学戦都市アスタリスク~歌姫との絆~ (璞毘)
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姫焔邂逅
プロローグ


はい、新しく新連載です
ストブラの方もやっていくのでよろしく!!


「シルヴィ、行っちゃうんだね」

 

「うん・・・

綾斗くんと離れたくないけどこればっかりはしょうないから・・」

 

シルヴィと呼ばれた少女は悲しそうに眼を伏せた

綾斗と呼ばれた少年も眉を八の字にして悲しそうにしていた

だいたい二人とも十歳くらいだろうか二人は向き合っていた

この二人は親の都合で離れなければならなかった

二人が・・・というわけではなく

シルヴィの親の都合上シルヴィもそれについていくことになったのだ

 

「シルヴィ、きっとまた会おう

大丈夫また会えるって僕は信じてる」

 

「綾斗くん・・・

うん、私もまた会えるって信じてる・・・

ねぇ、綾斗くん

再会出来たら―――――」

 

シルヴィは涙を拭い告げる自身が綾斗に抱いている想いを・・・

 

「あ・・・・・

ハハハ・・・

懐かしい夢を見たな・・・」

 

夜空みたいな瞳に同じように夜空のような髪色をした少年天霧綾斗は乾いた笑いを浮かべた

5年前の・・・あの少女と再会の約束をした時の夢・・・

今でも覚えてるかどうかわからないだけど綾斗は決してこの5年忘れてはいなかった

少なくとも自分自身は・・・

 

「今日はそういえば編入日だったよね・・・・」

 

綾斗はそう呟くと

送られてきた制服に袖を通し、都市アスタリスクに向けて出発するのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

予定より早く都市・・・アスタリスクに着いた綾斗は時間を潰すため編入予定の星導館学園の敷地内を散策していた

そこまではよかったのだが・・・

 

 

 

見事に道に迷ってしまっていた・・・

 

「えーと、ここはこうであれだから・・・」

 

綾斗は端末でマップを出し位置を確認するがなにがなんだかわからなかった・・・

学園の外ではないのでまだ大丈夫だとは思うがこれでは約束の時間までに星導館学園の生徒会長に会えるかどうかも微妙なところだ

道に迷った綾斗はとぼとぼと歩いているとひらひらと空から落ちてきた

綾斗は反射的にそれを掴んだ

それは刺繍の施されたシンプルなハンカチだった

刺繍からして女物だろう、綾斗としてもできることなら届けてあげたいがこの近くに生徒が見当たらないのをみると落としたことすら気付かずにいるのかもしれない

いくら学園の敷地内とはいえ星導館学園は広すぎるので闇雲に探しても無駄であろう

それに綾斗自身も今絶賛迷子中だ

そんなことをしてる暇もない

 

「えぇぃ・・・ん・・・・時に・・・・」

 

綾斗はあとで生徒会長にでも会うのだしそのついでに職員室によって落とし物として届ければいいかと考え、ハンカチをポケットに入れようとしたその時なにやら近くから声がした

そこに顔を向けるとそこは学園の寮らしき建物が見えた

その建物から慌ただしくしてるような声が聞こえた

 

「なるほど、あそこか・・・

う~ん、大体4階くらいかな」

 

そう言うと綾斗は一気に跳躍し開いている4階の窓から危なげもなく侵入した

 

「えーっと、窓から失礼します

ハンカチ落としませんでした・・・・・か・・・・?」

 

綾斗が窓から侵入してみた光景はそれはそれはすごい光景だった

女生徒の着替え姿だったのだから・・・・

 




まだ、シルヴィは出てきませんW
いえ、出したいんですけど出すタイミングが・・・WWW
過去では出てきましたけどね
綾斗とシルヴィは幼馴染設定です
勿論さやとも幼馴染ですよ
ではチャオチャオ


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一話

こんにちは、続きになります
この調子で投稿できたならと思っています


「えーっと・・・・」

 

綾斗は今目の前の状況をどう打破しようかと思考を巡らせるが何一ついい案が思いつかず思いつくのは最悪の未来だけだ

事の始まりは数分前綾斗としては空から降ってきたハンカチを届けようとしていただけだったのだが・・・

まさか着替え中とは思わず、綾斗はその着替えの場面に遭遇してしまったというわけだ

 

「あの、オレは決して悪気があって覗いたんじゃなくて・・・

ハンカチを・・・」

 

「後ろを向け・・・」

 

「え・・・?」

 

「いいから後ろを向け―――――!!」

 

綾斗が不可抗力で着替えを覗いてしまったのは桃色の髪の少女だった

年齢は綾斗と同じ15~16くらいであろう

その少女は胸元を隠しながら叫んだ

綾斗はすぐさま後ろを向いた綾斗の耳には布擦れのリアルな音が聞こえていた

年頃の青少年である綾斗にはそのリアルな音が衛生上よろしくないのはいうまでもないだろう

 

―――大丈夫、オレは、ハンカチを届けに来ただけだ

   それを伝えれば彼女もきっとわかってくれる

 

綾斗はそんなことを内心思っていた

着替えを覗いて事情を話せばわかってくれる人間などごく少数の人間だろう

彼女がその部類に入るかどうかはまだわからないことではあるが・・・

 

「で、ハンカチとは?」

 

着替えが終わったらしい桃色の髪の少女は綾斗にそう問いかけた

最も桃色の髪色の少女の表情は案の定こちらを睨みつけてご立腹と言った様子だが話を聞いてくれるあたり案外話のわかる人間なのかもしれない

 

「あ、うんこれなんだけど

おとさなかったかなと思ってさ」

 

綾斗は先程拾った刺繍入りのハンカチを桃色の少女に見せた

 

「それは・・・!!」

 

桃色の少女の表情が変わった

先程まで怒り心頭と言った様子だったのが今ではハンカチを見せたとたん安心しきった様子で先程の表情が嘘のようだ

 

「すまない、これはとても大切なものなんだ」

 

桃色の髪の少女は心から安心したような表情を浮かべていた

相当大切なものなのだろう

 

「よし、これで筋は通したな・・・」

 

「え?」

 

桃色の髪の少女から星辰力(プラーナ)の高まりを綾斗は感じた

 

――この感じ、《魔女(ストレガ)》!?

 

やばいと感じた綾斗はとっさに回避行動に出た

綾斗が先程出てきた窓に向かって走り出す

 

「くたばれ」

 

桃色の髪の少女は顔は笑っていたが目が笑っていなかった

その直後大爆発が起きた

綾斗はとっさに窓から飛び降りたため無事だったがあと一秒でも飛び降りのが遅かったらヤバかったかもしれなかった

 

「ほう、今のをかわすとはな・・・

ただの変質者ではないようだ・・・」

 

「なんで・・・」

 

「なんでだと・・・?

おまえはあろうことか女子寮に侵入し、乙女の着替えを覗いた

命をもって償うべきだ!!」

 

「命って・・・」

 

そんな大げさなと綾斗は思うが今それを口にするとややこしくなるのが目に見えているため綾斗は開きかけた口を閉ざす

 

「安心しろ

おとなしくしていればウェルダンぐらいで勘弁してやろう」

 

「中までしっかり焼くんじゃないか・・・」

 

綾斗はガックリと肩を落とす

 

「ちょっと待って、オレはここに編入したばかりであそこが女子寮だって知らなかったんだ」

 

綾斗は桃色の少女に編入生だってことを明かしアスタリスク(ここ)にも今日来たということを明かした

 

「なるほど、それは信じてやろう

だが、これとそれとは別だ

このままでは私の怒りが収まらん

おまえ、名前は?」

 

「天霧綾斗」

 

突然名前を聞かれ戸惑った綾斗だったが別に隠す理由もないため、綾斗は名乗る

 

「私はユリスだ

この星導館の序列5位だ

埠頭の証たる赤蓮の名のもとに我ユリス=アレクシア・フォン・リースフェルトは汝天霧綾斗への決闘を申請する」

 

ユリスがそういうとユリスと綾斗の校章が発光する

 

「決闘!?」

 

綾斗が驚いたように声をあげる

それはそうだろう公式戦でもなければここは公共の場だ

そんなところで決闘をしようと言うのだから

 

「お姫様が決闘だってよ」

 

「相手は誰だ?」

 

「うちの転入生らしいぞ」

 

決闘と聞きつけた野次たちが興味津々と言った様子でユリスと綾斗の周りに集まっていく

 

「お前が勝てばお前の言い分を聞いてやろうだが私が勝てばお前を私の好きにさせてもらうぞ

アスタリスクに来た以上決闘は知っているな?」

 

「知ってはいるけど、ほらオレ武器もないしさ」

 

「お前、なんの武器を使う?」

 

「・・・剣」

 

綾斗は渋々答える

 

「誰か武器を持っていないか?

出来れば剣がいいのだが・・・」

 

ユリスが周りのギャラリーにそう言う

 

「だったらこれを使えよ」

 

ギャラリーから綾斗の元に未調整の煌式武装(ルークス)の発動体が投げられる

本来はその人によって煌式武装は調整されその人用に長さなど違ってくるのだが、綾斗はこの学園に来たばかりで煌式武装の調整どころか配布すらされてない状態だった

そんな状態なら流石のユリスも諦めてくれると思ったのだが・・・

これだった・・・

綾斗はそれを受け取ると複雑な表情を浮かべる

これがなかったら綾斗はこの決闘を破棄できたかもしれないのだ

煌式武装を渡された以上決闘を受けないという選択肢はなくなったといってもいい

 

「まさか起動の仕方がわからないとは言うまい」

 

「・・・・・」

 

綾斗は煌式武装を起動させる

煌式武装に埋め込まれている鉱石・・・マダナイトが輝き青白い刀身が現れる

刀身は1mぐらいだろう

 

「よし」

 

「はぁ、我、天霧綾斗は汝、ユリスの決闘申請を受諾する」

 

綾斗は静かにそう宣言した

 決闘を受諾する・・・と

 

「では行くぞ」

 

綾斗が決闘を受諾すると同時に決闘開始(エンドオブデュエル)と機械の音声音が聞こえた

 

「咲き誇れ、鋭槍の白炎花(ロンギ・フローラム)

 

ユリスが自身の細剣型の煌式武装を振るうと炎の槍が次々と綾斗に襲いかかる

数は9ぐらいであろう

綾斗は焦ることなく剣型の煌式武装で炎の槍を次々といなしていく

時にはかわしたりとしていく

 

「まだだ、鋭槍の白炎花」

 

「・・・・!!」

 

綾斗は先程のように剣でいなそうとするがさっきと違い速度が上がっていくことに気付いた

綾斗はいなすタイミングを完璧に失い仕方なしにかわすことにした

言うのは簡単だが速度の上がった炎の槍をかわすのは言うほど簡単ではない、そう“並の相手なら”の話だ

だがユリスが決闘を申し込んだ相手は“全力を出せない”とはいえかなりの実力者だった

速度の上がった炎の槍も綾斗は軽々とかわしている

 

「あの新人やるな」

 

「悪くはないな」

 

「お姫様が手加減してんじゃないの?」

 

などと外野が言っているがユリスは手加減など微塵もしていない先程の鋭槍の白炎花でも並の相手なら消し炭になるような威力だった

勿論全力で戦っているかと言われれば全力というわけでもない本気で相手をしている

そしてそれは綾斗にも言えたことだった

綾斗も全力で戦っているわけではない

でも手を抜いているわけでもなかった

 

「見極めてやる、咲き誇れ、六弁の爆焔花(アマリリス)

 

圧倒的な星辰力と熱量をもった巨大な炎の花が綾斗に迫っていく

 

「やっべぇ、大技だ!!」

 

「退避、退避」

 

ギャラリーもユリスの大技に巻き込まれてたまるかと一目散に逃げていく

 

「・・・・・・」

 

綾斗はその炎を前にしてもかわそうとせず巨大な炎の花に突っ込んでいった

 

「おい、あの新人突っ込んだぞ」

 

「死ぬつもりか!?」

 

ギャラリ―の連中は退散しながらも綾斗が突っ込んだのを目にしてありえねぇと言った表情をした

 

「ギリギリでかわして接近戦に持ち込むつもりか

だが・・・そうはさせん

爆ぜろ!!」

 

その瞬間焔の花が爆発を引き起こす

 

「これで・・・!」

 

ユリスはこのとき勝利を確信した

あの大爆発でただですむはずがないと

だがそのときその爆発の中で剣閃が煌いた

 

「天霧辰明流剣術初伝―― 貮蛟龍(ふたつみずち)

 

炎の花が十字に切り裂かれる

 

「まさか、流星闘技(メテオアーツ)・・・!!」

 

流星闘技とは煌式武装に埋め込まれている鉱石マダナイトに星辰力を注ぎ煌式武装の出力を上げる技術だ

一朝一夕でできるものではなく相応の鍛錬と修練が必要となる

その他にも煌式武装の調整も必要なため未調整の煌式武装でやってのけたとするならばユリスは戦慄を禁じえなかった

炎の花を切り裂いた綾斗はすでに間合いに入っていた

 

「この・・・!!」

 

ユリスは細剣を振り下ろそうとするが綾斗は煌式武装わ持ってない手でその手首を掴んだ

そして煌式武装を持っている手で綾斗はユリスに向かって飛来してくる光の矢を弾いた

弾かれた矢は煌式武装らしく形を維持できなくなりそのまま消滅した

飛び道具系統の煌式武装は自らの星辰力を注ぐことで矢や銃弾などを形作ることができる

それは銃弾、矢がいらないということだ

しかし、それは使い手の星辰力を使うということで《魔女(ストレガ)》や《魔術師(ダンテ)》と同様星辰力をエネルギーにしているようなものである

 

「どうゆうつもりだ?」

 

「それは、敵さんにいってほしいなぁ・・・」

 

「そうではない、何故私を・・・」

 

「はいはい、それぐらいにしてくださいね」

 

ユリスの言葉を遮るようにして手を軽く二回ほどパンパンとたたいて現れたのは抜群のスタイルをもった金髪の美少女というよりは美女と言った方がしっくりくる女性だった

 

 




結構早めに投稿できた気がしますね
この調子でシルヴィも原作より早めに登場させる予定なのでそうしていきたいと思いますではまた会いましょう
チャオチャオ


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二話

二日ぶりですね
いやー、9月から投稿できなくなるんで今のうちにしておこうかと・・・w
ではどうぞ


「はいはい、その辺にしてくださいね」

 

手を軽くパンパンと叩いて現れたのはスタイル抜群の美少女・・・いや美女と言った方が正しいのであろう

ユリスや綾斗と同じ星導館の高等部の制服を着ているあたり10代なのは間違いないのだろうが抜群のスタイルの良さと彼女の雰囲気がそうさせているのかとても綾斗やユリスと同じの10代にはとても見えない

 

「確かに我が星導館は学生同士の決闘を認めていますが残念ながら此度の決闘は無効とさせていただきます」

 

「クローディア

なんの権利をもって邪魔をする?」

 

「勿論、生徒会長の権限ですよユリス」

 

クローディアと呼ばれた少女は自身の校章に手をかざす

 

「赤蓮の総代たる権限をもってユリス=アレクシア・フォン・リースフェルトと天霧綾斗の決闘を破棄します」

 

クローディアが決闘の破棄を宣言するとユリスと綾斗の校章の発光が収まる

 

「ふふ、これでもう大丈夫ですよ

天霧綾斗くん」

 

「ありがとうございます

えーっと、生徒会長さん?」

 

綾斗は安心したように息を吐いた

ユリスはまだ納得がいってなようで決闘を破棄したクローディアを睨みつけていたが・・・

 

「それに天霧君は正確にはまだうちの生徒ではありません

データ登録は済ませてあるので校章が反応してしまいましたがまだ最後の手続きが残っているのですよ

星導館は学生同士の決闘は認めていますが・・・わかりますね?」

 

そんなユリスの状態を知ってかクローディアは説明した

 

「くっ・・・」

 

ユリスは悔しそうに唇を噛んだ

なんの反論もないところをみるとどちらに理があるかユリス自身もわかっているようだ

 

「はい、そういうわけですから皆さんも解散してくださいね

授業に遅刻してしまいますよ」

 

クローディアの言葉にギャラリーも解散していく

結末に納得していないものもいるようだが生徒会長であるクローディアに文句を言う勇気があるやつはいないようだ

 

「あ・・・!」

 

綾斗は先程の狙撃を思い出した

ギャラリーにまだ犯人が紛れ込んでいるかもしれないのだ

今、解散させるわけにはいかなかった

 

「ちょっと、待っ・・・」

 

「捨て置け、それにもう逃げているだろう・・・」

 

綾斗の意図を察したのだろうユリスがそれを止める

 

「えぇ、それに《冒頭の十二人(ページ・ワン)》が狙われるのはそんなに珍しいことでもありませんし」

 

「えっと、《冒頭の十二人(ページ・ワン)》って・・?」

 

聞かない言葉に綾斗は首をかしげた

 

「《冒頭の十二人》とは、アスタリスクの各学園に序列制度があるのは知っていますね?」

 

「あー、うん、それくらいは・・・」

 

クローディアの確認に綾斗は首を縦に振り頷いた

綾斗もそれくらいはさすが知っていたようだ

ユリスからすれば冒頭の十二人のことも知ってて当たり前の知識だと思っているのだが・・・

 

「学園によって細かいルールは違ってきますが、それぞれの学園が有する実力者を明確にするランキングリスト――それが『在名祭祀書(ネームド・カルツ)』です

枠は全部で七二名、その中でも上位十二名は、リストの一枚目に名前が連なれていることから俗に《冒頭の十二人》と呼ばれています」

 

「へ~、ってことはユリス強いんだね

ユリスのあの強さも納得だよ」

 

綾斗は先程の決闘を思い出し感嘆の表情を浮かべた

 

「お世辞はよせ、私ではお前の相手にすらならなかったわけだしな」

 

「え・・・?

そんなこと・・・」

 

ないと言おうとしたところをユリスは遮るように続けた

 

「私が気付かないとでも思ったのか?

お前、私との決闘の際明らかに防御に徹していた

そうでなければ、私はただのケガではすまなかっただろう」

 

「それは・・・」

 

綾斗は返すべき言葉が見つからなかった

ユリスの言っていることは事実だったからだ

その証拠に綾斗はユリスの攻撃すべてに対応できていた

もし仮に綾斗がユリスに攻撃を仕掛けていたらと思うとゾッとしない話だった

勝負は一瞬でついていただろう

ユリスが反撃する暇もなくあっさりと終わっていただろう

それぐらいの力量の差が綾斗とユリスの間にはあった

それはユリスに限った話ではないこの星導館で綾斗と対等に戦りあえる相手などいるのかさえわからないのだから・・・

 

「まぁ、その話は置いといて・・・だ

お前には助けられたな

貸し一つだな

要請があれば一度だけ力を貸そうそれ以外はなれ合うつもりはない」

 

「あ、それとユリス?」

 

「なんだ?」

 

クローディアは思い出したかのようにユリスを呼び止める

ユリスはいかにも不機嫌そうにクローディアのほうに振り向いた

 

「《鳳凰星武祭(フェニクス)》のエントリーまで日にちがそうありませんが、パートナーは見つかりそうですか?」

 

「ぐ・・・

余計なお世話だ!!」

 

この反応からするとパートナーが見つかっていないのは明らかだった

ユリスはズカズカと足音を立てながら人混みに消えていった

 

「それでは私たちも行きましょうか

天霧綾斗くん」

 

「あ、はい」

 

綾斗もクローディアに連れられる形その場をあとにした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えー、そのような意味で前世記はまさしく災害の世紀であったといえるわけでありますが中でも落星雨(インベルティア)と呼ばれる隕石群の襲来は全世界に未曾有の被害をもたらしました。

三日三晩にわたって降り注いだ隕石により、世界は否応なく変質させられたのであります既存国家の衰退と統合企業財体の台頭、それに伴う倫理観の変容、隕石がもたらした万応素による新人類―――つまり君たち《星脈世代(ジェネステラ)》の誕生、さらには万応素研究―――」

 

綾斗とクローディアが通りすがった教室から教師が授業をしているのが聞こえる

 

「こんな朝早くから授業をしているんですね」

 

「あれは補修です」

 

「朝一から補修ですか・・・」

 

「えぇ、星導館(ウチ)は文武両道なので天霧くんも気を付けてくださいね」

 

「ハハハ・・・」

 

綾斗は苦笑いをした

自分では勉強しているつもりなのだがこの星導館の学問のレベルがわからないためなんとも言えなかった

生徒会室への道すがら校舎内を見渡してみたが先程綾斗が不法侵入した女子寮と違っていた

女子寮はクラシックな建物だったのに対しこの星導館の校舎内は近代的な高層建造物だった

この星導館学園は、中等部、高等部、大学部に分かれていて一番人数の多い高等部の校舎が大きく造られている

 

「あぁ、それと私も天霧君と同じ一年生なので砕けた喋り方で結構ですよ」

 

「え、そうなんですか?」

 

綾斗は意外そうな顔をしたもっと年上かと思っていたからだ

星導館学園の高等部の制服を着ていることから高等部の人間であることはわかっていたがまさか綾斗と同様一年とは思いもしないだろう

なにより雰囲気が綾斗と同い年とはとてもじゃないが感じられなかった

 

「えーっと、ならオレのことは綾斗でいいよ

なんかくんづけされるとくすぐったくてさ・・・」

 

「わかりました綾斗

でしたら私のこともクローディアとお呼びください」

 

「え、それは流石に・・・

クローディアさ―――」

 

綾斗は遠慮気味だった

流石に親しい女の子だったら呼び捨てにしたり、愛称で呼んだりするが初対面の女の子をいきなり呼び捨てにするのは流石の綾斗も躊躇する

 

「クローディアです」

 

「だけどさ

クローディアさ――――」

 

「ク・ロ・オ・デ・ィ・ア」

 

「わ、わかったよ

クローディア」

 

綾斗はクローディアのあまりの押しの強さに観念しクローディアの要望通り呼び捨てで呼ぶことになった

 

「できれば、その敬語もなくしてくれるとありがたいんだけど・・・」

 

「あぁ、これは習慣ですのでお気になさらずに」

 

「習慣?」

 

「はい、私はとても腹黒いのでせめて表面上だけでも・・・と」

 

「へぇ、腹黒いんだ?」

 

綾斗からみてクローディアは自分で言うほど腹黒そうに見えなかったので意外そうな顔をした

 

「えぇ、それはもう

私のおなかと来たらを暗黒物質(ダークマター)を煮立てて焦げ付かせたものをブラックホールにぶちこんで黒蜜をかけたくらいには真っ黒ですから」

 

「なんでしたらみてみます?」

 

「え・・・?」

 

このとき綾斗はなんとなく嫌な予感がした

 

「ほら真っ黒!」

 

「え、ちょっ・・・」

 

クローディアは自分の上着をめくり自分のお中を見せてきたのだ

まぁ見たところで腹黒いかどうかなんてわかるはずもなく

綾斗は自分の目を隠しなるべく見ないようにした

 

「ふふ、かわいい反応をしますね」

 

綾斗はこのとき自分がからかわれていたんだと気付いた

クローディアとそんな話をしているうちにいつの間にか生徒会室の前まで来ていた

 

「では、どうぞ」

 

クローディアが生徒会室のドアを開け入っていく

綾斗もクローディアに続くように生徒会室に入る

 

「そして、ようこそ、アスタリスクへ」

 




この調子で早めに投稿していきたいとおもいますでは
チャオチャオ


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三話

皆さん、久しぶりです
いやー、すいません、投稿が遅れてしまって多分これが8月最後の投稿になると思います
9月は本当に投稿できるかわかりません
本当に申し訳ありません
多分11月まで投稿できないかもしれません
出来たらしますので
では、どうぞ


「そして我が星導館学園が特待生であるあなたに望むことはただひとつ

――――勝つことです」

 

クローディアは続ける

 

「ガラードワースに打ち勝ち、アルルカントを下し、界龍(ジェロン)を退け、レヴォルフを破り、クインヴェールを倒すこと。

すなわち《星武祭(フェスタ)》を制することです

そうすれば我が学園は、貴方の望みを現世で叶うものであればなんでも叶えるでしょう」

 

