物語館 (むつさん)
しおりを挟む

冬の祠 雪と氷

どうも、悠樹@夢子です

世間は夏休みも終わり
私の休憩期間も終わり

なんだかんだ言って時間がかかることばかり、最近は刺激がなくて困ってる今日このごろ

スカイアリーナで小傘使って頑張るくらいかなぁ

小説は少しづつ書いて今さっきやっと書き終えた

国家資格受かったよ!やったね!
とは言っても、なんの嬉しさも湧かない

さぁ、こんなとこで雑談もやめて
本文説明しなきゃ

今回はレティチルのオリジナルシナリオです舞台は幻想郷だけど、オリジナルを混ぜてます

終わり方はバットエンドでもなくパッピーエンドでもない。いつもながらの微妙な終わり。

では、ごゆっくりと


 

ある日のこと

 

「あらチルノじゃない、そうね

少し時間あるかしら」

 

「レティさん、なんですか」

 

「あなたももう立派な妖精になってきたかしらね。」

 

「あたいは元から立派な妖精だよ、」

 

「まぁ、あなたはまだ幼稚な所もあると思ったけれど、もういいかしらね」

 

「なんの話なのさ、あたいに稽古でもつけるの?」

 

「違うわ、あなたに私達のような冬に関わる妖精や妖怪にとって大切なことを教えてあげるわ

特にあなたなら関わりは強いんじゃないかしら。」

 

「大事なことって何さ。」

 

「まぁ、いいわ、ついて来なさい」

 

そういって

レティとチルノは幻想郷一高い山の天辺付近まで行く

 

「この岩場だったかしら。」

似たような場所をいくつも探すレティ

それを手伝うチルノがあるものを見つける。

 

「これって。氷のツララの破片?

なんでこんなところに」

 

「あら、見つけれたのね

ちょっとどいてみなさい」

 

そう言うと岩場に向かって魔法を打つレティ。

 

そして…

岩が壊れて暗い穴が

「なにこれ。こんなところに、洞窟?」

 

「ええ、でもただの洞窟ではないわ。

ほら、中にはいるわよ。」

 

「え?ちょっと待ってよ。」

 

高い山となると気温が低い、

洞窟の中はさらに気温が下がり、真冬のような温度だった

 

「どう見てもただの洞窟じゃん

ここに何があるって言うのさ」

 

「あなたならもうじきわかるわ」

 

それを言った瞬間チルノは何を感じた

 

「え、なんだろう、あたいやレティさんと同じ魔力?なんで?他に誰かいる?」

 

「いいえ、いないわ、私達だけよ」

 

奥に進むたび、魔力を強く感じる

魔力が強くになるたびに気温が下がっていく

 

「出口が見えてきたわね、

さて、どうなっているかしら」

 

長い洞窟を抜けると…

 

「なに、これ…」

 

巨大なドーム状に広がっており。天井には大量のツララがあり床は一面氷で出来ていた、ところどころ雪が積もっている

中央には巨大な建築物がある

 

「私達冬に関わる者は皆、

ここを冬の祠、または冬の遺跡

と呼んでいるわ」

 

「冬の祠、こんなものがあったなんて知らなかった。」

 

「知らなくても当然よね、

元々私達はここで育ち。力をつけてから外に、つまり幻想郷に出るのよ」

「でもあなたは違った。まだあなたがもっと幼い頃に、ここに人間がやって来て。偶然会ったあなたをさらっていってしまった。」

 

「あたいだけ?人間に…」

 

「私はすぐ追いかけたわ。私以外にも探し回った者もいるけど。

最後までの捜索をしたのは私だけだった。」

 

少し歩きながら話す

 

「それで、どうなったの?」

 

「あなたは無事だったわ、山の途中で人間達が倒れていたわ。おそらく魔力を体に取り込んでしまったのと、体温が下がりすぎたせいでしょう。

あなたは倒れた人間に抱えられていたから。傷一つなく無事だったわ。」

 

「そうだったんだ、もう覚えてないや。」

 

「まぁ、覚えてなくても無理はないわ。気を失っていたから。」

 

「なんでここには誰もいないのさ。」

 

「別のどこかに移動したのだけど

今はどこに居るかわからないわ

人間に見つかってしまったからには長居はできないのよ。」

 

「それだけ秘密の強い場所なんだね」

 

「その当時は私達と人間は関わりを持ってはいなかったから、知られては困ることのほうが多かったのよ」

 

「今はそうでもないもんね」

 

「ええ、そうね、

私も何度も里にはお世話になっているから、今はもう隔たりはないわね」

 

「ここ…どれくらいこのままなんだろう。」

 

「そうね、どれくらいかしら、もう忘れたわ」

 

「それでも、これだけ綺麗に残ってるんだね。」

 

「今ここを知っているのは、私と八雲の彼女とあなただけなの」

 

「他にも元々住んでいたんじゃないの?」

 

「多分もう忘れていると思うわ。

それにここに来ることもないでしょうし。」

 

「なんか、悲しいな。捨てちゃうなんて」

 

「あなたを助けて。入り口を探しているうちにいなくなっていたから。私は移動に立ち会えなかったのよ。だからこの幻想郷に残っているの」

 

「じゃあ、あたいを助けなかったらここには居なかったんだ。」

 

「そうかもしれないわね。

でも、助けずにいられなかった」

「待ってもらえなかった。というのより、彼らがあなたを捨てたことに私は怒りたかった。」

 

「あたいとレティさんを待たずにどっか行っちゃったんだね…」

 

「そう、彼らは仲間より秘密を大事にした。それが許せない…」

 

「みんなからしたら

あたいはいらなかったのかな」

 

「そんなことないわ、あなたも大切な仲間のうちの一人だったもの。私は簡単に仲間を捨てたり裏切ったりしないわ」

 

「だから、レティさんは最後まであたいを探してくれていたんだよね。」

 

「ええ、でも、本当なら私とあなたも一緒にいるはずだったんだけど」

 

「仕方ないよ。でも幻想郷にいてもいいんじゃないかな、みんながいるし」

 

「そうね、彼らとついて行っていたら、私達もここを忘れていたかもしれわね」

 

建物の前まで着いた。

「こんな大きな扉、どうやってあけるの?」 

 

「簡単よ、魔力をぶつければいいだけ」

そういって簡単な弾幕をぶつける

 

大扉が開くと中は氷一面だった

 

「外側だとに普通の壁に見えるのに中は氷なんだね」

 

「特殊な魔法を施してあるのよ

私は教えてもらえなかったけど。」

 

「広いなぁ、こんなところでみんなで住んでいたのかぁ、」

 

「まぁ、あなたも少し居たのよ。」

 

「覚えてないもん。」

 

「そうね、見てないようなものかしら」

 

建物は所々庭のような場所がありそこに川のように水が流れていたりする。

 

「ここは私も気に入っていたのに

みんなとここに居たかった」

 

「どこに行っちゃったんだろうね。」

 

「今となってはもう遅いわ。見つけたとしても彼らとは一緒には居られない」

 

「許せないの?」

 

「ええ、もう彼らはいない

でも、あなたとならここを守っていける」

 

「それだけここに大切な思い出があるんだね」

 

「まだ、崩れていないから、まだ当分は心配なさそうね。」

 

レティがよく使用していた部屋に着く

レティが懐かしんでいるとチルノが、

何か妙なものを見つけた

「あれ、これは?」

 

「紙?手紙みたいだけど

こんな物前来たときは無かったわ」

 

「他にもここを知っている誰かがいるのかなぁ」

 

「手紙…一体誰が…」

 

内容は簡単なものだった

 

 

この手紙を見たものがいるならば

すぐに最後の場所まで行ってほしい

もしかしたらここはもう短いのかもしれない、それを確かめるために協力願いたい。どうか頼んだ

 

 

「わざわざ私の部屋の机に、

私に頼んでいるようなものじゃない

頼まれなくても行くつもりよ」

 

「このはもう短いかもしれないって

どういうことなの?」

 

「ここは山の中心核で本来は溶岩が溜まっているはずの場所なのよ、それが何故かこんなふうになっているのよ

それで、最近よくここを観察してきたのだけど、所々溶けている場所があるのよ」

 

「それで、もう短いって。」

 

「ええ、確証はないわ、でもいつかは全部溶けてしまうでしょうね」

 

「そんな、なんとかならないの?」

 

「なるとも言えないしならないとも言えない。

ただ、今のままではどうしようもないわね」

 

「そっか、少しづつ溶け始めたのを固め直すぐらいなら、出来るかな?」

 

「ええ、せめてのも処置にはなるわ」

 

「見かけたら凍らせておこうよ。」

 

「そうね、それもひとつの仕事ね」

 

それから二人は建物内を歩き回っていた、そこで、大きな部屋に入る 

「ここは?」

 

「大広間、私も幼い頃はここでよく遊んだものだわ。」

 

「そっか、そうだよね。

みんなとここにいたんだもんね」

 

「いつも私と遊んでくれた方もいたわ

もう、会えないかしらね…」

 

「みんな帰ってくるのかなぁ」

 

「帰ってくる頃にはここも無いかもしれないわ。」

 

その言葉で大広間を後にする

 

しばらく廊下や庭のような場所が続く

 

「ねぇ、この部屋は?」

 

「ここは、あなたの部屋よ」

 

「ここが…」

 

「覚えてないかしら。」

 

「この人形…思い出せそうで思い出せない…なんでだろう、なにか懐かしい感じがする。」

 

「これは、私があなたにあげた物なのよ。」

 

「レティさんが?わたしに、」

 

「ええ、そうよ、」

 

チルノが目を閉じて考えていた

「いつも寝るときに抱いてた…

そうだ、もらったその日からずっと離さず持ってた。」

 

「とても大切にしてたわ。

あなたが喜んでいるのを見て

わたしもとても嬉しかったわ」

 

「こんな大切なことをなんで忘れてたんだろう…」

 

「幼い頃の記憶はなかなか思い出せないものよ。それでも、大切と思えるなら忘れずどこかで思い出せるから。」

 

「この部屋に来て。ここのことをいろいろと思い出せそうな気がする。」

 

しばらく周りを見渡すチルノ

レティは椅子に座ってチルノを見つめ少し考えていた

 

「ねぇ、チルノ。」

 

「なんですか?」

 

「あなたは私とこの部屋でよく遊んでいたわ、それで、私はあなたと約束をしたのだけれど、思い出せるかしら。」

 

「約束……約束か…なんだろう…」

 

「大したことじゃないから、

覚えてなくても無理もないわ」

 

少し考え、そして、

 

「思い出せたよ

いつか、レティさんを超えるくらい

強くなってレティさんを守れるようになる、っていうことだったね」

 

「そうよ、確かにまだまだかもしれないけど。あなたはとても強くなったわ。」

 

「いつもあたい最強とか、言ってたけど、ホントはそんなんじゃないかな

威張れるほどじゃない、」

 

「あら、でも強くなったことには変わりないわ。」

 

「力で強くても、約束のように、守れる強さじゃなきゃ意味ないもん。」

 

「そうね。戦うだけの強さは力でしかないものね。」

 

「この部屋に来て、いろいろとわかった。あたいがいつも探してたものもあった、」

 

「どんなものなの?」

 

「それはまだ言えない、形にできてないから。だから、まだ待ってほしい」

 

「そう、それならわかったわ。」

 

「レティさんとここにいたことも思い出せたし、この人形もこの机も、どれも大切なんだっていうのが今になってわかった。」

 

「大切なものは簡単には消えない。だから、ここもまだ残っているし。この部屋にもあなたの大切な物が残っていた。」

 

「忘れない、忘れたくないな。」

 

「そうね。忘れてしまったら。

そこで全て終わりだものね。」

 

 

そこで会話が途切れ。

二人は部屋を後にする、

 

その後、廊下を歩きながら一つ一つ思い出を語り合っていた。

 

「そろそろ最後になりそうね。」

 

「ここで最後の場所なの?」

 

レティが少し考えて止まっていた

このままここが消えてしまうのかと

 

「ねぇ?レティさん?

どうしたの?」

 

「あぁ、なんだったかしら?」

 

「ここが最後の場所なのかなって。」

 

「そうね。最後といえば、最後になるかしら。」

 

「なにそれ。へんなの。」

 

大きな部屋。図書館のような場所。

ここの歴史も全てこの場所にある

 

「たんさん教わった。この場所にはいろいろととお世話になったわ」

 

「本がいっぱいある…図書館だよね

ここだけは覚えてないや。」

 

「多分ここにだけは来たことないんだと思うわ。ここには大事な資料とかが多くあるから、管理とか厳しくしていたわ。」

 

「そっか、なら仕方ないね。」

 

「さてと。思い出に浸っている暇はないかしらね。早く見つけなきゃ。」

 

「なにか探しているの?」

 

「さっきの手紙を覚えているかしら」

 

「最後の場所、ここが」

 

「ええ、そうよ。でもまだここがってわけじゃないわ、どこかに道があったはず…」

 

 

スイッチ的なものを見つけたチルノ、

何も考えず押してしまった。

 

「え?え?!」

 

「どうしたのかしら」

 

「な、なんか、スイッチがあったから

押しちゃったけど、ダメだったかな」

 

「この扉…これよ。」

 

「えぇっと。まぁ、いっか」

 

扉を開け、階段を降りていく

そして…

 

「ここが、最後の場所…」

 

「大きな氷…というより結晶…」

 

「やっぱり、溶け始めてるのね」

 

「このまま溶けきったらどうなるの?」

 

「多分ここ以外にも溶け始めて、跡形も無くなるでしょうね…」

 

「じゃあ、もう」

 

「ええ、ここが溶け始めてしまっては。もうどうにもならないわ」

 

「そっか、またここに戻れたらよかったのに。」

 

「そうね。またみんなとここに集まりたかったわ。でももう叶わないのかしらね…」

 

二人はしばらくうつむいていた

 

「さぁ、ここを出ましょう

もう、ここにいても何もないわ」

 

「私の部屋に寄ってもいい?」

 

「ええ。いいわよ」

 

二人はまたチルノの部屋に向かう

 

「この人形だけは、消えて欲しくないから。」

 

「外に持ちだしてしまうと、魔力が解けて消えてしまうわ。それでもいいなら。」

 

「そっか、でも最後はあたいの手元で、と思って、

せっかくレティさんがくれたものだから」

 

「ありがとう、最後まで大切にするのね」

 

「私の心の中には残るから。

それだけでも十分だよ」

 

「そうね、形だけが思い出だけじゃないわね。」

 

二人は部屋を後にする。

それから

特に何もなく二人は建物を出た

 

「もうじきここも消えてしまう…」

 

「悲しいな、せっかく思い出せたのに、それも消えちゃうなんて…」

 

氷の祠の出口へと向かう途中

所々溶け始めた建物を見つめていた

 

「あれは…やはりもう、」

 

「ねえ?なんか光ってるよ?」

 

「ダイヤモンドダスト!…本来なら森で起こる自然現象のはず…なぜ?」

 

「魔力を感じる…誰かいるのかな?」

 

「まさか、この大きな魔力って!」

 

周りを見渡す二人

すると一面全体に

ダイヤモンドダストが起きていた

 

「こんな場所でも起きるなんて。」

 

「結晶によるものよ…最後の時なのかしら…」

 

「じゃぁ、結晶が壊れる兆しってこと?」

 

「ええ…そう早くはないけど、ここまで来てしまっては消滅は確実でしょうね…」

 

「じゃぁ、もう…」

 

「仕方のないことよ、いつかはこうなると、みんな知っていたと思うわ。」

 

「綺麗なダイヤモンドダスト。」

 

「私にもこれぐらい起こすことはできるけど、ここまでのは流石に無理だわ」

 

しばらく見惚れていた

少しして

「ここを出ましょうか。

溶けてしまうのはどうしようもないわ、」

 

そう言って二人は洞窟に戻っていく

 

洞窟にまでダイヤモンドダストは続いていた。

 

その脇ではツララは溶け始めてとり

足元を水が走っていた

 

長い洞窟を抜けて二人は外に出た

 

「なんだか寂しいわね。」

 

「みんなどこにいるのかな。」

 

「きっといつか会えるわ。」

 

「それじゃあ、あたいは大ちゃん探そうかな。」

 

「ええ、またね」

 

二人は別れた

 

 

それから三日後

 

 

「これは…ここまで早くに…」

 

冬の祠に再び立ち寄ったレティ

しかし、見る影もなく冬の祠は溶け崩れていた。

 

「残っているのは結晶の周辺だけかしら。ここから先は歩くのも無理そうね」

 

すんなり諦めて後にした

 

 

次の日、

 

「あっ、レティさん。」

 

「チルノ?どうかしたのかしら」

 

「冬の祠見に行こうと思って。一緒に行きませんか。」

 

「昨日見に行ったわ…結晶の周辺以外は全部溶けてしまっていたわ。」

 

「そっか…溶けるの早いね…」

 

「それだけ消耗が激しかったのかもしれないわ。」

 

「ダイヤモンドダスト、だよね」

 

「もう言っても、水しかないわ

諦めましょう、」

 

「うん、わかった。」

 

「さて。もうそろそろ冬も終わりかしら。」

 

「まだ早いよ。もう少し時間はあると思うよ」

 

「そうかしら。冬にしか会えないのだから、なにか思い出を残さなきゃね。」

 

「祠のこと教えもらえただけで十分だよ。あとはいつも通りでいいかな。」

 

「そう?じゃあ今から氷風呂でも入りましょうか。」

 

「そうだね!行こう行こう!」

 

そう言って

二人は山の湖まで飛んでいった

 

 




ご拝読ありがとうございました。

今回はなんも考えず淡々と二人に雑談させてみた
実はチルノは推しキャラだったりする
レティも大好きですよ、

そんな事はどうでもいいとして

今回は単発です。
こんなのを書き続ける技量はないかな…

はい、それだけです


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

死して今を生きる

どうも、悠樹@夢子です

ひとつ報告を
オリ主&椛のオリジナルシナリオはまだ暫く時間がかかりそうです。

はい、今回はオリ主の転生物語です。
特に意味は無いですが、こんなことあればいいなと思って書いてみました。

ではごゆっくり


死して今を生きる

 

俺は死んだ、そう肉体的な死を迎えたらしい、歩いている感覚はないが、前に進んでいる感覚はある。

 

目を開けると目の前には赤い髪の大きな鎌を持った死神がいた

 

おお、目が覚めたか、もうすぐつくから待ってな

 

その一言を言われ、私はここが三途ノ川だということを理解し、そしてひとつため息をついた。

 

また目を閉じてしばらく待つことにした。そして、船が止まった。

 

こっちだ閻魔様がお待ちだよ

 

言われるままに歩いて行くと、一人の少女が大きな椅子に座っていた

 

よく来ましたね。

あなたの裁判をしましょう。

 

そう言うと少女は杓子を上にかざし横に下ろした

 

あなたは白、潔白の善人です

 

その一言だった

 

白、どう白なのか?無意識に訪ねてしまった。

 

少女は横にある大きな鏡を見て話した

 

あなたは生前20年生きた

数多くの逆境、あなたは人でありながら人から嫌われ爪弾きにされていた。

しかりそれに屈せず、人のために働き、人のために生き、人に尽くした。

あなたに黒判定を下す理由はどこにもない。だから白なのです

 

そうか、働き者は白なのか

 

そう了解すると少女は言葉をかけてきた

 

疲れたでしょう、天国で体を休めるといいです。

 

なるほど、長い休暇というわけだ

でもそれが休暇となるか永遠の休みとなるか、多分後者だろう。

死神が私を導き天国へと連れて行った、目を閉じろと言われそのとおりにする。しばらくすると目を開けろと言われそうした、

 

すると目の前には白い景色、まるで雲の上にいるような景色が広がっていた。

 

さぁついたよ、ゆっくり休みな。

 

そう言って死神はどこかえ消えてしまった。

 

さてどうしたものか。

 

そう考えていると人がやってきた

 

天国に人とはこれいかに

しかしこの人というものも私と同じ死んだ者と思うと自然にどうでもよくなった。

 

こちらへどうぞ、あなたも善人、私も善人、これから楽に生きましょう

 

そう言われた通り、楽に生きることにした。

なるほど善人は死後の世界で堕落するらしい。

 

まぁいいかと、2日3日は楽に堕落した生活を送ってみた。

しかししばらくするとむず痒い感じがしてならなかった。

 

食って遊んで寝るだけの生活がどうも好きになれないようだ

 

宿らしい建物を出て目についたのは木から果物を採っている天使らしい生き物の姿だった。

 

そして。無意識に声をかけていた。

 

手伝おうか一人だと時間がかかるだろう

 

そしたら、案の上の答えが帰ってきた

 

貴方様は善人です。貴方様は楽に生きればよいのです。

 

なるほど、働く権限はないと見た

 

仕方ない暇だから今日は寝て明日また試みてみるか

 

そう思っていたが次の日もどこかしら話しかけてみたものの、どれも断られた。

それを見ていた他の"老いた死人"は俺を見て笑っていた。

 

何を仰るのか。ここは天国、極楽浄土よ、働くなど毛頭無関係な場所て、何故そなたは動きたがる。

 

仕事とは無関係な場所、つまり生きて働くことしかしなかった私にとってここは地獄というわけだ。

 

なるほどこれは辛いわけだ

 

さてどうしたものか。またこんなことを考えていた。

 

仕方ないから、寝ることにした。

 

そうして目を開くと何故か小舟に乗ってふよふよと浮かんでいた。

 

あんたまた来たのかい、というか二度死は如何なものかと思うが

 

赤い髪の死神はそう笑った

 

どういうつもりか、私はまた死んだらしい。そして、また三途ノ川を渡っている。

 

しばらくするとまた閻魔の前に着いた

 

あなたはどうやら天国でも死んでしまったようですね。

 

天国は死後の世界、そこでまた死ぬとはこれいかに、

 

ならば仕方ない。現世に戻ってまた働くか、地獄に行くかどちらか選ばせてやろう。今回ばかりは裁判も何もないからな、

 

裁判で何を裁くというのか、議題かないならそれもない。

 

仕方ないから現世でまた働くことにする。

 

そう言うと、私はまた死神に導かれた

 

大きな碑石のようなものに手をかざした。その瞬間意識がなくなり私はそこで倒れた感覚に陥った。

 

意識がなくなる前、声が聞こえた

 

精一杯働いて疲れたらまたここに来るといい。それまでは戻ってこないことだな。

 

 

 

 

目が覚めると、身に覚えのない場所に私は寝ていた。

 

意識がはっきりしていない。だがわかることは、ここは天国でも地獄でもない、現世であるということだ。

 

私は眠たく気だるいから眠ることにした。

 

しばらくすると周りがバタバタと忙しそうな雰囲気で目が覚めた。

 

気がつくと目の前には三人の少女と一人の男性がいた。

 

少女の一人は目から涙を流している。

 

無意識にその少女の頰の涙に触れ拭き取るように手が動いていた。

 

少女は私の手を握りこういった

 

あなたが生きててよかった

 

わけがわからない、私は死んだはずだが、今こうやって現世にいる

 

しばらくしたらまた眠くなったから眠ることにした、

 

三人の少女は私に声をかけていたがよく聞き取れなかった。その声も一人の男性によってかき消されたようだ

 

 

 

気がつくと、私は部屋に立っていた

 

目の前には閻魔がいる

 

どうした、現世で何かあったか、

 

いやとくに何も。

 

だが、ここに来たということは何か疑問質問があるということだ、思い当たる節が出てくることだろう

 

そう思えばさっき眠る前に何か考えていた覚えがある。そしてこう言った

 

俺はいつまで生きていられる

 

閻魔は複雑な答えを言ってきた

 

お前は前と同じ肉体的な死を迎えるまで生きていられる。だが今お前は人間ではない。

 

人間でないなら何者かと

 

そうだな、簡単にいえば不老だな、

 

なるほど長寿か、つまり自分で死ねということを悟った。

 

わかった、できるだけ長生きしてみることにする。

 

そうして目を閉じてしばらくまた眠った

 

 

不意に目が覚めて、意識が戻った瞬間、手にぬくもりを感じた。

 

さっき涙を流した少女が私の手を握ったまま、眠っている。

仕方ないからそのままにして、座った姿勢になることにした

 

先ほどの一人の男性、つまり私の担当をしていた医者が私に気づき、少女を起こす。

 

少女はまた私に声をかけた

今度ははっきり聞こえた。

 

なぜ生きているかはわからない、でも生きていてほんとによかった。

 

俺は少女に頷くとまた少女は涙を流した。涙が流れる頬に触れ、慰めた

 

しかし医者が私にの異常気づきそれを話した。

 

信じられないことだが、キミは心臓が動いていない。だが血巡っている。どうしたものからわからないがとにかく生きているようだね。

 

なるほど人間ではないとはこういうことか、心臓動いていない。つまり人の原理をしていないわけだ

 

でも、生きているんです。それだけで充分です。

 

少女はまだ涙を流していた。

 

その涙を見て、ふと、俺はいろいろと思い出した。

 

この少女は魂魄妖夢

そしてこの医者は永遠亭の永琳の知り合いの男

 

さっきいた、残り二人は博麗霊夢と霧雨魔理沙。

 

やっといろんなことが意識に戻ってきた。

 

そうだ私は働き者で、天国で働けなかったから帰ってきたのだ

 

 

私は妖夢に声をかけた

 

泣くな、私は帰ってきたから

 

 

 

それから私はまた働いた

私は白玉楼に住んでいた。朝にそこから里まで行き里の役場仕事をしていた、いや、今後も続けていくつもりだ。




ご拝読ありがとうございます。

今後もこんな感じでオリジナルシナリオを書いていこうと思います。

ではまた会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

故知らぬ友

どうも、悠樹@夢子です

なんだかんだ言って
この適当な書き方が楽

この物語は適当です
そして終わり方も微妙です

ではごゆっくりと


あれ?こんなところに人が

 

青い髪の河童、にとりが見つけたのは倒れた人間だった

 

っていうか、片腕ないじゃん、あれか、妖怪に襲われたのか、可哀想なやつだ

 

にとりはそう言って、その人間を、背中のカバンから伸ばした大きな機械の手で拾い上げる。

 

そしてその人間を自分が活動の場としている工場に連れて行き

布を広げそこに寝かせた。

 

水を飲ませ、簡単な栄養錠剤を飲ませ暫く様子を見ていた、

 

その間にとりはあるものを作っていた、河童が作るものは機械であることに違いはない。

 

いきなり後ろから咳き込む音が聞こえて振り返ると人間が座り込んで苦しそうにしていた。

 

あっ、おお、生きてたかぁ

 

こ、ここは…

 

安心しなここに妖怪はあたししかいないよ

 

ま、まていま妖怪って…

 

だから、安心しなって

あたしは襲ったりしないから

それに襲ってたらとっくにそこにいないよ

 

人間は警戒心を解いたのか、にとりに近寄り作っているものを覗く

 

あぁ、作業の邪魔だよ、下手したら残ってるもう片方の腕も飛ぶかもしれないぞ。

 

少し脅してみた、

 

ひっ、と言って後ろに下がる人間

 

それを感じ取ったのか作業しながらクスクスと笑う

 

人間は周りを見渡していた

 

おまえさんちっとこっち来な

 

人間はビクッとしてにとりのを見て近寄って行った。

 

これが何かわかるかい?

 

手、あっ義手か

 

そう言うと失った片腕ともう片方の手をにとりに向けた

 

おお、わかってるじゃないか、話が早いねぇ

 

そう言うとにとりは大きめな定規を持ちだし、手の長さと幅を測りはじめた。

 

大体こんなもんかな

 

定規に印をつけ、また机に向かう

 

あ、それでどうすれば

 

もう少し待ってな、

 

人間は、また暇そうにしていた。

するとにとりが立ち上がって、ある機械を人間に渡した

 

これぐらいなら片手でもできるだろ。

 

ボタンとディスプレイが付いている。片手で持てる程度の大きさの機械。

 

外の世界ではスマートフォンとか言われてるものだ。それに簡単なプログラムを突っ込んでみた、試しにやってみてくれるか。

 

どうせ暇だし、と人間は了解した

 

にとりはまた机に向かい機械いじりをしていた。

 

しばらく人間もにとりも熱中していた

 

にとりが、ふと外を見た。するともう外は茜色の夕日が沈みかけていた

 

おお、もうこんな時間か。全くあたしも時間をかけすぎたかな。

 

にとりは完成した義手を持って人間のところに向かった

 

あ、完成したんですね、、

 

あぁ、さぁ、取り付けるか、

結構痛くなると思うから。覚悟しな

 

腕の切り取られた部分に義手を合わせる、特殊な方法での取り付け作業だというが、そのせいか、作業時にとても痛みを伴うようで。

 

うっ、ぃぃ、痛い!痛い!

 

らしい

 

よし!これでついた!

 

にとりが手を離すと、たしかにその腕はきちんとはまっていた。

 

あぁ。確かについてる…これが腕か

 

手に馴染むのが早いのか、人間すぐにそれを使いこなしていた。

 

悪くない、助かったありがとう

 

いいってことよ、それは、最近完成した設計図のものだからミスはないよ

 

なるほど、河童の技術には関心するよ

 

河童?なんで河童だとわかった?

 

里にこの前来てなかったか?

その時寺子屋の人が言ってたよ

 

あぁ、上白沢か、なるほどな、

 

とにかくありがとう。不自由なく生きていられる。

 

まぁ、私にとって人間は友だ、また、不調なことがあればメンテナンスに来るといい

 

わかった、また今度来るよ

 

そう言うと人間は里に向かって歩いていった

 

さて、今日は珍しく疲れた。

寝るとしようかな




特ににとりに何かあるわけではないです。
そして人間にも何かあるわけではない

ではまた会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

常なる心

どうも悠樹@夢子です

寒くなってきましたね、私は寒いのは好きですが、みなさんはどうでしょう?

それではごゆっくりと


日も雲に隠れたある日のこと

 

ここにもいないとなると、検討もつかないわね。全くどこに居るのやら。

それにしても相変わらずの評判と言ったところかしら。

 

さとりは呆れながら、そうつぶやいて里を出た

 

仕方ないから地底に戻り、素直にこいしの帰りを待つことにした

 

この日は地底での催しものがあり、こいしも参加することになっていたが、どうも姿がなく、また出回っているのではないかと、地上を探していた。

 

無意識っていうのは不思議ね、

 

独り言を言って道を歩いていると。

どこからか心の声が聞こえた

 

いったいどこの誰かしら、私に話しかけてくるなんて

 

横を向くと一人の男が寝そべって空を見ていた。

 

こんなところに地底のものがいるなんて珍しいな

 

人を探してたのよ、別にいいでしょ

 

そりゃ、こいしちゃんの事だな。

あの子ならさっき里で見かけたよ

気づいた時にはいなくなっていたけどな

 

里にいたのね。まぁそろそろ戻る頃でしょうか。

 

さとりはその男の隣に座って話しかけた、

 

あなたは里の人間かしら。

 

いーや、違う

 

なら魔法の森に住まいか

 

それも違う、人間じゃないしな

 

人じゃない。またすごい冗談をいうわね

 

本当だがな。約200は生きてるかな

 

それが本当なら、あなたも相当苦労人でしょうね

 

苦労人ねぇ、まぁ、間違いじゃないかな。

 

ふと男の顔を見ると、話しているように見えたが、口が動いていなかった

 

あら、テレパシーでも使えるのかしら

 

テレパシーねぇ、そうかもな

 

ひとつ質問しようかしら。

 

なにかな。

 

あなたは嫌われてるのかしら

 

嫌われてるかどうかなんて気にしたことないな。

 

あら、そういうのに疎いのかしら

 

嫌われてるかといって自分が変わるわけじゃないしな。俺は俺だ

 

なるほど、面白い回答ね。

 

そりゃどーも

 

二人はそんな会話をしていた、

 

ねぇ、200年も行きているなら、あなたいろんな妖怪のことも知ってるんじゃないかしら。

 

そうだな、紫さんとは長い付き合いではあるな、

 

あらスキマの妖怪とも知り合いとは、なかなかね。

 

他にも山の鬼とか博麗の巫女、それと森の奴らとも仲いいぞ。

 

あら、そこまで顔が広いなんて以外ね、

 

まぁ200年も生きていればな

 

そうね。私はあなたとは初めてじゃないかしら。

 

単に顔合わせしてないだけだ、俺は幾つとあんたを見かけてるしな。

 

あらそう?私は見たことないわ。

 

まぁ、影薄いとよく言われるよ。

 

あなた、なにかあったのかしら

 

ん?なにが?

 

試しに心を読んでみようと思ったのだけど。どうも壁があるみたいね。

 

俺はこいしみたいに心を閉ざしてはないからな。

 

それならなぜかしらね。読めないわ

 

そりゃ、俺が口で会話してないからだろ

 

どういうこと?

 

だから、俺はあんたの能力を知っててこうしてるんだよ、

 

心が読める、それがなにか?

 

わからないかな、俺はあんたと心を使って会話してるんだよ

 

えっと、つまり私は既に心を読んでいたということかしら。

 

そういうこと、だから俺の心は読めないだろ。

 

言ってることがおかしくないかしら、心が読めるとか読めないとか

 

わかりやすく言えば、心の奥底までは読めないだろうな、

 

なるほどね、あなたは心を私は口を使って会話している。そう言いたいのね?それで、あなたの心理を私は知ることはできないと、

 

そういうことだ。心理を覗こうとすれば俺の心の声が邪魔する。だから、あんたは俺の心の奥底にあるも野を読み取ることができない。

 

ひねくれたように言うから戸惑うわ、できるだけ簡単に話してくれないかしら。

 

悪かったよ。ひねくれてるのは昔からだから、どうしょうもない

 

しかし何故、心で会話するのかしら。

 

そりゃ、あんたに心を読まれないためだよ。

 

口が聞けないのかしら。

 

口が聞かないというべきか、

 

またそんな言い方をするのね

 

わかったよ簡単に言うさ

口が使えないんだよ

 

喋れない?なぜ?

 

もう声が出ないんだ、それと喉はとっくに枯れてる。200年も生きれば体の何処もかしこも、廃れるんだよ

 

それは、残念ね…

 

そう、残念でしかない、でもこれでいいと思ってそのままでいる。

 

なんで?人間じゃないならもっと生きていられるのに

 

俺は元人間だからだよ、この方が人としての死に方に近いからな

 

なるほどね、少なからず人としての理を貫きたいと。

 

そうだ。だから声もなくした、ついでに俺はもう足も失ってる

 

まさか、歩けないのかしら?

 

あぁ、腕はまだ動くらしい。ついでに体もな

 

ずっとそうやって苦しみながら生きるのかしら。

 

まぁ、それ以外の方法はない。

いっそあんたが俺を殺してくれるなら話は別だがね。逃げも隠れもできないし

 

そんな無価値なことはしないわ、それにあなたが死にたいと願うのなら、明日でも死ねるとおもうし。

 

まぁ、そうだろうな、いつ死のうかなんて考えてない。気がついたら死んでた、そんなもんでいい、

 

なんだか、長くなってしまったわね

こいしを探しながら帰ろうかしら

 

隣をよく見な

 

あらこいし、いつから居たのかしら

 

さとり様が座った少しあとから。

 

あら結構早い時からいたのね。

気が付かなかったなんて、

無意識って不思議だわ

 

さてと、それじゃ帰りましょうか

 

そう言ってこいしとさとりは歩いて消えていった

 

 

 

久しぶりの会話、心のつながりだったなぁ

 




あなたには心を込めて会話する人が居ますか?
残念ながら私にはいません、もし居るならば大切にしましょ


それではまた会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

嫉妬の混じった愛

どうも悠樹@夢子です。

恋と愛の違いってなんでしょうね?

私は今までに5回ぐらい失恋しました

それでは、ごゆっくりと


ほんと。妬ましいわね

 

何がだい、毎回それじゃないか

 

貴方のその堂々たる態度よ。

どうしてそんなにも意気込んでいられるのかしら。人間なのに

 

俺は誰かに押し付けられながら生きるのは嫌いだからな、それに、

人間も妖怪も心を持ってる。それを大切にすればいいんだよ。

 

妬ましいわね、妖怪をも大切にする心を持てるなんて。

 

それは褒め言葉なのか?

 

どっちでしょうね。

 

とにかく。今日は帰ろうかな。

地底もなかなか楽しいな、こんな商店街みたいな場所があるなんてなぁ。

 

人間のくせに妖怪と仲良くするなんて妬ましいわ。

 

……………………………

 

 

ねぇ、あなたはなぜ毎日地底に来るのかしら?

 

そうだなぁ、

つまらないんだよな。

 

つまらない?

地上にはたくさんの娯楽があるじゃない。

 

それもそうなんだけど。同じものばっかで飽きてねぇ

 

ふーん。そうやっていろんなものな興味が示せるあなたが妬ましいわ。

 

そうやってすぐ妬む君が妬ましいね。

 

あら。本当にそうかしら。

 

言ってみたかっただけさ。

 

そう。真似事なんてつまらないわ

 

そうかな、ちょっと君に興味が湧いてきたよ。

 

あら、嬉しいことだけど。私は妖怪、あなたは人間、そのことはわかってるわね?

 

そうさ、でも、俺は気にしない。

 

そう。

 

ここはすごく面白いところだね。地上よりも楽しい。なんたって暇しない

 

地上の人間なんだから地上で暮らしなさいよ。

 

うーん。私にとって地上は住み難いんだよな。

 

あら、どうしてかしら

 

人間とは仲が悪い。というか、私は嫌われものでね。私がいるとどうも気分を害するらしくてな。

 

あら。残念ね。というか、可哀想ね

 

まぁ、それも仕方ないことなんだけどな。

 

仕方ないこと?

 

うーん。なんて言うか。

地上でいろいろと問題が起きてね。

私がそれに関係してるんだ

 

そう。それであなたに関わりたくないということかしら

 

そうらしい。だから。こうやって地底に遊びに来ているんだ。

 

ふーん。あなたも災難ね

ここにいると何があるかわからないわよ?

 

まぁ、いつ死んでも構わない。

 

そんな恐れ知らずなところも妬ましいわね。

 

何でもかんでも妬んで。君は面白いな

 

それはどうも。

 

さて、地上ではそろそろ夜だろうから帰るとするか。

 

どうせ明日も来るでしょうけどね。

 

まぁ、ここに来ない日はないだろうねぇ

 

………………………………………

 

 

いつもこの店にいるのかしら

 

あぁ、そうだね。ここの紅茶は好みの味なんだ

 

もう地底で居場所を作ったなんて妬ましいわ。

 

なんだか、ほんとに妬まれてる気がしてくるね。

 

あら。妬ましいのはほんとよ?

 

そうかい。まぁそれもそうだろうな。

 

なによ。わかったようないい方するわね。

 

君は地上での居場所がないんだろう。

 

そうね。まぁ、妖怪だし。こんな性格だから。

 

私も居場所はない。

だから私はいつもここにいる。

 

逃げ道を見つけただけじゃない。

 

そうとも言うね。

 

ここにも、飽きたらまた別の場所に行くんでしょ?

 

あぁ、多分そうだろうなぁ。

 

やっぱり転々とするあなたが妬ましいわ

 

なにが妬ましいのかさっぱり

やっぱり君は面白いな。

君と話をしていると飽きないね。

 

ほんとにそうかしら?

 

あぁ、君との会話には暇がない。

 

まるで他の人がつまらないような。

 

そのままだよ、人間はいつも自分中心に会話をする。それを聞いてるこっちはつまらないんだよ。

 

あなたも一緒じゃないかしら?

 

私は誰かに話しかけることが少ない。

話しかけることがあるとしても重要なことか、ちょっとした用事で話すぐらいだ。会話という会話はしないんだよ

 

そう。忙しそうなあなたが妬ましいわ

 

忙しくなんかない。単に話さないだけだ

 

なのに口は達者なのね。

妬ましいわ

 

俺が妬ましいのは、誰かを恨み、

そして誰かを想うことが出来るやつだよ、

 

あらあなた、心があるんじゃないかしら?

 

俺はもうそういうのはわからなくてな

 

なによ。いきなり自信なさげになって。

 

はぁ…つまらない過去があったんだよ

 

興味が湧いたわ、聞かせてもらおうかしら

 

人に裏切られる人生を生きてきただけさ。俺には信じる人も信じられる人も居ない。もちろん。俺を信じてくれる人すらな、四面楚歌、八方塞がりだよ

 

あら。そんな人生を送ってきたなんて、あなた本当に苦労人ね

そんな苦労ができるなんて妬ましいわ

 

君は結局、私を妬むんだな

 

そういう癖、性格よ。諦めなさい

 

そうか、そうだなぁ

さぁ、今日はもう帰ろう、里の宿もいつ追い出されるかな。

 

なら地底で住めばいいのに

 

それもいいけど、そうするとつまらなくなってしまうかもしれないだろ?

 

………………………………………

 

あなた地底に住む気はないのかしら?

 

そうだね。そうしようと思っていた頃だよ。

 

あら?この前はつまらなくなると言っていたじゃない。

 

ついに地上に居場所がなくなった

宿は追い出され。人間には悪態をつかれるようになった。

地上にいても何の得もなくなったね

 

そう。可哀想ね。人間でありながら

人間から拒絶されるなんて。

 

妖怪から嫌われるよりずっとマシなんだろうけどね。

 

そうね、妖怪から嫌われてしまっては、食われるか生きていられなくなるか。だものね。

 

何故か。妖怪とは仲が良いんだ

俺でもわからない

 

ほんと、どんな妖怪とも仲が良いあなたが妬ましいわ

いっそ嫉妬の炎で燃やしてみたいわ

 

そんなことされたら困るなぁ、まだ生きてるから、できるだけこの人生を真っ当してやりたいよ

 

そうね。人間は人生が短いものね、

妬ましいわ

 

そんなこと言われてもなぁ。

 

妖怪は長生きだからその分出来事が多いのよ

 

そうだね。だから嫌なことも多いというわけか。まぁ、嬉しいことも多いだろう?

 

長生きがいいというわけでもないわ。

 

短命がいいというわけでもない

 

どっちとも言えないわね

 

だから、出来る限り生きるんだよ

 

そう。ならここでこうやって私と話していればいいじゃない。

 

そうだな。そうしようか

 

暇がない人生を歩む。私と話をすれば楽しく暇しない。そうでしょう?

 

あぁ、確かにそのとおりだ。

名案だな。助かったよ

 

短命の人間が妬ましいけど、

それを見届けるのも、面白そうだし

 

もしあなたが生きることをやめる時が来たら私があなたを終わらせてあげるわ。

 

あぁ、その時は頼むよ。

 

………………………………………

 

何年経ったかしらね。

 

さぁな。軽く四、五年ぐらいか

 

飽きもしないでよくもまぁここにいるわね。

 

ほんとに暇しないぐらいだからな。何度君に妬まれたか。

 

数え切れないわね。私もわからないわ

 

さて。いつまでこうしていられるかな

 

どういうことかしら。

 

長年ここにいるとどうも体が崩れ始める。人間ここは合わないらしい

それでも、君とここにいれて楽しいから、まぁ、気にはしてないけどね。

 

なら、妖怪にでもなってしまえばいいじゃない。

 

そしたらここにいる理由がなくなる、

 

別にいいじゃない、暇しない生活をすればいいのよ。

 

それもそうだが、どうすれば妖怪になれるか。

 

そうね。ならこうしてあげる

 

………………………………………

 

なぁ、もしかして。

 

何かしら?

 

パルスィって…

いや、そんなことはないか

 

気になるし隠すあなたが妬ましいわ

 

いや、確信がないんだ。言えない

 

そう。早く言えるようになってね

 

な、何だいきなり優しくなって

 

気のせいよ

 

やっぱりそうか。

 

なにがかしら?

 

俺の事を…

 

ええ、そうよ、私はあなたへ嫉妬が混じった愛を持っているわ。

あなたを愛してるのよ

 

だから。俺を地底に、妖怪に?

 

そう。いつまでもいて欲しかった

あなたは私の唯一の拠所なの。

私が抱いたあなたへの愛に気づいてくれなかった。あなたが妬ましかった。

 

パルスィ…ありがとう…

 

そうやってすぐにお礼を言えるあなたが妬ましいわ

 

愛していても妬むのはやめないんだね

 

そういう性格だって言ったでしょ。

 

そうだね。俺もパルスィの事を愛しているよ。これからもよろしく。

 

私の事を愛してくれるあなたが妬ましい。けど。この感じは、

 

嬉しいの方が合ってるかしら

 

 

 




私には心から信じれる人もいません
悲しい限りです

ではまた会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

誰かのために

どうも風邪引きの悠樹です

信仰はよくわかりません
そうです、私も論より証拠派です
時には論も必要ですね

ではごゆっくりと


誰かの為に

 

 

はぁー、疲れたぁ

 

お疲れ様です、おかえりなさい

 

あれ?早苗なんでここに?

 

信仰を集めている途中で足を休めようと、寄りました。

そうか、あのな、断りもなしに勝手に家に乗り込むんじゃない。

 

あなたならいいかなと思いまして

それに、里から離れて家なんてそんなにありませんから丁度いいじゃないですか。

 

まぁ、知り合いならまだしも知らない人の家になんか乗り込むなよ?

 

もちろん。それぐらいわかってますよ

 

んで、飯は?食ったか?

 

はい、あなたの分も用意してありますよ。

 

え?あぁ、あれか

 

 

これなんだ?

 

冷やし中華というものです。

おいしいですよ、里の方に作り方を教えてもらいました。

 

冷やし中華、初めて聞くな

 

 

ん、なかなかおいしいな。麺って暖かいもので食べることが多かったから、これはこれで、不思議な感じだな。

 

口にあってよかったです。

 

さぁ、休んだら戻れよ。

 

仕方ないですね。行くとしますか

 

………………………………………

 

なんでお前は今日もここにいるんだよ

 

暇だったからです、たまにはは休もうと思いまして

それと、あなたも信仰してください。

 

俺は祈るよりも先に体が動くんでな、そういうのはいいや

 

そうですか、仕方ないですね

 

俺は今日も畑に花壇で忙しいんだよ。

 

手伝いましょうか?特に何かするわけでもないですから。

 

助かるけど…

お前はいいのかよ

 

たまには気分転換が必要ですよ

 

 

 

 

いやぁこんなにも疲れるんですね!

 

それにしてもまだ元気だな、

 

いやいや、これでも足とか結構疲れて震えてるんです。

 

ほんと、疲れたな

 

さて、夕食もありますし、帰りますね。

 

あぁ、気を付けろよー

 

…………………………………………

 

おい起きろ。って、お前泣いてたのか?

 

あの…すいません。

 

謝るな事を説明してくれ。

 

守谷の二人は…本当に神様としてやっていけるんでしょうか…

 

どうしたいきなり。

 

毎日堕落してばかりで…私が吉報を送っても適当な反応しかしません。それに信仰されていることをあたかも当たり前のような言いぐさで。神様だと偉そうにして…

私だって一応神なのに…

 

そうか、早苗は現人神だもんな。

早苗は人間としての存在感の方が大きいから、そんなに信仰されないのか。

まぁ、お前がいるからあの二人は信仰が集まってるんだから。もう少し頑張ってみろ。

 

はい…二人にも自分で信仰を集めるよう促してみようと思います

 

……………………………………………

 

扉の音?はーい?

 

すみません、少しよろしいですか?

 

あれ。早苗今日も来たのか。

 

少しでいいです。

 

表情的に少しで済みそうじゃないな、まぁいい入れ。

 

 

 

俯いてないで。ほら茶だ、飲んでおちつけよ

 

ありがとうございます…

あの…

 

どうした?

 

あなたは私を信仰してくれますか…?

 

言ったろ。俺には信仰心はないそれに、今のお前を信仰してやろうとも思わない。

 

…!

 

待て!どこに行く!

 

離してください!もういいです!

 

お前がやることはわかってる、

神社を燃やすなんてやめろ!

 

あの力を使ったんですね

あなたは嫌ってるはず!誰かを傷つける、その自分の力を!

 

そうだ、だからその逆もあるかもしれないだろ。

 

離してください!

 

離さない、お前が落ち着くまでは、離してやらない。

 

なぜなんです!あなたは私を傷つけようとしたんですよ!

 

落ち着けと言っている、

深呼吸をしろ。

 

…はぁ、ふぅ。

で、なんで力を使ったんです。

 

お前を止めるべきだと思ったからだ、あのままだと二人は消えていた。お前も同時に消えていたかもな。

 

わかってて力を。

 

でないとお前を止めれないと思ったからな。

 

私にはもう神としての威厳も何も無いですから。

 

だから二人を巻き込むのか

 

そんなつもりは…

 

全部吐き出してみろ、抱え込んでいるもの。辛かったはずだ。二人の世話と仕事、悩みもあるだろ。

 

私は…

 

少しづつな。

 

私だって信仰されたい。でも私は人間としても生きていられる。だから、何時も二人の信仰を優先してきました。

 

それがお前にとっての仕事だしな。

 

疲れても、休憩してはすぐ続けて。そんなことばかりで、自分でも疲れててわかっているのに。どうしてもやらないとと思ってしまって。

でもいくら私が頑張っても、二人の態度に変化が見えなくて。まるで信仰が普通みたいに…

 

神社にいる時も二人は何もしないで堕落するか、霊夢さんのとこか他の人と会って遊んでばかり。

そんなので神様だなんて…

 

まぁ、堕落した神様なんて見たくもないしな。

正直、疲れたんだろ。

 

…はい。疲れました。

でも私はまだ休めないんですか?

 

さぁ。今後のお前の行動次第だ。

今は止めてあるから安心しろ。

 

ここで休むのが楽でした…

人間としての友人はあなたしかいませんし。霊夢さんや魔理沙さんはあまり頼りにならないどころか。話すらまともに聞いてくれませんから。

 

話し相手が少ないわけでも無いだろ。

 

ここまで話できるのはあなたぐらいです。

 

それはどうも。でも二人は?

 

神様に悩みなんて話せませんよ。第一わたしの悩みが二人の事なのにそんなこと話せません。

 

まぁ、そうか。

 

あなたがいなければ、どうかしていたかもしれません。本当にありがとうございました。

 

礼はいらん……

けどお前にしかできない事だ

もっと頑張れ。

 

はい。それでは失礼します

 

……………………………………………

 

おーい。いないかー

 

何だ、諏訪子に神奈子じゃないか。

 

最近早苗は?ここに寄ってたりするのか?

 

ええ、しょちゅう。

 

やっぱ。そうかぁ

 

何だ、わかったような物言いで、

 

ああ、まぁ、あいつ何も話さないで信仰集めてくるばかり言って、帰ってきても俯きながら掃除してるか、泣きながら本読んでたりしてるんだよ。

なんかいろいろとおかしいと思って

 

仕方ねえ、教えてやるわ

あいつお前らに悩みを抱えててな。

 

私達に?

 

あぁ、お二人さん堕落した生活ばかりだと聞く。実際どうか知らんが。周りから見るとそうらしい。

 

堕落した生活か…確かにそうかもしれないな…

 

それで、俺のとこにきて休憩がてらお悩み相談って事だ

 

そんなことが…

早苗には申し訳ないことを…

 

あいつも一応神様だ、そういうとこ、お前らを羨んでいたんだろう

 

 

 

すみませーん。

 

この声は早苗かな、

いらっしゃい、

 

今日も来ちゃいました。

って、諏訪子さんに神奈子さん?

 

やっほー

 

よう、こんなとこで会うとはなぁ

 

珍しいですね。外を出歩くなんて。

 

まぁ、たまには外に出て。自分で自分の信仰を集めるのも大切だと思って。

手始めにこいつをと思ったんだけど

 

俺は論より証拠だ、信仰はしないぞ

何度も言っているだろう

 

この通りだ、

 

ふふっ、そうですよ、この人は神様にには縁遠いひとですからね。

 

そうかぁ、縁遠いのかぁ

 

悪かったな。そういうのは信じないタイプなんだ。

 

まぁいい、諏訪子、人里に行って見よう。私達の信仰はどれだけ広がっているのかも知りたい。それに実際に私達を目で見て欲しいしな。

 

そうだね。行ってくるね!

 

おう。

 

 

 

どうした?早苗

 

お二人は話をされたのですか?

 

あぁ、でも。いきなりあんな話をしはじめるなんて思わなかった。

 

心変わり…二人はやっと…

 

ああ、やっと動き始めたな

 

ありがとうございます…

少しだけ目をつむってもらえますか?

 

あ、あぁ

 

 

……

 

 

早苗。お前

 

はい、あなたが好きです。

でも、私は、現人神ですから、ここまでしかできないですが、せめて気持ちだけでも。

 

あぁ、受けとるよ。

ここまでされたらお前を信仰してやらないわけにいかない。

まぁ、いつも頑張ってるからな。

お前だけ特別だ

 

はい!ありがとうございます!

 

これからも頑張れよ。

 

早苗様。

 




誰かのために、
私はカメラが好きで、カメラで撮って写真にして渡して喜ばれるのが好きですね。

ではまた会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

吸血記

どうも喉が痛い悠樹です

日記なんてつけたことないです。
でも。手帳は今後使っていく予定です

では、ごゆっくりと


10月3日

 

日にちなんてよくわからないわ

 

でもあの霊夢が言っているのだから。多分合ってるんでしょう。

 

日記手帳というものを貰ったわ。

1月分?のものらしい。

 

ただ何を書けばいいのかわからないわ。聞いてみようかしら。

 

 

10月4日

 

咲夜に聞いたところ。何か出来事を書けばいいらしい。

出来事。特にないわね。今日はこの辺にしようかしら。

 

 

10月8日

 

新しく執事が入ることになった。

というか今日いきなり来た。

 

名前は暁。私には咲夜がいるし、パチュリーは小悪魔がいる、美鈴の相方には相応しくないということで、フランのお世話役になったわ。

 

こんな感じかしら?

 

まぁ、何か気になった事を書いてみようかしら

 

10月10日

 

咲夜が普段よりも忙しそうにしているわ。パチェから聞いたところ。先日来た執事に弾幕ごっこで負けたらしい。それで、パチェが作った地下訓練所的な場所でパチェと特訓してるらしいけど…そんなに悔しかったのかしら?

 

よくわからないけど、とりあえず仕事に支障が出ない程度にと呼びかけておこうかしら。

 

10月12日

 

フランが部屋に来た。とは言っても普段とは何か違ってソワソワしていたわ。悩みがあると言って、聞いてみたところ。執事の暁に恋をしてしまったみたい。

素直に伝えるのが得策よ。と伝えてみたら顔を赤くして俯いたわ。全く素直になれないんだから。

 

実ってくれるといいわね

 

10月13日

 

今日もフランが部屋に来た。

昨日告白したらしく。答えはOKだったらしく。恋が実ったみたいね。

良かったわ。フランが残念そうにしている顔は見たくないもの。

今晩は二人の恋愛を祝う形で食事を取ったわ。

 

続くといいわね。

 

10月18日

 

久々に咲夜の愚痴を聞いたわ

 

どうも暁に弾幕ごっこで勝てないのが悔しかったようだけど諦めたようね、

まぁ、時にはそんなこともあるわよ

私だって霊夢に勝てないんだもの。

上には上がいるってことよね。

 

暁と今度弾幕ごっこやってみようかしら

 

10月21日

 

暁と弾幕ごっこしてみたけど

確かに実力はあったわ。

でも、もちろん私には敵わないわね

フランが乗り気じゃなかったみたいだから彼とは少しだけ張り合うだけになったわ。そうよね、恋人が傷つくかもしれないもの当たり前よね。

 

10月23日

 

気がついたらフランの私への呼び方に違和感を感じてたわ。

おかしいわけだわ。お姉様ではなく

おねぇちゃん、と呼んでくるんだもの、驚いたわ、これも成長かしら

フランも少しずつ大人になってるかしらね。

 

10月24日

 

珍しく里から客人が来た、と言っても商人で。何かほしい物はないかと。訪ねて来た。もちろん血は吸わせて貰ったわ。それが条件での館の観光と売り込み許可だもの、

 

私は何も興味無かったけど

フランと暁はお揃いでペンダントを買っていたわね。

咲夜は日用品を美鈴も髪飾りを買っていたわ。

 

10月27日

 

目に映るカップルが今後どうなるのかわからない。でも。幸せを願おうと思うわ

 

咲夜が風邪らしくて寝込んでいる。

人間だから仕方ないわね。

パチェとのお茶は今日は美鈴が用意してくれたわ、久々だわ美鈴のお茶は濃いめで美味しい

 

咲夜も、早く治るといいけど

まぁ、きっとすぐ治るわ

 

10月29日

 

フランが泣いて部屋に来た。

どうやら暁と喧嘩してしまったらしい。仲直りしても、暁への罪悪感が消えなくて胸が苦しいって言ってたわ。

フランも悩む時期が来たのね。

いい事だけど。私にとってもフランが苦しいのは嬉しくないこと。精一杯慰めたわ。

気が晴れたら。お迎えに来た暁と手を繋いで部屋に戻っていったわ

幸せそうで何より。

 

咲夜も風邪が治ってまたいつも通りになったからこれもまたよしって感じかしら。

 

10月30日

 

そういえば最近、パチェの様子がおかしいのよね。夜な夜な私の部屋に忍び込んだり。私のタンスをあさってはすごい息が荒かったり。

新手の病気か何かかしら?

咲夜ならよくあることなんだけど…

感染?したのかしら。不気味限りないわ

 

10月31日

 

最後のページになってしまったわ

 

思えば私よりも先にフランが恋人を作ってしまったわ。

でも。見届けたいかしら。あれだけ乱暴で我儘なフランがこうやって大人になって。嬉しい限りだわ。

私にも良い人が見つかると夢見ておこうかしら。

 

さて。最後の日なのに書くことがなくなってしまったわ。

これだけは残念ね。

また、気が向いたら霊夢から貰おうかしら、

何気に面白かったし。

 

さて。今日は、いや

 

今月はこの辺にしておこうかしら

 





レミィの1月の出来事。
なかなか普通?な日々にですね

それではまた会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

夜雀の日常

体調不良の悠樹です、


またまたのんびり系で投稿してみました


ではごゆっくりと


 

 

みすちー

たまご2つとがんもとだいこん。

 

はいはい、おまちどー。

 

いやぁ、いつもありがとね。

 

いいんですよ。大切なお客さんですから。

 

そういや慧音。寺子屋に新しい生徒が来たって?

 

あぁ、そうなんだよ。でも少し困ってな。周りに馴染めないみたいで、孤立していることが多いんだよな、

 

まーた問題児か?

 

まだそうとは限らないと思いますよ

その子って来たばかりなんですよね?

 

まぁ、まだ3日だからな、単に話しかけづらいかけにくいのやりとりだと私は思ってる。

 

なら時間が解決するな。

 

そうだといいですね。

 

ミスティアさんには、寺子屋に来ても

らって調理教室とかしてくれるとありがたいんですよね。

 

私は屋台を営んでますから

それに鳥系はダメですよ。

 

やっぱりそうくるか。

さて、みすちー生ビールおかわり

 

はい。おかわりね

 

んっんっ。ぷはっー!

 

一気に飲み過ぎじゃないかしら?

 

大丈夫だよ。間隔あけて飲んでるから取り敢えずは問題ないさ。

 

そう。後で戻さないでね。

 

心配ない。

 

あっ、ミスティアさん。私は弱めの焼酎おねがいします。

 

おっ、今日は慧音も飲むのか。

 

まぁ、疲れた時にはアルコールが欲しくなるものよ。

 

まぁ、寺子屋で張り付き教師やってれば、ストレスもたまりはするよな。

 

そうよ教えることって難しいんだから。

 

だから、私は料理を誰かに教えたくないんですけどね。

 

ミスティアさんは料理上手ですよね。将来いいお嫁さんになりそうですよ?

 

誰かと繋がりなんて持てませんよー。そんなことしたら屋台が経営できなっちゃいますしー。

 

ザラでもなさそうな表情ですね

 

まさか好きな人でもいるのかー?

 

さぁー?どうでしょ?

 

うふふ。いるとしたらどんな感じかしらね、

 

私の好みとしては、きちんと私を守ってくれる人がいいですね。

 

それだよなー、ちゃんと守ってくれる人がいいよな。

 

私達は守られるより守る側だけど?

 

それを言っちゃーいけない。

なんたって私達は女だ、男が女を守るのは当たり前じゃーないか?

なぁ、みすちー?

 

そうですねぇ。守ってもらえるならそれがいいですねぇ。

 

ほらぁ。やっぱ強い男だってぇ

 

強い男って、あなたより強い男がいると思えないわよ

ミスティアさん昆布とソーセージ一つづついい?

 

はい。これですね、どうぞ

 

ありがと、でもまぁ、確かに自分より強いとなると、惚れちゃうかもしれないわね。

 

だろぉ?やっぱ守ってもらいたいよなぁ。

でも人里にぃそんな奴いないしぃ

 

(慧音さん、隣もう結構酔ってますよ)

 

(そうみたいだからそろそろにするわね)

 

まぁ、いい男はいつか見つかるよ

さて、そろそろお開きにしようか

 

おぅーそーだなぁー

 

これお代ねまた来るわー

 

はーい。ありがとうございますー!

 

さて。と、もの洗わなきゃ。

 

 

ミスティアさん?いますか?

 

はい、いらっしゃい。

 

あっ、いたいた。

 

どうしました?妖夢さん

 

幽々子様が今度宴があるっていってて、私一人じゃ作るのに時間が掛かるので手伝ってもらえますか?

 

いいですよ。丁度お客さんが帰ったばかりなので、

 

ありがとうございます。先に戻って準備始めておきますね。

 

……………………………………

 

妖夢さーん!来ましたよー!

 

あら、こんなところに雀ちゃんが。

 

げ、幽々子さん。今日は食べないでください。妖夢さんの頼みできてるんですから。

 

あら、残念ねぇ。

屋台は繁盛してるかしら?

 

ええ、お陰様で。

昨日も5人6人来ましたね。

 

そう。よかったわえ

こんな遅くまでご苦労様

 

ありがとうございます、それと、妖夢さん呼んでもらえませんか?

 

ちょっと待ってなさいね。

 

 

 

遅いなぁ。妖夢さんまだかな。

 

ごめんごめん、遅くなった。

 

何かあったんですか?

 

食材の用意してたら幽々子様が後ろからイジって来たので少しお叱りを…

 

あはは。イタズラとか好きですもんね幽々子さん。

 

ほんと、台所に立っている時はダメっていっているんですけどね。

 

火とか刃物扱っている時とか危ないですからね。

 

まぁ、話していてもなんですし。

作業にとりかかりましょうか。

 

 

…………………………

 

 

これだけ作れば明日の宴の品揃えもなんとかなります。ありがとうございます

 

 

いえ、また何かあれば呼んでください、それじゃ、屋台の方に戻ります。

 

今日はありがとうございました。

 

……………………………………

 

いざ戻ってきたらこれですか。

幽々子さんどうしたんです。

 

いやぁ、たまには私もお酒を飲もうと思ったのよ。

 

戻って飲んでこればいいじゃないですか。

 

おでん注文いいかしら?

 

話聞いてないですね。どれにします?

 

たまごと巾着とごぼう巻2つ

 

はいよ。お酒はどれに?

 

生ビールとか言うのを頼むわ。

 

はーい。

はいこれ。生一杯とおでん。

 

ありがとうね。

 

それで、今日はいきなりどうしたんです?

 

そうね。たまには妖夢の目の離れたところで息抜きをしようかと思ってね、

 

いつもいっしょですもんね。

 

警護兼庭師。それでもってあの人の弟子、彼女も忙しいのよ?

 

そうですよね。私は突っ立って物売り商売しかしてませんから。

 

立ちっぱなしも疲れるでしょう?

それにこういう仕事は人の愚痴聞くから余計神経使ってるんじゃないかしら?

 

まぁ、それもそうですけど、慣れてきて大体どんな内容でも軽く受け流せるようになりましたから。

もちろん鳥関係以外ですけど。

 

相変わらずね。私の愚痴もいつかは忘れちゃうのかしら。

 

少なからず印象の弱いものは、そうなります。

 

悲しいわねぇ。

 

そう言われましても。

 

なら、ひとつ質問いいかしら。

 

何でしょう?

 

ここって人間も来たりするのかしら?

 

2、3日日に1回程度ですね。

そう頻繁じゃないです。

 

なら出会いも少ないのね。

 

ええまぁ。

でも人間でもいい人はいますからねぇ

それと、基本的には悪い人間が来ることは何ですからね

 

まぁ、食物屋を襲うのもねぇ?それに店主が妖怪だもの、勝てると思って襲うのは相当な人間ね

 

霊夢さんや魔理沙さんぐらいでしょう。そんな人

 

まぁ、そんなところでしょうね。

少なからず人里の住人でいるはずがないもの。

 

まぁ、一度だけあるんですよ?

ちょっとあの時はヒヤッとしましたけどねぇ、

 

へぇ?どんな感じだったのかしら?

 

はい。見た目は誠実で優しそうな人だったんですよ。お酒じゃなくて水しか頼まないでしたから。年齢的にお酒飲めなかったんでしょうね

 

大人じゃない?

 

はい、なんでも。人間はお酒が飲める年齢になるまでダメなんだとか。

 

へぇ、霊夢に聞いたことがあったけど本当みたいね

 

それで、注文も鰻重におでん少しに普通だったんですけど

 

あら、至って普通ね、襲われる要素が見当たらないんだけど?

 

それが。お金を持ってなくて。食べたあとに私に掴みかかってきたんですよ。

 

あら、やっとね。

 

もちろん私と反撃しますけど、

なにせ一応お客様だから突き放す程度にしかしなかったんですよ。

 

襲われたのに、冷静な判断ね。それで?

 

その後にいきなり泣き始めてどうしたのか聞いたところ

食べるだけ食べて。それで自殺しようとしたらしいんですよ。

 

あっ、なるほど、みすちーに殺して欲しかったわけなのね。

 

そう。困りますよ。私だって店経営してますし。そんな私の店で殺人があったなんて言ったらお客来なくなりますし。

 

まぁね。不評だけは買いたくないものね

 

それに。私自身人を殺そうなんて思いませんから。そんなことしたらお客減っちゃいますよ。

 

案外目ざといのねぇ。

 

そりゃ、商売やってたら。お客は欲しいですから

殺してくれって言われたけどそうも言っていられないですし。追い返したんですけど。

 

その後その人間はどうなったのかしら?

 

どうやら死ねたらしいですよ。

次の日の早朝に屋台を移動させようと思ったらその人間の亡骸が木に糸でぶら下がってましたから。

 

あら、結局そうなるのね。

 

ええ、まぁ仕方ないですよ。

 

何がそんなに嫌だったかしらねぇ

 

知りえませんよ。私達は妖怪半霊、

人間の事情には深入りしませんから

 

そうねぇ。

 

妖夢さんはいいんですか?

 

声はかけてあるから。いいのよ。

 

そうなんですか。

 

でもまぁ。今日はこの辺にしておこうかしら。

 

そうですか。今日はありがとうございました。

 

また、気が向いたら妖夢と来るわね。

 

はい、その時はよろしくお願いします。

 

それじゃ、また会いましょう。

 

 

 

 

さてと。明日の分のおでん煮ないと。

 

 

明日は誰が来るかなぁ




屋台なんてお祭りの時しか見ないですよね。

ではまた会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

死を知らぬ存在

どうも、過労死寸前だった夢子です。

不死になったら過労死もないかな?


それではごゆっくりと


 

 

お前は毎回私についてきて。

 

別にいいだろ。俺の勝手だ

 

迷いの竹林にきて何をすると言うんだ。

 

それも毎回言っているだろう。

妹紅と弾幕勝負したいと、

 

勝てるわけ無いだろう。

例えお前がスペカを何枚と持ってても私に勝てる見込みはない。帰れ

 

なんだよつまらないな。

 

そうだつまらないぞ、それに弾幕で戦ったとしてお前が無事でいられる保証はないぞ。

 

お前は不老不死だもんな

 

そんで、お前は普通の人間だ

 

それは否、弾幕もあれば、全てを避けきる程度の能力、もある

 

全てを避けきる、馬鹿らしい。

 

ホントだぞ?魔理沙やパチュリーとかアリスサンの弾幕も避けきったんだ。

 

へぇ、なかなかやるな、帰れ

 

帰れ帰ればっかり。そんなに嫌なのか人を殺してしまうかもしれないということが。

 

ただ単純に、めんどくさいだけだ

お前は死ぬことがどれだけ苦しいことか知らないだろ

 

あぁ、知らないね

 

私は幾度となく死を味わってきた

 

それで?それが人間を殺さない理由?

 

なんだ、お前は、なぜそこまで弾幕勝負を求めてくる?

 

死ねないお前にはわからないだろうな。

仕方ないから帰るか。

 

おい待て。ちっ、うぜぇ。

 

思えば、毎回あいつはこんな感じだったな。何なんだあいつ、

 

 

 

………………………………

 

 

また来たのか。

 

お前が戦ってくれるまでは来るだろうな。

 

めんどくさいやつだ。

 

ただ弾幕勝負をするだけなのになんでそれがめんどくさいのか。

 

めんどくさいものはめんどくさい

 

ふーん。これを喰らえ。

 

ちょ、何すんだよ、あぶねぇな

 

来ないならこっちからやろうと思って、

 

お前がどれだけ飛ばしてきても俺は返してやらないからな。

 

つまんないなぁ。

 

いつになったら消えてくれる。

 

お前が弾幕勝負してくれるまで

 

わがままなやつだ、

仕方ないから明日勝負してやる。

 

やっとやってくれる気になった。

 

少しだけだ、死んでもしらねえぞ

 

 

………………………………

 

来たか、

 

おう、来たぞ

 

さて、やるからには私も手加減はしない、避けきることができるんだろう、

やって見せてくれよ。

 

お安い御用よ。ほらこい!

 

……………………………

 

お前さ、なんのつもりだよ、

 

えっ、何が?

 

避けきるんじゃなかったのか。

 

避け切れなかったな。

 

嘘っぱちか、ふざけるな

 

いや嘘じゃない、単純に妹紅が強かったんだよ、

それに今さっき嘘になったとも言えるしな

 

それじゃ、避けるのはすごく上手いのは、確かだな。魔理沙やらアリスの弾幕を避けれるならなおさらその実力はあったということになるな。

 

あんたの弾幕は俺には避けにくい。それだけだったみたいだ。

それにしても腕が、焼けかけちまったなぁ。

 

当たったお前が悪い。

 

それぐらいはわかってるさ。

 

もう二度と私についてくるな。

 

唐突だなぁ、わかったよ。

 

この腕も治さないといけないし。

 

さぁ、帰った帰った。

 

 

……………………………

 

ほんとに来なくなるなんてな…

つまらね。いい暇つぶしだったのに

 

…まぁいい、

 

輝夜のとこにでも行くか。

 

………………………………

 

はぁはぁ…相変わらずこいつは出来る。

とは言ってもいつも私が勝つのは変わりない。手加減なんかいらねぇのに。

 

じゃあな輝夜、また暇になったら来るわ。

 

あーあ。いっつも返事がなくてつまらねー

 

 

…………………………………

 

あれ、妹紅じゃないか。久しぶりだな。

 

あ?あぁお前かどうしたまた勝負でもしろっていうのか?

 

察しがいいじゃないか。

 

やっぱりそうか。

 

あれからいろんな人と弾幕勝負をしたんだけど、やっぱり妹紅の弾幕だけよけれなかったよ、

 

誰とやったんだ?

 

フランとレミリア。霊夢さんに藍さん。妖精と妖怪ともやってたなぁ

 

へぇー、なかなかやるじゃないか

 

もう一度頼めるか。やっぱり悔しいんだよな。よけ切れないのはさ。

 

仕方ねぇな。

やるか

 

…………………………………

 

…おい、起きろよ。

 

まぁ…起きるわけねぇか。

 

こんなにあっさり当たるなんて、おかしいだろ!

 

ふざけるなよ…何が悔しいだ。

自分から当たりに来やがって。

 

まるで殺してと言わんばかりに…

 

ん?手紙?

 

 妹紅へ、

今までありがとう。

俺は体が特殊な体質で、火による処分でしか死ぬことができないんだ。

それを知っているから皆私に手加減をした。

できるだけ痛みを味わせたくないとか言い出して。面白くなかった。

 

でも妹紅の弾幕は基本的に炎で、当たれば死にかねない。だからこそ俺は楽しく弾幕勝負ができた。

楽しかったありがとう。

 

下手な文ですまない。

 

最後に…

好きだったよ、妹紅。

 

 

 

 

…馬鹿野郎だな

 

燃やし尽くすか。こんな奴二度と…見たく…ない…

 

……なぜそこまで私に…

 

なぜ避けなかった…

お前が避けるところなんて幾度と見た。本当に避ける能力が高いのは知っている…

 

私のことを好きでいながら、なぜ死を選んだ…

 

…答えてくれよ、なぁ、答えろよ

 

もう遅いってわかってるさ。でもそれだけは教えてくれよ。

 

こんな紙切れ一つ残して…

 

ん?何か…

 

好きだったよ妹紅

だから、これからも

楽しく弾幕勝負をしよう。

 

 

 

…は?何を言ってるんだよ

 

お前は、死んだじゃねぇか。

 

 

よう…あぁー。

 

えっ。おい。お前…

 

大丈夫すぐ治る…

どうしてか、人間なのに死ねないんだよな。

 

お前は…もしかして…

輝夜に…

 

輝夜がどうしたって?

 

お前あいつから薬貰わなかったか?

 

あぁー。もらったなあ。

 

それ、蓬莱の薬…不死の薬だよ。

 

なるほど、火による処分なんて嘘か。

でもいいや。妹紅これからもよろしく。

 

いつも唐突だな、お前。

 

いいじゃないか、それじゃ、弾幕勝負しようか。

 

それが終わったらお前に手紙の返事をしてやるよ。

 

あぁ、頼んだよ。

 

それじゃ、次は本気でやってくれよ!

 

かかってこい!

 




不死になってみたいとは思うけど
実際どうなんでしょうね?歳を取らないって


ではまた会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

再び会えた時は

どうも夢子です。

会いたい人、忘れられない人、
想い人。どんな人にも出逢いはあるものです
(多分)

ではごゆっくりと


 

 

針妙丸ちゃん?、いる?

 

何…また来たの?

 

だって最近ずっと機嫌悪そうんだもん。何かあったの?

 

…あなたには関係ないよ、大丈夫だよ、ちょっと嫌なことあっただけ。

 

そういえば、お兄ちゃんは?

 

出掛けてる。珍しい食材探してくるって。

 

そうなんだ。毎日行ってるんだね。

 

呆れるくらい、熱心だからね。

私はよくわからないんだけど。

 

お兄ちゃん前から料理が大好きだもん。

 

そうだね、きっと私の事よりも熱心だもんね。

 

そんなことないよ、だって、お兄ちゃんは他人に興味なかったのに、急に針妙丸ちゃんに心抱いて、そんなこと驚きだよ。

 

本当にそうなのかな…

 

きっとそうだよ、そうに決まってる。

 

また今度聞いてみようかな。

 

………………………

 

今日も来ちゃったよ。

あれ?針妙丸ちゃん?どこ?

 

帰って…今は一人になりたいの…

 

どうして?打出小槌使ってるの?

 

そう。それで今は小さくて隠れてるから、多分見つけれないよ、

 

そっか、また今度来るね。

 

うん、じゃあね。

 

…………………

 

針妙丸ちゃん…大丈夫?

 

なんで毎日くるの?

 

だって、針妙丸ちゃんもお兄ちゃんも心配なんだもん。

 

あの人はもう帰ってこない…

もう…帰って…来ないのかな…

なにも言わないで黙って…どこかに行っちゃって…

 

お兄ちゃん…昔から一人での行動が多かったから…

 

私のことなんて何も気にしないで、ひたすら出かけまわって。

もう、五日も帰ってこない…

 

え?そんなにも…

 

打出小槌で大きくなって。せっかく実った恋と。新しく見えるこの景色。やっと生まれ変われると思ったのに…

 

きっと帰ってくるよ。まだ忘れたわけじゃないと思う。ただの迷子だよきっと。

 

そう言い切れる保証もないよ…

 

待とうよ、私は待つよ?

 

待ってないわけじゃないけど。でも好きな人と離れて顔も声も聞こえなくて…寂しくて…

 

針妙丸ちゃんはお兄ちゃんの事好きなんだね。

 

あたりまえだよ、私を新しい世界に連れて来てくれた人、こんなにも素敵で新しいことばかりで、

今まで小さな体で見てきた景色とは全く違う、

あの人は私を変えた、私を救ってくれた。

だから、自分に打出小槌を使ってあの人と一緒に生きていきたいと願ったのに。

どうして?私がここにいるのに。どうして帰ってこないの?

 

 

落ち着こうよ、ね?

好きならまた会えた時に、たくさん甘えて、でかけれないぐらい甘えて、そうしよう?

 

うん。彼にまた会いたい。

 

今はお兄ちゃんの無事を祈っていよう。きっと帰ってくるよ

 

うん、待ってる。

 

……………………………

 

あなたが少名針妙丸さんですね。

 

ええ、そうですが。誰さん?

 

東風谷早苗といいます。

ある人に頼まれてきました。

 

な、なんのようでしょうか…?

 

これを言いに来たんです

 

「明日、貴方に奇跡が起こります」

 

奇跡?一体なにの?

 

それは明日わかります。

それでは私はこれで帰りますね

貴方に神のご加護があらんことを。

 

あっ、えっと。

ありがとうございました、

 

行っちゃった…一体何だったんだろう…

 

針妙丸ちゃん?

 

サエちゃん今日も来てくれるんだね。

 

お兄ちゃんはまだ帰ってきてない?

 

うん。でも、さっき変な人が来たんだよ。

 

もしかして緑髪の?さっきそこですれ違った人かな?

 

うん。なんか奇跡が起こるって行って帰ってっちゃった。

 

奇跡が起こる?

 

うん。なんだろう何だったんだろう。

 

わからないけど良いことがおこる?。

 

多分そうなんだと思う。

 

わからないけど、お兄ちゃんはいつも言ってたよ。悪いことが起きたあとは、いいことが必ず起きるって、

さっきの人はそれを改めて言いに来たのかな?

 

なら、優牙は帰ってくる?

 

多分そのいいこと、奇跡というのが、お兄ちゃんが帰ってくるってことかもしれないね。

 

なら、明日、帰ってくるってことかも!

 

えっ、明日!?

 

そう!さっきの人、明日奇跡が起こるって言ってたの!

 

なら!帰ってくるんだよ!きっと!

 

うん!

 

………………………

 

ねぇ、今何時?

 

もう。22時…やっぱり帰ってこない。

 

もう遅いから家に帰るのも怖いから今日もここに泊まってく?

 

うん。ありがと。

私。もう眠たいから寝るね…

もし、帰ってきたら起こして。

 

うん、おやすみ。

 

まだ、帰ってこないのかな。

奇跡が起こるなんて、嘘だったのかな。

あれ?足音?

 

……ガチャ。

 

えっ?あっ。

 

ただいま、ごめんね。遅れてしまって。

 

もう、遅いよ…

でもお帰り、ずっと待ってたから、

 

やっぱり、顔も声も聞けないのは寂しいな。ここが一番だよ。

 

うん。そうだよね、やっぱりそうだよね。

 

これからは里に行く時も一緒に行こうか。

 

うん、離れるなんて嫌、いつまでも一緒にいよう。

 

あぁ、約束だ

 

約束だよ。

 

 

やっぱり奇跡は起こった。

あの緑髪の人のおかげかな。




恋話が多くなってきたかな。

いや、みすちーはそうじゃなかったから
恋話ばかりでもないかな、


それではまた会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

スキマに見えた休息

どうも悠樹です。

最近忙しかったんで、やっと投稿します。
実は何日か前に予約投稿とか。

ではごゆっくり


あら、あなたは?

 

んー。さて誰でしょう。

 

何故わたしの介入なしこの空間に居られるのかしら?

 

それは秘密。でも教えてあげなくはない。

 

あら、随分と上から目線ね、

 

それはそうと、この空間はどこにでも繋がっているんだね。

 

そうよ、乱用されても困るのだけど、早く出て行ってくれないかしら。

 

安心して、僕はそんな悪質な人間じゃないから、

 

その確証はどこから来るのかしら。

人間欲望というものがあるでしょう?

 

それなら、君も同じだろう、紫さん。

 

そうね、まぁ、この空間を知っているということは、私のことも知っているということかしら。

 

その通り。さて、一つだけお願いがしたい。

 

どんなお願いかしら?

 

実は僕のこの姿は仮の姿、本当は別あるんだ。まぁ、探せばすぐ見つかるだろうけどね。

それで、薬を持ってきてほしいんだよ

 

薬?どんな薬かしら。

 

一般的な風邪薬だよ。特殊でも効能が強いものでもない、ただの薬さ。

 

何故それを私に?他の人に頼めばいいじゃない。それにその姿でも問題ないんじゃないかしら?

 

僕のいる世界には薬の技術が発達していない。その上本来の僕の今の状態はとてもじゃないが、動ける状態にない。

 

それで、それが私に頼む理由?

 

そうさ、交換条件が必要かな

 

なら、あなたがこの空間に居られる理由を教えて。

 

なら、それは僕が僕本来の姿の状態になってから話そう。

 

簡単には答えてくれないのね。

 

こちらもお願いしたからには、その約束を果たしてもらいたいからね。

 

仕方ないわね。

すぐ済ませてくるわ。

 

そう、助かるよ。

 

 

はいこれ。ニッポンという国から持ってきたわ。高医学で作った一般的かつ初歩的な薬をもらってきたわ。

 

これで風邪が治るのかい?

 

そうね、食事を摂った後に水と共に飲んで、安静していれば治るわ。

副作用に弱めの眠気が伴うようだけど、まぁ、寝ていれば治るんじゃないかしら。

 

そうか、ありがとう。

早速戻って治してくるよ、

 

風邪は2日から3日は症状が残るそうだから、すぐには治らないわ、

 

わかってるよ。大丈夫だ。

 

そう、それじゃ、私の約束もお願いね。

 

あぁ、良くなったらすぐまた来るよ。

 

あの、紫さま、先程の方は。

 

さぁ、私も知らないわ、

また今度来て、いろいろと話してもらうわ。

 

そうですか、

 

………

 

 

やぁ、来たよ。

 

仮の姿、ではなさそうね。

 

そう、この前はありがとう、おかげですっかり治ったよ。

 

それで、あなた一体何者かしら?

 

僕は君と同じような力を持っている。

 

私と同じような力?

 

正確には手に入れたというべきかな。

空間を自由に行き来できる程度の能力、とでも言っておこうかな。

 

なるほど、それでここに来ることもできるということね。

 

スキマ…というんだっけ?

ここは不思議な場所だね。

 

そう、私は慣れたものよ。

 

そういえば、付き人?いや、式神とその式神の式神は?

 

今はでかけてるわ。

 

そう、顔合わせくらいはしておきたかったけど、仕方ないか。

 

また今度来ることね。

 

そうするよ

でも、その前に一言だけ言い残しておくよ。

 

何かしら。

 

事が動いたね

 

?どういうこと?

 

さぁ、それじゃ、また今度来るよ

 

………

 

紫様、どうなさったんです?

 

ん?いや、何でもないわ。

 

そうですか。とりあえず先ほど言われた通り霊夢には行動をするよう促しておきました。

 

ありがとう、幻想郷の異変は彼女の仕事だからね。

 

では、少しばかり食事に行ってきます。橙がうどんを食べたいと駄々をこねるもので。

 

ええ、いってらっしゃい。

 

 

事が動いた…一体どういうこと?

 

よくわからない物言いだわ、

私に似た人間と言った感じかしら

 

さて、少し休憩にでも行こうかしら。

 

………

 

こんなところで何をしているの?

私の休憩を邪魔しないで。

 

誰も邪魔をするつもりはない。

 

なら、かえって頂戴。

 

はっきり言われるんじゃ、後がない、帰るよ、すまなかったね。

 

 

何よ、いきなり来ていきなり帰って

 

意味がわからないわ。

 

紫様?最近どうしたのですか?

 

そうね、名前も知らない男、客人といえばそうなるわね、よく来るのよ。

 

客人?迎え入れてるわけじゃなく?

 

そう、私に似た力を持っていて、どこにでも行ける。そう言っていたわ。

 

珍しいですね。

 

そうね、数を見ない力だと思うけど、まさか私と同じような能力の持ち主に会えるとは思わなかったわ。

 

次はいつ来るんでしょうね。

 

さぁ?気が向いたらくるんじゃないかしら。

 

迷惑じゃないんです?

 

特に何かしてくるわけでもないし、見張っておけば害はなさそうだから。

 

そうですか。

 

まぁ、来るときは適当に相手すればいいのよ。

 

……………

 

んーー。スキマって僕の力とは違うのかな?

 

同じじゃないかしら、でも細かな所は違うと思うわ

 

そうだろうね。なぁ、君はいつからこの空間を知っていたんだい?

 

さぁ、いつからかしらね。

ただの休憩場所にしか使ってないし、あまり気にしたことないわ。

 

そうなのか、それなら、僕もここに寄ってもいいかな?

 

好きにするといいわ、ただ、邪魔だけはしないで頂戴ね

 

それは分かってるさ、

 

あなた、自分の世界はいいのかしら?

 

んー、正直毎日同じことばかりで飽きてるんだよ。

 

ふーん。世界の摂理に歯向かうのはあまり得策ではないわ。

もとより空間を自由に行き来できる時点でそんなもの通用しないでしょうけど。

 

まぁ、あの世界もそろそろ潮時かなぁ。

 

あなたは今いる世界の住人じゃないのかしら。

 

そうだよ。2つか3つ、定住を探してみたけどダメだったよ、

 

ふーん、移民みたいね。

それで?結局どうするの?

 

次の世界を探してみようと思う。

どこか退屈しない程度に暮らせる世界があるといいんだけどなぁ。

 

贅沢な人生ね。そんなことばかり続けると定住できなくなるんじゃないかしら

 

うーん、その通りかもしれないね。

無理にでも定住を頑張ってみるか。

 

それがいいわ、頑張ってみなさい。

 

……………

 

ねぇ、紫さんはずっとここにいるのかい?

 

幻想郷っていうのよ。

 

幻想郷…決めた、この世界に住んでみるよ。

 

そう、頑張りなさい。

 

紫さんも一緒に暮らさないか?

 

お誘いはありがたいけど、私はやめておくわ

 

そうか、それは残念だ

 

そうね、あなたがこの世界で3年も住んでいられたら、考えてあげなくはないわ。

 

そうか、それは楽しみだね。

 

まぁ、頑張りなさい。

 

それじゃ、ちょっと行ってくるよ

 

……

 

いいのですか?あのような約束を、

 

さぁ、もし出来るのならよ、

まぁ、無理でしょうけど。

 

 

………………………

 

 

久しぶりだね紫さん

 

あら、あなた結局五年も住んでいたのね。

 

遅くなったよ。それで覚えているかい。五年前の約束。

 

確か…三年ほど住んでいられたら一緒に。だったかしら、

 

そう、お願いできるかい。

 

まぁ、約束だものね、

いいわ、

 

 

たまには息抜きもいいかしら。





不思議にも疲れが溜まっていく一方
寝ても覚めても眠たく体がだるい。

困った限りです。

それでは、また会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

大切な人

どうも、夢子です。

えっ?間隔短すぎる?知らないですね

まぁ、たまには詰めてもいいじゃないですか

ではごゆっくり


ちょっとくっつかないで。

ちょ、霊夢さん

いや、お酒は要らないから

 

ねぇーぇ、早く飲みなさいよぉ。

 

(毎回これだ。全く飽きないのか。)

 

だから、僕は飲みませんってば

 

いいじゃない。私はまだ飲むぅ。

 

(どうしてこうなった、こんなに酒癖強い人だとは……)

 

うう、あぁー、きもじわるぐなってきた…

 

あぁーまって、そこで戻さないで!

袋今持ってくるから!

 

(すごい匂いとともに、キラキラが袋に…うわぁ……)

 

あぁー、すっきりした、

 

(すっきりした。さいですか、こちとら目の前でリバースしたとこ見て気分最悪だよ。)

 

もう、毎回のみ過ぎですよ。

 

いいのよ。こうでもしないと。私はいっつも面倒事を引き受けるんだから。

 

(この人もこの人で面倒だ)

 

なら、他に任せればいいじゃないですか、魔理沙さんとか、八雲さんいるでしょ。

 

動いてくれないんだもの。

全くだわ。

まっ、今後はあなたもいて楽になるでしょうけど、

 

はぁ、僕は嫌ですよ疲れるのは

 

(この人の相手をするのも疲れるけど)

 

何を言ってるのあなたが自分から申し出たんだから、ちゃんとしないと怒るわよ、

 

わかりましたよ。全く相変わらず手厳しいなぁ。

 

文句あるの、飛ばすわよ。

 

いやいいです。

 

そう、じゃ、私は寝る。

 

(んな、唐突な)

 

お、おやすみなさい

 

片付けよろしくねぇー。

 

は!え!ちょっ

もう。

 

(毎回これだ、)

 

仕方ないか。

 

そういえばあの日も…

 

 

……………………………………

 

 

はぁはぁ

 

どうしました?息上がってますが

 

あんた、ほんとにそれで、本気なの?

 

結構は。でもまぁ、もうすこしできますよ

 

冗談きついわ。やってらんない。

いいわ、私の負けよ、

 

博麗さんが負けを認めていいんですか?

 

勝てる見込みがない!

そう言ってるの!

 

さいですか、

 

はぁー、初めて負けたわ。

 

そうなんですか。

 

あんたぐらいよそんなにやってくるの、

 

とは言っても、僕がここ(幻想郷)に来たのは一昨日ぐらいですし。

 

驚きよ、外の世界にこんなバケモノがいるなんて。

 

バケモノだなんて酷いですよ。

 

何言ってるのあんな隙も欠片もない弾幕初めて見たわ、

 

んー。そんなにでしたか?

 

あんなの避けれるわけないでしょ!

 

は、はぁ。

 

もういいわ、あんた、ちょっと付き合いなさい!

 

え、僕これから本読みに行くんですが、

 

どうせ大図書館でしょ。

行かなくてよろしい。来なさい!

 

え、えぇ。どこに行くんです。

 

私の神社よ。

 

はぁ、参拝しろと。

 

いいから来なさい。

 

 

…………………………

 

 

それから酒呑み愚痴に付き合わされたっけ。

 

思えば懐かしい。もう半年か。

 

結局あのあと、霊夢さんは寝て、後片付けを僕がやったんだっけ。今みたいに、相変わらずだなぁ。

 

 

よー!霊夢いるかー!

 

霊夢さんなら酒で飲み疲れて寝てます。

 

何だ寝てるのか。

ならお前でもいい。少し酒呑みに付き合え。

 

(これも毎回恒例と言ったとこか。)

 

僕は飲みませんからね。

 

なんだ。つまらないなぁ

 

霊夢さんはともかく。

萃香さんの飲むお酒は特に度が強いんですから。私が飲んだら大変なことになりかねませんよ。

 

別にいいだろー。たまには飲めよー

 

嫌ですよ。

 

うー、まぁいいや

 

(しかし、良くもこんなにグビグビ酒を飲めるもんだよこの鬼も)

 

ぷはぁ!!

 

今日はどうしたんです。

 

いや、また山でね問題が起きてねぇ。

 

そうなんですか。

 

そうなんだよー。白狼天狗共がまーた喧嘩してさぁ。止めるのめんどくさいんだよ。

 

山の管理者お疲れさまです。

 

棒読みかーこのー。

 

ちょ、やめて、お酒突きつけないでください。

 

飲めよー。

 

いやです

 

(飲めたもんじゃないこんな酒)

 

ふーん。頑なだなぁ。

そーだ。お前さ。

 

なんですか。

 

もう半年になるんだろ。何か進展はないのか?

 

なんの話です?

 

霊夢だよ、もしや、何も無かったりするのか?

 

進展も何も、僕はいつか元の世界に戻るつもりですから

 

そうなのか、寂しくなるなぁ、

 

それに、彼女は僕の事を嫌っているようにも見えますし、

 

どうだろうーねぇー

 

(確かに気がないわけじゃない。でも僕はいつだったか外の世界の人からの告白に答えを出していない)

 

帰らずに霊夢とくっつけばいいのに。

 

何を言い出すんです。霊夢さんみたいな存在のでかい人なんて僕には似合わないですよ。

 

関係ないさ。そんなことは。霊夢は愚痴ってたよ、

あいつはいつになったら私を見てくれるかって。

 

そんなこと言われても。全く困りますよ。

 

顔を赤めていうセリフじゃないなぁ、それは。

 

霊夢さんがそんなこと思ってるなんて思いもしませんでした、

 

どうする?このまま帰ったら霊夢泣くだろうなぁ?

 

うぅ。それを言われるのはキツイですよ。

 

(流石に女性を泣かせるわけには…)

 

考えてみてやったらどうだ。あいつもいつも一人では、大変だろうから。

 

まぁ、そうですね。

僕も少し落ち着くべきですね、

 

(決心はついていた、言うべきは今日か。)

 

さぁ、私は山に戻ろうかなぁ。

 

今日は早いですね。

 

んー?まぁ誰かさん達のために早帰りするんだよー、

 

(お見通しってわけか)

 

じゃぁ、お幸せになー

 

何言ってんだか

 

 

 

さて。と、

 

(コップに入った飲みかけのお酒…空になったお酒の瓶。キラキラしたものが入った袋。)

 

毎回…か、こんな日々も悪くないかもな。

 

さぁ、片付けて俺も寝るか。

 

 

 

あっ、起きてたのか。

 

片付けの音で目が覚めたの。

 

そうか。気分はどうだ。さっきもどしただろ。大丈夫か?

 

まぁ、大丈夫よ。とにかく眠たいわ。

 

そりゃ、寝起きだもんな。

 

片付け終わったかしら。

 

あぁ、いっつも任されてるからさっさと終わるよ、

 

そう。毎回悪いわね。

 

いいよ、慣れたもんさ。

 

ねぇ、あんたさ。私のことどう思ってるの…?

 

何よりも大切な人…かな

 

私の事好きってこと?

 

それ以上だね。

 

…あ、ありがとう…!

 

これから、よろしくな。

 

 

 

 

 




本文、短いかなと思ったら、ちゃんと2000文字越えてた。

やっと、緩い日々が帰ってきました。これからもよろしくです。

また会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

残す物 残す者

どうも悠樹です。

カメラはいいですよ!とても素晴らしい、

ではごゆっくり


あら、この感じは…

 

 

 

あなたは誰かしら。

 

ん?もしかして

この花畑の管理者さん?

 

そうね。で、ここに何のようかしら。

 

いや、綺麗な花畑だとおもって。写真を撮りたいんだが。

 

写真?あなたあの烏と同業者かしら?

 

カラス?烏…ああ、この写真の?

 

これは…あなたよくこんなに綺麗に撮れるわね。

彼女、幻想郷最速と言われるほどなのに、よく写真に収めれたわね。

 

なんか飛んできたから。撮っただけなんだけど。

 

まぁいいわ。写真を撮るだけなら構わないわ。

ただし、花には危害を加えないこと、

 

わかった。それじゃ。遠慮無く

 

 

 

 

どうかしら、いい写真が撮れたかしら、

 

どれも素晴らしいよ。

こんなに綺麗な場所は初めてだね。

 

そう、それで、どんな写真が撮れたのかしら。見せてもらってもいいかしら。

 

あぁ、いいよ。

少し広いところで写真を広げよう。

 

 

 

この辺でいいかな、

えっと、これかな、

 

ファイルかしら。結構重みがあるわね。

 

そりゃ、もう20年もカメラ持ってそこらじゅう歩き回ってるし。

 

20年も。飽きないのね。

 

飽きてたらここにいないさ。

 

しかし。ほんとにどれも綺麗ね。

風景ばかりだけど、他には?

 

別のファイルがある。

少し待ってね。

 

 

これだよ。

動植物と、その他さ。

 

たくさんあるのね。

 

動植物の方は特に多いかな。

 

厚みが圧倒的に違う、よくこんなもの持ち歩けるわね、

 

いいトレーニングになるからね。

 

にしても。これも綺麗ね。

動物の自然体なんて撮るの難しいんじゃないかしら?

 

遠距離から望遠用レンズを使ってるから。撮れなくはないよ。

 

そう。でも、かなり近くから撮ってる写真もあるのね。

 

まぁ、レンズは多種多様なものを使ってるからね。

 

あら、この写真。

 

あぁ、それ、さっき神社にお参りに行ったついでにと思って。

 

あのボロ神社も、こう見ると凄く綺麗なのね、

 

背景効果はすごいからね。見た目が一層変わるから。

 

さっきのカラスとは段違いの撮影の上手さだわ。

見習ってほしいものね。

 

ところで、名前まだだったね。

とは言っても名前なんか忘れてしまったけどね。

よく言われるあだ名はフィルだよ。

 

フィル。フィルム、からかしら。

 

そうらしい、君は?

 

私は風見幽香。花が好きなただの妖怪よ。

 

妖怪か、奇遇だね。

実は私は人間ではなくてね。

長寿な上、空まで飛べてしまう。

 

あら、人間ではないのね。

 

これでもそろそろ130ぐらいにはなる、

 

なかなか若い見た目なのに、そんな年とは驚きね。

 

まぁ、暇だったからカメラを始めてみたわけなんだけど、それがハマってしまってね。

 

それで、ここまで綺麗に撮れるようになったのかしら

 

そうだね。ただ撮るだけでは面白くもないけど、あっそうだ

これどうぞ、あげますよ。

 

ここ一面の写真、こんなものまでいつの間に。

 

なかなかに広いと思って上から見てみたらすごい景色だったんだ。

 

私も全体を見るのは久々だわ。それに、写真なんて触れることもないもの。

 

カラスさんは、写真はどうしてるんです?

 

彼女は記者だから、適当に撮って新聞にして。オシマイだもの。

撮った写真も物によっては見れたものじゃないし。

 

そうなのか、

 

まぁ、あれが彼女の仕事だから、否定も肯定もしないけれどね、

 

私的な意見なんだけど。

写真って。撮ってそれを見せて喜んでもらえるんじゃないかなって。思うんだ、

 

確かに綺麗だし、ここまでの写真は初めてで私も楽しいわ。

 

そう、誰かに楽しんでもらったり、喜んでもらったり。

それが嬉しくて続けていられるんだよ。

 

幸せを運ぶようね。

 

そう言ってもらえるのも嬉しいね。

 

美しい花に綺麗な景色、

そこにある当たり前な場面でも。

二度とないとても貴重な一枚になる、

と言った感じかしら?

 

そう!そのとおりだよ!

 

ふふふ、まるで子供みたいね。

 

少し無邪気になりすぎたね。

でもほんと、写真は二度と無い場面を残すためにあるんだと思う。

さっき渡した写真もそうだし。さっきまで撮っていた写真もね。

 

なかなかなロマンチストね。

 

この仕事を続けていると、癖でね、

 

少しいいかしら。

 

どうかしたかな?

 

この2つの写真、同じものよね

なぜ二回も撮ったのかしら?

 

写真に限らずだけど、目線を変えて撮ってあるんだよ。

 

目線を変える?

 

ちょっと待ってね。

 

 

 

これ、この2つ。そこの花の写真

一つは上から、もうひとつは斜め下から。

角度と場所を変えるだけで、花の感じと背景からなる綺麗さが違うよ。

 

あら、ほんとね。こんなにも変わるなんて、

 

素人はまっすぐとか、目の前とか単品で撮ることが多い。でも、ひとつ捻れば単品よりも団体で、それといろんな角度で撮ると、より一層綺麗なんだ。

 

力説ね。余程カメラが好きなのね。

 

ついつい、でも、とても楽しいからね。

 

そういう癖がついた。

もちろん単品、1点撮りが悪いわけじゃない。撮り方によるね

 

ぜひとも。あのカラスに教えてあげたら?

 

また見かけたらね。

 

綺麗な写真ね。何枚かもらってもいいかしら。

 

構わないよ。

 

ありがとう。

 

さて、じゃあ私はそろそろ次の場所に移動するよ。

 

そう、また寄ったら写真を見せて頂戴ね。

 

いいよ、立ち寄ったら。だけどね。




私は撮影技術はまだまだですが、これからも頑張っていこうかな。

写真は喜んでもらうもの。

ではまた会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

過去の面影

どうも夢子です

昔のことは昔のこと
今のことは今のこと

メリハリつけていきましょー


それではごゆっくり


よう霊夢。お賽銭どうだー

 

ちょいちょいってとこね。

 

おっ、入れてる人いるのか。

 

まぁ、居なくはないわ。

それで、今日は何のようかしら

 

用がなくても来るのがここだろ?

 

そういうと思ったわ。

 

しかし。最近は何もなくて暇だよなー

 

三ヶ月前のあの異変が忙しすぎただけよ。

 

霊夢だけだもんなー、まともに動けたの。

 

あの紫にですら、手に負えないんだもの、あれは疲れたわ。

 

終わった後もみんな宴なんかいいから、帰って寝るって言ってすぐ解散になったもんな。

 

私としては出費が減って有りがたかったわ。

 

しかし、元凶のあいつどこ行ったんだろうな?

 

あら、魔理沙はまだ知らされてないのね。

 

何を?

 

彼もうこの世に居ないのよ。

 

そうか、外の世界に…。

 

違うわ、本当にどこにもいないのよ、

 

おい、それってまさか。

 

亡くなったわ。

 

そんな…

 

自分かららしいわ。なんでも、あの異変がうまく行きすぎて罪悪感を覚えてしまったらしく、それで、らしいわ

 

だれから、そんなこと

 

サボり魔死神。

 

ああー、あいつかー

んで、黒判定か

 

まぁ、十中八九そうでしょうね。

 

仕方ないことだよな…

 

なんか、やけに下向きじゃない。

あなたにしては珍しいわね、

 

まぁ、最近いろいろあってな少しテンションの上がりが悪いんだよな。

 

まぁ、気を落としてばかりじゃ、何も面白くないわよ。いつも魔理沙がそう言ってるんだから

 

そう、だな!ちょっくらこーりんとこ行ってくるぜ。

 

ええ、行ってらっしゃい

 

 

…………………………

 

 

やぁ、魔理沙今日は八卦炉の調整かな?

 

いや、違う……

 

どうした?そんなに俯いて。

 

あのさ、あいつが死んだのは知ってんだよな

 

三ヶ月前の

 

そう、

 

あぁ、聞いているよ

 

その時、あいつの能力で

私とこーりんが入れ替わった。

覚えているよな、

 

人格を操れる程度の能力

怖いものだね。他人と他人の人格を入れ替えてしまうなんて。

 

その時気になったんだ

あいつがなんでその力を手にすることを、決めたのか、

でも、わかった

あいつは、外の世界に戻ってまた帰ってきた、それで、話してきた。

僕にはもう誰もいないって言ってた 

 

彼は彼で、居場所を探していたんだろう。でもここはそうではなかった。

でも、この世界で最期を決めた

 

その理由を知りたかったんだが…

最後私にそれだけ言って姿が見えなくなったんだけど、

なんの意図があったんだろう。

 

魔理沙は彼に会って何がしたいんだい?

 

単純に行動の意図を知りたい。

 

なら、もう諦めるのが得策だろう。

もう会えないだろうし。

 

……昔の私の知り合いにすごく似てたから。どうしても助けたかった。

 

過去の面影を、追いかけているんだね。

 

かっこわるいよな。こんなんじゃな。

 

そうは思わない。魔理沙はそれだけその人に対する感情があったんだよ。

素直でいいじゃないか。

 

なんか、さっきから慰められてばかりだな、これこそかっこわるい。

 

まぁ、そんな時もあるさ。

 

うん。なんかすっきりしたぜ!

 

それは良かったね。

魔理沙は元気が似合うから。そうやって笑顔で笑うほうがかわいい。

 

照れること言うなよ、こーりん

 

さて、今日は何をもっていくんだい。

 

それじゃ、お茶いただくぜ

 

これは珍しい、"サービス"を持っていくわけか。

 

変な解釈はいらないから、早くお茶をくれ。

 

はいはい、もう用意してるさ。

 

おっ、相変わらず仕事が早いね。

あんがとよー。

って、なんだ?新しいお茶か?

 

外のお茶らしい。紫さんが持ってきてくれてね。

烏龍茶って言うらしい。

 

独特の味がしてなかなかうまいぜ!

 

口にあって良かったよ。

さて僕も飲むかな。

 

しかしまぁー。

よく似てたよあいつは

 

昔の友人かい?

 

そう。身長は少し高いけど、顔とか体つきとか、結構面影を感じたんだよなー。

 

普通の人間だったんなら、他人の空似だと思うけどね。

 

まぁ、私もそんなところだと思ってるよ。

だって、なんの力もない人間なんだぜ?それにあいつ、結構内気の弱虫だったし。まぁ、ないわ。

 

その割りには、結構感情的になっていたみたいだけど。

 

そりゃ、あいつ、私のこと好きだったらしいし、

 

なるほど、それで魔理沙も同情とかしてたわけか。

 

まぁ、少なからずは。

 

それで、魔理沙はその人間が好きだったのかい?

 

いーや、たとえ仲のいい友人で、それが異性でも、あの時のあいつは、好きにならないぜ

 

まぁ、男で内気の弱虫ってのは、僕が女でも嫌だよ。

 

だろ?なんだかんだ言って、仲良かったってだけなのかもしれない

 

じゃあこの前のは?

 

んー。悪くないけど病んでるのはなぁ…?

 

結局ダメだね、彼は彼で自分の癖性格のせいで居場所がないのかもね。

 

そ、そうとしか思えねぇな、

自業自得ってやつだな。

 

おかわりいるかい?

 

いや、いい、そろそろ新しい本でも読みたいからパチュリーのとこから借りてこようかな。

 

それじゃ。今日はもう行くんだね。

 

あぁ、また来るぜ。

 




ちょっと短め。

でもまぁこんなもんと投稿

そして今回こそ他愛もない雑談。

それではまた会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

師弟

どうも、夢子です、

すっかり冷えてきましたね
冬好きの私にとってありがたい限りです。

ではごゆっくり


幻想郷の人里の離に鍛冶屋が在る。

 

刀鍛冶だが、刀は人里ではあまり使われないため、あまり有名ではなかった。

 

だが、刀自体の質はよく。魔除けや護身などに身につける人も少なくはない。

 

人里の外の人のあまり通らぬ場所で鉄を叩く音が鳴り響いていた。

 

そこに一人の少女が。

 

ゆっくりと戸を開けゆっくりと戸を締める。そして。刀鍛冶の男の脇に座り、鍛冶仕事を眺める。

 

しばし静寂が続いたあと、男が少女に話しかけた。

 

「如何なものでしょう。」

 

「とても良い質だけど輝きがないよ」

 

少女は自称ではあるが鍛冶ができるというらしい。

だが自称とは言っても、博麗やその他も認めるほどで、腕は確かであった。

 

「それなら。まだ鍛錬が足りないか。」

 

「確実に良くなってきてるよ」

 

うむ、と一言喉を濁らせ。また鉄を叩く。

 

少女はその場を後にしてふらふらと何処かに行ってしまった。

 

 

日が変わっても、鍛冶屋の仕事は変わらない

日が登れば鉄を打ち、日が沈めば静寂が現れる。

 

そんな毎日の繰り返しであった

 

 

少女がまた、男の鍛冶場に寄る。

 

男はすでに手を止めており

椅子に座り込んでいた

 

「終わったの?」

 

「先ほど。」

 

男の手元には一太刀の刀がある。

型は纏まっておりでとても良い刀身をしている、が、鈍く光っているため。斬れる刀ではなかった

 

「後少しでしょうか。」

 

「ううん。まだまだ、鈍い光は鈍らの証。それじゃ、斬るものも斬れないよ、」

 

男はまた手に鉄を取り、それを見つめ続け、そして少女に話しかけた。

 

「多々良さん。師は、父はどこに行ったのでしょうか。」

 

「それは私にも、わからないよ。」

 

この男には師である父親がいる。

が、幾年か前に姿を消してしまい。

その際、刀全ても消えてしまった。

 

ただ一つ手紙を残しただけだった

 

 

ここにはない鉄を探してくる

 

 

それだけしか書かれていなかった

 

男は捨てられたと片隅で思いながらも、師である父の帰りを待ち、只ひたすら刀を打ち続けている。

 

「あの小刀はまだ持ってるの?」

 

「部屋に飾ってあります。父が認めてくれたのは初めてでしたから」

 

「確かにあれは上品なものだったね。」

 

男がまだ小物(草刈り鎌や鉄製のヤスリ)などを造っているとき。試しに小刀を作った。

 

それの出来が良かったという理由で刀を打つことにした。

 

だがうまく行くことは少なく。小刀と普通の刀では大きさ等から作り方も違う、それに難儀し、長い年月が経っているが認めてもらう前に、師が消えた

 

「父はいつも言っていました、

俺と張り合える鍛冶職人が居てとても楽しいと、」

 

「あの人もあなたと一緒でずっと鍛冶をしてたよ。」

 

「父も私も鍛冶を好んでますから」

 

二人よく似た親子でこの鍛冶場もとても居心地の良いので、多々良はこの親子を、とても気に入っている。

それ故に男の父が消えたことには悲しみを覚えている。

 

「鉄なんてどこにでもあるのにね。」

 

「今あるものでは満足できないところまで詰め込んだんでしょう。」

 

「もう何年も帰ってきてないよね、」

 

「顔を思い出すのも大変ですよ。」

 

「また会いたいと思う?」

 

「その時までには認めてもらえるくらいの刀が打てるようになりたいですね。」

 

「相変わらずだね」

 

二人に細やかな笑みか浮かび、その後は話が弾んでいった

 

楽しいことがあると時間がすぎるのが早く感じるのか、外は月明かり無しでは何も見えなくなっている。

 

「気がつけばこんな時間か」

 

「今日は泊まっていこうかな。」

 

「珍しいですね。」

 

「まだまだ話が続けれそうだから、」

 

 

この夜ばかりは、静寂はなく代わりに男女の話し声が聞こえてきた、

しかしそれも次第に消えていき、やはり静寂は帰ってきた。

 

 

日も変わって、ある日のこと。

 

相変わらず鍛冶場からは鉄の音が聞こえてくる。

しかしこの日はおかしかった。

一つ鉄を叩く音色がずれ、それ以降の音が消えてしまった。

 

ほぼ毎日のようにその鍛冶場に寄る多々良が戸の手前で違和感を覚えた。

 

中に入ると男がいない。

何があったのかと探ると、

床には血が零れており、鍛冶台には割れた刀。破片が飛び散っている。

 

大方、予想は付いた、

鍛冶中に鉄がはねて怪我をした。

 

しかしこの床にはあまりにも血が付き過ぎている。

そのせいか多々良は少し心がざわついた、

 

鍛冶場の奥にある部屋を覗くと男が血を流して倒れている。

 

急いで近寄るも反応が薄い。

 

「大丈夫!ねぇ!しっかりして!」

 

横腹に刃が刺さっていて。明らかに苦しそうにしている。

 

男は悶え、必死に刃を抜こうとする

 

多々良が、手を貸し刃をゆっくり。確実に抜き取り。止血をする。

 

落ち着いたのか。男は深呼吸をして、ゆっくりと座る体制をとる。

 

「強く打ちすぎたかな。割れてしまってこの様だ。」

 

「鉄が冷めたらすぐにまた炉に入れて熱さなきゃダメだよ。」

 

「焦りは禁物か、さて、これは痛いことをした。」

 

男は少しばかり顔を竦めて呟く

 

「しばらくは刀は打てそうにない、」

 

「刀打つどころか、その怪我じゃ立つのも厳しいよ」

 

そのため、しばらくは多々良が男の世話をすることになった

 

 

しかし男は鉄が打てぬことに残念がってばかりで度々動き回るので。一向に良くなる傾向がない。

 

「傷が痛む。早く治らないか…」

 

「そんなにも落ち着きがないんじゃ、治りも遅くなるよ。」

 

「鉄を叩く音がまた聴きたい、」

 

そんなことをつぶやき始めたから。多々良は少々考えていた。

 

刃の折れた刀を処分し。

鍛冶場一帯の掃除をしていると。

珍しく男がおとなしく、居眠りをしている。

 

 

「せっかく準備したのに。」

 

結局多々良は、掃除だけしてその場を離れてしまった。

 

久々の鍛冶場と仕事をするのは諦めて男に毛布を掛け。多々良も少し寝ることにした、

 

目が覚めると鍛冶場に気配を感じ、覗くも、誰もいなかったが、そこに一枚手紙がある。

 

 

弟子を頼んだよ

私の唯一の友人へ

 

 

「帰ってきたなら声を掛けてくれてもいいのに。」

 

そう呟いて、手紙をしまい、

まだ寝ている男の顔にいたずらをしてクスクス笑っていた。

 

これから忙しくなりそう。

そう思って一つ決意を固くした、




最後少し雑になったかな。

しばらく読み手に回っていたので少し遅くなりました、他にも理由はありますがまぁそれは置いといて


また会えたら会いましょう。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

聖夜の傍らに

メリークリスマス
どうも悠樹@夢子です、

聖なる夜。クリスマスですね

まぁ、私の家は宗教的な話であまり関わりがないわけですが。勿論ぼっちです

ではごゆっくり


 

 

メリークリスマス。マミゾウさん

 

メリークリスマス。とは言ってもこの文化を知っておるのは儂ら外の住人と一部だけだからの。

 

まぁ。いいじゃないですか。雪も降り積もるそれらしい日ですし。

 

店は良いのか?

 

夜遅くから道具屋に来る人間なんていませんよ。

 

それもそうじゃな。

妖怪共は?人間の道具に興味を持つ者もいなくはないだろう?

 

まぁ。店の出入りが悪いんで今日はもういいです、

 

そうか、商売敵がそれなら、儂もそろそろ閉めるとするか。

 

タンザブ屋も妖怪人間問わずだからですか?商売敵なんて、初めて言われました。

 

ふふふ、まぁ、そういったところだ、

 

私は別に競ってなんかいませんけどね。まぁそう言う事ならそうでもいいですけど。

 

競いはせんよ。客引きはそちらの方が多いことはわかりきっておるじゃろう。

 

人里で店構えしてますし。

 

儂は里では店は出さぬ。化け狸の店は人間にはそう簡単に信じて貰えそうに無いしな。

 

どれも、便利なものばかりですけどね。

 

それでも。未知のものには触れぬのが人間じゃろう。

まぁ、例外はあるがな。

 

そんなこと言ったら、私の店だって妖怪には好かれませんよ。

 

人間と違って妖怪や妖精は未知に興味を持つものが多いからの。そういう意味では有名人気ではあるじゃろう?

 

そのせいで店たたみかけましたけどね。

 

はっはっは!、それはお主が悪かろう!あれは、道具を知らぬ妖怪に物を売ったからじゃ

 

客を選ぶわけにはいきません、ですけど、流石に間違えたと後悔はしましたよ。

 

商いは大変じゃろう?それ故に客は大切にせねばな。

お主暇じゃろ。ちょいと手伝ってくれぬか。

 

いいですよ、

 

さて。それにしてもお主がここに来るのは珍しいのう。

 

ちょっとした視察も兼ねてと言いましょうか。店閉めても特にやることが無いのでね。

 

ふーん。まぁ、こちらも店閉めてひまになるのだがな。

 

そうなっては帰るしかありませんね。

 

ふふふ、たまには、少しぐらい酒に付き合ってもらおうかの。

 

いいですよ、でも、私は少ししか飲みませんからね。

 

珍しい、儂の酒を飲むというか。

 

もともとお酒は嫌いじゃないですから。

 

さぁ、粗方、片付いたかの。

 

売れ残りとかどうするんです?

 

そうじゃな、連れに横流しか、儂が使っておる。

 

安くで売ったりはしないんですね。

 

利益に貪欲になっては商人として恥を知らざるを得なくなる。そうなっては名が廃ってしまうじゃろ。

 

時にはそうでも悪くありませんよ

私みたいな大きな失敗をするのは例外の分類ですけど。

 

何事にも慎重に行うのが道理じゃ。

焦りも禁物と言ったところじゃろう

 

これは痛いことをズケズケと、

まぁ。言われるのも無理ないか、

 

ほれ酒だ。盛大に飲め

 

少しと言いました。まぁ。有りがたくいただきます。

 

んっ、ふぅー。

まぁ、酒を飲んで忘れろとは言わぬが、あまり引きずり過ぎても。身に毒じゃからの。

 

ええまぁ、最近は客に合わせてものを勧めてますから。妖精に刃物は危険すぎたりしますし、特に頭の柔らかい氷精のあれには

 

ふふ、道具は使いを、選べぬからな。

 

その通り。どんなに便利なものでも、使い手が間違えれば恐ろしい凶器ですから。

 

お主の店にはあの針の小人が常連だと聞くが、

 

ええ。度々来て使えなくなった道具たちを持って行ってしまいます、

直して使うつもりならいいんですが、

 

変なこと考えておったりしてな。

また、下克上が、起きるかな?

 

勘弁してくださいよ、損失待ったなしですよ。

 

それは儂も同じこと。

 

まぁ。確かに。でも笑いごとにはなりませんね。

 

もちろん。巫女には動いてもらわねばな、

 

異変事は私にはどうしようもないですから。

 

実力はあるじゃろう。

 

相手は選びますとも。

 

平和主義者も悪くなかろう。

 

そういう意味ではないんですけどね。

 

儂と弾幕張り合いするか?

 

それはお断りですね。

 

ふふふ、そう来ると思った

 

どうしてわかるんです?

 

面倒事は避けたそうな顔をしておる。

 

ありゃ、顔に出ちまっては否めないな。

 

でも、流石の儂でもお主とはやり合うのは骨が折れそうじゃな

 

まぁ、私にはやる気はありませんよ、でも、喧嘩を売られたからには買わなくも無いですけど。

 

まぁ、物騒な話はこれぐらいじゃな。

 

あまり気は進みませんし。

 

さて。少々酔が巡ってきた頃具合か、

 

体が暖かくなってきましたね。

 

お主は酒に強いようじゃな。

 

これでも、一升程度なら飲み干せますよ、、

 

それはなかなか、それなら鬼との酒飲みも悪くないんじゃないか?

 

鬼はどうも苦手ですね。あの呑気には付いていけそうにない。

 

普段から物静かであるから。それには馴染めぬか。

 

そうですね。そんなところです。

 

ふふ、お主も好かれることぐらいあろう。

 

まぁ。ちょくちょく人間の女性に口説かれますね。

 

どうじゃ、いい女は見つかりそうか?

 

何を言ってるんです、口説かれても困る一方です。目に見えて貪欲なのがわかってるんですから。

人間の一面には振り回されたくないものです。

 

ほう、なら儂が口説けば、答えは出るか?

 

それはお互い酔いがない時にお願いしたいものです

 

お主も儂も、酒には強い、

流石に気の流れではない

 

ならば答えは。

 

まぁ、聞かぬともわかる。

 

おや、振っておいてそれは酷いですね。

 

気が変わったのでな。

 

なら私から。

私はマミゾウさんが好みですよ。

 

遠回しに言いよる。

 

こういうのは不器用でね。

 

ふふふ。まぁ、よかろう。

これからも末永くよろしくな。

 




ご読了ありがとうございます。

なんにしろケーキ食べておしまいだけなのは寂しい限りで。一筆30分程度書いてみました。
まったりな雑談と少しの大人な恋は好きになりそう、

ではまた会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

大晦日 静かな酒

どうも。

今年最後ぐらい短く

ごゆっくりどうぞ、


もうすぐ大晦日ですね。

お掃除終わりました?

 

とっくに終わってるわよ。

 

さすが、毎日暇する巫女さんですね。

 

あんたね、冷やかしに来たなら帰ってくれない?

これから宴の準備で忙しいの。

 

そりゃ、失礼。

それじゃ、また来るよ。

 

  ………

 

あんた、また来たのね。

 

お賽銭持ってきました。

 

それは!ありがとう!

 

とはいっても五百程ですよ。

僕だって裕福ではありませんから。

 

いいわよ、それでも

塵も積もればってね!

 

塵って額でも無いですけど…

 

まぁいいじゃない!

 

宴って大晦日の準備ですか?

 

そうよ。あんた来るの?

 

宴ですか。騒がしくなりそうですね。

 

その様子だと来なさそうね

 

鬼がいないなら。

 

もちろん来るでしょうね。

 

はぁ、ならいいです。

 

そう、あんたね、宴よ?

たまには気分を変えてみたら?

 

そうですね。気が向いたら。

寄ってみますね。

 

そう。またその返事じゃない。

 

別にいいじゃないですか。

宴に行くも行かないも自由ですから

 

そうね、勝手にするといいわ。

 

 

 …………

 

おーい!れいむー!

 

あっ萃香、お酒持ってきてくれた?

 

おおー!しっかりとな!

これでいいんだよな?

 

そうそう、焼酎にビール、ワインにチューハイ。

これだけあれば、十分ね!

 

私の酒もあるからな!

 

それはきついから、どうしてもって時でいいわ。

 

なんにせよ、今夜が楽しみだ!

 

そうね。久々じゃないかしら?異変以外での宴なんて。

 

そうだな。まぁ大晦日なんだから、パッとやろうじゃないか!

 

そういえば萃香、悠となんかあったの?

 

ん?なにも無いけど?

 

ふーん。なんか、あいつ、鬼の事を気にしてるのよね。

 

私達を?うーん。

恨まれてたりするのかな。

 

そういえば!あんたこの前人里で暴れてたでしょ!

 

あれなー、ちょっと派手にやりすぎた。

 

それに巻き込まれたとか!

 

いや、あの時はあいつはいなかったぞ?

 

うーん、あっ、飲み屋でひと悶着とか?

 

いや、あいつとは酒を飲まないぞ。

ていうか、悠って飲み屋行くのか?

 

そりゃ行くでしょ、彼も酒好きよ?

 

そうだったのか!

ならなんで私の酒を飲まないんだろ。

 

さぁ?知らないわよ。

 

うーん。今日来るのか?

 

鬼がこないならみたいなこと言ってたけど。

 

そっかー、じゃあ来ないのか。

 

あいつ。人里の飲み屋に出入りしてるらしいわ。

 

人里か、寄ってみるか。

じゃぁまた今夜な!

 

 

  ………… 

 

今日はいつもより静かだな。

 

よー!ここにいたのか!

 

 この声は…萃香さん。

 

どうしたんです?今日は宴に行くんじゃなかったんです?

 

 騒がしくなる…かな…

 

宴までは少し時間があるからなぁ、

 

 ならなんでここに?

 

たまには普通の酒もいいかなと思ってな。

 

 いつもうまい酒しか飲まない萃香さんがなぜ?

 

宴のお酒もいつもと変わらないじゃないですか。

 

お前だって宴で出る酒を飲めばいいじゃないか、

 

宴はあまり好きじゃないですから。

でもあの雰囲気は好きですよ

 

ふーん。なら別に拒む必要なんてないんじゃないか?

 

ないですね。でも、絶対参加しないといけないという理由も無いですよ?

 

そうだな。できるだけ参加して貰いたいんだけどなぁ

お前お酒好きなんだろ?

 

そうですけど、沢山は飲めないですから。

 

そんな馬鹿みたいに飲むわけじゃないから、いいんじゃないか?

 

酔った人たちが次から次に勧めてるのが。あまり好きじゃなくてね。

 

まぁ、私もその一人ではあるからなぁ

ところで、悠は最近私等鬼を避けていると聞いたが、

 

 別に避けているわけじゃないんだが…

 

避けてはいませんよ?どうしたんです?いきなり

 

霊夢から聞いたぞ、鬼が来ないなら宴に行くかもと。

 

 あぁ、そのことか。

 

あまり話したくないんですけど。ダメですか?

 

こればっかりはこちらもあまり気が良くない。できるなら話してくれないか?

 

 仕方ないか…

 

萃香さんの伊吹瓢や星熊さんの鬼の杯。あれらがあまり好きじゃなくって、ですね…

お酒はいろんな種類があって深み旨味があるでしょう?

 

まぁ、そ、そうだな、

 

同じお酒を飲み続けたり、杯に注いだだけでうまい酒になったりっていうのがどうも許せなくて。それで避けてる様になってしまっているのかもしれません。

 

なるほどな、そうか、

だがな、私等も普通にお酒を飲むことだってあるのだぞ?

宴の時はどうしても足りない時しか使わないし。

 

そうですよね。

誰だってうまい酒は飲みたくなりますし。

 

 僕だって物足りない時がある

 

その、なんだ、使わなければいいんだよな?

ならいいさ、宴来いよ。

私らは鬼の道具を使わない。

それでいいだろ?

 

うーん…わかりました。

 

 仕方ない…か

 

なら早く行こう、

もうそろそろ始まってしまうからな。

 

あの、まだ飲みきってないですって、

ちょっと、!

 

  ………

 

おーい!悠連れてきたぞ!

 

どうも。

 

おう、珍しいじゃねぇか。

って、お前聞いたぞ、

鬼に、なんかあったかい?

 

杯と伊吹瓢があまり好かないってだけですよ。

 

うまい酒は嫌いかい?

 

いえ、ですが、うまい酒というその定義が、嫌いなだけです。

 

そうか。気にいらないって言われてもあたしらはそれを受け入れはしないよ。

 

はい、わかっていますよ。

すいません。いきなりこんな話で。

 

構わないよ。さぁ霊夢!派手飲もうじゃねえか!

 

萃香さん、やっぱり僕はいいです、

外で飲んできます。

一本もらっていきますね。

 

おいー、そんなことはないだろー。

 

萃香、すまねぇな。

 

いいんだよ。ちょっと言ってくるな

 

  …………

 

あれ、萃香さん。

中で飲んで来なくていいんですか?

 

 一人で飲みたいのに、

 

誘っておいて一人で飲ませるわけにはいかないだろ

 

 それは、まぁ、

 

一杯もらっていいか?

 

ええ、どうぞ、

 

私、鬼だろ?

鬼ってだけで嫌われてな。

でも、こうやってみんなで集まるのがとても好きなんだよ。

 

ならなんで、わざわざ僕のために?

 

私だってこういうのを避けたい時があるんだ、

 

 そう、なんですね。

 

そう思って、あと私は悠と飲みながら話することがなかっただろう。

それも兼てだよ。

 

そんなにお酒は回したくないですから、あまり飲みませんけど。

 

私も今日は少ない量しか飲まないよ、

 

そうですか。

 

まぁ、はっきり言うのは苦手なんだが今言うのが筋なんだろう。

もう一度言う、

私は鬼だ

人間と過ごすことはできない、

でも人肌恋しくなる時がある。

その時だけでいいから、

私の隣にいてくれないか…?

 

 そんな急に…

 

えぇ、と、はい。

僕で良ければ。

 

すまないな、急なお願いで。

 

いいんです、萃香さんで良かった。

僕は萃香さんの呑気な所は苦手でも萃香さん自体は好きですから。

 

微妙なとこだが、でもありがとう。

今日は隣で飲んで話をしてもらえないか?

