人形をこしらえたのだそう。魂が尽きるまでは壊れないっていうとんでも人形だ(こっちにあったら多分封印指定物だね)。その人形を使ってその人の知名度を地道にあげていく努力をしたらしい。

 

「えっと、何そのドラマ的事情」

 

そこまでしてくれた友人を軟禁って………

 

「まあな、今さらだが俺もどうかしてたと思う……まあ、そういうわけだ。あんまりあの外見好かないんだよ」

「うん、よくわかったよ。でもウチのアーチャーそういう奴じゃないからさ」

「分かってるよ。錯乱しないように頑張るわ」

 

がんばれとしか言いようがなかった。とりあえず元に戻せる薬作らないとなぁ。

 

                   ☆

 

それからしばらくして昼休みの理科室、先生に無理言って鍵を借りて最後の調整をしていた。

 

「うん、出来た!」

 

フラスコに試薬が入っている。これなら直せるはず。

 

「はぁ、ここまでが長かったな」

 

あはは、まさかのスパコンレベルの演算がいるなんて思わなかったよ。てか、僕は最初どうやって作ったんだよ。どうにか完成したことがうれしくて日暮さんに笑いかける。

 

「日暮さん、ありがとう」

 

すると日暮さんが少し頬を掻いていった。

 

「……あー、俺のことは広夢でいい。俺もお前のこと明久って呼ぶから」

「え?」

 

いきなりどうして?

 

「なんかここまで付き合ってたら仲間意識みたいなものは出来るもんだぜ?」

「……そうかな?」

 

そういうもんだろと日暮さんが笑う。

 

「おう、困ったことがあったら何でも言ってくれよ。明久」

「……うん、じゃあよろしくね。広夢」

 

僕らは握手を交わした。

 

                   ☆

 

放課後、実家にもどってアーチャーを回収する。ちょうどみんな出払っていたらしくて、士郎しかいなかった。

 

「今日でこの猫返すことになったんだ」

「そうか、アイリさんやイリヤ寂しがるだろうな」

 

アイリさんもイリアもかわいい物好きだろうし当然か。

 

「そうかもね。まあ、今度はアーチャー連れてくるよ」

「何でアーチャーなんだ?」

 

士郎がいぶかしげにこっちを見てきた。

 

「あわわ、じゃあこの子連れてくね」

「わかった。兄さん無茶するなよ」

 

その言葉に手をひらひらさせて返す。

 

「へーきへーき、じゃあまた明日」

 

明日は土曜日だ。今週は無駄に濃かったなぁ。むしろ疲れた。

 

「じゃあな」

 

家路を急いで帰る。そして、リビングで猫のアーチャーに試薬をかけた。控えめなポンという音とともに煙が出てくる。煙が晴れれば見慣れたアーチャーの姿があった。

ほんっとうによかった! 内心喜んでいるとちょっとぽかんとしたアーチャーの顔が普段の表情に戻る。そして、ちょっと怖い感じの笑みに変わった。あれ?

 

「ふぅ、ようやく元に戻れたわけか。さて、マスター」

「な、何かな。アーチャー」

 

自分の顔が思いっきりひきつるのがよくわかった。

 

「そこに直りたまえ、説教の時間だ」

 

思わず助けて! とか思ったのは悪くないって思う。

 





むりくりやらかした感が半端ないね。そんなこんなで猫化騒動終了!

この後明久は多分無茶やったこと怒られると思うよ。薬ぶっかけたことに関しては全く何も言われないというね。

日暮の設定は元からありました。日暮の元サーヴァントはアーチャーで、裏側の騒動がきっかけで信頼していたはずのアーチャーがトラウマになり、未だにアーチャーと似た姿の人間が苦手って言うのまでが元設定。
まさかの生前無銘と幼馴染設定はCCCのサーヴァント√見て思いつきました。一緒に行動していた頃はどつき漫才のごとき会話をしながらわちゃわちゃと人助けをしてたことでしょう。

明久は地味に歪んでいます。自分を大切にできないっていうか、自分の価値は最底辺というか、他人のためなら自分は犠牲になってもいいみたいな発想になるタイプ、他人が一緒に居ればそれが見えることは少ないけど、一人でいるとタガが外れてしまう。今回みたいな無茶な生活が一番いい例、自分の生活<<(壁)<<アーチャーを治す くらいに考えてる。


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※ザビエル道場

※メタ発言注意


 

??:正直、疲れた。というかなんであそこまでキレられなくっちゃいけないわけ?

??:正直、自分のお人よしっぷりに呆れてるぜ

???:まあまあ、そんなわけでお約束!

 

『ザビエル道場!!』

 

ザビ男:どうも、今回本編に一回も登場していないザビ男だ

親友:今回無駄に出番があった気がする親友だ

長男:赤弓の説教がいまだに酷いので逃げ込んできた某家長男だよ

親友:そこはおとなしく叱られて来いよ(ビシッ

長男:なんで生活リズムのことばっかり言われなくちゃいけないのかな。普通にぶっかけた方怒られると思ってたのにさー、解せぬ。

ザビ男:ものすごく当然だと思うんだけど、赤弓にしろ紅茶にしろそういうタイプじゃない?(コテン

親友:奴の話題は出すな(真迫)

ザビ男:すまん。それにしても親友の意外な過去が明らかに

親友:そういうお前はどうなんだよ(ジト目

ザビ男:俺は普通にザビエルの軌跡を歩んだ。ちなみに自分のサーヴァント√

長男:リア充爆散しろ☆(指を銃の形にしてバーン☆

親友:同じく爆散希望(同じくバーン☆

ザビ男:ひどいなお前ら!?

長男:くる女の子くる女の子全部エロゲ主人公に取られてみなよ。言いたくなるから

親友:そうなのか?

長男:まあね。僕が女の子にモテるわけないというのは当たり前だったとしても目の前で弟にいちゃつかれたらさすがに……(呆れ

ザビ男:親父さんについては何か思わなかったのか?

長男:え? なんで養父について悪く言わなくちゃいけないの? いいじゃないか、養父は幸せになる権利あると思うよ。それまでの人生が壮絶だったらしいし、後赤弓も

親友:この弟の扱いである

長男:言っとくけど僕弟嫌いじゃないよ? ここだけ読んだらそう見えるかもしれないけど、普通に兄として心配だからさー

ザビ男:なるほど、とりあえず話題は変わって次回予告!

親友:ここで次回予告とか珍しいな

ザビ男:マンネリを防ぐためにもいろいろと模索するのだ(キリッ by中の人(さくしゃ)

親友:中の人(さくしゃ)かよ

長男:てかその言い方いい加減に直そうよ。分かりづらいし、普通に作者でいいんじゃないの?

ザビ男:長男、大人の事情(もじすうせいげん)があるんだよ。そのせいでこうなってるんだ(肩に手を置く

親友:ああ、俺たち……いや、この道場の最大の敵はこれに尽きるからな(同じく手を置く

長男:な、なんか二人して怖いよ?!(gkbr

ザビ男:そんなわけでこのコーナーは毎回大人の事情(もじすうせいげん)という名の敵と戦っているので無駄にグダグダでお送りする

親友:今回はどうにかなったぜ

 

??:マスター!!

長男:げ、僕逃げる!!

親友:わかった。捕まるなよ!

ザビ男:じゃあこれにてお開きだ

 

 





文字数制限が一番の敵なんだ。最終的に次回予告なくなってたのでここで予告。

清涼祭も無事に終わって、アーチャーのネコ化騒動もどうにか終わったことで気を抜いていた明久たちにさらなる騒動が巻き起こる! 告げられる新たな真実 女子VS男子?! 全面?!戦争の行方は?

そんなわけで次は合同合宿編です。


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強化合宿編
第一問


 

福原先生が強化合宿の冊子を持って入ってきた。もうそんな時期なんだ。

 

「さて、明日から始まる『学力強化合宿』ですが、だいたいのことは今配っている強化合宿のしおりに書いてあるので確認しておいてください。まぁ旅行に行くわけではないので、勉強道具と着替えさえ用意してあれば特に問題はないはずだとはおもいますが」

 

前の席から順番に冊子が回されてきた。

 

「集合の時間と場所だけはくれぐれも間違えないようにしてください」

 

まあ、集合場所に行き損ねて合宿行けないとか勘弁して欲しいし。

 

「特に他のクラスの集合場所と間違えないようにしてください。クラスごとでそれぞれ違いますので」

 

僕らがAクラスの設備を手に入れたとはいえ、他の待遇は殆どFクラスのままだ。Aクラスはきっとリムジンバスとかで快適に向かうんだろう。そうなると僕らはやっぱり狭い通常のバスだろうか。もしかすると補助席や吊り革かもしれない

 

「いいですか。他のクラスと違って我々Fクラスは現地集合――」

『『『『『案内すらないのかよっ!?』』』』』

 

あんまりの扱いに全級友が涙した。

 

                   ☆

 

「ってわけなんだよ。信じられる?」

 

明日から泊まりというわけで、今のうちに家族に顔を出しておこうということで今日の夕飯は実家で食べていた。

最近、アーチャーの目が妙に厳しい、まあ、あんな騒動やらかしたせいだけどさ。今日はアイリさんとセイバーとイリア姉は不在だ。女子会ならしい。そんなわけで今日の料理はどちらかというと男性向けなボリュームのあるメニューになった。

僕の話を聞いた士郎が箸を落としそうになった。慌てて落とさないようにしてからツッコミを入れる。

 

「流石にそれは無いだろ。場所卯月高原だし、現地集合って結構大変だぞ?」

「でしょ。お金に関しては(ちょっとばかし裏を使って)どうにかしたんだけど」

 

言質とか学園の裏事情とか色々とコネを使ってどうにかしたのだけど、バス手配までは無理だった。

 

「マスター、地味に不穏な感じがしたのだが?」

「え? なんで」

 

何か変なこと言った? じーさんが茶碗と箸をおいてから聞いてくる。

 

「そういえば他のクラスはどうなんだい?」

「えっと、Aがリムジンバス、Bが上級の観光バス、Cが下級の観光バス、Dが普通のでEがマイクロバス、Fは案内無しの現地集合……アレ?」

 

今更だけど酷過ぎじゃないのかなこれ?

 

「せめて案内は欲しいなぁ」

「そういう内容じゃ無いぞ!」

「そうだな。それは学校としていかがなものかと」

 

弟二人からツッコミが入った。最近、アーチャーも士郎に見える時があるんだよね。

ピンポーンと玄関のチャイムが鳴った。玄関に近い位置にすわって居た僕が出る。

 

「こんにちは」

「あ、舞弥さん!」

 

舞弥さんは元じーさんの部下だそうだ。昔、複雑な事情で分かれることになってしまった娘さんをどうにか見つけて、今はパティシエとして冬木で店を開いている。舞弥さん自身も甘い物好きだ。洋菓子系には特に目が無くって僕とも話が合うんだよね。

 

「明久、久しぶり これ今月の新作」

「わー、ありがとうございます」

 

舞弥さんのケーキ美味しいんだよねー。

 

「……兄さん」

「マスター」

 

士郎とアーチャーが呆れたような目でこっちを見ていた。なんでさ

 

                    ☆

 

下駄箱を開けてみれば、なんか封筒が入っていた。

 

「……なんだこれ」

 

裏を返してみてもこれと言って名前もない。何なんだろう? 首を傾げつつ家路に立つ。今日はちょっとした用事で帰りがそこそこ遅くなってしまった。そこに覚えのある声がした。

 

「よー、嬢ちゃんどうした?」

「あれ、ランサーさんバイト帰り?」

 

戦争もおじゃんになったのでランサーさんはバイト漬けの毎日だ。せっせと女の人を口説いているらしいが失敗しているらしい。(アサシンさん談)

 

「おう」

「そっか」

「ソレ、どうした?」

 

ぼくが持っていた封筒を指さす。あーこれね。

 

「いや、下駄箱の中に入ってて」

 

ガサガサと開けてみる。間違いじゃないといいなぁ。

 

「えーと、何々『貴女の秘密を握っています』」

「典型的だなオイ」

 

間違いだったらよかったのになぁ。

 

「『身近な異性に近づかないこと、破る場合には同封した写真をばらまきます』」

「写真?」

 

封筒が妙に分厚いと思ったら写真が三枚ほど入っていた。一番上には清涼祭の時のチャイナ服姿がかなりローアングルで撮られている。

 

「……ほう、これは中々」

「何時の間に撮ったのさこれ」

 

次のはカソック姿で黒鍵をぶん投げている写真だ。背後には化け物の姿もある。

 

「ん?」

「……ヤバイ、凛にキレられる」

 

神秘の秘匿とかぎゃんぎゃん言うだろうし。三枚目はヤバい予感がしてランサーさんに見られないように見てみた。

 

「最後のは……うわぁぁぁ」

「どした?!」

「み、見ない、みな、視ない、みな、みな」

 

三枚目はこの前学園長の実験につきあった際の写真だった。召喚獣の装備を疑似的に装備できるという実験だったんだけど、現在のぼくの召喚獣はランサーさんのような装備なのでぴったりとした青いあのスーツになったのだ。あ、あれは恥ずかった。思い出してうわぁぁぁとかなってるといきなり後ろから声がした。

 

「何をそこで騒いでいるのですか?」

「ひゃあああ」

「全くうるさいですね。何か落ちましたよ……おや?」

 

カレン姉さんだった。思わず写真をぶん投げてしまったらしい。カレン姉さんが裏向きに落ちた写真を拾って何気なく表に返す。あ

 

「これは一体どういうことですか明乃? 別に貴女がこういう服装が好きな変態であっても別にかまいませんが」

「違います。学校の実験に強制的に巻き添えを食らっただけです」

 

そんなぴっちりタイツ用意されたって着るものか。

 

「いえ、その写真がなぜここに?」

「……脅迫状に同封されてました」

 

カレン姉さんの表情が変わる。

 

「脅迫状ですか?」

「はい」

「見せなさい」

「へ?」

「見せなさい」

「はいっ!」

 

思わず封筒を渡してしまった。封筒の中身を見てカレン姉さんがちょっと渋い顔をする。

 

「なるほど、明乃は早く行ったらどうですか。明日は早いのでしょう?」

「あ、そうだった」

 

明日、卯月高原に現地集合なんだよね。面倒だ。

 

                    ☆

 

明乃が居なくなってから、カレンが虚空を見て呟く。

 

「アサシン」

 

すると霊体化していた言峰綺礼のサーヴァントアサシンが姿を現す。どうやらカレンの護衛のようだ。

 

「何でしょうか、カレン様」

「明乃に脅迫状が届きました。すぐに犯人を調べ、脅迫材料になっている写真のデータ元を入手するように」

「ハッ」

 

アサシンはすぐに闇へと消えた。

 





いくらなんでも案内も抜きの現地集合は無いって思うんだ。せめて地図ぐらいはあるよね……よね?

さて、脅迫状の主は生きていられるのか? そこが問題な気がする。データ抜き取られるだけで終わればいいけど、多分さくっと()られても多分ばれないね! 流石アサシン!

そんなわけで合同合宿編スタートです。


ところでだけどランサーの衣装って女の人が着るにはちょっと恥ずかしいと思うんだ。


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第二問

 

トンネルを抜けたらそこは田舎の風景でした。そんなわけでぼくらは卯月高原まで移動中です。もう、面倒なので全員バラバラで行くことになって、ぼくら仲のいい女子メンバーで電車旅行しようって話になった。ちなみに彩夏は強制参加させた。ボックス席を一つ占領して、ぼくと彩夏が隣同士で前には悠里、斜め前には神海の席順だ。彩夏はぐっすり眠っている。窓側の悠里が窓の外を見て言う。

 

「電車なんて久しぶりね」

「だねー。移動は基本徒歩だからなぁ」

 

それ以外の移動手段ってあんまり使わないしと言えば、

 

「「(……)え?」」

 

二人が一斉にこっちへ向いた。何で?!

 

「え、だって普通でしょ? ウチの親父、四つ隣の町なら徒歩で一時間以内で着けるよ。ぼくは流石に無理だけど」

「「?!」」

 

二人がさらに驚いた表情をした。でもこれくらいは余裕でやってるんだけど。

 

「あんたの父親はター○ネー○ー?」

「あ、それ合ってる気がする」

 

シュワちゃんのあの映画見てウチの親父の身体能力はこれ並だって思った。ちなみにこの前ランサーさんに見せたら同意してくれた。

 

「……本当?」

「うん」

「凄いわね」

 

この話をきっかけに映画談議に発展するとは思わなかったよ。

 

                   ☆

 

僕らは今回、バス旅行ってことになった。姉さんたちに電車で行かないかとか誘われたんだけど、たまには男だけでもいいかなって思って日向君も誘ってみたんだよね。何故か広夢も釣れたけど。とあるローカル線の僕ら以外が居ないバスの車内でわいわいとやっていたんだけど南が何か読んでいるのを見つけた。

 

「あれ、南 何読んでるの?」

「んー、百均の心理テストの本、読み仮名ついてるし読みやすいかなって思って」

「へぇ」

 

日本語の勉強渋ってたのにやる気になったんだ。

 

「面白そうじゃのう」

「じゃあ何かだしてくれ」

 

秀吉と日向君も乗り気みたいだ。ちなみに広夢は寝てる。

 

「あー、じゃあ『次の色でイメージする異性を挙げてください。緑、オレンジ、青、赤』」

「うーんと」

「えっと……って何ニヤついてるの?」

 

考えていると南の視線がちょっと気になった。南をジト目で見れば。

 

「なんでも?」

 

さらっと返される。

 

「俺からでいいか? 緑はBBとリップとメルトとエリザ、オレンジはサクラ、青は特にいないな 赤はネロだな」

「はぁ、じゃあ 緑は舞弥さん、オレンジは姉さんと悠里さん、青は広夢、赤は凛だね」

 

舞弥さんは普段着てる服のイメージ、姉さんと悠里さんは明るい感じとかその辺、広夢は青のジャージ着てたのと直感的に青だから、赤が凛なのは……何となく?

 

「え、何で日暮が異性に入ってるんだ?」

「は? 広夢って女の子でしょ?」

 

僕の発言に南と秀吉が目を丸くする。そこにタイミングよく広夢が起きてきた。

 

「くぁぁぁ、腹減った。どした?」

 

広夢はちょっと寝ぼけながらじっと見てくる秀吉と南に首を傾げた。

 

「日暮よ。お主、おなごなのかの?」

「あれ、言ってなかったか?」

「「えええええ?!」」

 

バスの車内に二人の驚きの声が響いた。

 

「むしろ気が付いた衛宮が凄い」

「え、なんで?」

 

こんなの見ればすぐにわかるじゃないか。なのに、なんでさ。

 

                 ☆

 

バスのアナウンスがとある場所の名前を告げた。あ、

 

「ごめん、ここで降りる」

「ん、了解」

「遅れるでないぞ」

 

二人が釘を刺してきた。わかってるよ。日向君が驚いた顔をする。

 

「え、何でだ?」

「あ、日向君には言ってなかったよね。僕、次で降りるんだ」

「いや、だからなんで?」

「知り合いにこの付近にあるケーキショップで買ってくるように言われてさ」

 

ここにしかない手作りケーキのお店で秘境の果てにあるとさえ言われるほどの珍しいお店なのだ。ちなみに依頼主は舞弥さん、最近お店が忙しくて買いに行けないと嘆いていたところに僕の強化合宿が重なったというわけだ。念押しされまくったよ。ついでにじーさんの知り合いからとあるものを回収しなくちゃいけないし。やること目白押しだね。

そんなわけで僕はバスを降りたわけだけど……

 

「よ」

「なんでさぁぁぁぁ!?」

 

何故か広夢まで一緒に降りてた。

 

                   ☆

 

「あーもう何で?」

「いや、バスに揺られんのも悪くないんだが、それだけだとつまんなくてな」

 

そういう問題じゃないと思うんだ。

 

「はぁ、まあ大丈夫か」

「悪い悪い」

 

広夢は全然悪びれてないし、向こうパニックになってたりして、大丈夫かな?

 

「とりあえず行こうぜ!」

「はいはい」

 

とりあえず、ケーキショップ行かないとね

 

                   ☆

 

「はぁぁぁ、ここがアヴァロンか」

「キャラ変わり過ぎだぞ。明久」

 

すげーテンションで明久がケーキショップの中を見て回る。好きなものに夢中になってるときって誰でもこうなんだろうな。

結構人里離れた場所にあるケーキショップ、そこに俺たちは来ていた。自然の食材を使ったケーキが売りらしく、遠くからわざわざ来る人間も多いそう。今回の俺たちみたいな奴もいるってわけか。

 

「まあ、美味そうではあるんだよなー」

 

ただなぁ。あれと比べると普通のケーキに見えてしょうがないんだが、言わぬが華ってやつか。

 

「広夢も何か頼む?」

「俺はパス、懐事情厳しいんで」

「そっか、じゃあこれとこれとこれとこれ、全部テイクアウトで」

 

どんだけ買うんだよ?!

 

                  ☆

 

「ふふふー」

「ご機嫌だな」

「まあねー」

 

トリップしまくっている奴に何を言ってもしょうがない気がしてきた。欲しいものを手に入れた直後の人間ってここまで浮かれるんだな。

 

「さて、じーさんから頼まれたのやらないと」

「?」

「確か、この先の三つ目の角を曲がったとこ」

 

雰囲気がガラッと変わって、真面目な顔して明久が呟く。ふぅん、こっちが素か。

明久がぶつぶつと言いながら何かを探しているようだ。

 

「あった」

 

そう言うとそこにあったガレージへ向かう。持っていた鍵を使って扉を開ければ、そこには

 

「すげぇ」

「よし見つけた」

 

化け物級の大型バイクがあった。黒塗り、でかい、詳しくない? 悪いが俺はバイクに疎い!

 

「前の聖杯戦争でセイバーに用意されたバイクなんだってさ。セイバーはあんまり乗ってないから整備が大変になって知り合いに預けたんだって。で、今回整備が終わったから取ってきてほしいと」

「へぇ、運転どうするんだ?」

 

運転できる奴ここに居るか?

 

「へ? 僕がやるよ。大型は無免許ならできるし」

「は?」

「大丈夫だよ。ちゃんと認識阻害の魔術はかけるし」

 

そこじゃない気がスゲーするんだが、やっぱこいつアホだろ。無免許バレたらどうするつもりだ?

 

「バイクがそれなりに普通ぐらいのサイズに見えるのと僕の外見年齢数歳上げるやつとこれ」

 

目の前に提示されたのは、普通に原付の免許だった。持ってるんかい?!

 

「まあね、忙しい合間を縫って免許は取ったよ。これに大型用の免許であるって阻害をかけるつもりだから」

 

うわぁ、魔術って地味に卑怯だなってか普通そんなことに魔術は使わねーよ。ウィザード能力を犯罪に応用する馬鹿どもは居るがそれの比じゃないことやってるぞこいつ。

 

「急がないと合宿に遅れるよ」

「あ」

「二人乗りの予定じゃなかったんだけどまあいっか、いつの間にか二人乗り用になってるし」

 

昔は一人用だったんだけどねー、などとのんきに明久は言う。俺はと言えば人生初のバイク二人乗りにちょっと感動してた。

とりあえず俺たちは無事に合宿所に着くことができた。中に入ってからが大騒動だったわけだが……どうしてああなった。

 





犯罪ダメ絶対!!

書いといてなんだけど、今回明久がやってるの地味に犯罪なんで注意してください。
普通はそういうこと考える人間がまずいないんだ。


心理テストの結果は後日発表です。


言峰神父はZEROでのあの身体能力を見てるとター○ネー○-にしか見えなくなってきたんだ。異論は認めます。あくまで自分の個人解釈なんで


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第三問

 

電車を降りて目的地である合宿所へ向かう。目の前には旅館かと思うくらいの大きな建物があった。

 

「おお、凄い」

「思った以上に大きいわね」

「……旅館」

「くぁー、確かに大きいな」

 

全員で思ったことを言い合いながらロビーへと向かった。そこには引き締められた体に浅黒い肌、黒髪をポニーテールにしたスーツ姿の女性が立っていた。

 

「あら、あなた達」

「西村先生」

 

もちろん西村先生だ。ここで生徒の集合具合を確認してたらしい。あー、ぼくらバラバラだもんね。

 

「Fクラスは殆ど集まってるわよ。後、居ないのは衛宮と木下と島田と日向と日暮の五人ね」

「バス組だけか」

 

電車よりバスの方が時間かかるもんなぁとか思ってたら後ろから声がした。

 

「おや、明乃ではないか」

「あれ、秀吉……ってアキと日暮君は?」

 

居るはずの二人が居ない。どうなってるんだろう?

 

「アキヒサは家族の用事を済ますために途中で降りて後で合流することになってる」

「ヒロは面白がってそれについていったみたい。まあ、いつものことだから気にしないでほしい」

 

驚いた。アキの方はちょっと想像がつくけど、日暮君、面白そうだからって一緒についていくって。

 

「え? そうなの」

「うん、止めようとは思ったんだけど止められなかった」

 

                     ☆

 

まあ、そんなこんなで部屋の場所を教えてもらったぼくらは部屋へときていた。Fクラスの女子は全員一緒ならしい。とりあえず荷物を置いてぼくらは一息ついた。

 

「はぁ、落ち着く」

「本当に金掛けてるわね」

「……無駄に広い」

 

だよね。結構広いなーなんて考えていると鈴原さんが言った。

 

「それはこの部屋が六人しかいないからじゃ」

「そうかもな。確か八人で一つの部屋だったはずだ」

 

彩夏がそう言うなら正しいか。ぼくらが話していると夢路が声をかけて来た。

 

「そんなことどうでもいいわよぉ。お風呂いきましょう?」

 

そういえばお風呂どうなってるのやら。

 

「あーお風呂か、えっと時間は……」

 

 

~合宿所での入浴について~

・女子ABCクラス…20:00~21:00 大浴場(女)

・女子DEFクラス…21:00~22:00 大浴場(女)

・男子ABCクラス…20:00~21:00 大浴場(男)

・男子DEFクラス…21:00~22:00 大浴場(男)

・Fクラス木下秀吉…21:00~22:00 個室風呂④

 

 

はい?

 

「何があったのさ」

「あらぁ、これでいいんじゃないのぉ」

 

夢路、お前は感覚可笑しいから。隣で同じく冊子を見た悠里が眉間にしわを寄せている。

 

「違和感以外ないわよ。何で木下だけ別になってるのよ」

「……男子からの要望、それから一部女子からも」

 

神海、何処からそんな情報得たの?

 

「なんでよ?」

「木下の見た目の問題じゃないのか?」

 

鈴原さんがそう言えば、彩夏が返す。あ、なるほどね。

 

「……あー、木下 姉によく似てるものね」

「なるほどね」

 

全員が納得したその時だった。ノック音がして誰かが入ってきた。黒髪のベリーショート、日暮君だ。

 

「あー、俺もこの部屋なんだけど」

 

えええええ?! 全員の声が一つになった瞬間だった。

 

                    ☆

 

どうにかバイクを回収して、バイクに乗ってこちらへ来た僕らは西村先生に部屋の場所を聞いて、部屋へとやってきた。広夢とはもう別れている。

 

「やっほー、着いたよ」

 

扉を開けてみれば全員がこちらを向いた。

 

「お、アキヒサ間に合ったか」

「ギリギリじゃが間に合ったの」

 

二人が安心したような顔をした。

 

「ヒロは?」

「え、普通に女子部屋だよ。部屋割りにもそう書いてあるし」

 

てか、その時点でみんな気が付きなよ。

 

「……女子部屋パニックになってないといいな」

 

だから、なんでみんな気が付かなかったの?

 

「見事にいつものメンバーだね……ってあれ? 須川君?」

「よう、俺もこの部屋だ。よろしくな」

 

須川君も同じ部屋か。

 

「そっかー、そういえばお風呂ってどうなってるの?」

 

バイク運転したから早めにシャワー浴びたい。

 

「ん? えっと……」

 

 

~合宿所での入浴について~

・女子ABCクラス…20:00~21:00 大浴場(女)

・女子DEFクラス…21:00~22:00 大浴場(女)

・男子ABCクラス…20:00~21:00 大浴場(男)

・男子DEFクラス…21:00~22:00 大浴場(男)

・Fクラス木下秀吉…21:00~22:00 個室風呂④

 

 

秀吉の表情が一気に凍りついた。

 

「……なぜじゃ」

「うん、何がどうしてそうなった」

「わかるわけがない」

 

分かるわけないじゃないか。そう言っている横で日向君と須川君が少しだけ考えるような表情をしてから呟いた。

 

「理由分かった気がする」

「俺も」

「なぜじゃ!!」

 

秀吉が問い詰める。

 

「「どう見たってその女顔だよ/ろ」」

「……ごめん秀吉、フォローできないや」

「ごめん、俺も……」

 

秀吉はとてもさみしそうな表情をした。そうだよね。前髪上げるとか、ちょっと目つきキリッとしてみるとか、涙ぐましい努力によって(当時からの比較で)女に見られる率は減ったのにこの状況とかね。

 

「てか、風呂の時間もうそろそろじゃないか?」

「あ」

 

色々と衝撃で飛んでた。

 

「支度全然してないぞ」

「ワシだけ分かれるのか……」

 

                    ☆

 

お風呂に行ってみる。すると見事に誰も居なかった。偶然だろうけど他の人が居ない時間帯に当たったらしい。

 

「しっかしまあ、お金かけてるねー」

 

大浴場の感じはもう銭湯の域だ。周りをしげしげと眺めてた日向君が頭を縦に振ってから言った。

 

「だね。俺の学校もそこそこ施設に金掛けてる方だけど、ここまでじゃない」

「月海原学園だったか? 確かあそこって西欧財閥が資金出してるって言う……」

「西欧財閥って……あー、あの無駄に金持ちの」

 

メイガスとはちょっとばかし対立しているあそこか、まさかウィザードの方だとは思わなかったけど。

 

「衛宮の発想は正しい、後ウチの会長で西欧財閥の次期当主はバカだ」

「それもどうかと思うぞ」

 

須川君のツッコミが入った。うんそれは言い過ぎじゃないのかな?

 

「俺、大きい風呂って初めてかも」

「え、南って銭湯とか行ったことないの?」

「せんとう? 何だそれ」

 

僕が聞いてみたら南はすぐに首を傾げた。日向君が驚いた顔をした。

 

「銭湯知らない日本人っているんだな」

「あー、島田は帰国子女だからな。日本文化にはなじみが薄いんだよ」

 

南って基本見た目は日本人寄りだからね。少し肌の色は白っぽいけど。

 

「へぇ、そうなんだ。頼むから斜め上で解釈しないでほしいな」

 

日向君からは哀愁が漂っていた。

 

「ようは皆で入る大きなお風呂みたいなものだね」

「へぇ、はじめて知ったよ」

 

ルンルンで服を脱ぎ始める南、僕も脱がないとなぁとか思ってるとコトリと変な音がした。

ん? 振り返れば南の足下に黒い箱のようなものが落ちていた。

 

「何だこれ」

「南、触らないで、多分これ隠しカメラだ。下手に触って指紋着いたらまずい」

「え?!」

「ちょ、男風呂に隠しカメラって……」

 

須川君が慌てる。どう考えたって盗撮目的ですありがとうございました。呆れながらもみんなに指示を入れる。

 

「他にもあるかもしれないからみんなちょっと大人しくしてて」

「おう」

「分かった」

 

その後、隅々まで探してみたところ最初のも含めて三つ見つかった。どんだけ男の体に興味あるんだよ。

 

「どうすんだコレ」

「……はぁ、とりあえず誰か先生呼ぼう。できるなら男の先生がいいなぁ」

 

何でこんなことになったのやら。はぁーあ、なんでさ。

 

                  ☆

 

お風呂の時間になったのでぼくらは大浴場にやってきた。脱衣所に来てみれば誰も居ない。

 

「あれ、見事に誰も居ないや」

「ラッキーじゃない。広いお風呂に入れるわよ」

「……もしかしたらほとんどが入った後」

 

あー、それの方が正しいかも。お湯ぬるくなってたりして。

 

「そっちの方が正しい気がするね」

「早く入りましょうよぉ」

「はぁー、ねむ」

「おいおい寝るなよ」

 

すぐに入って出て、もう寝たい。電車旅は楽しかったけど慣れないことはするべきじゃないよね。疲れた。

ガサガサと服を脱いでいると、コトンと音がした。黒い箱のようなものだ。

 

「ん?」

「……明乃、触らない。それ、盗撮用の監視カメラ」

「だな。下手に指紋着けて証拠能力がなくなるのも惜しい。言峰、触るなよ」

「へ?」

 

カメラ? 何で。

 

「……他がないか探す。全員下手に動かないように」

「土屋、俺も手伝う」

「なんでカメラなんて……」

「誰かが盗撮しようとしたんじゃないのぉ?」

 

それが一番正しいけどさ。犯人絶対に男じゃないよね。ここ男女別に分かれてるし、先生が一人ずつ見張りに立ってるし。

 

「はぁ、なんでこうなったのさ」

 

ぼくはアキじゃないけど言いたくなった。なんでさ





凸ってきた女子をボコボコにする話はよく見るけど、たまには明久たちが見つける立場でもいいと思うんだ。無駄にこの手のことのエキスパートが居たことに気が付いてしまった今日この頃(内訳:明久(衛宮家(てか切嗣)的な意味で)、神海(言わずもがな)、日暮(正義の味方の相方は正義だけじゃ勤まらないぜ))

恒例の閑話休題アンケートなのですが、感想欄でアンケートするのがアウトだと判明したので活動報告の方に設置しました。アンケートはそちらの方からどうぞ。こちらには結果だけを表記、もしも感想の方に投票が入ったとしてもそれは頭数に入れませんのであしからず。


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第四問

 

次の日のこと、各自習室にはひそひそと噂話が広まっていた。噂の元は不明だが。

 

『女子風呂でカメラが見つかったらしいよ』

『えー、それって盗撮じゃない。嫌だなぁ』

 

女子には嫌悪感を催す話だろう。しかし、別の女子が続ける。

 

『でも、男子のほうでも見つかったらしいよ』

『え、そうなの?』

 

噂話が尽きない自習室、AとFの部屋でもそうなのだが、その中でもFクラスの女性陣はマイペースを保っていた。明乃が不機嫌そうにシャーペンを回す。配られたプリントはあらかた埋まっていた。

 

「それにしてもこんなとこまで来て自習って」

「あら、これが妥当だと思うけど?」

「……なんで?」

 

悠里がしれっと返せば、神海が首を傾げる。明乃も似たような感じだ。その二人の様子を見た悠里が少しため息をついて聞く。

 

「あなたたちAクラスの授業受けてわかるのかしら?」

「聞くだけならどうにかなりそうだけど……」

 

理解はねーと明乃がぼやく。まあ、明乃が聞く分には大丈夫だろうが、それでも他のFクラスの生徒の大半が大人しく授業を聞いているわけがない。

 

「ま、聞くだけなら……ね。聞いたところで理解できるかできないかが重要なの、それからクラスのモチベーションの問題かしら。Aクラスを見てあんな風になろうとか、Fクラスを見てああはなるまいとか考えるでしょ」

「あー、わからないでもないな。ウチのクラスの男子は……」

 

その机に居た全員、明乃、悠里、神海、彩夏の四人は別の机に目を向ける。そこには教える夢路とその隣を(物理で)争奪しているバカの姿があった。全員が目をこちらに戻し口々に言い合う。

 

「ないね」

「あれにあこがれる要素を見出せってほうが無理だな」

「でしょ」

「……納得」

 

そう言って勉強し直そうとしたとき、別の机から霧島がやってきた。悠里のそばに近寄って聞く。

 

「……悠里、ここいい?」

「あら、翔子 いいわよ」

 

悠里が少し体をずらして霧島のスペースを作った。

 

「……ありがとう」

 

霧島は笑っていった。

一方その頃、Fクラスの中でもまともな方の男子はといえば……

 

「衛宮、すまんがここわかるか?」

 

須川が問題用紙を持って明久に尋ねた。問題文を見た明久が解説する。

 

「えっと、そこはBだよ。Aを訳すと一人でって意味で質問とは無関係、Cを訳すと投げていないって意味でまた無関係、Bがとても痛いって意味になって、喉がどうかしたのかって質問にあってるよね。これ本当はリスニングだから余計にわかりづらそうだけど」

「そうなのか?」

 

須川が驚いたような顔をした。明久がさらに続ける。

 

「うん、AとCには問題文に入っている単語と発音のよく似た単語が入っているから間違えやすい、リスニング形式の問題によくあるひっかけだね」

「なるほどな。ありがとうな、衛宮」

「お安い御用さ」

 

須川が居なくなるとすぐに南がやってきた。手には同じく問題文がある。

 

「アキヒサ、ここわかんない」

「えっと、それはAが正解、文章問題ならはじめの2・3行は丁寧に読まないと。これ見たら一発でセールの話だって分かるじゃないか」

「ごめん、ありがとな」

「はいはい。はー、なんで僕が解説やってるんだ?」

 

……明久を解説役に勉強をしていた。多分英語の話だろう。

そこに日暮がやってきた。そのままストンと隣に座って明久に話しかける。

 

「お疲れさん、俺もわからないところあるんだが」

「え、なにさ?」

「ここ」

 

問題用紙を見てしばし無言になる明久、そして言った。

 

「……ごめん、僕もわからないや」

「そうか……」

 

じゃあどうしようかーとか考えていると偶然木下優子が通りかかった。

 

「あら、あなたたちどうしたのよ」

「あ、木下さん。実は広夢がわからない問題あるって」

「そうなの、見せて頂戴、わかるかもしれないし」

「そうか? これなんだけど」

 

日暮は木下に問題用紙を見せる。その間に須川がやってきた。

 

「衛宮、すまん もう一問」

「えー、しょうがないなぁ」

「こんなの頼めるの、衛宮しかいないから」

「はいはい……ってさむっ」

 

明久が妙な悪寒を感じてぶるっと震えた。明久の後ろの方では木下がその様子をガン見していた。

 

「はぁ、姉上……」

 

事情を知っている秀吉は呆れる。姉は普段は自重する人間だったはずなのだが?

木下の様子を見た日暮は呆れながら言った。

 

「……木下、悪いことは言わん。身近な人間でネタを作るのはやめとけ」

「?!」

 

木下は驚いた。何を考えているのかまで見通されるとは思っていなかったのだから。

 

「節度は守れよ。ここの学校ってその手のモラル薄いよな。生徒モデルに腐った薄い本作るなよ」

「なななな」

 

日暮は呆れきり、木下はバレまくっていたことに戦慄をする。

その会話を聞いていた明久が首を傾げた。

 

「えっと、須川君、秀吉、腐ってるって?」

「おぬしは知らんままでいいのじゃ」

 

あれは地獄の沼地だと秀吉は考えていた。

 

「ああ、知らないなら知らないほうがマシだ。それにしても女子ってこの手のものに手を出すやつ多いのか?」

 

須川が呆れた。もしかしたら身近にそういう人間が居るのかもしれない。

 

「別に大半の女子が腐ってるとかないからな」

 

日暮がすかさずフォローを入れた。まあ、そう言いたくなる気持ちもあるのだろう。例えば雑食派みたいな人間もいるのだし。

 

「なんであなたがそう言い切るのよ」

「俺、女だし」

「えええ?!」

 

木下は叫び、なんだなんだとちょっとした騒ぎになるのだがまあ別の話。

 

その日の夜のこと、バカが数名大浴場に特攻した。

 





のんきに勉強会です。裏じゃあキナ臭いことになってるけどそんなの知ったこっちゃねー。って感じになってきた。

閑話休題アンケート

『次の色の組み合わせの内どれを選ぶ?

 ・赤×白
 
 ・青×白
 
 ・青×黒
 
 ・青×赤              』


※投票は活動報告の方によろしくおねがいします。
 感想の方に来たのは計算しませんのであしからず。


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第五問

 

次の日の朝、食堂では昨日の騒ぎが噂に上っていた。そのひそひそとした噂の声にイライラしているのが一人いた。その目の前で食事をしていた茶色の長い髪の少女、明乃がイライラしているその人物に声をかける。

 

「悠里、機嫌悪そうだけど」

「当然でしょ。あんのバカどもがっ」

 

悠里だ。よりにもよってFクラスの男子が主犯だという噂が後を絶たないからだ。悠里の様子を見て、傍に居た面々が口々に言いだす。

 

「……怒って当然、むしろ怒らない方がおかしい」

「まあ、そうよだね。つか普通やる?」

「ああ、流石に驚いたな」

 

神海、鈴原、彩夏の三人が呆れたような表情になる。

ひそひそ声はまだ終わらない。

 

「はぁ、どうやって事態収拾しようかしら」

 

悠里は大きなため息をついた。

そして、食事が終わり自習の時間になった。悠里が霧島に声をかける。

 

「翔子、悪いんだけどちょっと時間をくれる?」

「……どうかしたの、悠里」

「色々とね」

 

悠里は霧島に耳打ちをする。霧島はその内容を聞いてしばらくの間、無言だったが コクリと頷いた。それを確認すると悠里はすぐにFクラス全員を呼び集める。霧島も同様にAクラスの全員を集めた。全員が集まったのを見まわして確認すると悠里が切りだす。

 

「さて、あなたたち。昨日女子風呂に突入しようとしたバカが居るのは知ってのことよね。嘆かわしいことに、我がFクラスにもそのバカが居ることが分かったわ。てか、大半がFクラスだったのよね。素直に名乗り出る気はある?」

 

悠里が言った言葉にしばらく無言が貫かれたが悠里の視線に負けたのか、男子生徒たちが口ぐちに言い出した。

 

「しらねーよ」

「大体紳士な俺たちがそんなことするわけねーだろ!」

「「そーだ、そーだ!」」

 

その様子をさめたような目で見てた悠里は唐突に言った。

 

「秀吉」

「うむ、嘘をついておるのは水上と吉原と沢崎じゃな」

 

さらっと秀吉は答える。その声はあまり感情が籠ってなかった。

 

「「「秀吉(木下)?!」」」

 

売り渡された三人は驚愕の表情で秀吉を見る。基本秀吉は男子の味方だ。それがこうもあっさり男子を売り渡すなんて……といった表情だ。

 

「おぬしらが散々ワシをおなご扱いするからじゃ」

 

ならばおなごの味方をするのは当然じゃろう? 秀吉は結構いい笑顔で笑って言った。

 

「あなた達、ちょぉっとこっちに来なさい」

 

悠里がそれ以上の笑みで三人の服の襟を掴む。そのまま引きずっていく、そして部屋を出て行こうとする直前に振り返って言った。

 

「ちなみにだけど、次やらかしてみなさい。今回は普通に説教と補習で終わらせる予定だけど、次からは似合わない女装させて写真集作るわよ。社会的に致命的になりそうなやつ」

 

イェス、マム!! 一部を除く男どもが一斉に敬礼した。まあ、女は怒らせると怖いものなのさ。傍から見てた日暮が呟く。

 

「怒ってるな。代表」

「だねー。まあ、まだぬるい方だと思うよ。物理で行かない分、ウチだと説教より先に拳が飛んでくるからね」

「拳?」

 

思わず横にいた明久の方を向く。物理ってどういうことだよと目が物語っていた。明久は明後日の方を向いてさらに言う。

 

「うん、なんだろうね。基本的に物理で行くタイプの人間が多いから我が家」

 

ジェノサイドるとか言われるイリヤはもちろん、騎士王も結構喧嘩っ早いし、舞弥も怒らせると意外と怖い。最強はアイリなわけだが、あれだ。母は強し。

しばらくして悠里が帰ってきた。三人の姿は無い、多分西村先生にでも引き渡されたのだろう。悠里が霧島のところへ向かい、霧島に話しかけた。

 

「翔子、ありがと」

「……どういたしまして」

 

それから集まっていたAクラスの生徒に頭を下げた。

 

「Aクラスのみんなもごめんなさいね。こんなことに付き合わせて」

「かまわないよ」

「むしろ誠意を見せてもらった」

 

Aクラスからは称賛の声が上がった。

ある意味公開処刑だよね。これ 明乃の呟きは誰にも聞こえなかったそうな。

 





色々ごめんなさい。うん、とりあえず謝りたくなった。
代表が女性だったらこうなるかなって感じがする。まあ、ここまで過激じゃないんだろうけどさ。

それからFate女子の凄さはプライスレス 女性の方が強い気がするんだ。男はなんかヒロイン属性が多いし。普通に主人公してるけどさ、でもヒロイン力もある気がするんだ。


閑話休題アンケート

『次の色の組み合わせの内どれを選ぶ?

 ・赤×白
 
 ・青×白
 
 ・青×黒 一票
 
 ・青×赤              』


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第六問

 

夕方頃、人通りの少ない空き部屋に数人が集まっていた。またもやノートなどを広げている。

 

「なんでFクラスのバカが制裁されてないんだよ」

「女子が集団で移動してるって話も聞かないぞ」

「どうなってんだよ」

 

どうやら彼らは前回と同じくこの世界の展開について何か言いたいことがあったらしい。

 

「他にも転生がいるんじゃね?」

「いや、それはないだろ。それよりもどうすんだよ。これじゃあ原作通りじゃない」

「……俺たちから始めればいいんじゃね? 学年を巻き込めば原作通りだ」

 

その場に居た三人を除く全員が顔を見合わせて言った。

 

「「「それだ!!」」」

 

賛同しなかった三人、Fクラス所属の水上と吉原と沢崎は口々に言い合った。

 

「坂本の恐ろしさをしらねーからあんなことが言えんだよ」

「だな。生の鉄人の補修はきつかった」

「ああ、あんなのもう勘弁だ」

 

公開処刑は思わぬところで効果を発揮していたようだ。

 

                    ☆

 

その日の晩、女子風呂

明乃たちFクラスの女子(一部を除く)はまたもや貸切状態になった風呂を堪能していた。

 

「ふんふふーん」

「そういえば、代表は?」

 

日暮が周りを見渡す。悠里と夢路が居ない。

 

「……遊里ならシャワー」

「あーなるほど」

 

そりゃしょうがないと日暮は納得した。そこに鈴原が声をかけてくる。

 

「日暮、悪いけどシャンプーかして」

「いいぜ」

 

そこに何やら物音がした。

 

「「「?!」」」

 

一体何の音?! と全員が言い出すまで後二秒

 

                    ☆

 

衛宮明久はジジ抜きで負けてしまい、全員分のジュースを買いに行く羽目になっていた。風呂には入り終わっており、合宿所備え付けの浴衣(明久的にはこっちの方が慣れているのでこっちを着ている)に備え付けのスリッパをひっかけてぱたぱたと歩いていた。

 

「なんか少し嫌な予感するなぁ」

 

明久がぽつりと呟いた。その目の前を体育着を着た男子生徒の一団が通り過ぎる。多分、20人前後だろうか。ポカンと開けていた口に気が付いて慌てて口を閉じた後、明久は呟いた。

 

「え、なにあれ」

 

彼の後ろに人影があった。

 

                    ☆

 

昨日の一件から見回りを強化していた教員たちのところに一人の教員が慌てた様子で走ってきた。

 

「福原先生! 変態がまた徒党を組んでやってきました!」

「またですか」

 

福原は呆れた。昨日も同じようなことがあったのだ。

 

「「「うぉぉぉぉぉぉ」」」

「はぁ、いい加減にしてほしいですね」

 

一人の教員が召喚フィールドを開いた。そして教員が一斉に召喚獣を召喚する。

 

「あなた方も召喚しなさい。敵前逃亡になりますよ」

 

ずらっと並んだ教員の召喚獣、それを見て生徒たちは少し怯えたような表情になった。

 

「っ」

「Cクラスの豊崎が召喚勝負を挑みます。試獣召喚(サモン)っ!!」

 

一人が召喚獣を召喚する。そして、その召喚獣が現れたのだが、その直後に矢のようなものでその召喚獣は貫かれた。

 

「え?」

 

                    ☆

 

少し遠い所の全体が見回せる死角、そこに明久と明久の召喚獣が居た。その隣には悠里が居る。先ほど偶然にも悠里が通りかかったのだ。

 

「はぁ、いい加減にしてよ」

「そうね。それにしてもこんな能力ってチートじゃない?」

 

召喚獣の外見の問題に関してはどうにかなったのだが、能力の件に関しては解消されておらず、未だに投影しか使えないのだ。先ほどの矢は「赤原猟犬(フルンディング)」である。

 

「当てる技術がなくちゃ宝の持ち腐れだよ」

「なるほどね」

 

つまりは明久には当てるだけの技術があるということだ。

 

                    ☆

 

それから後、明久は罰ゲームの缶ジュースを買って部屋へと戻った。先ほどの出来事を話しの肴にジュースを飲む。

 

「ってことがあってさ」

「うわぁ、バカっているんだな」

「じゃのう」

 

南と秀吉が呆れたような顔をした。

 

「さすがに俺達でもそんなバカやらないぞ。……いや、やるバカは居たな。全く、紳士としてどうなんだよ」

 

須川も呆れる。日向はため息をつくだけだ。

 

「だよねー。僕はやる気すら起きないよ。ばれたらウチの女性陣が怖い」

「そうなのか」

 

日向がきょとんとした顔で明久を見た。その後、何故か話は女性談義に変わり、さらにはポーカーをやろうという話になぜか発展した。

第三ゲーム目、明久がガッツポーズをする。

 

「よっしゃ、勝った!」

 

明久が勝ったようだ。負けた他の面々が明久の方を向く。

 

「アキヒサ強いな」

「三回連続ロイヤルストレートフラッシュって……手札変えずに一発とかよくできたな」

「おぬし実はズルしとるのではないかの?」

 

秀吉が怪しいと言わんばかりの目線を向ける。明久は心外だとばかりに返した。

 

「え、なんでさ。運試し系のゲームで負けたのって滅多にないからさー」

「ずりぃ」

 

須川が羨ましそうに明久を見た。

 

「いや、負けるときは負けるよ? 姉さんとか、土壇場でとんでもないのを引くし……うん、強いよ。あの人は」

 

明久の声にはいろんな感情が籠っていた。しかし、それに気づけたのはたった一人だった。

 

「そうなのか」

「なるほどのう」

「……そうか」

 

日向が少し感慨深そうに呟く。その目はちょっとだけ遠くを見ていた。

その後も明久が大体勝ったのでこれはつまらないという話になってポーカー大会はお開きとなった。

ジュースをちびちび飲みながら、ふと明久が気になったことを尋ねる。

 

「そういえば、あの心理テストってなんだったの?」

 

結局、明久は移動の途中で抜けたので結果は知らないのだ。南はガサガサと鞄を漁って本を取り出した。

 

「あー、あれか? 緑は友達、オレンジは元気の源、青は気になる人、赤はえっと……たましいのはんりょ? なんだこれ」

 

読んだのはいいのだが一部分からない単語があったようだ。読み上げられた単語に明久はパニックになる。

 

「は、ええ?!」

「へぇ、結構合ってるな」

 

日向は納得した表情をする。明久はまだパニックに陥っていた。

 

「えぇ………うん、ないよ、うん」

 

戻るまでは時間がかかりそうだ。





幸運って大切な気がするんだ。まあ、そんな話です。

明久はどっちかというとギルガメッシュ的な感じで運がいいかなって思う。慢心しないタイプなので基本は運に甘えないし。明乃は土壇場での引き運の良さはあると思う。

それから心理テストの結果は捏造です。マジじゃないのでご注意ください。

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第七問

 

ここはFとAクラスの自習室とはまた違う自習室、隅の方で男子が話し込んでいた。

 

「は? 覗き」

 

少年は思わず聞き返した。自分をここまで引っ張ってきた彼はいきなり何を言い出したのか。

 

「ああ、突っ込んだ連中が居るだろ。アレに便乗すればキツイ処分なしで覗きができるはずだ」

「だが……」

 

勧誘された方は躊躇する。当然だろう、やろうとしていることは犯罪だし、もしも大事になれば自分の居場所も無い。

勧誘している方が一枚の写真を取り出した。随分と色気のあるその写真は顔が見えていない。

 

「これ見てみろよ」

「こ、これは……」

 

口の中に唾が溜まっていくのが感覚的によくわかる。それほどにこれは素晴らしいものだと彼の本能が告げていた。勧誘している方が同意を求めるように笑った。

 

「な?」

「……ああ、これは」

 

ゴクリと唾を飲んで少年は悪魔の誘いに乗ってしまった。

 

                    ☆

 

その頃、FとAクラスの自習室にて、いつものメンバーが固まって自習をしていた。雰囲気はかなりだれているようだが。

 

「はぁー自習って飽きるよね」

 

明乃と似たような表情をしてペン回しをしている明久、その解答用紙はやはり大体埋まっていた。そのつぶやきを隣で聞いた日暮が同意する。

 

「そうだな。三日連続自習はきつい、てかマンネリ化するよな」

 

あーつまんねーと日暮は愚痴をこぼす。最終日前なんだしもっとこう、イベント的なのないのかよとか呟いている。さらにその横に居た秀吉も疲れているようでシャーペンを置くとべたっと机に突っ伏した。

 

「正直、ワシも飽きたのじゃが……」

「明日までの辛抱だ。ヒデヨシ」

 

南はため息をつく。全員マンネリ化した自習に飽きているようだ。

そんな空気も読まずに須川が問題用紙を持って明久の方へ来た。

 

「はぁ、ここの問題わかんねーんだが」

「あー、そこね。この絵は『テニスコートの誓い』だね。フランス革命の時に起こった平民の集会だよ」

「なるほどな。ありがとよ」

 

明久から聞いた回答を即座にメモする須川、その様子を見た明久が言った。

 

「はいはい、てか須川君が一番まじめにやってるね」

「そうか?」

 

たぶんだれているメンバーよりは真面目にやっているだろう。

 

                    ☆

 

自室に戻る明久の肩を誰かが叩く。振り返ってみれば、黒髪黒目のどこにでも居そうな男子生徒だった。明久が振り返ったのを確認すると男子生徒は話し出す。

 

「おい、ちょっといいか」

「誰、君? てか、何か用?」

 

とりあえず明久の知り合いではない。そのまま、男子生徒が明久に言った。明久の発言なんて聞いてないようだ。

 

「単刀直入に聞くが覗きやらないのか?」

「は?」

 

明久は驚いた。それもそうだろう、普通やらないだろそれ。明久は心の中でツッコミを入れた。

 

「だって、お前写真で脅されてんだろ?」

「……頭どうかした? それとも今冬木でちょろっと流行ってる電波の類?」

 

ここ最近、明久や実家の周囲で電波のような行動をとる人間が増えているのだ。実は転生者の類なのだがそれを明久が知るわけがない。転生なんてものがホイホイ起こってるとか普通は考えないだろう。

 

「チッ 脅迫状は姉の方に行ったのかよ」

「……脅迫状? 姉さんに脅迫状?」

 

明久の雰囲気が変わる。何というべき一気にどす黒くなった。雰囲気が変わった明久に怖気づきつつ聞いた。

 

「な、何だよ」

 

怯えた様子に毒が抜けたのか明久の雰囲気が戻る。冷え切ったような雰囲気になった空間も一気に緩んだ。明久が苦笑する。

 

「いや、何でもないさ。とりあえずお断りします。そんなのやったらマジで家族に怒られるし、それに信用してくれてる人たちに悪いしね」

 

明久にとって家族や友人が世界そのものなのだ。家族や友人に失望されたりしたら本気でへこむだろう。明久の発言を聞いて男子生徒は舌打ちをしてから言った。

 

「いい子ちゃんぶりやがって」

「っ」

 

そのままドンと壁に押し付けられる明久、背中の痛みに顔をしかめている明久に男子生徒が何かを言おうとした。

 

「い「ちょーっとまった!!」

 

しかし、それは後ろからの声に遮られた。

 

「……姉さん、広夢?」

 

明乃と日暮だ。どこかへ向かう途中ならしく、明乃は女子用の赤いジャージ、日暮は持ち込んできた自前の青ジャージを着ている。

 

()()()の弟になにやってんのさ!」

「ゑ?」

「明久、古典じゃねーから」

 

日暮のツッコミが冴えわたる。明久はと言えば明乃の発言にポカンと口を開けていた。それもそうだろう、普段はぼく口調の姉がわたしなどと言ったのだから。

明乃はそんなのも気にせずに男子生徒に笑う。

 

「はいはい、君さー。なに道の真ん中で覗きの勧誘なんてしてるのー? 先生に見つかったら補習もんだね。これ」

「まあ、私はタイミングがよかったのかしらね」

「げ、鉄人!?」

 

男子生徒は鬼の教育指導教員である西村先生の顔を見るとすぐに逃げ出した。それを西村先生が追いかけた。

明久が息を吐いた。ホッとしたようだ。そして明乃のところまでやって来た。

 

「はぁ、助かったよ」

「うん? なんで、わたしたち双子じゃない」

「ところでその口調どうしたの? 何ていうか昔に戻ってるっていうか……」

 

明久の脳裏に在りし日の姉の姿があった。

 

「昔って? これ罰ゲームなんだ。女の子っぽい口調にするっていうの」

「……そっか」

 

明久の表情が少しだけ沈んだ。明乃は気が付いておらず、先ほどまでやっていたマインスイーパーの話をしていた。日暮がこそっと明久に言う。

 

「なんか寂しそうだな」

「あ、えっとなんでもないよ?」

「……そうか」

 

日暮は少しだけ同情するような表情をしてから、眉間にしわを寄せちょっと頭痛がしているような表情になった。

明乃がちょっと首を傾げて聞いてきた。

 

「ねぇ、聞いてる?」

「あ、うん」

 

明久はちょっと慌てた。真面目に聞いていなかったのだ。どうしようとか思っていると日暮がフォローを入れる。

 

「はぁ、言峰は引き運はいいのに、何であそこまで一発目から爆弾見つけるんだ?」

「アハハハ……知らないよ。むしろぼくが知りたいね」

 

明乃が思わず素に戻っていた。気が付いた明久が注意を入れる。

 

「あ、口調」

「あ、えっと内緒でね?」

「おっけー」

「分かった」

 

三人はそのまま別れて明乃と日暮は罰ゲームの缶ジュースを買いに行くのを実行にし、明久は自分の部屋に戻るために道を急いだ。

 





僕っ子にそれなりに理由があってもいいんじゃない?
そんなわけで無駄にシリアス…いや、シリアルはいりまーす。

転生者設定……要りましたかね?


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第八問

 

部屋に戻ってきた明久は思わずため息をついてしまった。

 

「はぁ」

 

それもそうだろう。合宿に来てから色々とありすぎた。明久のため息を聞きつけた友人たちが心配そうにする。

 

「どうした衛宮」

「随分と憂鬱気じゃのう?」

「覗きとかいうバカやろうとしてるバカが大勢いるみたいでさー。さっき勧誘受けた」

 

全体が凍りついた。それもそうだろう、この期に及んでまだ覗きなんてことをしようとしているのだから。

 

「おいおい、まだ懲りてなかったのかよ」

「坂本にこってり絞られたのに?」

 

須川と日向が呆れる。まあ、それも当然だろう。あの殺気を受けてまで覗きをしようなんていうアホが出るとは思わなかったからだ。

 

「ううん、多分別のクラスの人」

「はぁ、何じゃそりゃ」

「同じ様なことを考える奴っているんだ」

「難儀じゃのう」

 

全員が呆れた。明久がさらに続ける。

 

「大体さ、覗きって犯罪じゃないか。何でみんなやろうとするわけ?」

「まあ、あれじゃないか『赤信号みんなで渡れば怖くない』」

 

須川が言った。

 

「……あー、なんてわかりやすい」

「なるほどのう」

「確かにそうかもな」

「えっと、どういう意味?」

 

日本在住民は全員納得したが、南だけが困惑する。確かにそこまで使わない慣用句だろう。

 

「つまり『悪いことや間違ったことも、大勢でやれば怖くない』まあ、あれだよ。FFF団が集団だと無駄に強気なくせにいざ一対一になると平謝りしてくるのと同じ」

「……なるほど、よくわかった」

 

南よ。それで納得でいいのか?

 

「明日最終日ってことは今日が正念場だし………大丈夫かなぁ」

 

Fクラスの女子も居ることだしやっぱり気になる明久だった。その様子を見た日向が明久に声をかける。

 

「気になるなら見に行こう」

「あ、それもそっか」

 

他に行く人いるー? と明久は尋ねたが他のメンバーは少し渋り顔だ。

 

「俺はパスだ。疑われんのも面倒」

「ワシも流石に冷やかしに行くのはどうかと思うのでパスじゃ」

「じゃあ、俺もパス」

 

他のメンバーは来ないらしい。明久はドアに手をかけた。日向も一緒についてくる。

 

「わかった。じゃあ行ってくるね」

「はぁ、ヒロ大丈夫かな……」

 

明久と日向は部屋を出た。

 

                   ☆

 

二人はもう一つの罰ゲームであるジュース買い出しへと向かっていた。明乃が呟く。

 

「それにしても疲れるね」

「そうだな。多分今日も覗きは来るんだろうし、正直面倒だ」

 

毎晩毎晩元気だなと日暮は続ける。それに明乃も同意した。

 

「そうだよね。ぼ……わたしも正直もう嫌だなぁ」

 

慌てて一人称を直す明乃をみて日暮が言った。

 

「別に俺しかいないし普段の口調でいいぜ?」

「あー、でもいいわ。下手ズルしてるのばれたくないし。一応罰ゲームだし」

 

明乃は根が真面目なようだ。

 

「言峰は真面目だな。さしずめSGは『ワーカーホリック』ってところか」

「エスジー?」

 

聞きなれない単語に明乃は首を傾げた。

 

「っと、何でもないぜ?」

「そう?」

「おう」

 

そんな二人の前を「裸ー」とか「つるぺたー」とか「おっぱいこそ至高!!」とか色々と変態発言をしながら男子の集団が通って行った。かなりの人数が軍隊のように走り抜けていく。

 

「……日暮ちゃん」

「オッケーだぜ。言峰」

 

二人はその後を追った。

 

                   ☆

 

追ってみれば案の定、戦いの真っ最中であった。女子側の有志もそれなりに居るらしく戦況は拮抗しているようだ。

 

「うわぁ、混戦真っ最中だね」

「てかこれどっかで取りこぼしが出るぞ」

 

日暮が冷静に呟いた。明乃が「あー」と言ってから真面目な顔になって日暮の方を見て告げた。

 

「奥、確認しに行こう」

「そうするか」

 

二人は戦場をすり抜けて奥へと向かった。そんな二人の後姿を見つけたのが二人。

 

「あれ、ヒロだ」

「あ、姉さんだ」

 

声をかける間もなく、二人は奥へと向かってしまった。

 

「「……」」

 

二人は顔を見合わせる。そして同時にため息をついてから日向が言った。

 

「行くか」

「おーう」

 

二人は奥へと向かった。

 

                   ☆

 

進んでみればそこには教員と複数の女子が居た。その中の一人、オレンジ色の髪をツインドリルにした少女が明乃の姿を見つけて、吐き捨てるかのように言った。

 

「おや、お兄様にまとわりつく雌猫じゃありませんか」

「……えっと、だれかな?」

 

明乃的にはここまで扱き下ろしてくるような知り合いは心当たりがない。強いて言うならどこぞの養父である麻婆神父なわけだが彼とはまた毛色の違った罵倒だ。

 

「なっ、み、美春のことを馬鹿にしているんですか!?」

「あー、そいつってあれじゃないか、Dクラス戦の時に島田だけを狙った」

 

日暮の言葉に明乃が思い出したかのように手を打った。

 

「あ、あのヤンデレストーカーちゃんか」

「ストっ?! 違います!! 美春はただ純粋にお兄様のことを愛しているだけで」

 

その言い分を聞いた明乃が薄ら笑って、一瞬だが菩薩のような笑みを見せた。

 

「……うん、大体のストーカーってそういうこと言うもんね。よーく知ってるよ」

 

養父の言い訳を思い出したらしい。それでどうにかなったら警察も真面目に注意する身内も必要なくなるよねと心の中で呟いた。

 

「このっ」

 

ポケットらしきところから何かを取り出して明乃に突きつけた。

 

「この写真が……ってあれ?」

 

清水は自分の手にあるものを見て目を丸くした。日暮と明乃も同じように驚く。

 

「なあ、言峰 どう見たって写真に見えねーんだけど」

「同じく、只の絵ハガキだよね。それ」

 

そう、清水の手元にあったのは絵葉書だ。しかも達筆な字で『負け犬の遠吠え』や『悪即断』などと書かれている。

 

「嘘、なぜですか? あ、画像データの方も消えてる?!」

 

慌ててデジカメを確認する清水、しかしデジカメはNO DATAと表示するばかりだ。

 

「まあ、いいか。美春だっけ? 男、来そうだぞ」

「あ!」

 

そこに数名の男子生徒がやってきた。男子生徒全員が浮足立ったようになっている。その様子を見ながら明乃は呆れたようにつぶやいた。

 

「はぁ、何で巻き込まれてるのかな」

「以下同文っと」

 

明乃と日暮はそろって召喚獣を召喚した。

 

                    ☆

 

女子風呂近く、通路の最奥に西村先生が立っていた。きょろきょろしながらやってきた明久たちを見て少しだけ疑わしげな視線を向ける。

 

「あら、衛宮じゃない。あなた達も覗きに加わってたのかしら?」

「あ、西村先生 いえ、覗きに関しては勧誘断ってるの見てますよね?」

 

明久がそう言えば途端に雰囲気が和らいだ。

 

「冗談よ。衛宮が参加するとしたらもっと手を焼かれそうだもの」

「どうも」

 

それって褒められているのかな、明久は内心考えていた。明久のことはさて置いてと日向が話始める。

 

「西村先生、すみません。こっちにヒロ……いや、日暮は来てませんか?」

「あら、日向も居たのね。見てないわよ」

「そうですか」

 

一体どこへ行ったのだろうか? そう考えているところに足音がした。

 

「「「!」」」

 

三人が振り向くとそこには金髪に緑色の目をしたやわらかい雰囲気の男子生徒が居た。明久の姿を見つけるとにこやかに笑っていった。

 

「おや、Fクラスの吉井君ではないですか」

「……は?」

 

吉井、という単語を聞いた途端に明久の雰囲気が変わった。何というか警戒していると言った方がいい。日向はその明久の変わり具合に驚いた。

 

「衛宮?」

「黙ってて」

「わ、わかった」

 

明久は殆ど無表情でいきなり現れた男子生徒を眺めている。それを内心、少し鼻で笑ってから男子生徒は話し始めた。

 

「怖い顔しないで下さいよ。もう鉄人倒したのでしょう」

 

その言葉を聞いて西村先生は呆れて肩をすくめて言った。

 

「はぁ、何を言ってるかしら。Cクラスの渡辺、衛宮と日向は偶然ここにきただけよ。貴方の方こそ覗きと判断していいのね。試獣召喚(サモン)っ!」

 

フィールドが展開されて、西村先生の召喚獣が姿を現した。

 

「! まさかそういう展開とは、いいですよ。僕が主役なのですね。試獣召喚(サモン)!」

 

そこに現れたのは褐色の肌、白い髪、赤い外套の……

 

「え?」

 

明久が思わず呟く。そう、そこに居たのは紛れもないアーチャーの姿をした召喚獣だった。渡辺は笑う。人のいい笑みだったがその裏には何かが隠れているようだ。

 

「僕の召喚獣が負けるわけありませんよ」





ここからが正念場


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第九問

 

日暮は召喚獣を操りながら呆れた。目の前には日暮が操る剣で貫かれた召喚獣が居る。日暮が剣を抜けば召喚獣は消え失せた。

 

「全く、どんだけ来ればに気が済むんだよ」

 

呆れている広夢の背中に明乃が背中を合わせた。どうやら偶然らしい。そのまま、明乃の召喚獣は一斉に来た男子二人の召喚獣を槍で薙ぎ払う。そして戦いの喧騒にかき消されそうな声で呟いた。

 

「そうだよね。男子生徒の大半が来てるんじゃないの?」

「それは思ったぜ。これとっ捕まえる教員も大変じゃないか?」

 

聞こえてた日暮が答える。日暮がすこしだけ向こうを見れば教師の召喚獣が戦死になった生徒を捕まえてせっせと運んでいた。その様子を見て明乃は同意する。

 

「そうかも、でも西村先生がいないのは意外だね」

「あれだろ、西村先生は一番奥で待機」

 

あの人は教師で一番強いのだ。この状況を潜り抜けた猛者をどうにかするのは西村先生の担当だろう。日暮に言われた明乃が納得した。

 

「あ、それもそうか」

 

だいぶ人数は少なくなってきたが、それでもまだ居る覗き目的の男子を見て明乃が呆れた。日暮も同じように呆れる。

 

「さて、もうそろそろいい加減にしてほしいなぁ」

「はぁ、どんだけ来るんだよ」

 

                   ☆

 

一方その頃、最奥、風呂場のそばにて。

 

「はぁっ!!」

「ふっ」

 

西村先生の召喚獣と渡辺という男子生徒の召喚獣が戦っていた。アーチャーの姿を模した召喚獣は双剣を持って戦っている。あくまでアーチャー仕様ならしい。ちなみに外見はアーチャーそのもので、渡辺自身とは全く被っていない。

日向は戦いを見ながら呟く。

 

「あんな動きできるやつがいるんだな」

「確かにすごいね……彼、自分で操作してないみたいだけど」

 

明久が真剣なまなざしで召喚獣同士の戦いを見ながら言った。その目はずっと戦いを見ていて、そこからそれていない。

 

「え? そうなのか?」

 

日向が驚く。それもそうだろう、召喚獣を自分で操作しないとか普通は出来ないはずだ。日向の言葉に明久が少しだけ頷いて答えた。目線は相変わらず戦闘に固定されている。

 

「うん、操作しているなら何かしらの動きがあるはずだけど彼には何もない。たまにいるんだよね。ああいった感じの違法改造系、学園長が頭抱えてた」

「そうなのか、全然知らなかった」

 

日向がさらに驚いた。そんなことがあるとは。

 

「あー、一般生徒には知られてない分野だからねぇ。僕だって学園長の実験手伝ってなかったら知らなかったよ」

 

明久が目線を日向にちょっと向けて、フォローを入れる。しかし、日向は既に心あらずといった感じで考え込んでいた。

 

「ふぅん、改造ってありなんだな」

「いや、普通だめだからね?!」

「……わかった」

 

明久が日向に釘を刺しているそのときだった。拮抗状態だったバランスが崩れて西村先生の召喚獣が劣勢になる。

 

「っ」

「まだまだです!」

 

渡辺の召喚獣が一気に畳みかけた。どんどんと追い込まれていく西村先生の召喚獣、その様子を見て渡辺が笑う。

 

「アハハハハ、僕の召喚獣(サーヴァント)はだれにも負けるわけがない!!」

 

双剣を使って渡辺の召喚獣は西村先生の召喚獣をじわじわと攻めていく。その様子を見て、色々と突っ込みたくなる明久だったが何とかそれを留めて呟く。

 

「……アイツ、秘匿をなんだと思ってんだよ。一般人の前で堂々と言いやがって、それにアーチャーの実力がこんなもの? そんなわけないだろうに」

 

大体アーチャーが白兵戦を得意としていたところでところどころで弓を使うはずじゃないかと明久は言う。多分、マスターとして契約している間に過去の夢を見ていたのかもしれない。

 

「同感だ。俺の知っているあいつはもっと強いぞ。真面目にコンビ組まれるとえげつない連中だった」

 

日向は真面目にコンビを組んだ時の日暮とアーチャーを思い出していた。リソースもちゃんとしたアレに勝てとか……ムリゲーに近い、てかムリゲーだよ。そう思い出した内容にツッコミを入れた。

西村先生の召喚獣がいよいよ追い込まれた。渡辺が笑った。

 

「とどめです! さようなら」

 

召喚獣の攻撃が西村先生()()に向かっていく。

 

「え?!」

 

西村先生は驚く。当然だろう戦死を覚悟はしていたが、直接攻撃が来るなんて考えていないはずだ。

攻撃を突如として現れたポスターがそれを防いだ。

 

「なっ」

 

それは明久の召喚獣だった。髪色は普段通り、服装は黒いコートに白のインナー、ズボンも黒だ。首に赤いマフラーを巻いているのが特徴ともいえるかもしれない。ポスターが攻撃を耐えきる。多分、強化を応用して盾代わりにしたのだろう。

 

「……秘匿に関してはまあいいとしても、人間狙うのはルール違反でしょ。それからどうやってフィードバックシステムによく似たものを手に入れたのかなんて知らないけど、後でじっくり聞かせてもらおうかな? 西村先生、この戦闘は僕が引き継ぎます」

 

明久は一連の戦いで渡辺の召喚獣にはフィードバック機能に似た現実干渉の力があると判断した。そして、明久の召喚獣が弓を構える。明久の目は完ぺきに戦う人間の目だった。明久の様子を見て西村先生が頷く。

 

「……頼んだわ。衛宮」

「りょーかいです。日向君」

「わかってるさ、試獣召喚(サモン)!!」

 

明久の呼びかけにすぐに日向は答えた。日向の召喚獣が呼び出される。赤と黒を基調にした上着に黒地のなんか顔の書かれたインナー、それに茶色の制服らしきズボンとかなり出鱈目な服装だ。武器は何やら紐の巻かれた小刀らしい。

日向が渡辺を見ながら言った。

 

「一対二なんかする気はないけど、人を狙ってくるような奴相手に用心に越したことはなし」

「ふん、そんなもので僕に勝てると思わないでください」

 

明久と日向の召喚獣を見下したような感じで見てから渡辺が叫ぶ。

 

「『UBW(アンリミテッドブレードワークス)』!!」

 

召喚獣が腕輪を掲げた。途端に世界は変わる。赤い空に黒の歯車、剣の突き刺さった丘、そんなところに明久はいた。

 

「お、何だこれ」

 

いきなり変わった風景に明久は戸惑った。それはアーチャーの夢にもたびたび出てくる光景だからだ。

 

「衛宮気をつけろ! 宝具だ!!」

 

正体を知っている日向が叫ぶ。明久は少しだけ驚いて呟いた。

 

「へぇ、これがアーチャーの……ねぇ」

「行けっ!!」

 

渡辺の召喚獣が明久に襲いかかってきた。しかし、その攻撃はことごとく外れていく。攻撃をかわしていきながら明久が首を傾げた。

 

「てかこれ具体的にはどういう作用があるのさ。普通に攻撃性能上がってるだけじゃ」

 

それくらいしか変化を感じられないんだけど。そのつぶやきを聞いて日向が何処か遠い目をしていった。

 

「そういう宝具だ」

「……しょぼ」

 

正直に思ったことを口に出す明久、多分どこかで錬鉄の英雄がくしゃみをした。ちなみにだが、召喚獣には基本に「EXTRA」のような電子的パターンが入っているからこそ、この操作性なのである。本家本元はまた違うので注意。

 

「何で当たらないんですか!」

「そんな三流操作で当たるわけないじゃん」

 

明久が呆れたように言った。それを侮辱と感じた渡辺がキレて、そして言った。

 

「これなら『偽・螺旋剣(カラドボルグⅡ)』!」

「……はぁ、熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)

 

音速をこえた矢は明久の召喚獣に刺さることも無く、神代の盾をベースにした投影された盾に阻まれた。

 

「なっ」

「あーあー、もう面倒だなぁ!」

 

明久が大声になる。明久の肩口辺りが淡く発光し、少しだけ魔力の流れが変わったのを感じたのは日向だけだった。そして明久の召喚獣の姿が一瞬ぶれる。

 

「え?」

 

渡辺の召喚獣が瞬きの間に倒された。明久が渡辺に告げる。

 

「悪いんだけど、他人のお遊びに付き合えるほど戦争舐めてないから」

「渡辺、色々と聞きたいことは山ほどあるわ。来なさい」

「え、な……」

 

西村先生に腕を掴まれた渡辺の表情が赤くなっていく。それはどちらかというと憤怒からくるような赤さだった。

 

「何で! これは僕の物語なんでしょう? 僕が鉄人を倒して、男子の中ではヒーローになってそれで校内でも噂になって、注目されて! それなのになんで!?」

 

渡辺は引きずられていく間もそう叫んでいた。その様子を見ていた明久たちは同時に呆れたようにため息をついた。

 

「……こんな騒動で噂になったとしても内容は最悪だろうに」

「夢を見てる奴みたいな感じだ」

 

自分が主人公で世界を変えていって、自分が世界の絶対になるんだーみたいなアレ、と日向は続けた。明久はそれに同意する。

 

「あー、それは確かにそうかも」

「はぁ、見ている夢がもうちょっと普通だったら普通に応援するのにな。例えば青春真っ只中な生徒会とか」

 

ちょっと不思議な答えに明久が困惑した。

 

「へ? なにそれ」

「ウチの優秀だけどバカな生徒会長の話、それまで家の規則とかに縛られてた反動か斜め上に突っ切った発想の持ち主になった」

 

明久の顔がちょっとひきつる。どういう意味だそれ、顔が如実に語っていた。

 

「そうなんだ。ちなみに青春送れてる?」

 

どうにか考え出せた質問を日向に聞いてみれば、日向は少しだけ考えるようなしぐさをしてから言った。

 

「おう、俺たちが主な巻き添えを食らうが青春はしてると思う」

「そ、そうなんだ」

 

青春なんて人それぞれだからいいのかなぁ? 明久は内心首を傾げつつも、日向と雑談するのであった。

 

                    ☆

 

目の前に居た連中はとりあえずは居なくなった。それはそうだろう、明乃や日暮、他の女子たちがどうにか駆逐していったのだから。

 

「ふむ、こんなものだよね」

「だな」

 

明乃と日暮が満足げになる。どうにか覗きなどという変態行動を取ろうとしたバカを止めることができたのだ。それだけでもう十分だろう。

でも、それに納得できない奴らも居るわけで。教師の拘束を振り切って一人の男子生徒が走ってきた。

 

「ふっざけんなよ」

 

その時一番無防備だった日暮に拳を振りかぶろうとして、

 

「アンタの方がふざけないでよ」

 

横から飛んできた赤い狼……いや、坂本悠里に殴り飛ばされた。

 

「悠里?!」

 

明乃が驚く。まあそうだろういきなり部屋に居るはずの親友が現れたのだから。

 

「全く、ジュース買いに行って何やってんのよ」

「それよりもぶん殴った男子がかなり飛んで行ったのは?」

 

男子生徒は三回転して壁に激突した。人間業じゃねーだろこれと日暮は呟く。その言葉に悠里が笑って答えた。

 

「あたし、喧嘩得意なのよ」

「……そっか」

 

もう、それで納得するしかなかった。他に説明しようがないし、他の面々それで納得しているし。

 

                    ☆

 

それで、覗きの男子生徒も全部回収して、女子風呂の入浴時間も終了してから。奥の方から明久と日向がやってきた。

 

「あ、姉さん!」

「ヒロ!」

 

二人が現れたことにその場で警戒をしていた明乃と日暮と悠里が驚く。

 

「あれ? アキと日向君?」

「よ、明久 ウミも一緒か」

「なんで二人がここに居るのよ?」

 

アハハと苦笑いする二人、代表して明久が答えた。

 

「ちょっとねー。不安だから見回りしに来たの。そしたら電波に遭遇したってわけ」

 

かなり内容は捏造されている。まあ、それでも明久の言いたいことはわかったらしく明乃がうんうんと頷く。

 

「電波かぁ、最近冬木に増えたよね。こっちにも『吉井が何でこんなところに』とかさー」

「……そう、なんだ」

 

明久がちょっとだけ警戒した顔になるがすぐにそれは止めた。

 

「……(ふむ)」

 

その場に居たほとんどがその様子には気が付かなかったが、日暮だけは気が付いていた。明久の様子を少しだけ不安げに見つめる日暮だった。

 





かっこいい踏み台ってどうやれば作れますかね(´・ω・)ドウスリャイイノサ

UBWのあの設定は個人的な考えです。剣の丘ばぁっと出して、投影の攻撃力が上がっても避けられたら終わりな気がする。まあ、EXTRAは避けられませんけどねww
個人的には赤セイバーのあの派手な宝具が好きです。ばぁっとなる感じとかかっこいいって思う


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第十問

 

それから完全に夜中になって、明久は部屋をそっと抜け出した。月の見えるベランダのようなところへと来て、柵の上で片肘ついて片腕を外の方へ投げ出して、ぼうっと月を眺める。ちょうど満月に近いころだったらしく丸い月が輝いていた。

 

「ふぅ、疲れた」

「あれ、明久か?」

 

後ろから声がかかったので振り返ってみれば、ジャージ姿の日暮だった。手にはなぜかジュース缶が二本ある。

 

「あ、広夢?」

「よー、変質者撃退お疲れさん」

 

明久が驚いて聞けば、日暮は返しつつ、ジュース缶を一本投げてよこした。慌ててキャッチしてから礼を言う。

 

「ありがと、てか何でここに?」

 

こんなことやっているのなんて自分だけだと思っていた明久は心底驚いた表情で言った。

日暮はこちらへとやってきて、柵に背を付けてから、少し頬を掻きながら答えた。

 

「ま、俺も疲れたとなんか妙に目が冴えてさ」

 

眠くならないのでふらふらと抜け出していたらしい。その様子を眺めながら、カシュッと音を立てながらジュース缶を開け、一口飲んで、それから明久は言う。

 

「あー、わからなくはないね。僕は久方ぶりに自分の魔術使ってだるい、何で魔術使うと痛みがあるんだか」

 

その様子を見た日暮もジュース缶を開けて、口をつけようとするがその前に思い出したように明久に言った。

 

「一応、魔術回路って神経みたいなもののはずだろ? それを考えたら当然のように思えるけどな」

「確かにそうだね。一応、基礎としては知ってるけどさー。納得できるかって言われるとちょっとね」

 

もう少し痛み抑える薬とかないのかなーとぐちぐちと小言を言いながらジュースをちびちび飲んで行く。日暮が少し考えてから言った。

 

「あれか、頭で理解してても感情的には納得できないと」

「あ、それだね」

 

明久と日暮はそれで納得した。そのまま無言でジュースを飲んでいく。互いに視線は月を見ていた。日暮がふとつぶやく。

 

「それにして、いい月だな」

「そうだねー」

 

その後も二人は無言で月を眺めていた。その時に日暮が何かを思い出したらしく明久の方を向いて聞いた。

 

「そういえば、明久の苗字って元々吉井なのか?」

 

こちらを向いて、明久の動きがそこで止まった。しばらくそのままになる。それからものすごく嫌そうな顔をして明久は答えた。

 

「う……まあね、ほとんどの人は知らないだろうけど」

「確かにな普通に衛宮だって思ってたぜ。それで? なんで苗字言われて反応したんだ?」

 

明乃と喋っていた時の様子を見て気にしていたらしい。よくそこまで見てたなぁと明久は感心しながらそんな様子をおくびにも出さずに呆れた感じで日暮に言い返した。

 

「はぁ、なんていうか広夢って鋭いってよく言われない?」

「まあ、割と」

 

そのせいでまあ、気が付いちゃまずいことにも気が付いてとんでもない目に遭ったけどなぁと日暮は愚痴をこぼす。その様子をみて明久はあ、これは誤魔化してもろくなことにならないと思い、軽くため息をして話を始める。

 

「はぁ、僕の元々の家は魔術師でね。僕の上にはかなり優秀な姉がいたからどうあがいたってスペア代わりだったんだよ。それでもまあ、家の中は平和だったけど。それでウチは魔術界では割と有名だったらしくて、時々襲撃をかけてくる魔術師がいたりもしたんだ。今でもその名残で元々のほうの苗字で呼んでくる人間は敵だって警戒するようになっちゃって」

 

てか、普通に家庭内事情なんて知っている奴はおかしいと思わない? と明久は続ける。その言葉に納得した日暮が頷いた。

 

「そっか、ん? お前ってどこかの家の刻印継いだのか?」

 

その話を聞く限りは何処の家の刻印も継いでいないように聞こえたので気になって聞いてみた。すると明久が目を丸くする。

 

「刻印? ああ、じーさんの継いでるよ。一応、僕は正式に衛宮家の魔術師さ」

 

ああ、なるほど。それならばとさらに日暮は聞いた。

 

「へぇ、元々の家の方の魔術は継いでないのか」

 

その質問にも明久はきょとんとする。そして答えた。

 

「いや、できるけど」

「は?」

 

今度は日暮が固まる番だった。魔術師(メイガス)の魔術は基本一子相伝、上に優秀な姉がいるというのだ。だったら彼には教えられないはずだが?

