魔法使いが来る! (ケモミミ愛好家)
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俺達が転生する!



ヨーソロー!

初めましての人は初めまして、ケモミミです。
何か転生物やこのすば読んでたら書きたくなったので書きました(笑)

一応ドライブの方優先で行きますので、余り投稿速度は良くないと思いますので、ご了承下さい。


*本小説はかなりギャグよりで原作の流れに沿いますが、原作ブレイクのオンパレードです。
原作の展開が好きな方にはおすすめしません。
また、本小説をよんでアカメに興味を持たれるのは喜ばしいですが、原作の過酷さに絶望してファントムを産み出しても、ケモミミは一切責任を取りません。



 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある公園、そこに停まる1台のワゴン車。

そこには『はんぐり~』と書かれた暖簾があった。

世間で言う移動販売のドーナツ店である。

そこにある簡易式の椅子に腰かける2人の若者がいた。

 

 

「そういやそろそろ、アカ斬るの新刊発売だっけか‥」

 

「まじで?!マヨネーズ買い足しとかねぇと」

 

「何でマヨネーズが要るんだよ?!」

 

「だってあれ読むと暗くなんだぜ?

 元気を取り戻すには、マヨネーズが必要不可欠だろうが」

 

 

そう言いながら、天然パーマの青年が手にしたドーナツにマヨネーズを盛大にかけ始める。

 

 

「あ~…もったいない‥」

 

 

それを向かいで見ていた黒髪の青年は呆れた顔をし、ため息をついた。

 

 

「食うんだからいいじゃんか」

 

 

そう言ってマヨネーズを乗せたドーナツを方張る青年は、満足そうな笑みを浮かべた。

 

 

「やっぱマヨネーズは何にでも合うな!」

 

「見てるこっちが吐きそうなんだが…」

 

 

黒髪の青年はそう告げると、手元のコーヒーを口にする。

 

 

「そういや兄ちゃんは就職決まったの?」

 

「まぁ、なんとかな」

 

 

黒髪の青年は疲れ切った声で答えた。

 

他愛の無い日常の会話、2人の兄弟はいつもの様に話しをする。

周りでははしゃぐ子供達の笑い声、噴水から聞こえる水の音、ただ単に続く平和な日常。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この日、この2人の兄弟の平和な日常は、“終わった”。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ……何かあの車変じゃね?」

 

「言われてみれば…」

 

 

ヨロヨロと蛇行するトラック、その行き先に目をやった2人は、目を見開いた。

 

 

「やっべ?!」

 

「マジかよ?!」

 

 

2人は走り出した。

 

トラックの行き先へ、

 

 

 

 

そこにいる小さな2人の子供に向かって。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気付けば視界は低く、酷くぼやける。

 

体中が痛む、息が出来ない。

 

ふと横を向けば、地面に倒れた自分の弟が、その奥で泣き叫ぶ2人の子供、騒ぎ集まる外野の人達。

 

 

 

 

青年の意識は、ここで途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…‥‥目覚めなさい…

 

 

「zzz…‥‥」

 

「グゴー…ガー…」

 

 

…‥‥目覚めなさい…

 

 

「…‥‥ん…zzz…」

 

「フガッ……ゴガー…」

 

 

…‥‥目覚めなさい…

 

 

「…‥‥んぁ…zzz‥」

 

「ガー…ズゴー……」

 

 

……あの…

 

 

「Zzz…」

 

「フゴー…」

 

 

……起きてくれませんか?…

 

 

「ん…後5分…」

 

「俺は気分……」

 

 

………えっ…と……

 

 

「Zzz…」

 

「フガー……」

 

 

 

起きろっつてんでしょうが!!

 

 

「…んだよ、うるさいなぁ…攻也起きろ…お袋がうるさい」

 

「いいんだよ、ほっとけ……今日は学校サボる…」

 

「誰がお袋じゃあ!!」

 

「「うわっ?!」」

 

 

2人の青年が驚き辺りを見回す。

そこは白一色、何もない空間だった。

ただ1人、赤みがかった髪の少女が2人の前で腰に手を当て、立っていた。

 

 

「「えっ誰?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side???

 

 

誰だ?この女?

 

どっかで見たことあるような‥‥無いような…

 

てか、ここどこだ?

 

辺り見回しても白、白、白。

目が痛くなる。

 

 

「えー…と、…‥攻也、お前の彼女?」

 

「んな訳ねぇだろ兄ちゃん」

 

「だよな」

 

「兄ちゃんの彼女じゃないの?」

 

「俺に彼女がいると?

 人生で1度と無くモテた事の無い俺に彼女だと?」

 

「ゴメン兄ちゃん!」

 

 

弟の返事に俺はキレ気味で答えると、弟の攻也はあわてて返した。

 

 

「はぁ…確かに可愛いが、おっぱいが小さいな…顔は好みだがスタイルはもう少し欲しいかな」

 

「兄ちゃん巨乳好きだからな。

 俺はこれくらいが好みかな」

 

 

俺達の会話を聞いていた目の前の女は顔を赤くし胸を隠す。

 

 

「信じられない?!普通初対面の女性に胸の話しする?!」

 

 

そう言われてもな…‥

 

とりあえず…

 

 

「なぁ、ここどこだ?」

 

 

俺は目の前の女に質問すると、女は自慢気に語った。

 

 

「“ここは死後の分岐点、貴方達は死んだの”」

 

 

………

…………

……………はぁ?

 

 

ナニイッテンダ?コイツ……

 

 

「貴方達は死んだの、ここは死後の世界。

 正確には死んだ後に、天国に行くか、地獄に行くか、そして…“転生”するかを決める場所」

 

 

淡々と話し続ける女、俺は自分が死んだ事を実感できないでいた。

 

 

「あのさ」

 

「何?」

 

「俺達は死んだのか?」

 

「そうよ」

 

 

俺の質問に女は、冷静に、冷酷に、あっさりと答えた。

 

 

「マジかよ~…」

 

隣では弟の攻也が仰向けに寝転がる。

 

ただ俺はまだ女の言葉を信じられず、死んだ事を確かめる方法を模索していた。

 

しばらくし、一つの案を思い付く。

 

俺はゆっくりと、右手を女に向け開く、そして……

 

 

 

 

 

ムニュッ…

 

 

「ふぇっ?」

 

 

ムニュ、ムニィ、ムニュ

 

 

俺は女の胸を揉みし抱いた。

なぜか…

よくマンガ等で夢か現実かを確かめる手段として、頬をつねる行動がある。

それと同じようなものだ。

脳に刺激を与える。

そのために胸を揉む。

 

だって自分の頬つねるとか痛いじゃん。

 

 

「なっ?!な、ナ、な、…なにすんのよ!!」

 

「グバラッ」

 

「兄ーちゃーん!」

 

 

アッパーを受けた俺は、勢い良く吹き飛んだ後、地面に叩きつけられた。

 

 

だがおかしい……

 

 

「痛い……」

 

 

そして右手を見る。

 

 

「柔らかい……」

 

 

痛覚、触覚はある。

 

ホントに死んだのか?俺らは…‥

 

 

ふと自分が元に居た場所に目を向けると、赤髪は胸を手で隠し吠えている。

 

 

「信じられない!!普通、初対面の女性の胸揉む?!

 ましてや女神よ?!女神の胸を揉むなんて聞いたことないわ?!」

 

 

ギャーギャーわめく赤髪は、俺を睨み付けてくる。

 

…‥?

 

今アイツ‥‥

 

 

「なぁ、攻也?今アイツ自分の事“女神”って…」

 

「あぁ…言ったな」

 

「そうよ!私は女神よ」

 

 

フフンと鼻を鳴らし、ドヤ顔で仁王立ちする赤髪がいた。

 

 

「まさか…嘘だろ…‥」

 

「本当よ」

 

 

いまだに仁王立ちを続ける赤髪を見て、俺と攻也は互いの顔を見た。

 

 

「どう?畏れ入った?」

 

「「イタタタタ、痛いよ~お母さ~ん」ここに頭怪我した人がいるよ~」

 

「ちょっとどういう意味よ?!」

 

「どう…って…‥なぁ?」

 

「あぁ、その年格好で自称女神は…」

 

「本物よ!!」

 

 

すると赤髪はポーズを変えて話し出す。

 

 

「私は死んでしまった人の魂を導く女神、ユリーナよ」

 

「「イタタタタ、痛いよ~お父さ~ん」絆創膏持って来て~、出来るだけ大きな~、人一人包み込めるくらいの~」

 

「いい加減にしなさいよアンタ達」

 

 

握り拳を震わせながら自称女神は言い放った。

 

 

「なら証拠見せて貰おうか」

 

 

攻也は自称女神(笑)に喧嘩腰で話しかける。

 

 

「…‥……」

 

 

何か睨まれてる?

 

 

「良いわよ。

 見せてあげる」

 

 

そう言って自称女神(笑)は小さく深呼吸すると、身体が浮き出した。

 

 

「どう?」

 

「どう…って…‥」

 

「「地味」」

 

「ちょっと!これ結構大変なのよ?!」

 

「そう言われてもなぁ…」

 

「てかスカートで浮いてるとパンツ見えるぞ」

 

「ッ?!‥アッ…キャアッ?!」

 

 

動揺したのか、自称女神(笑)はスカートを押さえながら落ちた。

 

 

「大丈夫かー?」

 

「誰せいだと思ってんのよ?!」

 

「いや、自業自得だろ」

 

 

そう言い放った攻也に自称m…

 

 

「黙ってればさっきから自称女神(笑)って‥私は正真正銘の女神よ!!」

 

 

…‥?

 

 

「言っておくけど、貴方達の心の声なんて丸聞こえなんだから」

 

 

 

…‥マジで?

 

 

「マジよ」

 

 

ドヤ顔で俺を見る自sh…「ん?」…女神は俺達を指差し、こう言った。

 

 

「疑うなら心の中で何か言ってみなさい。

 当ててあげるわ」

 

 

そう言った瞬間、鬼の形相で女神は弟を殴り飛ばした。

 

 

 

 

side??? out

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

side攻也

 

 

 

心を読む~?!

 

信じらんね。

 

 

「疑うなら心の中で何か言ってみなさい。

 当ててあげるわ」

 

 

よ~し、やれるもんなら当ててみやがれ!

 

 

(やーいやーい縞パーン。縞縞パンツ~♪)

 

 

ふっ、心の声なんて聞こえる訳n……

 

 

「ゴッドハンドクラッシャー!」

 

「ブヴェァァァ!」

 

 

 

気づけば俺は頬に走る激痛と共に宙を舞っていた。

 

 

「おーい、大丈夫かー?」

 

 

俺が元いた場所から、兄ちゃんが呼び掛ける。

 

 

「マジで…読めんのか……っ」

 

 

俺は女神の実力を文字通り身をもって知ると同時に、意識を手放した。

 

 

 

 

side攻也 out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side???

 

 

 

 

 

「もう…嫌‥…‥何なのよコイツら…」

 

 

よよよと泣き出しそうな勢いの女神は涙混じりに愚痴り出した。

 

 

「何って、人様を訳の分からない空間に閉じ込めた上、睡眠の妨害、あげくの果てには自分は女神だなんて言うほうが頭おかしいだろ」

 

「兄ちゃん、アイツそろそろ泣いちまうぞ?」

 

「お、眼が覚めたか…ったく、しゃあねぇな」

 

 

俺は頭をかきむしりながらため息をついた。

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

「本題に入るわ」

 

 

泣き止んだ女神は立ち上がると、さっきまでのおふざけを忘れさせる様な、真面目な顔と声で話し出した。

 

 

「あなた達にはある世界に転生してもらいたいの」

 

「ある世界?

 転生?

 ……どこにだよ?」

 

 

「いわゆる物語の世界よ。

 貴方達の世界では小説やドラマ、漫画などの世界はフィクションであり所詮は創作物に過ぎないけど、生まれた瞬間にその世界は実在するの。

 貴方達の世界に創作物として実在したように、その世界そのものも実在すると言う事。

 逆に貴方達の居た世界は、他の世界では夢や創作物に当たる、解るかしら?」

 

「あぁ……何となく解る。

 …つまり俺達の世界は、他の世界では漫画やドラマ、小説として存在するって事だよな?」

  

「ご名答……他の言い方をするなら…パラレルワールド、多重世界理論ってところかしら。

 貴方達の知る創作物の世界は実在する、そこに貴方達は転生するのよ」

 

「なるほど…転生ってそう言う事か…」

 

「どういう事だ?」

 

 

俺と女神が話しに納得していると、話しを理解出来ていない馬鹿が1人、口をはさんだ。

 

 

「ハァ…」

 

「貴方…さっきの話し、理解して無いの?」

 

「ばっ…バカにすんな!

 確かに数学は苦手だけど…体育と歴史は得意なんだぞ!」

 

 

「数学の話しなんかしてないんだけど…」

 

 

弟の馬鹿さ加減を知らない女神は困惑していた。

そうだよな…

心が読めるからって全部が分かる訳じゃない。

 

 

「あ~…

 ゆりっぺ、お前女神なら俺らのパラメーター?

 能力値みたいなの見れないか、それで分かると思うわ」

 

 

俺は女神(ゆりっぺ)に助け船を出した。

 

 

「ゆりっぺ?!

 何よそのあだ名?!

 何でここに来た奴の大半はそのあだ名を付けるのよ?!」

 

「いいから、さっさとしろ」

 

「え…

 え~……と…」

 

 

ゆりっぺは手に本を出現させると、それを読み始める。

読み進めて行くと、その表情は困惑から絶望に満ちた、真っ青な顔になっていた。

 

 

「な、何よ…これ……知能…9?!

 冗談でしょ?!

 鳥でも二桁あるわよ?!」

 

「因みに俺は?

 人並みなのか?」

 

 

数値の基準が分からない俺は、自分の数値を聞いた。

 

 

「貴方は…31ね。

 平均値、人間は大体30~40が平均よ……」

 

「まぁそんなもんか」

 

「因みにカマキリは6、蜘蛛は15よ……」

 

「アイツの知能カマキリ以上…蜘蛛未満か…」

 

「俺ってそんなに凄いのか…

 流石俺だな、うん!」

 

「あぁ…凄いよ……

 今の会話から自分の知能が優れてるって、勘違いしてる辺りから」

 

「こんなの転生させて大丈夫かしら…」

 

 

俺とゆりっぺは同時にため息をついた。

 

 

「そういやぁ、俺らどこに転生ってのするんだ?」

 

「さぁ?

 あ!でもごちうさやラブライブなら大歓迎かも。

 城下町も捨てがたい……まぁ平和な所なら、なんでもいいや」

 

「やっぱ平和が一番だな」

 

 

俺達が転生先の話しをしていると、ゆりっぺは思い出したかの様に話し出した。

 

 

「そう言えば言って無かったわね。

 あなた達の向かう世界……それは………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………“アカメが斬る!”の世界よ」

 

 

 

 

「「よし!断る!!」」

 

「即答?!」

 

「当たり前だ、何が悲しくて新しい人生を悲惨な世界で過ごさなきゃいけないんだ!」

 

「なぁゆりっぺ、他には無いの?」

 

「え?ち、ちょっと待って……え~……と」

 

 

ゆりっぺは辞書の様な物を取り出し、ペラペラとめくりだす。

 

ーやっぱりアナログだなぁ…

 

 

「うるさいわね!

 ……え~と…あった!

 進撃の巨人「「却下」」

 …北斗の拳…「「断固辞退する」」

 テラフォーマーズ「「チェンジで」」

 ……じゃあ…ゴッドイーターは?」

 

「生アリサに生アネットに、生カノンちゃんか……興味あるな…」

 

「あぁ、生でアリサたんを拝見してみたいし」

 

「じゃあ!!」

 

「だが断る!」

 

「何でよ!」

 

「この俺が最も好きな事の1つ、それは…

 自分が絶対的優位だと思っている奴に、NOと断ってやることだ!」

 

「訳分かんないわよ!じゃあ聞くけど、どこなら良いのよ!?」

 

「どこって…他には?」

 

「ブルージェンダーでしょ、ブラック・ブレッドでしょ、コープス・パーティーにマブラヴオルタ…後は……

 アナザー」

 

「何でろくでもない選択肢しか無いんだ?!

 嫌がらせか?パンツ見た嫌がらせか?

 それともその貧相の胸揉んだ仕返しか?!」

 

「兄ちゃん落ち着け」

 

「これが落ち着けるか?!

 お前アニメとかあんまり見ないから悠長にしてられんだ?!

 何でホラーとかサスペンスとか崩壊世界の類いしか無いんだ?!えぇん!?

 何かこう…緩やかなフワッとした、平和なのは無いのかよ?!」

 

「無いわよ」

 

「「即答?!」」

 

 

今にも暴れ出したい気持ちを抑えながら、ゆりっぺを睨む。

 

ーくっそこの駄女神、もっかいその乳揉みしだくぞ

 

 

 

「勘違いしないで。

 これは嫌がらせとかそんなんじゃないから…

 って?!その手の妙な動き止めて?!」

 

 

ーおっといけない…

 

俺は無意識に左手をワキワキしていた。

 

 

「オホンッ…

 実はこれには深い理由があるの」

 

 

わざとらしく咳払いをした駄女神は真面目モードで話し出した。

 

 

「元は貴方達の言うような世界もあったの、平和な世界とか…

 でも大体の人達は刺激のある、自分が活躍できる新しい人生を求めて、わざと危険な世界に転生する人が絶えなかったの。

 でも実際に転生した人達はその過酷さに耐えられず、リタイア…中には自殺する者まで出てきたの…」

 

「転生特典とか無いの?

