龍球これくしょん ー龍(ドラ)これー 着任!!ベジータとピッコロ‼最強の戦士達 (ムリアリア)
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プロローグ1 愛する者の為に…ベジータ散る!―IF―

初めまして。ムリアリアと申します。
様々な小説を見ていて「自分も書ければな~」と思い、書いてみました。
文才0な上に誤字脱字も目立つかと思いますが、それでも見ていていただければ幸いです。
アドバイス、罵倒、苦情、全部がうp主の糧になるはずです!(親父ィ)
艦これは提督歴2年ですが、元ネタ(艦の歴史)、及びアニメの知識はありません。アニメも見てないのでだぁ~めだぁ!な所もありますので、そこの所はご容赦を・・・。ドラゴンボールの方はコミック版を全巻集めて読んでますので多少は大丈夫です!ハイ!アニメは世代じゃないので
同じくご容赦を。
憲兵「屑がぁ・・その程度の知識で読者を満足できると思っているのかぁ?(ギュピギュピ)」
ム「おぉ!?やめろっ、ブr・・憲兵!それ以上気を高めるなぁ!」
憲兵「できぬぅ!(パソコンを圧縮)」
ム「ふぁ~~はははは(涙)」
…茶番はこれまでにして、エピローグではありますが開始です。


「ククク…貴様を倒すには二度と修復できないよう、粉々に吹っ飛ばす事だ…!!」

 

「えっ…!?」

 

 今、広大な荒野に一人の戦士と人型の怪物が対峙していた。

 

 濃紺のタンクトップ状のアンダースーツに筋骨隆々の体、額には魔導士バビディの呪術を受けた者の証である【M】の文字。天を衝く様に逆立った金色の髪、そして敵を射貫くが如く鋭い

グリーンの瞳。目に見える程に迸るオーラからは、時折稲妻上の火花が散る。

戦士の名は、宇宙最強の強戦士族であるサイヤ人。その中でも惑星ベジータの名を関する程の

実力者のサイヤ人の王子、ベジータである。宇宙の中でも3本の指に入る程の強者である彼は、

体中から血を流し、正に満身創痍、といった有様であった。

 

 頭から生えた、根元は太く先が細い触角。黄色のグローブとブーツ。真ん中に【M】と書かれた

ベルト。そして首から背中にかけて紫色のマントをそのピンク色の肥満体に羽織り、糸目で常に

ニコニコ笑っている。

 ベジータと対峙している怪物は魔人ブウと言い、邪悪な魔導士ビビディによって、偶然に

生み出された存在である。魔人ブウの力は余りにも強大で、数多の星と生命がブウに滅ぼされた。

幸い、その暴走に手を焼いたビビディが魔人ブウを封印し、またそのビビディも東の界王神に

倒され、脅威は去った様に見えた。しかし、ビビディの息子、バビディによって封印した玉ごと

持ち去られてしまい、悟空達が住む地球で再び魔人ブウは復活を遂げてしまう。

 

――話を戻そう。ベジータは間接的にとはいえ、魔人ブウの復活に協力した。なので、孫悟空に

変わり、魔人ブウを倒さんと闘いを挑んだ。最初は有利に闘いを進めていたが、かつて闘った

強敵、セルをも上回る再生力に苦戦し、致命傷を負ってしまう。万が一にも勝ち目がないこの状況で、ベジータは不敵に笑う。腹に穴を開けても瞬時に戻るほどの再生能力。これを打ち破るには

再生する箇所すら残さずに木っ端微塵にしなければならない。致命傷により満足に体を動かせる

状況にないベジータが取った最後の手段。それは【自爆】。彼は自らの命と引き換えにブウを

葬り去らんと考えたのである。

 

右手を力一杯に握りしめ、気を爆発的に高め集中させていく。その際にベジータは、

最愛の妻である地球人、ブルマ。そしてその間に生まれた息子、トランクスの姿を思い浮かべた。

 

「さらばだ…ブルマ、トランクス…そして」

          

最後に浮かんだのは宿敵にして最大のライバルであるサイヤ人…

 

 

――カカロット――   

 

 

「ッ……ずああああああああああああーーーーーーーーーっ!!!!!」

 

咆哮と共にベジータを中心にドーム状の爆発破が発生した。その範囲は戦闘場所のみならず、

広範囲を飲み込み、全てを破壊していく。

 

「くおおおおおおお…オ…オ゛オ゛オ゛オ゛………」

 

無論、ベジータのすぐそばにいた魔人ブウが無事でいるはずも無く、あっという間に体は崩壊し、崩れ去っていった。

 

「だああああああああああああああああああああ……!!!!」

 

尚も力の放出を続けるベジータ。その力は凄まじく、既に悟天、トランクスを連れて退避していたクリリン、ピッコロ達にすら、その様子をはっきりと見て取る事ができた。

 

「ベ…ベジータ……ベジータァアアアアアアアアーーーッッ!!!」

 

「あ、あああ…!……くッ……!!!」

 

地球人の戦士、クリリンはその光の奔流を見て、ベジータが自爆したことを知り、悲痛な叫び声を上げる。ナメック星人の戦士であるピッコロは、ベジータにすべてを任せ、状況を黙ってみている事しかできなかった事に歯ぎしりするしかなかった。

 

 

壮絶な、光の彼方に超戦士は消えた。その名は、誇り高きサイヤ人の王子、ベジータ。

 

 

 

――しかし、運命のいたずらか否か、力を使い果たす寸前に、ベジータは不思議な声を聴いた。その言葉を理解する前に、ベジータは自らが発した光に飲み込まれるかの様に消えてしまう。

あの世でもこの世でも無い、【異世界】に、誇り高き超戦士は迷い込んだのであった。

 

 

『提督が鎮守府に着任しました。これより、艦隊の指揮を執ります!』

 




悟空「オッス!オラ悟空。せっかくべジータが命を懸けて魔人ブウをバラバラにしたのに、
全然終わった気がしねぇ。いってぇ何が起ころうとしてんだ?それに変だ!ベジータの死体も
見つからねぇ。おまけに変な声まで聞こえるし。オラもう訳わかんねぇぞ!次回、
龍球これくしょんー龍これープロローグ2話『異次元からの脱出‼超ゴテンクス3―IF―』
ピッコロ「ちぃっ!早く外に出なければ皆魔人ブウに殺されてしまう!」
ゴテンクス「「おーい、ピッコロさーん!」」
ピッコロ「オイ!せっかく人が雰囲気出して次回予告してる所を・・」
ゴテンクス「「俺の出番って、まさか・・次だけ?」」
ピッコロ「うっ!・・・すまん」
ゴテンクス「「チッキショー!!」」

はい、というわけでプロローグ終わりです。え?短すぎだって?プ、プロローグだからあまり長々書いてもよくないじゃないか(震え声)・・次回もプロローグなので艦娘達は出ないと
いうわけでございます☆だらしないうp主で済まない・・・
次もできるだけ早く、正確に出したいと思います。

悟空「みんな!次も見てくれよな!」

<8月9日;追記>前書き、本文、一部を修正しました。


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プロローグ2話 異次元からの脱出‼超ゴテンクス3―IF―

どうも。ムリアリアです。今回はピッコロサイドでまたもやプロローグです。艦娘は
まだ出てきません。す、すまねぇ!こんなはずじゃなかっtギャアアア!
憲兵「屑がぁ・・・それでは始まリー始まリーです・・・」



ナレーター「最大最強の敵、魔人ブウの圧倒的な強さの前に、ベジータは遂に死を、覚悟した…。自爆することで、ブウと相打ちを狙ったのであった。しかし、ブウは生きていた!
―時は流れ、異次元空間『精神と時の部屋』でより邪悪になりパワーを増した魔人ブウ(悪)と、フュージョンから生まれた最強の戦士、ゴテンクスの闘いが始まった。だが、事態は最悪の方向へと向かっていた!ゴテンクスの敗北の可能性を感じ、焦ったピッコロは、たった一つの出口を
破壊し、異次元の空間に魔人ブウを閉じ込めようとした。しかし、魔人ブウは外の世界に脱出
してしまった!取り残されたゴテンクスとピッコロは、果たしてこの世界から抜け出すことが、
できるのか?


プロローグ2話 『異次元からの脱出‼超ゴテンクス3―IF―』」





「「あいつ、逃げちゃったじゃないか!俺たち、こんな所で一生暮らすのかよっ!」」

 

「わめくなッ!!喚いたところで外に出られる訳じゃないッ!!!」

 

 

―ベジータが文字通り決死の覚悟で放った自爆をもってしても、ブウを完全に消滅させるには

至らなかった。悟天とトランクスは、悟飯とベジータが魔人ブウに殺された事に涙した。そして

悟空から教えられた最後の秘策、フュージョンをもって魔人ブウを必ずや倒さんと意気込んだのであった。途中、魔人ブウは格闘技の世界チャンピオンであるミスター・サタンと出会い、サタンの必死の説得もあって、人類を殺さないと約束した。

 しかし、運命はそれを許さなかった。愚かな人間二人により、魔人ブウは激怒。体の奥底に

溜まっていた悪の心が実体化し、太った方のブウは、痩せた方のブウに食べられてしまう。

戦闘向きの肉体になり、より凶悪となった魔人ブウは、大きな力を持つ存在を求め、神様の神殿へと降り立った。強い奴を出せと吠える魔人ブウ。追い返すことが叶わぬと考えたナメック星人・ピッコロは、必死に修業を重ねる悟天とトランクスに希望を託し、『精神と時の部屋』にブウを

連れてきたのであった。―一つの策を胸に秘めながら。

 

『フュージョン』 それは、孫悟空がセルの自爆に巻き込まれ死亡した後、あの世で修業を重ねていた時にメタモル星人から教わった術である。体格、気の大きさがほぼ均等の二人の生物がポーズを取り、成功すれば単体時より遥かに高いパワーを持った超戦士を生み出すことができる。悟天とトランクスは、失敗を重ねつつも見事にフュージョンを会得することに成功した。

超戦士、トランテン・・ではなく、『ゴテンクス』の誕生である。

 元来、子供なだけにフュージョンにより、やんちゃで高飛車な性格は更に拍車が掛かり、危うい場面に何度か陥ったものの、その圧倒的な戦闘力を持って魔人ブウを粉砕、完全に消滅させた。

―かと思われたが、なんと立ち上る煙から魔人ブウは再生した!。本気になる魔人ブウ、打つ手が無いと弱気になるゴテンクス。窮地に陥ったこの状況でピッコロは『精神と時の部屋』の入り口を睨み付け…気孔波を放った。

 そう、扉を破壊したのである。これこそが一つの策。最悪の状況を想定したピッコロが考えた

作戦である。なぜこれが作戦なのか?それを説明する前に、3人がいる場所について説明しよう。

 

『精神と時の部屋』 ここは、外界での1分が6時間になる特異な空間だ。気温の差が激しく、

重力は地球の10倍、空気は四分の1、さらに辺り一面を白で埋め尽くしたこの場所は、修行にうってつけの場所である。しかし、問題はいくつかある。

まず、過酷な環境により、肉体の疲労が通常より激しい事。幼少時に悟空はここで修業をするも、一月も経たずに根を上げてしまった。また、この空間には目印となる物が入り口以外に無く、一度迷うと戻れなくなる可能性がある。

 一番問題なのは、外の時間で2日―つまり2年しかいられない事である。この期間を過ぎれば

入ってきた入り口は消滅してしまい、二度と外界に戻る事は叶わなくなる。

 

――ピッコロはこの問題を逆手に取り、ゴテンクスで勝てなかった場合、扉を破壊することで外界へ逃げる手段を強制的に無くし、魔人ブウをこの異空間に閉じ込めようと考えていたのであった。無論、自分達も出られなくなってしまうのだが…。

 ピッコロがこの作戦を考えた時、脳内で一瞬ではあるが、魔人ブウを道連れに自爆したベジータの姿が思い浮かんだ。

 

 

【貴様、死ぬ気だな…】

【……一つだけ教えてくれ。俺が死んだら、またあの世とやらでカカロットに会えるか?】

 

 ベジータは気絶している悟天・トランクスを小脇に抱えているピッコロに背を向けつつ呟いた。ピッコロは苦い表情をしながらも、ベジータに人を殺しすぎて悟空と同じあの世へ行くのは

不可能な事。肉体は無となり魂も新しいものとなり、新しい生命体に変えられる事を語った。

 

【そうか……残念だ】

 

―やはりな 口には出さずに自嘲気味に笑うベジータ。当然の事だ。カカロットの闘る気を

出させる為とはいえ、観客席に向けて破壊の光を放ち、数百人もの罪なき人を殺した。

それ以前にも数えられない程の命を、自分は手にかけてきたのだから―

 

【もういい、行ってくれ。……急いでな】

 

 うむ、と言いつつ、その場を離れるピッコロ。その途中ピッコロはベジータが初めて、自分以外の者の為に闘うとしている…そう、『己の命を捨ててまで』 そのことに気付いた。

 

 

 

(…すまんな、ゴテンクス。だが!こいつだけは・・魔人ブウだけは絶対に食い止めなければ

ならなかった!俺達の命に代えても…!!)

ベジータの捨て身の行動に触発された…か、どうかは定かではないが、ピッコロは己の命を

捨てて、魔人ブウの暴走を止めることに成功したのである。

 

――と言う展開になればよかったのだが。ピッコロの覚悟を決めた行動は、時期尚早であった。

 

 なんとゴテンクスは、とっておきの技を隠し持っていたのであった。

先ほど、ゴテンクスは魔人ブウが復活した際、もう大技を出せる力が残っていない、と頭を

抱えながらどうしようもなさそうに喋っていた。だが…

 

「あれは軽いジョークさ!かわいいウソって奴だよ!!絶対に絶対にブウを閉じ込められる技があったんだよー!!もうっ!もうっ!!」

 

 まさかの冗談である。ゴテンクスはまだまだ余力を残していたが、『ピンチからの逆転の方が

盛り上がる』と、実に馬鹿げた事を考え、全力をわざと出さなかったのだ。

 

「アホかーーッッ!!!こんな時に何がかわいいウソだーーーーッッッ!!!!

 

 …普段は冷静で頭の切れるピッコロもこれには怒りを抑えられず、ゴテンクスに面と向かって

怒鳴り散らした。

 

「ちっともかわいくないっ!バカッ!バカッ!!バカバカバカーッ!!」

「バカはそっちだよーッ!!バカバカッ!!!

元の世界に帰りたいよ!!入り口元に戻してよーッ!!!」

「ブッ壊しちまったんだ!二度と戻せるかッッ!バカ!バカ!バカーッ!!

 

 お互いに大声で低レベルな罵倒合戦を繰り広げている二人をよそに、魔人ブウは呆然とした表情でふらふらと歩く。閉じ込められたという事実より、お菓子が無いということの方がよっぽど

ショックだった様だ。そして、魔人ブウは破壊された入り口の近くにピタリ、と止まる。

歯ぎしりしながら唸りを上げる魔人ブウ。次の瞬間――

 

「ッ…うぎぃぁあァアアアアぁあああアアああああァアアーーーー!!!!!!」

 

 ブウは激怒し、渾身の力を込めて咆哮した。その勢いたるや、

近くにいたゴテンクス・ピッコロが吹き飛ばされる程の爆音だった。

その威力のせいか、ブウの目の前に空間の様な物バチバチと音を立てながら出現した。そして

その空間からは、神様の神殿が見えた。

 

 ブウはまさかの力技で次元に穴を開けた!魔人ブウの力恐るべし、である。

徐々に小さくなっていく穴を見ながらピッコロは、はっ、と気づいた。

―空間から外の景色が見えるということはその穴を通れば外に出られるのではないか―

ピッコロの悪い予感は的中した。魔人ブウはこの機を逃すまいと己の体を細くし、

空間に入っていってしまった。二人が慌てて駆け寄るも、空間は既に閉じて、消滅してしまった。ゴテンクスとピッコロは、魔人ブウを倒せぬままこの異空間に閉じ込められたのであった…。

 

――そして、現在に至る。

 

「「だけどっ!どうするんだよ!?ブウは外に出ちゃったんだぜ!…もう地球はぶっ壊されてる

かもしれないんだぜ…」」

 

 ゴテンクスは肩を落としながら呟く。ゴテンクス、厳密にいえば悟天とトランクスは

魔人ブウの圧倒的パワーを直に見ている。故に魔人ブウが暴走し、地球を破壊してしまうのでは

ないか、と思っていた。

 幸い、外界ではそのような最悪な出来事は起きていない。――最も、Z戦士達にとっては

最悪の出来事ではあるのだが…。

 

「………」

 

 ピッコロは黙りこくったまま考え事をしていた。そしてゴテンクスに背を向けたまま

徐(おむもろ)に問いかける。

 

「ゴテンクス、お前…声に自信はあるか?」

 

「「えっ…声?」」

 

「二人で思いっきり叫ぶんだ。次元の壁が敗れる程に、な。ブウにできて俺達ができんということはない。」

 要はブウの真似事である。しかし、現状を打破する方法を一々模索する時間が無い以上、

これに賭けるしかない。

 

「「…よーし!やるぜっ!!」」

 

 ゴテンクスは先ほどの萎れた状態から立ち直り、気合を入れ直す。そして、ピッコロと

同じタイミングで息を吸い込み…

 

「「「――だああああああああああああああああああ!!!!!」」」

 

凄まじい大声を張り上げた。しかし、空間には何の変化も起こらない。

 

「ハァ…ハァ…よし、もう一度だ!!」

 

 その後も何度か同じことを繰り返すも効果はなく、徒(いたずら)に時間だけが過ぎていった。

「ハァッ…ハァッ…ハァッ…だ、駄目だ…!針の先ほどの穴も開かない…!こうしてる間にも

、向こうではどんどん時間が過ぎていく……!!」

 

 気になるのは魔人ブウの動向である。外の世界、すなわち神様の神殿には地上での魔人ブウの

破壊活動から逃れてきたクリリンやヤムチャ達Z戦士達や、その他大勢の関係者がいる。

 破壊と殺戮しか頭に無い魔人ブウの事である。恐らくは今頃――

 

「ま、まずいぞ…!みんながッ…」

 

ピッコロは歯ぎしりする。その様子をゴテンクスは肩で息をしながら見遣る。そしてはぁ…

とため息をついた。

 

「「「…ちぇっ。しょうがねぇな…『アレ』を使うか。もーちょっとカッコイイ場面でなろうと思ってたのにな~…」」

 

 腰に手を当て、やれやれと呟くゴテンクス。ピッコロはその余裕ともとれる態度に

怪訝な顔をする。

 

「な、何だというのだ…?」

 

「「へっへーん!何だと思う~?」」

 

【ゴィイイイン☆】

 

「「痛、痛ってててて…」」

「もったいつけるなッ!!バカッ!!!」

 

ニヤニヤとするゴテンクスにピッコロの拳骨が炸裂する。…自業自得である。

 

「「わかったよ!…それじゃ、いくぜぇ!!ジャジャーン…ほっ!!」」

頭をさすりながらゴテンクスは両手を上にあげた後、腰だめに手を握り気合を入れる。

 

「「はあああああああああ……‼‼‼」」

 

 顔に青筋を立てながら力むゴテンクス。その体からはスパークの様な物が弾ける。

 

「お、おい…!何を…」

 

 それに比例して気が増大していくのを見て、ピッコロは目を見張る。

「「ぎぎぎぎぎぎ……‼‼‼」」

 

 筋肉が膨張し、髪の毛が発光する。そして全身が眩い光を発し――

 

「「イェーイ!」」

 

 新たなゴテンクスが姿を現した。しかし、その容姿は以前の超サイヤ人の状態とはかけ離れて

いた。強大なオーラ、体からは絶え間なくスパークが弾け飛ぶ。髪の毛は腰に届くほど伸び、顔は

眉が無くなり、凶悪な雰囲気を醸し出している。

 

「「お、おおっ、お前ッ…!!それ…どうなってるんだ!!?」

 

「「どうなってるって…知らないよ。へへーん!ビビったでしょ?でも、メチャクチャ

強いんだぜ!」」

 

 ピッコロが驚いてるのを見て、ゴテンクスはしてやったり、な顔をして得意げに話す。

 

「「だけど・・・顔がちょっと悪役っぽいのは気になるけどね~。ま、

それはピッコロさんも同じか!」」

 

 どこから出したかわからない手鏡を持ちながらブツブツと呟いているゴテンクス。

さらりと失礼なことを言っているが、ピッコロにはその発言は聞こえていない。

 

「ス・・超サイヤ人3だ・・・!こ、こいつらが・・まさか…!?」

 

 ピッコロは驚きで開いた口が塞がらない。それもそのはず、ピッコロはこの姿を知っている。

それは孫悟空が魔人ブウを足止めする際に変身した超サイヤ人を超えた超サイヤ人をさらに超えた状態。悟空に言わせれば『超サイヤ人3』そのものだからである。

 

「「なーんて喋ってる場合じゃないんだよな。これ、なってられる時間がすっげー短いんだ。すぅー……」」

 

 ゴテンクスは時間がもったいない、と早速息を吸い込む。そしてかっ、と見開き――

「「だあああああああああああああああああーーーッッッッ!!!!!!」」

 

 先程やった様に叫び声を上げた。すると、ガラスが割れるような音と共に空間に穴が開いた。

 

「「やったぁ!穴が開いたぜ!」」

「………(あんぐり)」

 

 ガッツポーズを決めるゴテンクス。ピッコロは最早言葉が出ず、このハチャメチャな様子を

ただ茫然と見ているだけであった。

 

「「ピッコロさん!なにボヤッとしてんの!ほら、早くしないと穴が閉じちゃうよ!」」

「あ、ああ…」

 

 先に穴に入ったゴテンクスに続いてピッコロも入る。かなりの時間をくったものの、

何とか脱出することに成功した二人であった。

 

 

―その時であった。ピッコロは穴に体を潜り込ませる直前、ノイズの様な何かを聞き取った。

 

【ザ…ザ・・・『…ノ…リト…テ…メ・・・‼』】

【ザ…ザ…『コ…ハユ…セ…』】

 

(な、何だこれは…!?グッ…頭が、割れるようだ…!!だ、駄目だ。意識が…)

 

 最後に聞いた言葉を理解するよりも早く、ピッコロの意識は途切れ、次元の穴はピッコロを

飲み込み、消失したのであった。

 

 

『いいこと?暁の水平線に、勝利を刻むのよ♪』

 

 

ナレーター「やっと脱出できたゴテンクスとピッコロ。だが、ピッコロは謎の声に導かれるかの

ように消えてしまった。一体何が起きたのだろうか?そしてピッコロの運命は、如何に!」

 




悟空「オッス!オラ悟空!なんてこった。ベジータに続いてピッコロまで消えちまった。
地球の方はゴテンクスが残ってっからまだいいけど…。だけど何で二人の気を感じねぇんだ?
地獄でも界王神界でも気が全く感じ取れねぇなんて事はねぇはずなんだけどなぁ。」

次回!龍球これくしょんー龍これー第1話『どこだここ!?ベジータ異世界にたどり着く!』

ベジータ「チッ…いきなり海のど真ん中に放り出されたと思ったら、なんだこの女共は?」
???「・・・人が空に浮いている?あの奇妙な服装と言い、怪しいわね。
深海棲艦の新兵器か何かかしら」
???「ナンダアノヒタイガハゲタニンゲンハ・・・?」
ベジータ「貴様等ぁー!人の悪口ばっかり言いやがってぇええ!」

はい。プロローグ2話終わりです。今回、少しオリジナル要素入れました。ピッコロの覚悟が云々との所です。書いてから気付いたけどこれアニメほぼ丸パクリじゃねーか!(デデーン☆)
悟飯「(本編のネタバレなんて)なんてひどいことをするんだ!」
パラガス「こぉんな最低のうp主は必要ない!抹殺してしまええええ~!!」
ム「ダニィ!?ニャmふぉお!!(キィイイインドゴォオン)」
つ、次からは本当に艦娘も出てきます。次も早く出せたらいいなァ・・
後、ここからはオリジナル要素(という知識無いが故のガバガバ設定)が出るかと思います。
タグにオリジナル設定ありって加えた方がいいかな?
アドバイス・感想・苦情、なんでも結構です!うp主に力を分けてくれー!

悟空「みんな!また見てくれよな!」

追記;本文の誤字を直しました(依然=以前





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第1話『どこだここ!?ベジータ異世界にたどり着く!』

どうも。ムリアリアです。今回からやっと本編始まります。
島風「私達が出てくるのおっそーい!」
し、仕方ないじゃない!それに前振りは大事だって・・。
龍田「あら~?言い訳するなんていけない子ねぇ♪(スチャッ)」
ちょ、その槍どこにぶっ刺す気・・・アッー!(ブスリ♂)
ほ、本編開始です・・グハッ(ち~ん)




ナレーター「ピッコロはゴテンクスと自らを道連れに、魔人ブウを『精神と時の部屋』に
封じ込めた。だが、魔人ブウはあっさりと抜け出してしまった!超サイヤ人3になった
ゴテンクスとピッコロは、急いで空間から脱出するも、ピッコロだけが忽然と消えてしまう。
一方その頃、死んだと思われたベジータは、誰もいないであろう、小さな無人島で
目を覚ましたのであった…

第1話『どこだここ!?ベジータ異世界にたどり着く!』」


 ベジータは魔人ブウとの闘いで自らの力を全て出し切り、自爆した。本来であれば自爆した者は確実に死亡する。Z戦士の餃子(チャオズ)、ベジータの側近であったサイヤ人、ナッパが

生み出した植物怪人・栽培マンがいい例だ。――最もセルの様に本来であれば死んでいる場合であっても奇跡的に生き残るケースも存在するが。魔人ブウに至っては、一瞬で細胞ごと

消し飛ばされない限りは死なないので、自爆はノーリスク・ハイリターンである。

 

 自爆の話はさておき、全宇宙の生命体は死亡した際、閻魔大王のいる地獄に送られる。そして、

そこで天国行きか地獄行きかの判決を下されるのだ。ピッコロとの会話(プロローグ1話参照)で説明済みだが、人を殺した、物を盗んだ等の『悪い』行為を繰り返していけば当然下される判決は地獄送りである。ベジータもそれを承知の上で自爆した…

――のであるが、ベジータが目を覚ますと、そこは何もない、それこそ『精神と時の部屋』にでもいるかのような水平線の彼方まで真っ白な空間が存在していた。

 

「ぐっ…!…こ、ここはどこだ…!?俺は、確かに魔人ブウを道連れにしようと自爆した

はずだ…。まさか、ここが地獄?いや、それにしては何もなさすぎる!ピッコロが言った様に

魂とかいう奴がそこらにいるはず―」

 

そこまで考えて、ベジータはふと、気が付いた。なんと、手足があるではないか!服もボロボロの状態から元通りになっていて、傷も一つもついてない。

 

「どういうことだ…!…まるで理解不能のバーゲンセールだ。」

 

 よくわからない言葉をブツブツと呟きながらベジータは腕組みをする。

 

「とりあえずここから動かない事には始まらん。…とはいっても、目印が無い以上どこに行くか

わからんが。……うっ!!?」

 

 まず行動せねば、そう考えをまとめ、一歩踏み出そうとしたベジータの目の前で、突然眩い程の光が生まれる。

 

(な、なんだこれはッッ!?う、うおおおおお!!)

 

慌てて目を瞑り、顔面をガードするように腕を交差させるも、光の奔流はなお続き、ベジータを

包み込む。

 

 漸く光の奔流が収まり、ベジータが少しずつ目を開けると、辺り一面に海原が広がっていた。

「ここは…海か。ということは…まさか、地球に戻ってきたのか!?」

 何度目かにわたるベジータの驚愕。そして、ベジータは頭の上に『本来であればある物』が無い事に気付いた。

 

(カカロットについていた輪っかの様な物が付いていない…まさか、ドラゴンボールで

生き返ったのか!?だが一体、誰が何のために・・?)

 

 ドラゴンボール――詳しい説明は省くが、大抵の願いは叶える事のできる夢のマジックアイテムである。それを使えば、たとえ死者であろうと(条件付きではあるが)よみがえらせる事が可能だ。

 

 しかし、自分は天下一武道会で大勢の人間を殺した。その殺された人達をよみがえらせるなら

ともかく、人殺しをした自分まで生き返るなんて―

 否、とベジータは頭を振る。もしも…もしも、であるが、あの時の自爆で魔人ブウがまだ

生きていたら?そう考えると自分が生き返った理由も察しがつく。だがそうだとすれば――

 

「くそったれがッ!!!じゃあ俺は犬死にだったって訳か…!!ピッコロの奴が

ちゃんとトランクス達を無事に逃がしてくれればいいんだがな…」

 

脳内にあのピンク色の肥満体がニヤニヤ笑っている姿が映る。思い出す度に苛々が増していき、歯ぎしりをする。

 

「あの醜いフーセンデブめ!!今度会ったら一欠けらも残さず消滅させて…ん?」

 

 とてつもなく物騒な事を叫びながら、何気なくベジータは後ろを振り向いた。そして、

 

「なッッ!!?カ、カカロット!?それに魔人ブウとかいうヤローまで…!!」

 

―しつこいようだが、またもや驚くベジータ。しかしそれも無理はない。ベジータの目の前には、自分の宿敵にして永遠のライバル・孫悟空と、先程までブッ殺すと思っていた魔人ブウの姿が、

そこにあった。

 

(どういうことだ!?まるで気を感じなかったぞ…!…いや、そんな事はどうでもいい!)

 

 色々疑問に思う所はあるが、目の前に倒しかねた相手がいる。それだけでベジータが次にする

行動は決まっていた。

 

「カカロット!!手を出すなッ。こいつは俺が始末する!!」

 

 カカロット、地球名で孫悟空に左手で牽制の手を振り、右手を魔人ブウの方に向けて必殺の

気功波を放とうとする。…が、孫悟空から反応はない。

 

「おい、聞いているのか!カカロット!!…チッ、まぁいい。

てめぇが闘う気がないんなら俺が…」

 

 こいつを殺す、と言おうとしてベジータは気功波を打とうとした手を止めた。孫悟空が突如、

超サイヤ人になったのである。そして間髪入れずに超サイヤ人2に変身した。

 

「むっ・・カカロットの奴、俺と闘った時と同じ状態になりやがったか。…だがそれではブウの

ヤローは倒せん。どうするつもりだ・・?)

 

 ベジータは先程の激昂がウソのように冷静になり、気孔波を打とうとした手を下げ、腕組みを

する。そう、今の孫悟空ではブウを倒すことはできない。ベジータはその身を持ってその事を経験したのである。

 

(それにしても気味が悪いぜ。ブウどころかカカロットまで一言も喋らんとは・・。

いや、そもそも俺に気付いてすらいないのか?)

 

 普段だったら『無視しやがって!』と大いに怒る所ではあるが、先程から連続でありえない事を経験しているベジータは、怪訝な顔をしながら考えを巡らす。

 超サイヤ人2に変身してから少し間を置き、悟空はまたもや気を溜め始める。目を見開き、唸り声(実際にはベジータには聞こえないから口が開いているだけに見えるが)をあげながら

気がどんどん膨れ上がっていくのをベジータは感じ取った。

 最初からいきなりフルパワーで挑むのか、と考えるベジータであったが、すぐに違いに気付く。悟空を中心に、空気の流れが変わっている。しかも――

 

(まだ気が上がってやがる!?フルパワーでもここまでは・・はっ!ま、まさかカカロットの奴、更に『壁を越えた』のか!?)