 

「いやぁ、正確に言うと盗んだ?」

「……それ魔術的には地味にやばいんじゃないか?」

 

盗んだっておいと日暮は内心思う。そんな様子なんて気にする雰囲気も無く明久はあっけらかんと言った。

 

「起源のせいで魔術の内容大幅に変わったけど」

「おいおい」

 

起源とはその人間の魂の本質みたいなものだ。そのせいで魔術の内容が変わるとなると明久はよっぽど起源が表に出ているらしい。

苦笑いをして明久は続けた。

 

「だから『もうそれは継いだじゃなくって、開発だ』って言い切られたよ」

「そっか、今回はどっち使ったんだ?」

 

興味本位で日暮が聞いた。本来なら秘匿のはずだが明久は秘匿をあまり気にしない方だったので普通に答えた。

 

「ああ、固有時制御(タイムアルター)だよ。衛宮家特有の魔術のほうね」

 

固有時制御(タイムアルター)という単語を聞いて日暮が少しだけ驚いた。しかし、それは明久に気付かれることは無かった。それから日暮はジュースの最後の一口を飲むと言った。

 

「ふぅん……世界は狭いな」

「そう? そうでもないけど」

 

広いと思うけどなぁと明久は続けた。明久のジュース缶もちょうどよく空になる。

 

「いーや、狭いな……色々とさ。さて、部屋戻るか 西村先生に見つかるのはヤバい」

「それもそっか、とりあえずまた明日」

 

明久は先にベランダを去って行った。その背に日暮は軽く手を振って声をかける。

 

「おう、またな」

 

それからほぼ満月に近い月を見上げて呟いた。

 

「……ホント、世界は狭いな。こんな近くにあの人と同じ魔術使える奴がいるんだからさ」

 

日暮の脳裏には黒髪に黒コートに黒シャツ、黒づくめだった正義の味方を目指していたどこかの誰かの姿があった。

 

                   ☆

 

次の日、明久の暮らすマンションに明久が帰ってきた。ケーキを舞弥に届け、そしてバイクの方も切嗣に引き渡してからの帰宅である。

 

「ただいまー」

 

明久が玄関を開けて声を出せば、ちょうど料理をしていたのか黒いエプロンをつけたアーチャーがやってくる。ちなみにアーチャーのエプロンは明久が母の日のついでに買って来て、丁寧に『Archer』と魔力入りの刺繍を施した品だ。本人は母の日のついでということに少々憤慨していたが、エプロン自体は割と普通に使用している。

 

「帰ってきたようだな。有意義な合宿になったか?」

「ま、そこそこかな。むしろ疲れたよ。一部の男子が集団覗きとかバカやるし」

「……」

 

明久の言葉に思わず固まるアーチャー、そして少しだけ明久の方を疑わしげに見た。その視線に気が付いて明久が慌てて言う。

 

「あ、僕はやってないからね?!」

「あ、ああ 集団覗きって……」

 

アーチャーが詳細を知りたそうに明久を見るが、明久はアーチャーの向きを変えて背中を押す。

 

「はいはい、話はあとー。洗濯機使える? 洗う物とっとと片づけたいから」

「それくらいは私がやろう。軽食が冷蔵庫に入っているから食べるといい」

 

いいの? と明久が聞けば構わんよとアーチャーが返した。すると明久の表情が少しだけ申し訳なさそうになってからぱぁっと輝いた。

 

「あー、ごめんね。……ふぅ、なんか緊張感から解放された気分だよ」

 

もう疲れててしょうがないんだよねー。と言いながら明久は肩と首を回す。その様子と言葉を聞いてアーチャーが言った。

 

「そうか、疲れているなら仮眠をとるがいい。夕食の時間になったら起こすから」

「じゃあ、そうさせてもらうよ。流石に卯月から冬木までバイクはきつかった」

「?!」

 

明久の爆弾発言にアーチャーはさらに驚いた。

 

                   ☆

 

一方、冬木教会の明乃の部屋。明乃が帰ってきた。

 

「ただいま」

「よ、嬢ちゃんおかえり」

 

ランサーが出迎えた。明乃にとってはそれは普通だったのですぐに返事を返す。

 

「ただいまー、ランサーさん なんか疲れてるけどどうしたの?」

「ん、なんでもねーよ」

 

ランサーの雰囲気は全体的に疲れているような感じだ。心配した明乃がさらに大丈夫かと聞くがランサーは大丈夫だから気にすんなと答えた。

 

「そう? ならいいけど」

「嬢ちゃんも妙に疲れてるな」

 

明乃の雰囲気も妙に疲れているような感じだ。明乃の目が明後日の方を向く。

 

「アハハ、合宿先で集団覗きとか言うアホな騒動が」

「は?」

 

明乃の発言にランサーが驚いた。まあ普通そうなるだろう。

 

「まあ、どうにかなったからいいんだけどねー。一部の男子生徒が停学だとさ」

「アホだろそいつら」

「うん、そうとしか思えない。そういえばだけど、脅迫状どうなった?」

 

今更ながらに脅迫状の存在を思い出した明乃がランサーに尋ねた。あの現場にはランサーも居たのだから聞けば何らかの答えは得られると考えたのだ。

 

「あー、あれか……気にすんな」

「へ?」

 

思わぬ回答に明乃が驚く。

 

「気にしなくていいぞ。もう解決してるから」

「あ、そうなんだ。それならいいか さて、洗濯物どうにかしないとってわけで洗面所行ってくるね」

「おう分かった」

 

明乃が出て行った後、愛想よく笑っていたランサーの表情が疲れたような表情に変わった。

 

「……はぁ、嬢ちゃん愛されてんなぁ……色んな意味で」

 

手に入れた画像データがカレンの秘蔵メモリーの中に入っていて、その秘蔵メモリーの内容がとんでもないものであるなんてことはばらしたらまずいなとランサーはどこか遠くを眺めて考えた。

 

                     ☆

 

その頃、日暮は一人電車に乗っていた。ローカル線らしく人もいない。

 

「はぁ、どーにもこーにも一人っきりか」

 

日向とは少しだけ住んでいるところが違うため日暮は一人で電車に揺られている。どこかの駅で買ったであろう缶ジュースを片手に外を眺めてポツリと呟いた。

 

「……エミヤのばーか」

 

電車の揺れる音に声はすぐにかき消された。ぼうっと外を眺めながらさらに呟く。

 

「……空しいなこれ」

 

呟きながら遠い日を少しだけ思い出した。トラウマになったあの頃よりも数段幼い彼の姿が目に浮かんだ。

 

「……会いたいなぁ」

 

一目でいいから会いたいな。日暮はそう思った……思ってしまった。

 

《O.K》

 

その日はとてもきれいな月の晩だった。

……溺れる夜のその後に、

 

『何処か温泉でも行こうか』

『お、いいなぁ。それ』

 

遠い日の記憶は今、現実となる。

 





今章、妙に難産でした。
アンケートの方はこれが投稿された時点で締切りです。集計結果などは次回のザビエル道場で発表します。






以下設定語りなので注意

日暮はまあ、基本は紅茶disってますが本当は嫌いじゃありませんよ。
それから紅茶の師匠は若い切嗣とそれからナタリアで日暮も面識有、旅客機の一件で撃ち落としたのは二人という設定があります。日暮は全力で師匠二人をリスペクトしていた感じです。
無銘の本名が『エミヤシロウ』なのは多分公式で確定かなって思うので、当時の士郎が亡き師匠の名前を広めるために『衛宮士郎』と名乗り始めた……みたいなのだったらロマンあるかなって思います

EXTRAはこの辺の背景描かれてないから勝手に考えてしまいがちになるんですよね。


それから一応、wiki読み込んではいるつもりですがタイプムーンの世界観(特に魔術システム)を完全に把握しているわけではありません。その辺ご了承ください


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※ザビエル道場


※メタ発言、キャラの同士の掛け合い、他色々注意


 

??:えー、合宿編も無事終了!

???:毎度恒例メタ発言も辞さない蛇足コーナー

 

『ザビエル道場!!』

 

親友:ども、今回はとりあえず出番のあった親友だ(=゚ω゚)ノ ぃょぅ!

ザビ男:こいつの親友、俺だよね。と首を傾げたくなったザビ男だ(・ω・`)

親友:ま、まあしょうがねーだろ。俺たち一応脇役なんだし( ´Д)ノ(´・ω・) ナデナデ

ザビ男:そこはまあいいとしても、ようやく裏設定が出てきたという……

親友:はぁ、つーか気が付かない奴の方が変だろ(#゚Д゚)

ザビ男:普通気が付けって方が無理だと思う。ヒントは長男のさん付けくらいしかなかったんだし(呆)

親友:悪かったなぁ。こんな口調で(#゚Д゚)ゴルァ

ザビ男:ま、さらなる裏設定も数々ある親友だがもう面倒なのでちまちま出すってことで

親友:そりゃどうも、それにしてもただひたすらにゆるゆると学園生活送っていくってスタンスだよな。一応

ザビ男:悪いけどその主張は無理だと思う。むしろギャグ要素少な目の淡々雰囲気小説の方が合ってる

親友:どっちにしても騒動は似合わない……はずなのにな orz

ザビ男:小説なんだから、しょうがない

親友:しょうがない……のか?

 

ザビ男:さて、そんなことなんて置いておいて重大なことが判明した

親友:な、何だ(ゴクリ

ザビ男:キャス狐のマスターが居ない(`・ω・´)キリッ

親友:そこかよ!? 唐突かつ、今更だなオイ(ビシッ

ザビ男:ああ、紅茶に関しては出番がないにしても、キャス狐の出番がないとか普通ないだろっていう話になったんだがどうするんだろうな。これ

親友:その前に冬木でキャス狐呼んだ方が大問題だと思う。一応キャス狐日本の神様だぞ。マジで呼ばれた場合のステータスが(( ;゚Д゚))ブルブル

ザビ男:まあ、それはそうだけど。とりあえず、俺は嫁王一筋なんで(`・ω・´)キリッ

親友:そりゃそうだろうな。てか、新キャラか何か作るのか? 俺たち一応「Sクラス」のあいつみたいに月聖杯と関わりないのに? ( ゚Д゚)?

ザビ男:どうするんだろうな。まあ、その辺は中の人(さくしゃ)に丸投げするか

親友:まずここで話題に出す時点で間違ってる気がしなくはないんだが?

ザビ男:よくあるこったぁ。気にすんな(`・ω・)b ビシッ!

親友:スペシャルな方のポケモンか!?Σ (゚Д゚;) ネタとしてわかる人間がいるかどうかも不明だぞ、それ

 

ザビ男:話題、もう一つ変更 閑話休題アンケート結果発表!

親友:今回は活動報告の方になったのに投票してくれる人が居てくれてありがとうな

ザビ男:えっと、今回の内容は『次の色の組み合わせの内どれを選ぶ?』だ。相変わらずながらどんな内容か不明なアンケートだよな(´・ω・)?

親友:えっと零票は青×白、一票が赤×白、同率三票が青×黒と青×赤……どうすんだこれ

ザビ男:一応、青×黒ベースの予定とのこと、青×赤は全体的に物凄い暴走してるもんだからもしかしたら没行きかも

親友:個人的には没ってくれるとありがたい

ザビ男:まあ、没らないんだろうけど

親友:うげ Σ(゚д゚|||)

ザビ男:ぶっちゃけどう絡ませる予定なのかがよくわからなくなる

親友:まあ、普通に青×黒独走だと思ってプロット書いていたもんな

ザビ男:どうするかは中の人(さくしゃ)次第ってことで

親友:ま、俺には関係のない話か

 

ザビ男:そんなわけで今回の道場はここにて終了!

親友:本編あんなになってるけど一応緩いギャグ小説なのでシリアルにしかならないってことを忘れんなよ

 

??:あれ、ここどこ?

??:え、なんで?

 

ザビ男・親友:?!

 





そんなわけで、青×黒と青×赤の二つに決定しました。青×黒の独走で終わるかなって思ったけどそんなことも無かった。

キャス狐さんは今更かなとは思ったけど話題に全然出てきていなかったことに気付いたのでこんなことになりました。

スペシャルな方のポケモン結構好きなんですよね。

新キャラの予感?


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閑話休題
第一問


※一部に獣化ネタがあります。苦手な方はご注意ください


 

[約束されし悪運EX]

 

 

「ただいまー」

 

ある日の事、すこしばかり用事があって出かけていた明乃が教会に戻れば誰も居なかった。驚いた明乃が周囲を見渡すが本当に誰も居ない。

 

「あれ? 誰もいないし」

 

ふらふらと教会の中を移動しながら誰かいないものかと探す。ちなみにだが、言峰家の家長である祖父の璃正は海外に出かけており不在だ。

 

「珍しいなぁ」

 

そんなことを呟きながら中を探すが本当に誰も居ない。少し心細くなってきた明乃が誰かいないものかと名前を呼びながら歩き出した。

 

「……親父ー? カレン姉さーん? アサシンさん? ギルさまー? ランサーさーん?」

 

わんと足下で声がした。驚いた明乃が下を見れば何故か足下に犬が居た。青い毛並みに赤い目、ところどころに金色のピアスのような装飾がついている。

 

「え? 犬……?」

 

明乃が犬と言ったことに反応して犬がガルガルと声を立てる。犬と呼ばれるのが嫌ならしい。それを感じ取った明乃が普通に謝る。

 

「ちょ、ごめんって でも君、普通に犬だよね?」

 

わしわしと犬の頭を撫でつつ周囲を見渡す。本当に今日は何故誰も居ないのだろうか?

 

「なんで誰もいないんだ?」

 

首を傾げている明乃の耳に何やら間の抜けたアナウンスが聞こえてきた。

 

 

『えー、毎度おなじみ聖杯戦争、聖杯戦争でございます。敗れた夢、忘れていた野望などがございましたらお気軽に―――』

 

 

「……一体なんなのさ」

 

聖杯戦争は停戦しているはずだし、それよりなにより一般人にその存在を漏らすわけがない。なのに、このアナウンスは普通に誰にでも聞こえるようだ。声の主を確かめるために明乃は近くの窓から外を確認してみる。すると外はあたまのわるいの結界に支配されていた。驚いた明乃がもっとよく見てみればなんか町中が虎模様だった。

 

「は、なんで虎模様? てかなんなのあの結界?!」

 

しばらく驚きっぱなしだったがちょっとだけ考えて冷静に戻る。

 

「そういうことですか」

 

今なんで家族が不在かわかった気がした。主に親父と居候の二人

 

「……だぁぁぁ、仕事増やすなぁぁぁぁ!!」

 

多分何かしらの騒動をやらかしているだろう。周囲の被害を考えて明乃は出かけることにした。

 

「あー、もうしょうがないなぁ。探しに行くか」

 

明乃が仕事着であるカソックに着替えて玄関へ向かおうとすると、犬が一緒について来た。明乃はそれに気が付いてしゃがみこんで尋ねる。

 

「あ、わんちゃん一緒についてくるの? てか、君も君でどこから来たんだか」

 

大体、教会に動物(しかもわりと大型犬)入り込む余地なんてあったっけ? と明乃は首を傾げつつ出発した。

 

 

                       ☆

  

[月の裏から狂気爛漫]

 

 

その頃、冬木郊外の温泉にて。何故か白いドレス姿の金髪緑眼の少女と黒いゴスロリ服に狐耳と尻尾をつけた少女が温泉から顔を出す。

 

「ぷはぁ、あれ? ご主人様ー? 一緒にくっついていたのに一体どちらへ?!」

「ふはぁ。うむ、ここは何処だ?」

「ってあれ? 赤セイバーさん」

「む、キャス狐ではないか」

 

不思議そうにきょろきょろと見渡して、お互いを見つけた二人は顔を見合わせる。そこへ何かが落下するような音と誰かが叫ぶ声がした。

 

「うわぁぁぁぁ」

 

どぉぉぉぉんと水柱が立つ。いや、湯柱か そこにぷかりと浮かんできたのは赤い皮ジャケットに黒い皮のズボン姿の青年だった。

 

「ちょ、アーチャーさん、なに空から落ちてきたんですか?!」

「おお、テンプレートというやつだな」

 

二人はまあ、一応心配しているようで彼の傍に近づいた。そして彼の様子を見て気がつく。

 

「てか、アーチャーさん完璧気絶してますね」

「まあ、あの高さから落ちれば当然かもしれぬな」

 

それからしばらくしてアーチャーが目を覚ました。目が覚めたら温泉の脇だったことに驚きつつも二人になぜ落下してきたのかと尋ねられて普通に答える。

 

「いや、いきなりムーンセル(裏)が『ちょっと呼ばれてるから行って来い』と言われ、次元レベルで穴を開けられ足下から落ちたんだ」

「うわぁ、それはそれは災難でしたねぇ。して、貴方のマスターはいずこに?」

「マスター……か」

 

アーチャーの顔にいきなり影が出来たかのようになった。いきなり変わった様子にキャス狐が驚く。

 

「え、ちょ 何大切な何かをなくしたみたいな顔するんですか?!」

「いや、少々トラブルがあってね」

 

苦笑するアーチャー、その裏に何かあるなと感じ取ったキャス狐だったが特に気にすることでもないかと考えてスルーした。

 

                       ☆

 

[ウィーアー「ノット」ヒーローズ]

 

 

「おーい、お待たせ」

 

明久が駅前のところに来ていた。今日は平日なのだが、停学になった男子生徒があまりにも多いので授業がしばらく中止になったのだ。まあ、課題は出されているわけだが。それで出来た休日を利用して広夢が冬木観光に行きたいと言い出したのだ。それを明久が案内を買って出て今、この状況なのだ。

 

「よー、へぇ私服ってそんななのか」

「広夢もちょっと意外だね。もっと動きやすさ重視するかと」

 

明久も広夢も私服だ。明久はパーカーにズボンというラフなスタイルで斜めがけの黒カバンを掛けている。靴は動きやすそうなスニーカーだ。広夢は襟首の広い深い青の薄手の服、インナーにはモノクロのストライプのタンクトップだ。丈の短い水色のスカートの中に黒のレギンスを穿いている。靴は底が浅めのブーツだ。

 

「ん? これなぁ……ウミの彼女がプロデュースだ。ツッコミ入れて、どうにかこの感じにしたけど最初とんでもないくらいにヒラヒラだったんだぞ」

 

勘弁してくれと広夢は本気で嫌そうな顔で呟いた。

 

「へ? そうなんだ。別にたまにはいいんじゃない?」

「断る。てか、お前なんでボロボロなんだ?」

 

女の子なんだしおしゃれしたら? と明久が告げれば、広夢は即答する。それから明久の服の汚れ具合や髪の乱れ具合がおかしいことに気がつき質問する。

 

「もう、なんでさ」

「なんでさ、じゃないだろ。てかどうした?」

 

なんでさの一言でわかるとしたらそれはよっぽどのツーカーだ。もしくは置かれた状況が一緒の人間だろう。

 

「でかい方の弟に言いました。赤飯炊かれそうになりました。小さい方の弟に言いました。赤飯炊かれそうになりました。それでどっちも慌てて止めました。小さい方の弟に広夢の事、根掘り葉掘り聞かれました。ちょろっとばかし喧嘩になりました」

「どうしてそうなった」

 

それしか言うことがなかった。特に小さい方てか本来の義弟。

広夢の呟きを聞いた明久が叫ぶ。

 

「もう知るかぁぁぁぁ!! もう、なんでさ」

 

明久の発狂振りを見た広夢が一言。

 

「……観光案内じゃなくって気晴らしに行くことにするか?」

「あ、そこはちゃんとプラン練ってあるから大丈夫」

 

明久が取り出したメモ帳にはかなりメモ書きがされていた。

 

「おお、真面目だな」

「まあね。そのせいでデートだのなんだの言われたわけですが」

 

もうなんでさと明久はまた言った。明久の発言がようやく理解できた広夢が驚く。

 

「デ?! は?」

「弟二人にそう言われたわけだけどまずないわー」

 

うわぁと思いながら広夢は軽い気分で頼んだけどまずったかと反省する。どうにか同意の意思を示そうと口を開いて出た言葉は一言だけだった。

 

「……だな」

 





そんなわけでタイコロ×トラぶる時空でお送りします。話はじめに入っているのはチーム名です。

アンケートの詳細発表

・赤×白=[約束されし勝利の幸運A]
     アーチャー&明久√ 聖杯温泉へ家族旅行へ向かう衛宮一家の話

・青×白=[正義の味方の相棒ズ]
     広夢&明久√ 冬木観光に出かける明久と広夢の話、本当にそれだけ

・青×黒=[約束されし悪運EX]
     ランサー&明乃√ 不在の家族を探すために明乃が出かける話with犬化ランサー

・青×赤=[ウィーアーノットヒーローズ]&[月の裏から狂気爛漫]
     広夢&紅茶√ 冬木観光に出かけた広夢と明久が紅茶(月の裏ver)に出くわす話


でした。別に紅茶が嫌いなわけじゃないんだ。でもさ、月の裏での彼の暴走っぷりを見てネタキャラにしてもいいかなって思ったんだ。


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第二問

[約束されし悪運EX]

 

冬木の町を歩く明乃と謎の大型犬は挙動不審にきょろきょろとする幼馴染を発見した。明乃は普通に声をかける。

 

「あ、凛じゃん。やほー……ってどうしたのそのメガネ?」

 

振り向いた凛は獲物を見つけた見つけた肉食動物のような顔をした。目がキランと光ったようなないような?

 

「明乃、ちょうどいい所に居たわね。鴨が葱しょって歩いてきたって感じかしら」

「は?」

 

明乃が口をポカンとあける。それもそうだろう、いきなり鴨葱呼ばわりされたのだし。

 

「いいからとっととあたしに負けなさいーい!!」

「一体なんなのさー?!」

 

 

ガント用の宝石を宝石を構える凛に対して明乃は黒鍵を構えた。

――数分後

 

 

「勝った!」

「ま、負けたっ……このあたしが?!」

 

見るからに凛はショックを受けていた。大体かなり上級の魔術師とはいえ、肉弾戦に置いてもどきといえど代行者に勝てるとか考える方が難しいのではないだろうか?

 

「いや、なんで暴走してるのさ」

「……このメガネが外れないのよ」

 

思わず明乃が固まった。普段はそれなりにまともな幼馴染の暴挙の原因がそんなしょうもないことであることに驚きが隠せなかったのだ。

 

「そんなしょうもないことで暴れないでよ?!」

 

普段、君が気にしてる秘匿とか秘匿とか秘匿とかその辺のことも少しは考えろっ! 明乃が言えば凛が不機嫌そうに返す。

 

「そんなこと言ったってぇぇぇ、はっ、あそこに見えるのは桜、覚悟ぉぉぉぉ」

 

そのまま凛は走り去っていった。それをぽかーんと眺めた後、あわてて凛の去ったほうを向けばかなり髪の長い桜と似たような風貌の少女に凛が襲い掛かっていた。

 

「凛?! ……どうなってるのさ。それにしてもあの桜ちゃん、妙に髪が長い気が」

 

よく見てみればセーラー服姿だ。桜の通っている学校はブラウスにセーターだからセーラー服姿なわけがない。それにその桜の隣には彼女によく似た、ただしまとっている雰囲気が違う少女がいる。

 

「……人違いじゃね?」

 

その後、凛はさくっと彼女たちに撃退された。正確に言うと雰囲気の違う方の彼女が撃退したわけだが

 

「あ、うんそうだね。凛のうっかりなんていつものことだもんね」

 

明乃があきれて溜息をつけば、大型犬がわんわんと鳴いた。それで明乃が正気に戻る。そして今起こったことを反芻してから呟いた。

 

「……どうなってんさ、今日の冬木は」

 

                       ☆

 

[ウィーアー「ノット」ヒーローズ]

 

とりあえずと商店街にやってきた明久たち、そこにある肉屋でコロッケを買っていた。

 

「お、旨いなこれ」

 

広夢がコロッケをかじって呟く。それを耳ざとく聞きつけた明久が嬉しそうに言う。

 

「でしょー。ここのコロッケおいしいんだよね」

 

コロッケを食べながら歩いていく二人の目の前でいきなり喧嘩が始まった。二人はそのわきを通り過ぎる。

 

「喧嘩かぁ、めずらしいなぁ。冬木って治安いいのに」

「そうなのか?」

 

明久が言った言葉に広夢は首を傾げた。治安がいいというのは?

 

「うん、熱心な警察の人や消防の人っているみたいで犯罪発生件数は少なめだよ」

「あー、そういえば冬木は犯罪の事前発見件数が多いんだっけ。ウィザード(おれたち)の間でも有名だぞ」

 

その手の情報には困らないからなぁ俺たちと広夢が言った。初めて聞く話題に明久は目を丸くする。

 

「それは知らなかったよ。他になんか食べたいもの……ってあれ?」

 

また別の場所で喧嘩が発生した。どうやら金髪のツインテールの少女とライトブラウンのやや野暮ったい髪の少年の二人が喧嘩をしている。二人はそれを通り過ぎてからそろって首を傾げた。

 

「なんか今日妙だよな」

「あー、なんかね? よくわからないけど暴走している人多いねー」

 

犯罪とか発生してないからいいのかなと明久は考えながらコロッケをかじった。広夢も同意してから言った。

 

「ま、幼児連続誘拐とか、ホテル倒壊とか、謎の海魔発生とかないし安全か」

「……じーさんがごめん」

 

明久が急に謝った。かなり感情のこもった謝り方だ。

 

「どうした?」

「謝んないといけない気がしたから」

「??」

 

広夢は訳が分からずに首を傾げた。ちなみにこの時空では全部発生してないのであしからず。大体それをやらかしている大半は衛宮切嗣ではないぞ明久、メインは何処かの狂芸術家だ。

二人が歩いていると銀髪のロシア美人がやってきた。黒いコートに白いインナーで黒のズボンをはいている。かなりラフな格好だが、それが彼女の美しさを強調していた。明久に気が付くと嬉しそうに破顔する。

 

「お、明久じゃないか」

「あ、ナタリアさん!」

 

明久の養父、衛宮切嗣の師匠であるナタリア・カミンスキーだ。普通の時空では衛宮切嗣にジェット機を破壊されて死亡しているはずだが、この時空ではなぜか生き残っていた。四次聖杯戦争が終了した後ふらりとやって来て、切嗣を殴った。それからたびたび冬木にくるようになったのだ。

 

「元気にしてたか……ってお前が女連れとは珍しいな。こいつは?」

「クラスメイトの日暮広夢だよ」

 

話題を振られた広夢がカチコチになりながら返事をする。

 

「ど、ども……日暮広夢です」

「そうか、明久が世話になってるな」

 

ナタリアは広夢の頭を撫でた。それからしばらくの間、世間話をしているとナタリアが時計を見て、あ、と言った。

 

「そろそろ行かないと」

「何か用事があるの?」

「坊やのところにな。じゃあな」

 

ナタリアは颯爽と去って行った。その姿を見て広夢がぼそりと言った。

 

「……もう頭洗うのやめる」

「?!」

 

何があったのさ?! 明久は内心ツッコミを入れた。

 

                     ☆

 

アーチャーとキャス狐、セイバー三人は冬木の街を歩いていく。普通なら目立つ三人なのだがなぜか目立っていなかった。

 

「それにしてもアーチャーさんこの町よく御存じなんですね」

「まあ、それなりにだな」

 

キャス狐とアーチャーがそれなりに喋りながら道を進んでいく。セイバーは誰かを探すようにキョロキョロとしていた。三人ともが不注意だったのかなんなのか。

 

「わっ」

「わわっ」

 

誰かとぶつかった。茶色の髪をツインテールにした普通の少女とボリュームのありそうなウェービーな髪をポニーテールにまとめた気の強そうな少女の二人だ。服装は学生服だが、冬木にある学校の制服ではない。

 

「大丈夫か?」

「あわわ、だ、大丈夫です」

 

アーチャーが手を差し伸べる。ツインテールの少女がその手を取って立ち上がった。

 

「大丈夫だ。心配しないでほしい、それからありがとう。じゃあ行くぞ、さつき」

 

ポニーテールの少女が簡潔に礼を述べてツインテールの少女の手を引く。

 

「え、ちょ カナちゃん待ってよ! あの、ありがとうございました」

 

ツインテールの少女がどうにか礼を言って立ち去った。

 

「一体なんだったんだ」

 

アーチャーが首を傾げた。

 

「さぁ? それにしても先ほどの方、ご主人様に勝るとも劣らぬイケメン魂でしたね!」

 

キャス狐は目を輝かせた。

 

「余の奏者は一体何処にいるのだ!!」

 

赤セイバーは憤慨した。

 





今日の冬木は妙にキナ臭い。ちなみに連続幼児誘拐とかホテル云々はZeroネタさらに言うなら話の展開的には花札ネタです。だからと言って別にプロと勢とか、Zeroメンバーは出ませんけどね。なんかナタリアさんは出てきたけど。明乃ルートの眼鏡云々はコロシアムネタです。自分は正義の味方(大)√が意外と好きです。

出るわ出るわ個性的なモブの嵐、多分本編のどこかに登場する……はず。


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第三問

 

[約束されし悪運EX]

 

明乃と青い大型犬は冬木の町を歩く。明乃は妙に喧騒が聞こえることに首を傾げていた。

 

「それにしても今日の冬木は妙だなぁ。無駄に戦闘意欲のある人間が多いし、なんかメガネの鬼とか居るし」

 

あれはまさしく鬼だった。まあ、ラスボス系少女には勝てなかったようだが。明乃の背後にゆらりと誰かの人影が出てきた。足下の犬は少しだけ唸った。

 

「メガネですか!!」

 

その声にびくっとして振り向けば淡い紫の髪に同じ色の髪の長身の女性……桜のサーヴァント、ライダーが居た。どうやら戦闘服ではなく私服のようだ。それにしてもスタイルいいなぁとか考えながら明乃が返する。

 

「うわっ……ってライダーさんか、どうしたの?」

「それよりもメガネです! メガネ!」

 

鬼気迫る顔で迫ってくるライダーにたじろぎながら明乃は返す。

 

「びっくりした、なんか凛がメガネが外れないとかでそこら中の人叩きのめしてるんだよ」

「そうですか……遠坂凛が……」

 

ふふふ、まるで悪役のような笑い方をしながらぶつぶつとライダーがなにやら呟いている。その様子に目を丸くしているとライダーを追ってきたらしい緑色を基調とした服装の青年がやってきた。凛のサーヴァント、アサシンだ。彼も私服姿らしく普段の戦闘服とは違いマントの代わりに緑色の上着を着ている。

 

「はぁ、いい加減にしてほしいんだけどねぇ。お嬢がなにやって用が俺には関係ないでしょうに」

「あれ、緑のほうのアサシンさんも居たんだ」

 

明乃は少し驚いた。あまり接点のないと明乃が思っていた二人だったからだ。

 

「まあな。よくわからねーが、ライダーのメガネが盗まれたんだと」

「へぇ、そうなんだ。ところでだけどウチのメンツ誰か見てない? 家に帰ったら誰もいなくてさー」

 

犬が何かを訴えるように吠えるが、その意味を理解できる人間がここに居るわけも無くスルーされた。

 

「そうかい。だが、すまんが俺は何も知らないな」

「ちぇー、ランサーさんにはパスすら繋がらないしどうしたものかなぁ……」

 

パスは何やら混線しているようで、呼びかけてみても応えてくれないのだ。

 

「遠坂凛は一体どちらに行きましたか?」

「あー、凛なら桜ちゃん似の女の子を襲撃しにあっちへ行きましたよ?」

 

そういえばあの子たち何者だったのかな? ドッペルゲンガーとか? などと内心首を傾げながらライダーに伝えれば。

 

「なっ、桜が!? こうしてはいられません。急がねば!!」

「あ、ちょ、ライダー?! ああ、悪い。嬢ちゃんまたな!」

 

ライダーはかなりの速度で駆けて行ってしまった。アサシンが慌てて追いかける。そんな二人の様子を見て明乃はくすりと笑ってから呟いた。

 

「………なんだかんだで緑のアサシンさんは面倒見がいいと思うなぁ。ねー、わんちゃん」

 

犬に問いかければ同意するように犬も頷いた。そうだよねーとか笑っていた明乃にさらに別の声がかかる。

 

「あ、あの! 明乃さん」

 

振り向けばそこには学生服姿の桜が居た。髪の長さも普段見慣れている長さだ。こっちがぼくの知っている方の桜ちゃんだなと思いながら明乃は不思議に思ったことを聞いた。

 

「あれ、桜ちゃん? ってどうしたのそのメガネ……てか今日平日じゃん」

「ちょっと前に、姉さんがいきなり襲ってきて……あ、今日は半日なんです」

 

そういえばそうだ。自分たちは特別に課題付の授業休止だが、凛や桜、士郎の通う学校が同じようになっているわけがない。なのに何でここに居るんだ? その答えは桜からすぐに返ってきた。

 

「ところでなんですが姉さんはどちらに?」

「んー、あっちだよ。それとそのメガネ、ライダーさんのらしいよ」

「ありがとうございました」

 

桜は足早に去って行った。その様子を見送ってから明乃は家族を探すために魔力の濃そうなところを探し始めた。

 

                     ☆

 

[ウィーアー「ノット」ヒーローズ]

 

冬木の商店街を抜け、観光というか土地案内みたいな感じになってきた二人は先ほどからちょくちょく見かける喧嘩に首を傾げていた。

 

「うーん、今日は妙に戦闘意欲の多い人いるなぁ」

「だな。なんでこんな状況になってるんだ?」

 

そこに間の抜けたアナウンスが聞こえてきた。

 

『えー、こちら、毎度おなじみ聖杯戦争、聖杯戦争でございます。敗れた夢、忘れていた野望などございましたらお気軽に―――――』

 

まさかの内容に明久が愕然とする。

 

「なんでさ」

「ここまで堂々と公言していいのか? 秘匿とかあるだろうに」

 

ウィザード(おれら)にはそういったものないけど、メイガス(おまえら)にはあっただろ? と日暮が聞いた。

 

「うん、一応秘匿ってあるはずなんだけど。てかこのアナウンス聞いていると竿竹屋思い出すんだけど」

「あー、確かにバイクの廃品回収車みたいな感じだな」

 

それ以前の問題で聖杯がそんなひょいひょい見つかった方がおかしいのだが。

 

「とりあえず気になるから探しに行こうかな」

「面白そうだし俺も着いてくわ」

「そう、いいの? 観光じゃなくなるけど」

 

今日の約束は観光案内なのだ。ここから先は明久の判断で動く騒動探しなのだ。それは約束には含まれていない。

 

「ま、大丈夫だろ」

「それならいいけど」

 

                     ☆

 

[月の裏から狂気爛漫]

 

三人は冬木を行く。アーチャーが観光案内のガイドのように細かく説明しながらのんきに町を歩いていた。

 

「それにしてもなんていうか、なーんか嫌な雰囲気ありますね。この町」

「バカなことを言わないでくれ、連続幼児誘拐とかホテル倒壊とか謎の海魔事件とか大災害とかないいい街じゃないか」

「なんか無駄に具体的ですね。アーチャーさん」

「む、あそこにいるのは………」

 

三人の目の前をベリーショートの黒髪の少女とハニーブラウンの髪の緩い雰囲気の少年が通り過ぎようとしていた。アーチャーが一人の方を見て叫ぶ。

 

「マスター?!」

 

黒髪の少女がギギギと擬音が付きそうな感じにこちらの方を向いた。顔は青ざめている。

 

「……あ、アッチャー?」

「なんか違うよそれ! アーチャーじゃないの?!」

 

緩い雰囲気の少年が合っているようで妙に頓珍漢なツッコミを入れた。親しげな様子にアーチャーの表情が見る見る間に消えて行く。

 

「貴様は誰だ。()()マスターと何故一緒に居る」

 

声はまるで絶対零度のようだ。その様子に気が付いた黒髪の少女が少年を横抱きにして走り出した。

 

「逃げるぞ明久」

「え、ちょ うわっ?!」

 

住宅街を駆け抜ける早さはかなりのものだ。

 

「待てぃ!!」

 

アーチャーも負けじと追いかける。もうそれは敏捷Aくらい行きそうな勢いで。そして二人が残された。

 

「……あー、行っちゃいましたね」

「行ってしまったな」

 

ぽつんと二人は道の真ん中に取り残されている。キャス狐は首を傾げながら言った。

 

「これ、追いかけるべきなんですかね?」

「ふむ、追わねばあるまいな。アーチャー以外にこの町を知っておるものが居ないぞ?」

「はぁ、追いかけましょうか。てかアーチャーさん何時の間に拗らせてたんでしょうかねぇ」

 

自称「呪殺系ヤンデレ」巫女狐は三人の中で一番まともなはずのアーチャーの変貌にため息をついた。

 





悪運EXよりも幸運A++の方が妙な目に遭ってる件

紅茶さんは広夢の中ではアッチャーさんでキャラ確立しているみたいです。CCC紅茶でプレイなう。とりあえず「ハローッワーーーーークッ!!」に吹いた。キャス狐の方がよっぽど常識人になってきたようなないような……あるぇ??



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第四問

 

[ウィーアー「ノット」ヒーローズ]VS[月の裏から狂気爛漫]

 

ものすごい速さで駆けて行った日暮はある程度距離をとれたと感じたところでようやく明久を下した。

 

「はぁはぁはぁ、あいつもう来ないよな」

「驚いたのはこっちなんだけど急にどうしたの?」

 

アーチャー云々のくだりは聞こえてはいたが、それがいったい何なのかを理解するよりも先に日暮に抱えられた挙句に全力疾走された明久は訳が分かっていなかった。

 

「……どこかで見覚えのある裸ジャケットがいた」

 

それは言い方としてあんまりではないだろうか?

 

「………裸ジャケットの時点でツッコミを入れるべきじゃない?」

 

普通に考えればそこがまずおかしい、明久のツッコミはもっともだ。

 

「なんであいつがいるんだよ。しかも一番トラウマ時期の!! 俺が会いたいのはあいつじゃなくってバカな幼馴染だった頃のあいつじゃぁぁぁぁぁ!!」

「とりあえず根本的にサーヴァントが14以上存在することへのツッコミを入れるべきかな。魔術師(メイガス)的に、友達としては会いたかったんかいとかツッコミを入れるべきかな?」

 

全力で言い切った日暮に明久が少し呆れたような顔をして言う。すると日暮は明久のほうを向いてまくし立てた。

 

「てか当然だろ! ここ最近ウミは構ってくれねーし、お前とは学校以外接点ないし……寂しかったんだよ」

「そうか、だったら私の元に戻るがいいマスター」

 

いつの間にか後ろにいた裸ジャケットの青年が日暮を抱きしめる。あ、確かにこれはウチの弟のなれの果てそっくりだと明久は納得した。抱きつかれた日暮は奇声を上げる。

 

「うわぁぁぁぁぁっ!」

「へぐはっ」

 

繰り出したアッパーカットは見事に彼の顎に命中、アーチャーは痛みで少しだけ力を緩めた。そこに容赦なく日暮が蹴りを叩き込む。

 

「……広夢、サーヴァント殴り飛ばせるだけの実力があるなら世の中どこでもやっていけるよ」

 

明久のつぶやきは誰にも聞こえなかった。そこにさらに誰かがやってきた。白の拘束具と花嫁衣装を合わせた謎の服装の少女と黒と黄色を基調としたゴスロリ服の少女だ。

 

「ようやく追いつきましたよ! ってなんですかこの状況?」

「おお、アーチャーが見事に吹き飛ばされているな」

「どうしろってんのさ、この状況」

 

もう、あいつら二人が飽きるまでほっておくしかないかな? 明久のつぶやきに初対面の彼女たちも同意した。

そして、しばらくしてギャーギャー騒いでいた二人だったが日暮が明久を盾にして後ろから言った。

 

「はぁはぁはぁ、あははははは、来るな来るなマジで来るなよ!!」

「あのさ、僕にしがみついて言っても威厳とかいろいろとロストしている気が」

 

元サーヴァント相手にいいの?と聞くけどそんなこと気にしている場合じゃない。

 

「威厳もへったくれもあるかぁぁぁぁ。マジで勘弁してくれよぉ」

 

この時期のこいつは俺苦手なんだよ。と日暮が明久に縋り付く。その様子を見ていたアーチャーが青筋立てて明久に詰め寄る。

 

「……小僧、私のマスターを返してもらおうか」

「……もう、どこまで拗らせてんのさ。この人……友人の精神面的安全のためお断りします」

 

明久は殺気にも怯えずきっぱり言い切った。アーチャーの青筋がさらにぴきっとなる。

 

「ほう? ならば」

 

夫婦剣を投影するアーチャー、それを見た明久が呆れた顔をした。

 

「丸腰相手に何やるつもりなのさ。まったく……」

 

明久が防衛系の礼装を取り出そうとしたその時だった。

 

「待った」

 

誰かの声がかかる。そこにいたのは茶色の髪に黒の学ランを着た何処にでも居そうな少年だった。

 

「あれ?」

「へ?」

「奏者?!」

「ウミ?!」

 

その場にいた全員が驚いた。それは元赤セイバーのマスターにして現一般ウィザードとなった日向海人だ。いったいなんでこんなところにいるのか? 全員の驚愕した顔をしり目に日向は右手を掲げた。何故かそこにはみかんが握られている。

 

「みかん一個使用して固有結界発動!『無限の道場』!!」

 

みかんがまぶしく光る。目を開けるとそこには………

 

「そんなわけで『ザビエル道場』!!」

「え、ええええええ?!」

 

道場が広がっていた。見覚えのある道場だ。特にアーチャーは冷や汗を垂らしていた。

全員の服装が剣道の服装に変わっている。

 

「そんなわけで視覚、聴覚、感覚ともにハッキング完了。まあ、ラニのプレイルームだと思ってくれ」

「親友ぅぅぅぅ!!」

 

日暮が日向に飛びついた。そんな彼女を抱きしめ返してから日向は言った。ちなみに彼のサーヴァントであった記憶のあるセイバーはその様子にすこしギリィとしている。

 

「間に合ってよかった。俺達の知っている時空のサーヴァントたちが偶然にも時空間の歪みでこっちに来たって知った時には驚いた。それにヒロのアーチャーに関してはいろいろとあったし」

「えっと、つまり?」

 

完璧に状況を飲み込めない明久が日向に聞く。

 

「ま、この空間においての戦闘行為は不可この場では」

 

珍しくキリッとした日向が何やら花の絵が描かれた箱を手に宣言した。

 

「花札勝負をしてもらう」

「……なんでさ」

 

明久のツッコミはもっともである。

 

                       ☆

 

[約束されし悪運EX]

 

その少し前、明乃がふらふらと魔力の濃いところを探して回っていた。そんな明乃に誰かが声をかける。

 

「あら、明乃じゃな……」

 

知っている声だと何も考えずに振り向けば。

 

「あ、キャスターさん……ってどう「あなたは何も見なかったいいわね!!」

「は、はいっ!」

 

そこには歳不相応の学生服に身を包んだキャスターの姿があった。キャスターの剣幕に明乃は思わず返事をする。そしてキャスターはそのまま去って行った。ちなみに犬は何かを言うようにワンと鳴いたがそれは誰にも理解されることはなかった。

 

「……あれは一体なんだったのかな、キャスターさんが制服って……普通に外見変える魔術でも使えばいいのに」

 

神代の魔術師なのだ。それくらいに秘術くらい使えるんじゃないのかなと明乃は考えた。それから犬に同意を求めるように首をかしげる。

 

「ねー?」

 

犬も同意するようにわんと鳴いた。

 

「それにしても一体どうしたものか」

 

とりあえずへっぽこはへっぽこなりに頑張ろうと明乃はまた街をふらふら歩きはじめた。

 

「とりあえず魔力の濃そうなところに来てみたんだけど………」

 

そこにはなんか私服姿の弟とクラスメイト二人と見覚えは一応ある面々が居る。ただし何かがおかしいのだ。とりあえず明乃は目の前の光景に絶句した。一緒にいる犬も同じのようだ。結構驚いている。

 

「何があったのさ」

 

明乃の呟きに答える人間はここにはいない。とりあえずちょっと落ち着いてから小さな声でツッコミを入れていく。

 

「何でアーチャーさんが変質者のような恰好を? それにセイバーさんも居る……けどカラーリングがおかしい気がするし、それにあの黒いゴス狐は誰だ?」

 

ツッコミどころが多すぎる組み合わせだ。あんな格好するなんてアーチャーもセイバーもどうしたのだろう? と明乃は内心首をかしげた。

しばらくしているといきなりカッと目の前が光った。

 

「うわっ」

「消えた?」

 

明乃は首をかしげる。そこには明久と日暮と日向の三人しかいなかった。そのまま彼らは明乃たちに気が付くこともなく去って行った。

声をかけようとした明乃はあー、とちょっと残念そうにしてから、そこを離れて公園へ向かいベンチに座る。

 

「今日は一日妙だよなー。家には誰も居ないし、ランサーさんにはパス繋がらないし」

 

そこが一番気になるのだ。試しにランサーを呼んでみる。

 

「ランサーさーん……来るわけないよねー」

 

明乃の呼びかけになぜか犬が反応した。その頭を撫でながら明乃はすこし寂しそうな顔をした。

 

「はいはい、別にわんちゃんのこと言ってるわけじゃないよ? ……はぁ、半人前にはこれが限度ってことかなぁ」

 

魔術師としての自分なんて他の面々には遠く及ばないことなんて知っている。それでも自分を助けてくれたランサーに対しては誠意を尽くしたいのだ。

 

「いつもながらに自分がマスターでよかったのかが分からないよ」

 

ふらっと見てみればそこに何やら出店のようなワゴンが来ていた。立ててある看板を見てあー、そういえばお腹減ったなぁと思いだす。

 

「ホットドックの出店……お腹減ったなぁ」

 

財布の中身を確認した明乃はそのワゴンの方へ向かった。

 

「すいませーん。チリとケチャップとマスタード抜いたの一つ」

 

店員は少し無茶な注文に驚いたものの、普通に対応してくれた。出来上がったものを持ってベンチへと戻る。そこには犬が大人しく待ってた。

 

「ふむ、美味い。わんちゃんも食べる?」

 

パンとソーセージだけのものを犬の近くに寄せれば犬はぷいっとそっぽを向いた。

 

「あ、嫌だった? ホットドック、しょうがないなぁ。はい」

 

パンの間からソーセージを抜いて中身を抜いた包装紙の上に載せて、犬の前に差し出す。

 

「ソーセージ、食べれる?」

 

すると犬は普通にソーセージを食べだした。

 

「まあ、パン食べるのって犬的にまずいのか」

 

明乃が犬と呟いた途端にガルガルと犬は声を立てた。

 

「おっと、犬って言っちゃだめだった?」

 

ごめんねーとか言いながら明乃は犬の頭を撫でた。犬はそれに満足そうに目を細める。

 

「はいはい、それにしてもどこに行ったんだか」

 

みんな何処に行ったんだろうなぁ。明乃のつぶやきが空へと消えた。

 





ランサーって本当にホットドックでもダメなんでしょうかね?

そんなわけで紅茶は絶賛残念街道突っ走ってるぜ。てか何でこういうキャラになったんだろうorz
『ザビエル道場』まさかの本編進出となりました。元々はネタでしかなかったんだけどなぁ



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第五問

 

ここは冬木のとある寂れた神社、普段は人間なんて絶対に居ない。そんなところに明乃と犬は来ていた。明乃は盛大にため息をついてから言う。

 

「とりあえず、本日無駄に冬木がおかしいってことは納得したよ」

 

前に居る人影を睨みつけてさらに続けた。

 

「……で? なにやってるんですか。親父もギル様も」

 

そう、目の前には明乃の養父言峰綺礼と教会によく泊まりに来るほぼ居候状態の遠坂時臣のサーヴァントギルガメッシュがそこに居た。二人の周りには色々と変な武器が落ちている。

 

「ほう、最後の相手はわが娘ということか」

「実にいいではないか。この娘は実に気骨があるからな」

 

二人は楽しそうに笑った。その様子に少し嫌な感じを覚えながら明乃は聞いた。

 

「本当に何やってんですか」

 

本当にこんなところで何をやっているのだろう。明乃は不思議で仕方がなかった。

 

「いや、聖杯に『ランサーに死ぬまでホットドックを食べ続けろ』という願いをかなえてもらおうと考えてね」

「なにしょうもないことに聖杯使おうとしてんですか?! てか、ランサーさんはぼくのサーヴァント!! ぼくの許可なしにそういうこと止めてもらえますか?!」

 

聖杯になんか変な願いを願うと知って明乃は激怒した。犬も同じように吠える。その対象が自分のサーヴァントであるランサーならばなおさらだ。明乃の言い分が終わると言峰は真顔で言った。

 

「なに、親子とは争うものだろう?」

「言ってること訳わかんねーし。そんな壮絶な親子関係お断りです!!」

 

多分それって「姉妹は殺し合うもの」じゃね?

 

「まあ、言い分は戦いが終わってから聞くとしよう」

「……はぁ、結局こうなる羽目になるんだ。ランサーさんマジでどこだよ」

 

せめてランサーが居れば戦力としてこっちの方が優位かもしれないのにと明乃は愚痴をこぼす。それを耳ざとく聞いたギルガメッシュが口を開いた。

 

「ん? 駄犬であればs」

 

ギルガメッシュの言葉を遮るように言峰が言い出す。多分、わざとだ。

 

「では、始めるとしようか」

「勝算なくてもやらなくちゃいけないときはあるってことで……親父、覚悟!」

 

黒鍵を構えた両者の戦いが切って落とされた。

 

「中々にできるようになってきたな」

「どーも、流石に十年やってたら板につきますよ」

 

地味に口論にもならないような会話をしながら戦いは続いていく。しかし、言峰の方が一枚上手であり、経験も深かった。

 

「とは言え、まだ未熟か」

「はっ、器用貧乏に言われたくありませんね!」

 

隙を突かれて明乃は黒鍵で服と地面を縫いつけられてしまった。明乃がしまったという感じの顔をする。

 

「っ」

 

言峰はにやけそうな口を押さえながら言った。

 

「ふむ、それなりに善戦するようにはなったがここまでだな」

「……」

 

黒鍵が振り下ろされそうになった時、別の黒鍵が飛んできた。

 

「ちょおおおおっと待った!!」

「「?!」」

 

二人が驚いて声のした方を見れば、茶色のウェービーな髪をポニーテールに纏めた学生服姿の少女が黒鍵を片手にびしっと言峰に指を向ける。

 

「女に手挙げるなんざ笑止千万! 見過ごせるか!」

 

思わずその場に居た全員がぽかんとなる。

 

「え、だれ?」

「……」

「む、よく見れば雑種(マスター)ではないか」

 

その言葉でギルガメッシュの存在に気が付いたらしく、少女が驚いた顔をする。

 

「……へ、ギルガメッシュ?」

「はぁ、はぁ、カナちゃん置いていくなんてひど、ってえ?!」

 

何やら茶髪のツインテールの少女がやってきたのだが、その少女を抱えて少女が逃げ出す。

 

「っ、何であいつがここに居るんだよ?!」

「え、ちょ ええええ?!」

 

二人が去った後をギルガメッシュは面白そうに眺めてから言った。

 

「ほう、我から逃げるというのか、つくづく傲慢な雑種(マスター)だな」

 

そのままギルガメッシュは二人を追いかけに行った。あまりの光景に明乃と言峰は固まっていたが、先に明乃の方が正気に戻った。

 

「………!」

「っ」

 

服と地面を縫いとめていた黒鍵を抜き取り、明乃は言峰に不意打ちを仕掛けた。上手くいき、今度は明乃が言峰の首筋に黒鍵を添える。

 

「不意打ちかもしれないけど……勝った?」

「まあ、そういうことにしておこうか」

「…………っ」

 

やった、親父に勝てた。と喜びたいところだが本人の居る手前自重した明乃だった。

 

                    ☆

 

そのしばらく前、ザビエル道場にて

 

「花札勝負ねぇ……僕は割と好きだけど他の人は大丈夫?」

「俺はあんまり縁がないけどまあいいぜ。それにしても何で花札勝負なんだ?」

「……才能だけに頼れなくて運も重要になってくる勝負だから。頭良ければ勝てる勝負じゃつまらないじゃないか」

 

日向が意味深なことを言えば日暮は納得したように頷いた。明久はいきなりどうした?と首を傾げている。

 

「なーる。そちらさんは? 事情については花札しながら説明するか」

「別に構いませんよ。なんかわけありみたいですし」

 

キャス狐は普通に頷いた。

 

「奏者ぁ」

 

全然構ってくれない己のマスターに赤セイバーは涙目になった。

 

「はぁ、そういうことなら受けて立とう」

 

少し機嫌は悪そうだがアーチャーも同意した。

花札をしながら現在の状況を説明していく。三回ほどの勝負(内一回こいこい)が終わって大体の説明が終わった。

 

「というわけ、ここに居る俺たちはこの世界の住民 二人が知っている俺たちよりも少しだけ生きた人間なんだ」

「ふーん、時空間の歪みって奴ですか。私はご主人様と一緒に最下層を攻略している際に巻き込まれたので確定済みですがお二人は?」

 

赤セイバーがちょっと考えるようなしぐさをしてから言った。

 

「余たちのところは……アーチャーが広夢を誘拐した直後だな」

 

赤セイバーの発言を聞いた日暮の顔色が悪くなる。

 

「……うげ、よりにもよってそこかよ。絶賛トラウマじゃねーかよ」

「広夢、大丈夫? 顔色凄いけど」

「マスターに触るな」

 

明久が日暮を心配すればアーチャーがキレた。少し顔色が戻った日暮が言いだした。

 

「……まあな。そういや、アーチャーが結構な時間戻らなくてどうにか逃げ出したんだよな……あ」

「あ」

「つまり今この時間にその時のヒロは逃げてると」

 

つまりこの展開も含まれての俺たちの時空なんだなと日向は納得した。

それから、日暮がアーチャーの方を向いて聞いた。

 

「ああ、多分な。てかさ、アーチャー 何で俺の事閉じ込めようと思ったんだよ」

「……」

 

アーチャーは目をそらして口を開かない。日暮が少し不機嫌そうに言った。

 

「黙秘は禁止、俺はお前相手に過ぎたことは過ぎたこととか言えるほど精神面強くねーよ。重ねて言う、何で俺の事閉じ込めようとした。いや、一時的にとはいえBBと取引してまで俺を裏側に閉じ込めようとした?」

「っ バレていたのか」

 

BBとの取引までばれていたとはとアーチャーは言う。日暮は呆れたように返した。

 

「当然、あんな芸当お前ができるなんざさらさら思ってねーよ。お前の得意は投影魔術と家事だけだろ?」

「なぜそこで家事が出てくるのかを問いただしたいのだが?」

 

日暮が少し小馬鹿にするような笑みを浮かべて言う。

 

「は? 何ではこっちの台詞だよ。仮にも三回戦まで一緒に居たんだぞ。つーか、英霊になっても変わってねーんだな。バカ宮」

「その名前で呼ぶなよ。ヒロ……って、は?」

 

条件反射的に答えてみてからふとアーチャーが気が付く。日暮は軽く手を挙げて笑った。その目は何故かオッドアイに変わっている。

 

「よー、バカ馴染み」

「ええええ?!」

 

にゃぱっと笑った日暮にアーチャーは素で驚いた。その様子を見てた二人がひそひそと話し出した。

 

「もしかして、あのアーチャー何も知らないで閉じ込めようとしてたとか?」

「うん、そう。この後で判明する話だから、むしろアーチャーがいきなり言い出した」

「全部が全部繋がってるんだね。平行世界って本当にあるんだ」

 

明久も妙に納得したらしい。そんな外野の事なんて露知らず、日暮はアーチャーに尋ねた。

 

「はぁ、俺としては幼馴染としてもマスターとしても失望したぜ。拉致って軟禁とかないわー」

「っ それは!」

 

アーチャーが一瞬反論するように畳を叩いて中腰になるが冷静さが戻ったらしくすぐに姿勢を元に戻した。

 

「それは? 結局本当のところは全然聞き出せなかった訳だし、今教えてくれよ」

「……マスター…お前は三回戦で負けたんだ。お前が表側に戻ったら……」

 

アーチャーが言いよどんだ。日暮はそれに呆れながら言った。

 

「死ぬ、だろ? はぁ、バカらし。俺は別にかまわなかったんだよ。もう願うこともなにもなかった。お前が普通に英霊やってるの見て、それだけで十分だったんだよ。それに、一応俺のバックアップは地上にあったから別にあの俺が『死んだ』としても普通に地上じゃ生きてたぜ?」

「……広夢、ちょっと口挟ませてもらうけどそういうことじゃないと思うんだけど」

 

明久が花札をしながら口を挟んだ。

 

「は?」

 

日暮は驚く。明久はさらに続けた。

 

「はぁ、あのさ『目の前』の広夢に死んでほしくなかったんだと思うんだけど。地上とかそんなことは関係ない。目の前に居る自覚は無くたって自分の大切な人に居なくなってほしくない。そういうことじゃないの? 少なくとも、僕がアーチャーの立場に居たとしたらそう考えるけど?」

 

明久が言えば、日向も続けた。

 

「それは俺も思った。どこかにバックアップがあるからって目の前で誰かが死ぬっていうのは見過ごせない。もしもそうだったとしても俺も手を伸ばそうとする」

 

明久と日向とアーチャー、三人の視線を受けた日暮が顔を赤くして叫んだ。

 

「っ お前ら全員お人好し過ぎだよ! はぁ、何で俺の周りにはお人好しが多いんだ?!」

「広夢も十分お人好しだと思う。死んでるの知ってたのに何で表に戻るのに尽力したんだ?」

 

日向が聞いた。表に戻ったら死ぬというのになぜ表に戻ろうとしたのだろうか?

 

「……俺さ、閉じ込められるのとか大っ嫌いだって話はしたよな」

「うん、それは聞いた」

「それだけで十分な理由になるぜ?」

 

普通はならない。明久がちょっと考えるしぐさをしてから言った。

 

「広夢ってあれだよね。『情けは人のためならず』を素で実践している人っていうか、目的のためなら手段は問わないタイプ?」

 

いや、そういうわけじゃないぜ? と日暮はそれを否定した。日暮がちょっと考えてから話す。

 

「そういや昔『正義の味方が9を救って1を殺すっていうなら、俺はその1を救うために9を利用してやる』とか言った。まあ、そういうこと……だからさ、1(じぶん)の心を救うために9(みんな)の脱出作戦に今俺は乗ってるんだ。死者の戯れってことでわかってくれよ……シロウ」

 

急に話題を振られたアーチャーは焦る。

 

「……っ、わかったよ……ヒロム」

 

よかったよ。と日暮は笑った。そうこうしている内に花札勝負が終わったらしい明久が嬉しそうに万歳しながら言った。

 

「よし、こっちの勝ちだね!」

「あ、花札すっかり忘れてた。悪い」

「だと思った」

「ここまで引きがいい人間に初めて会いましたよ」

「よもやここまでとはな」

 

「花札勝負も終わったことだし戻すよ」

 

視界が少しずつノイズまみれになる中、日暮が言った。視線はおぼろげになりつつあるアーチャーの方を向いている。

 

「……そうだ。全然言ってなかったな」

「は?」

 

アーチャーはポカンとした。日暮はそんなこと構わずに言った。

 

「『お前に逢えてよかった。お前がサーヴァントでよかった。お前がお前らしくあってくれてうれしかった。俺はお前の事が……』後は向こうの俺に聞いてこい、いいか?」

「はぁ、わかったよ。じゃあな」

「おう」

 

視界は完ぺきにノイズに消えた。

 

「あー、疲れた」

「あ、居ないし」

「お疲れ様、時空の歪みなくなったみたいだからもう、大丈夫」

 

                    ☆

 

言峰に勝利した後、明乃は謎のころしあむに居た。

 

「え、ここどこ?」

 

明乃は周りを見渡す。

 

「はーい、お疲れ様!」

 

そこに道着姿の藤村大河がやってきた。

 

「え、藤村さん?! てか、何やってるの?」

「はい、聖杯だよ」

 

虎の模様が入った魔法瓶が差し出された。

 

「いや、なんで?!」

 

色んな意味でツッコミを入れたくなるのも道理だろう。

 

「えー、なんか願い事してよ。ね? ね?」

「えー、じゃあ『ランサーさん見つかりますように!』」

 

ずっと見つからないし。と明乃は軽い気持ちでそう願った。

 

「うわっ」

 

虎の魔法瓶が光ったかと思うと。

 

「……あれ?」

「お、戻った」

 

元に場所に居た。ランサーも一緒だ。

 

「あ、ランサーさん 凄い、あの虎の魔法瓶効いたんだ」

「お、おう?」

 

何かずれたことに喜ぶ明乃を見て困惑するランサーだった。






終わったぁぁぁぁ。今回完璧雰囲気小説ですみませんorz

ランサー獣化の謎解けなくてすみませんでした。


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※ザビエル道場

??:はぁ、なんでだよ。色んな意味で

???:まあまあ、そんなわけでお約束!

 

『ザビエル道場』!!

 

ザビ男:どうも、ついに便利キャラに成り下がった気がしなくはないザビ男だ

親友:どうにか頑張って平静繕ってたが内心SAN値がりごり削られてる感半端ない親友だ

ザビ男:今回は謝罪から『ああいったネタになって申し訳ないです』とのこと

親友:まあプロットできたときはああいう状況になってなかったのにああいう状況になったのはなぁ

ザビ男:ぶっちゃけ親友と紅茶の√は勘定に入れてなかったせいでこんな状況なんだけどね

親友:へいへい、とりあえず過ぎたことはしょうがねーから話題変更!

ザビ男:もう出てきていいよ

 

??:ども、閑話休題にちょろっとだけ登場したザビ子だ

??:えっと、実は閑話休題に容姿だけ登場してたエースだよ?

ザビ男:そのネーミングどうなのかと中の人(さくしゃ)に聞きたい

親友:まあ、ベースになった人物考えればそれでいいだろ

ザビ子:そういうわけでだ。私のサーヴァントは表ではバーサーカーから裏でギルガメッシュとなっている。ベースは言わずもがなザビ子だ……中身的にザビ男なんだが

エース:あ、そうだよね。僕のほうはサーヴァントは表でも裏でもキャス狐だよ。ベースは新聞部のエース君、まあ色々と容姿改変されてたり捏造甚だしいけどね

ザビ子:とりあえず男勝りの口調で黒鍵ぶん投げて暴れまわるところとか親友とかぶってる気がするんだが……

親友:気にすんな。俺よりは女子っぽいだろお前

ザビ子:いや、むしろ逆のポジショニングが欲しかったといべきか、むしろそこまで天元突破した男口調でありたかったというべきか

親友:いや、俺レベルだと多分読者に性別認定されないぞ

ザビ子:……むしろそれがよかった(ずーん

エース:ま、まあそんなわけだしもしかしたら本編の方に絡むかもしれないからよろしくね

 

エース:そういえばだけど、親友さんの容姿ってどう見ても男っぽいよね?

