隼の決闘 (ごくでヴぁる)
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プロローグ『日常の終わり』

遊戯王の小説面白い
ということで書いてみることにしました!
でも、プロローグはシリアスっぽいけど今後はそんなことなかったりする気がします(ぁ


 「俺のターン!」

 

 そういうと同時に、デュエルディスクに設置されたデッキからカードを引く。

それと同時に、相手を苦しげな表情で見上げる。

自らと相対するのは、ビルほどの高さを持つ巨大なモンスター。

その覇気に足がすくみそうになる。

だが、それに屈しればどうなるかわからない。

 

「そもそも……なんでこんな状況になってるんだっけな」

 

 昨日までは、なんてことのない日常を送っていたはずだったのに……

 そんな思いが、この状況となったきっかけとともに思い出されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「だー!今日も負けた!」

 

 遊戯王の大会の帰りだった。

 三回戦までいけたが、ギリギリのところで負けてしまい勝てなかった。

 彼は、『霧埼 隼』

 小学生の頃から、遊戯王をしている中学二年生。

 最近では、遊戯王ARC-Vで好きな『あるキャラ』のデッキを愛用している。

 大会にはいつもそのデッキで出ている。

 

 「逆転のカードは引けたんだけどなぁ、あそこで神の通告はきついって」

 

 そう愚痴をこぼしながらも、今回負けた原因を考えながら帰り道を歩いていた。

 ……そのとき、足元に一枚のカードが落ちているのに気づいた。

 

 「ん、誰かが捨てたのか?ひどいことするなぁ」

 

 そう言って、落ちていたカードを拾った。

 そのカードの名前は……

 

 「《運命の扉》?また変なカードを捨てるもんだな」

 

 《運命の扉》

 遊戯王ZEXALで、主人公である九十九遊馬が遭遇した扉がカード化したものだ。

 効果としては、使いにくいカードだが面白い効果を持っているのとアニメが好きな人では入れていることもあるだろうカードだ。

 

 「捨てるか落とすにせよ、珍しいカードを落とすなぁ」

 

 そう不思議に思っていたときだ。

 手に持っていた、《運命の扉》が光を放った。

 

 「なっ!カードから光が!?」

 

 その光は次第に強くなり、隼の体を包み込む。

 そして、光が消えるとその場にいた隼の姿は消えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ッ……ん」

 

 どのくらいの時間、気を失っていたのか。

 目を覚ますと、今まで歩いていた道とは違う場所で倒れていた。

 人気も少ないこの場所は、どこかの裏路地なのだろう。

 少なくとも、気を失った後いる場所としてはおかしいだろう。

 

 「ここは……確か、大会の帰りだったはずなんだけど。確か、《運命の扉》を拾って……そしたらカードが光って!」

 

 記憶の整理をし、余計に混乱を起こす隼。

 自分は何でここにいるのか、なぜカードが光ったのか、まるで意味がわからんぞ!とも言いたくなるぐらい困惑していた。

 そんなとき、裏路地の先から人の声が聞こえた。

 

 「……人の声?と、とりあえず誰かに話を聞きに行かないと!」

 

 一人ではどうしようもない、そう考えた隼は人の声がする場所へ向かった。

 その先に行くと、二人の人影が見えた。

 

 「ハッハッハッ!!こいつでダイレクトアタックだ!」

 

 目の部分には透明な板が、耳からかけることで装着されており腕にはカードを置く為の板が設置されていた。

 それをデュエルしているのか、大柄な男と制服のようなものを着た少女がつけている。

 そして、決着がついたのか。

 少女のほうは、まるで力のある何かに殴られたかのように吹き飛ばされる。

 そのままだと壁にぶつかるだろう、それを隼はほおっておけなかった。

 

 「危ない!」

 

 走って吹き飛ばされる少女の元へ向かい、彼女を自分の体で受け止めた。

 勢いが思っていたより強く、背中を近くの建物に打ちつける。

 

 「ッ……おい!大丈夫か?」

 

 「うぅ……」

 

 女性を見ると、体に負傷をしているのかうめき声をあげる。

 その姿を見ていた対戦相手の男は、ニヤリと笑みを浮かべる。

 

 「おやおや、どうやら俺に《No.》の攻撃を受けて怪我しちまったみたいだな」

 

 ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべ、男は少女の下へ向かおうとする。

 嫌な感じがする男に、隼は警戒心を強める。

 

 「おいお前!彼女に何をした!」

 

 「そう怒鳴るなよ、俺はただデュエルをしてただけだぜ?アンティとして、その女の身柄を要求してな」

 

 「なっ!?」

 

 その言葉に、隼はひどく驚いた。

 デュエル、遊戯王というカードゲームでそのようなことを決めようとすることに。

 先ほどのデュエルディスクや、男の雰囲気から普通のことをしているとは思っていなかった。

 しかし、ここまで非道なことをしているという事実に驚きと同時に怒りがこみ上げる。

 

 「……ふざけるな、貴様は人を何だと思ってる!」

 

 「そう怒るなよ、てめえには関係ないことだろ?」

 

 男の言い分は確かだ。

 この少女がどうなろうと自分には関係がない。

 だが、目の前で少女が不幸な目に合おうとしているのを見過ごせるはずがなかった。

 

 「……デュエルだ」

 

 「なに?」

 

 自然と、言葉に出ていた。

 目の前の男を見逃すことはできない、深く考えずに言っていた。

 

 「デュエルで俺が勝ったら、彼女に何もするな!」

 

 「……何を言うかと思えば。そんなの受ける必要もねぇことを」

 

 目の前の男に、殴り合いで勝てるはずもないだろう。

 体格や年齢を考えれば当然だ、よって彼からすれば受ける必要もないものだ。

 ……ゆえに、交換条件を出す。

 

 「……俺が負ければ、このデッキとエクストラデッキを差し出す!」

 

 彼がかけたのは、自らが愛用するデッキ。

 彼が今までともにデュエルしてきた魂とも言えるものだ。

 

 「ほう……いいだろう、なら相手してやるよ」

 

 男は、隼が出したカードを見ると目の色を変えた。

 それは今まで見たことのないカードであり、多くの『エクシーズモンスター』を持っていたからだ。

男は少女のそばによるのをやめ、先ほどのデュエルに使用していた道具……DゲイザーとDパッドを装着する。

 

「……すまない、借してもらうよ」

 

隼はその二つを持っていない、そのため倒れている少女に謝り彼女が持っているDゲイザーとDパッドを装着した。

 そして、自分のデッキを一目見た後Dパッドに装着した。

 

 「ハッ、じゃあやろうじゃねえか。ガキ!」

 

 「……行くぞ」

 

 「「デュエルッ!!」」

 

 男LP:4000   霧埼 隼LP:4000

 

