魔法科高校に一般人?が入るようです。 (そろばん)
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プロローグ

どうも。そろばんです。
さて、初投稿となります私の作品ですが、多分話の内容が分からなくなるかもしれませんが、暖かい目で見守って欲しいと思います。それではどうぞ!


どうしてこうなった………。

そう私は制服を着ながら頭の中で呟いた。

 

私こと、逆桐日向(さかきりひなた)は一般人"だった"。

普通の中学校に通い、普通の授業を受け、普通の友人と自由気ままに楽しい生活を送っていた。多少、目がおかしい事もあったが。あと髪の毛も。だった、と言うのは、まぁ、三ヶ月ほど前を思い出すとしよう。

 

______________________________________________________________________

 

私の家庭は、両親ともにすでに他界。家族は兄か一人いるだけだった。その兄はいろんなところで有名らしく、生活が不便になる事はなかった。まぁ、実際、家ではただのシスコンだが。

そして、高校受験のある2週間前、突然こんな事を言われた。

 

「ああ、そうそう。ひなの受験する高校、国立魔法大学付属第一高校に変えたから」

 

私はこの兄の頭を疑った。

こいつは何が言いたいのかと。

とりあえず頭がおかしくなったのかと思い、思いっきりドロップキックで蹴り飛ばした。

 

「は?あんたついに壊れたか?もう少し殴れば治るかな?」

 

私はそう言って電化製品見たく斜め45度に木刀を叩き込んだ。

 

「うわっ!ちょ!たんまっ!」

 

「うるさい!なんてことしてくれたのよこの馬鹿兄貴が!」

 

「ちょ!待てって!ちゃんと説明するからってうぉ!?」

 

兄を壁際に追い込んで木刀を投げた。

兄がギリギリ避けたのを見て私は思わず舌打ちをした。

 

「ちっ!外したか!」

 

「待て!待ってくれひな!ちゃんと説明するから!」

 

私はとりあえず思いっきり睨んでソファーに座った。

兄は安堵したようにふぅ、とため息をついてソファーに座る。

 

 

何でも私は魔法の適正があったらしい。それを象徴するのがこの目と髪なのだそう。この目は霊子放射光過敏症というらしい。感受性が特に鋭い者は過敏な反応を示すケースがあるのだとか。その症状(病気ではないそうだ)を霊子放射光過敏症というとの事。通称、見え過ぎ症だと。

 

そこで小さな疑問が解消した。

私は幼少期から眼鏡をかけている。

私は特別目が悪いわけではなく、この症状を緩和するためにこうして眼鏡をかけているという事だ。この眼鏡には何とかっていう特殊なレンズを使っているらしい。そのレンズが症状を緩和するという事だ。

 

「で?この髪は?どうして?」

 

「ああ、その前に「魔法」がどんなものか知ってるかい?」

 

「知らん。どうでもいいから早く」

 

「あ、はい。おっほん。魔法には二つ種類があり、その二つのうちの特殊な方をひなは二つ持っている。「破壊」と「ベクトル操作」だ。」

 

「それどこの一○通行?」

 

「いや、そんな事言われても。あるんだからしょうがないだろ?」

 

「それで?」

 

「この、まぁ、ひなは漫画とか読むのかは知らないけどその一○通行のように半自動的に紫外線とかが反射して白くなってるんだ」

 

「そして、この大きな二つの力のせいでひなは魔法を使えなかった。」

 

「でも兄貴半自動的にって言ってたよね?私はそんなに人を怪我させたりしなかったけど?」

 

「まぁ、そう出来ないようにしたのが僕だからね。」

 

「は?」

 

兄は私を手招きして兄の部屋がある二階の部屋に入る。

そこにはおびただしいほどの機械が並んでいた。

 

「あ、そうそう。ひなには言ってなかったけど、僕は魔法師だから。」

 

と、突然思いがけない事を言い出した。

 

「は?兄貴が、魔法師?」

 

「ひなが生まれて、3歳のころ、だったかな?ひなが使おうとしたおもちゃが壊れた。突然。その時はお父さんもお母さんも

既に死んでたよ?祖母に買ってもらった物も買ったその日に壊れた。その辺の石ころや木の枝もひなが触れるとすぐに壊れていった。その時に祖母は気づいた。ひなには触れるだけで何でも壊せる力がある、と。そしてさらに力は表れた。ひなが交通事故に遭ったときだ。ひなに触れた瞬間車がひしゃげた。その頃から、ひなに近づくものが逆方向に吹き飛んだり、ひなの投げたボールがあり得ない速度で飛んで行ったりと、元あった力とは別物だと悟った。その頃から僕はひなが僕と同じ、いやそれ以上の魔法が使える事が分かった。だから僕は大切な妹を守るためにいろいろな事を勉強した。自分で言うのもおこがましいけど天才だった。これから先、ひなが、自分の妹が楽しく幸せに暮らしていけるように、いろんなことを勉強し、考え、作った。その効果が実証できたのは、今、ひながつけているヘアゴムだ。その大きなリボンには魔法を阻害する術式が組み込まれている。普段、魔法を暴発させないようにしっかりとジャミング出来るように作った。これがひなが魔法を使えなかった理由さ。」

 

「…………」

 

私は唖然とした。

異様な話の長さに。

そのほとんどが分からなかった。

だからとりあえず私は、

 

「長いわ!」

 

そうつっこむ事にした。

 

「で?」

 

「で?って、え?話聞いてた?」

 

「聞いてたよ。で?何?さっきは何で魔法師かを黙ってたのかを聞いてたのに、何?さっきの自慢話。うん。私が魔法を使えなかった理由は分かったよ?その前の前振り何?」

 

「え?いや、その」

 

「自分の過去話してどうするの?自分で天才とか言うし。っていうか祖母はどこ行った?脈絡のない話し方して、せめて私の質問に答えてから過去話入ってよ」

 

「…………」

 

「で?魔法師って言うのを黙ってた理由は?」

 

「いや、避けられると思ったから」

 

「元々避けてるし」

 

私がそう言い放つと黙ってしまった。

 

「まぁ、私を守ろうってしてくれたのは、あ、ありがとう」

 

「ひ〜な〜!」

 

「わっ!ちょ!近づくな!」

 

私の言葉が嬉しかったのか、飛びついてくる兄を避けて回し蹴りを叩き込んだ。

 

「で?兄貴の部屋に来た理由は?」

 

「ああ、そうそう。ええっと、どこにしまったかな?」

 

そう言いながら、何かを探すために中に入っていった。

そして、これでもない、あれでもないと某青狸見たいにものを投げながら、

 

「あった!」

 

一つも何かを持って立ち上がった。

 

「はい、これ」

 

そう渡してきたのは、

 

「ヘアゴム?」

 

今自分がつけているようなリボン付きのヘアゴムだった。

 

「何でまた?」

 

「ふふん、これはねぇ、脳拡大装置なのだ!」

 

「脳拡大装置?」

 

「そう。僕ら魔法師は普通魔法演算領域っていうのがあってね?ひなには「破壊」と「ベクトル操作」があるから脳が圧迫されてこの領域がないんだ」

 

「それが何か、問題?」

 

「うん。魔法演算領域がないと普通の魔法が使えない。だから違うところで魔法演算領域を作ってそれを脳に埋め込むのさ」

 

「埋め込むって、殺す気かこの野郎」

 

「大丈夫だから。何も直接埋め込む訳じゃない」

 

「?どういうこと?」

 

「パソコンはわかるよね?主に記憶するところや操作するところなんかに分かれて、それが集まってパソコン、っていうものなんだ。だから、中に埋め込まなくても繋がっていれば大丈夫。っていう訳で、DNA採取するから「はい」」

 

変なことを言われる前に髪の毛を一本抜いて渡す。

 

「これで十分でしょ?」

 

「え?あ、うん。ありがとう。」

 

ありがとうと言いながら兄はため息をついていた。

……何が不満なんだか。

 

「それで、DNAを数本に分けて、このリボン型の機械にDNAを打ち込んで、………よし!完成!ひな、これで普通の魔法も使えるようになったよ。まぁ、これが無くても「破壊」と「ベクトル操作」は出来るけどね。練習すれば」

 

「ふぅん。ま、ありがと。」

 

「あーでも。普通の魔法。今から練習しても間に合わないかな」

 

「は?」

 

「だって、ほら。ひなは普通科だったでしょ?魔法科に入る為の勉強も、魔法の操作も全然してないから」

 

その話を聞いて唖然とした。

間に合わないのに勝手に変えたのか、と。

そして、なぜ今になってこの事を教えたのかを。

この馬鹿兄が勝手に変えたのに、

 

「なんで、」

 

「へ?」

 

「なんで!この話をもっと前にしなかった!この馬鹿兄貴が!」

 

 

 

 

______________________________________________________________________

 

 

なんてことがあった。

その2週間、寝る間も惜しんで(と言うか寝ずに)勉強も魔法を使う練習もしたおかげで、上位に入る事が出来た。 元々勉強は元の中学校ではどのテストでも一位を獲得していたので出来る方だった。某禁書目録のようなことは流石に出来ないが

それに近しいことが出来た。

 

「三ヶ月前を思い出すと、また殴りたくなるな」

 

あの時を思い出して、あいつを殴りに行こうか、なんて考えも浮かんだ。

私は首を振って考えを払いのける。

私は制服を着て、靴を履きコンコンと先を蹴って調節し、第一高校の入学式に向けてドアを開けた。

 

「行ってきます!」

 

さあ、何もかもが初めての、冒険の始まりだ!(仮)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうでした?
プロローグですが、まぁ、何とも訳の分からないものでしょう。こんなの絶対無理!と言うのもあると思いますが。
作者は豆腐メンタルなのです。
ので、暖かい目で見守って欲しいと思います。

さて次回は原作に入っていきます。
作者はアニメしか見てないので悪しからず。

seeyou next time


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入学編
入学編 その1


ども。
今回からほのか、雫登場です。
その他原作キャラも出していけたらとおもいますね。



魔法科高校入学式当日。

私は少し家を早めに出たおかげで余裕を持って学校に着いた。しかし、周りを見るとそれほど生徒は集まっていなかった。私はカバンの中から懐中時計を取り出して確認すると、

 

「早すぎたかな」

 

まだ式が始まるまであと30分もあった。

 

「どうしよう。電子書籍なんかも持ってきてないし」

 

と、頭で考えた末、

 

「する事もないし、少し学校探検でもしようかな」

 

そういう風に決め、少し学校を歩くことにした。

懐中時計をそのまま上の制服の裏ポケットに入れて歩き出す。

 

 

 

 

その数分後、

 

「………ここどこだろ?」

 

私は迷子になっていた。

 

「あれ?ちゃんと地図見ながら歩いたはずなのにおかしいな」

 

そんな風につぶやきながら歩いていると、

 

「ちょっとそこのあなた」

 

そう声をかけられたので、振り返ると一人の小柄な女性が立っていた。

 

「はい?」

 

「新入生の方ですね?」

 

そう聞かれたので頷きながら、

 

「ええ、そうですけど?」

 

「そろそろ講堂の方に行かないと間に合いませんよ?」

 

「そうなんですか?わざわざありがとうございます。ええっと?」

 

「ああ、自己紹介がまだでしたね。私はここの生徒会長をしています。七草真由美です。「ななくさ」と書いて「さえぐさ」と読みます。よろしくね」

 

「私は逆桐日向です」

 

私が名前を答えると少し驚いたような表情をした。

 

「そう、あなたが……。」

 

「私の事をご存知で?」

 

「ええ。先生方の間で少し話題になっていましたから。入試の7教科のテストの平均が100点満点中85点というまぁこの学校では普通。普通の教科はオール満点。魔法理論が100点満点にもかかわらず、魔法工学が0点。しかもその魔法工学は間違えて0点ではなく一切答えずに0点だったからおかしいな、こいつ。見たいな話になってたわ」

 

「あ、そうですか。」

 

