本好きと暗殺教室 (与麻奴良 カグヤ)
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楽しくない人生 51 「1時間目 どうでもいい時間」

「今、三つ目の世界が始まる」


私、若麻績風月は椚ヶ丘中学校三年生E組に所属する生徒だ。このクラスは成績不良の生徒が集められた事以外は普通のクラスだった。

でも今は………暗殺教室に変わってしまった





 「き 起立!!」

日直の掛け声でクラス中の生徒が銃を構える。

次の号令でクラス中の生徒が担任に向かって銃を撃つ中私は一人机に座り直前まで読んでいた本を開くと机の下で再び読み始める。

本を読んでいると出欠の確認で名前を呼ばれた。

「若麻績さん」

私で最後なので発砲が鳴りやんでから返事をした。

返事をする時も勿論視線は本に向かったままだ。

今日も命中弾はゼロらしい。

実に無駄な時間だと思う、こんなムリゲーをするくらいなら本を読んでいた方が実に有効だ。

その理由は三年初の日までさかのぼる。

始業式を終え教室で本を読んでいた時だった

少し前に起きた月が蒸発するという事件をやったと言う生物が来て来年には地球も爆るらしい、つまり来年には私達は死ぬ。

と言う訳で国からクラスにこの生物の暗殺依頼をしてきた。

しかし私は死ぬまでのリミットがあるならそれまで楽しく生きれば良いそう思った。

初めは皆も拒否していたが成功報酬が百億円という言葉でクラスはこの依頼を受けたのだ

本当、迷惑な話、いくら報酬が高くても最高速度マッハ20、こんな奴、マンガみたいな人外レベルやラノベの転生物の主人公が貰うチートがないと殺れるわけないし。

だから私は暗殺には参加せずやりたいことをする。






昼休みの後、暗殺が起きた。

爆発音が大きかったのでチラっと目線を教卓に向けると先生は真っ黒な顔で怒っていた。

本当どうなってるんだ?気持ちによって顔色が変わるとか…

その後、私達生徒の表札を持って来た。自分を他人を傷つける暗殺をして来たら私達以外を消すらしい、親を殺してくれるなら私は生きる力即ち暗殺する気になるんだけどなぁ






放課後、私一人残って今日授業中に提出するはずの課題をしていた。

これにはちゃんとした理由がある。それは課題を解く時間に本を読んでいた事もあるが単に家に帰るまでの時間稼ぎの為だ。

私の親は育ちが二人そろって良く私に厳しく、家に帰ると勉強、勉強とうるさいから学校で勉強していたという口実があり遅くなっても大丈夫だ。

課題を解いていると誰かが教室に入ってきた。

「おや、若麻績さん居残り勉強ですか?」

ターゲットもとい今日決まった名前で呼ぶなら『殺せんせー』だ。

殺せない先生が由来らしいがどうでもいい

「課題が出来てなかったから…」

「それにしては本を読んでいた様にみえましたが?空欄ばかりですねぇ あなたはよく授業を聞かずに本を読んでいますねぇ ちょいと先生が教えてあげましょう」






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52 「2時間目 いい気味な時間」

 突然だが私の席の位置は右から4列目、左から3列目の五番目つまり一番後ろの位置だ。
左右を見れば右側に寺坂しかいなかったのだがつい最近右隣に赤羽と言う奴が来た。
どうでもいいけど。



五月に入ってから新しい先生が来た。
イリーナ・イェラビッチと言う暗殺者だ。
一回目と二回目の授業は自習で授業をする気がなくて都合の良い先生だと思ったが、三回目の授業から実践的な会話術を教えてくれる様になった。
まぁ、あんな話なんか聞かず本を読んでいるのだが。



日にちは過ぎ中間テストの時期が来て担任がやる気に満ちている。
分身して生徒一人一人にマンツーマンで苦手な教科や伸ばす教科を教えるらしい、私のハチマキは寺坂と同じでナ○トだった………五教科とも最下位レベルだからか。
少し経つと先生の顔が崩れた。
赤羽が暗殺してそれを避けたらしい、アホらしい。
私は本を取り出して読み始めた。
「にゅ 若麻績さんこっち向いて聞いてください」
私が本を読んでいるのに気が付き私から本を取り上げた。
本を取り上げられた私は元々少なかったやる気が全くなくなったので頬杖をついて目を閉じた。
「目を開けて下さい、若麻績さん!」
勿論無視した、今更勉強しても成績など上がるわけないし



今日の授業が終わると私は気が付いた。
あいつに私の本を奪われたままだと言う事に。
仕方なく教員室に向かうと誰かが中を覗いていた。
潮田渚、先生の弱点をいつもメモしていてこの前自爆テロを実行した奴だ。
いつも本を読んでいる私だが決して読んでいると周りの声を全く聞いてない訳ではない、なので少しならクラスメートの事を知っている。
比較的直ぐに忘れるが…
話を戻そう、私は彼に気づかれないように教員室の中を覗いてみた。
そこにはこの学校の理事長が先生を論破しているように見えた。
さらに知恵の輪で絡まっているなんていい気味だ、私から本を奪ったから罰が起きたのよ。
理事長が出て行こうとしてるのが見え潮田は動いた時に私を見つけビックリしていた。
「若麻績さんいたんだったら声ぐらいかけてよ」
「なんで?かけなきゃいけないの?」
「なんで?って…」
その時、理事長が出てきた。
「やあ!中間テスト期待しているよ頑張りなさい!」
できっこないって分かっているのに期待しているなんて生徒の心境をよく理解しているのね、潮田君なんて前のE組の顔に一緒に変わっているし。
さてやっと教員室に入ってもいい状態になったので早く本を返してもらわないと。


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53 「3時間目 中間テストの時間」

 次の日、先生はもっと増えて勉強を教えてきた。
昨日、理事長に何か言われたことがきっかけになったようだ。
生徒一人に付き先生三人、一対三のハードな授業、正直言って昨日の一対一より分からない。
本を取り上げられるのはもう嫌なのでこんな時は寝るに限る。

休み時間、本を読んでいると校庭に出るように言われた。
また面倒な事になるしか思えない。
校庭に出ると先生はイリーナ先生に聞いた。
仕事をする時に考える作戦は一つだけかどうか?と。
それに対してイリーナ先生は本命の作戦は上手くいかない事が多いから予備の作戦をより綿密に建てておくと。
次に先生は烏間先生に聞いた。
ナイフ術を教える時、重要なのは第一撃だけか?と
それに対して烏間先生は第一撃は重要だが次の第二撃、第三撃がいかに高性度で繰り出せるかが勝敗を決めると。
先生が言いたい事は分かった。
先生を他の誰かが殺した時の事を考えろと言いたいのだ。
まぁ私は先生を誰も殺せなかった時の事を考えて行動しているのだが…
そして先生は今の私達には暗殺者の資格なしと。
明日に第二の刃を見せろ、つまり中間テストでクラス全員五十位以内に入れと。
無理だ、先生はすでに自分が育てているから大丈夫だと言っているが私には出来る気がしない。
担任がこの先生に代わったからっと言って別に勉強が前より分かるようになった事はない、と言うか地球を破壊すると聞いてからは授業中でも本を読んでいたので前より下がったと思う。

次の日、私達は本校舎でテストを受けていた。
ペンがはしる音が聞こえる。
他の皆は順調なようだ、私はテスト開始十五分で終わったので寝ている。
テストの時間は嫌いだ。
なぜなら問題を解き終わったら本が読めなくて寝るしかないからだ。
急にペンの音が鳴りやむ、皆気づいたらしい。
私は分からない問題はすぐ飛ばすのでかなり早くそこにたどり着いた。
テストの問題を見てすぐに気が付いた。
私にも解き方は分からなくても習ったか習っていないかはわかる。
だから分かった。
後半の問題は習っていないことに。

それから数日後テストがかえってきた。
合計得点…194点
186人中180位
それなりの点だ。
E組ではダントツに最下位だがこれでも成績は上がった。
以前のテストでは合計点が120点ぐらいで一回70点代を出した事もあったし最下位も抜け出せれた。
あの先生に教わって少しは上がったのか……でも来年地球か破壊されるならこんな事意味なんかないのだけど。
ちなみに先生は生徒に挑発されて「期末でリベンジです。」とか言っている。


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54 「4時間目 修学旅行の時間」

 中間テストも終わり次にやって来る行事は修学旅行。
ここで一つ問題が生じる。二日目の班活動だ。クラスの人数は27人と奇数である。一方班の人数は男女各3人ずつ、友達のいない私はこういう自由に班を決めるといつも余る。人数合わせで無理やり入らなければいけない時は最後にどこかに入れて貰うが数が合わない時はぼっちになる。
まぁ一人で図書館にでも籠っていたいから問題はないのだけど。
「あの若麻績さん、もしよかったら僕らの班に入る?」
皆が修学旅行の話で盛り上がっている中、一人本を読んでいると声を掛け来る奴がいた。
「なんで私を誘うの?班は六人班でもう決まっているじゃない」
「いや、殺せんせーがどこかの班は7人になりなさいって言ってたから」
なにそれ聞いてないし。普通に考えて見たら分かる事だけど。どうでもいいや。
「そうすれば良いよ、私達若麻績さんとお話してみたいし」
話に入り込んで来たのは茅野カエデ、よく潮田といるのを見かける。
「あれ、若麻績さんうちの班に入るんだ。」
「よ、よろしくお願いします。」
「よろしくね。若麻績さん」
なんか返事してないのに入る事になったんだけど、って言うかよく私みたいな話した事もないような人を善意で入れる事が出来るのだろう?
こうして私は不本意ながら潮田渚、茅野カエデ、赤羽業、奥田愛美、神崎有希子、杉野友人この6人の班に入る事になった。
少し時間が経って先生が辞書みたいなのを持って入って来た。
そしてそれを一人一人に配っていった。
「修学旅行のしおりです。」
最後のページを見ると1344ページ、見事に読みがいのあるしおりだ。この後の時間はこれを読もう。たまにはいいことするじゃないあの先生は。



数日後、修学旅行当日、東京駅で新幹線に乗る。A~D組はグリーン車、私達は普通車だそうだ。正直言って何が違うのか分からない。ただ値段が高いだけとしか思わない。

イリーナ先生が出発前はハリウッドスターみたいな服装でやって来て、出発後には寝間着になっていた…。

それと出発に先生が駅中スイーツを買って遅れた。
いいんだろうか、教師がおくれても。

一日目は順調に終わった。二日目は班行動だ。ばっくれようかなぁなんて考えていると神崎さんが希望した暗殺場所に着いた。
静かな場所だ。こういう所でベンチに座って本でも読めたらいいのになぁ
「ホントうってつけだ。なんでこんな拉致りやすい場所歩くかねぇ」
急に出て来た場違いな人達がいなかったら。


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55 「5時間目 しおりの時間」

 突然現れたヤンキーらしき高校生。

目的は女子の拉致。私はすぐさま、流れる様に壁に寄り掛かって本を読み始める。

こうする事で何故か誰にも気づかれずにすむ、こういうイベントにはとても便利だ。

1ページほど読むとヤンキーらしき高校生は去っていった。

連れ去られたのは茅野さんと神崎さんの二人だ。

奥田さんは私と同じように隠れていたので助かったらしい。

赤羽によると、さっきの奴らは犯罪慣れしてるらしい。

そして自分の手で処刑したいとか。

そういえば、修学旅行のしおりの1243ページに班員が拉致られた時の対処法があったはず。

「これからどうしよう」

「早く、あいつ等を見つけて処刑したいんだけど」

「どこに行ったか分かる訳ねぇしな」

呆れた、こいつ等、誰もしおりを読んでいないの。

私なんか貰った日に楽しく全部読んだのに。

しかしこれは別行動するチャンスだ。

さっさと別行動為には

「あなた達はしおりも読んでないの?」

「あれ読んだのかよ!?」

「読んでないの?まぁいいわ1243ページにあなた達が今しないといけない事が書いてあるから。ここまで教えたんだから、あとはそっちでなんとかしといて」

こうしてヒントをあげてサラッと別行動する。

早く図書館に行ってクーラーの付いた部屋で快適に過ごそう。

そう思いながら私はその場から離れるのだった。









「あの先生が書いた修学旅行のしおりってかなり役に立ったわ。これがなかったら私は今頃、どうなっていたのか」




あれからどうにか図書館にたどり着く事が出来た私は修学旅行のしおりに感謝をしていた。

なぜなら、これがなければ私は迷っていたからだ。

私はこの修学旅行にはお金を持って行ってない、なので移動は歩きしかない。

あとは図書館の場所が分からなかった。

普通の人なら携帯電話で調べればいいだろうが、私は携帯電話を持ってないから調べる事が出来ず、道に迷っていただろう。

しかし携帯電話を持っていなくてもこの修学旅行のしおりを全ページ読んだ私は安心して一人で行動する事が出来た。

なぜなら修学旅行のしおりには京都のマップが掲載してあり、そこらの地図より分かりやすく簡単に図書館にたどり着き、本を読みながら修学旅行のしおりに感謝している、と今に至る訳だった。




だった、そう過去形なのだ。

班行動中に一人で別行動できるはずもなく、回想してる内にお迎えが来たのだ。

「よくここが分かりましたね。先生」

「渚君たちを助けに行ったら、君だけ姿が見えず、聞いてみたら『一人どこかに行ってしまった。』と言われたので、先生はここだと判断しました。正解のようですねぇ」




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56 「6時間目 機械の時間」

先生に付いて宿に帰りお風呂に入ったあと部屋に帰るとイリーナ先生の周りに私以外の女子たちが集まっていた。

邪魔しては、いや気づかれたら面倒だと思い静かに荷物から漫画を就寝時間までの時間を計算しながら十冊ほど取り出し出ていく。

部屋を出る時に先生がいたが無視して出ていった。

直ぐに後ろから騒ぎが聞こえて来たので関わらなくて正解だった。

ロビーにある共用の椅子に座って漫画を読みながら明日の自由行動の時間について考える。

取り敢えず安いお土産を買わないと親に怒られる。

余ったお金で欲しかった本を買おう。

そう決めながら漫画のページをめくった。










修学旅行が終わり教室に行くと席の左側に黒い機械があった。

おそらく私達が修学旅行に行っている間に取り付けた対先生の何かだろう。

直ぐに興味を失い旅行中に買ったばかりの本に意識を向けた。



一時間目の授業中、机の下で本を読んでいると横から機械音ともの凄い発砲音が聞こえた。

チラッと目線だけで横を見ると自立固定砲台さんが授業中に禁止の発砲をしていた。

皆は授業にならないので迷惑そうだが私は別にどうでもいい。

先生が弾幕を避けるのに必死で私に注意してこないのが少し嬉しい。

後発砲音と跳ね返ってきた弾が少し鬱陶しいくらいだが本を読んでいる内に気にならなくなる。

授業が終わると弾が教室中に落ちていた。

この日はずっと発砲と弾の掃除で終わった。

もちろん掃除なんかサボったが。



次の日誰かがあの機械をガムテープで所々止めていた。

そのせいで昨日より本が読めなかった。

ガムテープぐらい勢いよく銃を飛び出せば破れるのでは?とあの機械は思わないのだろうか。

使えない機械(やつ)だ。



さらに次の日、機械は全画面表示液晶と何やら膨大な追加ソフトで進化していた。

お陰様で休み時間中機械の周りに人だかりができ鬱陶しい。

それに先生の財布が残り五円って明日から給料日までどうやって生きていくんだ?

それから機械の表情は豊かになった。

大体の人は騙されているが一部の人は気づいた。

全て作られたプログラムに過ぎない、機械自体に意思表示があるわけではないと。

確かに機械自体には意志があるわけではない。

でもそれは単なるプログラミング機械の場合だ。

あの機械には思考能力(AI)を持っている。

大体、ラノベとかによくあるパターンの様に自ら自我を持つようになり開発者の意志に逆らうだろう。

いわゆる『テンプレ』。



あの機械が来てから四日目教室に着くと機械は初日の様に元に戻っていた。

あーあ、先生の二十万は見事にぶっ飛んだっと。

勿体無い、二十万あれば一体何冊本が買えることか。

まぁ、あの先生のことだから「生徒がクラスに馴染むなら安い教育費です」とか言いそうだが。

もっともあの機械がテンプレ反応を起こさなければホントに二十万を捨てたことになるのだけれど、…もうどうでもいいやどっちにしろ私には関係のないことだ。


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57 「7時間目 壁を壊し者を推測の時間」

雨の降る六月の日

今日新しい転校生が来るらしいがどうせ暗殺者だろうし期待もしてない。

私に被害があるかないかが心配なところだ。

初めに入って来たのは全身真っ白な服を着ている男が入ってきた。

彼は転校生の保護者らしい。

そして転校生は入って来た。

後ろの校舎の壁を破壊して。

インパクトのある登場の仕方だと思う。

壁を壊すなんてこと普通の人には出来ない。

それに外は雨が降っているにもかかわらず転校生は一切濡れていない。

可能性としては彼が使ったのは魔法などの非科学的な力。

なにそれホントにあるなら私も使いたい。

だが彼は先生の兄弟だと言う。

でも先生の反応を見ると兄弟ではないらしい。

一日観察というか本を読んでただけなのだが席が隣なので何をしているかがイヤでもわかる、先生と彼は似ていた。

結果甘いもの、グラビアが好きと言う点が似ていた。

なら小説でよくある同じ力には同じ力で対抗する毒には毒って事だと思う。

要するに触手には触手をぶつける戦法これなら生身の人間が殺るより格段に殺せるはず。

放課後になってクラスメイトが教室に残るなか私は家に帰った。

次の日、転校生は暗殺に失敗しどこかへ消えたらしい。










 梅雨が明けたこの頃私の嫌いな学校行事ベスト3に入る『クラス対抗球技大会』が始まる。

E組は大会最後のエキシビションマッチに出なくてはならない。

今年はE組なのでサボろうとしたのだが競技が私を逃がしてくれないと思う。

今年の競技は男子が野球部の女子はバスケ部の選抜メンバーと戦らされる。

面倒だし別に何も言われなきゃやらなくてもいいから今年は休もうかな丁度先生の熱意は男子の野球に向いてるから。

「若麻績さんちょっといいかしら?」

ほら来た。

私が決めたとたんにこれだ。

本から目線を上げると…えっと誰だっけ?

今まで読んできた小説の登場人物なら分かるんだが現実はちょっと…。

確かクラス委員長の片岡さん?だっけ。

「若麻績さんバスケ部だったわよね?」

そう私は父の方針で小学一年生からバスケットボールをしていた。

小学校の頃は決して上手くはなかったものの交代要員として何度か試合にも出れたし勉強もそこそこできた。

中学は親に受験させられこの椚ヶ丘中学に進学、そのままバスケ部に入ったが勉強も運動も失敗今に至る。

「そうだけど」

「今度の土曜日時間大丈夫?」

「なんで?」

「なんで?ってほら女子全員で勝ちたいし。ほら経験者がいると対策が練りやすくレクチャーしてもらえるかって思って」


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58 「8時間目 弱い時間」

クラス対抗球技大会の当日

私は旧校舎と本校舎を繋ぐ道から少しずれた所で本を読んでいる。

何がクラス対抗球技大会だ。

私は昔から学校行事が大嫌いだった。

何でわざわざ勉強をするところで騒がなきゃいけないの?