 「(LPが4000?)」

 

 ARビジョンにより、お互いのLPやカードは実体化する。

 だが、そのLPがまず4000であることに疑問を覚えた。

 

 「先行は俺からだ!ドロー!」

 

 男 手札:6枚  隼 手札:5枚

 

 「先行ドロー!?」

 

 隼が慣れ親しんでいるルールは、『マスタールール3』と呼ばれるもの。

 先行ドローはできず、一部の効果処理なども変更されているもののはずだ。

 

 「ハァ?なに驚いてる?……デュエルのルールもろくに理解できねぇガキを相手にするとはな」

 

 少しため息をついたのち、男はデュエルを進める

 

 「魔法カード、《おろかな埋葬》。こいつでデッキから、《暗黒界の龍神グラファ》を墓地に送るぜぇ!」

 

 「暗黒界デッキ……」

 

 墓地に送られたカードから、隼は相手のデッキを予測する。

 先ほど墓地に送られたカードは、フィールドの《暗黒界》モンスターを手札に戻すことで特殊召喚できるカードだったはずだ。

 

 「さらに!手札から魔法カード、《手札抹殺》発動!お互いに手札をすべて捨てて、同じ枚数分ドローさせてもらうぜ」

 

「ッ……」

 

 「そしてこの効果で墓地に捨てられた《暗黒界の尖兵 ベージ》を特殊召喚!」

 

 男のフィールドに、槍を構えた不気味な姿をした悪魔が現れる。

 

 「さらに!こいつを手札に戻して墓地の《グラファ》効果発動!特殊召喚だ!」

 

 フィールドの《ベージ》が消えると同時に、地面に亀裂が走る

 その亀裂は広がり、その地面が砕けるとそこから龍の姿をした悪魔が現れる

 

 「ベージを召喚し、墓地にいるもう一体の《グラファ》も戻して特殊召喚だ!」

 

 「ッ……二体目もいたのか」

 

 男のフィールドに、二体の龍神が並んだ。

 

 「ハハハハハッ!これだけじゃねえ!俺は、二体の《グラファ》でオーバーレイだ!」

 

 「なに!?」

 

男の場にいる二体の《グラファ》が紫色の光の球となり、フィールドに出現した金色の渦の中へと吸い込まれる。

そして、渦を中心に光が爆発を起こす。

 

「二体の闇属性モンスターで、オーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!」

「現れよ!《No.22 不乱健》!」

 

渦の中から、布をかぶったビルほどの大きさを持つ巨人が現れる。

その巨人は相手である隼を見ると、大きく雄たけびを上げた。

 

《不乱健》

ATK:4500

 

「ッ……なんだ、この威圧感!」

 

今まで出てきたモンスターでは感じなかった異質な威圧感をこのモンスターは持っていた。

 

 「ターンエンドだ!」

 

 男 手札:5枚

   LP:4000

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 隼 手札:6枚

 

 「……とりあえず、どうするかな」

 「(《不乱健》には、相手の表側のカードの効果を無効にする効果があったはず。守備表示にもなるし、ここは)」

 「俺は手札から魔法カード、《ブラック・ホール》発動!」

 

 フィールドにすべてを吸い込む渦が出現する。

 このままなら、すべてのモンスターを破壊するだろう。

 

 「ハッ、そうはいくかよ。《不乱健》の効果発動!」

 

 「(よし、これで……)」

 

 守備表示になって、破壊できる。

 ……しかし、そうはいかなかった。

 

 「オーバーレイユニットを一つ使い手札を1枚捨てることで、相手フィールドのカードの効果を無効にする!」

 

 《ブラック・ホール》は無効にされ効力を失った。

 しかし、《不乱健》は守備表示にならなかった。

 

 「なに!?」

 「(そんな……なんで守備表示にならない……まさか!)」

 

 Dゲイザーを使い、相手のモンスター効果を確認した。

 そのテキストは……

 

《No.22 不乱健》

 エクシーズ・効果モンスター

ランク8/闇属性/アンデット族/攻4500/守1000

闇属性レベル8モンスター×2

(1)このカードは《No.》と名のつくモンスター以外の戦闘では破壊されない。

(2)1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、

手札を1枚墓地へ送り、

相手フィールド上に表側表示で存在するカード1枚を選択して発動できる。

選択したカードの効果をエンドフェイズ時まで無効にする。

さらに、無効にしたカードがモンスターカードの場合このターンのバトルフェイズ中、そのモンスターはこのカードに攻撃しなければならない

この効果は相手ターンでも発動できる。

(3)このカードは女性型モンスターには攻撃できない

 

 

 「ッ……原作効果か、厄介な」

 

 原作と同じ耐性と効果もち。

 これでは、並大抵の手段では倒すのは困難だ。

 

 「……だが、だからどうしたっていうんだ」

 

 あのモンスターには恐怖を覚える、今まで味わったことのないものだ。

 だが、だからといってここでくじけるわけには行かない。

 ……あのキャラのように、『鉄の意志と鋼の強さ』を持って。

 

 「敵を粉砕する!」

 

 相手を倒すための一手を、隼は使う。

 

 「俺は、《RR-スカル・イーグル》を召喚!」

 

 ATK:1000

 

 隼のフィールドに、黒と白を模した鳥が出現する。

 召喚されたモンスターを見ると、男は馬鹿にした笑いをする。

 

 「攻撃力1000のモンスターを攻撃表示だと?ハハハハッ!俺のモンスターに差し出す生贄か!」

 

 すでに隼に勝ち目はない、そう男は確信していた。

 それを気にせず、隼はデュエルを続ける。

 

 「さらに《スカル・イーグル》を対象に、手札から魔法カード《RR-コール》発動!対象としたモンスターの、同名の《RR》を特殊召喚する」

 「来い!二体目の、《スカル・イーグル》」

 

 魔法カードの効果で、同じ《スカル・イーグル》が出現する。

 その時点で、男は顔色を変えた。

 

 「ッ……同じモンスターってことは」

 

 「俺は、LV3の《スカル・イーグル》二体でオーバーレイ!!」

 

 黒色の渦へ、紫色の球体が吸い込まれ光の爆発を起こす。

 

 「エクシーズ召喚!現れよ、ランク3!《RR-デビル・イーグル》!」

 

 ATK:1000

 

 赤と白の機械的な翼を持った鳥がフィールドに出現した。

 

 「……攻撃力1000?そんなモンスターじゃ、俺の《No.》は倒せないぜ!」

 

 出てきたモンスターを見て、男は態度を一変する。

 攻撃力1000の弱小モンスターで、攻撃力4500のモンスターは倒せない。

 事実、《デビル・イーグル》では《不乱健》は倒せない。

 