「んー、悪いけどそうゆうのにはあまり興味がないんだ」

 

「えぇ、あなたがそうゆうのに興味がないことにも

そして何度も特待生としての招請を断ってきたことも

ですがここ最近我が星導館の星武祭の成績はあまりよろしくありません」

 

そうだ

この星導館学園は星武祭における総合順位が5位となっている

順位だけ聞くと聞こえはいいが星導館をあわせて6学園中5位だ

お世辞にも成績がいいとは言えない

ちなみに6位はクインヴェールだが、クインヴェールは順位など気にしていなので実質的には最下位ということだ

 

「そもそもなんでオレなんかを特待生に?」

 

「えぇ、私の知り合いからあなたの話を聞きまして

それで興味をもってスカウトさせていただきました」

 

「知り合い?」

 

「えぇ、べた褒めでしたよ」

 

「う~ん?」

 

綾斗は腕を組んで考えてる素振りをするが正直生徒会関連で綾斗の知り合いなど検討もつかなかった

 

「ふふ、今は名前を伏せておきましょう

その方が面白そうなので・・・」

 

クローディアは意味ありげな微笑みを受かべるだけでそれ以上はなにもいわなかった

 

「それにしても、心変わりして招請を受けて下さってたすかりました

これで断られたら生徒会の面目が丸つぶれでしたから」

 

「別に心変わりしたつもりはないんだけどね」

 

「でしたらなぜこの学園に?」

 

「・・・・・・」

 

綾斗は真剣な表情になる

 

「クローディア、姉さん・・・

いや、天霧遥に関する情報があるっていうのは・・・」

 

「情報と言えるほど確かなものではないのですが・・・」

 

そう言うとクローディアは端末を操作しデータを綾斗に送った

 

「これは・・・!」

 

綾斗は驚愕の表情を浮かべた

そこに載っていたのは・・・多少ぼやけているとはいえ記憶の中の綾斗の姉・・・天霧遥の顔写真だった

データからして学生データだろう

 

「すみません、復旧できたのはそれだけでした

 

「いや、これだけでも十分だよ」

 

綾斗としては今まで消息すらつかめなかった姉のことがわかったのは綾斗としてはそれだけで十分だった

 

「そしてそのデータによれば5年前にこの学園に入学し、そして半年後個人的な理由により退学しています

貴方がお姉さんを探してこの学園に来たのでしたら残念ながら彼女はもうこの学園には・・・」

 

「いや、いいんだ

別に姉さんを探しに来たわけじゃないからさ

期待してなかったって言えばウソだけどさ」

 

「あら、でしたらなぜこの学園に?」

 

「あえて言うなら自分のなすべきことを見つけるため・・・かな」

 

「ふふ、なかなかどうして貴方も喰えませんね」

 

「ハハ、そうかな・・・」

 

まさか自分のことを腹黒いと言っている人物から喰えない人物と評価されるとは思ってなかった

 

「それと、これは不確定な情報なので伝えるべきか悩んだのですが・・・

これを・・・・」

 

クローディアはもう一つの資料データを綾斗に送った

それはある煌式武装のデータだった

だが普通の煌式武装とはどこか違っていた

 

「それは純煌式武装(オーガルクス)です」

 

「純煌式武装ってたしか特殊なマダナイトで造られた・・・」

 

「えぇ、ウルム=マダナイトですね

そしてその純煌式武装の銘を《黒炉の魔剣(セル=ベレスタ)》というのですが・・・

貸出データは残ってなかったのですが不思議なことに実戦データだけが記録されていたのです」

 

「それが5年前・・・

つまり姉さんがこの学園にいた時期と被る・・・」

 

「えぇ」

 

クローディアは静かに頷いた

煌式武装のデータはしっかりしている

それも純煌式武装ともなればなおさらだ

その純煌式武装の貸出データがなく実戦データだけが残されているというのもおかしな話だった

そしてその実戦データもあいまいであくまで“使われた”という記録だけだった

どこで、そして誰との対戦時に使われたという詳細な記録はなにひとつ残されていなかったとクローディアは語った

 

「確かに気になるけど、姉さんのことだからきっと無事だと思うよ

なにも言わなかったのもきっとなにか理由があったんだと思うから・・・」

 

「お姉さんのこと信じているんですね」

 

「うん」

 

綾斗は頷いた

不安がないわけじゃない、だけど綾斗は姉である遥の強さを誰よりもしっている

姉が負けるはずがないと綾斗は信じて疑わなかった

 

「特待生には優先的に純煌式武装の貸し出しができますがどうしますか?」

 

それは姉の使っていたとされる純煌式武装をみれるということだ

綾斗は興味をひかれた

 

「うん、じゃあ、その《黒炉の魔剣》ってやつを使うかどうかはまだわからないけど見てみたいな

姉さんが使っていたとされる純煌式武装を・・・」

 

「わかりました、それではそのように手配しますね」

 

「あぁ、それと忘れるところだったけど決闘の時に言っていた最後の転入手続きって・・・?」

 

姉のことで忘れそうになったが確かにユリスとの決闘の時そんなことを言っていた

 

「あぁ、あれは・・・・嘘です

ユリスは真面目ですからあぁ言えば退くのがわかっていましたから

手続きなんてなーんにも残っていませんよ」

 

「そ、そうなんだ・・・」

 

あっさりと嘘だと告げられ

綾斗は微妙な表情をする、たとえ嘘だとしてももっと引っ張るか誤魔化すかすると思っていた綾斗だがこんなあっさりネタ晴らしするとは予想外だった

 

「あぁ、それと黒炉の魔剣の件ですが、日程が決まり次第書類をもって伺いますので今日はもういいですよ

貴方のクラスの担任には話を通してありますので」

 

「それでは失礼します」

 

綾斗は一礼してから生徒会室を後にした

 

「ふふふ、貴女が言っていたとおり面白い方ですね

シルヴィア

あなたには少々悪いですが私の“望み”のために彼には動いてもらいましょう

ですから怒らないでくださいね

なにもあなたの騎士を取ろうとは思っていませんから・・・」

 

クローディアは綾斗が去った生徒会室で静かに呟いた

だが、それは綾斗が大いなる戦いに巻き込まれることを意味していた・・・

綾斗の知らないところで歯車は静かに動き出していた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「というわけで特待転入生の天霧綾斗だ

適当に仲良くしろよー」

 

担任らしき人から綾斗の紹介されたがなあまりにも雑で適当な紹介だった

綾斗のクラスの担任は谷津崎匡子だ

谷津崎教師は教師とは思えないものを片手に担いでいた

釘バットだ

そのようなものは教師ではなく不良学生が持つようなものだ

決して教師がもっていいものではない

 

「おら、お前の番だ」

 

担任に促された綾斗は自己紹介する

 

「えーっと、天霧綾斗ですよろしく」

 

綾斗も案外人のことを言えるものではなく適当でそっけない挨拶だった

 

「おまえの席は調度いい

火遊び相手の隣だ」

 

「だ、誰が火遊び相手ですか!?」

 

火遊びと呼ばれた生徒は納得がいかなかったらしく立ち上がり抗議した

その火遊びと呼ばれた少女は先程決闘をしたユリスだった

 

「お前以外に誰がいるんだよ?

朝っぱらから派手にやらかしやがって」

 

「ぐ・・・」

 

谷津崎はからかうような口調でユリスに言う

確かに火遊び相手という呼び名はあんまりだとは思うが、朝っぱらから女子寮を吹っ飛ばせばそう呼ばれてもしかたないのかもしれない

 

「まさか、同じクラスとはね」

 

「笑えない冗談だ」

 

ユリスはそれだけ言うと綾斗から視線を外した

 

「あれ・・・?」

 

辺りを見渡してみると綾斗の左隣の席が空席なことに気付いた

担任の谷津崎教師はなんも言ってなかったし自分と同じ転入生が来るわけでもなさそうだと判断しただ単に今日は休みかもしれないと思い、どうせ明日も学校だ

その時にでも挨拶しようと考えた綾斗だった

 

「あぁ、今朝は色々あったけどこれからよろしく」

 

綾斗は頭を切り替え、空席のことよりもユリスと仲良くできないかと声をかける

 

「お前には。借りができた、要請があれば一度だけ力を貸す

だが、それ以外はなれ合うつもりはない」

 

ユリスは綾斗に話しかけられもう一度視線を綾斗に戻したが、話が終わると話すことはもうないと言うようにユリスはそっぽを向いた

さっきから綾斗も思っていたことだがどうやら歓迎されていないようだ

 

「ハハ、どうやら、ふられたみたいだな」

 

からかうような口調で話しかけてきたのは調度綾斗の後ろの席の生徒だ

 

「えっと、君は?」

 

「自己紹介がまだだったな

オレは矢吹英士郎

一応、ルームメイトってことになる

まぁ、よろしくな」

 

「ルームメイト・・・?

あぁ、もしかして寮の?」

 

「おうよ、基本、寮は二人で一部屋だからな」

 

「じゃあ、オレが来るまでは一人で使ってたんだ

悪いね、狭くしちゃって」

 

「別にかまわねぇぜ

賑やかなのは大歓迎だからな」

 

「おら、そこうるせぇぞ!!」

 

谷津崎の怒声が聞こえ始めたので、綾斗と矢吹は授業に集中することにした

授業はそんな苦でもなかった

そんな難しいことをやるのでもなくそこが一番不安だった綾斗だったが普通についていけそうで安堵した

そこまではよかったのだが問題はそのあとだった

授業が終わった途端生徒たちが一斉に綾斗に集中し質問し始めたのだ

内容は綾斗自身に関することは本当にすくなくほとんどがユリスに関することだけだった

質問が終わるころには綾斗もぐったりして疲れ切っていた

 

「ハハ、お疲れさん

やっぱ、特待生ともなると人気だねぇ」

 

矢吹がからかうような口調でぐったりしてる綾斗に言ってくる

 

「彼らが興味あるのはオレじゃない」

 

「へぇ・・・」

 

矢吹が感心したように眼を細めた

 

「彼らはオレを通してユリスのことを知ろうとしてた

違う?」

 

「おまえ、案外鋭いな

まぁ、ほとんどあってるぜ

あいつらはお前を通してお姫様のことを知りたがってる」

 

「あと、気になったんだけど皆ユリスのことをお姫様って言ってるけどあだ名かなんかなの?」

 

「その話は放課後にしようぜ

聞きたいこと話してやるよ

知ってる範囲でな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へー、ってことはユリスはあだ名とかでもなく本当にお姫様なんだね」

 

放課後、綾斗は矢吹からユリスがリーゼルタニアって国の第一王女だということを聞いた

最初は耳を疑った綾斗だが矢吹の話は信憑性のある話だったため、綾斗はすんなり信用した

 

「あぁ、それに

あだ名ならちゃんとあるぜ?」

 

「え?」

 

「《華焔の魔女(グリューエンローゼ)

それがあの姫さんのあだ名だ」

 

「へー」

 

その時矢吹の端末に着信が入る

矢吹は慣れた手つきで通話をタップする

 

「はいはい、なんすか先輩」

 

「なんすかじゃなーい!!

原稿今日まででしょうが!!」

 

「あ、やっべ

すぐ行きまーす

ってなわけだ天霧

また後でな」

 

「あ、ちょっと待って」

 

「ん?

どうしたんだ天霧?」

 

矢吹は急いだ足取りで綾斗に背を向け歩いていく

そんな矢吹を綾斗は思い出したかのように呼び止めた

 

「これ、貸してくれたの矢吹だろ?

まぁ、これがなかったらユリスも見逃してくれたかもしれないから複雑ではあるけど一応礼を言っておくよ」

 

綾斗は先程の決闘で使った煌式武装の発動体を矢吹に差し出す

 

「確かにおまえにこれを渡したのはオレだが、どうしてオレだと?」

 

「んー、声かな?」

 

「あの状況下でオレの声を覚えてたってのか」

 

「借りたものは返せと姉さんが口を酸っぱくさせるほど言ってたからね」

 

矢吹は目を細めた

いくら綾斗がユリスを上回る実力者でも矢吹の声をあの状況下で覚えてたってのが矢吹にしてみれば驚きだった

あの出来事は綾斗のしてみれば予想外の出来事だったはずだ

その中で矢吹の声を判別し煌式武装の持ち主だと判断した学生レベルの分析能力を超えていた

 

「へぇ、面白いなおまえさん

まぁいいやサンキュ

じゃあな」

 

矢吹は発動体を受け取ると今度こそ綾斗に背を向けた

 

「じゃあ、オレも行こうかな・・・」

 

綾斗は矢吹を見送ると寮へと戻っていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

のだが・・・

 

「あれ、ここは通れないのか・・・」

 

綾斗は近道をしようとして学園内の中庭を通り抜けようとしたのだがどうやら夕方以降はゲートが閉じてしまうらしい

 

「・・・んであんなやつと決闘した!」

 

綾斗がのんびりと中庭を歩いていると若い男の声が聞こえてきた

声は怒声なためなにかのもめ事だろうと綾斗は判断した

だが、首を突っ込む必要性も感じないため綾斗は中庭からの脱出に専念しようとした

 

「答えろ、ユリス!!」

 

知り合いの名前に綾斗は声のするほうに足を向けていた

 




言いたいことは前書きで言ったのでではチャオチャオ


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四話

皆さんお久しぶりです
当初は去年の11月に投稿を予定していたのですがなかなか投稿できず申し訳ありません
ではどうぞ


「答える義務はないな、レスター

我々は誰もが自由に決闘する権利を持っている」

 

「そうだ

当然オレもな」

 

綾斗はこそこそと移動し木影から様子をうかがう

そうしてみると片方は綾斗が思った通りピンク色の髪の少女―ユリスだった

そしてもう片方は確かレスタ-と呼ばれていた

かなり大柄な男性だ

二人は互いに睨みあっていてとても仲がいいとはいえなくむしろその逆で仲が悪いと言った方がいいかもしれない

 

「同様に、我々は決闘を断る権利も持っている

何度言われようともう貴様と決闘するともりはない」

 

「なぜだ!!」

 

レスターは声を荒げる

 

「はっきり言わないとわからないのか?」

 

ユリスは溜息を吐き立ち上がる

 

「きりがないからだ

私は貴様を三度退けた

これ以上はいくらやっても無駄だ」

 

「次はオレが勝つ

たまたままぐれが続いたくらいで調子に乗るなよ

オレは、オレ様の実力はあんなもんじゃねぇ!」

 

「そうだ、そうだレスターの実力はあんなもんじゃないぞ」

 

レスターが連れてる取り巻きの一人小柄で太った男子学生がレスターに便乗する

 

「ならばまずそれを証明してみろ

私以外の相手でな」

 

ユリスはレスターに背を向ける

 

「待て、話はまだ終わってn・・・」

 

レスターがユリスを引き留めようと肩を掴もうとしたその時・・・

 

「あれ、ユリス?

奇遇だねこんなところで会うなんてさ」

 

まさに狙っていたかのようなタイミングで綾斗はユリスとレスターの前に姿を現した

あまりにもタイミングがよすぎたせいかユリスもレスターも訝しげにこちらをみて睨んできている

 

「お前は・・・

なんでここに・・・」

 

「ハハハ・・・

道に迷っちゃってさ・・・」

 

「なんだてめぇは・・・」

 

レスターは初対面にも関わらず綾斗を睨みつける

 

「あぁ!!

レスターこいつだよ

例の転入生!!」

 

小柄で太った男子学生が思い出したかのように綾斗を指さす

 

「なんだと・・・?」

 

先程も綾斗を睨んでいたレスターだったが小太りの学生からそれを聞いてさらに睨み強くする

綾斗はそんなレスターを気にせず流していた

 

「で、ユリスこちらは?」

 

「・・・・レスター・マクフェイル

うちの序列九位だ」

 

ユリスはそれぐらい知っておけという視線を綾斗に送るが軽くため息を吐いた後答えた

 

「へぇ、君も冒頭の十二人なんだすごいなぁ」

 

「・・・・・・・」

 

ユリスはなにを白々しいと内心思っていた

先日の決闘で綾斗はユリスも本気ではなかったにしろユリスを圧倒するほどの実力を持っているのは確かだ

それに綾斗はまだ本気をみせていないのはユリスにも理解できた

そんな男がユリスより序列の低いレスターにすごいなぁなどといっているのだユリスにはふざけているようにしかみえなかった

まぁ序列があてにならないといえばならないが・・・

それにこれはユリスが思ったことだが綾斗の実力の底がみえなかった

ユリスもこのアスタリスクで結構戦ってきた

すべてはユリスの“願い”のために・・・

そのためある程度は相手の実力がわかるつもりだった

だが実際綾斗と戦ったユリスが感じたのは本当に底が見えない強さだった

 

「オレは天霧綾斗よろしく」

 

綾斗はそういうと右手をレスターに向けて出す

レスターと呼ばれた男は遠目からでも大柄なことはわかっていたが近くで見るとさらに大きく見えた

身長は大体2mはあるだろう

そして鍛え抜かれた身体も見事なものだった

普通、星脈世代は身体を鍛えてもそんなに見た目的特徴はまずでない

星脈世代は強靭でしなやかなのが普通だからだ

だがレスターは身体的特徴がでるほどトレーニングをつんだのだろうそれだけでレスターが尋常ではないほどの鍛錬を積んだことがわかる

 

「こ、こんな小僧と闘ってオレとは闘わないだと・・・?」

 

レスターは身体を震わせながら怒りを隠そうともせず呟く

言葉には苛立ちも感じられる

 

「ふざけるな!!

オレはてめぇを叩き潰す、どんな手を使ってでもだ!!」

 

レスターは綾斗からユリスに視線を戻しそう宣言する

発言が悪役のそれだがレスターはそんな汚い手は使わないだろうと綾斗は感じていた

なによりレスターはユリスとの決闘に拘っていたし、それにただ単に叩き潰したいだけならいくらでも手はあるはずだ

それをしないのはレスターがあくまで正々堂々の勝負に拘っているからだ

そしてレスターはそのままユリスに詰め寄った

 

「ちょ、ちょっとレスターさん、落ち着いてください

さすがにここじゃまずいですって・・・」

 

レスターの取り巻きの一人今度はずいぶんと痩せていてあまり強い印象はうかがえない

痩せた男子学生がレスターを宥めようとする

だがレスターは聞く耳をもたずユリスを睨んでいる

 

「不可能だな

少なくとも貴様が今のその性格を直さないかぎりはな」

 

「なんだと!?

くそ・・・!!」

 

「レスターを甘く見てると後悔するぞ

次こそは・・・」

 

「やめとけ、ランディ!!」

 

ランディと呼ばれた小太りの学生がレスターのことをなにか言おうとするがレスターがそれを止めた

 

「オレは諦めねぇぞ

絶対にオレの実力を認めさせてやる!!」

 

レスターはそう吐き捨てるとユリスに背を向ける

のこりの二人も慌ててレスターを追いかけた

 

「はぁ、やれやれだ」

 

レスター一行がいなくなるとユリスは呆れたように深い溜息を吐いた

 

「アハハ、余計なお世話だったかな」

 

「まったくだ、おかげで普段より絡まれたではないか」

 

「それはごめん

って普段からあんなことを?」

 

「レスターは私が気に食わないらしい

この手の輩は少なくないがこうもしつこいのはあいつぐらいだな」

 

「だけど序列9位ってことは相当だよね?」

 

綾斗の言う通り序列9位になれるのは相当な実力者ということだ

この星導館の序列はそんなに甘くはない

それはレヴォルフやクインヴェールなどほかの五学園にもいえることではあるが・・・

 

「強いか、弱いかで言えばまぁ強い方であろう

だが私ほどではあるまいしそもそも序列なんてものはあてにならん

序列入りしていなくても実力者はいるしな」

 

ユリスはそういうと綾斗をみた

綾斗はその視線からにげるかのようにユリスから視線をそらす

確かに綾斗は序列入りしていないとはいえかなりの実力者であることはユリスにも大方ばれているだろう

それに“今の状態”でもかなりのところまでこのアスタリスクで闘えると綾斗なりにも感じていた

決して慢心しているわけではないがユリスと闘ってわかったのが姉である遥の方がはるかに強いということだ

だがいくらアスタリスクでもこの星導館内での話だ

流石に星武祭ともなるとどこまでいけるかわからない

なにせ六学園の実力者たちが集まるのだから

 

「私からも質問がある」

 

「えっと、なにかな」

 

「今朝の決闘でおまえは流星闘技を使ったな?

どうやった」

 

「あぁ、あれは流星闘技じゃないよ

ただの剣技さ

うちは道場をやってるから」

 

「ただの剣技だと・・?」

 

ユリスは綾斗の話を聞いて信じられないといった表情をした

確かに煌式武装なら《魔女》であるユリスの技を切り裂くこと自体は不可能ではない

だがそれをするには達人クラスの剣の腕が必要だ

それなら、無調整の煌式武装で流星闘技を使ったと言われた方がまだ信憑性のある話に思える

 

「おまえ、どんな腕をしている?

決闘の時にも思ったがおまえ底が知れないぞ」

 

ユリスは綾斗の出鱈目な力に戦慄を覚えた

 

「ハハハ、たまたまさ」

 

「ふん、まぁいいさ

そのとぼけた面がいつまでもつかが見ものだな

ここはそんなに甘い場所ではないのだからな」

 

「甘く見てるつもりはないんだけどなぁ・・・」

 

綾斗は苦笑いを浮かべた

 

「そういうユリスはなんで闘ってるのさ」

 

「なに?」

 

そんなことを聞かれると思ってなかったユリスは綾斗を見る

 

「聞いたよお姫様なんだって?」

 

「確かに私はリーゼルタニアの第一王女だ

だが、それがどうした?

ここにいる者は多かれ少なかれ、ここでしか手に入れることのできないなにかを掴むために闘っている

肩書や身分は関係ない」

 

「・・・・ユリスが望むものって?」

 

「金だ」

 

「私には金が必要なのだ」

 

綾斗にはユリスの言っていることがいまいち理解できなかった

ユリスは王女―――つまり裕福な生活をしてきたはずだそれがなんで金が必要なのか綾斗には理解できなかった

 

「あぁ、それでパートナーを探しているんだね」

 

綾斗は決闘の時のクローディアとユリスの会話を思い出していた

金が必要ということは、序列の報奨金もそれなりにもらえたはずだ

それでも足りないということは鳳凰星武祭での優勝者の願いで金を望むに決まっている

だがユリスのことだそのパートナー探しに難儀していることは大体理解できる

 

「べ、別に私にパートナーが見つかってないのは私に友人がいないからではないぞ?

いや、このアスタリスクで友人がいないのは事実ではあるが・・・

それとは関係なく私の基準に値するものがいないだけだ」

 

「ちなみにその基準値は?」

 

綾斗はなんとなくその基準値に嫌な予感がしたがきいてみることにした

 

「そうだな・・・

まずは私と同程度の実力者――というのは流石に望みすぎなので、せめて冒頭の十二人クラスの戦闘力

そして清廉潔白で頭の回転が速く、強い意志と高潔な精神を秘めた騎士のような者だな」

 

「・・・・・・・・」

 

綾斗はユリスのその要求に言葉がでなかった

どう考えてもそんなパートナー見つかりっこない

仮に見つかるとしてもかなりの低確率だしユリスの申し出を受けてくれることさえわからないのが現状だ

もうちょっとハードルを低くしたほうがいいんじゃないかと思うが口にするとややこしくなりそうなので綾斗は表情を引きつらせながらも黙っていた

 

「さて、私はそろそろ戻るが―――――そういえばお前はどうしてこんなところにいたのだ?」

 

ユリスの疑問はもっともだ

そもそも先程のレスターの件はタイミングをみて入ってきたのは明らかだった

だが、それとここにいるのは話が別だ

 

「あー、うん、ちょっと迷っちゃってね・・・」

 

「は・・・?