ザビ男:それはフォローできない。というよりは一発で性別見分けた長男が凄い

親友:あー、それな 月で使ってたアバターの姿がこれなんだよ。ぶっちゃけこれにリソース持ってかれてる感半端なかったし。本来の姿はオレンジに近い髪に片目を隠してるいわゆる緑茶みたいな髪型で目はオッドアイ、いかにも中二な恰好だったからなアレ。それから西欧財閥の封印指定から逃げるっていうのもあったし

ザビ男:そのためにアバターカスタムしておいたら転生した際にその容姿になったと

親友:そうだぜ

ザビ子:私も転生に関しては一言文句言いたい。何で中身の性別考慮されなかった(ダンッ

エース:ザビ子にいたってはアレだもんね。中身は実は男性だったという

ザビ男:え、そうだったのか?

親友:俺たちの居た時空と二人が居た時空は違うから話がよくわかんねーんだけど

ザビ子:私はいわゆる憑依って形なんだ。まあ、簡単に言えば発生したバグ本体だと思ってくれればいい

エース:それでも優勝するんだからすごいよね

 

親友:っとまあ、こんな感じで本日はお開きにするか

ザビ男:特に話す話題もあまりなかったからいいか

ザビ子:んじゃ、私たちは帰るか

エース:そうだね。あ、そうだ。僕らの住んでいる町の名前は三咲町だよ。ザビ男君に忠告、吸血鬼さんザビ男君の事探してた。気を付けた方がいいよー

ザビ男:?!

親友:三咲って……あ、そういうことか

 





急ごしらえながらキャス狐のマスター登場です。それよりもBSK&ギルのマスターの方がキャラが濃くなった件

まだ吸血鬼騒動起こってない……かも? アルク居る時点でちょっとおかしいけど、それ言ったら冬木の聖杯戦争もちょっとおかしいのでまあいいか


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システムエラー編
第一問


 

停学も休学も開けた頃、突然学園長に呼び出されたと思ったらいきなり色々と言われた。主にシステム系の話について。まあ、観察処分者だから呼び出されたんだろうけど。

 

「それにしてもシステムの新機能の試運転ねぇ」

「停学の時に調節してたらしいから多分大丈夫だろうけど何にもないといいなぁ」

 

僕と姉さんは廊下を歩く。話題はさっき言われたシステムの試運転のための試召戦争に関する注意事項だった。明日多分公表されるんだろうけどその前に言っておきたかったのかな。

二人で歩いてると反対側から黒髪に黒学ラン、茶髪に黒学ランの二人組がやってきた。

 

「よ、どうしたんだ?」

「二人とも複雑そうな顔してる」

 

広夢と日向君だ。制服が前の学校のままだから目立つんだよね。

 

「あ、広夢、日向君」

「やほー、試召システムの新機能が出来たらしくて今試運転中だとさ」

 

姉さんがそういうと二人は目を輝かせた。あ、そういえば二人はここのシステムに興味津々だもんね。魔術師(ウィザード)だって知ってからは結構納得できた。ここのシステムって科学を使った魔術の再現みたいなものだもんなぁ。

 

「え、新機能?」

「それ本当?」

 

物凄く食いつきがいい。日向君ですら食いついてるのは驚きだよ。

 

「まあね。だからしばらく試召戦争は禁止だって」

「ふぅん、そうなのか」

「新機能か……気になるな」

 

広夢がそう呟いた。頼むからハッキングだけはダメだよ。

 

「ま、お披露目はちょっと先になるよ。先生の召喚獣やこういう時用の召喚獣で試験してる真っ最中だから」

「そうなのか」

「そういうための召喚獣(NPC)ってあるんだな。衛宮や言峰を実験に使ってるからそういうものなのかと」

 

痛いとこついてくるなぁ。確かに僕や姉さんは報酬の代わりに実験に付き合ってるしね。

 

「あー、僕たちの召喚獣が色々あって超特殊化しちゃったからね。そうじゃなきゃ学園長の事だし生徒で実験してたよ」

「多分そうだよね。あの人ぼくらを嬉々として色々とお蔵入りになった召喚獣の新システムの実験台にしてたし」

 

色々と思い出すと涙が浮かぶ気がしたうわぁ。

 

「それは学園の長としてどうなんだ?」

「まあ、あの女傑っぷりを見れば頷けるけどな」

 

うん、あの人研究者に向いてるよ。確実に教員には向いてないけど。自分も割とそういうタイプだけど、あの人は徹底しているからなぁ。

 

「ま、システムがどうにかなるまでは普通に学校生活楽しもうよ」

「それもそうだよねー。ここ最近まともな学生生活送ってる気がしないし」

 

第一次試召戦争然り、清涼祭然り、前回の集団覗き然り……最後だけ物凄く不名誉な気がするのは気のせいかな?

 

「俺も同感だ」

「だな。ま、たまには学生稼業にいそしむのも悪くは無いか」

 

一応学生稼業が本分じゃないのって突っ込んだら負けかな。僕も最近その辺の区分が怪しくなってきたし。

 

                    ☆

 

教室に戻って席に着いたら、赤い長い髪をオールバックにして黒のカチューシャを付けたスタイルのいい美人、悠里さんがこっちにやってきた。どうしたんだろう?

 

「あ、明久」

「あれ? 悠里さんどうしたの、そっちから声かけてくるって珍しい気がするけど」

 

清涼祭の時はコンビ組んでたから普通に話してたけど普段だったら姉さんが間に居るとか僕が話しかけるとかだから悠里さんから話しかけてくるのは珍しい。

 

「あなたあのチケット使った?」

「あー、あれね。別に興味ないからなぁ。てか、如月グランドパークは遠すぎでしょ。いっそのことわくわくざぶーんのチケットがよかったよ」

 

最近暑いし泳ぐ方がよっぽどいい気がするんだよね。それに如月グランドパークは冬木の物凄くはずれにあるから移動も面倒だし。

 

「やっぱあんたもなのね。あたしも誘う相手が居なくて」

「霧島さんといったら? もしくは姉さん」

 

悠里さんが誘いそうな相手を上げてみるけど、悠里さんは首を横に振った。

 

「そういうわけにいかないのよ。チケットの裏見た?」

 

裏? 言われたことが気になって偶然持ってたチケットを確認してみたらとんでもないことが書いてあった。

 

「裏? うーん……え、男女ペア?」

「そういうわけ、別にこういうことに誘うほど仲のいい男は居ないしね。どうしたものかと思って」

 

どうしろってんだ。この手の物に誘えるほど仲のいい女の子は知り合いには居ないぞ。あ、姉さんとかはありかな?

 

「……これは面倒だね。僕も居ないなぁ」

 

いや、こういう時に姉さん頼みにするのはよくないよね。そう思って呟いてみたら悠里さんが思いっきり驚いた顔をした。なんで?

 

「日暮が居るじゃない」

「は? なんでさ」

 

そういう仲じゃないんだけど。

 

「あら、仲良さそうだけど?」

「うーん、なんかこの手のもの好きそうじゃない感じが……」

 

なんて話をしていると自分の話題になったことに気が付いていたのかいないのか広夢がやってきた。

 

「よー、どうした? 学園祭以来の組み合わせじゃねーか」

「あ、広夢 副賞のチケット使って一緒に遊園地行こうって言ったら乗る?」

 

如月ハイランドのチケットを見せながら彼女に聞いてみれば。

 

「……わくわくざぶーんなら行く。あそこは行ってみたいんだよな」

「だよねー。如月グランドパークとか行くわけがない」

 

予想通りの答えが返ってきた。広夢と僕って思考回路、意外と似てるところがある気がするんだよね。如月グランドパークの名前を言うと広夢は渋い顔をした。

 

「如月グランドパークって言うとあれか『そこに行ったカップルが幸せになれる』とかいうジンクスを無理やり作ろうとしているっていうキナ臭い遊園地だろ」

 

へ? なにそれ。てか初めて聞いたよ?!

 

「え、なにそれ」

「へ? 割と有名だぜ、とは言えネットの噂だからな。どうだろうな」

「ネットか……でもそんな噂があるところには行けないわね。どうしようかしら」

 

悠里さんが本気で悩みだした。そうだよね。そんなキナ臭い所にホイホイ行く人っていないと思うんだけど。三人で頭突き合わせて考えていたら日向君がやってきた。

 

「どうした?」

「あ、良い手見つけた。ウミ、如月グランドパークのチケット要らないか?」

 

如月グランドパークの名前を出した途端に日向君の顔が疑うような顔になる。そこまで有名なんだ。

 

「如月? なんで」

「ほら、優勝賞品のアレ」

「あー……流石に無理、それよりも金券ショップで換金したら?」

 

それが出来たら苦労はしないよ。

 

「無理、プレミアムチケットだから売買禁止になってるんだよね」

「うわぁ積んでる」

 

うん、積んでるからここで話しあいしてるんだけど。

 

「いっそのこと期限切れまで待ったらどうだ?」

「いや、なんか貰ったら使っておこう精神が疼くっていうか」

「つまりもったいないと」

 

そういうことだよ。貰えるものは貰っとけ、使えるものは使え、これって大切だと思うけどなぁ。四人で話をしてたら姉さんがやってきた。

 

「どうしたのー?」

「あ、姉さん 優勝賞品のチケットどうしようかと思って」

 

優勝賞品のチケットと聞いて姉さんも思案顔になる。そこまで有名なの?!

 

「ん? チケット……如月グランドパークだっけ? そういえばギル様が行きたいとか言ってたなぁ。一枚余ってる?」

「まあ、一応」

 

聞かれた悠里さんがびっくりした顔になる。だよね、さっきの二人は渋ってたのに。

 

「じゃあ頂戴、てか二人が相談してるってことはどっちも?」

「「うん/ええ」」

 

そうなんだなよね。お互いに誘う相手が居ないからこの状況なわけだし。

 

「ならどっちも頂戴、適当に知り合いに押し付けるから」

「あ、本当? そうしてもらえると助かるわ」

「姉さんごめんね」

「いいっていいって」

 

チケット問題はどうにか片が付いた。

 





ぐだぐだ学園生活に……なるといいよね。
清水さんについては脅す材料がなくなった上に追加しようとすると消えるというホラー現象にあっているため今回は参入無しです。

それから量子ハッカーの無限の可能性を謳ってみる。
何の話かはさておきまして、ネット空間ひいては召喚フィールド内なら何でもできるんじゃね? とか思ってみたり


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第二問


※今回正体不明のオリキャラが跋扈しております。てか、主役の出番が消失中です。


 

次の日の朝の事、福原先生がHRで連絡を入れた。もちろん、召喚システムの改良についてだ。思った以上に深いところまでやるみたいだ。僕らは新システムの試験運転だけって聞いたのに。もしかして、新システムやったら状況悪化したとか?

 

「というわけですから、試召戦争および召喚獣の召喚は不可能ですので納得してください」

「先生、それっていつくらいまでですか?」

 

誰かが手を挙げて聞いた。うん、それ大切だよね。こっちとしてはいつ攻めてこられるかが問題だし。福原先生がちょっと考えてから言う。

 

「まあ、今学期が終わるくらいでしょうか」

「……そうですか」

 

福原先生は周りを見渡してから、ちょっとほっとしたような表情をした。まあ、福原先生ってシステム方面詳しくないししょうがないよね。

 

「他に意見のある人は……いないようですね。では、これでHRを終了します」

 

                    ☆

 

放課後、どこかの空き教室にて。またもやノートを突き合わせて謎の集団の会合が持たれていた。

 

「どうすんだ? 原作通りじゃないぞ」

 

一人がそう呟く、ノートの中身はどうやらこれからの動向が書かれているらしい。すると別の誰かが言った。

 

「いや、たぶんアニメのほうじゃないのか?」

「それにしたっておかしいだろ。まさかとは思うが4巻の内容飛ばされるとか?」

 

誰かが不安そうに呟いた。それを冷静な声が止める。

 

「かもな。まあでもあの暴力まな板女はここじゃ男だし普通にいいんじゃないか? 別にバカとの仲も悪くないし」

「まあ、それもそうだな」

 

とめどめのない内容のようで重要なやり取りは続く、それをつまらなさそうに見つめる少女が一人、夢路だ。

 

「(あいつら好き勝手言ってるわねぇ……私がヒロインじゃないなんて、なんでなのよぉ。最近あのメンバーから外されるようになってきたしぃ……)」

 

不満そうな顔をする夢路、それからしばらく考えて、そしてある結論に至った。

 

「(そうよねぇ。あの男女が全部の元凶よ。あいつさえいなければぁ………)」

 

彼女の口元がにやっとなる。こういう時は人間誰でもロクでもないことを考えているときだ。

 

「ふふっ、いいこと思いついたわぁ」

 

そのつぶやきは生憎だが誰にも聞こえていなかった。

 

                    ☆

 

とあるマンションの一室、そこにはキーボードのようなデバイスとそれに付随されるように何窓も表示された画面のようなものが四台置かれていた。赤の縁取りに黒のキーの物と赤の縁取りに白のキーの物の前に少年と少女が座っていた。少年はライトブラウンの少々野暮ったい髪に灰色の目、どこにでも居そうな少年だ。少女の方は緩くウェーブのかかった茶色の髪に翡翠を思わせる色の目、クラスで三番目くらいのかわいさの少女だ。

 

「全く、最近はわけのわかんねーハッキングの依頼が増えたな」

「……シズ君、さすがにこの依頼は止めたほうがいいよ。お給金は弾んでるけど文月学園ってあの月海原の魔術師(ウィザード)がいるって噂だし」

 

少年と少女は手元のデバイスをいじりながら話をする。彼らは犯罪以外のハッキングや情報収集を行うプロの情報屋だ。二人の他に数人いるのだが以下割愛。

 

「そりゃまずいな。んじゃこの依頼はなしでいくか」

「シズ、ハル、どうかな? 調子は」

 

その部屋にもう一人少年が入ってきた。狐を思わせるこげ茶の髪に琥珀を思わせる目の色をしている。

 

「あ、いなり君! なんか文月学園へのハッキング依頼が来てたよ」

「文月学園って……あの冬木市にある?」

 

入ってきたこげ茶の髪の少年が首を傾げる。どうやらその筋の人間には有名らしい。

 

「うん、お給金はずんでるけど流石になんか怪しいからこっちで依頼破棄しちゃった」

「というより犯罪は一応厳禁だからね?」

「はーい」

 

少女は笑って返事をした。どうやら天真爛漫な性格のようだ。元からいたライトブラウンの髪の少年が気になることがあるらしく尋ねた。

 

「そういえばカナの奴は?」

「あー……元サーヴァントに見つかって大変みたいだよ」

 

苦笑しながらも答えたこげ茶の髪の少年の言葉に二人は作業の手を止めて顔を見合わせる。

 

「え? サーヴァント」

旧魔術師(メイガス)側で呼び出されたのか?」

「そうみたいだね。冬木はメイガス側の聖杯があることでも有名だから」

「でも記憶があるっておかしい気がするんだけど」

 

月の聖杯と地上の聖杯は何ら関係がない。それなのに記憶があるとか何でだ? どうにか作業を再開させたライトブラウンの髪の少年がさらに首を傾げる。

 

「そうだね、でも居たものは居たんだからしょうがないよ。おかげでちょっと拉致られかかった」

「まじか」

 

元からいたライトブラウンの髪の少年が本気で驚く。少女の方もかなり驚いていた。

 

「うん、聞いたときはあわてたよ」

「そっかー、バーサーカーさん? それともギルガメッシュさん?」

 

少女が尋ねる。何故その選択肢が出たのかは本人たちのみぞ知る。

 

「ギルの方だよ。じゃなきゃ逃げないって」

「うわぁ、あの人類最古の暴君か」

 

やっぱりそうなるよねとようやく椅子に腰かけたこげ茶の髪の少年が苦笑いをする。彼の前には青の縁取りがされて、黒のキーのキーボード型のデバイスが置かれていた。

 

「しばらく冬木には近寄りたくないって」

「だよね。わたしも月の裏の話はログで知ってるけどあれは……」

「俺もお断りしたい。つくづく相棒がアイツでよかったよ」

 

ライトブラウンの髪の少年が作業をしながらほっと溜息をついた。さてそろそろ作業始めようかなとしていたこげ茶の髪の少年がふと思い出したように言う。

 

「そういえばだけど彼のオリジナル見たよ」

「まじか、どんな感じだ?」

 

作業の手は止めていないがライトブラウンの髪の少年が興味津々に聞いてきた。

 

「うーん、見た目は結構違ってたかな。割と素直な感じだったし」

「……想像がつかないんだが、慇懃無礼じゃないアイツとかアイツじゃないぞ」

 

ぜってーにちげーだろとライトブラウンの髪の少年が信じられないものを見たかのような表情をした。ようやく作業を始めたこげ茶の髪の少年が目線はデバイスから表示されたウィンドウを見つめたままさらに言った。

 

「それから英霊の方のオリジナルも見たよ」

「へ?」

 

作業をしていたライトブラウンの髪の少年の手が止まる。

 

「たぶん彼が言ってた『霊長の守護者』となった方の彼だと思う。なんかスーパーでタイムセールに参加してたよ」

「たっ、あははははははっ」

 

ライトブラウンの髪の少年がいきなり笑い出した。いきなりの事に今まで黙々と作業をしていた少女が驚く。

 

「だ、大丈夫?」

「腹痛てー、アイツがタイムセールって、タイムセールっ、似合いすぎだろ。ははははは」

「笑いすぎじゃないかな」

「しばらく笑わせておけばいいと思うよ」

 

こげ茶の髪の少年と少女は笑いだしたライトブラウンの髪の少年を放って作業を再開した。笑い声が収まるのは三分後、何事かと飛び込んできたもう一人の少女がやってきてからだった。





ようやく更新しました。今の今まで更新しなくてすみませんでした。

新章突入中です! え? 四巻?? 色々フラグがへし折れました、すみません。

閑話休題恒例アンケート!! ってわけでいつもの通りアンケートやります。ただし、規約違反になる可能性があるので活動報告でのみのアンケートです。その辺がご了承ください。万が一、感想の方に投票されても集計しません。そんなわけで今回のアンケート。


『ちょっとばかりお茶飲んで休憩といきたいと思います。
 じゃあ、何のお茶を飲みますか?

・魔法瓶使って、紅茶
・水入れ使って、水出し麦茶
・鍋を使って、煮出し麦茶
・急須を使って、緑茶

                           』

以上の四つからお答えください。気分で選んでいただいて結構です。

アンケート関係なしに、個人的には煮出し麦茶は一度でもいいからやってみたいロマンだったり。いつもは水出しなんですけどね(オイ


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第三問

 

とある量子ハッカーが文月学園のサーバーに無断接続(アクセス)していた。学園のサーバー室に忍び込んだ後、デバイスを繋いで接続する。量子で構成された自分をサーバーの中に滑り込ませながら彼は呟いた。

 

「はぁー、かったりー何でこんなことしないといけねーんだか」

 

しばらく疑似的に空間として表示されるようになったサーバーの海を進むと目的の空間に到着したようだ。自分の目の前にウィンドウを開きファイヤーウォールを次々と突破していく。

 

「結構ちょろいな。天下の文月って言ってもこんな程度か。まあ俺たち量子ハッカーに比べたらこの時代の技術なんてちょろいか」

 

そんなことを呟きながら彼は最期のファイヤーウォールに到達した。それを確認してから、にやっと笑って、またハックをスタートさせる。

 

「よし、ラスト」

 

急に開かれていたウィンドウが全て赤く染まり、ERRORが表示された。彼はぽかんとしてから慌てて体勢を立て直そうとするが何もできない。

 

「……は?」

 

これでも彼も名の知れたハッカーだ。かなりのランクだし、それこそ聖杯戦争に参加できるほどの実力は持っている。しかし、そんな彼をしてもそのエラーは解除できなかった。

 

「ちょ、なんでだよ。SE.RA.PU(セラフ)並みに固い?!」

 

慌てている彼に無機質なシステムボイスが告げる。

 

『領域内への不正アクセスを確認しました。これより排除を開始します』

 

いきなり領域内は全て彼に向けて敵意を向けた。彼は驚いた。当然だろう、楽勝だと思っていたシステムに急に牙を向けられたのだから。

 

「どうなってんだ?!」

 

そこで彼は強制退出(ログアウト)に踏み切った。気が付けば彼はサーバーの前で息を荒くしていた。随分と無茶な退出だったようだ。

 

「……はぁ、どうにかログアウトできたけどなんだったんだあの化け物レベルは」

 

そう呟きながら彼は去って行った。途中で通路に放置されていたコードに躓きながら。

 

                    ☆

 

今日も今日とて平凡な日のはずだった。今この時間までは、文月学園中にいきなりけたたましいアラームが鳴り響く。

 

「ちょ、なんなんだい。いきなり?!」

 

学園長室……ではなく研究室に居た学園長がいきなりの事に驚いた。

 

「警戒アラーム?!」

「学園長大変です! 試験召喚システムに異常が」

「フィールドが強制的に張られていきます!」

 

周囲に居た研究者たちも驚きながらも現状を伝えた。

 

「数体の召喚獣が暴走している模様です!!」

「……なんてこったい」

 

監視カメラを見てみれば暴走している召喚獣たちの様子が克明に映し出されていた。学園長は盛大に顔をひきつらせて呟く。

 

「これはまずいことになったさね」

 

                    ☆

 

お昼の後の授業ってつらいよね。うん、そんなわけでのんびりといつものようにお昼ご飯を食べてからのんびりだべっていた。南が思いっきりあくびをする。

 

「ふぁー、ねむ」

「お昼の後って眠くなるよね。ちょうど今みたいな時間帯」

「そうじゃのう」

 

だよねー。ちょっとぼけっとしていると、黒髪ベリーショートの学ラン姿の女の子、広夢がやってきた。

 

「どうした? 三人ともずいぶんと眠そうだな」

「やほ、広夢。食べたすぐ後って眠くなるよねって話」

「まあ確かにな、とはいえ気が緩んでるといざって時に大変な目にあうぞ」

 

広夢は結構真剣な目で言ってくる。何かあったのかな?

 

「それはそうなんだけどね」

「大体もうそろそろ授業始まるぞ?」

 

あ、一番身近に危機が迫ってた?! 南と秀吉と三人で顔を見合わせる。それから壁にかかっている時計を見たらもう1時近くを指していた。

 

「うわ、もうそんな時間?!」

「しまった。教科書ロッカーだ」

「ワシもじゃ」

「いそげよー」

 

広夢の声を背にして廊下にあるロッカーへと僕らは急いだ。

 

                    ☆

 

廊下に出て教科書を取っていると、いきなりアラーム音が聞こえた。え、まさか地震とか? 驚いていると、いきなり召喚フィールドが展開される。

 

「あれ? 召喚フィールド?」

「教師居ないよな」

「そのようじゃの」

 

三人で口々に言い合ってると急に召喚獣が現れた。目が爛々と赤く光ってておかしい。その召喚獣は武器を構えるとこちらに狙いをつけた。あ

 

「! 南、秀吉 伏せて!!」

「?!」

「なんじゃ?!」

 

南と秀吉の体を地面に押さえつけて、召喚獣の攻撃をどうにかかわさせた。召喚獣は壁に激突する。反射的に懐にいつも隠し持ってた小型の銃型魔弾発射装置(自作)で攻撃を加えると召喚獣は姿を消した。や、やっぱり。

 

「ふぅ、現実世界に干渉可能ってどういうことさ?!」

 

思わずそう叫んでいた。どうにか起き上がった二人が僕の方を見て驚く。

 

「アキヒサ?!」

「その手に持っておるのは?」

 

あ、気にするのはそこなんだ。まあ、現代社会っていうか日本ではまず見ないよね。よっぽどのことがないと。

 

「モデルガンだよ。本物を持ってるわけないよ」

 

二人に説明しようと思ったら、他の召喚獣が襲ってきた。それをどうにか、かわして二人を庇いながら僕は叫ぶ。

 

「っ 南、秀吉、ここは僕が食い止めるから教室に戻って! たぶん教室にはフィールド貼られてないはずだから!」

「そうは言っても」

「おぬしを一人にするわけには!」

 

うん、そう言ってくれると嬉しいよ。でもさ

 

「むしろ教室に戻って、僕は人を守りながら戦えるほど器用じゃないんだよ」

 

数体の召喚獣が一気にこちらへとやってきた。あ、まずい。そう思っていたら、召喚獣は飛んできた黒鍵(本物)に貫かれて霧散する。

 

「島田君! 木下君!」

 

姉さんの声だ! 振り向く間もなく後ろで声がした。

 

「へ、アキノってうわっ」

「のわっ」

 

多分、姉さんが二人を教室に引っ張り込んだのだろう。思わず口元がにやっとする。姉さんは流石だよね。

 

「ナイス姉さん!」

「もち、アキも急いで! 悠里の指示でバリケード張るから」

「了解!!」

 

軽く2・3発牽制のために撃った後、僕らは教室へと引っ込んだ。

 

                    ☆

 

教室に戻って一息ついた。うん、まさかこんなことになるとは。姉さんが渡してくれた水の入ったコップを一気飲みしてから尋ねる。

 

「はぁ、みんな無事?」

 

見回した感じはみんな居るみたいだけど。姉さんが返事をする。

 

「うん、教室にまでフィールド張られなくてよかったよ」

「それにしてもなんで急に……」

 

姉さんの隣では悠里さんがぶつぶつと呟きながら考えている。だよね。いきなりこうなるとか、なんでさ。

 

「それにあの召喚獣まずいよ。現実世界への干渉能力持ってるし」

「それってどういうことだ?」

 

広夢が首を傾げた。あー、フィードバックシステムって有名じゃないもんね。

 

「召喚獣って人間の数倍の力を持っているんだよね。こっちに攻撃しかけてくるとしたら怪我は免れないね」

「そんな……」

 

日向君が驚いたような声を出した。いや、別にデメリットだけじゃないんだよ?

 

「逆に言ったら現実世界からの攻撃も効くんだけど、そのレベルの身体能力持ってる人間って少ないからこのままおとなしくしてるのが吉だね」

 

僕の知ってる限り、姉さんと僕、広夢もいけるかな? 悠里さん……はギリギリ?

 

「召喚獣は使えないのか?」

 

いつの間にか参加していた南が聞いた。あ、それはそうだよね。でもなぁ。

 

「どうだろう」

「でも、召喚獣が暴走してるとなると下手に召喚しないほうがいいと思うわ」

「だよねー」

 

姉さんが気軽に言うけどそれって対抗策がないってことじゃないのかな。それを心の中でツッコんでから重大な事実に気が付いた。

 

「これどうしよう。帰りとか」

「……あ」

 

全員が顔を見合わせた。うん、そうなるよね。最悪……サーバーの電源切れまで? でも確かあれって予備電源で一か月が持つはずだし…………。

 

「あー、しばらく様子見しましょう」

「さすがに学園側が何か対策をとると思うのじゃが……」

 

秀吉の意見も正しいけど、あの学園長がすぐに対策を講じないとかないと思うなぁ。そんなことを考えてると広夢が僕の意図を感じてくれたみたいで言ってくれた。

 

「学園側が対策をとれない状況にあるかもだぞ。幸いここは環境も充実してるし閉じこもれるとは思うんだが……」

「特に心配なのはEとFかな」

 

日向君がちょっと不安そうにつぶやいた。あそこの二つは、他のクラスだと何かしらのオプションが付いているけどEとFはそういったものないし。いや、普通の学校は無いのが普通だよね。

 





お久方ぶりです(この小説では) 最近なんかよくネットが断線します。何ででしょうね?

そんなわけで本格始動のシステムエラー編です。ベースはアニメの「召喚獣暴走編」ネット関連に関しては彼らが居るので独壇場……になるといいなぁ。

何時もの通りの閑話休題アンケートやってます。感想欄にてアンケートの受け付けは致しませんのであしからず。

『ちょっとばかりお茶飲んで休憩といきたいと思います。
 じゃあ、何のお茶を飲みますか?

・魔法瓶使って、紅茶    ×2
・水入れ使って、水出し麦茶 ×1
・鍋を使って、煮出し麦茶
・急須を使って、緑茶    ×1

                           』


見事にばらけてる件。まあでも紅茶の独走でしょうか?


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第四問

バリケードから少し離れたところに僕と姉さん、悠里さん、それに南や秀吉などなどいつものメンバーが集まる。ちょっと離れたところで比奈丘さんが読書、広夢と日向君が忙しそうにパソコンを弄っていた。なにやってんだろ。そう考えていると、姉さんと悠里さんの話し声が聞こえてくる。

 

「うわぁ、学校崩壊とかまずいよね。どうする?」

「とはいえ、こんな状況を打開する策とかあたしにはないわよ」

 

多分そうだと思っていたよ。流石の悠里さんでもできることとできないことはあるよね。僕がそんなことを考えていると、姉さんが薄く笑って悠里さんに同意した。

 

「だよねー。物理面なら色々と仕事できるけどシステム面とか無理、そういったのは基本、アキの仕事だし」

 

え、いやちょっと待って?! 無理無理無理無理、絶対に無理だからね?!

 

「姉さん、その苦手な部類を僕にぶん投げる癖だけはどうにかしてよ。料理とかさー」

 

僕がそう言ったら姉さんはぷーと頬を膨らませた。あ、ちょっと機嫌悪い? 姉さんは少し不機嫌そうに言った。

 

「はいはい、ごめんなさいねーだ。それ言ったら基本的に喧嘩とかぼくがやってるじゃないか」

 

あー、そういうこと? こっちにだって言い分はあるんだからね。

 

「インドア系人間舐めるなよ。趣味以外は基本不得手だからね。システム系とか結構苦手なんだけど」

 

僕は基本的にアナログ人間だよ? じーさんの影響で重火器とかカメラには詳しいけど。え? 普通のアナログ人間はそういうことに詳しくない? そこはツッコミを入れないでほしい。前に致命的なアナログ人間である凛に怒られたし。

 

「え、そうなの?」

「ハッキングとかは専門外だから」

 

うん、本当に専門外だからね。専門なのは魔術師(ウィザード)の二人だから。

 

「そうなんだー。アキは何でもできると思ってたよ」

「姉さん?!」

 

人間を万能扱いにしないでよ。万能って言ったらアーチャーみたいな人間を指す気がするんだけど。家事炊事、ガラクタ修理、戦闘から爆弾解体まで何でもござれ。あれ? ガチで万能?

つらつらとそんなことを考えていたらパソコンから顔を上げた広夢がこっちを向いて言ってきた。

 

「ハッキングなら俺達ができるけど……」

「でも……」

 

二人がちょっと渋ったような声で言ってきた。

 

「え、二人ともできるのか?」

「何か渋る理由があるかの?」

 

南と秀吉が驚いた顔をした。そうなるよね。ハッキングできる人間って普通隣にいるなんて思えないし。僕も普通は居ないだろとか勝手に考えていたよ。

 

「あー、ここのシステムってザルとして有名なんだけど」

「なんか嫌な方向に有名だね?!」

 

初耳だよ?! それにハッキングされたなんて話ないし。あ、でもあのアーチャーの外見した召喚獣を呼び出した彼とかハッキングしてたとか?

 

「ただ、最後の防壁だけがあり得ないくらいに固いんだよ。一回ハックしたけど試損ねたし」

「してたの?!」

 

この前日向君に釘刺したばっかりなのに?! 僕がツッコミを入れたら広夢がパンと両手を合わせて苦笑いした。

 

「まあその辺の報告を学校側に入れるの勘弁な。頼む!」

「まあ、いいけど。それで?」

 

緊急事態だし、友達売る気は無いし。僕は広夢に続きを聞いた。すると広夢は真面目な顔に戻った。

 

「多分だけど今回のこれも誰かが防壁側にちょっかいをかけたせいだと思われるんだ」

「つまり防衛システムの一環ってこと?」

「まあそういうこと」

 

僕と広夢、それから相槌だけ打っている日向君が色々と話してると姉さんの声が聞こえた。

 

「わかりづらいなぁ」

「明乃、少しはちゃんと考えなさい」

「同感だ。明乃少し考えれば理解できる内容だぞ」

 

悠里さんと比奈丘さんにツッコミを入れられていた。ところでこの状況どうにかできないのって言ってみると二人の顔がまた渋くなった。あれ?

 

「あー、ちょっと言いにくいんだが一応策はあるにはある」

「え、広夢 本当に?」

 

広夢に聞き返せば日向君が言った。

 

「まあ、だけどちょっと問題があって……」

「どういった?」

 

すると広夢は僕と姉さんに視線を向けた。どうかしたのかな?

 

「主に明久と言峰に迷惑かかるんだが」

「へ? 僕は別にかまわないよ。慣れてるし」

 

いつもの事じゃないか。別に迷惑とか思わないし。そう言ったら広夢が呆れた顔をした。あれ?

 

「作戦聞く前から同意するな。無茶やって怪我でもされたら俺がへこむから!」

「そこは日暮ちゃんなんだ」

 

姉さんが会話に混ざってきた。姉さんのツッコミに広夢が真剣な顔になる。

 

「ああ、当然だろ」

「あー、あんたの気持ちわかるわ。日暮」

「うわぁ、わからんでもないな」

 

悠里さんと比奈丘さんも会話に混ざってきた。二人も僕を見ながらちょっと呆れている。え? なんで??

 

「代表はともかく比奈丘がわかってくれるとはな。そういうわけだ一応説明するから」

「そんなに気にしなくていいよ?」

「するから!」

 

たく、作戦聞く前に了承するなよなーとか言いながら広夢がノートパソコンを弄る。それからプロジェクターの画面を僕らに見せてきた。それから広夢が僕に視線を向けて言う。

 

「明久が持ってるタブがあるだろ。学園長特製のやつ」

「あ、うん。あるよ」

 

鞄の中から取り出せば広夢がそれを受け取ってタブを指さす。

 

「これに登録されている召喚獣は召喚獣の指定サーバーから外されて特別サーバーに移されているんだ」

 

広夢がノーパソのエンターキーを押すとサーバーと書かれた後ろが青い四角に僕や姉さんの召喚獣のようなデフォルメキャラが現れた。凄い、これどうやって作ったんだろう。ノーパソの画面では、それからさらに特別サーバーと書かれた別の四角が現れて、そこに僕や姉さんの召喚獣だけが移動する。なるほど、わかりやすい。

一通りの流れを見てから姉さんが聞いた。

 

「え、それ初めて聞いたけど」

「まあな、ただ単にサーバーが違うってだけ。普通なら」

 

広夢が意味深に言葉を区切れば、姉さんは首を傾げて。

 

「普通なら?」

 

おうむ返しをした。あ、なるほど。

 

「そう、普通なら サーバーが違う、ただそれだけなんだけどな」

「今回は違う、そのおかげで特別サーバーに入ってる召喚獣は無事なんだ」

 

別の作業をしてたらしい日向君も説明に加わった。とりあえず此処までの内容を頭で整理してから広夢に聞いてみる。

 

「つまり僕らの召喚獣は呼び出しても暴走しないってこと?」

「そういうこと」

 

まあ、とりあえず事情は分かった。だけど何で僕らの召喚獣が無事なことが条件なんだ?

 

「でも、それが何か意味あるの?」

「これ見てくれるか?」

 

広夢がノーパソの画面を別の物に切り替えた。ちょっと画像は荒いけど多分召喚獣のサーバー室だ。よく見てみると違和感が一つあった。

 

「えっと?」

「コードが外れてる?」

 

一本だけだけど太いコードが外れていた。広夢に視線を向ければ広夢は頷いた。

 

「そう、実際問題あそこのコード外れてるせいでこっちから介入できないし、学園長のほうも無理みたいだ」

「え、なんでわかるの?」

 

学園長の様子がここからわかるわけないのに。疑問を口にしたら広夢はちょっと得意そうに。

 

「いやぁ、ちょっとばかし学園の防犯カメラをハッキ……なんでもないぜ?」

 

言いかけて止めた。ハッキングって………えぇ?! 公共物ってハッキング禁止じゃ? 驚いてるとポンと肩に手を置かれた。日向君だ。

 

「衛宮、こんな言葉を知ってるか? 『ばれなきゃ犯罪じゃない』」

「そりゃまあ知ってるしよくわかってるけどいいの?」

 

これ、一応バレたら犯罪だよね? 広夢に視線を投げかけたら広夢はにやっと笑った。

 

「大丈夫、下手に足がつくようなことやってないから」

「まあ、それならいいかな?」

「だろ?」

 

足付いたらヤバいけど、まあどうにかなるか……多分。姉さんがどうにか頭で情報を咀嚼できたらしくてようやく口を開いた。

 

「つまりフィードバックシステムで現実世界に干渉できるぼくとアキの召喚獣でコードをつなぎ直すってこと?」

「そういうこと」

 

広夢は頷いた。簡単に言うけどいろいろと問題があるような。

 

「ちょっと待って、それだとこっちの方が分が悪いよ。フィールドとか、僕らオールラウンダーじゃないし」

 

特に僕、得意科目以外は悲惨だよ? 広夢はうんうんと頷いた。

 

「だよな。そこの対策は考え済みだ。代表、お前の腕輪ちょっと貸してくれ」

「これ? まあいいけど」

 

召喚フィールド用の腕輪? どうするんだろう。そう思っていると広夢が腕輪のカバーを外す。すると中からUSB用の接続プラグが出てきた。ええ?! 驚いている間にそこに自分のノーパソをつなげた広夢が何か操作をして満足が笑った。

 

「うん、やっぱりそうか。ウミ、リンに連絡、後はラニとサクラ、緊急事態だし助けてくれるはず。あとこれ系が得意なのはレオか」

「分かった。一応ユリウスにも伝える」

 

驚いている間に二人は色々と終わらせていった。なんだろう、こう水を得た魚ってこういうことをいうんだろうね。それくらい二人は生き生きしていた。

 





色々捏造設定ごめんなさい。だってアニメ版で「観察処分者の召喚獣は別ルートで走らせてるから暴走の影響を受けない」とか言ってたからだったら別のサーバーがあってもいいじゃないかとか、すみません黙ります。
今回の騒動はウィザードメンバーが水を得た魚になりました。勝手に動く動く

それから昨日は一日ネットが繋がらなかったよ。どちくしょー(ダンッ
そんなわけで当分ネット環境が不安定になるかもです。とはいえ最近は連日投稿できてませんけどねー。


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『ちょっとばかりお茶飲んで休憩といきたいと思います。
 じゃあ、何のお茶を飲みますか?

 ・魔法瓶使って、紅茶    ×2
 ・水入れ使って、水出し麦茶 ×1
 ・鍋を使って、煮出し麦茶
 ・急須を使って、緑茶    ×1

                           』


紅茶独走中。


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第五問

 

元Aクラスの現Fクラス、そこには休憩用の仮眠室があってそこそこ広い空間がある。そこにノーパソとか神海さんが適当に持ってきたモニターなどが複数台繋がれている。モニターのほうを向いて作業をしていた広夢がこっちに向き直って真剣な顔で言った。

 

「んじゃ、もう一回作戦の説明な。明久と言峰が召喚獣を召喚、コードをつなぎ直す。それでつなぎ直したところで俺たちが侵入、バグがあるならバグの消去、もしくは原因の収拾を行う、現実(リアル)のナビゲートは島田と木下、比奈丘と坂本の四人で頼む。土屋はカメラと音声を頼む」

 

それだけ言うとまた広夢はモニターのほうに向きなおって誰かと通信し始めた。誰としゃべってるんだろう? その様子を横目に見て姉さんはどうしたのかなと姉さんのほうを向くと、姉さんは今回の作戦のナビゲーター二人と裏方の神海さんに笑って言った。

 

「りょーかい。悠里、彩夏、神海、よろしくね」

「ええ、任せなさい」

「はぁ、面倒だが仕方がないか」

「……了解」

 

南たちどうしたのかなとそっちを向いてみれば南は緊張した顔をしている。やっぱそうだよね。秀吉は結構涼しそうな顔だ。得意のポーカーフェイスかな?

 

「わ、わかった」

「任せるのじゃ」

「二人とも任せたよ? ところでだけど、電子空間(システム)内のナビゲートは? 二人だけでどうにかなる?」

 

ふと気になったことを広夢に聞いてみた。すると広夢はニヤッと笑う。

 

「こっちにはこっちで超優秀なナビゲーターがいるから大丈夫だ。今回はふざけてられないからな。わかってるよな。特に会長と副会長」

 

いきなりモニターのほうをジト目で見だした。するとモニターのほうから誰かの声がする。

 

『当然ですよ。こんな事態ですからね』

『何でわたしまで混ぜるのよ。ヒロ』

 

男の子にしては妙に高い声かもしれないけどまあ男かなって感じの声とものすごく聞き覚えがある声がした。でも、声の感じがちょっと違う? 向こうのほうがはっちゃけてるかもしれない。

 

「会計と顧問ならともかくお前ら二人には一抹の不安を覚えるんだよ。主にRECの意味で」

「どういう意味さ、それ?!」

 

いやいや、なんかわけわかんないこと言ってるよ?! ツッコミ入れたら日向君がこっちを見てきた。

 

「人間知らなくていいこととかあるから」

「……なんか、よくわからないけどそういうことならいいか」

 

もうそれで納得しよう。僕の周りってそういうこと多いもんね!

 

「じゃあ、各自持ち場についてくれ」

 

広夢の指示で各自解散となった。バリケードのそばに向かうために仮眠室を出た僕らはそのちょっとの間に少しだけ話した。

 

「何て言うかこう、日暮ちゃんって頼れるリーダーって感じだよね」

「それは同感、よし姉さん準備はいい?」

「大丈夫、いくよ!!」

 

僕と姉さんが召喚獣を呼び出すために右手を前に向けた。あ、これって聖杯戦争の召喚っぽいかも……普通はこんな感じなんだよね。普通は

 

――― 試獣召喚(サモン)!!

 

                       ☆

 

明久と言峰を送り出した後、ちょっとだけ仮眠室を出る。フィールドの処置はウミに任せた。主な理由は全員分のドリンク確保だったりするわけだけど。そんなわけでドリンクバーに歩いていたら夢路に肩を掴まれた。そしていきなり怒鳴られる。

 

「何で私がナビゲート役じゃないのよっ!」

「は? なんでだと、お前そこまで明久や言峰と仲いいのか?」

 

こいつが一緒にいることなんてあったのか? それに言峰はこいつに辟易してるみたいだしナビ役にしたところでいいことあるのか?

そう考えていると夢路は笑う。なんだろう、こう……下種な感じだ。うん、あれだよあれ。幼馴染に惚れた女が俺につっかかってくるときの感じの笑い方、ようは嫉妬とか慢心とかその辺が混ざった感じの。

 

「いいわよ! 当然じゃない。いつも一緒に居るわよぉ」

「俺はそう思えないな。ついでに言うならお前は成績がいいだけでこういったことには絶対に向いてないからな。お前、戦闘したことあるのかよ?」

「っ……」

 

俺が殺気を出せば夢路はすぐに怯んだ。奴が怯んでいる間に肩を掴んでいた手を外してその場を立ち去る。それでも追いすがる気配を感じて首だけ振り返って奴を睨みつけた。

 

「悪いけど、あそこにいるのはお互いのことを思いやれる『仲間』だ。お前みたいに自分の欲しか考えてない奴はお断りなんだよ」

 

普段だったら絶対にしないような舌打ちをして夢路は立ち去った。その様子を確認してからドリンクバーへと向かいなおす。

 

「……たく、なんかあいつ見てるとどこぞのエロ尼僧思い出すぜ」

 

                       ☆

 

「よっと、うわ」

「酷いねこれは」

 

バリケードを越えた僕らの目に入ってきたのは召喚獣が暴れたせいか若干ボロボロになった校舎だった。僕と姉さんは召喚獣の頭に取り付けたカメラから流れる映像をゴーグルタイプの再生機器で見ていた。片耳に取り付けたイヤホンからナビゲーターの声が聞こえる。

 

『召喚獣の侵入を確認、アキヒサ、アキノ 聞こえている?』

『同じく確認したわ。サーバのある部屋まではしばらく一本道よ』

『ただし、暴走した召喚獣を数体確認、気を付けろ』

『召喚したら点数を確認しておくように日暮より言伝を預かっておる』

 

ナビも順調みたいだけどいきなりなんだろう?

 

「点数?」

「なんで?」

 

 

総合科目

Fクラス 言峰明乃 3468点 & Fクラス 衛宮明久 2168点

 

 

「普通だよね?」

「うん」

 

二人して首をかしげていると通信が入った。

 

『明久、明乃! 11時の方角から召喚獣じゃ!』

「了解!」

「あいさ!」

 

攻撃してきた召喚獣をいなして相手の点数を確認する。

 

 

古典

Aクラス 斉藤和紗 365点 & Bクラス 萩原紫園 269点

 

「古典?」

「なんで?!」

 

驚いていると召喚獣が襲いかかってきた。

 

「姉さん!」

「はいよっ!」

 

姉さんの黒鍵が襲ってきた二体の召喚獣を貫いた。その隙に僕が連絡を入れる。

 

「えっと、広夢か日向君に誰か聞いてきてくれないかな。何でこうなってるの?」

『すでに聞き済みだ。お前らの召喚獣の周りにだけ特殊なフィールドを張ったそうだ』

『その中に居るあんたたちの召喚獣だけが総合科目の点数になってるの』

 

うん、理由は分かった。やっていることも理解した。

 

「うわぁチート」

 

その言葉しか出ないよ。うわぁとか思ってると比奈丘さんから通信が入る。

 

『そのフィールドを安定化させるのであいつらは手一杯らしいから後は全部実力で頼むぞ』

「わかったよ」

 

そのまま僕と姉さんの召喚獣を走らせる。走る道すがら姉さんがつぶやいた。

 

「日暮ちゃんと日向君凄いね」

「絶対他の人間じゃ考えつかないと思うよコレ」

 

普通はこんなの考えないから。まさか空間のほうを変えてチートするとはね。

 

                       ☆

 

学園長や他の研究員がどうにか繋がった監視カメラのモニターから明久と明乃の召喚獣が廊下を走っていく様子を驚いた顔で見ていた。

 

「全く、どうなってるんだい。これは」

「我々にはどうにも」

「でもなんで彼らの召喚獣が」

「大方、あの外れているコードを物理干渉可能なあいつらの召喚獣で繋げようとしてるんだろうね。それはいいんだ。問題はこれをだれが指示したかってことさ。それからあの特殊な加工を施したフィールド、あたしですら実現不可能とあきらめた代物をあっさりと実現するとは」

 

それをただ一人少しだけ離れたところから見る一人の研究員がいた。茶色の野暮ったい髪に黄色のインナーにジーパン、上着は白衣、黒縁の大きなメガネをかけたかなり童顔の女性だ。

 

「……これはヤバいっスね」

 

彼女はジナコ=カリギリ、広夢や日向とは前世でも今世でも関わり合いのある一人だ。月海原学園卒業生で現在は文月学園研究部門所属している。なぜ所属しているのかというと学園長とは親が旧知の仲だったのだ。彼女の両親が交通事故で亡くなってしまった際に学園長が後見人を務める事となり、高校大学を経て彼女のお抱えの研究室に転がり込むこととなったのだ。ちなみに余談だが彼女の転身っぷりには月海原生徒会全員が驚いた。ついでに言うなら体重もきっちり減ったことも驚きの要因だったのかもしれない。とりあえず成人女性の平均並みになったとだけ言っておこう。

 

「大方ウミ君とヒロさんだろうけど、バレたらヤバいよ」

 

あわわわわと内心慌てていると学園長の校内用の端末がピリリと鳴った。学園長に知らせようかとふと見れば差出人は不明のメッセージだ。

 

「ん? これ絶対に怪しいっスよね……」

 

この状況でこれが送られてくるとかおかしいと感じたジナコはウィザード技術で学園長の端末から自分の端末にメールを移動、学園長の端末内の履歴もメールも削除した。サルベージできないようにするのも忘れない。下手にウィザードであることがばれるわけにはいかないからだ。それからメールの内容を確認する。

 

――― 今回のハッキング事件の犯人についてご連絡がございます。

 

その一文から始まったメールは広夢を犯人に仕立て上げようとする代物だった。それを見たジナコは盛大に頬を引きつらせる。

 

「……うわぁ、なんかボク陰謀に巻き込まれちゃった感じっスか。こういうのはウミ君やヒロさんの仕事っしょ」

 

文句を言ったところでしょうがないし、ここには味方はいない。居るのは確実にこんなメールを見たら信じるバカだけだ。生徒なんて実験のためのモルモットとしか考えない人間だっている。

 

「……しょうがないか」

 

ジナコは諦めて、端末操作を始めた。

 





ジナコさん登場……普通に生徒会顧問の予定だったのにどうしてこうなった。まあ、いいけど
生徒会顧問は多分ユリウス、ガトーさんは口調的に色々と無理があるので出番なしでお願いいたします。

ちなみに今回の作戦のチートの発想元はメルトリリスだったりします。


最後に閑話休題アンケート

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『ちょっとばかりお茶飲んで休憩といきたいと思います。
 じゃあ、何のお茶を飲みますか?

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 ・水入れ使って、水出し麦茶 ×1
 ・鍋を使って、煮出し麦茶
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紅茶独走中。このまま紅茶で決定かな?


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第六問

 

それから僕らは次々と襲ってくる召喚獣を撃破した。周囲に他の召喚獣がいないことを確認してから僕は姉さんに声をかける。

 

「よし、先に進もう」

「最初からこれってきついなぁ」

 

僕のイヤホンに通信が入る。南と秀吉かな?

 

『気を抜かんようにの』

『次のフィールドに入るからな』

 

二人の通信が切れたと同時に新手の召喚獣が現れた。今度はどこのフィールドだろう?

 

 

数学

Bクラス 深沢俊貴 368点 & Cクラス 長沢俊一 326点 & Cクラス 穂崎明日香 335点

 

 

「アキ、後衛よろしく」

「了解!」

 

姉さんが前衛で僕が後衛というお決まりのスタイルで僕らは戦い始めた。そんな僕らの耳にマイクを切り忘れていたらしい雑談が聞こえてきた。

 

『正直な話、あたしたち要るのかしら?』

『いや、必要だろ。ナビゲーター居なきゃこういうのって大変なんだぞ』

 

                   ☆

 

どうにかサーバー室の前まで進んだ。扉が少しだけ開いている。その隙間を抜けてサーバー室に忍び込めば外れている太いコードを発見した。

 

「あ、あれだね」

「結構、楽に進めたね」

 

姉さんのほうに通信が入る。

 

『油断するなよ。最後の最期で詰め誤るとか承知しないからな』

「わかってるって、他の召喚獣の反応は?」

『今のところは観測されてないわね』

 

三人がしゃべっている間に僕は召喚獣を進めてコードを繋げようとした。

 

「このコードをつなげ『アキヒサ、いったん下がって!!』

 

南の通信と同時に光が僕の足もとに現れる。僕は慌ててそこから離れた。

 

「っとと……新手か!」

「……うわ、ヤバい?」

 

新たな召喚円が現れた。その中から召喚獣が現れる。通常の召喚獣よりやや大きめ、教員の召喚獣かな。それにあのポニーテールってまさか……。

 

 

歴史

生活指導 西村宗香 896点

 

 

「さ、流石 西村先生だね」

「関心してる場合じゃないよ?!」

 

姉さんがボケるのに突っ込みを入れる。

 

『気を付けるのじゃ。明久』

『アキヒサ、来るぞ!』

「っ 風圧だけでもすごい」

 

攻撃自体はどうにかかわせたけど、風圧だけで点数を何点か持っていかれてしまった。うわぁ、西村先生が鉄人とか呼ばれる理由がよくわかったよ。

西村先生の召喚獣は姉さんの召喚獣のほうを向いた。あ

 

『明乃、今度はそっち行ったわ!』

 

悠里さんの声が鋭く飛ぶ。でも、それとほぼ同時に姉さんの召喚獣は殴り飛ばれされた。

 

「いつっ」

 

姉さんの召喚獣は受け身を取りながらゴロゴロと転がっていく。

 

『大丈夫か?』

「大丈夫、これくらいの威力なら親父の一撃の方が酷いから!」

『そこは自慢するところじゃないわよ/ぞ!?』

 

女性陣の鋭いツッコミが入った。その直後なんか向こう側でガタンと大きな音がした。そして、やめろ働きたくないとかそんな声がした。

 

「え?!」

「何かあったの?」

 

僕らが驚いてると無機質で淡々とした声が聞こえてきた。

 

『……オペレーター交代、比奈丘はちょっと連れて行かれた。油断禁止』

「あ、うん」

 

目の端に西村先生の召喚獣が襲い掛かってくるのが見えたので、それを二人してかわした。西村先生の召喚獣のこぶしが当たった先には浅いクレーターができていた。

 

「一体でこの破壊力って……」

「現実干渉可能の召喚獣にフィードバックが付いているのも納得だよね」

 

どうにかかわしていくけどそれにも限界が来る。

 

「っ!」

「姉さん!!」

 

姉さんの召喚獣が攻撃にさらされそうになったその時、

 

「燃えろ、そして凍りつけ!!」

 

炎と氷が西村先生の召喚獣を爆破した。

 

「?!」

「助っ人参上だ」

 

緑の黒髪、赤くてスカーフの黄色いセーラー服、比奈丘さんの召喚獣だ。

 

 

総合科目

Fクラス 比奈丘彩夏 5555点

 

 

何その点数、

 

「チートでもした?」

「いや、あたしの実力を甘く見すぎだろお前」

『そういう話じゃないわよ』

「普通の人間はそんな点数取れないからね?!」

 

二人は割と楽しそうに話してるけどこっちわりとピンチだからね?! 姉さんの召喚獣を狙うのを止めた西村先生の召喚獣が今度はこっちに狙いを定めてきたためかわすのに精一杯なんだけど。

 

「二人とも、漫才してないで助けてよ!!」

『アキヒサ、拳が来る!』

「了解」

 

もうたまらないので、アイアスを張って、ジャンプで逃げた。姉さんたちのそばに着地する。

 

「ひゅー、凄いな。衛宮」

「あ、ごめん アキ」

 

比奈丘さんが召喚獣をこっちに寄せてきた。それから僕の召喚獣を庇うように立つ。

 

「衛宮、日本刀出せるか? 出来ればとびっきりいい品がいい」

「それくらい余裕だけど? 良い品って……例えば?」

「絶刀泉美」

 

即答だった。ごめん、それ知らないから。

 

「銘からして知らんわっ!!」

「えーじゃあ、天乃尾羽張」

 

今度はメジャー過ぎない?!

 

「日本神話?! まあ、できるけど」

「できるの?!」

 

姉さんが驚く。まあ、そうなるよね。

 

「ええ、神話系の武器も『視』たらできるらしいね」

 

ウチのアーチャーは人類滅亡防止のためにどこで戦ってきたのさ。いや、生前だったとしてもどこで見たんだろう?

 

「とはいえ多分点数と時間かかるよ?」

「構わない。その間はあたしとこいつで守るから、な?」

「はいはい、言われなくても守るさ」

「頼んだよ。投影開始(トレース・オン)!」

 

僕は全神経を投影へと向けた。

 

                  ☆

 

先生の召喚獣の攻撃をかわしたり時々攻撃を仕掛けたりしながらぼくは思ったことを彩夏に言う。

 

「彩夏ってこういうの慣れてるんだね」

「は?」

 

彩夏が驚いたような声を出した。

 

「いや、結構余裕じゃないか」

 

ぼくはギリギリセーフでかわしてるのに彩夏は余裕でかわしてるよね。

 

「はぁ、それを言うならお前達もだと思うけど」

「ぼくはただのシスター見習いだよ」

 

それ以上でもそれ以下でもないよ。そう言ったら彩夏が呆れた。

 

「ここまで戦闘が出来てそれを言える方がおかしいぞ……あんたみたいなのが居たらもっと変わったかもな」

「? 何か言った」

「いや、なんでもない。楽させてくれ!」

 

彩夏の召喚獣がなんか黒い球を出してそれを爆発させる。

 

「おおっ」

 

驚いているとアキの声が響いた。

 

投影(トレース)完了、比奈丘さん!!」

 

その声に振り向けば金色の何かが彩夏に向かって飛んでいた。

 

                         ☆

 

パシリと小気味のいい音がして比奈丘さんの召喚獣の手の中に投影した刀が収まる。

 

「あいよ! ほぅ、中々の出来じゃないか」

「こっちは点数ぎりぎりだからもう動けないよ!」

 

まあ、たぶんだけど。フィードバックで体がだるい。もう召喚獣を動かすのも嫌になるし。そう叫んだら比奈丘さんと姉さんの召喚獣がこちらをちょっと向いた。表情が動くわけないけどそれでも二人の召喚獣がにっと笑ったように思えた。

 

「アキ、ぼくらに任せな! 彩夏、行くよ」

「ああ」

 

二人が飛び出した。姉さんの召喚獣が西村先生の召喚獣の攻撃をいなしてバランスを崩させた。地面に倒れた召喚獣に向けて、比奈丘さんの召喚獣が日本刀を構える。

 

「特別サービスだ」

 

召喚獣が動いた。かなり早い、こんなスピード召喚獣で出るの?

 

「せっ」

 

四方八方から西村先生の召喚獣を切り刻んでいく。

 

「お前はそこで突っ立っていろ!」

 

最後の一閃が終わる。

 

「はぁああ!」

 

比奈丘さんの召喚獣がムーンサルトに飛んだ。

 

「でゃああ!」

 

西村先生の召喚獣の首筋に刀が突き刺さる。

 

「楽な仕事で羨ましいよ……」

 

首元を貫かれて大ダメージを受けたであろう西村先生の召喚獣、それでもまだ動いていた。頭上にある点数はぎりぎり1残っている。比奈丘さんの声が焦ったような感じになる。

 

「うげ、仕留められなかった。明乃!」

「当然! 任された!!」

 

姉さんの召喚獣が一瞬だけ姿を変える。あれって……ランサーさん? 姉さんの召喚獣の得物が赤い槍へと変わった。

 

「……はぁっ!」

 

姉さんの召喚獣が投げた槍は西村先生の召喚獣を見事に貫いた。

 

「ふぃー」

『明乃! ヘタってないでコード繋いで!!』

「あ、りょうか……あ」

 

姉さんの召喚獣の視線の先には僕の召喚獣がコードを繋ぎ直してる姿が写っているだろう。

 

「やっておいたよ」

「おつかれさん」

「動けないんじゃ?」

「どうにかしたよ。主に気合と経験で」

 

点数の配分を切り替えて足だけは普通に動けるようにしたんだ。それから姉さんと比奈丘さんの召喚獣が西村先生の召喚獣と戦っている間に比較的安全そうなところを通ってコードのほうに行ったんだ。

 

「とりあえずお疲れ、アキ」

「姉さんもお疲れ」

 

召喚獣同士の拳を軽く打ち合わせていると今の今まで聞こえていなかった日向君と広夢の声がした。

 

『コードの接続を確認』

『明久、言峰、後途中で巻き込んだ比奈丘、お疲れ! 後はこっちで何とかするから召喚獣戻して休んでくれ』

 

その声を聴いて体からどっと力が抜けた。召喚獣を消してゴーグルを外して姉さんのほうを見たら姉さんも僕のほうを見た。思わず二人で笑いあう。

 

「イェイ!」

「とりあえずどうにかなったね!」

 

二人でハイタッチをした。後は広夢たちに任せるしかないよね。





だってせっかくタグに入れてるんだもの。有効活用しない手はないということで緊急参戦、彩夏さんでした。
使ってた技は最初の炎と氷がサイキックの技『フロストバーン』、止めに使った『乱れ散々桜』2020および2020-Ⅱの秘奥義です。アクションとか美麗なのでぜひ動画を見ることをお勧めします。『絶刀泉美』はゲームの終盤に手に入れる刀、『天之尾羽張』は裏ダンジョンで手に入る刀です。手に入ったら不味い気もしなくはないけど。あ、それは違う奴か

※アーチャーさんが本当に投影できるかなんて知りません。てか、アウト? その辺はご都合主義ということで



最後に閑話休題アンケート

※感想欄は集計しません。投票は活動報告にお願いします。

『ちょっとばかりお茶飲んで休憩といきたいと思います。
 じゃあ、何のお茶を飲みますか?

 ・魔法瓶使って、紅茶    ×2
 ・水入れ使って、水出し麦茶 ×1
 ・鍋を使って、煮出し麦茶  ×1
 ・急須を使って、緑茶    ×2

                           』


まさか並ぶとはさて、どうしたものか。あ、アンケートは十問更新までです。


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第七問

 

明久たちの方の戦いが終わった。それにしても比奈丘凄いな。何となく「やる」感じがするから頼んだわけだがここまでできるとは。

 

「よし、コードの接続を確認した」

 

ウミが画面を確認しながら言った。生徒会の方からも通信が入る。

 

『こっちも確認したわ。いつでも接続(アクセス)可能よ』

 

リンの声が聞こえた。いよいよだな。

 

「了解、ウミ行くぞ」

「うん」

 

俺たちは試験召喚システムへの接続(ダイブ)を開始した。

 

                   ☆

 

システム内に作られた量子空間、電子の海に降り立つ。まるで水中に立っているみたいな浮遊感はあれど、酸素不足で倒れそうな感覚は無かった。生徒会のバックアップも順調のようだ。されど目の前にあるのは割と安心していられない状況だ。

 

「っ、予想はしてたけどかなりだな」

 

目の前には攻性エネミーの数々、これを只単なるウィザードだけで切り抜けろとか笑えない。目の前の状況を見たウミが呟いた。

 

「せめてセイバーがいるなら」

「しょうがないだろ。ウミたちのサーヴァントたちは今は普通の人間として転生してるんだ」

 

アーチャーの奴は居ないがな。アーチャーの奴は!! ……そういえばジナコのラン……チャー、いやカルナも居ないな。

 

「わかってる。でも、この状況を切り抜ける手段ほかに思いつく?」

「無理だけど、無茶を承知で通すだけだろ。あっちはあっちでがんばってくれたんだし」

 

ウミの顔がキッとした表情へと変わる。うん、スイッチ入ったな。

 

「それはわかってる。急がないと」

「それにしても通信入りにくいな」

 

妙に通信が入るのが遅い。通信が入りにくい環境なのかもしれないな。

 

『やっと通信入ったわね。状況はこっちで確認済み、オペレーション始めるわよ』

『その空間はアリーナとは全くルールが違います。勝手が違うので注意してください』

 

頼もしい仲間の声がようやく聞こえるようになった。明久たちが頑張ったんだ。俺たちも頑張らないと。

 

「頼んだぜ」

「頼んだ」

 

ここから俺たちの正念場だ!

 

                   ☆

 

しばらく進めば、攻性プログラムと攻性防壁(ファイヤーウォール)が目につくようになる。ファイヤーウォールはこっちでどうにかなるとしても問題は攻性プログラムだ。俺たちには剣となるサーヴァントは居ない。この状況は俺たちでどうにかするしかないんだ。

 

「攻性プログラムを確認、逃げる方向性でいい?」

「そのほうがいいだろうな。ウミ、コードキャストの準備はいいか?」

 

俺はスピード強化系のコードキャストの準備をする。こういうのは俺の十八番だしな。逃げる方が今回に関しては効率的でもあるし。

 

「大丈夫、ヒロは?」

「いつでも行ける。オペレーター、最適ルートの検索は?」

『完了してます。マップにマーカーを付けましたのでそれを参考に進んでください』

 

流石は超一流のウィザード、その辺の抜け目は全くなかったか。俺が感心してるとリンから連絡が入る。

 

『それからジナコと連絡取れてない? あの人もそこの学園に勤務してるはずなんだけど』

「ジナコが? ごめん、知らない」

「すまん、俺も知らないな」

 

ジナコの連絡先までは知らないんだよな。それにしてもあの引きこもりのニートが研究者とか前世ってこうも影響を与えるんだな。

 

                   ☆

 

元AクラスのFクラス、そこにバリケードやらなんやら色々と張って被害を防いでいたんだけど一連の作業が終了したからバリケードは取っ払うことになったんだよね。アキには休んでもらってぼくが作業をしていたら扉からノック音がして、誰かが入ってきた。

 

「失礼するッス」

「え、どちら様?! というかどうやってここまで??」

 

その人は茶色のなんか先だけ直線なショートヘアに茶色の目、服装は黄色の長そでにジーンズ。首には何かの証明証が掛かっている。

 

「にゃはは、その辺は開発者特権って奴スよ」

「えっと、本当に誰ですか?」

「こういうものッス」

 

証明証を突き出された。ふむふむと書かれている内容を読んでみた。

 

「えっと、文月学園研究班ジナコ=カリギリ……あ、もしかして研究室のジナコさん?」

 

研究室の面々の中では割ととっつきやすいタイプだし仲良くしてたけど一瞬誰かわからなくなったよ?!

 

「アキにゃんは相変わらずだにゃー」

「いや、その恰好どうしたんですか? いつもの白衣と野暮ったい髪とメガネは?」

 

あれトレードマークじゃないですか。ぼくが言ったらジナコさんは不機嫌そうに言った。

 

「野暮ったいは失礼ッスよ。あー、白衣は脱いで来たっス。ついでに言うなら現実干渉の召喚獣の攻撃がちょこっと当たったもんだから髪とメガネがおじゃんしちまったんだぜ」「……ジナコさんよく平然としてられますね」

 

あれの破壊力はぼくたちが一番よく知ってるつもりだ。あれの中を生身の人間が駆け抜けていくなんて無謀が過ぎるよ。

 

「いやぁ、ジナコさん強いっスから」

 

……うん、指摘をしよう。この人、アキよりはマシだけどなんか危うい気がするよ。

 

「はぁ、違いますよね。つらいの我慢してここに来たんですよね。目が泳いでますよ。つらかったら言ってください、まがい物でもシスター見習いですから話くらい聞きますよ?」

「……うっ、と、とにかく、アt……ボクはヒロさんとウミ君に用事があるから。二人のところに案内してほしいッス」

 

図星だったらしくジナコさんは言葉に詰まった。それから真剣な顔になってそう言った。用事ならしょうがないか。

 

                   ☆

 

ファイヤーウォールやら攻性エネミーなどを解除したりすり抜けたりしながら俺たちは三階で一階層になっているものの三階層までやってきた。ここまでで踏破したのは計9階ってことになる。

 

「第三階層最奥まで侵入完了したよ」

「四階層に突入予定だけど大丈夫か?」

 

これって生徒会のパソコンに大幅な負荷かけてんだよな。心配になって生徒会室に連絡を入れる。すぐに返答が返ってきた。

 

『大丈夫よ。むしろあんたたちのほうこそ大丈夫?』

 

俺たち? うーん

 

「ちょっとばかし密度は増してるが大丈夫だろ。こんなのサクラ迷宮に比べたらマシ」

「うん、それに今は攻性プログラムも出現してないから平気」

 

そんなことを言った途端に目の前の進路を塞ぐように何か量子の量の半端ない物が出現する。

 

「「あ」」

 

途端に通信にノイズが入った。

 

『先輩、大丈夫ですか。いきなり映像にノイズが』

『音声は聞こえていますが映像が受け取れなくなって』

 

その声もすぐに聞こえなくなってしまった。これはここの環境が変わり過ぎたせいだな。

 

「レオ!?」

「落ち着け、通信が遮断されただけだ。それにしてもどうするよアレ」

 

目の前に現れたカスタマイズされまくったであろう攻性プログラムを指さす。

 

「……どうするといわれても」

 

そこにいたのはどう考えたって超特別仕様のエネミーだ。威圧感半端ない、さらに見た目が最悪、なんでそこでシンジタンクを採用したのかをツッコミしたい。せめてもっとマシなのあっただろうに。

 





とりあえず自分はジナコさんに夢を見すぎた。すみません


謝罪からスタートです。とりあえずジナコさんの謎のアグレッシブさは前世の影響ってことで、主にガトーさん、主にカルナさん(大切なことなので二度(ry
前世拗らせてるメンバー多すぎた。今更だけど一応反省はしている。

どうでもいい話、現在金ぴか√プレイ中。キャス狐ごめん、後回しにすることにしたんだ。それからさらにどうでもいい話、初の女主でプレイ中です。中々かわいいけど三章の恋人作戦にはちょっと首を傾げたくなった。これだったらユリウスが行ってもよかったんじゃないかな?? いや、色々と無茶なのはわかってるけどね!! 見事に百合系のハーレムゲームですごちそうさまでした。



最後に閑話休題アンケート

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『ちょっとばかりお茶飲んで休憩といきたいと思います。
 じゃあ、何のお茶を飲みますか?

 ・魔法瓶使って、紅茶    ×2
 ・水入れ使って、水出し麦茶 ×1
 ・鍋を使って、煮出し麦茶  ×1
 ・急須を使って、緑茶    ×2

                           』

一応締め切りは第十問更新までです。


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第八問

 

先に進まなければいけないのだけど、目の前には何時ぞや覚醒したウミとセイバーのコンビに完膚なきまでにぶっ壊されたシンジタンクのようなエネミーが居る。これをウィザード二人でどうにかしろっていうのは無理じゃないのか?

 

「これをどうにかしろってほうが無理じゃ……」

「アーチャーとかセイバーとかいないもんな」

 

サーヴァントいない状況でどうしろと、空気打ちもサーヴァントとマスターのコンビじゃないと意味がないし。つらつら考えていると不意に切れたはずの通信が聞こえてきた。

 

『あーテステス、聞こえてるッスか?』

 

あ、この若干やる気がなくてだれていて尚且(なおか)つ人を小馬鹿にした感じって。

 

「え、この声って」

「ジナコ?!」

『あ、聞こえてるようで何よりッス。いやぁ、派手にやってるスね。ジナコさん監視カメラから様子見てたッスよ』

 

どうやらジナコは研究室から監視カメラで見ていたらしい。確か研究室の扉はコードが外れた際に閉まってたはず。なのにどうして堂々と通信してるんだ?

 

「えっと、なんでジナコの通信が聞こえてるんだ?」

「そこから不明だよな」

『はいはい、難しい話はあとスよ。まあ、種明かしすると二人の横にいるッス……コードの件、二人ともありがとうッス。ただ、実は今ヤバい事態になってるんだ。この騒動、誰かが意図的に仕込んだものみたい』

 

は? 意図的に仕組んだもの? この騒動が!?

 

「え、そうなのか?!」

「意図的に仕込んだ?」

 

思わず聞き返す。一体何処の誰が何のためにだよ。ここのシステムハッキングしたところで有益なことって……色々あるな。うん

 

『うん、学園長の学園内用の端末に変なメールが送られてきたんだ。「今回の事件の犯人について」って件名で怪しいって思って調べてみたら、とある人物に行き着いた。それについては後、学園側でもシステム復旧しようとしてるんだけどできてないのが現状、悪いけど二人に頑張ってもらわないとまずいんだ』

 

ジナコが一気にまくしたてる。いつものキャラを維持しないくらいに焦っているみたいだ。そんなことは言われなくても分かってる。

 

「わかってるさ」

「ただ……」

 

ウミは言葉に詰まった。当然だよな。目の前のこれは今の俺たちじゃどうにもできないし。俺たちが少しどもっていると、ジナコが軽い口調で言ってきた。

 

『様子は見えてるッス。シンジ君のアレでしょ? もう、しょうがないにゃー。ボクも手伝ってあげるっス。カルナさん、たまには役に立ってくださいッス』

 

え、カルナってあの? 俺たちが驚いていると目の前にいきなり誰かが現れた。白い髪に赤い目、痩躯の男、前世で一度敵対することになってしまった彼の威圧感と存在感は忘れることは難しい。

 

「了解した。日向海人、日暮広夢、久しいな」

「カ、カルナ?!」

「えっと、なんで? 転生してないって……」

 

訳が分かっていない俺たちが口々に問いかけると痩躯の男、カルナは首を静かに横に振った。

 

「その辺の込み入った事情はあとでとジナコから言伝を預かっている。今は目の前のシステムの回復に努めろとのことだ」

 

ジナコにしては焦ってるな。これはよっぽどヤバイ自体のようだ。

 

「お、おう……」

「わかった。カルナ、指示やサポートは俺たちがする。それでいいんだな?」

 

俺がカルナに問えば、彼は今度は首を小さく縦に振った。

 

「そうしてくれるとありがたい」

「ウミ、カルナのサポート頼んだ。俺は生徒会との通信を回復させる」

 

ウミに指示を出しながら、量子空間内でコードキャストを使う際に表示されるウィンドウが俺の目の前に出す。よし、やるか!

 

「わかった。ヒロ、頼んだ」

 

俺たちの様子を確認するとカルナが赤い槍を出す。そして、彼の闘気は数段高まった。味方であるはずのこっちまでビリビリ来そうなほどの闘気だ。

 

「……我が主人、ジナコ=カリギリより『二人の力になれ』との命令だ。悪いが速やかに退場願おう」

 

主従仲改善されたんだな。俺は何となくほろりと来てしまった。まあ、そんなこと考えながらも通信の回復には努めているわけだが。

 

                    ☆

 

戦闘は物の数分で終わった。圧倒的な差でカルナの勝利だった。

 

「さすがカルナ、ガウェインと同等かそれ以上って言われるくらいはある」

「通信回復完了したぜ」

 

こっちも作業を完了した。するとモニターが復活したらしいリンたちから通信が入る。

 

『さっすが、西欧財閥から逃げ切った天才量子ハッカー』

 

それは過去の遺産だよな。大体月ではその他大勢と変わらない普通のウィザードだったんですけど?