 「……《スカル・イーグル》がエクシーズ素材になったことで、《デビル・イーグル》の攻撃力は一体につき300ポイントアップ」

 

 攻撃力:1000→1600

 

 「たかが600のアップで俺のモンスターは倒せねえよ!」

 

 「…………」

 

 俯いたまま、隼は立っていた。

 男の人を馬鹿にする態度、攻撃力でしか評価しない有様。

 そこに、あきれを覚えていた。

 

 「確かに、お前の《不乱健》は倒せない」

 

 「ハッ、そりゃあそうだ」

 

 「だが」

 

 男の言葉をさえぎるように、隼は男を見て言葉を言い放つ。

 

 「貴様を倒すには、このモンスターがもっとも最適だ、貴様のような高火力のモンスターが一番というやつにはな!」

 

 「なに?」

 

 隼は、男を倒すために《デビル・イーグル》に命令を下す。

 

 「《デビル・イーグル》の効果発動!オーバーレイユニットを一つ使い、相手の場の表側表示の特殊召喚されたモンスターの攻撃力分のダメージを、相手プレイヤーに与える!」

 

 「なんだと!?」

 

 《デビル・イーグル》の周りに浮いていた球体が砕け、紫色の光が《不乱健》を包み込む。

 

 「己がモンスターにやられて、倒れろ!」

 

 そして、《不乱健》は主に向けてこぶしを構えそのまま主へと叩き込む。

 

 「ッ……ぐああああああああああああああ!!!」

 

 男 LP:4000-4500=-500

 

 男は、吹き飛ばされると壁にぶつかりそのまま意識を失い、倒れた。

 同時に、展開されていたARも解除され静寂が周りを包み込んだ。

 

 「……勝てたのか、俺」

 

 イラ立ちを相手にたたきつけたせいか、冷静さを取り戻した隼は少女の元へ向かおうとした。

 ……そのとき、紫色の光を放つカードが隼の元へ向かった。

 

 「なっ……!」

 

 とっさにそのカードをつかむ、それは《No.22 不乱健》

 男が使っていたカードだ。

 そのカードはしばらく光を放った後、光が消え変哲のないカードに戻った。

 

 「……なんなんだ、一体」

 

 とりあえず、今は少女のことを優先させるためカードを手元にあったデッキケースにしまう。

 そして、少女を背負うとそのまま裏路地を後にした。

 

 「とりあえず……制服ってことは、学校か?そこに連れていけば親もわかるか……人に聞けばわかるよな!」

 

 幸先に不安を感じながら、隼は歩みを進めた。




というわけで、主人公のデッキは『RR』でした
……プ、プロローグだからね
いきなりエースは出しませんよ、ええ
バーンワンターンキルもどうかと思いますが、相手のカードもチートですからね
デッキもガチ寄りではない、とだけ言っておきます


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第一話『銀河の眼』

みなさんお気に入り登録ありがとうございます。
多くの方に見てもらえているようで、すごくうれしいです。
不定期更新になると思いますが、よろしくお願いします!


 「……どこだよ!ここ!」

 

 少女を背負って歩き続けて、1時間ほど経過した。

 裏路地からは出ることができたが、いまだ人に会えずにいた。

 それもそのはずだろう、裏路地は暗くて気づけていなかったがその時間帯は夜だった。

 今では、深夜の時間になっているため外出している人は少ない。

 

 「当てもなく歩くのは無理しすぎたか……とりあえず、どこか休ませられる場所ぐらいはさがさねぇと」

 

 背中に背負っている少女の意識は失われたままだ、大きい外傷は見られないがダメージを負っているのは確かだ。

 このまま背負って移動し続けるよりは、一度休ませる場所を探したほうがよいだろう。

 

 「つってもどうするかな……通貨は同じかわからねぇし、そもそも年齢制限で引っかかるか……」

 

 そんなことをぶつぶつつぶやきながら歩いていると、

 人にぶつかった。

 

 「っと……すまない、考え事をしていた」

 

 自分に非があるため、とっさにぶつかった相手に謝る。

 同時に顔を上げ、ぶつかった相手を見た。

 ……その顔を見た瞬間、一瞬めまいがした。

 

 「なに、気にするな。こちらも少々疲れていて前を見ていなかった」

 

 全体的に黒い服装をした、金髪の少年。

 ……隼はその少年に見覚えがあった。

 『天城カイト』

 遊戯王ZEXALにおける、最強デュエリストの一人。

 こんな人物とここで会うとは思いもしなかった。

 

 「しかし、見たところ中学生のようだが。こんな時間に徘徊するのはよくないぞ……待て」

 

 カイトは、隼を少々咎める様に言葉をかけていたが背中に背負われている少女を見ると態度が一変した。

 先ほどとは違い、険しい顔振りとなり少女と隼を見る。

 

 「『瑠那(ルナ)』がなぜ負傷をしている?詳しく話を聞かせてもらおうか」

 

 「『瑠那』?それが彼女の名前なのか?」

 

 カイトの反応に隼は動揺していた、隼は彼女の存在を知らなかったからだ。

 少なくとも、アニメで彼女を見たことがなかった。

 そして、『中学生ほどの』カイトの知り合いは少ないとも考えていた。

 

 「いいから答えろ!返答しだいでは、ただではおかないぞ」

 

 カイトは今にもデュエルを仕掛けそうな雰囲気を出していた。

 下手をすれば魂をとられかねない、そう思った隼はすぐに説明を始めた。

 彼女はデュエルに負け負傷した、その相手は『No.』と呼ばれる特殊なカードを使っていたこと、そこを話した。

 

 「……そうか、瑠那はNo.を相手にして……」

 

 少し顔をゆがめると、隼のほうを向く。

 そして、同時に頭を下げる。

 

 「まずは礼を言おう。ありがとう、お前のおかげで最悪の事態は避けられた」

 

 そんなことを言われると思っていなかった隼は、カイトの態度に動揺していた。

 それに、彼自身としては許せなかったから戦ったという自己満足の面も大きかった。

 

 「そ、そんな気にしないでくれ。……それより、彼女の治療もしたい。カイトの家に連れて行ってもらえないか?俺、ここの土地に詳しくなくて」

 

 頬をかきながら隼は答える。

 その言葉をきくと、カイトはうなづきDゲイザーを取り出すとどこかに連絡をした。

 そしてしばらくすると、カイトたちの前に一台の車が止まった。

 

 「これで向かうとしよう、きちんとした医療設備もあるからそこは問題ない」

 「それと……お前にもきてもらおう」

 

 隼のほうを見て、カイトは答える。

 その目からは、敵対意識は見えないが……何か思惑はあるのだろう。

 

 「……ああ、わかった。後、俺の名前は霧埼 隼だ」

 