ぷっははははははははははは」

 

ユリスは声をあげて笑った

綾斗はこのときこんな風に笑うこともできるんだなと内心思っていた+

 

「朝もあんな目にあったのだから少しは道を覚えるなりしたらどうなのだ・・・?」

 

ユリスは余程おかしいのか王女様らしからぬお腹を抱えて声をあげて大笑いをした

 

「へぇ・・・」

 

「む、なんだ

人の顔を見て・・」

 

綾斗はユリスの笑った顔を見て微笑ましい表情を浮かべた

ユリスはそんな綾斗の表情が不思議に思ったのかユリスは不思議そうに首を傾げた

 

「あ、いや、そんな表情もできるんだなーって・・・」

 

「なっ!?」

 

ユリスは綾斗のそんな言葉に顔を赤くする

 

「い、いきなり、何を言う

私だって、笑うことぐらいある!!」

 

「だったら、普段から愛想よくしてればいいのにもったいないよ

それに女の子は笑顔だってオレの幼馴染が言ってたよ」

 

「余計なお世話だ

おまえこそ、その府抜けた顔を何とかしたらどうだ」

 

ユリスは照れ隠しなのか大声で綾斗に怒鳴り散らすとても一国に王女とは思えないふるまいだ

 

「ねぇ、ユリス、オレに学園内を案内してくれないかな」

 

「な・・・!?」

 

ユリスは綾斗の突然の申し出に後ずさる

 




次は早めに投稿できるようにしたいと思います
ではチャオチャオ


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五話

本当に申し訳ありません!!
かなり遅れてしまいました!!

ゴッドイーターやっとデータ修復できた
まぁデータ消えたから取り戻してました

本当すいません・・・

ではどうぞ


「なんの冗談だ

どうして、私がそんなことをせねばならんのだ」

 

ユリスは綾斗の申し出に露骨に顔をしかめる

 

「だってほらオレはユリスの言う所の“貸し”を持ってるんでしょ?

ユリスだって言ってたじゃないか一度だけ頼みを聞いてくれるって」

 

「確かにそれは言ったが、そんなのでいいのか?」

 

「そんなのって?」

 

「はなはだ不本意ではあるが、私はお前に危機を救われた

決して小さくない借りだ

望むのならある程度のことは・・・・

い、いや、破廉恥なことは不可能だが・・・

例えば、《冒頭の十二人(ページ・ワン)》としての私の力を貸すこともできるのだぞ?」

 

「つまり、戦力としてユリスの力を貸してくれるってこと?」

 

「そうだ」

 

ユリスは頷いた

 

「それはいいや」

 

ユリスの提案に綾斗はあっさり拒否の反応を示し首を横に振った

実際綾斗の戦闘能力ならユリスの力など借りなくともどうとでもなるのが現状である

 

「それより、今は学園に慣れる方が先決だしね」

 

あっけらかんという綾斗をユリスは探るような眼で見ていたがやがて苦笑いした

 

「底の読めない男だ

それともただのバカなのか?」

 

「その二択なら後者じゃないかな」

 

綾斗は自分がバカだといっているのだが、その回答にユリスは深く息を吐いた

 

「よく、言う

だが、まぁいい、そういうことなら案内してやる」

 

「ありがとう

助かるよ」

 

「ま、まぁ、貸しは貸しだしな」

 

ユリスは照れくさそうに言った

 

「あ、あとひとつだけいいかな」

 

「む、なんだ?」

 

「えーっと、シルヴィア・リューネハイムって知ってるかな?」

 

「なんだと!?」

 

ユリスは綾斗の問いに大きく眼を見開き、驚愕の表情をした

 

「え、聞いたらいけないことだった?」

 

綾斗はユリスの反応からまずいことでも聞いたのかなと内心焦っていた

またユリスの機嫌を損ねて炎をぶっ放されてはたまったものではない

 

「そうではない・・・

おまえ、本当に何も知らぬのだな

アスタリスクに来るとなった時点で少しは他校の<冒頭の十二人>ぐらい調べておけ

まぁよい

シルヴィア・リューネハイム・・・

クインヴェール女学院の序列1位だ

戦律の魔女(シグルド・リーヴァ)》などと言われている」

 

「戦律・・・

ハハッ・・・

シルヴィらしいな・・・」

 

綾斗はユリスからシルヴィの二つ名を聞いて納得した

確かに彼女の能力を考えれば“戦律”という言葉は綾斗の中でしっくりきていた

 

「お前、あの戦律の魔女と知り合いなのか?」

 

ユリスは恐る恐るといった感じで綾斗に尋ねた

 

「あー、うん、幼馴染なんだよ

っても数年会ってないんだけどね」

 

「あのシルヴィア・リューネハイムと幼馴染・・・・」

 

ユリスは綾斗の言っていたことが信じられないのか未だに呆然としていた

 

「ユリス?

おーい」

 

綾斗は流石にユリスが心配になり近くで手を振ったり、ユリスの肩をゆすったりしてユリスの意識を現実に引き戻させた

綾斗はこんなことになるんだったら言わなきゃよかったなと後悔した

その後ユリスに質問攻めされることなく平和的に男子寮へ戻ることができた

先程のユリスの様子から頭がついていかず質問攻めにならずに済んだのかもしれない

明日質問攻めにあうかもしれないと考えると頭痛がしてくる綾斗だった

男子寮の自分の部屋に戻ってきた綾斗はベットに身を投げ出し仰向けになる

 

「シルヴィ・・・

まさか、君が序列一位なんて思わなかったよ・・・」

 

綾斗は先程のユリスの言葉を思い出していた

数年前、シルヴィの都合で離れ離れになった綾斗とシルヴィ

離れ離れになっても連絡は取りあっていたしシルヴィからの定時連絡でこのアスタリスクに籍を置いていることもわかっていたが序列一位っておう情報はまったくもって想定外だった

彼女の能力を別れる前に何回か見せてもらったことがある綾斗だったがかなりの上位だろうなとこのアスタリスクのランキング制の話をユリスから聞いた時思ったが一位と綾斗も驚愕した

 

「やっぱり、すごいなぁ~

シルヴィは・・・・」

 

綾斗は今は遥か高みにいる幼馴染を素直に評した

 

「だけど・・・

いつか君のいるところに追いつくよシルヴィ・・・

必ず・・・」

 

綾斗は新たな決意を胸にこれからのアスタリスクの生活に胸を躍らせた

そして意識は深い眠りへと落ちていく・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

草の香りのたつ初夏の夜だった

その日、少年は道場の片隅で正座させられていた

薄闇の中、子供らしい愛嬌のある仏教面がわずかに見えた

どれだけの時間そうしているのか少年にももうわからない

 

「今度はなにやらかしたの?

お父さん、カンカンだったよ」

 

ふいに道場にやわらかい声が響いた

 

「僕は悪くない」

 

少年はすねたようにそう言い、ぷいとそっぽを向いた

現れた少女は少年の目線を合わすかのように身を屈めた

外見的に少年より5つか6つは年上だろう

 

「綾斗」

 

少女は宥めるように少年の名前を呼んだ

 

「だって、お姉ちゃん

あいつらが!!」

 

「綾斗!!」

 

鋭さを増した声が道場に響いた

少年は身をすくませた

 

「うぅ・・・」

 

「言い訳なんて男らしくないぞ」

 

少女の声に少年の顔が歪み瞳から涙がにじんだ

 

「でも、綾斗が本当に反省してるなら話を聞いてあげる」

 

「本当!?」

 

先程の表情から一転、少年の表情が明るくなる

さっきの涙は演技なんじゃないかと思うくらいの手のひら返しだ

 

「・・・・ちゃんと反省してる?」

 

少女は疑いの目で少年をみた

まぁ少年の表情の変わりようをみれば疑いたくなる気持ちもわからなくはないだろう

 

「うん、反省してる!!」

 

少年も明るい表情で言うのだからまったくもって説得力がない

 

「本当に?」

 

「うん!!」

 

「本当に本当?」

 

「うん!!」

 

「本当に本当に本当?」

 

少女はしつこく本当に反省しているのかときいてくる

このしつこい門問に少年は・・・

 

「お姉ちゃん、重い女は嫌われるってサヤちゃんが言ってたよ」

 

「・・・・・・・・」

 

少女は無言で手を握りグーの形を作りそのままの形のまま少年に振り下ろした

 

「・・・ごめんなさい、反省してます」

 

「よろしい」

 

少女は満足したかのように深く頷いた

 

「じゃあ、まずそこに座りなさい」

 

「さっきから座ってるよお姉ちゃん」

 

「せ、正座しなさい」

 

「ずっと正座だよ」

 

少女は先程の恥ずかしさをまぎわらすかのように咳ばらいをすると制服のポケットから黒いフレームの眼鏡を取り出しそれをかけた

 

「それでなにがあったの?」

 

少女が少年に問いかける

 

「ぼくはなにもしてない!!

あいつらがしつこく立ち合えって言うから・・・・!!」

 

少年の話からすると道場の門下生が素振りばかりで一度も試合などの立ち合いをしているところをみたことがなかった少年―綾斗を門下生たちがからかったのだ

少年は他の門下生との試合を少年の父親は固く禁じた

そのため、他の門下生からちょっかいやからかわれたり、バカにされたりすることは多々あった

少年のところの道場は門下生自体はそんなに多くはないが門下生のほとんどが《星脈世代》だ

《星脈世代》が一般人への暴力は法律で禁止されている

それは未成年でも変わらない

だからこそ今回は同じ《星脈世代》の綾斗がほかの門下生たちのターゲットになってしまった

だが今回のようなことはこれがはじめてではない自分のことなら綾斗も軽くながして終わりだった

だが、今回は門下生たちも綾斗自身のことをなにを言ったて相手にされないと悟ったのだろう

門下生たちは綾斗の姉のことをバカにした

いくら綾斗でも自分の大好きであこがれている姉を馬鹿にされれば綾斗も我慢がならなかった

そして結果は綾斗の圧勝だったというわけだ

 

「それにあいつらお姉ちゃんのことまで・・・!!」

 

綾斗は悔しそうに唇を噛んだ

自身の姉の強さは綾斗がわかっている

それなのに門下生たちが立ち合いしたこともない自身の姉の悪口を言うから綾斗も我慢ならなかったということらしい

なにより綾斗の姉はこの道場の門下生の中では一番の実力者だ

それゆえ綾斗ほどではないが彼女も立ち合いを禁止されている

 

「だから少しだけ相手をしてやったんだ!!」

 

「ふむ・・・」

 

「もー、綾斗くんが相手したら洒落にならないでしょ?」

 

道場の扉から綾斗の姉とは別の声が聞こえた

 

「シルヴィ・・・」

 

歳は綾斗とそう変わらないだろう

綺麗な薄いパープル色の髪の少女だ

 

「綾斗君

他の門下生と比べると強すぎるんだから

そこは我慢しないとダメでしょ?」

 

シルヴィと呼ばれた少女は優しく綾斗に注意する

 

「いくら大好きなお姉ちゃんのこと悪く言われたからってそこは耐えないと」

 

「なっ・・・!?」

 

少女は悪戯っぽい笑みを浮かべた

綾斗は本人を前にそんなことを言われてみるみる顔がりんごみたいに赤くなってゆく

 

「シルヴィアちゃん来てたんだ」

 

「はい、おじゃましてます」

 

シルヴィは綾斗の姉に軽く会釈する

 

「・・・ねぇ、綾斗お父さんがなんであなたに試合を禁じてるかわかる?」

 

綾斗は姉の問いに首を横に振った

 

「さっき、シルヴィアちゃんが言ったのもあってるわ

貴方は強い

いずれ必ず私を超えるくらい強くなる

お父さんがあなたに立ち合いを禁じてるのはね

力というのは・・・人をそして自分を・・・

綾斗自身を傷つけてしまうかもしれないからよ

これはシルヴィアちゃんにも聞いてほしいの

貴方にも関係してくることだと思うから・・・・」

 

「はい・・・」

 

シルヴィは静かに頷いた

 

「いい綾斗

力に頼って身を任せている限り、痛みを感じることはない

でも、そのかわり人の痛みも感じることが出来ない

お父さんも私も綾斗とシルヴィアちゃんにはそんな人間になってほしくないの」

 

「「・・・・・?」」

 

綾斗もシルヴィも首を傾げている

どこか大事な話ということは二人にもわかっているだろうだが、理解はしてないみたいだった

 

「尊厳を守るために闘うことは大切よ?

誰もが持っている正当な権利だから間違ってはいないわ

でもね綾斗はまだその結果に関して責任を持てない

無責任と正しさは相いれないものだから」

 

「よくわからないよ」

 

綾斗に続くようにシルヴィもうんうんと頷いている

 

「とにかく綾斗にはまだ早いってこと」

 

「じゃあ、いつになったらいいの?」

 

「うーん、そうだなぁ」

 

少女は考える仕草をし少しの間唸る

 

「強いて言うのなら綾斗が成すべきことを見つけた時かな」

 

「なすべきこと・・・」

「そう、その時は綾斗が力の使い方が分かった時だから」

 

「お姉ちゃんは?」

 

「ん?」

 

「お姉ちゃんは成すべきこと見つかったの?」

 

綾斗の質問に少女は驚き目を見開いた

この少女もまさか弟がこんな質問をしてくるとは思わなかったのだろう

少し驚いたが少女はすぐに表情を柔らかくした

 

「もちろん、私が成すべきことは綾斗

貴方を守ることよ」

 

「僕を守る?」

 

「そう、それが私にとってなにより大切で成すべきこと」

 

「じゃあ・・・じゃあぼくもお姉ちゃんを守るよ

それが僕の成すべきことだ!!」

 

少女は綾斗の言葉に笑うと人差し指で綾斗の額を軽く小突いた

 

「うれしいこといってくれるなぁ

でもあなたの成すべきこととは言わないけど守るべき人は他にいるでしょ?」

 

少女はそういうと目線でシルヴィのことを指した

 

「も、もちろんシルヴィも守るよ!!

お姉ちゃんもシルヴィも守る!!」

 

「えぇ!?」

 

シルヴィは突然の綾斗の宣言に驚き頬を赤く染めた

 

「頼もしいね

でもね綾斗お姉ちゃんよりまだ弱いのに守れるの?」

 

「うぅ・・・」

 

姉の指摘に綾斗はしょぼくれて落ち込む

 

「冗談よ

さっきも言ったけどあなたは必ず強くなるわ

私よりも絶対に

だけど、私を守る必要はないわ

シルヴィアちゃんを守ってあげてそれがきっとあなたの成すべきことを見つけるきっかけになるはずだから」

 

少女は気付いていた自分の弟はもう成すべきことをみつけ始めてると

でもまだそれを自覚していないだけだと・・・

きっとシルヴィを守らせることで綾斗は必ず成すべきこととはなんなのかに気付くと・・・

そして少女は綾斗とシルヴィの背ぐらいまで屈むと二人を抱きしめた

 

「綾斗、お姉ちゃんのために怒ってくれてありがとう

大好きだよ

シルヴィアちゃん綾斗のことよろしくね・・・」

 




次は一か月以内に投稿したいなぁ~(白目
ま、まぁ気長に待っててくださいではチャオチャオ


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六話

な、なんとか・・・
連休前に投稿できた・・・・
これで、連休満喫できる・・・・ぜ


綾斗は毛布を振り払い、跳ね起きた

時間を確認すれば調度午前四時ぐらいだった

 

「・・・・・また随分と懐かしい夢を見たもんだな」

 

綾斗は身体をほぐしながらしみじみと呟く

さっきまでみていた夢は数年前の出来事だ

シルヴィがいて、姉がいた当たり前のような光景だけどとても幸せだったあの頃

今のこの時が幸せじゃないと綾斗自身思わないわけじゃないだけど・・・

姉は今行方知れずだしシルヴィは会おうと思えば会える

だけど星導館とクインヴェールじゃ中々難しい

それが今の現状だ

綾斗は少し・・・ほんの少しだけ寂しいと胸の奥で感じた

 

 

 

 

 

 

綾斗は雑念を振り払うかのように首を横にぶんぶんと横に振ると着替え始めた

星導館の制服ではなく訓練用のシャツと短パンだ

綾斗が朝の四時に起きたのもこのためだ

それは綾斗の習慣のため身に染みているのだろう

最後に煌式武装をホルダーに入れいざ朝練に行こうとした途端

 

「おー、さすが特待生

朝練とは真面目だねぇ」

 

綾斗の向かいのベッドら声がした

綾斗の部屋のルームメイト矢吹英史郎の声だ

まだ午前四時を少し過ぎた時間だ

綾斗もこんな時間にルームメイトが起きているとは思わず少し驚いた表情をした

 

「悪い、矢吹

起こしちゃったかな」

 

「いんや、気にすんな

もともと眠りは浅い方なんだ

まぁ、そんなわけで誰かさんの寝言が聞こえた気がするんだが気のせいだろ」

 

「っ!!」

 

綾斗は全身から冷汗が流れるのを感じた

なんにせよ先程の夢の内容からして矢吹の言う通り寝言を言っていたのだとしたらきっと恥ずかしいことに決まっている

 

「うん、僕もお姉ちゃんとシルヴィのことが大・・・・」

 

「うわーーーーーーーー!!」

 

綾斗は大声をだして矢吹に続きを言わせんとした

だが時間はまだ朝の四時だ

綾斗も流石にそこらへんは考慮して声量を調整している

あくまで部屋の中で声を出すにはでかいレベルの大きさだ

でないと寮の管理人がきて厳重とはいかなくても注意を受けてしまう

朝からそれはごめんだ

 

「矢吹、それは気のせいだよ

うん、きっと夢の続きでも見てるんだよ」

 

「あー、そう言われるとそうかもなー

でもそうでないかもしれないなー

・・・・ところで天霧、今日の朝食和食と洋食どっちにする?」

 

どうやら矢吹は先程の綾斗の寝言を朝食で手をうってくれるらしいが

・・・すごいわざとらしい

 

「はぁ、好きなのもってけよ・・・」

 

この先もたびたびこのネタで朝食持ってかれるんじゃないだろうかという不安に綾斗は駆られた

 

「よっしゃ、焼き魚いただき」

 

「さぁて、オレは寝なおすか

朝練がんばれよ」

 

矢吹は上機嫌でそう言うとわずか数秒で眠りに落ちた

眠りが浅くて眠りに落ちるのも早いってどんな体質なんだ・・・と綾斗は心底、疑問に思ったが今はそんなこと考えてる時間がない

仕方なしに綾斗は今度こそ朝練に向かうのだった

 

 

 

 

「ふぁ~あぁあ

眠い、眠い

おはようさんっと」

 

綾斗と一緒に登校してきた矢吹はそんなことを言いながら教室の扉を開ける

綾斗が朝練から帰ってきても矢吹は寝ていたことから早朝のあれは本当に二度寝したらしい

あんだけ寝て未だに寝たりそうな矢吹に内心呆れつつ綾斗も矢吹に続き教室に入る

 

「ユリス、おはよう」

 

綾斗は見知った桃色の髪の少女が目に入ったのでその少女に向かって挨拶をする

 

「あぁ、おはよう」

 

ユリスが綾斗に挨拶を返すと突然クラス内がざわめきだす

 

「おい、聞いたか!?」

 

「あぁ、驚いたな」

 

「あのお姫様が挨拶を返した・・・だと!?」

 

「レアだぜ」

 

「失敬な、私だって挨拶くらい返すぞ!!」

 

そんなクラスメイトたちの声を聞いてユリスは心外とばかりに立ち上がり抗議する

綾斗はそんなクラスの状況をみてユリスが普段どんななのかなんとなくわかってしまった

 

「いや、いやいきなり話しかけんな的なことを言ってたお姫様がんなこといっても説得力ないでしょ・・・」

 

綾斗が来る前のユリスを知っている矢吹が突っ込む

ユリスが序列5位になったばかりのころそれはそれは人が集まったのだが当時ユリスはうるさい、私に話しかけるなと言って周りの野次共を下がらせたのだ

 

「あぁ・・・」

 

綾斗はそれを聞いてその光景が頭に浮かんでくるようで妙に納得してしまった

ユリスの挨拶騒動が一通り落ち着いた頃、昨日は空いていた左隣のが埋まっていることに気付いた

髪色は水色でうつぶせになっているため顔はよくわからないが背は小柄な方だというか高校生というより小学生と言った方が多分納得できるだろう

 

「やぁ、お隣さん

オレは昨日編入してきた天霧―――」

 

左隣の席でうつぶせになっていたがやがて綾斗の声が聞こえたのかゆっくりと顔をあげた

その顔をみて綾斗は目を見開いたなにせその顔は数年前海外に引っ越し、離れ離れになった幼馴染の一人だったのだから

 

「紗夜!?

なんでここに!?」

 

「・・・・・・綾斗?」

 

なんだかおもしろそうだなと矢吹が会話に入ってくる

 

「なんだなんだ、おまえら知り合いだったのかよ?」

 

「あー、うん

まぁ幼馴染ってやつかな・・・」

 

「幼馴染?」

 

矢吹が疑いの目で紗夜と綾斗の二人を見つめる

 

「だったら、なんで星導館にいるって知らなかったんだ?」

 

矢吹の疑問は尤もだ

幼馴染ならそれなりに会う機会はこのアスタリスクにいる以上手続きがめんどくさいうえに時間がかかるのでしょうがないが連絡などの手段で紗夜が報告していてもおかしくない

綾斗が紗夜がこのアスタリスクにいることを知らなかったということはそれすらしていなかったことになる

また幼馴染でも仲が悪いというのなら納得がいくが紗夜と綾斗の様子を見る限りそれは限りなくゼロに近い

 

「いや、幼馴染って言っても紗夜が海外に引っ越して以来だから

だいたい6年くらいになるのかな」

 

「ふーん、ってこっちはあまり驚いていないみたいだが・・・」

 

矢吹の言う通り綾斗の反応とは対照的に紗夜はそんなに驚いてる様子は見受けられない

 

「んー、昔からこんなだったし、これでも驚いてるはず

・・・きっと、多分」

 

「本当か?」

 

「うん、ちょーびっくり」

 

「・・・いや、全然そう見えないんだけど」

 

矢吹が表情どころか眉一つ動かさずに言う紗夜を見て突っ込む

 

「でも、本当に久しぶり元気だった?」

 

首を縦に振り頷く紗夜

 

「それにしても変わらないね

紗夜は

なんか昔のまんまていうか・・・」

 

「・・・そんなことはない

ちゃんと背も伸びた」

 

「え・・・、そ、そう?」

 

綾は席から立ち上がった紗夜を見つめた

綾斗が感じる限りでは背は数年前に別れた時のまんまだ

 

「やっぱり、あまりかわってないような・・・」

 

「違う、綾斗がでかくなりすぎただけ」

 

「・・・でも大丈夫

私の予定では来年くらいには今の綾斗くらいになってる

綾斗もまだ背が伸びるだろうから調度釣り合いがとれる」

 

「いやいや・・・」

 

綾斗は紗夜の言葉に首を横にふる

紗夜自身は本気で思ってるかもしれないが一年で今の綾斗と同じ身長というと

つまり、今の紗夜の身長から計算すると30センチ以上身長がのびることになる

流石にそれはあまりにも無理だろうと紗夜の発言を否定する

 

「しかし世の中狭いものだな

運命の再会ってやつかもな」

 

「運命の再会?

