摩訶不思議アドベンチャーな世界に転生したかと思ったら一繋ぎの世界にトリップした件について (ミカヅキ)
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プロローグ
ドラゴンボールという国民的漫画がある。
幼い頃は年の離れた兄と一緒にかめはめ波を真剣に練習したし、自分はできないだけで舞空術ができる人間はいると思っていた。もちろん小学校に上がる前には現実を知ったのだが。
成長してなんだかんだと他の漫画にハマるようになっても、ドラゴンボールはずっと好きだったし、社会人になってからもう無いと思っていた2度の映画化にも興奮してきっちり映画館まで見に行ったものである。
単行本は完全版を集めたし、「神と神」と「復活のF」のDvDは初回限定版を買った。
ネット小説や夢小説にハマってからは、もしドラゴンボールの世界に行ったら~という妄想も幾度となく脳内で繰り広げたものである。
だがしかし、
「これはよそうしてなかった……。」
ベッドの上で目覚め、天井を見上げながら呟く。
まだ涙でチカチカする視界の中、部屋を見回すと額に置いてあった濡れタオルがズレ落ちた。
ガチャ…
まるで図ったようなタイミングでドアが開く。
寝ている(と思っている)自分を起こさないようにだろう、音を立てないようにそっと入ってきた父親が目を覚ましている自分に気づいて声をかけてきた。
「ジャスミン!目が覚めたのか?」
洗面器を床に置いてベッドの枕元に座り、額に手を当ててくる。
「まだ熱いな…。何か食べるか?おかゆ作ったぞ。」
「うん…。おなかすいた」
話しながら父親がズレ落ちたタオルを洗面器の中に入れると、水音と一緒にカラコロという音がする。どうやら氷水で冷やしてくれるらしい。
タオルを絞ってから額に乗せ直してくれると、冷たくて気持ちが良かった。
「気持ちいいか?」
「うん。」
「お父さん、おかゆあっためてくるからな。ちょっと待っててくれよ。」
そういって父親が再び部屋を出ていくのを見送りながら、おかゆを待っている間に熱と記憶を取り戻したことで混乱している頭を整理することにした。
さて、思い出したのは私が21世紀の日本でОLをしていた時の記憶である。
死んだ時の記憶は無いものの、昔の名前や両親や友人の名前も曖昧な上、こちらの世界で幼少を過ごした記憶はばっちり残っている為、憑依ではなく転生で間違いない。
たぶん、日本から転生してドラゴンボール世界に生まれ、記憶が無いまま今まで過ごしていたのだと思う。
記憶を取り戻したきっかけは恐らく、今も引かない熱だろう。
基本的なところは日本とさほど変わらない為、病気などの種類もほぼ一緒である。
とは言え、別に重篤な病気を発症した訳ではない。学校で流行っているインフルエンザに罷っただけのことである。
しかし、これまでこれといった病気に罹ったことの無い体には負担が大きかったようで、なかなか熱が下がらず2日程40℃近い高熱に浮かされることになったのだ。
他に理由も思い当たらないので、発熱がきっかけでいわゆる前世の記憶が戻ったに違いない。
そこまでつらつらと考えていると、再びドアが開いて父親が戻ってきた。
手には小さい土鍋と小鉢の乗ったお盆がある。
「持ってきたぞ。起き上がれるか?」
「うん…。」
額のタオルを持ちながらのそのそと起き上がると、洗面器の近くにお盆を置いて小鉢におかゆをよそってくれる。
「ほら。熱いから気をつけてな。」
「いただきます。」
差し出された小鉢を、同じく渡されたレンゲでかき回し、1口分のおかゆに息を吹きかけつつそっと父親を見た。
「ん?どうしたジャスミン?」
「なんでもない。」
程良く冷めたおかゆをほうばりつつ答える。
申し遅れた。自分の今の名前はジャスミン(7歳)。ドラゴンボール無印時代からのレギュラーキャラ、ヤムチャの娘として転生した元一般人である。
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第1話 狼牙真拳炸裂!勝ち残れ、天下一武道会
ここでプロローグでは触れなかった主人公の容姿とプロフィールについて説明します。
名前:ジャスミン
※ジャスミン茶から命名
年齢:14歳(学年的には悟天の2つ下で、エイジ770年に誕生)
容姿:腰まで伸ばした黒髪に緑色の瞳。黒髪はヤムチャ譲りで、目の色は母親似。特別美少女という程でもないが、顔立ちは整っており普通にかわいいタイプ。グラマーではないが、貧乳という程でもなく、Cカップはあり鍛えているので均整のとれた体付き。
身長:160cm
体重:53kg
来歴:セルゲーム後にドラゴンボールを使った際に、ヤムチャがネックレスをプレゼントしようとしていた彼女との間に生まれた。しかし、その時既に母親とヤムチャは別れており、母親にも別の彼氏がいた為、ヤムチャに押し付けられる。以来、ヤムチャがシングルファーザーとしてジャスミンを育てた。
魔人ブウとの戦いの時は4歳。既に舞空術やカメハメ波は体得していたものの、前世の記憶はまだ無かった為、目立った活躍はせず。天下一武道会にもヤムチャが許さずに参加していない。
7歳の時にインフルエンザによる高熱で前世の記憶を取り戻した。その後、せっかくドラゴンボール世界に転生したんだから限界に挑戦したい、と半ばミーハーな気持ちで修行に励む。
さて、私が前世の記憶を取り戻して約8年、私も14歳である。
ん……?展開が早い?修行と学校、時折遊びの毎日で特筆することが無かったのだ。そこは目をつぶってほしい。
今日は第28回天下一武道会。そう、ドラゴンボールファンならピンとくるだろう。
今日はドラゴンボールの漫画としての最終回、悟空がウーブと一緒に修行に出たあの大会である。
前世の記憶を取り戻して以降、この日の為に
その甲斐あってか、悟空曰く既に
因みになぜクリリンや悟空なのかと言えば、
余談だが、ヤムチャの職業は現在はアクション映画などのスタントマンである。撮影が長期に入る場合では、その分長い期間預けられていた為、修行に励むことができた。
難なく予選を通過し、本選のくじを引く為に出場者が集まっていた時のことだった。
「ねぇねぇジャスミンちゃん。」
「ん?」
振り返ると悟天とトランクスがいる。
「どうかした?悟天くん。」
「ジャスミンちゃんさー、なんで天下一武道会に出ようと思ったの?」
「そうそう。オレたちなんて、出るつもりなんて無かったのにさ。」
因みにこの2人、ジャスミンが頻繁に孫家やCPに預けられていたこともあり、幼馴染のような間柄である。特に悟天とは、悟空に修行をつけてもらっていた際には良く組手に付き合ってもらっていた。
「お父さんたちが出た大会だから出てみたかったんだよね。ほら、10年前は私参加できなかったしさ。」
「あ~…。そういやヤムチャさん、あん時は許してくれなかったんだっけ?」
思い出したようにトランクスが呟く。
「そ。ほら、少年の部があることわかんなかったからさ。」
「なるほどね~。」
悟天が納得したように頷いた。
「2人こそなんで?出たくなかったんでしょ?」
「ボクはお父さんに無理やり。今日、デートの約束してたのにさ。」
「オレもパパに命令されてさ~…。出なきゃこづかい半分だって言われたんだよ。」
溜息を吐きつつうなだれる2人。
「それもそれでたいへんだね。」
(そういえばそんな話だっけ?)
なにぶん、最後に原作を読んだのは10数年前の話なのではっきりしない。
「えー、それではくじ引きで順番を決めますので、予選を通過された選手のみなさん集まってくださーい。」
天下一武道会ではおなじみの審判に呼ばれ、出場者が集まった。
「名前を呼ばれた方から順番にくじを引いてください。」
それぞれトランクスが9番、悟天が8番を引く。
「次はジャスミンさん」
引いたくじは10番。初戦からトランクスである。
「何番ですか?」
「…10番です。」
「い?!」
「最初っからトランクスくんとジャスミンちゃんか~。」
まさかの結果にトランクスが驚き、悟天は他人事と思ってか「楽しみだな~。」と気楽な声を出している。
「負けないからね!」
そうそう勝てるとは思えないが、自分の実力がどこまで
「マジかよ・・・。」
対するトランクスは、
そこから先は原作通りにパンが第1試合を勝ち残り、第2試合は悟空がウーブを連れて会場を飛び出し無効。
第3試合もキャプテン・チキンが悟空とウーブの試合に恐れをなして逃亡した為試合放棄でキラーノの不戦勝。
第4試合では悟天が修行不足は否めずブウに敗退。
そして遂に第5試合・・・
「続きまして、第5試合。トランクス選手対ジャスミン選手の試合です!トランクス選手は、10年前に天下一武道会の少年の部で他を圧倒する強さを見せ、初出場で見事優勝しています!!対するジャスミン選手は、トランクス選手とは親同士の付き合いで幼馴染のような間柄とのこと。お父さんのヤムチャさんは青年時代に3度天下一武道会本選に出場したことのある武道家であります!そして何より、幼少の頃から先程激戦を魅せてくれた孫悟空選手に修行をつけてもらっていた実力者です!現在着ている道着も、お父さん方がかつて着ていた亀仙流の道着であります!」
審判の解説の間に武舞台に上がり、お互いに向かい合わせに立つ。
左の拳を右の手のひらに当て、胸の前で一礼し、トランクスも同様の礼を返す。
「それでは、第5試合トランクス対ジャスミン、試合開始!!」
試合開始と同時に右足で思い切り踏み込み、気合と同時に拳を突き出し、間髪つかせず連打する。
「りゃああああ!」
「くっ!」
拳と蹴りの激しい応戦に会場が沸いた。
「おおー!これは激しい攻防です!わたしにはその動きがかすかにしか見えませんー!」
審判の解説にも熱が入る。
「せい!」
気合と共に胸に放たれたジャスミンの蹴りをトランクスも腕をクロスさせて防ぐが、勢いを殺しきれずに数歩たたらを踏む。
「りゃあ!」
好機を逃さずに追撃するが、さすがに一筋縄ではいかずに今度は完璧に防がれてしまった。しかも一瞬体勢が崩れた隙をつき、トランクスの拳が突き出される。
「ちっ!」
ギリギリのところで身を引いて避け、そのまま飛びのいて一旦距離を取る。
「さすが強いね。」
「・・・お前こそ。」
「すっ、すっ、すごいすごい!近年稀に見る凄まじい試合です!」
手強い相手との試合を楽しんでいるジャスミンに比べ、トランクスはやりにくそうだった。
純粋な戦闘力で言えばジャスミンがトランクスに敵う筈も無いのだが、トランクスはここ最近ほとんど修行をしておらず、また相手が幼い頃から良く知る女の子という点がそれを鈍らせていた。
対してジャスミンは、相手がトランクスという時点で負けてもともと、実力試しのつもりで挑んでいる為、全く気負う必要が無くのびのび戦うことができていた。
「もっと本気できてよ。さすがに
「そんなこと言ったってさ・・・。」
「だったら・・・。」
セリフと同時にある構えを取る。拳を開いて腰を落とし、やや体をひねる。右手を顔の上にやや突き出し、左手を胸の前で構えた。
「その構えは・・・。」
「こっちから行くよ!」
言い終わると同時に飛び出し、先程の攻防の比ではない激しい連打をトランクスにあびせていく。
「りゃああああああ!」
「ぐっ…!」
「こっ、これはジャスミンさんのお父さん、ヤムチャさんの狼牙風々拳!親子2代で同じ技を使う!これぞ、長い歴史を誇る天下一武道会の醍醐味です!」
「違うよ!」
言葉と同時に拳だけでなく、蹴りも追加された。
「うえ?!」
両の拳だけでなく、その合間を縫って襲う凄まじい蹴りに徐々にトランクスの余裕が削られていく。
「なんと、ジャスミン選手!お父さんの技を進化させています!!トランクス選手、防戦一方か――――!?」
「狼牙真拳!」
恐るべきはそのスピードと卓越したバランス感覚である。もちろん、トランクスもやられてばかりではない。
その反撃を全て受け流し、あるいは紙一重で避け、ジャスミンがトランクスをおしていく。
「やべっ!」
「ハァッ!!」
トランクスが激しい応酬に耐え兼ね、一瞬だけバランスを崩した隙を見逃さず、ジャスミンの放った蹴りがトランクスの顎を捉えた。
トランクスの体が後方に弾き飛ばされ、ジャスミンが勝利を確信して気を抜きかけた瞬間、そのままの勢いでバク転の要領でバランスを立て直したトランクスが、逆立ちのままカポエイラの如く蹴りでジャスミンの足を払う。
「あぁっ!」
「はああっ!」
体勢を立て直す暇さえ与えず、そのままトランクスが掌底を放ち、ジャスミンが観客席の壁まで吹っ飛ばされた。
「ぎゃんっ!」
受け身を取れずに激突してしまった為、思わず変な声が出てしまう。
そのまま壁をずり落ち、地面に尻もちをついた。
「ジャ、ジャスミン選手場外―――――!トランクス選手の勝利です!」
「ジャスミン、大丈夫か!?」
駆け下りてきたトランクスが差し出した手を取り、起こしてもらう。
「ちょっと痛いけど大丈夫。・・・やっぱり強いね。勝てないや。」
「お前も強くなってて焦ったよ。もうちょっとで
ワアァァァ――――――――!!!
会場の拍手と歓声に見送られ、2人は武舞台を後にした。
終わった…。すいません、バトル描写がめちゃくちゃです。後々手直しするかも…。脳内の妄想をそのまま文章化してくれる機械があればいいのに…。
そして、クロスオーバー作品なのにまだクロスオーバーしません。次かその次には必ず…!
※ジャスミンの年齢を訂正しました。誕生日を12月にしてしまったので、誕生日前に15歳にしてしまうと「悟天の2つ下」という前提が崩れてしまうことに気付きまして…。天下一武道会の時点で中学3年生(14歳)とします……!
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第2話 ブルマの提案
そしてこの小説、ドラゴンボールの原作知らない人には不親切ですね…。ご存知無い方は後書きに軽く登場人物と用語の解説を書いておくのでご参照ください。
8月23日、加筆修正しました。
夏休みではなく、GWに変更しました……!
「第28回、天下一武道会優勝はミスター・サタン!!!」
ワアァァァ―――――――!!!
「あーあ、終わっちゃった…。1回戦くらいは勝ちたかったんだけどなー。」
トランクスに負けたジャスミンは、その後すぐに普段着に着替え、特別席で観戦している
「相手が悪かったな。トランクス相手じゃ仕方ないさ。結果はどうあれ、試合は凄かったぞ。また強くなったな。」
ぽんぽんと隣にいる
「そーよー。純粋な地球人なのに大したもんだわ。それにジャスミンちゃんの方がトランクスより3つも年下じゃない。私トランクスが負けるかと思ってちょっとハラハラしちゃった。」
ブルマがあっけらかんと言う。
「そうそう。サイヤ人にあれだけ戦えれば十分さ。今日はお父さんと何かうまいものを食いに行こうか。」
「…うん。私、中華がいーなー。」
「よし。今日は奮発するからな!」
「あら。じゃあ、みんなでウチにいらっしゃいよ。集まったのも久しぶりだし、ウチでパーティーしましょ。ね、そうしなさいよジャスミンちゃん。とびっきりおいしい中華ももちろん用意するわよ。」
その言葉に
「どうする?お父さんはどっちでも良いぞ。久しぶりに
「私もどっちでも良いけど…。」
「じゃ、決まりね!」
嬉々としてブルマが端末を操り、食材やら酒類の手配をした後、「はいはいちゅうもーく!」とパンパンと手を叩きながらみんなに呼び掛けた。
「今日はこのままウチでパーティーよ!みんなでパーッと騒ぎましょ!!」
ブルマの言葉に喜ぶ者半数、しょうがないなブルマさんはと言いたげな顔をしている者半数だった(かと言って反対という訳ではないようで、久しぶりに集まった仲間と騒げるのが嬉しい様子だったが)。
所変わって
「ねー、ジャスミンちゃん。」
「どしたのマーロン?」
不意にマーロンがジャスミンのパーカーの裾を引っ張ってきた。
クリリンと18号の娘のマーロンは、良くクリリン宅にも預けられていたジャスミンにとっては妹の様なものである。マーロンもジャスミンを姉のように慕っており、些細なお願いごとをしたり甘えたりすることは珍しいことではない。
「ジャスミンちゃんってドラゴンボール見たことある?」
「?あるよ。急にどしたの?」
「この前、パパたちの昔の写真を見たの。そしたら、私ドラゴンボールってちゃんと見たことないなと思って。」
「そっか。魔人ブウの時はマーロンまだ小さかったもんね。」
まだ幼かったマーロンの記憶には残っていないのだろう。状況が状況だけにあまりまじまじと見る時間も無かったし。そういう自分も、前世の記憶を取り戻してから集めるような機会も無く、いまいちドラゴンボールを見たという実感が無い。
「オレたちなんてドラゴンボール探ししたこともあるぜ。」
「ねー。」
そのやり取りを見ながら自慢してくるのがトランクスと悟天である。体は大きくなっても、そういうところはまだ子供らしい。
「ずるーい!私もドラゴンボール集めたい!」
「マーロンには無理だよ。空飛べないだろ?」
トランクスが宥めるように言うが、1度自慢した張本人なのでその効果は薄かった。
「じゃあ、私が代わりに集めて見せてあげようか?」
「私もドラゴンボール探しってしたことないし、1度やってみたかったんだよね。」
「やったー!ありがとう、ジャスミンちゃん!」
「良かったねーマーロンちゃん。」
無邪気に喜ぶマーロンを微笑ましそうに悟天がほやほやと見ている。
「良いのかジャスミン?」
「うん。私もまじまじとドラゴンボール見たことないし。トランクスくん、ドラゴンレーダー貸してくれる?」
ドラゴンレーダー無しにはドラゴンボール探しはままならない。そして、仲間内でドラゴンレーダーを所持しているのはブルマのみである。
「それなら、一緒にママのところに行こうぜ。その方が早いだろ。」
「うん。」
ブルマは
「ママ。」
「あらトランクス。ジャスミンちゃんも。どしたの?2人で。」
「ブルマさん、ドラゴンレーダーを貸してもらえませんか?」
「ドラゴンレーダー?それは構わないけど。ドラゴンボールを探すの?」
「はい。」
「マーロンがドラゴンボール見たいらしくて、代わりに集めてやるんだってさ。」
「マーロンが?」
それに反応したのがクリリンと18号である。
「クリリンさんたちの昔の写真を見て、ドラゴンボールが見たくなったみたいです。私も小さい時に見ただけだし、1度ドラゴンボール探ししてみたくて。良いでしょ?お父さん。
「ドラゴンボールを集めるのは構わないが…。もし海底に沈んでたりしたらどうするんだ?」
「あっ、そっか。そういうこともあるんだ。」
失念していた。確かに原作では幾度となくそういった場面があった。
「それなら、私もついでにお願いしたいことがあるの。ドラゴンボール探しにも役に立つ筈よ。」
「ママ、お願いって何?」
「ちょっと待っててね!」
言うやいなや部屋に走っていってしまった。
「なんだろ?」
トランクスに聞くが、
「さあ?」
予想は全くつかないようだった。
「悪いねジャスミン。マーロンがまた我儘言ったみたいで。」
「代わりに集めるっていうのは私から提案したんですよ。私もドラゴンボール探ししたことなかったから、ほんとに1度はやってみたかったので。」
18号とそんな会話をしている間にブルマが戻ってきた。
「お待たせ~。これよ、これ。これのモニターをお願いしたかったの!」
そう言って取り出したホイポイカプセルを投げる。
ボンッ!!
煙が晴れるなり出てきたのは、3~4人乗りの小型の潜水飛行艇だった。全体的に鮮やかな青いボディで、白い塗料で
「これって最近できたばっかりの最新モデルじゃん。」
トランクスが感心したように呟く。
「そ。飛行モードなら最高速度マッハ2、潜水モードなら深海2万Мまで潜れるわ。ロケット弾とレーザー砲も完備。海底調査も可能なように作ったから、マジックハンドで重さ200kgくらいの物体なら回収可能!ジャスミンちゃん、ドラゴンボール集めるつもりなら、これモニターしてくれない?もちろん、バイト代も弾むわよ~。」
「えっ、良いんですか?」
「お願いしてるんだもん、当然よ。」
「それにしても、ずいぶん物騒な装備がついてるな。」
「元々、軍から依頼されて作ったんだけど、ちょっと機能にこりすぎちゃってウチのスタッフじゃ試運転が限界だったのよね。」
確かに、ろくに訓練も受けていない人間がいきなりマッハ2なんて超スピードは出せまい。
「その点、ジャスミンちゃんなら鍛えてるし、舞空術も使えるからある程度のスピードも平気でしょ?」
「さすがにマッハ2はちょっと…。」
サイヤ人と一緒にされても困るのだが。
「そういうことなら、トランクスくんの方がこういうことに慣れてるんじゃないですか?」
「もちろん、すぐに最高速度出してほしいなんて言わないわ。機能的な確認もしてほしいんだけど、ほら、サイヤ人ってちょっとやそっとのことじゃビクともしないでしょ?この子が平気でも他の人間には耐えられない負荷が無いかとか、実際の乗り心地とかそういうのを知りたいのよ。その為にはトランクスはもちろん、悟天くんじゃダメなのよ。ほしいのは地球人が乗った時のデータだもの。」
「なるほど…。」
「モニターと言っても別に複雑なことはしなくて良いわ。これに乗ってもらえば、自動で私と
そういうことならこの申し出は渡りに船である。
「わかりました。ぜひ引き受けさせてください。」
「ありがとう、助かるわ~。で、バイト代なんだけど…。そうね、まだ試作段階のモニターだし、これからも協力お願いしたいし…。日当10万ゼニーでどう?」
「高っ!そんなにもらえません!」
「何言ってるのよ。危険手当も含んでるんだし、新製品のモニターなんてそんなもんよ。」
そうは言われてもドラゴンボール探しに何日かかるのかはっきりとわからない以上、引き受け辛い。たかだ中学生が受け取るにはその金額は高過ぎる。
「現金がダメなら、そうね。現物支給ならどう?」
「現物?」
「そうよ。ドラゴンボール探しならどんなに早くても2~3日はかかるでしょう?泊まる場所が必要よ。カプセルハウスをバイト代代わりにするのはどう?」
「むしろ高くなってませんか!?」
確かに比較的安価なカプセルハウスも存在するが、それでも最低10万ゼニーはするのだ。まして、ブルマが渡してくるものである。絶対にそれ以上高いと確信できた。
「大丈夫よ。ウチで商品化した商品の試作段階のものだから。もう既に商品化されてるから、試作品なんて誰も使わないもの。一応残しているけど、試作段階のデータは全て別に保管してるから、何か調べる時は現物を引っ張り出すよりそっちの方が早いの。このままだといくらカプセルに保管してても倉庫がいっぱいになりそうな勢いなのよね。ただ廃棄するのももったいないし、自由に好きなの持って行ってちょうだい。」
「え?廃棄しちゃうんですか!?」
「そうよ~。いくらカプセルにしててもさすがに何年もメンテナンス無しじゃ保たないし。数が膨大過ぎてメンテナンスの手も回らないのよ。ウチは色々と年に数10作品と開発してるから、数年に1回そういう試作品を全部廃棄して倉庫を整理してるんだけどすぐにいっぱいになっちゃうのよね~。ちょうどそろそろ倉庫整理しようと思ってたから、カプセルハウスだけじゃなくてほしいものがあったら好きに持って行ってもらって構わないわよ。どうせなら使ってもらった方がこっちも嬉しいしね。」
さすが世界に名だたる大企業の社長は太っ腹である。いくら廃棄予定とは言え、高価なカプセルをそうもポンポンと出すとは。
「そういうことなら、遠慮無くもらうと良い。」
「そうそう。どうせ誰も使わないんだしさ。好きなの持ってけよ。」
「じゃあ、遠慮無くいただきます。」
「よし!それじゃ、モニターよろしくね。ついでにこれもあげるわ。」
潜水飛行艇をカプセルにしまい、それをジャスミンに渡しながらブルマがさらに太っ腹なところを見せる。
「良いんですか?」
「良いの良いの。これからモニターとして使ってもらうんだし、その後はまた倉庫行きになっちゃうもの。好きに使って。ついでに今倉庫を見て好きなカプセルを見繕ってくるといいわ。トランクス、案内してあげて。」
「OK。」
「ありがとうございます。」
「サンキューな、ブルマ。」
「気にしないで。こっちもモニターお願いしてるんだし、正当なバイト代よ。」
用語解説
・孫悟空…「ドラゴンボール」の主人公。サイヤ人という宇宙最強の戦闘民族の生き残り。
・ベジータ…ブルマの夫でトランクス・ブラ兄妹の父親。悟空の永遠のライバルで元はサイヤ人の王子だった。
・ブルマ…世界に名だたる大企業「カプセルコーポレーション」現社長で地球でも指折りの天才科学者。悟空の少年時代からの仲間。
・トランクス…ベジータとブルマの息子。18歳。悟天の親友で、サイヤ人ハーフ。今作品では主人公と幼馴染。
・ブラ…トランクスの妹。3歳。ブルマそっくりのおしゃまな女の子。
・ヤムチャ…悟空の少年時代からの仲間で主人公の父親。ブルマの元彼氏だが、浮気性が原因で別れた。今作品ではその女癖のせいでシングルファーザーとなる。主人公のことはかわいがっており、親子仲は至って良好。
・チチ…悟空の妻で元武道家。孫悟飯・悟天兄弟の母でパンの祖母。
・孫悟飯・・・悟空の長男でビーデルの夫。以前は悟空より強かったが、現在では武道から遠ざかり学者の道一本。
・ビーデル…悟飯の元同級生で妻。ミスター・サタンの一人娘で、自身も武道家。
・パン…悟飯とビーデルの1人娘。4歳の天才武道家。
・孫悟天…悟空とチチの次男で悟飯の弟。17歳。父・悟空そっくりの顔立ちで、幼い頃は髪型も一緒だった。トランクスとは親友で幼馴染。今作品では主人公の幼馴染で、良く組手の相手になっていた。
・ミスター・サタン…ビーデルの父親で現世界チャンピオン。昔は悟空たちの功績を自分のものにしているなどちゃっかりしたところが目立ったが、現在では悟空たちと良好な関係を抱いている。娘のビーデルと孫のパンを溺愛。
・デンデ…ナメック星人と呼ばれる宇宙人で、地球の神を務める。この人が死ぬとドラゴンボールもただの石になる。
・ピッコロ…ナメック星人の戦士。元々は悟空たちの敵だったが、現在は仲間に。悟飯の師匠。
・クリリン…悟空の少年時代からの仲間で親友。18号と結婚して一人娘・マーロンを設けた。
・18号…スレンダーな金髪美人。Dr.ゲロという科学者に無理やり改造されたサイボーグで、悟空の敵だったがクリリンと結婚して性格も若干丸くなった。
・マーロン…クリリンと18号の娘。今作品では主人公の妹分。彼女の些細な我儘が主人公の運命を大きく変えることになる。
・天下一武道会…3年に1度開かれる武道の祭典。この大会に出場することは武道家にとって最高の栄誉。
・ドラゴンボール…7つ集めるとどんな願いも2つだけ叶えてくれる不思議な玉。
・ドラゴンレーダー…ドラゴンボールの放つ特殊な電波をキャッチするレーダー。ドラゴンボールはこれ無しには探せない。
・カプセルコーポレーション…ブルマが社長を務める大企業。または、彼女たちの自宅そのものを総称。
・ホイポイカプセル…ブルマの父・ブリーフ博士が作った発明品。家やバイク、飛行機などをこの中にしまって手軽に持ち歩くことができる。
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第3話 異常事態発生!探せ、ドラゴンボール!!
さて、主人公の強さですが、DB世界ではうまくいけばギリでクリリンに勝てるくらいです。しかし、戦闘力が高くてもいかんせん経験不足の為、楽には勝てません。修行不足のトランクスや悟天なら超化しなければ勝てるかも?くらいです。ワンピースの世界では、悪魔の実の能力もある為一概には言えませんが、グランドライン前半では敵がいないのではないかな、と思います。純粋な体術だけでなく、気功波なども使えるので…。ただ、海千山千の大海賊たちや海軍将校相手ではさすがにどうなるかわかりません。前述したように、主人公は実戦をほとんど経験していないので…。
そして、トランクスのブルマへの呼び方ですが、原作517話で悟飯との会話の中でベジータとブルマのことを「パパたち」と表現している為、「ママ」とさせていただきました(未来から来たトランクスは生い立ちが全く違う為、ある意味で別人なので…)。GTでは「父さん」「母さん」ですが、その場合トランクスも既に社長に就任している良い大人なので…。原作終了後~GTの間くらいに呼び方が変わったのではないかな、と推測しています。
ピッピッピッ………
(たぶんこの辺の筈なんだけどな~。)
ガサガサと草木をかき分け、ジャングルを探していく。
1度立ち止まってレーダーを確認すると、ちょうど自分が持っているドラゴンボールの位置と目当てのドラゴンボールの位置がほとんど重なっているのが分かった。
「ん?てことは・・・。」
付近を見てもそれらしきものは一切見当たらない。残る可能性は地中か木の上ということになる。
上を仰ぎみると、首が痛くなる程高い木々の枝の間に光るものがあった。
「あ。」
軽く地面を蹴ってそのまま浮き上がる。
地上15m程だろうか。鳥の巣の中に、鮮やかな青い羽毛に紛れて3つの赤い星が光る、澄んだオレンジ色の野球ボール程の大きさの玉を見つけた。
「あった!
ジャスミンが手に取ると、一瞬強く光る。
その中から1と書かれたカプセルを取り、上部のボタンを押して軽く放り投げた。
ボンッ!!
煙と共に出てきたのはジェルラミンのアタッシュケースである。
ガチャ・・・
ケースを開くと、7つ穴の開いた衝撃吸収の為の緩衝材が敷かれている。
穴の1つには5つ星の光るドラゴンボール、
(やっと2つかぁ………。)
溜息をつきながらケースの蓋を閉め、ケースの横についたボタンを押す。
ボンッ!
出てきた時と同じく煙が上がり、今度は逆にカプセルに戻った。
「残りのドラゴンボールは…っと。」
ドラゴンレーダーを取り出して上部のスイッチを押すと、ピッという音と共に画面が明るくなり、画面上にいくつかの点が表示された。
「1番近いのはこっから北東に約1,200kmか…。」
天候にもよるが、急げば1~2時間で着く。
「急いで残りのドラゴンボールを集めないと…。」
ギュンッ!!!
凄まじいスピードで飛び上がり、北東に向かって飛ぶ。
飛びながらジャスミンは半日前の出来事を思い返していた。
~半日前~
ブルマから引き受けたモニターのバイトも兼ね、ジャスミンはドラゴンボール集めの為に世界中を回っていた。
3日程かかって7つ全てのドラゴンボールを手に入れた直後のことだった。
最後の1つは骨董品店で5,000ゼニーで売られていた。
他にも色々と目を引くものがあったので、ドラゴンボールを購入した後に色々と店内を見て回っていたのが今考えると良くなかったのだろう。
そして、最後の1つをしまったアタッシュケースをカプセルに戻さず、手に持ったままだったのがさらに良くなかったに違いない。
色々と怪しげな骨董品を見つつ、年老いた店主からその
「おい、そこのガキ。」
「え?」
後ろから突然話しかけられ、振り返った時のことだった。
いかにもマフィアといった服装の黒スーツの男たちに詰め寄られたのは。
「…私に何か用ですか?」
「用があるのはお前じゃなく、お前が集めたドラゴンボールの方だ。」
「………?!」
「ドラゴンボールの存在を知るのはお前だけじゃない。ケガをしたくなかったらとっと
とそれを寄越せ。」
そう言って取り出したのは、こう言ってはなんだがテンプレの拳銃である。
「ひ、ひえぇぇぇ………。」
自分の後ろで店主が腰を抜かしたのが分かった。
(ヤバイな~・・・。ここじゃおじいさん巻き込んじゃうし……。)
例え撃たれたところで、自分1人なら避けることも弾を受け止めることもできるが、もしも店主を狙われたら厄介なことになる。
かと言って、大人しく渡したところでこいつらがそのまま帰るとも限らないのだ。
「さっさと渡せ!」
動かないジャスミンに焦れたのか、最初に話しかけてきたリーダー格の男ではなく、恐らく部下なのだろう、後ろに控えていた男の1人が発砲したのである。
ガァン!
本人は威嚇のつもりだったのだろう、ジャスミン本人や店主ではなく、店内の骨董品目がけて放たれた弾丸はそのうちの1つを撃ち抜いた。
それが、全ての元凶だった。
撃ち抜かれたそれは、ちょうど男たちが乱入してくる直前にジャスミンが店主から解説を受けていた骨董品だった。
大昔の海賊の航海日誌、と解説されていたそれは、鍵が壊れていて開かずの本だったにも関わらず、男の放った弾丸がちょうど鍵を破壊したらしい。
パタン…。パララララ……!
誰も触れていないのに、自然と表紙が開かれ、ページがまくれていくのに気付いた者はその場にはいなかった。
気付いた時には全てが遅かった。
カッ………………!!!
真ん中のページで動きを止めた航海日誌は、突然眩い光を放ち始めた。
「なにこれ?!」
「なんだ一体!?」
目が開けられない程の眩しい光が収まった時、ジャスミンは1人で砂浜に倒れていた。
傍らには、蓋の開いた空のアタッシュケースと
幸い、身に着けていたウェストポーチは無事であり、カプセルケースや財布、肝心のドラゴンレーダーも手元にあった。
「どこ?ここ………。」
場所を確認する為に一旦空に浮き上がる。
高度500m程上昇すると、周囲がすっかり見渡せるようになった。
「いや、ほんとにどこ?!」
周囲は見渡す限りの水平線。少なくとも目視で確認できる距離に陸地は無く、ジャスミンがいたのは完全なる孤島だったのである。
幸い、その後でドラゴンレーダーを確認したところドラゴンボールを確認できた為、こうして再び集め直しているのだが。ドラゴンボールさえあれば、最終手段として
しかし、気になることが1つある。ドラゴンレーダーで確認した周囲の地形が、明らかに半日前まで目にしていたレーダーの画面とは異なっていた、という点である。まるでここが
(なんかすごいヤな予感がする………。)
そして、その予感はわずか数10分後に現実のものとなった。
大海原に突如出現した、巨大なマングローブの木々の上に栄えた諸島を発見したことによって。
「ウソでしょ………?まさか、ここってワンピースの世界?!」
やっとトリップしました!ようやくこれで原作タグが生かせる…。最初に絡むキャラを誰にしようかちょっと悩んでます。さて、明日で3連休が終わる為、その前に後1話か2話アップしたいと考えています。その後はかなりゆっくりになると思いますが、どうか気長にお待ちください。
最後に今回出てきたドラゴンボール用語の解説を置いておきますので、ドラゴンボールご存知ない方はご参照ください。
・ゼニー…ドラゴンボールにおけるお金の単位。公式設定で1ゼニー=1円換算だとか。
・ドラゴンボールの共鳴…ドラゴンボールは、近くに2つ以上ある時、お互い共鳴して強く光る。
・神龍…ドラゴンボールを7つ集めて、呪文を唱えると出てくる。巨大な緑色の東洋風の姿の龍。ドラゴンボールを集めると願いが叶う、というのは神龍が叶えてくれる。
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第4話 冥王との出逢い。伝説との邂逅!
さて、今回はいよいよキャラと絡みます。話の展開上、微妙なところで切りましてが、次話ではもっと絡む筈…。……たぶん。
人気の少ない場所を探し、そっと上陸する。
ドラゴンレーダーを確認すると、この場所から1km圏内にドラゴンボールの反応があった。
周囲を見回すと、人気は全く無いが足元から絶えず巨大なシャボン玉が浮き上がってきている。
そしてこの地面は巨大なマングローブの上に乗っており、何10本とマングローブが集合して島のようになっているのがわかった。
「ここって確か「ワンピース」に出てくる島だったよね………?」
前世でハマった漫画の1つに確かに出てきていた。少なくとも15年は昔の話なので作品の詳細を覚えている訳ではない。しかし、主要キャラクターや印象的な場所はまだ覚えている。
(まさか……。)
急速に自分の中で嫌な予感が膨らんでいくが、冷静になろうと努める。
「…気を探れば良いんじゃん!」
しばらく深呼吸しているうちに思いつく。
むしろなぜ半日も思い至らなかったのか。自分で思っていたよりもどうやら焦っていたらしい。
意識を集中させ、最も馴染んでいる
「ウソ……。」
ずるずるとへたり込む。
確かに皆、普段は気を抑えて暮らしているが、戦闘中でもないのに0にするまで隠すことは無かったし、どれだけ距離があっても親しい相手の気なら見つけることができていた。
だが、今はそれができない。すなわち、探している相手が地上にも天界にも存在しないことを示していた。
(トリップしちゃった…?)
転生したと思ったら今度はトリップするとは。自分の人生、ちょっと波乱に満ち過ぎてはいないだろうか。
「落ち着け……。大丈夫、ドラゴンボールがある。必ず帰れる……!まずしなきゃいけないのは、お金を稼ぐこと。それから、なるべく早くドラゴンボールを集めること…!!」
やるべきことを口に出し、深呼吸していくうちに徐々に落ち着くことができた。
できるだけ早くドラゴンボールを集めたいところだが、この世界は危険が多い。それに、基本的な戦闘力はドラゴンボールの世界よりも高いだろう。少し気を探っただけでも一定以上の強さの人間がゴロゴロしている。
(たぶんこれが海賊とか海兵なんだろうな………。)
もしかしたら賞金稼ぎも含まれているかもしれない。
しかも、ワンピースの世界は確か世界情勢も不安定だった気がする。場所によってはドラゴンボールを見つけてもすぐに手に入れることができない可能性も高い。それに、骨董品屋に売られていたように既に誰かが所有してしまっている可能性もあるのだ。お金はあるに越したことは無い。
その為には、ある程度資金を稼いでこの世界の紙幣を手に入れる必要があった。
「よし!」
気合を入れ直して立ち上がる。まずは近くにあるドラゴンボールを回収するのが先決である。
近くのマングローブを見上げると「12GR」の文字が書いてある。ドラゴンボールの反応はその先からのようだった。
(それにしても……。)
「荒れてるな~、この辺。」
はて、漫画では主人公たちが土産物屋などで遊んでいたような記憶があるのだが…。
(こんなところも出てきたんだっけ?)
やはり記憶が薄い。15年以上前のことなので無理もないが。
そんなことをつらつらと考えているうち、ふとあちこちに散らばっていた周辺の人間が集まり始めているのに気付いた。
(6人…?違うな、7人だ。)
囲まれている。つかず離れずの距離を保ちつつ、徐々にジャスミンを包囲していた。
この諸島の中でもそこそこの強さのようだったが、あくまでもドラゴンボールの世界の一般人に比べればの話である。
(海賊かな?)
撒くのも倒すのも簡単だが、他に仲間がいても厄介なので取りあえず相手側が行動を起こすまで知らぬ顔をしておく。
ざっ……!
前に3人、後ろに4人それぞれ厳つい男たちが姿を現した。
「嬢ちゃん、こんなところ1人で歩いてちゃ危ないぜ?」
「そうそう。売り飛ばしてくださいって言ってるようなもんだ。」
前に立った3人のうち2人がニヤニヤとしながら話し出す。どうやら人攫いの方だったらしい。
(テンプレ過ぎてどんなリアクションをすれば良いのやら…。)
こういう如何にもなセリフを言って反応を見るのが楽しいんだろうなぁ、と思わず思ってしまった。
「……急いでるので、そこ通してもらえませんか?」
何かもう、反応を返すのもめんどくさかったが、無視もどうかと思ったので取りあえず正論で返してみる。
「お前状況わかってんのか?!ああ!!?」
「なめてんのかゴラァ!!!」
何というか、セリフとリアクション全てがテンプレ過ぎて逆に面白くなってきたが、こちらがわざわざ付き合ってやる義理は無い。
「まぁ、良いや。通してくれる気無いんですよね?」
軽く手足を回して柔軟を行いつつ一応尋ねてみる。
「当たり前だろうが!!」
「大人しく捕まった方がケガしなくて済むぜ?」
「…ああ、うん。そこまでテンプレでこられるとこっちも遠慮無く抵抗できます。」
「あ?何言ってんだコイツ?」
「先に仕掛けてきたのはそっちなので…。正当防衛ですから。恨まないでくださいね!」
言い終わると同時に踏み込み、前に立つ男たちのうち真ん中の鳩尾に正拳突きを、その右隣の男の顎に掌底を叩き込み、振り向きざまに左隣の男の側頭部に後ろ回し蹴りを食らわせた。
その間、時間にしてわずか0.7秒。そして、間髪入れずに後ろに立っていた残りの4人も、それぞれ全員纏めて1秒かからず沈められる。
何が起こったのか理解する暇も無かっただろう。
「よし。……さあ、行こ。」
男たちをそのまま放置して再度歩き出す。
ピッピッピッ……。
(レーダーだとこの辺りの筈なんだけどなぁ。)
先程の「12GR」と書かれていたエリアから移動して、現在は「13GR」である。
辺りを見回していると、不意に上から人間が降ってきた。
「わっ!」
軽く後ろに跳んで避けると、立て続けに3人降ってきた。全員がステレオタイプの海賊といった格好をしている。
そこそこボロボロにやられているが、命に別状は無いようだった。
ちょうど「13GR」と書いてあるマングローブの根に階段が作られており、そこを転がり落ちてきたようである。
「なんでこんなところから…。」
まじまじと見ていると、階段の途中に光るものを見つけた。
「あった!
拾い上げカプセルから出したケースにしまい込む。ケースをカプセルに戻しつつ、階段から上を仰ぎ見る。
下にいた時には気付かなかったが、どうやらマングローブの根っこの上に家が建っており、先程の男たちはここから落ちてきたらしい。
気を探ってみると、先程ジャスミンを襲ってきた人攫いたちよりもよほど大きな気が1つ。
(襲おうとして返り討ちにされたってところかな。)
そう結論付けると、ジャスミンは気をより多く感じる方向へ歩みを進めた。実際には男たちの方こそ法外な金額をぼったくられて襲われた被害者であるのだが、ジャスミンにとっては知る由もないことだった。
彼女にとっては2度と会うことも無いだろう海賊よりも、人通りの多いところで情報収集を行うことが最優先だったからである。
「17GR」、後少しで観覧車の見えるエリアに辿りつこうとしていたところで、ジャスミンは再び襲われた。今度は先程よりも大人数で、20人弱はいるだろう。
「ここ、ほんとに治安悪いなぁ、もう!」
文句を言いつつ、流れるような動きで襲ってくる男の攻撃を受け流し、手刀と鳩尾への1撃で次々と沈めていく。
(誰か見てるけど…。)
特に悪意は感じないが、確かに視線を感じる。どちらかと言えば面白がっているような感じだろうか?
この諸島の誰よりも強い、また静かな気である。
(強いなこの人。)
戦闘力の高さで言ったら自分の方が上だろうが、この気は数々の実戦を潜り抜けてきた戦士の気である。仮に戦っても、経験で翻弄させられた挙句に遊ばれそうな予感がする。
「はっ!」
最後の1人を蹴り飛ばし、他に仲間がいないことを確認してから視線の感じる方向へと目を向けた。
「何か用ですか?」
「おや。これはこれは、気付かれていたとは…。」
そう言ってマングローブの根の影から出てきたのは、肩までの長さの白髪をオールバックにした、屈強な老人だった。
「予想以上に見どころのある娘さんのようだ……。」
読んでいただいてありがとうございます。ついでに評価をいただけたりしたら、小躍りして喜びます。
さて、主人公の服装について一切説明していなかったので、この場で軽く説明させていただきます。
基本的にボーイッシュです。パーカーが好きで、だいたい普段着はパーカーにジーンズ、ハイカットのスニーカー(イメージはコン○ース)です。
髪は邪魔にならないようにだいたいはポニーテール、たまに三つ編みにしてます。トリップ当時はポニーテールなので、表記が無い限りポニーテールだと思ってください。
そして次は用語解説です。ドラゴンボールご存知の方は見なくても大丈夫です!
次回更新は、うまくいけば今夜にでもアップします!それが無理だったら少し間が空くと思いますので、どうか気長にお待ちください。
・気…ワンピース世界における「覇気」の概念とほぼ同じ。主人公が良くしている「気を探る」というのはワンピースでいうところの「見聞色の覇気」のようなものだと考えていただければ大丈夫です。
・天界…デンデやピッコロらが暮らす神殿のことを指す。
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閑話 冥王の興味
今回は本編ではなく、第4話のレイさんサイドです。閑話なので今回は短めになります。軽くネタバレすると、主人公を隠れて見ていたのは深い意味はありません。人攫いに襲われている主人公を見つけ、助けてあげようと思ったら自分で撃退しているのを見て面白がっていただけです。本人曰く、「若い娘さんが大好き」らしいので。
今後も関わってくるかどうかは、どこまで主人公が彼の興味を引くかにかかっています。
レイリーがその少女を見付けたのは単なる偶然に過ぎなかった。しかし、後に彼はこの邂逅を思い返し、世界を巻き込み、運命が大きく動き出したことを感じ取るのだった。
レイリーがそのルートを通ったのは、久しぶりにシャボンディパークに行こうとしていたからである。
博打で勝ち、懐も温かった彼は機嫌良く歩いていた。
(ん…?)
荒々しく騒がしい気配が20弱と、やや離れたところに小さな気配が1つ。
「またか……。」
この無法地帯では珍しいことではないが、また人攫いか海賊が民間人を襲おうとしているのだろう。これが海賊同士の小競り合いや、襲われている相手が海兵ならばわざわざ関わろうとはしない。
レイリーが気になったのは、襲われようとしているのがまだ年若い少女だったからである。見れば海賊にも賞金稼ぎにも見えない、小柄な少女だった。
服装からして地元の人間ではなさそうだし、観光客が無法地帯に紛れ込んでしまったのだろうと考えたのだ。
見ればなかなか可愛らしい顔立ちをしているし、綺麗な黒髪も良く手入れされているのがわかった。このままでは、ヒューマンショップで売り飛ばされ、悲惨な運命を辿ることになるだろう。
若い
(やれやれ…。)
ここは
襲われていた筈の少女が無駄の一切無い、流れるような動きで襲いかかってきた人攫いたちを次々に沈めていったのだ。
(ほう……。)
先程までは確かに一般的な、同じ年頃の少女たちと変わらない身のこなしだったのにも関わらず、今披露している無駄の無い流れるような
(海軍のものとも違うが、あの動きは我流では身につかん。わざわざ隠していたのか?一体何故……。)
些細な疑問もあったが、それよりも見ているうちに徐々にその動きに惹き込まれている自分がいることに気付く。
(面白い。あの若さであれだけの強さを身に付けるとは…。)
しかも、あの動きに荒々しさは欠片も見当たらない。実戦的に磨かれたのではなく、あくまでも鍛錬の一環として身に付けたものに間違い無い。
そんなことを考えているうちに、いつの間にか最後の1人も片付いたようだ。
(いらぬお節介だったか。)
そのままそっと
「私に何か用ですか?」
(気付かれていたとは……。)
老いたとは言え、すぐに気配を悟られる程衰えたつもりは無い。つまり、それだけ目の前の少女が手練れであることを示している。
もう少しこの少女と話をしてみたい。その欲求のままに、レイリーは少女の前に姿を現した。
実際に書いてみたら、予想以上にレイさんが主人公に興味深々になりました。今後どうなるのか、作者にもちょっとわかりません(汗)
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第5話 賞金稼ぎと仮の宿
今回、場面がコロコロ飛んでますが、全部書くと書きたいシーンに辿り着くまでに1ヵ月くらいかかりそうなのでちょいちょい飛ばしました。落ち着いたら番外編で詳しく書くかもしれません。
根っこの影から出てきた老人にはどこか見覚えがあった。たぶん、というかほぼ確実に原作に出てきた人間だと思うのだが…。いかんせん、15年以上前のことなのでキャラクターに至っては主人公たちしか覚えていない。
これが“ドラゴンボール”ならある程度の脇キャラでも覚えているのだが………。
「あの、あなたは?」
「何、ただのしがないコーティング屋のジジィだよ。君を助けようと思ったのだが…。余計なお節介だったようだね。」
「コーティング屋?」
「知らないかい?まぁ、一般的には馴染みの無い職業だからね。コーティングというのは、シャボンディ諸島や魚人島で不可欠な技術で、シャボンの膜で船全体を包み込み、深海での航海を可能にできるんだよ。」
「え?船ごと深海に行けるんですか?」
そう言われると、漫画で深海を進む様子を見た気もする。
「そうだとも。コーティング無しに魚人島へ行くことはできない。娘さん、シャボンディ諸島に来るのは初めてのようだね。」
「はい、今日着いたばかりなもので…。」
ウソは言っていない。来た手段を教えていないだけである。
「そうか。この辺は無法地帯でね。この諸島は広いから、どうしても海軍の目の届かないところがある。1番から29番
「
「そう。そこにも書いてあるだろう?」
そう言って老人が指差したのが、巨大なマングローブに書いてある数字と記号だった。
「ここは12番
「ありがとうございます。30番ですね?」
「そう。その辺りなら治安も悪くない。ゆっくり観光を楽しむと良い。」
「ありがとうございます。早速行ってみます。」
「構わんよ。良いものを見せてもらったお礼だ。縁があったらまた会おう。」
「はい。」
そう言って去る老人を見送り、その姿が見えなくなった後、ジャスミンが大きく息をつく。
「っは~……。緊張した………。」
何かもう、穏やかな語り口にも関わらず終始探るような目で見られていて気疲れした。おまけに、あからさまでこそないがひしひしとした威圧感を無茶苦茶感じた。
「結局、あの人誰なんだろ…?」
怪しまれている、というよりは試されているような印象が強い。
緊張感に耐えた甲斐あってこの島の情報が手に入ったのは良かったが。
「取りあえず町に行ってバイト探そ・・・・・・・。」
後数時間もすれば日が暮れる。下手に移動して閉鎖的な島に当たるより、絶えず不特定多数の人間が立ち寄るこの島で資金を稼ぎ、残りのドラゴンボールは明日以降に探した方が良い。
~レイリーside~
「ふふふ…。何者かはわからんが、悪い人間ではなさそうだ。勘も良く、度胸もある……。」
様子見として調整して放った覇王色の覇気にも全く動じることなく、気付かないフリすらしていた。
「今度はもっと腰を据えて話してみたいものだ。」
シャボンディパークはまた今度にして、シャッキーに土産話として話してやろう、と13番
━30番
ショッピングモールの入り口でちょうど分布図を配っていた為、1枚もらう。
「へぇ~。結構細かく分かれてるんだ?」
それにしても、60番エリア周辺が海軍の駐屯地と政府出入り口にも関わらず、すぐ隣の0番付近のエリアが無法地帯なのは一体どういうことなのか。
「お嬢ちゃん、シャボンディ諸島は初めてかい?」
「はい。今日着いたばかりで…。」
まじまじと分布図を眺めているのを見てか、分布図を配っていた中年の男が愛想良く声をかけてくる。
「0番から29番は無法地帯だ。遠回りになっても道を迂回することを勧めるよ。」
「そんなに危ないんですか?」
いや、実際に襲われたから知ってはいるけども。会話の流れとしては聞いた方が自然だろう。
「もちろん。人攫いや海賊だけでなく、海賊を狙う賞金稼ぎもゴロゴロしてるからな。」
「賞金稼ぎもいるんですか?」
「そりゃそうさ。この島は
この男、気が良いようでジャスミンの疑問にも笑顔で答えてくれる。まぁ、観光客に聞かれるのに慣れているだけかもしれないが。
「賞金稼ぎってそんなに多いんですか?」
「まあな。分布図を見てみな。60番付近は海軍の駐屯地がある。海軍本部も目と鼻の先だから、その分他の換金所よりも金の支払いもスムーズなんだ。懸賞金がすぐに支払われるもんだから、この付近の島の賞金稼ぎはみんなこの諸島に集まるのさ。」
「賞金稼ぎってそんな簡単になれるものなんですか?何か資格が必要とか?」
「そんなもんは無いさ。腕っ節に自信のあって手っ取り早く稼ぎたい奴らはたいてい賞金稼ぎになる。まあ、1年以上それで食っていける奴は極一部だがね。」
「へぇ……。」
「おいおい、まさか賞金稼ぎに興味があるのか?やめとけ、やめとけ。お嬢ちゃんみたいな小さい娘ができるような職業じゃねぇよ。」
「あはは・・。これでも腕には自信があるんですよ。ところで、この辺りで手配書が手に入る場所はありませんか?」
「手配書なら海軍の駐屯地に行きゃあ、いくらでももらえるが、おいおいほんとに賞金稼ぎになるつもりかい?」
「まあ、それはおいおい…。それより、1人でも気軽に泊まれる宿ってあります?」
「ああ、宿なら全部一括で70番エリアに集中してるよ。宿の
「70番ですね。色々ありがとうございました。参考になりました。」
「あ、ああ…。まぁ、楽しんでくれ!」
礼を言って来た道を戻る。取りあえずの行動が決まった。
目指すは60番グローブの海軍の駐屯地。手配書を手に入れなければならない。
まずは少額でも構わないから海賊を捕まえ、生活資金を手に入れたい。先立つものが無くては食事もできないし、野宿はさすがに避けたい事態である。
カプセルハウスは持っているが、この島では人目が多過ぎて目立つ為、できるだけカプセルは見せない方が良いだろう。
「人を売り飛ばすみたいで気は引けるけど……。背に腹は代えられないもんね…。」
できるだけ凶悪な奴を狙えば治安維持にも繋がるし、他の一般人の為にもなる筈である。
━海軍の駐屯地・懸賞金換金所━
「お疲れさん、これがあんたの捕らえた海賊たちの懸賞金の合計だ。全部で2,800万ベリーある。確認してくれ。」
「はい。」
受付の海兵が用意した札束を確認する。100枚ずつ紙幣が纏められた札束が全部で28個あった。
「大丈夫です。」
「よし、じゃあこの書類にサインしてくれ。それで手続きは終了だ。」
「はい。」
サインしながら海兵に尋ねる。
「すみません、袋か何か貸してもらえませんか?」
「ん?持ってないのかい?」
「うっかり忘れてきてしまって…。」
「じゃあ、バッグに入れてやるから、次に換金にきた時にでも返してくれ。他の奴にも伝えとくから、受付に渡してもらえば良い。」
そう言いながらボストンバックに札束を詰めてくれた。それにしても、そうしたバックがすんなり出てくるあたり、もしかしたらこういうことは珍しくないのかもしれない。
「ありがとうございます。」
「ああ。また頼むよ。」
金を受け取って換金所を後にする。
「さて…、後は宿かな。」
ホテル街のある70番エリアはすぐ隣の為、そこまでの距離は無い。
5分程歩けばすぐに70番
適当に歩き、高過ぎず安過ぎない宿を探し、取りあえず3泊でチェックインする。こういうところは高過ぎてもカモにされるし、安過ぎるとセキュリティー上の心配がある為だ。
2階の角部屋で、広さは無いが清潔で日当たりが良かった。
(適当に決めた割に当たりだったな。)
「あ~、疲れた……。」
何かもう、かなり濃い1日だった。カーテンを閉めてからカプセルを取り出し、当座の生活費として財布に10万ベリーだけしまって残りはカプセルにしまう。
もうすぐ日が暮れるが、食事に行くのも面倒だった。気疲れしているせいか空腹感も感じない。
明日からまたドラゴンボールを探さなくてはいけないし、早く家に帰りたかった。
カプセルから着替えを取り出し、明日からの予定を確認しながらシャワーを浴びることにした。
シャワーだけ浴びてすぐ寝よう。取りあえず休みたい。頭の中はもはやそれで一杯だったので。
今回、思ったよりもレイさんが暴走しました。おかしいな、当初の予定ではすぐに別れる予定だったのに…。最初に意図していた方向とは別の方向に行きました。意味深なこと言ってますが、今後再登場するかどうかはちょっとわかりません。
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主人公設定(第5話現在)
明日は休みなので、第6話は明日中にアップしたいと考えています。
※ジャスミンの年齢を訂正しました。
主人公
名前:ジャスミン
現代日本からドラゴンボール世界に転生した転生者。元ОLで、ドラゴンボールファン、ワンピースも既読だが、既に原作知識は曖昧。
年齢:14歳(中学3年生)
※12月25日生まれ。セルゲーム直後にドラゴンボールを使用した際、ヤムチャがネックレスをプレゼントしようとした彼女との間に生まれた。
ただし、その時既にヤムチャとは破局しており、別の彼氏がいた母親によってヤムチャに押し付けられた。
容姿:腰まで伸ばした黒髪に、澄んだ緑色の瞳。公式美形であるヤムチャの娘なので、ジャスミン自身も整った顔立ち。ただし、特別に目を惹く美少女という程でもなく、中の上ないしは上の下くらい。胸はそれ程大きくない(一応Cカップ)が、鍛えてあるので均整の取れた体つき。
身長:160cm
体重:53kg
血液型:0型→F型(ワンピース世界ではドラゴンボール世界と血液型を現す記号が違う)
流派:亀仙流(ただし、基礎を教えたのはヤムチャである為、完全な亀仙流門下生という訳ではない)
※現在本人が公言している師匠は、ヤムチャの他に悟空とクリリン。
技(作中で披露、あるいは公言されているもの):狼牙真拳(ヤムチャの「狼牙風々拳」を進化させたもの)、かめはめ波、舞空術
所持品:ドラゴンレーダー、ホイポイカプセル(詳細は後々)、財布、ケータイ(スマホタイプ)
※全てウェストポーチに収納。
服装:パーカーにジーンズ、スニーカー、髪はだいたいポニーテールにしており、時々三つ編みにしている。
※レイリー曰く、地元の人間には見えない服装。
性格:ボケかツッコミで例えればツッコミ。精神年齢は高く、そういった意味では思慮深いが、肉体に引きずられているのか、
趣味:ロードバイクでのツーリング、舞空術での空中散歩、ぬいぐるみ集め
特技:家事全般(幼い頃から母親がいない家庭で育った為)
好きな食べ物:フカヒレスープ、
好きな乗り物:ロードバイク、潜水艇
嫌いなもの:煙草の匂い、寂しいこと
備考:転生者だが、当初は前世の記憶は持たず、7歳の時にインフルエンザに罹って2日程40℃近い高熱にうなされたことがきっかけで記憶が戻った。本人は、高熱が長時間続いたことで、脳に何らかのダメージがあったのでは、と推察している様子。因みに、前世の記憶と言っても昔の名前や両親や友人など、個人的なことはほとんど覚えていない。昔はOLでドラゴンボールファンだった、くらいの認識。
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第6話 暗躍する悪とジャスミンの懸念
さて、お待たせしました本編第6話です。今後の展開がどうなるのか、作者もちょっとわかりません。気長に更新を待ってやってください。
ピピピッ!ピピピッ!ピピピッ!ピピピッ!ピピピッ!ピピピッ!
「ん~……。」
枕元から響くアラームに、目を瞑ったままベッドボードを探る。
ピピピッ!ピピピッ!ピッ…。
「ふぁ…。……眠い…。」
アラームをセットしていたスマホを止め、ベッドの中で伸びをする。
昔から朝に弱く、そのままだと2度寝してしまうことが良くある為、だいたいいつも起きてすぐにシャワーを浴びることにしており、怠い体を無理やり起こしてタオルを持ってシャワー室に入る。
ザァァァァ―――…!
ザァァァァ―――…!
ザァァァァ―――…!
ザァァァァ―――…!
ザァァァァ―――…!
無言で熱めのシャワーを浴びること約5分。やっと頭が冴えてきた。
「あ~…。お腹空いた…。」
良く考えると、昨夜は夕食を摂らずに寝てしまった為、意識した途端に空腹感が襲ってきた。
疲れ(主に精神的な)で18時頃には就寝し、現在は朝の6:30。単純計算でも12時間以上は寝たことになる。
(そりゃ、お腹も空く訳だ。)
生憎、この宿は素泊まり専用の為、食事をする場合は外でしなくてはならないのだが、外には軽食が食べられるカフェや比較的リーズナブルなレストランも多かった為、モーニングをやっている店も探せばあるだろう。
(取りあえず、着替えたら歯を磨いてー、ご飯食べに行ってー、レーダーチェックしないとなー。)
寝起きと低血糖が重なってまだ頭がぽやぽやするが、一応これからの予定を立てていく。
キュッ…!
シャワーを止め、まずは朝食にありつくべく、身支度を整える為にタオルを手に取った。
━AМ7:15、カフェテリアにて━
温かい紅茶を飲みつつ、ニュース・クーと呼ばれているらしいカモメから購入した新聞に目を通す。
特に目ぼしいニュースは無かったが、新聞を見ればだいたいの世界情勢は把握できる。
この世界にとっての常識をまず知ること、漫画の記憶もほとんど残っていない為、まずは少しでも世界について知る必要があった。しかし、人に安易に聞くことはできない。内容によっては、子供でも知っている筈のことを知らないのだ。変に人目を引いたり、妙な印象を残すことは避けたかった。
本来はジャスミンのような子供が賞金稼ぎになることも人目につくだろうが、幸いこの世界には悪魔の実と呼ばれるアイテムが存在する。特にこのシャボンディ諸島は、新世界の入り口と呼ばれるだけあって、老若男女問わず来島者が多く、様々な能力者も揃っていた。
それはジャスミンにとっても好都合であり、珍妙な能力を持つ者たちに紛れればジャスミンの強さもそう目立たずに済む。
できれば、ここを拠点にしつつ残りのドラゴンボールを全て集められればベストだった。
1度集めた時は海底に沈んでいたり、活火山の火口付近ぎりぎりに引っかかっていたりなど面倒な場所にあった上に、ブルマから頼まれていたモニターの仕事もあった為、特に急ぐことも無く旅行がてらゆっくり集めたが、本来ならば、舞空術を使えば休み休み飛んだとしても3~4時間程もあれば地球を1周できる。どんなに面倒な場所にあったとしても、本気で集めようと思えば1日もあれば集めることはできるのだ。
問題は、この世界が地球より遥かに広いということである。
(この世界、たぶん地球の4~5倍はあるよね……。)
ドラゴンレーダーを確認した際、ドラゴンボールの位置を表示するのにかなり縮小しないと表示されなかったことと、同時に表示された距離がそれを示している。
もしかしたら太陽や月も1つではないかもしれない。先程の新聞で仕入れ、また昔漫画で見た
地球では考えられないそんな異常気象の中、おまけに海軍や海賊たちに目を付けられないように秘密裏に行動できるかどうか。それが要となるだろう。
しかも、この世界は海が大部分を占めている。大陸は1つしかなく、海を2分するようにぐるりと1周するように大地が横断するのみだ。人の目から見れば巨大だが、惑星として全体を見ればかなり小さいものでしかない。現在ジャスミンが手に入れている3つのドラゴンボールは、運良く島に落ちていたが、残りのボールは海に落ちている可能性も高い。
幸い、ブルマからモニターを頼まれた潜水飛行艇がある。
海中のドラゴンボールを回収するのはそう難しいことでは無いが、その最中に海賊に遭遇する可能性も高い。いや、海賊なら口止めも兼ねて海軍に突き出せば良いが、もし海軍に見付かったら面倒なことになるのは間違い無いのだ。
ホイポイカプセルの技術力や舞空術の使用、何よりも心配なのはドラゴンボールの存在が海賊や世界政府に知られることである。もし、自分と同じように地球から飛ばされてきた人間がいたら…。
そんなことを考えながらジャスミンがホットサンドを頬張っていた時、彼女の想定していた最悪の事態が起ころうとしていたことなど、彼女には知る由も無かったのである。
━同じ頃、
「キシシシシシシシ!本当だろうな!?何でも願いが叶う?!!」
奇妙な笑い声を立てるのは、巨人かとも見紛う巨大な人影。
「は、はいそうです。7つ集めればどんな願いでも……。過去には王になることを願った者や、死者を生き返らせた者もいたと聞きます…!」
その人影に跪き、へりくだるのは、地球でジャスミンを襲った男たちの先頭にいた男だった。あの時の傲岸不遜な様子は見る影も無く、人影の機嫌を損ねぬように自らの持つ全ての情報を開示している。
「キシ!キシシシシシシシシ!!!そりゃあ、良い!オレのもんだ。ドラゴンボールは全てオレが手に入れる!!」
「ド、ドラゴンボールはレーダー無くしては集められません!どうぞこれをお使いください…!!」
そういって男が人影に差し出したのは、アタッシュケースに直接はめ込まれたドラゴンレーダーだった。ブルマの作ったものよりも大型で、細かい位置までは特定できないようだったが、確かにドラゴンボールの位置が表示されている。
「んん~…?既に3つ集まってるじゃねぇか。」
「お、恐らくあのジャスミンとかいうガキもこの世界に来てるんだと……!」
「なるほど、なるほど…。なら、最初にそのガキに他の6つを集めさせた方が都合が良い……!おい、そのジャスミンとかいうガキもレーダーを持ってるのか?」
「恐らく持っている筈です。ドラゴンボールはレーダー無しには集められません……!」
「なら、そのガキが他のドラゴンボールを集めるまで、このボールを隠しとかねぇとなぁ…。レーダーに映らないようにできねぇのか!?」
「ほ、方法は2つあります…!ドラゴンボールから出ている特殊な電波は、生物の体内にあると遮られてレーダーでは感知できなくなります!それと、電波を通さない特殊なケースがあれば………。」
「生物の体内~……?死体でも良いのか?」
「たぶん、可能かと…。」
「キシシシシシシシシシシッ!!それなら話は簡単だ。ゾンビ兵の誰かにボールを隠せば良い……!キシシシシシシシ!もうすぐだ…!もうすぐオレは王になる……!!!」
「は、はい…。」
「お前はもう少し生かしておいてやる…。ゾンビにしたら記憶も徐々に消えちまうからな。せいぜい、オレの役に立て…!キシシシシシシシ!」
「あ、ありがとうございます!」
震えながら頭を下げる男の周辺には、物言わぬ
━AМ8:00、ジャスミンが借りているホテルの一室━
「さてと…。残りのボールはっと。」
そう言って起動させたドラゴンレーダーに表示されたドラゴンボールは、2つ。
「あれ?」
ジャスミンが所持しているボールは3つ。残りのドラゴンボールは4つある筈だった。
2つ、何らかの原因でレーダーに映らないドラゴンボールがあることになる………。
という訳で、原作キャラ2人目の登場です。もう6話なのに、麦わらの一味と一向に接触しません。…おかしいな。最初の予定では、もう接触している筈だったのに…。ルフィたちと絡むのはもう少々お待ちください。
なんか、ワンピース世界が地球よりでかいとか太陽と月が複数あるとかねつ造もいいところですが、二次創作ということでご容赦ください。
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第7話 出逢いへの序章!そして運命は動き出す
それから3日後、ジャスミンはレーダーで感知できた2つのドラゴンボールを集めることに成功した。
予想通り、その2つのドラゴンボールは海底に沈んでおり、ジャスミンはブルマにモニターを頼まれていた潜水飛行艇でそれを回収した。海獣に襲われたり海王類に食べられかけたり碌な目に遭わなかったのだが……。
「まさかレーザー砲を活用する機会がくるとは思わなかったな~…。」
5つ目のドラゴンボールを回収した
「人生って何が必要になるかわかんないな…。」
しかし、無事に5つのドラゴンボールを回収できたものの、残り2つの
恐らく海王類か何かが呑み込んでしまったのだろう。いくら巨大な海王類と言えども、しばらく待てば消化されることの無いドラゴンボールは自然に体外に排出される筈である。
それまで何をして過ごせば良いのやら……。
3日間のドラゴンボール探しの間、成り行きで海賊を海軍に突き出したこともあった為、既に2,800万ベリーだった所持金は7,000万ベリーまで増えていた。
旅費としては十分過ぎるくらいであり、これ以上積極的に賞金稼ぎとして動くと変に目立つ危険も増える為、ジャスミンとしては自衛手段以外で海賊に関わるつもりは無かった。
そうなると、本格的にやることが無くなってくるのだ。この世界を見て回りたい気持ちはあるが、下手に動き回ると海軍及び世界政府にも目を付けられる可能性がある。一般的に正義の象徴とされている海軍だが、ここ3日の間に実際に世界を見て回り自身の目や他の人間からの印象を聞くと、海軍も決して完全な善とは言えない。
もちろん、組織として多くの人間を抱えている以上、様々な思想が交錯するのは至極当然のことであるが、それだけでなく組織全体としてグレーな部分も多いのだ。
天竜人の横暴なふるまいを全て許容し、人身売買を黙認するなど倫理的に信用できない部分が多過ぎる。
その為、できる限り目を付けられるような事態は避けたかった。
ドラゴンボールが再び感知できるようになるまで、どれくらいかかるかは想像が付かないが、自然排出されるまではどんなに長くとも半年以上かかることは無いと考えられる。
幸い、資金なら十分蓄えることができた。この無人島でこのまま隠れ住み、日用品は近くの島に夜になってから舞空術で飛んで買いに行けば良い。
そうなると日中は暇になるが、この際仕方が無い。1度己を鍛え直すのにも良い機会だと考えた。
(試したい技もあるし……。)
~それから半年後~
ジャスミンは舞空術で宙に浮きながら座禅を組み、既に日課となっている瞑想を行っていた。心を静め無にし、己の精神を研ぎ澄ませているのである。この半年間、定期的にドラゴンレーダーを確認していたが、残り2つのドラゴンボールの
別に地球に帰ることを諦めた訳ではない。むしろその逆である。日が経つにつれ、ジャスミンの
だからこそ、レーダーを見る頻度を自ら下げたのである。1度気にしてしまえばそれ以外のことを考えられなくなってしまうことを恐れたのだ。ジャスミンは自分の精神的な未熟さを良く理解している。
ドラゴンレーダーを確認する度に期待し、そして裏切られる。その行為はジャスミンの心にその都度傷を残した。
だからこそ意図的にレーダーに触れる時間を減らし、その分の時間を瞑想に当てていたのだ。
ピピピッ!ピピピッ!ピピピッ!ピピピッ!ピピピッ!
突然響き渡ったアラームにジャスミンは目を開け、座禅を崩してゆっくり着地する。
ピピピッ!ピピピッ!ピピッ………!
ポケットからスマホを取り出してアラームを止める。瞑想開始から3時間が経過し、設定した時間を知らせた為である。
「ふう…。」
休憩がてらカプセルハウスに戻り、寝室のベッドボードに置いてあったドラゴンレーダーを確認する。今日は1週間に1度の確認の日であったのだ。
カチッ!
ピッピッピッ!
スイッチを入れ、画面が明るくなると同時に電子音が響き、ゆっくりと移動しているドラゴンボールが表示された。
「ウソ…!やっと見付けた……。6つ目だ!」
距離はここからおよそ数1000km。この方角は
おまけに、移動しているということは誰か人間が見付けて運んでいる可能性が高い。いきなり船の上でエンカウントするより、まずは距離を取ってどんな人間が所有しているのか確認した後、どこかの島に上陸したのを見計らって接触した方が無難だった。
もちろん、鳥か何かが運んでいるならその場で手に入れられるし、仮に悪名高い海賊だった場合は遠慮無く奪うが、客船か何かの一般人が手に入れた可能性も否定できない為である。
取りあえず、夜になったらレーダーを頼りに近付き、その後どうやって手に入れるか方向性を決める必要があった。
「よしっ!準備しよっと。」
必ずドラゴンボールを揃えて地球に帰る、決意も新たにジャスミンも準備を始めた。
~その少し前、空島はスカイピア・
「見ろ!!!こんなに!!!」
海賊王を目指す少年、モンキー・D・ルフィとその仲間たちは
「すごーい!!」
航海士・ナミは拾い上げた王冠に頬ずりし、
「キレーだな!!サルの家で見たヤツと同じだ~!!」
船医のトナカイ、トニー・トニー・チョッパーは鐘形の黄金のインゴットを見付けて歓声を上げた。
「コリャ本物だぜ!!このヘビなに食ってんだ…。」
コックのサンジは黄金の十字架を担ぎ、周囲の宝を見回してノラが体内に宝をため込んでいたことに呆れている。
彼らは手分けして宝をノラの胃の中から運び出し、その後ちょっとした行き違いと勘違いによりスカイピアの者たちが差し出した黄金の柱を受け取ること無く自分たちの船・ゴーイングメリー号へと引き上げた。
そして実に高度7000mの高さから船ごと落下し、空島名物のタコバルーンの力を借りて
ただ、彼らは知らなかった。ノラの胃袋から運び出し、持ち帰った宝の中に赤い星を秘めた澄んだオレンジ色の玉があったことを。
そして彼らはまだ知る由も無かった。その玉を持ち帰ったことで、これから出逢うことになる1人の少女の存在を。
これはこれから紡がれる、1人の少女と
これからどのような物語が紡がれていくのか、それはまだ誰も知らない。
ただ1つ言えること。今この時、確かに世界の運命の輪は大きく動き始めた。
それは当初この世界が辿る筈だった道をなぞりつつ、しかし違った軌跡を残して進んでいく。
今回書きたかったこと。主人公の精神面の弱さ。ノラの胃袋家探しするルフィたち。ノラの胃袋にドラゴンボールを隠すのは連載当初から決めてました。書きたかったシーンが書けて満足です。
そして、終盤作者の厨二っぷりが明らかになってますが生温かく見守ってやってください。不治の病なんです……。
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第8話 水の都とジャスミンの思惑
一気にルフィたちと接触させたかったのですが、一気に持ってくと展開的に無理があったので、まずは前ふりです。次回かその次にはいよいよ接触する筈!
6つ目のドラゴンボールを感知してから6日目の夜、ジャスミンはドラゴンボールの反応を追って
ただ、今のジャスミンにとっての問題はそこではなかった。
見張りに気取られぬよう、上空700m程の高さを保ちつつ前へと回り込んで旗印と帆を確認する。
その印は麦わら帽子を被ったドクロ。
「まさか……。…こんなことってあるの?」
麦わらの一味が名を挙げてきているのは新聞や手配書で把握していたが、まさかここにきて
もう1度ドラゴンレーダーを確認する。確かに6つ目のドラゴンボールは、麦わらの一味の船の船にあった。
「……どうしようかな。」
空中で一定の距離を保ったまま思案する。
これが極悪非道の海賊だったなら、夜のうちに奇襲をかけて全員叩きのめした後にゆっくりドラゴンボールを探したのだが、相手が
別に彼らと敵対している訳では無いのだし。万が一
そこまで考えたところで思い付いた。
確か、このまま進んだ先の島は
ワンピースの原作は既にうろ覚えだが、その中でもウォーターセブンの話は印象に残っている。
(確か、世界政府からのスパイがいて、そいつらにロビンが捕まって…。助けに行って世界政府に宣戦布告するんだっけ?)
時系列は覚えていないが、その前に船のことでルフィとウソップが喧嘩してウソップが一味を抜ける、ということがあった筈だ。その時に引き金になったのが、ウソップが町のチンピラ(後に仲間になる、フランキーの部下だった気がする)に金を奪われたことだったと思う。
結構な大金で、その金はその前の冒険で手に入れた宝を換金したものだったのは覚えている。
そう、宝を持っている以上それを換金する筈。
「ウォーターセブンに先回りした方が良いかな…。」
「よし。」
ウォーターセブンに先回りする為、
ウォーターセブンを眼下に見付け、人気の無い海岸を探してそこに降り立つ。
既に時刻は深夜。
島は歓楽街を除いて静まり返り、ジャスミンの降りた海岸はおろか周囲1km程にわたって人の気配は全く無かった。
カチッ!