私は先輩の話を聞いてそりゃそうだ、と思った。

あのたった2週間で全く知識のない状況から1教科でも100点満点なんだから褒めて欲しいくらいだ。

 

「あ、引き止めてごめんなさいね。」

 

「あ、いえ。わざわざ知らせてくれてありがとうございました。では」

 

私はお辞儀をして、その場を離れた。

……あ、そういえばここどの辺なのか聞けばよかった。

そうして、少し急ぎ足で歩いて入学式にはギリギリ間に合った。

 

 

 

 

 

講堂に入ると、そりゃ分かりやすいぐらい「一科生」と「二科生」に分かれていた。私は元一般人なので正直な話、どこに座っても良かったが、なんか周りの視線が痛くなりそうなのでとりあえず前の方に座っておく。ポケットから懐中時計を取り出して、カバンの中にしまう。そうして、前をぼーっと見ていると、

 

「あの…」

 

横からか声がかけられた。

 

「はい?」

 

「初めまして、私、光井ほのかって言います。よろしくお願いします」

 

「北山雫。よろしくね」

 

「よろしく。私は逆桐日向です。」

 

挨拶されたのでとりあえず返しておく。

 

「逆桐さんは「日向でいいよ」、日向さんは入試の時に魔法理論が満点なのに魔法工学が0点って本当?」

 

「うん、そうだよ。兄のせいで2週間しか勉強する時がなかったからね。片方を完璧にするので精一杯だったよ」

 

「でも、元々学校で習ってたんなら普通は工学の方も点数は取れたんじゃ?」

 

「私は元々、普通の学校を受験する予定だったの。魔法が使えるなんて私自身知らなかったから。突然試験2週間に「お前は魔法適正がある」なんて言われてもどうにもならなかったよ」

 

「え?魔法使い出したのそんなに最近なの?一科生になれるくらいだから魔法力も高かったんじゃない?」

 

「いや、私はこの目のことすら知らなかったからね。何がどうなったら魔法力が高いのかも分からない。両親はもう死んじゃったから両親が何してたかも知らないしね。ほら、なんか魔法力は遺伝する、みたいなこと聞いたから」

 

「……ごめんね。なんか言いにくいこと聞いちゃったかな」

 

「いや、いいよ。さっきも言ったけど両親の顔も知らないからね。っと。もうそろそろ式が始まるかな」

 

そんな話をしながら待って、入学式が始まった。

新入生総代の子が可愛いというか綺麗って感じの女の子だった。顔を動かさずに周りを見るとみんながみんな感嘆なり見惚れてたりしている。

私は眼鏡をずらして裸眼で見つめる。

司波さんのオーラは他の魔法師の人とは比べものにならないくらい迸っていた。あと少し何か言葉に別の意味を感じる。二科生に気になる人でもいるのだろうか。視線が時々上に行っていて、何やら感動しているように見える。

 

私の目は何かが違う。

そう、今でも思う。

普通の霊子放射光過敏症の人がどのように見えるかは分からないけど、オーラはともかく人の鼓動や感情の動きが見えるのは明らかにおかしい。

同じ目の症状の人がいたら聞いてみよう。

 

そんなことを考えていたらいつの間にか式が終わっていた。

 

「ねぇ、日向もホームルーム覗きに行かない?」

 

そうほのかに提案された。

他にやることをないし、いっか。

 

「いいよ。行こう」

 

私がそう答えるとほのかの顔がぱっと晴れた。

その顔を見て雫の顔が少し緩む。

 

「そういえば」

 

と私が思ったことを口にする。

 

「何?」

 

「ほのかと雫ってもしかして幼馴染だったり?」

 

「うん、そうだよ。小学校からの友達」

 

「へぇ、いいね。私は元一般人だから他の友達はみんな違う学校に行ったよ」

 

「だ、大丈夫ですよ!私たちはもう友達です!」

 

そうほのかが大きな声で言ってくれた。

私も、知り合いが増えた安堵感から少し顔が緩んだ。

 

「ありがとう。ほのか、雫」

 

私がお礼を言うと二人ともニコッと笑って、ホームルームを見学しに動いた。

 

 

 

 

 

 

「そういえば、日向」

 

ホームルームを見学しに行って帰り際、雫から声をかけられる。

 

「どうしたの?雫」

 

「日向は何組?」

 

「私はA組だよ?ほのかと雫は?」

 

「私たちもA組だよ。」

 

「良かった。知り合いがクラスにいて」

 

「あと、新入生総代の司波深雪さんも同じクラス。」

 

「へぇ、そうなんだ。凄い魔法師なんだよね。あの子」

 

「そりゃそうだよ。新入生の総代。すなわち入試一位だから」

 

「やるね。多分明日になってクラスに行ったら囲まれてるよ。そんなに凄いならね」

 

「おまけに美人だし」

 

「日向も負けてないと思うよ?」

 

「いやいや、私はそこまで可愛くないよ。白髪に目は金色だし。他の人からしたら外国人かそこらに見られるよ」

 

「そういえば、式の前から気になってたんだけど、日向って霊子放射光過敏症なんだよね?」

 

「そうだよ。なんか色々な事が見えるしね。人の鼓動や感情の動きとかも見える」

 

「それは凄いね。他の人もそうなのかな?」

 

「流石に人の鼓動や感情の動きは見えないんじゃない?調べてみてもそんな記述ないから」

 

「なら日向の目はなんなんだろ?」

 

「さあ?ま、そこまで気にしなくても大丈夫でしょ。あ、私はこっちだから」

 

「うん、またね。日向」

 

「バイバイ」

 

「うん、バイバイ」

 

私はほのかと雫に手を振って別れた。

そして、カバンから懐中時計を取り出して時間を確認する。

 

「もう、こんな時間か。夕飯なににしよ?」

 

そう言って買い物してから帰ろうと家とは違う方向に歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうでした?
アニメしか見てないこともあって優等生の方のストーリーが分かりません。
じゃあなんで一科生でやっているのか、と聞かれれば、
一方通行を見るととても賢いので、ならとりあえず上の方で書こうと思った次第です。

次回、やっと司波兄妹登場?の予定です。
あと、モブ崎たちも。


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入学編 その2

どうも。
今回、やっと原作メンバーが出ます。
それではどうぞ。


入学式の次の日、昨日よりは遅く家を出た。

私は家を出る際に兄から渡された物を手に取る。

普通、魔法科高校の生徒としてはCADとやらを持っていないといけないらしい。それが何なのかわからないが。

スイッチを入れると、ジャキって音がしてその棒が伸びた。兄曰く警棒、なのだとか。流石に何時も家で兄をしばくための木刀は、大きくてカバンに入らないし、手に持てば目立つので兄に相談したところぱっと作ってぱっと渡された。私はその警棒?のスイッチを切り、カバンの中にしまう。

 

 

1-Aについてドアを開けると、その場にいた全員の視線がこっちにとんでくる。私はその視線をさらっと流し、席に着く。その際に後ろには昨日みた新入生総代の司波深雪さんがいた。

 

「おはよう。日向」

 

そう聞き覚えのある声が聞こえ、顔を上げると見知った顔があった。

 

「おはよう。ほのか、雫」

 

そう挨拶を返すと何やらほのかが手招きしている。

そして、小声で、

 

「ねえねえ、司波さんに声をかけてみようよ」

 

「ほのかがすれば?」

 

「雫!?そこは二人で、とかじゃないの!?」

 

「だって、今話しかける理由がない」

 

「…………」

 

そう言って何かほのかが決意して司波深雪に話しかけようとした。

 

「あの、司波さ、きゃあ!」

 

その時、ほのかの足が机に引っかかってずっこけた。手を差し伸べてくれたのはほのかが話しかけようとした司波深雪だった。

 

「大丈夫?」

 

「は、はい!大丈夫です!あ、あの私は光井ほのかって言います。よろしくお願いします。」

 

「私は北山雫。よろしく。」

 

「私は逆桐日向です。よろしくね」

 

私たちがババッと自己紹介すると、ポカンとした表情を浮かべ挨拶を返してきた。

 

「え、ええ。私は司波深雪です。こちらこそよろしくお願いします。それで?何かご用ですか?」

 

「え、えっと、司波さんは」

 

「深雪でいいですよ?同級生じゃないですか」

 

「う、うん。深雪は今日の昼休み一緒に食堂でご飯でも食べない?」

 

「ええ、いいですよ」

 

そう深雪が答えると、ほのかの表情がぱあっと明るくなる。

 

「本当!?」

 

「え、ええ」

 

そう聞いた瞬間に後ろの雫とハイタッチする。

と、ここで私は聞きたいことがあったので少し入らせてもらおう。

 

「司波さん。私も深雪って呼んでもいい?」

 

「ええ、どうぞ。」

 

「深雪のお兄さんってさ、」

 

そう言いながら顔を近づけ、深雪に聞こえる声で囁く。

 

「二科生の人?」

 

私がそう言うと少し表情を曇らせた。

 

「何故?そう思うのかしら?」

 

「入学式の答辞の時、時々二科生の方を見てたから。それと、二人のオーラが似てるから」

 

そう、オーラが似てるからと言った瞬間にとても驚いた表情を浮かべた。

 

「あなた、霊子放射光過敏症?」

 

「うん。でも安心して?私は一科生とか二科生とかどうでもいいから。あなたの大事なお兄さんへ侮蔑の視線とか向けないから」

 

「…………そう。」

 

大事なお兄さんと少し強調すると、深雪は少し顔を赤らめた。

 

 

 

 

 

そして昼休み、深雪に声をかけ一緒に食堂に行こうとしたら数名の男子が声をかけてきた。

 

「司波さん。一緒に食堂へ行かないか?」

 

深雪は少し顔を曇らせ、何も発せず少しだけ頷いた。

その前でガッツポーズをする、男子数名。

そして意気揚々と歩いていくモブ達の後ろを歩いて食堂についた途端深雪が走り出した。

 

「お兄様!」

 

その方向を見ると入学式の時に見た男子生徒たちがいた。

 

「お兄様、一緒に昼を食べてもよろしいですか?」

 

「ああ、いいよ」

 

「深雪、こっち空いてるよ」

 

「ありがとう、エリカ」

 

と、深雪が座ろうとすると男子たちが、

 

「君たち、場所変わってくれないか?」

 

そんなこと抜かした。

 

「司波さん、もっと広いところに行こうよ」

 

「え、でも私はお兄様と」

 

「いやいや、司波さん」

 

その生徒が深雪の兄の肩を見て、ふっと鼻で笑った。

それを見て、私は、

 

雑草(ウィード)と相席なんて、痛っ!」

 

腰から警棒を抜いておでこに振り抜いた。

 

「な、何するんだ!」

 

とか言ってるのを無視して深雪のそばに立った。

 

「ねぇ、」

 

「ああ?なんだ?」

 

私が声をかけるとガタイのいい男が少し苛立ったように言ってきた。ので、

 

「あなた達と一緒に食べていいかな?」

 

そう言うと、全員がポカンとした表情を浮かべた。

 

「は?」

 

「聞こえなかった?一緒に食べていいかな?って聞いたんだけど?」

 

「ちょ、ちょっと逆桐さん、」

 

「何?ええッと、ごめん名前知らないや」

 

「僕は森崎駿だ。雑草(ウィード)と相席なんてやめるべきだよ。だって「黙りなさい」!」

 

「あなたは一般的な常識も知らないの?なんでこうやって普通にご飯食べてる人に退けとか言うの?先に座ってて、しかも他に場所があるのに?」

 

「そ、それは」

 

「一緒に座って食べさせてもらうならともかく、いきなり来て退けとか横暴だとは思わないの?」

 

「だが、こいつらは雑草(ウィード)だぞ!?」

 

「だから?」

 

「は?」

 

「だから何って聞いてるの。同じ人間でしょ?ただ今少し劣っているだけの人だからいいの?そんなことが。見下すような言葉を選んでいいと思うの?少しは常識を考えなさい」

 

私が圧倒的な言葉で攻め立てると、えっと、モブ崎が黙った。

すると、後ろの席から立つ音が聞こえた。

 

「深雪、俺はもう済ませたから行くよ。」

 

そう言う男の皿にはまだ残っていたが、そう深雪に言って立ち去って行った。

 

「達也くん!?」

 

「おい!達也!」

 

さっき一緒に座っていた二人も達也と呼ばれた男の人についていった。

私は思わずため息をついた。

 

 

 

 

 

 

そしてまた変わって放課後。

 

またモブ崎達が揉めている。

 

「いい加減諦めたらどうなんですか!?」

 

「僕たちは彼女に用があるんだ!」

 

「そうよ!少し時間を貸してもらうだけなんだから!」

 

「はっ!そんなもん自活中にやれよ!そう言う時間はちゃんと取ってあるじゃねえか!」

 

「それに相談なら予め本人の同意を取ってからにしたら?