 

 そう、『超サイヤ人を超えた超サイヤ人を、さらに超えた』のである。悟空の足元では、海が轟々と波立つ。青空に浮かぶ雲は悟空の方にまるで吸い寄せられるように動いていく。

 

 地上では世界各地で大津波が発生し、地響きによって建物が次々と崩落していく。

正しく天変地異と呼んでもよいだろう。

 

「クソッタレ!なんてヤローだ。この俺が震えてやがるとはッ…」

 

 必死に踏ん張りながら悟空に目を向けるベジータ。そして悟空から膨大な光が放出され、

 

「う、うおおおおお…!!――――」

 

 余りの眩しさに片腕で顔を遮りガードする。そして、光はそう間を置かずは収まった。

ベジータが薄ら目を開けると…

 

「な、何だと!?カカロットの奴とブウのヤローはどこに行きやがったッ!?」

 

 先程までの様子がウソのようにしん、と静まっていた。それもそのはず、魔人ブウ、そして

凄まじい気を発していた悟空までもがこの場にいないのである。

―まさか自分は今まで夢を見ていたのか?あまりの突拍子のない出来事に、一瞬そう思い込んだ

ベジータであったが、即座にそれを否定した。

 

(いや、あの光景は紛れも無く現実だ。あのカカロットの凄まじい気が全身に纏わりつくかの様に感覚として残ってやがるッ…!)

 

 ふざけやがって、と思わずにはいられなかった。バビディの呪術を受けてまで、限界を超えた

パワーを手に入れたベジータであったが、自分の宿敵はそれをさらに一歩も二歩も上回っていた。あまつさえ決闘の際にはその力を出さずに闘っていた―つまりベジータは2重の意味でプライドを傷つけられたのだ。

 

「カカロットのヤロウ、次に会ったら徹底的に叩き潰してやる!!…チッ、それにしても

ここはどこだ?地球なのは間違いないが」

 

 血が出るくらいの勢いで拳を握りながら額に青筋を浮かべ、歯ぎしりするベジータ。

…が、いない相手にどうこうするも無いので、舌打ちをしながらベジータは辺りを見回す。

 最初と同じようにベジータの周りは透き通るような青の海原が広がっている。これだけ見れば、何も変わらないように見えるが…ふとベジータは気付く。

 

「服がボロボロの状態に戻ってやがるな…おまけに自爆する前ほどじゃないが、

傷まで残ってやがる。…仕方あるまい、あの小島に降りて休憩するか」

 

 今のベジータは少し腹が減っている状態だった。幸い、先とは違い島がある。そこでなら少しは食えるものがあるだろう、そう考え、ベジータはそこらに浮かぶ小島に適当に当たりを付け、

降下する。

 サクっ、と軽い音を立てながらベジータは着地する。海岸近くに降りたために、着地の際に風が

少々舞い、それに伴い砂が巻き上がる。

 

「げほっ!ペっ!ぺっ…くそったれ、砂が口の中に入っちまった。

どこまでもイラつかせやがるッ!…ん?『アレ』は…」

 

軽く砂を蹴り飛ばし、理不尽に怒るベジータ。恐らく先程の出来事が余程腹に据えかねたので

あろう。―だからといって今ので怒るのは少々子供っぽい所でもあるが。

それと同時にベジータは、視界に入った『ある物』を発見し、歩きながら近寄っていく。

 それはバケツであった。冗談ではなく、本当にただの緑色のバケツである。

 

「チッ、ただのゴミか。わざわざ砂が巻き起こらないように

歩いてきてやったというのに、骨折り損だぜ」

 

 そう呟くとベジータは溜まっていたストレスを吐き出すが如く、そのバケツを放り投げる―

 

――投げようとした所で、ベジータはバケツに白い文字で何かが書かれている事に気付いた。

 

「何か文字が書いてやがるな。…『どんな傷でもこれを被ればあっという間に全快します!

あなたも試してみませんか?【高速修復材】』…傷を治すだと?こんな気色悪い液体が?」

 

 ちゃぷん、とバケツと同じ色をした謎の液体を凝視しつつ、ベジータは訝しむ。一瞬ベジータは栽培マンの肌の色――ではなく、かつて地球に来て大怪我を負って惑星フリーザに帰ってきた際、傷を癒す為に入ったメディカルマシーンを思い出した。

 

「あれも緑か水色かわからん色をしてたな。ふっ、今となっては懐かしい思い出だ。

…とりあえず使っておくか。こんな所に打ち捨てられているんだ。誰も使いはしまい」

 

 普通だったら気味悪がって誰も使わないところであるが、流石はサイヤ人と言ったところか。

バケツの取っ手をぶっきらぼうに掴むと、逆さまにして一気に緑色の液体を被る。すると――

 

「…確かに治ってやがる。おまけに服も元通りか。だが全快、とまではいかない様だな」

 先程まで穴だらけだった服が傷一つない状態に戻り、あちこちにあった傷があっという間に

塞がったのである。…普通であれば全快するのだが、ベジータにはまだ少し傷が残っていた。

 改めて仙豆のありがたみを知ったベジータ。そしてバケツを捨てようとするも、バケツの裏面にまだ文字が残っていることに気付く。

 

「くそったれ。表に全部書いていればいい物を・・・『※注意!艦娘以外には効果が

薄くなります。というか毒なので決して艦娘以外には使わないでください!

使ったとしても自己責任でなんとかしてネ☆(by大本営)」

 

 最後の文字にイラッとしつつ、ベジータはある単語に注目した。

 

「艦娘、だと?個人名だとは思えんが…まさかサイヤ人・地球人の様な種族名か?

それに娘、ということは女か。大本営というのも一体…ッ!」

 

 ひとまずバケツを投げ捨て、腕組みをしながら考え事をするベジータ。

 

だが、即座に考え事を中断し、即座に地面を蹴って後方に飛ぶ。すると――

 

≪…ルルルルル…ドッゴォオオオン!!!≫

 

 ベジータが先程までいた場所に何かが落下し、激突。大きな音と共に砂が激しく舞い上がる。

舞い上がる砂を片腕で防ぎながらベジータは飛んできた方に目を向ける。

 

 すると、海に生き物の様な何かが見えた。数は二つ。ベジータは何かが落下した場所に

駆け寄り、砂に埋もれている物を手に取った。

 

「これは…大砲の弾か?ふん、あそこにいる奴らはこれを使って攻撃してきた訳か」

 

―少し前にトランクスに映画館とやらに連れられて見た映画を思い出した。海の上を動く

大きな鉄の塊がこれを大きくした物を棘が生えた歯車の様な機械に向けて

撃っていたシーンだったか。

 

『機械だけを殺す機械かよぉ!』と電波の様な物を受信した――かどうかはさておき。

ベジータはポーン、ポーンと2,3度弄ぶように大砲の弾をお手玉する。そして、

 

「そらっ!返すぞ!!」

 

 ベジータは狙いを定めて攻撃してきた生き物に対して大砲の弾を投げつける。

「「!?!?」」

 

 謎の生き物は声は出さないものの驚いたらしく、一瞬遅れて、大砲の弾を避ける。大砲の弾は

遥か遠くまで飛び、着弾。派手に水柱を立てる。2匹はその光景を呆然と見るも、

すぐに体勢を立て直そうとする。が、その一瞬の隙が命取りとなる。

 

「勝手に人様に攻撃してきやがって!今の俺は気が立ってるんだ。近づき

すぎて…火傷するんじゃねえぞぉお!!!」

 

 今までに溜まっていた鬱憤を晴らさんと、ベジータは2匹に対して急接近する。派手に水飛沫を

上げながら突っ込んでくるベジータに対して、生き物は口を開き、そこからまた弾を発射する。

「ふん!…つあッッ!!!!」

 

ベジータは右手を構え手刀の形にし、飛んでくる弾に対して薙ぐように振った。

手刀に当たった弾は真っ二つに割れ、ベジータの後ろで爆発した。

 

「「ギギッ!?」」「雑魚が…ずりゃ!!」

 

―避けるのではなく、真っ向から弾を叩き潰した。またもや驚く生物に対してベジータは

懐に潜り込み、胴体に向けてボディーブローを繰り出す。

 凄まじい衝撃と共に、身体をくの字に曲げる生物。間髪入れずに、ベジータは回し蹴りを放つ。生物は大きく吹き飛び、すぐ近くにいたもう1匹にぶつかった。今ので大ダメージを受けた

らしく、体のあちこちから煙を吹き出しながらふらふらと、自分を吹き飛ばした人間を

視界に入れようとする。が、既に人間―ベジータの姿はそこにはいなかった。

 

「バカめ、後ろだ!!」

 

 声をした方に振り返る生物。そこには、右の掌を全面に突き出したベジータがいた。

 

「喰らいやがれ!!」

 

一瞬掌が光り、そこから金色の光が撃ちだされる。

破壊の力を秘めた光は生物に吸い込まれるように飛んでいき――

 

≪ドグォッ!!!≫

 

 先程より派手な水柱をあげる。水柱が収まると、そこには黒焦げになり体中から煙をあげ、

身体を半分海に沈めながらぴくぴく、と浮いている生き物の姿があった。

 本当は消し炭にしてもよかったが、もしかしたら食えるかもしれない、と考え、

敢えて威力を落としたのだ。

 ベジータはその生物の脚を掴んだ。大きさとしてはちょうど悟天達より少し大きいくらいか。

これなら2匹まとめて島に持って帰ることができそうだ。

 姿は胴長、というよりも後ろについている足をのぞいたらほぼ胴体だけの様に見える。

目と思われる部分には、超サイヤ人と同じくエメラルドグリーンの光が宿っている。口には歯がぎっしりと並んでおり、サメの様な刃物の如き鋭さはないものの、人間の頭くらいなら

簡単に噛み砕けそうである。

 

―気味の悪い奴。ベジータはこの生き物に対してそう感想を抱いた。とはいえ、ベジータは過去に様々な宇宙人と会っている(もれなく皆殺しにしたが)為、別に驚きはしないのだが。

「ふん、雑魚のくせにこの俺に挑むとはバカな奴らだ。

…あまり美味そうではないが贅沢は言ってられん」

 ベジータは2匹の生き物を小脇に抱え、元いた島に戻っていった。

 

―パチパチ、と火花が飛び散る。そこらに生えている木を伐り、気で火をつけた後、

仕留めた生物を同じく先を削って尖らせた木の棒に突き刺し、じっくりと炙る。

 頃合いを見て、一匹を手に取り頭から噛り付く。味は地球に出発する前に制圧した星の原住民と似たような味で、平たく言えば美味くもなく、不味くもなく、と言ったところか。

 

―それにしても。ベジータはもぐもぐと口を動かしながら考え事をしていた。

(あの光景が夢でないのであれば、ここはどこだ?地球にこんな生物はいないはずだ。

いたとしたら恐らく、ちょっとした騒ぎになっているはず…)

 結果はベジータの圧勝であったが、普通の人間は言わずもがな、兵器を使ったとしても

この生き物を倒せるかどうかはわからない、とベジータは考える。

 流石は戦闘民族と言ったところか、その辺りは恐ろしく勘がよい。

 

 2匹とも食べ終わるのにそう時間はかからず、ベジータは口元を腕で拭いながら立ち上がる。

そして、尻辺りの埃を払った後、焚火に向かって足で砂をかけ消火した。

 

「さて、これからどうするか…ん?気を複数感じるぞ。まさか戦闘が起きているのか?」

 

孫悟空達Z戦士が得意とする、気をサーチする技術。ベジータもそれを使うことができるのだ。ベジータは感覚を鋭敏にする事で、複数の気配をキャッチした。

(数は10・・・そのうち5つは気が小さくなってやがる。ここにも僅かだが音が聞こえる…。

と、いう事はかなり激しい戦闘をしてやがるな)

 

――面白い。ベジータの口角が上がる。戦闘民族サイヤ人の血が騒ぐのだろう。身体から

白い炎の様なオーラが立ち昇る。どうやら戦闘に乱入するつもりらしい。

 

「はっ!!!」

 

 ベジータは掛け声をあげると急上昇して空高く舞い上がる。そして、戦闘が起きているであろう場所に猛スピードで飛んでいく。

 

 

――蒼天を一筋の白い矢が翔けて行った――

 

 

 

 一方、ベジータが辺りを付けた場所では、彼の予想通り激しい戦闘が行われていた。

 

「くっ…流石は姫級ね。ここまで追い込まれるなんて…」

 

 短めに纏めた黒のサイドテール。左肩には艦載機発艦の為の飛行甲板。背中には矢筒と大量の矢が入っている。胸当て、腰紐、袴にはその人物のカラーリングであろう青色があしらわれている。

 ブラウンベージュの瞳は鋭く、百戦錬磨の雰囲気を感じ取れる。この人物こそ、

正規空母『加賀』。元は加賀型戦艦一番艦であったのが『とある事情』により、空母として

生まれ変わったのが彼女である。

――その空母がどうして人型なのか?それはさておき、彼女を含む、味方の何人かは

負傷していた。加賀本人も身体のあちこちに傷があり、袴はボロボロ、甲板も焼き焦げて

その機能を発揮することは叶わなくなっている。

 

「うう…真っ先に狙われるなんて不幸だわ…(ぐすん)」

 

 と、加賀の左でボロボロな状態で俯きながらブツブツと暗い表情で呟いているのは扶桑型戦艦、

その2番艦である『山城』である。

 加賀と同じく黒髪ではあるが、髪型はボブカット。緋色の瞳に巫女装束を意識した服に

瞳と同じ色のミニスカート。頭の右側からは艦橋の様な髪飾りが付いている。

 

 しかし、何よりも目を引くのは背中に付けている機械群――艤装である。巨大な砲塔4基を背中からはやしているその姿は、まさしく『超弩級戦艦』と言うにふさわしいであろう。

 だが、その砲塔も根元から折れ曲がり、機能を半ば停止している状態になっている。4基全部が壊滅しわけではないので攻撃できなくはないが、良くて駆逐艦の様な小型しか

倒すことはできないであろう。

 実は彼女、戦闘が開始してすぐに、この状態になったのである。…確かに不幸である。

そう、どこかの狼の動きを模した拳法使いの様に―

 

「そこまで私は弱くないわよ!!…はぁ~…」

 

と、誰もいない虚空に向けて力一杯叫ぶ山城。だからと言ってどうにもなるわけではなく、

余計に落ち込むのであった。

 

「何やってんだ山城さん…って、ンな事よりもどうするよ加賀さん?

このままじゃ正直やべぇぞッ…!」

 

ジト目で山城の方を見た後、即座に加賀に目を向けた彼女は、高雄型3番艦、重巡洋艦の

摩耶である。彼女の言う通り、正直戦況は不利な状況にあった。

 加賀は中破、山城は大破しているものの、摩耶本人、そして駆逐艦の島風は小破であり、同じく軽巡の球磨はほぼ無傷である。

 対して敵はベジータが闘った生物に似た存在――駆逐ロ級、ハ級は撃沈。軽巡ホ級、重巡リ級は大破。戦艦ル級は中破。…これだけみれば加賀達の方が有利なのは明白である。

 しかし、残りの1体が厄介であった。その1体は、右手を加賀達に向けた。

 

「ククク…サスガカンムスタチトホメテヤリタイトコロダケド…

トウトウオワリノトキガキタヨウネェ?」

 

 まるで地獄の底から湧き出た様な恐ろしい声でどこかで聞いたようなセリフを呟くその人物は、空母棲姫と呼ばれる生命体であった。

 長髪とサイドテールを掛け合わせた奇妙な髪型。全身を包む漆黒の重装甲は

所々破壊されており、闇の様な色の服装が露出している。手足にわずかに残った装甲には血の様な模様が走っており、彼女の陶磁器の様な白い肌も合わさって、まるで幽鬼の様である。

 艦娘―加賀達が身に着けているのと同様に、彼女も艤装を装備している。が、その艤装は一言で言えば『異様』であった。左右の砲台からは滑走路が伸びており、ここから

艦載機を発艦させるのであろう。

 目を引くのはその滑走路と砲台が付いている本体である。空母棲姫本人より二回りも巨大な艤装には口があり、そこからは歯がずらりと並んでいる。まるで生き物の様なその艤装には空母棲姫と同様に血の様に赤い模様が至る所に浮かんでいる。亡霊の様なその姿は、敵の恐怖を掻きたてるには十分であった。

 

「オアソビハシマイダ…ヒノ…カタマリトナッテ…シズンデシマエ…ッッ!!!」

 

 死刑を執行する執行人の様に空母棲姫は加賀達に向かって手をかざす。すると、背中の艤装が

鈍く赤色の光を放ち、それを合図に滑走路から艦載機が飛び出てくる。艤装もおどろおどろしい物であったが、艦載機もまた同様に『艦載機の様な何か』である。

 白色の球体の姿、そこからは艤装と同じように鋭い歯がずらりと並び、頭の左右には角の様な物が飛び出している。目と思われる所からは赤色の光を発し、その姿は『鬼』の様にも見える。

 艦載機は瞬く間に数を増やし、空を埋め尽くす程の大群となった。艦載機の真下からは

爆弾が生成され、加賀達の命を確実に奪うべく、その凶器を発射する。

 

「ッ…!これまで、かしら…ごめんなさい、赤城さん…。

…でも、あなたが無事なら、それでいいの…先に逝って…待ってるわね…」

 

 艦載機を発艦できない今、加賀達にあの大量の艦載機を迎撃できるほどの力は残っていない。退却ができない今、運よく生き残れたとしても、その先に待っているのは絶望だけである。

加賀は覚悟を決めた。その瞬間、走馬燈の様に浮かんだのは、戦友であり、自分が一番気に留めていた人物であった正規空母の――

 

 

≪ズァオッッ!!!≫

 

 

――と、その時。大量の艦載機がいた場所を一筋の閃光が襲う。加賀達に攻撃を仕掛けようとした艦載機は、その巨大な光に呑まれていく。

 

「くッ…!」

「ナ、ナンダ!?」

 

いきなりの出来事に咄嗟に目の前を腕で覆い、必死に衝撃に耐える艦娘達と空母棲姫。

煙がはれ、その全貌が見えだすと、両者とも、その光景に驚いた。

 

「…!?艦載機が、全て撃墜された…!?」

 

「ソ、ソンナバカナ!?ワタシノカンサイキガ…!!」

 

 そう、あの空を覆いつくしていた大量の艦載機が全て破壊されていたのだ。

――ありえない。空母棲姫は先程の余裕たっぷりな態度が嘘の様に取り乱していた。

その時、光が走った方から一つの声が聞こえた。

 

「ふん…数は大したもんだが頑強さがまるでなかったな。あれじゃあ的が小さい分、まだ虫の方がマシだ」

 

「ナンダトッ!!…!?ニ、ニンゲンがソラニウカンデイル!?」

 

 自分の艦載機達を瞬く間に殲滅した人物。どんな奴かと殺意が籠った目で

声をした方向を振り返る。が、そこには…な、なんと!人間が腕組みをしながら

浮かんでいるではないか!しかも――

 

「ソノアタマハナンダ!?マ、マルデ『M』ノモジノヨウダ・・・ク、クククwww」

 

「空に人が浮いている?それに随分と奇妙な服装ね。…ちょっと危ない人にも見えるわ」

 

額にM字の禿、タンクトップ状のアンダースーツで筋肉ムキムキ、マッチョマンと言う、

一般的な価値観で見れば奇妙な風体に、一人は笑いをこらえきれずに吹き出し、もう一人は奇人、あるいは変態でも見るかのような冷めた目つきをしながらベジータを睨んだ。

 

――ピシリ――

 

と、まるでガラスに亀裂が入った様な音がした。音の発信源は空中で腕組みをしていた人間

、ベジータである。ベジータは額に大量の青筋を立て、両拳をメキメキ!と音が立てるくらいに

握りこみ。鬼の様な形相で叫んだ。

 

「笑うなぁあアアァアア!!命が惜しかったら、笑うんじゃッッねぇええええええ!!!!!」

 

 

 

 

 

ナレーター「砲撃が飛び交う苛烈な戦場に、サイヤ人の王子、ベジータは舞い降りた。

だが、自らの容姿を馬鹿にされたベジータは怒りを爆発させる!

その凄まじい怒気が向かう先は、艦娘達か!?それとも異形の存在か!?

 




悟空「オッス!オラ悟空!次回予告は引き続きオラだ!え?本編で忙しいから出られないんじゃ
ないのかって?心配ねぇって!「そこらへんは問題ない」って界王様が言ってたぞ。
何でかって聞いたら「お前に言ったところでわからん」って言われちまったけどな。
ま、よくわかんねぇけど界王様がそういうんだったらオラも気にせずやるぞ!」

ベジータ「おい、カカロット!そんなどうでもいいことをしゃべっている場合ではないだろう!
早くしないと終わってしまうぞ!」

悟空「ベジータ!いやぁ悪ぃ悪ぃ☆…よし!それじゃあ気を取り直して。
ベジータの奴、相変わらず気が短けぇなぁ~。せっかく艦娘っちゅう奴らを助けたんだから
間違っても攻撃するんじゃねぇぞ?

ベジータ「こんのクソ女共!!この俺様を怒らせてそんなに死にたいかああ!!」

悟空「次回!龍球これくしょんー龍これー第2話『ぶっ飛ばす!!ベジータ怒りの超パワー!』」

加賀「ありえないわ…空を飛んでるだけじゃなくて、あの姫級を相手に圧倒するなんて」

空母棲姫「オノレッ!ニンゲンメエエエ!!」



はい、これで一話終了です。最初は一話で終わらせるつもりでしたが伸びまくって前後篇みたいになりました。グダグダで内容ない文章にしちゃってすいませんでしたぁあ!!(土下座)
島風「ちょっと!私と龍田さんにはセリフの一つもないってどういうこと!?」
あ、あれ以上入れるとものすごい文字数になるから先にあげるために
仕方なかったんだ!俺は悪くぬぇ!!
龍田「悪い子ねぇ~? お・仕・置・き・よ☆」
球磨「球磨もだクマ!!もう許さないぞ、お前クマー!!」
つ、次はちゃんとセリフ書くから勘弁sクソマァー!!

前書きの所と本編最初でタイトルが重なりくどいように見えますが、前書きの方は
アニメの再現だと思ってください。どうしても気になるのなら、何らかの手を打とうと思います。
アドバイス・感想・苦情、なんでも結構です!うp主に力を分けてくれー!

悟空「みんな!また見てくれよな!」

追記;本文の誤字修正しました。ていうか1話に1回必ずあるってどういうことよ(涙)

追記2;気孔→気功に修正 なぜ気がつかなかったし・・・


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第2話『ぶっ飛ばす!!ベジータ怒りの超パワー!』

どうも。ムリアリアです。2話になります。待たせたな!(伝説の傭兵)
悟飯「でもうpぬしさん。これって実質1話の後編…アニメだったら
CM挟んだ後の話になるわけですよね?」
うっ!(ギクッ)そ、それは・・・わりぃけど急ぎの用事が出来ちまって・・・
加賀「散々待たせておいて漸く一つ終わらせただけ?頭に来ました(ギリリッ)」
か、加賀ロット!?逃げるんだぁ・・勝てるわけがないYO!
摩耶「逃げんじゃねーようp主!この摩耶様から逃げられると思ってんのかぁ!?(ジャコッ)」
アイエエエエエエ!!(シメヤカに爆発四散!)
山城「全く無能な提督・・じゃなくてうp主ね。それでは、第2話、始まります!」


ナレーター「魔人ブウとの死闘の末に、壮絶な自爆を遂げたベジータ。だが、ベジータは
生きていた!突如襲い掛かる謎の生物を退け、新たな戦場へたどり着くものの、馬鹿にするような言葉を受けたベジータは激怒した。
ベジータの怒りの矛先は、どちらへ向かうのか!?

第2話『ぶっ飛ばす!!ベジータ怒りの超パワー!』」


 加賀は改めて、空中に浮かんでいるベジータを見た。

先程の様な変人を見る目ではなく、真剣な目つきで分析していく。

 

(あの姫級も驚いていたし、深海棲姫の新たな兵器ではなさそうね…。見た所、飛行を可能とするような装備は付いていない。)

 

 以前、工廠と呼ばれる軍需品に関わる場所で、新装備の開発に従事していた

二人の人物を思い出す。

 

(――これよ!これさえあれば、深海棲艦達を一網打尽にできるわ!)

(――さ、流石にこれは無理じゃない…?でも、かっこいいわね!これ!)

 

 何かの雑誌を見ながら興奮気味に話していた二人。二人が去った後でその雑誌を見ると、表紙には、額にVの様なマーク、白を基調とし、胴体、そして突き出した肩は青。背中には翅の様な物が付いており右手に銃、左手には横長の分厚い盾の様な物を持っていた人間の様な奇妙な生き物が映っていた。

 

(流石に『アレ』と同じとは思えないけど、どうみても機械でしょうし。少なくとも…ただの人間ではなさそうね。となると、先の光も彼が…?だとしたら)

 

――私たちや奴らよりもよっぽど化け物ね。加賀の顔は無表情のままであったが、額から頬に

かけて一筋の汗が流れ落ちる。あの数の艦載機を容易く殲滅する力、それをこちらに

向けられたら…間違いなく無事では済むまい。

 

 今更謝罪したとしても、恐らく彼の機嫌を余計に損ねるだけだろう、と加賀はそう考え、

こちらに怒りの矛先が向かない様に胸中で祈った。

 

―どうでもいい事だが、山城にはベジータの背景に全身に兵装が付いた超巨大な機械人形が映ったとか映らなかったとか。

 

 一方、空母棲姫の方も彼の奇抜な額に噴きだしてしまったが、自分の艦載機を撃墜されたことを思い出し、すぐに表情を険しい物に切り替える。

 

(カンサイキハマダハッカンデキル…ガ、ヤツガイルイジョウムイミダ!

クソッ、バケモノメ…ッ)

 

 彼女が危惧しているのはたくさんの艦載機を失ったことではなく、それをやってのけたベジータ本人である。

 

 艦載機は攻撃のみならず、索敵、制空権確保等、様々な役割を果たす。当然、艦載機同士の戦闘もあれば艦から対空射撃を受けることもあるので、発艦してから帰還する度にその数は減る。

 

 だが、撃墜した相手は艦載機を発艦させる空母でもなく、戦艦でもなく、防空駆逐艦でもなく、

空中に浮いていることを除けば、ただの人間である。

―人間とはみなこうなのか?焦りのあまり、そんなことを考えるも、即座に頭を振り否定する。

そうであるなら艦娘など必要なくなる。なにより、

 

(テイトクトヨバレルニンゲントモチガウ、カンムストモチガウ、ナンナノヨコイツハ!?)

 

 そう、彼女は人間を見たことが何度かある。以前、手下を連れて鎮守府を襲撃しようとした

際に、艦娘達と戦闘を繰り広げている後ろで、錨の模様が描かれた白い軍帽、同じく白の軍服を

纏い、軍刀を振りながら指揮をしていた人間がいたのだ。

 

 その人間が提督と呼ばれていた事を、空母棲姫は思い出した。しかし、目の前にいるのは

どうみても提督とは思えない。提督本人も軍人故、それなりに鍛えている者は多い。が、あの人間はそういうレベルを超越している。それどころか人間かすら怪しい。普通の人間が艦載機の大群を一瞬で葬り去るなど有り得ない――ファンタジーでもない限り。

 空母棲姫も加賀達と同様、ベジータを警戒し、すぐに攻撃を開始しようとはしなかった。

 

そして、当の本人のベジータは未だに怒り心頭、といった状態であった。原因は二つ。

一つは自分を(主に容姿を)馬鹿にしたこと。そしてもう一つは、両者とも

だんまりで、動きが全くない事である。

 

(こんのクソ女共め!!俺がひそかに気にしている事を笑いやがってッ…!

あの時の事を思い出すぜ!)

 

 顔を怒りで歪ませながら、ベジータは、天下一武道会の本戦開始前に起きた

ある一つの事件(?)を思い出した。

 

 

――ベジータは悟天・トランクス達が出場した天下一武道会・子供の部(悟空達は

知らなかったが、いつのまにか子供・大人と分けられていた)の決勝戦を見た後、昼食を取り、

その後は選手のみが入れる控室に入り、部屋の一角で腕組みをしつつ、じっとしていた。

 

 控室の中には、褐色肌のタンクトップ・長髪のイケメン貴公子・アラビア風の髪と衣装を纏った巨漢等々、様々な選手がいたが、ベジータは目をつむったまま、微動だにしない。

 当然だ。自分の目的はカカロットと闘う事だけであり、その他など有象無象にすぎない。

 カカロットの息子の悟飯は平和ボケしていたせいか、少年時代と比べて明らかに戦闘力が

落ちているから論外だ。ピッコロも同様、7年前と比べて若干は強くなっているものの、

やはり悟飯よりは劣るだろう。

 

 ベジータは片目を薄ら上げながら自分より少し離れた所にいる2人の人物をちらり、と見た。

片方は自分より背が低い少年、もう一人はがっしりとした体つきに、ピッコロと

変わらないくらいの長身の人物だ。

 戦闘力は大したことはない。が、その奇妙な服装、人間離れした肌色もさることながら、

何か独特な雰囲気を纏っている事にベジータは気付いた。

 

(まぁ、試合が始まればわかることだ。今は気にする必要もあるまい)

 

 ベジータはそう考えると、再び目をつむり、自分の試合が来るのをただひたすら待つ――待とうとしたところで、ベジータは、部屋の隅にいたある二人の人物に目がついた。

 

 片方は痩身で背が低く、そしてもう片方は筋肉質で巨躯、と見事なまでにアンマッチである。

服装はなぜか片側がはだけた黒い服にスキンヘッドと、傍目から見ればかなりアブナイが、

それだけであるならばただの雑魚でしかないので、ベジータが気に留める理由は全く無い。

 しかし、その額には『M』の文字があった。そこを見た瞬間、ベジータは眉を跳ね上げた。

そして腕組みをしたまま、つかつかとその二人の近くまで近づき、声を荒らげる。

 

「そこのハゲ!額にMとはどういうことだ!?貴様‥‥俺をバカにしているのか!!」

 

「!?…な、何の事だ!?」

 

「とぼけるな!!俺が気にしている事に対する当てつけかと聞いているんだ!!」

 

「な、何を怒ってるんだコイツ‥‥!?」

 

 …これほど酷い八つ当たりはないであろう。この大男―スポポビッチも色々な意味で

不幸である。さらにベジータもそのあと同じ模様が額につくので、完全にブーメラン発言である。

 

 この後、偶然その場に入ってきた孫悟空が慌ててベジータを宥めたおかげで、一触即発の事態は

免れた。が、ベジータはその後も怒りがなかなか収まらず、悟空は対応に苦労したとかなんとか。

 

 

(チッ、パワーアップするためとはいえ、今思えばとんでもない屈辱だ!)