こんな事より本を読んでいた方が何倍も有意義な時間が過ごせる。

本を読んでいると自分だけの空間にいる様に感じる事があるが今日は中々その感覚がこない。

そのせいか誰かが私を見つけた。

「若麻績さん」

そこには片岡さんがいた。

「お願い来て!」

「っつ!?」

後ろから誰かが私の腕を掴んで動けなくなる。

そのまま本校舎に連行された。

「分かった。体育館には行ってあげるからはなして!ただし負けそうになった時だけ!」

「助かるわ」

私はベンチに座って本を取り出した。

あそこまで言ったからにはこれくらい許してほしい。

時々戦況を見もするし。



始めは向こうがリードしてたがこっちもついて行く。

このまま出なくていいかも?と思った時フラグを回収した。

か、茅野さん?のミス連発で突き放された。

で、茅野さんと交代。

「ごめんね若麻績さん。頑張って!」

取り敢えず適当に出てボールをあんまりもらわずにやって終わろう。





勝った。

あっけないほど簡単に勝ってしまった。

相手の動きが止まって見えるとは言い過ぎだけど遅いし体が思うようにスラスラと動けた。

あの暗殺教室のせいでしかない。

勝ったのはいいが後遺症が残って一週間頭はクラクラするし少しでも動くと体が痛い本を読むのも苦労した。

もう二度とあんな事してやるか!



夏服初日にボディーペイントがはやりクラス中が腕に何か書いてもらったり、先生が調子に乗ってイリーナ先生に落書きをして怒られたりして授業が一時中断になった。

その時間少しうるさかったが直ぐに本の世界に囚われ快く読書の時間が取れてまぁラッキー。



七月に入って新しい先生が来た。

烏間先生の同僚で鷹岡先生と言うらしい。

先生とは違う感じに距離を詰めてくる先生だ。

実際にお菓子で餌付けして来た。

近所の父ちゃんみたいだとか言われてたけどあれは父ちゃんの言う事は絶対だとか言ってくる私の嫌いなタイプだ。



あの先生の時間になると時間割が変わったと言った。

ほぼ訓練夜9時まで土曜日も登校、こんなに訓練したら死ぬ。

冗談抜きで

抗議したが一蹴された。

抜けたい奴は抜ければ良いとあいつはいう。

先生が良いって言ったので素直に抜けた。

涼しいそうな場所に移動すると赤羽がいた。

「あれ?授業はどうしたの?」

「抜けてきた」

「…若麻績さんは俺と似ているね」

「はぁ?私はあなたと違って何もできやしないわ」

「出来ないじゃなくてやらないって風に見えるけど」

わけわかんない。


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59 「9時間目 初めての暗殺関わり下準備の時間」

最近かなり暑くなってきた。

クーラーがないこの教室でクラス中だらけっている。

私は家の部屋にエアコンなんてないから家よりは暑いが暑さで先生もダウンしているので
本を読んでいる。

いつもどうりだ。

問題は今日からプール開きだという事。

うん、休もう。

なんで好きで水に濡れないといかないの?

水に濡れるのはお風呂の時で十分、本が読めない所なんて嫌いだ。





プール開きから数日後、私はある奴と接触していた。

「で、やってくれるかい?」

「さっきの話、本当に?」

「ああ、やってくれると報酬十万。さらに暗殺に成功すると一億。どうだい悪い話ではないだろう。私達が失敗しても準備さえすれば十万は貰える。」

「わかった。やらせて貰うわ。精々成功する事を願っているわ。」

早速やってこよう。

今から向かえば家に帰っても父はいないはず、母だけならそんなに怒られもしないはず。

さあ、プールを壊しに行こう。



次の日、学校でプールがメチャメチャになっているのが発見され予定通り寺坂等が犯人だと思われていた。

残念、確かにあの人も計画に関わっているけど別の仕事だ。

休み時間先生が作った木材のバイクの破片が、スプレーの粉が私に被害を及ぼした。



私はその夜プールにいた。

「ねぇ、計画通りにやるためだと言え私に被害が出るとは聞いてないんだけど」

「うるせぇ!お前が目立ちたくねえって言ったから俺がやったんだろ!」

とそこに依頼主のシロがやってきた。

「二人ともご苦労様。これで奴を殺す準備が整った。」

「私は見ていないのだけど触手が使えるの?」

と私が言うと寺坂と話してた奴がこっちに来た。

「お前の目にはビジョンがあるはず。なのに、しないのは?」

「そんなものないわ」

「逃げてるだけではないのか?」

逃げている?そうかもしれない。

「ごめんよ。嫌な事言われたかな?仲良くしてもらいたい。クラスで浮きかけている寺坂君なら不自然な行動も自然に出来る。さらにクラスで唯一暗殺に関わらない若麻績君に声を掛けて表を寺坂君が裏を若麻績君が下準備をする。決着は明日の放課後だ」

シロはそう言うと去って行った。

帰ると途中でプールに寄ると先程別れたシロがいた。

シロはプールの水の塞き止部分で何かしていた。

そう言えば少し聞いておきたい事があったので丁度いい。

「こんなところで何してるの?」

「ん、若麻績君か。何でもないよ。明日の暗殺の下見だよ。それよりどうしたのかな何か質問でも?」

「明日の暗殺だけどこのままでは失敗するのではないか?と思い少し計画についてお話ししたいと思います。」


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60 「10時間目 初めての暗殺関わり当日の時間」

「失敗する?どうしてだい」

「いくらプールに薬品を撒いてもプールに先生を落とせなければ意味がないと思ったので別の可能性を考えてみた。」

「それで?」

「まず、何らかの方法で生徒に危害を食わえる。勿論、そんなに危ないものではないと思う。精々先生が直ぐに助ける事が出来るはず。そうして油断した時に水場に落とす。寺坂に渡したピストルはあなた達に合図するものではなく別の物ではないと?」

「…お見事。正解だ。寺坂君に渡したピストルはあそこの塞き止部分に設置した爆弾の起爆装置になっている。生徒が川に流されているのを助けたアイツをイトナが殺る。そう言う計画だ。7~8人は死ぬ可能性がある。どうだいここまで聞いて私を止めるかい?」

「止める?バカ言わさせないで。成功に犠牲は付き物、そう言うのは分かり切ったことだわ。でも報酬は絶対よ。ここに私は居なかった。計画に関与してない。分かったわね」

「もちろんだよ。君みたいな人がいると非常に殺りやすい」

さて、聞きたい事も聞けたし帰るとするか。

絶対怒られるな。



次の日昼休み時間に寺坂が登校して来た。

今度は巻き込まれないようにと誰にも気づかれずに教室を出た。

向かった先はプール近く。

「今、彼が宣言したわ。放課後、ここで暗殺を行うよう言ってるはず。正直、生徒は何人来るか分からないけど」

「来てもらわなくてはこちらが困る。最悪君に人質役をやらさなくては」

「そうならないように祈っておくわ。」



放課後先に帰ったと見せかけてプール近くに行く。

プールにはクラスの人達。

良かった人質にならなくて。

さて、順調にいってよね。

とここで爆破音が聞こえてきた。

寺坂は呆然と立っていた。

爆破は成功、先生は流された人を救出しに行った。

少し川沿いを下り先生と転校生がいる近くに行った。

先生はと転校生の戦いはこっちが優勢だと一目で分かった。

一億まであと少し。

今の歳で一億あればアルバイトで生きていけるとなにかの本に書いてあった。

あと少し、あと…………

急に寺坂が邪魔をしてきた。

なぜ?さっき呆然と突っ立てったはずじゃあ。

周りを見渡すと赤羽がいた。

アイツが寺坂を使っているのか!

そして私の一億が遠のいた。

結局は寺坂も周りに飲み込まれたか。

このクラスと暗殺をする気は当初と同じく全くない。

成功する気がないから時間の無駄。

だけど、あの二人の計画はいい。

成功、失敗に関わらず計画の準備をキッチリとすればお金が貰えるのだからこれ程良いアルバイトはない。


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61 「11時間目 期末テストと夏休みの時間」

もうすぐ期末テストが始まる。

先生が三人も付いて鬱陶しい。

今回は各教科一位をとった人が触手を破壊できる権利を獲得できるらしい。

全教科最下位レベルの私じゃあ関係のない話になる。

それよりアルバイトで手に入ったお金で本がたんまりと手に入ったのでそちらの攻略を
したい。

次の日A組と各教科で勝負をする事になった。

どうしていつもこんな面倒なことをするのかしら、勝手に合意しやがって!



期末テスト当日

眠い。

昨日の晩、父親に明日がテストだということがばれて「勉強しろ!!」と怒られ仕方なく机に向かったもののする気などなく、いかにもやってますよ雰囲気で教科書を開き買ったばかりのシリーズ物小説を読み始めた。

一冊読み終わると続きが気になり二冊、三冊と立て続けに読んでいったのだが四冊目が読み終わると日が昇っているのに気づき慌てて支度し今にいたると。

眠たいのでぱっと見で分かる問題だけを探して解いていき後の時間は全部寝た。

全体の一割も分からなかったとは……これ高校入れないかも。

その前に地球がなくなるんだった。

もっと本を読まないと後悔がないように。


テストが返ってきて一学期最終日。

結果は全教科最下位

当然の結果だろう。

眠くて集中出来なくなり途中から問題すら読まずに記号問題を感で書く事しかやらなかったからね。

あ、A組との勝負は勝った。

おかげさまで夏休みなのに沖縄離島リゾートに三日も行かなくてはならない。

そこで暗殺をするのだと。

あぁ、私の夏休みがぁ………

さらに家に帰った後で親にもこっぴどく怒られた。

本だけは死守しなければ!



夏休みなのに学校で訓練

こんな事しても一向にナイフ術も射撃も上手くならない。

まぁ私一人が成長してないにすぎないのだけどね。

そんなわけで体を動かすナイフ術は嫌なので隅の方でゆっくりと狙いを定めて撃っていた。

撃つ、当たった。

撃つ、当たった。

撃つ、当たった。

こんな感じでVRMMOFPSゲームが出てくる某小説の感じを味わいながらひたすら撃っていた。



そんな感じで七月が過ぎ八月の沖縄離島の暗殺の日になった。

離島まで約六時間三冊弱の本が消費された。

かなりの冊数持って来たのだが果たして持つだろうか?

かなり不安だ。

暗殺は夕食後にやるそうなのでそれまでは自由時間。

もちろん部屋に籠って本を読むに限る。

エアコン完備の完全個室これ程本を読むのに適した部屋はこの島にはないだろう。

フカフカのベッドでゴロゴロと体制を変えたりこれまたフカフカな椅子に座ったりとしながら本の世界にめり込んでいった。


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62 「12時間目 夏休みの暗殺の時間」

夏休みの大型暗殺は強制参加

今回の私の役割は先生に弾を当たらない様に撃ち弾幕を張る係。弾幕と聞いた瞬間一瞬「東方project」を思い出したのは私だけだと思う。
選ばれた理由は射撃テストの成績が上位だったからだとか。適当に撃ってるのに上位ってこんなに簡単にできてしまっていいのだろうか?人生もこんなに簡単に出来ればいいのに。










まあ、今回の暗殺も私の人生と同じく簡単に成功するわけなかった。

最後の最後で「完全防御体」とか言ういかにも序盤のザコ敵が使ってきて直ぐに破られる様な名前の形態で弾を防いだらしい。
小説の様に直ぐ壊れるなんて事はなくその名の通りどんな攻撃も防いでしまうらしい。

故に暗殺は失敗

これを知ると私は真っ先に部屋に帰って行った。
結果が分かったならこれ以上こんなところに居る必要はない。

早く部屋に帰って続きを読まなければ。
気になって暗殺どころではなかった気分だ。



部屋に帰るとベッドに倒れそうになるのを我慢して本を取り出した。

かなり疲れたがベッドに倒れて寝るより本の続きが気になったのでそちらを優先させた。

が、やはり私の体は弱いらしく中々本の内容が頭に入ってこず、遂にしおりを挟んだ後、体をベッドに預けた。



コン、コン

部屋のドアを叩く音に反応して私は起きた。

誰?
人が気持ち良く寝てたのに起こしてくるのは?

暗殺が終わった後は何をしようが人の勝手だ。

私の部屋を訪ねてくる人はいないはず。

クラス全員に伝えないといけない事ができた場合以外は。という事は緊急事態が発生したのだろう。

「若麻績さん。居るか?居たら返事をしてくれ」

聞こえてくるのは烏間先生の声だ。ならば出なくてはいけない。これが生徒だったら無視するのに。

ゆっくりと体を起こすとそのままゆっくりとドアを半分だけ開けて顔を出した。

「何ですか?疲れているので寝てたんですけど」

「寝ていたのか?それは済まない。がどうしても伝えなければならない事があってな」

「手短にお願いします。」

烏間先生の話を聞くとクラスの何人かがウイルスにかかり酷い高熱になっているらしい。敵が治療薬を持っているので動ける人で奇襲しに行くそうだ。

私?行かないよ。面倒だし眠いし。

烏間先生は「体調が悪くなったら看病に残した二人に言ってくれ」と言って行った。

ウイルスか。私は体が弱いから大丈夫だろうか?それとももうかかってるのか?どちらにせよ今は眠い。

ドアを閉じ鍵を掛けるとベッドに倒れこみ瞬く間に眠った。


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63 「13時間目 気まぐれで気分最悪の時間」

フカフカのベッドで最高の寝心地

意識が曖昧に覚醒するが気持ち良すぎてまだこのままでいたい。

二度寝をしようとして更に意識が落ちそうになる時それは起きた。

爆発音だ。

人が気持ちよく寝ているのにこの騒音。今、何時だと思っているのかしら?
あ、夜だがまだ夕食の時間も来ていなかったらしい。だが害は害だ。
今度、面倒な時の切り札として取って置こう。先生はこう言うのにはかなり気にする派だから本でも奢ってくれるのではないだろうか?

今は二日目の夜就寝時間にはまだ早い時間帯どころか夕方だ。
今日の朝、起きて朝食を一人食べているとイリーナ先生がやってきて皆の無事を知らせてきた。

あ、そうですか。私には関係ないね。

その後部屋に戻り本を読み始めた。

何冊か読み終わった後再び眠気が襲ってきたので逆らわずそのまま寝て今に至る。

そのまま寝てもいいが爆発音で完全に眠気が覚めたので部屋から出て何処か静かな場所に行って読もうかな。

この気まぐれがいけなかった。



ホテルのデッキは涼しくて波の音が心地良いサウンドになり部屋の無音状態とはまた違った雰囲気が味わえる。

波の音を聞きながら読むのは確かに心を落ち着かせて読める。
直ぐに本の世界に入ったら聞こえなくなるのだがふと現実に戻った時に丁度いい。

本の世界に入っていると違和感が襲ってくる。
その正体を探ろうと現実に意識を戻す。
戻した瞬間違和感の正体に気づいた。

あのタコ先生だ。
顔を私と同じ高さまで下げこちらを向いている。

気づいてないふりをしてそのままページめくる。

「にゅ、少し早すぎませんか?先生まだ読めてないのですが。」

「私が読んでいたので先生にペースをどうこう言われる筋合いはないのですが?」

何を言っているのだろうこのタコは。
先生ならこのくらいの本五秒もかからず読めるはずなのに

「なら仕方がありませんねぇ。内容が気になったので今度貸してください。そして感想を言い合いましょう。」

いや買えよ!なに人の本を借りようとしているのだろうか。しかし感想を言い合うと言うのには少し惹かれる。

そんな感情とは裏腹に冷たく本を読みながら言った。

「それで何の目的があって私の所に来たのですか?こちらとしても暇ではないのですが…」

「せっかく来たのですから楽しい思い出を作れたらと思いまして肝試しをやりたいと思います。一緒に夏の夜を楽しみましょう。」

「嫌です。部屋に戻るので夕食の時間で」

誰が好き好んでこんな事するか!?

前言撤回だやっぱり気まぐれでも部屋に籠るべきだった。


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64 「14時間目 ダラダラ過ごす夏休みの時間」

21時遅めの夕食の時間になったので降りてくると固まって何やら話し会いをしていた。

先生の格好何なの?キモイ。

とそこで先生に気づかれた。

「おぉ。若麻績さん。烏間先生とイリーナ先生をくっつけたいのですがいい案はありますでしょうか?」

なぜ私にそんな事聞く?相変わらずこの先生はわけがわからない。

私に聞くメリットを考えていると先生は心を読んだかのように答えてきた。

「若麻績さんは色々な本を読んでいるので今のイリーナ先生と烏間先生の雰囲気に似た物を読んだことがあるのではないかと思いまして…」

なんだ、そんな事か。確かに今の先生方の雰囲気と同じ物を読んだことがある。だが断る。
現実の恋愛は本の世界とは違い簡単には上手くいかない。これは恋愛に限らずそうだ。現実が本に似たからといって同じ行動をしてもそれが本と全く同じなることはない。体験者が言うのだからそうだ。なら何でこう上手くいかない!?
取り敢えず知らない事にしておこう。厄介ごとはごめんだ。

「残念だけど全く思いつかないわ」

そう言って席に着いた。



早々と夕食を食べて部屋に戻る。

明日で東京に帰る。つまりこの居心地の良い部屋ともあと数時間でおさらばになってしまう。家に帰ると両親、特に父がやれ宿題をしろだの予習復習をしろだのうるさくなる。なので限界まで本を読むことにしよう。










私が通う椚ヶ丘中学校は超進学校だ。この学校はとにかく勉強をする。それに合わせて当然宿題の量も半端じゃない。

なんなのこの量!?終わる気がしない。暑い。手が痛い。腕が疲れた。

夏の猛暑日、クーラーのない部屋で閉じこもり暑さにやられながらいた。

今、部屋からでたら殺される。悪いのは私だがこんな量を出す方も可笑しい。
ふぅ、休憩でもするか。部屋の中で。

私は今大量の夏休みの宿題と戦っていた。

休憩手柄に本を読んでいるとふと思う。ここまで来ればもうやらなくてもいいのではないか?成績とかどうでもいいし。
こんな事も考える程切羽詰まっているというか疲れた。

今日は八月三十一日一般的な学校にとって夏休みの最後の日。宿題はまだ半分も終わっていない。

区切りのいいところでしおりを挟み机の上の宿題に手をつける。
考えても分からないし時間の無駄なので片っ端から答えを写していく。

三時近くになった頃ついに根を上げた。
こんなの出来るか!疲れたし腕が痛いしもう散々だ。よし諦めよう。気が向いた時にやっていって出来たらだそう。

と違和感を感じた。


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65 「15時間目 二学期の始まり」

 違和感もとい気配を感じ後ろを振り向く。そして静かに本へと視線を戻す。

見なかった事にしよう。

「ちょ、何で無視するのですか!?」

何で私が宿題を諦めようとすると出て来るのだ。このタコ先生は!