深雪の意思を無視しての相談なんかあったもんじゃない。そんなルールも知らないの?」

 

「とにかく何度も言ってるじゃないですか!深雪さんはお兄さんと帰るって言ってるんです!何の権利があってお二人の仲を引き裂こうって言うんですか!?」

 

「み、美月ったら、何を…何を勘違いしてるの!?」

 

「深雪、何故お前が焦る?」

 

「へ?あ、焦ってなんか、おりませんよ?」

 

「そして何故に疑問系?」

 

と、話し合いが激化している。ほのかも雫も戸惑っていた。

 

「これは1-Aの問題だ!雑草(ウィード)ごときが僕たち花冠(ブルーム)に口出しするな!」

 

「同じ新入生じゃないですか………!?あなた達花冠(ブルーム)が今の時点で、どれだけ優れていると言うんですか!?

 

眼鏡の女子がそう言うとモブ崎がニヤッと笑った。

 

「まずいな」

 

私はふとそう口にする。

 

「どれだけ優れているか知りたいか?」

 

「おう、是非とも教えて貰おうじゃねえか!」

 

「いいだろう。……だったら教えてやる!これがーー才能の差だ!!」

 

そう言ってモブ崎が銃を持って魔法を発動しようとするが、

赤髪の女子が私と同じような形の警棒でモブ崎の銃を弾き飛ばした。

 

「ひっ!」

 

「この距離なら、身体動かしたほうが早いのよね」

 

「お前俺の手ごと叩こうとしただろ!」

 

「あら、そんなことしないわよ。」

 

「誤魔化すんじゃねえ」

 

赤髪の女子は口に手を当てて上品に「オホホホ」と軽く笑う。

 

「くっ!」

 

他の一科生が二科生の方を睨む。すると、

 

「みんなダメ!」

 

そう言ってほのかが魔法を発動しようとするが、

 

「きゃあ!」

 

「ほのか!」

 

いきなり魔法式?が吹き飛んだ。

 

「そこまでだ!」

 

後ろから風紀委員と書かれた物をつけた先輩であろう女子生徒と、生徒会長の七草真由美がきた。

 

「自衛目的以外の、魔法による対人攻撃は犯罪行為ですよ!」

 

そうなんだ。と少し感心する。

 

「風紀委員長の渡辺摩利だ。1-Aの生徒と1-Eの生徒だな、事情を聞きます。全員ついて来なさい!」

 

渡辺摩利と言った風紀委員がそう言う。

全員が黙っていると、深雪の兄が前に出た。

 

「すみません。少々悪ふざけが過ぎました。」

 

「悪ふざけ?」

 

「はい、森崎家のクイック・ドロウは有名ですから。自分の工学のために少し見せてもらおうとしたのですが、あまりにも真に迫っていたので思わず手が出ていまいました。」

 

「では、そこの女子生徒が攻撃性の魔法を使おうとしていたのは何故だ?」

 

「あれはただの閃光魔法です。威力もかなり抑えられていました。」

 

「ほう、君は起動した魔法式を読み取ることができるみたいだな」

 

「ええ、実技は苦手ですが、分析は得意です」

 

「誤魔化すのも得意なようだ。」

 

「そんな、俺はただの、二科生のですよ」

 

深雪の兄が自分の肩を指差す。

 

「ちょっとした行き違いだったんです。お手を煩わせてしまい申し訳ありませんでした。」

 

そう言って深雪は頭を下げた。

こうして頭を下げられて、戸惑った渡辺摩利に見計らったように真由美が私たちの前に躍り出て、渡辺摩利の方を向く。

 

「もう、いいじゃない?摩利。達也くんも本当にただの見学だったのよね〜?」

 

「はい、仰る通りです。七草会長。」

 

そう深雪の兄に向けていた目を私たち全員に向ける。

 

「生徒同士で教え合うことが禁止されているわけではありませんが、魔法の行使には、細かな制限があります。魔法を伴う自習活動は控えたほうがいいでしょうね」

 

「会長もこう仰せられている事だし、今回は不問とします。以後このような事のないように」

 

その言葉に同意するかのように全員頭を下げる。それを見届けた渡辺摩利は悠然とした雰囲気を醸し出しながらその場を去っていく。

 

「君の名前は?」

 

「1-Eの司波達也です。」

 

「……………覚えておこう」

 

そう言って去っていった。

 

 

 

 

 




どうでした?
切るタイミングが分からずこのようなところで切る事にしました。司波兄妹は出ましたが、レオとエリカと美月のフルネームが出せませんでした。

次回出そうと思います。
次回もお楽しみに。


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入学編 その3

どうも。
今回は前回の続きです。
あと、日向のCADが完成します。

それではどうぞ。


「借りだなんて思わないからな」

 

一科生と二科生のいざこざが、風紀委員長と生徒会長の手によって終わらされた後、モブ崎が深雪の兄に向けて言った。

 

「借してるなんて思ってないから安心しろ。」

 

深雪の兄がそう答えるとモブ崎が深雪の兄の方を向いた。

 

「僕の名前は森崎駿。お前が見抜いた通り森崎家の本家に連なるものだ。司波達也!僕はお前を認めない!司波さんは僕たちと一緒に居るべきなんだ!」

 

「早速呼び捨てか」

 

深雪の兄が軽く受け流すと、モブ崎はくっ!って言ってどこかに歩いていった。

………ダサいな、モブ崎。

 

そのモブ崎一行を見送ったあと、ほのかの一言で一緒に帰る事になった。

 

 

 

 

 

「それじゃあ深雪のCADは達也さんが調整しているんですね」

 

「ええ、お兄様にしてもらうのが一番だもの」

 

帰り際、そう言う話をしていた。

まぁ、実際、CADってのが分からない私だが。

そうだ。聞いてみよう。

 

「ねぇ、達也くん。」

 

「なんだ」

 

「CADって何?」

 

「「「「「「「は?」」」」」」」

 

………そんなに驚く事だろうか。

 

「だから、CADって何かなっと思って」

 

「………本気で言ってるのか?」

 

「そりゃ、知ってたら聞かないよ。みんなの言い方からすれば魔法師として当たり前なものだとは思うけど」

 

「「「「「「「……………」」」」」」」

 

一つの沈黙の後、雫とほのかが思い出したように声をあげた。

 

「あ、そう言えば、日向って元々普通の学校に通ってたんだっけ?」

 

「そう、魔法なんて縁も所縁もないものだったんだけど、

いきなり魔法に適性があるとか言い出したからね」

 

「魔法を使い出したのはいつなんだ?」

 

「半月前ぐらいからかな」

 

「は、半月!?」

 

「うん。元々この目もあって多少はあったらしく、兄によると魔法を使えないように少し細工したって言ってた。強大だったらしいよ。兄曰く」

 

「な、なのに一科生、だと……」

 

「うん。」

 

全員驚愕を免れなかったようだ。

 

「分かった。それなら説明しよう。CADはCasting Asisstant Device。術式演算補助機の略称で、ホウキや

デバイス、アシスタンスなど呼ばれている。サイオン信号と電気信号を相互変換可能な合成物質の「感応石」を内蔵した、魔法の発動を補助する機械だ。実質、魔法師には必需品だな」

 

「へぇ、そうなんだ。あ、私、こっちだから、達也くん、って言いにくいから達也、解説ありがとうね」

 

私は手を振りながら離れていった。

私にもCADはあるかあのバカ兄貴に聞いてみよう。

 

 

 

 

 

「ただいま」

 

私が家に帰ってそう言うと二階から兄貴が降りてきた。

 

「おかえり、ちょうど良かった。ひなに渡しておきたいものが出来たんだ」

 

「…………指輪とかだったらぶっ飛ばす」

 

「違うよ!?CADだよCAD!」

 

「え?本当?」

 

「そう、名づけて「Angel Player」だ」

 

「何?私に神に復讐しろと?」

 

「いや、マンガじゃなくて。いや、元はマンガだけど。どちらかというと神側だったね。話が逸れた。このCADは世界でただ一つのCADだよ。もちろん、ひな専用のね?」

 

「専用、ねぇ。で?どうやって使うの?」

 

「このCADは、音声認識で魔法が使えるんだ。えっと、このCADはリストバンド型に作ってるから、どこにつける?

手首でも、普通に首でもいいけど」

 

「音声認識、なんだよね?」

 

「そうだよ」

 

「じゃあ首で、小さな声でも使えそうだから」

 

「そう、ぐへへ、僕が着けてあげ、ぐふっ!」

 

「いらん事言わず渡しなさい」

 

「はい……」

 

と、セクハラしてこようとした兄の腹を蹴り上げながらCADを受け取り、首に巻く。

 

「で?どうするの?ここから」

 

「そうだねぇ、とりあえずどっちでもいいから手を前に出してこう言って。「ガードスキル handsonic」って」

 

「分かった。」

 

私は手を前に出して、「ガードスキル handsonic」と言うと、

 

「わっ!」

 

にゅ、っと手首から剣らしきものが出てきた。

 

「すごい。これどうなってんの?」

 

「これは周りの空気を固める魔法だよ。正確にはウォーターカッターって言ったほうが分かりやすいかな?ひなの言葉に応じてそのCADが勝手にベクトルを操作して固めてるんだよ。硬度は鉄にも負けず、ダイヤモンドも切れるくらい切れ味あるはずだよ。僕の計算上」

 

「へぇ、これはすごいね。私のベクトルを操作する力があっての魔法ってことだね」

 

「そう言うこと」

 

「他にはどんなことできるの?」

 

「handsonic ver.2とdestortion、howlingとAngelswing、delayぐらいかな。」

 

「……能力説明を」

 

「分かった。destortionは簡単に言えば障壁。ベクトルを操作する位置を体の周りから少し離れたところまで伸びて

銃弾とか爆発とかが防げる。接近戦は防げないからその時は解除してね」

 

「うん。」

 

「Angelswingはそのまま、天使の羽が背中から生えてくる。動かし方は肩甲骨を動かす意識で、まぁ、これは練習してくれ。howlingはhandsonicを二つ出してそれを共鳴させることによって周囲に超音波を発生させるもの。まぁ、カテゴリー的に言えば振動系だね。delayは魔法的に言えば自己加速術式。相手の攻撃を流れるように回避できるよ。見方によれば瞬間移動している様に見えるかもね。大体分かった?」

 

「うん。ありがとう「それと」……何?」

 

「あまり「破壊」と「ベクトル操作」を人前で見せたり言ったりしないこと。それをしない様にするためにそのCADを作ったんだからね」

 

「え?なんで使ったらいけないの?使ったら「日向」……」

 

「……分かったね?」

 

「……分かった」

 

 

こうして私はCADを手に入れた。

 

 

 




どうでした?
タグにAngelbeats入れるの忘れてた…………。
技名だけですけどね。
魔法理論はこんなのかなって感じです。

さて次回は生徒会です。

日向を入れるか入れないかで迷ってます。

次回もお楽しみに。


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入学編 その4

どうも。
今回は生徒会です。
考えた結果、オリ主は生徒会に入れることにしました。

それではどうぞ。


兄からCADを受け取った、次の日。

しっかり首に巻いて登校する。

そして席に座った時、深雪に声をかけられた。

 