矢吹はいいことをいう」

 

そう言い紗夜は握りこぶしを作り親指を突き立てる

 

「そう言えば綾斗、運命の再会と言えばシルヴィアとはもう会ったの?」

 

「あー、それはまだ・・・」

 

「まだなら、会ってやった方がいい

シルヴィアもなんだかんだで綾斗に会えるのを楽しみにしてるはず」

 

「うん、時間があるときに連絡・・・」

 

「ちょっと待て!!」

 

「どうしたの矢吹?」

 

矢吹がいきなり大声をだし

紗夜と綾斗はそんな矢吹に不思議そうな表情をする

 

「シルヴィアってまさか・・・

戦律の魔女(シグルド・リーヴァ)》シルヴィア・リューネハイムか・・・!?」

 

「それ以外に誰がいる?」

 

「あー、なるほどね・・・」

 

矢吹の言葉に綾斗はある程度察した

紗夜はわかっておらずなんだいきなりと怪訝な感じで矢吹をみているが

と言っても紗夜は表情がほとんど変わらないためわかるのは幼馴染である綾斗くらいだろう

シルヴィア・リューネハイムこのアスタリスクでその名を知らない者はいないだろう

世界の歌姫にしてクインヴェール女学院の序列1位にして生徒会長

別名戦律の魔女という名でアスタリスク内では通っている

その人気はアスタリスク内には留まらずスタリスクの外でも絶大な人気を誇っている

そんな人間の名前が紗夜の口から出たのだ矢吹が騒ぐのも無理はない

尤も、綾斗はユリスに聞くまでシルヴィアの人気を知らなかったようだが綾斗のような世間に疎い人間は例外としておこう

 

「マジかよ・・・

あの戦律の魔女と知り合い・・・」

 

「知り合いというか私と綾斗とシルヴィアは幼馴染」

 

「なにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」

 

紗夜が再び爆弾を落とし矢吹の絶叫が教室に響き渡った

他のクラスメートたちも矢吹のように騒いだりはしてないが表情は驚愕に染まっている

あの歌姫と幼馴染と聞かされればクラスメートたちの反応は当然と言えば当然だ

 

「紗夜、今の状況でそれ言わなくていいことだよね!?」

 

綾斗はこれから質問攻めにされるかと思うと頭が痛くなってくるのだった

 

「おめーら朝からうるせーぞ

HR始めっから席につけ!!」

 

いいところで担任の匡子がきて綾斗は内心助かったと心から匡子に感謝した

 

「お、沙々宮じゃねーか

昨日はどうしたんだ聞いてやるから言ってみな」

 

匡子は昨日いなかった紗夜を見つけると紗夜のところまで歩み寄り引き攣った笑みを浮かべる

口元は笑ってるが所々に青筋が浮かんでいる辺りから察するに相当怒ってるだろう

 

「単に寝坊」

 

紗夜はそんな匡子に対してもいつもの調子で答える

 

「はっはー、そうか寝坊か・・・

アホ!!

これで何度目だ

次の休日は補習だからな!!」

 

匡子はそんな紗夜に拳骨を一発食らわして教壇に戻っていく

 

「うー、痛い・・・」

 

「あはは・・・、朝に弱いのも相変わらずだね・・・」

 

紗夜は頭押さえる

いつもは表情が変わらない紗夜もこの時ばかりは涙目になり本当に痛そうだ

 

「お布団には勝てない・・・」

 

その日の授業は全部終わり今は放課後だ

綾斗は紗夜との話に花を咲かせていた

まぁ数年ぶりに会ったのだから無理もない

 

「綾斗、綾斗が使ってた刀は持ってきたの?」

 

紗夜はそういえばと思い出したかのように聞く

天霧辰明流剣術は両刃型の武器でもできないことはない。だが、綾斗自身片刃型の武器の方がやりやすいのは紗夜も知っていた

そのため綾斗は木刀か刀を使って訓練していたのをよく覚えている

 

「あー、うん、一応父さんが送ってくれるって話になってるんだけど・・・」

 

煌式武装と違い刀などの武器は手続きに時間がかかるらしく綾斗のお父さんが実家から送った刀がまだ綾斗の元に届いてないのもそれが理由だ

 

「ふーん、そうか」

 

「あーごほん、そろそろいいか」

 

ユリスがわざとらしく咳ばらいをした

さっきはトイレに行くとか言ってたので今さっき戻ってきたのだろう

 

「うん、じゃあそろそろ行こうか」

 

「綾斗、リースフェルトとどこに行く?」

 

紗夜は不思議そうに首を傾げる

 

「あぁ、実はユリスに学園を案内してくれることになってるんだ」

 

「まぁ約束だしな仕方ない」

 

「リースフェルトに・・・?

なんで?」

 

「色々あったのだ、沙々宮には関係ない」

 

「むー」

 

紗夜は不機嫌そうに眉を顰める

 

「さぁ、行くぞ」

 

「あぁ、うん

じゃあ、紗夜また明日」

 

「・・・待って、だったら私が綾斗を案内する」

 

「なっ・・・」

 

「えぇ!?」

 

紗夜の発言に綾斗とユリスが驚いたような声をあげる

 

「案内くらい私だってできる

それにリースフェルトはさっき仕方ないといった

だったら私が案内しても問題ない」

 

「え、でも紗夜って・・・」

 

「申し出はありがたいが、あいにく私は一度交わした約束を破る気はない」

 

「・・・綾斗だって嫌々やられるより私の方がいいと思う」

 

綾斗がなにか言いかけるが二人の耳には入っておらずますますヒートアップしていく

 

「い、嫌々ではない!

そもそも沙々宮は今年入学してきたばかりではないか

その点私は中等部からここにいる

どちらが正しいかは明白だろう」

 

「あの二人とも・・・?」

 

綾斗が止めようとするがとても止まるような空気ではない

 

「あら、そういうことでしたら私が一番適任ということになりますね」

 

「クローディア・・・」

 

綾斗の背後から顔を覗かせたのはクローディアだ

綾斗はなんとなく気付いていたためそれほど驚きはしなかった

 

「ユリスは中等部三年からの参加ですが私はちゃーんと一年からここの生徒ですから」

 

「・・・・誰?」

 

「なぜおまえがここにいる」

 

「あら皆さんつれないですねぇ

折角ですから私も混ぜてもらおうと思ったのですけど・・・」

 

「嫌」

 

「不許可だ」

 

紗夜もユリスもなぜかクローディアには辛辣で綾斗は流石にクローディアがかわいそうに思えてきたが当の本人であるクローディアは対して気にした様子もなく掴みどころのない笑顔を浮かべている

 

「ふむ、残念です

では用件だけ・・・」

 

クローディアは綾斗に向き直ると書類の束を綾斗に差し出した

 

「先日申し上げた純煌式武装の選定及び適合率検査を明日行います

この書類に目を通してもらって問題がないようでしたら署名をおねがいしますね」

 

「・・・結構、多いね・・・」

 

綾斗顔を引きつらせ呟く

少なく見積もっても十枚以上はある束だ

それに書類の一枚一枚には文字がぎっしりと綴られている

 

「預かりものとはいいえ、統合企業財体の資産ですからね

まぁ、形式上のものなんで簡単に読み流してくださって結構ですよ」

 

「そんなものをわざわざ持ってくるとは生徒会長が持ってくるとは生徒会もよっぽど暇なのだな」

 

「えぇ、お陰様でうちの生徒は皆いい子ですからとても助かってます」

 

ユリスの皮肉に対してクローディアは軽く流す

 

「前から思ってたけど、ユリスとクローディアって友達なの?」

 

「はい、そうです」

 

「断じて違う!!」

 

「何度か顔を合わせただけだ

それ以上でもそれ以下でもない

お前も用が済んだなら帰れ」

 

「ふふっ、ではこれをお渡ししたら帰ることにしますね

綾斗、あなた宛てに荷物が届いていましたよ

おそらくですが、貴方の部屋が不在だったため生徒会長である私の手元にきたのではないかと」

 

クローディアは肩にかけていた細長い袋を綾斗に差し出す

それは刀袋だ

ということは中になにが入ってるか確かめるまでもない綾斗がよく使っていた愛刀だろう

 

「ありがとう、クローディア」

 

綾斗は礼を言うと刀袋を受け取る

 

「綾斗の刀・・・」

 

「うん」

 

綾斗は刀袋から刀を少しだけ出すと柄を握り少しだけ引き抜き刃が露わになる

その刃は白銀でその刀身が輝いて見える

 

「おぉ・・・!」

 

紗夜が感嘆の声を漏らした

 

「それでは今度こそ私は失礼いたしますね」

 

クローディアは綾斗の刀の輝きを見届けると教室から去っていった

 

「それで学園の案内だけど二人じゃダメかな・・・?」

 

 

 

 

 

こうして綾斗はユリスと紗夜二人に学園を案内してもらうことになった

 

「ここがクラブ棟だ

うちは一部のクラブ以外あまり活発ではないが、報道系のクラブなどに文句を言いたい場合などで足を運ぶことがあるな」

 

「・・・・ふむふむ」

 

「ここは委員会センター

福利厚生に関する要望・クレームはここを通す」

 

「・・・なるほど」

 

「食堂は・・・・流石に案内する必要はないか

一応学園にはカフェテリアを含めて七つの食事処があるがここの地下は比較的すいていることが多い」

 

「それは初耳」

 

 

 

 

 

 

「沙々宮私は別にお前を案内してるわけではないのだがな」

 

綾斗たちは中庭のベンチで一休みしていた

 

「私、方向音痴だから」

 

「それでよく案内すると言ったものだな・・・」

 

ユリスは呆れた表情で紗夜に言う

綾斗は紗夜の方向音痴をわかっていたため苦笑いしている

 

「えへん」

 

「いや、ほめてないぞ」

 

「まぁまぁ、オレも勉強になったし助かったよ」

 

「そ、それならいいのだが・・・」

 

「あ、なにか飲み物を買ってくるよ

なにがいい?

おごるよ」

 

「そうだな、では冷たい紅茶を」

 

「・・・私はリンゴジュース

濃縮還元じゃないやつ」

 

「了解」

 

綾斗は二人から飲み物を聞くと高等部の校舎の方へと走っていった

 

「・・・リースフェルトもう一度聞きたい

なんで、綾斗を案内することになった?」

 

「おまえも存外しつこいな

まぁ隠すほどのことでもないしないいだろう

決闘の最中に助けられてなその借りがあるから案内することになった

それだけだ」

 

「決闘?

リースフェルトは綾斗と決闘したのか?」

 

「そうだが、知らなかったのか?」

 

ユリスみたいな《冒頭の十二人》のようなレベルの決闘はすぐさま話題になるし

テレビでも放送されるそれでも紗夜がしらないということはよっぽどこの序列という制度に興味がないようにしか見えない

 

「結果は?」

 

「途中で邪魔が入ってな

不成立だ」

 

「それはおかしい」

 

「なにがだ」

 

「綾斗とやりあってリースフェルトが無事なわけがない

綾斗とやりあえるのは精々シルヴィアかガラードワースの聖騎士くらい

リースフェルトが綾斗の相手になるわけがない」

 

「これはまた過小評価されたものだな」

 

「リースフェルトは強いそれは知ってる

でもせいぜい私と同程度それじゃ話にならない」

 

「ほう、今度は随分と大きく出たな」

 

紗夜もユリスの実力は認めていた

だが、綾斗に届くかと問われれば否だ

数年前に海外に引っ越したとはいえこの星導館で綾斗の実力を知ってるのは紗夜だ

その時でも姉である遥には及ばなかったとはいえそれでも十分門下生たちを制する実力は十分なほどあったのだ

今となっては綾斗の戦闘能力は未知数だ

紗夜では図りきれない

ユリスも綾斗の実力が自分の遥か上をいっているのはわかっている

あの時、綾斗は攻めず防御に徹していたからこそあの時ユリスは特に大きなケガをせずに済んだのだ

もし綾斗が本気でユリスに攻撃を仕掛けていたらどうなっていたかわからない

だが、

だからといって序列外の紗夜と同レベルと言われればユリスとてなにも感じないわけではない

もちろん序列がすべてではないことはわかっている

中には綾斗のような化け物クラスがいるのも事実だろう

だが紗夜は序列どころか公式序列戦に参加しているところさえユリスはみたことがなかった

そんな人間にユリスも言われたくないだろう

 

「いいだろう、ためしてみるか?」

 

「・・・・・・」

 

紗夜は無言でユリスから距離をとった

それを同意と受け取ったユリスは校章に手を翳す

 

「我、ユリス=アレクシア・フォン・リースフェルトは汝、沙々宮紗夜への決闘を・・・」

 

そこまでいいかけてユリスは跳躍していた

中庭にある噴水の影から怪しげな格好をした奴がクロスボウ型の煌式武装をこちらにむけて放ったからだ

先程までユリスがいた所には光の矢が数本刺さっている

恐らく綾斗との決闘の際に襲ってきたやつと同一犯だ

 

「ふん、またもや不意打ちか

咲き誇れ、鋭槍の白炎花(ロンギフローラム)!!」

 

ユリスは星辰力を集中し、空中に顕現した炎の槍を黒ずくめに向かって放つ

黒ずくめに防ぐすべはない綾斗のようにかわすこともできないこともないがそれは綾斗のように身体スペックがあっての話だ黒ずくめの煌式武装を見る限り中距離戦は得意そうだがユリスのような強力な攻撃はおいそれと防ぐことはできないだろう

だがそれは黒い影によって防がれる

格好からしてクロスボウ型の煌式武装を持った奴の仲間だろう

そいつは斧型の煌式武装を盾代わりにしてユリスの炎の槍を防いで見せた

ユリスが星辰力を集中させようとした瞬間

 

「どーん」

 

ユリスの技を防いだ斧型の煌式武装を持った男が盛大に吹っ飛んだ

少なくとも十メートル以上は吹っ飛んだだろう

その男はそれきりぴくりとも動かない

死んではいないようだし多分あまりの威力に気絶したのだろう

 

「は?」

 

爆風の中、唖然としながら見ると紗夜が自分の身長よりでかい銃を構えていた

 

「・・・・なんだそれは」

 

「三十八式煌型擲弾銃ヘルネクラウム」

 

「まさかグレネードランチャーか!!」

 

ユリスの言葉に紗夜がこくりとうなずく

紗夜は銃口をクロスボウ型の煌式武装をもった奴に向けられる

 

「・・・バースト」

 

銃身が光を帯び

星辰力が急速に高まる

 

「―――流星闘技(メテオアーツ)か!!」

 

クロスボウ型の煌式武装をもった襲撃者も身の危険を感じ逃げようとするが

―――遅い

紗夜のほうが早い

 

「どどーん」

 

光弾が発射され、光弾は噴水を木っ端みじんに破壊し襲撃者も十メートル以上吹っ飛ばされた

そいつもピクリとも動かない

わずかに残った噴水の基底部分から水が吹きあがり周囲に降り注ぎ勿論それはユリスと紗夜にも降り注ぐ

 

「見かけによらず過激だな

お前」

 

「・・・リースフェルトほどじゃない」

 

「礼は言わんぞ

あの程度私一人でもどうとでもできた」

 

「必要ない、邪魔だっただけ」

 

「・・・続きする?」

 

「いや、やめておこう

お前の実力は本物だ」

 

「ならいい」

 

それを聞いて紗夜は煌式武装をしまう

 

「さて、こいつらを風紀委員に引き渡すとするか」

 

ユリスが倒れている襲撃者に視線を向けると、紗夜の煌式武装の光弾を受けて気絶していたはずがもう意識を取り戻しておりササッと逃げていた

ユリスたちが捕まえる暇もなく木々の中へ行ってしまった

 

「なんとまぁ、丈夫な連中だ」

 

「・・・びっくり」

 

「まぁ、逃げたものは仕方ない

迂闊に追いかけて待ち伏せされてもことだしな。

それより、沙々宮、学園の備品を壊したのだからちゃんと申請しておけよ」

 

「私が?」

 

「お前が吹き飛ばしたのだから、当たり前だろう」

 

「わずわらしい、リースフェルトに委任する」

 

「ふざけるな、冗談じゃない」

 

「おーい!」

 

紗夜とユリスが言い合っていると高等部の校舎から綾斗が飲み物を持って現れた

 

「なんかさっきすごい音が・・・って

うわっ、なにこれ、どうしたの・・・?」

 

綾斗が木っ端みじんになった噴水をみて驚き、状況が呑み込めず事情を知ってるであろうユリスと紗夜に聞く

 

「ちょっと、色々あったのだ

なぁ沙々宮」

 

「・・・うん、色々」

 

「えーっと・・・?」

 

ユリスと紗夜の説明に綾斗も困ったような表情をする

そんな色々だけでわかるはずもない

 

「なんだかよくわからないけどこれじゃ・・・わわっ」

 

綾斗は周囲を見渡していたが紗夜とユリスをみて顔が真っ赤に染まり慌てて視線を逸らした

ユリスはそんな綾斗の行動に怪訝そうに見ていたが自分の今の姿を見て綾斗の行動の意味を理解する

先程紗夜の攻撃で噴水を吹っ飛ばした際にユリスと紗夜は噴水の水をかぶってしまっていたのだ

当然、全体的に水を被ったのだから制服もびしょぬれで全体的に透けて見え下着までも制服越しに見えてしまっていた

だから綾斗は慌てて視線を逸らしたのだ

 

「み、見るな!!

みたらただではおかんぞ!!」

 

「み、見てない、見てない」

 

「・・・むむ、すけすけ

これはエロい」

 

「沙々宮、お前も少しはって・・・

お前、下着はどうした!?」

 

ユリスは紗夜のある一点・・・そう胸元だ

本来なら透けて下着が見えるはずなのだが・・・それがないのだ

 

「悲しいかな

私にはまだ必要ない」

 

真顔でそんなことを言う紗夜にユリスは顔をしかめた

 

「と、とにかく、なにか羽織るものを用意してくれ」

 

「わかった」

 

綾斗はすぐさま駆け出して行った

 




次の投稿は早くて連休明けです
連休は予定があるのでそこらへんはご了承ください
後、綾斗に刀持たせた理由ですけどただ単に私が綾斗に刀持たせて綺凛ちゃんと戦わせたかっただけです
まぁ言ってしまえば私の個人的な趣向ですww


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七話

はいどうも、お久しぶりです
連休は皆さん有意義に過ごせましたか?
オレは・・・有意義だったと思います
話は変わりますが、オレが好きなゲーム軌跡シリーズ最新作閃の軌跡Ⅲの発売日が決定しましたね
いやぁ、もう楽しみでしょうがないです
リィンも、もうそろ皆伝に至ってほしいですw
それでは続きをどうぞ!!


翌日、純星煌式武装(オーガルクス)の適合試験を受けるため

綾斗は生徒会室に訪れた。

最も純星煌式武装などなくとも綾斗は十分やっていけるのだがやはり姉が使っていたかもしれない武器だ少しでも手がかりが欲しい

 

「昨日は大変だったようですね、綾斗」

 

ユリスと紗夜が昨日の放課後、中庭で襲われた件についてはすでに風紀委員に通報済みだ

当然生徒会長であるクローディアの耳にも入ってるだろう

ちなみに昨日の襲撃の件はネットニュースにも話題に上がったがどれも

ユリスが襲われたというものばかりで紗夜の名前はなかった

当の本人は大して気にしてない様子ではあったが

 

「どう、犯人は捕まりそう?」

 

「んー、正直なところ難しいですね

風紀委員も本腰を入れて調査してますが・・・

なにせ、手がかりがない状態ですから」

 

「いくらアスタリスクでも昨日のは明らかに犯罪行為じゃないの?

だったら普通に警察とか・・・」

 

「そこが難しいところでして

アスタリスクにも一応警察に準じる星猟警備隊(シャーナガルム)という組織があるのですが、彼らは少々鼻が利きすぎるのです」

 

「というと?」

 

綾斗はクローディアの言っている意味が分からず首をかしげる

 

「彼らの警察権はアスタリスクの市街地で発生するのです

よっぽどのことがない限り各学園に彼らは招き入れないというのが学園側の見解なのです」

 

「痛くもない腹を探られるのは嫌だってことか」

 

綾斗は納得したかのように一人頷いた

 

「探られると痛いから嫌なのでしょう」

 

実際、アスタリスクの各学園には表沙汰にできないようなことをしているのも事実だ

そんなとこまで探られてしまえば学園側も痛手だ

だから学園側はできるだけ警察を呼びたくはないのだろう

 

「私個人としてはお願いしたいのですけど、私の権限でもそれはできませんから

せめてユリスがもう少し協力的でしたら対策の立てようもあるのですけど・・・」

 

「どうして、あぁもう頑ななのかなぁ」

 

綾斗は風紀委員に報告した時のことを思い出し呟いた

風紀委員に報告した際に護衛をつけることができると言ったのだがユリスはこれを拒否し、しまいには自分より弱い護衛はいらんとまできたものだ

風紀委員もそれ以上ユリスに干渉しようと思わずそのまんまだ

 

「きっとあの子は自分の手の中の物を守ることで精一杯なのですよ

新しいものを手に入れようとするとそこから零れ落ちてしまうと思っているのかもしれません」

 

「手の中のもの・・・」

 

「とは言え、それとこれとは話が別です

私としても今回の事件を看過することはできません

そこで相談なんですけど―――」

 

クローディアが続きを言おうとしたところで生徒会室のドアがノックされる

 

「すみません、今日はあなた以外にも来客があるのを忘れてました

話の続きは後程・・・」

 

クローディアが端末を操作すると生徒会室のドアが開かれるそこには意外な人物が入ってきて綾斗は驚きのあまり目を見開く

 

「純星煌式武装の利用申請は色々手続きが面倒なので、できれば一度に済ませてしまおうかと思いまして・・・

えーっと、こちらは・・・」

 

クローディアは紹介しようとするがその必要はなかった

なにせその人物は綾斗もよく知っている序列9位のレスター・マクフェイルだったからだ

後ろからはレスターの舎弟らしき小太りの男子生徒とちゃんと食べてるのか心配になるやせ細った男子生徒だ

 

「あら、もしかしてお知合いですか?」

 

「まぁ、一応ね・・・」

 

「なんで、おまえがここに・・・?」

 

小太りの男子生徒――ランディが綾斗を指さす

 

「今回は綾斗とマクフェイル君に純星煌式武装の適合率検査を受けてもらいます

おわかりだとは思いますがそちらの二人は保管庫には入れませんので・・・

よろしいですね?」

 

「あぁ、はい」

 

痩せた男子生徒――サイラスが頷く

 

「いいからさっさとはじめようぜ

時間がもったいねぇ」

 

「ふふ、せっかちですね

ですが確かに時間は有意義に使うべきですね

参りましょうか」

 

そういうと、クローディアを先頭に生徒会室を出て一行はクローディアについていく

 

「それで、純星煌式武装(オーガルクス)の適合試験ってどうなってるの?」

 

綾斗は試験を受けるってなってからずっと気になっていた疑問をクローディアにぶつける

 

「手順としては簡単ですよ

自分が借り受けたい純星煌式武装を選んで適合率が八十%以上引き出せれば貸与されます」

 

「へぇ、結構簡単なんだね」

 

綾斗はもう少し適合率検査というのはもう少しめんどくさいものだと思っていた

少し拍子抜けだ

だが、純星煌式武装に使われているウルム=マダナイトはとても金銭では換金できないような価値があるものだ

そんなものをそんな聞く限り簡単な試験で貸しだしてしまってもいいのだろうかとおもってしまうがそのまま貸しださないのもそれはそれで宝の持ち腐れだろう

 

「はっ、なんも知らねぇんだな

純星煌式武装を借りるってのは言うほど簡単じゃねぇんだよ」

 

突然、綾斗の後ろを歩いていたレスターが言う

 

「そもそも、希望すれば誰でも通るわけじゃねぇ。

序列上位者か《星武祭(フェスタ)》で活躍したやつか特待生でもなければ無理だ

そして適合率が八十%を超える純星煌式武装と巡り合えなきゃ意味がねぇ

そいつを借りれたとしてもそいつを使いこなせなきゃ意味がねぇ」

 

適合率とはその純星煌式武装の力をどこまで引き出せるかの数値だ

高ければ高いほどその純星煌式武装の力を引き出すことが可能だ

だが、適合率は相性なので、訓練で伸ばせるようなものではない

 

「ふふっ、チャレンジ三度目になると流石に意気込みが違いますね」

 

クローディアの言葉にレスターは顔をしかめた

 

「けっ、これで終わりにしてやるさ」

 

「そうだよ、レスター

今までのはたまたま運がなかっただけさ

今度こそやれる」

 

「ふふん、当然だ」

 

ランディのあらかさまな励ましに機嫌をよくするあたり案外レスターは単純なのかもしれない

 

「希望すれば何回もチャレンジできるの?」

 

「許可さえ下りれば可能ですよ

学園としても宝の持ち腐れでは意味がありませんからね

まぁ、そうは言っても審査が厳しいのは事実です。

冒頭の十二人(ページ・ワン)》は例外ですが・・・」

 

「ですが、《冒頭の十二人》の特権も無制限なわけではありません

見込みなしと判断されれば適合試験が受けれなくなります」

 

確かに、《冒頭の十二人》の特権はある程度優遇されるが、クローディアの言う通りその特権は見込みがあると思われてるからだ

何度も挑戦して見込みなしと判断されてしまえばその特権も使えなくなる

そうこうしてるうちに綾斗たちは地下の装備局にたどり着いた

 