 どちらにせよ、今の自分にいく当てはない。

 なら、カイトに同行するのも悪いことではないだろうと判断していた。

 

 「隼か……俺は、天城カイトだ。よろしくたのむ」

 

 お互いに自己紹介を終えると、車に乗り込みカイトの家へと向かう。

 カイトの家……そう、ハートランドに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ハートランドにつくと、すぐに瑠那は治療室へと運ばれた。

 今この場に残っているのは、カイトと隼だけだ。

 

 「……最初に聞く、隼。お前は何者だ」

 

 カイトは目の前にいる隼に向かってそういった。

 言っていることの割には、敵意を感じないのはただの疑問から言われる質問からだろう。

 

 「何者か、と言われてもな。こっちも何でこうなったのかわからないというか」

 

 聞かれた隼自身も、何者かと言われると返答に困るのが本音だった。

 カードを拾ったらそれが光って、気づいたらここにいました。

 と言っても信じてもらえるかわからないからだ。

 

 「……先ほど調べてもらったが、お前には戸籍がない。その時点から疑わねばならないからな」

 

 「(いつの間に……まさかここにつれてくる間に調べ上げたのか?)」

 

 事実、戸籍の調査に関してはハートランドに着く前にカイトの持つ『オービタル7』が済ませていた。

 あらゆるネットにハッキングを行えるオービタルを用いれば、短時間で戸籍を調べるのはそう難しいことではない。

 

 「……信じてもらえるかわからないけど、俺はおそらくこことは違う世界から来たんだと思う」

 

 カイト相手に下手な嘘はつけない、そう考えた隼は本当のことを話すことにした。

 

 「違う世界から、だと?」

 

 「ああ、少なくとも俺の世界にはデュエルディスク、だったか?こんなのはなかった」

 

 隼の目線は、カイトの持つデュエルディスクにあった。

 少なくともそれらは、隼の世界において創作のひとつだったことを知っている。

 

 「それに、《No.》だったか?あんな威圧感を放つカードなんかも、俺の世界にはなかった」

 

 そう言って、今手元にある《No.》をカイトに見せた。

 今も持っているだけで、カードからにじみ出るへんな感覚に気持ち悪さを感じていた。

 そんなカードは、少なくとも隼の世界ではありえない。

 

 「回収もしていたのか……」

 

 隼の言葉を聞き、カイトは考える。

 今の隼に嘘をつくメリットはないだろう、それに瑠那を助けてくれたことから悪い人物ではないことも推測できる。

 ______だが、それだけで信頼していいものか。

 そう考えていると、カイトの視界の中に隼が持つデッキが見えた。

 

 “_____ふん、相手がデュエリストならばやることは決まっているか”

 

 デュエルをすれば誰とでも分かり合える、彼自身を変えた友人の言葉が頭に思い浮かぶ。

 自分らしくないことを、そう思いながらもカイトは近くの机の上においてあった予備のDゲイザーとDパッドを隼へと投げ渡した。

 

 「わっ!?……これって」

 

 「それはくれてやる、その代わりと言っては何だが。デュエルをしてもらう、お前についてはそれで判断させてもらうぞ」

 

 カイトの言い分に一瞬混乱するが、隼はこの世界のことを考えるとそういうものか、と無理やり納得させる。

 それに、デュエルならいつでも大歓迎だ。

 

 「あ、ああわかった。……でも、その前にデッキ調整と……ルールの確認、いいか?」

 

 「そのくらいなら大丈夫だ」

 

 そう言うと、カイトは隼にDゲイザーとDパッドの使い方を説明してくれた。

 Dゲイザーは携帯としての機能や、インターネットの使用もできるらしい。

 ルールに関しても、Dゲイザーを用いることで調べるのは可能なようだ。

 

 「……便利だな、Dゲイザーって」

 

 その便利さに、隼は丁重に扱おうと心の中で決心した。

 そして、ルールを調べていく中で基本的なルールは自分のところと同じだと把握した。

 ただし先行ドローあり、LPは4000。

 そこに関しては慣れていくしかないだろう。

 

 「(LP4000……となると、《ソウル・チャージ》のようなライフコストの大きいカードは入れにくいな)」

 

 このルールにあわせて、一部カードを変更するために隼はデッキの確認をする。

 ……それと同時に、隼の思考が一瞬停止する。

 

 「…………え?」

 

 デッキの中にあったはずのカードがなくなっていた。

 その事実に隼はひどく驚いていた。

 

 「(おいおいおい!デッキの中にあった《RUM》が根こそぎ無くなってるぞ!一部のカードも無くなってるし……ッまさか)」

 

 エクストラデッキの中も確認する。

 すると、こちらにも一部のエクシーズモンスターが紛失していた。

 

 「(《カステル》や《シルフィーネ》も無くなってる……残っているのは《RR》エクシーズと、このカードだけか)」

 

 不幸中の幸いか、予備のカードも持ってきていたためデッキのカードを一部変更する。

 

 「(しかし、このままだと出せるエクシーズはランク4か3だけか……5も出せなくは無いけど……ん?)」

 

 デッキの構築に悩んでいるとき、一枚のカードが目に留まった。

 条件は難しいが、《RR》なら発動条件を満たすことも可能だろう。

 

 「……ま、デッキ枚数に空きはあるし入れてみるか」

 

 デッキにそのカードを加えると、調整は無事に終わり他のカードはデッキケースにしまうとデッキをセットする。

 

 「よし、準備できた。待たせて悪かったな、カイト」

 

 「問題は無い、さて、それでは始めるぞ」

 

 「「デュエル!」」

 

 カイト LP:4000 隼 LP:4000

 

 Dゲイザーに先行プレイヤーが表示される、先行は隼。

 

 「先行は俺か。俺のターン……ドロー!」

 

 おそるおそるドローをする。

 しかし、Dゲイザーからは警告のブザーが鳴らないため問題は無いようだ。

 

 「(大丈夫ってルール上わかっていても、不安なんだよな……)」

 

 だが、問題ない以上デュエルを進めるのは当然だ。

 

 「俺は《RR-バニシング・レイニアス》を召喚!」

 

 隼のフィールドに緑色の翼を持つ鳥が現れる。

 

 《RR-バニシング・レイニアス》

 ATK:1300

 

 「《RR》?聞いたことが無いカード群だ」

 

 「《バニシング・レイニアス》の効果発動!このカードが召喚・特殊召喚に成功したターン発動できる。手札からLV4以下の《RR》を特殊召喚できる!」

 「この効果で、手札から《RR-トリビュート・レイニアス》を特殊召喚!」

 

 《RR-トリビュート・レイニアス》

 ATK:1800

 