「おはよう、日向」

 

「おはよう、深雪」

 

「日向に伝言なんだけど今日のお昼は空いてるか?って七草会長が」

 

「え?そりゃ空いてるけど、なんで?」

 

「一緒にお昼を食べようと誘われたの。日向もね。それでどう?大丈夫?」

 

「オッケー。じゃあその時に言ってね」

 

「分かったわ」

 

深雪との会話が終わるとタイミングよくチャイムが鳴った。

 

 

 

 

そして、授業が終わって昼休み。

今更だけど、一科生とニ科生の違いは教師の有無だと気付いた。

私はカバンから弁当箱と水筒、懐中時計を取り出して、深雪に近寄る。

 

「じゃあ行きましょうか」

 

「うん、そうだね」

 

「その前にお兄様と一緒に行きたいのだけれどいいかしら?」

 

「うん、いいよ」

 

そう言ってE組に達也を呼びに行き、深雪たちに連れられて生徒会室へ向かう。実際、生徒会室なんて場所が分からないからね。

そして、生徒会室に着いた。

達也がノックをする。

 

「1-Eの司波達也です。」

 

「どうぞ」

 

中から声が聞こえたので入っていく。

 

「「「失礼します」」」

 

そうお辞儀をしながら言う。

顔を上げると深雪に見入っていた。

一人の女生徒の咳込みで我に返っていた。

 

「どうぞ座って」

 

その声を聞き、達也を挟んで左右に私と深雪が座る。

で、生徒会長の言葉を待つ。

 

「さて、入学式の時に紹介しましたけど念の為、私の隣に座っているのが、会計の市原鈴音。通称リンちゃん」

 

その紹介が気に入らなかったのかため息をついていた。

 

「私のことをそう呼ぶのは会長だけです。」

 

そう返す市原先輩。

いつもこんなやりとりをしているのか、さっと次の紹介に入っていた。

 

「その隣は知っていますね。風紀委員長の渡辺摩利」

 

「よっ」

 

そう軽く返事をしながら手を挙げた。

 

「それから、書記の中条あずさ。通称あーちゃん」

 

「会長!お願いですから下級生の前であーちゃんはやめてください!私にも立場というものがあるんです!」

 

そう可愛らしく怒る小さな先輩。

身長に関しては私もそんなに変わらないけど。

 

「そして、もう一人。生徒副会長の範蔵君を加えたメンバーが、今期の生徒会役員です。」

 

「私は違うがな?」

 

そう答える渡辺先輩。

そりゃ、生徒会と風紀委員は違うだろう。

普通の学校基準だけど。

 

「渡辺先輩」

 

「なんだ?」

 

そんなことを考えていると深雪が渡辺先輩に声をかけた。

 

「そのお弁当はご自分で作られたのですか?」

 

どうやら注目点は弁当らしい。

 

「そうだが、意外か?」

 

「いえ、少しも」

 

その時にパッと唯一の男子、達也が割って入って、即座に否定した。

 

「普段、料理しているかは手を見れば分かりますから」

 

そう言って渡辺先輩の、手を見ると絆創膏が貼られていた。それもたくさん。渡辺先輩は達也に手を見られ、恥ずかしそうに手を隠す。

 

「そうだ!お兄様、明日から私たちもお弁当にしませんか?」

 

と、不意に深雪が声を上げた。

渡辺先輩の弁当を見て、火がついたのかな?

 

「それは魅力的な話だけど、二人きりになれる場所がねぇ」

 

と、達也がそんな答えを返していた。

……お前らは恋人か。

 

「兄妹と言うよりは恋人同士の会話ですね。」

 

私と同じことを考えたのか市原先輩がツッコミを入れた。

 

「そうでしょうか?」

 

そう言いながら、深雪の頭を撫でながら、

 

「まぁ、考えたことはありますよ。深雪と血の繋がりが無ければ恋人にしたいな……と。」

 

そう言った。

深雪はうっとりしながら達也を見つめていたが、

達也はすっと普通の顔に戻り、

 

「もちろん、冗談ですが」

 

「「ええ!?」」

 

真顔でそう言い放った。

それに深雪と中条先輩が声を上げた。

まぁ、端から見れば桃色な空間になっていたから仕方なくもない。達也はその驚きの声に首を傾げていた。

その横で深雪は小さくため息をついていた。

 

 

 

 

 

 

「そろそろ本題に入りましょうか」

 

そう七草会長が言った。

その本題は深雪を生徒会に勧誘すること。

ここ数年は毎年新入生総代には入ってもらっているらしい。其処で深雪は入らせてもらうが兄も一緒には駄目かと、問うがニ科生は生徒会には入られないらしい、これは不文律じゃなく規則だと。深雪はしぶしぶ了解して生徒会に入った。

 

「あと、逆桐さんにも生徒会に入ってもらいたいんですが」

 

………え?

 

「わ、私ですか?」

 

「ええ。駄目かしら?」

 

「ええっと、私を選んだ理由を聞いていいですか?」

 

「理由はそうですね。成績が良かったから、でしょうか」

 

「私の成績が良かった?魔法理論0点なのにですか?」

 

「ええ、その魔法理論のテストは鉛筆で答えたあとがないから元々、知らなかったんじゃないかなって思ったんです。知っていたらオール満点も目指せたのかな、と思って。あと、魔法の成績も良かったから」

 

「………分かりました。精一杯やらせてもらいます」

 

私がそう答えると嬉しそうに手を叩いて、にっこりと笑われた。その時、渡辺先輩が挙手。何でも生徒会推薦枠の風紀委員が空いているとのこと。其処に達也を入れればいいんじゃないか、と七草会長に提言。七草会長は盲点だったと机を叩いて達也を風紀委員にすることを提案。しかし達也が拒否。達也曰く、一科生の生徒が二科生に取り締まられるのは反感を買う。さらに、風紀委員は問題が起これば力ずくで抑えねばならないはず、と言い力関係は任せろと渡辺先輩が言う。渡辺先輩が達也にして欲しいことは喧嘩を力ずくで止めるのではなく、達也の魔法の起動式を見て、事前に魔法の起動を止めるという役割らしい。ここで話が平行線をたどり、チャイムが鳴って放課後にまたあるらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうでした?
そう言えばCADを預けるのを忘れてました。
次回ははんぞー先輩が出てきます。


次回もお楽しみに


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入学編 その5

どうも。
今回は服部さん初登場です。
日向の呼び方は、

七草真由美は七草会長。
渡辺摩利は渡辺先輩。
市原鈴音は市原先輩。
中条あずさはあーちゃん先輩。
服部刑部は服部さんです。

それではどうぞ


移り変わって放課後。

私と深雪、達也はまた生徒会へ来ていた。

私たちはノックをして生徒会室に入ると、会長達の他に一人の男子生徒が目に入った。

すると、一人の男子生徒がこっちに歩いてきて手を出した。達也をひと睨みして。

 

「初めまして、生徒副会長の服部です。司波さん、逆桐さん、生徒会へようこそ」

 

私たちは手を取らず頭を下げる。

服部さんは少し面食らった顔をしたが、すぐ戻り元の場所に戻って行った。

 

「早速だけど、あーちゃんとお願いね。」

 

「はい……。」

 

中条先輩はやや引き攣った笑みを浮かべる。

私と深雪は中条先輩に教えてもらうために近づく。

 

「さて、私たちも移動しようか」

 

「どちらへ?」

 

達也が少し疑問の声を掛ける。

 

「風紀委員会本部だよ。色々見てもらいながらの方が、分かりやすいだろうからね」

 

渡辺先輩が生徒会の隅の方にあった扉へ歩いていく。そして、その扉を開けようとした時、

 

「渡辺先輩、待ってください」

 

服部さんが待ったを掛ける。渡辺先輩は少し笑みを浮かべながら、茶化すように言葉を返した。

 

「何だ〜?服部刑部少丞範蔵副会長?」

 

「フルネームで呼ばないでください!」

 

服部さんは照れ混じりに慌て始める。そんな様子を見ながら、渡辺先輩は笑いを噛み殺しながら、面白がっていた。

 

「じゃあ、服部範蔵副会長」

 

「服部刑部です!」

 

「それは名前じゃなくて官爵だろ?お前の家の」

 

「今は官位なんてありません!学校には服部刑部で届けを…って、そういうことが言いたいのではなく!」

 

少し渡辺先輩と服部さんのやりとりが続いて、

渡辺先輩のやや、ボケの入り混じった言葉に、息を荒げながら服部さんが反論を言う。そして、服部さんが一層声を荒げながら渡辺先輩の言葉に反発する。それを聞いた渡辺先輩が疑問の声を上げた。

 

「じゃあ、なんだ?」

 

その声が聞こえると、服部さんの表情が落ち着きを取り戻していく。

 

「私は、その一年を風紀委員に入れるのは反対です。過去

、雑草を風紀委員に任命した例はありません。」

 

雑草と聞こえた瞬間、渡辺先輩が眉を顰める。花冠、雑草という呼び方は禁止だからだ。そのまま、渡辺先輩は服部さんの方へと向き直り、低い声で服部さんに言葉を放った。

 

「二科生を雑草と呼ぶのは禁止されている。私の前で言うとはいい度胸だな」

 

「取り繕っても仕方ないでしょう。それとも、全校生徒の3分の一以上を摘発するつもりですか?」

 

その言葉に渡辺先輩は押し黙ってしまう。

実際、一科生と二科生では埋めようのない溝があるのだろう。それによって一科生は二科生を蔑んだ目で見るのも事実で、二科生も言い返さずに、黙殺している。この現状がこの学校の大きな課題なんだろう。

私にはよく分からないけど。

 

服部さんは渡辺先輩の目を見たまま、訴えるようにして右手を拳の様にして、右胸の前に掲げる。そのまま、服部さんは言葉を続けた。

 

「風紀委員は、ルールに従わない生徒を実力で取り締まる役職です!実力で劣る雑草には務まらない!」

 

「確かに実力主義だが、その実力にもいろいろあってな………」

 

そう言いながら達也を指差す。

 

「達也君には、起動式を直接読み取り、発動される魔法を正確に予測する目と頭脳がある!」

 

その声を聞いた服部さんの顔が、驚愕の色に染まる。驚いた服部さんは即座に反論するかの様な口調で、渡辺先輩に訴える。

 

「まさか!?基礎単一工程の魔法式だって、アルファベット三万字相当の情報量があるんですよ!?それを一瞬で読み取るなんて、出来る筈がない!!」

 

「常識的に考えれば出来る筈なんてないさ。だからこそ、彼の特技には価値がある。」

 

そのまま服部さんの方へと向き直り、諭すかの様な声音で服部さんに言葉を告げる。対する服部さんは、いまだに信じられないと言った素振りで、顔を歪ませていた。

 

「彼は、今まで罪状を確定出来ずに、軽い罪で済まされてきた未遂犯に対する、強力な抑止力になる。それに、私が彼を委員会に欲する理由は、もう一つある。」

 

「………?」

 

服部さんが虚ろな視線を渡辺先輩に向けて、疑念の色を浮かべる。渡辺先輩はそれを確認して、言葉を続けた。

 

「お前の言う通り当校には、一科生と二科生に感情の溝がある。一科の生徒が二科の生徒を取り締まり、その逆はないと言う構造は、この溝を深める事になっている。私が指揮する委員会が、差別意識を助長するのは、私の好む所ではない。」

 

「くっ…………!!」

 

服部さんは有り得ないと言わんばかりの表情で、七草会長の方へと振り返った。そのまま睨みつけるかの様な表情で、口を開く。

 

「会長!私は副会長として、司波達也の風紀委員就任に反対します!」

 

そして、即座に取り乱した姿勢を整えて、背中に両腕を回して、直立不動の姿勢を取る。

 

「魔法力のない二科生に、風紀委員は務まりません!!」

 

「待ってください!」

 

その声を遮る様に深雪が声をあげた。

 

「兄は確かに実技の成績が芳しくありません。ですが、それは評価方法に兄の力が適応していないだけなのです!実践ならば兄は誰にも負けません!」

 