 よく二次小説とかであるけど」

 

「与えたわよ…

 幻想殺し(イマジンブレイカー)

 一方通行(アクセラレーター)

 キングストーンやギアス、悪魔の実とか、イノセンスにその他色々…

 チート涙目的な、滅茶苦茶なのをね…

 でも力を与えたところでその人自身、精神は変わらない。

 それが原因で脱落者が後をたたないのよ」

 

 

「なるほど…

 でも、なら何で俺達なんだ?」

 

 

駄女神の話しに納得した俺は、最大の疑問を投げつけた。

 

 

「一応天界の方で基準を定めたの。

 精神力は勿論、体力、知力、環境への適応力、その他いろいろ。

 何項目かあって、その全体の80%をクリアすれば、その人の希望する世界に転生させてるの。

 ただ基準値を大きく上回る人は、出来る限りそういった危険な世界に転生して貰ってるの。

 特に貴方達は精神力に関して異常なまでに高い数値を出してるから、その為ね」

 

 

「精神力って…それってどういう事なんだ?」

 

「分かりやすく言えば、絶望しずらい」

 

「え?

 それだけ?」

 

「そうだけど、これはかなり凄いことよ?」

 

 

俺と攻也はその凄さに気付けないからか、駄女神は話し続けた。

 

 

「つまり戦争の無い、平和そのものな世界の人達は特に打たれ弱いわけ。

 例えるなら、エサを必ず貰える動物園で暮らしてきた人懐っこいライオンを、いきなり自足自給の喰うか喰われるかの極限サバイバル状態のサバンナに放り出す様な感じかしら」

 

「分かるような、分からないような…」

 

「つまり、平和ボケしている奴をそう言う世界に転生させても役に立つどころか、逆に迷惑になると…」

 

「そ、前回は酷かったのよ?

 ゲームやマンガでその世界を熟知してるつもりの引きニートやオタク、その逆のチンピラからギャル、一般的な社会人にマフィア、ヤクザ何かも転生させたけど、皆3日も持たなかったわ」

 

「3日って…」

 

「その世界を熟知しても、生きる術を知らない引きニートやオタク、逆に生きる術を知っても、その世界を知らず呑み込まれる人……

 男は奴隷になるか殺されるか、女子供は売られるか犯されて野郎の慰めものになるのが今までのオチよ」

 

「「えぇ~…」」

 

 

あまりの転生による問題に俺と攻也は軽く引いてしまった。

 

 

「でも貴方達は問題ない。でしょ?」

 

輪島 創太(わじま そうた)

 輪島 攻也(わじま こうや)

 貴方達にはアカメが斬るに対する知識がある。

 そして、その生い立ちから身に付けた、生きるための術も」

 

 

するとゆりっぺは俺を見つめる。

 

 

「そして…輪島 創太。

 貴方は今までの人達にはなかったものを、持っている。

 いえ、“経験”している。

 貴方達をこの世界に転生させる最大の理由…」

 

「おい!ゆりっぺ!!」

 

 

次の台詞を言おうとするゆりっぺを、攻也は叫んで止めようとする。

 

 

「攻也…別にかまわない」

 

 

俺は攻也の肩に手を置いてそれを止めた。

 

 

「別に、貴方“だけ”を転生させても良いのよ?」

 

「ざけんな。

 俺も行くに決まってんだろ」

 

 

挑発的な笑みで俺を見るゆりっぺと、俺の間に割って入った攻也はそう告げた。

 

 

「なら貴方達に“力”を授けましょう…これよ」

 

 

そう言って女神が出したのは、銀色の本体に金で縁取られた、黒い手の形した装飾が付けられたバックルの様な物と、黒い本体に左右2ヶ所に何かをはめるような凹みのある突起、そして扉を模した銀色のカバーが付いたバックルの様な物だった。

 

「っ?!これって…‥」

 

「「黙ったら死ぬ魔法の手(ウィザードライバー)大飯食らいの居候(ビーストドライバー)?!」」

 

「ちょっと何よ?!その悪意に満ちた呼び方?!」

 

「いや、だってなぁ?」

 

「あぁ…これは予想外だったわ……でも何でコレ?」

 

「だってあんな世界にカブトにフォーゼ、ファイズやドライブ何か行ったら、世界観ぶち壊しじゃない」

 

「「そんな理由?!」」

 

「…まぁ、確かにメカメカしたのは合わないわな…」

 

「あぁ~、俺マッハになりたかったなぁ」

 

「俺はファイズかドライブかな。

 まぁ、支給品に文句は付けないけどよ…

 こう言うのって、俺らが選べるもんじゃないの?」

 

「あぁ…確かにそうだけど、貴方達はこっちの都合で転生先を決めてしまったから、そのお詫びとして3つの特典を付けてるんだけど、装備の方はこっちから貴方達に最適な物、そしてその世界に悪影響を与えない物を支給する様になってるの。

 特典の内容は装備、スキル、そして本来の特典となる願い、その3つよ。

 それは装備で、あくまで戦う為の力、武器に過ぎないから。

 ちゃんとスキルと願いは別に用意させて貰うわ。

 じゃあ、まずはスキルから。

 どんなのが良いかしら?」

 

「「じゃあ、どんな相手でもモテモテになるスキルで」」

 

「モテる以外に望みは無いの?!」

 

「だって装備は上物っぽいし、他に要るものってな?」

 

「ん~…あ!マヨネーズ!!」

 

「それはスキルじゃないだろ…

 あ、あったわ」

 

「何かしら」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「絶〇体質」

 

 

 

 

 

 

 

「……は?」

 

 

「だから、〇倫体質」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スパァーッン!!

 

 

 

 

 

 

 

「面倒だわ、この中から選んで」

 

「良い蹴りだったぜぇ…」

 

 

俺は顔全体にひろがる痛みに絶えながら、ゆりっぺの出した資料に眼を通した。

 

 

ー透視に透明化、洗脳に催眠…くっそエロ系に使えるスキルが全部消されてやがる。

 

 

「しゃあない…じゃあ俺は無難に身体能力の向上で」

 

「俺は~…この索敵スキルでいいかな?」

 

「良いわ」

 

 

そう言ってゆりっぺは俺達が選んだスキルの資料を手にした。

 

 

「じゃあ最後に願いね。

 貴方達の願いを言いなさい。

 どんな願いも叶えてあげましょう。

「お前の払う代償はたった1つ…」

 って!横からチャチャいれないでよ!」

 

「じゃあ、コネクトの魔法で好きなときに好きなだけ無制限にプレーンシュガーを取り出して食えるようにしてくれ」

 

「あ!じゃあ俺はそのマヨネーズ版で」

 

「分かったわ…

 これで全手続きが済んだわ」

 

 

 

すると俺と攻也の足下が光だし、魔方陣の様なものが浮き出す。

 

 

「さぁ、行きなさい。

 絶望に満ちた世界の、新たな希望になることを願います」

 

 

ーいっちょまえな事言いやがって…

 

 

「最後くらい女神らしくさせてよ!」

 

 

 

そのゆりっぺの吠え面を最後に、俺の視界は光りに包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「……ん?…ここは…」

 

 

俺達は眼を開くと、さっきとは違う場所にいた。

 

取り合えず…

 

 

「「寒っみぃぃぃぃ?!」」

 

「何でこんなに…って?!雪?!」

 

「当たり一面真っ白だぜぇ…」

 

 

何で雪山からのスタート?

モン〇ンポータブル2ndじゃねぇんだぞ!

 

 

ー……ま、取り合えずは…

 

 

 

 

 

 

 

「「宿、探すか…」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして俺、輪島 創太と弟の攻也の新たな人生の幕が開かれたのである。

 

 

 

 





どうでしたか?

基本、ケモミミのやりたい事をするだけのネタ小説です。

ケモミミも初めましてアカメ(アニメ版)を観た際、
「やっべシェーレ可愛い!」
と思い翌日原作を全巻購入しましたが…(泣)

ちなみにケモミミはチェルシーとシェーレが好みです。

かなりのスローペースになると思いますが、よろしくお願いします。

誤字脱字あればご報告ください。


感想を書かれる際は、御手柔らかに(笑)
自分、豆腐メンタルですので。


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バカが食う!


スローペースとか言いながら、その日中に投稿。

今回は少し真面目な話しになります。(一応)


 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だあぁぁぁぁぁぁあああ!

 いつまで歩きゃいいんだよ?!」

 

「五月蝿いぞ攻也…」

 

 

俺、輪島 創太は弟の攻也と一緒に《アカメが斬る!》の世界に転生した。

 

だが何故か今は雪山の中を延々と歩いていた。

 

 

「ったく、スタートは帝都かどっか適当な村で良いじゃん。

 何で雪山何だよ」

 

「知るか、理由ならゆりっぺに聞け…」

 

 

俺達の新人生がまさか雪山のど真ん中からスタートするとは、俺も予想していなかった。

 

 

「…つーか、腹減った」

 

「俺も」

 

 

攻也の愚痴に同意しながら、俺はポケットから1つの指輪を取り出し、手のひらを模したようなベルトのバックルにかざした。

 

 

《コネクト…プリーズ》

 

 

すると魔法陣が展開され、そこに腕を入れる。

腕を出せば、手には好物のプレーンシュガーが…

 

 

「って?!あ”ぁ?!」

 

 

取り出したプレーンシュガーはすでに手から消えており、かわりに攻也の手にはマヨネーズがぶっかけられた、変わり果てたプレーンシュガーが乗っていた。

 

 

「返せ!俺のだろうが」

 

「良いじゃんか、無限に出てくるんだから…

 うんま~~~い!」

 

「ったく…」

 

《コネクト…プリーズ》

 

 

再びコネクトの魔法でプレーンシュガーを取り出したほうばる。

 

 

「つーか、ドーナツだけしか出ないのかよ」

 

「てめぇだってマヨネーズしか出せないだろうが…」

 

 

「「……はぁ…」」

 

 

互いのミスに愚痴りあいながら歩く。

 

 

「「何でコネクトで“何でも取り出せる”にしなかったんだろ…」」

 

 

ー後悔先に立たずとはよく言ったよ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういや攻也」

 

「ん?」

 

「お前、ハイパーリングとミラージュマグナム有ったか?」

 

「あぁ?うなもん……あれ?…無い?!」

 

「やっぱか…」

 

 

俺は予想通りの結果に肩を落とした。

 

 

「やっぱって、兄ちゃんも?」

 

「あぁ、インフィニティリングにフィニッシュとラッシュリングが無かった。

 後は…」

 

 

俺は2つのリングを取り出し、攻也に見せた。

 

 

「何だこれ?…濁ってる?」

 

「あぁ、ドラゴン系のスタイルリングにスペシャルリングがこんな風に濁ってんだよ」

 

 

俺はリングを仕舞いながら推測を話した。

 

 

「多分だが、このドラゴンの指輪はまだ使えないだけで、何か条件が合えば使える様になると思う」

 

「最初から楽は出来ないって事か?

 じゃあ、俺のハイパーやミラージュマグナムは?」

 

「原作が関係あるか分かんないが、あれは確か遺跡で発掘されたから…もしかすると、どっかの遺跡にあるかもしれないな」

 

「うぅわ、面倒っ…

 じゃあインフィニティも同じかもって事か?」

 

「もしインフィニティが原作通りなら、むしろ手に入んない可能性が高い。

 そもそも俺は、無い事に納得してるんだよ」

 

「え?!何で」

 

「そもそもインフィニティって、魔法石は存在しないんだよ。

 あれは晴人の涙に反応して結晶化した、ウィザードラゴンと晴人自身の魔力だから、晴人じゃ無い俺がインフィニティを生み出せる訳がない。

 よって、無い物は使えない。って事だ」

 

「ふ~ん」

 

 

俺の推測を理解出来たのか、攻也は黙り込んだ。

 

 

ーーーぐぅ~~~…

 

 

「腹減って頭が回んねぇ…」

 

 

ーやっぱコイツバカだ…

 

 

 

「お?…おぉ?!あれキノコじゃね?」

 

 

そう言って指差す攻也。

俺は攻也の指差す先に目を向け、絶句した。

 

 

「いや、弟よ…

 あれは確かにキノコだが、ダメなやつだ。

 見ろ、紫色で尖っている…毒だ」

 

「大丈夫だって。

 よく見た目の悪い物ほど旨いって言うじゃん」

 

「いやダメだって。

 あれはヤバイやつだ。

 土管潜りとコイン集めが趣味の、キノコ中毒の赤帽子のオッサンでも手を出さないやつだよ」

 

「大丈夫だって。

 それにほら、あれが毒でも俺には“コレ”がある」

 

 

 

そう言って攻也は今日一番の笑顔で笑う。

その指には“ドルフィンビーストリング”がはめられていた。

 

 

「いざと成れば、コレで毒なんてチョチョイのチョイだぜ」

 

 

《Go!コネックト!》

 

 

「さぁマヨネーズ(相棒)、出番だ」

 

「いや、止めた方が…」

 

「いっただっきま~す!」

 

 

 

俺の抑止を無視し、攻也はキノコをほうばった。

 

ーてか、よく生でいったな…

 

 

なんふぁ(何だ)ふぇんふぇんふぇいひふぁ(全然平気じゃ)…グボォッア?!」

 

 

 

瞬間、攻也は口と鼻から飫肥だたしい量の血を吐き出し、倒れた。

 

 

「…え?」

 

 

ーあ、ありのまま…今起こった事を説明するぜ。

 毒キノコと思わしき物を、マヨネーズをかけて食った弟の口から血が吹き出した…って?!

 

 

「え”え”え”え”ぇぇぇぇぇぇええええ?!」

 

 

ー即効性?!

 解毒とかさせないレベルの猛毒?!

 しかも口や鼻から血が吹き出すとかグロ過ぎるだろ?!

 

 

「おい攻也、大丈じょ…攻也?」

 

 

 

 

 

 

ーヘンジガナイ、タダノシカバネノヨウダ。

 

 

 

 

 

 

 

「……………………………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

転生人生初日。

わずか数時間足らずで弟の人生は、幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 魔法使い  

     

     残り 1人

 

 





???「アカ斬るキャラがまだ登場しないのは、全部ケモミミって奴のせいなんだ」





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神は言う!

ドライブがなかなか筆が進まないので…

サブタイどうり、あのネタです。



 

 

 

 

 

「はぁ…俺はこれからどうしたらいいんだ」

 

 

 

俺は攻也を適当な平地に埋め、そこらの木で簡単な十字架を作りぶっ刺した。

 

 

「最期までお前はお前だったな…バカ丸出しの死に様だったよ、攻也…アーメン」

 

 

俺は適当に十字をきり、近くの倒木に腰かけた。

 

 

「ハァ……ラーメン食いてぇ」

 

 

 

 

 

 

 

 

ーボコッ…

 

 

 

 

「ん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「勝手に埋めるなぁぁぁぁああ!」

 

「っうぉぉぉおお?!」

 

 

突然の死者蘇生、リビングデッドの瞬間を目の当たりにした俺は、倒木から転がり落ちた。

 

 

「勝手に埋めんなよ?!

 息できねぇし、マジ死ぬかと思ったぁ…

 あ、そういや死んだんだったな、俺」

 

「ビックリした…よく生き返ったな…」

 

「あぁ、実は…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー数分前

 

 

 

 

side 攻也

 

 

 

「いっただっきま~す!」

 

 

ー何だ全然旨いじゃん。

 少し舌が痺れて喉が痛いけど、コレならドルフィンリングで消せるな。

 

 

なんふぁ(何だ)ふぇんふぇんふぇいひふぁ(全然平気じゃ)…グボォッア?!」

 

 

 

俺の意識は、ここで途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー神は言っている…

   ここで死ぬ運命(さだめ)では無いと… 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……って?!猛毒じゃねぇか!!

 ………あれ?…夢……?」

 

 

辺りを見渡せば、俺は見覚えのある場所にいた。

 

 

 

 

「何だ、夢か。

 あぁ~…ビックリs「したのはこっちじゃぁぁああ!」グハァッ?!」

 

 

突如背後からの衝撃に、俺は吹き飛んだ。

顔面スライディングから起き上がり背後を見ると、そこには怒り狂ったゆりっぺがいた。

 

 

「信じらんない?!4時間よ4時間?!

 転生して4時間で死亡?!

 しかも死因が道に生えた毒キノコを食べたから?!

 貴方バカなの?!死ぬの?!

 あぁ、バカだから死んだんだったわね?!

 ごめんなさいね!!」

 

 

うるせぇな、好き勝手言いやがって…

 

 

「仕方無いだろ、腹減ったんだから」

 

「仕方無く無いわよ?!

 前代未聞よこんなこと?!

 転生して数時間内で死ぬなんて?!

 しかも毒を盛られたのじゃなく自分から食べるなんて?!」

 

「しゃあねぇだろ…あんなに毒が強いとは思わなかったんだよ。

 それに毒が強いかなんて、食ってみないとわかんねぇだろが普通」

 

「普通は毒キノコ食べようなんて思わないわよ!!

 それにあれはどう見てもアウトよ!!

 弟に身長負けてるビールっ腹の赤帽子被った髭のおっさんでも絶対に手を出さないやつよ?!」

 

「キノコ絡むとその話ばっかだな…

 てか、見た目で判断するのはどうかと思うぜ?

 イタリア料理や西木野 真姫ちゃんの好物で有名なあのトマトですら、ベラドンナに似た姿とその赤さから、悪魔の供物やら毒を持った野菜やら、果てには人間の血で育てられたなんか言われて、観賞植物として扱われて、食べ物としては見てもらえなかったんだぜ?

 当時の貧困民が餓死するくらいならと死を覚悟して食った事で、初めてトマトは食えるんだって事に人は気付いたんだ。

 ちなみにトマトはナス科の植物で、初めて日本に伝わったのは17世紀半ば、当時は赤茄子(あかなす)唐柿(とうし)小金瓜(こがねうり)蕃茄(ばんか)と呼ばれ「何でバカのくせに、トマトに対してそんな博識なのよアンタは?!」

 

 

 

 

大声で怒鳴り散らすゆりっぺ。

俺は耳を塞ぎながら怒号がおさまるのを待った。

 

 

「何だよ…文句ばっか言いやがって…

 あ!…1つ頼んで良いか?」

 

「え?………いいけど、今回限りよ」

 

 

 

 

 

 

 

side攻也 out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

「…って事があった」

 

「ふ~ん…よくゆりっぺはお前を生き返したな」

 

「あぁ、何でも俺達2人が揃わないとダメらしい」

 

「揃わないとって……それって、何回でも生き返るって事か?」

 

「いや、確か俺達以外に俺達の死を認識されたら出来ないらしい」

 

「……つまりは見られたりしない限りは、何回でもリトライ可能って事か?」

 

(でも何で?)