 

いいですよ。今夜はお付き合いします

 

 




良いお年を

来年もよろしくお願いいたします


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

昼寝と本と。

どうも夢子です。

夜更しは程々に
それと昼寝もほどほどに。


では、ごゆっくり。


早くおきなさい!

どうしてこう、いつも貴方は寝ているの?

 

んー。

 

起きてよ!

 

うん…ルナ?

 

もう、やっと…

 

おはよう…朝?

 

もう昼よ…

 

そんな時間なのか。また寝すぎたなぁ。

 

まだ眠たいんでしょ。

 

まぁね、

 

そんな徹夜して本読むことないのに…

 

面白かったからつい。

 

マンガってそんなに面白い?

 

んー?面白いね。

 

そ、そう。

 

ルナも読む?

 

いい、私は小説が好きだから。

 

そうかー。まぁ、俺も小説は好きだな。

 

読んでるとこ見た事ないわ、

 

これでも結構読んでるんだけどなぁ。

 

ふーん…パチュリーさんから本借りてくるけど。ついてくる?

 

いいや、眠たいし。

 

そればっかり

 

ルナは寝ないの?

 

昼寝は、たまにでいいかな。

 

そのたまにが今だったり?

 

パチュリーさんのとこに本借りに行くって言ったじゃない、

 

いいじゃん今から昼寝すれば読むことないから明日借りに行くとか。

 

うーん…今夜寝れなくなるの嫌だし…

 

寝ようと思えば寝れるよきっと。

 

そうだといいんだけど、

 

借りるだけ借りて、昼寝しよう。

 

それなら、ってそうやってまた誘おうとして、

 

じゃあ、ついていこうかな。

 

あれ?寝るんじゃないの?

 

たまには自分で借りに行こうと思って。

 

珍しいね、

 

寝てばかりでも暇だしー

 

そうね。

 

………………

 

パチュリーさん。

本返しに来たのとまた別の本を借りに来ました。

 

いらっしゃい、って、

彼もいるじゃない。

 

今日は借りる本を自分で選ぶって、

 

そう。あの怠け者がねぇ…

 

はいこれ。しおり挟んでおくから。

忘れないで返しに来て頂戴ね。

 

はい、いつもありがとうございます。

 

またいらっしゃい。

 

………………

 

ねぇ、なんの本を借りたの?

 

んー?【夢を見続ける少年】って言う本、挿絵程度の絵が挟んである小説だね。

 

こんな分厚い本よく読めるよね…

 

そうだねぇ。このサイズの本を読むのは久々かなぁ。

 

そんなに読んでなかったっけ?

 

うーん。多分。

 

でも、ほんとに読み切れるの?

 

また徹夜するかもしれないし。

そうなると2~3日かなぁ。

 

徹夜して読む必要はないと思うけど

 

とりあえず眠たいから寝るね

おやすみー。

 

う、うん、おやすみ。

 

私は借りてきた本を読むかな。

 

(なんでこういつも、昼寝ばっかり。寝るなら夜寝ればいいのに。

それとも、夜寝れないから昼寝るのかしら?)

 

  ねぇ、ルナは寝ないの?…

 

たまには昼寝もいいかな。

 

 

…………

 

 

ルナ、ねぇルナ?

 

ん…どうしたの?

 

朝だよ。

 

あれ。昼寝のつもりが…

寝すぎた…

 

ルナらしくないね。

 

貴方に言われたくはないけど。

 

お互い様だよ。

 

ま、まぁ、

 

ねぇこれ、手紙読んでくれる?

 

あなたが書いたの?

 

うん。

 

 ……

 

これって、ホントのこと?

 

ホントだよ。

 

なら私のことを?

 

うん。

 

そ、そう。

てっきり、あなたは本にしか興味ないと思ってた

 

そんなことはないよ。ずっと一緒にいてルナのこと想ってないわけないから。

 

う、うん、、、

 

ルナの隣で昼寝するのがすごく幸せなんだよ。

 

せめて起きててよ…

 

あ、まぁ、

でも本を読んでても寝てても一緒にいてくれるルナが好きだから。

 

うん。ありがとう

 

 

 




今回は短く纏まりました。
投稿字数ぎりぎり
すっごく短い。

でもたまにはこんなのもゆったりしてていい

では、また会えたら会いましょう。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

無意識の中の意識

どうも、夢子です。

最近考え事が尽きません。
頭痛くなりそー。


ではごゆっくり。


いつからだったか忘れた。

気がつけば隣に居るのは古明地こいしという、地底に住んでいるはずの少女

 

無意識を操ると言われているが。

彼女はいつも目の前に現れて隣に座っている。

 

理由はないよー

 

そう言っていつも消えていく。

 

謎が多い。

一度来た、姉である古明地さとりに聞いてみたが。

 

私にもわからない。

こいしの考えている無意識は読み取れないから。

 

といわれた。

 

まず、無意識は読み取れないから

 

という発言にすごく悩んだ。

 

確かに無意識は読めない。

感じ取る、という表現でも難しいだろう。

 

でもそれを操るとなると結局は

 

無意識ってなんだ?

 

どう考えてもその答えにたどり着く。

 

姉であるさとりの能力でわからないものなのか。

そういう疑問もある。

 

心が読めるなら

無意識は読めないのか?

 

と、考えてみた結果これはすぐに辿り着いた。

 

無意識は心無し状態で起きる行動

 

心がないなら、読めないのも仕方ない。

 

そういう疑問もすぐに消えた。

 

ならなぜ無意識は操れる?

 

これは古明地こいしを疑問づいていることになるか。

 

まぁ、無意識のうちにいろいろと考えていたら。例の声が聞こえてきた、

 

そう、古明地こいしがまた私のところに来たのだ

 

 

 

 

何をしているの?

 

君について考えていた、

 

そう、嬉しいな、

やっとあなたが私を見てくれたね。

 

見ているも何もいつも目の前に現れるじゃないか。

 

そうじゃないよ。

いっつも私のこと知らんぷりで何かしてるから。

無理やり目の前に現れてるんだよ。

 

(なんだ?構って欲しいのか?)

 

まぁ、そりゃ人が物事してる時は無意識になって集中するから。

 

そうそれ。あなたの無意識は操れなかったのよねー。

 

は?操れない?

 

そう。だってあなたの心の中が見えないんだもの、

 

どういう事だ?

 

その集中している時だけ。

操れないんだよねー

 

ますますわからないんだが…

 

なにがー?

 

どうやって操ってるんだ?

 

んー。私にもわからないんだー。

 

なんだそれ…

 

でも、あなたは操れないの。

あなたの心がわからないから。

 

それなら、無意識がないってことか?

 

うーん、多分あなたは考えすぎて無意識がないんだと思うの。

 

ん?それって、

無意識に考えすぎている

とかじゃないのか?

 

そう思って、操れるかと私も思ったんだけどねー。

やっぱだめなんだよなー、

多分、あなたが考えてる時は隔たりがあってそのせいで無意識を操るところまで届かないんだと思うの。

 

俺は俺で気がつけばいろいろと考えてしまっているんだが、それが無意識なんだろ?

 

そうだね。それが無意識のはずなんだけど、もしかしたら、無意識とは別で

考えているという状態がわかってない?のかな。

 

それってただの間抜けなんじゃ…

 

かもねー。ふふふ。

 

ならあれか。俺は無意識のうちに考えはじめて。それでそれが無意識じゃなくなってるのか?

 

うーん。そうなのかな?

まぁ、そうじゃないと操れないのはおかしいんだよねー。

 

結果操れないってことだな、

もうなんだ、めんどくさいから

考えるのをやめよう。

 

そうだねー。

まぁ、あなたの無意識は操らなくてもいいかなぁー。

 

どういう事だ?

 

だって、操っちゃったらいつまでも私に気づかなさそうだもん。

だから、私から話しかけて気づいてもらってこうやってしているのが楽しいかなぁ、って思ったの。

 

そうか、なら、俺はいつも通り変わりなく考え事をしていれば、お前は満足するのか?

 

なんか変な考え方するねー。

 

つまりは、お前は俺に気づいてもらうことを無意識の内にしてしまってるわけだろ?

 

あ!そうだね!

 

まぁ、そんなことされてばかりだと俺も考え事の邪魔ばかりされて困るんだけどな。

 

えー。私は?

 

何もお前の相手をしないとは言っていないだろ

お前とどう過ごすかも考えないといけなさそうだしな。

 

ふふふ、考え事で忙しそうだねー

 

どれも全部お前のせいなんだけどな。

 

私は悪くないよー?

だってあなたの隣にいるだけだもん、

 

どうして隣にいるのか。

それを考えてしまうのが俺なんでね。

 

理不尽だなー。

酷いなぁー。

もうこないよー?

 

いや、お前がいないと考えることがなくて困る。

 

正直に言ってよー。

もうこのくだり何回したかな。

 

わからないな。

なるほどそうか、

 

つまりは俺達は

 

無意識の内にお互いを意識していたってことだな。

 

そうだね、あなたの無意識が操れない理由はこれだったのかなー。

 

まぁ、でも操れないでくれ。

 

なんでー?

 

操られちまったら、

お前のこと考えられなくなっちまうからなぁ。

 

そっか。ならもう。私は無意識を操るのはやめようかな。

 

ん?どうしてだ?

 

だって、ひとりぼっちになっちゃうもん。

誰も私に気づいてくれない。

 

いつの間にか見つけられていつの間にか忘れられてる。

 

こんなに、悲しいことなんてないんだもん。

 

寂しかったんだな。

 

うーん、単純に、つまらなかったから、からかってたんだけど。

でもそれも通用しなくなっちゃた。

 

そうか。なら驚かしてみたらどうだ?

無意識を操れるなら、いつでもそれを解いて楽しめるだろ

 

それおもしろそうだねー!

 

でも、まぁ俺には通用しなさそうだけど。

 

だってあなたは無意識じゃないもんね。

 

間抜け…だったか?

 

ううん。あなたはしっかりと

考えている。からね

だから、私を見えているんだよ。

 

それは褒め言葉でいいのか?

 

うん。貴方は私のことがわかる人。

そんな人を身勝手にはしたくないかな。

 

なら俺も、俺のことをわかっているお前を忘れることはできないな。

 

ありがとう。

 

こちらこそ。




頭痛くなるまで考えるのは過ぎているとよく言われますから。程々にしておきましょう。

ではまた会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

恋と友人

どうも、悠樹です、

最近ペースが落ちてる気がする。
それだけじっくり考えて書いてるつもり()

ではごゆっくり


私は!あなたが好きです!

 

大ちゃん…そうか、

ありがとうね。

ほんとに、僕なんかでいいのかい?

 

はい…えっと。

優しくて、強くて。

いつも守ってもらっていて…

それで、えっと。

 

落ち着いて。

大ちゃんも優しくてしっかりしているじゃないか、

今は慌てているみたいだけど。

 

えっと、それはあの、、、

告白とか、恋とか、初めてで。

 

大丈夫、告白されるのは、僕も初めてだから。

正直、少し驚いたかな。

いきなり家に押し掛けて、

告白されるなんて。

 

あの。私、えっと。

 

とりあえず、これから仕事に行かなきゃいけないから。

また後でね。

 

は、はい

 

 

………………

 

 

大ちゃん、大ちゃん?

 

あっ、チルノちゃん、

どうしたの?

 

それはこっちのセリフだよ。

さっきからずっと、

俯いててどうしたの?

 

私ね、里の男の人に告白したの。

チルノちゃんも知ってる。

この前寺子屋で会った人に。

 

最近良く会うもんね。

好きだったんだね。

 

うん。それで、さっき告白して、

言いたいことが言えなくって。

 

あたいは、恋とか好きな人とかよくわからないけど。

大ちゃんはその人にもっと近づいて。それでその人にも大ちゃんを好きになってもらうのがいいんだと思う。

 

あの人は私の事好きなのかな…

 

霊夢さんは言ってたよ。

好きになって近づいて、それから知っていくのよ、って。

大ちゃんがその人が好きで近づいて、それで、告白したんだよね。

それなら、その人の事を知るために寄り添っていって。

同時に大ちゃんのことも知ってもらえばいいんじゃないかな。

 

チルノちゃんって。

凄く頭いいんだね。

 

唐突だね。

 

でも、その通りかもしれない。

まだあの人のことはよく知らないし。

勢いで告白しちゃったから、

あの人も困惑しちゃったし。

 

だから、今からは準備なんだよ

近づいていって、好きになってもらって、それから、また告白してみようよ。

 

うん。頑張ってみる、

 

大ちゃんが好きなその人、実はあたいも気にはしてたんだ。

 

そうなんだ、なら私申し訳ないことしちゃったかな。

 

ううん、いいんだよ。

私、わがままで、ドジで、

いっつも失敗ばかりだから。

迷惑かけちゃうかもしれないって思って、諦めてたから。

 

 

でも、告白だけでも。

 

いいの。大ちゃんの恋を応援したいから。

 

えっと、ありがとう。

 

いつも大ちゃんに慰められてばかりで、あたいも大ちゃんの為に何かしたいの。

だから、応援してる。

見守ってるから。

 

なんていうか、チルノちゃんに慰められて、私少し元気出てきた、

ありがとう、チルノちゃん

 

 

 

おーい!大ちゃん!

 

あっ、えっと。

探しに来たのかな

こんなところまで…

 

声掛けて、ほら、言いたいことあったんでしょ?

 

うん。

こっちだよー!

 

あっ、いたいた。

 

ど、どうしたの?いきなり。

 

さっきの返事してなかったよね。

 

う、うん

 

僕も大ちゃんが好き。

さっきは言えなかったから。

どうしても今言いたかった。

 

うん。ありがとう

なんて言うか。

言葉にできないくらい嬉しい

私も好き。

改めていいたかった。

 

あの時は僕も大ちゃんも慌てて落ち着いていなかったからね、

 

う、うん。だから、今言えてよかった。

 

良かったね大ちゃん。

 

うん。これからもよろしくね

チルノちゃん。

 

大ちゃんも頑張ってね。

 




今回も短くなったかな。

でも、一筆には、これぐらいがちょうどいいかな。


ではまた会えたらまた会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

捨てられた少年

どうも悠樹です。

今回は2話完結となっています
たまには長いシナリオも、いいものです、


それでは、ごゆっくり


 

 

 

ただいま戻りました。

 

美鈴お帰り!

 

フラン、疲れてるのだからしがみついちゃダメよ、

それで、美鈴、その子は?

 

里の離れの森で行き倒れになっていまして。

そのままでは、と思い一応連れて帰ってきました。

 

そう、人間かしら、

歳は…14と言ったとこね

それにしても、こんな冬に薄着なんて。

 

血がついてるよ…

すごく汚れてるし、

 

行き倒れなら仕方ないですよ。

 

とりあえず。中に入りましょう。

 

   ………

 

咲夜、傷薬持ってきて頂戴。

 

承知しました。

 

美鈴。

 

はい。

 

この子見覚えあるわ。

 

どこでですか?

 

と、その前に、あなたなぜ森に行ったのかしら。

 

咲夜さんにちょっとしたお使い頼まれて。あの森には珍しい果実があって、それを採りに行っていたんです

 

そう。

それで、この子なんだけど。

領家の子よ。

 

えぇー、っと、

誘拐…したってことになりかねませんよね?それ。

 

一歩間違えばそうなるわ。

でも、この子のこの様子を見る限り。何か訳有りな感じがするわ。

 

まぁ、お坊ちゃんって身なりでもないですし。何より、森で行き倒れになんかならないですし。

 

捨て子か、逃げたか。

 

お坊ちゃんが、逃げ出すなんて考えられませんけど…

 

あるとしたら親にせいじゃないかしら、

 

 

あら、レミィ、

レミィの部屋はいつから保健室になったのかしらね。

 

パチェ、まぁ、あれから紅魔館の来客も増えたんだから。人っ子一人助ける事ぐらいいいわよ。

それに、来客の対応は私の仕事でしょう。

 

それもそうね、

傷薬なんて使わなくても私の魔法で治せるわ。

 

気を失ってるのだから、下手に触れないわ。

 

ふーん、まぁいいわ。

それで、その人間どうするの?

 

里に返すってのは、流石に酷でしょうか…

 

宛がないなら余計辛いでしょうね。

 

まぁ、起きてから話を聞いてそれからにしましょう。

 

そうですね

 

 

   …

 

 

目が覚めましたね、

おはようございます。

 

あ、えっと…

あの…

 

どうしたんですか?

 

ここは…どこですか?

 

紅魔館です。

聞いた事無いですか?

 

吸血鬼の…

ど、どうして。

 

大丈夫ですよ、むやみに殺めたり血を吸ったりはしませんから。

 

ほ、ほんとにですか?

 

ええ、そうなっても私が止めますから。

 

あ、ありがとうございます…

 

少し待っててくださいね。 

 

 

 

あっ、そうだ…

僕は…

 

 

目が覚めたのね。

 

えっと、

レミリア・スカーレットさん、

と十六夜咲夜さん、

ですか?

 

そうよ。

名前知っているのね。

 

よく、主人様が話していました。

 

ふーん、あなたなぜ森で行き倒れになっていたのかしら?

 

それは…あの…

 

怒ってたり責めているわけではないですから、話してもらえませんか?

 

僕は…捨てられたんです…

 

捨てられた?

どうしてかしら?

 

物心ついて思い始めたのは8つの頃で…家族なのに僕だけ扱いが違ったんです。

 

そう…どんな感じだったのかしら。

 

まるで奴隷のようでした…

身なりも寝床も食事も、どれも貧相で床で寝たりボロ布服しかなかったり、僅かなパンだけだったり…

食事時はいつも僕だけ一人でした…

それに、何から何まで使いをやらされて、少しでも失敗をすると、主人様が鞭を打ったり…

 

もういいわ、

それ以上は辛いでしょう。

 

はい…

皿を割ってしまって…

それで…家には、いらないと…

 

そうだったんですね…

 

捨てられて…

仕方ないから里で何か出来ることはと思っていたんですが…

 

里で働くといってもね…

 

また…奴隷として働かされると思うと…里にも行けなくて…

 

連れて来て正解だったようね、美鈴。

 

そうですね。

ところで名前を聞いてもいいでしょうか?

 

えっと。

ハルス=エル=フリーデ…

確か母親が付けてくれた名前です、

兄と母は私のことを心配してくれていました…

 

ならなぜ里に行こうとしたのかしら?

 

戻っても…奴隷ですから…

もう苦しい思いなんてしたくないです。

 

そう。確かにそうね。

美鈴、咲夜とパチェを呼んで来て頂戴。

 

何かあったんですか?

 

いいから、

 

わかりました。

 

さて。フリーデ家か…

 

お知り合いなんですか?

 

そうね。

たまにうちに来て

いろんな契約を交わそうとしてくるわ。

やれ、税金や、土地のお金だってね。

 

里の土地を買うとかなんとか…

そんなこと言ってました…

 

あれは、結局霊夢が押し切って却下したわね。

 

そうなんですね。

 

下手な真似をすれば妖怪の賢者だって出てくるわ。

図に乗りすぎね、フリーデ家は、

 

主人様は…

我儘で乱暴で…幼稚で…何より。

人の事なんて、思ってないんです。

 

そうね。事実あなたがここにいるのもそのせいね。

 

 

レミリア様、今参りました。

 

レミィ、何かしら?

 

ちょっと話があるの。

美鈴、その子頼むわね。

 

え?は、はい。

 

 

どうしたんでしょう。

 

さぁ?、私にもわかりません。

 

時々こっちをチラ見してきますけど…

 

ははは、何でしょうね

 

 

咲夜準備してきてちょうだい。

 

はい、承知しました

 

さて、ハルス、あなたここで働きなさい。

 

えっと、えっ?

 

働きなさいって言ってるの

嫌かしら?

 

助けてもらった恩もありますし…

こんな僕でいいのなら。

でも…

 

安心なさい。奴隷になんてさせないわ、

 

執事というのが正しいですね。、

 

執事…わかりました。

おねがいします。

 

よろしい。

あなたの教育担当は咲夜よ。

彼女にも優しくするようには言ってあるけど。もし辛いようなら私に申し出なさい。

 

えっと。なぜレミリアさんに?

 

咲夜に直接言うより、私からそういうふうに命令した方が効果があるから。

 

あなたはまだ子供、

ですから無理は禁物ですよ。

 

はい、ありがとうございます。

 

さて、ハルと呼びましょうか。

ハルスでは、少し面倒だし。

 

ハルですね。わかりました。

 

フラン、隠れてないで。

こちらに来なさい。

 

はい。お姉さま

 

まずはお互い挨拶からね。

 

レミリアお姉さまの妹の、

フランドール・スカーレットよ。

よろしくね。

 

ハルス=エル=フリーデです。

この度紅魔館の執事になります。

今後よろしくおねがいします。

 

よろしい。

 

それじゃ、

咲夜のところに行きましょうか。

 

はい。

 

 ………

 

来たわね。

これを着てもらうわ

 

す、スーツ?

 

近いものはあるわね。

でもこれは執事用の特殊な服よ。

 

執事用のものなんてあるんですね。

 

いいから、来てみなさい。

 

…こんな感じでしょうか

 

似合ってるじゃない。

いいわよ、様になってる

 

これから、ここで働く時にはこれを着て仕事をしてもらうわ。

 

わかりました。

 

さて、それじゃ、

早速、基本から教えてあげましょうか。

 

 

 




次話も読んでいただけたら幸いです



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ハルス=エル=フリーデ

どうも、今話は
捨てられた少年
の続話となっています

まだお読みになっていない方はそちらからどうぞ

ではごゆっくり


 

 

 

 

美鈴、あの子なかなかうまく行っているようね

 

そうですね。

流石元奴隷。というのには皮肉でしょうか

 

事実だから仕方ないわね、

 

それにしても、働き者ですね。

 

ええ、貴女にも見習ってもらいたいわ。寝サボり門番さん。

 

うう、痛いことを…

 

まぁ、それでこその美鈴でしょうけど

 

なんだか、そういう言い方されるのはむず痒いですね。

 

決して褒めてはないわ。

 

わかってます。

 

さて。あなたにも話しておくわ。

 

はい?

 

明日フリーデ公がまた来るわ。

 

なんのために?

 

うちを買うとか言ってたわね。

馬鹿らしい。買われるくらいなら襲い返して逝くまで血を吸ってやるわ。

 

愚かというか、なんと言うか、

 

それで、あの子のことを話すのだけど。おもしろそうだから責め込んでみましょうよ、

 

はい?

 

最終的には閻魔のお説教地獄にするつもりよ。

 

それはまたひどいことを…

 

ハルが仕返しをするって、まぁフリーデ公のバツよ、

 

そうですね、当然の報いでしょうか…

 

人間が図に乗りすぎなのよ。

奴隷を持つなんて

ましてや自分の子をそうするなんて。ありえないわ。

 

それもそうですね。

 

さて、そろそろお茶にしようかしら。

今日は貴女に頼もうかしら。

 

パーフェクトメイドじゃなくていいんですか?

 

たまにはあなたの濃いめも飲みたいのよ。

 

承知しました。では少しお待ちを。

 

 

敬語も使えて、忠誠心も強い

仕事も難なくこなす。

いい執事を持ったものね。

 

あら、パチェ早いのね

美鈴も言っていた通り

流石元奴隷ね。

 

まだ大人には遠いから、無理させすぎるのも気に触るわ。

 

大図書館にもたまに寄っているらしいじゃない。

 

ええ、小悪魔の補助をやってくれているわ。

なんでも、本の整理が捗るとか。

 

まぁ、人手が増えればもちろんのことでしょ。

 

あっ、そういえばあの子ぼやいてたわよ。

 

ん?なんて?

 

こんな環境で暮らしてていいのだろうか、って、

 

そう。

まぁ、奴隷でいた頃に比べると、

そうね、疑心感を持つのもわからなくはないわね、

 

奴隷から執事なんて、とんだ機転、

人間の言うのことは本当のようね。

 

ん?なにが?

 

人生何があるかわからないって、やつよ

 

ハルはその言葉の通りってわけね。

 

そう。まぁそれでこそ生きるのが素晴らしい、って考えを持てるのでしょう

 

不思議なものね。

こう長く生きていると。そういうのも感じ難くなるのかしら。

 

仕方ないわ、私達とは違って

人間は短い一生にそういったものを見い出そうとするのが本質だから。

 

私は長く生きているものだから、そういうのはもうあまり気にしなくなったわ。

 

まぁ。仕方ないわね。

 

さてと。

美鈴お茶ありがとう。

 

はい、ありがとうございます

 

濃いめのお茶は久しぶりね。

なかなか美味しかったわ

ありがとう

 

パーフェクトメイドさん程ではありませんよ。

それに、私の本職は門番ですし。

 

そう言うならしっかり努めてもらいたいものね。

 

ま、まぁ、誰も来ないからつい、

 

ふふふ。咲夜がいつも呆れて見ているわよ。

 

たまにナイフ飛んできてたりしますからね…

 

なかなか物騒なのね。

 

あれでも、かなり甘い注意らしいけど。

 

殺しに来てて甘い注意なんて、

恐ろしいですよ。

 

居眠りする方もどうかと思うけど。

 

そりゃ、まぁ

そうですけど。

 

ふふ、しっかりして頂戴ね。

 

はい、気をつけます…

 

さて。明日に備えて先に寝ようかしら。

 

まだ早くないかしら?

 

時間軸をずらしては迷惑でしょう。

 

あのフリーデ公にわざわざそんなことを?

 

一応お客だし。閻魔が来るまでは普通を装うのよ。

 

そう。おやすみレミィ。

 

おやすみ、パチェ、それと美玲

 

おやすみなさい、レミリア様

 

    …

 

 

 

ここに来るのは二月ほど前かな?

 

ようこそおいでくださいました、

フリーデ公。

 

レミリアお嬢さんも、相変わらずですな。

 

お食事をご用意させて頂きました。

どうぞこちらへ。

 

おお、気が利くではないか。

お言葉に甘えて頂こう。

 

 

 

こちらへお掛けください。

 

おや、男かね。

 

ええ、先日執事を雇いまして。

女ばかりでは物足りなさを感じましたので。志願した人間を雇いました。

 

ほう、なかなか面白いこともするのだね。

少しばかり館内の雰囲気も変わりこれはこれでいいと思う。

 

ありがとうございます。

 

それでは食事にいたしましょう。

 

 

…………

 

 

ごちそうさま。

なかなか美味しかったよ。

それで、今回の訪問の理由は

おわかりかな?

 

ええ、

紅魔館ほぼ全ての買収

及び土地の買収と大図書館も買収

ですね。

 

当然の館の職員も私の直属となるわけだが。

どうかな?

 

謹んでお断りさせていただきます。

 

ほう、なぜかな?

 

私は紅魔館の主

そしてこの館を守る義務があります。

それを赤の他人に任せるわけには参りません。

 

買収後も、レミリア殿は館に残ってその義務を果たせるが。それではダメなのかね?

 

はい、あくまでも主であることなので。

買収されてはそれもなくなってしまいます。

それにこの館はスカーレット家の遺産。それを安々と買収されるわけにはいきません。

 

では、今回の交渉は失敗かな。

 

これ以上は意味をなさらないと思われます。

 

それでは仕方ないな。

おい。ガキ。黙って従え

 

なんのおつもりで?

 

無理矢理にでも、ここを頂くんだよ。

 

それがなんの意味をなしているのか。

わかっているのですか?

 

たかがガキにこんな館守れるか。

さっさと契約書よこせ。

 

ねぇ?

 

あん、何だよ。

おい、あんたの妹だぞ、さっさとどっか連れてけ。

 

ねぇ?あなたの子供はどこに行ったの?

 

知らねぇよどっかで野垂れてるだろ、

 

お母さんとお兄さんは?

 

どっか行ったよ。知るかあんな奴ら

 

ふーん、そう、じゃぁね、

 

ちっ、なんだあのガキは。

 

おい、早く契約書をよこせ!

 

お断りします。

 

っつ!なんだと!

 

あなたのお子さんは

ハルス=エル=フリーデ。

ですね。

 

ああ、そうだよ、あいつがどうしたってんだ。

 

ハル、来なさい、

 

はい。

 

さっきのちびがなんだってんだよ。

 

見覚えないかしら。

 

あん?知らねぇな。

 

フリーデ公、

あなたは次男を覚えていないのですか?

 

知るかあんな奴

奴隷と同然だ、

消えて当たり前だ。

 

そうですか。

わかりました、

レミリア様おねがいします

 

おい、何でもいいから早くしろ。

 

それはできない。

 

なんだよ、ったく。

 

この執事はハルといいます。

あなたの実の息子、

ハルス=エル=フリーデ

本人よ、

 

はぁ?何言ってんだか。

 

フリーデ公、この額の傷。覚えているでしょう。

 

そりゃ、俺があのガキにナイフでつけた跡。

あぁ!

 

やっとお気づきですか。

 

なんだよエル、こんなとこにいたのか。ほら早くこっち来いよ、

俺に許可もなくそんなことして、

厳しいバツだ。

 

お断りさせていただきます

 

ってめえ!

主人に楯突くな!

 

お言葉ですが、

僕の今の主人はレミリア様です。

 

なっ!てめぇ!

 

あなた、自分がどういうことしているのかわからないのかしら、

 

使えねぇガキを使えるように教育するだけだ。

 

それが過ちなのよ。

奴隷と同然だ

そう言ったわね。

 

なんだよ、

 

自分の子を奴隷など、

そんなことはどこの誰でも許されないことよ、

それに私から紅魔館を奪おうなんて。

千年生きてから言いなさい。

じゃないと血を枯らすわよ。

 

なんだよ、何なんだよ!

 

いい加減にしろ!

 

っ!

 

お前は父親失格だ。

いや、人間失格だ!

 

奴隷のてめぇに言われたか。

 

あなたがそれを言う資格はないわ、

 

なん!誰だ!

 

今のあなたは奴隷よりも価値のない存在です。

 

お、おめぇは…閻魔!

 

私を呼び捨てなんて、あなたは何様のつもりですか?

 

あぁー。四季様、お怒りだなぁ。

 

レミリア・スカーレット。

この度はご協力ありがとうございます。この男の行いには地獄でも噂になっていたようですから。

そろそろ潮時でしょう。

 

は、ハメやがったな!

 

度が過ぎるんです、

金持ちというだけで偉いとでも?

この幻想郷には人間以外もいることがわかっているでしょう?

彼女レミリア・スカーレットは

吸血鬼なのよ?

 

なん!あんなガキが…!

 

掴みかかって行けば確実に殺されていたでしょうね。

 

こんな人間の血なんか吸いたくないわ

 

チっ…

 

さて、小町。

そろそろ時間ですから。

 

へーい。

 

な、何をするつもりだ…

 

あんたを殺すんだよ。

その魂を閻魔様が裁くのさ。

 

やめろ!まだ死にたくは…

悪かった!俺が悪かった!

 

みな、そうやって罪から逃げようとします。ですがその頃にはもう手遅れなのですよ。

 

ハル、目を伏せてもいいのよ。

 

いいえ、父親の最後ぐらいは。

 

そう、強くなったのね。

 

やめっ!ひっ、うわぁぁ!

うっ!

 

 …

 

さて。この男の魂も抜けたところで私達はこれで帰ります。

これからこの男に真っ黒い判決を下すという仕事もありますし。

 

ええ、お疲れ様。

 

ハルス=エル=フリーデ

あなたは彼のようになってはダメですよ。

 

はい、

 

それじゃーなぁー。

 

こら小町、挨拶ぐらい真面目にしなさい、

 

えぇ、別にいぃじゃん。

 

 

 

終わったんですね。

 

ハル。最後までよく耐えたわ、

その涙ももう流していいのよ、

辛かったでしょう、

例え自分にひどいことをした親でも。決別の時だけは。悲しいものね。

 

これで…いいんです…

全部終わりましたから…

レミリア様…

ありがとうございました…

 

いいのよ、

これには散々迷惑被ったから。

いい仕返しできたわ。

 

あの、これからもここで働かせてもらえませんか?

 

兄と母は?心配でしょう?

 

母が里で結婚したと…

美玲さんが言っていました。

兄もそこにいます。

 

ともに暮らせばいいじゃない。

 

いえ、僕をここで執事として働かせてください。

レミリア様の執事として。

 

あなたがそれを望むのなら。

私に止める気はないわ。

それじゃ、これからも頼むわね。

 

 

-ハルス=エル=フリーデ

あなたを私の直属の執事に任命する-

 

 

はい、喜んでお受けします。

 

咲夜と仲良く頼むわね。

 

はい、これからも

よろしくお願いします

 




2話読了ありがとうございました。

また気が向いたらやってみようかな。


ではまた会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

二人の恋

どうも悠樹@夢子です

ロングエピソードはいいですね。

題名通り恋話

ごゆっくりどうぞ


「わ、私と付き合いなさい!」

 

いつからだろう

 

「ね、寝てるの?」

 

なぜ僕は、この女性と

 

「起きて私の話を聞きなさい!」

 

関わるようになったのだろうか…

 

 

 

 

、、、

 

 

 

客もいなくなり。眠気と戦いながら、レジの清算をしていた。

そう。僕はパン屋を営んでいる。

 

最初はこじんまりとして、客も少なく、人里の外の知る人ぞ知る店。

そんな感じだった。

 

だが、試しにと人里の掲示板に手作りのチラシを貼ると、次の日から客が殺到するようになった。

 

正直困っている。

売れ残りが少ない

 

少しでも残って自分で食べるようにと思っていたのが。残るものが毎回決まっていて楽しみがなくなった。

 

時には何一つ残らない日もある。

 

少し客が増えれば…の思いだが。こうなるとは思わなかった、

 

でも決して悪いことではない。

 

…そんなことばかり考えると。

 

その日最後の客が来た。

二人組の女性だ

初めて来るのだろう見覚えがない、

 

「まだやっているでしょうか?」

 

当然のことで飛び起きた、

あぁ…眠気がすっ飛んだ…

 

「い、いらっしゃいませ!」

 

とは言ったものの…

 

「何もないじゃない…」

 

「いいえ、まだ少しありますよ」

 

そう、売れ残ったクロワッサンと白餡パンぐらいしか残りはない。

 

「もうそれしか残ってなくて、申し訳ない。」

 

しかしそれでも手に取ってこっちに来るとこ、貰っていくらしい。

 

「この2ついくらですか?」

 

どうせ売れ残りだ、後で僕が食べる分だが…清算終えたあとでの管理はめんどくさい。タダでいいか。

 

「もう店は閉めますし、売れ残りですからお金はいいですよ。」

 

あぁ…また自分で食べる分が減った

 

「いいんですか?」

 

「構いませんよ。」

 

「衣玖。タダより高いものはないのよ!」

 

「そうですね、では言葉に甘えて」

 

「「いただきます」」

 

店内で食べるのはあまり好ましくないなぁ…まぁ、他に客もいないしいいか。

 

「お、美味しい!」

 

「ほんとにうちのシェフより美味しいわ!」

 

こう、喜んでもらえるのは嬉しい、しかも、歳も自分と差がないくらいのスタイルも見た目もいい女性二人だ。

 

「ありがとうございます。」

 

「またきますね」

 

そう言って満足そうな顔で帰っていった、

 

「はぁ…」

 

どうしてこうも忙しくなったのか、

売れ残りはない、おかげで繁盛している。喜んでもらえている。

だが、なにか満足行かない。

 

 

それで、次の日だ、

 

売り切れて店を閉めようとした時、昨日と同じ二人がやってきたわけで。

 

「もしかして、もう売り切れ?」

 

「ええ、先程最後の一個が売れまして」

 

「天子様仕方ありません。帰ってまた明日早い時間に来ましょう」

 

「ええー…せっかく今日は選べると思ったのに…」

 

なるほど少し早く来て選ぶつもりだったのか。生憎だが全て売れてしまった、仕方ない。何もなしで返すわけにはいかない。

 

「良ければ今からお作りしましょうか?」

 

まだ時間も昼過ぎだ。普段の閉店よりも一時間ほど早い。

 

「えっ?いいの?」

 

「手ぶらで返す訳にはいきませんし。」

 

「わざわざありがとうございます」

 

「少々お待ちくださいね。」

 

生地に、チョコペーストを練り込み、模様をつけるようにまたペーストをつけ、そのまま焼く、

ふんわりした生地のチョコ風味のパン、最近はこれがよく売れる。

 

「おまたせしました。」

 

「これは?」

 

「チョコ風味のふんわりパンです。」

 

「すごく美味しそうじゃない!。」

 

「最近はこれがよく売れるので。是非と思いまして。」

 

「それじゃ、いただきますね。」

 

パクっとその口にパンが入ると、

やはり二人からは笑みと満足そうな顔が浮き上がる。

こちらとしてはその笑顔はとても嬉しい限りではあるわけだ。

 

「明日こそ選べるようもっと早く来るわ!」

 

「お待ちしています。」

 

そう。確かに次の日も来た。

その次の日も

飽きずに毎日来て。複数の種類を買い、持ち帰っている

 

だが、何日か経ってしかも昼過ぎに、わがままそうな発言を繰り返す方の女性が一人で来た。

 

「はぁ…はぁ…まだ、やってるかしら、」

 

急いできたのか。息が荒い。

 

「ちょうど閉めるところでした。

まだ少し残ってますよ。」

 

とは言ったがどうも買いに来た様子には見えない。一体なんだろうか。

 

「どうなさいました?」

 

「あ、なた。な…名前は…?」

 

「愁也といいます。。

唐突ですね、名前を聞くなんて。」

 

どうも忙しそうだが、こちらも今から清算で忙しくなる。

 

「愁也ね。明日!絶対来るから!」

 

変な人だ。毎日来ているというのに、わざわざ宣言する必要もないだろうに。

 

「明日は休みの日なのですが」

 

そう言う前に飛ぶように去っていった、

まぁ、何も気にすることはない。リピーターが来るだけのことだ。

清算を終えて売れ残りのパンを食べながら新しいレシピを考えていると。

うとうとして寝てしまった。

 

「起きて!起きなさい!」

 

なんだ…せっかく人が気持ちよく寝ていたというのに…

 

「誰ですか…」

 

「起きた?朝よ!」

 

声はさほど大きくないんだが…なにせ寝起きだから。やたらと頭に響く。

 

目を開けると見覚えのある顔が目の前にあった。こんな朝早くから来るとは。

 

そんなことを考える暇もなく何か気がよぎった。

違和感を覚えながらも、椅子から立ち上がりひと伸びする。

 

十日に一度の休みを決めていて今日がその日だというのに、朝早くから目が覚めた。

どれもこの女性のせいだ、

 

「もう朝なのに…なにしてるのよ。」

 

「今日は定休日なんですよ。それで、寝ていたんですけどね。」

 

「あ、余計なことしちゃったかしら…」

 

あぁ、余計だ、まぁ起きたものは仕方ない。何かすることにしよう。

どうせ今日は店は休みだ。

 

「休みってことはパンは売ってもらえないのかしら…」

 

そんな気を落とされると、こちらもいい気分ではないな…

 

「えぇまぁ、休みは休みですし。」

 

そっか…と言葉をこぼして店内の椅子に座る。手に持ってるのは財布か?デカイもんだから中身が詰まってそうだ。

 

そういえば、今日も一人で来たようだ、いつも派手な服を着ているもう一人がいない。

 

「今日はお一人なのですね。」

 

「衣玖は今日は忙しいから。」

 

これから睡眠で忙しくしたいんだがなぁ…

 

「ねぇ、あなた今日は何するの?」

 

「新しいレシピを考えるか、寝て過ごすか。ですね。あと買い出し。」

 

休みは休みで、特に何かするわけもない、たまの休みは堕落するんだ。

 

「なら!…あっ、えっとあの…

今日一日。ここにいていいかしら…」

 

なんの意味があって?

まぁ、断る理由もないんだが…

さて困った。困ってはいるんだが。

何故か内心嬉しい気持ちがする

 

「ええ、構いませんよ」

 

口走ってしまった。

言ってしまったものは仕方ないか。

 

「え?いいの?」

 

「はい、お名前聞いてもよろしいですか?」

 

「ひ、比那名居天子よ。」

 

「天子さん、ですね。」

 

どっかで聞いた名前だ。

しかし里に住んでいるわけではなさそうだから。相当良い家に住んでいるんだろう。末っ娘のわがまま娘だろうか

 

そう思いながらとりあえず店の整理をする。

 

慣れない手つきで手伝ってくれているようだが…他に人がいるとなると、こちらも慣れない、

 

「その値札は向こうのかごに入れておいて、」

 

「えっと、どっちに?」

 

「他の値札も入ってる方、中を見ればすぐわかると思う」

 

今更なのだが、店がやっていたら手伝うつもりだったのだろうか…店員は持たないつもりだから、流石に返していただろうな。

 

そんなこんなで整理が終わった。店も大人しくガラッとしている、

こうでもしないと、店がやっていると勘違いされる。

店もやっていないのに客が来るのはこちらの迷惑な限りだ。お茶を出すのは趣味じゃない。

 

ならなぜこの女性は通すのかって?

そりゃ、気の迷いだよ。

 

「こう見ると…案外広いのね。」

 

「テーブルとか棚がありますから。それで狭く思えるんです。」

 

確かに広い。普通に部屋にするなら広すぎるだろう。

しかし建物が元飯屋なだけはあって、作りはしっかりとしている。

 

「これから、何するの?」

 

と言われるが。

流石に今から寝るなんて、言えたもんじゃない。少し早いが人里に買い出しに出るか。

 

「買い出しついてきますか?」

 

「う、うん。」

 

半分迷いがあるようにも見えるが、やはりついてくるらしい。

 

特に何もない、パンのトッピング用の具材とか、調味料とかそういったものと今日の夕食の飯を買うだけだ

なのだが、団子屋に寄ることにした。

 

たまにはパン以外で甘いものを食べよう。そう思っただけだ。

別に甘やかしているわけじゃない。

 

「団子なんて久しぶりだ。」

 

「いつもパンばかり食べているの?」

 

「そういう訳じゃないんだけど、まぁ、パンを食べることが多いだけかな。」

 

団子もひと仕切り食べて、人里を出ると斜め後ろで天子さんがそわそわしている…どうしたどうした、何があった。

 

気にするべきだろうか、

しかし、客と店員のやり取りしかしたことがないから、普段の会話なんて全くわからない、

 

「ね、ねぇ…」

 

「どうしました?」

 

「…やっぱ、何でもない…!」

 

そう言うと店まで一人で走って行ってしまった、鍵閉めてあるから入れないと思うんだけど…

 

店の前に着くと、うずくまっている天子さんがいた。こちらに気づくと、立ち上がって笑顔で

 

「おかえり!」

 

そう言ってくれた。

涙を拭いたあともあったけど、

とりあえずこう一言。

 

「ただいま」

 

それを言うと天子さんはまた笑顔でこっちに来る。とりあえず店の鍵開けなきゃ。早くこの重たい荷物を置きたい…

 

店に入って、荷物をしまい、

それから椅子に座ってお茶を飲む。

買い出しの後はいつもこうしているが、いつもと違うのは隣に天子さんが居るということ。

 

昼はいつも通りパンで済ます。

食べたいものはないかと聞くと、

作ってもらえるなら何でもいいと言う

それなら楽だ、自分のと同じものを作れば手間が省ける。

 

「これは?」

 

「普通のクリームパンだよ」

 

至って普通の人里でもよくあるものだ。何故か無性に食べたくなったから作った。

 

「そう、いただきます。」

 

僕も天子さんも無言で食べた。

特に会話もなく、黙々と。

だがやはり気まずい空気はあった。

今日一日何かおかしい。嫌に落ち着けない。

いったいどうしてしまったのだろう、

 

昼も食べ終わって。

十日分の清算をまとめていた。

その時は特に何も思わなかったが、

終えて椅子で居眠りしている天子さんを見ると、また何が気がよぎった。

落ち着いて、売上である分を店の奥の金庫にしまい込み。店先に戻ると。天子さんが起きて長椅子に移動していた。

 

こちら見て顔を赤面させてはよそを見てたまにチラ見し、もじもじしている。落ち着けないのは天子さんもなのだろう。

 

しかし、僕もよほど落ち着けなくなってきた、まともに顔を見るのも少し避けるようになってしまう。

 

夕方になる頃、突然扉が開いた。

どうやら天子さんのお迎えがきたようだ、

 

「天子様、ここにいらっしゃったのですね。」

 

「衣玖…」

 

「どうされました?皆が心配されてますから、早くお帰りなさいましょう、」

 

「わかったわ…」

 

「ご迷惑かけませんでした?」

 

「いえ、大丈夫ですよ。」

 

言葉でそう言っても一日ゆっくり出来なかったのは確かだ、少しばかり迷惑被ったのは間違いじゃない、が、そう言うのは今は場違いだろう。

 

「ま、また来るわ!」

 

「はい、待ってますよ。」

 

 

 

それからやはり毎日パンを買いに二人はやってくる。

しかし天子さんは毎回店の前に立って待っているらしい。

 

何かあったのだろうか。

こちらも、気にしてしまう

いや、このところほぼ毎日、

仕事が終わるたびに彼女を意識しているような気がするのは確かなのだ。

 

確かでありつつ、彼女が来るとこを待ち望んでいて、それで気にしてしまっているのだろう。

 

「天子さんは店の中には来られないのですか?」

 

「天子様ですか?そうですね、ひと捻りした言い方すれば、恥ずかしいといったところでしょう、」

 

また、不思議な言い回しをする人だ。

でもなるほど、彼女の中で何かあったのだろう。

 

「また、来るときはお二人揃っていらっしゃってください。」

 

「ええ、天子様も連れてきますね。」

 

 

そんな会話をした夕方に。

天子さんが一人で店までやってきた。

ノックもなしに店に入ってきて。いきなり椅子に座りこんだ。

これでは対応に困る、

 

「ど、どうしたんですか?」

 

こう聞くといきなり立ち上がって。

 

「な、何でもないわ。ここのパンが食べたくなったの!」

 

半泣きにも見える、

そして生憎だが今日は売り切れた。

作るにはもう気力が殆ど無いんだが…

 

「売り切れたから新しく作るよ。」

 

体が自然と動く。

 

この前と同じチョコパンを作り渡すとすぐさま口に含み。

それから、なにか喋った

食べ物を含みながら喋られても何を言っているのか全くわからない。

 

「先にゆっくり食べてからにしてくださいよ…」

 

飲み込んでひと呼吸おいてから、また話しかけてきた。

 

「相変わらず美味しいわ。

どうしたらこんなふうに上手く作れるの?」

 

考えたこともない。レシピ通り、それといつも通りに生地を作っているだけで。特にこれといったものはない。

 

「ただ、作りたくて作っているだけです、」

 

「それでこんなに上手に作れるなんて。」

 

そう思えば。どうしてこんなにも売れるのだろうか。

僕はただ趣味でパンを作っているだけだ。最初から売る気などなかったのだが…まぁ売れるなら売れるで作って売るのが今の現状か。

 

「作りたくて作ってるってことはパンを作ることが好きなの?」

 

それは一理ある、

 

「ええ、まぁ、」

 

だが、今は売るために、食べてもらうために作っている。

 

「なら、私の為にパンを作って!」

 

唐突な謎のお願いだが…

それはどう言うことなんだ?

 

「店をやめるわけにはいかないんですが…」

 

「毎日この時間に来るから!その時に作って!」

 

それなら別にいいか。

リピーターは減ってしまうが。

でも彼女の為なら悪い気はしない。

 

「わかりました。」

 

それで満足したのか、

少し満足した顔で、笑顔で帰っていった。

 

「毎日か…」

 

彼女が来ない日はなかった

だが、店内に顔を出さなかった日は少し寂しい感じ気がしていた。

 

次の日は何故か天子さんは来なかったが、お付の人が一人で来たようだ。

 

しかし今日は人が少ない。

流石に皆飽きてきたのだろうか。

そんなことを考えると客が話しかけてきた

 

「天子様はどうですか?」

 

どうですか?だって?

よくわからない質問だ。

 

「どうですか、とは?」

 

「天子様は、あなたのことがお好きなんですよ?」

 

そう言われると…嬉しい気はするがむず痒い。

 

「言動から察してはいましたけど。いざそう言われると。こちらも恥ずかしくなりますね…」

 

「あなたも気にかけているのでしょう?」

 

あぁ…そう思うとそうだ、

毎日彼女を意識しているのでは。好きという事だろう。

 

「ええ、まぁ」

 

「天子様がしびれを切らしてあなたに告白するのも近いうちかもしれませんね。」

 

僕はただここで店を営んでいたいんだが…いや、パンを作りたいだけだ

 

「お気持ちには添えかねます、僕には店がありますから。」

 

「きっと悲しみますよ?」

 

それはわかっている、

わかっているが。

こちらとしても素直に、はいとは言えない。

 

「どうにもね」

 

「まぁ、天子様は滅多に地上に来ませんでしたから。こういうのもいい機会だったのでしょう。」

 

「地上に来なかった?」

 

どういうことだ?

よく聞く地底の妖怪かなにかなのか?

 

「天子様は天人なのですよ?」

 

「雲の上の人か…」

 

こりゃびっくりだ。

天人様がこんなとこに来るなんて、滅多に無いのもわからなくはない。

 

「本人から聞いていないんですか?」

 

「そういう話は全く」

 

「そうだったんですね。ここに居る時はそうでもないんですけど、かなりワガママなんですよ。」

 

ワガママなのは時々そう言うような感じはする。

 

「強引に天上に連れていかれたりしませんよね…?」

 

「流石にそこまではないと思いますよ。いくら天人でもそんなことは。」

 

そんなことをされたら、この店が廃れてしまう。

 

「…もしかしたらありえますね。」

 

なんとも…有りえてほしくないんだが…

 

「まぁ、天子様次第ですから。」

 

それを言って全てうやむやにされるのは一番やりづらい、

 

「まぁ、そうなりますよね。」

 

いつもより多くパンを買って、御機嫌ようと言って帰っていった。

今日は客が少ない、

今日ばかりはパンが売れ残りそうだ。

いや、いい時間だから今日はもう店を閉めよう。

 

そうして、店を片付けて座って休憩していると居眠りしてしまった

 

ふと、意識が戻る。

そして彼女が頭に浮かぶ。

 

そして考える。 

何か声が聞こえるが、体がまだ起きていないのかよく聞き取れない。

 

「し、愁也!

わ、私と付き合いなさい!」

 

いつからだろうか

 

「ね、寝てるの?」

 

何故僕は、天子さんと

 

「起きて私の話を聞きなさい!」

 

関わるようになったのだろうか。

 

「ねぇ!起きてよ!」

 

やっとその声で目が覚めた、

瞼が開いて、目線が彼女と合う。

その瞬間、また気がよぎって

まともでいられなくなる。

 

「今日も、来たんですね」

 

「も、もちろんよ、毎日来るって言ったじゃない!」

 

「今日はどんなパンが食べたいですか?」

 

 

………

 

 

き、今日は…

今日はパンはいらない!

私は貴方が欲しいの!

 

えっ?

 

私はあなたが好きなの!

だ…だから、

私と付き合いなさい!

 

天子さん…

 

だ、ダメ…かしら…

ごめんなさい!

 

待って、まだ僕は返事を言ってません

 

……うん…

 

天子さん、僕もあなたのことが好きです。

 

ふぇっ…?

 

だから、泣かないでください。

僕もいつからか気にしていましたし。

毎日来てくれてすごく嬉しかったです。

 

ほ、ほんと?

 

ええ、ほんとです。

 

なら、私と付き合ってもらえるの…?

 

…残念ですが…僕はここを離れることはできません。天上に行くことはできませんから、

 

ふぇ…えっ…

 

…でも泣かないでください。

僕はここから離れないですから。いつでも逢いに来てください。

いつまでも待ってますから。

 

う、うん!

 

忘れないでください。

私もあなたが好きです。

 




読了ありがとうございました

恋文はとても書くのに苦労します…

でも書き終えたの達成感その他諸々はとても良いですね!

それではまた会えたら会いましょう。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

色付く出会い

どうも夢子です。

バレンタインなんて知らない(すっとぼけ)

チョコは貰いましたある人がみんなに配ってたらしいんでそれを、

今回も恋話。
なかなかいいものです

では、ごゆっくり


 

 

 

幻想郷からかなり離れた所に街があり、外の世界と変わりないくらい発展している。

 

人によってはここが外の世界じゃないかって思う人もいるらしい、

 

そんな街の端の住宅街に私は住んでいる。

 

幻想郷の鬼や神様とこの街の建築家が、私の家を建ててくれたのだが…

それがなかなか良い家になっている。

 

モダンな風勢に暖炉、二階建てに個室多め。

 

一人で過ごすには大きすぎる家だが、まぁ悪くはない。

 

人の暮らしをする半妖の私には贅沢というものだろう。

 

そんなある日に

私の家にある少女が、いや、ある妖怪が棲み着いた。

 

黒いワンピースで背中に赤と青のよくわからないものが付いている。

 

「ここ、あんたの家なの?」

 

「あぁ、そうだ。」

 

ふーん、そっか

 

そう言ってまた暖炉の椅子に座っている。

 

普段なら私がその椅子で読書しているのだが…

 

「君の名前は?」

 

「さぁ?なんだろーねぇ」

 

教えてくれないようだ。

 

多分だが、

この妖怪は幻想郷から来たのだろう

近場というか街でもこの妖怪は見たことがない、

 

この妖怪はほぼ毎日私の家にいる。

 

あるときはカーペットに化け、

あるときは時計に化け、

ある日は2階の扉に化けた、この時は騙されて、顔を壁にぶつけてしまった。

してやられたと思った時にはこの妖怪は私を見てクスクスと笑う。

まあ、そうでなきゃそんなことしないか。

 

椅子に化けた時もあった。

この時も騙されて座ってしまったが

流石に重さに耐えれなかったのかすぐに音を上げていた。

 

「うう…やっぱ椅子になんかなるんじゃなかった…」

 

そう言うなら元から化けるな。

 

この妖怪の少女には、やられてばかりではない。

もちろん、この家にいる以上、私を怒らせては叱る。

 

反省はするようだ。

正直に謝りもするし、素直な心はあるらしい。

もちろん反発もしてくる。

 

ある日のことだ、

 

私がある理由でこの少女を強く叱った。

いや。叱りすぎたというのが正しいだろう。

当然のことだが、この妖怪少女も反発をしたのだが、それも度が過ぎた。

三叉槍のようなものを取り出して投げつけてきたのだ。

 

腕で受けたが。

その事実が効いたのか

この少女は、しまった…という顔をして膝から崩れ泣き始めてしまった

 

「起きてしまったこと、やってしまったことはもう戻らない。泣くな、」

 

「ごめんなさい…」

 

どうやら深く反省をしているようだ。表情からわかる。

というか、泣いてて尚反発するようなら余程な豪気だろう。

 

その後の少女の行動があまりにも驚くものだった

 

恐らく罪悪感に耐えれなかったのだろう、泣きながら家を飛び出してしまった。

 

追いかけるように私も家を飛び出したが…なかなか見つからない。

ひたすら探し回った。

 

そして、近くで少女のものらしい悲鳴が聞こえた。

 

声の場所に行くと

街でも悪名名高い【三馬鹿】と先ほどの妖怪少女がいた。

 

二人に羽交い締めにされ一人は下半身がモロ出しになっている。

 

やばい…このままでは!

 

仮にも半妖だ、人の数倍の力はある。

風を切る勢いで走って、

その場に駆けつけた。

 

「おい!そこの三馬鹿!」

 

ひっ、と三人は一斉に尻もちをつく。

 

身軽になった途端、少女は私の後ろに行き、身を隠した。

 

「い、いつもの馬鹿力の!」

 

一番背の高い小僧の

逃げろ!

という掛け声で烏天狗のような速度で去っていった

 

「大丈夫か。怖かったろ」

 

「うん…うん……」

 

相当怖かったのだろう、まだ小刻みに震えている。

当たり前だろう、あんなことされてまともで居られるわけがない。

 

しばらくは、私の袖を掴んで怯えていた。

家に着くなりいつもの椅子に座って、俯いていた。

 

次の日のことだ、

久々に走ったからか、

ひどく疲れて椅子で居眠りをしたまま寝ていた。

 

扉を叩く音に起こされて。目が覚め、少女もこの音で起きたようだ。

 

扉を開けると見覚えのある顔が5つある

 

「どうしました?」

 

「うちの息子たちがご迷惑を掛けたようで…」

 

寝ぼけていてよくわからなかったから、取り敢えず家に上がって貰った、

それはいいんだが、入るなりいきなり三指ついて土下座をしてくる

 

「昨日うちの子たちが神谷さんの娘さんにご迷惑を掛けたようです」

 

「「申し訳ありませんでした、」」

 

口を揃えて言う

 

二度寝していた少女が声に驚いて起きて、私の後ろに隠れた。

そうくっつくな何もしてこないさ

 

どうやら、昨日の三馬鹿のことらしい。

そりゃ謝るのもわからなくないが、人間はここまでするのか、

 

「顔を上げてください。起きてしまったことは変えようが無いですから。」

 

そうしてしばらく彼らの謝罪が続いた。

話によれば、あの三馬鹿は少年担当警察ではなく、普通の警察に捕まり、法で裁かれることとなったそうだ。まぁたくさんの悪事と迷惑行為を繰り返していたからな。そうもなる

そのうちの二人は自宅謹慎、もう一人は刑が軽くなったのか謹慎処分にはならなかった、理由としては二人から暴力脅迫等いじめを受けていたから、つまりこいつも一応被害者だ。

まだ署内謹慎で事情聴取されてるらしい。まぁ後に家にきて謝りに来るのだろう

 

親たちが帰ったあと、少女が私にくっついて話しかけてきた。

 

「神谷っていうんだ。」

 

「ん?あぁ、ここでは神谷幸春って呼ばれてる、まぁ、本当の名前は違うけどもう忘れた」

 

親からは名前をつけてもらったことはない。その知り合いからもらった名前は嫌だったから忘れた、

 

心を開いたのか、

少女の方も名前を教えてくれた。

 

「私はぬえ、封獣ぬえ。」

 

命蓮寺にいたと言われるあの妖怪か。

 

「どうしてここに来ようと思ったんだ?」

 

「んー、なんかつまんなかったからさ。」

 

「面白い事はあったか?」

 

つまらなくはなかったかな、

そう言って椅子に座って暖炉を眺めて黙ってしまった。

 

まぁ、私も一人の頃に比べればつまらなくなかった。

むしろ楽しいくらいだ。

 

色があっていい日々だ

しかし、ここにもつまらなくなったらまたどこかにフラフラといなくなってしまうのだろう、そうなれば、また元の生活だ。

 

「しばらくは、ここにいようかな。」

 

少女がそう呟いた。

 

「命蓮寺はいいのか?」

 

「まぁ、遊びに行ってるようなものだし。あそこにいて用事があったわけでもないから」

 

「そうか、」

 

この少女がいて悪い気はしない、

恐らく、ぬえも私と共にいて悪い気はしていないのだろう。

 

なら釣り合いが取れている、

このまま仲良く平和に過ごすのがいいのだろう、

 

「まぁ、あんたのこと少しは好きになったかな。」

 

「少し、なんだな」

 

唐突な告白だ

まぁ、嬉しいものだ。

なにせ人間の下心満載の告白しかされたことがないものだから。

こういう幻想的な場面での告白はいいものだ、

 

まぁ、こういう生活も悪くない。

 

 

次の日のことだ、

 

朝起きるとぬえがいない。

探そうと思ったが、気配を感じないものだから、いないと確信して。

また前のように一人で朝を過ごしていた。

 

起きて一時間程経った頃だろう。

ドアをノックする音が聞こえて、扉をあける。

郵便だった。誰が?恐らく三馬鹿の内の…とまぁ、予想はしていたが。

大きく外れるとは思ってもみなかった。

 

受け取りサインをして、

大きな箱を床に置く。

郵便物を眺めながらコーヒーを飲む。

 

ふと何かを感じた。

 

物々しさでも圧力でもない。

郵便物ではありえない、気配を感じた。

 

テープをカッターではなく指で丁寧に剥がす、

それからある程度距離をとって、中の生き物に話しかける。

 

「もう出てきていいぞ。」

 

箱から出てきたのはぬえだった。

 

「今日あんた誕生日でしょ。」

 

そんなことも知ってたのか、

確かに生まれた日にちぐらいは覚えている、教えたことはないんだが。

恐らくカレンダーを見たのだろう。

 

「誕生日プレゼントは…私!どう!驚いた?」

 

「あぁ、凄くいい誕生日プレゼントだ、もちろん受け取るよ。」

 

驚きはしなかったが。

どちらかといえば誕生日云々のことに驚いたと言っておいた、

 

不服そうな顔が見えたから、頭を撫でて。満足そうな顔が見えるまで可愛がった。

そうか、これが恋愛ってやつなのか

 

なかなか、悪くない。

いや、とても良いものだ。




小説を考えれる程度の能力が付きました

嬉しい限りです。

ちなみに去年は誕生日プレゼントは兄から東方ゲームを買っていただいたのみです。

ではまた会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

再開と実り

どうも夢子です。

書くペースなんて無いようなもの

旅って何でしょうね?(哲学)
論理的なものはよくわからないです(無能)


ではごゆっくり


大鷹の妖怪である俺は旅をしていた。

 

数年ぶりに妖怪の山に向かっている。

懐かしい。烏天狗まだ記者をやっているだろうか、鬼はまだ現役か、守谷の神様たちは元気だろうか。

そんなことを考えていた。

 

しかし、ふとした瞬間、

翼に痛みが走る…

どうやら、地上の人間に猟銃か何かで撃たれたか…

 

 うぐっ…

 

山の上空まで逃げてきたが飛ぶ力ももうない。

低めの木に留まったが力尽きてしまい落ちてしまった。

 

落下した時に体中を強打したせいか。どんどん意識が薄れていく。

朦朧としていて意識を失う直前、誰かが私に話し掛けて来ていたのはかすかに覚えていた。

 

 

気がつくと

目の前には天井が広がっている。

 

「ここは…」

 

「目が覚めたんですね、怪我は大丈夫ですか。」

 

「大きな怪我はないようだが、翼がね…」

 

撃たれた傷跡は残るだろうか…

 

「その新聞は文屋のか?」

 

「そうですよ。知ってるんですね」

 

「あぁ、散々使わされたよ。」

 

「文さんとは知り合いなんですね」

 

「結構古い知り合いだ。」

 

 もーみーじー!

 いますかー!

 

なんて噂をすればってやつか

 

 ガチャ、

 

「文さん、新聞読みましたよ」

 

「椛ぐらいですよー、まともに読んでくれるのは、ってあれ?」

 

「久しぶりだな」

 

「懐かしいですねぇ。元気してましたか?」

 

「この通りの怪我だ」

 

「そうですかそうですか。怪我は大丈夫なんです?」

 

「問題ない、一月もすればすぐ良くなる。」

 

「オオタカさんいつもそう言ってますよねぇ。すぐ治る怪我でも」

 

「オオタカって名前なんですか。」

 

「そういや助けてもらってい自己紹介も無しじゃ失礼だったな。

大刻好先(おおこくよしさき)っていう」

 

「それで、大刻のオオとタカを合せてオオタカさんなんですよ。」

 

「あだ名にしてはシンプルだ」

 

「いやぁ、まさかまた会えるとは思いもしませんでした、また文々。で働いてもらえませんかね?」

 

「旅から帰ってきて早々それか。また事故が起こってほしくないから勘弁だよ」

 

「事故?なにがあったんです?」

 

「こいつが棚からものを取ろうとして足場の台から足滑らせて落ちた時にな。少し顔が合っちまってな。」

 

「あ~なるほど。」

 

「あれって、狙ってたんじゃないんですか?確かに足を滑らしたのは本当ですけど。近くにいたのはあなたですし」

 

「書類整理してただけだ。特に意図はないぞ、」

 

「ふーんそうだったんですね。」

 

「なんだそのつまんなそうな顔は。」

 

「てっきり私はそういうことだと思ってましたから。」

 

「その気はないんだがな。」

 

「漫才みたいな会話ありがとうございました。元気そうですから私は山のパトロールの続きしてきますね。」

 

「行ってらっしゃーい」

 

「すまないな。わざわざ、」

 

「それじゃ」

 

 バタン…

 

「あっ。名前聞いてなかった。」

 

「彼女は犬走椛、白狼天狗ですよ」

 

あの椛さんか、名前は聞いたことがある。

 

「そんなことより。」

 

「なんかあったか?」

 

「ほんとに何もないんですか?」

 

「なにか言いたげだな。」

 

「私はあの時の事故は事故だとは思ってないんです。」

 

「そうなのか」

 

「あなたって意外にも鈍感なんですね。あれが事故だったとしても、私はその前からあなたが気になって仕方なかったんですよ?」

 

「それなら、あの時のはお前にとっては事故ではなかったんだな」

 

「あのこともありましたから。おかげで片時も忘れられなくなりました。

ずっと待ってたんです。帰ってくるのを」

 

「そんなことも知らずに飛び出しちまったんだな…」

 

「椛にもあなたのことは話したんですけどね、あなたがいなくなってから私に元気がないのを見通してましたから。彼女には相談やらなんやら世話になりましたよ。」

 

「椛さんは部下なんだっけか。」

 

「ええ、まぁそうです。椛にはバレバレでしたよ。仕事もまともに手につきませんでしたし、元気も出ないですし。気がつけば泣いてましたから。いろいろとらしくない自分になってました」

 

「悪いことをした気分になるな、すまなかったな。当時も結構悪態ついたこと多かったと思うんだが。」

 

「いいですよ。そんな一言でも話が出来て嬉しかったですから。」

 

「俺はあの頃はお前を嫌ってたもんだから、」

 

「あやや、そうだったんですね。」

 

「今になってそんな話を聞くとどうも自分勝手な俺が馬鹿らしく思えてくる。」

 

「そんな風に思わないでください。私の片想いってだけですから」

 

「あの時はお前を嫌ってたとは言っても。いないと寂しいのはあったのかもな。」

 

「そういえばオオタカさんって結構無口でしたよね。久しぶりとはいえ変わりましたね」

 

「あぁ、数年もここにいなかったからな。」

 

「また旅に出るんですか?」

 

「怪我のこともあるし。歩くのは好きじゃないからな。ここに留まる。お前を悲しませたくないのもあるし」

 

「それなら…私と一緒にいてもらえませんか。」

 

「旅に出てから文のことを気にしていたのは、あったからな。」

 

「そう、なんですか?」

 

「まぁ…そりゃ一緒に暮らして一緒に働いてってしてたら、気にもするさ、だから、なんだ、俺からもよろしく頼むよ。」

 

「…はい!」

 

 

 

 

 

はたての呟き

 

うぅ…

記者としてだけでなく、女としても先を越されてしまった…

 

私にもきっといい出会いが!

…なんてないわね…多分…

 




一月ほど家を空ければ旅になりますかね?
まぁ、そんなことする気は無いですけど。

それではまた会えたら会いましょう。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

人と妖怪

どうも悠樹です。

長め?になりました。
今回も恋物語ですよ。
もう前書きなんてなくてもいい気が…


ではごゆっくり!


山小屋に住むようになったのはいつ頃からだっただろうか。

 

俺は小屋の持ち主ではない

居候だの同居だの同棲だの。

まぁ好きに言えばいい。

 

持ち主は犬走椛、白狼天狗だ。

訳あって彼女に頼み込まれてここに住むことになった。

 

元は。人里の鍛冶屋だったのだが。

 

ある事があってここに住まうことになった

 

…………………

 

「ふ〜。やっぱり休みの日には水浴びするのは気持ちいいです。」

 

「さて休みの日とはいえ、鍛錬は欠かせないですから。早く戻って、って…あっ…」

 

「す、すまない。取り込み中だったようだな。俺は帰るよ。」

 

「まてまてまてまて!」

 

あ~…捕まったよ…メンドイ

 

「わ、私の裸を…見たな!み、見たんだな!」

 

えぇまぁ見ましたとも。

目に写ったんだ

 

「無かったことにしよう。それで解決だ。」

 

「それでは気は済まない!、お前、剣を持ってるな。」

 

「これか?ただの護身用の飾りなんだが。」

 

「そんな事はどうでもいい、私と戦え!」

 

こりゃ、ご乱心だな…

 

「えぇ…釣りに来ただけなんだが…」

 

「拒否権はない!早く構えろ!」

 

「あなたは早く服を着てくれ」

 

「そ、そんなことはわかってる…」

 

 

「それで?勝ったらなにがあるんだ?」

 

「そ、そのまま見逃す。」

 

「負けたら?」

 

「殺す!絶対殺す!私の裸を見た刑に処す!人間なんて関係あるものか!」

 

お〜…相当ご乱心…

 

「仕方ない…か」

 

居合なんてひさしぶりだからうまくいきそうにない。

 

………

 

…それからなぜかあっさりと勝ってしまって、見逃してもらえることになった。

 

「ふぅ…これで、いいか。」

 

「敵わなかった…うぅ……わかった。見逃す…」

 

 

 

それはいいんだが次の日の朝だよ

面倒なことになった。

 

「さて、炉の火をおこさないと。」

 

 コンッコンッ。

 

ん?こんな朝早くに誰だ。

 

「どなたですか?」

 

見覚えがある…というか人里の人間じゃないということに驚き

 

「先日私と手合わせした人間で間違いないだろうか…」

 

「あ~。あの川辺で」

 

「そう!それで、謝罪とか…いろいろとあって。」

 

なんと言うか、律儀なもんだ

 

「まぁ入って。」

 

 

「先日は申し訳ない。私は犬走椛。白狼天狗で山の警備とかを仕事にしている。」

 

白狼?天狗?まぁいいか。

 

「俺は上矢頼家(かみやらいか)この通り鍛冶屋だ。」

 

「だから、あんなに質のいい剣を持っていたのか」

 

「正直アレは鈍らだ。キレるもんじゃない。」

 

「それを使って私に勝つのだから剣術も…一体誰に教えてもらったのだ?」

 

「鍛冶も剣術も独学だ。」

 

誰かに教えてもらおうとか思ったことないしな。

 

「独学でそこまで…私とは大違いだ」

 

「まさか妖怪に殺されかけるとは思わなかったよ。まぁ、山に行く時点で覚悟はしてたけどな」

 

「うう…それは…私の気が気じゃなかったから…」

 

そりゃ、あの場面で裸見られたら誰でも乱心するわ

 

「まぁ、あれはね。」

 

「それで…お願いがあるのだが…」

 

お願い?また面倒なことになるのか

 

「なんだ?お願いって」

 

「実はあれからずっと気になって仕方なくって。」

 

ん、なんだ?

 

「その…あなたの…嫁にさせてもらえないだろうか…」

 

「……は?」

 

「嫌ならいいんだ、諦めるのははっきり諦める…」

 

 

そんな残念そうに涙目で俯かれて、断れるか?

天然なのか誘ってるのか…

困った…

 

「すまん、急に言われてもなぁ」

 

「もちろん、少しづつでもいいんだ。無理にとは言わないし。」

 

仕方ねぇか…あの時は。一応俺も悪くないわけじゃないしな

 

「まぁ、里にも飽きてきているし、山で鍛冶ができないわけじゃないしな。」

 

「ということは、いいのか?」

 

「まぁ、同居なら、」

 

「あ。ありがとう。」

 

 

………………

 

 

椛が住んでいるという小屋に引っ越す、そしてその小屋の隣に鍛冶屋を建てた。

鬼と神様に頼んで作ってもらっただけはある。立派な作りをしている。

 

「しばらく世話になる。よろしく頼むな。」

 

「部屋は私の隣の客間が空いてるからそこを使ってほしい。」

 

「わかった。」

 

 

 

朝起きては椛を起こし。特訓に行く椛を見送り、鍛冶をする。夕頃には止め椛が帰ってきてから。夕食をとって、読書やら娯楽を楽しんでから寝る。

 

もちろん話もする、食事の際は二人で食事を楽しみ、その言葉の通り。普段の生活だ。

 

特別変わりはない、強いて言うなら同居人が妖怪ということだけだ。

それもあまり気にはしない。

 

「それじゃ行ってくる、」

 

「おう。気をつけろよ。」

 

椛を見送って、さぁ鍛冶をするか。と思ったのだが、今日はどうも体の調子がおかしいような気がする

朝食に何か悪いものでも食ったか。

いや、至って普通の食事だった。

 

「今日は、いいか。」

 

そう思って、今日一日はのんびりと過ごした、読書のたまにストレッチ、ストレッチに疲れて昼寝。そういう一日だった。

 

しかし。やはり体調は良くなかったらしい。

 

昼寝から目が覚めると、身体が熱い、目眩がする。思い通りに体が動かない。

 

リビングにあたる部屋の椅子で寝ていたからか。疲れが取れていない感じもする。

 

そのせいでしばらく動けなかった。

 

扉が開いて椛が帰ってきた。

 

「ただいま帰った。珍しく今日は早くっ…ど、どうした!」

 

「あぁ…風邪引いたみたいだ…」

 

「風邪?よくわからないがとりあえずベットまで連れて行けばいいか?。」

 

「あぁ…助かるよ」

 

これは困ったな…

 

「風邪…ど、どうすれば…?」

 

もーみーじー。遊びに来ましたよー!

 

「文さんならなにか知ってるかもしれない」

 

そうだといいんだが…

 

「あ、文さん。ちょっと助けてください。」

 

「ん?何かありましたか?」

 

「上矢さんが病気なんだが。風邪ってどうすればいいのかわからないんだ。」

 

「上矢ってあぁ、人間の、風邪はアレですよ。人里に売ってる風邪薬があればなんとでもなりますよ。」

 

「風邪薬か。ありがとう!すぐもらってくる!」

 

「まったまった、こっちに来た時の荷物になかったんですか?」

 

「あるかも。聞いてみよう。」

 

こりゃたまげた…また妖怪か…

 

「ほうほう、あなたが上矢さんですか。」

 

「そうだ。で、何かあったか。」

 

「風邪薬ってありますか?」

 

「あるはず。そこの鞄に入ってないか?」

 

「これですかね?」

 

「それだ。食事の後に飲むから。置いておいてくれ。」

 

「わ、わかった。」

 

「あ、夕飯ご一緒させてもらいますね。」

 

「ちゃっかりしてるんだな」

 

「そりゃもちろん食事代浮きますし?椛がわなわなしながら看病する姿もみてみたいですし?」

 

「相変わらずいい趣味してる…」

 

「椛、上矢さんの夕飯は別のものを用意するんですよ」

 

「え?なんで?」

 

「風邪引きにはお粥がいいんですよ。風邪を知らないってことはお粥も知らないんでしょ?」

 

「お、お粥くらい!つ、作れる…と、思う…」

 

「私も手伝いますから。ほら三人分の夕食の用意しますよ。」

 

「ほんとに食べてくのか…」

 

………

 

 

いいにおいがしてきた…

腹は減ってないが…食わなきゃ薬が効かない…

 

「お、お粥を持ってきた…」

 

「なんでそんなに恥ずかしそうにしてるんだ。」

 

「風邪引きの病人には看病する人が食べさせて上げるんだって、文さんが…」

 

おいおい…すごいなこりゃ…

 

「ま、まぁ俺はそうしてもらったほうが楽ではあるが…お前は夕飯があるだろう?」

 

「まだ作ってる最中で、文さんに代わってもらってるんだ。」

 

「そ、そうか、それじゃ、頼むよ。」

 

「わ、わかった。」

 

 

 

「はぁー!いいですねぇ〜!この構図!見ててすっごい面白いですよ!」

 

 

………

 

く、口を開けてくれ。

 

お、おう。

…あつ!あっつ!

 

だ、大丈夫か!

 

ちょ、み、水!

 

こ、これ!

 

あぁ…火傷するかと思った…

 

す、すまない。

 

まぁ、作りたてはこうなるか…

 

つぎ、大丈夫か?

 

冷ましてから頼む…

 

あ、あぁ、

 

ふーふー

いいか?

 

あぁ

うん。旨いな。

 

そうか!良かった…

 

犬走が作ったのか?

 

あぁ、教えてもらいながらだが、

 

でも旨い。ありがとう。

 

そ、そんなうまくは作れてなかったと思うんだが…そう言ってもらえると嬉しいよ。

 

 

 

………

 

「もみじー!イチャイチャタイム終わりましたかー?」

 

「イチャイチャはしてない!」

 

「へぇー?そうですかー?」

 

ほんといい趣味してるな…

 

「さて、私達も夕食にしましょう」

 

「あぁ、そうだな。それじゃ、行ってくるよ」

 

……

 

 

 …ガチャ…

 

「上矢、調子はどうだ?」

 

「あぁ、さっきよりかはマシになった。」

 

「すまない…私がしっかりしないばかりに…」

 

「いいんだよ。風邪に気づかなかった俺が悪い。」

 

「その…なんだ…私は、上矢を…頼家を助けたくて、」

 

「あぁ。ありがとう。薬も飲んだから明日か明後日には良くなるよ。」

 

「…すまない…私もまだまだだな…」

 

「何かあったのか?」

 

「何でもない…」

 

様子がおかしいというか。何か悩みでもあるようだが…

 

「言いたいことは言ってくれよ、」

 

「あぁ。わかってるよ…私は寝るよ。おやすみ」

 

「あぁ。おやすみ。」

 

 

 

………

 

 

 

「椛を起こしに行かないと…あぁ…まだ体がだるいな…」

 

「もう起きてるよ、」

 

「早いな。いつも起こしてたのに。」

 

「頼家は無理しない方が。」

 

「まぁ、そうだな。」

 

「少しだけ出てくる。今日は私は休むように言ってくる、」

 

「いいのか?」

 

「病人を放っておけない。私も心配してしまうからな。」

 

「わざわざ有り難うな、」

 

「それじゃ、行ってくるよ」

 

 

まさかとは思ったが風邪引くとはなぁ…慣れない環境だからか

 

まだ眠たい…というか体がだるい…

もう一眠りするか。

 

 

 

………

 

よく寝た…

すっかり、とまではいかないが良くなって来た気がする。

 

「おはよう。頼家。」

 

「あぁ。おはよう」

 

………

 

 

なぁ頼家

 

なんだ?

 

私は…頼家の邪魔になってるのだろうか…

 

どうしたんだ?

 

昨日文さんと話をして…いろいろと怒られたんだ。

 

何を言われた?

 

人間と向き合うのに。人間のことを知らないのでは頼りないと。勢いでアタックしたとしても迷惑になりかねないって。

 

それで?

 

私は…私は頼家のパートナーとしてふさわしくないんじゃないかって…

 

…お前はそれでいいのか?

 

私は!…私は頼家と一緒に居たい!…一緒にいたいんだが…でも…

 

泣くな。迷う気持ちもわかる。

俺だって悩んでるさ。

 

そうなのか…?

 

あぁ、椛は妖怪で、俺は人間だ。

俺にやれることは何がある?

妖怪と比べて体は脆くてひ弱だ。この通り病気にもなる。当然力もない。

そんな人間が妖怪の為に何ができるのか。わかりもしなかった。

 

そんな…

今までたくさん助けられてるのに。

 

お互いに助けあっていた。

それが気づけなかったんだ。

俺もお前も。

 

でも今こうやって話し合ってやっとわかった。

私は…頼家が…す、好きだ。

 

あぁ、俺もだ。

だから、椛、

 

は、はい。

 

俺と一緒にいてくれるか?

 

私も、あなたと一緒に居たい。

 

 

ありがとう

これからも…よろしく頼む。




少しずつ本文を伸ばしていけたらなぁ(願望)

のんびりした雑談もそろそろ書こうかな


ではまた会えたら会いましょう。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

離れて知ること

どうも夢子です

のんびりを書こうと思っても恋物語になってしまった。
まぁいっか


ではごゆっくり


「あのー…」

 

「なによ。」

 

「そろそろ機嫌なおしてくださいよ…」

 

「ふん。」

 

この男は私の事が好きらしい。

でも、私はこの男を好いているわけじゃない。

もう5年ほど付き合いがあるが、私は普段から誰かと居たいとは思っていない

でも、家に来たからといって追い返す訳でもない

 

「悪かったって。」

 

「謝って済むなら怒ってないわよ」

 

この男は私のカップを割った。

このカップはかなり前から使っている。何年前かは忘れた。

 

「新しいの買って送ったじゃないか。」

 

「そうね、同じ模様の全く同じ物をね。」

 

「なにか足りなかったか?足りないものがあるならなんとかするけど。」

 

「ないわよ。」

 

嫌いでもないが

何故だが好かない。気にいらない、

 

「はぁ、一体いつになったら答えをくれるんだい?」

 

「さぁ、いつでしょうね。」

 

「まだ怒ってる?」

 

「そうね。怒ってはないけど機嫌が良いわけではないわ。」

 

「お茶、おかわり入れてこようか」

 

「頼んだわ、」

 

お茶なんて人形に頼めば何でもいつでも…

そう、人形を使えばこんな男いつでも消せるけど、何かそれをする気にもなれない。

 

無関心かと言われれば

そういうわけでもない。

 

単純に何故か気にいらない。

 

「今日はもう日が落ちるから、帰るよ。」

 

「そう。」

 

「じゃあ、また今度」

 

帰るときは惜しみなく帰る。

全く…何なのかしら。

 

そう、それで次の日ももちろん来た。

 

「アリス、いる?」

 

「勝手に開けなさい。」

 

「おじゃまするね。」

 

もてなす訳でもない、追い返す訳でもない。ただ、私は、人形を作っているだけ。

 

なのにこの男は私のために何から何までやっている。

 

それも、私が何も見返りを用意していなくても…

 

「アリス。」

 

「なに?」

 

「今日も返事をくれないのかい?」

 

「別に私は貴方の事好きじゃないもの。」

 

「そ、そうか。」

 

告白されてもう3年。この男は…もう23になるかしら、

私にとって3年は短い時間だけど。

この男の3年は、人間の3年間はとてもではないか長い。

 

「貴方はなぜ私が好きなのかしら。」

 

「好きなものは好きなんだよ。理由は考えたことはないが、キミとここに居たいと思って。」

 

「ふーん、それだけ?」

 

「あぁ、そうだけど。」

 

理由なんてない。好きなものは好き。

尤もらしい答えだけど。

 

「別に私が答えを出さなくったって、あなたは毎日私の家に来ているじゃない。」

 

「そ、そうなんだけど。」

 

「私は、あなたに興味はないわ。そう言っているでしょう?」

 

「そ、そうだね。」

 

机に座って俯いて。何か考えている、それからはずっと悲しそうにしていた。

 

「まぁ、そんな顔してちゃ、誰にも好かれないわよ。」

 

「まぁ、そうだね。」

 

立ち直ったのか、諦めたのか。

表情が一転した。

だけど、その変化にあまり気にはならなかった。

 

「アリス。君と居れて楽しかったよ。」

 

この唐突な感謝には少し耳が傾いた。

 

「なによ、いきなり。」

 

「こうやって話してて、君はどう思っているかわからないけど。僕は楽しかった。」

 

「一つ一つが過去形だけど。」

 

「まぁ、気にしないでいい。」

 

「そう。」

 

「また今度来るよ。」

 

日も真上にある昼間に帰っていった。

 

それから。次の日もその次も家には来なくなった。

 

私は、また人形にいろいろと命令しながら普通に過ごしていた。

 

それはあの男のいない色のない生活

 

あの男は何かと私に尽くした。

それは私の生活に色を残したが、多分…灰色に近いかっただろう。

だが、私はあの男に何もしなかった。

 

なぜ私が、あの男に…

縁も何もないのに。

ずっとそう思っていた

 

せめて3年間私に尽くしたその行動に感謝の意を示そうとは思った。

 

だがやはり、いつまでも彼は来なかった。

 

10日待っても、ひと月待っても

 

どこに行ったのだろうか。

 

探してみるが、見つかるわけでもない。

 

人里に住んでいると聞いたことがあって行ってみたが数日も宿を空けていると宿主が言った。

 

彼は何をしているのだろうか。

 

行く宛も見当たらないからとりあえず家に帰る。

 

だが、やはり私の家にもいない。

 

巫女の神社にも、魔理沙の家にも、妖怪の山の各所にも。どこにもいない、

 

もちろん迷いの竹林で彷徨っているわけでもないようだった。永琳と妹紅が見かけなかったなら、恐らくいないだろう。

 

彼が居ないこの現実がつまらなく、華がなく、色がない。

 

そのことがどれだけ私を苦しめているのだろうか、

 

彼が恋しい。

 

いつの間にか、そう思うようになっていた。

 

彼は私に尽くした。3年も尽くして、恐らくそれ以降も尽くすつもりだったのだろう。

 

でも私は…彼に何もしなかった。

そのことが悔しいのか、申し訳ないと言うのか。

 

とても悲しく虚しくなっていた。

 

日をまたぎ、彼のいない昼になると。何故か…涙が流れる。

 

こんなにも他人に興味を、いや彼を想うのは初めてだった。

 

もう一度会いたい、会って感謝と謝罪と、それと彼の願う日を取り戻したい。

 

私は、馬鹿だった。

もう二度と彼と会えないのだろうか。

 

そうずっと思うしか、私は、考えれなかった。

 

 

ある日、ドアのノックが聞こえた。

 

「アリスーいるかー?」

 

魔理沙だ。

 

「ええ、いるわ。」

 

「入るぜー。」

 

家に入っては勝手にお菓子を食べ、お茶を飲み、私に話しかける。

 

「そういやお前、最近元気ないな。」

 

魔理沙の取る行動のそれが、私に彼を思い出させていた、

思わずまた涙が流れ出す。

 

「おいおい、いきなりどうしたんだよ。」

 

「何でもない、わ」

 

「ふーん。そんなふうには見えないけどなぁ。」

 

「気にしなくていいわ。」

 

気にしなくていい。

 

そう言って彼は来なくなった。

興味がないなんて言ったから?

好きじゃないなんてはっきり言ったから?

 

私は、彼の心も傷付けていたかもしれない。

 

「どうしたんだよ、アリス。」

 

「魔理沙。」

 

「なんだ?」

 

「自分が好きだと思っている人から、興味がないなんて言われたら、どう思うかしら、」

 

「そりゃ、悲しくもなるし、辛いだろうよ。」

 

「そうよね…」

 

「なんかあったのか?」

 

「私は、3年前に人間に告白されて。その男は、彼はずっと私に尽くしたの。」

 

「ほぉ、男がアリスの家を出入りしてたのか。」

 

「私は好かなかったし、興味もなかったけど、無視はせずにいた。」

 

「へぇ、無視しなかったのか」

 

「でもそれが逆に、彼を傷付けてしまったのかもしれなくて。」

 

「それでその男はここに来なくなったと。」

 

「うん…」

 

「恋心はよくわからなくてな。すまないなアリス。」

 

「そう…」

 

「でも、そうやって思うならもう一度会えた時に全部伝えたらいいんじゃないか?そのほうが私はいいと思うぜ」

 

「わかっているのだけど、どこを探しても居ないのよ。」

 

「まさか、もうどこにも?」

 

「そんなことは願いたくはないけど…」

 

「まぁ、頑張れアリス。」

 

そう言って魔理沙は帰ってしまった。

 

私はまた彼を探した。

 

すると。今度は彼を見つけれた。

 

人里の外を歩いているところに近づいた

 

でも私は彼になんて話しかければいいか。

 

名前を呼んで。それからなんて言えばいいか。

 

何もわからなかった。

 

彼は一言だけ

 

「やあ、アリス今から君の家に行こうと思って。」

 

私の家に?

 

「そう。」

 

これしか言えない。他に言葉が出てこない

 

「どうしたんだい。いつもなら無関心そうな顔でいるのに。」

 

わざわざ探しておいて無関心でいるわけがない。

 

「うちに来るのよね。」

 

「あぁ、そうだよ。」

 

「先に帰って待ってるわ。」

 

本当なら今すぐにでも、全部伝えたい。でも心の準備ができていない。

 

飛んで家に帰ってお茶を用意した。

人形にさせたのではなく自分で。

 

彼が好きだったクッキーも用意して。ただひたすら彼を待った。

 

昼頃、彼は私の家に来た

 

「おじゃまするね」

 

「いらっしゃい」

 

「えっ?」

 

「何か?」

 

どう告白すればいいかわからない

 

「い、いや、」

 

「お茶とお菓子があるから。」

 

「あぁ、ありがとう」

 

しばらく沈黙が続いた。私も彼も話はしなかった。私は、話しかけるのがどうしても怖かった。

 

声を出したのは彼からだった。

 

「アリス。」

 

「何かしら」

 

「今日は、やけに優しいね。」

 

自然と言葉が出てきた

 

「貴方が3年間も私の家に来て何から何までしていたから。そのお礼よ。」

 

「そうか。ありがとう。」

 

よくわからないままだった。

 

「つまらなかったわ。」

 

「何が?」

 

「あなたがいないと、色がないというか。暇だったのよ。」

 

「そ、そうか。」

 

「あと、貴方には悪いことをしてしまったかもしれない。」

 

「悪いこと?」

 

「興味がないなんて言って、ずっと無視して。あなたを傷付けて。」

 

「待ってアリス。」

 

「なに?」

 

「僕がアリスが好きなのは変わらないよ。でもアリスは僕に居場所をくれた。それだけで十分だったんだよ。一緒に居たいなんて欲を吐いた僕が悪かったんだ。」

 

そんな…

 

「そんなことはない!」

 

勢い強く出てしまった

 

「そ、そんなことはないわ…」

 

「どうしたんだい?」

 

もう伝える、全部伝えたい。

 

「私は貴方に感謝してる。それと謝りたい。」

 

「う、うん。」

 

「3年間私に向き合ってくれたこと、私の為に色々やってくれたことも。それなのに私は貴方に意も表さずただ無関心だったこと!全部私が答えを出さなかった。どうにも思わなかったのはどうしてもあなたが無視できなかったから!」

 

「アリス。」

 

「だから…」

 

…彼と居たい…

 

「これからも私と…一緒に居てほしいの。」

 

「本当…に?」

 

「うん。」

 

「わかった。ありがとう、アリス」

 

「私こそ今までありがとう。」

 

 

それから私は彼と一緒に過ごした。

片時も離れることなく五年は過ぎただろう。

魔法使いの私には彼の人生は短いものだが。彼にとって私との人生は長いだろう。

 

私は出来る限り彼と共にいて彼に尽くして、そうすることに決めた。

 

 

少しだけ彼に質問してみた

 

「なんで私の家に来なかった時期があったの?」

 

「アリスがどうしても忘れられなかったけど。もう僕のことが嫌いだったのなら、と思って本気で考えていて。どうしても顔を出せなかったんだ。」

 

嫌いにはならない。嫌いになんかならなかった。、嫌いになんかなれなかった

 

「ずっとあなたの事考えてたわ。恋しかったもの。」

 

「そうだったんだね。」

 

私は彼と逢えて良かったと

そう思うようになった

 

「ありがとう、アリス。」

 




まぁ、こんなもんなのかな。

では、また会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

月の使者を護る者

どうも悠樹です。

暇を見つけて投稿、
なんてことは可能でした。
もう2話先まで内容は決まってるんだよなぁ…

ではごゆっくり


 

幻想郷に来るのも久々だな

 

「あら、久しぶりね」

 

「紫か、久しぶり」

 

「また来たのね、」

 

「やっぱりここが一番平和的でいいよ。」

 

「そう。それは良かったわ、」

 

幻想郷には幾つか恩がある。と言っても俺がそう思っているだけなんだけど、

 

空間を裂いて道を創り次元と時空を超えていろんな世界を旅をする俺は、いつからか様々な名前で呼ばれるようになった。そのせいか自分の本名を忘れてしまった

 

唯一覚えている、いや気に入った名前が

 

【カイト】

 

幻想郷の住人がつけてくれた名前だ。

誰の発案かは知らないが。この名前を俺の名前とすることとした。

 

他にも紫さんや霊夢、吸血鬼姉妹他にも散々手厚く追い返し挨拶を貰ったよ。

 

当時来たばかりの頃は暇で暇で仕方なかったから。歓迎されてないのはわかっていたが。何かと手合わせばかりで楽しかった、と言っておこう。

 

流石に霊夢には敵いそうになかったが、魔理沙他はそう大したことはなかった。かな。

もちろん冷ややかしい時はあった

 

この世界には寄ることが多い。

さっき言った通りこの国は平和だからな。

 

「最近何か異変は起きたか?」

 

「そうね。霊夢の神社が乗っ取られそうになったり、幽霊船が出たりかしら、」

 

「相変わらずなにか起きるんだな」

 

「そうね。それでも平和というあなたの考えがよくわからないわ。」

 

「他の世界と違って、ここは何かあっても誰かが死んだりはしないからね、」

 

「それもそうね」

 

「前いた世界は戦争で灰になった国がたくさんあったし」

 

「物騒なものね。外の世界は」

 

「そういうもんさ、文明や文化、技術が進むといつかはそうなる。」

 

「じゃあ、この幻想郷もかしら。」

 

「さぁ?霊夢や君がいるから大丈夫だと思うけど。」

 

「どうなるかしらね。」

 

幾つも亡くなった国を見た、

その度世界を弔うように去っている。

 

ここは本当に平和だ。

 

「あなた暇かしら?」

 

「そうだね、しばらくは幻想郷にいるつもりだし暇だよ」

 

「なら、月に行かないかしら?」

 

「月に?あんな何もない所に行ってどうするんだい?」

 

「月の裏側には、月の都があって最近いろいろとあってよく顔を合わせるのよ。」

 

「へぇ、そりゃ珍しい。月に都があるなんて、なにか土産でも持っていくか。日本のお酒とか」

 

「まさか、お酒で酔い潰して落とすつもりじゃないでしょうね?」

 

「まさかね、俺にはそんな芸当無理だよ。」

 

「あら、そうは思わないわよ?」

 

「そうか?」

 

「まぁ、行くなら明日行きましょうか。」

 

「明日か、わかった。」

 

 

それから、日本のお酒とお茶、それから銘菓と言われるものを幾つか用意した。

のは良いんだが…月の住人の口に合うだろうか?

 

 

………

 

 

「相変わらずですね。」

 

「ここは静かね。」

 

「違いますよ、また桃ばかり食べて。」

 

「美味しいんだもん。」

 

「…太りますよ?」

 

「最近は玉兎達と訓練してるから…」

 

「とか言いながらお菓子食べてるんでしょ?」

 

「バレてた?」

 

「お菓子の袋を度々見つけますよ。」

 

「あちゃー。」

 

「豊姫様はともかく、玉兎達はサボらせないでください。」

 

「休憩よ、休憩」

 

「は、はぁ、」

 

「それより、またお客さんね。」

 

「ええ。また来たんですね。」

 

「あら、気づかれてたのね。」

 

「珍しく男がいるじゃない。どうしたのかしら?気でも迷った?」

 

「彼は違うわ、いろんな世界を旅する浪人よ。」

 

「いろんな世界を旅、ですか」

 

「どうも、カイトと言います。以後よろしく。」

 

「まぁ、立ち話も何だから、」

 

「そうね。」

 

「私は霊夢に呼ばれてるから、後で来るわね」

 

「連れて来ておいて放置ですか、まぁいいですけど」

 

「カイトさんだと言ったが、その袋の中身は?」

 

「これが何かあったか?」

 

「危険物を持ち込まれたら困る、一応確認を取っておきたい。」

 

「あぁ、お菓子とお酒だよ。」

 

「あら、お菓子を持ってきてくれたのね。ありがたいわ、」

 

「豊姫様、あまり食べ過ぎも良くないですよ。また体重計に乗って叫ぶなんてしないでくださいね。」

 

「だ、大丈夫よ、多分。」

 

「しっかりしてますね。」

 

「この姉ありのこの妹よ。」

 

「姉妹ですか。」

 

「これでも姉妹で月の使者のリーダーをやっているのよ。」

 

「豊姫様にはもっとしっかりしてもらいたいです…」

 

「やるときはやるのよ?」

 

「まぁ、風格のある姉に、真面目な妹と言ったとこですね。」

 

「あら、そう言ってもらえると嬉しいわね。」

 

「真面目なのが普通だと思うのは私だけなのか…」

 

「まぁ、真面目でしっかりしているのはいいことだよ」

 

少し歩いたところで月の都という所に着いた。なるほど、これは確かに都だな。文明的にも技術的にもすごいものだ。

 

「あっ、おかえりなさい!依姫様、豊姫様!」

 

「ただいまレイセン、お客さんが来ているから、お茶を出して頂戴。」

 

「わかりました!」

 

「あっ、ちょっと待った。」

 

「どうかした?」

 

「お茶ならいらない。自分で持ってきたのがあるから。」

 

「あら、そう?」

 

「えっと、ならお二人の分だけでいいんですか?」

「そうね。お願いね」

 

「あの子が玉兎?」

 

「ちょっと変わっているけど、まぁそうね、」

 

「それは?」

 

「さっき言ったお茶だよ。麦茶って言うんだ」

 

「紅茶やレモンティーとかなら聞いたことあるけど、初めて聞くわね。」

 

「後で一杯飲みますか?」

 

「甘いのはあまり…」

 

「あぁ、これは甘くないですよ。むしろ健康に気にする人はよく飲むものだな。」

 

「なら、少しだけ」

 

「お茶持ってきました、」

 

「ありがとう、下がっててね。」

 

「はい、」

 

「彼女もしっかりしてるんだね。」

 

「私達のペットだからね。」

「ペットねぇ。」

 

「それで、お菓子ってどんなもの?」

 

「せんべいに饅頭だよ。」

 

「わざわざ有り難う」

 

お酒ももう出そうかと思ったのだが。

 

「なら、私はその麦茶を」

 

「あぁ、どうぞ」

 

「粒あんはやっぱり美味しいわ」

 

「あっさりしてて、癖もない、美味しいお茶ですね。」

 

それから、お茶にお酒とお菓子を口にしながら話をしていた。

 

主に月の住人の普段の話とか、俺の旅の話だったんだが。

他人に旅の話を深く話すのは初めてかも知れない。

 

おそらく二時間ぐらい話し込んでいただろう、豊姫の方は酔いに負けたのか寝てしまっている。

 

私もそれに気づかず話を続けていた。依姫が目も逸らさずずっと聞くものだから。少し熱が入ってしまった。

 

のだが、少し依姫の怒りも買ってしまったようだ

 

「それで、幻想郷についたのか」

 

「あぁ、幻想郷は戦争も紛争もないからな、比較的平和だな、」

 

「月面戦争を知らないからそう言う…」

 

「まぁ、内面的なものはよく知らないからな。」

 

「あなたは…ただの遊び人なんだから。」

 

「まぁ、そうだな。」

 

「私達と比べれば、いつも堕落しているようなもの。豊姫様はこれでも私よりもできる人だから」

 

「すまないな、なにも無い抜け殻みたいなやつで。俺は何もできないやつさ。」

 

「そうやって逃げるように言う…」

 

「遊び人はそういうもんさ」

 

「何かを護ったり、責任感を持ったことはないのか?」

 

「…その果てをいくつも見てきたからな、」

 

「嘘だ!そんな見ただけの真実で何がわかる!」

 

「依姫、そこまでにしなさい。」

いつから起きてたんだよ…

 

「すいません、豊姫様。」

 

「謝るのは私じゃないわ」

 

「す、すまなかった…」

 

「気にするな、慣れてるもんさ」

 

「今日は終わりにしましょうか。」

 

「そうだな。俺ももう話すネタがない」

 

「静かの海まで行こう。そこなら幻想郷への道も作りやすいだろう」

 

「ここよりかは幾分も楽ね」

 

「私が送りに行きます」

 

「頼んだわ」

 

 

都を出て沈黙したまま静かの海まで着いた、

 

俺もだが依姫も少し度が過ぎたからか反省をしているようだ。

 

「最後の最後にすまなかった…」

 

「久々の酒で歯止めが効かないのもあったからな、俺もすまなかった、」

 

「良ければまた来てほしい。今度はこちらがお酒を出す。」

 

「歓迎してくれているのか?」

 

「それもあるけどお詫び」

 

「ありがとうな」

 

「あと、嫌いじゃない。」

 

「ん?」

 

「な!何でもない!」

 

「あぁ、それじゃ、また来るよ」

 

、、、、

 

「あら、解散しちゃったのね。」

 

「遅いですよ紫さん。」

 

「あんた。随分久しぶりじゃない」

 

「霊夢はまたサボってんのか?」

 

「言い方悪いわね、掃除も終わったから休憩してるのよ。」

 

「にしては、よくせんべいばっかりに手が伸びてるな。どっかの姉妹の姉か」

 

「どっかの姉妹って誰よ」

 

「月の住人の 」

 

「あんた。月に行ってきたの?」

 

「私が招待したのよ。まぁ、誰かさんに呼ばれたから置き去りにしちゃったのだけど。」

 

「ふーん。」

 

「悪いと思ってないだろ」

 

「当たり前じゃない、別にあんた、誰に襲われても対して怖くないでしょ」

 

「まぁね。」

 

「また、来て欲しいなんて歓迎してもらってるし。襲われることなんてないけどな。」

 

「気にいられてるのね。」

 

「いろいろとあってね、」

 

「次行く時は私も連れて行きなさい。」

 

「今度ね。」

 

「それじゃ、俺はこの辺で。またな」

 

人里の宿を借りてとりあえず2日、3日ほど過ごした、まだしばらくは世話になるだろうと思う。

 

それで、人里をぶらついていると、永遠亭の兎が話しかけてきた、

優曇華だったか?

 

「貴方がカイトかしら?」

 

「あぁ、そうだが。」

 

「永琳様がお呼びだから今日の夕方、永遠亭に来てちょうだい。」

 

永琳が自分で呼べばいいじゃないか…

 

「あぁ、わかった。」

 

 

とりあえず永遠亭に向かってみる。

相変わらず迷いの竹林は景色が変わらないな、まぁこういう景色は好きなのだが…

 

「お前、何しにここに来た。」

 

妹紅だ、背中の籠にたけのこがたくさん入っている。

 

「永琳に呼ばれたんだよ。」

 

「ふーん。」

 

「それじゃ、俺は行くよ」

 

「あぁ、」

 

特に何もなかった、いつもなら手合わせしようだなんだって食いついてくるんだが。今日はおとなしかったな。

 

 

「おい、来たぞ」

 

「カイトね、ちょっと待ちなさい。」

 

「なんか用事か?」

 

「月の都から手紙よ。」

 

「手紙か。」

 

 

また月に来たら飲んだり話したりしましょう

依姫がボヤいてることが多いからできるだけ早めにね。

あと、この前のお菓子も持ってきて頂戴ね。後麦茶も。

 

 

「お誘いですか。」

明日にでも行くか

 

「気にいられたようね。」

 

「まぁ月に行くなんて珍しいこと滅多にないですから。いいんですけどね。」

 

「二人をよろしく。」

 

「ええ、はい。」

 

日本に行ってまたお菓子などを買ってまた静かの海まで足を運んだ。

 

「道も覚えているし。自分で行くか。」

 

足音が聞こえる。

明らかに自分のものではない足音

 

「あなただったのね。」

 

豊姫の方だった

 

「あぁ、呼ばれたから来たんだ。また桃食べてるのか。」

 

「美味しいんだもん」

 

「依姫様の方は?」

 

「今日はタイミングが悪いわね。今日は依姫は玉兎の特訓で忙しいのよ。」

 

「そうなのか。」

 

「またあなたの話が聞きたいってずっと言ってたわ。」

 

「話のネタがないと言ったのだがな…」

 

「まぁいいじゃない」

 

とりあえず月の都まで向かう。

今回はレイセンも同席での、飲み会となったのだが、依姫は来なかった。

やはり、玉兎の特訓で忙しいらしい、

今日は来なさそうだ。

 

レイセンはお酒は飲まず、お茶を飲んでいたが。お菓子は容赦なく食べていた。

豊姫と取り合いをするかのように食べている。おい、、太るぞ?

 

「おかわりはないぞ?」

 

「ある分だけでも食べ切らないとね。」

 

「依姫様の前ではこういうお菓子は食べさせてもらえませんから。」

 

まぁ、気持ちはわからなくはないが…

 

「あなた達はお茶ばかりね。お酒は飲まないのかしら?」

 

「んー、今日はそんな気になれなんだよなぁ。」

 

「私は依姫様に止められているので飲めませんので。」

 

「ふーんそうなのね。」

 

結局この日は豊姫が酔い潰れて寝たので解散になった。片付けとかはレイセンがやってくれるってことで全て済んだ。

 

それで静かの海まで行って帰ろうとした時だ。

 

「来ていたんだな。」

 

「豊姫さんに呼ばれててね。」

 

「もう解散したのだろう。」

 

「ああ、豊姫さんが寝たからな。」

 

「もう帰るのか」

 

「まぁ、な」

 

「少しだけ話をしないか?」

 

「今からか?」

 

「飲んでないんだろう?」

 

「あぁ、まぁ俺はな。」

 

「なら丁度いい。」

 

「旅ネタはほとんど尽きたぞ。」

 

「旅のことじゃない。」

 

雑談ならまぁいいか

 

「まぁ、少しぐらいなら」

 

「ありがとう。」

 

「何かあったか?」

 

「来るなら来ると言ってくれれば良かったのに」

 

「豊姫が手紙を寄越したから。来たんだよ」

 

「そんなものいつ?」

 

「もらったのは昨日だったな。」

 

「昨日?」

 

「あぁ、永琳が月から手紙があるって言って呼ばれたんだ。」

 

「豊姫様は昨日はずっと寝てたはずだが…」

 

「そうねぇ、私は寝てたわ。」

 

「豊姫様。いらしたのですね。桃は控えてください。」

 

「美味しいんだもん。」

 

「ならあの手紙は?」

 

「永琳様がわざと用意したもの…」

 

「何か意味があったんじゃないかしら。」

 

「まぁ、なんでもいいだろ。」

 

「次はいつ来るんだ?」

 

「ちょっとゆっくりしてからまた来るわ」

 

「あぁ、お菓子もってまた来て頂戴ね」

 

「好きだな。それ。」

 

「だから、桃ばかり…」

 

「それじゃ。またな。」

 

、、、、、

 

 

 

「あら、おかえりなさい、何か用かしら?」

 

「手紙の意味を聞きに来た。」

 

「あぁ、あれのことね。」

 

「なんの意図があってあんなものを?」

 

「特に意味はない。と言ったら嘘になるけど。月の状態を聞きたかったから誰かを月に送ってと思ったのよ。」

 

「それで俺か」

 

「あなたあの姉妹から気にいられてるじゃない。」

 

「餌じゃねぇんだけどなあ。」

 

「月に行くなんて滅多にないことじゃないかしら?」

 

「そうだけど、まぁ」

 

「それで、どうだった?」

 

「あぁ、そうか。視察か?」

 

「そう。あの姉妹と月の都は」

 

「依姫は玉兎達の特訓とかしてたな。豊姫は相変わらずなのか知らないが桃を食ってた。月の都はよく知らん。良く発展した都市としか言えん」

 

「そう。わかったわ、ありがとう」

 

「何があって知りたかったんだ?」

 

「大した理由ではないわ。月がどんな感じなのか知りたいだけよ」

 

「行って確認すればいいだろ」

 

「それは嫌なのよね。」

 

「なんでだ?」

 

「スキマ妖怪には世話になるつもりはないわ」

 

「なるほどな」

 

「どうせあなたまた月に行くんでしょう?」

 

「まぁ、な」

 

「次行く時はお土産よろしく、」

 

「そんなもの気が向かなかったらねえよ」

 

「あら、冷たいのね」

 

「まぁ、気が向いたらだからな」

 

、、、、、

 

それからのこと。

月に行くことが多くなった。

それで少し問題が起きた

一部の玉兎には歓迎されてないのか。不穏な噂もあるらしく。それがついに姉妹に回ってきたのか疑いを持たれた。

 

呼び出しまで食らう始末だから。

相当良くないものなんだろう。

 

困ったものだ。

 

「カイト、と言ったかしら?」

 

「あぁ。どうかしたか。」

 

「あらぬ疑いだとは思うけど。レイセンから聞いたわ。」

 

「ああー、月の都の乗っ取り…だっけ?」

 

「私達は月の使者として本当なのか。嘘なのか調べなければならない」

 

「まぁ。そうなると思ったよ。」

 

「あなたに限ってないとは思うけど」

 

「できれば抵抗はしてもらいたくない。傷つけたくないから。」

 

「何もしないさ。」

 

「本当かしら?」

 

「俺はただあんたらと酒を飲んで話をして、そうしたいだけだ。」

 

「本当だな?」

 

「嘘を言ったことあるか?」

 

「それが初めての嘘かもしれないわよ?」

 

「言ってくれるねぇ…?」

 

「豊姫様…」

 

「私は疑いは持ち続けるわ。ここにいる限りは」

 

「豊姫様、それはもしや…」

 

「依姫、あなたも使者として疑われる者を容易に許してはならないわ。」

 

「ですが…」

 

「今日はそろそろ帰らせてもらおうかな。」

 

「そう。また今度ね」

 

「送っていくよ。」

 

、、、

 

「どうか気を落とさないでほしい。」

 

「何がだ?」

 

「疑いを持たれていることだ。」

 

「ああー、気にしちゃいないよ。」

 

「でも、最悪の場合、月に来れなくなるだろう?」

 

「依姫は豊姫が言ったことの意味がわからなかったのか?」

 

「私にはさっぱり。」

 

「次来ることにはもう疑いなんてないさ。」

 

「そんなことわからないだろう…」

 

「いや、きっと大丈夫さ」

 

「…わかった…」

 

…………

 

「さて、宿で休みに行きたいんだが」

 

「止まりなさい?あなたに聞くわ」

 

「豊姫様が地球にくるなんて珍しい。」

 

「茶化さないで。」

 

「嘘は言わない。今の俺が月の都を乗っ取る理由も必要も権利もない。それは、あんたが一番知ってるはずだ。」

 

「そうね。そんなこともさせないわ」

 

「なら何故疑う」

 

「あなたは何もしないのね?」

 

「そうだな。酒飲んで話してるだけだ。」

 

「気づいてるかしら?依姫の事を」

 

「何が言いたい。」

 

「まだなのね。気付いていないならいいわ。」

 

「なんのことだかさっぱり。」

 

「じゃあ、また今度会いましょう」

 

「お、おう。じゃあな。」

 

………

 

結局よくわからないまま、豊姫は帰って行った。疑われていないのは分かったが、何か気になる。

依姫が何かあったのだろうか。

そしてなぜ依姫の事を俺に聞くのか?

 

何か関係があるのだろうか

確認するためにまた今度。月に行かないと

 

………

 

以前の豊姫の発言が気になって仕方なく。

静かの海に

そこに着くと依姫が一人で居た

 

佇んでいるだけのようだが、

豊姫と一緒にいないのは珍しい

 

 

「どうした。豊姫様は?」

 

「都で桃を食べているか寝ているかですね。」

 

「相変わらずなんだな。」

 

「あなたは…本当に月の都を?」

 

「そんなわけ無いだろ」

 

「なら…」

 

「なら?」

 

「私…私と…一緒になってもらえないだろうか…」

 

「俺か?」

 

「豊姫様には。話をつけてあるんだ…」

 

「そうか…それで都をって言うことなのか」

 

「乗っ取らせはしない。ただ、私達と共に月を護ることなら…」

 

「あぁ、できるかもな」

 

「だから、」

 

「誤解を招くかもしれないぞ?」

 

「必ず話は終息させる。悪人になど、させない」

 

「ありがとうな。」

 

「月の都も賑やかになるな…」

 

「元から賑やかじゃないか。」

 

「あぁ、そうだな。」

 

「貴方も月に住むのね」

 

「豊姫様。」

 

「あぁ。しばらく世話になる」

 

「まさか、先に依姫に取られてしまったわ。」

 

「どういうことですか?」

 

「私もカイトを気にしてたり。なんて。」

 

「おいおい、人気者か…」

 

「私達と、月の都をよろしくね。」

 

二人を護り…都を護り…

 

「忙しくなるな。よろしく」

 

「よろしくお願いする。」

 




内容長くなったかな…?
その分雑談多めかと。

夜は活動できそう。
なので次が書き終わり次第また投稿していきます。

ではまた会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

人間を愛した恋われた妖怪の物語

どうも、夢子です、

今回はですね。
読めばわかりますよ、題名でわかりますよ
ある程度はね。
私の小説にしては珍しく「セリフ」が無いです

そしてものすごく短いです。

ではごゆっくり


妖怪の山。

濃い霧の掛かったある日

少年が山の森に迷い込んだ。

 

少年は何かを追いかけていた。

突然聞こえてくる水の音。

何もいないのに動く木々。

 

ひたすら目の前にいる見えない何かを追いかけていた。

 

走って開けた場所に出ると…

 

そこは崖だった。

立ち止まり崖下を見下げると…

 

青い服、緑の髪。蒼い瞳の少女の姿をした妖怪が、崖下の湖に飛び込んでいった。

湖に入った瞬間妖怪は見えなくなった。

 

もう一度一目見るため少年は崖を後にしようとした。

だが、その瞬間崖が崩れ。

湖に真っ逆さまに落ちた。

 

息ができず、ひたすら上に上にと藻掻く。

すると、突然手を引っ張られる。

 

さっきの妖怪が少年を湖の畔まで、引き上げた。

 

少年はその妖怪に、自分を助けたその妖怪に、

一目惚れをした。

 

少年は少しの間意識をなくし。妖怪は少年をおいて姿を消した、、

 

少年のかすかな意識には水の音が響いていた…

 

何日かたったある日。

 

また少年は山の森に現れた。

 

妖怪は、人を助けた。そのことを少し考え、今まで人間にされた行為を思い出し震えていた。数々の暴力を。暴言を。迫害を。

 

しかし。少年はそんな妖怪を見れど。何も言わず手を差し伸べた。

 

無邪気な笑顔を浮かべ、走り出す少年。

それにつられ妖怪も走り出す。

 

走った勢いで妖怪が頭に被っていた帽子が飛んでいくと綺麗な緑の髪が揺れた、

人にあまりみせない髪を。気兼ねなく揺らした。

人間にされた幾つもの愚行をいつの間にか忘れかけていた頃。

 

人間の大人たちが集まる場所に来てしまっていた。

 

大人たちは妖怪を目にした途端。罵詈雑言を繰り返し。石を投げ妖怪を追い払おうとする。

 

妖怪は怯え引き下がり、震える。

 

しかし、少年はかばった。

妖怪の目の前に立ち。全てを妖怪の代わりに受け止めた。逃げずにただ妖怪のために。

 

大人たちが消え去り。声も聞こえなくなる、その頃。少年は座りこんだ。

そして。妖怪はその少年に抱きついた。

 

そう、妖怪はこの少年に惚れた。

この少年に恋をしたのだ。

 

山の森に、幾度とくる少年は山で妖怪と過ごした。

無邪気に遊ぶ少年はいつしか妖怪を愛すようになった。

 

妖怪もこの少年の愛を受け止めた。

 

山の麓に、小屋がありその小屋で二人は一緒の時間を過ごした、

 

二年が経ち

 

五年が経ち

 

十年が経ち

ともに山を歩き

 

夜を共にし

 

二十年が経ち

 

散歩を楽しみ、

 

ともに暮らす喜びを分かち合い

 

三十年が経ち

 

四十年が経ち

 

人間は年を取り

 

妖怪はそれを不思議に思う。

 

六十年が経ち

 

人間は介護が必要となる、

 

八十年がたったある日

 

老人はついに、寝たきりとなった。

 

妖怪はいつまでもこの人間と共にいた。

変わらない愛を持ち続けた。

 

それなのに。もう人間はその愛に応えることもできなくなる。

 

妖怪は老人の隣に座り込み。

動けなくなったその姿を眺め。

悲しみがあふれだした。

 

そしてついに涙を流し始めた。

 

もう一度この人間と一緒に…そう強く願えど、過去に戻ることはできない。

そう願えば願うほど。一刻と時間は過ぎていき、離れていくことに気づいていく。

 

運命の時は…妖怪が創った古びた時計の針が三つ重なり合った時であった。

 

12時を迎え針が重なり合う瞬間。

妖怪が掴んでいた老人の手は力なく地に落ちた。

 

妖怪は恋われた日との別れを迎えた…

そしてそれは、恋した人間との別れを告げた。

妖怪はただひたすら、泣くことしかできなかった。

 

 

 

………………………………

 

 

古びた時計の音が鳴り響く白い部屋

その部屋には影が蠢くと言われている

そう、それは。

霧の中を探す夜 にとり 残された

人間を愛して恋われた妖怪

の影だろう。

 

 




約1400字でした

ものすごく短いです。
でも読んで感動して頂けたら感謝です。

あくまで、私の解釈で書きましたので。
それだけはご理解を。

ではまた会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

忘れぬ記憶

どうも悠樹です。

暇が多くて捗るぅぅ!

ではごゆっくり


俺は国立西江大学に通っている。

単なる大学生2年。笹浜幸助(ささはまこうすけ)だ。

 

と自己紹介なんてのはこれだけで十分だよな。

 

うちの大学に一人転校生が来た。

 

セミロングの髪に花の髪飾り。

背は低め。

清楚で綺麗で真面目な女性と言ったところだろう。

 

名前は…

 

 

「稗田阿求といいます。よろしくお願いします。」

 

というらしい。

 

大学生にしては少し幼い見た目のように感じるが…そんなのいくらでもいるから気にしない気にしない。

 

にしてもタイミングが悪い。

 

一週間後には定期試験で

国英数の筆記と聞取りがある。

 

それで忙しいのか。

皆挨拶を交わして稗田さんのことなど興味なしの様だ

大学生なんてサボってなんぼとか言うからだ。

 

もちろん俺は問題なく勉強して毎回合格点をとっている。抜かりはない。

 

何も知らされていないのか稗田さんは本を読んでいるものだから。少し声をかけてみる、

 

「稗田さん、と言うんですよね」

 

「はい。何か?」

 

「次の月曜日から定期試験があるんですが…それは知っていたりしますか?」

 

「えっと…初耳です」

 

おい教師…おまいらも仕事サボるなよ…

 

「それじゃ何も勉強してない…ですよね?」

 

「えっーと…そうです、ね」

 

「放課だと時間ないから夕方図書室で範囲とか教えれるけど…」

 

「はい。おねがいします。」

 

授業に入ると、真面目にノートをとっているようで。

居眠りも呆けている様子もない。

他とは違う。流石だな。

 

 

「おまえらー、来週から試験だからな。サボってないで勉強しろよー!それじゃ、解散」

 

声掛けするの遅いんだよなぁ…

 

「あの、試験のことで。」

 

「範囲教えるんだったね、図書室行こう。」

 

「はい、」

 

転校生と仲が良くなるなんて思ってはいないが。

でもいずれ困るであろう人を手助けするのは、誰かがやらないといけないからな。

 

案の定もうカップルなのかとか。

そういった声が聞こえるのは耳を閉じて放っておこう

 

 

「向こうの机が空いてるな、」

 

「本…たくさんありますね、」

 

「そりゃ、国立大学だからな。いろんな文献とかも集まるし。」

 

「今度読んでみます、今は試験範囲を、」

 

「あぁ、そうだったね。」

 

国英数の試験範囲。

そう広くはないが。広くないからこそ。詳しく深く出される。

下手したら、今回の試験で落第者は数人出るだろう。

 

範囲をひと仕切り教えて。

試験範囲の対策方法も教えて。

問題の解き方も教えた。

 

なかなか飲み込みが早いのか。案外すんなりと終わったが。

 

外は暗くなっている。

夕日ももう見えない。

 

 

「もう、こんなに暗く。早苗さん、心配してるかな…」

 

「送って行こうか。夜道は危ないし。」

 

「ありがとうございます。」

 

校内も所々にしか電気がついておらずそれなりに暗くなっている。

 

「夜の学校、か、」

 

「なんだか、ちょっと不気味ですね。」

 

「教師もいるし。幽霊とかが出るわけじゃないから。大丈夫、」

 

「妖怪とか。出てきたり?」

 

「ないない。」

 

そう言っているが。この大学。ある教室では鬼火が見れるという噂も流れている。

 

怖くはない。むしろ真暗な場所に色のついた炎なんて綺麗じゃないか。

 

そうこうしているうちに外に出た。

 

住宅街にぽつんと建てられたこの大学、

周囲は家ばかりで迷路状になっていて、下手したら迷子になる。

 

「目印がないとここは迷子になるから。」

 

「目印ですね…看板などの場所を覚えておけばいいでしょうか。」

 

「そうだね。それがいいかも。」

 

数分歩いた後。

やっとのことで稗田さんの家まで着いた。

 

「阿求さん!おかえりなさい!」

 

緑髪の女性が玄関先に立っている。母親にしては若いな…ホームステイとかいうやつか?

 

「すみません、少し勉強してて、それと迷子になってしまって。」

 

「特に何も起きてないですか?」

 

「はい。彼のおかげで、無事につくことができました。」

 

「有難う御座いました。あの、名前は…」

 

「笹浜幸助です。」

 

「笹浜さんですね。お時間も遅いですからあなたも気をつけてくださいね。」

 

「はい、わざわざ有り難うございます。」

 

二人が家に入っていくのを見届けて俺も家に帰った。

夜は好きだ。

暗いし涼しいし静かだし。

星も月も綺麗だからな

少し気が高揚しながらも家で予習をして寝た。

 

 

2日経ったその日の帰りに少し事件があった。

 

4年の先輩らしき人達だ。

何かを囲んでいるのを見かけたのだが、

 

その何かは稗田さんだった。

帰宅中に呼びとめ囲み遊びに無理やり誘うつもりなのだろう、

親譲りの正義感強い性格のせいか、それとも稗田さんとは顔馴染みだからか。

どちらでもいいが止めに入った。

 

「おい、なにしてんだ。」

 

あーん?だとか、

二年坊は引っ込めだとか言われてるが気にはしてない。

 

「無理矢理連れてくのは誘拐だぞ。嫌がってるんだ解放しろ。」

 

「年上になにさまのつもりだ!」

 

「正す人間は年齢なんか関係無い。」

 

そのセリフのあと掴みかかられた

顔に傷足や腕は打撲と、さんざん暴力を受けたが…

稗田さんは無事だ。

 

「あの、怪我を治すために家に、」

 

なにひとつ問題はない。

はずだったが。少々無理は出たかもしれない。

 

「大丈夫…だ、、よ」

 

倒れ込んでしまったか?

体が重く地面に叩きつけられた

意識が朦朧として目の前が暗くなる。

 

たかが暴力を受けただけなんだがな…

 

それからしばらくは記憶がない。

 

目が覚めた時には自室にいた。

よく覚えていないから普段通り過ごして寝た。

 

 

次の日だ。

 

俺の席にやたらと紙がはられている。

 

なんだ、弱者だの偽善者だのとガキの遊びのようなものだ、捨ててしまえ。

 

学校ついてから教師から呼び出しがあった、

 

どうやら稗田さんもらしく。

そこで思い出した。

 

昨日の暴力事件だろうか。

 

 

校長室まで向かっている途中、稗田さんと合流した。

 

 

校長に疑っている様子はなかった

 

「君たち、昨日4年生の一部と問題が起きたと聞くが。その傷は?その時のものかな?」

 

「待ってください、彼は何一つ悪くありません、暴力もしていません!」

 

「待て待て、君たちが被害者なのはわかっているから安心したまえ。」

 

「あいつらは?」

 

「暴力を振るうのは校則を破ること以上に厳しい処罰だ。一月自宅謹慎だよ。」

 

一月も謹慎処分か。

えげつないことするな。

 

「傷は大丈夫かね。無理はしない方がいい。試験も近いが、今日は休んでも構わないぞ。」

 

「大丈夫です。たかが傷や打撲ですから。」

 

「あの…」

 

「どうしたかな?」

 

「昨日のことで少し…」

 

「何か問題でも?」

 

「あの四年生たちは。いや、彼らは三年生だったんです。」

 

「どういうことかな。」

 

「校章バッチが色分けされているのはわかっていたんですが。何年を意味しているのかはよくわかっていなくて。」

 

つまり校章を盗んだもしくは借りた。か?

 

「四年生と校章を、取り替えていたと、言いたいのか?」

 

「はい、恐らく」

 

「そうなると。四年生側にも注意喚起が必要だね、」

 

あいつらには、もちろん校章を偽った罪も重なるわけだな。

 

「まぁ、とりあえず確認がしたかったから、良しとしよう。君たちはもう戻りなさい」

 

「「はい」」

 

教室に戻ると二人を囲むように集まられた。心配してくれているようだ。こう集まって心配されると何か恥ずかしいのだが…

 

「怪我は問題ない、大丈夫だ。」

 

そういうと。皆安心したのか自分の席に戻っていく。

 

その日の帰り。阿求さんと帰った。

怪我のことや昨日のことを心配してくれた。

 

これくらいどうということはない。

単なる傷だからな。

 

家につくと、阿求さんに家まで上がるように勧められた、

 

遠慮はしたが、どうしてもというので、仕方なく上がらせてもらった。

 

「笹浜さん、いらっしゃい。」

 

緑髪の女性が出迎えてくれた。

 

どうやら二人でこの家に住んでいるらしい。広くもない一軒家だが、二人で住むなら十分な広さだ。

 

わざわざケーキとお茶まで用意するなんて。律儀なものだと少し感動した。

 

結局試験勉強を少しして帰ることになった、

 

いろいろなことがあって、稗田さんとは縁があるようだ。

 

試験の日も一緒に帰っていた。

 

稗田さんと暮らす日は楽しく嬉しく思う日もあったと思う。

 

友人が増えて嬉しく思う以上に、稗田さん自体になにか感じていた。

 

試験から三日後の日のことだ。

 

教室に戻ると。稗田さんの席がなかった。

 

それだけでない。俺以外の皆が、稗田さんの事を忘れているのだ。

 

今までのことはすべて。幻だったのだろうか?

いや、そんなはずはない、鮮明に覚えている。

 

図書室で試験範囲を教えた。

帰り道を送って行った。

上級生に絡まれたのを助けた。

家に上がらせてもらったのも。

試験勉強をしたのも。

稗田さんと過ごした時間が楽しいと感じたことも…

 

一体どこに行ってしまったのか

ひたすらに校内を探し回った。

 

結局その日は稗田さんには会えなかった。

 

帰宅中。ふと思いだした、

きっと家にならいるはず!

 

そう思い走り出す。

その道のりを忘れてはいなかった。

 

しかし、家があった場所には小さな公園のような広場があった。

 

「なんでだ…?」

 

声が漏れた。

 

おかしい…俺だけが覚えていて。

でも、何一つ残っていない。

 

何が起きている?