「司波さん……」

 

服部さんは深雪の決死の訴えを聞いて、僅かに動揺の表情を見せる。深雪に決死の表情でここまで言われるとは思っていなかったのだろう。だが、直ぐに冷静さを取り戻し、深雪に向き直って言葉を告げる。

 

「魔法師は事象をあるがままに、冷静に、論理的に認識できなければなりません。不可能を可能にする力を持つが故に、社会の公益に貢献する奉仕する者として、自らを厳しく律する事が求められています。魔法師を目指す者は、身贔屓に目を曇らせる様な事があってはならないのです。」

 

「お言葉ですが、私は身贔屓に目を曇らせて等おりません!」

 

服部さんの言葉に我慢が出来なかったのだろう、深雪が声を上げて服部さんに反発する。頬は薄ら朱に染まっている。

 

「お兄様が本当の力を持ってすれば―――」

 

深雪が堰を切ったかの様に言葉を吐き始めた所で、目の前に、深雪の言葉を遮る様に手が出される。深雪はそれに驚いて言葉を止めてしまう。深雪の目の前に手を差し出したのは、達也だった。達也は後ろに居る深雪を、まるで諫めるかの様な視線で見詰める。

 

深雪は未だに何か言いたげだったが、達也の視線を受けて渋々口を閉ざした。そのまま達也は長机に沿って歩き始める。その最中に両手を使って、緊迫とした空気の最中緩み始めているネクタイを締め直した。

 

「服部副会長……」

 

そのまま窓際まで歩み寄ってから、黄昏の夕焼けの光を浴びつつ、達也が服部さんに呼び掛ける。その声を聞いた服部さんは直立不動の体勢を取っていた姿勢をやや強張らせながら、達也の声に応じる。そして、それを確認した達也は服部さんの方へと向き直り、驚愕の言葉を発した。

 

「俺と模擬戦をしませんか?」

 

 

 




どうでしたか?
次回は出来れば日向の戦闘シーンも書きたいと思います。

次回もお楽しみに。


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入学編 その6

どうも。
今回は少しだけ、戦闘シーンあります。
うまく書けてるか、不安です。


「俺と模擬戦をしませんか?」

 

そう達也は言った。

それを聞いた服部さんはとても怒ってる。

普通に考えたら二科生が一科生の先輩に戦いを挑むのは無謀だろう。

 

「思い上がるなよ………!補欠の分際で!」

 

その言葉を聞いた達也はふっと笑う。

 

「何がおかしい!」

 

「さっきご自分でおっしゃってたじゃないですか。魔法師は冷静を心掛けるべき、でしょう?」

 

さらに怒りを買う様に言って、少し後ろを見る。

 

「別に風紀委員に入りたい訳ではありませんが、深雪の目が曇っていないと証明する為にもやむ終えません」

 

その言葉を聞いた服部さんの怒りが頂点に達していた。

こんな状態。目で見なくても分かるね。

 

「良いだろう!身の程を弁える必要性をたっぷりと教えてやる!」

 

そうして、達也VS服部さんの勝負が決まった。

二人は何かの紙に承諾して書き込む。

 

「あ、そうだ。逆桐の実力も見たいから。これにサインしてくれ」

 

…………は?

 

「え?わ、私も戦うんですか!?」

 

「ああ、先に断っておくが真由美。こいつを一週間の部活紹介の時の風紀委員活動に借りて良いか?」

 

「良いわよ?」

 

「ありがとう」

 

と、勝手にトントン拍子で決まっていった。

 

何やらもう反論できない様になってる……!

 

私は諦めてそっとため息をついた。

 

 

 

 

そして第三演習場にやってきた。

先に達也VS服部さんの勝負をするということなので、

眼鏡を少しずらして見ておく。

達也の意識の波長、ほぼないじゃん。

感情も薄いし、凄いな、軍人かな?

いや、軍人でも、もう少し感情もあるとも思うんだけどな。

 

そんな思考に耽っていると、試合の流れの説明があった。

なんか色々言っていてよく分からなかったが、要は直接攻撃と打撲以上の怪我を負わせる魔法は禁止。そういう事だ。

服部さんの方を見てみると、大いに油断していた。

達也には相手が務まらないほど、相当勝てると思い込んでいるんだろう。

あさはかなり……。

 

結果、達也が一瞬で勝った。

文字どうり一瞬で、渡辺先輩に自己加速術式を予め用意していたのかと聞かれ、身体的な技術だと説明。

九重なんちゃら先生に教えを受けていると言い、他の人たちは驚いていた。

勝因は、波の合成?らしい。

その後魔法の理論を言っていたが何を言っているのか分からなかったので割愛します。

 

「さて、今度は私らの番だな」

 

とうとう私が戦わなければいけない時が来た。

はっきり言って勝てる要素が見当たらない。

誰かに剣道なり体術なりの教えを受けたことはない。

さらに魔法の使い方もいまいち分からない。

…………詰みである。

 

言っていても始まらないので、警棒を取り出そうとするが、そう言えば打撲させてはいけなかったのでしまう。

 

「ああ、武器は何使ってもいいぞ?そのくらいのハンデは必要だろう。」

 

そう聞いたので、わたしは普通に立つ。

 

「良いのか?さっきの警棒を使わなくて。武装一体型CADだろ?」

 

「武装一体型CAD?なんですか?それ」

 

………全員の空気が止まった。

 

「もう、始めましょう」

 

私がそう言うと思考を取り戻した様に声をあげた。

 

「それでは、始め!」

 

「ガードスキル handsonic」

 

私はそう呟いて剣を形成して迫る。

 

「音声認識!?」

 

何やら驚いていたがスルーする。

私は縦に振りかぶって振り下ろし、その勢いのまま前中しながら踵落としをする。

 

「くっ!」

 

ハンドソニックは避けれていたが、踵落としは避けれなかった様で両手をクロスして防いでいた。私はそのまま、左足でジャンプしながら回し蹴りをし、そのまま蹴り飛ばして着地する。

 

「いつつ、なかなか動けるな。」

 

「それはありがとうございます。」

 

「私からも行くぞ!」

 

そう言って渡辺先輩は走ってきて右ストレートを放ってくる。それをハンドソニックをしていない手で防ぐが、渡辺先輩が手を引いて横蹴りをしてくる。それを防げず、思わず座り込む。

そこにもう一度前蹴りが来たので横に転がって眼鏡を達也の方に投げる。

達也は何事か、みたいな表情を浮かべたがしっかりと眼鏡を受け取ってくれた。

 

「おい、逆桐。眼鏡外して大丈夫か?霊視放射光過敏症なんだろう?」

 

と、渡辺先輩も気を使ってくれる。

 

「大丈夫です。外してからが本気ですから」

 

私はそう答え、全力で走って行ってドロップキックをする。渡辺先輩は体ごと避け、畳み掛ける様に迫ってくる。

私はバク転をしながら、そのついでにサマーソルトキックを放つ。渡辺先輩は驚きながらも軽々と避ける。

そして、ハンドソニックを構え突撃し、もう少しで防がれるところでハンドソニックを解除。

 

渡辺先輩がその一瞬。

意識が揺らいだので、手を前に出して、叩く。

すると、渡辺先輩はふらっとして倒れた。

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、疲れたー」

 

試合が終わり、壁にもたれかかりながら水を飲む。

 

「ねえ、日向ちゃん」

 

日向ちゃん?と思いながら七草先輩の方を向く。

 

「摩利を倒した、あの柏手。何かの魔法を使ったの?」

 

「?いえ、ただの猫だましですが?」

 

「猫だまし?」

 

「はい。古くには、相撲、と呼ばれた競技があったらしく、その試合の時に使ったそうです。私のは詳しくは違いますが」

 

「え?違うの?」

 

「はい。その相撲、でする猫だましはあくまで思考を一時停止させるだけです。ですが、私のは意識を麻痺させるものですから」

 

「麻痺?やっぱり魔法かしら?」

 

「いえ、そうではなくて。私の目、霊視放射光過敏症なんですが、他の人と違うんです」

 

「違う?」

 

「はい。私のは普通の霊視放射光過敏症と一緒の性質と、人の感情や意識の波長が見えるんです」

 

「感情が見える!?」

 

「え?あ、はい。そうやって驚くのは赤です。普通の状態は無色です。胸のあたりに光が見えて、その光で判断してます。例えば、嘘をつけば黒。誰かを好きだー、って思えばピンクです。深雪の様に」

 

私が言うと、顔が真っ赤になった深雪。

そう言うところは見なくても分かる。

 

「ああ、感情の点で言えば眼鏡を外さなくても見えます。意識の波長となれば別ですけど。………そろそろ用があるので帰ってもいいですか?」

 

「………。ええ、もう今日は大丈夫です。ありがとうね、日向ちゃん」

 

その言葉を聞いて、達也に眼鏡を返してもらって、礼をして第三演習場を出た。

 

 

 

 

 

 

 




どうでした?
次回は風紀委員の仕事です。


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入学編 その7

どうも。
今回は風紀委員の仕事、1日目です。
二つに分けていきたいと思います。


服部さんと達也、私と渡辺先輩の模擬戦をした翌日。

私は風紀委員の手伝いをする為に風紀委員会本部に来ていた。

そこには風紀委員の上級生の人たちやあのモブ崎もいる。

私たち全員が揃ったのを確認して渡辺先輩が話を始めた。

 

「さて。今年もまた、あの馬鹿騒ぎの一週間がやって来た。風紀委員会にとっては新年度最初の山場になる。

この中には去年、調子に乗って大騒ぎした者も、それを鎮めようとして更に騒ぎを大きくしてくれた者もいるが、今年こそは処分者を出さずとも済むよう、気を引き締めて当たってもらいたい。

いいか、くれぐれも風紀委員が率先して騒ぎを起こすような真似はするなよ」

 

「今年は幸い卒業生分の補充が間に合った。紹介しよう。立て」

 

その紹介を受けて私たちは立ち上がる。

 

「1-A 森崎駿。同じく1-Aの逆桐日向。そして1-Eの司波達也だ。なお、逆桐に関しては生徒会からの助っ人として参加してもらう。」

 

私はお辞儀をする。

しかし、数名が疑わしげにこちらを見てきた。

 

「さて、前回も説明したが、部員争奪週間は問題が多発するからな、各自単独で巡回する。勿論、新入りであっても例外じゃない」

 

「大丈夫なんですか?」

 

達也の左胸に目線が向けられたまま、二年生の男子生徒が疑問を口にした。

その表情から、別に二科生を見下しているから、というわけではなく、単に、魔法技能の劣る二科生が一人で巡回をする、ということを心配している様だった。

 

「ああ、心配ない。今年は特に優秀でな、全員使えるヤツだ」

 

摩利さんがニヤリと笑みを浮かべながら言うと、姐さんがそう言うなら、と二年生の男子生徒は引き下がった。

 

「他に言いたいことのあるヤツはいないな?」

 

「これより、最終打合せを行う。巡回要領については前回まで打合せのとおり。今更反対意見はないと思うが?」

 

渡辺先輩は全員を見渡して意見がないことを確認して少し頷く。

 

「よろしい。では早速行動に移ってくれ。レコーダーを忘れるなよ。一年生については私から説明する。他の者は、解散!」

 

渡辺先輩の一声で、全員が一斉に立ち上がり、踵を揃えて、握りこんだ右手で左胸を叩いた。

 

そこで皆散らばって行った。

 

「まずこれを渡しておこう」

 

私たちを除いた六名が出て行ってすぐ、渡辺先輩は薄型のビデオレコーダーを手渡してきた。

 

 

「今後、巡回のときは常にそのレコーダーを携帯すること。違反行為を見つけたら、すぐにスイッチを入れろ。スイッチは右側面のボタンだ。まあ、撮影を意識する必要は無い。風紀委員の証言は、原則としてそのまま証拠に採用されるからな。念の為、くらいに考えてもらえれば良い」

 