ボンッ………!!!
カプセルハウスを出す。麦わらの一味の船が
「さて、と・・・・。寝よ。」
それまで体を休めておくことに決めた。
明日の朝一番で換金所に向かう。
ジャスミンなりの考えが、あった。
~翌朝~
カチッ!
ボンッ……!!!
カプセルハウスをホイポイカプセルに戻し、ケースにしまう。
「あふ…。」
あくびを噛み殺しつつ、ボストンバックを持って町の入り口へと向かった。
海岸から橋を渡った先、必ず通らなければ町に入れないルートに妙な店があった。
「“貸しブル屋”?」
疑問を持ちつつ、中に入る。
「いらっしゃい。」
やけに小さい眼鏡をかけた中年の男が出迎える。
「1人かい?じゃあ、“ヤガラ”1匹で十分だね。」
「“ヤガラ”?あの、貸しブル屋と書いてありましたが、“ブル”が何なのかわからなくて…。」
「あんた、旅行者かい?ブルを知らないってことはウォーターセブンは初めてだね?あれがブルさ。」
そう言って町の中を指差す。
水路の中に、小さいゴンドラのような船を背中に乗せた大型の魚の姿があった。背中の船に人や荷物を載せて運んでいる。
「“ヤガラブル”って言ってね。頭を出して泳ぐ“ヤガラ”って魚がこの辺にゃいるのさ。ウォーターセブンは「水の都」と呼ばれる程水路の多い町だ。歩道より水路の方が多いくらいでね。住民にとっては生活に欠かせない乗り物さ。この島を観光するのも同じだよ。」
「へぇ~。」
「2人乗りのヤガラブル、1匹1,000ベリーだよ。」
「意外と安いんですね……。」
もっと高いのかと思った。
「そこの
馬のような顔の魚がニーニーと鳴きながら
レンタルされているだけあってずいぶん人に慣れているらしく、ジャスミンが近付くとニーニーと鳴きながら何匹か近寄ってきた。
「人懐っこいなぁ。」
寄ってきたうちの1匹を撫でながらジャスミンが呟くと、
「こいつらも客には慣れてるからな。そいつに気に入られたようだ。そいつにすると良い。」
「じゃあ、この子でお願いします。」
「あいよ。」
貸出の手続きを行っている間にこの島について尋ねる。
「そうだ。この島で1番大きい換金所はどこにありますか?」
「換金所ならこの辺にもあるが、1番大きいとなると造船島の中心街だろうな。」
「造船島?」
「そうさ。まずは商店街に出て水門エレベーターに乗るんだ。その先が造船工場とウォーターセブンの中心街だ。」
地図を見せながら説明してくれた。
「換金所の近くに宿屋はありますか?」
「ああ。何件かある筈さ。」
レンタルの客にはサービスとして配っているらしく、その地図ももらう。
「んじゃ、まいどあり。気をつけてな。」
「ありがとうございました。」
「ニー!」
ブルに乗り込み、商店街を目指して走らせる。
「さて・・・・。商店街に行くには…。」
地図に目をやりながらブルを走らせていると、
「ニ――――――!!」
ジャスミンが指示を出す前に勝手にブルが坂を上り、水路を進んでいく。
「もしかして道わかるの?」
「ニー♪」
ブルに尋ねている間に商店街に着いてしまう。
「すごい。頭良いね。」
「ニ――――――!」
頭を撫でてやると喜んだ。
「じゃあ、水門エレベーターに乗ってくれる?中心街に行きたいんだけど。宿を探したいんだ。」
「ニーニー!」
この際なので、ブルに道案内を任せることにする。
~ウォーターセブン“造船島”中心街・換金所~
「いらっしゃいませ。」
「換金をお願いします。」
「こちらへどうぞ。」
店員に個室へと通される。
「それで、本日は何を換金いたしましょう?」
「これを。」
そう言って持っていたボストンバックをテーブルの上に乗せる。ファスナーを開けると、入っていたのは布に包まれた包みが5つと、革張りの平べったいケースが1つ。
その全てをテーブルの上に出し、包みの1つを開いて見せる。
「こ、これは……!」
それまで、小娘相手とどこか侮っていた店員の顔色が変わった。
包みから出てきたのは、眩いばかりの輝きを放つ黄金のゴブレットである。精緻な紋様が刻まれており、歴史的な価値も感じさせるものだった。
「同じ物が他に4つあります。」
そう言って残りの包みも開いていく。
全く同じ作りのゴブレットが5つ。恐らくは5つで1セットなのだろう。
「それと、これも……。」
残ったケースを開くと、ビロードが敷き詰められた台座の中に大粒のエメラルドがあしらわれた黄金のペンダントが輝いていた。
「お、お客様、少々お待ちください…!ここじゃなんですから、どうぞ奥の部屋に……!」
店員が慌てて電伝虫でどこかに連絡を入れ、ジャスミンをVIPルームへと通す。
「少々お待ちくださいませ!」
店員が出ていくと同時に、別の店員らしい男がコーヒーを運んできた。
どうやら上客と見て慌てて対応を変えたらしい。
コンコン!
「お待たせいたしました。私が鑑定を承ります。」
先程より数倍丁寧な対応で、責任者か恐らくそれに準ずる立場らしいかっちりした格好の初老の男が入ってきた。
「よろしくお願いします。」
「承りました。」
手袋を嵌め、ゴブレットを1つ1つ手に取り、レンズを使って鑑定していく。
「う~む…。」
次にペンダントを手に取った。
「これは…。」
ほう、と溜息を1つついて丁寧にペンダントをケースに戻した。
「どうですか?」
「素晴らしい……!このゴブレットは恐らく5つで1組の物…。それが揃っているとなると価値も跳ね上がります。純度も申し分無い!そしてこのペンダント。メインのエメラルドには傷1つ無く、これだけの大粒となると……。」
「いくらになりますか?」
「このゴブレットだけで5,000万出しましょう!ペンダントは7,000万…、いや1億出します!ぜひウチで売っていただきたい!」
「全部で1億5,000万ベリーという訳ですか?」
「ご不満でしょうか?」
「いえ。十分です。それでお願いします。」
「では早速換金の用意を…!」
こっちの気が変わらないうちに、と言わんばかりに急ごうとする男を制止する。
「ちょっと待ってください。」
「やはりご不満が…?」
男が顔色を変える。
「ああ、いえ。そうではなくて。ちょっとお伺いしたいことがあるんです。」
「なんでしょう。」
「この換金所で、これと同じ物を買い取ったことはありませんか?」
そう言ってウェストポーチを探る。取り出したのは、1つのドラゴンボールだった。
「これは…?」
「私は旅をしながらこれを探しているんです。その宝も、これを探している途中で手に入れました。」
ウソではない。実際にその宝は、4つ目のドラゴンボールが沈んでいた海底で見付け、一緒に回収したものである。
「手に取っても?」
「どうぞ。」
「これはこれまで見たことがありませんな…。水晶?いや、樹脂を磨いたものでしょうか?」
ドラゴンボールをジャスミンに返しつつ、男が尋ねる。
「さあ…。何でも全部集めると願いが叶うとか。」
「それはそれは…。」
笑いながら言うと、男が微笑ましそうな目を返してくる。
「私の故郷で昔から伝わっている伝説なんです。どうせ伝説は伝説なんでしょうが、同じ物が複数あるのは本当のようでして。他に4つ見付けました。ここまでくると全部集めてみたいと思いまして、それを目的の1つに旅をしているんです。」
「さようでございますか。」
虚実を織り交ぜて話すのがポイントである。男は夢見る金持ち少女の道楽とでも思ったのか、先程よりもずっと親しげな目を向けてきた。
「この換金所はこの島で最も大きいと聞いたので、もしかしてこれまでに持ち込んだ人がいるのではないかと思ったんですが…。」
もちろん、そんなことがある筈が無いのはジャスミン自身が1番知っている。
「いや、私はここに30年務めていますが初めて見ましたな。」
「そうですか…。それじゃあ、私はこの島に1週間滞在するつもりでいます。無いとは思いますが、もしその間にこれと同じ物を持ち込んだ人がいたらこの宿に連絡をくれませんか?1つ200万ベリーで買い取らせていただきます。」
そう言って宿の名前と部屋番号を書いたメモを渡す。
この時、あまり安値では連絡はもらえない。ただし、高値過ぎても欲を抱かせることになる。一般的に見れば十分高価だが、先程ジャスミンが持ち込んだ宝の前では霞む。このくらいのラインがちょうど良いのだ。
「わかりました。もし持ち込んだお客様がいらっしゃいましたらご連絡いたしましょう。」
案の定、男は笑って快諾した。一見して価値の見出せない石1つで200万手に入るのなら、と軽い小遣い稼ぎくらいの感覚を抱かせるくらいがちょうど良い。
中心街に換金所はここだけである。実際に
億を超える額の換金が可能なのは、この島ではこの換金所のみ。
必ず彼らはこの換金所を利用する筈だった。
直接交渉すれば怪しまれる可能性が高い。それより、宝が持ち込まれるだろう換金所にツテを作った方が確実だった。
もし、結果的に彼らがドラゴンボールを売らなかったとしても、その価値を知る為に1度は換金所に持ち込む筈である。
(確かナミって宝とかお金に目が無い性格だったと思うし…。)
彼女の性格上、宝の価値は知りたい筈。
例え換金所で売らなくても、それをこっちに教えてくれれば自分で交渉できる。
何故自分たちが持っているのを知っているのか、という最大の疑問が解消される為だ。
「それでは、こちらが1億5,000万ベリーになります。」
「ありがとうございます。それじゃ、もしさっきの玉と同じ物が持ち込まれたら…。」
「必ずお客様にご連絡させていただきます。」
「よろしくお願いします。」
「ありがとうございました。」
最敬礼で見送られ、換金所を後にする。
大口の上客、さらに言えばもしかしたら今後も贔屓にしてくれそうな客の頼みである。
ああいう業界は信用第一。必ず連絡が来るだろう。
ジャスミンはベリーの入った鞄を両手に持ち、待たせてあったブルのところに戻った。
ジャスミンと
今回長めでした。精神的には一応大人なので色々考えているジャスミンです。
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第9話 遭遇!麦わらの一味とジャスミンの告白
次回は1週間経たないうちに更新できると良いな…←願望
換金所を訪ねてからおよそ3時間後。換金所から宿に電伝虫で連絡が入った。
取り次がれた通信を受け、驚愕しつつも窓から確認を取る。
「この展開は予想して無かったな……。」
窓の外に立っていたのは、
「あんたがジャスミン?」
顔を合わせるなりそう聞いてきたのは、麦わらの一味の航海士‐ナミ。
「そうですけど…。」
「あたしはナミ。こっちはルフィとウソップ。換金所であんたがお宝を買ってくれるって聞いてきたんだけど。」
「赤い星の入ったオレンジ色の玉のことですか?」
「ええ、そうよ。換金所の鑑定士に紹介されたの。」
ナミが満面の笑みで頷く。
どうやら鑑定士は仲介のみを行うつもりのようだ。いや、
「紹介されたっつか、紹介させたの間違いだろ…。」
ウソップが小声で突っ込む。
………やっぱり隠し切れなかったらしい。
「なあ、見せてくれよ!お前もおんなじ玉持ってるんだろ?」
ルフィが目を輝かせてジャスミンに話しかけてきた。
「それは構わないんですが、あなたたちの持っている玉を確認させてもらえませんか?」
「そうね。場所を変えましょ?落ち着いて話がしたいもの。」
「じゃあ、この隣のカフェで待っていてください。今部屋から取ってくるので。」
「OK。じゃ、先に行って待ってるわ。行きましょ、2人とも。」
「おう!」
「へいへい。」
ナミが仕切り、ルフィとウソップもそれに続く。仮にも船長を差し置いて仕切って良いのだろうか…。
そんなことをつらつらと考えつつ、ジャスミンも一旦部屋に戻る。ドラゴンボールの入ったカプセルは常に持っているが、何も知らない人間の前でホイポイカプセルを使うことはできないからである。
ホイポイカプセルからアタッシュケースを取り出し、中身を確認する。半年前に集めた5つのドラゴンボールが全て揃っているのを確認してからケースを閉める。
さらに別のカプセルから、この世界に来てから手に入れたベリーを纏めた別のアタッシュケースを取り出し、500万ベリーを取って再びカプセルに戻した。
200万ベリーで話を通していたものの、相手はあの
まあ、地球に戻ったら手に入れたベリーもただの紙屑同然の為、相手が望む金額を出しても構わないのだが。
この半年で食料や日用品など細々したものは手に入れていたものの、賞金稼ぎとして手に入れた金は大部分が手付かずであったし、つい3時間前に1億5,000万ベリーを稼いだばかりである。また、ドラゴンボール探しの最中に海底から引き揚げた財宝もまだ残っている為、金には困っていない。
とは言え、
腐る訳でもないし、あって困る訳でもないのだから。
ただ1つの懸念は、換金所でルフィたちがどこまで聞いてきたか、である。
漫画で読んだのみの印象だが、「願い事が叶う伝説」というのは
一抹の不安を抱えつつ、アタッシュケースを手にジャスミンは待ち合わせ場所のカフェへと向かった…。
~中心街・カフェ~
ルフィたちがどこにいるかは、カフェに入ってすぐに明らかになった。
カフェ中の食料を食い尽くす勢いで食事をする人間がいるテーブルがあったからである。
(場所のチョイス誤ったかな……?)
もしかしてここの食事代も自分が払うのだろうか。……いや、懐には余裕があるのだが、何となく釈然としない。
「………お待たせしました。」
色々な感想を飲み込みつつ、ルフィたちが座るテーブルに近付く。
「ほう!いはいほはあかっかあ!(おう!意外と早かったな!)」
「……飲み込んでから喋ってくれると助かるんですけど…。」
もの凄い勢いでパスタやオムレツ、グラタンやパンを詰め込んでいるルフィに力無く突っ込む。
「ったく、行儀悪いわね!」
その様子を見てナミも突っ込んだ。
「まあ、座れよ。」
ルフィの勢いにやや押されているジャスミンを見かね、ウソップが出した助け船に乗って開いていたナミの隣に座る。向かい側には窓際にウソップ、通路側にルフィが並んでいた。
「じゃ、まどろっこしい話は抜きにして本題に入りましょ。あんた…、ジャスミンで良い?ジャスミンの探していたのって、これで間違い無いかしら?」
そう言ってナミが取り出したのは、間違い無くドラゴンボール‐
「……間違い無いみたいですね。」
高まる気持ちを抑えつつ肯定する。
「じゃ、決まりね。200万ベリーで良いのよね?」
「はい。」
頷き、ウェストポーチからさっき寄り分けておいた200万ベリーの入った封筒を取り出し、ルフィへと差し出す。
「ん?あんあおえ?(ん?なんだそれ?)」
「約束の200万ベリーです。あなたが船長さんでしょう?」
「あたしたちのこと知ってたの?」
ナミが驚いたように声を上げた。
「あなたたち、麦わらの一味でしょう?手配書を見たので。詳しいメンバーの顔までは知りませんでしたが、そちらの船長さん‐麦わらのルフィは
「おれたちもずいぶん有名になったなあ!」
「おう!」
ウソップが嬉しそうにルフィの肩を組み、ルフィもウソップの肩に手を回した。
「それより、約束の200万ベリーです。お譲りいただけますか?」
「おう!良いぞ!それより他のを見せてくれよ!」
「わかりました。」
頷き、アタッシュケースを抱え、胸の前で開いて見せた。本当はテーブルに乗せたかったが、大量の皿で置く場所が無かったのだ。
中には5つのドラゴンボールが納められ、断続的に金色に輝いている。
「おお~!なんかすっっげえぇぇ~~!!!」
「きれーい!」
「すげー!」
その光に呼応し、
「こっちも光ってる!」
それにいち早く反応したのが、流石と言おうかナミだった。
「これは、お互いの存在を感じ取ると光るんです。」
そう言いながら、
「あ――――――!もっと見せてくれよ!」
途端にルフィからブーイングが上がった。
「おい、その辺にしとけよルフィ。そいつ困ってるじゃねぇか。」
「もっと見せてくれって!」
手を伸ばされ(比喩で無く)、アタッシュケースを盗られた。
「やっぱすっげー!」
「返してください!とても大切なものなんです!それが無いと……!」
咄嗟にそこまで叫び、はっとして口を
「ん?無いとどうなるんだ?」
ルフィが真っ直ぐにジャスミンを見詰める。その真っ直ぐ過ぎる視線に、ルフィの黒い瞳の奥に光る強さに、ジャスミンは気圧された。そして、ある程度の事情を打ち明ける覚悟を決める。
「……それが無いと、私は家に帰れないんです。」
「どういう意味だ?」
ルフィだけでなく、ナミやウソップも腑に落ちない顔をしている。
「……ここじゃ人目が多過ぎる。場所を変えましょう。私の部屋にどうぞ。」
立ち上がり、ルフィからアタッシュケースを再度取り返し、先導する。
「おう!」
迷わず着いて行くルフィに、他の2人もそれに従った。
~宿屋・ジャスミンが借りた部屋~
「適当に座ってください。」
シングルが空いていなかった為、ツインを借りていたのが幸いだった。片方のベッドに腰を下ろし、向かい側のベッドを示す。
「それで?何でまた、こんなところまでわざわざ連れて来たのよ?」
「この玉についてと、何故私がこれを集めているのか、全部お話します。初めに言っておきますが、別に信じていただかなくても構いません。ただ、全てお話する代わりに私の邪魔をしないと約束してください。」
「ん!わかった。」
ルフィが頷く。
「ちょっと、ルフィ!どんな話かもまだ聞いて無いのに!」
「別にコイツが何をしようが、おれらには関係ねぇだろ?良いじゃねぇか別に。」
「それはそうだけど…。」
「だろ?あ、でもお前がもしおれらの冒険の邪魔をするってんなら、話は別だぞ。女だろうが関係ねぇ!そん時は全力でぶっ飛ばす!!」
「あなたたちの邪魔をするつもりも、敵になるつもりもありません。……私はただ家に帰りたいだけです。」
「なら良い!」
ルフィが満面の笑みで頷いた。
それを受け、ジャスミンが再度アタッシュケースを開き、ドラゴンボールを見せながら説明する。
「…この玉の名前はドラゴンボール。私の故郷では、別名を願い玉とも言い、7つ集めればどんな願いも叶うと言われています。」
「どんな願いでも?!」
「すっげー!不思議玉か!!」
まずナミが食い付き、ルフィも歓声を上げた。
「おいおいおい。そんなの迷信に決まってるだろ?だいたい、
自身もウソつきと称するだけあって、ウソップは眉唾ものだと思っているようだ。
「私は……、この世界のどこでも無い、別の世界から来ました。」
本来、ドラゴンボールについてルフィたちにぶっちゃける予定はありませんでした。しかし、ルフィは興味を持ったことに関しては引かないだろうな、と思ったのでジャスミンにぶっちゃけてもらいました。
今後どうなるのか、原作には絡むのか、どうかお楽しみに!
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第10話 新たな友
「別の世界…?」
「おいおい!また突拍子もねぇな!でもあんた、なかなかウソの才能あるぜ!」
ナミが呟き、ウソップが笑い飛ばす。
しかし、ルフィだけは静かにジャスミンを見詰めていた。
「それで?」
「はい?」
「どうやってこの世界に来たんだ?お前の世界の奴らってのは、自由に色んな世界に行けるのか?」
「ルフィ?」
「おい、信じるのかよルフィ?」
「コイツはウソついてねぇよ。だろ?」
そう確認してくるルフィの目を見て、ジャスミンは苦笑した。
「……信じてくれるんですね。」
「だってホントなんだろ?お前の目は、覚悟決めた奴の目だ。」
ニッと笑いながらルフィがジャスミンに告げる。
「覚悟って…。」
ナミが戸惑ったような声を上げるが、ジャスミンは構わず話を続けた。
「私がこの世界に来た理由はわかりません。ただの事故だったと思います。ドラゴンボールは世界中、色々な場所に散らばっているので、私はそれを集めていたんです。この世界に来たあの日、全てのドラゴンボールを手に入れたんですけど、ドラゴンボールを狙ってきた奴らがいて……。襲われかけたところで光に包まれたと思ったら、いつの間にか無人島で倒れていて、目が覚めた後には、集めた筈のドラゴンボールも1つだけになっていました。」
「ちょっと待って!その話が本当だとして、どうやってその、ドラゴンボール?の場所を知ったの?世界中に散らばってたんでしょ?」
「ドラゴンレーダーと言って、ドラゴンボールの放つ特殊な電波をキャッチできる機械があるんです。」
ナミの上げた疑問に答え、そのまま話を続ける。
「それが半年前のことです。それから情報収集をしていくうちに、ここが私のいた世界‐地球でないことに気付きました。取りあえず、ドラゴンボールを集めれば元の世界に帰れると思って、もう1度ドラゴンボールを探すことにしたんです。他の5つのドラゴンボールは集め始めてすぐに見付けたんですが、残りの2つがレーダーに映らなくて…。ずっと残りのドラゴンボールを探していたんです。」
「?レーダーに映らないってどういうことだ?」
今度はウソップが尋ねた。
「ドラゴンボールの放つ電波は、通常なら途切れることは無いんですが、電波を遮る特殊なケースに入っていたり、何か生命体の体内にあったりするとレーダーで感知できなくなるんです。」
「そうか!私たちの持っていたドラゴンボールはあの蛇の胃の中にあったから……!」
「蛇の胃の中ですか?てっきり海王類か何かが呑み込んでしまったのかと…。だから、私はこの半年、ドラゴンボールが体外に排出されるのを待っていたんです。」
「体外に排出ってどういうことだ?」
ルフィが首を傾げる。
「ドラゴンボールは胃液などで溶かされることは無いので、胃で溶かされることなく腸に運ばれます。なので、形を保ったまま排泄物と一緒に体外に出てくる筈なんです。」
「つまり、ウンコと一緒に出てくるってことか!」
「まぁ、そういうことです…。」
ああ!と言わんばかりに納得したルフィを見つつ、ちょっと脱力しながら肯定する。
「ん?ってことは、もしかして…。」
「どうした、ナミ?」
ウソップの疑問に答えること無く、ナミがジャスミンに尋ねる。
「ジャスミン、あんたもしかして最初っからあたしたちがドラゴンボールを持ってるって知ってたんじゃないの?いえ、あたしたちだとは知らなくても、近いうちにこのウォーターセブンにドラゴンボールが運ばれてくることは知っていた。それで、怪しまれること無くドラゴンボールを手に入れる為に、それ目的で換金所で手を回してたんじゃ……?」
「鋭いですね…。」
ここまできたら隠しておく意味も無い。
「ナミさんの言うとおり、私はあなたたちが残りのドラゴンボールの1つを持っていることを知っていました。7日前、それまでレーダーに映らなかったドラゴンボールのうちの1つが突然映って、急いでその反応を追ったんです。それで昨夜、あなたたちの船に追い付いて、次の目的地がこのウォーターセブンだと当たりを付けました。どういう状況でドラゴンボールを手に入れたかまではわかりませんでしたが、海賊がある程度大きな島に上陸した以上、換金所に宝を持ち込んで換金する可能性が高いと踏んで、手持ちの宝を換金した後で鑑定士に話を持ち掛けたんです。」
「ちょっと待って!昨夜あたしたちの船に追い付いたですって?」
「昨夜船なんて影も形も無かったぞ?!」
昨夜不寝番だったウソップが叫ぶ。
「船じゃありません。空からです。」
「「「空ぁ!?」」」
「やっぱり、この世界に飛べる人間はいないんですか?」
「いや、普通人間は飛べねぇよ!」
ジャスミンの疑問にツッコミで答えたのは、やはりと言おうかウソップだった。
「てゆうか、あんた飛べるの?!」
「はい。」
「すっげー!!なあ、飛んで見せてくれよ!」
「おい、ルフィ…!」
「良いですけど。」
「おめぇも良いのかよ!」
ルフィとジャスミンのやり取りにウソップがさらに突っ込む。
ウソップをさておき、ジャスミンは立ち上がり、舞空術で天井付近まで上昇する。
「ほ、本当に飛んでる…!」
「まじかよ!」
「すっっっげ――――――――――――!!!」
他2人のリアクションとは対照的に、ルフィの目は輝きに満ちていた。
「今はただ浮いているだけですが、その気になればもっと速く移動できます。天候に左右されなければ、
「本当に船じゃなくて飛んで移動してるのね…。」
「すげぇな。さっき、「この世界に飛べる人間はいないのか」って聞いてたけど、その口ぶりだとお前の世界の奴らって、みんな飛べるのか?」
「え!そうなのか!?」
ウソップの仮説に、さらにルフィの目が輝いた。
「いえ。向こうの世界でも普通の人間は飛べません。」
「「「飛べねぇ(ない)のかよ!」」」
「ただ…。」
「ただ?」
ツッコミを入れた後に続けられた言葉にウソップが真っ先に反応する。さすがにツッコミ属性は違う。
「私を含めた一部の人間は空を飛ぶ
「一部の人間?」
「はい。元々これは「舞空術」と呼ばれる武術の技の1つなんです。優れた武道家なら体得はそれ程難しいものではありません。ただ、一般的にはあまり認知されていないので、私や他の仲間たちも滅多に人前では使わないんですが…。」
「じゃあ、さっき何で聞いたんだよ!お前が隠してんなら、この世界でも隠してる奴がいるかもしれねぇだろ!」
「いや、この世界では「悪魔の実」でしたっけ?変な能力を持っている人がたくさんいるので、もしかして他にも似た技を使って飛べる人がいるかな、と。」
「そう言われたらそうね。中には鳥とかに変身して飛べる人もいるし…。案外、あたしたちが知らないだけで他にもいるのかしら?」
ジャスミンにつられ、ナミの思考も明後日の方向に飛び始めた。
その場にいた全員が本題を忘れかけたところで、満面の笑みを浮かべたルフィによって爆弾が落とされた。
「なあ!ジャスミン、お前おれの仲間になれよ!」
「仲間…?」
「おう!一緒に冒険しよう!」
率直に誘ってくるルフィに、一瞬楽しそう、と思ったが、そのすぐ後にはっとする。
「ごめんなさい。」
「え―――――――!何でだよ!海賊は楽しいんだぞ?」
「私、家に帰りたいから。お父さんも心配してるだろうし…。」
「そっか…。こっちの世界に来たのは事故みたいなものって言ってたものね。家族はジャスミンがここにいるって知らないのね?」
「はい。」
「家族が待ってんのか…。んじゃ、仕方ねぇもんな…。」
ルフィも渋々納得したようだった。
「だったら!おれはお前と友達になりてぇ!」
「友達……?」
「おう!おめぇ、すげぇ奴だからな。空飛べるだけじゃねぇ。たった1人で半年もがんばってんだろ?おれは1人はキライだ。だから、おめぇはすげぇ!」
真っ直ぐなその言葉が嬉しかった。裏表の無いその目が、心からそう思っていることを教えてくれる。
ジャスミンもルフィの言葉に、笑顔で頷いた。
「それなら喜んで。まだ最後の1つは見つからないから、それまでだったら一緒にいられます。」
「よし!んじゃ、敬語も無しだ!」
「…わかった。ルフィくんって呼んでも良い?」
「おう!おれもジャスミンって呼ぶからな。」
「全くルフィは…。すーぐ友達作っちゃうんだから!」
「それがルフィだけどな。」
ナミとウソップが呆れたような声を上げる。
「でも、まぁ。ジャスミン、あたしとも友達になってくれる?あんたの世界のこと、もっと聞かせて。他の世界の話を聞けるなんて機会、滅多に無いもの。」
「おれも。代わりに、おれたちの冒険の数々を話してやろう!」
「じゃあ、ナミちゃんとウソップくんで良い?」
「もちろん。」
「おう!」
その後はしばし、地球の話や麦わらの一味の冒険譚で時間が過ぎていく。
2時間程して、船の修理の手配の為、造船所に行かなくてはいけない彼らとは一旦別れたが、次の日の昼に再び会う約束を交わした。
トリップして以降、ずっと1人で過ごしていたジャスミンにとって、その時間は久しぶりに心から楽しいと思えたかけがえの無いものだった。
しかし、その約束を交わすにはしばしの猶予が必要となることは、この時は誰も思いもつかなかった。
ジャスミンもまた、これから
ということで、ジャスミンの原作突入ルートが解禁しました!どうしてこうなった(震え声)……。おかしいな。最初の予定ではちょっと原作にかする程度だったのに…。いつの間にかがっつり絡むことになってる…。
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第11話 波乱の幕開け
~ルフィたちと別れてから数時間後~
「ウソップくん……?」
突然、大きな気の乱れと複数の殺気を感じ、新聞をめくっていた手を一旦止めた。
ウソップが誰かに襲われている。
ガタッ……!
立ち上がった衝撃で椅子が倒れたが、助けに行く為に構わずに部屋を出ようとした時、不意に「原作」を思い出した。
(そうか…!ここがターニングポイントなんだ……。)
記憶が確かなら、ウソップを襲っているのはフランキーの手下だろう。
そして、船を修繕する為の金が奪われ、それがきっかけの1つになって1度ウソップは一味から離反する。
しかし、奪った金でフランキーが新たな船を造るのだ。
そして、1度起こった離反が一味の絆をより強固なものへと変える。
言わば、これは予定調和である。起こるべくして起こる、避けられない運命。
ここで
彼らが新しい船を手に入れないと、今後の彼らの旅にも支障が出るだろう。
(サニー号?だかじゃないと、逃げられなかったり危なかったこともあった筈だし……。)
確か、新しい船がやたらハイテクでそれで一味がずいぶん助かっていた筈だった。
(余計なことしない方が良いみたいだな~…。)
落ち着かないが、ある程度事態が進展するまで彼らと接触しない方が良さそうだ。
その後、夜も更けてルフィとウソップが戦っているのだろう、気のぶつかり合いを探りながら、ジャスミンは焦れながらも宿の部屋で時が過ぎるのを待っていた。
部屋で勝負の行方を確認した後、就寝したジャスミンだったが、深夜、不意に気の大きな乱れを感じ取った。
「………!?」
ガバッ…!
同時に激しい胸騒ぎを覚え、飛び起きる。
「今のは…。」
意識を集中させると、感じ取った気が少しずつ弱々しくなり、どうやら誰かに襲われたらしいことが分かる。
すぐに命に関わる程では無いが、このまま朝まで放っておけば確実に死ぬだろう。
助けに行くか、とベッドから出ようとしたところで、襲われたらしい方の気の持ち主のところに複数の人間が近付いていくのを感じた。
急激に気が入れ替っているようで、人の行き来が激しくなってきたようだった。
どうやら誰か第三者に発見されたらしく、弱々しく揺れていた気が弱いながらも安定していく。
(大丈夫そうだけど…。一体誰が?)
襲われたらしい気の乱れは感じ取れたが、加害者の殺気といったものは一切感じ取れなかった。
(私が気付かなかった?まさか。)
確かにこの世界は争いごとに満ちている。この島でも、あらゆる場所で争いが起きている。
その全てを感じ取れる訳ではもちろん無い。意識すれば造作も無いが、一々些細な小競り合いを感じ取るのはキリが無く、ジャスミン自身も疲れてしまう。
普段はそこまで感知能力を働かせていないが、それでも大きな気や殺気まで感じなくなる程感覚を鈍らせた覚えは無いのだ。
なのに、さっきは襲った側の殺気は全く感じ取れなかった。まるで
そこまで考えてハッとする。
「殺す気が無かった…?目的は殺すことじゃなくて、何か別のことだった?」
(ちょっと待ってよ…。この島で麦わらの一味の離反の他に起こったのは……。)
既に朧気となっている原作知識を必死に探る。
「あ。」
(市長さんが襲われたんだ。)
となれば、殺気を感じなかったのも頷ける。
確か彼を襲ったのは政府の組織だった筈だから、目的は命ではなく別のことにあったのだろう。
敢えて死なない程度の傷しか負わせなかったに違いない。
(何で襲われたんだっけ?)
肝心なところを全く覚えていない。
さらに言うなら、何故ロビンが政府に捕まったのかという理由も覚えていなかった。
市長が襲われたことと関係があった筈、という程度の知識しか残っていないのが辛い。
(朝になったら調べてみようかな・・・・。)
朝になれば恐らく島中の人間の知るところとなる。
相手が政府の組織なら情報操作をしてくるだろうが、それならそれで何が目的なのかわかりやすくなるだろう。
早朝に動き出すことに決め、その場は寝直すことにした。…すぐに眠れるかどうかは疑問だったが。
~翌朝、造船所1番ドッグ入口~
ヒュオオォォォ……
強い風が絶えず吹き付け、ジャスミンの髪を揺らしていた。
「何かコメントを!!」
「犯人は何者なんですか!!?」
「最新の情報をお願いします!!」
「第1発見者は誰ですか!!?質問させて下さい!!!」
「フランキーハウス壊滅と何かつながりが!!?」
昨夜気の乱れを感じた現場に行こうとしたのは良いが、場所はガレーラカンパニー本社内だったらしく、入口である1番ドックの前には野次馬と記者でごった返していた。中には関係者か特定の記者しか入れないようになっているらしく、とても様子を窺えそうに無い。
舞空術でなら簡単に入れるだろうが、さすがに誰にも見つからずに情報収集ができるか、と言われれば穏便に済ませられる自信は無い。見つかる前に全員気絶させるというなら話は別だが・・・・。
遠目にドックの入口を窺いつつ、号外に目を通す。
(どうしよっかな…。)
新聞社も情報を掴みかねているらしく、発行された号外も市長‐アイスバーグが襲われた、という以上のことは書いていない。犯人の目的も侵入経路もいまのところ掴めてはいないらしい。
取り敢えず事態が進展するまでは様子見か、と一旦宿に戻ろうとした時だった。
ウゥゥ――――――ッ…ウゥゥ―――――ッ
『お知らせいたします―…』
『こちらはウォーターセブン気象予報局―…』
『只今―…島全域に“アクア・ラグナ”警報が発令されました』
『繰り返します。只今―…』
「アクア・ラグナ?」
何だったっけ?何か響きは聞いたことあるんだけど…。などと思っていると、今の放送を聞いた周囲がにわかに騒ぎ出した。
「アクア・ラグナが来るぞー!」
「避難の準備をしろ――――!!」
「アクア・ラグナが来る!」
アイスバーグの容体を知ろうと騒ぎ立てていた野次馬たちも、記者を残して皆散って行く。
「あの、アクア・ラグナって何ですか?」
そのうちの中年の主婦らしき女を呼び止め、尋ねる。
「あら、あなた観光に来た人?タイミングが悪かったようね。今から高潮が来るのよ。アクア・ラグナっていうのは、毎年この時期にウォーターセブンに来る高潮のこと。」
「高潮が?」
「ええ。ちゃんと高いところに避難しないと…。裏町の辺りは完全に海に沈んでしまうくらいなの。」
「海に沈むくらい!?」
「そう。この辺りまで波が来ることは滅多に無いんだけど…。年々規模が大きくなっててね。あなたも荷物を纏めて避難した方が良いわよ。」
「わかりました。ありがとうございます。」
「どういたしまして。」
そう言って足早に去って行く女を見送り、宿に戻ろうとした時だった。
「あ!!おーい、ジャスミン!!!」
「え?」
振り向くと、ヤガラブルに乗ったルフィとナミが水路からジャスミンに向かって手を振っている。
「ルフィくん?ナミちゃん?」
「ジャスミ―――ン!!」
「お前も来てたのか━━━!」
「ちょっと待ってて、今そっちに行くから――――――!」
急いで待たせていた自分のヤガラブルに乗り込み、2人の元に向かう。
「2人も来たんだね。」
「ええ。私たち、昨日あれからアイスバーグさんのところに船の修繕を頼みに行ったのよ。それで心配になって…。」
「どの道、もっかい遭わなきゃなんねェんだけど…。アイスのおっさんには。」
「本社には行けないみたい。1番ドックの中から入るらしいんだけど、門の中には関係者か特定の記者しか入れないって。ここに集まってるのは、入れないことは知っててもそれでも何か情報が聞けないかどうか心配で集まった人たちらしくて……。」
話しながらドッグの入口に集う野次馬に目をやる。
「……すごい人望…。近付けそうに無いわね。」
「…………。」
ジャスミンとナミのやり取りをルフィは無言のまま見ている。それに気付き、ナミが宥めるように声をかけた。
「そのうち新聞ででも安否はわかるわよ。」
「ルフィくん…?」
ジャスミンもルフィの様子を伺う。
怖いくらい硬い表情で黙ったままのルフィに、どう声をかけたら良いものか、と思っていた時、どこからともなく妙に軽快なリズムが聞こえてきた。
ズン♪ズン♪ズズズン♪
ザワッ…!
「何だ!」
「!!?」
周囲がそれを受けて突然ざわつき始めた。
ズン♪ズン♪ズズズン♪
ズン♪ズン♪ズズズン♪
「うわあ!!こ・・・、このリズムは!!!」
「まさか!!そんなバカな!!!」
「「「?」」」
いっそ過剰にまで反応している周囲に、ルフィやナミと顔を見合わせる。
「ヘイお前たち。おれの名を今呼んだのか?」
「?誰の声?」
たぶん、この音楽を流しているらしい男の声が聞こえるが、それにしてもこの周囲の反応はやや過剰である。
「呼んでねぇよ!!!どっかいけー!!」
「どこにいるんだ!!!どこだ!!?」
「あ!!!」
ズン♪ズン♪ズズズン♪
「いた――――――!!!あそこだ―――――――!!!」
「出た―――――――――――!!!」
「リズムに乗ってる――――――!!!」
1人が指差した方向を見ると、橋の向こうの屋根にスクリーンのようなものが張られている。スクリーンの裏側でリズムに合わせて踊っている3人組の影が、スクリーンに映っていた。
どうやら、中央の男が声の主のようで、時々アウ!!と合いの手を入れつつリズムに乗っている。
ズン♪ズン♪ズズズン♪
「恥ずかしがらずに聞いてみな!!おれの名を!!!」
「聞きたくね――――――!!消えろ――――――!!!」
「アイスバーグさんを襲ったのはお前だろ―――――――――――!!!」
「ええ!?あいつが!!?」
「そうに決まってる!!」
「この島から出ていけ――――――!!」
「しばり首だ――――――!!!」
「このチンピラ―――――――――!!」
ズン♪ズン♪ズーズーズーン♪
「アー、うるせェハエ共め。ここに麦わらのルフィってのがいる筈だ!!出て来い!!!」
思わずバッとルフィを振り返る。
「?」
「え!?」
肝心のルフィもナミも心当たりは全く無いようだったが。
「おれはこの島一のスーパーな男!!ウォーターセブンの裏の顔!!!」
言葉と同時にバサァッ・・・・!!とスクリーンが後ろに放られた。
「そうだ、おれは人呼んでワァオ!!!ん――――――――――!!!フランキ―――――――――!!!!」
ドドォン!!!とポーズを付けた海パン姿の大男と、四角い髪型の両サイドの女性の姿が明らかになる。
「うわああ!!!ここで暴れ出すぞ――――――!!!逃げろー!!!」
わーわーと周囲の人間が慌てて避難しようとしている。
「出て来い“麦わらァ”!!!」
サングラスを親指で押し上げたフランキーが叫ぶ。
「……何だあの変態…。」
あのルフィですら“変態”呼ばわりする変態っぷりである。
(実際に見てみると、色々予想以上・・・・・。)
ジャスミンも思わず引いた。
「……!フランキーって…言わなかった!!?」
「……!!?あいつが……!!!」
ナミの言葉にルフィが激昂する。
(そう言えば、最初はウソップくんのことがあったから敵対してたんだっけ?)
「おい!!!海水パンツ!!!」
「ルフィ!!」
「あン!!?」
「おれがルフィだ」
ナミの制止も間に合わず、ドン!!!と2人がお互い睨み合う。
ザワ・・・
隣から感じるルフィの気迫に思わず皮膚が粟立つのを感じる。
一波乱だけでは済みそうになかった……。
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第12話 激突!ルフィvsフランキー
「お前かァ…。“麦わらのルフィ”ってのァ!!!人の留守中に、えらく大暴れしてくれたじゃないのお兄ちゃん…!!!」
距離にしておよそ30m。屋根と水路、それぞれに2人の男が睨み合う。
「帰って来て目を疑ったぜおれァ……。いやいや、見事に原形無いんだもんなァおれの
「ちょっと!!!あんた私たちのお金どうしたの!!?2億ベリー!!!」
「あァ!?そんなもん……。使っちまってもうカラッケツよォ!!!どこぞで奪ってきた金を偉そうに守ろうとすんじゃねェ海賊がァ!!!」
「そんなのはいい。とにかくおれはお前を!!ブッ飛ばさねェと気がすまねェ!!!」
「気が済まねェのはこっちだバカ野郎!!!」
もはや一触即発、いつぶつかり合ってもおかしくなかった。
「フランキーが暴れ出すぞ――――――!!」
「うわァ避難しろォ!!!」
周囲の人間が一斉に避難を始める。
すううぅぅぅ…
フランキーがのけ反りながら大きく息を吸う。
「おい!!こっちへ下りて来い!!!」
「何してんの、あれ。」
「ナミちゃん、避難した方が…。」
ジャスミンの忠告も間に合わなかった。
ボォウッ!!!
フランキーが口から火の塊を吐いたからである。
「うわぁっ!!!」
ジュワァッ!!!
水路に落ちた火は周囲の水を蒸発させ、近くにいた人間は慌てて避難する。
ジャスミンとナミも、慌ててヤガラブルを後退させた。
「火ィ吹いた!!!」
「何!!?あいつ!!!」
ルフィとナミが驚愕し、ジャスミンも一瞬目を見開いた。
「さっきの“溜め”はその為の……!」
「火ィ吹くのが珍しいか……?」
口から炎の余韻を吐き出しながら、フランキーが不敵な笑みを浮かべる。
「能力者かも…!!!」
「何の実だ!?」
ルフィたちが叫ぶが、その隙にフランキーはそれまで立っていた屋根から飛び降りていた。
ドッボォン!!ブクブク…
「水に突っ込んだぞ!!悪魔の実食ってたら溺れて終わりだ!」
「きっと滑って落ちたのよ!!火吹く“能力者”よあいつ!!」
「いや、下に……!」
結果的にその忠告は若干遅かった。
「どうりゃあァ!!!」
ドッゴォン!!!
ルフィたちの船の下に泳いで潜り込んでいたフランキーが、船底から船を破壊したのだ。
「わっ!!!」
ルフィとナミが宙に放り出される。
「泳げんのかっ!!!」
「いや~~~~っ!!」
「悪魔の実なんざ食っちゃいねぇっ!!!」
ルフィは空中で体勢を立て直したが、ナミはそのまま頭から水路に落ちていく。
「ナミちゃん!」
咄嗟にジャスミンがヤガラブルの背から跳び上がり、ナミを横抱きにして1番ドックの入口の前に着地した。
「あ、ありがとうジャスミン…!」
「どういたしまして。」
ドゴン!!!
「何!?」
目を離した間に、ルフィがフランキーの攻撃をまともに食らって1番ドックの扉に叩き付けられた。
「あの腕…。」
フランキーの腕が飛び出し、フランキーの体と鎖で繋がっている。ガシン…と金属音を立て、腕が元に戻った。
「何今の!!」
「ロボット…?いや、サイボーグ?」
生憎、フランキーのイメージが海パンということしか残っておらず、ジャスミンもナミと一緒に困惑する。
「……あァ、知らなかったのかい…。お姉ちゃんたち。じゃあ教えとこうか…。」
フランキーが水路から上がり、ルフィへと距離を詰めていく。
「おれは
ジャラ…
そう言って右手を外し、鎖を見せ付ける。
「人間を改造するなんて、一体誰が…。」
(Dr.ゲロみたいなヤツがこの世界にもいるってこと?それとも…)
「ルフィ――――――!!ブッ飛ばすのよ!!そんな海水パンツ!!!」
「あ。」
ジャスミンが思わず思考に沈みかけている間に、ルフィとフランキーの戦いは激しさを増していた。
「とにかくお前は…、ブッ飛ばしてやるからな!」
「うははは!!やってみろ。お前の攻撃なんざ効きゃあしねェ!!!“ウェポンズ
ボウン!!!
フランキーの左手首がまるで蓋のように開き、手のひらの照準器で左腕からバズーカのようなものが放たれた。
「あんなものまでって……?!」
ハッとして視線を脇にずらす。
「ゴムゴムの…“鞭”!!!」
ジャスミンが視線を向けたのとほぼ同時、ルフィが放った蹴りをフランキーが受け止めようとした時だった。
「!!?」
「ん!?」
一拍置いて2人も気付くが、結果的には遅かった。
「うわ!」
ガシャアン!!
「ウォッぷ!」
ドカァン!!!
予想だにしていなかった真横からの攻撃に2人とも積まれていた木材などに突っ込んだからである。
「誰だァ!!!」
「あ。」
「あの人たちって、確か…。」
「くだらねェマネしてくれたな。お前の狙いは何だ…!!!麦わらァ!!!!」
ガレーラカンパニーが誇る、1番ドックの5人の職長たちだった。
そのうちの2人、鳩を肩に乗せた男と鼻の長い男‐ルッチとカク‐を見付け、ジャスミンの目がわずかに、他人には分からない程度に鋭くなる。
(あの2人……。他の3人に比べて明らかに戦い慣れしてる。気の大きさも一般人とは比べ物にならないし…。たぶん、あの2人が政府からのスパイかな。それに他の人たちもこの張り詰めた空気…。)
「昨日の船大工の人たち…!!こりゃこっちの味方ね!!」
「ナミちゃん、逃げる準備した方が良いかも。」
「?何言ってんのよジャスミン!大丈夫よ。あたしたち、昨日あの人たちと知り合いになったの。」
「…言いにくいんだけど、たぶん違うと思うよ。」
「?どうゆうこと?」
「昨夜のアイスバーグさんの暗殺未遂事件…。ただの強盗や怨恨じゃないと思う。」
「?!ジャスミン、何か知ってるの!?」
「昨日言ったかどうかは忘れたけど、私気配で人の位置とかざっくりした体調とか分かるの・・・。昨夜、アイスバーグさんが襲われた時、アイスバーグさんの気配は分かったけど襲った相手の殺気は全く感じなくて。」
「殺気を感じなかったって…。」
「たぶん、襲った相手は最初からアイスバーグさんを殺すつもりは無かった…。アイスバーグさんが動けない間に何かしたかったのか、「襲撃」自体が目的だったのか、それは分からないけど…。」
「ちょっと待って!その考えが当たってたとしても、それとあの船大工の人たちとどんな関係があるの?!」
「そこまではまだわからない……。でも、あの人たちのあの空気…。とても友好的には見えないし。むしろ、ルフィくんに対して殺気立ってる。」
「そんな、まさか…。」
ジャスミンとナミがそんなやり取りをしている間に、ルフィたちの間でも話は進んでいたらしい。
「なんもしてねェよ!!」
突然のルフィの叫びに、ジャスミンとナミがそちらに目を向ける。
「とぼけるんなら・・・・、締め上げるまでだっ!!!
シュルルルル!!!
キュッ!!!
5人の真ん中に立っていた、葉巻を
「ウェェッ!!!苦しィ…苦…!!!ア``…」
「ルフィくん!!」
「“エア・ドライブ”!!!」
「………!!!」
ギュオオオオ!!
ドゴォン!!
「ぶへ!!!」
そのまま引き付けられ、木材の山に叩き付けられた。
「この野郎ども!!!邪魔すんなっつったのがわかんねェのか!!!そいつに恨みがあんのはおれだァ!!!」
フランキーが吠えるが、他の4人もそれぞれ武器を取り出し、または肩を鳴らすなど準備をしている。
「やっちまえ―――――――――!!ガレーラカンパニー!!!」
「社内最強の5人のケンカだっ!!!」
「ウソでしょ?!ホントに船大工もみんな敵なの!?」
「ほらぁ……。言わんこっちゃない…。」
「ジャスミン、これって一体どういうことよ!!?」
「だから、くわしいことは私も知らないってば…。分かるのは、さっきからあの船大工の人たちがやけに殺気立ってることだけ。まるで、
「あたしたちが?!」
「私がそう思ってる訳じゃないし、あの人たちが本当にそう思ってるかは分かんないよ?」
そんなことを話している間にも、ルフィvs5人の船大工の戦いは激しさを増していく。
ドガシャァン!!
「……!!ホントに強ェなこいつら。くそォ――――――!!!何なんだ理由くらい言えェ!!!」
ボコォン!!
突き飛ばされた先の木材を弾き飛ばしながら、ルフィが叫ぶ。
「理由を知りてェのはおれたちのの方だ…!!!昨夜、本社に侵入してアイスバーグさんを襲撃した犯人は、お前らだろうが!!!!」
「な、何それ…。」
「…何でそんな勘違いを…。」
「バカ言え!!!何でおれたちがそんなことするんだ!!!」
「“犯人”を2人覚えていると、目を覚ましたアイスバーグさんが証言したんだ。政府に聞きゃあお前らの仲間だと言うじゃねェか…。「ニコ・ロビン」って賞金首はよ!!!」
「ロビン!!?」
「………!!」
ルフィは叫び、ナミは驚愕のあまり声も出ないようだった。
「ナミちゃん、大丈夫?」
「何でロビンが…?」
「それはわからないけど、もしかしてニコ・ロビンさん本人じゃなくて、誰かの変装かもしれないし…。悪魔の実の能力者だったら、例えばニコ・ロビンさんの偽物を作ったり、そっくりに変身出来る人もいるかも…。」
「そう、そうよね!ロビンがそんなことする筈無いもの!」
「仮にニコ・ロビンさんだったとしても、誰かに脅されてる可能性もあるし…。ニコ・ロビンさん本人に会って確かめた方が良いよ。」
「ロビンを探すわ。ロビンは犯人なんかじゃないってはっきりさせなきゃ……!」
ナミが落ち着きを取り戻した直後だった。
「お前らロビンを知らねェくせに、勝手なこと言うなァ!!!!」
「ルフィ。」
「ルフィくん。」
「アイスのおっさんに会わせてくれ!!!見間違いだそんなの!!ロビンな訳ねェ!!!」
「今度もまた何するかわからねェ奴を、アイスバーグさんに近付けられるか!!!」
上半身に刺青を入れた男が吐き捨てると、周囲に集まった野次馬もそれに煽られた。
「そうだ!!!」
「この町の英雄を殺そうとした奴らだ!!!」
「首切ったって構わねェ!!!」
集団の恐ろしさと言うべきか、1人の賛同に次々と発想が物騒な方向へと進んでいく。
(このままここにいちゃマズイな……。)
「コノ!」
ガッ!
ギリ…!
「何をするつもりですか?」
ナミを後ろから羽交い締めにしようとした男の腕を逆に捻り上げる。
「いででででで!離せ!お前も麦わらの仲間だな!?」
「麦わらの仲間?!絶対に逃がすな!」
「捕まえろ!」
「ったく!」
ドンッ!
「うぉ…!」
腕を捻り上げていた男を突き飛ばし、次々捕まえようと襲ってくる男たちを時に足を引っかけ、時に突き飛ばしながら転ばせていく。
ヒョイ
ガッ!
ドサァ……!
ドンッ!
ドテッ!
「ジャスミン!」
「ナミちゃん、私から離れないでね。」
相手は一般人なのでそうそう手荒な真似は出来ない。ナミを庇いながらどこまでいけるか。
「ナミ!!!ジャスミン!!」
「観念しろ!!!情報はすぐ町中に広がる。逃げ場はねェぞ。一味全員、おれたちが仕留めてやる!!!」
用語解説
Dr.ゲロ…ドラゴンボールの主人公・孫悟空が子どもの時に壊滅させた悪の組織・レッドリボン軍お抱えのマッドサイエンティスト。性格はともかく頭は良く、科学者としては一流らしい。人間を非合法に攫い、無理やり改造してサイボーグにしていた。クリリンの妻・18号も被害者の1人。最終的に自身もサイボーグとなるが、Dr.ゲロを恨んでいた17号(18号の双子の弟で同じくサイボーグ)に首を刎ね飛ばされた後、頭を踏みつぶされるというショッキングな方法で殺される、という当時チビッコだった読者に結構なトラウマを与える。
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第13話 疑惑と仮説
因みに月曜からしばらく忙しくなりそうなので、更新は早くて来週になるかもしれません。
わあああああああああ!
「捕まえろォ!!!」
「暗殺者どもを逃がすなァ~~~~!!!」
ガッ!
ドカッ!
ドスッ!
ドサッ!
「ケガはさせたくないんです。この場は引いてもらえませんか?」
さすがに転ばせるだけでは凌ぎきれず、ナミを後ろに庇いながら出来るだけケガをさせないように襲ってくる住人たちを当て身と手刀で次々に気絶させていく。
「クソッ!この女強ェ…!」
「さすが1億の賞金首のクルー…!」
「いや、私はクルーじゃないんですが…。」
完全にジャスミンを麦わらの一味と勘違いしているらしい。最も、船長であるルフィの他には
「あたしたちが一体何したっていうのよ!!」
「とぼけるな暗殺者の一味め!!!よくもアイスバーグさんを撃ちやがったな!!!逃がさんぞ!!!」
「くそォ!!おい!!やめろお前らァ!!!おれたちはなんもしてねェ!!!」
「そうよ!!だいたいロビンにだってアイスバーグさんを狙う理由が無いもの!!!」
ルフィやナミが弁解するが、既に暗殺者は麦わらの一味、と思い込んでいる島の人間には通じなかった。
「いつまでも言い張ってるが良い。とにかく、お前ら
「このォ!!!何でそんなありもしねェこと……!!アイスのおっさんと話をさせろォ!!!」
「観念しろ。海賊。」
最早、誰が何を言っても聞き入れる気は無いらしい。
「ぶっ潰せ!!ガレーラカンパニー!!!」
その叫びが契機となった。
「どうした。受けるばっかりで良いのか?」
「だからおれは!!お前らと戦う理由がねェんだって!!!」
ガチャガチャン!!!
「
銃を放り投げ、残りの3人もそれぞれバズーカや大型ののこぎりを武器に構えている。
「くっそォ、やる気満々かあいつら!!」
ズム!!!
ボッカァン!!!
「うわあ!!!」
5人の中で最も巨漢‐タイルストンがバズーカをルフィ目がけてぶっ放す。
「うおおっ!!!」
「直撃だァ!!!」
住民から歓声が上がるが、ジャスミンの目はルフィが寸前でロープを引き千切ってクレーンで釣り上げられた木材の上に逃げるのを捉えていた。
「……いや、逃げた。」
「危ねェ」
ヒュッ!!
ズバン!!
「わっ。」
ガラガラガシャア…ン!!
「うお!!!」
落下する木材に巻き込まれることなく着地したルフィだったが、間髪入れずに
「ハア!ハー!」
ガカカッ!!!
壁際に追い詰められたと同時に、投擲されたのこぎりで服を縫い止められてしまう。
ドウン!!
「!!?う…、あ!しまった、動けねェ!」
その隙を逃すこと無く放たれたバズーカに、ルフィも焦りを見せた。
ドッゴオオ…ン!!
「ルフィ!!」
「よっしゃ、仕留めたぞォ!!」
ルフィがいた辺りに爆炎が立ち上り、
「いえ――――――い!!アッハッハッハッハッハ!!」
「気分爽快だわいな!」
「そうそうあんな奴ァ吹き飛ばしちまえば良いんだ!!」
いつの間にかちゃぶ台と湯呑を持ち出し、一服しているフランキーと部下?の四角い髪型の女性たちがガレーラカンパニー側についたような会話をしている。
(どっから持ってきたんだろ……。)
「さすがはおれたちの誇り!!!“ガレーラカンパニー”!!!いやいやいやしかし、お前。その麦わらのチビは
ご丁寧に「おんどりゃああ!!!」と気合を入れながらガシャァーン!!と盛大な音を立ててちゃぶ台をひっくり返す。
(それがやりたかったのか…。)
相変わらず襲い掛かってくる住人たちを捌きながら、軽く感心しながら横目で様子を伺う。
「ガレーラァ~~~~~!!!!」
「少し待っていろ。お前の相手はあいつを完全に捕えてからじゃ。」
「だから…!!何でおれの獲物をお前らが捕えるんだ……!!!いや、もういい。口で言ってもわからねェ様だ……。」
ウガァア、と吠えるフランキーを全く相手にせず、
「パウリー危ない!!!」
「ガレーラ逃げろー!!!」
「フランキーが!!ヤベェ攻撃に出るぞー!!!」
「コネクターセット……。」
ガチッ、ガチッ
腕と腕をT字型のパイプのような器具で繋いでいる。
「
「クレーンを…?」
「逃げろガレーラァ~~~~!!」
「大砲か?」
「……あのクレーン、いつの間に倒れたんだろうと思ったら…。」
「あんた、見て無かったの?!」
「つい考えごとしてて…。」
という会話をしている間に、フランキーの準備が完了したらしい。さっき装着したパイプを両手で包み込むように構えている。
「砲弾なんざ飛ばさねェよ。飛んでくのは…“空気の弾”。ただし…、速度は風の領域を超える。」
「空気?」
「危険だ、逃げろ~~~!!!」
「アァア~~~~~~~~~っ!!!」
気合と共にフランキーの両腕が大きく膨らんでいく。
「“
ベコォン!!!
ドカン!!!
「うああァ~っ!!!」
標的になった5人の船大工たちだけでなく、その後ろのドックにまで被害が及ぶ。
「
「うわァ!!!またクレーンが倒れるぞ――――――!!!」
「逃げろー、こっちまで届いちまう!!!」
「アッハッハッハ!オウ、潰れちまえ!!こんな造船ドックなんざ、潰れちまえ~っ!!!」
ズズズゥン…!!!
クレーンが倒壊し、辺り一帯に土埃が舞う。
「造りかけのガレオンごと……!!]
「1番ドックが崩壊したァ~~~~っ!!!」
フランキーの攻撃によって1番ドックは半壊し、見る影も無い。
辺りは巻き込まれないように逃げ出す者、その様子に視線が釘付けになる者と様々だったが、幸いそのおかげでジャスミンたちに襲い掛かってきていた住人たちも、おおよそそちらに意識が向いていた。
「ナミちゃん、ケガは?」
「大丈夫。それにしても、“
「ナミ!!!ジャスミン!!走れ!!」
言葉と同時にルフィが走り寄ってくる。やはり、直撃は上手く避けたらしい。
「ルフィ!!あんた大丈夫!?」
「ルフィくん、ケガは?」
「おれがあれくらいでやられるか!!とにかく意味がわからねェ、何とかしてアイスのおっさんとこ行こう!!!」
荒く息をつきながらも、この場を逃げ出す算段を付ける。
「賛成。このままここに居ても、リンチ以外の未来が見えないし。」
「えェ!?行くの!?無理よ、この騒ぎの中っ!!」
「おい見ろ!!“麦わら”が逃げるぞ!!!」
「やべェ。」
「しっかり捕まってろ!!」
がし!!
ナミと纏めて右腕で抱えられる。
「わ!!待って!」
「ルフィくん、私自分で飛べ……!」
びゅ!!ぴょーん!
最後まで喋ることが出来ないまま、勢い良く上に引き上げられた。
~ガレーラカンパニー本社向かいの屋根の上~
「うぇ、ちょっと酔った・・・・。」
ジャスミンが屋根の上に片膝を立てて座り込み、自身の膝に
自分で飛んでいる時はスピードをいくら出しても平気なのだが。
引き上げられる時の浮き上がるような感じが苦手らしい。エレベーターに乗った時の数10倍内臓が浮き上がるような感覚がした。
「ちょっと大丈夫?」
「何とか…。」
ナミに背中を擦ってもらいながら、返事を返す。
「なっさけねェな~、お前。」
ルフィが小指で鼻をほじりながら呆れたような声を出す。
「内臓がヒュンッてなったよ…。私、飛べるから自分で移動出来るのに…。」
「そういや、そうだったな!」
あっけらかんと笑われ、ジャスミンは気が抜けるのを感じた。
「…もう、良いよ……。」
「それどころじゃないわよ!ロビンのことだけじゃなく、色々とやばい状況なんだから!!」
「やばい?…何がやばいんだ。」
「この島の“地形”と“気候”よ。これだけ風が吹いて気圧が落ちてくれば、今夜島を台風が通るかもしれない。“水の都”と
「それがどうした。」
「んー。まあ、気になるから後で調べてみる。―――――――――それより
「ルフィくん、どうやってアイスバーグさんに会う気?」
「そうよ!問題はそれ!だいたい、本気で行くの!?」
「当たり前だ。アイスのおっさんが何でロビンを犯人だと言ったのか、直接聞いてくる。」
「言っとくけど、私たちも島中から追われてる身だってこと、忘れないでね。ちゃんとどこがアイスバーグさんの部屋か見当つけて上手く隙をついて慎重に……。」
「ルフィくん、話聞いてる?」
「?」
「じゃ、行って来る。」
「え…。」
ぐいー…ん
いつの間にか、ガレーラカンパニー本社目がけてルフィが腕を伸ばしていた。
「ちょっ………!!!」
ナミが止めようとするが既に遅かった。
バリィン!!!
次の瞬間には、ゴムの反発力を利用したルフィが本社に飛び込んでいたからである。
「“麦わらのルフィ”が本社に侵入したぞ――――――――っ!!!」
「赤いベストに麦わら帽子だ!!!」
「アイスバーグさんを守れー!!」
当然だが、途端に本社が騒がしくなった。
「あーあ、行っちゃった…。」
「………。」
ナミは最早声も出せないでいる。
「いっつもあんな感じ?」
「あんな感じ…。」
ズー……ン、とした効果音が聞こえそうな程がっくりしているナミに、少し迷ったが言葉を続ける。
「ナミちゃん、さっきの気圧の話だけど、もしかして警報聞いて無いの?」
「警報?」
「アクア・ラグナの警報。」
「……ねぇ、ジャスミン。すっごく嫌な予感がするのよ。質問しても良い?」
「たぶん間違って無いと思うけど、どうぞ。」
「“気圧”と“警報”って聞いただけで良い予感はしないけど……。“アクア・ラグナ”って名称が不安を掻き立てるわ。はっきり聞くけど、アクア・ラグナってもしかして水害か何か?」
「ピンポーン。……さっきの騒動の前に地元の人に聞いたら、場合によっては町1つ沈めちゃう程の高潮だって。予報では夜半過ぎに襲来するらしいよ。」
「町1つ沈める程の高潮ォ!?」
「……やっぱりそういうリアクションになるよね・・・。」
ガーンッ!!
と背後に文字を背負っていそうな表情をしている。「絶望」というタイトルを付けたらピッタリかもしれない。
「地元の人たちはみんな避難するって。裏町の辺りは完全に沈んじゃうくらいだって話だし、私たちも避難しないとマズイと思うんだけど…。」
「問題は、島中の人間が敵になったこの状況でどうするかってことね…。」
「そ。それに、もしかしてナミちゃんたちみたいに、他の“麦わらの一味”の人たちも警報聞いて無い人がいるかもしれないし。最初に他の仲間と合流して、これからどうするか決めた方が良いんじゃないかな?」
「そうね。それにしてもあいつら一体どこにいるんだか……!」
「そういえば…。アイスバーグさんの件だけど……。」
「?何か思いついたの?」
「アイスバーグさんの所に、世界政府の人間が定期的に訪ねてるらしいんだよね。」
「そういえば……!昨日、あたしたちが造船所を訪ねた時に見たわ!」
「そうなんだ?じゃあ、世界政府の人間はアイスバーグさんの持っている“何か”を譲ってもらおうとして来てるって噂を知ってる?さっき、1番ドックの前で地元の人が話してたんだよ。もしかして、“
「“
「本来存在しない筈の政府の暗躍機関らしいけど、あくまでも噂だしね。でも、本来は
それは本当である。1番ドックでルフィやナミに会う前に、確かにそんな噂を話す男たちがいた。人目を気にしてか、すぐに話題は変わってしまったが…。
その話を聞いて、うろ覚えだった原作知識に引っかかるものがあったのだ。
「アイスバーグさんを襲ったのは世界政府かもしれないってこと?じゃあ、ロビンを見たっていう話は?」
「そこはまだ何とも…。でも、さっき私が話した仮説を覚えてる?」
「え~と…。アイスバーグさんを襲ったのは、殺すことが目的じゃなかったって話?」
「そう。仮に、そのアイスバーグさんが持っている“何か”が欲しかったんだとしたら?私だったら、何度来られても譲りたく無いものだったらどこかに隠してる。その隠し場所を知る為にアイスバーグさんを殺せなかったのだとしたらどう?」
「……話の
「でしょ?ニコ・ロビンさんがそれにどう関係してくるのかはわからないけど…。捜査を
「そう…。そうね。可能性はあるわ!」
ドォン…!!!
「銃声?!」
「ルフィ!?」
ダンッ!
ガレーラカンパニー本社から銃声が聞こえてきたのとほぼ同時に、ルフィが屋根に飛び移ってくる。
しかし、その表情は硬い。
「………もしかして、話せたの?アイスバーグさんと?」
「本当にロビンを見たって……。」
ストン、と屋根に座りながら硬い声でルフィが告げる。
「――――――そんな。……どうしてロビンがそんなこと…。」
「おれは信じねェ!!!!」
「そうね。私も信じないわ!」
「ナミ。」
力強いナミの声にルフィがナミを見詰める。
「さっきちょうどジャスミンとそんな話をしてたの。それはロビン本人じゃなくて、ロビンの偽物かもしれない。仮にロビン本人だったとしても、何か理由があるに決まってるわ!!」
「にししっ!そうだな!!」
「じゃ、これからどうする?」
話がまとまったところで、ジャスミンが今後の予定を尋ねる。
「取りあえず、他のみんなを探しましょ。出来れば宿に戻って荷物を取りに行きたいところだけど…。」
「それは難しいかもね。島中が敵の状態だし…。宿はもう抑えられてると思う。」
「そういや、ジャスミンお前も一緒に来るのか?」
「ここに連れて来たのルフィくんだと思うんだけど……。まぁ、さっきの騒動で私も麦わらの一味だと思われてるみたいだし、しばらく一緒に行動させて。」
「おう!良いぞ。」
「あんたのせいでしょうが!!」
ガンッ!
シュウウゥ…!
ナミの拳骨でルフィの頭にぷっくりとタンコブが出来る。
(凄い…。怒りのあまり一瞬だけど“気”を拳に纏わせてる……。)
「ゴメンねジャスミン、巻き込んで・・・・。あたしもうっかりしてたわ。」
「気にしないで。友達の為に何かするのは特別なことじゃないでしょ?」
こうなれば、毒を食わらば皿まで、の心境である。
笑って言ったジャスミンに、ナミもほっとしたような笑顔を見せた。
ナミがルフィに拳骨を落とす時に気を無意識に使っている、というのは作者の都合の良い解釈によるものです。
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第14話 嵐の前の小休止
「どこへ行った!!!」
「どっかの屋根に登ってねェか!?」
「くまなく探せ!!!」
「路地はどうだ!?」
「くそ!!まかれたか!!?」
「確かにこっちに逃げたぞ!」
島中の男たちが集まり、険しい顔で周囲をくまなく探し回っている。屋根を1つ1つ確認し、狭い路地も覗き込み、ねずみ1匹逃がさない体制である。
ガレーラカンパニー本社から少し離れた水路の橋の下、ジャスミンはルフィたちと一緒にそこにいた。
「向こう行ってみよう。」
「どの辺りで消えた!?」
プルプルプル……
『……もう、良いか?』
『まだだ。』
『ルフィくん、もうちょっとだからがんばって。』
『………!!!』
橋のアーチの真下に、ルフィがそのゴムの体を生かし、精一杯手足を伸ばして自身の体をハンモックのようにしてゾロを支えていた。
『誰か来た…。』
ジャスミンが小声で告げる。
一瞬緊張が走るが、『でも、人間じゃないっぽい。』と続けるジャスミンに、ナミの脳裏に麦わらの一味が誇る船医の姿が浮かぶ。
が、それを口に出す前に橋の上から覗き込んできた人影によって、ルフィが「うお!!!」と短い悲鳴を上げて水路に落ちる。
バシャアン!
「ぶあ!!!」当然、ルフィに座る形になっていたゾロを道連れにして。
「…やっぱりチョッパーだったのね。」
「麦わらの一味の人?」
「そ。船医なの。」
「へぇ~。」
「後で紹介するわ。それよりまず、場所を変えないと・・・・。」
水路であっぷあっぷしているルフィと、それを引っ掴んで歩道に戻ろうとするゾロを見ながらナミがため息を
~裏町のとある屋根の上~
「チョッパー、お前良くここが分かったな。」
「におい。」
「ああ。」
「ふう…。落ち着いたか…。」
「落ち着いたかって…!!あんたがあんな大勢の船大工に追われてたから、私たちまで巻き込まれたんでしょ!?」
ゾロの一言にナミが嚙み付く。
「仕方ねェだろ。あんな数の人間相手に見付からねェ方がおかしいぞ。」
「あんったねェ!」
「まあまあ。今、それどころじゃないでしょ?」
青筋を立てるナミをジャスミンが宥める。
その様子を見て、ゾロが思い出したように切り出した。
「そう言えば、さっきから気になってたんだが、お前誰だ?」
「あ、おれも聞こうと思ってたんだ。お前、味方なのか?」
「ああ、私は」
「こいつはジャスミン!昨日友達になったんだ!!」
ジャスミンの言葉を途中で遮り、ルフィがざっくり説明した。
「友達だぁ?」
「おう!こいつすっっっげェ~んだぞ!空飛べるんだ!」
「そう言われれば、さっき浮いてたか……?」
「あんた、気が付いて無かったワケ?」
「それどころじゃなかっただろうが。」
「すげェ!空飛べんのか!?」
チョッパーだけは目を輝かせて食い付いていたが。
「成り行きで私も麦わらの一味と勘違いされてしまって…。この際なので、出来る限りの協力はさせてもらいます。」
ジャスミンが軽く補足する。
「そりゃ、災難だったな。」
「改めて。ジャスミンと言います。あなたはロロノア・ゾロさんですね?海賊狩りの。」
「ああ。」
「それから船医の…。お名前を聞いても?」
「おれはトニー・トニー・チョッパーだ!何でおれが船医って知ってるんだ?」
「さっきナミちゃんに聞いたんです。チョッパーくんって呼んでも良いですか?」
「おう、良いぞ!ジャスミンはおれのこと見ても驚かないのか?」
「?何か驚くようなことがありましたっけ?」
「?!だって、おれはトナカイだし、青っ鼻だ!!トナカイは普通喋んねェし、鼻だって青くねェ!」
どうやらジャスミンのリアクションが予想外だったらしく、驚きも気持ち悪がりもしないのが彼にとってはあり得ないことだったらしい。
「私の故郷では、チョッパーくんみたいな人はいっぱいいましたよ。父の古い知り合いには喋るウミガメも豚もいますし、喋るネコと一緒に住んでました。」
「ウ、ウミガメや豚が喋るのか!?」
「はい。喋るだけじゃないですよ。ウミガメさんは違いますけど、それ以外はチョッパーくんと同じように二足歩行で歩きますし、豚やネコなんかは色んなものに変身出来るんです。」
亀仙人のところのウミガメや、ウーロンを思い出す。それから、ずっと家族として暮らしていたプーアルを思い出してジャスミンはちょっとしんみりした。
(昔は、良くプーアルにねだって色んなものに変身して見せてもらったっけ……。)
まだ舞空術が使えない頃は、空飛ぶ絨毯に変身してもらって空中散歩に連れて行ってもらったこともある。まあ、安全を考えて必ず
あの時はまだ、前世のことを思い出して無かったんだっけ、とつらつらと考えていたところで、チョッパーが俯いたまま静かになっていることに気付く。
「チョッパーくん?」
「おれ、おかしく無いか?」
ともすれば風の音でかき消されそうな程小さな声でチョッパーが問う。
「ちっとも。」
「そっか。エッエッエッエッ!」
ジャスミンがきっぱりと否定すると、嬉しそうに笑い出す。
その姿を見て、2人のやり取りを見守るだけだった他の3人もそれぞれ笑みを浮かべていた。
「おい。そうだ、サンジは?」
思い出したようにルフィがチョッパーに聞くが、チョッパーは「それが…。」と話しづらそうに切り出す。
チョッパーによると、町の中で渦中の人物であるロビンに会ったのだと言う。
だが、そこで伝えられたのは別離の言葉だった。
追いかけたが追い付けず、チョッパーはそこでサンジとは別行動となり、今のやり取りをルフィたちに一言一句漏らさずに伝えるように言われたとのことだった。
「本当に言ったのか!!?ロビンがそんなこと!!!」
ルフィの叫びにチョッパーが無言で頷く。
全員、言葉が見付からず沈黙が続く中でゾロが切り出した。
「全員…。覚悟はあった筈だ……。」
カツン、と鞘に納めたままの刀で床を軽く叩く。
「仮にも…、“敵”として現れたロビンを船に乗せた。――――――それが急に怖くなったって逃げ出したんじゃ締まらねェ。
「うん。」
「今日限りでもう会うことはねェってんだから、今日中に何かまた事態を悪化させるようなことをするって、宣言してるようにも聞こえる。市長暗殺
「今度こそ…、“市長暗殺”。」
ゾロの言葉をナミが引き継ぐ。
「そう考えるのが自然だな。――――ただし、わざとおれたちに罪を被せてると分かった以上、これはおれたちを現場へ
「ちょっと!!それじゃあ、もう本当にロビンが敵だって言ってるみたいじゃない!!」
「可能性の話をしてるんだ。別におれはどっち側にも揺れちゃいねェ。信じるも疑うも…。どっちかに頭を傾けてたら…、真相がその逆だった時、次の瞬間の出足が鈍っちまうからな。ことが起こるとすりゃ今夜だ。“現場”へは?」
ゾロがルフィへと目を向ける。
「行く。」
即答だった。
「行くのは構わないけど…。問題があるのよね。サンジくんはロビンが誰かと歩いているのを見たと言ってたでしょ。アイスバーグさんも…、同じ証言をしてるの。“仮面を被った誰か”って。それはあたしたちの誰でも無い。急にロビンが
「そいつに悪いことさせられてるんじゃないか!?ロビンは!!」
ナミの意見にチョッパーも賛同する。
「その考え方が“吉”。そいつとロビンが
どこまでも冷静にゾロが続けた。
「――――――かと言って“仮面の誰か”じゃなんの手がかりにもならない。あたしたちの目的は何?」
「ロビンを捕まえるんだ!!!じゃなきゃ、何もわかんねェよ。」
立ち上がり、ルフィが断言する。
「確かに…。考えるだけ時間の無駄だな。……だが、――――確か…。世界政府が20年…、あの女を捕まえようとして未だ無理なんだっけな…。」
「でも、真相を知るにはそれしか無いわね。」
「よし!おれも頑張るぞ!」
「じゃあ、行こう。」
4人が立ち上がる。
「話は纏まったみたいだね。」
それまで口を噤んでいたジャスミンが口を開く。
「おう。ロビンに会わなきゃなんねェ。」
「じゃあ、ここからは別行動にしようか。」
「え!?ジャスミンは来ないのか!?」
チョッパーがジャスミンに詰め寄る。
「ルフィくんたちはニコ・ロビンさんを第一の目標にするんでしょ?なら、私は“仮面の誰か”を探すよ。」
「探すって言ったってどうする気?」
ナミが尋ねる。
「今夜、ルフィくんたちとは違う場所でガレーラカンパニー本社を見張るよ。ニコ・ロビンさんが現れたなら、たぶんその“仮面の誰か”も現れる。でも、ルフィくんたちがそこにいるのに最初から最後までずっと一緒に行動するとは限らない。むしろ、二手に分かれる可能性の方が高いと思う。それにその“仮面の誰か”が1人だけとは限らないでしょ?」
「他にも仲間がいるってこと?」
「うん。さっきも言ったでしょ?黒幕は世界政府かもしれない。」
「あ……!」
「世界政府が何だって市長暗殺なんか…。」
先程の話を知らないゾロが眉を寄せる。
「後で説明したげるわ。ジャスミン、続けて。」
「それが当たっているなら、必ず相手は
「それはそうだけど…。」
「お前なら突き止められるってのか?」
言葉に詰まったナミに変わり、ゾロがジャスミンに尋ねる。
「少なくとも私のことをニコ・ロビンさんは知りません。ルフィくんたちと行動していたのも、さっき1番ドックでが初めてなので、
「なるほどな。」
「ただ、私は仮にアイスバークさんが再び襲われても手を出すつもりはありません。必ず守ってください。」
「?どういう意味だ?」
ルフィが首を傾げる。
「この騒ぎを引き起こした相手の正体と、その目的を知りたいの。もし、相手が私が考えているように世界政府だったら、小手先だけの防衛は意味が無い。もし、その目的がはっきりしないまま相手の良いように踊らされちゃったら、全員罪人として捕まる可能性だってあるからね。」
「良くわかんねェよ。」
「つまり、相手のことを調べる為に私は出来るだけ手を出さないってこと。本当にルフィくんたちが危なくなったら手を出すかもしれないけど、よっぽどのことが無い限り一切手は出さないつもりだから。相手に知られちゃったら調べられなくなっちゃうし・・・・。」
「おう!わかった。」
「っつーかお前、そんなに強ェのか?」
「まあ、
「お前そんなに強いのか!?」
ゾロの疑問に答えたジャスミンを見て、チョッパーがちょっとのけ反る。
「数ヵ月前までは賞金稼ぎみたいなこともしてたので…。」
「あんたそんなことしてたの!?」
「ある程度旅の資金が必要だったから…。資金が貯まってからは、襲われた時だけ返り討ちにしてたの。」
「そう言われると、さっき町の人たちに襲われた時も全員一撃で気絶させてたわね……。」
「へェ。」
ゾロがわずかに興味を持ったらしく、面白そうな顔をする。
「まあ、それは置いといて…。ここからは別行動ってことで良い?」
「おう!良いぞ!」
「じゃ、後でね。」
バッ!ヒュウゥゥ…
ルフィの許可を得て、日が暮れるまで身を隠すべく、屋上から飛び降りる。
「ちょ…!」
「落ちたぁぁぁぁぁ?!」
タンッ!トッ!タンッ!