 

俺は一体何をしているのだ…

 

ないものを探しているような気になった。

 

おとぎ話に出てくる間抜けなことをしている…

 

そうして、諦め家まで帰ることにした。

 

来た道を戻りはじめた、その瞬間、後ろから気配を感じ取り聞き覚えがある声が、聞こえた

 

「きっと、いえ、必ず奇跡は起きますよ」

 

緑髪の女性の声だ。

 

しかし。振り向いても公園のような広場には誰もおらず。その家もなかった。

 

 

「奇跡…か」

 

突然消えたものを考えながらも家で試験の復習をしていた。

 

だが、うまく集中ができない、、

 

稗田さんはどこに行ったのか。

 

それだけが気がかりでなにも手につかない。

 

もう一度でいいから消えていくなら、さよならが言いたかった。

 

そんな我儘を胸にしまい込んで、その日は終わった。

 

何日が経っても稗田さんを忘れることはなかった。

 

むしろ。稗田さんを忘れている人を不思議に思った。

 

そんなある日また異変が…異変?

 

変な表現が混じっている。

 

また転校生が来た。

 

でもそれは見覚えがあり、

顔見知りであり。

 

友人の姿だった。

 

名前は…

 

「稗田阿求といいます。よろしくお願いします」

 

というらしい。

 

不思議には思わなかった。

 

でも、稗田さんは俺に近寄った、、

 

そしてこう言う

 

「あなただけがわたしを覚えていた。そして。奇跡は起きるのです。目を覚ましてくださいね。」

 

稗田さんがそう話したその瞬間

目の前の景色が全てひねり曲がり。吸い込まれていくように消えて。

 

意識を失った。

 

目が覚めると、

 

また、見覚えがある

広くはない場所で目を開けた。

 

「起きましたか?」

 

聞き覚えのある声。

 

寝ていた?頭の下には膝があった。

膝枕。一体誰に…

 

顔を見上げると、そこには

 

稗田さんの綺麗な姿が目に写った。

 

「おはようございます。お疲れだったんですね。」

 

「夢か…」

 

そう言葉をこぼすと…

 

「夢じゃありませんよ。全て現実です。」

 

「どういうことなんだ?」

 

「申し訳ないですが、私はあなたを試してみました」

 

試されたのか…。

 

「でもあなたはずっと私を覚えていた、あなただけなんです。そのおかげで私はここにいることができるんです。」

 

「俺だけが覚えて…」

それなら。俺が忘れていたら、そのまま…

 

「誰にも覚えてもらえなかったらここには帰ってこなかったとおもいますから。ありがとう。」

 

「そうか、俺こそ、ありがとう。」

 

それから、俺は稗田さんと仲良くしている。

だが、大学の奴らはやはり稗田さんのことは覚えていなかった。

 

卒業までの間、俺は稗田さんと付き合ってもいた。友人として、恋人として。

 

でも、卒業を迎えると…

 

「悲しいですけど、私はそろそろ元の場所に帰らないといけないんです。」

 

「元の場所。俺が君を探していた時のようにまた消えるのか?」

 

「いえ、あなたが覚えている限りは消えはしません、ですが、会えなくなるという意味では、間違いではないですね」

 

「また会えるか?」

 

「はい、必ず会いに来ます。」

 

「わかった。」

 

まだ、側にいてもらいたいのは、抱きしめていたいほどだ、

だが、稗田さんには用事があるのだろう。

引き止めるわけには行かない。

 

きっと。本当にいつか会えると

信じている。

 

お互いにさようならを告げて

 

稗田さんが乗った電車をただ見えなくなるまで見つめた。

 

……………………

 

「阿求、おかえりなさい。」

 

「閻魔様、ただ今戻りました。」

 

「どうでした?一週間と三年間は。」

 

「とても素敵で素晴らしくて、恋しいです。」

 

「恋愛…ですか、」

 

「まさか、私を覚えてくれる人がいるなんて。」

 

「あなたの力が少し移ったのかもしれませんね」

 

「それなら。彼は私を忘れることなんてない、ですね。」

 

「いつでも会いに行くことは許しますよ。ただ、向こうに永く住むことだけは許可は出せません。」

 

「ありがとう。ございます。」

 

「ただ、頻度は控えてくださいね。」

 

 

……………………

 

 

何日が経っただろうか。

 

おそらく卒業後から一月だろう。

 

不覚にも会社には面接、筆記試験等で落ちてバイトとパート暮らしだ、レベルが高すぎたか…

 

そんなことを考えて。

ある人の再開をいつも待っていた

 

そして。夜帰宅中のことだ。

 

自転車で走っていると

一人歩いている女性を通り越した。

 

「あの姿は…」

 

服装に見覚えはないが。すぐに誰かわかった。

 

あの服装が似合う女性は一人しかいない。

 

足を止め降りて後ろを振り向く。

 

やはり彼女だった。

 

「幸助さん。お久しぶりですね。逢いに来ちゃいました。」

 

「お帰り。待ってたよ。稗田阿求、見たものを忘れない能力を持つ、転生を繰り返す少女。」

 

「やはり、私の能力が少し移っていたんですね。」

 

「君を探していた時、既にそうだったんだろうと思う。常人であれば忘れていた。」

 

「ふふ、そうかもしれませんね。」

 

「またこっちで暮らしていくのか?」

 

「2日か、3日ほどあなたの所でお世話になろうかと思っていたところですよ。」

 

「そうか、構わないよ。」

 

「ありがとう。」

 

 

……………………………………

 

俺は人ならざる者から力を貰った、

覚えたものを強く記憶する程度の能力を

 

そして。力をくれたのは

見たものを忘れない程度の能力を持つ

転生を繰り返す。稗田阿求だ。

 

彼女とは長く深い付き合いだ。

 




今回は長めでしたね。

書き終えて疲れた感が半端ないですよ。

だって前回のは、執筆時間30分でしたから。
4倍はありますよ?

では、また会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

悠樹@夢子の語り

前書きなんてない


ねぇ、、

 

ん?どうした?

 

気づいた?

 

何に?

 

本数はちょっとずれるけど。

もう30話目よ。

 

あぁ、たしかにそうだね。

 

そろそろ一区切りね。

 

そうだな。

 

「私は夢子」

 

「僕は悠樹」

 

悠樹@夢子

 

次の話は、どうするの?

 

決まってないね。

 

誰にするとか?

 

特に指定もないし。

なら、原点回帰もいいんじゃないかしら?

 

原点回帰ねぇ。

 

さぁ、執筆開始よ。

 

……………………………………

 

 

「あんた。ねぇあんた」

 

「悠希、です。」

 

「よし、悠希!酒持って来い!」

 

「霊夢さん?もう酔ってます?」

 

「いや?まだよ」

 

「おい霊夢、酒はまだか」

 

「まぁ焦らないで魔理沙、いまお使い頼んだから。」

 

「誰も頼まれたなんて…」

 

「いいから、持って来なさい。」

 

……

 

「これでいいんですか?」

 

「おおー、日本酒にビールか!気が利くぜ!」

 

「ニッポンの酒か!飲ませろー!」

 

「ちょ、萃香、ラッパ飲みはダメだってば。」

 

「はっはっは!萃香は大胆だなぁ」

 

(ちょっとカット)

 

(どうした?)

 

(まるで誰が誰かわからないじゃない)

 

(誰が誰かなんてのは読者が決めて楽しむために不鮮明にしてあるんだよ。)

 

(ふーん。わかったわ、続けて)

 

「相変わらず皆さん飲み食い激しいですね…みすちーさん。」

 

「私だって飲みたいですよ!でもおつまみ作らないといけないんですよ!」

 

「まぁ、そう怒らないで」

 

「あなたは飲まないんです?」

 

「あっ、妖夢さん来てたんですね。」

 

「幽々子様が、宴に行くわ、といって、ついて来ました。」

 

「僕は弱いですから、飲んだらすぐ寝てしまいますし。」

 

「そうなんですね。」

 

「妖夢さんも酔うと愚痴ばっかりですもんね。」

 

「まぁ…あの時は迷惑かけました…」

 

「いえいえ、いいんですよ。」

 

(ねぇ、)

 

(なんだ?、)

 

(雑談ばっかりじゃない、早く進展させなさいよ。)

 

(まぁ。そう焦らずに)

 

「そういえば悠希さんがこっちの宴会に来るなんてめったに無いですね。」

 

「人里の宴会は。毎回出されますけど、今日は霊夢さんに無理やり使いで呼ばれて…」

 

「あー…、そうなんですね」

 

「初めて会っていきなり私の使いになれなんて。いい迷惑ですよ。」

 

「それで、もうまともに話せないくらい酔ってますもんね」

 

「こうもなれば、さて…やっと手も空いたな」

 

「どこか行かれるんですか?」

 

「うーん。少し外の空気を吸ってきますよ、酒の匂いばかりでちょっとね。」

 

「私も行きますよ。みすちーは、どうします?」

 

「おつまみ作ってます…」

 

「そ、そっか。それじゃちょっと出てきますね、」

 

……………………

 

(懐かしいなこのシナリオの作り方)

 

(以前は誤字脱字が、ひどかったものね)

 

(最近はそう目立ったことはないけど、文章の作りに違和感があったり…)

 

(ほら、二人が出てきたわよ、)

 

(そうみたいだね)

 

「やっぱり宴って夜にやることが多いですよね。」

 

「それは、皆が夜のほうが集まりやすいからですよ。」

 

「妖夢さんは幽々子さんはよかったんです?」

 

「霊夢さんや紫さんと飲み話してますから。」

 

「そうなのか。」

 

「あなたこそ、使いで来てて放っておいていいのか」

 

「さぁ?呼ばれたらまた行きますよ。」

 

「そうか。」

 

「大変そうですよね。幽々子さんの相手をしながら、白玉楼でいろいろやってて。」

 

「楽しいですよ。まぁ、大変なときはありますけど。」

 

「特に幽々子さんが大食いするとき?」

 

「ええまぁ…はい」

 

「あの人よく食べれますよね。」

 

「ほんと…どうやってるんでしょう…」

 

「あっ、流れ星。」

 

「流れ星といえば願い事とか言いたくなりますよね、」

 

「願い事…ですか」

 

「何かありますか?そういうこととかって」

 

「そうですね…離れた家族が幸せでいてくれるなら、それで十分です。」

 

「離れた家族がいるんですか?」

 

「僕は元々、外の世界と呼ばれる所に居たんです。」

 

「そうだったんですね、」

 

「それで、事故で死にかけた所を紫さんに助けられて。」

 

「意外な事するんですね。あの人も」

 

「懐かしいな、皆元気かな…」

 

「また会いたいですか?」

 

「叶わぬ願いなんて。想うものじゃないですよ」

 

「でも、大切だと思いますよ、家族思いで良いと思います。」

 

「本当は家族からはあまりね…」

 

「あっ、えっと。」

 

「気にしないでください、まぁ、いろいろあっただけですから」

 

「それでも、家族の幸せを願うんですね」

 

「僕はもう死んでいたも同然でしたから、ならまだ生きているであろう親しい人達の幸せをね…、」

 

「優しいんですね。」

 

「人に悪態をつくのは苦手というか、好きじゃないですから。」

 

「性格。でしょうか」

 

「そう。だね」

 

「私はずっと、幽々子様と一緒にいますし…離れ離れは、やっぱり悲しいですよね」

 

「会いたいとは思いますよ、でも突然会ってどんな顔されるか。これが怖かったりはしますね。」

 

「もう、会えないと思っているでしょうね。」

 

「それでも、僕はここで生きていますから。」

 

「あなただって幸せのほうが…」

 

「それは、考えてないんですよ」

 

「なぜですか?」

 

「僕にはそういった事は縁遠い気がするんです」

 

「そんなことはないですよ。」

 

「なんでそう思うんですか?」

 

「家族は今離れていても、こうやって私や霊夢さんたちみたいに、皆さんがいるじゃないですか。」

 

「でも、人を遠ざけてばかりで…」

 

「それなら、私と話なんかしてませんよ?」

 

「そう……ですね。」

 

「こうやって、幽々子様意外と一対一で話をすることは滅多に無いので、私は良いと思いますよ。」

 

「こっちにきてから、人と話す機会は増えましたけど…」

 

「それなら。あなただって変わってきているんですよ。」

 

「変わる…か」

 

「あなたの事、少し気にかけてたりするんです。」

 

「僕のこと、ですか?」

 

「はい、いつも誰かの頼みごとばかりしていて。忙しそうですよね。」

 

「そう…かな、」

 

「ちゃんと休んでますか?」

 

「まぁ。たまには」

 

「誰からの頼みも受けて。辛くないですか?騙されたり。失敗して怒られたりするでしょう?」

 

「そうですね、まぁ、それでも、僕は僕に出来ることを探しているだけです」

 

「誰の為でも頑張ってるんですね、そうやって頑張っている姿は。素敵だと思いますよ、」

 

「えっと。はい、まぁ…」

 

「どうかしました?」

 

「なんと言うか、頑張ってるつもりはなくて、ただ。そうやって心配されたり褒めてもらったりというのが、初めてで、」

 

「一人で抱え込むのは良くないですよ。私も幽々子様のお相手は疲れますし」

 

「大変ですね」

 

「ですから、たまには、羽を広げてゆっくりしましょうよ。今みたいに」

 

「できたら。またゆっくりしたいです」

 

「できますよ、きっと、白玉楼だったら何時でも来てください、歓迎しますから。」

 

「はい。今度行きますね、」

 

「……そろそろ戻りましょうか」

 

「そうですね。」

 

「ただ……その前にですね」

 

「はい?」

 

「先ほどのお誘いも兼ねてなんですが…私で良ければ、ですが…その」

 

「あの。えっと。…」

 

「お付き合いというか…仲良くしてもらえませんか?」

 

「それって、えっと」

 

「さっき言った通り、気にしているというか…実は好きで…!」

 

「僕でよろしければ、」

 

「はい、、おねがいしますね」

 

………………………………………………

 

さて、こんな感じかな?

 

そうね、

 

【宴を好み嫌う主人公】

 

という懐かしい設定かしら

 

そうだね。

 

ただ、今回は主人公と東方キャラの恋愛物だっていう設定が、あるのかしら。

 

知っている人なら懐かしいも思ってくれるだろうね。

 

でもまたやるんでしょう?

 

たぶんね。

 

この私達もまた出てくる時があるのかしら?

 

それは、書いている本人次第だから、僕達ではどうしょうもないね。

 

そうね。また出してもらえるかしら

 

さぁ?どうだろうね?

 

そろそろ終わろうか、

 

そうね。

 

「僕は悠樹」

 

「私は夢子」

 

悠樹@夢子

 

これで話をすることはもうないだろう

 

 

 

 




後書きなんてないだろう

では、また会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

蛍の光の温もり

どうも悠樹です。

ちょっと?いや
悲しいお話です。
たまにはこんな感じなのも

では、ごゆっくり。


幻想郷には蛍を操る妖怪がいる

それは蛍の妖怪であり。

人の姿を持つ妖怪だった。

 

………………

 

 

迷いの竹林に、迷いこんだ一人の人間がいた。

 

ひたすら竹と竹の間をくぐり、出口を探そうとする。

 

…時分も遅くなり

日も沈み、暗くなる頃。

 

幾つもの蛍が人間の目の前に現れる。

 

人間はその蛍に導かれるように歩いた。

 

そして、人間は竹林の外に出る。

 

人間は散り散りに別れた蛍を眺め、そして帰路を進んだ。

 

 

、、、

 

ある日の出来事。

 

男が筍を採るために竹林にやって来た。

 

目的が目的だ。迷うはずがない。

それを知ったのか蛍はこの男のもとには現れはしない。

 

男も筍を背負い帰路へと足を運ばせた。

 

その帰路の途中。

 

一匹の蛍が目の前にふらふらと力なく現れた。

 

「あ。あなたは…」

 

人の身なりと同じ姿をした蛍、の声を聞き。そして…

 

「今度は私が助ける。」

 

男はそう言って、蛍を抱え、

帰路へ。

 

男は蛍を助けた。

 

そう、蛍が男を助けたように。

 

人の姿をした蛍は、人の温もりを覚えていた

その温もりに微睡みしばらく眠った。

 

夢が巡り…

 

人が現れる…

 

網に捕らえられる蛍たち。

人の手によってその蛍は籠に閉じこめられ。

早くに命を断った

 

そう。自然と籠の中とでは生きていられる時間は変わってくる。

 

蛍でいた頃の仲間の悲鳴で

 

「うぅ…」

 

体が小刻みに震える…

人に怯え人を恨み

そして人の姿を得た。

 

人に復讐を為すために。

 

しかし。

 

この蛍にはそれができなかった。

 

人の温もりを知り。

それを覚え。

それを必要としていたからだ。

 

人を助け。

人を恨んでいるからそこ

人を想っている。

 

夢が暗くなり…

 

目が覚め、目を開くと眩しい光が視界に差込んできた。

 

 

「な、眩しい…」

 

声をこぼすと。

隣には先程の男の姿があった。

 

「目が覚めたな。」

 

筍が煮える音、煮汁のような深い匂い。

 

食欲を唆るが、この蛍は目が覚めた後、男から離れ、身構える

 

男は不思議そうにそれを眺めそして声をかける、。

 

「元気そうで何よりだ。」

 

男は笑顔を零した

 

男が何もしないことを確認し、

蛍はその笑顔を信じ警戒を解いた。

 

この男を助けたように

この男は私を助けたのだから。

向かいに座り、非礼を詫びて、そして助けてもらった礼を伝える。

 

それを見届け。

男は蛍にこう告げた。

 

「ありがとう」

 

と。

 

礼を礼で返されてことに不思議に思った

 

だが、それも人の暖かさなのだと知り。それをよしとしようと思った。

 

そしてその日は

筍を煮た汁物を頂き、一晩泊まった。

 

人の優しさを知った

 

蛍が人を襲うことはなかった。

 

 

………

 

 

そして、この蛍の妖怪は

その男の家に時々現れるようになった。

 

男もはじめは驚いていた

 

だが、蛍は男に優しくしてもらったことを。

その優しさを形で返したいと思っていた。

 

蛍はこの男に尽くし。

出来る限り時間を共にした。

 

竹林の迷い人を案内することはやめはしなかったが、

 

時間さえ見つければ。というほど頻繁だった。

 

人間と妖怪ではどうしても差が出来てしまうが。

 

それもお互い気にかけないよう。

支えあって過ごしていた。

 

いつか愛し合うようになり、出逢った瞬間や共に過ごした時間を懐かしんだ、

 

蛍も男も、それが運命だと。

そう信じそれを良しとした。

 

しかし。運命はいつも良しとは過ぎていかない。

 

 

ある日、蛍が男の家に向かうと、扉に一枚の紙が貼ってあった。

 

 

迷いの竹林で君を待っている。

 

そう、書かれていた。

 

 

疑問に思う蛍の妖怪は。

 

蛍を繰り男を探した。

 

竹林の深くで再会すると。

 

男は…力なく座り込んでいた。

 

何も理解できないまま。

蛍は男に近づいていく。

 

男は蛍にこう告げた

 

「僕は君を愛している。だがそれ故にもう生きていくことはできなくなってしまった。」

 

その言葉を理解できず。

ただ意味もわからず悲しくなった。

 

何故?

何かいけなかったのだろうか…

 

そう思うしかなかった。

 

そして、男は…

 

「僕は昔…蛍を殺めていた…無邪気な心に身を任せて…」

 

その言葉を聞き終わる頃、蛍の妖怪の目からは涙が溢れていた。

 

愛していた人が、仲間を殺めていた

その事実が、恐ろしく悲しく恨めしく。

どうしようもなく、怖かった。

 

男は…蛍にお願いをした。

 

「どうか…君の手で僕を…」

 

蛍は涙を流しながら抗った。

 

仲間を殺めたのは許せない…

だが愛する存在を殺めはできない。

 

その一心だった。

 

葛藤と戦い、ひたすらに男を抱きしめ、男を想った。

 

「私にはできないよ…」

 

男も蛍も互いに別れを否とした。

 

だが…運命は…

 

二人を引き裂いた。

 

 

人間の周りに蛍が溢れていた

 

それは妖怪が繰ってはいない蛍。

 

妖怪は気づいた。

 

個々の蛍が男から生気を奪い取っていることを。

 

妖怪は涙を流しながら、蛍を繰ろうとする

 

しかし、蛍からは怒りと憎しみが溢れ出しており、繰ることは出来なくなっていた。

 

「嫌だ…別れたくないよ…」

 

「もう…僕は…」

 

蛍が繰れるようになった頃には、もう生気が僅かにしか残っていなかった。

 

蛍は決心した。

男の願い通り…最後は自分で。

 

「私は…本当はこんなことしなくはないよ…」

 

「でも…これでいいんだよ…」

 

蛍は男と口付け交わし。

蛍は男から最期の生気を奪った。

 

男は力なく倒れ込み。

亡くなった。

 

蛍はその体を抱きしめ。

ただひたすら、涙を流した。

 

 

…………………………

 

 

迷いの竹林に迷い人を案内する蛍の妖怪がいる。

 

その妖怪は人を恨み人を想い、

そして人を愛した。

 

その妖怪が人を襲うことはなく

 

人の優しさを蛍の光として振る舞っていた




はい、恋愛離別物語でした。

もう後書きなんていらないよね

ではまた会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

幸福の兎

どうも、夢子です。

最近ゲーセンの音ゲーにハマってしまった。
悪いとは思ってない


ではごゆっくり


「かなり歩いたな…まだか?」

 

迷いの竹林を歩く一人の男がいる。

 

永遠亭まで薬を貰いに来た人里の人間なのだが…

 

どうやら案の定、迷ってしまったらしい、

 

そんな男に幾つも災難が起きる。

 

ブンッ…バチンッ

 

「っ痛っ!」

 

男の頬に木の板が叩きつけられたり…

 

時には、わざとらしい竹の根に引っかかり転ぶ。

 

男は呆れるように立ち上がり

 

「次はないぞ!」

 

誰かに言い叫ぶように吠えたそれで、

 

竹林が一気にざわつき

 

男の後ろから人の影が現れる

 

「えっー。楽しかったのに」

 

「馬鹿。俺はいてぇんだよ」

 

「ごめんねーー。」

 

謝りながら因幡てゐが姿を現した

 

「棒読みで謝ってるように思えねぇんだが。」

 

「えぇー。まぁいいや。」

 

「何がいいんだよ…」

 

そうして。二人は永遠亭まで歩きはじめた。

 

「母さんがまだ良くならなくてな」

 

「ふーん、偉いね」

 

「大切な家族だ。守っていかないとな」

 

「大切ねぇ…」

 

そうこう話をするうちに永遠亭に着いた。

永琳に用事があって来たのだ

 

「あら、今日も来たのね。」

 

「普通の風邪薬でいいんで。」

 

「もう4日経つのに治らないのかしら?」

 

「薬効いてないんじゃない?」

 

「良くはなってる。熱は下がったんだ、もう少しだと思う。」

 

「そう、それは良かった。」

 

「早く良くなるといいねぇ」

 

「あぁ。」

 

男は薬を受け取ると永遠亭を後にした。

てゐは、次のいたずらは何にしてやろうか、なんて考えを浮かばせニヤニヤしていた。

 

すると永琳が困った顔をしながら話しはじめた。

 

「多分治らないわ…」

 

不思議に思うてゐは聞いた

 

「何が?、風邪?」

 

「病気でもなければ風邪でもない、彼の母親は…」

 

「え?でもまだ若くない?40ぐらいでしょ?」

 

「老衰とは言ってないわ。」

 

「まぁ、そりゃそうだけど。」

 

「多分…臓器に異常があるわね…」

 

「ありゃ…そりゃご愁傷」

 

「薬じゃ治らないわ、さっきの通り熱が下がるだけね。」

 

「治してあげないの?」

 

「本人が来ない限りはそのつもりはないわ。それに出張サービスなんて、する気ないもの」

 

「案外ひどいねぇ」

 

「勝手に言ってなさい」

 

そう言い二人は別々に歩きはじめた。

 

「大切…か、」

 

てゐは人里に向かった。

 

竹林を抜け、広い草原を歩き、人里に着いた。

 

人里には幾つがイタズラをして来たが今回だけは理由が違う。

 

「ちょっと会いにでも行ってみようかな」

 

見慣れた道を進み

見慣れた光景を眺め。

 

ひとつの家に着く。

 

てゐは呼び出しをしたが。反応はなかった。

どうやらまだ男は帰ってないようだ。

 

許可もなく、だが恐る恐る家に入る

 

「おじゃまするね」

 

すると家の奥で横たわる一人の女性がいる。

 

「おや…あなたは…」

 

てゐは女性の隣に座った

 

「いたずらっ子の因幡てゐ、って言えばわかるかな?」

 

「おやおや…幸福の兎さんに会えるなんて…私は幸せもんね…」

 

「病気…辛い?」

 

「いーえ…あなたに会えたし、いつも息子が側にいてくれて。なんともないわ」

 

「そう…」

 

「でもね…もうそろそろなのかもしれないわ…」

 

「えっ…?」

 

「すごく眠たくてね、力が入らなくてね。私は、ただの風邪じゃないって知ってたのよ。」

 

「なら、なんで…?」

 

「あの子に心配掛けさせたくなくてね。」

 

「じゃあ!アイツは…」

 

「頼んだわね…あの子のこと…」

 

それ以降てゐが話しかけてももう返事はなかった。

 

「そんな…いきなり…」

 

涙ぐんで、何もできない事を悔やんだ。

 

「私は幸せを、呼ぶって。そんなの…」

 

やりきれない思いが溢れそうで

その場をあとにして

ひたすら走って永遠亭までもどった、

 

途中、男に話しかけられたのにも気づかずに。

 

男は家に戻ると涙を流しながら母の名を呼んだという。

 

それから男は永遠亭に顔を出さなくなった。

 

てゐもいたずらはしなくなった

 

 

………………………………

 

永遠亭でてゐが餅つきを眺めていると。

永琳がてゐに話しかけた、

 

 

「あの日、最期を見届けたのね」

 

「…うん。」

 

「気を落としたって何も変わらないわよ。」

 

「それはわかってる…」

 

「男が気がかりかしら?、」

 

「それも…あるかな。」

 

「元気…とは言い切れないけど、里でしっかりしてたわ。」

 

「そっか、よかった。」

 

「納得出来なさそうね。」

 

「いや、べ、別に」

 

「ふふ、会いに行ってみたら?」

 

「…後で行ってくる。」

 

そう言うと、てゐも餅つきを始めた

 

「いたずらっ子は素直じゃないのね」

 

そう呟いて永琳はその場を離れた。

 

餅つきを終えた後、てゐは人里に向かった

 

日も落ちかけた夕方に永遠亭を出て、人里に着いたのは夜だった。

 

よく晴れた満月の綺麗な星空。

 

見慣れた人里の道

見慣れぬ夜景の人里

そんな場所をてゐは歩いていた

 

 

 

男が家に向かう途中。

男の後ろからひとつの影がついて来ていた

 

「てゐか。」

 

「よく気づいたね。」

 

「いたずらっ子は見慣れたよ」

 

「散々いたずらしたもんね」

 

「ありがとうな。」

 

「何が?」

 

「あの日。母さんの最期を見届けたんだろ?」

 

「うん。」

 

「母さん、幸せそうな顔しててな、」

 

「えっと…」

 

「お前がいてくれたから寂しくなかったんだろうな。」

 

「そんな…私は幸せを、呼ぶって、そんなの!…信じてないのに…」

 

「でも、俺もお前に逢えて幸せだぞ、」

 

そのことを言われて何も言えずただ立ち尽くしていた。

ひたすら涙を我慢をしていた

 

「どうした?」

 

「ごめん、えっと…」

 

何も言えず結局涙が流れはじめ。

男はてゐをそっと抱きしめる。

 

「お前も寂しかったんじゃないのか?」

 

「別に寂しくなんかない…と思う」

 

「そうか」

 

涙を流したまま、てゐは話し続けた。

 

「あんたは…消えたりしないよね」

 

「死ぬまでは、」

 

「私が好きになった人は、いつもどこか消えちゃって。離れられたり…事故で死んじゃったり…幸福なんて全部ウソなんだよ…」

 

「やっぱり寂しいだろ?」

 

「…うん、」

 

「それなら。幸福が嘘なんて言うな。お前だって幸せがいいだろ?」

 

「私は幸せなんて…」

 

「なら、俺が幸せにしてやるから。」

 

「えっ…えっと…」

 

「なにか言いたげだな?」

 

「私が側にいても…幸せ?」

 

「そうだな、幸福の兎なんて関係無しに、お前と居れたら嬉しいかな。」

 

「えっと…あんたのお母さんに頼まれたんだ、よろしくねって。」

 

「そうか…」

 

「だから、お願いされたからには、と思って。」

 

「でも、それだけじゃないんだろ?」

 

「うん…あんたを幸せに…したいかな」

 

「ありがとうな。」




短めのもののほうが書きやすい感はある。

でも長いもののほうが書ききった感がある

どちらも良い良い


ではまた会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

乗り越えた先にある愛

題名がね…思い浮かばないよ…

かなーり考えた末これだからホントだめよ…

どうも悠樹です。
一月以上空きましたね。
お気に入りしてくれた皆様、お待ちしていただいた皆様
申し訳ないです。

久々の執筆でした。

それではごゆっくり


霧の湖、その近くに氷精がいた。

 

チルノという名のその妖精、

大妖精と一緒によくいたずらをしている。

 

人里に行ったある日のことだ。

 

氷精、チルノは人間に恋をした。

 

年頃は20ほどだが、しっかりしていて真面目な青年。

働く姿と、妖精達がいたずらをして、彼に叱られたあとのその優しい姿に惚れ込んだ。

 

これはその二人の物語だ。

 

 

 

「大ちゃん…」

 

「ん?どうしたの?」

 

「あたい、人間が好きになっちゃたんだけど…」

 

「チルノちゃん、人間に恋してるの?」

 

親友でもある大妖精に恋を打ち明ける

 

「そうなんだけど…でもあたいたち、妖精だし…」

 

「そっか…そうだよね…」

 

困惑するチルノ、しかしその人間は決して悪い人間ではなく、チルノがいたずらをしても暴力もなく叱ればその優しさを感じられ、褒めるときは心から褒める。

 

そんな人間だからこそ声をかけるのが申し訳なかった。

自分が妖精であり、人とは違うのだ。

 

「なんて言われるかな…」

 

「でも、わからないよ。あの人優しかったし。きっと、嫌われはしないと思う。」

 

「そうだといいけど…」

 

それ以来、チルノは人間が気になって、いたずらをしなくなった、

小さな小細工はしている。

もちろん人間もそれはわかっている、

 

時には顔を合わせる時もあり。

その度チルノは何故か恥ずかしくなり。

人間もチルノの様子に気づき始めていた。

 

 

ある日のことだ。

人間が夜空を眺めていた時。

なにかが視線を通り過ぎた。

「呼んでるのか?それとも…」

 

でも人間にはそれがなにかわかっており。

その先に向かった。

 

その頃チルノは星も月も輝く夜空を胸を焦らしながら静かに見上げていた

 

人間に恋をした、何もかもが初めてで、不安と好奇心とが混ざり合って、とても苦しくもありそして嬉しくもあった。

 

 

 

チルノが霧の湖で静かに座っていると、

隣に人間が座りこんだ。

 

「君に呼ばれた気がした。」

 

「呼んではいないけど。でも来たんだね。」

 

「いつもここにいるのか?」

 

「お気に入りの場所だから、よくここで大ちゃんとも遊ぶし」

 

「そうか、向こうの館が紅魔館だったかな。」

 

「うん。例の吸血鬼がいるね。」

 

そんな他愛もない会話をしていた。

チルノにはそれがとても嬉しくて、

でもいつまでも打ち明けられない苦しさがあった

 

「ねぇ。あんたはさ。どうにも思わないの?」

 

「なにが?どういうことなんだ?」

 

「あたいは妖精なんだよ?力さえ使えばあんたなんて…」

 

「僕なんてどうにでもできる、って言いたいのか?」

 

「…わかってて、ならなんで、あたいたちを叱ったり褒めたりするのさ、」

 

「さぁ、なんでだろうね。でもひとつだけ言えるのは。」

 

「ひとつだけ?」

 

「僕は君を妖精ではなく一人の人として見ているよ。」

 

「そ、それでもあたいは人とは違うし、それに力もあるからあんたなんて…」

 

「それで君が僕の運命を変えるなら、僕は君の運命を変えてしまうかもしれないね」

 

「どういうこと?」

 

「君が僕をどうにでも出来るなら、僕はそれに従うしかできない、なんたって僕は君より弱いからね、」

 

「そ、そんなの…」

 

「でもそれがどんなことであれ、それで君の運命も変わりかねないんだ。むしろ君自身が自分で運命を変えているかもしれないけどね。」

 

「な、何が言いたいのさ…?」

 

「僕は君に従う、でもそれが君を変えてしまうかもしれない。これならわかるかな?」

 

「なら、あたいは変わってもいい、だから…あたいと…私と付き合って!くれません…か?」

 

「お付き合い…か、すまないが、それはできないかもしれない」

 

「えっ…そ、そんな」

 

「既に婚約者が居るんだ、明日にはその人を向かえなきゃいけない。」

 

「そっか…そうなんだね…」

 

「だから、それはできないんだ、」

 

「わかった。いきなりこんな話してごめんね。」

 

チルノはその言葉を最後にその場を離れ夜を飛び去った。

初めての恋が実らず、悲しみが溢れ泣きながら

 

 

人間はありもしない嘘を吐いた自分を情けなく思うしかなかった。

 

過去の苦しみから恋人友人を持つことを恐れ独り身であった。それが故に何かを保つことはできなくなってしまっていたのだ。

 

二人とも感情が溢れ苦しく思うしかなかった。

 

それでもチルノは人間を想い、諦めきれず。

 

人間はその嘘を抱え込んで苦しみ

 

また振り出しにもどった

 

チルノはいたずらをして恋のことを紛らわし忘れようとしていた。

いたずらをすれば叱られる、叱る相手はいつも恋相手。好きな人に叱られ顔を隠すばかり。

 

人間は嘘を抱え込んでいるまま打ち明けることもできず、ただチルノと顔を合わせてもいたずらを叱ることその後に優しく相手をするしかできなかった。

 

お互い、すれ違うばかりでもどかしく思っていた。

 

想いを捨てきれないチルノ

 

嘘を抱え込む人間

 

二人とも耐え切れなくなっていた。

 

 

 

人間は霧の湖の近くでチルノに告白された日のことを思い出していた。

 

「何を恐れているんだろう…」

 

言葉で従うと言っておきながら逃げるように嘘を吐く。天邪鬼のようなことをしている。

そんなような気がしていた。

 

そこにチルノが横に座る。

 

「珍しいね、ここにいるなんて。」

 

「いろいろと思い出してね。」

 

「うまくいってるの?その、婚約者、って人と。」

 

「あまり答えたくはないかなぁ…」

 

「そっか、頑張ってね、」

 

「あぁ、努力するよ。」

 

「あたいはさ…あんたのことが忘れられなくって。毎日苦しいんだよね。」

 

「すまないな、俺が断ったばかりに。」

 

「でも仕方ないよね。だって、あなたには…」

 

悲しみを抑え切れず涙を流すチルノ。

それでも言葉をやめず話し続ける。

 

「あなたは優しすぎるから…いたずらをする私とは違い過ぎるもんね…」

 

「そ、そんなことは…」

 

「私は妖精、あなたは人間。そこに壁があって…どうしてもそれが怖くって…」

 

「チルノ…」

 

「人間に恋はしても…人間と恋愛はできないのかな…って…ずっと考えてて…」

 

「そんなの…種族なんて関係ない」

 

「考えるたびに苦しくなってたんだ…仕方ないことだと割りきって…それでも忘れられなくて…」

 

涙を流してうずくまるチルノを優しく抱きしめる人間。人間も耐え切れず嘘を打ち明けていく。

 

「すまなかったよ…俺が弱いばかりに…」

 

「ううん…違う、弱いのは私の方だよ…」

 

「ずっと嘘を言ってた…僕は誰かとつながりを持つことが怖くて、それで嘘を言ってた。」

 

「それって……」

 

「婚約者なんていない、ずっと君を避けてた、あの時、もし付き合いを始めてたら君を傷つけてしまうんじゃないかって思ってしまって。それで、」

 

「…そうだったんだね…」

 

「すまない…」

 

「…私と付き合って…くれますか…?」

 

「宜しく…お願いするよ」

 

「ありがとう、もういたずらなんてしないよ。だってもう寂しくないから…あなたがいるから…」

 

「僕も人を避けるのは控えるよ。そればかりではいられないから。」

 

それが二人にとって再び辛く苦しいことであっても互いに支え合いながらそしてお互いを受け入れていこうと決意している。

 

 

 

 

 

霧の湖の側の小屋

 

そこには二人の人影があった

 

男は人間だがもう一人は氷精である。

 

自分を乗り越え相手を受け入れ

 

そして変わらぬ想いと愛を手に入れた、

 

素晴らしい親愛の夫婦の姿だろう。




ご拝読ありがとう御座います。

次の予定は実はもう出来上がっております

と報告を。

今後は前の話と同じまたは被りでも関係なく執筆します。
なのでもしかしたら連続で同じキャラっていう可能性もゼロではありません。

なのでそこはご了承を。

それではまた会いましょう。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

四季と名前

どうも悠樹です。

先に言っておきます。

ゆうかりんではない。
そしてえーきさまでもないです。

それではごゆっくり


幻想郷

 

妖怪の山に神社がある。

 

この神社には

東風谷早苗という風祝の巫女と

洩矢諏訪子と八坂神奈子

という神様がいる。

守矢神社という名だ

妖怪の山にあるだけはあり参拝客が妖怪の被害を受けることも、多々ある

 

だが参拝客はそう少なくはない

 

 

また、一人の人間がこの神社を頻繁に訪れているようだ。

 

神社でのんびりしていた諏訪子が人間に気づき話をしている。

 

「おお。また新しい参拝客かぁ。」

 

「ここが守矢神社ですか?」

 

「そうだよ。あんた人間だろ?よく人里からここまで来る気になったねぇ。」

 

「まぁ少し願い事でもと思ったので。」

 

「ということはお賽銭かい?」

 

「ええ、まぁ。」

 

「来てくれるだけでもうれしいってのにお賽銭までしてくれるなんてほんとにありがたいねぇ。」

 

「まぁ硬化一枚ですけど」

 

「いいってことよ、その気持ちだけでもありがたいからね。」

 

賽銭箱にお金を入れる人間。

諏訪子はそれを見届け改めてお礼を言う。

 

「こんな所までわざわざすまないねぇ。」

 

「まぁ、お願いするならあざとい巫女しかいない神社よりも、ちょっと来るのは大変ですけどちゃんとした神様がいるここのほうがいいと思ったので。」

 

「ありゃ、博麗も見捨てられたもんだなぁ、それでお願いってどんなことなんだい?」

 

「大したことじゃないですよ。三日坊主の癖が直ったらなぁ、と、思っているだけです」

 

「そうかそうか、まぁうまく行くと思うよ。」

 

「そうだといいんですけど。」

 

「なんたってこの守矢神社にお願いに来ているんだから。」

 

「まぁ、出来る限り自分でも努力はします」

 

そう言うと人間は山を下り里に帰っていった。

 

 

 

「三日坊主ねぇ。」

 

そうつぶやいて諏訪子は少し考え事をしていた。

 

 

次の日もその人間はまた守矢神社に参拝に来ていた。

 

「参拝客ですね!ありがとう御座います!」

 

「あ、ここの巫女さんかな。」

 

「はい、東風谷早苗と言います。わざわざありがとう御座います」

 

「お賽銭、今日は紙を一枚持ってきました。」

 

「ありがとう御座います!」

 

紙を賽銭箱にいれ。お願いをして神社の側のベンチに座った。

 

「ここは静かでいいですね。」

 

「そうですね。人里とは遠いですし、森の中なので騒がしくなる時はそんなに無いですね。」

 

「博麗さんのところだとお賽銭ねだりが強くって。落ち着けないですよ」

 

「霊夢さんのところはいろいろな人が集まりますからね。」

 

「ここって、参拝客は来てますか?」

 

「来なくはないですねただ集まって来る方はあまりないです。あなたのように個人で来る方が大体です」

 

「そうなんですね。」

 

「それでも来てくれるのはありがたいです。本当にありがとうございます。」

 

「それじゃ、このあと仕事もあるので私はこれで、また来ますね。」

 

その一言で人間はまた人里まで帰っていった。

 

 

その後も人間は守矢神社に何度も参拝に訪れている。

 

三日坊主という癖を直すために。

 

 

そして、ある日のことだ。

 

「何度目かな?ここにくるのは?」

 

「諏訪子さんも飽きずに話しかけてくれますよね。」

 

「そりゃぁ、お客さんが来たら話しかけるのが普通だろうね。」

 

「まぁ、そうですね。」

 

「どうだい?お願い事の【三日坊主】は直りそうかな?」

 

「うーん。まぁ、まだわからないですね。」

 

「そうか。まぁこれからも頑張りなよ。」

 

 

「諏訪子も意地悪言うもんだな。はっきり言ってやりなよ。」

 

山の見回りから帰ってきた神奈子が諏訪子に愚痴をこぼす。

 

「ありゃ。まぁそれもそうか。」

 

「なんのことです?」

 

不思議に思う人間。

二人の神様は人間の願いのことについて話し出す。

 

「あんたの悪い癖、【三日坊主】だったかな。」

 

「ええ、そうですね。」

 

「とっくに直ってるんじゃないかい?」

 

「えっ?なんでです?」

 

「あんたここに初めて参拝に来たのはいつだい?」

 

「そうですね、あの日から5カ月ぐらい経ちますね」

 

「そうだろ?5カ月も経ってるんだそれだけ長い間あんたは参拝に来ているんだよ」

 

「でも、直るまでは続けるつもりですし。」

 

「わからないかなぁ。それだけ長い間、参拝に来てるんだよ、参拝しに来ているんだよ。」

 

「そういうことか。参拝か。これを…」

 

「あんたの癖を直すための参拝は、三日坊主で終わってないのさ。だからその癖はもう直ってるんだよ。」

 

「なるほど、これには気づかなかったよ。

二人ともありがとう。」

 

「いやいや、それだけあんたはこの神社に信仰を持ってくれていたんだ、嬉しい限りだよ。」

 

三人は少し談笑していた。

神様にお願いをしたことがいかに効果があるかなんて話をしていた。

 

「そうですね、これからもここには参拝に来ますよ。」

 

「おっ、ありがたいねぇ」

 

「癖が直ったお礼とこれからもこの神社に信仰を捧げていこうと思います。」

 

「うんうん、長く続けることはいいことだ。」

 

「もちろん信仰のこともありがたいよ。」

 

「お二人もこれからも頑張ってくださいね」

 

「あんたも頑張りなよ。」

 

「ところであんた。名前を聞いてなかったね。」

 

「名前なんていいですよ。」

 

「大事な参拝客だからな。大切にしたいんだよ」

 

「自分の名前なんて無いようなものです。」

 

「名前がない?どういうことなんだい?」

 

「生みの親と育ちの親が違って。何度も捨てられて何度も名づけなれて。そればっかりですから。」

 

「なんて身勝手な…」

 

「だから、僕に名前なんてあってないようなものです。」

 

「悲しいなぁ、親に捨てられるなんて…」

 

「慣れてますから。」

 

「そんなことに慣れるのはおかしいんだ。そんな粗末な話は起きたらいけないんだよ」

 

「それでももう変えようのない事実です。」

 

「毎回違う名前で嫌だろう?」

 

「もう気にもしてないですけど」

 

「それなら…そうだな。私にちょっと考えがある。」

 

「考え?いきなりなんだってんだよ神奈子、」

 

「名前欲しくないかい?」

 

「また名前ですか。まともじゃないですね。こんな話した後に、」

 

「あんたには四つ名前をやるよ。」

 

「ちょっと神奈子いい加減にしないか。」

 

「4つですか、僕はそれから選べはいいんですか?」

 

「いーや、全部やるよ、ただいつも同じ名前じゃない」

 

「どういうことです?」

 

「お前、四季は好きかい?」

 

「ええ、まぁ、嫌いじゃないです。」

 

「よし、今から命名してやるよ。神様からもらえる名前だ大切にしてくれよ」

 

神奈子は人間に名付けた。

でもそれには人間は満足をしていた、

その名は…

 

四季、春夏秋冬

その季節事に変わる名だという

春ならば春季【はるき】

夏ならば夏季【なつき】

秋ならば秋季【あき】

冬ならば冬季【ふゆき】

それぞれ四季で名が変わる

変わった特殊な名前だった。

 

 

 

「それなら、今は冬季ですね。」

 

「どうだい?気に入っただろう?」

 

「ええ。これなら面倒でもないですし。今までのように何かあるたびに変わっていくこともないですから。いいですね。」

 

「なんだ…神奈子が命名するってんだから、また野蛮なのが出るかと思ったよ。」

 

「そんなセンスも影もないみたいなこと言わないでくれよ。」

 

「でもまぁ、たまにはいい事言うじゃないか。」

 

「お名前、大切にしますよ。」

 

それから数年、人間は守矢神社に通っていた。

四季折々の名前を持ちその神社に、参拝に行く。

 

面白いことにちょっとした問題も起きたりする。

 

季節の変わり目のことだ。

 

「おお、夏季。」

 

「いやいや、もう、秋季じゃないのか?」

 

「まだ暑いんだし夏季でいいだろ」

 

「何言ってるんだ暦の上ではもう秋だぞ。」

 

「まぁそうだけどさぁ。」

 

「僕的には夏季でもいいんですけど…」

 

「ほらぁ!やっぱまだ夏だって。」

 

「暦は秋なんだから秋季だ。」

 

「夏季!」

 

「秋季!」

 

こんな感じで喧嘩も起きる。

それほど仲が良いことではあるが

二人ははっきりさせるまで止まらない。

 

一番困るのは人間だった。

 

まだ、早苗が、いないだけマシと言った感じが、早苗が割り込むとさらにひどいことになることもある。

 

また今日も一人の人間が参拝に来たようだ。

 

この人間は守矢神社の常連客となった

 

神様から名付けられた一人の人間だ

 




最後ちょっと締まりが悪かったかな…

できるだけやった結果がこれだよ

それではまた会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

白狐屋【大ちゃん】

どうも夢子です。









それではごゆっくり


人里にあるお店がある。

 

里では売られないような珍味や珍しい野菜、とにかく厳選された食べ物を売るお店だ、

もちろんお馴染みの野菜や果物も、売っている。

 

従業員はたった一人。

 

妖精、大妖精だ。

 

お客さんも少なくはない。そして、よく売れる。

何一つ問題はない。

 

お店のある休みの日のことだ。

 

大妖精は休みに温泉へ行っていた。

 

地底から湧く温泉は疲れが良く取れ、リラックスには十分なのだ。

 

「久しぶりの温泉かなあ。」

 

木々に囲まれたその場所、

入り口であることに気づく。

 

「あっ…!あの人は…」

 

急いでタオルを巻き。体を隠す、

 

普段は妖怪や幻想郷の異変に関わるような人間しかいない場所に普通の人間がいたのだ

とは言っても大妖精の知り合いであり、

親しい人間でもある。

そして、大切な仕入れ先でもある

 

「珍しいですね、ここに来るなんて」

 

「大妖精か、すまない邪魔をしたかな。」

 

「い、いえ、大丈夫ですよ。」

 

「そうか。それじゃ、まぁゆっくりするかな、」

 

「いつもありがとうございますね」

 

「うちの野菜や果物は売れてますか?」

 

「はい、とても美味しいと好評です、また売上お渡ししますね。」

 

「ありがたい、それを聞いて安心するよ」

 

「今後もお願いしますね。」

 

「こちらこそお願いするよ。」

 

「ただ…ちょっと困ってて…」

 

「何かあったのかい?」

 

「ただの噂でしかないんですけど…」

 

「噂?どんな噂なんだ?」

 

里にはもう一つ八百屋がある。

大妖精の店よりも売上も品揃えがいい、

ただ、大妖精の店にある珍味等はない。

 

それ故に人里の住人が合併したらすごく便利なお店になるんじゃないかと言い出したらしく。

 

白狐屋というその八百屋が大妖精のお店を買い取るという、不確定極まりない噂が流れているのだ。

 

もちろん噂なので、白狐屋も耳にはしているが、そのつもりはないようだ、

 

「身勝手な噂が本当になる可能性もゼロではないからな。注意はしておきたいが…」

 

「人里の人たちがそれを望むんでしたら…」

 

「待って、そしたら俺はどうなる。」

 

「そうでした…ごめんなさい、勝手なことを…」

 

「いや、まぁ、白狐屋と大妖精のお店に両方って話になるんだろうけど、」

 

「あのお店も悪くはないんです、むしろとても仲がいいので、それも悪くはないんですが…」

 

「何かあるのか?」

 

「私はこのままがいいんです」

 

「なんでそう思うんだ?」

 

「管理も準備も自分でやって、それでずっと続けてきたんです、それを変えたくなくて。」

 

「なるほどね、わかった。」

 

「なので、白狐屋と合併はしたくないんです。」

 

「それならそれでいいじゃないか、」

 

「明後日向こうも私もお店が休みで、話をすることになったんです、」

 

「合併するか否か、だね。」

 

「もちろん断るつもりなんですけど、向こうの提案によっては…」

 

「その時にならないとわからないからね、俺も同席させてもらおうかな。」

 

「いいんでしょうか…?」

 

「仕入先なんだから立派な関係者だし、問題はないと思うけど。」

 

「そうですね…おねがいします。」

 

「今はゆっくり休んでそれから話せばいいさ、」

 

「そうですね。久々の温泉ですし。」

 

その後も二人は話を続けていた、

どんな果物が人気か、白狐屋の主人はどんな人かなんて他愛もない話をしている。

そして話が終わる頃に二人は温泉を後にした

 

 

そしてその白狐屋と大妖精の対話の日がやってきた。

 

もちろん人間も同席している。

 

「どうも、大妖精さん。」

 

「白狐さんもお元気そうですね。」

 

「ええ、おたくの美味しい野菜のおかげさ、珍しい野菜ほど効能がいいからね。」

 

「白狐屋のお野菜も美味しいですよ、毎日お世話になっています、」

 

「お互い良き隣人で良きお客様だからね。」

 

「これからもおねがいしますね」

 

「こちらこそさ、とまぁ、前置きはこんなとこか、一つ聞きたいんだが、その隣の男はなんだい?」

 

「えっと、仕入先のお方です、どうしても同席したいと、」

 

「よろしく頼みます。」

 

「別に構わないが余計な口は挟まないでおくれよ、まぁ悪くは言わないから余り気に触ることはないと思うが」

 

「すみません、押し切られたものでして…」

 

「いいんだよ。あんたにはお似合いさ、」

 

「お、お似合いだなんて…そんな…」

 

「あれ?彼氏じゃないのかい?ずっとそう思ってたんだけどねぇ。」

 

「ま、まだそんなんじゃないです!」

 

「まだってことはその気はあるんだね?どうだいあんたは?」

 

「ええ、大妖精さんをお嫁に頂けるなら光栄ですよ、しっかりしてて真面目で何より優しいですから、そんな彼女を守っていけるなんて幸せ者です」

 

「あ、あなたまで…もぅ…」

 

「はっはっ!顔を赤くしちまってまぁ、いいことじゃないか、私みたいな老いた女にはそんな出会いもうないからね。」

 

「うぅ、なんといえばいいか…」

 

「さてまぁ、顔を赤くするのも終わりなよ、本題といこうじゃないか」

 

「は、はい。そうですね。」

 

「例の噂。あんたもよく聞いてるだろ。合併の件」

 

「はい、ご存知です。」

 

「あたしゃどっちでもいいんだ、でもまぁ合併ってなったらお互い難しいことも増えるだろうよ」

 

「そうですね、商品が増えますからその分管理も大変ですし」

 

「ぶっちゃけて言えばね、あたしゃ、もうあの店を大きくするつもりはない、あんた次第だ、むしろ大ちゃん、あんたがうちを買ってくれてもいいんだよ。」

 

「そ、そんな!恐れ多いですよ…」

 

「まぁそうなるだろうとおもぅたよ、まぁお互いいろいろあるからね。まだ別々でがんばろうや」

 

「は、はい。」

 

「今日は悪かったね、幸せそうなあんたの顔見れてホッとしたわ、あんたはあたしの孫みたいなもんだから、頑張っておくれよ。」

 

「孫?ですか。」

 

「そうだよ。あたしの息子夫婦は孫を産む前に火事で亡くなってね…孫の顔も見る前から…」

 

「無理に言わなくても…」

 

「だから、あんたを見るとほんとに孫のように思えてそれで可愛くて仕方ないんだ、」

 

「そうなんですね…なんと言うかありがとうございます」

 

「身勝手なことかもしれないが、あんたにはこれからも頑張ってもらいたいよ」

 

「はい、もちろんそのつもりです。」

 

「だからね、隣のお兄さん、この子を頼んだよ、あんたなら立派は旦那になる、大ちゃんも立派なお嫁になれるからね」

 

「ありがとう、白狐屋のばぁさん。」

 

「それじゃ、これ頂いてくよ、ほらいつまでも顔赤くしないで、お金払っていくんだからお客さんだよほら、しっかりしな、」

 

「はい!ありがとうございます!」

 

「良い笑顔だ。立派だよアンタは…」

 

そういって虹色のバナナを買い白狐屋の主人は帰っていった。

 

 

「なぁ大妖精、」

 

「なんですか?」

 

「オレを婿として向かい入れてくれるか?」

 

「な、何を唐突に言うんですか!」

 

「あぁ、すまん、自分でもいまおかしいと気づいた、何いってるんだろうな…」

 

「も、もちろん…いいですよ…」

 

「えっ?」

 

「私はあなたが好きですから…だから、いや、むしろというべきですね、私をお嫁に貰ってください。」

 

「そうか。それじゃ、これからは」

 

「夫婦としてこのお店を繋げていきましょう。」

 

「俺は作って」

 

「私は売ります。」

 

「よろしく頼みますよ」

 

「はい、こちらこそ。」

 

 

 

珍味屋大ちゃん、にまた一人従業員が増えた

それは元々店の仕入先のだったが、ある縁により結ばれ夫婦となった。

 

白狐屋の主人は、その後の二人の挙式を見届けたひと月後に亡くなってしまった。

そのこともあって大妖精はついに白狐屋も経営することにした。

 

全く関わりのない自分を家族同様に大切にしてくれた恩を返す為お店を受け継ぐことにした。

 

そうして、新しく八百屋ができた

 

白狐屋【大ちゃん】

 

という名のお店だ。

 














それではまた会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

偶然の裁判

どうも夢子でした。

過去形だけど気にしないでくださいね?

それではごゆっくり


「黒!地獄で罪を償いなさい!」

 

四季映姫ヤマザナドゥ

彼女は今日も死人を裁いていた。

 

「白!よくもまあこれだけ善を積んだものです。」

 

いつも通り裁判をして

 

「小町っ!どれだけ溜め込んでいるんですか!」

 

部下である小野塚小町に、説教をする、

 

一人二人と裁かれ

 

天国と地獄に魂が飛んでいき、

 

疲れたかのように椅子に座る。

 

「全く…」

 

「えーきさまー。ちょっと助けてください…」

 

「なんですか小町…疲れてるんですから手早くおねがいしますよ、」

 

「そう言われると難しいなぁ…」

 

一人の子どもと赤子が小町に連れて来られヤマザナドゥのもとについた。

 

「不幸なことね、こんな幼い子まで命を落とすなんて、」

 

「うっ、ううっ…」

 

今にも泣き出しそうな子供、

子供は赤子を抱えている。

 

「その子は?貴方の兄弟かしら?」

 

「…違うけど…でも…ううっ…」

 

「泣かない。男の子が泣いてたら格好悪い。なんでここに来たのか聞かせてもらえないかしら?」

 

「お店が燃えて…この子を助けようとして…」

 

「そう…偉い子ね…あなたは白、立派な子ね」

 

「こ、この子は…?」

 

「もちろん白よ、赤子にも意識はあるの、

自分では何もできない中、ちゃんと助けを求めることができた、だから白よ」

 

「よ、よかった…」

 

安心した二人の幼子はその体が消え魂が飛んでいった。

 

「不幸なことね…仕方ないことかしら。小町、次を連れて来てちょうだい」

 

「はーいよー、」

 

「一時間がいいですか?」

 

「い!1分でいいです!」

 

「なら早く!」

 

「はいっ!」

 

いつも通り小町を叱るヤマザナドゥ、そして叱られる小町。

この下りもいつも通りである。

 

「1分でも説教しなきゃいけないんですか。わたしは…」

 

呆れるヤマザナドゥ、1分間の説教を何度やったことかと溜息をついた。

 

「連れて来ましたー。」

 

「よろしい下がりなさい。」

 

常に俯き続ける人間。

 

「さぁ。ここに来た理由、なぜあなたは命を落としたのかしら?」

 

「息ができなかった、それだけだ。」

 

「そう、それで亡くなる前にはどんなことをしたのかしら?」

 

「子どもを二人…見殺しに…するしかなかった…」

 

「その前は?」

 

「宿屋で働いてた、買い出しに行っていたら、宿が燃えてて…」

 

「そう、見殺しにするしかなかったというのはどういう意味かしら?」

 

「助けられなかった…間にあわなかったんだ…」

 

「少しでも間にあわせるために、貴方は宿が燃えているなら飛び込んだのね。」

 

「あぁ…で、それで結局。俺も肺が燃えて息ができなくなったんだ、」

 

「残念ね…」

 

「まだあんなに小さいのに…!なんで助けられなかった…」

 

「今悔いても遅いわ。」

 

「あの子達もここに来たんだろう?」

 

「あの子達…そうね、おそらく来たわ。」

 

「そうか…」

 

「さて、あなたの裁判をしましょうか…」

 

「…どうなっても構わないさ…」

 

「貴方にはあってはならない第三の判決をしなくちゃいけない。」

 

「第三の判決…?」

 

「人間…この火事の原因はあなたにあるのです」

 

「な、そんな!」

 

「あなたの吸った葉巻の火が消え切れていなかった。それで葉巻の皿が床に落ちた時、その床の木に引火して、燃え上がったのです、」

 

「じゃあ…俺が殺してしまったのか…」

 

「悪意のない殺人は刑は軽くなりますがそれでも、その罪が消えるわけではない。でも、あなたは宿の異変に気づき子供二人を命に変えても助けようとした。それで五分五分なのです。」

 

「…そんな…」

 

「白にも黒にも近い、灰色、あなたは灰色なのです。」

 

「俺はどうなるんだ…?」

「貴方には時間をあげましょう。考えなさい、天国に行くか地獄に行くか、あなたに選ぶ権利をあげます。」

 

また俯く人間、天国か地獄かどちらが行くべきか

 

「さてその間に…小町っ!」

 

「はいっ!」

 

数分の間ヤマザナドゥによる説教が始まった、小町はペコペコと頭を下げている、

 

説教を終えたあと、ヤマザナドゥはまた人間に質問した。

 

「天国か地獄、どちらがいいですか?」

 

「天国にいくよ…助けられなかったことを謝りたい…もう一度あの子達に逢いたい。」

 

「いいでしょう…ではあなたは白です。」

 

「な、いきなり。、、?」

 

「天国に行くならば白ですから。」

 

「わかった…」

 

了解した後、人間の魂が飛んでいった

 

「偶然は重なるものね」

 

「火事の被害者で亡くなったのは彼らだけみたいですね。」

 

「そう…」

 

その後もヤマザナドゥは死人を裁いていた。

 

白か黒の判決を下すだけで、

良くも悪くも彼女の仕事は死人を裁くこと。

どれだけ偶然が重なろうと。悲惨な死を迎えた者でも、その者が悪人であろうと、

裁くだけ。

 

小町を叱るのもまたひとつの仕事になっているかもしれない。

 




短くなったなぁ


うん後書きなんてありませぬな


それではまた会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

あなたとの思い出

どうも犬走椛です。

 

今日は筆者さんの代わりに私が書くことになりました。

 

ちょっとした思い出話です

 

 

 

ゆっくりしていってくださいね

………………………………………………

 

やっぱ、今日も山は平和です。

そのまま何も起きなきゃいいですねえ

 

 

「もみじー!ちょっといいですかー!」

 

なんだ…また文さんか…

 

「なんですか…仕事の邪魔しに来たなら帰ってくださいよ…」

 

「違いますよーちょっと大事な話があるので手止めれます?」

 

大事な話?

 

「なんです?話って」

 

「とりあえずこの手紙読んでみてください、」

 

「は、はぁ。」

 

……………………………

 

拝啓 もみじ殿

 

先日、新人の白狼天狗が来た

 

椛殿は白狼天狗の中でも特に優秀かつ有望な方だと判断した

新人が半人前だと判断がつくまで教育担当を頼みたい

 

以上

 

……………………………

 

 

なんで私が……

 

「他には誰かいなかったんですか?」

 

「いやぁ、私が引き受けますよって言ったんですけどねぇ、どうしても上の方々が椛にって言うんで」

 

また面倒なこと増えたなぁ…はぁ…

 

「それで。新人ってのが、隣の方ですかね」

 

「よろしく」

 

暗い子だなぁ…

 

「まぁ、仕事まだ途中なんで詳しいことは後でお願いします。それまで文さんと詰所で待ってて下さい。」

 

「わかった」

 

「返事をするときは、はい。でおねがいしますね。」

 

「はい。」

 

「それじゃ。また後でおねがいしますね。」

 

「はーい、わっかりましたぁー。」

 

返事…新人の前でそれはない…

 

全く…上の方もなぁ、私じゃなくてもっと良い担当見つけてくれたらいいのに…

 

「まぁ、相変わらず山は平和でいいことです」

 

……………………

 

 

まぁ、見回りも終わりましたし詰所に戻りますか。

 

……………………

 

「文さーん、戻りましたよー、」

 

「お、帰ってきましたか。」

 

「それで、新人は?」

 

「向こうのテントにいますよ。」

 

テント?テントなんかあったっけ?

 

「あぁー、あれですか。」

 

「それじゃ私はこれから仕事なんで失礼しますねー。」

 

仕事って言ったって盗撮ですよ、どうせ

 

まぁ、挨拶しますか…

 

「入りますよー。」

 

「どうぞ。」

 

「新人の方ですよね、私は犬走椛と言います。さっき文さんが言ってた通りあなたの教育担当ですので、よろしく頼みますね」

 

「よろしくお願いします。」

 

ありゃ、それだけか…

 

「あの、名前をですね…教えてもらいたいんですけど…」

 

「しろ…です」

 

「しろさん、ですね。よろしくです、」

 

変わった名前ですね、、

 

「もう夕方ですし私もそろそろ帰るので今日はこの辺で。」

 

「あの。」

 

「はい?なんでしょう?」

 

「このテントどうしたらいいですか?」

 

何も片付けるだけですけど…

 

「片付けて帰られたらいいと思いますけど。」

 

「文さんが…テントしまってくださいって…どこか寝泊まりできる場所ってありますか…?」

 

「あー…えっと…」

 

家無し…?

いやそんなまさかね…

 

「家に戻らないんですか?」

 

「事故で無くして…」

 

なるほど…

こまりましたね…

仕方ありませんか。

 

「なら、案内するので来てください」

 

「はい…」

 

家がないなら。うちで預かるしかありませんから

 

「ここって、」

 

「私の家です。まぁ、しばらくはここで暮らしていってください。」

 

「いいんですか…?」

 

「私の家ではダメでしたか?」

 

「いや、そういうことじゃなくて」

 

「私が案内したんですから私が断ることはないです。」

 

「わかりました…」

 

「さぁ。どうぞ上がってください」

 

「おじゃまします…」

 

そうですね…それじゃ違いますから。

 

「ただいまでいいですよ。」

 

「いや、でもまだ…」

 

「おかえりなさい。しろさん。」

 

「た、ただいま…」

 

さてと…何から準備しましょうか…

 

「とりあえず部屋の用意しないといけませんね…」

 

二階に空き部屋あったはず…

 

「ここでいいですか?」

 

「えっと…はい、大丈夫です」

 

「荷物って何持ってます?リュックの中出してくれますか?」

 

「あぁ、はい。」

 

メモ帳に、筆記具に、

ビニール?包のごみかな…

あとは…

 

「懐中時計…?」

 

「母がくれたものです。妖怪の森の近くの変な店で買ったって。言ってました」

 

こーりんさんのとこのか。

 

「お母さんは?一緒にいないんです?」

 

「火事で…家が燃えた時に…」

 

あぁ…それは…

 

「わかりました…」

 

「大切なものなんです。」

 

「形見ですか、」

 

「そう。ですね。」

 

「さぁ、部屋の準備しましょうか。」

 

「はい。」

 

………………………………………

 

その後はですね…

 

私は先の新人の白狼天狗と暮らしました。

 

そうです、同棲ですよ?

 

だからといってまだ何も新展はないですからね?

 

なかなか筋は悪くないみたいで、

仕事も武器を使った訓練も問題なく

こなしていってました。

 

それで、しろさんの母親のことですけど。

気になりますよね。

 

………………………………………………

 

「椛さん…今時間あります?」

 

「ええ。丁度仕事が終わったところですよ。」

 

「母のことなんですが…」

 

「無理に話さなくてもいいんですよ…?」

 

「椛さんを見ていると、母を思い出すんです…」

 

「私…ですか」

 

私としろさんの母親とで何かあったのでしょうか

 

「椛さん。母にすごく似ているんです。」

 

「は、はぁ。」

 

似ている、ですか

 

「強くて、優しくて、それで…」

 

それで…?

 

「とても綺麗で…」

 

綺麗…ですか。

 

「本当の母のようで、何故か思ってしまうんです。」

 

「なんだか、嬉しいですね…」

 

「母と家族は…皆亡くなってしまったんです。」

 

「そう…なんですね。」

 

「火事が家で起きて、たまたま買い出しで出掛けているときに…」

 

「助からなかったんですか?」

 

「ある妖怪が…家族を襲ってその後、火を付けたみたいで、逃げれなかったのだろう…って」

 

逃げれなくした…なぜ?

 

「なるほど…そうですか…」

 

「戻った時には手遅れだったんです、その妖怪もその場で焼け死んでて…」

 

その後の自殺ですか…

 

「家族も殺されて、その復讐もできなくて」

 

辛かったでしょうけど…

 

「でも全部忘れたくてここに来たんです。」

 

「でも。今話しているのは…向き合うために?」

 

忘れないため…でしょうか

 

「そうです…でもまだ逃げてて…」

 

「強くなろうって思ったんですよね」

 

「はい…」

 

「なら、逃げてないですよ」

 

「えっ?」

 

「強くなって護れるようになろうって思っているなら、それはもう、過去に立ち向かっていってますよ。」

 

「…怖がって前に進めなかった…それだけなんでしょうか、」

 

「そうですね。それももう、悩むこともないですよ、」

 

「はい…ありがとう御座います」

 

 

…………………………………………

 

ということです、

 

母親に似てるなんて言われまして。

ちょっと驚きました。

 

でもまぁ普段の生活からそう思われるのは、

悪い気はしないですね。

 

それでまぁその後のことです。

 

無事、上からは評価されて

しろさんは一人前にまでなれて

 

私も指導を終わることになったんですけど

それでも家がないからということで、

しばらくは同棲が続きました

いえ、まだ続いてます。

 

彼は立派な哨戒天狗として仕事をしてます。

 

それで…ですね。

 

私も想定外なことに

また驚いたことがあったんです。

 

…………………………………………

 

「この懐中時計…懐かしいですねぇ」

 

しろさんがうちに来た時にいろいろ聞いたなぁ…

 

中身って時計と写真を飾る場所があるんでしたっけ?

 

「時計しかないですね…。」

 

「それ、写真ってどう取ればいいんですか?」

 

「あぁ、しろさん帰ってたんですね」

 

そうですね…文さんにでも頼めると思うんですけど、、

 

「家族とか大切な人との写真を飾るって聞きました。それで写真撮りたいんですが…」

 

「誰と取るんです?」

 

「もちろん、椛さんとですよ」

 

わ、私とですか!

 

「な、なぜ私なんです?」

 

「ここにきてから椛さんにはずっとお世話になってて、本当の母のように思ってて、それで…良ければお願いしたいんですが。」

 

そ、そうですね…

 

「そういうことであれば、まぁ、わかりました。」

 

多分盗聴ぐらいしてるでしょうし、あの人ならすぐそこにいますよね

 

というか…あの黒いのって、羽ですかね

 

「文さーん?盗聴お疲れ様ですー」

 

「あやややや、バレバレでしたかー」

 

いや、ほんとにバレバレですよ…

 

「あのですね…盗聴も程々にお願いしますね。」

 

「ど、どこから聞いてたんですか?」

 

「うーん…全部?」

 

悪趣味だなぁ

 

「で、ですよ。写真とってもらえますか?それで現像までして欲しいんですけど」

 

「えー、めんどくさいですよー」

 

はぁ…しかたないですね。

 

「盗聴までしてそれとはホントあなたって人は。」

 

どうしてあげましょうかねえ

 

「わかりました!、わかりましたから剣を収めてください!」

 

よし、解決。

 

「で、写真ですね。どう撮ります?椛のグラビアでも撮ります?」

 

この人はほんとに…

 

「右か左かどっちがいいですか?」

 

「あやや、どっちも大切な翼なんで勘弁してください…」

 

「まともにおねがいしますね…?」

 

「は、はいっ、」

 

「単純にしろさんとの写真です、懐中時計に入れるので現像までおねがいしますね。」

 

「ツーショット写真ですね。場所はここで大丈夫です?」

 

まぁ、いいでしょう

 

「はい、構いませんよ。」

 

文さんにカメラを向けられるのは何度目でしょう…

でもまぁ、今回はお願いしてますし。気にしませんけど

 

「あっ、しろさん目が閉まっちゃってますね。眩しかったですか?」

 

「す。すみません。」

 

撮り直しですかね。

 

「撮り直しますか」

 

あれ…手が暖かい…

えっ、しろさん?

 

「よしよし。いい出来になりました。」

 

「現像、お願いできますか?」

 

「ほいほい、もう出来てますよー」

 

やっぱり…これ

 

「し、しろさん…」

 

「まぁまぁ、手繋ぐぐらい許してあげてたらどうです?」

 

まぁ…嫌ではないんですけど…

 

「心の準備というものがですね…」

 

「あ。えっと。いや自然と…」

 

しろさん…なんだか、嬉しいですね…

 

「あらあらぁ、お熱いですねぇ。」

 

 

…………………………………………………

 

と、まぁ…

 

こんなことがあったんです。

 

今でも写真は懐中時計の中にありますし。

それとは別で飾ってあります。

 

 

実はというと…

 

あれから何日か経ったあと。

しろさんに改めてプロポーズをされまして。

 

付き合うことになりました。

お互い仕事もあることですから、

一緒に居られる時間は少ないですけど。

それでもその時間を大切したいということです、私もそれには賛同はしました。

 

 

 

……………………………………………

 

こんな感じでしょうか…

 

でもまぁ、これぐらいにしておきますか。

 

「ただいま。」

 

「しろさん、おかえりなさい」

 

「ん?そのノートはなに?」

 

「これですか?秘密です」

 

「そっか。」

 

 

私の唯一の思い出。

 

忘れたりしませんよ

 

「簡単に言えばあなたとの思い出です」

 

「思い出…思い出かぁ」

 

………………………………………………

 

それじゃこの辺で

 

また会えたら会いましょう

 

犬走椛

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

君を探して

どうも悠樹@夢子+松K.です。

初めに言っておきます

書きながら感動して半泣きでした。


……嘘ですごめんなさい。

泣きはしないけどすっごい感動してました、、

二週間じっくり考えて書いたので
私的には満足です

ではごゆっくり


私はなんの変哲もない人間

 

そんな私だがひとつだけずっと疑問に思うことがある

 

どうしたことか、

記憶の片隅にずっと少女の姿がある。

 

暗いシルエットだけ浮かび、

特徴的なその影だが

やはり誰かはわからない

 

夢にも出てくるが後ろ姿の黒い影だけ。

顔もわからず声もわからない。

話しかけても返してはくれない

 

いつか会うのだろう

 

その程度にしか思っていない。

 

 

 

里を歩いているとある一人の巫女に会った。

赤い服の巫女、博麗霊夢だ。

人探しをしているらしい

 

「ちょっとあんた、小傘見なかった?」

 

「見かけてはないな、すまない」

 

「そう、ならいいわ、」

 

そういうと巫女はまた走って里を駆け回っていった、

 

小傘…なんか聞き覚えがあるな。

 

確か命蓮寺のネズミが話をしていたような…

 

その程度にしか知らない。

もちろん見たこともない

 

妖怪が里で何かやらかせばすぐ問題事にはなるのだが

そんなやばいのであれば何かしら噂にはなっているだろう

 

そんなことを考えて家に帰る

 

そしてなぜか、見覚えのない箱がおいてある。

 

知り合いの農家かららしい

 

箱をどかそうと思うのだが、

 

異様に重たい、そしてなぜか箱が開かない

 

刃物でこじ開けようと思い離れた場所のハサミを取る。

箱のもとに戻ると箱がなくなっている。

 

 

どういうことか困ったものだ。

ハサミを戻そうと振り向くと…

 

黒いワンピースの少女が立っていた。

 

「ふーん…あんたがあいつの…」

 

「どこから入ってきた?」

 

「さっきあんたが開けようとした箱、あれはあたし、化けてたんだよー」

 

「なるほど、」

 

「あいつも幸せもんだね。こんな男が居るなんて羨ましい限りだよ」

 

「あいつ?誰のことだ。」

 

「そのうちわかるよ、お兄さん」

 

少女は黒い霧の中に消えていった

 

「あいつ…」

 

呟くと頭に浮かぶのはやはり影しか出てこないある少女のシルエット

 

でも、それは黒く影でしかない。

 

「全くだ…」

 

またつぶやいてその日は寝ていた。

 

明くる日もその次の日もシルエットが頭をよぎるが、それが誰のものか明らかになることはなかった。

 

また何日か経ったある日だ

 

寝ていて夢を見たのだが、それがどうにも異様に気がかりだった、

 

普通、夢は目が覚めたら忘れるものなのだが、いつまで経ってもはっきりと鮮明に覚えている。

 

ただ不思議なことに先の謎のシルエットは出て来ていなかった。

 

何か関係があるのかと思ったのだが、よく分からない。

 

ただ、私は森の中の小屋に向かっていた。

小屋の扉を開けたらそこで目覚めた。

 

違和感しかなくそしてその小屋があるのかどうかと気になってしまう。

 

森は確かにある。里の外れの小さな森だ。

確かめに向かってみることにした。

 

夢に見た光景はいくつもあった。

そしてその小屋もあった。

 

その小屋を眺めていると。

いきなり頭痛が走った…

 

「なんだ…いきなり…」

 

頭痛がするなかいつものシルエットが頭の中をよぎっていく。

 

「一体誰なんだ…」

 

何もわからないまま。頭痛に耐えきれずその場で倒れ込み、意識を失ってしまった。

 

意識を失っている間もまた夢のような感覚に陥った。

 

そこではっきりと鮮明にわかったことがある。

 

謎のシルエットの正体が

 

濃い赤紫の傘を持った少女。

オッドアイの目に青い服…

彼女は、巫女の言っていた小傘なのかもしれない

 

目が覚めた頃には自家に横たわっていた。

 

「いつの間に…」

 

そしてそんなことにも動じず、すぐにはっきりとした、姿を、その影を探して回った。

 

しかし里中探し回っても見つからない

夢の中の存在なのかもしれないと半分諦めかけていたその頃に。

 

ふと小屋のことを思い出した。

 

「そうか…」

 

いろいろと推測がつく。

 

小屋のことを思い出し。

少女のことがはっきりわかり。

それなら

小屋に入ればはっきりするはず…

 

「あの小屋に全部。」

 

里を飛び出し森に向かい

 

そして、小屋に辿り着いた。

 

「全部はっきりするんだ…」

 

恐る恐る扉に近づき。

ドアノブに手をかける。

 

好奇心と不安の衝動が止まらずざわめきが止まらない。しかしそれでも今の今までわからなかったことがはっきりする。

 

「確かめて見るしかないんだ。」

 

扉を開ける。

 

すると、そこは確かに人の住処だった。

 

何か気配を感じる、

 

きれいに整頓された靴箱

チリホコリの見えない廊下、

 

「一体…」

 

靴箱の上に額縁に入った一枚の写真があった。

手に取るとよく見える。

それは私と先の少女の写真だった。

 

「これは…?」

 

よく気がつくと小屋の奥から音がする。

 

物を切る音だ

 

さしずめ野菜か何かの葉のものだろう。

 

そこで私は正気に戻った、

 

他人の家に勝手に入っている。

私は一体何をしているのだろうと。

 

そこで写真を戻し

私はまたドアノブをひねる。

 

その瞬間、奥から声がしてきた。

 

歌声だろう。

どこか聞き覚えがある。

 

その歌を聞き私はまた胸騒ぎが走った

 

その歌をはっきりと知っていた

そして思わず私も口ずさむ。

 

すると、奥から声がしてくる

 

「えっ…?」

 

廊下の先の扉が開く…

 

するとそこには

 

「そうか…」

 

小傘と思わしき少女がいた。

 

しかしその少女は膠着状態だった

ただひたすら

 

えっ…?

 

という言葉だけを連ねている。

 

「す、すまないお邪魔したね。すぐ帰るよ。」

 

しかしよく見ると少女の目からは涙が溢れていた。

 

「な、泣かないでほしい。まだ何もしていないんだが、」

 

それでやっと少女が話しかけてきた。

 

「あなた…あなたは…」

 

「なにか?」

 

「事故で…いなくなってたって…」

 

事故?さっぱりわからない。

どういうことが訪ねてみるしかない

いなくなったとはどういうことだ?

 

「事故って?それにいなくなったってどうしてだ?」

 

「大きな地震があって里に仕事に行ったあなたはそのまま行方知らずだったはず…だけど今あなたは…」

 

「地震…地震…?」

 

そのワードを呟くと走馬灯のような記憶がフラッシュバックしてきた

と、同時に激しい頭痛に襲われた。

 

「うぐっ…な、なんだ…」

 

「だ、大丈夫⁉」

 

記憶がかき回されるように渦を巻いて頭の中を巡っていく。

 

地震、建物の倒壊。

地割れ。人の叫び声と泣き声。

 

そして、今目の前にいる少女の、誰かを呼ぶ声…

 

その時の記憶なのだろう…

一瞬で頭のなかに入り込んできた。

 

必死に耐える。

この渦の中に何か手がかりがあるかもしれない。

しかし頭痛は更にひどくなる。

次第に体に力が入らない

 

少女に支えられながらも体はなんとかしゃがんだまま維持している。

 

記憶が遡られていく。

その中にまた例のシルエットが混ざり込んでいる。そして、今自分がいる小屋もあった。

 

小屋の扉をあけている私。

その扉を開けた瞬間

 

目の前にいる少女が私に話しかけている。

楽しそうに笑顔で。

 

そして私とその少女がお互いに幸せそうに小屋の中に入っている姿が映る。

 

「一体…これは…?」

 

少女が心配そうにしている。

私を支える少女が顔を覗かせてくる

 

目が合い。そこで思考が停止した。

 

「だ、大丈夫なの?」

 

痛みもなく考えることもないまま、また記憶が頭の中をかけていった。

 

でもそれは私の記憶。

今の今までの記憶。

 

思い出すために記憶を遡っていった

 

私はあの地震の時、倒壊の衝撃で記憶を無くした

 

それでも彼女の影だけは残っていた。

 

たった一人の少女それが鍵だったのだ。

 

「すまない…支えてくれてありがとう…」

 

あと一歩。それで全部はっきりとわかる。

 

「ううん、いいんだよ。だってわたしは。」

 

少女には悪いが、口を塞いで言葉を遮らせてもらった。

自分で確かめたかったのだ。

 

「乱暴なことをしてすまない、でもひとつだけはっきりさせたいんだ」

 

「どんなこと?」

「君は…

多々良小傘という唐傘お化けの妖怪で

私と一緒になってくれた。

間違いないだろうか…?」

 

「うん…そうだよ。あなたはわたしの大切な人、唯一わたしを愛してくれた人。わたしは忘れたりなんかしないよ。」

 

そうか…それで、全部思い出した。

 

雨が降る日、傘も持たず私は歩いていた。

 

そんな私を彼女は驚かし、そして傘をさしてくれた

 

冷えた体を温めるため添い寝までして。

私を助けてくれた。

 

そんな命の恩人に私は恋をして、

彼女と、一緒に暮らすことになった

 

今いる小屋を住処とし。

里の仕事から帰ればいつもの驚かそうとする。

 

結婚して、一年たったある日には

改めて驚かしキスをされた。

 

記憶が全部帰ってきた、、

 

私は忘れていたのか

記憶を無くし。また彼女に寂しいさせてしまっていた。

 

「記憶を亡くして…君を忘れていた…今まで…はっきりと思い出せなくて。」

 

「急に居なくなって…ずっと探してたんだよ」

 

「私も君の面影をずっと探していた」

 

「そうなの?」

 

「影のようなシルエットだけ、ずっと残っていたんだ」

 

「それで思い出せたんだね」

 

「あぁ、そういうことだろう。」

 

やっと疑問が消えた。

そして…私はやっと帰ってきたのだ

 

「全部思い出したよ。」

 

「そうなのね。」

 

 

 

「ただいま」

 

「おかえりなさい。あなた。」

 

 

 

 

二人はまた幸せそうに自分たちの住処に帰っていった。

 

またあの頃の幸せを取り戻すために。

 

そしていつまでも幸せでいるために。

 

一人の人間と一人の妖怪は

今も固い絆と愛で結ばれているだろう。

 




さほど長くはない。

かなーりの自己満足が入ってますが許してください。

最後の方わかる人にはわかるちょっとした出来事が有ります。
それぐらいですかね。面白みといえば

次も頑張っていきます。

ではまた会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

あなたといるだけで

どうも夢子です

前書き書く暇なかった

許して


ではごゆっくり


幻想郷にある奇妙なことが起きていた、

 

「もう!これで何人目よ!」

 

「来るには来るでいいことなんじゃないですか?」

 

「そりゃそうだけど、でもなんか不気味なのよね…」

 

「まぁ、普通の人間であれば耐えきれずに逃げ出すだろうね。」

 

博麗霊夢。博麗神社の巫女の彼女のもとに沢山の男が求婚をしに来ているのだ。

 

しかも唐突に何の起点もなく一人返すともう一人。

 

「そ、そういうあんたはどうなのよ、」

 

「僕はただの参拝客ですよ。」

 

「そ、そう、良かったわ」

 

そんな問答が終わると。

 

「博麗霊夢さん!」

 

また一人現れた。

 

「はいはい、何用で」

 

「私と結婚し…」

 

「却下!お賽銭入れてすぐ帰って!」

 

現れた男もすぐさま断られまた帰っていった。

 

「お賽銭入れて帰れってすごいこと言いますね、」

 

「まぁ。神社に来たからにはお賽銭入れてもらわないとね。でも顔も見たくないから。さっさと帰ってほしいわ」

 

「散々言うなぁ」

 

「当たり前よ、気持ち悪い。」

 

半分苛つきながらお賽銭箱を覗くと紙幣と硬貨が見てわかるほど沢山入っている。

 

「なんだか…複雑な気分になるわね…」

 

「帰った人間みんなお賽銭入れてますもんね。」

 

「ありえないわ!なんかの異変よ!」

 

「そんな、無茶苦茶な…」

 

そう言いながらも小言を零す

 

「告白断るだけでお賽銭貯まるなら耐えて見るのも面白そうね。」

 

「人の心踏み躙って楽しむつもりなんですかね…」

 

「知らないわよ、私は興味ないの。そんなやつらに結婚してくださいって言われて、はいわかりましたって答えるわけないじゃない」

 

「そりゃ、そうだな。」

 

その後も何人も求婚者が現れたが全員お賽銭を入れて返された。

 

「そういえば、僕はなんともないんです?」

 

「何が?」

 

「簡単な話、霊夢さんに害を為していないとはいえ、ここにずっといますけど」

 

「あんたはいいのよただの参拝客なんだから、私の愚痴でも聞いてくれればいいわ」

 

「そうですか。」

 

「あんたが求婚なんてしてきたらそれこそ逃げ出すわ。」

 

焦って顔を逸して話す。

 

「まず無いんで大丈夫ですよ。」

 

「どういう意味かしら」

 

「お賽銭も僅かしか入れていなければ、僕は恋だ愛だと言うのは疎遠にして来た人間です。今更そういうのは気にしませんよ」

 

「そ。そう、良かったわ」

 

若干の残念感を抱え賽銭箱に手をかけ、一つため息した。

 

馬鹿な人間…

霊夢はそう呟いた

 

 

「なんか言ったか?」

 

人間はかすかな声を聞き取りはできなかったようだ

 

「何でもないわ」

 

平常を保ちながら答える。

 

その日はもう求婚目的に参拝する客はいなかった、

 

「散々だったわ。」

 

「大変でしたね」

 

「あんたは一言でそう言うけどね、私からすればひとり一人断るだけでもむしろそういった奴の顔を見るのも虫唾のものなの。勘弁してほしいわ」

 

まぁ、どれもこれもあんたが…

 

「僕は何も悪くないですよ、ただの傍観者ですから。」

 

「いい身分ねほんと。」

 

「どうせ明日も来るでしょうね」

 

「最悪よ勘弁して、やめて、もう逃げ出してしまおうかしら、」

 

 

「巫女失格みたいなこと言わないでください」

 

「別にはあんたには関係ないじゃない」

 

「楽しみが減るんですよー。」

 

「あんたね…人の不幸も蜜の味ってこのことね…」

 

「さて。僕もそろそろ帰ろうかな。」

 

「そう。また来なさい。」

また小言を呟く

(あんたなら歓迎するわ)

 

「また来ると思う楽しそうだったからね」

 

そう言うと男は里に帰っていた

 

「私ってバカね…弾幕はぶつけれても自分の意思をぶつけれない…」

 

そう呟いて目を閉じて寝入った

 

次の日の昼下がりだ。

 

また男は博麗神社で霊夢が求婚されるのを見て笑っていた。

 

その度霊夢はバツの悪そうな顔をする

そして男を睨みつけまた愚痴を零す

 

「あんたね。そろそろなんとかしようとか思わないわけ?」

 

「昨日言ったじゃないですか、僕はただの参拝客、傍観者ですよって」

 

「全く…人が困ってるのに見てみぬふりするなんてとんだ悪人みたいなことするのね」

 

霊夢がそう言うと男もバツの悪そうな顔をした。

 

「そう言われると何も言い返せませんね」

 

「何か案はないわけ?」

 

男は少しばかり思案すると、

唐突に案を言い出した

 

「そうですね、例えば、あなたが男と付き合っているっていう事実が広がれば求婚で参拝する人はいなくなりませんかね」

 

「悪くないとは思うけど。その仮の男をどうするかになるわよ」

 

「誰でもいいんですよほとぼりが冷めたら別れてしまえば」

 

「あんたそれこそ人の心踏み躙ってるわよ。」

 

「それもそうですね」

 

そういうとアハハハと笑い出す

 

「そうね、それじゃ…」

 

霊夢はどうしても誰でもないことを願っていた。

 

「あんたが私と付き合いなさい。」

 

「ふむ。いかにして僕なんて選んだんです」

 

「そ、そんなの!何でもいいじゃない!それに。あんたは誰でもいいって言ったわ」

 

「まぁ言いましたけど、僕は傍観者でいたかったんですけど」

 

「別にあんたはそこに座って見るだけよ。私があの男がいるから帰って、っていうだけ。」

 

「それなら良さそうだ」

 

そんな会話をしていると二人ほど同時に求婚者が現れた。

 

「「博麗さん!」」

 

「はいはい、何か」

 

「けっ…」

 

「残念ねお断りするわ、私にはもういるから」

 

「なっ!誰です!どの男です!」

 

「あいつよあいつ」

 

霊夢が指で示す、椅子に座った男は手を振る、すると求婚者たちが必死になった

 

「あんな見て笑うことしかしないやつよりも!絶対に幸せにしますから!」

 

「無理よ、諦めなさい、あんたにはその資格はないしあんたの幸せなんか押し付けられても嬉しくないわ、帰って」

 

男たちはその答えにあっけらかんとしてそして帰ってしまった、、

 

「こ、効果抜群ね。流石だわ」

 

「見てて面白かったですよ。笑いこらえるので精一杯でしたね。」

そういうとまたアハハハと笑った

 

「わ、笑うんじゃないわよ!もう!」

 

霊夢が赤面して軽く男を叩く

 

それで少し静寂が現れると

霊夢は男に言葉を投げた

 

「あんたずっとここにいなさいよ」

 

「それはどういう意味です?」

 

「意味も何もその言葉の通りよ」

 

半分理解し半分理解できなかった男はとりあえず答えた

 

「邪魔者でなければいいですけど」

 

「邪魔なわけないわ。寧ろそこにいて欲しいんだもの。」

 

「まあ、そう言うなら、別にここにいますけど。」

 

その後

 

日に日に霊夢に求婚をする人間は減っていった。

 

付き合っているという嘘が効いているらしく次第に日に一人ほどのペースになっている。

 

そのおかげでどうも霊夢は暇しているらしい

 

「今日も暇だわ。」

 

「たしかに暇そうにしてるね。今日は何人来たんだい」

 

「そうね珍しく今日は二人きたわ」

 

「ふーん。二人だけか、じゃあもう今日は来ないかもな」

 

「邪魔者は来ないでいいわ」

 

「参拝客を邪魔者扱いですか…」

 

「参拝目的じゃないなら参拝客じゃないもの帰ってちょうだいってなるわ。」

 

「それもそうだな。」

 

「ところで、あんたは何しに来たの?」

 

「お賽銭入れに来ただけ、」

 

「あら、ありがとうね。」

 

「さて、今日もゆっくりさせてもらおうかな。」

 

「こっちいらっしゃい。」

 

「ん?なにかあったか?」

 

「いいからこっち来て隣に座るの」

 

霊夢の隣に座り込む男

男が確かに座ったことを確認すると霊夢は距離を詰めていく。

 

「あんたさ、仮で私と付き合ってることになってるじゃない。」

 

「まぁ、そうだね。」

 

「それでなんだけど。」

 

恥ずかしいという感情を押し殺そうと必死に平常を保つ霊夢

それでもあまりにも男が普通なのでやはり耐えきれず顔をそらして話す

 

「あんた、このまま私と付き合いなさいよ。」

 

「それは、本当の意味の付き合いか?」

 

「そ、それ以外何があるのよ。」

 

「もしかして僕のこと好きなんです?」

 

顔を赤面し逸らして言う

 

「そ、そうよ、悪いかしら」

 

「いつ頃から?」

 

「そうね…思うようになったのは求婚騒動があった頃からかしら。」

 

「そうだとすると君は僕のある発言を聞いているね。」

 

思い返す霊夢はすぐに分かった

むしろ、その発言で今まで話を切り出せなかったのでもある

 

「恋愛関係は疎遠…だったかしら?」

 

「そう。でもね。一つ決めていたことがあるんだ」

 

「どんなことかしら。」

 

「もし、僕を愛する人が現れたら。その人を死ぬまで愛するって。つまり…」

 

それを途中まで聞いて霊夢は男の口を塞いた。

 

「わかった、それ以上は言わないで、私が耐えれないから」

 

「だから、さっきの付き合ってほしいの答えには、応えるよ。」

 

「正直に言うわ…ありがとう。」

 

「これからは毎日来るよ。」

 

「うん。来てほしい。」

 

隣々で座る二人

霊夢は男の肩に頭を寄せて

一つ呟いた

 

「あんたと居ると、恥ずかしいときもあるけど。なんか、すごく安心するし落ち着くのよね。」

 

男はそこで初めて気を荒げた

 

「な、何を言ってるんだ。魔法も何も使ってないからな。」

 

「いいのよ…それで…」

 

日に当たって微睡む霊夢

男は霊夢の頭をなでてゆっくりと眠る霊夢に膝枕をして見守っている

 

 

 

 

 

 




後書きはないですぜ兄貴


それではまた会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

親愛なる者達

どうも松K.です

前書きよりも本編を読んでください


ではごゆっくり


夜中に用事があって人里を歩いていた、

 

何か後から気配を感じて振り向いてみることにしたんだよ。

 

そしたら…

 

眩しい光と同時に大きな声が聞こえた。

 

「驚けー!」

 

まぁ、確かに驚いた。尻もちも付いたし何よりも眩しかった。

 

誰の仕業かわからない

顔をよく見ていなかったものだから仕方ないが、傘を持った青い服の少女だってのは分かった。

 

そんな少女がなぜいたずらをするかは知らないが。こういうイタズラは里でよく起きるらしい。

 

 

ある日の夜だ。

 

雨に濡れるのが好きなものだから。小雨程度ならと思い、傘もささないで歩いて仕事帰りに家まで帰っていた。

家に帰ると。

イタズラばかりしていたであろう少女が座りこんでいる。

 

意識はないが眠っているようだ。

 

息が荒くおそらく疲れているのだろう。

逃げていたのか単に疲れていたのか。

 

昨日から指名手配の様な張り紙もあったし、前者だろうとは思う。

 

そんなことだから。とりあえず扉の前では邪魔なので家に連れて行く。

 

所業から人ではなく妖怪なのはわかっていたので。目が覚めたときに何されるかわからないため。とりあえず簡単に手は縛っておいた。

 

 

どうしたものかと。晩飯を食べながら考えていると目をさました。

 

「あれ…ここは…」

 

「目が覚めたのか。」

 

少女は初めはぐったりしていたが、

気がついたのか私を見て睨みつけてきた。

 

手縛ったのだから仕方ないか。

 

「あ、あなたが私を捕まえて…」

 

「捕まえたというよりかは…そうだな。預かっていると表現しておこう。」

 

指名手配をおいそれと差し出す俺じゃない。更生できるならしてやりたいが。

 

「指名手配されてたんだっけ…どうするつもりなの?」

 

「別に。俺の勝手だ。」

 

「そう…そうだよね…」

 

案外簡単に諦めるみたいだ。

 

「そうだな…」

 

「ってやる…」

 

何かつぶやいてるみたいだ。

 

「呪ってやるんだから!」

 

いきなりすごいことを言い出すな

と、そうは思っていたが

案外そうでもないかもしれない。

 

「貴方に一生つきまとって!死ぬまで驚かしてやる!」

 

いや…それだけか…

正直にいえば。

さほど…怖くはないか。

 

「まぁ、好きにするといい。」

 

「絶対!絶対に驚かしてやるんだから!」

 

よほど怒っているらしい。

ここまで感情的なことに驚く

 

「ただ、今、君を自由にするとまた里で追われるかもしれないだろう」

 

「うん…」

 

「とりあえずしばらくはここにいろ。その方が身のためだ。」

 

軽く提案をする

すると頷いて、半分嫌そうに提案に乗った。

 

「まぁ、外に出て捕まるか。ここに残って隠れているかだし。ここは里からは離れているから、わざわざ家まで探しに来るやつなんかいないさ。」

 

それを聞いたのか。ホッとしている様子だった。

しかし気が緩んだのか、さっきの怒ったのとは真逆となった。いきなり泣き出して私に謝り始めだした。

 

「…ごめんなさい…ごめんなさい…」

 

「何がだ…?」

 

「まさか、驚かすだけで怪我させてしまうなんて…」

 

昨日の事件のことなんだろう。

 

少女が子供を驚かしたそうで

その子供は体の弱い子だったらしく、驚いた拍子に転けて地についた際、腕の骨が折れてしまったらしい。

まさかとは思った少女もその場で子供を介抱し、医院まで連れて行こうとしたのだが。

気の働かない大人のせいで加害者悪人扱いだ。

悪を認め善を積もうとする者を悪人呼びするほうが悪人な気もするが

 

この少女に限っては今までのイタズラが過ぎたのだろう、仕方のないことだと俺は思う。

 

結果子供は医院まで連れていけたが

その場で捕まりそうになり。

逃げたのだという。

 

まぁ、あのまま捕まっていたら、まともではいられなくなっていただろう。

賢明な判断だ。

 

 

「起きたことは変えられないし。いくら俺に謝っても何も変わらないぞ。」

 

「なら、わたしはどうすれば…!」

 

自分で考えろ…と言いたいところではあるが

 

「捕まれば良かったのかな、逃げずにそのまま謝っていれば。」

 

見苦しい考えばかりだ。それでどうなりたいのか。

 

「いくら考えても意味がないぞ。」

 

「じゃあ、私はどうすばいいの?」

 

簡単な話だ

 

「妖怪が人に害を成すのは当たり前、むしろそれを悪と捉えて人の法で裁こうと思うのも間違い。だから簡単に言えば悪くないわけではないがそれは必然だからお前が悪く思うことはない、、それともう一つ。お前はその子供を助けようと自分を改めた、それを踏み躙るような行動を取る大人たちも悪い、理解が足りないってやつだな。」

 

「えっと?…えっ、えっと…」

 

「お前は悪くない、妖怪として当たり前のことをしたまでだ、そしてお前はいいやつでもある。だから、そのままでもいい。」

 

複雑等な顔をしている少女だが。どうやら理解はしてくれたらしい。

 

「ただ、調子に乗るとまた同じことになるから気をつけろよ。」

 

「うん…」

 

俯いてばかりだったから、とりあえず手を縛っていた縄を解いた、

そしたら急に泣きついてくるものだから少し驚いた。

 

「いま驚いたよね…」

 

「まぁ、そうだが。」

 

「でもそんなことはいいの。あなたにも謝りたくて、」

 

「なんのことだ」

 

「さっき散々怒っちゃって、呪うだとか、つきまとうだとか言っちゃって…」

 

あー…そんなこともあったな

申し訳ないことだが。

半分ほど聞き流してたものだから覚えてなかった、

 

「別に気にしてないさ」

 

「しばらくここに居させてもらえないかな…その…何かやれることがあるなら。」

 

やれること…、まぁ、派手にやらかしてもらわなければ特に。

 

「自分の家だと思ってしばらくゆっくりするといい、それが今できることだ。」

 

「それだと、申し訳なくて大したことできないけど…」

 

「まぁ。問題起こさないでくれればいい。」

 

「…うん、わかった」

 

その後、少女は部屋で蹲っていた。何か考えているのだろうか。

聞き出す理由もなければ聞いて何かあるわけでもなさそうだが。気にはしておこうと思う。

 

とりあえず少女の分の晩飯を用意し

少女に声をかける。

 

「わざわざ私のために…?」

 

頷いて食べるように促す。

 

「でも…」

 

「気にしてばかりでは、何もうまく行かない。とりあえず食って落ち付いてみろ。」

 

そう言うと、少女は恐る恐る用意した晩飯を食べる。

 

「おいしい!」

 

その一言で少女は明るくなりやっと俺も気が落ち着いた。

 

まだ少女のような妖怪だ、里の大人が何するかわからん

保護という名目になるのかもしれんが、しばらくはここにいてもらうしかない。

 

それが今の少女にとっても里にとってもいいのだろうと、俺は思う。

 

その日は、少女は家で寝泊まりした。椅子に座って本を読んでいる最中に寝てしまったので俺のベットに寝かせておいた。

 

俺の寝床が無くなるが…

まぁ、ソファーでも寝れなくはない、

 

 

 

次の日の朝だ。

 

家の扉が強く閉まる音と鍵の閉まる音、それと扉を叩く音で起きた。

目覚めが悪い…朝から何があったと言うんだ。

 

目が悪いものだからソファーにおいた眼鏡をかけて周りを見渡す。

 

すると少女が駆け寄ってきて、

声をかけてきた…

 

「た…助けて、…来たのよ…」

 

何が来たというのか。

まさか里から…?

わざわざご苦労なことだとは思うが。

 

そのまさかであった、

 

「はいはい、今出ますからお待ちください。」

 

その一言で叩く音は消えた。

 

鍵を開け扉を開ける。

 

すると血眼になって顔を真っ赤にした輩が散々いた。

 

「何用で。」

 

「ここにあの小娘がいるのはわかってるんだそこをどけ!」

 

狩人じゃあるまいし、落ち着くべきだ。それと家をを勝手にしてくれるのは困る

 

「お帰りください。ここにはイタズラ妖怪なんていません。あと勝手にうちを荒らすなら里に迷惑状を出します。貴方達のような非常識な人たちがいると里も迷惑を被ると思いますよ。」

 

するとさらに顔を赤くしてしまった。火に油を注いだか。まぁいい。

 

仕方ないからまた扉を閉めて鍵を締めたするとまた扉を叩く

バカの一つ覚えのように言葉を繰り返す、

 

全くだ。

 

そのうち扉を叩く音が消えて

老いた声が聞こえた

聞き覚えがある

里の権力者の爺さんだろう。

まさか権力者がわざわざ捕まえに…?

ご苦労なことだ。

 

「開けてくれんかね。」

 

乱暴と荒さないことを誓えば

 

「安心してくだされ。我々はあの妖怪の娘に用事があるだけじゃ」

 

「その用事の内容を聞かせてもらえますかね。」

 

「部外者には話せぬ」

 

「ならお引き取りください。」

 

勝手に入られては困るし

少女もかなり怯えている

そんな状態でまともに話ができるわけもない。

 

ここは何が何でも下がってもらわないと。

 

「どうしてもかね?」

 

「はっきり言えば貴方達の探している少女は確かにいます。でも彼女は今怯えてて、まともではない状態です。仮にも妖怪、何が起きるかわかりません。ですのでお引き取りください」

 

かなり頑固だ、下がりたくないと見える、

 

「言っているではないですか。害は成さないと、」

 

「私が無事であっても少女に何かあれば私が許せません、里につれていくのであれば私も同伴します。今は私が彼女の保護者です。」

 

返事がない。小声は聞こえるから相談をしているようだ。

やがて返事が来たでも、それは老いた声ではなく若い声だった

 

「わかりましたでは同行をお願いします」

 

「お待ちくださいね。」

 

条件に乗られたからにはこちらも引き下がれない

仕方なく少女を説得し絶対に離れないことを約束し。

扉を開ける。

すると扉の前には若い男が一人で立っていた。

 

「他は?」

 

「里に戻られました。」

 

わかりやすい嘘だった、

真後ろ、いや、正確には後方から異常な殺気と気配を感じる。

 

「家の裏手に回り込ませましたね、勝手に家に入り込むのは許していませんが?」

 

「貴方には要はないのです早く娘を引き渡してください。」

 

そのことを聞いて、流石に腹が立ったので引きこもることにした。

 

「お断りします。帰ってください、」

 

こうなれば篭城だ。

 

少女も怯えている。俺もとてもじゃないが冷静さを失うか。

 

全くだ。

 

結局また老人が声をかけてきた。

 

「聞こえるかね。」

 

「何用で」

 

「今、先程だな。貴方はあの小娘の保護者と言うたな」

 

「ええ、確かに言いました」

 

「それならば一つお願いをしたい。」

 

「内容を」

 

「小娘が里でいたずらをしないよう里に現れぬよう、監視してくれるかね。」

 

どんなもの条件飛ばしてくるかと思ったらたかがそれだけか

 

「ふふっ。そうですか」

 

「何がおかしいのだ。」

 

「これは失敬。いいでしょうそのお願い聞きましょう。」

 

「よろしく頼みますぞ」

 

不便なことはある。それは今のうちに消しておこう

 

「ただ私からも一つお願いしましょう」

 

「なにかな?」

 

「私が同伴でのみ里には行かさせてもらいます」

 

「なぜかな。?」

 

「簡単な話です、私が離席中、少女に好き勝手させないため、それと里の人々に監視がしっかりとされているという証明をするため、」

 

「なるほど…」

 

「あとは単純に俺の生活関係で里に行くからそれについてきてもらう」

 

「それならば問題はなかろう、しかし問題沙汰になれば即出入り禁止とさせてもらうがよろしいかな?」

 

「ええ、構いませんよ」

 

結果この場で全部解決した。

 

里の人達か帰った後、少女が話しかけてきた。

 

「もう驚かしちゃだめなのかな」

 

「あぁ、そうなっちまったな」

 

「そっか…」

 

悲しそうに俯く

何もしてやれないどころか。

こいつには悪い条件に乗ってしまった

それは俺の責任でもあるが

どうにも不甲斐ない

 

少女は俯いたまま寝てしまい。仕方ないからまたベットに寝かしておいた。

 

特に何もすることがなく暇が続く。

家の隣の畑もまだ野菜の収穫には遠い、

かと言って山に行って山菜採りをするわけにも行かない。

 

どうにも暇だから

この前鈴奈庵から借りてきた本を読んでいた。

それにも流石に飽きてきたのか次第に微睡み始めてきていたころ。

 

「驚けー!」

 

何事かと大きな音に驚き体が一瞬跳ねた。

すぐに振り返ると先程まで寝ていた少女の恥ずかしそうに笑う姿があった

 

「どうかな、驚いてもらえたかな?」

 

「ああ。結構効いた…おかげで眠気がどっかすっ飛んだよ。」

 

そう言うと少女は笑顔になり安心したように俺の隣に座りこんだ。

 

「貴方は私が妖怪だというのはわかってるんだよね。」

 

「あぁ、まぁそうだな。」

 

「さっきの話だと私はずっとあなたと一緒にいることになるんだよね。」

 

「そうだな…嫌か?」

 

少女は考えながら話た。

 

「嫌じゃないかな。」

 

そして俺を見て話し続けた。

 

「貴方って、優しくて強くて暖かいんだもん。そんな貴方を嫌いになるなんて私には出来ない。だからね、貴方さえ良ければ…私はずっとここに居たい。」

 

少女の言葉に心を動かされた、

里を出てから誰かに想われたのは久々かもしれない。

もちろん里に知り合いや家族はいるが、疎遠になっているし、兄弟とは元々仲の良い方ではなかった

 

少女が望むのなら俺は彼女を守り続けて行く。それだけだ。

 

「あぁ、構わないよ。」

 

少女はふふっ、と笑って立ち上がった。

そしてまた一言

 

「これで、貴方を一生驚かしていられるね」

 

なるほど、さすが妖怪の考え方は一転しているようだ。

 

少女にとって驚かすとは生き方、アイデンティティとかいうやつだ。

それがなくなってしまっては悲しい限りなのだろうが。

俺がいなかったら全部無くしてたのかもな。

 

「俺でいいのか?」

 

「貴方を驚かすとね、お腹一杯になるだけじゃなくて、心も暖かさで一杯になるの。だからね、すっごく幸せでね。貴方が大好きでね。」

 

なるほど。

俺に心を寄せるのか、

 

「俺が好きか」

 

「恋人とかそういうのはちょっと遠いかもしれないけど。でもずっと一緒にいたくて。」

 

どうも心が暖かくなる。

親子ってこんな感じなんだろうか。

俺は今まで親に縛られて生きてきたから、こんな暖かみは初めてかもしれない、

 

「そうだな、俺も好きだし一緒にいてあげたい。」

 

俺も少女もお互いにお互いを必要としていた。

生きていく上で誰かを欲するのは当たり前だと聞くが。それが今なのだろう。

 

たまに喧嘩もする。一方的に感情をぶつけもしたりされたりする。

 

でもその度それを認めあっている

 

何よりも繋がりを持てたことに俺も少女も喜びを覚えていた。

 

それでまた、用があって人里に行くことにした。

技師の河童に用があったのだ。たまに里に顔を出すことがある。そのときにお願いをしたく里に行くことにしたのだ。

 

簡単に言えば機械のメンテナンスだ

 

少女と共に里に足を運んだ。

 

少女を連れて歩くものだからやはり鋭い目線を飛ばす輩もいる。

 

だが、そんなばかりではない。

少女に興味を持って好意を抱くやつもいる、

 

悪いことばかりではないようだ。

 

買い出しもついでにしておこうと思う。

 

それで河童がいつもいる暗い路地に入ったときだ。

後ろからいつもの声が聞こえた。

 

「おや、あんたさんいつの間に子を持ったんだい?」

 

「子じゃねぇ、拾い妖怪だ。」

 

「あー。忘れ傘の。」

 

「知ってるのか。」

 

「噂はかねがね。でもまぁただのいたずらに過ぎないのにねぇ。」

 

「俺が保護者として預かることにした。」

 

「忘れ傘を拾い傘って感じか、」

 

「まぁそんなとこだな。」

 

「今日はどうした?メンテナンスかな?」

 

「よくわかったな。時計を直してもらいたい。」

 

「はぁー…またあんたの家まで出張か…」

 

「すまないな、今夜は晩飯を用意するよ」

 

「おっ、よし乗った、きゅうりは出してくれるんだろうね?」

 

「この通り袋詰めだ。」

 

「なかなか準備がいいじゃないか、そういうとこ好いちゃうねぇ。」

 

「まぁ、そうでもしないと来ないだろう」

 

「よくわかっていらっしゃる」

 

談笑を終わらせてから後で家で会う約束をし大通りに戻る。

 

するといきなり人里の住人に囲まれた。

 

「これは一体なんのつもりですか、」

 

「その小娘にはやはり出てってもらいたい。」

 

「理由は?なぜ今になって。」

 

「いつイタズラをされるかわからない、それでまた被害が出ても困る。」

 

そういうと有無を言わさず近寄って少女の腕を掴み引っ張りだす。

 

「いや…やめて!」

 

俺も黙っちゃいない、

すぐさま少女を掴む腕を振り払おうとする、

 

すると少し離れたところから聞き覚えのある老いた声が聞こえてきた。

 

「やめんか!何をしておる!」

 

その声と同時に水玉のようなものが周りに浮かび始めた。

 

「身勝手すぎる。それでなんの満足なのさ。」

 

人里の長老とさっきの河童だ。

 

どうやら騒ぎを聞きつけたようだ。

 

「お主らに少女を問い詰めることは禁止したはずじゃ!その男に任せるのが吉と同意したではないか!」

 

「し…しかし!」

 

「あんたらさ、これ以上何を望むのよ、皮肉だけど、もうそいつは何もできやしないよ」

 

腕を振り払い少女を後ろに隠す。

 

「何を考えておる、なぜそこまで。」

 

「ただの八つ当たりだよ。何もできないんじゃ悔しいんだ」

 

それ以外何も言わず男たちはイライラしたまま帰っていった。

 

長老が申し訳なさそうに話し掛けてくる

 

「これは申し訳ないことを…」

 

「あいつらには今度、度の効いた説教をしといてくれ。」

 

「娘や、すまないな…」

 

怯える少女に手を差し伸べる。

少女はそれに応えるのを戸惑った。

 

「やはり…まだ怖いかね。」

 

「ごめんなさい…」

 

謝りながらも、怯える少女

長老はまだ申し訳なさそうにしていた。

 

「今回ばかりはこちらの不手際、そなた等にはなんの非もない。」

 

それはわかっている。

これでこちらのせいでは話にならない。

 

「里での息苦しさはあるかもしれぬができる限りこちらも手助けはしようとは思う、悪く思わんでくれ。」

 

「あぁ、助かるよ。」

 

一しきり落ち着いた頃、長老は去っていき、荷物を持った河童が寄ってきた。

 

「また面倒になったもんだねぇ、小傘さんや」

 

小傘。少女の名は小傘というのか

 

「…貴方は人里にいて、なんともないの?」

 

「私にとって人間は友だ盟友だ、それにあんたの隣にいる男は元々。」

 

それ以上言われると困るが…

 

「おい待て、それだけは言うな。」

 

「いいじゃないか、どうせあんた、小傘に心開いてんだろ?」

 

まぁ…そうだが…

 

「場所を考えてくれるか。」

 

「まぁ、そうだねぇ。」

 

結局河童と同行して帰ることになった

 

帰り道の途中、人里を歩いていると一組の親子が話しかけてきた。

 

「あなたですか?」

 

母親のほうが少女に話しかけてくる

 

「えっと…私が何か?」

 

「うちの子を医院まで連れてってくれたんですよね…?」

 

「は、はい。だって怪我しちゃったから。」

 

「それです、お礼を言いたくて。」

 

「えっ、?でも…」

 

「おねぇさん、ありがと!」

 

親子は少女の答えも聞かずただお礼をしていた、

結果良ければそれでいい

 

「まぁ、間違いじゃなかったってことだ。良かったな。」

 

少女…小傘は恥ずかしそうに頷いた。

 

親子と別れて里を離れ、家に戻る

 

するとすぐに河童が暑そうな上着を脱いだ。

 

「はー!ほんとここは快適だよー!」

 

「いきなり肌けすぎだ、少しは控えろよ、」

 

「いいじゃないか、どうせ私の家みたいなものだし。」

 

何を言い出すか。

 

「全く、ほら、早く時計を直してくれ。」

 

「はいはい、今診ますよー」

 

慣れた手つきで時計を解体、部品を修復していき、組み直す

十五分からニ十分ぐらいで人の体より大きな置き時計が正常に動き出す、

 

「ほんと、お前のその技術には感心するよ。」

 

「でもさぁ?これなんの意味もないんだよねぇ」

 

この幻想郷に時間の概念はあまり意味がない、俺が独断で考えて使っているだけで、本来の使い方は知らない。

 

「置物としては優秀だ。」

 

「そんな置物をわざわざ私に直させるとは、いい趣味してるねぇ。」

 

「ちょっと修復して、そのお代替わりに晩飯食えるんだからいいだろ、」

 

「ごもっともで、」

 

そういうと、さらに着ていたカッターシャツのような服すら脱いでタンクトップ一枚になる。

「何もそこまで暑くないだろ。」

 

「身が苦しい感じがするんだよなぁ。厚着すると」

 

厚着という厚着ではないだろう。

 

横から見ると胸が見えかける。

あまりにもだらしなく感じるが…

流石に目も耐えられない。

 

「さっきから赤くなってー。見える?ねぇ、みえるぅ?」

 

あからさま過ぎて泣けてくる。

 

少女は里での事件の反動で疲れているのかソファーで座って寝てしまっている。

 

「今なら何でもできちゃうねー?」

 

勘弁してくれよ…

 

そんなくだりをしていると河童の腹が鳴った

 

流石の河童もこれには恥ずかしさを覚えたようだ

 

「な、なんにも聞いてない!私はお腹へってないから!」

 

「じゃぁ、晩飯いらねぇな」

 

「いや、食べる!ごめんなさいって!」

 

河童が叫ぶものだから少女が起きた

 

「うーん…どうしたのぉ?」

 

「河童が腹減ったみたいだから晩飯にするんだ」

 

「私がお腹空かなくても晩飯は食べるでしょ!」

 

そんな河童の焦りを押し退けながらも三人分の夕食を用意した。

 

「相変わらずの味付けだねぇ。」

 

「あっさりしてて美味しいよ」

 

まぁ、料理は下手な方ではないが。薄めであっさりした味付けにいつもするものだから、あまり好まれない。

 

「濃い味は好きじゃない。」

 

食べ終わり。ゆっくりしていると。

河童がまた話し始めた、

 

「小傘はさ。なんでこの男と居ることにしたの?」

 

「成り行きっていうか…拾われてそれで。いろいろあって。」

 

「ふーん。確か里でいたずらして相当嫌われてたよね。」

 

「うん…まぁ、」

 

「それで、追われて逃げた挙句、家の前で意識無くして行き倒れてるところを拾ったんだ。」

 

「へぇー。相変わらずお人好し」

 

「好きに言え。」

 

「さっきの話の続き話そっか?」

 

結局そうなるのな。

 

「気になります。なんだったっけ?」

 

「この男は元々、里に住んでたんだよ。でもある薬屋に騙されてある病気になったんだ、」

 

「病気?」

 

「病気って言っても体に害悪があるわけじゃないけどな。」

 

「でも、普通の人ならかなり後悔するのにこの男はどうとも思わないんだよね。」

 

「どんな病気なの?」

 

「うーん。なんていえばいいかなぁ」

 

「そのままだ、死ねなくなる病気。」

 

「それって…」

 

そう、不死だ。

 

昔、二度と治らないと言われる病気に掛かり。かなり苦しんでいた。

永遠亭の薬屋にいろいろな薬を処方されたがどれも効かなかった。

 

でも一つだけ絶対的に効く薬があると言われ、俺もそれを望んで飲んだ

 

それで…不死になったのだ。

死にたくない、まだやりのこした事がある

 

でもやり残したこともなくなり、後悔も消え去っても尚病で死ぬことはなく生きている

それこそ健康体で、

 

「不老不死…だよね」

 

「あぁ、すっかり騙された気分になったけど、まぁ、この普通な生活がつづくなら悪くない。」

 

「ほら、つまらないこと言う。どうせ普通を繰り返すならさ、」

 

このくだりは何回目か、

 

「私もここに居させてよー。」

 

それだけはどうしても気が乗らない

 

「めんどい、却下」

 

「もーまたそれじゃないか!」

 

小傘が呆けて聞いているから河童が茶化す

 

「まだ早いかな?子供だねー」

 

子供でも妖怪は妖怪だ、

 

「実は言うと。こいつがまだ里にいた頃に。私はこいつに愛を誓うつもりだった」

 

懐かしい話だ。

 

「えっと…好きってことですか?」

 

「そう。誰よりもこいつが好きだった。」

 

「俺は何も言わん。」

 

「でも、こいつは私が妖怪だって、河童だって知らなかったみたいだから。悲しせてしまうって言って、少しも私に向いてくれなかったんだよねー。」

 

「悲しませる?なんで?」

 

「ほらこいつ、不死でしょ?それだけでも違いがあってそれで、らしいんだよね。」

 

「でも、妖怪なら今は?」

 

「どうなの?ねぇ。」

 

「発言は控えさせてもらう。」

 

「ほら、いつも、こんな感じ」

 

「なんで、この人はここにいちゃいけないの?」

 

それもまた、何度目の質問か、

 

「単純に面倒だからだ。」

 

「ふーん。私、面倒なんだ、」

 

面倒だからこそがこういう関係でいられる。これ以上は望むと思わない

 

「でも、お前には感謝している」

 

「い。いきなり何さ」

 

「いろいろだ。」

 

頬を赤くしてうつむく河童。

こいつのこの表情を見るとどうも胸が熱い。

 

わかってはいるが。

どうしても【怖い】んだろうと思う。

この河童が俺を好きなのはわかってる。俺もその思いには答えてやりたい。

だが、俺がこいつにしてやれることが見つからない。

普通の人間…いや、ただの不死の人間が、技師の河童に対して、何がしてやれるのか。

探しても探しても見つからない。

 

「そんなに…私が一緒にいると迷惑?」

 

「俺がお前に釣り合わない」

 

「そんなこと気にしないよ」

 

「俺が気にするんだ。」

 

「でも…私は…」

 

これ以上繰り返すのも、河童に悪いか。

でも俺にも俺の意志があるわけだが…

もう、こればかりは河童を…彼女を受けいれていくのがいいのかもしれない。

俺もいつまでも孤立意思を引きずる訳にもいかない?

 

「なぁ、河童。いや、にとり」

 

「なにさ。」

 

「本当に俺でいいんだな?」

 

「私には、あなた以外にいないからね、、」

 

「わかった。なら、それなら。」

 

「一緒にいてもいいの?」

 

「あぁ、あの日の答えだ。

俺もお前が好きだ。」

 

「うん!」

 

河童が明るい顔をするとまた胸が熱くなる。

出会いの多い最近だと痛感する。

いつから俺はこんなにも好かれるようになったのか。

 

元々嫌われもので。好かれるのも好きじゃなかった。

 

だが、今は変わってきている、

自然と好かれ好いている。

 

だが、俺も含め普通の人間ではない

それはまぁ…俺が不死だからというのもあるのだろう。

 

これもあの吸血鬼の言う【運命】ってやつか

 

悪くない。だが、昔を振り返ると俺がどれだけ損をしていたかよくわかる。

 

これからはこの親しき者たちと。

愛しき者たちと、生きていきたいと思う。

 

 

 

「ねぇ…」

 

唐突ににとりが話し掛けてくる

 

「あんたの名前、そういえば教えてもらってない。」

 

「あぁ。あだ名しか教えたことなかったな。」

 

「あんたにあんなあだ名は合わないよ」

 

名前か…

 

「私も知りたいな」

 

小傘も寄り添ってくる。

 

状況の説明がまだだったな、

 

実は今、俺はベットに寝ている。

 

二人の分も用意したのだが

どうしても俺の隣で寝たいという。

それで今両手に花状態だ。

 

勘弁してくれよ…暑苦しいだけじゃなくて寝苦しいとかそういうのじゃなくて。

 

恥ずかしいとかそういう感情に包まれて心を無にするのが精一杯だというのに。

 

質問までされたら気が確かじゃなくなる…

 

「名前か…」

 

「「あなたの名前は何?」」

 

「…」

 

「そっか!」

 

「いい名前だね!」

 

早く寝たいの一心で呟いた。

 

その後二人は俺の腕にくっついて寝ている

散々だ…そう思いながら二人の寝顔を眺めるとどうも心が和らぐ

 

俺も心が温まったような感覚で眠気が来て寝た。

 

いつかの吸血鬼

あいつが言っていた

 

あなたのように苦労と努力と損を重ねた者はいつか報われる。

安心なさい私が保証するわ。

 

その言葉を思い出した、

そう、報われる、今がその時で

俺は幸せを手に入れることができたのだろう

 

俺はいつまでもこの幸せが続いてほしいと願っている。

だから、俺はこの二人を大切にしたい。

 

「いつまでも愛してるよ」




ついに一万文字を越えました

ついでに題名もすぐ思いついた

それだけ

ではまた会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

永遠を誓って

どうも夢子です。

前書きは燃え尽きたのだ

ではごゆっくり


「おい、起きろ!」

 

嫁のその一声で目は覚めた。

 

「起きろって、飯が冷めるだろ。」

 

その声と同時に布団を剥がされる。

ああ、寒い、身震いをしてしまった

 

「ほら、起きて飯を食うぞ、せっかく作ったんだから、」

 

仕方なくベットから身を起こす。

 

「あぁ…おはよう、今日寒いじゃないか…こんな朝早くからどうした…?」

 

「早くはない、いつも通りだろう…」

 

そんなこんな会話をして食卓につく。

二人着いて食事を済ます。

 

「美味しかったか?」

 

「おいしかったぞ。」

 

わかりやすく簡単な返事で伝わる

 

「そうか、よかった。」

 

嫁が飯を作るのは珍しい方で、

普段は俺が飯を作る。

 

とは言っても嫁も料理が下手な訳ではない。単に俺が作ることが多いだけだ。

 

「今日はどうするんだ、買い出しにはお前が行くのか?」

 

「ついてくるか?」

 

「別に私はどっちでもいい。マフラー編んでる途中だし。それを終わらせるのもあるけど」

 

「またには二人で行くか?」

 

「そうだな。」

 

人里から離れた竹林

迷いの竹林に俺達の家がある。

 

慣れたものだから迷いはしない。

この竹林で迷うのは人里の住人ぐらいだろう。

 

寝着から着替え、家を出る。

買い出しにはよく行くが二人で行くのはたまにしかない。

だから夕食はどちらかの好みで作ることが多い。

 

竹林を歩いていると見知った顔を見かけた。

 

「あっ、月の兎じゃないか、」

 

「あっ、妹紅さん、お久しぶりですね、」

 

「君は確か。レイセンだったかな?」

 

「はい。えっと名前は…」

 

「あれ?会うのは初めてじゃないはずだけど。」

 

「そうでしたっけ?」

 

忘れられてもおかしくはない、もう一年前の話だしな。

 

「輝河だ、覚えておいてやれ」

 

「あー!永遠亭でお会いしましたね!」

 

「あのときは挨拶程度にしか会わなかったからな忘れても無理ないか」

 

「なんかすいませんね、」

 

「いいさ。」

 

「それにしても、お二人揃ってどこに行かれるんですか?」

 

「里まで買い出しだ、たまにはいいかと思ってな。」

 

「普段どっちかが行くからね。」

「そうなんですね、それでは私は八意様のとこに手紙を届けなきゃいけないでこれで!」

 

「ああ、気をつけろよ」

 

「はい、お気をつけて!」

 

レイセンは走って永遠亭まで向かっていった。

俺達も竹林を抜けて里にたどり着いた。

 

丁度今日は里の商店街の盛んな日らしく

出店と屋台とがたくさん並んでいる

何かの祭りだろう。

 

俺等もその雰囲気に溶け込んで楽しもうと思ったがどうも妹紅がその気じゃないようだ

もちろん、そんな雰囲気だから、いろんなやつが集まる。

鬼はもちろん、博麗の巫女も魔法使いも吸血鬼や仙人達も集まっている。

 

 

 

「あら?、こんなところで会えるなんてね。」

 

「ああ、あんたか、」

 

幽霊と半霊すらいる。

 

「幽々子こそ、珍しいな。」

 

「だってお祭りよ?美味しいもの食べ放題じゃない。」

 

「あの…幽々子様…これほんとに全部食べるつもりなんですか…?」

 

妖夢のもつ袋にヤキソバのパックと焼き鳥のパックなど約20ほど詰まっていた。

流石大食いなだけはある

 

「あなたも食べたかったら食べていいのよ?」

 

「私はもうお腹いっぱいですよ…」

 

「相変わらずだな、お前も。」

 

珍しく妹紅が口を開いた。

妹紅は人里だとあまり話さない。

まぁ。以前色々問題があったからだ。

 

「もう…自分で持ってもらいたいです…」

 

「えー、手に持ってたら食べれないじゃない、」

 

「はい…おっしゃるとおりです…」

 

そんなくだりをして幽々子と妖夢は次の屋台まで向かっていった。

 

「何か食いたいものあるか?」

 

妹紅に軽く提案してみた。

 

「お前の手料理」

 

「さいですか、」

 

祭りの屋台の食事は嫌いだろうか。

 

「八百屋向かうか、」

 

祭りの会場をあとにして

里の中央のいつも行く八百屋に向かう。

 

すると、八百屋のおばさんが出迎えてくれた。

 

「待ってたよ、今日はお客さん少なくて暇でね、あんたらは特別、一割引いてあげるよ!」

 

祭りのせいでここらも人が少ないか

値引き非常に嬉しい

 

野菜を一頻り買う。

おばさんにお礼を言って

これまたよく行く肉屋に行く

肉屋と言っても魚も売っているから

肉屋とは言い難いのが本音だ

 

「牛入ってるか?」

 

「生憎少なくてね予約いっぱいなんだ。」

 

「そうか。困ったな」

 

「でもちょっと待ってな。普段の牛よりいい肉があるんだ。」

 

値段の張る高級牛肉か入ったらしい、

年に一度の貴重なものらしいが

どうやらくれるらしい、

 

「あんたらは特別、もう10年ものリピーター様だからな!たまにはサービスだ、」

 

お代を払おうにも元々ただでの仕入れだから金はいらないといわれ、素直に受け取った。

 

「今日はみんなやけに気前がいいな。」

 

「祭りの影響もあるからだろう。」

 

「そういうものか?」

 

「多分な」

 

いまいち里に馴染めない妹紅は今日はやけにおとなしかった。それとやけに俺にくっついている。

 

「今日はどうした?なんかいつもと違うが?」

 

「そ、そんなことはない、」

 

「いつもの乱暴さがなくなってる気がするんだよな。」

 

「き、気のせいだ」

 

そうか、まぁ、そうだろうな。

 

帰りに祭りの会場を通るとこれまた珍しい人に会った。

 

「あら、妹紅、今日も幸せそうね。」

 

「輝夜か、祭りを見に来たのか?」

 

「ええ、たまにはいいかと思ってね、それにしても手なんか繋いで、貴方らしくないわね」

 

やはり、らしくないと思う。

 

「私の勝手だ、いいだろう」

 

「俺の意志は無視なのな」

 

「だ、だめなら離す」

 

そう言いながらも強く握る。

 

「嫌じゃないからいいさ、」

 

「お熱いのねえ、」

 

「一応…お前には感謝している…」

 

「あら?貴方が意を表すなんて、ほんと、らしくないわ」

 

どうしたのだろう?