 

『ええ、本当に彼女には手を焼かされましたよ』

 

捕まるのなんざまっぴらごめんだったからな。あいつの話を伝播できなくなるし。

 

『パーフェクトです。ヒロムさん それにしてもこの状況で通信を回復させるとは』

 

生徒会のメンバーから惜しみない賞賛が与えられるけどそんなものにはあまり興味がない。

 

「はいはい、こういうのだけは俺の専売特許なんだよ。あとは脱出系だけだ」

 

のんきに通信と喋っていると肩に手を置かれた。振り返ればウミが真面目な顔をしている。あ、そうだったな。

 

「ヒロ、急ごう」

「急ぐぞ。日暮広夢」

「あいよ」

 

まだ終わりは先なんだ。こんなところで立ち止まっているわけにはいかねーんだよ。

 

                    ☆

 

ジナコさんが寝ている二人の横でパソコンをいじりながら通信している。画面には海の中を行く二人と突然現れた白髪の男の人……ギル様並みに威圧感のある人が先へと進んでいた。

 

「ジナコさんすごいですね」

「にゃはは、褒めたってなにも出ないよー」

 

それでもパソコンを弄る手は止まらない。ふと横顔を見て気になったことを聞いてみることにした。

 

「それにしてもメガネ壊れたのによく見えてますね」

「一応、コンタクトつけてるしね。それよりもバリケード張り直したッスか?」

「はい、でもなんでバリケード張り直せとか」

 

あの後、いきなり何を言い出すかと思ったら撤去していたバリケード張り直せとか言われたんだよね。まあ、言われた通りクラスの男子とか総動員で張り直したけど。

 

「うーん、凡人特有の嫌な予感ってやつッス」

「そうですか」

 

あれだね。セイバーさんの直感って奴。あの人のあれ凄いからなぁ。後、ぼくとかランサーさんが時々感じる悪寒とか、あの辺のことを言うんだろう。ぼくが真顔で言ったらジナコさんはあっちゃあって顔になって訂正した。

 

「ま、それは冗談で一応ってやつッスね。コードを繋ぎ直してウミ君とヒロさんが内部に侵入してる状態ッス、それによる指揮系統の混乱も予想されるから気を付けないと」

「あー、わかったようなわからんような」

 

つまりどういうことなんだろう? 指揮者が居なくなるから何?? 首を傾げているとジナコさんは苦笑いしてから言った。

 

「アキにゃんは本当に科学系ダメダメッスね。そういえば明久君は?」

「あー……アキですか。アキなら……」

 

                    ☆

 

ここは仮眠室、先ほどまではオペレート室に使われていたのだが、一部が片づけられて、ベッドに明久が眠っていた。フィードバックが体に来たらしく、作戦終了後に気絶してしまったのだ。

 

「……うぅ」

「大丈夫かの?」

 

少々うなされている明久の頭をベッド脇で様子を見ていた秀吉が優しく撫でる。そこにふいに扉が開いて、濡れているであろうタオルと枕のようなものを持った南が入ってきた。そのまま明久のところへ迷わずやってくる。

 

「よっと、大丈夫か。アキヒサ」

 

南は明久の傍に座り、声をかけるが返事はない。南はそれを気にしないで、明久の頭の下に枕のようなものを設置する。

 

「南、おぬしどこに行っておったのじゃ?」

「ほら、氷嚢作ってた。ウチの妹が風邪ひいたりしたときによく作ってたから慣れてるし」

 

南は明久の額にタオルを乗せた。それから明久の顔を覗き込む。

 

「大丈夫かー?」

「………」

 

返事はない。しかし、明久の表情が少しだけやわらかいものに変化した。

 

「そっかー、気持ちいいか」

 

よしよしと明久の頭を撫でる南、秀吉は真面目な顔で何か考えていた。

 

「それにしてもじゃがフィードバックシステムとはここまで人体に影響を与えるのじゃな」

「うぅ、ア……チャ……」

「大丈夫か?!」

 

明久が急にまたうなされだした。南は慌てた。そこにドアがまた開く音がした。

 

「衛宮の様子見に来たんだが……大丈夫か?」

「もしかして寝てたかしら?」

 

比奈丘と悠里の二人だった。悠里の手にはドリンクバーから持ってきたであろうジュースがある。

 

「……あー」

「うむ、うなされておるのじゃ」

 

南は渋い顔をして、秀吉はきっぱりと言い切った。二人は明久の寝ているベッドにやってきて明久の顔色をうかがう。

 

「……う、うぅ」

「かなりうなされてるな」

 

比奈丘がそう呟くと明久の手が何かを求めるように空を切った。それを見た比奈丘がその手を掴む。

 

「…………」

 

すると明久はその手を握り返した。比奈丘が少し苦笑してから明久にささやく。

 

「はぁ、はいはい握っておくから寝とけ」

「………」

 

明久の表情が少しだけやわらかいものへとまた戻った。





明久がどんな夢を見ていたのかはご想像にお任せします。ちなみに別に投影魔術使ったせいとかじゃなくって単なる疲労です。明久は割と原作よりは貧弱設定だったり。基本的に暴力振るってくるクラスメイトも居ないし、別に観察処分者だからってしごかれているわけでもない。ちなみに明乃は体力とかはチート、その分機械系とか苦手だけど。

CCCプレイなう。金ぴか√一気に五章までプレイ、心の中には無駄に(たぎ)った。主人公が金ぴかを何だかんだで信頼していたの辺りが特に胸熱展開でした。それから五章入ってからの金ぴか、何あれどこでツンを捨てたのっていうくらいデレでした。紅茶と同レベルのインパクトじゃね?



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第九問

 

カルナに守ってもらいながら量子空間内を進んでいく。階層を進みに進み、ついに七階層まで到着した。一際デカい防壁が姿を現した。でかすぎだろあれ。何時ぞやのサクラのレリーフ並みだぞこれ、俺に解除できるか?

 

「ここでラストだな」

「結構強固な壁っぽい」

 

周囲の警戒と攻性エネミーの撃破はウミとカルナに任せて、俺は目の前にそびえたつ防壁の攻略にかかる。その途端にカルナから鋭い声が飛んだ。

 

「! 二人とも、下がれ」

 

俺たちが居たところに攻性エネミーの攻撃が飛んできた。寸でのところでかわすけど、これは厄介だな。

 

「っと」

「っ!」

 

防壁の周囲に攻性エネミーがずらっと並ぶ。その数はかなりのものだ。うわぁ、これ全部相手にするのってカルナ、大丈夫かよ。まあ、防壁へのアクセス自体は開始してるから離れても平気だけど。カルナの後ろに逃げ込んだ俺たちに無感情な声(システムボイス)が響き渡る。

 

『領域内への侵入を確認しました』

「! マジか」

 

音声を聞いて少しピンと来てしまった。まさか、いや、それは流石に無いよな? ついでに目の前に展開されたウィンドウの中身を見て辟易する。うわぁ、マジか。

 

「どうかしたのヒロ」

「これ、ムーンセルの防壁並みだ」

「へ?」

 

ウミが混乱しているところに生徒会室からの通信が入る。しめた!

 

『大丈夫? また映像に乱れが』

『大丈夫ですか、先輩』

 

リンとサクラの慌てた声が立て続けに聞こえる。サクラは俺のこと忘れてんのかなぁ。少し悲しい、まあ今はそんなところじゃないんだが。二人の声を少し無視して俺は叫んだ。

 

「誰かBB呼んで来い!」

『え、BBを?』

『何でですか』

 

ラニとレオが慌てて聞き返すが時間がない。なのでもう一回叫んだ。

 

「説明はあと! 急げ」

『はい、わかりまし……』

 

サクラの応答が聞こえた後、通信はまた切れた。あーあ

 

「チッ、切れたか」

「ヒロ、何でBBを?」

 

ウミが首を傾げる。まあ、ごもっともだよな。

 

「いや、まさかとは思うけどと言ったほうがいい感じ」

「は?」

 

ウミがぽかんと口を開ける。あー、やっぱその反応だよな。全然説明になってねーし。

 

「とりあえず、攻性エネミーが攻撃を始めた。こちらに集中してくれ」

「うん」

「了解」

 

                   ☆

 

その頃、Fクラス。バリケードを張り直して、警戒状態とはいえ、それほど緊張感のない空間が広がっていたわけだが、

 

「うわっ、何だ?!」

「バリケードが揺れた?!」

 

いきなりバリケードが凄い勢いで揺れた。揺れただけで崩れるようなこともなかったが、それでも教室に居た人間は慌てだす。それを落ち着けたのは一人の鋭い指示だった。

 

「みんな! 奥の方に避難して!!」

「わかった!」

「代表が言うなら大丈夫だな」

 

クラス代表の悠里だ。一喝でクラスの混乱を収めると次々に指示を飛ばして教室に居た面々を奥の方へと避難させた。少しほっと息を吐く悠里のところにパタパタと足音がした。

 

「悠里!」

「明乃」

 

ジナコや眠っている日向、日暮達のところに居た明乃だ。悠里に声をかけて、その横を通り過ぎ、明乃はバリケードに足をかけた。

 

「バリケードの外の召喚獣と戦ってくる」

「え?!」

 

悠里は驚く。当然だろう、生身で召喚獣と戦うのは危ないからだ。日向達があんな作戦を取ったのも明久や明乃の安全を守るためだ。悠里の驚く表情を見て、明乃は首を傾げた。

 

「どうかしたの?」

「あんたが召喚獣を呼ぶんじゃなくって?」

「ああ、大丈夫だよ? 普通にぼく悪運強いし。こんな生半可なとこじゃ怪我しないって」

 

それ悪運関係ないから、という悠里のツッコミが行くよりも先に明乃はバリケードを飛び越え、教室の外へと消えた。止めようと伸ばしかけた悠里の手は(むな)しく(くう)を切る。

 

「ちょっ……あー、明乃っていつもこういうところあるわよね」

 

呆れているといきなり隣に神海が現れた。さながら忍者のようだ。彼女も少し呆れているらしく、少しため息をついてから言った。

 

「……援護に行ってくる。悠里は教室の混乱の収拾」

「わかったわ。明乃の事くれぐれもよろしく」

 

悠里と神海は軽く拳を合わせてからそれぞれの向かうべき場所へと急いだ。

 

                   ☆

 

さて、バリケードを越えて教室から出たぼくはかなりの数の暴走した召喚獣に出くわした。ここまで来ると壮観だね。

 

「ひゅー、かなりの数のお出ましだねぇ。ランサーさんとかだったらかなり楽しむんだろうなぁ」

 

あの人戦い好きだし。過去の夢とか見てもほとんど戦いか宴か女の人口説いて……いや、思い出すの止めよう。とりあえず、あの人がバトルジャンキーであることは事実だよね。ちょっと考え事にひたってたぼくに召喚獣が襲いかかる。

 

「まあでも、お生憎様。ぼくは戦いを楽しめるようなバトルジャンキーじゃないし」

 

いつも持ちあるている黒鍵を投げつけ、さらに近づいてきたのは切り裂けば、たちまち召喚獣は塵となった。あれ? 結構あっけない??

 

「よっと、全滅?」

 

ちょっと楽すぎて油断してしまった。傍にまだ点数の残った召喚獣がまだいた。

 

「!」

 

とっさに迎撃しようとするけど間に合わない! そう思った直後に召喚獣に何かが突き刺さる。どう見てもカッターナイフだ。

 

「……大丈夫?」

 

横にしゅたっと降りてきたのは神海だった。何でここに?

 

「神海?!」

「……心配だから助太刀に来た」

 

あーなるほどね。確かにいきなり飛び出したのはダメだったかな。あちゃー、とか呟いていると召喚獣が充てんされる。あ

 

「さんきゅ、とっとと終わるとかしてほしいなぁ」

「……同感」

 

目の前に広がる数十体の暴走召喚獣という光景にちょっと辟易したぼくたちだった。

 

                   ☆

 

俺たちがシステム内へのハッキングをはじめて早二十分が経過しようとしていた。最終地点直前に到達してからは五分、さっきと状況はほとんど変わっていない。

 

「っ、数が異様に増してきている。カルナ、大丈夫か?」

「ああ、大丈夫だ」

「カルナがいるからどうにかなるとしても、この状況どうにかするには……」

 

ジリ貧状態の俺たちにノイズのかからないクリアな通信が来た。

 

『何か用事ですか? 広夢さん』

 

来た来た来た。これでどうにかできるようになるはず!!

 

「っしゃ、BB! この量子空間の構造調べてくれないか、俺の予想が正しければ多分アレのはずなんだが」

 

俺の指示にBBが少し困惑した感じで答える。

 

『量子空間の構造をですか? そんなの他の皆さんでもできると思いますけ……え、嘘』

 

BBが驚いているのがウミにも伝わったのか、ウミも少し不安そうな表情をした。

 

「え、どうかしたの?」

「やっぱか、一度でもムーンセルを侵食したことのあるBBじゃねーとわかんなかっただろうが、ここムーンセル並じゃなくってムーンセルなんじゃないか? って疑問に思って正解だったか」

『はぁ?! どういうことよ』

 

リンのツッコミはごもっとも、ここからは俺が立てた仮説だがご清聴いただこう。

 

「大体おかしいって思わないか。天才とはいえ、一介の研究者が疑似的にでも量子空間を現実に展開して、その中に出鱈目な力を持った使い魔(ファミリア)を呼び出せるような装置を作り上げるとか」

 

普通ムーンセルの演算処理能力とか使ってようやくできるような代物が地上の、しかもこんなネット環境はあの頃なんかと比べ物にならないような状態で出来るわけがない。

 

『確かに、それはあり得ませんね』

 

レオも納得してくれたみたいだ。調子に乗ってそのままべらべら喋る。

 

「この学園の装置は科学とオカルトとほんの少しの偶然でできてるとか言ってたけど、その偶然っていうのがムーンセルなんじゃないか?」

『確かに、その仮説はありかもしれません。ですがなぜムーンセルが? 我々の知っているムーンセルはミスター日向によって「人類への干渉」を止められたはずです』

 

うん、そこは三回戦で敗退するようなレベルのウィザードである俺にわかるわけがない。

 

「そこは不明、ムーンセルがまた起動したのかそれと―――「ヒロ!!」

 

喋っていた俺の意識がウミの声で外側へと向けられる。そこには攻性エネミーがすぐそこまで迫っていた。

 

「っ!」

 

どうにかエネミーを回避する。

 

「あっぶな」

 

驚いているとサクラの鋭い声が飛ぶ。

 

『広夢さん、四時の方向!』

 

その攻撃もかわすけど、そこであれって気が付いた。

 

「……もしかしてターゲット変更?」

 

もしかして俺、余計なこと言い過ぎた? ムーンセルに目つけられた?! 慌ててBBに指示を飛ばした。

 

「っ BB、この空間を書き換えられるなら書き換えてくれ! そうすれば多分この騒動終結できるはず」

『わかりました! BBちゃんに不可能なんてありませんよ!』

 

よし、このままBBが書き換えるまで時間を稼いで……。

 

「ヒロ!!」

 

ウミの声に振り向けば後ろの方からエネミーが迫っていた。あ、ヤベ これ、かわせな―――

 

 

 

―――― ふと、誰かの背中を思い出した。

それはあの世界で一番頼りにしていた相棒であり、

                 恐怖の権化であり

                 ……懐かしい友人の背中だった。

 

その背中を自分はもう二度と見ることはないと思ってた。

その背中が自分を守るために向けられるなんて思っていなかった。

 

「全く、お前は無茶をするのが趣味なのかよ?」

「………っ ばーか、そんなわけあるかよ」

 

ああ、やっぱりいつものように憎まれ口を叩いてしまう。目の前にいるのは、赤いマフラーを首に巻いた、黒コートに黒ズボンの白髪褐色の男、あの無駄に構造が謎な赤い礼装は何処へやったのだろうか。いや、そんなことなんてどうでもよかった。

 

「サーヴァント、セイヴァー。お前の呼び声に応じてここに参上した。アンタはオレのマスターだよな……ヒロ」

「………おう、シロウ」

 

もう一回、万感の思いを込めて、この名前を口にできただけでも幸せってもんだろうな。ああ、俺のよく知ってるあいつが返ってきた。それだけで十分すぎた。

 





さて、少々収集つかなくなってきた気がするけどまあいいや。分かりにくい設定を使ってごめんなさい。
この小説は基本的に誰得? 俺得! な話です。

日暮の態度が完全に軟化しているのは道場の一件でちょっと吹っ切れたからってことで、恐怖<<<友情になったからです。多分、道場騒動が無かったらこんな反応しなかったと思われます。


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第十問

 

シロウが見覚えのある夫婦剣じゃなくって、一丁のスナイパーライフルを投影する。あれ? 確か銃の投影って難しいはずじゃ。驚いているとシロウが口を開いた。

 

「悪いがムーンセルでもオレの友人に手を出すのは承知しないな」

 

目の前には攻性エネミーの大群が出現している。これをどうにかするって……よし! 俺は声を張り上げる。

 

「シロウ! 宝具の開帳を!!」

「ああ、ヒロ 魔力は任せた!」

 

あの俺にとってはもう懐かしくなった詠唱が聞こえる。そして、詠唱が終われば、只剣が突き刺さる赤と機械の荒野が現れる。はずだった。

 

「あれ、なんか違う気が……?」

 

俺が知ってるのって確か空は赤くて炎が舞う感じだったのに、ここは雲一つもない青空が広がってる。シロウが俺の方に顔を向けて笑う。

 

「お前が頑張ってくれたおかげだよ。それじゃ、行くぞ!!」

「おう!!」

 

理由はよくわかんねーけど、シロウが幸せそうならそれでよし! そう結論付けて俺は戦闘に集中した。

 

                    ☆

 

シロウが粗方の攻性エネミーを倒した頃、固有結界は解けてしまった。それから広がった空間を見て驚く、電子の海に懐かしさの残るアリーナの道が出来ていた。

 

「!」

 

驚いていると生徒会室から通信が入った。

 

『これくらいBBちゃんにかかれば楽勝です!』

 

得意そうなBBの声が耳に入ってきた。どうやら作戦は成功したらしい。

 

「お疲れ様、BB」

「シロウ、もう大丈夫だぜ」

「ああ」

 

声をかければ、シロウが最後の攻性エネミーをちょうど倒したところだった。それを確認した後、生徒会からまた通信が入った。

 

退出(ログアウト)するわよ』

『皆さん、お疲れ様でした』

 

                    ☆

 

あれからかなりの数の召喚獣を倒したけど倒せども倒せども召喚獣は現れる。ウチの学校って普通の規模の学校だよね? 何でこんなに出てくるの? なんて考えながら無心で倒していたわけだけど、召喚フィールドが消えると同時に召喚獣たちも消えた。ふぅ、よかった

 

「お、全部消えた」

「……よかった。手持ち、もうなかった」

 

隣にいた神海が呟く。手持ちって多分投げる物のことだよね。うわぁ、危ないなぁ。

 

「え、ホント? うわぁ、ギリギリだったんだね」

「……教室に戻る」

 

神海がぼくの手を引っ張った。その感触でようやく終わったって実感が生まれる。よかった、これでもう終わりなんだよね。ぼくは笑顔で頷いた。

 

「うん!」

 

                   ☆

 

ふと、辛く悲しい夢を見た。

 

「うぅ……あれ?」

「あ、目()めたか」

 

気が付けば視線は天井、自分は仰向けに寝ていて、隣からは誰かの声がした。横を見てみれば緑の長い髪に白い肌、緑の目をした……。

 

「あれ、比奈丘さ……ってうわぁぁ、ごめん」

 

何で僕、比奈丘さんと手つないでるんだ?! 慌てて比奈丘さんの手を放した。

 

「別にかまわないさ」

「ここって仮眠室のベット?! 起きない――うわっ」

 

仮眠室のベット占領するわけにいかないよ。と慌てて起き上がろうとしたけど、頭がふらついてバランスを崩してまたベットに横になってしまう。

 

「寝とけ、寝とけ。お前ずっとうなされていたんだからな」

「いや、でも……」

 

僕が使ってるわけにもいかないし。そう返そうとしたら仮眠室の扉が開いた。南と秀吉が入ってきた。僕の方を見るとホッとした顔になった。それから二人が嬉しそうな顔で喋りだした。

 

「アキヒサ、目覚めたみたいだな!」

「よかったのじゃ」

「南、秀吉も……ごめん」

 

色々と迷惑かけたみたいだと僕が言うと二人はそろって首を傾げた。

 

「なぜ謝るのじゃ」

「そうだよ。明久頑張っただろ?」

「あはは、姉さんの方が頑張ったと思うよ?」

 

僕なんかより姉さんの方が戦ってたし。僕なんてほとんど何もしてないよ。

 

「ううん、アキヒサも頑張った。だから休んでていいんだよ」

 

南が僕に笑いかけてきた。

 

「……そうかな?」

 

そう聞くと比奈丘さんも秀吉も南も笑った。

 

「そうだろ、頑張った奴には休みはあってもいいだろ」

「そうじゃ」

「ああ、お疲れ様アキヒサ」

「……うん、ありがと」

 

そのままもう一回眠りについた僕だった。今度は多分いい夢見れるんじゃないかな。

 

                   ☆

 

Fクラスの教室で悠里が立っていた。多分今の今まで指示を出していたんだろうね。本当に悠里は凄いよ。

 

「ふぅ、無事解決できたみたいね」

「ただいまー」

 

悠里に声をかければ悠里はあら、とぼくらの方を見る。悠里はぼくを上から下まで見てホッとしたように笑った。

 

「明乃、怪我……してないわね。神海も大丈夫かしら」

「………平気」

 

それからもう一回、ぼくらが大丈夫そうなのを確認してから、悠里はため息をついた。

 

「全く、なんたってこんなことに巻き込まれたのかしらね」

「アハハ……ごめん、ぼくが運悪いから」

 

大体こういったトラブルに二人が巻き込まれる原因ってぼくだよね。苦笑いして答えたら悠里も神海も首を横に振った。

 

「そこじゃないわよ。アンタがもってくる悪いことは大体後にいいことに繋がるもの」

「……同感、明乃のせいじゃない」

「そう?」

 

そうだとうれしいけど、それ単なる慰めだよね。とりあえず、と悠里は言ってからちょっと物騒な目つきになって言った。こういう時って結構怒ってるんだよなぁ。

 

「犯人結局誰だったのかって話よ」

「さあね? とりあえず教室無事で何よりじゃない?」

 

後の事は先生たちに任せよう、いつもは西村先生とか熱心な先生以外そんなにまともな仕事してないんだ。こういう時くらいは仕事してほしいなぁ。

 

「ま、それもそうよね」

 

                   ☆

 

研究室では安堵と歓喜の渦が巻き起こっていた。研究員の一人が学園長に報告へ来る。

 

「報告します。フィールド全消滅、召喚獣の暴走も止まっています」

「はぁ、やっとこさ回復かい……ん?」

 

安心した学園長の端末がメール受信を伝える。学園長が確認してみれば「再度、今回のハッキング事件の犯人について」という件名だった。学園長は内容を確認すると苦笑いする。

 

「……こりゃまた安直なのを」

 

また、メールの着信音が聞こえた。

 

「ふむ」

 

メールを確認する学園長、すると学園長にしては珍しく純粋に驚いたような顔をした。

 

「おや?」

 

さらに添付ファイルを見て学園長はにやっと笑う。その顔は何処か黒幕染みていた。

 

「ほほぅ……はぁ、そりゃ問題さね」

 

                    ☆

 

遠い海に溺れる夢を見た。

 

「……ん」

「あ、ヒロ 起きた?」

 

目を開けて、顔を上げればパソコンの画面が見えた。声を反芻して誰の声か思い出す。

 

「ウミ? あー、接続(ダイブ)解除して……えっと?」

 

いつも接続解除した直後って記憶があいまいになるんだよな。ぼうっとそんなことを考えていると画面の中から声がした。

 

『全く、君はその接続を解除した際に記憶が飛ぶのは少し気を付けた方がいいんじゃないか?』

「え?」

 

驚いて画面を見直せば、そこにはデフォルメ姿のシロウが居た。ちょうどアバターみたいな感じの、何でだ?!

 

『どうかしたのかヒロ』

「ええええええ?!」

 

                    ☆

 

それから一日後、学園長室にして。

 

「どういうことなんですか! 学園長先生?!」

 

学年でも1・2を争う成績優秀者、夢路恵利が学園長直々に呼び出された。そして、彼女は渡された通知について学園長に詰め寄っている。

 

「どうもこうもないよ。アンタがこの学園に及ぼした影響はとんでもないものさ。本当だったら退学ぐらいさせたいものだけどそれは出来ない。だから、これが妥当な処分さね」

 

そう、学園にハッカーを招きこんだのは夢路だったのだ。もっとも夢路自身が直接招いたわけではない。彼女がしたのはハッカーにメールで依頼をすることだけだ。それから学園長の端末に日暮を犯人に仕立て上げた偽証拠の詰まったメールを送りつけるようにも指示した。あくまで指示しただが、十分にその証拠はジナコによって揃っており言い逃れは出来るはずがない。

 

「そんなっ」

 

夢路が持っている通知には以下の事が書かれていた。

 

 

――― 2年Fクラス 夢路恵利 この者を観察処分者とする。

 





そんなわけで完全俺得話終了です。多分今度は閑話休題を挟んで本編に戻りますのでご安心ください。

超絶賛スランプですみませんでしたorz この章終えるのに何日かかったことやら。


閑話休題アンケートの結果はザビエル道場にてお知らせします。


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※ザビエル道場


※メタ発言、キャラの同士の掛け合い、他色々注意


 

??:そんなわけで散々だったようなないような 

??:あー、うん しょうがないよ。そんなわけでお約束!

 

『ザビエル道場!!』

 

親友:ども、今回は度重なるトラブルに恵まれてしまった親友だぜ( =゚ω゚)ノょぅ

ザビ男:基本的に出番薄めだよねと納得したザビ男だよ(´・ω・) 

親友:それにしても今回の騒動は疲れたな 

ザビ男:基本的にコード繋ぎなおせば普通に終わるところをハッキングだの何だので尺が伸びたから 

親友:しょうがないだろ。ああでもしないといろいろと間に合わなかったんだよ 

ザビ男:その結果が度重なる更新遅れ? 

親友:……弁明の余地がないな 

ザビ男:まあ、過ぎたことはしょうがない。間にいろいろと別のものを更新していったのは中の人(さくしゃ)の責任だし 

親友:そうだよなー。俺たちに責任はない! 

ザビ男:とりあえず今回もお疲れ様でした 

親友:よし、そういうことで終わらせよう。そうしよう 

ザビ男:いや、終わらせたらまずいよ。まだ尺あるし 

親友:ちぇ、これでお開きにできるかと思ったのに 

ザビ男:だめだから 

親友:ところで何の話しをするんだ? 

ザビ男:えっと、CCCプレイの話? 

親友:嫁王√をじわじわプレイしてるだけとか言ってたころが懐かしいな 

ザビ男:今じゃ、CCC√もクリア済みだもんね 

親友:……あれ? もしかして実質クリア済みなのこの二つだけ? 

ザビ男:あ 本当だ。意外とほとんどプレイしてないんだ 

親友:まあ、ななぞじもプレイ中だからしょうがない。裏ダンきつ過ぎて話にならないらしいし 

ザビ男:しょうがないんじゃないの? あの幻影・池袋の配置はえげつないよ 

親友:おっと、ゲームしてない人には分けわかんない話だったな。すまん 

ザビ男:さて、反省会といこうか 

親友:反省会? そらまたなんでだ? 

ザビ男:まあ、今回は自分得話だったからね。読者さん全く持って付いていけてないんじゃないのっていう 

親友:……それ、いまさらじゃね? 元々自分得話しかやってないぞ 

ザビ男:でもまあ、迷走に迷走を極めちゃったから 

親友:お前の言うことも一理あるな 

ザビ男:うん、一応弁明、この話のベースはアニメ版のオリジナル話「召喚獣暴走編」だそうで 

親友:まあ、それは最初に明言してたもんな。ただしいろいろどうしてああなったみたいな話も混在しているがその辺への弁明は? 

ザビ男:やりたくてやった。反省はあまりしていない。ついでに言うならオリジナル要素出そうとしたとのこと 

親友:……正しいといえば正しいか?

ザビ男:うん、でもオリジナルすぎてわけわかめ状態になったかも 

親友:まあ、いろいろと伏線がお粗末になったのもツッコミどころだろうけど、そこは無視でいくか。わけわかめといえば、アンケート結果は? 

ザビ男:あー……紅茶と緑茶が2票で麦茶2つが1票なんだけど 

親友:どうしろと 

ザビ男:並びすぎでしょ。とはいえ書くんだけどね!

親友:絶対に途中で投げるなよ 

ザビ男:うん、とりあえずがんばるって言ってた 

親友:終われると良いな 

ザビ男:じゃあ、今回はこの辺でお開きだノシ





今回は本当に俺得話すみませんでした。設定無駄に盛り込んだ挙句の果てにこのぐだぐだですみません

結果発表は先ほどの通り、紅茶と緑茶に2票、麦茶二つに1票でした。本当にどうしようか………

話は変わりまして、ななぞじ(2020-Ⅱ)やっている方っていらっしゃるんでしょうか? 自分のまわりにも一人はいるのですがあまり見かけないなぁと思いまして、やっぱりマイナーゲーム何でしょうか


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閑話休題
第一問



さて、ある休みの日の話をしよう。
まあ、色々あり過ぎて校舎(主に旧校舎)が使い物にならなくなったので完全改修工事が行われることになった。

これは、そんな休日の狂宴騒ぎ(カーニバル)


 

[第一話 始まりは突然に]

 

「くあぁぁ」

 

朝、目覚ましの音より前に目が覚める。学校無いから遅めにセットしたんだよね。それでも学校の時間に起きるのはもう習慣かな。リビングに行ってみれば見慣れた褐色白髪の男が食事を並べていた。

 

「おはよう、マスター 朝食の準備ができてるぞ」

「ありがとう、うーん、なんか妙な夢を見た気が」

 

なーんか忘れたけど。

 

「どうかしたのか?」

「いや、なんでもないと思うよ。疲れてるだけだろうし」

「ならよかった」

 

アーチャーが本日の朝食である和食に合うようにお茶を出してくれたんだけど、目の前に出された湯呑がおかしい。僕が持っている湯呑は波紋が入った綺麗な蒼のはず、それなのに目の前にある湯呑は目に痛い黄色と黒の虎縞模様だ。

 

「なんでトラ柄?」

「は? 何を言っているんだ。普通に……む?」

 

アーチャーがそこで異変に気が付いた。出す前に普通、見るよね?

 

「普通に考えておかしいでしょ。昨日まで普通の湯のみだったよね。じーさんが買ってくれた」

 

せっかくじーさんが僕に買ってくれた物なのに。アーチャーは僕の言葉にかなり驚いた顔をした。そういえばこの話、したことなかった。

 

「え、そうだったのか?」

「あれ、なんか外から聞こえる?」

 

窓を開けてみれば、いつかの覗きが原因の休みの時に聞こえたのと同じ声がした。

 

『こちら毎度おなじみ聖杯戦争、聖杯戦争でございます。敗れた夢、忘れていた願望などございましたら――――』

 

思わず二人で顔を見合わせて呟いてしまった。

 

「……なんでさ」

 

 

 

[第二話 人の話はちゃんと聞こう]

 

「どうなってるのこれ」

 

多分、何も知らないんだろうけどアーチャーの方を向いてみた。アーチャーは真面目な顔で考え込んでから一言、

 

「とりあえず一言だけ言えることは何をやっているんだ。藤村大河」

「え、これってタイガーのせいなの?!」

 

意外な人物が出てきたよ?! そして、彼女のあだ名を言ってみたら何となく納得できた。あいつにとって虎って愛憎入り乱れたなんとも言い難い存在だっけ?

 

「あ、トラってそういうことか」

 

それから気になったことがもう一つ。

 

「ところでなんだけどアーチャー、何で知ってるの?」

「いや、少し心当たりがあってね」

 

平行世界で何かあったのかな?

 

「ふーん、あのなんか妙に頭の悪そうな結界はどうしたら崩せる?」

 

これ一番大事、こんな大がかりすぎる魔術?(もう魔法とかの方が正しい気がするけど無視)は止めた方がいいよね。一般人に迷惑かかるし。

 

「まあ、普通に元凶を叩けばどうにかなるとは思うがね」

「よし、止めに行くか。主にタイガー なんかこの結界闘争本能が上がるみたいだから暴走している人も片っ端から止めに行こう」

 

我ながら珍しく暴力方面に突っ走ってるのは多分、この結界のせいだよね!

 

「?! マスター、いいのかそれで」

「えー、だって面倒じゃないか色々と」

 

こんな時に説得して止まる人間は前回居なかった。

 

「若干虎聖杯に毒されてはいないかね」

「?」

 

毒されてはいないと思うけど?

 

「まあ、君が行きたいというならいいのだがね」

「アーチャーも一緒に行くよ。タイガーの居場所知ってそうだし。いただきまーす」

「なんでさ」

 

いや、高みの見物止めてね。僕一人で行動してもどこかで負けるから、魔術師の貧弱さ舐めるな。

そんなわけで朝食を食べた後、さっそく町へと繰り出してみた。

 

「あれ、アサシンとランサー?」

 

見覚えのある青い髪の男の人と茶色い髪の男の人が言い争っている。何だろう?

 

「何やら言い争っているな」

「とりあえず戦闘になったら止めるでいいかな」

「だな」

 

アーチャーと僕はその場で様子を見ることにした。ちょっとして、ランサーとアサシンの服装が概念礼装に変わる。あ、ヤバいかも?

 

「あ、戦い始めた。アーチャー!」

「了解した!」

 

 

 

[第三話 だから話を聞けと小一時か(ry]

 

戦いは途中乱入した僕らが止めた。うん、背後からドロップキックとかやり過ぎたね。ランサーがドロップキックの決まった頭を抱えて僕を睨みつける。

 

「いてて、いったい何すんだよ」

「いや、近所迷惑防止?」

 

もう何か道がちょっと欠けてるし。アサシンを止めるように頼んだアーチャーの方を見てみればアサシンがちょっと不機嫌そうな顔でアーチャーを見てた。

 

「はぁ、派手にやってくれたな」

「すまない。マスターからの指示だったのでね」

 

アーチャーは涼しい顔で流してる。うん、止めろと言ったのは僕だし合ってるよね。

 

「てか、何で喧嘩してたの?」

「あー、ウチの嬢ちゃんが居なくなってな」

「え、姉さんが?」

 

居なくなるってそんな……何で?

 

「こっちも同じさ。ウチのお嬢居なくなったから探してたんだ。そしたらそこのランサーに遭遇、何故か喧嘩になったってわけ」

「はぁ、マスターの言った闘争本能を高めるは合っていたな」

 

そうだねー。とりあえず心の中のやることリストに一つ付け加えた。

 

「はぁ、やること増えたねってあ、メール」

 

いきなり鳴ったケータイにちょっとびっくりしたけどメールの内容を確認してみる。それは姉さんからの連絡だった。『凛のケータイ見繕うので出かけるってランサーさんとアサシンさんに伝えて。ぼく念話使えないし、凛は伝えるのが嫌なんだって』 一言いうなら何で僕に連絡を入れようと考えたのかっていうことかな。ツッコミを抑えて、連絡の内容をランサーとアサシンに伝える。

 

「……ちゃんと連絡くらい入れておいてあげなよ」

「だな」

 

そんなわけでなーなーでお開きになった僕たちでした。その後も町の探索を続ける。高級住宅街に出た頃、見覚えのある紫がかった髪を見つけた。

 

「あれ、桜ちゃん?」

 

声をかけてみればやっぱり見覚えのある顔が僕の方を向いた。

 

「あ、明久さん」

 

やっぱり間桐家の後継者でウチの弟のことが好きな女の子、間桐桜ちゃんだ。彼女自身はめちゃくちゃにこやかに僕に話しかけて来てくれてるんだけど。

 

「……どしたの?」

「え、何ですか?」

 

なんだろう、こう………殺気がする。それこそ、気を抜いたらさくっと刺されるか、ぐしゃっと潰されるような感じの。

 

「……いや、みなまで言うまい」

「??」

 

彼女は不思議そうに首を傾げた。うん、可愛いけどやっぱり殺気が凄い。アーチャーをちらっと見てみたら顔を青くしていた。ここを一刻も早く離れたい一心で彼女若干ひきつり気味に笑って言った。

 

「それじゃあね。僕タイガー探さないといけないから」

「へ? ああ、それじゃあ――――倒されてください」

 

去ろうとした背後から抜身の殺気が僕に向かってきた。思わず盾用の礼装でそれを防ぐ、それは間桐の魔術に虚数を織り交ぜた特殊魔術だった。これ当たってたら、当たったとこなくなる威力だよね?! 驚く間もなく、アーチャーの背後に紫の髪を見た。

 

「っ?! アーチャー!」

「!」

 

僕の叫びに反応して、アーチャーが夫婦剣を構えて防御を取る。攻撃してきたのは桜ちゃんのサーヴァント、ライダーだ。弾き飛ばされたライダーはすぐに体勢を立て直して、短剣を構える。

 

「させませんよ」

「ライダー、なぜ君が」

 

驚いた顔のアーチャーにライダーが一言返した。

 

マスター(さくら)を守るのが私の役目です」

 

 

 

[第四話 逃げた方がいいと思うよ?]

 

どうにか襲いかかってきた桜ちゃんとライダーを倒した。

 

「ったた、結構きつかった」

「大丈夫かね。マスター」

 

うん、結構きつかった。僕らが話をしているとライダーが桜ちゃんに話しかけていた。

 

「しょうがないですね。潔く負けをみとめましょう。桜」

「うぅ、負けちゃうなんて……先輩との甘々な日々がぁ」

 

そう言ってしくしくと泣く桜ちゃん、思わずアーチャーの方を向いてしまう。

 

「…………」

「何だねマスター」

 

僕の目線が気になったのかアーチャーはいぶかしげに僕を見る。よし、言うか。

 

「ううん、いい加減にしろよアングラー。それだけ。もしくは爆ぜて、アーチャー」

「……なんでさ」

 

この無自覚女子吸引器をどうにかしてください。いや、こいつはなれの果てだって知ってるけどね。傷心の桜ちゃんをライダーは慰めるということで、僕らはここで別れた。それからまた町を捜索していると、向こうから誰かが走って来た。見慣れた銅色の髪とユ○クロで買ってきたようなシンプルすぎる服、士郎だ。

 

「あれ、士郎 どうしたの?」

「あ、兄さん。助けてくれ!」

 

走ってきた士郎がそれだけ言うと近くの路地裏へと行ってしまった。

 

「は?」

 

すると目の前に恐ろしいスピードで金髪碧眼の美少女がやってきた。セイバーだ。かなり慌てた様子で僕らの横をすり抜けようとする。

 

「待ってください! シロウ」

「あれ、セイバー?」

 

じーさんところに某神父がやってきたとき並みの慌てようだったので、思わず声をかけた。セイバーは一旦停止をするとこっちを向いた。息切れ一つ起こしていないってところは流石英霊だよね。

 

「ああ、アキヒサ シロウを見ませんでした?」

「ああ、それなら……」

 

士郎の慌てっぷりが何となく気になったので、士郎の入った路地の方ではなく道の反対側を示してみた。

 

「あっちに行ったよ」

「そうですか。ありがとうございます!」

 

セイバーは物凄い勢いで走って行った。じーさんの魔力大丈夫かな? 気にはなったけど、それ以上に士郎の事も気になるし、路地裏に声をかけた。

 

「……もう出てきていいよ?」

「ありがとう、兄さん」

 

士郎が心底ほっとした顔で路地裏からでてきた。さっそく気になってたことを聞いてみよう。

 

「どうかしたの?」

「あ、いや ほら、えっと」

 

珍しい、士郎がどもったよ。その様子を見て、ちょっとイラついたのかアーチャーがちょっときつめに言った。

 

「はっきり話せ、マスターが困惑しているぞ」

「……ほ、ほら、虎聖杯あるだろ。あれで、ちょっと……」

 

あの聖杯の話、そっちまで行ってたんだ?! 驚くよりも先に物凄く嫌な予感で胸がいっぱいになる。なんでだろう。そう考えたその時、士郎が意を決した様子で僕に言ってきた。

 

「……たまには兄さんが家の中にずっといることないかなぁと。そしたらセイバーからいきなり止められて」

 

なんだろう、今、桜ちゃんの殺気なんかかわいく思えるくらい悪寒がしたんだけど?! なんか士郎の目が昔、会った頃並みに光がないのは気のせいだよね?! 気のせいだよね?!

 

「……」

「アーチャー、頼むからその目止めて。こういう時どういう顔すればいいのかわからないよ」

 

 

 

[第五話 それとこれとは話が別]

 

思わず全力疾走で士郎から離れていた。うん、あれは逃げずにして何処で逃げるのっていうくらいに怖かった。なに? なんなの、あれ。

 

「はーはーはー」

「大丈夫かね。随分と息切れしているようだが」

 

もう、なんか息するのだけでしんどい。それでもアーチャーの一言には反論したくてどうにか息を整えてから僕は言った。

 

「魔術師の体力の低さ舐めるな。ただですら日々の日常生活程度の運動しかしてないんだからこうなるのも仕方がないでしょうが」

「ふむ、それはそうだな。大体あそこでドン引きして逃げ出す君も君ではないのかね」

 

いや、あれは逃げるべきでしょ。逃げる以外の選択肢があったとしたら多分それは大人しく捕まるとかだよ? いや、別に士郎は僕を捕まえようとしたわけじゃないだろうけど、なんでかそういうことが思いついてしまった。うん、あれだよね

 

「うん、でもさ アレだよ。目の前で『アンタのこと監禁したい』とか言われてるようなものだからね。あはは、士郎も冗談きついよねー」

「まあ、あれの目は真剣だったがね」

 

アーチャーが止めを刺した。無理やり現実逃避しようとしたけど無駄になっちゃったじゃないか。

 

「……なんであんなこと言いだしたんだろう。あれかな、最近家に帰ってないから?」

「まあ、概ねそれだろう」

 

休日はなるべく帰るようにしてるけど、南とか秀吉とかと遊びに行ったりしているせいか最近帰ってないし。

 

「ですよねー。はぁ、たまには家に帰ろう……あの礼装だけ完成させて」

「その凝り性をまずはどうにかするべきではないかね」

「あ、それもそうかも?」

 

凝り性は直ることあんまりないだろうけど。ふと、どこかで戦闘音が聞こえた気がした。

 

「ん? あっちかな」

「待ってくれ、マスター」

 

 

 

[第六話 究極の選択?]

 

行ってみれば意外な人たちがそこに居た。銀色の長い髪をポニーテールにくくって、何故か袴姿の妙齢の美人と黒髪の癖っ毛に白シャツに黒ベスト、黒ズボンと流石に夏仕様の恰好。二人は僕らの方を見ると驚いた表情になる。

 

「あら、アキヒサにアーチャーね」

「こんなところで会うなんて奇遇だね。明久、それにアーチャー」

 

うん、僕の養い親であるアイリスフィール・フォン・アインツベルンと衛宮切嗣の二人だ。

 

「あれ、アイリさん? それにじーさん?」

「二人がなんでここに」

 

思わず僕らは二人して素で返す。するとアイリさんはとてもうれしそうな顔で笑った。じーさんの方は若干ひきつったような苦笑いを浮かべる。どうかしたんだろ?

 

「うふふ、さっき面白い放送が聞こえたのよね。ほら、あの虎聖杯っていうの?」

「まあ、僕はアイリに付き合ってるだけだよ」

「う、うん それで?」

 

何故だろう。また嫌な予感がする。直感的にそんなことを感じた直後に、アイリさんが爆弾発言をした。

 

「あれってどんな願い事でも叶うみたいなのだからね。アキヒサとシロウに「お母さん」とか「ばあさん」とか呼んでもらえるように願おうかなって」

「アウトー! どう考えてもアウトォォォォ!!」

 

思わず叫んでいた。

 

「どうかしたのかね。マスター」

 

いぶかしげにこっちを見てきたアーチャーとこそこそと喋る。

 

「考えても見てよアーチャー、アイリさんをお母さんないしばあさん呼びするとかどう考えたってまずいじゃないか。百歩譲ってお母さん呼びするのはいいとしても、ばあさん呼びするとか色んな人にドン引かれるし、只でさえ一緒に歩いていると変な目で見られるのに、これ以上変な目で見られるとか勘弁して欲しい」

 

あの人、一人で歩いてると普通にナンパされるんだよ。しかもこの前、二人で買い物行ったときには彼氏彼女と間違えられるし。これで仮にばあさん呼びとかしたあかつきには、確実に何かのプレイ? とか言われること間違いなしだよね?! パニクる僕にアーチャーは、どうどうと落ち着くように言った後、冷静な顔で言った。

 

「君の主張はよくわかったよ。しかし、どうするんだ。このまま戦うつもりか?」

「うっ、それは……」

 

じーさんとアイリさん敵に回すなんてできない。うぅ

 

「どう選ぼうが君次第だがね」

 

アーチャーだってじーさんを敵に回すのは辛いだろうに、僕に判断をゆだねてきた。

 

「……………僕は」

 

 

 

[第七話 多分これは最善の選択]

 

結局、僕は土下座して虎聖杯を諦めてもらった。そこ、拍子抜けしたとか言わない。だってしょうがないじゃないか、敵に回さずかつ諦めてもらうにはこれしかなかったし。それから一回だけでいいから「お母さん」と呼んでほしいって言われた。気恥ずかしかったけどしょうがないよね。うん、噛みまくりながらどうにかお母さんと言った僕を誰か褒めて。

それからじゃあ、探索を続けようと思ったら謎のコロシアムにやってきていた。なんで?

 

「どこここ」

「やー、まさか君が勝ちきるとはねー」

 

こちらも袴姿、まあ、アイリさんの方はピンクに赤という大正女子みたいな恰好だったのに対してこっちは正統派な剣道の服装みたいなんだけど。とりあえず袴姿の短髪の女の人がいた。ようやく発見したよ。

 

「あ、タイガー」

「こらー! タイガーいうな!!」

 

うん、この怒り方やっぱタイガーだ。納得してると銀色の髪に何故かブルマ姿の女の子がやってきた。

 

「どうするんですか師匠、とりあえず凹ります?」

「え、イリア姉さん?!」

 

何でそんな恰好をしてるの? ツッコミを入れたらイリア姉さんは怒り出した。

 

「ちっがーう、あたしは弟子一号よ!!」

「……とりあえずそこまでにしろよ色んな意味で」

 

主に聖杯、この元凶であろう聖杯。アーチャーはもう、なんか頭痛そうにこめかみをおさえてるし。そう言ったらタイガーがキレた。

 

「うるさいうるさいうるさーい! ふーんだ。そんなこと言うなら聖杯あげませんもんねーだ」

 

そうか、やっぱ雌雄を決するときのようだね。

 

「……アーチャー」

「了解した」

 

うん、それはそれは激闘だったよ。こっちが勝ったけど。

 

「とほほ」

「師匠、しょうがないんじゃないですか? この二人意外と強いですし」

「はぁーあ、しょうがないか」

 

タイガーがそう言いながらなんか虎のイラストが入った魔法瓶を取り出した。

 

「これ、何?」

「なにって聖杯に決まってるわよ聖杯!」

「この魔法瓶が?」

 

ちょっと待ってこれが?! 思わずアーチャーの方を向いてしまった。

 

「ああ、にわかに信じられないだろうが本当だ」

「そ、そうなんだ」

 

うわぁ、何もかもが出鱈目だなこの聖杯戦争。それしか言いようがなかった。

 

「さー早く願い事を!」

「……これ、何でも叶うの?」

「まーとりあえず叶うと思うよ。多分」

 

多分かい! ツッコミの喉でぐっとこらえて叶えたい願いを考える。礼装完成? いや、自力でできるでしょ。アーチャーより家事上手くなる? それも自分で努力するべき。士郎がまともに戻る? ………このなんかあたまのわるい結界のせいだ、多分。ちょっと考えて確実に自分じゃできないことを言ってみた。

 

「じゃあ『エミヤシロウがアラヤ識から解放されますように』」

 

うん、これは自分じゃ確実にできない。英霊のシステムがどうなってるかは前にギルガメッシュとかセイバーにちょっと聞いただけだけど僕一人でアーチャーの信仰を底上げするなんて不可能だろうし。

 

「マスター?!」

 

アーチャーは驚いた顔をしている。聖杯に目立った変化はないしやっぱ無理があったかな。しょうがないので笑ってごまかそう。

 

「なーんて、ん?」

 

頭の上にひらりと紙が落ちてきた。えーっと何々? 

『タイムパラドックスのせいで契約が変わっちまったよ。どちくしょう、そういうわけだから今日から君ガイアの英霊ね―――――― アラヤ識』

 

「………なんでさ」

 

だよね。まさかこんなことがあるとは……。あと結構フランクだな人類滅亡防止の抑止力。

気が付けば僕らは街に戻っていた。アーチャーの顔を見ればなんか言いたいことを我慢している子供みたいだ。

 

「……………」

「アーチャー?」

 

声をかけてみるけど返事はない。僕は思わずアーチャーの目を覗き込みながら話し始めた。

 

「シロウはさ、頑張ったよ。うん、もう滅亡回避(ヒトゴロシ)なんてしなくていいから……」

 

ちょっと腕を伸ばしてアーチャーの頭に触れる。それから思いっきり撫でてやる。髪が崩れたけど気にしないで一番言いたかったことを告げた。

 

「うん、シロウは、よくがんばりました」

「……っ」

 

アーチャー、ううん、シロウは泣きそうな顔をしていた。うん、やっぱり君もシロウだね。

 





とりあえず一言、長すぎてすみません。本来五話に分ける物を全部詰めました。それから別にBLじゃないです。色々と怪しい言動があったことを謝罪します。

そんなわけで、アンケート結果の『魔法瓶使って紅茶』です。
魔法瓶=タイガーコロシアム/アッパー 紅茶=アーチャー(赤弓)でした。

たまにはこんな突飛な理由で救われるアーチャーが居てもいいんだ……すみませんでした。ついでに言うならネタ詰め込みすぎた感の半端なさが酷い。


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第二問

 

山のふもとにある神社の神主(仮)である僕、雨下(うか)いなりの朝は割と早い。

 

「くぁー」

 

今日も今日とて襖越しの朝日を浴びて目が覚める。これが大体5時とか6時、それからいつもの巫女服に着替えて、顔を洗いに行く。

 

「ねむ……」

 

山から引いてきた冷たい水で顔を洗うと少しだけしゃきっとした。うん、やっぱり朝はこれだよね。

 

「よっと」

 

それから部屋に戻り、布団を片付けてからいつものように境内に向かう。

 

「うーん、よし」

 

ちょっと気合を入れたところで用具入れから竹ぼうきを取り出す。日課の朝の掃除だ。しばらく掃除に専念、参道を丁寧に掃き終えた僕は伸びをする。

 

「ふぅ、今日も一日頑張ろうかな」

 

よし、と気合が入ったところに神社の居住スペースの方からピンクの髪に狐の耳、それから青色の和装に割烹着を着た女の人がやってきた。

 

「おはようございます。ご主人様!」

「おはよう、タマモ」

 

彼女は僕の前世のサーヴァントにして、現世のご祭神にして眷属(笑)、玉藻の前。玉藻の前って普通に退治されたはずなのに、何故か僕の家の祭神(分霊)に収まっていた。うん、ツッコミどころは多いけど彼女だから仕方がないよね。

彼女お手製の朝食(完全手作り)を食べてから彼女に声をかける。

 

「ちょっとアジトに行ってくるから」

「そうですか、お早いおかえりを」

 

アジトという名の僕らが集まるいつもの場所に行ってみれば、珍しく誰も居なかった。あれー? 普段だったら、シズかハルが居るのに。

 

「あれ、みんな居ない?」

 

見渡してみれば僕の専用デバイスにメッセージが入っていた。シズとハルからで、今日はどこかに出かけるのでアジトには来れないとのこと。

 

「あー、そうなんだ。そういえばカナは?」

 

普段だったら二人が居なくても休みの日は普通にここに入り浸っているはずの幼馴染にして前世の相棒が居ない。気になってカナに電話をかけてみた。

 

「もしもし?」

『あ、いなりか! 頼む、助け……』

 

出たのはいいけど、なんかいきなりフェードアウトして行ってしまった。私には似合うわけない、とかそんなの趣味じゃないとか色々聞こえたけど最終的には電話が切れてしまった。どうしたんだろう?

 

「え、ちょ、カナ?!」

 

慌ててもう一回電話をかけてみるけど繋がらなかった。

 

「……切れたんだけど、どうしたらいいの」

 

こうなるとアジトに居る意味がなくなるんだけど。どうしよう

 

「うーん、今日は完ぺきにフリーか……そういえば、この前映画のチケット貰った気が……うん、たまにはいいよね」

 

普段の態度が態度だからしょうがないけど、久々に甘やかすことにしますか。そう考えて、僕は家である神社へと戻った。

 

「ただいまー」

「おかえりなさいませ。ご主人様」

 

割烹着は脱いだ彼女が出向かえてくれた。服の方は相変わらずの露出強だけど。丁寧に床に正座してお辞儀してくれる。本当にこういう時は大人しくてかわいいっていうか本当に良妻って感じなのに。

そんな考えを頭から消して、彼女に話しかけた。

 

「タマモ、今日暇?」

「へ、まあ、特に何かあるわけでも……ハッ、これはもしやデートのお誘い! いやん、ご主人様ったら」

 

うん、だからこれさえなければいいのに。後、R-18 籍入れるわけにいかないし。ついでに言うなら色んな意味で問題になるし。とりあえず、これは心を鬼にして伝えないと。

 

「……妄想垂れ流す暇があったらとっとと答えろ駄狐」

 

いつもの事だけどこれぐらい言わないと彼女反省してくれないところについては色々と呆れるか何かしたい気分だよ。

 

「うぅ、ご主人様が辛辣ですぅ。まあ、ご主人様のためならこのタマモどんな予定ああろうが即参りますけどね!」

「暇ならなんだけど、映画見に行かない?」

「映画ですか?」

「うん、知り合いの知り合いが映画好きらしくて最近よく見てるんだって。その関係で余ったチケットくれたんだけど……一緒に行ってくれる?」

 

ちなみに知り合いっていうのはカナの事だったり。うん、カナの映画好きの知り合いって誰だろう?

僕が彼女に尋ねれば彼女はにっこりと笑って。

 

「はい、もちろんでございます」

「そっか、ありがとう。服とか着替えるなら待ってるけど」

 

うん、幸せそうなかわいい顔ありがとうございました。それが見れただけでもいいよね。

女の子的にはそこらへん気にするのかなって思って彼女に言ってみたら、彼女は慌てた様子で立ち上がった。

 

「ありがとうございます。ご主人様! ちょぉっと、お待ちくださいまし」

 

部屋の奥へと消えて行った。それから彼女が別の服着てきたわけだけど、それは諸事情により僕のお古なわけで……彼シャツとかって威力抜群だよね。

 

                   ☆

 

自転車二人乗り(真似はしないように)で映画館へとやってきた。チケットを見てみれば最近はやりの恋愛ものの映画、これ見ようって思った理由を知り合いの知り合いに聞いてみたくなったよ。映画館を真正面に見据えてからふと、思い出したことを呟く。

 

「はー、そういえばまともに映画見に行ったのって多分シズとアニメ見に行った時以来かも」

「あれ、ご主人様ってアニメお好きでしたっけ?」

 

彼女がちょっと首を傾げる。あー、基本的に僕アニメとか見ないもんね。

 

「ううん、シズが好きだから付き合っただけ。露骨に男向けだったからハルのこと誘えなかったんだって」

「へぇ、そういえばあの二人って付き合っているんですよね」

 

あ、恋愛系には無駄に鋭い彼女が珍しく外した。そう思ったらちょっと嬉しくなったのでちょっと得意な気分を隠して、

 

「違うよ。アレで付き合っていないっていうんだからびっくりだよねー」

「え、そうだったんですか?! 私てっきり付き合ってるものと」

 

びっくりした顔も結構可愛いよね。

そんなこんなで中に入ろうとした矢先に金髪の美女と黒髪眼鏡の少年という微妙な組み合わせに遭遇した。突拍子もない組み合わせってわけじゃないけど、三咲の町自体に外国人があんまりいないから嫌でも目立つんだよね。それに、

 

「あれ、なんか見覚えが……」

「む、ご主人様。どちらをご覧になってるんですか?」

 

気のせいかな? 首をひねってると彼女がちょっと不機嫌そうに言った。慌てて訂正を入れる。

 

「いや、どっちも。あの学生服、カナのとこのだし。あの人……タマモ、覚えある? 僕、なんかうろ覚えで……」

「あー……あれじゃありませんか? カナンさんが戦った」

 

それを言われてカナが戦って言うサーヴァントを思い出す。ライダー、アーチャー、キャスター……あ。

 

「ああ! ガトーのサーヴァントだっけ。あれもバーサーカーじゃ」

「まあ、あそこは月ですからねー。見たところ真祖の吸血鬼で間違いないみたいですし、あれがマスターではねぇ……」

 

うん、表側に居た頃のログ見せてもらったけどあれは結構強烈だったよね。

 

「まあ、あの人肩の力さえ抜いちゃえば凄い人なんだけど」

 

一応フォローは入れておこう。あの人の『間が悪かった』は凄い理論だと思うよ。そんなことなんてお構いなしに彼女は僕の腕を引っ張る。

 

「ご主人様、映画見ましょう」

「それもそうだね。それにしてもあのバーサーカーも映画好きなんだね」

 

似たような感じで引っ張られていく学ラン君を見ながら彼女とあのバーサーカー似たようなところあるんじゃないのって首を傾げたくなった。

 

                    ☆

 

映画館を出てきた僕らの表情は正反対だった。

 

「うん、結構いい映画だったね」

「うぅ、ご主人様躊躇なんさすぎですよー」

 

満足げな僕と不満げな彼女、いや映画は普通に面白かったんだけど、暗がりの中で彼女が色々とやってきたのがきつかった。

 

「普通に手をつないだり、抱き着いてくるだけならいいけど、流石に……ねぇ?」

「せっかくの暗がりなのに……」

 

いや、普通はやらないから。まさか映画見ててキス迫られるとは思わなかったよ?!

 

「映画を楽しもうよ。全く……」

 

そんなこんなで自転車を押しながら僕らは歩いていった。

 

「お昼どうしようか」

「そうですねぇ。あ、あそことかどうですか?」

「あ、確かに良さそうかも」

 

普通に良さそうなファミレスを見つけたのでそこに入ることにした。

 

「すみません、二人分席開いてますか?」

「二名様ですね。こちらへどうぞ」

 

席に着いて、メニューを広げる。一通り見た後で僕は彼女に聞いた。

 

「うーん、何食べようか? タマモは決まった?」

「はい、こちらの稲荷寿司のセットにしようかと」

 

あー、やっぱり好きなんだ稲荷寿司、そういえば基本的にお揚げ入ってるもんねウチの食卓。

 

「そっか、僕はどうしようかな」

 

僕が一人で悩んでると後から青髪に眼鏡の女の人が入ってきた。一人で席に着くと、財布の中からお札二枚と小銭少しを取り出して机の上に置いた。何してるんだろう?

 

「すみません、カレーチャレンジで」

 

一気に店内の雰囲気が変わったよ?! いきなり戦場かっていうくらいの者になったんだけど何で?

 

「何だろう?」

「ふむ、こちらの品のようですね」

 

彼女がメニューの1か所を示してくれた。何々、超特大カレー、食べ切れたら無料、負けたら支払、横に写真が載ってるけど……

 

「うわぁ、富士山?」

「ていうか、これ食べきるって方が難しくないですか?」

 

どう見たって富士山みたいな物が載っていた。これを食べ切れとか絶対に無理。

 

「まあ、自信があるかよっぽどカレーが好きなんでしょ。僕は……うん、このネギトロ丼のセットにしようっと」

 

とりあえず注文をすることにした。僕と彼女の注文を言ってからふと思いついてもう一品頼むことにした。

 

「あ、すみません。後、あんみつ一つ」

「かしこまりました。稲荷セットが一つとネギトロ定食が一つとスペシャルあんみつが一つですね」

 

僕らの注文の品を待っている間にカレーがやってくる。恰幅のよさそうな男性が持ってきたのは写真で見るよりも数倍大きい富士山のごときカレーだった。

 

「うわぁ」

「アレは凄まじいですね。それに香辛料が強すぎます」

 

うわぁーとか言いながら彼女の顔色が少し悪そうだ。大丈夫かな?

 

「あ、タマモはきついの苦手だよね。お店出る?」

「いえ、大丈夫ですよ。それに注文しましたし」

「ならいいけど、無理しないでね?」

「はい! ふふふ、これで香辛料でくらぁとした私を心配してくれるご主人様、いやぁん」

「……うん」

 

見なかったことにしよう、そうした方が僕の身の安全が保たれる。あとでチョップかまそう、あんの脳内花畑狐は……

それにしてもあの青髪眼鏡の人、凄いスピードで食べてるなぁ。てか、もう真ん中ぐらいまで減ってるし。フードファイターも顔負けじゃないかな。

そんなこんなでお昼御飯も終わったことだし、服でも見に行こうかな。

 

                    ☆

 

店を出た後、歩きながら彼女に服を見に行こうと提案する。

 

「え、服……ですか?」

「うん、タマモの服見に行こうよ。今の服、僕のお古でしょ」

 

彼シャツ状態はもうそろそろ卒業していただきたい。

 

「別に構いませんよ? 神社の事もありますし」

「う、た、確かにウチは割と経営厳しいけど、タマモの服買えないくらい貧乏じゃありません! そりゃ、贅沢なの買えないだろうけど……」

 

ウチの神社結構貧乏なんだよね。まあ、そんなことで嘆くつもりなんてないけど。

 

「ふふふ、そのお気持ちだけで十分ですよ。それにしてもいいのですか? ご主人様のためならダキニ天法使うのもやぶさかではないのですが」

「はぁ、一応そういうの使う連中を叩く側の僕がそれに頼るわけにいかないでしょう。それに……タマモがいてくれたらそれで十分だし……」

 

あ、しまった。そう思った時には遅かった。彼女がちょっと固まってから僕の片方の手をしっかり握って顔をずずいと近づけてきた。

 

「! ご、ご主人様 ワンモア、ワンモア!!」

「ひ、人通りが多いから断る!!」

 

それから開いてる方の手で思わずチョップをかましてしまった。あう

 

「きゃん、うぅ、相変わらずのチョップ無双ですねぇ?!」

 

うん、ごめん。思わず手が出ただけなんだ。言い訳しようかなって思ったところにポケットに入れておいたケータイが鳴った。

 

「……あれ? 電話」

 

とりあえず誰かを確認すれば、月に居るカナ大好きの後輩(白)だった。こっちに電話かけてくるなんて珍しい。

 

「はい、もしm『ギルガメッシュ―――――!!』  ?!」

 

いきなり電話口で恨みごとのように大声で叫ばれた。一体どうしたの?! というかこれって黒い方の後輩だよね?! 電話が切り替わった。

 

『あ、ごめんなさい。今、ちょっとあの子たち、荒れてて』

「えっと、サクラ一体何が?」

 

後輩(白)に戻ったらしい。状況を問いただしたら。

 

『あー、えっとこれ見ていただけますか?』

 

デバイスにメールが来た。添付ファイルを開けて見れば、やけくそと言わんばかりに盛大に笑った我が相棒と太古の金ぴか英雄王、ギルガメッシュが写ってた……ウェディングドレスと白タキシードで。

 

「へぇ……ついにカナンさんあの金ぴかとくっついたんですか」

「いや、カナに限ってそれは無いでしょ。確かタイプは後輩系女子かモブ系同級生女子だし」

 

前世でそんなこと言ってた記憶がある。

 

「そういえばカナンさんって元男でしたよね」

「うん、まあ僕としてはもう女の子でしょって言いたくなるけど、それはそうとこれは?」

 

話を写真の方に戻してみた。

 

『えっと、如月グランドパークってご存知ですか』

「まあ、現在タマモと行きたくないとこワースト1だけど」

 

確か強制結婚……あ、読めた。

 

『この画像五秒ほど前に出されたんです。あ、普通に全データ削除しましたよ。コピーとかカメラのフィルム含めて!』

 

ドヤァって感じがしなくはないけど生憎僕がこの後輩を褒めたところで意味はないよね。

 

「お疲れ様、まあカナの表情から見て悪乗りもしくは強制って感じだから心配はしなくていいだろうけど」

『どっちかって言うと悪乗りの線が強そうですけどまあ、そこはいいんです。とりあえず後で先輩に真相聞いてもらえませんか?』

 

あー、やっぱ気になってるんだ。まあ、普通に考えたらそうだよね。大好きな先輩によりにもよって金ぴかが寄ってくるとかいやんだろうし。

 

「まあ、それくらいならお安い御用だよ。じゃあね」

『はい、この調子で如月グランドパークのこの計画潰しますね』

 

うふふふふ、と黒くなった白い方の後輩の声を最後に電話が切れた。色々と思うところはあるけど、これは………

 

「……束縛系女子に好かれてるカナもカナだよねー。てか、ギルガメッシュ誑し込んだ実績もあるんだしこれくらいちょろいか」

 

むしろあれは人誑し:☆とかついてそうで怖い。通話が終わって彼女の方を見てみればちょっと不機嫌そうだった。

 

「この手のこと頼むならご主人様よりシズさんの方がよっぽど的確じゃないですか? なんでわざわざ電話してきたのやら」

「ま、まあ 気にしたら終わりでしょ。じゃあ、気を取り直して買い物行こっか」

「! はい」

 

僕らは無事に買い物を終えて家路についたのだった。

 





そんなわけで帰ってきました。一週間ぶりでしょうか?
諸事情+スランプでいきなり更新休止宣言すみませんでした。活動報告にコメントくださった方々、この場でお礼申し上げます。

えっと、そんなわけで『急須使って緑茶』でした。
急須=とりあえず日本 緑茶=キャス狐のED って感じです。無茶ぶりすみませんでした。とりあえず人の予想を裏切ることをしてみたかった。前回の紅茶然り、今回の緑茶然り

キャス狐さんのマスター登場、彼女には妙に辛辣かつ甘いのは仕様です。多分デレがちょっとだけ多めのツンデレ、SGとか探したら『ツンデレ』もしくは『デレツン』がもれなく1に出てきます。


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第三問

 

朝が来た。ジリリリと煩い目覚ましを止めて起き上がる。ぐぅと伸びをしてから。周りを見渡す。うん、今日も今日とていつも通りだよね。

 

「ふぁぁぁ、ねむ……」

 

そんなことを言いながら、ぼくは普段着用のカソックに着替えて廊下を歩く。あー、そういえばランサーさん居ない。そんなことを考えていると髑髏の仮面をつけた女の人が歩いてきた。ウチの親父のアサシンさんだ。

 

「あ、おはようございます」

「おはようございます。明乃様、朝食の用意が済んでいますよ」

 

仮面をつけてるのになんか笑っているのがわかるのは長年一緒に居るからかな。

 

「いつもありがとうございます。そういや、今日、ギル様来てるんだよね」

 

基本的に起こしに行く人いないし、なんかいつの間にか担当ぼくになってるしこれはぼくが起こさないといけないよね。そんなわけですっかりギル様専用になってしまった客間の扉を叩く。このせいでぼくとランサーさんの部屋一緒なんだよねー。まあ、いいけど。

 

「ギル様ー、起きてます?」

 

部屋に顔を覗かせると見慣れた金髪赤目の白シャツに黒のスラックスの男の人、ギル様と全然知らない茶色のウェービーな髪をポニーテールにしたのランニング姿の女の子だ。不機嫌そうにギル様に女の子が食って掛かってた。

 

「そうか、おい、ギル 私に何か用なのか? 今日は友達と服買いに行く予定だったのに」

「はっ、貴様は我の所有物であろう。お前の都合など知らんわ」

 

ギル様がドヤ顔で言えば、女の子が叫ぶ。

 

「だぁぁぁ、相変わらずのギルガニズムかよ。おい」

「……ギ」

 

思わず声が出てしまった。うわ、二人ともこっち見てきた。

 

「あ、え?」

「む?」

 

二人の視線に耐えきれなくなって思わず叫ぶ。

 

「ギル様がついに人拉致ってきたぁぁ?! うわぁぁぁ、カレン姉さーん!!」

 

カレン姉さんのところに思わずぼくは走って行った。背後では二人が会話しているのが聞こえる。

 

「……なあギルガメッシュ」

「なんだ、花楠(かなん)

「ついにってどういうこと?! あれか、どこかの誰かに迷惑かけてんの?! どこの誰か教えて、謝ってくるから!!」

 

それからギル様が宝具解放しようとしたり、カレン姉さんがギル様伸したり色々あってみんなで朝食を食べてから、花楠さん(後で名前聞いた)とギル様がでかけるそうで見送りに出た。

 

「はぁ、本当にうちの暴君がすみません」

 

これだけは言っておかないと不味いよね。そう思って軽く下げた頭を前に戻せば、花楠さんは苦笑していた。

 

「ううん、私のほうこそこれがいつも迷惑かけているようで……」

「これとはなんだ。これとは、まあいい行くぞ、花楠」

「はいはい、じゃあ、朝ごはんごちそうさま」

 

二人はすぐに居なくなった。まずギル様にあそこまで軽い口調で話せる人間が居るってことに驚いた。人間関係ってよくわからないものだよね。

 

「ふぅ、いきなりのことすぎてびっくりだったよ」

 

部屋に戻ってみれば、当然のことながら誰も居ない。ランサーさん何処に行ったのやら? 朝ごはんの時も居なかったし。あれかな、登山?? 意外と趣味だったはずだけど、でも何も言わないのはおかしいし。そんなことを考えながら外を見れば晴れてる。うん、平和だ。

 

「今日はこれといって予定はないし……そうだ」

 

勉強机の上に隠すように乗せていたパンフレットを取り出す。ちょうどいい休日だし、これどうにかしよう。

 

「よし、出かけるか」

 

流石にカソックは目立つから私服の方に着替えて、ぼくは出かけることにした。それで目的のお店に行ってみれば。

 

「あれ、凛?」

「あら、明乃じゃない」

 

意外な人物と出くわした。普通に同じ町に住んでるし出会うのは普通だけど、ここで会うっていうのが普通じゃないんだよね。

 

「どうしたのこんなところで会うなんて珍しい、家電とか好きじゃないのに」

 

ここ、家電量販店の前なんだけど。凛の家って驚くほど家電がないんだよね。最近になってようやく電話入れたんだよね、主な使用者は事情多々で出入りするぼくっていうあたりであの家の家電普及率の低さが丸わかりだよ。

 

「しょ、しょうがないでしょう……ケータイ爆発しちゃったんだから」

「また!? びっくりだね」

 

確かいつかのデート騒ぎの後に買い換えたよね? 指摘したら凛がふくれっ面になる。

 

「またって言わないでよ…………気にしてんだから」

「ごめんって、あ、もしかしてケータイ買いに来たの? 一緒だね」

 

なんか凛の目が希望を見つけたと言わんばかりにキラッと輝いた気がする。

 

「え、明乃も?」

「うん、いろいろとねー。さすがにゴールドは目に痛い」

 

金色のケータイは流石に使う気が起きないよ。

 

「ゴールド?」

「基本的にぼくのケータイ、ギル様のお下がりなんだよね。安上がりだし、たださ、次のお下がりになりそうなのが金一色なんだよ。目に痛い感じの」

 

黒に金とかはゴージャスな感じだけどまあ嫌いじゃないから使ってたんだけど、流石に金色は目に痛い、というか目立つし。

 

「そ、そうなの」

「だから自分用のケータイ買いに行くんだ」

 

机の上にパンフ広げたままだったのはそのせい、ついでに色々あって慌てて隠したんだよね。ぼくがそう言ったら凛が黙りこくってる。

 

「……」

「凛はどういうの買うつもり? ぼくはちょうどいいしスマホに変えようかと思ってるんだけど」

「えっと、スマホ? なにそれ。アタシはほら、あのパカパカするやつ」

 

凛が手の動きを付ける。その動きを見てパカパカが何を示しているのかが分かった。

 

「ああ、折り畳み式のほうか。ガラケーとか?」

「ガラケー?」

「そこからスタートなんだ」 

 

今時ガラケー知らない人がいるんかい。ツッコミを入れたくなったけどまあ、いるところにいるんだろうね。そんなわけでぼく主催「わかりやすいケータイ講座(笑)」が開講した。終わる頃には凛は轟沈した。

 

「うぅ、なんでそんな面倒なのよ。もっとシンプルでいいじゃない」

「あはは……凛的にはシンプルなほうが好きなんだ」

 

まあ、人間楽な方がいいよね。

 

「まあね」

「種類は結構あるし自分が好きなの選べばいいと思うよ? さて、着いたみたいだし、じゃあね」

 

凛に別れを告げて自分のケータイを見に行こうかなと思って足を勧めようとしたら服の袖を少し引っ張られた。

 

「凛?」

「お、おねがいだから一緒に来て」

「……しょうがない、一緒に行こっか」

 

普段ツンが多い分デレが脅威すぎるんだけど……って何ぼくはツンデレ語ってるんだ? あ、そうだ。アキにメール入れておこう。多分アサシンさんとかランサーさんとか探してるだろうし。

それからしばらく、ぼくは凛に付き合いながらケータイを見て回った。

 

「うーん、自分のはこれって決めてたからいいとして問題はこっちか」

 

探し物の一つは見つけたけどもう一つが見つからない。

 

「あの人のイメージって青だよねー、どうしたものか」

「明乃、これどうかしら」

 

凛がケータイのパンフの一か所を指さす。かれこれ三十分ぐらいこのやり取り続けてる気がするんだけど。あれだよね。あれ、小さい子供がはじめての物をどれにしようか迷う図、いちいち保護者にこれがいいかあれがいいか聞いてくる。はっ、まさかのぼく保護者?!