 

 思い出す度に苛々が増していくベジータ。しかし彼もその場の感情で暴れる程、愚かではない。自分の目的―ここがどこなのかを確認しなければならない事を思い出し、とりあえず

怒気を引っ込め、加賀に顔を向けて、大声で叫ぶ。

 

「おい!地球の女ッ!!聞こえるか!聞こえるなら返事をしやがれ!!」

 

「?…もしかして私の事かしら」

 

「そうだ、青い女!貴様に確認したいことがある!」

 

 地球の女―加賀に向けてベジータは指をさしながら乱暴に言い放つ。加賀は一瞬身構えるものの、構えを解く。少なくとも問答無用で攻撃、という事はなさそうだ。

 若干の警戒を残しつつ、加賀はベジータのいる空に顔を上げつつ、話す。

 

「私の名前は加賀y」

「バカヤロウ!貴様の名前などに興味はないッ!答えろ女、ここはどこだ!!」

 

 …見事なまでの俺様思考である。これには加賀もイラッと来たのか。

 

「…無理ね」

 

と冷たく言い放つ。当然、ベジータはその言葉を聞き、激昂する。

 

「なにッ!?貴ッ様ぁ…!どうやら死にたいようだ・・・」

 

「少し言葉が足りなかったわね。『今は』無理よ」

 

 加賀は視線だけを空母棲姫の方に向ける。その視線を追ったベジータは、図々しい女だ、と

面白くなさそうな顔をする。つまり『話したくてもこの状況では話せないので

奴らを何とかしてくれ』と言いたいのだろう。

 

「フン、俺に押し付けようって腹か。…まぁいいだろう。俺としても闘うのなら貴様らの様な

死にぞこないよりも…」

 

と、ベジータはそこで言葉を切り、空母棲姫に顔を向ける。そして、にやりと笑った。

 

「――貴様等の方が少しは楽しめそうだ。くくく…」

「ッッ…デ、デテコイッ!!カンサイキタチ!!!」

 

 

空母棲姫はその笑みにゾっ、とした。そして悟った。『こいつは私たちの敵だ』、と。

そう判断するが否や、彼女は右手をベジータに向けてかざす。背中の艤装の滑走路から

次々と艦載機が発艦していく。しかも、その数は先ほどより明らかに増えている。

だが、その光景を目にするも、ベジータは余裕な態度を崩さない。

 

 やがて、発艦した大量の艦載機が、蒼天を覆った。数の割合で言えば、青が2に対して、

白(艦載機)が8といった所か。恐らく、今の彼女が出せる全兵力であろう。

まるでイナゴの大群の様である。

 

 さらに、先程まで大ダメージを負っていた軽巡ホ級、重巡リ級、戦艦ル級が、それぞれ主砲を

構えている。傷は完全に癒えており、さらに全身からは黄色いオーラの様な物が噴き出ていた。

 

「ッ…これほどの力をまだ残していたなんて…!」

 

 ギリッ、と歯ぎしりする加賀。ほかの艦娘達もこの光景を見て、驚くを通り越し恐怖を感じ、

青い顔をして震えあがっている。

 

「ド、ドウダ!コレデキサマニハマンニヒトツモカチメハナイゾッ!!」

 

 

 空母棲姫は勝ち誇ったように叫ぶ。しかし、当の本人は、恐怖どころか

焦りの表情すら微塵も見せていない。

 

「勝ち目はない、だと?面白いことを言うじゃねえか。それよりも、これで全力なのか?」

 

 ベジータは余裕綽綽と腕組みをしたまま問いかける。空母棲姫は、これならこいつを

確実に倒せる、という自信と、もしかしてこれでも足りないのか、という不安が脳内でぐるぐると渦巻いていた。

 

「…どうやらこれで全力の様だな。ちっ!がっかりだぜ。とっととかかってきやがれ!」

 

 ベジータはつまらなさそうに鼻を鳴らし、指をクイ、と動かし、挑発する。空母棲姫は

その行動に怒りを露わにする。先程の懸念を無理やり振り払うかのように、大声で叫んだ。

 

「オノレッ…!コレデ、オチロォオオ!!」

 

 怒号を合図に、艦載機から無数の黒い鉄塊が発射される。その量は加賀達が闘っている時とは

比べ物にならず、これを喰らって生き延びられる生き物は普通ならばいないだろう。

 

―そう、普通ならば…

 

「同じ芸当とは、芸の無いヤローだぜ。面倒だ、纏めて片付けてやる!」

 

 ベジータは腕組みを解き、両腕を胸の前で交差させる。そして、

 

「ずああッ!!!!」

 

 両腕を横に突き出す。すると、ベジータの体から黄の膜の様な物が放出された。膜は

ベジータを中心にあっという間に広範囲に広がっていく。そして、その膜に触れた物は瞬時にその姿を崩壊させていく。

 

 爆弾、艦載機、手下の深海棲艦。遠くで指揮をしている空母棲姫や偶然離れていた

艦娘達を除き、全ての物体が、膜に飲み込まれていった。

 大量の爆弾と艦載機が爆発し、空は一面を灰色の煙で染まる。そして煙と破滅を秘めた膜が徐々に無くなっていき、次第にその全貌が露わになる。

 

 そこには、恐怖に震える空母棲姫と、その光景に唖然とする艦娘達。

 そして、太陽を背に悠々と佇むベジータの姿があった。

 

「ア・・・ウ・・・(ガチガチ)」

 

――空母棲姫は生まれて初めて、心の底から震えあがった…。真の恐怖と、決定的な挫折に…。

恐ろしさと絶望に、涙すら流した。これも、初めての事だった…。

 

 今までこんな事は一度たりともなかった。無論、中破や大破なら経験したことはある。

だが、必ず生き延びてその時の屈辱を復讐の力に変えて、その力を増幅させていった。

故に彼女は姫級の中でも上位の存在となったのである。

 

…だが、今回は怒りすら沸いてくることはなかった。文字通り『次元が違う』のだ。たかが人間に負けた事、そんな屈辱的な事実が最早どうでもよくなるくらい、圧倒的な

差を見せつけられてしまったのである。

 

 ベジータはそんな空母棲姫を見下ろす様に見て――はおらず、既に背を向けていた。恐らく、

これ以上の戦闘は無駄、と考えたのであろう。良くも悪くもサイヤ人であるベジータらしい。

 

「ケッ、数に頼った挙句この様か。もういい!とっとと俺の前から失せろ。

俺の下にいる雑魚共もろとも、な」

 

「ッ・・・!?」

 

 空母棲姫は驚愕した。まさか見抜かれていたとは思わなかった。先程の艦載機を発艦させた際、保険にと、手下の深海棲艦達をベジータの真下に潜ませていたのである。

 仕留めきれなかった場合は、不意打ちで仕留めようと思っていたのだが、

それすら気付かれていたとは―

 

「グッ…オノレ、ニンゲメ…ッッ!コノクツジョク、カナラズヤ…!!」

 

 辛うじて絞り出すような声を出し、空母棲姫はとぷん、と闇の様に

深く、暗い海底に消えていった。

 

 一方、加賀は恐れの感情を何とか胸中に押し込んだ。そして、泥沼に

沈むかの如く、深く考え込む。

 

(ありえないわ…空を飛んでるだけじゃなくて、あの姫級を相手に圧倒するなんて)

 

 確かに、出会い頭に空母棲姫の艦載機を撃墜した所を加賀ははっきりと見た。

だが、あくまで不意を打った形なので、流石に勝つことは難しいだろう、と予測していた。

 

 ところが結果は『完全勝利!!―S―』と言っても過言ではないだろう。ただの(?)人間が

深海棲艦、その中でも上位の姫級に勝つ。こんな結果を誰が予測できたであろうか?

 

「――い!おい!!聞こえてるのか女ッ!」

 

「ッ…」

 

はっ、と我に返り、加賀は頭を上げる。見れば、ベジータが顔を険しくしながら、怒鳴っている。若干頭痛がする頭を指で押さえつつ、加賀はベジータの問いに答える。

 

「ええ、聞こえてるわ。ちゃんと。…それと、私は女という名前では無いわ。加賀よ」

 

 『加賀』の所で若干語気を強める加賀。どうやら先程の事を根に持っていたようだ。

…今は相手の出方次第でこちらの命運が決まるので、少し控えめになってはいるが。

 

チッ、と本日何度目かわからない舌打ちをするベジータ。強気な性格、面倒な所が

どことなくだが、自分の妻であるブルマを思い出させる。

 

(クソッ!こんな時に嫌な事思い出しちまったぜ。ブルマの奴、無事でいればいいが…)

 

 こうしている今も、地球ではブウの脅威が続いている。そう思うとベジータは

いてもたってもいられなかった。

 

「いちいち面倒な女だ!…加賀、と言ったな。今度こそ俺の質問に答えてもらうぞ。」

 

「わかったわ。でも、まず先に…」

 

鎮守府に帰還してから――そう言おうと思った矢先、摩耶が頭部に備えられているアンテナ型のカチューシャに手を添えながら、加賀に向かって叫ぶ。

 

「加賀さん!取り込み中悪ぃが、大変だッ!!鎮守府付近に深海棲艦が出やがったそうだ!!」

 

「何ですって…!?まさか、二正面作戦だとでも言うの…!!くッ、まんまとはめられたわね」

 

 恐らく姫級が派手に暴れる事で敵の戦力をおびき寄せ、手薄になった鎮守府を

一気に奇襲する作戦なのだろう。それに気づかなかったとは、加賀は自分の不甲斐なさを恥じる。

 

「とにかく、一旦戻らねぇと…ん?ンだよ淀さん!今忙し…はぁ!?なんだそりゃ!!」

 

 摩耶の怒鳴り声が聞こえる。何事か、と加賀達艦娘達が一斉に摩耶の方を見る。

摩耶はものすごく慌てた様子で加賀に早口で喋る。

 

「た、たたたた大変だ!!理由はわかんねーが鎮守府付近をうろついてたやつを

保護してたらしいンだけど。そいつが深海棲艦の軍団に一人で突っ込ンで行ったらしい!!」

 

「「「「「えっ!?」」」」」

 

 加賀を含む5人は摩耶の言葉に驚く。そもそも状況がよくわからない。どうしてそんな

怪しい奴を鎮守府に招き入れたのか、ていうかなぜ深海棲艦に自ら近づいていくのか。

 

(まさか、敵のスパイ?…駄目ね、あまりにも唐突すぎて状況が飲み込めないわ。

とりあえず、彼には悪いけど話は後にしてもらいましょう)

 

 そう考えを纏め、ベジータの方に顔を向ける加賀。と、そこで加賀は、

ベジータが先程の苛々した表情から、目を見開いて驚いている表情に変わっている事に気付く。

 

(この気は…まさか!ということは、やはり『ここ』は地球なのか・・!?)

 

 ベジータは急に出現した気を感じ取った。何故驚いたかと言うと、その気に

『覚えがある』からである。となると、やはりここは自分達がいた地球であってるのではないか?

と、考えたのであった。

 

(とりあえず近づいて話をする必要があるな…こいつらから

話を聞くのはその後でも遅くはなかろう)

 

 ベジータも考えを纏め、加賀に向かって叫ぶ。

 

「加賀!悪いが急用ができた。貴様等への質問は後でする!じゃあな」

 

 捲し立てるかの様に喋ると同時に、ベジータの体から、白い炎の様な物が噴出する。

それを見た加賀はやっぱり深海棲艦の新兵器なんじゃね?と一瞬思うも、すぐに頭を切り替え、

静止するように呼び掛ける。

 

「待ちなさい!後で、と言うけど、私たちの居場所があなたにわかるの?」

 

「心配するな。貴様らの気は独特だからな…すぐに気づく。…はぁっ!!」

 

 ベジータは、来た時と同じように、白い炎を纏いながら飛び去って行った。

その速度は凄まじく、加賀達はあっという間にベジータを見失った。

 

「あのM字ハゲはなんだったんだクマ…まるで嵐の様だったクマね。

…でもあの額は笑えるクマ。あいつきっと童貞クマねww」

 

「そうねぇ~…でも、ちょっとかっこよかったかしら~?彼♪(天龍ちゃんと

同じでいじりがいがありそうな人だわ~うふふふ☆)」

 

 緊張の糸が切れたかのように、ふぃーっと声を出しながら、額の汗をぬぐい、

ベジータのハゲに思い出し笑いをする軽巡、球磨。

 先程の異様な光景を目にしても、驚くどころか汗一つ掻いておらず、

むしろ楽しんでる様子すら見られる軽巡、龍田。

 

「おぅっ!?あの人すっごくはっやーい!!(キラキラ)」

 

「私が〇ム〇ャみたい(に不幸)だなんて…不幸だわ…(OTL)」

 

目を星の様にキラキラさせつつ、興奮気味にはしゃいでいる駆逐艦、島風。

 戦闘にほぼ参加できず、見せ場もなかったことに落ち込み、負のオーラを漂わせる戦艦、扶桑。

 

それを見ている加賀は、盛大にため息をつくと摩耶に振り返り、

 

「摩耶、胃薬は持ってないからしら?なんだか気分がすぐれないわ…」

 

「加賀さん…つらいけど、鎮守府に一旦帰還するまでの辛抱だ。がんばろうぜ?な?」

 

 摩耶に励ましの言葉をもらう加賀。それで気分が晴れた…と言えば嘘になるだろう。

あの変人のせいで――ベジータが飛んで行った方向を見て、加賀は愚痴るようにつぶやく。

 

「あの男…この後も面倒ごとを起こしそうで怖いわね。…はぁ」

 

 先程よりも大きなため息をつき、隊の艦娘達に帰還の準備をするよう、呼び掛けるのであった。

 

 

 

 

 

 所変わって、ベジータが加賀達と別れる2,3分前。加賀達が所属している鎮守府では…

 

「ほ、本当に一人で行くのですか?」

 

はわわ、と誰の目から見てもわかるくらい、心配そうな表情で声をかける少女。彼女は、この

鎮守府に所属する艦娘。特型駆逐艦、その後期型である暁型の四番艦、電(いなづま)である。

 

 水兵服にスカート。金色の瞳に、アップへアーにして束ねられた栗色の長髪。

左側からは束ね切れていない髪が垂れている。その姿は『優しい』と言う言葉が

一番似合うであろう。

 

「ああ。短い間とはいえ、お前たちには世話になった。

だから、借りを返す意味でもここは俺に任せてくれ」

 

 そう言い、電の目の前にいる長身の人物は、安心させるかの様に、電の

小さな頭にポン、と手をのせる。

 

「は、はわわわ…!びっくりしたのです」

 

 両手をバタバタさせながら慌てる電。頭にのせられている手は大きく、ごつごつとしている。

更に、指は4本しかなく、手の色はなんと緑である。

 傍目から見たら怪物にしか思えないが、電はそんな手に妙な安心感を覚えた。

そんな彼女を見て、その人物は海の方に身体を向けると、

顔だけをこちらに向けて右手を軽く振った。

 

「じゃあ、行ってくる」

 

 そう言い、体から白い炎の様な物を吹き出し、深海棲艦の反応がある場所に飛んで行った。

 電が間近にいた故、気をなるべく抑えたものの、飛び立った際に生じた

強い風圧に彼女は目をつぶりながら、スカートを必死に抑えていた。

 

「す、すごい!本当に飛んで行ったのです!」

 

「хорошо(ハラショー)空を飛べるなんて、実にかっこよくて羨ましいな」

 

目をキラキラさせる電の後ろで黒い軍帽を軽く押さえながらロシア語を呟くのは、

電と同じく暁型の二番艦、響である。

 

 電と同じ型の艦娘であるため、服装は同じだが、瞳はまるで海の様な透き通った青。

氷を思わせるような透明感のある薄い水色の髪を棚引かせながら、

落ち着き払っている彼女は、正しく「COOL」だ。

 

「でも、よかったのかい?彼を止めなくて、正直…かなり怪しいからね、彼は。

肌の色も悪いし、目つきも最悪だし」

 

「響ちゃん…流石に言いすぎなのです。後、肌の色は元からだそうですよ」

 

「へぇ、元からあの色なのか…интересный (インチリェースヌゥィ)」

 

 本人が聞いたら顔を真っ赤にさせて怒るであろう言葉を、響は平然と言う。そんな

口の悪い彼女に、電は苦笑いをしながら、飛行機雲の様な跡を残している空を見上げる。

 

「…確かに、突然鎮守府の近くに出てきた人を怪しくなる気持ちはわかるのです。

でも、あの人は…なんというか、その」

 

 次の出す言葉を言いにくそうに、顔を指でぽりぽり掻きながらごまかす電。

その様子を響はじっと見る。

 

「怖い感じはしましたが、その中に優しさを、ちょっと感じたのです。

…顔を見た時は正直怖かったですが」

 

 響は電の後ろにいるのでわからなかったが、電は少し涙目になっていた。

…余程顔が印象に残ったのであろう。

 

「ほぅ、電がそう思うんだったら安心だね。でも、本当に一人で大丈夫かな?」

 

「大丈夫なのです!空を飛べる人が悪い奴らなんかに負けるはずがないのです!!」

 

ふんす!と鼻息を荒くしながら両腕でガッツポーズを決める電。

――その背後には、まるで囲碁の黒石の様な真っ黒で大きな目と、邪悪な笑みを浮かべる

電に似た『何か』が浮かんでいた…様に響には見えた。

 

―ていうか空を飛ぶの関係ないんじゃ?と響は涼しい顔をしながら心の中で激しく

突っ込みたい衝動に駆られた。でも言ったら何かが間違いなく起こりそうなのでやめた。

 

「そうか。じゃあ私たちは何が起きても良いように出撃ドッグで準備しよう」

 

「らじゃー!なのです!」

 

 邪神みたいな物を一瞬で引っ込め、電はとてとて、と鎮守府に向けて走っていく。

響もそれに続いて行った。

 

 

 

 

「っくしょい!!な、なぜ俺がくしゃみを…?」

 

 鼻を擦りながら、海原の上を人影が走る。2mを超える長身。頭にはターバン、

体にはマントを身に着け、紫色のズボンを履いている。

そして、緑という奇妙な肌の色をしているこの人物こそ、『元の世界』で、

精神と時の部屋から脱出したと思われていたナメック星人、ピッコロである。

 

「色々腑に落ちんことはあるが…まずは落ち着いて話ができる状況を作らねばな。…はっ!!」

 

 気合を込めて、さらに飛行速度を上げるピッコロ。海を真っ二つに

割りながら、戦士は戦場へと飛翔するのであった。

 

 

 

 

ナレーター「幼い少女達を守るために、闘いに出向く人物。それは、な、なんと!

ピッコロであった。精神と時の部屋からなぜこんな場所に来たかはピッコロにもわからない。

果たして、ここはどこなのか。そして、ピッコロはもとの世界に帰れるのか!?」

 

 

 




悟空「オッス!オラ悟空!ベジータの奴、不思議なとこに迷い込んだなぁ~。
オラもチチや18号みたいに闘う女っちゅーのは見た事あるけど、そんなにいなかったもんなぁ。
かぁ~!!オラも闘ってみてぇぞ!」

ピッコロ「おい悟空!俺の事は無視か!?こっちも大変だというのに
貴様という奴は!(ガミガミクドクド)」

悟空「いぃっ!?す、すまねぇピッコロ!…あっ!もう時間だ!次回!
龍球これくしょんー龍これー第3話『ピッコロ大暴れ!ナメック星人を舐めるなよ!!』」

(`0言0́*)「ヴェアアアアアアアアア!!キモイヤツガデテキタァアアア!!」

ピッコロ「やかましいっ!!(拳骨)」



はい、と言う訳で第2話終了です。戦闘シーンは影も形もなかった…!
めんどくせーから超必ぶっぱみたいな展開で申し訳ありませんでしたァ!

ベジータ「クソッタレめ。敵を寄こすんならもっとやりがいがあるやつを出しやがれ!!」

ひでぶっ!(デデーン♪)

ベジータ「へっ!汚ねぇ花火だ」
電(?)「おぶつは消毒な゛の゛です゛!!!!」


タグに「オリジナル要素有り」を追加しました。基本両作品共にできるだけ
忠実に再現するつもりです。でも伝説の超おちこぼれクサイヤ人なのでムシケラ☆の様な凡ミスをやらかすかもしれません。
そんな時は遠慮なく指摘してくれて構いません、罵倒でもいいぞォ!(m9)

後、活動報告と言うものを書きました。アンケートはまだまだ先ですが、これからもこの作品を続けられるよう、がんばります!


アドバイス・感想・苦情、なんでも結構です!うp主に力を分けてくれー!

悟空「みんな!次も見てくれよな!」






追記;8月20日 本文を少し書き換えました。ご、誤字じゃねーし!(汗)
追記その2;10月19日 サブタイ変えました。誤字じゃ(ry

追記その3;2月6日 摩耶様のシーンをちょい修正しました。あのアンテナって実は電探だったらしい。不覚...


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第3話『海色の世界!?艦娘、深海、そしてピッコロ!』

どうも、ムリアリアです。今回は本編第3話(総数では5話)になります。
そしてムシ・・ピッコロのターン!ベジータとは勝手が違うから色々間違えるかもしれません。
なので、そこらへんは生温い目でみてやってくださいw
後、あとがきでうp主からの報告(と言う名の懺悔)があります。
ピッコロ「誰がムシケラだ!首の骨をへし折られたいか・・・」
ブロリー「邪魔DA-!!(ムシケラ☆サッカー)」
うp主&ピッコロ「「クソマァーッ!!」」

天龍「なにやってんだあいつら・・・まっ、俺には関係ないけどな。
それじゃあ、龍これ、始まるぜ!」
???「おーーーい!だれか忘れちゃいませんかってんだ!」
ヲ級「ナニカキコエマシタ?」
重巡棲姫「ワタシノログニハナニモナイナ」
???「ハァッ☆」
雷「影が薄いって?大丈夫よ!私がいるじゃない!」



ナレーター「ベジータの圧倒的な強さにより、謎の軍団は大敗、撤退を強いられた。そこで出会った艦娘というこれまた謎の存在と話をしようとしたベジータであったが、突如現れた強力な気を感じ取り、その場に急行する。一方、彼が異世界に流れ着いた頃、別の場所では一人の戦士がこの世界に迷い込んできたのであった」

龍球これくしょんー龍これー第3話『海色の世界!?艦娘、深海、そしてピッコロ!』


「しかし…本当に妙な場所に来たものだな」

 

海上を派手に水飛沫を上げながら飛ぶ影がある。ナメック星人、ピッコロだ。彼の言葉通り、

本来であれば彼は超サイヤ人3になったゴテンクスと共に精神と時の部屋から外の世界に

脱出していたはずであった。それが何故こんな所にいるのか?

 

時はベジータがこの謎の世界に迷い込んだ少し前まで遡る――

 

 

 

 

【ザ…ザ・・・『…ノ…リト…テ…メ・・・‼』】

【ザ…ザ…『コ…ハユ…セ…』】

 

(な、何だこれは…!?グッ…頭が、割れるようだ…!!だ、駄目だ。意識が…)

 

 

ピッコロはゴテンクスの超パワーによってこじ開けられた次元の穴を通る際、何やらノイズの様な物が脳内を走るのを感じた。

だが、その内容を理解するより前に、ノイズによって生じた激しい頭痛により、ピッコロの意識は失われつつあった。

 

(まだ…魔人ブウの脅威は続いてると、いうのにッ…!!す、すまん、ゴテンクス…!!)

 

いくらゴテンクスが超サイヤ人3になったといってもあの最凶の怪物に勝てるという保証はない。おまけにあの性格だ、あの隙の多さと詰めの甘さが、自身を窮地を招く可能性も容易に

想像できる。だから自分が見ておかなければ安心できないのだ。

なのに――

 

そこでピッコロの意識は完全にシャットアウトした。それと同時に謎の光がピッコロを包み

【この世界】からその存在は完全に消え失せたのである。

 

 

 

 

―だが、ピッコロは思ったより早く意識を取り戻すこととなる。

 

≪バッシャァアアン≫

 

「ぶわッ…!?ゲホッ!ゲホッ…な、何だ!?何が起きた…!」

 

派手な音と共にまかれる水飛沫、そして磯の匂いが鼻をつく。ここでピッコロは、自分が

海に落ちたということに気づいた。

 

(どういうことだッ!?確かにここは外の世界だが、俺とゴテンクスが見た光景は

神の神殿だったはずだ!なぜ全く関係ない所に出てきたんだ…!?)

 

そう、確かにピッコロは見たのだ。ゴテンクスが空けた次元の穴から、自分のよく見知った建物が映っていたのを―

 

「と、とりあえず陸地に上がらねば…このままでは、マズイ…!」

 

先ほどのノイズのせいか、頭痛はまだ治らない。何が起きたかを確認するよりも前にまず安全な

場所に移動しなければ、とピッコロはふらふらと覚束ない足…基体取りで舞空術で空に浮く。

幸いな事にピッコロが落ちた場所は陸地に比較的近く、5分程飛んでいると

目の前に陸が見え始めた。

そしてそこには、かなり大きいレンガ造りの建物が建っていた。建物の中央には錨の模様の印が

ついており、荘厳な雰囲気を醸し出している。

 

なんとか建物の近くまでたどり着き、しばらくふらふらと歩く。そして、裏口近くまで

たどり着くが、飛んでる間は比較的治まっていた頭痛が再発し、ピッコロは頭を抱えて蹲る。

 

「ぐ…う…も、もう駄目…だッ…」

 

辛うじて呻き声を出すものの最早どうしようもなく、伸ばした手をだらりと力なく落とすと

バタン、と膝から崩れ落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くぉらぁああ!!ま・ち・や・が・れッッ!このガキンチョ共ーーッ!!」

「ふふーん!そんなんじゃ捕まらないわよー!」

「なのです~!」

 

朝早くから、とある建物の中から怒りの声と、子供のようにはしゃぐ声が聞こえる。普通ならば

何事か、と誰か駆けつけるはずであるが、騒がしい3人以外には、これといった反応はない。

この喧騒が日常の光景なのか、偶然人がいないのかはわからない。

 

 

『鎮守府』

 

艦娘達の所属する軍事施設であり、装備開発の工廠、食事処、入渠の為の浴場、出撃ドッグなど様々な機能が備わっている。

そして、艦娘達は、この『鎮守府』から海域へと出撃し、戦闘又は遠征を行う。

 

ここは日本に4つしかない鎮守府の一つで、2番目に規模の大きい【呉鎮守府】である。

 

赤い絨毯が敷かれた廊下の中で、怒鳴り声をあげながら追いかける一人の女性と、

楽しそうに女性から逃げ回る二人の少女の姿があった。

 

「ぜぇ…ぜぇ…くっそ…相変わらず逃げ足の早い…!ぜぇ…」

 

追いかけるのをやめてその場で両手を膝に当てて、ぜいぜいと肩で息をしている人物。

彼女は軽巡洋艦、天龍型、その一番艦の天龍である。

長すぎず、かといって短すぎない程の青紫色の髪。敵を威圧するような鋭い黄の右目。左目は眼帯で隠れており、時折、紫電の如き光を発している。頭部には名前の通り『龍』の角の様な形をした特徴的な飾り。服は黒寄りの濃紺のカーディガンに黒のネクタイを着けている

。黒灰(こくかい)色のミニスカートは若干短めであり、彼女の抜群のスタイルと相まって

人には目に毒…かもしれない。

 

「あのチビジャリ共、今度やったら折檻してやるッ!…ふぅっ…」

 

2人に言い聞かせるわけでもなく大声で叫ぶ天龍。だいぶ息が落ち着いてきたのか、中腰の状態

から立ち上がり走ったせいで掻いた汗を右手で拭う。

本来なら駆逐艦の子供如き捕まえるのは訳もない。自分だって足の速い軽巡だ、世界水準越えで

あることを誇りに思っている。

…が、今回は二人いる上に、不意打ちで食らったいたずらに怒って我武者羅に動いたせいで体力がいつもより早く切れてしまったのである。

 

「ったく、子供ってのはいつも体力が有り余ってやがる。…まっ、悪い気はしねぇがな」

 

と、先ほどまで怒ってた割にはまんざらでもない表情を浮かべる天龍。というのも、彼女は

戦闘での活躍以上に資源確保の為の遠征、その旗艦を務めることが多い。そして、その護衛艦と

して駆逐艦達がついていく。

2人の少女――駆逐艦とも長い付き合いであり、お互い慣れっこなのである。

そんな駆逐艦達と共に勇ましく遠征に出撃する天龍の姿を、誰がそう言い出したか

       

            『天龍幼稚園』

 

と、いつの間にか鎮守府の名物の一つとなってしまっていた。

…ちなみにこの鎮守府に所属する重巡洋艦のA(事情により匿名)の話によると、駆逐艦と共に

遠征任務につく際、天龍の顔はものすごく嬉しそうだった様だ。別に幼女好きとかそういうのでは断じてない。

この様に頼れるお姉さん的な存在の天龍であるのだが、この時彼女はある事をふと思い出した。

 

(あれ?そういえば、ガキどもが逃げていった方向…たしかあそこって

まだ掃除されてなかったよな?)

 

知らぬ内に鎮守府内を一周してしまったので気づいていなかったが、駆逐艦達が逃げていった

場所―上に上るための階段が設置されている鎮守府の裏口。その扉の入口は早朝に白露型六番艦の駆逐艦である五月雨が、料理に使うために汲んだバケツ一杯の水を素っ転んで盛大に

ぶちまけたせいで一面が水浸しにしてしまった。本当はその時に掃除されるべきであったのだが、朝食の時間が近づいていたので本格的な掃除は後で、となったのである。

 

「ちょーど廊下の絨毯も変え時だっつってたしなぁ。足を滑らせてなきゃいいんだが…あいつら」

 

そう物思いに耽っていたちょうどその時、遠くから駆逐艦の二人の悲鳴が聞こえた。

 

「はわわわわ!?」

「きゃーっ!?た、大変よー!!」

 

それみたことか、と天龍はため息をつきながら軽く背を伸ばす。どうやらだいぶ息が整ってきた

ようだ。これなら少し走っても問題はないだろう。そう思い、天龍は声がした方に小走りする。

そして、そう時間を経たずして、二人の駆逐艦―雷と、雷にそっくりの電の姿を視界にとらえる。電ははわわわ、と手をパタパタ振りながら慌てふためいている。

雷の方は、尻餅をついた状態で「あわわわ」と、こちらも見るからに慌てた様子を見せていた。

天龍は建物の柱からなので駆逐艦達の姿は横の姿しか見えないが、恐らく

水で足を滑らして転んだのだろう。

 

「おう、ガキ共!怪我はねぇか?ったく、元気がいいのはいいけどよぉ…」

 

やれやれ、と天龍は右手で頭を軽く掻きながら雷を起こそうと手を差し伸べようとする

――しようとしたのだが、雷の発した言葉により、その手をぴたりと止めた。

 

「顔色の悪い人がずぶぬれになって死んでるうううう!!!」

 

「…なッ、なにィイイイイイ!?」

 

天龍の表情が一瞬で凍り付き、一瞬遅れて絶叫が鎮守府内に響き渡った…。

 

 

 

―さかのぼる事数分前、雷と電は天龍の追跡を振り切り裏口近くで楽しそうに話をしていた。

 

「天龍さんもまだまだね!スカートめくりくらいであんなに怒るなんて」

 

「わ、悪乗りした自分がいうのもなんですけど…それって

されたら結構恥ずかしいことなんじゃないですか?」

 

悪戯が成功して満足したのか、ふんす!と得意げな顔をする雷。それを苦笑いしながら見る電。

特III型(暁型)駆逐艦の3番艦である彼女は、当然ではあるが妹の電と共通点が多い。

強いて違いを上げるならば、徽章の位置、靴下の種類、活発な彼女を象徴する、口から覗く八重歯くらいのものだろう。

彼女達は、給料艦の『間宮』が経営している食事処で、朝食の後のデザートを取っている天龍に

対して、背後から忍び寄りその若干丈が短いスカートをめくったのだ。

デザートをほおばりながら頬を緩ませていた天龍は、「ひゃん!?」とかわいらしい悲鳴を

上げた後、怒りで顔を鬼のように歪ませ、羞恥の涙を流しながら、というものすごい形相で二人を捕まえんと追いかけたのであった。

…ちなみに食いかけのデザートは隣にいた龍田がおいしく頂いたらしい。

 

「あんなに隙だらけだったらいたずらしたくなっちゃうわ。

あ、そういえば天龍さんのデザートってなんだったかしら?」

 

「えぇっと…確か『タピオカプリン黒豆添えパフェ』とか言ってたですね。

おいしそうなのです…!」

 

想像しただけで涎が出そうになり、慌てて二人は口元を拭う動作をする。互いにまったく同じ動作をしているのを見て、電と雷はおかしくなってわらった。

 

「とにかく、悪戯とはいえ悪い事をしたんだから後で天龍さんに

二人できちんと謝った方がいいのです。」

 

「そうね。あのままだと天龍さんが少し可哀想だし、暁じゃないけどレディーの

することじゃないわ…あれ?あそこに誰かいるのかしら?」

 

天龍に謝る為、来た道を戻ろうとする雷と電。そこで、雷は裏口を出てすぐのところに人が

いるのを見た。しかし何か様子がおかしい…というか倒れてる。どうみても普通の状態じゃない。

 

「艦娘さんや提督さん以外の人って珍しいのです…って!た、倒れてる!?はわわ…」

「落ち着きなさいって!死んでるんじゃないんだから…でも本当に珍しいわね。

鎮守府の関係者じゃなさそうだし。ただの行き倒れさんかしら?」

 

見慣れない人への驚き半分、何故かうつ伏せで倒れている事への疑問半分で軽くパニック状態に陥っている電。対して慌てる電を落ち着かせつつ、疑問を口にする雷。

確かに雷の疑問は最もだ。この鎮守府は艦娘と提督の為の施設であり、時たまカーキ色の

軍服を着た強面の憲兵や、大本営から視察の目的でお偉いさんが来たりはするが、

基本的には軍属の人間以外にここに立ち寄る人は極めて少ない。目の前の肌色の悪い人間は

間違いなく軍人ではない。幼い駆逐艦達の目から見てもわかるくらい一目瞭然である。

 

「…さっきからピクリとも動かないわ。も、もしかして死…」

 

「ストォオオップ!なのです!と、とりあえず確認してみないと…」

 

最悪の展開を口にしようとした雷をズパッ!と音がしそうなくらいな勢いで手を突き出し

制する電。そろりそろりと小足でゆっくり近づき、若干震える手つきでその人間の

首の付け根にそっと手を当てる。

 

 

 

 

――そして現在に至る。

 

「ど、どどどどうすればいいんだこれ…!?」

 

天龍はあたふたと若干涙目になりながら慌てている。それはそうだろう、いきなり水死体、それも肌の色が緑になるまで変色してる人間を見たら誰だって驚くはずだ。

 

――緑?青白じゃなくて?