ナミとチョッパーが慌てて下を確認すると、ジャスミンが屋根を次々と跳躍し、中心街へと向かって行くところだった。
「やっぱスッッッゲェなぁ~、アイツ。」
「やるじゃねェか。」
ナミとチョッパーが呆然と見送る中、ルフィとゾロが楽しそうにジャスミンを見送る。
「さて、と…。日が暮れるまでどっかで休んどかないと……。」
シャッ!シャッ!
ある程度ルフィたちから離れたところでスピードを上げる。常人の目には捉えられない程に。
島の中心に
さっきルフィたちに告げたことは本心だった。ジャスミンは、この島では手を出すつもりは無い。
相手は世界政府。今この場を何とかしたとしても、手を変え品を変え同じことをしてくるだろう。
それを防ぐ為には、1度完膚無きまでに大本を叩くしか無い。
今回最善なのは、本来の流れの通りに世界政府に宣戦布告した
実際に政府の目的をはっきりさせたかったのも本心だが、それ以上に目の前でルフィたちが攻撃されるのを黙って見ていられる自信は無い。
もし、この場で政府からのスパイ(相手は恐らく噂の通り
その代わり、宣戦布告した際には暴れてやるつもりだったが。
この世界に来て半年。ジャスミンも世界政府のやり方は気に入らないのだ。
10数年前に読んだ漫画の内容は既にほとんど覚えていないが、実際にこの半年間見聞きして世界政府の掲げる“正義”には疑問を抱いていた。無論、ちゃんと一般人のことを考えている誠実な海兵もいたが、それ以上に私欲を肥やす海兵を見て来た。
(それに、うろ覚えだけど今回の敵役ってかなり
別に“正義”を気取る訳では無いが、実際にルフィたちと知り合い、友達になったことで、力になりたいとすら考えるようになっていたのである。
用語解説
喋るウミガメ…ドラゴンボールの主人公・孫悟空の師匠である亀仙人と一緒に住んでいるウミガメ。亀仙人がわりかし適当な性格をしているからか、真面目な性格。
喋る豚…悟空の少年時代からの仲間で名前はウーロン。変身能力があるが、3分間しか保たない上に例えば怪獣に変身しても強さは元のまま。ドスケベだが、そのドスケベが世界を救ったことがある。実は作中で1番最初にドラゴンボールで願い事を叶えたのはコイツ。
喋るネコ…名前はプーアル。変身能力を持つ。見かけはふよふよと空を飛ぶネコだが、鳥山先生曰くネコでは無く、ネコっぽい生き物とのこと。ジャスミンの父・ヤムチャを「ヤムチャ様」と呼び慕っており、この小説ではジャスミンのことも様付けで呼んでいる。ウーロンとは異なり、変身しても時間制限は無い。
昔からジャスミンのことを可愛がり、良く遊んでやっていた。が、まだ未登場。ミカヅキはプーアルを早く本編に出したくて仕方が無い。
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第15話 役者が揃う時
そしていつの間にかお気に入り登録が300件を超えていて「ウソやろ…。」とガチでプルプルしているミカヅキです。感想もありがとうございます!今後のネタバレになる可能性もある為、思ったような返信が出来ませんが、嬉しくてニヤニヤしながら見ております。
そんな訳で15話へどうぞ!16話は1週間経たないうちに更新出来ると良いな…。←願望
ヒュオオオォオォオ…
ビュオオォオォオオォォ…
(風が強くなってきたな…。)
既に日は暮れ、ガレーラカンパニー本社の周囲は船大工たちが警備を固めている。
ジャスミンは本社敷地内に植えてある木のうち、1本に完全に気を消して身を隠していた。
少し離れた所からルフィたちの気も感じる。
いつ動きがあるか、と少し焦れ始めた頃だった。
ドォン!!!
(!来た…!)
本社の入口近くで爆発が起き、その周辺を固めていた船大工が何人かその衝撃で吹っ飛ぶ。
「何だ!!?」
「砲撃か!!?」
途端に敷地内に詰めていた船大工たちが騒ぎ出す。
そして間も無く、頭をすっぽりと覆う仮装用の仮面を被った人物が現れる。
「人影が見えた!!!」
「仮装してるぞ!!!捕まえろ!!!」
入口付近の船大工たちを引き付けるように動き、鞭を操って屋上に飛び移る。
(囮か……。)
「こっちからは2人だ!!!」
「逃がすな!!!」
そして、最初に現れた人物とは別の、熊の仮面を被った人間と細身の人間が2人、別の方向に走っている。
(たぶん、あっちの細身の人がニコ・ロビンさんかな。)
シャッ!シャッ!シャッ!
船大工たちは仮面の人物たちを追うのに気を取られているが、念の為気付かれないように常人の目には捉えられない程度のスピードで移動し、別の木の上に身を隠す。
「追い詰めたぞ海賊共ォ!!!」
「逃げられねェさ!!観念しろォ!!!」
「良くもこの数の護衛の中に堂々と現れやがったもんだ!!」
「素顔を見せろ!!!」
ジャキキン!!
ス・・・!
熊の仮面を被った方が懐に手を入れ、船大工たちが殺気立つ。
「何かする気だ!!!」
「撃て!!!」
ばさっ!!!
銃撃が始まる一瞬前に、熊の仮面を被った方がマントを
ドドドドドドドォン!!!
船大工たちが一斉に銃を発射する。
シュウウウ…
パサ…
10数発の弾丸がマントをボロボロにしていくが、後に残ったのはマントの残骸のみだった。
「!!?」
「……消えた…。」
(今、空間に穴が開いた?)
船大工たちのように正面では無く、少し斜めから見ていたジャスミンには、銃撃が始まる直前に2人が背にした壁の手前に穴のようなものが出来たのが見えていた。
銃撃とほぼ同時に2人はその穴に飛び込み、すぐに穴が塞がった。船大工たちから見れば2人が突然消えたように見えただろう。
穴に入った直後は気を感じ取ることが出来なかったが、それからすぐにガレーラカンパニー本社の中に2人の気が現れる。
(悪魔の実かな?)
恐らく、空間移動系の能力を持つ能力者なのだろう。
もう1人の“鞭使い”の方は派手に暴れているようで、船大工たちはそっちへの応援と消えた2人組の探索に人数を割いている。
ただ、問題なのは“鞭使い”があちこち移動しながら暴れているせいで、本社内に侵入するのが難しい、という点である。
その気になれば気取られない程度のスピードで侵入することも不可能では無いだろうが、入口付近は常に何人かが固めている上に絶えずうろうろと移動している為、下手すればぶつかる可能性もある。
そんなに間抜けではない、と自分を信じたいところだが、常人よりもかなり大柄な男たちに入口を固められてしまうと通り抜けるスペースが心配なのだ。
しかも、本社の窓は見える範囲では全て
(この場合仕方無いか…。)
ブウゥ…ン!
手のひらを上にして気を集中させ、球体状の気弾を作り出す。
(
ギュンッ!
船大工たちに見付からないように1度頭上高く打ち上げ、人差し指と中指を立てて気弾を操り、本社の屋上の上空30mくらいのところに移動させた。
(はっ!)
ドッゴォン…!
そのまま気弾を一気に下降させ、屋上に着弾させる。
「何だ!?」
「屋上が爆発したぞ!!」
(よし!)
入口付近に固まっていた船大工たちが屋上を見上げる。
シュッ!
その隙を見逃さず、一気に加速して本社内に侵入する。そのままスピードを緩めず、気の少ない方へと移動した。
船大工たちはせいぜい風を感じた程度だっただろうが、今日はアクア・ラグナの接近で絶えず強風が吹き荒れている。気にする者はいなかっただろう。
(さて、さっきの2人組は・・・、と。)
どうやら既にアイスバーグと接触してしまっているらしい。アイスバーグの気が乱れ始めている。
それと同時に、3階で次々と船大工たちの気が弱くなっているのが分かった。一定のところから小さくなることは無い為、どうやら気絶しているらしい。
(この気はさっきの熊男?かな。)
しかも、船大工たちを襲っているのは1人では無い。あと2人、次々と船大工を沈めている者がいる。
(昼間のスパイか…!)
1番ドックで会った船大工、
既に2階以上に動いている船大工はいなかった。
(ん?)
「ルフィくん?」
何故かその2人のスパイがいるところにルフィが外から勢い良く突っ込んでいったのがわかった。
が、別に交戦している訳では無いようで、2人がすぐに部屋を出て行ったのに対し、ルフィはその場所に留まっている。特に気が弱まっている訳では無く、どうやら足止めされているらしい。
(あれ?もう1人いるな…。)
よくよく気を探ると、ルフィの他にももう1人いる。
「葉巻の人?」
昼間1番ドックにいた、
様子を見てから行こうとも思ったが、既にアイスバーグのところにさっきの2人が向かいつつある。
(元気みたいだし、ルフィくんなら大丈夫かな。)
ここはアイスバーグのところに向かった方が得策だろう。
(確か漫画では殺されなかった筈だけど…。)
しかし、ここには
もし、流れが変わりそうになったなら助けなければいけない。
ジャスミンはスピードを上げた。
(見付けた……!あの部屋!)
大きな扉の前に5つの椅子が並び、その前の廊下にはそれまでの比ではない数の船大工たちが倒れている。
(全員生きてはいるみたいだけど…。)
気を消したまま扉の前に張り付き、中の様子を伺う。
『お前ら…、政府の人間だったのか………!!』
『そう…。潜伏することなど我々には造作も無い任務。……しかし、あなたの思慮深さには呆れて物も言えない…!!!古代兵器プルトンの設計図。――――――その
恐らくアイスバーグだろう声と、聴いたことの無い男の声が聞こえる。
(古代兵器プルトン?設計図ってことは、世界政府の狙いはそれだったのか…。でも、何でまたニコ・ロビンさんまで一緒に……?)
聞き耳を立てているジャスミンが色々と推測しているうちに、信じられない情報が耳に飛び込んでくる。
『我々は…、政府に対して非協力な“市民”への“殺し”を許可されている。』
(殺しを許可?!一部の人間の暴走じゃなくて、組織全体でそれを許可するなんて……。そこまで腐ってるとは思わなかったな…。)
この展開はまずい。設計図の隠し場所がわかったら、すぐにでも彼らはアイスバーグを殺すだろう。
しかも、中のやり取りを聞く限り彼らは既に設計図の
(まずいな・・・。アイスバーグさんが危ない。踏み込んだ方が良いかな…。)
『トムのもう1人の弟子、「カティ・フラム」は生きている……。今もこの町に…。「フランキー」と名を換えて!!!』
(!フランキーがアイスバーグさんと兄弟弟子?!そうか、だからさっきまであんなに強気だったんだ…。生きていることすら知られていなかった相手に、既に肝心の物は託していたんだから!)
これ以上はまずい。彼らは何のためらいも無くアイスバーグを殺すだろう。
ニコ・ロビンが彼らに加担している理由までは探れなかったが、人命には代えられない。
(行こう……!)
ジャスミンが室内に踏み込もうと拳を構えた時、ダダダダダダ!と廊下を走る音が聞こえて来る。
「この気は…!」
「あそこ!!あの扉で間違い無いわって、ジャスミン!!!」
「ナミちゃん!」
気が小さ過ぎたのと、話に夢中になっていたのが合わさり、全く気が付かなかった。
「人がいっぱい倒れてるぞ!!」
「アイスバーグさんが危ない!!世界政府の奴ら、完全にアイスバーグさんを殺す気なんだ!」
「ゾロ!扉斬って突進よ!!!」
「おれに命令すんな!!」
文句を言いながらもゾロが扉を両断した。
ピキ……!!!ドッカァン!!!
ゾロが扉を両断したのとほぼ同時に、ルフィが隣の部屋から壁をぶち破って来た。
「ロビンはどこだ~~~~~~!!!!」
「やっぱりルフィくんだったのか…。」
ガラガラ……
ズズゥ…ン
扉や壁の残骸が崩れる中、ドオォ…ン!!!と遂にCP9と
本来加わる筈も無かった
それはまだ、誰も知らない。
彼女自身でさえも……。
用語解説
・繰気弾…元々はジャスミンの父・ヤムチャの技。気を手のひらで集中させて気弾を作り、それを指で自由自在に操る技。ただの気功波とは異なり、放ってからも自由に軌道を変えることが出来る為、ミカヅキとしては実に汎用性に長ける技だと考える。連載当初から早く使わせたくて仕方なかった技の1つ。
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第16話 友の裏切り!世界政府の闇
「ロビン!!!!やっと見付けたぞ――――――!!!」
「…………!!」
ルフィの叫びに、ロビンは声を詰まらせた。
「おい!!ルフィ!!!てめェ一体どこに居やがったんだ!!!」
「………!!ちょっと待って。この状況何!?」
「やれやれ……。」
ゾロとナミの叫びに、鳩を肩に乗せた男が呟く。
(!さっきの声、あの鳩男だったんんだ・・・。)
「麦わら……。パウリー……………!!!」
ベッドの脇に倒れたアイスバーグが掠れた声を出す。
ジャスミンがその傍に駆け寄って傷の具合を見る。
「左肩に
「多少視界が揺れるが問題ねェ…。」
「軽い
肩の傷の止血をしながらアイスバーグに告げる。
「あァ…。ところであんたも麦わらの一味か?」
「いや、私は……。」
「アイスバーグさん……。こりゃ、一体何がどうなってるんですか!!!」
ジャスミンが否定しようするが、それに被せるようにパウリーが叫んだ。
「………!!…パウリーてめェ、なぜ逃げねェ!!!」
「何なんですか…!!!まるでこいつらが…………!!!あなたの命を狙った犯人みてェに……………!!!お前ら何でそんな恰好してんだ………!!!」
「………。」
「………。」
「おい!!カリファ!!ブルーノ!!カク!!!ルッチ!!!冗談やめろよ、てめェら!!!」
パウリーの叫びに、CP9は一切答えない。
「……………そうだ!!あいつらお前と一緒にいた船大工だ!!鳩の奴だ!!」
「そういや、あの四角っ
「……まさか、“暗殺犯”が内部にいたってこと!?」
「パウリー……。実は、おれ達は世界政府の諜報部員だ。まァ、謝ったら許してくれるよな……?共に日々…、船造りに明け暮れた仲間だおれたちは…。突然で信じられねェなら、アイスバーグの顔でも……、踏んで見せようか………!!」
「……!!!ふざけんな…、もう充分だ!!!…ハァ…。
「やめろパウリー!!!」
激情のままにルッチに挑もうとしたパウリーをアイスバーグが止めようとするが、遅かった。
「“パイプ・ヒッチ・ナイブス”!!!」
ドヒュン!!
ジャラララララ!!!
懐から取り出した、ナイフが括り付けられたロープがルッチに向かうが、それは空を切った。
ビュッ!!!
シャッ!!
「
シュンッ!
ガシッ!!
「危ないな…。」
ルッチの一撃がパウリーの体を貫く、筈だった…。
しかし、その一瞬早くジャスミンがルッチの手首を掴んでそれを阻止する。
「何!?」
「一般人相手に手段を選ばないなんて……。世界政府は随分余裕が無いらしいね。…あなたはアイスバーグさんの傍にいてください。」
後半をパウリーに向かって告げる。
「あ、ああ…!」
パウリーがアイスバーグの傍に膝を付いたのを確認し、ルッチに向き直る。
その間も、ルッチを拘束する手は全く緩まない。
「…!」
「ルッチの一撃を…?!」
「ジャスミン!?」
「今、動きが見えなかったぞ!?」
一瞬でアイスバーグの傍から移動したジャスミンにナミとチョッパーが驚愕し、CP9の警戒が一気に高まるのが分かった。
「貴様……!何者だ……!!!」
「どんな答えを聞けば納得する?」
ドン!
唸るようなルッチの問いに、ジャスミンは答えをはぐらかしながらルッチを突き飛ばした。
「ふざけるな!おれ達はCP9。幼少期より
「修行が足りないんじゃないの?」
「何だと・・・・!」
直接ジャスミンと相対したルッチは何かを感じ取ったのか、わずかにジャスミンから距離を取った。
「お前ら!一緒に船大工やってたんじゃねェのかよ!!!」
「―――――さっきまでな…。もう違う……。」
ルフィの叫びに頭が冷えたのか、ルッチが先程までの冷徹さを取り戻した。
それを見て、ジャスミンも評価を改める。
(流石にプロ…。簡単にこっちのペースには持っていけないか…。)
やはり、一筋縄ではいかない。上手くいけば標的を
(やっぱり、その辺の海賊と同じようにはいかないみたいだ。)
原作通り、世界政府相手にケンカを売るのが1番確実な方法の様だ。
「本当に裏切り者か!!!じゃ、良いよ!とにかく、おれはコイツと一緒に!!アイスのおっさんを殺そうとしてる奴らをブチのめそうと約束したんだ!!!」
「…何故、お前がパウリーに味方するんじゃ…。」
「おれもお前らに用があるからだよ!!!おい、ロビン!!!何でお前がこんな奴らと一緒にいるんだ!!!出て行きたきゃちゃんと理由を言え!!!」
「そうよ!!こいつら政府の人間だって言うじゃない!!どうして!!?」
ルフィの叫びにナミも賛同する。
「……聞き分けが悪いのね。…コックさんとと船医さんにお別れは言った筈よ…。伝えてくれなかったの?」
「……!!伝えたよ!!だけどおれだって納得できねェ!!何でだ!!?ロビン!!!」
「私の願いを叶える為よ!!!あなたたちと一緒にいても決して叶わない願いを!!!……それを
「―――――それで…、平気で仲間を暗殺犯に仕立て上げたのか?願いってのは何だ!!」
「話す必要が無いわ。」
チョッパーの叫びやゾロの問いかけにも、ロビンは冷たく返す。
ただ、それはこれ以上踏み込んで欲しくない、という懇願のようにも見えた。
「正気の
「あなたにはもう…、何も言う権利は無い筈よ。」
ロビンが口を挟んだアイスバーグを睨み付ける。
「黙っていなさい!!!」
グキッ!!
「ぐあァ!!!」
「アイスバーグさん!!」
ロビンが能力を使ってアイスバーグの腕を捻り上げた。
「誰にも邪魔はさせない!!!!」
「おいロビン!!何やってんだ!!?お前本気かよ!!!」
「ロビンどうしちゃったんだ!?本当にもう…、敵なのか!!?ロビ――――ン!!!」
ルフィとチョッパーの悲痛な叫びにも、ロビンは応えない。
「悪いがそこまでにして貰おう…。我々はこれから“重要人物”を探さなきゃならないんだ。急いでいる。この屋敷にも、もう用は無いし……。…君らにももう完全に用が無い。カリファ、後どれくらいだ?」
「……2分よ。」
ルッチの問いにカリファが答える。
(CP9のリーダーはこの男か…。)
「突然だが…。後2分で、この屋敷は炎に包まれることになっている。」
「何だと!!?」
「色々な証拠を消すのに炎は有効な手段だ。…君たちも焼け死にたくなければ、速やかに屋敷を出ることだ。まァもちろん…、それが
ルッチの言葉に応えて、ルッチ以外のCP9の3人が並び立った。
「―――――どうやらおれたちを消す気らしいな。「ニコ・ロビン」も向こうにいたいようだが…。ルフィ、お前ロビンの
刀に手をかけながら、ゾロが船長たるルフィに問いかける。
「出来るかァ!!!!」
「1階のいくつかの部屋から、
先程ブルーノと呼ばれていた男が口を開く。
「人の仮面を被って好き放題なんて趣味悪いわね!!」
「元々汚れた仮面に不都合も無かろう。」
ナミが吐き捨てるが、
「さっきから聞いてれば、随分と好き勝手に言ってくれるね。こっちこそ、そう簡単にここから逃がすとでも?」
ジャスミンが1歩踏み出すと、CP9が全員戦闘態勢に入る。
さっきルッチの一撃を止めたことで、
「ブルーノ!お前はニコ・ロビンを連れて先に行け!」
「!わかった。」
ルッチに応えてブルーノが瞬時に動き、まるでドアのように空間を開く。
ガチャ…
「入れ。」
「――――じゃ、私は先に行かせてもらうわ。」
「待て!!!ロビン!!!認めねェぞ!!!」
「さようなら…。」
パタン…
ルフィの叫びにも振り返ること無く、ロビンはブルーノと共に空間に出来たドアの中に消えて行った。
「ウソ……!」
「消えたァ?!」
ナミとチョッパーが驚愕の声を上げる。
「悪魔の実…。空間移動系の能力者みたいだね。」
「その通り。ブルーノは“ドアドアの実”の能力者。その
「…真っ先にニコ・ロビンさんを離脱させるなんて……。仲間意識からとは思えないけど。目的は?」
「貴様らに答える義理は無い!!」
「そう。でも、何か目的があってニコ・ロビンさんを連れて行ったのはわかったよ。……意外とウソが吐けないタイプだったりする?」
「貴様……!」
「目的、ですって……?!」
ジャスミンの挑発に乗ったルッチにナミが反応した。
「そんなもん、どうだって良い!ロビンはどこだァ!!!」
ガン!!
言葉と同時にルフィがルッチに殴りかかるが、ルッチの体はビクともしない。
「……!!何でコイツらこんなに体硬ェんだ!!?」
「鍛え上げた我らの肉体は“鉄の
「どこだって言ってんだ!!!
ビュビュビュビュビュビュビュッ!!!
「“
「うわ!!全然当たらねェ!!」
「まるで紙みたいにヒラヒラと……!!」
「この・・・!!!“ゴムゴムの”…!!“
「“
ヒュン!!!
スカッ!!
「また消えた!!」
ルフィの目には消えたように見えただろうが、ジャスミンの目にはしっかりとその動きが見えていた。
「後ろだ!」
「―――――消えたように見える程の爆発的な脚力があれば…。」
「にゃろ!!!」
「“
スカッ!!
「
ジャスミンの言葉に反応し、すぐに後ろを殴るルフィだったが、それより早くルッチが空中に逃れる。
「飛んでる!!!」
(へぇ。純粋な脚力のみで空気を蹴り付けて反動で跳び上がってる。)
チョッパーの目が驚きで飛び出そうになっているが、ジャスミンは冷静に分析していた。
「「更に」」
カリファとカクがルフィの隙をついて背後に迫る。
「「“
ガッ!
正確にルフィの腹部を狙っていた2人の蹴りを、瞬時に割り込みルフィを突き飛ばしたジャスミンが右脚で受け止め、その勢いで弾き飛ばすと同時に叫ぶ。
「伏せろ!」
唯一その警告の意味を理解したのはゾロ唯1人だった。
キィ――――――…ン!!!
耳鳴りのような甲高い音が響く。
(斬撃か!!?)
「お前ら伏せろ!!!」
理解すると同時にナミとチョッパーに叫んだ。
「何で!?」
ズバン!!!
「きゃあ!」
「わー!!!」
間一髪で身を伏せるが、背後の壁は真一文字に斬り裂かれた。
「うあう!!」
ドサァ!
突き飛ばされた勢いでルフィが床に叩き付けられるが、そのお陰で斬撃の軌道からは外れていた。
「ルフィ!!」
「蹴りで壁が斬れたの!?今!」
「“
後方に跳んで勢いを殺し、難無く着地したカリファがナミの疑問に答えた。
「ロロノアさん!ダメだ!」
「……!!」
ドビュ!!!
ジャスミンの警告を聞かず、ゾロが間髪入れずにカクに迫る。
「!」
ギィン!!!
ゾロの一撃を、カクものこぎりで受け止めた。
「ルフィくんも下がって!」
「このォ!!!」
ガッ!
ルフィもルッチに向かって行くが、顔面を掴まれ動けないでいる。
「ルフィが簡単に捕まった…!!」
ドドドッ!!!
「ゾロ!!!」
「ロロノアさん!」
「“
カクの指がゾロの体を撃ち抜き、ゾロが床に倒れ込む。
ドサッ…!!!
「人体を撃ち抜くのに、弾丸なんぞいらん。」
ヒュッ!!
ドゴォン!!!
ルッチが捕まえていたルフィを壁に叩き付けた。
「ルフィ!!」
「ゾロ!!!」
「………何なの…?あいつらの強さ…!!!」
「何者なんだ。てめぇら…!」
ナミが呆然と呟き、パウリーもアイスバークの傍らでルッチたちに向かって問いかける。
「……環境が違う……!!我々“CP9”は物心付いた頃より、世界政府の為に命を使う覚悟と、“人体の限界”を超える為の訓練を受けてきた……。そして得た力が6つの超人的
言い切ったルッチに、実際にルフィやゾロが歯も立たなかったのを目の当たりにしたナミやチョッパーは声も出ない。
ルフィやゾロも、身を起こしはしたもののダメージは大きかった。
「ルッチ、発火装置も作動の時間よ。私たちも急がなくては…。」
「あァ。」
カリファの声にルッチが頷く。
そのまま、
「超人的
場違いな程に
戦闘シーンは時間があったら手直しがあるかもしれないです…。
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第17話 VSルッチ
「曲芸、だと…!?」
ジャスミンの挑発にルッチが唸るような声を上げた。
「曲芸じゃないなら大道芸かな?この程度の体術、出来る人間なんてゴロゴロしてるよ。実際、さっき攻撃の手を止められたのは誰だったっけ?」
肩を
「あれが、おれの本気だとでも?」
「へぇ、だったら見せてよ。その本気ってヤツをさ……。」
ジャスミンにしては珍しく挑発を続けているのは、別にルフィたちの為では無かった。
いや、最初は確かにルフィたちから
元々ジャスミンは前世の記憶を取り戻す前から武道に親しみ、鍛錬を積むと同時に礼節を学んできた。
その中には、意味も無く力をひけらかしてはいけない、というものや、破壊の為に用いてはいけない、という教えも含まれていた。
閑話休題
つまるところ、武道とは力の誇示では無く、誰かを守る為にこそある、とも教えられたジャスミンにとって、殺しの為だけに腕を磨き、尚且つ人を見下した態度を節々に出すルッチたちCP9、及びその大本である世界政府は既に嫌悪の対象に成りつつなっていたのだ。
「ジャ、ジャスミン!あんた何挑発してんのよ?!」
ナミが小声で訴えるが、わずかに遅かった。
「――――――そんなに言うなら、せっかくだ。
ルッチが言うと同時に、その
メキメキ……!
「………!?」
「え………!??」
「うわあああああ!!!」
体躯は3倍近い大きさに膨れ上がり、天井に迫る。腕や顔は毛皮で覆われ、爪は獣のそれと化した。
「ルッチ…!!!てめェは一体……!!!」
「“悪魔の実”……!!!」
「何の実だ!!?」
「“ネコネコの実”モデル“
「……!!“ヒョウ人間”か…。」
「でけェ!」
「……!!!ヤバイ…。“肉食”の
ゾロやルフィも呆然とし、チョッパーが震えながら叫ぶ。
「“
「何だ…、この姿…!!!」
パウリーが呆然と呟いた時だった。
微かに人の声が聞こえてきたのは。
(!まずいな。人が上がってきた……!)
恐らく、火が回り始めたことで外にいた職人たちが中の異常に気付き、アイスバークの安否を確かめに来たのだろう。
「ルッチ、職人たちが上がって来るわ!」
「なァに、来れやしない…。“
ビュッ!!
カリファの言葉に応えるや否や、ルッチが壁に向かって
パキ…!!
「え!?」
ルッチの
「ちっ!」
ぐいっ!
「きゃ!」
「うわ!」
思わず舌打ち、壁の近くにいたナミとチョッパーを回収する。
ドゴゴゴゴォ…ン!!!
バキバキ!
がラララ…!!
ドス―――――ン……!!!
直後までナミたちが立っていた場所を崩れた
「助かった…。」
「あ、危なかった…!ありがとう、ジャスミン…。じゃない!あんた何挑発してくれてんのよ!?」
助かったことを理解するなり、ナミが涙目でジャスミンに嚙み付く。
「文句なら後で聞くよ。それより、早くアイスバーグさんたちを連れて逃げた方が良い。あっちは私が引き受けるから。チョッパーくん、アイスバーグさんを乗せて運べる?」
「お、おう!任せろ!」
「パウリーさん、2人と一緒にアイスバーグさんを早く安全な所に…。誘導をお願いします。」
チョッパーとナミをアイスバーグたちの方に押しやり、パウリーを促す。
「ああ…。」
パウリーも頷き、チョッパーの背にアイスバーグを乗せる。
さっきの瓦礫で入口が塞がってしまった為、ルフィが開けた隣の部屋に続く穴を目指す。
ドン!!
「お止めなさい、パウリー。」
それを
「お前ら……!…おれは少なくとも……!!今までお前らを本当に“仲間”だと思ってた!!!」
「……。お前だけだ……。」
パウリーの涙ながらの叫びは、CP9には届かない。
ルッチの爪がパウリーを引き裂こうとしたその時……。
ガシッ!
「あなたたちの相手は私が引き受ける。そう言った筈だけど?」
その腕をジャスミンが止める。
「小娘が……!」
忌々しそうにルッチが唸った。
「早く避難を…!」
ルッチの腕を捕えたまま、首だけナミたちの方を振り返り、ジャスミンが再度促す。
「あんたたちも早く来てね!?」
「わかってるよ。」
ナミたちを見送り、ギリ・・・、とわずかにルッチを掴む腕を強くした時のことだった。
「ハトのやつ~~~~~~~!!!」
「!!」
ドカァン!!!
叫びと共に伸びたルフィの拳がルッチの顔面を殴り飛ばす。
「ルフィくん?!」
咄嗟に掴んでいた腕を離したのでジャスミンまで吹っ飛ぶことは無かったものの、思わずたたらを踏む。
結果的に、それがジャスミンの反応を遅らせることになる。
数m吹っ飛んだルッチをルフィが追撃するが、それよりもルッチが体勢を立て直す方が早かった。
「“
ドキュン!!
ルッチの
「……!!!ウ…、オ……!」
ルフィの腹部から血がボタボタと滴り落ちる。
「ルフィ!!!」
「しまった…!」
「ハァ…!」
ガッ!!
ルッチが再びルフィの顔面を掴む。
「ルフィくん!」
「島の外まで……、飛べ!!!!」
ボコォン!!!
ギュン!!
「ゔわあぁ~~~!…」
そのまま壁に叩き付けられ、勢いもそのままに外に飛ばされる。
「てめェ!!!」
「!ダメだロロノアさん!!」
「“
ギィン!!!
ジャスミンの制止も届かず、ルッチに斬りかかったゾロの刀は
シュッ!!!
ドゴォン!!!
避ける間も無く、ルッチの蹴りがゾロを襲い、さっきのルフィと同じようにそのまま壁を突き破り、空へと飛ばされる。
「ロロノアさん!!!」
「次はお前だ…!」
ルッチを始め、カリファやカクもジャスミンを囲い込む。
パチパチ…
ガララ…
ボオオォ…
次第に火の勢いが増し、建物が崩れる音が響き始める。
ジャスミンたちのいるアイスバークの寝室にも煙が立ち込めていた。
立っているのは2人。
対峙するのはジャスミンとルッチのみで、カリファとカクは既にジャスミンの一撃をそれぞれまともに食らい、昏倒している。
「ぐうぅ…!」
「まだやるつもり?」
ルッチが腹部を押さえ、微かに
「さすがに“
「貴様……!どうやってこれ程の力を…!?」
「日々修行。武道とは日々の積み重ねこそがものを言う。そっちこそ、言ってる割に動きが鈍いみたいだけど・・・・。船大工の仕事にかまけて修行不足なんじゃないの?いっそ、本当に船大工に転職しちゃえば?」
「ほざけ!」
言うや否や踏み込み、仕掛けてくる
「鬼さんこちら♪」
「この!」
次いで襲い来る
「手の鳴る方へ♪」
「どこまでも人を馬鹿に……!」
ガシャン!!
ガラガラガラ…!
「!」
ちょうどルッチたちとジャスミンたちを隔てるように天井が落ち始める。
ゴオオオオォォ……!
「もうここまで火が…!」
途中からルッチをおちょくるのが若干楽しくなっていた為、失念していた。
既に壁や天井にまで炎が回り、ジャスミンたちに迫っている。
「これまでか……。」
ルッチもその様子を目の当たりにして頭が冷えたらしく、気を失っているカリファとカクを担ぎ上げる。
「!逃げる気?」
「ふん…。もうその手には乗らん。お前のお陰でだいぶ時間を無駄にした。」
「さすがプロ。そう何度も安い挑発には乗ってくれないか……。」
「……直にこの部屋も焼け落ちる。死にたくなければ、とっとと逃げることだ。……決着は、いずれ着けさせてもらう!」
ダッ!
言い置いて、仲間を抱えたルッチが窓から飛び出し、
ガラガラガラ…!
ドシャ…!
「おっと!私もさっさと逃げないと……。!」
取り敢えず、ルフィたちのケガを最小限に抑えつつ、ナミたちを離脱させ、ある程度足止めをすることには成功した。
この辺が引き際かな、と自分も後に続こうとした時、ふと呼びかけてくるような妙な気を感じ取る。
その方向に目を向けると、あるものを見付けた。
「これは……!」
ゴオオオオォォ……!
ゴオオオオォォ……!!
ガシャアァ……ン!!!
「また崩れたぞ!?」
「ルフィ――――――――――!ゾロ――――――!!ジャスミ――――――――ン!!」
崩れゆくガレーラカンパニーを見て、チョッパーとナミが叫ぶ。
「アイスバーグさん!これは一体?!」
「麦わらの一味が犯人だったんじゃあ?」
「パウリーさん!どういうことですか??!」
その近くではアイスバーグとパウリーの周りをガレーラカンパニーの船大工たちが囲んでいた。
アイスバーグとパウリーはそれぞれ手当を受けつつ、“暗殺の実行犯”と確定されていた麦わらの一味と一緒に本社の中から出てきたことに衝撃を隠せない船大工たちから質問攻めに遭っている。
「ンマー、こいつらは無実だ。…逆に助けられた…。」
「無実!?麦わらの一味が??!」
「ああ。どうも、こいつらもハメられたらしい。おれもすっかり騙された。」
「じゃ、じゃあ…。こいつらは逆に恩人ってことに……?」
「ああ、そうなるな。…麦わらの一味には迷惑をかけた。」
アイスバークが周囲の船大工たちに麦わらの一味の誤解を解いていた時だった。
ガッシャアァアァア…ンン!!
シュッ!
一際大きな音を立ててアイスバークの寝室の壁が崩れ、そこから人影が飛び出して来る。
ダァ……ン!
骨にまで響きそうな音を立てながら着地したのは、1本の刀-ゾロの“3代
用語解説
亀仙人…ドラゴンボールの主人公・孫悟空の師匠で、かつては世界一と謳われた武道家で“武天老師”の異名を持つ。常に背負った亀の甲羅がトレードマークで、それが亀仙人の呼び名の由来。御年354歳(ジャスミントリップ時)。ドスケベだが、武道に対しては真面目で意外にも人望も厚い人格者。この人の放った元祖かめはめ破は当時の読者に多大な影響を与え、数多くのパロディーが存在する程。
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第18話 アクア・ラグナ到達!出るか?かめはめ波!!
そして、まだエニエス・ロビーまで進みません。次かその次くらいにはいける…んですかね?←聞くなよ…
「「ジャスミン!!!」」
飛び降りて来たジャスミンに、ナミとチョッパーが駆け寄る。
「ジャスミン、ケガは!?」
「ルフィとゾロは?!」
「ケガは無いよ。あいつら逃げちゃって……。ルフィくんとロロノアさんは…。ゴメン、CP9に外まで吹っ飛ばされちゃって…。生きてるとは思うけど……。」
「「吹っ飛ばされた!?」」
「うん。止める間も無く突っ込んで行っちゃって・・・。」
「「ああ~…。」」
ジャスミンの説明に、ナミとチョッパーが納得したような声を上げる。
「そう言えば、その刀…。」
「ああ、CP9が逃げた…。というか、引際を心得てたって言うのかな、あの場合…。まァ、とにかく引き上げた後で私もナミちゃんたちを追っかけようとしたら
「呼ばれたって…。」
「この刀、妖刀でしょ?」
「そう言えばゾロがそう言ってた気もするけど…。」
「
そんな会話をしていた時だった。
ザッ…!
「ちょっと良いか?」
アイスバーグがそこに立っていた。
「まずは…、ンマー…。申し訳無かった…。お前たちに妙な濡れ衣を着せた。誤解は解いておいたが…。」
「「……。」」
ナミとチョッパーは無言で、ジャスミンには答えようが無かった。
「話はニコ・ロビンのことだ…。」
「!何か知ってるの?」
ナミが真っ先にその言葉に反応する。
それからアイスバーグにより語られたのは、ニコ・ロビンが麦わらの一味に突き付けた決別の言葉に秘められた真相だった。
仲間の命を救うために、自分の命を捨てようとしている彼女の行動に、ジャスミンも言葉を失う。
アイスバーグが全ての真相を語り終えた時、ナミとチョッパーの体が崩れ落ちる。
バタッ…
コテッ…
「おい、どうした!!」
「大丈夫?」
「良かった…。ロビンはじゃあ…、あたしたちを裏切ったんじゃないんだ……!!!」
「ロビンはおれたちを助けようとして……!!」
「……良かったね。」
「良し!そうと分かれば…!」
ガバッ!
「ナミちゃん?」
「早くみんなを集めて知らせなきゃ!!ありがと、アイスバーグさん!!」
「待て!!麦わらたちもやられちまって、今更何をしようってんだ!!そこのお嬢ちゃんだって奴らにゃ逃げられちまったんだろう?!」
勢い良く立ち上がり、拳を振り上げるナミをアイスバーグが制止する。
「今更ですって?
言い切ったナミの目に、既に迷いは存在しなかった。
「行くわよ!チョッパー!!」
「おう!分かった!」
「私も手伝うよ。だいたいの距離と方角は分かるから。」
ジャスミンも2人に並ぶ。
「そう言えば、ジャスミンあんた気配が分かるって言ってたっけ……?」
「うん。特に強い人だと気配…、私たちは“気”って呼んでるんだけど、気も強いから。おおよその場所なら分かるよ。」
「良し!それなら話は早いわ!!場所はどこ?!」
「待て、お前ら……。」
すぐにでもルフィたちを探そうとしたジャスミンたちだったが、アイスバーグによって呼び止められる。
「ニコ・ロビンを追うのは勝手だが…。今夜11時に政府関係者の移動便で“海列車”が出航する。ンマー、恐らくだが…。あいつら、これに乗る可能性が高い。――――――つまり、ニコ・ロビンも一緒にだ。それを最終に“海列車”は一時、運行停止になる。もうすぐ“
「うっかりしてた…。今日はアクア・ラグナが到来するんだっけ…。」
「――――じゃあ、――――ってことは・・・!?」
「その便を
「うそ…!大変っ!!!今何時!?」
「10時半だ。」
「後30分!!?ねェ、何とかならないの!?海列車ちょっと止めてよ!!」
ナミが悲鳴のような声を上げ、アイスバーグに詰め寄る。
「ンマー、目的地のエニエス・ロビーってのは政府の人間以外立ち入り禁止の島だ。
「そんな!!じゃあ…!!!何とかあたしが駅に行ってロビンを直接説得するしか…!!!チョッパー!!ジャスミン!!2人一緒にルフィとゾロを探して!!」
「うん良し、わかった!!」
「OK。」
役割をそれぞれ決めたところで、パウリーが他の船大工たちを連れて来る。
「待ってくれ。おれたちも手伝う。」
「パウリーさん?」
「どうして?」
ジャスミンとナミが疑問の声を上げた。
「
「はい職長!!」
「色々すまなかったなお前ら!」
「指示をくれ、手ェ貸すぞ!!」
ガレーラカンパニー本社の職長の言葉に、船大工たちが一斉に声を上げる。
「おい、ハレンチ女、駅に行くんだろ!案内する。」
「ちょっとその呼び方…!まぁ、今は良いわ。お願い!!」
「じゃ、行こう。」
「ええ!」
「おう!」
それぞれの役割を果たすために、走り出す。
ビュオオォオォオオォォ!
「ルフィ―――――!!」
「麦わら――――――!どこだ――――――――――!!」
「ルフィく―――――――――――ん!!」
ザァアアア…!
「とうとう降ってきた……!」
「ただでさえ強風で鼻が利かないのに・・・!!ジャスミン、本当にこの辺か?!」
「うん。細かい場所はわからないけど、確かにこの辺の筈なんだけど…。」
ルフィの気の大きさでは、これだけの人間が雑多にいるところでは細かい位置まで特定出来ないのだ。
「ジャスミン!二手に分かれよう!!おれはゾロを探す、ジャスミンはこのままルフィを探してくれ!!」
「分かった。じゃあ、チョッパーくんこれも……。」
チョッパーにゾロの“3代
「じゃあ、後で!!」
「気を付けてね!!」
ビュゴオォオオオオオオ!!
ザアァアアアア……!!
雨風はますます強くなっていく。
「大変だァ~~~~!!!海を見ろォ!!!」
高町の階段近くで1人の船大工が声を上げる。
ザザザザザザザザ…!!!
「おい、どうした!!」
「あ!パウリーさん!!見て下さい!!!潮の引き方が尋常じゃないんです!!!」
ザザザザ……!
ザザザザザザザザ…!!
「水路の水が一気に…!アクア・ラグナってこんなにすごいの?!」
「いや、こんなのは今まで見たことがねェ…!」
「……ここまで潮が引くもんなのか……!!?」
ジャスミンが思わず呟いた言葉に、船大工たちが反応する。
水路の水はおろか、ウォーターセブンの浅瀬だった海も潮が全て引き、すっかり干上がってしまっている。
ビュルルルル…
ザアァアアアア…!
「海の音が止んだ……。」
「この嵐の中、波の音が全然聞こえないなんて…。」
「どれだけでけェ波が来るってんだよ…!!!」
「裏町は完全にのまれるな……!!!」
「裏町には誰もいねェだろうな!!?いたら即死だぞ!!!」
ゴオォオオオオオ…!!!
「大変だ、海賊女が………!!!階段を下りてった!!!」
「おい戻れェ――――――!!!低い場所へ行くな―――――!!」
「ナミちゃん!?」
「ゾロォ!!!」
「こら待て!!!トナカイお前まで!!!」
「チョッパーくんも!?」
それぞれの向かう先に目をやり、気付く。
「ルフィくんとロロノアさん?!何でそんな所に…!?」
ルフィは裏町の家と家の間、ゾロは何故か煙突に刺さっている。
「追うな!!!お前ら!!!大勢行きゃあ助かるってもんじゃねェ!!!相手は海だぞ…!!!道連れになるだけだ!何かあったらおれだけが動く!!お前ら手ェ出すな!!!」
慌てて後を追おうとした船大工たちをパウリーが
ズズズズズズ……!!
地鳴りのような音と共に、アクア・ラグナがもう、すぐそこまで迫ってきていた。
「見ろ!!!あの波を!!!」
「何だ、ありゃ……!!やっぱりいつもの数倍でけェ!!!」
ナミとチョッパーが向かった先は、アクア・ラグナから見てそれぞれ右と左。
ナミとチョッパーのどちらかを回収しながらルフィとゾロのどちらかを回収している間に、どちらの組は波にのまれてしまう。
「仕方無いか……!」
バッ!!
ジャスミンが裏町と造船島を繋ぐ大橋まで飛び降りる。
「おい!?」
「大丈夫です!これ以上は降りませんから!!」
パウリーに怒鳴り返し、アクア・ラグナを正面に、一歩右脚を引いて腰を落とす。
「か―――――――――――…!」
両手首を付けるようにして手のひらを内側に構え、前方に突き出す。
「め―――――――――――…!」
発声と同時に突き出した両手を右の腰まで引いた。
「は―――――――――――…!」
ギュイィイイイ…
ジャスミンの両手がゆっくりと光り出した。
「何だ!?」
「手が光ってやがる…!」
「め―――――――――――……!」
より腕を後ろに引き、気を高めていく。
「ああ…!!もうダメだ、間に合わねェ!!!」
「高い場所へ登れ――――!!!もっと高い場所へ―――――!!!」
「のまれちまうぞ~~~~~!!!」
船大工たちが悲鳴に近い声を上げながらナミとチョッパーに叫ぶ。
「アクア・ラグナだァ~~~~~~!!!!」
ゴオオオオォォッ!
大波が裏町をのみ込もうとした、その時だった。
「
ギュオォオオオオオ……!!!!!!
ジャスミンが前方に突き出した両手から、巨大なレーザー砲のようなエネルギー波が放たれた。
カッ!!!
ドッゴォオオオォオンンッ!!!!
ザッパァアアン!!
ジャスミンの放った技がアクア・ラグナに着弾した瞬間、凄まじい爆発音と共に裏町をのみ込もうとしていたアクア・ラグナが四散し、波が海へと押し戻された。
「「「「「ええぇええええぇええええええぇ!!!!!?」」」」」
ガボ――――――ン!
それを目の当たりにした船大工たちの顔から、某神のごとく色々と飛び出した。
ジャスミンがアクア・ラグナを相殺した直後、ルフィとゾロもそれぞれ自身を解放するべく、最後の踏ん張りを見せる。
メキ・・・メキメキ・・・!
ピシッ!!
「ウゥゥ!」
バキバキバキ…!
「「「ええ!!?」」」
「ああああああああ!!!!」
ボゴォォン!!!
「うおおおァ!!!町壊しやがったァ!!!」
最初にルフィが自身が挟まっていた建物を倒壊させ、
「“三十六
ズバァン!!!
ゾロが自身が刺さっていた煙突ごと建物を縦に両断する。
「うわああああァ~~~~!!」
「何だあいつらァ~~~~!!!」
スタンッ!
ばっ!!
ルフィとゾロがそれぞれナミとチョッパーを連れ、ジャスミンのいる大橋まで一気に登ってきた。
「早く造船島に!そのうち第2波が来る!!」
言い置いてジャスミンもパウリーたちのところまで一気に跳び上がる。
「おう!」
「ああ!」
ザァアアア!
ビュオオォオォオオォォ!!
ゴゴゴゴオォォ…!!!
「潮がまた引いてく!!」
「まだまだ続くぞ。第2波、第3波と今みてェなのが!!」
「ここは造船島だぞ…!!!ここにいてもヤバそうだ…!!」
「おれたちも内陸へ避難しよう!」
既にジャスミンの相殺した大波も潮が引き始め、間も無く先程と同じレベルの波が襲ってくるだろう。
「あれがアクア・ラグナ……。想像してたのよりずっと凄い……!!!」
「………これが毎年来てたら、この島はとっくに無くなってるよ。今年のは特別だ………!!!」
ジャスミンの呟きにパウリーが答える。
「それより…。おい、そこのポニーテール。」
「私ですか?」
「他に同じ髪型のヤツァいねェだろう。」
「そりゃそうですけど…。」
ナミの“ハレンチ女”よりはマシだろうが、もっと他に呼び方は無かったのか……。
「さっきのアレは何だ?」
「アレ?」
パウリーの疑問に首を傾げた時、ルフィとチョッパーが目を輝かせてジャスミンに詰め寄る。
「そうだよ!ジャスミン、お前ビーム出せんのか?!」
「凄かったなアレ!もっかい見せてくれよ!!」
「アレって、ああ…。“かめはめ
「かめかめ
「かめはめ
“かめかめ
「そうそれ!かめはめ
「アレは“
「“気”ってのァ、あれか?良く気配とかそういう風に呼ぶヤツか?」
“気”という単語が引っかかったらしく、ゾロが口を挟む。
「そうです。まァ、生命エネルギーとかオーラと呼ばれることもあります。修行すればこれを使いこなせるようになって、応用次第で人の気配を強く感じ取ったり、さっきみたいな技を使えたり、空を飛べたりします。」
「要するに、“悪魔の実”の能力じゃねェってことか?」
パウリーが尋ねる。
「“悪魔の実”の能力とは全くの別物です。訓練すればある程度誰でも使いこなせるものですから。」
ジャスミンがざっくり説明していた時だった。
「ホントに呆れたね。おめェら良く助かったもんら!!」
酒瓶片手に現れたのは、不思議な
用語解説
かめはめ波…ドラゴンボール知らない人でもこれは知ってる、という人がいる程有名な技。たぶんドラゴンボールファンならみんな1度は出せないかどうか練習した筈…!因みにミカヅキは小学校1年生くらいまで真面目に練習してました。
元々は亀仙流の始祖・亀仙人の技で、言わば亀仙流のお家芸。かなり初期の登場だったにも関わらず、物語の終盤まで主人公・孫悟空の決め技であり続けた。
ニュージーランドでは毎年「かめはめ波大会」が行われているらしい。
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第19話 嵐の中の出立!エニエス・ロビーへ!!
何はともあれ、お付き合いください!
「あ!怪獣のばーさん!!この島にいたのか!」
「当たり前ら!あんな海の真ん中にいたら溺れて死んじまうわね。んががががが!!」
「あの人たち知り合い?」
ルフィと老婆のやり取りを見つつ、何で怪獣?と思いながらナミに尋ねる。
「ああ、海列車のシフト
「へぇ~。」
「煙突に刺さってたってお前っ!!!あっはっはっはっはっ!ゾロはマヌケだな~。どうやったらそんなことに!」
「人を笑える立場か、あんたが!!!どっちも大マヌケよ!!!」
ジャスミンとナミが話している間に、ゾロが煙突に刺さっていたことを知ったルフィが大うけしており、ナミに叱責され、顔が変形する程思いっ切り
まぁ、ルフィも家の間に挟まっていたのだから、確かに人のことは言えない。
「あ……、じゃあサンジとウ………、サンジは!?」
(ウソップくんのことを口に出さないのは、ルフィくんなりのケジメなんだろうな……。)
1度口にしかけたが、言い直したルフィを見て思う。
(それはそれとして…、何であんなに思いっ切り顔引っ張られたまま正確な発音が出来るんだろう……?)
割と衝撃的な光景に思わず思考が
「そうね。話すことは色々あるわ。2人共聞いて。」
ナミが、先程のロビンの一件を知らないルフィとゾロに真相を説明する。
さらに、海列車は既に発射してしまい、ロビンだけでなくウソップとフランキー、さらにそれを追って一味のコック・サンジまでもエニエス・ロビーに向かったことが告げられた。
「考えることは何もねェじゃねェか。すぐ船出して追いかけよう!!!」
「―――――それ以外ねェな。」
真相を聞いたことでルフィとゾロからも迷いは消えたらしい。
(良い目だ。)
目は口程に物を言う、とは良く言ったものだ。ルフィもそうだが、ゾロも一船の船長を担えるだけの器の持ち主なのだろう。
「おい!ロープのヤツ、船貸してくれよ!!いや、船より“海列車”はもう出ねェのか!?」
ルフィがパウリーに問う。
「………“海列車”ってのはこの世にパッフィング・トム1台きりだ。かつていた伝説の船大工のチームが力を合わせてこそ、完成したあれは奇跡の船なんだ。」
「じゃ、船貸してくれ。この町で1番強くて速ェ船!!」
「良い加減にしろ、てめェら!!!たった今海で何を見た!!?例年来るアクア・ラグナでさえ、それを越えた船はいねェんだ。さっきの大波を見ただろう。そこのポニーテールがいなきゃ、間違い無く裏町は崩壊していた。お前らもお陀仏だったろうよ。今、船を出せば最大のガレオンで挑んでも1発で粉々にされるだろうな。死ぬと分かって船を出させる訳にはいかねェ!!!」
パウリーの言葉には、長年アクア・ラグナを見続け、尚且つ船大工として培ってきた重みがあった。
「朝まで待て。嵐が過ぎたら船くらい貸してやる。―――――おい、お前らも避難所にでも行ってろ。もう人探しは終わったんだ。」
船大工たちを促し、話を切り上げようとしたパウリーを引き戻したのは、ナミだった。
「――もし、朝まで待ったとして、あたしたちの目的は果たされるの!?エニエス・ロビーってあたし…、知ってるわ。政府の島だと聞いて思い出したの。そこは“正義の門”がある場所じゃないの!?」
「?」
「何だそりゃァ。」
ルフィとゾロは全くピンと来ていないようだが、ナミが続ける。
「政府所有の“司法の島”エニエス・ロビー。そこにあるのは名ばかりの裁判所…!!!エニエス・ロビーへ連行されることそのものが罪人の証とされ、罪人はただその誰もいない裁判所を素通りして、やがて冷たく巨大な鋼鉄の扉に辿り着く。それは“正義の門”と呼ばれ、罪ある者がくぐればもう2度と日の光を見ることは出来ない絶望の扉。何故なら、その先にある港から海へ出て到達出来る場所は2つしかないから。1つは世界中の“正義の戦力”の最高峰“海軍本部”。もう1つは、拷問室と死刑台が立ち並び、世界中で暴れ回っていた凶悪な囚人たちが幽閉される、深海の大監獄“インペルダウン”。エニエス・ロビーは罪人に何の慈悲も与えず、ただそこへ送り込むだけの形だけの裁判機関!!そうでしょう!?賞金首のロビンにとってはどこへ運ばれようとその先は地獄よ!!!こうしている間もロビンは刻々と“正義の門”へ近付いて行ってるのに!!!朝までなんて待てる訳ないじゃないっ!!!」
ナミの叫びが周囲に
「―――――行く方法なら、無いことも無いよ。」
「えっ…!?」
「ホントか!?ジャスミン!!!」
途端にルフィの目が輝く。
「私の持ってる船なら海中を進める。海の中なら、アクア・ラグナは凌げるし、流れもそこまでじゃない筈だよ。」
「潜水艦ってこと?」
「うん。ただ……。」
「ただ?」
「4人乗りなんだ。だから、操縦する私を除いて後3人が限界かな…。」
「3人か……。」
「あたしたちの中から、2人ロビンの救出には行けないってことね?」
「うん。だけど、行く前に…。――――――ルフィくん、失礼を承知で聞くよ。エニエス・ロビーに乗り込むって意味を本当に分かってる?」
「そのポニーテールの言う通りだ。例え行く手段があろうが、そこへ行くべきじゃねぇ。お前ら自身海賊だってことを忘れるな。」
ジャスミンの言葉にパウリーが続ける。
「エニエス・ロビーは“世界政府”の中枢に繋がる玄関だ。当然、それに相当する戦線が敷いてある。――――――どんな海賊も、あの島へ連行された仲間を取り返そうなんて考えねェ…。どうなるか分かるからだ……。お前ら“世界政府”の中枢にケンカでも売る気か!!!」
「そうだぞお前ら!!もう止めとけ!!」
「追いかけても殺されちまう!!」
「お前らこそ助かる可能性0だぞ!!!」
パウリーの言葉に、周囲の船大工たちが同意する。
「そんなの関係ねェ!!!」
ドパァァン!!!
ルフィの叫びに呼応するかのように、裏町に打ち付けた巨大な波が
「な……!」
「波まで怒った…。」
「仲間が待ってんだ!!!!邪魔すんなァ!!!!」
「良いぜ。相手になってやる。」
シュルル!!
パウリーがルフィの叫びに、自身の
それに応えて、麦わらの一味のそれぞれ臨戦態勢となった。
「待ちなおめェらァ!!!」
「ココロさん。」
一触触発だった空気をココロが断ち切る。
「
「うるせェな!ばーさんには…!」
「“関係ねェ”な、あァ…。まァ聞きな…。まったく、おめェら放っときゃ死ぬ気らね。……死ぬ覚悟があるんなら…。着いてきな。出してやるよ“海列車”」
「“海列車”は1台しか無いんじゃ…?」
ココロの言葉にジャスミンが尋ねる。原作でどんな方法でエニエス・ロビーに行ったのか覚えていないからこそ、自身が所持している潜水飛行艇で乗り込むことを提案したのだが……。
「んががががが!!!着いて来れば分かることら…。」
-ウォーターセブン、ゴミ処理場裏・レンガ倉庫—
ナミを除く麦わらの一味とジャスミン、そしてそれを伴ってきたココロと着いてきたチムニーらがそこにいた。
ギイィ…
“No2”と記された倉庫の扉をココロが開く。
「この倉庫も8年は放置されてる。“海列車”に至っちゃ12年以上手付かずら。もう動かねェかも知れねェな。んががが。」
「おい、それじゃ困るぞ!!!」
「…8年も放置されてたって言う割に、奥に誰かいるみたいですね。」
ジャスミンが倉庫の奥から気を感じ取る。
(それにこの気は……。)
「そんな筈は無いら。正面の扉にも鍵がかかって…、ん?何ら開いてるねェ。」
ドドドド…!
ジャスミンとココロの会話を聞くことも無く、既にルフィやチョッパーは奥の扉に向かって走っている。
「うおー!!!……!!あった!!!かっこいいぞ――――――!!!」
「言っとくがまともなモンじゃねェよ!こいつの名は“ロケットマン”とても客など乗せられねェ、“暴走海列車”ら。」
先行したルフィの興奮した叫びにココロが答え、続いて扉をくぐったジャスミンの目にもその“暴走海列車”の姿が明らかになった。
そこにあったのは、所々苔むしたもう1台の海列車。パッフィング・トムとは異なり、ヘッド部分が尖っており何故かサメを模したらしい厳つい顔が着いている。
ココロ曰く、「サメのヘッドは洒落でつけてある」らしい。
「速そ~~~~!!!」
ルフィとチョッパーの顔がこれ以上無く輝き、チムニーやゴンべらと一緒にはしゃいでいる中、“ロケットマン”の中からトランクを手にした1人の男が出て来る。
「あれ!?アイスのおっさん!!!」
(やっぱりアイスバーグさんだったんだ。)
ジャスミンが先程感じ取った気は間違い無かったらしい。
「麦わら…、良く無事だったな……。海賊娘の言った通りだ……。ココロさんが連れてきたのか。」
「命はあったようらね、アイスバーグ。おめー、ここで何してんらい…?」
「……ここにいるってことは…、あんたと同じことを考えたのさ。――――――バカは放っとけねェもんだ。」
「んががが。」
笑みを浮かべなら返したアイスバーグに、ココロも声を立てて笑う。
「使え。整備はすんだ・・・。水も石炭も積んで、今蒸気を溜めてる。」
倉庫内に放置されていた木箱に座り込んだアイスバーグが、ルフィに向かって告げる。
「おっさん、準備しててくれたのかー。」
「喜ぶのは生きられてからにしろ。この“ロケットマン”は“パッフィング・トム”の完成以前の“失敗作”だ。どう調整しても蒸気機関がスピードを抑えられず暴走するんだ。命の保証などできねェ。」
「ああ!!!ありがとう、アイスのおっさん!!!よ――――――し!!行くぞ、お前ら乗れー!!ばーさん、ナミが来たらすぐ出してくれ!!!」
たん!
と勢い良く“ロケットマン”に飛び乗るルフィだったが、急にふらりと足を
「ルフィ、大丈夫か!?さっきから足元ふらふらしてるぞ。」
「血を流し過ぎたんだろ。」
「エニエス・ロビーに着くまで、横になってた方が良いんじゃない?」
チョッパー、ゾロ、ジャスミンの順で声をかける。
「あァ、ちょっとうまく力が出ねェ…。肉でもあれば……。」
「いや、肉を食べたからってすぐに血肉になる訳じゃないでしょ…?サイヤ人じゃあるまいし…。」
声まで力を無くしているルフィにジャスミンが突っ込む。後半は小声だったので、ルフィたちには聞き取れ無かっただろうが。
そんなやり取りをしている中、ジャスミンはナミと他に2人の気が近付いているのに気付く。
ガラガラガラ…
何やら、重い荷物を荷車か何かで運んでいるような音と共に、次第にナミの声も聞こえてきた。
「急いで、こっち!!」
「この辺で食べたら良いじゃないか。」
「あたしがそんなに食べるか!!!」
ガラガラガラガラガラ…!!!
「ゴメン、遅くなった!!」
ナミが荷車を引いた2人の男を引き連れ、入口に姿を現す。
「ナミ!!おい、何やってんだお前!!早く乗れバカヤロー!!!」
ルフィがナミに怒鳴る。
「わっ、すごい。これも“海列車”!!?」
「……いやあ、こんな所にもう1隻あったとは。」
「驚いた。」
荷車を引いていた男たちが驚嘆している。
「ナミちゃん、その人たちは?」
「“海列車”の
荷車から荷物を下ろしながら言うナミを手伝い、一緒に“ロケットマン”に詰め込む。
「よいしょ。」
「随分大きいけど、中身は?」
「どこ行ってたんだ!!時間がねェっつったの誰だよ!!その荷物なんだ!?」
「肉とお酒。」
怒鳴り付けるルフィに対してナミは平然と返している。
更に、ルフィも「文句言ってごめんなさい!!!」と即座に態度を変えてナミの持ってきた食料を手当たり次第に口に突っ込んでいる。
実に見事な手のひら返しである。
「さすが…。ルフィくんたちのことは知り尽くしてるね…。」
とてもこれから敵の本拠地に乗り込むとは思えない、実に呑気な光景が広がっていた。
ゾロでさえ、一緒に持ち込まれた酒を物色している。
その間、ココロとアイスバーグの大人組はこれからの動きについて確認していた。
どうやら、動けるようになったとは言え重傷のアイスバーグは待機となり、ココロが運転手を引き受けてくれるらしい。
「ん……?」
「どうしたの?」
「誰か来るね。…1人や2人じゃないよ。7~8人はいる。」
ジャスミンが告げた時だった。
「麦わらァ~~~!!!」
ザッ……!!
全身に包帯を巻いた、妙な防具を着けたチンピラたちとフランキーと一緒にいた女性たちが入口に現れる。
「フランキー一家!」
「この忙しい時に…。」
ゾロが溜め息を
「頼む!!!おれたちも連れてってくれェ!!!!エニエス・ロビーに行くってガレーラの奴らに聞いた!!!アニキが政府に連行されちまったんだ!!!追いかけてェけど…、アクア・ラグナを越えられねェ!!!!」
「相手は世界政府らよ。」
「誰だろうと構うかァ!!!」
「アニキを取り返すんだ!!!」
「あたしらアニキの為なら、命だって惜しく無いわいな!!!」
「お願いだよ!」
フランキーは随分と慕われているらしい。
少なくとも、目の前で涙と流しながら頭を下げる彼らに、
「冗談じゃないわ!!!あんたたちが今まであたしたちに何をしたか分かってんの!!?」
しかし、船の修繕に必要な金を盗み、あまつさえ
「恥を忍んで頼んでる!!アニキを助けてェんだ!!!」
だが、彼らの真っ直ぐな涙は確かに届いていた。
「乗れ!!!!急げ!!!!」
ルフィの叫びが彼らを“ロケットマン”へと促す。
「………!!!麦わらァ……!!!」
「ちょっとルフィ!!!」
「ま、良いよ。」
ナミが抗議するが、一味の
「すまねェっ!!!恩に着る!!!!でも、その車両じゃなくて良いんだ!!おれたちァ、おめェらに合わせて“キングブル”で海へ飛び出すからよ!!車両の後ろに掴まらせてくれれば良いんだ!!!よろしく頼む!!!じゃ、後で!!!」
ガン!!!っと派手な音を立てて頭を床に打ち付け礼をした代表の男—ザンバイが、他の仲間を引き連れて入口へ取って返す。「アニキ救出に行けるぞー!!!」と歓声を上げながら。
「んがががが。ほいじゃ、行こうか。」
ガコン…
ココロが“ロケットマン”を始動させ、シュッシュッシュッ!と独特の蒸気音を上げながら動き出した。
シュッシュッシュッシュッ…!
シュッシュッシュッシュッ…!
シュッシュッシュッシュッ…!
「さァ海賊共、ふり落とされんじゃらいよ!!!ウォーターセブン発、エニエス・ロビー行き“暴走海列車・ロケットマン”!!」
「よし!!!出航!!!行くぞォ!!!全部奪い返しに!!!!」
ポッポ―――――――――――!!!
ココロの言葉に、ルフィの号令が続く。
これから、ジャスミンがどのようにして歴史を紡いでいくのか、それはまだ本人でさえも知らない……。
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第20話 突き進め!同志たちと共に
という訳で、第20話更新です!!!
「水路を出るよ!!!“ロケットマン”!!!全員覚悟決めなァ―――――!!!」
バシュン!!!
ココロの叫びと同時に、“ロケットマン”が水路から荒れ狂う海へと飛び出す。
「うお――――――!!!」
「飛び出た~~~~!!!」
ルフィとチョッパーの叫びが列車内に
その直後、後を追うように水路から何かが飛び出してきた。
「バヒィ~~~~~~ン!!」
「何?この鳴き声?」
ジャスミンの声に被せるようにルフィが叫ぶ。
「何だありゃ!!?何か飛んできた~~~~!!!」
その声に、ジャスミンも窓から身を乗り出し、後方を確認する。
「麦わらさーん!!!フランキー一家総勢50名!!お世話になりま~~~~す!!!」
「バヒヒ~~~ン!!!」
「バルルルァ~~~!!!」
「何あれ?!」
バカでかいヤガラブルが2匹、家のように巨大なゴンドラ(もはや船だろうか?)を曳いている。
「うは―――――!!でっけ―――ヤガラブルだァ!!!」
「キングブルさ!!荒波も走る最上ランクの“ブル”ら!!」
「“連結砲”撃てー!!!」
「ッヤバイ、何かに掴まっ・・・!」
ドゥン!!!
ドゴオォォン!!
ジャスミンの警告も間に合わず、
「……っ!!」
「うわあ―――――っ!!」
「畜生、あのヤロー共……!!!」
それぞれ衝撃で尻もちを着いたり、壁にぶつかったりなどの被害を受けた。
「「「よろしく!!!」」」
「無茶すなー!!!」
受けた被害の割にあまりにも軽いフランキー一家の挨拶に、ゾロが窓から顔を出して怒鳴り付ける。
『運転室より緊急連絡!!これから線路を掴むと急激に速度が上がるよ!!軽傷で済むようにしっかりしがみ付いてな!!!』
「取り敢えずケガはするんだ…。」
「ヤバッ!」
ナミのツッコミにジャスミンがハッとなる。
直後に窓から身を
「ジャスミン?!」
ナミが慌てて窓から確認すると、ジャスミンは舞空術でヘッド部分に急いでいるところだった。
《同じ頃、運転室周辺》
ザザザザザザザザ…!
ギギギ…!!!
間も無く“ロケットマン”が間も無く線路に到達する。
「もう少し!!ばーちゃん、もう少し右~~~!!」
「ニャーニャー!」
「チムニー!!!ゴンベ!!おめーら、着いてきてたのかい!!?」
そう。車外にはココロに無断で着いてきていた、チムニーとゴンベがいたのだ。
「何てこった、早く中へ入んなァ!!!吹き飛んじまうよ!!!」
運転室の窓から身を乗り出し、叫ぶココロだったが、その直後にガシィッ!という音と共に“ロケットマン”の車輪が線路を掴む。
ガクン・・・、グン!!
「うわっ!」
「ニャッ!」
ゴロンッ!
加速に耐え切れず、チムニーとゴンベが荒れ狂う海へと投げ出される。
「チムニー!ゴンベ!」
シュシュシュシュシュシュ…!
ボヒュン!!!
そのスピードにより、ココロの叫びがすぐに遥か前方へと運ばれていく。
2人の体が海に叩き付けられる寸前、ガシィ!と2人の体を掴む者がいた。
「良かった…。間に合った。」
「ポニーテールのねーちゃん!」
「ニャニャー!」
「しっかり捕まっててね。」
ギュン!
2人を抱え直し、そう言うや否や、ジャスミンもまた既に豆粒程の大きさになりつつある“ロケットマン”に戻る為、舞空術のスピードを上げた。
「すごーーーい!!」
「ニャッニャー!」
シュシュシュシュシュシュ……!
ザザザザザザザザザザザザザザザザ!
「チムニー!ゴンベ!」
「ばーちゃん!」
「ニャニャー!」
“ロケットマン”の車内に戻り、ココロに合流した。
「良かった。良かった……!もうダメらと思ったら……!!」
ガシッと2人を抱き締め、ココロが安堵の声を漏らす。
「ありがとうら……!あんた、名前は何ていったらァね?」
「ジャスミンです。」
「この恩は忘れらいらよ…!本当にありがとうら……!!」
「いえ。間に合って良かった。」
「成る程…。あの時慌てて飛び出していったのは、この子たちがいることに気付いてたからなのね?」
「まぁね。」
ナミの言葉に頷く。
「それにしても、ものすげー加速だ…!!」
「腰打った…。」
「いやいや、びびった!!」
「んがが!!加速でなく暴走らよ。」
ぼやく男たちにすっかり立ち直ったココロが答える。
「あそこは特等席じゃねェな…。吹っ飛ぶかと思ったぞ。」
チムニーたち同様、ヘッドに陣取っていたルフィが荒い息を吐きながら呟く。
まぁ、ルフィなら大丈夫だろう、と放っておいたのはジャスミンなのだが。
「……ちょっと待て。この車両におかしな奴らがいるぞ。」
不意にゾロが切り出す。
「「おい、そりゃ誰だ。」」
「お前らだよ!!!」
「おめェもだろ!!!」
(何のコント?)
パウリーとルル、タイルストンらガレーラの職長たちが“ロケットマン”に乗り込んでいることを知らなかったらしいゾロとのやり取りを見て、ジャスミンが胸中で呟いた。
「お前らの仲間を連れ去った“敵”は、アイスバーグさんの命を狙った“犯人”でもあるんだ!!――――――どうせお前ら止めても止まらねェんなら…、おれも参戦する!!あくまでもガレーラとは関係ねェおれの単独行動としてな……!!!」
「がははは、パウリー!!!おれたちはお前にくっ付いて来りゃあアイスバーグさんの
「――――――案の定…、そういうことらしいな…この戦い。おれたちも加えて貰うぞ。」
パウリーの言葉に、タイルストンとルルが続ける。
「さらにその“
「そうだわいな!!あたしらそいつが誰なのかもはっきりと知ってるんだわいな!!」
「やい、ガレーラ!!あんたらアニキに何かあったらどう責任取るんだわいな!!!」
「黙れ!!1番辛いのはアイスバーグさんだ!!!」
「パウリー!!おれたちにまず説明しろ!!!」
「知ってんだろ…、真犯人。お前の口から言ってみな。おれたちもそうそう鈍くねェ…。大方の見当は付いてる。別に…、驚きゃしねェよ…。」
ザンバイたちもそれぞれ自分の意見を主張し出し、場の収集が付かなくなり始めたところでルルが静かに切り出す。
「……まァ、急に意味も無く姿を消せば察しも付くか…。じゃあ、はっきり言う。仮面の奴らの正体は…、ルッチ・カク・カリファ……。それに酒場のブルーノ。――――――あの4人が政府の
その後のルルとタイルストンの顔が凄かった。
効果音を付けるなら“ガボ―――――――――ン!!!”だろうか。
「想像だにして無かったのか!!!一体誰だと思ってたんだよ!!!」
このパウリーの叫びが全てを物語っている。
「裏町の“マイケル”と“ホイケル”?」
「そうそう。」
「誰だよ!!!」
(本当に想像して無かったんだ…。)
まぁ、裏を返せばそれだけCP9がウォーターセブンで信頼を得ていた、ということなのだろうが。
「じゃあ、まー………!!」
先程からずっと肉を食べ続け、腹ごしらえしていたルフィが立ち上がりながら切り出す。
「フランキー一家とも、ガレーラの船大工たちとも、町じゃゴタゴタあったけどこの先はここにいる全員の“敵”は同じだ!!これから戦う中で1番強ェのは特にあの“ハトの奴”だ!!あいつは必ずおれがぶっ飛ばす!!!良いな?!ジャスミン!!」
「了解。」
ルフィの視線を受け、ジャスミンも頷く。
(ルフィくんが許すならこのまま私が引き受けるつもりだったけど……。)
やっぱり譲るつもりは無いらしい。
「――――――そうだな。この戦いは
ゾロが続ける。
車内が神妙な空気に包まれた時、不意に窓の外を見ていたココロが声を上げる。
「…………お!?」
「ばーちゃん、ばーちゃん!