違和感の正体はタコ先生が窓に張り付いていて部屋に入る光が少し変わった事によるものだった。

それになんだ。手?に持っている看板は?『夏祭りのお知らせ!!』あぁ、あれか。もう何年も行ってないやつだな。

このままではうるさいので中に入れた。

中に入れたのがいけなかった。タコ先生は部屋にはいると机の上に広げてあった宿題を見つけてやらされた。しかも19時になると気分転換と言って夏祭りに連れて行かれた。

余談だが夏祭りに行くとのことでおこずかいを母から貰えたので本代が増えた。これは少し感謝した。

夏祭りが終わってからもやらされ日付が変わる頃にやっと終わらせることが出来た。

両親に気づかないで教えるとはこのタコ先生はどうなっているのか?
取り敢えず私の夏休みは宿題が無事に終わった。










二学期が始まりは少し波乱万丈だった。



クラスから一人Aクラスに行ったと思ったら数日後Eクラスに戻ってきた。

何がしたかったかしら。



それからまだ続く。廃棄される卵を使って巨大プリンを作らされた。中に爆弾と弾を入れて食べている時に暗殺するという計画だったがタコ先生に見つかり失敗。

作るのは面倒だったが最後に食べたプリンが美味しかったのでまぁ良しとしよう。あとこの計画を考案したのが茅野さんだったのが少し驚いた。この手の人は何か抱えているのがテンプレなのだがどうでもいいや。



体育でも変化があった。フリーランニングと言われるこれまた体を壊す様な訓練を追加された。

これを見てタコ先生が何を思ったのかケイドロをやらされた。烏間先生とタコ先生のチートコンビを相手にだ。始めは烏間先生が無双していたらしいが途中タコ先生が賄賂受け取り知恵を入れ烏間先生の無双が止まり一チームが引き寄せてタコ先生が手を出せない水中に逃げ込み勝ったらしい。

私?開始数分で捕まり残り時間を読書にあててたよ。










ケイドロから数日後、学校から帰っていると奴に呼び止められた。

「若麻績君。また君に暗殺の下準備の依頼をしたい」

シロと言う得体の知れない奴だ。クラスに馴染めてない私にとって此奴は良い雇い主だ。今回も一言で引き受けた。

今回の仕事はタコ先生の私物に女性の下着を紛れ込ませる。クラスの出席簿に細工する。とのことだった。簡単だ。これだけの事で前回と同じく十万も貰えるとは。


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66 「16時間目 二学期の数日の時間」

 用意された女性用下着をあらゆる場所に紛れ込ます。そして次の日教室に着くとクラス中が新聞を持って話している。雰囲気が暗い。

その後タコ先生が来て無実を潔白しようとし私が仕掛けた女性用下着と細工したクラス出席簿を見つけ今日の授業は覇気がなかった。

本を読んでいても注意されないとはいい気分だ。

次の日、タコ先生の無実が証明された。暗殺は失敗したのだろう。報酬は貰っているので気にしない。

そして数日後には堀部が触手を抜かれた状態でクラスに復旧した。何やら直ぐにクラスに馴染んで行った。










何故かコードネームで一日中呼び合う事になった。クラス中が変な名前で呼ばれる中タコ先生だけはカッコイイ名前にしたため変な名前に変えられた。

ちなみに私は読書中毒者と呼ばれた。誰だよ?考えた奴。合ってるけど。










嫌いな学校行事がやってきた。体育祭だ。男子達は何やらAクラスと勝負をするらしいが関係ない。早く帰りたい一日だった。










こんな感じで過ぎ去った二学期。そしてやって来たタコ先生が増える期間。二学期の中間テスト。

タコ先生に付きまとわれて鬱陶しい期間になるはずだったのだがクラスの一部が街中でフリーランニングを使い事故を起こしてしまい『わかばパーク』に務める事になった。

結果テスト勉強をしてはいかない事になったのは幸いだ。子供の面倒を見るのは嫌だが勉強よりは良い。

そうして二週間が経ち一切勉強をせず中間テストの日が来た。

結果はほぼ一桁代。家に帰ると無茶苦茶怒られた。私のせいじゃないのに。



体操服がボロボロになってしまったことやこれ以上なってはいけないとの事で『地球最強の体操服』が支給された。あらゆる分野で世界最先端の技術を使っているそうだ。

ゲームに出てくる超高性能防具みたいで少し嬉しかったのはばれてはいけない。










 クラスでまたイリーナ先生と烏間先生くっつけ作戦とやらをやっている。また面倒ごとにならなきゃいいけど。

変な勘が直ぐに当たった。いつものように帰り道を歩いていると後ろから抑えられた。ハンカチに仕組まれた薬品を吸うと意識が朦朧として落ちていった。



目を覚ますと腕と足を後ろで縛られていた。

確か、私は家に帰る途中で…。拉致られた。私なんかが?どうして。私に価値なんか…あった。唯一の価値が。

気がつくと目の前に一人の男が立っていた。

いつの間にいたのだろうか。隠密行動スキルでも持っているのだろうか。

そんな事を考えていると男が話してきた。



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67 「17時間目 決意の時間」

何もかもタコ先生が来てからだった。

もういいよ。誰にも期待していない。興味ないとか言ったけど前言撤回にしてやる。

自分の平凡が崩れるなら殺してやる。だが今はまだ殺意を隠すべきだ。確実に殺せると安心できるスキル(武器)が手に入るまでは今までどうりにする。

死神にタコ先生への人質として捕らえられ私は密かに決意する。私の平凡(読書)を邪魔する奴らは全員殺してやると。



その後、私は救出された。死神は烏間先生にやられたそうだ。

結局は死神も失敗した。私の時間を奪ったのに失敗とは、やはりこの世界はダメだ。



今回の件で国に生徒を暗殺に巻き込んだ場合賞金は払わないものとすると請求し見事通ったらしいが賞金狙いの暗殺者は危害を加えて来なくなるがそれ以外は?
私みたいに単純にタコに殺意がある奴らはお構いなしに仕掛けてくるだろう。










そろそろ進路について考えないといけない時期になってきた。正直何も考えてなかった。高校は近くの簡単な所にいくだろう。親の決めた所に。
その後何をしたい?私はただ本が読みたいだけ。むしろそれ以外の事をしたくない。

進路相談は親が希望している高校の話をして終わった。










 またやって来た学校行事学園祭。

私のクラスでは山で拾った食材でラーメンをするらしい。

学校行事にガチにならなくてもいいじゃない。サボりたいがここで参加しないとタコが付きまとって来て殺意がばれるのは良くない。ここは我慢だ。

当日、私の役割はウエイトレス。本を読んでいたら勝手にこうなった。
無心で注文を受けひたすら出来上がった料理を運ぶ。

二日目、客が可笑しいくらい増えた。わざわざこんな物を食べる為に山に登って来る。ネットに評価が書かれて見た人が雪だるま式に増えたらしい。

直ぐにネットやテレビに影響を受けてやって来るなんてバカじゃないの。お前らは暇人か。昨日の様子をみたら今日もラクかと踏んでいるとこの忙しさ。やっぱりサボろうかな?

途中で麺の在庫が無くなったので閉めた。森の生態系を崩さない為とかタコは言ったが理由はともかく終わった。もう立つ気力もないや。本読も。









学園祭が終わると直ぐに二学期の期末テストが始まったが

私はこれまでの騒動の反動が来たかのように倒れテストを受けなかった。
それにより奪われた。

体調が戻り学校に行っている間にそれは起きた。
学校から帰るとそこにあったはずの—がなくなっていた。家中探してもない。
ない、ないない、ないないない、ないないないない………………………


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68 「18時間目 ないの時間」


ないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないない
ナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイなイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイ
…………………………………………………………………………………………………………



本がどこにも……………………ない。
捨てられた?なぜ?テストを休んだから?あれは不可抗力だった。私が初めから勉強を疎かにしていたから?こんな超進学校に入れたのは両親だ。私が悪い訳ではない。



これからどうすればどうすればどうすればどうすればどうすればどうすればどうすればどうすればどうすればどうすればどうすればどうすればどうすればどうすればどうすればどうすればどうすればどうすればどうすればどうすればどうすればどうすればどうすればどうスれバドウスれバドウスレバドウスレバドウスレバドウスレバドウスレバドウスレバドウスレバドウスレバドウスレバドウスレバドウスレバドウスレバドウスレバドウスレバドウスレバドウスレバドウスレバドウスレバドウスレバドウスレバドウスレバドウスレバドウスレバドウスレバドウスレバドウスレバドウスレバドウスレバドウスレバドウスレバドウスレバ………………………………………………………………………………………………




…………………………………もういいや。





家から出て走る。
ただ走る。がむしゃら走る。今までの人生で一番走った。足が痛くなっても。肺の空気がなくなり酸素を求める様に呼吸がつらくなっても。走ることをやめなかった。






誰かにぶつかった。そいつは

「おや?若麻績君ではないか。……うん。君に力を与えよう。」

シロと名乗る奴だった。


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69 「19時間目 冷静な触手の時間」

シロと会ってから私は家に帰らず防衛省が用意した部屋で過ごした。学校には行ってない。烏間先生にも知らせてないから見つかることはまずない。

ここは快適だ。何も言われないし本も自由に読める。だがこの生活も後からくるものに対してはほんの少しにもならない。故に必ず成功させてもらう。私の生活の為に!










二学期の始めに私が立てた予想は合っていた。これまでの物事から考える。始めよう最高の暗殺を。



目の前に茅野さんによって心臓が傷ついたタコに奇襲をかける。

暗殺のタイミングは他の暗殺失敗直後が良い。これは失敗した暗殺が大きければ大きいほど奇襲が成功する。夏休みの暗殺から得た知識からだ。

タコは驚く。いや、タコだけでなくこの場にいた全員の不意を着いた。

だって一番暗殺に乗り気でなかった私が触手で攻撃しているからだ。茅野は初めからタコに殺意を持っていた。私が殺意を持ったのはつい最近、死神に捕まってからだ。

タコ達が触手は危険だと説得して来る。

知るか!タコを殺せば触手は抜いて貰える。茅野と違って埋めてから一ヶ月も経ってない。ここでタコを殺して百億手に入れて一生本を読んで暮らす。もし失敗したら触手に蝕まれて死ぬだけだ。どうせ家に居ても本をもう読めない。なら大金を手に入れるか死ぬかのどっちかだ。

段々とタコを追い詰めていく。

茅野は感情に溺れ理性を失ったが私は違う。殺したいと思う気持ちと同時に冷静でいる。冷静さを失うと触手の動きが鈍るからだ。

触手を集めてエネルギーを凝縮し放つ。

触手の熟練度はタコには劣るが茅野には負けない。想像する事によって私は触手を動かしている。一学期の球技大会の時の様に想像するだけで触手が動く。

タコは防御に費やして攻めあぐねている。

それはそうだろう。タコは生徒を傷つけない。茅野の様に心臓を油断させても私は一発で躊躇せず何発の撃つ。仮に私の動きを止めても殺意は忘れない。食べ物の恨みは忘れない。みたいに本の恨みは忘れない。

さぁ、速く私に殺されろよ。何なら完全防御体にでもなってみるか?もしなったとしても高速ロケットの準備はできている。まぁ、心優しいタコはそんな動けなくなることしないよね。私を助けれなくなるもんね。人質は私自身だ。

でもなぜ倒れない?完璧なはずだ。

そうか。力だ。力が足りないのだ。堀部や茅野と明確に違う点。触手の色だ。そうだ怒ればいいんだ。怒りで黒くしちゃえば良いんだ。










死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね……………………………………………………………………



活動報告にて少しアンケートをしています。


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70 「20時間目 暗殺終了の時間」

触手が真っ黒に染まっていく。

それがどうした。むしろもっと速く、強く動かせる。
死ねよ、死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね

私の触手をタコに叩き付けるとそれだけで気持ち良い。頭に響くこの快感。ずっと感じていたいと思う程に離れられない。

故に打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、

あぁ、頭が痛い。でもイタイのが気持ちイイ。
もっと、もっとこの快楽が欲しい。

私はこの快楽を求め触手を動かし続ける。押しているはずなのにまだタコは倒れない。それどころか徐々に反撃をしてくる。

おかしい。

怒りで、痛みで、快楽でどうにかなってしまいそうなのに触手の動きはますます増していく。
タコの触手が私の身体に当たる。

何で?

もう何も考えられない。殺したい気持ちだけで触手は動きを更に激しくなる。

可笑しいな

私はもう何をやっているのかさえ分からなくなる。
私がいつも最後になると思うことそれは

もうどうでもいいや

次の瞬間、触手がちぎれた。
同時に私の意識も落ちた。


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71 「21時間目 そうしての時間」

 知らない天井だ。
私は意識を取り戻すと言うテンプレ発言を思い浮かべると起き上がろうとするが身体が動かない。動けない身体で考える。

死んでないの?なら何処かの病院だろうか?
どのくらい経ったのだろうか。私はこれからどうなるのだろう。
どうすればいいのだろうか。

視界の端でドアが開く。入って来たのは烏間先生だ。

烏間先生の話は謝罪から入った。
暗殺をすると勝手に判断したことからクラスに馴染めてないことももっと気にするべきだったとかから相談してくれ、どんなに苦しくても触手に頼るべきではなかったと段々と説教になり最後はやはり身体の心配をして出ていった。

次にタコ先生がやって来た。
内容は大体烏間先生と同じだった。

同じ内容を聞かされる私の身にもなって欲しい。

烏間先生と違ったのは最後に先生らしく進路の事についてだった。いつまでも親の拘束に囚われず自分のやりたいことやりなさい。あなたにはやりたいと強く思う事はやれる。それだけの力を持っているのですから。と言って出ていった。

私のやりたい事それは………本を読みたい。物語を見たい。
タコ先生は私が本気でやりたいと思った事はやれるって言った。
ならば物語を見るだけの仕事も見つかるはずだ。
見つけてやる。
その仕事を。



その瞬間、この世界から私は消えた。










知らない天井だ。
こんなに短時間で二回もこのセリフを味わうとは一体どういう事だろうか?
意識を失う予兆のなかったはずだ。
もしかしてこれはあの世界で生きていると言う夢を見ていたというオチだろうか?
だが夢を見ている前の記憶が全くない。
もしかしてだけど最近Web小説やラノベで有名な異世界転生と言うやつだろうか?

今度は動く体でベッドから起き上がる。

なにこれ体を動かす時に生じる筋肉の疲れが全くない。
まるでイメージをするだけで動く。

本来、脳でどう動かすか判断してから神経を伝って筋肉が出来る事だけの範囲で動くのに対してここでは出来ないはずの事もできる。
実際、見えない空間に足を掛ける様にイメージし足を動かすと空中に立てた。

前の世界では絶対に出来ない事をしながら遊んでいると目の前に光の粒子が集まる様に形をとった。

それはやっぱりと言うべきか女神のイメージになった。

そう。これだよ、これ。

「おめでとうございます。貴女は世界の心理に辿り着き創造神様の許可が得られました。では早速ですが、貴女の管理する世界の内容を渡します。これからその世界を監視して下さいね。」




今回で最終回です。


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自由に生きる人生 165 「22時間目 ふっかつの時間」

お久しぶりです。
続きが思いついたので投稿を再開します。


長い・・・永い夢を見ていた。



久しぶりに行われた『目を開ける』と言う行動に、私はこの世界に戻って来たんだ。と少し残念に思う。

目を開けるとまず見えたのは、知らな・・・見覚えのある天井だった。

膨大な記憶の中からこの光景を探ると、それは最も奥底にある記憶と同じ天井だと判断できた。

この世界での最後の記憶、私が暗殺を仕掛けた後に運ばれた病院だ。





ここまで確認した後、目を開けた時から気になっていたモノに意識を向ける。

巨大な黄色いタコだ。

正確に言えば、私の担任で月を破壊した超生物であり、私の人生を狂わせた張本人。

いや、人生を狂わせたと言うのは昔のこと、今ではこのタコに感謝すらしている。





そのタコは私を見て驚いた表情で固まっていた。


タコがここまで驚いている表情を見るのは初めてだ、今なら殺れるか?

面倒だからやめておこう。ホントに出来るかどうかも試していないから。


一瞬訪れた殺意を消し、あることに気が付いた。


タコは私の殺気に気がついていない?

それとも、気がついてなお、表情を変えなかった?


タコは一切表情を変えない。

ここは「分からない事がありましたら、何でも聞いてください」と言うタコ本人の言葉を実践してみることにした。


「何をジッと見ているんですか?」


私が声を掛けたせいか、タコは大層飛び跳ねて私に何本もの触手を伸ばして来た。

一瞬、とうとう生徒()にまで手を出したか!?この変体教師は、と思ったがどうやら違うようだ。

頭、首、腕と所々に触手の先を当てるだけ。

「機械と同じく脈は正常、その他も特に異常は見当たりません。若麻績さん、何か違和感を感じませんか?」

どうやら、タコは私の脈などを測っていたらしい。

器用な触手だ。

「先生がこうした行動に出ていることを不思議に思う以外、違和感は特に感じられませんが?」

「そうですか。ですが、本当に良かった」

私が違和感がないことを教えるとタコはほっと溜息つき、安心をしたふうに言った。

本当にわけがない。

いや、まさかと思うが・・・

「どうして、そこまでするのですか?私は寝て起きただけですよ?」

「若麻績さん、どうか驚かないで聞いて下さい。あなたは先程まで・・・生命活動が停止していました。」

生命活動の停止。

つまり、私は役目を果たしている間、この世界では死んでいたらしい。

問題はどの位死んでいたか、だ。

何日も、とかだったら何でもかんでも科学的理論を求めるこの世界では異端扱い、ファンタジー世界でも、死んだ人間が生き返るのは奇跡。

「先生がこの触手で調べたところ、完全に生命活動の停止から一時間弱、機械や人間による診断なら前例がいくらでもありますが・・・先生の触手が間違えるなんて!?」

どうにか誤魔化せそうだ。



タコによると、私の生命活動が復活してから話しかけるまでおよそ、二秒だったという。

星一つの寿命に近い時間、あの世界を管理していた私の思考は管理者になる前と比べて、恐ろしいほど早く回転するようになっていたらしい。

「・・・先生」

「にゅ?何ですか、若麻績さん?恐らく触手による未知の副作用かと私は思いますが、安静にしてください」

「先生、私はここから先、自由に生きたいと思います。応援してくれますか?」

自由に生きる。

管理者になる前だと自由に生きるなんて絶対に無理だと思っていた。

自由なんてもの私には与えられるはずがないと分かっていた。


「勿論、先生は応援していますよ」

タコはそれだけ言うと病室から出ていった。

今なら、私はこの世界を一人で生きていける。

さあ、ふっかつの呪文を唱えよう。


「マネジメントID:90682、システムログイン」



ここからカオス展開に!!


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168 「23時間目 確認の時間」

カオスも混沌の始まり始まり~


静かな病室に私の声が響いた。

ポワァと機械音を立てて、目の前に現れた半透明なパネル。

例えるなら、SOAのゲーム内に出てくるようなもの。

上からの順番に『ステータス』『マップ』『チートコード』『設定』とある。

試しに、『ステータス』の部分を軽くタッチすると、機械音がなり『ステータス』から別のパネルが伸び出た。


『 ステータス

   ・ID:90682

   ・名前:若麻績 風月

   ・種族:人間

   ・性別:女性

   ・年齢:15歳 (魂齢:4789615465歳) 

  装備

   ・病服
                            』

とこの世界でも分かる(一つは別として)ことから


『 ・ 力  :F

  ・ 俊敏 :E

  ・総合耐性:F

  ・ 回復 :E

  ・ 運  :D

  その他表示 』
      

と明らかにこの世界では分かりっこないものまで表示される。

その他表示をタッチしてみると


『表示したいステータスを声に出す、もしくは打って下さい』


と出た。

試しに、『これまで読んだ本の数』と打って見た。


『 ・総読破数:24976冊 』


基本的に何でも数値化してくれるらしい。

次に『チートコード』ではなくて『設定』を開いて見る。

そこには『パネルの表示設定』『音の設定』から始まり、こんなに必要あるかと思うほど大量の設定一覧が表示された。

取り敢えず、一番上から調べていく。


『 パネル設定

   ・パネルの表示:オン

    オフの場合は脳内に現れます。

   ・声による操作:オン

    パネルを表示していなくても声によって操作出来ます

              ・
              ・
              ・
                             
                              』





全ての設定を一通り確認し終わった後、最も重要な『チートコード』を開く。


そこには『無敵』『テレポート』といったチートコードによくある物から始まり、『力アップ』『俊敏性アップ』といったステータスアップ系、更にはお金や家、伝説の物から空想上の武具、といった何でもありな『アイテムコード』や『天候操作』『時間停止』『洗脳』『永続スキル』・・・extra


最後に『これらは一例です。お望みのチートは『創造神様の意志』に反しない限り、お叶えいたします』の文字。


『創造神様の意志』とは私を別世界の管理者に選んだ存在であり、無数に存在する『世界』を創ったお方、『創造神様』の意志。

創造神様が決めたルール。

『創造神様の意志』に則り、理者はそれから世界がズレないようにと管理している者達の事をいう。


私は管理者の役目を完了したとご褒美にこの『管理者権限』を貰った。

これも創造神様の意志なのだろうか?