 

と、一瞬考えるが、すぐに考えをやめ、水死体をどうするかを目をつぶり考える。

 

「とりあえず一旦鎮守府内に移したほうがいいな…。

雷、電!立てるか?悪ィが脚の方持ってくれ」

 

「は、はいなのです!」

 

「わ、わかったわ!任せなさい!」

 

裏口なのでそれほど目立つ訳でもない。が、それでも死体をいつまでも放置しておくわけにも

いかない。そう考え、天龍は死体の頭の方を持った。

2mを超える長身なので、いくら力が人間よりはるかに優れる艦娘といえど、一人で持ち運ぶのは難しい。一応できなくはないが、下半身をずるずると引きずりながらになるので

流石にかわいそうである。

なので、そこにいる雷と電に呼びかけて脚の方を持ってもらうことにした。

 

「変な物頭に巻いてんな。外国の帽子か何かか?…って、あれっ!?」

 

 

天龍がターバンが巻かれている頭を持ち上げようと手をかけた。すると、水死体と思っていた人物からほんの僅かであるが呼吸をしている事に天龍は気づいた。

 

「こいつ、まだ死んでないぞ!!」

 

「「えぇ~っ!?」」

 

天龍の言葉に電と雷は驚きの声を上げる。先ほどまで息をしてなくてピクリとも動かなかった人が急に息を吹き返したというのだからそりゃ驚くに決まっている。

 

「とは言ってもこのままじゃまた息が止まっちまう!どうすれば…」

 

今から鎮守府にある医務室に運んでいったとしても、それまで持つかどうかわからない。

天龍はどうすればいいと必死に考えを巡らす。そこで電は天龍の服の袖を遠慮がちに掴む。

 

「ん?どうした電。なんかいい考えがあんのかよ?」

 

「あ、あの…天龍さん。確かこの前、明石さんの保健の授業でこの様な事態への対処法というのを習ったのですが…」

 

その言葉に天龍の頭についてる角のような機械の飾りがピクリと動く。

 

「マジか!?で、どうやってやるんだ?」

 

「そ、それは…その…」

 

もごもご、とどこか奥歯に物が挟まったような言い方をする電。

心なしかその表情は紅をさしている。

 

「…?んだよ。はっきりしねぇな。やり方があんだろ?それとも3人じゃ足りねぇのか?」

 

「そう言う訳じゃないんだけど…あれ?天龍さんは授業で習ったことないの?」

 

「う゛っ!!そ、そんな訳ねぇだろ!こ、この天龍様がお前らも

知ってるようなことを知らない訳…」

 

ないだろ、とは言おうとしてその言葉を飲み込む。そういえば、以前に姉妹艦である妹の

龍田と話していた時になにやら言ってたっけか――

 

 

『天龍ちゃ~ん♪今日の明石さんの保健の授業、覚えているかしら~?』

 

『とうぜ…『嘘はよくないわよ~?』す、すまん…覚えてない…』

 

『しょうがないお姉ちゃんねぇ~。いい事?人工呼吸って言ってね~…』

 

―天龍は授業の内容をすっかり忘れていた。いや、それ以前に聞いていなかった…。

授業中によだれを垂らしながら爆睡していたからである。

そして、龍田が話した内容を思い出した瞬間、頭からぼん!と煙のようなものが出て、顔がまるで茹でたタコの様に真っ赤になる。

 

「た、確か胸を腕で圧迫した後に、酸素を送るんだっけか。そ、その…キ、キキキキ…」

 

「口移しで酸素を送る、です!キ、キスではないのですっ!」

 

電もまた顔を真っ赤にしながら必死にキスという言葉を否定する。

そんな漫才の様な光景を雷は若干呆れた目で見つつ、天龍に呼びかける。

 

「二人して何やってるのよ!できないんだったら私がやるわよ?」

 

その言葉で天龍は我に返った。今は息があってもまたいつ心臓が止まるかわからない。躊躇っている場合ではないのだ。

 

「す、すまねぇ雷。…よし!俺がやるっ!!」

 

決心をつけるために頬をぴしゃんと叩く。まずは胸部圧迫をするために、その人物の

胸に両手を当てようとした。

 

 

 

 

 

一方、その人物――ピッコロは、真っ黒で何もない空間の中で目を覚ました。

 

「むっ…ハッ!?こ、ここは一体…。確か、俺は陸地まで飛んで行ったはずだ。

だがこの空間は…!?」

 

人や建物どころか、地面に足がついてる感触すらない。まさか、自分は

死んでしまったのだろうか?とピッコロは考えた。

 

(いや、例えそうだとしてもまずは閻魔大王の所に行くはずだ。こんな何もない

場所に放り出されるなぞありえん!)

 

では、ここは一体どこなのか?眉間にしわを寄せながら考えるピッコロ。しかし…

 

≪ズキンッ≫

 

「痛ッ!!ま、またかっ…」

 

またもや襲い掛かる頭痛。これでは考えることもままならない。徐々に苛々が募ってくるが、この空間から抜け出せなければどうにもならない。

 

取り敢えず頭痛が治まるのを待とうと、目を瞑るピッコロ。だが、そう時間がたたぬ内に彼のいる空間は、ぐにゃりと捻じれながら歪んでいく。

 

(今度は何だ…。ッ!?こ、これは…!)

 

空間の歪みが収まっていくにつれて頭痛も治まってきたので、空間の変化を察知したピッコロは

目を開く。すると、そこには見慣れない物が映っていた。

まず、先ほどの何も映らない黒とは違い、空間ははっきりと景色を映し出している。だが、その

景色はまるであせたモノクロ写真の様な色であった。

 

眼下には錆色の海原が広がっており、そこでは多数の巨大な物体が浮かんでいる。そして、そこから何かが打ち出され、海に落ちると同時に巨大な水柱が上がった。

「あれは、船か。いや、戦艦だったか?」

ピッコロは額に指を当てて、記憶の糸を手繰っていく。魔人ブウが地上でバビディと

共に暴れていた時、地球の軍隊が対抗していた際にこの巨大な鉄塊も

出ていたのを思い出した(最も軍隊は呆気なく壊滅したが)。

 

「どうやら戦闘中の様だな。む?待て。こいつらはブウが暴れているのに、こんなことをしているというのか…?」

 

―魔人ブウが地球を破壊すれば全てがお終いだというのに、この期に及んで

まだ同じ人類で戦う等、地球人は何を考えているのだ――

 

そう思い、眉を顰めるピッコロ。そしてそのピッコロの思惑を余所に、

またもや空間はその形を変えていく。

今度は先ほどまでのようなゆったりとした変化とは違い、まるで

ビデオの早送りのように急激に変わっていった。

船体が真っ二つに裂け、沈んでいく船。戦闘機の爆撃によって炎上する船。沈む船から飛び降りる人間。戦闘機の射撃や戦艦の砲弾で跡形もなく吹き飛ぶ人間。

そして最後に映ったのは、眩い光と共に、天に届くかのような巨大な雲が上がる光景だった。

 

「これはッ…!!」

 

次々に浮かぶ

光景は、ピッコロにとっては別段どうということのない物だった。元がピッコロ大魔王ということもあってこれくらいの事はやっていた(といっても本人はしていないが)し、

そもそも少し前に大量の人間が魔人ブウに虐殺されている場面を見たばっかりなので、特に

胸糞悪いとかそういう感情は沸いてこなかった。…もちろん見ていて気持ちの

良いものかと言われれば、そうででないのも確かだが。

 

しかし、これを見たピッコロには一つの疑問点が浮かぶ。自分から見たら大したことのない戦いであっても、これが人間同士というなら話は別だ。それなりに大規模な

戦闘であることは一目瞭然である。

恐らくは、ブウの出現より前に起こった出来事ではないのか?と考え、自分の…というより、自分の中の『神』が持っていた知識からこの光景を引っ張り出そうとした。だが、どうしても

記憶の中からは浮かび出てこないのである。

 

(どういう事だ…?神の奴が地球に降り立つよりも前の事なのか?

ええい!さっぱりわからんッ…)

 

と、若干苛立ちながら考え事をしていると急にモノクロな空間から一筋の光が発せられた

――まるで出口であるのかを示すように。

 

「考えていも仕方ない、か。今は魔人ブウの後を追う方が先決だ」

 

事態が急を要するのを思い出し、早々に頭の中から先ほどの疑問を追い出すと

ピッコロはその光に向けて歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ッ!!」

 

現実世界に戻ったピッコロは、くわっ!と目を見開き上体を起こす。

と、そこまではよかったのだが…

 

「へっ…?ぎゃっ!!」

 

「はわっ!?」「だ、大丈夫!?」

 

運悪く、目の前には天龍、そして後方に控えていた電と雷がいた。その為、ピッコロが起き上がりざまに頭突きを食らわしてしまった。さらに仰け反った天龍の頭が電にぶつかるという、ちょっとした玉突き事故が起きたのである。雷は電の左後ろにいたので巻き込まれずに済んだが。

 

「痛ッつぅうう…。こっ、こんにゃろぉ!なにしやがるっ!!?」

 

左手で鼻を抑え、右手でピッコロの胸倉を掴み憤慨する天龍。最も、涙目で鼻血を垂らしながら、なのでお世辞にも怖いとは言えない。…哀れ天龍。

 

「て、天龍さん!さっきまで死にかけた人に乱暴するのは駄目なのですっ!」

 

「そ、そうよ!その人、ただでさえ顔色悪いのに!」

 

その天龍を必死に宥める二人の駆逐艦。その光景に、意識を覚醒させたばかりのピッコロは

ぶんぶんと胸倉を摑まれた乱暴に揺すられてもただ呆然としていた。

 

「ちっ!しょうがねぇな…。今回は許してやるけどよ、次やったら

砲撃の的にしてやっからな!!」

 

納得のいかない顔をした天龍であったが、雷と電の言う通り、先ほどまで死にかけていた(天龍達には少なくともそう見えた)人物に暴力を振るうほど、彼女は乱暴な性格ではない。

あくまで突然の起きた事に動揺して取った行動である。そういう所が

彼女が慕われている要因の一つなのである。

 

そして肝心のピッコロはというと―

 

(神の神殿ではない…!?クソッ!やはり無理矢理次元に穴を開けたのは不味かったか?)

 

と、心の中で狼狽していた。次元という極めて不安定な世界では何が起こるか

分かったものではない。しかし、魔人ブウを追わなければデンデ達や他の仲間が危ない――

そう思い、ピッコロはゴテンクスが開けた穴に入ったのだ。

 

(異次元に迷い込まなかっただけマシだったと思うしかないか…それにしても、ここはどこだ?)

 

天龍が揺するのを止めるのと同時に、ピッコロは目だけを動かしていた。何らかの施設、それも

かなり格式高い物であるのは間違いない。だがピッコロはこの様な建物は見覚えが無かった。

しばらく、とは言ってもピッコロにとっては一瞬であるが、考えた後にピッコロは目の前にいる

3人の人間に話を聞こうと結論付けた。だがその前に、とピッコロは

上半身だけ浮かした状態から、すっと立ち上がる。

急に立ち上がったものなので、天龍はビクッと震え、雷と電は若干涙目になりお互いの手を

ギュっとつないでいる。いきなり2mの長身の強面が立ち上がる図はそれだけでも衝撃だろう。

 

「あ~…その、なんだ。すまなかった」

 

ピッコロは軽くではあるが、頭を下げて謝罪の言葉を口にした。不意の出来事とはいえ、相手に

ケガをさせてしまったのだからこのまま話をしても相手の気分を害するだけだろう、とピッコロは考えた。謝り方としてはかなり雑ではあるだろうが、それでも謝ったのである。

ピッコロとして生まれ変わってから今に至るまで色々な事があり、多少は丸くなったものの

前身はあのピッコロ大魔王である。そんな悪の化身みたいな存在が、3人の

人間の女性に対して頭を下げているのだ。

 

恐らく、この光景をZ戦士達が見たら大層驚くはずだ。悟空だったら笑い転げるだろうし、

ピッコロ以上に仏頂面のベジータですら驚くだろう。…多分。

 

「えっ!?あ、ああ…。わ、わかりゃいいんだよ!わかりゃ」

 

「ちょ、ちょっと怖かったのです…」

 

「わ、私も…」

 

ピッコロが謝るのを見て、天龍はビビッた自分を無理やり押さえつけるように、軽巡にしては

かなり大きい胸を突き出すようにしてふんぞり返る。

 

電と雷は、ピッコロの意外な行動に驚く。が、その行動もあってか、未だ緊張はしているもののピッコロへの警戒は薄くなっていった。

 

「あ!まだ立ち上がってはダメなのです!ただでさえ顔色が悪いのに無理をしては…」

 

「そうよ!私達が医務室に連れて行ってあげるわ。明石さんなら問題ないわ!」

 

心配性の電は、ピッコロに安静にするように促す。しかし、ピッコロは「構わん」といつのまにか腕組みをしたまま、素っ気ない言葉で返す。そして、

 

「少し前まで頭痛を患ってただけだ。問題ない。…あと、俺は元々こういう顔色だ」

 

と、電の言葉に律儀に突っ込むのであった。

緑というありえない肌の色であるが、そもそもピッコロは異星人なので特に問題はないのである。ギニュー特戦隊のジースやバータなんて赤と青だ。もちろん天龍達は

そのことを知らないのであるが。

 

「それはそうと…ここはどこだ?見た所、まだ魔人ブウの被害にはあっていないようだが…」

 

「ぁん?どこって…鎮守府だろ。オッサン、見たところ軍属じゃなさそうだがよ。

鎮守府が何かって事くらいわかるだろ?」

 

「オ、オッサン…!?」

 

オッサン、という言葉に呆然とするピッコロ。いくらなんでも初対面であんまりである。以前

悟天とトランクスに初めて会った際、二人そろって「ピッコロのおじさん」と言われたのである。

その時は「おじさん」という言葉の意味がわからず、後で悟飯が苦笑しながら

教えてくれたのであった。「オッサン」も恐らくそれと同じだ。

ピッコロ大魔王から生まれ変わった存在であるので、あの頃からだいぶ立った現在でも(人間に

当てはめると)20歳にも満たないのに、である。

 

「それに…魔人ブウってなんだよ。そんな屁こいたような名前の奴なんざ知らねぇぞ?」

 

天龍は呆れながらピッコロに向かって喋る。その隣では電が「そんな下品な言葉いっちゃいけないのです!」と顔を赤くしながら言っている。

 

そんな天龍の言葉にピッコロは怪訝な顔をする。ブウを知らないなんて普通では

考えられない事であるからだ。

 

(ブウが地球全土で暴れているのは魔導士バビディを通じて全地球人が知っているはずだ。

知らないなんて事はまずないはずだが…ん!?)

そこでピッコロははっ、と気付く。魔人ブウが神様の神殿に来るまでの出来事を思い出した。

 

(そういえばブウは地球人をほぼ皆殺しにしたとか言っていた。

だがこいつらは普通に生きている…)

 

 

魔人ブウが神様の神殿に来た際に、ピッコロは悟天とトランクスの修行時間を稼ぐため、敢えて

ブウに地球人を攻撃させるという苦渋の選択をした。

―結果として、ブウはエネルギー弾を豪雨の様に地上に降らせ、サタン・天津飯・餃子を除いて

皆殺しにしたのであった。だが、ここにいる地球人は普通に生きている。

 

(チッ!考えたくはないが…ここは()()()()()()という可能性があるかもしれんな)

 

ピッコロがそう考えたのは理由がある。まず考えついたのは、ブウがいない平行世界という可能性だ。未来トランクスの一例(あっちは本来いないはずの存在がいたという物で厳密には違うが)もあるので、可能性が無いとは言い切れない。

だがその考えは否定した。もしそうならブウやバビディ以外にも感じ取れる気はあるはずだ。神様の神殿に避難しているZ戦士達が殺されたとしても、ピッコロは天津飯と餃子がブウの攻撃から

逃れたのを知っているので、生きている二人の気を感じ取れないという事はありえないのである。

もしかしたら自分達が脱出に手間取っている間にブウに殺された、という事も有り得るかも

しれないが、そこまで考えるときりがないのでピッコロは暫定的にではあるが、ここが異世界だと結論付けた。

 

(どうすれば…!俺にはゴテンクスの様に次元に穴を開ける程のパワーは持ち合わせていない。

いや、そもそも持ち合わせたとしてもまた元の地球に戻れるかどうかわからん!クソッ…)

 

どちらにせよ、ブウの気配が感じられない以上この世界に長く留まるべきではない。

しかし自分の力ではどうすることもできない。

一体どうすれば、と必死に考えを巡らせるピッコロであったが、そこで

彼を現実に引き戻す声が一つ。

 

「あの、先程から俯いて顔から汗を流してますが…本当に大丈夫ですか?」

 

「ムッ…あ、ああ。大丈夫だ、何も問題はない」

 

駆逐艦の電である。彼女は少々心配性な所があり、ピッコロが問題ないと言っても

不安を隠せないのであろう。顔をゆがませながら俯いている彼に声をかける。

彼女の姉である雷も、世話焼きな性格なので、会ってて間もないピッコロの事も放ってはおけず、彼に指をびしっ!と向けて話しかける。

 

「そう?でも一応、診てもらった方がいいわよ。天龍さん、私は

医療室に行って明石さんに声を掛けてくるわ!」

 

「…そうだな。事情を聴くにしてもとりあえず先にやることがある。うし!俺は

この事を提督に報告しに行ってくる!」

 

天龍はぐっ!と拳を握り、駆け足で鎮守府の方に向かった。…鼻にティッシュを突っ込んでいる

ため、少々間の抜けた姿に見える事は触れずにおこう。

雷の方も、天龍と同じく鎮守府の方に走る。提督のいる執務室と明石のいる医療室は

離れているので、途中で二人は別れる事になる。

 

こうして、今この場にいるのは、ピッコロと電だけになった。

 

(は、はわわ!二人だけになってしまったのです…。ど、どうしよう…)

 

電はピッコロの方をちらちら見ながら話を持ち掛けるべきかと必死になって考える。

気弱な性格の為、この何もない空気が重、耐えられないのだろう。

そしてピッコロの方はと言うと、

 

(な、何かよくわからん方向に話が進んでいっている気がする…。

どうする?一応魔人ブウの事を話しておくべきか?いや)

 

するだけ無駄か―ピッコロはそう考える。もしも、先ほどの自分の予想が正しければ、

ここは魔人ブウの様な邪悪な存在がいない世界なのかもしれない。

そんな所で自分がいくら話をしてもまともに取り合ってはもらえないだろう。

ならば別に何もする必要はあるまい…。

 

 

 

ピッコロの判断は正しかった。ここはドラゴンボールもなければ、神様や異星人の類が

存在しない、文字通りの異世界である。だが――

 

「――ッ!!?」

 

「ど、どうしたのですか!?」

 

ピッコロは遠く離れた場所から、複数の気配がここに向かって来ているのを感じ取った。

それもただの気配ではなく…

 

(なんだ、この気は…!?気の大きさは大したことはない。

だが…とてつもない悪意を発していやがる!!)

 

ピッコロは驚愕していた…その禍々しい、まるで津波の様に押し寄せてくる邪悪な気配に。

無論、こういった気配を今までに感じたことが無いわけではない。宇宙一の強戦士族サイヤ人。

宇宙の帝王、フリーザ。悪の科学者が生み出した究極の人造人間、セル。

魔導士バビディに魔人ブウ。

なにより自分がピッコロ大魔王の生まれ変わりである為、こういった感覚には鋭敏である。

だが良くも悪くも純粋な悪意を持つ彼らと違い、今感じているのは

極限まで歪み、捻じれたドス黒い感情。

恨み、妬み、殺意、その他諸々がぐちゃぐちゃに混ざり合った、まさに『()()()()()』であった。

 

「………」

 

ちら、と流し目で雷を見る。この少女や先程の二人、そして建物の中からもちらほらと高い気を持った存在を感じられる。どういう訳かは知らないが、人間にしては

妙に大きなパワーを持っている。

だが、恐らくこちらに向かってくる気配の持ち主達を押し返す事はできないだろう。戦力に差が

ありすぎるのだ。蹂躙されるとまではいかずとも、かなりの被害が出る事は容易に想像できる。

――だからどうした。俺にはやらねばやらんことがある。そう思いはするものの、どうしても目の前の少女から目が離せない。

この時ピッコロは、何故か少女の姿と、自分のかつての宿敵であり今は友人の孫悟空の息子、

孫御飯の小さい頃の姿が重なって見えた。

 

 

(フン、以前だったら関係ないと放っておいた所だが…俺も甘ちゃんになったもんだぜ)

 

そう思い、ピッコロは小さく舌打ちをする。しかしその顔はまんざらでもなさそうであった。

 

「おい、其処のお前。あ~…」

 

そういえば名前を聞いていなかった。先程の片目が塞がった女性の名前は聞いたものの、目の前の少女の名前はまだわかっていない。

なので、ピッコロはまず名前を聞いておこうと声をかけようとしたのだが…

 

「ひうっ!?こ、怖いのです!食べられちゃうのです!!」

 

「食べるかっ!!!」

 

顔を真っ青にさせながら怯える電。先程から物凄く険しい顔しか

していなかったので怖がらせてしまったのだろう。

しかしピッコロは人は勿論、動植物も食べないのである。彼を含むナメック星人という

種族は、水さえあれば何も問題はないのである。

と、どこかでしたことがある突っ込みをするピッコロであったが、

咳払いをすると電に話しかける。

 

「と、とにかくだ!俺はお前に危害は加えん。所で、お前の名は?」

 

「ほ、本当ですか…?い、電(いなづま)です。どうか、よろしくお願いいたします!」

 

おっかなびっくりではあるがものの頭を下げて自己紹介をする電。

緊張のあまりか、声が若干上擦っているようだ。

 

「いなづま、か。うむ、俺はマジ…ゲフン。ピッコロだ」

 

一瞬マジュニア、と言いかけたが、これはピッコロがかつて天下一武道会に

出たときに正体をばらさないように登録した偽名である。

当然、ここではピッコロの名を知っている者はいないはずなのでわざわざ偽名を出す必要はなく、普通に自分の名前を明かした。

 

「ピッコロさん…ですか?か、変わった名前なのです」

 

一瞬、きょとんとした顔をする電。基本的に彼女達艦娘は、元となった軍船の名前を

そのまま引き継いでいる。なので名前は漢字が基本だ。

故に少し違和感がある…かもしれない。

 

「む?別段変わった名ではないと思うが…まぁいい。それよりもだ」

 

そんなに変わった名前だろうか?と、一瞬悩んだピッコロであったが、今は特に関係のない内容なのでスルーする事にし、目の前に広がる海の方に向けて指をさす。

 

「向こうから複数の気がこちらに向かって来ている。どういう訳かは

知らんが、ここを狙っているようだな」

 

「えっ…!?なんでそんな事が…いえ、それよりそれってもしかして…深海棲艦!?」

 

「深海棲艦、だと?それが名前なのか?」

 

―聞いたことが無い名だ。ピッコロは記憶の本棚から引っ張り出そうと

するものの、やはり出てこない。

 

「そ、そうです!(ど、どうしよう…加賀さん達はまだ出撃した海域

からは帰ってこないだろうし…)」

 

ようやく気分が落ち着いてきた矢先にこの凶報である。電はまたピッコロと出会ったばかりの時の様におろおろと慌て始めた。

電の言う通り、旗艦である加賀が率いる艦隊は現在、別の海域に出撃中だ。呉鎮守府周辺の海域には深海棲艦が多数いる為、散発的に敵の襲撃に遭う。故に艦娘達数人(基本は6人)を一艦隊と

して編成し、迎撃任務や偵察任務に当たらせるのだ。

今回も鎮守府より遠く離れた海域で、深海棲艦が不穏な動きを見せている、との情報が入り、加賀達は索敵、場合によっては敵の撃滅も視野に入れた任務を行っていた。

このタイミングで襲撃、ということは恐らく加賀達が向かった先の深海棲艦群は囮、こちらに

向かってくる方が本命なのだろう。

この呉鎮守府は規模も大きく艦娘の数も多いものの、加賀達以外にも複数の艦娘達が

偵察任務、または遠征任務についている為、鎮守府には敵の大軍団を

迎え撃てるほどの数が残っていないのが現状だ。

 

(で、でも本当に敵襲なのでしょうか…?もしかしたら

加賀さん達か他の艦隊が帰投した可能性も…)

 

と、電は半信半疑であったが、ピッコロは海の方に向けていた顔を電の方に

向けると、腕組みをしながら話す。

 

「事実だ。何か身震いがする様な…凄まじい悪意を感じた。

お前たちにはそれが感じられない事もあるが…間違いなく敵だろう」

 

「そ、そうですか…。って!な、なんで私の考えていた事がわかったのですか!?」

 

「ほんの少しだが口に出ていたのでな。俺の聴覚は人間とは出来が違うんだ」

 

「ほぇ…す、すごいのです…」

 

―かつてトランクスが地球に帰ってきた悟空に自分の秘密を打ち明けた際にも、ピッコロは二人の距離が相当離れているにもかかわらず、その会話の内容を一字一句、しっかり聞いていた。

…その代償かせいかは知らないが口笛が大の苦手ではあるのだが。

 

「そこで、だ。先程、助けてもらった礼もある。ここは俺がなんとかしてやろう」

 

その言葉に電はきょとん、とする。その言葉の意味することを理解しきれていないのだろう。

 

「ふぇ?何とかするって…一体どうするのですか?」

 

「俺が奴らを叩き潰す。一人で十分だ」

 

「………」

 

ピッコロは、さも当然の様に言い放つ。

一瞬、呆然とする電であったが、ピッコロの言った言葉を理解した瞬間、

本日一番の大声を上げた。

 

「えッ…えぇええええ―――――ッッ!?」

 

 

 

 

 

 

そして時は現在に至る――

 

「並の人間より遥かに高い気を持った存在、そんな奴らが至る所にいやがるとはな。

ここの地球も案外、俺たちの地球と似たり寄ったりかもしれん…」

 

海上を凄まじいスピードで翔けながらピッコロは呟く。ピッコロ達が住む地球は過去にも凶悪な敵が地球を狙ってきた。サイヤ人、フリーザ、人造人間、セル(人造人間達は地球を狙ったわけではないが)。

ちなみにこれは本人が知らない、というより知ることができない事ではあるが、

異なる平行世界では、それこそ両手で収まりきらない程の危機が地球に迫ったのである。

流石にそれらと比べるとかわいいものであるが、やはりここの地球も人類の脅威となる存在と

闘っているのだろう。そうでなければ、ただのか弱い少女にしか

見えない存在があれほどのパワーを持っている理由にはならない。

 

「さて…ここらにいるはずだが…むッ!?」

 

そんな事を考えていながら飛行しているピッコロであったが、急にその足を止める。物凄く濃密な『悪意』がこの周辺とその先の海域から発せられているのだ。

常人ならここにいるだけで恐らく気が触れてしまうだろう。

 

「………そこかッ!!」

 

ピッコロはかっ!と目を見開くと額に揃えた人差し指と中指を当て、目の前の何もない空間にその指を振り抜く。すると、その指先から―

 

≪ズォビッ≫

 

と、独特な音と共に、螺旋のエネルギーを纏った黄の光線が放たれた。その光は凄まじいスピードで進み、その先にあった飛来する物体を貫通、爆砕せしめた。

 

『魔貫光殺砲』

 

かつて地球に来襲した初めてのサイヤ人であり、孫悟空の実の兄であるラディッツに対して

使用した技である。初使用時は戦闘力に大きな差があったので、撃つのに長い『溜め』を

しなければならなかったが、威力に拘らなければ速攻で打つことも連射することも可能である。

 

「咄嗟に撃ったが…まぁ問題はあるまい。こちらに向かって来ていたという事は

恐らく俺を狙っていたはずだ」

 

そう呟くピッコロ。そしてその予想は当たっていた。

 

 

 

 

 

 

「ッ……」

 

「ドウシタ、ヲ級?」

 

ピッコロがいた所より少し先の海域。そこでは無数の影がうごめいていた。

 

黒光りする魚のような一つ目の怪物。身体の半分を占める巨大な頭部に青白い手足が生えた怪物。細身の体とは不釣合いな程の巨大な鉄拳を持つ異形の者。腰まで届くほどの長い髪を持ち、水兵服に際どい下着という異端的な姿に腰からは巨大な砲塔をいくつも持つ者。

 

その周りには同じ様に魚の怪物がうようよと犇(ひし)めいている。

その先頭には、二つの影があった。

 

「サキホドワタシガハナッタカンサイキガ、ゲキツイサレマシタ」

 

―頭には先程の青白い手足の怪物の頭部、漆黒のマントを羽織り、指揮棒を携えている。

 

『空母ヲ級』―そう称される彼女は、指揮棒の先端部分を握りしめていた。彼女の顔は無表情ではあったが、唇からは「ギリッ」と言う音が聞こえる。

 

「…テキのカンサイキカ?オモッタヨリホソクサレルノガハヤイナ」

 

―色素が抜けきったかのような白髪、敵を射貫くような金の瞳、額には左右非対称(左が大きい)の角が付いている。胸部から腹部まで開いたフード付きの服を纏い、両手には黒いグローブ。

左足は赤白ストライプ柄のソックスので覆われている。

そして特徴的なのは、腹部から生えている二本の艤装である。白いウツボの様な姿をしており、頭部からは砲塔が突き出ていて、その姿は不気味極まるものだ。

 

『重巡棲姫』―彼女は、ヲ級からの報告に眉をしかめる。

明らかに捕捉されるタイミングが早すぎるのだ。

 

彼女等深海棲艦は、拠点が暗い深海という事もあってか気配を消す事に長けている。全て、と言う訳ではないが、兵器の質は艦娘側は深海棲艦側より劣っているので

敵影を補足しそこね奇襲を喰らう…などという事もたまにある。

 

海上からの進軍であればとっくのとうに気付かれていたが、今回は移動速度を犠牲にギリギリまで海の底から進軍したので、鎮守府まで近い距離になっても補足されずに済んだのだ。

…そう、()()()()()()

 

「イエ、ソノ…ホソクサレタ、トイウノハマチガイナイノデスガ」

 

「…?ドウシタ、ハギレノワルイイイカタダナ」

 

ピッコロが海上を移動している頃、重巡棲姫率いる深海棲艦群は深海から浮上して海上へ立った。そして、敵に気付かれていないかを確かめる為、空母であるヲ級は

偵察の為に艦載機を発艦させたのだが…。

 

ヲ級が受けた艦載機からの報告は驚くべきものであった。

『敵影を補足したとの事、しかしその数は一つ、艦載機ではなく

人型である。飛行速度は戦闘機をも上回る』

 

これに対しヲ級は驚愕した。―艦娘共め、いつの間に空を飛べるようになったのだ?―と。

しかも戦闘機より速いとは、常識では考えられない事である。

 

その後、謎の敵影は停止し辺りを見回している、との報告を受けたヲ級は

『我らの事を補足されるとまずい。発見次第射殺しろ』と艦載機に告げた。

しかし結果はまさかの返り討ちである。しかもあっさりと。この事を伝えるべきかどうかヲ級は迷ったが、言わないと後で『姫』に何をされるか分かったものではないので、素直に報告する事にした。

 

「カンサイキヲゲキツイシタノハチュウニウイタ「ニンゲン」デアッタト…。

オソラクハワレラノソンザイモキヅカレテオリマショウ」

 

「ナニッ!?マサカカンムスガソラヲトブトイウノカッ!?ワレラデモフカノウダトイウノニ…!!」

 

ヲ級から告げられた言葉に驚愕する重巡棲姫。艦娘にしろ人間にしろ『人』が空を飛んで、

あまつさえ空を飛び回る艦載機を叩き落したのだ。常識では考えられない。

更に艦載機を撃墜した人物が、こちらの存在を艦娘達がいる鎮守府に報告をする事は

まず間違いないだろう。事態の悪化に重巡棲姫は頭を抱える。

 

(クソッ、マサカコンナコトニナロウトハ…クウボノヤツ(空母棲姫)ガヤラレルトハ

オモエンガ…コウナッタラ!)