 

「ん? あー、いいんじゃないの? てか、凛が気に入ったのにすればいいと思うんだけど」

「だってしょうがないじゃない。この前は家に来てもらって店員に決めてもらったのよ」

 

流石お金持ち、やることが違うね。

 

「さすがお金持ち……まあ、そこは置いておいて。いっそのことアキと同じのにする? 凛って確か、×××のケータイだよね?」

「え、ええ」

 

流石に会社は覚えてたか、まあ、×××のケータイって有名だもんね。宣伝とか普通にするし。

 

「じゃあ、えっと、あった あった」

「ここ?」

 

ずらっとシンプルなケータイが並ぶ、アキって基本的に通話とかメールさえあれば大丈夫な人間だからこんなシンプルなのでいいんだろうなぁ。

 

「うん、確かアキのは黒に白のこれだよね。確か赤のもあったと思う……あ、あった」

「これ?」

「うん、色違いとかにしたら会話の話題にもできるんじゃない?」

 

まあ、その発想にいたることの方が少ないか。でも好きな人と同じものを持ちたいって結構常套手段なようなないような?

 

「……そうかしら」

「意外とアキって目ざといから気が付くと思うよ」

 

普段会話するのにも四苦八苦している凛にはちょうどいいよね。ついでに凛のケータイ操作技術の向上も兼ねて、爆発されないためにもね。

 

「……決めた。アタシこれにする」

「はぁ、凛は決まったかー。ぼくはどうしよう」

「あら、明乃が珍しいわね」

 

ぼくって基本即決するタイプだもんね。

 

「あはは、自分のは決まったんだけどねー。ランサーさんのやつが」

 

ぼくの言った言葉は意外だったらしく凛が目を丸くした。

 

「は、ランサー?」

「うん、ランサーさんの誕生日って夏至らしいんだよね。ちょっと過ぎちゃいそうだけど、まあいいかなって」

 

丁度今六月下旬だし。

 

「へぇ、誕生日なんてどうやって知ったの?」

「うーん、まだ推測の域を出ないんだよね。確認してないし」

 

なんか聞きづらいんだよねー。多分半年は主従やってるけど未だにお互いに踏み入れない部分って色々あるし。

 

「推測でよくプレゼント買おうなんてこと思いついたわね」

「まあ、ついでに言うならバイト先の連絡が家に来るからもだけど、それって色々不都合でしょ」

 

バイトに電話かけたら教会につながるとかバイト先の人にも迷惑だよね。

 

「まあ、それもそうね」

「そういうわけで、ランサーさんのケータイどうしよう」

「あー、あれとかいいんじゃない?」

 

凛が一点を指さした。そこにはシンプルだけどスポーティーな感じのケータイが並んでいる。うん、これデザイン的にもいいし、ケータイ会社、ぼくの使ってるのと一緒だし。これはいいね。

 

「あ、いいかも。こっちと同じ、○○○のケータイだし。凛ってやっぱりセンスいいよね」

「へっ? と、当然でしょ。アタシを誰だと思ってんのよ!」

 

凛がちょっと顔を赤くしてそっぽを向いた。あ、さては照れてる?

 

「うん、ありがと。凛」

「あんた人の話聞いてる?」

 

凛は呆れた顔になった。なんでだろう? 普通にお礼言っただけなのに。

 

「とりあえずお礼言いたくなったからねー」

「はぁ、こういうときって明久君とそっくりだって実感するわ」

「そう?」

「ええ」

 

そんなわけでぼくらはケータイの契約やらなんやらを済ませて解散することにした。

 

「ただいまー」

「よー、嬢ちゃんおかえり」

 

部屋に帰ってみれば私服姿のランサーさんが出迎えてくれた。何故か頭に氷嚢を乗せて。

 

「あれ、ランサーさん、なんで頭に氷嚢なんて乗せてるの?」

「どうもこうもねーよ」

 

どうやらランサーさんと凛のアサシンさんがぼくと凛を探している最中に出くわしたらしい。それからいつの間にか張られていたらしい頭の悪い結界のせいで戦いになりかけて、アキがドロップキックをかましたのだそう。アキ、そんな体力あったんだね。それにしても

 

「ごめんなさい」

 

謝らないとね。連絡入れなかったこっちの責任だし。

 

「あ、いや 嬢ちゃんが謝ることじゃねーよ」

「あ、うん。ありがとう」

 

ガシガシと頭を撫でられた。なんて言うのかこう、よく頭撫でられている気が。

 

「んで? なんで急に出かけたんだ?」

「あー、はい」

 

プレゼント用の包装なんて気の利いたものを頼む余裕なんてなかったので、紙袋のままランサーさんに渡す。

 

「お? なんだこれ」

 

ランサーさんは普通に紙袋の中の箱からケータイを取り出した。ランサーさんって結構現世慣れしているよね。

 

「携帯電話?」

「ランサーさんのやつないでしょ。だから今日買ってきたんだ。確か、夏至が誕生日だよね?」

 

ぼくがそう言うとランサーさんはびっくりした顔をした。

 

「お、嬢ちゃんよく知ってるな。というか何で知ってんだ?」

「あー、ランサーさんの使う槍なんだけどさ。あれ、心臓に命中する性能とか付いてる?」

 

表現的に妙だったらしくランサーさんが固まる。それからどうにかフリーズが解けたらしく一言。

 

「……まあ、付いてるな」

「うん、そんなわけで、心臓を穿つ槍、ルーン魔術、それから夢で見た経験の端々から真名当ててみた」

 

ぼくが真面目な表情でランサーさんを見据えれば、ランサーさんはにやりと笑った。

 

「ほう、それじゃあ俺が何の英雄なのかわかるのか?」

「うん、ランサーさん、貴方の真名はケルトの大英雄、クー・フーリンでしょ」

 

僕もにやりと笑って返せば、ランサーさんは笑いだす。

 

「くっははは、正解だ」

「ま、正直槍の時点で分かったけど」

 

ランサーさんの笑いはピタリと止まった。

 

「そうか?」

「まあね、本人はともかく槍は有名すぎるし」

「ほう」

 

ランサーさんはぼくの言葉に目を細めた。

 

「そりゃ、日本で一番有名な槍じゃない? あーでも三国志とか中国系を鑑みたらもっと違うのかな?」

「そりゃどうも」

「本人有名かって言われると……いや、ペ○ソナとかで出てくるしゲームやってる人間は割と知ってる?」

 

ぐるぐると思考回路が回る。うーん、実はランサーさんって有名? あれ、でも知名度低いから本来の力出せないっていうし……??

 

「おーい、嬢ちゃん、帰ってこい」

 

こつりと頭を叩かれた。

 

「はっ、ごめんごめん。そういうわけでそれランサーさんの名義にしてるから好きに使ってよ。料金は魔術協会が出してくれてるし」

「お、おう?」

 

魔術教会も太っ腹だよねー。うん、今回はいい買い物をした!

 





そんなわけでして、ランサー誕生日おめでとう?
まあ、かなり過ぎてるけどね!!

えー、『水入れ使って、水出し麦茶』でした。
水入れ=特に深い意味は無し 水出し麦茶=明乃の髪色 という訳ワカメな話でした。
強いて言うならケータイを買いに行く話。それ以上もそれ以下もないです。

そういえば今日は土用の丑の日らしいね。ウナギ食べてないけど(あ


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第四問

「あ、ギル様」

「ああ、小娘か」

「忘れてた。はい、これ」

「ふむ……ほう」

「前にギル様欲しがっていましたよね。知り合いが持ってたから貰ってきたんです」

「なるほどな」

「ただそれ、男女専用ペアチケットなんですよ。大丈夫ですか?」

「なに、当てはある」

 

                    ☆

 

朝、日課になってるランニングをしていると急に悪寒が走った。なんだろう、凄い嫌な予感がする。

 

「……嫌な予感しかしない」

 

どうしたものだろう、今日はさつきと出かける予定なのに。久しぶりに服を買いに行くのに。

 

「うーん、こういう時の予感って大抵当たるんだよな」

 

月の裏側での記憶が脳裏をよぎった。色々とあったなぁ。主に拝金主義とかぱんつはかせないとか恋愛脳(スイーツ)とか色々、基本的にロクな目に遭ってなかったなぁと思った。そんな月の裏側でも一緒に居てくれたパートナーを思い出す。

 

「あー、バーサーカーが恋しい……」

 

そう呟いた時に背後に何か気配を感じた。

 

「!」

 

振り返ってみれば見覚えのある金色と赤を見たような気がした。そこでいきなり私の意識は途切れた。

 

「はっ」

「気が付いたか、雑種」

 

気が付いてみれば、知らない部屋の天井に見覚えのある顔が結構アップで見えた。

 

「ギ、ギル……」

 

とりあえず体を起こして周囲を見渡してみれば、本当に知らない部屋だ。私の家とも違うし、どこか古い洋館を思わせる家具や部屋は縁がない。

 

「というか、ここどこ?」

「冬木に決まっておろう」

 

なにをさっくりと言いやがりますか、このAUO

 

「ちょ、冬木って三咲からかなり離れてるのに、どうやってここまで来たんだ?」

「ん? 我が黄金帆船(ヴィマーナ)に決まっておろう」

 

ドヤ顔でそう言い切ったぞ。この慢心王、うわぁ神秘の秘匿とか大変なことになってるんじゃないか? それにまさかあのヴィマーナ使うとは……インドの英霊もこんなしょうもないことに使われるとは思ってなかっただろうな。

 

「そうか、おい、ギル 私に何か用なのか? 今日は友達と服買いに行く予定だったのに」

 

さつきと約束してたのに。凹んでるとそんな私の顔を見たギルガメッシュが見下したような顔で笑う。

 

「はっ、貴様は(オレ)の所有物であろう。お前の都合など知らんわ」

「だぁぁぁ、相変わらずのギルガニズムかよ。おい」

 

思わず掴みかかってしまった。

 

「……ギ」

「あ、え?」

「む?」

 

部屋の扉から茶色の長い髪に茶色の目の女の子が顔を覗かせていた。思わず二人で彼女の方を見れば彼女がちょっと怯えたような顔をしてから叫びだした。

 

「ギル様がついに人拉致ってきたぁぁ?! うわぁぁぁ、カレン姉さーん!!」

 

彼女は大声を上げて何処かへ行ってしまった。とりあえず。

 

「……ギルガメッシュ」

「なんだ、花楠(かなん)

 

掴みかかった手にもっと力が入る。

 

「ついにってどういうこと?! まさか、どこかの誰かに迷惑かけてるの?! どこの誰か教えて、謝ってくるから!!」

「何を言うかと思えば、そのようなもの不要であろう」

 

もう、それこそ頭を抱えたくなる。てか、頭を抱えた。

 

「あるよ!! 大ありだよ、バカ! あああ、もうなんでこいつはこう他人に迷惑かけないと生きていかないの」

「雑種」

「あ」

 

殺気のこもった声に、ギルガメッシュを見てみれば背後にゴゴゴと何やら嫌な音をさせている。うわぁ、久方ぶりデスね。ゲート・オブ・バビロン。

 

「貴様はふぐぁ」

「?!」

 

なんか赤い布でギルガメッシュが絡み取られる。あっけにとられてると背後から声がした。

 

「……全く、ここは神聖なる教会です。それにこの場での宝具解放をしないことを条件にここに入ることを許したのに」

「えっと、どちら様?」

 

先ほど女の子が飛び出していった扉の方を見てみれば、また別の女の子が居た。白い髪のシスター服の女の子だ。

 

「こんにちは」

「えっと、あの……大丈夫ですか?」

「あ、さっきの ごめん、あのAUOが迷惑かけたみたいで」

 

ひょこっとさっきの女の子が入ってくる。こっちの子はカソック服だ。なんで? まあ、それはいいとしてこいつが日常的に迷惑かけてるっぽいし謝っておこう。

 

「いえ、こちらこそすみません。まさかよその人を拉致してくるとか」

「おい、花楠 我を王と呼ぶのは当然のことだが、英雄王の発音がおかしいのではないか」

 

もうギルガメッシュは復活していた。流石人類最古の英雄王、復活も早い、こういう時は誤魔化そう。

 

「さすが、復活早い。それから気のせい、気のせい」

「……ふんっ、ならいいが」

 

うん、意外とちょろいよなこいつ。懐かしさを感じていると女の子二人が驚いた声を出した。

 

「……えっと、マジ?」

「意外ですね」

「どうかした?」

 

なにがそんなに意外だったんだろう?

 

「いえ、あの英雄王があそこまで素直になるとは」

「うん、意外というか奇跡?」

「え?」

 

そうなのか? あ、でも出会ってすぐは割と……むしろあれか、私の事なんて歯牙にもかけてませんでしたよね英雄王。

 

「まあいいや、迷惑かけたお詫びってわけじゃないけど朝ごはん一緒に食べませんか?」

「いい?」

「ええ、元々朝ごはんが出来たから呼びに来たので」

「じゃあ、いただいてもいい? ちょうどランニング中で朝飯食べていないから」

 

正確には食べる前に拉致されたといったほうが正しい。ああ、多分今日はハルお手製のオムレツ付きモーニングプレートだったのに。残念だ。

 

「大丈夫ですよ。基本的に来る人拒まずですから」

「ありがとう。そうだ、自己紹介を忘れていた。私は(ひじり)花楠、三咲町の住民。一応、少しは魔術世界とは関わりあるから秘匿とかは気にしなくて構わない。それからギルガメッシュとはちょっとした腐れ縁ということでよろしく」

 

全く名乗っていないことを思い出して、名乗ることにした。ついでにフォローも忘れない。下手にここで転生とか喋ったらヤバいことになることは嫌でもわかる。

 

「そうですか、よろしくお願いします。花楠さん、ぼくは言峰明乃、この教会に住んでいます。えっと、聖杯戦争の監査役兼ランサーのマスターを務めさせてもらっていて、えっと……」

「監査役ってごつい男のイメージが大きい……ん? 言峰?」

 

どもった茶色い方の髪の女の子こと明乃ちゃんの言葉を反芻させて、ふと気になる単語を見つけた。

 

「何か?」

「……なんでもない」

 

こんなかわいくていい人そうな子があの購買店員の娘とかないない。多分義理か何かだろう。

 

「ならいいですけど、じゃあ案内しますね」

 

食事は割愛、一応一言美味かった。それからすぐにギルガメッシュに引っ張られて出かけることになった。それにしても、ここでのこいつの服装いたってまともだよな。なんか黒っぽいジャージみたいなのに、白のインナーに黒のズボン……うん、ちゃんとした普段着持ってるなら着てほしかった。あの大阪のおばちゃんが着そうな代物は勘弁して欲しかった。

明乃ちゃんが見送りに来てくれた。本当にいい子だよな。

 

「はぁ、本当にうちの暴君がすみません」

「いやいや、私のほうこそこれがいつも迷惑かけているようで……」

 

全く、どんだけ余所様に迷惑かければ気が済むんだこの暴君。

 

「これとはなんだ。これとは、まあいい、行くぞ花楠」

「はいはい、じゃあ、朝ごはんごちそうさま」

 

とりあえず引きずられるようにして、私はその場を離れることになった。

 

「うん、おいしかった」

 

味を思い出して思わず呟く、ハルのオムレツ食べ逃したのは残念だったけど、朝飯は美味しかった。

 

「では参るぞ」

「どこにだ?」

 

いきなり連れてこられただけだから何処に行くのかも知らないんだけど。

 

「見よ」

「あー、如月グランドパークか、色々と話題になってる。それにしてもさすがギルガメッシュ。入手困難なチケット手に入れるとは、しかもプレミアム」

 

ギルガメッシュの手には如月グランドパークのチケット、しかもプレミアムバージョンが握られていた。

 

「当然であろう、王たる我が凡俗のチケットで行くと思うか」

「ま、それはそうだと思う」

 

こいつが普通のチケットでいくとか予想が付かないし。

 

「それにしても、いつもながらに貧相な恰好よの」

「元々朝のランニング中だった。普段だったらもう少し見れた格好する」

 

現在ランニング用のノースリーブにショートパンツにスニーカー、とりあえず遊園地に行くやつがする格好ではない。

 

「そのような姿で我の隣に並ぶなど愚かにも程がある。丁度よく店も開いたようだし行くぞ」

「え、ちょ は?!」

 

普通に歩いていたわけだが、いきなり手を引かれると目の前にある服飾店へと引きずり込まれた。

 

「……なんでこうなるんだ」

 

店内に連れて行かれた私は完全に着せ替え人形と化していた。現在は少し露出度が高めのスポーティーな服装。それをじろじろと上から下まで眺めたギルガメッシュが傍に控えていた店員さんに言いつける。

 

「ふむ、もう少し清楚なものを持ってこい」

「は、はい」

 

ご愁傷様です店員さん。心底同情します。開店直後にいきなり札束出されて無茶苦茶な注文を数多く言い渡されるとか……私が店員だったら心底嫌だ。

それでも店員さんは割と根性のある人だったみたいで別の物を持ってきた。フリルがちょっとだけ入った淡い黄色のブラウスにの黄緑カーディガン、それからこちらも淡いオレンジのロングスカート……何この清楚なお嬢様スタイル。

 

「こちらなどいかがでしょうか?」

「は? こんなの、着れるか!」

 

可愛いけど、可愛いけど、着られるわけがあるかぁぁぁ?! 慌てた私の表情を見てギルガメッシュはにやりと笑う。あ、楽しんでますね英雄王。

 

「ほう、良いではないか」

「え、ちょ タンマ!」

 

ポケットの外に出して、戸棚に置いていたケータイが光ってる。着信だ!

 

『もしもし?』

「あ、いなりか! 頼む、助けてく」

 

れを言うよりも先にギルガメッシュにケータイを取り上げられる。

 

「なに電話なぞしている。行くぞ」

「ちょ、まて こんなのが似合うわけないだろ」

 

食い下がればギルガメッシュがにやりと笑う。そんでもって、私のケータイの電源は切られてしまった。

 

「我が良いと言っているのだ。それでよかろう」

 

相変わらずのギルガニズムですね。そんなわけで渋々それに着替えた後、タクシーを拾って件の如月グランドパークへと着いた。

 

「いらっしゃいマセ! 如月ハイランドへようこソ!」

「これでお願いします」

 

この人なにとは言わないけどエセすぎるだろとか内心ツッコミを入れながら、係員にチケットを見せる。

 

「拝見しマース」

「?」

 

チケットを確認した後、エセ係員が小声でマイクに何かしゃべりだした。

 

「―――私だ。例の連中が来た。ウエディングシフトの用意をはじめろ。確実に仕留める」

 

そういえば忘れてた。ここのキナ臭い噂。

 

「……ギル、無性に帰りたくなった。帰っていい?」

「ならん」

 

即答ですか。

 

「ですよねー。私は絶賛帰りたい」

「ならんと言っておろう」

 

二度目も即拒否られた。

 

「帰らせろくださいお願いします」

「ほう、王たる我に意見すると」

「っ」

 

顔がぐっと近づけられて、首元に手が伸びてくる。やば、首絞められる?! かと思ったらすぐにギルガメッシュの手の感触は無くなった。代わりにあるのは若干の違和感。

 

「ちょ、なにした?!」

「うむ、丁度良い首輪だ」

 

実に満足げにしないでほしいんだけど。状況を見てみたら唖然としたくなった。

 

「……マジで首輪付けたんかい」

 

その辺にあった鏡っぽいところで確認してみれば、首には多分首輪をモチーフにしただろうチョーカーが付いていた。うわぁ……さっきの店で何かを熱心に見てたみたいだけどこれか。

 

「あー……悪趣味な首輪だな」

 

カリカリと取ってみようとするけど外れない。それに外そうとしたらその手をギルガメッシュに抑え込まれた。

 

「これあとではずすよな?」

「外すなどという選択肢があるとでも思ったか?」

 

おい……おい。

 

「……BBに言いつけてお前の今後編纂させる」

 

うん決めた。今決めた。今後もこの調子だったらそうしよう。私が口にした名前にギルガメッシュは眉をひそめる。

 

「………BBだと?」

 

どうやらこいつはBBが居るとは思っていなかったらしい。

 

「私のかわいい後輩に文句があるならご自由に、あれはあれで健気だと思えば健気」

 

たまに愛が重いけど。

 

「アノー」

 

エセ係員は私たちの会話に実に入りづらそうにしていた。あ、忘れてたわ。

 

「うるさい道化は黙っておれ」

「は、はい……」

 

ギルガメッシュの睨みつける。効果は絶大だ。まあ、冗談はそれまでにして係員がかわいそうだったので、ギルガメッシュの服の袖を少し引っ張った。

 

「しょうがない、ギル行くぞ」

「まあ、良い貴様が案内するというなら我を興じさせることだな」

 

ま、ついでにウェディングシフトも回避ってことで。

 

「つまらん」

「さいで、まあ一通りは回った」

 

それから二時間ぐらいで、絶叫マシンに迷路、メリーゴーランド、月並みっちゃ月並みだけど普通のところは回った。あ、一つだけ残ってる。

 

「お化け屋敷行くか」

「? お化け屋敷、なんだそれは」

「え、知らないの?」

 

まさかの英雄王がお化け屋敷をしらないとか、驚いてるとちょっと目をつぶっていたギルガメッシュが目を開けてにやっと笑った。

 

「……ああ、なるほど。魍魎共の巣穴を模した屋敷ということか」

「正解、さーて気合い入れていくか」

「ん? 何か貴様に意気込む要素でもあるのか?」

 

これは重要なことだ。

 

「うっかり攻撃しないように、勘違いして普通の人に攻撃とかシャレにならない」

「はははは、それは見物だな」

「いうだけ言えばいい」

 

そんなわけで、廃病院を改造して作ったという、噂のお化け屋敷に向かうことにした。入ろうとする直前に係員が声をかけてきて、誓約書を書かされそうになった。誓約書が要るレベルのお化け屋敷ってどんだけこわいんだよとかツッコミを入れながら誓約書を手に取れば、とりあえずツッコミしかない内容の文が書かれていた。

 

「……」

「ふむ」

 

ギルガメッシュが内容を読んで真剣な顔になる。何を考えているのかはよくわからない。誓約書を係員に突っ返す。

 

「とりあえずお断りします。大体お前に戸籍ある?」

「戸籍はあるぞ。十年この時代に現界してるからな」

「そっか、とりあえず中に入るか」

 

そういうわけで雑談をしながら中に入ることにした。

 

「うーん、結構雰囲気はあるか、最近の技術は侮れ……」

 

ふと前を見れば、目の前に信じられない光景が広がっていた。

 

「どうかしたか、雑種」

「……」

 

無言で指を前に向ければギルガメッシュも前を見る。それから言った。

 

「実に恐ろしいのは女ということだな」

「そこじゃないと思うのは私だけ?」

 

それ以上に色々とツッコミどころあるからね?!

 

「他に何があるというのだ」

「なんであんな状況になってるのかを考えたほうが……いや、他人だし気にしないほうが……」

 

何が起こっているんだろう。片や見覚えのある黒髪碧眼の美少女とそれから赤い髪のアイドル、片や確実に見覚えしかない没個性な男女のコンビが何やら喧嘩してた。どっちかっていうと男の子が一方的に責められている感じだけど。シズが女の子誑し込むとかありえないし、誰かと勘違いしてるのか?

 

「あやつめ。これでは主共々共倒れになると思わんのか?」

「逃げよう。ギル」

 

怒りに任せて槍を取り出した赤い髪のアイドルを見て、私はギルガメッシュの腕を取って走り出した。一直線に入口へと戻る。

 

「はーはー、死ぬかと思った」

「お疲れサマでシタ。どうでシたカ? 結婚したくなりまシタか?」

 

まだいたのかよこの係員。

 

「……どう頑張っても無理」

「大体、この雑種を妾にすることすらありえんだろう」

 

うん、それは前に聞いた。というか、無いでしょ。

 

「私の方から願い下げ、大体こいつ相手に吊り橋効果なんて無理」

 

あったとしたら首刎ねられそうになってそれが助かったぐらいだろうけど、処刑人と恋する相手が同一とかありえない。

 

「ま、まア、気を取り直シテ。デハ、豪華なランチを用意してありマスので、こちらにいらして下サイ」

「へぇ、それはいいかも」

 

流石プレミアムチケット、この辺は徹底してるな。

 

「この我の食事を用意するというのであれば全て一級品でなければならんぞ」

「つくづく思うけどギルほどのクレーマーはあんまり居ない」

「何だと」

 

くだらない話をしながら私たちはランチの会場へと案内された。

 

 





そんなわけで続きます。ここまで長くなるとは正直思っていませんでした。
見事に長すぎて一昨日、昨日は更新できませんでした。


一応ベースは如月グランドパーク編、うっかりずっとハイランドだと思い込んでいたのでそれは訂正します。

見事にバカの出番がなかったんだ。どうしよう、それからシズハルコンビと対峙していたのは月海原の方のリンとランサーでした。暗がりなんでウミとシズを間違えただけです。四人とも普通な方のチケットで来たので企業の陰謀は知らない。


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第五問

 

しばらく歩くと、小洒落たレストランが見えてきた。

 

「コチラでランチをお楽しみ下サイ」

そう言ってエセ係員が案内したのはパーティー会場のような広間だった。そこら中に丸テーブルが設置されており、前方にはステージとテーブルが用意されている。あれ? この雰囲気、レストランというより――――

 

「クイズ会場だろここ」

「そんなことはどうでもよかろう」

 

そう。一応丸テーブルの上には豪華な料理が用意されているが、TVでよく観るクイズ会場のような雰囲気になっていた。大丈夫かこれ。私は一抹の不安を覚えた。そしてデザートも食べ終え、特に何のイベントもないのか、と安堵しかけたその時。

 

『皆様、本日は如月グランドパークのプレオープンイベントにご参加いただき、誠にありがとうございます!』

 

会場に大きくアナウンスの声が響き渡った。多分、普通にスタッフだな。

 

『なんと、本日ですが、この会場には結婚を前提としてお付き合いを始めようとしている高校生のカップルがいらっしゃっているのです!』

 

飲んでいたコップを置いて逃亡の準備をしようとしたが、ギルガメッシュに阻まれた。ちょ、待てコノヤロ。ついでに言うならこいつは高校生って面はしてない。

 

『そこで、当如月グループとしてはそんなお二人を応援する為の催しを企画させて頂きました! 題して、【如月グランドパークウエディング体験】プレゼントクイズ!』

 

出入口を封鎖する重々しい音が聞こえてくる。げ、退路まで断たれた。どこまで用意周到なんだよこの企業。

 

『本企画の内容は至ってシンプル。こちらの出題するクイズに答えて頂き、見事五問正解したら弊社が提供する最高級のウエディングプランを体験して頂けるというものです! もちろん、ご本人様の希望によってはそのまま入籍ということでも問題ありませんが』

 

根本的に色々とおかしいぞ。

 

『それでは、ギルガメッシュさん&聖花楠さん!前方のステージへとお進み下さい』

 

ご丁寧にも司会が私たちの席を示してくれたおかげで、レストランにいる観客が一斉にこちらへと目を向けた。うわぁ……本当にどうしろと。

 

「まあ、よい。一つ戯れに参加してやるとするか」

「……私に拒否権は」

「無かろう」

「そうですよねー……何でうっかりここに来たんだ私は」

 

ただの体験だと自分に言い聞かせ、渋々と壇上に上がる。スタッフの誘導の下、私と英雄王は解答者席へと案内された。本当にテレビで見るような代物。どれだけ金掛けてる?

 

『それでは【如月グランドパークウエディング】プレゼントクイズを始めます!』

 

私とギルガメッシュの間には大きなボタンが1つ設置されている。コレを押してから解答するというオーソドックスなシステムのようだ。とことんまでクイズ形式かい。正解したらプレゼント、ということは、間違え続けたら無効になるのだろう。ならば……

 

『では、第一問!』

 

ボタンに手を伸ばす用意をし、問題を待つ。さて、どんな問題が来るんだ?

 

『ギルガメッシュさんと花楠の結婚記念日はいつでしょうかっ?』

 

……おかしい。問題文の意味がわからない。私の思考回路が一瞬停止した。

 

―――ピンポン 

 

その軽快な音でハッと意識が戻る。手元を見てみれば、うっかりボタンを押していた。

 

『はい、花楠さん どうぞ!』

「え、あ……そもそも結婚してないから結婚記念日は無い」

 

うん、それは間違えようもない事実だ。

 

『はい、正解です! ご結婚なさる時にはぜひ我が如月グループの結婚式場で!!』

 

……うっかり本気回答(マジレス)してしまった。

 

『第二問!お二人の結婚式はどちらで挙げられるでしょうか』

 

だからツッコミが色々と。

 

―――ピンポン 

 

軽快な音が隣からした。見ればギルガメッシュがボタンを押している。あれ?

 

『はい、ギルガメッシュさん どうぞ!』

「この我が式を挙げるのだ。最高の部屋でなければならんぞ」

『正解です! お2人の挙式は当園にある如月グランドホテル・最高クラスの鳳凰の間で行われる予定です』

 

……相変わらずのギルガニズムっすね。英雄王、それはともかく、ここってホテルまであるんかい。

 

『どんどん行きましょう。第三問、お二人の出会いは?』

 

―――ピンポン 

 

ここは荒唐無稽な答えをすれば。

 

『花楠さん』

「前世」

『おお、前世からの仲なんですね。羨ましい限りです。それでは第四問!』

 

……いや、普通疑えや。まあ、前世に関してはやや事実ですけど! やっぱこれ無理矢理感が半端ないのだが。

 

『花楠さんの指輪のサイズはいくつでしょうか?』

 

ちょい待て、私も知らない。

 

―――ピンポン 

 

『はい、ギルガメッシュさん』

「八号であろう?」

『正解です!』

 

マジか

 

「よくお前分かったな」

「ふん、こんなもの見ればわかるわ」

 

なんだよ。その無駄な能力

 

『ちょっとおかしくな~い?アタシらも結婚する予定なのに、どうしてそんなコーコーセーだけがトクベツ扱いなワケ~?』

 

不愉快な口調のさらには鼻につくような声がした。その場の全員が声の主を探る。すると、そいつらは呼ばれてもいないのにステージのすぐ近くまで歩み寄ってきていた。

 

『あの、お客様。イベントの最中ですので、どうか――――』

『あぁっ!?グダグダとうるせーんだよ!オレたちはオキャクサマだぞコルァ!』

 

うわぁ、面倒な連中が来た。そんなんだと何処かの騎士王に「神は死んだ」とか言われるだろうが……おっと、メタ発言だった。

 

『アタシらもウエディング体験ってヤツ、やってみたいんだけど~?』

『で、ですが――――』

 

あ、司会の人困ってる。

 

『ゴチャゴチャ抜かすなってんだコルァ! オレたちもクイズに参加してやるって言ってんだボケがっ!』

『うんうんっ!じゃあ、こうしよーよ!アタシらがあの二人に問題出すから、答えられたらあの二人の勝ち、間違えたらアタシらの勝ちってコトで!』

 

慌てるスタッフをよそに、そのカップルはズカズカと壇上に上がり、設置してあるマイクの一つをひったくる。さて、ギルガメッシュの方を見てみれば見事に不機嫌そのものだった。これはいつバビロン撃ってもおかしくない。

 

『じゃあ、問題だ』

 

チンピラがわざわざ巻き舌の聞き取りにくい発音で言う。

 

『ヨーロッパの首都はどこだか答えろっ!』

「………」

 

言葉を、失った。

 

『オラ、答えろよ。わかんねぇのか?』

 

確かにわからないと言えばわからない。勉強しなくてもニュースとかを見てれば分かることだが、ヨーロッパは国というカテゴリーに属していたことは一度もないのだから。その首都を答えるなんて不可能だ。

 

『ギルガメッシュさん、花楠さん。おめでとうございます。【如月グランドパークウエディング体験】をプレゼントいたします』

『おい待てよ!こいつら答えられなかっただろ!? オレたちの勝ちじゃねぇかコルァ!』

『マジありえなくない!?この司会バカなんじゃないの!?』

 

バカップルがぎゃあぎゃあと騒ぎ立てる。すると、ギルが解答用のマイクを手に取り告げる。

 

「阿呆は貴様らであろう。そんなものありはせん、幼子であろうともわかることがなぜわからん」

 

まさに正論だった。カップルが絶句する中、ステージの幕が下りてくる。ああ、バカって世の中探せばいるんだ。そう思い知った今日だった。

 

                     ☆

 

無理やりメイク室に通された私は白を基調としたドレスに着替えさせられたわけだけど。

 

「ふむ、これ確実にサーヴァントが違う」

「? なにかおっしゃいましたか」

「いえ、何でもないです

 

」思わず本音が出てしまった。結い上げた髪を纏めるようなヴェールに肩は出すようなデザインの上の部分(初音ミクのアレ)にゴスロリかと疑うような袖口(キャスターの月の裏側での衣装みたいなの)、それからボリュームのあるスカート、靴も何故か足にぴったりだった。どこまで気合入ってるんだこれ。事前に下調べしなきゃ絶対に無理。

 

「お似合いですよ」

「……ありがとうございます」

 

こっちとしてはあんまり嬉しくないけど褒めてくれるのは普通に嬉しいし、一応お礼は言っておこう。

 

「ギルガメッシュ様がお待ちですよ」

「あ、ども」

 

はぁ、どーせあいつの事だし貧相だのなんだの言うんでしょうね。ま、いいけど

待機をしていると、大声のうるさい声が聞こえてきた。

 

『……他のお客様のご迷惑になりますので、大声での私語はご遠慮頂けるようお願い致します』

 

司会の人がんばれ。たまにいるよな、ああいう迷惑な客。

 

『コレ、アタシらのこと言ってんの~?』

『違ぇだろ。オレらはなんたってオキャクサマだぜ?』

『だよね~っ』

『ま、俺たちのことだとしても気にすんなよ。要は俺たちの気分がいいか悪いかってのが問題だろ?これ重要じゃない?』

『うんうん!リョータ、イイコト言うね!』

 

それで世界が構成できたら、多分世の中終わるだろうな。てか、終わったことは事実だから確実だ。調子に乗った下卑な笑い声が一層大きく響きわたってきた。主催側のイベントの邪魔になる要因は排除したいだろうに――――やっぱりあれだけ騒ぐ連中だと手を出せないだろうな。宣伝目的でやっているのに悪評を流されたら意味がないから仕方ないな。

 

『――――それでは、いよいよ新婦のご登場です!』

 

心なしか音量が上がったBGMとアナウンスが流れ、同時に会場の電気が全て消えた。シモークが足元に立ちこめ、否応なしに雰囲気が盛り上がった。……これで出ていくのは面倒この上ない、ついでに言うならギルが色々と煩そうで怖い。

 

『本イベントの主役、聖花楠さんです!』

 

しょうがない。出るか 会場の中へと入る。心なしか会場が静まった気がするがそこは気にしないことにしよう。ギルの方へ一直線に進む。そこには嫌味なくらいに白のタキシードが似合うギルの姿があった。月の裏側に居た頃と同じ調子でギルはにやっと笑みを浮かべる。

 

「ほう、そこそこ見れたものだな」

「ん? 意外、そこまで褒めてくれるとは」

 

本当に意外だ。普通に貶されると思ったのに、ちょっとうれしくて頬が緩んだ。

 

「……」

 

じろっとギルが私を見つめた。あー、頬を緩ませるなってことですか。そうですか。ちょっと真面目な顔に戻ってから、ギルに告げた。

 

「……ギル、私今凄く幸せだって感じる」

「そうか」

 

ギルがそれだけ言った。思わず言葉を続ける。

 

「前の時は結婚も何もなかったから、素直に嬉しい」

「そうか」

「―――ギル、ま「あーあ、つまんなーい!」

 

湿っぽい気分は無駄にむかつく声によってかき消された。顔が無駄に悪役顔ですよ、英雄王。その後も無駄に鼻につく声が言葉を続ける。

 

「マジつまんないこのイベントぉ~。人のノロケなんてどうでもいいからぁ、早く演出とか見せてくれな~い?」

「だよな~。お前らのことなんてどうでもいいっての」

 

ええ、私としてもお前らなんてどうでもいいよ。それからギル、人を殺せそうな笑み浮かべないで、せっかくの美青年が台無しだぞ。

 

「ってか、お嫁さんが夢です、って。オマエいくつだよ?なに?キャラづくり?ここのスタッフの脚本?バカみてぇ。ぶっちゃけキモいんだよ!」

 

んなこと言った覚えねーぞ。ゴラァ

 

「純愛ごっごでもやってんの?そんなもん観る為に貴重な時間裂いてるんじゃないんだけケドぉ~。あのオンナ、マジでアタマおかしいんじゃない?ギャグにしか思えないんだケドぉ」

「そっか!コレってコントじゃねぇ?あんなキモい夢、ずっと持ってるヤツなんていねぇもんな!」

お前らの方がよっぽどコントだぞ。

 

「え~っ!?コレってコントなのぉ?だとしたら、超ウケるんだケドぉ~!」

 

……幼稚だが頭に来た。ついでに言うならどこにそんな単語があった。夢とか一言も語った覚えなんてない。

 

「あ、お姉さん。少しマイク貸してください」

 

「え? あ、はい」

 

私は驚く司会のお姉さんにマイクを貰った。マイクで喋る前にギルガメッシュに視線を送ればしたり顔で頷いてくれた。それから息を吸い込む。一瞬だけ会場が静寂に包まれた。

 

「……ふむ、お前らの方がよっぽどコントだ。お笑いやるならステージとっとと貸すからやりやがれ。行くぞ、ギル」

 

ギルガメッシュと共にステージを飛び下りて駆け出す。閉じられていた教会の扉はギルが蹴っ飛ばして開けた。走る道すがら、ギルが笑う。

 

「ふっ、これが略奪結婚という奴か」

「それは違う。横入りして、花嫁かっさらうのが通例だ」

「まあよいではないか、貴様なんぞ嫁の貰い手も居なさそうだしな」

「そりゃどうも」

 

背後に『お客様?!』と言う単語を聞きながら、私たちは会場を後にした。

それからしばらく、イベント自体は中止に追い込まれた。ま、主役が居なくちゃ無理だよな。それから一応ということで記念撮影、それからドレスと靴を貰って解散ということになった。とりあえず出口を目指して歩いていく。

ちらっとギルの方を見てみれば、

 

「……」

 

実に不機嫌そうな顔をしていた。

 

「……ギルもしかして機嫌悪い?」

「見て分からんか?」

 

それだけ言うとまだ不機嫌そうな顔で黙っている。

 

「いや、見て分かったから聞いてるんだよ」

「あの有象無象共め、我の雑種(マスター)を貶すとはよもや首だけで足りると思うなよ」

 

嬉しいことにこいつは私がバカにされたことに激怒しているらしい。それにしてもまだマスターと呼んでくれるのかと心の中で感動した。転生してもなお、私はこいつのマスターらしい。

 

「ふふっ」

「ん? らしくない笑い方だな。それに頬がだらしなく緩んでいるぞ」

「あ、ごめん。そこまで言ってくれるのがうれしくてさ」

 

私はさらに頬が緩んだ。

 

「はぁ、行くぞ。花楠」

 

こいつにしては珍しく、手を差し伸べてくれた。その手を取ろうとしたその時。

 

「!」

 

視界の端に何かが写ったような気がして思わず避けようとするが、それよりも先に自分に()()()()()()()()がぶつかりそうになっていた。思わず目を瞑ってしまう、が思っていたような衝撃は来ない。

 

「?」

 

目を開ければ、石は足元に転がっているだけだった。

 

「ほぉ……たかが有象無象が我が所有物に手を出すとは大きく出たな」

 

ああ、ギルがキレている。目線を向けてみれば、そこにはあのうるさいカップルが居た。どうやら石を投げてきたのはあいつららしい。一瞬可哀そうに思ったけど、ここで同情してもしょうがない気がしたのでギルに一言告げた。

 

「証拠は残すな。騒がれても面倒」

「ははっ、当然だ」

 

他人を顧みず、己の欲のみで他でもない英雄王を傷つけようとした連中には裁定者の裁きが下ったってことで一つ、あ 別に死んでないぞ。死体出たら拙いし。帰り道にふと気になったことを聞いてみる。

 

「ギル、あの石何で落ちたんだ」

「ん? ああ、その首に巻いたそれであろう」

「これ?」

 

思わず手で触ってしまう。これにそんな効果が?

 

「当然であろう。我の宝物庫の品なのだからな」

「マジか?!」

 

これ、まさかの宝具か。

 

「てか、いいのか? 気前よく宝具とか」

「ん? 貴様は我の傍に居るのだからな、我が宝物を与えたのだ。当然であろう」

 

私の首のそれをなぞってにやりと笑うギルガメッシュ、ああ何となくオチが読めた。

 

「それには実は難点があってな。一度つけると外れん」

「……ああ、宝具を勝手に付けたって時点で読めてたよ。ギルガメッシュ、何でお前の宝具には大体欠点があるんだよ。バカァァァ」

 

日は沈んではいないが、もうそろそろ夕暮れ時の町に私の叫びが響いた。

 

                   ☆

 

次の日、どうにかギルガメッシュを説得して家に帰してもらった私は学校へ来ることができた。席に座ると親友の弓塚さつきが声をかけてきた。

 

「カナちゃん、昨日なんだけど」

 

ああ、そのことか

 

「……ほんっとうにごめん」

「あ、いや。カナちゃん何かあったの?」

「本当にごめんなさい」

 

……もう、謝るしかなかった。それ以上にどうしろと、結局連絡入れられなかったし。

とりあえずしばらくあいつのところに行くのはよそう。一瞬でもあいつに感動した私がバカだった。

 





各一話にする予定でしたがうっかりとんでもない文字数になりました。

そんなわけで『鍋使って、煮出し麦茶』でした。
鍋=……うっかり鍋にしたけど、やかんの方がよかったか。ギルガメッシュの肩のあれ 煮出し麦茶=花楠さんの髪色 結構こじつけですよねー。

上げて落としてみた……落ちまくった感が半端ないけど。CCCのギル√感動でした。むしろギルデレが凄かった。


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※後日談


※完全台本形式です。
※今回のザビエル道場はお休み。
※地の文は各自で補完お願いします。


・ケータイ変えました。(多分衛宮邸にて)

明久「あれ、凛 携帯変えた?」

凛「え、ええ」(ケータイ持て余してパカパカ、ついでに顔真っ赤

明久「そうなんだー。あ、僕のと機種一緒なんだ。困ったことあったら言ってよ。わかること教えるし」(極上スマイル

凛「あ……ありがと」

明久「もちろん」

明乃さんの策は大成功だったようです。

 

 

・結局何が悪かったの?(多分衛宮邸、せかんど)

士郎「なあ、遠坂」(凛にお茶を出して自分も座る

凛「どうかしたの、衛宮君」(ちょっとびっくり

士郎「最近兄さんが俺のこと避けてくるんだ」

凛「え」

士郎「ウチに帰ってきても俺と二人っきりになるの嫌がるし、アーチャーもなんか邪魔してくるし」(頭抱える

凛「う、うーん?」(何言ってるのこいつみたいな顔

士郎「この前の休みの記憶があやふやでさ」

凛「あら、そうなの?」

主に頭の悪い結界のせいでした。

 

 

・お母さん

アイリ「ねえ、アキヒサ」

明久「な、何かな? アイリさん」(なんか嫌な予感

アイリ「また『お母さん』って呼んでほしいなぁとか……ダメ?」

明久「っ……あぅ」

アイリ「じー」

明久「……うぅ」

アイリ「じー」

明久「っ……お、おか……やっぱ無理っ!!」

アイリ「ああっ、うぅ、また呼んでくれたっていいじゃない」(レコーダーを取り出す。

アイリ「しばらくはこれで我慢するしかないようね」

意外に策士でした。アイリさん

 

 

・聞いてみた

いなり「あ、カナー」

花楠「あ、いなり」

いなり「あのさ、如月グランドパークなんだけど」

花楠「……あー、それか」

いなり「何かあった?」

花楠「いや、ギルガメッシュはギルガメッシュだって再確認した」

いなり「??」

花楠「それで?」

いなり「いや、これ……」(件の写真を見せる。

花楠「え? 何で?!」

いなり「大丈夫だよ。僕以外にはサクラたちしか持ってないから」

花楠「……それこそ避けたいところだったのに」(ずーん

本当の意味での真相は闇の中

 

 

・お似合いですよ。花楠さん

花楠「あ、あのさ」

BB「なんですかー? センパイ」(なんか布もってじりじり

花楠「なんなのこの状況」(後退する

BB「うふふふ」

花楠「……サ、サクラさん?」(壁にぶつかる。それからいい笑顔のBBが壁ドン

花楠「う、うわぁぁぁ」

暗転

花楠「……どうしてこうなった」(白いドレス姿

BB「きゃー、センパイお似合いです!」(超上機嫌

花楠「サクラ、これは」

BB「私お手製のウェディングドレスです! あんな企業が作ったドレスなんかより絶対こっちの方が素敵です」(ドヤァ

サクラ「先輩、私も作りました。こっちも着てください」(ドレス持ってる

メルト「まさか貴女をこんな人形みたいにできるなんて……夢みたい」(こっちもドレス持ち

リップ「うぅ、ドレス持ってないから参加できない……」(しょぼーん

まさかの着せ替え人形化

 

 

・二度あることは三度ある。

花楠「なぁギル」

ギル「何だ雑種」

花楠「……本気でいい加減にしろって言いたいんだけど」

ギル「?」(何言ってるんだこいつって顔

明乃「ギル様ごは……花楠さん、またですか」(部屋に入ってきて驚く

花楠「まただよ。いい加減にしろよって言いたくなる」

明乃「本当にすみません」(ぺこり

また拉致られた花楠さんでした。

 





今回の閑話休題編終了です。

次回は多分オカルト召喚獣編になる予定。え? 期末? なんか普通に終わりそうなのでなしということになりました。


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オカルト召喚獣編
第一問


 

文月学園学園長室、そこでは野暮ったいボブショートの髪をした黒縁メガネに白衣の女性、ジナコ=カリギリと学園長、藤堂カヲルと補講教員、西村宗香と二年生の学年主任、高橋教諭がとある召喚獣を囲んで会議していた。三人の前には宗香の姿をした手に経を持った等身大の召喚獣が居る。

 

「えー、これどうするっスか」

「まあ………夏だね」

「学園長、そういう問題ではありません」

 

高橋教諭のツッコミが入る。ジナコが頭を少しかきながら同意した。

 

「そうっうスよねー、これあの子らにバレたら多分殴り込みとか来るんじゃないっスか」

 

何かとトラブルに巻き込まれる面々の顔をジナコは思い浮かべた。すると宗香が首を振って言った。

 

「うーん、あの子達はともかく別の生徒が殴りこんで来そうよね」

「そうっスか?」

 

そこにノックもそこそこに入ってきたのは、思い浮かべていた顔ぶれではなく、妙に整った顔立ちの、しかし妙に幼すぎる目をした少年たちだった。

 

「……本当だったっスね」

 

                   ☆

 

元Aクラスの現Fクラス、最近の工事のおかげで全クラスにクーラーが入った。ついでに隙間風があった部屋も補修されたんだよね。良かったよ

 

「それにしても補習って面倒だよね」

「まあ、あれだよ成績で補習とかじゃないだけマシじゃないかな」

 

それでもやっぱり面倒なものは面倒なんだよねー。何で夏休みになってまで学校に来なくちゃいけないんだろう。そんな感じで姉さんとだべってた。

 

「まあね。あれだよね学校の補修が原因で補習って……ギャグ?」

「寒いよ」

 

うん、正直自分でも寒いなぁっておもったよ。まあ、補修するのに結構時間食われたもんね。

 

「だよね。そういえばシステムの補修終わったのかな?」

 

個人的には大丈夫かどうか気になるんだけど。姉さんは凄く渋い顔をした。

 

「もうトラブルは勘弁してほしいよ」

「じゃあ、下手に何もしないってことで」

 

まあ、トラブル続きも勘弁だしね。期末のときはどうにか普通だったのにこれ以上何か起こったらもう嫌だよね。特に姉さんは色々と巻き添えくらいやすいし。

 

「アキヒサー」

「あれ、南どうしたの」

 

南が急にやって来た。何か慌てた様子だけどどうかしたのかな?

 

「Dクラスで召喚獣を召喚したんだって、そしたら……」

 

何か物が倒れる音がした。旧校舎の方からだ。

 

「何事?!」

「また召喚獣の暴走とか勘弁して!」

 

姉さんの魂からの叫びが聞こえた。またなんかトラブルかと南の方に視線を向けたら南が慌てた様子で言ってきた。

 

「何か等身大の召喚獣が出たんだって。しかも何かお化けらしくて、それでびっくりした他の人も召喚したら他の人のも化け物っぽいのが召喚されて」

「うん、わかった。とりあえずまたトラブルかい」

「もう勘弁してよ」

 

何でこの学園ってトラブルが絶えないのかな。もうそろそろ平穏な日常が欲しいよ。普段もFFF団とかで色々とロクでもない日常送ってる気が……。

 

                   ☆

 

さて、お化け召喚獣が呼び出されたその後、ぼくと悠里は学長に呼び出された。ぼくたち何かやらかしたっけ? とか話ながら学園長室に入ってみれば、学長とジナコさんが居た。

 

「で? あたしたちに何か?」

「これを見ておくれ」

 

学長が何かプリント一枚を悠里に渡した。悠里が見ているのをぼくは横から覗き込む。そこに書かれていたのは、

 

「ふむ、お化け屋敷?」

 

お化け屋敷の一文字だった。一体これはなんなの?

 

「オカルトの方面が強く出てしまった召喚獣が原因で一部の生徒が暴走してね。それを収めるためにイベントごとを開こうっていうのさ」

「ま、その案出して来たのはその暴走してた生徒なのに、具体的なことがまーったくなってないお粗末な案だったんっスけどね」

 

うわ、何それ。せめて提案するなら少しくらい具体的なこと考えなよ。例えばどういったコンセプトのお化け屋敷にするとか、どういう形式のものにするとか、召喚獣使うならせっかくだし召喚獣勝負取り入れないと……あ、無駄に色々考えていた。学長たちの方を見てみれば、ちょっと苦虫を潰したような顔をしてる。何かまずいことあったのかな?

 

「でもまあ、この案を呑まないと訴えると煩くてねぇ」

「ウチは良くも悪くも世間様の目が厳しいっスからねぇ」

 

あー、確かにそうか。世間の注目を集めるからこそ、暴走召喚獣なんて騒動引き起こした夢路すら観察処分者にするだけに留まることになるし、集団覗きの騒動だって内々で処分するだけで済ませることになったんだよね。

 

「それでぼくらに協力しろと? でもなんで」

 

呼び出される理由が全く思いつかないや。ぼくたち何かやった?

 

「今年の学園祭の出し物の売り上げの一位があんたたちのクラスだったんだよ」

「ちなみに二位は2-Aの茶房っス」

 

へぇ、確かにAクラスの茶房は良かったよね。こう、全体的に和って感じで。あっちの企画って誰がやったんだろう?

 

「で、その企画力と演出力を買いたいってわけさ」

「はぁ、当然見返りは用意してもらえるんでしょうね」

 

さすが悠里、こういう時には報酬もきっちり取るつもりか。まあ、報酬もないのにやる気はないよね。学長が少しだけ考えてから口を開いた。

 

「そりゃもちろんさ。暴走の一件でも世話になったしね。そうさね、スポンサー企業の特別優待券ならどうだい?」

「うーん……裏でなんかまずいことやってる企業じゃないならいいですよ」

「それは大丈夫っスよ」

 

ジナコさんの情報網舐めないでほしいっスねぇと言われて安心した。ジナコさんが間に入ってくれるなら(多分)大丈夫だよね。

 

「ならあたしもそれでいいわ」

 

そんなわけで二年生全体を巻き込んだお化け屋敷計画がスタートすることになったのだった。

学園長室を出てから、定位置である悠里の左側をキープして、ぼくは悠里に歩きながら話しかけた。

 

「はぁ、悠里いいの? 引き受けちゃったけど」

 

報酬に釣られたとはいえ、こんな大事任されるなんて滅多にないよね。

 

「いいじゃない。ひと夏の思い出には最適でしょ? それにこういうのは腕が鳴るわね」

「あはは、悠里らしい。こういったお祭り系は悠里大好きだもんね」

 

基本的に楽しいことには全力投球だし、後は気に入らない奴に対する対応もすさまじいか。まあ、ぼくも人のこと全然言えないけどね。

 

「明乃も結構そうじゃない。で、協力してくれるのかしら?」

「もちろん、悠里が動くって言うならぼくが動かないわけないでしょ? 派手にやろうよ」

 

ぼくが右手を上に上げれば悠里は笑って左手を上げる。

 

「当然ね。じゃ、行くわよ!」

「おー!」

 

ぼくらはハイタッチをして、教室に戻った。よーし、がんばるか。夏休み入る前では多分一番楽しい行事になりそうだしね。

 




オカルト召喚獣スタートです。まさかの召喚獣判明せずにスタートした件。

西村先生の召喚獣のモデルは経凛々、取り憑いた人に無理やりお経を読ませる妖怪です。妖怪というより九十九神? 本質というよりは何か別物だけど気にしないことにしようかなと。服装は袈裟をイメージしてます。あえての男物は趣味とぶっちゃけ尼さんの服装似合わなさそうだから。


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第二問

「どうしてこうなるのかな」

『暗幕足りないぞ! 誰か先生に言って借りて来い!』

『ねぇ、ここの装飾って涸れ井戸だけでいいのー?』

 

現在、文月学園の新校舎・旧校舎の3階は肝試しのための改装作業で大いに賑わっていた。設置する小道具を受け取りに来た秀吉と南が周りの様子を見ながら呟く。

 

「それにしてもこれはまた、凄い騒ぎじゃな」

「だよな」

「でもさ、それ以上に女性陣のポテンシャルの高さが怖い」

 

見れば姉さんが重そうな木を素手で運んでるし、悠里さんはみんなに檄を飛ばしてる。神海さんは情報収集に駆け回っているのか姿が見えないし、普段なら何もしないはずの比奈丘さんは教室のセッティングのために小物を運んでいる。もちろん広夢も脅かし用の道具なのかなんなのか知らないけどトラップ設置に余念がない。

 

「こらぁぁ、そこ! ちんたらするな!」

 

何か悠里さんが女王様に見えてきたよ。とりあえず荷馬車のように働かされている級友の様子を見ながら僕も脅かし用の道具を準備していた。

小道具班はそれなりに人数は居るんだけど基本は設置担当で製作担当は各クラスから一人か二人出るくらいなんだよね。それぞれ注文どおりのを作るのに忙しくて何も話なんてしていない。

 

「それにしても、まさかAクラスまで協力してくれるとは思わなかったよ」

「Aクラスといっても私たちもあなた達と同じ高校生ですから。勉強ばっかりでは息がつまります。それに期末試験も終わったばかりなので、渡りに船と言ったところですね」

 

僕がぼそりと呟いていたのを聞いていたらしいAクラスの佐藤さんが答えてくれた。佐藤さんも小道具班だから一緒に行動することが多いんだ。

 

「そりゃそっか。遊びより勉強が好きな高校生なんてそうそういないか」

 

個人的にはあそこまでポテンシャルが上がるものなのかってびっくりしているんだけど。

 

「えっと、衛宮君これでいいでしょうか?」

「あ、これはこっちにつけたほうが効果的だよ」

 

そんなわけで脅かし用の小道具作るのをしている僕らだった。

 

「ありがとう、衛宮君ってこういうの作るの得意なんですか?」

「まあ、肉体労働よりは物作りの方が得意かな」

 

ガラクタ弄りが趣味だし。まあ、作業再開しようかとまた作業し始めたときにそれは起こった。

 

「「お前らうるせぇんだよ!!」」

 

何か大声出してハゲた人とモヒカンの人が入ってきた。あ、もしかしてあれか。中華料理屋やったときに麻婆に撃沈、そんでもって営業妨害で西村先生に引っぱられた人たちか。

 

「騒がしいと思ったらやっぱりまたお前らか!」

「お前らはつくづく目障りなヤツだな……!」

 

ひどい言いようだ。大体営業妨害やったのはそっちの方じゃないか。お前らって言うときにチラッと須川君と佐藤さんの事を見た辺りは因縁をつけたいのはその二人みたいだね。

 

「えーっと……誰だっけ?」

 

とりあえずいつの間にか近くに居た須川君に聞いてみる。

 

「衛宮、あの営業妨害だ」

「衛宮君、あの最高学年とは思えない幼稚な頭をした営業妨害ですよ」

 

あーやっぱりそれでいいんだ。

 

「二人ともそれは言いす……あ、大体間違いじゃないね」

「おい!? 今言い直そうとしたくせにおれ達の顔を確認して言い直すのをやめなかったか!? てか、もっと酷くなってないか!!?」

「お前等、おれ達を心の底から営業妨害だと思っているだろ! 常村と夏川だ! いい加減名前くらい覚えろ!」

 

いや、名前自体初耳だから。へぇ、割と普通だね。

 

「それで常夏先輩。どうしたんですか?」

「早く用件を言ってください。先輩方」

 

姉さんと悠里さんが応対に出た。まあ、そっか現場仕切ってるのは実質悠里さんだし。

 

「テメェ……個人を覚えられないからってまとめやがったな……」

「流石はあの観察処分者だ。脳の容量が小さすぎるな」

「いえ、始めから覚える気がないだけです」

「「そっちのほうが失礼じゃ!!」」

「あんたらの方がよっぽど失礼だろ」

 

須川君が横から口を挟む。すると先輩たちは須川君を睨みつけた。須川君もにらみ返す。

 

「須川君、どーどー」

「ん? 衛宮はむかつかないのか?」

 

え、なんでさ。

 

「あんな小物に対して怒ってもしょうがないでしょ」

「どんだけ侮辱する気だ!?」

 

は? そんなの当然、

 

「メンタルへし折るまで」

「おお、衛宮が意外と言うな」

「衛宮君どうかしたんですか?」

 

何か驚いてるみたいだけど普通のことじゃない?

 

「っていうかお前らうるせぇんだよ! 俺達への当てつけかコラ!」

「夏期講習に集中できねぇだろうが!!」

 

なんだか殺気だっているようにも見える。受験勉強でピリピリしてるのかな? とはいえ酷い言いがかりだなぁ。

 

「先輩方、そいつは酷い言いがかりじゃないの?」

「だよね」

 

うん、確かにそうだよね。

 

「大体ここは旧校舎だけど、この前耐久性に対する工事はしたわ」

「うん、そのせいで補習なかったはずのぼくらにも特別補習が付いたんだし」

「それに、本来あんたらが居るのは新校舎よ。それもAクラス、よっぽどのことがない限り音が響くわけないじゃない」

 

姉さんと悠里さんの正論が難癖つけてきた先輩たちに突き刺さる。

 

「「うっ……」」

 

ああ、なるほど。

 

「先輩方は……勉強に飽きてフラフラしているところでぼく達が何かやってるのに気がついて、八つ当たりをしにきたってところですね」

 

姉さんが笑って言うとハゲの先輩はバツが悪そうに目を逸らした。ハゲの先輩がこちらを向いて噛み付いてくる。

 

「それじゃあ言わせてもらうがよ。お前らは迷惑極まりないんだよ! 学年全体での覗き騒ぎに、挙句の果てには二年生男子が全員停学だぞ!? この学校の評判が落ちて俺たち三年までバカだと思われたらどうしてくれんだ! 内申に響くじゃねぇか!」

「学年全体? そんなわけないじゃないですか。ウチのクラスは三人だけですよ」

「ま、やらかした人数は多かったけど、そこまで騒動になりませんでしたよ。学園側がもみ消し頑張ったし」

 

これ結構疲れたっスよーとかジナコさん言ってたよなぁ。つらつら別の事を考えていると悠里さんが先輩に言った。

 

「確かに文月学園のイメージが落ちたのは事実だけど。それが直接的に内申に響くわけじゃないわ? 内申とは先生方がその人の学習活動や学校生活についてを書く文書のことなんだからね。だから、貴方たち三年生がしっかりしてれば内申には響かないことになる。それに文月学園のイメージはこの肝試しが成功すれば上がるわよ。それとも、ただ単に二年生に難癖つけたいだけかしら?」

「逆にこんなことしてる暇があるのなら準備をしたらどうですか? 内申が微妙なら実力で取るしかないんでしょ?」

 

あ、悠里さんも姉さんも怒ってる。

 

「テッメぇら上等じゃねぇか()……」

 

ハゲの方の先輩が召喚獣を呼び出そうとする。フィールドは物を持てる召喚獣のためにはってあったんだった。あ、

 

「全く……3年生はどうしてこうも厄介なことしようとするかね」

 

学園長が来て呆れながらそう言った。

 

「「学園長!?」」

 

この場にいた全員が驚きの声をあげた。うん、まあウチの学園長ってそこまで気軽に会うことないし。

 

「ストレス発散したいなら、あんたらも肝試しに参加すればいいじゃないか、ここで小競り合いをしているよりは有意義さね」

 

そう言って学園長はハゲの先輩とモヒカンの先輩達を見た。当然先輩たちはキレる。

 

「じょ、冗談じゃねぇ。こんなクズどもと……」

「黙りな。ちなみにアンタ等に拒否権はないさね」

 

淡々と学園長はそう告げた。それからちょっとだけ考えるような仕草をして

 

「そうだ。明日の夏期講習・補習の最終日は全員参加の肝試しにしちゃったらどうッスか?」

 

いつの間にか居たジナコさんが学園長に提案しだした。本当に何時の間にそこに居たの?

 

「ふむ…その方がいいかもしれないねぇ」

 

学園長はその意見を聞いて楽しそうにニヤッと笑った。なんだろう、こう、心底楽しんでますね学園長。

 

「「な……っ!?」」

 

ハゲの先輩は驚いて目を白黒させる。

 

「ただし、これはあくまでも補習と夏期講習の仕上げだからね。補習と講習の参加者は余すことなく全員参加すること。いいね」

 

学園長はジナコさんと一緒にそれだけ言うと出て行った。うわぁ、面倒なことになった。

 

「あーあ、面倒だけど。そういうワケだからセンパイ。楽しくやりましょう?」

「お、お前らなんざと仲良くやるつもりはねぇ……」

「だよねー。ぼくもアンタらは気にくわないし……っていうことで、こういうのはどうですか?」

「あぁ?」

 

モヒカンの先輩に姉さんがなにやら紙を渡した。

 

「驚かす側と脅かされる側にわかれて勝負をする」

「二年と三年でわかれて、ってことか」

「ええ、それなら仲良くやる必要は全くないでしょう?」

「悪かねぇな。当然俺たち三年が驚かす側だよな?俺たちはお前らにお灸を据えてやる必要があるんだからな」

「ふむ、本当にそれでいいのね?」

 

あれ、悠里さんもしかして何か考えてる?

 

「ああ、当然だろ。で、ルールは?」

「決まりね。これよ」

 

そう言って悠里さんが取り出したのはA4サイズのプリント。どれだけの数のプリントがあるんだろう? 様子を見ていたら悠里さんがこっちに気が付いてプリントを渡してくれた。須川君と佐藤さんが横から覗き込んできたけど、それを気にせずに項目を確認する。

 

 

・二人一組での行動が必須。 一人だけになった場合のチェックポイント通過は認めない。

 ※一人になっても失格ではない。

・二人のうちのどちらかが悲鳴をあげてしまったら、両者とも失格とする。

・チェックポイントはA~Eの各クラスに一つずつ。 合計五ヶ所とする。

・チェックポイントでは各ポイントを守る代表者二名(クラス代表でなくても可)と召喚獣で勝負する。 撃破でチェックポイント通過扱いとなる。

・一組でもチェックポイントを全て通過できれば驚かされる側、通過者を一組も出さなければ驚かす側の勝利とする。

・驚かす側の一般生徒は召喚獣でのバトルは認めない。 あくまでも驚かすだけとする。

・召喚時に必要となる教師は各クラスに一名ずつ配置する。

・通過の確認用として驚かされる側はカメラを携帯する。

・設備への手出しを禁止する。

 

 

「後はこれに物理による攻撃の禁止を盛り込む予定よ。それからペアを引き剥がすような行為は禁止もね」

 

ペアのほうはFFF団対策でもあるかな。多分あまり意味ないだろうけど……FFF団って世間とかルールとかガン無視していくもんね。

 

「この悲鳴の定義はどうなっている?」

 

モヒカンの方の先輩がプリントを見ながら尋ねる。

 

「そこは声の大きさで判別するつもり。カメラを携帯させるわけだし、そこから拾う音声が一定値を超えたら失格ってところかしら」

「そんな事ができんのか?」

「……問題ない」

「うわっ」

 

いつの間にか来ていた神海さんが親指を立ててサムズアップする。カメラに関しては得意だもんね。

 

「チェックポイントの勝負科目はどう決める?」

「それについてはお互いに一つずつ科目を指定ってことでどう?」

「一つずつ? 二つずつじゃないのか」

「もう既に化学と現国と数学の教師には話をしたから。受験で選択され易いその二つならそこまで有利不利もないし問題ないでしょう?」

 

A~Eクラスなので、チェックポイントは全部で五つか。そのうち二つは現代国語と化学と数学で決定済みで、残り二つをそれぞれが選ぶことになる。

 

「坂本よぉ。それなら……」

「何よ」

「ただ勝負するだけじゃつまらねぇから……罰ゲームを決めようぜ」

 

うわ、何かさらに面倒なことになってきた。

 

「やるわけないでしょう」

「おいおい……坂本。さては、勝つ自信がねぇな?」

「そもそもなんであんたたちに因縁つけられるのかすら不明だわ。正直、勝負事は面倒よ。それにもうちょっと頭働かせたら分かることでしょう?」

「なんだと!?」

 

さすが悠里さん、先輩相手でも容赦ない。まあ、わけが分からない言いがかりっていうのは合ってるか。

 

「大体、この勝負は皆はまだ知らない。それなのに、罰ゲームを相談なしに決めたら学年全体から非難されるに決まってますよね?」

「そんなことも考えられないのかしら?」

「……ちっ」

 

こうして気がつけば肝試しは三年生を巻き込んだ大規模な催しになっていた。どうするんだこれ。

 

「ああ、ちなみにだけど」

 

悠里さんが振り返ってみんなの方を向いてパンパンと手を叩いた。

 

「みんな、急で悪いんだけどこっち側で作った小道具は片付けて頂戴。大丈夫、一般公開のときに使えば平気よ」

「なっ」

「どういうことだよ」

 

突然妙なこと言い出した悠里さんに先輩たちは食って掛かる。

 

「勝負ってものは準備からやるもでしょう? それともあんたたちは後輩に塩でも送られたいの?」

 

悠里さんのことだし何か考えそうな気がしてたけどまさかここまでとはね。悠里さんの隣で姉さんはげらげら笑っていた。

 





ちょっと酷くてすみません。この小説は主に悪ノリでできてます。
常夏の扱いが酷くてすみません。


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第三問

そして、迎えた当日。僕たちFクラスのいつもの面々は出来上がったお化け屋敷を見て驚いた。

 

「うわぁ、気合入りまくってるよ」

「そうじゃな…ここまでやるとなれば、学園側もかなりの投資が必要じゃったんじゃろうに……」

 

お化け屋敷と化した教室を覗いて見て、正直驚いた。薄暗い雰囲気といい、外観からでも伝わってくるほどに複雑そうな構造といい、まさかここまでなるとはね。しかも大まかなところはともかく、小道具系は全部撤収したのにこのクオリティーは流石だ。

 

「とりあえず、これは三年側も結構本気ね。相手も講習最終日くらいはハメを外したかったってところかしら?」

「ここまで頑張る必要はないのに、これマジモンが引き寄せられたらどうするつもりだろう」

「……正直頑張りすぎ」

 

女性陣はあんまり怖がってないっぽい?

 

「だよな!」

「あれ、南テンパってる?」

「そ、そんなわけないだろ」

 

うん、テンパりまくりでしょ。南が怖いもの嫌いって言うのは予想外だなぁ。海外の人って慣れていそうなイメージがあるのに。

 

「代表、確か俺達はFクラスに集合だったよな?」

 

少しケータイと睨めっこをしていた広夢が顔を上げて、悠里さんに聞いた。

 

「ええ。三年はA~Dクラスの教室、あたし達はFクラスでそれぞれ準備。開始時刻になったら1組目のメンバーから順次Dクラスに入っていく寸法よ」

「……カメラの準備もできている」

 

神海さんが大きな鞄を掲げてみせた。あの中には何台かのカメラが入っているそうで、僕達はそのカメラを持って中を進んでいくらしい。不正チェックと通過の証拠、あとは待っている人を退屈させないためだとか、色々と理由があってカメラを使うことになっている。

 

「俺達の準備はカメラとモニターの用意と……組み合せ作りだな」

「そっか。組み合わせを決めてなかったよね」

 

僕達は話をしながら旧校舎の空き教室へと入る。

 

「で、代表。ペアはどうするんだ?」

「組み合わせは折角だから、極力男女のペアになるようにしましょう。その方が盛り上がるだろうし」

「………男女ペア?」

「ええ、やっぱりこういうときはそういうほうが面白いでしょ」

 

悠里さんは悪戯っぽくウインクした。粋な計らいだね。さて、僕は誰と組もうかな? 姉さんとか広夢とか? 悩んでいると、肩を叩かれた。

 

「あれ?」

「衛宮、組んでくれないか? 正直ペア探すのも面倒だ」

 

まさかの比奈丘さんだった。緑色の綺麗な髪をガシガシと掻いている。あー、これは渡りに船かな。そう考えていると背後で声がした。

 

『会長。我等の意に反し女子と組もうとする輩が……』

『『『異端者に死を!』』』

 

やっぱりソレを嗅ぎつけない程甘くはない。それがFFF団こと、異端審問会のメンバーだよね。本当に休日にまで出張ってくるほどのしつこさだ。でも対策はある。

 

「ねえみんな………もし僕を処刑しようとしたら、それこそ女子から評判が地に落ちるんじゃない?」

「どういう意味だ?」

「大体、女の子はそんな暴力的な人と組みたいって思う?」

「私なら断るな。面倒ごとは避けたい」

 

比奈丘さんに同意を求めてみれば即同意してくれた。僕が言ったところで何の効果もないだろうし、こういうときは女の子を味方につけるのが一番早いよね。

 

「よしっ!今回の件は不問とする。皆もいいな!」

『『『意義なし』』』

 

よし、これで暴力沙汰はもうないよね。と安心しきった。そこでふと気になることがあって、覆面を取った近藤君を見つけて話しかける。

 

「ねえ、近藤君」

「なんだ? 衛宮」

「須川君はFFF団に参加してないの?」

 

確かFFF団のリーダーって須川君だったような……。

 

「ああ、須川か。あいつは抜けたよ」

「え、抜けた?」

 

一体どうして、創立から係わったようなものなのに?

 

「清涼祭終わった頃か、突然抜けると言い出してな。当然俺たちは異端者になったことを疑って、徹底的に調査をしたのだが証拠を掴む事はできなかったんだ」

「そうなんだ」

「何かいきなり槍術習いだしたらしいがなんでだ?」

「槍って珍しいね。まあ、武道系やってるって男磨いてるねぇ」

 

やっぱ男は武道系やってるとかっこいいとかあるのかな?

 

「男を磨く?」

「武道やってる男はかっこいいんじゃない?」

 

軽口言っていると、別の方から絶叫が聞こえてきた。まだお化け屋敷始まってないよね? そう驚いてそっちを見てみれば、南とオレンジ色の髪をドリルにした女の子が言い争っていた。

 

「げ、美春!?」

「さぁ、お兄さま! 美春とペアを!!」

 

あー、思い出した。Dクラス戦のときにやたら召喚獣の操作がうまかった人だ。確か……清水美晴だっけ?

その清水さんは南の腰にまとわり付いた。

 

「もうっ!離れろ美春!オレはお前と組む気なんてなくて……」

 

そこで南の目線が姉さんに向いた。姉さんと組みたいのかな? 視線を感じた姉さんが振り向いてから、現状を理解したらしくため息をついてから南達の方へとやって来た。

 

「ごめんね清水さん。島田君、ぼくと組むことになってるから。だから、またの機会にしてあげて?」

 

そう言って、姉さんは南と清水さんを引き剥がした。怒った清水さんが姉さんに噛み付くような勢いで迫った。

 

「なんなんですか、この泥棒猫!!」

「相変わらず酷いねぇ。でも島田君ぼくと組むんだよねー?」

「あ、え、あ、うん」

 

南がものすごくしどろもどろになりながら返事をした。清水さんが追いすがるように言い出す。

 

「ですがお兄様!そんな泥棒猫が一緒では……」

 

南がちょっと決意したかのようにキリッとした表情になる。それから清水さんに向かって言った。

 

「美晴。お前はオレが約束を破るのが大嫌いってこと、知っているよな? それなのに、まだそんなことを言うのか?」

 

南がそう言うと、清水さんは悔しげに下唇を噛み締めて小さく頷いて下を向いたまま言った。

 

「……分かりました、お兄様。そういうことなら、この場は引きます」

「うん。分かってくれてありがとうな、美春」

 

そこでガバっと顔を上げた。

 

「ですが、万が一そこの泥棒猫が参加できなくなったら、その時は美春と……」

「ごめんな、美春。その時は、オレはお腹が痛くなってる予定だから」

「お兄様は冷たいですっ!」

 

いろいろとおかしいよ。南にそう言われると、清水さんは涙を流しながら走っていった。腹痛の予定って、この前某教育番組でやってたデートの断り方みたいだね。確かあれは髪を洗わないといけないだっけ? いや、あれよりも斬新か。

 

「島田って大変なんだな」

「そうだね」

 

こうして、学年肝試し勝負が幕を開けた。

 





波乱の幕開け? とりあえずそんな感じで

いい加減にここに書くことなくなってきた気がする。

腹痛の予定って本当に斬新ですよね。


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第四問

『ね、ねぇ……あの角、怪しくない?』

『そ、そうだな……何か出てきそうだよな……』

 

神海さんが設置した高性能モニターから、最初のチャレンジャーとして出撃していったDクラスの男女ペアの送ってくる映像と音声が流れてくる。

まず最初に向かうことになっているのは、Dクラスの教室のチェックポイント、どうやら古都をイメージした配置みたいだね。

 

『そ、それじゃ、俺が先に行くから』

『うん……』

 

カメラが見るからに怪しい曲がり角を中心に周囲を映していく。カメラを構えた二人は入念な警戒態勢を取りながらそちらへと歩みを進めていく。その様子を見ながら意識を部屋の中へと戻せば。

 

「ア、アキノ……あの陰、何かいるような」

「はいはい、居たとしても気にしない」

 

こわがりって大変なんだね。南がここまで怖がってるとは思わなかったけど。

 

「うぅ……」

「何か出るんだろ。うわ、嫌だ」

 

他の人も怖いらしい。大変だなぁ。

 

『行くぞ……っ!!』

『うんっ!』

 

カメラが曲がり角の向こう側を映し出す。そこには何がいるのだろうか? よく見てみるけど、そこには……何もなかった。あれ?