 「さらに《トリビュート・レイニアス》の効果発動!このカードも、召喚・特殊召喚に成功したターンに発動できる。デッキから《RR》カードを墓地に送る」

 「この効果で、《RR-ミミクリー・レイニアス》を墓地へ」

 

 「……自らカードを墓地に」

 

 何かあるか、そう思いカイトは警戒する。

 

 「墓地の《ミミクリー・レイニアス》の効果!このカードが墓地に送られたターンに発動できる。このカードを除外することで、デッキから《RR》カードを手札に加える」

 「この効果でデッキから《RR-ネスト》を加え発動!」

 「自分フィールドに《RR》が二体以上いるとき、デッキ・墓地から《RR》モンスターを手札に加える」

 

 そう言うと同時にデッキがシャッフルされ、一番上のカードを手札に加える。

 

 「俺が加えたのは、《RR-ファジー・レイニアス》。こいつは俺の場に《RR》モンスターがいるとき、手札から特殊召喚できる。このターン、《RR》モンスターしか出せなくなるけどな」

 

 《RR-ファジー・レイニアス》

 DEF:1500

 

 「一気にLV4を三体そろえてきたか……」

 

 手札消費を最小限に抑えての展開、相手はかなりデッキを使い込んでいるのだろうと予想ができる。

 そしてLV4が並んだとなれば次は、

 

 「俺は、LV4の《トリビュート・レイニアス》と《バニシング・レイニアス》でオーバーレイ!」

 

 「(来るか、エクシーズ召喚!)」

 

 二体の機械的な鳥が、紫色の球体となり黒い渦の中に吸い込まれ光の爆発を起こす。

 

 「冥府の猛禽よ、闇の眼力で真実をあばき、鋭き鉤爪で栄光をもぎ取れ!エクシーズ召喚!飛来せよ!」

 

 紫色の光がひとつのモンスターの姿へと変わっていく。

 そして隼はそのモンスターのカードをデュエルディスクへ叩きつけるように置き、召喚する」

 

 「ランク4!《RR-フォース・ストリクス》!」

 

 《RR-フォース・ストリクス》

 DEF:2000

 

 「……(ランク4で守備力2000、特に変わった数値ではないが)」

 

 カイトは出てきたエクシーズモンスターを考察する。

 ステータスはランク4のエクシーズモンスターとしては変わった点は無い。

 となれば、何か強力な効果を持っているに違いない。

 

 「オーバーレイユニットを一つ使い、《フォース・ストリクス》の効果発動!デッキから、闇属性・鳥獣族・LV4のモンスターを一体手札に加える!」

 

 「サーチ効果か……厄介だな」

 

 広いサーチ範囲を持つエクシーズモンスター。

 カイトは《RR》デッキの特徴を今までの動きから察知していた。

 多くのサーチを用い、大量のモンスターを手札に貯め大量展開することによりエクシーズモンスターを展開するデッキ。

 

 「この効果で《RR-シンギング・レイニアス》を手札に加える。そしてこのカードは、俺の場にエクシーズモンスターがいるとき、手札から特殊召喚できる!」

 

 《RR-シンギング・レイニアス》

 DEF:100

 

 「そして、《ファジー・レイニアス》と《シンギング・レイニアス》でオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れよ!二体目の、《フォース・ストリクス》!」

 

 先ほどの同じモンスターエクシーズがフィールドに現れる。

 

 「オーバーレイユニットを使い効果発動、デッキから《バニシング・レイニアス》を手札に加える」

 

 ここまで展開して手札は5枚残っている。

 相手がカードアドバンテージを取っていることにカイトは警戒を強める。

 

 「……《フォース・ストリクス》は俺の場のこのカード以外の鳥獣族モンスター一体につき、攻撃力と守備力が500アップする」

 

 「フィールドには《フォース・ストリクス》は二体。……500のアップか」

 

 《フォース・ストリクス》×2

 DEF:2500

 

 カイトはそう言うと、二体の《フォース・ストリクス》を見る。

 微々たる強化であっても、大量展開を可能とする《RR》なら5体並べることは難しくないだろう。

 

 「俺はカードを二枚伏せ、ターンエンド!」

 

 隼 手札:3枚

    LP:4000

   場:《フォース・ストリクス》ORU:1×2

      《RR-ネスト》 伏せカード2枚

 

 

 「……いくぞ、俺のターン!ドロー!」

 

 今の布陣を突破するため、カイトはカードをドローする。

 ドローしたカードを一目見て、手札に加えるとすでにある一枚のカードを発動する。

 

 「俺は魔法カード、《トレード・イン》を発動!手札のLV8モンスターを墓地に送り二枚ドロー!」

 

 手札交換カード、だが狙いは別にあると考え隼は警戒する。

 警戒する隼を前に、カイトはデュエルを続ける。

 

 「さらに、俺の場にモンスターが存在しないとき。手札から《フォトン・スラッシャー》を特殊召喚する!」

 

 《フォトン・スラッシャー》

 ATK:2100

 

 「そして手札から、《銀河眼の雲篭》を召喚!」

 

 フィールドに、《銀河眼の光子竜》の幼体の竜が現れる。

 

 「……(あのモンスターは……まさかさっき墓地に送ったのは!)」

 

 ドラゴンの成長は早い。

 幼体もすぐに、成竜へと成長する。

 

 「《銀河眼の雲篭》の効果発動!墓地のこのカードを特殊召喚する」

 

 フィールドの《銀河眼の雲篭》に光が集まる。

 そしてその光の中に存在する、赤い十字をした物体をカイトはつかみ、宙へ投げた。

 

 「闇に輝く銀河よ、希望の光になりて我が僕に宿れ!」

 

 宙で回転する十字は周りの光を取り込むとその姿を変化させていく。

 

 「光の化身、ここに降臨!現れろ、《銀河眼の光子竜》!」

 

 そして、《光子》の名を持つ光の竜がフィールドに現れた。

 

 「……《銀河眼の光子竜》」

 

 その竜が持つ美しさに、隼は目を奪われた。

 カードから見るのではない、ARビジョンから見るかの竜は人を魅了する姿を持っていた。

 

 「行くぞ!バトルフェイズ、俺は《銀河眼の光子竜》で《フォース・ストリクス》を攻撃!」

 

 「ッ……」

 

 隼は一瞬伏せカードを見るが、何もせずに攻撃を待つ。

 

 「……《銀河眼の光子竜》の効果発動!戦闘を行うモンスター同士を、バトルフェイズ終了時まで除外する!」

 

 その宣言により、《銀河眼の光子竜》と《フォース・ストリクス》がフィールドから姿を消した。

 

 「……除外されたことで、《フォース・ストリクス》のオーバーレイユニットは墓地に行く。だが、墓地に行った《ファジー・レイニアス》の効果発動!」

 「デッキから、同名カードを手札に加える」

 