 

重巡棲姫は頭を上げると、右手を前に掲げ、叫ぶ。

 

「ワレラノソンザイハスデニテキニシラレテイル!!オトリノブタイガ

モチコタエテルアイダニ、ジンソクニテキノホンキョチヲタタクノダ!!ススメェエエ!!」

 

要はやられるまえにやれ、という事である。少し強引ではあるものの、もたもたしていたら艦娘達の部隊が戻ってきてしまう。そうなったら、最悪鎮守府の部隊との挟撃で壊滅する恐れがある。

そうなる前にこの大軍勢で敵拠点を潰す。そう考え、重巡棲姫は進軍を再開した。

 

 

 

 

――ここで重巡棲姫は致命的なミスを犯した。先程の艦載機を撃墜した謎の敵影。これについて

もう少し警戒をするべきであったのに、作戦のミスによる焦りと、それを招いた犯人への怒りで

冷静な判断ができなくなり、進軍を再開してしまった。全方から大量の光が迫っている事も知らずに――

 

≪ボボッ…ボッ…ボッ…ボボッ…ドグウオッッ≫

 

「ッ…!?」

 

「グゥッ…ナ、ナンダ!?」

 

轟音と共に、球状の光が海に着弾する。まるで鯨の潮吹きの如き巨大な水柱が何本も立ち、視界が遮られる。余りの衝撃に顔を手で覆い、目をつぶるヲ級と重巡棲姫。

視界が晴れてくると、そこには自分の手下の魚の怪物―駆逐艦達が、多数海の上にぷかぷかと

浮かんでいた。体の随所から炎が噴き出ているところを見ると、轟沈は避けられないだろう。

 

「バ、バカナ…!!!」

 

重巡棲姫は何が起こったかわからない、という顔をしている。ヲ級も同じく、その顔を

驚きに染めていたが、すぐに気を取り直して全方の上空を指さす。

 

「ヒメサマ!アソコニナニカガ…!」

 

「…!!」

 

きっ、と空を見上げる重巡棲姫とヲ級。そこにはマントをたなびかせ、腕組みをして

こちらを見下ろしている者がいた。

 

「なるほど、貴様等が深海棲艦、とやらか。どんな化けモンかと思いきや

意外と人間に近い姿をしているようだな」

 

「オノレェ…!カンムスデハナイナッ!!ナニモノダ、キサマハ!?」

 

怒号のあげる重巡棲姫。それに対し、その人物は口の端をニィ、とつりあげた。

 

「てめェ等に教えてやる義理は無い。…が、敢えてこう言ってやる。

 

 

俺はかんむすとやらでも地球人でもない。

 

 

俺は『貴様らを倒す者だ!!』」

 

 

暗き水底に潜む怪物の姫君と異世界の闇の大魔王の息子。両者がここで激突する!!――――

 

「・・・ェ」

 

「む?」

 

「 (`0言0́*)ヴェアアアアアアアアアア!!キモイチワルイヤツガデタァアアアア!!」

 

「やかましい!!」

 

 

―――かもしれない。

 

 

 

 

ナレーター「突如現れた謎の大軍団。その名は深海棲艦!鎮守府を襲撃しようとする彼女等の前に現れたピッコロ。

幼い少女、電。そしてその仲間達の拠り所を守らんと、異世界の大魔王の息子は

闘うことを決意した!

果たして、ピッコロはこの邪悪な者達を相手に勝利をつかむことが、できるのか!?」

 




悟空「オッス!オラ悟空!!ピッコロの奴もこっちに来たんかぁ!
頭押さえてうんうん唸ってたけど本当に大丈夫だったんかなぁ?あいつ。
がんばれピッコロ!今皆を守れるのはおめぇしかいねぇ!」

ピッコロ「貴様らを見過ごすわけにはいかん。くたばれっ!!」

重巡棲姫「チ、チックショオオオ…!!」


悟空「次回!龍球これくしょんー龍これー第4話『ピッコロ大暴れ!
ナメック星人を舐めるなよ!!』」



ベジータ「やはり…貴様か。ピッコロ!!」

ピッコロ「ベジータ!?なぜおまえがここに…」



はい、と言う訳で2話終了で…
ターレス「1月近くもかかるとは…サイヤ人の面汚しめ!」
いやサイヤ人じゃないから!後投稿の方には色々と事情がね・・・。
ターレス「ほーぉ?まだ言い訳する気か。このまま、死ぬか?(キルドライバーの構え)」
アイエエエ…(失禁)

ゴホン。お詫びしたいことが二つあります。1つは投稿が1月も伸びてしまったこと。
就活途中なのでなかなか書けないのと今後の展開どうしようか迷って
こんなに伸びに伸びてしまいました。反省!
もう1つは3話のタイトルを変えたことです。今回ものすご~~くグダグダな展開のせいで、
ピッコロさんの戦闘シーンが最後だけになってしまいました。本当だったら
終わるところまで行きたかったのに・・・。
次はもう少し考えてから書きます!申し訳ありませんでしたァ!(土下座)
後、これはアンケートみたいなものになるからここで書いていいのか微妙ではありますが…。
あと2,3話後にベジータとピッコロが本格的に艦娘達と絡むようになるんですが、アニメ基準で行くか、オリジナルで行くか迷っています。
皆さまはどちらの方がよいですか?もしよければ感想と一緒にお願いします。後、長くなったのでいったんあげましたが、後で文章が読みやすいように編集しなおします。

ピッコロ「貴様、やる気あるのか!?行き当たりばったりで書いているからこうなるのだ!」
悟空「まぁいいじゃんかぁ。じゃ!みんな、また見てくれよな!」



追記(10月18日);本文にいろいろ手を加えました。後サブタイを。それと前書きに雷ちゃんを出しました。パンツは泣いていい…。


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どうでもいい設定でございます。なんなりとご覧ください(その1)

パラガス「最新話などと、その気になってたお前たち(読者様)の姿はお笑いだったぜ☆ふぁ~ははww」
ビルス「ちょっと期待してた僕がバカだったよ・・・。破壊、しちゃっおっかなぁ?(ゴゴゴゴ)」

パラガス「おぉ!?お、お待ちください!今のはブロリーが言ったのです!俺は悪くないっ!」
ブロリー「え゛っ!?お、親父ィのバカヤロー!!」
ビルス「どっちでもいいよ(ポヒー♪)」
ブロリー「わ…わぁああああああああああー!!?(島田兵)」
パラガス「ふぁ~はははは(涙)あなたもどうぞ?」

はい、茶番で申し訳ありませんwムリアリアです。
きちんと本編は執筆中です!後30年お待ちください!(嘘)

今回は現時点でのベジータ、ピッコロを艦これ風にステータス化した感じです。


ベジータ(通常)       Lv 92

 

    450/450

 

 ;汚ねぇ花火

 :連続エネルギー弾

 ;ファイナルギャリックキャノン

 :爆発波

 

 

 耐久  ;450  火力  ;318

 装甲  ;221  雷装  ;283

 回避  ;166  対空  ;187

 搭載  ;0  対潜  ;125

 速力  ;超速  索敵  ;∞

 射程  ;極長  運   ;35

 

 

 解説

 

 汚ねぇ花火:対空カットイン 発動すればツ級並にたくさんの艦載機を撃墜できる。ツ級滅ぶべし、慈悲はない。なおカットイン無しでも秋月型と同じくらいの活躍はする。原作でキュイをあっさりと殺した技。相手に向けて2本指で「ピッ」と刺す。相手はしめやかに爆発四散!恐らく自分のエネルギーを瞬間的に指定の場所に送り込んで爆発させるものと勝手に想像。戦闘力がベジータより低いキュイなので爆発したのかもしれない。要はフリーザのデスビームと同じ?

 

 連続エネルギー弾:航空戦の先制攻撃 当たった敵全員に確定で小破の判定を与える。なお、艦これで言うところの大破、中破レベルになると、命中率は下がる上に当たっても大したダメージは与えられない。え?全快の状態でも大してダメージ与えられてなかっただろうって?やめたげてよぉ!ベジータの代名詞。初回は悟飯に大ダメージを与え、ザーボン相手にも通用したのにいつのまにかフラグのテンプレとなってしまった。焦りor切れたベジータの「だだだだだ!」→煙もくもく→やったか!?→ちーん(笑)←ここまでテンプレ。ブロリー映画ではおまけに岩盤もプレゼントされる。ちなみになぜグミなのかというとお菓子のCMで「グミくれよぉ!」「やーだよ!」とベジータと悟空の会話が原因。なお悟空がセルに使用した際はそこそこのダメージを与えられた。何故こうも差が…

 

ファイナルギャリックキャノン:弾着観測射撃(あくまでそれに相当する物なので実際は制空値確保してなくても出せる)当たれば確定で大破。中破・大破状態では発動しない。原作でザーボンに腹パンして直接ポヒーした技。ちなみに個人的にはベジータの技の中で上位に入るかっこよさだと思っています(ボソッ)

 

 

 爆発波:別名「ずあっ!!!!」:かばう(自分含め全味方)+相手全体に微ダメージカウンター。ただし中破、大破状態では発動しない。スパーキングなどの格闘ゲームでは気を使えるキャラの大多数は持ってる技。防御面に目が行きがちだが、バースト(コンボ抜け)、微ダメなので攻撃にも使えるなど便利。なおエネルギーフィールドには勝てない模様。

 

 

ピッコロ(通常)           Lv  64

 

    373/373

 

 ;魔閃光

 ;爆力魔波

 ;爆魔障壁

 ;爆裂魔口砲

 

 

 耐久;373  火力;272

 装甲;204  雷装;255

 回避;166  対空;199

 搭載;0  対潜;110

 速力;超速  索敵;∞

 射程;極長 運 ;42

 

 

解説

 

 魔閃光;開幕雷撃 外れることはなく、当たると確定小破(敵の防御によってはそれ以上もあり)額に両手を重ねて発射する気孔破。為が短い分かめはめ波より強くないし地味というレッテルを張られている技。原作でも使用は1回のみ。厳密にいえば悟飯の技。とはいっても師匠がピッコロなのでピッコロも使えるはずという無茶理論。

 

 爆力魔波;連撃(ベジータのファイナルギャリックキャノンと一緒でいつでも出せる)2回攻撃が当たれば確定中破。1発1発は微ダメ。気を最大まで高めて左手で抑えた右手で放つ気孔破。これも厳密にいえば本人ではなく親父の大魔王の技。でも親父が使えるから息子も(ry)原作では気を高めている所を悟空の一撃で邪魔されるも、悟空も負傷していて一撃に力が乗らず、カウンターの形で使用。キングキャッスルをほぼ更地にするという凄まじい威力を出した。でも原作では使用は(ry

 

爆魔障壁;3人までかばう ただし中破・大破状態では一人のみ。魔閃光と同じで悟飯の技。アニメオリジナルでガーリックjrのダイソン『デッド・ゾーン』から身を守る為に使用、なぜか攻撃もできてガーリックjrがボッシュート返しされるというオチ。青年の時もイケメンブロリーのイケメンエネルギー弾から悟天・トランクス・ビーデルを守る為に使用。あまりにも威力が高すぎたために守り切れずに全員ボロボロに。マモレナカッタ・・・。ピッコロが師匠なので(ry

 

 

爆裂魔口砲;かばう+攻撃してきた相手に大破ダメージカウンター。ただし小破未満+1回の戦闘で1回のみ、夜戦使用不可。肘うち→蹴り上げ→ハンマーナックル→相手が起き上がったところを腕を掴む→腹パン→上空に放り投げた所を口からの気孔破でフィニッシュ。名前がついてるのはゲーム限定、原作では腕を掴む所から以前はなし。これも結構かっこいいぞぉ!

 

 

 

 

 

…はい、レ級が下級戦士と思えるくらいのチートっぷりですねこりゃww

まぁでもこれくらいいいよね(にっこり)

ちなみに搭載数とかは関係ありません。どんな時でも打てます。まさにチート

レ級「ト、オモッテイタノカ!?(レ級フラグシップ改化)

 

ベジータ「ダニィ!?逃げるんだぁ・・・勝てるわけがないYO!!」

ピッコロ「何を寝言言ってる!ふてくされる暇があったら闘え!」

     




と、こんな感じです。こういう設定も話が進むにつれて書いていくかと思います。本編も界王拳並のスピードで書きます!今しばらくお待ちください!

追記;10月20日 いろいろ抜けてたので本文書き足しました。所詮下級戦士・・・無様なもんだ(自嘲)


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第4話『ピッコロ大暴れ!ナメック星人を舐めるなよ!!』

どうも。ムリアリアです。今回は第4話になります。ピッコロさんの本気をとくと見よ!
ピッコロ「おい!前回からだいぶ間が開いているぞ。界王拳がなんだって?(ゴキゴキ)」
た、ただの界王拳だから…まだ本気出してないだけだから!
ピッコロ「ふざけるなぁ!激烈光弾!!」
???「グレンキャノンもだっ!!」
???「手裏剣も付けるぜ!」
ちょっ…お前らどこから湧い・・・ニョワァアアアアアアアアア‼



ナレーター「ベジータと同じく、同じ様で同じでない地球に来てしまったピッコロ。鎮守府と呼ばれる場所に流れ着き、そこで出会った少女達に詳しい話を聞こうとするピッコロであったが、
突如邪悪な気配を感じ取る。果たしてその正体は何なのか?そして、ピッコロはその存在に打ち勝つことが、できるのか!

第4話『ピッコロ大暴れ!ナメック星人を舐めるなよ!!』」


≪ヒュオオオォォォォォォォ…≫

 

「………」

「………」

 

大海原を舞台に睨みあう二者。片や嘗て世界を恐怖に陥れた大魔王の息子、ピッコロ。片や海を蹂躙し人類に絶望を与える悪鬼、深海棲艦。

 

時間にすればほんの僅か―しかし、無限を感じさせる静寂を打ち破ったのは…

 

「はっ!!」

「ッ!」

 

――ピッコロだった。右手を突き出し、気弾を発射する。牽制の為なのか、先程駆逐艦の群れを壊滅させた程の大きさは無い。

重巡棲姫達も何かあれば動ける様に準備していた為、ピッコロの動作に合わせて散開する。

 

一発だけでは終わらず小型の気弾を弾幕の様に広範囲に展開するピッコロ。その密度に避けきる事ができなかった駆逐艦の数体が被弾する。

 

「ギュオオオ…」

身体をぐらつかせ、呻き声をあげる駆逐艦達。流石に一撃では仕留められないが、それでもダメージはあるらしく身体から煙を吹き出している。

 

雨の様に降り注ぐ気弾、そのうちのいくつかがヲ級に降り注ぐ。ヲ級は回避しきれぬと悟ると、とっさに艦載機を出し盾にしようとする。

 

 

≪ドォオン!≫

 

気弾が着弾し、小さい水柱が立つ。バラバラに展開していた深海棲艦の群れはピタッと止まる。

恐らくヲ級は重巡棲姫程ではないが重要な立場にいる者なのだろう、セーラー服の戦艦『タ級』やビキニ水着に両手の巨大な艤装が特徴の重巡『リ級』は驚いた顔で音がした方を見ていた。

しばらくして、水柱がなくなり視界が晴れるとそこには―

 

 

「ッ!?ヒメサマ…!」

「コノテイドナラワタシガウケル。ムダニカンサイキヲショウモウサセルナ!」

「ハッ…」

 

いつの間にかヲ級の前にいた重巡棲姫と、それに驚くヲ級の姿があった。恐らく重巡棲姫がヲ級をかばったのであろう、だがその身には傷の一つも見当たらない。

 

一方、仕掛けた方のピッコロは、先程気弾が当たる直前に見た光景について考えていた。

 

(姫とか言われていた奴が前に出た時、一瞬だが奴から強いパワーを感じた。あれは…)

 

重巡棲姫は気弾に当たる直前に片手をかざしていた。すると、本人を中心にうっすらと赤色の透明感を持った『何か』が出現した。

 

恐らくそれで防いだのだろう、何故ピッコロがそう思ったかというと、過去に似たような事をした敵と闘った事があったからである。

 

 

 

                

 ―【バ…バリアー…か!?】―

  

 

 ―【残念!…惜しかったな?】―

 

 

 

7年ほど前、究極の人造人間セルが暴れまわって間もない頃、亀仙人の家に移動したZ戦士達の前に現れた3人の人造人間。

そのうちの一人、レッドリボン軍の狂気の科学者Dr.ゲロによって改造された人造人間17号とピッコロは闘った。

その戦闘の際に大量の気弾を集中的に浴びせたにもかかわらず、高密度のエネルギーを障壁の様に周囲に張り巡らした17号にはまるで効果がなかったのだ。

 

 

(とはいえ先程のは牽制に過ぎん。17号程の性能があるかどうかはわからん…もう少しは様子見だな)

 

ピッコロは先程の様に大量の気弾を打ち出す。今度は重巡や戦艦にも被弾した。が、先ほどの様にバリアーの様な物に阻まれて威力を軽減されてしまう。戦艦に至っては埃が付いただけで無傷である。

どうやら全ての敵がバリアーを持っているようだ。先程駆逐艦級がダメージを負ったのはバリアーの質が低いせいだろう、とピッコロは分析する。

 

一方、その様子を重巡棲姫は憎々しげに見上げる。

 

「チッ!コレデ・・オチテシマエ!!」

 

腹部から伸びる2本(体?)の艤装、その先端の顔らしき場所から生えている砲『8inch長射程連装砲』が《ガコココ...》と重厚な音を立て砲塔を上空にいるピッコロに向ける。両目の2門、双頭合わせて4門の連装砲から巨大な鉄の塊が轟音と黒煙と共に吐き出された。

それを合図に戦艦、重巡、軽巡、駆逐艦等が一斉に空中に向けて砲撃を放つ。その凄まじい弾幕は艦娘であれば即大破、下手をしたら轟沈は免れない。

―だがそれはこの世界であれば、の話。ピッコロは持ち前の舞空術で、文字通り空を舞うかの様な動きでなんなく躱していく。

たまに当たりそうな時もあるが、その時は気弾で相殺していった。

重巡棲姫は悔しそうに歯ぎしりすると、ピッコロに向かって咆える。

 

 

「オノレッ…チョコザイナマネヲ!オリテクルガイイ!ヒキョウモノメッ!」

 

重巡棲姫率いる深海棲艦は攻めあぐねいていた。もちろん対空手段は持っている。が、今回は奇襲を想定した編成の為、部隊の大部分は駆逐艦、軽巡で占められている。

それに加え、敵も凄まじい密度の弾幕を繰り出しているため、それを避けながら対空射撃をするのは困難を極める。

対空の鬼と恐れられる軽巡ツ級も恐らく撃墜する前に被弾、撃沈されてしまいかねない。

空母も正規空母であるヲ級と軽母のヌ級はそれほどの数もおらず、後の事を考えるとここで艦載機を落とされるのはあまりよろしくないのである。

 

ピッコロはその言葉を聞き、しばらく目をつむる。そして目を開くとにやり、と口の端を釣り上げた。

 

「いいだろう、その誘いに乗ってやるぜ」

 

そう言うが否や、ピッコロは垂直に降りていき海上ぎりぎりの所でピタリと止まる。そして両方の手首と首をゴキゴキと鳴らし、握りこぶしを作る。

 

「リクエストに応えてやったぞ。さあ、かかってこい!」

 

わざわざ自分の得意な領域から敢えて不利な場所に身を降ろしたピッコロ。まるで挑発するようなその行為に

重巡棲姫は眉をしかめる。

 

(マサカホントウニオリテクルトハ…タダノオロカモノカ?ソレトモ)

 

――余程の自信があるのか――

 

「バカメ…!オノレノアサハカサヲクヤミナガラ…シズンデシマエ!!」

 

とにもかくにも敵を倒すチャンスを逃すわけにはいかない、そう考えた重巡棲姫はピッコロに向けて砲撃を開始する。

今度は艤装からだけでなく、腰の両面に備え付けられている連装砲からも砲撃を放つ。更には艤装の口と思われる部分が≪ガパァ…>と不気味な音ともに開き、魚雷『22inch魚雷後期型』が吐き出される。装備している全ての兵装が火を噴いた為、重巡棲姫の周辺からは煙が漂い、彼女自身の姿も一瞬であるが覆いつくされる。

 

しかし、その総攻撃ですら空を自由に移動できるピッコロに当たることは無く、ただただ大きな水柱を上げるだけに留まる。

 

ピッコロの方もただ回避するだけでなく、動きながら先程の様に気弾を打ち続けていた。

 

回避するピッコロに歯ぎしりする重巡棲姫であったが、向かってくる気弾が大きいことに気付く。

 

(ワタシヤタキュウはタエラレルガ…ホカハマズイ!)

 

そう判断するや否や、彼女は随伴艦たちに回避をするよう促そうとした。しかし、気弾は深海棲艦達の脇を大幅に過ぎていき派手な水しぶきを上げながら着弾する。

 

「ナニッ…?ハズシタノカ?」

 

飛んでくる水飛沫から片手をかざして守りつつ、重巡棲姫は呟く。先程は牽制とはいえこちらに狙いをつけてはなっていたのに今回は外した。しかもどう見てもわざと外したようにしか見えない。

何故?どうして?そんな思いが彼女の胸中を駆け巡る。

――そのせいで回りで起きている異変に気付くのがほんのわずかに遅れてしまった。

 

「ガッ…!」「ナンダコレハ・・・ウグ!?」「グォオオオ!?」

 

「ッ!?ナンダ、ナニガオコッテイル!!」

 

自分の周囲で悲鳴が上がっている。何事か、と急ぎ周りを見渡すも、先程の水柱によって発生した大量の水飛沫が周囲に舞い、まるで霞の様になっていて

どこにだれがいるのかよくわからなくなっている。

 

 

と、重巡棲姫が状況把握に悪戦苦闘しているその時、急に目の前に何かが物凄い速度で彼女に迫ってきた。

 

間一髪で避ける事に成功した重巡棲姫。キッと迫ってきた『何か』を見ると――

 

「ナッ!コレハ…ウデ!?クッ!」

 

そう、ピッコロの両腕だった。鞭の様にしなる「それ」を間一髪で躱し、お返しと言わんばかりに砲塔を向け、砲撃を放つ。

 

彼女の配下の深海棲艦達もそれに合わせてピッコロがいた地点に向けて斉射する。凄まじい量の砲弾が降り注ぎ、爆発と共にキノコ雲がもうもうと立ち昇る。

 

「ハァ…ハァ…ヤ、ヤッタカ?」

 

額から流れた汗を拭い息を吐く。手ごたえもあった、あれで生きているなど絶対にあり得ない…そう思い安堵する重巡棲姫であった。

 

やがて視界が晴れ、辺りを見渡せる様になっていく。眼前の敵を排除したことを確認した重巡棲姫は、気を落ち着かせる意味合いも込めて配下から被害報告を聞いた。そしてその損害の多さに顔を歪ませる。

 

 

 

駆逐級は轟沈及び中破大破を含め損害多数。重巡級、戦艦級は航行不能になった者はほぼいなかったものの、大小の傷を負っているのが多い。唯一の救いは空母の損害がゼロである事か。

 

(イツノマニココマデヤラレタ?…ッ!マサ、カ…)

 

そこで彼女はハッ、と気づく。先程の光弾は当てるつもりはなく、目くらましだったのだ。わざと海面に当て水柱を発生させる事で視界不良を起こし、

こちらが奴を探している隙を狙って、あの伸びる腕によって不意打ちを喰らわせたのだろう。

 

「チィ…カナリノイタデヲクラッテシマッタカ。ヤツノジャマサエナケレバムキズデチンジュフヲオソエタモノヲ!」

 

舌打ちをする重巡棲姫。とはいったものの起こってしまった事は仕方ない。幸い(何故かはわからないが)鎮守府から敵影が確認されず、別海域に出撃している艦娘達が今更こちらの存在に気付き、戻ってきたとしても着いた頃には無惨に破壊し尽くされた鎮守府だけが残っているだろう。

 

このままいけば当初の目的である鎮守府への奇襲は成し遂げられる――そう思った重巡棲姫は顔を歪ませる。先程とは違い怒りによる物ではなく、狂気を含んだ凶悪な笑みが海面に映し出されていた。

 

「ヨウヤクニクキカンムストニンゲンヲオウサツ(鏖殺)スルコトガデキル…。ククク…ハーハッハッハッハ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

――そう 『() () () () () () ()』――

 

 

 

 

 

 

「はーっはっはっは!!…どうした。何かおめでたい事でもあったか?」

 

 

「ハッハッ…ハッ!?ナッ…ンダトォォォ!!?」

 

 

ぐりん、という音がしそうな程に彼女が首を後ろに向けると、そこには何事もなかったかのように腕組みをしながら佇むピッコロの姿があった。

 

(バカナッ!!ムキズダト!?アリエナイ…!!イッタイドンナテヲツカッタノダ!!)

 

――防御した?だとしたら少なくとも服がボロボロになるはずだ。埃一つないのは明らかに不自然だ。

――避けた?ありえない。自分一人ならともかく大軍団による多方面からの一斉射撃なのだ。避けられるはずがない。

――海中に避難した?だったら配下の潜水艦が魚雷攻撃をしているはずだ。

 

――わからないわからなイわからナイわかラナイわカラナイワカラナイ――

 

必死に脳内で考えを巡らせるも一向に答えが出てこず、重巡棲姫は血がにじみ出る程唇を噛みしめてピッコロを睨み付け、咆えた。

 

「キサマ、アノコウゲキカラドウヤッテニゲノビタ!?」

 

「逃げた訳じゃない。少し貴様等の『()()』をしただけさ」

 

「マネ…マサカ!!」

 

そう、ピッコロは攻撃が当たる直前に自分の気を周囲に放出して全方面から身を守るバリアの様に展開していたのである。

最も深海棲艦側が使うバリア(障壁)は衝撃を和らげる程度の物であって、そこまでの強度はない。

対してピッコロの方は自身の持つ強大な気を使った物でありその強度は凄まじく、先程の攻撃くらいなら問題なくはじき返すことができるのだ。

 

「ふっ…そんな事より自分の心配をするんだな!」

 

ピッコロは隙ありと、驚きの余り隙を晒している重巡棲姫に向かって肉薄する。気弾での弾幕戦から格闘での肉弾戦に切り替えたのだ。

 

 

「チィイイ!!」

 

重巡棲姫はまさか直接殴りかかってくるとは思わず、慌てながらもピッコロを迎え撃つ。拳と蹴りの応酬が続き、その衝撃の影響で二人を中心に海上から波が起こっている。

 

しかし、格闘の心得があるわけでもなく、パワーも劣る重巡棲姫が勝てる筈も無く、徐々にピッコロに押されていく。

 

「むんっ…!!」

 

ピッコロは重巡棲姫の腹部から繰り出される艤装の噛みつきを紙一重で避け、その伸びきった胴体(?)を掴み、思い切り引き寄せた。

 

「ウオッ…!?」

 

重巡棲姫本体もまたピッコロの方に引っ張られていく。そして――

 

「ずありゃあ!!」

 

「グハッ…ガッ…!?」

 

彼の思い切り握りしめた右拳が重巡棲姫の左頬に突き刺さる。引っ張られた勢いと相まって、彼女の体は海上をピンボールの様に跳ねていった。

 

何度か跳ねた所でようやく勢いが止まり、何とか受け身を取り、ふらふらと立ち上がる重巡棲姫。その金色の瞳にはピッコロに対する驚愕と憎悪がぐるぐると渦巻いている。

 

 

 

艤装を纏った彼女はその細身の体に対して信じられない程重く、普通の人間どころか、艦娘ですら駆逐艦では数人がかりでないと引っ張る事はできないだろう。

 

それを一人で、しかも軽々とやってみせたピッコロは海の化生である深海棲艦達からみても『化け物』と見えるであろう。

 

「オ、オノレ…!!バケ・・モノ、ガ…!」

 

作戦を邪魔された事への苛立ちと、規格外の力を見せられたことへの恐怖への

余り、吐き捨てるように呟く重巡棲姫。

 

その言葉に続くかのようにピッコロが現れる。ピッコロは腕組みをしたままにやりと笑い、彼女に向けて話す。

 

「へっ、よく言うぜ。そんな凶悪な悪意を振りまいているてめぇらの方がよっぽど化け物だろうよ」

 

「ヌッ・・グ!」

 

歯ぎしりし唸り声をあげる重巡棲姫。最早彼女の体はボロボロで、艤装も先程の一撃のせいかうまく動かせない状態だ。

配下の深海棲艦達は、吹き飛ばされて距離が離れた自分の所に向かってくる途中であり、それまで持ちこたえるのは困難を極める。よしんば合流できたとしても配下の者達は空母を除けば全員傷だらけであり、

とてもじゃないが奴を倒すことはできないだろう。

 

その様子を空から眺めていたピッコロは、腕組みを解き右手を相手に向けてかざす。その掌から≪ブゥゥゥ…ン≫という独特な音と眩い光を放ち、光の球が形成される。

 

(クソッ!ドウスレバ…!!)