 

 

「それとコレ、兄ちゃんに渡してくれって、ゆりっぺから」

 

「っ?!……おいおい…冗談だろ…」

 

 

俺は攻也の取り出した指輪を見て、冷や汗をかいた。

 

攻也の取り出した指輪、それは紫色の魔法石で作られた太陽、そしてそれに重なる月の装飾が施された指輪だった。

 

 

「何でコレまで…」

 

 

取り合えずしまっておこう…

そう思い俺は、指輪をしまおうとした時、あり得ない光景を目の当たりにした…

 

 

「って!また食うのか?!」

 

 

そこには再び毒キノコにマヨネーズをかけて食べようとする攻也(バカ)がいた。

 

 

「大丈夫だって。

 今回はスキルを変更したから」

 

「変更?

 ゆりっぺに頼んだのって、スキルの変更だったのか?」

 

「あぁ、“毒では死なない”ってな。

 コレで毒キノコを死なずに食える。

 やっぱ俺、天才だわ」

 

 

そう言いながら攻也は、再び毒キノコにマヨネーズをかけて食い始めた。

 

 

瞬間……

 

 

 

 

 

「グボォッア?!…な、何で……?!

 オ”ォエ”ェェェェエェェ?!

 …ハァ…ハァ…血が…止まんねぇ?!

 か、体が…し、痺れ……」

 

 

(あぁ…ホント、コイツは……)

 

 

「なぁ…たぶんそれ、毒では死ななくなっただけで…

 毒の効果や影響は受けてんじゃね?」

 

「ど…どゆこと?」

 

「いや…多分だけどお前のスキル、“死なない”であって“効かない”じゃないからじゃないか?」

 

「そんな…グボォッア!」

 

「取り合えずドルフィンリング使え。

 毒で死ななくても、そのままだと失血死するぞ」

 

「お”ぅ…」

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー

 

 

 

 

「あ~あ、辺りが血の海だ」

 

 

俺は足元に広がる血の海を見て呟いた。

 

 

「そんな事より俺の心配して?」

 

「知るか、自業自得だ」

 

 

ーグルルルル…

 

 

「何か言ったか?」

 

「何にも?」

 

「「………………」」

 

「何か…生臭いな」

 

「俺の血じゃね?」

 

「いや、血の臭いじゃないだろ…コレ」

 

「何か、背中に生暖かい風が当たるんだけど…」

 

「奇遇だな、俺もだ」

 

「「………………」」

 

 

ーグルル…

 

 

 

「「最初はグー!じゃんけんポンッ!」あっち向いてホイッ!」

 

「………………」

 

 

俺の指がさした先を見た攻也は固まり、涙を流し初めた。

 

 

「…何がいるんだ?」

 

「…グスッ…全身密に生えた毛皮に大きな体、犬の約7倍近い嗅覚を持った…グスッ…冬なら本来…冬眠しているはずの生き物ってな~んだ(泣)」

 

「…(ぐま)?(泣)」

 

「……スンッ…正解(ぜいがい)(泣)…」

 

 

 

 

 

ーグマアアァァァァアア!!

 

 

 

 

 

「「イアアアァァァアア?!」」

 

 

互いに悲鳴を上げながら、俺達は全速力で走り出した。

 

 

「何で?!何で熊がいんの?!」

 

「確か、冬眠から中途半端に目覚めた熊は、腹が減ってかなり機嫌が悪いって聞いた!!」

 

「そんな情報どうでもいいから!

 早くアイツをどうにかしろ~!!」

 

「ここは年上の兄ちゃんがどうにかするもんだろ!!」

 

「うるせぇ!!テメェがどうにかしろ!!」

 

「無茶言うなよ?!人間が生身で勝てる訳無いだろ?!

 兄ちゃん元々体頑丈だろ?!

 スキルで身体能力上がってんだから、兄ちゃんの出番だろ!!」

 

「熊と対等に渡り合える訳ねぇだろ!!」

 

 

ーグマアアァァァアア!!

 

 

「つーか熊の鳴き声ってこんなんだったけか?!」

 

「知んねーよんな事!!」

 

「て言うか武器?!何か武器無いの?!」

 

「そんな都合よくある訳…って?!前!前!!」

 

「ウソだろ?!」

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間、さっきまであった地面がなくなり、俺達の体は……宙を翔ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「崖とかふざけんなぁぁぁぁぁああ!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー神は言っている…

   ここで死ぬ運命(さだめ)では無いと…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「いや~…落ちる瞬間って、股間がフワッとして気持ちいいんだな」」

 

「何だったら、こんどのコンテニューは地上10000フィートの空中からにしてあげましょうか?」

 

 

俺と攻也はゆりっぺの前で、頭にデカイたん瘤を抱えながら正座をしていた。

ちなみに瘤の犯人はゆりっぺである。

 

 

「いや、仕方ないだろゆりっぺ。

 目の前崖で後ろは熊…そりゃ死ぬって」

 

「諦めが早すぎなのよ、アンタ達やる気あるわけ?」

 

「ゆりっぺがストリップでもしてくれれば、多少は出るが」

 

 

 

 

 

ースパァンッ!

 

 

「だから冗談だよ」

 

「どうだか…」

 

 

俺は痛む頬を擦りながら、立ち上がる。

 

 

「さてと…じゃあコンテニューしますか」

 

「それより貴方達、そんな服装(そうび)で大丈夫なの?」

 

 

そういえば、元の世界では真夏日だった。

 

体を見渡せばカーキグリーンのズボンにワインレッドのTシャツ、黒の七分袖シャツの薄着だった。

 

攻也にいたっては短パンにタンクトップ、上から半袖のシャツを羽織った、いかにも夏の格好だ。

 

 

よくこんなんで雪山の中歩けたな、俺ら。

 

 

「そうだな…

 んじゃ、ちょっと試すか」

 

《ドレスアップ…プリーズ》

 

 

全身が光に包まれ、気付くと俺達の服装が変わっていた。

 

 

「晴人をイメージしたんだが…

 何か、いかにも中二って感じだな…」

 

 

俺の服装は黒みのあるジーンズに、さっきよりは少し明るい赤色のフードが付いたカーディガンに、膝裏まである黒のロングコートの格好だった。

 

 

「なんか、デビル◯イクライに居たな」

 

「確かに…

 ほら、攻也も」

 

《ドレスアップ…プリーズ》

 

「こんな感じかな」

 

 

攻也は青のジーンズにシャツ、ファーが付いたジャケットの格好になった。

 

 

「じゃあコンテニューね、そこに立って頂戴」

 

「いや、またあんな猛獣や危険種のような化け物と遭遇したらまずい…ゆりっぺ」

 

 

「何よ?」

 

 

俺と攻也は互いに頷き、ゆりっぺを見た。

 

 

「「一番強い武器(いいの)を頼む」」

 

 

するとゆりっぺは見惚れる様な笑顔で俺達を見る。

少しドキッとした俺達の前で、ゆりっぺは自分の隣に腰くらいの高さの台を召喚すると、その台の上の赤いボタンに手を伸ばした。

 

 

 

指輪とベルト(最初に)やったろうが!!」

 

 

 

さっきまでの笑顔がウソの様な、鬼も裸足で逃げ出す表情でボタンにゆりっぺが拳を叩き落とす、するとさっきまであった地面が姿を消した。

 

 

「「でしたねえぇぇぇぇぇぇ」」

 

 

突然消えた地面から垂直落下する俺と攻也は、そう叫びながら奈落へと落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ん…ここは…」

 

 

気が付けば、俺達はもといた雪山に立っていた。

 

 

「…さっきの雪山か?」

 

「また最初からかよ…」

 

「でもかなり歩いたし、最初からじゃないだろ」

 

 

愚痴る攻也に少し気楽に応え、俺は辺りを見回した。

 

 

「一体どこからコンテニュ…」

 

 

ーグルルルル…

 

 

 

聞き覚えのある唸り声に振り向けば、毛むくじゃらな生き物が、俺達を睨み付けていた…って?!

 

 

 

「「(ここ)からかよおぉぉぉぉ?!」」

 

 

ーグマアアァァァ

 

 

「ッ!攻也!!」

 

「応ぉ!」

 

 

俺と攻也は左右に回避し、1つの指輪を取り出した。

 

 

《コネクト…プリーズ》

《コネクト…Go!》

 

 

「食らえ!」

 

 

俺はウィザーソードガン(以降ソードガン)をガンモードに変え、熊に向けて引き金を引いた。

 

撃ち出した数発の弾丸が命中し、熊は怯んだ。

 

 

「攻也!」

 

「任せろ!」

 

 

勢いよく飛び出した攻也は、熊にダイスサーベル(以降サーベル)による突きや斬撃でダメージを与えた。

 

 

「よっしゃ、止めだ!」

 

 

勢いをつけたサーベルが熊の脳天を貫くその瞬間、サーベルは“何か”によって遮られ、攻也は吹き飛ばされた。

 

 

「攻也っ?!」

 

「グホッ…何だ?」

 

 

俺と攻也は熊に視線を向け、絶句した。

 

熊の肩から、まるで人間の腕の様な物が“生えていた”。

するともう片方からも同じように腕が生えだし、熊は後ろ足で立ち上がると、雄叫びと共にその体を“変化させた”。

 

 

「な、何だ?!」

 

「知るか!」

 

ーグルルルル…グルッ…グッ…グマアアァァァ!!

 

 

「何かヤバイぞ!」

 

 

ーグマアアァァァァァァァアア……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……マッスフォォォォォォォオオオル!!

 

 

 

「「……?………

  ………ッハァァァァァァァアア?!」」

 

 

 

奇妙な雄叫びと共に姿を変えた熊は、それはそれはたくましく、スタローンやシュワルツェネッガー顔負けのマッスルボディになりました。

 

 

ーマッスフォオオオル!!

 

 

「いや意味わかんねぇよ?!」

 

「心配すんな!俺もだ!」

 

 

突然の出来事に俺達は戸惑うも、熊?から距離を空け、ソードガンによる射撃でダメージを与えた。

 

 

ーマッスフォオオオル!!

 

 

「って?!効いてない?!」

 

「兄ちゃん、俺に任せろ!」

 

《ドライバー オン!》

 

「変~…身!!」

 

《セット!オープン!!》

 

「でぃや!」

 

《L・I・O・N…ライオーン!》

 

「へへん…んじゃ、ランチタイムだ!」

 

 

古の魔法使い、仮面ライダービーストに変身した攻也は熊っぽい化け物…熊ッスルと命名しよう。

熊ッスル相手に攻撃を仕掛けた。

 

 

「こんにゃろ!」

 

「俺もいくか…」

 

 

如何にも手こずっている攻也に加勢するため、俺はコネクトリングをドライバーオンリングに替え、ベルトにかざした。

 

《ドライバー オン!…プリーズ》

 

 

起動音と共に本来の姿に戻ったウィザードライバー。

その両サイドにあるレバーを操作し、中央のハンドオーサーを変身モードにする。

 

 

《シャバドゥビタッチヘンシーン!

 シャバドゥビタッチヘンシーン!

 シャバドゥビタッチヘンシーン!》

 

 

左手の中指に赤い魔法石で作られた指輪、“フレイムウィザードリング”をはめ、指輪のバイザーを下ろす。

 

 

「変身!」

 

《フレイム…プリーズ》

 

 

ハンドオーサーにフレイムリングをかざし、左に腕を伸ばすと、リングから魔法陣が展開される。

 

 

《ヒー・ヒー・ヒーヒーヒー!》

 

 

 

魔法陣を抜けると、俺の姿が変わる。

現代の魔法使い、絶望を希望に変える最後の希望。

 

仮面ライダーウィザード フレイムスタイル

 

 

「ハァッ!」

 

 

変身を終えた俺は、熊ッスルに攻撃を仕掛ける。

だが熊ッスルの体は硬く、ソードガンの斬撃は弾かれる。

 

「いやに硬いなチクショウ…」

 

「パワーじゃ勝てねぇか…だったら!」

 

 

 

《Go!バッバ・バ・バ・バ・バッファ!》

 

《ランド…プリーズ

 ド・ド・ド・ド・ド・ドン!ド・ド・ド・ドン!》

 

 

攻也はバッファリングを取り出し、バッファマントを纏とい、俺はランドスタイルにスタイルチェンジする。

 

 

「だぁ!オリャ!」

 

「ハァッ!ツァッ!」

 

 

ーグマァァァァッスフォオオオル!

 

 

劣勢を悟ったのか、熊ッスルは突然バックステップで距離をひらくと、咆哮と共にその背中から翼を生やし、空へと飛び上がった。

 

何でもありだな……

 

 

「ハァ?!そんなのありか?!」

 

「攻也!ファルコン使え!」

 

「そうか!」

 

 

攻也はファルコンリングを取り出し、それをバックルに勢い良く差し込む。

が…

 

 

《バッド!》

 

「あ?」

 

《バッド!》 

 

「はぁ?!バット?!

 俺が使いたいのはファルコンでコウモリじゃねぇんだよ!!」

 

 

何故か発動しないファルコンリングにキレる攻也。

そうこうしている内にだんだんと熊ッスルとの距離が開かれていく。

 

 

「っち!

 飛ぶの速すぎだろ」

 

 

(ハリケーンスタイルじゃ追い付きそうに無いな…)

 

 

「こうなりゃ一か八か…」

 

 

俺はハリケーンドラゴンのリングを取りだし、ハンドオーサーを操作し、リングをかざした。

 

 

《エラー》

 

 

「っ!やっぱダメか」

 

「だぁっクソっ!逃げんな昼飯~!!」

 

「あぁ~…逃げられたか…」

 

 

飛び去っていく熊ッスルに対し、攻也がとんでもない台詞を言った気がしたが俺はスルーし、離れていく熊ッスルを眺めながら呟いた。

 

 

 

「くっそ、何でファルコンが使えなかったんだ?」

 

「知るか、魔力切れだろ?

 バカみたいに、コネクトでマヨネーズ出してたツケが回ったんだろ。

 後、バットじゃ無くてバッドな」

 

 

互いに変身を解除し、さっきの戦闘について話す。

 

 

(そうだとしても妙だな…

  コネクトの消費魔力はたいした事無いと思うし、数回使うだけでこんなにも魔力を消費するか?)

 

 

俺は攻也を見て更に考えていると、1つの疑問が浮かぶ。

 

 

「…ん?

 攻也、体は何ともないのか?」

 

「何だよ、急に」

 

 

「いや、魔力を一定量摂取しないと不味いだろ?」

 

 

俺の言葉の意味を理解したのか、ビーストのデメリットを思いだし、攻也の表情がだんだんと青ざめていった。

 

 

「ヤッベェゾ?!」

 

「その言い方、全くそんな風に思えないが…」

 

 

 

慌てているのか分からない、すっとぼけた声で叫ぶ攻也。

だが表情は青ざめ、変な汗までかきはじめた。

 

 

「ヤバイ?!キマイラに食い殺されるぅぅぅぅぅ……って…あれ?」

 

 

「どうした?」

 

「なんともない…」

 

「……なぁ攻也」

 

「ん?」

 

「キマイラと話せるか?」

 

「……?…やってみるわ」

 

 

そう言って攻也はバックルを小突く。

 

 

「おーい、キマイラー。

 おーい…返事しろや居候!!」

 

 

ベルトのバックルを激しく揺すりながら、怒鳴る弟の絵面ってかなりシュールな画だな……

 

 

「なぁ兄ちゃん、これキマイラのヤツ入ってねぇんじゃねぇの?」

 

(っ?!…まさか)

 

「攻也、俺の体人目につかないようにどっか隠しておいてくれ」

 

 

《コネクト…プリーズ》

 

 

「ハァ?何言って…ーズカァーン!

 

 

俺は攻也に後を頼み、取り出したソードガンをこめかみに当て、引き金を引いた。

 

 

 

 

 

 




死にすぎじゃね?と思う方。
私もそれは思った。
つか、何だよ……熊ッスルって…

誤字脱字、何か設定に間違いがあればご報告を!
感想などがあればご自由に!


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疑問を解く!

いつも通りにグダグダですが…


 

 

 

 

 

 

 

 

「よっ」

 

「…………………………」

 

「無視すんなよ、ちょっと話したい事があってさ。

 来ちゃった♪」

 

 

「………来ちゃったって……何当たり前の様に来てんの?!

 しかもそんな友達や恋人に会うみたいな軽いノリで?!」

 

 

「気にすんな、聞きたい事が2、3あるだけだ」

 

「気にするなじゃな…」

 

 

俺は手を前に出してゆりっぺの言葉を遮る。

 

 

「あれはどういうつもりだ?」

 

「話が見えないわね?」

 

「とぼけんな。

 何であんな不良品を俺達に渡した」

 

「不良品…

 失礼ね、あれは正真正銘本物のベルトと指輪よ?」

 

「だからだ」

 

「言ってる意味が分からないわね」

 

「本物だからこそ不良品なんだよ」

 

「と言うと?」

 

 

俺の言葉に対し、イタズラな笑みをするゆりっぺ。

 

 

「最初は魔力の消費が半端じゃないだけだと思ってたんだが……

 アイツに、魔力の切れた攻也にビーストのデメリットが発生しなかった。

 最初は気付かなかったが、攻也のお陰で2つの可能成が上がった。

 1つはそっちが気を利かせて、そのデメリットを無くしてくれた。

 ただそんな事するなら、“キマイラの呪いの無効化”や“無制限に魔法を使用できる”ってチートの方が効率が良いだろ?