 隼の手札は増え、4枚となった。

 

 「だが、これでお前の場の鳥獣族モンスターは減りもう一体の《フォース・ストリクス》の守備力は下がる」

 

 《フォース・ストリクス》

 DEF:2000

 

 「さらに、俺の場に他のモンスターがいないため《フォトン・スラッシャー》は攻撃可能。やれ、《フォトン・スラッシャー》!」

 

 《フォトン・スラッシャー》の剣が、《フォース・ストリクス》の両翼を切り裂く。

 《フォース・ストリクス》は鳴き声をあげると同時に爆発し、破壊された。

 

 「ッ……《フォース・ストリクス》を無力化されたか」

 

 一体は破壊され、もう一体は素材をはがされた。

 実質サーチ効果を封じられたと言っても過言ではないだろう。

 

 「バトルフェイズ終了時、除外されたモンスターはフィールドに戻る」

 

 バトルが終わり、《光子竜》と《フォース・ストリクス》がフィールドに戻る。

 しかし、《光子竜》の効果は続いている。

 

 「さらに、《銀河眼の光子竜》の効果発動!除外されたエクシーズモンスターが持っていたオーバーレイユニット一つにつき、攻撃力が500アップする!」

 「《フォース・ストリクス》が持っていたオーバーレイユニットはひとつ、よって500アップ!」

 

 《銀河眼の光子竜》

 ATK:3500

 

 「攻撃力3500!」

 

 これでは、並大抵のモンスターでは破壊できないだろう。

 加えて言うと、《銀河眼の光子竜》は隼のデッキとは相性が悪い。

 どう対処するか、隼は考える。

 

 「まだ俺のターンは続いている、厄介な《RR-ネスト》は除去させてもらう。手札から速攻魔法、《破滅のフォトン・ストリーム》発動!」

 

 「《破滅のフォトン・ストリーム》!?」

 

 「このカードは、俺の場に《ギャラクシーアイズ》モンスターがいるとき発動できる。フィールド上のカードを1枚除外する!」

 「この効果で、お前の場の《RR-ネスト》を除外!」

 

 隼のフィールドから《RR-ネスト》が消滅する。

 これで、隼は《RR》のサーチ手段をひとつ失った。

 

 「クッ……」

 

 「俺は、カードを二枚伏せ。ターンエンド」

 

 カイト 手札:1枚

     LP:4000

場: 《銀河眼の光子竜》 《フォトン・スラッシャー》

       伏せ2枚

 

 隼 手札:4枚

    LP:4000

場:《フォース・ストリクス》ORU:なし

伏せ2枚

 

 「……俺のターン、ドロー!」

 

 この状況を逆転するため、隼はドローする。

 ______ドローカードは、

 

 「……来たか、俺は《バニシング・レイニアス》を召喚!」

 

 再びフィールドに、緑色の翼を持つ鳥が飛翔する。

 

 「《バニシング・レイニアス》の効果により、手札から二体目の《バニシング・レイニアス》を特殊召喚!」

 

 「二体目を引いたのか……」

 

 先ほどのサーチで一枚を加えていたのは知っていた、しかし二枚目はおそらく手札には無かったはず。

 となると、先ほど引いたのだろう。

 

 「二体目の《バニシング・レイニアス》の効果発動!手札から、《ファジー・レイニアス》を特殊召喚!」

 

 自身の効果を使わず、手札から《ファジー・レイニアス》を特殊召喚する。

 そして、これによりフィールドに素材となるモンスターがそろった。

 

 「……LV4モンスターが三体、来るか!」

 

 「行くぞカイト!俺は、LV4の《バニシング・レイニアス》二体と《ファジー・レイニアス》で、オーバーレイ!」

 

 三つの鳥が紫色の球体となり、紫色の渦へ吸い込まれる。

 そしてその渦は光の爆発を起こし、あるモンスターを目覚めさせる。

 

 「雌伏のハヤブサよ。逆境の中で研ぎ澄まされし爪を挙げ、反逆の翼翻せ!」

 

 鋭い鍵爪が敵を倒すために、今飛翔する。

 

 「エクシーズ召喚!現れろ!ランク4!《RR-ライズ・ファルコン》!」

 

 4つの目を赤く光らせ、機械的な体を持つ鳥がフィールドに現れた。

 

 「《ライズ・ファルコン》……」

 

 相手となるモンスターをカイトは警戒して見る。

 

 「行くぞカイト、お前に勝つ!」

 

 自らのモンスターを従え、隼は笑みを浮かべカイトに宣戦布告した。

 

 

 カイト 手札:1枚

     LP:4000

場: 《銀河眼の光子竜》 《フォトン・スラッシャー》

        伏せ2枚

 

 隼 手札:2枚

    LP:4000

場:《フォース・ストリクス》ORU:なし 《ライズ・ファルコン》ORU:3

伏せ2枚

 




勝負はガチガチ
考えていて思いますが、《RR》は強いです
しかし、相手は作中でも最強のデュエリスト、カイト!
デュエルは次回に続きます、お楽しみはこれからだ!


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第二話『超銀河の新生』

前回のデュエルの続きとなっています!
決着はどうなるのか……


 カイト 手札:1枚

     LP:4000

場: 《銀河眼の光子竜》 《フォトン・スラッシャー》

        伏せ2枚

 

  隼  手札:2枚

     LP:4000

場:《フォース・ストリクス》ORU:なし 《ライズ・ファルコン》ORU:3

伏せ2枚

 

 

 「いくぞカイト!俺は《ライズ・ファルコン》の効果発動!」

 

 隼の宣言と同時に、《ライズ・ファルコン》の周りを浮いていた紫色の玉が割れ、紫色の光が《銀河眼の光子竜》を包み込む。

 

 「《ライズ・ファルコン》は、オーバーレイユニットを一つ使い。相手の場の特殊召喚されたモンスター一体の攻撃力分、攻撃力をアップさせる!」

 

 「《銀河眼の光子竜》の攻撃力は3500……」

 

 「そう、つまり《ライズ・ファルコン》の攻撃力は3500アップする!」

 

 《銀河眼の光子竜》を包み込んでいた光が、《ライズ・ファルコン》へ向かう。

 その光を受け、《ライズ・ファルコン》の体は炎に包まれる。

 

 《ライズ・ファルコン》

 ATK:3600

 

 「……さらに、《ライズ・ファルコン》は特殊召喚されたモンスターに一度ずつ攻撃できる」

 

 「なに?」

 

 今のカイトの場にいるのは、特殊召喚されたモンスターのみ。

 《ライズ・ファルコン》はすべてのモンスターに攻撃できる。

 

 「(だが《銀河眼の光子竜》の効果を使えば、《ライズ・ファルコン》を除外できる)」

 