まぁ、ここで聞くのも妹紅の気に触るだろう今は控えておこう

 

「そういや、レイセンが永遠亭に向かっていたが、」

 

「玉兎ちゃんが?」

 

「えーりんとこに手紙を持っていくとかなんとか。」

 

「そう。」

 

軽く流されたが、まぁ輝夜にはどうでもいいことか。

 

輝夜が、屋台に気が引かれたようなので別れた。

妹紅も少しそわそわし始めている。

妙にくっついているし普段より大人しいし、本当にどうしてこうなったのだろう?

 

とりあえず里を離れて家に帰る。

妹紅は家に入るなり椅子に座ってうつむく。

 

丁度昼頃に家についたものだから

妹紅の言うとおり手料理を振舞った。

 

「うまいなぁ…うまい」

 

「そうか、良かった」

 

何も言わずただ黙々と食事を済ます妹紅

人里の屋台のものをつまんていたものだから俺はさほどお腹は空いてはいない。

 

食事を済ますとソファーの俺の隣にくっつくように寄って。

何も話さず、ずっと寝る仕草をしている

 

珍しいというか、らしくないというか、

どうしたのだろうか、

流石に心配になってくる。

 

「寝ようとしてるところ悪いが…ホントに今日はどうした?らしくないぞ、、」

 

「…今日ぐらい甘えてもいいだろ…?」

 

「それは構わないんだが。何かあったか?俺が何かあるんだったらできることなら何かするし。」

 

「お前のことではあるんだが…でも…」

 

「話してくれ。」

 

「わかった…」

 

 

 

妹紅が昨日寝たあと。

夢の話だ。

理由は覚えていないが。

俺と喧嘩をしたらしい

それで、俺が家を飛び出して行方をくらまし。それから会えなくなった

そんな夢を見たという。

 

妹紅からすれば悪夢のようなもので、

それで気分も上がらず、

俺が恋しくなり、

ずっとこんな様子なのだろう、

 

そう思えば妹紅と結婚をしてから

もう11年は経つ

それだけ長く一緒にいるがこんなことは初めてだ。

 

「今、お前といると…すごく落ち着くんだ…」

 

「そうか…」

 

「お前がいなくなったら私は本当に生きる意味をなくすかもしれない。」

 

「俺はお前を捨てたりはしない。だから大丈夫だ。」

 

「お前は…後悔してないんだな…」

 

「薬か?」

 

「普通なら永遠なんて嫌うはずだろ、、」

 

「お前が永遠に生きるなら。俺も永遠に生きるだけだ。」

 

「そうか…ありがとう」

 

妹紅と付き合い始めた頃。

 

妹紅が不死だと知った時、俺は別れようと思っていた。

 

俺が死んだら妹紅は悲しむ

そんな悲しい思いはさせたくなかったからだ、

 

だが、そう思った矢先

輝夜から提案された。

 

「好きなら好きで、そのまま続けなさいよ。」

 

「でも、俺はただの人間だ」

 

「永遠の命があれば、話は変わるのかしら?」

 

「もしあるならな」

 

「なら」

 

そのくだりのあと蓬莱の薬を渡され

不死になるために薬を飲んだ。

 

そして、妹紅と結婚した。

 

出来事としては…まぁ、

妹紅はすごく怒った。

輝夜にそそのかされて薬を飲んだこと

悲しませたくないという理由だけで別れようとしたこと。

他にも色々あるらしいが…

 

でも結局妹紅は、不死になった俺を受けいれてくれた。

 

いや、だからこそなのだろうか。

 

それからはずっと一緒に暮らして一緒に生きている。

 

お互いに永遠を誓って

 

 

 

 




後書きは灰と化したのだ

ではまた会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

運命に変えられた人生

どうも悠樹です。


前書き?知らない子ですね

ではごゆっくり


どこか見たことある光景。

 

始めてみたはずなのに。

何故か見たことがある風景

そんな不思議な出来事で

俺の運命は変わったのかもしれない

 

 

 

人里に住む私はある商売をしていた。

 

装飾品…アクセサリを作ることが趣味でそれが売れるのであればと思い。商売を始めた。

 

だが…俺が作るものはどれも人里の雰囲気や見た目などのそれに合わず。

 

物好きぐらいしか買うやつはいない。

 

まぁ、安価で売りに出してはいるのだが…

どうもやはり見た目と合わなければつけない。

つけないのであれば買わない…

 

そうもなれば売上も出ない。

そんなところだ。

 

ただ、大前提、俺が好きで作っているから。

売れなくても何も文句はない。

 

どんなものを作っているかというと。

簡単なものだ

 

ガラスや石、木造のものもある。

 

多種多様。どんなものでも素材にする。

その形が成り立つのであればだが。

 

あるものは勾玉から片翼がついたもの

あるものは陰陽玉のようなもの

あるものは小さな瓢箪

あるものは動物を模した小さな置物

 

どんなものでも造っている

 

置物はよく売れる。

髪飾りやピアスのようなものはあまり売れない。

 

それもまた様々だ

 

名の知れた店ではあるが…

なによりも芸術作品を見に来るだけの人のほうが多い。

 

買う気はない、見に来ただけ。

それでは美術館のようなものだ。

 

そんなこんなでのんびり生きながら趣味に全うしていた。

 

元から少ない客足が減った頃。

珍しいお客様が来た。

 

その姿を見た途端、俺は疑問を浮かばせたが気に留めても仕方ないと、作品の準備を始めた

 

「あら、人里にはこんな達者なお店もあるのね。」

 

その台詞には聞き飽きている。

そう言って人は買わないのだが…

 

「そこのあなたが店主かしら?」

 

話しかけられながらでは集中できないものだから、手は止めて返事をする。

 

「ええ。この店には唯一僕しか店員はいませんよ。」

 

「そう。これ全部あなたが作ったのかしら?」

 

「ええそうです。あのガラスの物も木彫りの物も」

 

「素晴らしいわ。いくつか貰ってもいいかしら。」

 

珍しい客というのはほんとに珍しい。

この店で物を買う客は10日に一人なものだから。

 

「構いませんよ。」

 

「それじゃ、選ばせてもらうわね。」

 

そう言うとその客は付きの者と作品を選び始める。

 

気を遣っているのは話さず喋らずにいるようだ。

ありがたいものだ。

 

ほんの数十分。

 

俺が2つ3つ作品を造り終えた頃。

 

二人で来た客は作品を持って俺のもとに来た。

 

 

「この5つ貰っていくわ、お代はいくらかしら?」

 

統一で硬化二枚。

外で言うなら弐百円のものだ。

 

「あら?こんな高級芸術品をこんな安価なんて。」

 

どうせ仕入れもただなものだから売れたらそれはそれで全部利益。

あまり価値なんてない。

 

「部屋に飾らせていただくわね。」

 

そのほうが造った物も喜ぶだろう。

 

その客達が帰ったあと。

作品を並べていてやはり疑問に思った。

 

人里の住人ではないのは確か。

そして初めて見るのは確かなのだが…

 

どこか懐かしくそして何故か見覚えがあるように感じた。

 

二人の客の内、片方は人ではなかった。

 

背中に蝙蝠の羽…洋風な服

 

付きの者もメイド服。

 

珍しいお客というのはこんなにも珍しいのか

 

そんなことを思いそしてその考えを忘れ。

また作品を造っている。

 

 

それから数日立った頃だろう、

先と同じ客が来た。

 

「相変わらずこのお店は素晴らしいわ。」

 

「お嬢様今日は持ち合わせがありませんが…」

 

「安心なさい。里の者から聞いたわここは全て安価らしいわ」

 

「だといいのですが…」

 

そのとおり、まぁ、欲しければタダでも渡すぐらいだ。

 

過去に聞いた話だが。

俺の作品を競りに出したものもいるらしい。

その時は凄く盛ったらしい

 

高価の紙幣五枚分

外の価格なら拾万円といったところだろう。

 

そんな価格で売れるなら

外の世界でなら俺は大金持ちになっているだろうな。

 

話はそれたが。

 

結局、客達はまたいくつか買っていった。

 

利益として嬉しい面はあるが、

なによりも造った物が買われて去ることか何か虚しい感じがする。

 

物造りな性格のせいか愛着がそれぞれあるもので、手元から離れるとどこか寂しい感じがしていた。

 

まぁ、仕方のないことか。

 

客が帰った次の日。

 

客のことを思い出し、

特徴を作品にしてみた。

 

蝙蝠の羽と懐中時計。

…とその2つを合わせたもの。

懐中時計と背中から蝙蝠の羽が生えているなんて、かなり変なものだ。

並べるには少し見栄えがよくないものだから。カウンタの下の棚にしまっておく。

 

 

リピーター…というのにはまだ遠いだろうけれど。

 

その客は何度も店に顔を出すようになった、

 

そのたび物を買う。

 

複雑な気持ちではあるが。

 

その客にイメージで作った物を

試しに作った、先のものを見せてみた。

 

「あら。なかなか悪くないわね。」

 

これはあくまで

蝙蝠の羽と懐中時計が別々のもの

の感想というだけで。

 

合わさった物を控えめに見せてみると…

 

「ふふっ。なかなか悪くないわ、面白い発想ね、気に入ったわ」

 

何故か気にいられた。

 

「あなた、名前は?」

 

名前を答えた後

そこで何かが起きた

 

そしていきなり客が目の前から消え

蝙蝠の羽等も消えていた。

 

人でないなら、魔法の類の一つや二つは使えるものだろうと解釈し、気にするのをやめた。

 

次の日のことだ。

 

例の客がこの店に来店したのだが

 

今日は買いに来たわけではないようだ。

しかも今日は付きの者が居ない。

 

「あなた。私の館に来ないかしら」

 

館と聞いて何か感じた

 

「紅魔館のほうが貴方の身に合っていると私は思うのだけれど」

 

何処でも造ることはできる。

どうせ買っていくのはこの客しかいない。

なら別に断る理由はない。

 

その提案に同意し。

俺は店を締め、

 

紅魔館で暮らすこととなった。

 

でも何も変わりはない。

ただ、俺は作品を造っているだけだ

 

そしてそれを部屋に飾り、

たまに館主やメイド、別館図書館の司書も来る。

 

その度造った物を例を言って持っていく。

 

オーダーメイド

 

というのだろうか。

指定されたようなものも造る

 

何も変わりはない。

俺は作るだけで、ほしいやつがものを持っていくのだ。

 

流れ的には何も問題はない。

 

ある日のことだ。

 

館主に呼び出されて久々に外に出た。理由も聞く前から魔法使いの所業で宙に浮かされた。

 

浮いた体のコントロールというものはどうも難しいのかと思ったが、、

普段からイメージしてものを作る私からすればどうということはないようだ。

 

隣で浮く館主が館を指してこういった。

 

その館を見た瞬間その景色が何故か見覚えのある景色に感じた。

当然こんなことは初めてだ

 

「紅魔館を模造したものを造って頂戴」

 

なるほど、そういうことか。

 

そういうことならお安い御用だ。

 

ものを作るのは構わない。

 

何度も確認し何度も手直しをして。

 

その度館主に見せても、

これが違う。これがこうじゃないと。

 

なかなか満足にはいかないらしい

 

こうもなればこちらも本気だと。

作ったいくつもの作品を見比べて。

兼ね合わせたようなものを作る。

 

それでやっと館主を頷かせるものができた。

 

大時計に館、図書館と、庭。

どれも繊細に作った。

それで満足してもらってこそ。

物造りのやりがいがあるってものだ。

 

館主はその後、度々俺の作業場に来ては眺めている。

 

何かするわけもなく、話しかけてくるわけでもない。

 

ただ、私が、休憩を挟むたび

寄り添って話をする。

 

何故かこの感じすら昔あったように感じる…

 

どうも気があるのか。

お茶を出してくるときもある。

 

館主なりのもてなしだろうか。

メイド長にも聞いてみたが。

そういうような事は以前には無かったという。

 

まぁ、なんにしろ私は彼女に受け入れてもらえたということだろう。

 

 

 

これからも仕事を続けていくし。

彼女との付き合いもあるが。

 

なによりも、

夢で見た光景というものが。

現実に、起きるという

その不思議から

私の運命は変わった。

 

 

 

そのことに今は驚いている。

 




後書き?知らない子ですね


ではまた会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

非情と無情

どうも、まつけー、です

まえがきなんてなくなったんですよ

それではごゆっくり



例えば…

 

大きな事件が起きたとして。

 

それが巡り巡って

 

自分に被害がふりかかるというのは

 

普通ならば考えないだろう

 

 

 

 

 

ある事を期に、人里には妖怪や鬼、魔法使い、様々な奴が来るようになった。

危害を為すことは滅多にない

 

それだけ幻想郷が平和になり。

環境は良くなってきている。

 

だが、人と妖怪等の力の差が無くなった訳ではない。

 

何か揉め事があれば妖怪が手を出すこともあるのだから。

 

しかし。それは今となってはどうしょうもないことだ。

 

元々妖怪等と人は共に生きるものではない。

力では人に勝ち目はないのだから。

 

だからと言って妖怪も人里で好き勝手できるわけでは無い。

何か問題でも起こせば、

博麗の巫女やその他に退治されかねない。

 

そう。圧力の掛け合いで

成り立っている部分も少しはある。

 

でも…必ずそこには

 

保たれた平和の中には。

やはり蠢く黒い影がある。

それが姿を明らかにしたとき。

または、それが事を為したときに。

必ず事件が…異変がおきてしまう。

それが…どんな結果を導こうとも。

被害は誰かに向けられ、消化されるのである。

 

 

………………………………………………

 

 

本屋の帰り。

ある妖怪に会った。

とても仲のいい妖怪だ。

よく話もする飲みもする。

そしてお互いに力を知っている。

 

だが、この日だけは違った。

気が落ち着かない様子で。

ずっと酒を飲んでいる。

 

声をかければいつものように話しているのだが。どこか不安げに見える。

 

話が聞いてやりたかったが。

向こうが乗り気ではない様子だったから、やめにしておいた

 

それで。妖怪と別れてから俺は家で、本屋から借りていた雑誌を読みながら。過ごしていた。

 

そんな時に博麗の巫女が息を荒げながら家の扉をあけて。話しかけてきた

 

どうもあの妖怪が…知り合いの妖怪が…

 

事故を起こしたようだ。

 

知り合いである私に伝えに来たというだけではなさそうで…

どうも私に協力を必要としていた。

 

 

現場に向かえば…

妖怪と言うには程遠いほど形を成していない例の妖怪が異形となって暴れだそうとしていた。

 

意識がおかしくなり気が狂い

とてもまともとは思えない。

 

私が声を掛け、見える程度に前に立つ

 

すると落ち着いたのか動きがおとなしくなる。

 

次第に声が聞こえてくる。

それは助けを求める声。この異形となった妖怪の微かな声だった

 

しかし、次第にそれは大きな雄叫びと代わり、そしてついに暴れだした。

 

博麗の巫女がなんとか縛り、それで動きを止めている。

 

だが、それから何度声を掛けても落ち着くことは無かった。

こうなってしまっては被害が出てしまう。

 

私は彼の最期を博麗の巫女に頼んだ。

博麗の巫女は頷いたあと札をいくつか用意したあと妖怪に投げつけた。

 

すると何故か周りが一瞬暗くなり。

明るくなった頃に異形の妖怪は消えていた。

 

 

事故には程遠いが、予兆もなかった

何か裏がある。

 

巫女はそう言ってどこかに行ってしまった。

 

 

誰かが仕組んで彼を暴走させた…

 

そうなれば。その誰かを私は許すわけには行かない。

私にとっても彼にとってもお互いがとても大切だったのだ。

 

私は彼の復讐をするべく。様々な手段を取って情報を探った。

 

だが、これと言って大した情報はない。

 

残念だった。どうしてもとは思ったが

諦めるしかなかった。

 

そして諦めた頃また一つ嫌なことが起きた。

 

また里に住む妖怪がおかしくなるのではないか。そして誰かがそれを促しているのではないか。

 

まさに巫女が言った通りだった。

 

何かが起きれば噂が立つ

そしてその噂は本当になる。

噂は異変のもと、また仕事が増える…と

 

噂が立ってしまえばもう遅い…

私はできる限り里を見て回った。

 

あやしい行動をする人間や妖怪などはいないか。

 

だが至って普通だ。誰が何をしているかなんて目で見る情報だと何もわからない。

 

どうしても諦めるしかなかった。

 

数日後やはり異変はまた起きた。

 

人里の妖怪達が立て続けに異形となっていってしまっている。

 

災厄だと人里の者達はいう。

 

だが、これは私でもわかる

誰かの仕業だと、誰かが仕組んだ事なのだと。

 

何かを感じた。

 

だが…それを明かす前に…

ことが動いてしまった。

 

人里の人達がでっち上げたことを言い始めた。

 

そう…嘘の犯人を作ったのだ…

 

本屋の娘…

特に賢く彼女のは魔法は、魔法使いも認めるほどで、手慣れていた。

 

だが、彼女自身は内気でそういうことはするような人ではない。

 

完璧にでっち上げなのだ。

 

結局、妖怪達は助からず…巫女が楽にしていた。

 

そして本屋の娘は、本屋を追い出され…

 

何もかも良くなった。

私も満足できない。

 

露頭に迷う娘は…私がなんとか受け入れた。

彼女も顔見知りの私にはすぐ納得してくれた。

 

どうしてもおかしいと…

 

異変は解決していない…

 

また何かしら起きてしまう。

 

私はできる限り人里の外にまで出て探った、

 

妖怪の山の天狗。地底のさとり妖怪。

鬼や吸血鬼、魔法使い。

様々な人に助けを求めた。

 

天狗により噂はまた流れたが…

それは探るためのもの

 

さとり妖怪によって本屋の娘は潔白だとわかった。

 

鬼と吸血鬼(メイドが協力してくれた)は情報収集、

魔法使いと巫女はすでに探っていたようだ。

 

後にはっきりした…

 

人里に住む妖怪の中に

やはり原因のその存在がいた

 

その妖怪は人を恨み異変の解決者達を恨み、平穏を嫌っていた。

 

理由は簡単。

仲間の妖怪が里を追いやられた挙句悪事をして退治された。ただそれだけだ。

 

とんだ迷惑だ、仲間の復讐とはいえ。

ここまで被害を出す必要はない。

だが、私もそうだ、

復讐という言葉とその意味に囚われ。

行動を大きくしすぎる

 

それが大きな被害になるのだ。

 

そう…大きな被害になるのだ。

 

 

結局その妖怪は…退治された。

それでお終いになる。

 

はずだった…

 

ことが治まってまた平穏が何故か崩れた。

 

妖怪が居るから里に異変が起きる。

異変が起きては平穏はない

そのような風潮が流れ始めた

 

一連の事件で散々亡くなった妖怪

その数少ない生き残り達が里から追い出された。

 

そして彼らを庇う私や本屋の娘まで追い出された。

 

平穏を嫌っていたのは…人里なのかもしれない。

 

私達はそれぞれ。妖怪の山や迷いの竹林…バラバラに別れた。

 

私と本屋の娘は吸血鬼の館に住まうことになったが。

 

人里にはそれからも異様な風潮が耐えないそうだ。

 

何がどうなっているのかはもう詳しいところわからない。

 

ただ一つ、里には二度と足を踏み入れることはない。

 

だから、知る必要もないだろう。

 

吸血鬼の館でも私は特に何も思わなかった。

 

例え相手がどんなものであろうとそれ相応の対応をする。

だが、それで悲惨な結末を迎えるなんて思いもしたなかった。

 

人里に妖怪が住まうようになったのは。

初めは巫女による圧力のお陰だったが、

次第に人里でも受け入れる風潮ができた。

 

大元は私が先に話した仲の良い妖怪が初めだからだが。

 

受け入れた妖怪がまた去っていくどころか亡くなって逝くとは思いもしなかった

 

初めに受け入れた私は今では指名手配犯扱い。魔法の使える本屋の娘は出入り禁止。

散々な結果となってしまっている

 

おまけに巫女や魔法使い、異変に関わる者達まで悪く思われてしまっている。

 

こんなにも大惨事に悲惨なことになるとは。

誰が予想したであろうか。

 

巡り巡って。

 

膳を尽くそうとした者が最大の悪人へと変わってしまうなど。

 

誰も考えもしないだろう。




あとがきなんてなかったんですよ。

とりあえずふざけてるけどゆるして

ではまたあえたらあいましょう




(まえがきもあとがきもかんじをつかってません)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

内なるもの 壊れた感情

どうも松K.です。

今回は壊れてみました

かなりグロテスクな表現とシーンが含まれております

気分を悪くされたらすぐにブラウザバックをしてくださいね

私では責任が取れませんのでご了承を

それでは

ゴユックリドウゾ!


人間は罪を犯せば罰が下される。

ならば…人で無ければどうか?

 

少なからず人の法で裁くことは無理だろう。

それ故に人間は憐れな事で、

穏便に平和的に事を済まそうとして、

 

結局、何もしないままなのだ

 

 

人里に住む私はいつも通り仕事をしていた。

 

人を相手にする仕事。

 

やれ接客だ、面接だなんだかんだと。

色々とする。

 

大体の人は仕事上の付き合いでしかないものだから、幼馴染を亡くしてから、あまり話さなくなった、

そのせいか、いつの間にか

何かを求めるようになっていた。

 

過去の事もあって。

独り暮らしをしている。

 

 

 

 

仕事が終わったある日の夜だ

 

自分ではない誰かの悲鳴が聞こえた。

かなり近いところからだ

 

何処かで何があったのかと探したが、

真夜中だとどうも視界が暗い。

 

 

目を凝らしながら歩くと足元に違和感を感じた。

 

ピチャピチャと音がする。

 

その後何かを踏んだ。

足元のその何かをよく見ると

 

男が倒れていた、

 

首や腹、足、腕、至るところから血が流れ出していた、

 

それを見て何があったのかわかった

 

妖怪か何かに人間が襲われたのだ。

 

そして、私も今、狙われているのかもしれない

 

下手に動けば私もこの死体と同じようになる。

 

自分が出す音以外に耳を傾けて、

足早にその場を立ち去り家に帰った。

 

後日、死体の身元が判明した。

団子屋の息子だそうだ。

親は泣いて悲しんでいるし、

もちろん妖怪等に襲われてこうなったのだというのは明確だ。

 

犯人など探せば逆に身に危険を及ぼす。

 

人間達はただ悲しむことしかしない。

 

だが、それは人の為した所業ではないからだ。

 

人が人を殺めれば。それは罪となり罰がくだされ、裁かれる。

 

だが、人の所業だと判明できないと、

悲しみ憐れみ弔うことしかしない。

 

なぜか、

 

人では妖怪は裁けないのだろうか。

 

確かに力の差がある。恐れるべき存在であり、それを私達人間と同じように扱う事は到底難しい。

 

人間が妖怪を裁くことを諦めているようにも見える。

 

だから人間は妖怪を恐れるのだろう。

 

 

だが…

私は知った。

 

妖怪であれ、何であれ。

 

心の奥底に潜ませる大きな塊を。

終わりのない感情を

 

やがて、その感情は爆発し。

爆発と同時にまた感情が沸く

それを満たすものを糧としてまた更に求めるように感情が沸く

 

そしてそれが人間の所業であっても

恐れてしまうのだと

 

 

ある昼のことだ。

 

広場で騒がしいと思い。

向かった。

 

その後たくさんの悲鳴が聞こえてきた。

 

人里の人間は一気に散り散りに逃げ出し叫び喚き、泣き声が絶えない。

何があったのかと周りを見渡す。

 

目の前の人間達がいなくなると。

 

そこには虹色の羽をもつ少女がいた。

 

少女の足元には腹部を抉るように切りつけられた人間が倒れている

 

そして少女の手は血と肉片で赤く染まっていた。

 

殺人鬼のような少女が目の前にいるという。

その現実を突きつけられれば人間ならば考える隙も無く恐れ逃げ出すだろう。

 

実際周りにいた野次馬のような奴らはもういない。気がつけば動かなくなった死体と私と少女だけになっている。

 

何故か、恐れという感覚はなかった

でも明らかにまともではない。

 

自分もそこに倒れる死体のようになるのかと思うと、それこそ反吐が出るほど嫌な思いだ。

 

だが、足が動かない。

魔法にかけられているのか、

それとも感覚がないせいか。

 

少女はこちらを見て何もしない。

 

ただまじまじと見つめるばかりで。

何かしてくるという様子もない、

 

しばらく沈黙が続く。

 

そして、少女が動き始めた。

私に近寄り。そして、腹に手をかける。

 

嫌な気がする。

私も殺されるのだろうか。

息が荒れて。心臓の鼓動が早くなる。

冷汗が流れ、体が小刻みにゆれる。

 

「ふふふ、私が怖い?」

 

その言葉にさらに胸が締め付けられる。

 

「あ、あぁ…」

 

かろうじて、掠れた声が出てきた。

 

「あはははは!そうだよね!怖いよね!」

 

少女はくるくると回りながら笑う

 

私はそこでやっと恐ろしい感覚を味わった。

 

だが、すでに手遅れだった。

 

「でも、なんで貴方は逃げないのかなぁ。」

 

確かに、なぜ私は逃げなかったのか。

 

「まぁ、いいや!」

 

しかし、今の私にはただ、その場に立ちすくむことしかできない。

 

「なんか、冷めちゃったし、貴方はまた今度にしよーかな」

 

そう言ってニコッと笑う

まるで無邪気に遊ぶ子供のように…

 

「それじゃあ!またあいましょう!」

 

そう言って虹色の羽を羽ばたかせて、飛んでいった。

 

どうやら、助かったようだ。

その場に座り込み。

しばらく頭が真っ白になった。

 

その一時が終わったものの、

私は少女が忘れられなくなった。

 

あの事件のあとから根強く記憶に残ってしまった。

 

仕事を終えたある夜だ…

 

広場でのお祭りを遠目に眺めていると後ろから子供の笑い声が聞こえてきた。

 

あの少女だ。

 

「ふふふ、また会ったわね!」

 

出来るなら会いたくはなかった。

 

でもなぜか、

恐ろしくなく怖くなく

何か内なるものを感じている。

 

「あら?私が怖くないのかしら?」

 

だが、まともではないのは確かのようだ。

内なるものが次第に大きくなっている…

確かにわかるのは、、

 

「お前のように…俺はなれるのか。」

 

「どういうこと?」

 

人間は罪を犯せば裁かれる

では、人でなければ裁かれない、

それならば、人ならざるために…

 

俺はもう抑えられなくなっていた。

内なるものを。

自分と人間と、存在に対する破壊衝動と…

 

「俺はあのときから…」

 

「そっか!あはははは!貴方も壊したいのね!」

 

少女は離れた場所の眠っている子供を連れてきた。

魔法か何かで眠ってしまっているようだ。

 

「でも、私から先だから、ちょっとまってね!」

 

そう言うと少女は手から爪をむき出し、子供の腹を抉り…そして笑いながらそれを繰り返した。

 

「あはははは!ははははは!!」

 

子供はすぐに息絶えそして腹部からは肉片と血が飛沫を上げていた。

少女は血塗れになりそしてなおそれを悦びとしていた。

 

尋常ではない。狂気そのもの…

でも私はそれを求め始めていた。

 

内なるもの…狂気がこみ上げてくる。

破壊衝動と抑えられない感情と欲求

 

少女の殺戮行為で完全に糸が切れてしまったようだ。

 

ちょうど、異様な音を聞きつけた人間がやってきた。

 

少女は人間を見つけるとすぐさまニヤつき近寄っていく。

 

人間は恐れ、その場に尻餅をついた。

 

しかし…

 

少女が人間に手を出す前に人間はすでに息を失くした。

 

そう…私が…護身用に持っていた小刀で滅茶苦茶に切りつけたのだ…

 

血肉が飛沫を上げ目や口からは血が流れ。

 

肉の切れる感触と血肉が飛び散る音が愛おしく感じた。

何度も何度も刃物を切り付け刺し付け、

抑えられない衝動を満たすためそれを無意識に繰り返した。

 

痙攣を繰り返した人間の体が止まったとき。

そこで物足りなさを感じた。

 

「あはは…アハハハ!もっと!もっとだ!」

 

既に出来上がってしまった。

狂気に身を任せ。殺戮欲求と破壊衝動を満たすため。殺人鬼となってしまっている。

 

少女は笑い、少女も殺人鬼と化していた、

 

私達は広場に向かっている。

 

そして、血を浴びて変わり果てた私達を見て、人間達は恐れを覚え、叫び悲鳴を上げ、逃げ惑い始めた。

 

私と少女は、人間をひとり一人。

見るも無残な姿にしていった。

そう…内なる狂気を満たすために。

 

………………………………………

 

 

日の出。

 

人里には沈黙しかなかった。

しかし次第に狂人の笑い声がきこえてくる

 

そこにはたくさんの人間の最後の姿と、二人の殺人鬼が笑いながら立っていた。




おつかれさまでした。

書いていて正直私もこんな欲求は湧いてきてしまっていました。

いやぁ…やばいやばい…

たまにはこんなシナリオを書いてみるのも悪くないものです


ではまた会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

特別な愛 二人の幸せ

どうも悠樹@夢子&松K.です

この日この時間なら誰かは察しがつくでしょう

特に何もなく、前書きは書かないスタイル


それではごゆっくり


仕事を終えてようやく家に向かう

 

家に帰れば、美味しい飯と至福の時間が待っている。

そう思うと仕事なんてなんともない。

 

「しかし…今日はやけに冷え込むな…」

 

季節的にもう雪が降ってもおかしくない時期ではある。

 

「体が冷える前に早く帰るか…」

 

里から離れた場所に霧の湖があり。

その近くに家がある。

 

家に着き扉を開けると…

 

「やけに暖かいな…」

 

なんか今日は寒暖が激しい。

 

「あぁ…おかえりなさい…いま、ようい。するか、ら」

 

「ちょっ!大丈夫か!」

 

台所に今にも倒れそうな嫁が食事の支度をしていた。

 

「待て待て、お前はもういいから!ちょっと変われ!」

 

「うぅ、うん。」

 

冷えたタオルに氷を包み嫁に持たせておく。

 

「はぁ…冷たいなぁ」

 

「大丈夫か?火を使うときは温度に気をつけろって言ったろ…」

 

「でも。レシピ通りだと…強火じゃないと、」

 

「無理して作るなよ。」

 

「だって…喜んでほしかったから…」

 

気持ちは嬉しいが…

お前が倒れるのが一番悲しくなる。

 

「それは嬉しいが、お前に何かあったらそれこそ意味がなくなってしまうだろ。」

 

「うん…ごめん」

 

「謝ることはない、無事で済んだから。」

 

今日はてんやわんやいろいろなことがあった。

 

でも何よりも嫁が迎えてくれる家だけは格別だ。

 

俺の嫁は人間ではなく。

妖精と言われる種族だ。

とは言ってももう大人な感じがするから【精霊】と言っても過言ではないか。

 

前は氷精だった嫁。

名はチルノという。

 

実は俺も人間ではないのだが…

特徴もなく弾幕が張れるわけでもない

半妖というだけで、人間より長寿といったぐらいだ。

 

能力といえば。

 

多人数の話を聞き分けれる程度だな。

 

外の世界の歴史的人物(実在したかは不明)に俺と同じようなことができる人間もいたとか。

 

そんなこんなで食事の用意ができた。

 

「ちょっと熱いかもしれないが、食べれるか?」

 

「大丈夫、食べ物ならもう平気。」

 

氷の妖精だけあって熱いものや暑さには弱い。

最近になって熱い食べ物や辛い食べ物に耐性がついたようだ。

 

それでも耐えきれないときもあるが、、

 

基本的に彼女は体温が上がると、

意識が朦朧として、熱が出る。酷くなると氷が出せなくなり、寝るように意識を失う。

 

難しいところではあるが…

 

「はぁ…はぁ…」

 

「おいおい…無理して食ってないか?」

 

「だ…大丈夫…」

 

明らかに大丈夫ではないので、彼女の額に手を当てる。するとやはり暖かくはなっている。

 

「ちょっと、待て、もうその辺にしておけ。」

 

「でも、残すと勿体無いよ…」

 

「俺が食うから、いいから。」

 

「うん、そっか。ありがとう」

 

確かに用意した食事は熱かった。

軽く火傷しそうなほどだ

 

よく我慢して食べたな…と思うしかなったが。彼女なりに頑張ったのだろう。

 

なんだか複雑な気分だ。

 

これ以上無理させないため、今夜寝るところまで一緒にいることにした。

 

普段は別々のベットだが、

今夜だけは心配だったので隣で寝ることにする。

 

のだが…やはり、嫁と隣で、と思うとやはりドキドキしてしまう。

 

チルノは、眠気が来ているのか、それとも体が火照るからか、かなりゆったりとしている。

 

そして極めつけの一言を呟いた

 

「貴方と添い寝すると…ちょっとだけ暖かくて…とっても、気持ちいいんだよね…なんだかとっても幸せな感じがするな…」

 

こんなこと言われて顔を真っ赤にしないやつなんて、百人に一人だろう。

かなり嬉しくなってしまって抱きしめてやりたくなったが…

これ以上彼女の体温が上がるとよくないから、流石に控えておいた。

 

彼女が寝入った少しあとに俺も眠気に負けて寝てしまった。

 

その後だが、手に冷たい感覚が僅かにあったから、多分彼女が手を握っていたんだろう。

 

 

 

…………………………………

 

 

 

 

意識が朦朧とするなか。

 

寒気を感じた。

 

「ここはどこだ?」

 

里で仕事をしていたのに。いつの間にか見覚えのない場所に来ていた。

 

意識がはっきりとして。

まわりを見渡す。

目の前にはかなり大きな湖。

 

その周りは紅が主の館と森ばかり。

 

一体何が起きたのか、

さっぱり検討もつかない。

 

そのままでも仕方ないと思い、周りを散策するも、特に何もない。

 

ここに来る前に何があったのかと思い返せば一つだけおかしな事はあった。

 

やけに里に妖怪が多かったなとは感じていた。

 

普段見ない妖怪すらいて。何かと怪しげなやつまでいた。

 

もしかしたら里で何か事件でも起きてるのではないかと、余計心配になってきてしまう。

 

そんなとき声が聞こえた、、

 

無邪気そうに笑う声と綺麗でおとなしい声。

 

湖の近くの森から出てきた二人の妖精。

 

こちらを見るなり青い服の妖精が威張って話しかけてくる。

 

「あんた人間だな!どうしてこんなところにいるのさ!」

 

いや、正直わからん。

まぁ、人間ではないんだが。

 

「さては、あたいたちをとっ捕まえるつもりだな!」

 

「ちょっと待ていきなりそれはないだろう。」

 

「じゃあ。何なのさ」

 

「わからん、なぜか気を失ってて目が覚めたらここだ、何も状況が掴めなくて困ってたとこだ」

 

今度は後ろの翠髪の妖精が話しかけてきた

 

「ねぇ、あなたってもしかして里の人?」

 

「そうだけど。」

 

「それなら、里まで連れて行ってあげるね、ここにいても何もわからないと思うし。」

 

案外優しいものだ

 

妖精達に案内されて無事里に帰ることは出来たが…

 

その時にはやはり里で異変が起きていた。

 

妖怪達が里を荒らしていた。

道端には何人かの人間が血を流して倒れている。

抵抗する妖怪を押さえ込む人間もいるが、手一杯なのは目に見えている、

私もできる限り協力した。

 

里の外に派遣された人間が博麗の巫女と魔法使いを探しに行っているらしい。

 

それまでの辛抱だ。

 

里にいる人間に味方する妖怪も少なくはないが、圧倒的に悪しき妖怪達の方が多い。

 

俺も半妖ではあるから人間の数倍の力はあるが、本物の妖怪に敵うかどうかと聞かれると、あまり首を立てには振れない。

非力ながらも人間の避難を手伝っていると。聞き覚えのある声が聞こえた。

 

それは悲鳴であり明らかに助けを求めていた。

 

現場に向かえば先の妖精達が妖怪に囲まれている。

 

青い服の妖精は何かと強気のようで氷の魔法のようなもので応戦するも、

やはり息切れのようだ

彼女も決して弱い訳ではないようだが。

数には勝てない。

 

すぐさま駆けつけた。

 

残った妖怪は鎌のような物を振り上げて。

そしてそれを力強く振り下げた。

 

鎌は俺の腕を大きく貫通した。

 

その瞬間また翠髪の妖精が小さく声を上げ泣きだしてしまう。

 

青い服の妖精も流石に今のには引いたのか。かなり怯えだしている。

 

俺も状況が読めた頃にかなり焦り始めてきた。

左腕の感覚がない、それだけでも、かなり不利だ。

 

右腕にできる限りの力を込めて。妖怪を殴りつけた。

それでかなり体力を消耗してしまった

まだ腕に鎌が刺さったままで。

次第に全身の力が抜けてくる。

 

妖怪が拳骨で大きくよろめいた途端。

光る何かにぶつかり消え去った、、

 

助かったと思いその場に座り込むと

ついに意識が朦朧として。

そのまま倒れ込んだ。

 

二人の妖精の声が頭に響く。

それも何を言っているのか考えられなくなるほど、もう意識はなかった。

 

 

 

目が覚めるとよく行く宿の一室で寝ていた。

 

右手がひんやり冷たく感じたが

肩の下から左腕の感覚がない

 

それと、両足の太もも付近に重みを感じた。

 

どうやら二人の妖精が私の手を握ったまま、寝てしまっているようだ。

 

泣いていたのか頬のあたりに薄い線がある。

 

窓の外を覗くと、壊れた建物もいくつかあるが、平和そうな風景が伺えた。

 

「里は無事みたいだな」

 

博麗の巫女と白黒の魔法使いが話をしているのが見える。

どうやらなんとか間に合ったようだ。

 

大きく息をつくと、青い服の妖精が起きた。

 

「あ…大丈夫?」

 

「あぁ…左腕がまだ感覚がない。」

 

「そうだよね…あんな大きな鎌を…」

 

丁寧な治療のおかげで腕の止血はしっかりと済んでいた、だが、多分傷跡は残るだろう。

 

「あそこで俺が行かなかったらお前らが危なかったからな、腕の一本ぐらいなんてことない。」

 

それを聞いたからか青い服の妖精は、また泣きだした。

 

「あたいがもっと強かったらあんたに怪我なんてさせなかったのに…」

 

「いや、よく頑張ったさ。」

 

「でも…あんなのを受けて死んでないなんて、もしかして人間じゃないの?」

 

なんだかんだ言うタイミングはなかったな

 

「あぁ半妖だな。人間の数倍の力はあるぐらいだ」

 

「そうだったんだね…」

 

「お前らは大丈夫か、」

 

「なんともないよ、あんたのおかげで、」

 

「そうか、よかった。」

 

翠髪の妖精もしばらくして目を覚ました。

 

「そういえば二人の名前を教えてもらえないか」

 

「あたいはチルノっていうんだ、」

 

「私は大妖精です。」

 

「チルノに大妖精か」

 

「あたいはいつも大ちゃんって呼んでるんだ」

 

「大妖精…大ちゃんか、」

 

「あっ、えっと、よろしくお願いします。」

 

「そんな堅苦しくしなくていい。」

 

「えっと…改めて言うけど。助けてくれてありがとう…お返しにあたい達にできることはないかな?」

 

「腕がこんな調子だからな…しばらく一緒にいて、何かと手伝いをしてもらえると助かる。」

 

「わかりました。何かあれば呼んでくださいね。」

 

そういってとりあえず二人は帰っていった。

チルノがおいていった溶けない氷。

この氷を揺らすと俺が呼んでいることチルノに伝わるという、

 

さっき俺が何故かいた湖、二人は霧の湖という場所によくいるらしい。

 

俺があの場所にいた理由はよくわからないままだが…

 

行き来できる道はわかったから、自分からもたまに会いに行くことにした…

 

 

………………………………

 

 

 

 

不意に目が覚めた、

まだ日の登る数時間前だが

どうも眠気が来ない。

 

俺が布団の中で少し動くと、チルノも起きてしまった、いや起こしてしまったか。

 

「うぅん…どうしたの?」

 

「目が覚めちゃってな」

 

「そっか…ちょっとこっちに寄って…」

 

「ん…どうした?」

 

言われたとおりに寄ると、急に抱きついてきた。

 

「どうした、変な夢でも見たか?」

 

「ううん…貴方と初めてあったときのことを思い出してね。それでちょっとだけ恋しくなったの」

 

「そうか。俺はここにいるぞ。」

 

「うん…だからこそね…」

 

「俺も夢を見てな、お前と初めてあったときの夢を」

 

「あの時は…私はまだまだだったな…」

 

「腕の傷跡は今でも残ってるし、あの時の事はよく覚えてるよ。」

 

そう言うとチルノはより強く抱きしめている。

顔を見てないから予測ではあるが、

チルノは泣いている。

 

「私…今でもまだ…あの時の事を…」

 

「もういいんだよ、俺は無事だお前も無事で、今こうやって二人一緒に居るじゃないか。」

 

「うん…うん…守ってくれて…すごく嬉しかった…」

 

「これからも守ってやるさ」

 

「うん…!」

 

愛しさよりも強く何かを感じている。

今彼女を手放してしまえば

何もかもが終わるようなそんな感じがする。

 

だから。という訳ではないけれど

 

 

 

チルノに幸せに生きてほしいと

チルノと幸せに暮らしたいと

 

そう想って

 

チルノからの温かい口付けを素直に受けた

 




この時期は私にとって大切な期間ですね。

理由は様々ありますが・


それではまた会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

届いた想いと愛の奇跡

どうも夢子です

ちょっと長めのシナリオになりました



それではごゆっくり


「つまんないなぁー」

 

少女はベットで寝そべってつぶやいた。

 

「早く戻ってこないかなぁ…」

 

つまらなそうに本をめくる。

 

しばらくすると部屋の扉を叩く音がした

 

「妹様。戻りました」

 

その声を聞いて少女の顔はぱぁっと明るくなった。

 

「入って入って!」

 

「失礼します。」

 

執事の男が部屋に入るなり少女は走って抱きついた。

 

「おかえり!」

 

「ただ今戻りました。」

 

少女は手に男が持っている袋を疑問に思い覗きこんだ。

 

「あっ、これ!」

 

中に入っていたのはデザートだった。

 

「これは今日のおやつですよ、」

 

「あれ?でも今日はお姉様が作るって言ってたけど…?」

 

「それがこれですよ。」

 

少女は袋の中の紙を取った。

 

少女宛の手紙でこう書かれていた。

 

 

今日のおやつは私がアリスに教えてもらったクレープよ。

フランはアリスのお菓子やデザートが好きと聞いたから習ってみたの。

暁と一緒に食べなさい。

 

 

「お姉様がわざわざアリスのお家に?」

 

「ええ、そうみたいです。」

 

フランは不思議そうにしていると。

 

暁は時計を見て近くの机にお茶とクレープを用意する。

 

「はぁぁ。おいしそう…」

 

今にも飛びつきそうな顔でお菓子を眺める。

 

しかしお茶が淹れ終わるまでフランは我慢していた。

 

行儀を良く。という意味で、

 

「それでは食べましょうか。」

 

「うん!いただきます!」

 

しかしながら口の周りにクリームが残ったり少々お茶をこぼしたりと…

必ずしも行儀が良いとは言えなかった。

 

「ごちそうさまでした!」

 

20分ほどのお茶の時間が過ぎた。

 

「ねぇ暁。」

 

「はい、妹様。」

 

「あっ、またそうやって」

 

「ん?」

 

「私のことはフランって呼んで!」

 

「わかりました。フラン様」

 

「もーっ!またそうやって様付する!」

 

お互いに愛し合いながらも

暁は執事としての立ち位置を捨てないからか

いつも様付や、メイド達と同じ呼び方をする。

 

フランはそれが気にいらないようで。

度々機嫌を悪くする。

 

「今度。私もアリスにお菓子の作り方教えてもらってみようかな。」

 

「その時は私も一緒に習いに行きたいです。」

 

「もちろんよ!私は暁にお菓子を作りたいんだもの!あとお姉様にお返しもしたいし。」

 

「ならフラン様と普段お世話になる、メイド長とパチュリー様に。」

 

二人は気分を上げながらも何を作りたいか考え楽しく話をしていた。

 

そこにレミリアが帰ってくる。

 

「フラン入るわね。」

 

「あっ!お姉様!」

 

「ちゃんといい子にしていたかしら?」

 

「もちろんよ!」

 

「そう。クレープは美味しかったかしら?」

 

「すごく美味しかったわ!また作ってもらいたいわ!」

 

「そう、じゃあ今度はフランも一緒に作りに行きましょうか。」

 

「やったぁ!」

 

喜ぶフランとそれ見て和む二人。

 

レミリアは暁に伝言があるらしい。

 

「暁、話があるから今夜食事のあと私の部屋に一人でいらっしゃい」

 

「んー…わたしはお部屋でお留守番?」

 

「そうね。あなたにも関わることだけど、こればかりは暁だけに話したいわ。」

 

「わかった。待ってるね!」

 

「ふふ、いい子ね。」

 

フランはちょっと残念そうにしていたがそれでも笑顔だった。

 

愛人を待って会うまでの時間があればあるほど、再開の楽しみが大きいのだ。

 

その日の夜。

食事を終えると、暁は咲夜と共に片付け掃除をして、すぐにレミリアの部屋に向かった。

 

部屋に入ると。

 

「あれ。お嬢様…これはどういうことですか。」

 

レミリアがすぐに鍵をかけた

 

貴方には大事な話があるの

 

「何でしょうか。」

 

「このままではフランには悲しい思いをさせてしまうの。それで貴方には2つの選択のどちらかを選んでもらうわ。」

 

「二択…それ以外は無しですか。」

 

「これからの選択で貴方の運命が最悪となるか幸福となるか、私はあえて運命を操らないわ。貴方に決めてもらうのよ。」

 

「なぜそれをフランには話さないんです?」

 

「フランは必ずわがままを言うわ。でもそれじゃ、いつも通り貴方がフランの言いなりになるだけで変わらないわ。私は貴方の意志が聞きたいの。」

 

「私の意志ですか」

 

「もちろん。貴方とフランは、今はもう運命共同体と言っても過言ではないわ、考えて答えて頂戴。」

 

「して、選択とは。」

 

 

一つは

フランの血を取り込んで吸血鬼になること。

 

もう一つは

明日何も言わず紅魔館を去ること

 

 

「吸血鬼になるか紅魔館を去るか」

 

「咲夜は吸血鬼にはならなかった。人間としての意志があったわ、あなたはどうかしら?」

 

「……そうですね。」

 

暁は迷わなかった。

彼には答えは一つしかなかったのだ

 

「フラン様の血を頂けるのであれば吸血鬼になりましょう。」

 

「…本当にそれでいいのね?」

 

「ええ。私は彼女の愛人。そして彼女は私の最後の愛人…後は言いたいことはわかりますね?」

 

「分かったわ。それならもう良いでしょう。」

 

レミリアは部屋の鍵を開けると。扉を開けた。

 

「あっ、えっと…暁…」

 

「えっ、妹様?」

 

暁は話がよく掴めず困惑していた。

 

「貴方が部屋に入って少ししたあとに、フランに扉の前で待つように言ってあったの。」

 

「それって、まさか。」

 

「そうよ、あなたの試させてもらったわ。」

 

「あぁ…やっぱりか」

 

暁は、してやられた、という表情を隠せず、フランの方をみる。

 

「実はこのことは全部フランにも話してあるわ。フランは駄々をこねて同席したがっていたけど。」

 

「でも…暁…」

 

フランは泣きだしそうになりながら、暁に歩み寄る。

 

「はぁ…お嬢様には毎度毎度…」

 

暁は呆れながらもしゃがんだ。

そして近寄るフランを待っていた。

 

「暁…わたし。暁が居なくなるのは嫌…」

 

「私はいつもここにいますよ。」

 

暁はフランの頭を撫でながら慰めた。

 

「でもいつか消えちゃうんだよ…?」

 

「どういう意味です?」

 

「だって貴方は人間だから…」

 

「そういうことですか。」

 

「だから、貴方にも吸血鬼になってもらう必要があるのよ。フランと永く共に居るのであれば、それが最善よ。」

 

フランは震えながら暁の手を握った。

それも今までよりも強く熱く

 

「わたし…本当にこれでいいのかわからないけど…でも…暁が選んだなら…」

 

暁はずっと不安そうにするフランを見て何か気づき疑問を覚えた。

 

「…お嬢様。まだなにか隠していますね。」

 

「さぁ?なんのことかしら。」

 

いつもより強くそして鋭くレミリアを睨む暁。

 

「あら、ご主人に対してそんな態度でいいのかしら。」

 

「フラン様がこれだけ怖がるのです。あなたが何か仕掛けたとしか思えません。」

 

「あら。それなら何をすると思うの?」

 

「例えば私が消えかけるか、フラン様の身に何か起こるか、または今後二人が引き別れる様な事故が起こるか。

あなたは運命を使わないと言いました。それであなたは操らない【何か】の事件、または事故が起きるのだと私は予測しますね、」

 

「なかなか鋭いわね…今回は私の負けよ。あなたが答えた3つのうち2つは正解、」

 

「やっぱり…」

 

フランは涙を流し。いつまでも暁に抱きついていた。

 

「初めに、これは全部フランのお願いなの」

 

「それは…?フラン様、本当なのですか?」

 

何も言わず、首を立てに振るフラン

驚きのあまり暁はフランを見つめていた

 

「お願いとは。いつまでも貴方と一緒に居させてほしいという。我儘だけど、フランの今までで一番のお願い」

 

「わたし…貴方を愛してるから…だから…」

 

「それで、今回話をさせてもらったわ」

 

「ふぅ…で。このあと何が起きるんです」

 

「もちろん、貴方にはフランの血を取り込んでもらうわ。でもねそれがとても危ないのよ。」

 

ついにフランは涙が止まらず暁から離れず。

ずっと泣いてしまっている。

 

「どう、危ないんですか。」

 

「血が変われば貴方の身体がどう変化するかわからないし、今まで巡っていた臓器達に異常が起きるだろうし、貴方は元の姿の影もなく異形になるかもしれない。最悪の場合、心臓が止まって死に至るわ」

 

「な…なるほど…」

 

「もちろん、パチェに頼んでどうにか成功するよういろんな施しは掛けさせてもらうわ。」

 

「何故、お嬢様は運命を操らずに?」

 

「フランが自分で決めたこと。私の能力には手を借りず。運命に向き合うため。彼女なりの決意があるのよ」

 

「フラン様…」

 

「巻き込んでしまって…ごめんなさい、でも…フランがここまで本気なのは初めて、私も正直、まだ驚きが隠せないの」

 

「わかりました…それなら。私もフランが決めた運命に向き合いましょう」

 

「暁…」

 

フランはレミリアの隣に立ち顔を上げ

レミリアと同じ姿勢を取った

 

「「あなたの運命は私のもの」」

 

レミリアは哀しみを浮かべながら

フランは泣きながら言葉を口にした

 

「ご主人様の思うままに…」

 

 

その後大図書館の地下で

 

大きな魔法陣の上のベットで横になる暁

 

そしてその周りには

レミリア

フラン

咲夜

パチュリー

美鈴

小悪魔

が揃っていた。

 

「さぁ、始めるわよ」

 

そう言ってパチュリーは魔法陣を起動させ

できる限りの耐性魔法を暁に掛けた

 

そしてフランはよくある普通の注射器で、自分の血を暁の血脈に流しこんだ。

 

見守る五人

 

注射器を抜いて、

魔法陣の外に。

 

数秒後。

暁は異常なほどの熱と目眩、全身に痺れるような痛み、そして、何よりも身体が悶苦しむ程の苦しみを味わった。

 

「うっ、ぐぅー、がぁー…ぁぁ…!」

 

落ちないようベットには結界が張ってあるが、その中でかなり激しく悶え動く。

 

「暁…暁…頑張って…」

 

フランはひたすら成功を祈った

レミリアはフランに寄り添う

 

その他も成功を祈り続ける。

 

パチュリーは休む暇なく

治癒魔法も繰り返す。

 

数分後暁は鎮まり。眠るように意識を失った。

 

パチュリーはまだ治癒魔法を掛けているが

五人は魔法陣の中に入り、暁の様子を伺う。

 

「暁…暁…?」

 

一見、何も異常はなかった。

結界を外し心臓に手を掛けたが普段通り動いている。

 

動脈部分も鼓動を繰り返し血も流れている。

 

しかしどれだけ経っても暁は目を覚まさない。

 

「ねぇ…成功したのかな…」

 

不安を抱えるフラン、、

 

誰も答えることはできなかった。

誰も予想していない結果になったのだ。

 

死ぬか見るに耐えれなくなるか、

何事もなく成功するか。

パチュリーが出した答えと他の予想はこれだけなのだ。

 

異常も見られず、意識を失ったままになるなど誰も予想しなかった

 

「そんな…起きてよ暁…」

 

フランは暁の身体を揺すりながら、そして泣きながら名前を呼んでいた。

 

当然、悲しんだのはフランだけではなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから十日ほど経つが

まだ目は覚まさない。

 

「フラン、入るわね。」

 

椅子に座って日記を書くフラン

レミリアの方を向いて一言だけ話した

 

「お姉様…暁は?」

 

「…ごめんなさい。まだ何も。」

 

「そう…」

 

それだけ話すとまた書き始めた

 

「十日…かしら。」

 

「うん…」

 

「フラン…あのね。」

 

「何?お姉様」

 

「後悔は…」

 

レミリアが言い切る前に即答した

「後悔はしてないわ、これがわたしの運命だもの。わたしが決めた決意の結果だから。後悔なんてしてないわ。」

 

「フラン…」

 

「ずっと、待ってるの。」

 

「起きないかもしれないのよ。」

 

「きっと起きるわ。だからそれまでずっと待ってるの」

 

「そう…強いのね。」

 

「だっていつまでも泣いてたら、昔の弱い私のままだもの、変わりたくて、暁と同じように強くなりたくて。決意をしたのよ。」

 

「わかった…それじゃ、お茶にしましょうか。今日はアリスが来てるから一緒にお菓子を作りましょう。」

 

「アリスが来てるの?」

 

「ええ、そうよ。前に言ったじゃない次作るときは一緒にって。」

 

「そうだったかしら、?」

 

「ええ、ほら行きましょう。」

 

 

キッチンなる場所に行くとすでに咲夜がアリスに教えてもらいながらアリス特製のお菓子を作っていた。

 

「咲夜、どうかしら?」

 

「普段、お菓子は作りませんので、なかなか難しいです…」

 

「ふふ、咲夜さんでも苦労するのね。レミリアは2日でできるようになったから、あなたならすぐよ」

 

「えっ…?は…はい、精進します…」

 

「さぁ、フラン作るわよ。」

 

「はい、お姉様。」

 

四人は気が済むまでそして何度もお菓子を作った。

以外にもフランの作ったお菓子は形は少しズレども味はアリスのそれに一番近かった。

 

「流石、フランちゃんは私のお菓子が好きなだけあって、味を覚えてるのね。」

 

「そう?なのかな?」

 

「暁が起きたら、沢山食べさせてあげなさい。きっと喜ぶわ。」

 

「はい!お姉様!」

 

 

 

そしてそれから2日だったある昼。

 

パチュリーが異様な音に気づいた。

 

「なにかしら…地下?」

 

地下の先の実験室でガラスを叩く音がしている。

 

「…まさか!」

 

そのまさかである。

 

扉を開けると、暁が起きて結界を叩いていた。

必死になって叫んでいるようだが。

結界に阻まれて音が消えていた。

 

「待ちなさい。今自由にするから。」

 

結界を外すと暁はベットから降りた。

 

「あー…やっと目が覚めた…」

 

「気分は?なにか変な感じはしない?」

 

「んー…寝すぎて頭が痛いかな。」

 

「へぇっ?」

 

あまりの返事にパチュリーは気の抜けた声が出てしまった。

 

「あとは運動がしたい。」

 

「あっ、いや、だから、何かえっと。」

 

パチュリーは動転して困惑している。

 

「落ち着いて。私はなにも問題ないですよ。」

 

「本当に?」

 

「このように元気が溢れちゃってますね」

 

その一言でパチュリーは安心した

 

「そうならそうと最初から言いなさいよ…」

 

少し考えると暁はまた話した

 

「えっと。餓死する勢いで空腹ですね、」

 

「あぁ…そう…」

 

パチュリーは呆れてそれしか言えなかった。

 

「まぁいいわ、上がりましょう。」

 

大図書館を出て紅魔館に戻り。

 

丁度お茶をしていたフランとレミリアの所に向かう。

 

そして。

 

レミリアの部屋のテラスで。

 

「レミィ、遅くなったわ」

 

「珍しいわね、あなたが遅れるなんて」

 

「まぁ、いろいろあったのよ。」

 

「そのいろいろとは?」

 

紅茶を一口飲むと合図のように声をかけた

 

「来なさい。」

 

新しい執事服を来た暁が3人分のケーキを運んできた

 

「貴方は…」

 

「暁…!」

 

レミリアとフランは驚き、椅子から立ち上がった。

 

「お二人とも、椅子をそんなふうにしてはいけません。」

 

「え、えぇ、そうね。」

 

「はい…ごめんなさい」

 

「待って、いや、そうじゃなくて!」

 

「やっと…やっと目が覚めたのね…」

 

二人は暁が起きたことに感激し

嬉しくなった。

フランは余計嬉しくて泣きそうになっている、

 

「「おかえりなさい」」

 

二人は口を揃えた。

 

その後のお茶時間は咲夜と暁、二人ともいた

 

 

 

そしてその日の夜

 

フランが部屋に戻ると一枚の手紙が置いてあった。

 

「なにかしら…?手紙?」

 

こう書かれていた。

 

 

 

あなたの想い、私にちゃんと届きました。

運命に打ち勝ち奇跡を掴みとったんです、

いつまでもお幸せに!

 

 

 

 

その文の後にかえるとヘビのスタンプが押されていた。

 

 

「奇跡…奇跡かぁ。」

 

フランは不思議そうにしながらも

奇跡が起きたということを理解した。

 

「きっと、奇跡のおかげなのね…」

 

フランはその手紙を仕舞い込み

暁の帰りを待った。

 

そして数分後、扉を叩く音がした

 

「妹様。」

 

その声を聞いてフランは声を弾ませた。

 

「入って入って!」

 

暁が部屋に入ると、

 

「その袋は何?」

 

「これはフラン様が作ったお菓子とデザートです。」

 

「アリスの特製伝授の!」

 

「はい。一緒食べましょうか」

 

「うん!」

 

 

二人は談笑しながら幸せな時を過ごしていた

 




また気がむいたら書こうと思います。

今回フランは初ですが

主人公の執事の名前は以前のシナリオにあります。

吸血記のその後の話に近い形をイメージしました
またこんな感じなのも書きたいと思ってます。


それではまた会えたら会いましょう。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

真逆の二人 甘い時間

はい、夢子です

前書きなんてないですよ


ではごゆっくり


「ねぇ、暇なんだけど。」

 

「そう言われても。」

 

「なんかしらイベントでも起こしちゃおうよ。人里でさ」

 

「またライブ?昨日やったばかりじゃ…」

 

「曲考えるのもいいんだけど、今は思い浮かばなくてさー。」

 

「さいですか。」

 

「そうだ、キミなんか歌ってみてよ。」

 

「下手ですし。それにミスティアさんが満足するような歌は歌えませんよ。」

 

「たまにはキミも歌ってみなよ。」

 

「僕はそんなに歌は…」

 

「えー。だってずっと私が歌ってばっかりで疲れるんだよー。」

 

「ボーカルがそれ言っていいんですかね…」

 

「休憩だよ、休憩。」

 

「はぁ、」

 

「それに、君の担当は結構きれいな部分だから歌もきれいなんでしょ」

 

「ピアノですから。まぁ、そう思われることは多いですけど。」

 

「ほらじゃあ、歌ってみてよ。」

 

「それとこれとは別ですって。僕は歌は下手なんです」

 

「ほんとにそうかなぁ。だってこの前私の曲小声で歌ってたじゃん、あれだけでも十分うまかったと思うけど?」

 

「あぁ…聞こえてたのか…」

 

「ほら!歌ってみてよー!」

 

「うーん…仕方ないか…」

 

「おっ!やっと乗り気になった!」

 

「僕はミスティアさんみたいに派手な曲は歌えないですから。僕が個人的に考えて曲にしたものにしますから。」

 

「それ、前に私に提案したやつ?」

 

「そうですよ。結構前ですけど、私には合わないって言って却下されたやつです。」

 

「あははー…そんなのもあったなぁ…」

 

「ライブのメンバーの中で僕の曲だけ一度も採用されたことないですよね。まぁ、合わなければそこで却下食らうし大体の理由は知ってるんですけど」

 

「今度いいのあったら歌ってみるから。ほら今は君が歌うんだから。」

 

「はいはい、わかりましたよ。」

 

……………

 

 

「んー、なんていうか、君って宝の持ち腐れしてる感が否めないね」

 

「どういう意味ですか?」

 

「ピアノに限らず、楽器はひと仕切り全部できるじゃん。おまけに作曲もできて歌もできるなら。なんでもできるよね。」

 

「うーん。考えたこともないですね、僕はピアノが好きなのでそれしか興味ないですし」

 

「にしても、いい曲だったなぁ。歌詞見るだけなのと、曲聴くのだと、やっぱり違うかー」

 

「曲調とかありますからね。」

 

「何よりもね、君の声と曲が合ってるの。凄く綺麗な歌だし。声も聴き惚れる程だったし。何よりもね。好きになっちゃう」

 

「そこまででした?」

 

「バラードっていうんだっけ?」

 

「そうですけど。」

 

「凄いよねぇ。私はそういう歌は難しいと思うんだ。」

 

「ミスティアさんは派手だったりそれに近い曲ばっかりですもんね。」

 

「たまには君もソロでやったらどう?」

 

「それはいやです。僕は…」

 

「歌うのは嫌いって言いたいの?」

 

「あっ、いや、そういうわけじゃ…」

 

「あのね。私は確かに好きでボーカルをやってる。みんなが演奏してくれるからそれに応えたいし。もちろんライブに来てる人たちも楽しんでもらいたいし。」

「でもライブメンバーが一人でも楽しめてないのは私は悲しい。」

 

「ミスティアさん…」

 

「私がバラードを好まないのは、楽しくなれない、というか、どうしても気が高揚しないからそういうのは苦手で拒んでるの。」

 

「それは、僕かロックとかが苦手なのと似てますけど」

 

「あなたは私とは真逆だから。ロックとかが苦手でバラードが好きならそれをみんなに知らしめてみなよ」

「とっても綺麗だし素敵だった。正直聴いててどきどきした。それくらい君は歌が上手いの。」

 

「なんだか…申し訳ないですね」

 

「だから、もっと自信持ちなよ」

 

「今まで演奏しかやったことないので。気にしたこともなかったですし。」

 

「他のメンバーはみんな自分なりに練習してるし頑張ってるよ。でも、君はすでに身についてるんだからそれをもっと生かさなきゃ、私以外のメンバーで一番上手いとは、正直なところ言い切れないけど十分、君らしく歌が歌えてるから、良いと思うんだ」

 

「僕らしく、ですか、」

 

「演奏も歌も。とっても上手歌に演奏があってるし、演奏に歌もあってる、羨ましいくらいに思っちゃう」

 

「…わかりました。とりあえず落ち着いてください。」

 

「うん…なんかゴメンね、責め立てるみたいな言い方になっちゃって」

 

「僕の方こそ、気を悪くさせてしまったので。申し訳ないですよ。」

 

「まぁ。私のことは気にしないで」

 

「そう言われても気にするんですよ…」

 

「そういえば、他のメンバー遅いね」

 

「あれ、あー、昨日の帰りがけ、ミスティアさん、話聞いてなかったんです?」

 

「なにかあったの?」

 

「プリズムの三人は元から来ないのは置いといて、幽谷さんは今泉って狼の人と用事があるらしくて、雷鼓さんは少名さんとお茶とかって、」

 

「九十九のふたりは?」

 

「八雲さんの知り合いの人間と演奏の練習とかって言ってましたね」

 

「うぅ…今日はバラバラですね…君も来る回数は少ない方だし。」

 

「まぁみなさんそれぞ用事があるんですし。仕方ないですよ」

 

「まぁ、丁度いいや。」

「ちょっとこっちきて」

 

「なんですか?」

 

「なんでもいいから。」

 

「はぁ、」

「って、かなり近くまで、なんですかほんと」

 

「あのね…さっきから凄くどきどきしてるの。」

 

「なんですか、唐突に」

 

「なんていうかさ、メンバーの中で男って君だけだから、」

 

「それがなにか?」

 

「あまり男との関わりもないし、もちろんライブでお客さんと触れ合うときはあるけど…普段から一緒にいるとなると。少しね…」

 

「あー…僕はそういうのは気にしたことないですけど。」

 

「それに、さっきの歌で余計気にするようになっちゃってさ…」

 

「僕のせいとか…?」

 

「いや、そういうつもりではないけど…でももうほんと…どきどきしてて…」

 

「えっと…あー…えっと…何かできることがあれば。」

 

「うん。えっとね。わたしと…」

 

「はい…?…!んっ!……」

 

…………

 

「ふぅ…ごめんね。急で」

 

「何か一言ください…」

 

「どうしても耐えれなくて口から言葉が出る前にキスしちゃった。」

 

「えぇ…」

 

「でもね、すっきりした、」

 

「ドキドキがですか?」

 

「そう、だけど、代わりに君がとっても好きになった。」

 

「は、はぁ…ん?えっ?」

 

「君が好きなの。」

 

「はい、えっと。はい」

 

「あっ、固まっちゃった」

 

「えっと。あのですね。」

 

「うんうん、どうしたの?」

 

「急にそんなこと言われましても…」

 

「あははは!まぁまぁ、」

 

「いや、まぁまぁ、じゃなくて」

 

「何か問題あった?」

 

「いぃ…え、特に何も、ないですけど」

 

「じゃぁ、私は貴方が好きになったから。付き合ってもらいたいな、なんて、」

「もういいです…口で勝てる気がしませんし…」

 

「おっ、やっと崩れてくれた!」

 

「なんですかその無邪気な答えは…」

 

「ありがとう!だいすき!」

 

「ちょっと待って!誰もいいとは言ってなっ…」

 

「あなたのソロライブ!期待してるね!」

 

「ちょ!それとこれとは話がべつでしょ!」




ミスティアのキャラってこんな感じかな…
とりあえず書き終えてなんかイメージとちがう感じがするけど、こんなミスティアも悪くない。

ではまた会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

秘めた心 恋し人

どうも、夢子です。

前書きはありませんですよ。


ではごゆっくり


博麗神社で宴があるのにも関わらず、遠くで一人静かにそこからの花火が打ち上がるのを見ていた

 

すると後から足音が聞こえてくる。

 

「ん…誰だ?」

 

「あっ。ばれちゃった!」

 

「なんだ、地獄の妖精か。」

 

…地獄の妖精、クラウンピースだ。

 

「なんだとはなによ!なんだとは!」

 

「また来たのか。今度はなんだ?」

 

「ふん!もちろんいたずらするつもりよ!」

 

バレてる時点で意味が…

 

「あぁ、そう。」

 

「なっー!反応うすすぎるよ!」

 

「たかがいたずらだしな」

 

「うぅ…じゃあ、イタズラじゃなきゃいいんだね!」

 

ほう、いたずら以外か

 

「今日はあたいの松明であんたを狂わせてみようかなぁ?」

 

狂う。へぇー

 

「あー!信じてないなー!」

 

「うん、まぁ。」

 

「もう怒った!どうなっても知らない!」

 

と、その瞬間、火の音が聞こえてくる。

クラウンピースは手に松明を持ち。近付いてくる。

 

「どう!良い炎でしょ!」

 

「それって触ったら熱いのか?」

 

ちょっと遊んでやるか…

 

「ふぇ?えっと…多分…」

 

「多分…ね。」

 

「いや!そうじゃなくて!」

 

「あっ。違ったか?炎っていうから熱いのかと思ったけど。」

 

「いや、熱いだろうけど、そうじゃないの!」

 

「あー。頼むからこの小屋燃やすのはやめてくれな。唯一の家なんだから。」

 

「えっ?燃やす?あたいの炎で燃えるのかなぁ……」

 

「家事でも起こったら大変だからな。」

 

「いや、燃やす気もないから!」

 

「ふーん。んで、どうすんの?」

 

「どうするもこうするも!あなたを狂わせるって言ってるじゃない!」

 

「俺の発言で調子狂ってる奴に言われたかないけどな。」

 

「うぅ…それは…」

 

なかなか、おもしろいな

 

「ほら、イタズラするならしろよ」

 

「えっ?えっと……」

 

「まぁ、隣座れ。花火上がってるから見ようぜ」

 

「えっ?花火…?」

 

「そう、花火、きれいだぞ」

 

「そ、そっか、うん。」

 

あっ、座るのか、案外素直だな。

 

「向こうの方だと。博麗神社?」

 

「ああ。丁度昨日の異変解決の打ち上げ宴みたいだ。」

 

「異変…?何かあった?」

 

「人里の妖怪襲撃の話。知らないのか?」

 

「知らなかったな…昨日はずっと寝てたから…」

 

「はぁ、寝てたのか。」

 

「だって、眠たかったんだもん、」

 

妖精でも一日だらけるのか…

以外だなあ

 

「花火。きれいだね…」

 

「久々だからな。冬に花火なんて合わないけど。」

 

「夏は外の世界で花火が多いって聞くけど…」

 

そうなのか。夏の暑い時期に上げるのか、

 

「だから、丁度冬頃に花火のことを忘れるのか」

 

「うん。晴れてるとよく見えるね」

 

「まぁ、また次は次の冬になるしな。」

 

「そっか…長いなぁ…」

 

「ところでクラウンピース、何しに来たんだ?」

 

「えっ?えっと、なんだっけ?」

 

理由忘れるなんてな。

 

「忘れたのか?」

 

「んー…と、あなたを狂わせる、だった気がする。」

 

「へぇー。狂わせてみろよ」

 

「あたいの松明ですぐだよ、」

 

そう言うと、すぐ松明を持ち出して。

赤紫の炎が現れた。

 

「どう?狂えてくるでしょ?」

 

「いや、全く。」

 

「えっ?なんで?」

 

なんでだろうな?

 

「今までみんな狂ってきたのに!」

 

「騒がしくするなよ。」

 

「だって!おかしいよ!」

 

「そうだな…おかしいかもな」

 

「もぉー!なんであなたはいつも反応が薄いの…?」

 

「んー…さぁ?」

 

「えっ。自分でもわからないの?」

 

「気にすることが少ないだけだろ」

 

「あっ、そう…」

 

「狂う炎か。」

 

「なんで?ほんとに何もないの?」

 

「んー。何も無いわけじゃないけど。クラウンピースの言う狂気は出てきそうにない。」

 

「うーん…あたいの松明では狂気が足りないのかなぁ…」

 

「俺は違う意味で狂ってるからな。」

 

「どういうこと?」

 

「ちょっとした病気だ、直るかは知らないが」

 

「そうなんだ…」

 

「永遠亭の医者に診てもらったが。どうも神経麻痺だの何だのって言われた覚えがあるな、それで感情が湧かなかったり。ずっと頭が働かなかったりするんだろうな、。」

 

「…大丈夫なの?」

 

「さぁ?むしろ今は怒る気持ちも悲しい気持ちも湧かないし、花火をただ眺めて静かにするのがいいから、」

 

「感情か…狂気だけでも沸かせてあげたいな。」

 

「んなもん、いらねぇよ」

 

「ぶー、でも。大変そうだね。」

 

「最近になって、話をすることも減ったから余計無心になることが多いな」

 

「だめだよ、話をしてもっと色々感じないと。余計悪くなっちゃうよ?」

 

「それはわかってるんだが、でも結局無心になって話をできなくてな」

 

「あたいのことも…わからなくなるの?」

 

「さぁ…そのときにならないとわからない」

 

クラウンピースの声が震えてきている。

泣いてるのか?

 

「あたいは…あんたがいなくなるのは寂しい。」

 

「えっ?」

 

「いつも、何しててもあんたは優しいし。怒ってくることもないけど…でも他の人間とは違って、あたいたちに仕返しもしない。」

 

「それも、病気のせいかな?」

 

「そんなわけない!そんなわけ…ないよ…」

 

「そうかな。」

 

「病気なんて無くたってあんたはきっと優しいよ」

 

「そうだといいな。」

 

「あたいは、あんたのこときらいじゃない。むしろ、あんたとこうやって話をする時間も最近増えてきて楽しく感じてた。」

 

「怒ってたりするのにな、」

 

「それはその時だけ、結局別れてからあんたのこと思い出すとまた会いたくなるし。」

 

「そうか。」

 

「もっとあんたのこと知りたいし。それこそ、そんなこと聞いたら余計心配するよ。」

 

「心配する…か」

 

そう思われるのは久々だな…

 

「そう。心配するの。」

 

「お前はなんとも思わないのか」

 

「何を?」

 

「俺が鬱陶しいとか、うざいだとか。」

 

「そんなふうに思うことはあるよ。でもね。それはその人の個性でしょ。そんなの悪態つけて嫌ってたらあたいなんて誰とも居られないよ。」

 

「そうか。そうだよな。」

 

「あんたは嫌われ者なの?」

 

嫌われもの…か

 

「いつしか誰も寄り付かなくなった。人間も妖怪も妖精や、鬼、天狗も。」

 

他人か…疎遠だな

 

「なんで…?」

 

「わからない。」

 

「あんたは優しいし…強いし…それなのに、…」

 

「見捨てられた。と思ったことはない。元よりそれまですらなかった様に感じてたからな」

 

「ひとりで…寂しくないの…?」

 

「寂しいと思ったことはない。」

 

「辛かったり、悲しかったり。そんなこともないの…?」

 

「……ない」

 

「そんな…」

 

「ただ。一人で黙々と過ごしているだけだ。」

 

そう、ただ一人で

 

「……あんたは…ほんとにそれでいいの…?」

 

「構わないね。むしろ。もう他の選択肢はないと思ってる。」

 

「だめだよ!そんなの!」

 

「なっ、いきなりどうした。」

 

おこってるのか…?

 

「もっともっと楽しんでさ!笑って!怒って!泣いて!そうやって生きたほうがきっと、ううん、もっと良くなるよ!」

 

「…ありがとうな…」

 

「そう!そうやって感謝もするの!」

 

なんだか…自分が情けないな、

 

「あんたは優しいんだから。もっと笑顔を振りまいてさ。周りも笑顔にしたりさ!」

 

「笑顔か。」

 

「本当は寂しんじゃないの?」

 

「………多分な」

 

「あんたは狂ってなんかない。ふつうの人とは違ってとっても優しくて強いけど、本当は凄く心脆い。だから。その強さで変に無理をして、一人でいても何も思わない、感じないんだと思う…」

 

「無理をしているつもりはないんだが…」

 

「もう…無理しないでよ…?」

 

無理か……

 

「多分だけど…よく覚えてないだが」

 

「うん。」

 

「一度だけ誰かを恋しくなった事はあるんだと思う」

 

「そうだよね。だってずっと一人は寂しんだもんね」

 

「ずっと昔だとは思う。もう覚えてないが」

 

「でも。そんな気持ちも大切なんだよ。あたいは子供みたいで、そんなのはあんまりわかんないけど…でも、他の妖精達といたずらすると楽しいし。」

 

「そうだな、誰かと…か」

 

「あたいはあんたと話をしてて楽しい。」

 

「そうか…?」

 

「そう。だからさ。もっと楽しもう?」

 

「あぁ…楽しむ…か」

 

「ねぇ?」

 

やっと分かった…自分の気持ちが。

 

「なぁ、クラウンピース」

 

ずっと探していた見えなかったもの

 

「なに?」

 

「やっと見つけたよ。自分を」

 

「自分を見つけた?」

 

「あぁ、だからな。クラウンピース」

 

「うん、何?」

 

「お前は俺の話をずっと聞いてくれた。俺を見捨てないで寄り添って必死になって俺を変えようとしてくれた。」

 

クラウンピースただ一人だけだ…

 

「うん。だってほっとけないし。」

 

「その心が…今すごく嬉しいんだよ。」

 

「ほんとに…?」

 

「あぁ、苦しいくらい嬉しい。」

 

「あたいは…そんな大したことしてないよ」

 

「あのな。クラウンピース。」

 

「なに?」

 

「俺は自分をずっと隠してた。誰かと繋がりを持つのを恐れてた。それで、誰とも話さなくなって無心になって。ついには精神にまで来ていた。」

 

「寂しい?」

 

「あぁ、物凄くな。でもな。お前のおかげで、わかったんだ」

「心の秘がやっと分かった」

 

「心の秘…?」

 

「クラウンピース…あのな。」

 

「う、うん。」

 

「俺は、誰かと生きたかった。大切な人と繋がりを持ちたい。そうやって思う度に、苦しくなって押さえつけるように無心になって。ずっと心が痛かった。」

 

「そうだったんだね…」

 

「だからな、クラウンピース。聞いてくれ」

 

「うん…話して」

 

「俺はお前が恋しい、俺に寄り添ってくれるお前は、とても大切な人なんだ。」

 

「うん…ありがとう。」

 

「ありがとう…今は凄く…嬉しいよ。」

 

 

 

 




クラウンピースを出したかっただけ。
クラウンピース要素は最初だけ。
クラウンピース可愛いと思うんだ

それだけ。

また会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

幻想郷を護る者、二人の人間

どうも松K.です。

祝50話目。

なんだかんだで先月で1年

そして今回の話で50話目

長く続いているものだと自分でも感心しています


それではごゆっくり


「ねぇ。」

 

「はい。」

 

「お茶、おかわり」

 

「はい。」

 

その言葉のとおり。俺は湯呑みにお茶を注いだ。

 

「煎餅、まだあったかしら。」

 

「ちょっと見てくる。まってて。」

 

棚を漁っていると、声が聞こえた。

 

「別にないならいいのよー。」

 

その声と同時に醤油の芳ばしい味の煎餅を見つけた。

 

袋のまま持っていき。少女に渡す、

 

「これ。」

 

「ありがとう。ほら、座って。」

 

「表の掃除しないと。」

 

「落ち葉の掃除ぐらい私がやるからいいわ」

 

「そう。」

 

炬燵を挟んで向かいに座る。

 

足を伸ばすと。向かいの少女と足が当たった。

 

「ちょっと、伸ばすなら当たらないように伸ばしなさいよ。」

 

「あぁ、すまん。」

 

少し足を引っ込める。

 

「それにしても。もうこんな時期ね、」

 

「あぁ、もう半年か。」

 

彼女との出会いは。半年前。

異変解決時のことだった。

 

…………………………………………

 

 

「一見落着かしら?」

 

「相変わらず霊夢は仕事が早い。」

 

「魔理沙は早すぎるときがあるけど。」

 

「それはそれ。これはこれだぜ。」

 

「にしても。異変は終わっても解決仕切れない問題があるのよね。」

 

「あぁ、あいつか。」

 

 

霊夢達が妖怪の山での異変を解決したとき。

俺は当時、山で活動していた。

 

里で植物調査を頼まれていた俺が巻き込まれるのはわかりきっていたことだが。

 

霊夢達は直々に俺の救助もお願いされていたのだ。

 

だが…

 

「ここまでひどいと…」

 

「あぁ…里には戻れないぜ…」

 

俺は山の妖怪に襲われ…怪我をした。

里にその姿をみせれば…霊夢達は合わせる顔がない。

 

事実、霊夢達が俺を見つける前からひどく怪我はしていたが。

 

里に戻らないというのは俺の意思でもあった。

 

「頼む…里には戻りたくない…」

 

「なんていえばいいのかしら…」

 

「死んだとでも…行方はわからないとでも言ってくれ…」

 

「でもそれじゃ、お前はどうなるんだ?」

 

「……さっきの言葉の通りだ…それしかない。」

 

「でも、それじゃあんたはほんとに。」

 

「いいんだ。こうなるのは避けれなかっただろう。」

 

「私の店で預かることもできるんだぜ?」

 

「あんたの店じゃ変な薬ばかりで心配だわ…」

 

「いいんだよ…これで。」

 

「あんた。うちの神社に来なさい。」

 

「なぜ?」

 

「身を隠すなら、悲しいけどうちの神社なら参拝者も少ないし。バレることなんてないわ。どうせ来ても私の知り合いたちばかり。話は合わせれるから、」

 

「いいのか?」

 

「ええ、仕方ないでしょ、無関係のあなたを死なせるわけにはいかないの、」

 

「まぁ、そのほうが…いいか。」

 

「魔理沙。竹林まで行って永琳を呼んできて頂戴。」

 

「わかったぜ」

 

魔理沙は高く飛び上がり。飛んでいった、

 

「さて…と。ちょっと待ってなさいね。」

 

「待つと言っても。俺の体力がなくなる前に帰ってきてくれよ。」

 

「ええ、もちろんよ」

 

そういうと、霊夢も飛び去って行った。

 

数分間。沈黙に包まれていた、

 

異変解決後の山は静かで風の音すら聞こえていた。

 

暫くして視界が悪くなってきた。

鼓動すら大きな音に聞こえ。

体が痺れてきて、意識が朦朧とする。

 

「限界…か…」

 

木の根元に座りこんでいたが横に倒れ…

体が床に叩きつけられる音すらもう聞こえなかった。

 

 

 

 

気がつくと目の前には天井が広がっていた。

 

薬の匂い。腕や足にしみる痛み

 

なるほど…大体状況が読めた。

 

「目が覚めたようね。」

 

「あんたは八意さんか。」

 

「ええ。霊夢の頼みじゃ断るわけには行かないわ。」

 

「なるほどな…」

 

「すぐに良くなるわ。安心なさい。」

 

まだ、意識がはっきりとしない。

 

でも永琳と霊夢の話ははっきりと聞こえていた。

 

「彼どうするの」

 

「ここに居させるわ」

 

「大丈夫なのかしら…?」

 

「私が良いっていったんだから、良いの」

 

「そう、また何かあれば呼びなさい。」

 

「ええ、また頼むわ」

 

声が聞こえなくなると。

どうやら永琳は帰ったようだ。

 

暫くして。お茶をすする音が聞こえてくる、

 

「はぁ、まぁ、仕方ないわね」

 

霊夢が座布団から立ち上がり俺の隣に座る。

 

「気分はどうかしら」

 

「あぁ。さっきよりはマシだ」

 

「そう。」

 

「すまないな、暫く迷惑かける。」

 

「いいのよ。助けられなかった私にも責任があるわ、」

 

「俺だって自殺行為だとわかっててやったことだ。」

 

「なぜそう思ったの?」

 

「山の雰囲気がおかしいのは以前から知っていた。それでも、それが感じ取れるのは山の調査を任された俺にしかわからないことだ。もし、あれで異変前に帰れたら里には伝達するつもりだったが、案の定だった。」

 

「知ってて、なら、なんで断らないの?」

 

「…どうせ。俺が断れば…あいつが行くことになるからだ。」

 

「あいつ…?」

 

「あぁ…俺の古い知り合い…幼馴染。」

 

「何か問題でもあるのかしら。」

 

「あんたによく似てる…正義感と実力。それと見えない権力すらな。」

 

「あなたの代わりが務まるならいいじゃない。」

 

「彼女は…俺の…」

 

「付き合いね…」

 

「それでいて、里の大切な柱でもあるんだ。だから、あいつにあの状態の山なんて行かせれるわけないんだ。」

 

「それで、あなたは犠牲のつもりなのね。」

 

「死ぬことなんて覚悟の上。生きて帰って里の皆に教えれるのなら。と思ったのだがな。」

 

「遅かったわけね…」

 

「里には行ったのか…?」

 

「……ええ、見当たらないと伝えてあるわ。」

 

「行方不明者…か」

 

「本当に良かったのね…?」

 

「…今更もう帰らない。」

 

「そう…わかったわ。」

 

そう言うと霊夢は表の落ち葉掃除を始めた。

 

俺は傷が痛むのを感じながら。

これからを考えていた。

だが、どうも横になっていると眠気が来る。

 

どうも絶えれなくて寝てしまった。

 

声が聞こえて目が覚める、

 

「起きなさい。」

 

「あ、あぁ…どうした。」

 

「あなた。もう傷は大丈夫だと思うわ。」

 

確かにもう痛みがない。

 

「ん…傷跡があるな…」

 

「そればかりはどうしようもないわ。」

 

「それもそうだな…」

 

「一つ提案があるの。」

 

「なんだ…?」

 

「今のところ、あなたの安否は私と魔理沙しか知らない。もしあなたが望むのなら魔理沙の店でも良いのだけど、どうするかしら?」

 

あの森の怪しい店か。

まだここのほうがマシというか、

静かで綺麗で…ここのほうがいい

 

「いや、ここでいい。」

 

「そう、わかったわ」

 

 

 

それから。俺は神社で過ごした。

 

霊夢が面倒と思わないよう。できる限りの行動はする。

 

たまに参拝客が里から来るが…その時は神社の裏に隠れる。そんなところだ。

 

烏天狗が新聞に上げようと聞き込みに来た時は、色々とあって止めた。

 

烏天狗に事情が知られたのは仕方ないが…なんとか広まるのを抑えることはできた。守谷の巫女や紅魔館のメイドなども来るが、毎回霊夢が口あわせをする。

 

なんだかんだと。

色々と世話になっているものの。

何も返せないのがどうも申し訳なく感じてきている。

 

やはり。正直に里に帰るのがいいかもしれない。

 

ある朝のことだ

 

 

「霊夢さん、一つ話しがあるんです」

 

「なにかしら。」

 

「やっぱり。里に戻りますよ」

 

「あれだけ拒んでいたのに今更?。」

 

「ええ…このままここにいても俺自身何も起きない上に、迷惑かけてばかりですし。」

 

「私は特に気にしてないけど?」

 

「そう言われても俺が気にするんです。」

 

「いいけど。私はなんて言えばいい。」

 

「非は俺にある。俺から里には、事情があって口合わせを頼んだのだと、言っておく」

 

「理由は?、そこまで聞かれたらどうするのよ。」

 

「異変後の山の調査。とでも言うか」

 

「そう。そうね。」

 

 

 

 

それから、霊夢に同行を頼んで里に顔を出しに行った。

 

そうすると…里の者達は、一斉に集まりに来た。

 

第一声はあいつ…姉だった。

 

「無事だったんだな!」

 

「あぁ、この数日間山を見て廻っていた。」

 

「博麗さん達にあんたを探すよう頼んだはずだが…会わなかったか…?」

 

「あぁ、すぐ見つかったさ。俺から頼んだんだ、異変後の山がどうなるのか継続的に知るために。神社で匿ってもらってたんだよ。」

 

「なんでそんなこと。別に戻ってきてもいいだろう」

 

「長は必ず止めるだろう、」

 

「しかし…私なら顔合わせぐらい…」

 

「いくら、長のお気に入りとはいえそこまでは危険だろう。何せ異変が起きた山だ何があるかわからないしな。」

 

「とにかく無事でよかった。」

 

「あぁ、そうだな。」

 

「博麗さん、うちの弟子がお世話になったよ。」

 

「いいのよ。」

 

「また何かあれば頼るかもしれない、またお願いする。」

 

「ええ、」

 

その場では解散して。俺も自宅に帰った。

 

懐かしい。

草木を保存していた箱や研究用のノート。

それらがしっかり詰まった戸棚

どれも俺がここまで生きて周りに知らしめてきたもの。

 

どれもしっかりと残っていた。

 

夕方になり。

部屋に日差しがかかり

日の光に反応する植物か萎えてくる頃。

 

開けていた窓から一人の少女が飛び込んできた。

 

よく見慣れた姿、今朝まで一緒にいた

 

そう、博麗霊夢だ。

 

なぜ唐突にここに来たのか、検討もつかないが…

 

部屋に入るなりこの一言

 

「葉っぱ臭いわね…」

 

「まぁそうだろうよ」

 

「あんた、こんな環境で過ごしてるの?」

 

「あぁ、まぁな。」

 

「山の調査で持ち帰るとはいえ。ちょっと、ちゃんと処分しなさいよ」

「仕方ないだろう数日間空けてたんだ。こうもなるさ」

 

「まぁ、そうね…」

 

「あれ…これは?」

 

「地底の酒、悟り妖怪から貰ったんだ」

 

「そう…あんた地底にも行ってるのね…」

 

「竹林の兎や不死達とも付き合いがあるしな」

 

「やっぱりそうよね…」

 

「いきなりどうした?何か用でもあるのか」

 

「あんた。戻って来る気はないの?」

 

「は?」

 

「だから、神社に戻って来る気はあるか、と聞いてるの」

 

「それ、ここに戻ってきた意味なくなるだろ。」

 

「それが何よ、」

ちょっと待て…意味がわからん…

 

「えっ、待て、お前は俺が戻ったとして、どうする」

 

「前みたいに暮らすだけよ」

 

「一つ聞きたい。」

 

「いいわ、話して」

 

「戻ってきてほしいのか…?」

 

「ええ、そうよ。」

 

「あぁ…そう…」

 

始めからそう言えよ…

 

「だから、あんたに戻ってくる気はあるか聞いたのよ。」

 

「さいですか…」

 

「で、戻ってきてくれるかしら」

 

難しいお願いだなぁ…

 

「うーん…今更過ぎるんだよなぁ…」

 

「嫌なら嫌と言いなさいよ」

 

「あのな…なんでさっき解散したときに言わないんだよ…」

 

「あんな大勢の前で戻ってこいなんて言えるわけ無いでしょ!」

 

「あぁ…そう…まぁな、それはそうだが」

 

「あんたはどうなの。あのときはどんな感じがしたのよ」

 

「んー…ひたすら隠居だったからな。少しやりづらい気はした」

 

「そう…それだけ…?」

 

「あと、散々匿ってもらったのに何もお返し出来ないのが申し訳なかったな」

 

「あぁ…そう」

 

「なんだ、その反応は」

 

「いいでしょなんでも。」

 

なんでもいいなら聞くな…

 

「それで、帰ってくるの?」

 

「戻るよ戻る。それでいいんだろ」

 

「いいのね。」

 

「あぁ、こんな生活にも飽きていた頃だ。」

 

それから、部屋を片付けた、草葉などは山の土に埋め、その他は一頻り売るか捨てるかした

 

その後に義姉に話をする予定だが…

 

「ちょっと。どういうつもりだ」

 

向こうから来たようだ

 

「何か用か?」

 

「あんた博麗さんのとこに行くそうじゃないか」

 

「あぁ、そうだが。何か問題でも?」

 

「約束、破る気?」

 

「約束なんて、した覚えないぞ」

 

「そうか、あれは嘘だったんだな!」

 

「嘘も何も、俺は了承してない」

 

「そんな!じゃあ私は…どうなる…」

 

「俺以外にも男なんてどこにでもいる。」

 

「お前は一人しかいないんだ!」

 

「知るか…散々振り回していて、今更そんなこと言うのか」

 

「何がいけない!私が何が悪かったんだ!」

 

「それぐらい教えなくても、いずれ気づく」

 

これ以上は無駄か。

 

「じゃあ、俺は行くからな」

 

「待ってくれ!まだ…まだ!」

 

「もういい、無意味だ!」

 

「そんな…」

 

「……じゃあな」

 

里を出てしばらく歩いた

それから、かなり長い階段を登る。

登りきった先には紅白の巫女が…博麗霊夢が表で掃除をしていた。

 

「遅くなった。」

 

「何してたの?」

 

「義姉と話」

 

「そう…別れたの…?」

 

「どうも好ましくない。それに散々悪態つかれてたからな。潮時だ。」

 

「簡単に言うけど、彼女の気持ちは考えたの?」

 

「誰でも別れるのは辛いだろうけど、それでもこればかりは我慢の限界だ、」

 

「そう…」

 

「皮肉だが…自業自得なんだよ…」

 

「私はどうなるのかしらね」

 

「さぁな、」

 

「中でゆっくりとお茶にでもしましょうか」

 

……………………………………………

 

 

 

「ちょっとこっち来て」

 

「なんだ?」

 

「いいから。」

 

霊夢が襖を開けて外を指さした。

 

するとちらちらと雪が振り始めてきていた。

 

「雪か。」

 

「ええ、雪ね」

 

「今年も積もるだろうな。」

 

「そうなったら、雪掻き手伝ってくれるわね」

 

「まぁ、もちろんさ。」

 

ちらつく雪を眺めながら考えていた。

もう半年になる。

しかし、あいつとはたった一月だ。

 

そうか、これがあいつと霊夢の差なのか。

そう考えてしまう自分がいた

 

「ぼぅっとして、何を考えているのかしら」

 

「ん…?あぁ、これからの事だな」

 

「これから…?」

 

「あぁ、春が来たらまた忙しくなるんだろう。」

 

「ええ、そうね。里にいったり紅魔館、地底、竹林、色々周らないといけないものね。」

 

「俺は全くの他人だから。周っている間は待ってるよ」

 

「別についてきていいのよ?」

 

「邪魔になるといけないからな」

 

「邪魔になんかならないわ。」

 

「そうだといいが、でもまぁ、待ってるさ」

 

「そう、わかったわ」

 

 

そんな会話を続けていると、だんだん日が落ちて来ていた。

 

「そろそろ締めましょうか。」

 

「あぁ、今日から冷え込むな」

 

「ええ。炬燵出していて正解だったかもね」

 

「掛布団出さないとな」

 

「衣替えの準備が必要ね」

 

そういうと夏から秋にかけて使用していたものなどを仕舞い込み、冬用の布団や暖房器具などを用意していた。

 

隙間風が入りこむのどうしても冷たく感じる。それに反応したのか霊夢が身震いしていた

 

「どうした、寒いか?」

 

「ん…大丈夫よ。」

 

「冷えるといけないからな、」

 

箪笥から俺が冬によく着ていたコートを出して渡した

 

「別にいいわ、大丈夫よ、」

 

「着て暖かくする分にはタダだ、着ておけ」

 

「そうね…ありがとう」

 

炬燵で暖まりながら読書をしていると。向かいの霊夢がうつ伏せていた。

 

どうやら寝てしまったようだ。

 

座ったままうつ伏せて寝るのはあまり良くないから。座布団を枕代わりにして、横になるよう姿勢を変えておいた。

 

「こう見ると普通の女の子だな。」

 

普段は鋭く、心まで見抜くような彼女だが、寝姿は至って普通の女の子で、その姿はあいつとは違いすぎていた。

 

特になんの力もないが、男として守ってやりたいという、謎の使命感まで湧く。

 

霊夢から目を離し。そっと襖を開け外に出る。

 

「冬か…」

 

風が冷え、雪が頬に当たって冷たい

 

「もうこんな時期だもんな…」

 

鳥居からの風景にも慣れてでもそれがとても愛おしく感じるようになっていた。

 

霊夢はこの風景を守るため。幻想郷を守るためにこの神社のこの場所にいるのだろう。

 

「割に合わないな、ほんと」

 

そんなことを呟きながら。表の落ち葉を掃いていた。

 

 

……

 

 

掃き掃除を終えた頃に鳥居の方から何かが飛んできていた。

 

人の姿をしている。

恐らく妖怪だろう

 

箒を鳥居に立て掛け。出迎える。

 

やって来たのは

 

冬の妖怪、レティ・ホワイトロック。

 

「ごきげんよう。」

 

「珍しいなこんなところに来るなんて。」

 

「せっかく冬になったのだから、霊夢に挨拶でもしようと思ってね。今は炬燵で寝てるんでしょう?」

 

「あぁ、そうだ、よくわかったな」

 

「この時期は毎回そうなのよ。せっかくだからチョットお姉さんと世間話でもしないかしら」

 

「あぁ、今掃除を終えたところだし。」

 

 

 

「あなた、里の女と別れたらしいわね。」

 

「あぁ、あいつか、」

 

「彼女貴方と別れてから山の調査を始めたらしいの。」

 

「へぇ、俺がいなくなってあいつがやることになったのか。」

 

「そう、それで、ここからが本題」

 

「それで?」

 

「彼女、妖怪に襲われて亡くなったわ。」

 

「そうか…」

 

「山を知らない人間なんてすぐ妖怪に襲われるものよ。」

 

「まぁ、当時の山は異変後で何が起こるかわからなかったからな。」

 

「それに、貴方は山の連中と顔見知りでもあるから、警戒されることはなかったけど。彼女は全くの他人、侵入者として見られてもおかしくないわ。」

 

「まぁ…起きたことはもう変えれないからな」

 

「残酷な運命を貴方が彼女に押し付けたのよ。」

 

「それを俺に言ってどうする」

 

「あら、案外、いや、以外な反応ね、」

 

「なんだ、どうしたいんだよ。」

 

「なにも、罪悪感でも植え付けてみようと思っただけよ。」

 

「そうか、」

 

「案外つまらないわね。」

 

「人が妖怪に襲われるのは仕方のない事だ。」

 

「ふーん…まぁそれだけよ。」

 

「ほら、霊夢に用事があるんだろ。早く行けよ。」

 

「冷たいわね」

 

「多分もう起きてるぞ。」

 

「そう、わかったわ」

 

レティが霊夢のところに行き境内はまた静かになる。

 

薄らと雪がつもり始めてきて。

石畳に足跡が残る。

 

「俺も戻るか。」

 

雪を払ってから、神社の中に戻る頃レティが帰って行った。

 

 

 

……

 

部屋に戻ると霊夢がみかんを食べながら話しかけて来た

 

「ねぇ、」

 

「ん?」

 

「あんたってどう思ってるの」

 

「主語がない。」

 

「あんたって私のことどう思ってるの」

 

そう思えば考えたことはあるがそれを形にしたことがなかったな。

 

「どう思うか、そうだな、」

 

「私もあんたにはここにいてほしい理由を話してないし、話した覚えもない。」

 

「あぁ、聞いたことないな」

 

「でもね、私はなんであんたを選んだかはしっかりとした理由があるの」

 

「理由か、」

 

「あんたはここ(幻想郷)を知りすぎてるの、地底にも竹林にも山にも足を踏み入れてる。」

 

「それがどうした?」

 

「だから、顔が広すぎるのと、知りすぎていること、それすら私にとっては脅威なの。」

 

「なんでだ?それが何を意味する?」

 

「あなたの今の立場ならどんな異変でも起こすことが容易なの。」

 

「力のない者がどうやって異変を起こすんだ。」

 

「異変を起こすのに力なんていらないわ、力を持つものを利用すれば異変なんて簡単に起こせるんだから。」

 

「虎の威を借る狐…」

 

「そういうこと。」

 

「力無くして異変を起こす方法…」

 

「だから、彼女は死んだのよ。」

 

「彼女?」

 

「あなたが別れた里の女。」

 

「あいつが何か?」

 

「妖怪に身を売って妖怪を利用しようとした。それでそれが山の妖怪にバレた。」

 

「そういうことなのか…」

 

「レティにからかわれたようだけど、あなたにはなんの非はないわ」

 

「もとより気になんかしてない」

 

「そう、」

 

「それで、俺は監視されているわけか。」

 

「あくまで形としてはね」

 

「逃げも隠れもしないさ。そういう事なら妖怪の賢者だって目を張ってるんだろ。」

 

「なかなか鋭いわね。その通りよ。」

 

「誰かを利用しようなんて、俺にはそんな芸当は無理だ、何せ利用することの恐ろしさを知りすぎてるからな」

 

「そう、ならいいのだけれど。」

 

「俺はな、霊夢とこの半年暮らして思うことがある。」

 

「何かしら?」

 

「俺では釣り合うわけがないんだよ」

 

「どうしてそう思うのかしら?」

 

「ただの人間、力も能力もない、そんな存在が幻想郷を護る偉大な巫女に何ができる?」

 

「さっき行ったでしょう、貴方は見えない大きな力を持っているのよ?もう忘れたの?」

 

「見えない力…?」

 

「訂正、力なき力」

 

「あぁ…虎の威を借る狐か、」

 

「いい?既に貴方は私に利用されていて、そして私を利用しているの。」

 

「博麗霊夢という存在と、幻想郷を知り過ぎた人間か、」

 

「私にとっては脅威な存在は裏を返せばその脅威すら利用できる。」

 

「なるほどな。」

 

「だから、釣り合わないわけがないの。」

 

「確かにそうだな。」

 

「それで、あなたの答えは?」

 

「好きとは思ったことはない。でもそれを超えたような感情は最近感じる。」

 

「そう、わかったわ」

 

「私もね、散々こんな話をしてるけど、貴方が居ることに安心感を感じてる、頼りになりすぎてるの、」

 

「そうだったのか…」

 

「だから、戻ってきて欲しかったし、ここにいて欲しいの。」

 

「…わかったよ。」

 

「これからも…よろしく…」

 

みかんを頬張りながら恥ずかしく言う一言に心が揺らぐ。

 

「あぁ、こちらこそな」

 

どうやら、俺はあの景色と霊夢を護らないといけないようだ…

 

でもそれは、俺にとっても彼女にとっても代わりがいない。

 

だからこそ必要とし合うのだろう。

 

 

 

 

気がつくと霊夢はまた眠ってしまっていた。

 

横にして寝かし。

その隣で寄り添うように

俺も眠ることにした。




これからも変わらないスタイルで書いていこうと思います。


それではまた会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ある日の出来事

どうも悠樹です。

もう、題名が…題名が!

ありきたりだけど許して。


それではごゆっくり


「はぁ…さて、どうするか…」

 

竹林で筍を探しに来てたときだ。

 

どうも足元が葉っぱだらけでおかしいなとは思ってたんだが。

 

案の定、地面が抜けて落ちてしまった。

 

それで出口がないかと探しているうちに何故か迷路状の洞窟に迷い込んでしまった。

 

「これは…帰れる保証が無くなってきたな…」

 

歩けば歩くほど分かれ道ばかり、

同じような風景を2度3度見ることがあるから、もしかしたら同じ道を何度か通っているかもしれない。

 

「完璧に迷った…はまりこんだ…」

 

道端にはたまに骨が見える

おそらく迷い込んで帰れなかった虚しい奴等だろう、

 

自分もこうなるのかと思うとぞっとする

 

「ここで終わりだけは勘弁だ…」

 

だが、何処を歩いても出口のような場所は見当たらない、それどころか同じような場所を彷徨ってばかりだ。

 

「…やばいなぁ…」

 

分かれ道ばかりが続きどうも、歩く気が失せてきた。

そんなとき。後ろから足音が聞こえてきた。

 

俺以外にも迷いこんだ人間がいるのかと思うと気の毒だが…

 

「おや…キミは…」

 

「耳が…でかい…?」

 

どうやら…人間じゃないらしい…

ネズミ…?まさか妖怪か?

 

「なんだ、またか…」

 

「あんた、ここがどうなってるのかわかるのか…?」

 

「ここは慣れたからね、道もわかるし出口も知ってる。まさか、竹林の穴から落ちたわけじゃないよね…」

 

「いや、その通りだ」

 

「あぁ…またあの兎どもめ…」

 

何か知ってそうだ

 

「できれば出口まで連れて行ってもらえないか?」

 

「それはいいけど私もここに探しものに来てるから、それまでは我慢してもらえるかな。」

 

「探しもの…?手伝うよ」

 

「いや、いい、下手に人間といると足を引っ張られたら困るからね。」

 

「そんな、足を引っ張るわけないだろう」

 

「竹林の穴に落ちたのはどこの誰だか。」

 

なかなか…強いな…

 

「うっ…まぁ、ここで一人でいるのもなんだからついて行かせてくれ。」

 

「勝手にすればいい、けど、邪魔はしないでくれよ」

 

足早に歩く妖怪についていく。確かに俺が彷徨っていた道とは風景が変わってきている。この少女について行けば確実に出れる気がする。

 

「キミはなんで竹林に。」

 

「永遠亭で料理をするのに筍を使おうと思って。」

 

「はぁ…まぁそんなところだろうとは思ったよ」

 

「何かあるのか…?」

 

「最近、因幡てゐの知り合いにイタズラが過ぎる奴が竹林で悪さしてるんだよ。」

 

「それで、ここが…」

 

「あぁ、あいつここを見つけたからって、人間をここに落として遊んでるんだ」

 

「たまったもんじゃない、こんな所死んでも出れないじゃないか!」

 

「うるさい、そう怒るな。だから私が定期的にここを見て回ってるんだよ」

 

悪質極まりないな…とっ捕まえてやりたい気分だ

 

「だが、あいつはてゐでも手がつけられないほどだからな、飽きるのを待つしかないんだよ。全くだ。」

 

定期的に見て回るなら捜し物に来る必要あったのか…?

 

「それで、捜し物って?」

 

「あぁ。永遠亭の薬師がペンダントを取られたって言ってたからここにないか探してるんだよ。どうもあいつの住処らしき場所はこの前見つけたから、行ってみようと思うんだ。」

 

「住処ねぇ…もしそこに兎がいたらどうする。」

 

「とっ捕まえて永遠亭にたたき出す。」

 

「まぁそうだよな、俺も同じ事考えてた」

 

「居なかったら居なかったで放置、できるだけ関わりたくないし。」

 

できるなら会いたくないな…

 

 

 

その後はしばらく真っ直ぐの道が続いた。

 

「ところで手に持っているその棒は?」

 

「見ての通り、ダウジングロッドだよ。」

 

「ならそれ使えばいいんじゃ、」

 

「最近これ。あてにならなくてね…」

 

「それ、持ってる意味ないよな…」

 

「方角と場所は分かるから、使えなくはないけど。物が合ってるかわからないからね…」

 

「あぁ…そう…」

 

しばらくすると大きな屋敷のような場所に出た。

 

「ここは…人でも住んでるのか…?」

 

「正確には住んで居ただね、」

 

「昔の建物にしては綺麗すぎる…」

 

「どうもここは霊魂が沸くみたいだ。主従関係があったみたいだから、主人を失くした執事使用人の霊魂で溢れてて、それらが屋敷をまだ綺麗に掃除してるんだ。」

 

「なるほど…ってやばいだろ、襲われたらどうする、」

 

「大丈夫だ、むしろ、客人だの何だのって歓迎してくれる。」

 

「そうなのか、」

 

「まぁ、あくまでここは通過点、もう少し先だから、」

 

「そ、そうか。」

 

頭を下げる霊魂に挨拶をしながらも屋敷の裏口の扉から出る、

 

扉をあけてすぐはまた迷路のような通路が続いた。

 

「かなり歩いたな。まだなのか?」

 

「もう目と鼻の先だ。」

 

「あぁ、あの広場のような場所がそうか。」

 

「そう、だね、着いた。」

 

言葉の通り若干広い場所に出た。

 

そこには瓦礫の山のような風景が溜まっていた。

 

しかし、貴重そうなものは何一つ見当たらない。

 

それもそのはずだろう。

鍵付きの箱があり厳重に鎖で縛ってあるのだから。

 

「どうやらこの宝箱の中みたいだね。」

 

「どうするんだ、これ」

 

「たかが、兎の鍵さ、」

 

そう言うと妖怪ネズミは手に持っていたダウジングロッドを叩きつけて鎖と鍵を壊した、

 

「結構野蛮だな…というか、そんなことをするからあてにならなくなるんじゃないか…」

 

「まぁ…それはそれだから…」

 

「あぁ…そう…」

 

宝箱を開けると。

 

「なんだこれ、貴金属ばかり…」

 

「肝心のペンダントが…ない…?」

 

「いや…あった、これだ。」

 

どうやらペンダントはあったらしい。

 

「これ、どうするんだ…?」

 

「仮に人里でこれだけの貴金属を売れば、一生遊んで暮らせるだろうね。」

 

「いや、いい、持ち帰るのでも一苦労だしな。」

 

「別に私もお金に困ることはないし。そのまま放置でいいだろう。」

 

ペンダントだけを持ち帰ることにした、

 

「あとは、帰るだけだな。」

 

「別に帰るのは苦じゃない。すぐそこだし」

 

「えっ…?」

 

その言葉を聞いて疑いはしているもがついていかないことには帰れないだろつ。

 

来た道とは別の通路に進んだ。

少しした所での曲がり道を迎えたとき。曲った先から何かが走ってきていた。

 

「なんかいるな…」

 

「…多分…」

 

妖怪ネズミが言い切る前に曲がり角から現れ勢い余って俺にぶつかった。

 

「なんだ…兎…?」

 

「あっ、こいつだよ」

 

どうも先程話したイタズラ兎のようだ。

 

「こんなところで会うとはね、」

 

兎は慌てて後ろに下がろうとする。

 

するとその先には竹林によくいる不死がいて、兎の服を掴み捕まえた

 

「あれ、妹紅じゃないか、」

 

「お前なんでこんなところに?」

 

「あぁ。その兎に落とされたんだよ。」

 

「なるほど、被害者か。」

 

「そういうこと。」

 

「それで、その兎はどうするつもり?」

 

「ナズーリンだったか、こいつに用事があるのか?」

 

「まぁ、見かけたら捕まえて永遠亭にでもと思ってたとこだけど。」

 

「奇遇だな、さっき私もこいつに迷惑被ったから、永遠亭に叩き出す所だ。」

 

「丁度いい?なら、早く出るか。」

 

妹紅が兎に拳骨を喰らわせると兎はすぐに気を失った。

 

そして、何故か俺が兎をおぶって行くことになった。

 

「案外軽いな、」

 

「まぁ、兎だし。」

 

「にしても今思うと不思議だよな」

 

「何が?」

 

「ネズミが兎を追うなんて」

 

「この幻想郷だから起きることだよ」

 

「どっかの巫女の言葉の通りか」

 

「なんだっけ?常識に囚われてはいけない。だっけか?」

 

「あぁ、それだ、」

 

「普通、兎がネズミを追う側だよな。」

 

「ていうか、ネズミを追うのは猫だよな」

 

「兎って肉食か?」

 

「そんなことはないと思うが」

 

「幻想郷だと、兎は何を食うんだろうな」

 

「さぁ…肉も食うんじゃないか?」

 

「肉食の兎って…」

 

「ナズーリンはともかく、 お前は兎の餅つき見てなかったのか?」

 

「あぁ…そういえば…」

 

「兎の餅つき、月の模様のあれのこと?」

 

「永遠亭では兎達は餅つきをしてるんだよ。」

 

「そうなのか…」

 

そんな会話をしていると。永遠亭についた。

永遠亭に、入ってすぐ永琳に会えた

 

「あらナズーリン、早かったわね。」

 

「ほら、これ、お願いされてたペンダント。」

 

「そうそう、これ、ありがとう。ところで、あなたは筍は?」

 

「あー…それが…」

 

「こいつのせいだ」

 

「あら、妹紅いたのね。」

 

「何度も目が合ってんのに今言うか」

 

「冗談よ。その兎は、あれね、てゐでも手を焼く例の」

 

「そう。こいつ、落とされたんだよ」

 

「はぁ…わかったわまた今度お願いするわ」

 

「はい、申し訳ない。」

 

その後兎達が餅つきを終えて、妹紅とナズーリンも一緒に夕食をとった。

 

ナズーリンはまた何処かへ行ってしまったが妹紅はどうも例の兎が気になるらしくしばらく様子を見るらしい。

 

 

 

 

 

そして俺だが。

 

相変わらず永琳に良い様に使われている。

 

まぁ、里に居ても暇だからいいのだが…

 

人使いのうまい人だと痛感した。

 

筍取りから薬の実験代、輝夜さんの相手もよくする、

 

でも、なんだかんだこの永遠亭が

自分にあってる気がしている。




久々の恋物語ではない話

たまにはこんなのもいいですね。

次は何かな。


ではまた会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

振り回される日々

どうも夢子です

前書きはありません

というまえがきでした

ではごゆっくり


「なぁ…私、帰っていいか?」

 

「何を云うておる、さぁ、お主も飲まんか、」

 

何でこいつの堕落に巻き込まれなきゃいけないんだ…

 

「わ、私は飲まないって言ってるだろ!」

 

「良いではないかー、たまにはお前も飲んで気分を変えてみたらどうだ?」

 

「私は酒は嫌いだ、もういいだろう」

 

ただでさえ…こいつが酔うとめんどくさいのに…

 

「つまらんのぅ、」

 

「つまらないのはこっちだ、なんで毎回お前の酒に付き合わなきゃいけないんだ。他にも居るだろ。」

 

「そこにお主がいるからお主なのだ。」

 

何だその理論は…

 

「大体、仙人のお前が酒なんか飲んでサボってどうするんだよ…」

 

「サボっているのではない、息抜きだ。息抜き、それに、仙人ではなくて尸解仙だぞ、」

 

どっちも変わらんだろう…

 

「屁理屈はいいから霊廟に帰るぞ!また神子様に怒られたらどうする。」

 

「そう思って、バレないようにお店を変えているではないか。」

 

「そういう意味じゃなくてだな…」

 

こいつ…懲りないのか…?

 

「飲みもしないのに私まで怒られて。いい迷惑なんだよ…」

 

「なら何故ついてくるのだ?」

 

「はぁ?お前が無理やり引っ張るからだろう…」

 

「わははは!まぁ良いではないか!」

 

「何も良くない!」

 

はぁ…なんで私まで毎回怒られるのか…

 

「まぁまぁ、幽霊さん、そう怒ってばかりでは、苦労しかしないぞ?」

 

誰だ…話しかけてくるのは…

 

地上の人間のくせに…

 

「あのな、人間、私も散々こいつに振り回されてるんだ。もうこいつのせいで十や二十は説教に巻き込まれてるんだ、怒りもするんだよ。」

 

「まぁ、酒飲みに何言ったって聞きやしないさ、ほら、隣、もう酔ってフラフラしてるじゃないか。」

 

「ほらぁ、とじこぉ、おぬしもぉ、のめぇのめぇ…すぅー…すぅ…」

 

「くそっ…やめろ、くっつくな!……はぁ…これで帰ればまた怒られる…」

 

「まぁまぁ、落ち着いて、幽霊さん、お名前は?」

 

「名乗るなら自分からだろ」

 

「これは失敬。俺は愁と言う。」

 

「蘇我屠自古だ、」

 

「蘇我さんね、隣は?」

 

「コイツは、物部布都、」

 

「物部さん、か、」

 

何だこいつ…なんか考えてるのか?

 

「手を出そったって無駄だからな。」

 

「そんな、単に気になったから話しかけただけさ。」

 

「ふん、あっそ。」

 

「なかなか。ツンとしてるね。」

 

「なんだよ。別にいいだろ。」

 

「ここにはよく来るのかい?」

 

「いーや、私は酒は飲まない、こいつに連れて来られてるだけだ、」

 

「なるほど、それで迷惑を被るってことか」

 

「そのとおりだ…またこいつを担いで帰るのか…」

 

「私で良ければ手伝うが」

 

ちっ…なんかねちっこいなこいつ

まぁ、重い布都を持ってくれるならいいか

 

「人間が何を言うか…と言いたい所だが。こいつ重いからな。お前がいいなら、頼むよ」

 

「重いとは失礼だろう」

 

「酒飲んで水っ腹のやつが、軽いわけ無いだろう」

 

「なるほど…うむ…まぁ否定はしないな。」

 

「ほら、いくぞ」

 

なんでこんな人間連れて回らないといけないのか…結局は全部布都のせいだ…

 

毎回道連れに怒られるのも…重いこいつおぶって大変な目にあうのも。こいつのせいだ。

 

でも…こいつは私ばかり…

 

なんなんだよほんと…

 

「蘇我さん?、そんな暗い怖い表情して、なにかあったのか?」

 

「考え事だよ、別にいいだろそれぐらい、」

 

「何も悪いとは言ってないが」

 

「いちいち突っ込んでくるなよ。」

 

「すまないね。」

 

しばらくは楽でいいが…

どうせ後で怒られる…

 

…………………………

 

さて…霊廟までついたな…

 

「こんな屋敷みたいなところに住んでるのか。」

 

「まあな、ほらもういいぞ、あとはなんとかする。」

 

「そうか、わかった。」

 

まぁ…怒られるのは毎回のことか…

 

「おや、こんなところに人間が。」

 

あっ…この声は…

 

「神子様…お戻りですか。」

 

「ええ、貴方達が居ないので、地上に見回りに行っていたのですが、奇遇ですね。」

 

はぁ…これ怒られるやつだ…

 

「おかえりなさい、屠自古。」

 

「は、はい。ただ今戻りました。」

 

「毎回、布都に振り回されてあなたも大変ですね。」

 

ん…怒らない?

 

「え?あぁ、はぃ。まぁ、」

 

「心配せずとも貴方が悪くないのは知っていますから。安心しなさい」

 

うぅ…なら何故怒る…

 

「さて、人間の方。」

 

「はいなんでしょう。」

 

「あなたもご苦労様、布都、重かったでしょう。」

 

「水っ腹は流石に。」

 

「一息ついてからお戻りになるといい、お茶を出そう。上がっていきなさい」

 

「お言葉に甘えて。」

 

なんか、異様に言葉の上手い人間だな…

 

 

 

 

「全く、あんなに顔を赤くして。」

 

「布都のやつ。ああなると何してもおきないんですよ。」

 

「私が叫んでも起きませんからね」

 

「そんなにですか。」

 

「ええ。それはもう気持ちよく寝たままですよ」

 

「全くだ…」

 

「あなたもよく我慢していますね。」

 

「何がですか?」

 

「布都に振り回されて。怒らないことです。」

 

「怒りはしますけど…霊廟の中なら幾らでもシバいてますが、外だと迷惑になりかねませんし…」

 

「ここでも十分、迷惑になるときはありますけどね。」

 

まぁ確かに…

 

「それは…まぁ。」

 

「それはさておき。さて。人間の方、愁さんご協力ありがとうございます。」

 

「ん…まった。どういうことですか?」

 

「蘇我さん、実はですね、神子様とは以前顔を合わせてまして。」

 

「そうです。彼は居酒屋や食い物屋には詳しい方で、そういったところを回ってるのです。」

 

「それで君たちを見つけたら報告してほしいとのことだったのだが、」

 

「うまくことが運んだのか、連れて帰ってきてくれる所までとは思いもしませんでしたよ。」

 

図られてたのか…流石、神子様だな…

 

「まぁ、その前から知り合いではあったのですが、」

 

「知り合い…?」

 

「ええ、彼とは長いですから。」

 

「よく食事に行ったりしますからね。」

 

「そうだったのか…」

 

「屠自古も、居酒屋や飯屋など、だめとは言いませんが、回数は控えるように。」

 

「私は霊廟で静かにしてる方がいいので…いつもは布都のやつに連れ出されてるだけなので…」

 

全くいい迷惑だよ…

 

「そう、後で叱っておきましょうか。」

 

「お願いします。」

 

「では、愁さん。また今度おあいしましょう。」

 

「はい、まあ、また、今度ですね。」

 

さてと、部屋に戻って本でも読もうかな。

 

 

 

……

 

本を読むのはいいが…

 

布都が神子様に怒られて…叫ぶ声で集中できない…

 

全く…いつもこうだ…




あとがきも無いです

また会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

暖かい幸せ

どうも悠樹です

ここで少しお詫びを。

前回の投稿でこちらのミスで二重投稿となってしまいました。
もちろんあとに投稿されたぶんは削除させていただきました。

この度は混乱を招くようなことをして申し訳ありませんでした、

今後共よろしくお願いいたします。



今回はゆったりとした話です

ではごゆっくり



「さっさと済ませてくるか。」

 

長い階段をまた登るのかと思うと、気が重くなる

そう思いながらも博麗神社に参拝に向かうことにした

 

仕事もあるので普段は朝に参拝に向かうのだが、

 

今日は朝寝坊しそうになったので、仕事が終わって、夜に向かうことにしたのだ。

 

「結構暗くなってきたな。」

 

日も落ちて星すら見えて来ている。

月明かりがうっすらとかかってきている

 

よく晴れているものだから。少しばかり明るい。とは言っても暗いことには変わりなくランタンを手に持とうとしたときだ、

 

「ねぇ、どこに行くの?」

 

後ろから声が聞こえてくる。

 

「誰だ…?」

 

振り向くと白黒の服の少女がふよふよと浮かんでいた。

 

「あっ、神社に行くんだね。」

 

「なんでわかった?」

 

「毎朝よく見かけるから」

 

毎朝見かける…なるほど、この付近の妖怪かそれに近いものか

 

「そうか、ちょっと急いでるからな、また今度。」

 

そう言って足早に先を急ぐ。

 

「私もついてくよ。」

 

後ろから浮いたままついてくるようだ。

 

「別に構わないが、何もないからな。」

 

「うん、いいよ。」

 

謎だな、少女とはいえ、おそらく妖怪、人を食うのが妖怪と聞くが、

 

まさか食われるとかないよな、

 

「さて…目覚ましの階段だな…」

 

例の長い階段登りきった先には神社。

 

さっさと登るか。

 

中盤に差し掛かるところで。そろそろ疲れを感じてくる。

 

「はぁ…はぁ…相変わらずだ…」

 

「どうしたの?疲れてるの?」

 

「そりゃ、お前と違って、地に足ついてるんだ。疲れもするよ、」

 

「ふーん、そーなのか、」

 

「はぁ…先、行っててくれ、」

 

「ううん、一緒に行くよー。」

 

律儀に待つらしい、

 

俺もいつまでも休憩するわけにはいかないから、しばしば登りを再開する。

 

慣れれば少しはらくになるとはいえ

いくら何でも長い階段というのは肉体的には辛い。

 

息が上がりながらもやっとのことで鳥居まで辿り着いた。

 

「はぁ…はぁ…ついた…」

 

「ついたねー。」

 

風船みたいに浮かんで…

楽で良さそうだよ…

 

「ほら。お参り行こ。」

 

「あぁ…ちょっとまってくれ、」

 

「うん。先に、そこの椅子で休もっか。」

 

少女が指さした先には長椅子があった

言われずとも椅子で休むことにする。

 

水筒の水を勢い良く飲み。深呼吸をする。

 

やっとのことで息が落ち着いてきた。

 

「ねぇ。お参りは?」

 

「あぁ、そうだな、お参りするか。」

 

立ち上がってお賽銭を投げ入れ、

手を合わせる、

 

少女もお賽銭はないが

横で手を合わせている

 

このときだけは地に足をつけるようだ。

 

「お参り終わったね。」

 

「そうだな、終わったな。」

 

振り向いて景色を眺める。

 

「夜だとこんなに綺麗な景色なのか、」

 

「綺麗だねー、」

 

「お前はいつもこの付近にいるのか?」

 

「んー。そんな感じだねー」

 

「そうなのか。」

 

「そーだよー。」

 

そこで会話が途切れた。

 

 

少女も俺も黙って景色を眺めていると後ろから足音が聞こえてきた。

 

「ふぁー…あんた、遅かったじゃない、」

 

「霊夢さん起きたんですね、」

 

「まぁ、妖怪が神社に来てる訳だしおちおち寝てる訳にはいかないからねぇ。」

 

「そーなのかー。」

 

「そーなのかー。じゃないわよ、あんたのせいで私は起きちゃったのよ。」

 

やはり、妖怪だったようだ

 

「やっぱり、こいつ妖怪なのか。」

 

「そう、ルーミアっていうのよ。」

 

「ルーミア?」

 

「そーだよー」

 

「ルーミア…あんた何してるの?、」

 

「特に何もー」

 

目的無かったのか…

 

「さっき会ってからずっとついてきてるんだが」

 

「ねぇ、れーむぅ。」

 

「何かしら」

 

「この人は食べてもいい人間?」

 

唐突に何を言い出すか、

 

「あなたが決めなさい。私は関係ないわ」

 

「そっかー。」

 

ルーミアは俺をしばらく見つめてからしばらくして、階段を降り始めた。

 

「食べないみたいね、」

 

「まぁ、そのほうがありがたいけどな。」

 

後を追うように俺も階段を降りていく、

途中でルーミアは止まって振り向いた

 

「あなたは食べても良い人間?」

 

「人間を食うのが妖怪だ、お前が俺を食うなら抵抗はしても勝てはしないだろう。好きにしろ」

 

「そっかー。」

 

その答えばかり、

一体何を考えているのか、

 

「お前は何故食べてもいいか聞くんだ?」

 

「んー。考えたことないなー、」

 

「そうか、」

 

長い階段を降り終えて。

ルーミアはまたこっちを向いて黙っている。

 

「なんだ?俺になんか付いてるか?」

 

「ううん、何も。」

 

何考えてるか、ほんとにわからない。

とりあえず家に帰ることにした。

 

相変わらず、ふよふよと後ろをついてくる。

 

人里にまでついて来る。

 

人里にはいくつか妖怪もいるがこいつは見かけたことはない。

 

「家はどこなんだ?」

 

「家?家かー。」

 

それからしばらく答えてくれない。

 

そのうち自宅まで着いた。

 

ずっとついてきたこいつだ。

どうせ上がっていくんだろ。

 

「ここがあなたの家なんだねー。」

 

「上がってくか?」

 

「うん。」

 

小さな家だが。

それでも人が住むには十分だ。

 

ふと思うと。なぜ俺は家に妖怪を上げてしまったのか。

 

「お腹空いたな。」

 

「ちょっと待ってろ、いま用意するから。」

 

人間の食事で満足するのだろうか。

 

何にせよルーミアが空腹ということは俺が食われかねない。

 

とりあえず用意はしてみた。

 

「あー。おうどんだ。」

 

「わかるのか。」

 

「よくれーむの神社で食べてた。」

 

「そうか、」

 

「いただきます、」

 

いただきますすら言うのか。

何気に行動は人間に近いんだな。

 

うどんをすすって。

普通に食べる。

 

妖怪とは少し離れすぎている気がする、

どこか微笑ましく感じてきて。でも、それがやはり違和感を感じる。

 

「んー。おいしー!」

 

「そうか、良かった」

 

案外喜んでくれるようだ

 

少女も満面の笑顔でうどんを食べている。

 

これはこれで良かったのかもしれない。

 

「美味しかったなー。」

 

食べるのが早いのは人食い妖怪?だからか?

 

「すまない、おかわりはないんだ。」

 

「ううん、大丈夫ー。」

 

俺を食うからおかわりはいらないか?