 だが、それをしなかった。

 もしくは“出来なかった”する。

 でもお前は紛いなりにも神様だろ?

 ならその可能性は低い、となると必然的にもう1つの可能性が有力になる」

 

「回りくどいわね?

 弟くんみたいに直球できたら?」

 

「ならお言葉に甘えて。

 つまりもう1つの可能性、問題はベルトだけじゃなく俺達にもある。

 俺達はただのゲートで、体内にファントムを宿していない。

 攻也のビーストドライバーにもキマイラは宿っていない。

 だからアイツにビーストのデメリットが発生しなかった。

 そして…」

 

 

俺はポケットからドラゴンスタイルのリングとサバトリングを取り出した。

 

 

「俺がドラゴンスタイルになれないのは、そもそもドラゴンを体内に宿していないから…

 じゃあどうする?簡単だ。

 サバトでファントムを産み出せばいい。

 そして、お前が言ってた俺達の最大の特長…

 “絶望しずらい”。

 魔法使いになるには、絶望を乗り越えてファントムを体内に抑え込む必要がある。

 なるほど、確かに絶望しずらい俺達には最適な装備だな」

 

 

俺の憶測に近い推理にゆりっぺはクスクスと笑いだす。

 

 

「御名答。

 他に質問は?」

 

「この仮説が事実なら、何故アイツは変身出来た?

 キマイラが居ないなら変身すら出来ないんじゃないのか?」

 

「それはこっちで変身出来るようにしておいたの。

 まぁそうしても、ゲートはもちろん、普通の魔法使いでも変身は出来ないのだけど。

 それでもあの子が変身出来たのは、貴方達が異質だから。

 そもそもゲートは、他の人間よりも魔力値が高いものを差すのは知ってるでしょ?」

 

 

ゆりっぺの問いかけに返事を返すと、続けて話し出した。

 

 

 「簡単に言うと貴方達は、ゲートを人間に定めた場合のゲートに当たる。

 貴方達は魔力値が高すぎるの、異常なまでにね。

 とくに貴方は、異常の中の異質、規格外の化け物」

 

「ひでぇ言いようだな」

 

「事実よ…貴方程じゃないけど、弟くんも相当なものよ?

 まぁ、あぁも簡単に変身されるとは思わなかったけど」

 

「実際どうなんだ?

 魔力の消費ってのは」

 

「そうね…現状、貴方はだいたい変身維持は30分といった所かしら、弟くんは20分って所ね。

 変身中に他の魔法を併用するなら、さらに短縮されるわ。

 弟くんも、1度の変身にマント1回が限度」

 

「俺はともかく、攻也はかなり厳しいな…

 そもそも、何でキマイラが居ないんだ?」

 

 

「エェっ?!

 いや、…あ、その…そう!

 呪いの事もあるから、抜いておいたの!

 いや~、でもデメリットの方も大きいわね!

 まぁあ?!それでも魔力不足で死ぬよりかはマシでしょうね!」

 

 

再び台を召喚するゆりっぺは、上に置かれたボタンに手を伸ばす。

 

 

「じゃあ、続き頑張ってね!」

 

 

ボタンが押され床が消える。

 

 

「ちょっと待てぇぇえい!!」

 

「うわぁあ?!」

 

 

ギリギリで俺は消えていない床にすがり付き、一番知りたかった事を尋ねる。

 

 

「最後の質問!あの世界にはーーーは居るのか?」

 

「フフッ♪…居る……と言ったら?」   

 

 

さっきまでの慌てた様子はなく、妖艶な笑み…その言葉をがピッタリな表情をするゆりっぺ。

ゆりっぺの言葉を、俺は鼻で笑い床から手を離した。

そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソファ〇キンだこのヤロー!!」

 

 

ゆりっぺに怒鳴りながら中指を立て、俺はあの世界にコンテニューをした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー

 

 

 

「…っ……戻ってきたか…」

 

 

目を開けばいつもの雪景色。

ふと体を起こすと、なぜか俺は祭壇の様な物の上に居た。

 

 

「体隠しとけっつったのに…あんバカは…」

 

 

愚弟のバカさ加減に愚痴っていると…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う~でとう~でを、つ~なぐ関節♪

 ひ~じ♪ひ~じ♪

 ひ~じが無ければ、う~では回らぬ♪

 ひ~じ♪ひ~じ♪

 あ~、ありがたや~ありがたや~♪」

 

 

妙な唄と妙な踊りをしているバカが、そこに居た。

 

(また変なキノコ食ったのか?)

 

 

「何やってんだ…お前…」

 

「ん?あぁ、おかえり兄ちゃん。

 何って、暇だったから邪教徒ごっこしてた」

 

 

(死体になってた俺を使って遊んでいたと…)

 

 

「…………ハァ……まぁいいや。

 攻也、話がある」

 

「?」

 

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

 

「なるほど…つまりファルコンが使えなかったのは、ベルトの中は空き家だから。

 キマイラが居ないから、使えないと…

 で、1回の変身にマントは1枚しか使えない…って!

 厳し過ぎるだろ?!」

 

「そこでだ」

 

 

俺はポケットから1つの指輪を取り出した。

 

 

「これを使って人為的にサバトを起こして、絶望する。

 そんで絶望を乗り越える事で、はれて魔法使いの一員って訳だ」

 

「面倒だなぁ…

 つーか、何でゆりっぺは初めからキマイラ入りのベルトにしなかったんだ?

 いくら呪いの事があるっつっても、流石になぁ…」

 

「だよな……

 そもそも、呪いの無効化の為にキマイラを抜き取るなら、魔力源が無くなる事を見越して魔法の無制限使用か、劇場版みたく、呪いを持たないタイプのキマイラにするのがベターだろうし…」

 

「それか…ゆりっぺがベルトに封印しようとした時に逃げられた、とか?」

 

「流石にそれは…」

 

 

俺はふとキマイラの事を聞いた時のゆりっぺを思い出した。

 

 

(まさか…な?)

 

 

「取り合えず、使ってみるか…攻也手ぇ出せ」

 

「は?何で?

 男に、しかも自分の兄貴に指輪されるとか嫌なんだけど」

 

「俺だってやだよ。

 お前のベルトじゃこの指輪使えないだろ?」

 

「じゃあ自分でつけるよ」

 

 

渋々俺の手から指輪を受け取り、攻也は中指にはめた。

 

 

「やるぞ?」

 

《エラー》

 

「あれ?」

 

「変だな…

 攻也、リング貸せ」

 

 

攻也からリングを受け取った俺は、自分の中指にはめてバックルにかざした。

 

 

《エラー》

 

「おかしい…」

 

 

結構時間が経ったから、魔力はお互いに回復したと思ったんだがな…

 

 

「まぁ良い…攻也、荒療治でいくぞ」

 

 

俺と攻也は近くの石と倒木に腰掛け、向かい合った。

 

 

「想像してみろ…

 お前の向かいから、超お前好みの美少女が歩いて来た」

 

「うんうん」

 

「するといきなり突風が!」

 

「おぉ!!…とっぷうってなに?」

 

「…いきなり来る強い風な」

 

「なるほど」

 

「その風で向かいの娘のスカートが捲れ上がった!」

 

「おおぉぉ!!!」

 

「だがそのスカートはキュロットスカートで、中は見えませんでした」

 

「グアァァァァア!」

 

 

勢い良くひび割れていく攻也の体を見て、俺は苦笑いしか浮かべられなかった。

 

 

「すげぇ勢いでいったな…軽く引くわ……

 てか、俺等の長所って絶望しずらいだったよな…

 まぁ、後はこれを乗り切れば…」

 

「に、……兄ちゃん…」

 

「どうした?」

 

「…ごめん……もう…無、理……」

 

「アカァァァァァァァアン!」

 

 

俺はたまたま側に有った小さい岩で、攻也の頭を叩き割った。

するとひびの進行は、攻也の息と同時に止まり。

ひび痕は攻也の命の火と連動して消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

「ただいま~…」

 

「お、目が覚めたか」

 

「あぁ。

 でもマジでゆりっぺのヤツ、限界来てたわ」

 

「だろうな…」

 

 

そろそろ真面目にいこうかなと思った瞬間、お互いの腹の虫が音をたてる。

 

 

「日も暮れてきたし、とりあえず腹ごしらえするか」

 

「ドーナツとマヨネーズだけだけどな」

 

「いいや。

 肉食うぞ」

 

 

俺は少し離れた場所を指差した。

そこにいる鹿は、こちらに気付いてないようだ。

 

 

「じいちゃんと狩りした時みたいに、スコープ付きのライフルじゃないが、ソードガンで弾道コントロール出来るから、多少外しても何とかなるさ」

 

「おぉ!頼むぜ兄ちゃん」

 

 

ゆっくりと近づき、ソードガンを構える。

 

息を止め、気配を消す。

 

昔の感覚を思い出しながら、引き金に指をかける。

ゆっくりと、静かに息を吸い、静かに吐き出し、獲物を見据える。

 

 

(殺気は出すな…一発勝負だ)

 

 

しばらくすると、鹿が視線を移しだした。

 

 

(今d…「マデヤゴラアァァァ!!」っ?!)

 

 

 

突然の怒号に俺と鹿は驚き、ビクついた。

驚いた拍子に引き金を引いてしまい、弾は鹿の真横をかすめ、背後の木に当たった。

怒号からの発砲音。

当然、鹿はそこから逃げていた。

 

 

「あぁ…俺の鹿肉(ステーキ)が…」

 

「攻也、それ一応死亡フラグな」

 

 

俺はため息と共に鹿を諦め、怒号の発声元を探した。

 

 

 

「おい兄ちゃん、あれ」

 

「ん?」

 

 

攻也が指差した先には、10人以上の山賊っぽいオッサンに追いかけ回されている、若い3人の男女だった。

その山賊が声の主だと理解すると、俺はソードガンを肩に担ぐように置き、首をならす。

攻也はサーベルを取りだし、サイコパスな殺人鬼の様にサーベルの刃を舐め、黒い笑みで山賊を見据える。

 

 

「攻也……狩りの続きだ。

 獲物は俺達の飯を台無しにした、あの山賊(バカ)共だ」

 

「ヘヘヘヘヘ……」

 

「行くぞぉぉぉぉ!!」

 

「ゴートゥーザ、ヘェールゥ!!」

 

 

俺達はどす黒い感情と本能の赴くまま、走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





ドライブの方も進めたいのに、オーブのクロスも書きたくて仕方ないケモミミです。

最後に現れた?3人組とは誰か。

誤字脱字とうあればご報告を!


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物語に出合う!

どうも…
ドライブの最新話をアップしようとしたら、間違えて削除した哀れなケモミミです。

タグを追加しますが、今回はかなり下ネタが含まれます。
書き方を主観の???sideから三人称視点に変えてみました、読みにくければご報告を。


 

とある雪山。

 

そこには武装した十数人の山賊と、それに追われる3人の若者が、命懸けのマラソンをしていた。

 

 

 

「マデヤゴラアァァァ!」

 

「待てって言われて待つヤツがいるかー!」

 

「どうするのよイエヤス!

 アンタが変なちょっかい出すから!」

 

「俺のせいかよ?!

 そんなの無理に決まってんだろ!

 サヨがどうにかしろよ!

 そのそこそこに立派なの胸とか使えば何とかなんだろ?!」

 

「こんな時にセクハラ?!

 信じらんない!

 しかもあんなのに色仕掛けなんかしたら、即行で犯されるわよ!!

 あんな連中が初めてとか絶体にイヤー!!」

 

「2人共!無駄口叩いてないで走れー!」

 

「「もう走って(んよ)るわよ!!」」

 

 

口喧嘩をしながら走る3人の前に、倒木に腰かけた男と、木にもたれ掛かる様に立つ男が現れた。

 

 

「おい!アンタ等逃げろ!!

 山賊が沢山来てる、殺されるぞ!!」

 

「危険~…まぁ、そうかもな…」

 

「「「っ?!」」

 

 

先頭を走る茶髪の少年が必死に叫び警告するが、2人の男の発する殺気に3人は驚いた。

 

 

「行くぞ攻也!!

 山賊狩りじゃぁぁぁあ!!!」

 

「ゴオォォォォオトゥゥゥウザ…

 ヘェェェェエルゥッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その男達は狂っていた。

 

 

 

 

 

 

黒い髪の男は身に纏うコートを靡かせながら、手にした銀色の剣で山賊達を凪ぎ払い、投げ飛ばし、蹴り上げ、変則的な動きで容赦の無い連撃を叩き込む。

茶髪の青年は相手の攻撃をかわしながら、マウントをとっての顔面殴打、足だけで木を駆け登ってはデタラメな動きと細剣による攻撃で、山賊達を圧倒していた。

 

 

「お前等のせいで鹿を仕留め損ねたじゃねぇか!!」

 

「俺等のメシを台無しにしやがって!!ゆるざん!!」

 

「た、助け…「オォラァッ!」グファッ!」

 

「ちょっ待っ…「ダァラッシャア!」ヘグッ!」

 

「へっ!貰っ…「速さが足りない!」コパッ!」

 

「隙あ…「ところがギッチョン!」アベシッ!」

 

 

ちぎっては殴り、ちぎっては蹴り、ちぎっては投げる。

 

それはまるで、地獄の光景であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「テメェ等の血は何色だぁぁぁ!」

 

「その程度か三下ぁぁぁあ!!」

 

「た、助けてくれぇぇぇぇ!」

 

「イヤだぁぁぁ!母ぁちゃぁぁぁん!」

 

「「さあ泣き叫べ!判決の時間だ!」」

 

 

[[[イギャァァァァ!!]]]

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絶対的なまでの暴力。

自分達を殺そうとしていた相手であるにも関わらず、山賊達に同情や哀れみなどが込み上げて来るその光景にただ、少年達は立ち尽くす。

 

 

 

 

 

少年は忘れないだろう…

 

いや、忘れられないだろう。

 

 

 

この光景を、この惨状を…

 

 

 

そして…

 

 

 

自分達の絶体絶命な状況を打破し、命を救ってくれた人物の姿を…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!」」

 

 

 

 

 

 

 

倒した山賊の頭を踏みにじり、DIOバウアーをしながら奇声を発している、2人の狂人(命の恩人)を……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当にすいませんっしたー!!」

 

[[[っしたー!!!]]]

 

「うん、許さん」

 

《バインド…プリーズ》

 

[[[ギャー!!]]]

 

「「「うわぁ…」」」

 

 

山賊狩りから数十分。

 

黒のコートを纏う男、ソウタの前にはズタボロの山賊達が土下座をしていた。

山賊達の謝罪は虚しくも相手に届かず、鬼畜な魔法使いは山賊を縛り上げた。

 

 

「えと…さっきはありがと。

 俺はタツミ、こっちがイエヤスで、こっちがサヨ」

 

 

鬼畜な魔法使い、ソウタに近づき礼と自己紹介をするタツミ。

それを見たソウタは、やっぱかと小声で呟いた。

仮面ライダー(魔法使い)の力に関しては、帝具の一種とすること。

そして、自身達が転生者であることが誰にもバレないようにと、コウヤとすでに話し合っている。

後は自然体で振る舞えばいい、ソウタはコウヤにアイコンタクトをとった。

するとコウヤも気付いたのか、頷き返した。

 

 

「チャパツにハチマキとオッパイだな、覚えた」

 

「何を覚えた?!」

 

「気にすんな、コイツなりの挨拶だ。

 たしか…タッチミーにイエモトと処女だったな」

 

「「「アンタもか!!」」」

 

「はははっ…わりー、わりー。

 でも緊張はとけたろ?

 ついでに警戒心もといてくれると助かるんだが」

 

「「………」」

 

 

笑顔で語りかけるソウタの言葉に、サヨとイエヤスは眉をひそめ、タツミが唖然とした表情で冷や汗を流す。

 

 

「な、何でそう思うんだよ?

 助けて貰ったんだから、礼ぐらいしないと」

 

「だってそこの嬢ちゃんは、腰に隠してある短剣かナイフを何時でも抜けるように、腕の位置を変えただろ?

 メインは弓みたいだが、この近距離じゃ弓なんて射れないからな。

 仮に距離の問題が解決しても、弓を構え矢をかけるまでの時間が命取りになる、的確な判断だな。

 ハチマキはずっとこのバカを注視してるしながら、いつでも攻撃や防御が出来るように足や腕を動かしている。

 そしてお前さんは、会話をしながらも俺の動きを見ている。

 視線が俺の手や足、側にあるソードガン獲物に向いていたぜ?

 何より、何時でも距離を空けられるよう足に力が入っている。

 何せ下は雪だ、その程度足の沈み具合を見れば分かる。

 そりゃ警戒するわな?

 見ず知らずの他人が、自分達を無償で助ける訳があるのか、もしかしたらコイツ等はさっきとは違う山賊じゃないのか…とか、まぁ色々考えればな」

 

「「「……………」」」

 

 

ソウタの言葉に全員が固まる。

自分達の行動と考えを完全に読まれ、再び唖然とするタツミ達。

そして、ヤっちまったとにこやかな笑顔で内心焦るソウタ。

そんな中、コウヤは笑いながらタツミの肩に手を置いて話し出した。

 

 

「気持ち悪いだろ?

 兄ちゃんの特技なんだよ、勘弁な?

 後俺はコウヤでいいわ。

 年も近そうだし、仲良くしようぜ」

 

 

良くやった、心の中でソウタはコウヤを誉め、安堵した。

 

 

「あっそうだ!

 タツミって事は、お前らこれから帝都に行くんだろ?

