ハイスクールD×D神と転生者によって崩壊した世界 (和寺)
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原作前
プロローグ


処女作ですよろしくお願いいたします。


《冥界の森の中》

 

冥界、そこは人間界とは違い、自然環境に恵まれ豊かな大地が広がる場所である。

多くの森が存在するが手入れされていない森もいくつかあり、森の中に迷い混んだ者をエサとする危険な魔物が住み着いていたりもする。

危険な魔物なら討伐すべきなのだがそういう訳にもいかないのだ。

 

この地では、数十年前に悪魔、天使、堕天使の3すくみの戦争があったのだ。

その時に多くの犠牲者が出た。

 

悪魔では、魔王と多くの上級悪魔を失い。

 

天使では、神と多くの上級天使を失い。

 

堕天使では、幹部と多くの上級堕天使を失った。

 

つまり、現在危険な魔物を討伐できる実力者がほとんどいないということなのだ。

そんな理由もあり、危険な魔物は討伐されず、森の中に放置されている。

 

そんな危険な森の中を歩く一人の人物がいた。

綺麗な蒼色の瞳と、白いリボンでまとめた美しい黒髪、コートの上からでも分かる滑らかな身体のラインで、女性だということが分かる。

何の迷いもなく歩いていることから、森の中に迷い混んだという訳では、無さそうだ。

 

 

 

*********************************************

 

 

 

私は目的を果たし、仲間と決めた待ち合わせ場所に向かっている最中だ。

目的というのは、亡くなった両親の遺品の回収だ。

私の両親は、悪魔とシスターだった。

つまり、私は悪魔とシスターのハーフである。

母様が普通の人間だったなら大したことには、ならなかったのだが、神に使えるシスターだったのが問題になったのだ。

結果的に私達家族は、冥界から追放された。私の父様は、悪魔の中でも屈指の実力者だったため殺されることは無かったのだ。

 

人間界に追放されたが、私は幸せだった。優しい父様と母様がいてくれたからだろう。

 

そんな幸せな日々は、長く続かなかった。

 

父様が病になったのだ。

その病は、冥界にある薬を使えば治ったが私達は、冥界から追放されていたので、薬を貰えなかったのだ。

 

それからしばらくして、父様は亡くなった。

その後、父様だけでなく母様も何者かに殺された。

 

私は、ほんの数日で全てを失ったのた。

 

 

いや、得たものもあった父様が亡くなる前にくれた悪魔の駒という道具だ。

 

この道具は、戦争で数を減らした悪魔が、個体の数を増やすために造った、人間などの別の種族を悪魔に転生させる道具である。

この道具がなかったら私はずっと一人ぼっちだっただろう。

 

ん?私は違和感を感じ止まる。

 

 

ーーーーーーーーガサガサッ

 

遠くから何もなければ聞こえるはずのない音が聞こえる。今は風も吹いていないので、考えられるのはおそらく魔物だろう。

でも妙だ、この森の中に住む魔物は凶暴で人を見つけたら直ぐに襲い掛かって来るのだ。私にも何度か襲い掛かってきたことがあった。

どの魔物も何の迷いもなく襲い掛かってきたのだ。なのに今聞こえている音は誰かを襲っているという感じでも無さそうだ。

 

ん?何か別の音が聞こえる。

音というよりこれは、泣き声?

それも随分幼い気がする。

子ども?

この森は、小さな子どもが迷いこんだら、入り口の辺りで魔物に食べられているはずだ。

なのにどうして?

いや、迷っている暇はないか。

私は泣き声の聞こえる方に走っていった。

 

 

 

***

 

 

 

魔物には、様々な種類がある。

肉食や草食。

大きいものや小さいもの。

知性の高いものや低いもの。

豪胆なものや臆病なもの。

どれも生きるために進化してきたのだろう。

今私の目の前にいる狼のような魔物は、この魔物だらけで弱肉強食の森の中でも、かなり強い部類に入るだろう。

この魔物は、たいした力を持っているという、訳ではない。この魔物の強みは、知性の高さである。

戦う相手の何処を攻めればいいか。

もしくは、どうすれば逃げ切れるか。

など、自分が生き残ることを第一に考える。ただ、相手に勝つだけがいいという訳ではないのだ。

 

さて、話を戻そう。

その狼は、私を見ている訳ではない狼が見ているのは、二人の赤ちゃんである。

 

おかしい・・・・

 

何がおかしいのかというと、 この狼の力は、中級悪魔ぐらいではあるのだ。

つまり、この狼ならこの二人の赤ちゃんを簡単に襲うことが出来るのだ。

なのに、この狼は、二人の赤ちゃんを見つめているだけ。

 

私は気になり、狼をよく見てみる。

 

 

 

狼の身体が震えている?

 

 

まさかっ!

 

この狼は、二人の赤ちゃんに脅えているとでもいうのだろうか?

そんな馬鹿なことがあるだろうか?

自分よりも力が弱い者に脅えることなんて・・・

 

 

ーーーーーーーー突如震えていた狼が覚悟を決めたかのように二人の赤ちゃんに襲い掛かった。

 

 

バキバキバキッ

 

その時、不思議な音と共に、私の目の前の大気にヒビが入る。

狼の牙は、二人の赤ちゃんに届くことは無かった。

私の能力を受けて狼は、ものすごい奇声を上げて吹き飛ばされたからだ。

力を入れすぎたのか、この辺りの木々も一緒に吹き飛ばしてしまい、日の光が差し込んでいる。

 

まあそんなことはどうでもいい。

今、気にすべきことは・・・・・

 

 

泣き叫ぶ二人の赤ちゃんだ。

 

 

「どうしよう・・・・・・・」

 

森の中では、赤ちゃんが泣き叫ぶ声だけが聴こえる。

 

 

本当にこの子逹をどうしたらいいだろうか?

 

 

 

*********************************************

 

 

 

昼間だというのに日の光が差し込まず、薄暗い森の中を歩く二人の人物がいた。

 

一人は、腰まで伸ばした銀髪と朱色の瞳が印象的な女性で、分厚い本を大事そうに抱えている。ちなみに青いワンピースを着ている。

もう一人は、背中の辺りまで伸ばした金髪をリボンでまとめている。金髪よりも目立つのは、右目が緑、左目が赤のオッドアイである。ちなみに彼女も女性で甲冑のついた戦闘服のようなものを着ている。

 

「そろそろ待ち合わせ場所ですね」

 

金髪の女性が、歩きながら言う。

 

「そ、そうだな」

 

銀髪の女性も答えるが、何か落ち着かない、そんな様子だ。

 

 

 

***

 

 

 

やれやれ、リインは戦闘の時は頼もしいがテレサのことになるとダメダメだな。

私はため息をはきながらリインをみる。

 

「これさえ、これさえ渡せばテレサにあんなことや、こんなことができる。」

 

・・・恐ろしいことを呟いているが聞かなかったことにしよう。

テレサもかわいそうに、持ってきてくれれば何でもする、なんて言わなければよかったのに。私達は彼女のお願いなら聞いてあげるというのに。

ちなみに彼女のお願いは、亡くなった両親の遺品の一つ、聖書を冥界の屋敷から取って来てほしい、というものである。

見張りなどもいなかったので簡単に持ってくることができた。

まあ、見張りがいたとしても私達の敵ではないがな。

 

そんなことを考えながら森の中を進んでいると・・・・

 

ものすごい奇声と轟音が聴こえた。

 

「こんな音をだせるのは・・・・」

 

私の頭の中で浮かんだのは、たった一人だった。

 

「テレサだっ」

 

「あっ、リイン待ってください」

 

リインは、私をおいて音の聴こえた場所に走って行ってしまった。

 

 

・・・速い

もう見えなくなってしまった。

 

まったくこの前、飛ぶのは好きだが、走るのは苦手なんて言っていたのは、誰ですか!

私は、心の中でリインの愚痴を言いながらも走っていった。

 

 

 

走っている最中、ボロボロになった狼が地面に転がっていた。

私は、思わず足を止めた。

きっとさっきの奇声は、この狼からだろう。傷の具合からしてテレサがやったと思われる。彼女の能力は地震やら衝撃やらを発生させるので、こんな傷になったような気がします。

でも妙ですね・・・・

この狼は、知性が高かったはずです。勝てない相手には、襲い掛かったりはしなかったはずです。

テレサに勝てないことなんて、分かったはずなのに。

 

まあそんなことよりもリインですね。

私は、再び走り出すのだった。

 

 

 

***

 

 

 

「やっと見つけましたよリイン」

 

私は、ようやくリインを見つけて声をかける。

しかし、返事がない。

 

「リイン、聞いているのですか?」

 

やはり返事がない。

いったい、どうしたというのだろうか?

・・・何かを、見ている?

どえやらリインは、何かを見ているようですね。

それもリインの顔は、あり得ないものでも見たのか呆然としています。

まったく、何がったと言うのでしょうか?

 

「んっ、眩しいですね」

 

私は、あまりの眩しさに目を閉じる。

どうやら、この周辺の木々が折れて日の光が差し込んでいるようですね。

さっきまで薄暗い所を走っていたから、余計に眩しく感じます。

 

この光が、リインを呆然とさせているのでしょうか?

いや、そんなことはないはずです。

ずっと目を閉じていても、何も解らないので私は、ゆっくりと目を開け光が差し込んでいる方を見た。

 

「なっ!」

 

私は思わず声をあげてしまった。

そういうことですか。

リインが呆然としていた理由が分かりました。

 

 

 

それは、日の光が差し込むその場所に、微笑みながら二人の赤子を抱えるテレサが居たからです。

 

彼女が、あんなに優しく微笑みを浮かべているのを見るのは、いつ以来だろう。

彼女は、元々感情を表にだすタイプではない。

なので、私も彼女の笑顔を見るのは、数える程しかないのだ。

そんことを考えていると・・・・

 

「オリヴィエ、リインどうしたの?」

 

どうやら私達に気がついたようだ。

 

「そ、その赤子はどうしたのですか?」

 

私もまだ動揺が隠しきれない。

 

「さっき拾った。」

 

「その子逹は、どうしますか?」

 

「捨て子みたいだし私が育てようと思う。」

 

「そうですか、分かりました。」

 

「反対、しないの?」

 

私は、迷うことなく言った。

 

「反対なんてしませんよ」

 

私は、

いや私達は、

テレサの優しさに救われたのだ。そんな彼女の提案に反対する理由などない。

 

「・・・・ありがとう」

 

テレサは、小さな声で恥ずかしそうに言った。

 

「では、帰りますか。」

 

「そうだね」

 

テレサは二人の赤子を抱え立ち上がった。

私は、今何となく思ったことを聞いてみた。

 

「この子逹は、テレサの眷属にするんですか?」

 

「解らない、それは私じゃなくてこの子逹が決めることだから。」

 

「そうですか。あっ、名前はどうしますか?」

 

「もう決まってる、この子逹にはこれしかない」

 

「ほう、それはどんな名前なんですか?」

 

私も気になる。

 

「イッセーとヴァーリ」

 

「それはいい名前ですね、ちなみに由来は?」

 

「ない、なんかこうビビッときてこの名前にした。」

 

勘ですか・・・・

でも、どちらも合っている気がするのでいいと思いまよ。

 

「リイン、来ないとおいてきますよ。」

 

未だに呆然としているリインに声をかける。

 

「まっ、まってくれ。」

 

「二人ともどんな子に育つかな。」

 

テレサは、静かに呟くのだった。

 

 




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リインのお願い

エラーがあったからか同じ話が投稿されてました。
申し訳ありません。

この作品のリインフォースは、《闇の書(夜天の書)》なしで蒐集した魔法を使うことができます。
後々本編で解説しますが、強さはなのは、フェイトと戦った時より強くなっています。


《人間界の島》

 

 

かつて冥界を追放されたテレサの家族は、地上(後の人間界)へと向かった。

地上に向かったのは、敵が少なかったということが大きいだろう。

もちろん、絶対安全という訳ではない。

地上では、妖怪などを筆頭に次々と新勢力が生まれていた。

何かあってからでは遅いので、テレサの家族は、島で生活することに決めたのだ。

島で生活することを決めた理由は、敵が進入しずらいからである。

テレサ逹が生活していた島は、様々な食物がとれたので生活するのには困らなかったのは、幸運だったといえる。

 

そしてテレサ逹は、現在でもこの島で生活している。

 

 

 

*********************************************

 

 

 

花に囲まれた土地に小さな墓があった。

その墓の前に一人の女性がいた。

 

「父様、母様、私達の家族が二人増えたよ。」

 

私は、新しい家族イッセーとヴァーリのことを父様と母様に報告しに来ていた。

 

「名前は、イッセーとヴァーリって言うんだ。今は、二人とも寝ているから連れてこれなかったんだけど、近いうちに連れてくるね。」

 

さて、父様と母様に報告も終わったので家に帰りますか。

私が家に帰ろうと家の方を向くと・・・

 

「リイン?」

 

私の前にはリインが立っていた。

 

「テ、テレサお願いの話なのだが・・・」

 

そういえば、遺品を持ってきたお礼に何でもお願いを聞いてあげるって言ったね。

 

さて、どんなお願いをしてくるのか、そんなにハードじゃないお願いがいいな。

 

そしてリインは、モジモジしながら言った。

 

「禁手化<バランスブレイク>した状態で私と戦ってくれないか?」

 

・・・その発想は無かったよ。

 

 

 

***

 

 

 

《数分前》

 

 

さて、テレサにはどんなお願いをしようか。

テレサは、『どんなお願いでもきいてあげる』といっていた。

 

私としては、また『あれ』を可愛がりたいのだが・・・・

だかテレサは、『あれ』になるのを嫌がっている。

だが、今なら・・・・

 

--------ん?『あれ』とは何かって?

 

その話をするには、まずこの世界にある神器<セイクリッド・ギア>というものについて説明しなければならないな。

神器とは、人間もしくは人間の血を引く者のみが持つことができるもので、使用者に不思議な力を与える道具のことだ。

神器は、必ず人間なら持っているという訳ではなく、むしろ持っている人間の方が少ないくらいなのだそうだ。

あと、自分が神器を持っていることに気づくことなく人生を終える者も多いらしいく神器を持っている人間の多くは、歴史に名を刻むものがほとんどだそうだ。

この世界の道具とはすごいものだな。

 

神器の力を高め、ある領域に至ったものが発揮する力の形がある。

禁手<バランス・ブレイカー>と呼ばれるもので、基本的には元の力のスケールアップだが、使い手の認識で化けることもあるそうだ。

本来の禁手とは異なる形の亜種もあるんだとか。

 

あと神器の中には、神すら滅ぼすことが可能な力を持つと言われる特殊な神器がある。

神滅具<ロンギヌス>といわれているそうだ。

 

そして、テレサは神滅具を持っている。

まあ私も、その辺は聞いた話なので細かい所は分からんがな。

 

 

話が長くなったな。

 

テレサの神滅具は、禁手化をした後しばらくの間、人格が代わるのだ。

いや、正しくは戻る・・・かな。

禁手化後のテレサは、幼かったころの人格になるのだ。

 

それがまた可愛くて可愛くて。

聞いてくださいよ、テレサったらあんな無邪気な笑顔でわたしに・・・・

 

--------はっ、私としたことが

あの事は、秘密にしてって言われてました。

しかもその時、テレサは泣きそうでしたしね。

 

可愛かったですよ。

 

まあとにかく、テレサは禁手後の人格の記憶もあるようで禁手化するのを嫌がっているのか、いつも断られます。

 

しかし今回、そうはいきませんよ!

 

テレサは一度決めた約束は絶対に守る娘です。

そしてテレサは、『どんなお願いでもきいてあげる』と言いました。

 

これでテレサを・・・・

 

リインは、ニヤリと笑みを浮かべるのだった。

 

 

 

*********************************************

 

 

 

《島の海辺》

 

 

 

私は後悔していた。

 

何でもじゃなくて、ある程度にしておけばよかった・・・・

 

母様の聖書がどこにあるのか判り、直ぐにでも回収しようと焦っていたのがいけなかったね。

まあ過ぎたことを悔やんでも仕方ないね。覚悟を決めなければ。

今私の目の前には、バリアジャケットを着て準備万端のリインがいる。

ちなみに、バリアジャケットとはリインの世界の防具のようなものらしい。

 

「じゃあリイン、最初に一撃当てた方が勝ちでいいですね?」

 

「ああそうだ、ちゃんと禁手化して戦ってくれ。」

 

リインは、今か今かと戦いが始まるのを待っているようだ。

 

「何で禁手化してなの?」

 

解っているが聞いてみる。

 

「そっ、それはあれだ。」

 

リインが焦りだす。

 

「あれとは?」

 

「え~と、そうだっ、もしもの時の為に禁手化するのになれていた方がいいと思ってな。」

 

そうだっ、

じゃないよ。完全に今思いついただけじゃないっ。

 

まあいいです。

 

「どのタイミングで始める?」

 

私に恥ずかしい思いをさせたいのはよく解ったよ。

 

「いつでもどうぞ。」

 

・・・・でもリイン

 

そう簡単にはいかないよ?

 

「禁手化<バランス・ブレイク>。」

 

リイン対テレサの戦いが始まった。

 

 

 

***

 

 

 

やっぱり強い。

私に神滅具を使わせる隙を与えてくれない。

 

まあ、私が使おうとしていないというのもあるけどね。

私の神滅具は、神滅具の中でもかなり特殊なものに分類されると思う。

 

私の神滅具の能力は、神器を創る能力。

 

ここだけ聞けば凄い能力だけど、色々と制限がある。この能力は、実在する神器、神滅具は創ることが出来ない。

自分で考えて創らないといけないのだ。

 

さらに残念なことに。

創るには、かなりハッキリとした具体的なイメージがないといけない。

創りたい神器があれば、似たような能力を持つ者に、何度も見せてもらったりしなければいけません。

 

昔私は、『テンセイシャ』という人に何度も能力を見せてもらって二つ創れるようになった。

 

一つは、衝撃波を発生させ地震などを引き起こす神器。たしか彼は『グラグラ』とか言っていた。

 

もう一つは、一定範囲内の物体を自在に改造することができる神器。これはたしか『オペオペ』って言っていた気する。

 

私の神滅具は、禁手化すると神器として使っていた能力を神滅具版にして使うことができる。

しかし、自分で創った神器を使いこなしていないと神滅具版として使えない。

ちなみに、神滅具版になると威力や規模が大幅に上がる。

 

今私が使えるのは、『オペオペ』の方だけ。『グラグラ』はまだ使いこなしていないので禁手化中は、使わない。

無理矢理使うことも出来るけど無事では済まされないので使いたくない。

 

この戦いは、相手に一撃いれた方が勝ち。私は禁手化して神器を使いすぎると、大変なことになるから、リインの隙をついて一撃入れるしかない。

 

今のところリインは『オペオペ』を知らない『グラグラ』を使いこなすため、ずっと『グラグラ』しか使っていなかったからね。

私は『オペオペ』を使うので、一撃入れるのはそう難しいことではない。

 

「ライトニングバインド」

 

リインが私を拘束しようと魔法を使ってくる。

私の周囲に鎖のようなものが出現し私は拘束された。だがそれもわざとだ。

 

リインが戦闘に関して熟練者であったとしても、相手を拘束したという事実が油断を生むのだ。

私の神器は一瞬の隙があれば十分だ。

 

「ROOM<ルーム>」

 

私を中心に特殊な空間が広がっていく。

それと同時に私は、体に巻かれた鎖を無理矢理引きちぎる。

 

「なっ。」

 

リインが驚いている。

そんな隙ないよ?

 

私は、隠し持っていたナイフを振る。

 

するとリインの腕が落ちた。

 

「え?」

 

「私の勝ちだね。」

 

腕が落ちて、未だに困惑しているリインに私は、私の勝利を伝えたのだった。

 

 

 

***

 

 

 

《テレサ達の家》

 

家にある椅子に腰掛けながらリインは言った。

 

「まったく酷いです、あんな神器があるなんて知りませんでしたよ。」

 

どうやらリインは、機嫌が良くないようだ。

 

「しかも禁手化したのに人格が代わらないし・・・・」

 

「そんなにあれがいいの?」

 

でも良かった、たいして神器を使わなかったから人格を保てた。

 

「い、いや今のテレサもいいんだがな、なんかこうギャップがあっていいんだ。」

 

なぜか、リインは焦りながら言う。

 

「そう・・・。」

 

さて、もうイッセーとヴァーリも寝てますし私も寝ますか。

それにしても二人ともよく寝るねえ。

 

「あの子達も、もう寝てるから私も寝るね。」

 

「・・・・ああ、そうだな。」

 

リインは力なく言う。

まったく、どれだけ私をあれにしたかったの?

私は、イッセーとヴァーリのいる寝室に向かう。

 

やれやれ、

人格が代わらなくて本当に良かっーーーーー

 

 

 

「ねーねーりいん」

 

代わってるし・・・・・

 

 

 

ま、まずいリインがこっちに来た。

 

しかもニヤニヤしてる。

 

「どうしたんですかテレサ?」

 

お願いだからヘンなことしないで。

私は心の底から願った。

しかし、その願いが叶うことはなかった。

 

「てれさねぇ、ねるまえにおやすみのちゅーをしてもらえないとねれないんだ」

 

・・・・・終わった。

 

「では私は、どうしたらいいんですか?」

 

戻れ!私の人格!

 

「ちゅーして!」

 

「しょうがないですねぇ。」

 

何がしょうがないですかっ!

うう、戻らない。

私の意識がしっかりしてるから直ぐにでも戻れるはずなのに。

 

リインの唇が近づいてくる・・・・・

 

 

 

--------私の唇に。

 

なんでそこなんですか!

普通、頬とかじゃないんですか?

 

まずい、私の唇が奪われる!

 

 

オギャー、オギャー

 

リインの唇は、私の唇に届くことは無かった。

私が手で防いだからだ。

どうやら、イッセーとヴァーリの目が覚めて泣き出し、その声で呼び戻されたのか私の人格がもどったようですね。

 

「テレサちゃーんおやすみのちゅーをして上げますよ」

 

どうやらリインは、私の人格が戻ったことに気づいていないみたい。

手で押さえているのに・・・・・

 

「なに寝惚けたことを言っているの、リイン?」

 

「えっ。」

 

私はリインを引き剥がし、泣いているイッセーとヴァーリがいる寝室へ向かう。

 

「二人を寝かしつけるまで、リインはそこで正座していて下さい。後でたっぷりとお話しがあります。」

 

「そんなぁ。」

 

「嫌ならいいですよ、これからはリインフォースさんって呼びますけどね。」

 

「分かりました正座して待ってますぅ。」

 

リインは泣きべそをかいている。

 

 

その後しばらく、リインの口から禁手の話が出なかったのは言うまでもない。

 

 

 

*********************************************

 

 

 

《???》

 

 

「おかしいのお、ちゃんと消したはずだったんじゃが・・・・」

 

光に包まれた部屋の中で、白髪の老人は呟いた。

 

「仕方ないのお、この儂が直々に行ってやるか。」

 

「神様、次の転生者がお待ちです。」

 

白い衣を纏った男が老人に言う。

 

「ああ、分かった今行く」

 

老人は、男の方に歩きだす。

 

 

 

「力を溜めたら殺しに行くとするかのう。」

 

 

老人は、老人とは思えないような凶悪な笑みを浮かばせながら呟くのだった。

 

 

 

 

 




同じ話が何本も上がっていました、すいませんでした。

次回は神と激突します。

はやく原作に入りたいですね。


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神の襲来

原作の過去をゆっくりやっていると、何の小説か分からなくなってしまうので、少し時間を跳ばしました。

原作に入るのは多くて後3話かなぁ。

未だに神の名前が決まっていない・・・・・
どうしよう・・・・・


《転生の間》

 

 

神の持つ宮殿には、多くの部屋がある。

数ある部屋の中でも、多く使われている部屋、通称『転生の間』

この部屋では、死んだ人間の記憶を消し、もう一度現世に蘇らせることができる。

さらに、蘇らせるのは現世だけという訳ではなく、神の創った世界に蘇らせることも出来る。

 

本来、この部屋は、神が世界の均衡を保つために在るのだが、どうやらこの神は違うようだ。

 

 

 

***

 

 

 

白い光に包まれた部屋に白髪の老人と、ごく一般的な姿をした男がいた。

 

「本当にすまんかった。」

 

もう何回目になるだろう。

千回を越えた辺りから数えていない。

だがこれで最後だ。

 

「いいんですよ、気にしないで下さい神様(転生特典なににしようかな)。」

 

「許してくれるのか?」

 

儂は、まるでとても後悔しているかのような演技をしながら言う。

 

「ミスは誰にでもあることですから(とりあえずここは、神に好印象をあたえとかないとなぁ)」

 

「ソウカ,オマエサンハイイヤツダナア」

 

おっと、心の声が聴こえるもんだからついつい笑いそうになってしまうわい。

なぁにがミスは誰にでもあることだよ。

心にもないこと言いやがって。

さて、恒例のあれをやるとするかのう。

 

「よし、儂はお前さんのことが気に入ったから転生させてやる。」

 

「転生?生き返れるってことですか?(やっぱり一方通行<アクセラレータ>とかのほうがいいかな)」

 

まったく、もう特典のことを考えているわい。

 

「そうじゃ、お前さんが元々いた世界に転生するのは無理じゃが、漫画やアニメの世界なら転生できるぞい」

 

「やったー(特典はねえのかじじい)」

 

聴こえているぞ。

 

「そうじゃ、せっかくだから特典をつけてやろう。漫画やアニメの技や能力を一つだけ使えるようにしてやろう。」

 

「う~ん、じゃあ一方通行<アクセラレータ>を使えるようにしてくれ(一つだけかよ)」

 

今の儂は特典をまともにつけられんから、何個付けても無駄だしな。

 

「分かった、使えるようにしてやろう。」

 

そして儂は、男を転生させた。

 

 

転生特典を付けないで・・・・

 

 

他の神共を欺くのに9年もかかってしまったわい。

転生者共に付ける特典を無しにして、儂の力をじわじわ溜めるのに、こんなにも時間がかかるとは予想外じゃ。

神が世界に入るのは、かなりの力を持って行かないと意味がないからのう。

 

『前に世界に入った時』は、ろくな力を持たないで行ったから人間を一人しか殺せなかったわい。

 

しかも、そのせいで他の神から監視されるようになってしまったしのう。

元々の世界の人間を殺すな、なんて言われてしまった。

別に原作に関わらないやつなんだからいいだろ。

 

他の神は気づいてないだろうな。

これから儂が原作のキャラクターを殺そうとしているなんて・・・

 

何が原作を乱すなだ、自分達だって転生者を送り込んでいるくせに。

 

色んな神がこの世界の設定を弄るから、別の世界の住人がいたり、儂が消したはずの、キャラクターが原作の過去に送られているじゃないか。

 

まあ今から消したはずの原作のキャラクター達を殺しに行いくからいいんだがのう。

 

 

「原作は壊してこそ面白いんじゃ」

 

 

そう言うと、老人の姿は消えていた。

 

 

 

*********************************************

 

 

 

《テレサ達の島》

 

 

テレサ達が生活している島は、かなり大きい。普通の人間の大人が、一日中走り続けても島を一周することができないくらいである。

 

そんな広い島の岩場にある大きな岩の前に、一人の女性が立っていた。

そしてその女性の後ろに二人の子どもがいる。

二人共、興味津々といった感じで女性を見ている。

 

女性は、碧銀の髪と左目が青、右目が紺のオッドアイという特徴的な容姿をしている。白い胴着を着て、いかにも修行中といった感じだ。

 

女性は、岩の前でゆっくりと構え・・・・

 

「覇王」

 

--------握った拳を岩に向かって放った。

 

「断空拳」

 

拳が岩に当たると同時に、岩が粉々に砕け散った。

 

女性は、ゆっくりと息を吹きながら後ろを振り向くと、

 

「すっげー、あんなに大きかった岩がバラバラになったぜ!」

 

「やっぱり凄いな、イングヴァルトその技僕にも教えてよ!」

 

後ろにいた二人から、賛辞を受けた。

 

「また来ていたのか、イッセー、ヴァーリ。」

 

女性は、やれやれといった様子で二人の話を聞き始めるのだった。

 

 

 

***

 

 

 

「まったく、イッセーとヴァーリはどこに行ったんだろう?」

 

私は、さっき作ったばかりのサンドイッチを大なバスケットに入れてリイン、オリヴィエと一緒にイッセーとヴァーリを探していた。

 

「そろそろお昼頃なので、お腹が減るころですね。」

 

「テレサ、二人に何処に行くか聞いていなかったのか?」

 

「二人とも行ってくるって言って、一瞬で外に遊びに行っちゃったんだよ。」

 

ちゃんと外に遊びに行く時は、何処に行くか言ってからにしなさいって言ってるのに・・・・

 

「まだ二人とも幼い子供だから仕方ないですね。」

 

オリヴィエが苦笑しながら言う。

 

「そうかもしれないけどねぇ、ちゃんと二人には言ったことを――――」

 

――――突然、私達の近くの岩場の大きな岩が粉々に砕け散った。

 

「・・・・オリヴィエ、イングヴァルトって何してたっけ?」

 

「確か鍛練をしていたかと思いますが・・・・」

 

私達は、岩が粉々に砕けた所に向かうのだった。

 

 

 

***

 

 

 

「ええいっ、放せ」

 

「いーじゃん、断空拳教えてよ!」

 

「教えたって減るもんじゃないでしょっ!」

 

いた、もしかしたらと思って来たけど正解だったみたい。

二人ともイングヴァルトにくっついてる。

 

「イッセー、ヴァーリお昼持ってきたよ。皆で一緒に食べよう。」

 

二人ともイングヴァルトを放し、走ってこっちに来る。

 

「うん、分かった!」

 

「僕もお腹ペコペコだよ。」

 

「イングヴァルトもどう?」

 

「頂こう。」

 

イングヴァルトは、歩きながらこっちに来るのだった。

 

 

 

***

 

 

 

「このサンドイッチは、俺のだっ。」

 

「それは僕のに決まってるだろう。」

 

イッセーとヴァーリはサンドイッチを奪い合っている。

 

「はいはい、二人ともケンカしない。どっちの分も作ってきたから。」

 

ちゃんと作ってきて良かった。

 

「これは私のだろう?」

 

「なにを平然と人のサンドイッチを取っているのですか。」

 

「ふんっ、取られる方が悪い。」

 

「何てこと言っているんですか!」

 

こっちも、もめている。

まったく二人共大人なんだから、そういうことはしないでほしいな。

 

「オリヴィエとイングヴァルト、ケンカするんならサンドイッチ没収ですよ?」

 

そう言うと二人は焦りながら、

 

「ケ、ケンカなんかしてないぞ。なあオリヴィエ?」

 

「そ、そうですねイングヴァルト。」

 

「そう、ならよかった。」

 

皆で、賑やかにサンドイッチを食べる。

だが私は、一人いないことに気づく。

 

「あれ、リインは?」

 

 

 

*********************************************

 

 

 

《テレサ達の島の外》

 

 

テレサ達の生活している島には、常に結界が張られている。島の結界を担当しているのはリインだ。

本来ずっと結界を張っているのはさすがのリインでも無理なのだが、悪魔の駒による効果で結界をずっと維持できるようになったのだ。

普通の悪魔の駒だと、こうはならないのだが、テレサは《特殊な悪魔の駒》を持っており、その効果によるものかと思われる。

 

普段はこの結界の中から出ることはないのだが。

 

今、リインは結界の外にいた。

 

島での生活は充実しているので、基本的には誰も外に出ることをしようとしない。

しかも、かなり強力な結界なので出る時はリインに言って、結界の一部を解除してもらう必要がある。

手間がかかるので、皆外に出ることは少ないのだ。

 

リインは、あることがあると結界の外に出る。

 

それは、正体不明の存在が島の結界に近づいた時だ。

 

 

そしてリインの前には、槍と杖を持ち黒い衣を着た白髪の老人がいた。

 

「お前は何者だ?」

 

リインは老人に問いかけた。

 

 

 

*********************************************

 

 

 

《テレサ達の島の中》

 

 

 

サンドイッチを食べ終わり、テレサはイッセー、ヴァーリと一緒に遊んでいた。

 

「テレサーこっち来てよ!」

 

「今行くからちょっと待ってて。」

 

この子達の相手も、大きくなってきてからは大変だ。

昔は、よく寝る子だったから今の時間はお昼寝してたのに。

テレサは、二人の成長を嬉しく思ったり寂しく思ったりしていた。

 

この子達は、私の悪魔の駒を使っていない。

 

いつか二人は・・・・・

 

そんなこと考えちゃダメだね。

 

あの子達が人生を楽しんでくれたのならそれでいいじゃない。

 

私は沈みかけてた気持ちを切り替えるのだった。

 

 

 

 

***

 

 

イッセー、ヴァーリと遊び終わってしばらくたった。

私は、二人と一緒に家に向かっていた。

 

結局リインは、私達がお昼のサンドイッチを食べないで居なくなってしまった。

 

リインからは念話が届くけど、私は念話が使えないのでリインに連絡を取れない。

 

ちゃんと使い方教わらないとね。

 

ちなみに念話とは、リイン達の世界で使われていた、魔法を使った会話術。

話すことなく意思を伝える事ができるのだ。

 

リイン『達』なのはオリヴィエ、イングヴァルトも同じ世界だからだ。

まあ時代が違うらしいけどね・・・・

 

 

それにしてもリイン、サンドイッチ楽しみにしてたのになぁ。

 

そんなことを考えていると・・・・

 

『テレサ・・・・皆を連れて逃げろ!』

 

リインから念話が届いた。

 

リインの様子から、ただ事ではないようだ。

 

それに・・・・・・逃げろ?