「各々の携帯端末に、委員会用の通信コードを送信しておいた。

報告の際は必ずこのコードを使用、こちらから指示ある際も、このコードを使うから必ず確認するように。」

 

「最後にCADについてだ。風紀委員はCADの学内携行を許可されているわけだが使用についても、一々誰かの指示を仰ぐ必要は無い。

状況を判断して適切に使用してくれ。無いとは思うが、一応言っておくと、不正使用が判明した場合は、委員会除名の上、一般生徒より厳重な罰が課せられることになっているからな。

一昨年はそれで実際に退学になったヤツもいる。甘く考えないことだ」

 

「説明は以上だが、何か質問はあるか?」

 

渡辺先輩の説明が終わったところで達也が質問していた。

 

「CADは委員会の備品を使用してもよろしいでしょうか?」

 

「……構わないが、理由は?釈迦に説法かもしれないが、あれは旧式だぞ?」

 

「確かに旧モデルではありますが、プロ仕様の高級品ですよ。調整は面倒ですが、設定の自由度が高く応用範囲の広い点が一部で熱狂的に支持されている機種です」

 

「……そうなのか」

 

「ええ、多分、あれを購入した人がファンだったんでしょう。バッテリーの持続時間が短くなるという欠点に目を瞑れば、処理速度も最新型並みにクロックアップできますから、しかるべき場所に持ち込めば、結構な値段がつくと思いますよ」

 

「……それを我々はガラクタ扱いしていたということか。なるほど、君が片付けに拘った理由がようやく分かったよ」

 

「コホン。まあ、備品のCADなら好きに使ってくれ。どうせ今まで埃をかぶっていた代物だし、他に誰も使わんだろう」

 

「では……この二機をお借りします」

 

「二機……? 本当に面白いな、君は」

 

「では、これで解散にする。私は部活連本部へ行かないといけないからな。各自、風紀委員としての自覚を持って行動するように」

 

渡辺先輩が話を締めくくって私たちは部屋を出た。

出て達也と同じ方向に行くと、

 

「おい」

 

モブ崎から声がかかった。

 

「なんだ?」

 

「お前、CADを二つ……………だろう!調子に乗るのもいい加減にしろ!」

 

モブ崎は何故か怒って行ってしまった。

私が達也の顔を見ると、分からないとばかりに首を振っている。

 

「そうだ。今日は一緒に行動していいかな?」

 

「ああ、構わない」

 

「ありがと」

 

こうして、私たちは風紀委員の仕事の1日目がスタートした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうでしたか?
次回は一応1日目続きです。


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入学編 その8

どうも。
更新が遅れて申し訳ありません。
ちょっと、リアルで色々ありまして……。
今回は前回の続き、1日目の続編です。

それではどうぞ!


達也と一緒に風紀委員のパトロールに出かけた私。

首にCADを巻き、腰に警棒を携えている。

達也はブレスレット型のCADを二つ持っていた。

 

今回は部活動勧誘週間のパトロールで、毎年何か揉め事があるらしく、全員が全員、部活動勧誘の為にそういった諍いが起こる。

中学ではなかった光景だ。

部活動は柔道や水泳、剣道部など普通の学校にあるものから、マーシャルアーツ部や剣術部など魔法を使った魔法科高校ならではの部活もある。

私はもう生徒会へ入ったから勧誘される事はないと思う。

 

 

 

 

さて、こうしてパトロールに出ていると早速目の前でトラブルが発生、と言うか揉みくちゃにされていた。

見ると、見覚えのある顔で、確か千葉エリカとか言う人だ。

私は横にいる達也にどうするか尋ねる。

 

「達也、どうする?」

 

「はぁ、助けるか」

 

達也はため息をつき、何かの魔法を発動、千葉エリカを囲んでいた人たちのバランスが崩れたその隙に達也は千葉エリカの手を取って走っていく。

私はその人混みを某一方通行見たくベクトルを操作してありえないほど飛び上がる。

降りるときもベクトルを操作して着地する。

体育館裏に行くと、千葉エリカがつま先を抑えて痛がっていた。

 

「……何したの?」

 

そう達也に聞いてみる。

達也はため息をつきながら、

 

「俺の脛を蹴って痛がっている」

 

そう言った。

逆に蹴った方が痛がっているわけか。

御愁傷様です。

千葉エリカは達也を恨めしそうに見て、そこから提案をした。

 

「悪いと思ってるならこの後付き合いなさいよ」

 

そう言われた達也はこちらに目を向けてくる。

私はコクンと頷き了解する。

 

 

 

 

 

そう言って千葉エリカが来たがっていたのは武道場の剣道部の演舞だった。

今、やっている女の人が壬生紗耶香先輩だそうで、千葉エリカ曰く中学より桁違いに強くなっているらしい。

そうやって剣道部が演舞をしている時に数名の男の人達が割り込んで行った。

 

「桐原君!剣術部の時間まであと1時間以上あるでしょ!?どうしてその時まで待てないの!?」

 

「壬生、俺は手伝ってやったんだぜ?こんな決まり切った演舞を盛り上げてやってんだ」

 

桐原と呼ばれた生徒が言うと周りの男子が笑う。

………ああ言うの見ると腹が立つ。

 

「心配するなよ、壬生。剣道部のデモだ、魔法は使わないでおいてやるよ」

 

「剣技だけであたしに敵うと思っているの? 魔法に頼り切りの剣術部の桐原君が、ただ剣技のみに磨きをかける剣道部の、このあたしに」

 

「大きく出たな、壬生。だったら見せてやるよ。身体能力の限界を超えた次元で競い合う、剣術の剣技をな!」

 

壬生先輩の方には、防具をつけていない相手へ打ち込むことに対する躊躇もあっただろう。

先に動き出したのは、桐原と呼ばれた生徒。

いきなりむき出しの頭部目掛けて、竹刀を振り下ろしたのだ。

竹刀と竹刀が激しく打ち鳴らされ、二拍ほど遅れて悲鳴が生じた。

竹と竹が打ち鳴らされる音、時折金属的な響きすら帯びる音響の暴威。

二人が交える剣撃の激しさは、既にこの体育館の雰囲気を殺伐としたものに塗り替え、観客は声を出すことさえ出来ずに、その試合を固唾を呑んで見守る。

 

試合は壬生先輩が優勢。

そしてこの試合初めて雄叫びをあげながら突進していく桐原と呼ばれた生徒。

そして、両者は真っ向からの打ち下ろし。

 

桐原と呼ばれた生徒の竹刀は壬生先輩の左上腕を捉え、壬生先輩の竹刀は桐原と呼ばれた生徒の右肩に食い込んでいる。

桐原と呼ばれた生徒は真剣なら致命傷。対して沙耶香の方は行動不能に陥る程ではない。

明確なルールの決まった試合ではなかったが、勝者がどちらなのかは、誰から見ても明らかだった。

 

「……真剣なら致命傷よ。あたしの方は骨に届いていない。素直に負けを認めなさい」

 

「は、ははは……」

 

凛とした表情で勝利を宣言する壬生先輩。

その壬生先輩の指摘が正しいことを、感情が否定しようとしても、剣士としての意識が認めてしまっていることに、桐原と呼ばれた生徒は顔を歪める。

そして、突如桐原と呼ばれた生徒が虚ろな笑い声を漏らす。

その笑い方に壬生先輩は危険だと思ったのか改めて構え直し、切っ先を真っ直ぐに向け、桐原と呼ばれた生徒を鋭く見据えている。

 

「真剣なら?俺の身体は、斬れてないぜ?壬生、お前、真剣勝負が望みか?

だったら……お望み通り、『真剣』で相手をしてやるよ!」

 

そう言って、桐原と呼ばれた生徒が竹刀から離れた右手で、左手首を抑えた。

その突如、ガラスを引っ掻いたような不快な騒音が、竹刀から、聞こえた。

一足跳びで間合いを詰め、左手一本で竹刀を振り下ろす桐原と呼ばれた生徒。

壬生先輩はその一撃を受けようとせず、大きく後方へ跳び退った。

 

あの生徒が言ったことが本当なら竹刀では受けれない。

 

壬生先輩の胴に、細い痕が走っている。

桐原と呼ばれた生徒の竹刀が、かすめていたみたいだ。

それだけで、固い胴に痕が走ったのである。

壬生先輩は冷や汗を流しているだろう。

 

もう一撃、桐原と呼ばれた生徒が竹刀を振り下ろす。

私はその間に割って入り、竹刀を正面から素手で掴んでベクトルを操作し握り潰した(・・・・・)

そして、前中をしながら桐原と呼ばれた生徒の頭に踵落としを決める。

 

「こちら、第二小体育館。逮捕者一名。気絶していますので担架をお願いします」

 

そう淡々と報告する達也。

……おお、仕事が早い。

 

「魔法の不適切使用の為、桐原先輩にはご同行願います」

 

気絶してるけどね。

 

「どうして桐原だけなんだよ!剣道部の壬生だって、同罪じゃないか!」

 

「魔法の不適切使用の種、言いましたが?そちらの壬生先輩は魔法を使用しておりませんので、今回は桐原先輩だけの逮捕となります。」

 

達也の告げた言葉を聞いた全員が、一瞬で口を噤んで押し黙った。先程の出来事を一部始終見ていた者であれば分かり切っている事実だからだ。

 

「ちっ!……ふざけんな!」

 

さっきから言葉を投げ掛けていた男子生徒が、正論ばかりを言われて堪え切れなくなったのか、逆上して殴り掛かってくる。私は達也と背中合わせになりながら、言葉を交わす。

 

「そっちは頼んだよ?」

 

「分かった」

 

そう短く交わして、私は警棒を取り出し走る。

殴りかかってくる人の手を警棒で防ぎ、空いてる手でその手を持って引っ張る。後ろ向きになったところで膝カックンをして前に蹴り飛ばす。

蹴り飛ばした時に後ろから殴ってきたのをその場で回転しながら避け、その手を掴み回転の勢いのまま足をかけて投げる。

もう一人は投げた途端に来たので警棒を振り上げて、手を離し柏手を打つ。

すると、その生徒は倒れた。

 

 

 

全員が倒れたのを見て、警棒をしまった。

 

 

 

 

 




どうでしたか?
手伝いとして頑張ってやっております。

次回もお楽しみに


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入学編 その9

投稿がとても遅れてしまい申し訳ありませんでしたぁ!
ついつい、読むことに時間を使ってしまいました。


さて、今回は報告とその後です。

それではどうぞ。


「――以上が剣道部乱入事件の顛末です」

 

閉門時間間際の部活連本部で、本日遭遇した剣道部の騒動について報告を行った、私達の前には三人の男女。

向かって右に生徒会長、七草真由美。中央に風紀委員長渡辺摩利。そして左の男子生徒が、部活連会頭、十文字克人だ。

身長は一八五センチ前後。見上げるような大男、という訳ではないが、分厚い胸板と広い肩幅、制服越しでも分かる、くっきりと隆起した筋肉で、巌のような男だった。

 

「それで、諍いが起こった原因については見ていないんだな?」

 

「はい」

 

「何故最初から仲裁に入らなかった?」

 

「仲裁に入らなかったのは、両者が主張している問題の現場を見ていなかったからです。それに、怪我程度で済むのなら、それは自己責任だと判断したからです」

 

「ふむ。……適切な処置だな。それで、魔法を使ったのは本当に桐原だけなんだな?」

 

「はい」

 

正確には魔法を発動出来たのが桐原先輩だけだったんだけど、発動する前に蹴り飛ばしてたし。発動させる機会も与えなかったし。

 

「それで、十文字。風紀委員はこの件に関して懲罰委員会に持ち込むつもりはないが、お前は如何だ?」

 

「俺も風紀委員の処置に従おう。せっかくの温情を無駄にするつもりはない」

 

「それで、達也くん怪我はないの?」

 

「俺はありません」

 

「日向さんは?高周波ブレードを素手で掴んだって聞いたけど」

 

私は掴んだ方の手を見る。

見ると、血が流れていた。

 