 俺達も連れt…ーズカーンッ!痛いぃっだぁい目がぁぁぁ?!」

 

 

誉めた自分がバカだった。

そう言わんばかりにソウタは頭を抑え、ソードガンでコウヤの目を撃ち出した。

 

(見ず知らずの他人が自分達の目的知ってたら、余計に警戒されるだろが)

 

心の中ぼやきながらソウタはソードガンをしまい、タツミ達の方に向き直った。

 

 

「いや、すまん。

 実は俺達帝都に向かっていたんだが、辺境の地から来たもので迷っていたんだよ。

 アンタ等もその装備からして山越えだろ?

 もし帝都に向かっているなら、帝都までの同行か、道のりを教えて貰えれば助かるんだが…」

 

「いや、それはいいんだが…」

 

 

そう言ってタツミは心配そうに横に目をやる。

 

 

「ぬぉあああぁぁぁぁぁ!!

 目が…目がぁぁぁぁぁぁああ!!」

 

「アンタの連れ大丈夫か?」

 

 

左目を両手で抑えながら、雪の上を左右行ったり来たりと転がるコウヤを見ながら、イエヤスはソウタに尋ねた。

 

 

「大丈夫大丈夫、魔力コントロールで弾をコルクに換えてあるから」

 

「まりょ…く?」

 

 

さぞどうでもいいかの様に右手を左右に振り、答えるソウタ。

一方タツミ達は聞きなれない単語に首を傾げた。

 

 

「……ッ~……

 大丈夫なわけねぇだろが?!

 亜音速で飛んでくるコルクが眼球に直撃したんだぞ?!

 俺じゃなきゃ失明してんぞ!!」

 

(((いや、何で平気なんだよ…)))

 

 

左目を抑えながら起き上がり、涙目で訴いかけるコウヤ。

タツミ達の内心とは裏腹に、ソウタはソードガンをしまいながら言葉を返した。

 

 

「大丈夫だって、最悪失明したら俺が直すから」

 

「治すの字が違うだろ絶体?!」

 

「どうでもいいだろ。

 そんな事より、お前はあのオッ山賊から使えそうな装備品、あと食い物と金銭全部取ってこい。

 終わったら、そのまま逆さ吊りにして火に掛けるか、身ぐるみ剥いで真っ裸にして木に縛りつけるから」

 

 

バインドの魔法で縛り上げている山賊達を指差しながら、ソウタはやる気無さげな疲れた声で告げる。

 

 

「~~……ちぇっ、わぁったよ…」

 

(((山賊よりひでぇ?!)))

 

 

頭をかきむしりながら、しぶしぶ了承するコウヤ。

そんな2人の行動に3人は驚いた。

 

 

「別にそこまでしなくても…」

 

「何言ってやがる。

 拘束が解けたら、また襲いに来るかもしれないだろが。

 それに、剥ぎ取りは狩りやRPGの鉄則だ」

 

「アール…ピー…?」

 

「で、どうだ?

 俺達の同行、頼んでもいいか?」

 

「あ、あぁ…

 アンタ等かなり腕がたつみたいだし、むしろこっちから頼みたいくらいだ」

 

「OK、交渉成立だな。

 遅れて悪い、俺はソウタだ。

 さっき自分で名乗ったが、あれが弟のコウヤ」

 

「あぁ、よろしく頼む」

 

「こっちこそ、あと…「兄ちゃん?!コイツら干し肉持ってるぞ!!」っ?!

 何だとぉぉ?!神かぁぁぁぁ!!」

 

 

コウヤの声に食いつくソウタは、タツミとの握手を解き、勢い良く山賊の方に走り出した。

破天荒かつ奇想天外な彼等の行動に、タツミは呆気に取られていた。

 

 

「ちょっとタツミ?

 ホントにあの人達と一緒に帝都に向かうの?」

 

「まぁ、その方がいいだろ?

 実際ソウタさんもだけど、コウヤもかなりのもんだしさ」

 

「確かに…そうだけど…」

 

「どうしたサヨ、嫌なのか?」

 

「嫌とかじゃなく…」

 

「何だよサヨ?

 もしかして…どっちかに惚れたとか?」

 

「はぁ?何言ってんの?

 あんまりふざけてると、キ〇玉引っこ抜くわよ」

 

「「怖ぇよ?!」」

 

 

ゴミを見るような冷ややかな目でイエヤスとタツミを睨むサヨ、すると山賊達が拘束されている方から情けないオッサンの声がタツミ達の耳に入った。

 

 

「た、…頼む!

 命だけは…命だけは助けてくれ!」

 

「あ?誰もお前らを殺すとは言ってないだろが。

 火に掛けるか、真っ裸で木に縛りつけるだけだ。

 ……まぁ、その後は放置して俺達は山を下りるが」

 

「それって見殺しじゃね?」

 

「見捨てるだけだ」

 

[[[どっちにしろ死ぬよ!!]]]

 

 

無情にして非情、ソウタの容赦ない鉄槌に山賊達の中には泣き出しそうな者まで現れた。

 

 

「じゃあ、どうされたいんだよ?

 拘束解いて下さいは無しな。

 解いたらお前ら、俺達を殺してそこの女の服引ん剥いて、コイツの手や足や胸、サラサラの髪使っての〇〇〇とか、口にナニぶち込んでイ☆☆☆☆やらさせて四方八方からテメェ等のチ◇◇で責めまくってレ××するつもりだろが。

 そんでもって全身開発、チ△△無しじゃ生きていけないのって体にしてテメェ等の肉**にするんだろが、羨まけしからん」

 

「ちょっと!?」

 

 

ソウタの放送禁止用語もとい淫語のオンパレードに、サヨは顔を赤くして胸を隠すようにして後ろに下がった。

 

 

「い、いや…そんな事はしねぇ。

 それに俺達…女には興味ねぇから…」

 

「「「「…ウェ?」」」」

 

 

山賊の1人が放った一言が、男4人の思考を停止させる。

 

 

「俺達は、女房や恋人、婚約者とか家族に捨てられたごろつきのあつまりなんでさぁ」

 

「みんな何かしろ、女に見限られた事で心に傷を負ってんだ。

 つまり何が言いたいかってぇと…」

 

[[[女なんて、クソくらえってんだ!!]]]

 

 

怒気と覇気のこもった魂の叫び、山賊達の性癖を知ったソウタは、冷や汗を流しながらタツミ達を指差す。

 

 

「……つまりコイツらを襲ったのは…」

 

「そこの茶髪の兄ちゃん、結構可愛い顔してるだろ?

 それでな……溜まってたもんが爆発しちまったわけさ」

 

「俺は黒髪の方かな?

 てか、兄ちゃん達もいい感じじゃねぇか。

 そこそこにイケメンで強いなんて…キライじゃねぇぜ?」

 

 

キランと聞こえて来そうなキメ顔をする山賊。

ソウタは少し目を細め、無言でポケットから1つの指輪を取り出し山賊達から距離をとる。

それを見たコウヤの表情は焦りに染まり、ソウタの元に駆け出した。

 

 

「兄ちゃん待って!早まるな!」

 

《エクスプロージョン…プリーズ》

 

「消え去れぇぇぇぇぇぇ!!」

 

[[[ぎゃぁぁぁぁぁああ!!]]]

 

 

爆音と爆炎が山賊達をつつみ、吹き飛ばす。

その光景に驚くタツミ達3人とは別に、コウヤはヤっちまったよと力の抜けた声で呟き、肩を落とした。

 

 

「ハァ…ハァ…ッツ、嫌なもん思い出させやがって」

 

「ど…どうしたんだ?ソウタさんは…」

 

 

ソウタの奇行に戸惑うタツミは、事態の真相を知るであろうコウヤに尋ねた。

 

「あ~…いや、兄ちゃん昔のバイト先で、ガチムチのオネェに襲われそうになった事があってだな…」

 

「マジかよ…」

 

 

ソウタの過去のトラウマを知ったタツミ達、するとドサリと鈍い音が響き、音のした方に全員が目を向けた。

そこで目にしたのは、雪の上にうつ伏せになって倒れているソウタだった。

 

 

「オイ?!ソウタさん!ソウタさん!!」

 

「心配するな~…ただの魔力切れだ…」

 

 

驚きの余りに叫ぶタツミ、サヨとイエヤスは心配そうにソウタを見るが、ソウタは少し気だるさを含んだ声色で肘をついて腕を左右にぶらぶらと振る。

 

 

「エクスプロージョンで魔力切れって、どこの頭のおかしい紅魔だよ」

 

「うるせぇな…

 あ"ぁ~…だりぃ~……

 …雪冷てぇ~……?…」

 

 

コウヤの言葉に面倒くさそうに返すソウタ。

埋もれた顔を横にした瞬間何かを感じたのか、表情を変え芋虫の様な動きでコウヤに近づき、その足にガッチリとしがみついた。

その様子に首を傾げるコウヤだが、次第に事態を把握したのか冷めた目をする。

 

 

「ねぇ?

 何か聞こえない?」

 

 

2人とは別に、いち早く異変に気付いたのはサヨだった。

 

 

「確かに…何だ?」

 

「ゴゴゴ……って、何の音だ?」

 

 

事態の深刻さを理解出来ずにいるタツミとイエヤス。

サヨは察したのか、事の原因であるソウタにジト目をむけた。

 

 

「オイ愚兄」

 

「何だ愚弟」

 

「離せよ、逃げられないだろが」

 

「なら俺を担いでけ、動けないんだよ」

 

 

サヨの視線に気付かず、コントのような事をするソウタとコウヤ。

次第に近づき大きくなる音にイエヤスとタツミは焦りを見せはじめた。

 

 

「何だよこの音?!」

 

 

不安からか叫ぶタツミ、それを見たコウヤは頭をかきむしりながらタツミ達をみる。

 

 

「あぁ~…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「雪崩だ」

 

 

 

 

 

コウヤの言った言葉を理解していないのか、理解したくないのか、タツミとイエヤスは呆けた顔で首を傾げ、サヨはひきつった笑みを浮かべ、涙目でやっぱりと呟く。

ほらとコウヤが指差す先に目を向けると、白い煙を上げながら雪が流れている様子が3人の目に入った。

 

 

「「「イヤァァァァァァァ?!」」」

 

 

迫り来る雪の波、それから逃げるようにタツミ達は全力で山を走り下りる。

後を追おうと走り出すコウヤ、だが足にしがみつくソウタがそれを良しとしなかった。

 

 

「HA☆NA☆SE!

 逃げらんないだろが!!」

 

「離すか!動けないつったろ!

 お前兄を見捨てるのか?!家族だろが!!」

 

「雪崩起こした張本人が何言ってんだ?!」

 

「こうなれば只では死なん!!

 貴様も道ずれにしてやるぅぅぅ!!」

 

 

急いでこの場を離れねば。

コウヤが走りだそうとするとソウタはそれを阻止、互いにその場から動けずにいた。

 

 

「がぁ~、離せ~…っ!

 あ!ミニ丈和服の雪女!」

 

「何だとぉ?!どこだ?!」

 

 

コウヤの言葉に過剰反応し、動かない体にムチを打ちながらコウヤの指差す方角に目を向けるソウタ。

するとコウヤはしめたと言わんばかりの表情で拳を握り、

 

 

「そこだぁぁぁあ!!」

 

「グハッ?!」

 

 

ソウタの顎にアッパーカットを打ち込み、殴り飛ばした。

 

 

「あ~ばよ♪とっつぁ~ん♪」

 

「オノォォォォレェェェェェ!」

 

 

笑いながら走り去るコウヤ。

ソウタはただ、悔しそうに叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オイィィィィ?!

 ソウタさん置いてきちまったぞ?!」

 

 

一部始終を見ていたのか、タツミは合流してきたコウヤに勢いのあるツッコミを入れた。

 

 

「ハッ!心配すんなヤマギ!「タツミだっつの!!」

 兄ちゃんはな、タフでエロくてドスケベで、運の悪い残念系の二枚目半。

 悪知恵やブラフで人を騙すのが得意な詐欺師野郎!

 そして何より人畜有害!

 Sが引くほど鬼畜で、Mが裸足で逃げ出す様な変態だ!

 あの程度じゃ死なねぇから大丈夫だよ!

 ……多分…」

 

「タフ以外の大丈夫要素どこだ?!

 って多分つった?!多分って言ったよな?!」

 

 

少し視線をそらし小声で呟いたコウヤだが、タツミにはしっかりと聞こえていた。

 

 

「イィヤッホォゥ!!」

 

 

全員が死力で駆け下りていると背後から奇妙の叫び声が響き渡り、タツミ達はその発生源を探した。

 

 

「オイ?!アレ!!」

 

「何か来たぁぁぁ?!」

 

 

雪煙を上げながら近付く影。

煙が薄れ、影がハッキリと姿を見せる。

 

 

「ソウタさん!!……って…」

 

「「「何ソレェェェェェ?!」」」

 

 

現れたのは、ふんどし1枚の巨漢をスノボよろしくの如く乗りこなすソウタだった。

山賊を器用に乗りこなしながらタツミ達の側によると、タツミ達の速度に合わせ並走した。

 

 

「いや~、レ〇ドブルってすげぇな。

 翼を授けるだけあるわ、1缶で魔力全回だ」

 

「何でレッ〇ブルがあんだよ?!」

 

 

驚くコウヤの肩に手を回し顔を近付けたソウタは、タツミ達に聞こえないように話し出した。

 

 

「ゆりっぺに頼んで、コネクトで欲しいものが何でも取り出せるに変えて来た。

 お前のも同じ使用に出来たんだが、やらない方が面白いと思ったからお前はそのままのマヨネーズ地獄だ、感謝しな」

 

「マジで?!流石だぜ変態!!啄むぞ」

 

 

走りながらコウヤは、ソウタの胸ぐらを掴んだ。

 

 

「ハッ!それほどでもねぇよロリコン!

 離せ擦り潰すぞ」

 

 

負けじとソウタも胸ぐらを掴み返す。

片方は走りながら、もう片方はふんどし1枚の筋肉モリモリマッチョマンのおっさんの上に乗って滑る男2人が、互いの胸ぐらを掴み頭突きした状態で山を下るシュールな光景が、そこにはあった。

 

 

「あんなぁ。

 ぺド判定食らうのは精神医学上13才以下を性愛対象に見た時、または13才以下とセッ〇〇した場合だ。

 ロリコンはテメェだろがエロペドリスト」

 

「俺は守備範囲が広いだけのフェミニストだ。

 第一そんな幼女や女児には手ぇ出さねぇよ、テメェと一緒にすんなマヨネーズ」

 

「んだとオッパイ性人が、マヨネーズバカにすんなよコラ」

 

「心配すんな。

 バカにしたのはマヨネーズではなくお前だ、脚フェチ」

 

「脚フェチの何が悪いだよ!

 テメェだってオッパイばっかだろ!」

 

「脚よりは健全だろが!

 男ってのは1周回って最後にはオッパイに還るんだよ!

 だいたい脚なんて男にだってあるだろが!

 そこに執着する意味が分からねぇよ!」

 

「テメッ!今全国の脚フェチ全員敵にしたからな!」

 

「だったら何だ!やるか!」

 

「上等だ、かかってこいや!」

 

「「童貞!!」」

 

 

互いに罵り合う2人は、最後の一言をきに下を向いてため息をつき、どんよりとした葬式の様な重い雰囲気を醸し出した。

 

 

「ふざけてる場合じゃないでしょぉがぁぁぁぁ!」

 

 

そんな2人の行動に痺れを切らしたサヨは、ツッコミを入れた。

 

 

 

「あ、そうだった。

 みんな乗れ!」

 

「乗れるか!!

 ていうか、その人さっきの山賊でしょ?!

 何があったらそうなるのよ?!」

 

「ん?

 コイツにこの危機を乗り越えたら、俺以外の誰かと一発ヤらせてやるって契約した」

 

「コイツ俺等を売りやがった?!」

 

 

さも当たり前の様に答えたソウタに、イエヤスは驚きを隠せずに叫んだ。

 

 

「流石だぜゲス野郎(兄ちゃん)!殺して良いか?」

 

「え?やだよ」

 

「素で返した?!

 ってか、そんなのサヨが一番ヤバイだろ?!」

 

 

キョトンとした表情で返すソウタに、今度はタツミがツッコミを入れる。

するとガハハハと笑いながら、山賊はタツミに話しかけた。

 

 

「心配すんな坊っちゃん。

 俺等女には興味ないって言っただろ?

 だから嬢ちゃんは安全だ、手は出さないさ」

 

「だそうだ、良かったなサヨ」

 

「それ女として複雑なんですけどぉ?!」

 

「つーかそれ!違う意味でもヤバイじゃねぇか?!」

 

 

ソウタのめちゃくちゃな行動に嘆き、ツッコミを入れるサヨとイエヤス。

コウヤは笑いながら、タツミの肩を叩いた。

 

 

「言ったろ?うちの兄ちゃん人畜有害だって」

 

「人畜有害とかそんなレベルじゃねぇ!」

 

「よく考えろ山口!!「タツミだ!!」

 今この状況を乗り越えなければ、全員死ぬぞ!

 テメェ等の尻と皆の命、どっちが大事だ!!」

 

「人の事を売っといて、何正論っぽい事吐いてんだアンタは?!」

 

「タツミ君、最初は怖いかも知れないが…

 大丈夫だ、ちゃんと優し…フッゴァ?!」

 

変態(ボード)が喋んな!」

 

 

そう言ってソウタは山賊の頭を足で踏み、雪に埋めた。

 

 

「早くしろ!時間が無いぞ!」

 

「そんなオッサンに全員乗るわけ無いだろ!」

 

「確かに…

 サヨ、お前恋人とかいるのか?」

 

 

ソウタの突然の質問にサヨは、顔を真っ赤にした。

 

 

「なっ?!

 何で今そんなこと聞くのよ?!」

 

「いいから!

 いるのか?!いないのか?!」

 

「…~~~……いないわよ!悪かったわね?!」

 

 

ソウタの迫力に圧されたサヨは、悔しそうに目に涙を浮かべ叫んだ。

 

 

「あっそ!