 

『あいつは私達の誰かを殺そうとしている!』

 

私達の誰かを殺す?

 

一体どうして・・・・・・

 

ーーーーーー突如、島に張られた結界が破られる。

 

「結界が破られるなんて・・・・」

 

私は思わず息をのんだ。

 

リインが張っている結界は、かなりの強度があり、そう簡単に破れるものではない。

結界を張っているリインですら破れる自信がないと言っていたほどだ。

 

しかし今、島の結界が破られた。

 

「イッセー、ヴァーリ!」

 

私は思わず二人を探す。

 

「どうしたのテレサ、そんなに慌てて?」

 

「何かあったの?」

 

私の前を歩いていたイッセーとヴァーリが、不思議そうに振り向きながら私に問いかける。

 

良かった、私の目の届く所にいて・・・・

 

「二人共こっちにーーーーーー」

 

「やっと見つけたわい。」

 

イッセーとヴァーリに私の所に来るように言おうとすると、

二人の後ろに黒い衣を着て右手に槍を左手に杖を持った白髪の老人が現れた。

 

誰?

 

いや、それよりも・・・・・

 

右手に持った槍だ。

 

これを見て私の頭の中では、リインが言っていた言葉が思い出される。

 

[あいつは私達の誰かを殺そうとしている!]

 

まさかっ、イッセーとヴァーリのこと!?

 

「ROOM<ルーム>」

 

私は二人を老人から引き離すため神器を使おうとするが・・・・・

 

「使えないっ!?」

 

何故か神器が使えないのだ。

 

「無駄だ小娘、儂がこの杖を持っている限り神器は使えん。」

 

そんなっ

このままだと二人が・・・・

 

老人は槍を二人に向けた。

 

「まったく、この儂にこんな手間を掛けさせよって、じゃがこれで終わりだ。」

 

老人の持つ槍が二人に降り下ろされる。

 

 

 

ーーーーーーーーーしかし、降り下ろされた槍がイッセーとヴァーリに刺さることは無かった。

 

「翼があって良かった。走ってだと間に合わなかった・・・・・・」

 

私が槍を身体で受け止めたからだ。

 

「翼・・・・この世界の人外か、邪魔をするな。」

 

老人は私に刺さった槍を引き抜きながら言った。

 

槍を身体で受け止めたため、私のお腹には穴が開いている。

 

こんな物が二人に刺さっていたかと思うとゾッとする。

 

「二人・・・共・・・・大丈・・夫?」

 

「テレサっ!?」

 

「僕達は大丈夫だけど、テレサがっ!?」

 

「私の・・・・心配・・は・・・いいから・・・二人共逃げてっ。」

 

「そんなこと出来ないよっ!」

 

「僕達もここにいるよ!」

 

 

二人共わがままばっかり言って・・・・

 

でも、私はそんな二人のことが・・・・大好きだよ。

 

 

もう覚悟を決めるしかないか・・・・

 

私は意識を手放した。

 

 

***

 

 

「テレサっ、テレサぁしっかりしてよ!」

 

「何でテレサを刺した!」

 

老人は何にも気にしていないという様に、

 

「五月蝿い小僧共だのう。」

 

再びイッセーとヴァーリの方に近づく。

 

突然、老人は近づくのを止める。

 

止めさせたのは、イッセーでもヴァーリでもなく、

 

 

ーーーーーーミシリ

 

「ぐあぁっ、何故だ、何故動ける!?」

 

テレサだった。

 

老人は杖を落とす。

テレサが左腕を握り潰したからだ。

 

「お前は・・・・戦えるはずない・・・・儂の槍でお前のーーーーーーー」

 

ーーーーーー老人の前の大気にヒビが入る。

 

「ぐぅっ。」

 

老人は、テレサの神器で吹き飛ばされる。

神器を封じていたと思われる杖が、老人の手から離れたことによって、神器を使えるようになったからだろう。

 

「テレサっ大丈夫!?」

 

「すぐに手当てをしてもらわないとっ。」

 

イッセーとヴァーリがテレサに声をかける。

しかし、テレサは答えない。

 

テレサは虚ろな目で、吹き飛ばされた老人を見ている。

 

刺された腹部もそうだが、

ボタボタとテレサの腕から血が吹き出る。

 

腕にも大きな傷が出来ていた。

 

どうやら、老人が吹き飛ばされる直前に槍で裂たようだ。

 

「何てやつじゃ、《この世界に合わせている》とはいえ、この儂に傷をおわせるとは・・・・・」

 

老人は、吹き飛ばされながらも立ち上がる。

 

「じゃが、今神器は破壊された、もうお前にーーーーーーー」

 

ーーーーーーーバキバキッ

 

テレサは一瞬で老人へと近づき再び攻撃する。

 

「お前、神器を複数持っていたのかぁ!?」

 

凄まじい轟音と共に再び老人は吹き飛ばされる。

 

今度は島の外の海までだ。

 

そして、息をつく隙さえ与えることなく、テレサは次々と神器の攻撃を当て続けた、

 

老人が動けなくなるまで・・・・・

 

 

 

*********************************************

 

 

 

 

《???》

 

 

「大変ですっ、原作『ハイスクールD×D』の世界の地上が滅びかかっています。」

 

白い衣を着た女性が赤い衣を着た女性に言う。

赤い衣を着た女性の方が地位が高いように見える。

 

「なんですって、原因は何ですか!?」

 

「おそらく、《あの神》かと・・・・」

 

「またですか・・・・」

 

赤い衣を着た女性は苦い顔をする。

 

「鏡を。」

 

「こちらに」

 

そう言うと白い衣を着た女性が、何処からか大きな鏡を出す。

 

「これはっ!?」

 

赤い衣を着た女性は鏡を覗くと、其処には、

子どもに槍を降り下ろす黒い衣を着た白髪の老人に黒髪の少女が子どもの前に出て、槍で貫かれている光景だった。

 

そして、槍で貫かれた少女は、老人の腕を握り潰して杖を落とさせた。

 

「あの杖はっ!」

 

赤い衣を着た女性は杖を見ると驚いた。

 

「そういう事ですか、あの杖で私達の監視の目を掻い潜ったのですね。」

 

「どうしますか?」

 

白い衣を着た女性が問いかける。

 

「とりあえず、この少女と仲間をここへ連れてきて下さい。」

 

「かしこまりました。」

 

白い衣を着た女性が居なくなると。

赤い衣を着た女性は、

 

「まさか《世界に合わせて》弱くなっているとはいえ、神を倒すとは・・・・」

 

驚きを隠せない、といった様に言い。

再び鏡を覗くのだった。

 

鏡の中では、血だらけの少女が倒れている光景が映っていた。

 

 

 




道具の解説

黒い衣の神の杖

自身の決めた事を世界の法則にする事ができる。
使うには、かなりの力を貯めてからでないと効果を発揮しない。法則の内容によって消費する力の大きさが違う。
手から離すと効果が切れる。

この話では、『神器の無効化』『この世界の住人以外は自身に干渉する事が出来ない』という法則を創った。


黒い衣の神の槍

この槍で傷を付けられると傷を付けられた者の《何か》がランダムに破壊される。破壊した本人は何を破壊したか分かる。

この話では槍に傷を付けられたテレサは神器の一つと●●を破壊された。


赤い衣の神の鏡

この鏡に起こった出来事を伝えると、どうして起こったのかの、過程が映し出される。

この話では、何故地上が滅びかかっているのか調べるために使った。


突っ込み所も多いでしょうが、次の話で説明します。



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テレサの記憶

難産でした。


《テレサ達の家》

 

 

この地に来てからもう十年か・・・・

私はカレンダーを眺め、今まであった色々なことを思い出していた。

 

「リイン、御茶です。」

 

オリヴィエから、茶をもらい一口飲む。

 

「まあまあだな・・・・」

 

「お世辞でも上手いと言って欲しかったですよ・・・・」

 

「そろそろかな、二人が来るのは。」

 

私は茶をもう一口飲みながら呟く。

 

「ちょっと、無視しないで下さいよ!」

 

私はもう一度カレンダーを見る。

 

《あの日》から何年経ったのだろう・・・

 

 

 

*********************************************

 

 

 

千五百年前

 

《神の宮殿》

 

 

「此所は・・・・・何処だ?」

 

気が付くと私は、見たことのない部屋にいた。

頭が痛くて何でこんな場所に居るのか思い出せない・・・・・

 

「やっと目覚めましたかリイン。」

 

「オリヴィエ・・・・それに皆も。」

 

私が周囲を見渡すと、皆がいた。

オリヴィエ以外眠っているようだ。

 

あれ・・・・テレサがいない?

 

「テレサはっ!?」

 

「ーーーーーーー彼女ならこの部屋に居ません。」

 

いきなり、赤い衣を着た女が現れた。

 

誰だ?

 

私はこの女の事を見たことがない。

 

「知らなくて当然です、私達は合ったことすら無いのですから。」

 

「テレサを何処にやった!」

 

「御安心下さい、彼女に危害などは加えていません。我々は治療しているだけです。」

 

治療だと・・・・

 

一体なぜだ?

 

「神と戦い怪我をしたからです。」

 

「神・・・だと?」

 

まだ頭が痛い。

 

それに、違和感がある。

 

何か大事なことを忘れている様な・・・

 

「これを御覧下さい。」

 

私が悩んでいると女は、大きな鏡を出した。

そして、その鏡の中には黒い衣を着た老人が映っていた。

 

黒い衣を着た老人・・・・・そうだっ。

 

確かあいつは、私達の島に居る奴で殺さなければならない奴が居ると言っていた!

 

私はあいつの杖で動けなくなって・・・・

 

あいつが殺さなければならないと言っていたのは・・・・まさかテレサかっ!?

 

「いいえ、違います。」

 

そう言うと女は、まだ目を覚まさしていないイッセーとヴァーリの方を向く。

 

「その子ども達です。」

 

「そんなっ!?」

 

どうしてイッセーとヴァーリが・・・・

 

「残念ながら私にも分かりません。」

 

「一体何故・・・・」

 

 

「神様、彼女の治療が終わりました。」

 

声のする方を見ると、今度は白い衣を着た女が現れた。

 

「どこまで治療出来ましたか?」

 

「身体は無事治療出来ましたが、《あれ》は最低限しか・・・・」

 

治療・・・テレサの事か!

 

「おい、テレサはどうなんだ!?」

 

そう白い衣を着た女に聞くと、女は申し訳なさそうに、

 

「身体は無事ですが、彼女は・・・・」

 

「ーーーーーーそこからは私が説明します。」

 

白い衣を着た女の言葉を遮り、赤い衣を着た女が話し出した。

 

「幾つもの世界があるのは、御存知ですよね。」

 

「ああ。」

 

私も別の世界から来たしな。

 

「幾つもの世界を管理する神という存在がいます。」

 

「それで?」

 

女は続ける。

 

「今回、我々により監視されていた神が、我々の監視を掻い潜り、あなた達の居る世界に侵入し、今回の事件を引き起こしました。」

 

「事前に止められなかったのか!」

 

「申し訳ございません。あの神の持っていた杖、そして自身の力を抑えた状態で、世界の中に侵入したので我々も発見出来なかったのです。」

 

女はまた、鏡を見せる。

そこには、見覚えのある槍が映っていた。

 

「彼女は、子どもの盾になってあの神の持っていた槍で貫かれました。」

 

あの槍で貫かれたのか!?

 

「槍で貫かれたことは、そんなに問題では有りません。」

 

槍で貫かれたことが問題ではないだと・・・・

 

「なら何が問題なんだ!」

 

「あの槍には、特殊な能力が有ります。傷をあたえた者の《何か》をランダムに破壊するという能力です。」

 

何か・・・・

 

「一体何を破壊されたというのだーーーーーー」

 

「ーーーーーー落ち着けリイン」

 

そう言ったのは、イングヴァルトだ。

 

目覚めたらしい。

 

「でも、落ち着いてだなんて・・・・」

 

「いいか、こういう時こそ落ち着いて話を聞け。大事なことを聞き逃すぞ。」

 

「・・・・そうだな。」

 

私達の会話が終わると、女は決心したかの様に表情を変え、言った。

 

 

「彼女は記憶を破壊されています。」

 

 

その瞬間、私の思考は停止した。

 

 

 

*********************************************

 

 

 

《テレサ達の家》

 

 

あの女に言われた、テレサの記憶を戻す方法、それはある人物なら出来ると言われた。

 

未来を見る能力で、その人物を見つけたんだそうだ。

 

その人物は、《リアス・グレモリー》という悪魔が駒王学園に入学して1年後に同じ学園に入学してくるらしい。

 

私達は、その人物に頼んでテレサの記憶を治してもらう。

その為に《リアス・グレモリー》が産まれたことを知ってから、駒王学園の近くのアパートを買い取ったのだ。(土地ごと)

 

アパートにしたのには理由がある。

駒王学園に行く、

 

イッセー

 

ヴァーリ

 

オリヴィエ

 

イングヴァルト

 

達が全員で同じ家に住んでいるとなると、

この地域を管理しているグレモリーやシトリーに怪しまれるからな。

 

アパートの内部の壁は、通れるように開けてあるので、全員の出入り口が違うだけであとは家みたいなものだ。

 

 

ん?

 

ふと窓の外を見ると雪が降っていた。

 

テレサと会ったのもこんな雪の降る日だったな。

 

私に何かある時は、大抵雪が降っている気がする。

 

私は本来消滅していたはずだった。

 

消滅するはずだった私を助けてくれたのは・・・・テレサだった。

 

 

 

*********************************************

 

 

 

千五百五十年前

 

 

 

《テレサの家》

 

気が付くと、私はベッドで寝ていた。

 

私は消滅したはず・・・・・

 

そのはずなのに、何故か身体があり意識もしっかりしている。

 

一体どうして・・・・・

 

誰かが歩いてくる足音が聞こえる。

 

そして、私の居る部屋のドアがゆっくりと開けられ、黒髪の少女が入ってきた。

 

「起きたんだね・・・・」

 

「此処は?」

 

「・・・・私の家。」

 

この少女が此処につれてきたのだろうか?

 

「身体はどう?」

 

そう言われると、何かおかしい気がする。

 

・・・・いつもと違う?

 

「違和感がある気がする。」

 

私がそう言うと、

 

「ごめんなさいっ!」

 

突然、彼女は謝りだした。

 

それも泣きながら。

 

 

 

***

 

 

 

 

「もういいって。」

 

「でも、でも私はあなたを!」

 

あれからしばらくの間、彼女は泣きながら私に謝り続けた。

 

どうやら私は悪魔というものになってしまったそうだ。

 

元々消滅していたはずの身体だったのだから私は気にしていないと言っているんだが、彼女はそうではないようだ。

 

「私はお前に救われた。」

 

「でも・・・・・」

 

彼女が口ごもったので、私は話題を変えてこの状況をどうにかすることにした。

 

「名前は何て言うんだ?」

 

「・・・テレサ。」

 

彼女は泣いていたが答えてくれた。

 

「テレサか、いい名前だな私の名前はリインフォースだ」

 

 

 

・・・・・・・・話が続かない。

 

何か話題を見つけなければ!

 

「お腹がへったんだが・・・」

 

「・・・・分かった」

 

彼女は泣きながら答え部屋を出ていった。

 

・・・しまった、これじゃあ悪者みたいだ。

 

 

 

***

 

 

 

今私はテレサの作ったサンドイッチを食べていた。

 

ようやくテレサは、泣き止んでくれた。

 

「ごめんなさい、これしか作れなくて。」

 

「いや、美味しいと思うぞ。」

 

「・・・」

 

急にテレサは無言になる。

何かマズイことでも言ってしまったか?

 

「・・・外は雪が降っているから、此処に泊まっていって。」

 

「しかし・・・・」

 

「・・・やっぱり嫌だよね、私と一緒じゃあ。」

 

今にも泣き出しそうなテレサの顔を見ると嫌だとはいえなくなってしまった。

 

結局私は、泣き出しそうなテレサをなぐさめ、テレサの家に泊まることになった。

 

 

 

***

 

 

 

私は風呂に入った後ベッドで横になっていた。

 

あの後、私はテレサに私の身体のことを教えてもらった。

 

どうやら私は《悪魔の駒》という道具で悪魔になってしまったようだ。

 

テレサは、最近両親を亡くして孤独になってしまい、たった一人の孤独が辛くて、外で偶然見つけた、消滅しそうだった私を自分の眷属にした。

 

テレサは、私を悪魔にしたことをとても後悔しているようで、また何度も謝ってきた。

 

元々消滅していたはずの身体だった私を救ってくれたのに何故謝るんだ・・・・

 

 

ーーーーーーーー何だこの声は?

 

私は声がする方に歩いて行った。

 

 

 

*********************************************

 

 

現在

 

 

《テレサ達の家》

 

 

あの時テレサは部屋で泣いていた。

 

亡くなった自分の両親のことに、

 

私を悪魔にしたことに、

 

孤独な自分に、

 

私は悪魔になったことを恨んはいない。

 

悪魔になったことで、皆に会えた。

 

悲しんでいたテレサを笑顔にすることができた。

 

私にとって、テレサとの思い出は大切なものだ。

 

しかし今、テレサは記憶を無くしてしまった。

 

テレサにとって悲しい過去は、忘れた方がいいものなのかもしれない。

 

でも私は、

 

いや違うな。

 

《私達は》テレサに思い出してほしい。

 

私達のことを、

 

大切な思い出を、

 

笑顔だったあの頃を、

 

 

記憶が戻ったら、悲しい記憶を思い出させた私達はテレサに嫌われてしまうかもしれない。

 

それでも私達は思い出してほしい。

 

私達の勝手かもしれない。

 

それでも・・・・

 

 

「ーーーーーーリイン、皆揃いましたよ。」

 

「今行く。」

 

オリヴィエに呼ばれ、私は皆のいる部屋に向かう。

 

テレサ、私達は破壊されたテレサの記憶を治す。

 

だから、後少しだけ待ってて。

 

 

 

*********************************************

 

 

 

《神の宮殿》

 

 

 

「流石に疲れましたね、人類の歴史が進む速度を違和感が無いように速くするのは。」

 

赤い衣を着た女性が呟いた。

 

「宜しかったのですか?」

 

白い衣を着た女性が、赤い衣を着た女性に問いかける。

 

「何がですか?」

 

「あの時彼女達に、神が子ども達を襲った理由を説明しなかったことです。」

 

「・・・・」

 

「他にも、どうして別の世界の住人がこの世界にいるのかや、転生者についてなども説明しませんでしたよね。」

 

「・・・決まりですから仕方ありません。」

 

赤い衣を着た女性は答えた。

 

「・・・そうですか。」

 

白い衣を着た女性は、それ以上聞くことはなかった。

 

 

 




次回

原作に入るか、イッセーとヴァーリの過去かどっちがいいかなぁ


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イッセーとヴァーリの弟子入り

テレサについては原作に入ったら説明します。


《駒王学園》

 

 

 

駒王学園、

この地域でもそこそこ学力の高い学校で、元々は女子高だったのだが今年から男女共学になった学校である。

 

限られた一部の者しか知らないがこの学校は、悪魔が管理している。

 

その悪魔というのがグレモリーとシトリーだ。

どちらの家も魔王をしている者がいる名門らしい。

 

現在この二つの悪魔は仲が悪いという訳でもないので、何か問題があると連繋して問題を解決することもあるようだ。

 

・・・・俺達の目的の為にも、下手に目立つ訳にはいかないな。

 

そんな事を考えながら、俺は掲示板に書いてあるクラス分けの結果を見ていた。

 

その周りには、金髪やら銀髪やらオッドアイやらがたくさんいる。

 

日本は黒髪が主流だった気がするんだけど・・・・

 

それに去年まで女子高だったからほとんどが女子かと思っていたのに男子が多い。

 

その男子達は顔立ちが整っている者が多い気がする。

 

まあどうでもいいか。

 

どれどれ、俺の名前はどこに書いてあるのかな?

 

俺は自分の名前を探す。

 

あった・・・・2組か。

 

兄ちゃんは・・・・

 

 

「ーーーーーー俺は4組だ。」

 

「うわっ、全然気づかなかった。」

 

「気配を感じなかったのか?」

 

多分掲示板の周りにいる、どの銀髪の男子よりも目立つ、俺の兄が近くにいた。

 

「兄ちゃんが気配を隠すのが上手すぎるんだよ。」

 

「僕よりも気配を隠すのが上手やつなんていくらでもいるぞ?」

 

兄ちゃんがそんな事を言っているが、絶対にないと思う。

 

兄ちゃんよりも気配を隠すのが上手のなんて、オリヴィエとイングヴァルトとリインぐらいしかいないと思う。

 

あと、師匠か。

 

「気配に気づかなくてやられました、なんて言ったら師匠に笑われるぞ?」

 

「確かにそうだな。」

 

皆や師匠がいなかったら俺達は、こんなにも強くなれなかっただろうな。

 

 

 

*********************************************

 

 

 

千五百年前

 

 

 

《地上の家》

 

 

 

「どうしてだよ、どうしてテレサがっ!」

 

「僕達のせいで、テレサは・・・・」

 

イッセーとヴァーリは後悔していた。

 

自分達に力が無かったことに、

 

自分達のせいでテレサが怪我をしたことに、

 

自分達のせいで、テレサの記憶が無くなったことに、

 

そんな二人の前には眠り続ける《幼くなった》テレサがいた。

 

「テレサ・・・」

 

 

「ーーーーーーーーお前達が後悔してテレサが喜ぶと思うか?」

 

「イングヴァルト・・・」

 

そんな二人の後ろには、イングヴァルトがいた。

 

「もう二度とテレサを傷つけない為にも、強くなろうとは考えないのか?」

 

イッセーとヴァーリは俯いたままだ。

 

「それとも自分達は、守られても仕方ないと思っているのか?」

 

「「そんな事はないっ!」」

 

イッセーとヴァーリは、顔を上げて答えた。

 

「そうか・・・なら強くなれ。」

 

そう言うとイングヴァルトは、寝ているテレサの頭を撫で、

 

「私とオリヴィエは、探し物があるからしばらくいないぞ。」

 

部屋から出ていった。

 

 

イングヴァルトが部屋から出ていく時、何かを落としていた。

 

気になったイッセーとヴァーリはその何かがどんなものか確かめるため、何かが落ちた所にいく。

 

「これは・・・地図?」

 

そう、イングヴァルトが落としたのは地図だった。

そしてその地図には『伝説の仙人の山』と書かれていた。

 

 

 

 

***

 

 

 

《仙人の山の階段》

 

 

 

「兄ちゃん、後どれくらいかな?」

 

「後少しだと思うぞイッセー。」

 

今俺と兄ちゃんは、山にある階段に落ちた木葉を箒で掃いていた。

 

何故こんな事をしているのかというと。

 

あの時、イングヴァルトが落としていった地図には、仙人が住む山への行き方が書いてあった。

 

強くなろうと思っても、イングヴァルトとオリヴィエは探し物があるとかでどっかに行っちゃったし、リインは頼める感じじゃなさそうだったから、この山の仙人に頼みに来たのだ。

 

仙人の山は、意外と近くにあったので来てみたら仙人を見つける事ができた。

 

でも、仙人に弟子にしてくれって頼んだら・・・・

[儂のことを師匠と呼びたければ、この山にある階段の落ち葉を払ってからこい。]

 

なんて言われたからそこら辺にあった箒で、落ち葉を払っているのだ。

 

てゆうか何で仙人しかいない山に階段があるんだよ。

 

「やっと終わった。」

 

朝からこれをやっていて終わるのが夕方だなんて・・・・

 

「イッセー、早くじいさんの所に行こう。」

 

「・・・うん」

 

またこの階段を上るのか・・・・

 

 

 

***

 

 

 

《仙人の家の前》

 

 

 

俺達は落ち葉を払った後、階段を上り終わり、じいさんの家の前に来ていた。

 

既に家の前には、じいさんが立っていた。

 

「やっと来たか。」

 

「待たせたな。」

 

「僕達を弟子にしてくれ。」

 

じいさんは少し悩んで、

 

「・・・・まだいやじゃ。」

 

断った。

 

「おいちょっと何でだよ、ちゃんと落ち葉を払っ来ただろ!?」

 

「貴方に言われてやって来たのに!?」

 

俺とヴァーリはじいさんに文句を付ける。

 

「まあ待て、《まだ》と言ったんだ。」

 

じいさんは、

 

「儂に一回でも攻撃を当てられたら弟子にしてやろう。」

 

挑発的な笑みをしながら言った。

 

 

 

***

 

 

《仙人の山の階段》

 

 

 

今日も俺達は、山の階段の落ち葉を払っていた。

 

《今日も》というのは、何回も挑戦しているからだ。

 

あのじいさんに、

 

[また挑戦してもいいが、山の階段の落ち葉を払ってからにしろよ。]

 

と、言われたので俺達は何回も落ち葉を箒で払って挑戦しているのだ。

 

「それにしても、あのじいさん強すぎだろ。」

 

俺はため息混じりに言う。

 

「だからこそ師にしたい。」

 

「確かにそうだな。」

 

俺達が強くなる為には、強い人に教わるしかないしな。

 

「そういえばあのじいさん、手から何か出してないか?」

 

兄ちゃんが話し出す。

 

「あのじいさんは、一歩も動かないと言っていたのに、僕達は吹っ飛ばされる事があるだろ。」

 

「うん。」

 

確かにじいさんと距離があるのに吹っ飛ばされることがよくある。

 

吹っ飛ばされるほど近くにいないのになぁ。

 

「イッセー、あれは見えない攻撃をしているんじゃないかと思うんだが・・・」

 

「そうかっ、確かにいつも身体に何かが当たっている気がする!」

 

流石兄ちゃん、じいさんが何をしてたか解ったんだ。

 

「一体どんなものを出しているの?」

 

「それをこれから確かめるんだ。」

 

 

 

***

 

 

《仙人の家の前》

 

 

「また来たのか、よっぽど儂を師にしたいとみえる。」

 

「だったら俺達を弟子にしてくれよ。」

 

「それはならん。」

 

そう言うのは分かってたよ。

 

「さて始めるかの、儂は動かないから攻撃を当ててみろ。」

 

今回はじいさんに攻撃を当てるのが目的じゃない、じいさんの技を盗むのが目的だ。

 

最初じいさんの技を盗むのは無理だと思っていたのだが、

 

「《お主らでも出来るような簡単な技》を使っているんだ、儂に一撃入れてみろ。」

 

戦う前いつもこんなことを言っているので盗むことが出来るのではないかと思ったのだ。

 

今回じいさんの手をよく見て技を盗む!

 

 

「来ないのか?では儂からいくぞ。」

 

よしっ、作戦通りだ。

 

今回は近づかずじいさんの技を見て盗む。

 

俺達はじいさんの手を走りながら見続けている。

 

走りながらというのは、じいさんの攻撃が少しでも当たらないようにするためだ。

 

俺達の周りにある木々が倒れていく。

 

俺達の身体にこんなのが当たってたのかよ!

 

俺は自分の身体の頑丈さに驚きながらもじいさんの手を見続ける。

 

「うわっ。」

 

兄ちゃんが吹っ飛ばされる。

 

「兄ちゃん!」

 

「あっちに、気をとられている隙はないぞ?」

 

じいさんの手から透明な球の様なものが飛ばされてきた。

 

・・・・球の様なもの?