「ニャー!」
チムニーとゴンベの一言もあり、一気に緊張感が走る。
「そういえばココロさん!!運転室から離れて良いの!?」
「そう言われれば……。」
ナミのツッコミにジャスミンもココロへ目を向ける。
「んががが、言ったろ!“ロケットマン”は“暴走海列車”。あたしの仕事は列車を線路に乗せるまで!!運転しようにもスロットルが効きゃしねぇんら。したがって列車は常にフルスロットル!!!もう誰にも止められねェんら!!!」
「げ。」
「ウソ!!?」
ココロの言葉にジャスミンが呻き、ナミが叫ぶ。
「ルフィ!!列車が大波にぶつかっちゃうわ!!ルフィ!!」
ナミの叫びも耳に入らない様子で、ルフィがパウリーやザンバイらと向き合う。
「————せっかく同じ方向向いてるモンが、バラバラに戦っちゃ意味がねェ。」
スッと2人に向かって手を差し出す。
「良いか。おれたちは同志だ!!!」
ガシッ!!
ルフィ、パウリー、ザンバイ。
麦わらの一味、ガレーラカンパニー職長、フランキー一家、3つの集団の
「先に出た“海列車”には、おれたちの仲間も乗り込んでる!!!戦力はまだ上がる!!!大波なんかにやられんな!!!全員目的を果たすんだ!!!行くぞォ~!!!!」
「「「ウオオオ―――――――――――ッ!!!」」」
ルフィの号令に合わせ、男たちの
「んがががが。さーおめェら、この波何とかしてみせなァ!!!」
全員の心が1つに纏まったところで、ココロの声が響く。
「フランキー一家!!波に怯むな!」
「大砲用意!!!」
バタバタとフランキー一家がアクア・ラグナを越える為の準備をしているのを見つつ、ジャスミンもソファーから立ち上がる。
「さて……。まずはアクア・ラグナを何とかしないとね。」
「そっか!もう1度さっきの何とか波で……!!」
「かめはめ波ね。ちょっと行って来る。」
そう言い置いてジャスミンも再度窓から車外に飛び出した。
「“デミ・キャノン”!!!」
ボウン!!!
屋根の上からタイルストンやフランキー一家が迫り来るアクア・ラグナに大砲を撃つが、波は全く崩れる様子が無い。
ゴゴゴゴゴゴゴ…
「……穴も開かねェ…。当然か……!!」
「うおおお!!」
ドゥン!!
ドォン!!
ドゥン!!!
立て続けに大砲が放たれるが、全てスパン、と波に呑まれるばかりで一向に効き目は無い。
「だめだ、だめだそんなんじゃあ―――――っ!!!」
ゴォオオオオ
ゴゴゴゴゴゴゴ
後ろからフランキー一家のゴンドラから、巨大な大砲がアクア・ラグナを狙う。
「下げってろ!!フランキー一家、特製大砲に任せとけー!!!」
「目標、アクア・ラグナ!」
「撃て―――――――――――っ!!!“スーパー
ズドォン!!!
ゴゴゴゴゴゴゴ…
スパァン!
「怯むなァ!!!どんどん撃ち込め――――っ!!!」
ドゥン!!
ドォン!!
ボウン!!
ドゥン!!!
ドドン!!!
だが、全く効果は見られない。
スタッ!
「よいしょっと……。」
そこにジャスミンが降り立つ。
「!おい、嬢ちゃん危ねェぞ!!中に入れ!!!」
タイルストンが叫ぶが、パウリーは「そうか…!お前がいたか!」と幾分か安堵した顔を見せていた。
「危ないですから、中に入っていた方が良いですよ。」
言い置いて腰を落とし、構えを取る。
「何を……!」
「早く危ねェから中に…!」
「おい!おめェら、邪魔になる!一旦この嬢ちゃんに任せて下がれ!!」
ジャスミンを知らないタイルストンやフランキー一家が反論する中、
「か――――――……、め―――――……!」
呼吸を整え、気を高めていく。
ゴゴゴゴオォォ……!!!
その間にも、アクア・ラグナは目前に迫っていた。
「うおおお~~~~っ!!!ぶつかるぞォ!!!」
「やべェ!!!死ぬ―――――!!」
「死んじまう―――――っ!!」
「泣きごと言う暇あったら撃てェ!!!」
「活路を開けーっ!!!」
「は―――――……、め―――――……!」
ギュオォオオオオオ………!!
ジャスミンの気の高まりに呼応し、手のひらの輝きが強くなっていくが、余裕の無い男たちの目には入らないらしい。
スタン!
ストッ!
とルフィとゾロも屋根の上に登って来た。
「んよっ!」
「おい、お前らちょっと後ろに下がってろ!コイツの邪魔になる。」
「お前ら何しに来たんだ!!!」
「しししっ!さっきは良く見れなかったからな。見物に来た!!」
「同じく。」
パウリーの問いにルフィとゾロが返した直後だった。
「波――――――――――――――――――!!!!」
極限にまで高まった気が、巨大なかめはめ波となって目前に迫ったアクア・ラグナに叩き込まれた。
カッ!!!
ドッグァアアアアアアンンッ!!!!
ザッパァアアン!!
シュウゥウウウウウ…!!
「「「「「えええぇえええぇええぇえええ!!!??」」」」」
ジャスミンの放った
それを初めて目の当たりにした男たちの、某神の
「すっっっっげ――――――なァ――――――――――!!!!」
「へェ……。」
間近で改めてそれを見たルフィのテンションはだだ上がりで、ゾロでさえちょっと目を輝かせている。
「ア、アクア・ラグナが………。」
「…消えたァ………!!!」
「し、死ぬかと思ったァ~~~~~っ!!!」
「アクア・ラグナが消えたぞ~~~~~~~!!!!」
ココロさんの喋り方めっちゃ難しいです…。
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第21話 激突!2人の剣豪
ジャスミンたちが中に戻ると、すぐさまナミがルフィを呼ぶ。どうやら、先行した海列車に密航していたサンジからナミに通信が入ったらしい。
フランキー一家がジャスミンを見て軽くざわざわしていたものの、ジャスミンがナミたちの近くに寄るのを見て、通信の邪魔をしないようにか直接話しかけてくる者はいなかった。
まぁ、この世界には悪魔の実の能力者がいる為、奇特な力にも多少耐性があるのだろう。
「サンジ――――――っ!!そっちどうだ!?ロビンは!?」
ナミから子電伝虫を受け取り、ルフィが通信に出る。
『ロビンちゃんは……。まだ捕まったままだ。ナミさんから今、事情を聞いたとこだ。…全部聞いた…。』
子電伝虫の口からサンジの声が聞こえてくる。
……いつも思うが、巨大なカタツムリが喋るというのはかなりシュールな光景である。
通信の邪魔にならないように傍らで静かにしながら、ジャスミンの思考が
しかも、個体によっては受話器を取り付けられるなど多少の改造を受けていたりしているのだから、動物愛護的な意味でアウトな気もするのだが……。
プッ!ツー、ツー…
「終わったの?」
通信が切れ、眠り始めた子電伝虫を見ながら尋ねる。
「おう!ばーさん、列車もっとスピード出してくれ!!」
「もっと!!?安心しな。…もう既に船の限界速度を超えてるよ!!もう自力じゃ止まれねェ程にね!!んがががが!」
サンジに暴れて良いと許可を下したルフィが、ココロに更なる加速を要求していた。
「大丈夫かしら、サンジくん…。」
ナミが眠った子電伝虫を手に呟く。
「私はそのサンジさんって人を直接は知らないけど……。海列車に密航したり、連絡手段の子電伝虫を残していくくらいだから、きっと頭の回転が速い人なんでしょ?上手く立ち回れるんじゃないかな?」
「……そうね。」
ジャスミンの言葉に頷いたナミだったが、納得してたというよりも自分に言い聞かせているように見える。
「このスピードで行けば、エニエス・ロビーに着く前に追い付けるかもしれない。戦闘に備えておこうよ。」
「ええ。」
ナミが半ば無理やりに自分を納得させる。
「ん?」
不意にジャスミンが前方に目をやった。
「どうしたのよ?」
「ん~…。ちょっと屋根にいるね。」
そう言い置いてジャスミンが再び窓から車外に出る。
雨風が激しく吹き付けるなか、“ロケットマン”のヘッド部分、鼻先にあたる部分に降り立ち、意識を前方に集中させた。
「戦闘中・・・・かな?」
まだ多少の距離があるが、一定の速度で前方に進んでいるのにも関わらず気を高ぶらせている集団を感じ取る。
たぶんこれが先行している“パッフィング・トム”だろう。
「?分かれた?……列車が分断したかな?」
集団が2分されたのを感じ取る。
一方は相変わらず前進しているが、もう一方は徐々にそのスピードを落としていた。
進んでいる方も速度が先程よりも上がっているので、車両を分断させてスピードを上げたのかもしれない。
「まずいな……。このままのスピードで進まれると、追い付くより先に向こうの方が着いちゃうだろうし。」
何より、置き去りにされた方の列車と衝突することになる。
“ロケットマン”もかなりのスピードで進んでいるのだから。
自分が飛んで行って線路から残った方の車両をどかすべきだろうか。
「いや、でもそれだと船と違って列車だから沈んじゃうしな……。」
どかすのは自分でも出来るが、さすがに持ち上げてどこかに運ぶのはキツい。
一般的な同年代の女子に比べれば鍛えているが、ジャスミンは純粋な地球人である。いくら鍛えていても、純粋な腕力は、一般的な成人男性と大して変わらないのだ。
打撃などの場合は、瞬間的に威力を上げることは出来るが、持ち上げるなど持久力が必要な事態においては目立った活躍は出来ない。
そもそも、ジャスミンが得意とするのはそのスピードでもって相手を翻弄し、的確に急所を狙うという戦闘スタイルである。天下一武道会で
典型的な短期決戦型だが、腕力や持久力の不足を自身が理解しているからこそ得意なスピードに磨きを上げたのだ。
少しでも欠点を解消しようとはしているが、元々筋力が付き難い体質ということもあってなかなか上手くいっていないのが現状である。
閑話休題
さてどうしようか、とどんどんと近付く“パッフィング・トム”の車両と“ロケットマン”に頭を悩ませている時だった。
「いよっと!」
したんっ!と音を立ててルフィがジャスミンのすぐ後ろに着地した。
「あれ?ルフィくん?」
「おー!ジャスミン。何やってんだ?」
「いや、それはこっちのセリフだけど・・・・。」
「おれは“バッシング・トム”がまだか見に来たんだ!!」
「“パッフィング・トム”だよ。あれ?服着替えたの?」
「おう!戦闘準備だ!!」
「へぇって、それどころじゃない。このまま進むと切り離された車両とぶつかっちゃうんだよ!」
「切り離された車両?何で分かんだ?」
「気配で分かるんだってば!それより、後2~3分でぶつかるけど、どうする?!50人くらい乗ってるみたいだから、さっきみたく吹き飛ばそうにも出来なくて……。」
呑気なルフィにジャスミンも声を荒げる。
「サンジはいるか?」
「私はサンジさんに会ったこと無いから分かんない。でも、“パッフィング・トム”で戦ってる人たちが何人かいるけど、動いている方に乗ってるみたいだよ。」
そんなことを話していた時だった。前方に、波に翻弄されている海列車の車両を発見する。
「おい、おめェら!!前に列車が見えた!!!」
「え!!?」
ルフィの叫びに、
「中身確認して来る!!“ゴムゴムの”……!!」
「ちょっとルフィくん!?」
「“ロケット”!!!」
ドギュゥン!!!
止める間も無くルフィが前方の車両に突っ込んだ。
車両を確認するべく、ゾロやタイルストンたち、ザンバイらも出て来た。
「麦わらさんは!?」
「…今さっき、前の車両に突っ込んで行きました……。」
溜息を
そしてそんな話をしている間に前方の車両が何やら騒がしくなってきた。
「!麦わらさんが出て来たぞ!!」
何やら頭の上で腕をバツ印に交差させている。
「…サンジさんたちはいないってことかな?」
「誰もいねェって撃たれながら!!」
ザンバイが後方に向かって叫ぶ。
「ということは、あの人影は全部政府の人間ってことか。……どうします?あの車両どかさないと、私たちもただじゃ済まないと思いますよ。」
「よし!じゃあ、おれたちがぶつかる寸前で解体してやる!!」
「よォし!!おれたちも乗った!!!」
ザンバイの叫びにタイルストンが同意する。
「おーい、ゾロ~~~~~~!!!」
「ロロノアさん!!ルフィくんが呼んでます!」
もはや目前に迫りつつある車両を前に、ジャスミンがゾロを呼ぶ。
「斬れ。邪魔。」
「ああ。」
端的なルフィの要求にゾロが応じる。
「斬るったって…。」
「――――――
腰に
「斬り裂けり。二刀流“
ザン!!!
言うや否や、瞬時に抜刀した2本の刀で追い付き様に車両を斬り裂く。
「「「「「!!!?え~~~~~~っ!!?」」」」」
某神のごときリアクション、3度目である。
一方ジャスミンはと言えば、
「凄い…。これだけ綺麗に斬ってるのに、1人も殺してない……!!」
誰1人として斬り捨てること無く、車両を分断してのけたゾロを感嘆の眼差しで見詰めていた。
これだけの人数が乗っている車両を、正確に人と人の間を
ただ斬り裂くだけなら、名のある剣豪なら可能だろう。
だが、1人も傷付けること無くやってのけるのは並大抵の技量ではない。剣のことなど欠片も分からないジャスミンだが、彼女とて武道家の端くれである。例え畑違いであっても、その技量の凄まじさだけは見ていて分かった。
「よ!」
トン!
と、ルフィが“ロケットマン”に戻って来るのとほぼ同時にゾロの刀が
ザザァァ…ン!!!
同時に両断された車両が、それぞれ着水する。幸い、分断された車両が船のように浮いている為、乗っていた海兵や政府の人間たちも全員が無事のようである。
「あのなお前ら、そういうことやるんなら前もって一言くらい!」
「聞こえたろ。“斬れ”って。」
「斬れると思わねェしよ!!」
「あんな怪物でも一味の
ルルがルフィに食ってかかり、ザンバイが半ば放心状態で呟いているのを聞きつつ、ジャスミンが前方に目をやる。
どうやらゾロも気が付いているようで、前を見据えて目を離さない。
「……おい、お前ら!!まだだ……!!!」
腕に巻いていた黒い手ぬぐいを頭に巻き直しながらゾロが唸るように言う。
「……相手もまた、無類の剣士みたいだね…!」
「え?ウゲ!前見てみろ!!!」
「か…海王類が真っ二つ!!この列車の5倍はあるぞ!!」
線路を中心に、斬り裂かれた巨大な海王類の死体が海を漂う。
そして、荒れ狂う波間を漂う線路の上に1人の人影が見えた。
「誰かいるぞ!!」
「あァ!!!ありゃ“
「?ふねきり!?」
ザンバイが叫ぶ。
「あいつは“海軍本部”の大佐“
「……詳しいですね。」
この視界の悪さの中、良く見知った相手ならともかく噂程度にしか知らないだろう相手を誰だか判別するとは。
「まぁな!ってそれどころじゃねェ!!野郎共!!!砲撃準備!!!」
「「「うおお―――――!!!」」」
「待て!!!」
すぐさま砲撃に移ろうとしたフランキー一家をルフィが制止する。
「何すか!!急がねェと、この海列車スパッといかれちまいまっスよ!!?」
「お前さっき何見てたんだよ。ゾロに任せろ。邪魔すんな!!」
「既にロロノアさんはそのつもりみたいですよ。」
そう。ゾロは既にあの海兵を自身の相手とみなしている。
「1度だけ言うぞ!!!道を開けろ!!!」
「ここは正義の
ゾロの警告に、海兵が叫び返す。
「私は“海軍本部”大佐!!!生き恥など
「そうもいかねェ!おれたちの目指す場所はお前のいるその先にあるからな!!!」
「来い!!!」
「あの海兵も強いね…。」
それも、確固たる“正義”を秘めている。見せかけだけでなく、本当に民間人のことを考えている人間なのだろう。
その叫びからは、絶対にここで足止めをする、そんな強い意志がひしひしと感じられた。
恐らく勝負は一瞬。
「曲がった
「“三刀流”
「“
ビュオ!!!
ギキン!!!
海兵の放った斬撃が直角に曲がりゾロを襲うが、それはゾロによって弾かれる。
刹那―――――、
「“
ドン!!
ゾロの斬撃が海兵を線路から弾き飛ばした。
ザバァ…ン!!
海兵が海に落ちる。幸い、傷は致命傷には至っていないが、このまま大荒れの海を漂っていては命はあるまい。そもそも、意識があるかどうかも怪しい。
「うお―――――!!!」
「“
「……ルフィくん。私ちょっと外すね。」
ザンバイらが喜びに沸く中、ジャスミンがルフィに告げる。
「んあ?どこ行くんだ?」
「あの海兵拾って、さっきの車両の人たちの所に置いてくるよ。」
「おいおい!相手は海兵だぞ!?」
「わざわざ捕まりに行くようなもんだ!!!」
ザンバイらが途端騒ぎ出すが、ジャスミンはルフィの目を真っ直ぐに見据えていた。
「―――――相手は海兵だぞ?」
「私は海賊じゃない。――――もちろん、向こうがそんな理屈を聞いてくれるとは思わないけどね。でも、ここで彼を見捨てるのは私の武道家としての主義に反するんだ。」
「勝負の結果だ。向こうは怒るんじゃねェか?生き恥だどうこうって叫んでたしな。」
「だろうね。――――でも、彼はこんな所で死んで良い人間じゃない。この大海賊時代、腐り切った名ばかりの“正義”が横行している中、彼が掲げる“正義”は本物だ。純真、と言い換えても良い。ルフィくん、私は彼のような真っ直ぐで気持ちの良い“正義”を掲げる海兵を初めて見たよ。彼は本当に民間人のことを考えている人だ。」
「そっか。うし、分かった!」
同じくジャスミンの目を真っ直ぐに見ていたルフィは、彼女の思いを汲み取り頷いた。
「応急手当して送り届けたらすぐに追いかけるよ。」
「おう!後でな!!」
手を上げて応じるルフィに手を振り返し、ジャスミンは先程の海兵を拾うべく、舞空術で“ロケットマン”から飛び立った。
ジャスミンは実戦に出たのはワンピース世界が初めてな上、ドラゴンボール世界ではただ武道の心得があるだけの中学生だったので人の死に直面するような戦いに慣れていません。ワンピース世界にきて半年経っている為、“男のメンツ”や“プライド”、それぞれの考えなどに対しては多少の理解がありますが、殺し合いはちょっと…、という感じです。
これがよっぽどの悪党や人間的に屑だったら、もしかして助けなかったかもしれませんが、今回はたまたま立場的に敵対関係になってしまっただけの善良な海兵だった為、死ぬかもしれないのを見過ごせませんでした。
たまたまお互いの主張がすれ違っただけで、仲間を助けたいルフィたちも、民間人を守る為に“海賊”を見逃せない、というTボーンもどちらも間違ってはいません。“弱者の為”というTボーンの“正義”を、“守る”為の強さを求めるジャスミンは武道家として共感してもいます。ジャスミンは“海賊”ではなく、“友人”としてルフィたちに加勢している為、そこの主義は曲げませんでした。仮に海賊になっても曲げない気はしますが…。
長くなりましたが、そんな考えの下、ジャスミンはTボーンを助けに行きました。
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第22話 突入!エニエス・ロビー
「よっ、と……。」
ザパッ……!
“ロケットマン”から飛び立った後、先程の場所まで戻り気を失っている海兵‐Tボーンを海から引き揚げる。
「意外と傷が深いな…。」
一旦線路の上に乗せる形で傷を確かめながら呟く。
揺れる線路の上では手当することも出来ない。また、出来れば雨風の及ばない場所で海水に浸かってしまった傷口を清められればベストなのだが。
「逆方向になっちゃうけど、一旦ウォーターセブンまで戻った方が良いかな…。」
エニエス・ロビーの方が距離的には近いが、敵の本拠地でのんびり傷の手当が出来るとも思えない。
いっそわざと人目の付く場所へ下り、手当を任せて置いてきた方が良いか、ともチラッと考えたが、罠だと警戒されるのがオチだろうし手当が遅れては手遅れになる危険もあった。
となれば多少距離があってもウォーターセブンで手当し、その後で先程の切り離された車両の海兵たちに預けた方が良いだろう。
実際にこの海兵‐Tボーンを知る者ならば話も通じ易い。現場の人間の方が話が通し易いものなのだ。
「急ごう。」
Tボーンを背中に担ぎ上げ、フワリ、と舞空術で宙に浮き上がる。
ギュン!
ウォーターセブンを目指し飛び立った。
━同じ頃、“ロケットマン”内━
「さっきの車両はきっとサンジくんたちの
ナミが先程の車両について断言する。
「じゃ、もうすぐか!!よ――――――し!!!行け――――――――――“ロケットマン”!!!敵は近いぞ―――――!!!ハトの奴をぶっ飛ばすぞ―――――っ!!!」
「ウオオオ~っ!!!」
ルフィの号令に男たちが声を上げた。
「あれ?ルフィ、そういえばジャスミンはどこに行ったの?」
「ああ。さっきゾロが斬った海兵助けに行った。」
「ハアアァ???!!」
「海兵をか!!?」
ルフィの言葉にナミとチョッパーが驚愕の声を上げる。
海賊である彼らにとって、敵対した相手、それも海兵を助けに行くというのがある意味衝撃だったのだろう。
そして、一切それらに気付かず、ゾロは1人熟睡していた。
「アイツは海賊じゃねェからな。」
「あ……。」
「そういえばそうか。」
その言葉にナミとチョッパーは一瞬納得してしまった。
すっかり仲間のようなノリでいたが、ジャスミンは単に“友達”として手を貸してくれていただけだったのだ。
「アイツにはアイツなりの“信念”があるんだ。しししっ!アイツやっぱり仲間になんねェかな~!」
この一件が終わった後、再度ジャスミンはルフィの強烈な勧誘の嵐に遭うのだが、それはまだ先の話である。
━その直後、ウォーターセブン“造船島”中心街━
「へくしっ!」
いくつかあるホテルの屋根の上でTボーンの手当をしながら、ジャスミンが不意にくしゃみをした。
「?…風邪引いたかな?」
そんなやわな鍛え方はしていないつもりだが、この雨風で体調でも崩したか?と思案しつつも、手当の手は止めない。
巻いている先から包帯がぐっしょりと濡れていく。
激しく吹き付ける雨風と、押し寄せるアクア・ラグナを防ぐ為に建物の窓は全て塞がれており、中に入ることは出来なかった。
当然、入口も全て塞がれている為、止む無く雨ざらしの中で屋根の上で手当していたのだ。
「良し。…この場所じゃ、これが限界か……。」
一通りの傷を消毒し、ガーゼと包帯で止血する。
「早くルフィくんたちと合流しないと・・・・。」
再びTボーンを背中に担ぎ上げ、海へと飛ぶ。
キィイ―――――――――――――――――ン……!!!
背中のTボーンを落とさないようにある程度スピードは抑えているものの、その速度は“ロケットマン”を遥かに上回る。
5分程飛んだところで、先程ゾロが両断した車両が見えてきた。
乗っている海兵や政府関係者が、木材の端切れのようなもので懸命に海を
「いた…!」
トッ!!
風を切って車両の1つに降り立つ。
「なっ……!!」
「誰だ貴様!!!」
「争う気は無いよ。あなたたちの上官を送り届けに来ただけだ。」
武器を構える海兵たちを片手で制止しつつ、出来るだけ傷に
「Tボーン大佐!!!」
「一体何をした貴様!!」
「大佐から離れろ!」
ジャキキキッ!!!!
一斉に海兵たちの武器がジャスミンへと向けられる。
「だから争う気は無いって言ってるのに…。こんな所で死んで良い人間じゃないと思ったから拾って連れて来たんだ。応急手当はしたけど、傷は深い。早めに医者に診せた方が良いよ。」
「手当だと……?」
「貴様、海賊じゃないのか?何故大佐を助ける!?」
「私自身は海賊になった覚えは無いよ。――――Tボーン大佐だっけ?彼はこんな所で死んで良い人間じゃない。彼が掲げる“正義”のその先を私は見てみたい。」
それは偽らざる本音だった。上に行けば行く程、海軍という組織は闇に染まっている。どこまでTボーンが自分を貫けるのか。世界政府の闇を知って
目を
敵では無いのか?という空気が漂うが、その間にジャスミンは再び宙へと浮き上がる。
「う、浮いてる…!」
「悪魔の実の能力者か!?」
「じゃあ、後の手当は任せるよ。」
ギュン!
そう言い置くと、海兵たちに構うこと無くジャスミンが空へと飛びあがった。
「急ぐか…。」
キイィ―――――――――――――――――ン!!!!
ルフィたちに追い付くべく、全力でエニエス・ロビーへと飛ぶ。
そのスピードは先程の比では無い。2~3分も飛べば、エニエス・ロビーの正門が見えてきた。
“ロケットマン”とフランキー一家の船も見える。
「間に合った……!」
タン!
“ロケットマン”の屋根に手を付き、そのまま窓から車内へ滑り込む。
「ただいま。」
ストン、と着地しながら告げたジャスミンに真っ先に反応したのはナミでもルフィでも無く、いつの間にかルフィたちと合流していたらしい男‐サンジだった。
「おぉう!?窓から急にレディが!!ここで会ったのも運命。初めまして、あなたのコック‐サンジです!!」
喋ると同時にジャスミンの前に
予想していなかったところからの激しい反応に、ジャスミンが思わずビクッと体を震わせ、「止めんか!!」とナミがサンジをどついた。
それを見てルフィが爆笑する、というちょっとしたカオスな状況が繰り広げられた。
その後、落ち着いてからちょっとした自己紹介が行われる。
「改めまして、ジャスミンといいます。ルフィくんたちとはウォーターセブンで友達になって・・・・。成り行きでお手伝いすることになりました。」
サンジたちに向かってペコリ、とお
そう、狙撃の王様“そげキング”である。
頭から爪先までとっくりと見詰め、うん、と1人頷く。
(ウソップくん……。意外とケガも大丈夫そうだ。)
何しろ、フランキー一家にかなり手酷くやられたようだったので
「ジャスミンちゃんって言うのか。いやぁ、それにしたってこの先はレディには危険だ。今から帰るのは難しいが、そこのレディたちと一緒に海列車の中に隠れてた方が良い。」
女性至上主義のラブコックらしく、サンジがジャスミンとフランキー一家の2人‐モズとキウイに前線から引くように促した。
「ジャスミンならたぶん大丈夫よ。そんなに心配しなくても。」
「ナミさん?どういう意味だい?」
「だってジャスミン強いもの。」
「凄いんだぞ!ビーム出せるんだ!!」
「ビーム!!??」
「ビームじゃなくて
チョッパーの言葉を苦笑しながら訂正しつつも、話を本題に戻す。
「どうするってハトの奴らをぶっ飛ばしてロビンを助けんだよ!!」
「いや、私が聞きたいのは作戦をどうするかって話。」
それによってジャスミンがどう動くかが決まってくる。
「そうね。ただ闇雲に突っ込めばどうなるか…。」
「せめて地形が分かりゃ作戦の1つも立てられるかもしれねェが…。」
ジャスミンの言葉に、麦わらの一味の中でも頭脳派のナミとサンジが同意する。
「お前らちょっとコレ見ろ。」
不意にパウリーがルフィたちを呼んだ。
傍に寄ると、エニエス・ロビーの地図が広げられていた。
「前に1度線路の整備で来たことがあって…。おれがうろ覚えで描いたんだが、エニエス・ロビーのだいたいの地形だ。」
パウリーが地図を指しながら、“正門”“本島前門”“裁判所”“司法の塔”“正義の門”とざっくりと説明をしてくれる。現在地は正門の手前だが、エニエス・ロビー全体を鉄柵がぐるりと囲っていた。
「“正義の門”ってのは島の裏手にあって“司法の塔”からのみ行けるようだ。」
「何だコリャ。黒いの何だ?」
ルフィが地図に記された本島の周りを囲む黒い円を指して疑問の声を上げる。
「黒いのは滝だ。まあ、門を
パウリーがルフィを真っ直ぐに見る。
「おれたちァ、それまでに先行して列車が通れるように“正門”と“本島前門”をこじ開ける!!!その後もおれたちが例え何人倒れようとも構わず前へ進んで欲しいんだ!!」
その後をザンバイが続けた。
「こっちはたかだか60数人。敵は2千3千じゃ収まらねェ筈。麦わらさんたちはとにかく!!無駄な戦いを避けて“
「ああ!!!分かった!!!」
ザンバイの言葉にルフィが力強く頷く。
「それなら“正門”と“本島前門”は私が引き受けるよ。わざわざ敵中に入り込んでから開けるのはリスクが高い。
私なら、この距離からでも門を吹っ飛ばせる。」
ザンバイたちの
「おお!さっきのビームか!!」
「ならその後は、ポニーテールも麦わらたちと一緒に行動してくれ。他の海兵の相手はおれたちがする。お前らは一刻も早くニコ・ロビンたちを救出するんだ。ルッチたちの足止めをしてくれたお前なら、充分過ぎる戦力だからな…。」
「え!?ジャスミンちゃん、そんなに強いの?!」
パウリーの言葉に、合流したばかりでジャスミンのことを一切知らないサンジが思わず、といった
実際に“パッフィング・トム”の中で彼らと対峙したサンジにとって、
「ええ、まあ…。」
「ウソだろ!?あ、もしかして悪魔の実の能力者なのか?それなら…。」
「サンジくん!後で説明したげるから話の腰折らないで
「ハァ~イ、ナミすわん!!!」
ナミに対して目をハートにし、身体をくねんくねんにし始めたサンジに、またもやジャスミンがビクッとする。
「気にするな。サンジのアレは病気なんだ。おれも治せねェ。」
「あ、うん…。」
チョッパーの言葉に思わず頷く。
閑話休題
結局、ジャスミンが正門を破壊した後で“ロケットマン”ごと本島に乗り込み、その後で再びジャスミンが“本島前門”を破壊して道を作る。というシンプルな作戦に纏まった。
途中で海兵に会った場合はパウリーたちが引き受け、ジャスミンはルフィたちと一緒に
「さァ、おめェら島の正面らよ!!!エニエス・ロビーの後ろの空をよ━━くごらん!!!アレが“正義の門”ら……!!!」
ココロの言葉に窓から外を見る。今まで
「うおああああ~~~~~~~~っ!!」
「でけ~~~~~~~~~~~~!!!」
「全開になることはまずねェ。罪人が通過する時、あの扉はほんの少しだけ開く。そして扉の向こうには“
「じゃ、門を吹っ飛ばそうか。」
そう言い置いて、ジャスミンが窓から屋根へと上がる。
「吹っ飛ばすったってどうやって…。」
「大砲でも撃つ気か?」
唯一ジャスミンの技を知らないサンジと
「まァ、見てろ。」
「すっげ――――ぞ!」
ゾロとルフィが楽し気な笑みを浮かべる。
その頃、ジャスミンは屋根の上に立っていた。
「さて…。出来るだけ人は巻き込まないようにしないと…。」
いっそ全力でぶっ放した方が楽なのだが、それをしたら最後、救出対象であるロビンやフランキーは
「か――――…!め――――…!は――――…!め――――…!」
まずは正門を狙う。
「波――――――――――!!!!!!」
ドッゴォオオオォオンン!!!
狙い通り、正面の鉄柵ごと正門の扉のみが吹っ飛ぶ。
「よし!上手くいった。」
本音を言うと力加減を誤って本島の前門まで吹っ飛ばしはしないかと不安だったのだが。
一旦車内に戻ろうとした時だった。
窓から、ルフィが飛び出して行くのが見えたのは。
「ルフィくん!!?」
何で1人で先に乗り込もうとしているのか。
「何やってんだ、あいつは勝手に――――――――――っ!!!」
「あの人作戦全然分かってねェ~~~~~~~~っ!!!」
パウリーとザンバイの叫びが聞こえてくる。
「まぁ、ルフィくんが大人しく作戦通りに動くとは思って無かったけどさぁ…。」
ジャスミンが脱力している間に、既にルフィはエニエス・ロビー本島へ突っ込み、正門の異常を確認に来た海兵たちを次々と吹っ飛ばしていた。
「おめェら、準備は良いかい!!?“ロケットマン”、突撃するよ!!!」
ココロの言葉に、ジャスミンも車内に戻る。ふと、ザンバイらの姿が見えないことに気が付いた。しかし、それを確認するより先に再度ココロの声が響く。
「突っ込むよ!全員どこかに掴まりなァ!!!」
ポッポ――――――――――!!!
ゴオオオオオオオ…!!
ぐん、と一瞬身体が浮くような感覚の後、
ドッゴォオオオォ……オンン!!!
ガガガガガガガガガ……!!
ガクンッ!!
「ぐ……!」
「くぅ…!」
「きゃ!」
凄まじい着地の衝撃が襲った後も進んだのが分かったが、その後すぐに“ロケットマン”が停車する。
「止まった…?」
「何で急に…。」
その答えは、窓の外を見ればすぐに分かった。
「ふァ~~~…。まだ寝足りねェなァ…。こんなモンで突っ込んでくるとは思わなかったが、早ェトコ追っ払ってまた寝るぞ。」
「オイも。」
「巨人族ですって!!?」
「この2人が止めたのか……!」
2人の巨人族が、正門を越えたところで“ロケットマン”を強引に止めてしまったのである。
「さすが“世界政府”の玄関と言われるだけあるね…。人材が豊富。」
「感心してる場合じゃ無いでしょうが!!!」
ジャスミンの言葉にナミが突っ込んだ。
今回書きたかったこと
1.ジャスミンが正門破壊
2.オイモとカーシーが“ロケットマン”を止める
この2つはわりかし早い段階で入れたいと思ってました。取りあえず書きたいところは書けたので満足です。
追記:見直して初めてヨコズナの存在を忘れてたことに気付きました…。スイマセン、これから唐突に登場するかもしれません…。
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第23話 司法の島での戦い
これ、年内にエニエス・ロビー編終わるんだろうか…。
「おめェらこんなトコに何しに来たかは知らねェが、潰れる前に帰った方がええぞ。なァ、オイモ。」
「ああ、カーシー。オイも同感。骨の
目の前の2人の巨人‐どうやらオイモとカーシーというらしい‐が、体中に響くような声で言い放つ。
せっかく正門を破壊したのに、結果的にすぐに止められてしまった。
ギリギリのところで正門を通過出来たのは不幸中の幸いだったが、“本島前門”まではまだ距離がある。
「仕方無い。ここは私が引き受けるからみんなは早く本島に…。」
ジャスミンが降りようとした時だった。
「いや、お前はコイツらと一緒に麦わらを追いかけろ。」
パウリーがナミたちを指しながらジャスミンを制止する。
ガレーラの職長たちと、ザンバイやモズたち以外のフランキー一家もそれに応じるように立ち上がった。
「いや、でも…。」
「作戦を思い出せ!!」
「巨人たちは任せろ!!」
「あんたらはアニキを頼む!!」
言い置いて次々と車外に飛び出していく。
「ジャスミン、あたしたちも行きましょう!」
「この場は奴らに任せろ!!」
「……分かった!」
車外に飛び出しながら促すナミとゾロの言葉に頷き、その後に続く。
「ここはお願いします!!」
「おう!任せろ!!」
ナミたちと一緒に“本島前門”に向かって真っ直ぐ走り抜ける。
前門が見えるにつれ、その異常が明らかとなった。
「?警備兵たちが全員やられてる…。」
「おおかた、ルフィにやられたんだろう。」
「…もうちょっと隠密行動ってものを覚えてほしいと思うのは私だけですかね?」
「安心しろ。おれら全員が思ってるよ。」
「「「いや、まったく。」」」
ゾロの言葉に、ナミ・サンジ・チョッパーが深く頷いた。が、1人足りない。
「あれ?ウソ、じゃない“そげキング”さんは?」
「「「「あ。」」」」
ジャスミン以外の人間が声を
「仕方ねェ。戻ってる時間が惜しい。」
「そのうち顔出すだろ。」
「はぁ…。」
サンジとゾロが判断する。確かにその通りではあるが、それで良いのだろうか?
(まぁ、確かに今優先しなきゃいけないのはこっちだけど。)
一刻も早く本島に入らなくては。
「じゃ、やりますか。」
ザッ…!
“本島前門”から100m程の距離でジャスミンが足を止める。
「私の後ろに下がってください。」
ナミたちに告げながら、腰を落として構えた。
「ジャスミン、お願いね!」
「またアレをするのか?!」
「もしかして、さっきのヤツをもう1度するのか…?」
チョッパーがジャスミンを見詰める目がキラキラと輝くのを見て、サンジがハッとなる。
「か…め…は…め…。」
ギュイィイイイ・・・・
ジャスミンの両手がゆっくりと光り出した。
高まった気の放流により、ジャスミンの髪や服が揺らぐ。
「波ァ――――――――――――――――っ!!!!!」
ギュオォオオオオオ………!!!!!!
カッッッ!!!!
ドッゴォオオオォオンン……!!!!!
“本島前門”が跡形も無く粉砕した。
「スッゲ――――――――――――!!!」
「マジかよ…。」
チョッパーの瞳の輝きが増し、サンジの口から煙草が落ちる。
「じゃ、行きましょう。」
━エニエス・ロビー本島前門前━
「侵入者だァ――――――――――――――!!!」
「これ以上の侵入を許すな!」
「捕えろ!!!」
ドドドドドドッ!!
ズバッ!ザシュッ!
バリバリバリッ!!!
ドゴォ!!
次々に現れる海兵たちは、サンジに蹴り飛ばされ、ゾロに斬られ、ナミの雷によって焦がされ、トナカイに戻ったチョッパーによって弾かれる。
ドサササササ……!
そしてジャスミンは、ゾロたちでさえ
やられた者たちでさえ、何が起こったのか気付けなかっただろう。
辺りには、既に100人近い海兵たちが倒れている。
「ナミちゃん、凄いねその武器。」
「あんたも充分凄いわよ…。」
ナミの
「そこまでだお前らァ!!!」
周囲の海兵が一通り片付いた頃、新たに増援が現れた。
「我々は“
「“
100人はいるだろうか。何故か犬に
「何で犬?」
「変な恰好。」
「やかましいわ!!!」
単刀直入な女子2人の感想に1番手前にいるリーダー格の男が叫ぶ。
「このエニエス・ロビーの本島、海賊
「そこ、どいてくれませんか?出来るだけ手荒な真似はしたく無い。」
ジャスミンが1歩前に出る。
「ほざけ!!!」
「はぁ・…。」
ジャスミンの言葉を
溜息を
ブワッ!
一瞬ジャスミンの髪がなびいた。
ゾクッ……!
ゾロとサンジ、そして元は野生で生きてきた経験を持つチョッパーの背筋に寒気が走る。
「キャンッ…!」
「クゥン……!」
「ワゥウ……!」
そして
耳を伏せ、ジャスミンから目を離さないが決して視線を合わせない。そして尻尾は足の間に
「お、おい!」
「どうしたお前ら!」
「さっさと動け!」
“
ザリッ…!
ビクッ!
ジャスミンが更に距離を詰めると犬たちが一斉に震えた。
「
「キャウン……!」
「アォン……!」
「キャンキャン…!」
「ま、待て!」
「止まれお前ら!」
ジャスミンが放った“命令”により、犬たちが一斉に逃げ出す。“
100人近くいた兵たちは、そのほとんどが犬の逃走によって一緒に姿を消し、辛うじて犬から降りた10人程度が残るばかりとなっている。
「な、何今の…。ジャスミン、あんた何したの?」
「こっちが“上”だって教えただけだよ。動物相手は
普段は常人程度にまで抑えている“気”を一瞬だけ解放し、実力を見せ付けたのである。
ナミが何とも無かったのに対し、他の3人が反応したのはそれだけ感覚が優れている為だ。
「後は……。」
ジャスミンが残った“
「き、消え、が……。」
「ぐ…。」
「うぐっ……。」
ドサササササッ!
次の瞬間、“
「クソマリモ。お前、見えたか?」
「いや……。」
1度ガレーラカンパニー本社でその実力を目の当たりにしているゾロはともかく、サンジの驚愕は凄まじい。
「さて……。早くルフィくんと合流しましょう。」
ナミたちを振り返り、ジャスミンが促す。
「ったく、先に突っ走りやがって…。どこにいやがるんだ、
「さァ。この島も狭くはないから、探すとなると…。」
ゾロが吐き捨て、ナミが呟いた時だった。
ボカァ…ン!!
島の中心近くで爆発が起きる。
「「「「「絶対あそこだ!!!」」」」」
思わずジャスミンの声も揃う。
「それじゃ…、追いかけるか。」
ゾロの一言にそれぞれ頷いた時だった。
「いたぞ!!」
「絶対に逃がすな!!!」
新手の海兵たちがジャスミンたちの周囲を囲う。
「ったく、もう……。次から次へと……。」
「もう!敵多過ぎ!!」
ジャスミンが溜息を
「ん?」
不意にジャスミンが後方を振り返る。
「どうかしたのか?」
「パウリーさんたちがさっきの巨人たちを倒したみたいだ。すぐにこっちに来るよ。」
チョッパーの言葉に答えているうちに、チョッパーの耳が人間の耳には聞こえない音を
「何だ?この音・・・?」
…………………ゴォオ!
ゴオオオオオオオ!!!
「バヒヒヒ―――――――――――ン!!!」
「キングブルが陸を走ってる……!」
フランキー一家のキングブル‐ソドムとゴモラが
「こっちへ乗れェ!お前ら!!!」
「バヒヒヒヒ――――――――――ン!!!」
ソドムの背からパウリーが叫ぶ。
「ここへ来た
言葉と同時にパウリーのロープが何本も投げられた。
「敵が逃げるぞ!!」
ジャスミンもナミたちに続いてロープを掴み、ソドムの背へと登る。
「バヒヒヒ――――――ン!!」
「衛兵、離れろ!!」
「ウォーターセブンの“キングブル”だァ―――――――――っ!!!」
「うわああ―――――――――っ!!!」
「大砲を用意するんだ!」
予想だにしなかった逃走方法に海兵たちがパニック状態に
「バルルルルルァ―――――――――――――――!!!」
「バヒヒヒ―――――――――――――――ン!!!」
「うわあああああ!!!」
「ぎゃあああ!!」
ソドムとゴモラが次々と海兵たちを吹っ飛ばしながら、凄まじい速さで滑走していく。
「撃ちまくれェ!!!」
「おらおらァ~~~~!!!」
ドォン!!
ドドォン!!
ズドン!!!
ゴモラの背からフランキー一家がライフルで海兵たちを狙い撃つ。
「くそ!!こいつらが本島の門を破ったのか!!」
ドウン!
ガン!
ドッカァン!!!
「海賊たちを止めろ!!」
ドウン!!
ボッ!
ドッカァン!!!
海兵たちも負けじと大砲を撃つが、その全てがゾロに叩き落されるか、ジャスミンの気功波によって空中で爆発させられてしまう。
「ジャスミン!ルフィが今どの辺にいるのか分かる!?」
「裁判所の上!
「裁判所か…。ジャスミン、悪いんだけどあんた先に行ってルフィと合流してくれない?それで絶対にそっから動くなって言って!!アイツがこれ以上暴走する前に早いトコ合流しないと…!」
「なるほど…。OK!じゃ、先に行ってるね。」
「お願いね!」
ナミの言葉に承諾し、舞空術で一足先に裁判所に向かう。
━裁判所屋上・ルフィvsブルーノ━
ドゴォン!!!
ガラガラガラ…ガシャアン……!
「世界がどうとか、政府が何だとか!!そんなもん勝手にやってろ。おれたちはロビンを奪い返しに来ただけだ!!!」
ジャスミンが屋上に到着した時、ちょうどルフィがブルーノを屋上のポール目がけて叩き付けたところだった。
スタッ!
屋上に降り立ってルフィの
「ルフィくん!」
「ジャスミン、何か用か?」
「いや、何か用かじゃないよ…。作戦無視して1人で勝手に飛び出すの止めてくれないかな…。もうすぐナミちゃんたちが来るから、それまで絶対にここから動かないで、だって。」
ルフィの問いに思わず脱力しながら答える。
「何言ってんだ!早ェトコロビンを助けねェと……!」
「だから!ニコ・ロビンさんを助ける為には、みんなと合流して動くのが1番なんだってば!!」
ジャスミンがルフィを
ガラララ…
「ナメていた。まさか“
「ナメンな!!!」
「その上、仲間が来るとはな…。」
ブルーノが、ルフィの
「ジャスミン、お前手ェ出すなよ。」
それを受け、ルフィがブルーノと対峙したままジャスミンに告げる。
「分かってるよ。手は出さない。だけどルフィくん、もし君が殺されそうになったら割り込ませてもらうからね?」
「おう。」
「まぁ、今のルフィくんなら大丈夫だろうけど。」
肩を
「まずはお前か……。」
「お前ェはおれがぶっ倒す!!」
―――――
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第24話 麦わら一味VSCP9
追記 さっき気付きましたが、いつの間にかお気に入り登録が500人を超えてました!ありがとうございます!これからも頑張ります!!
━エニエス・ロビー本島、裁判所屋上━
「“
ズバッ!!!
「うおっ!!」
ドォン!!
麦わら一味船長‐モンキー・D・ルフィと、世界政府直下
ブルーノの“ドアドアの実”の能力をフル活用され、
(悪魔の実の能力ってホントに何でもありだな……。)
その様子を屋上の端まで下がり、柵にもたれかかったジャスミンが見物していた。
一見するとルフィが押されているようだが、その
(精神状態がここまで動きに影響を与える人間も珍しい……。)
元々ムラっ気があって気分に左右されるタイプなのだろう。
ガレーラカンパニーではロビンの裏切り疑惑によって
ジャスミンが思わず呟く。
「単純と言おうか、はたまた純粋と言おうか…。」
判断に悩むところだ。
ドゴォン…!!!
ルフィによって軌道を変えられたブルーノの“
「ダメだ。」
不意にルフィがにい、と笑いながら呟く。
「……おれはこんなんじゃダメだ…。」
ルフィが静かな口調で続ける。
「………“青キジ”に
「ルフィくん…。」
その“覚悟”に一瞬圧倒される。
自分と大して
おまけに…。
(今、“青キジ”って言った……?)
確か“青キジ”とは海軍大将の異名だったと思うのだが……。
「…おれには強くなんかなくったって、一緒にいて欲しい仲間がいるから………!!おれが誰よりも強くならなきゃ、そいつらをみんな失っちまう!!!」
「では…。どうする?」
ルフィの叫びにブルーノが問う。
「力いっぱい戦う方法を考えた…。誰も失わねェように………!!」
ルフィが前かがみになり、自身の両膝に手を置いた時、足首が不意に波打ち、膨らんだ。
「誰も遠くへ行かねェように…。」
ギュポン…
ドクン…!
足首の膨らみが膝の付近に移動し、ルフィの身体が一瞬
シュッ…、シュッ…、シュッ…
「煙?いや、水蒸気……?一体何を…。」
まるで海列車のような音と共に、ルフィの身体から蒸気が立ち上っていく。
「お前はもう…、おれについて来れねェぞ…。」
「何!?」
「おれの技はみんな…。一段階進化する。“ギア
「“ギア”?技が進化する…?」
ブルーノが疑問の声を上げる。
「身体から蒸気を
「おれは、お前らとここで会って良かった。“ゴムゴムの”……。」
ギリギリとルフィがブルーノに向かって拳を構える。
「…狙い撃ちする気か…。
「いや、違う…。」
ブルーノはルフィを
「“
ビュッ!
ブルーノがルフィを
「“
ドンッ!!!
「!!!?」
ルフィの、遥かにスピードを増した一撃がブルーノを
「速い…!今までとは段違い……!!」
ドゴオオ…ン!!!
「…く!!」
吹っ飛んだブルーノが体勢を立て直した時には、既にルフィはそこにいない。
ドカン!!
「オウ!!!?」
後ろからブルーノを吹っ飛ばし、
「“スタンプ”!!!」
ガン!!!
「……!!!」
ブルーノの受けた衝撃は大きいだろう。
あの様子だと、ブルーノはルフィの動きを目で追うことすら出来ていない。
自分がスピードで
信じがたい現実に違いない。
「ルフィくん、良くここまで…。」
どうやってか、身体能力そのものが劇的にパワーアップしている。
先程までは変わっていなかったから、あの“ギア
(原理が分かんないな…。“気”は確かに大きくなったけど、あくまでも身体能力が上がったことで一緒に大きくなった感じだし……。自分で“気を高めた”って感じじゃなかった。)
「“
ブルーノが一時的に能力で離脱する。
「消えた……。」
(いや、“移動”はしてない。)
確かに姿は消えたが、ブルーノの“気”は移動していない。
しかし、何かに
(空間移動系…。亜空間に留まることも出来るなら、説明もつくかな…。)
フッ…!!
ルフィの背後にブルーノが現れる。
「“ドアドア”。」
そのまま掴みかかろうとするが、その両手は
ヒュッ
そしてルフィはさらにその背後に現れる。
「お前らが……、消えるように動くとき。一瞬に地面を10回以上蹴って移動してんのが見えた。コツもわかったし、そういう移動技があるのを知れて良かった。」
(そういう無駄な動きを入れてるから、一定以上からスピードが上がらないんだよなぁ…。)
まぁ、純粋な
「“ゴムゴムの”!!!」
シュンッ!!!
ルフィの両手が後方目がけて思い切り伸びる。
「“
「受けて立つ気か…。バカだな。」
「“
ズドン!!!
ルフィの
「……ホンットに
受けてなお、倒れないブルーノにルフィが半ば感心したように呟く。
「……ほんじゃあ、もっと面白ェもん見せてやるよ。」
ぐっ、とルフィが右手の親指を
「必要無いよ。ルフィくん。」
「あ?」
「もう気絶してる。」
その言葉と同時に、ブルーノの身体が揺らぎ、倒れ込んだ。
「すげェ疲れた…。」
荒い息を
「どうやったの?アレ。だいぶ
ふらついているルフィを見てジャスミンが
「
「……あんまり無茶しないようにね。船長だからって全部背負う必要は無いでしょ?仲間に頼っても良いんじゃないかな?」
「おう。だけどおれは、仲間がいねェと何も出来ねェ。だから、仲間はおれが守るんだ!」
「……そう。」
詳細を語らないのは自分が“仲間”ではないからだろう、と納得してその場は引いたジャスミンだったが、まさか体に負担をかけるのを自覚していながらも平気で無茶をやらかす人間だ、とはまだルフィのことを理解しきれていなかった。
閑話休題
「うし!」
ルフィが気合と共に屋上の柵、その1段高い柱に登る。
「ルフィくん?何を…。」
もし飛び出そうとするなら力づくでも止めなくては、と思ったものの次の瞬間に聞いた叫びで自身も柵に登る。
「ロ~~~~~~ビ~~~~~~~~ン!!!迎えに来たぞォ~~~~~~~~~!!!!」
裁判所の屋上から、目の前の司法の塔に向かって叫んだ。
「ロ~~~~~~ビ~~~~~~~~・・・ン~~~~~~~!!!!
「まぁ、ここまで暴れちゃったら忍び込むも何も無いから良いか……。」
溜息を
ぐぎゅるるるるるる…!!
「ん?」
「だいぶ暴れたからなァ………!!腹減った…。こんな時の為の…べ~~~~~んと~~~!!!」
「いや、それどっから出したの……?」
思わず突っ込むが、肉に夢中なルフィは全く聞いていない。
「うめェ、うめェ。」
ムシャムシャと肉を
(ニコ・ロビンさんとフランキーさんはあの中か…。)
このまま自分が
それに、ルフィがここで
「おし!!
「あ、食べ終わったんだ?」
「ううおおおおォ~~~~~~!!!お――――――――――い!!!誰かいねェのか――――――!?出て来――――い!!!」
「……ルフィくんてホント真っ直ぐだね…。」
何かもう、他にコメントの
ルフィの叫びを何とも言えない気持ちで
ズドォォン!!!
「!」
ガシャァン!!!
「ぐおお!!!」
ギギギギギ…
ガラガラ…
何かが爆発したような音が響いた直後、何かが司法の塔から飛び出し、目の前のフェンスにぶち当たる。
「!」
「あれは……。」
ニコ・ロビンとフランキーが何故か司法の塔から飛び出してきたのだ。
が、勢い余ってフェンスに突っ込んでしまったらしく、外れてしまったフェンスに支えられる形で宙ぶらりんとなった。
「スーパ~~~~~!!!」
フランキーがおなじみの掛け声と同時にフェンスを蹴った反動でベランダ部分に戻ったようだが、拘束はまだ外れていないらしい。
「お―――――――――っ!!!ロビ―――――ン!!!良かった!!まだそこにいたのかァ!!!」
ロビンもルフィに気付いた様子で、真っ直ぐにルフィを見詰めていた。
「“ウエポンズ
ドドドドドゴォン!!
フランキーが2人を追ってきた海兵たちを狙い撃つ。
「フランキーもいるみてェだな。良し!!そこで待ってろ!!!遠いけど飛んでみる!!!」
言い置いてルフィが柱から飛び降り、ゴム人間ならではの反動を利用して司法の塔へ飛び移ろうとしている。
「ちょっ・・・!ルフィくん?!ナミちゃんたちが来るまで待ってって…!」
「“ゴムゴムの”ォ~!!」
「待って!!!!」
いざ、ルフィが飛び移ろうとした時、ロビンの叫びが
「何度も言ったわ。私は……!!あなたたちの
悲痛な叫びだった。
その叫びを聞いたフランキーがロビンに突っかかろうとしたようだが、後ろから現れた
また、
そして、ベランダ部分より下にある窓から残りの
その中にルッチ、カク、カリファのガレーラカンパニーで
(何でドヤ顔?)
思わず冷めた目で見てしまう。
まあ、あれだけ大口を叩いていた割にたかだか10代の小娘にあっさり負け、本人を前にしてもその
いや、それともジャスミンに気付いていないのだろうか?
閑話休題
「死にてェ!!?」
「そうよ!!!」
ジャスミンがわずかに気を
「ロビ――――――――ン!!!死ぬなんて、何言ってんだァ!!?お前!!!」
「鼻ほじんなくても…。」
「あのなァ!!ロビンっ!!!おれたち、もうここまで来ちまったから!!!」
ボッカァァ・・ン!!
ルフィが呼びかける後ろで、屋上の床が突然
「とにかく助けるからよ!!!そんでなァ、それでも・・・まだお前死にたかったら、そしたらその時死ね!!」
「いやいやいや…。」
思わずルフィを見上げて突っ込むジャスミンの後ろで、穴からの爆風により巻き上げられた
ナミは綺麗に着地したが、チョッパーは背中から落ちてしまったようだ。
続いてゾロとサンジも到着し、間を置かずに何故かウソップ、もといそげキングが下から飛んできた。
自分の意志では無かったらしく、着地に失敗していたが。
(どうやって飛んできたんだろ…。)
「頼むからよ!!ロビン…!!!死ぬとか何とか…、何言っても構わねェからよ!!!そういうことはお前…。おれたちの側で言え!!!!」
「そうだぞロビンちゃん!!!」
「ロビン帰って来―――――い!!!」
ルフィの呼びかけに同意しながら、同じく柵の上、その1段高い柱に麦わら一味が並ぶ。
「後はおれたちに任せろ!!!」
麦わら一味が遂に揃った。
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第25話 宣戦布告!ルフィの叫びとロビンの涙
※某紫パンダさんを盛大にディスるシーンが多めに存在する為、ファンの方はご注意ください。
ゴォオオオオ…
屋上だけあって風が強く、服がはためき髪が舞い上がる。
「
「ああ。今、フランキー一家が
「お前が先走ってこんな屋上にいやがるから、おれたちもここに集合するしかねェだろ。」
1番肝心なところを聞いていなかったルフィの為に、ゾロとサンジがこれからの作戦を説明している。一足先にルフィと合流したジャスミンも知らなかったが、どうやら裁判所の両脇の塔のレバーを操作し、
「ロビン…。」
一向に助けを求めようともしないロビンを見て、ナミが呟く。
それを見てジャスミンが口を開こうとした時だった。
「ワッ―――――ハッハッハッハッハッハッ!!!」
品性の感じられない笑い声が響いた。
「このタコ海賊集団!!お前らが
「…権力を持たせちゃいけない人間の見本みたいな人だな……。」
言っている内容からして指揮官のようだが、良くそこまで出世出来たと感心する程だった。
(あのプライドの高そうな連中が大人しく従う程の
よっぽどバックにいる人間に影響力があるのだろうか。
それよりも気になるのは、ロビンが男の言葉に反応を見せたことである。
(“バスターコール”って何だっけ……?)
ジャスミンが記憶を探っている間にも、男がロビンに対して聞くに
20年前に“バスターコール”によってロビンの故郷“オハラ”が消えた、という言葉に対し、サンジやチョッパーも怒りの言葉を発していた。
「やめて!!!それだけはっ!!!」
「ウ~~~ウ、良い反応だぜゾクゾクする。何だァ!?そりゃ、この“バスターコール”発動スイッチを押せって意味か?えっ!?おい…!!」
「それを押せば、何が起こるか分かってるの!!?」
「ロビン。」
「ロビンちゃん…。」
いや、それともそれを感じ取れるだけの感性すら持たないのか…。
「分かるとも…!!!海賊たちがこの島から出られる確率が“
「そんな簡単なことじゃ済まないわ!!!やめなさいっ!!!」
「………んん?
ロビンの
「
「何をバカな!!味方の攻撃で消されてたまるかっ!!何言ってんだてめェはァ!!!」
「20年前……、私から全てを奪い大勢の人の人生を狂わせた……たった1度の攻撃が“バスターコール”…!!!」
「その攻撃が…、やっと出会えた気を許せる仲間たちに向けられた。私があなたたちと一緒にいたいと望めば望む程、私の運命があなたたちに牙を
再び立ち上がり、真っ直ぐに麦わら一味を見詰めてロビンが叫ぶ。
「青キジの時も!!今回のことも…!!もう2度もあなたたちを巻き込んだ…!!!これが永遠に続けばどんなに気の良いあなたたちだって……!!いつか
強い“思い”と“覚悟”が込められた叫びに、ジャスミンは言葉が見付からない。
「ロビン。」
「ロビンちゃん…。」
「そういうことか……。」
麦わら一味たちは、何故
「ワハハハハハハハ!!成る程なァ…、まさに正論だ!!」
その空気をぶち壊す下品な笑い声が響く。
「そりゃそうだ!!お前を抱えて邪魔だと思わねェ馬鹿はいねーね!!ワハハハハ!!」
「……あの
いっそのこと、このまま感情のままに
「あの
「ロビンの敵は良く分かった!」
それまで口を閉ざしていたルフィが不意に呟く。
「そげキング。」
「ん。」
(あれ?これって確か……。)
ジャスミンが
「あの
「了解!!」
(あ、やっぱり。)
「!!?は?」
仮面の男に構うこと無く、
「新兵器、巨大パチンコ。名を“カブト”!その威力とくと見よ!!!必殺…、“
ボオォウ!!!
放たれた弾は瞬時に燃え上がり、その名の通りに“火の鳥”の姿を
ドゥン!!
そして、その狙いは外れること無く、世界政府を象徴する
「さすが。パチンコであんなに正確に狙い撃つなんて……。」
「………!!!」
「………まさか。」
感嘆の声を漏らすジャスミンとは対照的に、仮面の男は動揺のあまり言葉にならず、ロビンでさえ目を疑っていた。
「あ……、ああ!!………あいつらやりやがった…!!
「やりやがったァ~~~~!!!!」
「海賊たちが…!!!“世界政府”に宣戦布告しやがったァ~~~~~!!!!」
その
「正気か貴様らァ!!!全世界を敵に回して生きてられると思うなよォ!!!!」
「望むところだァ―――――――――――っ!!!!」
予想外の出来事にテンパりながら叫ぶ仮面の男に、ルフィが凄まじい気迫でもって叫び返す。
その瞬間、膨れ上がったルフィの気に、ジャスミンは一瞬ピリッと肌が
まだまだ
(これから“化ける”だろうな、ルフィくん…。)
何だかそれがとても
「ロビン!!!まだ、お前の口から聞いてねェ!「生きたい」と言えェ!!!!」
「…ロビン!」
「ロビンっ!!!」
ルフィの叫びを受け、麦わら一味が
「生ぎたいっ!!!!…!!!私も一緒に、海へ連れてって!!!」
そして、ロビンもそれに
その答えに、ルフィが不敵な笑みを浮かべたのが見えた。
その時だった。
ガコン…
ゴゴゴゴゴゴ…
重々しい音と共に、
「
「あいつら、上手くいったみてェだな。」
「あまり無茶して、ケガして無ければ良いんですけど…。」
チョッパーとサンジに続き、フランキー一家を思い浮かべながらジャスミンが呟く。
「ム…。
ガタガタと震えながら
「早く下ろせ。」
「悪そうな顔…!!」
完全な悪人顔で戦いを待ちわびる者、そしてそれを呆れたように見詰める者など、良くも悪くも個性的な面々である。
「ぎゃあああ、来んなー!!!」
「……ルフィくん、あの
情けない悲鳴を上げる仮面の男を見て、ジャスミンが指を鳴らした。
「おう。行くぞ!!!!」
ボキボキ、とルフィもまた好戦的な笑みを浮かべ指を鳴らす。
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第26話 フクロウ驚愕!ジャスミンの真価
今回も、紫パンダさんのファンの方はご注意ください。
「
予想外の
「ロビン!!!必ず助ける!!!」
「来んな――――っ!!!」
それぞれの
特に、ルッチ、カク、カリファ、直接ジャスミンと相対した者たちの彼女に対する視線は鋭い。
ルッチの視線には殺気も多分に含まれていたが、ジャスミンにとってそれは脅威となりえない。
一部から突き刺さる視線を全く気に留めること無く、さて、あの
ズドォォォン!!!
ギギ……!!
爆発音と共に
「!!!
「スパンダム長官っ!!!“司法の塔”から避難を!!」
サンジの叫びに被せるように、“裁判所”の下の方から誰かが叫ぶ。
「邪魔しやがって…!!!何だチキショ―――!!誰だァ―――――――――っ!!!」
「上に立つヤツが無能だと、部下が有能にならざるを得ないもんね…。そう簡単にはいかないか。」
ルフィの怒りを
「誰が無能だクラァッ!!!って、それどころじゃなかった……!!良し!!!良くやった!!!あいつらがやって来る前に“正義の門”へ……!!!来い!!!ニコ・ロビン!!!」
「あっ…!」
いっそ情けない程
ロビンの腕を
「ロビン!!!」
「…真っ先にこの場から逃げようとするあたり、ホントびっくりするくらい
重要人物の
ただ、自分が助かりたいだけだ、あの男……。
「だから誰が
スッ…。
いい加減我慢も限界に達したジャスミンが気功波をぶっ放すべく、右手を構えた瞬間だった。
「!!?ぬおっ!!!カティ・フラム!!!」
フランキーが
「ん?」
「それは…、お前まさか……!!!古代兵器プルトンの設計図!!?」
「……本物だ。信じるか?ルッチ…、カク…、お前ら分かるよな。」
フランキーは本物だと証明するように、ガレーラカンパニー本社で職長を務めていた2人にパラパラと軽く中身をめくって見せた。
「!…。」
「まさかとは思うたが……。貴様、それを自分の体に隠し持っておったのか。」
「ほ…、本物か!?本物なのか!?
ルッチとカクの反応に本物と確信したらしい
(この場でそれを取り出して何を……?取引でもするつもりなの…?)
「ニコ・ロビン。」
ジャスミンがフランキーの意志を
「お前が
「早く
「トムさんやアイスバーグが
フランキーが、代々受け継がれた設計図と、それを巡る船大工たちの想いを語る。
「ニコ・ロビンを利用出来れば確かに兵器を呼び起こせる!!危険な女だ!だが、こいつにはその身を守ってくれる仲間がいる!!!だからおれァ、“
「!?」
「“
CP9たちがその言葉に反応し、ジャスミンもまた疑問として呟く。
「おれが今、この状況で“設計者”たちの想いを
「ぐだぐだ言ってねェで早く渡せ!!!それはおれのもんだ!!」
ボォオッ!!!
「!!?」
「あァ!!!」
フランキーが、手にした設計図を自ら吐き出した炎で燃やしたのである。
「うわああああ――――――――――っ!!!てめェ!!!何をする―――――っ!!!
「私たちの5年間の任務を……。」
「“抵抗勢力”を造る為に残された設計図が、お前ら政府に狙われた………!!本来、こんなもんは人知れずある物で、明るみに出た時点で消さなきゃならねェんだ!!!――――だが、これで“兵器”に対抗する力は失くなった!!ニコ・ロビンがこのままお前らの手に落ちれば“
「フザケたマネを…!!てめェも、今ここで死にてェらしいな!!!」
フランキーの叫びに、
「アニキ―――――!!!フランキーのアニキ―――!!」
ザンバイたちが裁判所の下の階で叫んでいる。
「おい、司法の塔にアニキが!!」
「良かった、無事か!!」
「アニキ助けに来たわいな――――!!」
「ケガは無いですか――――――!?」
「て……、てめェら……。」
次々にフランキーに向かって叫ぶ自身の部下たちの声に、まさか来ているとは思わなかったのだろう。フランキーの顔は
「てめェらコノヤロ―――――、誰が助けに来いなんて…来いなんて…、
そして次の瞬間、状況を理解したフランキーの顔が涙と鼻水で思い切り崩れる。
(凄い顔………。)
「ア――――――ニキ―――――――――――ッ!!!」
「バカヤロ―――――、コノヤロ――――――。泣いてねェぞ――――――――――!」
「うるせェ、お前らァ――――っ!!!」
感動的な再会のやり取りを、ルフィがバッサリと切って捨てた。
「いやいやいや…。」
「「いや、鬼かっ!!!」」
あまりのバッサリ
が、
「ロビンが待ってんだ、早く橋をかけろ!!!」
「あァ、そうだな。さっさとしろてめェら!!!」
「そうよね!!あんたら急ぎなさいよ。ブッ飛ばすわよ!!」
「そんな取りとめの無いナミさんも好きだ―――!!!」
「いやいやいやいや…………。」
続けたルフィの言葉にすかさず手のひらを返した面々に、再度ジャスミンが突っ込む。
ザンバイだけは「ですよね…。」と呟いていたが。
「麦わらァ!!!」
不意にフランキーがルフィに向かって叫ぶ。
「子分たちが世話んなった様だな…。今度は
「勝手にしろォ!!!おれはまだウソップのこと根に持ってんだからな!!!」
「……いや、横にいるだろ…。」
「ご
ルフィとフランキーの会話に、思わずジャスミンも頷く。
まぁ、そげキング=ウソップだと
しかし、声を変えている訳でも無し、ましてや彼の最大の特徴である“鼻”はそのままなのに、何故気付かないのだろうか……。
つらつらとジャスミンがそんなことを考えていた時のことだ。
「うわァ―――――っアニキ―――!!!」
「アニキが
「うおお!!」
「あ~あ。しょうがないな、と…。」
フランキーを回収すべく、ジャスミンも柵の上から飛び降りた。
ヒュウウゥゥゥ……!
ガシィ!!!!
「!!
両手でフランキーの腕を
「うおぉおお!!?何でお前飛べんだ??!」
「暴れないでください、重い……。」
何せ2mを優に超える巨漢である。100kg以上あるのは間違い無い。しかも、落下する勢いも加わったから
ジャスミン自身も降下しながらだった為、多少緩和されたものの、そうでなかったら肩が外れてもおかしくない程の衝撃だった。
フランキーを落とさないように腕をしっかり
ポッポ――――――――――!!!
「?
何故かすぐ近くから海列車の
「行くぞ!!!ジャスミンも来い!!!」
「へ?」
腕を伸ばし、仲間たちを
「まだ走れるよ“ロケットマン”は!!伝説の造船会社・トムズワーカーズをナメンじゃらいよォ―――――っ!!!」
その直後、ココロの叫びと共に、何故か裁判所の中から半分だけかかった
「は!??」
「……!!“ロケットマン”…!?」
ポッポ―――――――――――ッ!!!
「!?ヤバッ…!!!」
助走の勢いそのままに司法の塔に突っ込む“ロケットマン”を
「「「「「「うわああああぁぁぁぁ――――――――――――…………………!!!」」」」」」
「き…、来やがった――――――――――!!!!」
麦わらの一味の悲鳴が遠ざかっていき、合わせて
ズドォ…ン!!!
「「えええぇええええ……。」」
司法の塔に突っ込んだ“ロケットマン”に、思わずジャスミンとフランキーの声が被る。
「おいおいおい、大丈夫かあいつら?!。それに、見間違いじゃなきゃココロのババアもいなかったか、今!?」
「た、確かに…。ルフィくんたちは大丈夫そうだけど、ココロさんは一般人……!」
想定外の事態に一瞬ボケっとしてしまったが、フランキーの言葉にジャスミンもハッとそれに思い当たる。
━司法の塔内━
“ロケットマン”は横倒しになり、辺りには
「…おい!!大丈夫か!!?ココロのババア!!チビ共っ!!何でこんなトコにいんだよ!!!」
「ココロさん!チムニー!ゴンベ!大丈夫ですか!?」
“ロケットマン”の側に倒れているココロたちの所にすぐに駆け寄る。
「“ロケットマン”なんて危なっかしいモン引っ張り出してきて!!なァ、おいババア!!しっかりしろ!!!おい、頼むから…!!死ぬなよ!!死ぬなァ――――――!!!」
「ココロさん…!」
全く反応を見せないココロらに、もしや見当たらないだけでケガでもしたのかとそっと抱き起そうとした時だった。
「「鼻血出た!!」」
「ニャ―――――!!」
不意にココロたちがむくっと起き上がり、ケロっとした姿を見せる。
「鼻血で済むのはおかしいだろうがよ!!!」
「じょ、
フランキーが力の限りツッコミを入れ、ジャスミンも他にコメントの仕様が無くその様子を
フランキーのツッコミがやけに激しいが、その分心配していた現れだろう。
「さて、ココロさんたちは無事だったし、ルフィくんたちは……。」
ボコオォン!!
「よっっしゃ―――、着いた――――――っ!!!」
「麦わら。」
「ルフィくん。」
「
同じく、実は
「ゴ…、ゴムのお前と一緒にすんじゃねェ…。…
「「「「「あるかァ━━っ!!!!」」」」」
ドカァ――――ン!!!
「全員無事だ。」
他の仲間も、大したケガも無く勢い良く
「うん。特に心配はして無かった。」
ジャスミンが呟きながら頷き、
「お前らも
フランキーが冷たく突っ込んだ。
「さて…。“正義の門”に行かれる前にニコ・ロビンさんを助けないとねって…。」
ジャスミンがそれなりの速さで近付いてくる気配に気付く。
「あそこに階段がある!!早くロビンとこ行くぞ!!」
ルフィはまだ気配を感じ取るのは苦手なようで、気付いた様子は無い。
他の面々は、ルフィの後を追おうとしたところでかけられた声で気が付いた。
「待て。」
壁に張り付いた、
(ハンプティダンプティみたいだな…。)
ずんぐりと全体的に丸っこい男を見て、ジャスミンが胸中で呟く。
「チャパパパパ…!!侵入されてしまった―――――!さっきの部屋へ行っても、もうニコ・ロビンはいないぞ――――。ルッチが“正義の門”へ連れてったからな。」
「え!?」
「あ…、あと長官もな。今向かってるところだが行き方も教えないし、おれたち“CP9”がそれをさせない。お前たちを
そう言いながら見せたのは1本の鍵だった。
「鍵!?」
「何のだ。」
「ニコ・ロビンを捕えている
「カイロウセキ??」
「能力者の悪魔の力を無効にする石よ!あんたたちが海に落ちるのと同じ効力らしいわ。」
疑問の声を上げたチョッパーにナミが答えた。
「それでロビンは今も大人しくしてるのか。本当は強いのに!!悔しいだろうな!!」
「お前たちが万が一ニコ・ロビンを救い出すことがあっても、
「じゃ、
ヒュッ!
ドゴォン!!!
ルフィのパンチが迫るが、一瞬早く男が避ける。
「……あいつもあの技使えるみてェだ。」
(…ここでダイヤはハンマーで簡単に壊せるって言ったら、
男が避けた瞬間にスリ盗った鍵を、手の中で
「
「探してるのってコレ?」
「「「「「「「「え?」」」」」」」」
鍵が無いことに気付いたらしい男にジャスミンが鍵を
「お、お前いつの間に!!?」
「さっきルフィくんの攻撃を避けてた時にちょっとね…。大事な物スられても気付かないなんて、
「良くやったわ、ジャスミン!」
予想外の事態に一瞬
「そ、それは別の
鍵を盗られるという失態に、何とか再び上位に立とうとしてか、男が言葉を続ける。
「じゃあ、お前らを仕留めて鍵を奪い、ロビンの
「くだらねェ時間
「――――――でも、ロビンの方がことを急ぐわ!」
ゾロとサンジにナミが続ける。
「まず確実にロビンを奪い返して、鍵はその後で良い!!あんなの放っといて急ぎましょ!!」
「チャパパパ、お前頭良いな。――――でも、そんなことしたら、そんな鍵なんか海へ捨てちゃうぞ!!チャパパパ!おれたちはチャンスを…、ぐへェ!!!」
ベシャ!
“
「ジャスミン!!?」
「動きが見えねェ……!」
ナミとゾロが彼女を
「で?」
「チャパッ…?!」
「他のCP9はどこにいて、“正義の門”へはどうやって行くの?」
「教える訳ないだろ!!!」
「じゃあ、良いや。……ちょっと邪魔だからさ。しばらく寝ててもらえないかな?」
ジャスミンが拳を構える。
「おれたちは“CP9”だぞ!やれるもんなら・・・・!おぐぅっ!!!」
男が迎え討とうとした時には、瞬時に距離を詰めたジャスミンの拳が的確に
「バ…、バカな…。
ドサァ………!
「まずは1人目。」
いよいよ、ジャスミンの
・ジャスミンの道力について
ジャスミンのの道力や戦闘力について気にされていた方がいらっしゃいましたので、今回悩みましたが決めてみました。
道力=戦闘力ではありません。道力は武器を持った衛兵が10、と武器込みの数え方らしいので、ややこしかったので勝手に成人男性の道力が10と解釈しました。それを戦闘力に換算すると一般的な成人男性で5(ドラゴンボールで銃を持った男の戦闘力が5だったので)です。ジャスミンの戦闘力はギニュー特戦隊以上、ナメック星時の悟空以下と考えて地球人の枠を出ない線を考慮しつつ18万とし、それを倍にして道力として換算して36万です。
賛否両論あるでしょうが、二次創作ということでご了承ください。
追記:ジャスミンがフランキーをキャッチした場面で、いくら何でも戦闘力の割にジャスミンの力が弱過ぎると違和感を覚えられている方が多数いらっしゃいましたので、説明させていただきます。
仮にフランキーの体重を100kgと仮定して説明しますが、この場合立っているフランキーを持ち上げたのではなく、落ちて来るフランキーを途中でキャッチした、というのがミソです。この場合、落下した勢いとスピードがプラスされているので、そのまま100kgの負担がかかった訳では無く、単純計算で10倍くらいの負担がジャスミンの両肩に一気にかかったことになります。一説によると大人1人が1mの高さから落下した時の衝撃は1トンちょっととのことなので、推定5~6mを落下した時のフランキーをキャッチした衝撃はそれ以上です。
※本来はもっと詳しく説明したいのですが、計算式が複雑すぎて根っからの文系かつ数学に関しては赤点ぎりぎりだった作者には理解出来ませんでした・・・・・。
また、同じ10kgの荷物を持ってもリュックで背負った時と、買い物袋で持った時では重さの感じ方と負担のかかり方が違うので、そういった意味もありました。
つまり、普通に担ぎ上げるならジャスミンも鍛えているので100kgくらいなら平気です。ただ、今回のケースでは落下の衝撃と持ち方の問題であんなにヘロヘロになっていた訳です。詳しく文章に入れようとすると本題からどんどんズレていく自信があったので、省略させてもらった結果分かりづらくなってしまいました。
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第27話 新たなCP9登場!!!迫る影の脅威
いつの間にかお気に入り登録が600人を越えました!ありがとうございます!!
