限界突破、ジュ―ド君 (ラーマイオン)
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第一話

 俺ことジュ―ド・マティスは一度死んだ。それは確かだ。知らない国の知らない町で自分の名前も親の名前も思い出せないがそれでも生きていたことは覚えている。そして覚えているからこそ今の自分が前世を持っている普通の人間ではない事も分かっている。

 

 そんな普通ではない俺であるが前世では平穏に暮らしていただろう。だからこそ、この生きている世界、魔物がいる世界に恐怖を覚えると同時に興奮も覚えている。この世界は不思議なことにレベルというものが存在しておりレベルが上がるとグロウアップポイントが取得できそれを使いリリアルオ―ブというアイテムを使い自己を成長させていく。

 

 リリアルオ―ブは保持者を記録して外見とは関係なく成長させてくれる。だから、見た目少女が巨大な岩を粉々に砕くことを可能にしている。

 

 それを知った俺は親に駄々をこねてオーブをもらい近所の格闘家のおばちゃんに格闘技を教えてもらい、さらに駄々をこねて旅に出た。まぁ親は働きがちで俺のことなんかどうでも良かったのかもしれない。

 

 近所の友達であり格闘技の先生の娘であるレイアは俺と離れるのが嫌だったらしいが「必ず帰るよ、お前のために」と言ったところ「待ってる、ずっと帰ってきたら私と……」と言って最後らへん口ごもっていて分からなかったが死亡フラグを建築したような気がする。

 

 そんな訳で意気揚々と旅に出た俺(10歳)は某ポケモントレーナーと同い年ということもあり旅の途中に出会った眼につく魔物全てを撃破し続けた。またバーミヤ峡谷では俺の武器と似たような武器を持った魔物がいたので撲殺して奪い取った。

 

 こうやっていろいろな人と出会い成長した俺だがある日激怒した。俺のレベルが99でストップだと!? ふざけるな!! 100なら納得できる。だが99ってそんな中途半端なのが俺の限界であると認められるか!!

 

 後に知ったことだが99でストップは普通らしい。

 

 そんなことを知らない俺は限界を超えるために各地で敵を葬ったり、倒したりしてきた。だが99より成長しなかった。この時11歳。

 

 泣きながらサマンガン海底にいると怪しい人が話しかけてきた。

 

「ぼうや、その年でとても強いね。もっと強くなりたいかい?」

 

「うん、なりたい」

 

「なら、この鍵を持ってファイザバード沼野に行ってごらん」

 

「分かった」

 

 怪しいと思ったが99への苛立ちがあった俺は信じて沼野に行き、そして怪しい緑の入口をくぐって中にいた黄金の剣士を倒した。一方的に。

 

「強いな、小僧名前は?」

 

「ジュ―ドだ」

 

「ジュ―ド、貴様はそれほどの強さを持ちながらさらなる高みを目指そうと言うのか」

 

「当り前だろ」

 

 三桁に行きたい。

 

「よかろう、ならば貴様のリリアルオーブを見せてみろ」

 

「ほれ」

 

 そこで俺のリリアルオーブを改造しながらいろいろ語っていた。自分のためにリリアルオーブを作ったことや魔装具(魔物が持っていたやつ)は封印を解いたからこれからも頑張ってねみたいなこと。

 

 そして返してもらったリリアルオーブを見たら、なんと、100になっていたのだ。

 

「私を倒した経験値によって上がったのだな」

 

 どうでもいい、そんなこと。それよりも100だ、三桁だ、この感動を誰かに伝えたい。一人で感動していると黄金剣士が「これからも戦え」と言って消えた。

 

 当たり前だろ!! 

 

 こうして魔装具の封印の解除に加えてリリアルオーブの上限の開放によって俺はレベル200まで到達した。

 

 俺のデコピンは山を砕き、素振りの一発は海を割った。そう、俺は限界突破して最強になってしまったのだ。

 

 今さらだけど、変なテンションでやっちゃったな。この前とか山賊を半殺しにしてしまったりと自分がいかに強くなったか再確認した。

 

 満足感と後悔を胸に抱きながら家に帰宅すると親が治療しているのが見えて、邪魔しないように外に出て散歩しながら親の姿を見て考えた。

 

 治療できるなら多少死にかけるような目にあわせても助かるな、と。

 

 そこで帰宅した俺は親に更に駄々をこねて今度はこの国一番の医学校に入学させてもらった。

 

 え? 学力? 知力3000ですよ僕。一回参考書読んだだけで丸暗記余裕ですよ。

 

 ただ、学校に行くときにまたしてもレイアに泣かれたがひたすら謝って許してもらった。しかし別れ際に帰ってきたらあの時の約束守ってねと言っていたことが気になったが大丈夫だろう。

 

 こうして俺の医学生としての旅が始まった。



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第二話

 

 医学校に入学して数年が経過して俺ももうすぐ卒業という時期が来た。俺の場合に卒業後はゆっくりと親の様に田舎で医者をやりたいと思っていたのだが恩師であるハウス教授に研究を手伝ってほしいと頼まれ第一助手として働くことが決定している。

 