「や、やあ、この前はすみませんでしたね」

 

背後から声が聞こえ、サイラスが綾斗に話しかけていた

 

「レスターさんも悪い人じゃないんですが・・・

少々、気性の激しいところがありまして・・・」

 

「あぁ、いや、別に気にしてないから」

 

「ランディさんもあの調子ですから、また、なにか不愉快な思いをさせてしまうかもしれませんが・・・本当に申し訳ないです。

昨日もなにか二人で話してたみたいで・・・」

 

「おい、サイラス、てめぇ、なにやってる!!」

 

「そうだ、早く来い!!」

 

綾斗の前を歩いてたレスターとランディの怒声がサイラスに向けて飛んでくる

サイラスは綾斗に一礼すると急ぎ足でレスターたちのもとに駆け寄った

綾斗はサイラスをみて明らかに不信感を抱いていた

先程なぜサイラスはレスターとランディを警戒させるようなことを言ったのだろうか・・・

ユリスの襲撃事件にこのサイラスの発言・・・なにかつながりがあるかもしれないと思う綾斗だったが今の状態では情報が少なすぎるため今は考えても仕方ないと判断した

あくまでこの違和感は頭の片隅に置いておくことにした

今は姉が使っていたとされる純星煌式武装を見る方が大切だ

綾斗が頭を切り替えた頃にはすでにトレーニングルームのような空間のところについていて、やけに天井が高かった

 

「先に始めるぜ

いいな」

 

「構いませんか、綾斗?」

 

「あぁ、うん、どうぞ」

 

綾斗としては今回姉が使っていたとされる純星煌式武装を見に来ただけであって

別に使いたいとかそうゆう目的できたわけではない

あくまで見に来ただけだ

レスターは慣れた手つきで六角形の壁の隅に置かれた端末を操作した

流石に三回目ともなると慣れるであろう

巨大な空間ウィンドウが表示されレスターはそれを真剣な表情で見ている

 

「あれは?」

 

その様子をみていた綾斗はクローディアに聞く

 

「星導館学園が所持している純星煌式武装の一覧です

ちなみに今現在の総数は二十二

この数は六学園中トップなんですよ」

 

「へぇ」

 

「一覧には、形状と名前、その能力が記載されてますので、希望するのを一つ選んでください

表示がグレーになっているのは今現在貸し出されているものですので・・」

 

「ということは、えぇっと・・・」

 

「今、ウチの学生で純星煌式武装使っている学生は七名

そのうち四名は《冒頭の十二人》です」

 

「よし、これでいい」

 

レスターは一覧から一つを選ぶとウィンドウを閉じる

それと同時に六角形の模様が一つ輝き、それは場所を組み替えるかのように滑らかに動きながらレスターの前にやってきた。模様が壁からせり出してくる

模様に見えたのは収納ケースのようだ

 

「無駄に凝ってますね・・・」

 

「無駄って・・・」

 

「あら?」

 

クローディアが驚いたように目を見開いた

 

「マクフェイル君、《黒炉の魔剣(セル=ベレスタ)》を選びましたか」

 

「《黒炉の魔剣》それって確か・・・」

 

聞き覚えのある名前に綾斗は初めて生徒会室に赴いた時のことを思い出していた

確か姉である、天霧遥が使っていたとされる純星煌式武装が確かそんな名前の純星煌式武装だったはずだ

 

「はい、貴方のお姉さんが使っていたかもしれない純星煌式武装です」

 

クローディアは静かに頷いた

綾斗はレスターの手元に集中する

綾斗は今日この純星煌式武装を見るために適合率検査に参加したのだ

綾斗自身強力な武器にさほど興味がなかった。だが姉の情報に繋がるならと一目見ておきたかったのだ

ただそれだけだ

《黒炉の魔剣》は発動体自体は普通の煌式武装と変わらない形だった

あえて違うところをあげるとすれば純星煌式武装に使われているコア

ウルム=マダナイトぐらいだろう

《黒炉の魔剣》のコアであるウルム=マダナイトが赤く輝いている

 

「さぁて、行くぜぇ!」

 

レスターが《黒炉の魔剣》を起動させる

するとまずは柄から再構築されていく、かなりの大きさだ

そしてその柄の部分が開き刀身が現れる

《黒炉の魔剣》と言われるくらいだ、刀身は漆黒なのかなと勝手な想像をしていた綾斗だったが、実際はそんなことはなく名に似つかず純白の刀身だった

片刃の刃で巨大な光の刀と現した方がいいのかもしれない

綾斗が近くで見ようと一歩踏み出した瞬間、ドクンと心臓が大きくはねた感覚が綾斗の身に起きていた

綾斗は原因を探ろうと辺りを見渡すが原因となるようなものはなにひとつなかった

そうある一点を覗いては・・・

《黒炉の魔剣》だ

心臓がはねた感覚が起きたあの一瞬、綾斗は、《黒炉の魔剣》を近くで見ようと一歩踏み出した

その時だあの感覚が起きたのは

最も、その感覚は一瞬で今はもうそんな感覚はなくなっていた

 

「計測準備できました

どうぞ始めてください」

 

スピーカー越しに声がっ聞こえてくる

おそらく装備局の人間だろう

それを受けてレスターは《黒炉の魔剣》を握った

 

「うおおおおおおおおおおおおおおお」

 

「適合率、三十二%です」

 

スピーカから現在のレスターと《黒炉の魔剣》の適合率が告げられる

所定のラインの八十%にはまだまだ遠い

 

「なぁめるなぁあああああああああ」

 

レスターが再度気合を入れたように叫び《黒炉の魔剣》を握る手に自然と力が入る

だが、《黒炉の魔剣》はうんともすんとも言わずレスターに適合する気配はない

逆に《黒炉の魔剣》は眩い閃光を放ちレスターを弾き飛ばす

 

「ぐああああああ」

 

《黒炉の魔剣》はレスターの手から解放されると宙に浮いた

 

「拒絶されましたね」

 

「純星煌式武装には意志のようなものがあるって聞いたことがあるけど」

 

「ええ、と言ってもコミュニケーションがとれるようなものではありませんがね」

 

「最終的な適合率は二十八%です」

 

スピーカからまた適合率が告げられた

さっきより下がっている

これ以上続けても適合できないだろうことは綾斗もクローディアもそしておそらくは装備局の人間でさえもわかってることだろう

 

「まだまだ!!」

 

だがレスターは諦めずに再度《黒炉の魔剣》に適合しようと触れる

 

「ああいう、がむしゃらに力を追い求める姿勢は嫌いではありませんが・・・・

強引なだけでは口説き落とせる相手ではないようですね」

 

「よくわかるね」

 

「私も純星煌式武装の使い手の一人ですから」

 

「え!?」

 

クローディアはあっさり言ったが綾斗は驚愕の表情で隣のクローディアをみた

最初見たときは只者ではないと思っていたがまさか純星煌式武装

の使い手だとは流石に綾斗としては予想外だった

 

「マクフェイル君は、前回、前々回と名のある純星煌式武装を選んでいますが、どれも今回と同じような結果でした。強力であればなんでもいいという節操のなさを見抜かれているのかもしれません

その割り切り方は決して悪いことではないのですけど・・・」

 

クローディアの言う通り、確かに割り切ることは悪いことではない

だが、純星煌式武装の場合は別なのだろう

その割り切りの良さが逆に純星煌式武装の機嫌を損ねているのかもしれない

聞く話によれば純星煌式武装は意思のようなものがあるらしい

本当に意思のようなものがあるならレスターを《黒炉の魔剣》が受け入れるわけがないのだ

そう、割り切りの良さが逆に災いしてしまっているのだろう

 

「くそがぁ!、なんで従わねぇ!」

 

レスターがめげずにまだ挑戦している

もう適合できないであろうことはもう本人も気付いているだろう

そうなってくるともう意地だ

 

「少なくともあれはそういう態度がお気に召さないようです

まぁ、気難しいことで名が知れた純星煌式武装ですし」

 

「そうなんだ?」

 

「アレは比較的古い純星煌式武装になりますが、使いこなせた学生が二人・・・

いえ、彼女もいれると三人ですね」

 

その彼女が誰を指してるのか聞かなくてもわかる

姉である天霧遥だ

尤も正確なデータがないため使っていた“かも”だが・・・

レスターはもう《黒炉の魔剣》触れることさえできなくなっていた

レスターが触れようとすると触れさせまいとレスターを弾き飛ばしてしまうのだ

 

「いいから、オレ様に従えぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ」

 

レスターは拒否する《黒炉の魔剣》に掴みかかる

だがそんなことをすればまた閃光を発し吹き飛ばされるのは目に見えてる

案の定レスターは再び吹き飛ばされる

 

「適合率マイナス値へ移行、これ以上は危険です!」

 

スピーカーから警告を告げる声が聞こえる

 

「あぁ、これはいけません、本格的に機嫌を損ねてしまったみたいですね」

 

クローディアが焦った口調で一歩踏み出すがその場で止まる

不思議に思った綾斗だが理由はすぐにわかることになる

《黒炉の魔剣》が尋常ではない熱を発してるのだ

これでは近づけない

 

「対象は完全に暴走しています

至急、退避してください」

 

スピーカーから焦った声が聞こえてくる

 

「対象の熱量が急激に上昇中」

 

それはわざわざ言われるまでもないことだ

その熱は今現在綾斗たちが感じてる

 

「アレは本来、熱を刀身にためこむ剣です

制御する使い手がいないので、少々外に漏れだしてしまってるみたいです」

 

「こういうことってよくあるの?」

 

「純星煌式武装の暴走ですか?

記録では何度か起きてるみたいですが、実際には見たことがありません

逃げますか?」

 

「そうしたのは山々だけど・・・」

 

綾斗は《黒炉の魔剣》の視線をひしひしと感じていた

その証拠に《黒炉の魔剣》は宙に浮き刀身を綾斗に向けている

《黒炉の魔剣》の真意はわからないが綾斗になにか興味がわいたように見受けられた

 

「はぁ、仕方ないか」

 

綾斗は星辰力(プラーナ)を集中させる

すると、星辰力で形作られ綾斗の力を封じている鎖が弾け飛ぶ

綾斗は本来の自分に戻ったような感覚に陥るがそんな悠長なことを思っている状況ではない

《黒炉の魔剣》が今にもその純白の刀身で貫かんとしている

しばらく綾斗と睨みあっていた《黒炉の魔剣》だが突如と綾斗に襲いかかる

綾斗は少し身体を横にずらしてその攻撃をかわす

 

「その程度の剣速じゃオレを捕えられないよ」

 

綾斗は顔だけを見ながら挑発じみたことを言う

実際、《黒炉の魔剣》の攻撃スピードは綾斗からすれば大したことなくかわすことなどわけなかった

これなら封印を解除しなくてよかったなと内心思うが油断は禁物だと自身に喝を入れ<黒炉の魔剣>に集中する

綾斗はこの攻防で決めるつもりでいた

綾斗は深呼吸をすると、《黒炉の魔剣》にわざと背を向ける

<黒炉の魔剣>はチャンスとばかりにその刀身を綾斗にむけて襲いかかってくる

このアスタリスク内でもこの《黒炉の魔剣》の攻撃をかわせるものはそういないだろう

綾斗はその刀身が突き刺さるか刺さらないかのギリギリのラインで身体を反らして<黒炉の魔剣>とすれ違う瞬間に綾斗は柄を掴み床に突き立てる

 

「熱っ!!」

 

いくら身体スペックが優れていても暴走している<黒炉の魔剣>の熱量に顔を歪める

綾斗もなにも対策をせず《黒炉の魔剣》に触れていたわけではない

手に星辰力を集中させていたのだがそれでも熱を軽減できていない

流石は強力な純星煌式武装と言ったところだろう

だが、綾斗は《黒炉の魔剣》から手を放さなかった

 

「悪いけど、しつこくされるのは嫌いなんだ

君と同じでね」

 

そして、《黒炉の魔剣》は動きを止めた

 

「ふぅ」

 

綾斗の圧倒的な戦闘センスとあの《黒炉の魔剣》をいとも容易く大人しくさせたことにレスターもふくめ唖然としていた

ただ一人を除いては・・・クローディアだ

クローディアだけがこの状況の中で普段通りにしていた

 

「流石は綾斗です

それで、適合率は?」

 

装備局の職員は数値を確認し報告する

スピーカー越しではあるが、その声は驚愕に満ちていた

 

「九、九十七%です」

 

「結構

そういうわけです

マクフェイル君も意義ありませんね

なにせ、数値がそれを物語っているのですから・・・」

 

レスターはなにも言わなかったが表情はとても悔しそうにしていた

 




じ、次回こそシルヴィを登場させたい
というか綾斗とデートさせたい・・・
では次回会いましょうチャオチャオ


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八話

皆さん、こんにちは
今回はシルヴィのデートまで行きたかったのですが・・・・すいません無理でした



綾斗とクローディアは再び生徒会室にいた

適合試験のあと、《黒炉の魔剣(セル=ベレスタ)》を暴走状態で触れたため綾斗の手が軽いやけどを負っていたため治療のためクローディアが綾斗を連れてきたのだ

いくら《星脈世代(ジェネステラ)》で回復が早いとはいえ火傷は火傷だ

 

「だけど、本当にオレが使ってもいいのかい?」

 

あの適合率検査で綾斗は誰もが驚く破格の数値を出したため

綾斗があの《黒炉の魔剣》を借り受けることになった

と言っても今綾斗の手元に《黒炉の魔剣》はない

なんでも、適合試験に合格したからすぐに渡せるものではなく、登録手続きに二、三日かかるらしい

 

「適合率九十七%に文句をつける人はいませんよ

それとも《黒炉の魔剣》では不満ですか?」

 

「いや、最初は見れればいいと思ってたし

それに姉さんが使っていたかもしれないものだよ

興味がないわけじゃないんだ

ただ・・・ね」

 

「マクフェイル君のことですか?」

 

綾斗は静かに頷いた

 

「なんか横取りしたみたいにいなってマズかったかなって」

 

「それは仕方ありません

この都市の本質は競い合いです

もちろん友情や助け合いを否定するものではありません

他者が己よりも高い評価を得たのであればそれを素直に受け入れることも必要です」

 

「レスターもそう思ってくれたらいいんだけどね」

 

綾斗はレスターと初めて会った時のことを思い出していた

どうもレスターは綾斗に対してあまりいい印象を持っていないらしい

 

「彼となにかあったのですか?」

 

「オレじゃなくてユリスかな」

 

綾斗は先日レスターとユリスの間に何があったのか話した

 

「ははぁ、なるほど

マクフェイル君がユリスに執着してるのは有名ですから」

 

クローディアは綾斗から話を聞いて納得したような表情をした

レスターのユリスへの執着はこの学園では有名らしい

 

「オレが恨まれるのはいいんだ

諦めもつくしね

でもユリスは昨日みたいなことがあったばかりだし、変な形で

迷惑をかけることになったら嫌だからさ」

 

「・・・綾斗はユリスを襲ったのがマクフェイル君だと?」

 

綾斗は苦笑いする

 

「そうは言ってないよ

確かにユリス達を襲ったのはレスターくらいの体格だったらしいけどそれだけで犯人扱いは流石にレスターがかわいそうだよ」

 

「ですが、彼には動機があると思いません?

ユリスに敗北し、穏やかとは程遠い感情を抱いてる彼には・・・」

 

「だからこそ、オレは違うと思うんだ

レスターはユリスを恨んでいるのとは違うと思うんだ

恨むというより、ユリスに勝ちたい・・・というか自分の力を認めてほしいと思ってるみたいだし、だからこそ、こそこそ隠れて襲ったって意味がない。

むしろ逆に正々堂々と真向から勝負を挑むんじゃないかな」

 

「では、どうして綾斗はユリスに迷惑がかかると考えたのですか?」

 

「犯人はかなり慎重にユリスの隙を伺っているみたいなんだ

まぁ、当然だよね

ユリスは強いし、普通にやったら失敗の可能性の方が高いしね

だけど、戦闘中なら話は別なんだ

いくらユリスでも目の前の戦いに集中せざるをえない」

 

「貴方がそれを言いますか・・・

まぁ、それはいいとして

格好の狙い目ですね」

 

クローディアは呆れたような表情をしながら苦笑いを浮かべる

《黒炉の魔剣》の適合試験であれだけ有利に立ち回っておいてユリスを強いと言っても綾斗本人にその気がなくとも嫌みに聞こえるだろう

 

「オレとの決闘の時もそうだったし、昨日は紗夜と決闘を始めようかってところで襲われたらしいよ

そうなると、レスターを刺激して、万が一ユリスと決闘なんてことになったら大変だなって思ってさ」

 

「ふふ、素晴らしい炯眼です

ですが、そんなユリスのことばかり考えてるとシルヴィアが妬いちゃいますよ」

 

「え?

シルヴィが?

なんで?」

 

綾斗は急に出てきた数年顔を合わせてない幼馴染の名前が出てきたことに不思議そうに首を傾げる

 

「ふふ、これではシルヴィも苦労しますね・・・」

 

クローディアは楽しそうに笑みを浮かべた

綾斗のことに関してクローディアは何度かシルヴィアから聞いたことがあった

その時のシルヴィアがまるで自分のことのように楽しそうに話してくれたのを今でも覚えている

そしてクローディアはシルヴィアが綾斗に関してどんな感情を抱いてるのかもその時に見抜いた

だからシルヴィアに心底、同情した

 

「綾斗、こんなことのあとにこんなことを言うのはなんですが・・・

貴方を見込んでお願いしたいことがあります

今夜、少しだけお時間をいただけますか?」

 

「それは構わないけど今じゃダメなの?」

 

「ええ、内密のお話ですので。

 

内密の話ならこの生徒会室でも今の状況なら十分できる状態だ

生徒会室のドアはクローディアが許可を出さない限りドアは開かれることはないし、なにより、今この生徒会室には綾斗とクローディアだけだ

内密の話ならこの生徒会室でも可能ではないかと綾斗は内心思った

 

「壁に耳あり、障子に目ありと申します

権謀術数渦巻くこの場所は内密な話をする場所に適してはいないのですよ」

 

クローディアは綾斗の考えを読んだかのように言った

 

 

 

 

 

 

 

 

男子寮で同じ部屋のルームメイトである矢吹に聞かれるわけにはいかないので、男子寮から出てから綾斗は携帯端末の通話ボタンをタップする

 

「すみません、遅くなってしまいました

あれから、一件会議が入ってしまいまして」

 

「オレはいいけど、そっちは大丈夫なの?」

 

高等部は門限などないので何時に出かけようが問題ないのだが、流石に女の子が出歩くような時間帯ではない

 

「ええ、ですからお手数ですが綾斗からこちらに来てください」

 

「こちらって?」

 

綾斗はこれからクローディアが言わんとしていることに嫌な予感がした

 

「わたしの部屋です」

 

「・・・・・部屋って

女子寮の・・・?」

 

「はい、部屋は東南の最上階です

窓は開けておきますので、どうぞ入ってきてください」

 

「いや、オレはこの前それでとんでもない目に遭ったばかりなんだけど・・・」

 

前回、知らなかったとはいえユリスの部屋に侵入してしまい危うくウェルダンにされるところだったのだ

万が一でも女子寮の生徒にみつかったらと思うと洒落にならない

 

「大丈夫ですよ、ユリスのように決闘を申し込んだりしませんから」

「そういう問題じゃないと思うんだけど・・・・」

 

「それではお待ちしていますよ」

 

「ちょっ、クローディア!!」

 

綾斗がなにか言う前に一方的にクローディアは通信を切った

綾斗は仕方なく女子寮に向かうことにした

 

「ユリスに見つかったら今度こそ命はないなぁ・・・」

 

綾斗は初めてこの女子寮に入った時のことを思い出した

あの時はなとかなったが今回はそうならないだろうなぁと考えていた

女子寮は男子寮と比べて警備の手が薄い

それには訳があった。それは侵入者の確保というより撃退に重きを置いているからだ

そもそも《星脈世代》とは言え年頃の女の子たちだあまり警備を厳重にしてしまうと生活に不憫を強いかねない

それに《星脈世代》が侵入した場合普通の警備システムでは用を成さない

そのため女子寮の警備は男子寮より甘めだ

それに女子寮の各部屋には自警団への通報システムが存在している

ボタン一つで自警団へ連絡がいくようになっている

また、設定で侵入した時点で連絡が行くようにもできるらしい

それを聞いた時は綾斗は心からユリスがそういう設定にしてなくてよかったと安堵した

 

「さてと、あそこか・・・

足掛かりがあるからこの前よりは楽なんだけどこれじゃ本当に変質者だな・・・」

 

女子寮についた綾斗は人目のつかないところまで移動すると壁をつたっていく

これを目撃されれば普通に通報されてしまうだろう・・・

綾斗は物音を立てないようにそーっと目的のクローディアの部屋に入る

 

「クローディア?」

 

綾斗は部屋に入り、そう声をかけるが、反応はない

 

「まさか、いないってことはないんだろうけど・・・」

 

綾斗は周りを見渡しながら一人呟く

クローディアのあてられた部屋は綾斗が住んでいる部屋とは比較にならないほど広く

部屋というよりは高級ホテルを連想させた

 

「あら、いらしてたのですか。すみませんシャワーを浴びてまして」

 

現れたクローディアはバスタオル一枚という格好で現れた

年頃の男の子である綾斗にはいささか刺激が強い

 

「着替えてきますのでどうかくつろいでいてください」

 

クローディアは硬直している綾斗の横を通り過ぎ寝室へ向かう

 

「はい、お待たせしました

こちらへどうぞ」

 

綾斗が寝室に入るとバスローブ一枚に身を包んだクローディアだった

多少刺激に強い恰好ではあるがさっきのタオル一枚よりは遥かにマシだ

クローディアはその格好でベットに腰かけていた

相手によってはとても勘違いしそうなシチュエーションだ

 

「随分くつろいだ格好だね」

 

「部屋ではこうなんです」

 

綾斗はクローディアの向かいに置いてあるソファーに座る

クローディアは用意していたグラスにルビー色の液体を注ぐ

 

「綾斗もどうですか?」

 

「・・・・遠慮するよ」

 

綾斗の目から見てそれはどう見てもアルコールの類だ

カクテルかワインの一種だろう

 

「それにしても広い部屋だね

これも生徒会長の特権なのかな」

 

綾斗はぐるりと部屋を見渡しながらクローディアに尋ねた

寮生活とは思えないほどの広さだ

 

「いえ、これは序列上位者としての特権です

冒頭の十二人(ページ・ワン)》になればこの部屋もそうですが・・・資金面など色々優遇されますよ」

 

「へぇ、クローディアも《冒頭の十二人》だったんだ」

 

綾斗は関心したように言う

《冒頭の十二人》と言えばかなりの実力者だ

何位なのかはわからないが、それでも≪冒頭の十二人≫に名を連ねるだけで関心に値する

 

「まぁ、綾斗は本当にこの序列の制度に興味がないのですね」

 

「あはは、まぁ《冒頭の十二人》に興味があるわけでじゃないしね」

 

その発言にクローディアは苦笑いした

このアスタリスクにいてここまでこの序列に興味がないのも珍しい

まぁ、綾斗のような人間がいないわけではないだろうが珍しい分類だろう

 

「綾斗も、もう少しこの序列制度に興味も持ちましょうね」

 

「あはは・・・」

 

綾斗は乾いた笑いを浮かべる

 

「まぁ、いいでしょう

とにかく、生徒会長なんて面倒なだけで見入りが少ないのですよ」

 

「だったらなんで引き受けたの?」

 

「面倒ごとが好きなんですよ」

 

「つまり、そのお願いってのも面倒ごとが絡んでくるってことか・・・」

 

「話が早くて助かります

まずはこちらをご覧ください」

 

クローディアが端末を操作すると空間ウィンドウが複数展開される

それのどれも生徒の画像が出ていることから生徒のデータだろう

 

「彼らは次の《鳳凰星武祭》にエントリーしていた学生です

《冒頭の十二人》この中にいませんが誰もが『在名祭祀書(ネームド・カルツ)』の序列上位者ばかり、ある程度活躍が期待されていた方々ばかりです」

 

「過去形だね」

 

「ええ、そうです。

彼らはここしばらくの間にけがを負って出場を辞退せざる得なかった人物たちです」

 

クローディアはそういうとウィンドウを消す

 

「原因は様々です

事故であったり、決闘中のケガであったり・・・

そもそもこの都市ではある程度のケガは珍しくもありません。

そのため対処が遅れてしまいましたがどうも怪しいところがありましてね」

 

「第三者の介入があった?