「まずは1人目。」
静かに、しかし一瞬で男‐フクロウを沈めたジャスミンが呟く。
「い、一撃……!?ウソだろ、オイ。あいつもCP9の1人、決して弱くはねェ筈だ…。しかも、動きが全く見えねェ…!」
「確かにびっくりしたけど、ジャスミンだもの。」
「スッゲェな~~~!ジャスミン!!」
その様子を見ていたフランキーが己の目を疑い、ナミとチョッパーに至っては一周回って“ジャスミンなら何でもあり”と受け取っていた。
だが、ゾロとサンジはジャスミンの実力に警戒してか、探るような目を向けている。
ジャスミンももちろんそれに気が付いてはいたが、突然現れた自分を警戒するのは当然、と甘んじて受け入れていた。
「おっしゃあ!行くぞお前ら!!!」
「おい、待て!!!!」
そう言うなり走り出そうとしたルフィを、寸でのところでゾロが捕まえる。
「ほがががが!!!」
…掴んだのが顔だったせいで、ルフィの顔があり得ない程伸びていたが。
「ふんごがががが!!!放せくらァ!!!」
「止まれ!!もうちょっとだけだ!!これからの各自の動きを確認するまで待て!!!」
(人間の顔ってあんなに伸びるものだっけ………?)
ああ、ゴムだからか…。
ジャスミンが自問自答しつつ、ルフィたちの側に歩み寄る。
「で。これからどう動くんですか?」
本来、指揮を
「その前に確認したいんだが、“ルッチ”ってのはあの
「そうです。」
「……そいつとロビンちゃんが一緒にいるんだったら、ルフィだけでも先に行かせよう。ルフィ!お前はとにかく
「ロビンくんが門を
サンジの言葉に
「では、ルフィくん以外はまずは鍵を揃えることが第一、ということで。」
ジャスミンが頷く。
「ふぎぎぎ!!!」
「
進むことしか考えていない
「「「「「「おう!!!」」」」」」
そして、それぞればらけ、司法の塔を駆け上がる。
ただ、ジャスミンだけはまだその場に残っていた。
「?あんたは行からいろかい?」
「もちろん、行きます。でも、ココロさんたちはどうするんですか?」
どう見ても非戦闘員の老人と子ども、ペットを残して行くには不安が残る。
ジャスミンの性格上、彼女たちの安全を確保していないうちに動くのは不可能なのだ。
「んがががが!!心配
「おねーちゃん、頑張って!!」
「ニャッニャ――――!」
「…わかりました。気を付けて。」
わずかに
そう思い直し、ジャスミンもまた司法の塔内へと走った。
━司法の塔・4階「狼の間」━
タタタタタタッ!
ザッ………!!!
ジャスミンがそこに
ドカァン!!!
ドサ…
CP9の1人の、ナマズのようなヒゲを生やした男‐ジャブラによって
「ウソ、そげキングさん!!」
「あぁ?」
ジャスミンの叫びに
「お前は…。そうか、お前がルッチの野郎が言ってた女か。」
「そげキングさん!大丈夫ですか?」
「ゲホッ……!……ね…、寝起きの一発の威力か、これが…!!」
「はは…!ぎゃははは!!お前らが来たか。政府の
グビッ…
そう言って酒瓶を
「忠告?」
「ああ。あの野郎、珍しくおれたち全員に忠告してきやがった。もし、黒髪のポニーテールの女と
「全員に忠告、ね……。その割に、あの口がチャックの男は人のことを
挑発するようにジャスミンが
「口がチャックの男ってのは、もしかしなくてもフクロウか。………そういやあ、あの野郎は新しい噂を仕入れるだのなんだの言っていなかったかもしれねェなァ。」
「へぇ…。じゃあ、あなたは違うって?」
挑発しながら立ち上がり、
「ああ。お望み通り最初から全力で相手してやるよ。安心しろ……。」
そう言いながらネクタイを外す
腕や顔が毛皮で覆われ、爪が数倍に伸び、口元からは鋭い牙が覗いた。
「え!!?」
「やっぱり能力者…。それも肉食の“
「見た目と違って…、いたぶる趣味はねェからよ。」
「あ…、“悪魔の実”!!?」
「“イヌイヌの実”モデル“
「
「……!!
「く……、くそォ…!!!」
ばっ!!
「ウ、じゃない
「何だ…、
「何だろうがやるんだうるせェ!!!…おれはロビンを助けに来たんだ!!!」
「
その“覚悟”に、ジャスミンの口元に笑みが浮かぶ。
なら、自分は今回は
パラ…パラ…
不意に上から何かが落ちてくる。
「ん?」
「まさか…!」
バキバキ!
ピキ、ピキキ…!!
見れば、天井一面に大きな
「うわ!!天井が!!」
「……手抜き工事?」
「いや、
思わず呟いたジャスミンの微妙にズレた発言に、
そんなことをやっている間に、次第に落ちてくる破片も大きくなっていった。
「…逃げた方が良さそうだね。」
「崩れる!!!」
その直後だった。
ボコォン!!!
天井の決壊と共に、
「うわあ!!」
ゾロと
「うおっ!!いかん!!」
「キリ――――――――――ン!!?」
……何故かキリンが落ちてきた。
「“
「キリンが喋りながら落ちてきた―――――――――っ!!!」
……
「ぎゃ~~~~っはははは!!!カク!!!お前のその能力サイコーだ!!!」
「
「……何てカオス。」
落下しながら叫ぶゾロの声を聞きつつ、ジャスミンが呟いた。
━その頃、
「遅い!!!!」
部屋中に、妙に
「ドラゴンボールはもう6つ集まってるじゃねェか!!!そのジャスミンとかい言うガキは、一体いつここに来やがるんだ!!!!」
ガァンッ!!!
「ひいぃっ…!!」
そう言って投げ付けられた宝箱が、目の前の床で跳ね上がり、音が部屋中に響いた。
それを
どうやら、ジャスミンが6つのドラゴンボールを集めたことは既に彼らのドラゴンレーダーを通して明らかになっているらしい。
「な、7つ目のドラゴンボールはここにあります…!!奴は必ずここに現れる筈……!!!どうか、もうしばらくお待ちを!!!」
「ちっ………!!!まァ、そうだな。最後のドラゴンボールはここだ。もうすぐおれ様の願いが叶うんだ。焦ることもねェか……。」
現在は
ジャスミン自身も知らぬ間に、新たな
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第28話 鍵はどこに!?繋がれた2人と華麗なる手のひら返し
思っていたよりも早めに更新出来たので、年内にもう1回更新を目指します!
━司法の塔・
ガラガラガラ…
日本庭園を
「“ウシウシの実”モデル
「キリンの何がおかしいんじゃ!わしは気に入ってると言うとろうが!!」
目の前でキリンと
地球には
が、目の前の敵を放置したまましなければならない会話には思えない。
(状況分かってんのかな、この人たち……。)
思わずゾロの隣で沈黙してしまう。
「……あのハトの野郎は“
「たぶん、政府か“CP9”のトップからか支給されたんだと思いますよ。まぁ、単に“悪魔の実”として支給したのか、動物縛りを狙ったのかは分かりませんけど。」
ゾロの呟きを拾い、ジャスミンが答える。
「あぁ?何で分かる?」
「…そこのキリンの人は、さっき『“
「
「そういうことです。」
つらつらと自身の推察を話すジャスミンに、ゾロが納得したように頷く。
「それはそれとして…。」
「あん?」
ジャスミンが不意に目線を前に戻す。
「いつまでやってるんでしょうね?あの人たち……。」
「…………。」
未だ言い争いを続けるCP9の2人を見やって呟くジャスミンに、ゾロも思わず無言になった。
「そろそろ意識をこっちに戻してくれないと、身構えて無い相手に攻撃するのも
「面倒くせェな…。」
チャキ…
そう言うなり、ゾロが既に抜いていた刀を構え直す。
「オイ、キリン…。いつまでそこで言い争ってんだ。おれには時間がねェと言った筈だぞ!!そのままで良いんなら、そのまま斬らせてもらうぞ。」
「
その言葉と共に、カクの姿が変化していく。
「見せてやる……。生まれ変わったわしのパワー!!」
が、いざ変わったその姿を見て
「ぷっ………!!!」
ジャスミンは耐え切れずに
「かっこ悪っ!!!」
ゾロも思わず突っ込んだ。
「
「ぎゃ~~~~~~~っはっはっはっはっひ~~~~~~~い!!!」
ガビ――――――――――ン!!という文字を背負ったようなショックを受けたカクを
カクの“
何というか、全体的に四角い。
仮に効果音を付けるなら“の――――――ん!!”だろうか。
キリンだから首が長くなるのは仕方無いのだが、体が人間だとアンバランスさが余計に引き立つ上、人間の姿の特徴である“四角い鼻”が体全体に
「ぎゃ――――――はっはっはっ!!!」
「いつまで
(ああ、あっちの人ってジャブラっていうんだ・・・・・。)
再び始まったCP9の2人のやり取りに、思わず思考が
その時だった。
「!」
ジャスミンが気付いたのとほぼ同時に、
ヒュウン!!
ガチャン!!
「わっ!!」
何かが風を切って飛んできて、ゾロの手首に音を立てて
「……!?何だ、この
「ぎゃ――――――!!しまった!!すまない、ゾロくん!!」
後ろから
「…
「オイ、何の
「そいつは!!たぶん、例の
「それを何でおれに
「だ……、だってよ!!キリンの顔がおかしくって……、つい手元が狂って!!」
「…おのれ、どいつもこいつも……!!」
言い訳しながらカクを指刺して笑う
そして怒りのままに両手を床に付け、カポエイラのように長い首ごと体を回転させ始める。
「“
「お!」
「うお―――――!!!何だ?!何か来るぞ――――――――――!!!」
そのカクの様子に、ジャブラ(先程、ようやく名前が発覚した)が声を上げ、何かを感じ取った
「んん…、“
ドウッ!!!
カクを中心に、そこから円形状に凄まじい風が巻き起こった。
「こりゃ、いかん!!」
ジャブラは直後にその場を離脱し、
「伏せろ!!ウソップ!!」
「うおお!!」
ゾロが
そしてジャスミンもまた、ゾロたちが上手く
その一瞬後、
ズドオォ……オン!!!
ズズズ…!!!
凄まじい
「くっ……!」
「うわああああ――――――――――っ!!」
巻き起こる風から顔を腕で
少し経った後、風が収まり身を起こす。
ガラ…
ドス…!
カラン…
あちこちから
「
少し離れたところからゾロが批評しているのが聞こえた。
「……な、何だァ!?おい…、何も壊れてねェじゃねェか……。」
「天井見てみてください。」
拍子抜けしたような声を出す
「?あれ?あんな所から空が見える………!!?うおお!!まさか!!!この“司法の塔”が斬れてズレてんのかァ!!?オイオイオイオイ、危ねェよォっ!!!」
「周囲全てに広がる
驚愕も
「フン!みっともねェ。戦闘で感情
タン!
と避難していたジャブラが、カクの後ろにどこからともなく着地した。
「やかましい!わしはキリン気に入っとるんじゃ!キリン大好きじゃ。」
「あー、わかったわかった。」
「どうでも良いけど、さっさと始めてくれないかな?
放っておくと、再び言い争いに発展しそうなCP9たちにジャスミンが
「おれのせいじゃないでしょ――――がァ!!!」
「おめ―――――がおれに突進してきたからこうなったんだろ!!」
「そりゃ、さっきの攻撃でお前がボ―――――ッと突っ立ってやがるから……!!良いから、外せ早くこの
「鍵なんかねェよ~~~~~~~!!!」
「何――――――――――っ!!?」
「あ~、さっきの攻撃を
ゾロと
「何やっとんじゃ、あいつら。」
「それ、言える立場だと思ってる?」
しゅるる・・・、と音を立てて人間に戻ったカクが突っ込むが、それにさらにジャスミンが突っ込む。
全くその通りな状況ではあるが、さっき似たようなことをしていた人間には1番言われたくないセリフである。
「
「!!……じゃ、鍵は…!!」
「“CP9”の誰かが持ってる…。倒して手に入れるしかない。」
「無茶言うな!こんな状況で戦えるか!!!」
「針金か何かで開きませんか?」
言い争っていても進展しない為、取り
「針金ったって……。急に言われたって持ってねェよ。」
「ヘアピンならあるんですけど…。」
髪を留めていたヘアピンを1本引き抜いて見せる。
「悪ィ!貸してくれってか、ダメにしちまうから1本くれ!!」
「どうぞ。」
ヘアピンを
針金状に広げ、四苦八苦しながらなんとか
「おい、お前たちっ!!!」
「
「番号!?」
カクとジャブラの
「どの鍵がどの
「え!?本当か!!?」
「え~っと…。あった!これか!」
カクの言葉を受けてジャスミンが
「良し!何番だ!??」
「2番ですね。」
「2番だ!!!開けてくれ―――――――――!!!」
が、
「外れだ。」
「わしもじゃ。残念。」
「何だよ、期待持たせやがって!!」
「じゃあ、他の2人の“CP9”の持ってる鍵ってことか…、ってオイ!ジャスミン!!お前が持ってる鍵は!!?」
「あ。」
完全に忘れていた。
「え――――と…。」
「頼むぞ…!今となっちゃ、それが最後の希望だ!!!」
「4番。」
「だああああ!!」
「お前も外れかよ!!チクショ―――――!」
「………なんか、すいません?」
思わず謝ってしまった。
「仕方ねェ。先に……!」
ドッ!ドウ!
チッ!
ジュッ!
ドッガァアアン……!!!
「『先に殺した方が勝ち』、とでも言うつもりならこっちも一切
ジャブラが
カクとジャブラ、それぞれにジャスミンの気功波が放たれる。
放たれた気功波は、それぞれカクの帽子を
「「…………。」」
カクとジャブラはお互い顔を見合わせた後に後ろを振り返り、ジャスミンが開けた壁の大穴を確認して再びジャスミンを振り返る。
「あ――――…。先にそのヘアピンで
「そうじゃな。それくらいは待ってやるわい。」
何て華麗な手のひら返しなんだ。
ゾロと
そして、その様子を見た
コイツ1人いれば十分じゃねェかな、と。
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第29話 怒りの矛先
ハッピーバースデー、ジャスミン!!!
今回が恐らく年内最後の更新になると思います。
ちょっと本編ネタバレすると、ジャスミンはガチで怒ると口調が変わる人です(笑)。
それではみなさま、良いお年をお迎えください!!
来年もよろしくお願いします!!!
━
ガチャガチャ…!
ガチャッガチャッ…!
ガチャッ……!ガチン!!!
「あ、開いた……!」
ドサッ!
「良し!」
「お――――!!」
パチパチパチ……!
「思ったんだけどよ……。」
「?どうしました?」
ポツリ、と呟いた
「これ、わざわざ鍵集めなくても、ロビンの
「確かに…!」
思わずハッとする。
それならば、わざわざ鍵を集めて回るなんてリスキーなことをしなくても良いではないか、と思い至った時だった。
『プルプルプルプル…』
『プルプルプルプル…』
「ん?」
不意に、誰かが口でプルプル言っている声が聞こえ、音のした方に目をやる。
見れば、カクがポケットから子電伝虫を取り出しているところだった。
『ガチャ。』
『
「は?」
ドンッ!!!!!
例の仮面の
ここに来ての
「う……!」
「ぐぉ…!」
「ひっ…!」
「くっ…!」
直接自分に向けられたものでは無いが、それをまともに受けてしまった4人の背筋に冷たいものが走った。
それは、太古の昔より生き物に刻み付けられてきた本能。圧倒的な強者を前にした、生物としての本能が彼らに
例え猫に襲う気は無くとも、圧倒的な強者というのは時に存在自体が恐怖となり得る。
かつて、
しかし、いくら怒りに気を取られたからと言ってジャスミンがここまで気のコントロールを失うことも珍しい。
いや、珍しいどころか初めてのことだった。
慣れない環境での生活と不安が、本人も自覚の無いままにストレスとなっていたのだ。わずかな感情の乱れが、既に呼吸にも等しい気のコントロールを
しかも、ジャスミン本人は未だにそれに気が付いていない。子電伝虫から語られる、
『・・・・・奪い去ろうとするバカどもを、より確実に
「へぇ………。」
ズンッ……!!!!
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ………!!!!
「うぐっ!」
「ぐぁっ!」
「ひぃっ!」
「くぅっ!」
とことん自分本位な考えしか持たない
「あっ。」
しかし、4人が再度
ガクンッ!
ドサッ!
「はぁっ…!」
「はっはっ…!」
「な、何だったんだ?今の…。」
「ちっ・・・・・!」
不意に消えた圧迫感に、4人はそれぞれ膝を付き、または尻餅を付いた。
地鳴りと共に揺れていた塔も、パラパラと細かい
『…島を離れて!!!エニエス・ロビーに“バスターコール”がかかった!!!島にいたら助からないわ!!!』
『余計なこと言ってんじゃねェよ!!!』
子電伝虫も怯えてはいたが、
ロビンの避難を
「……あの
既に落ち着きを取り戻してはいるものの、先程よりも一層低い声でジャスミンが呟く。
「“バスターコール”が……、かかったらしいわい…。」
「何をしとるんだ
カクとジャブラが仕切り直すように呟くが、内心では自身たちの長官に対し、考えつくだけの
眠っていた獅子を叩き起こしただけでなく、わざわざ尾を
先程、ジャスミンの本来の気の
ただでさえ勝てない相手が、怒りによってさらにその闘志を燃やしているのだ。例え100回
「おれたちもグズグズしちゃおれんぞ。」
「さっさと片付けて“正義の門”へ急がにゃあな………。」
カクとジャブラが、この場をいかに切り抜け、任務を
「……ブオオォオオォオ…!!!」
…ドカァン!!!
突然何かの生き物が
「な、何だ!?」
「この気は……?まさか?!」
「……ブオオォオオォオ…!!!」
徐々にジャスミンたちがいる部屋に近付いて来ているのがわかる。
「一体何じゃ…?」
ズドォオオ…ン!!!!!
「ブオオォオオォオオオオ!!!!!」
壁をぶち破り、5~6mはある“怪物”が部屋に飛び込んできた。
……チョッパーの帽子を被った“怪物”が。
「チョッパーくん……!!!」
「「何ィ!!!?」」
ジャスミンの叫びに、
「あれがチョッパーだと?!」
「うううわァ――――――!!!やめろ―――――――――っ!!!」
「ブオオォオオオオ!!」
ズドオォン!!!
我を忘れたように襲いかかる、チョッパーらしき“怪物”の爪をかいくぐりながらゾロがジャスミンに叫び返し、
「おい!!アレが本当にチョッパーか!?何でおれたちがわからねェ!!!」
「わかりません!!!でもあの帽子と角!それにこの気は間違い無くチョッパーくんです!!でも、あの姿は一体……?!」
ジャスミンも叫び返しながら、襲って来るチョッパーの爪を
「…様子がおかしいぞ…!!死にそうなのは…、あいつの方じゃねェのか………!!?」
「ブオオ…オオ……!」
見れば、先程飛び込んできた時よりも荒い息を
何よりも、どんどんとチョッパーの気が弱くなっていくのが感じ取れた。
「気が、どんどん弱く……!」
「どど…、どういうことだ?」
「あの姿でいることがとてつもねェエネルギーを食っちまうとか……!!放っておくと今にも力尽きそうだ…!!」
ゾロのその推測は、恐らく間違ってはいない。
こうしている間にも、チョッパーの気がみるみるうちに
「仕方無い……!」
他に方法を考えている時間は無かった。グズグズしていれば、チョッパーの命が危ない。
ジャスミンは真っ先に思い付いた手段に
ガッ!
ジャスミンがチョッパーから目を離さないまま、足元に転がっていたある物を蹴り上げ、右手でキャッチする。
「おい!お前何を……!!!」
「色々考えている時間はありません!
フッ…!
言うや否や、持っていたそれ━先程
「ブオ…?!」
見失った
ガチャン…!
巨大化したチョッパーの角に、
「ブオ!?」
ドクン…!
ドクン…!
ズズ…、ズズズズズズズ…!!!
チョッパーの体が数回跳ねた直後、ビデオの逆再生を見ているようにチョッパーの体がみるみるうちに縮んでいく。
コテン…!
そして、普段の2頭身に戻り、そのまま倒れた。
「チョッパーくん!」
「チョッパー!」
「チョッパー!おいおい、まさか死んでんじゃねェだろうな……!」
すぐさま駆け寄ったジャスミンがチョッパーを抱き起す。
「大丈夫……!傷は酷いけど、気絶してるだけです……!!!!」
「まったく…。
カクの、
少しでも戦いを有利に進めようとしているのか、会話の主導権を握ろうとしているのだろう。
「ふん……。笑ってねェで後悔しろよ………。…もう2度と来ねェぞ。今みてェな、おれを討ち取る
「ならば、続きといくとしようかの……。“
ガギギギィ!!!!
言葉と同時に放たれた“
「その長ェ首…!!」
たたんっ!!
カクが体勢を戻す前にゾロが前に踏み込む。
「弱点にならねェと良いな。」
「その心配は無いわい!!!」
ビュッ!!!
言うが早いか振り抜かれた刀を、その長い首を生かし、場所は全く移動しないまま首だけのけ反り
「首を自在に操るだけの
ほぼ同時に、ゾロが3本目の刀を
ビュッ!!!
「“
ドゴォン!!!
カクの鼻と、ゾロの3本の刀が激しくぶつかり合う。
ブォッ!!!
ビリ…ビリ…!
「うおっ!!!…何だ、側にいるだけでこの衝撃!!」
「鼻先で
その衝撃に空気が震えているのが分かる。
「おら!!!」
ギィン!!!
ボォ――――――――――…ン!!!
ゾロが
「あ、凄い。岩に四角い穴が開いた。」
「ひいぃいっ!!!何だ、あの鼻!!!っつうか、ジャスミン!お前注目するのがそこかよ!!」
「割らずに穴だけ開けるのって結構難しいんですよ?私も出来るようになるのに時間かかったし。鼻では
見事に鼻先が
「いや、しかし。なかなか能力をものにしてるな、カクの奴。」
ゾロとカクの、緊迫したやり取りとはまるで無縁のような顔でジャブラがそこに加わる。
実際のところ、カクがまんまとゾロと
「お…、
巨大パチンコを構え、
「ん?………そう
「そ!!そうだ!!お前の鍵は私がいただく!!!」
チャリン…!!
「さっさと持ってけ…。そして…、ニコ・ロビンを…救ってやれ。」
「……え?お…、お前一体…。」
「どういうつもり?」
「おれは本当は、人殺しなど…したくはねェんだ……。血が嫌でよ…。」
静かな声でジャブラがジャスミンと
「そ…、そんじゃ一応鍵は
「…そうですね。わざわざ無用な戦いをする必要はありませんし。」
その瞬間だった。
ジャスミンに向かって舌なめずりをしたジャブラに、
「ダメだ、ジャスミン!!危ねェ!!!」
「ぎゃはは!!」
ジャスミンが
「“
そして、ジャスミンが顔を上げた瞬間、10本全ての指から“
「!!!」
ジャスミンの体が、大きく前のめりになる。
「ジャ、ジャスミ―――――――――ン!!!」
「気を許すな。おれァ“
しかし、確かにジャブラの10本の爪が食い込んでいた筈のジャスミンの体が、不意に揺らぎ次第に
「え!?」
「何!!?」
「そんなことだろうと思った。」
全くの無傷のジャスミンが、ジャブラの後ろで静かに彼を
「お、お前!!一体いつの間に…!!どうやって消えやがった!!!!」
「“
「あんだと?」
ジャスミンの
「あなたは2つ間違いを犯した……。1つ、仮にも武を
ざり…
ジャスミンが静かに1歩、距離を詰める。
その
ジャスミンとはジャブラを
笑顔だが目が全く笑っていない、徐々に殺気すら
「来いよ、
ジャスミンがジャブラに向かって構えるが、その構えはこれまで見せていたものとは大きく異なる。
拳を開いて腰を落とし、やや体をひねって右手を顔の上にやや突き出し、左手を胸の前に構えていた。
既に口調まで変わっている。
(ヤバイ、チョー怖いんですけど…。)
全く関係の無い
………とんだとばっちりである。
‐用語解説‐
・フリーザ…ドラゴンボールにおいてのかつてのラスボスの1人。宇宙の地上げ屋で、ベジータの元上司。サイヤ人の故郷、惑星・ベジータを滅ぼしたのはコイツ。かの名台詞「わたしの戦闘力は53万です。」は、かつて日本中の読者を絶望に叩き落した。連載が進むにつれ、ドラゴンボール名物の戦闘力のインフレからは完全に置いていかれることとなったが、まさかの劇場版とドラゴンボール超によって華麗なる復活を果たした。原作での最期があまりにあっけなかったので時折雑魚扱い、完全なる過去の人扱いされることもあるが、仮にジャスミンが戦ったらワンパンで殺される。それぐらいの強敵。
・Z戦士…ドラゴンボール(主にアニメ・ドラゴンボールZ)においての主人公とその仲間たち、特に戦士たちの総称。
・残像拳…高速で動いて残像を残し、敵を翻弄する技。なんとなく「分身の術」的な技を想像してもらえれば大丈夫。
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第30話 ジャブラ撃破!ロビンの奪還と反撃へのカウントダウン
お待たせしました!第30話更新です。
いつの間にか、お気に入り登録が800人目前に…。
こんな亀更新の駄文にありがとうございます!
感想もみなさん、ありがとうございます!
今年もがんばって更新したいと思います。
目指せ、年内の完結!!←年が明けたばっかですけど…(汗)
さて、今回も某ナマズヒゲさんと紫パンダさんをディスるシーンが多めなので、ファンの方はご注意ください。
※1月10日、加筆修正しました。……チョッパーの存在を途中からすっかり忘れておりまして……。
ザッ……!
これまで、ほとんど秒殺で相手を倒していたジャスミンが、構えらしい構えを彼らの前で見せるのは初めてだった。
「“本物の
ジャスミンの
「ああ。来い、
(怖ぇ……!)
何の罪も無い
「なら見せてやる!!“
ダッ…!
再度ジャスミンが吐き捨てた
ガッ!!!
ジャブラの両手を、ジャスミンが左腕で受け止めた。
「クソがぁっ!!!」
「その程度?」
「っ……!!!“
ビュッ!!!
ガシィッ!
間髪入れずに放たれた“
「………
ギリ……!
「ぐあぁ!!」
「す、すげぇ……!!」
見ているしか無い
「チ、ックショウ……!!チクショウ、チクショウ、チクショウ……!!クソがぁ―――――――――――っ!!!!」
「!」
「な、何だ…………!!!?」
ジャブラの気が一気に
「“
ジャブラが
ビュン!!
ビュン!!
ビュン!!
その構えのまま、ジャスミンの周囲を駆け回った。
「“
ヒュッ!
駆け回りながら
「…っと!」
ギギイィン!!!
一瞬前までジャスミンが立っていた場所が、
「斬撃か…!」
「“
ドッ…!!!
ジャスミンが着地するより早く、ジャブラの
「くっ……!」
ボコォ……ン!!!
攻撃は受け止めたものの、空中では踏ん張りが効かずに壁に吹っ飛ばされ、辺りに破片が飛び散る。
「ジャ、ジャスミン!おい、大丈夫か?!」
「ぎゃははは!!!どうだ!!おれの“
ガラララ…
「全く…。大した決定打も与えていないのにベラベラと……。」
「っ…!?テメェ、まだ生きて……!!!!」
「ジャスミン!!!!」
多少パーカーやジーンズが汚れているものの、
「時間が無いんだ。悪いけどとっとと終わらせてもらう。見せてあげるよ。“
再度ジャスミンが構えた、次の瞬間だった。
ビュッ!!!
「!??」
「はあぁぁぁぁっ!!!」
ドドドドドドドドッ!!!!!
「へぶっ・・・・・・・・!!!!!!」
一瞬で距離を詰めたジャスミンの、激しい
“
本来の“
ジャスミンの“
あまりの速さに、もはや
「何だ、一体・・・・!」
「はぁっ!!!」
ドゴオォン!!!
「げふっ…。」
とどめに放たれた蹴りが、ジャブラを反対側の壁まで吹っ飛ばし、壁にめり込ませる。
わずか数秒間の攻撃にも関わらず、壁に叩き付けられめり込んだジャブラの姿はボロボロと呼ぶに
ピクピクと微かに
「
(……あそこまでいくと、いっそ相手が気の毒になるのはおれだけなんだろうか…。)
冷めた声で吐き捨てたジャスミンを見ながら、
「さて…。先を急ぎましょうか。」
「お、おお…!ってゾロはどうするんだ?」
頷いた後でハッと気付いた
「いや、何と言うかロロノアさんの場合は下手に
「た、確かに…!」
「取り敢えずニコ・ロビンさんのところに急ぎましょう。この2本で開けばそれに越したことは無いですけど、最悪開かなくても
「そ、そうだな…。まずはロビンくんの救出が第一だ。」
「そうと決まれば…。ロロノアさ―――――――――ん!!先に行ってます!後から追いかけて来てください!!!」
「すまんがゾロくん!!!そのキリンの相手は頼んだ!!!!」
「分かったから早く行け!!!!」
ジャスミンと
「行きましょう、
「ああ!」
日本庭園を模した
タンタンタンタンタンッ……!
「お、おい!こっちで良いのか!?」
下に降りるのかと思いきや、迷わずに階段を駆け上がり始めたジャスミンに、手を引かれてつられて駆け上がる
右手をジャスミンの左手に引かれているが、左手で意識の無いチョッパーを抱え、自身の巨大パチンコを持っている為、うっかりするとどちらかを落としそうになる。
「“正義の門”への行き方知ってるんですか?!」
「そりゃ、知らねェけど………!」
「私も知りません!でも、下に降りて
「な、なるほど…!」
振り返らないまま答えるジャスミンの言い分に、
確かに、下にはまだ海兵たちが
途中、カクの一撃のせいで階段がズレているところがあったが、走りを止めること無く飛び越えた。
タンタンタンタンタンタンタンタンタンッ…!!!
バンッ!!
「着いた!」
ゴオオオォオオオォオ……!
屋上への扉を開けた瞬間、強い風が吹き付ける。
バサバサバサッ…!
髪や服が、風を
「!“正義の門”が、完全に開いてる…!」
「おい!ジャスミン、あれを見ろ!!」
「え?!」
「ロビンだ!!!」
ここからでは
「・・・!まずい、もう門を
「行かせるかぁ……!!!」
言うや否や、
ギリリリ…!
「いっけぇえ!!!」
ビュッ!!!
ドゥン!!
「やった!」
「おりゃ!」
ビュッ!!!
ボボボボォン!!!
続けて放たれた弾も、途中で分裂してロビンの近くに立つ海兵たちに続けざまに命中する。
「この距離で、しかもパチンコでさすが・・・!」
ジャスミンが感嘆しつつ、
「……何でポーズ付けてるんですか?」
「
「いや、何で歌うの?!」
巨大パチンコを肩に担ぎ、左手で空を指してポーズを付け、何故か歌う
「って、こんなことしてる場合じゃない…!
再度チョッパーを
「お、おう!」
自分に比べてかなり
「お、重くないかね!?」
「それなりに!」
「どっちだそれ、はぁあ!!!?」
ギュン!!
「うぼぼあぼぼぼぼ……!!!!」
「
そのままロビンを目指して飛ぶジャスミンの背中で、
が、チョッパーを落とさないようにしっかり抱えているあたりはさすがである。
ズザザッ……!!
ものの10秒足らずでロビンがいる“ためらいの橋”に到着する。…着地の勢いが強過ぎて橋の
「な、何だお前たちは…!!」
「一体どこから来た…?!」
海兵たちには、速過ぎてジャスミンたちが急に現れたように見えたらしい。動揺のあまり、銃を構えることすら忘れている様子だった。
「ロビンくん!!!」
「
「私のことは気にしないでください。単なるルフィくんたちの友達です。」
「友達……?」
ジャスミンのことを知らないロビンが疑問の声を上げるが、今は細かい説明をしている暇は無い。
「
「
手に入れた鍵2本と、念の為に新しいヘアピンを1本抜いて振り向かないまま
「さて…。あなたたちの相手は私がします。……特にそこの
ザッ………!
構えて告げるジャスミンの
うまくいけば、次かその次でエニエス・ロビー編は終わりです!ドラゴンボール集めもいよいよクライマックス!!
気長に更新をお待ちください!
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第31話 非情なる攻撃!バスターコールとジャスミン怒りの覚醒
毎回、タイトル考えるのが大変で、タイトルで半分以上ネタバレしてしまいます…。文才が欲しい…。
前回、お気に入り登録がもうすぐ800人、と書かせていただいたんですが、気が付けばアレ、もうすぐ900人…?(震え声)
嬉しいです、ありがとうございます!感想・評価も励みになります!
これからも頑張ります!!!
「ひいぃいいぃ…!」
情けなくも腰を抜かした
「…お前みたいな、権力を
冷めた声で語るジャスミンに、
「う、
ドドドドドドンッ!!!!!
一瞬、勝利を確信した
シャシャシャシャッ!
ジャスミンの両手が残像を残す程高速に動き、全ての銃弾を
「……悪いけど、銃は無駄だよ。こんなもの、いくらでも止められる。」
言葉と同時に、両手を突き出し、握っていた
バラララララ……
「だ、弾丸を
「バケモンだ………!!!」
ジャスミンの両手落ちた10近い弾丸銃撃した海兵たちが
「この程度出来る人間なんてゴロゴロいるよ。…私のいたところではね。」
後半は小声だった為、風の強い橋の上では海兵たちには届かなかっただろうが。
「彼女、一体何者なの…?」
「さっき彼女自身も言っていただろう?ルフィくんの友達さ。」
その様子を見ていたロビンが、驚愕も
ヘアピンで
その
「ルフィの…。」
それを受け、再びジャスミンを見つめるロビンの目には、先程とは違う光が宿っていた…。
ザリッ……!
「ひっ……!何なんだお前ェ?!何で銃が効かねェんだよ…?!」
1歩、前に出たジャスミンに
「当たらなければどうってこと無いんだよ、あんなもの。…それより、覚悟は出来てるんだろうね?」
「か、覚悟だと…?!」
「別に海賊に対して
喋っているうちに怒りが再熱したジャスミンの口調が徐々に荒れていく。
かろうじて“気”を抑えるだけの理性は残ってはいたが。
「だから、誰が
「良し!外れた!!!」
ガチャンッ!!
「バカなっ!!へ、ヘアピンで
ロビンが自由を取り戻した自身の手を見つめる。
「
ロビンが
「礼なら全てが済んでから、必死に戦った者たちに言いたまえ。君は
「同感です。…取り敢えず、この場はお譲りします。」
ジャスミンも
「……ええ。」
くるりと振り返りながらロビンが頷く。
「“
ロビンが胸の前で軽く手をクロスさせると同時に、
「え!?何だ!!?」
「“スラップ”!!!」
ズパン!パパパン!!
「ホゲぶ!!!」
ロビンの掛け声と同時に6本の腕が一斉に
「存分に・・・!!やらせてもらうわ。」
やはりロビンも
「は!ザマァ。」
…ジャスミンもだいぶ
(……コイツらだけは怒らせねェようにしよう…。)
それを見て
「!ん?今、何か聞こえた。」
ボカァ…ン!!!
しかし、それを確かめる前に、“正義の門”のすぐ側の
「え…!?」
「!?さっきまでの“
「“正義の門”が全開になっているせいよ…!あの“
ジャスミンの叫びにロビンが続けた。
ドォン!!!
「!“司法の塔”が!!!」
ガラララララ!!
続けられた砲撃により、司法の塔が半分崩れ落ちる。
「!!まずいぞ、まだみんなが塔の中に……!」
「大丈夫。塔からは移動してるみたいです。こっちに向かってる…。」
「砲撃が始まった…!」
「まずいぞ、ここも危ない!!」
それを受け、
「急げ兵士共、砲撃が本格化する前に!!!」
「はっ!!!」
ジャキキン!
既にロビンによってボコボコにされている
「・・・・砲撃が本格化する前にさっさと脱出したいところですね。」
「橋の向こうの“護送船”、あれを奪う他に助かる道は無さそうね。」
「
ジャスミン、ロビンに続いて
「かかれェ~~~~!!!」
ドゴォッ!!
バキッ!!
ドンッ!
ドンッ!
構えていた銃はそれぞれ狙いが外れ、
ボンッ!
ボカァンッ!
「ぐお!」
「ぎゃあぁ!」
「“クラッチ”!」
バキボキベキッ……!
「ぐぁっ………!」
「ぎゃあああ………!」
「あがっ………!」
ロビンが能力で生やした腕によって次々と絞め落とされ、
「はぁっ!」
ドンッ!!!
「!」
「!?」
「?!」
ボチャン!
バシャアッ!!
ジャスミンの
足場が狭くロビンや
まぁ、本人にとってはだいぶスピードを抑えてはいるものの、周りから見れば目で追うのがやっとだったのだが。
「急げっ!!!ニコ・ロビンを捕まえて護送船に乗せるだけだ!グズグズするな、軍艦が来るぞ!!!」
口だけしか出さない
“バスターコール”が本格化する前に方を付けろ、と言わんばかりにせっつくが、結果としては間に合わなかったようだ。
「ちょ、長官…。もう…、手遅れのようで…。」
「あ!?」
1人の海兵の言葉に、
「あ…………!!!」
そして、忌まわしい記憶を持つロビンもまた、
「うわああああ!!!」
「霧の向こうに――――――――――!!」
「お!!お前ら、逃げるな待て!!!」
「影が見える!!」
霧の向こうから姿を現した軍艦を皮切りに、海兵たちがパニックを起こす。中には、その場から逃亡を図ろうとする者さえいた。
「……………!!!」
「バスターコールが始まるぞ―――――っ!!!!」
「軍艦の艦隊だ!!!」
目の前に迫る軍艦は10隻はある。
「思ってたより早かったな…。」
『“バスターコール”発動!!!標的、海賊“麦わらのルフィ”とその一味、約60名!!!―――
電伝虫で流しているらしい命令の間にも砲撃が止むことは無い。
『全艦
「おい、見ろお前ら!!逃げるんじゃねェ!!ホラ、この橋は軍艦も素通りだ!ワハハ、おれ様がいるからさ!!そうさ、
『罪人・ニコ・ロビンのいる“橋”は一時対象外とする!!』
「おい、見ろお前ら!ここは安全だ!!おれが“CP9”長官だからだ!!」
軍艦からの命令が響く中で、
「親子揃ってバスターコールを発動させたわけ?つくづく
「ニコさん?どうしました?」
自身を抱き締め、膝を付き震えている。
「…震えが止まらない…!!」
始まった“バスターコール”に、
何と声をかければ良いのか、ジャスミンが思わず
ボコォン!!!
「腕!?」
巨大な“腕”が“ためらいの橋”の支柱を内部から破壊する。
そして、ジャスミンの目はその腕に吹っ飛ばされ、軍艦の1つに落ちた人影を確かに
「今のは、CP9の
「“ゴムゴムのォ、ロケットォ――――っ”!!!」
ボコォン!!
「ルフィくん?!」
今度は風船のように膨らんだルフィが飛び出してくる。
そしてそのまま舞台を軍艦の上に移し、ルッチとルフィの激しい攻防が繰り広げられる。
ズドォン!!!
ボキボキキ!!!
ズバァン!!!
「私も人のこと言えないけど、なんて人間離れした戦い……。」
ドラゴンボール世界とはまた別の意味合いで、この世界もチートの集まりである。
瞬く間にボロボロになっていく軍艦に、やや呆れながらジャスミンが呟いた瞬間だった。
『砲撃』
ドドドォ…ン!!!
「な!!?」
ルフィたちが戦っていた軍艦が、他の軍艦の砲撃を受け沈められたのだ。
ルフィは砲撃の瞬間に再び支柱に向かって飛ばされ、ルッチもまた上手く逃れたようだが、ほんの一瞬で1000人近い“気”が消えたのが分かる。
中には海に投げ出され、生き残った者もいるようだが、それでも30人にも満たない。
「ワハハハハハハ!!おい!!見たか!?たった今軍艦で暴れてた麦わらが!!
「味方ごと……!?正気の
「これが!!
シャキィ…ン!!!
「
「アレは強ェぞ!!」
「喰らえ!!!“エレファント・チョ~…”!!!」
ドンッ!!!!!!!
ゴォオオオオォオ!!!
ジャスミンを中心に、激しい風が巻き起こった。
「パォ!!?」
剣から飛び出したように見えた象が、その動きを止め、ジャスミンを
ゾクッ………!!!
その場に居合わせた者たちの背中に、例外無く冷たいものが走った。
バチッ!バチチッ!!
シュン…シュン……シュン…………!!!
ジャスミンの体を青白い炎のようなものが包み、ところどころで激しくスパークしている。
「な、何だ、一体!!!??」
彼がもう少し武に長けていたか鋭い感性を持っていたなら、それが生存本能が鳴らす
――――――
怒りによって膨れ上がり、解放されたジャスミンの“気”が
“司法の塔”と時とは異なり、ジャスミン自ら解放した為に大地を揺らすことは無かったが、その分はっきりとした姿で
「あの時と同じ?!いや、もっとスゲェ………!!!」
「あの時……?」
「…「これが正義」だって………?味方すら無差別に殺す、この攻撃が?」
激しい怒りを覚えながらも、ジャスミンは冷静だった。“司法の塔”の時とは異なり、ただ感情に囚われた訳では無い。
人の命を簡単に奪う攻撃への怒り、それを命令した海軍への怒り、元凶である世界政府への怒り、そして防ぐことの出来なかった自分自身への怒りと殺された海兵たちへの
一刻も早くこの攻撃を終わらせる。
これ以上犠牲者を出す前に。
その為には―――――、
「こんなの、許せる訳が無い…。さっさと終わらせてもらう!!!」
ドゴォッ!!!
「っ……!!!!」
「パオォ!!?」
バシャアッ……ン!!
宣言と同時にジャスミンに蹴り飛ばされた
「な、何!?」
「長官殿ォ!!?」
ドガガガガガガッ!!!
「!」
「がっ…!」
「?!」
海兵たちが事態を
“ためらいの橋”にいた海兵を全て片付け、そのまま“護送船”へと飛び移る。
それまで“原作”から大きく外れた道を
誰も傷付けないで事態を
しかし、少なくとも被害を少なくすることは出来た筈だった。
「はあぁぁぁぁっ!!!」
ドドドドドドドドッ!
「ぐっ!」
「がっ!」
「がはっ!」
バシャン!
ボチャン!
バシャッ!
「
橋へと振り返り、ジャスミンが叫ぶ。
その圧倒的な実力に、半ば
「ロビン!!!」
「ええ…。もう、大丈夫。オハラとは…、あの時とは違うもの……!!私はもう1人じゃない、怖がることなんて何もないわ…。ルフィたちの為にも、私にも出来ることをしなくちゃ……!!!!」
その瞳には、既に迷いや恐れは
ジャスミン、激おこの巻でした。
きっとサイヤ人の血を引いていたら、間違いなく超サイヤ人に覚醒していた程の怒りです。
上手くいけば次話でエニエス・ロビー編が完結です。
………後1話で終わればですが…。
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第32話 VSバスターコール!遂に決着、ルフィとルッチ
今回、諸事情によりちょっと短めとなっております。さらに、やっぱりまだエニエス・ロビー編完結しておりません(汗)
次かその次には必ず………!
今回、遂に“あの技”が登場します!!!
追伸、お気に入り登録900人超え+感想+評価、みなさんありがとうございます!
ご指摘を受けたのでちょっと文章の形式を全話手直しさせていただきました。
今後ともよろしくお願いします!!
「すみませんが、ここはお願いします。もうすぐナミちゃんたちが来る筈なので……。」
“護送船”を
炎のような“気”の放流は収まっているが、“気”そのものを抑えている訳ではない為、威圧感は消えてはいない。
「?どこに行く気だね?」
「軍艦を何とかしないと……。島に残っているガレーラやフランキー一家の皆さんが危ない。」
ギュン!
「一体何を………?」
「分からん。だが、ここは彼女に任せよう。いつ、他のみんなが来ても良いようにすぐに船を動かせるように準備をしておこう!」
ジャスミンが
3隻の軍艦が“正門”に近付いているのを確認し、手のひらを上に向けるように右手を構えた。
「はあぁぁぁぁっ!!!」
ブゥ……ン…!!!
気合と共に、ジャスミンの手のひらに“気”が集まっていく。
フォン…!フォン……!フォン………!
ギュイィイイイン…………!
それは高速で回転を加えられることで、
「
ギャンッ!!!
ズバババァ………………ン!!!
気合と同時に放たれた
バッシャアァアァァ………ン!!!
ザッパアァアア…………ン!!!
「な、何だ!!?」
「何ごとだ!!??」
「マ、マストがありません!!」
「何ィ!?」
ブゥ……ン…!!!
「もういっちょ!」
ギャンッ!!!
ズバババァ…………ン!!!
もう1隻の軍艦のマストも全て斬り落とす。
バッシャアァアァァ………ン!!!
ザッパアァアア……ン!!!
「うわああああ!!!」
「マストが折れたァ!?」
「誰だ一体!?」
「
この世界の船はほとんどが
最初は大砲を気功波で爆破させようかとも思ったが、砲弾の火薬に引火してしまわない保証は無い。
それよりも、船の機動力さえ奪ってしまえば一気にこちらのペースに持っていくことが出来る。
実際、海兵たちは砲撃を続けるよりもマストに気を取られていてそれどころでは無い様子だった。
「一体どうなっている!?」
バスターコールによって招集された、5人の中将の1人であるやたらと上に長い頭の男・ストロベリーが叫ぶ。
「ス、ストロベリー中将、あれを!!」
混乱の中、状況の
「!この威圧感は貴様か?!貴様も“麦わら一味”の一味か!!?」
「浮いている……!能力者でしょうか………?!」
「さすがに見付かっちゃったか…。悪いけど、こんな馬鹿げた攻撃、続けさせる訳にはいかないんで、ね!!」
ブゥ……ン…!!!
ストロベリーの問いに答えること無く、再度
「な、何だ!?」
「はぁっ!!」
ギャンッ!!!
ズバババァ……………ン!!!
「うわああああ!!!」
「ま、マストが……!!!」
「貴様、何をする!?」
「これで3隻!」
残る軍艦は6隻だが、さすがにこれ以上黙って見ているつもりは無いようだ。
『北西“正門前”より全艦に報告!“麦わら一味”の1人と思われる女を上空に発見!それにより、軍艦3隻が
「人間1人に対してやる?普通……。」
嫌悪に顔を歪めながら、顔の前に腕を交差させるように構え、衝撃に備える。下手に避けるとエニエス・ロビーに当たってしまう為だ。
『砲撃!』
ドドドドドドドドドォ………ン
「……………!!!!」
9隻の軍艦から一斉に砲撃され、ジャスミンの姿が爆炎と煙に包まれる。
「やったか?!」
「この砲撃だ。さすがに生きてはいられないでしょう。」
「ジャスミ――――――――――ンっ!!!」
「そんな……!」
「ウソ………?!」
“ためらいの橋”の側の“護送船”でその様子を見ていた
彼らが絶望を抱きかけた時、
シュウウウゥウウゥ………!
潮風に…よって煙が晴れる。
ヴヴゥ……ン!!!
「お、おい!見ろ、アレ!!」
「ジャスミン!!!」
「無事だったのね……!」
そこには、自らの“気”で張ったバリアーにより身を守っていたジャスミンの姿があった。
「ス、ストロベリー中将!!!」
「バカな……!あれだけの砲撃を受けて全くの無傷だと…!?」
海兵たちが、自らの目を疑う。
「つくづく見下げ果てた奴らだな………!たった1人の人間相手に島ごと巻き込む集中砲火とはね……!後ろにはまだお前たちの味方が山程いるんだぞ……!?」
ヴ………ン……!
バリアーを解除しながらジャスミンが吐き捨てる。
「何の罪も無い人間を、自分たちの味方をこうも簡単に見捨てて切り捨てる……!そのやり方が気に入らないんだ……!」
ドウッ……!
ジャスミンから、再び青白い炎のような激しいオーラ
ブオォ…………!
「ぐぅ……!」
「くっ………!」
「うぉっ…………!」
ジャスミンを中心に巻き起こった風が軍艦を揺らす。
それに伴い、発せられる威圧感もさらに増した。
『ぜ、全艦に
「良い加減、
慌てふためく海兵たちを見下ろしつつ、胸の前で右手を構える。手のひらを上に向け、指を開いて“気”を集中させ、左手で手首を支えた。
「
ボッ!!
直径20cmに満たない程の青白い球体が手のひらから飛び出した。
「はっ!」
ズギュンッ!!
投げ付けられた
「な、何だアレは!?」
「光るボール…!?」
ドォオオ……………ン!!!
「しゅ、主砲が…!」
「ストロベリー中将!!」
「何とか
「む、無理です!マストが無いので
ビッ!ビッ!ビッ!シャシャシャッ!!
ドォオオ…………ン!!!
ズドォオオ…………ン!!!
ジャスミンの指の動きに合わせ、放たれた
そして目の前に並ぶ軍艦の3つの主砲、その“
主砲そのものではなく、“
「クソォ……!」
「う、撃て撃て……!撃ち殺せ!!」
ドォン!
ドドドドォン!
ドドン!
「ちっ……!」
シュン!
立て続けに放たれる弾丸を上空に移動することで
「
ズドドドドドドドドドドドドォオオ…………ン!!!
残りの8隻の軍艦の主砲も全て破壊する。
『ぜ、全艦に
『こちら5号艦、同じく主砲での砲撃不能!』
『1号艦、2号艦、3号艦も砲撃不能!!』
「何モンだ、あのオネーチャン。軍艦を次々無力化してやがる……!」
“ためらいの橋”からその様子を見ていたフランキーが呆然と呟く。
目線の先では、ジャスミンが再び光る
「おい、ここまできて何だが、あの女は本当に信用出来るんだろうな?」
「何だね、突然!?」
ゾロの唐突な1言に
「もし、あの女がおれたちの敵になるようなことがあれば……。例えここを無事に突破出来たとしても、すぐに全滅だ。悔しいが、今のおれたちじゃアイツには敵わねェ!」
「何よその言い方……………!ジャスミンはそんなことしないわよ!!」
「悪いが、おれはお前ら程あの女のことを信用出来ねェ。第一、お前らだって何でそこまであの女のことを信じられる!?もし、アイツが海軍やCP9からのスパイだったとしたら?」
「?!そんな訳無いでしょ!?」
「現に、ウォーターセブンの奴らはCP9の連中に何年も
ナミが抗議するが、それはゾロの態度を
「悪いがナミさん、おれもゾロに賛成だ。レディを疑いたくは無いが、ジャスミンちゃんとはウォーターセブンで初めて会ったんだろう?言っちゃあ何だが、タイミングが良過ぎる……。」
「ジャスミンは違うわよ!!ウォーターセブンにいたのだって別の理由があってのことだし、最初にあの子を巻き込んだのはルフィの方よ!?」
同意するサンジに対し、ナミが説明するが、疑惑を完全に晴らすことは出来なかった。
ホテルで
ボコォ…ン!!!
「…!!!」
「第一支柱が!!!」
内側から破壊された第一支柱に、海兵たちがざわつくのが聞こえる。
「ルフィ!!?」
「ルフィ…!!」
ジャスミンも、放とうとしていた気円斬《きえんざん》を思わず消し、第一支柱を見詰める。
「ルフィくん……!?」
“麦わらの一味”やフランキー、ココロたちだけで無く軍艦の上の海兵たちでさえ
「一緒に帰るぞォ!!!ロビ~~~~~~~~ン!!!!」
『ぜ、全艦へ報告!!!“CP9”ロブ・ルッチ氏が、たった今……!!海賊“麦わらのルフィ”に!!!
追記
気円斬…“気”を円盤状のカッターに練り上げ、物体を切断するクリリンの必殺技。この技をルフィ(の中の人)の声で叫ばれると、ドラゴンボールファンのテンションが30は上がる。
ジャスミンはヤムチャの仕事の都合でクリリン宅に預けられることも多かった為、教えてもらったという設定です。
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第33話 決着!取り戻した仲間たち
いつの間にか、お気に入り登録が1000人超えに……。
本当にありがとうございます!感想もなかなか返信出来ませんが、全て読んでいます!!
これからもよろしくお願いします!!
「何だとォ!!?」
「………そんなバカな…!!」
「サイファーポール史上最強と言われる現在の“CP9”の……。そのリーダー、ロブ・ルッチ氏までもが海賊に
どよどよと海兵たちが動揺している様子が、上空にいるジャスミンにまで伝わってくる。
「ウ…、ウゥ……。ルフィが………、ルフィが勝ったァ―――――――――!!!」
ウソップの歓喜の声が響き渡る。
「ヒヤヒヤさせやがって。」
「
ゾロが息を
「全員、早く脱出船へ!!!船を出すわよ!!!」
ナミがその場の全員に指示を出すが、結果としてそれはわずかに遅かった。
『全艦へ
電伝虫を通した伝達が、上空にいるジャスミンにも届く。
ジャスミンが軍艦を無力化させたことにより、砲撃や
「さすがに数が多いな……………。」
上空に待機しながら、軍艦の上に並び立つ海兵たちを見下ろす。
砲撃を完全に無効化してしまうジャスミンより、“ためらいの橋”にいる“麦わらの一味”に狙いを定めたのかと思ったが、下の軍艦から複数の強い視線を感じる。
5人の中将たちが、
「なるほど……。
ジャスミンが
その直後、
『ニコ・ロビンを
「「「「「おおぉおおぉおおおお!!!!!」」」」」
号令と共に、一斉に
軍艦から次々と
そして、
「死ねェ!海賊!!!」
ヒュッ……!
ガキィン!!!
ジャスミンが空中で身を
「ちっ………!」
「むぅ……………!」
2人が更に追撃するより速く。
「はっ!!」
ガッ!
ドッ!
「!?」
「がっ……!」
ドボボォオ………ン!!
「!ヤバッ………!」
軍艦に落とすつもりだったが誤って海へと落としてしまい、ジャスミンが焦る。万が一、悪魔の実の能力者だったら死活問題である。
「貴様、よくも……………!」
しかし、安否を確認するより先に
「おっと……………!」
剣士相手に戦ったことなど無いので
シャシャシャシャシャシャシャシャッ!
「わったっとっはっなっちょっ……………!!」
おまけに、
はっきり言って剣士とほとんど戦ったことの無いジャスミンが、体術で反撃するのは難しい。
「………っ!だったら…………………!!!」
ギュン!
一旦後方に飛んで距離を取り、両手の中指と人差し指を立てて額に当てる。
「逃がすか!!」
「
カッ!!!!!
「ぐぉ……………!!」
「うぐっ………!!」
「目がぁっ…………!!」
ジャスミンの叫びと共に、ジャスミン自身から激しい
強烈な光は網膜を焼き、視神経を刺激して激しい痛みを与える。
予測していなかった攻撃方法に、3人の中将がわずかに
相手も
「せい!」
ドゴォッ!
ドガァッン!
ドゴォンッ!
「ぐっあ!!」
「がっ………!!」
「!?ゔ………!」
一気に距離を詰め、3人
ドッガアァ………………ン!!!
「良し。後はルフィくんを回収して脱出船に…………。」
狙い通り軍艦に落ちたのを確認し、ルフィたちの所に向かおうとした瞬間だった。
ドッゴォオオオォオンン!!!
突然、脱出用に奪った“護送船”から
「!しまった…!!船を………!!」
見れば、船体に穴を開けられたらしい“護送船”がゆっくりと傾き、沈んでいくところだった。
ジャスミンがそうしたように、船自体を狙って強制的に足止めをする気らしい。
「っこうなったら、海軍全員倒して“ロケットマン”の所に戻るしか無いか……!」
その間にも、海兵たちの猛攻は止まらない。
既にルッチとの戦いでを
ギュン!!
取り敢えず、ルフィを保護した後でナミと合流する為に、第一支柱へと向かう。
「海へ飛べ――――――!!!!海へ――――!!!」
ジャスミンがルフィの
「ウソップくん……?一体、何を…。」
思わず空中で止まり、海へと視線を落とした時だった。
「―――――そうか!
ジャスミンが
ルフィも、ロビンの能力でいち早く離脱したらしい。
「だったら、フォローに回った方が良いか。」
スタン!
そのまま、ジャスミンは“ためらいの橋”へと降り立つ。
「メリー号に!!!乗り込め―――――!!!!」
ドカッ!
バキィッ!
ドスッ!!!
ドサドサドサッ!!
ウソップの叫びを背中に、追撃しようとする海兵たちを次々と沈めていく。
残る海兵はおよそ100名弱。しかし、周囲に巻き込む人間がいないのなら、スピードを抑える必要は無い。トップスピードを維持させることが出来る。
「悪いけど、ここは通さないから。文句がある人は自力で頑張って。……手加減はしてあげるからさ。」
ニッ、と浮かべられた不敵な笑みに海兵たちの間に動揺が走った。
「ひ、
「「「おおぉおおおおお!!!」」」
半ば以上
「はあああああああっ!!!」
ドスッ!
ドッ!
ゴッ!
ベキッ!
ドカッ!
ドサササササ……!!!
手刀と
その間に、“麦わら一味”は航海士であるナミを中心に、既に出航の準備を整えていた。
「ジャスミン!あんたも早く!!」
「先に行ってて!!パウリーさんたちと一緒に追いかけるから!!!」
ドギュン!
ナミに叫び返すや否や、舞空術で再びエニエス・ロビー本島へと向かったジャスミンを見送り、ナミがクルーたちに指示を出す。
「ガレーラとフランキー一家のことはジャスミンに任せるわ!!今のうちにとっとと逃げるわよ!!!」
「「「「「「「おう!!!」」」」」」」
エニエス・ロビー本島に着くと、パウリーたちが正門前で海兵たちを縛り上げ、“パッフィングトム”を出立させるべく蒸気を溜めているところだった。
スタッ!
「何だ。様子を見に来るまでも無かったみたいですね。」
「!ポニーテールか!!」
陣頭指揮を
「ニコ・ロビンさんとフランキーさんは、ルフィくんたちと無事に出航しました。後はあなたたちだけです。」
「よっしゃあ!!アニキが無事に脱出出来たんなら、おれたちもさっさとズラかろうぜ!!」
ジャスミンの言葉に、ザンバイが歓声を上げる。
「よし…!こっちもいつでも出発出来る。海軍本部から応援が来る前に行くぞ!!」
「いえ。私はちょっと会っておきたい人がいるので、先に行っていてもらえますか?すぐに追い付くので……。」
パウリーの
「あ?会っておきたい人だ?」
「こんな時に、一体誰と……?」
「この騒動の中、高みの見物をしていた“誰かさん”にですよ。」
パウリーとザンバイの疑問に、舞空術で浮き上がりながらはぐらかした。
「5人の中将及び、“ためらいの橋”に降りた精鋭200名が全て戦闘不能に!!!」
ポッポ――――――――――!!!
「海列車が!奴らが逃げます!!」
「“麦わら一味”の乗った船も、もうあそこまで!!」
「至急、本部に応援を…………!!!」
「待て。」
想像だにしていなかった事態に
「あ、あなたは………!?た、大将・
「い……、いらしていたとは!!」
海兵を制止したのは、海軍本部の最高戦力・3大将の1人、“
「…もう良い。」
静かに告げる
「………この艦隊と、倒された海兵たちを見れば、
大将からもたらされた敗北宣言に、その場にいた海兵たちが
その時だった。
「それを聞いて安心しました。これ以上無駄な争いをするのは、こっちとしても本意では無いので。」
「な!?」
「お、お前は?!」
「“麦わら一味”、じゃねェようだな……。お嬢ちゃんの顔は見たことがねェ。あんた、何者だい?」
「初めまして、大将“
疑われている時に、余計に怪しい行動を取ってそれに拍車をかける主人公……。
追記
太陽拳…悟空たちの仲間、三つ目の武道家・天津飯の技。頭部から強烈な光と変えた気を放つことで、相手の目をくらませる。サングラスなどで防げるが、裸眼だと眩しいを通り越して痛いような描写多数。“それほど難しい技じゃない”らしく、意外と使われているが、使う人間によってポーズが多少異なる。
ジャスミンはクリリンを通じて教えてもらった為、ポーズはほぼクリリンと一緒。ただ、目は開けている設定。
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閑話2 海軍大将との邂逅!青雉との交渉
そして、前々回の更新で“あと1~2話くらいでエニエス・ロビー編終了”、と書いてまだ終わらせられなかったのは私です……。
もうちょっと続きます。どうかご了承ください……。
「“お願い”?」
「はい。まあ、“お願い”というか“
「まぁ、内容次第じゃ聞いてやらないことも無いが……、その前にこっちの質問には答えちゃくれないのかい?………あんたが何者なのか。」
淡々と返す
「あ、すみません。申し遅れました。ジャスミンといいます。何者か、と言われればそうですね……。ルフィくん、“麦わらのルフィ”の友達です。」
ジャスミンもそれを分かっているからこそ、笑みを絶やすことなく静かに続けた。
「友達………?クルーじゃないのかい?」
「海賊になった覚えはありませんし、これからもなるつもりもありません。……まあ、今回の一件で賞金首になるのは確実でしょうけど………。」
ジャスミンが肩を
「どうも
「友達に協力するのが、そんなにおかしいですか?」
海賊ではない、と言い切ったジャスミンに対し、わずかに
「まぁ、でも………。例えばこれが、ルフィくんたちが一般人に対して
言い切って、挑戦的にも見える目で
「友達の為、ねェ………。まぁ、何だ…。例え海賊じゃなかろうが、いやだからこそか…。放っておく訳にもいかねェか……。」
パキ…パキパキ……
「ク、クザン大将……!」
急激に下がり始めた気温に、海兵たちの間にも同様が走った。
「そちらがその気なら、こっちも容赦しませんが………。」
そして、ジャスミンもまた、1度は抑えた“気”を少しずつ解放する。
「2人共…、何て殺気だ…!!」
クザンを中心に少しずつ下がる気温と、徐々に強くなっていくジャスミンから放たれるビリビリとしたプレッシャーに、周囲の海兵たちが息を
まさに
周囲の緊張が最高潮に達した時――――、
「まぁ、ここで争うつもりはありませんけどね。」
ふっ、と不意にジャスミンから放たれていたプレッシャーが消え、害意は無い、というように両手を肩の高さまで上げて見せる。
「はぁ?」
同時に、徐々に広がっていた足元の氷が止まる。
「“
「あ――…、そういや言ってたな……。」
すっかり緩んだ空気に脱力しながら、
「で?“
「それは分かってます。まぁ、犯罪者に懸賞金をかけたり、海賊を追うのは海軍の仕事ですから、それに関しては文句を言うつもりはありません。私がお願いしたいのは、
「海賊が、民間人の心配をすんのかい?」
ジャスミンの言葉に、
「私は海賊じゃないので。」
「ああ、そうだったな…。」
肩を
「私がお願いしたいのは、“少なくともウォーターセブンをバスターコールの対象としない”、そして“民間人を巻き込まない”こと。この2つを約束してほしいんです。」
「……本当にそんなことで良いのか?」
「はい。それだけです。……まぁ、今度そんなことが目の前で起こったら、今度こそ自分を抑える自信は無いんですけどね。」
一瞬だけジャスミンの目が
「……分かった。まぁ、おれたち海軍としても民間人を巻き込むことは本意じゃない。そんなことは決して無い、と言っておく。…ただ、それと追手をかけないことは話が別だ。民間人に被害が出ない範囲で、海軍としての
溜息を
「それに関しては、どうぞ
試すような言葉と共に、ジャスミンの視線が
ゾク…!
それに
「私が手配されるのは別に構わないんですよ……。世界政府に宣戦布告したのは私も一緒ですから。ただ……、彼らは違う。」
徐々に放たれるプレッシャーが強くなっていく。
「……もし、それは出来ないって言ったら、どうするんだい?」
少しずつ強くなる圧迫感に、息苦しささえ感じながら
スッ……………!
不意にジャスミンの左手が上がる。
カッ!!!!!
ドォンッ!!!
「な?!」
ジャスミンの左手が光ったと同時に響いた破壊音に、
ガラガラガラッ……!!!!
バシャアァ……ン!!!
“ためらいの橋”が中心から破壊され、崩れていくところだった。
「“ためらいの橋”が…!」
「い、一瞬で?!」
取り乱す海兵たちを尻目に
「……どういうつもりだ?」
「言った
「脅しのつもりか……?」
「………そう聞こえたなら、そう取ってもらっても構いませんが、あなたも先程言っていませんでしたか?“民間人を巻き込むことは本意じゃない”、と。」
お互い、しばし
しかし、今度は
「はぁ~…。分かったよ……。世界政府のやり方にも非はあった……。ガレーラの職人や、島のゴロツキたちに関してはおれが上手く取り計らおう。」
「大将
「ただし、」
海兵の声を無視して
「お嬢ちゃんやカティ・フラムに関しては別だ。」
「でしょうね。さっきも言いましたが、世界政府に宣戦布告したのは私も一緒ですし、フランキーさんも覚悟はしてるでしょうから、それに関しては何も言いません。大将さんが話の通じる人で助かりました。」
「……半ば以上脅しだった
呆れたような
「それじゃ、もう会わないことを願ってます。……お互いに。」
ヒュンッ!
言い置いて、ウォーターセブンの方向に飛び立ったジャスミンを見送り、
「あ――――…。まぁ、取り敢えず何だ、このままじゃ軍艦も動かねェし、本部に連絡して迎えに来てもらえ。」
「は、はい!!」
「とんでもねェお嬢ちゃんだったな………。さて、センゴクさんに何て報告しようかねェ……。」
呟きながら、
「ジャスミン、ね……。とんだバケモンが現れたもんだ………。」
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第34話 遂に探知!最後のドラゴンボール
なんか、まだ週中なのに閲覧数がえらいことになっているんですが…。
何より、2月7日付けでのランキング11位に驚愕しました。リアルにチューハイ噴きだしそうになって、気管に入ってめちゃめちゃ苦しかったです(苦笑)
あれ、ランキングに入った時って何か告知的なものがあるかと思ったんですが無いんですね…。
サイトさん巻き込んだ盛大なドッキリか何かかと思いました…。
しかし!とても嬉しいです!!
いつの間にかお気に入り登録も1300件を超えていました!
評価、感想もありがとうございます!
これからも頑張ります!
さて、今回ジャスミンの精神的な不安定さが明らかになります!
いよいよ、次回からスリラーバーク編です!
ここまで長かった…。
もう少しお付き合いください!!
━世界を揺るがした、エニエス・ロビーの一件の翌日━
ジャスミンは、自身が取っていたホテルを引き払い、ガレーラカンパニーの仮設本社、その屋上にいた。
マスコミが押しかけてはゆっくり体を休めることも出来ないだろう、とのアイスバーグの
パラ……
「まだ
屋根の上に座り込み、ニュース・クーから購入した新聞に目を通しながら、呟く。
「はぁ……。」
パサッ…!
新聞を軽く
「ダメだ……。どんどん思考が暗くなる………。」
右腕を額に乗せて呟く。
考えがどんどん悪い方へ流されていくのが分かる。
しかも、武道家としてはあるまじきことに、自分でもどうしようも出来ない感情の乱れそのままに“武”を暴力として
ジャスミンは、元々自身が精神的に強くないことを自覚していた。そもそも慣れない環境と孤独感によるホームシックで、それなりに精神的に追い詰められていたところに今回の一件である。
慣れない環境での
実戦に出たことが無かったにも関わらず、身の程知らずにも大きな事件の
それはジャスミンにとって大きなショックだった。
頭のどこかで
確かに脅威となり得る相手などいなかった。しかし、その
ジャスミンには、エニエス・ロビーで死んだ海兵たちの元々の運命など分からない。ただ、もし元々死ぬ
「っ………!」
カタカタカタ……
額に乗せていた手が、自分の意志ではどうにも出来ず震えているのが分かる。
もしかして、自分が関わったことで死んでしまったのでは…、そう思うと震えが止まらなかった。
「早く7つ目のドラゴンボールを集めないと……。」
ドラゴンボールで叶う願いは2つ。ジャスミンも、2つの願いを決める。
1つは、ジャスミン自身と7つのドラゴンボールを
そしてもう1つで、エニエス・ロビーで死なせてしまった海兵たちを生き返らせよう、そう決めた。
「一応レーダー確認しておこうかな…。」
震えを無理やり抑え付けるように、
腰に付けていたウェストポーチを探り、ドラゴンレーダーを取り出してスイッチを押した。
カチッ!
ピッピッピッ…!
スイッチを入れ、画面が明るくなると同時に響いた電子音、そして画面で点滅する丸いマークに、ジャスミンは一瞬己の目を疑った。
「まさか…!」
半年間、全く
━その夜・特別海賊ルーム━
カチャ…
まだ眠っている者たちを起こさないように、出来るだけ音を立てないよう、そっとドアを開けて中に
「ジャスミン!」
「!あなたはあの時助けてくれた……!」
テーブルでお茶を飲んでいたらしいナミとロビンが、ジャスミンに気付く。
「おはよう、ナミちゃん。ニコさんもおはようございます。」
両腕に紙袋を抱えたまま、ナミたちの方に歩み寄る。
スッ、とロビンが立ち上がりジャスミンの前まで出てきた。
「あの時はありがとう。おかげで生き延びられたわ。」
「ああ…!いえ。友達の手伝いをしただけですから…。」
笑顔で礼を言ってくるロビンに、ジャスミンが首を振る。
「改めて。ニコ・ロビンよ。」
「こちらこそ。ジャスミンです。」
ジャスミンの
今のジャスミンにとっては。
「ジャスミン、あんたどこ行ってたの?」
「ちょっと買い物にね。そろそろ起きる頃かな、と思って。差し入れ。」
ナミの疑問に答えつつ、抱えていた紙袋をテーブルに置く。
「差し入れ?」
「うん。ウォーターセブン名物、
説明しながら中身を並べていく。
現在の時刻は夜の7時ちょっと前。丸1日以上寝ていた計算になるが、いきなりがっつりしたものを食べるのも胃に悪いだろう。
軽過ぎても食べた気がしないだろうが、ローストした
「わ――――!おいしそう…!」
「ホントね。」
「酒はねェのか?」
不意に割り込んできた声に、全員振り返る。
目を覚ましたらしいゾロが、ボリボリと頭を
「ロロノアさん…。」
「あんた起きたの?」
「おはよう。良く眠っていたわね。」
「ジュースしかねェのかよ…。」
「ちょっと!せっかく差し入れてもらったのに、そういう言い方しか出来ない訳?!」
「まぁまぁ…。すみません、さすがにお酒は年齢的な問題で売ってくれなくて…。」
ナミが怒るのを、横から
「そういえば、あなたいくつ?」
ふと気になったようで、ロビンが尋ねてくる。
「私ですか?もうすぐ15歳です。」
天下一武道会が
「え。」
「え?」
「は?」
「「「え(はぁ)~~~~~~~~~~!!?」
「うお!?」
「な、何だ何だ?」
ナミたちの絶叫に、サンジやチョッパーも飛び起きる。
「ちょ、ちょっと待って!ジャスミン、あんたもうすぐ15歳ってことは、今14歳……?」
「そ、そうだけど…。」
詰め寄ってきたナミの剣幕に、思わず一歩
「てっきりルフィと同じか少し年上かと思っていたけど…。随分大人っぽいわね。」
「あたしも。てっきり同い年くらいかと思ってたわ。」
まだ子供と言っても良いくらいの年齢と知ったのは、随分と衝撃的だったらしい。
ロビンとナミは早くも衝撃から立ち直り、ジャスミンをしげしげと見詰めているが、訳が分からないのは、突然の絶叫で叩き起こされたサンジとチョッパーである。
「おい、クソマリモ。何なんだ一体?」
「すっげェ声だったな。おれ、びっくりしたぞ。」
が、問われたゾロはといえば、未だ衝撃から立ち直れずに「まだガキじゃねェか…。そんなガキにおれはあんなに警戒…。」と何やらブツブツと
「っておい!聞いてんのかこのクソ剣士が!!」
「っさっきからうるせェんだよ!このエロコック!!」
「ケンカすんなよ2人共!!!お前らも怪我人なんだぞ!!」
何とか
ジャスミンもナミやサンジに誘われ、一緒にテーブルに付いていた。
どうやらジャスミンの年齢が明らかになったことで、世界政府からのスパイ疑惑も多少和らいだらしい。
「え!?ジャスミン、もう行っちゃうの?」
「うん。今すぐって訳じゃないけど、今回の件で世界政府がどう出たか分かったらね。私がいたら余計危ないかもしれないし、万が一にも民間人が巻き込まれることが無いようにしないと…。」
ナミの疑問に頷きながら答える。エニエス・ロビーでの今回の一件、世界政府がどう出るか。それを見届けた後、ウォーターセブンを出るつもりだ。
「次はどこに行くんだ?」
チョッパーが好奇心に
「どんな所かはまだ分からないの。場所なら分かるんだけど…。」
「?どういう意味?」
ジャスミンの分かり辛い返しに今度はナミが問い返す。
「7つ目のドラゴンボールが見付かったの。レーダーで場所は分かったけど、実際に行ってみないとどんな所かは分からないから…。」
「ああ。そういうこと…。でも良かったじゃない!もうすぐ家に帰れるってことでしょ?」
「うん!」
ナミに笑顔で頷く。
もうすぐ帰れる。その思いがジャスミンの心に余裕を持たせていた。
「ドラゴンボール?」
「あ、えーっと…。」
ナミがロビンの声に反応しながらジャスミンの方を見る。
「みんなにも話しても良い?」
「うん。」
余計な疑惑を持たれたままよりは、いっそ秘密を
その後は、夕食を食べながらナミによってジャスミンのことが“麦わらの一味”に話され、ジャスミンが質問に答えながら静かに夜が
今回、ジャスミンの年齢と天下一武道会の開催時期をちょっと訂正させていただきました。うっかりしてまして、悟天の2つ下だと高校生だと年齢が合わないんですよね…(汗)。
そんな訳で、現在中学3年生で作中で誕生日がきたら15歳とします(汗)
今まで散々高校生と言ってきたんですが、すみません中学生でお願いします!!!
それに伴い、作中で勝手に11月にしてしまいましたが、二次創作ということでご容赦ください……!
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第35話 遂に賞金首!さよならウォーターセブン
お気に入り登録1600人越え、感想・評価などありがとうございます!
なんだか、閲覧数がえらいことになっていてちょっと怖いですが嬉しいです!!
さて、次回からいよいよスリラーバーク編です!
今週ちょっとばたばたしてまして、少し更新が遅れるかもしれませんが、どうか気長にお待ちください!
━翌日、特設海賊ルーム━
ドカァ…ン!!!