 なので俺は学校が終わればいつもハウス教授がいるイル・ファンの診療所に行って仕事を手伝っている。今日も一日仕事頑張るか。

 

 診療所の中へ入るとタイミング良くハウス教授と出会った。

 

「あれ、ハウス教授この時間にどうしたんですか?」

 

「ああ、ジュ―ド君か。国からの呼び出しでね、あの研究所に向かわなければならなくなったんだよ」

 

「国からの仕事ってさすがですね」

 

「それですまないんだけど、僕の代わりに仕事頼んだよ。今日は簡単な診察しかないからね。私もすぐに戻るから」

 

「分かりました」

 

 ハウス教授と別れた俺は白衣に着替えそのまま仕事をしていると最後の患者の診察が終わったのでやっと一息つける。

 

 最後の患者が妙なことを言っていた最近精霊の様子がおかしいというのが気になる。少し調べた方がいいか?

 

 どこを探すか考えていると同僚の人が診察室に飛び込んできた。

 

「ハウス教授はいますか!?」

 

「いや、いませんけど」

 

 そういえばすぐに帰るって言っていたのにおかしいな。

 

「それでそんな急いでどうしたんですか?」

 

「ハウス教授がハオ賞に選ばれたんです」

 

「本当ですか!?」

 

 それはすごい、ハオ賞を受賞した人は少なく受賞した場合には一気に知名度があがるほどの賞である。

 

「それなら早く教えないといけませんね。行った場所知っているので俺が報告してきます」

 

「頼むよマティス君」

 

 俺はいつもの格好に武具を装備してハウス教授を探しに出た。

 

 数分歩いて研究所の前に着き門番に教授について尋ねたがすでに帰ったらしい。礼を言って離れながら考える。

 

 ハウス教授が帰った証拠である出所記録を確かめたがすでに帰宅したことは確かであった。

 

 あの字が教授のだったらな!! どうみても別人の字だよ。これは事件の匂いがするな。

 

 どうやってあの研究所に進入しようか考えていると周りに異変が起こった。突風が吹き街灯が消えた。

 

「やはり精霊がおかしい?」

 

 そんなことより研究所にどうやって侵入しようかよ考えていると研究所の下水道の前に女性が立っていた。

 

 水の上に立っている!?

 

 そのままその女性を眺めていると火の精霊術で鉄格子を破壊した。

 

 なるほど、その手があったか。俺も便乗して侵入しよ。

 

 俺も水の上に降りると普通に立てた。何これすごい。

 

 感動していると俺に気付いた女性が振り返った。

 

「君、ここで何をしている?」

 

「それは俺のセリフでもあるんだが?」

 

「私は探しものだ」

 

「奇遇だな俺も探しものだ」

 

「それでは一体何を探している?」

 

「俺は人探しだ。そういうあんたは?」

 

「私の方は言えない」

 

「あっそ」

 

 特に興味があった訳でもないし。どうみても教えてくれそうな雰囲気ないし。

 

「それよりも速く入らないのか?」

 

「ああ、そうだったな。ではな」

 

 俺の返事を聞く前に飛び出した女性はそのまま中へと入っていった。俺も入ろ。

 

 中に入ってうろちょろしていると警備員に見つかった。こんなところまで警備してるってどゆこと!?

 

「子供がどうしてこの中に」

 

 普通そう思うよね。

 

「勝手に入ってすみません。すぐに出ていきますんで」

 

「まあ素直に謝ったし許してあげよう。出口まで案内するよ」

 

「ありがとうございます。それで聞きたいことがあるんですけどハウス教授知りませんか?」

 

「ん? 君先生の知り合い? 先生ならまだいるよ」

 

 やっぱりいたのか。しかしそれならどうして出所記録に名前があったんだ?

 

「僕からも聞きたいのだけど、家の人と連絡とれたりする?」

 

「? いえ、一人暮らししているので無理ですけど」

 

「よかった。それを聞けて安心したよ」

 

 言うと同時に武器を構える警備員。

 

「どういうことですか?」

 

「大丈夫、大人しくしていれば痛い目に合わなくて済むから」

 

 これは口封じをしようとしていると考えられる。なら、教授がやばい!!

 

 考え事をしていると警備員が警棒の長い版を頭に振り下ろしてきたので片手で受け止める。

 

「……大人しくしていれば痛い目に合わないと言っていた筈ですが?」

 

「なっ片手で!? ああ、すぐに殺してあげるよ!!」

 

「それを聞けて安心しました」

 

「何を言って?」

 

 俺は警棒を奪い取るとその棒を折った。

 

「俺も容赦しなくてすむ」

 

「あ、うわ、なんで? それは普通なら折れないはず?」

 

 俺はニコッと笑って言った。

 

「安心して下さい。死にさえしなければちゃんと治してあげますから」

 

「ひ、ひいいいいいいい。た助けて」

 

「無理です」

 

 警備員に鎧の上からデコピンを食らわせる。すると警備員は吹っ飛んでいき壁に陥没した。

 

「やれやれ、馬鹿なことを考えるからそんな目に合うんだよ。それよりもハウス教授を探さなくちゃ」

 