 じゃあちょっと失礼!」

 

《エクステンド…プリーズ》

 

「えっ?!

 ちょっ…きゃあっ?!」

 

 

エクステンドで腕を伸ばしたソウタは、サヨの体に腕を巻き付け引き寄せた後、サヨをお姫様抱っこで抱き抱える。

 

 

「これなら1人分何とかなっただろ」

 

「えぇい、こうなりゃ自棄だ!」

 

「覚えてろよテメェ!」

 

 

タツミ、イエヤスと順に山賊の上に飛び乗る。

 

 

「ようし、後は俺…「ただしコウヤ、お前はダメだ」

 ……てめっ!さては置いてったの根に持ってんな?!」

 

「フハハハハァ!

 自力で逃げるんだなぁ!」

 

「さ…せ…るかぁぁ!」

 

「ヒャンッ?!」

 

 

勢い良く飛び付いたコウヤは、山賊のふんどしを掴んだ。

 

 

「なんじゃとてぇぇぇ?!」

 

「スピードが、落ちてる?!」

 

 

コウヤの行動に驚き、妙な叫び声を上げるソウタ。

そして山賊の速度が変化した事に、サヨも驚きの声を上げる。

 

 

「ヘッ!人間ボードの使い方なら、俺も知ってんだよ!」

 

「Oh…」

 

 

勢い良くふんどしを引っ張ると、山賊の声と共にスピードが落ちる。

 

 

ふんどし(ブレーキ)離せこのバカ!」

 

「離すか!

 俺も乗せやがれぇぇぇ」

 

「ブレーキが(こわ)れるだろが!」

 

「ちょっ2人共!!後ろ!後ろ!!

 雪がぁぁぁぁぁぁああ!!」

 

 

サヨの絶叫と共に迫る雪。

するとコウヤは何かに気付いたのか、あっと呟いた。

 

 

「兄ちゃん」

 

「何だ?!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…飛べば良かったんじゃね?」

 

 

右手にはめたファルコンのリング。

コウヤがそれをソウタに見せると、ソウタは先程までの焦りを忘れたかのような穏やか笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

「テレポートって手もあったな…」

 

 

 

時すでに遅し、雪の波は5人の真後ろに迫っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「ギィアァァァァ!!」」

 

「「ウワアァァァァァ(OMO;)!!」」

 

「イヤァァァァァァァ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ソウタ達の向かいの山の山頂。

そこにある人影は、ジッとソウタ達を見つめる。

白いローブを纏ったその人物は、雪崩にのまれるソウタ達を見届けた後、腰に巻かれたバックルに指輪をかざした。

 

 

《テレポート…ナウ》

 

 

展開された魔方陣をくぐり姿を消した人物は、まるで魔法使いの様だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔法使い

 

    残り ?人

 

 




ー次回予告擬きー(AB!風)

「…夜這い?」
「何じゃありゃぁぁぁぁ?!」
「駆け落ちかね?」
「惚れてまうやろぉぉがぁぁぁ!」
「これで俺の勝ちだな」
「何してんのよ変態!」
「詐欺じゃねぇか?!」
「お前アホだろ」
「いやだぁぁぁ!」
「次はねぇからな?」
「これが…帝都…」
















「ピーマンは…ピーマンだけは…
 ウワァァァァァァ…婆ぁぁぁちゃぁぁぁん!」


ーーーー





自分で書いててなんだが、こんな奴等を仮面ライダーにするとか大丈夫かと本気で心配し出した今日この頃。

誤字脱字があればご報告お願いします。




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フラグが建つ!

タイトル通り、フラグが建ちます。
いつもの駄文ですが、楽しんで頂ければ幸いです。


「……ん…ここは…?」

 

 

サヨは目を覚ますと、辺りを見回した。

 

 

「そうだ、私達雪崩に…」

 

 

タツミやイエヤスは?

道中出会ったあの2人は?みんなは無事なのか?

 

心配にくれるサヨは、重く気怠い体を起こそうとした。

すると腰に何かが当たっている、否、乗っている感触を感じたサヨは、後ろを向き絶句した。

 

そこには大木が。

その間には自分を庇ったかのように木に倒れかかるソウタの姿があった。

 

 

「ちょっと?!

 ねぇ?!大丈夫なの?!…っ?!」

 

 

ソウタを起こそうと体をを揺するサヨ。

その時、ソウタの額から血が流れ出した。

 

 

「どうしよう…」

 

 

ソウタの額に応急措置として、自身の腰に巻いていた帯を巻き付け止血したサヨは、辺りを再び見回した。

 

 

「……!

 あそこなら」

 

 

目に入ったのは小さな洞窟だった。

ソウタを抱えながら洞窟に入るサヨは、すぐに辺りの物をかき集め、火を起こした。

 

 

「よし!後は…」

 

 

ソウタに視線を移したサヨは、再び驚いた。

その唇は紫に、体も僅かに震えていた。

頭部の出血に雪で濡れた服が、彼の体温を奪っていく。

このままでは凍死しかねない、急いでサヨはソウタの体を火の側に移動させた。

 

 

「仕方ないわよね、助けて貰ったわけだし…」

 

サヨは自身の荷物から厚めの布を取り出した。

幸いにも布は濡れておらず、サヨはそれを側に置くと、おもむろに濡れた服を脱ぎ出した。

 

 

「さ、さすがに…下はいいわよね…」

 

 

下着姿になったサヨは恥ずかしそうに呟き、ソウタの服に手をかけた。

ソウタの服を脱がし終えたサヨは、側に置いた布を羽織りソウタに寄り添う。

恥ずかしさから体温が上がり、鼓動が速まるのを感じながらサヨはソウタに体を密着させようとした。

 

 

瞬間…

 

 

「……寒っ?!…え?何で俺裸?」

 

「…………ぇ?……」

 

「……は?…サヨ…?

 何でお前も裸なの…まさか…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…夜這い?」

 

 

パチンと大きな渇いた音が、洞窟に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

「ホントごめん!

 マジでごめん!

 本当に悪かったごめんなさい!」

 

「…………………………」

 

 

焚き火を挟むように向かい合って座るサヨと、現在進行形でパンツ1枚姿で土下座をするソウタ。

ソウタの謝罪はサヨには届かず、そっぽを向かれていた。

 

 

「いや、ホントマジで許して…」

 

「…………たの?…」

 

「…え?」

 

「……見たの?…」

 

「あ~……はい…」

 

「…ずいぶんと正直に答えたわね」

 

「いや、あんな正面から来られた上に何で裸なのとか言っちゃてるしな…

 弁解のしょうがない」

 

「ふ~ん…

 後、夜這いとかじゃないから」

 

「あぁ、俺を助けようとしたんだろ?

 ありがとな」

 

「べっ!…別にたいしたことは…クチュンッ!」

 

 

素直な感謝が照れ臭かったのか、視線をそらしながら返答したサヨは、小さなくしゃみをした。

 

くしゃみを聞いたソウタはクスリと笑いコネクトの指輪をはめ、側に干してあるズボンを穿き、指輪をバックルにかざした。

 

 

《コネクト…プリーズ》

 

「使えよ、その布だと風邪ひいちまいぞ?」

 

「あ…ありがとう…」

 

 

魔方陣から毛布を取り出したソウタは、サヨに毛布を手渡した後、同じ物を取り出して羽織った。

 

 

「後は……ほれ。

 飲めよ、温まる」

 

 

そう言ってソウタは再び魔方陣から湯気の立ったマグカップを取り出し、サヨに手渡した。

サヨはありがとうと受け取り、渡されたカップに息を吹きかけ口にした。

 

 

「甘くて美味しい…何コレ?!」

 

「ん?

 あぁ、ココアだが…知らないのか?」

 

「し、知らないわよ!悪かったわね!」

 

 

少し頬を膨らませながらサヨはソウタを睨んだが、再びココアを口にして表情を和らげる。

 

 

「……ねぇ」

 

「ん?」

 

「気になったのだけど、その能力なんなの?  

 色んな物を取り出しり、腕が伸びたり、何も無いところから鎖生やしたり…

 貴方ホントに人間?」

 

「失礼だな、魔法だよ」

 

「魔法…?」

 

 

ソウタは頷き、冷ましたココアを口した。

 

 

「俺は魔法使いなんだよ」

 

「うそ…」

 

 

驚いた表情で固まるサヨに、ソウタはホントだと告げ再びココアを飲む。

すると固まっていたサヨが口を開いた。

 

 

「とても30才以上に見えないわ…」

 

「おいサヨテメェ何つった?!

 そっちの魔法使いじゃねぇよ!

 俺はまだ20代だ!執行猶予はまだ7年ちょっとはあるんだよ!

 何だったら、今すぐテメェ襲ってそっちへのジョブチェンジ権破棄してやろうか?!

 あ"ぁ?!」

 

「ゴメンゴメン!!

 冗談だから!本気にしないで!」

 

 

好きで童貞でいるわけじゃねぇんだよと、必死に謝るサヨをよそにソウタは、ぶつぶつとぼやきながら腰をおろした。

 

 

「てか、女の子本人を目の前にしてレイプ宣告って…

 他にはどんなのがあるの?」

 

「他?……う~ん…

 デカくなったり、小さくなったり…臭くなったり、光ったり…ムキムキになったり……とか?」

 

「何それ……使えるの?」

 

「まぁ…使い方次第だよ。

 後このコネクトの魔法はもう1つ能力がある」

 

「もう1つ?」

 

「そ」

 

《コネクト…プリーズ》

 

 

そう言ってソウタは再びバックルにリングをかざし、展開された魔法陣に腕を入れた。

その様子をまじまじと見ていたサヨの肩に、トントンとつつかれた様な音と感触が伝わる。

不思議に思ったサヨが振り返るとそこには洞窟の壁、そこから生えてきたかのように存在する腕が、サヨの目に写った。

 

 

「ヒギャアァァァァァァ?!

 手が!手が!手ぇぇぇぇぇぇ!「ふごっ?!」

 イヤァァァァァ!キモイキモイキモイキモイ!」

 

 

驚きの余りに羽織っていた毛布を放り投げ、タックルをかけるかの様な突進でソウタに抱き付くサヨはパニック状態で、目には涙を浮かべていた。

 

 

「苦し!ちょっ!

 サヨ落ち着け、俺の手!俺の手だから!」

 

「…スン…え?」

 

 

ソウタの言葉で我に返ったサヨは背後を見る。

そこには指輪をはめた右腕がピースをしていた。

 

 

「な?」

 

「何だ…びっくりしたぁ~…」

 

「「……………………」」

 

 

安堵した2人はため息と同時に下を向く。

そして今の自分達の姿に絶句した。

上半身裸の男に抱き付くパンツ1枚の女。

瞬間、サヨの腕は大きく振り上げられ銀色の閃光がソウタを襲った。

 

文字通り眼前。

ソウタの目から数センチの距離に、どこから取り出したのかサヨの右手に握られたダガーが迫っていた。

 

 

「ちょっと待て!

 今のは俺悪くねぇだろ?!」

 

「アンタが魔法なんか使うからよ!」

 

「お前が聞いてきたんだろが!」

 

「やり方ってのがあるでしょう…が!!」

 

「アザディスタンッ?!」

 

 

白羽取りでナイフを止めたソウタに、サヨは頭突きを入れてソウタを倒した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「服も乾いてきたし、そろそろ行くか」

 

「そうね」

 

 

ソウタがコートを触りながら話すと、サヨは賛同して立ち上がりソウタを睨んだ。

 

 

「何だよ?」

 

「あっち!向いててくれる?」

 

「ハイハイ…分かりましたよ……

 ったく、2回も間近で裸見たんだから別に今更気にしなくても…」

 

 

ビシッと外を指差すサヨ。

ソウタはぶつぶつとため息をつきながら返事を返し、乾いた服を着るとサヨに背を向けて座り込んだ。

 

 

「じゃあ俺は暇だし武器の手入れでもしようかな~……」

(何てな小娘!

 この俺がすんなりと引くわけないだろが!)

 

 

そう言ってソウタはコネクトでソードガンと布を取りだし、鼻歌混じりに手入れをしだした。

ソードガンを磨いたソウタは、その剣を色んな角度から見る、銀色のその剣はまるで鏡のようにソウタを写す。

ソレを見たソウタはゲスな笑みを浮かべ、ソードガンを傾けた。

 

 

(ソードガンの角度を調整すれば~♪

 美少女の生着替えを~♪

 覗くことが出来る気がする~♪)

 

 

ソードガンの表面を、鏡のように利用しながらソウタは覗きをはじめる。

しかし、ソードガンに写ったサヨの姿は弓を構えており、鬼の形相で今にも矢を放つ勢いだった。

 

 

「……こ、こんなもんでいいかな~…武器の手入れ…」

 

 

そう言ってソウタはソードガンを仕舞った。

 

 

「ハァ…全く、油断も隙もないんだから……ん?」

 

「聞こえたか?」

 

 

ソウタの行動に呆れながら着替えを再開したサヨは、何かを感じたのかソウタの方を向きなおす。

ソウタも何か聞こえたのか、サヨに尋ねながらソードガンを手に険しい表情で外に出て、周囲を見渡していると何かを見つけたのか、屈みながらそれを覗き見る。

サヨは着替えを止め、薄着姿で後に続きながらソウタの隣についた。

 

 

「あれは…まさかゴブリンか?」

(う~…わ、ゴブリンまでいんのかよ…)

 

 

ソウタの目に入ったのは、馬車に乗った老人と女性を襲うゴブリンの群れだった。

 

 

「多分…

 早く助けな…「はい待ちんさい」っきゃ?!」

 

 

立ち上がり助けに入ろうとするサヨの腰帯を、ソウタはため息をつきながら引っ張って止めた。

 

 

「バカかお前は。

 普通にやり合って勝てる数じゃねぇだろ。

 それに、ゴブリンってのは女を玩具にするらしいからな。

 その場で犯すか、巣に連れ込んで死ぬまで忌みものにして孕ませ続けるかの2択だ。

 あん中に女のお前が助太刀に行った所でアイツ等のお楽しみが増えるだけだよ。

 お前可愛いしスタイル良いんだから、そういう所もう少し気を付けて、女の子としての自覚を持ちなさい。

 そんな下着が見える様な格好で外に出てきたりなんかして、嫁入り前でしょうがみっともない!」

 

「なっ?!オカンかアンタは!!」

 

 

THE オカンな口調で話すソウタに、サヨは顔を赤らめながら、ゴブリンに気付かれない様小さな声で怒鳴った。

 

 

「無事に帝都に着きたいなら、あのじいさんと娘さんには悪いがここはやり過ごした方がいいな」

 

「っ?!

 でもあのままだと!」

 

「あぁ…じいさんは殺され、ゴブリン連中はあの娘相手にお楽しみタイムだろうな」

 

「アンタそれが分かってて見捨てるつもりなの?!」

 

 

ソウタはあぁと頷きながらコネクトでプレーンシュガーを取り出し、方張り始めた。

 

 

「お前が安全に帝都までの旅を御所望ならな。

 危ない橋を渡る必要がないなら、渡らないに越したことはない。

 それに俺は、“確実に勝てる戦いしかしない”。

 俺がするのは勝てるかもや負けないじゃない、100%勝利の決まった戦いだけだ。

 命がチップなら……尚更な」

 

 

冷め切った目、普段のチャラついた雰囲気とは思えないような目と声で話すソウタに、サヨは驚きながらもソウタの意見に反対を示すように睨んだ。

 

 

「最低…だったら私1人で…「だけど」…え?」

 

「俺はやり過ごした方が良いと言っただけで、助けないとは言ってない」

 

 

フフンと笑いながら最後のひと切れを口にし、指についた砂糖を舐めると、ソウタは立ち上がりながらソードガンを肩に担いだ。

それを見たサヨは呆気に取られた表情でソウタを見つめ、口を開いた。

 

 

「…何で?」

 

「あれ、言わなかったか?