ユリスの時のように・・・」

 

「ええ、先日のように直接的な介入はありませんが、ユリスの時も綾斗との決闘の時みたいに狙撃で直接的な介入ではある意味ではありません

同じように彼らの時もその可能性がないとは言い切れません」

 

「なにか証拠は?」

 

「いいえ、なにも

それに狙われた生徒たちは捜査に非協力的でして」

 

クローディアは首を横にゆっくりと振る

 

「どういうこと?」

 

「う~ん、この学園の・・・・《星脈世代》特有の問題とでも言いましょう

それなりに自分の力に自信を持っている生徒は、あまり他人に頼ろうとしないのです。

ケガが治ったら見つけ出して叩き潰すと活き込んでいる生徒までいる始末でして・・・」

 

「なるほど、確かにそれは問題だね」

 

「すべて事情を説明でえききればいいんでしょうけどそういうわけにもいきませんから・・・」

 

襲われた者たちは皆クローディアの話からすると序列の上位者だ

序列の上位に入るほど自身の能力や力に自信がついてくるだから余計にだろう

 

「ちなみにここだけの話ですが・・・

風紀委員はマクフェイル君を有力な容疑者候補として調べています。

彼とランディ・フック君の二人は昨日の襲撃事件の時間帯にアリバイがないそうですから・・・」

 

「でもクローディアはそう思ってない」

 

「ええ、貴方と同じで」

 

「ところで、今の話だとサイラスは容疑者候補に入ってないのかい?」

 

綾斗は素直に思ったことを訪ねた

確かに、レスター、ランディ、サイラスはいつも一緒にいる印象が強い

そのサイラスが容疑者候補に入ってないのは逆に不自然だ

 

「サイラス・ノーマン君には明確なアリバイがあるそうです

その時間帯彼は確かに寮の部屋で勉強していたとルームメイトからの証言があります」

 

「・・・・そっか

だけど、こうもなにも手がかりがない以上後手に回るしかないみたいだね」

 

綾斗は少しサイラスのことで気になることがあったが明確なアリバイがある以上彼は白なんだろうと結論付けた

 

「そうですね

ですが我々には一つだけ有利なことがあります

次に狙われるのが誰かわかっていることです」

 

「ユリスだね」

 

「犯人が狙いが誰でもいいと言うのならわざわざ姿を現してまで襲撃をしたりはしないでしょう

そもそも《冒頭の十二人》を狙うようなこと自体しないはずです

ですが犯人には難しいとわかっていながら有力学生を狙う理由がある

推測するに―――」

 

「他学園の意向が絡んでいる可能性が高いです」

 

「ほかの学園が?」

 

「そして犯人はうちの学園の生徒です

犯行場所はほとんど学園の敷地内ですし、わざわざ他学園の生徒がうちに侵入するにはリスクが高すぎます」

 

「まあ、それに関してはオレも同感かな」

 

綾斗もクローディアの推理には賛同できた

他学園の意向はわからないがウチの学園の生徒が犯人というのは綾斗も同意見だった

あまり同じ学園の生徒を犯人扱いしたくはないがもうそれは割り切るしかない

 

「無論、あってはならないことです

でも禁じられていることは言うまでもありません

ですが、過去にもいくつか事例があり、どの学園も本当に必要とあらばその程度のことはやってのけるのが」事実なのです」

 

それは、必要ならば星導館もやるということを意味していた

 

「今回はクインヴェールとガラードワースは除外していいでしょう

あちらはイメージがありますから、万が一露見した際に被るダメージが大きすぎます

今回の件で得られるメリットでは釣り合いがとれません。この手のことが得意なのはレヴォルフですが・・・あちらは≪王竜星武祭(リンドブルス)≫に注力しているはずなので・・・この時期に動くとは考えられません

となると界龍かアルルカントになりますが・・・まぁぶっちゃけそれはどうでもいいのです」

 

「どうでもいい?」

 

「はい、問題は他の学園が絡んでる以上こちらも迂闊には動けないということです」

 

「実のところ、星導館学園には統合企業財体直轄の特務機関です

上の許可が下りない限り、私でも自由に動かすことができませんが、風紀委員よりもはるかに強い権限を持った組織です

ですが、彼らを動かせば遠からず相手もそのことに気づくでしょう

統合企業財体はお互いにその動向を厳しく監視していますから」

 

クローディアはやれやれと肩をすくめる

 

「そうなれば背後にいる学園はすぐさま手を引くでしょう

それでは意味がないのです。彼らが関与していたという証拠を押さえられないなら、それはすなわち我々の 敗北を意味します。そして我らが統合企業財体は無意味な敗北を許すほど寛容ではありません」

 

「確実な証拠か、あるいは犯人を捕まえられる保証がない限り動かせないってことか」

 

「ですが逆に言えば、それまでは向こうも襲撃を続行させる可能性が高いということでもあります

そこで綾斗にお願いなのですが・・・しばらくの間ユリスの傍についていてもらえないでしょうか?」

 

「え?」

 

綾斗はまさかそんなお願いをされると思ってもみなかったためクローディアを見返す

 

「ユリスは近いうちにまた襲撃を受けるでしょう。おそらく次はあの子だけでは対処しきれないはずです

その時に綾斗にはユリスの力になってあげてほしいのです」

 

「オレじゃないとダメな理由は?」

 

正直、ユリスの護衛なら綾斗じゃなくても務まるだろう

確かに綾斗の戦闘センスを考えれば適任と言えば適任ではあるが・・・

 

「ご存知の通り、あの子は他人と距離を取りたがる傾向があります

ですがあなたにはユリスは気を許してるそうですので」

 

「そうかなぁ・・・」

 

クローディアはああ言ってるが綾斗はあまりそうは思えなかった

 

「ふふ、あなたは本当に人の感情に鈍いですね」

 

クローディアは楽しそうに笑みを浮かべる

 

「話はわかったけど、力になれないよ?」

 

「あら、どうしてです?」

 

「頼りにならないからさ」

 

「ふふ、ご謙遜を・・・

“武の理”に近づいていながらそれはないでしょう」

 

「・・・・・クローディアどうしてそれを」

 

綾斗はソファーからいきよいよく立ち上がった

それは一部の人間しか知らないはずのことだ

綾斗自身はまだまだ“理”には遠いと思っているが綾斗の師匠から“武の理”に近いと言われていた

そのことを知っているのはその師匠だけだ

幼馴染のシルヴィアや紗夜、そして姉の遥でさえしらないのだから

それをクローディアが知っているはずがないのだ

 

「まぁ、うちにも情報機関が存在してましてね

貴方のことは調べさせてもらいましたよ

実家がやっている道場の流派、天霧辰明流とそして東方に伝わる剣術の集大成

八葉一刀流を修め

八葉一刀流に関しては実質中伝ではあるが実力的にはもう皆伝に至ってもおかしくないとか」

 

「・・・・よく調べたね

後半のことにかんしてはオレにはわからないけど」

 

確かに綾斗は八葉一刀流と言われる東方の剣術を修めてはいるが、実力が皆伝と言われたことがないので本当のことか判断に困っていた

 

「まぁ、その話はひとまず置いときましょう

先程申し上げたようにできる範囲でかまいません

ないとは思いますが自分がヤバくなったら逃げても構いません」

 

「いや、置いとけないから・・・」

 

綾斗は冷静に突っ込む

この調子ではプライベートに関することまで調べられているんじゃないだろうかと綾斗は頭を抱えたくなった

まぁ、修めてる剣術に関してもプライベートと言えばプライベートだ

 

「それに傍に誰かいるだけでも抑止力になります」

 

「はぁ、わかったよ

だけどあまり期待しないでね?

クローディアたちが犯人を見つけてくれればそれで済むわけだし」

 

「はい、もちろんです」

 

「ところで、どうしてそこまでユリスのことを気にかけるのか聞いていい?」

 

「あら、生徒会長が学園の生徒の身を案じるのは当然じゃありませんか?」

 

「もちろん、それも理由のひとつだと思う

だけど、どれだけじゃない気がするんだ」

 

「・・・・・・」

 

クローディアはしばらく沈黙していたが、観念したかのように口を開いた

 

「私も他の学生同様叶えたい願いがあるのです

そのために私は動いてるにすぎません」

 

「願い・・・」

 

「そうそう、お願いというからには報酬も必要ですね」

 

「え?、いいよ」

 

綾斗は手を横にぶんぶんとふり遠慮するが、クローディアはそんなで引き下がるような人間ではない

 

「まぁまぁ、遠慮なさらずに」

 

そう言うとクローディアは寝室にあるランプの置いてある机の引き出しから紙切れを取り出しなにかを書き込んでいる

そしてそれを綾斗に差し出した

 

「今度の日曜日ここに向かってください

あなたにとって懐かしい人物に会えますから」

 

綾斗はその紙切れを受け取り、そのあとは他愛もない話をして解散となり、綾斗は男子寮の自身の部屋に戻った

紙にはこう書いてあった

朝10時に星導館学園正門前・・・・と

 




次回はシルヴィのデートになります
では、チャオチャオ


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九話

ついにこの回を書けましたw
いやぁ、やっとシルヴィを出せた・・・
もう感激です


「えっと、ここでいいんだよね・・・?」

 

すかっり晴れた日曜日、綾斗はクローディアから渡された紙のとおりに正門前に来ていた

時刻は9時と50分約束の時間の10分前だ

クローディアは懐かしい人物と言っていたが誰なのか綾斗は検討もつかない

 

「えーっと天霧綾斗君だよね?」

 

相手のほうも調度来たようで綾斗の後ろから声が聞こえた

 

「うん、天霧綾斗だけど・・・」

 

綾斗は後ろを向き相手方の姿を確認した

相手は女の子だ

栗色の髪に大きめの帽子を深くかぶり

ジーンズにブラウスといった格好だった

 

「本当に綾斗くんだ・・・」

 

目の前の少女はまるでこの出会いが信じられないかのように綾斗をまじまじと見つめた

 

「えーっと、君は・・・」

 

綾斗の方はこんな知り合いいたかなと必死に思い出そうとしてるが、まるで思い出せないが、だがどこか懐かしい感じはしていた

そしてこの少女から感じられる雰囲気といいどこかで会ったことがあるかのようだったがまるで思い出せなかった

 

「ごめん、懐かしい感じはするんだけど・・・

君、どこかで会ってたっけ?」

 

「え・・・?」

 

少女のほうはまさか忘れっちゃった!?とショックを受けるが今の自分の格好をみてああと納得する

今、自分は変装しているんだったとそれではわからなくても仕方ないと思うが気付いてくれても・・・と内心綾斗に毒づく

 

「あー、これじゃわからないか

あれから数年だもんね

じゃあ、綾斗くんちょっとこっちにきて」

 

少女は綾斗の手を引っ張り人気のない所まで連れていく

 

「綾斗君、これならわかるよね?」

 

そういうと少女は、帽子を脱ぎヘッドフォンについているスイッチを押すと

髪色が栗色から紫色に変わる

 

「シ、シルヴィ!?」

 

綾斗は驚いたように声をあげた

実際、驚いてるのだが・・・・

そこには数年前、とある事情で綾斗の住んでいた実家から引っ越した幼馴染

シルヴィア・リューネハイムの姿だった

数年前と比べたら背が伸びてたり、雰囲気が多少変わってたりしてるが

面影があった。数年前のシルヴィアの姿と重なる面影が・・・

綾斗の幼馴染、シルヴィア・リューネハイム

今やクインヴェール女学院序列1位

そして世界に名を轟かせる歌姫

別名《戦律の魔女(シグルド・リーヴァ)》・・・

 

「本当に久しぶりだね、シルヴィ

元気だったかい?」

 

「うん、綾斗くんも久しぶりだね

本当に会えて嬉しいよ!!」

 

シルヴィは綾斗とさらに距離を詰めて本当にうれしそうな表情をした

 

「ってことはクローディアが言ってた懐かしい人物ってシルヴィのこと?」

 

「うん、そうだよ

綾斗くんが特待生として星導館に入学してことは《千見の盟主(パルカ・モルタ)》に聞いててね

あ、《千見の盟主》ってのはクローディアのことだから

それで、クローディアと相談して綾斗君に会う機会をもらったんだ」

 

「ああ、そういうことか・・・」

 

綾斗は納得したように頷いた

 

「それに綾斗くん、市街地はまだ足を向けてないみたいだし折角だから幼馴染の私が案内しようかなっと思ってね」

 

「じゃあ、シルヴィが案内してくれるんだね

頼もしいよ

ほら、紗夜だと・・・」

 

「あ、うん・・・」

 

シルヴィは綾斗の言わんとしてることがわかったらしく微妙な表情をする

綾斗とシルヴィと紗夜は幼馴染だ

紗夜の極度の方向音痴も知ってておかしくない

紗夜も案内してくれようとするのはありがたいのだがあれでは逆にこっちが色々調べて案内することになりそうだ

幼いころ三人でかくれんぼをしたら最後、紗夜が自分で今どこに隠れてるかわからなくなり姉の遥にも協力してもらい探したのを今でも覚えてる

 

「学園内の案内の時はユリスがいて助かったよ・・・」

 

綾斗は紗夜もついていくと言ってついてきた数日前の実質ユリスと紗夜ではなくユリスに案内してもらっていた

 

「そっか、リースフェルトさんに学園内は案内してもらったんだ」

 

綾斗がユリスの名前を出した途端シルヴィはあらかさまに機嫌が悪そうにむっとする

綾斗は綾斗でそれに気づいた様子はない

シルヴィもユリスの名前は知っている

星導館の序列5位だ

決闘の動画を見たこともあるが結構な実力者だというのがシルヴィの見解だ

 

「そういえば、遥さんは元気?

今度、挨拶に行きたいんだ」

 

「ああ、シルヴィは知らなかったね・・・

姉さん、今は行方不明なんだ」

 

「え・・・・?」

 

この時、シルヴィは自分がどこから声をだしてるかわからなかった

それくらい自分の声がかすれてるということが理解できた

 

「うーん、シルヴィが引っ越してすぐだったかな

姉さんは行き先も告げず去ったんだ」

 

「そう・・・なんだ・・・」

 

シルヴィは自分が思っていた以上に遥の失踪にショックを受けていることを理解した

シルヴィにとっても綾斗の姉―遥は姉さんみたいな人だった

一人っ子だったシルヴィに姉弟の感覚はなんとなくでしか感じられなかったが遥と話してるとそれが感じられた

シルヴィにとって姉替わりだった遥の失踪はよっぽどショックだったのだろう

 

「でもね、シルヴィ

姉さんが姿を消したのには理由があると思うんだ

だから、シルヴィも姉さんを信じてあげて欲しいんだ」

 

「・・・綾斗くん

そうだね、綾斗くんがそういうならそうしようかな

ちょっとしんみりしちゃったけど行こう綾斗くん!!」

 

「うわ、ちょっと

引っ張らないでよシルヴィ!!」

 

シルヴィは再び髪色を栗色にし、帽子を深くかぶりなおすと綾斗の手を引っ張って市街地へ繰り出した

 

 

 

 

 

 

 

アスタリスクの市街地は主に外縁居住区と中央区に別れる

外縁居住区にはモノレールの環状線が通っていて、緑の部分にあたる港湾ブロックと移住エリア、そして六つの学園を繋いでいる

それに対して中央区での移動は地下鉄が中心だ

これは学生同士の決闘が交通機関に影響しないように配慮されたものだ

中央区はさらに商業エリアと行政エリアに別れている

シルヴィと綾斗はその中央区《星武祭(フェスタ)》の総合メインステージ前にいた

 

「ここは、アスタリスク最大の規模を誇るメインステージだよ

星武祭(フェスタ)》の決勝は全部ここで行われるんだ

綾斗くんがもし《鳳凰星武祭(フェニクス)》に出場するつもりならここに来ることになるね」

 

「ハハハ・・・

決勝まで生き残れればだけどね・・・」

 

「またまた、綾斗君に対応できるって言ったらそれこそ限られてくるでしょ

ガラードワースの《聖騎士(ペンドラゴン)》かレヴォルフの《孤毒の魔女(エレンシュキーガル)》くらいでしょ

まあ、《聖騎士》は《獅鷲星武祭(グリプス)》に絞ってるし、《孤毒の魔女》も《王竜星武祭(リンドブルス)》に絞ってるみたいだしね

だけど、《王竜星武祭》に出るつもりなら手加減しないから」

 

シルヴィに封印のことを話してないため

シルヴィはこんなことを言ってるが“今の状態”で綾斗自身どこまでいけるかわからなかった

 

「手加減しないって・・・

もしかして、シルヴィ・・・」

 

綾斗は何かを察したらしくシルヴィを見つめた

シルヴィは意味ありげに微笑んだ

 

「うん、私は《王竜星武祭》に絞ってるんだ

だから、もし出場するなら覚悟してね」

 

「そうなったら、お手柔らかに頼むよ・・・」

 

昔とはいえシルヴィと立ち合いしたことのある綾斗はその強さを身をもって知っている

そして彼女の《魔女(ストレガ)》としての能力の恐ろしさも・・・

そして確実に目の前の幼馴染は数年前とは比べ物にならないくらい成長していることが綾斗は確信できた

 

「それはこっちのセリフかな

さて、じゃあ、説明を続けるよ」

 

巨大なドーム状の建物を前にシルヴィが脱線した話をもとに戻して説明を再開する

収容人数はおよそ10万人≪星武祭≫の期間中はここがギャラリーで埋め尽くされるらしい

 

「ローマのコロッセオをモチーフにしてるらしいけど、最早別物だね。

このほかにも大規模なステージが三つ、中規模ステージが七つ存在するんだけど

野外の小規模ステージに関しては数え切れないなぁ・・・」

 

「へぇ、そんなにあるんだ」

 

「市街地の決闘でも、原則的にステージを利用するのがマナーになってるんだ

だけどあくまで原則は・・・あまり守られてはいないみたいだね・・・」

 

「それは街中でも決闘が・・・?」

 

「おっ、流石綾斗くん察しがいいね

その通りだよ」

 

「どう考えても危険なんじゃ・・・・」

それは綾斗が口にするまでもなくアスタリスクに来たばっかなら誰でも思うことだ

だがこのアスタリスクに来て長い人間はその状況に慣れてしまっているのが今のこのアスタリスクの現状だ

 

「ここの住人はそれも承知の上なんだよ綾斗くん。

観光客もね・・・

それに・・・住むにしろ観光にしろそういう危険性について書かれた誓約書があるんだけど、それにサインしないとこのアスタリスクには入れないしね

 

「無茶苦茶だね

それでもここに来たがる人がいるんだからわからないなぁ・・・」

 

「企業からしてみればアスタリスクに出店するってことはステータスであり、宣伝にもなるからね

それにイベントによってはこの中央区そのものが舞台になることもあるからね」

 

「オレは住みたくないなぁ・・・」

 

「ハハハ・・・

綾斗くんはそういうよね・・・

だけど私も同感かな」

 

「じゃあ、次はどうしようか

まだここら辺見る?」

 

「いや、ここはもういいかな」

 

「だったら、行政区に行って治療院をみてみる?

綾斗くんもこの先決闘とかする機会が多くなると思うし、それに≪星武祭≫に出るかは知らないけど出るなら知ってて損はないよ

まあ、出なくても知っておいたほうがいいと思うけど・・・

あそこには治癒の能力者がいるから

大けがとかしたときは便利だよ」

 

とは言ってもちょっとしたケガで来られては手が回り切れないので命の関わるケガでないかぎり治癒能力者による治癒は受けられない

 

「あとは・・・そうだね

一度、再開発エリアを見ておくのもいいね。

あの辺りは一部がスラム化していて治安的には問題があるけどね

知らないで、迷い込むのはもっと危険だから

まあ、綾斗くんの実力ならなにかあっても問題なさそうだけどね」

 

スラムには様々な事情で学園に居られなくなったものや、外から逃げ込んだ≪星脈世代≫の犯罪者などが巣食っている

なんとも物騒な話だが、このアスタリスク内ではこういった影の部分があるのは仕方がないことだ

 

「そういえば、紗夜が買い物に行こうとして怪しげな場所に迷い込んだことがあるとか言ってたなぁ・・・

なんか古くてボロボロのビルやら潰れたお店やらばっかりが並んでたって」

 

「・・・・それは再開発エリアだね

紗夜ちゃんの方向音痴は相変わらずだね・・・」

 

幼いころにもこの二人は紗夜の方向音痴に悩まされたものだ

見つからないときはその時はもうシルヴィの<魔女>の能力を使って探し出したりもした

それほどにまで紗夜の方向音痴はすさまじかった

シルヴィは時間を確認した

時刻はもう昼を過ぎたあたりだった

 

「おっと、もうこんな時間だね

綾斗くん、お昼にしようか」

 




シルヴィとのデートは続きます
次で一旦シルヴィのデートは終了になります


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十話

あと四日でイース発売ですね
めっちゃ楽しみです!!


「じゃあ、綾斗くん商業エリアに行こうか」

 

「ちょっ、シルヴィ!?」

 

シルヴィは綾斗の手を引っ張りながら商業エリアを慣れた足取りで進んでいく

まぁシルヴィはアスタリスクに来て綾斗よりも長い、市街地の地形に詳しいのだろう

商業エリアはいわゆるショッピングに適したエリアだ

その他にも食事するところも多数あり、買い物などはこの商業エリアが適している

他のエリアも買い物ができないわけではないがこの商業エリアほど店が出揃ってるわけではない

 

「よくここには来るの?」

 

「うん、そうだね

ほら、私芸能活動もしてるでしょ?

だから衣装選びとかでここによく来てるんだ」

 

「へぇ~」

 

そういうのって本人じゃなくて関係者がするもんなんじゃ・・・と綾斗は内心思ったが、これがシルヴィのスタイルだと納得することにした

 

「お昼食べたらショッピングしようか

ほら、綾斗くんの格好があれだし・・・」

 

「そ、そうかなぁ・・・」

 

そういわれて綾斗は今の自分の格好を見てみる

長袖の服にジーンズと言ったまぁシンプルな格好だ

こういう市街地以外なら綾斗の格好でもいいのだろうがここは市街地の商業エリア

市街地でも特に人が集まるところだ

<星武祭>になればもっと人が増える

そんなところでなんの飾りもないファッションは逆に目立つ

それに商業エリアに来てる人たちは皆お洒落してるのだ綾斗も少しはファッションに気を使った方がいいだろう

 

「はぁ、昔から綾斗くんのファッションセンスはあれだけど昔よりひどくなってる気がする」

 

「うっ・・・」

 

シルヴィは綾斗の服装を見て呆れたように言う

 

「ほら、ここで食べよう

この前、ここらへんでライブの仕事があったんだけどその時のお昼でここで食べてすごいおいしかったんだよ」

 

そこはいわゆるハンバーグレストランだった

外から見えるショーケースにおいしそうなハンバーグの模型が置かれている

中に入ってみると内装はカントリーな内装で時間も時間なので客もかなりの人数が入っている

綾斗とシルヴィは空いているボックスの席に互いに向かい合うように座った

しばらくすると店員さんがメニューと水を置いて丁寧に一礼してから下がった

 

「へぇ~

メニューは最初からあるわけじゃないんだね」

 

「結構、めずらしいスタイルだよね」

 

確かに多くの飲食店はメニューが最初から置いてあるのが印象に強く残っている

先程のようにメニューは最初からなくわざわざ持ってくるのはなかなか見ないので綾斗からすれば珍しい

 

「どれもおいしそうだな~」

 

「ふふ、迷っちゃうよね」

 

二人はメニューをみながら呟く

確かにメニューに載っているイメージの写真はどれも美味しそうなものばかりだった

これなら綾斗とシルヴィが迷うのも無理はない

 

「じゃあ、私これにするよ」

 

「じゃあ、オレはこれにしようかな」

 

二人ともしばらくメニューをみて迷っていたがしばらくして何を食べるのか決まり店員を呼んでそれを伝えた

店自体も客が多いので料理が来るまでしばらくかかると簡単に予測できるので綾斗とシルヴィはそれまで談笑していた

 

「綾斗くん、学校のほうはどうかな

だいぶ慣れた?」

 

「うん、そうだね

紗夜もいるし大体はね」

 

「そっか、紗夜ちゃんと同じクラスなんだったよね」

 

シルヴィは転入して間もない綾斗を少なからず心配していた

学院に慣れて友達ができるまで結構時間がかかる人も少なからずいる

シルヴィはそこを心配していた

だが、それも杞憂で終わったそうでシルヴィは心底、安心した

幼馴染である紗夜と同じクラスならそれなら心配ないだろう・・・と

 

「そういえば、なんで綾斗くんが序列5位の≪華焔の魔女≫と知り合いなの!?」

 

シルヴィは飲食店の中なのも構わず身を乗り出し不機嫌そうな感じで言う

 

「あー、いや、それは・・・」

 

綾斗はどこか歯切れが悪そうに言葉を濁す

綾斗も綾斗でそのことはなかなか言いずらいだろう。なにせ知らなかったとは言え女子寮のユリスの部屋にハンカチを届けるために窓から入ったらハンカチの所有者であるユリスが丁度着替え中だったなどと言えるはずもない

綾斗がどう誤魔化そうと考えていると・・・

 

「お待たせしました

カリーバーグディッシュとゆずおろしポンバーグステーキです」

 

タイミングよく店員が頼んだ料理を運んできた

そしてそれぞれの料理を綾斗とシルヴィの前に置く

 

「それでは、ごゆっくり」

 

店員は伝票を置くと一礼して下がる

 

「さ、さぁ、料理も来たし食べよう!!