 

 

 

***

 

 

 

《仙人の山の周辺》

 

「手から透明な球が出ていたな。」

 

「やってみようぜ。」

 

今日はじいさんの家に行かないで、じいさんの技を使うため、兄ちゃんと話し合いをしていた。

 

「う~ん、出ないなぁ。」

 

じいさんがやっていた様にやってみるのだがなかなか上手くいかない。

 

「おっ、出たぞ!」

 

兄ちゃんからはじいさんの手から出ていた球の様なものが出ていた。

当然じいさんに比べれば小さなものだけど・・・

 

「兄ちゃんどうやったんだよ?」

 

「身体の中から放出する感じだ。」

 

身体の中からか・・・

 

 

ドゴオオオオオン

 

俺の手から光が放出され、

目の前にあった木々が粉々になった。

 

「・・・・うっ。」

 

「おいイッセー大丈夫か!?」

 

俺は身体に力が入らなくなり倒れる。

 

「大丈夫。」

 

「そうか、良かった。」

 

兄ちゃんは、ほっと胸を撫で下ろす。

 

「力の調節が必要なようだな。」

 

「何回も練習しないとね。」

 

「そうだな、それにしてもイッセー。」

 

「どうしたの兄ちゃん?」

 

「お前はさっき、光を放出していなかったか?」

 

「確かにそうかも。」

 

何かあるのかもしれない。

 

「まあそれは、じいさんにでも聞けばいいか。師匠と呼べるようになってからな。」

 

「うん!」

 

「となると練習場所だな、木だと直ぐ折れるから、何か硬い物にぶつけて練習したいんだが・・・・」

 

「兄ちゃん、あれがあるじゃん!」

 

俺が指を指したのは・・・・

 

 

 

じいさんの山の階段だった。

 

 

 

***

 

 

 

《仙人の家の前》

 

 

「最近見なくなったのお。」

 

「ーーーーーーーーそうでもないぜ?」

 

「今日こそ一撃入れさせてもらう。」

 

「ほう、来たのか。」

 

じいさんは感心したように言い、こっちを向いた。

 

 

あの時から毎日俺達は、山の階段に技をぶつけて練習し続けた。

 

最初は階段にたいした傷をつけられなかったが、練習するにつれ簡単に階段を破壊出来るようになっていった。

 

そういえば練習している間に色々なことが分かった。

 

兄ちゃんでも光を出せるし、俺でも透明な球を出せることだ。

 

まあでも、兄ちゃんは俺ほど光を出せないし、俺も兄ちゃんほど強力な透明な球を出せないけどな。

 

「さて、始めるかの。」

 

「そうだなっ!」

 

兄ちゃんは透明な球を出し先制攻撃を仕掛ける。

 

「ふんっ」

 

じいさんも透明な球を出して相殺する。

 

「まだだっ!」

 

俺も透明な球を出してじいさんに攻撃をする。

 

「まさかどっちも覚えてくるとは、だが儂には当たらんぞ。」

 

「そうかな?」

 

俺は全力で光を放出した。

 

「甘いなっ、デカイ攻撃は速度が遅いぞ!」

 

じいさんはかわそうとする。

 

「じいさん、動かないって言ってなかったけ?」

 

「そういえばっ、だが儂がこれを止めればいいだけのことだぁ!」

 

じいさんは透明な球を投げる、作戦通りだな。

 

俺とじいさんの技がぶつかり相殺する。

 

そして兄ちゃんの攻撃が当たった。

 

「僕達の勝ちだな。」

 

「やられたっ、まさかそんな手があったとは・・・・」

 

そう、俺の光の後ろに兄ちゃんの透明な球を隠していたのだ。

 

「さて、これで弟子にしてくれるよな?」

 

「まだじゃ。」

 

「なんだとこの野郎っ!?」

 

「おかしいじゃないかっ!?」

 

じいさんは俺達の後ろを指差した。

 

俺達は、じいさんが指差した方を見る。

 

其所には・・・・

 

 

 

俺達が練習で破壊した階段があった。

 

 

「あれを直してからじゃ。」

 

 

 

*********************************************

 

 

 

《仙人の山の周辺》

 

 

私は遠くからイッセーとヴァーリを見ていた。

 

「良かった、無事弟子になれたようだな。」

 

それにしてもあの二人がいつの間にかテレサの眷属になっていたのは驚いたな。

 

まあ、テレサの悪魔の駒は特殊たから何が起きてもおかしくないが。

 

「イングヴァルト、まさか上手くいくとは。」

 

「だから言っただろ。」

 

「・・・・そうですか。」

 

もしもの時は私とオリヴィエが教える予定だったが、私達は教えるのが得意ではないからな。

それに・・・・

 

「あの女が紹介した老人、かなりの使い手だな。」

 

「そうですね。」

 

「あんなのと戦う事になったらどうする?」

 

「負けない為にも今修行しているのでは?」

 

私達も修行したいからな。

 

 

 

 

 




この作品内での歴史


悪魔、天使、堕天使の戦争中にテレサが産まれる。

※この作品では太古の昔でも人間がおり、天使側として参加していた。さらにこの時代の人間は聖なる力を自在に操れた。

戦争が終わるとテレサ一家冥界追放。

地上の島で生活。

その後テレサの両親が死亡。

父親は病死、母親は《あれ》に殺害される。

※《あれ》はこの作品でもう登場しています。

父親から死亡する直前にテレサは悪魔の駒を貰う。

数ヶ月後リインを悪魔の駒で悪魔に《する》

数十年後オリヴィエ、イングヴァルトが悪魔に《なる》

さらに数十年後イッセーとヴァーリを拾う。

テレサが黒い衣の神と戦う。

地上が滅ぶ。

赤い衣の神が地上の人類を創り歴史が進む速度を上げて千五百年で現代の人類と同じレベルに成長させる。

※この神が創った人類は聖なる力を操れない。

そして原作へ

こんな感じです。




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イッセーとヴァーリの修行

タイトル詐欺・・・・


《仙人の山》

 

 

「もう朝か・・・」

 

木々の隙間から入り込む、日の光に照らされて俺は自然と目が覚めた。

 

木々の隙間からというのは、俺が森で寝ていたからだ。

昨日師匠に、どんな場所でも寝れる様になれと言われ、森で寝ていたのだ。

 

日の光は俺の身体に良くないと思うんだけどなぁ。

 

師匠から聞いたけど俺と兄ちゃんは、悪魔になっていたようだ。

もちろん、自然に悪魔になっていた訳ではなく、悪魔の駒で悪魔になっていた。

その悪魔の駒というのは、テレサのものだった。

テレサの悪魔の駒は特殊で、持ち主であるテレサがいなくても勝手に悪魔に転生させる事があるらしい。

さらに悪魔として転生させた者に魔力を操る力と聖なる力を操る力を与える。

普通の悪魔の駒だと魔力を操る力しか与えられないが、テレサが『王』だからなのか、テレサの悪魔の駒で悪魔として転生した者には聖なる力を操る力も与えられる。

 

俺達が悪魔でありながら光を放出する事が出来るのも、テレサの悪魔の駒で転生したからだろう。

ちなみに、悪魔だけど聖なる力を操る事が出来るので同系統の天使や堕天使の光で消滅することはない。

でも光は痛いんだけどね。

 

師匠に言われたけど俺は魔力が殆ど無いらしい、でも聖なる力(聖力?)はかなりあるんだとか。

 

そして、兄ちゃんはあり得ないぐらい魔力があるらしい。そして反対に聖なる力はそんなにないらしい。

 

 

師匠に弟子入りしてからもう数十年がたった。

 

その間に神器が出せるようになった。

 

しかし今、神器の使用は師匠に禁じられている。もっと修行をして実力を身に付けてからにするように言われている。

 

俺達は昔、自分の神器にどんな能力が有るのか聞いてみたことがあった。

 

そしたら師匠は、

 

俺の神器は《敵を強くする》能力、

 

兄ちゃんの神器は《自分を弱くする》能力

 

だと言った。

 

正直使えそうにもない能力だと思った。

両方神滅具だと言っていたから、結構期待していただけにショックが大きかった。

 

こんなのでどうやったら神を倒せるんだろうか・・・・

 

まあ今は、神器のことよりも修行して実力を付ける事が大事だな。

 

「今日も頑張るか。」

 

俺は体を起こして、修行の準備を始めるのだった。

 

 

 

*********************************************

 

 

 

「次はこの山の階段を走って上ってこい、上に着いたらしばらく休憩していいぞ。」

 

「「はいっ!」」

 

儂の弟子であるイッセーとヴァーリが力強い返事をし、山の階段を上っていく。

 

「もう見えなくなったわい。」

 

さっきまで姿が見えていたのに、もう見えなくなっていた。

最初のころは、山の階段を走って上がってこいと言ったら、階段を上りきる事が出来なかったのに、修行を重ねるごとにどんどん体力を付けて、今では簡単に山の階段を上る事が出来るようになった。

 

それはイッセーとヴァーリが悪魔だからだということもあるのだろうが、二人の成長する速度が異常なほど早い事が大きいのではないかと思う。

 

それにあの二人の神器、あれは本来この世界に存在しない神滅具だ。

 

イッセーとヴァーリに言った能力は嘘ではない、全ての能力を言わなかっただけだ。

 

この世界に合わせて若干能力が低下しているが、あれは紛れもなく我々神が使う道具だ・・・・何らかが原因でこの世界に紛れ込んだのだろう。

 

イッセーは《奪う能力》

ヴァーリは《封印する能力》

 

どちらも条件や制限があるが使いこなせれば強力な力となるだろう。

 

 

かつてイッセーとヴァーリの命を狙いに来た儂の弟、この世界の娘が倒したがアイツはまだ生きている。

 

倒されたのはアイツの身代わりだろう・・・

 

現在この世界は多くの神が転生者を送っている、神々が転生させるのは別の世界で死んだ人間だ。

人間は一人一人考え方が違う生き物だ、人間の考え方は、過ごしてきた環境などによって大きく変化していく。

 

神々がもつ宮殿の《転生の間》元々は世界の均衡を保つ為に、人間の生涯の中で転生させる程の価値がある者に転生する権利を与え、転生するか選ばせる為にあるものだ。

 

それなのに弟を含む多くの神は、自分達の暇潰しや、気まぐれなどで転生させる価値もないような人間を転生させたり、まだ人生が終わっていないのに無理矢理転生させたりなどして世界の事を考えないような事をした。

 

儂は、最高神にその事を伝えたが最高神も同じ事をしていた。

正しい転生者を送る事を主張していた儂は最高神やその他の神に邪魔だったのだろう。

 

気がつけば知らない世界に送られていた。

 

かつての力の大半を失い今ではこの山の中でのみ力を使う事しか出来なくなってしまった。

この世界は『ハイスクールD×D』という物語を元に創られている。

儂も一人だけこの世界に転生者を送っているのである程度のことは分かる。

 

イッセーとヴァーリはこの物語の重要な人物らしい。

 

今の時代はまだ物語が始まる時ではない。

おそらく物語が始まったら二人は儂の弟だけではない他の神々からも狙われるだろう。

 

儂の力だけでは二人を守りきることは出来ない。

 

なので二人にはもっと強くなってもらわなければならない。

 

そのためには・・・

 

「禁手に至る事しか考えられんのう。」

 

どうしょうもない儂の弟だが、一つだけ役に立つ事をした。

 

イッセーとヴァーリに禁手に至る為の過去(トラウマ)を与えた事だ。

 

過去を乗り越える事が出来れば、二人は禁手に至る事が出来るだろう。

 

「その為にも儂が悪役になる必要があるのう。」

 

儂は《槍》を創り、イッセーとヴァーリがいる山の頂上に向かった。

 

 

 

*********************************************

 

 

現代

 

《駒王学園近辺》

 

 

「兄ちゃんこの辺だったよね。」

 

「ああ、確かにこの辺りだったと思うんだが・・・」

 

俺と兄ちゃんは、駒王学園の入学式を終え、家に帰る途中だったけど不審な気配を感じ、気配のしたと思われる場所に来ていた。

 

駒王学園の付近には悪魔、天使、堕天使などといった種族がいるので、その存在を知る者は、小競り合い等に巻き込まれるのを恐れて近づくことは滅多にない。

 

だがそんな危険な場所に自ら近づこうとする者もーーーー

 

「オリ主である俺様の気配を感じてここまで来るとはやるじゃねえか!」

 

俺と兄ちゃんの背後から声が聞こえる。

声からして男のようだ。

 

「だがまだ実力が足りなかった様だな、後ろをとられている様じゃ俺様には勝てないぜ!」

 

「後ろをとられた・・・・か。」

 

兄ちゃんが静かに呟く。

兄ちゃんと付き合いの長い俺には少し笑っている様にも聞こえる。

後ろの男に聞こえる様に言ったのか分からないが、聞こえてたようだ。

 

「ビビってまともに声も出せない様だな、まあ安心しな、お前らの神器もこの俺が貰っといてやるぜ!」

 

お前らの神器?

こいつ・・・・何で知っている!?

完璧に隠してるはずなのに!

 

『兄ちゃん!?』

 

俺は慌てて兄ちゃんに念話をした。

 

『落ち着けイッセー。』

 

「何で俺達に神器が有ることを知っているんだ?」

 

俺は慌てているが、

兄ちゃんは冷静に背後の男に聞いた。

 

「転生特典だよっ!」

 

そう言うと背後の男が襲い掛かってきた。

 

「遅い・・・・」

 

襲い掛かってきた男の腹部に、兄ちゃんの膝が入る。

 

「ごはぁっ。」

 

『イッセー、やれそうか?』

 

やれそう・・・ああ、そういう事か。

 

『分かった、兄ちゃん準備は出来てる。』

 

「こ・・の・・・野郎・・・・」

 

男は何処からか剣を出した、

これは・・・・・神器か。

 

「俺の魔剣でお前らを殺してやる!」

 

『もう居ても意味がないか、イッセー先に帰る。』

 

『分かったよ。』

 

どうせ兄ちゃんは強い奴がいることを期待いていたのだろう。

戦闘狂だからな・・・・

 

こいつは神器の持ち主を見つける能力のようなものだろう。

 

それに最初に、

 

[お前らの神器もこの俺様が貰っといてやるぜ!]

 

とかなんとか言ってたな。

 

過去に何度か他人の神器を奪っているのか?

 

だとしたら、

 

「死ねぇ!」

 

「だから遅いって。」

 

「ぐふっ。」

 

やるしかないな。

 

俺の右手には黄色い籠手が現れていた。

 

「行くぞ。」

 

さっき俺に殴られて吹っ飛んだ男が立ち上がろうとするが、そんな隙は与えない。

 

俺は素早く男の正面に移動し、拳を放つ。

 

「ぐはぁっ。」

 

よし、《奪った》

 

「もう神器を持つ人を襲わないって約束したら見逃してあげてもいいよ。」

 

俺は男にチャンスを与える。

 

が・・・・

 

「ふざけんな、てめえは俺様が殺してやる!」

 

そうかい。

 

俺は男にもう一度拳を放つ。

 

男は俺の拳をくらって、よろけている。

 

 

あれ?男の表情が変わったぞ。

 

ああ、いつものあれか。

 

「おい、謝るなら今の内だぜ!」

 

「・・・」

 

「俺様は更なる力に目覚めた!」

そう言う男の手にはさっき持っていたよりも強い力を感じさせる剣が握られていた。

 

「やはり、俺様こそ真のオリ主だぁ!」

 

このやりとり何回目だろう・・・・

 

「ぐらいやがれええぇ!」

 

男が俺に剣を振りかざす。

 

大振りなので色んな所ががら空きだな。

 

俺の拳がまた入る。

 

二発か、わりと使いこなしていたみたいだな。

 

「何故だ、何故俺様の神器が使えない!?」

 

「《奪った》からだ。」

 

「奪った・・・だと!?」

 

もうこの男に戦う力は残っていないか。

 

「おい待て!」

 

俺はこの場を後にした。

 

*********************************************

 

 

「クソがぁ、オリ主である俺様が何でモブなんかに!」

 

意味がわかんねえよ!

 

『お前が弱かったからだ。』

 

頭の中から声が聞こえる。

確かこいつは俺を転生させた神。

 

「俺様にもっと力を寄越せ!」

 

『断る、雑魚にやる力などない。』

 

「なんだとてめえ!」

 

ふざけやがって!

 

『うるさい奴だ。』

「お、俺様の身体がぁ!?」

 

突如俺様の身体が、消え始めた。

 

「てめえ!」

 

『さよならだ、転生者。』

 

「なんでーーーーー」

 

 

 

男の声は途中で途切れ、辺りは静寂に包まれた。

 

 




師匠が槍を持って何をしたかはまた後でやります。

原作に入ってないのに過去編を長くやるとグダグダになりそうなので、原作に入ってから過去の細かい所をやろうと思います。


朱乃ーーリアスに拾われた

木場ーー復讐

小猫ーーリアスに拾われた

アーシアーー悪魔として転生したしオカ研にイッセーも居るし・・・・・・イッセーも居るし!?


テレサ眷属

女王ーーリイン

戦車ーーオリヴィエ

騎士ーーイングヴァルト

兵士ーーイッセー、ヴァーリ


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原作突入編
リアスの眷属


原作に介入したい転生者がすることといえば・・・


《駒王学園》

 

 

 

カッカッカッーー

 

チョークを持つ教師の手が止まる、どうやら問題を書き終わった様だ。

 

「ここの問題出来たやつ。」

 

そう教師が言うが、誰も手を上げ答える者はいない。

生徒にやる気が無いという訳ではなく、教師が書いた問題が難しい事が原因だろう。

実際この教師の書いた問題は大学入試などで出る応用問題であり、問題が書かれてから数十秒で答えられる様な問題ではない。

 

「え~とそうだな。」

 

誰も手を上げないので教師は指名することにした様だ。

クラスの生徒は指名されない様に目を伏せる。

 

そんな中、一人だけ目を伏せていない生徒がいた。

 

「一ノ瀬<いちのせ>、答えてみろ。」

 

教師に指名された様だ。

 

「14です。」

 

生徒がなんの迷いもなく答える。

 

「正解だ。」

 

どうやら問題は正解していた様で、クラスの生徒から歓声が上がる。

 

「さてもう授業が終わる時間だな、これで授業を終わりにする。」

 

それと同時に授業の終了を告げるチャイムが鳴った。

 

 

 

***

 

 

 

アイツ・・・問題を答える時、神器を使った反応があった。

アイツの神器は違う様だな。

 

俺はノートに書いてある一ノ瀬という字に斜線を入れる。

 

この前奪った能力、テレサの記憶を治すことのできる者を探すのには非常に便利だ。

予想だがテレサの記憶を治すことが出来るのは、神器の力だと思う。

 

この学校には、神器を持つ者が50人以上いる。俺、兄ちゃん、オリヴィエ、イングヴァルトで調べているけどなかなかそれらしき者を見つけられないでいる。

 

もしかしたら神器を持つ者じゃなかったりして・・・

 

俺はノートを見る。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

イッセーのノート

 

《テンセイシャ》

よく分からない謎の存在、種族の名前なのかもしれないし、組織の名前なのかもしれない。特徴としては皆何かしらの能力を持っている。

 

《テンセイトクテン》

テンセイシャと言う者が能力の事をそう言っていたりする。神器の事を言ったりもしている。

 

《新型の悪魔の駒》

俺達の悪魔の駒とは違う駒で数千年前から使われる様になったらしい。

悪魔として転生させる者が弱くても転生が可能。

 

《アルジェント》

テンセイシャの数名が言っていた言葉。

家にあるテレサのナイフにもアルジェントと刻まれていたので一応メモしておく。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

テレサの記憶を治すのに重要になってくるのはやっぱりテンセイシャなのかもしれないな・・・・

 

テンセイトクテンを持つ者が、治せるのかもしれない。

 

『イッセー、あの能力を使って神器を持ってるヤツが何処にいるのか探してくれ。』

 

兄ちゃんからの念話が来た。

神器を持ってるヤツの場所?

 

いったいどうして・・・・

 

まあいっか。

 

俺は能力を使う。

 

『兄ちゃん、今回は能力を使う規模がデカイから俺はしばらく動けないよ。』

 

『ああ、場所は分かったか?』

 

『うん・・・どうやらほとんど同じ場所に居るみたいだね。』

 

『一体何処だ。』

 

『オカルト研究部。』

 

 

 

*********************************************

 

 

《オカルト研究部前》

 

 

僕はイッセーの言っていたオカルト研究部に来ていた。

 

クラスにいる神器持ちを監視していたのだが、放課後になると大半が同じ場所に向かって移動し始めたので、イッセーに他の神器持ちもそうではないかと調べてもらい、他の神器持ちもそうだったので来てみたのだ。

 

「こんにちは、最後尾はあっちにあるよ。」

 

金髪の男がそう言って奥を指差す。

 

指を差した先には、長い人の列が出来ていた。しかも大半が金髪やら銀髪だ。

 

「あれは?」

 

僕は男に聞く。

 

「あれ、もしかして関係者じゃなかった?」

 

「いや・・・・僕もそうだ、列が長いんで別のものかと思ってな。」

 

「確かに、部長もこんなに来るとは思って無かったって言ってたしね。」

 

男は苦笑しながら言う。

 

「あっ、そういえば僕の名前を言って無かったね。木場祐斗<きばゆうと>だよ。」

 

「僕は火野義明<ひのよしあき>だ。」

 

まあ偽名なんだがな。

前に師匠から駒王学園に行くときは、ヴァーリではなく偽名を使えと言われてな。

理由はよく分からん。

 

木場からは聞けそうにないな、列に並んでいるヤツから聞くとするか。

 

俺は列に向かうのだった。

 

 

 

*********************************************

 

 

 

《オカルト研究部》

 

 

「部長、眷属候補のリストです。」

 

私の《騎手》の祐斗が紙の束を私の机の上に置く。

 

「ありがとう祐斗 。」

 

一体どうしてこんなにも私の下僕になりたいなんて人がいるのかしら・・・

 

私はため息を吐く。

 

「あらあら部長、お疲れですか?」

 

そう言いながら部室に入ってきたのは、私の《女王》の朱乃<あけの>だ。

 

「ええ、まさかこんなにも人が来るなんて思ってもいなかったわ。」

 

誰も下僕になりたいと言う人がいないことよりは、いいのかもしれない。

 

でもこの数は異常だ。

 

「・・・部長、さっき言っていたはぐれ悪魔の討伐はどうしますか?」

 

・・・・私はかなり疲れているのかもしれない。

 

小猫はまだ外にいるのかと思っていた。

 

「ごめんなさい、私は下僕の面接で疲れが溜まっているから、動けそうな人が行ってきてくれないかしら。」

 

幸い、今回のはぐれ悪魔は下級の中でも弱い者だったと思う。

 

「・・・分かりました、《彼》に行ってきてもらいます。」

 

 

《彼》か・・・・

 

確かに下級なら問題は無いだろう。

 

《彼》は私の下僕の中でもかなりの力を持っている方だと思う。

 

でも精神が弱い。

 

相手に自分の力が及ばなかった時に諦めてしまうのが《彼》の悪い癖だ。

 

もっと精神が強くなってくれれば私達の中でも心強い存在になるだろう。

神滅具があるからといって、必ず負けないという訳ではない事をしっかりと認識してほしい。

 

神滅具持ちだけが必ず強いという訳ではない事を《彼》に分かってもらい、成長してもらう為にも、今回はより強い下僕を見つけなくてはね。

 

私は下僕候補のリストが纏めてある紙を読み始めるのだった。

 

 

 

*********************************************

 

 

 

《駒王学園付近》

 

 

あの後、僕は神器持ちがどうしてオカルト研究部に集まっていたのかを知った。

どうやらグレモリーの眷属になるため集まっていた様だ。

 

そんなに悪魔の眷属になりたいものなのか?

 

悪魔になったとしても、《今の人間》は見下されているから、いい事は無いと思う。

 

見下していなくても大半の悪魔の《王》は眷属のことを下僕などと言っている事から人間は弱いとでも思っているのだろう。

 

こう言う僕も悪魔の眷属ではあるが、皆家族みたいなものだ。

それにーーー

 

「オレノヨメハドコダアアアアアア!」

 

僕の前に何者かが現れる、この感じからして、悪魔のようだ。

 

何か様子もおかしいな、力が暴走でもしているのか?

 

こいつの様子はまるで、イッセーの神器の能力でも使われたかのような感じだ。

 

 

今思えばイッセーの神器の能力は、とんでもないものだと思う。

 

あの神器の能力は神器で相手を攻撃すると、攻撃された相手の能力が強化される。それも攻撃した数だけ能力が強化されていく。

相手が強化され過ぎた能力を使いこなせなくなるとイッセーの能力として使えるようになる。

より正確には奪うか・・・

 

奪うまで相手が強くなるというデメリットがあるが、それを差し引いても強力な能力だ。

 

 

まあこんな話は置いておいて、

 

目の前のやつは自分の力を使いこなせなくなってる様だな。

はぐれ悪魔にでもなって暴走しているのか?

 

仕方ない・・・・

 

僕の手に剣が握られる。

 

これは僕の神器。

 

この神器の能力は《封印》だ、しかし使い方次第で《破壊》が可能となる。

 

今からこいつの中にある悪魔の駒を《破壊》する!

 

「グオオオオオ!」

 

目の前の悪魔が雄叫びを上げる。

 

雄叫びと言うよりも悲鳴に近いな・・・

 

「来いっ!」

 

悪魔が僕に向かって走り出す。

 

「ッ!?」

 

悪魔の動きが止まる。

僕が聖なる力で光を創り、悪魔の目に当てたからだ。

 

悪魔の動きが止まった隙に、僕は悪魔の身体を斬る。

 

「グハアッ!?」

 

「大丈夫だ、僕が斬ったのはお前じゃない、お前の悪魔の駒だ。」

 

その証拠に、悪魔の身体には傷一つ無かった。

 

どんなものにも限界がある。

僕がやったのは封印だ。

だが、ただの封印ではない。

 

《強すぎる》封印だ。

 

悪魔の駒一個と変異の駒四個だとどう考えても釣り合わない・・・

 

 

僕の能力のことはいいか、こいつからどうしてこうなったか事情を聞くとしよう。

 

「おいお前ーーー」

 

ドゴオオオン

 

僕が後ろを振り向いた瞬間。

後ろにいたはずの元悪魔が倒れていた。

 

それも血だらけで・・・

 

「まったく、どうして原作の始まる直前になると、こんなにもはぐれ悪魔が出てくるんだか。」

 

やったのはコイツか・・・

 

「ホントに邪魔な奴等だよな。」

 

元悪魔を殺した男は、もう動かなくなった死体を踏みながら言った。

 

「・・・そいつはもう悪魔ではないだろ。」

 

僕は男に言うが・・・

 

「はぐれ悪魔は殺せって言われてんだよ。」

 

「どうしてはぐれになったかぐらい聞いてやってもいいんじゃないか?」

 

「ハッ、興味ないね。」

 

コイツ・・・

 

「お前もしかしてこのはぐれ悪魔の仲間か、だったら殺すしかないな。」

 

『Boost<ブースト>』

 

男が僕に魔力の球を投げてくる。

 

僕は剣でその球を斬る。

 

「やるな。」

 

男は関心したように呟く。

 

「お前には特別に俺の名前を教えてやるよ。」

 

男は高らかに自分の名前を名乗った。

 

 

「兵藤剣<ひょうどうつるぎ>だ。」

 

 

 

 

 




ヴァーリの能力の詳細はまた今度に。


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テレサの友達

イッセー・・・・


《駒王学園付近》

 

 

『兄ちゃん、そいつと戦わないでくれ!』

 

今俺は、兄ちゃんとグレモリー眷属の戦いを止める為、大急ぎで移動していた。

 

『無理だな、コイツは攻撃を止めてくれそうにない。』

 

兄ちゃんは戦いを止める気配がない。

 

『そいつはグレモリー眷属だから下手なことすると後々厄介になるぞ?』

 

『イングヴァルトもそう言ってるんだから何とかして逃げてよ!』

 

『僕もそうしたいんだか・・・コイツは気に入らない。』

 

駄目だ、俺達の話を聞いていない・・・

 

『イッセー、ヴァーリの居る所まで後どれぐらいかかりそうだ?』

 

『後三分ぐらい。』

 

飛んで移動するならもう着いているんだけど、目立たないようにしているから今は飛べない。

 

『後三分か・・・それなら私も追いつけそうだ。』

 

兄ちゃんは、グレモリー眷属に何をするつもりなんだ?

兄ちゃんが言っていた、気に入らないという言葉で思い至るのは・・・

 

神器の破壊か悪魔の駒の破壊、もしくはその両方か!?

でも、いくら兄ちゃんといえど神滅具を破壊できるのだろうか?

 

そんなことを考えてる時間はないか。

 

俺は走る速度を上げるのだった。

 

 

 

*********************************************

 

 

 

《テレサ達の家》

 

 

季節は春、寒かった冬から段々と温かくなっていく季節。

まだ4月の上旬なので冬の寒さが残っており、この家ではストーブやこたつなどが出ている。

ちなみに布団もまだ毛布を使っている。

 

イッセーは今、布団にくるまって寝ていた。

 

ピピピピッ

 

イッセーの部屋の中で音が鳴り響く。

ガチャッという音と共にその音が消える。

どうやら目覚まし時計だったようだ。

 

「目覚まし鳴るようにセットしてあったか・・・・」

 

イッセーは眠たそうに呟く。

 

「今日学校休みじゃん・・・・」

 

今日は学校が休みの日なので、まだ布団から出たくないのか、イッセーはまた布団にくるまろうとする。

しかし、布団にくるまろうとしたイッセーの動きが止まる。

 

「・・・・」

 

布団をよく見れば、小さな膨らみが有るようにも見える。

イッセーは無言で布団を剥いだ。

 

布団の中には《小さな》テレサがいたのだった。

 

「え?」

 

 

 

*********************************************

 

 

 

昔テレサが大怪我をして記憶を破壊された時、テレサは見知らぬ女に保護されていた。

 

私はあまりにもショックが大きくて、女の話など聞くことが出来なかった。

 

後からオリヴィエとイングヴァルトから説明されたが、今のテレサは破壊された記憶の欠片を自身の記憶としていて、その記憶は幼い頃の記憶だったので、もしもの事が起こらないように、その記憶に合わせて身体を幼い頃と同じ姿にしているそうだ。

 

最初は禁手の反動でなるテレサとは違ったテレサに戸惑っていたが、時間が経つにつれ段々と馴れていった。

 

長い間一緒に生活していて分かったのだが、幼い頃のテレサはとても怖がりで寂しがり屋だったということだ。

 

私の知っていたテレサは、怖がりだという事を思わせないような感じだったのにな。

 

いや、昔イッセーとヴァーリを冥界で拾った時、自分の周囲の木々をなぎ倒して森の中に光を入れていたような気がする。

あれはまさか薄暗い森の中が怖かったからだったりして・・・

まあそんなことは置いといて。

 

今私が何をしているのかというと。

 

「テレサー、どこに居るんだ?」

 

昨日一緒に寝ていたはずのテレサを探していた。

 

 

*********************************************

 

 

俺はスヤスヤと寝息を立てて眠るテレサを見ながら固まっていた。

 

一体どうしてテレサが俺の部屋に居るんだ?

今の俺はそんなことしか考えていない。

 

確かテレサはいつもリインやオリヴィエとかと一緒に寝ていたはずだ。

テレサが小さくなってからは俺と一緒に寝たことは一度もない。

 

ということは間違えて俺の部屋に来てしまったのだろうか?

 

とりあえずリインでも呼んでどうにかしてもらおう。

俺はテレサを起こさないようにそっと布団から出ようとするが・・・

 

ガシッ

 

テレサに腕を捕まれてしまった。

離そうとするが、強く捕まれているので離れそうにもない。

 

仕方ない、諦めてテレサが起きるまで待つとするか。俺も昨日の事で疲れているからちょうどいい。

 

スヤスヤ

 

テレサはグッスリと眠っている。これはまだ起きるまで時間が掛かりそうかな。

 

それにしても、テレサの寝顔はとても気持ち良さそうだな。

俺はなんとなくテレサの頬を指で突いてみた。

 

柔らかい。

 

テレサが女の子だから柔らかいのか?

それとも幼いから柔らかいのだろうか?

 

俺は気がつけば、そんなことを考えながらテレサの頬を一回、二回と指で突いていた。

 

「う~ん、あれりいんは?」

 

あ、テレサが起きてしまった。

テレサの頬で遊び過ぎてしまったようだ。

 

「テレサは俺が起きた頃からこの部屋にいたよ。」

 

「あれれ?おかしいなぁ。」

 

テレサは可愛らしく首をかしげる。

どうやらテレサは自分から俺の部屋に来た訳ではないようだ。

考えられるのは、テレサが昨日寝惚けて俺の部屋に来ちゃったとかかな?

 

「ま、いっか。」

 

テレサは別に気にしてないようだ。

 

「そうだっ、きのうりいんにじぶんで、きがえるっていったんだった。」

 

テレサはそう言うと、俺の前で服を脱ぎはじめた。

 

「テ、テレサ何やってんの!?」

 

俺は慌ててテレサを止めようとするが、

 

「いっせー、じゃましないで!てれさは、ひとりでおきがえするんだから!」

 

テレサはそう言うと、どんどん服を脱いでいく。

俺は脱ぐのを止めさせようとするが、テレサにまたじゃましないで、と言われどうしようか悩んでいる間に、テレサは脱ぐのを終えていた。

 

そう《脱ぐのを》

 

「テレサ、着替えも無しに服を脱いでどうするというんだ?」

 

俺の部屋にリインが入ってきた。

 

「全裸だと風邪を・・・・」

 

リインの言葉が止まる。

 

俺を見てから・・・

 

いや、より正確には両手にテレサの服と下着を持つ俺を見てからだ。

 

「なあイッセー」

 

「はい、何でしょうか。」

 

リインから放たれるあまりの威圧感に、俺は思わず敬語になる。

 

「テレサを全裸にしたのはお前か?」

 

こういう時は何て言ったらいいのだろうか?