 俺はフェミニストなの。

 女の子には優しく、激しく、いやらしくがモットー」

 

 

ニカッと子供の様にハニカムソウタを見たサヨは、少し嬉しそうに笑った。

 

 

「…勝てる戦いしかしないんじゃないの?」

 

「ん~…そうだがちょっと違うかな」

 

 

ソウタは担いだソードガンを降ろすと、リングを取り出した。

 

 

「確かに俺は勝てる戦いしかしない…

 つまりだ……」

 

 

取り出したリングを指にはめると、さっきの無邪気な笑顔とは違う、ゲスな笑顔を浮かべた。

 

 

「100%じゃないなら、100%にしてやればいい」

 

《バインド…プリーズ》

 

 

リングをバックルにかざすと、ゴブリン達の周囲に無数の魔法陣が展開され、そこから大量の鎖が伸び次々とゴブリン達を縛り上げる。

その様子を見ながらソウタはブツブツと呟きだしたた。

 

 

「出す鎖の数以外に長さも消費魔力と比例するのね…

 自身と出す位置の距離は関係ないと…じゃあこっちは!」

 

 

右手で鎖をコントロールしながら、左に手にしたソードガンでゴブリン達の頭や左胸、右胸撃ち抜いた。

頭と左胸を撃ち抜かれたゴブリンは力尽き、右胸を撃ち抜かれたゴブリンは、苦しみながらもバインドから脱け出そうと暴れ続けた。

 

 

「ゴブリンの脳や心臓、急所は人間と同じ場所にあるのか。

 弾丸もコウヤの時に気付いてはいたが、生成する弾の種類で消費魔力は変わると…

 今回は鉛にしたが、

 コルク<鉛<銀の順かな…

 他にも飛距離と弾のコントロール、飛距離が長ければ長いほど、コントロールも精密にすればするほど比例する。

 …ハァ~…疲れた。

 魔力の残量ギリギリだわ~…」

 

 

首をならしながら肩を回すソウタ、最初の軽い雰囲気、少し前の冷酷さ、そしてさっきの冷静さ、その切り替え具合にサヨは再び驚いた。

 

 

「すご…でも、さっきあんなに冷たい事言ってたのに、何でそこまでするの?」

 

「モテたい男は女の子の前でカッコつけるものなの」

 

 

ソウタがそう言って再び笑いかけると、あまりにもバカ過ぎる理由にサヨもつられるように笑いだした。

 

 

「フフ…不純」

 

「男なんて所詮そんな生き物さ」

 

 

そう言いながらソウタはコネクトの魔法で何かを取り出した。

 

 

「何それ?」

 

「1日1本しか出せない魔力回復アイテム」

 

 

コネクトで缶を取り出し、それを飲み干した。

 

 

「多分どっかに伏兵が…っと、言ってるそばからわんさかと」

 

 

右胸を撃たれたゴブリンや、ソウタの死角となる馬車の裏に隠れていたゴブリン達が吠えると、茂みや雪に隠れた洞穴から十数のゴブリンが姿を現せた。

 

 

「私…アンタとは会ったばかりだから、信頼も信用もない。

 してくれなくて良い…でも」

 

 

弓に矢をかけながらサヨは立ち上がり、ソウタを真っ直ぐに見つめた。

 

 

「私はアンタを信じてみたいから…

 背中は…任せて」

 

「オーライ…なら、援護頼んだ」

 

 

サヨに笑いかけると、ソウタは向かって来るゴブリンの群れにソードガンをソード形態に切り替え飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 

 

 

一方その頃、コウヤはピンチに陥っていた。

 

体はボロボロに、額から血を流しながら肩で息をするコウヤの目には、あり得ない物が写っていた。

 

 

 

「なかなかにしぶといな」

 

「ったりめぇだ…こんな事で……くたばる俺じゃ…ねぇ!!」

 

 

目の前の異形に悪態つくコウヤ。

その様子を見た異形はクスクスと笑いだした。

 

 

「そうか……だがコイツ等を相手に同じ台詞を吐けるかな」

 

 

異形はそう言った後にパチンと指をならす。

すると異形の背後の扉が重い音を響かせながら開き、中からいくつものの影が姿を表した。

 

 

「なんだぁ?

 俺をぶっ倒すならもっとスゲェのを…」

 

 

近付いてくる影の正体を知ったコウヤの表情は、次第に青くなっていった。

 

 

「ウソ…だろ?

 待て……ソレは!ソイツだけは!!」

 

 

コウヤの言葉を無視し、徐々に距離をつめる新たな異形。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「止めろ来るな!

 ピーマンは…ピーマンだけは……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウワァァァァァ!!

 婆ぁぁぁちゃぁぁぁぁぁぁん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 

「いや何があったんだよっ?!「キャアッ?!」…アレ?」

 

 

馬車に揺られながら眠っていたソウタは、突然目を覚ますと天に向かって叫びだし、同じく隣で眠っていたサヨは驚きの余り跳び跳ねた。

 

 

「もぅ~…何よいきなり…」

 

「悪い…何かツッコミセンサーが反応した気がしたからさ」

 

 

転んだサヨに手を差し伸べながらソウタは謝罪した。

 

 

「アンタってホントに変ね」

 

「どうかなさいました?」

 

 

ソウタの手を取りながら起き上がり、腰かけるサヨに馬車の前から顔を覗かせる少女が声をかけた。

 

 

「いえ…すいません、騒いじゃって」

 

「構いませんよ」

 

「でも本当に助かりました。

 帝都まで乗せて貰えるだけじゃなくお金まで」

 

「こちらこそ。

 ゴブリンに襲われていた所を助けていただ上に、道中の護衛を引き受けてくれたのですから、このくらいは」

 

「しっかし御二人さん、どうして帝都に?

 それも若い男女で……あぁ、駆け落ちかね?」

 

「「ぶっ?!」」

 

 

老人の放った一言にサヨとソウタは驚き、ソウタに至っては飲んでいた水を吹き出した。

 

 

「ちっちちちちちちちち違います!違います!

 コイツとはそんな!」

 

「お父さん、からかっちゃダメだよ」

 

「そうだぜおっさん。

 それにコイツにはタツミって先約がいるんだ、俺の出る幕はないよ。

 だから照れ隠しで刺しに来るの止めろ、ダガーしまえ」

 

「タッ?!タツミは今関係ないでしょ?!」

 

「お~…顔赤くしちゃって若いっていいねぇ~♪」

 

「からかうな~!」

 

 

からかうソウタを押し倒し、サヨは手にしたダガーを再び構えて襲いかかった。

 

 

 

「タツミと言う方は存じ上げませんが、私はお二人共お似合いだと思いますが」

 

「この状況がそんな風に見えるのかいお嬢さん?」

 

 

冷や汗を流しながら左手でダガーを持つ腕を押さえ、右手でサヨの肩を押し距離を空けようとするソウタの言葉に、村娘はえぇと返し顔を引っ込めた。

 

 

「ん~…よし!

 じゃあハッキリさせようぜサヨ。

 俺とタツミ、彼氏にして結婚までいくならどっちがいい?」

 

「えぇっ?!」

 

「心配するな。

 タツミって即答してもからかったりしねぇからさ」

 

 

ソウタの突然の質問に、サヨは顔を反らし少し頬を赤らめながら沈黙した。

 

 

「おい、そこはタツミって断言してくれよ。

 ガチで悩むとか勘違いしちまうだろが」

 

「なッ?!ナニイッテンノ?!

 べ、別に悩んでなんか無いわよ!!

 て言うか変な事言わないで…っよ!!」

 

「はっ、同じ手を2度も食らうか!」

 

 

頭を後に動かし頭突きの体制に入ったサヨ。

ソウタはニヤリとした表情で、左手で掴んだ腕を上に上げ、膝をついているサヨの両足を自分の足で払った。

バランスを崩した以前に、ソウタの反撃に一時的に宙に浮いたサヨは、驚きの表情を浮かべる。

やったと言わんばかりの表情を浮かべたソウタ、だが……

 

 

「「…ぇ?」」

 

 

本来なら落ちてくるサヨを自身の胴体でキャッチする算段だったソウタ。

しかしソウタの予想に反して、上げた左腕がサヨの落下予測位置を変えてしまい、胸元に来るはずのサヨの顔が自分の顔と重なってしまい、2人は小さな声で驚き硬直した。

 

 

「あの~…

 騒いで貰っても構いませんが、積んである酒樽は倒さないで下さ…い」

 

「「…………ぅむ……」」

 

 

ドタンと大きな音を立てた2人に少女は再び馬車の荷台に顔を覗かせる。

そこで目にしたのは、抱き合う様な体勢で互いの唇を合わせるサヨとソウタの姿だった。

 

 

「あらあら…お邪魔でした?」

 

 

「っぷは?!

 違う!誤解だ!事故だ!なぁサヨ!

 お前も何か弁解を…」

 

「うそ……私の…はじめてが……」

 

「オィィィィィ?!

 泣くなぁぁぁぁ!悪かった!

 さっきのは事故だからノーカンだ!

 あれだ!人工呼吸と同じだと思え!

 そうすれば……な?」

 

「何がノーカンよ!!最低!!」

 

「なっ?!

 俺だってはじめてだったんだよ!

 これが人生(前世を含む)初のキスとか俺としても何か不服なんだよ!」

 

「不服って何?!

 私なんかじゃ不満だと?!

 そう言う事?!」

 

「何でそうなんだ?!」

 

「あの~…喧嘩は…」

 

「はっはっはっ…いや~初々しいのぉ…お?

 着きましたよお二方、あれが帝都ですぞ」

 

「「…ふぇ?」」

 

 

互いの頬を引っ張りながら取っ組み合う2人は、老人の言葉に喧嘩を止めて外を見た。

 

 

「あれがそうなの?…大きい~…

 ねぇソウタ!帝都ってあんなに…ソウタ?」

 

 

帝都を見たサヨはその大きさに驚き、ソウタに話しかけようと隣を見ると、そこには少し辛そうな表情を浮かべながら無言で帝都を見つめるソウタがいた。

 

 

「どうしたの?」

 

「いや……何でもない…

 それよりタツミ達だ、どうにか合流しないとな…」

 

「そうよね…

 特にイエヤス、アイツ方向音痴だから」

 

「タツミは主人公補正があるから大丈夫だろう。

 あのバカは……忘れるか。

 だから問題はイエヤスだけだな」

 

「ごめん、いろいろとツッコミを入れたいのだけど…

 何でタツミは大丈夫なの?」

 

「アイツは運に恵まれてるって事だ。

 現にお前みたいな可愛い幼馴染みとか、明らかにモテそうの無い幼馴染みの親友…どこの古臭いギャルゲだよ」

 

「…?、?、?」

 

 

羨ましくねぇがなと小言を吐きながらソウタは、プレーンシュガーを取り出し口にする。

 

 

「タツミやイエヤスを心配してくれるのは有り難いけど…

 コウヤ…弟さんは心配じゃないの?」

 

「アイツなら心配するだけ無駄だ。

 猛獣や危険種相手でも魔法で何とかするだろうし、出来なくても山賊や盗賊ぐらいなら襲われても大丈夫だ。

 はっきり言ってアイツはかなり強い。

 正直俺、アイツとの純粋な殴り合い(タイマン)で勝った試しがないんだよ。

 てか勝てる気しない」

 

「ウソ…」

 

 

最初の山賊、そして先程のゴブリンとのソウタの戦いを思い出しサヨは驚愕した。

ゴブリンや山賊、桁違いの数を相手にノーダメージで切り抜けたソウタが自分から勝てないと断言したからだ。

コウヤも強い事は山賊の時に気付いていた。

だが先程のゴブリン戦でのソウタを見たサヨには、その言葉が信じられなかった。

心臓や脳、首の動脈など生物の急所を乱戦のなか的確に撃ち抜き、切り裂き、叩き潰す彼の戦いを、実力を目にしたサヨは、驚きから呆けてしまったからだ。

それほどの実力者が勝てないと断言した、サヨはその事実にただ驚く事しか出来なかった。

 

 

「ま、小細工アリ騙し討ちアリ、何でもアリなら負けはしないが…

 アイツが負けるとしたら…弱点をつかれるか、純粋に数の暴力ぐらいだろ。

 ま…後者なら俺と同等か、それ以上の実力を持ったヤツ限定だがな。

 なんせ前世(むこう)じゃ俺に付き合って、色々な所に殴り込んだぐらいだからな…

 それこそ将軍級の実力とかでないと、多分アイツは止まらないよ」

 

「アンタ以上って…

 そう言えば、さっきの弱点って?」

 

「あぁ…弱点って言うよりか、苦手なものかな…」

 

「それって?」

 

 

サヨの質問に少し苦笑いを浮かべながら頭をかくソウタは、サヨを真っ直ぐに見据えて意を決した様に口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……お化けと生トマト…そしてピーマンだ」

 

 

「………………………………」

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

帝都の南門

 

そこを小さな犬を連れて歩く少女がいた。

 

 

「ん~!

 今日もいい天気!

 最高のパトロール日和だね!コロ」

 

「キュウ!」

 

 

少女はセリュー・ユビキタス

帝国警備団に身を置く少女であり、隣を歩く犬型の生物、帝具ヘカトンケイルのコロは日課の見回りをしていた。

 

 

 

「な、何だあれぇ?!」

 

 

門から聞こえた叫び声にセリューは驚き、声のする監視塔に走り出した。

 

 

「どうかしたのですか?!」

 

「妙な軍勢がこっちに向かって来てやがる!」

 

 

慌てふためく衛兵が指差す方角に目を向けると、大きな土煙が上がっていた。

 

 

「貸してください!」

 

 

セリューは見張り兵から双眼鏡を借りると、その様子を見た。

 

 

「何…アレ……」

 

 

目の前に広がる光景に、セリューは言葉を失った。

 

 

じょじょに聞こえるドルンドルンという重低音と、パラリラパラリラと軽快な音を鳴らしながら土煙を上げて近付くそれは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バイクにまたがる、特攻服を着た野菜の群だった。

 

 

 

 

 

 

様々な種類のバイクにまたがる色とりどりの野菜。

そしてそのバイクに掲げられている旗には、セリュー達の見たことも無い字が書かれていた。

 

 

『高丘組』

 

『生喰上等』

 

『辺侍駄武流』

 

『天下一品』

 

『鮮度命』

 

 

驚愕する衛兵達。

セリューも例外ではなく、迫り来る意味不明(やさい)に驚いた。

そして何よりセリュー達を驚かしたのは、先頭を走るニンジンの乗るバイク、その後方に掲げられた十字架に縛り付けられたもう1人の主人公(コウヤ)の姿だった。

皆が警戒する中、突然門から少し離れた場所で野菜達は停車しバイクから降り始める。

バイクから降りた野菜は、ニンジンの乗っていたバイクにかけられた十字架からコウヤを引き剥がすと、勢い良く投げ捨てた。

うつ伏せに倒れ込むコウヤにニンジンは近付くと、その髪を掴み持ち上げた。

 

 

「今度ピーマン残したら、この程度じゃすまねぇからな?

 わ"ぁったがぁ!!」

 

 

ニンジンはそう言って頭から手を離し、コウヤの脇腹に蹴りを入れた。

 

 

「行くぜテメェ等!!」

 

 

再びバイクに股がったニンジンの叫びに、周りの野菜達は雄叫びを上げながらバイクを走らせ、その場を後にした。

数秒間の沈黙。

我に返ったセリューは血だらけのコウヤに駆け寄った。

 

 

「あ、あの!

 大丈夫ですか?!」

 

「……もん」

 

「はい?」

 

「だって……

 ピーマン…しょっぱいんだもん…」

 

 

駆け寄って来たセリューに、コウヤはまるで時代劇などの女性の様に足を崩した状態で座り込み、よよと口を押さえながら涙を堪え言葉を発した。

そしてセリューはその姿と言葉に困惑した。

 

 

「取り合えず…事情をお伺いしますので、ご同行よろしいでしょうか?」

 

 

そう言ってセリューはコウヤの手を取り、慰めながらその場を後にした。

 

 

「しかも……何でトマトも生でしかダメなんだよ…

 別に良いじゃん、焼いたって煮たって…

 あのグチャッて感触がダメなだけなのに」

 

「…………」

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 

 

「次の方ー…

 あー…嬢ちゃんも入隊希望かい…

 んじゃ、この書類書いてまた持ってきな」

 

 

やる気無さげに頬杖をつきながら書類を渡す受付。

彼から渡された書類を読んだサヨは、少しながら不満そうな表情を浮かべた。

 

 

「……

 これって一兵卒からになるんですか?」

 

「当たり前でしょが…

 それにこの時期に入る新兵の大抵は辺境行きだ。

 帝都内で働きたいなら、そっから名を上げて出世するこったな」

 

 

アクビ混じりに説明をする受付にサヨは、渡された書類を勢い良く机に叩きつけ、大声で叫び始めた。

 

 

「そんな悠長な事してられないわ!!

 私、これでも弓にはかなり自信があるの!!

 見てなさい!あそこに掛けてる絵の女にヘッドショットかましてあげるわ!!」

 

 

そう言ってサヨは弓に矢をかけ、構えだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ~…

 ありゃダメだな…」

(アイツ、タツミと同じ事してらぁ)

 

ーニャー…

 

 

サヨが兵舎内で騒ぎを起こす中、ソウタは兵舎外の窓から中を覗きながら、黒猫を頭に乗せプレーンシュガーをほうばっていた。

 

 

「あっ…捕まった」

 

ーナァー

 

 

ソウタが出入り口の方を見ると、ドアが勢い良く開き、そこからサヨが放り出された。

 

 

「いきなり兵舎の中で矢をぶっ放すヤツがいるかぁ!!

 こっちとら不況のせいで希望者が殺到して、てんやわんや何だよ!!

 雇える数には限界があんだ!

 不満があんなら兵士なんざ目指さねぇで、そこらの路地裏で体でも売ってろクソガキ!!」

 

「なっ?!

 アンタ達みたいなのこっちから願い下げよ!

 バーカ!!」

 

 

バタンッ!

激しく閉められた扉に対しサヨは悪態をつくと、ソウタの居る所に戻りどんよりとした表情でため息をすると、膝を抱えながら座り込んだ。

 

 

「……お前アホだろ」

 

 

ソウタの心無い一言に、サヨは目に涙を浮かべながら顔を上げた。

 

 

「ゥゥ…だって~…」

 

「いきなり室内で矢をぶっ放す方が悪い」

 

ーナァー

 

「ほら見ろ…

 猫にもバカにされてんぞ」

 

「何よ!

 てか、その猫どうしたの?」

 

「なつかれた」

 

ーニャー♪

 

 

ソウタが頭の上に乗せた黒猫の頭を撫でると、黒猫は気持ちよさげに鳴いた。

 

 

「そぅ…これからどうしよう」

 

「どうもこうも…

 あんな騒ぎを起こせば、入隊は無理だな」

 

「そんな~…」

 

 

頭を抱えながら項垂れるサヨの肩に手を置いたソウタは、サヨの正面で同じ目線まで屈んだ。

 

 

「入隊という未来の門は固く閉ざされたんだ。

 こうなりゃやるしかないだろ。

 テメェの力で、テメェの意思で…

 開くしかねぇだろ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …テメェの股を「不潔!」サイサリスッ?!」

 

 

真面目な表情と声で下ネタをぶっこむソウタのアゴに、サヨはアッパーカット打ち込んだ。

 

 

「アンタそれ身売りしろって事?!