まぁいい、と考えるのを辞め、パネルの表示をオフに切替え、音声・脳内操作をオンにした。

これでこの世界の人にチートが気づかれる可能性は無くなった。


さあ、自由な生活を始めようとしますか。



本当にソードアートオンラインを参考にしました。

分かりにくくて申し訳ない

『創造神様の意志』
  例えば、『超新星爆発』や『人類滅亡』『一部の国(日本、アメリカ、といった世界主要国)の崩壊』『殺せんせー死』など言った無茶苦茶なチートの禁止事項とでも思ってくれればおーけーです。

創造神様って誰?
 言えません。



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169 「24時間目 最後の帰宅の時間」

まず、私がチートコードを使って行った事は、能力の上昇だ。

これにより、最低ランクだった私のステータスは、上げれる限界値まで上げた。


『ステータス

 ・ 力  :SSS

 ・ 俊敏 :SSS

 ・総合耐性:SSS

 ・ 回復 :SSS

 ・ 運  :SSS 』


幸い、というべきか、まだ冬休み期間に入ったばかりなので、あの教室に一週間以上は行かなくていい。

逆を言えば、二週間以内には学校に通わなければならない、ということだ。

学校を辞めるというチートはどんな方法で回り道しても駄目だった。

『神の意志』に逆らうそうだ。


後、総合耐性や回復を限界値まで上げたのは理由がある。

チートコード『無敵』これを使って置けば大丈夫という訳にはいかなかった。

『無敵』には三分の制限時間があった。

三分毎にかけ直すのもあほらしいので、必要な場面以外は使わない。


回復をSSSまで上げたおかげか、だるかった体は直ぐに良くなり、最高のコンディションに変わる。

人に見られなくて済むように『不可視』を使った後、『テレポート』を使い、自宅前に飛んだ。

瞬きを一回する間に景色が病室から自宅玄関に変わる。

これが『テレポート』か・・・タイムラグが殆どしない、戦闘にも使えそう。


久しぶりに玄関ドアを開けて家に帰ると、両親に怒られた。

今までどこに行っていた!から始まり、私の成績の事まで言われる筋合い。

過去何度か怒られたが、これほどまでに怒られたのは初めてだ。


私が居たくもない自宅に戻ったのは本などの荷物を取りに来た為だ。

チートコードでいくらでも出せると思うが、買った本には愛着があるし、チートコードでお金は出しても、本は書店で買いたい。

これは私の小さなポリシーだ。

チートコードがあっても『本は書店で買う』これは譲らない。


親には防衛省からもらった「機密情報によるなんたらかんたら~~」を見せたら、仕方なく怒りを治めた。

解放された最後に「一人暮らしをする」と言って、お金を数百万渡すと直ぐに承諾してくれた。

初めは驚いていたが、防衛省からもらった紙の件で勝手な想像をし、私に甘えて来た。

私の親ながら気持ち悪い奴らだ。

縁も切りたかったが二人は猛反対、更にはチートコードではどうしょうも出来なかったので月に百万円を振り込むことで事実上の縁を切った。


私は荷物を『アイテムボックス』に詰め込んで、家から出た時に気が付いた。

自室に『テレポート』すれば、後は紙に伝言を書いておいておけば、親には会わずにすんだはずなのに。




所々、何でこうしないの?って思うところがあるかもしれませんが、作者が思いつかなかった、彼女が思いつかなかった、物語上の都合、と思ってください。


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170 「25時間目 冬休みの使い方の時間」

今年もあとわずか、悔いのないように!


先ずは住む場所を決めよう。

椚ヶ丘付近は勿論、論外。

・・・誰も知らない山奥なんてどうだろうか?

世間に隔離されている所だと、税とかも払わなくて済む。


というか、今の日本は生きるには何でもお金が必要だ。

まず、土地税に保険やなんらかんら、学校に通う義務、食費に娯楽費、最後のは絶対には必要ないものだけど娯楽が無ければ人間なんで生きてんの?と思う。

一昔前だと、土地税は人のいない場所に住んでいたら払わなくてもいいし、戸籍もキチンとしていなかった。

食費は自足自給で生きていける。

つまり、今の日本、世界は可笑しい。

生きていくにはお金が必要、そのために一週間の内六日間、大体の人は働いている。

そう、生きていく為に何の疑問もなく、ただ周りがやっているから周りに合わせて生きている。

私は思う。

生きていく為、なら生きる理由とは何なのだろうか?

子どもの頃は何の疑問も持たずに生きてきた。

育つに連れて、私はそう考え始めた。

大体の人はそんな疑問も持たずに周りに合わせて育っていく。

そんな中、私のようにその疑問を見つけ出す人も一定数以上いる。

それでも、最終的には生きていく為だと仕事に就く。

やはりそれは生きたいからだ。

私は生きたいとは思わない。

本を読む、それだけだ。

それ以外は基本的には何もしたくない。

それができないなら、生きる理由がない。

何が言いたいかと言えばつまり、皆死ぬのが怖いのだ。

私は怖くなんかなかった。

むしろ、こんな生きにくい世界とおさらばできると感謝していた。

だから私は選ばれた。


と適当な事を一人、論ずいているうちに山奥にテレポートした。

人里から遠く離れた山奥、ここなら静かに読書ができそうな場所だ。


一軒分の広さにある草木をチートコードで消す。

そこに『イメージ建築』を使って防音電気冷暖房インターネット環境完備の書庫を建てる。


戸籍消去はできないのに違法建築はできるのはなぜだろうか?


建物に『不可視』をかけて完成。

これで誰にも邪魔されずに読書ができる。


次に向かったのは勿論、書店。

今まで買えなかった本を一気に買う。

二百冊位だろうか?

そのくらい選んだ後、これ以上は流石にどう持って帰るのか気にされる。

宅配サービスを進められたが、異次元倉庫があるので拒否した。

箱に詰めて何回かに分けて持って帰るふりをして買い物は終わった。

お金がいくらあってもポイントが貯まるのは嬉しい。


さて、帰って読書でも・・・。

タコがスーツ姿になって居酒屋に入って行く姿が見えた。




風月が長々と世界がどうとか言ってるシーン、なぜ書いたのだろう?
特に意味はない。


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172 「26時間目 エンディングクエストの時間」

2017年最後の更新です。


何故タコが居酒屋に?

早く帰って読書をしたいが・・・ここでタコの日常生活を監視するのも、暗殺の役に立つだろう。


私はチートコードによって自由に生きることができると思っていたが、少し考えれば見当違いなことに気が付いた。

チートコードで幾ら死なない身体を手に入れたとしても、時間は有限だと言うことに。

タコが言うには三月に地球もろとも爆発するらしい。

私ならそれくらい、チートコードを使って逃げ切れる可能性が十分にあるが、本が無い世界では生きていく意味がない。

『異次元倉庫』に幾ら本を詰め込もうとも『作者』がいなければ、本は増えない。

それともう一つ、『ステータス』欄で検索で探さないと出てこなかった記述。


『 ・エンディングクエスト
    殺せんせーの暗殺成功 』




『エンディングクエスト』

例えば、物語が一つある。

その物語の完結結果の事を管理者ではエンディングクエストと呼ぶ。

重要なのはここからだ。

例えエンディングクエストが終わっても、その『物語上の世界』は続く。

ゲームなどで例えると、魔王を倒すまでがゲームだ。

プレイヤーはそこまでしかその世界が続かないが、ゲームの中の人達にとっては魔王を倒した後も生活は続いて行く。

そんな感じだ。

つまり、この世界も『誰か』がプレイヤーもしくは読者、私はその中のキャラの一人。

『誰か』がこの世界を見ることを辞めた後も、私の人生(人生と言っていいか分からないが)は続いて行く。




私がエンディングクエストの存在を知れたのは大きい。

エンディングクエストを成功すると、私にとって良いことしか起こらない。

管理者権限を得ている今、これ以上の良いこととは『静かに読書だけをして生きていく』

それを得る為にエンディングクエストは絶対にクリアしておきたい。

以上の理由もあるが・・・強さを得た者はそれを試したくなるものだ。

私は知らないうちに、チートコードを使っての殺し合いに、少しだけ興味が湧いていた。



閑話休題

タコの日常生活を探るために、居酒屋に入ることにした私は、不可視状態になった。

居酒屋にテレポートで侵入した私はそこで、四人の男に絡んでいるタコの姿を見た。


一般人に絡んでいいのか・・・。

いや、絡まれている男たちもナイフで応戦している。

あれは対先生用ナイフ。

チートコード『観察眼』を発動。


『 ・観察眼

    魔眼チートの一つで、見た者のステータスを知ることが出来る。

    相手のレベルに応じてステータスの量は変わる。       』


四人の男達の正体はやっぱり『暗殺者』だった。



オリジナル設定がドンドン広がっていく。

もっと解りやすく説明出来ればいいのにね。

それでは皆さん!よいお年をお迎えください。


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173 「27時間目 軽い偵察の時間」

明けましておめでとうございます。

今年も自分の作品をよろしくお願いいたします。


今、目の前で繰り広げられている所業をどう表現すればいいのだろうか?

店主である若女将とその娘を巻き込んで、突然行われた、タコと暗殺者の同コンごっこ遊び。


帰って読書していた方が有意義だったかも。


そのうちに暗殺者達は急に落胆し、お金を払って出ていった。

店主と看板娘も見送りに出ていく。


タコはお酒の前だと結構、だらけきって・・・方向性が違うだけで、いつもと一緒。

特に収穫はなし、帰るか。

その前に!


酔っている今なら、と淡い期待でタコにナイフを投げつける。

パッシブスキル『刃投』

このスキルは刃物を投げ付ける時に効果を発揮する。

主に命中精度と威力、速度をアップさせる。

最大まで上げたスキル補正の効果で私が投げたナイフの速度は、弾丸にも匹敵する。が


「ニュルフフフ。甘いですねぇ?誰だか分かりませんが、姿を見せることをオススメします」


飽くまで弾丸に匹敵する程度、タコの触手速度には届かない。

仕方なく姿を現すことにした。


「流石ですね、先生」

「若麻績さんでしたか。あなたの答えはこれですか?」

「どういう事ですか?」

「クラスの皆さんには集まって話したのですが、あなたは気を失っていましたので目を覚ました時に話したはずですが・・・?」


あぁ、私が管理者になる直前のことか。

何億年も昔のことだから忘れていた。


「先生が初代死神だったことですか?」

「そうです。あなた以外の生徒たちは悩んでいるはずです」


悩む?

一体何に対して?

悩むようなことはないはずだけれど・・・もしかして。


「私は悩むことなんてしてませよ。むしろ、その回さえ思いつきませんでした。先生を殺す、これだけで充分でないですか」


あいつらは9か月もタコと過ごしてある感情が芽生えたのだ。

そのせいで、「助けたい」と言う気持ちになる。

私はあいつらとは考え方が根本的に違う。

あいつらの力はタコに教わって育てた物、私のは自分の強い思いから貰ったもの。

私の力はタコから貰ったものではない。

あいつらと違って、助けたい気持ちが芽生えなかったもの、今までの積み重ねの結果。

もし、あいつらがタコを助けると言うのなら、私は・・・邪魔者は全力で排除する。


「冬休み期間は私だけになりそうですが、お相手をよろしくお願いいたします。殺さない程度に仕掛けますよ」

「・・・にゅ!!若麻m」

「それでは先生。また後日」


今度こそ、『テレポート』を使って山奥の自宅に帰った。

先ほどの時間を取り戻すように、本の世界にのめりこんだ。

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174 「28時間目 爆発の時間」

次の日の夜、私は再び居酒屋に足を運んだ。

暗殺の為だ。


狙うと宣言した翌日から行動に移すのは、タコにとって警戒心が緩んでいない為、暗殺者にとっては不利になる。

暗殺者なら、だ。


私は暗殺者ではない。

エンディングクエストをこなす、ただのチートプレイヤー。

チーターだ、チーター。


チーターというものは基本的に勝ちが決定している。

都市伝説になるくらい強い兄妹くらいでないと、負けるわけがない。

タコも一般人から見ると、チーターに近い。

だが、管理者権限を持っている私には、到底敵わない。

世間から見ると怪物に見えるタコを完膚なきまでに叩きのめす。

世界を救った英雄とか名誉なんかはどうでもいいけど、この世界で唯一のチーターを叩きのめすのは楽しそうだ。

何が言いたいというと、警戒心MAXのタコでないと、戦闘を楽しめない。


私の純粋な願望からくる行動だった。


昨日よりも遅い時間帯、月が昇り切った夜道を一人、居酒屋に向かって歩く。

直接居酒屋にテレポートをしなかったのは、チートまでとはいかないが私がなんらかかの力を手に入れたとなんら推測されている為だ。

いずれは見つかっても構わないけど、今はまだ早い。

そういうわけで居酒屋から徒歩十分ほど離れた場所にテレポートをしてから歩いて向かっている。


移動時間を使って暗殺計画を立てる。


今回はどうしよう。

自営業という点を付いて、お店を爆発させるってのどうだろうか?

当然あのタコは店主と看板娘を守る為に脱皮を使うだろう。

そうしたら、タコは多少躊躇するか、真っ黒に染め上がるかのどっちか。

一般人を巻き込むのは気が引ける。

とはならないが、タコの怒りを買うのも厄介なので、爆破の次に思いついた、人質作成も放棄する。


その時、私が歩いていた歩道に面している建物にが爆発した。

爆風が当たる前に『無敵』を発動させた。

何?間違えてチートを使ってしまった?

そんなあるわけもない事を考えながらも、ついさっきまで爆破を考えていた為、無関係を調べる理由で爆破地点に向かった。


私が確かに見た爆風、その時に出来た破片は、跡形も無かったかのようになっていた。

私が無関係を否定できなかったのはこれにある。


ビルの玄関にタコが居酒屋の店主と話しているのを見つけた。

やっぱり、タコ関係か。

爆発した瞬間にでも破片を回収して元通りにしたのだろう。

私は有無を言わずに『不可視』を発動させビルの玄関の中に『テレポート』を使って入った。


これは好都合、暗殺を開始しましょう。



『  』だったら風月を倒せると思いますか?

もちろん『無敵』はなし。


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175 「29時間目 冬休み期間終わりの時間」

あの爆発は居酒屋の店主が自爆で行った結果らしい。

余命が近い店主は責めて娘にお金を、とタコに接近したらしい。

その後、店主の話を聞いたタコは店主の目を治した。


私はその時に暗殺を仕掛けた。

手始めに後ろから奇襲。

ちっ、避けられた。

しかも、店主も安全な場所に避難させるおまけ付き。

余裕ってわけか・・・なら。

チートコードで空中に爆弾を出現させ、私が自爆する様に見せかけて起爆した。


勝った。

タコは私を爆風から庇う様に動き、爆発を無かったことにする。

その瞬間、ステータスMAXまで上げた速度と力によって、タコの心臓目掛けてナイフを振った。

当たる寸前でナイフを止めた。


「チェックです、先生」

「いいのですか?このまま止めを刺さなくても?」

「簡単に死んでもらっても困りますから」


私はまるで、弱いもので遊ぶ子供のような気持ちだった。

今度は聖剣とか出して戦うのも面白そう。

アニメや漫画のようなバトル、期待してるからね、タコ先生。


冬休み期間の暗殺はこれくらいでいいだろうとのことで、あと一週間本を読もう。



ラスト一日、私は気付いてしまった。

宿題に全く手を付けてない事に。

時間の無駄だけど、手を付けない訳にはいかない。

放課後補習とか、絶対に嫌に決まってる。

そんな訳でチートコード『ホムンクルス』をジェネレート。

完全服従メイドの出来上がり。

家での家事から宿題まで全てを任せて、私は安心して本を読む。


流石、ホムンクルス。

日付が変わるころには宿題は完璧にこなしていた。

8時に起こす様に命令すると、私はチートコードで出したフカフカのベッドで寝た。



朝8時きっかりに起こしてもらった私は制服に着替えて学校に行く。

クラスの奴らは雰囲気が暗い。

ビッチが精々後悔のない選択をしろ。とか言ってきたが、私には関係の無いことだし。

そもそも、その言葉は自分に言ってろ。


放課後、潮田が校舎裏の山に呼び出しをした。

逃げよう。そう思った時には既に遅し。

クラス委員長の・・・片岡と巨乳の持ち主・・・矢田が私の両腕をガッチリ拘束。

そのまま連れて行かれた。


逃げようと思えば、力で振りほどいたり、テレポートで帰宅できるのだが、辞めた。

潮田の呼び出し理由はある程度、予測がつく。

このクラスが私にとってはどうなるかを知るには、行かないとはならない。


「逃げないから、拘束をほどいて欲しいのだけど」

「だ~め!若麻績さんはめんどくさがりだから、こうもしないと来ないでしょ」

「そうよ。もっと私たちと仲良くしましょう」


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176 「30時間目 クラス内暗殺サバイバル開始の時間」

あぁ、二年後からその先、生きていける自身が無くなった。


イライラして来た。

主に拘束中に当たる矢田の胸に。


潮田の相談とは「殺せんせーを助けたい」というもの。

半数は同意するが、もう半数は否定する。

潮田と赤羽が殴り合いまで発展するとタコが解決案を出してきた。

赤と青の殺す派と殺さない派で別れて、インクを付けられた奴は死亡扱い。

全滅か降伏、旗を取られた方が負け、勝った方をクラスの総意見とするというもの。


要するに、力でねじ伏せろ、という訳だ。

別に、中立で参加しない意見もあるが、私個人の意見としてはタコを殺すのは決定事項だ。

穏便に赤チーム、殺す派を選ぶ。

いい機会だ。

このクラスにステータススキルだけでどれ位できるか、試させてもうおう。


赤羽をリーダーにして始まった、殺す派の作戦会議

私以外にドンドン指示を出す。


いない子扱いなのかな。

別にそれでも、好きにやるけど。


輪の中から外れて、使えるチートコード探していた私に、作戦を粗方伝え終わった赤羽が話かけてきた。


「若麻績さん」

「何?」

「どれくらい、動けそう?」

「どれくらい?」

「そう、若麻績さん。訓練の時さあ、本気出して無かったでしょ」

「根拠は何?」

「触手を使った暗殺の時さぁ、いきなり使いこなしていたじゃん。身体能力が高くないと出来ないことだよ」

「ハァ・・・。触手はないけど、それに準ずる動きは出来る事を保証するわ」

「オッケー。じゃあ、開始と同時に敵の旗目掛けて突っ込んで」

「捨て駒?酷い」

「陽動作戦だよ。敵が現れたり、攻撃してきたら逃げていいよ」

「分かったわ。作戦に加担してあげる」

「あ!最後に・・・」


なんだか、考えて行動するのが、面倒だったので赤羽の作戦を受けた。

私が無双しても面白くないから、という思いもある。


開始同時に私は敵陣目指して、歩いた。

銃もナイフも装備せずに、ただゆっくり歩く。

敵は何かの作戦かと疑問に思って攻撃してこない。

私に気が逸れている内に赤羽の作戦が敵に襲いかかった。


両チーム死亡者が出たところで、私が旗まで残り三分の一に迫った。

このままだと私の進行はただの陽動じゃなと思ったのか、それともこれ以上進行させてはいけないと思ったのか。

一発の銃弾が私に放たれた。

それを避ける。

今度は何発も放たれる。


無駄だ。

私の動体視力はタコの触手を完全に見切る。

銃弾の軌道を見切って避けることなど、造作もない。


弾を避けるふりをして、茂みに逃げる。


別に、逃げずに旗を取りに行けるけど、疲れた。

『疲労無効』のお陰で体に疲れはでないが、動いたと言う事実が精神的に疲労を起こす。



なんか、グダグダ。
ごめんなさい。


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177 「31時間目 この程度の時間」

動いたと言う事実が私を精神的な疲れを感じさせる。

茂みに潜り込んで、異次元倉庫から出した本を読む。


本は何時でも、精神的疲労を私からなくしてくれる。

これだから、読書は辞めれない。


今回はゲームの途中ともあり、『速読』を使って読み進める。

五分もしないうちに精神的疲労は回復し、むしろテンションは上昇していた。


思ったけど、この超体操着、見た目としてはかっこよくていいけど、動くことを考えるともうひと頑張りな評価だ。

チートコードにもっといい防具が無いか後で調べよう。


ここで『索敵スキル』を使ってみた。


『索敵スキル』

使うと任意の範囲内をマップ形式で写してくれるスキル『マップ表示』と掛け合わせて使うことで敵の正確な位置を知ることができる。


私にだけ見えるマップが表示されて、敵の位置を確認する。

一人だけ不自然な場所にとどまっているのを見つけた。


誰かしら。

私の索敵では個人名までしっかりと確認できた。


潮田、彼か。

恐らく彼はクラス内で一番、暗殺の才能がある人。

面白い。

ターゲットは彼に決定。


警戒心がないように見せかけて後ろに回り込む。

わざと音を立てる。

潮田と目が合った。

私は笑う。


絶対に気づかれないと思っていた場所をあっさりと見つけられ、こんなに近くまで接近された気持ちはどう?