冷める前に食べようよ」

 

「・・・・綾斗くん

あとで、ちゃんと聞かせてもらうから」

 

綾斗は料理を口実に誤魔化そうとしたのだが、綾斗の考えは甘かったということを心底思い知らされた

それでも空気が重い食事になるということはなくむしろ楽しく話をしながら

食事を楽しんでいた

 

「綾斗くんの頼んだ料理もおいしそうだね」

 

「え、それじゃ一口食べる?」

 

綾斗はそう言うとスプーンで一口サイズすくうとシルヴィの前までもっていく

いわゆるあーんというやつだ

 

「ちょっ、綾斗くん・・・!?」

 

シルヴィは恥ずかしいのか顔を赤くして俯いている

それはそうだろうこんな公衆の面前でやられれば誰だって恥ずかしい

ただでさえ公衆の面前でなくとも多少は恥ずかしさがある行為だ

 

「シルヴィ?」

 

綾斗はその行為にどんな意味があるのかわかってないのかただ首をかしげているだけだ

 

「た、食べるよ!!」

 

シルヴィはもう意地になってシルヴィの前に差し出された物を口を開けて食べる

相当恥ずかしい行為ではあったが料理はおいしかった

ハンバーグにのってるソースが多少辛みがあってハンバーグとあっていた

 

「おいしい!!」

 

シルヴィは綾斗が頼んだハンバーグを一口食べて素直に感想を言う

 

「じゃあ、綾斗くんも私の一口あげる」

 

そういうとシルヴィは自分が頼んだハンバーグを一口サイズにすくうと綾斗の前に差し出す

 

「え、いいのかい?」

 

「うん

私だけもらうのもあれだし・・・」

 

「じゃあ、もらうよ?」

 

綾斗は差し出されたハンバーグを口に含む

シルヴィの頼んだハンバーグは綾斗の頼んだがっつり系ではなくあっさりとしていてとても食べやすいハンバーグだった

あっさりしすぎというわけでもなくちょうどいい味加減だった

 

「シルヴィのハンバーグも美味しいね

あっさりしていて食べやすいよ」

 

と綾斗はこんなことを言っているがシルヴィはそれどころではなかった

シルヴィはさっきからスプーンを見つめたまま固まっている

綾斗はそんなシルヴィを不思議そうに見ているだけで理由に関してはわかってない

理由は至って簡単だ。先程綾斗にハンバーグを食べさせたスプーン・・・

行ってしまえば間接キスというやつだ

シルヴィはそれを気にして固まっているのだ

綾斗の使っているスプーンも間接キスなっているが綾斗自身はまったく気にした様子はなく使っている

いや、気にしたというより先程の行為が間接キスということに気付いてないだけだ

シルヴィはそんな綾斗をみて大きくため息を吐いた

シルヴィは気にしていた自分がばからしく思い気にせず食べようとするのだが・・・

一度気にしたら気にしてしまうのが人間というもので手をプルプル震わせながらシルヴィは残りのハンバーグを食べるのだった

 

「シルヴィ、おいしかったね」

 

「うん、そうだね・・・」

 

なにやらさっきからテンションがガタ落ちしているシルヴィが気になった綾斗は心配そうにシルヴィを見つめている

 

「シルヴィ、元気がなさそうだけど大丈夫?」

 

「うん、大丈夫だよ

精神的に色々とやられただけだから」

 

先程の間接キスがよっぽど効いたらしいがしばらくするとシルヴィが言った通り元のシルヴィに戻った

 

「じゃあ、綾斗くん行こう」

 

すっかり元のシルヴィに戻りシルヴィと綾斗は商業エリアをシルヴィを先頭に歩いていた

 

「とりあえず、綾斗くんのコーディーネートしようか」

 

そういいシルヴィが立ち寄ったのはさっきのハンバーグ屋からそう遠くない服屋だった

シルヴィは綾斗を引きつれ中に入っていく。

中は季節にあった服から季節から外れて安売りしている服まで何でもとは言わないが一通りの服が揃っていた

シルヴィは何着か服とズボンを選び綾斗に持たせて試着室に押し込む

 

「着替えたら、教えてね」

 

シルヴィは綾斗が着替えてる間、適当に服を見ていた

 

「こういう服もかわいいよねー」

 

シルヴィが手に取ったものはシンプルなデザインのワンピースだった

シルヴィは基本ワンピースなどは着ない

勿論アイドルとしての仕事としての衣装で着たりはするがプライベートでは今のシルヴィがしてる格好ジーンズにブラウスといった格好が多い

 

「シルヴィ、着替えたけどー」

 

「うん、今行くよー」

 

シルヴィはワンピースを元あった場所に戻し、綾斗が入ってるであろう試着室に向かう

シルヴィが試着室のカーテンを開けようとカーテンに手を伸ばした瞬間カーテンが開けられた

開けたのは綾斗だ

 

「あ、綾斗くん・・・?」

 

シルヴィ呆然として綾斗をみていた

今の綾斗は濃い紺色の細身のジーンズに白いシャツに上から黒いテーラードジャケットを羽織っている

先程の服装と比べたらえらい違いだ

 

「ど、どうかな?」

 

綾斗は照れくさそうにシルヴィに訊ねた

 

「うん、似合ってるよ綾斗くん

さっきとは偉い違いだよ」

 

「そこまで、酷かったかなぁ・・・・」

 

シルヴィに悪気はないのだろうが綾斗は軽くショックを受けた

 

「あと、これと・・・これも!!」

 

シルヴィは今、綾斗が試着している服のほかにも何着か綾斗に手渡す

そのあとも綾斗はシルヴィの着せ替え人形と化していた

結局、綾斗が試着した服は全部シルヴィの支払いで買った

綾斗は遠慮したのだが押し切られてしまったのだ

 

「さて、綾斗くん次は・・・そうだな

時間的にもあれだし次で最後にしようか」

 

アスタリスクの市街地は言ってしまえば都会とそう変わらない広さだ

一日やそこらで回れるような広さではない

だからシルヴィは一区切りとしてとりあえず今日は次で最後にしようと言ったのだ

 

「次は案内ってわけじゃなくて

単純に綾斗くんと遊びたいんだ

いいでしょ?」

 

「う、うん」

 

綾斗自身もこれまで自分の都合で案内ばっかりさせていたのだ

すこしくらいシルヴィが行きたいところに行っても問題ないだろう

 

「じゃあ、カラオケ行こうよ!」

 

「え・・・?」

 

綾斗は自然と疑問の声が出ていた

今や人気の世界の歌姫とカラオケなど歌のクオリティが違いすぎて話にならないだろう

 

「綾斗くん、ほら行こう」

 

シルヴィは綾斗の手を握り先導する

手を握ると言っても恋人繋ぎのような甘いものではない子供がするような普通の手つなぎだ

それでもシルヴィは今はそれでもよかった

そう、“今”は・・・

 

 

 

 

 

 

 

カラオケ店についた綾斗とシルヴィは早速受付に行った

と言っても、受け付けは全部シルヴィがやったのだが・・・

受付が終わったシルヴィは綾斗と指定された個室に入る

シルヴィ達が指定された個室は狭い部屋だった

それでも四人ぐらいはは入れる広さはある

二人でカラオケならこの広さで十分だろう

 

「じゃあ、綾斗くんから歌う?」

 

「シルヴィからでいいよ」

 

綾斗は先手をシルヴィに譲った

一番手は色々緊張するので綾斗の気持ちがわからないでもない

 

「じゃあ、私から行くね

最初はこれかな」

 

シルヴィはすぐに曲を決めると入力する

画面に曲名が映され歌詞も出る

 

「♪~今年最初の雪の華を~♪―――」

 

綾斗はシルヴィの歌声に聞きほれていた

シルヴィの歌は透き通っていて綺麗なそんな歌声だった

 

「はい、じゃあ次綾斗君の番だね!」

 

シルヴィはそういうとタブレット型のリモコンを差し出してくる

正直あんな歌を聞かされた後ではかなり歌いずらかったが歌わないわけにはいかないので綾斗は曲を入れる

綾斗はマイクを手に大きく深呼吸する

 

「♪~たぶんあの時僕らは歩き出したんだ互いに違う道を―――♪」

 

綾斗の歌声はうまいとは言えなく、下手なわけではない

普通だった

それでも歌う時になんらかの気持ちが入ってるようにシルヴィにはそうゆふうに聞こえた

そのあともお互いに歌いあいカラオケを楽しんだ

 

「綾斗くん、今日は楽しかったよ」

 

「それはこっちのセリフだよ

ありがとう、シルヴィ

市街地を案内してくれて、助かったし

シルヴィといて楽しかったよ」

 

「う、うん」

 

シルヴィは綾斗の何気ない一言で顔を赤く染めた

それを見られまいとシルヴィは俯く

 

「綾斗くん、アスタリスクは欲望が渦巻く場所だけど、自分の願いを叶えられる場所でもある

綾斗くん、君が今なにをしたいのかもう一度考えてみてそうすればきっと君の心に秘めてる望みが分かるはずだから・・・」

 

シルヴィはそういうとクインヴェール女学院の道へと歩いていくのだった

まぁ道と言っても地下鉄なわけだが・・・

 

「望み・・・・」

 

綾斗はシルヴィに言われたことをかみしめながら静かに呟いた

 




イース発売までにあと一つは投稿したい
出来ればですが・・・
ではチャオチャオ


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十一話

遅れました、すいません
いや、閃Ⅲやったりと色々忙しくて・・・
はい、さぼってゲームやってましたすいません


シルヴィとのデートが終わった翌日、綾斗はクローディアに呼び出されて生徒会室に来ていた

 

「週明け早々呼び出してすみません

実は報告しておきたいことがありまして・・・

貴方が昨日シルヴィに市街地を案内されてる時にユリスが襲われました・・・」

 

「ユリスが?」

 

「ええ、幸いと言うべきか

全部ユリスが撃退しました。ですが、この先もこううまく行くとは限りません

そこで綾斗にはなるべくユリスから目を離さないでください」

 

「わかった」

 

綾斗は顔を引き締め頷いた

綾斗はこの後授業が入ってるため教室に戻った

 

「・・・頼みましたよ、綾斗」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ユリス、おはよう」

 

「・・・・・」

 

「ユリス?」

 

「あ、ああ、おはよう」

 

ユリスは少し焦ったように視線を逸らす

 

「・・・・?」

 

「おらおら、席につけ出席とるぞー!」

 

綾斗はユリス態度を不思議に思ったがなにか聞こうにもタイミング悪く担任の匡子が来たため綾斗は聞くことができなかった

 

「ユリス、どうかした?」

 

結局、あの後も何回か聞こうかと思ったのだが中々ユリスと時間が取れず聞けたのは放課後だった

 

「―――すまないが、今日は用事がある」

 

「え?、ちょっ、ちょっとユリス?」

 

綾斗はユリスを呼び止めるがそんな制止の声が聞こえてないのかそそくさと足早で教室から出て行ってしまった

 

「どうしたんだろう・・・?」

 

「あらら、なんかまた昔に戻ったみたいだな」

 

「昔って?」

 

綾斗が質問すると矢吹は肩をすくめながらしゃべり始める

 

「あのお姫さん、おまえさんが転校してくる前はあんな感じだったんだよ

頑なに『私に関わるな』ってそんなもんだから前も言った通り気に入らない奴らが決闘を挑んだが返り討ちにあった・・・

はぁ~、けどもったいねぇなぁ、せっかく雪解けしてきた感じだったのに」

 

「・・・・・」

 

ユリスの様子は気になったがこの後今回の一件の件でクローディアから呼び出されていた

朝も呼び出されたが今回も朝と同じ用件で呼び出されている

おそらく進展があったのだろう

 

 

「ごきげんよう、綾斗よ

よくきてくれましたね」

 

「それでは早速本題に入りましょうか

今回の件で犯人の目星がつきました」

 

「本当かい?」

 

クローディアの言葉に綾斗は少し驚いたような表情を見せるがすぐに元の表情に戻す

実はこんな話だろうと綾斗自身予想していた。

だが本当にそんな話だと思わず驚いた表情をしたのだ

 

「えぇ、これが今回の犯人のデータです」

 

クローディアは端末を操作し綾斗にデータを送る

 

「これは・・・」

 

綾斗は送られてきたベータをみて顔を険しくする

 

「残念ですが、間違いなさそうです」

 

「そう・・・」

 

「綾斗には悪いのですが早速犯人のところに向かってください」

 

「向かってくださいって・・・

どこにいるのかも・・・」

 

綾斗の言う通りだ

クローディアから犯人の情報を聞けたのは幸いだが肝心の居場所が分かっておらず向かおうにも今の状況では向かえないのが現状だ

 

「その点は心配なく今データを送りますので」

 

クローディアはそういうと素早く端末を操作し綾斗のデータを送る

 

「これは・・・アスタリスク内の地図?」

 

クローディアが送ったのは地図のデータだ

一か所だけ赤丸でかこってあるところがある、おそらくそこが犯人の潜伏場所であろうことは簡単に予想できる

 

「えぇ、そこに今回の件の犯人がいるはずです」

 

「わかった、じゃあオレは行ってくるよ」

 

綾斗はそういって生徒会室から出ていこうとするが・・・

 

「綾斗!

調整はすんでます!」

 

クローディアは綾斗に向かってケースを投げる

以前の審査で綾斗が持つことになった純星煌式武装《黒炉の魔剣(セル=ベレスタ)》だ

今しがた調整が済みクローディアの元に届いたのだ

 

「ありがとう、クローディア」

綾斗はそれを受け取るとそのまま走り出した

綾斗が出ていったのを確認するとクローディア自分以外誰もいないはずの生徒会室で声をかけた

 

「もういいですよ“リィンさん”」

 

その瞬間空間が歪みそこから黒髪の青年が現れる白いコートを羽織りコートの下は黒いジャケットを着ている

年代は大体クローディアの少し上くらいだろう

 

「会っていかれてもよかったのではないでしょうか貴方の弟弟子にあたる人でしょう?」

 

「まだ、早いさ

その時がきたならオレは綾斗の前に姿を現すよ

まだ、その時期じゃない・・・」

 

「そうですか・・・

それと今回の件は助かりました」

 

「困ったことがあったらまた呼んでくれ

これも“要請”だからさ」

 

そういうと青年が立っている所の空間が歪みそこにはもう青年の姿はなかった

 

「やれやれ、困った方です。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃ユリスは再開発エリアの廃ビルを訪れていた

解体工事中のそこは逢魔が時の薄闇を支配している。すでに一部の壁や床が打ち壊されているので広く感じるが、あちこちに廃材が積まれているため死角は多い

それでもユリスはためらうことなく奥へと進んでいった。

傾いた日が不気味な影模様を作り出す中、険しい顔で黙々と歩みを進める。

――――が、一番奥の区画へ足を踏み入れた途端、吹き抜け状になっている上部分からユリスは視線もあげず呟く

 

「咲き誇れ、隔絶の赤傘花(レッドクラウン)

 

同時にユリスを守るように五角形の花弁が現出し、落下してきた廃材をすべて跳ね除ける

それはまるで炎の傘のようだった

 

「今更この程度で私をどうにかできると思っていたのか

いい加減姿を現したらどうだ」

 

屋上まで貫いた吹き抜けの更に向こうにはうっすらとした月が浮かんでいる

弾かれた強化鉄骨が床に突き刺さり、廃材が巻き上げた土埃がもうもうと立ち込める中、一人の少年が姿を現した

 

「これは失敬、余興にもなりませんでしたかな」

 

「サイラス、おまえだったのか・・・」

 

痩せた少年、サイラスは芝居がかかった仕草で頭をさげた

 

「ふふ、驚いたでしょう

まさか星導館の生徒であるこの僕が今回の件を起こしたなんて!!」

 

「おまえが犯人であるなら今ここでお前を倒すだけだ」

 

そういうとユリスは星辰力を集中させる

ユリスを呼び出したとされる目の前の男サイラスはあてに手紙を書いてた

内容はこうだ『今から周囲の人間を襲う、それが嫌なら指定の場所に来い』というものだった

 

「まぁまぁ、待ってください

僕もあなたと真正面からやりあって勝てると思ってませんここは話し合いで解決しませんか」

 

サイラスの言葉にユリスは怪訝な表情をする

 

「・・・・・・わかった

話だけは聞いてやろう」

 

ユリスはサイラスの警戒は解かずそう告げる

 

「そうこなくては、実は僕もあなた同様ここに来たのはお金を稼ぐことでしてね

気が合うはずだと思っていたのですよ」

 

「すでにおわかりだとは思いますがこちらの用件は貴女が、《鳳凰星武祭(フェニクス)》の辞退でしてね

プラスで今回の襲撃と僕が無関係であることを証言していただくと助かります」

 

「それを呑んだとして私に何のメリットがある」

 

「あなたと他の生徒へ危害を加えないでは不満ですか?」

 

「話にならん」

 

ユリスはサイラスの話を切り捨てる

 

「今貴様をここで倒せば済む話だしな」

 

ユリスは今度こそサイラスを倒そうと星辰力を集中させたとき・・・・

 

「これは一体どういうことだサイラス!!」

 

「・・・レスター?」

 

ずかずかとやってきたのはレスター・マクフェイルだった

レスターは怒りの形相でサイラスをみている

 

「やあ、お待ちしていましたよ、レスターさん」

 

「ユリスが決闘を受けたと言うから駆けつけてみれば・・・

今の話は本当なのか?

てめぇがユリスを襲った犯人だと?」

 

「えぇ、その通りです

それが何か?」

 

「ふざけるな!、なんでそんなマネしやがった」

 

「なんでといわれましてもね、依頼としか言えません」

 

「依頼だと・・・?」

 

レスターは驚きと怒り、そして混乱が入り混じった表情をしている

 

「こいつはな、どこぞの学園と内通して《鳳凰星武祭》にエントリーした有力学生を襲っていたのだ。知らなかったのか?」

 

「・・・・!」

 

レスターは言葉にならないといった表情をした

サイラスが他学園と繋がっていたのがにわかに信じられないのだろう

そんなレスターをあざけるような目でみながらサイラスは肩をすくめる

 

「僕はあなた方と違い、正面切ってぶつかり合うような愚かしいマネを繰り返すのはごめんなんですよ

もっと安全でスマートに稼げる方法があるのなら、そちらを選択して当然でしょう」

 

「それが同じ学園の仲間を売ることだと?」

 

「仲間?、ははっ、ご冗談を」

 

「ここに集まっている者は皆敵同士じゃないですか。チーム戦やタッグ戦のために一時的に手を組むことはあっても、それ以外ではお互いを蹴落とそうとしてる連中ばかりです。

あなた方のような序列上位者はそれをよくご存じでしょう

必死で闘って、血と汗を流して勝って、ようやくそれなりの地位を手に入れたと思ったら今度はその地位を付け狙われる。僕はそのようにわずわらしい生活は真っ平なんですよ。

同じぐらい稼げるのであれば、目立たずひっそりしていたほうが賢いと思いませんか」

 

「・・・・まぁ、貴様の言い分にも一理あるな

確かに我々は同じ学園に所属しているが、仲良しこよしの関係じゃないし、名前が広まればわずらしさもついてくる」

 

「おい、ユリス・・・」

 

「だが、――決してそれだけではない」

 

「おや、これは意外ですな。

あなたはどちらかと言えば僕に近い人間だと思っていたのですが」

 

「こちらも心外だ。

貴様のような外道と一緒にされるとはな」

 

ユリスはこれで話は終わりとばかりにサイラスを睨みつける

 

「ぶちのめす前に聞いておくぜ。

なんでわざわざオレ様を呼びだした

まさかオレ様がてめぇの味方になるとでもおもったのかだったら大馬鹿野郎としか思えねえな」

 

「いえいえ、あなたは保険のようなものですよ。

もしユリスさんとの交渉が決裂した場合、誰かがかわりに犯人役をやっていただく必要がありますか」

 

「・・・・てめぇ、本当に馬鹿なのか?

オレ様がはい、そうですかと引き受けるわけなぇだろ」

 

それはそうだ何らかの形でレスターを犯人役になるように誘導するのならまだ理解できる

レスターは単純な性格だ。

本人には悪いがそこをうまく利用すればレスターを今回の件の犯人役に誘導することもできただろう

 

「なに、お二人とも揃って口がきけなくなるまでいたぶれば、あとは適当な筋書きを用意しますから

なに、ご安心を

まぁ、そうですね、お二人が決闘の挙句、仲良く共倒れというのが一番無難なところでしょう」

 

サイラスはそういう設定でいくつもりらしいが、それは無理があるだろう

レスターはユリスが序列五位になってから何度も決闘を挑んでるがすべて圧勝している

その中で突然ユリスがレスターと決闘して共倒れなんてことになったら生徒会は動かなくとも怪しむ生徒たちは出てくるだろう

 

「おもしれぇ、てめぇのちんけな能力で黙らせれるっていうなら、ぜひとおやってもらおうじゃねぇか」

 

そう言ってレスターは煌式武装の発動体を取り出し起動すると戦斧《ヴァルディッシュ=レオ》が姿を現す

 

「レスター、先走るな

何を仕掛けてくるかわからん、やつも《魔術師》なのだろう?」

 

ユリスにとってレスターは仲がいいとは言えないがそれでもこの現状ではいないよりはマシだろう

 

「はっ、あいつの能力は物体操作だ

せいぜいそこらの鉄骨を振り回すことぐらいしかできやしねぇ

それよりユリス、おまえは手を出すんじゃねえぞ!」

 

そういうとレスターは、一瞬でサイラスとの距離を詰め斧型の煌式武装を振り上げる

サイラスの力量ならその一撃をかわすことなど不可能に近い、もし仮にも運よくかわせたとしても二撃目は確実に喰らってしまうだろう

そう・・・今までともに過ごしてきたサイラス・・・・なら―――

 

「なに・・・!?」

 

レスターは驚愕で目を見開き、驚きの声をあげる

突如吹き抜けから振ってきた黒ずくめの大男がサイラスの前にたちレスターの一撃を防いだ

だがそれだけならレスターも驚きはしない、サイラスが仲間を待機させていても不思議ではないそれにレスターの一撃をサイラスではなく大男が防いでるのならこれも納得だ

――――煌式武装で防いでるのなら・・・・だが・・・

大男はレスターの一撃を素手で受け止めていた・・・・

 

「ぐぅぅぅぅ!」

 

レスターの一撃を素手で受け止めているというだけで衝撃的ではあるがレスターがいくら力をこめてもまったくびくともしなかった

レスターは驚いた表情をしたがすぐさま距離をとった

 

「へっ!、そうか、そうかそいつが自慢の仲間ってわけか・・・」

 

「仲間?、くくっ、バカを言わないでください」

 

そう言いサイラスが指を鳴らすとさらに数体黒ずくめの大男が姿を現した

 

「こいつらはかわいいかわいい僕のお人形ですよ!」

 

黒ずくめの男たちがローブを脱ぎ捨てるとまさしく人形と言うにふさわしい機械人形だった

 

「戦闘用の擬形体か・・・?」

 

ユリスが冷静に観察しその人形をみてそれとなく呟いた

擬形体、それは戦場で使われるいわゆる機械兵器だ主に遠隔操作用のが用いられる

だが、それらを扱うには専門の施設を必要とする

いくらサイラスが他学園の生徒だとしてもそこまで大掛かりなものは用意できるとは思えなかった

 

「あんな無粋なものと一緒にしないでください

こいつらに機械仕掛けは施してませんよ」

 

サイラスの言ってることが確かなら動くはずがない

だが、現にそれらは動いていた考えられるとすれば一つだけだ

 

「なるほど、それが貴様の能力というわけか・・・」

 

そう、魔術師としての能力ならば簡単に説明がつく

機械仕掛けではない人形を動かせても不思議ではない

それにユリスが襲撃されたときなぜ気配をギリギリまで察知できなかった理由も簡単だ

人であるならまだしも機械であるなら気配を察知するのは難しいそれこそ“理”に至っている人間なら機械の気配すらも感じられそうではあるが・・・

少なくともユリスは武の領域でそこまで至ってはいないもちろん今戦っているレスターもその限りではないだろう

 

「てめぇ、隠してやがったのか!