 

 

 

*********************************************

 

 

 

《公園》

 

 

「あーしあちゃん!」

 

「テレサちゃん!」

 

イッセーに四時間ほど尋問をした後、私とテレサは公園に遊びに来ていた。

どうやら公園にはテレサが最近仲良くなった、教会のシスターがいたようで、今二人は遊んでいる。

 

二人共楽しそうだな。

 

「リインフォースさんもどうですか?」

 

「いや、私は遠慮しておこう。」

 

このシスターのことはけっこう気に入っている。

何がいいのかと言われて、すぐに答えが出る訳でもないがな。

 

私は公園の時計を見る。

もうお昼か・・・・よしっ。

 

「テレサ、そろそろお昼にしようと思うんだが。」

 

「うんっ、わかった!」

 

「アーシアもどうだ?」

 

彼女もお腹が空いた頃だろう。

 

「でも、色々ご迷惑がかかりますし・・・」

 

「遠慮することはない。」

 

私はそう言うが、彼女はまだ戸惑っているようだ。

 

「てれさたちと、おひるたべるのいやなの?」

 

テレサが悲しそうな顔をしながらアーシアに言う。

 

「そ、そんなことは無いですっ!」

 

アーシアは慌ててテレサの所に行き頭を撫でる。

 

「テレサちゃん達と食べたいに決まっています。」

 

「えへへ~。」

 

テレサはさっきまでの表情を変えて、嬉しそうな顔をしている。

 

そうかっ、私がアーシアを気に入っているのは、私と同じようにアーシアもテレサを大切に思っているからだ。

 

「あーしあ、ぎゅ~ってして!」

 

「はいっ。」

 

アーシアはテレサを抱きしめている。

 

「もっと!」

 

何だこの複雑な気持ちは・・・

 

「はい・・・ってリインフォースさん、本当に私もご一緒して宜しいんでしょうか?」

 

「ああっ、そうだな・・・」

 

私は無愛想に答える。

 

「リインフォースさん、私何かいけない事でもしてしまいましたかっ!?」

 

「・・・別に。」

 

「いやっ、でも・・・」

 

なんだかんだありながらもアーシアは私達の家でお昼を食べていくことになった。

 

 

 

*********************************************

 

 

 

《???》

 

 

「ようやく、ようやくじゃ。」

 

黒い衣をきた老人が呟く。

 

「儂の邪魔をした小娘に復讐ができる。」

 

老人の前には人らしきモノが転がっていた。

 

「あの小娘の記憶を治せるのはもういない。」

 

老人は笑みを浮かべている。

 

「自分の記憶すら思い出せぬまま、死んでいくがいい。」

 

そう言うと、老人は何処かへ向かって歩き始めるのだった。

 

 

「儂の邪魔をした事を後悔させてやる!」

 

 




アーシアは原作よりも一年早く教会に来ています。

今回は急ぎ足でしたね。

このまま続きの神の話をやるか、何か一本話を挟むかどっちがいいですかねぇ。


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イッセーの・・・・


今回同じ場面が二つありますが仕様です。


《???》

 

黒い衣を着た老人の足下で倒れているのは血まみれになったテレサだった。

幼い身体には無数の刀傷が刻まれており、かなりの重傷だということが分かる。

老人が握っている刀についた血から、老人がやったのだろう。

 

「ガハハハッ、幼い身体になっていたのは間違いだったな!」

 

老人は上機嫌といった様子で笑い、血のついた刀を止めの一撃と言わんばかりにテレサに刺した。

 

「テレサッ!?」

 

「テレサちゃんっ!?」

 

イッセーとアーシアが叫び声を上げるが、老人は気にした様子も無く、テレサの身体を持ち上げアーシアのいる所に投げ捨てた。

 

「その娘も思い知ったじゃろう、神の邪魔をするとどうなるのかをのうっ。」

 

老人はまた笑いだす。

 

「テレサちゃんっ、テレサちゃんっ!?」

 

テレサに駆け寄ったアーシアが必死にテレサに声を掛けるが、テレサからは返事がない。

 

「待ってて下さい、今治してあげますからっ!」

 

そう言いアーシアは自身の神器でテレサの身体を治そうとするが、テレサの身体の刀傷から吹き出る血が止まる様子はない。

 

傷が多すぎて治癒が間に合わないのだろう。

 

「あーしあ・・・ちゃ・・ん・・・」

 

普通なら意識を失っていてもおかしくないのだが、テレサが声を出した。

テレサが悪魔の血を引いていることが、テレサの意識を保たせているのかもしれない。

テレサはアーシアの名前を呼ぶが、その声に力はない。

 

「テレサちゃんっ、喋らないで下さいっ!」

 

「どう・・・して・・ないて・・・いる・・の?」

 

「それはテレサちゃんが・・・・」

 

死んでしまう。

そんなことはアーシアには言えなかった。

言ってしまったら、テレサの死を認めてしまうことになるからだ。

 

「・・・・」

 

アーシアは助かるはずの無いテレサの刀傷を治療するしかなかった。

 

認めたくない、ただそれだけがアーシアをに神器を使わせていた。

 

「待ってて下さい、今傷を治してあげますから・・・痛いのは無くなりますからっ・・」

 

アーシアはテレサにそう言いながら治療を続ける。

この言葉はアーシアが自分に言い聞かせていただけなのかもしれない。

 

自分がテレサの刀傷を治せば、テレサは助かるのだと・・・

 

「わたしは・・いた・・・く・・ないよ・・だから・・・あーしあ・・・・」

 

テレサは残された最後の力をふりしぼって声を出す。

 

「なかないで・・・」

 

そう言いテレサは瞳を閉じる。

 

「どうしてですか・・・」

 

アーシアはまだテレサに神器を使っている。

 

「どうしてテレサちゃんがっ!」

 

神器を使っているアーシアは既に、テレサが死んでいることは分かっていた。

 

「私の・・・私のっ・・・・」

 

アーシアにとってテレサは大切な友達であり、家族のような存在だった。

 

「あの時、私の力は凄い力だって言ってくれたのに・・・」

 

かつてアーシアは人々から聖女と呼ばれていた。

 

「なにが聖女ですか・・・私だけ助けてもらったのに・・・助けてくれたテレサちゃんを助けられないなんてっ!」

 

既にテレサは死んでいた、しかしそれでもアーシアはまだ神器を使い続けた。

 

「また・・・・守れなかった。」

 

イッセーはその場に立ち尽くす事しか出来なかった。

 

 

*********************************************

 

 

 

《イッセーの部屋》

 

 

「なんだよ、なんだよあれはっ!」

 

まだ息が荒い・・・・

 

俺が今布団にいるってことは、さっき見たのは夢だったのか?

 

夢にしてはリアルだった。

 

あの夢の中で、テレサは死んでいた。

俺の手が届かなかったからだ・・・・

 

「俺のせいで!」

 

俺じゃあ駄目なのか・・・

禁手を使いこなせていない俺じゃあ駄目だってのか!

 

俺は拳で壁を叩いた。

 

たいした意味は無い、ただ何かにあたりたかっただけだ。

 

「どうして俺は-――」

 

「―――いっせー、なにしてるの?」

 

俺の部屋の入り口にはテレサがいた。

テレサの身体には傷が無い。

 

やっぱり夢だったんだ。

そう確信したら、身体から力が抜けていく。

 

「いっせーのおへやから、どんっ!てきこえたからきたんだけど・・・」

 

「いや、何でもないよ。」

 

「そんなことないで―――」

 

俺は身体を起こして、テレサのいる所に行き頭を撫でる。

幼いテレサはこうすれば誤魔化せるしな。

 

テレサは撫でられると、目を細めて静かになっている。

さて・・・顔でも洗ってくるか。

 

 

 

***

 

 

 

《商店街》

 

 

今日は、俺と兄ちゃんとテレサとアーシアで商店街に来ていた。

商店街に来た理由は、家に食材が無かったからリインが買いに行こうとしていたので、いつもリインだと大変だということで代わりに俺達が行くことにしたのだ。

 

リインから貰ったメモには、必要な食材がビッシリと書いてある。

こんな量を一人で買っていたの?なんて聞いたら、私のは少ない方だぞ?なんて言われた。

商店街に来る主婦の方が多いんだとか。

 

凄いな・・・

 

 

さて最初は何から買った方がいいのかな?

 

「イッセーさん、あそこにお肉屋さんがありますよ。」

 

どうやらアーシアが、肉屋を見つけたようだ。

 

「イッセーそこからでいいんじゃないか?」

 

「分かった。」

 

肉屋からにしよう。

俺達は肉屋へと向かった。

 

 

***

 

 

「豚肉と鶏肉と・・・・」

 

家では牛肉があまり出ない、高いからだそうだ。

高いといっても金ならかなりあると思うんだけどなぁ。

 

「やっぱり牛肉も―――」

 

「―――ダメですよイッセーさん、メモには牛肉って書いて無いんですから。」

 

「そーだ、そーだ!」

 

うっ、そう言われると買いにくくなる。

 

仕方ないか・・・

 

俺は牛肉を諦めた。

牛肉とはあんまり関係の無い話だが今アーシアは俺達の家に住んでいる。

理由はアーシアの勤めていた教会が何故だか無くなったからだ。

無くなった教会の周辺には何故か堕天使が住み着いて危険なので、アーシアに俺達の家に来ないかと誘ったのだ。

 

「次は・・・」

 

どこに買いに行くかな。

 

「いっせー、あれは?」

 

テレサが指を差していたのは魚屋だった。

そこでいっか。

俺達は魚屋へと向かった。

 

 

***

 

 

《商店街周辺》

 

 

「たくさん買ったな。」

 

食材を入れた袋を持った兄ちゃんが呟く。

確かにこんなに量があるなんて・・・

メモを見るだけじゃあよく分かんなかったな。

 

「リインさんは凄いですね。こんな量を一人で買ってきてるなんて。」

 

「たまに、オリヴィエとイングヴァルトが手伝ってくれてるらしいけどね。」

 

俺はアーシアに二人も手伝っていることを教える。まあ二人共《たまに》なんだけどね。

 

「てれさもてつだうっていってるのに、あんまりてつだわせてくれないんだ・・・」

 

テレサが少し悲しそうに言う。

たしか、リインは心配だから何人かいる時に連れていくって言ってたような・・・

 

「そんなことは無いですよテレサちゃん。」

 

「あー・・しあ。」

 

テレサは少し泣きそうだ。

テレサが幼くなってから泣いてることを見るのは多くある。

俺達が小さかった頃はそんなに泣いてなかった気がする。

テレサは小さい時、よく泣いてたのかな?

 

「きっと皆さん、テレサちゃんの事が心配なんですよ。」

 

アーシアがテレサをなぐさめる。

 

「う・・うう。」

 

「よしよし。」

 

アーシアがテレサを抱っこして頭を撫でている。

これも最近ではよく見ることだな。

そういえばテレサとアーシア、どこか似ているような気がするな。

どこが似ているのかと言われると、これといった所が無いのだが、なんとなく似ている気がする。

黒髪のテレサがアーシアと同じ金髪にしたら親子の様に見えると思う。

今度試してみよう。

 

さて、やることも終わったし帰るかな。

俺が帰ろうとすると。

 

『イッセー感じたか?』

 

兄ちゃんから念話がくる。

何のことを言ってるんだ?

 

『どうしたの兄ちゃん?』

 

兄ちゃんから念話が来たので俺も念話で返す。

 

『気配を探れ・・・この気配感じた事がないか?』

 

気配か・・・

俺も気配を探ってみる。

あまり上手ではないので時間がかかる。

 

ん?何か感じるな・・・

 

この気配は―――

 

『―――テレサを刺したじじいだ!』

 

兄ちゃんがその言葉を言った瞬間、辺りが結界で包まれる。

 

「結界!?」

 

俺はテレサとアーシアのいた場所を見る。

 

いないっ!?

 

「兄ちゃん、テレサとアーシアが!」

 

「落ち着けイッセー、神器を使って確めろ!」

 

そうかっ、そうすればいいんだ!

俺は奪った力の、神器がどこにあり誰が持っているのかを調べる能力を使う。

 

「近くにいる・・・だと。 」

 

「どういうことだイッセー!?」

 

そう、俺は能力を使ったがテレサとアーシアは近くにいるとなっているのだ。

 

「この周辺に・・・」

 

俺が反応の有った場所に近づくと・・・

 

ガンッ

 

「うっ、何だこれは?」

 

見えない壁の様なものに当たった。

 

「見えない壁・・・結界かっ!」

 

兄ちゃんが何か分かった様だ。

 

「イッセーこれは結界だ、結界の中にもう一つ結界が張られている!」

 

「なるほど、そういうことか!」

 

なら結界を破壊するだけだ!

俺は結界を破壊しようとするが・・・

 

「―――イッセー結界から離れろ!」

 

結界の中から光線が放たれてきた。

兄ちゃんが言わなかったら当たってたかも・・・

 

結界の中から何かが出てきた。

 

「龍・・・・か。」

 

兄ちゃんの言うように結界から出てきたのは龍だった。白い体に青い目をしており、かなりの大きさがあるようだ。

 

「イッセー、僕が龍を相手するからその間にお前は結界の中に入れ。」

 

「結界の破壊じゃなくてか?」

 

「破壊は時間がかかる、だったら一部に穴を開けて入った方が早い。」

 

「分かった。」

 

俺は兄ちゃんに剣を渡す。

今創った剣だ。

この剣は龍に大きなダメージを与えるドラゴンキラーを元に創った剣なので、役にたつだろう。

そして俺は結界に向かって飛んだ。

 

グオオオオォ

 

龍が俺に攻撃をしようとするが、兄ちゃんによって阻まれる。

 

「お前の相手は僕だろ?」

 

どうやら兄ちゃんがさっき渡した剣で龍を斬ったようだ。

龍が苦しんでいる。

 

俺は結界に近づくが・・・

 

グオオオオォ

 

再び結界の中から光線が放たれる。

 

どういうことだっ!

また光線だと・・・まさかっ!

 

考えられるのは一つだけ。

 

二匹目だ。

 

結界の中から二匹目の龍が出てくる。

一匹目と同じヤツだ!

結界の中はどうなってるんだ!?

テレサとアーシアがいるってのに。

 

『イッセー、そのまま行けぇ!』

 

龍と戦っている兄ちゃんからの念話がくる。あまり時間を掛けられない、兄ちゃんを信じて突っ込むか!

 

俺は結界に向かって再び飛ぶ。

 

グオオオオォ

 

龍が再び俺に光線を放とうとする・・・が。

 

「禁手化<バランス・ブレイク>」

 

龍から光線は放たれなかった。

兄ちゃんが龍との距離を詰めて禁手を使って封印したようだ。

 

禁手をするほどの相手だったのか!

 

「行けぇ!」

 

俺は結界の中に入っていった。

 

テレサ、アーシア、無事でいてくれ。

 

 

 

*********************************************

 

 

 

《結界の中》

 

 

私がテレサちゃんを抱っこしていたら、いきなり周囲の光景が変わり、目の前に黒い衣を着たおじいさんが現れました。

 

おじいさんの後ろには《三匹》の大きな生き物がいる。

あれはたしか龍。

昔本で読んだ事があります。

 

とっても怖いです。

でも私が怖がる訳にはいきません。

私が怖がったらテレサちゃんが怖がってしまいます。私は勇気を振り絞って、なんとかその場に留まります。

 

「いらん者まで結界に入れてしまったか・・・まあいい。」

 

おじいさんはゆっくりと私に近づいてくる。

 

「やっと、やっとじゃ。」

 

本能が逃げろと言っている。

おじいさんはどこからか、刃物の様な物を出した。

 

「そ、それで何をするつもりですか?」

 

私は怖いのを我慢しておじいさんに聞く。

 

「簡単じゃよ、この刀でなぁ。」

 

おじいさんは笑顔で言った。

 

「その娘を殺すんじゃよ。」

 

「あ・・・ああ・・・・」

 

 

怖い

 

 

その言葉しか浮かばない。

 

私はあまりの恐怖で逃げる事すら出来なかった。

 

「さて、その娘には死んでもらうかの。」

 

動けない、動かない。

まるで金縛りにでもあったかのように私の身体は動かない。

 

―――その時私の手が震えた。

 

これはテレサちゃん!?

 

私が抱っこしているテレサちゃんは震えていた。

そうだ、テレサちゃんだって怖いんだ。

 

私が怖がっていたら、テレサちゃんはもっと怖がってしまう。

 

私はなんとか身体を動かす。

 

「逃げるな、儂が殺せなくなるじゃろ。」

 

「そんなことさせませんっ!」

 

私はテレサちゃんを抱っこしまま、おじいさんから逃げ出す。

 

しかし、

 

「まあ逃げても無駄なんじゃがの。」

 

おじいさんは一瞬で私の前に現れ・・・

 

ズバアッ

 

手に持つ刃物をテレサちゃんに刺した。

 

「テレサちゃん!?」

 

おじいさんは刃物をテレサちゃんの身体から抜き、もう一度刺そうとすが・・・・

 

バキバキッ

 

おじいさんは吹き飛ばされる。

 

私が抱っこしていたテレサちゃんは、立っていた。

重症のはずなのに!?

 

「テレサちゃん早く治療を!」

 

テレサちゃんは虚ろな目で、吹き飛ばされたおじいさんを見ている。

 

「そうだったなぁ、お主は重症を負っても動けるんだったなぁ。」

 

おじいさんが立ち上がりながら言う。

 

テレサちゃんがゆっくりとおじいさんに向かって動いていく。

 

「テレサちゃん、待ってください!」

 

私が止めようとしてもテレサちゃんは止まらない。

 

「テレサちゃん!」

 

 

 

*********************************************

 

 

兄ちゃんの援護で結界の中に入れたけど、また龍が現れて前に進めない。

 

「どけぇっ!」

 

グオオオオォ

 

テレサとアーシアがどうなっているのか分からないってのに!

 

ドゴオオオオン

 

この音は・・・・

 

俺でもなければ龍でもない、何だこの音は?

 

バキバキバキッ

 

また音はがした。

今度はまた別の音だ。

 

この音は過去にも聞いた事がある。

 

テレサッ!?

 

そうだこの音はテレサの・・・・

だったら尚更時間がないっ、さっさとこの龍を片付ける!

 

俺は兄ちゃんに渡した剣と同じ剣を創り、龍に向かって突っ込んだ。

 

 

***

 

 

「なんて強い龍だよ・・・・」

 

なんとか倒す事が出来たが俺の身体はもうボロボロだ。

時間を掛ければもっと身体の傷は少なかっただろう。

 

この辺りにテレサとアーシアがいるはずなんだけど・・・

 

ドゴオオオオン

 

辺りに轟音が鳴り響く。

 

そこかっ!

 

俺は轟音のした場所に向かった・・・・

 

 

 

*********************************************

 

 

 

黒い衣を着た老人の足下で倒れているのは血まみれになったテレサだった。

幼い身体には無数の刀傷が刻まれており、かなりの重傷だということが分かる。

老人が握っている刀についた血から、老人がやったのだろう。

 

「ガハハハッ、幼い身体になっていたのは間違いだったな!」

 

老人は上機嫌といった様子で笑い、血のついた刀を止めの一撃と言わんばかりにテレサに刺した。

 

「テレサッ!?」

 

「テレサちゃんっ!?」

 

イッセーとアーシアが叫び声を上げるが、老人は気にした様子も無く、テレサの身体を持ち上げアーシアのいる所に投げ捨てた。

 

「その娘も思い知ったじゃろう、神の邪魔をするとどうなるのかをのうっ。」

 

老人はまた笑いだす。

 

「テレサちゃんっ、テレサちゃんっ!?」

 

テレサに駆け寄ったアーシアが必死にテレサに声を掛けるが、テレサからは返事がない。

 

「待ってて下さい、今治してあげますからっ!」

 

そう言いアーシアは自身の神器でテレサの身体を治そうとするが、テレサの身体の刀傷から吹き出る血が止まる様子はない。

 

傷が多すぎて治癒が間に合わないのだろう。

 

「あーしあ・・・ちゃ・・ん・・・」

 

普通なら意識を失っていてもおかしくないのだが、テレサが声を出した。

テレサが悪魔の血を引いていることが、テレサの意識を保たせているのかもしれない。

テレサはアーシアの名前を呼ぶが、その声に力はない。

 

「テレサちゃんっ、喋らないで下さいっ!」

 

「どう・・・して・・ないて・・・いる・・の?」

 

「それはテレサちゃんが・・・・」

 

死んでしまう。

そんなことはアーシアには言えなかった。

言ってしまったら、テレサの死を認めてしまうことになるからだ。

 

「・・・・」

 

アーシアは助かるはずの無いテレサの刀傷を治療するしかなかった。

 

認めたくない、ただそれだけがアーシアをに神器を使わせていた。

 

「待ってて下さい、今傷を治してあげますから・・・痛いのは無くなりますからっ・・」

 

アーシアはテレサにそう言いながら治療を続ける。

この言葉はアーシアが自分に言い聞かせていただけなのかもしれない。

 

自分がテレサの刀傷を治せば、テレサは助かるのだと・・・

 

「わたしは・・いた・・・く・・ないよ・・だから・・・あーしあ・・・・」

 

テレサは残された最後の力をふりしぼって声を出す。

 

「なかないで・・・」

 

そう言いテレサは瞳を閉じる。

 

「どうしてですか・・・」

 

アーシアはまだテレサに神器を使っている。

 

「どうしてテレサちゃんがっ!」

 

神器を使っているアーシアは既に、テレサが死んでいることは分かっていた。

 

「私の・・・私のっ・・・・」

 

アーシアにとってテレサは大切な友達であり、家族のような存在だった。

 

「あの時、私の力は凄い力だって言ってくれたのに・・・」

 

かつてアーシアは人々から聖女と呼ばれていた。

 

「なにが聖女ですか・・・私だけ助けてもらったのに・・・助けてくれたテレサちゃんを助けられないなんてっ!」

 

既にテレサは死んでいた、しかしそれでもアーシアはまだ神器を使い続けた。

 

「また・・・・守れなかった。」

 

イッセーはその場に立ち尽くす事しか出来なかった。

 

 

 

*********************************************

 

 

また・・・・テレサを・・・・

あの夢と一緒じゃないか。

もう二度と、テレサを見ることが出来なくなった・・・・

 

「ついでじゃ、お主も殺しておいてやる。」

 

じいさんが俺に近づいてくる。

 

「テレ・・サ」

 

「安心しろ直ぐにお前もあの娘と同じ所に逝ける。」

 

確かにその方がいいのかもしれない。

もう・・・俺は・・・・

 

「そうだっ、絶望を味わったまま死んでいけっ!」

 

じいさんの刀が俺に降り下ろされる。

 

―――その時、辺り一面が光に包まれた。

 

「なんだっ、なんだこの光はっ!?」

 

じいさんの動きが止まる。

光が発生したのは・・・テレサとアーシアのいた所か。

 

俺はふとその場所を見る。

 

 

あれ?テレサがいない・・・・

 

 

「ふんっ、まあいいっ。」

 

じいさんが再び俺に刀を降り下ろす。

 

今、テレサの声が聞こえたような・・・

 

―――その刀は俺の身体を切り裂くことは無かった。

 

「まったく・・・・」

 

俺が移動したからだ。

いや、俺が移動したじゃなくて・・・・

 

「私の家族に何をするつもりだったの?」

 

移動させられたんだ。

 

「テレ・・・・サ?」

 

俺の前には見覚えのある女性が立っていた。

 

「どうしたのイッセー?」

 

でもこの人はっ・・・もう・・・・

 

「本当にテレサ・・・なのか?」

 

「おかしなことを言わないでよ、私はテレサだよ忘れたの?」

 

「でもさっき・・・」

 

「アーシアが治してくれた。私の身体も私の記憶も・・・・」

 

アーシアが?

 

「――さて、おじいさん決着をつけよっか?」

 

「ぐぬぬ、まさか瀕死の状態から復活するとはっ!」

 

テレサがじいさんの方を向く。

 

「待っててね、イッセー直ぐに終わるから・・・」

 

また戦うのか?

テレサが・・・・・

 

あの時も見ているしか出来なかったのに・・・

また俺は見ているだけなのか・・・・

 

 

嫌だ!俺はテレサを守ると決めたんだ!

俺が守られてどうする!

 

「テレサ・・・」

 

「ん?どうし―――」

 

テレサが倒れそうになったので俺が支えた。

俺が意識を《奪った》ので当然か・・・

 

「アーシア、テレサを頼んだ。」

 

「はいっ。」

 

アーシアが駆け寄ってくる。

テレサ意識は後で返す。

 

後で何と言われても構わない。

 

でも俺は、

 

「禁手化<バランス・ブレイク>」

 

このじじいをぶっ飛ばす!

 

「ふんっ、お主が戦うのか?」

 

じいさんが俺を見て言う。

表情から余裕だということがよく分かる。

 

だけどな・・・

 

「じじい、借りは100倍返しだ!」

 

そんな余裕直ぐに壊してやるよ!

 

 

 

 





ここが終わったらライザー編に入ります。
もう少しで終わります。

レイナーレはありません。


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イッセーの禁手

イッセーとヴァーリの神器の名前が浮かばない。
どなたかアイデアを下さい。


数分前

 

《テレサ達の家》

 

「やはり行くべきかっ!いや・・・それだと・・・」

 

今私は玄関とリビングの間を何度も往復していた。

 

「リイン・・・そんなに心配なら迎えに行ったらどうですか?」

 

オリヴィエが何か言っているがそんなことはどうでもいい。

 

「・・・」

 

こんなことになるならいつも一緒に買い物に行けば良かった!

よくテレサが私の買い物に付いてきたいと言っていたのに、駄目だと言ったりしなければ・・・・

 

「帰りが遅い~。」

 

いくらイッセー、ヴァーリ、アーシアがいたとしても不安だ・・・

 

「やっぱりこの目でテレサの無事を確認出来ないのは・・・」

 

私が買い物に夢中になっている間にテレサにもしもの事があったら・・・なんて考えていたのが失敗だった!

 

「最近テレサは私と買い物に行きたいって言わなくなってたし~。」

 

やっぱり嫌われてしまったのか?

 

幼いテレサはとても純粋だ・・・なんでも真に受けてしまう。

 

幼いテレサには私が初めて会った時とは違う可愛いさがあって、ついつい私も可愛がりたくなってしまう。

昔幼いテレサを可愛がりたくて、テレサに禁手を頼んだ事があったしな。

外見は変わらないけど・・・

 

もちろん、大きくなったテレサも可愛い、幼かった頃の話をすると恥ずかしがったりするのなんて特に可愛い。

 

一番可愛い反応をするのはテレサが熱になった時の話だな。

 

「うう~、てれさぁ~。」

 

今からでも行った方が・・・・

 

ゴンッ

 

「―――いいかげんメソメソするのは止めないか!」

 

「あ、頭がぁ・・・ってイングヴァルト?」

 

私の前には下着姿のイングヴァルトがいた。もう昼過ぎなのに今起きたのか・・・

 

「でもぉ~。」

 

「そんなに心配なら念話でもすればいいだろ!」

 

その手が有ったか!

私はテレサと一緒にいるイッセーとヴァーリに念話するが・・・・

 

「・・・繋がらないだと!?」

 

 

 

***

 

 

 

《結界付近》

 

私、オリヴィエ、イングヴァルトは家を出て皆が買い物に行った場所に向かっていた。

目立つ訳にはいかないので今回も走って移動するしかない。

緊急事態だというのにっ!

走ってだと時間がかかる・・・

 

だが全力で走っていたので、皆が買い物に行っていた商店街の近くには来ている。

 

私は商店街の周辺を見る。

 

「やはり結界か!」

 

念話が繋がらないということは、気絶等の念話を出来ない状態、もしくは結界等の念話を出来ない空間にいるということだ。

 

イッセーとヴァーリに限って前者はありえない。となれば必然的に後者になる。

皆はあの結界の中にいるのだろう。

「破壊するか?」

 

イングヴァルトが私に聞いてくる。

「そうだな破壊しよう。」

 

だがかなり強固な結界のようだ、その証拠に・・・・

 

「俺の全力の攻撃をくらいやがれ!」

 

「我の最高の攻撃だ!」

 

「この僕にこれを使わせるとは・・・」

 

結界の周辺にいる三人から攻撃が放たれるが結界は揺るぎもしない。

 

「私達も始めましょう。」

 

「そうだなオリヴィエ・・・」

 

だがどれほどの固さであっても破壊しなければならない。

 

「やるぞ!」

 

「はいっ!」

 

「ああっ!」

 

私達は結界の破壊の為、結界に接近するが・・・

 

「―――君達に結界を破壊してもらっては困るんだよ。」

 

突如私達の前に黒い衣を着た者が現れる。

 

数は・・・・五人か。

私達に武器を向けていることから話し合いに来た様では無いな。

 

『・・・・リイン、イングヴァルト、先に結界に向かって下さい。』

 

『だがオリヴィエ!』

 

佇まいからコイツらそれなりの実力者だ。

一人で相手をするというのは・・・・

 

どうすればいい・・・この様子では結界の中にも敵がいる可能性が高い。

 

テレサも心配だし・・・・こうなったら、

 

『オリヴィエとイングヴァルトが結界に向かってくれ、私がコイツらの相手をする!』

 

私が残る。

 

オリヴィエとイングヴァルトは、一対一ならかなりの強さだが多対一となるとそうでもない。

 

『しかしリイン!』

 

『それだとお前が・・・』

 

多対一なら私の方が相性がいい。

それにコイツらの着ている黒い衣。

テレサを刺した老人を連想させて、何か嫌な感じがする・・・・あまり悩んでいる時間はなさそうだ。

 

「行けぇ!」

 

私は前の五人に光の塊を放つ。

私の放った光の塊が破裂し、敵五人の視界が光に包まれる。

 

目の前の敵五人に生じた隙を逃すオリヴィエとイングヴァルトではない。

 

「無事でいて下さいっ!」

 

「クッ、仕方ないか!」

 

オリヴィエとイングヴァルトは翼を出し、敵五人を抜き結界に向かった。

後はこの五人を・・・

 

「―――誰が我々は五人と言った?」

 

結界に向かう、オリヴィエとイングヴァルトの背後に剣を持った男が現れる。

 

ずっと気配を消して隠れていたのか!?

オリヴィエとイングヴァルトは気づいていないっ!?

私はその男に近づこうとするが・・・

 

「行かせませんよ?」

 

敵五人の妨害を受けて近づけない。

 

「二人共っ後ろに―――」

 

「―――遅いっ!」

 

男が二人に斬りかかる。

 

キイィィィン

 

「オリヴィエ、イングヴァルト!」

 

私が二人の名前を叫ぶが返事がない・・・

 

やられたのか!?

 

「お前は!」

 

いや、違う。

 

「誰が我々は五人と言った・・・か。」

 

オリヴィエとイングヴァルトの背後から斬りかかった男の剣を、受け止める男がいた。

なるほど・・・

 

「僕達の方も三人とは言って無いだろ?」

 

ヴァーリか!

 

「おいヴァーリ、お前が止めなくても私は反応出来たぞ。」

 

「イングヴァルト、そこは素直にお礼を言った方がいいのでは?」

 

どうやら二人共無事だったようだ。

 

「お前何処から来たっ!」

 

ヴァーリは無言で指を差す。

その指を差した場所は・・・・

 

「結界・・・だと!?」

 

男の言ったように、ヴァーリが差したのは結界だった。

 

「あの御方がいるはずでは!?」

 

「あの御方?ああ、テレサを刺したじじいのことか。」

 

なんだとっ!?

 

「今アイツならイッセーと戦ってる。」

 

「おいヴァーリ、ならどうしてこっちに来たっ!」

 

アイツが何をしたか忘れた訳じゃないだろ!

 

「いや、僕だってアイツに借りを返したかったさ・・・・」

 

「ならどうして・・・」

 

ヴァーリは結界の方を向き言った。

 

「だって僕達の目的はもう達成されたんだから。」

 

 

 

*********************************************

 

 

《結界の中》

 

 

今でもよく覚えている。

あの時テレサは俺と兄ちゃんの前に立って、このじじいの槍に刺された。

 

テレサは槍に刺されて血まみれになっても戦い続けた。

 

その時俺は動けなかった。

怖かったんだ・・・・テレサを刺した槍が今度は自分を刺すんじゃないかと。

 

 

大きくなった今でも思う、あの時どうして動けなかったのかと!

 

「いくぞじじい・・・」

 

「ふんっ若造が、調子にのるなぁっ!」

 

じじいが刀を持って俺に斬りかかるが・・・

 

ドゴォ

 

「ぐはぁっ。」

 

じじいの刀が俺の身体に届く前に俺の拳がじじいに当たる。

 

「まだだ!」

 

禁手化して両手に装着された籠手でじじいに何度も攻撃を仕掛ける。

この瞬間にしかじじいの力を上げることは出来ないっ!

だから一発でも多く・・・・

 

ズバァ

 

「クッ。」

 

俺の身体がじじいの刀に切り裂かれる。

さっきの龍との戦いがなければ、かわせたかもな・・・

いや、そんなこと言ってもしょうがないか。

 

俺はじじいから離れて距離をとる。

 

「どうした、お主の能力は儂に近づかないと意味がないんじゃないのか?」

 

じじいが笑いながら言う。

笑ってられるのは今だけだぞ。

 

「十発は・・・攻撃したか?」

 

「十発程度でこの儂が、力を操れなくなるなどあり得ん!」

 

俺の視界からじじいが消える。

 

ズバァ

 

「うっ。」

 

今度は背中を切り裂かれた。

 

「儂は元々力を弱くしてこの世界に来ておるんじゃ。お主に力を強くされた所で弱くする前に戻るだけじゃ!」

 

「・・・随分と速くなったじゃねえか。」

 

「コイツ・・・儂を舐めとるのか!」

 

ズバァ

 

また俺の身体が切り裂かれる。

 

「舐めてるのは・・・お前だろ・・・」

 

コイツは俺の禁手の能力を知らない。

俺の禁手の能力は・・・・

 

「―――ぐっ。」

 

じじいが片手で俺の首を締める。

 

「ふんっ、大口叩いてた割には呆気ないものじゃったな・・・そうじゃ!」

 

じじいの持っていた刀が消え、槍が現れる。

 

「これで止めをさしてやろう。」

 

じじい・・・・

 

 

油断したな!

 

俺の拳がじじいに当たる。

 

「ふんっ、こんな弱い攻撃儂には効かん!」

 

それはどうかな?