お前らが必至扱いて磨いたスキルは私にとってごみくず同然。


そんな意味を込めて笑った。


潮田は私に殺意が無いのを感じ取ったのか、こちらに警戒したまま動かない。


一方、殺す派と殺さない派が最後の攻防に出ていた。

潮田は私に気を取られて、絶好の機会を見逃した。


あ~あ、私ばかりに気を取られて、本命のターゲットを見過ごすとは、やっぱり、中学生か。

この勝負、やる価値もない。


私はそう悟った。

そのまま、烏間先生にリタイヤ宣言をして、ゲームの結果だけを聞いて帰った。


次の日、タコを助ける為に国際宇宙ステーションをハイジャックする事が決まった。


何でそうなる!

たかがタコを助ける為に宇宙に行く?

ホントに馬鹿馬鹿しい。

宇宙なんて行こうと思えば何時でも行けるが、全く行きたいなんて思わない。


クラス内が楽しく準備している間、私の能力は全く手伝える事など皆無なので、夏にプールになっていた所に逃げ隠れて本を読む。

しかし、チートを使ってなかったのが不幸か、見つかって宇宙に関する意見を聞かれた。

応えるのも面倒なのだが、答えなければもっと面倒になりそうだったため、小説に書いてあったものと私の意見を混ぜて答えた。



ゲーム中に無双するかとおもいました?

残念ながらあっけなく終わりです。



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178  「32時間目 事故れ!の時間」

国際宇宙ステーションをハイジャックする決行の日。

私は自宅に籠った。


クラスの奴らは今頃、宇宙センターにいる頃だろう。

行っても意味がないし、何より今日は休日。

休みの日を返上で何故動かなければいけないの?

平日に代休をくれるなら行ってもよかったのだどね。


私はテレビを付けて、ロケット打ち上げのライブ放送を読書の片目で見ている。

テレビには今のところ、発射中止の報告は出ていない。


見つかって捕まったら面白いのに。

もしくは、発射失敗で乗った奴が死ぬとか。


タコがいるにもかかわらずそんな事故が起こるはずもないのに、私は計画失敗を期待する。

そんなこと思っている内に、ロケットは発射成功した。


確か帰還の時間は授業中だったはず。

勉強はしたくないが、クラスで何かやるって言う事も大嫌い。

大人しく読書でしていれば巻き込まれないはず。

わけのわからない事に巻き込まないでよ。


ロケットの発射を確認しただけでテレビは用済み。

ホムンクルスに片付けてもらう。


「テレビは片付けて。それから、本屋に行くわ。留守番をお願い」

「はい、マスター」


ホムンクルスに後片付けを頼むと、私は財布とカバンを異次元倉庫から取り出した。

財布の中身を確認する。


残金、四万円。

不安だからもう一万円はあった方がいいかしら?


チートを使ってお金を出したあと、マフラーとコートも取り出した。


『・優れたマフラー

   防御力30

   対氷属性50

   防御力と対氷属性付いたマフラー。

   真夏でも使える優れもの。


 ・ヒーリングコート

   防御力70

   名の通り、一秒間に3000の体力を回復する、薄緑色をしたコート。

   攻略に慎重な人にどうぞ。                        』


ステータスをあげているから外の寒さは効かないのだけれども、周りの人の目線と自分の気分を考えて出した装備。

ヒーリングコートは着ているだけで体力を回復する効果を発揮する。

つまり、どれだけ動いても攻撃を喰らわない限り、肉体的疲労がなくなる優れもの。


もう、ずっと着ていたい気分になるコートを羽織って出かける準備を終えた時だった。


「マスター、私もついて行ってもよろしいでしょうか?」

片付けを終わらしたホムンクルスが、私に訊ねた。

ホムンクルスの表情は勇気を出した顔だった。


忘れていた。


ホムンクルスはその名の通り、ホムンクルス。

生まれながらにしてあらゆる知識を持っていると言われているが、唯一持っていないものがある。

それは心。

私は、私に絶対服従を条件に自我をホムンクルスに与えた。

その結果が今のホムンクルスだ。



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179 「33時間目 初めてのお出掛けの時間」

「ついて行きたい?」

「はい。私も書店と言うところに行ってみたいです。ダメですか?」


か、可愛い!

「うちのホムンクルスが可愛すぎる件について」とでも題名を付けようと思う。


そんなバカみたいな事を考えていると、ホムンクルスはシュンとなっていく。


創ってから一ヶ月弱、まさかテレビや本だけでここまで成長するなんて!!

外の世界に連れていって色んな事を体験させた方が、今後の為にもいいかもしれない。

書店の場所を覚えてもらい、どうしてもいけない時にお使いさせるのもいい。

新しい本を教えてくれるかもしれない。

そうと決まれば、早速連れて行こう。


「そうね。私の命令がない限り、あなたには自由にして欲しいもの」

「っ!連れていってくれるのですか!!?」

「そういってるでしょ」


私が許可を出すとホムンクルスは花の様に笑った。


今更ながら、ホムンクルスの容姿を説明しよう。

顔立ちはアイドル業界で売れる位。

私に似ようとしたのか、白銀の髪を伸ばしている。

胸はほどよい大きさ。

服装は勿論、エプロンドレス。


さて、まずはチートコードで服を出す。


「その格好は目立ちすぎると思うから着替える?」


私はホムンクルスに疑問形で聞いた。

命令形で言うと絶対服従になるが、疑問形だと自分で考えさせれる。

私は基本的には自由にさせたい。

私の様には育って欲しくない。


「私はこのままの方がいいです」

「寒いわよ?」

「大丈夫です」


ホムンクルスにはステータスチートは使っていない。

しかしホムンクルス故か、基本スペックが異常に高い。


多分だけど、タコといい勝負ができるくらいは強い。

一体何を材料にして創られたのだろうか?

非常に興味深い。


本人の希望により、着替えをせずにエプロンドレスの姿ののまま、書店近くにテレポートした。

通り過ぎる人が全員、私とホムンクルスに注目してくる。


エプロンドレスがそんなにも珍しいか!?

アキバでも行ってろ!

そこら中にメイドさんがいるぞ。

知らないけど。


書店に入ると店員が台車を持って来てくれた。

常連客どころではなく、VIP待遇だ。

台車をホムンクルスに任せて、ラノベコーナーに向かう。

新刊のチェックを始める。

ホムンクルスは私の後ろにじっと立つ。


「私が持っている本は覚えている?」

「もちろんです」

「だったら、新刊が出ていないか探して。同じ作者が書いていれば持ってないシリーズでも構わないわ。それと、気になる物があったら勝手に選んでもいいわ」

「分かりました」


二人いると作業が捗る。

結局、私はいつもの半分の時間で倍の量、本を買った。




ホムンクルスの名前を募集中。

返信は活動報告覧にて。

期間は早ければ明日、遅ければ二、三日ほど。

よろしくお願いします。



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180 「34時間目 ますた~の時間」


ホムンクルスと一緒に書店に言って以来、ホムンクルスは何かと私に話しける様になった。


「マスター!私も本を読んでもよろしいでしょうか?」

「マスター、この本のこの部分はどういった意味なのでしょうか?」

「マスター!!今日は本に書いてあった料理を再現してみました。」

「ま、ますた~。怖い本を読んでしまったので、一緒に寝てもよろしいでしょうか?」


うちのホムンクルス、可愛すぎる!!


私もついつい読書を止めて、話を聞いてあげる。





それと話が変わるが、宇宙ステーションをハイジャックした二人が何事もなく帰って来た。

どこか事故ればタコを精神的に攻撃できたのに。


その日の授業を総合に変えて実験結果の分析をした。

簡単に言えば、あのタコが爆発死をする可能性は一パーセント以下、というのを読書の片耳で聞いた。

地球の消滅は無くなったが、クラスの奴らは卒業まで暗殺を続けるらしい。


私は積極的には協力しないけど。


私の邪魔者では無くなったと言うことが分かった結果だった。

私の場合、卒業してもタコを狙い続けるだろう。

それがエンディングクエストだから、チーターとして全力で戦える相手だから。





クラスの奴らが暗殺を続けると決断した日、学校から帰ると出迎えてカバンを受け取ってくれたホムンクルスが私に言った。


「マスター。お願いがあるんですが・・・」


制服から着替えて、楽な格好になった後、私の部屋にホムンクルスは本を持ってやって来た。


「それで、お願いはなにかしら?」

「あの!学校というものに行って見たです」

「学校に?」

「そうです」


ホムンクルスが持ってきた本は学園ラブコメジャンル。

恐らく、その本を読んで興味が湧いたらしい。

ホムンクルスの存在意義はこの家の家事と私の身の回りの世話だけ。

学校に通わせるくらい、問題ない。

そう判断した私は答えた。


「分かったわ。じゃあ来年度の四月に向けて・・・」

「マスター。そういう意味ではなくて、私はマスターと一緒に行きたいのです」

「一緒に?椚ヶ丘中学校のE組に行きたいってこと?」

「はい!マスターの担任を見てみたいのと学校でもマスターのお世話を出来ると思ったからです」


ええ子や。

何処までも私の事を考えてくれるホムンクルス。

子の子だけがめんどくさい世間からの攻撃を癒してくれる存在。

その子がこんなにもお願いしてくる。

これは何としても叶えなければ!!

そうと決まれば、戸籍を創ろう!!


そう思ったところで私は気付いた。


名前はどうしよう?




風月が段々親バカになっていく。

そんな三学期前半。


ホムンクルスの名前は明日の昼過ぎまで受付中。

活動報告覧にて返信お待ちしております。


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181 「35時間目 編入段取りの時間」

ホムンクルスの名前が決定。


学校に通いたいと言ったホムンクルスの願いを叶えるべく、まずは戸籍を創ろうとしたのだったが。

名前をまだ決めていなかった。

特に名前を付ける理由が無かったから、決め手なかった。

何か用があるときは


「~~をやっておいて」


基本これだけの命令形だったからだ。


とにかく、今は名前を考えないといけない。

後回しにしても、いい案は思い浮かばなさそうだし、考えるのを忘れる。


と言う訳でホムンクルスに向き合う。

ホムンクルスはチートコードで出した、エプロンドレスを着ている。


エプロンドレス、エプロンドレス・・・エプロンドレスと言ったら、『不思議の国のアリス』の主人公アリスが着ているのが全世界共通で有名だ。

日本語版で読んだことがあるが、それなりに楽しめた。

チートコードに『完訳』というものがある。


『・『完訳』

    どんな世界、国、時代、であろうと文字である限り、完全に使用者の分かる文字     に訳される。

    これで解読不可能な文献も解読可能、歴史的発見もできるね!』


これで原書を読むのもいいかもしれない。

発売された当時の物をジェネレートできたはず。


ここまで考えた所で本題から脱線していることに気づく。

そこで私は思った。


もう『アリス』でいんじゃないか。

髪の毛が白銀なのを苗字にして『アリス・ホワイトシルバー』

うん、決まり。


それをアリスに伝えると


「アリス・ホワイトシルバー。・・・アリス、私の名前はアリス。っあ、ありがとうございます。マスター!!」


安易なネーミングセンスだったが、喜んでくれたので良しとしよう。


『戸籍作成』を使って外国の戸籍を作成。

続いて、『書類偽造』で外国生まれのアリスを日本に移住させる書類を作り、役所に提出した。


『チートコード

 ・『戸籍作成』

   主にホムンクルスなどの戸籍を作る時に用意る。

   中華人民共和国にはこの能力が必要な人が沢山います。


 ・『書類偽造』

   大切な書類を役所からパクって変えれる。

   お金の偽造はやめましょう。             』


これでアリスは正式に在住外国人になった。

保護者はあの親どもにして、税金なんかは私の金庫から引かれる。


さて、次にやる事と言ったら、椚ヶ丘中学校の編入試験だろうか。


「アリス。編入試験を受けに行くわよ。問題はないわね」

「もちろんです、マスター」


アリスを連れて、通学の時に利用している場所にテレポートする。

そのまま、本校舎の事務室に向かう。

場所は全然覚えていなかった為、『ナビゲーション』に任せた。

来年度の入学ではなく、今からの編入と念を押して書類を提出して家に帰り、いつも通りの読書を始めた。



名前はアリスに決定。

げね様、協力ありがとうございました。


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182 「36時間目 編入試験の時間」

次の日、アリスと一緒に学校に登校した。


「じゃあ、私はこっちだから」

「はい。確か、帰りは迎えに来ていただけるのですね?」

「そうよ。ちょっと寄る場所があるから、・・・ここで待っていなさい」

「分かりました。では、また後でお会いしましょう」


編入試験を受けるアリスと分かれた。

私はある面倒な山道を登って教室に入った。


うちの学校の編入は入学試験よりも難しいらしい。

何でも、A組に入れるくらいでないと、編入学出来ないそうだ。

私は別に不安ではなかった。

アリスはホムンクルス故に頭がいい。

中学校のテストどころか、世界一頭のいいハーバード大学にも余裕で合格できるだろう。

今、心配なのはどうやって、理事長先生と烏間先生、つまり防衛省を脅して、アリスをこのクラスに入らすか?だ。

難関は防衛省ではなく、烏間先生の方だろう。

防衛省は僅かな可能性がある限り、暗殺者を送り込むことは邪魔しないだろう。

烏間先生は・・・上からの命令という必殺技を使おう。

あれ?難関とか言ったけど、防衛省と言う上を落とせば案外簡単に落とせるのでなはいか?


そう思ったが辞めた。

アリスはタコを殺す暗殺者として編入する訳ではないことを思い出したから。

今日一日の授業を聞き流して終わった後、アリスと合流すべく、山を下りた。


何かと考えたけど、結局はアリスをE組に編入させる様、理事長先生にお願いをしに行くだけだ。

難しいことを考える必要もない。

サッサと終わらせて帰ろう。


山を下りると何やら人だかりが出来ている。

私がその人だかりを避けようとしたら、人だかりが割れた。

人だかりの原因がやって来た。


「ますた~!!助けてください~~ぃ」


私の癒し、アリスだった。

私はすぐさま『認識妨害』を使い、私たちを認識しにくくした。


『・認識妨害

   周りから認識されにくくなる。

   ある程度の者だと認識される。

   不可視と違って完全に姿が消えるのでない。』


「ありがとうございます。ますた~」


アリスがお礼を言ってきた。

アリスは、普段しかっりしているが、予想外の事が起こるとパニックになり、今みたいに泣きついて来る。


普段とのギャップが可愛い子。


それはそうと、何故あそこまでの人だかりになるまで、動かなかったのかを聞く。


「ますたーが、ここで待ってなさいって言ったから待ってました。ぐすん」

「少しくらい動いても、問題なかったのだけれど、そこまで伝えなかった私が悪かったわ」


涙目になって命令の遂行報告をするアリスに謝罪するのだった。



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183 「37時間目 一方的な要求の時間」

昨日は申し訳ございませんでした。


アリスは落ち着くと謝罪してきた。


「申し訳ございません。マスターの時間を私なんかの為に使わせてしまいました」

「別に構わないわ。ただ、アリスも人間になっていくのだから、私の命令を完璧に行うのもいいけど、時と場合によっては柔軟性を持つように」

「柔軟性ですか?」

「例えばさっきの場合、私はここで待つようにと言ったでしょ?」

「はい。だから言われた場所に寸分狂わずいました」

「そこ、私は寸分狂わず待てとは言ってないわ。この近くで私が気づくところならどこでもいいの。後、人が集まって来たでしょ?」

「そうです。立っているとどんどん集まって来て。・・・怖かったです」

「怖かったなら、逃げればいいじゃない?いったん逃げて、また戻って来る。最終的には私と合流できればいいのだから」

「っは!それが柔軟性というものなのですね!分かりました、マスター!」

「それじゃあ、ちょっと時間をくったけど、理事長室に行きましょう」


アリスに少しお勉強をした私は『ナビゲーション』を頼りに理事長室に向かった。

『マップ』で理事長先生が中にいることを確認すると、「ノックして、もしも~し」とドアを開けるのを我慢してノックだけをした。


「どうぞ」

「「失礼します」」


理事長先生に入室許可を貰うとアリスと二人して挨拶をして入る。

私は言葉だけだったがアリスはキッチリとお辞儀までする。


「それで、何の用ですか?若麻績さん。と・・・ホワイトシルバーさん」

「アリスの編入試験の結果を教えて貰いたいです」

「何故今それを?通知書は送るはずだが?」

「合格ですね。アリスは本人立っての希望により、A組ではなくE組に編入ということを理事長先生にお伝えします」


こちらの要件を伝える。

理事長先生の意志なんか関係ない。


「アリスさんは若麻績さんが用意した暗殺者、かな?」

「いいえ、ただの編入生という扱いでお願いします」

「・・・さっきから要件を突き付けるだけで、それが通るとでも?」

「アリス!」

「分かりました」


アリスは私の思考を読み取って、理事長室から出ていきアタッシュケースを持ってきた。

持ってきたアタッシュケースをアリスは理事長先生に見せるように開けた。


「一億あります。入学金やらなんやらです。アリスは明日から登校させますのでよろしくお願いいたします。要件は以上です」


言うだけ言って部屋を出る。


「ふぅ、疲れた」

「お疲れ様です」


私が溜息を吐くとアリスが労ってくれる。

さぁ、帰って読書をしよう。

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184 「38時間目 何でみんな知ってんの!?の時間」

今日はアリスの編入初日だ。

制服、教科書類、カバンは全てチートコードで揃えた。


「マスター!どうですか?似合ってますか?」


アリスが制服を着て、私に見せてくる。


「とても似合ってわ」

「ありがとうございます」


アリスに制服を着させた所で気付いた。


あれは命令しておかないと。


「アリス。学校では私の事を『マスター』と呼ぶのは控えて」

「?分かりました、マスター。でも、何で『マスター』と呼んではいけないのでしょうか?」

「目立つからよ」

「マスターはもっと目立ってもいいと思うのですが・・・分かりました。マスターのご命令とあらば従います」

「ありがと」


アリスは私と学校でも仲良くしたいらしい。

それは別にいい。

だけど、考えて貰いたい。

クラスに転校生がやって来た。

それも、とびっきり可愛い外国人。

その人が何の脈絡もなく、クラスで浮いている人をマスターと呼ぶ。

そうなるとクラスの奴らはその人と転校生が主従関係だと思う。

転校生がその人に話すとその人は素っ気なく返す。

その人が何気なく言った命令にも従う転校生。

クラスの奴らはその人が無理矢理命令していると勘違いする。

その人を悪として転校生を被害者として扱う。

最悪だ。


いつもの場所にテレポートをすると私とアリスは別れた。

アリスは名残惜しそうにしていたが、私が先に行くとギリギリ見える距離でついてくる。

私がいつものように教室に着くとクラスの奴らは転校生の話で持ち切りだった。


その情報、どこから手に入れた!

私はともかく、何でこいつらが知っている!

あれか?「クラス内コミュニケーションツール」って奴だろうか!?

だとしたら発生源は烏間先生か?

理事長先生からただの転校生と言われたのか?


チャイムが鳴り、タコが入って来た。


烏間先生も一緒なのは転校生関係だからか?