 

「な、なんだ」

「あれ、何も居ないんだ」

 

南が安心して胸をなでおろして、姉さんが拍子抜けだなぁとか呟いているときにそれは起こった。

 

『『ぎゃぁあああーっ!?!?』』

「「きゃぁあああーっ!!」」

 

カメラの向こうから大きな悲鳴が響いて、それを聞いた教室の人たちも同時に悲鳴を上げてしまった。耳にキーンとくるなぁ。 

 

「ほら、島田君。単なる悲鳴じゃないか」

「いやだいやだ」

 

姉さんは抱きついてきた南の背中を撫でながらなぐさめる。

しかし、何があったんだろう? 画面じゃ何も映ってないし。

 

「……失格」

 

神海さんがカメラ①と表示されている画面の右隅を指差した。そこに映し出されているデジタルメーターは一瞬で跳ね上がり、赤い失格ラインを遥かに超えた音声レベルを示している。ここまで便利な機能あるんだ

 

「……悠里、何が怖いの?」

「あんたって昔からそうよね」

 

霧島さん全然動じてないなぁ。顔色一つ変わってないし。

 

「うわぁ、昔を思い出すぜ」

「ヒロ、昔って何時?」

「あー、リアルゾンビ?」

 

広夢、リアルゾンビってなにさ。しかも質問の回答になってないからそれ。日向君も呆れてるよ。

 

「一つ目の曲がり角でいきなり失格とは……驚かす役も本気だよ」

「そうね。流石は三年といったところかしら」

 

姉さんと悠里さんがうんうんと唸っていた。みんなの印象が凄すぎて気が付かなかったけど、姉さんも悠里さんも全然動じてないや。

 

「……二組目がスタートした」

 

神海さんがカメラ②と表示されている画面を指差した。 そちらにはEクラスの男女ペアが進んでいく姿が映し出されている。

 

「今度は向こうがどんなことをしてくるのかがはっきり映るといいね」

「そうだな」

 

一応コレは三年生との勝負だし、せめて何が来るのかぐらいは分かっておきたいところよねー。と比奈丘さんと喋っていると

 

「それは難しいだろ」

「え? 広夢、それってどういう……」

 

何かを知っている様な言い方の広夢にその真意を確認しようとしていると。

 

『『ひゃぁぁあああ―――――っ!?!?』』

「「きゃぁあああーっ!!」」

 

開始早々、またもやモニターの向こうから悲鳴が聞こえてきた。また画面には何も映っていない。

 

「……失格」

 

今度はさっきとは若干違って、まだ曲がり角が見えてきたばかりの地点だ。ポイントをずらすとは、油断しているときに襲い掛かってきたってことかぁ。

 

『ち、血塗れの顔が壁から突然でてきやがった……』

『上からいきなり女性が……』

 

そんな呟きが聞こえてくる。カメラには何も映らなかったのは死角に突然現れたからか。今回の召喚獣は今までと違って等身大になっている。どれもリアルな形で現れているだろうから、かなり怖いに違いない。

 

「なるほどね……」

「……あちらもカメラ使ってる可能性があるわね」

 

カメラを使っているのが僕達だけじゃないってことは……。

 

「三年生もこの映像を見ているってこと?」

「それはそうだろ。そうじゃなかったらカメラの使用なんて俺たちに有利すぎる。文句を言ってこなかったのは、向こうは向こうでメリットがあるからだ」

 

広夢が呆れたように言ってくる。僕としては、驚かす側が相手を待ってる間も楽しむためとか思ってたけどそういう使い方あるんだ。

 

「こっちのカメラの映像を見ていたら、標的がどこら辺に注意を払っているのかが分かるからな。驚かす側としてもタイミングが取り易いし、死角から襲いかかるのも簡単だ」

「あ、そっか」

 

位置の確認くらいなら他の方法でもできるけど、どこに注意を払っているのかはカメラを通した方が断然分かり易い。

 

「おまけに観察処分者の召喚獣以外は物に触れないから、障害物をすり抜けて急襲できる。相手の位置と方向が分かればいきなり背後に化け物を配置するなんてことも可能になるしな」

「なるほど。 何台もの固定カメラを設置しなくても僕達自身が相手に情報を与えているってことか。それは向こうも相当やり易いだろうね」

「召喚獣を使った肝試しならではってことか」

 

そんなことを言い合いながら画面を見ていればまた新しい組が入って行ったけど、また失格になった。

 

「とは言え、あまり切羽詰まってなくても勝負は勝負。一方的にやられたままって言うのも気に食わないわね」

 

ふん、と悠里さんが鼻を鳴らす。負けず嫌いな悠里らしいねぇと姉さんが苦笑いしながら言った。

 

「最初は様子見と思ってたけど、これはそうも言ってられないわね。あまり人が失格になりすぎるとあとが辛いから」

「そうだね。向こうもチェックポイントには成績の良い人を配置しているだろうからね。

あまり人を裂くと点数も減るし、後が持たない」

 

三年生側の召喚獣バトルをする人は大体がその科目の成績優秀者だ。こちらも成績の高い人を沢山送り込まないとチェックポイントのバトルで全滅なんていう可能性も充分にありえるわけで。

 

「それじゃあ、こっちも手を打ちましょう。皆!順番変更よ! Fクラスのペアを先行させて!」

 

悠里さんがその場に座ったまま声を上げると、しばらくして画面に見慣れた顔が映った。

 

『行ってくるぜ!』

『カメラは俺が持つぞ!』

 

朝倉&有動ペアがカメラを構え、2人は何の躊躇もなくスタスタと歩を進めていく

 

「うわぁ、本当にウチの男子は物怖じしないね」

「そうね。こっちの方がみんなにはいいみたい」

 

普通に警戒してる人のカメラワークより、こうやって無警戒でどんどん進んでいく方が怖くない。それにこうやってずんずん進まれると、脅かす側もタイミングが取りづらいみたいだいし。

 

『おっ、あそこだったか? 何かでるって場所』

『だな』

 

立て続けに3ペアがやられた曲がり角を映し出す。2人がカメラを構えたまま曲がり角を曲がり、何気なく横を移すと……

 

「「きゃああああーっ!」」

 

そこには、血みどろの生首が浮いていた。そしてそのままカメラはさらに動き、背後を映し出す。そこに居たのは、耳まで口が裂けている気味が悪い女の人が居る。

 

「「きゃあああああっ! きゃああああああっ!!」」

 

もう各クラスのほぼ全員が悲鳴をあげていた。けれど……。

 

『おっ、この人少し口は大きいけど美人じゃないか?』

『いやいや、こっちの方が美人だろ。首から下がないからスタイルはわからないけど、血を洗い流したらきれいな筈だ』

 

さすがFクラスというべきか冷静に相手を見定めていた。

 

「やっぱりね」

「さすがFクラスだな」

「こういう時は頼もしいな」

 

まあ、本当に物怖じしない人達だよなぁ。

 

「な、なんでアイツらあんなに平気そうなんだよ!? アキヒサ達も、怖くないのかよ!?」

「いや、だって……」

 

僕は比奈丘さんと広夢に目配せをして頷く。それに答える様に、二人は頷いた。

 

「別に命の危険がある訳じゃないからね。ついでに言うなら慣れてるし。FFF団に処刑されている人の悲惨さとか酷いよ」

「俺は割りとホラー好きだからな。あ、それは俺も見た」

「あたしにとってみれば、こんなもの子供だましだろ。昔取った杵柄って奴だ。まあ、この学園に来てからはさらに慣れた気がしなくはない」

 

今更流血程度で驚くような繊細な神経の持ち主などFクラスにはあんまり存在しないんだよね。

 

『それにしても暗いな・・・何かに躓いて転びそうだ。』

『それなら丁度良い物あった。あそこにある明かりを借りて行こうぜ』

 

装飾品として飾られている提灯が映し出される。 

二人が拝借しようと近づいて行くと。

 

「「「きゃぁあああーっ!!」」」

 

突如、提灯に鬼のような顔が現れて、寸法のおかしな手足が生えた。あれは提灯お化けだね。なるほど、セットの中に召喚獣を紛れ込ませていたのか。上手い演出だなぁ。

 

『ん?これ掴めないぞ?』

『召喚獣なら掴めるでだろ。サモン。』

 

そんな向こうの粋な演出も意に介さず、

一人の喚びだした召喚獣に提灯お化けを持たせて先に進み始めた……。しかもその召喚獣はゾンビだ。手足をバタバタと動かしている提灯お化けがちょっとだけ可哀想な気がしてきた。

 

「な、なんか…かなりシュールな光景ね……」

「そ、そうだね………」

 

悠里さんも姉さんも呆れているや。

 

「……悠里。怖いから手をつないで欲しい」

「あらどうしたのよ、翔子。あんたはは全然怖がってないでしょう」

 

そういいながらしょうがないわねーと霧島さんの手を握る。霧島さんは驚いたみたいで目をぱちくりさせた。

 

「……本当に握ってくれるとは思わなかった。ちなみに冗談」

「あら、冗談だったの?」

 

冗談言うなんて珍しいわねと悠里さんが霧島さんの頭を撫でた。その光景を何かちょっとよだれをたらしながら見ている秀吉のお姉さんについては無視しよう。そんな空気をガン無視して姉さんが悠里さんに話しかける。

 

「悠里、二人のおかげで相手の仕掛けが分かったね」

「そうよね。あいつ等がチェックポイントまで行くのも時間の問題かしら」

 

そして、ついに二人のカメラが開けた場所を映し出した。その場所の中心には二年生の二人と、現代国語の寺井先生が待ち構えている。

 

『どうやら、チェックポイントみたいだな。』

『ま、順調だな』

『『『『サモン!!』』』』

 

僕達がモニター越しに見守る中、先生の許可の下でそれぞれの召喚獣が喚びだされ、その点数が表示された。 まずは三年生側の点数が明らかになる。

 

 

現代国語

3ーA 室井 貴志 232点 & 鎌田 敦子 264点 

     

 

「やはりAクラスの人が来たね」

「三年は予備校に通っている人達も多いだろうから、きっちり成績優秀な人を用意してきたな」

 

普段は悠里さんとか霧島さんとかの点数をよく見るせいで勘違いするけど、普通は200点を超えるだけでも胸を張れるくらい凄い成績なんだよね。つまり、画面に映っている先輩たちは成績の良い人達ってことだよね。そして、対するこちら、二年生側の成績は……

 

 

2-F 朝倉正弘 44点 & 有働住吉 49点

 

 

ものすごく低い点数だった。やはりFクラスだけあって、一瞬でやられるかと思ったけど一撃を上手くかわす。

 

『え、嘘でしょ?!』

『かわした?!』

 

懐に上手く入り込むと、二人ともが召喚獣に一撃を食らわせた。それからすぐになぎ払われた武器によって二人の召喚獣は消えてしまった。でも二人の顔は清々しい。

 

『代表たちに扱かれてんだ。これぐらいは出来て当然だぜ!』

『ああ、もちろん!』

 

凄いや。あの一回目の試験召喚戦争からずっと召喚獣のトレーニングはやっていたけど、こんなところで役に立つなんて。ちょっと感動してたら、悠里さんと姉さんが互いにハイタッチしているのが目の端に映った。

 

「やったわね」

「一矢を報いたね」

 

姉さんも悠里さんも嬉しそうだなぁ。

 





たまには一矢報いたかった。それだけの話。
珍しく番外編


※キャラ同士の掛け合い注意
※全編台本形式




明久「それにしても広夢も比奈丘さんもグロ系平気なの?」
広夢「え? まあ、いろいろとなー(言えない。まさか前世で本物の戦場に行っていたとか、死徒化した集団と戦ったとか、うわぁ前世が意外とロクでもない)」
彩夏「私も一緒だな(流石の衛宮も突飛過ぎて信じないだろうな。明乃も信じないだろうし、ああ思い出しただけでむかつくなあの四谷のゾンビは)」
明久「あ、そうなんだ」
広夢「そういう明久はどうなんだよ? なんで平気なんだ」
彩夏「ああ、確かに明乃ならともかく衛宮が平気なのは気になるな」
明久「あはは……色々?(言えるわけがないよね。あんな地獄、それにアーチャーの過去夢とか言ってもわからないだろうし)」

須川「俺にはお前ら全員凄すぎだよ。何事も色々で片付けるな」

閑話休題でした。


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第五問

 

「悠里、今のところは順調そうだね」

「そうよね」

 

それからしばらく、無事に僕たち二年生はDクラスのチェックポイントは通過できた。今度のCクラスは周りが墓場なだけで今のとこ何も仕掛けはない。声がでたとしても失格レベルには至らない小さな声だ。問題ないってところだよね。

 

「……何もしてこないね」

「ということは、向こうもそろそろ動きを見せる頃合いということじゃな?」

「ああ。向こうもこっちの様子は筒抜けだからな」

「何かしらの方法で落としにかかってくるだろうし」

 

お互いにカメラを通じて状況を把握できる分、臨機応変な対応が可能になる。向こうが順調ならこっちが、こっちが順調なら向こうが手を打つのは当然だ。

 

「そうなると、今度は何をしてくるのかな?」

「さぁね? 見当付かな………」

 

悠里さんが言葉を途中で句切ってモニターに身体を向けた。姉さんも神海さんも画面を見ている。それに釣られるように僕らも画面を見た。

 

「何か雰囲気が変わったな」

「暗いだけなのになんで嫌な予感がするんだろう」

 

画面の先に何か嫌な予感を感じた。姉さんも感じたみたいで訝しげに画面を見ている。

 

「広めの空間だけのようだが、後は……中央の上部に照明設備らきしものが見えるくらいか」

 

更に目を凝らしてモニターの映像を見る。確かに天井の辺りにケーブルのようなものが見える。 

 

『何だか不気味だな』

『ああ。よく分からねぇけど、ヤバい感じがするな』

 

近くにいたペアも周りの雰囲気に気が付いたみたいだね。それに流石Fクラス、ヤバい状況を見極めるのはお手の物だよね。

 

「……人」

 

神海さんが指差すモニターには、暗闇の空間の中央に誰かが静かに佇む影が映しだされていた。あれが向こうの仕掛けだろうか。いや、囮の可能性もあるかもと姉さんが呟く。あ、そっか何もない広い空間と見せかけて、本命は後ろからの奇襲なんてことだって充分に考えられるよね。

 

『突っ立っていても仕方がない。先に進むぞ』

『分かった』

 

二人が歩を進め、カメラもそれに伴って暗闇の奥を映しださんと移動していく。 そして、2人が空間の中央まであと三歩、といったところで『バン』と荒々しく照明のスイッチが入る音が響き渡る。

暗闇から一転して光の溢れだしたモニターの中央には、常夏コンビの1人であるハゲの先輩こと夏川先輩がスポットライトを浴びて静かに佇んでいた………

 

 

 

 

 

全身フリルだらけの、ゴシックロリータファッションで。 

 

 

 

 

 

『『『『『ぎゃぁああああーーっ!!』』』』』

 

 

モニターの内外問わず、そこら中から響き渡る悲鳴。うわぁ……

 

「うわぁ……」

「えと、アキノ?!」

 

似たような呟きをした姉さんを見てみれば、南を太ももに押し付けるようにして先輩(変態)の映像から隠していた。

 

「坊主野郎っ! やってくれたわね!!」

 

悠里さんは叫ぶ。

 

「汚いっ! やり方も汚ければ映っている絵面も汚い!」

「なんつーもん見せて来るんだよあの先輩、営業妨害じゃなくって変態じゃねーか」

 

広夢とか須川君とかその辺の叫び声も聞こえた。

 

「衛宮、お前よく平気だな。うぅ」

「ううん、凄く不愉快だよ。もっと酷い代物見たことあるから平気だけど」

 

イリア姉、なんでバーサーカーに女物の服装をさせようと思ったんだろう。あれは酷かった。アレを見たものは全員気分不快をおこしていた。そうなるよね。

 

 

「……気持ち悪い」

「…翔子、大丈夫?」

「……大丈夫」

 

いつもポーカーフェイスの霧島さんすらこの状況って、本気でいい加減にしてほしいなぁ。あの先輩何時まであんな変な格好するつもりなんだ?

 

「畜生!! なんてもん見せやがるのよ!!」

「みんなのダメージがひどいよ……」

 

ほかのみんなもこのグロ画像に悲鳴は避けられなかった。と言うか一部失神してる。

 

『何だ? 今、こっちの方から何か聞こえなかったか?』

『ああ。 間違いない。 そこで悲鳴g・・・・・・』

 

 

ギャァァァァァァァアアアアアアア!!!!-

 

 

はっ! しまった!! 悲鳴が呼び水になってマズいことになっている!

 

「悠里!! 早く手を打たないと全滅する!」

「く……! 無理よ!」

「あいつら既に突入しているんだ! もう助けようがないぞ!」

「嘘っ!? 彼らを見捨てるしかないって言うの!?」

 

そう僕達は何もできず、モニターを見続けることしかできない。 ゴメン、皆!! そうこうしていると次々と他の人たちが餌食になっていった。

 

『ぎゃぁああーっ! 誰か、誰か助k・・・』

『嫌だ! 嫌だ嫌だ嫌だ! 頼むからここからだしてくれ!』

『助けてくれ! それができないならせめ殺してくれ!』

『いやぁぁぁぁああ!!!!!!??????』

『奇g&p$#~*krt!?』

 

画面のマイクが次々とあの危険物を直で見てしまったみんなの叫び声が拾われていく。画面を見ていた神海さんが悔しそうに呟いた。

 

「…………突入部隊……全滅…」

 

戦力は全て壊滅。モニター越しに見ていたこっちでもこのダメージだ。直接、見てしまった彼らは、当分社会復帰できないだろう・・・おのれ! 何て惨いことを!

 

「ここの被害は?」

「男子一部、そして女子の過半数が………」

「坂本!仇を・・・! アイツらの仇を討ってくれ!」

「このまま負けたら、散っていったアイツらを申し訳がたたねぇよ……!」

「あんなの酷すぎる!」

 

Fクラスの生徒だけでなく他のクラスの皆までもが涙ながらに訴えてきた。

 

「分かってるわ! 向こうがそうくるならこっちだって全力でしょ! こちらからは、神海と工藤のペアを投入するわ!!」

 

確かに神海さんなら動じそうに無いよね。

神海さんと工藤さんのペアなら保体だしチェックポイント落とせるか。

 

「…………あの坊主に本物の地獄を見せてやる」

 

 





更新遅れてすみません。
今回は基本原作通り?


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第六問

「もうそろそろか……」

 

神海さんと工藤さんの持ったカメラが件の場所に近づいていく。来ると分かっていても耐えがたい恐怖が周りを包んだ。何かすでに嫌だとか呟いてる人も居るなぁ。

 

『情報屋ちゃん。あの先だっけ?さっきの面白い人が待ってるのって』

『………準備はできている』

 

そんな教室の空気とは対照的に、目的地へ向かっている張本人たちは落ち着いているみたいだカメラを構えているのは工藤さんで、神海さんは何か別のものを抱えていた。ハゲの先輩対策の何かかな……あれって、

 

「やっぱりまた真っ暗になってるね」

 

画面に映った広場は最初と同じように暗闇に包まれていた。それを見て姉さんと悠里さんが話し始める。

 

「突然現れる効果があるだろうから。タイミングを見計らってスポットライトを入れるんでしょう」

 

闇の中でカメラがぼんやりと人影を映す。誰かののどがゴクリと鳴った。

 

「そろそろくるぞ」

「うん……」

 

僕や比奈丘さんなども衝撃映像に備えた。

すると、

 

バンッ!(スポットライトのスイッチが入る音)

 

ドンッ!(大きな鏡を置く音)

 

ケポケポケポッ!!(ハゲの先輩が嘔吐する音)

 

神海さんのこうげき、効果抜群だ!!

 

『て、てめぇ!何てものを見せやがる!思わず吐いちまったじゃねぇか!』

 

うわぁ、自分で言うのか。

 

『……吐いたことは恥じゃない。それは人として当然のこと』

『くそっ。想像を絶する気持ち悪さに自分で驚いたぜ……道理で着つけをやった連中が頑なに鏡を見せてくれねぇわけだ……』

 

きっとその人たちも吐き気に襲われただろうに………まずどうしてこんなアホな作戦を考えたのだろうか?

 

『情報屋ちゃん。この先輩、ちょっと面白いね。来世でなら知り合い程度になってあげてもいいかなって思っちゃうよ』

『ちょっと待てお前!俺の現世を全面否定してねぇか!? っていうか生まれ変わっても知り合いどまりかよ!』

『あ。ごめんなさい。悪気は無かったんです、ゲロ野郎』

『純粋な悪意しか見られねぇよ! って待てやコラ!てめぇ何人のこんな格好を撮ろうとしてやがるんだ!』

『…………海外のホンモノサイトにUPする』

 

うん、いいんじゃないかな。ここまで似合わない女装もそうないだろうけど。てか普通はもう少しギャグで済みそうなものなのに、なんでこんなに気持ち悪いものが出来上がったんだろう。

 

『じょ、冗談じゃねぇ!覚えてろっ!!』

 

ハゲの先輩はダッシュでその場から去っていった。これでCクラス最大の脅威は取り除かれたよね。

 

「それにしても工藤さんがあんなこというなんてね」

「……愛子は普段、あんなこと言わない」

「あ、そういえばさっきDクラスの清水に話聞きに行ってたわね」

 

ああ、あの罵倒って清水さんからなんだ。道理でえげつないわけだ。

 

『………先に進む』

『多分チェックポイントまであとちょっとだよね』

 

神海さんは工藤さんと一緒にハゲの先輩が向かっていった方向に歩き出す。 パーティションで作られた通路を少し歩くと、その先では三年生らしき人が二人待っていた。 

予想通りさっきの仕掛けに場所を取り過ぎたようで、チェックポイントはすぐ傍にあったみたいだ。

 

「お? ここのチェックポイントはあの変態じゃないみたいだな」

「だね。あの先輩が待機してるって思ってたよ」

 

チェックポイントには変質者の姿はない。まあ、脱ぐの大変だろうしすぐのチェックポイントには居ないよね。

 

「別にそういう決まりは作っていないわよ」

「後のAクラスかBクラスにいるかもね」

「出てこないってことはないかしら」

「いやぁ、無理でしょ。あの人たちどう考えてもプライドの塊だろうし」

 

妙な理由でこっちに突っかかって来たし、姉さんが言っているプライドが高いは間違ってはいないだろうね。

 

「まぁ、後のことは後のことじゃ。まずは目先のことじゃな」

「そうだね」

 

モニターに視線を戻す。チェックポイントで対峙している四人はそれぞれ召喚獣を喚び出すところだった

 

『『『『試獣召喚(サモン)!!』』』』

 

神海さんの召喚獣は吸血鬼で、工藤さんのはのっぺらぼうだった。後ろから見たらどちらも普通の人にしか見えない。

 

「悠里、工藤さんの召喚獣がのっぺらぼうなのはどうしてか分かる?」

「さぁ? 顔がない、つまり素顔を見せないところに何かがあるのかもしれないわね」

 

姉さんが真剣に悩んでいる。でもさ、それって結構無駄な気がするような。確かのっぺらぼうの尻目っていう奴があったはず。人に出くわすと全裸になる奴。

 

「向こうは向こうで分かり易いお化けだね……」

「そうね。おかげで敵の行動も予想しやすそうよ」

 

一方、三年生の方はミイラ男とフランケンというラインナップ。どちらもメジャーなお化けだから一目でそれと分かる。

 

 

保健体育 

Aクラス 市原 両次郎 303点 & Aクラス 名波 健一 保健体育 301点

 

 

点数は300を超えていた。保健体育は受験の科目にないんだからもう少し手を抜いても良さそうなのに。やっぱりAクラスに入るだけあって真面目なんだろうか?

 

『情報屋ちゃん。先輩達の召喚獣、何だか強そうだね。召喚獣の操作だってボクたちより一年も長くやってるし、結構危ないかな?』

『………確かに、強い』

 

対するムッツリーニと工藤さんの点数が表示される。

 

保健体育

Aクラス 工藤 愛子 479点 & Fクラス  土屋 神海 保健体育 557点

 

 

相変わらずながらの高得点だね。

 

『………が、私と工藤の敵じゃない』

『確かに、ね』

 

瞬きすら許されないような刹那の後、ミイラ男とフランケンは敵と一度も組み合うことなく地に臥した。ついでにのっぺらぼうも痛そうに頭を抑えている。あまりに圧倒的な戦力差。保健体育という科目である以上、この二人には教師ですら敵わないか。

 

「何があったのじゃ」

「あれはちょっと………」

「……明久も見えたか」

 

広夢や比奈丘さんも呆れた顔してるってことは、見えてたんだ。ついでに言うならちょっと離れた場所にいた須川君が鼻を押さえている。

 

「神海さんの方は、一瞬で狼に変身してフランケンを切り裂いて、また人型に戻ったよね」

「ああ、のっぺらぼうの方は……」

「一瞬で全裸になってミイラ男をボコボコにして、また服を着ていた」

 

あ、やっぱりそうなんだね。いきなり脱ぎだすからなんなのかと……あ、のっぺらぼうの尻目か。さっき予測したとおりだったんだ。

 

「やっぱりか、ついでに言うなら。土屋の召喚獣がそのすぐ直後にハリセンで工藤の召喚獣を叩いてたぞ」

「へ? 工藤さんを神海さんがじゃ無くって?」

 

すごいことに本人と召喚獣が同時にそれを行っていたのか。

 

『いたたた、Cクラスもクリアってことで。次はどこに行けば良いんだっけ?』

『……Bクラス』

『情報屋ちゃん、どうして頭を叩いたのかな?』

『……はしたない』

 

神海さん正論だね。神海さんはそのまますたすた歩いていった。それを工藤さんが慌てて追いかける。

 

『あ、ちょっと待ってよ。情報屋ちゃん!』

『……土屋神海』

『へ?』

 

いきなりのことに工藤さんが立ち止まった。

 

『……私の名前、情報屋じゃない。土屋神海』

『えっと、土屋ちゃん?』

『……それでいい』

 

あ、ちょっと満足そうとか姉さんが呟いていた。そういえば情報屋って呼ばれるの嫌いだって前に言ってたっけ。

 





本編中あんまりにも絡みが無かったよねこのコンビとツッコミを入れたい。いや、書いてるの自分だし。

明久が実に冷静なんだ。


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第七問

先に進んだ2人は、普通のお化けに対してなんら臆することなく先へ先へと進んでいった。全然おびえてないや。

 

「順調だな。このままあの2人で全部突破できそうだけど、そう問屋が卸さないか?」

「そうだな。だが、あの二人にこれといった弱点はあるのか?」

 

広夢と比奈丘さんが互いに話し合っている。

 

「三年生は神海の名前は知らなくても『保健体育が異様に得意なスケベがいる』って勝手に思い込んでいるはずよね」

「あー、確かに。そうなると、神海が一番不味いよね」

 

そうこう話していると二人の持つカメラが薄明かりの下に佇む女の人の姿を捉えていた。恐らくあの人が『神海さん対策』だろうな。

 

『……』

『土屋ちゃん? なんでそんなに呆れて……え?』

 

徐々にその人の姿がはっきりと見えてくる。その女の人は髪を結い上げた切れ長の目の綺麗な美人が色っぽく着物を着崩していた。

 

「「「「「眼福じゃぁぁぁぁっ!」」」」」

 

後ろから男子の歓喜の声が上がる。クールな表情や長い手足。タイプで言うと霧島さんが一番近いかな。ついでに言うなら比奈丘さんとか。そんな人が着物を着崩して色っぽく立っているのだから、皆が叫ぶのも無理はないだろうね。

 

「……悠里」

「なによ、翔子。何が映っているの?」

「……私だって、着物を着たらあんな感じになる」

「えっと、言ってることの意味が分からないわよ。とにかく目隠しは外してくれない?!」

 

霧島さんが目隠しをしたまま、ムッとして膨れている。自分と同じタイプの人に対抗意識を燃やしているみたいだ。でもさ、なんで悠里さんの目をふさいでるの? まさかとは思うけどそういう趣味?

 

「……悠里、結婚式にどちらを着たほうが良い?」

「え? ドレスと着物? まぁ、誰と結婚するかはおいといて、悩むくらいなら両方着るって選択肢も………」

「……そうかな」

「まあ、結婚なんて今意識しなくてもいいでしょうに」

「……うん」

 

画面の向こうでは神海さんと工藤さんに着物の先輩が話しかけていた。

 

『ようこそいらっしゃいました、御二方。私、3年A組所属の小暮葵と申します』

『小暮先輩ですか。こんにちは。僕は2ーAの工藤愛子です。その着物似合ってますね』

『ありがとうございます。こう見えてもわたくし、茶道部に所属しておりますので』

『あ、そっか。茶道って着物でやるんだもんね。その服装はユニフォームみたいだもんだよね。ちょっと着方はエッチだけど』

 

普通着物って着崩すものだっけ? 爺さんとか雁夜さんとか思い出すけど、そんな感じには全然なってなかった。

 

『はい。ユニフォームを着ているのです』

『そうですか。それじゃ、ボクたち先を急ぐので』

『そして、実はわたくし……』

『?なんですか?まだ何か?』

 

着物に手をかけている。あ、もしかして。

 

『新体操部にも所属しておりますの。』

 

はだけだけられた着物は完全に脱ぎ捨てられ、その下からは、レオタードを身に纏う小暮先輩が現れた。

 

『………』

『土屋ちゃん? 大丈夫、凄い怖い顔してるけど』

『……帰る』

『え、ちょっと、土屋ちゃん?!』

 

土屋さんは踵を返して反対の方向へと行ってしまった。

 

『土屋が棄権した! 今度は俺が行ってくる!』

『一人じゃ危険だ! 俺も行く!』

『待て! 俺だって行くぞ!』

『俺も行くぜ! 仲間を見捨てるものか!』

 

男子の一部が独断専行を始めていた。

 

『『『『『うぉおおおぉぉっ! 新体操――っっ!!』』』』』

 

「………突入と同時に全員失格したようじゃな」

「何でうちの学校の男どもってこうもバカだらけなのかしらね……。あれ、衛宮はあの先輩見てなんとも思わないの?」

 

悠里さんがいきなり僕に話題を振ってきた?!

 

「僕? あー、あの先輩は普通に美人だと思うよ? あはは、うん。僕はもっと綺麗な人知ってるから」

 

……誰かは誰にもいう気はないけどね。

 

「……そうなの、それはお目にかかりたいわね」

「無理だと思うよ。会えるのはもっと先だし」

 

次々と失格になっていく仲間たち(男子のみ)。しかもそれはFクラス男子だけではなく他クラスの男子も大勢混ざっていた。

 

「はぁ、これは色々と不味いわよ」

「だね。ペアの男子が失格になった子も多いし」

「それから」

 

悠里さんが入り口の方を向いた。そこにはものすごく暗い表情をした神海さんがいた。

 

「あれ、どうにかしないとね」

「あー、神海 おいで」

「…………(コクリ」

 

神海さんは姉さんの傍に座った。それから姉さんが神海さんの頭を撫でる。

 

「……私は別に変態じゃない」

「知ってるよ。神海はただ単に人観察が好きなんだよね」

「……なんでみんな私のことおかしいって言う」

「神海は普通だよ。大丈夫、ね?」

 

姉さんはそのままひたすら神海さんの頭を撫でて慰めている。その様子を見ている悠里さんに話しかけた。

 

「神海さん、あれって?」

「まあ、神海の奴にも色々とあるのよ。あんまり触れないでやって、よしあの着物先輩どうにかしないと」

 

あ、そうだ。

 

「秀吉と木下さんのペアとかどう? 秀吉なら着物の先輩に動じないだろうし」

「あら、あの二人ペアなの?」

「だったよね。秀吉」

 

秀吉に確認するように笑いかければ、秀吉が目を丸くした。

 

「明久はなぜ知っておるのじゃ?」

「いや、何か秀吉にアタックかけてくるのって基本男でしょう?」

「不名誉なことを言うでない」

 

まあ、男に誘われるとか勘弁してほしいよね。

 

「それにキレたお姉さんがペアにするって強制的に決めたんでしょ?」

「まるで見て来たかのように言うのう」

「いや、偶然見かけただけだよ?」

 

内部把握用に放った使い魔が。おかげで実は内部把握できてたり。Aクラスのアレは卑怯だよ。

 

「見られておったのか」

「じゃあ、頑張りなさいね。木下姉妹」

「ワシは男じゃ!!」

「頑張れ、秀吉」

 

いろんな意味で。僕の目線から何かを把握したみたいで、秀吉はため息をついて言った。

 

「ワシを普通に男としてみてくれるのは明久と南のみかの」

 

何かちょっとショックを受けた様子で秀吉は去っていった。大丈夫かな?

秀吉と木下さんのペアはどんどんと進んで行って、ついにあの着物の先輩、小暮先輩のところにまでたどり着いた。

 

『あら? あなた方は……そうですか。女の子同士の組み合わせできましたか。それでしたら、わたくしにはできることはありませんね。どうぞお通り下さい』

『納得いかぬのじゃ。ワシは男じゃというのに』

 

言葉の通り、何の抵抗もなく小暮先輩は脇に避けて道を譲ってくれた。そして秀吉達は小暮先輩を抜けて進んでいく。

 

「何だか随分あっさりと通過さてくれたね」

「そうだな」

「あとはチェックポイントだけか?」

 

画面を見ている。とモヒカンの先輩は普通に突っ立っていた。見たところ何もおかしな道具はないように見えるけど何をしに来たんだろう?

 

「……何が目的だ?」

「わからないね。さっさと抜けたほうがいいと思うけど大丈夫かな?」

 

秀吉達も同じようなことを考えているみたいで、すり抜けようとしていた。モヒカンの先輩は秀吉の腕を取ろうとして、秀吉はその腕を逆手にとって関節技を仕掛けた。あれ? 秀吉ってあんなことできた?!

 

『いででででででで』

『それで、何用かの? あいにくじゃが男からの告白はお断りじゃ。行くぞ姉上』

『え、ええ』

 

秀吉はすぐに関節技を止めてその場を立ち去った。え?

 

『秀吉、あんたなんであんなこと出来るようになったのよ』

 

それ、それが気になってたよ。

 

『姉上知っておるか。ワシを女子と勘違いして告白してくる阿呆はともかくじゃが、告白を断ることによって付いてくるような阿呆がおることを』

『嘘、ストーカーってこと?!』

 

もしかしてこの前一緒に帰ったときの視線ってこれ?

 

『そうじゃ。ワシとしては穏便に済ませたいわけじゃが、下手に手出ししてくるような輩には実力行使も辞さないことにしたのじゃ』

『そ、そうなの…………』

 

秀吉、そのこといってほしかったよ? 普通に社会的地位くらいなくすことできるのに。

 

「衛宮、怖えぇよ」

「あ、ごめん。聞こえてた?」

「ああ、ばっちりとな」

「ごめんごめん」

 

そんな雑談をしていると、画面の方から「木下ぁぁぁぁぁ」という叫び声が聞こえた。驚いて画面を見直せば、カメラの手元が狂ったように画面が荒れていた。どうしたんだろう? それからしばらくして、誰のかはわからないけど叫び声が聞こえた。

 

「「「?!」」」

 

それからちょっとして、ものすごく髪の毛とか振り乱した秀吉が木下さんに肩を支えられて帰ってきた。心配になった僕は秀吉に駆け寄る。見れば南も秀吉に走り寄っていた。

 

「秀吉、大丈夫?」

「大丈夫か? ヒデヨシ、あの先輩に何かされたか?」

 

先輩という単語を聞いて、秀吉がびくっとした。やっぱ何かあったのか。

 

「何かあったの?」

「う、うん………実は」

 

木下さんによると、あの後モヒカン先輩が秀吉に追いついたらしい。秀吉の肩を掴んで、告白したのだそう。秀吉的にはそこは普通にあるから平気だったらしい。そこから後、自作のポエムを披露されたそう。それはもうSAN値はガリガリと削られていく。さらにはポエムの後に「俺の太陽」とか言われてもう駄目になったらしい、さっきの叫び声は秀吉だったんだ。

 

「秀吉、大変だったんだね」

「うぅ、すまぬ。姉上の力でどうにか突破したかったのじゃが」

「そんなこといわないで、むしろその状況でよく頑張ったよ」

「だよな。オレだったらそれこそ発狂してたかも」

「姉上すら口元押さえておったのう」

 

まず、秀吉の目が遠い?! 木下さんの方を見れば、同じような感じに目が遠くなってた。

 




お疲れ様でした。あいもかわらず若干矛盾気味ですが、その辺は少し目をつぶってください。
たまには告白自力で回避するのもいいのかなぁと思ったのですがどう考えてもうまい展開が思いつかなかったのでこんなこといなてしまいました。ごめんよ秀吉


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第八問

「それは心配しないで、木下。向こうは向こうでこっちのメンバーのことをある程度は知っているようだけど、こっちには秘密兵器がいるわ。色香に惑わされることもないだろうし、恐らくはチェックポイントもクリアできるはずよ」

「え? そんな奴いたのか」

「女子だとしても、さっきのハゲの先輩の女装とモヒカンの先輩の心理攻撃に怯えきっていると思うんだけど」

「いえ、常夏コンビについてはもう大丈夫だと思うわ。ゴスロリはあそこまでやればもう出てこないだろうし、告白の方は対秀吉専用の作戦でしょうね」

 

悠里さんの言う通りだ。さっきのモヒカンの先輩の告白は演技ではなく、本気の本気だった、いやな事に。

悠里さんの常夏、という単語に秀吉が一瞬ビクンと身体を震わせる。軽いトラウマになっているみたいだ。

 

「そういうわけで頑張りなさい、明久」

「え? 僕」

「ええ、あんたならあの着物の先輩はどうにかなりそうだし。比奈丘がパートナーでしょ」

「あー、僕でいいの?」

 

僕が行ったところでどうにかなるとは思えないんだけど。

 

「ええ、あんたらじゃないと無理よ。一応保険も用意するつもりだけど、いざって時のためにだからなるべくあんたたちで突破してちょうだい」

「まあいいよ。行こうか、比奈丘さん」

「ああ、面倒には巻き込まれたくなかったんだがな」

 

僕らは教室を出て行こうとした。すると背後で何か話し声がする。

 

「悠里、ぼくに何か用?」

 

姉さんが悠里さんに呼びかけられたらしい。

 

「あんたたちも中に入ってほしいの」

「は? なんで、アキと彩夏入るのに?」

「ええ、頼んだわ」

「まあいいけど、行こうか。島田君」

「ひぃっ、ア、アキノ待って!」

 

意味は分からないけど、悠里さんのことだから何か作戦があるんだろうね。南、ご愁傷様。僕達はBクラスに入ると、バンッという音を立てて何かが飛び出してくる。

 

「へぇ」

「結構うまく出来てるな」

 

モニター越しでも思ったけど上手に作ってあるなぁ。あれは一反木綿だろうか。古いカーテンを上手く使ってそれっぽさを醸し出している。基本的にグロい物も怖いものも平気なんだけど、薄暗い雰囲気とマッチしていて結構迫力があるよ。

 

「ア、アァァァアアアア」

 

後から声がしたので振り向くと、血塗れで手足がおかしな方を向いている人影。あれは誰かの召喚獣だろうか。召喚獣が後ろから迫ってきているなんて、上手い演出だ。

 

「衛宮」

「えっと、どうかしたの比奈丘さん」

「こいつ殴って平気か?」

「どうしたの?!」

 

何か召喚獣睨みつけてるけど?!

 

「いや、ゾンビに恨みがあるだけだ」

「なんでさ」

 

そうこう話てると、問題地点にたどり着いた。

 

「始めまして、お二人方」

「どうも」

「始めまして」

 

レオタードを着た小暮先輩が優雅に一礼した。どっちかって言うと着物着ている姿の方が似合いそうな動作だなぁ。

 

「………」

「………」

「えっと?」

 

何か無言の空間が生まれたけどこれは一体?

 

「反応しないんですね」

「え?何がですか?」

「私は女だ」

 

あー、そういうことか。他の男子みたいに反応しないのかってこと。

 

「わかってますよ。しかし……魅力がないのでしょうか?」

「え?普通に美人だと思いますよ?」

 

すると小暮先輩は苦笑して、

 

「素で恥ずかしいことをさらりと言いますね」

「そりゃあ、アレの弟だし」

「?」

 

いや、なんでさ。

 

「まぁ意味がないみたいですし、先に行かれてもいいですよ」

 

先輩が道を譲ってくれたので先に行く。

 

「なあ衛宮」

「んー?」

 

比奈丘さんが話しかけてきた。手に指を当てて静かにするように仕草をする。あ、なんとなく読めたのでカメラの集音部分に手を当てる。

 

「で?」

「いや、衛宮ってさ。好きな奴いるか?」

「うーん……家族とか?」

 

僕のこと好きになってくれるのは家族ぐらいなんだろうなぁ。

 

「そういう意味じゃ……あ、もしかしてだけどお前って『自分に価値が見出せない』のか?」

「え? いやだなー。そんなわけな「あるんだろ。盛大に頬が引きつってるぞ?」

 

げ、表情筋がいつの間にか動いていたみたいだ。

 

「お前って明乃と本当に似てるよな。明乃も嘘つくときって大体そうするんだ」

「それで、それがどうかしたの?」

 

もう諦めよう。何言ったところで誤魔化せないだろうし。

 

「いや、お前もかって思ってさ」

「も?」

「ああ、私も似たような部類だ」

 

少し話なるがいいか? と比奈丘さんが聞いてきた。僕は黙って頷く。どうせ道中やることないんだし、人の話を聞くのもいいよね。

 

「私にはそれこそ親友とでも言うべき幼馴染が居たんだ。だがな、その幼馴染は幼いときにご両親が亡くなって施設に預けられるようになった。それからはずいぶんと疎遠になったよ。再会したのはその13年後、しかも敵同士。全くなんでああなったのやら」

 

皮肉なもんさと比奈丘さんの口元は笑った。でも、その目は今にも泣きそうな目に近かったのかもしれない。

 

「それで、どうにか和解した私たちだったけどそこで最悪の悪夢が襲ったんだ。互いに命を懸けなくてはいけない大仕事が待ってた」

 

いや、片方は無事に戻ることも出来るような仕事で、もう片方の仕事は死が確実な仕事だな。比奈丘さんは何処か遠くを見るように前だけを見据えてる。僕の事なんて目に入っていないみたいだ。

 

「奴は死んでしまう方の仕事を取った。私はそれまで知らなかったが、奴の寿命は尽きかけていたんだ。それで私も奴も仕事はきっちりこなした。それから奴の姿を見た奴は誰もいなかったんだ」

 

それからもう魂が抜けたような日々だったよ。そう呟いて、比奈丘さんは足を止めてうつむいた。その親友の事を思い出しているの? そう聞くことすら僕にはできない。

 

「それがあるとき急に奴……いや、意識がもうズタボロになって奴じゃなくなった奴が見つかったって知らせが入ったんだ。それはもう夢中になって奴の住処を探したよ」

「親友は見つかったの?」

「ああ、見つけたさ。話の通り、意識がズタボロになってて。もう私を私だって認識できないくらいな。それ見て思った。ああ、もう私がこの世界にいる理由なんてないんだって」

「…………」

 

僕はその発言に驚くことはなかった。だって、それは僕があそこ(じごく)で感じたことと同じことだから。

 

「でさ、じゃあこいつだけでも道ずれにして死んでやろうとか思ったわけだ」

「え?」

 

なんだろう、これじゃあまるで……

 

「見事に成功、奴と私は相打ち。薄れていく意識の中、これでよかったんだって思ったんだ。でも違った。さらに奥では生きていたいって思っていたんだよな。そのせいで私は転生したと」

「………」

 

なーんてな。そう比奈丘さんは笑った。転生は冗談だぞと彼女が笑う。でもそれは多分嘘だなって思った。なんでかはよくわからないけど。

 

「だからさ、そんな生き方していたら絶対後悔するぞ。それは言えるんだ」

「……」

 

僕はそれに頷くことは出来なかった。だって、頷くだけならできるけどそれは僕の心の中を埋めることが出来たら頷けることで、今できることじゃない。

 

「それじゃあ、先に進もうか」

「うん」

 

僕らは歩きながら話し続ける。

 

「あ、そうだ。好きな奴教えてくれよ」

「まだ言うの?」

「あ、じゃあこうするか、好きな奴に似合う色をお互いに教えるっていうのは?」

 

似合う色か。まあ、

 

「それなら、まあいいかな? 比奈丘さんは?」

「私は青だな。深い青、私が好きだった奴らはみんな青が似合ってた」

「そっか、僕は赤かな」

 

凛の色、アーチャーの色、うん、僕は赤が似合う人が好きだ。

 

「それは反対だな」

「あれ? 補色は別でしょ?」

「ほしょく?」

 

そんなわけで僕らは歩きながら話を続けて、どうにかチェックポイントまでたどり着いた。

だけど、

 

「イヤ、来ないで 怖い怖い怖い」

「あたしはお兄様なんて知らないから」

 

……チェックポイントの担当の先輩たちがしゃがみこんでガクガク震えている。どうなってるのこれ? 気になった僕らはまだ待機していた教科の先生に尋ねた。

 

「どうなってるんですか、これ」

「ああ、衛宮君と比奈丘さんですか。チェックポイントについてはもう終わってますよ」

「そうなんですか。ならいいかな?」

 

この先輩たちは一体どうしたんだろう? 不安になって眺めていると、比奈丘さんがすたすた先輩たちの方に歩み寄って。一撃! 手とうで先輩たちを気絶させた。

 

「比奈丘さん?!」

「衛宮、こっちの先輩担げ。保健室まで運ぶぞ」

「ごめん、人を担ぐ腕力無いよ」

 

比奈丘さんはさくっと横抱きしてるけど僕はそんなに腕力無いからね? 多分どこかで落とすだろうし。

 

「しょうがない。先生、召喚獣召喚の許可を」

「え、あ」

「あ、僕からもお願いします。この先輩放っておくわけにはいかないんで」

「……わかりました。許可します」

 

先生がフィールドを張ってくれた。よし、召喚……あ、忘れてた。

 

「僕何の召喚獣なんだろう?」

 

幽霊とかだった場合、運べないんだけど。

 

「衛宮?」

「あ、うん。今から召喚するよ、試獣召喚(サモン)!!」

 

魔方陣が現れて、召喚獣が姿を現した。なんだろう、全体的に騎士の格好をしてる? セイバーに見せてもらった概念礼装みたいな感じで。まあ、あれはドレス姿だったけど。こっちは普通に騎士のような格好だ。しっかりとした胸当てに白い羽のようなものが付いた豪華なマント、腰にはちゃんと剣が刺してある。それから一つだけ気になることが

 

「この髪飾りなんだろう?」

 

女の子がするみたいな、ヘアピンとリボンが付いている。しかも召喚獣の髪は普段の僕なんかより数段長くなっていた。

 

「そんなの後でいいだろ。運ぶぞ」

「あ、うん」

 

比奈丘さんが担いでいないほうの先輩を僕の召喚獣に担いでもらって、僕らはBクラスを後にした。

 





さて、終盤戦。多分、Bクラスの先輩方は某化け物を超えたストーカーの餌食になりました。

ちなみに比奈丘の幼馴染兼親友は人類戦士です。話のベースは2020のつもり。分かる方は分かるかと。

明久の召喚獣の正体は分かりやすいでしょうかね?


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第九問

 

無事に保健室に先輩を運び終わた僕たちは教室に戻ってきた。比奈丘さんは飽きたと一言言って、本を読み始めてしまう。

 

「よー、おかえり」

 

広夢が何故かモニターの傍にいた。確かそこって神海さんがいたところじゃあ。

 

「あれ? 広夢、なんでここに居るの?」

「あ? とりあえず立ち直りそうに無い土屋に代わってモニター及び失格判定の仕事」

 

あ、なるほど。神海さんまだ戻ってないんだ。何処にいるのかなって探したら端の方に(うずくま)っていた。工藤さんが一生懸命励ましているみたいだ。

 

「そうなんだ。広夢は肝試し楽しんでないの?」

 

誰かとペア組んでいるようにも突入するつもりがあるようにも見えないし。

 

「いや、そっちに行くよりこっちで画面眺めてるほうがよっぽど楽しいぜ」

「そう? 実体験するのもいいことだと思うけど」

 

百の訓練より一の実践とか言わないかな?

 

「とりあえず、まあお疲れさん。ところでだが手で抑えたところで音声は聞こえるぞ」

「あ、やば」

 

まさかとは思うけどあの会話聞こえてた?!

 

「俺が適当に何とかしておいたから安心しとけ」

「あはは、ありがとう」

「どういたしましてっと。お、失格」

 

一組ペアが失格になったみたいだ。

 

「そういえばだけど聞いてたの?」

「まあ、俺は聞こえてたぞ」

 

誤魔化したのは俺なんだし聞いていて当然だろと広夢は言った。うわぁ、聞かれてたんだ。

 

「そっか……僕って歪んでんのかな」

 

うん、今の今まで感じていた穴がようやく判った気がする。あー、僕は歪んでいたんだって。

 

「歪んでるだろ。てか、歪まない人間の方が奇跡だぞ? 俺だって見事に歪みまくってるぜ?」

「そうかな、広夢はまともだと思うけど」

 

僕なんかに比べたらよっぽどまともだ。

 

「まともかまともじゃないかは、自分が決めていいと思うぞ? すくなくともお前みたいな歪みなんて普通にもってるもんだろ。お前はちょっと規模がでかいだけ」

「それでも僕はまともじゃないって言い切れると思うんだけど」

 

普通じゃないことくらい分かってるよ。まあ、歪んでいるって発想に行き着いたのはついさっきだけど。

 

「はぁ、歪んでる自覚あるだけマシだろ。思い返してみろ、ほとんど無自覚でサバイバーズギルド拗らせて正義の味方になったバカとかいるぞ」

「……バカは違うと思うよ」

 

アーチャーがバカとか広夢にだって言われたくない。

 

「突っ込みどころはそこかい」

「だって、彼だって……エミヤだし」

 

家族を馬鹿になんてされたくないよ。

 

「なるほどな。確かにそれは言えるな。ってそこじゃねーだろ」

「どっちにしても拗らせてるのは一緒ってことでしょ??」

「だがな、あいつも俺も生きようとした。ここが違うものだろ」

「うん、わかってる」

 

僕は生きようとすることは止めている。それが一番の違いだよね。広夢の顔が曇った。

 

「はぁ、ゴメン。俺に言えることは少ないな。同類(ひなおか)ならともかく俺はお前に説教しかできねーわ」

「あ、いや、別に何か言ってほしかったわけじゃ」

 

誰にも頼んだ覚えないし。

 

「俺が言いたかったんだよ。でも言えなかったか」

「でもまあ、ありがと。僕なんかのためにさ」

「ならいいか」

 

お前が自覚しただけマシだよなーと酷い一言を言われたのだった。

しばらくして、広夢がモニターを眺めながら呟いた。

 

「それにしてもあいつアホじゃね? どう考えたって」

「えっと、清水さん?」

 

何かDクラス戦とか、今日のペア決めとかで見かけたツインドリルの女の子、清水さんが何かどこかのクラスの男の子を引きずって歩いている。なんだろう、見ているだけで悪寒を感じるのって普通は無いよね。

 

「ああ、言峰と島田のペアを追いかけてチェックポイント突破してそのまま彷徨ってる」

「あれ、姉さんたち帰って」

 

ないよね。と言おうとしたら教室の扉が開いた。

 

「あ、来た」

「いやぁ、気絶するとは思わなかったよー」

 

姉さんが入ってきた。南を俵担ぎして。驚いていると、姉さんは座布団が何枚か敷かれているエリアに南を下ろした。

 

「南?!」

「南、お主 大丈夫かの」

 

姉さんが寝かした南の元へ、僕と秀吉が向かう。あれ? 秀吉??

 

「お、木下 復活した」

「秀吉も大丈夫?」

「大丈夫じゃ。それにしても南は無事かの?」

 

どうやら無事みたいだ。それにしても、気絶するほど怖いってどういうことだろう?

 

「ただ単に九十九神に追いかけられて気絶しただけだよ。これくらいでびっくりするとは思わなかったよー」

 

何がなんだか分からないけど、南は相当怖い目に遭ったみたいだ。そうこうしているうちに、モニターがチェックポイントを映し出した。

 

「あ、清水さんたちが着いたみたい」

 

 

物理

Dクラス 清水 美晴 71点 & Aクラス 久遠(くどう) 太一 203点

 

 

清水さんたちの点数が表示された。清水さんはともかく巻き込まれたほうの男の子の方はそこそこ成績がいいみたいだ。流石にAクラスとはいえそんなにとんでもない点数なわけ………

 

 

Aクラス 常夏 勇作 412点 & Aクラス 夏川 俊平 408点

 

 

「嘘」

 

まさかのとんでもなく高い点数だった。

 

「うわっ、そういうことかよ」

「なんじゃあの点数は」

「Aクラスの中でもトップレベルじゃないか」

「あいつら得意分野を選択に持ってきやがった」

 

清水さんたちはあっさり倒された。主に清水さんが魂を抜けたようになったせいで召喚獣が動いていないからだ。巻き込まれたほうの男の子は二三回攻撃を加えて、召喚獣は姿を消した。減ったとしても、50点か60点くらいかな。それでも300点は下らないだろうし。うわぁ……

 

「どうするの?」

「……私と悠里ならどうにかなるとは思う」

「だったとしても多分、ペア引き離すことは出来るだろうし………」

 

たしかあそこのエリアは壁を動かして迷路の形状を変えることができるようになっていたから。

 

「え? どういうことよ」

「あ、ごめん口に出てた?」

「ええ、どういうことか説明しなさい」

 

ぐ、あんまり言うつもりなかったのになぁ。とりあえず魔術的なところは誤魔化して僕が調べたAクラスの仕掛けについて話す。

 

「うわ、卑怯」

「もしかして、今普通に楽しんでいる連中にほとんど召喚獣がけしかけられてないのはそれでか?」

 

広夢が推測を口にした。それかもしれないね。

 

「多分かな」

「だろうね。面倒だなぁ」

「まあ、しばらくは様子見かしら」

「そうだねー」

 

それからしばらく、妙な仕掛けが起こることも無く平穏な肝試しになっていた。ただ妙に迷う人間の数が多すぎる、ってだけで。

 

「どうだい様子は」

「あ、学園長」

 

学園長がやって来た。それからモニターを眺めてぶつぶつと呟いている。

 

「ふむ、それなりに……おや?」

「どうかしましたか?」

「うーん、妙にぐるぐる回ってないかい?」

「あはは、まあAクラスは広いですししょうがないんじゃ……」

 

画面を見てみたら誰かがチェックポイントにたどり着いたみたいだ。

 

『よう、後輩共。よく来たな』

『……はぁ、営業妨害共なんつー仕掛け作ってんだよ』

 

この声、須川君? 仕掛けに気が付いてるっぽい。

 

『おい、先輩に対してその口の聞き方はなんだ』

『申し訳ありませんが、貴方方を先輩と思えません』

 

この声って佐藤さんだよね。もしかして、須川君と佐藤さんがペアなの? その後も悪口の応酬が続く。

 

「ほう、このガキ共はずいぶんと口が悪いね」

「あー、こっちとしては色々と因縁つけられたからいい加減にしてほしいんだよなぁ」

「確かに、学園祭の営業妨害とかアレなんでだったんだっけ?」

「営業妨害?」

 

学園長が不思議そうに首を横に傾げた。あれ、もしかして知らないのかな?

 

「あ、多分西村先生なら知ってると思いますけど。ウチの中華料理屋、営業妨害が出たんです。それがあの先輩たち」

「そうだよねー。麻婆のおかげで追い出せたけど、アレ続いてたら不味かったよ」

「ふぅん、こいつらもずいぶんと派手にやらかしてんだねぇ」

 

『それにしてもお前らみたいなクズを率いてる代表なんざ、よっぽどのクズだろうな』

『……なんだと?』

 

あれ、画面の向こうからも。こっちからもブチっと何か音がした。何言ってるんだろうこの人たち。

 

『それはそうだろ。先輩への敬意も教えねぇような能無しだしな』

『……そうですか』

『お? 認めるか』

 

いや、佐藤さんどう考えても認めてないでしょう。あの口ぶり。

 

『ならば正直に言わせてもらいますが、貴方方のような品のない人たちを先輩などと呼ぶ気はありません。我々にそう呼ばせたいなら、まずは態度で表してください。貴方方なんかより、私の代表の方がよっぽど先輩と呼ぶに値する人物だと私は思いますから』

 

凄い、佐藤さんノンブレスで言い切ったよ。確かにあんなのが先輩とか止めてほしいよね。

 

『んだと?!』

『てめっ』

『だな。ウチの代表のほうがよっぽど尊敬できるな。頭ごなしに命令するような人じゃないし、有言実行の化身だぞ。キレたら怖えぇけど、それでも付いて行きたいって思うんだ。あんたらはそういう人間じゃないだろ』

 

須川君もノンブレスで言い切った。なんだろう、ノンブレスが流行ってるの?

 

『そういうわけです。それでは』

『じゃあな』

『お前ら!?』

『待ちやがれ?!』

 

そのまま須川君と佐藤さんは出て行ってしまった。唖然としていると、悠里さんと霧島さんが立ち上がった。なんで?!

 

「悠里……怒ってる?」

「あら、明乃。怒らないわけないでしょう?」

「……同意見」

 

怖い、怖いよ二人とも。

 

「いってらー」

「止めないの姉さん?!」

 

そうこうしているうちに悠里さんと霧島さんは出て行った。どうしたらいいのさ。

 

「止めるわけないじゃん。ぼくが代表だったら同じように怒ってたよ」

「そっか」

 





今回無駄にぐだぐだです。いや、いつものことなんですけどね。
それからややアンチ気味です。非常夏アンチってあるんですかね? 難しい気はしなくはない。

妙に脈略が無いんだ。




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第十問

それにしても、悠里さんと霧島さんはずいぶんと速いスピードで進んでいるなぁ。この画面だけ全く驚きすらないよ。飛び出した召喚獣は完璧スルーだし、何か放置された召喚獣が他のペアの画面に映ったのを見て、なんかしょっぱい気持ちになった。

 

「ただいまー」

「戻りました」

 

須川君と佐藤さんが帰ってきた。二人ともちょっとだけ顔が暗いや。

 

「あ、お帰りなさい。二人とも凄いねー」

 

僕だったらあんなこと言えないよ。そう言うと二人の顔がさらに暗くなった。あれ?

 

「いや、すまん。せっかくチェックポイントに着いたのにそれを台無しにしてしまった」

「わたしも済みませんでした」

「いいんじゃないかな。二人は自分の代表を誇りに思ってるってことでしょ?」

 

二人は顔を赤くして、笑う。

確かに悠里さんも霧島さんも尊敬に値する二人だもんね。

 

「なんか恥ずかしいな」

「ですね。そういえば代表たちは?」

 

佐藤さんがようやく二人の不在に気が付いたみたいで周りを見渡した。

 

「あ、二人とも行っちゃったよ?」

「「え?」」

「あ、チェックポイントに着いたみたいだ」

 

悠里さんと霧島さんのカメラがチェックポイントを映し出していた。

 

                   ☆

 

さて、悠里たちがチェックポイントに着いたみたいだ。画面には悠里たちが遠くに映されている。神海を拝み倒してカメラをこっそり仕掛けて貰ったかいがあったよ。

 

『待たせたわね、先輩』

『遅かったじゃねぇか、坂本。格下が目上の人間をあまり待たせるもんじゃねぇぞ』

 

相変わらずながらムカつく先輩だなぁ。先輩がそんなに偉いの? いや、先輩は偉いよね。あの先輩がどう考えても偉いって思えないだけで。

 

『あら、それは悪かったわね。日々忙しいセンパイ方は時間が重要なのかしら?』

『当たり前だろ。お前らみたいなバカどもとは違うんだ』」

 

霧島さんと悠里が対戦のための位置に移動すれば、常夏コンビは揃っていやらしい笑みを浮かべた。自分たちが圧倒的に優位な立場にあるという余裕の表情だ。

 

『ところで昨日、お前ら『個人的な勝負ならする』って言ってたよな? それって当然、何か賭けるんだろ?』

『あんたら、難聴なのか?』

 

あ、悠里が完璧に素になってる。まあでもそうだよねー。何処をどう解釈するとそうなるのさ。

勝利を確信しているようで、坊主頭の……変態(なつかわ)先輩は挑発するように霧島さんと悠里を交互に睨みつけた。その後ろではモヒカンの常村先輩もニヤニヤと笑っている。そもそも昨日色々と断ったのに何言ってるんだろうかあの人たち。

まあでも……

 

『……良い。約束かは知らないけど。この勝負、罰ゲームあり』

『いいんじゃない? とびっきりいいもの用意するか』

 

悠里の声色が妙におかしい。あー、結構スイッチ入っちゃってるっぽいなぁ。

 

『『くっ……!?』』

 

常夏コンビがおびえた表情になっている。ま、そうだよね。あのモードの悠里は色々と面倒だし。

 

「……悠里、怒ってる?」

「そりゃそうでしょ」

 

神海と画面を見ながら言い合う。ああ、アキが持ってきてくれたお茶がおいしい。それにしてもこれ何処で作って来たんだろう? それに、どうしよう。これの後処理ぼく担当だよね? 後のことがいろいろと面倒だよ。

 

『別に先輩が嫌なら断ってもいいわよ』

『っ、お前らがそう言うなら乗ってやろうじゃねぇか……!』

『罰ゲームは何にするんだ?』

 

気を取り直して姿勢を整える常夏コンビ。断ればよかったのに、そしたらぼくの仕事減るのに。

 

『そうね……「負けた方は勝った方の言うことを何でも聞く」って言うのはどうかしら?』

『『んだと?』』

 

二人の顔色が変わった。何か恐怖に歪んでいる。ようやく悠里の気配に気が付いたのかな?

 

『てめぇ、何か企んでやがるな……?』

『よっぽど自信があるみてぇじゃねぇか』

『あらあら? センパイ方は自身がないようで? あたしたちはあんた達が言う格下で、しかも代表の資格もないクズなのにねぇ?』

 

訝しく悠里たちを睨みつける常夏コンビに対して、悠里が挑発するかのように心底バカにした態度で話しかける。そうそう、そんなことも言ってたよね。それにクズ量産する装置とか言ってよなぁ。やっぱり躊躇無くぶっ飛ばしても大丈夫だよね。

 

『……自信はあって当然。勝つのは簡単』

 

霧島さんがボソッと言った。なんだろう。悠里の挑発なんかよりよっぽど神経逆なでしそう。

 

『分かった……!お前らが何を企んでいるのか知らねぇが、どうせ猿知恵だろうからな! 行くぞ!!』

『ぶちのめしてやる!!』

 

霧島さんの最後の馬鹿にした態度に切れたみたいだね。常夏コンビが召喚獣を喚びだそうとする。すると悠里がニヤッと笑った。

 

試獣召喚(サモン)

 

常夏コンビよりも先に悠里が召喚獣を呼び出した。それに合わせるように霧島さんも召喚獣を召喚する。

そこにはタートルネックにロングスカート姿、そして妙に綺麗な光色彩の目をした悠里の召喚獣と女神が着ているような服装に背中から大きな翼を生やした霧島さんの召喚獣が現れた。

悠里の召喚獣を見て、全身に氷を這わしたような感覚に襲われた。なんだろう、あれは不味いものな気がする。

行かなくちゃ行けない。そんな感じがした。

 

「……神海さん、広夢、何かこの定点カメラの様子がわかる小型の受信モニターない?」

 

何かアキが急に言い出した。不安伝わってたかな?

 

「は? 明久、急にどうした」

「なんていうかお願い」

 

少しの間、沈黙が続いてから。日暮ちゃんがため息をついた。

 

「了解。よく分けがわからんが、用意するか。土屋、あるか?」

「……はい、あった」

「早っ?!」

 

アキが驚いたような声を出す。様子が気になって振り向けばアキが何かをこちらに投げてきた。キャッチすれば、それは小型のスマホのようなものだ。そこにはカメラの様子が映っている。

 

「姉さん、行くんでしょ? 行ってらっしゃい」

「アキ、ありがとう。行ってくる!」

 

ぼくは教室を飛び出した。アレがどういうものかは分からないけど、それでもやっぱり気になるんだよね。

 

                     ☆

 

姉さんは教室を飛び出していった。画面の方では、悠里さんたちの召喚獣とハゲの先輩たちの召喚獣がにらみ合っている。

先輩たちの召喚獣は牛頭と馬頭、地獄の番人をしているとか言われる妖怪だ。学園長から聞いたんだけど、このオカルト召喚獣は人の根本的な特徴を指し示しているらしい。例えば、Fクラス男子のゾンビは性根が『腐っている』から。工藤さんののっぺらぼうは『露出』とかその辺? 神海さんの吸血鬼は『隠密行動』とかその辺が入っているのだろう。

先輩たちの召喚獣の上に点数が表示された。

 

 

物理

 

Aクラス 常夏 勇作 386点 & Aクラス 夏川 俊平 357点

 

 

先輩たちの召喚獣はやっぱり先ほどの戦闘で点数が低くなっていた。これなら腕輪(もしくはそれに順ずるもの)の能力は発揮されないね。

悠里さんたちのほうを見れば驚きが待っていた。

 

 

物理

 

Fクラス 坂本 悠里 543点 & Aクラス 霧島 翔子 485点

 

 

確か悠里さんって理系科目得意だって姉さんがいつか言っていた気がする。

 

『な!!何だその点数!?』

『か、カンニングだろ!?』

 

悠里さんが鼻で笑った。ちょっと思ったんだけど悠里さんってもしかして、勝負事のときはちょっと荒っぽい?

 

『は? 何言ってるのよ。これが素よ? カンニングなんかするわけないじゃない。それともあんたたちのその点数はカンニングだったのかしら?』

『な……!?』

『んだと?!』

『……悠里は私よりも天才。だから普通』

 

霧島さんがボソッと言ってから召喚獣を動かし始めた。召喚獣の手にはいつの間にか杖のようなものが握られている。

 

『おらっ!!』

『死ね!!』

 

牛頭と馬頭が同時に霧島さんの召喚獣に襲い掛かった。霧島さんの召喚獣は慌てることもせずふわりと空中へと浮かび、牛頭と馬頭の攻撃を相打ちにさせた。お互いに離れた隙を縫って、悠里さんの召喚獣が懐へと潜り込み、牛頭と馬頭を伸びた爪で一閃。牛頭と馬頭にははっきりと抉れた痕がついた。

 

『な……なんで…………』

『あら、どうかしたのかしら? 普通に攻撃しただけじゃない』

『そ、そんな馬鹿なことが……』

 

先輩たちが驚くのも無理はない。牛頭と馬頭の点数は一気に200点削られた。残っているのは100点ほど、これは悠里さんがもう一撃加えれば牛頭と馬頭を倒せるね。

 

『先輩、あたし結構キレてるのよね。正直自分でもなにするか分からないわ』

『てめえ!!』

 

牛頭はむちゃくちゃな動きをして、悠里さんを近づけないように必死になって動いている。それをかわしながらニヤニヤと悠里さんは笑う。

 

『……私たちのクラスメイトを馬鹿にしたんだから当然の報い。代表としてもクラスメイトとしても許せない』

『なんだってんだ!!』

 

馬頭の方は霧島さんの召喚獣の攻撃からどうにか逃れていた。あの棒みたいなの風切音が凄い。

 

『ま、そういうことよ。じわじわなぶり殺すのもいいだろうけど、まあ顔を見るのすらムカつくから一撃で葬り去ってあげるわ』

 

悠里さんの召喚獣が牛頭を蹴り飛ばして、馬頭に当てた。それでも点数はギリギリ残っている。すると悠里さんはにやりと笑い、悠里さんの召喚獣は腕を掲げた。すると、牛頭と馬頭はまるで重力の塊に押しつぶされたかのようにひしゃげていった。

 

『お、俺たちの召喚獣が?!』

『なんだと!?』

『ふんっ、どうだ? 格下だとか言ってた連中にストレート負けするのは? なあ、今どんな気持ち?』

 

悠里さんが二人に詰め寄った。悠里さんの召喚獣がしゃっしゃっと素振りの練習をしている。多分、無意識にやってるんだよね。アレ

 

『だからどうしたってんだ!!』

『おい、夏川!』

 

悠里さんに掴みかかろうとするモヒカンの先輩を止めに入るハゲの先輩、ああようやく気が付いたんだ。………悠里さんの殺気に。

 

『………賭けは私たちの勝ち』

 

その空気を霧散させるためなのか霧島さんがぼそりと言った。

 

『くっ!て、てめぇら……!』

『けっ。俺達に・・・何をやらせようってんだ』

 

敗北を認め、忌々しげに吐き捨てるハゲとモヒカンのコンビ。すると悠里さんと霧島さんは笑った。

 

『二年生、特に各クラスの代表に謝ってちょうだい』

 

まあ、妥当だよね。途中で聞くに堪えなくなって、無視してたんだけど後で須川君達に詳しく聞いてみたらかなり酷い内容だったみたいだし。

 

『……それだけかよ?』

『後、おめでとうとでも言っておこうかしら?』

『『は?』』

 

先輩達が固まった。悠里さんが何を言いたいのか分からない様子だ。

 

『……おめでとう。先輩方は……内申点はほぼ無くなった』

『『な、何を言って……』』

 

まあ、日頃の行いとかもあるんじゃないの?

 

『このお化け屋敷の試合のビデオとかって、後で先生達が見るんでしょう?』

『だからそれがどう………!!』

 

いや、現在進行形で見てるよ。学園長がここに居るって知った先生達が最後の勝負については見てたし、須川君たちとの悪口の応酬もばっちり記録に残っている。

 

『さて、あんだけの暴言を吐く生徒を先生達はどう思うでしょうね?』

『テ、テメェ』

 

悠里さんに掴みかかろうとする先輩たち、でもそれは阻止された。

 

『はーい、もうこれぐらいにしておいたほうがいいですよ。センパイ?』

 

姉さんだ。間に合ったといえばいいのかな?

 

『なっ、お前は』

『悪いですけど。ぼく、親友を犯罪者になんかしたくないんです。無駄な悪あがきは止めてくださいよ。それにほとんど自己責任でしょうに』

『……っ』

『それじゃあ、お開きってことで』

 

こうしてこの勝負は二年の勝利に終わった。いや、まあ、相互的に傷になった部分もあったんだよね。二年生は主にハゲの先輩の女装と小暮先輩のレオタードによる彼氏の暴走による男女関係のもつれ。三年生はハゲの先輩とモヒカンの先輩による学年全体のイメージダウンとかそんな感じで。

 

                     ☆

 

ぼくたちは帰り道を歩いていた。お化け屋敷は一般公開用に改造するとのこと。先生たちも大変だよねー。

 

「はぁー無事終わったね」

「そうね。ところでなんで明乃はあそこに来たのよ」

「んー? 悠里が暴走するって思ったからかな。下手に暴走されると困るんだよねー。『悪鬼羅刹』様?」

 

中学時代には札付きの不良とさえ言われた悠里が暴走したら堪ったもんじゃないよ。

 

「ふんっ、もうそんな名前捨てたわよ」

「結構素に戻ってたと思うけどなぁ」

「……危険だった」

 

あれ、珍しい。神海が悠里の方を脅かすなんて。

 

「うわ、神海?!」

「……悠里だったら殴り返す」

「だよねー。そういえばあのオカルト召喚獣って人の本質みたいなのを映し出すんだって」

「へぇ、じゃああたしの召喚獣はなんなのよ」

 

悠里の召喚獣の本質かぁ。あの召喚獣を見る限り……

 

「『反転』じゃないの?」

「反転?」

「……どういう意味?」

 

あ、そっか。これはどっちかって言うと業界用語に近いよね。

 

「そうだなぁ。何か物事を成すときに自分本位な考え方に切り替わること。言っちゃえば社会とか無視して自分に都合がいいように動くようになってしまうことだね」

 

あれ、意外と合ってるっぽい? 悠里って社会的倫理は一応あるけど自分の方が優先なこと多いし。

 

「まあ、確かに合ってるわね。そういえば明乃の召喚獣ってなんだったのよ」

「ぼく? 召喚してないから知らないや」

 

ぼくの本質かぁ。なんだろう?