 

じじいは俺に槍を刺そうとするが・・・・

 

「ぐうっ、何だこれはぁ!?」

 

じじいが俺の首から手を離し苦しみだす。

 

「力が、力が操りきれんっ!?」

 

「・・・・・だろうな。」

 

「お主、何をしたぁ!?」

 

じじいの顔には、今までの余裕はない。

 

「大した事はしてねえよ・・・俺の禁手の能力が発動しただけだ。」

 

俺の禁手の能力は、禁手を発動してから相手に攻撃した回数だけ相手の力を倍にする能力。

この能力は禁手状態で相手を攻撃してからしばらく待ち、もう一度攻撃すると発動する。

 

じじいは痛く無かったみたいだけど、さっきのあれも立派な攻撃だ。

俺がじじいを攻撃したのは十回以上だ。

つまり、今じじいの力は今までとは比べ物にならない程になっているということだ。

 

「これで力は操れなく―――」

 

「―――儂を舐めるなぁ!」

 

苦しんでいたじじいが俺に向き直る。

 

「十乗だぞ・・・」

 

俺はじじいにやられたダメージが大きくて動けない。

 

じじいが俺に槍を刺しにくる。

 

「もう動けまい、死ねえ!」

 

 

いや、

 

 

動けないんじゃなくて・・・・

 

 

「バーカ。」

 

動こうとしないんだ。

 

じじいの槍が俺に刺さる瞬間、俺の前に大きな鏡が現れる。

 

「なっ!?」

 

もう遅い。

この鏡の能力は・・・・

 

攻撃の反射だ。

 

「どうだよ・・・自分の槍で貫かれる気分は・・・」

 

昔奪った神器が役にたった。

 

「ぐぅ、お主最初からこれを・・・・儂の攻撃で儂に止めをささせるつもりだったのか!?」

 

「ああ、だが少しだけ違うな・・・・」

 

俺は拳を強く握る。

 

「止めは・・・俺の攻撃だぁ!」

 

俺はじじいに向かって、持てる限りの全力で拳を放った。

 

ドゴォォン

 

物凄い音と共にじじいは吹っ飛ばされる。

 

「ハァ・・・ハァ・・・・」

 

血を流し過ぎたし、もう限界か・・・

テレサの借りは・・・返した・・・・・

 

目的を果たして緊張の糸が切れたのか、俺は意識を手放した。

 

 




次回はライザー編に入ります。
といってもプロローグのような話ですけどね。

神器の名前どうしよう・・・・


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ライザー編
幻鳥の故郷



すいません遅れました。


???年前

 

 

《転生の間》

 

 

「だから言ってるだろ、俺は使い魔が欲しいんだって!」

 

「使い魔って・・・・そんなショボい特典で本当にいいのか?」

 

「だったら強い使い魔にすればいいだろ!」

 

「なるほど、強い使い魔か!」

 

俺の前にいる神は納得したといった様子だ。

最初からそうすれば良かったのに・・・

 

「ウ~ム、強い使い魔といってもどんな使い魔がいいかのう。何か希望はないのか?」

 

「そうだなぁ・・・・」

 

強い使い魔か、

 

「神様、俺の種族って自由に決められるのか?」

 

たしか俺の転生する世界はハイスクールD×Dだったはずだ。

 

「ああ、出来るぞ。」

 

「じゃあ俺の種族を天使にして、それから俺の使い魔は青龍、朱雀、白虎、玄武にしてくれ。あと原作との矛盾は神様の力でどうにかしてくれ。」

 

たしかこの扉の先に行くと転生するんだったよな。

 

「じゃあよろしく!」

 

俺は扉を開けハイスクールD×Dの世界へ向かうのだった。

 

 

***

 

 

「行ってしまったのお・・・・」

 

最近の人間は先を急ぎすぎる。

それにしても《原作との矛盾》を消せか、

 

 

「天使は使い魔持てないじゃろ・・・・」

 

天使でも使い魔を持てるようにしろということかのぉ。

そんなことをするのは大変だし、四聖獣には適当に主を探してもらうか・・・

 

 

 

*********************************************

 

 

 

過去にあった天使、堕天使、悪魔の戦争。

どの勢力も、多くの犠牲者を出しながらも戦争は長く続いていたがある時、戦争が行われている冥界に二体の龍が出現する。

その龍達は戦争に介入するために来た訳ではなく、互いに争っていただけなのだが、その二体の龍の争いにより周辺だけでなく、天使、堕天使、悪魔にも大きな被害が出た。

これにより、二体の龍の被害にあった三つの勢力は一時的に停戦協定を結び、二体の龍を討伐するため手を組んだ。

三つの勢力が手を組んだ際、各勢力で互いに裏切らないよう監視が送られた。

その中で天使側から悪魔側に送られたのは、

 

あるシスターと聖獣《白虎》だった。

 

戦いが終わった今でも白虎は冥界の悪魔領の《ある土地》に居る。まるで主の帰りを待っているかのように・・・・

 

 

*********************************************

 

 

 

《魔王の部屋》

 

 

やっと書類が終わった。

いつも後回しにしていたから、量が多かった・・・

 

コンコン

 

私の部屋をノックする音が聞こえる。

 

「どうぞ。」

 

私がそう言うとメイドが入ってきた。

大きな箱を持っていて顔が見えない。

 

「失礼します。」

 

この声は・・・

私の妻であるグレイフィアのようだ。

グレイフィアがよろけながらも私の方へ近づいてくる。

よろける程思い荷物なのか!?

 

ドンッ

 

床に箱が置かれる。

グレイフィアは箱の中から紙の束を取り出した。

まさか・・・・

 

「では、今日中にこの書類を片付けて下さい。」

 

・・・・やはり。

 

私の机の上に大量の書類が置かれる。

さっき、これと同じ量をの書類を終わらせたばかりだったと思うんだけど・・・・

 

「そろそろ休憩しても・・・」

 

「ーーーちゃんと終わらせて下さいね。」

 

グレイフィアが私を睨んでくる。

今まで書類を片付けていなかったのに怒っているのだろう。

 

「・・・・・分かった。」

 

私がそう言うとグレイフィアは、失礼しましたと言って部屋を出ていった。

 

 

この書類を終わらせるのに何時間かかるのだろうか・・・・

今まで書類を片付けていなかったことを後悔しても無意味か。

 

私は書類に目を通す。

全部土地関係の書類の様だ。

 

どの土地も、誰も管理する悪魔がいない土地だ。

冥界にはそんな土地は幾らでもある。

 

それもそうか、土地を管理するのは上級もしくは最上級悪魔だ。

そんなに沢山の数がいるわけではない。

それに多くの土地を持つと管理が大変だ。

 

誰も管理する悪魔がいないと我々魔王が管理しなくてはならない。

誰か土地を貰ってくれる悪魔はいないのだろうか。

 

「サーゼクス様、早く書類を片付けて下さい。」

 

「グレイフィア!さっき部屋を出たばかりじゃ・・・・」

 

「さっき?もう一時間は経ってますよ。」

 

そんなことは・・・・

私は部屋にある時計を見る。

 

 

あ・・・・

 

「一時間経ったのに一枚も終わってないとは・・・」

 

グレイフィアは呆れたような顔をしながら言う。

 

「仕方ないですね。終わるまで私が見張りましょう。」

 

「あっ、いやでも・・・・」

 

「ーーーあれだけあったのに全然進まなかったですよね。」

 

その後私は一回も休憩することなく(もらえなかった)グレイフィアに見張られながら、書類を片付けたのだった。

 

 

 

*********************************************

 

 

 

《冥界・???》

 

 

現在私達は冥界の空を飛んでいた。

 

「空飛んで移動するなんて何年ぶりかな~。」

 

「テレサは千年以上飛んで無かったな・・・」

 

リインが落ち込んだ様な声で言う。

 

「記憶が無くなったのも私のせいなんだから気にしなくていいって!」

 

「いや・・・しかし・・・」

 

まったく・・・

私の記憶が戻ってから皆ずっとこの調子だ。

 

「もう私は大丈夫だって。」

 

「まだ記憶が戻ってからそんなに日が経ってないだろ。」

 

そういえばリインは最後まで私が空を飛ぶのに反対してたね。

私が抱っこして連れていくとかなんとか・・・

 

「そんなに私の事を心配しなくても・・・」

 

「ーーー皆テレサちゃんの事が大切なんですよ。」

 

「アーシア・・・・」

 

私の事が大切・・・か。

そう言ってくれると嬉しいけど過保護なのは困る。

 

それにしてもアーシアまで悪魔にしてしまうなんて・・・

アーシアは別にいいって言ってくれたけど、アーシアは元々シスターだからショックだったと思う。

本当によかったのかなぁ。

 

私の悪魔の駒は私の許可なく勝手に悪魔にする事がある。

あれ・・・する事がある、

じゃなくてリイン以外は悪魔の駒が勝手に悪魔にしてるんじゃ・・・

 

イッセーとヴァーリも私の記憶が戻る前から悪魔になってたみたいだし。

私の悪魔の駒はなんとかしたほうがいいね。

 

「テレサちゃん、この子の故郷まで後どれくらい掛かりますか?」

 

「もうちょっとかな。」

 

この子とは、

オリヴィエにお姫様抱っこされているアーシアの頭の上に乗っている鳥の事だ。

 

アーシアが地上で拾ってきた。

元々この鳥は冥界に住んでいる鳥なんだけど、何故か地上にいたらしい。

 

翼を怪我していたので、怪我が治るまで私達の家で飼うつもりだったけど、そうもいかない理由があった。

それは地上と冥界の生物の違いだ、この鳥が餌にする生物が地上には居らず、地上で飼うにしても餌を出してあげられない。

 

怪我が治るのにも時間が掛かりそうだし何度も冥界に行って餌を取りに行くなら、この鳥の故郷に送り届けた方がいいということになったのだ。

 

まあその為だけに冥界に来た訳じゃないんだけどね。

 

私達が冥界に来た理由、

 

それは確認の為だ。

この鳥の名前は《フェニックス》不死の幻鳥だ。

悪魔の名家でもあるフェニックス家の持つ不死の力と同じ力を持っている。

ちなみに名前が同じだがどちらが先についたのかは知らない。

 

この鳥が生息する場所は一ヶ所しかない。

かつて私の父様が管理していた土地だ。

この鳥、フェニックスが怪我をすることは滅多にない。どんな傷でも再生するからだ。

 

それなのにこの鳥は怪我をしていた。

ということはあの土地に何かあったのかもしれないのだ。

 

私はあの土地で生活していた記憶があまりない。私が幼かったからだろう。

あまり覚えていないとしても、父様が大切にしていた土地だ。何かあったら嫌だ。

なので私は土地を確認しに来た。

 

「テレサ、この辺だったよな?」

 

イングヴァルトが私に聞いてくる。

 

「そうだったけどどうしたの?」

 

イングヴァルトが指を差す。

私はイングヴァルトが差した方を向く。

 

「え?」

 

私が見たのは、霧に包まれたあの土地だった。

 

 

 

***

 

 

 

「テレサ、僕達で全体を見てきたがどうやらこの土地だけ霧に包まれているみたいだ。」

 

「ありがと、イッセー、ヴァーリ。」

 

「あ、ああ。」

 

「う、うん。」

 

まだ二人とも私に対して、ぎこちない反応だ、まあいきなり元に戻ったから仕方ないかな。

 

「どうしますかテレサ?」

 

アーシアを抱っこしたままのオリヴィエが聞いてくる。

 

「とりあえず降りよう。」

 

ずっと飛びっぱなしだったからね。

 

 

***

 

 

私は今空から降りて、霧の中に入ろうとしているんだけど、

 

「やっぱり入ってみようかなぁ。」

 

「駄目だテレサ、危険すぎる!」

 

「そうですよテレサちゃん!」

 

リインとアーシアの反対で入れない。

 

「じゃあどうるの?」

 

二人に聞いてみると、

 

「様子を見よう。」

 

「そうですよ、様子を見ましょう。」

 

ずっとこれだ。

 

「でもそれじゃーーー」

 

「ーーーおいテレサ!」

 

「どうしたのイングヴァルト?」

 

イングヴァルトが私の肩を叩いてくる。

 

「霧が!」

 

霧?

 

私は土地を見る。

そこでは、

 

「霧が無くなってる!?」

 

あれほど濃かった霧が無くなっていたのだ。

霧が無くなり森が見えている。

 

『やっと見つけた。』

「これは・・・念話!?」

 

どうやら私だけでなく、オリヴィエにも聞こえている様だ。驚いている。

 

いや、私とオリヴィエだけでなく、他の皆も聞こえているみたい・・・

 

「何者だ!姿を表せ!」

 

イングヴァルトがそう言うと、

 

『いいだろう。』

 

返事が聞こえたかと思ったら森の中から白い虎が出てきた。

 

『待っていたぞ姫、数千年ぶりだな。』

 

数千年ぶり?

それに・・・・姫?

 

『テレサ、お前の事だ。我が主の娘よ。』

 

「私が・・・・姫ぇ!?」

 

 

 

 

 





前回の続きがどうなったかについては後々やります。


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テレサの神器

とりあえずイッセーの神器の名前は決まりました。
ご感想にも複数あった収穫を入れて、収穫の籠手にしました。
ヴァーリはまだ決まってません。



《冥界・旧シュバリナ嶺》

 

 

 

現在私達は白い虎と共に、森の中の獣道を歩いていた。

白い虎が言った言葉の意味を確かめようとしたら、虎が付いて来いと言って森に向かって歩き出したので聞き逃してしまい、聞くに聞けなくなってしまったのだ。

 

『おいテレサ、姫ってどういう事だ?』

 

イングヴァルトが私に念話で聞いてくる。

 

『私だって知らないよ!そもそもこの虎のことだって知らないんだし・・・・』

 

でも虎の言っていた[我が主の娘]という言葉。本当に娘が私の事だったとしたら、この虎の主というのは私の両親のどちらかになる。

 

母様は人間だったから、使い魔は持てない。

じゃあ父様の使い魔?

 

でも私は昔、悪魔について色々と父様に教えてもらった事があり、その時に使い魔についても教えてもらった記憶がある。

その時、私は父様に使い魔を持っているのか聞いたけど持っていないって言っていた気がする。

 

・・・・・考えれば考えるほど分からなくなってきた。

 

 

ーーーバサバサッ

 

鳥の羽音が空から聴こえた。

私達が音のした方を見ると、

 

沢山の鳥が空を飛んでいた。飛び方からして、どうやら群れのようだ。

飛んでいるというより、舞っているの方が合ってるかな。

今私達の目の前にいる鳥は全てこの土地でしか生息しない幻鳥フェニックスだ。

ただ飛んでいるだけなんだろうけど、この光景は美しいと言わざるを得ない。

金色の体が美しさをより際立てている。

 

「綺麗だな。」

 

「うん。」

 

この光景を過去に一度だけ見たことがあるリインがフェニックスの群れの感想を言う。

他の皆は驚いているのか、ただ呆然とこの光景を眺めている。

 

 

『着いたぞ。』

 

そう念話を私達に伝えると、ゆっくりと虎の足が止まる。

 

着いた?

一体どこに着いたのだろう。

 

私は周辺を見渡す。

 

「何あれっ!?」

 

私は思わず声を上げて驚いた。

 

私が声を上げて驚いていたからだろう。

他の皆も私が驚いている方を向いた。

 

「なんだあれは!?」

 

「あんなの見たことないぞ!」

 

「私のいた世界では考えられない大きさですね。」

 

「城か?こんな大きさは僕も見たことないな・・・・」

 

「俺も見たことない大きさだ!」

 

「あれがお城なんですかぁ~。初めて見ました。」

 

やっぱり驚くよね。

沢山のフェニックスに気を取られていたから気づかなかったけど、まさかこんなに大きな城があったなんて・・・・

 

ってゆうか、

 

「アーシア、城を見るのは初めてなの?」

 

「はいっ、こんなに大きなものなんですねお城って。」

 

初めてだからこれが普通の大きさだと思っているのかな・・・

 

「普通の城はもっと小さいよ。」

 

「えっ、そうなんですか!?」

 

やっぱり知らなかったんだ・・・・

 

 

ーーーギギギギ

 

なにこの音?

金属と金属が擦れるような音がする。

 

『いま正門を開けたぞ。』

 

「正門?どこにあるの?」

 

『もっと奥だ。』

 

正門まで着いてから止まればよかったのに・・・・

 

『今まで進んでいた森の獣道は複雑で迷うからな、ここからなら迷う事がないだろ。』

 

確かにもうこの先は道が整備されていて、迷う事が無さそうだけど・・・

これだけ城が大きいんだから、空を飛べばよかったんじゃないかな。

 

『ちなみにこの城は遠くや空から見ると見えないようになっている。』

 

だったら歩くしかない・・・・って!

 

「あなた私の心読んでる!?」

 

『そういう訳ではない、ただ昔にも同じようなやり取りがあっただけだ・・・』

 

「・・・・昔?」

 

『姫はここに残って仲間には先に城に行ってもらえ』

 

「え、どうして?」

 

『大事な話があるからだ。姫のことについてな・・・・』

 

「・・・・でも。」

 

わざわざ皆にここまで来てもらったのに・・・

 

「ーーーテレサ、私達は先に行ってるぞ。」

 

リインはそう言うと皆を強引に連れて行った。

気を使ってくれたのかな。

 

『ありがとね、リイン。』

 

『・・・・・・ああ。』

 

 

そして、皆の姿が見えなくなる。

 

「それでどういう話なの?」

 

『それはだな・・・・』

 

 

 

*********************************************

 

 

 

「テレサについての話って何だろうな。」

 

俺達はリインに強引に連れられて、城の正門に向かって進んでいた。

 

「さあ?僕にも分からないな。」

 

「あの虎さんはテレサちゃんの事を知っていたみたいでしたね。」

 

確かにアーシアが言ったようにあの虎はテレサの事を知っていたみたいだった。

それもずっと昔から。

 

「テレサの過去・・・・か。」

 

「気になるのかイッセー、テレサの過去が?」

 

「それは気になるけど・・・・」

 

「どうしても気になるならテレサに聞け。」

 

「うん。」

 

そのうちテレサに聞いてみよう。

 

「それとイッセー。」

 

「ん?」

 

「もうまともに神器は使えるようになったのか?」

 

うっ!

 

「いや・・・・まだ中途半端。」

 

俺がそう言うと、リインがやれやれとため息をつく。

俺の神器《収穫の籠手<ハーベスト・ギア>》は禁手化するとしばらくの間、神器としての能力をまともに使えなくなる。

テレサから奪った意識を戻すのも大変だった。

俺はまだまだ弱い・・・今思えばあのじじいとの戦いも賭けだった。

収穫の籠手の禁手で相手の能力を強化する量は毎回違う。あの時は運が良かった。基本的に本来の能力である累乗になることは滅多にない。

それに俺が禁手化するといつも違和感がある。やっぱりそれは使いこなせていないからだろう。

 

 

「イッセーさんも神器が使えないんですか・・・・」

 

アーシアが残念そうに呟く。

そういえばアーシアの神器も今は使えないんだっけ?

 

「大丈夫だよアーシア、俺の神器と同じようにしばらくしたら使えるようになるから。」

 

「イッセーさん・・・・」

 

そういえば、結局テレサを治したのはアーシアの神器だっな。

あの時アーシアの神器《聖母の微笑<トワイライト・ヒーリング>》でテレサの記憶が治った。

でもアーシアは記憶を治そうとしたんじゃなくて、テレサの怪我を治そうとしたと言っていた。

その時の神器はいつもの感覚とは違っていたとも言っていたから多分、聖母の微笑の禁手だろう。

能力は・・・なんでも治す能力とかかな?

 

「早く・・・・神器を使えるようにならないとな。」

 

確かにあのじじいは倒した。

後から来た兄ちゃん達がじじいが消滅するのを見たって言ってたしな。

 

「僕もそう思うが、神器を使えるようにするのを急ぐなんて、何かしたいことでもあるのか?」

「もしもの為に、急いだ方がいいだろ?」

 

でも、

 

「まあそうだが・・・・」

 

 

何か嫌な予感がするんだよ。

 

 

 

「ーーー皆、着いたみたいだ。」

 

どうやら着いたみたいだ。

開いた大きな門があり、その前には執事服を着た男がいる。

 

そしてその男が口を開く。

 

「ようこそ、客人は歓迎しますよ。」

 

 

 

*********************************************

 

 

 

 

 

『最後に一つ聞こう・・・姫は神器の禁手を使った後、いつもどうなっている。』

 

「それは・・・・」

 

私の人格が別のものになる。

 

『しばらくは神器が使えない状態にならないか?』

 

「まあ確かに禁手だった時間とか規模によって使えない(人格が代わる)時間は違うけどそうだね。」

 

『なら姫、長時間の禁手の使用は止めておけ、姫の神器は身体に大きな負担がかかる。禁手後に神器が使えなくなるのも身体に負担がかからないように神器が使えないようにしているんだ。』

 

「神器が・・・・勝手に?」

 

本当にそうなのかなぁ。

 

『まあ出来るだけ禁手をしないようにしてくれればいいさ。』

 

「うん、分かったよ。」

 

『話はこれだけだ。』

 

随分と長く話してたみたい。もう辺りが暗くなり始めてる。

 

「あの話は本当なんだよね・・・・私の身体は・・・・」

 

『ショックか?』

 

「分かんない。」

 

『そうか・・・・』

 

「じゃあ皆がいる城に行こうか。」

 

『そうだな。』

 

私と白虎は城に向かって歩きだした。

 

 

 

*********************************************

 

 

 

《魔王の部屋》

 

 

「ではこれは君に一任するよ。」

 

「任せて下さい。」

 

成功だ。

 

「では失礼します。」

 

僕は魔王からサインを貰った書類を受け取り、魔王の部屋を出る。

 

「これでようやく、この世界の転生者がどんなものか判る。」

 

新種の神滅具なども多く出てくるだろう。

 

「強い力を持った転生者の実力はどんなものかな。」

 

僕はあのじじいとは違う。

 

 

 

「転生者とイレギュラーは我々神によって管理されるべきだ。」

 

 

男の呟きに答える者は誰もいない。

 

 

 




この作品では作者がイメージしずらいのでオリヴィエ、イングヴァルト(女)はヴィヴィオ、アインハルトの大人モードの姿だということにしています。
原作(vivid)だとどちらも姿があまり描かれてないんですよね・・・・

この二人はオリキャラという認識でいいです。


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テレサの血


頭では出来ていてもなかなか文字に出来ない・・・


《エクシール城・客室》

 

 

 

今俺達はあのデカイ城、エクシール城の客室でまだ来ていないテレサを待っている。

 

今この部屋に居ないのはアーシアとイングヴァルトだ、どちらも疲れたのか寝室を借りて寝ている。

 

 

「イッセー様、紅茶はいかがですか?

 

「あ、いえ結構です。」

 

今俺に紅茶を勧めてきたのはこの城、エクシール城唯一の執事のベスさんだ。

この城には彼以外の執事はいないらしい。

と言うより、彼以外いないらしい。

 

「イッセー、貰っておいたらどうだ?」

 

リインに紅茶を勧められる。

 

「え、でも・・・・」

「美味しいぞ。」

 

そう言いながらリインは紅茶を飲んでいる。

 

「俺はテレサがまだここに来ていないのに、落ちついて紅茶なんて飲めない。」

 

「もうすぐ来るさ・・・」

 

リインに焦った様子は無い、いつもだったらテレサの事を心配しているはずなのに・・・・

そういえば、あの虎がテレサに話があるって言った時も、テレサを残して城に行くように俺達に言った。

いつもなら私も残るとか言うはずだ。

 

あの過保護なリインがどうして・・・・

 

まさかリインはあの虎の事を知っていたのか?

 

「リインはあの虎の事をーーー」

 

バンッ

 

「ーーーお待たせっ。」

 

客室の大きな扉が開いたかと思うと、聞き慣れた声が聞こえてきた。

どうやらテレサのようだ。

あの白い虎の背に乗っている。

 

「テレサ、遅かったな。」

 

リインがテレサに声をかける。

 

「ごめんね、待たせちゃって。」

 

「構わんさ・・・・」

 

『疲れて寝ている者もいるようだし、明日になったら話をするとしようか。』

 

明日・・・・

 

執事のベスさんが虎の横に立つ。

 

「では皆さん、本日はここエリクシール城で泊まっていって下さい。」

 

ここに泊まるのか!?

 

 

 

*********************************************

 

 

 

私は今、エリクシール城にあるベランダにいる。

 

 

「そろそろ寝るか。」

 

皆は既に寝室に行って寝ているみたいだしな。

 

私はテーブルの上にある、飲みかけの紅茶を飲み干し寝室に向かう。

 

今日紅茶何杯飲んだだろう・・・・

 

この城の執事・・・確か名前はベスだったかな。

彼のいれた紅茶が美味くてつい飲みすぎてしまったな。やはりオリヴィエのいれる微妙な紅茶とは違う。

 

 

私はそんなどうでもいい事を考えながら城の案内図を探す。この城では、城の内部があまりにも広すぎる為、所々に案内図がある。

 

 

「確かこの辺りだった気がするんだが・・・・」

 

『案内図ならこっちだ。』

 

聞き慣れた声を聞き、私は周囲を見渡す。

 

「白虎か・・・・」

 

どうやら声の主は私の後ろにいたようで、簡単に見つかった。

 

『久しぶりだな、リインフォース。』

 

「ああ、そうだな。」

 

 

 

***

 

 

 

「この廊下の突き当たりまで行けば寝室か。」

 

案内図が正確に出来ていたから思ったより寝室に行くのに時間がかかることもなさそうだ。

廊下は壁に付いている蝋燭立てに付けられた蝋燭の火の明かりだけで照らされている。

 

明かりが蝋燭の火だけなんて久しぶりだな。

私はその光景を懐かしくも思いながら廊下を進んでいく。

 

『姫の様子はどうだ?』

 

白虎が私に問いかける。

姫・・・テレサのことか。

 

「 悪くはない・・・・といった所だ。」

 

テレサの記憶が治ってからも、これといった症状は出ていない。

 

『そうか・・・』

 

テレサの身体の調子を伝えても白虎はどこか様子がおかしい。

 

「何か心配事でもあるのか?」

 

『心配事だらけさ・・・』

 

心配・・・・か、確かに《あの時》もお前はテレサの事を心配していたな。

 

 

 

 

*********************************************

 

 

千五百四十八年前

 

《地上》

 

 

「つまり、この二天龍と呼ばれる龍がいなかったら、まだ戦争は続いていたかもしれなかったということか。」

 

「うん、そういうことだよ。」

 

今私はこの世界での生活にも落ち着いたので、黒髪の少女、テレサにこの世界について教えてもらっていた。

この世界には人間だけではなく、天使、悪魔、堕天使といった種族もいるらしい。

 

「テレサの種族はどれなんだ?」

 

「私は人間と悪魔のハーフだよ。」

 

テレサは、人間と悪魔のハーフなのか。

 

「この世界でテレサのようなハーフは多いのか?」

 

「見たことないから分かんない。」

 

「そうか。」

 

それもそうか、私もここの近辺で人を見たことがないしな。

それにテレサも遠くに出かけることもあまりないので、見たことがないというのも変な話でなはい。

 

「じゃあリイン、そろそろご飯にしよっか。」

 

もうそんな時間か、

 

「ああ、今日はテレサの番だったよな。」

 

「うんっ。」

 

テレサの作る料理は美味しいからな、楽しみだ。

 

 

 

一時間後

 

 

 

ーーーコンコン

 

「リイン、出来たよ。」

 

ノックの音と共に、私の部屋にテレサが入ってきた。

どうやらご飯が出来たようだ。

 

「分かった、今行く。」

 

一体今日のご飯は何だろう?

 

私はリビングに向かうテレサの後を付いていく。

 

「今日はグラタンだよ。」

 

「おおっ!」

 

机の上には美味しそうなグラタンがあった。

 

「テレサ、グラタンを作ったのは初めてなんじゃないか?」

 

確か私の記憶ではテレサはグラタンを作った事が無かったはずだ。

 

「うん、レシピを見て作ってみた。」

 

「そうか、美味しそうに出来てるじゃないか。」

 

そう言いながら私は椅子に座る。

 

「じゃあテレサ、冷めない内に食べよう。」

 

「そうだね。」

 

テレサも椅子に座る。

 

「「いただきます。」」

 

テレサが、私の感想を聞きたいのか食べないで待っている様なので、早速私はグラタンを一口食べる。

 

「美味しいな。」

 

「よかった、初めてだったから自信が無かったんだよ。」

 

テレサはホッとしたような表情を浮かべる。

 

「テレサも食べたらどうだ?」

 

「そうだね。」

 

テレサもグラタンを食べだした。

 

「うん、美味しく出来てる。」

 

テレサが嬉しそうに言う。

 

・・・・初めて会った時より、テレサは感情を表に出すようになった気がする。

 

昔は無表情、いや無関心かな・・・

まあとにかくそんな感じだった。

 

昔のテレサより今のテレサの方がいい。

 

 

ーーーん?

 

テレサの頭が揺れている。

 

「おいテレサどうしーーー」

 

ーーーガタンッ

 

テレサが椅子から落ち倒れる。

 

「テレサ!?」

 

「リイン・・大丈夫だよ・・・ちょっと滑っただけだから・・・・」

 

そう言うがどう見ても様子がおかしい。

私は倒れたテレサの身体を起こし、額を触る。

 

「熱っ、凄い熱だ!」

 

「別に・・・私は・・・・」

 

「大丈夫な訳ないだろ!」

 

私は急いでテレサをテレサの部屋まで運んでいく、普段はテレサの部屋に入らないようにしているが仕方ない。

 

 

 

とりあえずテレサの額に冷したタオルをのせておいた。

 

しばらくすれば熱も下がるだろう。

 

『その症状は熱ではない』

 

聞いたことのない声が私の頭の中で鳴り響く。これは・・・念話か!

 

『外に出ろ、治す方法を教えてやる。』

 

 

 

***

 

 

 

私は迷ったが、念話の主の所に行く事にした。

 

「さあ外に出たぞ!」

 

一体どこに居る?

 

『ここだ。』

 

念話が聞こえたと思うと、私の前に白い虎が現れた。

 

ーーー気配が無いだと!?

 

白い虎には気配はなくただ形だけある、といった感じだ。

 

『早速で悪いが、姫にこの薬を飲ませてやってくれ。』

 

私の前に小さな紙袋が出現する。

魔法でも使ったのか?

 

「姫とはテレサの事か?」

 

『そうだ、彼女は私の主の娘だからな。』

 

主の娘・・・つまりテレサの親ということ

か。

 

娘が高熱を出して苦しんでいるというのに親は何をやっているんだ!

 

『私の主、つまり姫の親は既に亡くなっている。』

 

なんだと!?

いや、初めて会った時もそんなことを言っていた。あの時は何が何だか分からなくなっていたから忘れていた。

 

『私が姫の近くにいてやりたいが、そうもいかない。』

 

虎は続ける。

 

『姫の身体には神、悪魔、人間の血が流れている。これがどこかの勢力に知られれば命を狙われてしまう。』

 

「神?確かテレサは悪魔と人間のハーフだと・・・」

 

『姫が知らない、いや姫に教えてないだけだ。この事は姫が大きくなったら話す。』

 

神の血・・・・ん?

 

「おい、神と悪魔の血は混ざらないんじゃないか?」

 

『そうだ、本来ならば混ざらない。しかし、姫の持つ悪魔の血はある能力を受け継いでいた。』

 

「能力?」

 

『瞬時に適応し、進化する能力だ。姫の身体の血は神の血と悪魔の血と人間の血が混ざることが出来るように進化したんだ。』

 

進化、なるほどな。

悪魔には色々な能力があるらしいしな。

 

『だが姫には悪魔の血が半分しか流れていない。つまり能力も完璧ではないんだ。今姫が苦しんでいるのは、進化した身体でも耐えられない力が出ているからだ。』

 

「どうして耐えられない力が出たんだ?」

 

『進化が中途半端だったからだ。』

 

中途半端な進化・・・いや、それよりも!

 

「急いでテレサを!」

 

『ああ頼んだ、その薬は神の力を抑える力がある。きっと姫の体調も良くなるはずだ。』

 

「最後に一つ聞きたいんだが・・・」

 

『何だ?』

 

「名を何という?」

 

『白虎だ。』

 

 

 

*********************************************

 

 

現在

 

《エリクシール城・寝室》

 

 

昔の事を思い出していたらかなり時間が経ってしまったな。

 

あの時は大変だった。

神の血の影響で金髪になったテレサが一人だと寂しいと言って私から離れなかったりしたしな。

 

まあ可愛かったからいいが。

 

さて、もう寝るか。

テレサの記憶も治ったし、今日はいい夢が観れそうだ。

 

 

 

*********************************************

 

 

《旧シュバリナ領》

 

 

見つけた、遂に見つけたぞ!