 

大きさからして恐らく着弾点だけでなく、その周囲にまで衝撃が及ぶだろうと思われるその光球が彼女に牙を向いている。ボロボロの体を何とか動かそうとする重巡棲姫―

 

と、その時、ピッコロの後方から何かが飛んできた。ピッコロもその気配を感じ取ったのか、顔だけを若干後ろに向ける。

 

(ン!?ア、アレハ…)

 

ふらふらと覚束ない足取りの中、重巡棲姫は目を凝らして謎の物体を観察する。

 

 

灰色で半透明の薄い体躯、先端には歯がずらりと並びんでいる。一見駆逐級の様にも見えるが、背中には発光するでっぱりが付いており、なおかつ『()()()()()()()』ソレは――

 

(カンサイキ…ヲキュウガトバシタノカ!)

 

そう、航空母艦の艦娘も扱う『艦載機』である。前方にプロペラ、左右に伸びた羽を持つ一般的な艦載機とは違い、どこか生物兵器チックな見た目ではあるが、空母棲姫が扱っていた鬼の様な艦載機から分かるように、これが深海棲艦の艦載機なのである。

「ヒメサマーッ!!!ゴブジデ!?」

 

それから若干遅れて、今度は水飛沫と共に、ヲ級と配下の深海棲艦達が現れる。

水上をまるでスキーの様に滑りつつ、軍団は重巡棲姫の前に盾の並び立った。

 

「ハァ…ハァ…ヨ、ヨカッタ…」

 

全速力でこちらに向かってきたのだろう、ヲ級は左手を膝に当てぜぇぜぇと息を切らしている。先程ヲ級の放ったであろう艦載機は、彼女の頭部の軽母ヌ級に酷似したユニットの口と思われる部分に吸い込まれるように入っていった。先程の攻防で、艦載機での攻撃が通じない事をヲ級は知っていたが、状況確認の為に、そして少しでもピッコロの注意を引く為に本来であれば先端と後部についている砲塔を外し身軽になった艦載機を放ったのだ。

「オ、オマエタチ…(グスッ)」

「ン…?ヒメサマ、ドウサレマシタ?」

「ナ、ナンデモナイッ!!(ア、アブネエエエ!!)」

 

重巡棲姫は自分を守ろうと必死なヲ級達に涙ぐんだ。だが部下の前で、しかも戦闘中にそんな顔を見せるわけにもいかず、ヲ級が振り返る前に顔を擦ることで何とか誤魔化す。

 

再び視点を上空に向ける重巡棲姫とヲ級達。その目には右手を突き出し、気弾を発射する体制のピッコロの姿が映る。

 

それを見た重巡棲姫達の顔は今自分が立っている蒼海の如き色に染まる。

ただでさえ大きかった光球がさらに膨らみ、輝きを増していた。ピッコロの姿すら覆うのではないかと思える程の破壊の光は、衝撃の余波だけで彼女等をバラバラに砕いてしまうだろう。これでは海中に逃げたとしても結果は同じだ。

 

「俺は貴様の事はよく知らん。艦娘という奴らとの関係も知ったことではない。

・・・が、貴様らの様な狂気の存在を見過ごすわけにはいかん。ここでくたばれっ!!」

 

ピッコロが叫ぶ。彼の言葉が死神の言葉となり、光が鎌となり、容赦なく突き刺さろうとしている。

正に絶体絶命である。重巡棲姫はどうしようもない事を悟り、絶叫を上げる。

 

「チ、チックショオオオ――!!」

 

 

 

 

 

 

――だが、そこで突如発せられた声により、両者はその動きを止める事となる。

 

 

 

 

「やはり…貴様か。ピッコロ!!」

 

ピッコロの掌から生み出された気弾はまるで風船の様に萎んでいき、輝きを失っていき、消失した。彼が驚きの表情と共に後ろへ振り向くと、そこにいたのは――

 

 

「ベジータ!?なぜおまえがここに…」

 

 

誇り高きサイヤ人の王子…ベジータだった。ベジータは腕組みをしたままゆっくりとピッコロの側まで近づく。そんな彼をピッコロは信じられない物を見るような顔で見る。

 

「お前は確かに、あの時自爆した筈だ!」

 

ベジータの自らの命を捨ててまで使った決死の大技――それは間違いなくピッコロの脳内に鮮明に残っている。見間違えるなどありえないはずだ。

 

「…そう思っていたんだがな、よくわからんが気付いたらこの海のど真ん中にいた」

 

一方のベジータも、自らの右手を握り、開きを繰り返しつつ呟く。その様子からして、彼も自分の身に起こったことについて未だに半信半疑の様だ。

 

「…一体、何が起こっているというのだ…」

顎に手を当ててピッコロは唸る。一方、二人のやり取りを見ていた重巡棲姫は呆気に取られている。正確には二人のやり取りではなく、また一人空を飛ぶ妙な人間(M字ハゲ)が来たことに驚いている、と言った方が正しいか。そんな彼女に側にいたヲ級は上空にいる二人には聞こえないように小声で耳打ちする。

 

(ヒメサマ、イマノウチニ…)

 

(・・・ハッ!ソ、ソウダナ。ヨシ、オマエタチ。ジュンビハイイナ?)

 

ヲ級の声によって正気に戻った重巡棲姫は、すぐに表情を切り替える。その切り替えの早さは流石軍団を率いる姫級と言えよう。配下の深海棲艦隊達も頷き、重巡級と戦艦級は各々の兵装を上空にいる二人に向ける。それを合図に重巡棲姫は叫んだ。

 

 

 

「クヤシイガ、ココハヒカセテモラウ!!ツギコソハ、キサマノイキノネヲトメテテクレルワッ!!!!」

 

その声を聞き、ピッコロはハッ、と顔を上げる。

 

「ッ…そうはさせん!!喰らえっ!!」

 

その言葉と共に重巡棲姫の方に向き直り、先ほどと同じ大きさの気弾を速攻で作ろうとするが、それより早く重巡棲姫の艤装の口の部分から『何か』が射出された。

 

「むっ!?」

 

その『何か』はピッコロ目がけてではなく、彼より若干前方の上空で止まる。そして――

 

 

≪カッッ!!≫

 

「ぐっ…!」

 

「チッ…!」

突如、その射出された物体から強烈な光が迸り、二人はその眩しさに目がくらむ。

幸い、光が出る前に二人とも目を閉じていたのでモロに喰らって目を焼かれる事態は避けられた。

しばらくして二人の目が見えるようになると、そこには重巡棲姫とヲ級達の姿は無く、蒼い海だけが映っていた。

 

「くそったれ!逃がしたか。ここで仕留めたかったが…」

 

ピッコロは右手を握りしめながら悔しそうに呟く。海を探ろうにも深海棲艦の独特な気とこの海域に漂う瘴気が混ざり合い、気で探るのを阻害している。この海域を抜ければ問題ないだろうが、恐らくその頃には完全に追うのは不可能だろう。

 

(…まぁ問題は無かろう。あれだけやれば奴らも警戒して迂闊には攻めて来まい)

 

あくまで目的は鎮守府を強襲しようとした敵艦隊をくい止める事であって殲滅する事ではない。

彼女等が以前に闘った人造人間、セルの様に生物を吸収してパワーを高める事ができる存在であるならばその必要もあっただろうが_..

 

そう考えた時、ピッコロはふと奇妙な違和感を感じた。

 

(ん?そういえば――)

 

思案に耽るピッコロ。そこでベジータが先程の閃光のせいで多少苛ついた顔をしながらピッコロに向けて乱暴に言い放つ。

 

「おい、ピッコロ!色々聞きたいことはあるが…

あの後、トランクスとブルマはどうなったんだ!

無事じゃなかったらてめぇをブッ殺すぞ!!」

 

少し前(元の世界)、ピッコロにトランクスと悟天を託したとは思えない程の剣幕で怒鳴るベジータ。

とはいえ自分が命懸けで守ろうとした大事な妻と息子だ、彼がこうなるのも無理はないだろう。

…最も先程から不可解な現象の連続で苛々してる(主にカカロット関連で)だけという可能性も否定できないが。そんなベジータをピッコロは宥めようとする。

 

「落ち着け、ベジータ。…順序を追って話す。

とりあえず場所を変えるぞ、道中で話す」

 

そう言い、ピッコロは来た道を引き返す…つまり鎮守府の方に向けて飛ぼうとする。

 

「話ならこのままでもできるだろう!どこへ行くつもりだ」

 

不機嫌な顔のまま吐き捨てるベジータ。ピッコロは振り返り彼に向けて話す。

 

()()()に来た際に世話になった所があってな…念の為、話をせねばならん」

 

「こっち、だと?どういうことだそれは…おい!」

 

含みのある言い方に眉をひそめるベジータ。

問い詰めようとするもピッコロが飛んでいった為、後を追いかけるしかない。

 

 

ベジータは「ちっ!」と舌打ちをするも、鎮守府の方に向けて飛ぶピッコロの後を着いていった。

 

 

 

 

 

 

 

「オノレ...!タカガニンゲンヒトリニナンテザマダッッ」

 

 

 

――一切の光を拒む混沌の世界『深海』――

 

暗き水底(みなそこ)で悔しげに拳を握る重巡棲姫。

艦娘達に比べ遥かに力の劣る人間、某宇宙の帝王風に言えば『アリが恐竜に勝てるとでも思ったか』だろう。それくらいの差があるのだ。

なのにその人間、しかもたった一人に完敗するなど、まるで悪い夢でもみているかの様だった。

今まで人類を蹂躙し、醒めぬ悪夢を与えてきた自分達がまさかそのままそっくり返されるとは皮肉としかいいようがない。

 

「......メ..マ、ヒメサマ」

 

そんな彼女がふと顔を上げると、そこにはヲ級と配下の軍団の姿が映る。ヲ級は何か言いたそうな顔で重巡棲姫を見ていた。

 

「ヲキュウカ、ドウシタ?」

 

「クウボセイキサマがオモドリニナラレマシタ」

 

彼女の報告を聞き顔をしかめる重巡棲姫。

理由は言わずもがな、鎮守府強襲に失敗した事を責められるかもしれないからである。ヲ級は空母棲姫のドヤ顔を想像し、苦笑する。

 

「ァ~~...コレハシバラクイジラレソウデスネェ。

【ニンゲンニ?ザッコwwwwオカシクッテハライタイワ~~ww】......ッテカンジデ」

 

「ヴェアアアアアアアア!!!!

二゛グラ゛ジャ゛ア゛゛ア゛......」

 

先ほどピッコロに与えられた屈辱よりも悔しいのか、頭を抱えまるで壊れたメトロノームの様にブンブン振る重巡棲姫。頭がもげないか不安である。

 

「...ナニヤッテンノヨアンタハ」

 

そんな重態な彼女の所にため息をつきながら一人の女性が現れる。

 

「フォ!?ナ、ナンダオマエカ。クウボセイキ」

 

 

「ナンダ、ジャナイワヨ。ハァ~~…ドウヤラソノヨウスダトアンタモヤラレタミタイネェ」

 

再び溜息をつく女性――空母棲姫はやれやれ、と顔と手を左右に振る。その言葉に重巡棲姫は眉を顰め、疑問を口にする。

 

「『アンタ()』?ドウイウコトダ、ソッチデナニガアッタノダ?」

 

「…アッタンデショ?『ソラヲトブニンゲン』」

 

苦々しく言葉を紡ぐ空母棲姫。その言葉に重巡棲姫は大いに驚いた。

 

「ッ…!!?マサカ…!」

 

「ビンゴッテトコカシラ、ネ」

 

空母棲姫はやっぱり、と盛大に溜息をつく。そして髪の毛を掻き毟りながら叫んだ。

アァ~~~!!ワタシタチノカンペキナケイカクヲダイナシニシテクレチャッテ!!

ホントウムカッパラタツワ、アノ『エムジハゲ!』」

 

「ハ?エムジハゲ?」

 

きょとん、とした顔をする重巡棲姫。対する空母棲姫も彼女の反応に眉をひそめ問いかけた。

 

「アレ?チガッタ?」

 

「ワタシガデクワシタノハアタマニショッカクガハエタゼンシンミドリノニンゲンダッタゾ」

 

「...ナニソノバケモノ。ドウカンガエテモジンガイジャナイ」

 

二本足で触角があって緑色の、まるで昆虫の様な人間の姿を脳内で想像し苦笑いする空母棲姫。が、すぐに表情を正し、こめかみを指で押しながら苦々しげに話す。

 

「アンタノハナシカラサッスルト...ドウヤラヒトリダケジャナイヨウネ。『ヤッカイナヤツ』ハ」

 

「アァ...モットモソイツラガタンドクデウゴイテイルノデアレバ、サシテモンダイハナイ。モンダイハ」

 

―――『艦娘』と手を組む可能性があるかもしれない―――

 

いくら一騎当千の力を持とうとも、一人で出来る事などたかが知れている。物量作戦で体力を消耗させ、押し潰せばいいだけだ。生物である以上動き回れば疲れもするし、補給無しでは満足に戦う事すら出来ない。

 

しかし他の人間、もっと言えば艦娘共と接触したらどうなる?恐らく提督達はをあの手この手で『厄介な奴』を引き込もうとするだろう。そうなればこちらが不利になる...どころか戦局を大きくひっくり返されかねない――

 

「ウウ~ン...ゴウリュウサレルマエ二ナントカシテオキタイケド、ソラヲトバレチャ」

 

「オテアゲダナ...マチガイナク」

 

そう、海より遥かに広大な空を自由に動ける存在を空を飛べない存在――彼女らがどうにかしようなぞ、土台無理な話なのである。二人の深海の姫は同時に肩を落とす。

 

「タブンソイツラトハマタアウカモシレナイワネ。ハァ~~~~...サキユキフアンダワ」

 

「...ノムカ?」

 

「...ソーシマショ。ノマナキャヤッテランナイワ」

 

二人はお互いを励ますかの様に肩を組みながら、とぼとぼと自分の拠点に向かって歩いて行くのであった。その時の彼女達の顔はそれはもう疲れきった感じの物であったそうな...。

 

 

 

 

 

ナレーター「異形の存在、深海棲艦と呼ばれる怪物の軍団を見事に返り討ちにしたピッコロ。だがそこに現れたのは、な、なんと!

魔人ブウと相打ちになったと思われていたベジータであった!なぜベジータが生きていたのか?どうして二人はこの世界に現れたのか?

そして二人は元の世界に帰ることができるのか!?」




悟空「オッス!オラ悟空!!ピッコロの奴やっぱつええなぁ!今度久しぶりにまた相手してもらおうかなぁ!でもその前に
ベジータとピッコロが何とかオラの世界に戻ってもらわねぇとな...」

ベジータ「...この俺に他人の下で働けと?ふざけるな!」

悟空「次回!龍球これくしょんー龍これー第5話『俺たちが提督に!?ベジータとピッコロの鎮守府着任!』(前篇)

ピッコロ「なんなんだこの場所は...!!お、
女ばかりじゃないか!!」





はい、と言う訳で3話終了です。年内に仕上げたくて無茶したのでとりあえず投稿という形になりました。なので、この後内容をちょこちょこ書き足して編集しなおします。
許してくだサイヤ☆
それではみなさん!よいお年を!来年もよろしくお願いします!

悟空「おめぇそりゃねぇだろ~。…ま、いいか!じゃ!みんな、来年もまた見てくれよな!」

追記;色々追加したり修正したりしました。遅れて申し訳ありません!謝罪は次話でいたします。

追記2;次話が前後に分かれたので次回予告のサブタイに前篇を加えました。


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第5話『俺達が提督に!?ベジータとピッコロの鎮守府着任!』前篇

す、すまねぇ!こんなはず(8ヶ月もかかる)じゃ...

全王様「ムカつくね、消えちゃえ!」

ギャアアアアアアアアアアアアアア!?

※余りに長いので前後に分けてます。説明多く含むので原作を知っているファンにとってはゴミのような回です。所詮俺は屑なのだぁ...



ナレーター「異形の存在、深海棲艦と呼ばれる怪物の軍団を見事に返り討ちにしたピッコロ。だがそこに現れたのは、な、なんと!
魔人ブウと相打ちになったと思われていたベジータであった!なぜベジータが生きていたのか?どうして二人はこの世界に現れたのか?
そして二人は元の世界に帰ることができるのか!?

第5話『俺達が提督に!?ベジータとピッコロの鎮守府着任!』前篇」



 

 

 

「ここが異世界…だと?」

 

「ああ。あくまで推測の域ではあるが、な」

 

蒼い海原のはるか上空を二本の白矢…否、二人の人間が飛んでいる。ベジータとピッコロである。

 

先程の戦闘の後、ピッコロは結果報告と助けてくれた礼を言うのを兼ねて自分が飛んできた場所、鎮守府に向かおうとした。ベジータは不愉快な表情を隠そうともせずピッコロを睨む。だがピッコロが自分よりも多くの情報を知っているかもしれない事がわかると、渋々ピッコロの後をついていくことにしたのだ。

そして現在に至る――

 

「ふざけるな!俺は貴様のジョークをわざわざ聞くためについてきたわけじゃないんだぞっ!!」

 

「落ち着け。推測でしかない、と言っただろう」

 

怒鳴るベジータを冷静に受け流すピッコロ。並の人間ならばそれだけでも一目散に逃げだすであろうベジータの睨みを受けてもなお涼しい顔をしているのは流石、といった所か。

 

「お前も見ただろう?あの『化け物』達を」

 

「ふん、あんな雑魚共が如何したというんだ。戦闘力が多少ある所を除けばそこらの星にいる原生生物と大してかわらん。珍しくもない」

 

ベジータやカカロット…孫悟空に限らず、サイヤ人は好戦的な者が多い(悟空の父バーダックの妻であるギネやベジータの弟のターブルの様な例外もいるが)。彼らは宇宙に広がる星々を侵略し、支配圏を拡大していった。フリーザ軍の傘下に入った後は環境の整った惑星を見つけると、そこの原住民を殲滅し他の惑星に高価で売り飛ばす『宇宙の地上げ屋』となっていった。そんな事もあり、嫌々ながらもフリーザ軍の兵士として様々な惑星の生物と闘ってきたベジータにとっては、深海棲艦など別段珍しい存在ではないのである。

それがどうした、と言わんばかりの態度をとるベジータに対し、ピッコロは顔は前を向いたまま、淡々と話を進めていく。

 

「そうだ。だが問題は奴らが何故今になって出てきたか、だ」

 

「…?何を言ってやがる。訳の分からん事を言ってないで・・・」

 

「魔人ブウが暴れまわっている時におかしいとは思わないか?明確に知性があると思われる奴等がそんな愚行を犯すとは考えられん」

「……」

 

ピッコロの疑問に、ベジータは黙り込む。確かにその疑問は最もだ。彼はピッコロと共に鎮守府へ向かう最中、自分が死んだと思われた後に起きた様々な出来事を聞いた。

魔人ブウがやはり生きていた事。魔導士バビディがピッコロ、悟天、トランクスを炙りだす為に地球人を皆殺しにしようとした事。孫悟空と魔人ブウの闘い(これを聞いた時はベジータが激昂し、ピッコロがそれを宥めるのに苦労した)。

悟天とトランクスがフュージョンでゴテンクスとなり魔人ブウ相手に戦った事…。

 

重要な事は魔人ブウは人間を殺してピッコロ達を悔しがらせてやろうというバビディみたいな陰湿な思考の持ち主でもなく、また人間を地球人憎悪している訳でもない。ただバビディに「たのしい遊び」と教わって地球人を殺していたに過ぎない。

更にブウはサイヤ人程ではないが強い相手と闘う事に興味がある。それを考えれば自分達サイヤ人には遠く及ばないものの、少なくとも地球人を遥かに凌ぐ戦闘力を持っている深海棲艦は正にうってつけの『遊び相手』になるだろう。

恐らく戦えばあの『化け物』達はブウに敵わないと判れば地上、基海上に出てこようとはしないだろう。勝ち目の全くない戦いをするほど愚かな事はないのだから。

 

そこまで考えるとベジータはふん、と吐き捨てると、考え事で下げていた頭をピッコロの方に向けた

「回りくどい事をペラペラ言ってやがるがもっと確信的な要素があるだろう。…魔人ブウの気を感じない、というな」

 

「ああ。魔人ブウが気を消せるという可能性もなくはないが…奴の性格を見る限りそれはありえんだろう」

 

「だろうな。あのデブがセルの様にこそこそやっていたらと思うと笑えるぜ」

 

くつくつと笑うベジータ。7年前、セルが初めて姿を現した際、セルはピッコロ達相手に勝てぬとみるや、太陽拳で目くらましをし、逃走した。

そしてピッコロ達に気付かれない様気を消しつつ、自分の体の一部である尾を使い人間を吸収、パワーアップしていったのだ。

気を察知する能力は便利ではあるが、17号・18号達人造人間の様な気を持たない存在に対しては効果を発揮できない。逆を言えば、ある程度の気をもってさえいれば地球のどこにいようが判ってしまう。

あれほど地球で我が物顔で暴れていた魔人ブウがわざわざ気を消して行動している確率は限りなく0に近いだろう。

 

「だがピッコロ、そのフュージョンで合体したトランクスと悟飯の弟…ゴテンクスだったか?

そいつが超サイヤ人3とやらになれたんだったらブウを完全に消し飛ばす事もできるだろう」

 

気は個人の強さを表すと共に生命力を示している。すなわち気が完全に消えればその生命体は死亡したという事になる。

 

「うまくいけば、な。ゴテンクスの性格を考える限りかなり怪しいが…」

 

ピッコロは渋い顔をしながら呟く。フュージョンの訓練で成功したはいいものの、合体したゴテンクスは過剰なまでの自信を持ち、このままで十分とピッコロの制止を振り切り、魔人ブウに戦いを挑んだ事があった。

…結果は当然惨敗であり、ピッコロからもキツイ言葉のお灸を据えられた。しかし、再び超サイヤ人で合体した際はまたもや同じ事をやらかしてしまった。

その時は直前に遊びすぎたせいで時間が足りず、闘う前にフュージョンが解けてしまったので事なきを得たが…。

無論ゴテンクスの強さを信用していないわけではない。フュージョンで戦闘力が大幅に上がったうえに超サイヤ人3になったのだ。

単純な強さで言えば孫悟空の超サイヤ人3すら上回る。だがその強さのせいで天狗になり、お遊び感覚で戦闘をされてはとどめを刺す前にフュージョンが解けてしまった、という最悪の可能性が起こる事もあり得る。

 

ベジータもピッコロの言葉に渋い顔をする。思い出すのはトランクスと一緒に重力室で修業をしていた際、彼がさも当然の様に超サイヤ人になって150倍の重力が掛かる中を余裕で走り回っていた光景だ。

流石自分の息子と誇らしげに思うより、伝説の戦士がまるでバーゲンセールの様にぽんぽん出てくる事への何とも言えない気持ちと同時に、この年でこれ程までの力を身に着けたことによって調子に乗って増長するのではないか、という不安を感じた。

故に、ベジータには勝てる相手にも慢心してちんたら遊んだ挙句、合体が解けてピンチに!…となった姿が容易に想像できたのである。

 

「…すまんな。トランクスが迷惑をかけて」

 

「!?…あ、ああ」

 

てっきりブウを仕留めそこなった事で詰られるのかと思ったピッコロは、珍しく謝るベジータの姿に驚きの余り目を見開く。

何故謝る、と言いかけた所で口をつぐむ。恐らくベジータも自分と同じ事を考えていたのであろう。ピッコロは理由を察し、言いかけた言葉を飲み込み黙ることにした。

 

「………」

 

「………」

 

ほんの僅かの間、無言の空間が作られる。そしてその空間を最初に破ったのはベジータだった。

 

「チッ、薄々わかってはいたが…ジョークでも何でもなく別の地球に飛ばされたみたいだな。ピッコロ、何か方法は無いのか?」

 

「現状では元の世界に戻る手段は無い。この異世界に飛ばされた理由がわからん以上どうしようもないからな。俺が来た時と同じ様に力づくで次元に穴を開けて出る、という方法もなくもないが…」

 

言いかけてピッコロは押し黙る。ベジータもその理由を察し、苦い顔をする。

 

「パワーが足りん、という訳か」

 

「そうだ。俺と超サイヤ人3になる前のゴテンクスの二人で試してみたが…針の先程の穴も開かなかった」

 

 

変異した魔人ブウ、或いは超サイヤ人3のゴテンクス程の力を持たないベジータではどうする事もできない…その事実が彼にとってはたまらなく悔しかった。7年の間修行を続け、ようやくセルを倒したときの孫悟飯を超える強さを身に着けたと思っていたら

自分のライバルは更にその一歩先を行っていた。それどころかフュージョンしたとはいえ、自分の息子にまであっさり追い抜かれたのだ。

ギリッ、と歯ぎしりするベジータであったが、今はそのライバルも息子(と孫悟飯の弟)もいないので腹を立てた所で何の意味もないのである。

一方のピッコロは苛々しているベジータをちらりと見た後、視界を前に戻し話を続ける。

 

「悔しいのはわかるが…今はどうしようもない。今せねばならんのは情報収集だ。運が良ければ元の世界に帰れる手段も見つけられる可能性がある」

希望的観測ではあるがな、と一言付け足すピッコロ。ベジータはひとまず苛立ちを抑え、疑問を投げかける。

 

「情報収集か…どうするつもりだ、ピッコロ?ここが異世界なら俺達に当てなどないはずだぞ」

 

「それは俺もわかっている。とりあえず今はこれから向かう場所に望みを託す他ない。先程の地球人達と話ができれば何かわかるかもしれんからな」

 

地球人、の所でベジータはつい数十分程前に顔を合わせた人間の事を思い出した。特に印象が強かったのは目つきが鋭い白と青のへんてこな服を着た女であった。

 

(クソッ、あの地球人の女め、気に入らん!何故だか知らんがブルマを思い出す…。どうもああいう奴は苦手だ!)

 

強制的に思考をシャットアウトし現実に戻るベジータ。孫悟空と同じく、彼も地球人の女性には弱い。戦闘力が、と言う訳ではなく頭が上がらないのだ。

もちろん彼の妻であるブルマとここでいう地球人の女…加賀とは違う点もたくさんあり似てはいない。だが何故か、ベジータは加賀に対して嫌なイメージしか持てないでいた。

そう言う訳で、艦娘…特に加賀と顔を余り合わせたくないベジータはふい、とピッコロに向けてた視線を逸らす。

 

「そのあたりは貴様に任せる。俺は地球人共のご機嫌取りなぞ御免だからな」

 

「だろうな…むしろお前がそんな事をする姿が想像できん」

 

何気にひどい発言をするピッコロである。だが当然と言えば当然だ。自分がよく知っている人物が普段では絶対やらないような事を予想することはできないはずである。

この時、ピッコロの脳内ではベジータがダンスをする、タコヤキを作る、カップラーメンを作る姿が出てきたのであった。

 

そんなこんなで一応、今後の方針が決まったベジータとピッコロの前に、目的地である鎮守府が見えてきた。レンガと御影石を使った重厚な造り、尚且つ凝ったデザインである鎮守府を見たベジータはほう、と感嘆の声を漏らす。

 

「見えてきたぞ、あそこだ」

 

「なかなか大きな所だ。余計な装飾が無いのは評価できるな」

 

カプセルコーポレーション程ではないがな、と遠回しに嫁自慢をするベジータ。そんな惚気話(?)をピッコロは華麗にスルーして鎮守府から少し離れた場所にある桟橋に降下していく。

 

そこには先程自分を助けた地球人の少女、電がピッコロに向けて手をぶんぶんと手を振っていた。ベジータはそれを遠目に見ながら少し驚いた顔をする。

 

(あの地球人のガキ、トランクスとあまり変わらんくせにそこそこの気を持ってやがる)

 

実はこの時、ベジータが感じた電の戦闘力は、かつてナメック星で死闘を繰り広げた宇宙の帝王フリーザとほぼ同等レベルであったのだ。

 

(そういえばあの時は苛々してて気づかなかったが…あの加賀とかいう女も相当の気を持っていやがった。それに…)

 

視線を電からずらし、鎮守府の方に向ける。流石に戦闘時ではないのでかなり低いが、ちらほらと気を感じられた。

と、そこまで考えていると降下を中断し、その様子を見ていたピッコロから声がかかった。

 

「お前、まさかあの地球人達と闘ってみたい、など思ってはいないだろうな?」

 

「バカかてめぇは。カカロットならともかく俺はそんなことは思わん!そんな事より元の世界に戻る方が先決だ。さっさと奴らと話をつけて来い!」

 

「わ、わかった(…図星だったか)」

 

地上にいる電に指をさして若干早口で怒鳴るベジータ。ピッコロは激しい剣幕に多少押されるも、すぐに降下を再開し電の元へと降りていく。

 

ベジータの方といえば、先程ピッコロの言葉通りの感情が出た事を恥じ、それを指摘された事からようやく収まってきた苛々がまたぶり返していた。彼はこの場にいない自分のライバルに向けて鬱憤を晴らすかのように怒鳴り散らす。

 

「くそったれ!苛々させやがる…カカロットめ、元の世界に戻ったら必ずボコボコにしてやる!!」

 

思いっきり言葉を吐き出して多少気分が落ち着いたのか、「ふぅ」と一息つくとピッコロの後を追うように桟橋の方に向けて降りて行った。

 

 

 

―――――

 

「~~~ぃいっきし!!」

 

「わっ!か、風邪ですか?悟空さん」

 

「ずびっ…おっかしいなぁ、何か急にムズムズしてきてよ。多分風邪じゃないとは思うんだけど…」

 

その頃、ベジータの元いた世界にある聖地、界王神界ではカカロット――孫悟空が盛大にくしゃみをかましていた。近くにいる少年、東の界王神は間近にいた為驚いて若干距離を取っていた為無事である。

 

「そもそもオラ死んでる身だけど…死人って風邪引くんかな?界王神様」

 

「さ、さあ…しかし悟空さんの様な死んでいるのに腹のすく人もいるのですから、もしかしたら風邪をひく者もいるのではないでしょうか?」

 

「かもな~~…っっくしょい!!」

 

――――

 

 

「…報告は以上だ」

 

「うむ、ご苦労だった」

 

 

 

一方、ベジータ達が鎮守府に到着したのと同時期、鎮守府内のとある一室では、ある一人の艦娘と一人の男性による会話が行われていた。

腕組みをして立っている女性の方は、頭部には艦橋の信号桁を模したヘッドギアに首からは首輪のようなパーツをぶら下げている。上半身は手に指ぬきの黒の長手袋、金のラインが入ったノースリーブの和服を意識したボディスーツのような上着を着ており、下半身は白の長めのミニスカートに大日本帝国の象徴である菊の御紋をあしらったベルトをつけ、赤に黒ラインのニーソックスをはいている。

長身でアスリートのような引き締まったライン、かつ出るところは出るといった世の中の女性が羨むような体系だ。露出がそこそこ多く、鍛え上げられた腹筋が見えるこの服装もその体系の魅力を極めて引き立たせている。

流れるような黒の長髪に淡褐色の鋭い瞳、凛とした表情とその立ち姿は歴戦の武人、あるいは戦乙女を想像させる。彼女の名は長門。長門型戦艦の一番艦であり、世界最強の七艦『ビッグ7』に名を連ね、連合艦隊の旗艦を務めた偉大な艦娘である。

 

男性の方は部屋が薄暗く、電気がついていないせいもあってか、顔の辺りや体つきはよく見えない。だが、少なくとも艦娘であり軍人でもある大淀と話をしているのを見る限り、彼が軍人である事は間違いないだろう。そして長門よりも上の立場であるという事も。

 