 

「おうどん一杯で満足だから。」

 

そうか、そりゃ良かった、

 

食器を洗っていたのだが、夜も遅いものだから眠気が少しばかり来ていた。

 

人食い妖怪が側にいるものだから、

流石に今寝るのはやばいと思ったのだが…

 

「ふぁー…眠くなってきたなぁ…」

 

どうやらルーミアも眠たいらしい。

 

俺もいつまでも眠気と戦ってもいられない。

 

ルーミアが寝るまで待ってみようと思ったのだが、以外にも少女の方から行動に移してきた。

 

俺がベットで寝るふりをしていると。

顔を覗き込むように割り込んできた。

 

「まだ起きてるね」

 

「あぁ、まぁ、食われるかもしれないしな」

 

「食べないよ。だってあなたは優しいもん」

 

優しいから食べない。

以外な理由だな。

 

「これだけ近くにいても逃げないし。おうどんもくれたし。なによりも私を怖がらないし。」

 

まぁ、見た目で判断するものではないが、怖いとは感じなかった。

 

「まぁ、なんていうか。」

 

「あなたって優しいね。」

 

そういうと、ルーミアは抱きついてきた。

 

頭を撫でてみる。

なんというか、暖かい感じがする、

 

食われるという緊張感よりも

少し幸せを感じてきている。

 

「あなたと居ると自然にお腹が一杯になっちゃうなあ。」

 

食わずとも腹が満たされる。

なんて幸せ者なんだろうな

 

でもそれだけ、俺は彼女に、気にいられているようだ。

 

「俺が好きか?」

 

「うん。大好き。」

 

すごく微笑ましく感じる

恋愛的な愛ではなく

まるで家族のような、そんな暖かみを感じる。

 

「ねぇ。しばらくここにいていい?」

 

「あぁ、いいぞ、」

 

「ふふっ、嬉しいなぁ。」

 

小さく喜ぶ少女の顔がとても可愛らしく。

 

俺も少し嬉しく感じる。

 

喜んで抱きついてきているが

気がついたら少女は寝てしまっていた

 

寝る姿すら女の子そのものだ、

こんな少女が人食い妖怪なんて信じられない。

 

そんなふうに思いながらも。

 

少女に寄り添い、俺も寝ることにした。




こんなルーミアいたらいいなと思って書きました。

はい、自己満足ガンガンです

でもこんな感じなのもたまにはいいかな。

また会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

兎の団子屋

どうも夢子でした

前書きはありませんでした


それではごゆっくり


喜びながら袋を手に持つ人間。

 

そしてその後ろにはカウンター越しに兎、

 

「毎度ありー!」

 

数分後その兎の元にまた人間が

 

「うさぎさん!団子二本ください!」

 

「ハイハイ二本ね!はいこれ!」

 

「ありがとー!」

 

 

「やっぱり里だとお団子は売れるねぇ」

 

そう言いながら、兎は売り物の団子を頬張った

 

 

 

人里のある通りに団子屋がある。

 

 

店主は鈴瑚という兎。

 

団子好きの兎である。

 

団子屋に一人の男がやってきた

 

 

「鈴瑚さんのお団子、今日も売れてそうだね。」

 

「うどん屋の息子さんじゃないか。仕事はいいのかい」

 

「母さんが団子を食べたいって。お使いに出てるだけさ。」

 

「そう言って、ホントは抜けてきたんだろ?」

 

「半分正解で半分はさっきの通りかな」

 

「して答えとは?」

 

「母さんが父さんにお使いを頼んだから、代わりに俺が来た、仕事をサボれるなら。ってこと。」

 

「うむ。うまい口実。それで何本いる?」

 

「そうだね。妹も両親も、勿論俺も好きだから。八本貰おうかな。」

 

「八本ね。今日は気前がいいじゃないか、はいどうぞ。」

 

「まぁ、美味しいものは食べたくなるものだからね。それじゃ、戻るとするよ」

 

「毎度あり、また今度も頼むよー」

 

そう言うと男はのんびりと帰っていった。

 

「仕事サボりかー。」

 

カウンターに団子並べながら

 

「全く、仕事をサボれるなんて、いい身分だよね。ほんと、」

 

そう呟きながらも。鈴瑚はまた団子を頬張った。

 

数時間経って夜のことだ

 

里では珍しい客がやってきた。

 

「人里に人気の団子屋があると、咲夜から聞いたのだけれど。」

 

「おや、紅魔の吸血鬼さんじゃないか。」

 

「ここで間違いないかしら?」

 

「団子屋ね。多分合ってるんじゃないかな。」

 

「それじゃ、美味しいお団子、を二十本頂こうかしら。」

 

「おぉ…二十本かい。ちょっと用意するから待ってて。」

 

「できるだけ早めにお願いするわ。」

 

鈴瑚は慣れた手つきで売るための団子を用意し始めた。

 

作りながらも。自分用の団子を口に頬張る。

 

「ふぉい、ほれ。」

 

「食べながら渡すなんて失礼ね。」

 

「すまないね。団子を食って力つけてたから、とりあえず、ほら、持ってくだろう。」

 

「ええ、受け取るわ。」

 

「毎度あり。」

 

「感想次第だけど、また来ると思うわ。」

 

「その時のために、たくさん用意しておきますよ、」

 

「ええ、頼むわ、それじゃぁまた今度。」

 

そう言うと、吸血鬼は飛んでいった。

 

 

「紅魔の吸血鬼の耳にまで届くとは…思いもしなかったけど…まぁ、そろそろ他の連中も来る頃かな。」

 

次の日も、兎の団子屋に客は来る。

 

老若男女問わずやってきては団子を買っていく。

 

たまに団子泥棒もいるが。

 

目で見てない限りは見逃している。

 

なぜかと言うと。

 

大体が清蘭の団子屋でも盗みを働こうとして、バレてるからだ。

 

本人も盗まれても、さほど気にしてはいない、

 

むしろ、商品を自分で食べるときがあるほどでもある。

 

盗みが起きるほど、鈴瑚の団子屋は人気でもあるからだ。

 

 

 

「鈴瑚さん、お団子一つ。」

 

「はいよ。」

 

今日も団子は売れる。

 

「兎さんや、お団子一本、頂きたいよ」

 

「本屋の婆さん、喉には気をつけなよ、」

 

「歯は無くともね、ちゃんと食べれるからね。大丈夫だよ。」

 

「そうかい。いつもありがとね。」

 

また売れる。

 

 

「兎のおねぇちゃん!お団子ください!」

 

「ハイハイ、何本かな?」

 

「五本!」

 

「五本かー。おやつにみんなで食べるのかな?」

 

「そー!お友達と食べるんだー!」

 

「楽しそうだね。はいこれ。」

 

「ありがとー!」

 

「うんうん、また来てね。」

 

その次の日だって売れる。

 

たまに鈴瑚目当ての人間もくる。

 

「鈴瑚さん、たまには休みなよ。」

 

「うーん?これでも結構のんびりやってるんだよ?」

 

「へぇ、そうか。ほら、清蘭に任せてさ、たまにはゆっくりしなよ、里には詳しいからさ、案内するって。」

 

「うーん。気持ちはありがたいけどね。里に関しては何度も見て回ってるし。それでここを選んでいるわけだから。」

 

「うんうん、なら尚更散歩してまわろうよ」

 

「いや、いいよ。他にもお客さん来るのに店は空けれないから。」

 

「清蘭に任せてさ、ほら行こうよ。」

 

「あいつもあいつで店構えてるんだから無理に決まってるだろ。」

 

「それじゃ、向こうの団子屋の息子は。あいついつも暇そうじゃん、」

 

「あんたね。私の団子屋に来てナンパとはいい度胸じゃないか」

 

「ナンパなんかしてないよ、まぁいいや、また今度来るなー。」

 

 

「今度は団子買ってってくれよ。」

 

そう言いながらも、本心は

 

(団子買わないなら来るなよ…他のお客さんの迷惑だから…)

 

そう思うばかりだった。

 

実際、先の男が居座っていたせいで三組ほど客が帰っていったのは現実だったりするのだ。

 

 

団子屋に客が来ない日など無く。

鈴瑚は毎日団子を頬張る。

 

「兎さん。お祭り用のお団子って用意してもらえないかな。」

 

「へえー、お祭りか」

 

「そう。近いうちに里でお祭りをするから。お店開くか屋台出すかしてくれるとみんな喜ぶと思うんだ。」

 

「乗った。屋台は用意できそうにないからお店を飾るなり何なりして。便乗させてもらうよ。」

 

「ありがとう。僕もその時は手伝うし、きっとみんなも喜ぶと思う、」

 

「まぁね、みんな毎日買っていってくれるから、参加しないわけにはいかないさ」

 

 

 

お祭り当日

 

ある子供は右手に団子、左手に綿菓子

 

椅子に座る男は両手に団子。

 

見渡す限り。二人に一人は団子を手に持っている

 

お祭り便乗は成功したようで、

 

店の前にたくさんの行列が並んでいる。

 

 

 

鈴瑚の団子屋は里では有名であり

今日も団子はたくさん売れる。




後書きもありませんでした


そまた会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

固い誓い

どうも悠樹@夢子&松K.です。

前書きかー…

そうですね。

小説を始めた頃のスタイルに近いと思います、
オリ主の設定的な意味で

ではごゆっくり


幻想郷で。ある異変が起きていた時のことだ。

 

八雲藍は妖怪の山で調査をしていた。

 

「山は全く関係なさそうですね…」

 

そう思った瞬間、山の妖怪達が藍を囲んだ、

 

「やっと出てきましたか。」

 

妖怪達は何も言わず藍に襲いかかる。

 

「はぁ…無益な殺生は嫌いなんですが…」

 

そう言うと、弾幕が周りに撃ちだされ妖怪達に当たり一気に数が減った。

 

残った妖怪達が次々に顔を出す。

 

「避けましたか。面倒ですね…」

 

藍が次の弾幕を放つ用意をしていると。

 

いきなり足元に缶が飛んできた。

 

藍はそれが何かすぐに理解をして。

耳と目を塞いだ。

 

その瞬間、周りに甲高い起爆音と目が眩むほどの光が走った

 

その数秒後、大量の発砲音がして。

藍を囲んでいた妖怪達は次々に散った。

 

「これは…?」

 

状況が読めない中

周りを見渡した。

 

この妖怪達を倒した何が何処かにいる。

 

「一体…」

 

考える暇もなく

藍は妖怪がまた近づいてくるのを感じた。

 

「いつまでも長居はできませんね…」

 

そう呟くと飛んで山を後にした。

 

 

………

 

 

「紫様、戻りました。」

 

「山はどうだったかしら?」

 

「目立った異常は見受けられませんでしたが…妖怪の量が多すぎるかと…」

 

「そう。それじゃ、何か隠れてそうね。」

 

「はい…ですが…」

 

「何かあったかしら?」

 

言いかけてやめた

 

「いえ…何でもありません。」

 

「そう、」

 

 

 

 

その後も藍は各所で調査を進めた。

 

既に霊夢や魔理沙が動いており。

彼女達が関わった面子を見ると

大体の関係者の予想はついていた。

 

「残るは…」

 

そう思いもう一度、山に向かった

 

山に入り森の中を歩いていると。

 

一人の人間が立っていた。

 

「ここで何をしているのですか。」

 

「あなたと同じ俺も調査側の人間だ。」

 

「なるほど。」

 

「八雲、と言ったな。」

 

「私が何か。」

 

「この山は危険だ。」

 

「ええ、ですから調査するのですよ。」

 

「今すぐ去れ。身の保証はしない。」

 

「人間のあなたこそ、危ないのでは?」

 

「俺のことはいい。早くこの場を去れ」

 

「あなたにそれを言われる筋合いはない」

 

「そうか…なら好きにするといい…」

 

「ひとつだけ聞きます。」

 

「なんだ?」

 

「なぜ貴方はこの山が危険だとわかるのですか?」

 

「……それは言わない…」

 

その一言を言って、人間は山の森の中に紛れて行った。

 

その会話を聞いていた紫がスキマから顔を覗かせた。

 

「一体何者なのでしょうか。」

 

「さぁ、きっと、彼にしかわからない理由があるのよ」

 

「続けて調査をしますが。」

 

「やめておきなさい。あなたには危険よ。」

 

「何故?」

 

「彼が危険だと言ったから、」

 

「それじゃ納得できません。」

 

「そう、なら勝手にするといいわ」

 

藍は不満を抱えながら。

山を調査して回った。

 

紫と別れた数分後のこと。

 

大きな地響きが山で起きて。

地面が大きく揺れた。

 

「一体これは…?」

 

高い木の天辺のところまで飛び上がり周りを見渡すと。反対側から大きな煙が上がっていた。

 

火事などの煙ではなく茶色い土煙。

 

地響きもそこから起きている。

 

「何かが暴れている?」

 

かなり離れたその場に向かう、

 

「あれは…?一体…」

 

大きな人形の妖怪のような生き物

異型にも近いそれが土煙の中にシルエットとして見えている。

 

「何故こんな生き物が…?」

 

藍はその場に更に近づく、

 

すると異型が藍に気づき、

足元の木を投げつける。

土煙の中からいきなり飛んでくる木に気づけず反応が鈍る。

 

「だめ…避けきれな…」

 

その瞬間体に紐が巻き付き、強く下に引っ張られる。

 

「なっ…!」

 

地面に近くなるところで紐が解け。安全に着地した、

 

目の前には先程の人間が。

 

「貴方は先程の」

 

「なんでここにいる。危険といっただろう!」

 

「不確かなことで終わりでは、調査と言えません…」

 

「それは命令か?自己判断か?」

 

「自己判断…です、」

 

「賢者の言うとおりにすればいいものを…」

 

人間はその場に藍を残して異型の方に向かった、

 

「あなたはなぜ…」

 

それも言う前に、人間は異型と応戦する。

 

「人間があんなに…」

 

そう呟くと。

紫がスキマから現れる。

 

「彼は私の部下、異世界の住人。」

 

「異世界の?」

 

「ええ、私を知っていたようで。私のもとでこの幻想郷を見ていきたいと言っていたわ。」

 

「そうですか…」

 

「河童の技術でもあんな武器はみたこと無いわ。拳銃型の弾幕発射機。」

 

宙に浮き弾幕を撃つ、

人間は異型をあっさりと処分した。

異型は光を放ちながら消え魂だけが地獄へと向かっていく。

 

数分後のこと、紫の元に人間が戻ってきた。

 

「終わりました。」

 

「ご苦労様。今回はどうだったかしら?」

 

「…魔法ですね。山の妖怪の仕業でしょう。」

 

「やっぱり山が原因ね」

 

「ええ。しばらく張り込んでみようと思います」

 

「その必要はないわ。」

 

「はあ、わかりました。」

 

「天狗達にこの件は伝えてあるから安心なさい。」

 

「かしこまりました。では少しばかり休みますか」

 

「藍と顔を合わせてないみたいだから、挨拶ぐらいしなさいよ。」

 

「なんだかんだまだでしたね。」

 

「あなた、今度宴あるから出なさい、」

 

「俺はそういうのはあまり…」

 

「藍と顔を合わせる機会だから、」

 

「…そうですね」

 

次の日の夜

 

いつも通り博麗神社で宴が行われた。

 

紅魔館、地霊殿、永遠亭

様々なところから人…妖怪達が集まる。

 

 

「あなたは…」

 

藍が人間に気づき話しかける、

 

「先日の、九尾の方ですね。」

 

「はい、あのときは助けていただきありがとうございました。」

 

「無事で何より。」

 

「紫様の部下と聞きましたが…」

 

「ええ、そうです。」

 

「挨拶が遅れました、八雲藍といいます。」

 

「隼人です。以後よろしくお願いします。」

 

「宴、楽しみましょう。」

 

「え…ええ、」

 

「どうしました?何かありましたか?」

 

「いえ、何でもありませんよ。」

 

隼人は紫の様子を伺っているようだった。

 

紫が霊夢達と飲み始めると。

隼人はその場を離れ鳥居まで向かった。

 

不審に思った藍は後をついていく。

 

それに気づいた隼人は藍に話しかける。

 

「宴はいいのですか?」

 

「あなたこそ何をしているのですか?」

 

「俺はただ紫さんが来るのを待ってるだけだ。」

 

「そうですか。なら私もそうします、」

 

「何故?」

 

「あなたがそうするからです。」

 

「…そうですか。」

 

藍は疑問に思っていたことを聞いてみる。

 

「何故、紫様の部下になろうと思ったのです?元の世界でも生きていけたはずでは?」

 

隼人は藍を見ず、空を眺めながら話した。

 

「元々…俺には家族はいたんだ…」

 

悲しむ隼人の話を藍は黙って聞き、見つめていた。

 

………………………………

 

兄弟も親もいた。

 

今と同じように向こうの世界でも化け物と対峙してた。

 

幼馴染が化け物に殺され。

その復讐に化け物共に仇討ちをするために。ここまで力を付けて。

家族を守るために。力なきもの達を守るために。

 

でも…それは叶わなかった…

 

俺が退治に向かっている時に…

運悪く。俺の町に大量の化け物達が…

襲って…街を壊して…何もかも瓦礫の山だった…

 

多くの人が亡くなって…

街も復旧するまでもなく…

 

何もかも無くなった…

 

その街に住む俺だけが現場に居なくて

助かった…

 

住む場所も家族も何もかも無くして。

 

生きる希望すら無くして。

 

そんなときに。

過去に会った紫さんを思い出したんだ。

 

この世界に居場所がないなら。

 

彼女の住む世界でもう一度。

そう思ったんだ。

 

そして俺は。紫さんの部下として。

この世界の異変の解決の手伝いをすることを決めた。

 

………………………

 

「俺を助けてくれた紫さんが居る、この幻想郷を守りたい。」

 

「だから、ここに来たんですね。」

 

「…もうこれ以上無くさないために、更に強くならないと…」

 

「あなたは十分に強いですよ。」

 

「…なぜ?」

 

「失くしても尚、守るものと守るための力を求める。私には出来ない。」

「生きる使命。それをしっかりと持っている。それがとても素晴らしいと思います。」

 

「八雲さん…」

 

「これからも頑張ってください。」

 

「ええ…もちろん。」

 

藍は微笑むと後ろを振り向いて。

社に戻ろうとしてやめた。

 

隼人はまだ鳥居で待っているつもりだった。

 

「貴方は。宴は嫌いですか?、」

 

「雰囲気に馴染めない。それだけ。」

 

「そうですか。まぁ、そんな人もいますね。今日は私もここにいることにします。」

 

「そうですか。」

 

「もっとお話、聞かせてください。」

 

「…話…ですか。」

 

「貴方について知りたくなりましたので。」

 

「俺に興味が…?」

 

「ええ、だから、今日はここに居させてください、」

 

「八雲さん……そうか…」

 

「どうかしました?」

 

「家族と幼馴染を失くしてから。紫さん以外誰とも親しくなったことがなくて、紫さんもなにか強い壁のような物も感じていましたし…少しばかり…」

 

「気になりますか?」

 

「誰かに想われることが。こんなにも嬉しい事だというのを…忘れていたのかもしれない…」

 

「私は貴方が好きですよ。」

 

「あっ…えっと…」

 

「ふふ、不器用ですね。」

 

恥ずかしがる隼人を何も言わず抱きしめる…

 

俯く隼人は涙を隠しながら。ひとつ呟いた。

 

「ありがとう…」

 

「こちらこそ」

 

 

神社の境内には。

夜空の月明かりに照らされた、言葉の無い固い誓いで結ばれる二人の人影があった。




うん。何もない。
あとがきは何もないよ。


それではまた会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

眠れぬ夜の出来事

どうも。夢子です。

今回は寝る前に時間を取って書きました
とは言っても何日かに分けてます。
だって…一夜で書ききれるほど…語彙力も作文力もないんだもん…

ではごゆっくり


紅魔館の一室で本を読んでいた。

 

普段は寝ている時間だが。

どうにも眠れないものだから、手元用のスタンドライトを机に置いて、軽く明るくして読んでいる。

 

雨の降る音だけが聞こえる中

静かな空間が広がっていた

 

そんなときに。

 

隣のベットでゴソゴソと動く音がした

 

「どうしたレミィ。眠れないのか?」

 

「ん、うん。」

 

「そうか。すまん。明るくしないほうが良かったか?」

 

「別に構わないわ。貴方も眠れないのでしょう?」

 

「あいにくな、」

 

「そう。」

 

レミリア・スカーレット。

紅魔館の主であり。

俺の愛人。

そして、俺は彼女の執事

 

レミリアはベットから起き上がると机を挟んで対面の椅子に座る。

机に伏せるようにして顔を覗かせてくる。

 

「どうした。寝ないのか?」

 

「ふとんの中、暑苦しいのよ。」

 

「まぁ、雨も降ってるしな。」

 

「本。何読んでるの、」

 

「これか?知り合いが里から持ってきたやつで、旅人の話だ。」

 

「そう。貴方、旅がしたいの?」

 

「旅なんてする必要はない。定住地もあればお前もいる。旅なんて俺には無関係だ」

 

「そうね」

 

本を閉じてレミリアと向かい合う。

レミリアもよそ見をしていたのを視線を変えてこちらを向く、

 

「相変わらず、あなたは優しい目をしているのね。」

 

「生まれつきらしい。俺は気にしたことがない」

 

「見た目だけじゃなくて貴方は本当にやさしいものね。」

 

「よく言われる」

 

「そんな貴方が私は愛おしい」

 

「その発言は何回目か」

 

「さぁ、わからないわ」

 

そのひとことで黙り

また静かな空間が広がった

 

お互いに真剣な眼差しで見つめ合い

そして、お互いに目をよそに向ける

 

そこに恥ずかしさなどはなく、

単に違う景色を移すためだった

 

しばらくの間話さなかった

 

まるで心が通い合っているように、

たまに目を合わせてはまたそらし。

何かあれば目を合わせてまたそらす、

 

その繰り返しをしていた、

 

次に声を出したのはレミリアだった

 

「…ねぇ…」

 

「ん?」

 

「寝ましょ…」

 

「眠たいか?」

 

「…ん…うん…」

 

「そうだな、寝るか」

 

本を仕舞い、ライトを消し。

レミリアと同じベットで横になる。

 

俺は寝るときはすぐ寝る。

しかし、どうも今日はひたすら寝れない。

 

眠たそうにするレミリアを撫でながら、眠るのを待つ。

 

帽子のつけていないパジャマ姿のレミリア。

普段の風格を感じられない姿の彼女からは女の子らしさと今だけは寂しさを感じていた

 

レミリアは、すすり泣くような声を出し、蹲るように体制を変える。

 

「どうした、泣いてるのか?」

 

「……」

 

何も答えずに抱き着いてくるレミリア。

 

そっと抱き返し。落ち着かせる。

 

「どうした。何か気に触ることでもあったか。」

 

「貴方は…本当に…優しすぎるのよ…」

 

この発言も何度も聞いた

 

「優しいのは…罪か?」

 

「…いいえ…でも、私は貴方を傷付けてしまったのに…それを許しているは…罪なのかもしれないわ…」

 

「レミィは…まだあの時の事を?」

 

「だって…私は貴方の全てを奪ったのよ…」

 

「確かに…俺は家族を失くして、家を失くして、死にかけた、」

 

「ええ…だから…私は…」

 

「でも、だからこそ。俺は半妖となり。レミリアと逢い。こうしてここにいる。」

 

「……」

 

何も言わず更に強く抱きしめてくる

 

「…俺はな、誰かを恨んだり憎んだりするのは苦手なんだよ。だから、別にレミィに対してそういうふうには思ってないぞ。」

 

「私が…悔しいのよ…」

 

「気にするな…」

 

「だって…全部奪って…傷付けて…挙句、私と付き合わせることになって…」

 

「…俺はレミィが好きだし…もっと言うなら、これ以上無いほど今幸せだと思ってる。」

 

「私は貴方に何もしてあげれないのよ…」

 

「俺を死の縁から救ってくれた。それだけで充分だ。」

 

「…なんでなのよ…」

 

「なにが…?」

 

「何で私は…貴方に良くしてあげれなくて…それで…貴方はいつも私に優しくするの…」

 

「レミィ…あのな、」

 

「もう…私は貴方に何をすれば…」

 

「レミィ、」

 

「…うん…」

 

「何もしなくてもいい、いつもみたいにレミィはレミィとしていてくれればいい。」

 

「でもそれだと…貴方が報われない…」

 

「報われる必要なんてないだろ。」

 

「なんで…貴方だって…」

 

「報われたいとは思ってないし、報われて何が変わる?今のままでも俺は充分満足してる。それにあの頃が一番の最悪だったとしたなら、それを乗り越えて今は幸せなんだ。」

 

「でも…私は…」

 

「もういいんだよ、それとも、レミィは満足できない?」

 

「うん…」

 

「なら、レミィの思うやり方でいい。少しずつ優しくなればいいんじゃないか。」

 

「優しくなる…それだけかしら…?」

 

「俺はいつも人に優しくしているんだと思う。他人が言うように。だから、レミィも優しいと言われるようになればいいんじゃないか。」

 

「うん…」

 

「そうすれば、自然と誰かに何かしてあげることができるだろうし。」

 

「…私は貴方に優しくすればいいのかしら…?」

 

「もちろんそれもそう。でも俺だけじゃない。俺だけにするんじゃただの不公平だから。」

 

「優しくなる…そうね…やれるだけやってみるわ…」

 

そういうとレミリアは静かにまた抱き着いてきて。そのまま落ち着くように寝てしまった。

 

「おやすみ、レミィ」

 

その数秒後に俺もやっと寝ることができた。




今回は短めに終わりましたね。

ちょっとしたシナリオでした。


では、また会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

花と愛人

どうも、夢子です

もうだめ前書きのネタがないの。

ゆるして

ではごゆっくり


 

幻想郷の広大な花畑の隣に、一軒の家があり

 

妖怪…風見幽香と、その知り合いの半妖の男が住んでいた。

 

 

 

「幽香。体調はどうだ。」

 

「…全く良くならないわ」

 

「そうか…どうすれば治るんだろうな…」

 

 

妖怪である風見幽香は、2日前、花畑を荒らす人間を粛清した際に、人間が持っていた謎の薬によって病気を患わってしまった。

 

病の正体も治療方法もわからず。

半妖の男は手探りにいろんな方法を試していた。

 

「普通の薬も効かないか…」

 

「元々人間用だもの、効かなくてもおかしくはないわ」

 

ゆっくりとベットから立ち上がる幽香、支えるように男は手を貸す

 

「寝ておかなくて大丈夫か?」

 

「食事、自分で用意するわ。」

 

「いや、俺が作るよ。休んでてくれ。」

 

「…すまないわね…」

 

そう言うと幽香はベットに座った。

 

「私のことはいいのよ…?」

 

「いくら妖怪で丈夫だとはいえ、そんな状態のやつはほっとけないからな」

 

「…そう。悪いわね、引き止めてしまって」

 

「まぁ、もうこいつも年だからな。」

 

部屋に飾ってあるカメラ。

かなり使い古されている。

 

 

「やめてしまうのね。」

 

「代わりになるやつがないから。ここで終わりだろうな。」

 

「残念ね…」

 

 

軽い会話を終えると。男は部屋を出て台所で食事を用意する、

 

「…ほんと、らしくない…」

 

謎の病のせいなのか。

 

空も飛べず。弾幕も出せず。

おまけに微熱と体の不調まである、、

 

立って歩くことすら満足にできない状態だった。

 

いつものように花と会話するが。

それでも。心配されてばかりである、

 

「…私も何か探らないといけないかしらね」

 

「無理するな。必ず治る方法を探してやるから。安静にしてくれ。」

 

男はスープを作って持ってきていた

 

「そういっても。迷惑かけてばかりではいられないのよ。」

 

「お前はあの場所守るために頑張ってたからな。だから今は充分に休め、」

 

幽香は何も言わなかった。

 

「スープ飲めるか。」

 

「ホントは飲まなくてもいいのだけど…」

 

「薬飲んで。熱下げるためでもあるんだし、少しでもよくするためだ」

 

「わかってるわ。」

 

普段食事という食事をしないため。

食器などの扱いに慣れていない。

その為か、初めはスプーンでスープをすくうこともうまくできなかった。

 

「…お願いしてもいいかしら。」

 

「そういうとこ不器用なのか…」

 

「…悪かったわね」

 

「そう怒るな。誰も拒否はしてない。」

 

「…お願いするわ…」

 

男は呆れながら幽香にスープを飲ませた。

 

「次からティーカップに用意するか…」

 

「…そうね…そのほうがいいかもしれないわ」

 

スープを飲み終わると幽香は人間用の簡易的な風邪薬を飲み。また横になった、

 

男は大きく息をつくと椅子に座って休憩をしていた、

 

「貴方に1つ言いたいことがあるのよ。」

 

「なんだ?」

 

「なんでそんなに私の世話をするのかしら?」

 

「困ってる人を放っておけない性格だからな。」

 

「そう」

 

「それに。昔の知り合いでもある」

 

「そうね…」

 

そう一言言うとまたつぶやいた。

 

「…迷惑かけてばかりではいけないし、私もそろそろ外に出て何かしら探さないといけないかしら…」

 

「それはだめだ」

 

「…なんでかしら、」

 

「今のお前は何もできない上にまともに動けもしない。そんな状態で妖怪にでも襲われたらどうする、」

 

「なんとかして逃げるわ」

 

「普段力でねじ伏せてきたお前が、逃げ方を知っているのか?」

 

「…」

 

「それに、逃げれたとしてその後も身の保証はできない」

 

「なら。メディスンに。」

 

「同行してもらう分には構わない。ただ足手まといになるということも考えろ。」

 

「……」

 

「俺がついていったって、力が十二分にあるわけでもない。わかるか。」

 

「……不便ね…」

 

「そうだな…不便だ、」

 

「はぁ…わかったわ、貴方の言う通り。大人しくしてる、だから、」

 

「だから。?」

 

「たまには花がみたいの。」

 

「向こうの花畑か?」

 

「ええ、」

 

「…わかった。」

 

幽香は立ち上がり、歩きだす。

 

「ついてくよ。」

 

手を貸す男。

 

ふらつきながら歩く幽香を見守りながら一緒に歩きだす。

 

「そこの椅子に座ってくれ」

 

「立って歩くわ。」

 

「河童に車椅子を用意して貰ったから。それを使う。」

 

「そうね。そのほうが楽そうね。」

 

幽香は車椅子に座りそれを男が押して進む。

 

少し歩くとすぐに花畑に入り。

辺り一面が花で覆い尽くされる、

 

「やっぱりここだけは変わらないわね」

 

「ああ、いつ見ても。綺麗だな」

 

しばらくすると幽香は呟いた。

 

「私なら大丈夫よ、」

 

「花か。」

 

「ええ、心配されてばかり。」

 

幽香は空を見上げると。溜息をついた。

 

「らしくないな、」

 

「仕方ないわ」

 

夕方になる頃に、花畑から戻り始め、

家についた頃にはすでに暗くなっていた。

 

 

部屋に戻ると幽香は車椅子からソファに移り。お茶を用意していた、

 

「座って、話がしたいわ。」

 

「どうした、話って。」

 

「私が、もし治らなかったら、貴方はずっとこのままのつもりなのかしら」

 

「まぁ、そうだろうな。」

 

「それなら…例えば私が治ったらどうするのかしら?」

 

「あまり考えてないな、」

 

「そう。」

 

「まぁ、カメラ無くても旅はできるし。カメラも河童に直してもらうこともできるだろうし、それはその時に。かな」

 

「治ったら旅を続けるのね。」

 

「まぁ、だろうな。」

 

「そう。わかったわ」

 

「あぁ、それだけか?」

 

「迷惑かけてばかりだものね。今の話は忘れて。」

 

「うん?まぁ、」

 

お茶を飲み干すと、幽香はベッドに移り横になる。

 

男は、まだ同じ部屋でソファに座ったまま少し考えていた。

 

「…なぁ…」

 

男は唐突に話しかけた。

 

「なんか引っかかるんだよ…」

 

「…」

 

「まだ起きてるか?」

 

「ええ。」

 

「なんであんな話をしたんだ?」

 

「忘れて、あの話はもういいわ。」

 

「俺が良くない」

 

「……」

 

「なぁ、あの話の意図はなんだ」

 

「強引ね…」

 

「答えてくれよ」

 

「ただの我儘よ。気にしなくていいわ。」

 

「我儘…我儘なら、それこそなんで言わない」

 

「また迷惑かけるわけにはいかないでしょ」

 

「言ってみてくれ、言う分には何も起きやしない。」

 

「……」

 

「……」

 

お互いに黙りあったまま。

約一分は沈黙が続いた。

 

「私は…貴方が大切だと思ってるわ。」

 

「大切…?」

 

「そう。」

 

「それは。今だからか?」

 

「いえ…これからずっとね、」

 

「わかった…それで、我儘っていうのは?」

 

「貴方には…ずっと居てもらいたいの。」

 

「そうか。」

 

「我儘だから。別にいいのよ」

 

「……」

 

「貴方は貴方が好きなようにして、」

 

「まぁ、そうだな。」

 

「だから、この話は忘れて頂戴。」

 

「検討しておくよ。」

 

「そう…」

 

男は部屋を出て行った。

 

幽香はそのまま横になっていたが。どうしても眠れなかった。

 

 

男は外に出て、また幻想郷を飛び回り、幽香の病気を治すためいろいろと探り始めた。

 

「…不器用だな、」

 

花畑から離れて呟いた

 

 

 

 

 

「目覚めが悪いわ…一段と気分が優れない…」

 

いつの間にか眠ってしまっていた幽香は

昼前に目が覚めたが。

いつもより体の不調が強かった。

 

「今日は立つのも無理そうね…」

 

横なったまま呟いた。

 

部屋の扉が開いて。男が椅子に座って、幽香に声を掛けた。

 

「幽香。わかったぞ。」

 

「そう。治るのね?」

 

「薬。飲めるか?」

 

「ええ、」

 

男は包を渡した。

 

「しばらくしたら良くなるだろう。」

 

「その根拠は?」

 

「それは私から説明するね。」

 

あとから、メディスンが扉を開けて入ってくる。

 

「メディスンが、あのとき幽香に掛かった粉末の薬物を調べてくれたんだ。」

 

「地面に残ったものがそのままだったの。」

 

……

 

あの粉は植物を枯らせるための除草用の粉末を魔法で変換させてた。ちょっとした薬。

 

それが、本来は植物を狂わせて化物…いわゆる食虫植物に近い状態にさせる、正確には人を食べるけどね、そういう薬なのだけど、妖気を奪ってしまうような効能も持っているの。

 

それで風見さんに掛かったときに吸ってしまって風見さんが弱ってしまったということなの。

 

……

 

「それで、幽香さんを治す方法なんだけど」

 

「それがこの薬?」

 

「そう。」

 

「一体何の薬なのかしら。」

 

「八意さんと一緒に作ったの。でも大元は栄養剤なんだよ。」

 

「栄養剤?」

 

「栄養剤を粉末化させて乾燥させた薬草を混ぜただけ。簡単なものらしい、」

 

「こんなもので治るのかしら…」

 

「わざわざ実験までしたから」

「おかげで優曇華院は2日間元気が余りすぎて寝れなかったらしい」

 

「毎日朝それを飲んで少しずつ体を慣らしていけば数日で治るわ。」

 

「そう。わかったわ」

 

幽香は了解すると薬を飲んだ

 

「これでとりあえずは様子見だな。」

 

「そうね…」

 

「私にできることはこれだけ。また良くなったら報告待ってるね。」

 

そういうとメディスンは帰っていった、

 

男は部屋をあとにして朝食を用意していた。

 

幽香は薬を飲んだ数分後にまた寝てしまった

 

男は食事を用意していたが仕方なく起きるまで待っていた。

 

日も登った昼過ぎに。幽香は目を覚ました

 

「おっ、起きたな」

 

「そうね…よく寝たわ。」

 

「飯、食うか?」

 

「ええ、頂くわ。」

 

慣れない手つきで箸を扱い。

慎重になりながらも昼食を済ませた

 

「いい加減慣れてきたわ」

 

「まだ不器用さが抜けてないけどな。」

 

「…悪かったわね」

 

「そう怒るなよ。」

 

二人が昼食を片付けてお茶を飲んでいた

 

「もう少しなのね。」

 

「何が?」

 

「何でもないわ、独り言よ。」

 

「そうか。」

 

ちょっとした会話が終わるとまた静かな空間が続いた

 

男は本を読んでおり。

幽香はずっと外を見て考えていた。

 

幽香はふと視線を男に向けると

男はソファで座ったまま寝てしまっていた

 

「疲れてるのね…」

 

幽香は、向かいのソファから移り、男の隣に座る

 

最初は距離があったが、

恐る恐る距離を詰めて、少しずつ近寄っていた。

 

「きっと、またいつか来てくれる…よね」

 

幽香はそう呟いて男に肩を寄せた。

 

しばらくその状態が続くと。

幽香もいつの間にか眠ってしまっていた。

 

 

 

幽香は目が覚めるとベットで横になっていた

起きあがって座ると男が話しかけた。

 

「俺はともかく、お前はしっかりとした場所で寝ないと。治るものも治らないぞ。」

 

「わかってるわ…ただの居眠りよ、」

 

「気をつけてくれな、今はどうだ?体調のほうは」

 

「問題ないわ、今なら普通に歩けそうなくらいよ。」

 

「そうか、それはよかった。」

 

「…本当に元通りになるのね…」

 

「そのほうがいいだろ。何か後遺症が残ってたらそれこそ不便だろ」

 

「それはそうね…」

 

幽香は不服そうにしながら外を眺めていた

 

男はまた外に出て行った。

 

 

 

それから2日ほど経つ。

幽香は、元の状態に近かった。

 

空が飛べるようにまで戻り

体の不調もなく普段通りに過ごせている

 

弾幕は、火力こそ低いが問題なく出せるようになっていた。

 

「こうして、花畑を足で歩くのも久々ね。」

 

「よかったじゃないか。」

 

「ええ、貴方のおかげよ。」

 

「俺は何もしてないさ。ただの人助けだ、」

 

「その人助けが私にはありがたいのよ」

 

「そうか、どういたしまして。」

 

 

 

二人はしばらく黙って花畑を歩いていた。

 

数分歩いたところで唐突に幽香は足を止めた。

 

「ん?まだ、足が痛むか?」

 

「違うわ」

 

「それならどうした」

 

幽香は後ろを向き上を見上げて話しかけた。

 

「貴方は、本当に旅に出るの」

 

「…まだ決めてない」

 

その答えを聞くと幽香は俯いた。

 

「まだ治りきってないんだ」

 

「そう…ね」

 

男は幽香に近づこうとした瞬間、

幽香は振り返った。

 

いつものように凛々しい表情を見せたが。

いつの間にか泣いていたのか涙を流していた。

 

「俺が大切…か」

 

「…ええ。」

 

「我儘だったな。」

 

「いいえ…今なら、お願いかしら」

 

「そのお願いとは?」

 

「貴方が愛おしい…だから」

 

幽香は黙って見つめる男に近寄り

そして抱きしめた。

 

「これからも私と一緒にいてほしいの」

 

 

 

 

 

幻想郷には

 

花が咲き乱れる広大な花畑がある。

 

よくよく見つめると

 

手を繋いだ二人の人影がのんびりと散歩をしている様子が伺えるだろう




後書きのネタもないの。

勘弁して…


また会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

小さなお店の大きな絆

どうも夢子です。










どうぞごゆっくり


人里の裏路地に小さなお店がある。

 

自由席の机が2つにカウンターだけ、と

 

本当に小さいお店だが。

 

毎日同じお客がくる。

 

 

 

「お兄さん。薄めの苦いやつ飲みたい。」

 

「コーヒーだね」

 

「そう、それ、」

 

客が相槌を返すと、店員はすぐに用意した。

 

ちいさな機械が動き始めると

店内に芳しい豆の匂いがする。

 

「ん…?豆変えた?」

 

客はちょっとした変化にすぐ気づいた

 

「まぁ、いつも同じだと飽きると思う。」

 

「私は飽きとか気にしないけど。」

 

「まぁ、たまにはね、」

 

マグカップに湯気の立つコーヒーが注がれ。

 

客はそれを冷まそうと息を吹く。

 

「これ…絶対熱いよ、やけどしそう。」

 

「この前自分で飲んでみたけど。普通に火傷した。」

 

「だと思った、」

 

客はしばらくはコーヒーを口にしなかった、

 

「熱くて飲めやしないって…」

 

「冷めてからでいいのか?」

 

「うー。うん。」

 

客は温まったマグカップで手を温めている

 

「今日はいつまでいるんだ?」

 

「ん…気が向くまで。」

 

「ライブ直後なんだろ?疲れてないか?」

 

「ここで十分休憩する、」

 

「寝るなよ…?」

 

「そうなったら泊まってく。」

 

「そ、そうか…」

 

客というのは実は妖怪で。

幽谷響子という、山彦妖怪。

 

鳥獣伎楽というバンドでのライブを

たまにする、

 

今日はそのライブの日の夜だ

 

「最近思うんだ。」

 

「何を?」

 

「命蓮寺の修行の付き合いもライブも苦しかったり楽しかったり色々あるんだけどさ。」

 

「うん。」

 

「ここに来ると決まって落ち着けるんだよね。」

 

「まぁ、静かだし、」

 

「いつも煩いって言われるのに、ここに来るとどうしても声が小さくなる。」

 

「疲れてたり落ち着いてるからだな。」

 

「なんていうか、私らしくないんだよね」

 

「いいじゃん、それくらい」

 

「いい…のかな。」

 

「ここには休みに来てるんだろ?」

 

「そんな感じだね。」

 

「だったらおとなしくしてたほうが疲れなくていい。」

 

「まぁね。」

 

湯気が薄くなってきたからか。

幽谷はマグカップに口をつけた、

 

ゴクリと一口飲むとすぐにマグカップを置き。顔をしかめた。

 

「薄すぎ。」

 

「ん、ほんとか?」

 

「飲んでみなよ。」

 

店主は客からマグカップを受け取ると一口飲んだ、

 

「たしかに薄いな。」

 

「でしょ?それはそうと。」

 

「ん、、?」

 

「口付けたところ同じだったね。」

 

「すまん。気にしてなかった」

 

「だと思った」

 

幽谷はマグカップを受け取るとまたひとくち飲んだ。

 

同じところから口を付けて、

 

「って、お前も気にしてないだろ。」

 

「まぁね、。」

 

空になったマグカップを置くと店主はすぐにそれを受け取り洗って仕舞った。

 

「ねぇ、ここっていつからお店開いたの?」

 

「二月前だな。」

 

「丁度私が通い始めた頃だね。」

 

「まぁ、そんな感じだな。」

 

「どうして始めよう思ったの」

 

「…元々は俺も飯屋をやってたんだ。」

 

「そうなんだ。」

 

「知り合いと男手二人で。里の大通りで店構えて、、そりゃ繁盛もしたさ。俺も相方も料理は大の得意で美味かった。行列まで作るくらいだった。」

 

「やめちゃったんだね?」

 

「やめるしかなかった…」

 

「なんで?」

 

「向かいのある飯屋が…うちに火をつけて、、、建物は跡形もなく焼け落ちて。相方は都合悪く、その中にいて…」

 

「…ごめん…もう言わなくていいから…」

 

「いいんだ…紛れもない事実だしな。」

 

「それでここに?」

 

「あぁ。飯は作らなくなっても、せめて飲み屋くらいはと思ってな。有り余った資金でしばらくここをやっていく。」

 

「でも、客は私くらいしかいないね」

 

「客はいなくてもなんとでもなる。仕入れは必要なときにしかしない。そうなれば減る金も少ないから資金も残る。」

 

「本当にしばらく続くね」

 

「まぁな。それに。唯一の大切なお客もいる。」

 

「私のこと?」

 

「以外誰がいる?」

 

「だと思った」

 

「逆に質問していいか?」

 

「なに?」

 

「どうしてここに来ようと思ったんだ?」

 

「疲れたりしたときって、一人で静かに落ち着きたいでしょ、」

 

「まぁ、確かに。」

 

「多分それでなんだと思う」

 

「なら俺はいないほうがいいか。」

 

「話聞いてくれるんだからいなくなったら悲しいかな。」

 

「まぁ、そりゃな。」

 

「それに、美味しい飲み物も飲めなくなるし。」

 

「俺しかいないからな」

 

「だから、あなたにはいてほしいかな」

 

「なるほど。」

 

「落ち着きたいからここに来るっていうのが、理由かな」

 

「わかった。」

 

 

「眠たい…」

 

「ならそろそろ帰ったらどうだ?」

 

「此処からお寺って結構遠いんだよね…」

 

「そういわれても俺は行ったことないしな。」

 

「……と、」

 

「…?」

 

「泊まらせて…もう歩きたくない。」

 

「すっごいだらしない」

 

「だめなの?」

 

「…駄目じゃないが…」

 

「なら別に良いじゃん」

 

「…わかったよ。」

 

そういうと店主はカウンターの電気と店の電気を落とし、カウンターから出た。

 

「着いてこい、案内するよ」

 

何も言わずに歩く幽谷

店の裏の扉を開けると部屋があった。

 

「上がって。」

 

「おじゃまするね。」

 

店主は押入れから布団を用意する

 

座っていた幽谷は布団に入り混んだ

 

「おやすみ、、」

 

「早いな」

 

幽谷はいつまでも起きている店主が気になり話しかけた。

 

「あなたは寝ないの?」

 

「眠たくないし、どうせ座って寝るし。」

 

「おいでよ、暖かいよ」

 

「いや…流石にそれは…」

 

「お願い。一緒に寝よ、」

 

店主は戸惑っていたが…

ようやく観念して、同じ布団に入り混んだ、

幽谷はゴソゴソと動きながら店主に寄り添ってくっつくように抱きついた。

 

「こうすればもっと暖かいでしょ。」

 

「あのな…」

 

店主が何か言いかける前に、幽谷はすでに寝入っていた。

 

「はぁ…ほんとに…」

 

店主も、くっつかれたまま寝入った。

 

 

 

 

気が付くと朝になっていた。

 

店主が目を覚ますと

幽谷は部屋に寄り掛かって座っていた

 

「おはよーございます。」

 

「おう、おはよう。いつもみたいに大声で言わないんだな。」

 

「なんか。声出なかったから。」

 

「そうか、まぁ、こんなところで大声で言われても迷惑だから、別にいいけど、」

 

「うん。」

 

「どうする、帰るか?」

 

「うん。お寺戻るね。」

 

部屋を出て表の通りに出ると。

 

「響子ちゃん、ここに居たのね。」

 

聖白蓮と丁度会った。

 

「聖さん。あの。」

 

「昨日は疲れたのでしょう。」

 

「はい。」

 

「貴方も響子のお世話をありがとう。」

 

「いえいえ、大切なお客様ですから。」

 

「よっぽど好かれてるのね」

 

「…聖さん。」

 

「どうかしたのかしら?」

 

「この人、お寺に迎えてもいいかな」

 

「俺を?」

 

「構わないけど。何か理由でも?」

 

「ちょっとだけ。好きになったから。」

 

「あらあら。ほんとに好かれてるわね。」

 

「…まぁ、たまにはいいか」

 

 

 

三人は命蓮寺に向かって歩き始めた。

 

聖があることに気づき男に話しかけた、

 

「貴方。見覚えあるわ。」

 

「んー…俺ですか。」

 

「確か…ごはん屋さんやってたかしら…」

 

「あぁ、やってたな。」

 

「今度行くわね。」

 

「すまないな…もう店やってないんだ。」

 

「あら。そうなの?またやってくれたら嬉しいわ。美味しかったし、」

 

「それがな…店が焼けちまってな…」

 

「そう…事故?」

 

「いや、向かいの店の野郎が…」

 

「そう…残念ね…」

 

「腕が鈍ってなきゃ、いつでも作れるんだが。作る場所がないからな。」

 

「うちの台所。貸してあげるから。何か作ってくれないかしら。」

 

「そりゃ、助かるけど。今からか?」

 

「食材は買いたしたばかりだし、」

 

「私も食べてみたいですね。」

 

「わかった。久々に腕がなるな。」

 

命蓮寺につくと寅丸とナズーリンがまた喧嘩しており。聖はその仲裁に入った。

 

幽谷が台所まで案内し。

男はすぐに準備を始めていった。

 

 

寅丸とナズーリンの喧嘩仲裁が終わった頃には料理は終わっており。

 

部屋の机には豪華に近いような食事が用意されていた。

 

「流石ね。」

 

「ちょっと雑だったかな。」

 

男は少し不満そうに答えた

 

「なんだ、誰が用意したのか?」

 

ナズーリンと寅丸は今にも飛びつきそうだった。

 

「自分の料理を食うのは久々だな。」

 

五人は机を囲んで食事を楽しんだ。

 

 

数分過ぎて。

すべての皿が空になった頃。

 

寅丸とナズーリンは満腹ですぐに寝てしまった。

 

「この二人は相変わらずだわ…」

 

「大変そうだな。」

 

「まぁ、いつものことだから。」

 

「それじゃ、片付けようか。」

 

男と幽谷は皿をまとめて洗い元の位置に仕舞っていた

 

「手伝ってくれてありがとな」

 

「いつもは私がやってるので。」

 

「そうなのか。」

 

片付けを終えると。聖は男に話しかけた。

 

 

「貴方うちに住まない?」

 

「なんとも最近はよく誘われる」

 

「嫌ならいいのよ?」

 

「嫌じゃないが断っておくよ、」

 

「そう、わかったわ」

 

男は少しして命蓮寺を後にした。

 

夕暮れるころお店を開けてまた客を待っていた。

 

お店を開けて数分する頃。

店の扉が開いた。

 

「いらっしゃい。」

 

「お兄さん。甘い飲み物が飲みたい。」

 

「はいはいお待ちを」

 

客…幽谷がカウンターの席に座るころ。飲み物が用意された。

 

「これは?」

 

「コーヒーに砂糖とミルクを混ぜた、カフェオレっていうんだ。」

 

「カフェオレ、こんなのもあるんだね」

 

幽谷は程よく暖かいカフェオレを飲むと肩を落としてゆっくりしていた、

 

「美味しいね。初めて飲んだよ」

 

「だろうと思って用意してみたんだ。」

 

「ありがとう。」

 

「礼なんていらない。いつものことだしな。」

 

 

 

「今日のさ、聖さんからのお誘い覚えてる?」

 

「お寺にっていうあれか?」

 

「うん。なんで断ったの?」

 

「俺にはここがある。」

 

「そうだね、それだけ?」

 

「それ以外にもあるけど。聞きたいか?」

 

「気になるなぁ」

 

「お前の休憩場所が無くなるから。」

 

「私のためだったの…?」

 

「俺のためでもある、」

 

「確かに。ここは…私にとっても大切だけど…」

 

「だろ?」

 

「でも。」

 

「それにな。俺は響子との二人の時間が楽しいんだ、それで。俺はここに残りたかったんだ」

 

「…ありがとう…ほんとにありがとう。」

 

「こちらこそ、うちに来てくれてありがとな」

 

幽谷は涙ぐみながらカフェオレを飲み干した。

 

「泣くなよ。俺は恩返しがしたかっただけだから。」

 

「だって…そんなふうだと思わなくて…」

 

「俺も響子が来てくれると嬉しいんだ。だからそのお返しだから。」

 

「うん!ほんとにありがとう!」

 

幽谷は涙を拭いていっぱいの笑顔で店主にお礼を言った。

 

「こちらこそ。」

 

 

人里の裏路地には小さなお店がある。

 

そのお店は、いつも、決まったあるお客と一人の店員が話語り合っていた




ご拝読ありがとうございました、











また会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

最後の居場所 幸せな日々

どうも松K.です


ではごゆっくり


ここは地底。

 

そして俺はその地底の地底に住まう半妖

 

元は地上にいたのだが。人間に裏切られ…地上の居場所を無くした。

 

そんなとき地底の主、古明地さとりという。覚り妖怪に地底に案内された。

 

そして今は旧都という地底の街の酒場にいる

 

旧都からは先の覚り妖怪、古明地さとりが住んでいる地霊殿が見える。

さとりに拾われた俺はしばらくは地霊殿に住むことになった、

 

「【なんであんな少女が地底の主なのか】

ですって?」

 

「さとり様。いたんですか」

 

「散歩よ、で、私が地底の主の理由を知りたいのかしら?」

 

「別にいい。ちょっと疑問に思っただけだから」

 

「【知ったところで何の得もない】、そうね確かにあなたにはなんの得もないわ。」

 

「ところでこんな酒場までなんの用で?」

 

「散歩ついでにこいしを探してるの。」

 

「こいし様か。なにかあったのか?」

 

「まぁ色々よ、見かけなかったかしら?」

 

「無意識なんか見つけれるわけない。」

 

「まぁそう言うと思ったわ、」

 

「見かけたら話はしておく」

 

「お願いするわ」

 

古明地さとりはそういうと酒場を後にしてまだどこかに行ってしまった。

 

一口酒を飲むと離れた机の牛の妖怪が話しかけてきた。

 

「あ、あんた、古明地嬢と平然と話するなんて…信じられねぇぞ。」

 

「変に気を遣ったり、緊張するから怒らせたり不機嫌にさせるんだ。普段から普通に接していればいい」

 

蜂みたいなものだろうと俺は思っている。

なにより地霊殿の茶会の支度もするから、これくらいできないといつ何されるかわからないからな

 

「流石…古明地嬢に話しかけられるだけはあるな…」

 

牛の妖怪は酒場を後にして行った。

 

今日も酒場は騒がしく。

腹踊りする者や、ひたすら飲む者、泣きながら飲む者。ヤケになって飲む者、

様々な奴等がいる。

 

俺はそんな派手にすることもなく。

普段から弱い酒しか飲まない、それに十数分に一口飲むだけだからそんなに酔わない。

 

一杯飲み終えた頃酒場を後にした

 

古明地さとりに拾われてから、地霊殿で寝泊まりしているが…

 

どうもここは大きすぎる。

 

そう思いながらも。

俺は用意された部屋へ向かった。

 

長い廊下を歩いていると、

道の途中に古明地こいしが歩いていた

 

俺に気づいて振り向いてこっちを見る。

一瞬目が合うと、俯いて下を向いた。

 

「どうかしました?」

 

「………」

 

何も言わない。

 

「ちょっと来て…」

 

かと思ったら一言呟いた

 

言われるままついていくと

こいしの部屋についた。

 

こいしはベットに座り込むと俺に隣に座るように促した。

断る理由もないから隣に座る。

 

寄り掛かってくるこいしは、悲しそうだった。

 

「お姉ちゃんのペットである貴方だから…こうしていられるなぁ…」

 

「どうかされましたか?」

 

暫く黙ったままだったが数分経つと話し始めた。

 

「私ね…地上の人間が好きでね…付き合ってたの。」

 

そのことを聞いた瞬間、昔のことを思い出して俺は少し気分が下がった

 

そんなことも気にせずこいしは話し続けた

 

「すごく仲良くしてくれてね。私も楽しかったの…でもね。その人は…」

 

言わずともわかるような気がした

 

「こいし様を裏切った。」

 

こいしは何も言わずに首を縦に振った。

 

「妖怪だって知って。でもいいよって言ってくれたのに。結局はお金がある人に寄っていちゃった。私なんて可愛いだけなんだって言われたの…」

 

「酷いですね…」

 

こいしは泣き始め。蹲った。

 

優しく抱きしめてなぐされることしかできないと思っていた

 

「こいし様…悲しいのはわかります、でもそうやって強くなっていくんです。」

 

「うん…」

 

「俺も…ここに来た理由は人間に裏切られたからなんですよ、」

 

「そうなんだ…」

 

「…信じていた人間が俺を裏切り、財産も立場も居場所も何もかも壊されてしまった。終いには地上に居ると腫れ物扱いされてしまったのです。」

 

「あなたは…私より…」

 

「でも…俺には地底という、素晴らしい世界がある。さとり様がいてこいし様がいて、地霊殿がある。」

 

「そうだね…」

 

「こいし様も、お燐様やお空様それにさとり様だっているんです。」

 

「うん。」

 

「ですから…」

 

「だから?」

 

この先の言葉が出なかった。

どう声をかければいいかわからなかった

 

「いいよ…ありがとう。」

 

「えっと…はい。」

 

「さとり様以外にこんなに優しくしてもらったの初めてかな」

 

「地上の付き合ってた人間は?」

 

「結構。子供っぽいし…あなた以上に優しくなんてなかったな。」

 

「そうだったんですね。」

 

姿勢を戻すとこいしは涙を拭いた。

 

「ありがとう。」

 

「いいんです。俺もこいし様と同じで裏切られたので…」

 

「でも。あなたも辛かったでしょ?」

 

「まぁ…それは確かに」

 

「私より…大変だったんだね。」

 

「もう、地上になんか戻れませんし。」

 

「悲しい?」

 

「もう、悲しくないですよ。」

 

「そっか。」

 

「裏切られたから、今俺は地霊殿にいるんです。こうやってこいし様と話していられるんです。」

 

「うん。そうだね。」

 

「確かに嫌な過去ですけど。それでも今の為の過去なら。なんとも思いませんよ。」

 

「ほんとに、強いんだね。」

 

「そう…でしょうか?」

 

「ねぇ。」

 

「はい。」

 

「貴方はわたしを裏切らない?」

 

「裏切るのも裏切られるのも俺はもう嫌ですから」

 

「なら…」

 

「こいし様、俺は古明地姉妹のペットです。断ることも裏切ることもしません。」

 

「私のこと好きになってくれる?」

 

「えっと、お付き合いなら喜んでお受けします。」

 

「うん!ありがとう、」

 

「ただ。」

 

「何かいけない?」

 

「さとり様はどう言うでしょうか。」

 

「お姉ちゃんならきっと大丈夫だよ、」

 

「だと良いのですが。」

 

こいしはベットに横になると大きな欠伸をした。

 

「なんか、スッキリして眠たくなってきたな。」

 

「なら寝ましょう。俺も戻りますね、、」

 

「待って。」

 

「どうかしました?」

 

「今日は…一緒に寝てくれる?」

 

「わかりました。」

 

こいしの隣で横になると、こいしは寄り添ってくる。

 

「好きな人とこうやって一緒に寝るのって、なんかドキドキしちゃうな。」

 

「そうですね…ちょっと寝れそうにないです」

 

「あはは。そうだね、ドキドキして眠たくなくなっちゃう。」

 

そうは言ったが。

数分するとこいしはすぐに眠たくなってきたようで。体が暖かくなってきていた。

 

「眠たいですか?」

 

「うん…ちょっとぼぅっとしてきたかな…」

 

「俺も眠たくなってきましたね…」

 

「お休み…」

 

「はい…お休みなさい」

 

俺とこいしはすぐに寝入った、

 

………

 

夢も見ることなく体を軽く揺らされて、目が覚めた

 

「起きて?」

 

「うぅ…もう起きたのですか?」

 

「長い間寝てたみたいだね」

 

「そう…ですか…」

 

「ねぇ、お姉ちゃんのとこに行こ」

 

「いいですけど何かありましたか?」

 

「私ねお姉ちゃんに心配されてたんだ。その…さっき話した裏切られたことで…」

 

「うん…」

 

「もう大丈夫だって。言っておきたいの。」

 

「そうか、そうですね。」

 

「私には…あなたがいるから、、」

 

 

 

 

 

地霊殿を少し歩いてさとりの部屋に向かった。

その途中でペット達に会った。

 

「ねぇお姉ちゃん見てない?」

 

ペット達の話によるとどうやらお空とお燐と一緒にいたという。

 

「ってことはペット達の部屋かな」

 

一度道を戻り別の方向に向かった。

 

部屋の前に着くとさとりが出てきた。

 

「待ってたわ。」

 

「待ってたって、どういうこと?」

 

「こいし、ちょっとだけそこで待ってて、」

 

「えっ?うん…」

 

そして俺とさとりだけ部屋に入った

 

「話があるんでしょ」

 

「そうですね、」

 

「…何よその目は」

 

「心を読めば全部わかるんだろ」

 

「まぁ、そうね。」

 

「俺の口から話すくらいなら読んでもらったほうが早いだろ」

 

「【余計な詮索は必要ないからな】そうね、そうだけど、貴方は…」

 

俺はさとりが言い切る前に言った

 

「俺はもう逃げも隠れもしないぞ」

 

「なんのつもり?」

 

「さとり様が俺をどうしようが俺は抗わない。でもそうなれば俺はここから消えるだけだ。いや、この世界からか。」

 

「あなたね…」

 

「心を読んで本音を読んでみろよ」

 

「【ここが最後の居場所なんだよ】…本当のことを教えて頂戴」

 

「地上から逃げたとしか行ってなかったな。本当は逃げたわけじゃなくて追い出されたんだ、地上からな。」

 

「…」

 

「必然的に俺は死ぬしか道がなかった、だがそんなとき、さとり様が、あんたが俺を救ってくれた。」

 

「【命の恩人に捨てられる覚悟】…そんな覚悟…私は望んでないわ。」

 

「ココにとって俺は邪魔者だろう、他のペット達も俺を軽視してる。あんたにとっても俺はちょっとした障害じみた存在でもあるんだ。だから、いつか捨てられるんだろうと俺は思ってる」

 

「誰も捨てるなんて…」

 

「いつだったか聞いた。居場所は与えられるものじゃなくて作るものだと」

 

「どういうこと?」

 

「あんたは、どうか知らないが。俺にはもうここしかないんだ。俺は最期までここにいるつもりだ。」

 

「少しいいかしら」

 

「なんだ?」

 

「大きな勘違いをしていないかしら?」

 

「勘違い?」

 

「別に私は貴方を捨てようなんて思ってないし、ここに来た理由が知りたかっただけなのだけど」

 

「あぁ…そうか、最近はいろいろあって焦ってたものだから…」

 

「別にいいわ、ここに残りたいなら好きにしなさい。」

 

「あぁ、そうするよ。」

 

「こいしを呼んで頂戴。」

 

「わかった。」

 

扉を開けてこいしを呼ぶ。

するとこいしは不満そうにしていた。

 

「なにもそんな顔しなくていいじゃない。」

 

「だって私だけ仲間外れにするんだもん」

 

「悪かったわ。」

 

こいしは部屋に入るとすぐに俺にくっついて来た

 

「相当気にいられてるようね。」

 

「気にいられてるというか。」

 

「こいし、地上の人間はどうするの?」

 

「あの人はもういいの。」

 

「そう。別れるのね」

 

「うん、だって、他の人と付き合うって。言ってたからもう私はいらないって」

 

「そう…許せないわね…」

 

「でも、いいの、」

 

「そう。」

 

「だって私にはもうこの人がいるから。」

 

「でも彼はペットなのよ?」

 

「じゃぁ、今日からペットじゃなくて私の恋人にする。」

 

「そう…それなら構わないけど。あなたはいいの?」

 

「ええ、もちろん。」

 

「そう。よかったわね、こいし」

 

「この人は…私より辛かったみたいだから…」

 

「そうかもね…」

 

「でもすごく優しいんだよ。」

 

「そう。」

 

「さてと。そろそろ掃除に行ってくるよ。」

 

「この時間だと私の部屋かしら、」

 

「そう…だな、あとこいし様の部屋も」

 

「待ってるね。」

 

「はい。」

 

俺は部屋を出たあと、さとりの部屋を片付けていた。

 

読みかけの本やお菓子の箱、机に広げられたペット達の資料。

 

さほど散らかってはいないが、

ベットだけはいつもくしゃくしゃだった。

 

一通り終えるとすぐこいしの部屋に向かった。

 

扉を開けた瞬間こいしが飛びついて来た。

 

「待ってたよ。」

 

「えっと…そんなに抱きつかれたら掃除が…」

 

「えへへ、ごめんごめん。」

 

本や棚はある程度片付けてあった。

ベットも少し手入れするだけで

特に何もしなくてもすぐ片付いた。

 

「こいし様がある程度掃除していてくれたおかげですぐ終わりましたよ。」

 

「掃除は全部終わった?」

 

「ええ、しばらくはまたゆっくりしてますから。」

 

「それじゃあ!またここにいてくれる?」

 

「ええ、いいですよ。」

 

 

 

俺とこいしはまた部屋で話をした

 

地上の話、恋人の話、人間の話、いろいろ話していた。

そして疲れたら隣同士で寝て。

たまにさとりが割り込みにきて…

 

俺はたまに酒場にいって。

そんな幸せな日々を送っていた

 




ご拝読ありがとう御座います


また会えたら
会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

未知の世界、変わる世界

どうも夢子です。

題名がだめ考えつかなかった


ではごゆっくり


そうだ、早苗

 

はい

 

外の世界行ってこいよ。

 

はい?

 

それじゃ行ってこい!

 

えぇ!

 

……………………

 

 

「またこっちの世界に来てしまいました…」

 

幻想郷にいた早苗は諏訪子のイタズラで外の世界に飛ばされた。

 

「弾幕と奇跡も使えないから…こっちの生活は大変なんですよね…」

 

飛ばされてすぐついた場所は

人の去った神社だった。

 

「神社…と言っても巫女も神様もいないようですね…捨てられてしまったのでしょうか」

 

一言つぶやくと後ろから足音が聞こえた

 

「珍しいな、こんな神社に参拝者か。」

 

「珍しい…と言う事は」

 

「あぁ、ここは秋宮神社、昔は神様すらいたとされる神社だ。」

 

「秋宮神社。なぜこのような状態に?」

 

「ここを奉る人たちが減ったからだ。いや、正確にはここが廃れているからか。」

 

「そうですか…廃れる…そんなこともあるんですね…」

 

「そんなあんたはなぜここに」

 

「訳を話すと長く…なりませんけど、多分信じえもらえませんね…」

 

「別に聞かないわけじゃないけどな」

 

「貴方こそここに来る理由はなんですか?」

 

「俺か?この秋宮神社にはちゃんと巫女がいたんだその知り合い、でね。初代が俺の婆さん、二代目が俺の母親で三代目が姉。四代目も俺の幼馴染とまで決まってたんだが」

 

「三代目で止まってしまったのですね」

 

「……」

 

男は黙ったまま神社を見つめていた。

 

「何か訳があるんですね、」

 

「もう誰もいないんだ。」

 

「どういうことなのですか?」

 

「この神社での奉り事がある前日の日、俺はここで奉り事の準備をしていた、一頻り準備…まぁ飾り付けだけどな。それを終えて家に帰ると。形相を変えた両親の知り合いがいた、」

 

「一体何か?」

 

「交通事故で…両親と姉が亡くなったんだ。しかも俺が準備を終えた直後ぐらいに。」

 

「そんな…」

 

「先代の婆さんはとっくに逝ってるし。幼馴染はまだ巫女になれる年じゃなかった。」

 

「と言う事は、まだ何年か前の話なのですか?」

 

「ざっと10年前だな、俺がまだ11のころだから」

 

「そんな…」

 

「もちろん後日の奉り事は延期なしの中止。ひと月後には参拝客もかなり減って。」

 

「そこからこの神社は…」

 

「あぁ、幼馴染は巫女になることを諦めて、今はデザイナーをやってる。俺はまだ学生。」

 

「そうなのですね…」

 

「もう、俺くらいしかここには来ないと思ってる。深い関わりを持っているのは俺くらいだ」

 

「悲しいですね…」

 

「いいんだ、なるべくしてなったんだろ。」

 

「……」

 

「あんたはなんでここに?」

 

「えっと、、私、東風谷早苗って言うんですが。さっきまで別の世界にいまして…」

 

「別の世界。ね」

 

「そこで…知り合いがわたしをこっちに飛ばしまして…」

 

「災難ですね。」

 

「ええ…まぁ…」

 

「で、宛はない感じか。」

 

「はい…」

 

「とりあえずうちに来なよ」

 

「そうさせてもらえると助かります、」

 

二人は神社を後にして男が住む家に向かった。

 

 

 

 

 

「あがって。」

 

二階建ての普通の一軒家。

男はそこに一人で住んでいた、

 

「お一人なのですか?」

 

「さっき行ったとおり。家族はもういないからな。」

 

「そう…ですか」

 

「まぁ、気にしないでいい」

 

「はい…」

 

「こんな時間だし。夕食用意するから待っててくれるか。」

 

「はい。わかりました。」

 

 

男が夕食を用意している間。

早苗はTVのニュースを眺めていた。

 

「結構変わってしまったようですね…」

 

そう呟くと男は食事を持って来た。

 

「何か知ってるのか?」

 

「元々、こっちの世界で神社にいて私の知り合い…まあその神社の神様の信仰を集めていたんです。」

 

「へぇ、そうだったのか、、」

 

「でも。次第に私たちは忘れられていって…それで幻想郷という。別の世界に移り住んでいたんです。」

 

「なるほど、新しい信仰を集めるためにか。」

 

「はい。ですが…幻想郷にはもう一つ神社があって…」

 

「何か?」

 

「その神社の巫女…彼女にはどうしても勝てなくて…結局は私の神社は信仰は少ないままなんです。」

 

「残念だな。」

 

「でも、幻想郷なら私の神社の神様は、消えることはないですから。」

 

「んで、その神様達にこっちに飛ばされたんだな?」

 

「はい…ごもっともです…」

 

「なんという乱暴な神様だよ。」

 

「なんとも…」

 

「まぁ、冷める前に食うか。」

 

二人は用意した食事を食べ終えて。

一息ついていた。

 

「コーヒーなんて、久しぶりに飲みました。」

 

「俺はまぁ2日に一回は飲むけど。」

 

 

「さてと…風呂どうするか。」

 

「お風呂は先にどうぞ」

 

「そうか、なら先に失礼するかな。」

 

 

 

 

男が湯に浸かっていると…

 

「失礼しますね。」

 

早苗が風呂場まで割り込んできた

 

「失礼しますね。じゃないよ、何してんだよ…」

 

「何って一緒にはだめでしたか?」

 

「いや…普通混浴はしないだろ…」

 

「そうなんですね…」

 

そう言いながらも浴室に入る、

 

「いや、だから」

 

「まぁいいじゃないですか。」

 

「…はぁ…」

 

 

 

二人は浴室から出て。

 

男は疲れたようにぐったりしていた。

 

「なんか…疲れた。」

 

「大丈夫ですか?」

 

「眠たいだけだから気にしなくていい。」

 

「そうですか。」

 

男はリビングのソファに座ったまま居眠りしていた。

 

「男の子…ですもんね。」

 

早苗はすぐそこにあった薄い毛布を掛けた

 

「ホントはゆっくり寝たほうがいいですが。無理に起こすのも気に触りますし。」

 

早苗はリビングの電気を消すと隣で寄添うように寝入った。

 

 

 

「母さん……」

 

男は呟くように寝言を言った。

 

 

 

 

次の朝、

 

男は調理器具の音で目が覚めた。

 

「なんだ…なんかいいにおいするな…」

 

「起きましたね。朝ご飯、準備できてますよ。」

 

「あぁ…ありがとう。」

 

男は振り向くと視線が止まっていた

 

「どうしました?」

 

男は普段見ない光景に戸惑っていた。

 

気がつくと目からは涙を流しており、何も話せなかった。

 

「どうしたんですか?」

 

「あっ…いや…なんでも…」

 

男にはとても懐かしい光景に思えていた。

 

「すまん…情けないとこ見せた…」

 

「なんで泣いていたんです?」

 

「誰かと暮らすなんて久々で…何というか、すまない…」

 

「気になさらないでください。」

 

「ありがとう。」

 

二人は朝食を済ませた。

その時も男はやはり懐かしさを感じていた。

 

「さてと…俺は出かけてくる」

 

「どこに行くんですか?」

 

「いや…学校に用事があってな。」

 

「ついていきますよ。」

 

「いや、来るなよ」

 

「私一人、残すのですか!」

 

「あ~もぅ…わかったよ。」

 

「でもどうしましょう。」

 

「何が?」

 

「流石にこの格好で行くわけには…」

 

「あぁ…巫女服か…何か着れるものないか、探してみるか。」

 

家の中を探していると…

 

「あっ…そうだ。あいつの服が着れるか」

 

男の幼馴染の服がいくつか仕舞ってある。

たまに泊まりに来るのだがその時のものだ、

 

「はい。これならサイズも丁度いいですし、大丈夫そうです。」

 

「そりゃ良かったよ。」

 

家を出て歩いて学校に向かう。

休日なので普通は学校は休みだが。

部活はやっている。

 

男は先日部活でやり残したことがあるため後処理のため向かった、

 

校舎に付き部室まで向かう、

その途中運動場の端を歩いていると野球部のボールが飛んできた

 

男は勢いの落ちたそのボールを素手で受け止めた。

 

「ナイスキャッチ!流石楓さん!」

 

「ナイスキャッチじゃねぇ、ちゃんと打て」

 

「ただのホームランですよ、あいつは下手な打者じゃないですから。」

 

「そうか」

 

ボールを投げ返して校舎に入った、

 

部室に着くと、部員たちは作業をしていたが忙しそうな風景はなかった。

 

「終わったか?」

 

「あと点検です。問題なく打ち出せれば使えますよ、」

 

「それじゃ、裏の森借りるか、」

 

男…楓の部活はサバイバルゲームをする部活だ、二年前大人達が校舎の森を借りたいと申し出をだし、了承をした。

その際学生達で流行り。部活として承認された。

楓はその部長で。ゲームではトップを走っている

 

「機関銃がたくさん…」

 

「あっ、下手に触らないでくださいね。」

 

部員の一人が注意喚起を促すも早苗には聞こえていなかった。

 

手に取ろうとしたとき、先に楓がそれを取った、

 

「素人の触るものじゃないからな。興味があるなら着いてこい。」

 

部員二名と楓、そして早苗は機関銃の試験射撃を行うため校舎の裏手の森に向かった。

 

「ところで部長、」

 

「どうした華森。」

 

「その女の人は?」

 

「訳ありの知り合い。」

 

「いかにして訳ありなんです?」

 

「聞くな、説明したくない、」

 

「さいですか、」

 

「私ですか?私はですね。」

 

「頼むから、言わなくていいから。」

 

「えー、」

 

「えー、じゃない。」

 

そんな会話をしていると、森についた、

 

「さて、試してみるか。」

 

早苗を除く三人は機関銃を持って試験射撃を始めた。

 

早苗は離れて見ていたが発泡音に耐えれず楓に声をかけた。

 

「あの…」

 

「どうした?」

 

「耳が…」

 

「あぁ、すまん、これつけて。」

 

早苗にヘッドホンを渡すとまた早苗は離れて見ていた

 

お互いに交換して試射をして数分経った頃終えた。

 

「どれも問題なさそうですかね?」

 

「ひとつだけ威力が高すぎる。まだ調整がいるな。それ以外は良さそうだな。」

 

「それじゃ少し緩めてお終いですね。戻ります?」

 

「あぁ、これで全部か?」

 

「はい。もちろん。」

 

「なかなか早いな、今まだ11時だが、いつからやってた?」

 

「たしか…7時?」

 

「早いわけだ。」

 

校舎に戻る間も少しばかり会話をしていた、

 

部室に戻ると部員は減っており室内もすごくおとなしく整理されていた。

 

「挨拶もなしに帰るなんて薄情な奴らだな、」

 

「仕方ないですよ元々休日ですし。」

 

「まぁ、そうだな、、」

 

「模擬戦やります?」

 

「いや。このメンツでは足りないな」

 

「自信満々ですねぇ。」

 

「五人だろ?十人でも探しきれないのにやれるのかよ」

 

「まぁ、無謀ですね。」

 

「だろ?」

 

楓達は室内を片付け学校を後にした。

 

家に戻り楓はソファでゆっくりしていた。

 

「さて…休みは暇だな…どうせ練習も呼ばれないだろうし…」

 

「じゃあ。この辺を散歩しましょう!」

 

あまりにも暇だったので

唐突な提案に乗ることにした

 

「散歩か、まぁ、軽く街を紹介していくよ」

 

 

楓と早苗は住宅街を抜けて大通りに出る

 

商店街とビル街、古い町並みから自然の多い通り、川の名前の由来などいろいろな話をしていた。

 

「それで、最後が、」

 

「秋宮神社…」

 

「そうだ。ここだ。」

 

ひと気のない神社。

神すら捨てたように寂しく建つ社

そこには気配も妖気も感じられなかった。

 

「静かですね…」

 

「巫女も神も居ない神社…か」

 

二人は何も言わずに神社を後にした。

 

夕方頃家に戻り二人は夕食を済ませ、風呂を一緒に(早苗が無理やり割り込み)済ませた

 

それから深夜の話。

 

「何故でしょう…なかなか寝付けません…」

 

早苗は夜中に目が覚めてしばらく寝れなかった。

 

喉が乾いて飲み物を取りに降り、お茶を飲んでから部屋に戻ると楓が起きて座っていた。

 

「なんだ、茶か」

 

「はい、喉が乾いたので…」

 

「うん。寝るか」

 

「それが…なかなか寝付けなくて。」

 

「そんなときもあるさ。」

 

楓はまた布団に入る。早苗は楓のベットで横になるが。やはり寝付けなかった。

 

「あの…楓さん…」

 

「どうした。」

 

「少しばかり話。しませんか?」

 

「これまた唐突な」

 

「だめでしょうか…」

 

「いいさ。俺も変に寝れないしな」

 

二人は横になったまま話をする

 

「一人では寂しくないのですか?」

 

「むしろ一人のほうが楽なことが多い。寂しいと思う時はもちろんあるけどな。」

 

「やっぱり…」

 

「ただ、俺にとって他人っていつのは未知なんだ。」

 

「未知?」

 

「あんたもそうだが、俺は人を簡単に信用しない。あんたをうちに上げるのも本意ではなかった。」

 

「ならなんで…」

 

「なんでだろうな…人は信じないくせに、人には優しくしちまうんだよ。他人なんて嫌いでうしろめたいと思うばかりなのに…」

 

「優しいのですね」

 

「さぁてな。人に善を尽くそうと思ったってそれが相手には迷惑だったりする。」

 

「でも…良かれと思って…」

 

「相手が快く受け入れてくれてこそ、善行だろうな。」

 

「確かにそうですが…」

 

「……俺はな…いつも一人なんだ…」

 

「そんな、部活の人も他の方も貴方と仲良くされているのに。」

 

「…仲良く見えるか?」

 

「はい、」

 

「そうか…」

 

「なぜ…あなたは…」

 

「言っただろう。他人は信じちゃいない、部活の奴らも学校の奴らも」

 

「なら…私なんて…」

 

「…言ってくれるな…」

 

「私は邪魔ですか…?」

 

「その問には答え難い…」

 

「そうですか…」

 

「俺はな…どうすれば生きればのかわかんないんだよ。」

 

「生きる…生き方…」

 

「家族がみんな死んで天涯孤独になって、それでも誰も哀れんでくれないまま施設に入った。そこでも親無しだと虐められ。職員も俺のことに目も暮れず見捨てた。」

 

「そんな…」

 

「そんな状態なのにな。俺はどれだけ苦痛を味わっていても人に良くした。自分なんかどうでもいいと。利他主義で生きてた。」

 

「あなたは一体…」

 

「わからないさ。何が良くて何が悪いかなんて。独立してからもそうやって生きて。今に至る」

 

「…」

 

「変だよな。どれだけ疲れたって体は動く、気を失うほど体は限界だったのに意識が戻ればすぐ体を虐めるように動かし。精神的苦痛を受けても、だんだん薄れてその感覚すらどうでもよくなる。遂には人の言う常識や普通すらわからなくなる。」

 

「そんな…なんで。」

 

「なんでかなんて俺が聞きたい。何で俺はこんなにもおかしいのかと」

 

「私…あの…」

 

「…すまない…少しこまらせたな…」

 

早苗はベットから起き上がって楓の布団の真横に座る。

 

「わ…私…」

 

楓がそれに気づき早苗と向き合う

そのときには既に早苗を涙を流していた

 

「何故泣く…」

 

「だって…辛そうだから…」

 

「俺はな。既に諦めてるんだ」

 

「あ…諦める…」

 

「このままでいい。変化なんていらない」

 

「……」

 

「誰かを愛したり、誰かに愛されたり。環境が変わることも、変えられることも、無くていいんだ。」

 

「それじゃ、つまらないですよ」

 

「つまらなくて、、いいんだよ」

 

「そんなの…良くないです…」

 

早苗は立ち上がってベットに戻った。

横になると泣いたまま寝入った。

 

楓も少しするとすぐ寝入った、

 

 

 

 

 

……

 

 

「おはようございます…」

 

「あぁ、おはよう」

 

早苗はまた朝食を用意していた、、

 

「昨日はあんな話して済まなかった。」

 

「気にされなくても…私は大丈夫です。」

 

「あんたは…早苗さんは初めて俺に泣いてくれたからな…泣かせてしまったのを謝りたくてな」

 

「そうですか…私は大丈夫ですよ。」

 

「あぁ、済まなかったな」

 

二人は朝食を済ませた。

 

「ちょっと出かけてくる。」

 

「どこに行かれるのですか?」

 

「買い出しだ、晩飯の分の食材買わないと。来るか?」

 

「家、掃除して待ってますね。」

 

「そうか、それは助かる」

 

楓はもよりのスーパーまで歩いて向かった。

 

その間早苗は家のリビングなど楓の部屋以外はある程度掃除していた。

 

ある部屋に入ると…

 

「これは…流石楓さんですね…」

 

「機関銃と軍服。サバイバルゲームの道具が沢山揃っていた。」

 

「ここは掃除の必要はなさそうですね。」

 

整理整頓が部屋の隅々までいきわたっていた。リビングや空き部屋なんて差もないほどの綺麗さだった。

 

部屋をあとにして昼食の準備をしていると

 

ドアホンが鳴った。

 

「どなたでしょう?」

 

玄関のドアを開けると。

そこには複数の丈夫そうなので男がいた。

 

「あれ?なんであいつん家に女がいるんだ。」

 

「あの…どちら様でしょうか…?」

 

「楓の小僧はどこだ。」

 

「買い出しに…」

 

「ちっ、なんだ居ねえのか。じゃあいい、おい女ちょっと来い!」

 

そう言うと男たちは強引に早苗を家から引っ張りだそうとする。

 

「なっ!やめてください!やめ…」

 

一番大きな男が無理やり縛り上げつれ去って行った。

 

 

 

……………

 

 

「ただいま。」

 

その言葉に返事が帰ってこなかった。

 

「あれ、早苗さん?」

 

リビングに入っても誰もいなかった。

台所には切りかけの野菜達が置いてあるのを見ると、何か嫌な予感が過ぎった。

 

「いや…まさかな、」

 

テーブルの紙切れを見つけるとそこには小さな文字が書いてあった。

 

 

[お前の大切な場所で待つ、来なければ女はどうかなるかわかるな]

 

楓は一瞬頭に血が登った。

だがすぐに考えが変わった。

 

 

「…赤の他人をわざわざ助ける必要なんてないしな…」

 

そう思うが何故か落ち着けなかった。

台所を片付けても荒々しくされた玄関を片付けても。

 

「めんどくさい…で済ませる訳にはいかないみたいだな…」

 

楓は助けに行くことを決心すると。

ある部屋に向かった。

 

それは楓の大切な部屋。

大きな鞄を肩にかけて。

家を出た。

 

 

……………

 

 

早苗は秋宮神社に連れてこられた。

 

「さぁて。あいつは来るかな。」

 

手足口を縛られているが唸って抵抗しろうとした。

 

「うるせぇぞ諦めて大人しくしてろ!」

 

それでも、静かにしようとはしなかった。

 

男は苛ついたのか必死に怒鳴る

 

「うるせぇなぁ!何か言いたいことでもあんのか!」

 

そう言いながら口に貼ってあるテープを勢い良く外した。

 

早苗は息を整えると男達に呟く

 

「貴方達には神罰が下りますよ!」

 

男は何も言わず早苗を一発殴りつけた。

 

「黙ってろ。」

 

早苗は地面に顔を打ち付け横に倒れた…

 

男達はざわつきながらずっと話をしていた。

 

 

 

数分経った頃

 

秋宮神社の男達がいきなり倒れ始めていった。

 

「んん?なんだ?」

 

リーダーのような男が周囲を見渡していると…

周囲の男達は次々と倒れていく。

 

「一体何が起きてんだ!」

 

次の瞬間男の足元には小さな缶がとんできた。

 

それを見た瞬間甲高い大きな音とか目が眩むような光が走った。

 

「なんだってんだよ!」

 

男には自分の声すら聞こえてなかった。

 

男の視界が戻った頃。

 

男の目の前には拳銃を構えた楓が立っていた。

 

「女にまで手を出すなんて下衆以下だな。」

 

「てめぇに言われたか。」

 

「俺は真っ当な事しかしてない。何かいいたいならはやく言えよ。」

 

「てめえに情けなんかかけられてたまるか!」

 

楓は何も言わず引き金を引いた。

 

その瞬間男は床に倒れた。

 

楓は早苗の手足の紐を解いた。

 

「…彼らは…」

 

「安心しろ、ゴム弾と麻酔弾だ。殺傷性は皆無に近い。」

 

「そうですか…」

 

楓は耳に手を当てると一言呟いた。

 

「終わったんで来てください」

 

数分後に警察官が数名現れ、男達を捕らえていった。

 

「ご協力ありがとうございました」

 

「現行犯逮捕ですから。こちらこそ。」

 

警察官達は帰っていった、

 

早苗と楓は家に戻った。

 

早苗は落ち着くと昼食の準備を再開し、

楓は持ち出した装備を仕舞っていた。

 

楓がリビングに戻ると早苗が話し掛けた

 

「彼らは一体なんだったんですか?」

 

「……気にしなくていい」

 

「でも。急にあんなことされたんです。わからないままでは気が済みません。」

 

「……」

 

「だめでしょうか…?」

 

「あいつらは…親父の知り合い、」

 

「なぜあなたに?」

 

「俺の親父が仕事でうまくいって。それであいつらの仕事を飲み込む形で事が進んだ、」

 

「それで…」

 

「確かに恨むのはわかる。でも親父は死んでる。なんで俺にまで関わってくるのか…」

 

「まぁ…もうそれも終わりだ。」

 

「そう…ですね。」

 

楓達は昼食を取り終えてリビングでゆっくり過ごしていた。

 

その時あることに気がついた。

 

早苗は隣にいるのに背後に気配を感じた。

 

「誰だ。隠れてんのか」

 

「あら、中々、感が鋭いのね」

 

振り向くと居たのは

妖怪の賢者、八雲紫だった。

 

「紫さん…どうしてここに?」

 

「現人神のあなたを向こうに戻すために来たのよ」

 

「ならわざわざ隠れるようなことするなよ…」

 

「それじゃつまらないでしょ」

 

早苗は少し考えていた。

 

「ここにいるより。その幻想郷ってとこの方か断然安全だろうから戻るのが筋だろ。」

 

「ですが…」

 

紫は何も言わなかった

 

「なぁ紫…っていったか」

 

「何かしら」

 

「幻想郷っていうのはどんな世界だ」

 

「こっちで忘れられた存在が集まる非常識的な世界。ただそれは向こうではそれが常識になるわ。」

 

「忘れられた存在が集まる…か」

 

「何を考えているのですか?」

 

楓は数分黙ると紫に話し掛けた

 

「八雲紫の神隠し…そういうんだな」

 

「あら、向こうに行きたいというのかしら?」

 

「なっ!」

 

「俺は天涯孤独で残す物ももうない。だから向こうに行かせてくれ。」

 

「向こうに行ってどうするのかしら、」

 

「さあな、でもこの世界から忘れられるならそれでいい」

 

「そう、別に拒否をする理由もないわ、行きたければ行きなさい、」

 

そういうと紫はスキマを開いた

 

楓はスキマを眺めると。

軽く身支度をして

スキマに入っていった。

 

「ほんとに行くのですね…」

 

早苗もスキマを通って幻想郷に戻った。

 

 

 

 

……………

 

 

「ここが幻想郷。」

 

「あんたが神隠しされた人間ね」

 

「あぁ、博麗さんだったか。」

 

「私のことは霊夢でいいわ、それで宛はあるのかしら?」

 

「早苗さんはどこにいるかわかるなら、教えてもらえると助かる。」

 

「早苗のとこに行くのね、早苗は山の神社よ。ただあの山は妖怪の山、向かったとして道中妖怪に襲われても文句は言えないわ。」

 

「そうか、妖怪の山か…」

 

「行くなら勝手に行きなさい、私はついていくつもりはないわ、面倒だし、向こうに行くと何かしら話聞かされて捕まるし。」

 

そういうと霊夢は博麗神社まで飛んでいった

 

「忘れられた存在が集まる非常識的な世界…」

 

楓は山に向かって歩いた。

 

途中一人の少女…白狼天狗に会う

 

「貴方は、山に向かうのか?」

 

「あぁ、東風谷早苗という女性に会いに行くのだが。」

 

「守谷神社か。誰か付き人はいるのか?」

 

「いや、俺一人だ。」

 

「人間が一人で山に向かうとは…仕方ない、案内ついでに私がついていくよ。」

 

「わざわざ済まない。」

 

麓から山に入り。長い階段を登っていく。

 

しばらくすると鳥居が見え。

登りきると。神社が見えた

 

「ここが…こっちの世界の神社か…」

 

物心ついた頃から廃れた神社しか知らず。さらに幻想郷の神社を見て感激を覚えた。

 

「あぁっ!楓さん!」

 

神社で落ち葉を掃いていた早苗は楓に気づき。走って向かった。

 

「こっちだとその服が普通なんだな、」

 

「はい、やっぱりこの服が楽ですよ」

 

「そ、そうか。」

 

「犬走さん、わざわざありがとうございました。」

 

「うむ、それじゃお暇させてもらう」

 

そういって天狗は飛んでいった

 

ちょうどその頃、二人の神様が神社に戻ってきた

 

「へぇ~こいつが早苗を誑かした男かぁ。」

 

「神奈子よさないか、ご親切にしてもらったんだから。」

 

「まぁいいじゃないか、」

 

「お二人がこの神社の神様なんだな?」

 

「ええ!そうです!」

 

早苗は待ってましたと言わんばかりに張り切って二人の神様の話を続けた。

十分二十分ほど長々と一人で喋り続けた。

 

 

「どうですか!このお二人のこと、知っていただけましたか!」

 

「まぁ…そりゃ…それだけ長々と話されると、まぁ。」

 

「ははは!いつも早苗は」

 

そんなような会話で四人は談笑を続けていた

 

日も落ちてきて夕暮れる頃。

 

早苗はあることに気がついた。

 

「あの、楓さん、宛はどうするのですか?」

 

「人里とか言うところでとりあえずは済ませるつもりだが。」

 

「そうなんですね…もし、よろしければなんですが…」

 

「どうした?」

 

早苗は中々話出せず。

ずっと躊躇っていた。

 

洩矢諏訪子はその様子を見ていた

 

「なんだい早苗、早く言っちまえよ。」

 

「ですが…」

 

「言ってもらわないとわからないからな」

 

「その…よろしければ神社を一緒に守っていただければと思いまして…」

 

「あぁ、そういうこと。」

 

「あと…これは我儘なんですが…私と…その、お付き合いもお願いしたい…の、ですが…」

 

楓はその告白とお願いを受け入れることにした。

 

「あの…これからもお願いします。」

 

楓は新しくなった環境を身に染みるほど痛感し、また感激を覚えた。

 

そして、神社という場所を守るというまた一つの決意していた

 




なんか長ったらしくなったなぁ…


ではまた会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

冬の妖怪。

明けましておめでとう御座いました
ていうかもうそんな時期じゃないですね

どうも松K.です

なんだかんだしてたら半月経ちました。


今年ものんびり書いていきますので
どうぞよろしくお願いいたします。

ではごゆっくり


幻想郷にも、冬季が来た。

 

雪が降り積り一面に白い景色が広がっていた。

 

「全く…これじゃ外に出る気もないわ…」

 

博麗の巫女はこたつに入り猫のように伸びてだらけていた。

 

そこに一人の妖怪が現れる、

 

「相変わらず、だらしたいわね」

 

「なによ。毎回冬になるとそうやって茶化しにきて。」

 

「なにも、貴方のだらしない一面を見に来ただけよ」

 

現れた妖怪は、冬の妖怪、レティ・ホワイトロック。

 

冬が訪れると現れる妖怪だった。

 

「あんたね…見物じゃないんだからいい加減その趣味なんとかしなさいよ。あと、寒いから襖締めて頂戴。」

 

「寒くていいじゃない、と言いたいとこだけどあなたを不機嫌にするといいことないから襖は締めるわ」

 

そういうとレティは襖を締めてこたつに入りこんだ

 

「あんた、冬の妖怪の癖にこたつにはいるのね…」

 

「別に暑いのが苦手なわけじゃないから。でも温まりすぎると体には毒みたいなものね」

 

「ふーん」

 

半分無関心な返事をすると霊夢は横になった。

 

「温まってるとこに寒気を強くしようと思ったけど、もう意味なさそうね。」

 

「勘弁してよやっと暖かくなってきたんだから」

 

「そうみたいね、そろそろ行くわ。あなたのだらしなさも確認できたし」

 

「悪かったわね」

 

「また合いましょう」

 

レティはそういうと襖を開けたまま冬の空に飛んでいった

 

「せめて締めて行きなさいよ…」

 

霊夢は襖を締めてまたこたつの中でまるくなった。

 

 

レティが飛んで、霧の湖に向かう途中一人男に会った。

 

「あら、こんな空中で人に出会うなんて珍しいこともあるものね」

 

「人?俺は妖怪だが。」

 

「あら、これは失礼したわ、」

 

「それはいいんだが、人を探してて。」

 

「誰かしら?わたしの知ってる人?」

 

「知ってたら教えてほしい。レティホワイトロックっていう妖怪をみかけなかったか?冬の妖怪だと聞いてもういるんじゃないかと探してるんだが…」

 

「あら、私のことだわ。」

 

「あんたが、レティホワイトロックなのか」

 

「そうよ。私に何か用?」

 

「妖精が探してた。見つけたら紅魔館に来てほしいとかって言ってたぞ。」

 

「紅魔館?まぁいいわ、有難う。」

 

「とりあえず、俺も呼ばれてるから行くか」

 

二人は紅魔館にむけて飛んでいった。

 

「ところで貴方、名前は?」

 

「スノウ、いつもこう呼ばれてるな」

 

「スノウ…そう。スノウね、」

 

二人は紅魔館に着くとすぐ大妖精が出迎えた。

 

「レティさん!やっと来てくれたんですね!」

 

「ええまぁ、それで何かあったの?」

 

「チルノちゃんが…体調悪いみたいで…レティさんなら何か知ってるかなって思って。」

 

「ただの熱じゃないの?」

 

「なのかな…」

 

慌てる大妖精を追いかけるようにパチュリーがやってきた

 

「ちょっと…慌てて飛び出して…はぁ…大丈夫だって言ってるでしょ…はぁ…はぁ…」

 

紅魔館の応接室のベットでチルノは落ち着いた様子で眠っていた

 

レティ達が応接室に戻るとレミリアが不機嫌そうにチルノを見つめていた。

 

「はぁ…私は医者じゃないのに」

 

「そんなこと言わないで、レミィ、」

 

そんなことはお構いなしにレティがチルノを診る。

 

「ただの熱よ、安静にしていればすぐ良くなるわ。」

 

大妖精は安心したようでほっとしていた。

 

「あなたがいるということは、もう冬なのね。」

 

「ええ、これだけ冷え込んでいるもの冬でもおかしくないわね。」

 

スノウはレティを見つめてつぶやいた

 

「冬の妖怪か。」

 

「何かしら?」

 

「いや…」

 

パチュリーはスノウの意図することがわかった様子で自慢気に話した

 

「スノウはレティが気になるのね、まぁ冬好きの妖怪ならわからなくもないわ」

 

「冬好きの妖怪、ね」

 

「まぁ、今まで噂でしか聞いたことなかったからな、見てみたいというのはあったが。」

 

「あら、私ってそんなに珍しいのかしら」

 

「そうでもないと思うけど」

 

「珍しいと言うより、やっぱり興味だな、」

 

「ほら、気になるんじゃない。」

 

「んー…まぁそういうことにしておくか。」

 

スノウは半分納得していなかったが面倒だと思い。そこで打ち切った、

 

チルノの無事がはっきりしたところでスノウは紅魔館をあとにした。

 

レティはスノウを追いかけて見ることにした。

 

「ちょっと。いいかしら。」

 

「なんだ?何か用か?」

 

「あなた、冬好きの妖怪なのよね。」

 

「まぁな。この時期はたしかに好きだし。気分もいいと思う。」

 

「そう。そうね。」

 

レティが考えているとスノウは気が済んだのかまた人里に向かって飛んでいこうとした。

 

「あっ、ちょっと。」

 

「なんだ?俺はまだ他にも用事があるんだが」

 

「あなたのスペルカードが見てみたいわ。」

 

「どれも小細工ばかりでそんな美しいものでもないぞ。」

 

「ほんとにそうかしら。」

 

「大したスペカはないぞ。」

 

「なら見せてもらってもいいかしら?」

 

「避けれるならな。」

 

その一言でレティはスペカを用意し大きく下がり回避の姿勢をとった。

 

スノウも何枚かのスペカを用意し。構えていた。

 

「いつでもいいわ。」

 

スノウが手慣らしに弾幕を打ち出す、

 

それを朝飯前かのように優雅に避ける。

 

「あら、この程度なのかしら。」

 

「…」

 

無言で弾幕を張っていく。

 

「私から行くわね。」

 

レティが隙を突いて弾幕を張りながらスペカを用意していた。

 

「冬符!」

 

スペカの宣言をかけた瞬間レティの視界からスノウが消えた。

 

「なっ、」

 

辺りを見渡し探すも見つからず。

スペカをしまって警戒していた。

 

「雨符【レインシャワー】」

 

その宣言が聞こえた瞬間、レティは真上を警戒した。

 

確かに頭上から弾幕は降っているが。

肝心のスノウはレティの正面斜め下にいたのだ。

 

「こんないきなり…危なかった…」

 

レティは当たらないぎりぎりのところで避けきっていた。

 

スノウは間髪入れずに次の宣言の準備を始めていた。

 

「曇天【雨水の踊り】」

 

レティがやっとのことで避けきったとき次のスペカが宣言された

 

レティの周りが急に曇り始め。視界が薄暗い中、自然発生した弾幕が無作為かつ自由に動き回る。

その外側の4つの雨雲からレティ目掛けて弾幕が放たれる。

 

「こんな段幕っ!ありえない!」

 

レティは避けることに専念してスノウを探すことを諦めた。

 

「くっ…」

 

弾幕が弱くなり避けきったとき。

離れた先、正面にスノウが現れた。

 

「はぁ…はぁ…まだあるわけ…?」

 

「…」

 

スノウは答えず次のスペカを宣言する。

 

「景符【ダイアモンドダスト】」

 

その瞬間スノウとレティを含め広範囲が氷漬けとなった。

 

もちろんその状態では身動きが取れない。

 

氷がいきなり割れて。

その細かな破片が弾幕へと豹変していく。

 

「なにっ?今の…」

 

理解が間にあう前に無数の弾幕が、四方八方上下左右斜めからレティ目掛けて走っていく。

 

「体が、思うように動かない…!」

 

氷漬けになっていたせいで体が冷え込んで縮こまり、激しい行動が取れなくなっていた。

 

レティは必死に避けるが

遂に被弾してしまう。

 

「はぁ……はぁ…私の負け…」

 

「これでいいか。」

 

レティは満足そうに頷いた。

 

だが、スノウは半分不機嫌そうにしていた。

 

「あら、せっかく勝ったのにその表情はこちらも嬉しくないわね。」

 

「あんた…いやレティ…」

 

スノウはレティが姿勢を整えるのを手伝い。

 

真正面から向き合った。

 

「な、なによ、」

 

「やっぱりそうか…」

 

スノウはレティを確認し直すとあることに気がついた。

 

「なに…私になにか…?」

 

「…久しぶりだな…」

 

「久し…ぶり?」

 

レティには何かよくわかっていなかった。

 

「見覚えがないのだけど…」

 

「それもそうか、もう何年も前のことだしな。」

 

レティは思い出そうとするがイマイチ宛がなかった。

 

「冬の祠、覚えてるか、」

 

「冬の祠…?それが何か…?」

 

「ほら、図書館でよく話をしたじゃないか。スノウって覚えないか。」

 

レティは考えると一瞬で思い出した。

 

「あっ!あなたは…」

 

「まさかとは思ったけど。俺もさっき思い出したよ」

 

「帰ってきたのね…」

 

「あぁ、元気にしてたか。」

 

「ええ…まあ、」

 

レティは当時のことを思い出していた。

 

 

「どうした、何かあったか。」

 

「いえ…何でもないわ」

 

祠を捨てた冬の妖怪。

彼らを許すことのできなかったレティは

もう昔の仲間のことを忘れていた

 

「ここも変わったんだな。」

 

「ええ、関係を絶っていた頃とは大違いよ。」

 

「あぁ、吸血鬼や神社の巫女と仲良くさせてもらってるしな」

 

「あの場所も亡くなってしまったものね。」

 

「やっぱりそうなのか。」

 

「仕方ないわ。護り手達が居ないのだもの。」

 

「…そうだな…」

 

二人は祠のことを残念に思っていた、

 

「ところで何故人里に?」

 

「彼らと別れてからここに戻ってきたんだ。それで祠に戻ってもと思って。人里に住むことにしたんだ。」

 

「そう。」

 

「うちくるか。いろいろと話さないといけないこともあるしな。」

 

「何か重要なことでも?」

 

「まぁ、な」

 

二人は人里につくと家に入った。

 

「あなたにしては質素ね。」

 

「昔はちょっと派手だったからな。今はおとなしめのほうが好みだな。 」

 

「そう、それで話って?」

 

「彼等、のことだ」

 

「彼等?」

 

「あぁ…祠から離れたあのあと。外の世界の北を目指したんだ。」

 

「外の世界…」

 

「だが…俺達幻想郷の存在は外の世界の者とは合わない…」

 

「そう…」

 

「彼等は人間達の無理な提案で騙され…身を滅ぼした…散り散りになり。体を売られ…皆…」

 

「そう…終わったのね…」

 

「俺は途中で別れてから離れて人に紛れて彼等を見ていた、」

 

「なぜ助けなかったの?」

 

「…俺は彼等を見捨てたんだ…今更彼等を助ける義務も権利もない…」

 

「あなた…それでも仲間なの?」

 

「…俺は彼等を止めようとした。外に行ったってこうなることはわかってた、だから、俺は離れたんだ…」

 

「…そう…、」

 

「祠は…捨てるべきじゃなかったんだ…あのとき俺含め何人かは止めようとしたんだが、長が振り切ったせいで…」

 

「それで…祠から離れていったのね…」

 

「その段階で何人かはとっくにどこか行った。俺の知り合いも幻想郷にとどまってるらしい。会えたら会いたいが…」

 

「そのうちの一人が私というわけね。」

 

「あと、チルノもな。」

 

「そうね。」

 

「丁度二人は祠に居なかったんだったな。」

 

「ええ、チルノが…」

 

「そうだ、人が入り込んでチルノを拐ったんだったな。」

 

「ええ、助けに行った私だけはそのことを知らなかったのよ。」

 

「それなら、知らなくても仕方ないな…」

 

「もういいのよ。」

 

「すまなかったな、手助けしてやれなくて。」

 

二人はその後も話をしていた。

途中スノウには何人か客人か来ていた。

 

その中の一人に珍しい客人もいた。

 

「おーい、スノウ、暇か?」

 

「いや、昔の知り合いと今いるんだが。」

 

「昔の知り合い?ってなんだレティじゃないか。」

 

「あら?こんなところに神様が来るなんて。」

 

スノウを訪ねてきたのは山の神社の神様、洩矢諏訪子だった。

 

「昔の知り合いってことは、この前言ってた故郷の話かい?」

 

「あぁ、レティがまだ妖怪として半人前だったときに仲良くしててな」

 

「彼にはよく世話になってたわ。」

 

「へぇ〜、それじゃぁ幼馴染みたいなもんだなぁ」

 

「まぁ、そんなとこだな。」

 

「どうだい、レティ、こいつは」

 

「どう…ってそうね。」

 

「昔と変わったからその質問は難しいだろう。」

 

「私的には今の彼はとてもいいと思うわ。」

 

「おう、そう来るかい。」

 

「まさかとは思うがレティ…お前…」

 

「レティも…狙ってたりするんだな?」

 

「少なくとも幼い見た目の神様よりかはいいと思うのだけど?」

 

「おいおい…お前ら…」

 

「別に私は神様だから?もっといい男でもいいんだよ?」

 

「ならそうしてもらえるかしら、彼は私の幼馴染みたいなものなのよ。」

 

「おい…今決まったことを直ぐ使うな…」

 

「あなたはどうなの?」

 

「俺を攻めるな。この状態じゃ権限なんかないようなものだろ」

 

「あははは!レティはムキになってるなぁ」

 

「別にムキになってなんかないわ。」

 

「好きにしなよ。私は本気じゃないさ、あんた等をからかってみただけだからね」

 

「俺は大迷惑だよ全く。」

 

「でもまぁ、昔仲良しだったのはあるな。すごくお似合いに感じるよ」

 

「そうかしら?」

 

「いっそ付き合っちまいなよ。そのほうが丸く収まるんじゃないか?」

 

「何がどう収まるのやら。」

 

「そりゃ、昔のこともあんたらの関係も。お前さんのお悩みもだよ。」

 

「馬鹿、俺は別に…」

 

「神様にバカはひどいなぁ、氷の妖精じゃあるまいし。」

 

「どっかの妖精は置いといて、諏訪子さんは何のようだ。」

 

「あぁ、えっとな早苗が呼んでるんだよ。なんでも里の信仰がどうとかって、私達のために頑張ってんだ。手伝ってやってくれないか。」

 

「またそれか、今回はやめとくよ、疲れてるし、レティもいるし。」

 

「そうかい。まぁまた今度頼むよ」

 

そういうと諏訪子は丁度通り掛かった早苗と合流してどこかに行った。

 

「神様とまで仲良くなるなんて。あなたもよっぽど好かれるわね。」

 

「うーん…別に俺は興味ないんだがな。あいつから来るんだよ…」

 

「そう。良かったじゃない。幻想郷に戻ってこれたようなものよ。」

 

「そうだな。」

 

「それより。」

 

「なんだ?」

 

「相変わらずあなたには敵わなかったわ。それに最後のあのスペカ。流石というべきかしら。」

 

「あの巫女には敵わないさ。」

 

「霊夢と弾幕勝負したのね。」

 

「あぁ、すぐに勝負つけられたよやっぱり巫女だな、」

 

「そうね。私でも彼女は怒らせたくないものだわ。」

 

「ちょっと挨拶でもしてくるか。しばらく会ってないし」

 

「私も行こうかしら、さっき会ったけど。」

 

二人は博麗神社につくと、襖を勢い良く開けた。

 

「あんたね…いい加減その開け方やめなさいよ…」

 

「博麗の巫女たるあんたがこんな怠慢でいいのかよ。」

 

「いいのよ。少しぐらい」

 

「いつもそうじゃない。」

 

「いいから、襖を締めて、寒いの」

 

呆れた様子で襖を締めて、

それから話をしていた、

 

「それで、何の用?」

 

「いや、特に、」

 

「暇だったからからかいに来たのよ」

 

「またそれ、いい加減飽きたわ。」

 

「あらそう。つまらないわね」

 

「つまらなくて結構。正直面倒だからやめてちょうだい。」

 

「ここまで素直に言われたら流石にやめたほうが良さそうね。」

 

そんな会話をしていると。

また襖が勢い良く開いた。

 

「はぁ…今度は誰よ…」

 

「おい霊夢!暇か!」

 

やってきたのは魔理沙だった。

 

「暇じゃない、あと寒いから締めて。」

 

「こたつで横になってる、その図は暇人の図に見えるな」

 

魔理沙は襖を締めてこたつに入り込んだ

 

「暇人じゃないけど暇な妖怪ならそこに二人いるわ。」

 

「おい。俺等に振るなよ。」

 

「どうせ暇なら相手してやりなさいよ。」

 

「おっ、そういえばスノウとはやったことないな。」

 

「まぁ、そうだが…」

 

「せっかくだから相手しろよ。」

 

「仕方ねぇなあ…」

 

 

その後、魔理沙とスノウは弾幕勝負をしたのだが…

 

「んー…なんか気が済まないなぁ…」

 

「もういいだろ。俺の負け当たったほうが負けだろ。」

 

「わざと当たったとかじゃないよな?」

 

「そんなわけ無いだろ。」

 

「そうかぁ…」

 

攻防の末スノウは魔理沙の弾幕が掠れるように被弾したのだ

 

 

「まぁいいか。あのままだと私はきっと負けてたし。これはこれでよしだな。」

 

「負ける自信はあるのか、」

 

「正直霊夢の次にめんどくさいな。」

 

「あぁ、そう」

 

「それじゃ、私はアリスの茶菓子でも頂いてくるよ。」

 

「じゃぁな。」

 

そういえと魔理沙は魔法の森の方へ飛んでいった。

 

「終わったかしら」

 

遠目で眺めていたレティが話しかける。

 

「ん、まぁな。負けたけど」

 

 

「敢えて、ね」

 

「面倒だから負けた。って言いたいのか?」

 

「違ったかしら?」

 

「否定はしないが避けきれずに当たったのは事実だ。」

 

「そう、認めるのね」

 

「負けてしまったのも事実だしな。」

 

「そうね。」

 

スノウは溜息をつくと。人里の方に向かった。

 

「俺は帰るよ。」

 

「そう。」

 

レティも特に宛がないため。スノウについていくことにした。

 

「上がってくか?」

 

「ええ。そうするわ。」

 

家についてからは、スノウは読書をしていてレティも棚に積まれた本を眺めていた、

 

小さな寝息が聞こえてスノウが視線を変えたときにはレティは座ったまま居眠りをしていた。

 

「疲れてんのか。全く。」

 

スノウは座ったままのレティを布団に移し、軽く毛布をかけた。

 

「俺も今日は疲れたな…」

 

軽く伸びると座椅子にもたれ掛かけ。読書を続けていた。

次第な眠たくなり。気がついた頃にはスノウも寝入った




だらだらと書き連ねる
年明けて一発目にこれだから先行き怪しくなりますね…

まぁ今後も間隔長かったり短かったりと、こんな感じです。

それでもよろしければよろしくお願いいたします

また会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

新たな居場所。

どうも夢子です。

約一月。お久しぶりです。

気長に作文してましたので内容はブレっブレですが

ご了承ください…


ではごゆっくり


「はぁ…はぁ…ここまでこれば多分大丈夫かな…」

 

凍えるような寒さの中、必死に階段を駆けのぼった。

 

 

 

逃げ始めてからもう半日経った…少し前に逃げていることがバレて。ずっと隠れていたけど、もう里から離れて逃げるしかなかった。

 

「もう足が…」

 

階段を登りきったその時目の前に人が見えてた、でもその瞬間意識が薄れていった

 

意識が薄れていって次の瞬間には体に力が入らなくなって倒れてしまった。

 

「ちょっと!大丈夫!」

 

微かに聞こえたその声は。何処となく聞き覚えのあるような声だった。

 

……………………………

 

意識が戻って目を開けると目の前には見覚えのない景色が広がっていた。

 

「ここは…どこ…」

 

「目が覚めたのね」

 

声の方を向くと紅白の衣装を来た巫女。博麗霊夢がいた、

 

「霊夢さん…?」

 

「あんたね…いきなり来て倒れるなんてびっくりするじゃない」

 

「あの…ごめんなさい…」

 

「まぁ…いいのよ。どうしたの何かあったのかしら。」

 

しばらくは思い出せなかった。必死に何かから逃げたのは覚えていて、でもそれしか今は覚えていなかった。

 

「あっ、えっと…」

 

思い出そうとすると嫌な気がした…

 

「まぁ。思い出してからでいいわ」

 

そう言って温かいお茶を出してくれた

 

「ありがとうございます。」

 

「あんたって里の子よね。」

 

「はい…そうです…けど…」

 

里…その言葉を聞いて思い出した。

 

「そうだ…里…」

 

「どうしたの?」

 

「僕…親に捨てられて、知らない人に売られて、ずっと働かされてて…」

 

「そう…」

 

「ずっと辛い仕事ばかりで。それで逃げて…」

 

「そういうことね…」

 

逃げたのはいいがそれからを考える余裕なんてなかった

 

「僕は…どうすればいいんでしょう…」

 

「まぁ…逃げてるってことはあんたを探してる輩がいるわけよね。」

 

「はい…」

 

「なら、ここに居るのはあまり良いとは言えないわね。」

 

「どうしてですか…?」

 

「少なからず私の元を訪ねてくる人は居るでしょう。匿うのは構わないけどバレたら面倒だからあんまり私は好ましくないわ」

 

「そう…ですか…」

 

「とはいえ、そのまま置き去りにするのも腑に落ちないから、、そうね。まぁ仕方ないからしばらくここに居なさい。」

 

「はい…ありがとうございます。」

 

外を見るととっくに日は暮れて暗くなっていた。

 

「もう夜…」

 

「あんたがここに来たのが、たしか日暮れの前ぐらいだったかしら。結構時間は経ってるわ。」

 

「誰も来てませんよね…?」

 

「まぁ、こんなとこに人探しで来る人間なんてそうないけど 、あくまで参拝しに来る人にあんたを探してる人がいないとは言い切れないわ。」

 

「そう…ですよね…」

 

「まぁ。安心しなさい。あんたの拾い先が見つかるまでは匿ってあげるわ。それにまだ子供だってのに重労働させるなんて許せないのもあるし」

 

「できることならここにいる間は、なにか手伝います。」

 

「できることねぇ…特にないのよね。」

 

「そうですか…」

 

「まぁ、とりあえず今日は寝なさい。時間も時間だし。また明日考えるわ。」

 

「は、はい。おやすみなさい。」

 

霊夢さんも隣で別の布団で寝る。

こんなも静かで安心して寝れるのは久しぶりで…逆に不安になって寝れなかった、

 

どうにも寝れなくて寝返りを何度もしていた、

 

「落ち着いて寝なさい」

 

「…はい…」

 

目を瞑って暫くするとやっと寝入った。

 

 

 

 

「起きなさい。朝よ。」

 

「…ん?、うぅん…」

 

「朝ご飯用意したから。ほら、早くしなさい。」

 

「え…?あ、はい。」

 

布団を仕舞って。部屋を移動すると。

机の上に朝食が用意されていた。

 

温かいご飯に魚や漬物と汁物

 

以前なら考えもしなかった…

 

「これが…朝ご飯ですか?」

 

「そうよ、不満かしら?」

 

「いえ…なんていうか…」

 

「贅沢だと思う?気にしないでいいわ。」

 

複雑な思いで朝食を食べ終えた…

 

「食器貸して、洗ってくるわ」

 

「あの…僕洗います。」

 

「えっ…?いやいいのよ。」

 

「でも僕は何か恩を返したくて…」

 

「まだ子供なんだからいいのよ。」

 

「…はい…」

 

まだ…子供…

たしかに、寺子屋にも通ってて。身なりも幼い…

 

そう考えながら。神社の縁側に座りこんだ。

 

「あんたいくつよ」

 

「いまは…11です」

 

「11歳の子供に仕事させるなんてね。まぁ普通なら考えられないわ、寺子屋は?けーねの寺子屋は行ってるの?」

 

「はい、寺子屋は行かせてもらえてました。」

 

「けーねには相談しなかったの?」

 

「何度か相談はして…でも…」

 

「そしたら?どうしたのよ、」

 

「けーね先生が…暴力振るわれたんです…」

 

「あらそう…別にけーねなら勝てるでしょうけど。」

 

「たしかにけーね先生は力は強いですけどその時は、何人も男の人がいたので…」

 

「まさに数の暴力ということね。」

 

「はい…」

 

「まったく…まぁ容赦がないわねぇ。」

 

そう言いながらも霊夢さんはお茶を飲んでいた。

僕も用意して貰った煎餅を食べた。

 

「まぁ、なんていうか。」

 

霊夢さんはまた一口飲んで話し始めて。

 

「そこまで酷いならちょっと見てこようかしら。気に入らなくなってきたわ。」

 

「えっ…?」

 

「けーねとは仲良くしてるし、人里でそんなことが起きてるなんて知ってちょっと腹が立っただけ。」

 

「そう…ですか」

 

「普段ならこんなことないのだけどね。なんか気に触れたわ。」

 

そう言うと霊夢さんは上衣を着て歩きはじめて僕を誘った。

 

「ほら、行くわよ。」

 

「えっ?僕もですか?」

 

「子供一人神社で放って置くわけにも行かないから。ほらこれ着て。」

 

ちょっとサイズの大きい温かい上衣。

それを着て人里に向った。

 

道程はそう特に何もなく。

気持ち早く人里についた。

 

 

人里はいつも通り静かで、でも、どこか賑やかな風景が続いていた。

 

「やっぱり問題っていうのは探らないとわからないものね。」

 

見てわかる事なんて平和に過ごす人たちが居る程度。

商いをする人、立って話し込む人

仲良く歩く夫婦、元気に騒ぎ遊ぶ自分と同じぐらいの子供。

 

やっぱり、そんな風景ばかりだった。

 

「こうもこんな風景ばかりだから、あんたの昨日の話が疑わしく思えてくるわ。」

 

「そう…ですね…こんなに平和だから…」

 

「別に否定してるわけじゃないんだから気を落とされても困るわ」

 

「は、はい」

 

しばらく歩くと寺子屋についた。

 

「あっ…そっか今日はお休みなんだ。」

 

「ふーん、休みね」

 

そう言うと霊夢さんは扉をあけて中に入って行った。

 

「あっ!ちょっと!」

 

おいて行かれないように早歩きで、ついていった

寺子屋のけーね先生の部屋に行くと

座って書類の整理をしてた。

 

「あれ霊夢じゃないか。それに、ゆう、どうした?」

 

「けーね、あんた、この子の事情知ってるのよね。」

 

「えぇ…まぁ…」

 

「まぁ、少なからず暴力で解決するのは…教 え子達に悪影響を及ぼしてしまうでしょうね」

 

「話の通じない相手だしな…妹紅にも相談してみたんだが、あいつは面倒だって言って協力してくれなかった。」

 

「そもそも、妹紅は人里が嫌いなのよ。」

 

「まぁ。それは知ってるが。」

 

「それにしても、11歳の子供に仕事させるなんてね。いい身分よね。」

 

「まぁ…なんとも言えないな…」

 

「今この子ね、うちの神社で匿ってるのよ。」

 

「えっ、そうなのか?」

 

「はい…昨日ちょっと…」

 

「夜逃げみたいなものよ、」

 

「あぁ、そういうことか、」

 

「けーね、この子の家わかる?」

 

「んー…わからないな。仕事してる場所で寝泊まりしてるってのはわかるが、」

 

「なら早いわ、訪ねてみるわね。」

 

「おい、本気か、」

 

「別に、本気ではないけど、気にいらないだけよ、」

 

「気をつけていけよ。」

 

「大丈夫よ。」

 

 

それから、僕達は仕事場に向かった。

 

ちょうどその時は人が少なかったから、

若い人が出迎えた。

 

「おや、博麗の巫女さんがこんな土木屋に来るなんて珍しいな。」

 

「ちょっと色々あるのよ。ここの偉い人はいるかしら?」

 

「頭ならいま休憩中ですね。向かいの団子屋にいませんかね。」

 

「ありがとう、訪ねてみるわね」

 

それからすぐ向かいの団子屋の体つきのいい男の人を訪ねた。

厳つい雰囲気の人だけど、霊夢さんはなんの遠慮もなく話しかけていた

 

「あなたがあの向こうの土木屋の頭領かしら?」

 

「ん?あぁ、そうだが、」

 

「少し話があるの。」

 

「巫女に目をつけられちゃ、参るな、話とは。」

 

「一人子供を預かっていてね、その子がちょっと問題になってるよ。」

 

「隣のちっこいのか、」

 

「そう、この子がそこで働いているの。理由はわかるのかしら。」

 

「ちょっと待った、その子はいくらだ、」

 

「あの…11です…」

 

「今なんて言った。11?」

 

「ええ、11歳よ、まさか知らないの?」

 

「若いのが一人入ったとは聞いたが、俺は基本的に外に出て建てるのが仕事だから店で角材作るのは任せっきりで、店の方は知らねぇんだ。」

 

「隠蔽ね…ありがとう、あなたに否はなさそうね。」

 

「ちょっと待った俺も戻る。その話は隅に置けねぇよ。誰がこんな子供を働らかせるか、危なすぎる。」

 

 

それからさっきのお店に戻った。

男の人は半分焦っているようだった。

確かにこの人に合うのは初めてだから、お店の方には来ていなかった思う。

 

お店につくと若い人がまた出迎えた。

 

「おや、さっきの巫女さんにお頭、どうかされましたか?」

 

「一旦店閉めてくれ、話がある、」

 

「はぁ、わかりました、」

 

「あと、二等を呼べ、」

 

「二等は今設計で奥で篭ってますけど。」

 

「構わん、呼び戻せ。」

 

 

それからお店の奥で、頭領と二等と呼ばれる人が向かい合って睨み合っていた…

 

「頭、設計やってて呼び戻すなんて、何事です。」

 

「お前も大概設計だから、店のことは知らんと思うが、この子はわかるか、」

 

「いや、その子供がなにがあるというんです、」

 

「うちの店で働かせてるらしい。おかしな話だ。何か知ってるか、」

 

「いや、こっちには基本的に図面しか来ないんですよ。」

 

「となると、平八か」

 

「でしょうね。」

 

平八…よく聞き慣れた名前…

いつも厳しくしてくるのはこの平八という人とその周りの人達だ

 

「若いの、」

 

「はいお頭、」

 

「平八とその連れはいるか、」

 

「ええ、いますよ、かしこまりやした、ちっと待ってくださいね、」

 

 

名前を呼ぶと平八さんとその連れの人達が皆来た。

 

「なんすか」

 

「お頭が呼んでるんだその態度はよせ。」

 

「随分と生意気になったな、平八」

 

「頭、それに二等、珍しいですね、こっちに来るなんて、」

 

「そんなことはいいんだ、おまえこの子はなんだ」

 

「あぁ、連れ帰ってきたんすか、」

 

「どういうつもりだ。」

 

「うちに預けられてたから働かせてただけすよ。それが昨日逃げたみたいだけですけど。」

 

「それだけか。」

 

「なんすか、」

 

「子供を働かせろと誰が言った。」

 

「いかんのですか」

 

「ふざけるな!大馬鹿者!」

 

「なっ。」

 

「11の子供に土木の仕事をさせる阿呆がどこにいるか!」

 

「いや、頭、目の前にいますよ」

 

「二等の兄貴、冗談はよしてください」

 

「いくら土木を任せられていても常識というものはあるだろう」

 

「別に子供一人いいでしょう」

 

「おまえ、何様のつもりだ。」

 

「なんですか、」

 

「もういい、平八お前は降りろ」

 

「なっ、まだ現場の分残ってますよ。」

 

「降りろと言ったんだ、わからないのか」

 

「わかりました、はい降りますよ、あとはおまかせします」

 

平八さんとその連れの人はみんな帰っていって…

 

それから僕の行き先の話になった。

 

「さて。巫女さんよ、その子はどうするか」

 

「そうね、両親に売られてるからね…しばらくは預かってもいいのだけど、いつかは引き取り先が見つかるといいわ」

 

「そうか…弱ったな…」

 

「寺子屋は行ってるんですよね。」

 

「はい…寺子屋は通ってます」

 

「上白沢の姉さんは?」

 

「けーねはあれでも物事を教える立場の人よ、訳有でも教え子を預かるのは良くないわ」

 

「名前はなんていう、」

 

「ゆう。です。」

 

「そうか、ゆう、うちに来るか」

 

「えっ…?」

 

「頭、本気ですか」

 

「どうせ二等は篭って相手にできねぇだろ、それに若い衆に任せるのも癪に触れる。」

 

「私の神社にいつまでも居させるわけには行かないわ。」

 

「だろ、ちょっと口うるさい家内がいるがそれでもよければ、うちに来るか、」

 

「いいんですか?」

 

「家内には話をつけるさ、それにうちは子供一人といないからな、家内も嬉しいだろうからな。」

 

「養子みたいなものね、良かったじゃない。」

 

「はい、えっと、ありがとうございます。」

 

それからは頭領さんと暮らした。

 

普通の子供の普通な生活。

 

それがとても嬉しく思えた。

物心付く頃にはすでに辛い思いしかしていなかったから、今の生活がとても幸せに感じていた。

 

たまに頭領さんやおばさんにも怒られたりはするけど…でも以前に比べると違った感じがした。

 

寺子屋の生活でも少し環境が変わった感じがした。

今までは嫌われ気味なのがあったのかもしれないけど、一連の事が済むとみんな仲良くしてくれた。

 

 

頭領さんにも霊夢さんにもとても感謝していて、いつも仲良くさせてもらっています。




次もこんな感じで間隔空くかもしれませんのでどうか気長にお待ちください。


ではまた会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

小傘との日々

どうも、悠樹@夢子です。

小傘との日常を切り取って貼り合わせた
ちょっとした作品です

そう長くはないですね。

ではごゆっくり。


 

「驚けー!」

 

「うん、ただいま。」

 

「もう、驚いてよぅ…」

 

「いつも出迎えてくれてありがとうな、」

 

「今日も仕事お疲れ様、どうだった?お祭りは」

 

「大盛況だったよ、みんな楽しそうでよかった」

 

「そっか!よかったぁ。」

 

「今日はあなたも混じってきたの?」

 

「ううん、いつも通りだ。」

 

「なんで?お祭り楽しいのになぁ、」

 

「管制塔から見たほうがいろいろ見渡せていいんだ、問題ごとが起きてもすぐ対応できるし。」

 

「仕事熱心だね。楽しまないと。」

 

「いいんだよ。」

 

「ねぇ!また今度、私も連れてってよ!」

 

「あぁ、いいぞ。」

 

「その時は貴方も楽しんでね?」

 

「わかった、」

 

 

 

…………………

 

 

 

「ねぇねぇ、ちょっと見てみてよ。」

 

「ん?なんだ?」

 

「この本。すごく…なんていうか興味があって読んでみたんだけど、なんかすごく面白くてね!」

 

「本?めずらしいな君が本を読むなんて」

 

「でも!ほんと面白いんだよ!」

 

「どんな本なんだ?」

 

「ほんとにいろんな物語があって!」

 

「私達みたいなカップルのお話とか、屋台のお話とか、のんびりしたお話とか、色々あるんだよ!」

 

「そうだな。たまにはこんな本も悪くないな、」

 

「あれ…このお話…」

 

「あぁ…何も言わず読もう。」

 

……

 

「人間…か」

 

「最後には、別れちゃうんだね…」

 

「俺も人間だったら悲しませてたのかもな」

 

「でも貴方は人間じゃないから、長生きできるんだよ?」

 

「そうだな。長生きしてその分幸せになろうな、」

 

「そうだね、いつまでも私を好きでいてね…?」

 

「あぁ、いつまでも愛してるよ。」

 

「うん!私も愛してるよ!」

 

…………………………………………

 

「おかえりなさい!ってあっ!」

「もー!また傘ささないで帰ってきたのね!」

 

「あぁ、そんなに強くなったんだけどな、途中から強くなってきてたから。」

 

「傘持ってるのになんでささないの?」

 

「雨は好きだから」

 

「それでも濡れちゃうよ?」

 

「濡れるのは嫌いじゃない」

 

「だめだよ…風邪引いちゃうよ?」

 

「その時は小傘が治るまで看病してくれるから。」

 

「そ、そうだけど…もう。」

 

「小傘が看病してくれるなら幾らでも風邪引いていいかな。」

 

「だめだよー…そしたら私が風邪引いたときが大変だもの。」

 

「あはは、そうだな。」

 

「だから、雨の日はちゃんと傘をさしてね」

 

「あぁ、わかったよ……ん…くしゅん。」

 

「あー…もう体熱いよ、ほら早くこっち来て休んでね。」

 

「あぁ、いつもありがとうな。」

 

「な!なによいきなり…」

 

「看病、ありがとうな。」

 

「う、うん…だってほっとけないから…」

 

「優しいんだな…」

 

「うぅー…ずるいよぉ…」

 

「なんか、今日の雨はやけに冷たかった。」

 

「まだまだ強くなるみたいだから早めに帰ってきてよかったね、」

 

「その分小傘にも早く会えたしな」

 

「もう…あなたったら…」

 

……………………………

 

「ねぇ、起きてよ」

 

「んー…朝か…」

 

「朝ご飯用意できてるよ。」

 

「あぁ、ありがとな。」

 

「ん…これなんだ?」

 

「唐辛子っていう香辛料を使ってみたんだけど…多かったかな。味見したらなんか辛くて。」

 

「唐辛子はもともと辛いけど…やけに量が…まぁ、食べてみるよ」

 

……

 

「あー…っ…うっ…あーっと…」

 

「うっー。やっぱり…」

 

「ごめん…もう無理…辛すぎる…」

 

「うっー…うぅ…やっぱり辛い…」

 

「香辛料は入れすぎるとこうなるのか…」

 

「けほっけほっ、どう…しよ、これ」

 

「もったいないけど…処分、だな。」

 

「明日は甘い朝ご飯にしたいな…」

 

「頼むから普通の朝ご飯で頼む。」

 

「うん…今日のは辛すぎてびっくりだったよ…」

 

…………………………………

 

ただいまー。

 

あれ?