自分じゃナイフを操るぐらいが関の山とかほざいてやがったくせに!!」

 

「まさか、それを信じていたんですか?

あはははは!、いや、これは失敬

ですが、冷静に考えて下さいよ

わざわざ、手の内を見せる馬鹿がどこにいますか?」

 

サイラスは大げさに肩をすくめてみせる

サイラスの言う通りだ。

最初からサイラスがこの計画を練っていたのだとしたら能力をわざわざばらす必要はない

ばらせば計画の妨げになるからだ

 

「レスターさんの言う通り僕の能力は印を結んだものに万応素で干渉し操作すること

それが無機物である以上、たとえこの人形のよう複雑な構造であっても干渉することが可能です。

もっともこのことを知ってる星導館の学生はいませんけどね」

 

「貴様はターゲットをその人形共に襲わせていた

そして貴様が人形をコントロールできることを知らないのであれば、貴様を捕まえるのは難しいだろう」

 

《魔女》や《魔術師》が犯罪行為をした場合は極めて立証が難しいのが現状だ

サイラスのように能力を隠すというのもあるが《星脈世代(ジェネステラ)》でも《魔女(ストレガ)》や《魔術師(ダンテ)》の数が極めて少ないのも理由のひとつであろう

 

「くだらねぇ!、そんなものここでてめぇを張り倒して風紀委員にでも突き出せば済むことだ」

 

「それはあなた方が無事に帰れたらの話でしょう」

「「いいだろう、だったら次は本気で行くぜ!」

 

そう言うとレスターは《ヴァルディッシュ=レオ》に星辰力を込める

すると《ヴァルディッシュ=レオ》が二倍近く大きくなる

ユリスもサイラスも知っているレスターの流星闘技(メテオアーツ)

 

「喰らいやがれ、《ブラストネメア》」

 

巨大化した煌式武装をレスターは振り下ろした

レスターの一撃によってサイラスの機械兵器は三体同時に吹き飛ばされ三体のうち二体は完全に機能が停止していた

腕などがありえない方向にねじ曲がっている。

最も三体目の大男タイプの機械人形はヒビが入っただけの軽症ですんでいるが・・・

 

「ほう、ちっとは丈夫なやつがいるじゃねぇか・・・」

 

軽症の機械人形を見たレスターが不敵な笑みを浮かべた

驚かない様子を見るとあらかじめ、予期していたのかそれともまだ自分に自信があるのかだが後者だろうとユリスは結論付けた

 

「これは対レスターさん用に用意した重量型ですからね

ノーマルタイプとは防御力が違います

体格も武器もあなたにあわせてありますいざという時代わりを務めてもらうためにね」

 

「オレ様に罪を着せるためにか?

ってことはそのクロスボウ型の武器の人形はランディ役か?」

 

「ま、そんなところです」

 

「ふん、わざわざご苦労なこった

残念だったなそいつは無駄に終わりそうだぜ!」

 

再びレスターは《ヴァルディッシュ=レオ》を振り下ろすがその刃が重量型に届く寸前

柱の影から現れた新たな機械人形がレスターに光弾の嵐を浴びせていた

 

「ぐあああああぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

「レスター!!」

 

ユリスは飛び出そうとするがそれを阻むように機械人形がユリスの前に立ちふさがる

 

「おっと、あなたはそこでおとなしくしておいてください

そいつらも特別仕様でしてね貴女用に耐熱限界をあげてあります」

 

「くっ・・・」

 

ユリスを囲むように更に数体の機械人形が現れる

その手には剣型の煌式武装が握られていた

ユリスはすかさず細剣型の煌式武装《アスペラ・スピーナ》を起動する

 

「ぐ・・・

きたねぇ、不意打ちしか出来ねぇようだな・・・」

 

光弾を受けたレスターは膝をつきサイラスを睨みつける

 

「おや、存外に元気ですね」

 

とっさに星辰力を防御に回したのだろう

思いのほか元気そうだ、所々に血が目立つがレスターほどの男なら大丈夫だろう

 

「こ、こんな木偶の坊、何体かかってこようとオレ様の敵じゃ・・・」

 

「やれやれ、レスターさんあなたは何も理解していない」

 

その瞬間レスターの前にまた新たな機械人形が現れる

それだけではない機械人形は更に一体また一体と増える一方だ

その数今確認できるだけでも十や二十では済まさないいやむしろ・・・

 

「何体でかかってこようと?

いいでしょう、それならお望み通り相手してあげますよ

百二十八体の人形でね!」

 

「ひゃく・・・」

 

レスターの先程の自信に満ちた表情は消えそこには恐怖や絶望しかなかった

 

「あぁ、いい表情です

そうそう、あなたのそういう表情がみたかったんですよ

それではごきげんよう」

 

サイラスが合図を出すと百体以上の機械人形が一斉にレスターへと襲いかかる

 

「やめろ、サイラス!!」

 

ユリスは叫びながらもなんとか人形たちの包囲網を突破しようと試みるがなかなかうまいように突破できないでいた

一体一体の人形の戦闘能力はそれこそ大したものではない

酷く言えば雑魚の類だ

だが、この人形たちは連携がうまい、それが未だにユリスが突破できない理由の一つだ

 

「ご安心を、まだしばらく息をしてもらわないと困ります

なにしろレスターさんは貴女が倒したことにしないとマズいですからね!

適当に火種を用意しませんと」

 

「咲き誇れ!、呑竜の咬焔花(アンテリナム・マジェス)!」

 

ユリスが細剣を振るうと魔法陣が描かれそこから巨大な焔の竜が出現した

 

「おぉ、これは初めて見ますね」

 

サイラスが感心したようにつぶやくがユリスはそれを無視して焔の竜を操り機械人形たちをその竜が呑み込んでいく

 

「おお!?」

 

耐熱限界をあげてると言ったその機械人形も意味をなさずいとも簡単に焼き尽くされてしまう

 

「これは大したものですね

序列五位は伊達ではないということですか・・・!」

 

サイラスは一旦距離をとり指を鳴らす

 

「しかし多勢に無勢です」

 

サイラスの合図とともに人形たちは焔の合間をくぐってユリスに迫ってくる

 

「くっ・・・」

 

ユリスは細剣で応戦するが、とてもさばききれてない

それは少しでも集中を乱せば今出してる技のコントロールが効かなくなるためだ

そのため近づいてきた人形たちに対処しきれてないのだ

 

「舐めるな!!」

 

ユリスは目の前の鍔競り合いになっている人形を弾き後ろから襲いかかってきている人形を刺して戦闘不能にする

だが人形はまだあまるほどある数体やられた程度ではなにも変わらないだろう

レスターを倒し終えたのかレスターの方に向かっていた人形たちもユリスの方に向かってきている

更にサイラスの前にいる人形たちが銃をユリスに向けている

ユリスは盾にするべく焔の竜を呼び戻が―――――――

わずかに間に合わない・・・

銃弾の嵐がユリスを打ち抜いていく

 

「ぐっ・・・・!」

 

ユリスは苦悶の表情を浮かべながらも立ち上がろうとするが身体に力が入らず立てずにいる

幸いわざとなのか致命傷は避けてるようで命に別状はなさそうな傷ではある

ユリスがダメージを受けたせいか焔の竜はあっけなく消えてしまう

 

「貴方の能力は強力ですが自身の視界を塞いでしまうのが難点ですね」

 

「ふん、流石によく観察しているじゃないか

だが、私にもひとつわかったことがある

貴様のバックにいるのがアルルカントであるということだ」

 

その言葉にさっきまで余裕の笑みを浮かべていたサイラスから笑みが消えた

どうやら図星ということだろう

 

「その人形特別仕様とか言っていたな?

だが、私やレスターの攻撃に耐えうる装甲をどこで手に入れた?

ましてその人形の数からみてもバックにどこがいるのか一目瞭然だ」

 

「ふむ、ご明察

これはいよいよ見逃すわけにはいかなくなりましたね」

 

「元々、そんなつもりないくせによく言う」

 

「なぁに、あなたもレスターさんももう少し痛めつけてからと思いましたが気が変わりました」

 

サイラスが合図すると一体の人形が巨大な戦斧をユリスに向かって振り下ろしていた

普段のユリスなら簡単に避けるか破壊しただろうだが先程の人形の攻撃を喰らったせいでうまく動けずにいる

かわすことも、歩くことも簡単ではないそんな状態で人形の攻撃などかわせるはずもない

ユリスは咄嗟に目をつぶる

だが、いつまでたっても痛みはなかった

ユリスはゆっくりと目をあけてみるとそこには両断された人形がユリスの視界には映っていた

 

「ごめん、ユリス

遅くなった・・・・」

 

そこには人形を両断したであろう人が立っていた

それは・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く




本当申し訳ない、というか結局リィンさん出しましたwww
まぁわからない人は閃の軌跡って調べればわかります

ではチャオチャオ


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十二話

とりあえず一巻の内容は終了です



その声に驚いて目を開けばそこには本来ここにいるはずのない少年の顔が映った

右手には純白の大剣を持っている

天霧綾斗・・・つい最近アスタリスクにやってきた特待生だ

話によればクローディアが推薦したらしいが詳しいことはユリスにもわかってない

 

「綾斗!?」

 

ユリスが声をあげたのと同時に綾斗が先程一刀両断した人形とは別の人形が襲いかかってくる

だが、綾斗は焦った様子もみせず純白の大剣を振りまたしても両断して見せる

その切れ味は一般的な煌式武装とは比べ物にならないくらいの切れ味だ

そう、特殊な煌式武装・・・・純星煌式武装と呼ぶにふさわしい・・・

 

「これが・・・《黒炉の魔剣(セル=ベレスタ)》・・・」

 

ユリスは静かに呟いた

ユリスも綾斗が《黒炉の魔剣》の適合テストにて合格ラインの数値をたたき出したことは聞いている

それを聞いてもなおその切れ味は流石としか言えなかった

《黒炉の魔剣》もそうだが、あの大剣を片手で振るっている綾斗も相当な力量だ

 

「ではなく、おまえどうしてここに・・・」

 

「クローディアのおかげかな」

 

「クローディアの・・・?」

 

「まさか、私を助けに来たなどとぬかすなよ?」

 

「いやいや、どうみてもそうなんだけど・・・」

 

やっと振り向いた綾斗は困ったように笑う

 

「これは私の問題で、おまえとはなんの関係もないはずだ

それなのにわざわざ危険な目に遭いに来たと言うのか!?」

 

「・・・・・関係ない・・・か

ねぇ、ユリス、人と人が関わってる以上関係ないなんてことはないと思う」

 

「なに・・・?」

 

「オレはもう君と関わってしまっている

その上で関係ないなんてことはない・・・

まぁ、受け売りだけどさ」

 

綾斗はそれだけ言うと、ユリスから視線をはずし正面を向く

綾斗の目線にはサイラスがいる

 

「お話は終わりましたか?

いやはや、思わぬ飛込ゲストですね

天霧綾斗くん」

 

サイラスは芝居がかかった仕草で肩をすくめる

一瞬で人形が数体一刀両断されたというのにサイラスの表情に焦りはない

まだ余裕があるということだろう

 

「今のが《黒炉の魔剣》の力ですか・・・・

なるほど少々厄介ですね・・・」

 

《黒炉の魔剣》・・・星導館学園が誇る最高峰の純星煌式武装にして四色の魔剣の一種だ

黒とつくわりに刀身は白い純白の大剣だ

綾斗はそれを片手で構えている

 

「しかし、使い手が二流だと折角の純星煌式武装も宝の持ち腐れというものです

綾斗くん、あなたの戦いぶりは拝見しましたが、正直この学園に置いて凡庸の極みです

今は不意打ちがうまく行ったようですが、百体を超える僕の人形たちになにができると・・・・」

 

「黙れ、不意打ちしかできないのも、二流もあんただろ

サイラス・ノーマン」

 

まだ綾斗にあってそんなに日がたっていないユリスだが底冷えするような冷たい声だった

そんな風にユリスは感じた

 

「言ってくれますね

でしたら試してみますか?」

 

サイラスが合図をすると百体以上の人形体がそれぞれ煌式武装をかまえ一斉に綾斗に襲いかかった

 

「綾斗!!」

 

ユリスは声をあげた

なにせ数体でも苦戦を強いられたユリスだ人形の戦闘力は今現在ユリスが一番よくわかっている

いくら戦闘能力が低い人形でも数で来られれば対応しきれなくなる・・・そうそれは一般的な場合だ

綾斗に一般的な・・・・は

 

「数でくればいいわけじゃないよ・・・

八葉一刀流・・・弧月一閃」

 

綾斗は《黒炉の魔剣》を腰に構える、いわゆる抜刀の構えだ

《黒炉の魔剣》に鞘はないため抜き身で構える

そして一瞬の抜刀・・・黒い焔の斬撃ととも人形たちが一斉に両断される

 

「なっ・・・・!?」

 

サイラスの先程の余裕の表情が顔から消え、明らかに焦っているのがわかる

 

「サイラス・ノーマン、この程度かい?」

 

「ぐっ・・・

多少はできるようですが、侮らないでください!

次はちらも本気でいかせていただきますよ!」

 

と、今まで乱雑だった、人形たちが整列をし、綺麗に並ぶ

前衛は槍などの長柄武器、後衛は銃やクロスボウなど遠距離武器、ところどころに剣の煌式武装を手にした人形も並んでいる

そして、その最後尾にサイラスが立った

 

「これぞ我が《》の精髄!

一個中隊にも等しいその破壊力、凌げるなら凌いで見せろ!」

 

サイラスは勝ち誇ったように高らかに言う

 

「はぁ・・・・」

 

綾斗は大きくため息を吐いた

サイラスがあまり綾斗の戦闘スタイルが分からないから仕方ないかもしれないが自分の周りに人形を置いただけで勝ったような気でいるのだ

溜息も吐きたくなる

それにあれだけきれいに並ばれれば綾斗にとっては好都合だ

 

「八葉一刀流、二の型、疾風」

 

サイラスの視線から綾斗が消えた

 

「な・・・

何処に行った!?」

 

サイラスはきょろきょろと辺りを見渡すが綾斗の姿は見当たらない

そんなことをしてる間に一体の人形が両断される

更に一体、もう一体と次々と人形たちが両断されていく

サイラスはその光景に動揺したようにあたりを見渡すがそんなことしても見つかるはずがない

そんなことをしているうちに前衛の人形がすべて両断される

前衛の次は後衛の人形だ

綾斗は高速で移動しながら後衛の人形も両断していく

《黒炉の魔剣》の巨大さのせいか綾斗自身いつもの綾斗が使う疾風より速度が落ちてると感じていた

いつもは太刀を使う剣術の技だ速度が落ちても不思議ではない

それでもサイラスは捕えれないようだが・・・

キョロキョロと翻弄されている

そして綾斗は最後の一体を両断する

 

「馬鹿な・・・、馬鹿な・・・」

 

「終わりだよ、サイラス・・・」

 

綾斗はすべての人形を両断し終えるとサイラスに《黒炉の魔剣》を向ける

 

「まだだ、まだ僕には奥の手がある!」

 

サイラスは腰砕けになりながら大きく合図をした

すると背後にあった瓦礫の山が吹き飛び中から巨大な人形が出現する

もしかしなくてもこれがサイラスの言っていた奥の手だろう

綾斗ほどの実力者からしてみればなんてことはないただ大きくなっただけで先程の人形と同じだ

 

「は、ははは、さぁ、僕のクイーンやってしまえ」

 

巨大な人形はサイラスの命に従い綾斗に向かってその巨大な腕を振り下ろす

 

「八葉一刀流伍の型、残月」

 

その瞬間巨大な人形の腕が瞬時に落とされた

 

「は・・・?」

 

サイラスはぽかんとその光景を見ていることしかできなかった

攻撃を仕掛けたのはサイラスの人形の方だ。

まだ鍔競り合いになるのならサイラス自身も理解ができる

だが、先程の一撃はそれさえも許さなかった

まさ一閃だった

 

「まさか、一切の防御が許されない剣

それが、《黒炉の魔剣》」

 

ユリスは静かにその光景をみながら呟く

《黒炉の魔剣》の噂は耳でしか聞いたことがない万物を焼き切る純星煌式武装・・・

今までしっくりこなかったが今目で見たユリスならその意味がよく分かった

一切の防御を無視しそれごと焼き切るのだと・・・

 

「馬鹿なぁぁぁぁぁぁぁぁあ」

 

サイラスはその光景を見て叫んだ

綾斗の剣士としての実力派疑いようがない達人級の実力だと・・・

ユリスはそう感じた

 

「八葉一刀流、螺旋撃」

 

綾斗は《黒炉の魔剣》を上段に構え右上からの斬り下げ横に一閃そして体を捻り一回転し更に一閃それを最後に斬撃とともに炎の竜巻が巨大な人形を切り刻む

 

「・・・・・・」

 

サイラスはこの光景が信じられないからか未だに呆然とみている

 

「今度こそ終わりだよ、サイラス」

 

綾斗はサイラスに向き直りそう告げる

 

「ひぃぃぃぃぃぃぃぃい」

 

サイラスは悲鳴を上げると綾斗が両断した人形の中でマシなのに乗りそのままフワーと浮いていく

 

「本当往生際が悪いなぁ・・・」

 

綾斗は溜息を吐きながら追いかけようとすると・・・

 

「ん?」

 

綾斗の端末に連絡が入った

クローディアかなと思い緊急だったが綾斗は端末を操作し、通話状態にする

 

「綾斗、久々だな」

 

そこには一年半前に私用があるとかで綾斗の前から姿を消した、綾斗の修めている剣術

八葉一刀流の兄弟子・・・

そして・・・《灰塵の剣聖》の異名を持つ、武の世界では知らない者はいないリィン・シュバルツァーだった

 

「リィンさん、久々ですけどすいませんが今こっちは立て込んでて・・・」

 

久々の憧れの人からの連絡はうれしくないわけじゃないが綾斗に急ぎの用がある

逃げたサイラスを追わなければならない

そのことを伝えようと口を開きかけた時最初にリィンが口を開く

 

「あぁ、サイラス・ノーマンだろ?

その件で連絡したんだ」

 

「え・・・?」

 

「なに・・・?」

 

まさかリィンがサイラスの件で連絡してくるとは思いもしなかった綾斗は目を丸くする

今回のサイラス件は知っているもいのは今この現場にいる、綾斗たち、そしてクローディアぐらいだろう

まさかリィンが知っているとは思いもしないだろう

 

「その件、オレに任せてくれ

例の機械人形を操ってるって聞いてな

そこで聞きたいことがあってな・・・」

 

「いえ、リィンさんなら任せても大丈夫です」

 

綾斗自身疑問はかなりあったがあこがれる兄弟子だ

もしかしての線はないとみていいだろう

 

「あ、でも逃げられて・・・」

 

「わかってる、逃がしたのを分かったから連絡したんだ」

 

それを最後にリィンは通信を切った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、多分ここら辺に降りるとは思うが・・・」

 

通信を切った綾斗の兄弟子、リィン・シュバルツァーは再開発エリアの路地裏でターゲットが来るのを待っていた

ある人物の伝手でここに来ることはわかっている

あとは現れるのを待つだけだ

 

「リィンさん、先にきていたんですね・・・」

 

「えぇ、少佐も早いですね・・・」

 

少佐と呼ばれた女性はリィンに微笑む

顔立ちは整っていて美人の分類にはいるだろう

 

「例の人形どう思います?」

 

「今回は外れだと思います

多分バックはアルルカント、オレたちが追っている“蛇”ではないでしょうね」

 

 

 

 

 

 

 

 

綾斗にこっぴどくやられたサイラス・ノーマンは重い体を無理やり動かしながら再開発エリアの路地裏に入っていた

サイラス自身今すぐにでも休みたいがそうはいかない統合企業財体の特務部隊《影星》が動いている

今足を止めれば確実に捕まりサイラス自身が持っている情報を聞き出そうとするだろう

それだけは阻止する必要がある

 

「くそ!、くそ!、何故でない」

 

サイラスのバックであるアルルカントにさっきからなんども連絡しているがまるで応答がなかった

そのことに苛立ちを覚える

一刻も早くアルルカントに保護してもらいたいサイラスだが肝心のアルルカントが出ないのであればどうしようもない

こうしてる間にも追っては迫ってきてるというのに・・・

 

「僕が捕まって困るのはあっちも同じだろうに・・・」

 

「ハハ、それは見当違いだと思うけどなサイラス・ノーマン」

 

「ひっ!?」

 

闇の中サイラスの行く手を阻むように現れたのは、黒髪の青年に軍服を着た女性だ

 

「か、灰塵・・・

それに、氷の乙女・・・」

 

サイラスは二人の姿を見て完全に腰が抜けてしまった

武の世界ではもちろんこの二人は裏の世界でも名が上がるほどの要注意人物とされている

サイラスも曲がりなりにも裏に足を踏み入れた人間この二人を知らないはずがない

 

「うわああああああああぁぁぁぁぁぁ」

 

サイラスは叫びながら路地裏にあるものを操りそれをリィンたちに投げていくだがそんなもの時間稼ぎにもならない

黒髪の青年は一瞬でサイラスの目の前まで移動する

 

「がっ・・・・」

 

黒髪の青年は自身の武器である太刀の柄の部分をサイラスの溝にいれ、気絶させる

 

「あ、聞き出すんだったけどはずれっぽいですね」

 

「えぇ・・・」

 

軍服の女性も近くまで寄ってきて気絶したサイラスをみる

 

「流石は綾斗の兄弟子ですね」

 

暗闇の中さらに声が聞こえる

今度は金髪の少女だ

 

「で、彼は拷問して聞き出すより外交カードとして使うそんなところか?」

 

「おや、鋭いですね

流石は剣聖といったところですか」

 

「そしてそこの《影星》も隠れてないで出てきたらどうですか」

 

軍服の女性が銃をそこに向けると姿を現す

 

「いやぁ、うまく隠れてたつもりなんですけどね・・・」

 

現れたのは綾斗とそう同級生の矢吹だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ではこの件は内密に」

 

「えぇ、わかってますよ」

 

そして誰も知らないところで事態は動き出す今回の件がかわいいと思えるほど深刻な事態が・・・

だが、それはまだ先の話、今はつかの間の平和を楽しもう・・・・

 




次巻の内容は多分リィンさんとか例の少佐さんとかでないです
内容的にもwww

ではチャオチャオ


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