 その効果を使えば、《ライズ・ファルコン》の攻撃をかわすことができる。

 しかし、それは隼もよくわかっている。

 

 「……リバースカードオープン!」

 

 隼は、カイトを倒すために一枚の伏せカードを発動する。

 

 「《フォース・ストリクス》をリリースして、トラップカード《ナイトメア・デーモンズ》発動!」

 

 すると、カイトの場に黒い影への姿をしたモンスターが三体出現する。

 

 《ナイトメア・デーモン・トークン》×3

 ATK:2000

 

 「俺の場にモンスターを……なるほど、《ライズ・ファルコン》の攻撃対象を増やすためか」

 

 「そうだ、そしてその《ナイトメア・デーモン・トークン》は破壊されたときプレイヤーに800のダメージを与える、特殊召喚されたモンスターである以上《ライズ・ファルコン》で殲滅できる」

 

 今の《ライズ・ファルコン》の攻撃力は3600。

 《ナイトメア・デーモン・トークン》三体と《フォトン・スラッシャー》を攻撃すれば、効果ダメージも含め8700のダメージ

 カイトに勝つことができる。

 

 「いくぞ、バトルだ!やれ!《ライズ・ファルコン》!」

 

 炎に包まれたからだで宙を舞う。

 そして、敵を自らの鍵爪で切り裂くため空中から敵へと突進する。

 

 「ブレイブクロー・レヴォリューション!」

 

 まず、《ナイトメア・デーモン・トークン》に攻撃が向かう。

 ……その攻撃が来ると同時に、カイトは自らの手札に手をかける。

 

 「俺は手札の《クリフォトン》の効果発動!」

 

 「ッなに!?」

 

 それと同時に、カイトの周りに透明な壁が現れる。

 《ナイトメア・デーモン・トークン》は破壊されるが、カイトにダメージはない。

 

 「このカードは、手札から墓地に送りLPを2000支払って発動する。このターン、俺が受けるすべてのダメージは0となる」

 

 カイト LP:4000→2000

 

 たった一枚のカードによって、隼はこのターンカイトを倒すことができなくなってしまった。

 

 「……だが、バトルフェイズはまだ続いている!トラップ発動!《ブレイク・スルー・スキル》!こいつで、《銀河眼の光子竜》の効果を無効にする!」

 

 もう一枚の伏せカードによって、《銀河眼の光子竜》の効果が無効にされる。

 これによって、《銀河眼の光子竜》の効果で逃げることはできない。

 

 「やれ!《ライズ・ファルコン》!すべての敵を破壊しろ!ブレイブクロー・レヴォリューション!」

 

 《ライズ・ファルコン》の鍵爪がカイトのモンスターを襲う。

 《ナイトメア・デーモン・トークン》は、その鍵爪に引き裂かれ消滅する。

 《フォトン・スラッシャー》は攻撃を剣で防ごうとするが、そのまま破壊されてしまう。

 そして、《銀河眼の光子竜》……

 

 「トラップ発動!《光子化》!モンスター一体の攻撃を無効にする!」

 

 攻撃が届く前に、光が《ライズ・ファルコン》をさえぎる。

 

 「なに!」

 

 「さらに、攻撃してきたモンスターの攻撃力分。《銀河眼の光子竜》の攻撃力を次の俺のエンドフェイズまでアップさせる」

 

 《銀河眼の光子竜》

 ATK:3500→7100

 

 「ッ……攻撃力7100……俺はカードを一枚伏せ、ターンエンド」

 

  カイト 手札:0枚

     LP:2000

場: 《銀河眼の光子竜》

        伏せ1枚

 

 隼 手札:1枚

    LP:4000

場:《ライズ・ファルコン》ORU:3

伏せ1枚

 

 

 「(……強い。俺の攻撃をすべて防いだ)」

 

 カードアドバンテージを取らせないように、《フォース・ストリクス》を無力化させ、《RR-ネスト》を除去する戦術。

 次のターンの攻撃も、防ぎきり返しのターンで逆転する手立ても用意してある。

 カードパワーの差はあるだろうが、それをプレイングで補い敵を倒す。

 それが、天城カイトのデュエルスタイルなのだろう。

 

 「(でも、だからこそ勝ちたい。ここまで楽しいデュエルは久々だ)」

 

 まだ勝敗は決まっていない、隼は前を見据えてデュエルを続ける。

 

 「(俺の伏せカードは、《エクシーズ・リボーン》。たとえ《銀河眼の光子竜》

で《ライズ・ファルコン》が破壊されても、墓地から守備表示で蘇生する事で次のターンにつなげられる)」

 

 少なくとも、次のターンで負けることはない。

 隼はそう思っていた。

 

 「(俺の伏せカードは、《フォトン・サンチュクアリ》。これだけでは意味がない。……)」

 

 カイトは感じていた。

 目の前のデュエリスト、隼は強い。

 そして、その中にはデュエルを楽しむ気持ちもある。

 少なくとも、敵にはならない。

 そう感じていた。

 これ以上は続ける理由はないのかもしれない。

 だが、一度はじめたデュエルをデュエリストとしてカイトは止める気はない。

 ゆえに……このターンで決着をつける。

 

 「俺のターン、ドロー!」

 

 デッキから力をこめてカードを引く。

 伏せカードがある以上、決めきるには一撃でライフを削りきる必要がある。

 そのためのカードを……カイトは引いた。

 

 「リバースカード発動!《フォトン・サンチュクアリ》!この効果で、《フォトントークン》を二体特殊召喚!」

 「そして俺はこの二体をリリース!来い、《フォトン・カイザー》!」

 

 自分の場にいる、厄介なトークンをリリースすることによって除去をする。

 そして召喚されたモンスターは、LV8のモンスター。

 

 「《フォトン・カイザー》の効果発動!このカードが召喚に成功したとき、デッキから同名カードを特殊召喚!」

 

 デッキからまったく同じモンスターが現れる。

 そのモンスターも当然

 

 「LV8のモンスターが三体……まさか!」

 

 「先ほどの攻撃は見事だった。今度はこちらの番だ、いくぞ隼!」

 

 その言葉と同時に、カイトの体を赤いオーラーが包み込む。

 それは、カイトの切り札が召喚される合図だった。

 

 「俺は、LV8の《銀河眼の光子竜》と二体の《フォトン・カイザー》でオーバーレイネットワークを構築!」

 

 光子の名を持つ竜が、光の竜となりそれを追うように二つの光が金色の渦の中に吸い込まれる。

 そして、カイトの手元に槍の形を持つ物が現れる。

 それをカイトは片手で握る。

 その槍を構えると、カイトは宙にあいた穴に向かってそれを投げる。

 