 

「……それずるい」

「そうよね。よし、起動(アウェイクン)!」

 

悠里が簡易のフィールドを開いた。

 

「え?!」

「さー、明乃召喚獣召喚しなさい」

 

何この展開。逃げたくなったので逃げ出すことにした。

 

「……逃がさない」

「にょわ?!」

 

カッターナイフ?! しかもかなりの速度だよ。

 

「一体なんだってんだよー。ぼくに()()題があるわけじゃないんだし」

 

そう呟いた途端に召喚円が現れて、召喚獣が呼び出された。そこには、若干見慣れているストライプの長袖に緑色のワンピース? 姿のぼくの召喚獣がいた。なんで?

 

「うーん、なんなのかしらこの召喚獣」

「……わからない」

「とりあえず消すよ!」

 

一体なんで藤村さんの格好で出て来たんだろう? ぼくの疑問は結局明かされることはなさそうだ。

 

 





相変わらずながらのぐだぐだ進行でお送りしました。
分かりづらいところがあったらすみません。

明乃の召喚獣の姿はお察しの通り藤村大河でした。アレが妖怪なのかは不明、てか妖怪だったらアーチャーが困るよね。本質は『受容』を想定してました。

ついでに明久の召喚獣はアポクリの黒のライダー、本質は『幸運』と『自己犠牲』、後は冗談で『女装が似合う(笑)』ご自由なのをどうぞ?

没ネタは比奈丘の召喚獣は人竜化(バグによる変質、本来は戦士で本質は『戦い』)、それから広夢はウィンディーネ『自由』、日向は幽霊『希薄』、夢路はリリス『ヒロイン願望』などなど。考えてはいたんですよ?


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※ザビエル道場

※キャラ同士の掛け合い注意。


??:はい、無事に肝試しも終了!

???:前回はちょっとお休みしたけど、毎度おなじみこのコーナー!

 

『ザビエル道場』!!

 

親友:はい、どーもー。いつもながらに脇役万歳! 親友と

ザビ男:どう考えたって脇役じゃないよな親友と思ってしまう。ザビ男だ

親友:それにしてもまあ……迷走してたな

ザビ男:しょうがないよ。書きたい要素詰め込んだら読者が追いつけないような内容に仕上がったんだから

親友:だよなー。ぶっちゃけCCCからななぞじを移動して、まさかのテイルズ再熱ってなんでだよ

ザビ男:あー、ポテンシャルが減ってたってことだね。ついでに言うなら氷娘の番外の方がよっぽど思いつくとかないわー

親友:プライリをリアルタイムで見てるしな。ネタを考える時間が……

ザビ男:まあ、夏だから

親友:それで終わらせていいのか?

ザビ男:そうじゃないともう収拾つかない

親友:そっかー、それじゃあしょうがないよな!

 

ザビ男:そういうわけで閑話休題。

親友:相も変わらずだが尺があまる。どうすんだ? アンケートやってないし

ザビ男:そんなわけでゲストを呼ぶか(指パッチン)

???:ったた(ちょっと上から落下してきた)

親友:落ちてきた?! 長男のときは何かスモーク湧いただけだったのに?

???:痛い……あれ? 道場?

ザビ男:そういうわけで今回のゲスト

???:そういったことか、ザビ子だ。よろしく

親友:ザビ子がゲストか。でもなんでだ?

ザビ男:いや、閑話休題に出るし。夏だ!海だ! 人外のバレーボール大会だ! 的な?

親友:本気でやるのか?

ザビ子:私としては勘弁してほしい。私は自分の親友と普通に過ごしたいだけ。金ぴかとか、殺人貴とか勘弁願いたい

ザビ男:殺人貴よりもあーぱー吸血鬼とかカレー先輩とかその辺注意したほうが

親友:どっちにしてもザビ子の幸運って多分Eだよな

ザビ子:なっ?! せめてそこはD程度は寄越せ!

ザビ男:Dでいいんだ

親友:そっか……(肩に手を置く)

ザビ子:どうした?!

親友:Dって俺レベルだぞ?(人物紹介参照)

ザビ男:親友レベルって、拉致監禁?

親友:ああ、ついでに言うなら一人の人間に人生持ってかれたな。転生後も

ザビ子:マジか……あれ? 意外と当てはまる?

親友:ご愁傷様

ザビ男:とりあえず暗い話題は勘弁してほしいんだが

ザビ子:ああ、それはすまない

ザビ男:それじゃあ、もうそろそろ終わりといくか

親友:そうか、それなら前は失敗した次回予告ー

ザビ子:いいのか次回予告

親友:まあな。それじゃ、どぞ

 

 

夏だ! 海だ! ナンパだ? 花火大会だ?

そんなわけで夏休みがスタート。

色々と盛り込む予定です。 





そんなわけでザビエル道場でした。
最近はプライリ×氷娘とか妄想していたり?

それからテイルズのマイソロ3に再(はま)りしてたり。夏休みって何か趣味が切り替わる季節だなとか思ったり。

次回予告どおり閑話休題は海編になる……はず。


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閑話休題
第一問


「王様ゲーム」


「……で? なんでこうなった」

「あははは、なんでさ」

 

目の前に広がる惨状にもう何かちょっと泣きたくなった。イリア姉と桜ちゃんは士郎を挟んで喧嘩してるし、凛は何か机に突っ伏している。ライダーさんは気絶している聖さんを必死に介抱している。

 

「おー、派手にやってんな」

「マスター、私たちが不在の間に何をしたんだ?」

「「王様ゲーム」」

 

そうとしか言いようがないんだけど。どうしたらいいのさこれ。

 

「こういう時は息ぴったりだなお前ら」

「はぁ、とりあえずこの状況をどうにかするべきか?」

「お願い、正気な二人だけじゃどうにもなりそうにないよ。てか何をしてたかは二人も知ってたよね?」

 

なんでこんなことになったのか、それはそれなりに時間を遡る。

 

                     ☆

 

丁度、大人が不在だったもんだからかなり広いウチで泊まり会をしようということになった。割とよくやるから気にしないんだけど、何故か今日は王様ゲームをしようという話になってとりあえず道具を用意して、リビングにみんなが集まる。

 

「王様ゲーム!」

「「「イェーイ!!」」」

 

士郎の掛け声が入る。今日ここに来ているのは、この家の住人である僕、士郎、イリア姉、それからアーチャー、凛に桜ちゃんとライダー、凛のアサシンは不在で、それと姉さんとランサーさんと姉さんの知り合いだという聖花楠さんの十人だ。

 

「ルールをよろしく、兄さん」

「はいはい、えっとここに1から10までトランプがあります。みんな一つずつ引いてね。それから王様の指示はさっきみんなに書いて貰ったのをこの箱の中にいれてあります。トランプが1の人が引いてね。1の人は掛け声のときに名乗るように」

「それじゃあ、早速はじめるか」

 

みんなが用意されたカードを引いていった。

 

「せーの」

「「「王様だーれだ!」」」

 

誰が1なんだろう?

 

「お、幸先いいな」

「あ、ランサーさんが1?」

 

ランサーみたいだね。ランサーが喜々として箱の中に手を突っ込んで、紙を一枚取り出した。

 

「えっと何々? 『1と7がぼくの仕事を代行』おい、嬢ちゃん?」

「あははー……ごめん」

 

姉さんらしいといえばらしいかな?

 

「あ」

「……あちゃぁ、アーチャーどんまい」

 

隣のアーチャーが何かぼそりと呟いたのを聞いて覗き込んでみれば、アーチャーは7のカードを持っていた。

 

「逆に言えば安全地帯に逃げ出せるとも取れるがな。マスター気をつけたほうがいいぞ」

「あはは、怖いこといわないでよー」

 

そんなわけでして、アーチャーとランサーは姉さんの仕事こと化け物退治に出かけることになったのだった。

 

「じゃあ、どうしようか?」

「9と10が指示に書かれていたら1と2にしちゃおうか」

「いいよ」

 

それからもう一回トランプを配る。よし

 

「せーのっ!」

「「「王様だーれだ!」」」

 

トランプを見てみれば6だった。普通だね。

 

「あ、私だな」

「花楠さん?」

「ふむ、『2と8が買出しの手伝い』買出し?」

 

アーチャーもしくは士郎だけど、誰?

 

「心当たりがある人ー」

 

姉さんが聞くけど誰も手を上げない。ああ、これはアーチャーか。

 

「2はぼくなわけだけど、8は?」

「アタシよ」

「凛かぁ」

 

買い出しって何の買出しだろうねと姉さんと凛は言い合っている。ふーん

 

「アーチャーが羨ましいねぇ。両手に花とは」

「あはは、買い出しって絶対アレだよな。タイムセール」

 

あ、そっか。そういうこともありえるか……どうしよう。タイムセールのこと教えようかな。

 

「まあ、居ないから無効だよね」

 

……ドンマイ、アーチャー。

 

「じゃあ、もう一回配りなおそうか」

 

もう一回カードを配りなおした。

 

「よし、せーのっ!」

「「「王様だーれだ!」」」

 

僕のは7か、うーん。1ってなかなか当たらないんだなぁ。

 

「あ、私ですね」

「ライダーさんなんだ」

「ほい、箱」

「ありがとうございます」

 

ライダーが箱から紙を取り出した。

 

「えー『7と10がメガネをかける』ですね」

「えっと、7僕なんだけど。2は?」

「あ、俺」

「……ッチ」

 

舌打ちした?! ライダー舌打ちした?!

 

「とはいえ、メガネねぇ」

 

何か持ってたよね。ちょっと席を外すよと声をかけて自分の部屋に戻ってみれば丁度よく赤と黒のメガネフレームがあった。何作ろうとしてたんだろう僕

 

「ただいまー」

「兄さんお帰り、どうかしたのか?」

「はい」

「メガネ?!……のフレーム?」

「これかけてれば多分命令実行したことになる?」

 

多分これライダーが命令書いたんだよね。ライダーを見ればため息をついて。

 

「まあいいでしょう。桜のメガネ姿……」

 

なんだかよくわからないけど触れないほうがいいね。カードを配った。

 

「よし、せーのっ!」

「「「王様だーれだ!」」」

 

僕のトランプは3見事に当たらないね。

 

「あ、わたしです」

「桜ちゃんか。はい、箱」

「ありがとうございます」

 

桜ちゃんが箱の中から紙を一枚取り出す。

 

「えっと、『3と6が怖い話をする』……あ」

 

二回目か。怖い話、怖い話……

 

「どうかしたの?」

「いえ、私が書いたの自分で引いちゃったなぁって」

「そうなんだ。さて、ぼくが6なわけだけどどうしようかなぁ」

 

あ、姉さんか。思いついた話被っちゃいそうだなぁ。

 

「あ、そうだ。部屋の電気消しましょう、雰囲気でていいじゃない」

「そこまで怖い話するつもりないよ?」

「そうそう、止めておこう?」

 

怖いわけじゃないけど、こういう時って変なものよって来そうで怖いからさーと姉さんが笑う。姉さん、それが怖いよ。

 

「じゃあ、ちゃっちゃと話して次に行くよ。じゃあ僕から」

 

 

 これはまあ、一応本当にあった話です。

 この江戸屋敷に住みだした頃、この家って基本廊下が庭に面しているから夜とか月明かりを頼りに動くことが出来るんだよね。

 ある夜トイレに行きたくなって、僕は部屋を出たんだ。その頃は子ども三人で川の字に寝てたから二人を起こさないようにそぉっと抜け出して、廊下を歩いたんだ。するとね、台所からコトンコトンって音がするんだよ。あ、誰かが包丁使って何か切ってるなって感じだったんだよね。それで気になったから廊下からリビングを隔てて台所を覗いてみたんだ。そしたら士郎がいつも使ってる台がそこにあって、そこに誰かが立っててまな板と包丁を出して料理をしていたんだ。僕はそれが士郎だと思って、料理頑張ってるなぁーってくらいで台所を見るのを止めて、トイレにいったんだよ。それで戻ってきて、布団に潜り込んでから気が付いたんだよね。士郎ここで寝てたのになんで台所で作業してるんだろうって

 

 

「……ってわけで僕の話は終わりだよ」

「ちょ、兄さん?!」

「アキヒサ?! どういうことよ説明しなさい!」

「いや、寝ぼけてたから間違えたのかもしれないしさー」

 

結局のオチはじーさんが夜食作ってただけなんだよね。それが物凄くど下手で驚いたなぁ。いや、ど下手って言うよりもどう考えたって野戦料理なんだよね。せめて普通のくらい覚えろってことで、簡単な夜食の作り方教えたのはいい思いでだなぁ。ちなみに台は士郎がうっかり出しっぱなしにしてただけだったり。

 

「アキの話はわりとユーモアがあるね」

「ユーモアのカケラもないわよ!? この家ってことは本当に居るかもしれないじゃない」

「いや、大丈夫。別に変な気配はねーぞ?」

「「そういう問題じゃないわよ/から!」」

 

真相を教えろと二人はがっこんがっこん僕を揺らすけど、育ての親の名誉のためとそれから説教回避のためにもこれは黙っておかないとね。

 

「じゃあ、こんどはぼくの話かな」

 

姉さんが口を開いて話し始めた。

 

 

 これは本当にあった話。あ、怖いかどうかは別だよ。

 ある日のこと、ぼくがいつもの通りに遠坂家の当主に雑用押し付けられたときのこと。そのとき丁度用事があって倉庫みたいな部屋に入ったんだよね。普段は入らないような場所なんだけど、そこにある資料が要るってことになって探しに行ったんだよ。そしたらさ、とんでもなく豪奢な箱から「出して」「出して」って声がしたんだよ。それで気になってその箱を開けようとしたんだよね。そしたらさ、遠坂家の当主がいきなり飛び込んできて「この箱は絶対に開けてはいけない」ってさー、鬼のような形相で言うんだよ。いつもの優雅な感じはどこに言ったのって感じでさ。怖いよねー

 

 

「はい、これで終了。あの人があんな顔するなんて思わなかったよ」

「あの、怖いの部分が違いません?」

「え? そうかな。他にどこが怖いかな?」

 

普通の人は箱から出して出してって言ってる所が怖いと思うんだけど。てかなんで遠坂の家

にそんなものがあるの? あそこの専門って宝石魔術だから人体実験とかしないって思ってたのに。

 

「……明乃、ちょっと感覚おかしくない?」

「あはは、姉さん昔からだよね。お墓で変な声聞いたとか、お化け屋敷で人影見たとか、何もないはずの新築の家で変な影が躍ってるのを見たとかさー」

「嘘、明乃って霊感あったの?!」

 

うん、昔は霊感なのかはよく分かってなかったけど。霊感ばっちりあるよね、姉さん。

 

「へぇ、明乃は霊感があるのか」

「霊感?」

「あー、食われないようにな」

「あ、はい」

 

聖さんが真面目な顔で言っていた。食われる……もしかして幽霊とかに?

 

「き、気を取り直して次に行こう!」

「士郎、何か声が震えてるけど大丈夫?」

「あはは、に、兄さん何言ってるんだ?」

「アキヒサがあんな話するからでしょ!」

 

??? あれに何か怖い要素があったのかな? ちょっと内心首を捻りながらカードをまた配った。カードを確認してみれば、あ。

 

「せーの!」

「王様だーれだ!」

 

誰も名乗りを上げない。まあ、それはそうだよね。

 

「はい、僕でした。それにしても見事にバラバラだよね。」

 

僕が1引けたんだよね。見事に被らないよなぁ。

士郎が渡してくれた箱から紙を一枚取り出す。

 

「『7と8が家族孝行』…………」

 

なんだろう、紙を床に投げ捨てたい気もちになった。なんで三回連続で1の人が自分の書いた紙を取り出せたんだろう。

 

「あ、7はわたしね」

「俺が8だけど……家族孝行?」

「親孝行の家族版だと思って。参ったなぁ。普通に自分が当たるって思って準備してきたのに」

 

どうしたものか、落語の寄席とか普通見に行かないよね。しかも最近ちょっと流行ってる落語家さんのやつ。たまには伝統芸能とかいいかなって思ってチケット買ったんだけどなぁ。

 

「ちなみに明久は何を用意してきたのよ」

「あー、じーさんが落語好きだから寄席のちょっと高いとこのチケット。全員分買ったしどうしよう」

 

普通に自分が当たるって思ってたよ。

 

「うわ、これって人気があってチケット完売しちゃうって言う噂の落語家の寄席じゃない」

「あれ、知ってるんだ」

「桜がこの人の怪談が聞きたいって喋っててさ」

 

思わず桜ちゃんの方を見てしまった。意外に渋い趣味してるんだね。

 

「あ、いえ、その……その落語家さんの怖い話って全部創作なんです。だからちょっと気になってて」

「なんだったらいる? 見事に当てが外れたし」

 

僕もそれなりに興味はあるけど、そこまで行きたいものじゃないしさーと言っていると背中に何かが張り付いた。

 

「駄目よ。アキヒサ」

 

イリア姉だ。急にどうしたんだろう?

 

「そうだぞ、兄さん。せっかく買ったのに、もったいないじゃないか。だからみんなで見に行くぞ」

「そうよ。せっかくアキヒサが買ったんでしょう? だったら使わないのは駄目よ」

「だってさ、アキ?」

 

士郎とイリア姉と姉さんが僕の方を見てくる。何か視線が痛い。

 

「わ、分かったよ」

「はい、じゃあけってーい!」

「爺さんにも言うから誤魔化すなよ?」

 

絶対だからねとイリア姉に念を押された。そこまで言わなくても分かったよ。

 

「ところでですが、命令の方は?」

「「あ」」

 

すっかり王様ゲーム忘れてたよ。

 

「決めた。わたしはお母様とお父様におそろいのアクセサリーを作るわ」

 

凛がそうきっぱりと言った。さすが凛、やることはさくっと決めるところも凄いところだよね。

 

「先輩はどうするんですか?」

「俺? 俺は……今度みんなの好きなメニューにするか」

 

士郎らしいなぁ。そういえばアーチャーの好物って士郎と同じでいいのかな?

 

「じゃあ、それは今度報告ってことで。次で最後にしようか」

「だな。結構遅い時間まで起きてるし」

「カードきったわよ」

「ありがとう」

 

きり終えたカードを凛が渡してくれた。カードを引いて中身を確認する。中にあったカードは3、またか。

そして、例の掛け声をかけたわけだけど、もう思い出したくもない。

 

                   ☆

 

「来た命令が『3と6、7と9がキスをする』って奴で士郎が引いたんだ」

「ふむ、それで?」

「僕と凛だったわけだけど、そっちはまあいいとして……」

 

アイリさんに普段からやられてるもんだからなれてんだよね。そっちはいいんだけど

 

「士郎の相手が桜ちゃんでそれにイリア姉さんが食って掛かってさ」

「なるほどな。それであの喧嘩ということか」

「で、そのときにぶつかった魔力のせいで聖さんが昏倒、凛が何か顔真っ赤にして机に突っ伏した」

「そうか、マスター。一言だけ言えることがあるぞ」

「なに?」

「遠坂凛の赤面は明らかに君のせいだ」

 

なんでさ

 





中途半端なところで終わってすみませんでした。今回間に合わなかったんです。


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第二問

「それぞれの海」


僕が玄関を開けて、中に入ろうとしていると。リビングから話し声が聞こえた。

 

「え? 海かい」

「はい! 丁度ウチで海の家やってるところがあって。切嗣さんがの都合があっていたらで構わないのですけど……」

 

あ、タイガー来てたんだ。これはご飯多めにしないとまずいかな。

 

「海か……」

 

士郎の呟く声がした。冬木って港町だから遊べる海岸ってあんまりないんだよね。おかげで僕らにとっては海ってちょっと縁遠いものだよなぁ。

 

「え? キリツグ海行くの?! イリヤも行きたい!」

「え、そうなの? 舞弥さんも誘いましょう!」

「それでしたら他の方も誘うべきではないでしょうか。アイリスフィール」

 

女性陣の盛り上がる声が聞こえる。僕はアーチャーに促されて、玄関を閉めて中へと入った。うわー涼しい。食べ物の買い出し、アーチャーが担当だったんだけどどう考えたって一人じゃ疲れるだろうからって一緒に出かけたんだよね。道中が暑すぎてまいったけど。

 

「ただいまー……って何やってるの?」

「マスター、冷凍食品の類が溶けかかっているぞ」

 

アーチャーが忠告をしてくれた。あ、本当だ。

 

「え、あ。本当?! 士郎、手伝って!」

 

リビングに顔を出して、士郎に呼びかければ士郎はすぐに来てくれた。

 

「あ、うん。兄さん、今度海行くって」

「え、本当? うーん、海かぁ。水着あったっけ?」

 

一応聞いていた話題だけど盗み聞きは悪いよねってことで適当に誤魔化した。アーチャーの分の水着どうしよう。

 

「あはは、みんなで行くことになりそうだけどいいかな?」

「はい、おじいちゃんに伝えておきますね」

 

そんなわけで僕たちは海へ向かうことになったのだった。

 

                    ☆

 

一方、その頃。遠坂邸にて、和服姿の白髪に若干ただれた右半分の顔の男性とひげの生えた白のワイシャツに赤いベスト姿の男性が玄関先で会話をしていた。

 

「お前の家って暑いな。冷房ないのかよ」

「雁夜、冷房ってなんだい?」

 

中に入りながら和服の男性、間桐雁夜が赤いベスト姿の男性、遠坂時臣に尋ねた。

 

「そこから始まるのかよ?!」

 

あまりにもずれた発言に雁夜は呆れる。

 

「いつもは別荘に行くからね。夏場はこっちにいないことが多いんだ」

「へぇ、別荘ね。これだから金持ちは」

 

ジト目で雁夜が時臣を見れば、時臣はきょとんとした顔で雁夜を見つめた。

 

「え? 雁夜の家にもあるもんじゃないのかい」

「へーへー、後で兄貴にでも聞いてみるか」

 

                    ☆

 

「え、別荘ですか?」

「うん、調べてみたら十年ほど行ってないけど確かにウチにもあるみたいでさ。別荘の掃除とかもかねてみんなで出かけないかい?」

「へぇ、ウチにそんなものがあったなんて驚きだね」

「カリヤが向かうというのであれば私も向かいますよ」

「じゃあ、今度……あれ? 衛宮さん?」

 

雁夜の携帯電話が急に鳴り出す。番号を見てみれば、それは聖杯戦争で関わるようになった衛宮切嗣だった。

 

「はい、もしもし?」

『あ、間桐かい?』

 

やはりそれは衛宮切嗣だった。めったなことでは連絡してくることのない彼がどうして電話をしてきたのだろう、と内心首を傾げながら雁夜は話しはじめる。

 

「どーも、どうかしました?」

『いや、実は藤村さんからのお誘いで海に行くことになってるんだけど一緒にどうかと思って』

「あー、海ですか。丁度今、海沿いにある別荘の掃除の話してて」

 

なんていうタイミングの合わなささなんだろうなと雁夜は内心考えながら返事をする。

 

『へぇ、別荘なんてあるんだ。流石は御三家の一角だね』

 

その言葉には全く含みもなく、感心しているだけのようだ。

 

「いや、あんたも御三家だろ」

『僕は入り婿だからね』

 

すると急に声が途切れて、携帯を落としたかのような音や襖の開くような音、風が通り抜ける音が聞こえてきた。それからしばらくして、誰かが携帯を拾ったようで声が聞こえてくる。

 

『あ、雁夜さんすみません』

「明久君?」

 

衛宮家の長男、明久だ。慌てたような感じで少し早口に喋る。

 

『いや、ちょっと家が立込んでて……あ、ちょ、凛?!』

「明久君?!」

 

明久のその言葉を最後に、ツーツーツーと電話がきれたことを示す音が聞こえてきた。携帯を耳から離して、画面を見る。すると、通話終了の字が画面に出ていた。

 

「………切れた」

「おじさん、どうかしたんですか?」

 

一連の様子を見ていたらしく桜が不思議そうに聞いてきた。

 

「いや、何か衛宮さんところも海行くみたいで誘われたんだけど、てか凛ちゃん?」

 

明久が最後にそう言っていたような気がする。

 

「え、姉さんがどうかしたんですか?」

「あー、何かよく分からないや」

 

とりあえず別荘にいく日にちを決めようという話し合いになった。

 

                     ☆

 

さて、バイト先にて。私こと聖花楠は級友で、同じくバイト仲間の遠野志貴と話をしていた。ちなみにこの店の名前はアーネンエルベ、特異点と呼ぶ人間もいる知られざる秘境的な店だ。

 

「は? 海」

「うん、ウチにプライベートビーチがあるらしくてさ」

 

そういえばこいつの家は財閥だったな。

 

「へぇ、さすがブルジョア。私には縁がない」

「いや、頼む一緒に来てくれないか」

「は?」

 

家族水入らずとかその辺の話だろうに。

 

「いや、ちょっと……な」

「どうしたんだ」

 

何か苦虫潰したような顔をしている。

 

「俺、彼女いるんだ」

「はあ、それはおめでとう」

 

うわ、ついにこいつにも春が来たかと思ってしまった。

 

「それで、ちょっと修羅場が」

「私には関係ない」

 

こいつの八方美人癖は昔からだろう。呆れながら拭いていたグラスを拭き終わった食器を置く場所へと置いた。

その時、ケータイが揺れた。何かあったのか?

 

「ん? メール?」

 

メールが来ていた。内容を確認する前に差出人を見てみれば、王様の二文字……もちろんギルの(強制)登録のせい。

 

「……遠野」

「どうしたんだ。聖」

「海行くわ」

 

海に行こう、現実逃避というか現状逃避したい。

 

「急に?!」

「あ、さつき誘うけどいい?」

 

私の最大の癒しである彼女を連れて行かないわけがない。むかつくことに遠野に恋をしている彼女は簡単に釣られてくれるだろう。

 

「別に構わないよ」

「ついでに妹や友人も招くけどいいか?」

 

思えば、イナリやハルにシズ、みんなと出かけたことなんて片手で数えられそうなくらいだ。

 

「まあ、別に構わないよ」

「よし、休み全部奴に潰されるとかマジ勘弁」

「??」

 

ギルガメッシュから逃げるのは難しいだろうけど、それでも現状逃避しなけりゃやってらんないよ。





前回から閑話休題にはサブタイトルつけてます。他の閑話休題にもつける予定


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第三問

「ナンパには注意?」


それからしばらくして、とある砂浜に銀髪赤目の美女、アイリスフィールが白いビキニに黒いパレオ姿で歩いていた。見る人見る人が驚いたように振り向く。

 

「ふふっ、たまには遠出もいいわね」

「はい、しかし良かったのでしょうか。私まで水着を買っていただいて」

 

その隣を金髪の凛々しい碧眼の少女、セイバーがスポーティーな黒の水着姿で歩いている。こちらも人の視線を集めていた。

 

「いいわよ。気にしないから」

「そうですか、ありがとうございます」

 

談笑をしながら歩く二人だったが、その前に茶髪の男性と黒髪の男性の二人組が現れた。二人はピアスにネックレスなどいわゆるチャラいと呼ばれるような外見をしていた。

 

「おーおー、そこを行くお姉ちゃんたち。今暇か?」

「俺たちとお茶しない?」

 

どうやら典型的なナンパらしい。するとアイリスフィールはにこやかに笑った。

 

「あら、すてきなお誘いね」

「何を言っているのですかアイリスフィール」

 

にっこりと笑うアイリスフィールをセイバーは慌てた様子で止めに入る。だが、涼しい顔したアイリスフィールはさらりと言った。

 

「でも、ごめんなさいね。買出しに行かなくちゃ行けないの」

 

だから貴方たちのお誘いは無理ねとアイリスフィールは去ろうとする。追いすがろうとするナンパ二人組だが、それよりも先に誰かが声をかけた。

 

「アイリ」

 

完全に泳ぐ気なんて見えない和服姿の切嗣だ。切嗣の姿を見つけたアイリスフィールはにっこりと笑う。

 

「キリツグ! どうしたの? イリヤと一緒にパラソルの下にいるんじゃなかったの?」

「あー、うん。ちょっとね」

「アイリスフィール、それにキリツグまで、あの……買出しはいいのですか」

 

シロウやアーチャーも待っているやもしれません。とセイバーは言う。

 

「あ、そうだったね。急ごうか」

「一緒に行けるなんてうれしいわ」

 

そう言うと、切嗣の腕にアイリスフィールが抱きつく。そのまま三人はその場を去ろうとした。

 

「……なんだったんだよあのおっさん」

「ああ」

 

その場に残されたナンパ二人組が呟く。するとアイリスフィールとセイバーが顔だけをナンパ二人組へと向けた。

 

「「…………」」

「「ひぃっ」」

 

その顔はにっこりと笑っていたが背筋が冷えるようなものだった。多分、息子二人が居たらこう言うだろう。あの母と姉貴分にしてあの姉ありと。

 

                    ☆

 

いっぽう、砂浜の別の場所。こちらでは一騒ぎ起こっていた。

 

「……失せなさい、この蛆虫共が」

「正直、君たちに興味ないんだよね。失せろ」

 

白髪に碧眼の身体のラインが出るような黒の水着を着た少女、カレンと茶色の髪に茶色の目、白地に水色、ピンクといったカラフルな色の水玉模様の入ったフリル付きのセパレートの水着を着た少女、明乃が追いすがってくるドM共を片っ端から伸していた。最初はただ単なるナンパを罵倒していただけなのだが、ドンドンと変態が寄ってくるようになったのだ。

 

「あ、姉さん! カレンさん!」

「ちょっと待ちなさい! アキヒサ!!」

 

少し遠くから声がしたかと思うと、黄緑の半ズボンタイプの水着に水色のパーカーを着た茶髪の少年、明久と銀髪赤目に白のワンピースタイプの水着を着た外見は幼い少女、イリヤスフィールがやって来た。

 

「よう、嬢ちゃん達、ようやく見つけたぞ」

 

また別の方向から呆れたような声がして、青髪に赤目、精悍な顔つきのアロハシャツにズボン姿の青年、ランサーがやって来た。

 

「あれ? アキ! それにイリヤさん、ランサーさんも?」

 

次々と現れた知り合いたちに驚愕する明乃。

 

「はぁ、嬢ちゃん勝手にいなくなるなよ」

 

主従コンビはそのまま会話を続ける。一方、明久はカレンに話しかけていた。

 

「そっちも海に来てたんだね。意外だよ」

「ワタシたちだけです。遠坂家に誘われたので」

「そっか、この前は急に凛がやってきてびっくりしたよ。しかも理由が暑いって」

 

アレはアレでちょっとした騒動だったなぁ、と明久は遠い目をする。

 

「あの家には冷房がありませんかから、蒸し風呂かと言わんばかりですから」

「うわ、本当? せめて冷暖房は完備しなよ」

 

普通の家庭だと冷暖房の普及率って半端ないのにと明久は呆れる。

 

「いえ、冬場はストーブがあるそうで」

「それは暖かそうだね。夏場は全く持って意味ないだろうけど」

 

むしろ暑いでしょうに、とさらに呆れればカレンは頷きながら自分の知っている情報を教えた。

 

「ええ、普段は別荘へと避暑に出かけるそうで」

「さすがブルジョア……あれ? もしかして、凛も来てる?」

「遠坂凛なら来てますよ」

 

他の方々は来てないですけど、とカレンは付け加えた。

 

「そっか、探したほうがいいかな?」

「もう! アキヒサ、勝手にいなくなっちゃ駄目でしょ! パラソルのところに戻るよ!!」

 

追いついたイリヤスフィールがぷりぷりと怒りながら、明久の手を取り引っぱっていく。

 

「え、ちょ……ごめん、じゃあね」

 

明久はこうして去っていった。カレンが視線を明乃の方へ戻せば。

 

「ランサーさんありがと、連中全然引き下がってくれなくってさー」

 

見事にドM共を伸したランサーに明乃は苦笑しながら礼を言っていた。

 

「それにしても下手なナンパが多いな」

「やっているのは自分も一緒でしょうに、香水匂ってるよ」

 

何処の美女をナンパしようとして失敗したのさ、と明乃はにやりと笑って聞いた。それを聞いたランサーは盛大に顔を引きつらせる。

 

「げ、嬢ちゃん妙に感覚が鋭いよな」

 

明乃に気づかれたことよりも明乃の死角になっているところから冷笑を浮かべるカレンが恐ろしかったからだ。

 

「それはどうも、カレン姉さんいこっか」

 

ランサーさん一旦荷物のところ戻るよーと明乃に言われて慌てて着いて行くランサーだった。

 

                    ☆

 

「それにしてもしつこいナンパね」

「はい、姉さんよくあしらえますね。私一人だったら流されそうですよ」

 

海に来ていた黒髪ツインテールに碧眼、服装は赤いビキニタイプの水着にホットパンツを合わせた物を着た少女、凛とやや紫がかった髪に黒目がちの目、水着はパーカーに隠れてよく見えない少女、桜の二人はナンパを撃退しながら歩いていた。

 

「ふぅ、せめて知り合いの男子がいてくれたらなぁ」

「アサシンさんに荷物番任せたのは間違いでしたね」

「そうよね。あれ? 衛宮君?」

 

見慣れた赤銅色の頭を見つけて声をかければ、それは幼馴染の衛宮士郎だった。服装はオレンジの半ズボンタイプの水着だ。

 

「お、遠坂に桜?」

「あれ? 先輩どうしてここに?」

 

予定が合わずに誘えなかった衛宮家がなぜここに居るのかと二人は驚く。

 

「え、ああ。ここの海の家、藤村組の若い人たちがバイトしてるらしくてさ。この近くにあるコテージの宿泊券、爺さんが安く手に入れたんだって。そういう桜たちは? 爺さんが電話で誘ってたみたいだけど」

 

まあ、凛が乗り込んできた一件で色々とうやむやになったわけだが。

 

「あ、この近くにウチの別荘があって、そこのお手入れもかねて遊びにきたんです」

「そうなのか、あれ? 誰か保護者は?」

 

普段だったら誰かしら居るよなと士郎は周りを見渡す。

 

「それが、わたしたちが買い出しなのよ」

「そうか、俺が着いていこうか?」

 

ナンパとか大変みたいだしなと士郎は笑う。どうやら先ほどの二人の会話は聞こえていたらしい。

 

「え、いいんですか?」

「今、アーチャーの奴が荷物番だから俺、暇なんだ」

 

爺さんはアイリさん追いかけるし、兄さんは急に飛び出すし、イリヤはそれを追いかけるし、つまんなくって。と士郎は苦笑した。

 

「じゃあ、よろしく衛宮君」

「おう」

 

返事のない桜は、先輩と一緒に海とぶつぶつ呟きながらオーバーヒートしていた。

 

                    ☆

 

一方、その頃。その砂浜付近にあるプライベートビーチにて。

 

「はー、海だな」

「海だねー」

 

ゆるくウェービーな茶髪を一人は編みこみで綺麗に、もう一人はポニーテールに纏めて、二人は体育座りで海を見ていた。波がいいよなーと二人は呟く。彼女たちはいろんな意味で上には上が居るということを更衣室で知ったのだった。そのせいで微妙にへこんでいる。

ちなみに、他の女性陣は色々とトラブって未だに宿泊場所である屋敷から出れないでいた。

 

「はいそこー、そんなところで現実逃避するなよ」

「ばーさーかー……」

 

赤い半ズボンタイプの水着を着た少年、シズが二人を現実に引き戻そうとするが、ポニーテールの少女、カナこと花楠は意味不明なことを呟きだした。

 

「カナ、落ち着いて。そんなさ、依存するのは止めたほうが……」

「やだ」

 

もう一人の青色の水着の少年、イナリが止めに入るが効果はない。そこにパタパタと足音がして、誰かがやって来た。茶色の髪をツインテールにした何処にでもいそうな少女、弓塚さつきだ。黄色いビキニタイプの水着を着ている。

 

「あ、カナちゃん。お待たせ!」

「あ、さつき! 水着似合ってるよ」

 

先ほど海で黄昏ていたとは思えないほどの復活ぶりだ。にっこり笑った笑顔がまぶしい。

 

「そ、そうかな」

 

てれるさつきを見ながら男二人はこそこそと話し始めた。

 

「……意外と男前だよね」

「それは認める。妹はああなのに、なんでああなる」

「いや、むしろなんであんな妹?」

 

そこ、何ウチの妹にケチつけてんだよ。と花楠は二人をにらみつけた。

 





途中からナンパ意味なくなっていた。
アイリさんは意外と無自覚小悪魔だなと思っている。異論は受け付けます。あくまで個人的にですから。

各人の水着姿は脳内補填すればいいかと。


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第四問

さて、どうしてこうなったと花楠は呆れかえった。

 

「はぁー、がんばれよー」

 

気の抜けた声で目の前の状況を応援した。そこには多種多様な美少女たちが気合を入れて準備体操をしている。今回、このプライベートビーチに花楠を誘った遠野志貴との相部屋を獲得するためにビーチバレー大会を開こうとしているのだ。

 

「わたしも参加したかったのに」

 

花楠の親友であるさつきが不機嫌そうに口を尖らせる。

 

「だ、駄目だよ! さつきちゃん死んじゃうからね!」

「俺も同意見だ。止めておけ」

「僕も同じくかな」

 

ハル、シズ、イナリの三人が全力で止めにかかる。確かにそうだろう、どう考えても人外しかいないようなビーチバレー大会にただの人間であるさつきを参加させるわけにはいかないからだ。

 

「あはは…………」

 

渦中の遠野志貴は盛大に苦笑いしか出来なかった。ちなみにだが、頬には大きな手のひらの痕が着いている。取り合いの際に女性の胸が当たって嬉しそうな顔をしていたのを花楠に咎められたのだ。

それからしばらく、壮絶な打ち合いが続く。

 

「うわー、これプライベートビーチじゃなかったらヤバイだろ」

「目で追えないよ」

 

花楠とハルが眺めながら感想を述べる。

 

「これ、ボールよく潰れないよな」

「だな。どう考えてもあの頑丈さは普通じゃない」

 

志貴とシズが少々観点の違うところを話し合っている。そんなシズの肩を誰かの手が叩く。シズと気配に気が付いた志貴が振り返れば若干顔の赤いイナリが苦笑いしていた。

 

「うん、これはもう放っておいて中に入らない? 僕なんか頭くらくらしてきた」

「熱中症か? ほい」

 

話を聞いていたらしき花楠がよく冷えているらしきペットボトルをイナリに渡す。

 

「あー、ありがと。泳げないからなかなか海って楽しめなんだよね」

「大丈夫?」

 

ハルが心配そうに聞いた。それに答えるよりも先に花楠がイナリの肩を叩いた。

 

「ん」

 

花楠が己の太ももを示した。するとイナリは躊躇なくそこに頭を乗せる。

 

「ごめん。うわぁ……きもちい」

「ほいほい」

 

水で絞ったらしきタオルを花楠がイナリの額に乗せた。その様子を見ていた三人がこそこそと話し合う。

 

「……これで付き合ってないのか?」

「うん、付き合ってないよ」

「付き合うわけがねーよ」

 

志貴の疑問にハルとシズはばっさりいった。

 

「マジか」

「マジだな」

「本当だよ」

 

                     ☆

 

それからさらにしばらく、物凄い方向にボールが飛んでいくこともあったがそれでも打ち合いが続いている。

 

「おわんねーな」

「だねー」

 

先ほどはパラソルから離れていたさつきが戻ってきて花楠と一緒にぼけーと試合を眺めている。ちなみにさつきはイナリについては全く気にしていない。

 

「なんでまだ打ち合い続けられるんだろう? もう、人間業じゃないよ」

「そうだと思う」

「うん、ボールが目で追えないよ」

 

するとその時、剛速球が飛んできた。

 

「「あ」」

「へ?」

 

さつきに向かって。花楠は慌ててさつきを庇おうとする。

 

「さつき!」

「あたっ」

 

太ももに頭を乗せていたイナリが落ちた。

 

「……」

「カナちゃん?」

 

ボールをどうにかかわした二人だったが、花楠の様子がおかしい。さつきは困惑した声をかける。

 

「……………」

「いたた…………カナ?! ……ちがう、君は誰?」

 

じっとアルクウェイドを見つめる花楠にイナリも驚いたような表情を浮かべた。

 

「……はぁ、我が身体(マスター)が私を呼び起こさないように願っていたのに」

「へ?」

 

イナリが問いただそうとしたその時、二人のかなり後方にめり込んでいたボールが破裂した。

 

「っ」

「貴方は誰ですか? 話によっては………」

 

警戒をする他の面々、特に蒼髪に眼鏡の女性、シエルがそれこそ即殺すといわんばかりの殺気を見せる。それをただ一瞥しただけで花楠はアルクウェイドの傍にやって来た。

 

「久しぶりだな。姫君、今は狂気がないようで何よりだ」

「あら、貴方なの久しぶり~。相変わらずの狂いっぷりね、ってことはその女の子はあのときの小さなマスターさんなのね」

 

アルクウェイドは知り合いらしく、嬉しそうに笑った。花楠? は心底嬉しくなさそうな表情をする。

 

「そういうことだ。だが姫君、マスターに手を出すということはどういうことか分かっているのか?」

「貴方を敵に回す、くらいね」

 

別にリスクはないでしょうとアルクウェイドは笑った。

 

「いや、それ以上だ。あくまでここはお前の本拠地だが、それでも私は全力でお前を倒そう。ついでに言うなら厄介な守り手が憑いたようだからな」

 

花楠?はにやりと笑う、アルクウェイドは彼女の発言をさらりと流した。

 

「ふぅん、まあいっか。つまり私をまた殺すってことかしら?」

「もちろんだ」

 

花楠? はアルクウェイドの目を見つめた。するとアルクウェイドの口元にも笑みが浮かぶ。

 

「………うん、あの赤い剣士を連れたちっぽけなマスターと同じ目をしてる。でも、貴方はどうやって私を殺すのかしら」

「さあ? だが、マスターに手を出すということはそういうことだ。そこにいる娘たちも心得ておくがいい。この不肖『切り裂きジャック』はお前たちを解体することなどたやすいのだからな」

 

いつもの彼女とは違い、赤く黒ずんだ目がバレーボールをしていた面々を見渡した。それだけで他の面々はそこに込められた狂気を読み取り息を呑む。

パラソルの方で見ていた面々も雰囲気の変わりすぎた彼女に驚いていた。

 

「……ジャック、昔はあんなこと言わなかったのに」

 

唯一事情が飲み込めたイナリだけが小さくそう呟いた。

 

「えっと、カナちゃんどうしたのかな?」

「さ、さあ?」

 

さつきがイナリに尋ねたが、誤魔化すだけだった。花楠の頭が大きく舟をこいではっとなって彼女が頭を上げれば、普段どおりの彼女の目に戻っていた。

 

「……あれ? アルクウェイド?」

「ふぅん、貴女も結構大変ね」

 

その様子を見たアルクウェイドが驚いたといわんばかりに目を丸くした。

 

「カナちゃん!」

「あ、さつき。大丈夫? 怪我は?」

 

駆け寄ってきた親友に花楠は普段どおりに笑いかけた。

 

「う、うん。カナちゃんも大丈夫?」

「? 別に怪我なんてしてない」

「そ、それならいいんだ」

 

一体何があったんだ? と花楠は首をかしげるのだった。

 





バレーボールは途中で中断ということになったとさ。

花楠さんの元サーヴァント登場、ジャック・ザ・キラー。fakeの方です。アポクリのロリっ子じゃないんだ。


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第五問

ここはコテージのリビング。アイリさんとイリア姉、セイバーに途中合流した舞弥さんと舞弥さんの娘さんの五人が浴衣に着替えていた。

 

「うん、五人とも似合ってるよ」

 

デレデレしまくっているのは普段よりは明るい色合いの浴衣に身を包んだじーさん。顔緩みっぱなしだよ。イリア姉相手にはいつもそうだけど、今日は自重してないなぁ。

 

「そうですか、浴衣はあまり着慣れていないので不安でしたがそれを聞いて安心しました」

 

深い青色を基調にした花火模様の浴衣を着たセイバーが笑う。

 

「うんうん、セイバーかわいいわよ」

 

セイバーに声をかけたアイリさんは白に川を思わせる淡い黒の模様が入った浴衣を着てる。確か、じーさんと一緒に選んだんだよね。

 

「お母様も綺麗」

 

イリア姉はアイリさんと同じく白に波紋を思わせる水色の模様、それから金魚が描かれた浴衣だ。これ選ぶまでに何時間かかったことか。

 

「ありがとうございます。切嗣」

「……ありがとう、叔父さん」

 

舞弥さんは緑を基調としたシンプルな浴衣を、娘さんはピンクを基調としたかわいい浴衣をそれぞれ着ている。

そんな六人を眺めるのは、まあ。

 

「見事に蚊帳の外だねぇ」

 

僕たち野郎三人なんだよね。僕は自分で選んできた紺に黒の縦じまの浴衣に着替えていた。士郎を待ってるんだけど来ないなぁ。

 

「まあ、いいのではないか」

 

アーチャーは着替えていない。いつ切り出そうかなぁ。

 

「兄さん、あのさ」

 

肩を少し叩かれて振り向いてみたら困り顔の士郎だった。あ、もしかして。

 

「あー、ほら貸してみ。帯締めるの慣れてないんでしょ」

「ごめん」

 

やっぱりそうか、まあ昔は甚平は着てたけど浴衣は着てないよね。

 

「気にしなくていいよ。あ、そうそうアーチャー、あっちにアーチャーの分の浴衣あるから」

 

よし、どうにか切り出せた。じーさんと二人で買いにいったんだから無駄にするわけにいかないし。

 

「私はサーヴァントだぞ。ついでに言うなら「はいはい、屁理屈言わないの。アーチャー用に買ってきたやつだよ。ついでに言うならどうやったってあの体格に合うの我が家では君だけだし」

「………」

 

やっぱり、断ってくると思ったよ。しょうがない。最終兵器出すとしようかな。

 

「あーあー、アーチャーのためだけに()()()()と僕が選んだのにー」

「………わかった。着ればいいのだろう?」

 

あ、すぐに折れた。

 

「いってらっしゃい」

 

さすがアーチャー、じーさんには甘いよね。その様子を眺めてから、僕は士郎の帯締めに取り掛かった。

 

                    ☆

 

祭りの入り口にて、ぼくたち三人は人ごみを眺めていた。ちなみに桜ちゃんは家の人とお祭りを見るから分かれた。

 

「ふぅー、人多いわね」

 

トレードカラーともいえる赤の浴衣を着た凛がうんざりとした顔で人ごみを眺めた。気持ちは分からなくないんだけどね。

 

「ま、しょうがないでしょ。お祭りの醍醐味ってことで」

 

ぼくは苦笑いをして返した。ちなみにぼくは淡い青色に金魚の模様の入った浴衣。

 

「こんなに人が集まる理由が分かりません」

 

珍しく髪を結い上げて、白地に黒のトンボの模様の浴衣を着たカレン姉さんが首をかしげる。

 

「お嬢、なるべく俺らから離れないでくれよ」

「嬢ちゃん、お前もだぞ」

 

緑の浴衣を着たアサシンさんと濃い青色の浴衣を着たランサーさんが釘を刺してくる。ナンパの一件から二人とも妙に警戒してるなぁ。

 

「はいはい、お、輪投げ屋。何かほしいのあったら取るよ」

 

そんな二人の警告を軽く聞き流しながら視線を屋台の方に目を向ければ輪投げ屋があった。

 

「あらいいの?」

「こんなの楽勝だからね」

 

何かを投げて命中させるのは得意だからね。

 

「じゃあ、あそこのアレとか取れる?」

「んー? 大丈夫だよ」

 

凛が50点の景品を指差した。

 

「ワタシも一つ、あそこの奴を」

「いいよー」

 

カレン姉さんが別の方の景品を指差した。よし、これなら全部一回で取れるかな?

代金を支払って輪投げをしていると何処からか大歓声と悲鳴が聞こえてきた。あ

 

「アキだ」

「毎年派手ねぇ」

 

夏祭り風物詩(冬木限定)のアキと切嗣さんのコンビ(黒い悪魔とかそんなあだ名だったはず)だろうなぁ。たぶん射的屋から景品がごっそり消えていることだろう。

 

「いや、本人は多分大真面目に打ってるだけだよ? 全弾命中しているだけで」

「そうかもしれないけどアレは異常よ。確か中学時代に弓道部のエースだったんでしょう。彼」

 

確かそうだったはず。中学校のときって学校違うから噂しか聞いてなかったんだよね。

 

「うん、百戦連勝。撃った矢は全て真ん中に命中、化け物とか呼ばれるくらいには」

「なのよね」

 

弓道部が戦々恐々していたって記憶があるなぁ。ぼくはといえばいろんなところの助っ人やってた。主にバスケとかサッカーとかゴールにシュートするタイプのスポーツの部活だけど。

 

「でもさ、それって士郎にも言えることなんだよね。あの子もアキに隠れてるけど命中精度半端ないし」

「ふぅん、あ、確かに桜が前に言ってたかも」

 

未だに弓道部の別の学校に行った友人がそんなことを言っていた。

 

「今じゃそっちの弓道部のエースは士郎だしね」

「それもそうよね」

 

凛と話していると浴衣の裾を引っぱられた。

 

「アキノ、次はあちらに行きましょう」

 

振り返って見てみれば、カレン姉さんが裾を引っぱっていた。

 

「はーい、凛、行こう」

「ええ、行くわよ。ランサー、アサシン」

 

後ろでぼくらを見ていた二人に凛が声をかける。

 

「へいへい」

「俺にまで命令すんなよな」

 

まあまあ、そんなこといわないで他の屋台見に行こうよ。ランサーさんにそう声をかけて、ぼくはさらに先へと進んだ。

 

                    ☆

 

私たち十三人は屋台が並ぶ場所に来ていた。私らは大人数過ぎる気が。ついでに言うなら、男女比がおかしい。多分、周囲から見たら突っ込みどころの多い連中だよな。女性陣は軒並み浴衣だからさらに目立つし。私は浴衣は性に合わないので断った。

 

「うわぁ、人ばっかり」

「三咲も結構大きい町だけどここまでの活気は珍しいよね」

 

確かにこの場所の祭りはかなり活気がある。三咲って意外と田舎だったんだな。

 

「たこ焼き食べに行こう! たこ焼き!」

「おい、ハル派目外しすぎるなよな」

 

シズが妹に手を伸ばす。そんな二人を止めようとしたときにシャツの端が少しだけ引っぱられた。振り返ればさつきがシャツの端を握っていた。

 

「なんだかはぐれちゃいそう」

「だったら、手繋ぐ?」

「え、いいの?」

 

さつきが驚いたような顔をする。手を繋ぐのは意外な感じだったか。

 

「うん」

「じゃあ、一緒に行こう」

 

さつきの手を取って私は人ごみの中へと進んだ。

 

                    ☆

 

「よっと」

 

僕は自分で取った射的屋の景品を持ち直した。重っ

 

「マスター、取りすぎだ」

 

アーチャーが呆れたような顔で僕を見る。だってさー

 

「うぅ、しょうがないじゃん。イリア姉さんがもっととか言うから。ついでに言うならどこかの誰かご所望の海の幸&お肉セット取ったし」

 

主に重い原因ってそれだよね。はぁ、調子に乗って取りすぎたかな?

じーさんは取ったものを置きに一旦コテージに戻った。イリア姉とアイリさんは一緒に戻ってる。セイバーと舞弥さん、それから舞弥さんの娘さんは屋台の食べ物の買い出し担当で屋台を回ってる。大丈夫かな? セイバーが勝手に食べそうで怖い。

僕とアーチャーと士郎はバーベキューのために食材を運ぶ担当なんだよね。

 

「はぁ、バーベキューをするというのになぜ食材を用意しなかった」

「してるって、分かりづらいところにあるだろうけど」

 

どう考えたってクーラーボックスとか面倒だからって、錬金術で作られた冷やさなくても安全に保存できるというとんでもタッパーをいくつ借りてきたから、ただタッパーがあるっていうおかしな状況になってるけど。

 

「兄さん、半分持とうか?」

 

士郎が心配そうに聞いてきた。士郎に迷惑かけるわけにはいかないし。

 

「ううん、大丈夫。自分で取った代物についてはちゃんと責任取るつもりだし」

「いや、前とか見えなくなってるから困ってるだろ」

 

あー、そこか。

 

「あはは、最悪アーチャーに助けてもらうよ」

「それを早く言いたまえ」

「あ」

 

海の幸とお肉セットが僕の腕からひょいと取り上げられた。

 

「別に私は持たないなどとは言っていないのだがね」

「……ありがと」

 

顔が有無を言わせない感じになってるよ。しょうがないし持っておいてもらおう。

 

「ん?」

 

足元に何か落ちてきた。なんだろう? 手に物持ってるから取れないし。

 

「なんだ?」

「えっと、何々? 浴衣美女コンテスト?」

 

士郎が拾って、読んでくれた。

 

「へぇ、そんなのまでやるんだ」

「まあ、なんにしても我々には関係のないことだがね」

 

ま、ウチには美人が五人もいるし当然だよね。あ、何かずれてる? 気にしない気にしない。

 

                    ☆

 

はぁ、しつこい。いい加減にしてほしいよなぁ。

 

「お断りします。大体なんでそんな悪徳業者みたいなことしてるんですか?」

「そうよね。普通に出たい人だけ出ればいいじゃない」

 

なんか昼間のナンパと同じ感じで浴衣大会に誘われていた。ちなみにランサーさんたちは食べ物の買出し中。上手く隙をついてきたなぁ。

 

「そんなこといわずに、ぜひ参加してくださいよ」

 

その誘ってきた人はへらへらと笑ってる。それで了承する人っているのかな?

 

「我々が嫌がっているのが分からないのですか? その頭は蛆虫以下なのでしょうか?」

 

うわ、さすがカレン姉さん毒舌だね。

 

「カレン姉さん言いすぎだよ。そういう時はからっぽかって聞かないと」

「あんたも言いすぎじゃない?」

 

そうかな?

 

                    ☆

 

人ごみの中、私たちは花火を見た。鮮やかな光と轟音、周りにいる人たちの足が止まる。

 

「お、花火だな」

 

シズが眩しそうに花火を見上げた。

 

「綺麗……あれ? 遠野君は?」

 

さつきがいるはずの遠野を探す。大方、彼女と二人きりって所……それにしては不在率高くないか? 私たち、いつもの面子以外の面々が居ない。人数は一気に減って五人だ。

 

「さあ? それよりも凄い」

「うん、綺麗だね」

 

私とハルが呟いた。

 

「あ、色が変わった」

「凄いよねー」

 

のん気に花火を見やる友人四人を一歩引いて私は見た。

ああ、この日々が愛おしい。

どうか、こんな日々が、続けと願いながら花火を見上げた。

 

                    ☆

 

どぉんと花火の音がした。ここは神社の境内、買出しに出たランサーさんが見つけた花火を見るためのお勧めスポットなんだ。そこに買ってきたたこ焼きや焼きそばなどなど屋台料理とラムネを持ち込んで花火を眺めている。

 

「あ、たまやー」

 

思わずそう言ってしまう。

 

「かぎやー……だったかしら」

「うん、あってるあってる」

 

ぼくが言っても分かってくれない人多いんだよなぁ。

 

「それは一体どういうものですか? アキノはよく打ち上げ花火を見ると言っていますけど」

 

カレン姉さんが不思議そうに首をかしげた。

 

「んー、江戸時代にあった花火屋さんの名前だよ。花火が上がったときにその屋号……お店の名前を呼ぶんだ。その名残で今でも花火が上がると『たまや、かぎや』って言うわけ」

「そうですか」

「明乃よく知ってるわね」

 

えー?

 

「割と常識かなって思ってたんだけど」

「まあ、いいか。それにしても綺麗ね」

「ええ」

「だね……」

 

隣で花火に魅入っている友だちと姉を見ながら思った。

こんな穏やかな時間を過ごせることこそ幸せだよね。

花火は儚く消えるものだけど、できることならみんなとのこの日々がまだ続きますように。

 

                    ☆

 

バーベキューをやっていると、大きな音がした。音の方を見てみれば花火が上がってる。もうそんな時間なんだ。

 

「お、上がった上がった」

 

ちゃっかり時間を知っていたらしいじーさんが椅子に座ったまま嬉しそうに言う。

 

「綺麗……」

「すごーい」

 

じーさんの隣に座ってるアイリさんが嬉しそうに笑ってる。イリア姉は立ち上がって楽しそうに花火を見上げていた。

 

「美しいです」

 

セイバーが手にバーベキューのお皿を持ったまま花火を見てる。食べるか花火見るかどっちかにしようよ。

 

「そうですね。マダム」

「……綺麗です」

 

舞弥さんたちも見入っているみたいだ。

 

「凄いな」

「………」

 

士郎は花火を見上げながら呟いているし、アーチャーは無言だけど嬉しそうに見ている。

 

「本当に凄いなぁ」

 

花火が上がるのを僕達は見ていた。セイバーが食べるから、僕と士郎はバーベキューもどうにかしないといけなかったんだけどね。

 

「後で手持ち花火でもしようか」

 

じーさんが花火の上がる中、急に思いついたと言わんばかりに笑顔で言う。

 

「あ、それいいね。確か車に積んでたはずだよ」

「それも楽しそう!」

 

僕が返事をすればイリア姉が乗っかる。うん、バケツあったよね。

 

「バケツはあるのか?」

「大丈夫だよ。持ってきてる」

 

花火持ってくるって話したときにバケツ持ってこないといけないなって思ったからちゃんと持ってきたんだよね。

 

「兄さん、花火は俺が取ってこようか」

「ん? 後でいいよ。今は花火見よっか」

 

 

わいわいと花火を背景に騒ぐ僕の家族を見て思った。

……どうか、どうか、大切な人たちとの平穏な日々が終わらないでほしい。

そう、上がっては消えていく花火に願った。

 





別に最終回ではないです。不穏すぎるオチになってますけど。
基本ほのぼのがモットーです。バトル描写なんて無理。

それから一部謝罪、花楠における急展開及び月姫キャラの扱いの雑さとか色々とすみませんでした。
ついでに言うなら更新の遅れも申し訳ございません。


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※ザビエル道場

※キャラ同士の掛け合い注意
※設定語り注意
※基本的に地雷です


??:完全に出番無しだったぜ

???:大体俺たち脇役だからいいんじゃないの? そんなわけで

 

『ザビエル道場』!!

 

親友:どうも、今回出番なかったぜ。親友だ

ザビ男:こんにちは、前回今回出番なかったザビ男だよ

親友:正直、向こうの月聖杯連中に出番食われてるよなぁ

ザビ男:うん、ぶっちゃけこっちは親友と紅茶のトラブルがメインだったわけで

親友:それ言っちまうと、向こうも向こうじゃね?

ザビ男:まあそうなんだけど、とりあえず次回は出番あるといいなぁ。主に俺

親友:段々存在感消えかかってるもんな。ザビ男

ザビ男:親友よりもね。さて、本気で尺があまりそうなんだけど

親友:ゲストでも呼ぶのか?

ザビ男:大体このコーナーが毎度の蛇足なのにゲストの意味合いって本当にあるの?

親友:……痛いところ突くな

ザビ男:だよね。とりあえず痛い設定語りと行こうかな?

親友:痛いは一応余計だからな。てか設定語りって何を語るんだよ

ザビ男:え? Zero勢の詳細設定?

親友:斜め上行ったな。そこは普通は鯖設定とか語らね?

ザビ男:まあ、裏設定ってことでいいんじゃないかな? はい、まずは長男家!

 

親友:マジで

やるか。じゃあ、設定にも書かれたとおりセイバーと爺さんは普通に会話してるぞ。後は部下さんは娘を取り戻し済み。作中にも少し出たが、部下さん似の美少女だ。長男の奴、容姿ぐらい説明しろよ。

ザビ男:色々と裏設定はあるよねー。まあ、基本は設定に書かれてるから大丈夫だけど

 

親友:じゃあ次、ルビー宅とブロッサム宅

ザビ男:うん。とりあえず色々あったけど相互不干渉の盟約は解消、後は当主さんと記者さんは悪友状態、トラブルの方は解決済み? 少なくとも殺し合いには発展しないはず

親友:大体大丈夫だな。ついでに言うならこっちのワカメはいわゆる綺麗なワカメ……あのさ、この呼称なんなの? 俺の方(紅茶)の知り合いにこいつなんて居なかったぞ?

ザビ男:あくまでここの紅茶は一応赤弓さんとはと違う顛末って感じらしいよ。作者曰く

親友:あー、あれか。一応ベースは俺の知ってるバカ馴染みだが、赤弓の記憶もあるってことだよな

ザビ男:うん、そんな感じかな?

親友:はい、語ったら長くなるからこれで終了な

 

ザビ男:それじゃあ、怒涛のクロックタワー行ってみよう!

親友:へーへー、普通にアレだろ。安心安定のクロックタワー、昼ドラと安定の幸運EX

ザビ男:それ以上に言いようもないよねぇ。あ、双子とは知り合いだよ

親友:ついでに言うならアレだな。ライダーは普通にあの征服王だぞ

ザビ男:聖杯の騎士じゃないよね

 

親友:最後? にみんな気になる魔陣営と次女家

ザビ男:次女家については皆さん知ってのとおりの状況っていうことで

親友:魔陣営は普通にアーティスト、グロ系中心だけど。出番……あるといいな

ザビ男:あるといいよね。とりあえず鯖は青髭さん(正常)だよ

親友:停戦の理由は実はこの人にあったり

 

ザビ男:とりあえず尺は稼げたね

親友:だな。それにしても見事に関係のない話だよなこれ

ザビ男:しょうがないよ。とりあえず1000文字越せば十分だし

親友:まあ、そんなわけでまだまだ茶番は続くぞ?

ザビ男:じゃあ、ここでお開き

 




そんなわけでしてお疲れ様でした。
隠語にする必要性が若干ないなとうっかり思った自分だったり。

プライリ面白いですよね。コミックの方は読んでいませんがアニメ版を毎週見ている状況です。本屋にあった小説版が欲しい今日この頃。


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最終幕
第一幕


新学期、学園への坂道を歩いていた。

 

「はぁー、気が重いよ」

 

もうなんで学校なんてあるんだろう? もう嫌だ。そんなことをぶつぶつ言っていたら横から呆れたような声がする。

 

「そうでしょうね。あんたは宿題ギリギリで終わらせたんだから」

「そうでしたねー。ご迷惑おかけしました」

 

悠里が呆れるのも当然だよね。

二週間前からみんなで集まりながらこまごまと宿題やったのが夏の最終的な思い出になったんだよ。遊びつくしたいとかはないけど、もっと計画性を持ってやったほうが良かったなぁ。

 

「……やり忘れない?」

「大丈夫だよ」

「…………だる」

 

彩夏がぼくなんかよりも疲れた感じで呟いた。顔色悪っ、何か疲れるようなことしたのかな?

 

「彩夏も大丈夫?」

「夏休み明けって何か気が抜けたようになるわよね」

 

あー、そうかもしれない。

 

「それはそうでしょ。だって夏は目一杯エネルギーを使うんだから!」

 

思いっきり腕を振り上げて宣言する。すると神海も悠里もジト目でぼくを見てきた。

 

「……使いすぎで体調崩したら元も子もない」

「あはは、申し訳ございませんでしたーだ」

 

そして宿題の終わった後に熱出して倒れるってね。知恵熱じゃねって話になったのは不名誉だよね? ……だよね? 夏風邪は馬鹿が引くとか…………嘘だよね?

 

「おはよう、あなた達」

 

あ、校門で西村先生が待ってた。相変わらずポニーテールにスーツ姿、いつもこの格好だよなぁ。

 

「あ、西村先生 おはようございます」

「新学期早々大変見たいね」

「……(こくり)」

「くぁぁぁ」

 

四者四様の挨拶ってことで、というか挨拶しているのぼくだけじゃ。西村先生が呆れたようにため息をついた。いつもすみません。

 

「はぁ、挨拶はちゃんとしなさいよ。新学期早々遅刻なんてことがないように」

「はーい」

 

ぼくが気の抜けた返事をしたら、西村先生がぼくのことをジト目で見てきた。うぅ

 

「返事は短く!」

「……はい」

 

渋々返事をした。あれ、みんなは? と見渡してみたら。

 

「明乃ー、早く!」

 

もう先に玄関の方へ向かっていた。その様子を見てから一言

 

「なんでぼくばっかり」

 

昔から何か妙に貧乏くじ引くような気がするよ。

 

                     ☆

 

チャイムがなる中、僕は廊下を走っていた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……間に合った」

 

教室の扉を開けて、中へと入る。そして教室の中を見てみればみんなが揃っていた。席に着けば前の席に座っていた姉さんが振り向いた。

 

「あれ、アキ遅刻しかけ?」

「うん……うっかり休み感覚で実家に居たもんだから普段どおりの時間に出たのはいいけど遅刻しかけた」

 

はぁー、まさかの遅刻原因だよね。いっそのことバイクで行こうかと思ったよ。止める場所ないから止めたけど。

 

「まあ、間に合っただけいいじゃないか」

「うん、そういえば。これ確認忘れてた」

 

郵便を確認したアーチャーが渡してくれたんだよね。海外からのエアメールなんて珍しい。いや、来てるんだろうけど基本はじーさん宛なんだよね。かばんの中からエアメールを出すと姉さんが驚いた顔をする。

 

「ん? エアメール? 差出人は……え? ロード?!」

 

姉さんが出した大声でクラス中の人が振り向いた。

 

「姉さん……」

 

僕が姉さんを睨みつけると姉さんが苦笑いした。

 

「ごめんごめん。でもさ、ウェンバーさんはともかくロード・エルメロイが差出人ってどういうことさ」

 

あの人がエアメールが送ってくるとかよっぽどだよね。基本は使い魔使ってくるし、お金の心配はないからこんなの送ってくる方がおかしいよね。ちなみに僕は基本懐が寂しいので安上がりになるように頑張ってるから手紙とかよく使うんだよね。

 

「大方ロクでもないことか書かれてるんだろうね。はぁー、巻き添え食らうのって基本僕か姉さんだよね。面倒だなぁ」

 

何度トラブルに巻き込まれてことだろう。いい加減にしてほしいなぁ。てか、魔術の業界って色々とトラブル起こしすぎでしょ。秘匿とかうるさく言ってるけど、それを考えるなら普通、山奥とかでやらない? 聖杯戦争とか特にさー。他人に迷惑かけるなって話だよ。

 

「でもこの人がエアメール送ってくるってことはよっぽど重要事項じゃないかな?」

「僕はそうは思えないなぁ。とりあえず中身確認しておこう」

 

学園の技術を調査したいからアポ取れとか無茶振りじゃないよね。

 

「……へ?」

 

読んだ内容に愕然とした。まさかそんなことが起こるなんて信じられないよ。僕の驚いた表情にびっくりしたのか姉さんも驚いた顔で聞いてきた。

 

「どうかしたの? まさかとは思うけど、学園の技術を盗んで来いとか?」

「あ、ううんそんなことじゃないよ。姉さんは関係ないよ」

「ならいいけど」

 

それ以上は興味がなかったらしく姉さんは前を向いた。その背中を眺めながら聞こえないように呟く。

 

「……ヤバイことになりそうだなぁ」

 

なんで今、なんてツッコミを入れたかったけど。ああ、トラブルが予定組んできたらトラブルじゃないよねって気が付いた。さて、どうしよう。姉さんにばれないようにこれをどうにかしないと。

 

 

                     ☆

 

「失礼するわ」

 

教室の扉が開いて、教室に赤いボブカットの女の子が入ってきた。あ、Bクラス代表の根本さんだ。

 

「あら、Bクラスの代表じゃない」

「久しぶりね。Fクラスの代表」

 

二人はにこやかに笑いあってるんだけど。なんだろう、微妙に薄ら寒いものが……

 

「で、何か用事かしら?」

「我々BクラスはFクラスに模擬試験召喚戦争を申し込むわ!」

 

トラブルなんて、突然に舞い込んでくるものなんだ。小説の書き出しみたいにそう考えた。どうしよう新学期早々試験召喚戦争とは、大丈夫かな?

 





最終章? 開幕

戦争で始まりトラブルで終わるかもしれない。無事に閉幕できるのか不明だけどとりあえずもうそろそろ終わりにする予定……多分

むしろ今は番外編とかやりた(殴


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第二幕

Bクラスの代表、根本恭子さんがクラスに入ってくるなり、Fクラスに模擬試召戦争の申し込みをしてきた。模擬は珍しいよね。

 

「ふぅん、模擬試験召喚戦争ね」

「普通に試召戦争じゃないの?」

 

悠里さんと姉さんが根本さんに聞いた。根本さんはちょっとだけため息をついてから答える。

 

「まあ色々とね。Fクラスは見事にAクラスを倒したから挑むクラスはないのよ。だったらあたしたちのBクラスなら……って連中が多いの」

「つまりそういった連中への牽制ってことね。模擬なのは双方の遺恨を残さないためかしら」

 

あー、なるほどね。でもBクラスだったら向こうが勝つ可能性も少なからずあるんじゃ。

 

「ええ、これを機にAクラスの設備を……って考えなくは無いけど、負けるのは見えてるから止めておくわ」

「あら、そうなの。残念ね」

 

根本さんと悠里さんが会話してるんだけど、妙にきな臭い。

 

「うわぁ、二人とも悪役染みてる」

「………同意」

 

姉さんと神海さんが言い切った。

 

「何か言ったかしら? 明乃」

「ううん、なんでもないよー。あははは」

 

あー、うわぁ。

 

「姉さん、棒読みすぎっしょ」

「それにしても模擬試験召喚戦争か、俺たちよく知らないんだが」

 

いつの間にか近くに来ていた広夢が聞いてきた。あ、そういえば。

 

「あ、そっか。模擬は今年度は初だからね。ルール知らなくて当然か」

「うん、教えてほしい。知らないまま戦争に突入って言うのは困るし」

 

日向君も会話に加わってきた。この二人はこっちに来て一応まだ一年も経ってないよね。他の学年でも大きな戦争はあまり起こってないし知らないのも当然か。

 

「えっとね。模擬戦争って言うのは……」

 

模擬試験召喚戦争、通称は模擬戦争、もしくは模擬試召戦争。まあ、大体のルールは試召戦争と変わらない。でも一つだけ大きな特徴があって、総合科目、もしくは決められた特定の科目で戦うことになるんだ。教師の拘束時間を減らすためもあるらしいね。

 

「なるほどな。つまり練習試合ってところか」

「うん、点数の消費自体は戦争が終わったら解除されるから平気だよ。その代わり点数補充の期間はない」

 

これも特徴かな。

 

「それだとその直後に挑まれたときに不利じゃない?」

「うん、召喚獣の操作は精神力使うからね。十日間は戦争を挑むのも挑まれるのも禁止だし、免除になるんだ」

 

そうでもしないとやってられないとか苦情が出たとか出ないとか。

 

「ふむ、本番よりは期間が大幅に短いんだな」

「まあ、十日あれば相手に合わせて勉強することも可能だよね」

 

それを言ったら、二人が納得したような顔をした。

 

「あ、なるほど」

「あー、敵情視察ってことか?」

「それもあり、今回みたいに上位クラスが下位クラスへの牽制にも使えるし。他にも思いつくものがあれば、何かできるかもしれないね」

 

僕が思いついたのはこの程度だけどもっと思いつける人が居たら、もっと有効活用するかもしれないね。

 

「本当に何でもありなんだね。本物の戦争に近いかも」

「うん、使えるものは何でも使えってね。ウチの第一次試験召喚戦争がいい例でしょう?」

「確かにな。アレはいろいろと奇想天外だったな」

 

二人が遠い目をしてる。いや、一応あれって非日常の部類だよ?