「長門、先程加賀から寄せられた報告の件…どう見る?」

 

「私的な意見ではあるが、俄かには信じがたいな。空を飛ぶ事に加え砲撃や雷撃とも異なる攻撃で敵の艦隊を瞬く間に壊滅…流石に私やこの鎮守府の最大戦力である大和でもその様な事は不可能だ。さらに言えばタイミングも出来すぎている。加賀達が危機に陥った場所に偶然…なんてことはな。深海棲艦と艦娘の戦いが始まってから数年は経っているが、この様な事例は今まで聞いたことも無い」

 

「然り。今回はその矛が深海棲艦に向いただけであって、その脅威の力が我ら人類と艦娘に向けられる危険性も充分に在り得る。しかし、だ」

 

「うむ、理由はどうであれ我らを守ってくれたのは事実だ。もし助けがなければ加賀達の部隊は壊滅、この鎮守府も甚大な被害を受けていただろう」

 

――彼等(ベジータとピッコロ)が現れたタイミングが重要な事ではない。加賀達を轟沈の危機から救い、皆の住まいであり拠り所である鎮守府を守ってくれた事の方がが大事なのだ――

 

男性は長門の答えに満足するかの様に組んでいた腕を解くと、ゆっくりと立ち上がり窓のカーテンを開けた。そこから見えるのは駆逐艦の電が件の人物――ピッコロとベジータを相手に何やら話をしているのが見える。

 

「ああ、私も同じ考えだ。そこでだ、私は彼等と会い話をしようと思っている。もしかすると」

 

「こちらに協力してくれるかもしれない、か?」

 

男性を見る長門の目が厳しくなる。彼女が目を光らせる理由も最もだろう。先程はああ言ったものの、いくら自分達を助けてくれた人物だとしてもまだ完全にこちらに対して無害だと決まったわけではない。万が一提督が狙われたりでもしたら――

 

長門の視線に気づき、男性はカーテンをもとの位置に戻すと彼女の方へ顔を向ける。

 

「そこまでは言っておらんさ。ただ面白い話の一つや二つでも聞ければ、と思っていてな」

 

「本音は?」

 

「本音さ。…まぁ、彼等が我等と手を取り合ってくれるのならばそれに越したことはないがね」

 

疑惑の目を向ける長門に対し、男性は苦笑いをしながら机の後ろにある椅子に座る。そしてまた机に肘をつけて腕を組み直す。

 

「大丈夫だ。これでも人を見る目は十二分にあると自負している」

 

「勘便りの当てずっぽうの間違いだろう。その勘がよく当たるのが解せんが」

 

「ははは…相変わらず厳しいな、長門は」

 

真剣な話をしているのにも関わらず冗談めいたことを口にする男性に長門は呆れた目を向けながらため息を漏らす。長年秘書艦として彼のそばにいただけあって、行動や考えをよく知っている様だ。彼女は男性の机に立てかけられている羽ペンを取ると、手持ちの書類になにやら書き込む。恐らくこの提督の行動を記録しているのだろう。

 

「私と陸奥がお前の護衛をする。これで問題無いとは思うが、油断するなよ――    提督」

 

「いつも済まんな。さて、鬼が出るか仏が出るか…」

 

提督、と呼ばれた男性は軍帽を深く被り直すと、部屋の扉を開けて秘書艦の長門と共にベジータ達の元へと向かった。

 

 

 

 

「ところで提督よ、先程の腕を組んだのと部屋の電気を消していたのは意味があったのか?」

 

「以前夕張から借りた漫画の中の人物がやっていたポーズと演出を真似てみたんだが…どう?恰好良くない?」

 

「阿呆かお前は」

 

 

 

そしてその話題の人物――ピッコロとベジータであるが、桟橋を少し進んで鎮守府の敷地内まで移動したのは良いのだが…

 

「もう!私達がどれだけ心配していたかわかっているのですか!?」

 

「う、うむ…済まん(な、なぜこの様な目に…)」

 

電の雷(艦娘に非ず)がピッコロに落とされていた。どうやら先程単独で出撃していった事について咎められている様だ。二人の後ろではベジータが腕を組んでじっとしている。だが口角が僅かに吊り上がっている所を見る限り、ピッコロの普段見せない姿に笑いを堪えているのだろう。

 

「はぁ…もういいのです。元はといえば無理にでも止めなかった私の方が悪い訳ですし」

 

ため息をつく電。実はピッコロが出た際、提督にその旨を報告しに行こうとした所で鎮守府を出る何か(ピッコロ)を目撃した雷、暁、天龍から何事かと詰め寄られ、正直に話したら盛大に叱られたのであった。(ちなみに一緒にいた響は既にその場から姿を消していた…)

 

緊急で仕方なかったとはいえ、仮にも軍人である者が真っ先にせねばならない報告を忘れるのは大問題である。病み上がりのピッコロを止めなかった事もあり、気づいた時には電は顔を両手で覆いやってしまった、とおおいに落ち込んだ。ひとしきり反省した後、電は次からはピッコロが絶対無茶をしない様に厳しく言い聞かせようと決心したのであった。

 

「私にも至らない所があったので反省します。だからピッコロさんももう絶対危ない事を一人でしないで欲しいのです」

 

「う、うむ。善処する」

 

「それは出来ない人が言うお約束という奴じゃないですか!全くもう…」

 

「むむむ…」

 

ため息をつきながらジト目で睨む電にたじろぐピッコロ。過去に悟空と一緒に妻のチチに叱咤された事もあってか、こういう時の地球人の女性には敵わないと彼は悟った。

と、ようやくここで電はたじろぐピッコロの後ろにいるベジータに気付く。

 

「あれ?その人は...」

「ようやく気付いたか。早く貴様等の上司の所へ案内しやがれ」

 

電に会っていきなりピッコロが説教をくらっている間、ベジータはじっと腕を組んで待っていた。が、先程の苛々がまだ残っている状態であるので、待っている間

ベジータの眉はずっと上がりっぱなしでいた。

 

その悪人面と相まって凄まじい表情となっている彼の姿を見た電の感じた衝撃は相当の物で

 

「ひぃやああぁ!?」

 

と、悲鳴を上げ尻もちをついてしまう。その目には涙がたまっており、明らかに恐怖に震えているのが見て取れる。

 

「.........ベジータ」

 

「お、俺は何もしていないッ!!このガキが勝手に勘違いをしているだけだっ......」

 

非難する様な目を向けるピッコロに対し、ベジータは先程の苛々した表情から一転、焦った顔になり必死に弁明しようとする。とてもじゃないが先程まで鬼も裸足で逃げ出す様な顔をしていた者とは思えない光景である。

 

「まったくお前という奴は…おい、電…であってたな?」

 

「ひっぐ…そ、そうなのです…」

 

「こいつは今少し不機嫌な状態でな、別にお前に怒ってる訳ではないのだ。だからそう怖がらなくてもいい」

 

「ほ、本当ですか?でも、物凄く怖い顔をしているのですっ…」

 

涙は収まったものの、まだ少し震えている電。誤解は解けかけてはいるが、これでは話をするのは少々難しい状況だ。ピッコロは右手を顎に当てて少しの間黙り込む。そして何か思いついたのか、中腰になり電の頭に手を添え

優しく撫でた。撫でられて「はわわわ!?」と驚く電であったが嫌がる様子はなく、寧ろ心地よさを感じているのかされるがままとなっていた。

 

「落ち着いたか?」

 

「はっ!?わわわわ!!ご、ごごごごめんなさいなのです!!」

 

「な、何故謝る…」

 

泣き顔から一転、今度は顔を真っ赤にしながら電は必死に謝る。怒ったり泣いたり驚いたりと目まぐるしく表情が変わる彼女にピッコロは戸惑いながらも忙しい奴だ、と思い苦笑する。

 

(悟飯の奴も出会って間もない頃はこんな感じだったな…まぁ泣き虫の面が強かったが)

 

ふと、自分の元いた世界で魔人ブウに殺された悟飯(死んでいないが)の事を思い起こしていたピッコロ。

 

と、その時である。鎮守府の入り口の扉がギィイイイ、と重い音を響かせながら開いた。それに気づいたピッコロ

とベジータは顔を音がした方向に向ける。

 

扉から出てきたのは白い軍服を来た男性と黒髪と茶髪の女性の3人であった。

男性は両脇の女性と共にピッコロとベジータの元へ歩いてゆき、目の前まで来てから被っている軍帽を外し、一礼する。精稈な顔立ちをしており、漆黒の如き黒髪は後ろで一つに束ねられている。瞳はまるで黒曜石のナイフの様な切れ目の黒瞳であり、左目から唇の下あたりまで大きな切り傷と思しきものが付いている。本人は柔和な笑みを浮かべているもののそれが逆に恐ろしく見えてしまう。正直子供なら泣いて逃げ出すレベルだろう。体格は180を超えるであろう長身に細身の体ではあるが、軍人である事を考えると服の下はかなり鍛えられているであろう事が容易に想像できる。

 

「此度は私の部下を助けて頂き、誠に感謝いたします。貴方方の助けが無ければ私達も無事では済みませんでした」

 

「大したことじゃない。助けられた恩を返したまでだ。…それよりもお前は?」

 

軍帽を外し、頭を軽く下げ感謝の言葉を述べる男性。ピッコロは彼の出で立ちを見て横に控えている女性達より上の立場の者である事を察した。しかし一応勘違いという可能性もあるので、念の為に男性に聞いたのである。

男性は手に持った軍帽を被り直すと、多少顔を上にあげながら(ピッコロは2mを超えるので見上げる感じになっている)ピッコロの質問に答える。

 

「申し遅れました。私はこの『呉鎮守府』で提督を務めさせてもらっている『神代 総司』と申します。私共を窮地より救って頂いた事、重ね重ね御礼申し上げます」

 

自らの名を名乗った後、神代と呼ばれた男性は姿勢を正し肘を斜め右に、脇を締めて伸ばした五指を顔の右に当てた。所謂『海軍式』の敬礼だ。左右に控えている2人の女性もそれに倣い全く同じタイミングで敬礼をする。

 

「長門型戦艦、一番艦の長門だ。貴殿等の救援、誠に感謝する」

 

凛とした表情を崩さず、敬礼をしつつ名前を名乗る長門。その後に続いてもう一人の女性も自己紹介をする。

 

「同じく長門型戦艦、二番艦の陸奥よ。私達と『家』を護ってくれて有難うね」

 

少し癖のある茶のボブカットで瞳は透き通る様な黄緑色。和風をイメージしたヘソ出しノースリープの上着は姉の長門と変わらないが、頭の飾りがカチューシャ型、

白の手袋、長門より短いスカート、左足に巻かれた鎖付きの錨など、細かい所に違いがある。軽装な見た目故か、長門よりフランクな感じを漂わせている。姉が『武人』なら、妹は『大人のお姉さん』という言葉がしっくり来るだろう。

 

「ピッコロだ」

 

「………」

 

シンプルに名前だけを挙げるピッコロ。省きすぎな気がしないでもないが、やれ元地球の神だ、やれナメック星人だと言っても自分達の仲間(と身内)以外には判るわけが無いので省略したのである。

 

一方のベジータは腕組みをしたまま無言で前の三人を睨みつける様な目で見ていた。その目は敵意を持った物ではなく、観察し情報を分析する様な目つきであった。

 

(あの二人の女…やはり相当の戦闘力を隠し持ってやがる。提督だとか言ってたヤロウも女共程じゃないがそこそこできるようだな)

 

艦娘達の潜在能力を探り、その予想通りの高さに僅かに口角を上げるベジータ。

 

(…だが、何だ?この違和感は。この俺が強いと思える程の力を持っているはずだ、なのに……)

 

どうもおかしい、根本的に何かが間違っている様な…歯に物が詰まったかの様なもどかしさが彼の胸中を渦巻く。

 

「…い、おい!」

 

「チッ…ベジータだ」

 

自分を呼ぶピッコロの声に思考という名の海から浮かび上がるベジータ。自己紹介をまだしていなかった事に気づき、仕方なしに名前を名乗る。

 

その態度の悪さにピッコロは顔に手を当てため息をつき、叢雲は苦笑を漏らす。陸奥は「あらあら」と言うだけで特に気にした様子はない。長門はこめかみをピクリと動かし口には出さないものの、明らかに印象は悪い事が想像できる。

 

「すまん…こいつはいつもこういう態度しか取らんのだ。気に障るかもしれんが堪忍してもらえると助かる」

 

「構いませんよ。十人十色、とも言いますしね」

 

頭を下げ、ベジータのした事について謝罪をするピッコロに、神代は別段気にする素振りも見せず、話を続ける。

 

「立ち話も何ですので、中で話しませんか?無論、そちらが急ぎの用事があるのなら無理強いはしませんが…」

 

神代の言葉にピッコロは心の中で安堵した。元々態度の良くないベジータであったが、今回は更に輪をかけてよくない状態になっている為、何をしでかすか不安になってしょうがなかったのである。下手に相手を傷づける(物理)様なことがあれば、話を聞けないどころか追われる立場の身になっていただろう。神代と呼ばれる男が見た目に対して大らかな人物だというのも僥倖であった。もし気難しい性格であるならばこうはいかなかっただろう。

 

「…いや、その話を受けよう。こちらも色々気になる事があってな」

 

「助かります。私としても恩人に御礼もできないのは心苦しい事だと思っておりましたので。――では、こちらへ」

 

神代の提案に渡りに船、と乗るピッコロ。神代もその答えに満足するように頷くと、鎮守府の入り口に踵を返し

歩を進めだした。そして額の汗をぬぐい心の中で安堵の声を漏らす。

 

(話の分かる人で助かった。怒りやすい性格で下手に気分を損ね怒らせたりでもしたら、加賀達からの報告が本当なら自分の命どころかこの鎮守府一帯が壊滅しかねなかった所だった)

 

長門達がいる手前、平静を装ってはいたものの、ピッコロとベジータから視線をそらした瞬間、冷や汗が噴き出た。敵意を向けられていないにもかかわらず、無意識に体がこわばってしまった。これなら敵部隊を一人で壊滅させたというのも頷ける。

すぐにでも一息つきたい所だが、まだ最初の関門をクリアしただけであり、彼らとの話し合いこそが本命である。先程長門から言われた油断するなという言葉を嚙み締めつつ神代は鎮守府の扉を開くのであった。

 

 

―――

 

ざわ…ざわ…ざわ…

 

「ほう、彼の者どもが例の…ふぅむ。おかしな格好をしておるのう!」

 

「すっごく恰好よくて強そうっぽい!でも緑の人、顔色悪いっぽい?大丈夫かなぁ」

 

「ふっふっふ…わかる、わかるで!あの額が広い兄(あん)ちゃんはお好み焼きを作れる!うちの目に狂いはないっ!!」

 

「ん~…な~んかあのピーマンみたいな色した人どっかで見たことあるんだよねぇ~」

 

「あんなMハゲ凸野郎やミドリムシなんてどうでもいいじゃないですか、北上さん♪(北上さんに手を出そうとしたらコロス…)」

 

 

(なんなんだこの場所は...!!お、女ばかりじゃないか!!)

 

 

鎮守府内の通路を歩く提督・長門・陸奥と後ろからそれについていくピッコロとベジータ。

が、ピッコロは既に疲れたような顔をしていた。何故かというと、先程から艦娘達とすれ違う度に好奇の目線と騒がしい声を受けているからである。電や長門、陸奥と会ってある程度予想はしていたものの、この鎮守府という建物には提督である神代と工廠(兵装を作る場所)にいるわずかな整備員達を除いて男が存在しない。つまり戦いの主軸となるのがこの艦娘という女性達だ。女三人寄れば姦しい、というが3人どころかもう両手で数えても到底足りないくらいの艦娘とすれ違い、その度に同じ反応をされるのだ。騒がしいのが苦手なピッコロ達にとってはたまったものではない。しかも時たま物凄く敵意をむき出しにしたような視線も感じるのだ(妙な悪寒を感じたのでスルーしたが)

ベジータはこの展開をすでに予想していたのか、両目をつぶり、腕組みをしながら歩いている。恐らく精神を集中させて余計な雑音を防いでいるのだろう。…それでも額(M字ハゲ)の話がでると耳がかすかにピクリ、と動いてはいるが。

 

「申し訳ありません。なにしろたくさんの艦娘がここで生活していますので、施設も広くせざるを得ないのです」

 

歩きながら顔と体を半分ほどピッコロ達の方に向け、申し訳なさそうに話す神代。

 

気にしてるのはそこじゃないんだがな、と思いながらも口には出さないピッコロ。そうとは知らず神代は歩みを続け、やがて数ある扉の一つの前で立ち止まる。

 

「着きました。さぁ、此方へ」

 

神代の言葉を合図に、彼のそばを歩いていた長門がドアノブを手に取り扉を開ける。中は綺麗に整えられており、ソファーや時計等の調度品はよく使いこまれているように見えるが古ぼけた様子はなく、むしろ丁寧に磨かれていて輝きを放っている。ピッコロ達が入ったのは来客を持て成す時に用いられる賓客室だった。

 

「失礼する」

 

そう言いソファーにゆっくり座るピッコロ。すでに目を開けていたベジータも同じように座り込む。その後に反対側のソファーに神代が座り込む。長門と陸奥は座らず、先程と同じ様に彼の両脇に控えている。

 

(やはり警戒されているか…まぁ当然といえば当然だがな)

 

ピッコロは長門達の視線に気づき、その瞳に若干の警戒が含まれている事を察した。恐らく自分達の戦いが艦娘達に知られたせいであろう。何か事を起こそうとしようなら即座に反撃されるのは火を見るより明らかだ。最も、自分達は争いをしにここに来たわけではないのだが。注がれる視線に気づかぬふりをし、ピッコロは神代に質問をする。

 

「さて、早速で悪いが…1つ聞きたい事がある。重要なことだ」

 

「わかりました。わかる範囲であればですが、何なりとお聞きください」

 

早速話を持ち出してきたピッコロに、神代は心の中で身構える。何を言ってくるのか、金の要求か?それともこの鎮守府の戦力についての情報か?それとも

 

(いや、それはないだろう。…何を考えているんだ自分は)

 

勘とはいえ彼らを信じたはずなのに、こんな下衆な勘繰りをしてしまう自分に嫌になり人知れずため息をつきそうになる。が、今は対談中であるので顔には出さず、質問の内容に耳を傾ける。

 

「助かる。まず、この世界の歴史を知りたい」

 

「歴史…ん?歴史ですか?構いませんが…何故です?」

 

意外な事にピッコロが聞いてきたのは世界の歴史についてだった。なぜそのようなことを知りたがるのか?この鎮守府の事や今の世界の在り様についてではなく、もっと基本的な事について質問されるとは思っておらず、内容を聞いた神代も一瞬呆気に取られる。そしてすぐにその意図について尋ねた。

 

「少し気になる事があってな…ここに来るまで色々考えていた。恐らく世界の歴史が分かれば、俺達の知りたい事も自ずとわかってくると思ったのだ」

 

ピッコロの答えに神代は右手を顎に当て、しばし黙り込む。向こうが何を考えてるのかはわからない。しかし少なくとも軍機に触れる様な事ではない為、話しても別に問題はないであろう、そう神代は考える。

 

「ふむ…よくはわかりませんが、その程度ならお安い事です。ですが、話が長くなるといけないので最近の出来事についてのみですが…宜しいですか?」

 

「ああ、問題ない」

 

ピッコロの了承を得て、神代はこの一見普通の、しかして歪なこの世界について語り始めた――

 

 

―――

 

 

「…なるほど、大体の事はわかった」

 

ピッコロは神代の話を聞き終えて、おおよその事を理解した。神代の話を要約すると、

 

1;今から10年程前に突如として現在は深海棲艦と呼称される謎の敵が出現した。

 

2:それまでは世界中で戦争とはいかずとも小競り合いが繰り返し行われていた。しかしある期を切っ掛けに若干のわだかまりを残したものの、そういった争いが終わり一応の平和となった(深海棲艦が出現する30年程前だそうだ)。

 

3:深海棲艦に既存の兵器はほぼ通用せず、世界の有力国(アメリカ・ドイツ・イギリス等)が総力を結集して挑んだにも関わらず結果は惨敗。シーレーン(海上交通路)を破壊され、各国間の船での移動、物資輸送もほぼ不可能な状況である。

 

4;深海棲艦に人類が壊滅的打撃を被ってから2年程経ち、この日本という国から『艦娘』という存在が現れ始めた。彼女らは深海棲艦に効果的にダメージを与えられる存在である事がわかり、それ以降、艦娘達の奮闘により敵勢力をある程度駆逐する事に成功。現在の戦況は五分五分の状態になっている。

 

と、いう話であった。

 

「やはりな。当たって欲しくない予想だったが、当たってしまったか…」

 

右手を顔に当てため息をつくピッコロ。神代は彼の言動の意図が読み取れず、思わず聞き返した。

 

「予想…と、いうと?」

 

「神代、これから言うことはお前達にとっては全く非現実的な事となるだろう。だが全て事実だ」

 

「「「………」」」

 

ピッコロの真剣な表情から余程重大な話であることがわかる。故に、神代だけでなく長門、陸奥も押し黙り次の言葉を待った。

 

「恐らくだが、俺達は『元いた世界』から『この世界』へと移ってきてしまった。…理由はわからんがな」

 

「元いた…世界…」

 

「えっ?それって…」

 

「どういう事だ…?」

 

 

その衝撃的な発言に、3人ともそれぞれ別の反応を示した。神代は顎に拳を当て、同じ言葉をゆっくりと繰り返す。陸奥は口に手を添えて目をぱちくりさせて驚いている。長門は眉根を寄せて難しい表情をしている。

 

「まず、軽くだが『俺達の世界』について話す。突拍子もない話ばかりになるだろうが、心して聞いてほしい」

 

ピッコロは3人に自分達の世界、そして今何が起こっているかを話し出した。世界の43の小国が集まり一つの連邦国家となっている事、南北東西に大きな都がある事。そしてその世界が魔人ブウにより、壊滅的な打撃をこうむっている事等々…(過去に戦ってきた敵や天下一武道会等の話は関係ないので割愛)。

 

「…何というかその、色々と凄まじいですね」

 

話を聞き終えた後、神代はぽつりと呟く。その顔には明らかに疲労の色が窺える。陸奥も額に指を当て目を瞑り「う~ん」と唸っている。長門に至っては頭から煙を出して呆然とした状態になっている。

 

「ちょっと待って。言いづらいんだけど…本当にそれって実際の話なの?」

 

「そ、そうだぞ!!私達を騙してからかっているんじゃないのか!?質の悪い冗談だ!!」

 

陸奥は何とも歯切れの悪い言い方でピッコロに対して自分の疑問を口にする。はっ、と我に返った長門も陸奥と同じく食って掛かる様な態度で答えを求めて詰め寄る。

 

「すべて事実だ。最も『俺達の世界』ではだがな。俺からしたらお前達の世界の方も大概だとは思うがな」

 

何千もの国家があること。一つにまとまっているのではなく、いくつもの国が独立した勢力となっている事等、同じ地球であるにも関わらずこれほどたくさんの相違点がある事。驚くべき事ではあるがそれより気になるのは艦娘と深海棲艦という2つのキーワードだった。

 

「おい、貴様等!」

 

と、そこで突然割り込む様に声が響き渡る。ピッコロと神代、長門、陸奥が声をする方に顔を向けると、そこにはベジータが腕組みをしたまま苛々した表情でこちらを睨みつけていた。

 

「いつまでもどうでもいい事をべらべらと喋りやがって…!世間話をしにわざわざ俺をここに呼んだのか!?」

 

物凄い剣幕で怒鳴るベジータ。その様子にピッコロは周りに聞こえない程の小さい溜息をつく。

 

(もう少し詳しく話を聞きたかったが...これ以上は無理か)

 

 

「神代、お前達が望んでいるのは俺達との話し合いか、それとも『()()』か?」

 

「っ...私達はただ貴方達に御礼がしたかっただけですよ」

 

ピッコロの言葉に意表を突かれたのか、神代は一瞬言い淀み、吐き出された様に言葉を紡ぐ。

 

「確かにそれもあるだろう。が、それだけでここで一番上の立場にいるお前が態々出てくるとは考えにくい。隣の二人に護衛を任せているとしても危険である事に変わりは無い」

 

「.........」

 

畳みかける様に話すピッコロに神代は何も言わず、推測を聞き続ける。

 

「先程の話を聞く限り、人類と深海棲艦との戦いは一進一退を繰り返している訳だ。そんな折に俺達がお前達を助けた。ならば此方に協力してくれるかも知れない...だから危険を承知で自ら会って確かめたかった。違うか?」

 

「――何もかもお見通しですか。確かに貴方の言う通り、私はその強力な力が戦争を終結させる事が出来るのではないかと考えておりました」

 

 

観念したかの様に軍帽を深くかぶり直し、自分の胸中を明かす神代。陸奥と長門は神代がピッコロ達に会う理由を知っていたので、大丈夫なのか?と不安な気持ちになり神代に視線を向ける。

神代もそれに気づいたのか、大丈夫という目配せを二人に送った。

 

「ですが、これは私達の世界の問題です。巻き込まれた貴方方にこれ以上迷惑をかけたくはない。何より純粋に私達を助けてくれた貴方方を利用する様な卑怯な事はしたくありません」

 

神代は濁りの一切無い目でピッコロに自分の本心を語る。ただでさえ強面の顔が引き締まった事で、さながら893(ヤグザ)の様だ。そんな中、ベジータは神代をじっと見たかと思うと皮肉めいた言葉を吐く。

 

「どうだかな。口ではそうは言ってやがるが本心では俺達にあのバケモン共の相手をしてほしいんだろ?」

 

「おい、ベジータ...!」

 

まずい!と思いピッコロはベジータを止めようとするが時すでに遅く、ベジータは神代達に指を指し声を荒げる。

 

「あの加賀とかいう女共と話してそれがよーくわかったぜ。...この俺に他人の元で働けと?巫山戯るな!」

 

 

(~~ッ!!こ、こいつは...!!俺の気苦労も知らずにッッ...)

 

穏便に話を進めようとした矢先にこれである。ピッコロは頭を抱えてベジータと自分の運命(苦労人の体質)を恨む事しかできなかった。

 

 

 

 

話が始まったばかりでこの始末☆はてさて、この先、どうなりますことやら?

 

テレレーテレーテレーンテッテテー♪(アイキャッチ)

 

 

 

―――

 

(CM)

 

孫悟空「間宮!!」

 

ベジータ「寄こせぇ!!」

 

加賀「嫌です(キリッ)」

 

孫悟空「ドラゴンボールと艦これがコラボした!」

 

ベジータ「パフェくれよぉ!!」

 

加賀「やーだよ(もっきゅもっきゅ)」

 

孫悟空「給糧艦間宮特製ギャリックパフェ!!ベジタブル味!!艦娘ねんどろいども!!」

 

 

 

 




どうも、ムリアリアです。忙しい+文章たしたり削ったりしてたらこんなに長くなりました。ごめんなサイヤ☆

ちなみに提督の名前の元ネタは某クロスゲームの主人公の名前から取ってます。次は一月に投稿するはずです!もう少しお時間を!

ブロリー「出来ぬぅ!!」
ケール「ムリアリア...コロス!」

ふぉお!?(W岩盤)






追記;悟空の次回予告加えました。本来なら前後編ということもあるし、CM流した後に次回予告とかどうなのよとか思われるかもしれませんが、許してチョンマゲー!次に似たようなことが起こったらその時はちゃんと考えてやります。

追記の追記(2021/8/27);次を書いていていろいろおかしいと思ったので次回予告は破壊☆します。あと後編と書きましたがあまりにも長いので次回は中編です。なので次回予告も変えるという訳だぁ!行き当たりばったリーです・・・はい。


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今年もドラこれを読んでくれてアリガットォォ!来年もよろリーです...

※茶番+反省会で御座います。(話の)戦闘力たったの5か...ゴミめ!と思ったよい子の皆はブラぁ~ぅ(^q×)ザバーックぅぅうう~でもいかがかな?腐☆腐☆


ブロリー「で、なんで俺が今年の締めの挨拶をしなければならん?それと本編はどこにいったんだぁ?」

 

うp主「bbbbbbブロリー!?おおおおおtiつけkけぇ!(汗)わしは悪くねぇ!シャモのせいだぁ!」

 

シャモ「違うよ!うp主なんて悪魔さ!」

 

ブロリー「大人しく本当の事を話さなければ、おれはこの小説ごとお前を破壊し尽くすだけだぁ!」

 

うp主「わ、わかった。実は艦これに集中しててこっちを書く暇がなかったんだ。後モチベーションの低下とか」

 

ブロリー「本当にそれだけかぁ?」

 

うp主「ほんt「おぉおおおおおおい!!」!?」

 

???クス「嘘です!全て嘘です!本当はしゅうsy...」

パラガス「何だこのパンツ!どこから現れた!?」

 

パンツ「嘘っ!?あぁああああん!!(涙)」

 

ブロリー「何なんだぁ今のはぁ?は...だが今のでなんとなくわかった。なぁ親父ィ?」

 

パラガス「オゥイェース!!こぉんな最低のうp主はこの世から消し去ってしまえええ!!(ピロロロロ)」

 

(ゴゴゴゴゴ)

 

ブロリー「へぇあ!?何だこの猫はぁ...」

 

モア「ま、まさか...」

 

ビルス「君、今年は今回のも合わせて二つしか投稿してないよねぇ?...完全に、キレたぞぉおおお!!!」

 

ブ「えっ!?」パ「シュワット!?」主「もう駄目だ...お終いだぁ...」

 

(デデーン♪)この始末☆

 

黒ロット「なんと無様な光景か...」

 

??ス「約束事の一つも守れぬとは、やはり人間は愚かだ...」

 

ビルス「H☆KA☆I☆」

 

黒「ぬわぁああああああああ!!」

??ス「うわぁアアアアアアアア!!」

 

ピッコロ「何をやっとるんだアレは?」

 

神代「何でも年内に新作を投稿するのが出来なかったかららしいです」

 

ベジータ「うp主のヤロウがヘマをしたから制裁だそうだ。馬鹿め、さっさと書かんからだ」

 

島風「執筆速度おっそーい!」

 

長門「全くもって弛んでいるな。こんな調子で大丈夫なのか?打ち切りだけは御免だぞ。」

 

天龍「フフフ...打ち切り怖い...(錯乱)」

 

悟空「大丈夫だってうp主は言ってたけど艦これはやってんのにこっちがちぃとも進んでないんじゃなぁ。馬鹿な事(茶番劇)やってねぇで働(本編書)け!

 

悪いな皆!うp主には頑張るように言っとくからよ、来年も絶対ドラこれを読んでくれよな。そんじゃ、良い年を!バイバーイ!!」

 

???「えっ!?私の出番は未だなんですか!?そんなぁ...(涙)」

 

???クス「おーーーい!元気出してくださああい!!ふ...ドァラ!!(アッパー☆)」

 

ブロリー「ネタバレはヤメロットォォォ!!」




はい、御免なさいOTL 色々あってモチベがあがらず年内に本編あげることが出来ませんでした。しかしエタら無いようにはしますのでもう暫くお時間を!!艦
これも冬イベ終わったら二期になるようで楽しみですね。でもレイテがやばそうなんだよなぁ...(震え声)
それと、何時の間にかUA8000超えにお気に入り44でビックリーです...。こんな亀更新の伝説の超駄作を読んで頂きアリガットォォォ!!
それでは良いお年を!来年もよろしくお願いします!