「ふぁっ!!?」
不意に響いた破壊音に、ガバッと身を起こす。
そこで初めて、ジャスミンは自分がそれまでベッドに寝かされていたことに気が付いた。
「何だ……!!!」
「誰だァ!!!」
サンジやフランキーたちが騒いでいるのが分かるが、今の今まで眠った記憶も無く寝ていたらしいので、そもそもの状況が理解出来ない。
「え?え?」
思わず周りをキョロキョロと見回すが、周りの人間もいまいち状況を
「お前らか……。“麦わらの一味”とは…。」
そう言いながら壁に開いた穴から、犬を模した帽子を被った老人がゆっくりと入ってくる。
「モンキー・D・ルフィに会わせたい男たちがおるんじゃが……。」
「海軍……!!!」
警戒するサンジたちの声で、その人物が海軍ということに気付くが、寝起きでは相変わらず回転の悪い頭ではその次の行動を見送るしか無かった。まぁ、殺気や敵意は一切感じられなかったというのも大きいが、第一に
「起きんかァ~!!!」
ドカァン!!!
「い!?痛ェ――――――!!!」
いくら賞金首相手とは言え、
それにしても、いきなりテーブルごと床をぶち破るようなパンチを繰り出すとは…。しかも、今の一撃は敵意が無いながらも強い“気”が込められていた。
「痛ェ!?何言ってんだ、パンチだぞ今の!!ゴムに効く訳……!」
「今、一瞬
サンジが驚愕のあまり叫んだのを受け、まだ眠気が取れずにボケっとしているジャスミンが呟くが、“ゴム人間”が打撃に痛がっている、という衝撃的な事実が大き過ぎて誰も気が付かなかった。
「愛ある
そう言いながら帽子を外した老人の顔を見て、ルフィが叫ぶ。
「げェ!!!じ…、じいちゃん!!!!」
「「「「えェ!!?じいちゃん!!?」」」」
「どーりでルフィくんと“気”が似てると思った………。」
周りが驚愕に叫ぶ中、ジャスミンのぽやっとした声が
「ルフィ、お前。わしに謝らにゃならん事があるんじゃないか!?」
何より、家族間のことに他人が口を出すものでは無いので。
それに、目の前にいる
それにしても、海軍の英雄がルフィの祖父だったとは、すっかり頭から抜けていた。名前と存在はこちらの世界では有名だった為、
(言われてみれば、
まだボーっとしている頭で考えながら、ベッドの下に
「うぁ…っとっと…!」
立ち上がった
バフンッ!
「あれ?」
「あら、起きたのね。」
かけられた涼し気な声に顔を上げる。
「ニコさん…。」
「おはよう。良く眠っていたわね。」
見れば、ロビンがジャスミンに気付いて近付いてくるところだった。他の者たちはルフィと
「おはようございます。…あの私、昨日一体いつ寝たんでしょうか?」
フラフラする頭に手をやりながらロビンに尋ねる。
「時間的には夜の10時くらいかしら。覚えてる?昨日、あなたのことを色々聞いているうちに、ジュースと間違えて私とナミ用だったカクテルを飲んじゃったのよ。グラスに半分くらいだったからそれ程量は飲んでいないし、度数も大したことは無い
「そ、それは大変なご迷惑を……。」
笑いながら告げられた言葉に、思わず顔が赤くなるのを感じる。
これで頭痛と
それにしても、いくら何でも酒とジュースを取り違えるとは、帰れる
「気分はどう?頭は痛くない?」
「頭痛と
「立派な二日酔いね。ちょっと待ってて、お水持って来てあげるわ。」
クスクスと笑いながらロビンが一旦その場を離れる。
身動きするとガンガンとした痛みが頭を襲う為、こめかみをゆっくりと
「うわぁ…。」
ルフィと
「そもそも“赤髪”って男がどれ程の海賊なのか解っとるのか!?お前は!!」
「………!?シャンクス!?シャンクスたちは元気なのか!?どこにいるんだ!?」
「あれ、“赤髪”って確か“
ルフィの麦わら帽子が“預かり物”ということは覚えていたが、まさか相手が“
“赤髪のシャンクス”と言えば、“新世界”に
いやまぁ、仮にも主人公なのだからそんな過去があってもおかしくは無いのだが。
ジャスミンがそんなことをつらつらと考えている間にも、
「この“
「良く分かんねェけど、元気なら良いや。
「か、軽い……。」
ルフィの
何だろう、この軽さは。何だか、
(悟空さんにそっくり…。ジャンプの主人公ってみんなこうなの?)
血の繋がりは一切無い
「まさか、ルフィの麦わら帽子があの“赤髪”から預かっているものとは知らなかったわ。」
いつの間にか戻ってきていたロビンが呟く。
「その
差し出されたミネラルウォーターのボトルを、礼を言って受け取りながらジャスミンも同意した。
1口、2口と水で
「ぷはっ…!」
「少しは気分が良くなったかしら?」
「お
どうやら二日酔いだけでなく、軽い脱水症状も起こしていたようだ。水を補給したことで、身動きする度に襲っていた頭痛と
「それは良かったわ。」
クスクスと笑うロビンに軽く頷き、残りの水を
わーわー…!
ガキィ…ン!!!
キィ…ン!!
「ん?」
「?なにかしら?」
壁から開いた穴から、外の騒ぎが伝わってくる。
「ロロノアさんが外で暴れてるみたいですね。」
「ゾロが?」
「はい。まぁ、ロロノアさんを何とか出来るような実力者はいないみたいですし、ルフィくんのお祖父さんもこの場で捕まえようとしている訳じゃないみたいなので、私もちょっと
水を飲み干し、今度こそ立ち上がる。
「早めに戻って来た方が良いわよ。今日はバーベキューですって。もちろん、あなたの分もあるわ。」
「それは楽しみです。」
━造船島・1番ドック入口━
仮設本社の周囲には海兵が
「さて、と…。わざわざ差し向けられた追手がルフィくんのお祖父さん、ってことはあの時の“約束”を守っていただいた、と思って良いんですよね?」
辺りにいるのは海兵たちのみ。少し前までドック入口前を固めていた島民たちは、海兵たちによって家へと帰されたようだ。
そんな中、突然“誰か”に向かって喋り出したジャスミンに、周囲の海兵たちが何事かと視線を向けるが、すぐに驚愕に目を見開く事となった。
「ああ。男が1度口にした事だ。センゴクさん、元帥には上手く言っといたよ。まぁ、ガープ中将が来たのは別におれが何かした訳じゃなくて、あの爺さんが勝手に来たんだけどな。」
カツリ、と革靴を鳴らして現れた男に、周囲にいた海兵たちが
「た、大将・
「何故ここに??!」
周囲の激しい動揺を全く
「ところで、何故わざわざ大将さんがここに?」
「“麦わらの一味”のニコ・ロビンとは多少の
「…この場でどうこうしよう、って訳でも無いみたいですね。」
「ああ。この島で仕掛ける気はねェよ。おれが暴れちゃ、他の島民に迷惑がかかる…。“約束”通り、この島の奴らにゃ手を出さん。」
ダルそうに頭を
「それを聞いて安心しました。」
「良く言う…。“島民に手を出すな”ってのは、最初からそれも狙っていたんだろ?」
「さぁ?どうでしょう?」
呆れたような
「それじゃ、今度こそ2度と会わないことを願ってます。」
「ああ。お互いの為に、な……。」
「!ああ、そうそう…。明日の新聞には今回の一件が
どこか楽し気にも聞こえる声で告げられた言葉の本当の意味を、ジャスミンが悟ったのはその更に翌日のこと。
夜通し行われたバーベキューパーティーを存分に楽しんだ翌朝のことだった。
「あの言葉はこういう意味か……。」
予想はしていたが、予想以上の額に呆れた声を
『
「“中将
初頭手配で億超え、しかも3億を超えたとなると異例中の異例と言える。
新聞によると、“麦わらの一味”では無いが一味の共犯者であり、“バスターコール”の艦隊をほぼ1人で壊滅させ、5人の中将と100人の精鋭を相手取った、とある。
「まぁ、そこらへんは勘違いされても仕方無いけど……。それにしても、我ながら悪そうな顔で写ってるなぁ……。」
一体いつの間に撮られていたのか、挑発的な笑みを浮かべるジャスミンの顔が真正面から写されていた。恐らく
「ま、良いか。」
それが分かった以上、これ以上ウォーターセブンに留まる理由は無い。
それから1時間と経たずに、ジャスミンはココロに
そう考えての行動だったが、再会の時はジャスミンが考えていたよりもずっと早く訪れる事となる。
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第36話 ジャスミン敗れる!!戦慄のスリラーバーク
お気に入り登録1700人越え、感想もありがとうございます!
今回、ジャスミンがかなり追い詰められます。
これまで予告していたとおり、某幽霊娘の能力はかなり相性が悪いようです。
追記:あまりにもあっさりゴーストの一撃を食らったことに違和感を覚えられた方が多数いらっしゃいましたので、多少手直しをさせていただきました。
今後の展開上必要だったので、どうかご容赦ください。
ギュオオォオオオ……!
「霧が濃くなってきたな……。レーダーによるとこの辺の
ピッピッピッピッ……!
レーダーによると後1kmも無いが、霧が深過ぎて島影のようなものは一切確認出来ない。
「やっぱり、また海底かな……?」
半年以上もレーダーに映らなかったのだから、やはり海王類か何かが飲み込んでいて今になって
いっそ、海面近くまで下りて潜水飛行艇のカプセルを出そうか、と高度を下げていた矢先だった。
「!?島……?!」
島の中央に城のように巨大な屋敷が見えるが、塀は崩れ外壁もどこか薄汚れた印象を与えており、まるで
その島を囲むように海に外壁がぐるりと一周しているのかと思ったが、よく見ると屋敷の更に奥に巨大な塔があり、そこに
「いや、島じゃない…。船?!」
おまけに、あの海賊旗のマークはどこかで見た覚えがある。既にうろ覚えとなっている原作知識ではなく、こちらの世界に来てからの記憶の
「誰のマークだっけ…?!それに、このシチュエーション確か漫画で見たんだけど……!」
必死に記憶を探るが、全く出て来ない。
良い予感は全くしないが、確かにドラゴンボールの反応はこの船、しかも位置的に屋敷のど真ん中にある。
「い、嫌な予感しかしない……。」
思わず顔を引き
「“スリラーバーク”…?ちょっと待ってよ…。
改めて記憶を高速で
「お…、思い出した……。」
ゾンビだ。確か
原作で他にどんなキャラクターが出ていたか、というのは全く覚えていない上、その
「話し合いに応じてくれるような相手だと良いんだけどなぁ……。」
たぶん無理だろうな、と思いつつも
出来るだけ相手を刺激しないように、
――――――それが、ジャスミンのその後の
門を
「それにしても暗いな…。霧のせいか…。」
周囲は薄暗く、まだ午前中にも関わらず夕方のようだった。
この海域一帯を取り囲んでいる濃霧のせいで、日光が
「
一旦足を止め、ウェストポーチを探る。
「あれ?確かこの辺に……。あ、あった。」
見えない為、完全に手探りで時間がかかったが、お目当てのペンライトを探し出す。
カチッ!
パァッ……!
スイッチを入れ、ペンライトの光が前方を照らし出した瞬間、ジャスミンが息を
「骨!?」
階段を下りきるまで後3m程。その先には
思わず
恐る恐る残りの階段を下り、ペンライトで
近付くと、
「っ……!この
バッと鼻ごと口元を
これだけの数の
少なくとも数千、いやもしかしたら万…。そのおぞましさに震えが止まらない。
とてもこの
何とか震えを抑え、
「行くしかない、か……。」
先へ進もうとした矢先、
「グルルルル…!」
パキパキ…!バキキ……!!
「!あれは…!」
ペンライトで照らし出されたのは、
「ゾンビか…!」
多分、記憶が正しければこの
『ガルルル……!』
「こんな姿にされてまで……。かわいそうに…。」
本来、土に
『ガルルァ!!!』
「っと!」
バキィッ!
襲い掛かってきたゾンビを
「もう眠れ…!」
額の前で両手の手のひらを重ね、構える。
「
ズオ!!
叫びと同時に突き出された手から、
ドォン!
『ギャウ…!』
ボオォ!!
『ギャウゥウウ……!』
バキバキベキ…!!
ズ…ズズ……!
燃えながらゾンビが
「ガアァア!!」
ズズズズズズッ!!!
そして、
ヒュ―――――…ン!!
「影が飛んでいく…!持ち主のところに帰るのか…。」
抜け出た影がどこかへ飛び立つのを見送り、燃え尽きたゾンビの成れの果てに手を合わせ、先へと進む。
進んだ先にあったのは、登りの階段。それを上がった先には門があり、森へと続いていた。
カチッ!
ピッピッピッピッ……!
ウェストポーチから取り出したドラゴンレーダーを確認する。
「レーダーがこっちをを示してるって事は……。やっぱりドラゴンボールはあの屋敷の中かな……。」
ドラゴンレーダーを手に奥へと進むジャスミンだったが、不意に異様な“気”を感じ取る。
「?!何だ…?この“気”……?」
その時だった。
『ネガティブ♪ネガティブ♪』
フィ―――――…ン
「な……!?」
白い、
『ネガティブ♪ネガティブ♪』
「こいつら、いつの間に……!?」
別に、
しかし、彼とは決定的に
「あなたたち、能力者……!?」
だが、それは
『ネガティブ♪ネガティブ♪』
『ホロロロロロ…』
スィ――――…
「!」
『ホロホロホロホロ…!』
「う………!?」
とても立っていられずに、思わずその場に膝を付いた。
「う…、あぁあ……!」
もう2度と地球に帰れないのではないか、父にもう会えないのでは、そんな心の奥底にあった不安が
言いようの無い不安感がジャスミンを襲い、涙が
「お父さん……!いやあぁああぁあ………!!!」
『ホロホロホロ…!』
スィ――――…
精神の
「あぁぁ………。」
度重なる精神的衝撃と
しかし、既に自分ではそれを繋ぎ留める事は出来ず、ジャスミンの体が
ドサッ……!
『ホロロロロロ…』
『ネガティブ♪ネガティブ♪』
―――――
━ジャスミンが“スリラーバーク”に足を踏み入れた2日後━
『急げ!!急げ!!始まるぞ!!始まるぞ!!』
『“
『午前0時を回る!!』
ドタドタバタバタと屋敷を駆け回るのは、
『ご主人様―――――!!』
『モリア様―――――!!』
『
バン!!
3体のゾンビたちが開け放った
そして、
「ぐおおぉおお……。」
「ぐお―――――…。ごが―――――…。」
『そいやっ!!』
ヒュッ!
パァン!!
ゾンビの1体が放った矢が、モリアの
「ふごっ!!?ご…!!ん??………ああ…。」
その衝撃でモリアの目が覚めた。
『ご主人様―――!!』
「あ―――――――。悪ィ夢を見た。」
『サイコーですねご主人様っ!!』
ゾンビの呼びかけで完全にモリアの意識が
『前回の“
『今回の
『ご主人様がずっとお待ちになっていた、ジャスミンとかいう娘も2日前にここに!!』
「何?!ジャスミンがここに来たのか!?」
ガバッ!
1人のゾンビの言葉に、モリアが勢い良く身を起こす。
『はい!ペローナ様が捕え、ご主人様がずっとお求めになっていた宝の
「キシシシシシッ!!そうか、ペローナがやったか……!!良くやった!!!そいつの所へ案内しろ!!メシはその後だ!!」
立ち上がったモリアの目は
補足:ホロホロの実は原作では“人をネガティブにさせる”、という能力で出てきますが、今回は「鋼のような精神力のルフィやゾロがネガティブになるなら、障子紙のような破れやすい精神力のジャスミンならどうなるんだろうか」「アレ、SAN値ピンチ…?」という発想で思い付いた展開な為、作者独自の解釈が多分に含まれております。
二次創作、ということで何とぞご了承ください。
・魔閃光…悟飯がピッコロから教わったらしい技。かめはめ波より早く撃てる分威力は低め。原作では1度きりしか使われていないが、アニメでは度々使われている。ジャスミンは悟飯から教わった。本編に出てくるかどうかは分からないが、まだ前世の記憶が戻る前にかめはめ波が使えなくてベソをかいていた時に見かねた悟飯が教えてくれた、という裏設定がある(時間軸的には、魔人ブウ編の少し前あたり)。
・占いババ…亀仙人の実の姉で、彼より200歳以上年上。必ず当たる凄腕の占い師だが、金にがめつく法外な報酬を要求する。あの世とこの世を行き来出来る力を持ち、死者を24時間だけ呼び戻すなど不思議な力を持つ。地球人が全滅したことがあるドラゴンボール世界において1度も死んだことが無い、という偉業の持ち主。
・案内役の幽霊…占いババの部下。占いババの宮殿で客の案内役をしており、とぼけたような顔をしている。
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第37話 ゲッコー・モリア登場!奪われたドラゴンボール
お気に入り登録1800人越え、評価もありがとうございます!
さて、今回の副題は“ジャスミンSAN値ピンチ”です。
今回も、話の展開上主人公が追い詰められてますが、どうかご了承ください。
彼女の受難はまだ続きます…。
━“マストの屋敷”内、ゲッコー・モリアのダンスホール━
ジャスミンは鎖で拘束され、
「とっとと吐けっ!!」
ドゴッ!
「グッ……!ゲホッ!ゲホッ………!!」
黒スーツの男の放った蹴りが、拘束されたまま転がされたジャスミンの
「
「…しらないっていってるだろ……!!」
ジャスミンを
半年前と比べて見る影も無く
この2日間の男の言動から推察するに、この男はどうやら命と引き換えにモリアに従っているらしい。
そして、モリアが
だが、男にとっては不運な、ジャスミンにとっては幸運なことに男はドラゴンボールの使い方を知らなかった。
2日に及ぶ暴行により、ジャスミンの顔も
何より、
痛みと疲労で飛びそうな意識を、気力のみで何とか保っている状態だったが、悪人にドラゴンボールを使わせる訳にはいかない、という決意のみで口を
更に、暴力だけでなくあの
そして、つい2~3時間前にジャスミンは途切れそうになる意識を
後少し耐えれば、ルフィが
そんな希望を胸に抱き、激しい暴力を
「キシシシシシッ!!」
「っひ……!」
そして、ズンズンと部屋全体に響くような重たげな足音を立ててホールに入ってきた大男を見て、男があからさまに怯え出した。
「モ、モリア様……!!」
そしてジャスミンもまた、
(コイツがゲッコー・モリア………?)
デカい。それが最初の印象だった。
巨人と
海賊というよりも、お化け屋敷のキャストと言われた方がしっくりくる。
「キシシシシシッ!ドラゴンボールが全て集まったらしいな。」
変に
「は、はい!!こちらにご用意してございます!」
「キーシッシッシッシッシッ!!!やっとか!!
「今までご苦労だったな…。お前のお
「も、
(まさか……!)
モリアの言葉に
「遠慮はいらねェさ…。受け取れ……!」
「やめっ…………!!」
ドシュッ!!!
殺気を込めたモリアの言葉に、ジャスミンが制止するより早く、モリアがその腕を
「ぁ……?」
何が起こったのか分からない、そんな顔をして
ブシャァアアアアアッ………!!!
(あかい、あめ………。)
部屋に赤い、
ズシャッ…!
数拍の間を置いて男の体が床に倒れ込んだ。
「あ、あぁああ……………!」
男の
「キーシッシッシッシッシッシッシッ!!!
「な、何て事を……。」
例え相手が悪人とは言え、何も出来ず、目の前で殺させてしまった事に、ジャスミンに無力感がのしかかった。
「さて…。ドラゴンボールが全ておれの手に入った以上、もうお前にも用はねェが…。一応、お前も億超えの賞金首だ。その影ももらっておくとしようか。」
「ぐっ……!」
言葉と同時に、その巨大な手でモリアがジャスミンの頭を
全体重が首にかかり、ジャスミンが苦痛で微かに
ベリベリベリ…!
ジャキン!!
「!?」
何かを無理矢理
━“サウザンドサニー号”医療室━
「………アアにィ…イ!!!?……ノーレー!!」
ふっ、と意識が浮上するのを感じる。まず復活したのは聴覚。
(さんじさんのこえ……?おこってる…………?)
「…れ以上刺激…やるな…。何かに…しそう…。」
(ぞろさんも、いる……。)
次第に、徐々に感覚が戻り、近くにナミ以外の“麦わらの一味”がいることに気が付いた。
ただ、1人を
(この“気”は…。)
「ちょっぱーくん…?」
まだ頭がはっきりとしていない為か、変に
「ジャスミン!目が覚めたのか!?」
「ここは…?っ…!!?」
周囲を確認しようと首をわずかに動かした
「まだ動いちゃダメだ!!治療はまだ途中だからな。アバラが3本も折れていたんだぞ?
チョッパーがジャスミンを安心させるように語りかかる。
その言葉に、
ジャスミンが寝かされているのは、どうやら医療室のベッドのようで、右腕には
そこまで認識して、はたと気付く。包帯が見える、ということは…
「私の服…?」
辛うじて下着は付けているが、それ以外は包帯とコルセットで隠れているものの人前に出られる姿ではなかった。
チョッパーは厳密には人間ではないし、治療目的だと分かっているので別に脱がされていたことに抵抗がある訳では無いが、もし治療の際に
何しろ、所持していたカプセルは全てウェストポーチごと奪われてしまったのだから。
ジャスミンの問いかけに、チョッパーが申し訳無さそうな顔をしたのが見える。
「ゴメン…。ジャスミンの服は、その、血だらけでとても着れる状態じゃなかったから、悪いとは思ったんだけど…。」
「あ―――…、やっぱり…。」
そして、その原因を思い出し悲痛な
「っ……!」
込み上げてくる涙を
「ジャスミン…?何があったんだ…?」
「…目の前で、人が殺されました。……助けられなかった…………!!」
チョッパーの柔らかな声に、これまで必死で抑えていたものが涙と共に
「お前の体中に鎖の
「でも…!」
「とにかく、今はゆっくり体を休めるんだ。もう少し眠ると良いよ。」
それを涙で
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閑話3 希望か、それとも絶望か…。目覚めたゾンビは敵?味方?
今回は閑話となります。
ジャスミンの影を入れられたゾンビについて、みなさま考察されているようですが、詳細は本編で……。
ちょっと日曜日から仕事が立て込んでまして、次回更新はちょっと遅れるかもしれません。
どうか気長にお待ちください。
追伸、お気に入り登録&評価、ありがとうございます!
※脱字訂正しました。
時はわずかに
ゲッコー・モリアに影を奪われたジャスミンは、
今までに影を奪われた犠牲者たちと同じく、
『おかしいな、船がねェ…。』
パンダもどきゾンビが首を、いや丸っこい体付きで首が無いので体を
本来影を奪われた人間を海に流す際には、その人間が乗ってきた船に乗せてそのまま海へと流すのだが、その船が無く
それも当然だった。そもそも、ジャスミンが“スリラーバーク”に来た際には
しかし、そんな事をホイポイカプセルの存在自体を知らないゾンビが知っている
『
本体が死んでしまっては、せっかく奪った影も消えてしまう。
ジャスミンを
そして、顔を上げてふと目に入った船があった。“麦わらの一味”の船、“サウザンドサニー号”である。
『まあ、あそこでも良いか。』
そして、
『よいせっ!!!』
ヒュンッ!
ドサッ……!!!
投げ付けられたジャスミンは、サニー号の
そして、それから数10分後、ジャスミンは一旦サニー号に戻ってきたチョッパーたちに発見される事となる。
━━━━その、ほぼ同時刻。
ゲッコー・モリアが、ジャスミンの影を
そして、ジャスミンの影を入れられたウサギの“
この時、モリアがたった1つ犯した、しかし
そして、影単体では大した戦力にはなるまい、と考え“過去消去”の契約を結ばなかったのだ。モリアの意のままに動かすには必要不可欠な、“過去消去”の契約。これを行わない、という事はかつての人気女優‐ビクトリア・シンドリーに入れられた影と同じく、本体の性格や
ゾンビである以上、モリアの能力である“影の支配”からは
しかし、“過去消去”の契約が結ばれていない以上、主人であるモリアの“命令”が無い限り、ジャスミンの影を入れられたゾンビは自身の意志のままに行動する。
まして、奪われたばかりの影には本体の影響が色濃く残っている。
ジャスミンの影を入れられたウサギのゾンビは、目覚めるなり
脚力の強い、ウサギの“
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第38話 遭遇!もう1人の七武海
今回は導入部分の為、次回バトル勃発の予定です。
ご感想、お気に入り登録、評価どうもありがとうございます!
━“サウザンドサニー号”医療室━
(……この“気”………?確か………。)
医療室のベッドの中、
以前感じた時には、酷く
(間違い無い……。この“気”は…。)
「あの、ゆうれい……。」
パチ、と目を開きジャスミンが
まだ意識がどこかぼんやりとしているものの、深く眠れた事で体力が回復したのか、先程目が覚めた時よりも気分がスッキリとしている。更に、チョッパーが
実はジャスミンはそれ程痛みへの耐性が無い。これ程にボロボロになる事などほとんど経験が無かったし、時折修行中に怪我をしたとしてもある程度酷いものだったなら、すぐに
しかし、今は
「っつ………!」
ゆっくりと身を起こし、右手を何度か開閉させて自身の体調を確かめる。
「これ位なら、いける。」
だが、ジャスミンとて
それよりも気になるのは、あの
「
いくら
内心で自身に舌打ちながら、周囲を見回す。体力・気力共に戦える程度には回復したが、
その原因を思い出し、再び気分が沈みそうになったものの、今はそれどころでは無い、と自らを
「ん?」
ベッド
「私
チョッパーからジャスミンに
[ジャスミンへ。体の具合はどうだ?おれたちは、今から
メモが乗っていた布を広げる。見れば、
「助かる…!ありがとう、チョッパーくん…!!」
この際、着られれば何でも良い。ベッドから下り、
スニーカーを
「……!」
これまでに感じたことの無い“気”の何者かが突然現れ、その直後にあの幽霊を操っていたらしい能力者が
「っまずいかも…!」
何があったのかは知らないが、その何者かの近くにナミがいる。この“気”が“麦わらの一味”のもので無い以上、敵である可能性も高い。
ナミの所へ急ぐ必要があった。
━その少し前、“スリラーバーク”内ペローナの“
『出て来ォ―――――――い!!!麦わらの一味ィ―――――――――――!!!!』
壁をぶち破って城から飛び出し、割れ
ルフィの影を入れられ、500年の時を
『“ゴ―ム―ゴ―ム―の~…”』
オーズがサンジにターゲットを
「ルフィの技だっ!!」
「まさか伸びるのか!?」
「あいつもゴム人間になったのか!?」
チョッパーとウソップ、ゾロがそれに
『“
ボゴォン!!!
「うお!!」
「の…伸びはしなかった!!…けど!」
「あんだけリーチと破壊力があったら関係ね――――――――っ!!!」
その破壊力に、チョッパーとウソップの目は飛び出さんばかりである。
「“
『ふんっ!!!』
ガン!!!
サンジが反撃の為、オーズの
ガァンッ!!
「うっ!」
サンジの体は
ドゴォンッ!!!
「ぐァ!!!」
「あの巨体で何て速さ!!!」
フランキーが思わず叫ぶが、その
ガララ…
壁に叩き付けられたサンジが、崩れ落ちた
オーズの巨大な手がサンジを
バキィッ!!
『うおっ!?』
オーズの手を
ガシッ!
落下するサンジを地面に叩き付けられる前に
ダン!
着地したのは――――、
「「「「「「「ウサギ!?」」」」」」」
ジャスミンの影が入れられた、
『私が相手になるよ。かかって来いよ、
『何だァ?お前…!』
━同じ頃、“サウザンドサニー号”━
『
『どわあぁああぁあ!!!』
ゾンビたちが恐れをなして逃げ出すのは、聖書を抱えた7m近い大男。
“スリラーバーク”の
「驚いたな…。まさか、こんな短期間にもう1人“
「!」
バッと、くまが振り返った先に、ジャスミンが
「お前は…、“
「別に1人も殺してないけど…。不本意だな、その
むっすりとした顔でジャスミンが否定する。
「
「別に………。それより、それはこっちのセリフなんだけどね。何で、“
「お前には、関係の無い事だ…。」
「そう…。なら、こっちもノーコメントにさせてもらうよ。」
お互い、腹の探り合いだった。こころなしか、周囲の気温が2~3℃下がったような気がする。
「それよりも…。“
不意にくまがジャスミンから目を
「えっ!」
突然注目され、
「モンキー・D・ルフィに兄がいるというのは、本当か。」
「い、いるわよ。エースでしょ?……それが何?」
「
「何なの!?ルフィに用!?目的は何!?本当に“
「何をしようと、おれの自由。」
聞きたいことを聞くなり、スタスタと歩き出すくまの背中に、ジャスミンが
「あなたがどこで、誰と、何をしようと自由だけど…。ルフィくんたちや私の邪魔をする気なら、
一瞬立ち止まり、くまが
「覚えておこう。」
そして、瞬間的に移動する。
「い、一瞬で…!?」
ナミが驚愕しているのが分かる。一般人には
「やっぱり能力者だったか……。」
まぁ、今の問題は
ルフィたちの影は原作でも大丈夫だったので何とかなるだろうが、ジャスミン自身も影を奪われてしまったのだ。一刻も早く奪い返さなくては。
夜明けは、近い。
某幽霊娘が不在と分かっているので、ちょっと余裕のあるジャスミン(笑)
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第39話 VS伝説の魔人
今回、一部感想でもご指摘のあったくまについて、ジャスミンが考察しています。
本編で詳しく語るのはもう少し先でしょうか…。
お気に入り登録、ご感想などどうもありがとうございます!
━ジャスミンがくまと接触する少し前━
ガァンッ!!!
ウサギゾンビの蹴りと、オーズの
「うおっ……!!?」
「ひいぃぃ……!!」
「っ何て
サンジが思わず1歩身を引き、ウソップが悲鳴を上げ、ゾロが
『ぅわっ!』
ドコォン!
しかし、その後の
「!ウサギの方が押し負けたぞ!!」
「パワーは
しかし、その直後ウサギゾンビが
『…あんまり調子に乗るなよ………!』
ベキィッ!!
お返し、と言わんばかりにウサギゾンビが飛び出した反動を利用し、オーズの頭を蹴り付ける。
『うぉっ!!?』
蹴られた衝撃でバランスを崩したオーズの
ズズゥウウ…………ン!!!
オーズが倒れた事で、まるで地響きのように船全体が揺れる。
「あの巨体を蹴り飛ばしやがった…!」
「っつ―――――か、あの口調どっかで聞いた事があんだよな…。」
思わず
そして、思い出した。
「あ―――――――――――!!!!」
「あんだよ、ウッセーな!!?」
「どうした?」
突然上がったウソップの叫びに、サンジが耳を抑えて
「アイツ、あのウサギ!ジャスミンだ!!この口調は
ウサギゾンビを指差しながら叫ぶウソップに、
「はぁ!?」
「何だと!?」
「アレがジャスミンちゃん!?ホントか、それ?!」
中でもサンジの驚きは激しかった。ウソップの肩を
「うぇ…!止めろ、
「あのお
普段のジャスミンの口調を思い出しつつ、フランキーが問う。彼はさほどジャスミンと関わる機会は無かったが、戦えそうも無い外見の割に強い、という印象もあり記憶に残り易かった。
「おう。特にあの
「へェ。人は見かけによらねェもんだ。っつーか、あのお
「怪我の方に目がいってしまって気付かなかったけど、そう言われれば無かったかもしれないわ。」
ロビンが2体のゾンビの戦いから目を離さないまま応じる。
「何にしたって、これなら何とかなるかもしれねェぞ…!」
「ああ!希望が見えてきた………!!」
フランキーとサンジの声がわずかに明るくなる。
その視線の先では、ウサギゾンビがその体格差をものともせず、オーズ相手に互角の戦いを繰り広げていた。
本来、ジャスミン自身の腕力や脚力は、Z戦士の中では最弱である。それは経験値の違いだけで無く、
普段、パワーが格上の相手とも渡り合う事が出来ているのは、攻撃の際には瞬間的に“気”を込めて威力を底上げしている為だ。元々筋力が付き難い体質、という事もあり仮に“気”を封じられてしまった場合、一気に攻撃力が落ちてしまう。
そのジャスミンの影を入れられている以上、ウサギゾンビも本来その体が有している以上のパワーを引き出す事は出来ない。体格差が人間と山程もあるオーズと戦えているのは、
ウサギ、と一言で言っても普通のウサギでは無い。原作の記憶がほぼ怪しいジャスミンは勿論、麦わらの一味でさえ知る
その脚力と、ジャスミンの影を入れられる事で得たスピードでオーズを
『せいっ!!』
ゲシィッ!!!
ウサギゾンビが仕掛けた足払いに、オーズが『ぉおっ?!』と叫びながらバランスを崩す。
『りゃあっ!!』
大きく体が
そしてそのままオーズの体が180°回転し、
ボコォン!!!
『うォあがっ!!!』
頭から地面に叩き付けられた。
『はっ!ザマァ…!』
良い気味だ、とでも言わんばかりの表情でウサギゾンビがオーズを鼻で笑う。
━ウサギゾンビがオーズを見事に蹴り飛ばしていた頃━
ルフィはモリアを倒す為に、逃げるモリアを追いかけ、森の中をひたすら走っていた。
「捕まえたぞ――――――――――っ!!!モリア~~~~~~~~!!!」
がしぃっ!!と後ろからモリアに飛びつき、地面に押し倒す。
「ゼー…!ゼー…!ハー…!ハー…!も………!!もう逃がさねェぞ、コノヤロー!!さァ、おれと戦え!!!みんなの影を返せ!!!」
息を切らせ、モリアに言い放ったルフィだが、確かに捕まえた
くるり、とルフィを振り向いたその顔は真っ黒だった。
「!……カゲ?」
一瞬
「っしまった―――――――――――!!!ダマされてた―――――――――――!!!ここ、どこだ――――――――!!?」
―――――――――影を盗られた者たちへのタイムリミットである夜明けまで、残り時間およそ30分。
━その、ほぼ同時刻━
ナミと再会したジャスミンは、互いが持つ情報を交換していた。
スリラーバークを支配する四怪人とそれぞれの能力を聞き、ジャスミンが
「あの
「それよりジャスミン、あんたどうしてそんな
「話せば長いんだけど…。その
「影を盗られたァ?!しかも、ドラゴンボールってあの願いを叶えるっていうアレでしょ!?!」
「我ながら
頭を抱えながら思い口調で話すジャスミンに、ナミも何かしら
「!そういえば、ナミちゃんに確認したい事があったんだけど…。」
「何?」
ふと思い出したように、ジャスミンが顔を上げる。
「ウォーターセブンでフランキーさんと初めて会った時、フランキーさん確か自分で“
「?ええ、そうよ。どうしたのよ、突然…?」
「“
「ああ、それなら仲間になった時に聞いた事あるわ。確か、海列車に
「!自分で自分を……?!」
「ええ。だから、体の前半分しか改造出来なくて、背中側の後ろ半分は
「体の前半分だけ…。だからか…。」
ナミの説明を聞いて考え込むジャスミンを、ナミが
「それがどうかしたの?」
「さっきの“
その時だった。
ズズゥ…ン!!!
「何よ一体!?」
「?!空が……!」
ナミを
“
「両方共早いトコ取り返さないと…。取り敢えず、優先順位は影かな。夜明けが近い……。」
白んできた空を見上げ、ジャスミンが呟く。
「でも、ドラゴンボールが盗られちゃったなら、もうモリアが自分の願いを叶えちゃったんじゃ……?」
「それは無いと思うよ。アイツら、願いを叶える為に必要不可欠な呪文を知らない
ニッ、といたずらっぽく
「呪文?」
「そう。私、先に行ってるね!たぶん、夜明けまで30分も無い…!」
ダンッ!
言い置いて勢い良く
「ちょっと!ジャスミン!!さっきの話って……!」
ナミが呼び止めようとするが、
「あの“
しかし、夜明けまで時間が無いのは確かだった。ナミはジャスミンの言葉を気にしながらも、ウェディングドレスを着替えるべくサニー号へと走る。
ワノ国からリューマの死体が盗まれているくらいなので、同じく新世界からミンク族を入れてみました。ゾウの国からでなく、生前は奴隷だった、という裏設定があるのですが、いずれ本編で入れる時がきましたら詳しく説明したいと思います。
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第40話 モリアinオーズ!遂にジャスミン参戦
今回、本来はもっと進む筈だったのですが、グダグダになってしまったので止む無く削り、大幅に手直しました。
今回、ジャスミンのトラウマがちょっとだけ明らかになります。
※タイトル微変更しました。モリアにオーズは入れないですよね、すみません…!
━ジャスミンとナミと別れた、数分前━
『よくもやりやがったな…!!』
オーズが
“
「……!!最悪だ……!!夜明けまで後30分もねェってのに…!!」
フランキーが白んできた空を見上げながら吐き捨てる。
「一体、
『マズいな…。このまま朝になったら私も消滅しちゃうじゃないか…!』
サンジとウサギゾンビが
「キシシシシ…!!
不意にモリアの声が辺りに響く。
「…モ…、モリア!!!モリアだ!!!何でここに!!?ルフィは!?」
「おい、待てウソップ。モリアがどこにいるってんだよ!!」
ウソップが声を上げるが、サンジたちには見付けられない。
「いるじゃねェか!!あそこ見ろ!!腹だ!!オーズの腹ん中!!」
「腹の中??」
ウソップの言葉に、フランキーが目を
見れば、オーズの腹部に窓のような穴があり、その中に小さな部屋がある。その部屋に、モリアはいた。
「い…、いた!!!じゃ、ルフィは!?
「あるいは…!!」
「やられやしねェよルフィは!!」
サンジの叫びにフランキーが最悪の事態を
『マ、マズい…!ご主人様が来るなんて…!!』
彼らを
「キシシシッ!お前はあん時逃げやがったゾンビだな…?オーズの邪魔をしてやがったみたいだが、まぁ良い。命令だ。そこで
『は、はい!!』
下された命令に、ウサギゾンビが直立不動になる。ゾンビである以上、主人であるモリアの命令には逆らえない。モリアがオーズとウサギゾンビの戦いを直接見ていなかった事は、“麦わらの一味”たちにとってはこの上無い幸運だった。
もし、モリアがウサギゾンビに向かって「“麦わらの一味”を殺せ」とでも命令していたなら、その瞬間にでも彼らの命は無かっただろう。
『おお――!!コクピット!?何だ、おれの腹コクピットなのか!!?スッゲー、イカス!!おれロボみてェじゃん!!テンション上がるな―――!!!』
「キシシシシ…!」
何故かやたらとテンションの上がっているオーズを
「キシシシ!!さァ、お前ら。おれと戦うチャンスをやろう。おれを倒せば全ての影を解放出来る。全員でかかって来い!!!――――――ただし、オーズを倒さねばこのおれは引きずり出せねェがな…!!」
「………!!あのヤロー汚ねェぞ!!」
「モリアを倒さなきゃオーズを
自身の身を守りつつ、あくまでも
「―――――かえってスッキリしたじゃねェか。標的がよ。」
「やるしかねェ!!!」
サンジとゾロは既に戦闘
「ウソップ!!おれたちが何とか
「良し!!分かった!!」
ゾロの指示にウソップが頷いた直後だった。
「キシシシシシッ!!!やらせねェよ!オーズ!!あの長っ鼻をぶっ
『はい、ご主人様。』
「マズい………!!」
「逃げろ!!!」
モリアの命令に従い、
グォッ………!!!
ボコォ…ン!!!
「しまった!!!ウソップ―――――――――――!!!」
オーズの
“麦わらの一味”たちが、最悪の事態を想定して
「ご無事ですっ!!!」
ウソップを
「遅くなって申し訳ありません!!!大量に塩が必要かと思い!!集めていました!!!」
大きな
「上手く
グォッ………!!!
ブルックが体勢を立て直すより早く、オーズの追撃がウソップたちに襲い掛かる。今度こそ
「
ズバァッン……!!
ウソップたちの手前で、オーズの腕が
ズ…ズゥ……ン…!!!
斬り飛ばされた腕は、屋敷の壁を一部破壊しながら、2人がいる場所スレスレに落ちる。
「この技は……!!」
「まさか!?」
「何なんだ一体!?」
彼らにつられたのか、モリアもその方向に目をやった。
「その巨人がルフィくんの影が入ってるっていうゾンビですか?話には聞いてたけど、
ペローナの“
「ジャスミンちゃん!!?」
「良かった。思ったよりも元気そうね。」
サンジが叫び、ロビンがその姿を見て
「お前は―――!絶対安静って書いておいただろ?!」
チョッパーからの
「“だって”じゃねェ!!!」
「おいおい、チョッパー。今はそれどころじゃねェだろ?!」
更に怒鳴るチョッパーを、ブルックに下ろしてもらったウソップが
そう、目の前にいる敵が待っていてくれる
「オーズの腕を斬り落としやがっただと……?!何の能力だ?」
ジャスミンを悪魔の実の能力者と思い込んでいるモリアが首を
「何でも良いだろう。そんな事より、私の影はどのゾンビに入れた?」
怒っているチョッパーを視界に入れないようにしつつ、ジャスミンがモリアを
「そこのウサギだ!!間違いねェ!!!」
「ウサギ?」
ウソップの叫びに、ジャスミンがそちらに目を向ける。見れば、その言葉通りにロビンたちの側にウサギのゾンビが
「…そう。悪いけど、その影、返してもらうよ。」
『………それが一番良い方法なのは分かってる。でも、私も死にたく無い…。…だから、戦わせてもらう……!』
ジャスミンがウサギに向き直るが、ウサギゾンビもジャスミンを
互いに
片や、異世界の英雄にもその実力を認められた武道家。片や、生まれながらの戦闘種族であり歴戦の戦士。
その2人の放つプレッシャーが頂点に達した時、ゴクリ、と誰かが
その瞬間――――、
ドォンッ!!
ウサギゾンビがジャスミン目がけて
『え……?』
「………ゴメンね…。」
“
ボッ………!!!
ウサギゾンビが背後のジャスミンに気付く前に、ジャスミンの手から放たれた
ズズズズズズ………!!!
ヒュ―――――…ン
燃え尽きたウサギゾンビから飛び出た影がジャスミンへと戻ってくる。
「影が戻った…!」
「一撃で……!!」
ロビンがジャスミンの足元を注視し、フランキーが
「キシシシシシッ!!!やるじゃねェか…!たった一撃でおれのゾンビを倒すとは…。確かに、体を燃やされちまったら影は本体に戻る。さすがに億超えの賞金首だな。」
意外にも水を差す事無く勝負を見ていたモリアが、感心したような声を上げる。
「だが、オーズには勝てねェ…!コイツは伝説の魔人だ……!!!キ――シッシッシッシッシッ!!!」
「………伝説の魔人、ねぇ。それにしては、さっきから
オーズの腹部に入り込んだままのモリアを見上げ、ジャスミンが挑発するように言い放つ。
そう。かつて、地球を丸ごと破壊してのけた桃色の魔人。当時はまだ前世の記憶が戻っていなかったジャスミンもトラウマを植え付けられた。おかげで未だにチョコレートが食べられない。
「もっと強くて怖い魔人、だと……?!」
何をバカな事を、そう言いたげにモリアが吐き捨てるが、ジャスミンが続ける。
「まぁ、信じたくなければそれでも良いけど…。お前は許さないよ?」
(やべェ。怖ェ………!)
笑顔を浮かべつつも、しかし目だけが怒りを
※本来、ウサギゾンビはもうちょっと活躍させるつもりだったのですが、タイミングを間違えるとモリアがジャスミンの影も吸収してしまう為、ちょっと収集が付かなくなりそうなので退場してもらいました。
もし時間と需要があれば、ifで吸収されたVerも書きたいと思います。
・桃色の魔人…ドラゴンボール原作において最後のラスボス・魔人ブウのこと。邪悪な魔導師によって生み出せれた魔人で、戦闘センスが突き抜けている上に魔術が使え、尚且つ再生能力があるチート。ベジータ捨て身の自爆攻撃でさえ全く効かなかった。実は地味に色々な形態があり、微妙に性格なども異なっている。最終的には2人に分裂し、悪とそうでも無い方に分かれた。悪の方は悟空に倒され、残った方はミスターサタンの尽力によって改心し、現在はミスターブウと名を変えている。
・ジャスミンのトラウマ…魔人ブウは魔術で人間などをお菓子に変えることが出来、ジャスミンも1度そのせいで死んでいる。ジャスミンはヤムチャが目の前でチョコレートに姿を変えられ、食べられるのを目の当たりにした為、トラウマで板チョコが食べられない。
※実際に原作ではその描写はありませんでしたが、魔人ブウが「チョコレートにする」的なことを言っていたのでその設定にしました。
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第41話 決着!?倒されたモリア
本当はもっと早くに更新したかったんですが、年度が替わってバタバタしてまして、なかなか時間が取れませんでした。
夏まで不定期更新になると思われます。
そして、いつの間にかお気に入り登録が1900人を超えていました…!感想、評価も合わせてどうもありがとうございます!これからもがんばらせていただきます!!
「許さない、だァ?何を許さないってェ?」
ジャスミンを
周囲にいる“麦わらの一味”が何となく
「1つ。自分の
不意にジャスミンがモリアから視線を外し、軽く
「あァ?」
何を言ってるんだコイツは、とでも言いたげなモリアの視線を無視し、更に近付いていく。
「2つ。100歩譲って海賊相手の
更に距離が近付く。
「何が言いてェんだ。」
「3つ。私の
ザッ…!
オーズの3m程手前でジャスミンが足を止め、ゆっくりと顔を上げる。
「良い加減にしろよ…?この
モリアを
「ふん。何とでも言え。
キシシシシシッ!!!と
「オーズ。あんたはそれで良いの?今のままじゃ、あんたは一生モリアの操り人形だ。一生太陽に怯え、自由も無い、ただ使われるだけの日々。」
少しでも自我が残っているならばあるいは、と
『おれはご主人様に従う。』
「そう…。」
きっぱりと言い放ったオーズに、ジャスミンもそれ以上は何も言わなかった。
その代わりに、行動で示す。
「だったら、悪いけどここで
ズオッ………!!!
『あ゛……?!』
言葉と同時に、ジャスミンが右手のみで放った
「オーズ?!おいっ!!」
ズズズズズズ…!
モリアが異常に気付き、オーズの体内の小部屋から飛び出すが、既にオーズの体からは影が抜け出初めていた。
頭ごと脳を吹っ飛ばされたのだ。人の体は、例外無く脳からの指令によって動く。意識的にであろうと、無意識にであろうとも。外部からの刺激による反射行動だけならば、
1体1体がそれぞれモリアが操る
前世で有名になったゾンビパニック映画をヒントにしたが、判断としては正しかったようだ。
ヒュ―――…ン!
「影が…!クソ!オーズが一撃だと……?!」
「ルフィの影が…!」
「やった…!スゲェぞジャスミン!!」
チョッパーが抜け出た影を目で追い、ウソップが興奮した叫びを上げる。
ドッオォオオ…………ン……!!!
一拍置いて、オーズの体が周囲の
「テメェ…!よくもオーズを
苛立ちも
「こうなりゃ、もう1度テメェの影を利用させてもらうぜ。オーズを一撃で倒した程だ。
「言ってろ…。」
いよいよ自ら戦う気になったモリアに対し、ジャスミンも構えを取る。
――――――――夜明けまでおよそ20分。最後の戦いの
━少し前、スリラーバーク内の森の中━
モリアによって
「お前、モリアの“現在地”知ってっか!!?腹の中よ!!あの
「ええ~!?食われたのか!?」
ローリング海賊団の一員、リスキー兄弟がルフィに状況を説明している。
「そうじゃねェっ!!つまり、お前の影の入った
「そこにいるのか、チキショ~~~~!!!」
ルフィがモリアの現在の居場所を聞いた直後だった。
ヒュ――――――……!
「お、おい!アレ……!!」
「え?!」
ヒュ―――……ン!
「うおっ?!何だ!!」
飛んできた
「お、おれの影?」
「あの
ジャスミンがオーズを戦闘不能にした事により、解放されたルフィの影が
「良し!じゃ、おれホント急ぐから…!」
「待てっつってんでしょ!!って出口はそっちじゃないわよ?!」
“ローリング海賊団”船長“求婚のローラ”の制止も最後まで聞く事無く、ルフィは中庭を目指す。が、逆方向へと走り去っていった。
━ルフィが中庭を目指したのとほぼ同時刻━
「“
ズズズ…
ポコ…!ポコ…!
ポポポポポポポポッ…!!!
モリアの“影”が立体となり、それが
「ちっ…!邪魔だ!!」
ドドドドドドドドドッ!!!
マシンガンの
「キシシシシシッ!やっぱり
撃ち落とされた
(長引けばこっちが不利…。となれば、一気に
痛み止めが切れたのか、再び痛みが強くなり始めたのを感じる。呼吸の度にズキズキと
(だったら…。)
オーズが追撃するより早く、ジャスミンが構えを変える。
「げっ……!あ、あの構えは………?!」
「ウソップ?」
片手である為、以前見た時とは多少異なるものの、1人、その構えに見覚えのあったウソップが
「悪いけど…。これで終わりにさせてもらう!!」
言うや否や、瞬間的にジャスミンの姿が
「な?!」
モリアとジャスミンの身長差は、大人と子どもを
「はあぁぁぁぁっ!!!」
ドドドドドドドドッ!!!!!
「がっあぁぁ・・・・・・・・!!!!!!」
モリアがジャスミンに反応するよりも早く、ジャスミンの激しい
やはり体格差と片手のハンデは大きく、モリアの頭と精々胸元までしかジャスミンの攻撃は通らない。しかし、一撃一撃が確実に急所を
「は、速ェ……!!」
「動きが見えねェ!!」
ジャスミン自身、決して浅くは無い傷を負っている為、その動きは
「でりゃぁああっ!!!」
ガォン!!!
「がっ…!」
とどめに放たれた
ズッシャアァアアアッ!!!
モリアの体は
「ハァッ…ハァッ………!!」
ストッと地面に降り立ったジャスミンが荒い息を
一旦は回復したとは言え、負傷し
「や…、やったのか…!?」
「モリアを倒した…?」
フランキーが、ロビンが
「ハァ…、正確には、まだ終わって無い…。」
荒い呼吸を繰り返しつつ、吹っ飛ばしたモリアへと近付きながらジャスミンが答える。
「まだって…。」
「まだ、“影”は解放されて無い…。ハァ…!」
ザリッ…!
「ただ
完全に意識を飛ばしているモリアを見下ろすが、ジャスミンが不意にその
「おい?!何する気だ…?」
ゾロが無言でモリアを引き
「能力者本人が意識を失っても能力が解けないなら、それだけその力が強力という事…。でも、完全にその能力自体を封じてしまえば、無効化されるんじゃないかと思ったんです。」
一旦足を止め、ジャスミンがゾロを振り向く。
「完全に能力を封じるったって、一体どうやって…。」
今度はサンジが疑問の声を上げる。
「本当は
「いや、だから何をどうやるってんだよ?」
溜息を
「海に突き落とします。」
サラッと落とされた
「「「「え?」」」」
「「「は?」」」
一拍置いて
「「「「「「「マジか!?」」」」」」」
その場にいた“麦わらの一味”+1名のツッコミが響いた。
「な、何!?何事!!?」
ちょうどタイミング良くその場に到着したナミが、急なツッコミにビビる。
――――――――夜明けまで、およそ15分。あれだけ
今回、ゾンビが頭吹っ飛ばせば攻略OK、みたいな書き方をさせていただきましたが、二次創作という事でご了承ください。
因みに、能力者を海に落としたら能力解除、というのも二次創作という事で…。
追記:モリアの能力については、原作でローラが気絶したモリアを前にして「モリアの口から“本来の主人の元へ帰れ”と命令しなければ影は戻らない」と明言していた為、このような展開にさせていただきました。
同じ超人系でも、シュガーのホビホビの能力は気絶すれば能力解除だったのに対し、カゲカゲは解除されない、というのはそれだけモリアの執念が強かったのかな?と推察しました。基本的にドフラミンゴの指示で能力を使っていたシュガーとは異なり、モリアには確固たる野望があったからではないか、と勝手に考えています。腐っても七武海、戦ったら確実にシュガーより強いでしょうし…。
以上、ミカヅキの勝手な推察でした。
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第42話 一難去ってまた一難!?
本来はバトルになる筈だったんですが、どうしてこうなった…。そして、サブタイトルが何か初代プ○キュアっぽくなりましたが、作者はおジ○魔女世代です。
次回、いよいよ神龍を喚び出します!ジャスミンが何を願うのか、どうかお楽しみに!!
━“
「船長――――――――――!!!
朝日が
「バカ言ってねェで寝ろ!!朝日で消滅しちまうぞ!!モリアに影を奪われて2年…、おれたちァ…。」
ドタバタと音を立てて船長室に駆け込んできた船員に、ベッドに入ろうとしていた船長が怒鳴り付ける。
「それが船長…!!足元をご
「あァ?」
船員の言葉に、自らの足元に目をやり、一瞬動きを止める。
「影が、ある!!!」
バンッ!!!
「影がある―――――――――――――っ!!!」
「全員です船長ォ!!全員の影が戻りましたァ!!!」
ワアァアアアアアアアアア―――――――――――!!!!!!
全員が
再び太陽の
彼らの他にも、“
━“スリラーバーク”中庭・メインマスト前━
「朝日だ――――――――!!」
「朝日もう恐くねェ~~~~~~!!」
モリアを海に沈め(もちろんちゃんと引き上げた為、まだ生きている)、全ての影を解放したジャスミンがモリアを引き
見たことの無い海賊団に内心首を
「ジャスミン!!お前、怪我は?!
「ヤバッ……!」
チョッパーの顔が怖い。ドクターストップを無視して無茶をやらかした自覚はあるが、仮にも医者が患者にしてはいけないような顔をしている。
反射的に身を引こうとしたものの、
ガシッ!
「へっ…?」
急いで足元を確認すると、
「こ、この腕は…!ニコさん?!」
ロビンを振り返ると、
「ダメよジャスミン。ドクターの言う事は聞かないと。」
「げっ……!」
ジャスミンが顔を引き
「逃げるな――――――――!!!」
「ご、ごめんなさい!!」
その後、診察を受けつつも正座させられ、
「んじゃ、結局モリアはジャスミンが倒しちまったのか?!」
ようやっと中庭に
「おいおい…。ジャスミンがモリアを倒して影を解放してくれたお陰で、お前もゾロもサンジも無事なんだぜ?まぁ、自分で倒したかったんだろうが、お前を待ってたら今頃影を盗られた
ウソップが
「あんたたち…!!礼が遅れたわね!!」
そこに、“ローリング海賊団”船長‐“求婚のローラ”が
それを受けて、“ローリング海賊団”の船員たちも船長であるローラも元へと集まった。
「おれたちも心底感謝してるぜ!!お陰でまた太陽の下に出られた…!」
「ああ、全部あんたたちのお陰だ!!」
船員が集まったのを見計らい、ローラがその場に
「ありがとうあんたたち!!!スリラーバーク被害者の会一同………!!この恩は決して忘れないわ!!!」
「「「「「「「「「「ありがとうございました!!!」」」」」」」」」」
船長に
「お礼に私を
「「「「「いらん。」」」」」
ローラの求婚には、即座に麦わらボーイズ(ただし、ジャスミンを診察中のチョッパーを除く)が拒否したが。
「そう言わずに!!!」
「………礼を言われてもな。おれたちは
「特にあんた!!結婚しない!?」
「お前らついでに助かっただけだ。」
食い気味で発せられた指名式の求婚をスルーしつつ、ゾロが続ける。
その様子をやや離れた所で、チョッパーの診察を受けながら観察していたジャスミンだったが、不意に感じ取った“気”に
「あ。」
「どうしたんだ?」
取り
「ドタバタしてたんですっかり忘れてました。まだ終わってなかった…。」
言うなり立ち上がったジャスミンが屋敷の屋根を見上げる。
「…そうだ私……!!…大変な事忘れてた………!!!」
そのジャスミンの目線を何気無く追ったナミも、そこにいた人影を見て思い出したようだ。
「どうしたの?」
ロビンが彼女らの様子に気付き、ナミに問いかける。
「それが!!大変なの………!!」
『成程な。』
ナミが仲間に教えようとした時だった。不意に、知らない男の声がそれを
バッと、ローリング海賊団を含めたその場の全員がその方向‐屋敷の屋根を見上げた。
『悪い予感が的中したという訳か。』
「―――――――そのようで………!!」
「「「「「「「「「「「「!!?」」」」」」」」」」」」
手の中の電伝虫で会話する
「落ち着いて聞いてよ………!!?言いそびれてたんだけど、この島には…もう1人…!!いたの……!!!“
「!!?」
「…な………!!」
「今…、何て!!?」
「あれが、“
再び、その場にいた者たちの視線が
「アイツもあのデカらっきょやクロコダイルと同じってことか!?」
想定外の相手に、ルフィでさえ叫ぶ。
『やっとクロコダイルの
「さァ…。」
『生きてさえいれば…、回復を待ち
「……そうだわ。あのモリアにも
「あいつが!?“
こちらに構う事無く通話を続ける男の正体に、ローラが気付いた。そして、その場にいた者たちへ驚愕が広がっていく。
「マズいな…。」
ポツリ、とジャスミンが洩らした呟きは、その驚愕の
『私の言っている意味は分かるな?モリアの敗北に目撃者がいてはならない。』
「ちっ……!」
バッ……!!
不意に電伝虫が吐き出した
『世界政府より
「た
「させないよ。」
「“
『何!?』
「この場の全員を殺す?そんな事を私がみすみす許すと思う?」
ズオッ………!!!
言い放つと同時に、“気”を解放する。
「ぐっ…!」
エニエス・ロビーの時とは異なり、的確にバーソロミュー・くまにのみ向けられた
『くま?!何があった!?』
「1つ言っておく。その電伝虫の向こうにいるのが誰かは知らないけど、今この場で強硬手段に出るというならもう1人“
『何だと?!』
ジャスミンに
「取引しない?今この場にいる全員を見逃すというなら、私もバーソロミュー・くまに手は出さない。モリアの件にも口を
『小娘が
「まぁ、私も今は本調子じゃない。今戦ったら私も相当の痛手を負うだろうけど、そんな状態で上手く手加減出来るかどうかは自信無いんだ。バーソロミュー・くまも無事じゃ済まないだろうね。――――――1日で天下の“
『小娘がァ……!!!』
「………。」
いきり立つ通話相手とは対照的に、バーソロミュー・くまはジャスミンから目を離さないまま、沈黙を保っていた。
一方ジャスミンとしても、取引と言いつつも世界政府が
先程の
全快しているならともかく、今の自分のコンディションではかなり苦戦させられる事は間違い無いが、負けるとは思わない。能力にさえ気を付ければ勝てない相手では無い。唯一の
特に、今回さしてダメージを負わなかった“麦わらの一味”は率先して戦おうとするだろう。
(彼らが戦うのは、まだ早い…。)
“
シャボンディ諸島の際には能力で“
この場で“
ジャスミンが内心で思いを巡らせつつ、相手側の出方を
『………良いだろう…!だが、もしお前たちの口からモリアの敗北を洩らす者がいたならば、その時は覚悟しておくが良い!!ブツッ…!』
「「!」」
(自分で持ち掛けといてなんだけど、乗るんだ…。)
数秒間の
バーソロミュー・くまでさえ一瞬微妙な顔をした。
「…じゃあ、さっさとここから立ち去って欲しいな。もう用は無いんだろう?」
「…そのようだ。」
何となく微妙なままの空気の中、水を向けたジャスミンに手持ち
そしてそのまま自身の能力でパッとその場を後にした。
「……戦わずに済んだのは助かったけど、何だかなぁ…。」
何となく
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閑話4 世界政府の要!“五老星”の意志
本編でなくてすみません…。
世界政府サイドの話を入れようとしたら以外と長くなってしまった為、分けました。本編はもう少しお待ちください…。
お気に入り登録、ご感想などいつもありがとうございます!
――――――――時はわずかに
“
『プルプルプルプル…!プルプルプルプル…!プル、ガチャッ……!』
中心に置かれたテーブルの上の電伝虫が鳴り響き、その中の1人である頭に
『こちら、くま。』
物静かを通り越し、むしろ感情の
『報告する。ゲッコー・モリアが落ちた。』
「何?!」
「何だと…!?」
「まさかモリアが…。」
「悪い予感が的中したという訳か。」
通話相手、“
『―――――そのようで……!!』
苦々しく顔を歪めながら、バーソロミュー・くまにその場に居合わせた海賊たちの始末を命令した直後だった、その声が響いたのは。
『させないよ。』
「誰だ?」
「女の声?」
突然電伝虫が吐き出した、若い女の声に“
『“
「何!?」
「こいつが…?!」
『この場の全員を殺す?そんな事を私がみすみす許すと思う?』
『ぐっ…!』
「くま?!何があった!?」
ジャスミンの声の直後に、苦し気に
『1つ言っておく。その電伝虫の向こうにいるのが誰かは知らないけど、今この場で強硬手段に出るというならもう1人“
「何だと?!」
放たれた挑発に、“
『取引しない?今この場にいる全員を見逃すというなら、私もバーソロミュー・くまに手は出さない。モリアの件にも口を
「小娘が
『まぁ、私も今は本調子じゃない。今戦ったら私も相当の痛手を負うだろうけど、そんな状態で上手く手加減出来るかどうかは自信無いんだ。バーソロミュー・くまも無事じゃ済まないだろうね。――――――1日で天下の“
「小娘がァ……!!!」
いきり立つ
「………良いだろう…!だが、もしお前たちの口からモリアの敗北を洩らす者がいたならば、その時は覚悟しておくが良い!!」
そう言い放って通話を切った白髪の男に、
「どういうつもりだ!?」
「…もし、バーソロミュー・くまも落とされてしまったなら、それこそ世界政府の失態。辛うじて保てている三大勢力の
「その通りだ。今は多少のプライドを曲げてでも戦力を維持しなくては。」
白髪の男の説明に、金髪の男も同意する。
「それよりも今考えねばならんのは、モリアの処分をどうするかだろう。仮にあのジャスミンという娘や、他の者たちが漏らさなくともそうした情報はいつかは漏れてしまうもの…。1度落とされた者に、既に抑止力は望めまい…。
「うむ…。抑止力を失った“
黒い帽子を被った巻き毛の男が議題を変えれば、眼鏡をかけた着物の男が続ける。
彼らの議論はその後も続いた。
何故、彼らが戦力を必要としているのか、それは今後明らかにされていくだろう。
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第43話 ジャスミンの考察
今回、やたら長いです。
伏線回収しようとしたら、異様に長くなりまして…。
何はともあれ、お付き合いください。
ご感想、お気に入り登録などありがとうございます!!
━バーソロミュー・くまの撤退から半日後━
あちこちが崩れ、中もめちゃくちゃになっているメインマストの屋敷内を、ジャスミンが
“麦わらの一味”は一旦自分たちの船に戻り、“ローリング海賊団”は中庭で日光浴をしつつ数年ぶりの太陽を
「どこに隠したんだろ…?」
あのマフィアの男に奪われたドラゴンボールとウェストポーチが、どこを探しても見付からないのだ。モリアのような性格ならば、大事な物は自分のテリトリーに隠しているものとばかり思っていたのだが…。
「ここに無いって事は、
こんな事なら、モリアを叩き起こしてドラゴンボールの
既にモリアは気絶したまま部下2人の手によって別の船に乗せられ、スリラーバークを出航している。目を覚ましても面倒なので、モリアをこそこそと運び出す部下たちを黙って見逃がしたジャスミンだったが、今となっては
今からでも追いかけた方が良いだろうか、とジャスミンが思案していた時の事だ。
「ジャスミ――――ン…!どこ――――…?」
不意に中庭の方からナミが呼ぶ声が響く。
「な―――――に――――――?ナミちゃ――――ん?!」
呼び声に応じ、ジャスミンもテラスから顔を出す。
「あ!いたいた。ジャスミン!!これ、あんたのでしょ――――?!」
見ればナミが中庭から手を振っているが、その足元には見覚えのあるアタッシュケースと、手には愛用のウェストポーチが握られていた。
「それ!?」
目にするなり自身の物に間違い無い事に気付く。
バッと、そのままテラスから身を
「それ!どこにあったの?!」
着地したその勢いのまま、ナミへと駆け寄る。
「やっぱりあんたのだったのね?誰の
「ありがとう…!」
ウェストポーチを受け取り、足元のアタッシュケースを開けた。ドラゴンボールが確かに7つ全て
左手が使えないのでもどかしいが、何とかファスナーを開け、地面に中身を並べていく。
「えっとペンライトにケータイ、財布にドラゴンレーダーとカプセルケース…。」
カプセルケースも中身を確認するが、全てのカプセルがそのまま残されていた。念の為にドラゴンレーダーを起動させるが、故障している様子も無く、正確にドラゴンボールの位置を示しているのが分かる。
ついでに財布の中身も確認するが、ゼニー札の他にこちらの世界で手に入れたベリー札も抜かれている様子は無かった。あのマフィアの男も、ジャスミンから荷物を取り上げたもののドラゴンボール以外には注意を払わなかったようだ。モリアにしてみても、取り
「良かった、全部あるし壊れた物も無いみたい…。」
無事に見付かった事に
「良かったじゃない!じゃあ、これで元の世界に帰れるってことね?」
「うん。長かった…。」
これまでの半年間を思い出し、軽く溜息を
「ところで、いつ帰るつもりなの?もしかして、今日これから…?」
「ううん。ナミちゃんたちはともかく、あまりドラゴンボールを使うところを人目に
「だったら、一緒にご飯食べましょ。このままはい、サヨウナラ、じゃあんまりだわ。それに、バーソロミュー・くまがサイボーグだって話、まだ詳しく聞いて無いもの。」
「それは私も気になるわ。」
ナミの言葉に被せるように、その後ろからロビンが現れる。
「私には分からなかったけど、どこで
感情の読めない笑顔を浮かべつつ、ロビンがジャスミンを見詰める。
「ああ、それは…。」
ジャスミンがそれに答えようとした時だった。
「お―――――い!ナミさん!ロビンちゃん!それとジャスミンちゃん!メシの準備が出来たよ―――――!!」
ナミたちの後ろから、サンジが呼びかける。それを受け、ジャスミンの腹部がキュルルル…、と切なげな音を立てた。
「あ…。」
右手で腹部を押さえつつ、恥ずかし気に
「ふふっ。続きは食べながらにしましょうか。」
「そうね。特にジャスミンはウォーターセブンを出てから何も食べて無いんでしょ?まずは腹ごしらえね。」
「…はい。」
「「「「「いただきま―――――――す!!!」」」」」
「んんんめ~~~~~!!!」
「こんなうめェ料理食った事ねェ!!!」
「まともなメシすら何年振りだよおれたちァ~~~~!!」
「生きてて良かったァ~~~~~!!」
晴天の下、並べられたサンジ手製の料理を“ローリング海賊団”や骸骨紳士‐ブルックが嬉々として
丸2日に渡って強制的な絶食状態だったジャスミンも、サンジが別メニューとして出してくれたスープをゆっくりと
ジャスミン自身が考えているよりも、丸2日に渡る絶食と暴行は彼女の体に負担をかけていたのである。自覚するよりも先に点滴と睡眠である程度回復してしまったのが悪かったらしく、戦闘時のアドレナリンも手伝い本人も気付かなかったのだが、バーソロミュー・くまを追い返した後で気が抜けたのか貧血を起こして再度点滴された程だった(そんな状態で無茶をやらかしていたからこそ、チョッパーがあれ程怒ったのだが)。
温かいスープを
「ふぁ…あふ……。」
しかし、体が温まってきた事で急激に睡魔が襲ってくる。未だ回復し切っていない体は休息を欲しているらしい。
眠い目を
「それで、ばーそろみゅー・くまのはなしでしたっけ…?」
……眠気で頭がフラフラと揺れている上に、かなり舌っ足らずになってしまったが。
「ジャスミン、あんた眠いなら寝ても良いのよ?」
「うふふっ…。」
「だいじょうぶ…。ふぁ…。私が人の気配で位置とかざっくりとした体調が分かるっていうのは、ナミちゃんは知ってるよね?」
もう1度大きな
「ええ、聞いたわ。」
「細かい説明するとややこしい上に長くなるから
「“気”?」
「はい。気配、オーラ、生命エネルギー…。呼び方は様々ですけど、大元は一緒です。それは生き物なら必ず持っているもの。私の故郷では、極一部の優れた武道家はそれを自在に操る
以前ナミには簡単に説明していたが、本題に入る前に再度ロビンにも説明しておく。
「例えば、“気”を圧縮して体外に撃ち出す“
「今わざわざそれを説明するって事は、バーソロミュー・くまの話と関係があるって事なんでしょ?」
「うん。それを説明する為にもう1つ説明しなきゃいけないんだけど…。」
ナミの質問に同意しつつ、話を続ける。
「実は、私の知り合い…。正確に言うと父の友人の奥さんなんだけど、
「「え?」」
ジャスミンの衝撃な発言に、思わず2人も一瞬言葉を失う。
「その人は昔ある科学者に無理やり改造されてサイボーグになったんだけど、その時に体のほとんどを改造されたからか、その人には
「さっき、生き物には必ず“気”がある、と言っていたと思ったけど、その人には無いというのはどういう事かしら?」
真剣な顔付きになったロビンが姿勢を正す。
「ここからは私の仮説が入るんですけど…。“気”とはあくまでも肉体に宿るもの。サイボーグとして改造された時点で、その人の肉体のほとんどは生来のものでは無く、人工的な生体パーツに代わっています。自我はそのままらしいですし、日常生活も全く問題無く送れていますが、体のほとんどは人工物なんです。主要の脳や内臓のいくつかはそのままらしいですけど、生身の肉体がそれだけじゃ他者が感じ取れる程の“気”を発していない…。極論になりますけど、つまり
「いいえ。何となくだけど分かったわ。今の話を踏まえると、バーソロミュー・くまにも
肩を落とすジャスミンにロビンが軽く
「いえ。正確に言えば“気”はありました。でも、
「フランキーと同じ?」
「そういえば、あんたフランキーの事聞いてきたもんね?誰が改造したのか、とか…。」
ナミが思い出したように呟く。
「もし、この世界にサイボーグ技術が普及しているなら厄介な事になるな、と思って。フランキーさんと初めて会った時も思ったんだけど、“気”は大きいのに
「大きいけど薄いって良く分かんないんだけど?」
「何て言えば良いかな…?感覚的なものだから説明し辛いんだけど、フランキーさんも体の半分は機械で生身じゃないんでしょ?半分機械な分何て言うのかな、大きさの割に密度が少ない、って言ったら分かる?本来なら、フランキーさん位“気”が大きいならもっと力強く感じる
「良く分かんないけど、サイボーグの“気”?が特徴的、っていうのは分かったわ。」
…自身の感じた感覚を何とか言語化しようと試みるジャスミンだったが、ナミには通じなかったようだ。
「うん、まぁそこが分かってもらえれば良いや…。」
完全に理解出来るのは、ジャスミン同様に“気”を感じ取れる者だけだろうと思っていたので、取り
説明し終わった達成感もあり、いつの間にか始まった大合唱をBGMに、ジャスミンの意識が徐々に
ふっ、と意識が浮上する。
「あれ…?」
目の前に広がる天井に、ここどこだっけ…?とまだポヤッとしている頭を必死に働かせるが、自力で答えに
「ジャスミン!起きたのか?」
とてててっと可愛らしく走り寄ってきたのは、“麦わらの一味”が誇る船医‐チョッパーだった。
「ちょっぱーくんがいるってことは…、ここはルフィくんのふね……?」
「おう!お前体力が限界だったみたいで寝ちゃったんだよ!!放っとく訳にもいかないからサニー号に運んだんだ。」
「うわ―――――――。ご迷惑おかけしました…。」
身を起こしつつ頭を下げる。どうやら再び医療室に寝かされていたようだ。
「私どれ位寝てた?」
やけに頭が重く、体の節々が痛い。丸1日寝てた、というオチじゃ…、と恐る恐るチョッパーに尋ねる。
「3日だ。」
「……………………ごめん、もう1回。」
「だから3日だって。」
「………マジ?」
「マジ。」
重々しく頷かれ、事実と悟る。
「だから言っただろ。それだけ体に負担がかかってたんだぞ!!」
「ごめんなさい。」
再び説教が始まりそうだった為、すぐ様謝る。
「まぁ、分かってるなら良いけど…。それより腹減ってないか?サンジが、いつジャスミンが起きても良いようにスープ作ってくれてるぞ!!」
キュルルル…!
「…減ってる。」
現金なもので、スープと聞いた
「良し!じゃ、用意してもらって来るから待ってろ。そうだ。待ってる間に風呂入るか?」
「え?お風呂あるの?」
ぜひ入りたい。ウォーターセブンを出てから入れていない為、髪もベタベタで臭いも気になる。
「おう!サニーの風呂は広いぞ!!」
「迷惑じゃなければぜひ。」
「じゃ、ロビンかナミに用意してもらって来るから待ってろよ!!」
「うん。」
その後、数分で戻ってきたチョッパーに案内され、汗を流す事が出来た。さすがに起きたばかりの為、浴槽に入る事は許されずシャワーだけだったが、生き返る心地だった。
そして。
「色々とご迷惑をおかけしたみたいで…。すみません、ありがとうございました。」
食堂にて勢揃いした“麦わらの一味”に謝罪する。
「おう!気にすんな!!」
「こっちこそ助かったからな。」
「色々助けてもらったからお返しよ。」
ルフィ、ウソップ、ナミを始めにそれぞれ好意的に返してくれた。
「気にする事ねェよ。それより、腹減ったろ?座ってくれ。」
サンジもジャスミンに椅子を勧め、スープをよそってくれる。
「アウ!まずは食えよ。3日も寝っぱなしじゃ腹減ってるだろ。」
「まずは食べましょう。若いお嬢さんが食べないままは体に悪いですから。ヨホホ!!!」
「うふふ。」
年長組(フランキー、ブルック、ロビン)の気遣いに恐縮しつつ席に着く。
チョッパーはニコニコとジャスミンを見守っているし、ゾロもウォーターセブンで見せていた警戒は取り去ったようで、好意的とまではいかないが険の無い眼差しをジャスミンに送っていた。
どことなく気恥ずかしい思いをしつつ、食事をいただいた1時間後。
ジャスミンと“麦わらの一味”は甲板に出ていた。
「じゃ、始めるね。」
「おう!!わっくわくすんな!!!」
“麦わらの一味”からやや離れた所に立ったジャスミンが、手にしたアタッシュケースを開き、ルフィに断る。ルフィを始め、“麦わらの一味”の興奮もピークに達していた。
(やっと帰れる…。)
ジャスミンも興奮を抑え、口を開く。
「
カッ!!!!