 

あぁ、寝てるのか。

 

起きろー、

 

疲れてるのか…?

 

まぁ、いいか、

そっとしておこう。

 

さて、と。

 

仕事の書類整理しないとな、

 

「うぅーん…まだなのぉ…?」

 

ん…?

 

「すぅー。すぅー。」

 

なんだ寝言か、

 

 

「えへへー。かわいいでしょー。すぅー」

 

うん、かわいい。

 

さて、書類に手を付けないと…

 

「もぉー。まだまってよぉー。」

 

起きてるのか…?

 

「とっても。おいしいよー…?…すぅー。」

 

いや、寝言だな。

 

「すぅー、すぅー」

 

寝息が微かに聞こえてくるな。

いかんいかん。

仕事仕事。

 

「えへ。えへへ。恥ずかしいよぉー」

 

えっ。なにが。

 

「もう、あなたってばぁ。」

 

あー。。寝言に頭が行って仕事が…

 

「そんなに言われたら恥ずかしいってば。」

 

何を言われてるんだ。

 

「うふふ、わたしだってそうだよー。」

 

お、おう。そうか。

 

「でもねー。あなたはわたしがー…」

 

わたしが?

 

「すぅー。すぅー」

 

あぁ…気になる

 

「だからぁ。まってってばぁ。」

 

待ってないから

 

「ええー。そんなこと言われてもぉ」

 

……

 

「でもね。わたしはあなたが。」

 

あなたが…?

 

「えへへー、おどろいたぁ?」

 

いや、わからなさすぎておどろけない。

 

「だからぁ。」

 

だから?

 

「愛してるってばぁ。」

 

…!

 

「あなたも一緒なんだぁ!」

 

もちろんだとも。

 

「えへへ。」

 

かわいい。

 

「そんなにくっついたらせまいよぉ。」

かわいいから仕方ないな

 

「うぅー…ん。」

「ふぁー…ぁぁ…」

 

あっ、起きたか?

 

「あぁ、帰ってたのね。」

 

ただいま。

 

「おかえりなさい」

 

 

……………………………………

 

「雨、降ってきたね。」

 

「そうだなぁ、降ってきたな」

 

「そうだ、買い出し行かないと。」

 

「今日の分ぐらいあるだろう。わざわざ雨の日に行かなくても」

 

「雨だからこそ行くんだよ。傘さしてさ」

 

「そうか、なら行こうか」

 

「じゃぁ…相合傘しよっか!」

 

……………………………………

 

「ん…朝か…」

 

「目覚まし止めないと…」

 

 

「今日ゴミ捨ての日だったか?」

 

「そうだったね。」

 

「行ってくるよ。」

 

「あ、うん、ありがとう。」

 

 

……

 

「あっ、多々良さんお早う御座います」

 

「稗田さんに小鈴さんか、お早う」

 

「多々良さん、小傘さんは?一緒じゃないんですか?」

 

「小傘は家で掃除してもらってるんだ。」

 

「それで、ゴミ捨てをしてるんですね。」

 

「そうだ、」

 

「おや、若いお兄さんがいるじゃないか、」

 

「あっ、八百屋のおばさん、」

 

「偉いねぇ。若いのにゴミ捨て手伝うなんて。」

 

「まぁ、そういうもんですよ。」

 

「いやいや、今時若い男なんて遊ぶか仕事に更け混んでるものさ。」

 

「まぁ、仕事してても、生活のことぐらいはしますよ。」

 

「あんたさんみたいな立派な男を婿にできたら幸せだろうねぇ、」

 

「おばさん、彼は既に既婚者ですよ。」

 

「あら、そうなのね、お相手はきっと素敵なお嫁さんだわ。ほんとに幸せそうだわ。」

 

「まぁ、半妖ですから…それに僕の嫁は妖怪ですので。」

 

「妖怪でも人間でも、愛し合うことには違い無いわ。お嫁さんを大切にしなさいな!」

 

「はい。また会いましょう。」

 

「それじゃ私達も失礼しますね。」

 

「ああ、またな、」

 

……

 

「ただいま。」

 

「おかえりなさい!!」

 

「お?幽谷か、どうしたんだ?」

 

「小傘ちゃんの掃除手伝ってたの、」

 

「そうか、ありがとうな。」

 

「おかえりなさい、あなた、」

 

「掃除、終わったか?」

 

「うん、終わったよ。」

 

「そうか、お疲れ様。お土産買ってきたから、食べるか?」

 

「うん、食べる。」

 

「あ、プリンだ、」

 

「でも。2つしかないよ?」

 

「元々小傘と食べようと思ったけど、まぁ、二人が食べてくれればいいよ。」

 

「いいの?」

 

「あぁ、俺はいいよ。」

 

「うん、ありがとう。」

 

「ねぇ、口開けて?」

 

「いいのか?」

 

「うん、いいよ、」

 

「あーん、んっ、」

 

「美味しいでしょ?」

 

「あぁ、美味しいな。」

 

「良かった」

 

「ありがとうな、」

 

「折角買って来てくれたんだから、貴方もね?」

 

「そうだな、また今度は三人で食べようか。」

 

「うん!」

 

……………………………………

 




小傘可愛いですよね。

日常を切り取った作品というのは
こうもほのぼのするものなんですね。

なかなかいいものです。


また会えたら会いましょう。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

過去の人と今の鬼

どうも夢子です。

題名に困った
困った末こうなった。

どうしてこうなった…

ではごゆっくり


「今宵もまた、宴が賑わうなぁ!」

 

愉しむように叫んだのは、

 

鬼、伊吹萃香であった。

 

 

 

「はぁ…また参拝者が減るわ…」

 

「元から居ないんだし。減るもんじゃないぜ」

 

肩を落とす霊夢に、魔理沙は追い打ちのように話した。

 

「別にいないわけじゃないのよねぇ…」

 

「そういや、この前。霊夢が留守にしてたときに参拝者らしき奴を見かけたぜ。」

 

「私がいるときに来なさいよ…」

 

「でも見た感じ人間じゃなかったんだよな」

 

「ええぇ!」

 

「多分鬼かなんかだぜ、角っぽいものが頭に見えたから。」

 

「人間の参拝者がきてほしいのよ…」

 

いつものように会話する二人に萃香が割り込む。

 

「まあ、毎回こんな宴開いてたら来なくもなるだろう!」

 

「あのね萃香、あんたが宴宴ってうるさいし、放っとくと厄介事起こすから仕方なくやってるの。わかってるの?」

 

「はっはっはっ、そうだったかなぁ!」

 

とぼける萃香に霊夢は呆れていた。

 

「いい迷惑よ…ほんと…」

 

「でも、毎回宴は開くんだよな。」

 

「まぁ、たまに美味しいお酒があったりするのは確かだし…」

 

「それに、普段は静かな神社も、これなら賑やかでいいではないか!」

 

「はぁ…まぁ…そうね…」

 

呆れ返る霊夢に魔理沙はどんまいと言わんばかりに肩を叩く。

 

「ん…あれは…なんだ?」

 

宴では人影なんていくらでも有るが、気にかかった人影を見に行く事にした。

 

「おい、萃香、どこ行くんだよ、」

 

「妻味妻味、また後でくるよ!」

 

 

瓢箪を肩にかけてさっきの人影を探すと、神社がそう広くないおかげか、すぐ見つかった、

 

「おっ、いたいた。って、ん?」

 

見つけたのは、自分と同じ、鬼だった

萃香と同じ二本角の鬼だ。

 

「いつもいる鬼か。」

 

「へぇ、私や勇儀以外にもここに来る鬼がいるとはねぇ。」

 

「連れはいいのか?」

 

「あぁ、霊夢達は常日ごろから戯れるからね、別に良いんだよ。」

 

「酒を飲むなら彼女達の方が、肴にはいいだろう?」

 

「まぁな、気の引く話はいいからな、」

 

「ところで俺なんか追いかけてどうした。」

 

「ちょっとした興味だな、理由は特にない」

 

「そうか」

 

「隣、失礼するぞ。」

 

「あぁ、妻味はないが、いいか?」

 

「んー、それは困るなぁ。」

 

「持ってくるよ、少し待っててくれ。」

 

「済まないね、頼んだ」

 

鬼は立ち上がると少し離れた所まで妻味を取りに行く。

 

「珍しいというか、なんというか、」

 

少し呟くと鬼は戻って来た。

 

「何か珍しいんだ?」

 

「んー、私ともう一人勇儀っていう鬼がいてな。私達はよく参加するが、まさか私達以外に宴に参加する鬼がいるなんて、ってね。」

 

「ふーん。まぁ、今日はたまたま寄っただけだ。この神社にはちょっとした思い入れはあるが、大した内容でもないしな。」

 

「何かあったのか?」

 

「まぁ、昔、博麗が出払ってがいない時にここに逃げ込んだときだな、妖魔がここを嫌って助かった時がある。」

 

「ほぉー。そうかい。」

 

「それ以来、恩返しの意味でたまに賽銭はしてる。鬼が神社を参拝するなんて、異質だがな。」

 

「恩返しってのは種族は関係ないと、私は思うな。」

 

「そうなのか?まぁ、確かに気にすることでもないんだろうか。」

 

「でもまぁ、霊夢が直接助けたわけでもないしな。」

 

「なんの事かと気持ち悪がられても気分が悪いだけだし、お礼そのものを言ってわかるとも言えないしな。」

 

「それで恩義というのは違う気がするなぁ」

 

「そうか…博麗に今度会うべきだろうか。」

 

「まぁ、会ったときでいいんじゃないか?お前さんと直接の関わりがない以上過ぎても意味ないだけだしな。」

 

「まぁな。これ、妻味」

 

渡したのは胡瓜の塩漬け。よくある一般的なものだった、

 

「おっ、妻味は…漬物か?」

 

「漬物は嫌いか?」

 

「いーや、構わないや。なかなか旨いしな。」

 

「そうか。よかったよ、」

 

「ほら、私の酒分けるよ。」

 

「すまない、お酒は遠慮しておくよ。」

 

「おいおい、宴に来て酒を飲まないとはどういうつもりなんだよ。」

 

「元々酒は飲まないんだ、」

 

「てことは茶か。」

 

「まあ、麦茶をな。」

 

「なんだ~?私の酒が飲めないってかぁ?」

 

「強要するのは関心しないな。」

 

「そう気を悪くするな、」

 

「お酒は飲まない」

 

「わかったよ。そういや名前、お互いに話してなかったな。私は萃香、伊吹萃香だ、お前さんは?」

 

「砕牙三月、【さいがみつき】だ、」

 

「へえ、男にしちゃ珍しい名前だな。みつきか、」

 

「そう珍しくはないと思うが。」

 

二人はそんな会話をしながら乾杯をした。

 

「酒を飲まない宴ってどんな感じなんだ?」

 

「さぁ?酒を飲む宴ってのはわかるのか?」

 

「質問に質問で返すなんて酷いやつだなぁ、」

 

「お互いにわからないならこの話は無しにしようか。」

 

「仕方ない、また今度聞くとするか。」

 

「萃香は博麗達とどういう関係なんだ?」

 

「友達だな。親友とも言う」

 

そのことを聞くと三月は少し顔を顰めた。

 

「友達か…そうなんだな」

 

「どうした?もしかして…?」

 

「気にするな昔のことを思い出しただけだ」

 

「そうか、済まないな嫌なことを思い出させてしまって」

 

「いいんだ。仕方ないさ。」

 

「あれだ、嫌なことは酒を呑んで忘れるといい。」

 

「俺の場合は茶だがな、」

 

「どっちでもいいさ。」

 

萃香は杯、三月は湯呑み

お互いに飲み交わした。

 

「そろそろ霊夢達のとこに戻るよ。ありがとうな」

 

「そうか、こちらこそありがとう。」

 

二人はそう言うと離れ合った。

 

 

 

「想いを蒐める鬼…か…」

 

三月は呟いて神社から出ていった。

 

 

 

 

何日か後。

 

萃香は博麗神社でのんびりしていた。

 

「ねぇ萃香。あんたいつまでここにいる気?」

 

「いつって、気が向くまでだけど?」

 

「あぁ…そう…」

 

霊夢はため息をつくと立ち上がった。

 

「ちょっとレミリアのとこに行ってくるわ。たまには我儘お嬢様の相手もしてあげないとすぐ拗ねるから、」

 

「そうか、血、吸われないようになぁ。」

 

「心配なんてしなくても大丈夫よ。」

 

そう言うと霊夢は飛びさって行った。

 

「つまらないやつだなぁ」

 

退屈そうにしながら縁側で横たわる。

すると鳥居の方から足音が聞こえてくる。

 

「おや、参拝者か?」

 

 

「今日も誰もいないのか」

 

三月は博麗神社に参拝者に来ていた。

 

「よう、来たんだな」

 

三月はどこからか聞こえる声を探した、

 

「萃香だな。どこにいる?」

 

「後ろだよ、後ろ」

 

振り向くと確かに萃香はいた、

 

「どこから出てきた」

 

「まっ、ちょっとした能力だな、」

 

「ふーん、こりゃいつどこから襲われるかわかんねぇな」

 

「物騒だなぁ、私は正面から向かうタイプだから、裏から攻めたりはしないぞ。」

 

「そりゃありがたい。」

 

そう言うと、三月はお賽銭を済ませた、

 

「ほんとにここに参拝に来てたんだな。」

 

「嘘はつかない。それに。嘘を言う理由もないしな。」

 

「確かにな。」

 

萃香は縁側に座り込むと。

三月を隣に誘った。

 

「ほら、ちょっと話に付き合ってくれよ。」

 

「あぁ、まぁ、少しな。」

 

 

三月が座ると萃香は話しかける。

 

「なぁ、確か人里にいたよな。」

 

「そうだが。なんでだ?」

 

「お前に似た人間をいつだったか前にみた覚えがあるんだ。」

 

「俺か?いつ見たかによるけど人違いかもな、」

 

「だろうと、思うがちょっと気になってな。」

 

「まぁ、人間なんて、似た人はいくらでもいるだろう。」

 

「いくらでもはいないと思うが…まぁ人違いか」

 

「まぁ…」

 

「ん?」

 

「そうだな、萃香さんよ、」

 

「どうしたいきなり」

 

「確かに昔、俺は人里にいた。嘘じゃない、でもな、俺は昔、人間だったんだ。」

 

「どういうことだ…?」

 

「俺は…ある妖怪のせいで鬼となった。人間から鬼に変わった。それからは人里ではこの姿を隠して生きてる」

 

「妖怪に…」

 

「あいつは、俺の弱みに漬け込んで…それで俺はこうなった。この角さえ生えた。」

 

「そうなのか…」

 

「まぁ、話戻すと、俺を見たのはもしかしたら間違いじゃないかもしれないな。」

 

「そうか。なんで。鬼になった?」

 

「それは…」

 

「話したくないか。」

 

「嘘は言いたくはない。でも、ホントのことも言いたくない」

 

「そうか…」

 

「すまないな…俺にだって譲れない部分はあるんだ…」

 

「いや、いいさ。誰だってそういうもんさ。」

 

「さてと。俺はそろそろ戻るかな。」

 

「わざわざこんなとこまでご足労だよ。」

 

「まぁな。」

 

三月は神社を後にして人里に帰って行った

 

「妖怪か…人の弱みに漬け込むといったら。例のあいつか…」

 

 

 

また、何日か後。

萃香はいつも通り神社にいた。

 

「退屈ねぇ…異変は起きてほしくないけど何かないかしら。」

 

「そうは言っても面倒事が嫌いなんだろう?」

 

「面倒事と面白いことは別よ。」

 

「まぁ、そうだろうなぁ、」

 

萃香は三月のことを思い出し、退屈そうにする霊夢に提案をした。

 

「暇なら協力してほしいことがあるんだが。頼んじゃくれないか」

 

「面倒事は嫌よ?」

 

「まぁ、多少面倒かもしれないが、ここにくるある参拝客の事でちょっとな。」

 

「ふ~ん…分かったわ、」

 

「さすが霊夢。それじゃ人里に行こうか。」

 

「里に?まぁ、参拝客ってことなら人里もわからなくないけど。」

 

二人は神社を出て人里に着く。

 

「座敷童子って、わかるよな。」

 

「ええ、でもあれは幸運の妖怪よね?」

 

「その逆もあるのは知っているだろう?悪戯好きという話だ」

 

「ええ。でもまさか?」

 

「そのまさかだと思う」

 

「思ってことは確証はないの?」

 

「あくまで聞いた話だ」

 

「そう…それで参拝客っていうのは?」

 

「私と同じある鬼がいてな、この里に住んでいるらしいんだが、」

 

「人間じゃないのね…」

 

萃香はあたりを見渡すとそれらしき人物が家屋に入るところを見かけた。

 

「あっ、あいつか?」

 

入口の戸を叩いて訪ねると…

 

「こんな昼中になんですか?」

 

出迎えたのは確かに三月だった、

 

「あれ、萃香か、どうした?」

 

「お前の事でちょっと気になることがあってな、」

 

「それで、博麗まで連れてきたってことは。この前の話か?」

 

「確かめたいことがあるんだ。」

 

「そうか、まぁ、入ってくれ。」

 

萃香は家に入るなり押入れを探して周り、襖という襖を開けていく

 

「何してる。ほんとに探してるのか?」

 

「まぁ、やってみないことには見つかるかいないかわからないだろう。」

 

「ちょっと萃香、あまりにもそれは失礼よ」

 

霊夢からの声掛けも無視して探し続ける萃香。

 

そして部屋の押入れを開けたとき。

何かが動く音がした。

 

「ん?何だ今の」

 

萃香は押入れの中を覗き込むと、そこには子供の様な身なりの生き物がいた。

 

「おぉ…これは…」

 

「どうしたのよ萃香。」

 

萃香は更に中に入り込む

 

「うわっ!何するんだ!」

 

その生き物を鷲掴みにする。

 

「なんだ?今の声」

 

二人は謎の声に顔を合わせて不思議がる。

 

そのまま萃香は押入れから出てきた。

 

「やめろ…!離せよ!」

 

「やっぱりいた。」

 

萃香は出てくると、人の半分程度の大きさの人の姿をした生き物を掴みながら出てきた。

 

「こいつ…」

 

「三月、こいつだろ。」

 

「あぁ、多分そうだ、こいつが座敷童子だな。」

 

座敷童子は暴れて抵抗するも萃香は全く離す気はなかった。

 

「で、萃香、それを見つけてどうするっていうのよ。」

 

「うん、まぁ。色々と聞き出さないとな。」

 

「お、おいらは何も知らねぇぞ、」

 

「何も知らないなら知らないなりに話してもらおうか。」

 

萃香は座敷童子が縦に首を降るとそこに降ろし。そこで座りこんだ。

座敷童子は三月を見ると俯いた。

 

「おいらは…何も知らない…」

 

「何も知らないならそんなふうに俯かないでしょ、」

 

しばらく座敷童子は黙っていた。

 

「黙るってことは。なにか訳があるんだろ。」

 

座敷童子は顔を上げると話し始めた。

 

「確かにおいらは知らないわけじゃない。でもおいらはその鬼と全く関わりはないんだ。」

 

「んー。関わりがないのに俯いて後ろめようとする理由は?」

 

「元々おいらはさっきの押入れに住み着いていた。ただの住み着いてただけで、何かしていたわけじゃない。」

 

「ならなんで彼は鬼になったのかしら。」

 

「ある日だ…おいらの他に座敷童子が住み着いていたんだ…」

 

「他の…?なんで二匹も住み着くのよ。」

 

「それはおいらにもわからない。でも見た目はおいらみたいに座敷童子だった。でもあいつはおいらと違って。すごく悪意を感じたんだ…」

 

「その座敷童子が彼を鬼にさせたのね。」

 

「あいつはおいらを見ても何もして来なかった。おいらには敵意を示さなかった。」

 

「なら、止めればよかったじゃないか。」

 

「そう思ったさ、でも圧倒的な力の差がある。おいらはまだ妖怪として弱い。でもあいつは妖気が半端じゃなかったんだ…」

 

「まぁ、力の差はあるだろうな、それ故に手出しができないのは仕方ない。」

 

「だから…おいらはそいつと関係は無いんだ…」

 

「分かったわありがとう。」

 

「すまないな無理矢理ひっぱり出して」

 

「もう明るいところは懲り懲りだよ。」

 

そう言うと座敷童子は押入れに帰って行った、

 

「さて。どうするかな。」

 

「ところで萃香。なんで探ろうと思ったわけ?」

 

「妖怪の賢者が言ってた言葉を思い出したんだよ。」

 

「紫の言葉?」

 

「あぁ」

 

[人は鬼や妖魔に成ってはいけない。弱き者が莫大なる力を手に入れるとそれは欲望に繋がって均衡と平穏を壊すのよ。]

 

「とな、だから、せめて経緯だけでも調べておかないと、と思ったんだよ。」

 

「そういうことね。まぁ、わからなくないけど。何かしようとでも思ってるの?」

 

「まぁ、さっきのあいつが根源だったら賢者にでも突き出してやろうと思ったけど。まぁ、冷めたし。この辺にしておこうかな。」

 

「…まぁ、そうね。」

 

 

 

萃香と霊夢は三月に挨拶をすると家を出た。

 

里を出て少し離れた頃

ある事に気づいていた

 

「やっぱり。いるんだな。」

 

「あの家、さっきの座敷童子以外にも何か憑いてるわ。」

 

「行った通り。いるな。多分まだ居るんだろう。どうするかな。」

 

「事が起きる前に済ませたいところだけど」

 

二人は考えながら博麗神社に帰って行った。

 

後日

 

いつものように二人が話していると

博麗神社に一人の人間が駆け込んできた

 

「はぁ…はぁ…助けてくれ!」

 

「どうしたよのいきなり。」

 

「鬼が…鬼が出たんだ!」

 

「鬼なんてそう珍しくないだろ。それがどうした」

 

「あいつが…様子がおかしいと思ったら…急に襲い始めてきたんだ!」

 

二人は嫌な予感がした。

 

「例の…」

 

「早くないか?まだそんなに経ってないのに、」

 

「萃香、とにかく行くわよ。」

 

「わかってるよ。」

 

二人は急いで里に向かう。

 

途中里から逃げ出して走っていく人影も見えた。

 

「ほんとに異常事態みたいね」

 

「早く行かないとな」

 

 

二人は人里に着くと鬼を探した。

 

必死に抵抗する人々達を見つけると。

萃香達は変わって避難させた。

 

そして、問題事を起こしていたのは…

 

「やっぱり…」

 

「お前なんだな、」

 

砕牙三月、例の鬼だった

しかし三月の様子は明らかにおかしかった。

 

「なんか憑いてるわね」

 

普段のおとなしい表情は見られず、文字通り鬼の形相になっていた。

 

「正気を失ってるな」

 

「何…この妖気…?」

 

「多分…あの妖怪だな、」

 

背中に何かが取り憑いて、三月の意識を奪っていた。

 

「座敷童子でしょ、この前話したあいつ、」

 

「だな、早く祓ってくれるか?」

 

「それはわかるけど、彼も鬼なのよ?負担が大き過ぎるわ」

 

「そうか、どうするか…」

 

「そのままだと三月も死にかねないわ」

 

「わかった…なんとかする。」

 

萃香は近寄ると三月が反応して、萃香に襲いかかった。

 

襲いかかる三月を正面から受け止め、

三月を抱き締める形で動きを止めた

三月は振り解こうと暴れ始める

 

「霊夢、早く、」

 

「ちょっと萃香、どういうつもりなのよ」

 

「私も同時に受ければ、負担もなんとかなるだろ」

 

「確かそうだけど、あんた、本気なの?」

 

「いいさ、早くしてくれ、」

 

「わかったわ…すぐ終わらせるから、我慢して頂戴、」

 

霊夢は普段通り夢想封印を放つ、

 

それが萃香と三月に容赦なくぶつけられた

 

間もなく三月は気を失い。

萃香もしばらく動かなかった。

 

 

 

「萃香?だ、大丈夫かしら?」

 

「あぁ、私はなんともないぞ。」

 

「そう…三月は…?」

 

「気を失ってるみたいだな。一度神社に連れて行こう。でも、ここにはもう居られないだろうな…」

 

「まぁこれだけ暴れて…被害出しちゃってるわけだし、仕方ないわ」

 

萃香が三月を背負い二人は神社に戻った。

 

神社の一室で。

 

「どうしようか、」

 

「どうするもなにも。里に戻れない以上宛はないままよ、」

 

「そうだな…」

 

「とりあえず里の混乱を収めてくるから戻ってくるまでに決めて頂戴。私の神社に留めるなんて答えは勘弁だからね。」

 

「なんとかするよ」

 

霊夢は神社を後にして人里に向かった。

 

「なんとかすると言ってもなぁ、」

 

萃香は縁側に座りこんでしばらく考えていた

 

ごそごそと動く音に気がついて振り向くと三月が起き上がっていた。

 

「ここは…」

 

「神社だよ、霊夢のとこだ。」

 

「博麗神社か…」

 

「痛いとこはないか?霊夢のことだ、多分手加減なんかしてないだろうし」

 

「どういうことだ?」

 

「お前さんが例の座敷童子に取り憑かれて人里で暴れて回ってたんだよ。」

 

「それで、博麗が俺を祓った訳か」

 

「そうなんだけど、私もいくつか肩代わりして受けてやったさ、なんとかお前は無事だけどな、さっきの座敷童子は跡形もなく消えたよ、」

 

「そうか。済まなかった」

 

「いいんだよ、お前さんが無事なら痛いのくらいどうってことない。流石にお前さんが一人で霊夢の夢想封印を受け止めれるわけ無いしな」

 

「まぁ…座敷童子と一緒に跡形もなくなっていただろうな、」

 

「私達はなんとか耐えれるけど、霊夢がほんとに全力で飛ばしてくると私も多分他の妖怪も跡形も無くなるだろうから」

 

「それだけ偉大なんだろうな。」

 

「それでな、お前さんのことなんだが」

 

「…里には戻れなさそうだよな」

 

「結構大暴れしてたからな、里は難しそう何だが、だからといってここに留まるというのは霊夢が拒否してたしな、」

 

「どこでもいいさ…」

 

「どこでもいいって、その回答が一番面倒なのよね。」

 

気がつくと霊夢は戻ってきていた。

 

「まぁ、確かに…」

 

「霊夢、里はどうだった?」

 

「大丈夫そう。もう復興にむけて動いてたから心配なさそうよ」

 

「そうか、よかったよ」

 

「ただ、里長の話を聞く限り、あんた相当酷い過去を…」

 

「あぁ、そうさ。なんだ、聞いたのか」

 

「まぁ、里長が話してたのを横耳で聞こえただけよ」

 

「そうか…」

 

「別に気にしないわ、あなたの人生なんだから、それより行き先どうするのよ」

 

「そうだな…」

 

「ねえ萃香、地底はどうなのよ、勇儀に話を通して見たら?」

 

「旧都か、それも悪くないな」

 

「旧都…地底、なるほどな」

 

「妖怪妖魔鬼、あらゆる魑魅魍魎が住まう街。」

 

「それなら悪くないな。」

 

「そうも決まれば行ってみるしかないな」

 

萃香と三月は博麗神社を後にして地底の旧都へ向かった。

 

「へえ。珍しいな、萃香がこっちに来るなんて。」

 

「久々だなぁ、勇儀」

 

「また飲むか?」

 

「まぁ、それはまた今度だな、ちょっとお願いがあってきたんだ。」

 

「ほー。お願いとは」

 

「こいつをな、旧都に向かい入れてやってほしい」

 

「あたしらと同じ鬼か、」

 

「訳があって里には居られなくなったんだ。」

 

「まぁ、ここの秩序さえ乱さなきゃどんなやつでも歓迎だよ。慣れるまでは時間が掛かるだろうけど、ゆっくりするといい、」

 

「すまないな、ありがとう。」

 

「堅苦しいことはなしだ、里じゃ辛かったろうしな。」

 

「住処と街の案内とかは私がするから、それじゃ勇儀、また後でな。」

 

「おう、頼んだぞ、またな、」

 

勇儀と別れてから旧都を歩きながら話していた。

 

「さっき言ってた通り、ここは妖魔妖怪達が住まう街でな、酒場も宿屋も多くある。それで向こうに見える洋館が地霊殿さ。」

 

「地霊殿?」

 

「知らないか?古明地姉妹の」

 

「あぁ、あの二人はここに住んでるのか」

 

「そうさ、地底は基本的に旧都は勇儀の管轄で全体的には古明地達が仕切ってる。私もたまに協力はするが、地上にいることが多いからなあまり触れることはない。」

 

「そうか、そんな仕組みなんだな」

 

「と言っても殆ど放任主義だから、さっき勇儀の話の通り何か問題事を起こさなければ特に決まりはないよ」

 

「なるほどな、」

 

「そうだな…、ここだろう。ここの宿屋の女将は私達と同じ鬼でね、私も仲良くさせてもらってるんだ、きっと大丈夫だろう。」

 

大きな襖を開けて宿屋に入ると

ロビーはやけに静かだった

 

耳を澄ますと二回の方から騒がしい声が聞こえてくる。

 

「何かあったのかな、ちょっと見に行こう。」

 

ロビーを抜けて階段を上がる。

すると女将が慌しくしていた。

 

「おう、女将、この騒ぎはどうしたんだ?」

 

「お客さんが乱心でさ、酒を飲みすぎたんだよ。」

 

「なんだ、いつものか」

 

「まぁ大したことはないのうちの旦那がなんとかしてくれてるからね、それより今日はどうしたんだい?」

 

「ちょっと部屋を借りたくてねしばらく泊めさせてやってくれないか」

 

「隣の鬼かい、構わないようちは萃香のおかげで存続できたんだ、萃香の頼みならもちろんいいさ」

 

「しばらく世話になります、三月といいます。」

 

「三月ね、よろしく頼むよ。部屋は済まないね今は1階の広い部屋しかなくてね、そこで頼めるかい?萃香、11-5号室まで案内してやってくれるかい?」

 

「おう、わかったよ」

 

「ありがとね、詳しい案内はまた後でするから取りあえずゆっくりしていってくれ」

 

「あぁ、ありがとう。」

 

1階に戻り、部屋についてから

二人は座りこんで話をしていた。

 

「結構広いんだな、」

 

「まぁ、狭いよりはいいだろう、」

 

「まぁな。」

 

「まぁ…色々と不幸があったけど。落ち着いて良かったよ」

 

「何から何まで。ありがとうな。」

 

「いいんだ、同じ鬼として、捨て置けないからな。また何かあったら来たときに話しかけてくれ。それと勇儀もいるからな。」

 

「あぁ、助かるよ」

 

「ただ、古明地姉妹には無礼のないようにな、あの二人はちゃんとしたお偉いさんみたいなもんだから」

 

「わかった、気をつけるよ」

 

「ありがとうな。」

 

「なぜ、萃香がお礼を言うか、」

 

「いや、昔の知り合いに似ててな」

 

「それは理由にならない気がするんだが」

 

「まぁな、昔のその知り合いは人間だったんよ。」

 

「人間の知り合いなんていっぱいいるだろう。」

 

「そいつは、私が鬼だってわかってるのに私の事をキリもなく愛してくれてたんだ。」

 

「そうだったのか」

 

「もちろん私もそれに応えてあいつが一生を終えるまで付き合ってやったさ。」

 

「人間なんだろ?一生を終えるまでって言ったらお前は辛いだろ、」

 

「もちろん別れは辛かったさ、この上ないほどに…でも鬼と人とでは仕方のないことだ。」

 

「まぁ…な。」

 

萃香は軽く涙を流していて少しばかり声も小さくなっていった

 

「後悔はしてないし、もう何年も前さ、あいつの事は忘れたくはないが、もう顔も覚えてないよ。」

 

「そうか…」

 

「でも、お前を見て思い出したんだよ、お前が暴走をしてたからな、正面から抱きついて動きを止めた時に、ちょっと思ったんだ」

 

「あのときは済まなかったな」

 

「いいんだ、私もお前のことをあいつと重ねて見てた部分もあったから…あいつが帰ってきたんじゃないかってちょっと嬉しく思ったのもあったしな」

 

「色々と済まなかったな。世話ばかりかけて」

 

「いいんだ、大切なことに気づけたからな。」

 

「まぁなんだ、俺で良ければここにはいつでも来てくれ」

 

「ああ…そうだな。」

 

萃香は近づくと三月に優しく抱きついた。

三月とそれに答えるように抱き返した

 

「ずっとこうしたかった…あいつが老いてからはもうずっと暖かみに触れてなかったから…」

 

「萃香…寂しかったろ」

 

「あぁ…今でも思い出すと恋しいな…」

 

「俺で代わりになるか?」

 

「あいつの代わりなんていないさ、でもお前は私の数少ない想い人がいい。」

 

「それっていうのは、」

 

「これから、頼むよ」

 

「あぁこちらこそな」

 

 

 

いつもの様に霊夢は神社て暇を余らせていた。

 

「萃香。暇ね」

 

「そうだな。」

 

「そういえば、あんたがいない日が最近増えた気がするわ」

 

「そうだな、そうかもしれない」

 

「ほんと、あんたのせいでまた少し暇が増えたわ、」

 

「そう言われてもなぁ、私がいたって暇じゃないが」

 

「暇が売れたら。どれだけ儲かるのかしらね。」

 

「まーた、お金のことばかり。」

 

「でも聞いてよ、最近よくお賽銭が増えたの。」

 

「この前の件じゃないか?」

 

「そうかもしれないわ…何か起こらないかしら。」

 

「そう何度も問題事が起きてもらっても困るんだよな。」

 

「それもそうね」

 

「さて、私は少し席を外すよ。」

 

「またー?暇になるわ。」

 

「まぁ、ちょっと知り合いのとこにね。」

 

「…三月でしょ。ほんと仲良いのね」

 

「まぁな、それじゃまた。」

 

 

 

 




あっ…1万文字超えてなかった…

特に気にしてないけどなんか残念

ではまた会えたら会いましょう。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

夢と甘い果実

どうも夢子です。

なんとなくゆったりした話になりました

まぁ、たまにはいいかと


ではごゆっくり


「たまにはこういう散歩も悪くないなぁ」

 

ドレミーは名もない森を歩いていた、

 

「それにしても、すっごく静かだなぁ。森なんだから妖怪の一匹や二匹いると思うのに。」

 

そう呟いた直後、視線にあるものが映りそれに気づく。

 

「あれっ、もしかして…」

 

木陰に隠れているように見えるそれに

恐る恐る近づいていく。

 

「お、やっぱり人間かぁ」

 

木にもたれ掛かって昼寝をする人間だった。

 

「まぁ、これだけ平和だったら、昼寝もしたくなるねぇ。」

 

ドレミーは人間の側でしゃがみこんで少し考えた。

 

「そうだ、どうせだからどんな夢か見てみよう。」

 

隣に座って手をかざす。人間から白い何かが広がりドレミーはそれに飛び込んだ。

 

 

「へぇ…こりゃなかなかに…」

 

夢の風景は。

 

辺り一面草原で、地平線の先までずっと青空が続いていた。

所々丘のように立地の高いところもある。

 

そんな夢だった

 

「清々しい夢見ていらっしゃる…」

 

ドレミーは周りを見渡して思った

 

「だめだ、キリがない…」

 

そのままでは意味がないと思い歩きながら周りを見渡していた

 

「さっきもさっきで歩いてたし。疲れてきたなぁ。」

 

そう言うと体を浮かし。低空を飛んで進み始めた

 

「うーん…なんにもないなぁ…」

 

いくら進んでも一面緑と青、そんな風景ばかり続いている

 

丘のような場所に着いて周りを見渡していた。

 

「帰ろうかな…」

 

そう思った矢先。緑の中に黒っぽい点を見つけた。

 

「お、もしかして、さっきの人間さんかな。」

 

少しばかり足を速めて近づいていく。

 

形がしっかりとわかったところで。

ようやくさっきの人間だとわかった。

 

「ようやくだよ…」

 

人間は草原に寝転んでいた。

 

「まさか、寝てる…?」

 

恐る恐る人間に近づく。

 

「俺に用事か?」

 

人間は目も開けずそのままの姿勢でドレミーに話しかけた

 

「あっ、起きてた」

 

人間は起き上がるとドレミーの方に体を向けた。

 

「なんだ?お前」

 

「私?私はドレミー」

 

「ドレミー、ふぅん。」

 

「よくこんなとこに居るね」

 

「そう言われても気がついたらここに居たんだ。まぁ静かで暖かいものだからついつい眠たくなってさっきまで寝てたな。」

 

「ふーん。ここがどこかわかってる?」

 

「さぁ?自分がどこにいてどこからここに来たのか、むしろどうしてここにいるのかすら知らない」

 

「まぁ、そうだろうと思った」

 

「何か知ってるのか?」

 

「それは秘密」

 

「あっそ。」

 

人間はまた寝転んで、大きな欠伸をした。

 

「眠たそうだね。」

 

「そりゃ、ずっとこんな景色で。何もないし。何もやる気が起きないからな。眠たくもなるさ。」

 

ドレミーは横に座り込む。

 

「確かにこんなに清々しいと気分も落ち着いちゃうなぁ」。

 

「あぁ、全くだよ」

 

「すごいねぇ、こんなとこに実際に見たのは初めてかな。」

 

「まぁ、だろうな。」

 

ドレミーも人間の隣で寝転んだ。

 

「ほんと。最初はどうしたものかと焦ったけど、次第にどうでもいいかなって思ってそれからはここからほとんど動いて無いんだよな。」

 

「これだけ。広いとね、どれだけ歩いても変わらないかな。」

 

「多分、そうだろうな」

 

「いいなぁ、静かで。」

 

「そうやって落ち着くと動かなくなるんだよな」

 

「そう…だねぇ。」

 

「あー、いや手遅れか」

 

「かもね?」

 

「なんにもないな。」

 

「うん。」

 

「帰ろうかな。」

 

「帰るったってどこに」

 

「それは秘密かな。」

 

「あっそ」

 

ドレミーは起き上がると指を鳴らした

 

その瞬間ドレミーは人間の夢から消えた

 

「どこにいったのやら」

 

人間は呟いた。

 

ドレミーは夢から出ると人間にいたずらをしようと企んでいた

 

「どうしよっかな。」

 

そうつぶやいた直後、人間が目覚めた、

 

「んん…誰だ…?」

 

「あっ、起きちゃった。」

 

「あ?その声は…」

 

人間はしっかりと目覚めるとドレミーを見た。

 

「お前はドレミーか?」

 

「そうそう。覚えてるんだね」

 

「夢…?」

 

「ううん、今は現実」

 

「ということはさっきの風景が夢か…?」

 

「そういう事」

 

「ならドレミーはなんでいた…?」

 

「私はドレミー、夢を創ったり食べたりが出来ちゃうんだ、まぁ操ったりも出来るんだけど」

 

「それで入り込んで来たわけか」

 

「そういうこと、」

 

「妖怪…だよな?」

 

「そうだねぇ。」

 

「妖怪ね…やっぱ出てくるもんなんだな。」

 

「とは言っても私は乱暴は嫌いだよ」

 

「そうか、そりゃ助かる」

 

「夢の管理人でもある私が夢以外で乱暴なんかしないさ。」

 

「ほぅ、そうかい。」

 

「ところで、貴方は何でこんな森にいるの」

 

「あるものを探してたんだよ」

 

「あるもの?」

 

人間は大きな籠を指はした。

 

「これさ、」

 

籠にはぎっしり詰まった果物が入っていた。

 

「果実だね、こんなものを探しに?」

 

「そうさ。林檎の一種でな、林檎に比べて果汁が多いんだ。」

 

「へぇー。そんなものが有るんだね」

 

「最近里で流行っていてね。ちょっと高いから手を伸ばしにくいんだ。」

 

「それで、買わずに自分で採るわけなんだね」

 

「もちろん、商売屋に売り付けてお金にすることもできなくはない」

 

「でも、買うより安いじゃん」

 

「お金のほうが何かと便利なのは間違いないんだよ。」

 

「そういうもんなの?」

 

「そういうもんさ。」

 

人間は果物を手に取るとドレミーに渡した。

 

「せっかくだし食べてみろよ。」

 

「高いんでしょ?いいの?」

 

「沢山あるしな一個ぐらいいいさ」

 

「ありがとう。」

 

ドレミーは一口齧ると

果物からは果汁が溢れだした、

 

「うわっ、すごいね!」

 

「だろ。その果汁も甘いからな、そのままジュースにしても美味いんだ。」

 

「確かにこれが流行るのはうなずけるなぁ」

 

「まだこれ明確な名前が無いんだよな」

 

「ふーん。名前ねえ、林檎の似たものかぁ」

 

「普通に林檎でもいいと思うんだけどそれじゃだめだって言うやつもいるからな」

 

「林檎でいいと思うけどねぇ、」

 

「まぁなんでもいいんだけどな、」

 

「スイートアップル、ってのはどうかな」

 

「なんだ唐突に」

 

「普通の林檎よりも甘いからと思ってさ、」

 

「スイートアップルか、」

 

「ふふ、私の名前の果実かぁ」

 

「名前?どういうことだ?」

 

「私の名前、全部言うと、ドレミースイートだから、」

 

「なるほどな、」

 

「でも悪くないでしょ、ちょっと広めてみてよ。」

 

「まぁ、悪くないしな」

 

「よし。じゃあ広めてみてね!」

 

「おう、分かったよ」

 

人間は立ち上がると籠を背負った、

 

「さて、そろそろ帰るよ」

 

「うん、じゃぁねぇ。」

 

人間とドレミーは別々に歩き、別れた。

 

 

 

後日。

 

人里にはある流行りが出来ていた。

 

様々な食べ物に【スイート】という前付がされているのだ。

 

しかし、それら全てスイートアップルを使った食べ物だった。

 

スイートアップルが流行るどころか

【スイート】という単語が流行っていた




うん、林檎って美味しいですよね

私はアップルティーが特に好きです


ではまた会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

愛を探す天狗

もみじもみもみ


ではごゆっくり


妖怪の山。

 

天狗達の見張りにより人間は立ち入る事のできない、幻想郷では有名な山

 

半妖という立場と天狗達との縁でなら妖怪の山に立ち入ることが出来ていた。

 

「全く…これじゃ視界が悪い…」

 

妖怪の山でしか取れない珍味にも近い山菜を採りに山に来ていた。

 

「晴れていたのになぁ…」

 

里から出るときは青空がみえるほど晴れていたのにも関わらず。

急な天候の変化で雨が降り始めてしまった。

 

「雨具はあるとはいえ。視界が悪いんでは、採るものも見つからないな…」

 

今回は特に霧が強く、遠くが見えなくなってしまった。

 

「困ったなぁ…帰る道もわからなくなりそうだな…」

 

目印はあるが…霧のせいでほとんど見えない。

 

山道を進んでいると、正面に人影が見えた、

 

「なんだ…?人間…そんな訳ないか」

 

近づくと誰かはすぐわかった。

 

「椛…?椛か?」

 

犬走椛。白狼天狗だ。

 

彼女とは仲が良く、顔を合わせてはよく話し掛けてくる、

最近では付き合っている彼氏についての相談すらお願いされたこともある。

 

それぐらい親身な関係だ。

 

しかし。これだけ雨が降っているのに、雨具も無しに上向いたまま立ち尽くしている。

 

「おい椛!どうした!」

 

椛の耳が微かに動いた。

でも格好はそのままだった、

 

近寄って更に声を掛けた。

 

「椛!おい椛!」

 

やっとの事で反応を示した。

 

「あぁ…陸さん…」

 

こっちを向いて囁く様に声を発して。

 

それから下を向いて俯いていた、

 

「椛…?具合でも悪いのか…?」

 

椛は答える間もなく膝から崩れて座りこんだ。

 

「おい?、どうしたんだよ」

 

軽く体を揺すると力もなく倒れ込んでしまった。

 

「おい…?椛!、椛!」

 

息はしているが意識がない。

いくら声をかけても返事がなく。

かなり困ってしまった。

 

「おい誰かいるのか?」

 

後方から声が聞こえた。

 

聞き覚えのある声だ。おそらく哨戒中の天狗だろう。

 

「助けてくれ!白狼天狗が倒れている!」

 

力強く呼ぶように叫ぶとすぐに天狗が駆けつけてくれた。

 

「お前は?。」

 

「陸と言えばわかるか。」

 

「なるほど。噂は聞いてる。それより天狗は…椛殿?」

 

「あぁ…道の途中で立ち尽くしてて、いきなり倒れ込んだ。どこか安全なところは知らないか?」

 

「椛殿の小屋が近くにある。そこまで連れて行こう。」

 

天狗に道案内を頼み。

俺は椛を背負いながら歩いた。

 

そう遠くはないところで小屋についた、

 

「ここだ。先に中で休ませていてくれ。私は救護の天狗を連れてくる。」

 

そう言うと天狗は飛んでいった。

 

ベットに寝かせて様子を見ることにした。

 

「体が濡れて冷めちまってるな…」

 

秋季とはいえ雨が降れば気温も下がる。

しかも雨に濡れるとなれば体も冷える。

 

そこにあった暖炉に火を焚き、椛に毛布を掛けて、出来る限りタオルで体を拭いていく。

 

目が覚めるのはいつになるか。

 

そう思っていると小屋の扉が空いて先程の天狗ともう一人天狗が来た。

 

「陸ね、椛はどこに?」

 

「ベットで寝かせてる、出来る限りの処置はしたがあとは頼むよ。」

 

「わかったわ」

 

天狗は椛に近づくと。

急に振り向いて話しかけてきた、

 

「何したのかしら?」

 

「何したって、体が冷めない様に暖炉を焚いて毛布着させて体を拭いた。それだけだが?」

 

「服。脱がして拭いたわね?あなた男でしょ、わかってるの?」

 

「緊急時だしな。最初は気が引けたが、命に関わるならいけないと思ったし。仕方ないだろ、」

 

「まぁ…そうね…」

 

半分納得のいかない顔で答えた。

 

「姉さん。椛殿なら多分大丈夫ですよ。椛殿と陸殿はかなりの仲ですから。」

 

「わかったわ。」

 

俺も体をある程度拭いて。

椅子に座っていた。

 

「あなたもこのアメの中山に来ていたのでしょう。体調の方は大丈夫なのかしら。」

 

「俺は大丈夫だ、雨具もあったしな。」

 

「そう。」

 

「椛はいいのか。」

 

「見た感じ、怪我をしてるわけでもなさそうだし、体が冷えてるとはいえ。息が荒かったり熱があったりしてるわけじゃないから」

 

「今の段階では風邪ではなさそうだな」

 

「まぁ、そのうち目が覚めるでしょう。私が居ても変わらないわ」

 

「そうか、すまないな。」

 

「それじゃ、私は帰るわね。」

 

「ああ、」

 

「私も山の警備に戻ります」

 

「おう、ありがとうな。」

 

天狗の二人は小屋から出ていった。

 

しかしながら、外傷も無ければ病気でない、

 

となれば…何が原因だろうか。

考えてもわからない。

 

とにかく起きるのを待った。

 

多少雨に濡れていたからか。

疲れも相まって。眠気も来ていたが

 

気がつくと、眠ってしまっていた。

 

 

目が覚めて、窓から外を覗くと。空は曇ったままだが、雨は止んでいた。

 

顔を前に戻すと、椛が悲しそうな顔をしてお茶を飲んでいた。

 

「陸さん、起きたんですね。」

 

そう言うと椛は立ち上がって、お茶を出してくれた、

 

「ごめんなさい。迷惑かけてしまいましたよね、」

 

「さっきはどうしたんだ。」

 

「話…聞いてくれますか?」

 

「いつもみたいに話してくれ。」

 

「はい…この一週間ぐらいのことなんです…」

 

……

 

私の彼は…だんだん素っ気なさが見えてて。

 

私も不安に思ってたんです。

何か悪いことでもあったか聞いたら

彼は呟いたんです。

 

「もういいんだよ。俺達は知りすぎたんだ」

 

って、それで、一方的に別れられてしまって…

 

でも…私は納得もいかないので、話もしました、もう一度やり直そうって何度も説得して…

 

それで…さっき…言われたんです…

 

「お前は好きになれない」

 

って…

 

私は…私は彼に何もしてないのに…

なんで何でしょう…

 

私は…

 

……

 

「椛。あのな。」

 

「はい…」

 

「すごく申し訳無いが、俺にはその心はわからん、誰かを好きになったことはある、でも叶わなかったし、誰かと付き合ったこともないしな。」

 

「そう…なんですね…わかりました…」

 

「まて、それでだ、俺から話をするぞ」

 

「はい…」

 

「お前はあいつが愛しくて再びを願ったんだろ。」

 

「はい…」

 

「でも叶わなかった。それがなんでなのか考えたことはあるか?」

 

「…ないかもしれません。」

 

「そうか。俺から言えるとすれば、1つや2つだな」

 

「それは?」

 

「あいつが単純に椛に冷めた。」

 

「私が飽きたと言うことですね」

 

「そうとも言う。それでもう一つは」

 

「私が自然に彼が離れるようなことをした…」

 

「悲観的になるな、話を聞け。」

 

「…はい。すみません…」

 

「多分な、考えることとか、求めるものとか、合わなかったのかもしれんな。」

 

「考え…」

 

「まぁ、なんだ、あいつは狼でお前は白狼。多少なりとも違いはある。もちろん異種でも愛し合う奴らはいるが。意見が違うのは、仕方ないと思うぞ。」

 

「そう…でしょうか」

 

「まぁそうだろ、人間と妖怪の場合でもそうだ、元々違う生き物で環境も違う。そうなれば自然と考えも追求も変わるさ」

 

「…はい…」

 

「だからな椛」

 

「はい。」

 

「次、本当に誰かを愛したいと思うんなら。お前をこよなく愛したいと思う奴に尽くせ。」

 

「私を…愛してくれる…」

 

「不安か?」

 

「…はい…」

 

「まぁ、いつでもいい、気が晴れてからでもこのことを忘れてからでも。」

 

「そうですね…ありがとうございます、」

 

「だから、お前は早くその濡れた顔を拭け。」

 

「なっ…」

 

冗談を混じえると椛は驚くような顔をした。

 

「お前にそんな悲しい顔は似合わないって言ってるんだよ。」

 

 

「あっ、そうですね…すみません。」

 

「ほら、いつもの元気はどうした。いつもみたいに飛びついて話し込んで。それが椛だろう。」

 

そう言うとやっと椛の顔から悲しさが消えて行き始めていた。

 

「ふふっ、そうですね。」

 

「そうだ、笑って笑顔で。その方が気分がスッキリするしな。」

 

「ありがとうございます。」

 

「いつもの事だ、お礼なんて関係ないさ、」

 

 

お茶を飲んでひと呼吸おいた。

 

「ねぇ、陸さん。」

 

落ち着いた様子で椛は話しかけてきた

 

「なんだ?話なら聞くぞ?」

 

「いつも私の話ばかりなので、たまには陸さんの話を聞きたいです」

 

いきなりの提案で少し驚いたが…

確かに思えばいつも椛が一方的に話して別れていたから。それも悪くないかもしれない

 

「おっ?そうだな。何を話そうか…」

 

「あの…さっき誰かをを好きになったことあるって言いましたよね」

 

「まぁ、言ったな」

 

「陸さんが好きになった方ってどんな方なんですか?」

 

「ああ。そうだな。」

 

……

 

俺が好きになったのは人間だった。

 

もう八年も前だ。

俺は里の役場で仕事をしてた、

今でもまだ役場で仕事してるが

 

その当時ある人間の若めの女性が、新しく仕事場に入ったんだ。

 

その人は優しかった。

気が利いて、笑顔も素敵で。

それ以上ないくらい素敵な人だった

 

俺はいつの間にか彼女が好きになって。

話をしていても楽しかったし何よりも触れ合える事が嬉しかった。

一緒に仕事できることが幸せだった。

 

でも、数ヶ月経ってすぐ、彼女は仕事をやめてしまった。

その時は何故かはわからなかった。

 

彼女が仕事をやめてから数日後俺は我慢ならなくて彼女を探した。

 

近隣の人に聞いて彼女の家を教えてもらい。

尋ねることにした。

 

それで家を尋ねると、

両親であろう人達が向かい入れてくれた。

 

何故か最初に名前を聞かれて答えると。

悲しい顔をして手紙をくれた。

 

その手紙は彼女の手紙だったんだ。

 

“あなたと居れたことが嬉しかったです。一緒に話したことも一緒に仕事したことも、何よりあなたとの時間は私の一生の宝物です”

 

短い文だったけどそれでもとても嬉しかった。

 

その後彼女のことを聞くと。

両親は悲しい表情をして呟くように答えたんだ

 

「先日…亡くなったのよ…」

 

そう、一言だけだった。

 

彼女は元々体が弱く。

いつも病に苦しんでいたそうなんだ。

 

それで里では治せないような不治の病にかかって…寿命が短くなってしまっていた。

 

おおよその寿命がわかってるのにもかかわらず、仕事をしていた。

 

そして、僅かな寿命の間でも仕事をしたいと思い役場に来たそうだ。

 

そして、彼女も俺に恋をしていた。

 

でも…彼女は寿命も恋も隠したんだ。

 

両親が話してくれた

 

俺を悲しませたくないと。

出来る限り別れは避けたいと。

 

その優しさすら、もう虚しかった。

 

俺は思ったんだ。

もっと前に話していれば。

彼女に気持ちを伝えていればよかったと。

 

あいにく、俺は永遠亭の医者とも知り合いだ。あの人にならなんとでもしてもらえたはずだと。

 

ずっと、未練と後悔ばかりだった。

 

 

 

……

 

「そんな、つらい過去があるんですね…」

 

「もう何年も前さ。今は一人で暮らしてる。」

 

「今でもまだその人のことを?」

 

「いーや。流石にそれはないさ。その時は嘘だと強く願ったけど。葬式に同席したときから。もう諦めたさ。」

 

「そうなんですね。」

 

「それからは特に誰かを好きになったことなんてない。」

 

「誰かと居たいと思ったことはないんですか?」

 

「まぁ、疲れたときとかはな、誰かに甘えたくはなるが…居ないならそれまでだしな」

 

「強いんですね。陸さんは。」

 

「別に強くなんかないさ。意地を張ってるだけだ。」

 

「私はそんな意地なんてないですから」

 

椛は立ち上がるとお茶を淹れ直した

 

「山菜集めよかったんですか?」

 

「まぁ、ある程度は集まったしな。そろそろ帰ろうかと考えていたところだ」

 

「そうなんですね。私は今日はおやすみなので。ゆっくりしていってもいいですよ。」

 

「まぁ、俺の採ってきた山菜を目当てに訪ねてくる人もいるし。そう遅くまでは居られないかな。」

 

「それなら仕方ないですね。」

 

「まぁ、またあったときにでも来るよ。」

 

「いつでも来てください。」

 

お茶を飲み干し。立ち上がって山菜の籠を背負い扉に手を掛けたとき

 

「あの、陸さん…」

 

小さな声で話しかけてきた

 

「ん?どうした?」

 

「もう少しだけ。あと少しでいいので居てくれませんか?」

 

「別に構わないけど。」

 

籠を降ろして壁にもたれていると、

 

また小さな声で話しかけてきた。

 

 

「あの。陸さん…」

 

「どうした?」

 

「陸さんは私の事をどう思ってますか?」

 

「どう思う。か。」

 

「わ、私は…」

 

「そうだな…お前が俺のことを好きだと言うなら。愛したいと思うなら。俺はその気持ちに応える。」

 

「えっ…?」

 

「今お前が思ったように、椛が俺に対してどういう思いなのかは知っておきたかったのはあるからな。」

 

「そう、だったんですね」

 

「少なからず無関心なわけじゃない、俺だって気にはしてた。ただお前はあの狼が居たからな。」

 

「でも、もう彼は。」

 

「それで、気は晴れたか?」

 

「ええ、まぁスッキリしました、」

 

「正直に言うなら俺も椛の事は好きだと言いたい。それ以上の気持ちだってあるが今でも抑えてる」

 

「そんな、まだ意地張って…」

 

「そりゃ。お前はあの狼が好きだったんだからな。奪っちゃいけないだろ。」

 

「でも、もう彼は諦めましたから。だから、陸さんは抑えなくてもいいんですよ。」

 

「お前は…いいんだな?」

 

「あんなことあったあとですが…でもあなたなら私は大丈夫です。」

 

「ありがとう。」

 

「だって…あなたは私の唯一の親友でしたから。貴方が私の支えでもあったんです。もっとずっと一緒にいてほしいです。」

 

「ああ、俺もそう思うよ。」

 

「あの…なので…お付き合いから!お願いします!」

 

「こちらこそ」

 

 

妖怪の山。

 

天狗の監視で人間は立ち入る事のできない

幻想郷では有名な山

 

椛は今日も哨戒から帰ると。

 

愛おしい旦那が美味しいご飯を用意して出迎える。この二人はずっと幸せそうに過ごしていた

 

 

 




もみじもみもみ


ではまた会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む



どうも悠樹です。

猫。それだけです


それでは後ゆっくり


「よしよし今日も元気だな。」

 

幻想郷の里に住む動物も、捨てられて帰る場所を無くしたりすることはある。

 

「シロは今日は不機嫌そうだな、また喧嘩したのか」

 

里の外に住むある私は、里で捨てられた猫を拾い、自家を住処とさせていた。

 

「あっ。ちょっとミミ、おもちゃ横取りしちゃだめだろ。」

 

どこもかしこも猫だらけ。

 

でもそんな風景が私にとっては幸せなのだ、

 

「おっ、クロ、そんなに甘えてどうした?」

 

気が付けば足元には猫。

座り込めば両膝に猫。

頭の上にも猫。

 

そんな具合である。

それぐらい猫に好かれている。

 

「もうこんな時間か。」

 

手に抱えた猫を下ろすと台所に向かう。

 

戸棚から大きな袋を取り出す

もちろん中は魚のそぼろ、猫用に加工してある、それをいくつもの皿に注ぎ分ける。

 

部屋に戻り、その皿を置くと猫は寄ってたかってそぼろを食べていく。

 

その光景が大好きで幸せそうに眺めていた

 

しかし、あることに気がつく。

 

皿が一つ多いのだ。

先日亡くなった猫の分も用意していた、

 

「おっと、幽霊さんに上げる餌はないんだ、戻しておくか。」

 

そうつぶやいて餌の皿を持つと一匹の猫が足元で顔を擦り付けていた。

 

「お?もう食べ終わったのか?おかわりはないぞ~」

 

しかし、ふと顔をずらすと各皿で皆、猫が餌をほお張っている

 

「あれ?みんないるな」

 

どこからか現れた猫。

仕方ないと皿を置き餌を上げることにした。

 

「お前も食べるか。」

 

声をかけてみるがその猫は食べる気配はなくただ座っていた。

 

「ねだっていた訳ではなさそうだな。」

 

とりあえず餌を袋に戻す。

 

そして部屋に戻ると先程の猫の姿がなかった。

 

「何だったんだろう。野良なのか?」

 

疑問に思って少し探したが見当たらなかった。

 

そうするうちに猫達は餌を食べ終わっていたので皿を片付けることにした。

 

結局その日は先程の猫は見当たらなかった

 

次の日の朝

目が覚めるといつも通り猫達が元気に遊んでいた

 

しかしそこには一人の少女がいた。

 

「君は?」

 

猫のような耳と尻尾。

明らかに人間ではなかった。

 

「私の名前は橙。」

 

橙、八雲の式神ということは知っているが実際に見るのは初めてだ。

 

「君は式神だろう。主人はどうした。」

 

「今は自由行動中なの。」

 

「そうか。」

 

そう言いながらうちの猫達とかなり仲良くしている。

 

「懐かれるの早いな。」

 

「猫って可愛いよね」

 

「あぁ、そうだな。」

 

橙は猫達とじゃれ合っている

 

「ここに来た理由は?」

 

「猫がいたから。」

 

猫がいる。

まぁ確かに猫は沢山いる。

だが今初めてあったこの少女に

この場所を教えた覚えは無い。

 

「どうしてここに来たんだ?」

 

「猫がいたから、」

 

もう一度同じような質問をしたが全く同じ答えが帰ってきた

 

橙が猫と戯れ合っているのを見ると何故か微笑ましく思えてくる。

なぜだろうか…彼女も化け猫の類だからか?

 

考えに呆けていると俺のもとにも猫達が集まってきた。

 

「おっ、お前たち。遊ぶか」

 

足元に集まる猫達とじゃれ合いながら。

また一日過ごしていた。

 

橙は気がつくと居なくなっていた。

しかし。夜中猫達が大人しく寝床に戻る頃、橙は戻ってきた。

 

「どうした?もう皆寝るぞ?」

 

「今日はここで寝るから。」

 

そう言うと橙は部屋の私のベットで横になる

 

「仕方ないな」

 

私もベットで橙の隣で横になり寝た

すると。橙は私の胸の辺りで丸くなるように眠った。

 

朝、橙に体を揺すられ起きた。

 

「ねぇ、怪我してるよ。」

 

橙が抱えている猫の右後ろ足に切り傷のような跡があり、そこからわずかに血が出ていた、

 

喧嘩したのか何かに引っ掛けたか。

とにかくこのままでは。歩く度に痛むだろう。

動物用の傷薬を塗り包帯を使って保護しておく、

 

「これでいいか、」

 

「大人しいんだね」

 

普段里の動物用の治療医院だとこの子たちは拒むように暴れる。

しかし、ここだとなんの気もなく大人しくしている。

 

「多分、私だからだろう。」

 

「なんでわかるの?」

 

「動物医院の人は飼い主ではないからな、主人でもない人に体を触られるんだ、嫌がるだろう、たとえ人でも、それは同じだからな。」

 

「そっか、それだけ信頼されてるんだね」

 

「ここはこの子達の帰る場所でもあるしな。」

 

怪我をした猫は手当が済むとゆっくりと歩きながら他の猫達のところに行って行った。

 

「どうしてここに住んでいるの?」

 

「どうしてか」

 

「里からは遠いよね。」

 

「まぁ、元々里には住んでいたんだけどな。」

 

「わざわざここに?」

 

「捨て猫を拾っていくうちに迷惑がられてね。うちの子達に暴力振るわれたりしたから、耐えれなくて里を出たんだ」

 

「そっか。」

 

「それにここなら、猫達も伸び伸びと過ごせるだろう?まぁ私も世話は大変だが。それも私にとって楽しかったりするし。」

 

「困ってはなさそうだね」

 

「まぁ、里を出たほうが良かったかもしれないからこれはこれでいいかな。」

 

「そうだね。」

 

「お前は主人は良かったのか?」

 

「呼ばれるときは行くけど普段は自由行動なの。」

 

「そうなのか」

 

「ここはいいね、静かで猫達もいて遊び相手にも困らないし。」

 

「まあ、化け猫のお前にとっては環境はいいのかもな」

 

「しばらくここに居てもいいかな。」

 

「別に私は構わないよ」

 

「自由だから、特にやることもないし。」

 

「その分猫達と、遊ぶか?」

 

「そうだね。」

 

今日も家には猫がたくさん遊び回っていた。

橙は家の猫の遊び相手をしながら過ごしていた。

 

私はそんな風景を眺めながら一日を過ごす




のんびりゆったりと書いてこんな感じ

のんびりした内容って案外かきにくいものです


また会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

幻想郷に生きる者達

どうも悠樹@夢子&松K.です。

5月中にできるかなと思ったのですが、
いろいろが重なって考えている場合じゃなく。
結局6月に投稿になってしまいました。

お待ちいただいていた方。
大変申し訳ございません。

まぁ、長い作品ですからごゆっくりどうぞ。


二つの命

 

幻想郷に住む俺は近日挙式を控えていた。

 

相手は一つ上の幼馴染。

静かで大人しく、優しい女性だ。

 

まぁ、歳上と言っても見た目はまだ幼さが抜けておらず、背も低い、

 

今はもう同居で戸建の家に住んでいる。

 

「祐奈おはよう。」

 

「おはよう、悠。」

 

ベットから起き上がる彼女に手を貸す。

 

「大丈夫よ、起き上がるくらい」

 

「朝は力が入らないだろうと思ったんだ」

 

「いいよ、ありがとう。」

 

彼女は以前、事故に遭って、それ以来体の力が衰えて、弱ってしまっている。

 

事故自体は妖怪達の争いで起きたことだが巻き込まれてしまった、永遠亭の医者に頼んで治療してもらっても、完治までには至らなかったそうだ。

 

彼女自身、割り切っているそうだが…

俺はなんともまだその気にはなれない。

 

「ご飯用意するね。」

 

「今日仕事が休みだから祐奈はゆっくりしてくれ。」

 

「そうなんだね、ありがとう」

 

子供の頃。母親を亡くした俺は父親と双子の妹と弟と四人で暮らしていた。

長男だった俺はまだ赤子の双子の世話をしながら、何から何まで家事を全部やっていた。

 

そのおかげか、今も家事程度ならいつもやっている

 

洗濯から炊事、掃除まで淡々と黙々とやっていく。

 

「ねぇ悠。」

 

「ん?、どうした?」

 

「行きたい場所があるの」

 

彼女にしては珍しく自分から用事を申し付けてきた

 

「いいぞ。ただもう少しだけ待ってくれ」

 

朝食で使用した食器を片付けてから

彼女の用事を尋ねる、

 

 

「それで、行きたい場所って?」

 

「毎回ごめんね、太陽の畑なの」

 

「幽香さんか、いいぞ。」

 

彼女は河童特製の車椅子に移り

俺はそれを押して進む。

 

里から出ればそこはもう無法地帯。

昼間はさほど被害はないが、妖怪に襲われない保証はない。

 

一応、護身用の物は常備していた。

 

しかし、里を少し歩いた所に見覚えのある人影が立っていた。

 

「あ、幽香、どうしたの?」

 

「今日来るって話だったかしら、迎えに来たわ」

「そうなのね。わざわざありがとう」

 

「道中襲われると危ないでしょう。」

 

「まぁ、居てくれると助かる」

 

「貴方も下等妖怪程度ならよっぽど大丈夫だとは思うわ」

 

「まぁ、数の問題になってくるな。」

 

「そうね」

 

こちらの歩くペースに合わせる幽香。

優しいというか頼もしいというか。

普段ならもっと堅牢とした態度だが

俺達にだけは優しくしてくれている

 

彼女曰く

【貴方達は花に好かれているから】

らしい

 

太陽の畑に着き、少し歩くと小屋に着いた

メディスンが中でお茶の用意をしてくれていた。

 

彼女と幽香とメディスン。

この三人はこの太陽の畑でよくお茶会をする。

 

俺はそれを見守っているばかりだが

別に抵抗はない。

普段出歩かない彼女の、数少ない交流だからな、好きにさせてあげている。

 

小屋の外のベンチでのんびりとしていると。

小屋からの話し声や楽しそうな笑い声がよく聞こえてくる。

 

何よりも彼女が楽しいと思えるなら

それでいい。

 

昼過ぎ。ベンチで寝てしまった俺は幽香に起こされた。

 

「日向は気持ちよかったかしら?」

 

「ああ、すまないな、」

 

「いいのよ、待たせてしまっているもの、」

 

幽香が振り向いた先の車椅子で彼女は眠ってしまっていた。

 

「彼女も寝てしまったけど、どうする?」

 

どうすると言われても困る

 

「無理に押しても良くないしな…ベットがあるなら借りれるか?」

 

「構わないわ上がって頂戴」

 

小屋に上がって小部屋に入る。

ベットが2つ用意してあった。

客間のつもりらしい。

 

 

「片方借りるぞ」

 

「いいわ。好きにしなさい」

 

彼女をベットに寝かせ、隣の椅子に腰掛けて一息つく、

 

「あなたも大変でしょう?」

 

「何がだ?」

 

「こんな不自由な女性を相手して苦労ばかりじゃないのかしら。」

 

「まぁ、確かに苦労はあるかもしれない。でもそれを理由に彼女から離れるようなことはしないさ、」

 

「そう。彼女、大切にしなさいよ」

 

「どうした?幽香にしては珍しいな。」

 

「彼女のことが心配になっただけよ。」

 

「そうか、ありがとうな。」

 

幽香が誰かを心配する。

珍しいことだ。

だが、それだけ幽香にとっても祐奈は大切なのだろう。

 

夕方、祐奈は目を覚した。

 

「起きたか?」

 

「ごめん…寝ちゃってた」

 

「いいんだよ、」

 

「ゆっくりできたかしら。」

 

「幽香、うん、ありがとう」

 

「今日はもう帰るのでしょう?」

 

「そうだな。そろそろ帰らないと」

 

「里までは一緒に行くわ、」

 

今日はやけに優しい。

ありがたい限りだ。

 

帰り道。

里よりまだ距離があるところで何かを感じた、幽香も同じようで立ち止まった

 

「どうしたの?」

 

どうやら祐奈にはわからないみたいだ。

 

「誰か、いや何か居るな」

 

「妖怪の類だけど、なかなか大きそうね」

 

ゆっくりと進む幽香。

それに後ろからついていく。

 

大きな何か、その正体は異形の妖怪。

 

獣の様な姿の化物と例えるとよくわかる

そんなものがなぜここにいるのか…

 

しかし、近づいてもそれは襲ってくる様子はなかった。

いくら幽香がいるとはいえど。

人には容赦なく襲いかかるはずだが。

その気配はなかった、

そして幽香を恐れているようでもなかった。

 

「これなら気にせず素通りしましょう」

 

「触らぬ神に祟りなし。か」

 

「そうね。」

 

真横を通ってもこちらに見向きもせず

ただ一点を見つめているようだった。

 

人里に着いて家についた。

 

「道中変なのがいたけど特に何もなく帰ってこれたな。」

 

「そうだね。なんだったんだろう…」

 

「気にしなくていいと思うわ、それじゃ私は戻るわ」

 

「幽香、ありがとう。」

 

幽香は手を振ると飛んで行った。

 

夕方頃畑を出たものだからもう夜だ、

 

「晩飯用意するよ。」

 

「ありがとう。」

 

食事を済ませて寝室でゆっくりしていた。

 

彼女もベットで落ち着いた様子だったがどうも眠れないようだ。

まぁ、昼寝をした後だ仕方ない

 

「寝れないか?」

 

「まぁ…ね。」

 

「今日は少し晩くまでなりそうだな」

 

「ごめんね」

 

「いいさ、俺も昼寝してたしな」

 

「そうだったんだ」

 

「あぁ、だから別に構わないぞ」

 

同じベットで特に話をするわけでもなく、ただ横になる。

 

そのうち彼女は眠った、

その近いうちに俺も寝てしまっていた、

 

それから数日後

 

博麗神社に俺と彼女はいる。

 

そう、挙式だ

お互いに着物姿で式に出たんだ。

 

そして何事もなく挙式が終わった。

お祝いに来ていた人間達はすぐに里に戻っていった。

 

「挙式があったからか、今日はお賽銭が多いわ」

 

「良かったじゃないか小遣いが増えて」

 

「小遣いじゃないわよ、これでも立派な生活費なの。」

 

「それなら私達もお賽銭しましょうか。」

 

「そうだな。」

 

普段より多めに入れ、御参りをする。

 

「いつもありがとう。」

 

霊夢は見届けると改めて御参りのお礼を言った。

 

「いえ。お礼を言うのは私達の方ですから。」

 

「至るところで助けてもらってるのもそうだが。今回もここを式場として使わせてもらえたしな。」

 

「また、頼むわね」

 

「はい、こちらこそ」

 

神社の後にして里に向かう途中、

一人の少女に会った。

 

「あっ、悠だ。」

 

「あら、ルーミアちゃん、また会ったね。」

 

「来てたんだねー」

 

「今から帰るところだ、」

 

「そうなのかー。ついて行っていい?」

 

「いいよ。おいで」

 

ルーミアは彼女と手を繋ぎながら歩いている

まるで子供と親のような光景だ。

いつかこんな風景が日常になるのだろうか

 

神社からずっと歩いていたからか。

彼女はかなり疲れた様子だった。

 

「祐奈、大丈夫か?」

 

「うん…ちょっと疲れただけ、大丈夫。」

 

ソファーに座って一息ついたようだ。

その隣にルーミアも座る。

 

「ルーミアは祐奈が好きか。」

 

「んー。うん。」

 

「ふふっ、ありがとう。」

 

少しするとルーミアは眠ってしまった、

先程会った時も少し体を浮かせて移動して居たようだから、恐らく歩くのは慣れていないのかもしれない。

ルーミアも疲れていたのだろう。

 

「ルーミア。寝ている姿は普通の女の子なのね。」

 

「妖怪と言ってもまだ少女なんだな。」

 

「いつか私達にもこんな子がいるといいな。」

 

「そうだな。」

 

少しすると祐奈も眠ってしまった。

 

俺は買い出しに人里の市場まで向かっていた。

 

市場で見慣れた二人と顔を合わせた。

 

「あっ、悠さん。こんにちは。」

 

「お久しぶりです、稗田さん、本居さん」

 

「お買い物ですか?」

 

「まぁ、夕飯の支度をするから。」

 

「祐奈さんは一緒じゃないんですね。」

 

「家でルーミアと寝てる、起こすわけにはいかないし、一人で来たんだ。」

 

「そうなんですね。」

 

「ルーミアって人食い妖怪じゃないんですか?」

 

「あの子なら大丈夫さ。」

 

「悠さんが言うなら大丈夫ですよ。」

 

「そうですね。私達は今から帰るところです」

 

「そうか、それじゃあまたな。本居さん、また本借りに行くよ。」

 

「はい、またお願いします」

 

家に帰ると、祐奈が起きてお茶を淹れていた。

ルーミアが見当たらない。

どこか行ってしまったか。

 

「おかえりなさい。」

 

「ただいま、ルーミアは?」

 

「起きたときにはいなかったわ。」

 

「そうか。一人分余分に買ったのにな。」

 

「私なら居るよ?」

 

ルーミアは後ろから出てきた。

 

「おぉ?どこに居たんだ?」

 

「さっき戻ってきたの」

 

「そうか。」

 

その日は彼女とルーミアと三人で過ごした。

夜は彼女とルーミアはベットで寝ていた。

俺は仕方ないから床に布団を敷いて寝る事にした。

起きて少しするとルーミアはどこか行ってしまった。

 

 

その日、彼女の体調が優れなかったため。

永遠亭に向かうことにした。

迷いの竹林にも慣れたおかげで最近は迷わずに済むことが多い。

 

永遠亭に着き。

永琳に診てもらう、

 

「どうしたのかしら。」

 

「永琳さん、ちょっと調子が良くなくて…」

 

「具体的にどんな感じかしら?」

 

「体が重たくて…食欲もないし。すぐに息が切れちゃうの。」

 

「そう。昨日何かした?」

 

「博麗神社で挙式をしたな。それ以外は特に」

 

「そうね…何かしら…」

 

てゐがあとからやってきて。

唐突に話しかけてきた。

 

「永琳。あれじゃないの?」

 

「あれって?」

 

「だって。二人は夫婦なんでしょ?」

 

「そういうことね。」

 

永琳はすぐに気が付き、

彼女のお腹に手を当ててみる。

 

「…そうね…その可能性は否定できないわ。」

 

「まぁ…それはそうかもしれないな。」

 

「一応、そういうことはしましたし…」

 

「ならそうなんじゃない?」

 

「経過観察、時間を見てまた来て頂戴。」

 

「わかりました」

 

「ただ…」

 

永琳は少し思案顔をしていた。

 

「どうかしたのか?」

 

「そうね、祐奈、少し残って頂戴」

 

俺は屋敷の外で待っていると、

すぐに戻ってきた。

 

「何だった?」

 

「ううん、何でもないよ。」

 

少し気がかりだったが…

大丈夫そうならいい。

 

家に戻り夕飯の支度をする。

その途中も祐奈が気分が悪そうだった

 

「大丈夫か?」

 

「うん…疲れちゃっただけ。」

 

「そうか。無理するなよ?」

 

「うん、休んでいれば大丈夫だと思う」

 

夕食を済ませベットで横になる。

隣に彼女もいるが、ずっと俯いている様子だった。

 

「具合でも悪いのか?」

 

「ううん…大丈夫…」

 

いつも大丈夫と言って誤魔化すことが多い。

体も弱く、そのせいで精神的にも追い詰められていて大丈夫な訳がない、

 

「永琳に何か言われたか?」

 

「…私の事、いろいろと心配されたの。」

 

永琳曰く。

 

妊娠自体は問題はないが、いざお産になると。体へのショックは大きい。

今、体が衰弱状態に近いような彼女がお産を迎えると、どうなるかわからないという。

無事にお産が済んでも彼女の身が通常通り健康体で済むかわからないのだ。

 

「そうか…祐奈は怖いか?」

 

「うん…でもどうしよう、って」

 

「無理はしてほしくない。」

 

「うん…」

 

「お腹に子供がいるのは祐奈だし、産むも諦めるも祐奈しかできない。俺は祐奈が決めたことについて行くから。」

 

「ありがとう。」

 

「だから、心配するな。」

 

「赤ちゃん絶対産むから。」

 

「ああ、例え何があっても子供も祐奈も守ってやるさ。」

 

落ち着いてきたのか彼女は手を握ったまま、そのまま眠った。

 

とはいえ。俺もそのことを知るとまともを保つのも少し大変だ。

 

なにせ。彼女のことだ…

居なくなるなんて考えたことはないが。

万が一にもあり得なくない。

これからが物凄く心配だ、

 

 

日が経つに連れ

やはり彼女のお腹は大きくなっていた。

永琳からも妊娠していると告げられ。

彼女もそういったことは理解していて。今はもう子供を産むということに楽しみがあるようだった。

 

だが、俺はそれでも祐奈が心配だった

もちろん楽しみじゃないわけではない

 

気がつけばもう、近いうちに陣痛がきてもおかしくない時期だった、

 

「永琳さんは明日ぐらいに来るかもと、言ってた、」

 

「明日か、丁度休みだから明日だと助かるな。」

 

「ついに、子供が産まれるのね」

 

「そうだな、待ち遠しいよ。」

 

彼女が楽しそうにしているおかげか、心配してた心が少し和らいだ。

 

今は、きっと大丈夫だと。そう思っている

 

 

永琳が言っていた通りだろう

翌日の朝方、彼女が苦しそうに話しかけてきた。

 

「悠…ごめん。」

 

「祐奈?そうか!」

 

知り合いの天狗に頼んですぐに永琳のもとにいく。

 

着くとすぐ準備を始めて。

俺は部屋の外で待っていた。

 

彼女の辛そうな声は度々聞こえてくる。

それでも我慢して待ち続けていた。

途中、輝夜や優曇華が心配そうに話しかけてきてくれて。何とか不安を凌げていた。

 

それから数分経って。

泣き声が聞こえてきた。

そう、赤ん坊の大きな泣き声。

遂に産まれたのだ。

永琳から呼ばれて部屋に入る。

すぐ目についたのは元気に泣く赤ん坊と、抱きかかえる彼女だった。

 

「産まれたよ…悠」

 

赤ん坊の泣き声が響く中、か細い声だがしっかり聞こえた。

 

嬉しくて声が出なかった。

頷いてわかったことを示すと。

彼女は涙を流して喜んでいた。

 

「元気でよかった。」

 

そうだ、元気に産まれたのだ。

 

赤ん坊が泣きじゃくる中

抱きかかえる手が少しづつ下がっていった。

 

「いけない、このままでは!」

 

唐突に永琳が焦りだす。

どうしたものかと様子を伺う

 

「早く点滴を用意しないと、彼女、持たないわ…!」

 

補助の兎もせっせと用意をする。

 

「祐奈?大丈夫か?」

 

「ううん…ごめん…疲れちゃった…」

 

明らかに意識が薄れているように見える

 

「しっかりするんだ!まだ眠るには早い!」

 

「うん…頑張るよ…」

 

そう言いつつも、ほとんど意識はない。

 

準備が整い点滴を始める。

赤ん坊はまだ泣いているが。

祐奈の手元から俺が代りに抱き。

そのまま祐奈の治療を始めた。

 

準備が終わって丁度眠ってしまったようだ。

 

どうなるのだろうか…

 

「永琳…助かるか?」

 

「申し訳ないけど、何とも言えないわ…」

 

「そうか…」

 

俺はかなり不安だった…

赤ん坊が産まれたと言うのに祐奈がいなくなる…そうなれば赤ん坊はどうなるのだろうか…この子には俺のように親を亡くして生きて欲しくない…

そんな考えが当たり前のように浮かんで

胸の奥がかなり苦しくて痛い。

 

気がつくと赤ん坊は泣き止み眠っていた。

 

沈黙が続く中。

永琳が話しかけてきた。

 

「この様子を見る限り。生きてはいるわ。」

 

その言葉を聞いて俺の情緒は何とか収まってきていた。

 

「ただ…これでもかと体は弱まってる…母乳を出すどころか赤ん坊を抱くことすら、多分ままならないわ…」

 

「そんな…」

 

母親の役目を果たせないようなものだ。

彼女は一体どうなってしまうのか…?

 

「残念だけれど…今は命があるだけ喜ぶ事しかできないわ。」

 

「…そうか…」

 

言葉が見つからなかった。

赤ん坊が産まれて、彼女が生きていて。

それなのに喜ぶことが出来なかった。

 

もう一度笑顔で笑う彼女が…

どうしても見たかったからだ…

 

「このまま居ても仕方ないわ、とりあえず…そうね…どうしましょうか。」

 

永琳も戸惑っている様子だった。

 

「あなた、里で経験のある人は知り合いはいるかしら?」

 

「まぁ、居なくはないが…」

 

「こういったことは私も知識はあまり無くて、本物の母親達に聞いた方が参考になるわ」

 

「そうだな…何とかしてみるよ」

 

天狗に頼んで里まで戻る

 

「今日はありがとう、急にすまなかったな、」

 

「いいんですよ、いつでも呼んでください」

 

そういうと山に戻っていった

 

律儀な天狗だ、いつも世話になっている

いつか礼をしないといけないな

 

家についてから。

眠っている赤ん坊を見て

いろいろと考えた

 

「ひとまず…できることからやっていくか」

 

赤ん坊の服や下着などは全部揃えてある、

 

昔の経験のおかげで、世話程度ならなんともない。それでもできる限りは他人の力も借りたい。

 

「とりあえず何人か声を掛けてみるか」

 

助言からサポート、

いろいろと助かりそうかと思ったが…

 

とにかく全部知っているどころか、

昔やってたこと、今もやろうとしてた事ばかりだ、

 

なんとも…助力と言うのは手伝ってもらうぐらいだろうか。

 

家に戻って一息つくと。

赤ん坊が起きた。

 

目が合って、微笑ましさから笑顔が溢れる。

それを見たからか、赤ん坊も微かに笑顔のような表情をしている。

 

「せっかく、産まれてきてくれたんだ。絶対祐奈と合わせてやるからな。」

 

赤ん坊だ、まだ言葉の理解はできないが。

約束をするように一人で呟く

 

あの日の彼女との約束はまだ覚えていた。

この子も彼女も守る、それを思い出すと

改めて決意が固まった気がした。

 

 

 

 

 

ベビーシッター

 

上司達にも話をして、暫くの間、育児休暇を取った。

 

暫くとは言っても、祐奈はいつ戻るかわからないから、仕事に復帰するのは当分無理だろう、

 

祐奈も数日経ったがまだ目を覚まさない…

 

毎日を育児と家事で追われる

昔に戻ったような感覚だった、

 

ある日の昼間、赤ん坊が寝て、俺も眠気に襲われて意識が薄れていた時、家の扉を叩く音がして目が覚めた

 

「誰だろうか…」

 

扉を開けてみると。

 

「ご機嫌よう。祐奈はいるかしら?」

 

風見幽香、花の妖怪だった。

 

「幽香さん…それが…」

 

これまでのことを話すと、幽香はわかったように頷いた

 

「それなら、暫くは竹林にいるのね。」

 

「ああ…まだ目は覚まさないが。」

 

「そう…貴方も世話が大変でしょう。」

 

「まぁ…大変だが、昔っからこういうのは慣れてて、とりあえずは大丈夫だ。」

 

「そう、それならいいのだけど。」

 

「心配してくれてありがとう。」

 

「いいのよ、貴方達だからこそなのよ。」

 

幽香は椅子から立ち上がると、赤ん坊を眺めていた、

 

「ちゃんと産まれたのね。」

 

「元気な男の子だ」

 

「男の子。そう」

 

幽香は赤ん坊に撫でるように触れると、

少し笑顔になって話しかけてきた。

 

「この子も、花に喜んでもらえそうね」

 

そんな不思議な事を言いながら戻ってきた。

 

「貴方達と同じね。」

 

「そうか。」

 

少しすると幽香は帰って行った。

 

ソファーに座ってゆっくりしていると気がついたら寝てしまっていた。

 

不意に目が覚めて正面の窓を見ると

紅く夕焼けが見えていた

赤ん坊はまだ寝ているようだ。

 

ふと、何かに気づく。

後ろから気配と物音を感じて振り返ると。

一人の少女が掃除をしていた。

 

「こんにちは。起こしちゃってごめんなさい、貴方が悠さんかな?」

 

青い服に青い髪。そして青と赤のオッドアイ

見覚えがない…誰だろうか

 

「どうしてここにいる?」

 

「あっ、えっと私は多々良小傘って言うの」

 

多々良小傘…やっぱりわからない

 

「あー、えっと、幽香さんはわかる?」

 

「風見幽香か?」

 

「そう、幽香さんに頼まれてここに来たの」

 

「幽香さんが?」

 

「そう、私、里でこっそりベビーシッターやってて、幽香さんはそれを知ってて私に声かけたのかな、一応幽香さんとは知り合いでね。」

 

「ベビーシッター?母親の代わりに赤ん坊の世話をするというあれか?」

 

「そう。それだね。」

 

「いや、まぁ、困っているわけじゃないし…別に何かお願いしたわけでもないんだがなぁ…」

 

「う~ん。私邪魔かな?」

 

「いや、邪魔というわけじゃなくてだな」

 

幽香も親切心での行為なのだろう。しかしお願いしたわけでもない、

ベビーシッターも欲しいと思った訳でもないのだが。まぁ、手伝って貰えるならそれはそれで助かるか。

 

「まぁ、手伝ってくれるならお願いするよ。」

 

「うん、任せてね。こう見えてもいろいろできちゃうんだから。」

 

多々良小傘、ベビーシッターか。

幽香の知り合いだから、大丈夫だとは思うが…お願いしてよかったのだろうか。

 

まぁ、家事全般は俺がやるとして、その間の赤ん坊の世話をしてもらえるだけでも、多少は落ち着いて暮らしていける

 

もちろん、多々良に任せっきりも疲れてしまうからたまには代わってやらないといけないか。

 

「そういえばこの子、名前は?」

 

「雪樹(ゆき)だ。」

 

「ゆきちゃんだね。」

 

「男の子だ。」

 

多々良は寝ている赤ん坊を見て呟いた

 

「お母さんに会えるといいね。」

 

「いつか会わせでやりたい…」

 

日も落ちて外は暗くなっていた、

もうこんな時間か、

 

夕飯の支度をする前に赤ん坊のミルクを用意しようと思い台所に向かうと。

 

ミルク入りの哺乳瓶がすでに用意してあった。炊飯もしてあって、煮物と軽い野菜も用意してあった。

 

「これは…?」

 

「疲れてると思って、もう用意したの、」

 

「あぁ、ありがとう。助かる。」

 

ソファーに座り特に意識もせず窓の外を眺めていた。

 

「お茶入れてくるね。」

 

気を遣ってくれたのか、多々良はお茶を出してくれた。

 

「あぁ、ありがとう」

 

温かい緑茶、昨日も飲んだはずなのに、

何故か染みるほど美味しく感じた。

 

「さっきから、どうしたの?」

 

「いや…すまない、疲れてるだけだ。大丈夫だよ、」

 

大丈夫…疲れてるだけ…

彼女が誤魔化すようにいつも言っていた言葉

 

多々良が隣に座り話し掛けてくる。

 

「大丈夫だって心配かけたくない気持ちはわかるよ。でも、疲れてるのにそんなに気を張ってばっかりじゃ、余計体壊しちゃうから」

 

「まぁ…」

 

「休める時はゆっくり休んで、しばらくは大変だと思うから、私も手伝っていくからさ。」

 

「そうか、ありがとう」

 

疲れても、いつもならなんともないはずなのだが、今日だけは気が遠のくような感じがした。そして、こんな風に誰かに支えてもらうのもあまり無いから、嬉しく感じた

 

「ほら、晩御飯食べて元気出そ。」

 

多々良は立ち上がって台所に行くと

食事の用意をした、

 

しかし、用意したのは一人分、つまり俺の分だけだった。

 

「あれ?多々良さんは。いいのか?」

 

「私は妖怪だから、普通の食事は滅多に食べないの。」

 

そこで初めて知った。

多々良小傘。彼女は妖怪だったのか。

 

「妖怪?そうだったのか」

 

「うん。でも安心して、私は人は食べないから、」

 

「そうか。」

 

「私はね、人間を驚かして、びっくりさせる妖怪なの。それで、そのびっくりしたときの人間の心を食べるんだ。」

 

「びっくりした心。なるほどな。」

 

「でもね、最近みんな驚いてくれなくなっちゃったから、つまんなくなってきてね。」

 

「まぁ、慣れてしまったらそれまでだしな。」

 

「うん、だからこうやってベビーシッターとか、いろいろやってるの。」

 

「妖怪も、大変なんだな、」

 

「うーん。こういうことするのは私だけだから、そういうわけでもないかな。」

 

「そうなのか、」

 

「うん、まぁ、私ぐらいかなぁ。」

 

「まぁ、助かるよ。」

 

夕飯を食べ終えて、片付けたころ。丁度赤ん坊が起きた。寝起きだが上機嫌で、すぐに泣く様子はなかった。

 

「あっ、起きたんだね。」

 

多々良は赤ん坊用の哺乳瓶を手元に持ってくると、赤ん坊は泣き始めた。

 

「お腹空いてるもんね。」

 

赤ん坊はすぐミルクを飲み始め、

落ち着いた様子だった。

 

「わかるんだな。」

 

「まぁね。」

 

多々良の戸惑いのない行動を見て

本当にベビーシッターなんだなと確信が持てた。彼女ならきっと大丈夫だろう。

 

「いいのか?ベビーシッターを任せても。」

 

「幽香さんのお願いだし。それに母親と一緒に居られない赤ちゃんを見過ごすわけには行かないの。」

 

「そうか、本当に助かるよ」

 

母親の様な姿の多々良を見て。

祐奈のことを思い出し。

また少し頑張ろうと思えてきた。

 

何日か経って、ある日の夕方

 

珍しく天狗がうちに来た。

 

「どうした?」

 

「永遠亭から手紙です。」

 

「手紙?ありがとう受け取るよ。」

 

「一応仕事中なんでこれで」

 

天狗は手紙を渡すとすぐ戻っていった

 

手紙。永琳からだった。

 

「なんて書いてあるの?」

 

多々良が覗くように見にくる。

 

手紙の内容は…

 

今朝、祐奈の意識が戻ったわ。

記憶もしっかりしてる、

それでも衰弱状態なのは変わらないから

しばらくはまだこっちで休ませてるわ。

落ち着いたときにいらっしゃい。

 

「祐奈さん起きたんだね。」

 

「よかった…ほんとに良かった…」

 

「いつ行くの?」

 

「天狗が仕事中だって言ってたからな。今日はやめておくか。」

 

「そっか。早く会いに行けるといいね。」

 

「明日、天狗にお願いしてみるか。」

 

次の日の昼間。

天狗を呼んで永遠亭までお願いした。

 

途中、天狗が珍しく話しかけてきた。

 

「昨日の手紙、なんだったんですか?」

 

「祐奈が起きたって知らせだったよ、」

 

「祐奈さん。起きられたんですね。」

 

「あぁ、よかったよ、」

 

「ええ、ところで隣の方は?」

 

「彼女は多々良小傘、妖怪でベビーシッターなんだ。」

 

「相変わらず、あなたの周りは妖怪やそういった類が集まりますね。」

 

「そう思うとそうかもな。」

 

「多々良さん。よろしくお願い致します。」

 

「えっ?うん、こちらこそよろしくお願いします、」

 

そんな会話をしていると

永遠亭についた。

 

「待ってたわ、昨日すぐ来ると思ったのだけど、」

 

「手紙もらった時間も遅かったしな。落ち着いたときでいいってのは永琳からのことだろ?」

 

「まぁ、そうね。」

 

永琳は案内をするように歩き始めた。

 

部屋につくと祐奈は座っていた。

 

「祐奈、」

 

「あっ、悠。来てくれたんだね。」

 

「まぁな、起きたって聞いて来たよ。」

 

「ありがとう、」

 

「あと、彼女なんだが」

 

「隣の方、だね。」

 

「多々良小傘って言います。えっと幽香さんに頼まれてベビーシッターやってます。」

 

「多々良さん。ありがとうございます。ゆきは大丈夫だった?」

 

「はい、元気にすくすくと」

 

「よかった、」

 

祐奈は安心するように肩を落とした。

祐奈は多々良からゆきを預かると抱き上げていた、

 

「ゆき。また会えたね。」

 

祐奈が笑顔になるとゆきも笑顔の様な表情になり。とても微笑ましく見えた。

 

「やっぱり、本物の母親にはなれないなぁ…」

 

多々良は呟いた。

 

「産みの親ですからね。でも人間の育児ができる妖怪なんて、そう居ませんよ。」

 

天狗は慰めるように多々良に話した。

 

「そう、なのかな。」

 

しばらくは永遠亭で過ごした昼食は永遠亭で済ませた。

 

夕方。

 

「日が落ちてきたな。」

 

「家のこともあるけど、ここにずっとって言うのは、だめですよね。」

 

「そうね。私も追加で二人、正確には三人だけど、養うわけにはいかないわ」

 

「祐奈はまだ体調が戻ってないんだ。もうしばらくはここにいるだろ?」

 

「うん…ごめんね。心配かけて。」

 

「いいんだ。また元気になって帰ってくるのを待ってるよ。」

 

俺等が部屋を出て襖が閉まる頃祐奈は小さく手を振っているのが見えた。

 

帰りも天狗に頼んだ。

 

「祐奈さん元気そうで良かったね。」

 

「あぁ、まぁ…」

 

「どうしたの?」

 

「多々良さん。祐奈さんはね。」

 

「俺から言うよ。」

 

そう言うと天狗は控えるように話すのをやめた

 

帰り道、祐奈の事を多々良に話した、

事故があったこと体が衰弱状態なこと、お産時に意識を失ったこと。

 

「そうなんですね…」

 

「だから…今の祐奈の状態は必ずしも元気とは、言いたくない。」

 

「でも、やっと起きたんでしょ?」

 

「まぁ、な。」

 

「いつかきっと帰ってくるんだったら待とう?」

 

「もちろん、そのつもりだ」

 

「私は、祐奈さんが帰ってくるまで、ちゃんとベビーシッターするからね。」

 

「ありがとう。」

 

家についた頃にはもう夜だった

 

「晩御飯用意しないと。」

 

「飯は作るよ。ゆきをとりあえず寝かさないと。」

 

「大丈夫もう寝たよ」

 

「そうか。今日は早いな。」

 

「それなら二人で早く済ませるか。」

 

俺と多々良で手短に作った。

その日は天狗も一緒に夕飯を済ませた。

 

多々良が来てから。

いろいろと落ち着いた気がする

 

ただやはりそれでも世話というのは大変で、俺と多々良で代わりながら世話をしている。ベビーシッターは頼もしいが。

まだまだ祐奈は帰ってこない。

 

度々永遠亭には顔をだして。

祐奈に会いに行っている、

祐奈も雪樹に会いたいだろう。

 

そんな日が続いた。

 

 

誓う者。

 

「そういえば。名前聞いてないや。」

 

多々良が天狗に尋ねる

 

「私の名前、ですか。」

 

「うん。」

 

「私に名前なんて。」

 

「楓、だったかな。」

 

「それは…えっと。」

 

「楓、楓さんだね。」

 

「楓…か…懐かしい名前ですね…」

 

「あぁ、かなり前のことだな。」

 

そう。昔のことだ

 

俺と祐奈が同居を初めて数カ月ほどの頃、祐奈が妖怪達の争いに巻き込まれる頃の出来事だ…

 

 

 

 

いつものように。俺と祐奈が太陽の畑に向かっていたとき。

遠くで誰かが倒れているのを見つけた、

 

黒い翼に白い服。

烏天狗だ。

 

天狗といえば山の妖怪。

それが何故か何もない平原で倒れている。

 

近くづいても起き上がる様子はない。

かと言って、そのまま放っておく訳にもいかない。

 

「大丈夫か。」

 

声をかけると、微かに唸り声が聞こえた。

祐奈が体を揺すると意識が戻ったのか座り込んだ

 

「うぅ…背中が…」

 

「何があったんですか?」

 

「あっ!…あなた達は?」

 

「たまたま通りかかっただけだ。」

 

「そうですか…よかった。」

 

安心したように肩を落とす

 

「どうかしたのか?」

 

「いきなり背中の翼の付け根が痛くなって…飛べなくなって落ちてしまって。」

 

「それで、落下の衝撃で気を失ってたわけか、」

 

「はい…うーん…まだ痛い…」

 

天狗の背中に目を向けると翼の付け根あたりに傷があった、切り傷のような痕。

一体何があったのが。

 

その時、後ろの方から足音が聞こえた。

振り向いて見るとそこには…

 

「チッ…他のやつがきちまったか…」

 

猟銃を持った男がいる。

 

「一体何者だ。」

 

「話す必要なんかねぇ。おい、そこの天狗に用事があるんだ。どいてくれねぇか。」

 

「彼女は今、怪我をしてるの。だから待ってあげて。」

 

祐奈が止めるように促すが…

 

「うるせぇなぁ。黙らすぞ。」

 

男は猟銃を祐奈にむけて構えた

 

何となく察していたが。

やはりこうなるのは望みたくなかった。

 

祐奈を守るように正面に立ち、護身用の木刀を構える。

 

「何だてめぇやるってのか。」

 

その気はないが…

こうなってしまっては後に引けない

 

「構えられたらこちらも守りの体制はとるさ。」

 

男は猟銃を構え直す。

 

「鉄砲相手に木刀なんていい度胸じゃねぇか、後悔すんじゃねぇぞ!」

 

猟銃の引き金がカチンと音を鳴らす。

もちろんその瞬間先端から弾丸が放たれた。

 

猟銃から放たれた弾丸をうまく木刀に当てる、そして、その弾丸は的外れのような場所に飛んでいった。

 

「木刀で…弾きやがった…」

 

弾丸弾き、幽香さんにさんざん教えこまれた。使い処なんてないと思っていたが…

 

まさかここで生かされるとは思わなかったよ

 

「頼むから手荒な真似はよしてくれ。お互いに利益はないだろ。」

 

「そういうなら、その天狗をこちらによこせ」

 

「それは断る、怪我をしてるし、それに引き渡したあとが嫌な予感しかしない。」

 

「てめぇ…」

 

男はまた猟銃を構え発砲した。

 

当然弾丸を弾き飛ばす。

 

「畜生…何者だこいつ…」

 

「あら、危ないわね。」

 

後ろから聞き覚えのある声…

振り返ると幽香さんがいた。

 

「あっ、幽香。」

 

「貴方ね、飛ばすなら人の居ないところに飛ばしなさい。それじゃ自分しか守れないわよ?」

 

「まだ、これが手一杯ですって、」

 

「まぁ、それもそうでしょうね。精進なさい。」

 

「努力はするよ。」

 

「なんだ、この女…また増えやがったよ」

 

「あなたね、彼等に手を出すなら容赦はしないわよ?」

 

「俺はお前らの後ろの天狗に用事があるだけだ。」

 

「そう。でも彼等は断ってるのでしょ?それなのにそんな物騒なもの使って痛めつけようとして。許せないわね。」

 

「な、なんだてめぇ。」

 

男はまた発砲した。

 

幽香は傘を広げそれを防ぐ。

 

「な!なんだよそれ!」

 

傘は弾丸を受け止めたが傷一つ出来ていない。その事に驚きまた発砲したが、それも防がれる。

 

「畜生…ホントなんなんだよ!」

 

「さて。どうされたいかしら?」

 

「チッ…」

 

幽香は瞬く間に男に近寄り、腹を一発殴った。

 

男はその場に屈み込み、酷く咳込んだ。

 

「次はどうするかしら?」

 

「まて…わかった…もういい。」

 

それを聞いて、幽香は下がる

 

「天狗はもういい、このままこんなこと続けてたら命がいくつあっても…足りやしない」

 

そういうと男はどこかへいった。

 

「大丈夫だったかしら。」

 

「ああ、まぁな、」

 

「あの、皆さんありがとうございます。」

 

「怪我してるなら、早く治療しないと傷口酷くなるわ。歩けるかしら?」

 

「はい、歩くのは大丈夫です。」

 

「そう。それじゃ。ついてきなさい。」

 

幽香さんについていくと、いつも通り太陽の畑の小屋にたどり着いた。

 

「元々ここに来る予定だったから、丁度いいかな。」

 

祐奈と幽香がお茶の用意を始めている間に、俺が天狗の怪我の治療をしていた。

今思えばなぜ俺が治療をしているのか…

 

「…えっと…あの…」

 

「すまん…我慢してくれ」

 

背中の傷口の治療をしているから、上半身の服を脱いでいるわけだ

傷口の周りだけに塗り薬では足りないから当然傷口用のテープとそれが剥がれないように包帯も使う。包帯を、巻くときが一番際どい…

 

殆ど前は見えないとはいえ。彼女も女性。

当然恥ずかしいだろう…

 

「うう…」

 

声から察するにかなり涙ぐんでいる、

悪気はないのに…なんだろうか

この罪悪感は…

 

「もう、悠。泣かせちゃダメだよ」

 

「待ってくれ!これは俺が悪いのか!?」

 

「そうです…この人は…悪く…ないんです…」

 

半泣き状態で言われてもなんのフォローにもなってない…

 

「よし、これでいいだろ…頼むから許してくれ…」

 

天狗は服を着て、深々と礼をしてくる

 

「すん…ありがとう…ございました…」

 

既に目から涙が見える…

泣いている。明らかに泣いている。

 

「もう、泣かせちゃだめだって言ったのに」

 

「なんで俺のせいなんだ…」

 

「ふふっ、なかなか面白いわね。」

 

幽香と祐奈は俺をからかって楽しんでいた。

 

天狗が落ち着いた頃にお茶会を始めた。女性同士のお茶会だからな

俺はいつもみたいに外のベンチで待っていた

 

陽が当たって暖かいものだからつい眠たくなってしまう。うとうとしていたとき隣から声が聞こえてきた。

 

「あの。隣良かったですか?」

 

先程の天狗だった。

 

「あぁ。いいけど、お茶はいいのか?」

 

「えっと…また戻りますけど、ちょっと…謝りたくて…」

 

多分さっきのことだろう、

 

「まぁ…あんな状態じゃ仕方ないからな。謝る必要はないと思うぞ」

 

「助けてもらった恩があるのにあんな風になってしまって申し訳なくて…」

 

「いや、普通に誰だってなると思うぞ…恥ずかしいんだもんな…」

 

「ほんとに…ごめんなさい…」

 

「そんな謝らんでくれ…」

 

ここまで謝られると逆に困った。

 

なんとかして話題を変えないとな。

 

「そういえば、名前はなんていうんだ?」

 

「えっ…名前…ですか?」

 

「そう名前だ。あるんだろ?」

 

「その…私、名前という名前がなくて…」

 

「それなら、いつもなんて呼ばれてるんだ?」

 

「郵便天狗とか、郵便屋とか、」

 

「郵便?」

 

「そうです、これでも運び屋やってまして、手紙とか軽い荷物の運び屋なんです。」

 

「それで郵便なのか。」

 

「はい…」

 

名前がないなんて…なんて可哀想に…

 

「流石に郵便屋なんて呼べないしな…」

 

「私は気にしてないです」

 

「でもそれじゃ俺はなんか嫌だな」

 

「そう言われましても…」

 

名前…名前か。

 

「それじゃあ、わかった。」

 

「なにがですか」

 

「俺は君のことを楓って呼ぶことにするよ。」

 

「楓…ですか。」

 

「嫌か?嫌なら他にするが」

 

「嫌じゃないです。名前ですね。」

 

「あぁ、名前だ。」

 

「また、一つ恩が出来てしまいました…」

 

「いやいいよ、気にするな」

 

「あの。私普段は人里にいるので、もし良かったら来てください。」

 

「里にいるのか?」

 

「そうです。とは言っても手紙とか包とかは自分で運ぶ人もいるのでたまにしか仕事してないですけど。」

 

「そうなんだな、」

 

「それでは、私は戻りますね。」

 

「ああ、」

 

天狗は小屋に入って、またお茶会を楽しんでいた。

 

俺もすぐ眠たくなって寝ていた。

 

夕方頃声をかけられて起きた。

 

「ごめんね、お待たせ。」

 

「ああ、終わったか。」

 

「うん。」

 

「それじゃ。帰ろうか。」

 

「里まで一緒に行きます。」

 

幽香に挨拶をして太陽の畑を出る、

何事もなく里に着いたが…

どうも騒がしく様子がおかしい。

 

少し歩くといきなり黒い何かが楓を目掛けて飛んできた。

 

「危ない!…ひゃっ!」

 

楓を庇って祐奈がそれを受けてしまった、

 

「祐奈さん!大丈夫ですか!」

 

ぶつかった衝撃などは無く、すぐしゃがみこんでぐったりしているようだった、

 

「祐奈?大丈夫か?」

 

「うん…痛くはなかった…けど力が入らないの…」

 

「立てるか?」

 

「ごめん…足が動かない…」

 

俺は祐奈をおぶって家に向かう。

 

楓に前を歩いてもらって。

俺は後ろを気をつけながら進む。

 

「あれは?」

 

楓が何か見つけたようだ。

 

それは二体の妖怪。

掴み合ってはお互いを殴り合い。

たまに弾幕のようなものを飛ばす。

 

片方のそれはまさに先程飛んできて祐奈が受けた黒い何かだった。

 

「あいつらが…なぜ里で暴れてるんだ?」

 

「わかりませんが…早く屋内に行かないと私達まで受けてしまいます。」

 

「そうだな。」

 

急いで家に向かう、

 

そう遠くないうちに家に着いてなんとかなった。

 

「一体…何だったんでしょうか」

 

「わからないが…今は祐奈のことが心配だ。」

 

ベットに寝かせて様子を伺う。

 

「だめ…力が入らない…」

 

「無理をするな。とりあえず安静にするんだ。」

 

「うん…」

 

気がつくと外は静かになっていた、

どちらが片方が倒れたか、両方が共倒れか。

 

どちらでもいいが、俺は永遠亭に向かった。

 

「あら、珍しいじゃない一人で来るなんて」

 

「輝夜さん、永琳はどこに居る?」

 

「永琳ならさっき里に向かったわよ?」

 

「そうか…行き違えたな…ありがとう」

 

「そんなに急いでどうしたのよ」

 

「文字通り緊急事態ってことだな。」

 

そういうと俺は走って、

少し時間がかかったが里に戻ってきた

 

永琳には運良くすぐ会えた

 

「あら、そんなに息を荒げてどうしたのかしら?」

 

「あんたを、探してた…はぁはぁ…祐奈が…祐奈が…」

 

「落ち着きなさい、すぐ行くわ」

 

永琳が家につくとすぐ祐奈のもとに行く。

 

「こんにちは、どうしたのかしら?」

 

「あの…体に力が入らなくて…」

 

「何かあった?体をぶつけたとか頭をぶつけたとか。」

 

「先程、妖怪が里で争ってまして…」

 

「知ってるわそれを聞いて怪我人がいないか確かめに来たのもの。」

 

「それで、妖怪の弾幕のような物が当たってそれからこの様子で。」

 

「つまり巻き込まれたのね。」

 

「はい…祐奈さんは私を庇って…」

 

「人間なんだから、天狗を庇うなんて無茶ね、」

 

「なんとお詫びすればいいか…」

 

「あなたが詫びをいれたって治るわけじゃないわ。」

 

「それはわかってます。何かできる事は…」

 

「まぁ、今はまだ大人しくすることね、見た感じあなたも翼を怪我しているようだから。」

 

「そうですか…まぁ…そうですよね…」

 

永琳は思案顔を続けていたが

次第にそれが晴れて話し始めた。

 

「そうね。どういう症状かわからないし、私特性の万能薬を、もってきたほうが早いかしら。」

 

「そうしてもらえると助かる。」

 

「待ってなさいすぐ戻るわ。」

 

永琳は家を出て、永遠亭まで飛んでいった。

 

その少しあとに霊夢が家に来た。

 

「あんた達は大丈夫そうね。」

 

「大丈夫じゃないな。」

 

「どうかしたの?」

 

「祐奈が巻き込まれて、弾幕みたいなものを受けてから、体が思うように動かないみたいなんだ」

 

「あいつら被害者だしてたのね…」

 

「あの妖怪達はどうなったんですか?」

 

「迷惑行為はお断りなの、退治したわ。まぁ里で暴れるようなやつは当然よ、」

 

「そうなるんだな。」

 

「被害者も出ちゃってるわけだしね、」

 

「まぁ。永琳がさっき出ていったの見たからなんとかしてもらえるとは思うわ。」

 

「あぁ、」

 

「気をつけなさい。それじゃ私は行くわ」

 

そう言うと家から出ていった。

 

「祐奈…」

 

気がつくと祐奈は眠っていた。

 

「祐奈さん…私が気づかなかったばかりに…」

 

「仕方ないさ。急なことだったんだから」

 

少しすると永琳が戻ってきた、

 

「大丈夫かしら、寝てるのね、」

 

永琳が持ってきた飲み薬は

以前もお世話になった特殊な薬で。

飲んで数分経てば良くなるものだ。

 

「起きてから飲ませるよ」

 

「わかったわ。それじゃ、朗報待ってるわね」

 

永琳が帰ってからしばらくしたあと、祐奈は起きた。

 

「おはよう…」

 

「具合はどうだ?」

 

「うーん…体が重たいよ…」

 

「さっき永琳さんが持ってきた薬あるからこれ飲んでみるんだ。」

 

祐奈は薬を飲みまた横になる。

 

「どうだ…?」

 

「なんか、体がすっと軽くなった感じはする。」

 

「そうか、よかった。」

 

「でも、手足の力が入りにくいんだ…」

 

「なっ…まだだめなのか?」

 

「立ったり歩いたりはできるようになると思うからもう少しゆっくりさせて、」

 

「ああ、それはいいんだが…」

 

祐奈は少しするとまた眠ってしまった。

 

「私を庇ったから…私のせいです…」

 

「いいんだ。楓は悪くない。」

 

「…でも…」

 

「心配する気持ちはわかるが、俺等にはもうやれることはないんだ…」

 

「そう…ですね…」

 

しばらく二人は黙り込んでいた。

 

「あの、悠さん」

 

「なんだ?」

 

「この笛渡しますね、」

 

「これは」

 

「呼び笛、私にしかわからない音色が鳴るんです。何かあったらこれで私を呼んでください。」

 

「どうしてこれを?」

 

「恩返し…と言うには程遠いかもしれないですけど、何か手伝ってほしいことがあるときは、呼んでください。」

 

「そうか、ありがとう。」

 

 

「それから、度々楓には世話になっているんだ。」

 

「そうなんだね。」

 

「まぁ…恩返しでもありますから。」

 

「いつもありがとうな。」

 

「こうやって、ここに居られるのも、祐奈さんが助けてくれたおかげです、なので今度は私がどんなことでもいいから助けるんです。」

 

「優しいんですね。」

 

「私。山から追い出されてから、ずっと里に住んでいるので、人との関わりも大切に感じてるんです。」

 

「里を追い出された?」

 

「元は山で活動してたんですけど。いざこざに巻き込まれて、追い出されてしまったんです、」

 

「巻き込まれたのか…」

 

「私、全く関係なかったんですけどね…」

 

「そうなのか…よかったのか?」

 

「別に気にしてないですよ。元々嫌われがちでしたし、あんまり居心地よくなかったので、」

 

「そ、そうか。」

 

「それに、里の人たちのほうが優しいですし。今の仕事もありますからね。」

 

「そうだな。」

 

「だから、これでいいんです。」

 

「そっか。」

 

「では、私は戻りますので、またお願いしますね。」

 

「ありがとうな。」

 

「はい、また今度。」

 

 

 

幻想郷に生きる者。

 

俺は多々良と楓とそして雪樹も一緒に永遠亭に居た。

 

祐奈が目を覚ましてから何週か経つだろう

 

定期的に会いに行っており、今がその時だ。

 

「祐奈、来たよ。」

 

「ありがとう。また来てくれたんだね。」

 

「調子はどうだ?」

 

「うん。なんか前よりずっと良くなってる気がするんだ。」

 

「そうなのか?」

 

「うん。さっき、輝夜と外を散歩してたよ」

 

「そうか…本当に戻ってるんだな」

 

「もう。帰れるよ。」

 

「ああ、帰ろう。」

 

永琳が荷物を持ってきた。

 

「ほら、これ家から持ってきた祐奈の荷物よ。ちゃんとこれも持って帰ってよ?」

 

「もちろんだよ。立つ鳥跡を濁さずって言うからね。」

 

「それじゃ、また何かあれば世話になるよ」

 

「次に会うときはまた元気な調子で来なさいよ」

 

「そうですね。それでは、」

 

永遠亭を後にして竹林を進んでいると妹紅が話しかけてきた、

 

「おい、治ったのか」

 

「うん。もう歩けるし元気だよ」

 

「そうか。良かったな」

 

妹紅が珍しく心配してくれているようだ。

 

「ありがとうな」

 

「もう見舞いはいらないな。」

 

「そう…だね今までありがとう」

 

「たまに家に来るといい」

 

「そうしたいとこだが、人里は好きじゃないからな。」

 

「そうか。」

 

「それじゃ、またな。」

 

妹紅は竹林の奥に行ってしまった、

 

「妹紅もよく来てたんだな、」

 

「うん、ずっと一人で寝てるだけじゃつまらないだろって、」

 

「そうだったんだな。」

 

「でもあんまり話してくれないんだよ。安心感はあったけど。」

 

「そうか。」

 

竹林を抜けて平原に出る。

 

遠く上空から何か飛んでいる。

次第に近づくとよくわかる。

 

妖精達だ。

 

三月精と大妖精とチルノ、

そこにミスティアとリグルもいる。

 

しかし

こちらに来る様子はないようだ。

 

「相変わらず楽しそうだね。」

 

「あいつらはいつも、あんな調子だからな、」

 

 

「あら、もういいのかしら?」

 

ふと聞き覚えのある声が聞こえた。

 

「あっ、幽香。うん、もう大丈夫だよ。」

 

「丁度、見舞いに行くところだったのだけど、その必要はなさそうね。」

 

「わざわざ済まないな。」

 

「友人が病に伏せていたら、誰だって心配になるでしょ?当然のことだと思うわ。」

 

「ありがとう。また今度畑まで行くね」

 

「ええ、いつでもいらっしゃい、」

 

人里に着くといろんな人が声をかけてくる。

 

そう祐奈を心配に思ってくれていたのだ、

稗田さんに本居さん、

彼女の知り合いから市場の人まで

 

本当に彼女は帰ってきた。

そう思うと急に肩の荷が降りた感じがした

 

家について。

小傘が雪樹を降ろして寝かせる

 

椅子で一息つく。

 

「戻ってこれたんだね。」

 

「ああ、そうだな。」

 

「良かったですね。あの頃のことが嘘のような感じがします。」

 

「私は。もういいかな、?」

 

「えっ?」

 

「だって祐奈さん帰ってきたし。」

 

「あっ、そっかベビーシッター。だったもんね。」

 

「うん、でも母親が戻ってきたなら私はいてもあんまり意味ないし。」

 

「まぁ、戻ってきたって言っても、祐奈はまだ本調子じゃないんだ。まだしばらく居てくれると助かるんだが。」

 

「うーん。そういうことなら。」

 

「ごめんね、ありがとう。」

 

「わたしもお手伝いできることあればいつでも呼んでください」

 

「うん、楓さんもありがとうね、」

 

楓が帰ってから、雪を多々良に頼み、博麗神社まで挨拶に行くことにした。

 

道中、また立ちつくす異形を見かけた、

 

「ねぇ…あれって。」

 

「この前見た奴だなずっと空を見てどうしてるんだろうか。」

 

 

「この化物はね…元は人間だったのよ」

 

声がする方を向くと霊夢がいた。

 

「霊夢さん。いらしたんですね」

 

「こいつ、人間だったのか、」

 

「…あんたらと一緒にいた小傘の知り合い。いえ愛人だったのよ。」

 

「えっ…」

 

「なっ…!」

 

俺等は驚きを隠せなかった。

多々良の愛人だったと聞いたら何も言えなかった

 

「彼も妖怪の争いに巻き込まれてしまったのよ。でも彼はもっと酷かった。」

 

「何が…」

 

霊夢は淡々と話し続けた。

 

 

元は人間だったのよ、人里で小傘と一夜を過ごし彼は小傘に誓った。

その後離れの森で幸せに暮らしてたんだけど

 

貴方達も覚えていると思うけど大きな地震があったでしょ?実際は地底の仕業だったのよ、それで人里での建物の倒壊に巻き込まれたのよ、

 

それで故が分からなくなってから

小傘は森の中でひたすらに待ってたのよ。

当の彼はというと、記憶を亡くして一人の独身男性として暮らしてたみたいなの。

記憶喪失なんて私も知らなかったから詳しくはわからないけど

 

そのうち小傘を思い出したのか森でまた一緒に暮らしてたみたいよ。

 

それから数カ月経ったある日

小傘と彼が人里に来たとき

不運にも妖怪が怒りに暴走し始めた

それ自体は里を追い出された魔法使いの仕業なのだけど、暴走した妖怪たちはひどく暴れたわ

魔法を使うもの弾幕を撒き散らすもの暴力を振るうもの

沢山いたわ、私も押さえ込むのには手間がかかる異変だと覚えてるわ。

 

 

それで…それに巻き込まれて魔法を幾つも受けてしまったの

自分に向かったものも小傘を庇うようにして飛んできたものすべてね

 

それから直ぐ見るに耐えないような姿になって、自分の姿に恐怖を覚えそれが暴走した妖怪達への怒りに変わって彼自体も暴走してしまった。

 

私は彼だけは殺さず札で押さえ込んだ。

彼の怒りが収まり札を外すと

小傘の前で座り込む姿勢を取って

二人とも涙を流してたわ…

 

お互いに何を思ったのか知らないけど

殺してくれと願う彼とそれを拒む小傘

二人から散々言われたわ。

結果的に他の力を借りて彼の意識だけを奪うことになった。

それで…ずっと空を眺めるようになってしまったのよ

 

 

「そんなことが…」

 

「彼女。小傘はそれからしばらくは塞ぎ込んでしまったわ。」

 

「そうなるのもわからなくはないな」

 

「驚かす妖怪のくせに人にばかり優しくして、ベビーシッターをやっているのも彼との関係があるみたいなのよ。」

 

「そうか…」

 

「彼女、相当辛いでしょうね、」

 

「…なんとかならないのか…?」

 

「なんとかなってたら今頃こんな話ししてないわ」

 

「だろうな…」

 

「多々良さん…可哀想だね…」

 

 

「その話、本当か?」

 

横から話しかけてきたのは化け狸、二ッ岩マミゾウだった、

 

「またあんた…今度は何かする気?」

 

「うーん。面倒そうじゃなぁ」

 

「その気はすでにあるみたいね、」

 

マミゾウはそれだけ言うとどこかに行ってしまった

 

「全くね…」

 

「霊夢さん。」

 

「あの、お世話になりました、」

 

「な、何よ唐突に?」

 

「あの、いつもお世話になってますし、私もやっともとに戻ったので、」

 

「いいのよ、」

 

「これからもよろしく頼む」

 

「もちろんよ、あとあんた達、」

 

「なんですか?」

 

「小傘、喜んでたわ。」

 

「小傘が?」

 

「ええ、まるで家族みたいだって、笑顔で話しに来てたことがあるのよ。」

 

「そうだったんですね、」

 

「小傘があんな笑顔になるのは久しぶりに見たからね、本当に嬉しかったんだと思うわ、だから、彼女を大切にしなさいよ。」

 

「あぁ、わかった。」

 

「それじゃ私は散歩の途中だから。」

 

「はい、ありがとうございました」

 

「また何かあったら呼んで頂戴。」

 

霊夢と別れてから。里に戻った。

 

「二人ともおかえり。」

 

「ただいま」

 

「おかえりなさい。」

 

家に帰ると何故か楓もいた、

 

「あれ。楓?どうしたんだ?」

 

「悠さん宛の手紙があったので。届けに来たんです。」

 

「なるほどな」

 

「誰からでした?」

 

「それが差出人の名前がないんです。」

 

「そうなんですね、誰だろう?」

 

「とりあえずこれでひと仕事終えましたしもう少しゆっくりさせてもらいますね」

 

「ああ、構わないよ」

 

楓からもらった封筒を眺めていると

微かに葉っぱの匂いがした。

 

「これって…」

 

「どうかしたの」

 

「いや、何でもない。」

 

「そう。」

 

「楓、多々良、祐奈を頼むな、ちょっと出てくる。」

 

「え?うん。」

 

「お、お気をつけて。」

 

「手紙、の事かな。行ってらっしゃい。」

 

家を出て封筒の口を開ける

中身は空っぽだが、これが何を意味しているのかはなんとなくわかった気がした。

 

里を出て草原に出る。

 

しばらく歩くと、先の異形がいた。

その手前で止まると。

 

後ろから何かが飛んできた気がして、

護身用の木刀を構えながら振り向いた。

 

「おや、そんな物騒な。」

 

「なんだ、さっきの狸か。」

 

そこにいたのは、二ッ岩マミゾウ。

そしてその連れの妖怪達だ

 

「しかしお前だけ来ても困るのじゃが」

 

「そういうことじゃないってのは知ってる。ただ、お前がこいつに何かしてそれに巻き込まれるかもしれないと思って俺だけ来たんだ。」

 

「ふん。下手のことはしやせんのにな。」

 

「で、この化物をどうするんだ。」

 

「元に戻す。それ以外あると思うか?」

 

「だろうと思った。」

 

「さすれば、あの傘も喜ぶじゃろう?」

 

「まぁ、そうだろうな、なぜそれをする気になった?」

 

「ただの暇つぶし、と言えば満足するかの?」

 

「あんたが謎深き妖怪だってのはなんとなくわかったよ。」

 

「んー。聞き分けのない人間じゃな。」

 

「本当はなんの目的だ?」

 

「先の通り暇つぶしでもある。ただ、本意は彼が戻ってこなければ困るのじゃ、」

 

「どういうことだ?」

 

「度々あの傘が人間を誑かすのでな。あの傘が人の心を縛り付けおる。」

 

「どういうことだ?」

 

「あやつはベビーシッターやっとるやろ?自然と人間が傘に心惹かれ寄ってな、里の人間共の繁栄に支障が出てきておってな。」

 

「んー…そういうことか。」

 

「まぁ、こうなっては霊夢は知れとるが、賢者もいつ手を出すかわからぬ。」

 

「予防線張ってお前が事を収めよってことかなるほどな。」

 

「そういうことじゃ、それで小奴らの力を借りて彼を元に戻す。」

 

「人の姿にか?記憶はどうなる?」

 

「そうじゃな、多少遡るじゃろう。その辺はお願いしてある。なにせ幻想郷の妖怪と他界の妖怪達だからの。うまく行くに決まってある。」

 

「よっぽどの自信だな」

 

「過去にも一度やっておるし、成功しておる、安心せい、」

 

「ここにいると邪魔だな、」

 

「では、始めようとするかの。」

 

五体の妖怪が順番に魔法のようなものを使う。そうしているうちに異形の様子が変わった。

 

ずっと上を向いていたのが、急に下を向き始め、頭を抱える。小さく唸る声は次第に大きくなっていった。

その後、信じられない光景が続いた。

 

少しずつ異形の身体が白く光だし唸り声は名前を呼ぶ声と変わっている。

その声は確かに多々良を呼んでいた、

 

巨体の身体は人のそれに近くなりそして、次第に小さくなる。

 

まさに人間の姿だった。

 

「…ほんとに人に…」

 

「そこでやめじゃ。」

 

化物だった男は屈み込んで酷く咳き込む。

 

「大丈夫…?ではなさそうじゃな、ほれ、水じゃそれで落ち着け」

 

男は水入りの瓶を受け取ると勢い良く飲み干した。

 

「いや…マミゾウ助かったよ。」

 

「お、儂を覚えておるか」

 

「ああ、小傘を誑かした悪ダヌキだな」

 

「命の恩人にその言い草は酷いものじゃ戻してやろうかね」

 

「悪かったよ。しっかり覚えているさ。」

 

当たり前のように話す二人。

その光景にしばらく言葉が出なかった。

 

「しかし…元の姿に戻れるなんてな…」

 

「傘が待っておろう。」

 

「そうだな。」

 

「あっ、多々良のとこまでは案内するよ」

 

「知っているなら頼もうかな」

 

人里に戻り家に帰る。

 

「あっ、悠、おかえり。」

「ただいま、えっと多々良…」

 

「どうしたの?そんな気まずそうにして。」

 

「えっとだな…」

 

俺は体をずらして横にそれる、

そうして見えた男に小傘は驚いてた

 

「えっ?えっ…えっ?」

 

「落ち着いて。またこの前みたいになってるぞ。」

 

「いや、だって…」

 

「あの時は済まなかったな。また帰ってきたよ。」

 

「もう…なんて言ったらいいかわかんない…」

 

次第に泣き始める小傘

男は少し困りながら慰めていた。

 

「ねぇ、悠もしかしてあの手紙って…?」

 

「まぁ、あの狸からだ、」

 

「そうなんだね。なにもされてない?大丈夫?」

 

「別に俺は何もされてないから大丈夫だぞ。」

 

「そっか、良かった。」

 

 

「多々良さん、」

 

「は、はい。」

 

「霊夢さんからお話を聞かせてもらってたのですが。もし、多々良さんがいいというのなら、自分達の生活に戻ってもいいとおもうんです。」

 

「祐奈大丈夫なのか?」

 

「ええ、楓さんもいますし、それに悠だって、いるでしょ?」

 

「そうだな。」

 

「いいんですか?」

 

「だって、せっかく帰ってきたんだよ。二人でいてもいいと思う、私のことは気にしないで。」

 

「気遣いありがとう御座います。」

 

「また何かあれば呼ぶかもしれないけど、その時はよろしく頼むよ。」

 

「はい、わかりました。」

 

「帰ろうか、小傘」

 

「うん。」

 

多々良と男は二人手を繋いで、里を出て森へと向かっていった。

霊夢さんが言っていた離れの森での暮らしをまた過ごすのだろう。

 

「行っちゃったね。」

 

「そうだな。」

 

「えっと、私戻りますね。」

 

「あぁ、手紙、ありがとな」

 

「は、はい。それではお幸せに」

 

慌てるように家を飛び出していった。

 

「何をあんなに急いでるのか。」

 

「ふふ、面白いね。」

 

そうして。少しの間だけ無言になっていた。

 

なんとなくだが落ち着いて来たのを感じたからだろうか。

 

「なんか、疲れちゃったね。」

 

「そうだな。」

 

なんだかんだあったがまだ昼間だった。

よく晴れた昼間、窓からの日差しのせいか家の中は若干暖かい。

その暖かさのせいで眠気が来ていた。

 

「たまには昼寝もいいかもな。」

 

「ふふ。そうだね。」

 

俺と祐奈は雪樹を挟むようにしてベットで横になった。

 

祐奈はすぐ眠ってしまったが

俺は少し起きていた、

 

「これが、幸せってやつかな。」

 

確かに目に映る、嫁と息子の寝姿を眺めていると、とても微笑ましく思えた。

 

次第に眠気が来て、俺も眠ってしまっていた。

 

 

……………………………………

 

どうでしたでしょうか。

幻想郷に生きる者のお話は。

 

えっ?ありきたりじゃないかって?