タコが話始めた。

私も読書をしているふりをして聞いておく。


「皆んさん、知っていると思いますが今日は転校生が来ます。こんな時期になんですが、仲良くしてください」

「次に俺からだ。転校生ということで私たち防衛省が彼女に接触しようとした。勿論、このクラスの秘密、こいつのことだ。しかし、接触出来なかった」

「つまり」

「転校生はこのクラスがしていること、こいつの存在を知らないと言うことだ」

「何で理事長先生はそんな転校生をこのクラスに転校させたのかは分かりません。もしかしたら、外部の手を一切借りない、新たな暗殺者かも知れません」

「表向きは俺を担任と言ってある。今から転校生とこいつを合わせるが、何があっても対応できるようにお願いする」



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185 「39時間目 アリス、学校初日の時間」

タコと烏間先生の話が終わると烏間先生が言う。


「入って来てくれ」

「はい」


アリスは静かに入ってきた。

烏間先生を見て、タコを見つめる。

やがて視線を外すと今度はクラスの中を見渡す。

私に視線が合った時、嬉しそうな表情に変ったのが見えた。


「え~っと確か?」


アリスは後ろに振り向き、黒板に名前を書き、再び振り向く。


「アリス・ホワイトシルバーです。どうぞよろしくお願いいたします」

「はい。よろしくお願いします」


アリスが自己紹介をした後、タコの声だけが教室に発せられた。

誰もが声を出さない。

沈黙を破る一声が上がる。


「ほ、ホワイトシルバーさん?あの、驚かないの?」


クラス委員長の片岡が言った。

アリスはコテンっと首を傾げて少しの間、考えた後に答えた。


「あっ!この黄色い生物は何ですか?烏間先生?」

「ああ、奴は・・・」


烏間先生はアリスに私達が四月に聞いたものと同じ説明をする。


しまった。

アリスにタコの事を知らないふりをしろと言ってなかった。

何とか判断できたみたいだけど。

さっきから、私の方に向かって褒めて褒めてオーラを出してきている。

家に帰ったら、褒め倒そう。


説明がいつの間にか終わったのか、アリスが席に着いた。

私の隣、寺坂の逆側の赤羽を挟んだ向こう側だ。

アリスが席に着くといつも通りの学校が始まる。

アリスは今日一日注目の的だった。

授業中、問題を当てられても難なく回答。

休み時間には人が集まって質問攻め。

体育の訓練では、抜群の運動神経を発揮。

ナイフ格闘では烏間先生と張合い、射撃訓練では百発百中を誇った。


流石、私のアリス。

クラスになじんでいる。

私が関わっていると言う情報も出さない。

遠まわしに言った、命令が効いている。


学校が終わった。

アリスはまだ囲まれている。

私はいつもの様に山を下り、校門を出てテレポート地点に辿り着いた。


さて、さっさと帰ろ・・・アリスがまだ来ていなかった。

仕方がない。

本を読んで待つか。


十分後にアリスがやって来た。


「申し訳ありません、マスうぐう!!」

「黙って!」


遅れたこと謝ろうとしたアリスの口に手を当てて塞ぐ。

急いで『認識妨害』を使う。

そのまま、アリスの手を取って走る。

角を曲がって曲がって、何回目かの角を曲がった瞬間、『テレポート』を発動。


「あの、マスター?どうなさったのですか?」

「クラスの奴らに後を着けられてたわ。恐らく、アリスが何処に住んでいるのか知りたかった。単なる好奇心ね」

「全然気が付きませんでした」




活動報告覧にてちょっとしたアンケートをあげています。


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186 「40時間目 喧嘩の時間」

どうしてこうなった!


次の日、学校に行くとクラスの奴らに問い詰められた。


「昨日、ホワイトシルバーさんに何していたの!?」


誰かが一人問うと何人かが私の元に来る。


ほらきた。

事情も知らない、変な正義感を持つ奴らがぞろぞろと。


「・・・別に何も」

「噓を突くのは止めて!」


噓?

私はアリスに何もやってない。

噓は言っていない。


・・・別の誰かが私を攻め立てる。


「若麻績さん!あなた、三学期から変だわ!」

「・・・?別に変ではないでしょ。いつもと変わらない」

「いいえ!変わっているわ?いつもと同じ様に見えても。妙に自信ありげに話しているもの!」


周りからはそう見えていたのか?


誰かが言った。


「若麻績、まさかお前!また触手なんぞ使っているのか!!?」

「触手?そんな貧相な装備なんて持ってないわ!」


管理者権限の前で触手なんて使い物にならない。

そう思って言ったのに。


「若麻績さん。危ないものはもうやめようよ」


また、勘違いしてくる。

危ないもの?

管理者権限のどこが危ないものだって言える!?


「クッ!なら力ずくで!!」

「若麻績さん!私たちは解り合いたいの!!」


クラスの奴らが私に向かって来る。


こうなったら、嫌でも解らせてやる。

お前らとは一生分かり合えないんだってことを!


私とクラスの奴らがぶつかる瞬間。


「おはようございます。・・・何があったんですか!?」


私の命令で登校時間を後れさせた、アリスが教室に入ってきた。

私は止まったが、向かって来た奴らは止まり損ねて、肩を押された。

咄嗟の事だったので後ろに転んでしまう私。

アリスはクラスを見渡して


「・・・何が、あったんですか??」

「ホワイトシルバーさん・・・これは、その」

「っは!!マスター!!」


転んでいる私に駆け寄った。

禁句を口に出して。


「「「「「「「マスター!!!!!????」」」」」」」


クラスの奴らが口をそろえて驚く。

アリスは知ったこと無いと私の事を心配する。


「マスター!お怪我はございませんか?誰にやられたのですか?このクラス全員ですか?マスターの敵判定ですか?殲滅しますか?」

「・・・アリス」


私がアリスに命令を下そうとしたその時。

クラスの奴らがアリスに説明を求める。


「ホワイトシルバーさん!貴方と若麻績さんの関係は何なのか教えてください」

「マスターは私のマスターです。それ以外に何が必要ですか?マスターの敵は私の敵。よって、殲滅します」


こんなにも怒っているアリスは初めて見た。

このままだとアリスは本当にこのクラス全員を肉片に変えてしまう。




何度でも言おう、どうしてこうなった!!


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187 「41時間目 お前らと違うの時間」

前回に引き続き言います。

どうしてこうなった!!!


「アリス!!」

「なんでしょうか、マスター?」

「少し冷静になりなさい。私は別に何ともないわ」

「・・・そう、ですか」


私はアリスを冷静にさせると見ている奴らに向き合った。


「答えてあげるわ。見ての通り、アリス・ホワイトシルバーは私が創った従者。あ、別に奴隷とかじゃなから。私に全てをささげてくれる。私はともかく、アリスとは仲良くやってね。私の娘同然の存在なんだから」

「そんなこと言われたって!」

「それよりも作った?」

「そうよ、アリスは今の体は全て人間そのもの、だけどアリスがこの世界に生まれてまだ三ヶ月も経っていない」

「人間を創る!?そんなことが!!」

「出来る。この世界に一人、私だけにはね。こんな風に」


アイテム『エリュシデータ』をジェネレート。

私の手元に現れた、某黒い剣士愛用の剣を構える。


「それって空想の物なんかじゃあ!!?」

「試してみる?自分の肌で?」


私の本気の眼差しを目に奴らは後ずさる。


「私が何者か言ってなかったよね」


いつもの『ヒーリングコート』を装備する。


「私は、若麻績風月。元管理者で今はこの世界で生きる管理者権限持ちの暗殺者よ」


操作パネルの表情をオンにして、見せる。

奴らは混乱してる様だった。

分かり易く言い替えよう。


「ゲームとかでよくあるでしょ?チート、管理者権限はこの世界のそれそのもの」

「よくわからないけど、すごい力だってことは分かった。でもそれで何がやりたのか分からない」

「簡単よ、タコと遊ぶのよ。お前らは邪魔者。タコを殺すのは私で十分」

「待って、殺せんせーを殺すのはクラスのみんなでって」

「皆!?誰もが皆って言葉が好きだと思わないで!!?私は始め、タコを殺すことに反対だった。でもお前らが有無を聞かずに、少数派の意見を聞かずに多数派の意見を全体の意見だと勝手に決め付けた!!今度は私がお前らの意見を聞かない番だ!!止めたかったら止めればいい。お前ら全員でも、烏間でも、タコでも国だろうと使って来てもいい!!管理者権限の前では無力同然」


ここまで言い切ってアリスの下に向かう。


「マスター」

「・・・アリス。これからは精々がんばって」

「えっ!きゃあっ!」


私はアリスを奴らに向かって放り投げた。

数分前に殺すと言われた相手をそれでも向けとめる奴ら。


「なっ!従者なんじゃ!!?」

「アリスは命令を破った。使えない物を側に置いておいて何の役に立つと言うの?」

「今は逃げるけど、タコは殺しに行くわ。お前らの言うみんなって力で頑張って私を楽しませて!!」

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188 「42時間目 アリスの時間」

予告通りアリスちゃん視点です。


私が初めて受けた命令は、家の家事でした。

私は、私という存在が生まれてから、いろんな知識だけは持っていましたので、ぎこちない手取りで家事を始めました。

ただ、この家というものに住んでいらっしゃる、長い黒髪を持った女性の命令だけを聞いてきました。

逆らおう、などとは思いも寄らず、人間が食事を摂る、睡眠を摂る、性欲を持つ、と同じ様にマスターの命令を聞くためだけに生まれて来ました。

マスターは一定の家事と時々下される命令をやり解ければ、それ以外の生活は迷惑をかけなければ何をしてもいいとおっしゃいました。

それからというもの、マスターの持っている本をお借りするようになりました。

私は本を読んで、小さな感情というものが芽生え始めました。

この世界にはこんなことがあるんだって思いました。

しばらくして書店にお出掛けされるマスターに私は初めて意見というものを言いました。

マスターは私の傾向をよく思い、連れていって下さいました。

初めてのこの家以外の世界!

知識では知っているものの、初めて体験することにドキドキとワクワクと言った感情が押せえれませんでした。

そのお出かけ以来、私はマスターに甘えると言う行動を続けました。

この頃には生まれた時のようなただ黙然と命令をこなすだけの私ではなく、日々の生活が楽しかったのです。

本を読んで、私は学校と言うものに通ってみたくなりました。

マスターが学校で独りぼっちなのは知っています。

なので、マスターを学校でも独りぼっちにさせない為に、マスターに学校に通いたいと言い出しました。

マスターは私の言う事を飲んでくださり、この国での戸籍と「アリス」という名前まで下さいました。

その夜、お布団の中に入っても嬉しすぎて寝れなかったのはナイショです。

私が言った二日後にはマスターと一緒に学校に通えるようになりました。

私は学校でもマスターをマスターとして呼びたかったのですが、マスターにそれはダメだと命令されました。

一日目はマスター以外の人たちが常に私の周りにやってきて、あれこれ質問攻めにされました。

下校時に用事があるからと周りを振り切り、マスターの下に急ぎました。

が警戒を怠ったのでしょう、付けられている事を知らずにマスターに接触してしまい、マスターのお手を煩わせてしました。

次の日、前の日を警戒してマスターのより遅れて学校に行くことになりました。

私が教室にたどり着くと、マスターがクラスの人たちにやられていました。


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189 「43時間目 これからの時間」

今回もアリス視点


その時、私の中で怒りとういう感情が芽生えました。

マスターを傷つける人間を殲滅する。

そのことで頭がいっぱいになったのです。

だから私は、マスターの命令を破ってしまったのです。

マスターが私を止めました。

マスターはクラスの前でチートを使いました。

マスターが叫んでいます。

最後に私の下に来てくださって・・・。


「・・・アリス。これからは精々がんばって」


マスターの言葉を考える前にマスターに放り投げられました。

マスターが言いました。


「使えない物を置いといて何の役に立つと言うの?」

使えない、物。

それが、命令を破った私への罰でした。


何かが私の頬を伝って落ちていきました。

よく見ると、私の目から出ていました。


「それは涙よ。感情が抑えきれなくなった時に出るもの」


クラスの誰かが教えてくれました。


涙・・・。


その時、私は泣いているのだと初めて気づきました。

クラスの皆さんが泣いている私を慰めてくれました。


ひと時と言えど、殺そうとした私にやさしくしてくれたのです。



放課後、皆さんが私に訊ねてきました。

マスターをこれからどうしたいか、と。


皆さんはマスターを止めるつもりです。

止めて、解り合いたいと皆さんは言った。


私は泣いた。


悲しくて泣いたのではなく、今度は嬉しかったのです。

皆さんを信じないマスターを信じてくれる皆さんは、とても輝いて見えました。

私は、私の知っている限りのマスターの情報を皆さんに話しました。

初めは驚かれましたが、私の存在と私の言っている事が正しくないと辻妻が合わないとのことで信じてもらえました。


私の話が長引き、時間が夜七時と暗くなった為、今日はお開きになりました。

皆さんが帰っていく中、私は困りました。


どうしましょうか?

帰る場所がありません。

マスターと住んでいた場所は遠く離れた山奥です。

帰ろうにも帰れません。


何かないかと手持ちを探りましたら、私のカバンの中にマスターが用意してくださっていたお金が見つかりました。

そのお金を見て、私はまた涙がこみ上げて来ました。


私の為に色々と準備してくださったマスター。

今、何をしているのでしょうか?

私の事を思って下さっているのなら、私も嬉しいです。

が、きっとお本をお読みになられているはず。

それが、マスターの生きがいなのですから・・・。


一先ず、夜を明かす為に行動し、ホテルにやって来ました。

空いている部屋を確保して、お金を払います。

私の気に入った本を買ってもいい、持たされたお金を使うのに少し抵抗がありましたが、振り切りました。



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190 「44時間目 不思議な夢の時間」

気が付くと、何もない空間にいました。


はて?ここは何処でしょうか?

昨日は確か、布団に入ったところまでは覚えているのですが・・・。

夢でしょうか?


「その認識で間違ってはいませんよ」


私の疑問に答えるようにして、声が聞こえてきました。


いいえ、聞こえると言いましたが、聞こえるよりも頭に響いて来ると言った方が正しいのでしょうか?

ここは夢の中なのですから、どちらが正しいのか分かりません。

しかし、それよりもです。

私は何故、このような夢にいるのでしょうか?


「それは私が呼んだからですよ」


また聞こえてきました。

私は聞き返しました。

声が出ないので、頭の中で。


貴方は誰ですか?

一体どういう理由で、私にこんな夢を見させているのですか?


答えは直ぐに返って来ました。


「姿を見せた方があなたも安心出来るでしょう」


言葉と共に私に声をかけているであろう者の姿が現れました。

透けていた体が段々とハッキリと見えるように現れました。


こんな現れ方を出来るお方を私は一人しか知りません。

ですが、ここは夢の中。

マスターが私の夢に干渉してきている事はないと言い切れませんが、声を聴く限りマスターではありません。


何故なら、私に全く見覚えのない方が、私を見てました。


・・・女神様。


そうとしか、例えようのない者が私を見ていました。

金色に輝く髪の毛、キズ一つ付いたことのないと思われる純白の肌、ひらひらした服、どれをとっても神話に出てくる天使なる者に似ています。

その方は私に言いました。


「突然このようなことをして、申し訳ございませんね」


その方は私に謝罪をしてくださいました。


謝罪はともかく、私は貴女様がどの様な方なのか知りたいのですが・・・。


頭を上げたその方は私の思考を読んでいるのか、また謝罪を申しあげました。。


「そうですね。初めに名乗らなかったのは、わたくしの落ち度です。何せ、誰かに名乗るという行為が久々でしたから」


その方は、最後に名乗ったのはいつだったかしら?と一人で考え始めました。


一体この方は誰で、何のために現れたか、さっぱりです。

何だか、とてつもなく自分勝手な人の雰囲気です。


私の思考が再び聞こえたのか、その方は考えを辞め、あっけなく告げました。


「自分勝手な人・・・?あなた方にとってはそう思うかもしれませんね。まぁ、あなた方にどう思われようとわたくしは構いません。あぁ!あなたの質問に答えてませんでしたね?わたくしの名前はスティーナと申します。創造神様よりこの世界を任されたこの世界の管理者でもあります」



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191 「45時間目 スティーナ様の時間」

・・・・・・管理者。

スティーナ様はご自分の事をそうおっしゃいました。


ではスティーナ様がマスターに管理者権限を与えた方のなのでしょうか?


「それは違います。風月に管理者権限を与えたのは、創造神様です」


創造神様、マスターから聞いたことがあります。

確か、この世界を創った張本人であるとか。


「そこまでにして下さい。これ以上考えるのはね?」


なぜでしょうか?

何かいけない事でもしたのでしょうか?


「私たち創り手の事は余り考えないで下さい。物語の軸からズレてしまう事があるので」


なら、何故かマスターを管理者にしたり、管理者権限を与えたりしたのでしょうか?

不思議です。


「それが神の意志ですから。私がこうして貴女の夢に干渉しているのも神の意志です」


神の意志・・・?

この世界はこうなる。と決められたルートのようなものでしょうか?

よく分かりませんがスティーナ様は私に用があって現れたと言うことでしょうか?


「そうですね。今は何か用があって現れた、と思って下さい。何の用かは後ほど分かる形になっていますので。それをどう使おうと、あなたの勝手です。物語はあなたたちの気づかないうちに、終末へと進んでいくのですから」


私の頭の中はショートしそうになりました。

本物の人間の様にできていないためか、スティーナ様の話は私にとって難し過ぎたようでした。


「では、貴女がこれからどう動くのか、見させて貰います。さようなら」


スティーナ様は現れた時と同じ様に、消えていきました。

同時に私の夢は終わりだと言わんばかりに、意識が遠のいていきました。



再び意識が浮上すると私はベットの中でした。

スティーナ様に会って、何か変った事はないかと体を調べましたが特に変化は見られませんでした。


スティーナ様は後ほど分かるとおっしゃいました。

来たるべき時が訪れたらわかるのでしょう。

それよりも、私が今考えるべきことはマスターの事です。


そのまま、学校に登校し、烏間先生に住む所を相談したところ、期限付きで用意してくださいました。

期限は卒業式までです。

それからというもの、マスターが姿を現わさないまま、日は過ぎていきました。

皆さんが将来の為に入試とういうものが、ひと段落した頃のある日。

クラスの皆さんがソワソワしていました。


今日に何かあるのでしょうか?

はっ!

もしかして、マスターから何か連絡があったのではないでしょうか!?


気になる事は何でも聞く。

その教えに従って、皆さんに聞いてみました。



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192 「46時間目 それぞれの下準備の時間」

前半アリス視点、後半風月視点です。


「バレンタインデー?ですか?」

「うん。あっ!もしかして知らない?」

「大丈夫です。知識だけは知っていますので」


皆さんがそわしていたので、聞いてみた結果、もう直ぐバレンタインデーだと知りました。


バレンタインデー、元々は聖ウァレンティヌスに由来する祭典でしたが、日本ではチョコレート会社の影響で今のような形になったそうです。

今では女性が好きな男性に渡すだけでなく、義理チョコや友チョコなど色んな形があるそうですし、当日には日頃の感謝を込めて皆さんにチョコを渡しましょうか?

ならば、帰りにはデパートによらなくてはいけませんね。


有言実行、私は放課後になるとデパートに行き、クラスの皆さんに一人一つずつチョコを買った。

それと別にもう一つ、本命チョコも。


マスターにも渡せれたら嬉しいです。

お返しにマスターからもいただいたりして!!!