 

「うん、まさか人間飛び越えるってあんまり……」

「あはは、あれは。姉さんの身体能力が異常だよ」

 

昔っからあんなだったよなぁ。体力勝負で姉さんに勝てたことないし。

 

「それは認めよう。言峰の跳躍力は半端じゃない」

「うん、あれは言峰さんいなかったら無理だったよね」

「でしょ? 使えるものは使えってね。うん、はぁぁぁぁ、どうしよう」

 

今更だけど自分の抱えている問題を思い出してしまってナーバスになる。考えてもいい案が思いつかないんだよなぁ。圧倒的に自分の手が足りない。

 

「どした?」

「なにか困ったことでもあるのか? よければ力になるよ」

 

二人が笑って言ってくれた。………よし

 

「………じゃあ、助けて」

 

前だったら絶対に言わなかったはずだけど、比奈丘さんの言葉を聞いて少しは人を頼ろうって気になった。ただ、それだけなんだけどね。

 

「おう、当然だろ」

「俺にできることがあるなら何でも言ってほしい」

 

二人の顔が頼もしく見えた。それで、一体どうしたんだ? と広夢が聞いてくる。うん、これ結構重大事件かも。

 

「はぁ、停戦したはずの戦争が再発するかもしれないんだよね」

「は?」

「え?」

 

分け分からないって顔してくれてありがとう。僕もこんな説明だけでどうにかなるなんて思ってないから。とりあえず前置きとしてこれは覚えておいてと二人に言って、それから作戦会議の折に二人を連れて教室を静かに抜け出した。

 

                    ☆

 

「はぁー、面倒よね」

 

Bクラスの代表の根本さんが去った後、ぼくらは悠里に呼ばれて仮眠室に来ていた。仮眠室に置かれたテーブルには悠里の作戦ノートがある。一応誰にも聞かれなさそうな仮眠室で作戦会議ってわけ。

 

「あれ、珍しい。悠里からそんな感想が聞けるなんて。こういうのは喜々としてやるじゃないか」

「……意外」

 

いつもならこういうときは楽しそうにするのに、ずっと何か悪いものでも食べたような顔なんて珍しいなぁ。

 

「そりゃ面倒にもなるわよ。相手はBクラス、確かに敵としての不足はないわ。でもね、下手に色々と手を見せるわけにもいかないの」

「あー、他のクラスに手の内を晒すわけにはいかないってこと?」

 

確かに下手に手の内見せてそこを突かれて敗北、なんてことになったらまずいもんね。ぼくがそう言ったら悠里が頷いた。

 

「ええ、だから色々と考えないといけないのよね」

「まあ、悠里が考えた作戦だったら絶対に大丈夫だよ。少なくともぼくはそう信じるよ」

「……私も」

 

悠里がそんなことでめげるわけもないし、こんな逆境程度で負けるなんて思えないし。

 

「そう言ってくれるとありがたいわ。うん、あんたたちの期待に応えないとね」

 

そういって悠里は笑った。やっぱり悠里はそういう顔が一番だよね。個人的にはあのあくどい顔は勘弁してほしいんだよなぁ。





動きだす表と裏、オチはどうなるかは一応決定済みの予定

作中にしては珍しく明久が他人を頼りました。この辺は成長かなとも思いますが、基本のキャラ設定はブレていないはず。


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第三幕

ここは冬木の衛宮邸、その玄関先で家主である和服の男性、衛宮切嗣とオレンジ色の髪をして紫の上着を羽織った青年、雨龍龍之介が喋っていた。

 

「それは本当かい?」

 

どうやら龍之介が切嗣に連絡を持ってきたらしい。切嗣が訊ねれば龍之介が首を縦に振った。

 

「うん、一応ケイネスさんが連絡入れたって言ってたけど見てないの?」

「見てないよ。連絡手段は?」

 

使い魔なら気が付かないということはないしと首を捻る切嗣に龍之介が爆弾発言をした。

 

「うーん、カモフラージュのためにエアメールを使って、宛名は明久君に送ったって」

「はぁ、なに考えているんだ。そんなことやったら明久が持ってく……あ」

 

どうして連絡が入らないのかについて分かったようだ。明久宛に来たエアメールは本来は切嗣宛だったらしい。龍之介が笑いながら頷く。

 

「多分それだね。いいよ。オレちょっと確認してくる」

「あ、雨龍!?」

 

走っていく龍之介の背中を切嗣は呆然と見ることしかできなかった。完全に背中が見えなくなってから切嗣は呟く。

 

「……どうしよう」

 

                     ☆

 

さて、教室は熱気に包まれていた。何故かって?

 

「よし、あんた達! 模擬戦だからといって、油断しちゃ駄目よ!」

「「「おおう!!」」」

 

悠里がみんなの士気を上げるために色々と頑張ったからだ。おかげで体感温度すら高くなりそうで怖い。人間って集まるとここまでの熱気を持てるんだ。暑苦しすぎてなんか息苦しく感じるんだけど。

 

「近藤と福村以下二十名は前線部隊よ! プランAをベースに出来るならCを加えてちょうだい」

「了解!」

「ただし、無茶は禁止よ。負けそうになったらすぐに戻ること」

「わかってる」

 

悠里が次々と檄を飛ばす。うん、気合入ってるなぁ。むしろ気合入りすぎだよね。ちょっと茶々入れてリラックスさせないと不味いかな?

 

「悠里、気合入ってるね。中堅は?」

「そこは日向と明乃に頼みたいの」

 

あれ?

 

「了解、でもぼくが遊撃じゃないって珍しい」

「まあ、色々と考えているのよ。頼んだわ」

 

ま、ここにぼくを配置するって言うのはなにか策があるってことだよね。悠里が無駄に何かをするってことは少ないし。

 

「はいはい、お任せくださいな」

 

さーて、頑張らないとなぁと心の中でだけ気合を入れていると悠里は別の場所でまた指示を出していた。頑張りすぎないでよ?

 

「明久と比奈丘、それから須川の三人は遊撃担当よ。メインはあんたたち三人、それから木下と島田も連れて行きなさい」

 

お、遊撃部隊は結構面白い人選だね。アキや彩夏はともかく須川君とか木下君とか島田君は珍しい。てか、遊撃部隊って言うんだから攻撃してすぐに逃げるとかでスピード重視だと思ったのに。

 

「ん、わかったよ」

「はぁー、めんど」

 

アキは普段通り……いや、ちょっと疲れてる? それに彩夏はいつものように面倒くさがってるなぁ。

 

「俺まで遊撃担当なのか?」

「むしろワシがおる意味が分からんのじゃが」

「大丈夫だろ、俺よりは」

 

あ、案の定三人が渋ってる。大丈夫かな? いきなり普段やらないことやるって言われても、困るよね。

 

「三人とも、気弱にならないで! あんたらも作戦の一部なんだから」

 

悠里も檄を飛ばす。語調も強いしみんな萎縮しないといいんだけど。ちょっと不安だなぁ。

 

「悠里さんが必要って言うんだから必要じゃないかな」

 

アキがフォロー入れてる。これは大丈夫だね。はぁ、悠里が気合入りすぎてて心配だよ。

 

「すまん」

「そうじゃの。悠里殿の作戦なのじゃから大丈夫じゃの」

「ゴメン、こっちが気弱になったらダメだよな」

 

じゃあ、がんばろー。とアキが言っているのを聞きながらちょっとにやけていると、作戦会議をしていた日向君がぎょっとした顔でこっちを見た。あ、しまった。変な奴って思われることこの上ないよね。

 

「日暮、夢路、鈴原の三人はあたしの近衛担当」

 

お、珍しく正統派に成績優秀者で近衛を固めてるんだ。でもあの夢路まで入ってるって……大丈夫かな? 何かあの一件もあるし心配だよ。

 

「あいよ、ずいぶんと厳重だな。俺を除き」

「……わかったわよぉ」

「分かってる」

 

まあ、心配しすぎてもしょうがないよね。頑張らないといけないのはいつものことだし、いざって時はぼくが悠里のところに行けばいいか。

 

「よし、絶対に勝たないと」

「……調査完了」

 

あ。神海来た。何か調査してたのかな?

 

「お疲れ、大丈夫そう?」

「………うん」

「とはいえ、相手はあの根本よね。気をつけないと」

 

今回は悠里が物凄く気合を入れている。ある意味ライバルとも言える根本さんが相手なら当然か。気合入るときって最後の最後でトラブルんだよなぁ。警戒しとこう。

つらつら考えてたら日向君にせっつかれた。あ、作戦会議忘れてた。

 

                    ☆

 

「…………これで、良し」

「………」

 

校舎の片隅で、黒いフードを被った謎の人物が何かクナイを設置していた。そこから漏れてくる魔力は妙に禍々しい。黒いフードを被った人物が立ち去るとクナイは地面にずぶりずぶりと沈み込み、取っ手の部分を残して刃の部分は地面に埋まってしまった。

 

 

――――運命の夜を待ちわびる異分子と平穏を望む人々の戦いが幕を開ける。

 





不穏な気配はじわりじわりとやってくる。
なんてね。

雨龍さん登場、最後の最後になっての登場です。

とりあえずBクラス戦はどうなるのか、フードの正体は? 次回へ続きます。


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第四幕

クラスのみんなに指示を出す悠里さんを見て、姉さんが呟いた。

 

「はぁー、気合入りすぎっしょ」

「……同感」

 

一緒に見ていた神海さんも頷く。

 

「ぼくも頑張るけどさー。頑張りすぎは体の毒でしょ」

「……(コクリ)」

 

人間頑張りすぎは毒になるか………耳が痛いです。そんなことを考えていると、僕宛のエアメールを読んでいた広夢と日向君がメールから顔を上げた。読み終わったかな?

 

「なるほどな。これは大騒動だな」

「でも、なんでこんなことを」

 

あ、読み終わったみたいだ。ああ、やっぱそこは気になるよね。

 

「……言いたくないけど僕が原因だよね。とにかく、みんなにバレないように、どうにかしよう」

「あいよ」

「うん、急がないと」

 

ちょっとでも被害が出てくる前にどうにかしないといけないと三人で頷きあっていると、後ろの方から声が聞こえた。

 

「ちょっとあんた達! こんなところで固まってないで持ち場について!」

「あ、うん……」

「おーう」

「わかってる」

 

振り向けば、鬼のような形相をした悠里さんがいた。その勢いに負けてつい返事をしてしまう。あ

 

「とりあえず目の前の戦争だな」

「うん」

「う、そうだね」

 

二人は頷きあってるけど、被害とか出さないためにも急ぎたいんだよなぁ。

 

「これで、騒動起こったらどうしろと」

「そのときはそのときだ。運命なんて油断してるときに来るぜ?」

「うん、トラブルを気にしていたら勝てるものにも勝てなくなるから」

 

二人の目は真剣だ。はぁー、そういうものかな? 僕としては不安でしょうがないんだけどなぁ。

 

「そうだね。頑張るだけ頑張ろっか」

 

とりあえず持ち場に着かないとということになって僕らは解散した。戦争中に起こるのだけは勘弁してほしいなぁ。

 

『これより、Bクラス対Fクラスの模擬試験召喚戦争を開始します。両者、準備はいいですね』

『『はいっ!』』

『それでは模擬試験召喚戦争、はじめっ!!』

 

廊下で両陣営がにらみ合っているのを僕たちは別のところから眺めていた。

 

「おー、やってるなぁ」

 

廊下が見える隣の校舎の屋上から双眼鏡で様子を覗く。神海さんの隠しスピーカーのおかげで音声情報までばっちりだ。神海さんっていつも思うけど何の趣味を持っててこんなことできるんだろう?

 

「こんなところからやるのか?」

 

信じらんないなと須川君が呟く。

 

「アキヒサ見えてるのか?」

 

あ、そっか。南は双眼鏡がないから見えないんだ。双眼鏡持ってきたの僕だけだから他のみんなはわからないんだ。

 

「スナイパーでも難しいと思うぞ。これ」

「ワシらはここにおるべきなのじゃろうか?」

 

他の二人の意見も聞きながら、僕は南に双眼鏡を渡した。

 

「これ使えば見えるよ」

「おお、凄い」

 

南がはしゃいでいると、比奈丘さんが少し思案顔で呟いた。

 

「あいつら大丈夫か?」

「あやつらならば無事じゃろう」

「そうだろ、俺らが信用しなくて誰が信用するんだ?」

 

比奈丘さん的にはFクラスのみんながBクラスに通用するのか気になるらしい。でも、その不安は秀吉と須川君が打ち消したみたいだ。双眼鏡を覗いていた南が振り向いて須川君に笑いかける。

 

「お、須川言うな!」

「お化け屋敷の一件から思ってたけど、須川君って意外と男前だよね」

 

言いたいことズバッというし、はっきりとしててかっこいいと思うなぁ。それに最近はあの嫉妬深さも改善されてるし。

 

「い、いや。そういった意味合いで言ったつもりは全くないぞ。人として当たり前のことを言ったまでで」

「??」

 

いや、何言ってるの? 何かいきなりアーチャーみたいなこと言われても分けわからないよ。

 

「これってどっちにツッコミを入れればいいんだ?」

「わからん」

「二人してなに話てるんだ?」

 

だよね。僕は何か変なことを言ってしまったのだろうか?

 

                     ☆

 

中堅部隊の待機所にて、ぼくはというと……

 

「しっかし……暇だね」

 

絶賛暇を持て余していた。ぼくの呟きを聞きつけたようで、持ち込んできてた本を読んでいた日向君がこちらを向いてきた。

 

「そんなこと言わないほうがいいと思う。でも、前線部隊がいい活躍しているのは確か」

「これはこれで気が緩みそうだよ。悠里の気合入りっぷりが嘘みたいだ」

 

前線部隊がここまで仕事するとか悠里は全然考えてないわけないだろうけどさあ。

 

「逆に言ったらこれが作戦の内っていうのもありえる」

「そう?」

 

この暇さが作戦の内とかなんだろ?

 

「代表がなにを考えているかまでは予測できないけど、もしかしたらって言うのもありえるから」

「まあ、いっか。やることやるだけだよ」

 

悠里がどう考えていても、ぼくができることはここで普通に待機して、前線部隊のフォローに回ることだけだよね。

 

「言峰は凄い」

「え?」

 

日向君がいきなり呟いた。何事?!

 

「いや、なんていうか切り替えが上手いっていうべきか……」

「あはは、マイペースとも言えるけどね」

 

ほとんど自分のペースでやってるもんぁ。

 

「それはいいことだと思うけど」

「もっと酷いのだとあんまり一つに集中できないともいえる」

 

自分的にはこれでよしって思ったらもう興味なくなるし、どうも飽き性なんだよね。

 

「とりあえず、俺は言峰は凄いって思ってる。それは変わらない」

「えへへ、ありがとう。それにしてもまあ、暇だ」

 

喋ってて変わることと変わらないことがある。今回は全然何も変わることはなかった。

 

                    ☆

 

文月学園の坂の頂上、校門のすぐ傍にて。

 

「おー、ここが明久君たちの通ってる学校かー」

「随分と高いところにあるようですね。リュウノスケ」

 

オレンジの髪に紫の上着を着たなんとも目立つ青年と背の高い外国人と思わしき男性の奇妙な二人組みが立っていた。

 

「ま、町の外れは土地が安くて広い土地が手に入るからじゃないかな? とりあえず、明久君に会いに行こう!」

 

おー、と気の抜けた感じで青年が笑えば。

 

「それもそうですね。行きましょう」

 

背の高い男性も穏やかに笑った。

 

「明乃ちゃん元気にしてるかなー。また絵のモデルやってもらえないかなぁ?」

 

明乃ちゃんってかわいいし、描きがいがある薄幸さって言うかさーと青年が笑顔で言う。それは本人には言わないようにしてくださいねと背の高い男性は嗜めた。

 

「はっくち」

 

その頃、中堅部隊の待機所にて。明乃がくしゃみをした。

 

「大丈夫?」

「うー? 風邪でも引いてたっけ?」

 

おっかしいなぁと首をかしげる明乃だった。

 





明乃の幸運は多分どこかにお出かけしているかなって思う。それから幸運Eの人を引き寄せそう。

雨龍龍之介はグロをメイン、たまにとても綺麗な風景画や人物画を描く異色のアーティストとして活躍中。旦那は助手、外見は綺麗な旦那を思い浮かべていただければ完璧かと。


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第五幕

 

戦況を双眼鏡で眺めながら、僕は呟いた。

 

「……お、こっちが押してる」

 

見ていると、戦場を占める召喚獣の割合はFクラスの方がやや多めになってきた。この調子だと前線部隊が勝つかもしれない。

 

「まじか」

「凄いのう」

「でも何かおかしくないか? 前線部隊にしては数が少ない気が……」

「気のせいでしょ」

「いや、比奈丘見えてるのか?」

 

みんなが口々に何かを言ってるけど、それ以上に色々と気になることがあった。

 

「うーん、奇襲に戦力回してるとか? それとも何か別の作戦が……」

 

Bクラスの作戦が微妙に読めないんだよね。そんなことを考えていると屋上の扉が開いて、人が大勢やって来た。その数は十人前後、結構(試召戦争の部隊としては)大人数かもしれない。

 

「ここに居たわね。Fクラス!」

「こんなところに居るとは」

 

リーダーらしき二人組がやや息を弾ませながらこちらへとやって来た。ようやく納得できたよ。

 

「あー、こっちにも奇襲ってことか」

 

さっき考えたみたいに奇襲のために戦力分散を図ったらしいね。ま、奇襲されたら困るから先手を打つってところか。

 

「のん気にやってる場合かよ?!」

 

南に突っ込みを入れられた。解せぬ

 

「よーし、やるか」

 

比奈丘さんが珍しくやる気だ。

 

「ワシらが見つかったら不味いのではないかの?」

 

どうだろうね。なんで悠里さんがこんな目立つところに僕らを配置したのかはいまいちわからないよ。

 

「とりあえず目の前の敵をどうにかしてからだろ。試獣召喚(サモン)っ!」

 

須川君が召喚獣を呼び出した。召喚円からは胴着と棒を持った須川君の姿をした召喚獣が……。

 

「あれ? 召喚獣の姿が変わってる」

 

現れなかった。何かお坊さんみたいな格好をして、手には長刀を持っている。武蔵坊弁慶とかその辺のイメージなのかな?

 

「俺もだな」

 

南の召喚獣は前までは闘牛士の服にサーベル姿だったのが、部分鎧をつけて細身のランスを手にした姿に変わっている。ちょっとごつくなったなぁ。

 

「ワシのもじゃ」

 

秀吉のは羽織袴に薙刀が新撰組の羽織を着た和服姿に日本刀という姿になってる。何かちょっと勇ましいね。

 

「気を抜くなよ!」

 

比奈丘さんは服の色が赤から白になってる。正統派になってるよねこれ。あ、そうだ。僕の召喚獣は………。

 

「……なんでさ」

 

赤い外套はないけど、見慣れた黒のインナーに黒のズボンとブーツ、それから手に持った形の特徴的な弓。うん、アーチャーですよね、どう見ても。しかもご丁寧に髪の色が白くなってるし。設定直したはずなのに、なんでさ。

 

                    ☆

 

ふぅ、やっぱり暇すぎてしょうがない。

 

「前線組は快調みたいだね」

「うん、でも油断は禁物だと思う」

 

ツッコミを食らったよ。確かに油断は禁物だろうけどさー。

 

「まあね、とはいえぼくは正直もう出番ないかなって思うんだよね」

「油断してると……」

 

日向君の言葉をさえぎるようにどたばたと足音がして、十人ぐらいがやって来た。お、もしかして奇襲組?

 

「見つけたぞ! Fクラスだ!!」

「こんなところにも居たのか!」

 

あ、ちょっと気になる。

 

「にも?」

 

どこかで別のチームが探してるのかな? もしくは別のところで別の部隊と戦ったとか?

 

「どうかした?」

「ちょっと気になってね。試獣召喚(サモン)!」

「よくわからないけど試獣召喚(サモン)

 

うん、召喚獣召喚しないとね。

 

「あれ? 召喚獣の姿が変わってる?」

「うん、そうみたいだ」

 

ぼくの召喚獣はアオザイに黒鍵というなんかネタモノ感が満載の代物になってるんだけど。

 

「ま、武器が変わってなきゃ大丈夫か」

 

そんなことを呟きながらぼくは黒鍵を振るう。うん、それなりに平気みたいだ。戦い始めると日向君が呟いた。

 

「言峰は本当に凄い」

「へ?」

 

ぼくが何か言った?

 

                    ☆

 

「なんなのよ。この強さは」

「っ」

 

Bクラスの人たちの召喚獣はボロボロだ。こっちの召喚獣は平然としてる。

 

「みんな凄いね」

「衛宮も少しは戦ったらどうだ?」

 

比奈丘さんに呆れたような顔をされた。酷いなぁ。

 

「出番がないんだよ。絶賛後衛だもの」

「ま、須川と島田、それに木下までもが強くなってるしな」

「だよねー。ん?」

 

比奈丘さんに同意しながら、ふと戦場の方をまた見てみれば。神海さんが何か動いてた。なんか中堅部隊が待機している辺りの窓を開けている。そして、僕を見つけると無言で指を拳銃の形にした。あ、もしかして。

 

「……なーる」

「? どうした衛宮……あ」

 

どうやら比奈丘さんにも見えたみたいだ。遊撃部隊ってそういうことだったのか。

 

「やりますか? 後ろをよろしく」

「わかった。がんばれよ」

「はーい」

 

僕は双眼鏡を覗き込みながら、召喚獣に弓を引かせた。

 

                    ☆

 

うーん。

 

「ふむ、結構しぶといなぁ」

 

ぼくたち中堅部隊の目の前にはきっかり十人が残っている。

 

「い、一撃で半端ない点数削ってるあんたが言わないでよ」

 

うん、ぼくが一撃加えてその後はみんなが攻撃を加えるってスタンスを取ってる。これは一応プランBとして考えられていたんだよね。ただし、それじゃあ一人の負担が大きすぎるからって却下になってたんだけど。

 

「えー? ぼくは普通に攻撃しているだけだよ?」

「言峰、色々と……」

「? なんでかな」

 

さっきから日向君に色々とツッコミを食らってる気がするんだけど。

 

「のん気に話するなぁっ!!」

「!」

 

ぼくの召喚獣に相手の召喚獣が向かってきた。だけどかわすことはしなかった。

 

「え? なんで?!」

「……凄いなぁ。アキ」

 

狙いばっちしだよね。相手の召喚獣は矢の代わりに使われた剣に貫かれている。絶対にアキの召喚獣の力だし、ついでに言うなら風切音が聞こえてたからわかってたし。

 

「衛宮?」

「ま、ぼくの弟は得意分野においては最強だからね」

 

いや、それじゃわからない、と日向君にまたツッコミを食らった。

 

                    ☆

 

「よし、こんなものかな?」

 

姉さんの傍にいた召喚獣を打ち抜く。その要領で他の召喚獣も打ち抜いた。よし、全滅。

 

「すごいな。スナイパーも真っ青だろこれ」

 

いや、それは無理だよと比奈丘さんに方を向いて笑っていると須川君の声がした。

 

「衛宮、比奈丘、すまん!」

「覚悟ぉぉぉぉっ!」

 

比奈丘さんの召喚獣に向かってBクラスの人の召喚獣が突っ込んできていた。頭の上の点数は物凄く低いけど、三人の攻撃をどうにかかわしきったみたいだ。

 

「お、『灰となり散れ』!!」

「嘘だろ」

 

比奈丘さんの召喚獣が腕を横薙ぎにすれば、相手の召喚獣は炎に包まれた。

 

「これ以上面倒を増やすな」

「うわぁ、丸こげ」

 

相手の召喚獣はギャグみたいに丸焦げになってそれから消滅した。

 

「ふんっ、これで済んだだけありがたく思え」

 

比奈丘さんがそう言っていると、その倒された召喚獣を操ってる人が何かを言った。

 

「なんでセブンスドラゴンのキャラがここに居んだよ」

「? おい、お前」

「戦死者は補習!!」

 

比奈丘さんがそのよくわからない単語に反応した。そして、その人に話しかけようとしたけどそれは出来ずに終わった。

 

「……」

 

比奈丘さんが連れて行かれた屋上の扉を見ながら呆然としている。

 

「比奈丘?」

「比奈丘殿?」

「どうかしたのか?」

 

戦闘が終わったのでこっちを見る余裕ができたらしい三人が比奈丘さんに心配そうに話しかける。比奈丘さんどうしたんだろう?

 

「……なんかあった?」

「いや、なんでもない……」

 

あたしはキャラじゃないぞ、そう比奈丘さんが呟いた。キャラ? 一体何のことだろう?

 

                     ☆

 

学園の隅の方、雑木林の中。

 

「……後一つ」

「……………」

 

黒いフード姿の何者かが禍々しいクナイをまた一つ埋め込んだ。





基本鈍足進行かつご都合展開です。それから高度な頭脳戦とか………誰も期待してませんよねー。基本的に自分はそこまで凝ったことしてないですし

そういえばプリヤの小説買いました。こうやって略すんですね。プリズマ・イリヤ、この前までプラズマだと勘違いしてた自分はアホですね。もしくはアレでしょうか、ポケモンのブラホワやってたのでそこが混ざったか。どちらにしてもプラズマ……


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第六幕

さて、元Aクラスこと現FクラスにようやくBの代表以下数名がやって来た。代表が仕組んでいたのはこれだったらしい。

 

「あんた、結構とんでもないことするわね」

「あら、あんたも乗ったじゃない」

 

にやにや笑いあいながら話し合ってるこいつらを見て、心底最近の女子高校生って怖いと思った。いや、俺も今生では今女子高校生だけど。

 

「お前ら本当に悪役だよな」

「あら、日暮 何か言った?」

「そこの彼、何か言ったかしら?」

 

ぼそりと呟いたのが聞こえたらしく、いい笑顔でこちらを向いてきた。

 

「……ほんと、てめぇらは敵に回したかねーよ。俺らの敵として一番面倒な連中だ」

「なによその言い方。あたしが悪役みたいじゃない」

 

ふてされたような口調で代表が言う。ただし、それを見ても俺としては昔に出会った知能犯が思いつくわけで。

 

「それはどうも。こう見えても俺、昔は正義の味方とか志してたもんでな」

「あら、そうなの。それならあたしも一緒よ。むしろ今も追いかけてる真っ最中かしら」

 

あー、正義の味方とまでは行かないがこいつは弱者の味方をしようって傾向はあるよな。

 

「へぇ、明乃たち大事にしろよ。正義の味方は一人じゃ勤まらないぜ?」

「ふぅ、そろそろ行きましょうか」

「ふん、すぐに倒れるようじゃ面白くないわよ」

「本当にお前ら悪役だろ」

 

俺の呟き声なんてもう聞こえていないらしかった。

 

「「試獣召喚(サモン)!」」

「さて、派手にやりましょう!」

「望むところよ!!」

 

代表同士が召喚獣をぶつけあう。あいつ直接対決のためにこの作戦立てただろ。唖然としてるBクラスの近衛に視線を向ける。

 

「はー、こんな代表ですまん。試獣召喚(サモン)!」

 

召喚獣が現れてみれば、何故か黒髪のもののどう見ても見慣れた幼馴染の姿をしている。

 

「……なんでだよ」

 

そう呟けば、召喚獣がチラッとこちらを向いた。その視線でちょっと理解した。

 

「……………はぁ」

 

英霊を召喚獣化って、絶対に前代未聞だろ。

 

                    ☆

 

ふと気になることが出来た。

 

「大丈夫かな、日暮ちゃん」

「どうかしたの?」

「いや、ツッコミ的な意味で」

「?!」

 

いや、いきなりどうした。と日向君に突っ込まれた。

 

                    ☆

 

あ、なんだろう?

 

「広夢、大丈夫かな?」

 

苦労してそうな気がする。

 

「? どうしたんだ。急に日暮って」

「何かあったのかの」

 

比奈丘さんと秀吉が不思議そうに聞いてきた。

 

「いや、なんだろう。胃がキリキリしてそうな感じが、気のせいかな?」

「なんだよ。その第六感的なのは」

 

須川君にツッコミを入れられた。

 

「アキヒサはいつも通りだよな」

「いや、衛宮がいつも通りなのか?」

 

さらに須川君のツッコミが冴え渡った。

 

                    ☆

 

 

召喚獣同士の殴り合いは最終局面を迎えようとしていた。

 

「はぁっ!!」

「せいやっ!!」

 

代表たちの召喚獣のクロスカウンターが決まる! その瞬間。

 

「………へ?」

 

突然、空気が重くなったような感じがした。

 

「!」

 

見てみれば、周りにいた連中が全員倒れている。召喚獣は一斉に姿を消し、あたりは静寂に包まれていた。

 

「どうなってんだよ。これ」

 

                    ☆

 

なんて言ったらいいのだろう? とりあえず、何かいきなり水の中に落とされたような感覚がした。

 

「!」

「?! どうなってるんだこれ」

 

周りの人間が次々と倒れた。驚くけど、それよりも先に現状が気になる。

 

「固有結界……にしてはちょっと稚拙? でも、まずい」

 

明らかに魔術による何かしらの工作があったように感じる。

 

「わかるの?」

「まあね。みんな倒れたし、多分魔術適正のある人間以外は倒れてると思う。秘匿の原則何処にやりやがった」

 

犯人とっちめるだけじゃ絶対に終わらないよね。この手の後片付けは教会……とっとと終わらせよう。

 

                    ☆

 

突然、世界が歪んだような気がした。

 

「?」

「!」

 

僕と比奈丘さんは同時に周囲を見渡した。変な違和感に焦りを覚えながら視線を元の場所に戻せば、友達が三人とも倒れている。

 

「南? 秀吉? 須川君?!」

 

みんなの傍によって揺するけれども、みんなはピクリともしない。慌てて呼吸を確認してみたらみんな普通に呼吸はしていた。眠っているだけみたいだ。

 

「おい、衛宮どうなってるんだこの状況!」

 

比奈丘さんが僕の方へやってきて、僕の肩を掴んだ。

 

「………ごめん、僕のせいだ」

 

そうとしか言えない。僕はこうなることを知っていたのに、放っておいてしまった。僕のせいなんだ。そう思うと居てもたっても居られなくなって、屋上の扉へと走り出す。

 

「衛宮!」

 

比奈丘さんの呼ぶ声に半ば出かかった扉から顔だけを覗かせて、比奈丘さんの方を向いて僕は言った。

 

「僕行ってくる。比奈丘さんはここに居て!」

 

急がないと。多分この規模なら学校全部覆ってるかも。

 

「……あんの、バカ野郎」

 

                    ☆

 

気軽に学園内を歩く龍之介たち、当然入門証などはなく不法侵入だ。

 

「? 旦那、何か変?」

 

突然変わった学園の空気に龍之介も感づいた。一応魔術の基礎だけはやっているので気が付けたのだ。

 

「どうやら結界のようなものですね」

「! もしかして。オレ、やばい所に来た?」

 

あっちゃぁとか言いながらも口元はニヤニヤとしている。龍之介は面白い事になりそうな予感がするなぁとか内心考えていた。

 

「そうなりますね」

「マジ? 衛宮さんに連絡入れたほうがいいよね」

 

龍之介は衛宮さんと書かれた電話番号を携帯から呼び出して、連絡を入れる。コールは数回もならずに画面が通話中に切り替わった。

 

「あ、もしもし。衛宮さん?」

 

龍之介がいつもと変わらない調子で喋る。電話口の声もそれに焦りが削がれたらしく次第に落ち着いた声に変わった。

 

「そうそう、何か今結界みたいなのに巻き込まれて。多分明久く……」

 

その単語を言い切る前に電話がぷつりと切れた。携帯を正面に戻してから龍之介は呟く。

 

「切れた」

 

多分衛宮さん、こっちに来るんだろうなぁ。とかしみじみ考えながら龍之介はキャスターの方を向いた。

 

「あちゃぁ……どしよ。旦那」

「どうしましょうか」

 





これといって書くことがないです。とりあえず最終決戦の幕は切って落とされた?


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第七幕

行動に移すのはいいとして、何処をどう攻めたらいいんだろう?

 

「……多分こういうのって基点があって、そこを繋げて結界を作ってるはずだから。基点を壊せば……よし」

 

確かそんなものだったはず。固有結界とかになると術者を倒さないといけないんだけど、それはこの手の結界にはないはずだから大丈夫。大体固有結界って使える人間の方が少ないんだよね。

ぼくが歩きだろうとすると、日向君が声をかけてきた。

 

「言峰、なにするつもり?」

「ん? 事態解決に決まってるでしょ。あ、日向君はここで大人しくしておいてね。じゃ!」

 

よし、急いでどうにかしないとね。始末書書かされるのは多分ぼくだし、やってらんないよ。

 

「言峰?!」

 

後ろから日向君の焦った声が聞こえたけど気にしない、気にしない。

 

「……行ってしまった。どうしろっていうんだろう」

「多分これって衛宮が言っていたことだよな」

「うん、ヒロの所に行こう」

 

                    ☆

 

僕はただひたすらに足を進める。今止めたら、誰かに顔向けできないような気がするから。

 

「はぁ、はぁ、はぁ」

 

息が上がってくる。普段あまり運動しないツケが回ってきたのかな。それから言えるのはもうそろそろ色々と危ない気がする。

 

「かはっ、けほ、けほ」

 

あ、ほらやっぱりだ。息が苦しくなりすぎて、咳き込んだ。もう走れないかも。

しゃがみこんで呼吸を整えていた僕の肩を誰かが叩いた。

 

「え?」

 

振り返ってみれば、物凄く不機嫌な顔をした比奈丘さんだった。

 

「衛宮……一人で突っ走るなって伝えたよな」

「あ、えっと、その」

 

いや、今回の事は主に僕のせいだし、それに(一応)一般人である比奈丘さんに言うわけにいかないし。色々と考えて答えに詰まっていると、なにを勘違いしたのか比奈丘さんが僕の目の前までしゃがんで目線を合わせて、真剣な顔して言った。

 

「一人で抱え込むなよ。わたしは明乃の友人だからお前にとっては他人かもしれないが、そういう奴だからこそ言えることだってあるだろ」

「いや、あの……」

 

そ、そういう理由じゃないんだけど。まだ答えにどもってると周囲の空気が一段と歪んだような気がした。

 

「!」

「?!」

 

二人で周りを見渡せば、まるで零的な何かに出てきそうな怨霊が大量に出現した。見る見るうちに廊下中が埋まっていく。

そんな光景をみて思わず呟きたくなった。

 

「……なんでさ」

 

それ以上に何か言えることってあるのかな。そう感じた。

 

                    ☆

 

「おおお、COOOOL! マジでCOOOLだよね旦那!」

 

教室の廊下を龍之介がハイテンションで走りぬける。器用にも前をちょっと見ては隣を走るキャスターと喋るという芸当をやってのけている。

 

「ええ、貴方の好きそうなものであることは認めますが。一体なんなのでしょうかこれは」

 

彼に併走しながらもキャスターは冷静に状況を判断していた。

 

「とりあえずケイネスさんが言ってた基点とやらを探そう! 一つくらいバラしてもいいかな」

 

何処からか取り出したメスのように鋭いナイフをくるくると回す。

 

「リュウノスケ、止めておきましょう。アキノさんが知ったらまた怒られますよ」

「ちぇー、絶対にバラしたら面白いのに」

「……それにしてもこれほどの死者はどこから連れてきたのでしょうか。いや、まずこれは死者なのでしょうか?」

 

死者にしては妙に生気を感じるとキャスターは首をかしげる。その様子を見て、龍之介が驚いたような顔をした。

 

「んー、あれ? 旦那気が付いてないの。あれって生霊でしょ」

「生霊、ですか?」

 

生霊は生霊でCOOOLなんだよねー。と龍之介が笑う。しかしキャスターはさらに首をかしげた。死者になら縁があるキャスターも流石に生霊には縁がないらしい。

 

「うん、ケイネスさんところで何度か見たことあるから分かるんだ」

「そうですか、生霊……」

 

しかしなぜ生霊がこんなにも発生しているのか。誰も現状境ではそのキャスターの疑問に答えられなかった。

 

                    ☆

 

とりあえず僕は比奈丘さんの手を引いて、疲れきった身体に鞭打って走り出した。

 

「なんだよこいつら」

 

比奈丘さんが少し後ろを向きながら呟く。ああああ、もう色々と勘弁願いたいんですけどぉぉぉ。

 

「……もうなんでさぁぁぁぁぁ。アーチャァァァァっ! もしくはセイバー! もう誰でも良いや、誰か身内来てぇぇぇぇ!!」

 

叫びながら全力疾走で走る。ふと冷静に意識を戻したら、物凄く何叫んでんだろうって気がした。僕の叫び声に驚いた比奈丘さんがこっちを見る。

 

「アーチャー?」

「あ、ごめん。知り合い」

 

げ、前からも来やがった。懐から小型魔弾発射装置を取り出す。すると比奈丘さんがこっちを向いた。

 

「お、衛宮。いいもの持ってるな」

「あ、これ一般人は使えないからね!」

 

一応魔力持ちしか扱えないからね。違うと比奈丘さんが首を振る。違うって。

 

「いや、そっちのナイフ」

「あ、こっち? 普通の品物だよ?」

 

アーチャーの投影した奴だけど。

 

「貸してほしい。後で返すから」

「え、そう? あ!」

 

比奈丘さんにナイフを渡してたら、比奈丘さんの後ろから怨霊が襲い掛かってきた?! 慌てて魔弾を撃とうとすると、それよりも先に比奈丘さんが僕から受け取ったナイフで怨霊を切り裂いた。

 

「……すご」

「わたしがそんなに弱く見えるか?」

 

にやりと比奈丘さんが笑った。この人やっぱり凄いよ。

 

                    ☆

 

目の前にいきなり生霊が大量に現れた。どうなってるのさこの学園、ただ結界張っただけなのに生霊大量に出てくるとかさー。

 

「うわぁ、基点いく前に仕事かい」

 

術者探したほうがよさそうだなぁ。一応術者っぽい気配はぼくらのFクラスの教室にある。

 

「悠里が心配だし」

 

もしかしたら悠里に危害が及んでるかもしれない。

 

「急ごう」

 

教室へとたどり着く。やっぱりこっちに術者がいるみたいだ。扉を開ければ見慣れた赤い髪が床に着いている。

 

「悠里!」

 

慌てて悠里の所に走り出せば、足元にクナイが刺さる。

 

「っ あぶっな」

 

飛んでかわせば、さっきは気が付かなかった黒いフードの人物がそこにいた。見えているのは手だけ、白くて細い手は女の人を思わせる。

 

「君は一体誰だい? 見たところ魔術師のようだけど、こんな昼間にしかも普通の人がいる場所でこんな大々的な魔術をするとかさー」

 

ガントが飛んできた。よっぽど話し合うつもりがないらしい。

 

「ふぅん、あくまでこっちの邪魔して来るんだ」

「……」

 

相手は問答無用でクナイを構えてきた。

 

                    ☆

 

俺は廊下を走る。すると目の前から見慣れた茶色の頭が走ってきた。

 

「ヒロ!」

「よ、ウミ。無事そうで何よりだな。言峰は?」

 

一緒に行動してるはずの言峰の姿が見えない。なんでだ?

 

「一人で行った」

「はぁ、あいつら二人は本当に姉弟だよな」

 

明久と明乃は本当にこういうところが似通ってるぜ。

 

「ウミ!」

「大丈夫だよ」

 

手元に現れた剣でいきなり現れた化け物を切り裂く。うん、結構上手に投影できたな。

 

「よし、行くか!」

「ヒロ、俺と再会する前に何かあったのか?」

「は?」

 

いきなり何言い出すんだか。俺の実家がこういう魔術の家系ってだけなんだけどな。





正直、自分得かつ誰得状態突っ走ってます。

………いつもの事でしたよねー。相変わらずグダグダ進行

最終章も残すところ後三話。終わるかこれ


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第八幕

「こんのっ」

 

フードで顔見えないけど、結構焦ってるなぁ。ナイフの軌道がぶれてきてる。

 

「……きついんじゃないの? もうそろそろ諦めたら?」

 

ぼくがそう言うけど、さらに焦った様子でナイフを振るってきた。それをかわしながら気になったことを聞く。

 

「大体さー。なんでこんなことやってるのさ」

 

するとなにやら小さな声でその人が呟きだした。

 

「原作通りに進まないと……」

「原作? なにそれ」

 

何言ってるんだこの人。もしかして、ここ最近ウチにやってくる電波とかと一緒? 内心首をかしげているといきなり声を荒げた。

 

「なんであんたみたいなイレギュラーに令呪が宿るのよ」

「イレギュラー? は?」

 

やっぱりわけが分からないよ。それにしても今声聞いて気が付いたけどこの人女の人だ。てかこの声聞き覚えが………。

 

「なんで、ここはフェイトの世界じゃないの? それにこんな学園知らない!」

「………は?」

 

いや、この学園に来てるのに知らないってないでしょ。呆れていると、クナイ振りかざして再度襲い掛かってきた。

 

「あんたが、あんたがいなかったら!」

「…………」

 

叫びながら襲い掛かってくるの無言で避けていく。

 

「あたしがマスターになって!」

「……」

 

やっぱり聖杯戦争は知ってたんだ。さらに斬檄と叫びは続く。

 

「みんなを助けて」

「……」

 

ああ、なるほどね。

 

「愛されて」

「……だけ?」

 

うん、

 

「え?」

「言いたいことはそれだけ?」

 

ぼくは取り出した黒鍵を彼女に突きつける。

 

「!」

「君のそれって、ただ単にちやほやされたいだけじゃない?」

 

息を呑む音がした。そんなの無視してぼくは彼女に切りかかった。

 

「っ」

「そんな半端な覚悟で、戦争に参加するとか言わないでよ」

 

まずは一本、それが彼女の服の端を床に縫い付ける。

 

「!」

「大体聖杯戦争は第四次で無期限停戦してるんだ。今更聖杯戦争を始める? ふざけんな」

 

動けない彼女にさらに僕はもう一本黒鍵を使い肩口を床に縫いつけた。

 

「あっ」

「あの終わり(じごく)を続けてたまるか。わたしはあの終わりでもう終わったんだ」

 

あの()()()終わり(じごく)をもう一回なんて許さない。それも個人の身勝手な理由でなんて、本当に許せない。ただそれだけなんだ。

 

「ぼくらの世界(いばしょ)を奪うな」

「はひ」

 

さらにもう一本の黒鍵を彼女の首筋に当てて凄めば彼女はたちまち気絶した。

 

「ふぅ……ちょっと熱くなっちゃったかな」

 

興味本位でフードを外してみれば、そこにあったのは少し前に教会と遠坂家にやってきた魔術師の女の子だった。よく分からないけど電波の一種なのかな?

 

「術者はどうにかしたけど、どうにもなりそうにないなぁ」

 

周りを見渡す。みんな見事に気絶してる。

 

「基点を探さないと……」

「………あきの?」

 

か細くだけど悠里の声がした! 悠里の方を見てみれば起き上がってぼうとこちらを見てる悠里の姿があった。

 

「! 悠里?!」

「明乃、あんた今……」

「っ」

 

まさかとは思うけど見られてた?! ぼくがどもってると悠里がにやりと笑う。

 

「いいわ、あんたが秘密にしたいなら言わなくても」

「悠里………」

 

悠里がそんなこと言ってくれるなんてうれしいよ。ちょっと感動してたら悠里がキッとこちらを睨みつけて殴りかかってきた。

 

「なんていうかと思ったか。ばかぁぁぁぁぁ」

「うわっ、ゆ、悠里?!」

 

慌ててかわして、避けたことで倒れ掛かった悠里を抱きとめる。すると悠里はぼくを抱きしめてきた。

 

「心配するに決まってるじゃない! あいつなんか変な弾飛ばしてくるし、ナイフ使ってるし、一発でも当たったらあんたが怪我するんじゃないかって……」

「ごめん、ごめんね、悠里」

 

回された腕の強さでどれだけ悠里が心配してくれてたのかがよくわかった。

 

「?!」

 

じーんとまた感動してると教室の扉が開いた。敵襲かと思って構えたけどそれは全然必要なかった。見慣れた青い髪に少し見慣れているようでいない全身タイツのような概念礼装、それから赤い魔槍。

 

「よ、嬢ちゃん」

「ら、ランサーさん?」

 

なんでこの人ここに居るんだ?

 

「ん? あの麻婆神父が妙な結界を感知………」

 

ランサーさんの声が途中で止まる。ランサーさんを見て固まっている悠里を見つけたんだ。

 

「な、な、な」

「あ」

 

説明するのが面倒だよ。それにこの全身タイツが知り合いとか普通の人は言いたくないよね。

 

「なんなのよ。一体!?」

「悠里、耳痛い。事情は一応説明するから離して。この状況どうにかしたいんだけど」

 

どうしよう、本来って一般人には秘匿だよね。でも悠里の記憶を消すのは忍びないし。どうしろと。

ぼくが悩んでいると教室の外からこちらに生霊がぞろぞろと入ってきた。

 

「うわ」

 

どうしろと

 

「なによ、こいつら」

 

驚いている悠里の腕がゆるまる。よし、これなら逃げれる!

ぼくは悠里の腕から抜け出し、ランサーさんの横に立つ。それから黒鍵を取り出す。

 

「……ランサー、殲滅するよ」

「おうよ」

 

よし、この状況は絶対にどうにかしないと。後ろから送られる視線に気が付いて振り返る。そこには悠里が心底心配そうな顔でぼくを見ていた。

 

「悠里は下がってて」

「明乃」

 

ぼくは上手く笑えてるかなんて分からないけど一応笑って。

 

「足手纏いは勘弁願うよ。悠里、これは君とっては全く普通じゃないんだ」

「っ」

 

中学のとき、最初に不良に絡まれた時に言われたことの仕返しだ。悠里が悔しそうな顔をしながら頷いた。ランサーさんと敵の方に向き直ればランサーさんが聞いてきた。

 

「嬢ちゃん、準備はいいか?」

「もち、これでも一応シスター見習いなので」

 

思わず普段言ってることが口に出てきた。どうしよう訂正とか入れたほうがいいのかなとか思ってると。

 

「なんでかしら、凄い説得力」

「嬢ちゃんもそう思ったか」

 

なんでなのかな? それで説得できたらおかしいよね。

 

「よし、殲滅完了! ……って、これもしかして」

 

戦いながら教室を飛び出して、扉を閉めて悠里の安全を確保してから廊下にいた連中を倒しきればいつの間にか結構学園のはずれの方まで来たんだけど。そしたら何か地面に埋まっている変な鉄の輪を見つけた。

 

「ん? これは結界の基点だな」

「ラッキー」

 

これを外せば上手くいく! そう思って引き抜こうと思ったら後ろから肩を叩かれた。

 

「あれ、明乃ちゃん!」

「え、龍之介さん?!」

 

聞き覚えのある声に振り向いたらオレンジの髪に紫の上着、少し苦手にしてるアーティスト兼第四次聖杯戦争キャスターのマスター、雨龍龍之介さんだった。

 

「良かったー見つかって。はい、これお土産」

 

ほいと渡されたのは目の前にある鉄の輪と同じような気配をもったクナイだ。

 

「これ、結界の基点じゃ」

「うん、何かぶらついてたら見つけてさ。明乃ちゃんにあげるよ」

「ども……」

 

ぶらついてて結界の基点を見つけるってどうなんだろう?

 

「あれ、ちょっとまって。基点を外したのに結界が落ちてない?」

「それもそうだね。もしかしたら全部の基点を外さないと落ちない代物だったりして」

「うわぁ、心底面倒なんだけど」

「まあ、一緒にがんばろ」

 

それは心底不安です。

 





終わる気配がしないんだ。ついでに言うならぐだぐだ過ぎて読者が付いていけてない気がするんだ。

あと、新連載始めたい。いや、エタってるのどうにかしたほうがいいんだろうけどさー。ネタがないのさ。どうしよう、思いつくのは新作のネタばかり。


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第九幕

 

僕たちは怨霊と戦いながら廊下を走っていた。

 

「あー、もううっとうしい」

「一向に数が減らない」

 

もう、うんざりだと比奈丘さんが愚痴る。

 

「いや、これをどうにかするのは結界の基点を……あ」

 

こういった話は一般人の前では禁止だった。

 

「衛宮は妙に詳しいんだな」

「あはは、あー……」

 

どうやって誤魔化そうか。そう考えてると比奈丘さんが苦笑いを浮かべる。

 

「ま、衛宮が何していようがわたしには関係ないことだ。とりあえず今、この状況を把握できているのはお前だけだ」

「どうも、なんか僕の周りの人って理解在りすぎて怖いなぁ」

 

踏み込んでくる人が少ないとも言えるかもしれないなぁ。

 

「そうでもないだろ。我が強いやつしかいないと思うがな、明乃然り悠里然り日暮然り」

「あはは、そうかな?」

 

我が強いとはまた違う気がするんだけどなぁ。

 

「だろ。しかも根っからのお人よしときた。心底……憧れるな」

「……そうだねー。僕もそう思うよ」

 

それは同意する。人間って絶対に成れないものに憧れるんだよね。

 

「よし、その基点とやらを探すか。衛宮、場所くらい分かってんだろ」

「うん、それは大丈夫だよ。それにしても、一箇所壊せばどうにかなりそうかな?」

 

むしろそうであってほしい。基点全部回るのはきついよ。

 

「全部壊せばいいだろ。一番近いのは何処だ?」

「比奈丘さんって思った以上に大雑把だよね」

 

なんだろう無気力系とは思ってたけどやるときは徹底的にっていうタイプだとは思わなかったよ。

 

「悪いか?」

「んー、強いて言うなら。少しくらい考えてね? 姉さんレベルで猪突猛進とは知らなかったよ」

 

姉さんって加減が分からなくなるとすごい事やらかすからなぁ。例えば中学時代のクレーター騒動とか。

 

「あれレベルはない」

「ううん、姉さんレベルだよ。どう考えても」

 

根底では似たもの同士だからこの二人って仲がいいんだよね。

 

「んなわけあるか」

 

喧嘩しながら走りつつ僕らは基点のある場所へと向かう。そこは学園の外れの雑木林の中だった。そこに結界と同じ魔力で構成された丸い鉄の輪がある。

 

「あった、あの出っ張ってる奴」

「了解」

 

比奈丘さんが引き抜こうと近づいた。

 

「あ、ヤバっ」

「っと、あぶね」

 

あ、事前に注意するの忘れたよ。

 

「耐性ない人間は弾かれるから」

「そういうことは早く言ってくれ」

 

僕は鉄の輪に近づいてそれの前にしゃがんだ。

 

「ごめん、これは僕が外すよ」

「ほいほい……」

 

比奈丘さんの返事が途中で切れたことに驚いて振り向けば、比奈丘さんは謎の黒フードのナイフを僕が渡したあのナイフで防いでいた。

 

「比奈丘さん?!」

「衛宮、お前はそれをどうにかしろ。わたしが相手をしておく」

「っ ごめん。頼んだ!」

 

正直比奈丘さんが心配だけどしょうがない。これを外さないことには不味いよね。

 

「やっぱ術式が特殊だ。姉さん絶対に力任せに壊してるよ……どうしよう」

 

鉄の輪の術式を調べて気が付いたんだけど時すでに遅しって奴?

 

「よし! ……って、あれ?」

 

加勢をしようと振り向いてみれば、謎の黒フードは無数の剣によって地面に縫い付けられていた。

 

「よー、明久。無事そうで何よりだぜ」

「広夢?」

 

なんでいるのさ。

 

「おう、それにしても大掛かりな魔術だよなー」

「広夢……」

 

僕が驚いている比奈丘さんを指差すと広夢はそっちを向いた。

 

「んー? ………あ」

「やあ、比奈丘さん」

 

広夢も固まった。あ、日向君一緒にいたんだ。

 

「お、おう」

「はぁ、まだやる気か?」

 

広夢はまだ動こうとした黒フードにいつの間にか取り出した剣を突きつけた。

 

「っ」

「なぜだろう、その力妙に見覚えが」

 

黒フードが息を呑む。それを聞きながら僕は気になったことを考えていた。何処で見たんだっけ?

 

「あ、そうだ。他の場所も探さないと」

 

基点探さないとこの状況どうにもならないよね。

 

「あ、それだったら俺たちが調べた」

「これだろ」

 

広夢がいつもの端末に学園の地図を出して見せてきた。赤い×印で四つ印がついている。

 

「広夢、空気読みすぎ」

「ん?」

 

どしたー? と首をかしげて聞いてくる広夢に苦笑いしか浮かばないのはなんでだろう?

 

「衛宮、前々から思っていたんだが日暮って何者だ?」

「あははは、ゴメン。僕もはっきりしたことは言えないや」

 

正直知ってることって少ない気がするんだよね。前世があって、アーチャーそっくりなサーヴァントの元マスターで、パソコンが得意で……これくらいしか知ら………いや、これだけ知ってたら結構知ってるってことにならない?

内心そんなことを考えながら犯人を魔術的拘束で縛り上げる。

 

「それにしても、こいつが犯人なのはいいとして。何のためにここまで」

「……主に僕のせいなんだよね」

 

まさかサーヴァントを手に入れるためにマスターに襲撃をかけようっていう過激な魔術師がいるとは思わなかったよ。一応ケイネスさんの依頼ではその魔術師に雇われた護衛と他の魔術師の三人らしいんだけどこのフードの人からは魔術の気配がしないから多分護衛の方だね。

 

「いや、こいつらのせいだろ」

 

広夢が言い切った。いつも思うけど、そのざっくり感凄いよなぁ。

 

「日暮たちは理由知ってるのか?」

「まあ、さわりはな。さて、どうすんだ明久」

「一応協会に引き渡せって言われてるけど、正直面倒なんだよね。そういうわけでして」

 

僕は黒フードの頭に手をかざした。別にこれだけでどうにかなるとかじゃないけど、さっき縛るときに事前準備は済ませてるから大丈夫。

 

「よっと」

 

少しだけ魔力を込める。するとフードは倒れた。

 

「何をしたんだ?」

 

比奈丘さんが僕に聞いてきた。細かい作業をしながら僕は答える。

 

「ざっくりいうと記憶を消したんだ。この人妙な能力持ってるけどこっちの人間じゃないみたいだし」

 

魔術師とかじゃなくって超能力者の部類らしい。ついでに言うなら結界張った術者でもないみたいだし。

 

「まじか。それなのにこんな騒動に力かしてるのか?」

「みたいだね。そういうわけなんで、記憶を消したんだよ……ま、一部分だけーとか凄いこと出来ないから一か月分丸まるだけど」

 

それ以上のピンポイントとなると聖堂教会とかに頼まないと無理なんだよね。いや、姉さんは出来るのかな?

 

「それでも凄いだろピンポイントだ」

「そう? とりあえず他の壊しにいこうか。姉さん無理やり壊してるかも」

 

てか絶対壊してるよ。さっき分かったし。

 

「壊すと不味いのか?」

「一つ正しくない方法で壊すと全部壊さないと解除できなくなるんだ」

 

で、僕が正規の方法で外したにも関わらず結界は解除されない。

 

「うわ、面倒だな」

「見事に誰かが一つ壊してるみたいでどうにかしないと」

 

さて、移動するかと話し合っていると比奈丘さんが顔をしかめて僕の方を見る。

 

「衛宮、何か凄い音してないか?」

 

あー、僕も聞こえてるよ。

 

「だな。なんでだ?」

「こっちに近づいてきてる?」

 

広夢も日向君も同じように訝しげな顔をしてる。

 

「あ、いや。まさか………」

 

僕が言い切るよりも先に轟音が近くに来た。そして、僕らの目の前に黒塗りの大型バイクが止まる。見覚えがありすぎるんだけどこのバイク。それに乗っている黒コートに黒ヘルメットの二人組にも妙に見覚えが……。

 

「明久、無事かい!」

「全く、坊やは慌てすぎだよ」

 

二人組がヘルメットを取るとそこから現れたのは見慣れた黒髪くせっ毛のくたびれた男の人と銀髪の美女、つまりじーさんとナタリアさんだ。

 

「「……なんでさ?!」」

 

僕と広夢が同時に叫んだ。そして、僕と広夢が顔を見合わせる。

 

「……なんでさ」

 

僕はもう一度呟いてしまった。なんで広夢までそう言うのさ。一瞬、自分とダブったよ?





次回で大団円? そうなるのかは不明です。

てか最終章と銘打ってるけど最後になりそうにない詐欺
グダグダかつ迷走気味ですが、もうしばらくお付き合い下さい。


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第十幕

どうにか全てが片付いて僕らは教室に向かう廊下を歩いていた。じーさんやナタリアさん、雨龍さんやキャスターは先に帰ってくれた。下手にいたら誤魔化すのすら大変だったよ。

 

「そんなわけでお疲れ様でしたー」

「うん、お疲れ」

 

僕と姉さんはぐぐっと伸びをする。

 

「それにしてもそんな騒動だったとはねー」

「ごめん、姉さんに何も言ってなくって」

 

これだったら姉さんに先に言っておけばよかったよ。

 

「いや、そこはいいんだ。でもさ、どうしよう」

「何が?」

 

何かあったっけ? これと言って思い出せないんだけど。

 

「模擬試召戦争終わってない」

「あ」

「あ」

 

僕と僕の後ろを歩いていた広夢が呟いた。

 

「忘れてたね」

「だな。代表は起きてるんだろ?」

 

比奈丘さんが励ますように言う。

 

「まあね……どうしよ。魔術見られた」

「事情話せば大丈夫でしょ。悠里さんだし」

 

あの人のことだしそれがどうしたで終わらせる気がするんだ。

 

「わたしも一応一般人なんだが」

「え? 比奈丘さんは黙っててくれるでしょ」

 

大丈夫だって信じてるし。

 

「……お前ってさ。人誑しとか言われない?」

「え? 言われたことないけど」

 

そういうこと言われるのは姉さんだよ。僕は全然そんなこと言われないんだよなぁ。

 

「そうか……」

 

何か比奈丘さんが納得したような顔で見てきた。なんなのさ。僕たちは教室の扉を開けた。

それからしばらくして、

 

「はぁ、教室に戻ったわけだけど」

「……ああなるとは思いも寄らなかったよ」

 

姉さんと二人で愚痴る。教室に入ってみれば、いち早く目を覚ました悠里さんとそれから根本さんがバトってる最中だった。

 

「悠里綺麗に勝ってるし」

「だねぇ」

 

僕らが入ったそのときに悠里さんの召喚獣の拳が根本さんの召喚獣に突き刺さったのだ。女の人って喧嘩強いんだねと変な納得をした僕だった。

 

「でもまあ、無事に終わって何よりって事かな?」

「ぼくは事後処理があるけどね」

 

そうだった。姉さんは仮にも聖堂教会に所属してるんだった。

 

「ご迷惑おかけします」

「いいよ。仕事だし」

 

魔術師はもっともみ消しをやってくれてる教会の人に感謝するべきじゃない?

 

                     ☆

 

実家に帰って、部屋に飛び込んで、僕は部屋にあった座布団に突っ伏した。

 

「つーかーれーたー」

 

ああ、このまま寝ちゃいたい。そう考えてると襖が開いた。横目に見れば、じーさんが入ってきた。アーチャーも一緒だ。

 

「お疲れ様、明久。よく頑張ったよ」

「うぅー」

 

じーさんが頭を撫でてくれるのが心地よくてたまらない。思考回路がもう熔けて消えかけてる気がする。そこに不安そうな声が振ってきた。

 

「大丈夫か、マスター」

「うん、魔力ガンガン消費して無駄にだるいけど大丈夫。だる……あ、今日の夕飯いらない。もうねる………」

 

眠いです。もう嫌だ。

 

「マスター?」

「出てけ……」

 

熔け切った頭にガンガン声が響いて気持ち悪い。

 

「はいはい、じゃあ出ようかアーチャー」

「あ、ああ」

 

ああ、もう眠すぎてだめだ。

 

                     ☆

 

衛宮邸の居間にて。

 

「え? アキヒサ寝ちゃったの?」

 

湯飲みに入ったお茶をすすりながらイリヤスフィールが驚いた顔をした。

 

「うん、疲れてるみたいだから。今日は部屋に行かないようにね」

 

居間へと入り、座布団に座った切嗣も同じようにお茶をすすりながら返事をした。するとイリヤスフィールがジト目で切嗣を見る。

 

「はーい、なんかまた無茶してたの?」

「あはは、うーん。まあ、頑張ったよ」

 

居間で親子がのほほんと会話している頃、台所では士郎が無言でかぼちゃや大根といった大型で固めの食材をぶつ切りにしていた。その様子を見に来たアーチャーが士郎に声をかける。

 

「随分と荒れてるな」

 

すると士郎がぎろりと睨みつける。

 

「……お前は兄さんのサーヴァントなんだよな」

「それは疑いようも事実だが?」

 

令呪があって、パスが繋がっているのだから疑いようもないのだ。そうかよ、と言いながら士郎がさらに睨みつける。

 

「……ならなんで兄さんが無茶するの止めなかったんだよ」

 

パスが繋がっていると言うならそれくらい出来ただろと士郎が続けた。

 

「…………」

「………」

 

二人のにらみ合いが続く。いつの間にか士郎の手は止まっている。

 

「はーい、二人して何喧嘩してるのかしら?」

 

士郎とアーチャーの間に割ってはいるように、アイリスフィールが笑いかける。

 

「……アイリさん」

「……アイリスフィール」

「二人が喧嘩してたらアキヒサが心配しちゃうわよ。ね?」

 

アイリスフィールがにこにこと二人を見る。

 

「……」

「……」

 

すると士郎は料理を再開して、アーチャーは居間へと向かった。あらあらと言いながらアイリスフィールは士郎に手伝うかと声をかけて遠まわしに遠慮されてしょうがないとアイリスフィールも居間に向かった。

 

                     ☆

 

一方、冬木教会の言峰一家の居住スペース。

 

「はぁ、結局こうなるんだね」

 

キッチンに立ちながら明乃はため息をついた。するとリビングから声がかかる。

 

「明乃ちゃん、おかわりある?」

「嬢ちゃん、追加頼めるか?」

「アキノ、追加を」

 

夕食を食べている面々から追加の注文が入ってるのだ。何故か学校で分かれたはずの龍之介もこちらにいる。明乃は手を動かしながら声を張り上げた。

 

「はいはーい、今作ってるから待って」

「小娘、遅いぞ」

「おい、ギル今作ってるって言ってる。ゴメン、明乃。これのことなんか気にしないで」

 

どうやらギルガメッシュと彼に連行された花楠もいるらしい。

 

「明乃ちゃん、ご馳走様!」

「どうも、お粗末さまでした」

 

全員がごちそうさまと彼女に声をかけた。

 

                     ☆

 

それからしばらく、事件の処理も全部終わった頃。

 

「はぁー、平和なことで」

「だね?」

 

広夢と明久が歩いていた。

 

「てか全員昏倒もどうにか誤魔化せたしね」

「それにしてもサーヴァントを狙ってあの騒動って」

 

普通考えるか? と広夢が呟けば明久は心底申し訳なさそうな顔をして。

 

「申し訳ございませんでした」

「ま、別にいいけどよ。退屈しねーし」

「ありがと?」

 

ま、そこで謝られても面白くないから感謝でいいぜと広夢が言ってから他愛のない話が始まる。最近の事、昔の事、それから将来の事。そして、将来どうするかと言う話になって広夢が思い出したように言った。

 

「そうだ。ものは相談だが俺とコンビ組まね」

「へ?」

 

なんでさ。いつもの台詞で本日も終了しそうだ。

 





あざーした。最終章閉幕!
オチが凄く雑で申し訳ございません。あとはザビエル道場とエピローグの予定



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※ザビエル道場

※盛大にメタ発言
※キャラ同士の掛け合い
※普段以上に謎時空です


??:はいはい、ラストラストの超大詰め!

???:正直このオチでいいのとか突っ込みは多いと思うんだよね

 

『ザビエル道場』!!

 

親友:はいどうも、爆弾発言するだけして終わったぜ。親友だ

ザビ男:俺の立ち居地って一体、ザビ男だぞ

親友:それにしてもついに最後かー

ザビ男:まあ、基本プロット同士をつなげて作った代物だから

親友:切ろうと思えば何処でも切れ

??:ルビーサミング!

親友:のが?!

ザビ男:親友?!

親友:いててて、流石に眼球は考えてなかったぞ(目を押さえてる

ザビ男:それにしてもさっきのは一体……(周りを見渡す

??:親友、大丈夫?(ひょっこり

親友:え、長男?(びっくり

長男?:この辺で愉快型魔術礼装を見なかった? 今探しててさー

親友:……お前本当に長男か?(じとー

ザビ男:え? いきなり何言い出してんだ。親友

親友:なんか長男にしては妙に胡散臭いというべきか(じとー

ザビ男:えー、流石にそれは………確かに(頷く

長男?:ひどっ、胡散臭いは勘弁してよ。せめて強かと言ってほしいなぁ(呆

親友:で? 誰だよ(じとー

平行長男:まあ、平行世界の僕ってことで一つ

親友:そうかいそうかい、それで? 急になんでここに登場?

平行長男:いや、だから愉快型魔術礼装を探しに来てて(きょろきょろ

親友:すまんが心当たりはない

平行長男:そっかー、それにしても道場懐かしいなぁ

ザビ男:え? 懐かしい?

平行長男:あ、あはははは。ナンデモナイヨ(胡散臭い笑顔

親友:あー、分かった。どういうわけかは知らんが道場経験者であることは分かった

ザビ男:なるほど。でも、だとしたらこっちの長男は?

平行長男:いや、どうだろうね。僕がもしかしたら第二魔法を偶然にも会得して成長した本人だったりして?(にやり

親友:そういうことを言う奴は大体本物じゃない(びしっ

平行長男:ちぇー、バレたか(ぶー

ザビ男:さくっと言ってるけど、本当は誰?

平行長男:んー、そうだなぁー。新連載とはまた違った平行時空の住民?(こてん

親友:新連載じゃないんかい(びしっ

ザビ男:これで何人目だよ

平行長男:だよねぇ。まじで何人目? えーと「召喚戦争」「反転世界」「Sクラス」「SクラスIF」運命絡みはこれくらい?(指折って数える。四本折れてる

親友:「氷娘」のあの子忘れてやるな

ザビ男:あれは一応俺の同位体も出てるから(呆

平行長男:あ、そっか。あの子も()

親友:忘れてやるな。マジで可哀そうだぞ(じとー

ザビ男:確かSGに少年羨望あったはず

平行長男:なんかごめんね

親友:謝るなら。氷娘に謝ったらどうだ?

平行長男:そだね。愉快型礼装見つけたら謝ってくる

ザビ男:そうだ。愉快型礼装?

平行長男:うん、紅玉の方。うっかり封印解いちゃって、ルビーに取り憑くし、雪姉に取り憑くし挙句の果てには……うん、忘れよう(頭をぶんぶん

親友:どした?

平行長男:なんでもないよ……思い出したら色々とツッコミが多いからさ。うん

親友:よく分からんが頑張れ

平行長男:さて、見つけに行かないとね! じゃ!(去っていく

親友・ザビ男:なんだったのさ一体

??:ふーやれやれ、まさかこんなところまで追いかけられるなんて思いませんでしたよー

親友・ザビ男:?!

??:あ、どもども。私、紅玉と申します! いやぁ、あの長男さんにマジギレされて(くねくね

親友:……投影(トレース)

紅玉:ぎゃああ、ちょ。一体何するんですか(魔力で作った拘束具でぐるぐる巻きに

親友:見慣れん奴より、平行世界の住民だろうと俺は友人を取る(ドヤァ

紅玉:かっこいいこと言ってますけど、私には物凄く悪意たっぷりの台詞ですよ?! どうなってるんですかこれ?!(逃げようとジタバタ

ザビ男:平行長男探してきた(遠くからやってきた

平行長男:見つけたよ愉快型礼装! いい加減にあいつに対するマスター登録解除しろ!

紅玉:えーあの人に対する登録をですかー? 絶対に解除しないほうが面白いのにー

平行長男:お断りします! 氷娘ちゃんに絶対解除させるって約束したんだから。いっそのことルビー直伝の拷問術でもやってあげようか?(拘束されている紅玉をギリギリ

紅玉:ちょ、それしゃれになりませんよ?!(逃げようとするけど逃げれない

親友:よく分からんが、愉快型礼装が悪いな。そしてルビー、なんであいつが拷問技術持ってるんだよ(盛大に頬を引きつらせる

ザビ男:さあ?(首を傾げる

紅玉:しょうがないですねー。シロウさんのマスター登録解除しますよ。あーあ、絶対に面白いのに、魔法少女カレイド・エミヤとか……

親友:ちょ、シロウって……ふ、ふはっ、ふははははは(おなか抱えて笑う

ザビ男:……正直笑えない

平行長男:だよね。正直誰得感満載だし……僕自身は話聞いただけだけど可哀そうだったよ

親友:あははははは、もうおなか痛い……シロウって……くはは

平行長男:笑いすぎだから。よし、紅玉行こうか?

紅玉:え、ちょ、普通に解放じゃないんですか?!

平行長男:いや、どう考えてもダメでしょ。ルビーにキレられるとか僕勘弁

親友:ああ、ルビーの尻に敷かれてんのか

平行長男:あれが婚約者とか……赤弓に驚かれたよ

親友:婚約者?!

ザビ男:ええ?!

平行長男:じゃあねー(紅玉引きずって去っていく

 

親友:ちょま……行っちまった

ザビ男:色々と爆弾発言でしょアレ

親友:とりあえずザビエル道場はこれにて終了!

ザビ男:多分これで最後だとおもうぞ

親友:それから平行長男は平行と名のつくとおり全くもってのIF世界の住民だ

ザビ男:それフォロー入れるべき?

 

 





大団円と参りましょう?
親友も言ったとおり平行長男は今回しか出番がないはずです

新連載の方はいつもの見切りってことになる可能性が大。まあ、それより先に氷娘とか終わらせろって話ですよねー

残すところは最終回? のみ、それではまたお付き合い願います


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最期の話
最期の話 E



※死ネタ注意
※今回会話ほとんどなし
※今更だけどご都合主義の塊


 

最期の話をしようと思う。

思えば人生は長いようで短かった。

 

 

あの日、僕は広夢に誘われて『正義の味方』を創めることになった。それからの高校生活は本当に平穏に過ぎた。いや平穏と言うにはちょっと騒動だらけだったけど、まだマシだったってことで。そうだよなー、普通は一年間で学校閉校騒動が何回も起こるとかないよね。色々とありすぎたんだ。

 

大学生になってからは広夢と一緒に『正義の味方』と大学生の二束草鞋。いや、ついでに言うなら外道魔術師への制裁のためにじーさんの名前も継いで『魔術師殺し』もやってた。こっちには申し訳なかったけどアーチャーも巻き込んで、長らく外道魔術師狩りの『魔術師殺し』をやらせていただました。いやぁ、色々とやらかしたなぁ。封印指定の子ども助けたり、行ってみたら聖堂教会とかち合って戦ったりとか、逆に聖堂教会の人と一緒に戦ったりとか……あのカレーがむちゃくちゃ好きなメガネさん元気にしてるかな?

 

そんなこんなで大学生も終わって、本格的に『正義の味方』の活動が始まる。この頃には色々と慣れきった。そういえばこの辺で士郎が結婚したんだよね。相手は桜ちゃん、本当にお似合いな二人だった。僕はと言えば相変わらずながら広夢と二人で『正義の味方』活動このままずっと二人でやっていくって思ってた。

 

 

 

 

 

 

それから少しして…………広夢が死んだ。仕事で向かった紛争地帯で分断されて、どうにか合流したときにはもう………。ホテルで気が抜けたような一日を過ごした。相棒とも言えた友人はもういない。帰国して、気が抜けたようになった僕を見てみんな慌てた。それからは江戸屋敷に閉じこもる日々。結婚した士郎もそれからアーチャーも凛もみんな毎日のように僕の閉じこもる部屋の前に来ては話をしてくれた。それでもまだ広夢が居ないことに空虚なものを感じていた。

 

それから半年が過ぎて、ついに業を煮やした凛が殴りこんできた。いきなり開いた襖、驚きもしないでぼんやり見た僕の顔を見て凛の目には見る見る間に涙が浮かんで、いきなり殴られた。閉じこもって過ごしていたせいか凛に殴られただけで倒れた。これは後でアーチャーに言ったら凛の力が凄すぎるだけだそうで。そのままボロ泣きの凛に馬乗りにされてしばらく、何事かと思った士郎(偶然来てたらしい)が来るまでそんな状態が続いた。

 

それからさらに一年、まさかの凛と入籍することになった。魔術師としてそれでいいのかとツッコミを入れたけれども彼女は何処吹く風で笑うだけ、この頃には調子が戻ってた。大切な場所はまた出来たからね。

 

それからもうちょっとして、聖杯の解体が行われた。随分と長い間一緒にいたアーチャー……ううん、もう一人の弟とはそれでお別れに……ならなかった。まさか引きこもりになってたときにヤケで使い魔契約に切り替えてたとかなんでさ。

 

 

 

そして僕は最期を迎える。ある意味平穏とは程遠い人生だったけど、幸せだなと思える人生だったよ。

自分で書いた術式の魔法陣を前にアーチャーが振り向いた。心配そうな顔をしている。

 

 

「マスター、本当にやるのかね?」

「まあね。一世一代の大勝負……とはいえないけど、やってみるに越したことはないからさ」

 

遠坂家に婿入りして、魔術の資料を盗み見て、考案した『平行世界の運用』の魔術のかなり手荒いの。多分使えないだろうけど、それでも試してみたくて無茶をすることにした。もちろん凛には言っていない。

 

「はぁ、全く君はバカじゃないのか?」

「あれ? 今の今まで気が付かなかったの? そうに決まってるじゃないか。それじゃ、行きますか」

 

多分行き着くのは平行世界ですらないけど。

 

 

 

 

 

 

 

遠く暗い闇の中を通り過ぎ、明るすぎる光の中を通り過ぎ、僕は草原に立っていた。

草原の中央、金色の髪のワンピース姿の女の子が褐色の肌に白い髪の奇妙な外套を着た青年を膝枕していた。うん、やっぱりなんだ。

 

「や、セイバー」

「! ようやく来たのですか?」

 

僕が声をかければワンピースの女の子が顔を上げた。やっぱり髪は下ろしているけど、僕たちやじーさんたちと一緒にいたセイバーだ。

 

「うん、お待たせ?」

「待たせすぎです。シロウもずっと貴方を待っていましたよ」

 

セイバーが眠っているアーチャー本体の頭を優しく撫でる。聖杯の解体時に逆流した魔力によってアーチャーの状態を知ったんだ。無事に阿頼耶識から解放されたアーチャーだったけど、長年の滅亡回避で磨耗しきったアーチャーの本体の磨耗を解消するために僕の元にやって来たアーチャーの分霊が必要だったんだ。

 

 

 

全ての果て無き理想郷(アヴァロン)

それが僕の到達点、まあ良かったかな?

 





お疲れ様でした。一応、これで終了。

原作後の話の進みは大体あんな感じです。気合が続いたら明乃サイドの話も入れたい。

四月一日のエイプリールのための投稿からスタートして、早半年と二ヶ月くらい過ぎてました。更新しない日とかも色々ありましたがこれにて一応完結です。
自分で書いててグダグダしてるなーと思うところが多々ありますが、それはいつか修正入れようと思います。
それからこんなのが最終話ですみません。


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