アタッシュケースに納められた7つのドラゴンボールが
用語解説
・18号…以前も紹介した、クリリンの妻でマーロンの母。永久エネルギー炉を持つ人造人間(サイボーグ)で、クリリンより強い。
作中のサイボーグ及び18号についての解釈について
・ドラゴンボール世界において、“人造人間(サイボーグ)”は“気”が無い、と明言されている為、ワンピース世界とつり合いを取らせる為に独自に解釈しております。また、それを強調する為に原作では描写の無い「18号は永久エネルギー炉により、本来食事を必要としない」というねつ造設定を付けさせていただきました。
ドラゴンボール世界の正史(未来トランクスの世界)において、17号と18号が食事をしている描写が無いこと。+破壊にも遠慮が無い為、食料などの心配を一切していない(食品工場や生産する人間に気を使うような描写が無い)という点から解釈させていただきました。
賛否両論あると思いますが、二次創作という事でご了承くださいませ。
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第44話 神龍降臨!ジャスミンの願いの行方
第44話更新です。
お気に入り登録、ご感想ありがとうございます!
それでは本編へどうぞ!
「
カッ!!!!
ジャスミン叫びを受け、アタッシュケースに納められた7つのドラゴンボールが
「空が暗くなった!?」
「しまった…。夜になるのを待つべきだった……。」
ウソップの叫びに、ジャスミンが自身の失態を悟る。実際に
が、もう遅い。
バシュ―――――――――――ッ!!!
ドラゴンボールから一筋の光が放たれ、空へと伸びていくのに、“麦わらの一味”が息を
バチバチッ!!!
バチッ!!
空に伸びた光は、激しくスパークしながら徐々にその姿を変えていく。
「あ…!あぁ……!!」
「りゅ、龍!?」
「ス、スッッッゲ――――――――ェ―――――!!!」
ズオォオオオ……!!!
完全に姿を現し、空一面を覆いつくすようにうねり、
『さあ、願いを言え。どんな願いも3つ叶えてやろう…。』
「3つ!?叶う願いは2つじゃ…?」
『地球の神が代替わりした当初はそうだったが、
記憶と異なる
しかし、ジャスミンのその認識もあながち記憶違いでなかった事が、次の
『だが、1つ目の願いで多くの人間を生き返らせた場合は、叶えられる願いは2つに減少する。』
「あ~…、そういう事だったのか…。」
前回、ジャスミンが
「じゃあ、まずは私がこの世界に来た日から今日までに死んだ、極悪人以外の人たちを生き返らせてその人たちが安全に生活出来る場所に送ってください!!」
『
「
『それならば可能だが、数が多いので時間がかかる。少し待っていろ…。』
「お願いします!」
『
カッ……!
「ちょ、ちょっと待って…!今、死んだ人間を生き返らせるって言った?!」
ジャスミンが願った1つ目の願いに、ナミがジャスミンへと詰め寄る。
「うん。バスターコールで助けられなかった人たちや、スリラーバークで助けられなかった人たちがいるから…。」
「そうじゃなくて!!!ド、ドラゴンボールって死んだ人間も生き返らせる事が出来るの?!」
「ッホントかよ?!」
ナミの矢継ぎ早の質問に、ウソップも食い付く。他の、それぞれ大切な人間を失った者たちも目の色を変える。
「色々制限はあるんだけどね…。」
ジャスミンも、それを察し、言い辛そうにしつつも説明する。
「ドラゴンボールで生き返らせる事が出来るのは、過去1年以内に死んだ場合のみなの。1年を超えると生き返らせる事は出来ないし、自然死、さっき
「そう、なんだ…。」
ジャスミンの説明を聞き、彼女の肩を
「もし、ナミちゃんたちの大切な人が亡くなったんなら、過去1年以内だったら今の私の願いで生き返る
「あ、良いの良いの!気にしないで。」
手を振りながら笑顔を作るナミだったが、その笑顔はやはりぎこちない。
無駄に期待させてしまった事に多少の罪悪感を覚えつつ、何と言っていいものかも考えあぐねていたジャスミンだったが、不意に響いた
『1つ目の願いは叶えてやった。先程も言ったように、多くの人間を生き返らせた場合は、叶えられる願いは2つに減少する。最後の願いを言うが良い。』
その言葉を受け、“麦わらの一味”へと向き直る。
「それじゃ、色々とお世話になりました…!」
「おう!元気でな!」
ジャスミンの別れの言葉に、真っ先に反応したのはルフィだった。
「ルフィくんたちも、皆さんもお元気で。航海の無事を祈ってます。」
一味を見渡しながら告げたジャスミンに、他の者たちも
「お前も元気でな。」
「早くお父さんと会えると良いわね。」
「あんまり無茶するんじゃねェぞ!」
ウソップ、ナミ、チョッパーが笑顔で告げ、
「まぁ、何だ…。色々悪かった。」
「おれもだ。疑ってゴメンな…。」
ゾロが決まり悪そうに目を
「もっとあなたの世界の話を聞きたかったわ。」
「早ェトコ父ちゃんを安心させてやれよ!」
「ヨホホホ!無事にご家族と再会出来る事をお祈りしますよ。」
ロビン、フランキー、ブルックもそれぞれ笑顔で見送る。
「皆さんも色々とお気を付けて。」
再度別れを告げたジャスミンが、再び
「それでは最後の願いを!私とドラゴンボール、そしてもし生き返ったのならあの男たち…!地球からこの世界に来た存在全てを地球の元いた場所に戻してください!!!」
『それは叶えられない願いだ。』
「え……?」
「ちょっとどういう事よ!?どんな願いも叶えてくれるんじゃなかったの?!」
『私は地球の神によって創られた。よって創造主である神の力を超える願いを叶える事は出来ない。』
「そんな…。」
絶望から脱力し、ジャスミンが膝から崩れ落ちる。
『しかし、叶えられるようにする方法はある。』
「え!?」
ガバリ、と
『異なる世界同士の移動は
「事情?」
『この世界そのものの
「ナメック星の、って事はまさかお父さんたちが…?!」
『恐らく、お前と私を地球に
父たちも自分の為に動いてくれている、その事実がジャスミンの心を軽くし、表情がわずかに明るくなる。
[ナメック星って何だ?]
[ジャスミン大丈夫かな…?]
[じくーかんって何だ?]
[しっ!静かに…。邪魔しちゃダメよ…。]
背後でウソップ、チョッパー、ルフィが小声で話しているのが分かるが、ジャスミンに答える余裕が無いのが分かったのか、ロビンが
その間に、ジャスミンは帰る方法を見付ける為に知恵を絞る。
「では、その原因を取り除いてもらう事は出来ますか!?」
『それも出来ない。私の力ではその者たちには及ばない。その者たちがどこにいるのか、何人いるのか、
「私たちと同じ世界から…?」
『地球では無いようだが、同じ第7宇宙の存在である事は間違い無い。』
『
相手の目的も、人数も、強さも居場所すら分からない手探りの状況に思わず
『それ以外の願いは無いのか?無いならば、消えさせてもらおう。』
「それなら…。
取り
『
再び
「あれ?こんなに?」
てっきり1
『サービスだ。…願いは叶えてやった。では、さらばだ…!!』
カッ…!
一瞬の強い光と共に、
ヒュ―――――――――――!!
直後にアタッシュケースに納められていたドラゴンボールが空高く浮かび上がっていく。
ヒュンッ!
ヒュヒュンッ!
ヒュンッ!
浮かび上がったドラゴンボールは、それぞれ別の方向へと飛び去っていき、それと同時に空も元通りに明るくなる。
「……これからどうしようかなぁ。」
静寂の下りた甲板に
用語解説
・ナメック星…デンデやピッコロの出身星。
・ポルンガ…ナメック語で“夢の神”を意味する、ナメック星の神龍。地球の神龍とはだいぶ違う姿をしており、数倍デカい。地球の神龍とは多少異なり、ポルンガの方が力が強いような描写あり。願いを叶える際にはナメック語で願いを伝える必要がある。
・仙豆…食べれば瞬時に体力回復、どんな怪我も治してくれる不思議な豆。1粒食べれば10日間は何も食べなくても大丈夫、と言われる程栄養豊富。
・時空間…時間と空間を混ぜた造語。はっきり言って語感で付けたので、ふわっと読んでもらって大丈夫です。
ドラゴンボールを使うと空が暗くなる為、名台詞「空が暗くなった!?」を言わせたいが為に昼間に使ったという裏設定あり(笑)。
ドラゴンボールで叶えられる願いの数については、アニメや映画などだとコロコロ変わるので、原作の設定を採用しました。
時空間を歪めてる奴らの正体と目的については、今後明らかにさせていただきます。
追記:大勢の人間を生き返らせる願いを叶えた事で、奴隷として死んだ人間のその後の安否を心配されている方がいらっしゃいましたので、生き返らせる時の条件に“その人たちが安全に生活出来る場所に送る”という一文を付けたさせていただきました。元奴隷たちのその後に関しては、そのうち閑話かどこかで紹介させていただきます。
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第45話 新世界への入口!シャボンディ諸島に向けて
ドラゴンボールを使用した事について、様々なご意見をいただいていますが、それについてのジャスミンとワンピース世界の住人との意識の違いが明らかになります。
次回、あの人が再び登場予定です、がそこまで行けると良いな…。
お気に入り登録が2000人を超えました!どうもありがとうございます!
ご感想もありがとうございます!なかなか返信出来ませんが、全て読んでいます。
今後もよろしくお願いします!!
「ジャスミン。お前、これからどうすんだ?」
肩を落としたジャスミンを気遣ってか、ウソップやチョッパーが、後ろでこそこそとどちらが最初に話しかけるかを押し付け合っている中、
[おいバカ、ルフィ!!]
[あんたちょっとは気を使いなさいよ!]
後ろで見ているウソップやナミの方がハラハラしながら小声で怒鳴り付けるが、短い付き合いながらルフィの性格を徐々に理解し始めたジャスミンは苦笑しただけだった。
「取り
あまりの手がかりの無さに、いっそ笑いが込み上げてきそうだ。
思ったよりも大丈夫そうなジャスミンの様子に、チョッパーがおずおずと尋ねる。
「ジャスミン、あの龍に何をもらったんだ?」
「あぁ!これ?」
「ちょうど良かった。
カポッと
「豆?」
「枝豆みたいに見えるけど、これ何なんだ?」
その様子に、ナミやウソップ、ルフィたちも興味を
「これは
「ホントかそれ?!」
「ホント。」
やはり医者の
ポリポリと
ベキィッ!
バラバラと砕けて甲板に落ちるギプスに、チョッパーが叫んだ。
「お前何やってんだよ!?」
「もう治ったんだよ。ほら見てみてよ。」
そう言って差し出されたジャスミンの左腕に、チョッパーが異常が無いかを詳しく診察する。
「嘘だろ!?完全に腫れが引いてる…!」
「ね?」
「マジか、それ!?」
「嘘でしょ!?」
ウソップとナミも驚愕するが、医師として医学に精通しているチョッパーの驚愕はもっと大きかった。
「な!?どェええええ!??どうなってんだこの豆?!」
「チョッパーくんに“麦わらの一味”全員分の
1人あたり3粒の
「あ、ありがとう…。っじゃなくて!!」
「仕組みは私も一切知らないけどね。
苦笑しながら言うジャスミンに、ルフィが「なるほど、不思議
「まぁ、それで納得してもらった方が簡単だと思う。」
取り
「ところで、それうめぇのか?」
「まずくは無いけど、そんなにおいしくもないよ。豆だから。」
「なんだ、んじゃ良いや。」
(もし、おいしかったら食べる気だったな…。)
目をキラキラさせていたものの、すぐさま興味を無くしたように目を
「それより聞きたいのだけれど、良いかしら?」
不意に歩み寄ってきたロビンが切り出した。
「何でしょう?」
「1つ目の願いでこの1年で死んだ人間を生き返らせたのは何故?」
「…最初は“バスターコール”で死んだ海兵たちだけを生き返らせようとしたんです。彼らをみすみす死なせてしまったのは私のミスですから。でも、そうすれば
「
「そうです。世界中で同じ事が起こったなら、それは一種の
「“その人たちが安全に生活出来る場所に送る”事?」
「そうです。こっちの
「……もう1つ聞いても良いかしら?」
「?他に何か?」
「スリラーバークでモリアに殺された男たちって事は、あなたを捕まえて
「ああ…。正確に言えば、彼らが本当に生き返ったかどうかは知りません。私が願ったのは、“私がこの世界に来てから死んだ、極悪人以外の人間の
「そう…。」
「っつ――――か、本当に生き返ったのか?」
「大丈夫だと思いますよ。ただ、心配なのは世界政府や裏社会の人間がどの程度
既に意識を“死者の蘇生”では無く、“世界政府と裏社会の動向”に移しているジャスミンを見て、ロビンとフランキー、ブルックの年長組は、ある種の危うさを感じ取っていた。
自分がどれ程大変な事をしでかしたのかを全く理解していない、そう思ったのだ。
その認識はあながち間違ったものでも無かったと言える。
ジャスミンにとっては、自分のせいで死んだ人間がいるのならば生き返らせなければ、という認識しか無かったからだ。それがどんな混乱を巻き起こすのか、それを本当の意味で理解してはいなかった。
幼い頃からドラゴンボールの奇跡を目の当たりにしていたジャスミンにとって、死者の蘇生は特別な事では無い。特にZ戦士たちにとっては、自らが関わった事件においての死者の蘇生とはある意味で義務のようなものでもあったからである。
何故、元々は“常識的な考えを持つ日本人女性”だった
ジャスミンも無論、頭では本来ならばあり得ない事である事は理解してはいた。しかし、自身もドラゴンボールによって生き返るという異例の経歴を持つが
染まっていた、と言い換えても良い。
いくら前世の記憶を持つ、と言ってもそれは既に
例えるならば、大人が幼少期の遠い記憶を
記憶とは、常に新しいものへと塗り替えられていき、古いもの程消えていくもの。ジャスミンも、“ドラゴンボール世界”で生きるうちに、“かつての日本人女性”ではなく“ヤムチャの娘”としての意識が強くなっているのだ。もちろん、基本的な思考回路など、前世での影響を全く受けていない、とは言わない。しかし、それは既に“過去”として処理されており、一般的な人間が幼少期に受けた影響が性格に反映されているのと同じ
そもそも、死者の蘇生自体がドラゴンボール世界では“世界7不思議”の1つに挙げられる程周知されている。ドラゴンボールによるものである事を知るのは極少数だが、
この意識のズレが、後にジャスミン本人に
「話は戻るけど、ジャスミン、あんた魚人島への行き方なんて知らないわよね?」
「?知ってるよ?」
「え!?」
「ん?」
バッとジャスミンを振り返ったナミに首を
「わっ!」
「どうやって行くの?!」
「ま、まずはシャボンディ諸島で船をコーティングしてもらわないと…。」
ナミの勢いに思わず気圧されつつ、自身が知る知識を教える。
「コーティング?」
「私も実物を見た事がある訳じゃないから詳しくはしらないけど、海底での航海を可能にする技術みたいだよ。魚人島は海底1万mの深海…。普通の船が行ける訳ないけど、コーティング船だけは行き来出来るって聞いた事あるから…。」
「シャボンディ諸島って?」
「“ヤルキマン・マングローブ”の樹の集まりで出来た諸島の事。その1本1本に町や色んな施設があって、“新世界”に行く人たちが集まる島だよ。」
「そこでコーティングってやつをするのね?でも、魚人島へのログが書き換えられちゃう事は無いの?」
「大丈夫。諸島って言ってもあくまでも樹の集まりだから、磁力は無いみたい。」
「なるほどね。ありがと、ジャスミン!お陰で進むべき道が分かったわ!」
「それは良かった。」
生き生きとし始めたナミに苦笑しつつ、提案する。
「良かったら、先にシャボンディ諸島に行って、コーティング職人を探しておこうか?」
「コーティング職人って何だ?」
ナミとの会話を聞いていたウソップが尋ねてくる。
「船をコーティングする職人さんだよ。コーティングっていうのは船全体をシャボン玉で包む特殊な技術らしくて、腕の良い職人じゃないと海底で航海してる最中にシャボン玉が割れちゃう事もあるんだってさ。」
「わ、割れたらどうなるんだよ?!」
「そのまま沈んじゃうみたい。」
「マジでか?!」
「だから、コーティング職人選びが重要になってくるんだよ。腕の悪い職人に当たって途中で沈んじゃった船も星の数程いるらしいし…。大金が手に入る仕事だから、
「「こ、怖ェ~!!」」
「ゾッとしないわね…。」
ウソップとチョッパーが震え上がり、ロビンの顔も険しい。
「しかも、海軍本部が近いし、賞金稼ぎの数も尋常じゃないから、短期間ならともかく長期間の滞在は向かないんだよ。だから、コーティング職人探しで時間を取られちゃうとその分動きが後手に回る事になるしね。」
「そうか、そういう問題もあるのね…。」
「そう。だから、スムーズにコーティングを済ませられるように、職人を探しておこうか?」
「それは助かるけど…。こっからシャボンディ諸島までどれ位あるの?」
「だいたい船で1日半ってトコかな?」
「その間、あんた1人で大丈夫?」
「平気。船で行くより、1人で空を飛んでいった方が目立たないし、髪型や服装変えれば手配書が出回ってても意外と気付かれなかったりするもんだよ?」
「それならお願いしようかしら。島で会いましょ。」
「OK!じゃ、決まりね。」
ナミとの話が纏まり、ジャスミンが立ち上がる。
ジャスミンとしても、今後について少し1人で考える時間が欲しかったところであるし、反面何かしていた方が気が
「じゃ、シャボンディで会おうね!」
ドシュッ………!
言い置いて、勢い良く
コーティング職人に1人、心当たりが、あった。
用語解説
・カリン様…カリン塔と呼ばれる塔に住む仙猫。800年以上生きており、武術の達人。仙豆の栽培・管理をしており、悟空たちもたびたび世話になっている。
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第46話 集い来るルーキーたち
さて、前回何となく予感していた通り、再会まで持っていけませんでした…(汗)
“最悪の世代”との絡みを期待している方々がいらっしゃいましたので、ちょっとニアミスさせてみました!
最後に登場した人物がわかる方はいらっしゃるでしょうか?一応ヒントは入れたので、そんなに難しくないとは思いますが、ぜひ予想してみてください!!
━シャボンディ諸島53番
“サウザンドサニー号”から飛び立つ事およそ3時間。ジャスミンは夕闇に
コーティング職人の中で、最も腕の良い職人を探すべく、造船所やコーティング
(何だってこんなに同時期に…。)
上陸する前に上空から見下ろした際、やけに海賊船が停泊しているのを見て
その中でも、コーティング職人らしき男を脅し付ける赤い髪の男の姿がジャスミンの目に留まった。“ルーキー”と呼ばれる海賊たちの中でも特に
(
無駄に
「ん?」
(?!)
“キャプテン”キッドの隣に立っていた仮面の男‐“
「あ゛?どうした、キラー。」
ドサリ、と胸倉を
「いや、誰かに見られているような気がしてな…。」
「何ィ?」
(ヤバッ…!)
バッとキラーの視線を追った“キャプテン”キッドに、ジャスミンが内心焦る。
別に争いとなっても負ける気はしないが、仮にもルフィよりも懸賞金が上の大物“ルーキー”である。大事になって海軍の目を惹くのは本意では無い。
「確かめるか…!」
“キャプテン”キッドがジャスミンが隠れている辺りに向かって右手を突き出した。
(何をする気…?)
ジャスミンが疑問に思ったその瞬間、バチィッと“キャプテン”キッドの右手が、何かが
ジ…ジジ……!
その
「え…?!」
よろけかけた体を
「!本当にいやがったか…!コソコソと
バチバチッ…!
再び何かが
(マズい……!)
不安定な足場では踏ん張るのも限界がある。左手ごと腕時計を引っ張られているだけでもバランスを保つのに精一杯なのに対し、ウェストポーチを引っ張られているせいで腰までもっていかれそうだった。
何とか足を踏ん張り、右手で目の前の枝に抱き着いて耐えているが、引っ張る力はどんどん強くなっていく。
(仕方無い…!)
バシュッ…!
右手で枝に力一杯抱き着いたまま、引っ張られている左手で何とか狙いを定め、
ドゴッ!
「!何だ?!」
放たれた
その瞬間、
(今だ……!)
ドシュンッ………!!!
ジャスミンがその
キイィイ………ン……!!
「ふう…。ここまでくれば大丈夫か……。」
超高速で上空2000m程まで一気に上昇したので、“キャプテン”キッドたちにはジャスミンを目視する事は出来なかっただろう。
(それにしても、“気”は完璧に消してた
腕時計に目を落とせば、ノイズはすっかり収まり画面も元に戻っていた。ウェストポーチを確認すると、スマホがさっきの腕時計同様にノイズを発し、画面も一部がバグが発生したようにおかしい。
「げ…!まさか壊れた?!」
慌てて音声認識のガイドアプリを起動させようとするが、応答は無く画面にタッチしても全く反応しない。
先程とは異なり操作にも反応するが、念の為に機種の状態をセルフチェックするアプリを起動させ、本当に問題が無いかを確かめる。
ピンポーン…!
『強力な
セルフチェック終了と同時にガイドアプリも復旧したらしく、音声で報告があった。
「
『発生の原因は不明。先程の
「システム保護アプリ?」
『次にその
「そのアプリが起動するまでの
『
「そのアプリが起動しても故障する可能性は?」
『半径100m以内の接近で14.9%。半径50m以内の接近で36.7%。半径2m以内の接近で56.3%。』
「…なるほど、近付き過ぎると危ないって事ね……。」
出来るだけ“キャプテン”キッドには近付かない方が良さそうだ、と判断したところでガイドアプリを終了してウェストポーチに戻す。
さて、これからどうするかと意識をコーティング職人探しに移した。
今すぐにさっきの場所に戻る訳にはいかない。50番代の
(と、なると…。もう1つの可能性に賭けるしか無い訳だけど………。)
半年前に遭遇した老人を思い出す。
(出来ればあの人には会いたくないな……。)
悪印象を持っている訳では無いが、あのテの
「…そんな事言ってる場合じゃない、か……。」
原作でサニー号をコーティングしたのがどんなコーティング職人だったかは覚えていないが、彼らがバーソロミュー・くまと交戦し、能力であちこちに飛ばしたのは覚えている。確かルフィだけが
(何でルフィくんだけあんなに大暴れしてたんだっけ?)
何か、とても大事な事を忘れている気がするのだが。…
これがドラゴンボールに関する事なら、多少マイナーな初期の話も事細かに覚えているのだが…。
何だろう、何か…
「何かやらかしてる気がする………。」
何を失敗したのかは全く思い当たらないが、確実に何かをやらかした気がひしひしとする。
それが自分が忘れている“原作”に関してなのか、何なのか…。
ひとまず嫌な予感に目を
━21番
(この辺の
無法地帯だけあって、周囲が荒れているが、
が、
(あぁ、ここだ。…でも、ここって………)
目当ての老人の“気”を探り当てたのは良いものの、よりにもよって
(100%カモにされる未来しか見えない…。)
出て来るのを近くで待っていた方が身の為のようだ。
こと戦闘においてならそう簡単に遅れを取るつもりは無いが、ああいった場は独自のルールを有している場合が多く、賭け事などした事も無いジャスミンにとってはアウェイ過ぎる。
一歩中に足を踏み入れればルールに従わざるを得ないが、懸賞金は高いとは言え
これがナミのようにある程度場数を踏んでいるならともかく、ジャスミン自身中に入れば気圧されない自信は無い。“お
(仕方無いからどっかで時間潰そう…。)
「なるほど…。“
不意に、ジャスミンの目の前に立ちはだかった男がいた。
用語解説
・スマホのガイドアプリ…お察しの通り、モデルはsi〇i。しかし、作者はi〇h〇neどころかスマホすら所持していないガラケー愛用者の為、ざっくりしたイメージのみで書いていますので、様々な矛盾にはスルーでお願いします。
カプセルコーポレーション製なら現代の科学では不可能な事が可能に違い無い、という作者の希望的観測により、ドラゴンボール世界のケータイには1台1台簡易的な人工知能が内臓してある設定にしました。ケータイというより、電話の出来るパソコンのイメージ。
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第47話 動き出す脅威
前回のクイズ?でみなさん正解されていたので、そこが通じた事がとても嬉しかったミカヅキです。
さて、今回いよいよ“黒幕”についてチラッと出てきます。ある程度ヒントは出しましたが、前回よりも難易度は高いので正解される方はいらっしゃるでしょうか?
※オリキャラでは無く、既存のキャラクターをゲストとして登場させるつもりで話をさせております。ぜひ推理してみてください。
「はぁ?」
急に目の前で意味の分からない事を言い出した男に、思わずジャスミンが
無法地帯を歩くのだから、下手に変装して絡まれるよりも自分が“中将殺し”と分かった方が抑止力になるだろう、と
しかし、“電波系”かとも思ったその男に見覚えがある事に気付き、記憶を
「あなたは確か…。“魔術師”バジル・ホーキンス……!」
長い金髪と独特の
「おれを知っていたか。」
「連日新聞を
「
お前が言うな、とでも言いたげな顔をしたホーキンスだったが、溜め息を1つ
「……“尋ね人の相”が出ているな。それも、お前自身も誰を探せば良いのか分からない。」
「!?………何を知ってる?」
警戒を
「落ち着け…。おれはお前の“相”を読み取っただけだ。ここに来たのも、お前がいると分かっていたからでなく、おれの運勢を占った時に“
「……さっきも言ってましたね。“
「ここでお前の“探し物”を見付ければ、近いうちおれはお前に命を救われるらしい。」
「……つまり、その“占い”で私の探している相手を探す代わりに、自分を助けて欲しいと?仮にも“億越え”の“ルーキー”の割に
「これは“
大真面目に不可思議な事を主張するホーキンスに、
ホーキンスは
何よりも、ジャスミンが人を探している事、実際に誰を探せば良いのか探しあぐねている事まで知っている事を考えると、信用に
「……なら、実際に占ってみてくれませんか?私は誰を探してどこに行けば良いのか。あなたを助けるかどうかは分かりませんけど、占いの内容次第では
「ふむ。何よりだ。…ここでは店の邪魔になるな。場所を変えよう。そこで良い。」
5m程離れたオープンカフェのテーブルを指し、ホーキンスが先導する。
無法地帯の割に意外と店の種類が豊富だよな、と割とどうでも良い事を考えながら後に着いて行く。
「で、どうやって占うんですか?」
何も頼まずに席だけ陣取るのも営業妨害
「これだ。」
そう言って取り出したのは、トランプよりも1回り大きなカード。
「カード?」
タロットに似ているが、占いにはさほど詳しく無いので違いが良く分からない。
「おれはこれを使って占う。」
手袋を
(
ジャスミンの意識が一瞬
カードの絵柄の部分は表、つまりホーキンス側に向けられている為、ジャスミンからはその絵柄は読み取れない。最も、絵柄が見えていたとしてもはっきり言ってジャスミンにはその意味が全く分からないのだが。
「ふむ…。場所は…、“新世界”。誰の物でも無い島だ。」
「“新世界”…!?」
1枚1枚貼り付けながら呟いていくホーキンスの、確信を持って
「ああ。お前の“尋ね人”は“新世界”の、“誰の物でも無い島”にいる。」
「“誰の物でも無い島”…?無人島?いや、場所が“新世界”なら誰の縄張りでも無いって事かな…?もっと詳しく分かりませんか?」
「おれが実際に行った事のある場所ならば特定も可能だが、全くの手探りならばこれが限界だ。」
「それなら、相手の人数や目的は?」
「それならば分かる。」
頷きながら、ホーキンスが残っているカードを貼り付けながら読み解いていく。
「3人。1人は女、1人は男。残る1人は男のようだが、そうではない。ふむ、妙だな…。コイツらは本当に人間か?」
「どういう意味です?」
「カードの示し方がおかしい。酷く読み取り辛いが、人間のようであってそうでない、男女の2人組と良く分からん奴が1人…。女と男は存在がはっきりしているが、最後の1人は酷く
「つまり?」
カードを貼り付けながら1人で納得したように呟くホーキンスに
「お前が探している相手は男女の2人組。しかし、人間であってそうではない。追手から逃げてその島にいる。3人目の死にかけている仲間を何とかしようとしているらしいな。」
「“復活”…。人間であってそうでない…。」
その言葉に、
『地球では無いようだが、同じ第7宇宙の存在である事は間違い無い。』
(宇宙人って事…?)
「具体的に何をどうやって3人目を“復活”させようと?」
「…何をしているかまでは知らんが、男の方が戦いの場に出現しているようだ。今から10日後に動く、と出ている。」
「10日後?何か大きな戦争でも起こるんですか?」
「“世界を動かす争い”と出ている。
しかし、“復活”と“追手”。その言葉に加えて、“気”を全く
(胸騒ぎがする……。)
背筋が
「…参考になりました。少なくとも3日はシャボンディ諸島に滞在する予定ですから、その間にあなたが危ない状況にあるのに遭遇したら、お礼に手助け位はします。」
「近いうちに再び
そう言い置いて早々に立ち去るホーキンスを見送る。ほぼ同時に先程注文したアイスティーが運ばれてきた。もっと長く話し込んでいた気がしていたが、実際にはものの5分にも満たない短い時間だったらしい。
取り
━2時間後、43番
あの後、改めて宿を取ったジャスミンは例のコーティング職人の老人の“気”を時折探りつつも、暇を潰すべくショッピング・モールをぶらついていた。
今回は無法地帯では無い為、無駄に人目を
特徴的なポニーテールは止め、シニヨンを作ったツインテールにして白い髪
服も、
バッグも普段のウェストポーチでなく、髪
余談だが、ドラゴンボール世界でも“チャイナ服”や“チャイナ風~”といった言葉は存在する。主に東地区の一部で使われているものだが、中国という国が存在している訳では無いので、その語源は定かでは無い。
服装に合わせて派手では無いが軽く化粧をしている為、良家の子女にも見える。
本来ならもっとラフな格好をしたかったところではあるが、
チャイナ風ワンピースも同じような物ではあるが、似たようなデザインや
かと言って、いつまでも
(さて、ティーン向けの服屋は、と…。)
ジャスミンが周囲を見回している時だった。
―――――ゾクッ……!!!
ほんの一瞬だけだったが、
「なっ……!!?」
バッと、思わずその方向を振り向くが、既にその“気”は感じ取れなくなっており、細かい位置どころかおおよその距離すら測る事が出来なかった。
分かったのは方角のみ。
「今のは…、まさか………!」
これまでに感じた事の無い、邪悪な“気”。もしや、今のが“
一瞬。たった一瞬で、全身に
(あんなの、今まで1度も感じた事なんて……。)
あまりの脅威にそこまで考えたところで、ふと頭に引っかかるものがある。
(1度も…?いや、昔似たような“気”を感じた事があったような……?)
本当に昔、まだジャスミンが幼かった頃に1度だけ、先程感じた“気”に良く似た“気”を感じた事があった
しかし、ある程度平和な時代に生まれたジャスミンは、そこまでの脅威に
(!そうか、もう1人いた……!
それに思い当たると同時にゾッとする。
あんな
ホーキンスの予知した“世界を動かす争い”まで後10日。
「
ルフィたちにも悪いが、コーティング職人に構っている場合でも無くなった。ルフィたちがシャボンディ諸島に着いた頃に1度
今はルフィたちの所まで飛んでいく時間も惜しい。
一旦借りた宿まで荷物を取りに行くべく、
用語解説
・シニヨンを作ったツインテール…わかりやすく言うとセーラー〇ーンヘア。
・ジャスミンのワンピース…チチさんお手製。特に孫家とは家族ぐるみの付き合いなので、ジャスミンの私服にはチチさんお手製のものが多数。
追記:確率の出し方がおかしいとのご指摘を受けた為、訂正しました。
追記2:ルフィたちがシャボンディ諸島に来るまでの日数を換算し忘れていた為、8日後から10日後に修正しました。
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第48話 超新星、揃う
今回、黒幕本人はまだ出ませんが、ジャスミンが連想した相手が明らかになります。
正解されたみなさん、おめでとうございます!
まともに戦ったら絶対勝てない相手なのでジャスミンも涙目です(笑)
さすがに無理ゲーなので、助っ人を登場させるつもりですが、まだ影も形も出てきておりません。たぶん、黒幕の正体が明らかになれば必然的にお分かりになるかと思いますので、少々お待ちくださいませ。
━2日後、シャボンディ諸島13番
無事シャボンディ諸島に上陸した“麦わら一味”は、途中出逢った人魚のケイミーとヒトデのパッパグ、そして奇妙な縁で再会したタコの魚人・ハチと共に、コーティング職人を求めてハチのツテを頼っていた。
「なぁ。わざわざタコッぱちに紹介してもらわなくても、ジャスミンが探してくれてんだろ?コーティング職人。だったら別に良いんじゃねェか?」
“ボンチャリ”と呼ばれるシャボンディ諸島特有(魚人島でも一応使用出来るらしいが)の自転車に乗っていたルフィが、ふと思い出したように同行していたブルックとチョッパーに問う。
「それはそうですが、私たちが上陸してから1時間は経ちます。その間、ジャスミンさんから接触が無いのも妙な話。単に私たちに気付かなかった、というなら良いんですが、何かトラブルがあったのかもしれません…。しかし、コーティングには少なくとも3日はかかるという話ですから、まずはコーティングの話を付けてからジャスミンさんを探した方が良いでしょう。ここは海軍本部も近いですから、一刻も早く船を使えるようにしておかなければ。」
「そんなもんか?」
ブルックの説得にルフィが首を傾げる。
「そんなもんです。」
「ジャスミン大丈夫かなぁ…。」
「ジャスミンさんなら大抵の事は突破出来るでしょうから、たぶん心配はいらないでしょう。もし、ジャスミンさんが職人を見付けてくださっていたら、その時は素直に謝れば良いんです。きっと苦笑しながら許してくださいますよ。」
連絡の取れないジャスミンを心配し、顔を
「ニュ~~~。今は海賊たちがいつになく集まってるみたいだから、なかなか空いている職人が見付からないのかもしれないぞ。ちゃんとした職人は滅多にいないからな――――…。」
「へぇ――。やっぱりジャスミンの言ってた通りだったんだな。」
ハチの説明にチョッパーも納得したように頷く。
その後しばし歩いた後、不意にハチが立ち止まる。
「さァ着いたぞ―――――!!」
「やっと着いた―――――!!」
“ボンチャリ”から降りながら、ルフィが大きく伸びをする。
「あの根っこの上にある店がそうだ。…店やってるかな。10年ぶりだ。」
“ヤルキマン・マングローブ”の根っこを指差しながら、ハチが先導する。
「コーティング職人も魚人か?ま、会えば分かるか!」
「あ、私とパッパグは
「!そうなのか。」
ルフィが自己完結するが、実際に知り合いなのはハチだけらしく、ケイミーがルフィに断りを入れる。
「ニュ~~~~。おれが子どもの頃からの付き合いなんだ。」
ハチが説明しながら階段を
「この店、ぼったくる気が全面に押し出されてんだが…、ハチ…。すげ――――、凶暴なんじゃ…。」
「大丈夫だ。良い人間たちだ。」
正直過ぎる看板にパッパグがドン引くが、ハチは慣れているらしく全く意に
カランカラン……
「レイリー、シャッキー、いるか―――?」
ハチがドアを開けたものの、次の瞬間一同の目に入ったのは衝撃の瞬間だった。
「払いまず……。」
目も当てられない程にボッコボコにされ、絞り出すような声で支払いを訴える
「いらっしゃい。何にする?……あら。」
その
「はっちゃ―――――――ん!!?」
「ニュ~~~~~、ご
「そうよ、もう10年ぶり位!?」
再会を喜びあったのも
「座ってまってて。今、この子たちから
見れば、
「ニュ~~~~。ゆっくりで良いぞ。」
「「「…………。」」」
ドン引いているチョッパー・ケイミー・パッパグとは異なり、全く気にしないハチとそれに笑顔で着いていくルフィ、そして全く動じないブルックがちょっと怖い。そう思った3人だった。
「そう……。海賊辞めたの。それが良いわよ。カタギが1番!」
ぼったくった海賊たちを階段下まで投げ捨てた後、女主人‐シャクヤク(通称シャッキー)とハチが旧交を温めている頃、ルフィとブルックは無断で店の冷蔵庫を
「あ……、そうだ。キミたちに飲み物………。」
シャッキーがルフィたちの存在を思い出した時には、既に2人共勝手に冷蔵庫の中身を食い
「冷蔵庫
パッパグのツッコミが
「アハハハ……。ええ、好きにやって。」
シャッキーは全く気にしていないようだが。先程海賊たちから遠慮無くぼったくり、階段下に投げ捨てた人間とは思えない。
「ルフィ、ブルック!!お前らぼったくられるぞ――――――――!!」
「はっちゃんのお友達からお代はもらわないわよ。はい、君にはこれね。」
焦るチョッパーを
「わたあめ~~~~!!!」
うひょ――――!!っと喜ぶチョッパーを見て、ルフィがシャッキーに尋ねる。
「オバハン、何でチョッパーの好物知ってんだ?」
「キミたち、モンキーちゃん一味でしょ?」
「おれの事知ってんのか!?」
「もちろんよ。話題の一味だもの。私は情報通だし。」
聞けばシャッキーも昔は海賊であり、今はルフィたちのようなルーキーを応援する側なのだという。40年程前に、ルフィの祖父であるガープに追いかけられた事がある、という
「――――ところで、シャッキー。」
「ああ、言わないで。分かってる。全部分かってる。」
本題に入ろうとしたハチの言葉をシャッキーが
「はっちゃんたちやケイミーちゃんがわざわざ陸のルートを通って来たのは、船をコーティングしたいモンキーちゃんたちを案内する為でしょ?――――つまり、レイリーにコーティングの依頼ね?」
「ニュ~~~~。そうなんだ。」
「――――だけど彼、ここにいないのよ。」
「え―――!?職人いないのか!?おれたち、魚人島に行きてェんだ!!」
まさかの返答にルフィが叫ぶ。
「まぁ、でもこの諸島から出る訳は無いから…。どこかの酒場か
「待ってたら帰って来るだろ?」
「そうね、いつかは…。もう半年は帰って来てないけど。」
「「「半年!?」」」
「その辺に女作って寝泊りはしてると思うから、体の心配はして無いけど。1度飛び出すと長く帰らないのは海賊の
「職人のおっさんも海賊だったのか!」
「弱りましたね……。じゃあ、探すしか無いですね。おおよそ
「そうね…。1番から29番にはいるんじゃないかしら。彼も
ブルックの問いにシャッキーが心当たりを上げていく。
「あと、そうね…。その範囲外では…“シャボンディパーク”も好きね…。」
「遊園地か!!!そこ探すぞ――――――――!!!」
「わ―――い!!遊園地―――――――!!!」
「コラ!!ケイミー!!」
ひゃっほ―――――う!!と歓声を上げるルフィたちに
「どこを探すにしても…、とにかく気を付けて。私の情報網によると…。キミたちが上陸した事で、現在このシャボンディ諸島には…12人!!“億”を超える賞金首がいるわ。」
「そんなにィ――――――!?」
チョッパーが驚愕のあまりに鼻水を
「モンキーちゃんとロロノアちゃんを除いても10人!!キミたちは“
「うん。」
ルフィがシャッキーの言葉に頷く。
「だったら、当然他の6本を
「新聞読まね――もん。」
他人の事など全く気にしないルフィに、シャッキーがアドバイスする。
「ウフフフ…。情報は武器よ。ライバルたちの名前くらい知っておいたら?懸賞金で言えば…、その中でキミは
「ルフィより上がいんのか!?この島に…!?」
ルフィの強さを日々目の当たりにしているチョッパーが、更に上の存在に驚愕する。
「ええ。“
「そうか…!そう言えばジャスミンはルフィより懸賞金が上だったんだ!!」
「その様子だと、キミたちがエニエス・ロビーで“中将殺し”と組んでいたのは本当みたいね?」
チョッパーがハッとしたのを見て、シャッキーがルフィに尋ねる。
「おう!色々助けてもらったんだ!友達だ!!」
「そうなの…。モンキーちゃんがそう言うなら、ジャスミンちゃんもイイコみたいね。」
ルフィの満面の笑みを見て、シャッキーがどこか安心したように呟く。
他のルーキーたちに比べ、ジャスミンの情報は極端に少ない。情報通の彼女も
━その頃、シャボンディ諸島から10数kmの無人島━
「はぁああああああっ!!!」
ブゥ………ン!!!
腰の位置で軽く両手の拳を握り、自然体で立っているジャスミンの全身を赤いオーラが包み込む。
一見するとただ立ち、“気”を放出しているだけにも見えるが、その顔は
「ハアアアッ!!」
それを押し殺すように更に気合を入れるとオーラは一瞬大きくなったものの、ジャスミンが構えを取ろうとすると、まるで張り詰めていた糸が切れてしまったかのようにシュウゥ…!と掻き消えてしまった。
直後、ジャスミンが崩れ落ちるように地面に膝を付く。
「はぁっ…!はぁっ…!はぁっ………!」
肩で息をしながら、両膝を付いて地面に突っ
「後ちょっと…!後ちょっとなのに……!!!」
なかなか思うように進まない修行に苛立つが、こればかりは焦ってもどうしようも無い。
宇宙レベルで見てもそこそこの戦士であり、Z戦士たちからもその実力と才能を認められているジャスミンがこれほどまでに苦戦している理由。
それは、ある技を体得しようとしての事だった。
“
自身の戦闘力を一時的に何倍にも増幅させる技である。
かつて、孫悟空が“北の界王”から伝授された奥義の1つ。上手くいけば通常の数倍の力を発揮する事が出来るが、反面リスクが高く体に負担がかかる。
発動させるにはかなり精密な“気”のコントロールが不可欠だが、それが難しい。静止している状態ならまだしも、少しでも身動きすれば高めた“気”が瞬時に
「やっぱりまだ無理って事……?」
人並外れた才能を持つ悟空でさえ、体得までにはその前段階も合わせて1年近い時間がかかっている。体得した後も、発動させるには相当の負担がかかったとも聞いている。
実際、悟空に頼み込んで原理は教えてもらえたものの、実際に試すにはまだ早い、とも忠告されていたのだ。絶対に自分のいない所では試すな、とも。成長期の体には負担がかかり過ぎるから、自分が許可を出すまでは絶対に禁止とまで言っていたのだ。あの、普段はこちらが心配になる程に楽天的な悟空が。
しかし、無理でも何でも
あの時にシャボンディ諸島で感じた“気”。実際の正体はまだ不明だが、それに良く似た“気”の持ち主を自身は知っている。
“暗黒魔界の王”ダーブラ。
“気”を感じ取ったのみで、まだ幼かったジャスミンは直接
当時はまだ幼く、“気”を感じ取っただけのジャスミンも恐怖に
あの恐怖は魔人ブウへのトラウマと共に、心に刻み込まれている。
あのダーブラと同格の“気”の持ち主。今のままのジャスミンでは…。否、
だが、もし
「クソッ……!時間が無いっていうのに………!!」
ダンッと地面を殴り付け、苛立ちを
「~~~っっっ!!!」
ギシギシと
カチッ!
ボンッ………!!
投げ付けたカプセルから現れたのは、
「った~~~!!」
痛みに
カリッポリッ……!
1粒口に含んで
「あ――――…。痛かった……。」
痛みのあまりに
「2日かけてあの程度か…。方向性変えた方が良いかな……?」
なかなか進まない
「2日…?ヤバッ…!ルフィくんたちもう着いてるよね……!?」
修行に夢中ですっかり忘れていた。コーティング職人を探せていない事を報告しなくては。
修行中だった為、着ていた亀仙流の道着は
「急がないと…!」
用語解説
・北の界王…たぶん宇宙で3番目か4番目くらいには偉い神様。悟空に修行をつけた師匠でもあり、凄い人だが印象としてはオヤジギャグの好きな人。哀しい程に笑いの沸点が低い。作者個人としては結構な癒しキャラ。実は悟空の自爆に巻き込まれ死人になってしまったという不遇さ。
・界王拳…わかりやすく言うとマ〇オがスターを取った状態に近い状態になれる技。ただし使用者への負担がかなり大きい。
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閑話5 その頃地球は…
本編でなくてすみません。
今回はジャスミンがトリップした直後の地球sideです。
――――――時はしばし
長い撮影期間が
ソファで
「………!」
ゴトン…!
「わ?!何してるんです、ヤムチャ様!!」
隣で同じくデイゲームを観戦していたプーアルが、ジョッキの倒れる音でテーブル中をびしょびしょにしているビールに気付き、
しかし、普段ならすぐに自分も片付けようと動く
「ヤムチャ様?ど、どうしたんですか?!」
見れば、青白い顔で
「ジャスミン…?」
何かを確かめるように呟かれたのは、
「ジャスミン様がどうかなさったんですか?」
この様子は
プーアルの言葉に、ヤムチャが
そして、ジャスミンの番号を呼び出し始めた。
『お呼びした番号に応答がありません。電波の入らない所にいるか、電話機本体が故障していると考えられます。』
呼び出しを始めた
「え?」
それを聞いたプーアルが首を
「最後まで潜水飛行艇のモニターをされながらお帰りになるつもりなんでしょうか?」
「いや、違う…。」
「違うって…。まさか、スマホを壊してしまったという事ですか?」
確かあれは、去年のジャスミンの誕生日にヤムチャが贈った最新モデルで、ブルマの改造によってかなりタフな仕上がりになっている
『GPSを起動。追跡対象者の現在地を探知します。』
西の都の17歳以下の子どもは、GPS機能付きの携帯電話の所持・携帯が条例によって義務付けられている。大都市であるが故に犯罪も多く、未成年者がそれに巻き込まれる事例が多発した事から、10年程前に制定された。親の目が離れやすくなる就学から、高校2年生までのおよそ10年間は例外無くその条例の対象となり、保護者は常に子どもの居場所を把握しておくのが義務となっているのである。17歳以下の子どもに限り、15分置きに自身の居場所を発信させる特殊なアプリのダウンロードが義務付けられている。保護者はそのアプリと連動している探知アプリをダウンロードしており、それによって保護者はいつでも自身の子どもがどこにいるのかを把握する事が出来るのだ。
それはジャスミンも例外では無い。仮にスマホ本体が壊れてしまっていたとしても、その直前にどこにいたのかは記録されている。
『追跡対象者を探知出来ませんでした。7分前の位置情報を表示します。』
ものの10秒程で表示されたのは、先程電話でジャスミン自身の口から伝えられていた
「プーアル!出かけるぞ!!」
「えっ?ど、どこにですか?」
「ジャスミンの所だ!!」
「ま、待ってください、ヤムチャ様!!!」
上着を引っ
━東の都から10km地点の町━
「っここか……!!」
スマホを見ながら店を探していたヤムチャが、スタッ!と店の前に降り立つ。
「ジャスミン!どこだ?!」
バンッ!
勢いのあまり扉がけたたましい音を立てる。本来なら店中の人間の注目を集めて当然の行動だったが、そうはならなかった。
「っこれは…!」
店内には商品だったらしい品物が散乱し、人1人存在しなかったからである。
まるで店内で大風が吹き荒れたように棚の中身は全て落ち、陶器やガラス類は全て壊れている。
そしてその中、散乱する
「ジャスミンの
2つに割れてしまった、直径2cm程の
━カプセルコーポレーション本社兼自宅━
スタッ…!!
ブルマが社長を務めるカプセルコーポレーションの本社前に降り立ったヤムチャは、その勢いのまま受付に詰め寄る。
「至急、ブルマ社長をお願いします!急ぎの要件です!!」
「ア、アポイントメントはおありでしょうか…?」
ヤムチャのあまりの勢いに若干
「いや、約束はしてないが、ヤムチャが来たと言ってもらえれば分かる
「は、はぁ…。しかし、アポイントメントの無い方は規定上お繋ぎ出来ないようになっておりまして…。」
「娘が危ないかもしれないんだ!早くブルマと連絡を取らないと……!!」
「そ、そう言われましても………。」
「あれ?ヤムチャさん?どうしたんですか?」
「!」
「ト、トランクス
カプセルコーポレーションの
次期社長として既にブルマの仕事を手伝っている彼は、長期休みの時には日中はほぼ本社に入り
来てみれば何やら受付付近が騒がしく、よくよく見てみれば幼い頃から良く見知っている
「頼む、トランクス!至急ブルマに繋いでくれ!!」
「はい?」
渡りに船、と言わんばかりに自分に詰め寄ってきたヤムチャに、思わずトランクスが
「ドラゴンレーダーがもう1つ必要なんだ!頼む……!!」
「ドラゴンレーダーが必要って…。確かジャスミンが持ってる
突然のヤムチャの申し出に、トランクスが困惑した様子を見せるが、次のヤムチャの一言で全てが吹っ飛んだ。
「ジャスミンが
「
ただならぬ様子に、トランクスの顔つきも変わる。
「連絡が取れない…。それだけじゃない、GPSでも探知出来ないようになっているし、何より
「!!」
その言葉に、トランクスも意識を集中させてジャスミンの“気”を探す。普段なら、いくら一般人程度まで抑えていたとしてもすぐに発見出来る程に
「っ確かに…!何でも無いのにアイツが“気”を消すなんてこれまで無かったし…。連絡も取れないとなると……。」
「さっきから、嫌な予感がするんだ…!2度と
ヤムチャの顔色は青を通り越して白い。
「ジャスミンはドラゴンボールを集めていた…。最後の1つを見付けたから、今日中に帰ると言っていたんだ…!頼む、ドラゴンレーダーでジャスミンを見付けてくれ!!」
「っわかりました!ママなら、今の時間は社長室で書類に目を通している
必死の
すぐさま
それからは
ならば、とジャスミンのスマホの現在地を何とか突き止めようとしたものの、カプセルコーポレーションの技術をもってしても、ジャスミンの
そして、行き詰まった彼らは最後の切り札に頼る事となる。
最後の切り札、
“困った時の占いババ”、彼女の力に頼ったのだ。
しかし、100発100中の彼女の占いを持ってしても、ジャスミンの
ただし、どこに跳ばされたのか、別の惑星かはたまた全く異なる宇宙なのか、それは全くの不明。また、運が悪ければ出口に
「ヤムチャさん!?しっかり!!!」
同行していたトランクスが
「だ、大丈夫かの?」
説明した張本人である占いババも思わず心配する程のショックの受け方だった。
同じく同行し占いババの話を聞いていたブルマも、幼い頃から娘同然に可愛がっていた少女に起こった事態に思わず気が遠くなったが、地球一の
「トランクス!一旦帰るわよ!!」
入口に向けて
「え?!わ、分かった。」
自身も
「これからどうするつもりだい?頼みの綱のドラゴンボールも無いんじゃ、探しようが無かろう?」
占いババの言葉に、ブルマがピタリと足を止めた。
「ドラゴンボールならあるわよ。…ナメック星のがね!!」
自信たっぷりに言い放たれたブルマの言葉に、トランクスと占いババも
「あ!」
「おぉ!その手があったか…!」
感心したように納得する占いババに、ブルマも頷いてみせた。
「そういう事。という訳でトランクス!さっさと帰るわよ!!…それから、あんたはヤムチャを部屋に寝かせたら急いで
「え?悟空さんを?何で?」
「バカね。ナメック星に行くには
「た、確かに…。」
一瞬疑問に思ったものの、説明されればなるほど
「分かったらとっととダッシュ!ジャスミンちゃんが危ないかもしれないのよ!!」
「はいっ!!!」
ブルマの号令に、
――――――――その後、悟空を探し当てたトランクスが
ナメック星のポルンガの力を持ってしても、ジャスミンと地球のドラゴンボールを
しかし、全く収穫が無かった訳では無かった。ポルンガによって、ジャスミンが“
最悪の状況は回避出来た事に胸を
「良く分かんねぇけど、ポルンガでもダメだったんだからオラ
悟空の提案により、
今回書きたかった事
・父親の勘でジャスミンの危機を感じ取るヤムチャ
・軽くパシられるトランクス
何気に初登場のプーアルと悟空でした。
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第49話 ケイミーを救え!シャボンディ諸島の闇
次話から原作と多少違う展開になる予定です。
今回はあくまでも導入部分なので、さほど進んでいません(汗)
次回更新はいつになる事やら…(汗)
追記:お気に入り登録が2300人を超えました!!感想・評価もありがとうございます!
―――――――――第7宇宙。ジャスミンの出身星である地球を始め、多種多様の生命が
その中でも
“
一般的に
小さな、地球から見れば本当に小さな
その家の前に置かれたテーブルとイス。そこに座り、
「う―――――――む………。」
青い肌の為に
「
同じくテーブルに付き、
「ちょっと黙っておれ!
「うぉっ!?」
くわっ!と怒鳴り付けてくる
「わ、分かったよ。でも、そんなに難しいんか?特定すんの。」
「当ったり前じゃ!!この宇宙以外にも世界は星の数程あるんじゃぞ?!その中から何の手掛かりも無しに見付けようなんぞ、不可能じゃ!例えるなら、海の中に落としたたった1つの小石を見付けようとするようなもんじゃぞ!!!」
「そ、そんなにかぁ?!」
「分かったら静かにしておれ。この
「“入口”を創る?」
「
「ああ。確かそうだ。」
「さっきも説明したが、この宇宙以外にも世界は星の数程存在する。その中から何の手掛かりも無しにたった1人の娘を見付け出す事は不可能。ポルンガとて同じ事じゃ。しかし、原因を解明し“出口”を突き止める事が出来ればその世界の“
「よ、良く分かんねぇけど分かった。」
「分かったら静かにしておれ!気が散るわ!!」
ただでさえ大仕事なんだから邪魔するな、と再び本に目を落とした
半年かかってまだ折り返せていない。
…………道のりは長かった。
━シャボンディ諸島22番
「誰も人魚売りに来てねェか!!?」
シャボンディ諸島の至る所に点在する、
「き、来てねェよ!!」
「おい麦わら、騒ぎになると探しづらくなるぞ!!」
店員の
「どうだ、タコッパチ!!パッパグ!!」
ぜーぜーと荒い息を
「いねェな店内には。」
ハチが店内を見回し、目に付く
「ウチは倉庫ねェから出てる商品で全部だ。」
ルフィの締め上げから解放された店員が、ルフィたちを
少し前まで、ルフィたちはシャボンディ諸島の名物とも言える観光スポット、“シャボンディパーク”で遊んでいた。これまで遊園地など行った事の無い彼らは、少々
ケイミーから目を離してしまった。
それは魚人や人魚にとっては、誰しもが知っている事だったが、あまりにも楽しい、夢のような時間を過ごすうちに
アイスクリームを選ぶ為に、歩けないケイミーを1人ベンチに待たせ、彼らはその場を離れてしまった。
………彼らが戻ってきた時、ケイミーは
ルフィたちは2手に分かれ、ケイミーを捜索する組と他の仲間たちと合流する組に分かれたのである。
一旦
「ニュー!!まだ売られてるとは限らねェし、せめて
「お――――――い!!!ケイミ――――――――!!!」
「ペイ…、ペイビ――――――――イ!!!どこだ――――!!?」
ルフィが声の限り叫び、パッパグは
その様子に、周囲の人間も“麦わらのルフィ”に気付き、ざわつき始めたが、ルフィたちにそれに構っている暇は無かった。
「
パッパグが泣きながらケイミーと交わした最後の会話を思い出す。
「あ…、あァ…、あれがケイミーとの最後の会話なんて嫌だァ――――――!!!おれが
「何か知らねェけど、あんなに喜んでたんだ!!遊園地に行った事は良いじゃねェか!!」
「…良かねェよ!!本当は…、魚人や人魚がこの島に入る事さえ良かねェんだ!!――――――だけど、ハチはどうしてもお前らの役に立ちてェって言うから…。」
「………パッパグ!!それ以上言うな!!」
「何で良くねェんだよ!!タコッパチ!」
ハチがパッパグを制止しようとするが、ルフィがそれに疑問の声を上げる。
「ケイミーとハチの敵は…、何も
「!?」
パッパグが続けた言葉に、ルフィが一瞬言葉を失う。
そして、パッパグから人魚や魚人たちが受けてきた迫害の歴史と、
「差別…。」
「ここは、
パッパグはルフィに説明しながらも自らを責め続ける。
「ニュ~。悪い、麦わら。お前らの手助けをするつもりが迷惑を…。」
「何言ってんだお前ら!お前らが悪いと思う事なんて、1つもねェじゃねェか!!お前ら3人共、もうおれたちの友達なんだ!!例えどんな事したってケイミーは必ず助け出すから!!!もう泣くな!!!」
「!!!……ムギ………、お前……!!」
パッパグの涙が思わず止まった、その瞬間だった。
そこに、もう1人が
「どうしたの?ルフィくん。」
そう、ルフィに声をかけたのは。
「ジャスミン!?」
「遅くなってゴメンね。ちょっと訳があって…。ナミちゃんたちは?」
かけられた声にルフィがその場に視線を向けると、そこには本来上陸直後に合流予定だった少女‐ジャスミンがいた。
「訳?って、それどころじゃねェんだ!大変なんだよ!!」
「何があったの?この人たちは?」
「話は後だ!ケイミーが、友達の人魚が
「!そのケイミーさんって名前からして女の人だよね?いくつくらい?若いのかそれとも、ある程度の年齢なのか分かれば……。」
ルフィの言葉に、ジャスミンが半年程前に仕入れた情報を
「たぶん、おれたちとそう変わんねェ
「なら、十中八九1番
「ほ、本当かそれ!?」
言い切ったジャスミンの肩をハチが
「あのオークション会場はシャボンディ諸島でも最大の規模…。若い女の人魚を欲しがる
「て、
「マズいぞ、それ……!!」
恐れていた事態を
「今日は1日だから…。マズいな、今日がそのオークションが開催される日…。開始時間は確か16時。今ならまだ間に合います。」
ジャスミンが時計で日時を確認する。現在は15時39分。急げばまだ間に合う。
「なら急いで行こう!!」
「待ってルフィくん!!!」
すぐにでも駆け出しかねないルフィをジャスミンが制止する。
「ケイミーさんを助けには私が行く!ルフィくんは、この人たちと一緒にオークション会場の裏口付近に隠れて待っててくれない?」
「何でだよ!?おれも行く!!」
「ルフィくん、絶対
ただでさえ“予言”された日まで時間が無い。負ける気はさらさら無いが、大将の相手をしている暇など無いのだ。
「私なら、客に気付かれないでオークション会場に忍び込める。必ずケイミーさんを連れて行くから、裏口で待ってて!」
「わ、分かった…。」
ジャスミンの
「じゃ、先に行ってるから。」
「お、おう…!」
バシュッ!と飛び立ったジャスミンを見送りながら、ポツリとハチとパッパグが呟く。
「ニュ~。アイツ、“中将殺し”だろ?意外と優しいんだな…。」
「新聞だとかなり極悪非道に書かれてたけどな…。」
「アイツは良い奴だ!おれたちも行こう!!」
言い置いて、ルフィも走り出した。
界王さま登場~。
・界王録…一応原作にも出て来るが、実際には何冊あるのかは不明。宇宙が始まってからの全ての事が書いてあるなら、1冊じゃ済まないよな、と巻数はねつ造。
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第50話 忍び寄る悪
50話までいっても大して山場に持っていけない自分の文才の無さにちょっと落ち込みつつ、これからも更新を頑張らせていただきます!
さて、今回いよいよ“黒幕”たちがちょっとだけ登場します。これで分かる方ももしかしたらいらっしゃるかもしれませんね。
“助っ人”は次回かその次まで少々お待ちくださいませ。
━1番
――――15時42分、オークション会場舞台裏‐
ジャスミンは既に
(何でこんなトコにいるんだろ、
(!あれか…。)
そんな中、目的の人物に気付く。
「放してよ!!痛いっ!!あんたたちなんか!!はっちんがぶっ飛ばしに来ちゃうんだからね!!」
趣味の悪い服装の男たちに2人がかりで運ばれているのが、人魚のケイミーだろう。
そこに、従業員たちとは違う服装(これも趣味が悪い)の責任者らしき男が近付いていく。
「おほっ!!コリャ高く売れそうだ珍しい!!イキも良い!!ハリもある!!」
(
ケイミーの顔を
「出品者は?」
「“ハウンドペッツ”で。」
「ピーターマンか。良い仕事しやがる。トビウオライダーズは今回何も出して来ねェってのに。」
「べ――――っ!!」
その瞬間、それまで笑みを浮かべていた男が
パン!!
「きゃあ!!」
「コノヤロー、魚の
思い切りケイミーを平手で殴り付け、倒れたところを蹴り付けようとして部下たちが慌てて男を抑えた。
「ちょっと、ディスコさん!!大事な商品ですよ!!!」
「傷付けたら値が下がる!!蹴るんならせめて服で隠せる腹とか…。」
「ケッ!!」
部下の言葉に吐き捨てる男‐ディスコに、ケイミーが泣きながら叫ぶ。
「お前だって!!………!!はっちんがやっつけてくれるんだからね!!!」
「まだ
ゾクッ………!
不意に
ドサッ!
「!?え!?…ディスコさん!?」
「おい、どうしたディスコさん!?」
そのまま気絶したディスコに、保管庫にいた部下たちが全員駆け寄ったのを確認し、ジャスミンが動いた。
ドッ!
ドドッ!
ドンッ!!
ポケットから瞬時に
ドサッ!
ドタンッ!
バタッ!
「え!?」
「な、何だ!?」
「どうしたの?!」
ディスコが倒れた事にも不思議そうな顔をしていたケイミーが、疑問の声を上げ、それに反応した他の
スタンッ!
「あなたがケイミーさんですね?」
「え?あ、あなた誰?!」
突然現れたジャスミンにケイミーが目を白黒させた。
「話は後です。外でルフィくんたちが待ってますから、早く逃げましょう。」
「ルフィちんたちが!?」
ルフィの名に、ケイミーの顔が明るくなる。
「裏口で待ってます。その前に…。」
ケイミーに答えながらジャスミンがディスコのポケットを探る。
「あった!」
チャリ…!
取り出されたのは、鍵の束。そして今回オークションに出品される
「ちょっと待っててくださいね。」
ガチャン…!
「これから皆さんの首輪を外します!裏口までの安全は保障しますが、それから先は自力で逃げてもらいます!既に表の会場には客が大勢入っています。中には
そう言うなり、急いで全ての者たちの首輪と
「ありがとう…!ありがとう…!」
「助かった…!もうダメかと思った…!!」
奴隷の証である首輪から解放された
「この恩は絶対忘れない…!いつか必ず礼をする!!」
特に巨人の男は、ジャスミンにそう
そして、最後の1人―――――――――。
「ふふふ……。
「ええ、全く。元々私は、あなたを探してこの島に来たんですけどね…。」
半年前に
「おや?私を探していたのかい?」
「ええ。コーティングを依頼したくて。でも、話は後です。オークション開始まで後10分。そろそろ他の従業員が顔を出してもおかしく無い。急ぎましょう!!」
そう言うなり、ケイミーを抱えて足早に裏口を目指す。
「なら、
コーティング職人の老人の言葉に、解放された者たちが頷き足早にジャスミンの後に続く。
「おや?君は行かないのかね?」
他の者たちが次々と部屋を出て行く中、動こうとしない巨人に向かって老人が問う。
「行くさ。せっかく自由にしてもらったんだ。ただ、じいさんあんた何者だ……!?さっきの
「ふふ…。ただのコーティング屋をやってるジジイだ。わしは若い娘さんが大好きでねェ…。それに、あんなものは多少
そう言いながら老人が倒れた男たちの
「何だそれ?」
「コイン…。100
「コイン?それがどうした?」
「ああ。君じゃ視線が高過ぎて見えなかったのか。このコインが、この男たちを気絶させたのさ…。」
「コインで?能力者か?」
「いや。このコインを指で弾いて、弾丸のように撃ち出したのさ。…全く大した腕だ。」
そう。あの時、ジャスミンがポケットから取り出し、撃ち出したのは3枚の100
「そんな芸当が本当に可能なのか?」
「現にこの男たちは気絶している。さて、他の連中は皆逃げられたようだ。わしらもそろそろ行こう。本当に従業員が来てしまう。」
言い置いて裏口を目指して歩き出す老人に、半信半疑ながらも巨人の男も付いていく。
最初に気付いたのはルフィだった。
「来た!ジャスミンだ!!」
「ケイミー!!」
「ペイビ―――――――ィ!!!」
ジャスミンがケイミーを抱えて裏口を潜り抜けた
「はっちん!!パッパグ!!」
「そ、外だ…!助かった…!!」
「自由だ…!!」
「ありがとう…!あんたのお陰だ……!!」
ジャスミンによって奴隷の危機から解放された者たちも、次々と裏口から外に出て来る。
ケイミーをハチへと渡し、ジャスミンも彼らへと向き直った。
「どういたしまして。言い方はなんですけどついででしたから。それより、早くここから離れてください。2度と捕まらないように。」
ジャスミンの言葉に、皆口々に礼を言いながら
他の者たちが全員逃げ出した後、最後に巨人の男とコーティング職人の老人が出て来た。
「ん?そこにいるのは…。おぉ!!?ハチじゃないか!?そうだな!!?久しぶりだ!―――――何をしとるこんな所で!!」
「レ、レイリー!!?」
「ん?あ~、いやいや言わんで良いぞ。――――成程、その人魚の娘さんはお前の連れだったか。」
「……お知り合いだったんですね。」
まさか自身の探していたコーティング職人と、ルフィの連れが知り合いだとは思わなかった、とジャスミンが内心呟く。
「?このおっさんがコーティング職人なのか?」
「!ルフィくんたちもこの人を探してたの?」
ルフィの問いかけに反応したのはジャスミンだった。
「みたいだな!お
「まぁね…。それより場所を移動しよう。他に捕まってた人たちは
「なら、シャッキーのバーへ行こう。あそこならそう簡単に見付からん。」
「まだみんな来てねェんだ。おっさんとタコッパチたち、ケイミー連れて先に行っててくれよ。後でみんなと一緒に行く。」
ルフィが提案し、ルフィ1人残して行くのも不安だったジャスミンがそれに付き添ってハチらを見送る。コーティング職人の老人‐レイリーがいるなら何かが起こっても大丈夫だと判断しての事だ。
「ルフィくん、私“麦わら一味”が全員
「?これからどうするか決めたのか?」
「後8日…、実質的には7日かな。元の世界に帰る手掛かりが
「あぁ!だからそんな
ジャスミンが
「そ。
取り
「お――――い!ルフィ―――――!!」
「ルフィ――――――――!!」
サンジとナミ、ロビン、フランキー、ウソップが到着する。
「ジャスミン!あんたもいたのね。ルフィ!それで、ケイミーは?!」
「ケイミーは大丈夫なのか!?」
「大丈夫だ。もうジャスミンが助けてくれたからな!今はタコッパチたちと一緒にオバハンの店に先に行ってる。」
ナミとウソップが立て続けに問い
「後はチョッパーくんとブルックさん、それにロロノアさんですね?」
「ああ。それにしても
ジャスミンの言葉にサンジが同意した直後。
「ん?」
不意にジャスミンが上空を
「何だ?」
「まさか…。」
「何か嫌な予感が…。」
それに釣られてルフィ、サンジ、ナミも同様に上を見上げた時だった。
ヒュンッ!
ヒュヒュンッ!
ヒュンッ!!
「うわぁああああっ!!!?」
「ヨホ――――――――ッ!!!」
「ぅおっ!?」
ドッカアァアアアア……………ン!!!!!
チョッパー、ブルック、ゾロを乗せた巨大トビウオが会場へと突っ込む。
「うぉおおおい?!チョッパ――――――――!?ブルック、ゾロ―――――!!?」
「おぉ!?お前ら大丈夫か――――――!?」
ウソップとルフィが慌てて会場へと走って行くのを思わず見送り、他のメンバーは重い溜息を
「「「「「あぁ――――あ………」」」」」
誰もがやっぱり一騒動起こるのか、と悟る。
「あ、ヤバイ。中に
「何ですって!?」
「マズイわね…。」
思い出したように呟かれたジャスミンの1言に、真っ先にナミとロビンが反応する。そして、これ以上何か
━同時刻、新世界のとある島━
「ちっ……!集まりが遅い…。やはり、この世界では
自身たちの存在を
2人の視線の先には、ガラスのような球体が取り付けられた巨大な装置。その中には、手足が
「…
爪を
彼女たちの正体は一体何者なのか。それが明らかになるまで後8日――――――。
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第51話 天竜人の激昂!迫る海軍大将
本来もっと進む筈でしたが、意外と長くなった為一旦切りました。
来週から割と忙しくなる為、急いであげましたが、次回更新はいつになるやら…。
何となく入る前から嫌な予感はしていたのだ。100人以上を収容する
ジャスミンたちが会場の中へと入った時、そこは静まり返っていた。
「悪いお前ら……。
パキポキと拳を鳴らすルフィから、その周辺に倒れた
そして血だらけでゾロに抱えられているチョッパーを見付けた。
「チョッパーくん?!」
「チョッパー?!」
「おいチョッパー!一体どうしたってんだよ!」
慌てて駆け寄るジャスミンと、それに続くナミとウソップ。
一体この短時間で何があったというのか。
――――――その、わずか3分前。
会場内は、16時を過ぎてもオークションが始まらない事にざわついていた。
「一体、いつまで待たせるアマス!もうとっくに時間は過ぎているアマス!!」
「も、申し訳ありません!ただいま確認に行っておりますので、もう少々だけお待ちを……!」
その目の前で、膝を付いて床に頭を
最初は演出かと思ったものの、何の連絡も受けておらず他の従業員も姿を現さない。慌てて会場内にいた衛兵に目配せして確認に行かせているところだった。
このオークション会場で働き始めて数年経つが、こんなアクシデントに
冷や汗をかきながら、男がひたすら
ドッカアァアアアア……………ン!!!!!
「ぐふぇっ!?」
音を立てて、天井が崩れ落ちたのは。
「いったい、何事だえ!?」
突然の出来事に、それまでは男の言い訳を
「…?!チャルロス!!」
そして見たのは、ちょうど会場に入ってきた、自身の息子であるチャルロス聖が天井から落ちて来た
「チャルロス兄様――――――!!」
シャルリア
「いてててて…。うぉっ!?大丈夫かお前!?医者――――――!!っておれだ―――――!!」
自身が誰かを下敷きにしていたらしい事に気付いて、慌てて
「イタタタ…。イヤ―――、死ぬかと思いました。……って私、もう死んでますけど。ヨホホホホッ!!」
「ったく、いきなりなんなんだよ…!」
ガラガラと
怒りの余りロズワード聖とシャルリア
「チョッパ―――――!ブルック、ゾロ―――!!」
そんな中ステージから響き渡った声。
「!」
「…あれが“麦わら”。」
ステージ
「お!いたいた!お前ら無事だったか―――!!」
仲間を見付けた事で、笑顔で歩み寄るルフィだったが、それを阻止するかのように一発の銃声が響き渡る。
ドォンッ!!!
「え‶………?」
わたわたとチャルロス聖の応急手当をしていたチョッパーの体が
「おい?チョッパー?」
最初に異変に気付いたのはゾロだった。
ドサリッと倒れ込んだその小さな体に立ち上がって駆け寄ろうとするが、それよりも早く続け様に放たれた弾丸にそれは
ドンッ!
ドドンッ!!
その
「チョッパ――――――ッ!!!」
「チョッパー!!?」
ルフィが叫び、ゾロがその体を抱き起す。
「
撃ったのはロズワード聖。
「テメェッ!!?」
急いで止血を
ゆっくりとロズワード聖に向かうルフィの姿に、ゾロの次にその意図を悟ったのは、見物していた海賊たちだった。
「麦わら屋…?まさか…。」
「本気か!?」
トラファルガー・ローと“キャプテン”キッドが
そして、次第に他の客たちの中にも徐々にそれに気付き始めた。
「何する気なんだ、あいつ…!?」
「冗談だろう…!?」
察しの良い人間が
「すぐに“海軍大将”と“軍艦”を呼べ!!!この世界の創造主の
ドンッ!!
ドンッ!!
再び放たれた弾丸は、真っ直ぐにルフィへと向かうが、それが当たる前にルフィの姿が
そして次の瞬間――――――、
ドゴォン!!!
瞬時にロズワード聖の目の前に現れたルフィの拳が、的確にロズワード聖の左
そしてその直後、ジャスミンたちが駆け付けたのである。
「お、お父上様まで…!!!お前たち!何をグズグズしているアマス!さっさと奴らを捕えるアマス!!!」
「は、はい!!!」
怒りに顔を
「
「逃げろ外へ!!!」
「キャ―――――――――!!!」
「貴様ら、生きてここから出られると思うな!!」
「海賊共を逃がすな!!」
オークション会場内にいた衛兵たちと、
「ナミ、コイツを頼んだ。」
「一体何があったってのよ!?」
「おい!それより早いトコ医者に
ナミとウソップが慌てる中、重傷ではあるが
「見たとこ急所は外してる。今すぐ容体が悪化する事は無いだろうけど、あんまり動かさないであげてね。」
言い置いてジャスミンが出入り口へと歩みを進める。
「お、おい!ジャスミン?!どこ行くんだよ!!?」
「海兵に囲まれたら
ウソップの問いかけにも振り返る事無く、手だけ振って答える。
━その頃、聖地マリージョア━
海軍本部の1室で、頭を抱える男がいた。
アフロヘアに無理やり被った何故か上にカモメを乗せた“
現海軍“
「……またあの
「はっ!“
センゴクの怒声に、後ろに
「あれ程の実力者が何故あんな
胃の辺りを抑えて悲痛な声で叫ぶセンゴクに、後ろに
しかし、職務を
「情報では“麦わらの一味”と“中将殺し”に加え、海賊ユースタス・キッドと仲間数名、更にトラファルガー・ローとその仲間数名。賞金首は14名まで確認。――――内6名は“億超え”のルーキーです。
表向きは公認していると公言出来ない“
因みに、“
その為、残っていたのは会場内にいた衛兵たちのみで、彼らも既にルフィたちによって片付けられている。
「――――とにかく、
「――――何か要求はあるのか?」
「いえ、今の所は…………!!」
取り
「――――何がどうあれ、世界貴族に手を出されて我々が動かん訳にはいかんでしょう。センゴクさん…………。」
そんな中、それまで同じ部屋にいながらも口を出さなかった男が、ソファから立ち上がりながら口を開いた。
「
「わっしが出ましょう。すぐ戻ります。ご安心なすって。」
3m近い長身にストライプ模様の派手なスーツにサングラス。お
本来ならば、海賊たちの
「気を抜くんじゃないぞ。
「…
真剣に忠告してくるセンゴクに、
普段
歴戦の
ケイミー救出済みでハチが撃たれるフラグも折れているので、ルフィがそれだけ怒る理由を模索したところ、チョッパーがかわいそうな事態に…(汗)
作者はチョッパーが大好きです!!!ゴメンね、チョッパー!!
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第52話 迫り来る悪意…!
ようやっと次回、黒幕と本格的に絡みます。
そして、助っ人は次回かその次には必ず登場させますので…!
「チョッパー?しっかりしなさい、チョッパー!!」
急所は外れているが未だ出血が止まらない様子のチョッパーに、ナミとウソップの呼びかけが続くが、完全に意識が
「おい!しっかりしろって……!!」
焦るウソップがチョッパーを
「
バッとナミとウソップが振り返った先には、1人の男。
「あ、あんた……!!」
「知ってるのか?ナミ!」
「新聞位読みなさい!コイツはトラファルガー・ロー!!