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~





時は少々遡り、ある政府関係の敷地内


建てられたばかりのビルが粉々に崩れ落ちる姿をバックに歩く二人の怪物。


一人は全身を隙間なく真っ黒い服で頭から被り、その中身は人間では無くなった怪物。

もう一人はまだ人間の体に見えるが、体の一部を別のモノに変えている怪物。


二人の怪物の目の前にもう一人、怪物が現れた。


三人目の怪物は緑色のコート姿で長い黒髪をはたびかせ、無表情の顔で二人の怪物を見る。


「君か・・・。私に何かようかな?奴を殺す準備は整った。それとも、君にも同じ力が欲しいのかな?」

「いいえ、ただの偵察よ。今更そんなモノに頼らなくても、タコは殺せるわ」

「ほう。出来損ないの君がここまで言うようになったとは・・・。何か力を得たのかい?」

「・・・面倒だから説明はしないわ。タコを殺すのは私よ。邪魔をするのなら、あなたの自信をへし折ってあげる」

「楽しみにしているよ、若麻績君」

「私も楽しみにしているわ」


三人の怪物は別れた。





柳沢、二代目死神。

どちらも、人体改造を施している。

柳沢はともかく、二代目死神の方はタコと同じ位かそれ以上に強くなっている。

奴らが仕掛ける日時もやり方も分かっている。

楽しみだなぁ。

成長する前でも手も足も出なかった私に、成長しても手も足も出なくなっている現実を叩きつけるのは、快感だわ。

最後のチート無双はこれ以上なく、楽しくならなきゃ。

さっ、仕事もしたし、帰って読書の続きをしましょうか。


私は読書にめり込む為に自宅にテレポートをした。






風月さん今まで何やってたの?

読書にめり込んでいました。
気が付いたら、数日経ってたとか・・・。


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193 「47時間目 岡島大河、バレンタインデーの時間」

 この日の彼は期待していた。

 誰か一人は自分宛のチョコがあるのでは?と期待して、朝から変な気配を漂わせていた。

 故に、ある事実に気が付かなかった。


「俺宛のチョコが見当たらねえ!絶対にあるはずなのに!!さては、山にでも隠しやがったな!!見とけよ渚!!俺はこのまま0個で終わらさねえ!!!」


 2月14日の放課後、呼び出しがあるかも!と教室に残っていた彼、岡島大河は悟った。
 
 誰も自分へ呼び出しをしない。

 そう悟ると同じく教室に残っていたクラスメート、潮田渚に向かって、絶対にチョコがあるはずだ!と叫んだ後、涙ながらに走った。


「ちくしょお!!!俺のチョコは何処だあああぁぁぁぁぁ!!!」


 チョコを求めて、裏山を走る岡島。

 そんな彼に声がかかる。


「ふぅ、やっと見つけました。岡島君」

「ん!今、女子の声が!!俺のチョコは!?」

「後ろです」


 岡島は今、全力疾走をしている。

 そんな彼の後ろを、付いて走れる女子がどれだけいるだろうか?

 岡島は止まる。

 自分に声を掛けてくれた女子と向き合う為に。


「あ、アリス・・・さん」

「やっと追いつけれました。はい、どうぞ」


 岡島を呼び止めたのは、最近になって編入して来た外国人。

 ということになっている人工生命体、アリス・ホワイトシルバーだった。

 彼女が持っているのは、高級チョコメーカーのロゴマークが入った紙袋。

 ロゴマーク通りならば、紙袋の中身はチョコレート。

 彼女はその紙袋を岡島に差し出した。


「うおぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!」


 彼は涙した。

 先ほどの悲し泣きとは違う、嬉し泣きだ。

 バレンタインデー、この日に高級なチョコレートを男性に渡す女性。

 彼はこの意味は一つしか考えていなかった。


(あのアリス・ホワイトシルバーが俺にチョコを渡してくれた!!これは、俺のことが好きだと言う告白で間違いない!!)


 こんな可愛い子が俺の彼女、そんな脳内お花畑を想像している岡島にアリス・ホワイトシルバーは言った。


「今日中に渡せれて良かったです。これで全部です」

「へ?全部って?」


 彼女言った言葉に疑問が生じた岡島は、雄叫びも辞めて聞き返す。


「今日はバレンタインデーですから。日頃の感謝を込めて、クラスの皆さん全員にチョコレートを配っていました。岡島君だけ、何やら気が経っていましたので最後になってしまいましたが、これで皆さんに渡せれて、ほっとしてます」

「クラスの皆さん?」

「はい?」

「俺だけ高級チョコだとか!?」

「皆さん平等に同じチョコレートですが・・・?」

「あ、あははははh」


 お花畑終了


 岡島は朝から、アリスがチョコを配っているのを見ていなかった。

 そんな、彼のミスがこの結果を産んだのであった。


「でも、チョコが一個、貰えたわけだし!!義理でも嬉しいぃぃぃ!!!!」


 家に持ち帰った岡島はそのチョコを、それはそれは大切に食べたのは別な話し。


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195 「48時間目 写真の時間」

 バレンタインデーも終わり、クラス全員・・・登校を拒否している若麻績風月とその従者、アリス・ホワイトシルバーを除いた27人の高校進学が決まった。


「皆さん!第二志望以内で合格、おめでとうございます!!」


 ある日のホームルーム、殺せんせーは一人の生徒以外の合格を祝っていた。


「本来この後に進路相談の予定でしたが、その前にやりたいことがあります!」


 殺せんせーがうずうず、と待ちきれない態度で話す。

 それに気付いた生徒たちも、手にクラッカーやジュースを持って今かと開始宣言を待つ。

 が、殺せんせーが放った言葉は・・・


「編集作業です」


 ドンっ!と教卓に乗せたのは大量の写真。

 殺せんせーはご丁寧にも眼鏡をかけ、カツラを被り、ダサい服と上着をはおってパソコンをカタカタ、カチカチと操作する。

 そんな担任の姿にクラス全員が声をそろえて


「「「「「何でだよ!!」」」」」


 突っ込む。

 そんな生徒たちに殺せんせーは笑顔で


「もちろん、卒業アルバムを作るんです。E組だけの!」


 学校全体の卒業アルバムもう作ってあった。

 そこには国家機密である殺せんせーの姿はもちろん、暗殺訓練や授業風景はなかった。

 殺せんせーは自分が写っている写真や本当のE組の日常を込めたE組だけのアルバムを作りたかった。

 その為の編集作業を殺せんせーはしたかった。

 いつの間にか編集者のコスプレを辞めた殺せんせーが言った。


「この一年間、隙を突いて撮った秘蔵の自撮り写真三万枚!!皆さんで選定しましょう!!」


 自由に見てくださいと、ドン!と写真を置いた。





 数分後、そこから本人にとって恥ずかしい写真を速水、三村を筆頭に撮られていることに教室内は大騒ぎ状態になっていた。

 そんな中、ただ一人だけ静かにクラスを見守っている者が一人。


「皆さん、楽しそうですね」

「ホワイトシルバーさん。貴方は行かないのですか?」


 アリスは写真を見ているクラスメイトを少し離れた位置で傍観していた。

 流石殺せんせー、気になったので声をかける。


「私は、編入して来て日が浅いので写真もありませんし」

「そんなことありませんよ。これを」


 殺せんせーがアリスに見せたのは、編入初日の休み時間の光景が写っている写真だった。


「っ!いつの間に撮っていたんですか?」

「ニュフフフ、隙あらば撮ったと言ったでしょう。後はそうですねえ・・・これとか?」

「っは!!こ、この写真は!!」


 アリスがここまで乱す写真を殺せんせーは見せた。

 それは・・・


「マスターの寝顔写真ですか!?」

「えぇ、若麻績さんは写真嫌いですから、この様な不意を突いたのしか・・・」

「ほ!他にはどんなのが!!」

「食いつきますねぇ~。束の中に幾つかあるはずです、探してみてはいかがでしょう?」

「・・・はい!」


 アリスは飢えていた。

 生まれてから毎日一緒に暮らしていたマスターに会えない日が既に数週間。

 写真でも良いからマスターを見たい。

 その要求に逆らわず、アリスはクラスメイトがいる場所に走っていった。


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196 「49時間目 進路相談の時間」

追記、お気に入り登録が100件を超えました!
ありがとうございます。
あと少しですが、頑張っていきたいと思います。


 本来、進路相談をしなければならない日に、E組だけの卒業アルバムに載せる写真を撮りに外国まで行ってしまった為、その日は進路相談が出来ずしまいに終わってしまった。

 そんなこともあってか、次の日に進路相談が行われた。


 教室の黒板には

 『進路相談final~言えた者から帰ってよし!!~』

 と書かれてある。


 殺せんせーが文字を書き、教室を出ると、クラスから一人、一人、また一人と教室を出て行き、進路相談を終えて、帰っていった。

 もう、この教室に残っている人数は二人、生徒人数でいえばAIの律を入れて三人。


「アリスさん、昨日は凄かったですね」

「私も初めて見たものばかりでした。知識としては知っていても、見たことのない物ばかりでしたから。・・・マスターと一緒に見たかったです」

「マスター・・・!そう言えばアリスさんも私と境遇が似ていないことも無いですね」

「確か、律さんも人に作られた存在でしたね?」

「はい!そうです」


 教室に残っていた二人の内の一人、アリスが律と喋っている。

 話は昨日の、一日で三十ヵ国を回った話から二人の境遇の話に変わっていった。


 律は人工知能、アリスはホムンクルス。

 科学技術、錬金術(管理者権限)と正反対の分野ではあるが、どちらも人の手で造られた存在同士。

 何か通じるものがあるのか、二人は気が合った。


 ガラガラー


「「!?」」

「ごめん。邪魔したかな?」


 ドアが開く音が聞こえてアリスと律が音のした方を向くと、アリスの他に進路相談が終わっていないもう一人、渚が謝ってきた。

 二人は顔を見合わせると同時に言った。


「「いいえ」」

「良かった。じゃ、僕は先生の所に行くから」

「そうですか。では、また明日です。さようなら」

「うん、アリスさんも律も、さようなら」

「はい!さようなら」


 アリスと律は渚と挨拶を交わして、閉まるドアを見送った。

 渚が去ってから沈黙が続く。


 律の目から見て、アリスは何か思っている風に見えたが、律はこんな時に何を話せばいいのか分からない。

 そう言えば、と不意にアリスが律に話題を振った。


「律さんはここを卒業したら、どうするつもりですか?」

「私はネットで活動しつつ、見聞を広めたり皆さんが困った時に役に立ちたいと思っています」

「・・・そう、ですか」

「?アリスさんはどうするつもりですか?」


 聞き返す律にアリスは中々答えれない。


「・・・私は、生まれてからまだ二か月程しか経っていません。一つの事以外にやりたいことが見つからないのです」


 重々しく話すアリス。

 そんなアリスに律は


「でしたら、その一つの事を全力でやったらいいのではないでしょうか?」

「全力で?」

「そうです。私は応援しますよ」

「・・・・・・ありがとうございます。私も進路相談に行って来ますね」


 アリスは律に微笑むと鞄を持って教室から出ていく。

 廊下を歩いて向かったアリスは教務員室に着くと、コンコンとドアをノックした。

 どうぞ、と殺せんせーが返事をするとアリスは教務員室に入った。


「失礼します」

「さて、ホワイトシルバーさん。貴女は何か、なりたいものを見つけましたか?」

「いいえ、先生。なりたいものは見つけれませんでした」

「そうですか」


 将来の目標が決まっていないのはアリスともう一人だけ。

 殺せんせーは考える。

 どうしたらいいのか?を。

 しかしその考えは、アリスが続けた言葉で一つ無駄になる。


「でも、やりたいことは見つけています」

「教えてください」

「私は、私という存在を造って下さったマスターに恩返しをしたいです」


 アリスは真剣な表情で殺せんせーに言った。

 殺せんせーの頭はそのためにどうすればいいのか?と考えを張り巡らせる。


「その為にはまず、若麻績さんを止めなくてはなりませんねぇ」

「殺せんせー・・・マスターを助けてくれませんか?もちろん、私も最大限に努力します。お願いします」


 アリスは殺せんせーに頭を下げて、懇願した。

 殺せんせーはアリスの頭を自身の触手で撫でた。


「大丈夫です。貴女も若麻績さんも私の生徒です。絶対に見捨てません」

「ありがとうございます」


 殺せんせーが見捨てないと言うと、アリスは再びお礼を言った。


 ここでアリスの進路相談を終え、若麻績風月の話題になる。

「それでは、若麻績さんの事ですが、彼女が教室に来なくなってから二回程暗殺を受けました」

「っ!」

「一度目は超遠方からの狙撃、私の視線が弾にいってる隙に接近戦を仕掛けてきました。何となく思いついたから実行した、と彼女は言っていました」

「何処までやられましたか?」

「接近戦で一度二度ナイフを振るうと暗殺を辞めました。触手は無傷です」

「マスターらしいです」


 アリスの脳内に、暗殺を辞めた風月が「疲れた」と言ってるシーンが思い浮かぶ。

 アリスの表情が変ったのを見て、殺せんせーもニヤニヤしながら話を続ける。


「二度目の戦闘は面白かったですよ。先生、思わず魔王の格好に着替えてしまいました」

「・・・マスター」


 二度目はお遊びの様な戦闘だったらしい。

 創造の武器をふんだんに使ったライトノベル風の戦闘がアリスの頭の中に蘇る。

 魔法剣を振るうマスターと触手モンスター殺せんせーの高速戦闘、カオスだ。


 アリスは頭を左右にブンブンと降ってカオスな戦闘をかき消した。


「これまでの暗殺間隔を見ると、一週間以内にくるでしょう」

「一週間ですか」

「ええ、それも二回とも深夜でした」

「深夜、マスターが選びそうな時間です」

「そうですかっと、長引きました。あまり引き留めても悪いですし、また明日にしましょう」

「はい。さようなら、殺せんせー」


 アリスは再びお辞儀をして、教務員室を出た。


「烏間先生、お疲れ様です」

「あぁ、帰りか。気をつけてな」

「はい、また明日」


 途中で烏間先生にあったので挨拶をして帰る、アリス。

 アリスは本校舎の正門を出て、政府に用意された近場のマンションに帰って行った。


 アリスはいつも通り、夕飯の支度を始めた。


「っは!!」


 その時だった、何かが降ってくる!アリスがそう感づいたのは。

 急いでベランダに這い出て、空を見上げると空が一瞬、光った。


「まさか!マスターが!!?」


 次の瞬間、宇宙からの高速レーザーが椚ヶ丘中学校旧校舎に降りかかった。



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198 「50時間目 最後の登校の時間」

祝五十話!!


 レーザーが殺せんせーに放たれた直後、最終暗殺の指令本部では暗殺の結果を確認されていた。

「信じられん!!?あれをかわすか?」
「音もなく光速で降ってくるレーザーだぞ!?」

 結果は失敗。光の速さを前触れもない状況で避けていた。
 指令本部にいる人は奴の勘の鋭さを呆れて称えていた。
 しかし、本当に勘だけだったのであろうか?そのことを知る者は本人以外いない。





 時はレーザー発射の数分前まで遡る。
 
 進路相談も一人を残し終わり、烏間先生と少しだけ会話をした後の事だった。
 E組だけの卒業アルバムの作成をしていた殺せんせーは誰一人として気配のなかった教室に突如、人の気配を感じ取った。
 どういう訳か、気配は感じ取ったが殺気は感じられない。
 
 殺せんせーは気配の方向に目を向けて、止まった。
 これがもし、暗殺の為の計画なら殺せんせーの命は既に失われていただろう。
 
 硬直時間は僅かコンマ一秒、直ぐに何事もなかったかのように会話を始める。

「今晩、若麻績さん。こんな時間に久しぶりの登校ですか?」

 右から4列目、左から3列目の五番目、クラスで一か月程空白だった席。
 その席の持ち主、若麻績風月が座って本を読んでいた。

「そうなるわね」

 本から目を離さないで風月は答えた。
 その答えに、殺せんせーは涙した。

「おぉ!!やっと戻ってくれますか!先生は嬉しいです。でもなぜ今になって戻って来てくれたのですか?」
「最後になると思ったからよ。ところで先生はやり残したことがある?」

 しっかりと会話をしながらも、目はしっかりと本に向けられている。
 風月の質問に殺せんせーは答える。

「もちろんですとも。まだアルバムも作り終えてませんし、アリスさんとの約束もあります。若麻績さんには」
「今すぐに死にたくないなら、ここから避けた方が良いわ」

 風月が殺せんせーの話を遮って警告を発した瞬間、宇宙からのレーザーが校舎を貫いた。
 殺せんせーは咄嗟に窓に向かって全速力で移動して、ガラスを突き破ってレーザー圏外に脱出した。

 大切な生徒である風月を置き去りにする程、殺せんせーには余裕なかった。
 殺せんせーは助かった、と分かった途端に風月の存在を思い出す。

「わ、若麻績さん!!無事ですか!!?」

 口ではそう言いつつも、殺せんせーの体は逃げ場を求めて、動く。
 殺せんせーは逃げろと言う本能に逆らえない。
 心の底で、若麻績さんなら大丈夫だろう、と思ってもいたからだ。

 殺せんせーの前にバリアーが現れる。
 殺せんせーがバリアー触れると、触れた部分が溶けてしまう。

「よく避けたわ」
「若麻績さん!無事でしたか!?」

 殺せんせーの前に風月がテレポートで現れた。
 やはり本を読んでいる状態だ。
 殺せんせーは風月の無事を確認でき、ホッとする。

「冷静になれば分かる事よ。あのレーザーは触手だけを溶かす物。私が何もしなくても無事なのは当然のこと」

 風月はまるでこの作戦を知っているかのように説明する。
 それもそのはず、風月はこの作戦を知っていた。
 作戦に関わらない人間がどうやって国家機密レベルの情報を手に入れる事が出来たのか?
 それはもちろん、管理者権限を使って誰にも気づかれずに情報を入手しただけである。

「ふぅ、そうですか。しかし、若麻績さんは何故、私を助ける様な行動を取ったのですか?」
「こんな作戦で死なれても面白くないからよ」

 私が楽しくいたぶる為に助けただけ。
 そんな意味合いを込めて、風月は返した。
 
 その時、風月の手には本を持っていなかった。
 代わりにラノベで見かける創造上の剣が一振り、手に持っていた。
 
 服装もいつも間に変わっている。
 制服だった物が愛用のヒーリングコートに変わっていた。

「そろそろ殺さないといけない時間かしら?」
「どういう事ですか?」

 風月は自分の知ってる作戦情報を殺せんせーに話した。
 一週間後にはバリアー全体を覆いつくすレーザーが放たれる計画である事を。
 今回の暗殺で殺せんせーの存在を世間に発表する事を。
 クラス全員は監禁される予定である事を。

 一つ一つ丁寧に、警備の配置に至るまで管理者権限で得た計画を全てを風月は話した。
 殺せんせーは聞き終えると

「万事休すですねぇ。ならば、今出来る事をやりましょう」
「何を?」
「生憎ですが、私はマッハ二十です。やれることなど幾らでもります」

 殺せんせーはそう言うと、教室の中に入っていった。
 風月もゆっくりと後を追った。





「何それ?」

 教室に戻った殺せんせーのしている事を見た風月は一言、あっけとした表情で言った。
 殺せんせーは何本もの触手を使いこなして、アルバム作成をしていた。

「命の危機的な状況に陥って、やるべき事というのが下らないアルバム作り!?」
「えぇそうですとも。もちろん、もう一つありますよ」
「何?このバリアを壊す打算であるの?」

 殺せんせーに剣を向けて問う風月に、殺せんせーは触手を止め、風月の目を見て言った。

「いいえ、若麻績さん。貴女の進路相談です」

 殺せんせーの答えを聞いた風月は剣を鞘に戻して、笑った。

「っふ、うふふ!!あははははは!!進路相談!?必要ないでしょ?勉強も運動も出来ない私に進路なんて無いわよ!!私は管理者権限の力で誰にも邪魔されずに生きていく。それで十分じゃない!!どうせ私なんか、生きていても何もできずに死んでいくだけの存在だったのだから!!!力を得た今、本を読んで暮らすだけじゃいけないの!!??」

 自分のどうしょうもない持論を荒々と叫んだ風月は、はぁはぁと息を上げる。
 風月の本音を聞いた殺せんせーは静かに言った。

「先生は教えたはずです、第二の刃を持てと。若麻績さんの管理者権限と言う不思議な力は立派な第一の刃です。今のクラスで言う、暗殺に当たります。ならば、その力が無くなった時の事を考えましょう。第二の刃を携えるのです」

 殺せんせーが言う、管理者権限に頼るな、と。
 その言葉は風月の怒りを沸き上がらせる。

「第二の刃を持て、違う力も持て。出来る奴らはいつもそう言う。それが出来ないから一つの事、読書だけに目を向けているでしょう!!読書以外、何もいらないのよ!!」

 感情に任せた言葉を言い切ったと同時に、風月は納めたばかりの剣を鞘から抜き床を蹴った。

「今なら誰にも邪魔されないわ!!これで最後よ、先生!!」
「若麻績さん。貴女を止めます!!」

 卒業まで後一週間、風月による最終暗殺が始まった。



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199 「51時間目 夢の終わりの時間」

長く空けてしまって申し訳ございません。



 アリスは宇宙からのレーザーを見た瞬間、正規ルートの階段やエレベーターから降りるのももどかしいと、ベランダから飛び降りた。
 きれいに着地をして、アリスは走る。
 直線距離で走った。
 目指すべき教室へと、最高速で飛び回る。

 人様の敷地に入るのは申し訳ございませんが、今回だけです。
 屋根を少しだけお借りします。

 アリスは謝りながら走る。
 途中で、連絡用にと渡されたスマホが鳴った。

 こんな時に!!