 帝都に着いて早々何させるつもりよ?!」

 

「じょ、冗談だよ冗談…

 本気にするな、軽いジョークだ」

 

「笑えないわよ~…」

 

 

再び項垂れながら座り込むサヨ。

痛むアゴを擦りながらソウタは再びサヨの前に立つと、手を差しだし口を開いた。

 

 

「ま、気晴らしに町ん中見て回ろうぜ。

 運が良けりゃ、何か見つかるかもしれねぇしな」

 

「…うん」

 

 

その手を取ったサヨは服に付いた汚れを落とし始めた。

その様子を見ていたソウタは、足下の猫に視線をやった。

 

 

「んじゃ、お前とはここでお別れだ…またな」

 

 

ソウタは猫に別れの言葉をかけると、猫も一声鳴いて去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

「……もう一度言ってくれませんか?」

 

「だ~か~ら~、ピーマン残したらアイツらにリンチされたんだよ」

 

 

帝国警備団屯所

 

そこの一室に置かれた小さなテーブルを挟む様に、コウヤとセリューは向かい合いながら話していた。

 

 

 

「アイツらとは…あの野菜の群れですか?」

 

「あぁ…

 ちっくしょニンジンの野郎…今度会ったら細切りにしてリンゴと一緒にレモン汁に浸けてからマヨネーズかけて食ってやる」

 

「「…………」」

 

 

困ったと言わんばかりな表情を浮かべるセリューは、後ろのテーブルで調書を記録している衛兵をみる。

衛兵も似た表情を浮かべながら肩をすかした。

 

 

「なぁそろそろいいだろ?

 俺、兄ちゃん達探しに行きたいんだが」

 

 

しびれを切らしたのか、少し不機嫌気味に尋ねるコウヤの言葉にセリューは席から立ち上がった。

 

 

「人探しですか?!

 でしたらお手伝いします!

 いえ、させてください!!」

 

「マジか!」

 

「はい!

 人探しも世のため、人のため、正義の行いです!

 あ!自己紹介がまだでしたね、自分はセリューと言います!

 こっちは相棒のコロです!」

 

「キュイッ!」

 

「マジでぇぇぇぇぇぇぇぇぇ?!」

 

 

自己紹介の後、同時に敬礼をするセリュー達の名を聞いたコウヤは青ざめた表情で叫んだ。

 

 

「どっ、どうかしましたか?!」

 

「いや、あぁ…俺はコウヤだ」

(マジか?マジで?マジかよウソだ~…

 ど~りでどっか見たことある訳だわ)

 

 

互いに自己紹介をした2人。

セリューは衛兵からペンとスケッチブックを借りると、コウヤに質問をし始めた。

 

 

「ではその方の特長を教えてください」

 

「おぉ、特長なぁ…」

 

 

腕を組ながら考え込むコウヤは、真っ先に思い付いたソウタの特徴を口にした。

 

 

「エロい」

 

「…は?」

 

「人畜有害、歩くエロス、存在そのものが18禁。

 サディストもマゾヒストも泣きながら逃げ出させるド変態。

 そんで人を騙すのが得意な鬼畜詐欺師。

 おそらく全世界が相手にしたくないヤツランキングで、1位をとるだろう女いじりが好きな自称フェミニスト」

 

「いえ…あの、内面的な特徴ではなくて、外見の特徴を…「あ~あ~…みなまで言うな、分かってるよ」…でしたらいいのですが」

 

 

コウヤの述べたソウタの特徴にツッコミを入れたいセリューは、会話を進めるために自身の気持ち(ツッコミ)を抑えながらコウヤに再度問いかけようとした。

だがそれを理解しているのかコウヤがセリューの話しを遮ると、セリューはため息をつきながら再びスケッチブックに目をやった。

 

 

「伸長は俺と同じくらいで中肉中背。  

 髪は黒、後黒いコート着てる」

 

 

頷きながらセリューは、スケッチブックに似顔絵を描き始めた。

 

 

「…以上!」

 

 

コウヤの言葉にセリューと衛兵はずっこけた。

 

 

「他に無いんですか?!」

 

「他って言われてもなぁ…」

 

「顔の特徴とかは?」

 

「顔ね~…目付き悪い」

 

 

どうすればいいのよとぼやきながら、セリューはそれっぽい絵を描いてはコウヤに見せ、コウヤが首を横に傾けては描き直し、再びみせる。

そうこうしている内に、すでに小一時間が過ぎていた。

 

 

(にしても参ったなぁ~…

 兄ちゃんはぐれるとは…

 アイツの行きそうな所……風俗街?

 いや、兄ちゃんアレで以外とヘタレだしな…

 まぁあの変態はほっといても大丈夫だろ。

 つか帝都到着してから即行でセリューちゃんと遭遇って。

 せめてナイトレイドに入れればタツミとは合流出来るんだが…)

 

「…そうだ」

 

 

考え込むコウヤ。

瞬間何か閃いたのか、パンッと両手を叩くとセリューを見つめて口を開いた。

 

 

 

「なぁセリューちゃん、聞きたいことあるんだけど」

 

「今度は何ですか?」

 

 

疲れている様にため息を交えながら応えるセリューに、コウヤは満面の笑みで口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ナイトレイドって、どうやったら入れんの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 

 

「すご~い!

 これが帝都か~、ねぇねぇ!

 あれ何かな!

 あ!あれって服屋かな!」

 

 

帝都内の商店街

人と活気が集まる賑やかなそこに、サヨとソウタは訪れていた。

 

 

「ずいぶんと回復早いな…

 落ち着けおのぼりさん。

 あんまし騒ぐと、周りの迷惑になるぞ」

 

「うぅ…ごめん」

 

「分かれば良いんだよ。

 とにかく、あんましウロチョロするな。

 まだ何があるか分かったもんじゃ……って言ってるそばから!」

 

 

ソウタがため息をつく一瞬で、再びサヨは姿を消した。

愚痴りながら辺りを見渡していると、装飾品店を眺めるサヨが視界に入る。

ソウタは再びため息をつくと、サヨの隣に足を運んだ。

サヨの見つめる先には、透き通った淡い水色の宝石が填められた、銀のネックレスが置かれていた。

 

 

「欲しいのか?」

 

「ぜ、全然?!

 村にはあんなのが無いから、珍しかっただけよ!」

 

「はいはい…」

 

 

否定こそしても、サヨの目はネックレスから離れる事はなく、その様子を見たソウタは頭をかきながら大きなため息をつくと、店の中へと足を運んだ。

 

 

「すいませーん、あれっていくらですか?」

 

「金貨2枚と銀貨6枚です」

 

 

店員の告げた値段にソウタは唸った。

金に関しては、山で出会ったマッチョの親切なオッサン達がくれたので何とかなる。

問題は値段だ。

市場に着いてから様々な店を見渡し、そこに置かれてある物とその値段、それらの物価からすでにある程度の帝都内での為替相場、単価を理解していたソウタは苦い表情を浮かべた。

 

 

「結構するな…まぁワビにはちょうど良いか」

 

「毎度あり~。

 頑張ってくださいね♪」

 

「………」

 

 

何を勘違いしているのか、ニヤケ顔で見送りをする店主にため息をつき、ソウタは商品の入った紙袋を持って店を出た。 

 

 

「あっ…」

 

「ほらよ」

 

「え?」

 

「あ~…あれだ。

 裸見ちまったのと、馬車でのアレのワビ」

 

「ゥゥ…何か変な気分だけど、ありがとう!」

 

 

唸りはしたものの、明るい笑顔で素直に喜ぶサヨはソウタに礼を言うと、紙袋を開けた。

 

 

(どこに行っても、女ってのは変わらないんだな…

 アイツもプレゼントやった時に同じような表情(かお)したっけかな…)

 

 

サヨの喜ぶ姿を見たソウタは、前世(過去)を懐かしむ感情から表情を緩め、目をつむった。

しばらくしてサヨに目をやると、首を傾げながらネックレスを凝視している姿が目に写った。

 

 

「どうかしたか?」

 

「これ…どうやって着けるの?」

 

「…貸せ」

 

 

予想外なサヨの一言にソウタはため息をつくと、額を押さえながらサヨからネックレス受け取った。

 

 

「…ほらよ」

 

「ありがと」

 

 

礼を告げ、くるりとソウタの方に向き直すサヨは、少し顔を赤らめながら笑った。

 

 

「似合うかしら?」

 

「ッ?!」

 

 

その笑顔に不意を突かれたソウタは少し顔を赤くし、とっさにサヨから目をそらした。

 

 

「…ソウタ?」

 

「アー…ニアウニアウ」

 

「ちょっと?! 

 何で空を見上げながら言うの?!」

 

「良いだろ別に…似合ってるから安心しろ」

 

「説得力皆無よ…もう」

 

 

そう言ってサヨは頬を膨らませながら歩いていった。

 

 

微笑ましいの光景の中、ソウタはこれから起きる悲劇の1つを案じ、暗い表情を浮かべた。

 

 

(何でこんな娘が死ななくちゃいけないんだ…)

 

 

これから先の事を考えるなら、サヨは死ぬべきだ…

 

サヨの死は、タツミの起爆剤になる。

サヨの死で、タツミの物語の始まる。

サヨの死が、タツミを強くする。

 

(でも…)

 

サヨが死ななかったら?

タツミはどうなる?

ナイトレイドはどうなる?

未来は?物語はどう進む?

 

 

未来を、物語を知るからこその葛藤がソウタを襲った。

 

 

(やっぱし、サヨは死ぬべきなのか?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈また見捨てるのね〉

 

(…違う)

 

〈犠牲が必要なんだろ?〉

 

(違う)

 

〈今までそうして来たんだ…

 今更何が違うんだ〉

 

(違う俺は、もう…)

 

〈お前は変われ無いよ。

 お前はお前のままだ…〉

 

(それでも俺は、アイツと…)

 

〈貴方は彼とは違う、だからあの娘も私たちみたいに…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …“殺すんでしょ?”〉

 

 

「ッ?!」

 

 

自問自答。

頭をかきながらため息をついたソウタは、側に置かれた木箱に腰かけて空を見上げた。

 

 

「“あん時”までの俺なら、こんなことで悩んだりしないんだろな…

 てかゆりっぺのヤツ、俺の事知ってこの世界に送るのだったら、記憶消して欲しかったな…ま、この記憶消してたら何の役にも立たず、前任達の二の舞だろうけどな」

 

 

昔を思い出しながら自虐的に笑うソウタ、すると足元に何かが当たる感触を感じ、下を見た。

 

 

ーニャー?

 

 

「何だまたお前か…」

 

 

ーニャー♪

 

「……だな…悩むのはやめだ。

 俺はフェミニストだ。

 女の子には優しく、激しく、いやらしく…

 そんでその幸せを守る…だったよな、相棒…」

 

 

何かを懐かしむように再び空を見上げるソウタは、何処と無く寂しげな表情を浮かべていた。

 

 

「俺達がいる時点でとっくにに物語が壊れてんだ、ならやりたいようにやるとするさ」

 

 

足下の猫の頭をワシワシと掴みながら撫でると、猫はウニャと短く鳴くと体を擦り寄せる。

 

 

「なってやるよ、今度こそ…

 テメェが言ってた、“最後の希望”(ヒーロー)ってやつに…」

 

 

足元の猫を撫でるソウタの表情は、さっきまでとはうって変わって強い覚悟を感じさせるような笑みを浮かべながら呟いた。

 

 

「ねぇソウタ!

 この人達、私達を雇ってくれるって!

 使用人兼衛兵としてしかも住み込みで!

 これで宿も職も解決よ!

 それにお給料も色つき、これで少しは村の皆に楽させてあげられるわ」

 

「よかったなぁサヨ。

 …ん?待て、私“達”だと?」

 

 

嬉しそうに戻って来たサヨの言葉に疑問を抱いたソウタが質問しようとした瞬間、サヨの後ろから数人の衛兵と共に1人の少女がやって来た。

 

 

「はじめまして。

 貴方がサヨさんのお連れの方ね?

 私はアリアって言うの。

 これからよろしくね」

 

「あぁいや、俺は別…に……」

 

「どうかしたの?」

 

「お~い、ソウタ~?」

 

 

衛兵を連れた金髪の少女、アリアが自己紹介をすると、ソウタはまるで蛇に睨まれたカエルのように固まった。

サヨが顔を覗き込ませたり、ソウタの目の前で手を振ったりとしたが反応は無く、ただダラダラと妙な汗をかきながらソウタは小刻みに震えていた。

 

 

(……は?…えっ?

 ……sadistic princess?

 サド貴族のアリア様がご光臨なされましたが…

 もしかしてコイツが召喚したのか?

 この小娘、自分を殺す事になる相手連れて来やがったぞオイ…

 鴨が鍋と食材一式揃えてプロの料理人連れて来ちゃったよ。

 どうすんのコレ…

 俺がわざわざ中二病を再発させてまで、シリアスな雰囲気の中カッコ良くフラグブレイクの案を考えてる間に、なぁにコイツ自分でフラグ回収してんの?

 バカなの?死ぬの?

 ホントどうすんだよ~…もぅ~……アレ?

 でもサヨの時も思ったが…実際に実物を見るとアレだな。

 アリア様かわいいわ~…結構好みかも。

 これでも~少し胸が大きければな~…

 いや待てよ…むしろ今のアリア様はこの体型だから完成しているのではないだろうか。

 素直で無垢な表面にちょっと?Sっ気を帯びた内面。

 明るいその笑みの裏で内心、

 へへ…また良いおもちゃゲッ~ト♪

 どう遊んで上げましょうか、フヒヒヒヒ~…

 とか思ってるんでしょ?

 そういうの見てると…こう…… 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……調教したい…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうです、私もそっち側です。

 ちなみに私、Mの方よりこういったSっ気を帯びた子をいじる方が好きなんです。

 Sの方は弄って恥辱と屈辱を与え、

 Mの方には逆に私を責めて頂くのが、私のplay styleです。 

 Sは自分のしたい事を奪われ、Mは自分がされたい事をやらされるなんて、屈辱以外何物でもないでしょ?

 でも私は貴女みたいに非人道的な事はしませんよ?

 そんな焼いたり、切ったり、抉ったりしませんよもったいない。

 まぁあ?傷物にする…って意味合いなら手は出しますが。

 それでも向こうから求めて来ない限り、手は出しませんよ絶対。

 互いの合意が、愛があってこそでしょそういうのは。

 そんなかわいい女の子の心や体に痕が残るような酷い事はしません。

 私はサディストである前にフェミニストなのです。

 女の子は優しく、激しく、いやらしくいじるのが好きなんです。

 比喩的にも、物理的にも。

 そうです私はSです。

 SOUTAのSはサドのSなのです、はい。

 そう考えると、ホントにアリア様は私のツボ心得てますわ~。

 ちょっと背伸びした感じの振る舞いに年齢相応の乙女感、最高じゃ無いですか。

 正直、ドストライクです。

 あ、でも私はロリコンではありませんよ?

 しつこいかも知れませんが、私はフェミニストなのです。

 見た感じ14~16くらいかな…

 この娘の5年後ぐらいが楽しみだ。

 では想像してみてください。

 このアリア様が恥辱に顔を赤くしながら自分に屈伏して言いなりになる姿。

 そして最後にはデレてなついて、昼は眩しい笑顔で後ろから「お兄さま~♡」や、「ご主人様~♡」と抱き付いて来たり、夜は淫乱になって物欲しそうな表情でよがって来る光景。

 興奮しません?

 共感して貰えるそこの貴方、握手をしましょう。

 Nice to meet you 私はソウタ。 

 貴方の魂の友人です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …って、ふざけてる場合じゃ無かったぁ!

 あまりの緊急事態に気が動転して煩悩覚醒してからの野獣解放するところだったぁ!)

 

 

「あ~……ソウタです…」

 

「よろしくねソウタ。

 そこに馬車を待たせてあるわ。

 時間も時間ですし、夕食を御一緒しましょう?

 ご馳走するわね」

 

「いや、だから俺は…「ありがとうございます!」…っておまっ…」

 

「じゃあ行きましょ」

 

 

そう言ってアリアは馬車を停めている場所へと歩き始めた。

サヨと共に続くように歩み出すと、ソウタは頭を掻きながらため息混じりにぼやき始めた。

 

 

「たっくよ…

 原作のタツミみたく、ナイトレイドの襲撃からの転職ですか?

 ここに居るの、タツミじゃなくサヨだよ?

 おい作者、寝ぼけてんの?

 まだレオーネに会って無いぞ?

 あの素晴らしきオッパイを見ずに、いきなりペッタンコアリア様ですか?

 まぁタツミみたいにとって食われる訳じゃないなら、豪勢なタダ飯食らってから考え…」

 

 

サヨには聞こえないよう少し離れて歩いていたソウタは、急に足を止めた。

 

 

(……ん?待て飯だって?

 これって…もしかしてタツミのじゃなくてぇ…

 サヨ達が捕まったイベントじゃね?

 ……あれ?イエヤスがいないよ?

 イエヤスがいないって事は~…

 俺が~…

 イエヤスの代わりに~…

 奥様の日記に載るの?

 俺…ルボラend?

 何それちょーウケる)

 

 

 

「ほ~ら!何ボケッとしてるの、行くよ!」

 

 

立ち止まっていたソウタに気付いたサヨは、楽しそうにウキウキとソウタの手を引いて歩く。

サヨの笑顔を見たソウタは、何かを悟ったかのような柔らかい笑みを浮かべ歩き出す。

 

(しかもコイツあれだ、ポンコツだ…

 なんてこった、サヨさんポンコツでしたか。

 てかどこで死亡フラグ立てたんだ?俺……)

 

地獄行きの馬車に乗る際、穏やかな表情をしたソウタの目から一筋の雫がこぼれていた事は、置いていかれた黒猫以外、誰も…知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

走り出す馬車に揺られながら、遠い目で空を見続けるソウタ。

無数の衛兵に囲まれ緊迫した空気の中、事態が理解できないコウヤ。

 

 

((ひょっとしなくても、今のこの状況…ヤバくね?))

 

 

転生を果たした魔法使い(バカ)2人は、偶然にも同じ事を思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

魔法使い

    残り 2人(WARNING)

 

         

 

 

 

 

 




はい、フラグ(色々)が建ちました。

誤字脱字があればご報告お願いします。


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