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第5話『俺達が提督に!?ベジータとピッコロの鎮守府着任!』前篇その2

ハーメルンよ!私は帰ってきたぁ!(ソロモンの悪夢)

…はい、4年ぶりです。なかなか筆が進まずになんやかんやあってここまで長引いてしまいました。申し訳ありません!その上話ばっかりで全然進まねーじゃねぇかコノヤロー!(伝説の超審査員)それでもいいぞぉ!という方はどうぞ!


(NG集;その1)

 

電「もう!私達がどれだけ心配していたかわかっているのですか!?」

 

ピッコロ「う、うむ…済まん(な、なぜこの様な目に…)」

 

電(●ワ●)「今度やったら 海 に (チン) な゛ の゛ で ず ! ! ! !」

 

ピッコロ「な、なにっ!?クソマァー!!(ぷらずま☆サッカー)」

 

ベジータ「もうだめだ…おしまいだぁ…OTL」

 

 

 

テレレーンテレーテーレーテーテーテテンッ♪(アイキャッチ)

 

 

 

 

 

突然のベジータの剣幕に神代・陸奥は驚き、長門は敵意を顕にする。そしてピッコロはその空気の読めなさに呆れると同時に焦りを感じていた。

(このバカッ!!今この場で言う奴がいるか!せっかく穏便にすませようとしたのに、このままでは話すら...)

 

「貴様ッ…!提督に対して何という不遜な態度を!!」

 

案の定、長門は勘弁ならんとベジータに殴り飛ばさんと拳を固める。しかし、彼女の前に制止の手がかかる。

 

「待て、長門」

 

「しかしッ!」

 

それは提督の神代の手だった。制止の言葉に長門は納得がいかないらしく、声を荒らげる。

 

「頼む」

 

「ッ…わかった」

 

神代の真剣な目つきを受けて長門は握っていた拳を解く。だが、刺すような目つきを見る限り、今ので(長門からの)印象が悪くなってしまった事は容易に想像できる。

 

(何とか一触即発の事態は避けられたか。しかしこいつの目の離せなさは...ブウの一件で少しは変わったかと

思ったが根本的な所はまるで変わってない!)

 

初めて誰かのために文字通り必死に闘った姿と、自分の隣でふんぞり返っている姿を比較し、本日何度目かの

溜息をつくピッコロであった。

神代の方も安堵の息をつくと、改めて憤慨する理由を聞き出そうとした。

 

「ベジータさん、貴方は人の下で働くのを極端に嫌がってる様ですが…何故です?」

 

「俺は誇り高き戦闘民族、サイヤ人だ。

他人にこき使われる等この俺のプライドが許さん!」

 

さも当然だと言わんばかりに息巻くベジータ。その堂々とした態度に若干引くと同時に聞きなれぬ単語が含まれている事に神代は気づく。

 

 

「そ、そうですか…ところでサイヤ人とは?」

 

 

「詳しくは長くなるから割愛するが、こいつと俺は

お前達地球人から見れば所謂宇宙人という事になる」

 

その疑問に答えようと、いつの間にか憂鬱な気分から

立ち直ったピッコロが答え。

 

異星人、という言葉に神代達3人は驚く。陸奥は目を

見開きまじまじと二人を体の隅々まで観察するように

見つめる。

 

「宇宙人!?確かにそんな雰囲気はするけど…私、初めて見たわ」

 

「私もだ。だがそこの緑肌の...ピッコロはともかく

ベジータは見た目は私達や提督とほぼ変わらんな」

 

長門も陸奥の言葉に同意を示す。提督の神代も首を縦に振る事で同様の意を示している。

確かに宇宙人と言われて想像するのは銀の肌に枝の様な細い体、目の色は赤や緑等、『人間離れ』な感じだろう。全身緑色のピッコロ等宇宙人そのものだ。

 

「何をじろじろと見てやがる。宇宙人なぞ別に珍しくも無いだろうが」

 

「いやいや!私はこの鎮守府で長い間勤めているが

宇宙人なぞ見たことはないぞ!?」

 

苛立ちを抑えようともせず乱暴に呟くベジータとツッコミを入れる長門。その様子を

尻目に見ながら、ピッコロは苦い顔をする。

 

(やはり相当荒れてるな・・・無理もあるまい。命を捨てて倒したと思ったブウが生きていて、

嫁のブルマが殺されたとあっては憤るなと言う方が無理がある)

 

実はこの鎮守府に向かう途中、ベジータにブウが死んだかどうかを尋ねられた。話すべきかどうか一瞬迷ったが、どうせ明らかになると思いピッコロはベジータに全てを話した。

 

当然激怒するかと思ったが、意外な事にベジータは眉を顰め舌打ちは

したもののそれ以上は追究してこなかったのだ。

 

恐らくこの異なる世界に来てからハプニングが連続で続いたのでいちいち怒るのも面倒になり、

落ち着いた場所に来れたからこそ今まで溜まっていた鬱憤が爆発したのだろう、と結論付けた。

 

(だが今は俺たちの今後を左右する重要な時だ。

頼むからこれ以上の面倒だけは起こすなよ…!)

 

祈り半分、諦め半分でベジータの行動を見守る

ピッコロ。その姿は手のかかる悟天とトランクスに辟易している時とよく似ていた…。

 

一方、神代の方はというと、表面上平静を装ってはいたが、内心は冷や汗で一杯だった。

長門からの報告を聞く限り、これ以上機嫌を損ねれば最悪鎮守府を破壊する可能性も十分にあるからだ。

 

藪を突いて蛇を出す事は避けなければならない…そう考えて

両隣の二人に目を向け、小声でぼそりと呟いた。

 

(陸奥、長門。ここは私に任せてくれないか)

 

その言葉の意図を汲み取り、二人は無言で首を縦に振る。

…もっとも長門は未だに納得しておらず、眉をわずかに顰めたままであったが。

 

「ベジータさん、あなたの過去になにがあったのかは聞きません。気に障られたのであれば謝罪致します。

...ですが、私達人類と彼女等艦娘は真に平和を得ることを願い闘っている。

これは嘘偽りでは無いことを分かっていただきたい」

 

拳を握り締め断言する神代。その瞳には強い決意が込められていた。

 

「・・・・・・」

 

ベジータは腕組みをし足を組んだ姿勢のまま睨めつける。しかしその目は

ただ単に気に入らないから、と言うわけではなくどこか値踏みをするかのような感じだ。

 

ほんの僅かの間、両者の間に沈黙が流れる。ただそれだけだと言うのにそこには異様な雰囲気が渦巻いており、側にいる長門と陸奥も額から僅かに汗を流し、緊張した面持ちでこの先起こる事を見守ることしかできなかった。

 

永遠とも一瞬ともとれる静寂の後、ベジータ今まで閉じていた口を、重々しく開いた。

 

「……いいだろう。貴様の覚悟は認めてやる」

 

「では・・・?」

 

「勘違いするな。まだ貴様等に手を貸してやるとは言っていない」

 

「……ッ」

 

いまだに厳しい表情を崩さないながらも自分達の戦いへの決意を認めて貰った事に安心した

神代だったが、すぐ後に続いた言葉に再び緊張感が高まる。しかし同時にある事に気づく。

 

()()?と言うことは条件次第で此方に手を

貸してくれる、と?」

 

「そうだ。尤も条件を飲んだとしても絶対に手を貸してやると言う保証はないがな」

 

「そうですか…ではベジータさん。あなたが望む条件とは?」

 

違う世界からやってきたというから、恐らくは衣食住、後は元の世界に帰るための情報だろう。

神代はそう予想づけていたが、返ってきた言葉はその予想を上回る物だった。

 

「俺と闘ってもらう。もし俺をその気にさせられればその時は貴様等に手を貸してやろう」

 

「「「!?」」」

 

まさかの答えに3人は驚愕する。そしてそれはピッコロもまた同じであり、慌ててベジータを諫めようとした。

 

(お、おいベジータ!!それは流石に···)

 

(貴様は黙っていろ。これは俺の問題だ)

 

声には出さず、にらみ合いを続ける二人の雰囲気に神代は呑まれながらも、何とか言葉を絞りだそうとする。

 

「一応理由を聞かせて頂いても…?」

 

「簡単な事だ。俺の手を借りたかったらそれに相応しい力を見せてみろ。吠えるだけの輩なぞゴメンだからな」

 

要は実力行使で何とかしろという訳だ。凄まじいまでの脳筋理論だが無理難題という程ではない。単純だが難易度の高い要求に神代は小さく息を吐いた。

 

「…分かりました。確かに言葉だけではいくらでも言えるでしょう。貴方を納得させるには闘うしかなさそうだ。ただ、準備を含め諸々時間がかかるので、勝負は明日にして頂いても宜しいでしょうか?」

 

「いいだろう」

 

短く了承の意を伝えるベジータ。どうやら話をしてる内に少し落ち着いてきた様で、

無愛想なのは相変わらずだが、どことなく先程より言葉の角が和らいだ風に見えた。

 

神代は安堵の息をつき、二人に感謝の言葉を述べる。

 

 

 

「有り難うございます。では、私はこれにて。客室へは私の部下がご案内致します。直ぐにそちらに向かわせますので、暫くお待ちください」

 

「…すまない。いきなり押し掛けてきた上に世話になってしまった」

 

非常に申し訳なさそうに頭を下げるピッコロ。その姿に苦労人なんだな、と苦笑する。自身も癖の強い艦娘を束ねる立場なので彼の境遇は痛いほど共感出来るのだ。不幸姉妹の妹や雷巡の怖い方等がよい例だろう。無論そのような者達も、なんだかんだ言って指示にはきちんと従ってくれるので問題ない。気苦労を気にしては提督などやっていけないのである。

 

「構いませんよ。こちらこそ、命の恩人に対して礼を失する様な事をしてしまい大変失礼致しました」

 

軍帽を脱ぎ頭を下げ礼を言い、神代は賓客室を退出した。

ばたん、と赤いカーペットが敷かれた廊下にドアを閉める無機質な音が響く。

今まで張り詰めた緊張の糸が解けたのか、ドア越しには聞こえていない程度とはいえ

大きく息を吐く神代。

 

安全確保の為に彼の退出より一足先に出た陸奥と、同じく護衛の為に一足遅れて部屋を出た長門は労いの言葉を掛ける。

 

「お疲れ様、提督」

 

「うむ、頑張ったな。あの二人の気迫に怯まず面と向き合って話せた、流石は私達の提督だ!」

 

「そんなことはないさ。正直言うとあともうちょっとあの場にいたら泣き出してたかもしれないしな···」

 

ははは、と後ろ頭を掻きながらばつの悪そうそうな顔で呟く。無理もないだろう、ピッコロだけならまだしもベジータの方は対談中常に気が立っていた状態で、機嫌をこれ以上損なわない様に言葉を選ぶのに手一杯で怯む余裕すらなかったのだ。自分の情けなさに不甲斐なく思いつつ、神代は長門、陸奥と共に渡り廊下を歩きだした。

 

 

 

「……長門、陸奥、私の我が儘に付き合わせて本当に申し訳ない」

 

深紅のカーペットの上を進みながら、神代は顔を前に向けたまま、ぽつりと言葉を漏らした。その顔には不安という表情がありありと現れており先程の自分の行動に自信が未だに持てていないというのがよくわかる。

 

急な言葉に何事かと首をかしげる二人であったが、すぐに言葉の意図を理解しほほ笑みを見せた。

 

「提督の判断は間違っていない。そうだろう?陸奥」

 

「ええ、彼の性格と言動を考えたらこうなるんじゃないかって思ってたわ」

 

実際、彼の判断は正しかっただろう。あの独特の髪型をした男…ベジータは危険ではあるが、捻くれた考えを持っておらず()() ()なのだ、最もそれが善か悪かはわからないが。

 

兎にも角にも模擬戦とはいえ闘うことになった以上、気を引き締めていかねばならぬと神代は真剣な顔を2人の信頼できる部下に向ける。

 

「そう言って貰えると助かる。…正直言うと分の悪い賭けになるかもしれない」

 

「「……」」

 

不安と少しの弱音を含んだ言葉を長門と陸奥は黙って聞き入れる。

 

「それでも少しでも可能性があればそれに縋るしかないと俺は考えている。ついてきてくれるか?二人とも」

 

そう決意の言葉を述べる神代は頼もしく、まさしく彼女等『艦娘』を率いる『提督』そのものであった。

 

そんな彼を見て、長門と陸奥は不敵な笑みを浮かべる。神代が彼女等を強く信頼している様に、

彼女等もまた彼を認めているのだ。

 

「ふっ、そうでなくてはな。この長門を侮るなよ?何処までもついていくぞ、提督!」

 

「あらあら、私もよ?提督。私達がついているんだから『大船』に乗ったつもりでいなさい♪」

 

「ははは、旨いことを言うな!」

 

茶目っ気たっぷりでウィンクを決める陸奥に神代は緊張の残滓を払いきるかのように大きく笑い、

2人と共にこれからの事についてを考えながら賓客室を後にするのであった。

 

 

 

 

 

 

----------------------------------

 

 

 

 

「全くお前は…」

 

「ふん、俺は間違ったことは言っていない」

 

 

神代達が去った後、ピッコロは流れ出た汗を拭うと溜息を吐きベジータに非難の言葉をかける。そんな本人はどこ吹く風と腕を組んで目を閉じたままだ。その様子から本当に自分は何一つ間違っていないと思っているのだろう。…ピッコロが胃が心配である。

 

「そうじゃない!もう少し言葉に気を付けろと言ってるんだ」

 

ピッコロ達の目的は一刻も早く元の世界に戻り、魔人ブウの脅威から地球…ひいては自分達の家族や仲間を守ることだ。その為には多少強引な手段に走ることも致し方ないと考えもした。

 

だが幸運な事に、元の世界に帰る手がかりになるかもしれない情報を集める手段をすぐにでも得られるかもしれないのだ。しかし初対面の相手にあまりにも無礼な態度ばかりとっていては相手に不信感を与え、下手をしたら協力してもらえないことも十分にあり得えてしまう。

彼の部下を救助して多少は印象も良い方に傾いているかもしれないが、助ける為とはいえ空を飛び気を放つ等明らかに人外の力を見せつけたのは自分達の素性が不明な事も加味しても少々まずかったかもしれない。故にもう少し慎重になるようベジータに促しているのである。

 

 

「俺たちの目的は早く元の世界に戻ることだ。その為には情報収集をせねばならん。運良くすぐにそのチャンスが来たんだ、其れを不意にするような言動は慎め!」

 

「チッ、貴様に言われんでもわかっている」

 

舌打ちをしながら鬱陶しそうに答えるベジータを見て、痛みつつある目頭を押さえながらピッコロはふと自分の中で気になっている事を尋ねる。

 

 

「ところでベジータ。ここにくるまでの間に違和感を感じなかったか?」

 

「違和感だと?そんなものは感じなかったが、それがどうした」

 

急なうえに要領を得ない抽象的な質問にベジータは眉をひそめながら答える。何を言っているんだ貴様は、と言わんが如く疑問の目を向ける彼にピッコロは自分の考えていることを語り始める。

 

「あの艦娘という連中…全員が一定以上の強さの気を持っていた。弱い奴でも ()()()()()()()()()()()()()と思った方がいい」

 

そういわれてベジータははっ、と気づく。自分が初めて遭遇した艦娘といういけ好かない連中…特に自分にきつい視線を浴びせかけたサイドテールの弓を持った青女(加賀)の持つ気はかなりのものだった。大怪我をしていたのでだいぶ気が落ちていたが、万全な状態なら恐らくあのセルに匹敵する程だったであろう。

 

 

「ムッ…言われてみれば、確かに。ここが俺たちが知る地球と違っていたとしてもありえん事だな」

 

「うむ…お前が最初に地球に来襲した時の強さでさえ本気で暴れれば地球が持たんレベルだった。其れを遥かに上回るフリーザと同等の力を持っているのになぜこの地球は無事なのか、それが気になってな」

 

ピッコロはそう答えつつ、かつての記憶を脳内に思い起こす。悟空の兄貴を語っていた自分が初めて遭遇したサイヤ人、ラディッツ。目の前にいるベジータと共に地球に来襲してきたナッパ。

どちらも当時の自分の想像を絶する様なパワーを持っており、特に後者の方の実力は、大地を震わせる様な超パワーであった事は今でも鮮明に覚えている。

 

「大方、連中も俺たちのように気のコントロールができているんだろう。あの黒い怪物共(深海棲艦)から地球を守るために闘ってるという話が本当ならそれくらいできて当たり前だ」

 

確かに自分達が守るべき地球を自分たちの手で痛めつけるなんてことがあれば笑い話では済まないだろう。

事実、ベジータ達は人造人間、そして魔人ブウとの戦いは常に地球上での戦いだった。自分を含むZ戦士達は戦闘力のコントロールに長けている者がほとんどで、地を裂き海を割る程の力で闘うこともできれば、パンチングマシンを壊さずに叩く事も造作も無い事である(ベジータは遠慮なく叩き壊したが)。

無論、艦娘達がその様に気を扱う事に長けている…否、そもそも気の存在を知っていればの話ではあるが。

 

「連中がどんな力を持ってようと俺の知ったことじゃない。今の俺たちならフリーザ如き雑魚なぞ問題ないだろうが」

 

 

しかしベジータにはそのような事はどうでもよかった。そもそも艦娘達と敵対してるわけでもないのにそのような話をしてもそれは意味がない。よしんば敵対したとしてもセルですら問題なく片付けることができる今の自分にとってはそんな仮定の話は無意味な事であった。

 

俺たちが気にすることじゃない、無理やり結論づける彼を尻目にピッコロは顎に拳を当て、思案に耽る。

 

(そう、本来なら気にする事のない…問題じゃない事なはずだ。だが何だ?妙に気にかかる…)

 

何か根本的に抜け落ちている様な気がする…そもそも本当に艦娘達がそこまでの力を持っているのだろうか?違和感があるのはむしろ────

 

 

そこまで考えていた時、不意に賓客室の扉を軽く叩く音が2人の耳に入る。

 

「失礼します。神代提督の使いで参りました、軽巡洋艦の大淀と申します。部屋に入らせて頂いてもよろしいでしょうか?」

 

「ン…ああ、構わない。入ってくれ」

 

思考の海に沈むあまり、気がづくのが一瞬遅れ無意識に構えを取った自分を恥じつつ、ピッコロは体ごと、ベジータは眼だけを賓客室の入口扉に向ける。

 

「ありがとうございます。では、失礼します」

 

その言葉と共に扉が控えめに開かれ、そこから一人の艦娘が姿を現した。

黒曜石の様な黒い長髪に青いヘアバンド、蒼海の如き目にはアンダーリム(下縁)のメガネが掛けられており、手には羽ペンとファイルとノートが握られている。

これだけで見れば学校でよく見る敏腕生徒会長の様な実直かつ優等生という様な感じに見て取れる(実際そうなのだが)が、問題はその服装である。

衣服はセーラー服であり、胸元には花をあしらった厨子飾り、そこから衣装の裾まで走る赤と青の帯紐が入っている。他にも赤いネクタイを締めており、派手でもなければ地味でもない…といった感じだ。

問題は、スカートの方である。行灯袴をプリーツスカートにしたものを履きなぜか腰回りの一部が露出している。すらっとしたスレンダーな体系も相まって思春期な男子達には目に毒であろう事が見て取れるだろう。…最も、今この場にいる男二人にはそんな考えなぞ頭の隅っこにも留まっていないのであるが(ピッコロに至っては性別等そもそも関係ない)

 

そんな彼女は扉を音を立てないように閉めると、姿勢を正し腰を折り曲げてお辞儀をする。きっちり30度の角度でお辞儀をする姿は完璧であり、彼女の几帳面な性格が伺える。

 

「それでは改めまして自己紹介を、私は軽巡洋艦の大淀と申します。神代提督の秘書艦としております」

 

「ピッコロだ、よろしく頼む。あそこでふんぞり返っている奴はベジータだ」

 

そう言い、握手を交わそうと手を差し出すピッコロ。大淀は長身であり強面のピッコロを前に一瞬畏縮するものの、すぐに切り替え笑顔でその差し出された手を握る。

ごつごつとした歴戦の強者の手…しかしどこか温かくなる気持ちに不思議な感覚を覚えつつ大淀は握手した手を放す。

それと同時に彼の後ろでソファーにもたれ両手両足を組んで座っているベジータの姿が目に入る。まるで興味がないと言わんばかりに眼をつむったまま顔をこちらにすら向けていないその姿に苦笑いを浮かべながら、大淀はもう一度軽くお辞儀をする。

 

 

「こちらこそよろしくお願いいたします。それでは御二人方の為のお部屋をご用意してありますので、そこまで私がご案内いたします」

 

「わかった。おい、ベジータ!行くぞ」

 

「いいだろう」

 

こちらに来るよう促され、ベジータはソファーから立ち上がる。大淀は扉の取っ手を開けたまま2人が出るのを待っているようだ。ピッコロは先に賓客室の外に出ていたようで外へ出たベジータを一瞥すると扉を閉めた後、先導する大淀の後ろを歩き始める。ベジータもそれに倣い鎮守府の廊下を歩いていく。

 

 

 

 

「この度は、加賀さん達を助けて頂きありがとうございました。神代提督も甚く感謝しております。」

 

「勘違いするな、俺は自分のやりたい事をやっただけだ。あのいけ好かない女の事など知ったことではない!」

 

大淀は二人を客室に案内する途中、感謝の言葉を述べた。当時、相当の不安と恐れを頂いていただろう事は彼女の言葉の節々から感じて取れた。そして当のお礼を言われた本人はというと、顔を横に向けたまま吐き捨てるように呟く。心の底から嫌っている、という程ではなさそうだが余程馬が合わなかったのだろう、歯をぎりぎり鳴らしながら不快感を隠そうともしないその姿とは裏腹に、最初の言葉だけを拾えばその発言は俗にいう典型的なツンデレ発言であり、彼をよく知る者…例えば妻であるブルマがこの場にいれば、恐らく堪えきれずに噴き出していたことだろう。

 

 

「全くこいつは…悪いな、不器用な奴なんだ」

 

「おいピッコロ!余計なことは言うんじゃない」

 

そんなベジータの態度にも慣れているのか、呆れながら大淀に謝罪するピッコロ。ベジータはその言葉にイライラしながら声を荒げて反論する。一種のコントの様な光景に大淀は自然と笑みが零れる。強面と正体が地球人ではないという事に一抹の不安を覚えていたが、実際に会って話してみると意外と話しやすいのではないか、と思えてしまう。

 

「ふふふ、お二人とも仲がよろしいのですね」

 

「よくない!…それで?何か言いたそうな顔だな」

 

誰がこんなナメック星人なんかと、と反射的に噛みつくベジータであったが、大淀が先ほど浮かべた笑顔から一転、沈んだ顔をしている事に気づき眉を顰める。

 

「申し訳ありません。ピッコロさんが出撃して頂いた事も含め、本来なら私達艦娘が対処するべき事態であったのに…」

 

「何度も言わせるな、俺は自分の考えるままにやったに過ぎん。貴様らが落ち込む等筋違いだ」

 

「ベジータの言うとおりだ。…ここの奴らには世話になったからな、勝手ながら借りを返したまでだ」

 

2人して同じような事を言っているのに大淀は似た者同士なんだなぁ、と思いつつ柔らかい笑顔を浮かべ、謝辞を述べる。

 

「その様に仰って頂けると大変嬉しく思います。────着きました、こちらでございます。どうぞ」

 

きぃ、という音共に客室への扉を大淀によって開かれる。客室内はそこそこ豪華で、ホテル等でよくみられる物は大抵そろっており掃除もきちんと行き届いている様だ。鎮守府内という普段は関係者以外は絶対に入れない所であるが、ここまで整備されているという事はたまに来る関係者…恐らく軍関係者の為に設えているのだろう。

 

「給湯器に寝台に箪笥に通信機器、冷蔵庫に化粧室等、一通りの物は揃えています。飲食類は急な事なので冷蔵庫には最低限は入っておりませんが、ご要望ならば受話器を通じてこちらにお伝えくださればお持ちいたします。見取り図は────」

 

ピッコロはてきぱきと説明をしている大淀を見て、今日で唯一かもしれない心の底からの安心感…の様なものを得ていた。なにせ、先ほどから息詰まる展開の連続であったので(主にベジータのせい)普通に会話ができるというだけでも気持ちが救われたのだ。普段いかに問題児(サイヤ人)を相手に苦労していたかがよくわかる瞬間であった…。そんな原因の一つは備え付けのソファーにどっかと座りいつの間にか手に持っている飲料水を開けて中身を飲んでいた。それをあえてスルーしつつ、大淀に礼を述べた。

 

「すまんな、何から何まで」

 

「いえ、これくらい当然の事です。あ、それと鎮守府内ですが…大変申し訳ありませんが、この資料に印がつけられている場所以外に行かれるのはご遠慮頂きますよう、よろしくお願い申し上げます」

 

申し訳なさげに言う彼女にピッコロはすぐにその言葉の意図に感づく。

 

「…軍事機密というわけだな?いかに俺たちが関係者といえどまだ本格的に協力する訳ではないからな。そんな者にうろうろ出歩かれては困る、か」

 

そう、ピッコロ達はまだ関係者の仮の領域を抜け出していないのだ。そんな存在が機密事項の塊である鎮守府を不用意にうろうろされてたは堪らないのは一目瞭然だ。ただでさえ自分の姿は鎮守府内の人間を不用意に警戒させざるを得ないのだから仕方のないことである。

 

「申し訳ございません。こればかりは…」

 

「いや、構わない。俺もお前たちの立場なら必ずそうしている。むしろ余計な気を使わせてしまって悪かった」

 

「きょ、恐縮です!」

 

どこかの情報好きの重巡洋艦の様なセリフを言いつつ、大淀は深々と頭を下げる。どことなくだが、その姿を見て普段から相当苦労しているんだろうな、とピッコロは多少の同情の念を含め彼女を見つめていた。

 

「では、また何かあればご連絡いたします。見取り図は先ほどお渡しした資料にございますが、何か不備があった際は遠慮なくお申し付けください。食堂はいつでも空いておりますのでよろしければご利用ください」

 

「助かる」

 

渡された資料をちら、と見つつピッコロは頷く。それでは失礼します、という言葉と共に客室の扉を開きこちらにお辞儀をすると大淀は静かに扉を閉め、客室を去っていった。

 

暫しの静寂の後、口を開いたのはピッコロだった。

 

「さて…どうする?ベジータ」

 

「俺は寝る。ここに来るまで碌に休んでいなかったからな。夕食までには起きる」

 

「うむ、わかった」

 

飲料水の容器をくしゃりと握りつぶしゴミ箱に放り投げる。綺麗に放物線を描き、ゴミ箱に収まる容器を尻目にベジータはベッドに体を預けると目を閉じた。そう時間を絶たずに寝息が聞こえてきたので余程疲れていたのだろう、とピッコロは想像する。

 

(さて、どうするか…とはいっても先ほど自分でも言ったが俺たちはまだ仮の協力者でしかない以上、できることは限られる。本当ならば資料室にでも行って調べ物でもしたいところだが…致し方あるまい)

 

ベジータにああ言った以上、自分も今の所は下手な行動は起こさない方が得策だと判断した。

 

しかし、こうしてる今も魔人ブウとゴテンクスが闘っているかもしれない。幸いあの超サイヤ人3の姿ならあの強大な魔人ブウですら打ち破ることは十分可能だろう。しかしまたお遊びをしている間にフュージョンが解けて大惨事になっているかもしれない。…否、そもそもあの二人はちゃんと元の世界にたどり着けたのであろうか?自分達がそうな様に、この世界か、はたまた別の世界にたどり着いているかもしれない…。そんな思いが次から次へと浮かんでは沈んでいく。

 

そこまで考えてピッコロは頭を左右に振り思考を中断させる。楽観視するのもよくないが、だからと言ってマイナスの思考ばかりに陥っていては心身共に参ってしまう。まずは情報を得るために、提督と艦娘達との関係を良い方向にもっていかねば、と決心を固める。

 

(悟天、トランクス、そして…魔人ブウ。気掛かりな事は多いが、今はどうしようもない事だが、せめて安否でも分かればよいのだが…)

 

 

 

窓のカーテンを開けると、そこからはどこまでも続く蒼く輝く水平線と、どこかの正規空母が飛ばしたかもしれない艦載機が大空を舞うように翔ける姿が目に入るのであった。

 

 

 

 

 

 

余談だが、夕食の際に(ピッコロは水しか飲まないが)ベジータが皿で自分の姿が見えなくなる程の量を平らげて食堂にいる艦娘達を大いに驚かせたとか。その様子を見ていた一航戦の青い方は「ここは譲れません」と何故か対抗意識を燃やしていたとかなんとか。

 

 

 

 

ナレーター「神代と呼ばれた提督と二人の艦娘と対談をしたベジータとピッコロ。

力を貸してほしいと懇願する神代にベジータは自分と闘えととんでもない事を要求するのであった。

果たして両者の戦いの結果はどうなるのか?そしてベジータ達は無事に元の世界への手がかりを手に入れることができるのだろうか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

----------------------------------------------

 

 

 

 

------遥か遠い世界、どこかも分らないような場所------

 

 

 

 

『……また見ていたのか?』

 

 

『ああ、あの二人なら絶対大丈夫だと思ってるんだがよ、どうしても不安になっちまってなぁ』

 

『全く、お前の無茶ぶりにはいつも驚かされているが、今回は格別だったぞ』

 

 

雲海の上に2つの声が響き渡る。片方はの太く、かつ威厳あふれる声。もう片方は幼く、かつ活発な声だ。

 

 

『ははは!悪ぃ悪ぃ!すまねぇな。いつまでも同じ場所に留まるなんて本来ならしちゃいけねぇ事なんだけどよ』

 

申し訳なさげな幼子の声に対し、もう片方の声は焦る様子もなく怒る様子もなく、淡々と告げる。

 

『構わん、お前はそれくらいの我儘が許される程の者なのだ』

 

『へへっ!サンキュー。もう少し様子見したら行くよ』

 

『わかった』

 

そこまでで会話は途切れ、再び静寂が訪れる。

 

(…すまねぇ、本当なら関わっちゃいけねぇ事なんだろうが、何か嫌な予感がしやがるんだ。頼んだぜ、ピッコロ、ベジータ)

 

体の後ろにある物が蠢く。あたかもそれは ()()()()()()の様で、その尻尾は彼の感情を表すかのようにうねうねと揺れている。

 

 

どこまでも続いてく雲の上の世界を、『龍』の雄叫びが木霊したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

オッス!オラ悟空!

 

いよいよベジータ達が艦娘っちゅう奴らと闘うってよ!か~っ!!羨ましいなぁ。オラも闘いてぇぞぉ。

 

ベジータ「どうした!貴様らの実力はこの程度か!?」

 

長門「言ったはずだ、この長門を侮るなと!!」

 

次回、「次回!龍球これくしょんー龍これー第4話『俺達が提督に!?ベジータとピッコロの鎮守府着任!中編』

 

 

ピッコロ「違和感の正体…こういうことだったとはな」

 

ベジータ「どういうことだ!?説明しろ、ピッコロ!」

 

 

 

次回も絶対見てくれよな!

 

 

 

 

 




という訳でやっと前編(という名のお話会).前の話のあとがきの追記で書き足しましたが、あまりにも長くなりすぎたので中編、後編と分けます。ついでに言えばまた伸びる可能性もあるという訳だぁ!あまりにも長くなるとだれるのでもちっと文章少なくしたりはしょったり考えたリーしなければ…この作品の面白さが破壊しつくされてしまう!今後も不定期更新にはなりますがそれでも良ければお付き合い頂ければ幸いです…ハイ…。
追記(8/27 16;07)界王様の最後のナレーション忘れてたので追加しました。


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