「大丈夫です」

 

達也から、嘘つけ、みたいな視線を送られるが無視する。

 

「そうですか。では今回の争いの話はこれで終わりです。二人ともご苦労様でした。今日はもう上がっていいわよ」

 

「「失礼します」」

 

二人同時に礼をして部屋から出る。

カバンを教室に取りに行こうと達也とは逆方向に歩き出すが、

 

「待て」

 

いきなり肩を掴まれる。

特に何も思わなかったがとりあえず声だけ上げてみる。

 

「きゃー、達也のエッチっ」

 

「そんな棒読みで言われてもな」

 

「ま、そうだよね。で、何?」

 

「手は大丈夫か?血が出てただろ」

 

「さっきも言ったけど大丈夫だよ。こんな傷、すぐ治るよ」

 

「一応、保健室に行っておけ」

 

「はいはい」

 

達也の説教じみた言葉を軽くあしらって教室に向かう。

実際、顔を顰めるのを我慢してる。

だって、手を切られたら痛いじゃん。

それを我慢して教室に入りカバンを取って部屋から出る。

 

……一応保健室に行っておくか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

保健室に行って、第一高校保険医、安宿玲美先生に包帯を巻いてもらった。

更に、

 

「女の子なんだから、傷は残っちゃ嫌でしょ?我慢しちゃダメ」

 

と小言ももらった。

傷を治す魔法とかないかなぁ、なんて考えながら歩いて昇降口を通ると、

 

「逆桐」

 

達也たちいつものメンバーがいた。

怪我のことがバレないようにそっと隠す。

 

「みんな如何したの?」

 

「お兄様が日向も待ってあげようと言ってくれたの」

 

「それで達也くんが奢ってくれるって言うんだけど逆桐さんも来ない?」

 

「それはいい。私も行くよ。ありがとう、達也。ゴチになります」

 

「……お前も俺と一緒で遅れてきたんだがな。まあいい、それじゃ行くか」

 

そう達也が切り出して歩き始めた。

そうして、店に着いて注文をする。

そこで、西城レオンハルトが今日の争いについて聞いてくる。

 

「そう言えば達也、剣術部の相手は殺傷性Bランクの魔法を使ってきたんだろ?よく無事だったな」

 

「『高周波ブレード』は有効範囲の狭い魔法だ。触れなければ如何とでも対処できる。刃に触れられないだけで、それ以外は真剣相手と対処は変わらない。が、逆桐は『高周波ブレード』を真正面から受けてたな」

 

「だ、大丈夫なのかよ。真正面から受けたって……」

 

こちらを向いて心配そうに見てくる。

実際、とても痛いがあっけらかんと話す。

 

「大丈夫大丈夫。手を怪我したぐらいだから」

 

「って怪我してんじゃねえか!」

 

「だって、あの魔法がどんなものか知らなかったんだから。名前しか聞いたことが無かったし」

「魔法を無効化する前に飛び出してたからな」

 

「それを早く言って欲しかったよ……」

 

達也が魔法を無効化出来ると今聞いて項垂れる。

 

「それよりもこの子に魔法を教えるのが先決じゃない?見てて危なっかしいわよ」

 

「そうだな。だが、今日はもう遅いし帰るか」

 

「そうですね」

 

そう言って、勘定を達也に全てお任せして、みんなと分かれる。

……家に帰ると兄が面倒そうだな。

 

 

 

 

 

実際に面倒くさかった。

心配してくれるのはありがたいけど、いちいち喚くし、終いには桐原先輩を襲いに行こうとしてたし。

怪我をするもんじゃないなぁ。

兄がとても面倒くさい。

 

静かにさせる為に思いっきり木刀で殴る。

 

「痛いよ!なんで殴るの!?」

 

「うるさいから。そこまで大きな怪我じゃないし、そこまで騒がないで」

 

「怪我の大きさの問題じゃないんだよ!怪我をしたこと自体が問題なんだ!」

 

「じゃあ、怪我を治す魔法とか作ってよ」

 

「……」

 

その手があったか!みたいな感じで顔をあげる。

……本気にしてしまった。

 

「分かったよ、ひな!今すぐ作ってくるっ!」

 

そう言って階段を駆け上がっていった。

あまり期待はしていないので、騒がしかったことにため息をついた。

 

 

 




どうでしたか?
達也がキャスト・ジャミングを使っていないので説明はカットしました。アンティナイトも出てきませんでした。

怪我を治す魔法については後ほど、ということになります。

次回は達也視点が入ります。
お楽しみに。


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入学編 その10

どうもです。
今回はちょっと優等生の方に行きます。

とは言っても漫画も持っていないので他の作品を見させて貰ったり、BOOK OFFとか古本屋とかで読んで少しずつ書きました。
まあでも、半分以上、オリジナルって感じですけど。

まぁ、とりあえずどうぞ。


部活動勧誘週間ももうすぐ終わりになる。

あと、1日2日やればいいだけだから。

 

さて、そんな事も考えつつ見回りをしている私。

今は生徒にhandsonicを使う訳にも行かないので警棒を持ち歩いている。

そうすれば武装一体型CADと間違えてくれるからである。

校門近くを巡回している時に見知った顔をみた。

何故か外を気にして。

私は不思議に思ったので聞いてみる。

 

「どうしたの?深雪」

 

「日向。いえ、雫たちが何故か外に出て行ってしまったから。……っ!」

 

深雪の説明を聞いている時に近くで甲高いバイクか何かの音が聞こてた。深雪の反応を見る限り、雫たちが行った方向みたいだ。

 

「深雪!」

 

「ええ!」

 

私たちは言葉少なく了解して走り出す。

その途中に私は魔法を使う。

 

「ガードスキル Angelwing」

 

そう首元のCADに呟くと、私の背に大きな天使のような翼が生えた。

ベクトル操作で思いっきり跳躍して校門の壁を越え、雫達のいる場所に滑空し、雫達を囲んでいた男達をも越えて着地する。

雫達は何かの魔法を受けたのか少し気分が悪そうだった。

男が雫達にナイフを向けていたので翼を一回羽ばたく。

 

その音で私に気づいたようで驚いた表情で私を見ている。

そしてわざわざ何故か指輪をこちらに向けてきた。

私は威圧するように思いっきり翼を広げる。

 

「な、何故キャスト・ジャミングが効かない!?」

 

そんなことを言っているが何のことか分からないので無視

する。丁度深雪も来てはさみ打ちの形になった。

あと、深雪の魔法か何かの影響で凄く寒い。

 

「当校の生徒から離れなさい」

 

鋭いナイフのような冷たさを感じる声で言う深雪。

私も雫達を危険な目に合わせたこの男達を思いっきり睨む。

すると、男が持っていたナイフの刃が消えた。

一人だけでなく全員の刃も。

 

「もう一度言います。当校の生徒から離れなさい」

 

冷たい眼差しを男達に向ける深雪。

男達は二人のうち、翼が生えていない少女がナイフを壊したのだと気づき、それに驚愕した。

 

「バ、バカなこのアンティナイトは高純度の特注品なんだぞ。その影響下で魔法が使えるはずが…」

 

目の前の状況を飲み込めず、男は声を震わせる。

 

「おい、もっと出力を上げろ!」

 

「無駄です。非魔法師のキャスト・ジャミングなど通用しません」

 

深雪は男達に向けて冷たく蔑むように言った。

 

「ハッタリだ。キャスト・ジャミングの影響下で魔法が使える筈が無い!」

 

そんなことを言う男に私は溜息をついた。

 

「あのねぇ、既に私が魔法を使ってるって気付いてる?」

 

呆れるように言う私は、深雪に視線を向けた。

 

「深雪、雫達の介抱は任せたよ。こっちは私が処理する」

 

そう言葉を交わし、深雪が頷く。

右手を横に伸ばして、

 

「ガードスキル handsonic」

 

そう呟いた。

手首から剣が作り出される。

Angelwingを解除して、走り出す。

 

「くそぉ!」

 

そう言って男が拳を振るってくる。

私はそれを避け、肩の筋を切る。

そして、素早くアキレス腱も切って蹴り飛ばす。

バックステップで後ろに下がって、handsonicをもう一つ使い、両手を上にクロスになるように掲げる。

 

「ガードスキル howling」

 

首元のCADに呟くとhandsonicが共鳴する。

すると、耳を劈くような音が出て男達に地面を抉りながら迫っていき、

 

「「ぐぁぁぁぁぁぁ!!」」

 

男達に直撃した。

そして、数秒ほどで全員が地に伏っした。

私はそれを確認すると、両手のhandsonicを止めた。

 

「ふぅ。これで終わりっと。深雪!雫達は?」

 

「向こうにいるわ」

 

「そう。で、これを秘密裏に処理出来ない?多分、やり過ぎたよ」

 

「大丈夫よ、このくらい。一応相手もナイフを向けてきたのだから、正当防衛と言えばいいのよ。処理は私の知り合いに頼んでおくわ」

 

「よろしくね」

 

そう言って携帯を取り出して何処かへ電話している深雪の横を通って、雫達のいる場所に行く。

 

「雫、ほのか。それと……、ごめんなさい、名前分からないけど大丈夫?何処も怪我をしてない?」

 

「だ、大丈夫大丈夫。少しアンティナイトのせいで酔っちゃっただけだよ。あ、私は明智・ゴールデン・英美。エイミィって呼んでね」

 

「よろしくね、エイミィ。それで雫もほのかも大丈っ夫!?」

 

エイミィの自己紹介を受けてからもう一度聞き直すと、雫もほのかも抱きついてきた。

 

「ど、どうし「怖かった」……」

 

そう言って、少し泣きそうになりながら声を紡ぐ。

 

「あの時、深雪と日向が来なかったら、私たち、殺されて……」

 

「……何も、出来なかった……」

 

雫達は、あの時に何も出来なかったことを後悔または、反省しているようだった。人に殺されそうになったのだから後悔も反省もしなくてもいいと思うんだけどね。

それでも、私は落ち着かせる為に二人をぎゅっと抱きしめた。

 

「大丈夫だよ。今回はちょっと踏み込み過ぎちゃっただけ。今回の失敗は次に活かせばいいんだよ。ま、犯罪にはあまり関わらないほうがいいけどね」

 

「「………」」

 

……少し茶化したんだけど無反応。

これはこれで少し悲しい。

 

「今回は動けなかった。それは事実。でも抵抗しようとした。これも事実。でも、私と深雪が来なければ死んでいた。これは事実ではないよ。可能性だった」

 

「「………」」

 

「今は生きている。これだけが唯一の事実だよ。前のことを気にしてもいい。自分の不甲斐なさを嘆いてもいい。でも、それだけでは何も変わらない」

 

「「……」」

 

「何も出来なかった、なら、次、もし同じような目にあった場合にどう動くか。どう対処するかを考える。それが大切なんだよ。それに、

 

過去は未来を変える為にあるものだ。

 

どんな結果であったって過去は変えられない。もう起きてしまったことだから。でも未来は違う。過去を踏まえてこれからどうするか、どうしなければいけないのか。これを考えることも大切だよ」

「「…………」」

 

「さて、長々と話してしまったけど、言いたいことは一つ。

 

これからが大事。

 

これだけ。

どれだけ過去を恨んでも、どれだけ過去を後悔しても変わらない。なら、この過去から踏み出して未来へ進む。明日はまたやってくるんだからね。とりあえず今回は、無事で良かったよ。雫、ほのか」

 

そう言って笑いかける。

二人がこれからを踏み出していけるように。

それと、恐怖を忘れるくらいまでたくさん泣けるように。

それから数分は二人が泣き止むことはなかった。

 

 

 

 

______________________________________________________________________

 

 

 

二人が泣き止んでから、私たちは家路についていた。

二人とも泣きすぎて目が真っ赤になっている。

 

「ぐすっ、言い、忘れてた、けど、ぐすっ、助けてくれてありがとう、日向、深雪」

 

「どういたしまして」

 

「無事で何よりだけれど、あまり無茶は禁物よ」

 