 

この土地に幻鳥フェニックスが生息していたのか。

 

さて・・・・どうやってこの土地を、手に入れようか。

 

「そうだ、いい手があったぞ。」

 

あれなら土地を手に入れられる。

 

幻鳥フェニックスは、俺達フェニックス家が手に入れる。

 

「父上に、いい報告が出来そうだ。」

 

 

 



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フェニックスの婚約相手

スマホで使っている小説用のアプリがアップデートしたら使えなくなってしまった・・・・


《オカルト研究部》

 

 

何故だ?

 

何故原作イベントが起こらない!

 

「どう考えてもおかしいだろ・・・・」

 

「原作イベントが起こらない事についてか?」

 

「ああ、そうだよ!」

 

ったく、コイツは気楽でいいな。

なにせ原作知識を消してるんだからよぉ。

原作に異常が起きてる事なんてよく分かってねぇからな。

現在の原作だとアーシアが出てきて、悪魔になってオカルト研究部に入ってるはずだ。

 

兵藤剣、原作主人公じゃなくてコイツが赤龍帝になったから原作の流れが変わったのか?

でもアーシアが出てこないのはおかしいたろ。

いや、もしかしたらこの前行った古びた教会に住み着いた堕天使の討伐でアーシア編終了ってことなのか。

でもそれだとアーシアが出て無いからアーシア編と言えるかどうか・・・・

 

ーーーキイイイィ

 

扉が空いた音がする。

 

「聖人<まさと>、剣、もう来てたの?」

 

リアス・グレモリー、原作の重要人物。

俺の王でもある。

彼女は俺達の座るソファーを通りすぎ、奥にあるいつも座る椅子に腰掛けた。

 

「「「・・・・・」」」

 

会話が無い・・・

こんな時は、部長が何か話したりするけど何も話す様子がない。

 

・・・・あんまりしたくなかったけど神器を使って今の原作の状況でも調べるとするか。

 

俺の神器《答えを出す者<アンサートーカー>》の能力は自分が知りたい事を知ることが出来る能力。

 

例えば学校の授業の問題の答えといった小さなことから、相手の能力等の重要なことまで完璧に知ることが出来る。

 

 

さて、今の原作の状況は?

 

[ライザー編]

 

やはりか・・・・予想していたから驚くような事ではない。

 

・・・・いや待てよ。

 

だったら何故ライザーはオカルト研究部に来ないんだ?

 

[ライザー・フェニックスの父親が止めている]

 

なんだと!?

何故父親が止めているんだ?

 

[グレモリーとの婚約を迷っている]

 

迷う・・・だと?

確か原作だと純血の悪魔の存続の為だとかなんとかだったはずだ。

 

これは・・・・

 

「部長、人間の契約者を探しに行ってきます。」

 

本人に直接聞いてみるか。

 

 

 

*************************************

 

 

 

《エクシール城・会議室》

 

 

『皆揃ったようだな。』

 

白虎さんが言う。

皆って・・・・

 

「テレサちゃんがいませんよ?」

 

そうだ、アーシアの言った通りこの部屋にはテレサがいない。

 

『姫なら別室で勉強中だ』

 

「「「「「「勉強?」」」」」」

 

皆の声が重なる。

 

『これを見てくれ』

 

白虎さんが机の上にあるリモコンのボタンを押すと、会議室にある大きな液晶テレビでニュース番組が流れる。

肉球でボタン押すのか・・・凄いな。

 

『最近の冥界のニュースは知ってるか?』

 

白虎さんが俺の方を見ながら言う。

俺が答えた方がいいのかな?

 

「知りません。」

 

冥界に住んでる訳でもないから知るはずがない。

 

『最近、冥界である政策が発表された。今テレビでやっているニュースはその事についてだ。』

 

「その内容とは?」

 

リインが白虎さんに聞く。

 

『今日から一週間後に行われる、上級悪魔に昇格する試験だ。』

 

「でもその試験がテレサに関係あるのか?」

 

今回はイングヴァルトが聞いた。

 

『ああ、その試験では下級、中級関係無く参加できる。』

 

「なんだとっ!?」

 

「つまり今テレサが勉強しているのは・・・・」

 

試験勉強ってことか。

 

「白虎さん、テレサちゃんはその事を知っていて冥界に来たのですか?」

 

アーシアが白虎さんに聞く。

でも本当にそうだとしたらどうやって知ったんだ?

 

『いや、姫はその事は知らなかった。《偶然》この怪我をしたこの土地の鳥を見つけ冥界に来たら《偶然》この政策がやることになっただけだ。』

 

「偶然・・・・か。」

 

リインが呟く。

白虎さんを睨んでる様にも見える。

 

いや気のせいか。

 

「あれ?何でテレサは試験を受けようとしてるんだ。」

 

テレサは冥界に住んでいる訳じゃないし上級悪魔になったとしてもメリットがあるとは思えない。

 

「領地・・・だろ。」

 

俺の疑問に答えたのは白虎さんではなく、兄ちゃんだった。

 

「領地?」

 

「イッセー、上級悪魔になって獲られるものはなんだ?」

 

「悪魔の駒と・・・・領地か!」

 

『そうだ、この土地を手に入れる為、姫は勉強しているんだ。(まあ悪魔の駒の方が重要なんだがな)』

 

「白虎さん、俺達に出来ることは無いんですか?」

 

俺もテレサに協力したい。

 

『特に無いな、今お前達に出来ることは見守る事だけだ。』

 

 

 

*************************************

 

 

 

《エクシール城・個室》

 

 

ウトウト

 

「お嬢様、お嬢様・・・・仕方ないですね。」

 

ギュッ

 

「痛い、痛いって、ベスさん!」

 

気がつけば私は執事のベスさんに頬をつねられていた。

 

「お嬢様が寝そうになっておられたので。」

 

「うう、ヒドイ。」

 

まだつねられた頬がヒリヒリする。

 

「お嬢様、後一週間しか時間がないのですよ?」

 

「それはそうだけどぉ。」

 

私は机の上にある参考書を指差す。

 

「この参考書の問題が出たのって百年前なんでしょ?」

 

「必ず試験に出ます。」

 

「いやでも、ずっと出てなーーー」

 

「ーーー出ます。」

 

何の迷いもない返答、どうしてこんなに自信があるの?

うう、ベスさんの目が怖いよぉ。

 

「では次の問題をしましょう。」

 

「・・・はい。」

 

ベスさんを信じて勉強するしかないか。

 

 

 

*************************************

 

 

 

《フェニックス領・???》

 

 

俺、一ノ瀬聖人<いちのせまさと>の前には金髪の老人がいる。

いや、老人ってほどではないか。

年齢はかなりのものだけど、悪魔はある程度年をとると容姿を若い頃に変えられるしな。

 

「何故リアス・グレモリーとの婚約を迷っているんですか?」

 

「お前の神器はお見通しということか・・・」

 

今俺は冥界に来てライザー・フェニックスの父親と話をしていた。

部長には黙っているが俺はフェニックス家と関わりがある。

 

俺が冥界に行って会いたいと連絡したら、直ぐに使いの者が来てくれた。

 

「本当にグレモリーでいいのかと思ってしまってな、お前の力を貸してほしい。」

 

「《答えを出す者<アンサートーカー>》ですか。」

 

「ああ、報酬は出すぞ。」

 

報酬、フェニックスの涙か。

アーシアがいない今では、たった一つの回復手段だ、ここは協力するべきだな。

 

「知りたい事は何ですか?」

 

「現在婚約が可能なグレモリーを越える血、グレモリーより優秀な血を持つものだ。」

 

グレモリーを越える血?

まあいい、調べてみるか。

 

現在婚約が可能なグレモリーより優秀な血を持つものは?

 

[シュバリナの血。]

 

「シュバリナの血?」

 

なんだそれ、原作でも聞いたことがないぞ?

 

「シュバリナ・・・だと。」

 

俺の気持ちとは反対に、フェニックス卿の顔は驚愕に包まれていた。

 

「ご存知ですか?」

 

「バカな!もう存在しないはずなのに!?」

 

フェニックス卿は、なにやら取り乱しているようだ。

 

「答えを出す者には出たんだ、真実ですよ。」

 

「っ!そうだな、確かにそうだ。」

 

答えを出す者の力は絶対だ。

 

「他に知りたい事はありますか?」

 

「その者の名前は?」

 

[テレサ]

 

「テレサ、とゆう名前だそうですね。」

 

「そうか・・・・」

 

・・・・答えを出す者よ、フェニックス編はこれからどうなる?

 

[崩壊]

 

「これからどうするつもりですか?」

 

「シュバリナの血をもつ者、テレサを息子のライザーの妻に向かえる。」

 

「グレモリーとの婚約は?」

 

「当然破棄だ、リアス・グレモリーも乗り気でなかったしちょうどいい。」

 

っ!何の迷いもない。

シュバリナの血がそうさせるのか、一体どんな血なんだ?

 

[最強の適応能力と進化能力]

 

「そうですか、ではそろそろ部長の所に戻ります。」

 

「ああ、報酬は後で渡す。使いの者を出すから直ぐに戻れるだろう。」

 

「聖人様、此方へどうぞ。」

 

フェニックス卿の隣に俺をここまで連れてきた人が現れた。

 

「また近い内に会おう。」

 

「ええ。」

 

俺は、フェニックス卿の使いの者についていく。

使いの者が作ったと思われる魔方陣の上に乗ると、俺の身体が光に包まれる。

人間界に転送するためだ。

 

 

***

 

 

《人間界》

 

 

「それでは失礼します。」

 

俺をここまで連れてきた使いの者が消えた。

俺は彼が消えた事を確認してから呟く。

 

「それにしても、婚約破棄か・・・・」

 

俺のせいなのねぇ。

原作崩壊は免れないな。

 

「やっちまった。」

 

 

 

*************************************

 

一週間後

 

 

《冥界・旧シュバリナ領》

 

 

「テレサちゃん、頑張って下さいね。」

 

「テレサお前なら出来る。」

 

「自分を信じて。」

 

「分かった、分かったって!」

 

朝から耳が痛くなるほど皆の声援を聞いている。

まあ、気持ちはありがたいんだけどね。

 

「お嬢様、勉強した場所は必ず試験にでます。ですから胸を張って挑んで下さい。」

 

結局、私が一週間勉強したのは百年前の出そうもない問題だ。ベスさんを信じて勉強したけどやっぱり不安がある。

 

「じゃあ行ってきます。」

 

これで試験落ちたらどうしよう。

まあベストを尽くすしかないよね。

 

 

 

*************************************

 

 

《???》

 

 

試験会場に向かうテレサを鏡越しに見ている男女がいた。

女性の方は食い付くように鏡を見ているが、男性の方はそんなに興味を持っている様には見えない。

女性の方の外見は光輝く金髪で蒼色の瞳をしていてスタイルも良い。

そして男性の方は黒髪で赤色の瞳だ、細い身体をしているが服越しにでもかなりの筋肉があることが分かる。

 

「あ、テレサが試験会場に向かったわよ!」

 

「そうか・・・・ってイタタタタ。」

 

女性が男性の鼻を引っ張る。

 

「テレサが頑張ろうとしているのよ?」

 

女性の金髪が更に輝きを増す。

 

「っ!」

 

男性は慌てて鏡を見る。

 

「正座ね。」

 

「なんで俺がーーー」

 

「ーーー聞こえなかったの?」

 

男性は慌てて正座する。

 

「テレサが頑張っているのを見るのは楽しいわね。」

 

「はい、おっしゃる通りで。」

 

「早くテレサに会いたいわ。」

 

「あの・・・・俺の正座はいつまでーーー」

 

「ーーーテレサの試験が終わるまでに決まってるでしょ?」

 

女性は当然の事と言わんばかりに言う。

 

「・・・はい。」

 

男性の正座はまだまだ続きそうだ。

 

 

 

 

 

 



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イッセーの夢


今回はイッセーメインです。


???年前

 

 

《冥界》

 

 

「何故だ、何故私の攻撃が効かない・・・・」

 

私と対峙している男の天使が狼狽えながらそう言った。

今した攻撃がこの男の全力だったのだろう。もう立っているのがやっとだというのが分かるほど、この男からは力が感じられない。

 

「私もあまり時間を掛ける訳にはいかないのでな。」

 

私の右腕に炎が発生する。

本来はこの炎を球体に圧縮して相手に向けて放つのだが、この男にはもう避ける程の力も残っていないし、圧縮して放つと魔力を多く使う。

今は無駄に魔力を使いたくない。

 

「終わりだ。」

 

私は炎を纏った右腕を男に向かって放った。男は既に限界を越えていたようだ、声一つ上げることなく倒れた。

 

「見張りの天使は潰したし、そろそろ本隊が敵の拠点を攻撃する頃か・・・」

 

 

ーーー敵の拠点から爆音が聞こえる。

 

どうやら始まった様だ。

見張りを潰したから奇襲が成功しているといいんだが・・・

 

「私も本隊と合流して敵の拠点を叩くとするか。」

 

私は翼を拡げ、敵拠点へと向かうのだった。

 

 

 

*************************************

 

 

数分前

 

 

《冥界・天使の拠点》

 

 

「敵の・・・悪魔の奇襲だ!」

 

私達に気づいた天使がそう叫ぶが、もう遅い。既に天使の拠点は私達悪魔によって囲まれている。

 

これも見張りを潰したから上手くいったことだな。

確か見張りを潰しにいったのは、最近上級悪魔になったフェニックスだったかな。

フェニックス一族の不死の力、まったく便利なものだ。

 

「ーーーベス隊長、空に奇妙な影が!」

 

空に奇妙な影?

部下にそう言われ、私は空を見る。

 

「っ!」

 

また来たのか。

天使の拠点を叩けなくなるのは惜しいが仕方ない。

 

 

「・・・・撤退だ。」

 

私は部下に撤退の命令を出す。

 

「撤退ですか!?」

 

「ヤツがこの戦いに乱入してくるとなると被害が大きくなる!」

 

「はっ!」

 

部下は周りに指示を出すが、部隊の規模が大きすぎたことと、戦闘に入っていたこともあり、全体に指示が伝わらない。

 

このままだと・・・・

 

ーーーグオオオオオォ

 

突如戦場に剣の雨が降り注ぐ。

 

聞こえるのは、剣が地面に突き刺さった音と悲鳴ばかり。

 

遅かったか!

 

天使、悪魔共に剣の雨を浴びて戦場に立っている者が殆どいなくなってしまった。

 

「この戦場には雑魚しかいないな。」

 

そう言うのは奇妙な黒い影と言われていた龍。次元の狭間で産まれたとされ、相手の能力を奪う力を持つ・・・・

 

「略奪龍ガルディール。」

 

誰かがそう呟いた、この小さな呟きは一瞬で戦場全体に伝わった。さっきの攻撃から運良く外れた者が次々と逃げていく。

 

略奪龍は逃げる者を追おうとはしないようだ。空から降り、戦場になっていた天使の拠点の中心でどっしりと構えている。

 

何をしようとしているんだ?

略奪龍が口を開いた。

 

「この俺に挑むヤツはいねえのか!」

 

この龍は何を言っているんだ?

コイツに挑むヤツなどーーー

 

「ーーーおいおい、ヒデエ有り様じゃねえか。」

 

どうやら天使の見張りを潰しに行っていた悪魔が来たようだ。

 

「よくも仲間の悪魔を殺ってくれたな。」

 

そう言う悪魔の後ろに無数の黄金の剣が出現する。

 

「その能力を持ってるヤツがまだいたのか。」

 

略奪龍は嬉しそうに言い、黄色だっ体を黒くする。

略奪龍が力を使う合図だ。

 

略奪龍の後ろにも黄金の剣が出現する。

だがその剣の量はこの悪魔と比べ物にならないほど多い。

 

「なんだと!だが俺の攻撃は多いだけの剣に負ける筈がねえんだ。」

 

悪魔の剣が略奪龍へと向かったと同時に、略奪龍の剣も悪魔へと向かっていた。

 

悪魔の攻撃と略奪龍の攻撃がぶつかり合う。結果は言うまでもなく略奪龍の勝利、剣の数が違うから当然か。

 

「お前の能力、頂くぞ。」

 

「・・・・」

 

あの悪魔はもう瀕死の状態、抵抗できる筈もなく能力を奪われる。

 

「お前は挑んで来ないのか?」

 

「この私には戦闘能力がない。」

 

私はオリジナルではないからな。

 

この龍はどうにかしないとこれからの戦いに大きな支障が出そうだ。

 

「では私はこれで失礼するとしようか。」

 

「お前の能力もいつか奪ってやろう。」

 

怖いことを言ってくれる、だがそうなる事は無いだろう。《彼》がいるのだから。

 

私はオリジナルにこの事を伝えるべく、静かに消えるのだった。

 

 

 

*************************************

 

 

これは!?

 

天使の拠点付近に到着し、本隊と合流して戦闘をしようとした私は、目を疑う光景を見ていた。

 

味方が、本隊の能力が天使の拠点から逃げていたのだ。逃げる悪魔は背後も気にせず、皆必死に逃げている。

 

これは明らかに撤退ではなく、逃走だ。

 

 

一体何があったのだ!

 

「!?」

 

ーーードゴオオオン

 

突如飛ばされてきた炎の球により私の立っていた地面が抉れる。

 

「っ!」

 

気づけなかっただと!?

動揺していたとはいえ、自分への攻撃を察知できなかった。

 

いや問題はそれよりも・・・・・

 

精神力の消耗が激しい事だ。

私の能力である不死の力は傷を再生するごとに精神力を消耗する。

そして攻撃の威力によっても消耗する精神力の量は異なる。

一撃で私の精神力を大きく消耗させることが出来るのは魔王ぐらいなのだが・・・

 

「この攻撃は魔王並、いやそれ以上かもしれん・・・・・」

 

あの攻撃による精神力の消耗は魔王の攻撃を越えている。

 

「お前は今俺から逃げてる奴らとは違うようだな。」

 

炎の球を飛ばしてきたと思われる場所から、黄色の身体をした龍が現れ、私のいる場所に向かってゆっくりと歩いてくる。

 

なんだこの龍は!

龍の身体にある強靭な鱗は私でも傷をつけられそうにない、そして今までに感じたこともないような威圧感が放たれている。

 

私の本能が逃げろと言っている。

私も今すぐ逃げたい。

 

しかし・・・・・身体が動かない!

 

「見たところお前の能力は再生か?悪くない能力だ。俺が奪ってやろう。」

 

「奪う・・・・だと!?」

 

龍はもう私のすぐそばにいる。

このままだと・・・・

 

「ーーーおらぁっ!」

 

ドゴォ

 

大きな掛け声が聞こえたと思うと、龍の身体が大きくよろけた。

そして私の前に一人の悪魔が現れる。

 

彼が龍に攻撃したのか!?

 

「タフなヤツだな、ならもう一発だ!」

 

バキィ

 

あの強靭そうな龍の鱗に亀裂が入る。

なんという一撃だ!

 

「貴様ぁ!」

 

龍の身体の色が黒く染まる。

龍を怒らせたのか!?

 

「俺が相手になってやるよ。」

 

私の前にいる悪魔はそう言って、龍との戦いを始めたのだった。

 

 

 

*************************************

 

現代

 

 

《フェニックス家の城内》

 

 

あの日戦場で見た、略奪龍ガルディールとリーク・シュバリナの戦いは今でも鮮明に覚えている。

そんなことを思いながら、私は今回の協力者との話を続けている。

 

「君のおかげでフェニックス家はリーク・シュバリナの血を手に入れることが出来た。」

 

私の前には黒い衣を纏った男がいる。

 

「僕と君の利害が一致しただけさ。」

 

この男がいなかったらこんなにも早く、ライザーを婚約させることは出来なかっただろう。

 

「君はこれからどうするんだ?」

 

「少しやりたい事があってね。」

 

そう言うと男は私の前から姿を消してしまった。

 

「冥界全てに幻術をかけるとはな・・・・」

 

 

 

*************************************

 

 

 

《フェニックス領・上空》

 

 

「今回の件で、大量の転生者を管理下に置くことが出来た。」

 

下級悪魔でも上級悪魔にして眷属を作れるようになると言ったら、転生者が沢山来た。

 

「僕に従わない転生者からは神器を没収できた。」

 

僕は右手に持つ、黄金に輝く聖剣《約束された勝利の剣<エクスカリバー>》を眺める。

 

「まあ、神器を百個以上手に入れたのは予想外だったかな。」

 

予定では十個位だった。

 

「後僕がやる事は・・・・」

 

 

 

*************************************

 

 

《エクシール城》

 

 

テレサは?

 

旦那の所にいるんじゃないか。

 

旦那?

 

ライザーさんですよ。

 

ライザー?

 

不死の力を持つフェニックス家の三男だ。さっき結婚式で見ただろ。

 

 

旦那?ライザー?結婚?

 

「なにがどうなってんだよ。」

 

俺はおぼつかない足どりでエクシール城の廊下を歩いていた。

 

俺には何の覚えもないのに、いつの間にかテレサがライザーって男と結婚してる事になってる。

 

最初は何かの冗談かと思った。

でもそれは違った。

皆に聞いている内にこの事は真実だと分かってしまった。

 

俺が覚えているのはテレサが上級悪魔の昇格試験に行った事。その後は全く覚えていない。

皆から聞いた情報だと、テレサは無事に上級悪魔の昇格試験に合格し、その合格祝いを発表会場でしていた時にライザーに会い、一目惚れして翌日に結婚。

そして、俺はその結婚式に出席していたらしい。

 

「分かんねえ、分かんねえよ!」

 

いつの間にかテレサが結婚していたなんて・・・・

 

「テレサの夢が俺のーーー。」

 

『ーーーはじめましてイッセー君。』

 

俺の頭の中に、聞いたこともない声が響きわたる。

 

「誰だ!?」

 

『まさか僕の幻術を破るなんてね。』

 

「幻術?」

 

何を言っているんだこいつは?

 

『今冥界は僕によって幻術にかけられているんだよ。』

 

「冥界・・・だと!?」

 

分からない、こいつの言いたい事が。

 

『・・・・まさか君は自分の意思で僕の幻術を破った訳ではないのか?』

 

「俺の意思?」

 

『そうか!なるほど、どうりで君と会話が成り立たない訳だ。なら教えてあげよう、僕の力によって冥界の住人や君の仲間は幻術にかけられているんだよ。』

 

「なんだと!」

 

『これは事実さ、実際君の仲間であるテレサはライザーという男と結婚しているだろう?』

 

「じゃあテレサは幻術にかかって・・・」

 

『テレサだけじゃない、君も幻術にかかっていたんだ。あの女の結婚を祝福していたじゃないか。』

 

「そんな!?」

 

『まあ何故か君は僕の幻術を破ったんだがね。』

 

「なんで、なんでこんなことをしたんだ!」

 

幻術にかけてまでテレサを結婚させるなんて。

 

『すいぶんと必死だな、あの女に気があったのか?だとしたら諦めるしかないな。あの女は監視のついでに実験をするからな。』

 

「監視・・・それに実験だと!?」

 

『そうだよ、原作に存在しなかったはずの強力な力を持つイレギュラーの血と不死の力を持つフェニックスを交配させるとどうなるのか、といった実験だ。』

 

交配させる・・・つまり・・・・

 

「テレサの意思に関係無くか・・・・」

 

『当然だ、まあ意思があったら抵抗するのを力ずくで言い聞かせるだけだから、幻術にかけているだけでも親切じゃないか。』

 

そんな・・・・

 

『幻術にかかった君の仲間や冥界の住人は、君が何をしようとあの女とライザーが結婚したことを事実だと思っているから無駄なことは止めておくんだね。』

 

テレサが・・・・

 

『そういえば僕の名前を言ってなかった、僕の名前はデュレイ、この世界に干渉する力を持つ神だ。』

 

俺は一体どうすればいい!

 

〔小僧、力が欲しいか?〕

 

その時、俺はどこからか何かの声を聞いた。

 

 

 

*************************************

 

 

《???》

 

 

 

「そんなの、あんまりだよぉ。」

 

鏡に映る冥界を見ながら泣きべそをかいているシエラ、こういう時はいつもと違って弱々しく見える。

そういえばシエラもテレサも泣く時はどっちも弱々しく見えるな。テレサはシエラに似ちまったってことか。

 

「あんなヤツにテレサの純血が奪われるぐらいなら。」

 

シエラの身体の周りに魔方陣が出現する。

ヤバい、向こうに行くつもりだ!

俺は急いでシエラの身体を両手で掴み引っ張り、魔方陣から引き離す。

 

「止めないでリーク、このままだとてれさがぁ。」

 

「落ち着けシエラ!」

 

シエラはまだ暴れている。

 

「リークは嫌じゃないの?このままだとテレサが無理矢理・・・・」

 

俺は優しくシエラの頭を撫でる。

そして耳元で静かに呟く。

 

「向こうには俺が行く、だからお前はここで大人しく待ってろ。」

 

「でもぉ、そんなことをしたらリークの身体がぁ。」

 

「俺の身体は大丈夫だ。早く俺を向こうに送ってくれ。」

 

俺はまたシエラの頭を撫でる。

こうすればシエラは大体言うことを聞いてくれる。

 

「・・・・・・」

 

俺の後ろに魔方陣が出現する。

 

「ありがとな。」

 

シエラを掴んでいた手を離し、俺は魔方陣の上に立つ。

 

「心配するな、テレサは俺が助けてくる。」

 

「身体に気をつけてだよ。」

 

「ああ、任せろ。」

 

シエラは鏡を覗いた。

なんで今さら?

 

「リーク、やっぱりテレサを助けなくていい。」

 

「えっ?」

 

シエラ、どうしたんだ!?

 

「リークはテレサを助ける手伝いをしてあげて。」

 

シエラがそう言うと俺の立つ魔方陣が輝きだす。転送する気だ!

 

「おいシエラ、手伝いって誰のーーー」

 

俺が言葉をいい終える前に、俺は転送されてしまった。一体誰の手伝いをすればいいんだ?

 

 

 

*************************************

 

 

 

《エクシール城・近辺》

 

 

「俺はどうすれば・・・・」

 

俺はエクシール城から出て一人で城の付近を歩いていた。

 

[ねえテレサ!]

 

[どうしたのイッセー?]

 

[なんで人は赤ちゃんをつくるの?]

 

[えっ!そ、それは・・・・]

 

[結婚したらつくれるんだよね?]

 

[ま、まあ・・・・]

 

[テレサも結婚して赤ちゃんつくるの?]

 

[そ、それは・・・大好きな人となら・・・]

 

[それはテレサの夢?]

 

[ちょっと違うかな、私の夢はいつか大好きな人と子供をつくって、その子が寂しくないようにずっと側にいてあげることだよ。]

 

[ふ~ん、そうなんだぁ。]

 

[ほらイッセー、こんな話はいいからヴァーリと遊んでおいで。]

 

[うん!・・・あ、そうだ。テレサ、俺の夢も決まったよ。]

 

[へぇ、どんな夢なの?]

 

[俺の夢は・・・・・]

 

 

誰もテレサが幻術にかけられて結婚したことを理解してくれない。

皆幻術にかかっているんだから当然か。

 

もう諦めるしかないのか。

 

でも、それだと・・・・

 

「テレサの夢を叶えるのが俺の夢。」

 

昔テレサは言ってた、いつか大好きな人と結婚して子供をつくりたいと!

 

幻術にかけられてじゃあ違うだろ!

 

そんなの幸せなことじゃねえだろ!

 

 

声が聞こえる、今なら分かるこの声の正体が・・・・

 

「なあ、《収穫の籠手<ハーベスト・ギア>》この声はお前の声なんだろ?」

 

〔やっと俺の存在に気づいたのか。〕

 

「さっきから、俺に力が欲しいかと聞いてたよな。」

 

〔ああそうだ、何度でも聞いてやる。小僧、力が欲しいか?〕

 

「ああ。」

 

〔大きなリスクがあるぞ、それでもいいのか?〕

 

「ああ!」

 

〔そうか・・・・なら貸してやろうこの俺、略奪龍ガルディールの力を!〕

 

ライザー・フェニックス、テレサが結婚したいのは少なくともお前じゃねんだよ!

 

その時、俺の心にはなんの迷いもなかった。

 

俺はテレサを助ける!

 

 

 

 

 




キャラ紹介

デュレイ

現在百以上の神器を所有する神。
どの神器も転生特典で創られた神器なのでどれも強力。
既に所有するすべての神器を完璧に使いこなせる。


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テレサの親

6月は忙しい・・・・


《フェニックス領》

 

 

本当に冥界の全ての悪魔に幻術をかける事は可能なのか?

幻術を使って戦う者もいる事は知っている。でもこんなに大規模な幻術をかける事が出来るヤツなんて本当にいるのだろうか。

 

俺の耳に聞こえるのは自分の翼が風を切る音と、心臓の鼓動。

 

昔師匠から聞いたことがある。

幻術を使いこなせば誰でも意のままに操れると・・・・それ程の相手に俺は勝てるのか?

 

場合によっては、俺は全く関係のない悪魔と戦う事になるかもしれない。俺はその悪魔全てを一人で倒さなくちゃいけないってことだ。

最悪、テレサとも戦う事に・・・・

 

「ガルディール、お前は俺の事をずっと神器の中から見てたんだよな?」

 

〔それぐらいしかする事がなかったからな。〕

 

「じゃあテレサを刺したじじいは本当にあの時倒せたのか?」

 

さっき俺に念話を送ってきた、デュレイとかいうヤツから感じたのはあのじじいと似たような感じだった。もしかしたらあのじじいが・・・・

 

〔倒せたとは言いきれないが、アイツはもう戦うことは出来ないだろう。〕

 

ならあのじじいとは別のヤツってことか。

あの時の俺は意識が朦朧としていたからあんまり最後の事は細かく覚えていない。

ガルディールなら知っているかと思ったけど・・・・・

 

〔それより俺の力の使い方、ちゃんと覚えたか?〕

 

「分かってるよ。」

 

〔この力をある程度使えれば負けることは無いだろう。〕

 

ある程度・・・・

そう・・・・・ある程度使えれば。

 

〔今の小僧は俺の力の三割に耐えるのが限界だ。〕

 

そうだ、俺は幻術を使っているヤツを倒し、幻術にかけられたテレサや皆を・・・・

 

〔ーーー小僧、どうやら先客がいるようだ。城を見てみろ。〕

 

「一体誰が・・・・」

 

俺が見た光景、それは半壊したフェニックス家の城だ。

誰かがここで戦ってるのか?

 

敵か、味方か・・・・

 

「どっちだとしても、迷ってる時間はーーー」

 

「ーーー消えなさいっ!」

 

何かが俺に向かって飛んできた、俺は反射的に籠手で弾く。

そして弾かれた何かは爆発を起こし消滅した。こんなものを飛ばしてくるってことは・・・・

 

「敵か。」

 

「私はライザー・フェニックス様の女王ーーー」

 

ーーー俺は悪魔の弱点でもある聖なる力で出来た光の球を創り敵に向かって放つ。

 

球に当たった敵は地面に倒れ伏す。

敵が死なないギリギリの攻撃だったから当然だ。

 

〔容赦ないな。拳による打撃の方が力を温存出来たんじゃないか?〕

 

「あれをするんだったら力は残さない方がいいんじゃないか?」

 

〔それもそうか。〕

 

俺は球を当てた敵の前に降り立ち、神器で治療を施す。昔堕天使から奪った《聖母の微笑<トワイライト・ヒーリング》を使ってだ。

ちなみにアーシアにはこの神器を持っていることを言ってない。

 

「治療したけどしばらく動けないだろ。」

 

悪魔の弱点である聖なる力によるダメージは身体だけでなく精神にも伝わる。

 

「よし、行くか!」

 

俺は目の前にあるフェニックス家の城に向かって走り出した。

 

 

 

*************************************

 

 

 

《城内》

 

 

「来るなっ!来るなぁっ!」

 

俺は必死に後ろの男から逃げる。

男の攻撃は信じられない程強力だ、数回の攻撃で俺の精神力が尽きて再生能力が使えなくなった。

今度攻撃されたら・・・・・

 

「逃げてんじゃねえぞコラァ!」

 

ーーーベキィ

 

「がぁっ!」

 

俺は後ろの男に一瞬で追いつかれ、腹を殴られ城の壁に激突する。さっきの一撃で骨が折れーーー

 

「ーーーおい、寝てんじゃねえよ!」

 

顔面に男の蹴りが入る。

今度は激突した床が壊れ、城の一階に落とされる。

 

「・・もう・・・・やめ・・・て・・くれ。」

 

「聞こえねえよ、最低野郎の言葉なんてなぁ。」

 

男は俺にゆっくりと近づいてくる。

こ、殺される!