 「逆巻く銀河よ、今こそ、怒涛の光となりて姿を現すがいい!」

 

 槍が穴に吸い込まれると、膨大な光の爆発を起こす。

 そして、その光の中から赤い光を纏う三つ首の光子龍が具現化する。

 

 「降臨せよ、我が魂!《超銀河眼の光子龍》!」

 

 主に答えるかのように、雄たけびを上げその龍はフィールドに舞い降りた。

 

 《超銀河眼の光子龍》

 ATK:4500 ORU:3

 

 「……《超銀河眼の光子龍》」

 

 カイトのエースモンスターが持つ迫力、それに隼は圧倒されていた。

 

 「《超銀河眼の光子龍》の効果発動!《銀河眼の光子竜》を素材にエクシーズ召喚に成功したとき、このカード以外の表側表示のカードの効果を無効にする」

 「フォトン・ハウリング!」

 

 《超銀河眼の光子龍》の咆哮が、《ライズ・ファルコン》を無力化される。

 《ライズ・ファルコン》は、堕ちまいと飛んでいるがまとっていた炎が吹き飛ばされる。

 

 《ライズ・ファルコン》

 ATK:3600→100 ORU:2

 

 「ッ……効果が無効になったことで、《ライズ・ファルコン》の攻撃力は元に戻る」

 

 効果は無効になり、攻撃力が下がった。

 ……だが、カイトの猛攻はまだ続く。

 

 「《超銀河眼の光子龍》の効果発動!オーバーレイユニットをひとつ使い、相手フィールド上のオーバーレイユニットをすべて取り除く!」

 

 《超銀河眼の光子龍》は、自身の周りに浮いていた光の球体を噛み砕くと同時に《ライズ・ファルコン》の周りに浮いていた、紫色の球体が《超銀河眼の光子龍》に引き寄せられるかのように向かう。

 そして、《超銀河眼の光子龍》はその紫色の球体二つを二つつの首で噛み砕いた。

 

 「この効果で取り除いたオーバーレイユニットひとつにつき、攻撃力が500アップ。二つ取り除いたため攻撃力は1000ポイントアップ!」

 

 《超銀河眼の光子龍》

 ATK:4500→5500

 

 「攻撃力……5500!」

 

 「さらに!《超銀河眼の光子龍》はこの効果で取り除いたオーバーレイユニットの数だけ攻撃できる!」

 

 「なんだと!?」

 

 つまり、《超銀河眼の光子龍》はこのターン2回攻撃を行える。

 隼の今のライフでは、到底耐え切れる数値ではない。

 

 「……負け、か」

 

 悔しい気持ちはある。

 デュエルは勝つことで楽しむこともあるからだ。

 しかし、今はそれ以上に楽しいという気持ちもあった。

 

 「次は負けないからな!」

 

 笑みを浮かべ、隼はカイトに言う。

 その言葉を聞くと、カイトは頬を緩ませる。

 

 「そう簡単に負ける気はないがな。……いけ!《超銀河眼の光子龍》、《ライズ・ファルコン》に攻撃!アルティメットフォトン、ストリーム!!」

 

 三つの首の口から赤い光が集まっていく、そしてそれは赤い光線となり射出される。

 ……だが、せめてもの抵抗はさせてもらおう。

 

 「迎え撃て!《ライズ・ファルコン》!ブレイブクロー・レヴォリューション!!」

 

 再び体に炎をまとうと、《ライズ・ファルコン》は赤き光線に突進する。

 どのような力にも屈しない、そんな強さを見せる攻撃。

 しかしそれは、赤き光線に貫かれ大きく爆発を起こす。

 

 「ぐあああああああああ!!」

 

 隼 LP:4000→-1900

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 攻撃の勢いによって、隼は吹き飛ばされ地面に倒れる。

 それと同時にライフがつきフィールドのARビジョンが解除される。

 

 「……負けた、か」

 

 そうつぶやいた後、隼は残った手札を見る。

 《タンホイザーゲート》

 そしてオーバーレイユニットとして、墓地に送られた《ファジー・レイニアス》の効果でサーチができる。

 次のターンがあったなら、引き次第ではあるが勝つことも可能だっただろう。

 だが、結果はカイトの勝ちであった以上負け惜しみにしかならない。

 

 「……立てるか?」

 

 隼が顔を上げると、目の前には手を差し出すカイトがいた。

 少しの間をおき、隼はカイトの手を借り立ち上がる。

 

 「ああ、大丈夫だ。後、楽しいデュエルだった!」

 

 そういって、カイトに笑みを向ける。

 カイトも少し笑みを浮かべた。

 

 「ああ、俺も楽しかった」

 

 そういった後、カイトは真剣な表情を浮かべる。

 ……元々のデュエルを始めた目的、その結果を伝えるために。

 

 「お前は、俺が見たことのないカードを使っていた。別の世界から来た、というのもあっているのだろう」

 

 カイトは少なくとも、今のカードプールについては知り尽くしている。

 そのカイトでも見たことないカードとなると、きわめて特殊なカードになってくる。

 それこそ、『No.』や新たに『生み出されたカード』になるだろう。

 

 「それに、ARビジョンに対して慣れていない反応をしていた。お前のデュエリストとしての腕を踏まえれば、おかしいといえるほどにな」

 

 このハートランドでは、ARビジョンによるデュエルが普及している。

 少なくとも、デュエルの腕が高いものでARビジョン内でのデュエルをしたことないというのは少ないだろう。

 そして、隼のプレイングは扱いにくいとされる《ナイトメア・デーモンズ》などを有効的に使っている時点で高いと取れる。

 

 「ゆえに、俺はお前の言うことを信用しよう。……それに」

 

 「それに?」

 

 「……いや、なんでもない」

 

 デュエルをしている間、楽しそうにしていたお前が悪いことなどできないだろう。

 そんな言葉にする必要のないことを言おうとしていた。

 

 「……とりあえず、今日は休んでおけ。もう子供は寝る時間だからな。部屋を一室貸し出そう」

 

 そう言うと、カイトは隼を客室へ案内するために歩き出す。

 

 「あ、ああ。わかった、ありがとう!」

 

 隼も、疲れているのは確かであるためその好意に甘えることにした。

 休めると思ったため、疲れが一気にきた気がした。

 

 「(今日は大変だったし……早く休もう)」

 

 疲れがあったためか、隼は気づかなかった。

 

 「……No.を持っていても、影響を受けていない……か」

 

 そう言った、カイトのつぶやきに。




というわけで、隼は負けてしまいました。
はっきり言うと、相手が悪かったですね。
……隼もわりと殺意の高い戦術を取っていたのですが。
ちなみに、次のターンが回っていたら……あれが出ていましたね。
なので、1ターンの差が勝負を分けたのは事実です


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