「うぅ、反省してます……」

 

「うん……」

 

「エイミィも、危険なことにあまり関わらないほうがいいわよ」

 

「そうだね。あんなことにもう会いたくないし。それにしても、かっこいいね。日向ちゃん」

 

「何がかっこ良かったのかしら?」

 

「だって、あれだけ優しく説教出来てるし。更に、二人の気持ちを考えつつ、それでいて次に進めるように言ってさ。『過去は未来を変える為にあるものだ』、だっけ?もう名台詞だよね〜」

 

「……いやぁ、今思えば、なかなか恥ずかしいこと言ってるね、私」

 

エイミィに私が言っていたことを復唱されて、少し恥ずかしくなった。

……そんなこと言ってたなぁ。

 

「うん。日向、かっこ良かったよ」

 

「そうそう」

 

「……あまり照れるからやめてよ」

 

多分顔が真っ赤になっていると思う。

顔が熱くてしょうがない。

 

「ねえ、日向」

 

恥ずかしさに顔を俯けていると雫が声をかけてきた。

 

「……何?」

 

「戦い方を教えてくれない?」

 

「戦い方を?」

 

「うん。今回の私たちは手も足も出なかった」

 

「相手は、アンティナイト?ってのを使ってたんでしょ?魔法師が受けたら船酔いみたいになるって言うの」

 

「そうだよ。だから、アンティナイトを受けてもその場から離れるくらいのことは出来るようになりたい」

 

「う〜ん、でも、私、素人だよ?そもそも、教えられることなんて何も……」

 

「え?日向って何処か道場とかは行ってはいなかったの?」

 

「そうだよ?深雪。まぁ、普通科の中学校で、多少、剣道とかは習ったけど、あの動き方は我流だよ?」

 

「そう、だったのね」

 

「日向、それでもお願い」

 

「……分かった。私に出来ることならやるけど、一応、達也にも相談してみよっか」

 

「達也さん?」

 

「何故お兄様に?」

 

「剣道場の時の争いを止めていた時だけだけどあの身のこなしは普通じゃないね」

 

「でも、その時一緒に戦ってたんでしょ?」

 

「多分、体術だけなら達也には勝てないと思うよ。何せこっちは我流で、向こうは武術の心得があるんだから」

 

「でも、あまり達也さんには迷惑かけたくない。今回も、達也さんを襲ってた人を追ってたから」

 

「……分かったよ。出来ることはやるけど、私のは絶対じゃないからね。こうしたほうがいいかも、とかしか教えられないよ。私だって初心者だから」

 

「分かった」

 

「それじゃ、私こっちだから。じゃあね。みんな、気をつけて」

 

「「「「うん(ええ)(まったね〜)」」」」

 

そう言ってみんなとは別れて家に帰った。

 

 

 

 

 

 




どうでしたか?
オリジナル要素が多かったでしょう?
それに、ちょっとだけ雫とかが強くなることになりました。主人公も言いましたが武術の心得はありません。

次回もお楽しみに。

see you next time!


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入学編 その11

部活動勧誘週間も終わり、緩やかな1日が始まろうとしていた。

部活動のいざこざ等もありはしたが、とりあえず大したこともなかったので、……ああ、来年もあるのか、って言う程度にしか思っていない。

 

いつも通り、制服を着てカバンを持って、行ってきます、と言う。

その時、

 

「ひな、ちょっと待った」

 

寝癖全開の兄が声をかけてきた。

 

「何?」

 

「これを渡しておきたくてね」

 

そう言って手のヒラに出したのは、ブレスレット型のCADだった。

 

「これは?」

 

「それは前にひなが言っていた傷を治す魔法だよ」

 

「……本当に出来たんだ」

 

「本当に出来ているかは分からないけどね」

 

「分からない?」

 

「うん。それはひなの持つ『破壊』の魔法を反転させる魔法なんだよ。でも、僕は『破壊』の魔法を使えないからね。一応、シュミレーションでは成功しているけど、実際に使ってみないと分からない」

 

「という事は、私は実験台?」

 

「……言い方を変えればね。実験台と言ってもひなのように『破壊』の魔法を使える人なんていないと思うからひな専用だね」

 

「…そう。で、どうやって使うの?」

 

「治したい場所、または人に手を翳してブレスレットのCADから魔法を使い、その魔法に『破壊』を使うと傷が治る。理論上はね」

 

「失敗したら?」

 

「傷口を破壊するわけだから逆に怪我の範囲が大きくなるね」

 

「……責任重大じゃない」

 

「まぁ、家に帰ってきてから練習しよう。とりあえず学校に行っておいで」

 

「……ん。行ってきます」

 

「行ってらっしゃい」

 

そう言葉を交わして家を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学校に着いてからはいつも通り時間が流れていく。

そうして、昼休みに入った。

私は昼ごはんの弁当を取り出して食べようとすると、

 

「日向。ちょっといいかしら?」

 

深雪が声をかけてきた。

 

「どうしたの?」

 

「七草先輩から生徒会室で食べないかって誘われているの。出来れば日向も一緒にって」

 

「え、うん。いいけど」

 

なぜか私まで呼ばれて弁当を風呂敷に包む。

それを持って深雪と共に生徒会室に到着した。

ノックをして生徒会室に入る。

既に七草先輩達は座ってご飯を食べ、そこにいた達也はもう終えている頃だった。

 

「いらっしゃい日向さん。ちょっとだけ聞きたいことと、話したいことがあるから座って貰えるかしら」

 

「?はい」

 

七草先輩の聞きたいことに見覚えがなかったがとりあえず座る。

 

「日向さんは『ブランシュ』って聞いたことある?」

 

「?いえ、聞いたことありませんが?」

 

「そう。……ねぇ達也くん。本当に話すの?」

 

「はい。逆桐も当事者ですから」

 

「……分かったわ。それでね、日向さん」

 

「はい?」

 

「『ブランシュ』って言うのは反魔法国際政治団体のことなの。本来、この名前は秘匿情報扱いで、国が情報を完全にシャットアウトしているんだけど、達也くんは知っていて、この学校の生徒もここに加入している可能性があるのよ。だから、気をつけてね」

 

「気をつけて、と言われても、何がどうして私に関係があるんです?その「ブラシ」って」

 

「ブラシじゃなくて『ブランシュ』ね。ほら、深雪さんから聞いたのだけれど、その『ブランシュ』のメンバーを一人で倒したって。キャスト・ジャミングの中で魔法を使ったって聞いて、一番貴女が計画の邪魔だとか言って狙われそうだから一応注意してね」

 

「まぁ、何を気をつければいいのか分かりませんが、分かりました」

 

「この話はこれでおしまいです。さ、お弁当食べましょ」

 

そう言ってまた弁当を食べていく七草先輩。

私も弁当を広げて食べ始め、

 

(『ブランシュ』か……。兄に相談してみようかな)

 

そう心の中で決めた。

 



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入学編 その12

『ブランシュ』と呼ばれる反魔法国際政治団体に狙われるかもしれないと家で兄の前で言ったらもう、大騒ぎだった。怒り狂って『ブランシュ』自体を探し出して全員片っ端から消すとまで言っていた。

 

シスコンここに極めり、である。

 

そんなことしなくて良いから『ブランシュ』について教えてと言うと、あらゆる情報を提供してくれた。

 

まず反魔法を掲げてはいるが、根幹は魔法をもっと知って、自分たちの良いように使おうとしていること。そして、自分たちの活動を邪魔する奴は襲うと言う。

次に、ブランシュは一高にもいるかもしれないということ。主に二科生を対象に魔法に対して強い不満を持っている生徒に声をかけているらしい。

そして、もし、一高が襲われるなら図書館を狙うということ。そこには、国家機密の情報があるらしい。

何故、兄がそんなことを知っているのかは分からないが、とりあえず参考にさせて貰おう。

 

あと、本当に襲ってきた場合は手加減なしで戦えと言われた。『破壊』も『ベクトル操作』も本来なら一人の人間が最初から持っているのを知られたら、命の危険性もあるとも言われた。

そこら辺は肝に銘じておくとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『皆さん!』

 

昼食を食べていると、突然放送で音量を間違えたのかとてつもない大きなキーン!と言う音を立てながら放送が始まった。

本来なら、使用申請を出さなければこの時間に放送室は使いないのだが、この時間の放送室の使用申請は出されてないので、間違い無く不法使用なのだろう。

放送では差別撤廃を目指す同士だと言っているが、実態は昨日兄から聞いたブランシュの下部組織『エガリテ』に参加している生徒だと、このとき思った。

 

「ごめんね、ほのか、雫。ちょっと行ってくるね」

 

「行ってらっしゃい」

 

「気をつけてね」

 

「うん」

 

携帯で放送室に集まれと召集が来たので弁当を片付けて放送室を目指す。既に深雪はいないが、恐らく達也のところに行ったのだろう。そう思って直接放送室に向かう。

 

 

 

放送室について、十文字先輩や渡辺先輩はもう既に来ていた。

 

「逆桐です。遅くなりました」

 

「いや、まだ早いほうだろう」

 

「遅くなりました」

 

私が来たあとに達也と深雪も来た。

 

「遅いぞ」

 

「すみません」

 

私と対して時間は変わらないのに怒られる達也、可哀想に。

まあ、形式的なものだと思うので状況を確認しよう。

 

とりあえず放送は止まっている。恐らくは電源をカットしたからだろう。放送室の扉は閉ざされており、突入した形跡は無い。如何やら占領した連中は、鍵をマスターキーごと持っていったらしい。

 

「明らかに犯罪だな」

 

「そうです。だから相手を暴走させない為にも此方は慎重に行くべきでしょう」

 

達也の独り言を鈴音が拾い、誰かに言い聞かせるような口調で自身の考えを披露する。誰に言っているのかは考えるまでも無く分かった。

 

「聞く耳を持ってる連中とは思えん。此処は多少強引でも短時間で解決を図るべきだ」

 

一人頭に血が上っているように思える渡辺先輩は、市原先輩の意見を却下しスピード解決を主張している。

 

「十文字会頭は如何のようにお考えで?」

 

達也は渡辺先輩の意見も聞きつつ、十文字先輩にも質問する。

 

「俺は交渉に応じても良いと考えてるが、学校施設を破壊してまで早急に解決すべきかは悩みどころだ」

 

「なるほど」

 

ああ、そういえば良い方法がある。

 

「なら、こうしましょう」

 

「何?」

 

達也の疑問の言葉を聞きつつもドアの前に立つ。

そして、鍵穴を覗き込んでレバーの位置を確認。そして、バレないようにベクトルを操作しつつ、

 

「開け、ゴマ!」

 

過去にあったらしい呪文を唱えた。

鍵元からはガチャ、と音がする。

 

「はい。これで良いでしょうか?」

 

私の行動に驚き、更に鍵が開いた事に驚いていた。

 

「……な、何をした?」

 

渡辺先輩が代表で聞いてくる。

……何って、

 

「鍵を開けましたが、それが何か?」

 

それ以外の回答はない。

 

「十文字先輩、中の人を取り押さえないと」

 

「……うむ。全員突撃!」

 

そう、十文字先輩の掛け声と共に、ドアを開けなだれ込んでいく。そして、中にいた人を瞬く間に捉えていく。

 

「な、何故鍵が開いている!?」

 

当然、そんな反応にはなるだろう。

閉まっていると思っていたドアがいきなり開いて捕まったのだから。

 

「何をしたんだ?」

 

達也が横に立って聞いてくる。

 

「何って、こう、なんて言うか、開け!って念じながら言ったら開いた」

 

「……つまり、適当か?」

 

「うん。私がしなくても達也に策はあると思ってダメ元でやってみた」

 

「……そうか」

 

なんとも言えない顔になっている達也。

本当の事は話せないのでとりあえずこれで納得してもらおう。横にいる深雪はクスクス笑っているから何の問題もないだろう。

 

 

 

このあとに七草先輩が来て、占領していた人の意見を聞くことになり、そして、明日に討論会をする事になった。



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