 そう思ったアリスだが、律義に確認は取る。
 屋根から屋根へと飛び移った瞬間を狙って、空中でスマホを取り出す。
 着地、と同時にまた走る。
 進路に注意しながらも、視界を広くしてメッセージの確認を取る。

『差出人:烏間惟臣
   緊急通達
  各自、自宅に待機し指示を待つように。
  また、『仕事』の事は許可が出るまで一切話さないように。』

 烏間先生からのメッセージはそう書かれていた。
 しかし、アリスの足は回れ右することもなく、走る速度を早めた。

 自宅待機が何ですか!
 政府の暗殺なんてどうでもいいのです!
 マスターがあそこにいるのですから!

 烏間先生の命令を無視してもなお、マスターがあそこにいると言う根拠のない勘を信じて、アリスは走る。
 ショートカットと言う直線距離で屋根の上を走っていたアリスは、封鎖されれている地上の道を難無く突破する。
 地上の警備を突破すると、後は椚ヶ丘中学校が所有する山があるだけだ。

 本来ならば山の中に『群狼』と呼ばれる別働部隊の傭兵集団が二重の警護に入っている予定だったが、アリスの行動が早すぎた。
 群狼は只今、クラスの監禁の為に動いている。
 もっとも、群狼のリーダーであるホウジョウが居てもアリスを止めることは出来なかったであろうが。





 * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *





 一本の剣が振り下ろされる。
 受け止めようと構えていた殺せんせーは刹那、嫌な気配を感じ取って避けに転換する。

「はぁ、はぁ、はぁ」
「・・・恐ろしい勘ね」
「何ですかその剣は?確かに金属のはずです」


 避けたと思った殺せんせーだったが、足に当たる触手の何本かが切られていた。
 風月が持っている剣の素材は確かに金属類、それでは殺せんせーにダメージを与える事が出来ないはずだったが。

「エンチャントコード、対触手。私なら、あらゆる物に付属効果を付けられるわ」

 管理者権限の前には全てがデタラメである。
 風月は今、移動速度up、筋力up、攻撃力up、体力up、回復速度up、回復遼up、跳躍力up、動体視力up、思考速度up、火炎耐性up、肺活量up、落下体制up、爆破耐性up、飛ぶ道具耐性up、近接攻撃力up、魔法攻撃力up、発動速度up、行動予測補正、暗視補正、ダメージ補正、水中行動補正、隠密補正、剣術補正、生理的欲求無効化、アイテムコンマンド簡略化、毒無効化、無演唱化、などと言った無数のハブをかけていた。

 これだけやって負けるわけがないわ。
 今の私に勝てるのは同じ管理者権限を持つ者だけ。

 風月は、かけすぎだろ!?と言われる程のハブをかけた余裕によって、口元が緩んでいた。
 狂った様な笑みを浮かべる。



 しかし、風月は失態を犯した。
 政府の計画通り、この校舎に誰も入れないと思っていたが為にマップの確認を怠った。
 意識の全てを殺せんせーに向けていた注意不足。
 この二つの失態が風月にとって裏面に出てしまった。





 * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *





「はぁ、はぁ、はぁ」


 ズゴゴゴーーー!!
 大地がうねりを上げるかの様に鳴り響いた。
 カッ!!ズシャンン!!ズシャンン!!ズッシャン!!ズシャン!!ズシャン!!
 天が光り、天の裁きと言える雷が無数に降り注ぐ。
 ザァーザァー!!ビュウ~~~ゥ!!ゴゴゴゴォォォォ!!
 雨が滝の様に流れ落ち、嵐の如く風が吹き荒れる。
 ブォオォォ!!
 かと思えば辺り一面、火の海に変わる。
 まさに天変地異。
 辺りはそんな現象の余波を受けていた。

「はぁ、はぁ・・・マスター」

 そんな中、アリスはただひたすら、天変地異に向けて走っていた。

 アリスが警備網を抜け山に入って直ぐだ。
 殺せんせーを逃がさない為のドーム付近で異常現象が確認された。

 あんな事が出来るのはマスターしかいないのです。
 私の勘は間違っていませんでした!

 アリスは自身の思いが間違って無かったのだと、再確認し足を早めた。

 もう直ぐバリア内です。
 待っててください、マスター!!





* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * 





 「無様ね。でも、褒めてあげるわ。よくここまで逃げ回れたわね?流石、死神の名を持つ殺し屋ね。でも、もうおしまい。手足を封じられ、細胞の一つすら動かせないこの状況なら、後は私が剣を振りかぶるだけ。何か言いたいことは?」

 風月は自身が創りだした結界によって捕らえられた殺せんせーに向かって言い放つ。
 と同時に声帯と口の中細胞だけ動かせる様にした。
 
 戦いは一方的な展開だった。
 管理者権限によって引き出された身体能力で繰り出される斬撃、そこまでだったなら殺せんせーにも勝機があった。
 しかし、実際に起こったのは防御戦。
 斬撃に加えて、無演唱かつ瞬時的に発動される上級魔法の数々。
 時間が経つにつれて避ける事も難しくなっていく耐久戦に殺せんせーは負けた。

「・・・まさか此処までとは。四月とは大違いですね」
「それはそうでしょうね。ここまで」

 来るのにどれだけ経ったと思ってーと言いかけた所で辞めた。

 タコの話なんて聞く価値もないじゃない。
 サッサと殺してしまおう。
 そうして、何もやらなくていい本だけを読む生活を始めましょう。

 風月は剣を振り上げた。

「・・・もういいわ。お前の言い残す事に興味はない」
「若麻績さん、私は信じてますよ」

 殺せんせーの言葉に風月の身体が一瞬止まる。

 今更何を信じると言うの?
 まさか、時間稼ぎ!?
 でも、どうでもいいわ。

 風月は殺せんせーの言った意味を考えようとしたが、考えるのを辞めた。
 ごちゃごちゃと考えるのは面倒だから。

「さようなら」

 言葉と共に振り下ろされる剣。
 風月が振り下ろした剣は、殺せんせーの心臓に向かっていき・・・・・・・・・



「もう!やめてください!!マスター!!」
「っ!!?」

 剣は、殺せんせーの心臓に当たらなかった。
 殺せんせーを真っ二つに斬ろうとした剣は代わりに乱入者、アリス・ホワイトシルバーを切り裂いた。
 並みの刃物ならキズ一つどころか、刃物の方が折れる程頑丈なアリスの肌は、左肩から腰の方までかけてサックリと切られた。
 ホムンクルスであるアリスも、傷口からドクドクとドス黒い血が人間と同じ様に、とめどなく流れ出ている。

「・・・なん、とか。ま、間に合い・・・・・・ました」
「アリスさん!!」

 どういう訳か、身体が動くようになった殺せんせーが崩れ落ちていくアリスを抱きかかえる。

「しっかりしてください!!」
「マスター・・・」

 風月は動いた殺せんせーに気に留めず、今の現状にただ立ち尽くすだけ。
 それは、アリスがどれだけ傷突こうと関係ないと思う無関心か?
 それとも、指の一振りでそんな傷簡単に完治出来る余裕の表れか?
 違った。
 風月は己の思考回路の限界を超え、ただ混乱していた。

 何でここにアリスがいるの!?
 何でタコは動けるの!?
 何で私は・・・倒れるの!!?

「うっぶ!」

 風月は力を失ったかのように倒れた。
 否、失ったのだ。
 風月が自身にかけた無数のハブは解けていた。

 何で?
 とにかくハブをかけ直さないと・・・!!??

 一心不乱に管理者権限のウインドウを開こうとする風月だったが幾らやっても開かない。
 なぜなら・・・・・・・・

『管理者権限の機能を停止しました』

 風月の視界にはその『文字』がポツンと表示されていた。

「何で!!?マネジメントID:90682、システムログイン!!・・・開け!!?なんでよ!!」



 そんな風月の傍らでアリスは視界に映る『文字』に目を向けていた。

「こ、れは?」
「アリスさん!!しっかりしてください!!」

 殺せんせーが懸命に声をかけるが、アリスの耳には全くと言っていいほど聞こえて無かった。
 アリスの視界に映る『文字』それは・・・

『一時的なログインの許可を認識しました』

 風月が管理者権限を使えなくなった代わりに、アリスの元に管理者権限が舞い降りていた。




作中のハブは適当に書きました。


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200 「52時間目 終わりの始まりの時間」

祝総投稿回数200回!!?そして……………


 突然と表れた『文字』にアリスは戸惑いながらも操作を行う。

 確か、この一覧のこの辺だったはずです。

 瀕死のアリスがおぼつかない手取りでウインドウを操作するのを見て、殺せんせーには何をしているのか分からない。
 それでも、何をやってるのか分からないアリスの行為をやめさせようとする。

「アリスさん!!しっかりしてください!!今先生が応急処置を―――」
「大丈夫ですよ、殺せんせー。……今、治りますから」
「な!何を言って―――――――っ!!?」

 殺せんせーの応急処置を拒否したアリスは、ようやく目的の場所を見つけた。
 今更ながら、希望に縋るようにしっかりとタップをする。
 結果は希望通り。
 ざっくりと切り裂かれた傷口は跡形も無く消え去り、身体の調子はきれいさっぱり戻った。
 むしろ、今まで以上に身体が軽い、とアリスは思った。

「……アリスさん、それは!」
「どういう訳か、一時的な権限を得たようです」

 心当たりはありますが………。

 アリスの頭の中にスティーナの言葉が甦った。

 『今は何か用があって現れた、と思って下さい。何の用かは後ほど分かる形になっていますので。それをどう使おうと、あなたの勝手です。物語はあなたたちの気づかないうちに、終末へと進んでいくのですから』

 何か用があって現れた、とは私に一時的な権限を与える為でしょう。
 後ほど分かる、は私がマスターの手によって瀕死に陥ったから一時的な権限が発動したのでしょうか?
 それをどう使おうとあなたの勝手、なら私がマスターの助けを行っても、何もしなくても、殺せんせーを殺しても、私の勝手。
 でしたら、私は………………





* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *





 風月は今、幾つものハブや装備スキルによって誤魔化していた身体の弱さを目の当たりにしていた。
 本来ならば、人外となった殺せんせーとの戦闘に生身の人間が肉弾戦を挑んでも勝てない。
 ましてや風月の身体は人一倍弱い。
 そんな体で戦闘を行った後、誤魔化しが消えたらどうなるのか?

「ぜぇぜぇぜぇ、っう!ゲホゲホ…あぁ!!!」

 答えは単純、重度の無理によって筋肉痛どころではなくなる。

 何で権限が無くなったの!!?
 あぁ!体中がバラバラになるほど痛い!!

 初めは権限が無くなった事に対する怒り、嘆きと言った感情だけだったが次第に身体の悲鳴だけが頭の中を占めていく。

 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛イイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイ……………………………………………………………………………………………………………――――――――――――――――――。


 今まで感じたことのない痛みに、風月の思考は逆に冷静になって行った。

 管理者権限………が無くなった……………………今……………………あの家に……もう……、戻ることは……………………出来ない。
 集めた……………………本も……もう、…私の…手には………戻ってこない。
 ……これから、…私は……どう生きれば……………良いの…だろうか?
 ……………いや、……………生きる…意味は…もう……失ってしまった。
 このまま………………この…痛みを……受け入れたら……私は………死ねる…だろうか?

 『テレポート』でないと行き来が不可能な場所に建てた風月の家。
 管理者権限を失った風月では、もう二度とその場所に行くことは出来ない。
 そう悟った風月は無駄な足搔きを辞めた。
 痛みを受け入れて死のうと、目を閉じた。

 あぁ、痛みが消えていく。
 これが死ぬ……私が何回も望んだ感覚……。





 しかし神は風月を簡単には終わらせさせなかった。
 
 身体は軽くなっていくのに対し、意識は一向に薄れて行かない。
 むしろ、ハッキリとしていく事に風月は戸惑い、目を開けた。

「何が起こって!!?…ゑ!」

 今にも死にそうだった身体は風月の脳の命令によって、いとも簡単に動いた。
 痛みが消えたのは幻覚などではなく、管理者権限をもらう前と何ら変わりもない状態に戻っているのを風月は感じとる。

 死に掛けだった風月を元の状態に回復させた。
 その様な奇跡、神以外にいるのだろうか?
 否この場に一人、神の代行者とも言える権限、『管理者権限』を一時的にだが持つ者がいる。

「…マスター」
「どうして…!」

 アリスである。
 アリスは自分を創ってくれた風月に生きて欲しいと願い、風月の身体を完全回復させた。

 どうして?と言われましても、私はマスターに生きて欲しいから助けたのです。
 生きて、恩返しをさせて下さい。マスター。

 アリスが考え、行動した行いは、それだけを見れば『助けられた者が助けた者の窮地を救い恩返しをしたい』そう見えるだろう。
 しかし、死ぬ直前の生き物の命を救うことは、必ずしも救われた物を助ける事になるとは限らない。
 風月の事例も同じだ。
 死にたい、終わらせたいと願っていた風月に、アリスが己のエゴで風月の命を増やした。

「……死ねない?……………」

 結果、風月は壊れた。




* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *





 風月が大人しくなったのを確認したアリスは殺せんせーに向き合う。

「この度はお世話になりました」
「いえいえ、先生が生徒を助ける事は当然のことです。ですが、アリスさんが来てくださらなかったら先生は殺されていました。偽りの力であろうと、先生を此処まで追い込んだのは見事でした」
「…。これで良かったのでしょうか?今になってそう思います」

 アリスは俯いて殺せんせーに問う。

「いいですか、アリスさん。あの時こうすれば良かった、ああすればこうなったのに。そう考えることは終わった後で幾らでも出来ます。大切なのは、これからどうするかです」
「これから?」
「そう、これからです。アリスさんはどうしたのですか?」

 アリスは殺せんせーに問われ考える。

 これからどうしたいのか?
 そんなこと、生まれた時から決まっています。

「マスターに一生仕えます。それが恩返しにならなくても、私がそう決めたのですから」

 アリスに依然聞いた決意を思い出させると、殺せんせーは教室に戻って行った。

「さて、アルバム作りの続きといきますかね」
「ありがとうございました」

 アリスは殺せんせーにお辞儀をして見送ると、敬愛するマスターに意識を向けた。

「マスター、外はまだ寒いです。私達も校舎に戻りましょう」
「……………」

 アリスは風月に声を掛ける。が風月は一向に動かない。
 不思議に思ったアリスは風月に近寄った。

「マス、たー?…!」




* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * 




 時は経ち、レーザー発射まで後わずか。

 アリスと風月を除く生徒達が無事に校舎に辿り着き、柳沢と二代目死神の襲撃があったものの何とか撃退。
 そして今、最後の出欠を取っていた。
 番号順に名前を呼ばれ、答える。
 最後の方になった。

「二十七番若麻績風月さん」
「……………。はい…」

 感情のこもってない声がでる。
 違う、こもってないのではなくて感情がないのだ。

 風月は壊れた。
 全てを失い、終わろうとしても終わらない。
 風月は考える自我を棄てた。
 今、風月の状態を言葉に表せたのならこんな風だ。

 アリスや誰かに呼ばれたりしたら、遅くても十秒以内に答える。
 排泄や睡眠も取る。
 用意さえされれば食事も取る。
 しかし何もなければ、時と場合関係なくぼーっとしている。
 行動がゆっくりとしている。
 目にも声にも生気が漂っていない。
 時折、手を動かして何かをしようとするが何もない。

 ただ何も感じず生きてるだけ。
 風月の状態はそんなだった。

 風月から二人呼ばれ、最後に。

「三十番アリス・ホワイトシルバーさん」
「…はい」



 殺せんせーにお礼申し上げた後、アリスはマスターの異変に気づいた。
 アリスは暗殺を勝手に止めた自分に、何も言ってこないマスターを心配した。
 声を掛けても返事はする。
 だけど、その声には感情がない。
 殺せんせーに相談してみると、時間経過を勧められた。

 自分のせいでマスターが壊れた。

 そう思い、取り乱すアリスは管理者権限で何かないかと探そうとした。
 しかし、管理者権限の一時的な許可は切れた後だった。

「っ!後は自分で何とかしろってことですか?スティーナ様」

 アリスは風月と違い、焦ったりしない。
 落ち着いてやるべき事を一から見直す。

 先生はおっしゃたではないですか。
 こうすれば良かったなどの言い訳は、後から幾らでもできる。
 大事なのはこれからどうすればいいのか。だと!



 アリスはマスターの状態が良くなるのを信じて、この一週間お世話し続けた。
 マスターが望んだ『殺せんせーの死』その直前に至っても、まだ状態は変わらない。

 先生の死、その直前なら何か変化が訪れれば!と思いましたが…。
 仕方ありません、何年でも待ちましょう。

 そして、潮田渚の手により殺せんせーは暗殺された。





* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * 





 風月とアリスが椚ヶ丘中学校を卒業して、七年が経った。

「では、マスター。お仕事に行って参りますので、お留守番の方よろしくお願いします」
「……………うん」
「では、行ってきます」

 アリスはとあるマンション一部屋を借りて暮らしていた。
 風月を養う為に今日もお仕事に出勤するアリスを後に部屋には風月一人だ。

 長いと言えないが短いとも言えない時間が経ってなお、風月の状態は変わっていなかった。


 かのように見えた。


 風月はアリスを見送ると、一冊の本手に取る。
 タイトル名は『殺せんせーのアドバイスブック 若麻績風月編』
 風月個人が持っている唯一の本だ。

「……………三回目」

 最後のページを読み終えた風月は呟いた。
 三回目、もちろん意味は読み終えた回数のことだ。
 他のクラスメイトは半分すら読み終えてない中で風月は三回も読み終えていた。
 ただぼーっとしていたある日、アリスが本を読ませれば治るのではないか?と思って風月にアドバイスブックを渡した。
 それから風月は一人でいる時、少しずつ読み進めていた。

 一回目はそこに本があるから本能的に読んだ。内容は頭の中に入ってない。
 二回目は内容をきちんと整理しながら読んだ。
 三回目は二回目に解らなかった内容を知ろうと読んだ。

 そして、三回目を読み終えた今……………



「出来る事を………探そうかしら?」



 今回を持ちまして『本好きと暗殺教室』を完結とします。
 最後まで読んでくださった方、感想を言ってくださった皆様のお陰で完結することが出来ました。ありがとうございます。
 主人公は本が好きシリーズはまだまだ続いて行きます。良ければ他作品、次作もよろしくお願いします。
 今までありがとうございました!!


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