 俺は面倒なことに巻き込まれた考えながら研究所を進んだ。

 

 

 

 

 

 



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第三話

 

 吹っ飛ばした兵士から服を剥ぎ取り服の上から着込む。侵入するのだから変装ぐらいはしておかなければな。裸で下水道にあの兵士を放っておくことに罪悪感が少しあるが俺を殺そうとし人だしどうでもいいや。

 

 そのまま下水道を抜け梯子の前に立っていた兵士を油断した瞬間に気絶させ上の階に行く。上の階では物々しい雰囲気であった。周りを見渡し近くにいた兵士に話しかける。

 

「何があったんですか?」

 

「侵入者だよ。金髪の女性だ。兵士を火の精霊術を使っていた」

 

「そうなんですか」。かなり危険ですね」

 

「ああ、だから見つけたら一人で戦うのではなくて仲間を呼ぶようにな」

 

「了解です」

 

 あいつだ。一緒に浸入したやつだ。あいつバレルぐらい暴れるなら正面から行けばよかったのに。

 

 とにかくハウス教授を探さねば。

 

 不審がられないように色々な部屋を探索していると光のない真っ暗な部屋があった。この部屋は他の部屋とは一線を画すような不気味さがあった。

 

「なんだこの部屋?」

 

 中に誰か人がいるらしいので近づこうとした瞬間、暗さに目が慣れた俺の視界がハウス教授を姿をとらえた。ハウス教授はガラスの筒の中、液体の中で苦しそうに何かを呟いている。

 

「ハウス教授!?」

 

 驚きながらもすぐにガラスの筒を破壊してハウス教授を助け出す。

 

「ハウス教授、何でこんな目に合っているんですか!?」

 

「だ、ま、さ、れ。す、まんジュ―、ど、君」

 

「騙されたってどういう……」

 

 詳しく聞こうとした瞬間ハウス教授は灰になるように消えた。恩師の死という物に驚いていると電気がついた。そこにはさっきのハウス教授と同じような状態の人々がたくさんいる。

 

 まさか、国が人体実験をしているってことか? ハウス教授も騙されたって言ってたし。こんな馬鹿げたことがあってたまるか!

 

 国に対して怒りを募らせていると上から女性に声をかけられた。

 

「おいおい、侵入者ってあんたなの? 見ちゃったんだ」

 

「おそらく別人だ。それよりここでは一体何をやっている?」

 

「あはぁー、その顔、その恐怖した顔たまんない」

 

「おい、会話しろよ」

 

「何をやっているかなんて知る必要は無いよ。あんたはここで死ぬんだから」

 

 女は言うと同時に飛びかかって来た……が

 

「残念ながら俺は死に場所はここをえらぶつもりはない」

 

 女の武器を人差し指と中指で挟むように受け止める。

 

「な、離せ!」

 

「お前はいろいろ知ってそうだから全部吐いてもらうぞ!」

 

 そのまま左手で鳩尾を殴る。ただの攻撃ではなくマナを溜めての一撃なのでかなり痛いはず。

 

「がっ!」

 

「恩師が殺されたんだ、容赦するつもりは無いぞ」

 

「ちっくしょう! 舐めるな!!」

 

 女が叫ぶと女の周りに炎が燃え上がり始める。

 

「てめぇだけは絶対にぶっ殺してやる!!」

 

「やってみろよ」

 

 どちらが先に動くか睨みあっていると部屋の入口が開いた。相手の動きに注意しながら見てみると最初に出会った金髪の女性がいた。俺の侵入のハードルを上げた女である。

 

「ふむ、この状況からして私が倒すのはそっちの女だな。イフリート」

 

『任せろぉ!』

 

 開いた口がふさがらないとはこのことだろう。イフリートは四大精霊の一つ、火の精霊であり、それを使役できるのは元素えお司るマクスウェルだけのはず。だが今はそんなことはどうでもいい。俺が言いたいのはイフリートが火の攻撃をすると思っていたら普通に殴り飛ばしたのだ。

 

 イフリートォ、お前、せめて火の関係の攻撃しろよ。

 

 俺が軽く失望していると金髪の彼女は俺に話しかけてきた。

 

「探し人は見つかったか?」

 

「残念ながらここにはもういなかったよ。そういうお前さんは?」

 

「私の方はまだだよ。それでお前は今からどうするんだ?」

 

「少し気になることがあるが一先ず帰るよ」

 

「そうか、ん? 分かったぞイフリート。すまないがこのまま一緒に来てくれないだろうか?」

 

「どうして?」

 

「イフリートがお前にビビビと来たらしい」

 

 ビビビってなんか古臭い響きだな。しかし、この施設、敷いては国でやばい研究が行われているのは事実だ。しかもハウス教授の関係者なら俺も狙われるかもしれない。ここは着いて行ってもいいはず。

 

「いいよ。乗りかかった船だ。最後までいくよ」

 

「ああ、よろしく。私はミラだ。ミラ・マクスウェル」

 

 やっぱりマクスウェルなんだ。

 

「俺はジュ―ド・マティス、よろしく」

 

 俺たちは握手して部屋を出たのだった。

 

 こいつといたら変装の意味無いな。

 



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