「2億ゥ!!?」
コントのようなやり取りを
「…確かに急所は外れちゃいるが、それにしちゃ出血が多いな……。“
ローの言葉と同時に、チョッパーの体をサークル状の青い
「ちょっと!あんた何してんのよ!?」
「チョ、チョッパーに何してんだよ!!?」
「黙ってろ。…“スキャン”。」
青いサークルに包まれたままのチョッパーの体、その撃たれた傷口の周辺が一瞬キラキラとした光を放つ。
「!何?今、チョッパーの中で何か光った!」
「……どうやら、弾丸の
ナミの声にローが静かに答える。
「弾丸の
「
言葉とは
「下手に動かせば、食い込んだ
ハッとナミとウソップが顔を上げると、そこには衛兵たちを全て片付けた仲間たちがいた。
あれだけ
「助けてくれんのか?」
「……おれは医者だ。助かる患者を見殺しにするのも
真っ直ぐに
━━その少し前、オークション会場前━━
『犯人は
それぞれ
ギイィィイイ……!
「出て来たぞ!!」
「構えろ!!」
オークション会場の扉が開き、姿を現したのは
「あれは“中将殺し”……!!!」
「
「あれが3億8,000万の首……!!!」
ゆっくりと出入り口の階段を降りた“中将殺し”ことジャスミンが、周囲を囲った海兵たちに目をやる。
「…全く、仕事が早い事で…。」
『警告する!!』
ジャスミンがその数にうんざり
『もうすぐ“大将”
「…ならこっちも警告する。余計な怪我をしたくなかったら、さっさと
『!?何だと……!』
ジャスミンが放った言葉に、海兵たちがどよめき指揮官が
『小娘が
ドン!!
ドン!!
ドォン!!
「だから人間1人にやる?普通…。」
ボボボ……ン!!
『な!?』
「悪いけど1人1人構ってる
ズォッ!!!!!
両手から放たれた巨大な
『た、
指揮官が
「はっ!!」
放たれた
「せいっ!!!」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドォ…………………ンンンン!!!!!!!
“
「が…!」
「!?」
「ぐっ!」
一瞬。
一瞬にしてオークション会場を囲んでいた100人近い海兵たち、全員の意識が
宣言通りきちんと手加減をした為、全員死んではおらず大した怪我もしていない。しかし、衝撃はかなりのものだったようで、完全に意識が
周囲を見渡しつつ“気”を探り、取りこぼしが無い事を確認すると、会場内に戻るべくジャスミンが
「…何か用?」
邪魔な海兵たちは全て
そんな思いを視線に込めつつ、ジャスミンが先程から自分を観察していたらしい男‐ユースタス・“キャプテン”キッドを見詰める。
「……成程。3億8,000万は
「…答える義理は無いね。この近くの海兵たちはそこに転がってる連中だけみたいだから、第2陣が来る前にさっさと逃げた方が良いんじゃないの?」
普段、敵対関係にある場合を除き年上相手には基本的に敬語を使うジャスミンだったが、“キャプテン”キッドには最初からタメ口、それも若干のケンカ腰である。ジャスミンにとっては珍しかったが、元々“キャプテン”キッドは
視線を振り切るように足を進めるジャスミンだったが、“キャプテン”キッドが放った言葉に一瞬足を止める。
「
「
「
「……だったらどうするの?」
「…
ザリ…!
凶悪な顔で笑う“キャプテン”キッドに
「…別にここで
「ッテメェ……!!!」
「落ち着けキッド!気持ちは分かるがそいつの言う事も
右腕である“
「ちっ!この場は
苛立ちも
「行くぞお前らァ!!!」
「「「「「「「おう!!!」」」」」」」
“キッド海賊団”の面々も、それぞれジャスミンを
「取り
「分かった。ありがとう!!」
ジャスミンが会場へと戻った時、
「“中将屋”が戻って来たって事は、ひとまず海兵たちは片付いたんだろう?おれたちは先に行かせてもらうぜ。」
チラリ、とタイミング良く入ってきたジャスミンを
「おう!ホントにありがとな!!」
「…別に。貸しはそのうち返してもらうぜ。行くぜ、お前ら。」
振り返る事無く仲間たちを呼び寄せ、ローもまた会場を後にする。
何となく口を
(“中将屋”って何…?)
しかし、今はそんな事を気にしている場合では無い。
「取り
ルフィたちに伝えながら
「…ついでに私ちょっと“
「な、何を思い付いたってんだよ…。」
ニヤリ、と珍しくあくどい顔で笑ったジャスミンにウソップが引く。
しかし、そこで伝えられた“
「良し!乗った!!フランキーとロビン!お前らも手伝ってくれよ!!」
「ええ。良いわよ。」
「アウ!スーパー!任せろ!!」
黒い笑顔で頷くロビンと、いつものポーズを決めるフランキーと誰よりも乗り気なウソップ、発案者であるジャスミンを残し、他の者たちはチョッパーを連れて先にシャッキーのバーへと向かう。
――――――そして10分後、ジャスミンたちもまた
そして更に15分後、
しかし、
特に
「な、何て事をしてくれたんだ、あのルーキー共……!!」
これから先の展開を考え、海兵たちが
保護対象である
━同時刻、新世界のとある島━
「!これは……!!」
手元の水晶玉を
青い肌に
彼女こそ、時空間を
そして、彼女は知ってしまった。
この世界の誰よりも強い戦士の存在を。
「うふっ。うふふふふ…。これだけのエネルギーが手に入れば、きっと…。」
トワが
ジャスミンの姿だった―――――――――。
用語解説
・拡散弾…連載当初から早く出したくて仕方なかった技。巨大な気功波を放った、と見せかけて上にあげて分裂させてから落とす。1対多人数で大きな効力を発揮する。
・ジャスミンの悪戯…たまには奴隷の気分を味わえ、というお茶目()。ウソップもチョッパーへの所業に怒っていましたが、まだ現段階では正面切っての戦闘には参加できなかった為、この場で鬱憤晴らし。ロビン、フランキーも似たようなもの。
他のメンバーは率先して参加する程ではないけど、止めもしなかった。
・トワ…ジャスミンが帰れない元凶。見た目はボンキュッボンの綺麗なお姉さんだが、暗黒魔界と呼ばれる世界の出身。ドラゴンボールからのゲストキャラだが、原作にはもちろんアニメにも登場していない、完全なゲームのみのキャラクター。冷酷な科学者であり、目的の為には手段を選ばない。
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第53話 現れた“希望”とVS海軍大将
いよいよ助っ人たちがチラッと登場しました!
そして今回、やけに長いです。キリの良いところまで何とか書こうとした結果…。
月曜日からちょっと忙しいので、少し次話は遅くなるかもしれません…。
━第7宇宙地球・“西の都”カプセルコーポレーション━
ドガッ!
ガッ!
ドシュッ…!!
重力コントロール室の中で、2つの人影が激しく組み合い、
「!っ…!!」
一瞬体勢が崩れた瞬間、
ドゴッ……!!!
「ぐっ………!!!」
ガァンッ!!!
そのままの勢いで壁へと叩き付けられ、蹴られた青年‐トランクスが
「何をしている、トランクス!さっさと立て!!」
組手の相手‐ベジータがそんな息子を
「ゲホッゲホッ……!!ちょ、ちょっと待って…!モロに入った……!!」
「ちっ……!
「この“気”は、まさか……!?」
「…?どうしたのさ、パパ。」
それを
「ちょ、ちょっと、パパ?!」
「良いから黙ってついて来い!!!」
扉を開けるなり全力で走り出した父の背中を見送る形となり、父の
「パパ!一体、どうしっ………?!」
やっと追い付いたのは庭に出てから。そこで初めて、トランクスは父が反応した“異様な気”に気付く。
父の
全くの
「オ、オレ………?!」
毎朝鏡に
━13番
中にいるのは、“麦わら一味”と店の主・シャッキー、そして探し求めていたコーティング職人・レイリー。ケイミーたちは先程の騒動を受け、
そこで、レイリーがかつて“海賊王”の右腕とも呼ばれた大海賊であった事を知らされ、“麦わら一味”だけでなくジャスミンもまた驚いていた。
“海賊王”処刑の裏側、“歴史の全て”を知る者の言葉の重み、そして何よりも強い“信念”を持って生きた男の話に半ば
“麦わら一味”が“新世界”への期待と不安を
「ちょっと良いかしら?」
ロビンに呼び止められたのは。
「これを見てもらえる?」
「新聞?げっ……!」
そのまま店の
[世界中で
[
[“集団蘇生事件”の原因を突き止めた者に賞金あり?世界政府が調査へ。]
[伝説の怪物か?!“
[“龍”に懸賞金!!!生きて捕獲した者には2億
1面どころか、ほぼ全ての記事が“死者の
(何か嫌な予感がしてたのはコレだったのか……。)
「自分がどれ程大変な事をしたのか、理解出来たかしら?」
「こんな
短い付き合いであり、それ程親しく話した事は無いものの、ジャスミンがそこまで考え無しだとは思っていたかったからである。
「人は死んだらそれまでだ。…まぁ、ブルックみてェな一部の例外はいるようだがな。ちょっと考えれば、どんな騒ぎになるかくらいは分かっただろうよ?」
「短い付き合いですが、あなたが
「私の
「私の
突然の告白に“年長組”3人が顔を見合わせるが、ロビンが静かに続きを
「ええ。それで?」
「その
静かに、自分自身で整理するように
「ドラゴンボールは探す事こそ困難ですが、伝説そのものを知っている人間は
説明していくうちに、自分でも感覚が
その告白に、聞いていた全員が何とも言えない顔になった。
「ちょっと待ってジャスミン…。色々ツッコミたい所はあるんだけど、何よりもまず…。」
微妙な沈黙の下りる中、ナミが
「お
ウソップのツッコミが、
「取り
一通りジャスミンを質問責めにした後、フランキーが
「事情は分かったわ。幼い頃からそんな環境に身を置いていたなら感覚が
「
「さて…。そろそろ良いかね?」
話が一段落したのを見て取ったレイリーが静かに
「すみません、
「何。構わないよ。それより、コーティングの間君たちどうするかね?島にもう“大将”が来ているかもしれんが…。」
「まだ上陸はしていませんが、すぐそこまで来てますね。遅くとも後20分位で上陸出来る位置です。」
レイリーの言葉に同調するようにジャスミンが“気”を探った。
「後20分……!」
「だ、誰が来てんだ?!また
ナミが息を
「いや……、
「あ?…会った事もねェのに、何で分かるんだよ?」
ジャスミンの推測に真っ先に反応したのがゾロである。
「感覚的なものですから、言葉だと説明し辛いんですけど…。この“気”の感じはそこまで攻撃的じゃない…。聞いた話だと
「ほう?そこまで分かるのかね?」
「ええ、まぁ…。」
面白そうに見てきたレイリーに
「こう言っちゃなんだけど、今のルフィくんたちじゃまだ“大将”と戦うには早いと思う。1番良いのは、コーティングが終わるまで諸島の中を隠れるか逃げるかしながら時間を
「そうだな。おれたちが一緒にいたらそこに
ジャスミンの言葉にフランキーも同意する。
「じゃあ、おれたちァ適当にバラけて仕上がりの時間にそこへ集合で良いだろ。」
「計画的に
ソファに
これからの“麦わら一味”の方向性が決まりつつあった
ピクリ、とジャスミンが何かに反応したように外を見やる。
「来たみたいですね。」
「「「「え!?」」」」
チョッパー、ウソップ、ナミ、ブルックがそれに
「この方向は……、たぶん26番
「どどどど、どうすんだよ?!どの方向に逃げる??!」
「早めにここから離れた方が良いよ。ルフィくん、私もそろそろ行くね?」
「おう!色々ありがとな!!」
さっぱりと笑顔で見送るルフィに対し、それに焦ったのはナミとウソップである。
「ちょ、ちょっと待ってジャスミン!あんたどこ行くの?!」
「おおおお前がいなかったら、誰が“大将”と戦うんだよ?!!」
何だかんだでジャスミンを戦力として大いに
「何言ってんだお前ら。ジャスミンにだって色々やらなきゃならねェ事があんだぞ?」
「それに今まで助けてくれていたのは彼女の善意。それを
「うっ……。」
「た、確かに…。」
ルフィとロビンの言葉に、ナミとウソップも反省したように
「ごめんね。私もちょっと時間無くて……。」
「ううん!良いの、良いの!!あたしたちもちょっと甘え過ぎてたわ!」
「おおおおうよ!“大将”なんかどうって事ねェさ!!」
苦笑しながら謝るジャスミンに、ナミとウソップが否定した。
「それじゃ、ホントに行くけど気を付けてね。」
「ええ!色々ありがとう。」
「またな――――!!」
ナミと手を振るチョッパーに答え、
再び例の無人島に戻ろうとしたが、“大将”と戦闘中の“気”に気付いた。
(この“気”は…。)
「…行かなきゃダメか。」
修行を再開する前に、借りを返さなくてはいけないらしい。
━24番
半ば
ざわざわざわ……
ホーキンスの
「“
そして、その
「!!?」
そして、
「どいつもこいつも…。“億”を超えるような
ズバズバン!!!
ズバン!!
「!!」
気付いたホーキンスが周囲を見回そうとしたが、それよりも早く再び目の前に現れた
ピカッ!!
「おわァァァァ―――———っ!!!目が!!見えない………!!!」
「ホーキンス船長—————っ!!!!」
ホーキンスの目の前で
視神経を
視界を完全に
ピュンピュン!
ズバッズバッ!!
「ウッ!!!」
完全に
「何の能力か知らねェけども…。“実体”はあるなァ…。“
「船長―――――――っ!!」
「まずいぞダメージの限界を超える!!本当に死んじまう!!」
“ホーキンス海賊団”の悲痛な叫びが響く。
「まずは1人目…。ここまでの長い航海、ご苦労だったねェ――――――…。」
ドガァアンッ…!!!
ストンッ!
「
「ありゃぁ…!“中将殺し”じゃねェか……!!オイオイ、“大将”を蹴り飛ばすってどんだけだよ?!」
予想だにしなかった人物の登場に驚き、目を
「言った
まだ視力は回復しないものの、声によって誰に助けられたのか理解したホーキンスが、
「まぁ、それは置いておいて…。死にたくなかったらとっとと逃げた方が良いですよ?…
既にジャスミンはホーキンスを見ていなかった。
その視線の先にいたのは、
「オォ―————…。痛いじゃないかァ…。蹴られるなんて、何10年ぶりだろうねェ…。」
ガラガラと体から
「“中将殺し”…。話に聞いていた通りとんだ“化け物”だねェ―――…。」
「…“光人間”に言われるのは心外だな。
間違い無く、
さあ!現れた助っ人たちは誰でしょう?!
書き上げてから気付いた。アプーの唯一の見せ場が完全に消失…。ゴメンよ、アプー…。
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閑話6 その頃、彼らは…
こちらの連載は久々の更新です。が、本編でなくてすみません…。
今回は、ジャスミンが“悪戯中”のチョッパーsideで、本編の補足になります。
VS黄猿はもう少々お待ちくださいませ。
―――――――――これは、ジャスミンがウソップたちと一緒に“悪戯”をしている間に起こった出来事である。
“シャッキー'S ぼったくりBAR”に避難した“麦わらの一味”は、チョッパーを長椅子に寝かせ、目が覚めるのを待っていた。
仲間たちがじりじりと待つ中、徐々にチョッパーの意識が浮上する。
痛い、チョッパーが意識を取り戻し、まず感じた感覚はそれだった。
何でこんなに全身が痛いんだ?そんな事を思いながらチョッパーが目を開ける。
「うっ…。いててて……!!」
起き上がろうとするが、あまりの痛みにそれが出来ない。
「チョッパー!起きたのね?!」
「ナミ?おれ、一体どうしたんだ?」
周りを見れば、
「おお、目が覚めたようだな。」
「誰だ?あの爺さん。」
痛みを
「ああ、ハチの知り合いのコーティング職人の“レイさん”よ。取り
「あ!そ、そう言えばケイミーは?!無事なのか??!」
思い出したように叫ぶチョッパーに、ナミが
「無事よ。というより、あんたたちが会場に突っ込んだ時にはもうジャスミンが助けてくれてたの。今はパッパグも一緒にハチが“魚人島”まで送っていってるわ。」
「そ、そっか…。良かった。」
その知らせに
「なぁ、ナミ。なんでおれ寝てたんだ?」
「覚えてないの?あんた天竜人に撃たれたのよ。特殊な弾だったみたいで、もしかしたら後遺症が残るかもしれないって言われたくらいだったんだから!」
「え?!」
「でも、もう弾は完全に取ってもらったから大丈夫よ。後はしばらく安静にしてれば大丈夫ですって。」
「取ってもらったって…?」
「何だっけな…。トラ、トラフォ…?トラ男だ!!」
誰が自分を治療してくれたのか、と尋ねるチョッパーに適当な事を言うルフィの後頭部をスパン!とナミがブッ叩く。
「トラファルガー・ロー!!!自分のライバルになる海賊の名前くらいちゃんと覚えなさい!!」
「え!?海賊が助けてくれたのか?」
「海賊で医者だとか言ってたな…。“面白ェもん”を見せてくれたから貸しだとよ。」
ナミの言葉に驚愕するチョッパーに、サンジが補足する。
「“面白ェもん”って?」
「ルフィが天竜人を殴り飛ばしたんだ。間も無くこの諸島に海軍大将が来る。」
「大将ォ??!!」
ゾロの簡潔な説明に、チョッパーが目を
「オークション会場を囲んでいた海兵たちはジャスミンが片付けてくれたけど、問題はこれからなのよね…。チョッパーも怪我が治った訳じゃないし…。」
「そういや、チョッパー。お前ジャスミンから“不思議豆”もらってなかったか?」
ナミの言葉で思い出したように、ルフィがチョッパーに目を向ける。
「あ。」
「そう言えば…。」
チョッパーとナミがハッとなり、サンジとゾロ、ブルックもその言葉で思い出した。
「ある!もらったぞ、みんなの分も!!おれのリュックの中に入ってる!!!」
その言葉に、ナミが急いでチョッパーのリュックを
「えっと…、あった!これね?!」
3粒ずつ小瓶に小分けにされた緑色の豆‐ジャスミンがくれた“
「確か1粒で凄い効果があったわよね…?」
ナミが小瓶から1粒だけ取り出し、チョッパーに食べさせる。
ポリッコリッ……!
ゴクン、と飲み込んだ直後、チョッパーがガバリと身を起こす。
「わ!びっくりした…!!」
「ス、スッゲェ―――――――――――――!!!治ってる―――――――――!!!!」
あまりの勢いに若干引いたナミを尻目に、チョッパーが全快した事をアピールするように店中を飛び跳ねる。
「これは一体……?」
「さっきまで重傷だったわよね…?」
「ヨホホホホッ!
「…なるほど。」
「…そうね。」
ブルックの
やれやれ、と内心胸を撫で下ろしつつ、ブルックはロビンとフランキーの年長組が戻り次第、ジャスミンを説教しようと心に決める。
“
はしゃぐチョッパーとそれに乗っかる我らが船長を眺めながら、ブルックは小さく溜息を
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第54話 VS黄猿!そして現れる謎の男!!!
ようやっと物語が動き出した、という感じです。
さぁ、これからどうなるのか、どうかお楽しみに!!
ガッ!
ドッ!
ゴッ!
拳と拳、蹴りと蹴りがぶつかり合う。
パワーでは劣るジャスミンだったが、スピードでは黄猿に勝っていた。“ピカピカの実”の能力の特性を発揮されていれば分からなかったが、ジャスミンのスピードは黄猿にその余裕を与えなかった。
しかし、海軍最高戦力の呼び声は
ピュン!
ジャスミンの
バシッ!
が、事も無げに手で払い
「!何…?!」
瞬時に
「悪いけど、」
カッ…………!!!
言葉と同時に黄猿の目前に
ドォオ………ン……!!!
「あなたの能力じゃ、私には勝てない。」
「ぐっ……!」
「おいおい、マジかよ…?」
いとも
ジャスミンも黄猿も当然、“
「大したダメージじゃないでしょ?立ちなよ?」
ザッザッザ…
ゆっくりと距離を詰めながらジャスミンが黄猿を
放たれた
しかし、決して殺さないよう、そして周囲に被害を与えないようにそれなりに手加減されていたとはいえ、ジャスミンの
「こりゃあ…、参ったねェ……!」
30m程吹っ飛ばされた黄猿だが、海軍大将としての意地とでも言うべきか、直撃を喰らった頭を
黄猿こと、海軍大将ボルサリーノは“ピカピカの実”の“光人間”。その体は“光”そのものであるが
だが、同じような性質を持つと言っても、
“光”であるが
「話には聞いちゃいたが…、ここまでの“化け物”だったとはねェ……。」
「…さっきも言ったけど、“光人間”には言われたくない
「……これだけの力を持っていながら、何でまたァ“麦わら”たちとつるんでるんだい…?」
フラフラとよろめく体を何とか平行に保とうと努力しつつ、黄猿がジャスミンに問う。
「別につるんでるって訳じゃない。友達の助けになる事は別に不思議でも何でも無いでしょ?………そんな事より、」
淡々と答えていたジャスミンが、不意に振り返らないまま左手を後ろに向けた。
ズオッ………!!!
ドガァンッ………!!!!!
後ろを振り返る事無く
「くだらない会話で気を引いている間に後ろから襲うのが海軍のやり方?」
ドガッ!!
バチッ…!
バチバチッ…!!
背後で小さな爆破を繰り返し、火花を散らしている“パシフィスタ”に構う事無く、ジャスミンが黄猿を
「…正攻法じゃ
そのやり取りに、見物に回らざるを得なくなった周囲の方が背筋が寒くなる。
空気を読んでとっとと撤退した“ホーキンス海賊団”の面々はともかく、出て行くタイミングを完全に逃したアプーや、黄猿がジャスミンに
「“中将殺し”ジャスミンか…。何て強さだ。あの“パシフィスタ”をああもあっさりと……!」
特に
「…1つ聞きたいんだけど。」
「オォ~、何だい?あっしが答えられる事なら答えてあげるよォ~。」
「あの“兵器”…。“元”はどうやって手に入れたの?」
「……どういう意味だァい?」
ジャスミンの発言が完全に予想外だった、と言わんばかりの表情で黄猿が目を細める。
「
「………。」
「どういう意味だ、ありゃ…?人体実験?人間を改造ってオイ………!」
妙な緊張感が
少なからず
「顔だけバーソロミュー・くまそっくりに整形したっていう線はまず無い。体格までそっくり同じっていうのは考えられないし、何よりいちいちそんな無駄な事をする理由も分からない。次に、バーソロミュー・くまそっくりの兄弟を改造したっていうのも考え難い。くまに兄弟がいるって話は聞かないし、仮に兄弟だったならくまに負けず劣らず戦闘経験が豊富でもおかしく無いのに、さっきの
「オォ~。残念だねェ…。それはあっしには答えられねェ質問だよォ~…。」
確信を持って問いかけるジャスミンに、黄猿は答えをはぐらかす。
「…そう。じゃあ、良いや。取り
そう言って、ジャスミンが再び
「!」
ジャスミンが何かに気付いたようにハッと顔を上げ、構えを取った。
ガキィッ!!!!
瞬時に目の前に現れた男が、ジャスミンに襲い掛かる。迷い無く顔面を狙ってきた拳を、
「
“気”でガードしているにも関わらず、骨まで響くような激痛がジャスミンの両腕に走る。
しかし、ジャスミンが距離を取るよりも早く、男がそのまま逆の手でジャスミンの
ドゴォッ…!!!
「ぐっぅ……!!!!」
衝撃で息が詰まり、ジャスミンの体がくの字に曲がる。
ガッ…!
そのまま倒れ込みそうになったジャスミンを、男がその前髪を
「ガホッ…!ゲホッ……!!」
咳き込みと共に
「こっの……!!!」
ズォッ……!!!
痛みを
「!」
「何者だァい…?海軍じゃァねェが、海賊にも見えないねェ…。」
ジャスミンが襲われた瞬間、“ピカピカの実”の能力で距離を取っていた黄猿が呟く。
そしてアプーやドレークも、突然の乱入者に驚きを隠せなかった。海軍大将を相手に一方的に勝負を進めていたジャスミンが手も足も出ない相手。
そして何よりも、
「う、浮いてやがる……!」
そして、ジャスミンもまた驚愕していた。
「
ジャスミンの視線の先、彼女の前方上空100m程の所に
顔は仮面で分からないが、その出で立ちには見覚えがあった。
そして何よりもその“気”。自身が
――――――――――――
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第55話 明かされた真実…!消えたジャスミンの謎
今回、主人公全く出てきません(汗)ジャスミンが戦っている間の地球sideです。
閑話でも良いかと思いましたが、本編にがっつり関わる内容なので閑話でなく本編とします。
次回はジャスミンsideに戻る予定です。
━第7宇宙地球・“西の都”カプセルコーポレーション━
そのリビングに、ある種異様な緊張感が
いや、緊張しているのは1人。世界に名立たる大企業・カプセルコーポレーションの跡取り息子・トランクスである。
彼は最も
その原因(と言っては人聞きが悪いが)は、自身とテーブルを挟んで向かいに座っている1人の青年にあった。目の前に座っているのは、自分そっくりの姿の青年。
しかし、それも当然の事であった。
トランクスの目の前に座っているのもまた、トランクス。未来の世界からタイムマシンに乗ってやってきた、
目の前で自分と同じ顔の青年が、自分の両親と再会を喜び合う、というのは何とも言えない気持ちである。まして、“未来の世界から来た自分”の事は幼い頃から良く聞いていた。まだ赤ん坊だった頃の自分と一緒に写っている写真さえある。
幼い頃は、良くその写真を見せられながら“未来の世界から来た自分”の話を聞かされたものだった。
特に、母やその仲間たちが何の気無しに自分と“未来の世界から来た自分”を比較するのは、幼い頃は面白くなかったものである。
今考えれば、それは
まぁ、それも幼い頃の話である。今となっては素直に“凄い”と思えるが、こうして目の前にすると複雑な事に変わりは無い。まして、自分1人を置いてけぼりにして会話が盛り上がっている時の
「そう…。やっぱり、そっちの世界でも魔人ブウが現れたのね?」
「はい。話せば長くなるんですが、結果的に老界王神様のお陰で悟飯さんを生き返らせる事が出来たので、2人で力を合わせて何とか…。」
そして、未来から来たトランクスが自身の隣に座っていたもう1人の青年に目を向ける。
トランクス(未来)の師匠でもある、未来の世界の孫悟飯だった。トランクス(未来)が少年の頃に死んでしまったが、こちらの世界の悟空のように老界王神の命を譲り受けて生き返ったらしい。
こちらの世界の悟飯は学者として忙しい日々を送っている為、戦士としては既に引退したも等しい。しかし、未来の世界の悟飯は未だ現役らしく、こちらの世界の悟飯に比べても格段に
「そう、そっちでは悟飯くんが生き返ったのね。良かったわ…。」
別の未来の
「こっちでは、という事はこちらの世界でも誰か老界王神様の命を頂いた人がいるんですか?」
ブルマの言い回しに疑問を感じたらしい悟飯(未来)が不思議そうな顔で尋ねる。
「孫くんよ。」
「え?」
「悟空さんが?!」
「ええ、そうよ。こっちでは孫くんが生き返って、最後は
驚いた様子の2人に、ブルマが頷く。
「そうですか、父さんが…。」
「ええ、そうよ。」
「凄いですね悟空さん…。オレたちは1人ずつどころか、2人一緒に戦っても魔人ブウには勝てなかったのに。」
感じ入ったように頷くトランクス(未来)に、ブルマが苦笑する。
「と言っても、孫くんもただ戦っただけじゃ勝てなくて、最終的には地球人皆の“気”を集めた“
「地球人皆の…?!」
「それは相当凄かったんでしょうね。」
素直に驚愕してくれる聞き手の未来コンビに、ブルマもより
「私も直接見た訳じゃないけど、すんっっっごく!!!大きかったらしいわ。ね、ベジータ?」
「ああ。」
こうなると止めても無駄と良く良く理解している
それを見たトランクス(未来)が、「父さん…。すっかり丸くなって……!」と感動していた。
「それよりトランクス。」
「「はい。」」
「…未来の方だ。」
「何ですか?父さん。」
「お前、さっき2人一緒に戦っても勝てなかったと言っていたが、どうやって魔人ブウを倒したんだ?」
「あ、それオレも気になる。」
改めて未来の
「あ、界王神様からポタラという特別な道具をお借りしまして…。見た目はただのイヤリングなんですが、2人の戦士がそれぞれ右耳と左耳に着けると合体して1人の戦士になれるんです。オレたちも合体してなんとか…。」
「!ポタラを使ったのか?!」
「ご存知でしたか?」
驚愕するベジータに、トランクス(未来)も驚く。
「ああ。不本意だが、オレとカカロットも1度使った…。オレたちは偶然元に戻ったが、あれは1度使えば2度と元には戻れないと聞いていたが…?」
「ああ、それは神同士が使った場合だそうです。神以外の者が使うと1時間で解けてしまうそうで…。」
「
トランクス(未来)の説明に悟飯(未来)が補足する。
「そうか…。」
10年越しに知る真実に、あの時の
「ねぇねぇ!合体した時の名前は何て言うの?」
「名前、ですか?」
突然何を言い出すのか、とトランクス(未来)が
「そ、名前。あんたたちが合体した時には無かったの?こっちのトランクスが悟天くんとフュージョンした時には“ゴテンクス”になるの。」
「フュージョン?」
「悟天…?」
初めて聞く単語に、未来から来た2人が首を傾げる。
「フュージョンはポタラみたいに2人が1人に合体する技よ。30分しか保たないけどね。それより、そっか…。そっちの世界には悟天くんはいないんだったわね……。」
それ
「悟天はオレの親友で、悟空さんの息子。悟飯さんの弟だよ。」
「え?!」
「オレの、弟……?」
「セルとの戦いで孫くんは死んじゃったけど、その時既にチチさんのお腹には悟天くんがいたの。トランクスとは1歳差で、小さい頃からの親友なのよ。」
未来ではいない存在の話を聞かされ、半ば呆然としている未来の2人にブルマが補足した。
「そうですか…。こっちのオレには弟がいるんですね…。」
「ええ。小さい頃の孫くんそっくりでね。物心付いた頃からジャスミンちゃんも含めて、兄妹みたいに育ったのよ。」
「ジャスミン?」
また知らない名前が、とばかりにトランクス(未来)がブルマに聞き返す。
「あぁ、そっか…。ジャスミンちゃんはヤムチャの娘よ。こっちのトランクスと悟天くんにとっては妹みたいなものね。」
「ヤ、ヤムチャさんご結婚されたんですか?!」
予想外の事実にトランクス(未来)が目を
「ううん。シングルファーザーってヤツね。結婚したのはクリリンの方よ。奥さんの名前聞いたら、あんたたち驚くわよ――――?」
「だ、誰ですか?」
ブルマの含み笑いに、トランクス(未来)が恐々と尋ねる。
「18号よ。」
「な?!」
「18号ってまさか!!?」
ブルマの言葉にトランクス(未来)がソファから腰を浮かせ、悟飯(未来)が完全に立ち上がった。
「そう。人造人間18号。でも大丈夫よ。未来が変わったせいか、こっちの世界の18号は話に聞いてたあんたたちの世界の人造人間とは違って悪い奴じゃないのよ。今はクリリンと結婚して専業主婦をしてるし、マーロンちゃんっていう娘もいるわ。」
「そ、そうですか…。」
「………
安心させるように微笑みながら断言するブルマに、トランクス(未来)は気が抜けたように座り込み、悟飯(未来)もまた警戒を解いて座り直す。
「……
どこか複雑な笑みを浮かべて話す悟飯(未来)に、それまで笑顔を浮かべていたブルマや、興味深そうに話を聞いていたトランクス(現代)の顔が
「?どうしたんですか?」
「そうね…。
「実は、半年前からジャスミンちゃんが
「
「ええ。“
「!その話、
「!どうしたのよ、突然…。」
説明の途中で急に身を乗り出してきたトランクス(未来)と悟飯(未来)に、ブルマが驚く。その言葉に、未来から来た2人が姿勢を正した。
「実は、オレたちが今日この時代に来たのは“タイムパトロール”としての仕事なんです。」
「“タイムパトロール”?何よそれ?」
トランクス(未来)の言葉に、ブルマが首を傾げる。どうやら知らなかったのは自分だけではないらしい、と気付いたトランクスも隣で首を傾げた。
「“時の界王神様”によって組織された、“歴史の改変”を防ぐ為の部隊です。実は、魔人ブウを倒した後で“時の界王神様”からお叱りを受けまして…。」
「お叱りって?」
「実は、タイムマシンでの時間移動は宇宙でも重罪らしいんです。“歴史の改変”や“時空移動”は少し間違えると宇宙そのものが滅んでしまう事がある程危険な
「トランクスが過去に行く事になったのも、元を
“タイムパトロール”について、トランクス(未来)と悟飯(未来)が交互に説明していく。
「前置きは良い。その禁止されている
早く本題に入れ、と言わんばかりにベジータが急かす。
「半年前、オレたちは“タイムパトロール”として“歴史の改変”を
「でも、この時代にいる
トランクス(未来)が
そして、その話にブルマが身を乗り出した。
「!!!まさか、その時間軸の乱れって……?!」
「母さんたちの話を聞いて確信しました。恐らく、半年前に起こった“
用語解説
・トランクス(未来)…たぶん、ドラゴンボール世界一ヘビーな過去の持ち主。本来なら彼の住む未来が正史だったが、彼がタイムマシンで過去に跳び、未来を変えた事により歴史が大きく変化。パラレルワールドが生まれた。トランクス(未来)の生きる世界では、人造人間17号と18号という敵の手により都市は壊滅状態で、戦士たちもトランクス(未来)以外は殺されてしまった。現在は“タイムパトロール”の一員(ゲーム参照)。
・悟飯(未来)…トランクス(未来)の師匠で、左腕を失っている。トランクス(未来)を庇って殺されたが、この小説では生き返った(1部ゲームのルートでは生き返るシナリオも存在し、その設定を借りてきた)。
・時の界王神…ゲームからのゲストキャラで、上記2人の上司。後々出てきたら詳しく解説します。
・ポタラ…界王神と呼ばれる宇宙全体を統べる神やその付き人らが耳に着けている、丸い珠の付いたイヤリング。2人の神(人間でも可)がそれぞれ右耳と左耳に分けて着けると合体し、1つの存在になり、超パワーアップする。神同士、あるいは神+人間の合体だと2度と元の2人に戻れないが、人間同士で使用した場合のみ時間が経つと元に戻る。
・フュージョン…メタモル星人と呼ばれる宇宙人のお家芸。2人の、強さや体のサイズなどの条件を満たした戦士が左右対称にコミカルなポーズ(ダンス?)を取ると合体し、超強力な戦士となる。ただし、30分しか保たない上に合体に必要なポーズ(ダンス?)を取っている間は隙だらけ。技としては強力だが、ポーズ(ダンス?)がダサすぎると不評であり、ベジータは原作でそれを理由にフュージョンを拒否した程。
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第56話 仮面の男との戦い 足掻くジャスミンとの死闘!
さて、いよいよ事態が大きく動き出しました!!
今後の展開にご期待ください!
「はあぁああああああ!!!!!」
ドドドドドドドドドッ!!!!!!!!
最初から全力の“
ガッ!
「っち………!!」
ジャスミンの攻撃の合間を
カッ!!!
「!“
ズオッ!!!
蹴りを防ぐ為に、ジャスミンが体勢を崩した
ドッゴォオオオォオンン!!!!
「うぉお?!」
「くっ?!」
2つの気功波がぶつかり合い、凄まじい爆風が
巻き上がった
「!」
ゴッ!!
視界が
ガシャッ…ァン!!!
「がっは………!!!」
(速い……!!!!)
ジャスミンとて当然警戒はしていた。攻撃の瞬間の“気”の揺らぎも感知する事が出来た。
しかし、ジャスミンの反応速度よりも尚、仮面の男の速さが上だった。
気が付いた時には、仮面の男の拳がジャスミンの腹部を強打していたのである。
「ゲホッ…!強い……!!!」
10m程吹っ飛ばされ、レストランへと突っ込んだが、間一髪で急所を外す事に成功し、何とか意識を飛ばす事だけは
「この“気”に強さ、それにあの
実際に相対すると良く分かる。悟空や悟飯、悟天と良く似た“気”。恐らくはサイヤ人。それも、悟空らと近しい血縁関係にあると考えられる。
(でもサイヤ人は悟空さんたち以外には残っていない
確かに映画やアニメオリジナルでは他にも生き残りが出て来る事はあった。しかし、それらは実際にジャスミンが生まれた世界軸でも敵として現れ、皆悟空たちに倒されたと聞いている。
(唯一の例外はターブルさん位だと思ってたけど…。)
しかも、悟空の血縁となると原作に登場したのは2人。うち1人、悟空の
残るは、
「まさか……?」
悟空の父親‐バーダック。彼ならば可能性がある。
原作でも明確な死亡シーンが描かれたわけでは無く、確かアニメオリジナルの続編が作られていた
しかし、仮にあの仮面の男が本当にバーダックだったとして、
ザリッ…!
思考に沈む間も無く、仮面の男がゆっくりと距離を詰めてくる。
「考える時間もくれないって事か…。」
ジャスミンが考え込んでいたのは、せいぜい数秒。その程度のインターバルもくれないらしい。
ゼイゼイと荒い息を
(さて、どうしようかな……。)
まともに戦っても勝ち目はゼロ。既にボロボロのこの体では、次の攻撃を
(一か八か…。試してみようか……!)
ただ死んでなどやるものか。
「
パァン!
両の手の平を合わせ、“気”を集中させていく。
「はぁああ………!!!」
バチィッ…!
バチチチッ……!!!
ジャスミンの手の平から、光が溢れ次第にスパークしていく。
(後10m…。8、6、今!!!)
仮面の男とジャスミンの距離が5mを切る。その瞬間、ジャスミンが両手を仮面の男目がけて突き出した。
「“
「ッ!?ガァアアアアアッ!!!!」
ババババババババッ…!!!!
叫びと共にジャスミンの手から放たれた、青白い電流が仮面の男を襲う。
“
破壊力では奥義である“かめはめ波”に劣るが、対人においてならば恐らくは亀仙流の技でも最強クラスの技。その危険性
ジャスミン自身、実戦で使用するのはこれが初めてであったが、相手がサイヤ人ならばこの程度で死ぬ
「はあああああああっ!!!!」
「グァアアア…………!!!!」
バチバチバチバチバチバチッ!!!!
(良し…!効いてる…!!)
どこまで効果があるかは分からないが、先程までとは異なり、確かに
出来る事ならば、このまま気絶してくれればありがたい。
「はっ!」
バチチチィッ!!!
そんな思いを抱きながら、更に出力を上げた時だった。
ピシッ…!
男の仮面に、わずかに
「グッ…?ガァアアッ!!!!」
仮面に
「グアアアアアアア―――――――――――――――っ!!!!」
「!?きゃあああああああ―――――――――――!!!」
グオッ!!!!
叫びと共に、仮面の男から放たれた爆発的な“気”にジャスミンも巻き込まれ、弾き飛ばされた。
“
ズサァッ…!
「くっ…!一体、何が…?」
思い切り背中から地面に叩き付けられ、一瞬息が詰まるが、すぐに身を起こす。
「グォオオ………!!!」
見れば、仮面の男が地面に膝を付き、頭を抱え苦しんでいるのが分かった。
「………!まさか……?!」
仮面に
「あの仮面を壊せば………!!!」
原作でダーブラがバビディに洗脳されていたように、あの仮面の男もまたダーブラそっくりの“気”の持ち主によって操られているのかもしれない。仮面に
あの仮面を壊せば、希望が見えてくるかもしれない。
そんな思いと共に、立ち上がったジャスミンだったが、直後に目の前に現れた仮面の男に成すすべ無く捕まってしまう。
「あぐっ……!!!」
ギリギリと首を絞め上げられ、呼吸すらままならない。
「ギギィ…!」
まだ苦し気に
「がっ……ぁっ…!!!」
足をバタつかせて何とか逃れようとするものの、完全に首を絞められながら吊り上げられていては踏ん張る事も出来ない。
「ぐぅ……!」
徐々に意識が遠のき、視界が黒く染まっていくのが分かる。
(ヤバイ…!このままじゃ、本当に死ぬ………!!)
バシッ…。
ドンッ…。
男に蹴りを入れ、
(お父さん……!)
ほぼ意識が堕ちかけた時、不意に超高速で近付いて来る“気”を感じ取った。
(だれ……?知ってる“気”……。)
知っている
消えかけた意識の中、首への圧迫感が突然消える。
ドサッ!
「ひゅっ………!ゲホッ、ゲホッ………!!!」
「大丈夫かい?!」
衝撃が全身に走った直後、急激に気道に流れ込んできた空気に咳き込むジャスミンの背を
「だ、れ……?」
(この、声は………。)
横抱きにされた事で、自身を助けてくれた人物を見る事が出来た。
「…ら、くす、く………?」
(トランクスくん……?)
淡い藤色の髪に、鋭い目付きの、
だけど、その“気”も顔立ちも、自身の知る彼とはどこか違う。
「もう大丈夫。助けに来たよ。」
そんな、
用語解説
・ターブル…ベジータの弟で、サイヤ人王家の生き残り。トランクスやブラにとっては叔父にあたる。サイヤ人には珍しく戦闘向きな性格では無かったらしく、辺境の星に追放処分を受けていたが、それによって生き残る事が出来た。グレという異星人の妻がいる。1度ベジータを頼って地球に来たが、現在どこの星に住んでいるのかはベジータも知らない。ジャスミンが住む世界軸でも、地球を来訪後、自分たちの星に戻っている。
・ラディッツ…悟空の正真正銘の実兄。原作で初めてサイヤ人について暴露した人物。当時4歳の悟飯を人質にとって弟を勧誘する、という下衆な行為のせいで殺される。初登場時は強敵として書かれていたが、後にサイヤ人の中でも雑魚だったとベジータらによって暴露された。
・バーダック…悟空とラディッツの父親。悟空そっくりの容姿だが、クールでワイルド。頬に十字型の傷がある。フリーザの企みを知り、彼を倒そうとして返り討ちに遭ったと思われていたが…。仮面の男の正体?
・萬國驚天掌…原作では1度しか使われていなかった幻の技。最近、アニメで再び使われ始めた為、作者は嬉しくて仕方が無い。余談だが、原作で使われた1度も、亀仙人の姿では無く変装中の“ジャッキー・チュン”として使われていた為、悟空やクリリンも長らく亀仙流の技とは認識していなかった可能性もある。…実際のところはどうなんだろうか。
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第57話 “スカウター”
い、一ヶ月ぶり…(汗)
他連載に浮気していて更新が滞っておりました…。
そして、あんまり進んでおりません。
今後の展開を書いていたメモを誤って消してしまい、何を書こうとしていたのか忘れてしまった事が原因です(汗)
たぶん、次話で助っ人たちと本格的に絡む筈です。
――――――――時は
自分たちが追う、歴史改変を企む魔族‐トワの
『トワがその時代に到着した影響で“
「はい。更に、この時代の女の子が1人、その“
『“
「それは大丈夫です。その女の子が直前にいた場所が、GPSで探知されています。」
『なら、急いでその場所に移動して!ちょっと無理矢理になるけど、強制的に時空間に“トンネル”を創って半年前に発生した“
「!?そんな事が可能なんですか?!」
『
「はい!」
『“
「分かりました。」
プツリッ……!と通信が途絶える。
直前まで通信機器として使用していた
「“時の界王神”様の指示で、おれたちはこれからジャスミンちゃんが消えた場所へ向かいます。“時の界王神”様が“トンネル”を創り、それを通ってトワの企みを阻止する為に。ジャスミンちゃんも必ず連れて帰りますから…!」
「本当に出来るの?ポルンガでさえ出来なかったのに…?」
トランクス(未来)の言葉に、ブルマが心配そうに尋ねる。
「はい。“時の界王神”様はその名の通り“時間”を司る神様ですから。しかし、本来なら時空間への
「それだけヤバイ事態になってるって事ね…。」
「そのようです…。」
トランクス(未来)とブルマのやり取りを黙って見詰めていたベジータが、
「トランクス。」
「「はい。」」
「……この時代の方だ。」
「何?パパ。」
「ヤムチャに知らせてやれ。ジャスミンがもうすぐ帰って来るとな…。」
「!うん…!!!」
父の言葉に表情を明るくしたトランクス(現代)が、ヤムチャに連絡を入れるべく慌ただしくリビングを出て行く。…携帯で連絡を入れる、という手段が思い浮かばないあたり、彼も慌てているらしい。
それを横目で見やりながら、ベジータが今度は未来の息子へと尋ねた。
「…さっきから気になっていたが、
トランクス(未来)が通信機として使用していた機械に目をやる。
「はい。おれたちがタイムパトロールとなった時に、母さん…、未来の母さんが戦闘中でも壊れないようなタフな通信機が必要だ、と言って昔改造した“スカウター”をモデルに新しく作ったものなんです。」
「本来の主要機能だった戦闘力の測定機能は外されているんですが、通信機能と個人の識別機能、サーモグラフィーなどが付けられたので、性能自体は上がっていると思います。」
トランクス(未来)の説明に、悟飯(未来)も補足する。
「個人の識別機能って?」
流石は未来の私、とばかりに聞いていたブルマがトランクスに尋ねる。
「事前に生体情報を登録しておいた相手に限るんですが、例え“気”を消していても正確な位置を割り出す事が出来るんです。」
「へぇ…。便利ね。」
「それでなんですが、ブルマさん。」
ついでに、と言わんばかりに悟飯(未来)が切り出す。
「おれたちはそのジャスミンちゃんの“気”を知らないので、その個人識別機能を使って彼女を探す事になります。」
「ああ、そうか。会った事も無いんだもん、探すのも大変よね…。」
「ええ。それで、生体情報を登録するのに、出来れば1年以内に写した写真とジャスミンちゃんのDNAが検出出来るものがあると助かるんですが…。」
「DNAを検出出来るもの?」
「はい。髪の毛や爪、あるいは
「写真ならすぐに用意出来るけど、DNAってなるとねぇ…。」
悟飯(未来)の言葉に、ブルマが首を捻る。
半年前に行方不明になるまでは、比較的
ヤムチャの自宅の、ジャスミンの自室ならばどうかとも思ったが、そこは綺麗好きで普段からしっかりしているジャスミンだ。自身が不在中は
「やっぱり難しいですか?」
本来、仲間の情報を目の前で登録する事を想定していた機能だけに、こうした場合は予測していなかった。悟飯(未来)がやはり最初にトワを探し出すべきか、と考えたところで、ブルマが「あ!」と声を上げる。
「もしかしたら、だけど…。あるかもしれないわ、DNA!!」
「ホントですか?!」
「良かった…!それなら登録出来ます!!」
「ちょっと待ってて!今持って来るから…!」
そう言い置いて、ブルマは自身の研究室へと走る。
「えっと…、確かここにしまったままになってた
ガタゴト、ガサゴソと片っ端から引き出しをひっくり返すブルマが、
「あった…!!」
「あった…!あったわ!これよ……!!」
ブルマが持っていたのは、1つのホイポイカプセル。
「一体、何を持って来たんだ。」
ブルマの持つカプセルに全く心当たりの無いベジータが尋ねる。
「まぁ、見てて。」
カチッ!
ボンッ……!!
ブルマが投げたホイポイカプセルから現れた物を見て、トランクス(未来)と悟飯(未来)が思わず目を丸くする。
「これは…?」
「食洗器……?」
カプセルから出てきたのは、どこから見てもただの食洗器だったからである。
「そう、ただの食洗器よ。だけど、これ壊れてるの。」
「その、壊れたただの食洗器と、ジャスミンちゃんと何の関係が…?」
何でこんな物を、とでも言いたげなトランクス(未来)に、ブルマが説明する。
「ここを見て。ちょっと黒ずんでる所があるでしょ?」
ブルマが指差す箇所をよくよく見てみれば、確かに食洗器の一部が欠けており、その欠けた部分に何か黒いものが付着している。
「これは…、まさか血ですか?」
はっと、悟飯(未来)が気付いたように呟く。
「ピンポーン!これ、ジャスミンちゃんの血なのよ。」
「ジャスミンちゃんの…?!」
「確かに、これならDNAも取れますが、何でこんな物があるんですか?」
悟飯(未来)の
「実はこれ、半年前にジャスミンちゃんに修理を頼まれてたのよ。あんな事があったから、すっかり頭から抜けちゃってたんだけど…。確か、キッチンの掃除をしてる時に場所を移動させようとして落としちゃって、その時に壊れた所に引っかけちゃって怪我をしたって言ってたから、もしかしたらと思ったんだけど残ってて良かったわ。一応拭き取ったとは聞いてたけど、洗い流した訳じゃないからそれが幸いしたわね。」
――――――――――数時間後、トランクス(未来)はその会話を思い出していた。
あの時、ブルマが食洗器の存在を思い出さなかったら、間に合わなかったかもしれない。悟飯(未来)と一緒にスカウターで探知したジャスミンの居場所へと向かっている途中で、急にジャスミンの“気”が膨れ上がるのと同時に得体の知れない“気”を感じ取った。
慌ててスピードを上げた事で何とか間に合う事が出来たが、スカウターが無かったら恐らく間に合わなかった。
間一髪のところで救い出した少女を抱えながら
『…ら、くす、く………?』
自分を過去の自分と見間違えた少女は、地球人の、しかもこの年頃の少女にしては信じられない程の実力を備えているのは一目で分かった。しかし、今回ばかりは相手が悪かった。
「トランクス、その
「はい!」
悟飯(未来)の指示に従い、200m程離れた建物の屋上へと避難する。
助け出した少女‐ジャスミンが相対していた男は、間違い無くトワの手の者だろう。自分や悟飯(未来)に敵う程の相手では無いだろうが、万が一にもジャスミンがこれ以上傷付くような事は避けたい。
―――――――もう1人の自分の妹分。運命が1つでもズレていたなら、もしかしたら、自分にとってもそうだったかもしれない、歴史の変革の象徴。
タイムパトロールとしてだけでなく、トランクス(未来)個人が気に掛けるには、充分な理由だった。
絶対に守り、無事に元の世界に帰すと改めて自分自身に誓い、その
ざっと見たところは今すぐに命に関わるような怪我はしていないようだが、その細い首にくっきりと付いた手形は痛々しい。呼吸もどこか苦し気である為、もしかしたら肋骨も損傷しているかもしれない。一刻も早く治療してやりたいが、この世界の事をいまいち把握出来ていない自分では、下手に動く訳にもいかなかった。
気を失ったのは怪我が原因では無く、緊張が解けた事によるもののようだから、今は安全な場所で彼女の意識が戻るのを待つしか無い。
ジャスミンの意識が回復するのをじりじりと待ちながら、トランクス(未来)は師と仮面の男の戦いを見守る。
用語解説
・時の界王神…見た目は幼女()。神だが割と軽い性格。しかし、時の界王神としての責務はしっかり果たす。界王神と正式になる前の名前はクロノアと言うらしい。
・スカウター…“ドラゴンボール”に出て来る、相手の戦闘力を数値化し、調べる事が出来る機械の事。戦闘力だけでなく、その居場所も表示され、仲間との通信機も兼ねている。見た目は片目のヘッドマウントディスプレイ。片耳に嵌める感じで顔にくっついているが、原理は不明。原作者のT山先生曰く、「吸盤のようになっていると思う。」というふわっとさ。
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第58話 仮面の下
ここまで間を開けるつもりは無かったのですが、なかなかパソコンに向き合う時間が取れず…。
4月半ば頃まで執筆する時間がなかなか取れない事が続くと思います。ご了承くださいませ…。
――――――――――大地を激しく揺るがす、凄まじい2つの気の
「っ
身じろぐと同時に、全身を
「!気が付いたかい?」
声をかけられて初めて、自分が誰かに抱えられている事に気が付いた。
記憶を刺激する声に疑問を感じながらも、痛みに思わず再び
「っ……!」
「トランクスくん………?!」
自身を抱えている青年を目にした
「初めまして。ジャスミンちゃんだね?君の知っている“トランクス”とは違うけど、オレも“トランクス”だよ。君とは違う時代から来た、ね…。」
苦笑しながら告げられた言葉に、まじまじと青年を観察する。
そう、ジャスミンはこの青年を良く知っていた。
「まさか…、未来から来たもう1人の………?!」
「そう。オレの事を知っていたんだね。お父さん、ヤムチャさんから聞いたのかい?」
衝撃のあまり無言で頷きを返しながらも、頭の中は
「な、なんで
そして、
取り
下ろしてもらえるように頼もうと、口を開いた瞬間だった。
ズォオオッ……!!!
激しい攻防の末に弾かれた
「おっと…!!!」
「!わっ……!?」
当然、不意を突かれたとは言え簡単に直撃を喰らう程、トランクスは
直撃を喰らう瞬間、ジャスミンを抱えたまま上空へと逃れる。
しかし、抱えられていたジャスミンは予想外の動きに思わずトランクスにしがみ付いた。
「ゴメン、ゴメン。大丈夫かい?」
「あ、いえこちらこそ、すいません……。」
苦笑するトランクスに気恥ずかしさを感じながら、そっと身を離す。
「あ、あの…。私自分で飛べるので……。」
「でも、怪我は大丈夫かい?」
「これくらいなら問題無いです……。」
元々ファザコン気味のジャスミンは“大人の男”に弱い。
下ろしてもらったジャスミンがそのまま
「ところで、あそこで戦っているのはもしかして……。」
「ああ。オレの時代の悟飯さんだよ。」
「やっぱり…。」
ジャスミンが散々苦戦していたあの“仮面の男”を圧倒している。分かってはいたが、ここまで実力差を見せ付けられると
「それにしても、あの男一体何者なんだ…?サイヤ人のようにも見えるが…。」
「
「操られている?」
「はい。さっき、仮面に
「なるほど……。」
ジャスミンの説明に頷いたトランクス(未来)が声を張り上げる。
「悟飯さ――――――――ん!!!仮面です!!!仮面を壊してください!!!!!!」
――――――――――――そこからの悟飯の反応が早かった。
「分かった!!」
トランクスの助言に瞬時に活路を悟り、相手の攻撃を弾くと同時に男の顔を仮面ごと
ビキビキッ…ビシッ………!!!
「グッ?!」
悟飯の常人離れした握力で仮面に次々と
「ガァアアアアッ……!!!」
「っさせるか…!」
悟飯の腕を引き
しかし、男が悟飯の腕を引き
パリィッ……イン…!!!
「ガッ?!………うおおおおおおおっ!!!!」
仮面が砕け散った瞬間、頭を抱えて苦し気に
「「「っ……?!」」」
それを見守っていた3人の戦士が、思わず身構える程。
「あ――――――…。」
男が上空を向いていた顔をゆっくりと戻しながら、気が抜けたように息を
「やっと頭がすっきりしたぜ…。」
顔を
「と、父さん……!?」
「悟空さん?!」
彼らの良く知る英雄‐孫悟空と瓜二つの男の姿に。
次回、仮面の男の正体が遂に明らかに?!←まぁ、皆さんお分かりのあの人です。
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閑話7 その宝の名は…。
ケータイが壊れて、書き溜めていた展開が全ておじゃんになりました…。
思い出しながらポチポチ打ってますが、本編の更新はいつになる事やら…。
本編の展開に行き詰ったので、自分的な息抜きで閑話を上げときます……。
―――――――それは、ほんの少し昔の物語。
ヤムチャは自分の目を疑った。バイトから戻ってきたばかりのアパートの、自分の部屋の前に放置されていたベビーカーと、その中で眠っている赤ん坊に。
「オレの部屋だよな……?」
思わず表札を確かめるが、間違い無く自分の部屋である。
このご
取り
“ヤムチャ様”
その
嫌な予感をひしひしと感じつつ、ぐっすりと眠っている赤ん坊を起こさないようにそっと手紙を掴み取って開いた。
“ハァイ、ヤムチャ。
久しぶりね。覚えてるかしら?ナタリーよ。
この手紙を読んでる時点で察しは付いてると思うけど、その赤ちゃんはあなたの子よ。
その子の事よろしくね。あなたの娘なんだもの、育ててくれるわよね?
もし
私ももう、付き合ってる人がいるの。結婚の話も出てるの。他の男の子どもなんて育てられないわ。
だからよろしくね。別にその子の事が憎い訳じゃないけど、私は
P.S.今の彼はその子の事知らないの。だから連絡も止めてね。もしバレたら一生恨むから。”
「オレの子………?!嘘だろ…!?」
ほんの1年前に付き合っていた元カノの手紙に
「名前も無いだって……?
こんな、自分の子どもを物のように扱う女と
しかし、これからどうすれば良いのか。赤ん坊の扱いなどまるで分からない。ヤムチャが手紙が片手に
「っ………あ‶ぅゔ~………。」
それまで静かに眠っていた赤ん坊が不意に
「げっ!起きたのか……?!」
「ゔぁあ‶あ‶あ‶あ‶――――――――――っ!!!!」
ヤムチャの声が
「ほ、ほ~らほら泣くな泣くな~!ほら、べろべろべ~♪」
赤ん坊を覗き込んで精一杯の変顔を決めるが、当然泣き止む
「は、腹が減ったのか?!それともオムツか?!ああああああ!どうすりゃ良いんだ!!!」
35歳独身、育児経験無し。
当然、赤ん坊の扱いなど分かる
「っそうだ!ブルマ……!!!」
1児の母である彼女ならが、赤ん坊の扱いなどお手の物だろう。
善は急げ、とばかりにベビーカーを
――――――20分後。
あれだけ泣き
「あらあら、ホントにお腹が空いてたのねぇ~。」
ころころと柔らかく笑いながらミルクを与えるパンチ―は、常日頃のふわふわした様子からは想像出来ない程に頼りになった。
夫・ブリーフの秘書に連絡を入れて大至急粉ミルクを買いに行かせ、倉庫からトランクスの使っていた
そしてダッシュでミルクを届けに来た秘書に追加でベビー服一式とオムツを手配させ、消毒の終わった
その間およそ15分。ヤムチャが事情を説明している
「それにしても、久しぶりねぇヤムチャちゃん。いつの間に結婚なさったの?」
ミルクを飲み終わった赤ん坊を抱え直して背中を
「どうもご
口ごもりながら事情を説明し始めたヤムチャに、パンチ―は目を丸くした。
「あらまぁ…。それじゃあ、ヤムチャちゃんこの赤ちゃんどうするつもりなの?」
「どうする、って…。」
「自分で育てるのか、施設に預けるのか…。ヤムチャちゃんはどうしたいのかしら?」
普段は開いているのかいないのか分からない程に細い目を見開いて、パンチ―がヤムチャを見詰める。
「おれが、どうしたいのか……?」
「赤ちゃんを育てるってたいへんよ。自分の事は全部後回しになっちゃうわ。私の時はパパやメイド達が手伝ってくれたから
「パンチ―さん…。」
心からそう言ってくれていると分かるパンチ―の眼差しに、思わずヤムチャの胸が熱くなった。
昔、ブルマと付き合い始めたばかりの頃、最初に家庭の温かさを教えてくれたのは目の前のこの人だった。ヤムチャ自身も実の母のように慕っていた。いずれは義母になるのかもしれない、と淡い夢を抱いていた時もあったが、今でも息子同然だと言ってくれるその心が嬉しかった。
「でも、もしヤムチャちゃんがこの子を施設に預ける、と言っても私は責めないわ。急に自分の子どもって言われても良く分からないだろうとは思うもの。女は自分のお腹で子どもを育てるけど、男の人はそういう事が無いから生まれるまでずっと見ていてもなかなか実感が沸かないんですって。パパもそうだったわ。」
「ブリーフ博士がですか?」
「ええ。ある程度ブルマが大きくなって、人の顔を判別出来るようになった頃、私やパパを見付けると良く笑うようになったの。そこからだったわ。それまで私を気遣ってはくれてもどこか育児に他人事だったパパが手伝ってくれるようになったのは。」
「そんな事が……。」
「まして、いきなりあなたの子どもって言われたら実感も何も無いわよねぇ。急に言われても困るっていうのが正直なところだとは思うけど、今日中に決めた方が良いわよ。」
「今日中?!」
それは急過ぎやしないか。
そんな思いと共にパンチ―を見詰める。
「長い時間一緒にいたら情が沸くわ。悪い事ではもちろん無いけど、そんな状態でなぁなぁに引き取られたんじゃこの子が可哀想…。お互いの為にも良くないわ。責任だとかそういうのを無しにして、ヤムチャちゃんが心からこの子を育てたいと思わないと……。」
「……そんな事急に言われても、正直なところ本当にオレの子かも分からないですし…。」
「そう…。やっぱり難しいわよねぇ……。」
「ゲポッ……!」
首を支えるようにして縦抱きにされ、会話しながらも背中を
「あらあら…。」
「あっ!す、すみません服が……!!!」
パンチ―のブラウスの左肩が、吐き戻されたミルクで汚れシミを作る。鮮やかなレモンイエローの仕立ての良いブラウスだったが、早く着替えなくてはシミが残るだろう。
この人の事だから普段着でもかなり高い、とヤムチャが慌てる。
「大丈夫よ。洗濯すればすぐに落ちるし、赤ちゃんには珍しく無いのよ~。」
ころころと
「すみません、任せっぱなしで…。代わりますから着替えてきてください。」
「あら…。」
何の気負いも無く手を伸ばしたヤムチャを見詰め、パンチ―が目を丸くした。
「ふふっ…!そうね。それじゃ、お願いしようかしら。」
笑みをこぼしながら抱えていた赤ん坊をそっとヤムチャに
「左手1本で支える感じで…、右手は添えるだけよ。…そう、上手じゃない。」
「ゔ~…。」
相手が変わって居心地が悪かったのか、うごうごと良いポジションを探すように動いていた赤ん坊だったが、しばらくすると落ち着いたのか動きが止まる。
「つ、
何でこんなにふにゃふにゃとしているのか。それに、思っていたよりも暖かい。抱えているとやや暑い位である。
「大丈夫、上手よ。それじゃ、ちょっと着替えに行かせてもらうわね。」
クスクスと笑いながらパンチ―がリビングを後にする。
その姿を目で追っていたヤムチャだが、完全に見えなくなって腕の中の赤ん坊に目を移した。
「これからどうするかなぁ…。なぁ、お前はどうしたいんだ?」
返事が返って来る訳も無いのは百も承知だが、つい赤ん坊に問いかけた。
もちろん、返事を返す
「ん?どうした?」
ヤムチャがつい、腕の中の赤ん坊を覗き込んだ瞬間だった。
にこぉっ…!と赤ん坊が微笑んだ。
“生理的微笑反射”。生後2ヵ月程までの新生児は、本能的に“自分が笑うことで周囲が優しくしてくれる”という、自己防衛で微笑む事がある。
しかし、当然ヤムチャはそんな事知る
そして、理解すると同時にじわじわと愛しさが
そうしているうちにミルクを飲んで満腹になった事で眠くなったのだろう。赤ん坊がうとうとし始めたのが分かる。
ヤムチャは、無意識のうちに赤ん坊を抱えたままゆらゆらと体を揺らし始めた。
満腹状態で抱かれ、揺らされていれば結果は分かり切っている。数分後には、赤ん坊は完全に寝入っていた。
「寝ちまった…。」
眠った
血が繋がっているかどうかはもう良い。それ以上に、この子と家族になりたい、という想いだった。
元より天涯孤独だったヤムチャである。プーアルと出逢ってからは独りではなくなったが、“家族”に対する
ブルマと別れてからは一層華やかになった女性関係も、元を
「名前を決めないとな……。女の子だから花の名前が良い。ジャスミン……。お前の名前はジャスミンだ。」
赤ん坊を育てる事がたいへんだ、というのは想像する事位は出来る。今まで通りの生活はもう出来ない。それでも、ヤムチャは“父親”になりたいと思ったのだ。
――――――そして、ジャスミンと名付けられたその赤ん坊は、ヤムチャの生涯の宝となった。
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第59話 仮面の男の正体!時を超えた戦士
最後に更新したのいつだコレ…。
──────砕かれた仮面の下から現れたその顔に、3人の戦士が驚愕に目を見開いた。
「と、父さん…?!」
「ご、悟空さん?!!」
「悟空おじさんにそっくり……。」
その正体を半ば予見していたジャスミンでさえ、思わず呟く程に
違うのは鋭い目付きと、左頬に刻まれた十字型の傷痕のみ。
因みに、全くの余談だがジャスミンは悟空やクリリンの事を幼い頃は"〇〇おじさん"と呼んでいた。中学に進学してからは名前で呼ぶようになったものの、ほんの2年程前までは亀仙人でさえ"亀のおじいちゃん"呼びだったので、今でもうっかりすると昔の呼び方が出てしまう。
また、悟空は何を考えているのかいまいちな読めないものの、クリリンや亀仙人などは呼び方が変わった事が寂しいらしく、事あるごとに「おじさんで良いぞ」だの「もうおじいちゃんとは呼んでくれんのか?」だのとジャスミンに訴える事もしばしばだった。
「おかげで頭がスッキリしたぜ……。」
額に手を当てたまま、頭をはっきりさせるように軽く首を振る男を、3人が凝視する。
「あ、あなたは一体…?サイヤ人、ですよね………?」
以前にも悟空にそっくりなサイヤ人、ターレスから"下級戦士はタイプが少ない"と聞かされていた悟飯がいち早く衝撃から立ち直り、男に尋ねた。
その問いに、男は悟飯へと向き直り、トランクス、そしてジャスミンへと目を向けた。
「………カカロットの息子か…。"王子"の息子もいやがるとはな………。そっちのガキは知らねぇが…。」
その言葉に、悟飯とトランクスがわずかに身構え、ジャスミンも驚愕に目を
(この2人を知ってる、って事はやっぱりこの人は………。)
「オレの名はバーダック。………カカロットの父親だ。」
「「え?」」
(やっぱり……。)
「と、父さんの父親………?!」
「ま、まさか…。サイヤ人はわずかな生き残りを残して全滅した
男、バーダックからの予想外の
「あの、」
ジャスミンが口を開いた瞬間、3人の視線が一斉に向けられ、思わずジャスミンがビクついた。
「ベ、ベジータさんからサイヤ人は戦闘民族だから、戦う為に若い期間が長いと聞いた事があります…。悟空さんもベジータさんも、もう50歳近くていらっしゃるのに私が生まれる前とほとんど外見変わっておられませんし…。」
まぁ、厳密に言えば悟空は7年間死んでいたので肉体年齢は実年齢(-7歳)なのだが。
「た、確かに…。先程お会いしたベジータさんもほとんど昔のままだったし…。」
「で、ではどうやってフリーザから
ジャスミンの言葉に悟飯が一応納得した様子を見せるものの、トランクスが新たな疑問を口にする。
「……正確に言やぁ、オレはフリーザに殺される
「そ、そうか…!トワが過去を改変して本来死ぬ
「オレとトランクスの事も、トワから聞いたんですか?」
これでバーダックとトワが繋がった。
再度尋ねた悟飯に、バーダックが首を振った。
「いや、詳細は
ジャスミンに目をやりながら説明するバーダックに、悟飯とトランクスが納得している一方で、ジャスミンは情報を整理していた。
("未来視"の力があるという事は、この人はアニメ寄りの世界から来たという事…?)
最初に発表されたアニメオリジナルVer.と、後に書き下ろされた公式コミックスVer.では設定に若干の差があるのだ。
「……と、いう事はつまりあなたはオレの祖父という事ですね?」
恐る恐る確認する悟飯に、バーダックが頷いた。
「オメェがオレのガキのガキ、っつう以上はそうなるだろうな。」
(この人と悟空さんと12~13歳位の悟天くんを3人並べてみたい…。)
複雑な初対面を果たす祖父と孫を尻目に、ジャスミンの思考が思わず
因みに、何故現在ではなく12~13歳の悟天かというと、中二位で身長がグンと伸び始めた悟天が父である悟空と間違えられる回数が格段に上がり、業を煮やして強引にヘアスタイルを変えた為、若干そっくり度が下がったからである。
どこか妙な緊張感の漂う祖父と孫に、どう声をかければ良いか戸惑うトランクスとジャスミンだったが、その空気に割り込む声があった。
「見付けたぞ!"中将殺し"!!!」
「あ。」
ドヤドヤと周囲を取り囲む海兵たちに、ジャスミンが状況を思い出した。
それどころじゃなかった為、頭からすっかり抜けていたが、良く見れば黄猿もいない。
"気"を探ってもシャボンディ諸島内に"麦わらの一味"の"気"が感じられない為、どうやら
「"中将殺し"?」
物騒な呼び名に、悟飯は怪訝そうな顔を見せる。
「あぁ~…、私の事です。一応言っておきますが、誰も殺してません。ちょっと諸事情あってこの世界の軍隊みたいなのに追われてまして……。」
「ど、どんな事情があってそうなったんだい?」
保護した
「ざっくり言うと、犯罪らしい犯罪は犯していない海賊と友達になって、その海賊が世界規模の陰謀に巻き込まれているのを手助けしたら指名手配されまして………。」
「指名手配?!」
予想外の言葉に、トランクスの声がひっくり返った。悟飯も目を見開いている。
「………取り敢えず、場所を変えましょう。ここじゃ、落ち着いて情報をすり合わせる事も出来ませんし…。」
「その方が良いだろうね…。」
色々聞きたい事はあれど、一旦は飲み込んだ悟飯がジャスミンに同意する。
「近くに私が修行に使っていた無人島があります。一旦上空に上がってから
「分かった。それじゃ、行こうか。……バーダックさん、でしたっけ?あなたも一旦オレたちと一緒に来てもらえませんか?」
「…ああ。」
バーダックが頷いたのを確認し、ジャスミンは
「んな?!待て、"中将殺し"!!」
ガン無視される形となった海兵たちががなり立て、発砲するが、既に空高く飛び上がった彼らに届く
4人の戦士たちは既に視認するのも難しい程の上空から、いずこかへと飛び去っていた。
────────―とある無人島。
海兵たちから姿を
取り敢えず、と
「すいません、紅茶しか無いんですけど…。」
来客用のティーカップなども無い為、
「ありがとう。」
悟飯がジャスミンに微笑み、トランクスが目礼する。バーダックはチラリ、と目の前に置かれた紙コップに目を走らせはしたが、それ以上の反応は無かった。
自身も自分の分の紅茶を持ってソファに座り、おずおずと話を切り出す。
「え、と…。お2人は未来の世界から来られた、という事で良いんですよね?」
いまいち状況が把握出来ていないジャスミンが、情報を整理すべく悟飯とトランクスに尋ねる。
「そうだよ。直接会った事は無いだろうけど、ここにいるトランクスが昔タイムマシンで過去の世界に行った事は知ってるかい?」
「はい。お父さ…、父たちから聞いた事がありますし、カプセルコーポレーションで写真を見せてもらった事もあります。」
悟飯がジャスミンの問いに頷き、まずはジャスミンがトランクス(未来)の存在を知っているかどうかを確認した。
「オレたちがこの世界に来たのは、第一に君を保護する為だ。」
「私を…?」
悟飯から言われた言葉に、一瞬ポカンとしたジャスミンだったが、じわじわと期待がその顔に浮かんでいった。
「地球に帰れるんですか?!」
「勿論。オレたちが絶対に君を地球に連れて帰るよ。」
悟飯の断言に、ジャスミンの目に涙が浮かぶ。
ジワリと滲む涙を拭い、「良かった…。」と心からの笑みを浮かべるジャスミンを微笑まし気に見詰めながら、わずかに顔を引き締めた悟飯が続けた。
「まずは、君がこの世界に来てしまった原因を話さなくちゃいけない…。」
そして語られたのは、"タイムパトロール"の存在と歴史改変を
「じゃあ、あのダーブラそっくりの
「トワのものだろう。アイツはダーブラの実の妹だからね…。」
納得したように頷くジャスミンに、悟飯も頷く。
そこで、ジャスミンの脳裏にとある情報が
「そうだ…。そのトワでしたっけ?その魔族に仲間、あるいは部下がいませんか?」
「…アイツは、主にその時代にいる人間を操って歴史を改変しようとするんだが、確かに腹心と呼べる部下が1人いたよ。ミラ、トワが作り出した人造人間だ。」
「だけど、ミラは既にオレたちが倒している。バーダックさんという部下も失った今、最も警戒すべきは誰かこの世界の住人が洗脳されないかという点だけど……。アイツがこの世界に来た理由も分からないし……。」
悟飯に続き、トランクスが補足するが、ジャスミンにはとある情報があった。
「いえ…。恐らく、トワの目的はミラの復活です。」
そう、"魔術師"バジル・ホーキンスからの情報が。
"人間のようであってそうでない、男女の2人組が追手から逃れて来て3人目の仲間を復活させようとしている。"
ここにきて提示された、新たな情報に悟飯とトランクスが目を見開いた。
「その情報、どこまで信用出来るんだい?」
「少なくとも、"人間のようであってそうでない"という部分は魔族とサイヤ人という宇宙人という点で符号します。そして、"追手から逃れて来て"という点も合致する……。」
悟飯の問いに、ジャスミンが根拠と考える点を挙げていく。
そんな中、それまで沈黙を保っていたバーダックが口を開いた。
「…そのガキの推測はおおよそ当たってやがるぜ……。」
バッと3人の視線がバーダックへと集まった。
「操られてた間の事はあんまり覚えちゃいねぇが、
バーダックの言葉に、悟飯とトランクスが一気に顔を険しくさせた。
「青い肌の男…。間違い無い、ミラです。」
「ミラが復活、となると厄介ですね……。」
「バーダックさん、トワが今潜伏している場所を覚えていますか?」
「だいたいの場所なら分かるが、いくつかの島が連なってる所だったからな…。細かい場所までは覚えてねぇ。それに、あの女"結界"とか言って周囲から見えなくするバリアみたいなモン張ってやがった。出入りもあの女の許可無しには出来なかったからな……。」
「そうですか…。」
「どうやって奴の居場所を特定しましょうか?」
険しい表情を見合わせる悟飯とトランクスに、再度ジャスミンの記憶が刺激される。
(そう言えば………。)
「…あの、バーダックさん。」
「ああ?」
おもむろに話しかけてきたジャスミンに、バーダックが器用に片眉を上げて反応する。
「"あちこちの戦場に顔を出していた"という事は、その"キリ"は戦闘時に発生されるものなんですか?」
「そうらしいな。オレも詳しくは知らねぇが……。」
「そして、私と戦ったのもそのエネルギーを集める為……。」
「そう言ってんだろ。」
確認するように呟くジャスミンに、バーダックが吐き捨てる。
「…具体的に今どれ位のエネルギーが集まっているのか分かりますか?」
その問いに、悟飯とトランクスも2人へと視線を向け、バーダックが記憶を
「テメェと戦ってどれ位集まったかは知らねぇが、オレがテメェの所に行くまでは5分の1も集まって無かった
「という事は、まだそのミラの復活までには間があると考えても良いですね……。であれば、次にトワに現れるのは恐らく7日後です。」
『…何をしているかまでは知らんが、男の方が戦いの場に出現しているようだ。今から10日後に動く、と出ている。』
『10日後?何か大きな戦争でも起こるんですか?』
『“世界を動かす争い”と出ている。
ほんの3日前にバジル・ホーキンスと交わした会話がジャスミンの脳裏に蘇る。
"7日後"。
そう断言したジャスミンに、悟飯とトランクスの顔が引き締まり、バーダックが好戦的な笑みを浮かべた。
────────7日後に何が起こるのか。
未だ、ジャスミンは知らない。
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