 

「ーーーライザー様から離れろぉ!」

 

男の後ろから俺の《騎手》シーリスが男に向かって斬りかかる。

よしっ、これでコイツをーーー

 

「ーーーどけ。」

 

シーリスは一瞬にして俺の前から姿を消す。

一体何が!

 

バァン

 

城の壁から粉塵が出ている。

 

「っ!」

 

まさかあの一瞬でシーリスを吹き飛ばしたのか!?

 

「さあて、止めだ。」

 

「いやだぁ、し、死にたくない!」

 

「うるせえヤツだなーーー」

 

「ーーー彼を殺すの、止めてくれないかなぁ。」

 

殺されそうだった俺の前に現れたのは、見覚えのない黒い衣を着た誰かだった。

 

 

 

*************************************

 

 

 

俺はフェニックス家の城の中に侵入し、ライザー・フェニックスとデュレイを探していた。

 

ん?

 

「誰だコイツは?」

 

城の廊下に、ボロボロになった金髪の悪魔が転がっていた。

どこかで見たような気が・・・・

 

あ!

 

「ライザー・フェニックスだ。」

 

あまりにもボロボロで分からなかったが間違いない。コイツはライザー・フェニックスだ。

 

「一体誰が・・・・」

 

ーーーゾクッ

 

「っ!?」

 

身体中に悪寒が走る。

ここに居てはいけないと本能が告げた。俺は咄嗟に壁から離れる。

 

「よく僕の攻撃を避けたね。」

 

「あんな攻撃、目を閉じてても避けられるさ。」

 

危なかった、あそこにいたら俺は串刺しになってたな。

 

俺がさっきまでいた壁の周辺は、黄金の剣や槍が数十本刺さっている。

 

「あの二人は・・・・」

 

穴の空いた壁からは二人の人物の戦いが見える。おそらく黄金の剣や槍を飛ばしたのはあの二人のどちらかだろう。

 

 

なんとなく分かる、黒い衣を着ているのは冥界の悪魔や皆に幻術をかけたデュレイってヤツだってことが。

でも今デュレイと戦ってる男は誰なんだ?

 

〔あの男は・・・・リーク、俺をこの神器の中に封印したヤツらの一人だ。〕

 

「リーク?」

 

聞いたことのない名前だ。

 

「ガルディールを封印したヤツが何でデュレイと戦ってるんだ?」

 

〔知らん。〕

 

それもそうか。

 

「まあとにかくデュレイを倒さないと、幻術が解除されないはずだ。」

 

〔デュレイを倒す、それは無理かもしれん。〕

「どうしてそう思うんだ?」

 

〔どうやらヤツの持っている能力は反射能力の様だ、リークを見てみろ、攻撃をしないでデュレイの攻撃を回避することしかしていないだろ?〕

 

言われてみればそうだ、リークって人はデュレイに攻撃していない。

 

〔小僧、お前の神器の能力は相手に攻撃しなければ意味がないんだ。デュレイに攻撃しても反射されるだけだぞ。〕

 

ならどうやって倒せば・・・・

 

「やっと来た様だねイッセー君。」

 

この声・・・・

やっぱり黒い衣を着ている方がデュレイだったか。

 

「折角来てくれたとこ悪いけど、君の力では僕に勝てないよ。」

 

皆は幻術にかけられてデュレイの存在を知らない。つまり今戦えるのは俺だけだ。

 

確かに俺の能力は相手に自分の攻撃を当てないと意味がない。デュレイの持つ能力との相性は最悪だ。

だけど・・・・・俺は!

 

「それでも俺は勝たなくちゃいけないんだよ!」

 

テレサの為にも!

 

「ガルディール!」

 

〔やるのか?〕

 

「五割・・・・お前の力を半分使わせろ。」

 

〔今のお前の身体が耐えられるのは俺の持つ力の三割までなんだぞ!?〕

 

「ならどうやってデュレイを倒すんだ!」

 

ガルディールの言っていたあの能力はガルディールの力が半分使えれば発動可能と言っていた。

 

「テレサの為だ、身体がどうなろうと知ったことか!」

 

もう、戦えるのは俺しかいないんだ。

 

〔俺が何を言っても聞かないか・・・・いいだろう使わせてやる。〕

 

ーーーその瞬間、俺の視界は真っ暗になった。

 

 

 

*************************************

 

 

 

「よく僕の攻撃を避けたね。」

 

「あんな攻撃、目を閉じてても避けられるさ。」

 

この野郎、厄介な攻撃ばかりしてきやがって・・・・

余裕ぶってるが実際ヤバいな。

攻撃を反射されるとコイツにダメージを与えられない。どうやってダメージを与えるか・・・・

この世界に来るのでかなりの力を消耗してる、結構厳しいな。

 

「ならどうやってデュレイを倒すんだ!」

 

ん?

この声は今戦ってるヤツの声じゃないな。

どうやらあの壁の穴から声がしたようだ。

俺はそこを見る。

 

確かテレサといたガキか・・・・

 

「テレサの為だ、身体がどうなろうと知ったことか!」

 

コイツ・・・・

 

ーーー突如、ガキの身体から凄まじいプレッシャーが放たれる。

 

「っ!」

 

「この感じ・・・・ガルディールの!」

 

ガキの腕に付いている黄色の籠手の色がゆっくりと黒色に染まっていく。

 

まさか!

 

俺は急いで城から出て、ガキの近くから離れる。

あのガキがやろうとしてるのは・・・・・

 

「ガルディールの能力の一つ、自分以外の能力を無効化する空間の構築か!」

 

ガキを中心にその空間が広がっていく。

俺はその空間に入らない、ギリギリの所から空間の中を覗いた。

 

「何故だ!僕の能力が・・・・・」

 

あの野郎、相当焦ってるな・・・・

 

ガキの拳がアイツの顔に入る。

これはかなり効いたな。

 

殴られたアイツは勢いよく吹っ飛ばされて、壁に激突する。

そしてアイツが壁に激突したのと同時にガキは倒れた。

ガキの構築していた空間が消えていく。身体の限界か、当然といけば当然だな、ガルディールのあの力に耐えられるはずがない。

 

「さて、どうするか・・・・」

 

一瞬で戦いが終わっちまった。

 

 

 

*************************************

 

 

 

〔おい、おい小僧!〕

 

ん・・・・ガルディールの声・・・か?

 

〔今お前の持ってる神器でお前の身体を治療した。しばらくすれば動けるだろう。〕

 

「そう・・・・か。」

 

俺はガルディールの力を使ってから何があったか、いまいち覚えていない。

 

「結局どうなった?」

 

〔あの男・・・・デュレイに攻撃することは出来た。だが倒せたかは分からん。〕

 

「じゃあまだデュレイはーーー」

 

「ーーーおいガキ、大丈夫か?」

 

この声は・・・・

 

〔リーク・・・・〕

 

「久しぶりだなガルディール。」

 

〔貴様の進化能力があればヤツを倒せただろう。〕

 

「今の状態だと使いこなせねんだよ。」

 

「進化?」

 

〔言ってなかったな小僧、リークの能力は自身の身体を進化させる能力だ、敵の攻撃に耐えられるようになったり、自身の限界を超えた力を出したり出来る。〕

 

そんな能力が・・・・

 

「早いとこ、テレサを見つけないとな・・・」

 

テレサ?

何でこの人テレサの事を知ってるんだ?

 

「何でテレサの事を・・・・」

 

「それは・・・・俺が親だから。」

 

「っ!?」

 

コイツが・・・・テレサの。

俺は何とか身体を動かして立ち上がる。

 

〔小僧、無理して動くな!〕

 

「アンタが・・・テレサを!」

 

「っ!身体が・・・・これはシエラかっ」

 

俺は本気でテレサの親であるリークを殴った。

 

「俺が小さかった時、テレサは一人で泣いてたんだよ、アンタに会いたいってなぁ!」

 

「・・・・・・」

 

「何でテレサを一人にしたんだよ!」

 

「・・・・すまねえ。」

 

「謝るんなら・・・・テレサに言ってやれよ・・・」

 

「・・・・時間か。」

 

リークの身体が透明になっていく。

 

「ガキ・・・いやイッセー、テレサにはちゃんと謝る。」

 

「・・・・」

 

「だから・・・・しばらくの間でいい、テレサの事を・・・・頼んだ。」

 

そう言う、リークの顔からは悔しさが出ている。

そうだよな、この人も・・・・

 

「しばらくじゃなくて、ずっとでもいいさ・・・」

 

テレサのことが大切なんだな。

 

「ったく、調子に乗んな・・・・」

 

そう言うと、リークは満足そうに消えていった。

 

そして辺りは静寂に包まれる。

 

 

いや・・・・

 

〔小僧、まだ終わってないようだ。〕

 

「ああ・・・・」

 

「ーーーよくもっ、よくも僕を殴ってくれたね!」

 

やっぱりデュレイはまだ動けるようだ。

てことはまだ幻術は解除出来てない。

 

「テレサの為なら何回でも殴るさ。」

 

「フッ、もう君はまともに動けないだろう?」

 

そして、デュレイは高笑いを上げる。

甘いな・・・・

 

「ガルディール、俺のやりたいこと分かるか?」

 

〔小僧、とんでもないことをしたな。〕

 

テレサの父、リークの持つ能力は進化。

 

「今の俺の身体はどこまで耐えられる?」

 

俺はその進化の能力を・・・・

 

〔七割だ。〕

 

奪った。

 

「じゃあやるか・・・・そういえば七割で何が出来るんだ?」

 

〔触っただけで相手の能力を奪える。〕

 

「そうか・・・・なら・・・」

 

今の俺は身体の限界を超えた力に

 

〔ああ、存分に暴れてこい。〕

 

「テレサの為にも、リークの為にも・・・・デュレイ、お前を倒す!」

 

 

*************************************

 

 

俺が動けるようになった頃には、あの男は消えていた。

 

「クッ・・・・」

 

身体中が痛い、何もかもあのリークとかいう男のせいだ。

 

「テレサはアイツの娘だそうだな・・・」

 

身体は動かなかったがハッキリと聞こえた。俺にこんな怪我をさせた借りは返させてもらうぞ!

 

そして俺はテレサのいる部屋へと向かっていくのだった。

 

 

 

 

 





イッセーがリークから奪った進化は完璧ではない進化の方だったので一時的な進化しかできません。


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テレサの願い


話の内容を考えてたらこんなにも遅くなってしまいました。すいません。


《城内》

 

 

「テレサの為にも、リークの為にも・・・・デュレイ、お前を倒す!」

 

顔を殴られてついカッとなってしまった。

彼とはもう、戦う予定じゃなかったというのに。

だがこれは好機か、恐らく今の状態が彼の全力だろう。今なら全力の彼と戦う事が出来る。

 

戦うか?

 

それとも・・・・

 

「ーーー来ないのか?」

 

「っ!考えてただけさ、君をどうやって倒すのか・・・・」

 

逃がしてはくれないな。

まあ彼が来たのは僕を倒す為だし当然か。

 

それにしても凄まじいプレッシャーだ。

あの龍の力は脅威だ・・・いや、本当の脅威は・・・・・

 

原作主人公<イッセー>か。

 

 

僕は手に《約束された勝利の剣<エクスカリバー》を出し、構えた。まともに僕の神力を纏っても壊れない、数少ない神器だ。

 

《アイツ》が行動を起こすまでの時間は三分といったところかな。

 

「それじゃあ、いくよ!」

 

三分以内にこの戦いを終わらせる!

 

 

 

*************************************

 

 

 

「それじゃあ、いくよ!」

 

ーーーその言葉がデュレイの口から出た時にはデュレイの姿は無くなっていた。

 

〔後ろだ!〕

 

キインッ

 

俺は籠手でデュレイが降り下ろした剣を防いだ。

なんて速さだ!ガルディールに言われなかったら防げなかったな。

 

恐らく反応出来なかった。

 

[小僧、もう一度あの空間を創れ。あの剣には何か特殊な力が纏ってある、今度籠手で受けたら腕ごと持ってかれるぞ。]

 

特殊な力・・・・確かにデュレイの剣を受けた籠手の一部に亀裂が入っている。何度も受けるのは得策ではなさそうだ。

魔力でも、聖なる力でもない力か。

俺の知らない力って事だな。

 

[それにヤツは反射能力も持っているんだ、攻撃するにはそれしかない。]

 

「分かった。」

 

俺は再び、あの空間を創る。

辺りが暗闇に包まれていく。

 

今度は俺の意識もしっかりしている。

これなら俺も、まともに攻撃出来そうだ。

 

[小僧、一応言っておく。お前がこの空間の中で行動出来る時間は数分が限界だ。]

 

大丈夫だガルディール。

 

「いくぞデュレイ、今度はこっちの番だ!」

 

それまでに終わらせる。

 

俺は拳を握りしめ、デュレイに向かって駆け出した。

 

 

*************************************

 

 

 

「そうだ・・・・俺は・・・・・」

 

立つことがやっとの身体だったが、精神力が回復してきたのか、だんだんと身体の痛みが無くなってきた。

歩くペースも速くなり、もう少しでテレサの部屋に着くだろう。

 

「ヤツに・・・・・」

 

何だこの感覚は?

ゆっくりと、しかし確実に自分の意識が薄れていくのが分かる。

 

あの男にやられた直後なら分かるが・・・・

 

〔お前は自分を痛めつけたアイツが憎いんじゃろ?〕

 

何だ、何だこの声は!?

耳から聞こえるのではなく、俺の頭の中に直接響いてくるような感じだ。

 

〔そしてお前はその娘を使って・・・・〕

 

「俺は・・・・テレサを・・・」

 

〔そうじゃ、殺してしまえ。〕

 

 

殺してしまえ。

その言葉だけが俺の頭の中で何度も繰り返し聞こえる。

 

「俺は・・・・俺は!」

 

 

 

***

 

 

 

「そうじゃ、お前の心に少しでも憎しみがあれば、儂はお前の身体を乗っ取れる。」

 

この言葉を発するのはライザー・フェニックス。

 

「儂の肉体は消滅したが魂までは消滅せんわい。」

 

まるで人が代わったかのように喋りだす。

 

「デュレイのヤツが原作の通りに世界の流れを作ろうとするだろうと思って原作キャラの精神に侵入しておいたのが正解だったわい。」

 

ライザーの身体が炎で包まれる。

そして、身体にあった傷が信じられないような速度で再生していく。

 

「儂はライザー・フェニックスの精神の中で貴様に負けた時の事だけを考えていた。イッセー、儂にこんな屈辱を与えたさせたことを後悔させてやる。」

 

そう言うライザーの顔は、憎しみに満ちた凶悪な顔だった。

 

 

 

*************************************

 

 

 

「どうしたんだい、動きが鈍くなってきてるよっ!」

 

俺の顔に向かってきた、デュレイの拳を籠手で掴み受け止める。

 

「誰が・・・誰の動きが鈍くなってきたって?」

 

〔まさか小僧と格闘で互角とはな。〕

 

俺が能力無効の空間を創った直後、デュレイは黄金の剣を捨て、身体能力だけを使った格闘戦になった。

 

「ーーー君のことに決まっているだろっ!」

 

デュレイの蹴りが俺の腹部に向かってくる。

俺はデュレイの拳を掴んでいた手を離し、デュレイから距離をとる。

 

〔デュレイ、ヤツの戦いは能力に頼った戦いかと思っていたが格闘戦で小僧と互角。ヤバいんじゃないか?〕

 

ああ、確かにヤバいな。

 

「イッセー君、格闘戦において相手から距離をとるというのは、自分が格闘術で負けている事を隠す為の行為だと思うんだが君はどう思う?」

 

「言ってろ。」

 

だから・・・・

 

「ガルディール、お前の力をもっと使わせてもらう。」

 

〔ああ。〕

 

ガルディールの力は相手の能力を奪ったり、無効化させたりするだけではない。

純粋な龍としての力もある。

 

これから俺が使うのは眼。

龍の眼の多くは、速い動きでも対応出来る。

悔しいが今の俺じゃあデュレイの動きに、まともに対応出来ない。デュレイの拳を避けながら攻撃をするのは無理だ。

 

「デュレイ、今度はこっちの番だ。」

 

 

 

*************************************

 

 

 

何故だ?

 

「くらぇ!」

 

さっきまで彼は防戦一方だったというのに、今では僕が・・・・

 

「ーーーっ、まだだっ!」

 

何故彼は・・・・僕とここまで戦えるんだ!?

今僕が放っている拳は大抵の神ならかわすことが出来ないような速さで放たれている。

それなのに彼は、僕の拳を受け流したかと思えば、僕の身体に攻撃を入れてくる。

神である僕が放つ拳が見えているとでもいうのか?

 

「あり得ない・・・・・」

 

既に彼は原作の流れから外れ、主人公では無くなっている。だから彼には主人公補正など無い。

それに何だ?彼に攻撃される度に僕の持つ神器が消えていく。

そもそも本来は僕に攻撃することすら出来ないのに・・・・

 

「ーーー何があり得ないんだ?」

 

「・・・・何故君はそんなに戦えるんだ?」

 

「そんなのーーー」

 

「ーーーあの娘の為か?」

 

黒に包まれた空間の外から聞こえる声、

確かこの声は・・・・

 

「ライザー・フェニックス。」

 

そうだ、この声はライザー・フェニックスの声だ。でもどうして・・・・

 

黒に包まれた空間が消えていく。

きっと彼も確認したくて消したんだろう。

それに僕の反射能力のある神器も消えているから、空間を出しておく必要もない。

 

空間の消滅と共に、僕と彼の視線はライザー・フェニックスに向けられる。

 

「テレサッ!?」

 

彼・・・イッセー君が叫んだ。

ライザー・フェニックスの足下には、イッセー君が助けようとした女性、テレサがいたからだ。

どうやら床に横たわる彼女には、意識がないようだ。指一本動かさない。

 

今の僕には幻術を操る能力はない。テレサに掛かっていた幻術は解除されている筈だ。

僕達が戦っていた間に何かあったのか?

 

「ーーーおい、ライザー・フェニックス!」

 

と、僕は冷静に思考を巡らすがイッセー君はそうでもないようだ。

彼女の為に神である僕に立ち向かってきたんだ当然のことではある。

 

イッセー君はライザー・フェニックスに攻撃を仕掛けようとするが・・・・

 

「ーーー動くなぁっ!」

 

部屋にライザー・フェニックスの怒声が響き渡る。

イッセー君ならその怒声を聞いても動けただろう、しかし動けない理由があった。

 

「動けば儂の槍がこの娘を貫くぞ!」

 

ライザー・フェニックスの持つ槍がテレサに向けられていたのだ。

 

それに・・・・あの槍は!

 

「その槍は既に他の神によって没収された筈だ!」

 

この世界に持ち込むことなんて・・・・

 

「デュレイ、誰があの槍だと言った?」

 

ライザー・フェニックス、いや駄神がそう言うが、駄神が持つ槍から放たれている禍々しいオーラは・・・・

 

「理解出来ないといった顔だな。」

 

駄神はいかにも上機嫌といった様子で・・・

 

「この小娘から貰った。」

 

とんでもない事を言った。

 

彼女の持つ《神の能力》は、自身のイメージするモノを創る能力だった筈だ。

それを・・・・貰っただと!?

 

・・・・いや、昔聞いたことがある。神が他の神に能力を渡す事が出来ると。だが能力を渡した神は三日三晩地獄のような苦しみを受け続けるとも・・・・

 

彼女は能力を渡している間にも痛みが襲ってきていた筈だ、能力を渡したら自分がただでは済まない事だって分かった筈なのに・・・・

 

「ーーーこの小娘の夫というのは便利だのぉ。」

 

「っ!?・・・・・まさか・・・・・」

 

まさか・・・・まさかっ!

 

おそらくその時彼女には幻術が掛かっていたっ!

僕が掛けた幻術は《自分はライザー・フェニックスの妻》だということを認識させることだ。

 

彼女は・・・・・

 

テレサは・・・・・

 

 

自分の夫の為、苦痛と引き換えに自らの神の能力を差し出したんだ。

 

「なんて事を・・・・・」

 

僕は彼女のとった行動に思わず絶句してしまった。

 

僕は元々、僕達と同じ神の力を持っているが、彼女の存在は日の光を見ることのない、小さな存在だと思っていた、それが偶然過去に飛ばされた原作キャラと出会っただけだと思っていた。

 

彼女を消そうが、原作キャラさえ無事ならば別にいいと思っていた。

 

大切な人の為に自分の身を犠牲にする・・・・

 

これじゃあまるで・・・・ヒロインじゃないか。

 

「ーーーまあ儂の新しいこの力を試したいし、この娘は返してやろう。どうせ時間が経てば死ぬからのぉ。」

 

駄神が彼女の身体を放り投げる。

イッセー君は彼女の身体を優しく受け止めた。

 

「テレサ、おいテレサ!?」

 

イッセー君は必死に彼女の目を覚まそうと声を掛ける。

 

「・・・・・イッ・・セー?」

 

「テレサッ!?」

 

彼女は苦しそうな顔をしながら声を出す。

 

「・・・・私・・・何やって・・・るんだろ。」

 

「テレサ・・・・」

 

「全然・・・・知らない人と結婚して、力も渡しちゃって・・・・残ったのは・・・・痛みだけ・・・・」

 

「それは幻術がーーー」

 

「ーーー私って本当に馬鹿だなぁ。」

 

っ!?

 

僕が彼女を・・・・・

 

「ーーーさてクソガキ、別れの言葉はすんだか?」

 

「てめえ・・・」

 

イッセー君は彼女を優しく床に寝かせた。

 

「テレサ・・・少しだけ待ってて。」

 

イッセー君の姿が消える。

 

ーーードゴオオオン

 

「ーーー再生の能力の前には貴様の攻撃など無駄だぁっ!」

 

戦いの場所を外に移したようだ・・・・

 

「僕はどうすればいい・・・・」

 

ふと、何処からか声が聞こえた。

 

この声は・・・・

 

「誰か・・・・誰でもいい・・・・・」

 

彼女・・・・テレサか。

 

「私はどうなっても構わない・・・・あの相手と戦ったら・・・・イッセーが死んじゃう・・・・・」

 

それはあまりにも弱々しい声だった。

 

「だから・・・・イッセーを助けてあげて下さい・・・・」

 

でもその声は僕の心の中にまで響いた。

 

「・・・・私のせいだ、私が能力を渡したから・・・・・」

 

「・・・・」

 

彼女の瞳からは何粒もの涙がこぼれ落ちていた・・・・

 

「どうか・・・・・」

 

まだ苦痛が続いているのだろう、彼女は再び意識を失った。

 

 

「彼女は、彼女は・・・・」

 

僕は分からなくなった、

 

原作の通りに物語が進むのが正しい事なのか。

 

原作が全てなのか。

 

どの存在が重要なのか。

 

 

・・・・・もしかしたら

 

「もうそんな事どうでもいいのかもしれないな。」

 

イッセー君は守りたい者の為に神を相手に戦った。

 

もう主人公でもないのに・・・・・

 

異なった時代。

 

異なった出会い。

 

異なった家族。

 

「それもまた、いいのかもしれない。」

 

僕は何をしたい・・・・・

 

そうだ・・・・・僕は・・・・・

 

「この異なった物語を最後まで観てみたくなったんだ。」

 

幻術を掛けてすまなかった。

・・・・彼を助けてくるよ。

 

「君が尽くすなら、あの駄神じゃない。イッセー君だ!」

 

そして僕は飛び立った。

 

 

 

*************************************

 

 

 

「その程度かぁっ!」

 

「クソッ。」

 

もうガルディールの力も限界だ。段々と力が無くなっていくのが分かる。

でも、俺は!

 

「何度攻撃しても儂は再生するっ!」

 

「グハァッ。」

 

俺は地面に叩きつけられた。

もう・・・・身体が・・・・・

 

「ガハハハッ、たった一人で何が出来ると言うんだ?」

 

「ーーー彼は一人じゃない。」

 

この声は・・・・

 

「デュレイ!」

 

「イッセー君、もう終わりかい?さっき僕と戦っていた時はもっとタフだったと思うんだが・・・・・」

 

バカにしやがって。

俺は地面に手を付きながらも立ち上がった。

 

「まだ、終わってねえよ。」

 

「協力してヤツを倒そう。」

 

「ーーー嫌だ、お前はテレサに幻術を掛けたんだぞ!」

 

「彼女の願いだ・・・・・」

 

テレサの、願い・・・・

 

「どうするイッセー君?」

 

正直俺はこいつの事は嫌いだ。

でもこいつのが嘘をつかないことは今までの事で分かった。

俺一人の力じゃあ勝てないんだ。

 

俺は・・・・

 

「デュレイ、足を引っ張るなよっ!」

 

「フッ、君こそなっ!」

 

デュレイと一緒にヤツを倒す!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







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イッセーの意思

《城外》

 

 

フェニックス家の者のみが持つことが出来る再生能力。それは、いかなる攻撃を受けても炎と共に再生する能力だ。

無敵にも思えるこの能力には、欠点とも言える大きな弱点がある。

原作の主人公はその弱点があったからこそ倒せたと言っても過言ではない。

 

その弱点とは、再生の対象に精神力が含まれていないことだ。

 

原作では《赤龍帝の籠手<ブーステッド・ギア>》で効果を増した聖水を浴びせられ、精神力が消耗した所に攻撃を受けライザー・フェニックスは敗北した。

 

僕とイッセー君なら《ライザー・フェニックスを倒す》のは難しいことではない。

大きく精神力が削れる威力の高い攻撃を放ち続ければいいだけの話だからだ。

 

 

だが・・・・今僕達が対峙するライザー・フェニックスは違う。

そもそも、今僕達が対峙する相手はライザー・フェニックスなのか疑わしい所だ。

 

肉体はライザー・フェニックス。

 

精神はあの駄神か。

 

 

最悪だ・・・・・つい肉体と精神が逆だったら良かったのにと思う。

 

この状況で、何がいけないのかと言うと原作で使った倒し方が使えなくなってしまった事だ。

精神があの駄神になったことで、精神力を削り戦闘不能にすることが出来なくなってしまった。神の精神力は無限に等しい。

 

 

元々僕は駄神と戦うつもりでここに来ていた。ライザー・フェニックスの精神の片隅に隠れていた駄神に恨みを持つイッセー君の姿を見せることでライザー・フェニックスの精神の中から出そうとした。

予定では駄神の肉体は既に消滅しているから僕が擬似的に駄神の肉体を創り、その肉体に憑依してもらい精神を縛り消滅させるつもりだった。

 

が、

今の駄神には神の肉体を持つというプライドがないみたいだ。

まさかライザー・フェニックスの肉体を使うとは・・・・

 

今駄神が持つ力はライザー・フェニックスの再生能力。そしてテレサの持っていた神の能力、万物の創造の劣化版か。

 

 

対する僕達はというと・・・・

 

僕はイッセー君との戦いで神器の大半を紛失、さらに大量の神力の消耗。

イッセー君はあの男から奪った進化の力は使いすぎにより消滅、そして龍の力はこれ以上使えない状況。

 

・・・・こんな状況で戦うのか。

 

 

『ーーーデュレイ、先制攻撃を仕掛けるか?』

 

僕の前にいるイッセー君が念話を送ってくる。僕の方に振り向かないで念話を送ってきているということは、僕のことをある程度は信用してくれているのだろう。

 

僕が彼女にしてしまった事は、後で謝っておかないとな。

 

『ああ、まずはあの槍を破壊するっ!』

 

僕とイッセー君が同時に地面を蹴る。

 

ーーーバキイッ

 

正に電光石火とも言うべき速さで駄神の持つ槍が破壊された。

 

やったことは単純だ、僕が槍を両手で掴み、イッセー君が槍に蹴りを入れただけ・・・・

 

やはり脆い、時間も掛けないで創った槍だからか。

 

ーーー僕とイッセー君の蹴りが同時に駄神の身体に入る。

 

僕は神力を、イッセー君は聖なる光を纏っていたからかなりの威力になり、駄神の身体がぶっ飛んだ。

 

「手応えはあったかい?」

 

イッセー君が首を横に振る。

 

「デュレイはあったのか?」

 

「残念ながら僕も無かったよ。」

 

駄神の身体はぶっ飛んでいる最中にも再生していた。信じられないような再生速度だった。

さて・・・・・この相手をどうやって倒すか。

 

ーーー突如、駄神のいる位置から何かが飛ばされてきた。

 

「っ!・・・・やっぱりまだ動けるか。」

 

僕達はその何かを掴んだ。

僕とイッセー君が今握っているのは槍、砂煙が立っていてよく見えないが駄神が新たに創って投げたのか。

 

僕達が掴んだ槍が消える。

おそらく自分以外が持つと消滅するようにでも創ったのだろう。

 

駄神は無限に再生する。

どうやって倒す?

 

再生の能力を奪うか?

 

イッセー君の神器は相手が能力を使いこなしていない状態でないと意味がない。

今のイッセー君には僕と戦っていた時のように、触っただけで能力を奪う力がない。

 

「ーーー今の儂は誰にも倒せん!」

 

両手に槍を携え、駄神がゆっくりと近づいてくる。

 

『イッセー君、どうにかしてライザー・フェニックスが持つ、テレサの能力を奪えないか?』

 

『少し前なら出来たんだけどな・・・・今は無理だ。』

 

それもそうか。

今の駄神の能力を強化するのは危険すぎる。

 

『何か案があるのか?』

 

『テレサの能力を奪えないと意味がない。』

 

再生の能力の攻略方は精神力。

能力を奪えない今の状況では、そこを狙うしかない。

 

聖水でも浴びせるか?

 

無駄か、今僕達の前にいるのは原作を越えたライザー・フェニックスだ。

聖水では動きを止めることすら出来ないだろう。

一体どうやって・・・・

 

「ーーー来たぞっ!」

 

イッセー君の声・・・・しまった!

 

僕に接近する駄神の存在に気づいた時には、駄神の槍が僕の身体を貫いていた。

 

 

 

*************************************

 

 

 

「デュレイっ!」

 

デュレイが槍に刺された。

デュレイなら避けられた筈だったのに・・・・

 

「デュレイ、今お前の神器を破壊した。」

 

「デュレイから離れろ!」

 

俺の拳がライザー・フェニックスに入る。

ライザー・フェニックスは再び再生しながら飛ばされていく。

 

「デュレイ、大丈夫か!」

 

「・・・・・ああ、なんとかね。」

 

「神器を破壊されたって・・・・」

 

「本当の事だ、イッセー君あの槍には刺した相手の何かを破壊する能力がある。」

 

刺した相手の何かを破壊する能力?

それって・・・・

 

「見た目が違うが、かつてテレサを刺した槍と同じ能力だ。」

 

なんだと!

 

「いいか、よく聞いてくれ。アイツはライザー・フェニックスであってライザー・フェニックスではない。」

 

ライザー・フェニックスであってライザー・フェニックスではない?

それは一体・・・・

 

「今ライザー・フェニックスの精神には、かつてテレサを刺したヤツが憑依している。」

 

やっぱりあのじじいは消えてなかったのか。

なるほど・・・・

 

「だからライザー・フェニックスの性格が悪かったのか。」

 

デュレイが地面に手を着きながらも立ち上がる。

 

「あのじじいの精神にライザー・フェニックスの肉体か、厄介だな。」

 

「ああ、ヤツは無限に再生する。能力を奪えない今の状況だと、全滅だな。」

 

あのじじい、厄介な存在になりやがって!

 

「・・・・今、ヤツを倒す方法を思いついた。」

 

「それは・・・・」

 

「ーーー僕も肉体を捨て、ライザー・フェニックスの精神に憑依し、自爆することだ。」

 

 

 

*************************************

 

 

 

最高の気分だ。

不死身の再生能力と神の能力。

この2つの能力を持った儂に敵などいない。

 

「今の一撃で、デュレイは死なないまでも戦闘能力が低下しただろう。後はあのクソガキを・・・・」

 

「ーーーじゃあやってみろよ。」

 

「ほう、勝てないと分かっているのに来たのか?」

 

「どうだろうな・・・・」

 

このガキは何が言いたいんだ?