 

そうですね。そうかもしれません。

 

ですが、そのありきたりすら

あえて書き記し文章とすることが

大切なのです。

 

そうしてこのような作品ができるのですから

 

よくあるお話かもしれませんが

その作品にはその特徴や面白さがあるのです。どんな展開になるか、どんな登場人物がいるのか、読んでいて興味の湧くような作品こそ面白いと思うのです。

 

さて、今回はここまで。

 

また会えたら会いましょう。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

私と彼、俺と彼女

どうも夢子です。

作文し終えてから気づいた。
題名全く考えてなかった。

それだけで約一週間は投稿が伸びました。
題名…案外思い浮かばないんですよ…

ではごゆっくり。


教師からの呼び出しの後、掃除を任されて教室に戻ったときだ

 

放課後の教室で寝ようとしている女子を見つけ、声をかけることにした

 

「寝るなら帰ってから寝ろよ」

 

「別に帰らないといけない理由なんてないでしょ。」

 

何を言ってるんだ…閉校までいるつもりか?

 

「授業も終わったんだ。掃除の邪魔だし早く出てくれないか」

 

「掃除?終わったんじゃないの?」

 

「生憎呼び出しくらってまだ終わってないんだ、ほら、早くどいてくれ。」

 

「めんどくさい。早く済ませてよ」

 

荷物を持って教室を出る女子。

ただ扉の外で座り込んだところ、

帰る気はないらしい

 

数十分は掃除をした。

綺麗好きな性格かいつも念入りにする。

 

「まぁ、こんなもんか」

 

「早く済ませてって言ったじゃない」

 

「なんだ、帰ってないのか。」

 

まさかまた寝る気なのか?

 

そう思った矢先、自分の席であろう場所の椅子に座り込みうつ伏せる。

 

「おいだから…」

 

「別にいいでしょ、あなたには関係ないんだから。」

 

「困るんだよ。鍵閉めてこいって言われてるんだ、」

 

「宇佐見がいて閉めれなかったって言えば済むわ」

 

何言っているんだか…

 

「そういう話じゃないだろ…」

 

ちょっと待った。宇佐美って…

……あの宇佐美か?

 

「宇佐見って、宇佐見董子…?」

 

「そうよ。」

 

「そうか…お前があの超能力使えるっていう。」

 

「そうよ、」

 

超能力…そんなことがホントにあるとは思えない、

 

「いや、ていうか寝るなよ」

 

「寝るわ、おやすみ」

 

「いや、だから寝るなよ」

 

「もう…あなたのせいで一時間は損したわ。これなら帰って寝たほうがいいわ…」

 

「元からそうしろ。全く」

 

気がついたら外はもう暗くなっていた。

そりゃそうか、もう閉校一時間前。

時間で言うなら18時半

冬場のこの時間は十分暗い。

最近は不審者のニュースもよく見る、

 

「鍵返してくるから下駄箱のところで待ってろ。」

 

「なんでよ、私は帰るのよ?」

 

「外は暗いんだ、一人で帰るには危ないだろ」

 

「超能力使えるって知ってるのにそういうこと言うのね。」

 

「それとこれとは別だろ」

 

「…まぁいいや、早くしてよ」

 

「はいはい。」

 

俺は職員室に、宇佐見は下駄箱まで。

鍵を返すとき遅いだの何だの文句を言われたが気にせず返した。

 

下駄箱まで行くと宇佐見は待っていた。

なんだ、先に行ってるんだろうと思ったが素直に待つんだな。

 

「おまたせ。」

 

「暗くなる前に早く行きましょ」

 

何言ってるんだか…

 

「もうすでに暗いんだが。」

 

そう言いつつも歩き始める。

 

「…あんた離れないでよ、」

 

急に距離を詰めてきた。

いつもこの時間に帰ってるんじゃないのか?

だとしたら相当危ないな。

 

「そう言うならお前こそ離れるなよ。」

 

寒さもあるせいか、宇佐見が震えている風にも見える。

 

「どうした?寒いか。」

 

「大丈夫よ…寒いのくらい。」

 

さっきよりも震えが強くなっている。

やっぱり寒いのだろう。

 

「ほら、これ使え。」

 

さっきまでつけていた手袋とコート。

あれば助かるが、

昔から寒いのには強い体質でこれらがなくもさほど気にしないからな。

どうせなら温まるほうがいい。

 

「あんたも寒いでしょ、いいよそんなの。」

 

「俺は気にしないからな。寒くて震えるくらいなら使え。」

 

「…ありがとう…」

 

浮かない顔で手袋をはめ、コートを羽織る

 

「暖かいわ…」

 

そりゃそうだろう、さっきまで着てたんだ。

 

「それ、着とけばとりあえずは大丈夫だろ。」

 

「うん、結構暖かいから」

 

黙々と歩いていると突然声をかけてきた。

 

「ねぇ、なんで呼び出しなんてさせられてたの?」

 

「ん?ただの成績不振だよ」

 

「なに、勉強苦手なの?」

 

「いや、最近までいろいろあって学校に行けてなかったんだ」

 

「あ…だから後ろの席一つ空いてたのね。」

 

「そう、俺の席だな、」

 

宇佐見は唐突に立ち止まって、振り返って話しかけてきた

 

「あっ!それじゃ、何ヶ月か前体育のときに倒れたのって!」

 

「そう、俺だよ」

 

「今は、大丈夫なの?」

 

「…全く大丈夫じゃない。」

 

「大丈夫じゃないって、何がどうしたの?」

 

「どうも、医者も知らないような病気らしい。」

 

「病気?なのね。でもそれって誰かに伝染ったりしないの?」

 

「あっいや、そういうのじゃなくて、身体的なものらしい。風邪とかそういう感染するものとは大きく違うんだとか。」

 

「そう。大変なんだね。」

 

「突然筋肉に力が入らなかったり、意識が薄れたりするんだ。神経系の障害らしい。」

 

「そうなんだ、じゃあいきなり立てなくなったりするの?」

 

「まぁ、そうだな、いきなり倒れたりもする。」

 

「それって、結構危険だよ。学校に来てる場合じゃないでしょ。」

 

「んー…でも家でずっと暇するよりかはいいかな、」

 

「そうなんだね。」

 

そんな会話をしていると宇佐見の家の手前まで着いた、話しているとあっという間だったな。

 

「ありがとう」

 

「どういたしまして、ゆっくり休めよ」

 

そう言って帰ろうとしたときだ。

 

「あっ、そうだ。」

 

「どうした?」

 

「名前、聞いてない」

 

そういえばそうだ。これだけしておいて名乗らないのはいけなかったな

 

「向春奏眞(むかいはる、そうま)だ」

 

「そうま、ありがとう。」

 

「それじゃ、俺も帰るから」

 

「ええ、また学校で」

 

夜道を帰るのは久々だったから

とても見慣れない風景だった。

 

俺も疲れていたのか家について食事だなんだかんだを済ませるとすぐに寝入ってしまった。

 

朝、目が覚めるが起き上がれなかった。

体が動かない、力が入らないのだ。

 

「こりゃ困ったな、」

 

なんとか首は動くから時計を見る。

いつもならもう家を出てる時間か。

とはいえ寝過ごすような時間帯ではないからまだ余裕はあるか。

 

急に部屋の扉が開く。

母親が心配して来てくれたようだ。

 

「遅いからどうかしたのかと思ったわ。また動けないの?」

 

「うん。首が動く程度。少ししたら戻ると思う、」

 

そう聞くと母親は戻っていった。

少しづつ体に力が入っていって

ようやく立って歩くところまで戻ってきた。

 

「ごめん朝飯食う暇ないや。」

 

「仕方ないわ。これ持って行って、歩きながらでもいいから。」

 

栄養ドリンクと、カロリーメイト。

まぁ腹は膨れないが、朝には丁度いいか

 

ちょっと急ぎ目に歩く。

 

横断歩道を歩いていたその時。

一瞬だけ意識が遠退いてしゃがみこんでしまった。普段車の通らない場所だったからよかったが…

 

学校に着くやすぐに疲れてしまって

立つのもやっとだった。

 

「おい、今日移動教室多いけど、大丈夫か?」

 

同じクラスの一人が心配して声をかけてくれた、まあ、行くしかないけどな、

 

「まぁ、行くには行くさ。心配かけて済まないな」

 

鐘が鳴って授業が始まる。

普段通り過ぎていった。

 

それでいざ移動教室だ。

 

「んー…困ったな。」

 

立ち上がったはいいが、次第に力が抜けていく感じがした。

 

またかと思う前に体が、横に傾く、

その瞬間体を誰かが支えてくれた

 

「ありがとう、助かるよ、」

 

「大丈夫?ゆっくりでも歩けるならついていくよ」

 

支えてくれたのは宇佐見だった。

ゆっくりとは言えどもう授業の始まる二分前、走れば間に合わなくはないが、

ゆっくり歩くとなれば軽く5~6分はかかる

 

「お前まで遅れてしまうだろ。そこまでしなくていい。」

 

「いいよ、予習済みだし、それに私勉強は得意だから気にしないよ。」

 

「済まないなありがとう」

 

そういえば宇佐見は五教科トップだと言うのを思い出した。

そうか、それなら別にいいのもわからなくない

 

宇佐見に支えてもらいながらゆっくり歩く。

 

「ありがとう。助かるよ」

 

「いいよ。」

 

移動後の教室に着いてすぐ

担当からお咎めがあったが

理由を話せば俺も宇佐見も特に注意もなかった

 

そんなことの繰り替えしで、また日は過ぎていった。

 

……………………………………

 

最近ある人物と関わり合うことが増えた

名前は向春奏眞。

どうも彼が辛そうにしているところを見ると手を出したくなる。

 

その時は特に大したことはなかった。

別に困っている人を助ける程度の思いだったけど、最近は学校でもよく見かけるから、手助けしている。

 

あんな状態で一人でやっていこうとするほうが逆に辛いはずなのに。

 

かと言って周りを見ても声をかける程度、

歩くペース合わせたりするわけでもない。

そそくさと自分達だけ行ってしまわれて

あとに残る彼がどうも捨て置けない。

 

「宇佐見、いつもありがとうな、」

 

「いいの、私くらいしかいないでしょ」

 

「確かにお前に合う前はいつも自力だったからな。平気で遅刻もあったし、授業もまともに参加できなかったときもあったな。」

 

やっぱり一人じゃ大変だったみたい。

誰かが支えてあげないといけないのに。

 

「辛くないの?」

 

「辛い思いはしてるけど、やらなきゃなんにもならないからな。」

 

できるなら、超能力を使いたい。

けど、学校で使うにはあまり方法として良くない。

 

気を抑えてなんとか手伝ってる。

 

「超能力ってどんな感じなんだ?」

 

「どんな感じ、か、見てみる?」

 

「いや、見るのはまた今度。学校では使ってないんだろ?」

 

「え、ええまぁ、」

普通なら疑うはずなのに。

彼は全くその気配はない。

超能力なんて聞いて信じる人が少ないっていうのは当たり前なんだろうけど。

それでも、彼みたいに話してくる人も少ないと思う。

 

帰り道も何度か彼がふらついていたけど何度も支えてあげていた、

 

いつもこんな危ない帰り道なのかと思うと

余計心配してしまう。

 

「ありがとう。助かるよ」

 

「大丈夫だよ、だって私は…」

 

…言いかけてやめた。

こんなふうに誰かを気にしたのは初めてだったから。言いたいけど…

 

「そういえば、帰り道が同じような人。他にいないの?」

 

「いるだろうけど、前言ったとおり、最近学校に復帰したばかりだからな。」

 

あぁ、そうか。

そういえばそうだった。

 

「お前が初めてだよ。」

 

そう言われると何故か胸が一瞬締め付けられるような感じがした。

 

「そんな、他にもいるでしょ、来れなくなる前の人とか、」

 

「その時はまだ友人関係とか周りもまだまだだったからな、」

 

「そうだったんだ。」

 

しばらく話しながら歩いてたからか

彼の家に着いた。

 

「それじゃ、気を付けてな」

 

「うん、あなたもゆっくりしてね。」

 

そう言って彼と別れた。

 

 

彼のその病気というのが気になる一方

あの一件から、向こうに行く頻度が極端に減った。

あの頃は超能力で何でもできると思って、かなり調子に乗っていたけれど。

幻想郷の人間妖怪魑魅魍魎、どれも想像とはかけ離れていた。

 

それ自体に恐怖感はなかったが。

自分の実力と自信が少し曲がってしまったからか。少し後ろめたく思う部分があった、そのせいかこっちでもおとなしくなってしまっている

 

良くも悪くも私は変わったんだなと感じた

 

ただ、あの頃の私のままだと今の彼は

全く気にもしなかっただろう。

 

 

次の日は彼の家まで迎えに行った。

学校ではなく彼からの誘いで

お昼を食べに行こうということらしい。

 

近くのファミレスでお昼を過ごした。

 

日頃の話をしながら食事を済ませ。

お店を出るとき。

彼が急にふらついて倒れそうになった、

すぐに支えてあげたけど。少しすると重たさがかかった。

 

「だ、大丈夫?!」

 

「すまん…限界かもしれない。」

 

そう聞くと嫌な予感がした。

 

軽く叫んで店員を呼び、

救急車を呼ぶ。

 

彼は床に座り込んでぐったりしてけど

救急車がつく前に意識が薄まっていた。

 

「しっかりして奏眞!」

 

「あぁ…まだ…」

 

救急車に乗り込み病院まで運ばれる。

私もすぐ病院まで向かう。

彼の家の電話は、教えてもらっていたから親の方にも連絡を取ってすぐ来てくれた。

 

「奏眞は?」

 

「いまベットで…」

 

彼の両親と奏眞の病室までいく。

 

「起きて…ないのかな。」

 

「まだ起きてないですね。」

 

医師の方が部屋に入ってきていろいろと話をしてくれた。

 

以前よりも病状は悪化していると。

最近、頻繁に具合を悪くしているのは感じてた。でも…彼はそれを我慢してた

我慢する必要なんて無いのに。

気が落ち込んでしばらく言葉が出なかった

だけど。そのおかげかあることに気がついた。

 

私は、超能力者で、幻想郷を知る者

向こうになら何か手段はあるはず。

 

「どうにかならないの?」

 

彼の母親が悲しむ様子が見えた

 

「なんとかなるかと言われたら。出来なくはない、ただ、確実に治せるとも言えないが…」

 

言いたいことはわかる。

100%治せると限らないのがこういう病気だから。

ただ以前は治らないと聞いたけど…?

どういうことなんだろう。

 

「方法はあるんですか?」

 

「ああ、さっき言ったとおり確実性はない、他の病院にもこういう患者がいないか聞いたところ、同じような人がいたらしい。」

 

「その人はどうなったの?」

 

「患者さんに了承を取った上でだが、治療法をいくつか試させてもらったらしい。それで判明したようなんだ。」

 

「なら治るんですね!」

 

彼の母親が泣きつくように喋って…

 

「落ち着いて、まだ判明したばかりだから、全てに通用するとは限らないんだ、だから確実性はないと言ったんです。」

 

「でも。試す価値はありますから」

 

確かに。

でも幻想郷にも手段があるはず。

 

「…わかりました。ひとまず患者さんが目を覚ますまで待ちましょう。」

 

「起きなかったら?その時どうするの?」

 

「…3日待って起きなければ、実行でも、」

 

「わかりました、」

 

3日…3日間ある。

その間に向こうに行って手段を探さないと…!

 

私はすぐさま家に帰った。

 

生憎明日は休み。

どうせ勉強何てどうでもいいから。

幻想郷に行く…

 

……

 

そして。幻想郷に着いた。

 

相変わらず古景色が広がってる。

 

着いた場所は運がいいのか悪いのか。

博麗神社だった。

 

「……」

 

前はこっちに来るたびに胸が昂って。

戦って勝って負けてってしてた。

 

今は違う。目的がある。

 

「あんたもしかして!」

 

後ろから声が聴こえてくる。

振り向くと博麗の巫女がいた。

 

「久しぶり、」

 

「久しぶりね。今度は何しに来たの?」

 

「…」

 

「黙っててもわからないでしょ。」

 

「人助け。」

 

「はぁ?あんたが人助けなんて、雪が降るわ、」

 

軽く馬鹿にされる。

そんな貶しに構っている必要はないけど…

 

「まぁ。いろいろとあるの。」

 

「いいんじゃない。それで、ここにいるってことは私に用があるってことでしょ?」

 

まぁ、たまたま降り立っただけなんだけど…

まぁ聴き込むなら十分な人物かな。

 

「幻想郷だと、難病って。どうやって治してるの?」

 

「そうね。大体は永琳が見てあげてるわね。薬とか直接行ったり、永遠亭に来たり。」

 

「そっか…薬って貰えるかな。」

 

「それなりに求めてくるけど、まぁもらえなくはないでしょ、」

 

「ありがとう、行ってくる。」

 

「あ、ありがとう?、まぁいいわ、行ってらっしゃい、」

 

振り向かず永遠亭に向かう。

前はただ逃げ回るように飛び回った。

 

藤原は元気にしているかな。

また会えるといいな。

 

永遠亭につくと。

藤原と着物を着た女性が話し込んでいた。

内容からしてあまり気が良さそうではなかったから、話しかけるのはやめておこうかな。

 

「あら、あなたあのときの。」

 

うさぎ耳の…優曇華院かな。

 

「あ、優曇華院、永琳って人がここに居るって聞いたの、いるかな。」

 

「永琳様ならこっちよ。」

 

案内されて永琳のところまで行くことができた。

 

「あら、あなたは噂に聞くオカルト少女ね、」

 

「はい。」

 

「はい、ってかなり畏まって、聞いてたのとは違うけどまぁいいわ。私に用でしょ?何かしら」

 

「薬を貰いに来た、もちろんお金がいるなら払うわ」

 

「何に使うの」

 

「私の…」

 

「一応言っておくけど両親とかその上の方に使うなんて言わないでよ、老衰なんかに使う薬は無いから。」

 

勘違いだって言うのはわかってたけど…

そんなこと言われてどうしても声を荒げてしまった。

 

「違う!彼は病気なのよ!…あっ、あの…病気を、治す薬が欲しいの…」

 

「まぁ、わかったわ、貴方の大切な人って言うことはよくわかったわ、」

 

「お金払うから」

 

「いいわ、そんな必死になられたら商売なんてする気起きないもの」

 

「せめてこれだけでも受け取ってください」

 

ポッケにはいっていた五百円玉、

それを出すと…

 

「なっ!そんな大金どうして!」

 

優曇華院が驚きだし気を荒げた

 

「まぁ、外の世界と幻想郷では通貨価値が違うから合わないのよ、だからお金はいらない、ほら、これ持っていきなさい、」

 

「あの、これは?」

 

「私特製の薬、八意印の万能薬ってみんな言ってるけど。まぁただの万能薬、ほら、彼氏が待ってるんでしょ、行ってあげなさい。」

 

彼氏…そう聞くと胸が苦しくなって、でも昂る何かがあった。

 

「ありがとう、」

 

お礼を言って。すぐさま戻る

 

………………………………

 

目が覚めたのは午後8時。

 

目の前は見覚えのない景色広がっている。

 

「病院…か」

 

あの時、結局意識を失った。

 

宇佐見が何度か俺を呼んでいたのはなんとなくだが覚えてる。

 

外を眺めていると部屋の扉を叩く音が聞こえた。

 

「どうぞ。」

 

入ってきたのは、宇佐見だった。

 

「宇佐見、こんな時間にわざわざ来てくれたのか。」

 

「当然だよ!だって…だって!」

 

「落ち着いて。それで来た理由は何だったんだ?」

 

「あの、これを。」

 

宇佐見が渡してくれたのは薬の入った小包。

見た目は錠剤、一般的な風邪薬とかと対して変わりはない。

 

「これは?」

 

「とにかく飲んで、きっと治るから」

 

俺の病気のことだろうか。

ただこれだけで治るとは思えない。

 

「たった三錠で?」

 

「うん、だから、飲んで」

 

まぁ、治るなら…

そこにあった水と一緒に飲む。

当然薬は飲んでから数時間後に効能が効き始める、

 

効き目が実感できるのは明日の朝くらいだろう。

 

「わざわざ薬届けてくれてありがとう、時間も遅いし、帰ったほうがいいと思うぞ、」

 

「ううん…今日は帰らない」

 

いや…いやいや。

帰らないって?

泊まってくのか?

 

「病院はホテルじゃないんだ。学校でもないから、ほら。」

 

「…親にも言ってあるし、病院の人にも許可は取ったの。だから、帰らない」

 

本気で言ってるのか…

これは困った…

 

「それなら構わないけど…布団かベットか用意してあるのか…」

 

「まぁ…着る毛布的なものなら…」

 

それだけで冬の寒さは凌げないだろ…

第一病院とはいえ暖房もそんな強くない。

風邪を引いても知らないぞ…

 

「まぁ…お前がいいなら…それでいいんだろうけど…」

 

それからというものの、

宇佐見は俺のベットの隣で座って寝ようとしている。

 

「そういえば、あの薬はどこから持ってきたんだ?」

 

「あれは…その…」

 

まさか麻薬飲まされたとかやめてくれよ

 

「幻想郷の…永琳って医者の人から、」

 

幻想郷…永琳…

なんだかよくわからないが。

医者からもらった薬って聴けばまぁ、大丈夫か

 

「その、幻想郷ってのは何なんだ?」

 

「多分、信じてくれないと思うけど…」

 

「いいよ、話して。」

 

「幻想郷は、人や妖怪、鬼いろんな種族がいるこことは違う別の世界、魔法だってあるし…いろんなことがある。」

「前に初めて行った時は歓迎されずに何度も追い払おうとされた。」

 

「なんだか物騒だな」

 

「いや、当たり前のことなの、あの世界にはあの世界の決まりがあって、私はそれを乱して無理矢理入り込んだから。」

 

「なるほど、自業自得ってことか。」

 

「そう…もちろん私も得意の超能力でなんとか逃げたりしたけど。結局向こうの偉い人に捕まって…」

 

「それから?」

 

「出入りは自由になったけど、問題ごとを起こせばすぐに怒られる。」

 

「まぁ、よくあることか」

 

「遊びに行くのも最近はあんまりないかな」

 

幻想郷…か。

 

「でもその世界にも医者は居るんだな。」

 

「うん、それでもらった」

 

「そうか、本当にありがとな」

 

「うん、どういたしまして。」

 

なんとなく話すこともなくなって。

寝ようと思ったとき。

宇佐見がベットの横で小刻みに揺れているように見えた

 

「やっぱり寒いんだろ。」

 

「うん…」

 

「布団か何か持ってきてもらうか。」

 

「大丈夫。」

 

「でもそれじゃ、」

 

宇佐見は頑なに拒んでくるから。

仕方なくやめた。

 

「風邪引いても知らないぞ」

 

「大丈夫だから。」

 

とは言ってもあまりにも寒そうだったから。少し提案をしてみることにする。

 

「ベット、来るか?」

 

「え…?いや…あの…」

 

「別に俺は構わないし、広いから大丈夫だろ。」

 

「いや、でも…病人のベットに、そんな…」

 

「伝染る訳じゃないんだ、大丈夫さ、」

 

「うぅ…わかった…」

 

恐る恐るベットに入る宇佐見、

手を引いて寝かせるように布団に連れる。

 

「あの…これは恥ずかしいよ…」

 

「…んー。なら出るか?、それとも俺が出ようか」

 

「どっちも良くないかな。」

 

「そっか。」

 

もぞもぞと動いて少しずつ寄ってくる。

よほど気が落ち着かないんだな、

仕方ないから俺から近づいてみた。

 

「そ、そんないきなり!」

 

「この方が暖かいかなって。」

 

「そ。そうだけど…んーもう!」

 

宇佐見もヤケになったのか、距離を詰めて、抱きしめてくる

 

「ほんと、暖かいね」

 

「ああ、暖かいな」

 

暫くその姿勢が続いていた

唐突に宇佐見の腕の力が緩んだ

どうやら眠ったみたいだ。

「おやすみ、」

 

そう呟いて、暫くしたら俺も寝てしまっていた。

 

……

 

目が覚めて、視線の先には立って窓の外を眺めている彼の姿があった。

 

「あ。おはよう」

 

「おう。おはよう。」

 

当たり前のように挨拶を交わしたあと。

彼はベットまで戻ってきた、

 

「なぁ、宇佐見。」

 

「なに?」

 

「あの薬、なんて薬なんだ?」

 

「えっと…八意印の万能薬とかって。」

 

「万能薬、か」

 

彼は思案しながらまた話しかけてきた

 

「うん。なんていうか、いろんな所が良くなった。ありがとな」

 

治った。そうわかって私もすごく嬉しかった。

 

「うん。ありがとう!」

 

それから、その日は病院で済ませた。

次の日からは学校に来ていた。

 

「あっ、おはよう」

 

「うん。おはよう」

 

何気なく交わす挨拶。

特別何かあったわけでもないけど。

それが毎日続くようになった

 

彼は学校に普通に来ている。

なんの不自由なく過ごしている。

 

でもそれが、私には嬉しかった。




終わりよければなんたらといいますし、
これはこれで良い良い。

また会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

貧乏神に幸あれ

どうも悠樹@夢子&松K.です

題名…かなり適当に付けました
なんかぱっと出てきたのがこれです。
話とあまり関係ない様なある様な…

今度はしっかり考えないと…

ではごゆっくり


人里を歩いていると。

視界の先に何かに群れる子供たちを見つけた。

 

何だろうか。囲むようにしているせいで、それが見えない。

 

「ちょっと寄ってみるか」

 

最初はその程度の好奇心だった。

 

「なぁ君たち。何を見てるんだ?」

 

そう言いながら覗いてみた。

そしたらそこには…

 

「あっ、あの。」

 

みすぼらしい身なりの女性が地べたに座り込んでいた。

 

「何か食べ物ないかしら。お腹空いたの」

 

生憎だがキャラメルしかない。

それでもいいなら

 

「ほら、空腹を紛らわす程度だけど。」

 

「あ!ありがとう!」

 

女性は小さなキャラメルを口に入れると、さもご馳走を食べたような反応をする。

 

「これ、もう一個やるから、またお腹空いたら食えな。」

 

「え…いいの…?」

 

「まぁ、まだあるからな。」

 

気がついたら子供たちは居なくなって、俺と女性の二人だけだった

 

今居る場所は大通りからかなり外れた場所で、普段人なんか寄り付かない。

 

何で俺がここにいるかというと、

ただの仕事帰りの近道だからだ。

 

「それか、腹減ってるんだったらうち来るか。」

 

「いく!いくわ!」

 

女性は、すっと立ち上がった

 

「はは、なかなか元気だな」

 

俺が歩き始めて少ししたときだ

 

「あっ、でも…」

「どうした?」

 

ずっとうつむいていて、何か言いたげな様子だが。

 

「私…貧乏神だから…」

 

貧乏…神…貧乏神?

あぁ、そういうことか。

 

「お前、依神紫苑か?」

 

「そ、そうよ…」

 

「ああー、なるほどな」

 

貧乏神を助けるなんてかなりの大馬鹿者だと思う、だけど、別にそんなの気にしない。

目の前でよわってる誰かをみて、

それを見ぬふりするのは性に合わない

 

「いいよ。ほらうまい飯作ってやるから。」

 

「ほんとにいいの?」

 

「うまい飯はいやか?」

 

「イヤじゃない…むしろ食べたい」

 

「じゃあ、ついてこい」

 

スタスタと早歩きでついてくる。

 

家についたはいいが

片付けをしていなかったな

 

「まぁ、適当に座っててくれ。」

 

「質素な家なのね。」

 

「ん?、まぁな。普通って言うのが一番いいだろ」

 

「そう?なのね。」

 

「何かしら飾るのは好きじゃないしな。」

 

「そう。」

 

時間もそんなにないから手早く夕飯を作る。

 

「こんなんでいいか。」

 

炒飯にサラダそれと汁物。

時間がなかったりそれ程気力のないときはこれで済ませる、

 

「あの…ほんとにこんなのいいの?」

 

「俺がいいっていうんだからいいんだよ。」

 

「わかった、いただきます。」

 

口いっぱい頬張る。

とても女性らしい振る舞いではないが。

でも貧乏神となればまぁ、さほど気にはしない。

 

「うまいか。」

 

「ええ。とっても。」

 

「そりゃよかった。」

 

食べ終わった彼女は、とても満足げだった。

 

一息ついたところでなんだかんだと済ませようと思ったのだが。

 

「紫苑。だったか。」

 

「あっ、えっと、もう出てったほうがいいわよね…」

 

うつむきながらそういうことを言うものだから少し困った

 

「宛は?あるのか?」

 

「ない、」

 

だろうとは思ったけど。

 

「妹さんはどうなんだ?」

 

「女苑は…」

 

それから何も言わずうつむいている

何か後ろめたいことでもあるか。

まぁいいか。

 

「まぁ、出るのは構わないけど、宛がなければまたここに来るといい。」

 

「わかったわ…」

 

一言だけで了承して、出ていってしまった、

 

俺は仕事の後始末を終えるとそのまま寝た。

その晩は紫苑が戻ってくることはなかった

 

 

次の日の朝、起きて気がつくと雨音が聞こえた。洗濯物を外に干したままなのを気付き急いで取り込むが…間に合わずほとんどがまた濡れている。

 

「うーん…」

 

悩んだ末、知り合いの洗濯屋に頼むことにした。

 

カバンに服を詰めて外に出ると。

 

「あの…おはようございます…」

 

「あれ?紫苑か?」

 

ずぶ濡れの状態で軒先で待っていたみたいだ。

 

「そんなところにいるより、ほら中に入れ、」

 

「う、うん…」

 

タオルを渡して紫苑が身体を拭いている間に、温かいお茶を用意する。

 

「寒かったろ。ほら。」

 

「ありがとう…」

 

お茶を飲んで一息ついたようだ。

 

「服、濡れてるな。」

 

「いいのよ…これしかないから。」

 

「ちょっと待ってろ、」

 

箪笥にいくつか服がある。

 

「まさか貴方、女性用の服持ってるの?」

 

「ああ、少し前に服屋の手伝いしててな、その時の残りがいくつかあるはずなんだ。」

 

と、言ってるうちに見つかった。

 

「今着ているものに近いな。これでいいか? 」

 

「え。ええ…いいけど…」

 

着替えたあと。服はすぐ洗濯桶で洗って

その日取り込んだものと一緒に屋内で干した

 

「雨。降ってるからな。」

 

「あの…何から何までありがとう…」

 

「いいんだよ。」

 

「でも、私に関わると貴方も不幸になるのよ?」

 

「誰かそうやって決めた?」

 

「それは…誰も…」

 

「俺の幸不幸は俺が決める。だから紫苑のせいで不幸になったかどうかはその時俺がどう思うかだ。」

 

「……」

 

「別に何か起きても気にしないよ。その時を乗り切ればいいだけ。」

 

「そう…」

 

そこで一度話が途切れた。

けど、また紫苑から話しかけてきた。

 

「貴方はなんでそんなに…」

 

「ん?」

 

「どうしてそんなに気楽でいられるの?」

 

「…それは俺もわからない」

 

「わからないって…」

 

「多分辛いこととか悲しいこととか、沢山味わって来たからと思う」

 

「どういうこと?」

 

「俺は、小さい頃イジメられてた。金持ちの家に生まれて、何一つ不自由なく育った」

「でも親は俺に目もくれず商売ばかり、それ捨て子もどきだって親に見合わないって」

 

「お金持ちだったのね」

 

「でも、親が俺に目もくれない理由は他にあったんだ。普通なら起こらないはずなんだ」

 

「何があったの?」

 

「俺は…半霊なんだよ。」

 

「は…半霊?どうして…」

 

「元々母親に取り憑いていた悪霊の類が腹の中の俺に移って、産まれるときに俺の半身となって出てきた」

 

「それじゃ、貴方悪霊に取り憑かれてるわけ?それって…」

 

「いや、もう悪霊はではないな。」

 

「えっ?どういうこと…消えたの?」

 

「ふよふよと無意識に浮かんでるよ。」

 

「そうなのね…」

 

「そう、それでそのうち本当に親に捨てられて、でもどういうわけかまた別の金持ちの家に養子として、拾われた」

「養子として拾われてからは可愛がられたさ、弟分もいたし楽しかった、でも弟分が事故でなくなってから両方共とも実の息子を亡くしたショックで自殺しちまった。」

 

「…なんていうか…その。」

 

「うん、わかってる。結局二人の遺産は俺が相続することになって、それからずっと独り身だよ。金はあるけどやることは仕事ぐらいさ。」

 

「ごめんなさい…私、こんなところに居たらだめな気がしてきたわ…」

 

「別にいいんだけどな。」

 

「だって、それだけ不幸が続いたあとなのに。私が、」

 

「だからこそ、俺の不幸は俺が決めるさ。」

 

貧乏神か…紫苑の思う不幸って何だろうか

 

「貴方はそれでいいの?」

 

「良くなかったら、とっくに俺もここにいないさ。」

 

「そう…」

 

「そうだ、風呂沸かしてくるよ、少し待っててな。」

 

雨でずぶ濡れだったからな。

体温めた方がいい。

 

「ありがとう。」

 

紫苑が風呂に行っている間に昼の用意をしておく。

昨日みたいな粗食だと、あまり良くないだろうか

 

「これでよし。」

 

「あっ、もしかして私の分も?」

 

「あぁ、もちろんさ。」

 

話をしながら昼を済ませた。

お気に入りの場所や最近の出来事

人里の話など。いろいろ話した

話をしてると思うのだが

やはり貧乏神とは言っても、普通の女性と変わりがない気もする。

 

実際になにか起きない限りは貧乏神っていうのは感じないかもしれない、

 

「ご飯、ありがとう。」

 

「いつでもごちそうするさ。」

 

夕方にかけて雨は止んでいった。

雨が止んだなら買い物に行かないと。

 

明日の分の食材を買い足しておかないといけない。

 

「少し買い物に行ってくるよ。」

 

「別にそれは構わないけど。貴方、見ず知らずの女性を自分の家に一人で残すなんて正気?」

 

一つ立ち止まって考えてみれば

確かにそうか。貴重品や金庫の中身も盗られかねない。

 

「んー。確かにいろいろと問題があるかもしれないな。」

 

だが、紫苑がそういうやつだとは思えない。

 

「なら、出ていくか?」

 

「えっ…」

 

そんなことは冗談だが。

仮に盗られたとしたら、

それはそれでその時次第だな

 

「冗談だよ。でも、買い物についてくるのはお前が好ましくないんだろ?」

 

「…いいわ、待ってるから。」

 

結局一人で買い物に来た

 

買い物に市場まできたはいいが

紫苑が物を取るような風には見えない

 

一通り終えてから家に戻る。

 

「あっ、えっと…」

 

家に入ろうとその瞬間、紫苑が袋を持って家を出てきた。

 

「その袋の中身は?」

 

「えっと…あの…」

 

「まぁ…いいや、持っていくなら好きにすればいい」

 

「ほんとに言ってるの?」

 

「それが正しいと思うならそうすればいい。」

 

「何よその言い方。」

 

「そのままだけど。」

 

「…いいわよ…わかったわよ!」

 

急に怒り始めた…

 

「キレられても困る。持っていくんだろ?どこに行くかは知らないけど。」

 

「返すわ、いらない。」

 

そう言って袋を押し付けて俺の家に戻って行った。返すのはいいのとして。わざわざ俺の家に戻っていくのか

 

俺も家の中に入ると機嫌悪そうに椅子に座っている。

 

「あのな、」

 

「何よ」

 

相当不機嫌な様子みたいだ。

 

とりあえず買ってきた物を納めるか。

 

「ねぇ、」

 

「どうした?」

 

「なんで、貴方には何も悪いことが起こらないの?」

 

「そんなこと言われてもな。」

 

正直その問いには困る。

 

「私は負の象徴なのよ?貧乏神なのよ?」

 

「そ、そうだな。」

 

「なのになんで何も起こらないのよ」

 

「まあ、いつか何かあるだろ。」

 

「いつかって…」

 

「そんなこと気にしていたらキリがない」

 

「……」

 

それから紫苑は黙ってしまった。

 

気がつくと紫苑は椅子に座ったまま寝てしまい。仕方なく布団に寝かせる。

 

落ち着いた寝姿はおとなしくて普通の女性なのだが。本当に貧乏神とは思えないくらい可愛らしさを感じる。

 

「俺も寝るか」

 

 

次の朝。

起きたときには紫苑の姿はなかった。

まぁ、当然といえば当然か。

 

そう思って起き上がった瞬間、

外から衝突音と悲鳴が聞こえた。

 

驚いて飛び出すと、

人力車と籠車が横たわっていて、

その周辺に何人もの怪我人が見えた。

 

「あんたら大丈夫か!」

 

周囲に呼びかけてすぐに救護を呼ぶ。

 

なんとか怪我人は皆医者のもとに行けたようだ。

 

にしても珍しい、籠車と人力車がぶつかるなんて。

 

どちらも人の手があるはず。

それが正面衝突なんて万に一もありえないはずなのだが

よほど双方がよそ見をしていたか…

 

「朝から事故か…」

 

目が覚めてすぐだから。

目覚めが悪いというわけでもないが。

何か腑に落ちない感じがする。

 

「まぁ、気にしていても無駄か。」

 

そういえば紫苑はどこに行ったのだろう

また路頭で座り込んでいるのだろうか

そう思うと服もそのままだし

前の服も家にまだ干してある。

 

「まぁ、そのうちまた来るか。」

 

それからしばらく

紫苑に会うことはなかった。

元々は無縁で他人同士だったとはいえ

流石に心配になってきた。

 

仕事帰りに遠回りしても

休みの買い出しの時も、

道端でしゃがみこんでいるのかと探して見ても見つかることはなかった。

 

「きっと妹と一緒にいるんだな。」

 

そう思い、探すのをやめた。

 

家につくと。

見慣れない人影が家の前に立っていた。

 

「どちら様ですか?」

 

「あ、」

 

派手な服装だ。人里にこんな人いただろうか?

 

「あんたが姉さんの言っていた、えっと、」

 

「半霊、か?」

 

「それ、間違いないんだね。」

 

紫苑の妹か、にしてはすごく風格というか見た目が違い過ぎる。

 

「まぁ、とりあえず入って。」

 

「えっ、あっ、うん。」

 

とりあえずお茶を出すか

 

「質素な家なんだね。」

 

「まぁ、一人で住んでるからな」

 

「お金持ちなんでしょ?」

 

「まぁな、それは、紫苑から聞いたのか?」

 

「そうだよ。美味しいご飯をごちそうしたんだってね?」

 

「まぁ、客人をもてなすのが家主の務めだからな」

「あんたはそれが目当てで来たのか?」

 

「半分外れで半分当たり」

 

半々?、どういうことだ?

 

「姉さんが世話になったって聞いたから少しお礼を伝えに来たっていうのと、ついでにご飯をごちそうさせてもらおうかなって思ってる」

 

「なるほどな、昼飯なら構わないよ。紫苑にはまた来るといいって伝えておいてくれ。」

 

「それが、最後に貴方の話をしてから、それ以降、姉さん見かけないの」

 

「やっぱりそうなのか、人里でも少し探してみたが見つからなかったからな」

 

「霊夢のとこにいるのかな。」

 

「それなら心配ないんだがな、」

 

昼を用意してなんだかんだと話をして済ませた。心当たりはないが、何かないかと二人で考えていた。

 

「そういえば、この前天狗達とすれ違ったときなんだけど。」

 

「うん?」

 

「なんか、妖怪の山に見慣れない人影が居るって話を聞いたんだよね。」

 

見慣れない人影か、

 

「普通なら人間は立ち入らないし、そうじゃなくても天狗達の目に入れば何かしらあるはずじゃない?」

 

「まぁ。確かに。山は立ち入りは厳しいからな。」

 

「不法侵入ならわからなくないけどそれなら尚更天狗達に捕まるだろうし。」

 

「天狗達ですら関わろうとしないとすれば」

 

「その可能性はあるかもしれないんだけど、私は既に天狗達に厄介払いされてるから入れないんだよね。」

 

なるほど、まぁわからなくはない

これは俺が確かめてみるしかないか

 

「俺が行ってみるよ。」

 

「いやいや、流石に半霊でも、山は厳しいよ。」

 

「武器はある。武術剣術なら人並み以上の自信はある。同じ半霊に稽古をつけてもらったこともある。」

 

「よっぽどの自信なんだね…まぁ行ってみる価値はあるんじゃないかな。」

 

「もしそうだとしたら、一つ心当たりもあるしな」

 

「これは期待しておこうかな、」

 

「まぁ、あくまでその人影が紫苑であるならばの話だ。」

 

「私はそうであってほしいんだけど。」

 

「姉だからか?」

 

「もちろん、知らない間にいなくなってそのまま消息不明だなんて嫌だから。頼んだよ」

 

「まぁ、今回ばかりは頼まれるよ。俺も紫苑に無関心ってわけでもないし。」

 

「姉さんには落ち着いてもらえるとありがたいんだけどね。いっそあんたのとこに居候させてもらえたらいいかな」

 

「この家も狭くなるよ。」

 

そう言って立ち上がって軽く身支度と。

育ての親の形見である日本刀。黒楼と碧霧を持っていく。

 

「いいものをお持ちなんだね」

 

「外の世界の物らしいんだ、育ての親が大切にしていたんだ。」

 

「それ持って稽古つけてもらってたのかな?」

 

「この前初めて鞘を抜いたときは刃こぼれとサビとが、ひどかったからな。いくつか宛を探してみたが身内の鍛冶屋は受けてくれなかったよ。」

 

「そんな業物、鍛え直すのも一苦労でしょ。」

 

「まぁ、そうかもなぁ。」

 

「私が鍛冶屋だとして、それでもいくらお金払われてもやらないわ。」

 

「そんなにか?」

 

「素人でも目でわかるくらい、いいものだと思うわ」

 

「そうか…」

 

そんなに価値のあるものなのか。

形見だから大切に保管してはいたが。

 

「それで結局誰が鍛え直したの?」

 

「多々良小傘っていう妖怪が話しかけてきてな、自身があるからってお願いしたんだ。」

 

「唐傘お化けの?まぁ噂はちらっと聞いたけど…」

 

「でも数日したらこれが帰ってきたんだ。多分本物の鍛冶屋なんだろう。」

 

「あの霊夢の退魔針を作ったって噂もあるし。本当かもしれない…」

 

「そろそろ行くよ。」

 

「わかった。」

 

「あ、その前に。」

 

「どうしたの?」

 

「これ、渡しておくよ。」

 

「袋…?お金だね…これを私に?」

 

「もし紫苑が先に見つかったら、その金でうまい飯とあいつに似合うような服を着させてやってくれ。」

 

「えっ?うんと、わかった。」

 

そう言って二人で家から出て別れた。

 

「さてと。山は久々に行くな。」

 

山には以前、烏天狗のせいで世話になった。

その時の忘れ物もついでに持っていくから

それを理由に山に入れそうだ。

 

「関所はまぁ…大丈夫だろ。」

 

そう考えているうちに、山の関所に着いた。

 

「おい、そこのお前、止まれ」

 

言われた通りとりあえず足を止める

 

「うん?お前、以前ここに来たことあるな?」

 

覚えがいいな。

 

「あぁ、記者の烏天狗に振り回されてな、何度かお邪魔してるよ」

 

「やっぱりそうか、今度は何をしに来た」

 

「その時の忘れ物を返しに来たのと、ついでに人探しにな」

 

「忘れ物は私達が預かろう、」

 

「結局振り回されて終わりだからな、いくつか申し立てもあるから、手渡しさせてくれるか。」

 

「わかった。それで。人探しとは?」

 

「あんたらも見てみぬふりしてるんだろ。噂になってる怪しい人影ってやつを」

 

「なっ…!なぜそれを?」

 

「どこから漏れたかは知らないがそういう噂を聞く。」

 

「そうか…その人影はだな…」

 

「言わなくても大体わかる。貧乏神、だな」

 

「ああ…」

 

「まぁ、上も関わりたくないだろうな、」

 

「うむ…放っておけばいいと…」

 

「だろうな、」

 

「私で良ければ協力するが。」

 

「ああ、それには及ばない。宛はわかってるからな。」

 

「そうか。なら道中気をつけるといい、通行を許可したからと言って安全を保証したわけではない、何が起こってもこちらは責任は持たないからな。」

 

「あぁ、大丈夫さ」

 

案外すんなり道を通してもらえた。

 

まぁ先に烏天狗のとこに行くか。

 

関所からそう遠くないところにある小屋、

それが先の烏天狗の事務所になる。

 

「久しぶりにくるな。」

 

「うんと?見覚えのある姿ですね?」

 

烏天狗。射命丸文。

地底やら山やら人里、紅魔館

こいつのせいで色んなところに連れていかれた。

 

「よう、駄天狗。忘れ物返しに来たわ。」

 

「あややや、駄天狗なんて酷いですね」

 

「早く受け取れよ。」

 

「仕方ないですね。これは。写真?」

 

「ああ、各地巡ったときの写真がいくつか俺の家に置きっぱなしになってたんだよ。」

 

「わざわざ渡しに来るなんて律儀なんですねぇ」

 

「まぁ、これはついでなんだけどな」

 

「そうですかそうですか。照れ隠しはよしてくださいなー」

 

「それじゃ、俺はもう行くよ。」

 

「ちょ、何か反応してくださいよ…」

 

「いや、渡しに来ただけだ、それ以外の用事はないからな。それに少し急いだほうがいいかもしれんからな。」

 

「…もしかして、貧乏神ですか?」

 

「よくわかったな。」

 

「そうですか。」

 

「それじゃ、」

 

烏天狗は特に言い返すこともなく黙って事務所に戻っていった。

やっぱり貧乏神には関わらないっていうのを貫いているのか。

 

「あいつも余程だな。」

 

貧乏神、か

それだけで人に悪く思われるなんて。

優しくないな。

 

山の森を進んでいき、

中腹ぐらいに着いた。

その頃にはもう夕方で、綺麗な夕日が見えてくる。

 

そう、その綺麗な夕日が見える場所だ

紫苑から教えてもらった場所についた

 

「ここに居たんだな。」

 

森の中の岩場。

そこからは人里がよく見えてそして夕日もよく見える。

その岩場の崖先に紫苑は居た。

 

「貴方…よくここがわかったね」

 

「お前が言ってたからな。そうじゃないかって思ったんだよ」

 

「なんで山に入れるの?」

 

「顔を覚えられてるしな、」

 

「…そう。」

 

「ここ、綺麗だよな。」

 

「ええ、とても綺麗。」

 

紅い夕日とそこに映る蒼い姿の紫苑。

二つとない、凄まじい光景だった。

 

「紫苑、また家に来いよ。」

 

「嫌よ。」

 

「そうか。ならまた来てくれるのを待ってるよ。」

 

「…」

 

紫苑はずっと景色を見ていたからか

顔を合わさずただ振り向きもしなかった。

 

後ろ姿しか見せなかった紫苑だったが

俺が立ち去ろうとしたとき。

話しかけてきた。

 

「ねぇ。」

 

「なんだ?」

 

「あなたの思う不幸って一体何?」

 

「…さぁ?」

 

「さぁ?じゃないの。教えて。」

 

珍しく強く話し掛けてくる。

 

「深く考えたことはないが…大切な物が目の前から消えた時。そう思うかもしれないな。」

 

「そう…」

 

そのまま俺も紫苑も黙って立ち尽くしていた。

 

 

そんな中どこからか声が聴こえてくる…

 

「おい!そこで何をしている!」

 

指図め、哨戒天狗だろう。

 

「なっ?貧乏神?!」

 

「そうよ。私は貧乏神、私は誰彼構わず不幸にさせてしまう。だから、あなたは早く哨戒の続きに行ったほうがいいわ。」

 

「しかし…この男は…」

 

「俺は関所から許可もらって入ってきてるからな、そういう紫苑は?関所は通ってないんだろ。」

 

「………」

 

「黙りか、不法侵入とあらば…」

 

「ええ、邪魔ならすぐにどこか行くわ」

 

「そういうわけでは…」

 

天狗が話し終える前に、紫苑は崖先から飛び降りていった。

そのまま見過ごすわけにもいかない、、

 

「馬鹿!何してっ!」

 

俺もすぐ飛び降りて紫苑を庇うようにして抱き締める。

 

「なっ!離してよ!」

 

「ふざけたこと言うな!」

 

そう言い切ったとき。強く地面に叩きつけられ、斜面から転がり落ちた。

 

動きが止まったときには全身に激痛が走り、

体が思うように動かなくなっていた。

 

「ちょ、ちょっと!しっかりしなさいよ!」

 

目は微かに開く。

映っていた景色は夕日で焼けた空と涙を流しながら話しかける紫苑の顔。

 

「無事…か…」

 

最後の力を絞って言葉を発する。

微かに動く腕で紫苑の顔に触れる。

その時の腕は、所々に木片が刺さり、血で赤くなっていた。

 

「喋らないで!無理したら、余計にひどくなるわ!」

 

その声も既によく聞き取れていなかった。

次第に気が薄れていく…

目を閉じると。そのまま何も感じなくなった。

 

……

 

「ちょっと…ねぇ…返事してよ!」

 

彼はそのまま。意識を失ってしまった。

微かに息はしてる。まだ生きてる。

早く治療しないといけないが

 

そう思えど。私も体中が痛い。

今の私に怪我人を運ぶほどの力はない…

どうしたらいいかと、そう思った矢先、聞き覚えのある声がした、さっきの天狗だろう。

 

「助けて!こっちよ!早く来て!」

 

できる限りの力で叫ぶ。

 

気が付いたのか、天狗は止まってこちらを見た。だが、少し止まって驚いた表情をした後どこかに行ってしまった…

 

「ちょっと!」

 

私が貧乏神だから?

私が貧乏神だから…彼はこんなに大怪我をして死にかけて。それなのに…助けを求めても逃げられてしまう

 

「ごめんなさい…私…私…」

 

何も言えなかった。

何を言ったって彼には届かない。

死人に口なしとは言えないが、

今の彼には意識がない…

謝っても…彼は返事をしてくれない。

 

座り尽くして…

ただずっと泣いていた…

それしかできず、

それ以外考えられなかった。

私のせいで人が不幸になるなんて

私の中ではよくあることだった。

でもそれが自分を庇ってまで大切に思う人まで、死の縁に追い込まれるほどの不幸を起こしてしまった。

 

罪悪感で胸が苦しく。

何もできない自分がとても情けなかった。

 

泣き続けていたその時。

 

「姉さん!大丈夫!?」

 

妹の声だ。

振り向くとそこに女苑と先の天狗がいた。

 

「女苑…私…」

 

「姉さん…これは…」

 

女苑の絶望したような顔。

天狗の俯く顔。

どちらも私の罪悪感を膨らます。

 

「だめだよ…まだ諦めちゃ!」

 

「えっ…?」

 

「まだ息をしてる!生きてるんだよ!早くしないと!」

 

女苑は天狗に話す

 

天狗は飛び去っていく。

 

「姉さんも怪我してるんだから安静にしててて。ここで待ってて」

 

女苑もどこか行ってしまった

 

全て終わりだと思っていた

そんな中突然起きたことにまだ意識が追いついていなく。戸惑っていた。

 

「…私は…貧乏神…誰彼構わず不幸にさせてしまう…」

 

そう貧乏神なのに。

いわば奇跡が起きたという事だ。

 

考えても見れば不幸の裏返しは幸福

奇跡はまた別の類なのだろう。

 

そう思うとなんとなく自分の中で自己解決してしまった。

 

だが、そう考えているうちに、

私も体の限界が来たようだった。

次第に力が抜けていき

意識を失ってしまっていた

 

………

 

気がついたのか、体に意識は戻ってきたようだ、だが目を開けることすらままならず手足も動かない。

 

体中に怪我を負えばそうもなるか。

 

どれぐらいの間眠ったままだったのだろうか、時間を確認するすべもなく。むしろ現実で生きているのかすら怪しい。

 

「心配しなくとも、あなたは生きているわ」

 

唐突に聞こえてくる。誰かの声

心でも読んでいるのか?

 

「そう、私は心が読めるの、」

 

なるほど、目も口も使えない状態でもそれなら話せるな。

 

それならばいくつか確認したいことがある

 

「何かしら?」

 

まず俺の、心を読んでいるあんたは誰だ

 

「私は古明地さとり、地底であったことあるでしょ?」

 

あ、思い出した。あの姉妹の姉の方か

あと、それでもう一つ。

依神紫苑は。あいつは無事か?

 

「彼女もしっかり治療してもらってるわ、あなたよりも比較的軽傷だけど、精神的に来てるみたいよ。早く貴方が元気になって、彼女に会いに行きなさい。」

 

そうは言っても体のどこも動かないんでは、それもできん。

 

「そうでしょうね、まぁまだしばらく様子見よ。」

 

仕方ないな。まだ当分はこのままなんだろ。

 

「さぁ?私はそういうのは詳しくないわ」

 

そうか、だろうな。

 

それと。ここはどこだ?

 

「人里よ、もっと詳しく言うなら貴方の家」

 

自分の家か、なるほど紫苑はどこにいる?

 

「彼女は永遠亭で治療を受けてるはずよ、

妹と一緒にいるんじゃないかしら。」

 

そうか、ありがとう。

 

「どういたしまして、とは言ってもしばらくは貴方は動けないわ。安静にしておいて頂戴」

 

安静も何も動けないんだよ。

 

「そうね。」

 

話が終わるとさとりは立ち上がって離れたようだ。

扉の音がしてさとりは家から出たようだ

 

誰もいなくなると時計の音だけがよく聞こえるくらい家の中は静かだった。

 

全く…俺も無茶しすぎたか。

 

考えに深けているとまた意識が遠のいて眠ってしまった。

 

 

目が覚めたのは

その半日ぐらい経ったときだ、

 

しばらくは体が気怠いままだったが

目が開いて、手足も動かせた。

ただ、やはり動かすと痛みが走る。

余程、傷口が酷かったのだろう

 

「痛いな…これは…」

 

仕方なく動かずに安静にしておく。

 

気がつくと、物音がよく聞こえてきた。

 

「誰かいるのか?」

 

「あっ、起きたのね。」

 

聞き覚えがあるな。

 

「私よ。女苑よ、」

 

「妹の方か。」

 

「そう、姉さんがあなたの事が心配だっていうから、怪我人をうろつかせるわけには行かなくて、私が来たの」

 

「そうか、すまないな心配かけて」

 

「そりゃ、心配もするでしょ、あんな怪我して心配しないほうがよっぽどの無神経よ。」

 

「まぁ、そうだな、」

 

「動ける?」

 

「動くとかなり痛いな。」

 

「傷口開くと余計に酷くなりそうだね」

 

「あぁ、まぁな。」

 

「治療は永琳にしてもらってるから、どこぞの人里の藪医者より十二分にいいはずだよ」

 

「そりゃ、助かるよ」

 

傷テープだらけの腕

足もそんな感じだ、

 

「ねぇ、あんたさ」

 

「ん?」

 

「姉さんは崖から飛び降りたって聞いてるけど、どうして庇ったの?」

 

「…自分の中でも考えたんだ。今まで一人でいる事が多かったから、他人なんてそう気にしたことはなかった。」

 

そうだ、育ての親が居なくなってから、

誰かと少しでも時間を共にするなんて、

微塵もなかった。

 

「それで紫苑に会ってから何か感じたんだ」

 

「それがあんたの思う大切なもの?」

 

「そう、かもしれないな」

 

「そっか、姉さんが貧乏神だって知ってるでしょ?」

 

「ああ、そりゃもちろん、」

 

「貧乏神を選ぶなんてあんたもよっぽど酔狂だね、」

 

「まぁ、まず貧乏神と関わりたくないと普通思うだろう。」

 

「ましてやその妹の私は疫病神だよ。」

 

「お前疫病神なのか」

 

「そうだよ、言ってなかったっけ?」

 

「まぁ、聞いたことはない」

 

「そうだっけ、まぁ私は姉さんと違って力をコントロールできるけど」

 

「まぁ、できても出来なくても脅威なのは変わりないけどな。」

 

「まぁ、間違いないよ。」

 

最凶最悪の姉妹ってやつか。

これはこれですごいな。

 

「少しでも動くと痛い?」

 

「まぁ…」

 

「じゃぁ、無理しないほうがいいね。」

 

「動くことすらできないからな、しばらくの辛抱だ。」

 

生憎人ではないから空腹感やそういった感覚は長く我慢できる。それでも、永琳の薬なら傷口も早く治ってくれるはずだ。

 

女苑と話していると家の扉が開く音がした。

誰だろうか、訪ねることもせずいきなり開けるなんて…

 

「女苑、いたのね。」

 

「姉さん!怪我してるんだから、外で歩くのはだめだよ。」

 

「だって。心配なんだもの。」

 

「そりゃわかるけど、でも姉さんだって怪我して傷口が塞がってるわけじゃないんだから

安静にしておかないと。」

 

「もう、私なら大丈夫だから。」

 

「そうは言ってもさ。」

 

いつまでも問答が続く。

姉妹らしい会話だ、

 

「紫苑が居たいなら別にいいよ。」

 

「貴方もそうやって…」

 

「大丈夫?ちゃんと生きてるわよね…?」

 

「お陰様でこの有様だけどな。」

 

「ごめんなさい…」

 

「謝ることはない、こうなってもおかしくなかったからな逆に生きてる方が奇跡だと思う。」

 

「そうね。怪我だらけとはいえ、命に別状はないって言ってたから」

 

「なら放っておけば治る。」

 

「まぁ…間違いじゃないけど。」

 

紫苑か近づいて手に触れる。

 

「ほんとに、酷い怪我ね…」

 

そう言いながら手に触れる。

 

「まだ痛いから動かされると困るんだが」

 

「あっ、ごめん、」

 

「お前も無理するなよ。」

 

「う…うん。」

 

紫苑は俺の隣で座ると、

また手に触れてくる。

 

「やっぱり…痛いよね…」

 

「そりゃ、まぁ」

 

「なんで私を庇ったの?」

 

「…自分が傷付くよりも、お前がいなくなる方が嫌だったからだ」

 

「それが、貴方の不幸?」

 

「そうとも言える。」

 

「私は貧乏神なのよ?」

 

「ああ、そうだな、」

 

「そうだなって、そんな、なんとも思わないの?」

 

「確かに貧乏神かもしれないけど、俺からすれば普通の女性と変わりないんだ。何かと理由つけて嫌うとか近寄りたくないとか、そういうのは嫌いだから」

 

「普通の女性。ね」

 

「普段はみっともない姿してるけど、ちゃんと着飾って髪も整えて。そうすれば美しい女性だし」

 

「おふろ借りたときね、」

 

「ああ、その時、凄く勿体なく感じたんだ、でも貧乏神だからって拒否するだろうと思ってな」

 

「…私は、貧乏神だから、」

 

「そう言うと思った。だから、特に何も言わなかったんだ。」

「なんていうか…その…貴方にとって私は、大切なのね…」

 

「まぁ、それ以上、かな。」

 

「…ありがとう。」

 

「よかったね、姉さん。」

 

「うん、」

 

「あっ、そうだ、これ返すよ。」

 

女苑が持ってきたのは以前渡した袋だった

 

「あっ…この袋…」

 

「覚えてるんだな、そう、紫苑が持ち出そうとした時のものさ」

 

「そうだったの?姉さん」

 

「う…うん…一度盗もうとしたときがあって」

 

「それをわざわざ私に持たせるなんてね」

 

「まぁ、受け取っておくから、机に置いてくれ。」

 

「それじゃ私は出るね、また今度、お大事に」

 

「あぁ、ありがとうな」

 

女苑はそういうと家を出て行った

 

「紫苑は永遠亭に戻らなくていいのか?」

 

「私はここにいる。心配だから。」

 

「そうか、ありがとう」

 

そっと力を入れて手を握る。

少し痛みが走るけど

でもそんな痛みが生きてる証だと思うと

なんとなく嬉しく感じた。

 

「痛くない?大丈夫?」

 

「大丈夫さ。痛いだけだから」

 

「そっか」

 

「これからもよろしくな」

 

「えっと…うん。よろしく!」

 

 

 

今まで戸惑いもあったかもしれない

でも紫苑の笑顔がそれを晴らしてくれた

 

いつも心から誰かと居たいと思った

だから紫苑が貧乏神だと知っていても

たとえ不幸を呼んだとしても

それは俺が紫苑と居る証で

俺の心を少なからず満たしてくれた。

 

だからこれからも彼女を大切にしようと

そう誓って生きていくんだ、

 




毎回の事ですが
書き終わってから題名が思い浮かばないんですよね…
何かと考えても出てきません…
話の内容をしっかりするべきでしょうか
ちょっと考えないといけないかな。

ではまた会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

静かな心の氷結娘

どうも悠樹@夢子&松K.です

去年もやりましたこの日の投稿です。

特に言うことはありませんが

ごゆっくりどうぞ


暑い日差しが差し込む中、

ある妖精に呼ばれて

霧の湖に向かって飛んでいた

 

「あいつは…元気にしてるだろうか。」

 

毎年真夏は天狗達に呼ばれて

山の作業を手伝っている。

借りている山小屋に戻ると。

 

「次の休みに会いに来て。」

 

そんな手紙が置いてあった。

断る理由もないから向かう事にするが

 

「こんな真夏なのに大丈夫なのか?」

 

今から会いに行くのは

氷精、チルノだ。

昔は元気で明るい子だってよく言われてたらしいが、今ではそんな風には思えないくらい大人しくて静かだ。

 

「まぁ、わざわざ呼ぶってことは問題ないんだろうな。」

 

そんなことを考えながら。

霧の湖に着いた。

 

「チルノ?いるのか?」

 

辺りを見渡してもすぐには見つからなかった。

 

少し移動しながら探していると

気温が下がったような感じがした。

 

「久しぶり」

 

大人しくて小さな声

でもそれはしっかりと聞こえた。

 

「あぁ、久しぶりだったか?」

 

「うん、久しぶりだと思う。」

 

日に当たり続けるのはチルノに良くないから木陰に移動するとすぐに体を寄せてきた

 

「急に呼び出してきてどうした?」

 

「ん?うん。会いたかったの」

 

「そうか。それだけか?」

 

「うん。ありがとう」

 

そう思えば去年もこんなことがあった気がする。チルノに会ってから何年が経っただろうか。

 

「どうしたの?何か考えごと?」

 

「あぁ、俺達、最初にあってから、何年経ったかなって思って。」

 

「そうだね…もう覚えてないや」

 

「でも、まだあの家。壊されてないんだろ」

 

「うん。でもね、もう、壊させないから。」

 

「そうか。」

 

最初に会った時、

チルノに家が無かった。

そんな感じの出会いだった気がする。

 

「懐かしいね、ちょっと思い出した」

 

「ああ、懐かしいな。」

 

そう、何年か前の春先のことだったかな。

 

 

 

 

「ちょっと待って」

 

霧の湖を通過しようとした時

どこからか声が聞こえた気がした。

 

「ねぇ、待ってよ!」

 

後ろから声が聞こえて振り向くと、

青い服に青いリボン。

どこか見覚えのある少女が居た。

 

「何か用か?」

 

「あなた、何してるの?」

 

「何かと言われたら、紅魔館の用事済ませるところかな。」

 

「そっか…終わったら戻ってきて欲しい。」

 

「ん?まぁいいけど」

 

そう言って少女は湖の近くの森のところまで行ってしまった、

 

とりあえず紅魔館の用事、というか咲夜からのお願いを済ませる。

ただのお使いくらいならメイド妖精にさせればいいのに。

 

それから霧の湖に戻ると、

すぐに少女が話しかけてきた。

 

「おかえり。」

 

「あ、あぁ、ただいま?」

 

いきなりおかえりと言われるのも

少し疑問に思うが…

 

「こっち来て。」

 

湖の木陰に誘われて座りながら話をしていた。

 

「あなた、どこから来たの?」

 

「どこからって言うと、うーん…」

 

考えてみると特に落ち着ける場所はないな…

普段誰かしらのお使いで動き回っていることが多い。

 

「基本的には人里の宿…かな?」

 

「宿…?家じゃないの?」

 

「家は持ったことないな。」

 

「そうなんだ。」

 

「そういえば名前は?」

 

「私はチルノ。」

 

確か氷の妖精だったか?

 

「チルノ?氷の妖精?」

 

「そうだよ、あなたは?」

 

「俺はレイ、水を操れる程度の妖怪かな。」

 

「レイ。妖怪なんだね。」

 

「お前こそ、家はいいのか?」

 

「家は…」

 

俯いて少し悲しそうに見える。

家族に何かあったのか?

喧嘩でもしたのだろうか、

それなら、少し後ろめたく思うのもわからなくはないが…

 

「すまない、そんなつもりはなかったんだ」

 

「ううん。いいの、毎年だから」

 

毎年…?毎年何かあるのか?

 

「何かあるのか?」

 

「冬にね、三月精達が私の家を壊すの」

 

三月精…?あぁ、なんとなくわかる。

 

「喧嘩したのか。」

 

「そういうわけじゃないよ?むしろイタズラ仲間で、仲はいいほうだし。」

 

「そうなのか、もしかしてそのイタズラで家を壊わされてるのか?」

 

「うん、いつもは仕返しにとっちめるんだけど、なんか今年はそんな気分になれなくて。」

 

「それじゃ、夜はいつもどうしてるんだ?家がないのは辛いだろ」

 

「うんまぁ…三月精に泊めてって言うのも気まずいし…紅魔館はよくお茶とか遊びに行くけど泊めてもらえなかった。」

 

もしかしていつも野宿なのか?

 

「だから、この木陰でお昼寝したり夜も寝てる。」

 

「うーん…他には?ほら慧音先生とかいるだろ。?」

 

「人里でよくイタズラしてたから…多分無理かな…」

 

「他に友達は居ないのか?」

 

「いるよ?大ちゃんっていう大妖精の女の子が居るんだけど…チルノちゃんらしくないって、最近会うことが減ったんだよね…」

 

「そうか…」

 

チルノの自分らしさって何だろうか。

 

「お前にとっての自分らしさってなんだ?」

 

「ちょっと前までは、おてんばだとか、バカみたいなことしてた。さいきょーだって、でもそれは妖精同士だけ。まぁ、元気で明るいってのはそうだったかな。」

 

「今は、大人しくて内気に見えるけど」

 

「そうだよね。どうしちゃったんだろう」

 

チルノの変化に周りも戸惑うだろうが、それよりもチルノ自身変わった自分に戸惑ってしまっている。

 

「そのなんだ、落ち込んてばかりでもだめだからな、なんか楽しいこと探そう」

 

「楽しいこととはちょっと違うかもしれないけど。本を読んでたかな。」

 

「本か。」

 

「でもね、家を壊されたときに一緒にいくつが駄目になっちゃったからどうしようかなって」

 

知り合いとも話さず、楽しさも見つからず唯一の本すら無くなって。

追い込まれてるというか。

そんな状況だと流石にこちらも心配になる。

 

「本なら紅魔館の大図書館があるじゃないか。」

 

「うん。今度行くんだ。」

 

「俺もいくつか用事あるし。良かったら今から行くか?」

 

「ううん。私はもう少しここに居る。」

 

「そうか。」

 

そろそろ移動しようかと立ち上がった時、チルノが小さな声で話しかけてきた

 

「あの…よかったらもう少し、少しだけでいいから、居てくれないかな…?」

 

寂しそうに囁きながらそうお願いされる。

何故か断る気になれなくて、

むしろ断ってはいけないような気がした

 

「いいよ。」

 

いつものように返事をして。

再びチルノの隣に座ると、チルノは肩を寄せてきて、少しすると肩に頭を乗せる

 

「どうした?」

 

「うんと…だめかな、?」

 

「ダメじゃないが…もしかして寂しかったのか?」

 

「うん…」

 

「そうか」

 

半泣きの状態で俯いてばかりで、どうにか声をかけてやりたいんだが…

 

「ずっと一人でぼうっとしてたから、こうやって話するのが久しぶりで。ちょっと嬉しかった。」

 

「楽しかったか?それなら良かった」

 

「うん。楽しかったよ、ありがとう」

 

僅かにチルノの顔に笑顔が見えた。

少しでも前向きになってくれているならそれはそれでいいか。

 

「家、無いんだったな。」

 

「そうだけど、どうしたの?」

 

「知り合いに頼んでみるよ。」

 

「でも、また壊されちゃうよ。」

 

「でも、今無いよりかはいいじゃないか。」

 

「そうだけど…」

 

「それに、俺もたまに寄るからさ。」

 

「う、うん…ありがとう。」

 

「それじゃ、そろそろ行こうかな」

 

そう思って、立ち上がった時、手に冷たさを感じた。チルノが手を掴んでいる

 

「チルノ?」

 

「あ…あの…えっと。」

 

顔を赤くして照れているようで

何か言いたげにモジモジしている。

 

「まだ居たほうがよかったか?」

 

「あっ、そうじゃなくて」

 

「ごめんな、俺も他にやることあるからさ。」

 

「わかってる…えっと…今日はありがとう!」

 

そっと手を離すと。チルノは紅魔館の方に向かっていった。

俺も別の用事を済ますために人里に向かった。

 

 

それから数日後。

博麗神社に寄った時だ、

 

「そうだ、萃香。」

 

「おっ、なんだ?酒の誘いか?」

 

「いや、他で用事があるんだ。」

 

「なんだー、そーなのかー」

 

話聞く気あるのか?

 

「さ、酒はまた今度な…それで知り合いに家を建ててやりたくてだな、」

 

「家?家なら私じゃなくて他にもいるだろう?ほら、人里の面子とか勇儀とかさ。」

 

確かにそうか。勇儀、となると旧都か。

 

「そうか、確かにな、勇儀に聞いてみるよ。」

 

「別にいいよー」

 

旧都か…以前、酒飲みの妖怪に絡まれて散々な目に遭ったばかりで行くのは気が引けるが……まぁ言い始めたのは俺だからな。

 

悪いことが起こらないよう、少し賽銭だけして博麗神社を後にして妖怪の山に向かった。

 

山の頂上付近に着くと、

後ろから誰かに話しかけられた

 

「そこのあんた、地底に行く気かい?」

 

振り向いてみるとそこには勇儀が居て

旧都まで向かわなくて済んだ。

 

「勇儀か、丁度いいな。」

 

「あれ、レイじゃないか、また地底の頼みごとでも受けてくれたのかい?」

 

「あっ。いや、勇儀に用事があるんだ。」

 

「私?私がなんか頼みごとしたか?」

 

「俺が頼みたいことがあるんだ」

 

「ほう、そういうことか、お前から頼みに来るなんて珍しいね、で、どんなことだい?」

 

「知り合いに家を建ててやりたくてな、勇儀なら旧都でいくつか経験あると思って、協力してもらえると助かるんだが」

 

「家か、なるほどね、まぁ普段から良くしてもらってるからもちろん受けるよ。で、どこの誰だい?」

 

「チルノって妖精は知ってるか?」

 

「氷精だろ?知ってるさ、建てると言ってもあいつの家はいつも壊されてるじゃないか?」

 

「まぁ、だからこそ壊れないような家をお願いしたいんだ」

 

「それってつまり、弾幕にも耐えれる家ってことだろ?」

 

「まぁ…そうなるだろうな…」

 

「弾幕に耐えるってなると金属だな…でもそんな量の資源はないぞ…」

 

「石…でなんとかなるか?」

 

「強度としてはいいけど、もしも三月精達が一気に弾幕ぶつけてきたら、流石に耐えきれないぞ?」

 

家を建てるってのも大変なんだな。

頑丈な家ってのは難しいのか。

そうなると協力してもらえるかどうか考えものだな

 

「どうするかな…」

 

「例えば、木で建てたとして、魔法か何かでそういう風にできないのか?」

 

魔法…その手があったか。

魔法ってなると魔理沙かアリスかパチュリーだが、魔理沙は攻撃的だからそういうのはわからなさそうだな。となると近いところでパチュリーだな。

 

「もちろん私は魔法なんて使えないからな、そうするなら宛を探してもらわないと困るが」

 

「それに関しては、まぁ大丈夫だろう。」

 

「まぁ、レイのことだからな、いつからでいいんだ?どうせ私は暇だから今からでもいいんだが」

 

突拍子もないこと言い出すな。

まぁこういうのは早い方がいいのかもしれないな。

 

「そうだな。そうしてもらえると助かる。」

 

「それじゃ、私は人里に行って材料と人員集めてくるよ。魔法のことも合わせて話しておいてくれるか?頼んだよ」

 

そう言って勇儀は人里に向かっていった。

 

俺もチルノに話しをするため、霧の湖まで向かった

 

 

「チルノ?いるか?」

 

少し探すと木陰で本を読んでいるチルノを見つけた

 

「何読んでるんだ?」

 

「これ?えっと…」

 

本を閉じると表紙が見えた。

 

「芸術か、造形に興味あるのか」

 

「うんと…気になってたんだ。こういうの」

 

チルノは本を置くと氷を作り出し、形を変え始めた。

 

「こんな感じ、かな。」

 

チルノが作り上げたのは家の形の氷像

良く出来ている。もしかして、自分の家を模したのだろうか

 

「すごいな、さっき読み始めたばかりなんだろ?」

 

「ん?うん、そうだけど、そんなに上手かな?」

 

「ああ、良く出来てると思うぞ。」

 

「うん。ありがとう。」

 

「それ、飾ると良さそうだよな」

 

「今度紅魔館に持っていってみようかな。」

 

「家、建てるから飾るといいんじゃないか?」

 

「えっ?」

 

「ほら、この前言っただろ。今から始めるんだよ。」

 

「そ、そうなんだ。」

 

「それで。チルノの家ってどこにある?」

 

「えっと…ついて来て。」

 

湖の近くの森を進むと開けたところに出た、そこには屋根や壁が崩れた廃屋が見えた。

 

「ここが、チルノの家」

 

「また、壊されちゃって。直すのもなんかね…」

 

呆れて吐き出すように話すチルノ。木陰に座り込んで家を眺めている。

 

「家を建てるというより、建て直す、の方が合ってるな。」

 

後ろから声が聞こえて振り向くと、

勇儀とその連れ達がいた。

何人か。人里の人間もいるようだ。

 

「勇儀、来たのか。」

 

「ああ、それで、ここでいいのかい?」

 

「頼むよ、」

 

「それはいいんだが、チルノの様子なんかおかしくないか」

 

確かに木陰に隠れて怯えているように見える。

 

「あの、もしかして。」

 

「ああ、すまない、話してなかったよ」

 

「おいおい、大事なところ抜かすなよ?」

 

怯えるチルノを宥めてやらないと。

 

「チルノ、確かに協力するとは言ったけど基本的には彼らの仕事なんだ、教えるの遅れてごめんな。」

 

「う、うん。」

 

勇儀の後ろの人間達が何か話している。

よく聞き取れないが、何か不満そうだ

 

「どうした、お前ら」

 

「いや、あの青くてちっこいの、チルノって妖精だよな。」

 

「そうだが?それがなにか?」

 

「いやな…散々いたずらに振り回されて迷惑被ってたから、そんな目の敵の家を建てるってもなぁ、まぁ、他でもよくあるんだろうけど。」

 

「あ、あの…ごめんなさい」

 

「あっ?い、今なんて?」

 

「ご、ごめんなさい…」

 

「チルノ、落ち着いて。」

 

「そんな状態で謝られちゃ…こっちが悪いことしたみたいじゃねぇか…頭上げてくれよ…」

 

「まぁまぁ、心変わりの一つくらい許してやりなよ。」

 

勇儀のその一声で人間達は気を収めたようで、準備に取り掛かった。

 

「それじゃ、始めるからな。」

 

「はい…えっと、お願いします。」

 

離れて眺めているだけでは言い出した本人として顔が立たないと、思い何かできることはないかと探していたが

 

「すまないな、レイ、こういう仕事は危険が多いから、いくらお前でも流石に任せれないんだ。あと、基本的な家の形は出来てるからすぐ終わるよ。わざわざ来てもらって申し訳無いけど。人手は足りてるんだ。」

 

「そ…そうか…わかった。」

 

木陰に居るチルノの隣に座り込み

作業を眺めていた。

 

「手伝わないの?」

 

「どうも、予定していたよりも早く終わるらしくてな。人手は足りてるらしい。」

 

「そうなんだね。」

 

「どうするかな」

 

考えに更けていると、

小腹が空いてきた。

それで一つ思いついたことがある。

 

「チルノ、ちょっとついて来てくれ。」

 

「えっ?う、うん。」

 

二人で人里まで向かい

握り飯やパン、そしてお茶を買い込んだ。

そしてそれを持って家のところまで戻る。

 

「これ。お昼ご飯だね。」

 

「手伝いがない分、こういう所で協力できると思ったんだよ。」

 

「そうだね、皆。お腹すいてるかな、」

 

「まぁ、そろそろ昼飯時だから、いい具合だと思うんだが。」

 

そう思って待機してると、勇儀が荷物に気付いたようだ。

 

「ん?それは?飯か?」

 

「昼飯は済ませたか?一応全員足りる分ぐらいは買ってきたんだが。」

 

「昼はまだ済ませてないよ、むしろ、そろそろ休憩挟もうとしてたとこだからな。丁度いいや。みんな!飯にするよ!」

 

勇儀が叫ぶようにすると、作業してた連中は手を止めて集まってきた。

 

「二人が食事の用意をしてくれたんだ、せっかくだから頂こうじゃないか」

 

レジャーシートを広げ。食事が並ぶ。

小さめの宴会のような感じになった。

もちろんお酒はないが。

それはまぁ、仕方ないかと。

こんな感じの日々が数日は続いた。

 

そして。完成する頃。

チルノの家に向かうと。

立派になった家がそこにはあった。

 

「すごい…これ、本当にいいのかな」

 

「何言ってるんだ。当たり前さ、まぁ、まだ手直しがいくつかあるから、もう少し待っておくれよ。」

 

勇儀が呼ばれると家の外観と内装の見周りに行った。

頷いて笑顔になったところを見ると、

どうやらこれで完成のようだ。

というか、勇儀が満足するほど立派な家なら俺も欲しいくらいなんだがな…

 

「いやぁ、久々だからつい興奮して手の混んだものになったなぁ。」

 

「いいじゃないか。その方がありがたいよ」

 

「まぁそうだな!私達の仕事はこれで終わりだよ。あとは任せたよ?」

 

「ああ、助かったよ。報酬は今はないから後日でいいか?」

 

勇儀と話していると、連れの作業員達が割り込んできた。

 

「いや、報酬はいらないや。正直な所暇だからってのもあるが、何より楽しかった。」

 

「あと、毎日の昼が何よりご褒美みたいなもんだったしな。お嬢さんと話しながらの飯なんて最高だったよ。ありがとうな。」

 

「い、いえ、そんな、」

 

チルノは戸惑っているのか

困り顔と照れ顔が入り混じっていた。

無理もないだろう。前まではいたずらばかりでこんなふうに接してもらったことないだろうからな。

 

「よかったな。チルノ。」

 

「う、うん。」

 

「それじゃ、私達は失礼するよ。あいつらはあんなこと言ってるが、私からのお礼として報酬は出しとくから。心配しなくていい。」

 

「ああ、わかった。本当にありがとう」

 

勇儀は、おう、と返事をして荷物を持ち上げて里へと向かっていってしまった。

 

「完成したな。 」

 

「うん。なんか。ちょっと嬉しくなってきたな。」

 

薄っすらと笑顔を移すと。

歩き始めて家の中に入って行ってしまった

 

「さて、最後の仕上げをするか」

 

家をあとにして大図書館つくと。

まだかと言わんばかりにパチュリーが暇そうにしていた。

 

「思ったより早かったのね。あと2日くらい掛かるんじゃないかと思ってたのだけど」

 

「まぁ、指揮をしてるのが鬼だからなそりゃ、早くも終わるはずだよ。」

 

「鬼とその愉快な仲間たち、ね」

 

「まぁ、そういうこと。頼むよ」

 

「外に出るなんて。半月前の宴以来だわ。」

 

「引き篭もってると体に良くないぞ」

 

「好きで篭ってる訳じゃないのよ、」

 

持病の喘息、だったか。

そういえばそんなこと言ってたな

 

「たまには、外に出ないとほんとに良くないからな?」

 

「外庭を散歩とかしてるわ?」

 

「そうか。」

 

気がつくと夕方になっていて、

赤々とした夕日がよく見えた。

 

「あら…夕日ってこんなに綺麗なのね。」

 

「そりゃ、お天道様だからな。」

 

「本で見るより何倍も綺麗じゃない。」

 

「あれは、書物だからな、そのへんは劣るさ」

 

話をしているとチルノの家の前まで着いた

 

「ここね。あら、相当立派じゃない」

 

「ホントな、俺もこんな家欲しいよ」

 

「あんたは、いつも宿とか野宿とかよね。」

 

「まぁ、俺のことはいいから頼むよ」

 

「ええ、良いのだけど。家の中に誰か居ないかしら?確認してほしいわ」

 

「あぁ、わかった」

 

多分チルノが居るかもしれない

さっき家に入っていったのは見たから

居たとしたら呼ばないとな。

 

「チルノ?いるかー?」

 

家に入って軽く叫ぶ。

特に音もなく声も聞こえない

もしかしたらチルノはいないのかもしれない。

 

そう思ったとき、寝室のような部屋のベットで寝ているチルノを見つけた。

 

「あ…寝てるのか…こりゃ困ったな…」

 

仕方なく抱き上げて家の外に出る

 

「あ。あんた…寝てるからと言ってそれはないわ…」

 

いわゆるお姫様抱っこ状態にパチュリーはドン引きしていた。

 

「し、仕方ないだろ。」

 

「ま、まぁいいわ。少し下がってちょうだい、、」

 

パチュリーが魔法を唱えると

家の周りにいくつか魔法陣が展開していく。

次第に家の周りに薄っすらと結界のようなものが張りついて。すぐに見えなくなった。

 

「これでよし。試して見るかしら?」

 

「俺か?俺は妖精ほど弾幕は強くないしな。頼むよ」

 

「そう。私がやってみるわ。」

 

「壊さないでくれよ?」

 

「私の弾幕は確かに協力だけどそれに耐え得る結界を張ったつもりよ。耐えれるはずだから幾ら妖精達が束になったってビクともしないわ。」

 

「まぁ、大魔法使いの弾幕ならそりゃな。」

 

パチュリーはまた魔法陣を繰り出すと

その魔法陣からいくつも魔法が放たれて。

勢い良く家にぶつかった、

 

「えっ?あっ…い、家が…」

 

今の衝撃の音でチルノは起きてしまったようで。弾幕が家に当たる瞬間だけを見てしまったようだ。

 

「あっ、起きたな。」

 

衝撃の影響でいくつも煙が発生したが、

その煙が消えたとき。そこにあったのは傷一つないさっきの家だった

 

「あれ?ど、どういうこと?」

 

「チルノ、これでやっと完成だ。」

 

「えっと…う、うん…」

 

「とりあえず降ろして上げなさいよ」

 

「そうだな、チルノ、ちょっといいか?」

 

「えっ?あっ・・・!はぅぅ…」

 

チルノは自分の状態を認識するとすっかり赤くなってしまって、降ろした瞬間座り込んだ。

 

「あっ、あの…えっと…なんで」

 

「ごめんな、寝てたからこうするしかなくてな?」

 

「流石に女の子にあれはないわ。」

 

「あっ…パチュリーさん…」

 

「だから…ごめんって…」

 

「う、うん…でも、ちょっと嬉しかった…」

 

「おっ、おう?」

 

「まぁ、用事も住んだし、私はちょっと散歩して帰るわ。また結界が弱くなったときは呼んで頂戴、それじゃ、お幸せになさいね。」

 

パチュリーはそういうと歩いて紅魔館まで向かっていった

 

チルノはまだ、座り込んだままだった

 

「チルノ?大丈夫か?」

 

「なんていうか、ずっと考えがとまんなくて…よくわかんなくて…」

 

「チルノ、落ち着け?とりあえず家の中に行こう。」

 

「う、うん…」

 

チルノは立ち上がるといきなり手を繋いできた。いや、力が入り過ぎて、繋ぐというより掴んできたの方が合ってるかもしれない…

ここは我慢するしかないか

 

家の中は家具や荷物がしっかりと整頓されていて、本当にキレイだった。

 

チルノは椅子に座り込んで蹲っていた

 

「ほんと…わたし…どうしちゃったんだろう…」

 

「チルノ。」

 

少し経つとチルノは椅子に座ったまま寝てしまっていた。

 

「これは、またか。」

 

椅子から今度はおぶって寝室のベットまで向かう、

 

ベットにおろして、薄く毛布をかけ、

近くにあった椅子に座り込む。

 

「一息ついたな…」

 

「わ、わたし…あの…レイ…」

 

「チルノ?」

 

いきなりのことで驚いたが、しっかりと寝ているようだから、恐らく寝言だろう。

夢まで見るくらい疲れたのだろうか。

 

「ここ…どこ…」

 

悪い夢でも見てるのか?

 

「いやだ…まって…いや!」

 

相当魘されているようで。

顔色も悪く、息も荒い。

 

「おい、チルノ?大丈夫か?」

 

「あっ…レイ…」

 

目は覚したようだ。

大丈夫だろうか?

 

「よかった…夢だったんだ…」

 

「悪夢…だったみたいだな」

 

「うん…でも、なんか…」

 

「うん?どうした?」

 

「いいや、何でもない」

 

チルノはまた布団に入る。

 

「しばらくはここに居るから。安心しろ」

 

「うん、ありがとう」

 

しばらくするとチルノはまた寝入ったようで今度は特に魘されている様子はなく

落ち着いた様子だった。

 

「俺も疲れたな…」

 

近くにあったソファに座り込み

楽な姿勢で寝入った。

 

目が覚めると。チルノはまだ寝ていた、

外はまだ日の出る前くらいだった。

 

「まだ、寝てるのか」

 

「ん…起きてるよ」

 

「よく眠れたか?」

 

「うん」

 

「俺はそろそろどこか行こうかな」

 

「いつでも来て…」

 

「あぁ、ありがとな、」

 

荷支度をして家から出ると窓からチルノがこちらを向いているのが見えた

どこか寂しそうな表情だったが…

 

「また今度行けばいいか、その時までお預けってことでいいかな。」

 

薄々は気づいて居るが、チルノも女の子、

誰かが気になるのは妖精も変わらず、

チルノにとってそれがきっと俺なのだろう

 

それから何度かチルノの家に寄っていた。

話をしたり、氷の造形をもらったりそのお返しに食事を行ったりと、チルノとはいろいろあるが。

 

冬のことだ、雪が積もって気温も下がり

俺も寒さのせいで外に出歩くことが減ったせいか、チルノに会う数が減ったその頃ことだ

 

人里で知り合いの所に行こうとしたとき

里の外から大きな音がした。土煙のようなものが遠くから見える、

方向的に霧の湖の方だ、また紅魔館の吸血鬼姉妹が喧嘩でもしているのだろう。

 

そう思って煙を少し眺めていたが

いつもよりも煙の位置がズレている

 

「おかしい?こんなに強く煙が立つか?」

 

吸血鬼姉妹の喧嘩もよっぽど派手なのだろうか、いや…そんなことならもっと大きな音があるはずだ。

 

「嫌な予感がしてきたな…」

 

すぐに霧の湖の方まで飛んでいく。

上空からだとよくわかるが紅魔館ではなく湖の側の森の中からだ。

 

「冬に壊されるって…言ってたな…」

 

多分三月精だろう。

よっぽど家は大丈夫だとは思うが。

チルノが心配だ。

 

「やめて!もうやめてよ!」

 

急ぎながら飛んでいると。

叫ぶ声が聞こえた。

恐らく今のはチルノの声だ。

現場まで着くとやっぱり三月精がいた。

 

「な、なんでいるのよ。」

 

「あの人に作ってもらったの!壊させないから!」

 

「な…何よ!…」

 

三月精達が弾幕を撃つと

それに合わせて打ち消すようにチルノも弾幕を撃つ。

 

「も、もう!そんなに大事ならもういいよ!」

 

サニーミルクが痺れをきらして諦めたようだ。手を止めるとチルノはすぐに座り込んでしまった

 

「おいチルノ!大丈夫か?」

 

「レイ…わ、わたし…頑張って守ったよ…?」

 

「あぁ、ありがとう。でも無理はするなよ?」

 

「うん…ごめんね…」

 

「謝らなくていい。」

 

突然やってきてチルノに寄り添う俺を見て、スターサファイアが恐る恐る話しかけてきた

 

「あなたは誰?」

 

「俺か?俺はレイ、チルノの家を建てたのは俺なんだ」

 

「そうなの?なんか悪いことしちゃったかな」

 

「ああ、壊されると、チルノも悲しむし俺も困る。」

 

「そっか、ごめんなさい、」

 

「もう、今度からは壊しに来ないよごめんね、チルノちゃん」

 

ルナチャイルドは深々と謝ると三人でまたどこかに行ってしまった。

 

「家、無事だな。よかったよ。」

 

「うん、よかった。」

 

「チルノは無事か?三人分を一度に対処しようなんて無茶苦茶だぞ…」

 

「ちょっとやりすぎて疲れちゃったな…あはは…」

 

「立てるか?」

 

「ちょっと待ってね…」

 

「仕方ない、ほら早く」

 

「ありがとう。」

 

チルノをおぶって家まで行き、椅子に座らせてお茶を出す。

 

「ありがとう、助けてもらってばかりで。なんかごめんね。」

 

「謝る必要はないよ。」

 

「久々にあんなに力いっぱい頑張ったかな。最近ずっと本読むばっかだったから。」

 

「でも、チルノがあんなに強いなんて思わなかったよ、相手は三人だぞ?」

 

「うん、でも三月精達とはいつものことだよ?あれくらいなら日常茶飯事だったし。それに妖精相手だったら負けるつもりは無いし」

 

「チルノってホントはすごく強いんだな。」

 

「妖精相手なら、だけどね、一応、霊夢や魔理沙からは面倒くさがられるかな。それくらい相手にしたくないってよく言われてた。」

 

「俺じゃ絶対敵わないな。何せ最近妖怪になったばかりだし」

 

「そうなんだ。そういえば、水を操るんだっけ?」

 

「あ?ああ。大したことはないよ。もし俺とチルノと弾幕勝負したとしても、相性の関係で勝ち目もないし。」

 

「そうだね。水は凍っちゃうから、わたしの方が有利かもしれないね。」

 

「まぁ、そんなことはしないけどな。妖精に弾幕勝負しかけるなんてしないし、もっと言うならチルノが痛い思いするのは俺も気分よくないしな、」

 

「わたしの心配もしてくれるんだね、ありがとう。」

 

「まぁ、なんというか、よく一緒にいたからなそりゃ…まぁ」

 

よく考えると俺も気がつくとチルノの事を考えてる事が多い。それだけ親しくなっているのは確かだが…でも俺はチルノのことを大切だと思っている。

 

「ねぇ?それならさ。」

 

「うん?」

 

「これからも一緒に居て。もし何かあってもここに帰ってきて?」

 

「それは毎日ってことか?」

 

「そうだよ、一緒に居て欲しくて。」

 

「ありがとな。そうするよ。」

 

もし何かあってもここに帰ってきて……?

この言葉に少し疑問が浮かぶ…

まぁ、それだけ大切ということかもしれないが…

 

 

それから俺はチルノと一緒に日々を過ごした。いつものように誰かしらのお願いは聞いてそれに対して動きはするが、

自分から探すようなことはなくなった。

以前は自分の時間というのがどうもつまらなく感じていたからだが、今は違う落ち着ける場所もあれば、チルノもいる。

 

だから、これからはゆっくり過ごそう。

そう決めて毎日を過ごしていた。

 




チルノにはこんなキャラもありなんじゃないか
そんなふうに私は思ってます

もちろん⑨も良いとは思うんですが
人を馬鹿にするのはあまり好きな質ではないので
こんな感じのキャラ設定が多くなりがちです…

ではまた会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

氷結娘は夢を見る

どうも夢子です

静かな心の氷結娘のちょっとした番外編みたいな感じで書きました


ごゆっくりどうぞ


「それじゃちょっと行ってくるよ」

 

そう言ってから彼はもう一日帰ってきていない…

 

「大変なのかな…でも私はここに居ないと…」

 

彼が帰ってきて私が居なかったらきっと残念に思うだろう。

 

「無事だといいけど…」

 

彼…レイはわたしの大切な人。

ボロボロの家をわざわざ人まで連れてきて建て直してくれた。

それだけじゃない、わたしが困っているときはいつもの助けてくれた。

そんな彼だから余計に心配してしまう。

 

「もうお昼になっちゃうな…」

 

昨日の朝、彼は手紙で呼ばれて

人里まで行った。それから帰ってきていない

 

 

「ちょっと、探してこようかな。」

 

家を出て人里に行く。

相変わらず、人里は賑やかだった。

子供達は元気に遊び回り、商売人が居て、話し込む大人達。そんな風景だった。

 

「前見た景色とは、なんか違って見えるのはなんでだろう?」

 

きっとイタズラしてた頃とは見方が変わったのかもしれない、その時はいつでも何でもかんでも標的だったから。

それと比べると今のわたしは…この人達と対して変わりがない。

家で過ごして、誰かと暮らして、誰かと話して周りを見ながら生きてる。

人の暮らしがこんなにも落ち着いているなんて思いもしなかった。

 

「あっ!お前!」

 

後ろから話しかけてきたのは肉屋の若い衆だった。

 

「あっ、えっと…前はイタズラばかりしてごめんなさい。あと、いつもお世話になってます、ありがとうございます。」

 

「えっ?お前?なんだ…なにが何だか…?」

 

「あの、レイ見てませんか?」

 

「お?レイは一昨日に少し話してから見てないな?何かあったのか?」

 

「そうですか…ちょっと探してるんです。わかりました、ありがとうございました。」

レイは肉屋とは縁深いのか仲がいいから、

何かわかるかと思ったけど。特に何もなかった。

 

「お、おう、だけどよお前さん…ど、どうしたんだ?そのなんだ?風格っていうか。」

 

「えっ?わたしが何か?」

 

「いや、だってよ、昔はイタズラばっかで喋り方ももっと生意気で、そんな落ち着いてなんかなかっただろ?」

 

「えっと…心変わり…?かな?」

 

「ま、まぁそうだよな…人間心変わりぐらいするよな。あ、妖精だったか。」

 

「わたしはそろそろ行きます、ありがとうございました、またお肉買いに来ますから」

 

「おう、いつでもおいで」

 

肉屋の若い衆は首を傾げながら店まで戻って行った。多分、まだここの人達はわたしがイタズラっ子だってイメージが消えてないんだ

 

しばらく見渡しながら歩いてもやっぱりレイは居なかった。いろんな人に声をかけても、声を掛けられてもその手がかりすら、見つからなかった。

 

「もう…帰ろう。」

 

そう思って人里を後にしようとした時、

 

「おい!そこのお前!」

 

多分わたしかもしれないと振り返ると

そこには大男が居た。

 

大男はいきなりわたしの腕を掴んできて、

思いっきり引っ張ってきた。

 

「い、痛い!やめてください!」

 

「へへ、やっと捕まえたぜ、これで借金まみれとはおさらばだぜ!」

 

「わたし!賞金首なんかじゃないです!」

 

「はぁ?何言ってんだ!十分な金になるほどおめえは悪人だよ!」

 

大切な事を忘れていた、今のことを言われて思い出した、わたしはイタズラっ子…その昔の歴史は消えない…だからわたしは…

 

でも、ここで立ち止まっているわけにはいかない、家に帰らないと、

もしかしたらレイは帰ってきて居るかもしれない、そうじゃなくても帰ってレイの帰りを迎えるんだ。

 

「やめてください!」

 

力を込めて大男の腕を振り払う。

そうすると大男は思いっきり殴りつけて来た

 

「いやっ…」

 

「ちっとはおとなしくしやがれ」

 

拳骨はわたしに思っきりぶつかり…

少しずつ意識が薄まって…

いつの間にか意識はなくなってた、

 

 

目が覚めると布団の中で横になっていた

起き上がって周りを見渡すと

屋敷の大広間のような部屋にぽつんとわたしは寝ていたみたいだった。

 

「ここ…どこだろう…」

 

その言葉を放った瞬間。

何かを思い出した。

ここは…見覚えがある感じがする…

 

「目が覚めたかい?」

 

聞こえてきたのは男の人の声、振り返ると歩いてきていた、さっき襖を開けて入って来ていたみたいだ。

 

「あ、あなたは…?」

 

「僕はレイ。金貸しをやっているんだ。」

 

…えっ?レイ…?

でも…見た目も背も全く違う…

この男は低くて…でも彼はもっと背が高い…

同じ名前の別の人…

 

「金貸し…なら、わ…わたし…売られたんですか…」

 

何か引っかかる…

さっきから見覚えのある風景ばかり。

何かあるの…?

 

「そう、君は僕が預かった。大男に君は襲われただろう?」

 

「はい…」

 

「彼は君を襲ったあと、僕のところに来て君を売ろうとした。」

 

「それじゃ…わたし…」

 

…人を売るなんて信じられないけど…でも…どうすればいいか…わからない…

 

「これから…わたしは…ねぇ…レイ…どうすれば…」

 

泣きそうだった。

いや、泣いている

胸が苦しくなって声が出なくて…

レイにもう一度会いたくて…

涙が止まらなかった。

 

「確か、君の愛人もレイだったね。」

 

「な、なんで…それを…?」

 

「僕は彼の弟分でね。彼とはとても仲良くさせてもらってるんだ。」

 

「そう…なんですね…」

 

「君がこんなに変わっているなんて思いもしなくて、最初、彼から聞いたときは嘘だと思っていたけど。ほんとに君は変わったんだね。」

 

「でも…もう、わたしは…」

 

涙が止まらなかった。

 

「泣かないでくれ。君にはそんなつもりはないんだ。だって君は彼の愛人だろう?僕が君に何かしたら彼が何するかわからないからな。」

 

「レイ…わたし…」

 

男は必死に弁明していたがよく聞こえていなかった。会いたい一心でずっと苦しかった。

 

「ちょっと落ち着いてくれよ…もぅ…仕方ないな…」

 

男は部屋を出ていった

わたしはそのまま泣いていた…

少しすると男が手に箱を持ってまた戻ってきた。男が箱を少し弄ると…

音程が高くて綺麗でゆっくりとした音色が聞こえた。

 

自然と気が落ち着く不思議な音色だった。

 

「これを聞くと不思議と落ち着くんだよね。」

 

男は音の鳴る箱をわたしに渡すと座り込んだ。

 

「これはね、レイが君の為にって、私に作らせたものなんだ。」

 

「レイが…これを?」

 

「そう、音程から曲調まで全部譜面で作ってあってね。題名まであるんだ、たしか…静かな心の氷結娘、だったかな」

 

「静かな心の氷結娘…」

 

「多分、今の君のことだと思う。」

 

「私の為に…」

 

「君も彼に愛されているね。」

 

悲しい気持ちが次第に薄れていったが。

それでも会いたい気持ちはより一層強くなった。だからこそ、ここにいるばかりじゃだめだと思えるようになった。

 

「それは君にあげるよ、元々彼から君へのプレゼントにするつもりだったそうだけど、先に君に見せてしまったからね、まぁ、仕方ないよ。」

 

「あの…ありがとうございます」

 

「お礼はいらない。彼の大切な人なら僕にとっても大切な存在だからね。」

 

わたしは涙を拭いて立ち上がって深々とお礼をした。いらないとは言われてもこんなに親切にしてもらってなにもしないわけにはいかなかった。

 

「ははは、ほんと君は変わったなぁ。」

 

音の止まった小箱を眺めると、とても勇気が湧いてくる感じがした。

帰らないといけない、

 

「あ、あとちなみに。」

 

「はい?」

 

「あの大男なんだけど、」

 

大男…わたしを襲ったあの…?

 

「今頃、慧音先生のとこで大罰を食らってると思うよ。」

 

「そ、そうなんですね」

 

「当たり前さ、女の子とっ捕まえて、拳骨や暴力振るったうえに人に売るつもりなんだ。人として失格だね。」

 

「でも、あなたは。」

 

「まぁ、確かに預かったとは言ったけど、そういう意味とはちょっと違うかな。僕ら金貸しの間では、人から何かを貰うときや預かるときは買うって言う癖がある人もいてね、それに近いのがつい出てしまったんだよ。勘違いさせてしまって申し訳ないね。」

 

「そうなんですね。」

 

「まぁ、正確には彼から取り返したんだ。多分あのままだと本当の意味で君は売られていただろうね。」

 

そう言われるとぞっとする…

彼がいてくれて助かった…

 

「あ、ありがとうございました。」

 

彼ならレイがどこか行ったか知っているかな…

 

「あの、レイのことなんですが…」

 

「彼がどうかしたかい?」

 

「昨日の朝から、帰ってなくて…探しに来てたんですが見つからなくて」

 

「昨日の朝からか…事故でもあったならすぐに何か騒ぎになるはずだし、僕のもとにその知らせも来るはず。どこかにいるとは思うけど、ごめんよ。僕もそれはわからないな。」

 

「そうですか…わかりました…」

 

帰ろう…

帰ってもう一日待とう、

 

「僕の方でも探してみるよ、流石にあの人が消えたって聞いたら困るからね」

 

「ありがとうございます。見つかったら心配してたって伝えてください」

 

「わかった。それじゃ気をつけてね。」

 

屋敷をあとにして霧の湖の家まで帰ってきた。

 

「ただいま。レイ、居る?」

 

家の中には誰もおらずお帰りの声も聞こえなかった。

 

「レイ…まだ帰ってないんだ…」

 

ただ待っているだけでは落ち着かなく

とりあえず本を読んでいた。

それでも少しすると会いたくなって胸が苦しくて読書に集中できなかった。

掃除をしても洗濯をしても終わる頃には彼の事が恋しくなる。

 

「早く帰ってきて…」

 

そう呟きながらソファに座り込んだ。

 

彼は今どこにいるだろうか。

人里…地底…迷いの竹林…?

この幻想郷にはいろんな場所がある。

それ故にいろんな人や妖怪がいる。

 

そういえば彼は言っていた

 

まだ俺は妖怪になって間もない、と

力も弾幕もそんなに強くない、と…

 

もしかしたら他の妖怪に襲われたのかもしれない。それかいろんな仕事が込み合って忙しくて帰りが遅いのか。

 

なんにしろ、わたしに何かできるかどうかと言われるとそう言う訳ではないのがとても悲しかった。

 

今までイタズラばかりしてきたから、他人に優しくするのが親切心だって、誰かに何かをしてあげたいって気持だよと、よく言われたけど、いまいちまだよくわかってない。

 

レイが帰ってきたら何かできることはないかな…ごはんを作る、一緒に話をするお風呂に入る、朝まで一緒に寝る

それくらいだろうか。いや、もっとあるはずだ

 

そうやって考えに更けていた。

でもやっぱり思うのは…

 

「レイ…どこにいるの?」

 

そればかり。

もしかしたら、別の女の人の家にいるのかもしれない、確かにこの幻想郷にはわたしよりももっと魅力的な少女達がいる

 

彼が目移りしてしまったら…わたしは…

 

考えるほど胸が苦しくなる

ソファに座っていると次第に眠気がやってきて、いつの間にか寝てしまった。

 

…薄っすらと誰かの声が聞こえる、

 

「チルノ…?」

 

わたしの名前を呼ぶ声…

 

「チルノ?大丈夫か?」

 

この声は…レイかな…きっと帰ってきたんだ。

 

「う、うん…レイ?」

 

目を開けて前を見ると心配そうにするレイがいた。でも、レイが帰ってきたことがとても嬉しく思わず抱きついてしまった。

 

「ちょ、チルノ?いきなりどうした?」

 

「帰ってくるの…遅いよ…」

 

「ご、ごめん?」

 

「もう2日くらい待ったんだから…」

 

「2日?俺はすぐ帰ってきたけど?」

 

「あれ?じゃぁ…夢…だったの?」

 

「そうかもな。結構うなされてたから、相当辛い夢見てたんだな。」

 

「あれ…でもそれ…?」

 

レイが持っていた小箱。夢に出てきた音の鳴る箱に似ている。

 

「これか?これはプレゼントに用意したんだけどな、チルノが落ち着いてくれるかと思ってさっき鳴らしてたんだ。」

 

「それ…あなたの金貸しの弟分さんの?」

 

「弟分?いや、双子の弟ならいるが…」

 

「そうなんだ…」

 

夢とは少し違ってる…でもこの箱の音色は…

 

「音、鳴らしてもらっていい?」

 

「ああ、いいぞ」

 

小箱からは夢で聞いた曲が流れていた

とても落ち着く綺麗な音色

 

「静かな心の氷結娘…だっけ」

 

「ああ、よくわかったね」

 

「夢でね、弟さんが、わたしにくれたの。」

 

「そうだったのか。」

 

音色を聴いているととても落ち着く。

でも、落ち着くだけじゃなくて何だか、とても冷たくて夢の様な感じもする。

 

「わたし…この音色、好きだな…」

 

「そうか、よかった。」

 

彼に会ってから、わたしは少しずつ前向きになれた。三月精達とは会うことは減っちゃったけど、それは仕方ないよね

 

大ちゃんとはたまに家でお茶会したり、

他の妖精達も家に来ることが多くなった。

 

「ねぇ、レイ。」

 

「どうした?」

 

「ありがとう」

 

「うん?どうした、そんないきなり」

 

「うん、なんかね、ちょっと感謝したくなったからさ。レイのおかげで楽しい毎日が送れて嬉しい。」

 

「チルノが楽しく笑顔でいてくれると俺も幸せだな。ありがとう」

 

「うん!」

 

いつまでも彼と居たい。

どれだけ日が経っても

その気持ちは変わらない

わたしは彼と今もこれからも

幸せを感じながら生きていくんだ。




番外編のつもりです
長めになったとか悔いてませんから

ではまた会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

背負う者の一時の休息

どうも夢子です。

どうぞごゆっくり


高校の卒業を迎えた次の週。

親から卒業記念に旅行をプレゼントしてもらった。

2泊3日の県外旅行、ごく普通の旅行だ。

 

その旅行中…ガイドバスに揺られて

高速道路を移動していたときのことだ…

 

ガヤガヤと同年代達が騒ぎ散らし

静かに読書すらできない。

かと言って同じように騒ぐ質でもなく。

ただ苛立ちを感じながら外を眺めていた。

 

外の景色はまぁ十分だ、真下は海で開けている、見てて落ち着きもするし、景色もいい、気分も少しは晴れてくれる、窓を開ければ空気も良い。

 

そんなこんなで時間を潰してた。

 

そのすぐ後一瞬のことだ…

物がぶつかり合う音と同時に悲鳴と振動を感じた。

 

「なんだ?」

 

周りはそれに気づいてはいるのだろうが。

それでもバスは進んでいた。

今俺が乗っているバスは無事か。

 

「どうやら反対車線のトラックが事故ったみたいだ。」

 

横耳で現状が聞こえてくる。

なるほどまぁ高速道路だからな…

何かと事故が起きるのはわからなくはない…

 

そう思った矢先。

事故はまたすぐ…起きてしまった。

 

運転手の叫び声と

周りの悲鳴が聴こえる。

何かと正面を見た瞬間…

目の前からコンテナを積んだトラックが反対車線から飛び込む様に走ってきた。

 

考える暇もなく…バスとトラックは衝突。

 

大きな衝撃を受けた俺は全開に開いた窓から放り出され。海に真っ逆さま…

 

落ちる感覚を味わいながら…

目の前に海があることを理解した。

これは助からない…

その瞬間…目の前に何かが映ってそれに飛び込む形で落ちた…

 

……

 

落下のショックで気を失っていたのか

気がつくと地面に横たわっていた。

 

ん…?地面…?

俺は海に落ちていったはず…

 

「また…人間が…」

 

女性の声…夢か…?

 

意識がはっきりしてきて…

とりあえず立ち上がると目の前には大きな屋敷があった。

 

「目が覚めたようですね。」

 

さっきの声…振り返るとそこには…

 

「なっ!なんだ!」

 

つい最近…学本で見た九尾にそっくりだ。

しかし…あれは妖狐。

狐の姿のほうが強いはずだが…

目の前の九尾は人の身なりがしっかりとしている…?

 

「い、一体どうなってる…?」

 

「驚かれても仕方ないでしょう。あなたは神隠しに遭ったのです。」

 

「神隠し?」

 

「そう。八雲紫の神隠し。」

 

神隠し…突然人が消える現象の事か…

俺は神隠しに遭ったのか…

 

「それじゃ…俺は…死んでないのか?」

 

「ええ、少なからずあなたは生きています。」

 

「まず…ここはどこだ?」

 

「ここは紫様の御屋敷。紫様の神隠しに遭う者はいつもここに来るようになっています。」

 

「そうなのか…俺はこのあとどうすればいい?」

 

「さぁ…?それは紫様が決めることです」

 

「そうか…それじゃ、この屋敷に入って答えを聞けばいいんだな」

 

「その通りです。では私はこれで」

 

九尾は振り向いて歩き始めると

突然現れた裂け目のようなものに入って行き、そのあと裂け目は次第に小さくなり消えた

 

「神隠し…か」

 

恐らく、紫っていうのは…神隠しと言うくらいだから、神様かその類なんだろう。

神様なんか信じたことないが…

こんな事が起きてしまったからには、

そんなことも言っていられない。

 

屋敷の入り口に着くと。

扉は勝手に開いた。

見た感じ靴は履いたままでいいようだ。

ただ神域の類だとすると土足はまずい、

改めて靴を脱いで。入り口の外に置き

中に入っていく。

 

目の前には長い通路。

終わりが見つからない。魔法か何かでもかけてあるのだろうか…

 

しばらく歩き続けると声が聞こえた。

 

「ようこそ、私の屋敷に」

 

「ど、どこから?」

 

「そのまま歩いてきなさい。」

 

言われるままに歩くと、行き止まりに部屋が見えた。

 

「ここでいいのか?」

 

「そうよ。」

 

「失礼します…」

 

襖を開けて一礼をしてから踏み入れる。

 

「あら、面白いわね。」

 

そのまま三歩歩きその場に正座する。

神域の類だとすれば無礼は禁物。

少しでも怒らせてしまえば

命なんてないようなものだろう。

 

「そんなに改まらなくてもいいのよ?」

 

「そうは言われましても…」

 

「丁寧なのは認めるわそれにすごく冷静ね。」

試されている?

 

「私は、あなた様に今後のことについてお伺いするべく、この場まで参りました。」

 

「そう、それで?」

 

「先程、お会いした、妖狐からは紫様に訪ねなさいと言われましたので、そのことについてどうかお答えをお聞かせください」

 

「ヤダ、めんどくさい」

 

「なっ?!」

 

とんだ神様がいたもんだ

 

「だって、あなた丁寧過ぎて面白くないんだもん」

 

「なっ、そんな。ここはそういう場所では?」

 

「いいえ?全く?」

 

「そんな、もう、バカみたいなことしてる気分だ、あぁもう…」

 

「んー、でもあんなに丁寧にされたの初めてね。少し気に入ったわ」

 

「そ、そうですか…」

 

気に入られても困るんだが。

 

「あなた歳は?」

 

「丁度3日前に19になったところです」

 

「へぇ~まだ若いじゃない」

 

また目の前に裂け目ができると

一人の女性が傘を手に持ちながら出てきた。

 

「あなたが、八雲紫…?」

 

「そうよ、妖怪の賢者。そう呼ばれるときもあるわ」

 

「妖怪…?神様とかではない…?」

 

「そう、妖怪よ?」

 

妖怪だったのか…何だか損した気分だ…

 

「そうだったのか…」

 

「なんで、残念に思ってるのよ?」

 

「き、気のせいだ」

「あっ、そう、まあいいわ」

 

紫は俺の正面に座り込むとまた話し始めた

 

「あなたには2つの選択肢をあげる」

 

「それは?」

 

「ここを去ってさっきの海に落ちるか

私が創った場所、幻想郷で生きるか、

どちらがいい?」

 

「どっちにしろ命の保証はないな?」

 

「そうね、海に落ちれば藻屑となるか魚の餌、幻想郷には妖怪や妖魔魑魅魍魎がいるけど、まぁ人間もいるし人の住む里もあるわ、均衡関係にあるから容易に襲われることなんて基本的にはないわ。ただ少しでもその場の秩序を乱せば話は別だけどね。」

 

「まぁ…この場合はその幻想郷で生きるという選択をするのが懸命だな。」

 

「そうね、なんというか、あなた冷静すぎてほんとにつまらないわ。」

 

「そう言われてもな…」

 

「でもそんなあなたならきっと幻想郷でもやって行けるわ」

 

「そうか」

 

「幻想郷は面白いわ。だからあなたもそれを十分に味わってみなさい」

 

「ああ、わかった、」

 

「それじゃ、また会いましょう、」

 

そう言うと紫は現れた裂け目に入って行った。

 

「あれ…俺このまま放置?」

 

立ち上がって部屋中見渡してもさっきの出口しか見当たらない。仕方なく屋敷から出る

 

すると…

 

「なんだ…これ。」

 

さっきから見えていた裂け目が

そこらじゅうにできていた。

 

「これに…入ればいいのか?」

 

一つだけ、離れて遠くにあった裂け目に

恐る恐る入っていく。

 

すると途端に他の裂け目は消えた。

 

「なるほど…後戻りはできないな…」

 

裂け目が閉じるとそのまま歩き続けた。

 

すると目の前にまた裂け目が出来たので

それに入っていく。

 

裂け目を出ると。目の前には鳥居。

その向こうは広大な風景が広がっていた。

 

「ここは?」

 

「いらっしゃい、ここが幻想郷よ。」

 

振り向くと紫がいた。

 

「ここが…幻想郷」

 

「あなたのいた世界とは文明も歴史も大きく違う。近いところなら、江戸とかじゃないかしら?」

 

「かなり古いな…」

 

「そして今いるここが、この幻想郷の中でも最も大切な場所。博麗神社よ。」

 

「博麗神社、なるほどこれだけ広いの景色が見れるからか」

 

「そう、理解が早くて助かるわ」

 

「神社…か」

 

「神社に思い入れでも?」

 

「ついさっき。旅行で観光名所の神社に行ったばかりなんだが、それとは雰囲気とかが違いすぎててな。」

 

「当たり前よ、私の神社はここ(幻想郷)を護るためのものなのよ?観光地と一緒にされては困るわ」

 

横槍を指してきたのは

神社の主と称する少女だった。

 

「霊夢?自己紹介くらいしなさい?」

 

「はいはい、私は博麗霊夢。この幻想郷、博麗神社のごく普通の巫女よ。あっ、お酒は大好きだから持ってきてくれると嬉しいわね」

 

「人間…?」

 

妖怪妖魔魑魅魍魎が溢れる世界で。

人間が守護者…?

しかも俺よりも幼い…

高校入りたてくらいの女の子が…

 

「あんた。いまこんな女の子がって思ったでしょ。失礼ねこれでも幻想郷では私に指図できるのは、今あんたの横にいる紫くらいなのよ?」

 

感が鋭い…心が読めるのか…?

 

「それじゃ、霊夢私は忙しいからあとよろしくね。」

 

「ちょ、紫!もう…面倒なことになったわ…」

 

紫はまた裂け目の中に消えてしまった

 

「えっと霊夢さん、よろしくお願いします」

 

「よろしく。まぁそんなかしこまらなくでも霊夢でいいわ。それで通ってるからね。あとあんた元々人間だったと思うけど、今の妖力見るからに半妖みたいな状態ね…何かあったのかしら?」

 

「俺が…妖怪?」

 

「気づいてないのね。」

 

人や生き物が妖怪やそういった類になるには、長い年月がかかるはず…

そんな現象が一瞬で?

 

「まぁ、試しに手に力を集中させてみなさい。」

 

疑い深くも。そうしてみた。すると…

 

手元に氷が出来上がっていた。

 

「いわゆるそれが妖力ね。あんた氷の妖みたいよ。でも…んー。それだけじゃなさそうね」

 

氷…か

 

「まっ、立ち話も疲れるだけだし、とりあえず中に入りましょ」

 

神社とは言えど霊夢からすれば家も同然、

神社の中は生活環境がよくわかるほど、

出来上がっていた。

 

「まぁそこ座って。」

 

ひとまず机を挟んで座る

 

「あんた、名前は?」

 

「波行 道一、普段はミツと呼ばれてる」

 

「みちかずっていうのね。今後よろしく頼むわ」

 

「よろしく。」

 

「それで、今後のことなんだけど。」

 

「どこかに住む場所あるのか?」

 

「まぁ、人里っていう、人間と妖怪が一緒に暮らす場所があるわ。でも…紫がここに連れてきて放置したってことは…」

 

「人里か…」

 

「当分はここで面倒みてあげるわ。まずはこの世界の環境に慣れる事も大切でしょ」

 

「お世話になります」

 

「そんな、頭下げなくてもいいわよ。それに見た目あんたのほうが大人なんだから」

 

「そうは言ってもな。そういう癖があるから。」

 

「そう、まぁいいわ。」

 

「それで、この後何かするのか?」

 

「特に何も、普段私はここにいるもの、里に行くのも遠くて面倒くさいし、何かあるのを待つくらい。最近は異変もめったに起きなくて暇してたとこよ。」

 

「そうなのか…異変っていうのは?」

 

「いわゆる危機みたいなものね、幻想郷を脅かす輩が何か問題を起こしたら、そういうふうに呼んでるわ」

 

「それを霊夢が収めてるんだな、」

 

「そうよ。」

 

「霊夢って、すごいんだな。」

 

「な、何よ唐突に」

 

「いや、なんというか、頑張ってるんだなって。」

 

「別に慣れたものよ、急に空に紅い霧が出たり春が来なかったり、空に船が浮かんだり地面が宙に浮いたりするけど。まぁ、なんともないわ」

 

色々と問題があると思うが…

 

「霊夢一人で全部?」

 

「全部ってわけでもないわ。一応紫とか他にも協力者はいるわ、最後には私が収める形にはなるけど。」

 

「そうなんだな。」

 

「まぁ、それが私の役目だから。それとあんた、まだ自分の力を知ることすら出来てないみたいだから。こっちきてすぐだけど、少し特訓するわよ。」

 

「わかった。頼む」

 

境内に出て、妖力の使い方について学ぶことになった…まぁ…妖怪なのに妖力も制御できなければ幻想郷では生きていけないのだろう…

 

「まず、さっきみたいに氷は出せるかしら?」

 

右の掌に力を集中させてみる…

特に何も起こらなかった。

 

「出ない…何も起きない…?」

 

「根気強く試しなさい。」

 

言われたとおり。何度も繰り返した。

 

すると…掌の先には、小さな火が出来ていた

 

「あ?なんで火が…?」

 

「右手は火、左手は?」

 

「た、試してみるよ…」

 

左手に力を込めて…力を集中させる…

すると掌には氷が出来上がっていた

 

「今度は氷が…」

 

「あんた、両方使えるのね」

 

「これが…妖力か」

 

「紫もこんなやつを連れて来てなんのつもりなのよ」

 

俺は何度も妖力を操る練習をしていた。

 

火も氷もまだ小さく出せる程度でしかなく、実用性はなかった。

 

「筋はいいんじゃないの?今度はそれを弾幕として飛ばせるくらいにならないとね」

 

「ちょっと…休ませてくれ…」

 

「一日でそこまでとは言わないわ。まぁゆっくりでいいから頑張りなさい。」

 

「ああ。」

 

「ひとまず戻って休憩しましょ、」

 

「そうしてもらえると助かる…」

 

神社の中の部屋に戻って座り込む…

約一時間で3日…いや4日分くらいの労力を使った感じがする…

 

「ほら、お茶飲みなさい、疲れてるでしょ?」

 

「ありがとう」

 

「あんた、外の世界から来たのよね」

 

「えっと、外の世界?幻想郷の外ってことか?」

 

「そうよ。それ以外にある?」

 

「いや…あるかどうかはさておき、それがなにか?」

 

「戻りたいとは思わなかったの?紫に会った時に。」

 

「まぁ、いろんな事残してるし。単純に戻りたいとは思ったけど。」

 

「ならなんでそう言わなかったのよ」

 

「神隠しに遭う直前に、事故が起きて、それで俺は、死にそうだったんだ。」

 

「事故?何があったのよ」

 

「バスから叩き出されてな、海に真っ逆さま。」

 

「バス?」

 

まさか…幻想郷にはバスがないのか?

いや…紫は江戸に近いって言ってたな…

それならかなり昔のことになる…

近代的なものはほぼないのか…?

 

「ごめん。バスはないんだな…バスってのは沢山の人を乗せて走る乗り物で、そうだな…人力車ならわかると思うが…」

 

「人力車はわかるわ」

 

「人力車の座席がいくつもついてて、なおかつ機械の力で走るんだ。なんていうか…説明難しいな…」

 

「んー、何となくわかりそう、にとりなら詳しいかもしれないわね。」

 

「にとり…?」

 

どこかで聞いたな、あれは家具屋か

ま、ここで言うのは人の名前だろうけど

 

「にとりっていう、河童の技師がいるのよ。」

 

「河童?妖怪か、」

 

「そうよ。ま、また今度説明するわ、私も疲れたし。もう夕方なのもあるし、」

 

「もう夕方なのか…」

 

微妙に開いた襖からは夕日が差し込んでいた。

 

それが空腹を誘ったのかどうかは知らないがとにかく腹が空いている。思えば朝に軽くパンを食べてから何も食べてない。バスを降りた先で昼食予定だったが…まあ今に至るわけだ…

 

「それで、帰るつもりは?あるの?」

 

考えをぶった切るように話を変えてきた。

帰るつもり…か。

 

「さっき言ったけど。もしこっちに来ていなかったら事故で海に落ちて命は無かったからまぁ、ここに残ることにするかな。どうせ向こうに戻れば幽霊扱いされるだけだし。」

 

「そう。まぁそれならいいわ。」

 

「なぁ…」

 

「何?」

 

「腹、空かないか?」

 

「私はさっきまで煎餅食べてたから、そんなに減ってないわ。」

 

「煎餅って…そんなに腹に溜まるものじゃないだろ…」

 

「まぁ、軽く用意するから、待ってて頂戴。」

 

霊夢はそう言うと部屋を出て行った

 

そう思えば荷物のことをすっかり忘れていた。服とかお土産とか…まぁお土産に関しては問題ないか。どうせ帰らないし

 

「手元にある、スマホと財布くらいか」

 

スマホも、もちろん圏外。

インターネットなんてあるわけがない。

これは…不便だな。

でも元々なくて、それが必要のない世界ならば、そのうち無くてもなんとか慣れるだろうし、大丈夫だろう。

 

財布の中はかなり詰まっていた、

万札五枚に五千円を三枚、千円が十二枚、あとは細かい小銭、しかし…こっちでは通貨も変わるだろう…これはボツか…

 

「幸先いいのか悪いのか…はぁ…」

 

まだ突然のことに身体が追いついていないのか、さっきの特訓のせいか、身体が重たく、疲れた。

 

「おっ、霊夢のとこに客人か、」

 

開いていた襖の所から背の低い少女が来た、

 

「えっと…角ってことは、鬼?」

 

「おう、私は伊吹萃香。鬼だ。」

 

鬼。古い歴史本に子供を攫って食うという、そんなことが書いってあった気がする。

尤もこの鬼は食われる側の身なりのようだが…これが…幻想郷の鬼…?