 

ん?

 

「・・・身体・・・・が・・・・」

 

儂の身体が、動かない!

 

「それはデュレイとの戦いの時に奪った神器の能力だ。少しの間、対象物の動きを止める能力を持つ。」

 

儂の動きを止めたとしても・・・・

 

「これでアンタは僕から逃げられなくなった。」

 

「貴様は・・・・」

 

デュレイ、貴様であろうともう儂には・・・・

 

「今から僕は、ライザー・フェニックスの精神に憑依し自爆する。」

 

「っ!?」

 

あの目は本気だ。

そんな事をされたら!

 

「ーーー僕もアンタも消滅するだろうね。」

 

「やめろぉっ!」

 

デュレイの身体が輝きだす。

このままだと儂はデュレイに・・・・

 

デュレイ・・・に?

 

 

「・・・・やってくれたねイッセー君。何故邪魔をする。」

 

見るとデュレイは固まっていた。

 

クソガキが何かしたのか?

 

「悪いデュレイ、じじいを倒す為に誰かが死ぬのはやっぱり嫌なんだ。」

 

「イッセー君・・・・」

 

「それにこのじじいは俺が倒す。」

 

儂の身体に自由が戻る。

馬鹿なヤツだ。儂を倒すチャンスだったというのに。

 

おっと、声に出してはいかんな。また拘束されたら厄介じゃ。

動ける内にこのクソガキを排除するかのぉ。

 

「じじい、お前はテレサに少しでも申し訳ないと思ったことがあるか?」

 

申し訳ない?

あの小娘にか?

 

「あるわけ無いだろ!」

 

「そうかよ・・・・なら良かった。」

 

クソガキはゆっくりと儂を見据える。

 

「テレサは優しいから、反省してたらお前の事を許しちまうかもしれないからな。」

 

「許す?何を馬鹿なーーー」

 

「ーーーこれでお前を容赦なく消せる!」

 

クソガキの籠手が輝きだす。

 

「禁手<バランス・ブレイク>。」

 

 

 

*************************************

 

 

 

ガルディールの力を感じなくなった後、俺の神器の中にあった違和感の様なものが消えた。

 

神器の力とガルディールの力が互いに打ち消し合っていたのかもしれない。

いつもより強く、神器の力を感じる。

 

今なら・・・・・

 

「行くぞじじいっ!」

 

俺の拳がじじいの槍を折る。

そして、暇を与えることなくじじいに拳を放つ。

 

「ふんっ!」

 

一瞬で再生。

そんなこと分かってるよ。

 

「死ねぇっ!」

 

じじいはまた槍を創ったのか俺に向けて突いてきた。

 

隙だらけだぞ?

 

ーーーゴッ

 

俺の拳がじじいの腹に入り、鈍い音を立てる。

じじいが槍を振り回すので、俺はじじいから距離をとる。目的も果たしたしな。

 

「クソガキ逃げるのかっ!」

 

「まさか。テメエ相手に逃げる必要ないだろ?」

 

「舐めるなぁっ!」

 

じじいが槍を投げてきた。

俺はそれを難なく手で掴む。

 

俺の掴んだ槍が消える。

 

「ふんっ。」

 

じじいが槍を創ろうとするが・・・・

 

「どうしたじじい、疲れて出来なくなったのか?」

 

「ハアアアァ!」

 

じじいの手に槍が握られる。

そして槍を創ったじじいは肩で息をしている。

 

「出来た・・・・じゃろ・・・・」

 

ーーーゴッ

 

俺は再びじじいの身体に拳を放つ。

 

「グハアッ!」

 

じじいの身体がくの字に曲がり吹っ飛んでいく。

吹っ飛ばされたじじいの持っていた槍が地面に転がっている。俺はそれを掴み、折る。

 

「ーーークソガキ、何をした!」

 

じじいが怒声を上げる。

さっきまでの余裕はどうした?

 

「返してもらっただけだ。テレサの力をな。」

 

俺は槍を創った。

もちろんじじいから《奪った》テレサの能力でだ。

 

「この槍は精神を破壊する能力を持つ。」

 

「なんだとっ!やめーーー」

 

「ーーーさよならだ。」

 

俺はじじいに向かって槍を放った。

 

 

 

 





イッセーの真の禁手についての能力は次の話で。

現在幻術の能力はイッセーが持っており、皆幻術が解除されています。
幻術が解除されたヴァーリ達は?
となるのですがそれは次の章に繋がります。

最近遅れぎみですが出来るだけ速めに投稿します。


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イッセーの介護?日記


すいません、書いては消してを繰り返していたらこんなに間が開いてしまいました。

次回(聖剣編)は原作に沿う所が多くなるので更新速度は上げたいと思います。


《???》

 

 

目が覚めると私は知らない部屋にいた。

部屋は、私が寝ているベッドと小さめの鏡と棚があるだけの殺風景な部屋だ。

 

お城の部屋でもないし、アパートの部屋でもない。ここは一体・・・・

 

「・・・っ!」

 

身体が痛い。

何でこんなに・・・・

 

「ーーーあっ。」

 

思い出した。

別に思い出したくもなかったけど。

私の力・・・母様から受け継いだ神の力を上げたからだ。

 

でも今、私の身体には確かに神の力がある。

 

「何で神の力が・・・・」

 

「ーーーそれは俺が取り返して、デュレイにテレサの持ってた神の力を戻してもらったからだよ。」

 

部屋に一つしかないドアが開き、聞き慣れた声がする。

 

「イッセー?」

 

私はどうにか身体を動かし、ドアの方を向く。

 

「ああ、テレサ・・・・・って、髪が!?」

 

イッセーは何を言っているのかな。

私はふと、肩に掛かる髪を見た。

 

「・・・・金髪だ。」

 

黒かった筈の髪が金になっていた。

 

イッセーに・・・・バレちゃった・・・・

 

「イッセーこれはーーー」

 

ーーー突如、今までに体感したこともないような頭痛に襲われる。

 

「頭が・・・痛ぃ・・・・」

 

「ーーーテレサ、おいテレサ!」

 

私の身体の事ちゃんとイッセーに言わないと・・・

あれ?

イッセーの声が聞こえなくなって・・・・

 

 

 

*************************************

 

 

数分前

 

 

「イッセー君、本当に行くのかい?」

 

「ああ。」

 

「分かったよ。」

 

デュレイはそう言うと、聞いたこともないような言葉を発した。魔法か何かの詠唱だろうか?

 

俺の目の前の空間に裂け目が出来た。

 

「二度と出られなくなったとしてもいいのかい?」

 

「そうだとしたら尚更行ってあげないといけない。」

 

「ほほう、尚更とは?」

 

デュレイが興味深そうに聞いてくる。

何かおかしい事言ったか?

 

「テレサは寂しがりやなんだ、一人にしておくなんて可愛そうだろ?」

 

俺がそう言うと、デュレイは手で口を抑え肩を震わせている。

 

「何が可笑しい。」

 

「いや、君達を引き裂こうとした自分が馬鹿らしく思えてきてね。」

 

俺はデュレイが創った空間の裂け目に入っていく。

 

「彼女を幸せにしてやってくれ。」

 

「その台詞はーーー」

 

おかしくないか?・・・・

 

俺が言葉を言い終わる前に空間の裂け目が閉じた。

デュレイめ・・・・

 

ん?

 

薄暗い空間の中に、白い何かが浮かんでいる。

 

「なんだあれは?」

 

俺はその白い何かに近づく。

どうやらこれは手紙の様だ。

表に[イッセー君へ]と書いてある。デュレイからか?

俺はその手紙を手に取り、広げた。

 

[イッセー君のいる空間には念話等の通信が行えないので、連絡事項は手紙を送って伝えます。今イッセー君がいる薄暗い空間を突き進むと目的地に着くよ。]

 

ここをまっすぐ行けばいいのか。

俺は手紙に書いてあった通り、薄暗い空間を突き進んだ。

 

「ここが目的地か?」

 

時間にして一時間は歩いたと思う。まあ時計も無いから実際の所は分からない。

俺の目の前には空間の裂け目があった。

 

「これは・・・・」

 

空間の裂け目の近くに手紙が浮かんでいた。これもデュレイからだろう。

俺はまた手紙を手に取り、広げた。

 

[この空間の裂け目に入って少し進むと彼女のいる空間に辿り着くよ。裂け目が沢山あるから間違えないように。]

 

何で何個も無駄に創ってるんだ。

 

[裂け目は一方通行、入ったら出る事が出来ないのでよく覚えておいてくれ。]

 

何を今更言ってるんだ。

もう覚悟は決まってる。

 

俺は目の前の裂け目に入っていった。

 

 

 

*************************************

 

 

 

「一切迷いなしか・・・・」

 

僕は水晶の中に映るイッセー君を見ながら呟いた。

 

「過程はどうあれ、あの駄神は消滅させる事が出来た訳だ。」

 

駄神が憑依していた、ライザー・フェニックスの身体はボロボロだが治せない程じゃない。

正直、イッセー君がいなかったらあの駄神は消滅させられなかっただろうな。

 

それにしても、あんな力があったとは・・・・

イッセー君の神器は龍を封印するのに容量を使いすぎて、本当の禁手が使えなかったみたいだけど。龍から力を借りたことにより、龍の持つ力が弱まり本当の禁手が使えたということか。

 

イッセー君の禁手の能力は、禁手した直後に相手からじわじわと能力を奪っていき、自分がその相手に攻撃を仕掛け、その攻撃が当たると能力を奪う速さが上がる。

勿論、攻撃すればするほどその速さは加速する。

 

相手はじわじわと能力を奪われるから、完全に奪われて能力が使えなくなるまで気づかない。

奪われかけている能力だと、効果が小規模になったり、自身が能力を使うことにより消耗する体力が多くなったりする。

事実、あの駄神も能力をじわじわ奪われて、槍を創るのに手間取っていた。

 

とんでもない能力だね。

まさに禁手<バランス・ブレイク>だ。

龍の力に耐えた後にしか使えないというデメリットがあるけど禁手で得られるメリットも大きい。

 

ちなみに何故イッセー君の能力を僕が知っているのかというと、僕の所持する数少ない神器の内の一つのおかげだ。

 

「さて、イッセー君も目的地に着いたみたいだし。」

 

僕は周りを見渡す。

半壊したフェニックス城だ。

 

「全部何とかしないとな・・・・」

 

これは時間が掛かりそうだ。

 

 

 

 

+++++++++++++++++++++++++++++++++

 

 

イッセーのノート

 

デュレイから聞いた話だけどテレサは自分の持っている神の力を一度無くしてから再び得たため、神の力の影響で身体が思うように動かせないらしい。

俺が介護することになったのでテレサが俺の介護が必要なくなるまで記録をつけることにした。

 

 

***

 

初日

 

 

俺がテレサの部屋に入るとテレサの髪が金色になっていた。きっと神の力の影響だろう。

テレサは俺に何か言おうとしていたけど頭痛で気を失ってしまった。

とりあえず寒くないように布団をかけておいた。

ずっと見守っていたけどこの日、テレサは目覚めることはなかった。

 

あまり介護とは関係の無い話だけど、不覚にもテレサを見た時に見とれてしまった。

蒼色の澄んだ瞳に白い肌、そして優しい輝きを放つ金色の髪。今のテレサの姿を一言で言うなら女神、もしくは天使かな?

 

 

***

 

 

気がついたらテレサのベッドの隣に置いた椅子で寝ていてしまったので身体が痛い。

次はソファーか何かを持ってきて寝ようと思う。

テレサが目覚めたのは丁度午後になったころだった。

目覚めたテレサは俺を見るなり泣き出しそうになったので何処か痛いのかと思い、頭を撫でながら

「何処か痛い所はない?」

と、聞くと突然テレサは大泣きした。

 

原因は俺の怪我らしい。

打撲や切り傷などで身体のあちこちに包帯が巻かれているのを見て、

「自分の事を大事にして。」

と泣かれてしまったのだ。テレサは泣きながら

「自分のことを大事にすると約束して。」

と言ってきたので

「俺の事はテレサの次でいい、俺にとってはテレサのことの方が大事なんだ。」

俺がそう言うと、テレサは

「こっち見ちゃダメ。」

と言って黙りこんでしまった。

 

テレサにそう言われ、俺は後ろを向いたけどテレサは何も言わない。

俺から何か言おうにも、何か言えるような感じでもないし、言うべき言葉も思い浮かばない。

 

 

この静まり返った状況を変えたのは、テレサのお腹の鳴る音だった。

 

テレサのご飯を作る事という事を口実に、俺はなんとか部屋から脱出。

 

俺が普段持ち歩いている非常食を食べさせる訳にはいかないし、テレサのご飯をどうするか悩んでいたらデュレイから手紙がきて、その中に料理場までの案内図が入っていたので案内図にあった料理場で料理をする事ができた。

料理場はかなりの大きさで、冷蔵庫の中に大量の食材が入っていたり、沢山の食器があったりと設備が整っているのはラッキーだった。

料理場にあった食器を何処かで見た事があるような気がしたけど気のせいだろう。

 

食事は当然俺が食べさせる事になる。

テレサはまだ身体をまともに動かせない状態なので仕方がない。

テレサは俺に食べさせてもらうのが恥ずかしかったらしく顔を真っ赤にしていた。

テレサは食べ終わった後、恥ずかしくて泣きそうだと言っていけど、これがまだ何日も続くということを言うのはやめておこう。

 

それからちょっと前にリインが言っていた、恥ずかしがっているテレサは可愛いと言っていたことの意味がよくわかった。

 

そうえばどうしてテレサはあの時俺に後ろを向いてと言ったんだろう?

 

 

***

 

 

俺の身体の怪我も初日よりは良くなってきた。俺の持っていた治療系の神器は壊れてしまったので自然回復を待つしかない。

アーシアとかがいれば簡単に治ったと思うけど今はいない。

 

まだテレサは俺にご飯を食べさせてもらってはいるものの、まだ身体が痛くて食べさせてもらうのも辛いらしい。

昼にちょっとした冗談のつもりで食べ終わったテレサに、

「辛いのを我慢して食べきったご褒美」

と言って頭を撫でたところ、テレサは食べさせている時よりも顔を真っ赤にして俯いてしまった。

 

少しやり過ぎてしまったかもしれないと反省したけど、反省するのが少し遅かった。

 

夜にご飯を食べきったテレサが俺に、

「ご褒美っ!・・・・ご褒美くれないのイッセー?」

と言ってきたので、結局頭を撫でてあげることに・・・・

結局、俺はテレサが寝つくまで頭をなで続けた。

 

まあテレサの髪は犬や猫の毛のような柔らかさだったので撫でていて癒されたような気がする。

 

 

***

 

 

最初の頃と比べて、テレサの調子は良くなったように思える。

どうやら神の力に馴染んできたようだ。

ある程度身体が動くようになったからといって油断は出来そうにない。

昨日の様にならないようにしないと。

 

[肉体が神の状態だと精神も神の状態になる。彼女の場合は自分に素直になるようだね。]

あとデュレイから手紙がきた、書いてあったのはこれだけだ。デュレイは俺に何を伝えたかったのだろうか?

 

 

***

 

 

普段の様にとはいかないものの、テレサは自分一人で歩ける様になった。自分の力に慣れた様だ。

 

そういえば、ライザー・フェニックスに憑依していたじじいはどうしてあんなにも早くテレサの持つ神の力を使えたんだろう?

俺はリークの進化の力があったからすぐ使えたけど、じじいにその力があるとは思えない。

俺の知らない何かがあるのか?

 

 

*

 

*

 

*

 

*

 

 

最後のページ

 

 

テレサの身体はもう大丈夫だと思う。

そろそろ、この空間から出られないことをテレサに言わなくちゃいけない。

俺は最初から出られないことを知っていて入ってきたからいいけど、テレサはまだこの事を知らない。

この事をテレサに言ったらテレサはーーーーーーー

 

 

ーーーパタン

 

私はイッセーのノートをゆっくりと閉じた。

 

「・・・・・イッセー。」

 

今日私は身体の調子も良くなったことだし、これまでのお礼も含めイッセーにご飯をご馳走しようと調理場に足を運んでいた。

調理場の棚を漁っていると、レシピの書いてある本に混ざって一冊のノートが見つかった。

何気にそのノートを開くと、日記のようなものが書かれていた。その字はイッセーの書いた字だった。よく見たことがあったのですぐにイッセーだと分かった。

 

今私達がいるこの場所の事はよく分からない。イッセーに聞くのもよかったけど、私はイッセーから話してくれるのを待つことにしていた。

 

結局私はイッセーから聞いて知るのではなく、イッセーの日記を読み自分で知ることになった。

イッセーは私に言うのかずっと迷ってたんだ。

それでも・・・・・

 

「ーーーテレサ。」

 

「っ!」

 

日記に夢中で、時間がたっていたことに気づかなかった。

私は日記をイッセーに見えないように背後に隠した。

 

「ど、どうしたの?」

 

気づかれなかった・・・よね?

 

「・・・・見られちゃったか。」

 

バレてた。

 

「あ、あのねイッセー。私はイッセーが傍にいてくれて嬉しかったし、寂しくなかったんだよ。でもイッセーまでここに閉じ込められる必要なんて・・・・・」

 

イッセーは気まずそうに・・・・

 

「テレサ、その事なんだけど・・・・」

 

 

 

*************************************

 

《エリクシール城付近》

 

[テレサ・オルスレン

 

かつての戦争の際に断絶したと思われていたオルスレン一族の末裔。

一族に代々伝わる進化の能力は継承されている。しかし本人は非常に病弱なため、滅多に表にでない。

 

神の血も混ざっーーー]

 

「ーーーそこはまだ都合が悪いから要らないわ。」

 

「じゃあこれでいいのかい?」

 

「後、オルスレン家の当主っていうのも付け足しといてね。」

 

「分かったよ。」

 

「感謝するわ。」

 

「人に剣を突きつけておいてよくーーー」

 

「ーーー何か言ったかしら?」

 

僕は必死に首を横にふった。

 

「じゃあこれを貴方の力でテレサの正式なプロフィールにしておいてね。」

 

こんな嘘ばっかりのプロフィールを・・・・家名も適当すぎる、別にアルジェントでもいいんじゃないか?

 

まあ今の僕に発言権は無い、イッセー君と彼女の娘で遊びすぎた・・・・

 

これ以上余計なことをすると消される。

 

「それじゃあ頼んだわよ。」

 

その言葉と同時に彼女の気配が消える。それと同時に僕の身体から力が抜ける。

 

僕は近くにあった岩に腰掛けた。

 

「・・・・・帰るか。」

 

まだ少しやりたい事があったけど、大怪我をしたり、脅されたりと今日は厄日のようだ。

もうこれ以上何かをする気力がない。

 

僕の身体が黒い霧に包まれると同時に、僕の服装も変化した。

これまで着ていた悪魔の貴族の服から、黒い衣になった。

 

あの駄神の席を奪えただけでもよしとしよう。

 

 

 

*************************************

 

 

 

「あれっ?たしかこの辺りだったはずなんだけど・・・・」

 

結局、この空間・・・・この部屋から出られないというのはイッセーの勘違い?(本人は騙されたと言っていた)らしい。

 

「見つからない・・・・」

 

イッセーは今まで別の空間にある特殊な部屋などにいるんだと思っていたらしい。

でも実際はエリクシール城の地下。

 

思い込みとは恐ろしい。

 

・・・・まあそんな私も気がつかなかったけど。

 

「あった!」

 

山積みになったタオルの中に隠れていた白いリボンを髪に結び付ける。

タオルと同じいろだったから分かりにくかったよ。

 

急がないととイッセーを待たせちゃう。

 

ガタン

 

あっ、急いでいたせいか部屋に置かれていたゴミ箱を蹴飛ばしてしまった。

 

良かった、ゴミ箱の中にはそんなにゴミが入っていなかったらようだ。

ゴミ箱から出たのは丸まった紙一つみたい。

 

私はその紙を拾い上げてゴミ箱に入れようとするが・・・・・

 

あれ?紙に何か書いてある。

 

 

*************************************

 

 

《エリクシール城地下、階段前》

 

 

[イッセー君へ

現在、イッセー君達がいる場所はエリクシール城の地下です(笑)この手紙を最後まで読むとイッセー君の視覚に掛かっている幻術が解除されます。彼女についてはプロフィールを少し?だけ代えてあるから後で確認しておいてね。それから彼女は金髪になっている時はとても素直になるみたいだから、黒髪になっている時に金髪になっていた時の話をしない方がいいよ。]

 

デュレイから送られてきた最後の手紙。まあもう捨ててしまったけど・・・・完全に遊ばれていたな。まぎらわしい事を言って

勘違いさせやがって。

それにまだ幻術が使えたのか。今度会ったら完全に奪ってやる。

 

〔そうなる日が楽しみだな。〕

 

「ガルディール!」

 

最近声を聞いていなかったからすっかり忘れていた。最後に声を聞いたのはいつだっけな・・・・

 

〔・・・・俺がいると邪魔そうだったからおとなしくしていたんだ〕

 

「邪魔そうって・・・そんなこと無いと思うけど。」

 

〔ずっとあの娘と二人きりの空間に入っていたような気がするが?〕

 

「・・・・・」

 

否定できない。

いや、あれだ・・・・いつものテレサと違うというか、なんというか・・・小動物みたいな感じで放っておけなかったというか・・・・

 

「ーーーゴメンねイッセー、遅くなっちゃった。」

 

「い、いや大丈夫。」

 

とりあえず、テレサと一緒に皆に会えるから良かったかな。

 

「それじゃあ上がろっか。」

 

「そうだね・・・・あ!でもその前に。」

 

テレサが数段階段を上った所で、俺の方に振り向いた。

あれ?黒だった髪が金色になってる。

 

「私の事気遣ってくれてありがとう、それから・・・・大好きっ!」

 

そう言うとテレサは階段をかけ上がっていってしまった。

 

〔また俺はおとなしくしていた方がいいのか?〕

 

「・・・・・ああ。」

 

〔・・・・・・〕

 

大好き・・・か。

 

「それは俺もだよ、テレサ。」

 

そして俺も階段を上っていくのだった。

 

 

 

 

 

 





デュレイは大量に神器や能力を所持しているので幻術系の一つが失われたとしても幻術を使えたりします。

テレサについては

悪魔の血で得たもの
進化の能力・・・・敵から受けた特殊な攻撃などを自身の身体を進化させることで無効化させる能力。

人の血で得たもの
神器・・・・神器を創る神器、とテレサは認識しているが実際は違うらしい。

神の血で得たもの
神の光・・・・天使の光、堕天使の光よりも強力な光。

本来悪魔の血と神の血が混ざることはないが、悪魔の血から受け継いだ進化の力により、混ざることができた。

身体の調子によって、どちらかの血が一時的に濃くなったりすることもあるが、悪魔の血が身体の半分流れているので普段は悪魔の状態。
神の血が濃い状態だと金髪になる。外見は髪意外ほとんど変わらないが性格がとても素直になるので、普段言わないような本音を言ったりする。


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聖剣編
ヴァーリの神器


《オルスレン(シュバリナ)領立入禁止区域》

 

 

木々に囲まれて見つかりにくいこの場所に避難して正解だったな。案の定、空に逃げたイングヴァルトはリインに捕まっている。

 

「かれこれ五時間か・・・・」

 

僕は冥界の時計屋で買った懐中時計を見ながらため息まじりに呟く。

 

ーーーバサバサッ

 

戻ってきたか。

 

僕の目の前に1羽の鳥が飛んできた。

幻鳥フェニックス、この領地にしか生息しないと言われている鳥だ。

噂だが、太古の昔はフェニックス家の領地にも生息していたとか。

 

まあそんなことはいいとして、

 

「もう終わりそうかい?」

 

僕は鳥に問い掛ける。

普通の鳥なら僕が何を言っても無駄だろうがこの鳥は違う。言葉を理解することができる。

 

・・・・鳥は首を横に振った。

 

まだあの列が続いているのか。

 

 

 

*************************************

 

五時間前

 

《エリクシール城》

 

 

頭がクラクラするな。

 

「・・・・ヴァーリ、おいヴァーリ!」

 

「・・・・リイン・・・か?」

 

僕は周囲を見渡す。

よく見たことのある部屋だ。

どうやら成功した様だな。

 

俺は、いや俺達はテレサがライザーフェニックスと結婚したということが真実だと思い込んでいた。普通だったらまず信じないだろう。だが何故かそう思い込んでいた。

イッセーにテレサとライザーが結婚したのかと聞かれた時、僕はそうだと言った。

その時はイッセーがおかしなことを言っている様にしか思えなかった。

だが暫くしてから自分の頭の中から何かが抜けたかと思うと、おかしいのは自分だと気がついた。

僕は何らかの幻術にでも掛けられていたのだろう。テレサとライザーが結婚しているという幻術に・・・・

 

自分が幻術にかかる前に戻りたい、そう思ったのが失敗だった。

 

「全員戻ってこれたぞ。」

 

まさか過去に行くことになるとは・・・・

 

「そうか。」

 

僕はそっと胸を撫で下ろす。

失敗しなくて良かった・・・・

 

「他の皆はどうしたんだ?」

 

「巻き込まれなかったテレサとイッセーを探しに行っている。」

 

「それじゃあ僕も・・・」

 

僕は身体を起こした。

 

「大丈夫なのか?」

 

リインが心配そうに言うが、僕の身体は特に問題ない。身体は、ね。

 

「ああ、それよりも二人を探そう。」

 

「ならいいんだが・・・・皆はあっちに向かって歩いていったぞ。」

 

「それなら僕達は反対側を探してみよう。」

 

「そうだな。」

 

僕とリインはアーシア、オリヴィエ、イングヴァルトが向かった方向とは逆の方向に向かって行くのだった。

 

 

 

*************************************

 

 

 

「おいオリヴィエ、早く声を掛けろ。」

 

と、オリヴィエの背中を押すイングヴァルト。

 

「嫌ですよ、アーシア自然な感じで声を掛けらてくれませんか?」

 

イングヴァルトの押しに堪えつつ、アーシアに問題をパスしようとするオリヴィエ。

 

「えっ!あんなテレサちゃん初めて見ますし私もどんな感じに声を掛けたらいいのか分かりませんよぉ。」

 

結局自分が話し掛けに行くことになるんだろうと思いつつ、なんとか回避しようとするアーシア。

 

三人はドアを少しだけ開け、ある部屋の中を覗き込んでいた。

 

そこはテレサの部屋。

そしてそこにいたのは・・・・

 

 

 

「お城に誰も居ないし今日もイッセーと二人っきり~♪」

 

ベッドの毛布にくるまりながら、嬉しそうにはしゃいでいるテレサだった。

 

「「「・・・・・」」」

 

自分達が居なかった間に何があったというのだろうか。

 

この三人の中に今のテレサに声を掛けられるような者はいない。いや、この三人でなかったとしても大半は声を掛けるのに戸惑うだろう。

だが、誰かがやらなくてはならない。

 

なら・・・・

 

オリヴィエとイングヴァルトの目が合う。

 

ーーートンッ、バタン

 

無言の連携。

イングヴァルトがアーシアの背中を押して、オリヴィエが部屋のドアを閉めたのだ。

 

「イッセーを探しましょう。」

 

「そうだな、毎日テレサと一緒に寝ているアーシアなら大丈夫だろう。」

 

二人は何事も無かったかの様にイッセーを探すため、テレサの部屋から離れていくのだった。

 

***

 

 

「ようやく戻ってきましたか。」

 

イッセーを探す私とオリヴィエの前に執事服を着た一人の男が現れた。

この城、エリクシール城唯一の執事ベスだ。

 

「なんとかな。」

 

「ええ、皆無事ですよ。」

 

無事!?

私は両手の骨が粉々になったんだぞ!

 

『アーシアに治療してもらったから結果的に無事でしょうが。』

 

くっ、顔に出ていたか。私が文句を言う前に・・・・

 

しかし、信じられない事が起こったものだ、まさかヴァーリの神器で過去に行くことになるとは。

ヴァーリの神器の能力は封印。自分に有るものを封印する事で、相手が持つ自分が封印したものと同じものを封印する事が出来る。自分に掛けた封印を解除すると相手に掛けた封印は解除されるが、自分が解かない限り封印は解除される事はない。さらに自分の封印したものが相手より大きかった場合、相手の封印したものを破壊する事が出来る。

 

ヴァーリが魔力を封印してから剣で相手を斬れば、相手の魔力も封印される。

ただしヴァーリは魔力が膨大なため自分の魔力を少し封印するだけで相手の魔力を封印することが出来る。

 

そして禁手は自分が封印するものを選択出来る。例えば相手の神器を封印するのに、自分の神器を封印するのではなく魔力を封印する事で相手の神器を封印する事ができる。禁手の状態の時のみ自分が封印したものは一定時間を過ぎると消滅する。消滅した時は相手に掛けた封印も解除される。

だが自分の封印したものが相手の封印したものよりも大きなものだった場合、自分の封印したものが消滅しても 相手の封印したものは解除されない。

 

この神器の禁手では封印の対象に限りがない。

神であろうと龍であろうと封印することができる。だが相当な対価が必要になる。

 

過去の使い手にも神や龍を封印した者がいた様でヴァーリの神器には何体か封印されている。

だが封印されている神や龍は長い年月の経過が原因なのか、どれも精神と言える様なものが消滅しているらしい。

 

つまり赤龍帝の神器の様に封印されているものの力を借りる事が出来ないということだ。

 

だが今回は何故か封印されているものの力が使えたらしい。《時間操作の能力》封印されている神か龍の能力だ。

まあ使えたといっても使いこなせていなかったのでかなり昔に行くことになったがな。それにヴァーリだけでなく私達まで巻き込まれてしまった。

 

 

・・・・ん?

 

オリヴィエがベスと話をしながらチラチラとこっちを見ている。

 

なんだろう・・・・凄く嫌な予感がする。

 

「イングヴァルト、頼みがーーー」

 

「ーーーそうだ、用事を思い出した!」

 

オリヴィエの言葉を最後まで聞く前に私は逃げ出した。

なんとなく分かる、これは面倒な事を押し付けられる。

 

私は全力で城から出て、翼を広げ空に逃げた・・・・

 

 

 

*************************************

 

 

 

イングヴァルトを見つけたかと思えば物凄い勢いで走っていってしまった。

何かから逃げていたのかと思い、イングヴァルトが逃げてきた方に行ってみればオリヴィエがいた。

 

「まったく、イングヴァルトがいなくなったら誰が接待をするんですか・・・」

 

ヤレヤレと言った様子で執事のベスとイングヴァルトを追い始めた。

僕は咄嗟に隠れたからまだ見つかってない筈だ。

 

普通に何があったのかを聞いても良かったが、僕の本能がそれを拒んでいた様な気がしたので、とりあえず二人にバレない程度に近づき、聞き耳を立ててみる。

 

「イングヴァルトが見つからなかったらヴァーリ辺りにでも客人達の接待をしてもらいましょうか。」

 

「それがいいですね。」

 

客人?

しかも達と言っていたから複数いるのか!?

そういうのはイッセーとかの担当だ。

 

 

ーーーなんだか外が騒がしいな。

 

 

僕は城の窓から外の様子を眺める。

騒がしいのは城の門か・・・・

 

!?

 

何だあの悪魔の数は!

 

少なく見積もっても百人はいるだろう。

あれを僕が接待?

 

・・・・よし、逃げよう。

 

 

 

*************************************

 

 

そして現在

 

 

神器に封印された神か龍の力を使ったら神器に亀裂が出来てしまった。

あの金髪の女神の攻撃を受けたのが原因な気もするがな。

 

あの女神が使っていた武器、確かエクスカリバーだったかな?

確か現在は地上にあったはずだ。

 

神器が自然に修復するのにはかなりの時間がかかる。

武器はなくてもいいが、もしもの為にもあった方がいいかもしれない。

 

「エクスカリバー、盗ってくるかな。」

 

イッセーにレプリカでも創ってもらい、それと交換しておけば問題ないな。

 

ーーーバサバサッ

 

「お前も来るか?」

 

黄金の幻鳥フェニックスは首を縦に振った。

 

僕はフェニックスと共に地上に向かって歩きだした。

 

 

 




城に来ていた悪魔達は貴族です。
次の話でそのことについても書こうと思います。
それからテレサとアーシアのやりとりはまた後に書きます。



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