 

「なんだなんだ、私を変な目で見てー、そんなにこの角がおかしいか?」

 

「あっ、いや…そのなんだ。簡単に言えば、特徴的だなぁと、」

 

「まぁ、鬼だしな。」

 

萃香は部屋に座り込むと手に持っていた瓢箪の先に口をつけゴクゴクと音を鳴らしながら何かを飲み始めた

 

「何を飲んでるんだ?」

 

「これかぁ?これは酒だよ」

 

酒か、まぁ鬼は酒好きともよく聞くからな。

それはなんとなくわかる

 

「お前も飲むかい?私の酒は美味いよ〜?」

 

「お酒はまだ飲めないんだ」

 

「お?お前妖怪だろ?それで酒が飲めないってよっぽど弱いのか?」

 

言われてから思い出した、

俺は妖怪になってしまっていたんだ。

いや、ほんとに妖怪なのか?

妖力が扱えるとは言えど…まだ本当にそうなのかも怪しく思えてくる、

 

「えっと…なんて言えばいいかな…」

 

「まだまだ妖力弱いからなぁ。」

 

「そういうの関係するのか?」

 

「うーん?多分関係ない。」

 

「そ、そうか。えっと俺はまだ妖怪になったばかりらしくて、元々人間なんだ。それで歳もまだ19なんだよ。だから酒はまだ飲めない。」

 

「へぇ~、妖怪になったばかりか〜、でも人間なんて18くらいになれば酒くらい飲める体になってるだろう?」

 

「かもしれないが、元々酒は飲むつもりもなかったからなぁ。」

 

「つまらないねぇ〜」

 

「そう言われてもな。」

 

「ところでお前さん、名前は?」

 

「道一、っていう。ミツと呼んでくれるとありがたい。」

 

「ミツか、よろしくー」

 

そう言うとまた酒を飲んでいる。

 

「ほら、持ってきたわ」

 

いい匂いがすると思うと、霊夢が食事を持ってきてくれていた。

簡単に言えば魚定食、そんな感じだ

 

「いただきます」

 

「霊夢が世話を焼くなんて珍しいなぁ」

 

「まぁ、そういうときもあるのよ」

 

「ふーん」

 

一人黙々と食べていると。

霊夢がそれをずっと眺めている

 

「どうした?」

 

「美味しい?」

 

「ああ、美味しい、魚は久々に食べたよ。俺の母さんは魚焼くの苦手だからいつも焦げかけてるか、生っぽいかで、こんなにしっかりしたのは初めてだな、なんか嬉しいというか。」

 

「そう、よかった。」

 

「どうした霊夢?料理なんて普段しないから心配だったのか?」

 

「馬鹿なこと言うんじゃないわ、料理は普段からしてる。でも人に食べてもらうのはあんまりないから、ちょっと気になっただけよ。」

 

「あんまりって、魔理沙とか吸血鬼とかに振る舞うときがあるだろ?」

 

「あいつらはそういうの気にしないから。」

 

「ひどいもんだなぁ、いろんな意味で」

 

「ふん。味を気にしない方が悪いのよ」

 

そう言われると無視ができなかった。

まだ向こうにいる頃。

母親の料理に悪態つくことが多かった

今思うととても申し訳なく思う。

 

「どうかした?あっ、骨かしら、今水持ってくるわ、待ってて」

 

「いや大丈夫だ。骨じゃないよ。」

 

腹に入れば何でもいいとか

味なんて変わらないとか

店も家も変わらないとか

今となっては謝ることすらできない。

 

「ほんとに大丈夫?何かあったら言って頂戴よ。」

 

「あぁ、わかったよ…」

 

「そういえば。ミツって人間だったんだよな最近妖怪になったって、なんかあったのか?」

 

「彼は外の世界の人間だったのよ、多分紫がこっちに連れてくるときに何かあったんじゃない。」

 

「ふーんそんなもんなのかね」

 

「紫に聞かないとわからないわ、でも筋はいいから妖怪としては十分やっていけると思うわ」

 

「霊夢が言うならそうだろな、ひょっとしたら幻想郷の脅威になったりしてな。」

 

話を聞いていればいきなり危険者扱いか。

 

「そんなつもりは無いんですけどね」

 

「あのね、そうはさせないし、しばらくは私の所で面倒みてあげることになるから万が一にもそんなことはないわ」

 

「へぇ~、まっ、そうだろうよ」

「それじゃ遅くなる前に帰ろうかな」

 

「どうせ明日も来るんでしょ」

 

「多分、まぁじゃなぁ。」

 

そういうと萃香は飛んでいった。

 

「食べ終わってるのね。下げるわ。」

 

「これくらい自分でやるさ」

 

「疲れてるんだから、任せなさい。」

 

「霊夢さんが言うなら…」

 

霊夢が食器を持っていき。

部屋で一人になってしまった。

開いたままの襖からからは月明かりが指していて外はかなり暗くなっていた。

 

「夜…か」

 

「そうね、なんか今日は早かったわ。」

 

気がつくともう戻ってきていた

 

「なぁ、霊夢さ…ちょっと…!おい!」

 

ふと霊夢の方に振り向くと服を脱ぎ始め、寝間着に着替えようとしていた、

あわてて視線を外に向ける

 

「あっ、ちょっと外に出てて頂戴。」

 

「そういうのは先に言ってくれ!」

 

縁側に出て襖を締める。

 

「びっくりした…」

 

ふと見上げると今までに見たことのない光景

が広がっていて言葉も出ず眺めていた、星と月の夜空がしっかりと見えていた。

 

「空ってこんなに綺麗だったのか」

 

「外の世界だと街灯とかで街が明るいせいで星も見えないって聞くわ。」

 

気がつくと霊夢は隣で座っていた。

それでも、あまりの光景に夜空を見つめていた。

 

「こういうのを絶景って言うんだろうな。」

 

「そうね」

 

ふと横を向くと。

結んだ髪を解いた寝間着姿の霊夢がいた。さっきまでは結んでいたから気づかなかったが、肩下くらいまで髪は伸びているようだ

 

まだ歳が低い頃は姉がこんな感じだったとよく覚えている。今思うととても、なんていうか…美しいと可愛いが混ざったような表現だ

 

「霊夢さん、あのさ。」

 

「うん?」

 

言うのはちょっとまだ控えた方がいいんだろうけど…どうしても考えてしまう

 

「ど、どうしたのよ。」

 

「いや、なんというか、可愛いというか…綺麗というか…」

 

「な、ばっ…!馬鹿ね!いきなり何言うのよ!もう!」

 

「言うのを控えるべきかとは思ったんだけど、なんかほら、我慢しきれなくて」

 

「もう…、まぁとにかく、ありがとう」

 

しばらく無言の時間が続いて。

先に声を出したのは霊夢だった。

 

「ねぇ、戻りましょ」

 

「そうだな。」

 

部屋に入ると布団が一つしか無かった

 

「えっと、布団が一つしかないんだけど、どうする?」

 

どうする…?どうしようか。

 

「掛け布団的なものがあるならそれだけでいいよ。」

 

「ええ…それでいいなら。」

 

そういうと押入れから薄めの布団を用意してくれた。まぁ薄くても何もないよりはいい、

 

「布団、大きいから、一緒に入れるわよ」

 

「霊夢も女の子だろ。」

 

「そ、そうだけど…」

 

何故、残念そうに落ち込む。

普通それはありえないだろ。

 

「んーと。一緒に寝たいのか?」

 

「そ!そんなわけ無いでしょが!あ、あんたが風邪引くと。良くないから、そう思ったのよ。」

 

「まぁ、ありがとう、それならお言葉に甘えるよ」

 

確かに広い布団だ。

多分三人は平気で横になれるだろう。

 

「こ、これでいいかしら。」

 

霊夢は、密着とまでいかないがかなり肌を寄せてくる。まぁ、気温的に冬前くらいだから、気遣ってくれているのかもしれないが…恥ずかしいなら無理はしなくても…

 

「充分暖かいが霊夢…震えてないか?」

 

「そ、そんなことない、だ、大丈夫よ。」

 

大丈夫なわけない、声すら震えているように聞こえる、やはりかなり無理してるというか、緊張しすぎているのだろう

 

「落ち着けよ。俺だって緊張してるんだ。肩の力抜いて。リラックスして。恥ずかしいのはわかるが、それじゃ寝れないだろう。」

 

「そ、そうね…うん。」

 

霊夢は深呼吸を何度もすると。震えが止まって落ち着いたようだ

 

「なんだか…眠たくなってきたわ」

 

「そうか。」

 

落ち着いて慣れたせいか、

さっきよりもっと近くに寄っている。

丁度、俺の胸元に霊夢の頭がある

かなりくっついてきているな…

 

「なんていうか…」

 

これ以上言うとまた霊夢が恥ずかしさで騒ぎ出すかもしれない。それは良くない。

 

「どうしたの?」

 

「何でもない」

 

「この感じ久しぶりっていうか。初めてかもしれないけど…この音…心臓の音かしらね…すごく落ち着くのね…」

 

「多分、赤ん坊が母親に抱かれているときによく聞く音なんだと思う。だからといって今もそうとは言い切れないけど」

 

「人を赤ん坊呼ばわりするなんてね、」

 

「そ、そんなつもりは」

 

「冗談よ、実際この状態に落ち着いちゃってる私がいる訳だし。すごく安心感があるというか。」

 

「そりゃ、良かったよ」

 

霊夢は顔を上げてこっちを向くとまた話しかけてくる。視線がとても甘えていて、どうすればわからない。

末っ子の俺には難しすぎる

 

「なんていうか。私達今日あったばかりよね」

 

「あ、あぁそうだな。」

 

「あんた…人を落ち着かせるような、そんな力があるんじゃないかしら…」

 

「いや…それは知らないけど…そんなのあるのか?」

 

「さぁ…?」

 

「そ、そうか、」

 

霊夢が顔を下げるとまた話しかけてくる

 

「なんか…いつもより体が疲れてる感じがするよのね…」

 

「それ多分、今まで感じなかった疲れとかストレスが今来たんじゃないか。世界の守護者となると気持ちの事も気にしないで動くことだってあると思うし」

 

「緊張の糸…かしらね。そういうことなのかしら…」

「確かに…異変は少なくなったと言っても細かい事件は起きるし、その関係でまたいろんなやつと関わって面倒なことは減らない、それにいつも魔理沙や萃香、最近は吸血鬼もよく来るのよ…」

 

「大変そうだな…霊夢さんもよっぽど疲れてるんだよ。」

 

「そうかもしれないわね…私も疲れてるのね…」

 

「ゆっくり休めるといいな。」

 

「うん…」

 

急に胸元が濡れた感触がした、

 

「もしかして霊夢さん、泣いてるのか?」

 

「ちょっと…ちょっとだけよ…」

 

「我慢は良くない」

 

「そう言ったって私は博麗の巫女なのよ。」

 

「別に誰か見てるわけじゃない」

 

「うん…そうだね…」

 

霊夢は顔を上げるとかなり涙を流していた。目も悲しそうで声もとても小さく聞こえる

 

「さっきまでの私とは大違いよね…」

 

「うん?まぁ…」

 

「私だって。女の子としていろんなことしたい。お洒落して遊んで食べていろんなことがしたいよ…でも、私は巫女だから…博麗の巫女なのよ…」

「でもこれは私にしかできない絶対的なことだから。嫌なんて思ってない。むしろ今までやっていけている自分を自身持ってすごいと思ってるよ。」

 

「肩代わりはできないもんな」

 

「そう、代わりがいないから私はずっとやってきた。がんばったのよね…私…?」

 

「ああ、きっと十分頑張ってるよ、」

 

「そうよね。ありがとう…」

 

その人にしかできないことがあるって言うのはとてもすごいことだと思う。

俺はいつも、誰かの代わりに何かをすることが多かった気がするから

そう思うと、少し羨ましい感じがする

 

「なんか…ほんとあんたってよくわからないわ」

 

「何が?」

 

「最初は面倒だと思ったんだけど、今になってそんなこと考えられないの。だって、誰かにこんな姿見せたの初めてだもの。」

 

「そうか。」

 

「なんだか、好きになりそうでちょっと怖いのもあるけど。一緒にいてくれると助かるわ」

 

「まだまだ半人前の妖怪だけど…それでもか?」

 

「ええ。それでもよ…妖怪とか半人前とか関係ないわ。私が必要とするんだもの。」

 

「そうか。」

 

嬉しくとも何故か不思議に思う。

今まで誰かに必要とされることが少なかったからだろうか…?

少なからずそういうふうに言われたのは初めてだからだろう。

 

「霊夢…ありがとう。」

 

「なっ何よ、いきなり」

 

「俺も誰かにこんなに必要とされるなんて思わなくて。ずっと単身で生きることが多かったからな。」

 

「家族が居たでしょ」

 

「まぁ確かにいたけど、そんなに仲の良い風ではないからな。親が離婚してから母親と姉と三人でほとんど話しもしなかった。」

 

「そう…」

 

「外でもほとんど独りで行動することが多かった。誰かとこんなに親しくなるなんて思いもしなかった。」

 

「あんたも辛かったでしょ、独りなんて」

 

「辛いというより。何でも一人でやらないといけなかったから。大変だったかな。」

 

「やっぱり、そうよね。」

 

「でも、こっち来ちゃったからな、その必要もなくなった、」

 

「私が面倒みてあげるから。」

 

「今のその状態で言うことじゃないとは思うが…」

 

「あぁ…まぁ…そうね…」

 

「それに。こっちだとやれる事も少ない」

 

「でも…あんた…は…」

 

「霊夢さん?」

 

どうやら眠ってしまったようだ。

 

「おやすみ」

 

しばらくは寝付けずそのままじっとしていた。霊夢がかなりくっついているから動くに動けない状態でもある。

 

「幻想郷…か。」

 

「どうかしら?私の創った世界は?」

 

どこからともなく紫の声が聞こえる

 

「まだ博麗神社から一歩も外に出てない。そのセリフはまた3日くらいあとにしてほしい、あと霊夢が寝てるんだから少し静かに。」

 

「ふーん。ちょっとあなた。」

 

「なんだ?」

 

紫がいきなり現れてこっちを睨みつける。

 

「どういうつもり?」

 

「どういうつもりも何も」

 

「霊夢に何したわけ?」

 

「だから、何もしてないぞ」

 

「そう…」

 

紫はブツブツと小言を続けていた。

霊夢がなにあったか?

特別何かした覚えもないが。

 

「一体なんのつもりで霊夢と寝てるわけ?あなたが強引に誘ったなら即刻ここから帰ってもらうわ」

 

「おいおい待て、さっきから何だいきなり」

 

「ちょっとこっち来なさい。」

 

無理やり布団から出されて境内に出る。

まだ暗い境内は明かりなしだとほとんど何も見えない。

 

「だからなんだよ」

 

「正直な所、霊夢があんな状態になるのはこっちとしてあまり良くない、それに今日来たばかりのあなたに霊夢がそんなふうに態度を取るとは思えない。だから何をしたか聞いてるの」

 

「さっきから言ってるが俺は、何もしてない、誘ってきたのも霊夢さんだし。あれだけくっついてきたのも全部霊夢さんが自分でしたことだ、俺は何もしちゃいない」

 

「さぁ、どうかしらね」

 

話し込んでいると襖が開いて霊夢が出てきた

 

「煩いわね…私が何よ」

 

「霊夢さん。すまない起こしてしまった…」

 

「別にそれはいいわよ、異変のときもよく夜中に叩き起こされるし、で、なに、私がなんだって?」

 

「霊夢、あなたこの男に体を売るつもり?」

 

「あんた…頭冷してきなさいよ…言ってることがアホらしくて話す気もしないわ」

 

「なっ!どういうつもりよ!」

 

「一々騒がないで煩い。私は体を売るつもりは無い。元はといえばあんたが道一さんをここに放置したのも悪いのよ、」

 

「そ、それがなによ。」

 

「彼を試してみただけよ。氷と火、それ以外にも何かあると思ったから。多分、包容力的な何かがすごく強いのよ、きっと道一さんはまだそれに気づいてないだけ。」

 

「試してみたっていうのにまんまとはめられてるじゃない。」

 

「まぁ、あまりにも言葉が刺さり過ぎて私ですら、甘えたくなるほどだったもの。でもそのおかげで何か吹っ切れた感じがしたから結果的には良かったのよ」

 

「霊夢…あなたね…」

 

「巫女としての立場もここの守護者としての立場も忘れちゃいないわ、でもねあんたもそうだと思うけど、人ってのは生きてて何かに気持ちをぶつけたくなるものなのよ、私は彼を利用させてもらってただけ、それだけよ」

 

「わかったわ。」

 

「夜中にこんな話しなくてもいいじゃない私は寝るわ。」

 

そういうと霊夢は部屋の中に行った。

 

「にわかには信じがたいけど。霊夢がそう言ってるなら仕方ないわ。あなたも気をつけることね。」

 

そういうと紫もどこかに行ってしまった。

 

仕方なく俺も部屋に戻る。

部屋に戻ると霊夢が座り込んでいた。

 

「紫も気にしすぎなのよ、」

 

「まぁそれだけ幻想郷が大切なんだろうな。」

 

「そうね…それは私も同じだもの」

 

「お互い護る側の立場だもんな」

 

「まぁね、」

 

霊夢は布団に入るとまた入ってくるよう誘ってきた。

「いや、あんな事あった後だ、流石にな…」

 

「私が、寝付くまででいいわ。」

 

「…わかったよ…」

 

さっきと同じように霊夢はくっついてきた。

 

「さっきはあんなこと言って悪かったわね」

 

「ああ、気にしてないよ。全部ほんとなんだろ?」

 

「嘘は言わないわ、試したのもそれに負けたのも。利用する形になったのも全部その通り、でも悪気はないのよ」

 

「ならいいよ、」

 

「散々言って悪かったわ、」

そういうと。霊夢は俺の服を強く握っていた。なにか腑に落ちないことでもあっただろうか、

 

「俺が悪かったのかもな。」

 

「そんなことないわ。」

 

「ならなんでそんなふうになる?」

 

「あっ、ごめん…」

 

「落ち着こうな。」

 

「うん…」

 

しばらく静かにしていたようだが…

急にもぞもぞと動き始めた。

小刻みに震えているようで、

どうやら泣いているだ。

 

「どうした?」

 

「ずっと、落ち着かないのよ…!」

 

「大丈夫か?」

 

「もう…あんたのせいよ…なんか…すごく複雑な気持ちで、ほんとに落ち着かないのよ」

 

「出るよ、ゆっくりしてくれ」

 

「それはだめ!…あっ…えっと…」

 

「うーん…だめか」

 

「何なのかしら…」

 

「落ち着けないか…?」

 

「うん…そうなのよ…」

 

困ったな。いや別に直接何かした訳ではないし、特に何も被害はないから困ったというのはおかしいが。

どうしたものかなと、考え込んでしまう。

 

「霊夢さん。あのさ」

 

「うん…」

 

「あの、嫌だったら言ってな?」

 

「嫌じゃないわ…」

 

「そうか、ならもう少し俺から近づくぞ?」

 

「うん…」

 

霊夢とほぼ同じ視線になってから、

そっと腕を伸ばして優しく抱きしめる

 

正直に言えばもう俺も相当緊張している。

でもそれ以上に霊夢は固まっていた。

 

「…っ!あっ…ぅ…ぅ」

 

「ゆっくり気持ちを落ち着かせれるか?」

 

「うっ…うん…」

 

お互いに深呼吸をして緊張を解いていく。

霊夢は落ち着いてきたようだ。

 

「ありがとう…なんとか落ち着いてきたみたい…なんだか、眠たくなって来たわ…」

 

「そうか。」

 

返事を聞く間もなく霊夢は眠ってしまった。

心地が良かったのかそのまま抱き着いて来た

 

「今度こそ。お休み」

 

俺もそのまま眠りについた。

 




前書きは特にありません。
後書きも特にありません。

それではまた会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

館主と執事

どうも悠樹です。

いつだったかの話のその後のお話。

それではごゆっくり


食事を終えて自室に戻ると。

執事であるハルが居眠りをしていた。

 

「仕事中に居眠りは、感心しないわ」

 

しかし、そう言いながらも毛布を肩からかけておく。

 

「疲れてるなら言えばいいのに」

 

まだ15歳なのに、執事としてしっかりと働く、それこそメイド妖精なんか比べれないくらい。

 

それなのに根を上げる訳でもなく、

弱音すらも聞いたこともない。

ただ笑顔を絶やさず仕事をする。

 

元奴隷とは言えないくらい様変わりしている

 

今日も私の代わりに書類の整理をしてくれていた

 

「お願いはしてないのだけれど…」

 

ハルの手が止まった所から続きを始める。

 

黙々と書類を纏めて終わる頃に疲れた感じがした。

 

「いつもこれだけやってくれているのはありがたいわね。」

 

ハルの父親の一件からもう数カ月経つ。

それでもハルは紅魔館で執事として働いてくれている。

 

特に私の事になると誰よりも、咲夜よりも熱心に。

 

「いつもありがとう。」

 

そう言いながら、ベットに寝かせる。

 

しばらく本を読んでいたけど、眠たくなったので寝た。

 

 

朝起きるとハルが既に居なかった。

 

「起こしてくれてもいいのに。」

 

そう呟いた直後、誰かが部屋のドアをノックした。

 

「お嬢様。」

 

「ハルね、入って頂戴」

 

扉を開けるとハルがお茶を持ってきてくれた、

 

「ありがとう、二人分ってことは?」

 

「えっと、パチュリー様は籠もってまして、妹様は暁さんと…」

 

「そう。わかったわ。」

 

ハルと二人でお茶なんて、しばらくなかった気がする。

 

「羊羹、如何ですか?」

 

「美味しいわ、これは柑橘ね」

 

「はい、先日、母が私宛に送ってくれたそうです。母はこれが得意でよく食べてました。」

 

「手作りなのね。なかなか癖になる味、嫌いじゃないわ」

 

「そう言って頂けると幸いです」

 

「このお茶もそうなの?」

 

「いえ。これはいつもの紅茶にレモンの果汁を少し、」

 

「そう、良い味ね、悪くないわ」

 

「ありがとうございます」

 

そう、ハルも頑張っている

毎日私の為にいつも工夫をしてくれている。

 

 

「そうね、こちらこそ、ありがとう」

 

「ありがとう?ですか。」

 

「何か可笑しかったかしら?」

 

「あっ、いや、お礼を言われるのは初めてだった気がするので…」

 

「ふふっ、そうね、そうかもしれないわね」

 

「えっと。なんか嬉しいですね。」

 

「そう、よかったわ。」

 

ハルは食器を片付けに部屋を出た。

 

 

窓の外はもう明るくなっている。

散歩もしたいが…日が出ている間はあまり外に出たくはない。

 

暁と弾幕ごっこも飽きてきたし、

パチュリーは最近また籠もり気味だし。

 

考えに老けていると咲夜が来た

 

「お嬢様、おはようございます」

 

「ええ、おはよう」

 

「いまお茶を…」

 

「お茶はもう頂いたわ。」

 

「え?もう済まされたのですか?」

 

「ハルが用意してくれたから大丈夫よ」

 

「そうでしたか…彼は早いですね。」

 

「ハルのこと?」

 

「何も能力がないのに。あれだけ出来てしまうのは少し羨ましく思ってしまいます。」

 

「ハルは熱心だから。咲夜にとって当たり前のことかもしれないけど、紅魔館の仕事を熱心になってやっているからよ。」

 

「熱心に…ですか。」

 

「ええ、彼、私のことになると貴女よりも奮起しているわ。もちろん他の仕事でもしっかりしているみたいね」

 

「そうですね…」

 

「貴女も初心に返って見るのが一つ良い手かもしれないわよ?」

 

「はい、頑張る、ですね。」

 

「そう、頑張りなさい」

 

「はい、それでは失礼します。」

 

咲夜は部屋を出ていった。

 

今日は何をしようかしら。

霊夢のところに行くのも、日差しが強いからあまり行く気になれない。

 

かと言って本も読み過ぎると頭が痛くなるのが多々。さぁ…何をしようかしら…

 

「もう少し、寝るかな…」

 

ベットに入り直すと、そう時間も経たないうちに眠った。

 

 

目が覚めると。ハルが部屋にいた。

また居眠りしているようだ。

 

「今度は本を読みながら、ね。」

 

付箋をつけて本を閉じる。

体に手をかけたところでハルは起きた。

 

「お嬢様…すいません寝てました…」

 

「いいのよ。疲れてるのでしょ。」

 

「いえ、そんな。」

 

「私の部屋くらい、ゆっくりしていきなさい。」

 

「はい。ありがとうございます。」

 

ハルは軽くため息を吐いて本を手に取った、

 

本を読まれると私がまた手持ち無沙汰になってしまうかと思って。向かいに座った。

 

「ハル、」

 

「はい。」

 

「無理してないかしら?」

 

「無理は…しているつもりはありませんが…」

 

「でも、最近居眠りが多いわ、しっかり休んで頂戴。」

 

「えっと…はい…」

 

バツの悪い顔をする。

でも、言わなければハルはずっとこのままだっただろう。

 

「まだあなたは子供なの。甘えるくらいいいのよ?。」

 

「そんな…甘えるだなんて」

 

「ハル。あなたは奴隷じゃないの、私の執事なの。だから働くだけじゃだめなのよ」

 

「執事…ですもんね…」

 

「ハルはまだ実感がないのかもしれないけど、もしかして奴隷だった頃のことをまだ思ってるの?」

 

「そんなことは決して…」

 

「それなら、自分も大切にして頂戴。あなたは立派な人間なんだから。」

 

「えっと…はい…」

 

「咲夜だってしっかり切り替えをしてるわ、黙って里に行ったりするけど…それは彼女が毎日の疲れを取るために行っていること。あなたも我儘言ってもいいのよ。」

 

「私は…その…」

 

詰めすぎたせいか、ハルがあまり話せない状態になりつつある。涙も流している

泣かせてしまったのは、やり過ぎかしら

 

「少し言い過ぎたわ…ごめんなさい」

 

「私は…レミリアお嬢様が好きで…」

 

私のことが好きだとはっきり言われたのは初めてだけど、なんとなくは気づいていた。

 

「私の事が好きなのね。」

 

「でも…私は…僕は執事なんです、ですから。」

 

「ハル?」

 

「はい…」

 

「私も頑張ってるハルが好きよ」

 

「あの…」

 

「だからね、私に甘えてほしいのもあるから、たまには羽を伸ばしてほしいの」

 

「お嬢様…」

「そうね、泣いてもいいわ、おいで」

 

緊張の糸が切れたのかハルは涙を流しながら泣きついて来た。

 

「寂しかった…もうそればかりで…」

 

「いつも一緒に居たじゃない。」

 

「執事だから…駄目なんじゃないかって…ずっとそう思ってて…」

 

「駄目なんかじゃないわ、それだったら私は部屋になんか入れないもの。」

 

「レミリア様が好きで…でも伝えたら嫌われるんじゃないかって思えて、怖かったんです…」

 

「私はあなたの事を認めているわ、想いはしっかりと受け止めるつもりだったし、思い詰めずに、言ってくれればよかったのよ」

 

「なんだか…申し訳ないです…」

 

「いいのよ、ほら、暁だっていつもフランと楽しくしてるじゃない。」

 

「あの二人は…例外ですよ…」

 

「あっ…そう?」

 

「まぁ…そう思ってます…」

 

例外ってなによ…例外って…

ただのカップルみたいなものじゃない…

 

「でもね?貴方も私にくっついてくれてよかったのよ?」

 

「なんか、近づき難くて…」

 

「私はいつでも良かったのだけど」

 

「レミリア様…」

 

まるで幼児の様に抱き付いて

ずっと泣き続ける、

 

しばらくはそのままだったけど。

気がついたらハルは眠ってしまっていた

 

「ゆっくり休んでね」

 

ハルをベットに寝かせて部屋を出る。

 

「お嬢様」

 

「咲夜、何か用?」

 

「ハルの事なんですが…」

 

「彼が何か?」

 

「私から提案するのは…あまり良くないのかもしれませんか…彼は執事でなくレミリア様の…」

 

「咲夜?」

 

「はい。」

 

「余計な事は言わなくてよろしい。それは私が決めることよ。」

 

「失礼致しました。」

 

「彼はまだ執事としても私の相手としても何処をとっても未熟、だから、まだその時じゃないのよ、今はまだ執事として居ればいいのよ」

 

「かしこまりました、それで私はこれで…失礼します」

 

外に出て、庭先に建つ小さな日避けに行き、

椅子に座る。

たまにここに来ては館を眺めてる。

 

すると、暁が近くに来ていた

一人で散歩してるみたい、

 

「暁、ちょっとこっちに来なさい」

 

「はい、お嬢様。」

 

向かいの椅子に暁が座る。

いつ見ても清楚で立派な体つきをしてる。

 

「執事ってどんな気分?」

 

「どんな気分?とは?」

 

「貴方の場合、フランが主人な訳だけど、普段館の仕事をするときはどんな気持ちなのかしら?」

 

「そうですね、それはそれ、これはこれ。ですよ」

 

メリハリ、ということかしらね

 

「そう。仕事もこなして、フランの相手もしっかりしてってことかしら」

 

「まぁそういうことです」

 

「そう、」

 

仕事、ね。

やっぱり、ハルには重荷なのかもしれない

 

「ハルのことを心配されてるのですか?」

 

「そうよ。彼はまだ15だから、内容についていけてないところがあるかと思ってるの」

 

「ハルはしっかりしてますよ。ただ自己犠牲心が強いかもしれないですね。」

 

「やっぱり、無理してるのかしらね」

 

「ハル自身その感覚はないと思いますよ」

 

「そうね、無理をしているつもりはないと言ってたわ」

 

「ハルがついていけてないというより、ハルの体がまだそれ相応ではないかと。」

 

「そういうことね」

 

15とはいえ執事という仕事をさせるのはまだ酷なのかしら。

それでも彼には頑張ってもらうしかないのだろうけど…

 

「そうですね…数日に一度、まる一日休ませてあげたらいいんじゃないですか、」

 

「なるほどね、それも悪くないわ」

 

「私の場合は仕事していても、常にフラン様が隣りに居ますから、そんなに疲れてる感じはしないですが、彼の場合、淡々と仕事をこなしているだけですからね、」

 

「あなたの場合はフランといるだけで仕事が成されているのと変わりないじゃない」

 

「ごもっともですよ、咲夜さんとフラン様で決めたことですけど、私はそれでも充分満足してます」

 

「休ませてあげると言っても。ただ漠然と過ごされても困るのよね」

 

「そこは彼の思うようにしてもらうしかありません、お休みというのはそういうものです」

 

「そうよね…何か彼が喜ぶようなことがあるといいのだけど」

 

「まぁ、詰めた話、彼がここに残るか、里に行って親子として生きるかですから。それを決めるのはレミリア様ですよ」

 

「いきなりプレッシャー掛けるのやめなさいよ、」

 

プレッシャー…そういうこと?

 

「その顔は何かに気づいたようですね」

 

「なんとなくね、」

 

「彼を心配されるのなら、彼にどうすればいいのか考えるのが今の段階ですよ」

 

「貴方、ほんと口が減らないわね」

 

「そういう性格なので」

 

「まぁいいわ、要はハルの癒やしになるような事を探してみればいいんでしょ」

 

「ご名答です。」

 

「わかったわ。ありがとう、また何かあったら呼ぶわ」

 

「珍しくお礼を言うんですね、」

 

「お礼くらい普段から言うわ」

 

「まぁ、そうですよね、それでは。」

 

相変わらず口の減らない執事ね…

 

にしても…癒やしね…

年頃の男の子の癒やしってなにかしら…

 

部屋に戻って

考えに更けながら、ハルの隣で眠った…

 

目が覚めるとハルはまだ寝ていた。

机の上の本を片付けていると。

ハルも目を覚ました。

 

「おはよう。ハル」

 

「おはようございます、お嬢様」

 

「ハル」

 

「はい、何でしょう、」

 

「今日一日、仕事を休みなさい」

 

「お休み…?ですか。いいのですか?」

 

「私がいいと言うんだから。いいのよ、」

 

「えっと、ありがとうございます」

 

「それじゃ、私はお茶をしてくるから。まぁ、ゆっくりして頂戴。」

 

「あの、レミリア様」

 

「何かしら?」

 

「館の外には行ってもいいのですか?」

 

「構わないけどね、妖怪やイタズラする妖精がいるから。その時は声をかけて頂戴ね。」

 

「はい。ありがとうございます」

 

部屋を出てフランの部屋に向かっていた。

部屋の前につくと…

明らかに甘い雰囲気が漂っている感じがして、なんだか入りづらかったから

結局自分の部屋に戻ることにした。

 

「咲夜が来るかな、その時お茶を頼みましょ…」

 

しばらくはあの部屋には入れそうにない、というよりも入ってはいけない感じがする。

 

部屋に戻るとハルはまた寝ていた。

 

「ゆっくりして頂戴ね」

 

声をかけながら撫でる、

こんなに手をかけるのはフラン以来かもしれない

 

まぁ、今は暁に任せきりだけど、

そんなことを考えていると咲夜が部屋に居た

 

「お茶をお持ちしました」

 

「ご苦労様、下がって頂戴」

 

「失礼します」

 

一人でお茶を飲むのもかなり久しぶりかしら

あっ、いや、そうでもないわね

 

「館の外…か」

 

ハルが行きたい場所

人里…かしらね。

 

やっぱり母親に会いたいと思うのは子として、本望でしょう。

彼が望むのなら人里でもどこでも連れて行かせてあげたいわ。

 

「執事の相手をする主人…」

 

まぁ、それもそうよね、

主人と執事なのだから。

まぁ…執事がまだ青年以下ってのも…

少しおかしな話かもしれないけど

 

「それはそれ、これはこれ、ね」

 

お茶を飲み終えた頃、丁度ハルが起きた

 

「レミリア様…おはようございます」

 

「おはよう、ぐっすりだったわね。」

 

「こんなに、熟睡したのは…初めてかもしれません…」

 

「そう、よかったわ」

 

「あの。お茶用意してきます」

 

「今済ませたとこなのよ。済まないわね」

 

「そうなんですね。」

 

「それと、今日は休んでいいのよ?」

 

「毎日のことなのと、私もお茶を飲みたかったので…」

 

「まぁ、そうね、」

 

「ですが…もう済ませてるなら。仕方ないです」

 

「あなたの分だけでも用意すればいいじゃない。」

 

「大丈夫です。」

 

「そう。」

 

「それと。一つお願いがあります。」

 

「何かしら?」

 

「あの。博麗神社に行ってみたいです。」

 

博麗神社?

人里じゃないのね。

わざわざ博麗神社に何の用があるのかしら?

 

「ええ、構わないけど。博麗神社なのね?」

 

「はい。一度行ってみたくて」

 

まぁ。彼からすればどこも未知の世界だから、わからなくはないけど、

まぁ、ついて行ってあげる事にしましょう

 

「いいわ。今から行くの?」

 

「えっと、軽く身支度だけ。」

 

「ええ、また声かけて頂戴」

 

しばらく経ったあとハルが戻ってきた。

 

「行きましょうか」

 

「はい。」

 

館のエントランスについた頃、咲夜が待っていた。

 

「今日はどちらまで?」

 

「博麗神社よ。」

 

「日傘を指しますからどうぞ」

 

「日傘は自分で指すわ。咲夜は館の仕事に専念して頂戴。」

 

「か、かしこまりました…」

 

日傘を自分で持つなんてもう随分なかったわ。いつも咲夜が持ってくれていたから、片手が塞がるのは違和感があるわね。

 

正確にはハルと手を繋いでいるから両手塞がっているのだけど…

 

「博麗神社に用があるの?」

 

「えっと…一度行ってみたくて。」

 

「そう。」

 

特に何事もなく博麗神社までついた。

私は慣れているからいいけれど。

ハルには神社の前の長い階段状はきつかったかしら

 

「ここが…博麗神社…」

 

「そうよ。ほんといつ見ても質素よね」

 

「質素で悪かったわね。」

 

「あら、今の聞こえてたのね」

 

横を向くと霊夢がいた。

頂戴。今帰ってきたところみたい。

 

「あんたの趣味の悪い赤い屋敷よりマシでしょうが」

 

「赤の何が悪いのよ」

 

「正直、センスないわ」

 

そこまで言わなくてもいいじゃない

 

「センスないなんて失礼ね」

 

「あれで何がカリスマよ?大体あんたは」

 

「お二人とも喧嘩はよしてください」

 

ハルの一声で冷めた…

確かに少しカッとなっていたかもしれないわ…

 

「そういえば居たわね。この前言ってた執事ってこの子のこと?」

 

「そうよ、」

 

「ハルと言います。よろしくお願いします。 」

 

「霊夢でいいわ、よろしく」

 

「仕事熱心で、いつも助かってるわ。」

 

「あんた、いくつ?」

 

「15です。」

 

「レミリアあんたさ…」

 

「いろいろあったのよ。誰も無理矢理執事にしたわけじゃないわ、訳ありよ、」

 

「えっと…そういうことです」

 

「そ、そう…でもなんか…見覚えあるのよね…」

 

「私ですか?」

 

「えーと…フリーデの…?」

 

「あら、よくわかったわね、」

 

「あの。奴隷扱いされてた…」

 

「はい…」

 

「やっぱりあんた…」

 

「話してなかったかもしれないけど。フリーデの大馬鹿者は死んだわ、彼は追い出されたって聞いたから、うちに向かい入れたの、それだけよ」

 

「そう…って死んだってことは館は?まさか誰もいなくて放置なわけ?」

 

「…そういえば。全く考えてなかったわ。」

 

「あんたしっかりしなさいよ。死んだってこと館の使用人達は知らないわけでしょ?」

 

「そう…ね。」

 

「あいつが死んだのいつ頃?妖怪とか住み着いてなければいいけど…」

 

「四、五ヶ月前くらい?だったかしら」

 

「半年近く前じゃない」

 

「今から見に行きます。」

 

「ハル?よかったの?」

 

「はい。」

 

博麗神社をあとにして。

紅魔館と人里の丁度間くらいの森。

そこにハルの住んでいた館があるはず

以前行ったことがあるから薄っすらと覚えている

 

「ここです、」

 

「随分と綺麗ね」

 

しっかりと手入れされた庭先

窓の光の反射が少し眩しいわ…

 

館の扉をノックして。少し待ってたら、

扉が開いて、使用人達がまだいた

 

「あなた様は…確か…」

 

「紅魔館のレミリア・スカーレットよ。」

 

「ようこそおいでくださいました、ですが…生憎旦那様はご不在でして…」

 

「知っているわ。相変わらず、きれいな館ね」

 

「ありがとうございます。」

 

「館のものは?貴女だけ?」

 

「いえ、まだ数名います。立ち話ではいけませんので、客間までご案内しますね、」

 

エントランスも廊下も何処も綺麗に掃除されている。うちも負けてないけど。ここには人間しか居ない。

そこが何故か羨ましく思ってしまうわ

 

「どうぞ。お掛けください、」

 

「ありがとう。館の使用人達を集めてちょうだい、できるだけ早めに」

 

「はい?えっと。かしこまりました」

 

数分と経たないうちに。十数人集まった

 

「これで全部?」

 

「はい。」

 

「わかったわ。貴方達にはいくつか知らせがあるの」

 

「知らせ…とは?」

 

「まず、ハルス=エル=フリーデ、この子は知っているわね。」

 

「まさか、エル…?」

 

「そうです…皆さん、お久しぶりです」

 

「心配していたよ…よかった。」

 

「彼は、フリーデ公に追い出されてからうちのものが行き倒れてたのを連れてきたのよ。それで彼の希望とまぁいろいろあってうちで執事をやってる。」

 

「そうだったのですね。安心しました」

 

「それと、フリーデ公は亡くなったわ」

 

「まさか…そんなことが」

 

「彼の横暴な行為が閻魔まで怒らせたらしくて、うちに来たときに、命を狩られたわ、」

 

「そう…ですか…」

 

「奥さんとその息子の一人は人里で別の男と暮らしてるって聞いてるわ」

 

「それでは…私達は!」

 

「そう、帰らぬ主人を待っていたことになるわ」

 

「そんな…」

 

「正直な話、気の毒としか言えないけれど。そういうことなの。だから、この館をどうしたいか。あなた達に聞きたい。ハルはうちの執事。奥さん達をここに呼び戻すでもよし、ここを捨てて各々の道を目指すもよし。もちろん私の館に来てもらってもいいわ。」

 

使用人達にはそれを選ぶ権利がある…

ハルは仕方なくうちの執事になったけど…

本当なら各々の道を選んでほしいところね…

 

「私…奥様がどこにいるか知っています…一度確認を取ってからでもよろしいでしょうか…?」

 

「ええ。まぁ、それは構わないけど。」

 

「私達は…主人が帰ってくるのを待っていたんです…だから奥様が戻って来てもらえるなら、今はそれが私達の本望です」

 

「そうね。今は使用人だものね。」

 

彼らは自分よりも今の立場を優先するのね…

 

「なら、私とハルが確認をしてくるから。あなた達はここで待っていて頂戴。」

 

「いいのですか?」

 

「ええ。元々、フリーデ公がうちの買収の話をし始めていたから、それを閻魔が止めたって言うのが筋。私も少なからず彼には怒りを覚えていたのもあるし。何よりハルのことがあるから。」

 

「ありがとうございます!」

 

腑に落ちないところもあるけれど…それはそれ、私達が真実を知っている唯一なのだから。しっかりと後始末はしないといけないわ。

 

それにしても。今日は色んなところに行くわ…次は人里だものね…

 

「この家だったはずなんですけど」

 

「はずって…美鈴、しっかりして頂戴。」

 

「多分…いやそうですよ」

 

「ハル?わかるの?」

 

「その…この柑橘の匂い…母の好物で…」

 

「なるほどね。」

 

カン、かしらね。戸をあけてもらわないことには、わからないけど…

 

「あの…どちら様ですか…?って…吸血鬼?」

 

「ええ、レミリア・スカーレットよ、貴女がフリーデ公の奥様だった方かしら?」

 

「はい…そうですが…私が何か…?」

 

「ええ、館のことについて話をお伺いに参りました。お時間は宜しくて?」

 

「構いませんが…どうぞ上がってください」

 

里の質素な家…椅子もなければ紅茶もないけど…我慢ね。

 

「フリーデ…彼はどうなったんですか」

 

「彼は亡くなったわ。悪事の数々が目付いたのか閻魔に裁かれて今頃地獄にいるでしょうね」

 

「そうなのですか…」

 

「それで、エルという子についてなのだけど。覚えているかしら?」

 

「はい…今でも思い出すと…何もしてあげられなかったのが…苦しく思ってしまいます…」

 

「あなたはエルに優しかったと聞くわ。」

 

「彼と違って私はエルを大切に想ってましたから…」

 

「何故フリーデ公はエルの事を奴隷のようにしたの?」

 

「今更ですが…エルの成り立ちを話ますね…」

 

「成り立ち…?」

 

「彼は…私の実の息子ではなく…私の友人の子供なのです…」

 

「つまり、養子ね。」

 

「はい…友人は二歳のエルを残して事故で亡くなり…そしてエルを養子として預かったのです。ですが…彼はそれを受け入れず…」

 

「器の小さい男ね…」

 

「世話の殆どを使用人達がやっていて、エルが物心ついた頃には…彼が命令をするようになり、教育という名目で虐待を繰り返していたのです…彼の横暴な態度もそこからエスカレートしていったんです」

 

「養子…ね」

 

フリーデ公は知っててこんなことをした…

それがまた許せなく思ってしまう。

 

「それで結果的に閻魔に裁かれた…と」

 

「そういうことになると思います」

 

「なるほどね。それでも、館はまだ残ってしまっているのよ。使用人達は主人の帰りを待っていたようでね。」

 

「そうですか」

 

「まぁ。男もいると思うから検討するといいわ。」

 

「いえ!館に戻ります!あの館は私の大切なものがいくつも残っています。それに今の旦那もいつか館に戻れるといいなって話してくれてました。だから帰ります、」

 

「そう。使用人達も喜ぶと思うわ。」

 

「はい。わざわざありがとうございました。」

 

「礼には及ばないわ、私はただ大馬鹿者の後始末をしただけよ。」

 

「近いうちに戻りますと。お伝えできますか?」

 

「もちろんよ。あとそれと」

 

「まだ何か?」

 

「この子は見覚えあるかしら?」

 

「…エル…エルなの?」

 

「お母さ…ん…?」

 

「やっぱりエル…生きてたのね!」

 

「僕は…レミリアさんに助けてもらえて…でも…僕は…」

 

今のハルはかなりショックを受けているでしょうね。養子、実の両親がいないこと。そして今の自分の立場、相当混乱してるはずだけど…

 

「ハル。」

 

「どうしたの?エル?」

 

「多分、今の彼はかなり混乱してるわ。唐突に自分の過去を話されたのだもの、わけがわからなくなってもおかしくないわ。」

 

「ハル落ち着いて。」

 

「レミリア様…僕は?」

 

「今あなたの目の前にいるのがあなたの母親。あなたを本当に救ったのは彼女なのよ。」

 

「はい…そうです…ね」

 

「エル…ごめんなさい…何もしてやれなくて」

 

「お母さん…」

 

親子…か、ほんと微笑ましいわね…

 

「レミリアさん。本当にありがとうございます。」

 

「お礼を言われるようなことはしてないわ。」

 

「あの…それじゃ僕達はこれで…」

 

「エル…また来てね」

 

「はい。お母さん」

 

 

人里を後にして、またフリーデの館まで行かなければならない…

そろそろ歩くのも疲れてきたわ…

 

「それで…奥様はなんと…?」

 

「戻るって言ってたわ。新しい旦那も一緒に来るそうよ。」

 

「よかった…ありがとうございます」

 

「それと。ハル」

 

「はいレミリア様。」

 

「貴方、執事のままでいるか、それとも母親と暮らすか。どちらがいいかしら?」

 

「それは…」

 

「私は決めないわ。貴方が思うようにすればいい。」

 

「それなら…このように数日に一度…ここに帰って来るというのでは。だめでしょうか?」

 

「欲張りね、でもいいわ。そうすれば寂しくないものね。」

 

気がつけばもう夕方…

いつもはお茶や昼寝で過ごす時間が。今日は早く感じたわ…

 

「ハル。お疲れ様。」

 

「わざわざ我儘に付き合って頂いてしまって。申し訳ないです」

 

「いいのよ。執事の面倒を見るのも主人として、館主としての仕事だもの、」

 

「ありがとうございます」

 

 

 

最近、ハルの様子が変わった気がするわ

なにか…活き活きしてるというか。

 

「ハル。」

 

「はい、レミリア様」

 

「お茶、お願いしようかしら。」

 

「はい、いまお持ちします。」

 

「今日は二人で、ね」

 

「パチュリー様はよろしいのですか?」

 

「また本ばかり読んでるもの研究の邪魔をするのは良くないわ。」

 

「そうですね、かしこまりました。」

 

ハルの笑顔を見ると、何故か

胸に熱いものを感じてしまう

 

「さぁ…何でしょうね…」

 

恋…とは違う気がするけれど…

私にとってハルが大切な存在であることには

変わりないわね。

 

 

フラン以外にこんな気持ちになったのは初めてかもしれないわ。




特に何もありません

また会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

想い人と寄り添いながら

どうも悠樹です

なんかもう、ほんとなんかもう
だぁぁ!あぁ…
そんな感じ…

そうだよ!うまくいかなかったんだよ!
あぁ…

ではごゆっくり…


「あ…貴方は」

 

「久しぶりだね、妖夢」

 

「今日はどうしたんですか?」

 

「幽々子様に呼ばれたんだ。」

 

「そうですか。ゆっくりしていって下さい」

 

 

 

 

「幽々子様。遅いですよ」

 

「ごめんなさいね。ちょっと妖夢と話し込んでたのよ」

 

「そうですか。それで用事って何ですか?」

 

「聞きたいことがあって。貴方って一度死んでるのよね、」

 

「うんまぁ。」

 

「正確にはあの世に行ってから帰ってきている、だけれど。」

 

「変わりないと思いますよ。よくご存知ですね」

 

「まぁ、貴方とは短くはないけど。そういう話を閻魔から聞いたから確かめてみたくてね、」

 

「あっ。閻魔様こっちに来てたんですね」

 

「休暇貰ったから羽伸ばしにこっち来たらしいけど。結局説教三昧だったらしいわ」

 

「そうですか…忙しい人ですね」

 

「まぁ。性格上仕方ないんじゃない?」

 

「まぁ。そうでしょうね。」

 

「それで私が何か?」

 

「貴方が少し前から仕事が忙しいって里に付きっきりで、妖夢が元気無いのよね」

 

「そうですね。確かにさっき会ったけど思いの外声も小さかったな。」

 

「ずっとそわそわしてるのよねぇ」

 

「元気もなかったしな」

 

「庭先も不揃いだし。料理も味にばらつきがあるのよねぇ。」

 

「…つまりアレか、俺に戻ってきてほしいって意味か」

 

「私はどっちでもいいのよ?」

 

「めんどくさいこと言うなぁ…」

 

「それに。妖夢?ほら隠れてないで」

 

「えっと…私はそんな。」

 

「ごめんな。まだ掛かるから。待っててくれないか?」

 

「そんな!私は急かしている訳ではなくて…」

 

「たまにはこっちにも来るから、元気出してくれ」

 

「あの…は、はい 。」

 

「貴方達って面白いわねぇ?」

 

「余計なこと言わなくていいから。それじゃ、俺は里に戻って仕事してくるよ」

 

「落ち着いたら戻ってくるといいわ」

 

「あぁ、もちろんさ」

 

 

……

 

幽々子様は…またからかって…

 

「優真さん、仕事大変なんですね」

 

「あはは、まぁね」

 

「治安維持、でしたっけ。最近事件とか多いんですか?」

 

「…まぁ。」

 

「頑張ってください。」

 

「ありがとう」

 

…また一緒に過ごせたら、それは嬉しいけど

でも仕方ないですから…

 

「妖夢、」

 

「はい?」

 

「一生懸命、頑張れな」

 

「えっと、はい?」

 

「さっきの幽々子の話、本当ならちょっと申し訳ないかなって思ってさ」

 

「もちろん…少し寂しいのはありますけど…」

 

「料理も庭仕事も自分が満足するようにしてほしい。」

 

「はい。」

 

 

仕事…私にとって…庭仕事も食事の用意も…いつものこと、満足行くように…か…

 

忙しいってどんな感じなんだろう…

 

「妖夢?手が止まってるわ、」

 

「あっ…」

 

「妖夢、こっちおいで」

 

「はい…」

 

最近…すぐに考えてしまう…

 

「あのね。いろいろと思い込むのはわかるわ。考えが纏まらなかったりするのもね、でもそれで何も手がつかないのは良くないわ。」

 

「申し訳ないです…」

 

「あと、彼の事が気になるならたまには里に行ってきてもいいわ」

 

「いいのですか?」

 

「ええ。でもあなたのやるべきことはしっかり済ませて頂戴、」

 

「はい。」

 

 

彼に会える…

それを思うと何故か心が高鳴る…

 

「あれ。妖夢」

 

「幽々子様がたまには会いに行ってもいいって。」

 

「そっか、上がって」

 

質素で殺風景

これが里での優真さんの住む借家

それでも…何故か暖かい感じがする。

 

「ごめんね、何も用意してないや」

 

「いいんです。私が突然お邪魔してるだけなので…」

 

「お茶持ってくるよ」

 

里のお茶は…白玉楼で飲むお茶に比べると少し薄い。薄いし濁りがある。

 

「それにしても、ここに来るまでに何もなかった?」

 

「え?はい。何も。」

 

「そうか。よかった」

 

「どうかしたのですか?」

 

「忙しいって言ってたよね、理由なんだけど…」

 

「?」

 

「最近、大人の男性が男女問わず成人未満の子供を攫う事件が多くてね。」

 

「なんとも野蛮な…」

 

「それで、重労働や売買、更には欲求を満たすための道具にする輩すらいる」

 

「ひどい…」

 

「今は落ち着いてきたが少し前までは酷かったよ…悲鳴が毎日聞こえてたからね。」

 

「大変ですね…」

 

「俺達のような里の役人には手に終えなくてね…自警団と妹紅さんが動き始めてからまぁ落ち着いてきたよ」

 

「そうなんですね。」

 

「それでも里の仕事がそれだけって訳じゃないから、まぁ忙しいことには変わりないよ」

 

「しばらくは白玉楼に戻ってこれなさそうですね」

 

「でもまぁ。すぐ戻るよ」

 

「戻れるんですか?」

 

「忙しいとは言っても、忙しくしてるのは俺くらいだしな」

 

「どういうことです?」

 

「自警団が里の見回りとか一部をやってくれることになった、全体的に仕事の役割が減ったんだ、だから、役人の中でも地位が上の人間、特に俺とかはまだやることが多いけど、その他はそうでもない」

 

「そうだったんですね」

 

「だからすぐにでも、戻れると思う」

 

「良かったです」

 

「それに、妖夢がわざわざ会いに来るくらい、寂しい思いさせてるみたいだし。」

 

「えっと…それは。」

 

「ははは、まぁ、俺も寂しくないわけじゃないし、一緒に入れたらそれこそ嬉しいよ」

 

「私も…それは嬉しいです。」

 

「だから、まだ少し寂しくなるかもしれないけど。白玉楼にいるときは、この前言ったように自分が満足いくような仕事をしてほしい」

 

「わかりました、」

 

 

そう思って優真さんの借家を出た直後に…

 

誰かにつけられてる。

まだ距離はあるけどはっきりわかる。

 

「はぁ…命知らず…」

 

わざと立ち止まって迷子になってフリをすると…一気に詰めてきた。

 

鞘からは抜かず白楼剣で叩く

 

「うげぇ!」

 

「聞いたとおり、まだ人攫いはいるんですね」

 

「へへぇ…お嬢ちゃん、なかなかきれいだな、」

 

「貴方のような人間に褒められても気味が悪いだけです」

 

「悲しいこと言うなよぉ、」

 

気を引いてるつもりでしょうけど…

まだ何人かいる、視線でわかる

 

「私は暇じゃないんです」

 

そう言って振り向くと隠れていた輩も出てきた…

 

「遅い!」

 

野蛮なやり方…私には、どうということはない…

 

「ちっ!つまらねえなぁ!」

 

「貴方達のような人間に負けるほど弱くはありません、」

 

「人間だあ?誰が人間だよ?」

 

「何を言ってるの?どこからどう見ても人間でしょ?」

 

「へへ…後悔するなよ?」

 

人の体から…虫のような…化け物に豹変していく…見た目が気持ち悪いのはさておき、人攫いが妖怪だったなんて

 

「お嬢さんよぉ?最後に何か言いたいことはあるかぁ?」

 

「貴方達、今までに何人攫ったのですか?」

 

「いやぁ…覚えてない、沢山だな。それだけか?」

 

「ええ、充分です」

 

「そうかい!それじゃ!」

 

「それなら容赦は必要ないですね。」

 

少し息を止めて…構えて…

 

「おお?怖すぎて動けねぇか!」

 

襲いかかる…

でもその程度なら。

 

「未来永劫斬!」

 

真っ二つ…いや2本とも使ってるから

4つになった。

もちろん…息絶えただろう、

 

「てめぇ!何しやがる!」

 

「子供を攫った罰です、しっかりと受けなさい!」

 

まるで阿呆のように叫んで。

襲い掛かってくる。正面から何体も、

正面…か。

 

「妄執剣…修羅の血!」

 

文字通り真っ二つ。

 

「な、何だこの化物!」

 

「化物はあなた達でしょ?」

 

「間違いじゃねぇが…巫女以外にこんな強えやつ見たことねぇ」

 

「この幻想郷には私よりも強い人は沢山居ます、私はまだ序の口と言えるかもしれないが…貴方達程度の下衆な妖怪に負ける程、甘くはない。」

 

「畜生!」

 

「最後にいくつか聞きたいことがあります」

 

「な…なんだよ…」

 

「攫った人間…主に子供や私のような若い人間でしょうけど、どこに連れていきました?」

 

「…い、言えねぇ…知らねぇ?」

 

「なら、斬ればわかりますね。」

 

「まて!わかった!いうから見逃してくれ!」

 

「どこに居ますか?」

 

「里の倉の裏手!そこに地面に隠し戸がある!そこに何人か…いや俺らが攫ったのは全員いる!」

 

「何故攫ったんです?」

 

「俺や…あんたが斬った兄貴は…若い頃あんなようなガキどもにイジメられてたんだ!」

 

「イジメられてた?」

 

「俺たちゃ虫のような見た目だ。妖怪だ、力もない頃はずっと迫害されてたんだよ!今!力を手に入れた今だから!復讐したかったんだ!」

 

「なるほど…」

 

「でも…あんたは…」

 

「そう思う気持ちはわからなくはないけれど、そこで復讐するとなればそれは罪です、ここではそれは悪なのです」

 

「それくらいわかってるよ!でも…何もしないでずっと我慢するのは耐えきれなかったんだ!」

 

「そうですか。残念です」

 

「畜生…」

 

「もう十分でしょう」

 

「お嬢さんよ…最期に名前を教えてくれ…」

 

「私は魂魄妖夢。半人半霊です」

 

「魂魄妖夢…ああ…早く斬ってくれ…」

 

「見逃すというのは?」

 

「今更だろ…」

 

「わかりました。」

 

望み通り、命を断つ。

迷いもないような諦めだったけど、

それでも罪が晴れるわけじゃない

 

 

「妖夢、大丈夫かい」

 

「優真さん、いらしたんですね」

 

「この妖怪達は?」

 

「人攫いをしていた団体です。『俺達が攫ったのは』、と言っていたので他にもいるかと…」

 

「そうか…」

 

「里の倉の裏手に隠し戸があってそこに攫われた子どもたちがいるそうです。早く行ってあげてください。」

 

「わかった、ありがとう」

 

これで…よかったのでしょうか…

いいえ。これでいいです。

彼らは然るべき罰を受けたのですから

 

「他の連中の話は何か言ってたか?」

 

「いえ、特には。」

 

「そうか、知らなかったかもしれないし仕方ないか」

 

 

 

「妖夢?」

 

「はい、幽々子様」

 

「里で一悶着あったって聞くけど大丈夫だったかしら?」

 

「傷一つないですよ。大丈夫です」

 

「そう、相手は誰だったの?」

 

「人攫いの妖怪でした。どうも彼らだけではなさそうですが。」

 

「そう。それなら他の人攫いもあなたがおびき出してみたら?」

 

「私がですか?」

 

「だってそうすれば彼の仕事が早く終わるでしょ?」

 

「そ、そうですが…もしかしてそれだけですか?」

 

「んー…そうね、そんな感じ」

 

突拍子もないことを…

確かに里に住む妖怪なら…負けることはないと思うけど…万が一のことを考えると危険だから…

 

「幽々子様、その必要はありませんよ」

 

「優真さん?」

 

「あら、来てたのね」

 

「やっと暇がもらえたからね。」

 

「もしかして解決したのかしら?」

 

「自警団と話をしてね、大体の目星をつけたんだ。それで昨日、妖夢が斬った妖怪達の他にも捕まってね。多分同時期ぐらいに自警団が輩に接触してる」

 

「そうだったんですね」

 

「ああ、後は攫われた子供達の身元を確認して引き渡しておしまい、俺はほとんど仕事が無いから、戻ってきたよ」

 

「そう。」

 

「まぁ。やっと終わったって感じだよ」

 

「良かったです」

 

「それに、妖夢も寂しそうだったしな」

 

「私はそんな…!」

 

「それじゃ今日はもう疲れたしゆっくりしようかな」

 

「そう。」

 

「それじゃまた後で」

 

 

「優真さん…」

 

「どうした?妖夢」

 

「お茶持ってきた…」

 

「ありがとう、」

 

…何か話さないと…何か…

 

「妖夢はさ」

 

「私ですか?」

 

「やっぱ…なんでもない」

 

「そうですか」

 

…彼のことを考えると何故か落ち着かない…

 

「妖夢…」

 

「なんでしょう?」

 

「俺な、ずっと考えていたんだ。」

 

「どんなことですか?」

 

「生き還ってから、今はしっかりと身体が戻って不自由なく生きてる。」

 

「はい、あのときはとても心配しました」

 

「でも。それでいいのか。なぜ俺は戻ってこれたのか。」

 

「何故か…それはあなたが…」

 

「あのとき俺の魂は天国に行ったんだ。それで天国で暮らしていた。」

 

「はい…」

 

「でも、俺は天国でも働こうとして、働けないストレスに負けて二度目の死を迎えた。本来なら天国で死を迎えるはずはないと思うし。仮に迎えたとしたらそこで成仏するだろ。」

 

「そうかもしれませんが…」

 

「なぜ俺は…二回も閻魔のところに行ったのか…ずっとわからないままなんだよな…」

 

「生きている…それでいいと思います」

 

「それはわかる。今でもここで妖夢と一緒にいると言葉は出なくてもすごく安心して落ち着ける。」

 

「私もそうですよ」

 

「そう。それなのに俺はどこに行っても働き者なんだよ。折角生き還って、妖夢に辛い思いさせなくて済むはずだったのに、仕事ばかりだ」

 

「私はそんな風には思ってないですが。」

 

「申し訳なくてな。」

 

「私は頑張っている優真さんの方がいいと思いますよ」

 

「そうか?」

 

「だって。天国でも働こうとするんですから。その方が優真さんらしくていいと思います」

 

「俺らしさ…か…妖夢は寂しくないのか?」

 

「寂しいと思うこともありますけど。でも普通はそうだと思います。だって人里では男が仕事して女が家事に努めて。そういうものだと聞きます。だから、自然なことだと思いますよ?」

 

「そうだな…」

 

「私は…優真さんの事は好きだけど、優真さんのことを縛り付けるようなことはしたくないです。仕事をしたいと思うならしてもいいと思いますよ。」

 

「妖夢、ありがとうな」

 

「いいんです。そんな風に私の事を思ってくれていたなんて少し嬉しいですよ、でもだからこそ優真さんには優真さんの思うように生きてほしい」

 

「わかった。」

 

初めて彼の弱音を聞いたかもしれない

でも…誰だってそういう所はある…

だからこそ、彼は私に話してくれた…

それが…とても嬉しく思う

 

「妖夢、ありがとう」

 

「どういたしまして。」

 

 




半ば無理矢理進めてしまった感が否めない…
一体何があってどうしてこうなった!
もう自分でも訳がわからないよ

また会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

一時とこれから

どうも松K.です


ごゆっくり


「ここが…幻想郷か…」

 

どうしてここにいるのだろうか

 

今いる場所が幻想郷だというのは、なぜだかわかる、ここに来る前、家を出て数分後くらいだろう

 

「事故でも起きたのか…?いや…そんなことはなかった気がするなぁ…」

 

車の音もしなかったと思うし、痛みもなかった気がする

 

「とにかく。困ったなぁ…」

 

それはまぁ、いろいろと困った

 

学校も家族のことも宿題や塾

まぁいろいろ。

 

「まぁいいか、誰か…いないかな」

 

幻想郷

小さい頃、博麗霊夢という女性から聞いたことがある。

どんなところかと聞くと古くて懐かしい場所だと言っていた。

 

古いかどうかはさておき、懐かしい感じっていうのはどこか感じる。

 

適当に歩いていると大きな湖が見えてきた

 

「霧の湖、か」

 

見たこともないのに何故か知っているような感覚に陥る。

博麗から聞いたことあるだけのはずなのに

 

「ここは少し涼しいな、」

 

水辺は涼しい

先程まで湿気と温度の高めな森の中に居たせいか、水辺と霧というのがとても涼しく感じる。

 

「誰かいるな?」

 

青い服、何か食べてる

アイスクリーム?

 

「誰?」

 

「朝霧っていう。気がついたら幻想郷に来てたんだ。」

 

「そう、私はチルノ」

 

チルノ…氷の妖精か

強気ですぐ突っかかってくると聞くが…

 

「近づかないほうがいいよ、今涼みたくて周りを冷やしてるから」

 

ちょっと違うみたいだ

 

「そうなのか?あまり気にならないが?」

 

「寒くないの?」

 

「寒くはないな、丁度いい感じだ」

 

「ふーん、そっか、」

 

「隣、いいか?」

 

「お好きにどーぞ」

 

チルノの隣に座ってみる、

確かに冷える、少し肌寒いだろうか

 

「何しに来たの」

 

「何かをするというのは特に考えてなくて、こっちに来てしまったことに少し困ってるんだ。」

 

「困る?何に困るの?」

 

「ここじゃない別の世界に居たんだけどな、いろいろとやり残したことがあるんだけど、どうやって戻ればいいのかわからない」

 

「それを私に聞くの?」

 

「いや…そのつもりはないよ、たださっき迄ずっと考えながら歩いてたから少し疲れてね休憩したかったんだ」

 

「ふーん、そっか。」

 

「チルノは。友達はいいのか?大妖精だっけ?」

 

「大ちゃんは今は寺子屋にいるから」

 

「チルノは行かなくていいのか?」

 

「もともと今日は行く予定はないんだけどね、大ちゃんはもっと勉強したいって、個人的に行ってるだけ、他にもそういう子達はいるけど。私は普段受ける分だけでいいや」

 

「大妖精は勤勉なんだな、」

 

「けーね先生みたいに教える立場になりたいって言ってた」

 

「そうか、頑張ってるな」

 

「あなたは?」

 

「俺が何か?」

 

「あなたの世界で寺子屋に行ってるんでしょ?」

 

「まぁな、こっちだと学校だが、もう行かないかもしれないな」

 

「サボるのは良くない。」

 

「帰れないだったら、サボるも何もないだろ?」

 

「まぁ、そうだね。」

 

特に大口叩くわけでもなさそうだな、

案外丁寧な話し方をするのか

 

「博麗さんから幻想郷についていくつか聞いたことがあるんだ。」

 

「霊夢?あなたの世界にも行ってたんだ。忙しいんだね」

 

「そうみたいでな、俺がまだ小さい頃、いくつか話を聞いてたんだ。」

 

「ここについて?」

 

「そう、でも博麗の言うチルノは強気で何にでも喧嘩売って意地張ってばかりだって聞いてた、もちろん妖精の中でも群を抜いて強いとも」

 

「ふーん。」

 

「でも今のチルノはすごく大人しいんだな。」

 

「強ち間違いじゃない…けど、今はそんなに」

 

「つまりは?」

 

「確かに今でも意地を張る、ちょっと変わるけど売られた喧嘩は買うし、いざとなれば、強気なのもそうだよ。」

 

「控えめになったって言うことか?」

 

「そうだね。」

 

「そうか。」

 

拍子抜け…というのには言いすぎか、

実際にその場面は見たことないから

 

「こっちにはさっき来たばかりなんだっけ」

 

「まぁな、宛も何も無くて帰る術もわからない、妖怪にでも喰われておしまいかもしれないな」

 

「あるいは今ここで、私があなたを凍死させるか」

 

「それもあり得るな」

 

「まぁそんなことはしないけどさ、この先どうするの?」

 

「どうするべきかもわからない、それすらも今考えないといけないからな。」

 

「まぁね。」

 

「聞いてた人里にでも行くかなぁ。」

 

「どうせ宛はないんでしょ」

 

「うん。」

 

宛はないがまぁ、何かしら探してみるしかないだろう。

 

「さて。行くかな。」

 

「そう。」

 

立ち上がって森に入ろうとしたとき。

何故か足が動かなかった。

どうも氷漬けになっている

 

「なるほど、もう少しここにいようかな」

 

「少しお昼寝したいからここにいて。」

 

無防備になるからとはいえ、

俺に対しては無用心か

 

「俺は危険視してないのか。」

 

「その足で何かできるの?」

 

「まぁほとんど無理だな」

 

「だよね」

 

その場で横になるチルノ。

まぁ、足が氷漬けでなくても妖精相手に手を出す気は元々ないが。

 

「これじゃ、里に行くことも逃げることもできないな。」

 

空を見ると木々の隙間から暗い雲が見えてきた、風が強くなってきているせいか

雲の動きも早い。すぐにでも、雨が降るだろう。

 

「ずぶ濡れ確定か。更に困った。」

 

どこか雨宿りしたいところだが、

全く…仕方ないか。

 

しばらく考えに更けていた、

うとうとしながらも、眠るわけにはいかず。

なんとか意識を保っていた。

 

「…うーん…あんまり眠れなかったなぁ。」

 

「起きたか」

 

「うん。」

 

まだ眠たそうにしているが。

しっかりと起きているようだ

 

「んー。雨かな」

 

「結構曇ってきてるな、」

 

「帰ろうかな」

 

「俺はどうなる」

 

「どうせだから。くる?」

 

「女性の家にお邪魔するわけには…」

 

「宛はないんでしょ?」

 

確かにそうだ、宛はない

歩けば近くにあるチルノの家か

どれだけ歩くか、たどり着くかすらわからない里に行くか

 

まぁ、仕方ない

 

「そう…だな、よろしく頼むよ」

 

 

そう遠くない所にあるのだろうか。

 

「こっちだよ」

 

少し浮遊しながらの道案内か

空を飛ぶなんて向こうならあり得ないが…

 

そんなことを考えていると

頭に雨があたり始めた

 

「降り始めちゃったなぁ」

 

「そうだな…」

 

「もう少しだから」

 

開けた場所に一軒の家があった。

 

「ここか」

 

「あがって。」

 

妖精の家にしては案外大人しい。

 

「これで、拭いて。」

 

タオルまで出してくれるのか。

 

「ありがとう、」

 

「どういたしまして」

 

「チルノはなんでそんなに優しくするんだ?」

 

「誰かが困っていたら助けてあげる、当たり前のことだと思うけど、」

 

「まぁ…確かにな」

 

ごく普通の事だな

 

「すなまい、愚問だったな」

 

「ううん、いいよ、不思議に思うのも普通だと思うから」

 

そうなのだろうか。

幻想郷では常識が通用しないというが、困った誰かを助ける、というのは…まぁこの世界も同じということか。

 

「本当に助かるよ」

 

「うん。」

 

椅子でゆっくりとしていると。

だんだんと眠たくなってきた。

うとうとしてきている…

 

「すまない…少し休ませてもらっていいか…?」

 

「いいよ。」

 

数分しない内に眠ってしまった。

 

この世界の時間の概念はわからないが、

そう長く眠ってはいないと思う。

起きたとき窓の外が暗く。

夜になった頃だろうか。

 

「あっ、おはようございます。」

 

「夜でおはようというのも…余り聞こえが良くないが。まぁ、おはよう」

 

話しかけてきたのは、大妖精だろうか。

まだ意識がハッキリしていない。

ただ何故か大妖精というのはわかる

 

「お茶持ってきますね。」

 

「ありがとう。」

 

「起きたんだね」

 

「ああ、」

 

さっきもそうだが、

チルノはずっと本を読んでいる、

文庫本ではない…絵本?

いや芸術とかそういう類か

 

「そこの氷の飾りはチルノが作ったのか?」

 

家を象った小さな飾り。

青く透き通る色をしてるとなれば

チルノが繰り出す氷だと思える。

 

「そうだよ。」

 

「そうか。」

 

何だろう、何故か見たことがある?

いやこれが霊夢の言う懐かしい感じか。

 

「どうしたの?」

 

「あっ、いや、なんでもない」

 

懐かしい感じか…?

そうだと思うが…

 

「でも、涙流してるよ。」

 

「あれ。ほんとだ…」

 

なんで泣いているのか…

わからない。

 

「チルノ…お前…」

 

「何?」

 

レイか、そうだ。

きっとここにはレイがいたんだ…

 

「レイ…か、そうか…」

 

「レイを知ってるの?」

 

思い出せそうで…何か引っかかる…

弟…?いや。そんな間柄ではないはず

というか…なんでレイという人物を知っているのかすら…疑問に思う

 

「すまない…あと少しで思い出せそうなんだ…」

 

「う、うん。」

 

「この家を建てた…そうだ…」

 

「もしかして」

 

急に扉の開く音がした。

誰だろうか。

 

「やっぱりあんた、こっちに来ちゃったのね」

 

「博麗さんか?」

 

「そうよ。ここにいるってことは思い出しちゃったのね」

 

「なんの話だ?」

 

「あら?まだだったのね、」

 

「霊夢、なんの話?」

 

「彼は、レイのお兄さんなのよ。」

 

「えっ? 」

 

「弟…俺に弟が…」

 

「そう、あんたは知らないと思うけどね、しかも双子なのよ、」

 

「そんなこと何も知らないぞ。どうなってる?」

 

「知らなくて当たり前よ。あなたの一歳年下だし、死産で生きて産まれてこなかったのだから。」

 

「死産…?」

 

「母親から出てきた直後に息を引き取ったと私は聞いてるわ」

 

「そんな…」

 

「だから、まだ一歳越えたばかりのあなたは当然知らないし、戸籍にも乗らなければ知らされもしなかったのよ、私は彼らの魂がこっちに来て別の母親から産まれたということは知らされた。閻魔から無理やりね」

 

「レイのお兄さんなんだね」

 

「ちなみにあんたは一度も来たことがないはず、でも懐かしく感じたわよね?」

 

「ああ、」

 

「あなたは幼い頃、私がここについて話をしたよね。」

 

「ああ、覚えてる」

 

「それがまるで過去のように感じているのよ」

 

「そういうことか…」

 

「血は繋がってないのに、兄弟なの?」

 

「まぁ、そこはなんとも言えないわ、魂がそういうふうに因縁付けているだけかもしれない、私はそういう詳しいところはわからないから、閻魔にでも聞いて頂戴」

 

「…それだけか?」

 

「ええ、それだけよ、ただあなたがこっちに来たとき、必ず伝えろって閻魔に言われてたからね。それだけ」

 

「そうか。ありがとう。」

 

「お礼をいうことでもないけどね、まぁいいわ、あんた、向こうに戻る気はある?」

 

「んー。いつでも帰れるのか?」

 

「いつでもって訳じゃないけど。帰りたいならしっかりと準備して帰すわ」

 

「それじゃあ、その時が来たら頼むよ。」

 

「そう、そのときは私の神社に来なさい。」

 

「ありがとう。頼む」

 

弟…か

どんな奴なんだろうな。

 

里のこと聞く前に霊夢は行ってしまったな…

しばらくはお邪魔するか。

 

「あの…お話し終わりましたか?」

 

大妖精のことをすっかり忘れてた

 

「あぁ、ごめんよ、終わってる、お茶ありがとうな」

 

 

「なんか、大変そうですね」

 

「まぁ、実感はないんだけど、」

 

「レイが帰ってきてこんなこと知ったらびっくりするだろうな」

 

「俺もびっくりだからな…」

 

また扉を開ける音がする。

今度は誰か。

 

「ただいま、あれ?お客さん?」

 

「おかえり、レイ」

 

ほう、これが弟か…

 

「初めまして、レイです。」

 

「こちらこそ初めまして、朝霧です。」

 

「どうぞ、ゆっくりしていってください」

 

「お言葉に甘えさせてもらいます」

 

「レイ。荷物置いたら話があるから来てね?」

 

「話?ああ、わかったよ」

 

弟か…俺よりしっかりしてそうな感じがするけど…どうなんだろうか。歳は1つしか変わらないからな…差はないか。

 

「それで、話って?」

 

「今、朝霧さんがいるでしょ?」

 

「そうだな、」

 

「朝霧さんはレイのお兄さんなんだって」

 

「んーと、兄?」

 

「そうみたいなんだ。」

 

「いや…そんなこといきなり言われてもな…」

 

「霊夢さんが言ってたんだ。血は繋がってないけど兄弟なんだって。魂がどうとかって」

 

「あ、そう…」

 

「まぁ、いきなり言われても、普通信じられないよな、」

 

「いやまぁ。仮に兄弟だったとしても、兄がいたことなんて何も知らないし。そもそも血が繋がってないのに、兄弟っておかしいと思う。」

 

「話すと長く…はならないか、けどまぁ、閻魔がそういうふうに言ってたんだと。博麗さんから聞いたんだよ。」

 

「そうか…まぁ。それなら、別にいいけど…」

 

あっ、いいんだ。

まぁ、俺も気にしてないけど

 

「それなら、兄さん、と呼ぶべきかな」

 

「んーや。別にいい。ほとんど他人みたいな感じだから」

 

「そう、それじゃぁよろしく、朝霧さん」

 

「こちらこそ」

 

今の話。必要だったか?

 

「えっと、話はこれだけだよ。」

 

「そうか。」

 

「それじゃ、今日は私が夕飯作るね、大ちゃん、手伝ってくれる?」

 

「もちろんだよ」

 

チルノって…ほんとに聞いてたのと違うな?

 

「レイさん。」

 

「なんでしょう?」

 

「チルノさんっていつもあんな感じなのか?」

 

「まぁ、昔…というか前はかなりやんちゃでしたよ。」

 

「やっぱりそうなのか。」

 

「ただ、やんちゃばかりするのも疲れたって、それで今みたいな感じですよ」

 

「へぇ…そうなんですか。」

 

「何かありました?」

 

「いやまぁ。向こうの世界にいた頃、博麗さんからチルノさんのことを聞いたことがあるんだが、今と違うなって、やっぱり変わるもんなんですね」

 

「まぁ、誰だってそういうのはあると思いますよ。」

 

「そうですよね。」

 

「私はもう、やんちゃはしないよ。」

 

「ああ、まぁ。そうか」

 

「だって、そんなことしたらレイに迷惑だから。」

 

「あはは、まぁ、何かやらかして庇うのは俺だからな。そうもなれば俺も顔がたたないよ。」

 

数分は経っただろう、

気がつくとテーブルには食事が並んでいる。

チルノと大妖精の手作りか

 

「チルノちゃん、あとは?」

 

「これでいいかな。」

 

「今日は豪勢だな」

 

「大ちゃんもいるし、お客さんもいるし 」

 

「そうですね。」

 

誰かの手作り料理なんて久々だな。

一人暮らしをだと。自分か出来合いを買うから…しばらく食べてない

 

「また泣いてるね。」

 

「朝霧さんは、涙脆いんですね。」

 

あぁ、またか。

何だろうか。情けない

 

「すまない…ここに来てからとても不思議な気分で。情けないとこ見せて。」

 

「美味しい?ですか?」

 

「ああ…とてもね、手料理なんて久々かな。」

 

「そうなんですか?」

 

「俺は一人暮らしだからね、こうやって食卓を囲むのも懐かしい感じだな。」

 

ああ…情けないな…ほんと

 

「寂しかったんでしょうか」

 

「かもしれない。」

 

御馳走だった、というか。

思い深い食事だった。

 

「雨、結構強いな」

 

「大ちゃん、帰れる?」

 

「うーん…」

 

「私のベット使っていいよ?」

 

「でも。」

 

「私とレイは座ってるから」

 

「2つしかないからな、朝霧さんも疲れてるだろうし」

 

「いや、俺はいいよ。」

 

「そうは言っても」

 

「えっと…ベットって2つなんですよね。」

 

「そうだけど?」

 

「私はいいですよ。」

 

「いいの?大ちゃん。」

 

「うん。」

 

「それなら、私とレイは同じベットでいいかな?」

 

「まぁ、それでいいなら」

 

そう来るか

 

「もう片方は俺ということか」

 

「そうですね」

 

まぁ、そういうことなら…

 

「私は食事の片付けをするので皆さんは休んでてください」

 

「俺も手伝うよ」

 

「そんな、朝霧さんはお客さんなんですから、いいですよ。」

 

「雨宿りに豪勢な食事、それに一晩泊めてもらって何もなしじゃこちらも申し訳ないんだよな。せめて片付けくらいは手伝わせてくれ」

 

「そ、そうですか、ありがとう御座います」

 

「ごめんね大ちゃん、あとお願いするね。」

 

「はい。おやすみなさい」

 

ほんとに二人とも先に寝るんだな…

まぁいいか。

 

「大妖精は世話焼きなんだな。」

 

「えっ?えっと…」

 

「ああ、すまない聞かなかったことにしてくれ」

 

「間違いじゃないと思います、でもどうなのかな。」

 

「何かあったのか?」

 

「チルノちゃんが落ち着いて、チルノちゃんは遊びに来ていいよって言ってくれてるんだけど、私が邪魔してるような感じがして」

 

「んー…適度が大切だと思うな」

 

「適度。そうですよね。」

 

「まぁ、そこは深く考える必要はないと思う。むしろ歓迎されてるんじゃないかな」

 

「歓迎されてるのかな。」

 

「だって、二人は親友だろ?レイさんだって悪く思ってたら、家に呼ばないだろうから」

 

「そう…ですね。なんだか助かりました」

 

「どういたしまして、あんまり思い詰め無くていいと思う。」

 

「はい、」

 

大妖精も、チルノが変わったことにいろいろと大変なんだな。

 

「朝霧さんは友人とか家族とかは?」

 

「んー…一人暮らしをしてるって話をさっきしたと思うんだが。」

 

「あっ、そうでしたね。」

 

「ただ、実家は元々遠いんだけど、引っ越して更に遠くなったから。もうしばらく顔を合わせてないんだ、」

 

「なんだか、寂しいですね。」

 

「まぁ、引っ越すのは仕方ないな。」

 

「友人とかは?」

 

「あはは…それが。特にそういう間柄はいないんだ、」

 

「居ないんですか?」

 

「確かに連絡先を知ってるやつもいたが。顔を合わせてないし、一緒に食事を行くこともないな。」

 

「朝霧さんも大変そうですね」

 

「どうだろ。めんどくさいと思うだけじゃないかな、普段から一人だなら、そういう交流も煩わしいのかもしれないし」

 

「私なら友人になってもらえるかな。」

 

「なんというか。いきなりだね」

 

「あっ、ごめんなさい」

 

「いいよ。」

 

友人…か、、

久しくそんなこと気にしたな。

 

「さてと。片付けも終わったな。」

 

「わざわざありがとう御座います」

 

「大妖精さんは、このあとどうすんですか?」

 

「どうしようかな。椅子でも寝れるけど」

 

「ベットいいですよ。僕は」

 

「なら。私と一緒でも、いいですか?」

 

「あっ…と…」

 

そうくるかぁ…

こりゃまいったなぁ

 

「一緒にか」

 

「だめ…でしょうか…」

 

そんな、残念な顔されると、

断ったら悪者みたいになるだろ…

 

「あぁ、まぁ、いいよ、うん」

 

「ありがとう御座います」

 

レイさん達も二人同じベットで寝ている。

やっぱり避けては通れないか…?

 

「やっぱり、俺はいいから、大妖精さん、どうぞ、」

 

「えっ。でも。一緒にって。」

 

「いやでもほら、今日あったばかりだし…」

 

「別に気にしませんが、それに、二人だってほら一緒に寝てますし」

 

それとこれとは別だろ。

 

「どうしてもか?」

 

「そういうわけではないですが…でも…」

 

またそういう…駄々をこねる…

仕方ないか…この問答を続けるのはやめた。

まぁ、泣かれても困るし。

 

「いいよ、わかったさ」

 

「…はい。」

 

「どうした?」

 

「いえ!なんでもないです」

 

ずっと二人の方見て、

まぁ、なんとなく察するけど

 

「あっ、あの…落ちないですか」

 

案外狭いベットだな…

 

「いや、こっちは大丈夫だ。」

 

「そっか。それなら…」

 

一気に身体を寄せて

そして、抱き着く、まぁ…こうなるよな

 

「これで、落ちないですね」

 

「まぁな。」

 

「こうやって誰かと同じベットで寝るなんて初めてです」

 

「まぁ、覚えてる限りでは初めてだな。」

 

「男の人ってこんなにも暖かいんですね」

 

「そ、そうか。」

 

「この感じ、まるで恋人みたいですね、」

 

またそういうことを言う…

 

「恋人か…」

 

「もしかして、朝霧さんは、恋人がいたりするんですか…?」

 

「まぁ、昔ね。今はいないよ」

 

「別れたんですね。」

 

「まぁ。仕方ない…で済ませていいのかな…」

 

「何があって別れたんですか…」

 

「俺は、一目惚れに近い形で好きになった。でも相手は親しくなるうちに好きになった。お互い両思いだったんだ、その時はな」

 

「出会いは良かったんですね」

 

「まぁ、恋人として付き合い始めてから。数日経って、変な噂を聞いたんだ。」

 

「変な噂?」

 

「そいつがどんな男にもそういうことをするやつだって。」

 

「えっ?まさか…」

 

「そのまさかだった。嘘だったんだ」

 

「酷い…」

 

「酷い奴さ、人の気持ちを玩具にして遊ぶ、そんなやつだったんだ。」

 

今でも思い出すと許せない…

二度と会いたくないが…

会って散々毒を吐いてやりたくも思う!

 

「なんであんなやつを好きになったのか今でもわからない。見た目だけだったんだ」

 

「朝霧さん…」

 

「だから俺は人と疎遠になったのかもな、」

 

「裏切られて…信じられなくなってしまったんですか?」

 

「まぁ…そんなとこだろうと」

 

「なんていうか…可哀想です。」

 

「可哀想に思うか。」

 

「はい…だって、裏切られるなんて私は耐えられないです…」

 

「…まぁ。普通起きることはないだろうからな。」

 

「ごめんなさい、軽々と恋人なんて言ってしまって」

 

「いいよ。俺が勝手に思い出してただけなんだからな」

 

「あの…」

 

「どうした?」

 

「実は…私、朝霧さんが好きというか…一目惚れって言うんでしょうか…」

 

お、おう…

まぁなんとも言えない状態だな

 

「言いたいことはわかるが…俺は…」

 

「今日だけでいいです…あの…甘えさせてもらいたくて…」

 

「…わかったよ、大妖精さんにも何かあったんだろうし」

 

「…そうです…」

 

寂しかった…それだけかな

多分そうじゃないな。

 

「私…この前チルノちゃんと喧嘩して…その時は仲直りしたんですけど…なんかまだ気になってて…」

 

「何があった?」

 

「言い争いになって…二人が付き合ってることを悪く言ってしまって…」

 

「んー…まぁ。それは良くなかったかもな」

 

「ですよね…」

 

まぁ、その気持ちもわからなくはないな…

 

「羨ましい、そう思っただけなんです…」

 

「そうか。」

 

「ごめんなさい…」

 

「俺に謝るなよ。それに仲直りはしたなら大丈夫だと思う」

 

「誰かに話しておきたくて…でも…みんなには言いづらくて…」

 

「そうか。すっきりしたか?」

 

「安心したような感じで…でももっとこのままで居たいです…」

 

「わかった。」

 

一日だけの恋人…か

 

「大妖精さん、いや、大ちゃん」

 

「はい…?」

 

「大ちゃんは俺が好きだって言ってたね」

 

「えっと、はい」

 

「なんとなくだけど、俺も大ちゃんが気になってきたんだ、あっ、変な意味じゃないぞ?普通に、そう、普通にだ」

 

「ふふっ。そっか、」

 

「だからな、今は恋人だけど、明日からは友達として仲良くしてくれるか。」

 

「それは…嫌です」

 

おっ、おう?

 

「なんでかな…?」

 

「今はじゃなくて今からがいいんです」

 

控えめに出たつもりが予想を超えていた…

 

「今から?か」

 

「そうです。今からです」

 

まぁ、こういうのも、ありか。

ただ、俺も頑張らないとな…

 

「わかったよ、よろしく大ちゃん」

 

「はい!お兄さん!」

 




次、書こうかな

それではまた会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

夢と現実、温もりと幸せ

どうも夢子です。

ごゆっくり


待ってよ…ねぇ…

嫌だよ…行っちゃいやだよ…

待ってよ…!

 

………

 

「…あっ……夢か…」

 

嫌な夢…

 

「ルーミア。ん?おふっ!」

 

「うん、おはよう」

 

彼が居なくなるなんて…考えられない。

夢でよかった…

 

「おう…どうした?」

 

「大好き。」

 

「うん、そうか。」

 

彼に頭を撫でてもらうと…

なんだかとても気持ちいい。

 

「俺の夢でも見たか?」

 

「ん…うん。」

 

「楽しかったか?」

 

「ううん…とっても怖かった…」

 

「怖かった…そっか。なら聞かないでおくよ」

 

「わかった…」

 

そろそろ起きないと…でも…

 

「ルーミア?おい?あたっ!」

 

「むー…」

 

「また腕に齧りついて…そんなに俺の腕は美味しいか」

 

「血の味がする。」

 

「そうか。」

 

うん…起きなきゃ

 

「ふぁ〜…」

 

「朝から甘えっきりだな?」

 

「嫌だった?」

 

「いーや、甘えるルーミアも可愛かったな」

 

「じゃあ、怒ったら?」

 

「怒ってもきっと可愛いだろうな。」

 

もう…またそんなこと…

 

「…私が居なくなったら?」

 

なんてこと聞いてるんだろう…

でも…夢だと彼が消えて…

私は寂しかったんだ…

 

「探す。どこにでも行くよ。だから、ルーミアが居なくなったら寂しいから探す」

 

嬉しい…

 

「どこにも行かないよ?」

 

「そっか、よかった。」

 

「だって。まだ少しもあなたを味わってないから」

 

「あれだけ腕を齧っておきながら、まだ少しにも満たないのか」

 

「腕は血の味しかしないもん」

 

「そっか。そろそろ行かなきゃな。」

 

「仕事?」

 

「ああ、あと博麗神社な、」

 

「そっか。」

 

今日はついていこうかな

 

「ん?ルーミアも神社まで行くか?」

 

「うん。」

 

「珍しいや。さ、行こうか」

 

彼は毎朝、博麗神社までお参りに行く。

彼に会ったときは夜だったな

 

「あら。今日はルーミアも一緒なのね」

 

「おはよう博麗さん。」

 

「ええ、おはよう、毎日ありがとう、あんたくらいよ参拝に来てくれるのは」

 

「まぁ…他の人がどうかはわからないが、俺はこの神社を大切にしたいからさ」

 

「うん、そう言ってもらえると助かるわ」

 

「それじゃ、また明日、ルーミアもまた後でな」

 

「ええ、行ってらっしゃい、」

 

「行ってらっしゃい…帰ってきてね」

 

夢とは違う。笑顔で元気だった。

 

「ん?ルーミアはどうするの?」

 

「どうしようかな」

 

縁側で一休みしようかな。

でも、また怖い夢見たらどうしよ…

 

「ルーミア?」

 

「ねぇ、れーむ。」

 

「なに?」

 

「私ね、今朝怖い夢見たの。」

 

「あんたに怖いものがあったのね。それで?」

 

「彼がね…怒った顔で私を捨てるようにどこか行ってしまって…そんな夢見て…」

 

「そう…」

 

「私、何か悪い事したかな…でも最近人は食べてないし…」

 

「それは私に言われても困るわよ。」

 

「んー…仕事の邪魔したからかな…」

 

「確か、家でも仕事の残りをしてるって聞くわね」

 

「うん…ちょっといたずらして少し怒られた時があったんだ。でも、そのときはすぐ謝ったし、彼もすぐ笑って許してくれてたと思うけど…」

 

「ただの気にし過ぎじゃないの?」

 

「そうかな…?」

 

「彼は仕事って何してるの?」

 

「家でやるときはいつもの書類に書き込んだり纏めたりしてるね。」

 

「里の役場仕事か何かかしら。」

 

「最近、郷で人攫いが横行してるって言って。それで忙しいって。」

 

「それは知ってるけど、確かどっかの半霊が終わらせたんじゃなかった?」

 

「うーん…詳しいことはわからないけど、忙しいって。」

 

「まぁ、後始末的なことはあるでしょうし。仕方ないわね。」

 

「今日も忙しいのかな、」

 

「まぁ、きっとね」

 

「やっぱり、邪魔したら良くないかな。」

 

「あんたの好きにすればいいわ、彼は人間で、あんたは人食い妖怪、全うの人間が妖怪に敵うわけないんだし。食われたところで人食い妖怪と同居してる時点で彼は何も言えないでしょ。」

 

「うん…」

 

「まぁ、心配に思うなら直接聞きなさい、きっとなんとも思ってないわよ。」

 

「そうしてみる。」

 

聞くって言っても…今すぐは聞けないし…

里に行くのもなぁ…

 

「あと。さっきの夢の話、」

 

「うん?」

 

「それも一応話すといいわ。知ってもらえるだけでも、あんたの気分も晴れると思うし、そうやって心配に思うほどまた夢に出てくるかもしれないから。」

 

「わかった。ありがとう霊夢」

 

「別に礼はいらないわ、またあんたがつまらない事で相談しに来られても困るのよ。」

 

「そっか。ごめん?」

 

心配してくれてるのかな。

 

「まぁ、あとはあんた次第よ。」

 

「うん。」

 

「確か彼の名前ってトウヤだったかしら?」

 

なんだか。眠たくなってきたな…

 

「れーむ」

 

「なに?」

 

「ちょっと寝るね」

 

「そう。彼が帰ってくる前に起きなさいよ」

 

「うーん。多分起きると思う」

 

起きたら彼がいたらいいな…

 

「妖怪って世話が焼けるわ…あっいや、妖怪だけじゃないわね、全く、最近はいろいろ忙しいわ…」

 

……

 

 

「ねぇ?」

 

「ん?」

 

「私が居なくなったら…どう思う?」

 

「うーん。あまり気にしないかな、帰ってくるのを待ってるよ」

 

「そっか…」

 

「ルーミア?」

 

「…もし私が帰ってこなかったら?」

 

「また一人で暮らすだけになると思う」

 

……なんで?

 

「私は…あなたが居なくなったら探すけどなぁ。」

 

「そっか。まぁ、多分すぐ見つかるよ」

 

どうしてそんなに…

 

「ねぇ?」

 

「ん?」

 

「…やっぱなんでもない…」

 

「そう。」

 

冷たい…すごく…

あの時の暖かさは…もうないんだ…

 

「あぁ、ルーミア」

 

「なに?」

「俺今度別の人と暮らす事になったんだ」

 

……?

 

「俺さ、結婚するんだ」

 

…え?……えっ?

 

「結婚…?」

 

「そう。だから、ルーミアとはさよならかな」

 

「えっ…?」

 

「じゃあね。」

 

待ってよ…

 

「えっ?待ってよ…」

 

「待たないよ。もう決まったんだ」

 

いやだよ……そんな…

 

待ってよ…

嫌だよ…行っちゃいやだよ…

 

なんで……なんで!

 

「ねぇ!待ってよ!」

 

………

 

「ルーミア?おい。ルーミア?」

 

「ふぇ…?」

 

あれ…?

 

「どうした?ずっとうなされてるぞ?」

 

また…夢だった…

嫌な夢…

でも今度は…はっきりと覚えてる…

怖いな…

 

「また怖い夢だったのか?」

 

「…うん…」

 

「ほら、泣くな、人食い妖怪が泣いてたら、人間はどうすりゃいいのかわかんないぞ」

 

「うぅ…トウヤ…」

 

彼は目の前にいるのに…

とても悲しくなる。

何でだろう…嬉しいはずなのに!

なんでこんなに泣いてしまうの?

 

「怖かったんだな」

 

「うん…」

 

「また。俺の夢か?」

 

「うん…」

 

思い出すと…余計に悲しくなる

 

「ねぇ…」

 

「ん?」

 

「私が…私が居なくなったら。どう思う…?」

 

「それ、今朝も聞いたな、ルーミアが居なくなったら、探しに行く、いないと寂しいから」

 

「うん…ありがとう」

 

やっぱり…夢じゃない。

 

「私もあなたが居なくなったら探すから。」

 

「ありがとうな。」

 

「トウヤ、といったかしら?」

 

「あぁ。博麗さん、どうかしました?」

 

「仕事の方はいいの?」

 

「んー…まぁ、まだまだ終わりは見えないけど、先が見えない分、しっかりと一日分終らせてるから、まぁ、問題ないですよ、」

 

「そう、あんた、ルーミアを大切にしなさいよ、もし捨てるようなことがあれば私が許さないからね、」

 

「万が一にもルーミアを捨てるなんてことはないよ、もしルーミアをおいていなくなるとすれば僕が死ぬときくらいさ。」

 

「トウヤ…」

 

夢とは違う。

彼は…

 

「ルーミア?」

 

「やっぱり…あなたが大好き」

 

「うん、ありがとう」

 

「ほら、日が落ちる前に帰った帰った」

 

「そうだね、帰ろうか」

 

「うん。」

 

博麗神社をあとにして長い階段を降りるとき、初めて彼と話をしたときのことを思い出した。

 

彼は仕事帰りだったかな。

ご飯をご馳走させてもらったり。

いっしょに寝たり。

 

すごく暖かさを感じた。だから

彼が大好きになった。

 

「あなたも、私のことが好き?」

 

「好きよりも、」

 

よりも?

 

「自分の娘のような、そんな感じ」

 

「家族?かな?」

 

「うん。そんな感じ、簡単に言えば、愛してる、かな。」

 

やっぱり彼は暖かい。

他の人間とは違う。とても優しい。

 

「嬉しいな。すごく嬉しい、」

 

「良かったよ」

 

「私ね、最近怖い夢ばかりで」

 

「うん。」

 

「その毎回があなたが私を置いてどこかに行ってしまう夢だったの。」

 

「そっか…」

 

「だから。とても心配になって。怖くて」

 

「大丈夫だよ。」

 

「うん。あなたの答えが聞けてすっきりした」

 

「そうか、良かった」

 

「ありがとう。」

 

「おう。」

 

彼と居るとすごく落ち着く。

彼だからそこかもしれないけど。

なんだかとても幸せな気分になる。

 

「ずっと一緒に居たいな。」

 

「ずっとか、普通なら考えられないな」

 

「うーん…そうだね。」

 

「不死の薬…とか言うのがあれば。無理じゃないが、簡単に手に入るものでもないからな。」

 

「永遠亭…だっけ?」

 

「永琳さんとは知り合いだが、不死の薬となれば話は別だからなぁ。」

 

「そうだね、」

 

「でも。俺は…」

 

「いいよ!そこまで!」

 

そんな。無理しなくても…

 

「だって、ルーミアが悲しいだろ?」

 

「確かに、貴方が居なくなってしまったら悲しいけど…寿命なら、それは仕方ないことだから。」

 

「でも…」

 

「でもなルーミア。実は、もう」

 

えっ?まさか…

 

「不死の薬…?」

 

「もう既に服用したあとなんだ。」

 

「そ、そうなの?」

 

「輝夜っていう月のお姫様が俺にってくれたんだ。永琳さんに確認したら間違いないって。それで。」

 

そうだったんだ。

 

「隠しててゴメンな。でもこれで別れの悲しさはないから。ずっと一緒に居られる。」

 

「何か…ほんと、ありがとう。」

 

「まぁ…俺もどうしようか悩んだけど、でも、ルーミアのことを考えると、ルーミアに悲しい思いはして欲しくなくてな。」

 

「私は…ガマンするのに。」

 

「いいんだよ、我慢はもうしなくていいから」

 

「うん…ありがとう!」

 

たくさん甘える、そうしよう

彼は…私の大切な人。

自分の運命を変えてまで。私のことを想ってくれるとても良い人。

 

私も彼と一緒にいる、だから。

私も彼に何かしてあげたいな

 

でも…今は一緒にいるだけで

私も彼もとても幸せ。

だから、それはまた今度。




読了ありがとうございます

次話を気長にお待ちください

それではまた会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

想いの繋がり。新たな繋がり

どうも悠樹@夢子&松K.です

フルネームということはそれだけ想いがあること

今後に関わるようなちょっとした話です

ではごゆっくり


命蓮寺宛の手紙を届け、

里に帰る途中のこと。

 

普段の公道とは別で森に近道があるのを知っていたからたまたまその道を通りかかったときに…

 

「おはよーございます!」

 

「うわぁ!」

 

突然…大きな声が聞こえてびっくりした

その時持っていた護身用の退魔札を投げてしまった…

 

「ひゃぅぅ…」

 

重いものが落ちる音がして、

音の方を向くと、女の子が座り込んでいた。

肩に札が付いて効果があるということは

妖怪?みたいだ。

 

「あっ…えっと…」

 

見た感じ、危険そうではないけど…

 

「あの…大丈夫です?」

 

いや。

札投げつけておいて大丈夫かなんて…

なに聞いてるんだ…

 

「あっ…あの…大丈夫じゃないです…」

 

だよね…知ってる

 

「ごめんなさい、今外します」

 

肩の札を外したけど。

それでもまだ座り込んだままだった。

 

「札が効いてるってことは。妖怪?」

 

「山彦妖怪…だから…」

 

やっぱりそうか…

 

「立てそうですか?」

 

「うーん…まだ力はいらないよ…」

 

しまったなぁ…

むやみに投げるんじゃなかった。

 

「えっと…命蓮寺が近いのでそこまで行きましょうか。」

 

「うぅ。なんでこんな目に…」

 

泣いてる。

いや…泣かせてしまった…

 

「札が当たってしまって」

 

「でも、あなたは優しいんだね…」

 

「そう…ですか?」

 

「だって、天狗はみんな意地っ張りだって聞くから」

 

「あぁ、まぁそうかもしれませんね…」

 

あながち間違いではないけど、

 

「あなたはもしかして、下っ端なの?」

 

「いえ、山の天狗ではないので」

 

「えっと…そうなんだ。」

 

「そうですよ…っと。すぐつくので」

 

失礼かな…案外軽いな?

 

「えっと…ごめんね?」

 

「いいですよ」

 

「名前、聞いていい?」

 

「椿です、君は?」

 

「幽谷響子です。」

 

あまり聞いたことないな、

やっぱりこの辺の妖怪なのかな

 

「翼、痛くないですか?」

 

「とりあえず、大丈夫です」

 

「なんでこの道を歩いてたの?」

 

「んー、そんな気分だったので」

 

「そうなんだ、変だね」

 

そうかな…

まぁ、翼があれば普通飛ぶか。

確かに変なのかもはしれない

 

「たまに歩きたくなるときがあるんです、特にこういう明るい森とか」

 

「そっか。」

 

少し歩いていたらいつの間にか命蓮寺の前までついた。

 

「ありがとう、もう大丈夫。」

 

「ここでいいですか?」

 

「うん。」

 

「それでは、僕はこれで。」

 

「うん、また寄ってね。」

 

翼が軽くなったからか、

飛びたくなってきた

飛んで帰ろうかな。

 

少しもしないうちに、里についた。

 

「お帰り椿、遅かったね、また歩いてたの?」

 

「いえ、ちょっとあって」

 

上司の楓さん。

同じ烏天狗の女性

郵便屋として人里で働いていて。

山を追い出されたときにここで働き始めたって聞く。山を出て里に住んでいた僕は、同じ天狗として、ここで働くことにした。

楓さん自体は、ある人の護衛もやってるみたいだけど。それはまた別の話なので。

 

「ふーん。命蓮寺の女の子かな。」

 

「んー…まぁ。」

 

「まっ、早く仕事終わらせちゃいましょう」

 

「はい」

 

 

次は…博麗霊夢さん…か

札も使ったからついでにもらっておこう

 

「あら、文以外の烏天狗がここに来るなんて、珍しいわね。」

 

「えっと、郵便です。」

 

「ご苦労様、確か楓のところの?」

 

「そうです。人里の郵便屋、ですね」

 

「里から私宛なんて珍しいわね、まぁ貰っておくわ、ありがとう」

 

「はい、確かにお渡ししました。あとそれと、」

 

「ん?まだある?」

 

「以前もらった御札、使ってしまったのでできれば頂きたいんですが…」

 

「護身用の退魔札ね、役に立ってるみたいで良かったわ。また最近人里の外でも人攫いが増えたから、あんたも襲われないように気をつけなさいよ。」

 

「はい。ありがとう御座います、それでは。」

 

「ご苦労様またあったらお願いね」

 

一度人里に戻ろう…

そういえば起きてからまだ何も食べてない。

 

「楓さーん!お腹空きましたぁ…」

 

あれ?反応がない、楓さんも出てるのかな

 

「うーん…まぁ僕が用意しようかな」

 

普段朝は楓さんが用意していることが多いけど、今日は特に何もないみたい

 

サンドイッチ程度を用意しておけば楓さんも食べてくれるかな。

 

「さて、次は…」

 

幽谷響子…?送り主はミスティア。

また命蓮寺の方に行かなきゃ

 

「さっき渡しておけばよかったなぁ…ん?でもこんな手紙さっき見たかな…」

 

まぁ、いいか。

 

 

「すいませーん!」

 

「お客か?」

 

聖さんじゃない。ネズミ…っぽい。

ナズーリン…さんかな。

 

「何だ君か、手紙はさっき全部もらったんじゃなかったのか?」

 

「それが、幽谷さん指名の手紙が他にあったんです。」

 

「ちょっとまってて」

 

少ししたら、来てくれた

 

「あっ、さっきの、椿さん、」

 

「あー。先程はすいませんでした、これ幽谷さん宛で来てます。」

 

「みすちーからだ。ありがとう」

 

「はい、確かにお渡ししました。ほんと先程はすいませんでした」

 

「いえいえ、私こそわざわざ命蓮寺まで送ってもらったんだし、お礼がしたいよ。」

 

「お礼…ですか、」

 

「うん、ちょっと目を閉じて?」

 

ん?よくわからないけ…

 

んえ?…えっ!?

 

いきなり唇が暖かくなって…

まさか…これって…

 

「もういいよ。」

 

「あの…?」

 

「んー…少し惚れちゃったからかな、信じてないでしょ?」

 

「こういうの、初めてだったので…」

 

「ふふ、そっか、ありがとう。また来てね」

 

「はい。」

 

どっきりにも程度がほしいと思った…

 

とにかく次行かなきゃ。

 

「えっと…ハルさん、って誰だろう。」

 

聞き覚えないなぁ…

カタカナ…紅魔館?

 

「とりあえず行って聞いてみようかな」

 

 

「あのー…」

 

門番…?

立って寝てる…

 

そのまま入っていいのかな

 

「すいませーん!」

 

「はいぃ!ねてないです!ごめんなさいぃ!」

 

あっ、起きた

 

「あのー、郵便なんですが?」

 

「ふぇ?ああ、はい?、」

 

「ハルさんってここでよかったですか?」

 

「おーっと、ハイハイどうぞ」

 

案内されて歩いていると…

 

「あら美鈴、お客様かしら?」

 

「ハル様宛です。」

 

「わかったわ下がって。」

 

「はい。」

 

吸血鬼?

レミリアさんかな。

 

「私が紅魔館の主、レミリアスカーレットよ、ハルは今仕事中だから私が伺うわ。用事って何かしら?」

 

「あの、手紙を届けに来ました。」

 

「手紙?預かるわ。」

 

「あと、パチュリーさんも、ここでよかったですか?」

 

「ええ、貰っておくわ。」

 

「確かにお渡ししました。あと。」

 

「他にもある?」

 

「チルノさんとか、ルーミアさんとかもここであってますか?」

 

「チルノは向かいの湖の森に家がある、ルーミアは確か人里にいたはずよ。」

 

「あー。わかりました。多々良さんは?」

 

「それはわからないわ、人里の離れの森ってだけはわかるけどそれくらいね」

 

「わかりましたわざわざありがとう御座います。それでは。」

 

 

「湖の近くの森って…この広い森のことかな?」

 

いや…見つかるかわからないな…

 

「あれ。どうしたの?」

 

「ん?ああ、こんにちは」

 

この辺の人かな。

 

「えっと、チルノって人を探してまして。この森のどこかだって聞いたんですが…広いなって思って…」

 

「チルノは私だよ?」

 

「あっ、そうだったんですね、チルノさん宛で手紙があるので、はい、これ、」

 

「ありがとう、」

 

「それと、次があるかもしれないので、良ければ家の場所を教えてもらえませんか?」

 

「そうだね、案内するね。」

 

んー…チルノさんってなんか不思議感じがするなぁ。

なんというか、らしくない感じ…?

気のせいかな。

 

「ここだよ」

 

「結構大きな家ですね。」

 

「またあったらお願いします。」

 

「はい、それでは。」

 

おかしいな…これだけしっかりした家なのに、なんで空から見えなかったんだろう、魔法か何かかな…

まぁいいや。

 

 

「ルーミアさんは人里にいるんだっけ。」

 

人里のどこだろう…

 

「あれ?椿、ここで何してるの?」

 

楓さんとその知り合いの方たち…かな

 

「あっ、楓さん。あの、ルーミアって人探してるんです、」

 

「ルーミア?あー。悠さん確か知ってましたよね?」

 

「んー。確か団子屋の2つ隣のトウヤさんとこじゃなかったか? 」

 

団子屋…いくつかあるんだけど。

 

「家の特徴とかってわかりますか? 」

 

「んー。よく見たことないな。団子屋の名前が久団子って名前だったから、その2つ右隣だったはず、」

 

「わかりました。行ってみます。」

 

楓さんは、別のお仕事中かな。

まぁいいや。

 

 

「ここが、久団子、の右隣…2つ隣」

 

ここかな。

 

「すいませーん!」

 

「はい?」

 

あっ、男の人、トウヤって人かな

 

「あの、ルーミアさんいますか?」

 

「んー?。今はいないよ?どうかした?」

 

「ルーミアさん宛の手紙です。ここでよかったですか?」

 

「うん、もらっておくよ。ありがとう」

 

「はい、確かにお渡ししました。」

 

「あれ?あっ。」

 

「どうかしました?」

 

「いや、後ろにいるのが、」

 

後ろ?誰かいる?

 

「こんにちは。」

 

「えっと、こんにちは」

 

「ルーミアお帰り。」

 

「うん、ただいまー、」

 

「あっ、あなたがルーミアさんなんですね。」

 

「そうだよー。」

 

「手紙もらったよ。」

 

「えっと、それではこれで。」

 

「うん、またよろしく頼むよ。」

 

 

さてと…里の外の離れの森…

ってどれだ…?

魔法の森…じゃないよね…

 

「あれ?あんた、こんなとこで何してるのよ。」

 

「あっ、霊夢さん、多々良さんの家を探してるんですが。里の離れの森って言われて、どこの森かわからないんです…」

 

「あぁー…まぁいいわ、案内するからついてきなさい」

 

「あっ、ありがとう御座います。」

 

案内は助かるなぁ…

 

「この森。丁度人里を挟んで魔法の森の反対側ね。家はすぐ見つかると思うから跡は自分で探しなさい」

 

「ありがとうございます。」

 

森の中は案外明るい。

空気も綺麗で清々しい気分になれるなぁ

 

「日差しが気持ちいい、こんなところに住めるなんて少し羨ましいなぁ」

 

森の中に入って少しすると家が見えてきた。

 

ここのことかな。

 

「すいませーん」

 

家の中から女性の声の返事が聞こえる、

 

「はいどなた?」

 

「多々良さんの家はここであってますか?」

 

「うん、そうだよ。」

 

「手紙です、はいこれ」

 

「ありがとう」

 

んー…見覚えあるなぁ…

 

「えっと…どうかしました?」

 

「あっ、えっと。以前会ったことあるような気がして…気のせいかな」

 

「んー。会ったことあるとしたら命蓮寺じゃないかな?多分」

 

「命蓮寺ですか…んー。なら気のせいかな。」

 

「そっか。」

 

多々良小傘…じゃないね

こんなおとなしくはなかったし

 

「あれ、あなたって郵便屋の子?」

 

「ええ、そうですが。」

 

「やっぱそうなんだ、うん、見たことあるよ。」

 

「そうかな…思い出せないですが…」

 

「命蓮寺じゃなくて里だね。私が見たってだけで会って話しした訳じゃないよ。」

 

「そういうことですか。」

 

「多々良小傘って知らないかな?」

 

「あっ、楓さんから話を聞いたことがあります。ということは貴方が小傘さん?」

 

「そうだよ。」

 

「なるほど、実際に会えてよかったです」

 

「うんうん、私も話は聞いてたから」

 

「長話になってしまいました。さてと、手紙は確かに渡したので僕はこれで、」

 

「うん、またあったらお願いします」

 

 

さてと。もう昼過ぎになったな。

どうしようかな。

 

「一旦帰って来たけど…楓さんはいないか…」

 

とりあえず日報と通知書だけ纏めないと

それも終わったら…んー…

 

「眠たくなってきたな…」

 

「あのー…」

 

「あっ、こんにちは。」

 

ん?幽谷さんだ。

 

「お仕事中かな?」

 

「えっと…まぁ一応とりあえず一段落つけますね。」

 

「うん。わかった。」

 

書類を纏めて…提出箱に入れておいて…

 

「終わった…」

 

「今は楓さん?は居ないんだね」

 

「楓さんは別の用事で出てます」

 

「そっか。」

 

「楓さんに何か?」

 

「あっいや、楓さんではなくて、」

 

「あれ、どうかしました?手紙はさっき渡しましたが。」

 

「うん、手紙のことでもないよ」

 

どうしたんだろう、

 

「まぁ、ゆっくりしていてください」

 

「うん。」

 

明日の分を用意しておかないと。

 

「ねぇ?」

 

「はい?」

 

「椿さんは…楓さんが好き?」

 

んー?唐突な…

 

「んー…好きというよりかは、憧れですね、好きとかそういうのはないですよ?」

 

「憧れなんですね。」

 

「はい。元々、僕も楓さんも山で仕事してたんですけど。まぁ、いろいろあるんです。」

 

「そうなんだ。椿さんはなんで里に?」

 

「僕ですか。」

 

「うん、あっえっと、嫌なら話さなくてもいいけど…」

 

「いいですよ。」

 

懐かしいというか…昔の話か。

 

「…僕は元々山で仕事してましたよ。真面目に一生懸命にね。でも、僕は逃げ出したんです」

 

「逃げたんですか?」

 

「ええ、仕事が嫌だった訳じゃなくて、天狗社会自体が嫌になったんです。投げ出したくなるほどに」

 

「何があったんですか?そんな嫌になるほどのことが…」

 

「僕は悪くないんですけどね、馬鹿な上司のせいです。」

 

会いたくもない…思い出したくもない

 

「僕は…哨戒任務も事務も賊退治も真面目にやって優秀な天狗として名もありました、でも上司が全部無駄にして僕はいつまで経っても下っ端のまま。」

 

「なんで?」

 

「僕は僕の仕事を全部終わらせてます、なのに女天狗の上司は何もしないで、毎日のように男と遊び呆けてばかり。結果上司の仕事が僕に回って来て責任も何故か僕に回って来る。」

 

「おかしい…ですね。」

 

「巫山戯てますよね。人一倍仕事して功績残して。上司の仕事すらして。それなのにいつまで経っても下っ端のまま、上司が付いている以上、その上司に認められないと昇格出来ないんですよ。でもその上司は何故かずっと遊びばかり、目もくれず放置ですからね」

 

「酷いですね…」

 

「僕と同じ世代は部下を持ったり、一人前に役職をもらってそれ相応の対価を貰ってる。なのに僕は何故か最下級のまま。ありえない。」

 

「確かに…理不尽ですね。」

 

「だから、大天狗様の側近まで上がった親しい同世代に話したんです。」

 

「どうなったんですか?」

 

「結果的に上司は処罰です。天狗の名を汚すとして厳しすぎる処罰をです。でも当然の報いですね。まぁ僕は下っ端のままだったんですが。」

 

「そんな…」

 

「上げようがないんですよ。確かに僕は功績を残してたくさんの仕事をした、多くがそれを知っている。でも直属の上司ではないから昇格させることができない。先の側近の人も大天狗様に交渉してみたとは言ってたけど、決められたことを曲げることはできないと。次の上司に任せよと。」

 

「なんでなんでしょう…」

 

「決められたことを守るのは確かに大切です、だから僕は理不尽な決まり事にはもうウンザリなので里にきたんですけど、僕の指名手配が始まったんです」

 

「そうだったんですね。」

 

「ほんと。大天狗様が直々に僕を見つけろって。言ってたんです。もちろん見つかって、終わりかなって思ったんですが。」

 

「どうなったんですか?」

 

「大天狗様が頭下げて謝ったんですよ、僕はてっきり逃げた罪で命はもう無いと思ってたんですけど。もうびっくりして」

 

「意外と。」

 

「そう、意外でした、大天狗様も僕の事を認めてくれました。直接そういう記録を見たとかで、一人で二人分の仕事、告発とか、いろいろ感謝されました。」

 

「良かったですね。あれ、でもならなんで里に?」

 

「んー…逃げ出して今更天狗社会をまたなんてどうにも嫌だったからです。大天狗様も戻ってきてほしいって、大天狗様直々にしっかり見合った役職を与えるって言ってもらえたんですけどね、それでも嫌だったんです、それにその頃から人里に住み慣れてましたから。」

 

「そうなんですね」

 

「ある宿屋の召使として働いてました。その時丁度、楓さんのことを知って郵便屋をすることにしたんです、だからまぁ、好きとかじゃなくて、単純についていこうと思っただけなんですよね。」

 

「んーと…なんかすごいです」

 

「なにが?」

 

「私も…椿さんみたいに誰かの役に立たないといけないかなって思って。」

 

「んー…それは人それぞれですよ、そもそも僕は好きで仕事をしているだけですし、里に住むからには何か仕事をしないといけませんからね。」

 

「私は、いつも命蓮寺の掃除くらいしかしてないから」

 

「別にそれでいいと思いますよ?掃除なんて基本やりたがらないでしょうし、面倒だと思ってしまう人もいますから」

 

「まぁ…そうなんだけど。」

 

「幽谷さんの好きなことをすればいいと思います。」

 

「好きなこと…だね」

 

「はい。」

 

なんか、最初と話逸れたような…

 

「まぁ、話戻しますけど、里に来た理由はそういうことです」

 

「それでも、天狗の上司なんですよね。」

 

「そう思えばそうですね、あまり気にしたことないや。」

 

「ふふっ。まぁいいと思いますよ、それでは私はそろそろ帰ります、また手紙あったらよろしくね」

 

「はい、」

 

結局、何しに来たんだろう。

何か伝えたかったのかな

 

「戻ったよー」

 

「あっ、楓さん、おかえりなさい」

 

「うん、んー…?さっきまで誰か居た?」

 

「さっきまで幽谷さんがいました。」

 

「犬っぽい匂いはそれかな?」

 

え…匂いわかるの?

よっぽど楓さんも犬みたいな嗅覚してますよ…

 

「今日の仕事はもう終わりましたよ。これからどうするんです?」

 

「あっ、終わった?なら今日は自由にしようかな、」

 

「報告書とかは纏めてあるので」

 

「また見とくよ、」

 

「そう言って昨日の分処理してないですよね。」

 

「あっ…ばれた…?」

 

「箱の中に昨日の分残ってましたから?」

 

「うげぇ…忘れてた…」

 

「頼みますよ…」

 

「はぁい…」

 

「まぁ。手伝えることあるなら手伝いますよ。」

 

「いや、いいよ。どうせすぐ終わるから。」

 

「そうですか。」

 

「それじゃ!ちゃっちゃと終わらせますよ!」

 

楓さんは仕事は速いんだよなぁ…

すぐやっておけばいいのに。

 

「終わったー」

 

はや…

 

「お腹空いたね!」

 

「あ、サンドイッチ作ってあるので、是非食べてください。」

 

「おー。ありがと」

 

「僕はもう食べたのであと全部どうぞ」

 

「おいしーねー。椿も早くお嫁さん探せばいいのに」

 

…そう言われるとなんか複雑な気持になる、

 

「お嫁さん…ですか、」

 

「間違っても私なんて言っちゃだめだぞ。私は悠さんと祐奈さんの付き人なんだから」

 

「…あぁそう…」

 

そう思ったことはない。

 

「そういうのは気にしないです。」

 

「気にしない?そっか。」

 

「逃げた天狗なんてそんな」

 

「ならさ?」

 

「はい?」

 

「椿のことが好きな人を連れて来ようか?」

 

「何を唐突に…」

 

「私は知ってるし、椿も知ってる。」

 

「僕は…まだ仕事をしていたいので…」

 

「ふーん…そっか。」

 

きっと幽谷さんだろう。

さっきの質問からして僕のことを気にかけているのかもしれないとは思っている。

勘違いじゃなければ。だけど。

 

「まぁ。椿がそういうなら。いいか。」

 

この人はほんと自由だ…

 

「でも。しっかりと相手してあげてよ?響子ちゃんだってあなたに会いたくなるときだってあると思うからね。」

 

そんなにはっきり言うとは…

いやまぁ…わかってはいるけど!

 

「そ、それくらいは。」

 

「好きな人が目の前にいるのに。何もできないと苦しいのよ?」

 

それがわかっている人だから…

余計に反論できない

 

「私と同じ思いする人はいてほしくないからさー。」

 

「…何も言い返せないですね…」

 

「まぁね。結果的に椿がどうしたいかだよ。」

 

「だから…まだ仕事をするって。」

 

「そう。」

 

なんだか…調子狂うなぁ…

 

「今日は件数も少なかったし暇だなぁ。」

 

「そうですね。」

 

「私達はこうやって暇してるけど、山の天狗達は今でも仕事してるんだろうね」

 

「まぁ、仕事の内容が違いすぎますけど。きっと仕事中でしょうね」

 

「そうだよねー。」

 

何考えてるんだろう

 

「ねぇ、椿。」

 

「なんですか?」

 

「椿は仲のいい天狗はいた?」

 

「まぁ、それなりには」

 

「そっか。また戻りたい?」

 

「そんなことは微塵も思ってません」

 

「そうなんだ。ふーん。」

 

「今のここが、楽しくて気楽で良いっていうのもありますけど、山にはもう戻らないって決めてますから。」

 

「あ、そう意外だなぁ。」

 

「なんでそう思ったんですか?」

 

「まぁ、話聞いたときと今だと結構変わったなぁと思って。また戻りたいとか思ってるのかなぁ。と」

 

「そういうことですか。」

 

「まぁ、いいや。」

 

まぁいいや。

 

「まぁ、私は雪樹ちゃんでも愛でてくるかな。」

 

「行ってらっしゃい」

 

…まぁ、命蓮寺にでも行こうかな

 

 

「こんにちは!」

 

うわっ…!

誰…?

 

「か、幽谷さん?」

 

「あっ、来てくれたんだね」

 

「は、はい…声…大きいですよ…」

 

「そうですか?挨拶は大きな声でしないと!挨拶は心のオアシスともいいますから!」

 

ああ…そう…

 

「ところで。どうしました?」

 

「…まぁ、仕事も終わって暇だったので。」

 

「だったので、と言われても。暇でお寺に来るなんて、やっぱり変だね。」

 

うん、よくよく考えるとそうだと思う

でも。そういうつもりじゃなくて

 

「それはさておき。さっき幽谷さんが何か言いかけてたような気がしたので、それが気になったからもしよかったら話でも、と、思ったんですよ。」

 

「え、私?特にないよ?」

 

「そうでしたか。」

 

「でも、わざわざ会いに来てくれたのは嬉しいかな。」

 

「あ…まぁ。そういうことなんです。」

 

「そっか、向こうベンチあるから。」

 

こんな森の中にベンチ…

なんのために…?

 

「こんなところにあるんですね」

 

「休憩用にあるみたいですよ」

 

「そうなんですね。」

 

「それで、私に何かあった?」

 

「うんと。幽谷さんは僕のこと好きなのかなって」

 

「ん?うーん…いきなりだね」

 

「まぁ、さっきの話とか、もしかしたら、そうなのかなって」

 

「う、うーんと…確かにさっき惚れたといったけど…えっと…」

 

「あっ、ごめん、困らせちゃったかな。」

 

「確かに好きっていうのはそうなんだけど。でもそう言うと恥ずかしい…んだよね…」

 

「そ、そうですか。」

 

「なんか、ごめんね。」

 

「いいですよ。どうなのかなって単純に思っただけですから。むしろこんな質問して困らせて、僕の方こそすいません」

 

「私は話しできるだけでも嬉しいかな。」

 

「うん、ありがとう」

 

「お付き合いとか、そういうのはまだわからなくて…」

 

「少しづつで、いいかな」

 

「うん。」

 

「ありがとう」

 

「こちらこそ」

 

 

 

 

……

 

楓さんはあなたかしら?

 

はい?そうですか、どちら様で?

 

あなたは気づいた?

 

なんのことです?

 

この"幻想郷"のこと

 

…幻想郷の"繋がり"のことですか?

 

ふふ。よくわかったわね

 

ところで顔も見せず声だけ聞こえるんですが、あなたは誰ですか?

 

妖怪の賢者よ、これでわかるかしら?

 

なるほど。

 

それじゃ、またね

 

姿ぐらい見せればいいのに。

 

その必要はないでしょ?

 

まぁ、そうでしょうね

 

それではごきげんよう

 

 

 




こんな昼間に投稿するのは久々だな。


また会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

二人の愛 二つの愛

どうも、夢子です、

寝ぼけてます。

寝る寸前で書き終えたせいで。
題名を考えるのに一苦労しました


事あるごとに博麗神社は宴を開く

異変解決後となるとよくあることだ…

 

「うおーい!酒持ってコーイ!」

 

「ちょ霊夢、飲み過ぎだって!」

 

「まったくぅ!」

 

いつも平和で何よりだ…

というか…今回は異変というより、

ちょっとした事件なだけなんじゃ…

あれ…霊夢さんって今回何かやった?

 

「楓さん…だったかな、どこだろう…」

 

文さんと同じ…烏天狗か。

すぐ見つかるかな。

 

「おっ?もみじじゃなーい!」

 

あっ、やべ、霊夢さんに見つかった…

 

「あはは…こ、こんにちはー、」

 

「なぁにぃ?あんたも宴に来たのぉ?」

 

「いや、私は人探してるんです…」

 

「あそう!それじゃあ!飲みましょー!」

 

ええ!どうしてそうなるの!

 

「飲みませんから!」

 

「霊夢ほら!こっちで飲もうぜ!」

 

「おお!まりさぁ!飲むぞ飲むぞぉ。」

 

「ほら、椛、今のうちだぞ」(小声)

 

「あ、ありがとうございます…」

 

た、助かったぁ…

 

さてと…烏天狗は…

あ、いた?

 

「あのー。」

 

「はい?って、白狼天狗がなんでここに?」

 

「えっと、楓っていう烏天狗を探してます。あなたですか?」

 

「いや、僕は椿です。楓さんならすぐそこにいますよ?」

 

「うん?…あっ」

 

あの烏天狗かな。

 

「楓さーん!」

 

「んっ?どうした椿?」

 

「天狗さんが楓さんをお呼びみたいです。」

 

なんで二人も烏天狗が…

 

「私ですか?」

 

「はい。これを渡しに来ました」

 

「ん?あー。あれ?」

 

「印鑑?」

 

「どうも文さんのところに置き忘れていたみたいです。」

 

「あちゃ。私としたことが。わざわざありがとうございます。」

 

「いえいえ、では私はこれで。」

 

こんな危険なところ。早く撤退しますよ…

 

 

 

「ふぅ…やっと戻ってこれた…」

 

「あっ、お帰り椛」

 

「文さん、来ていたんですね。」

 

「ええ、あなたの上司に用事があったので。」

 

「暮葉さんに何か?」

 

「なんとも。俺の取材をしたいとかって」

 

「取材?」

 

「そうですよ。最近彼の話題が上がってますからね。これを期に取材して。もっと広めてしまおうと思ったんです!」

 

「俺は大したことしてないんだが…」

 

「は、はぁ…?」

 

「んー…でもいつまで経って以前話になったことしか話題がないんですよねー、おかしいなぁ…」

 

「だから、大したことはしてないって…」

 

「仕方ありません。ここはひとまず戻って何か考えるとします!それでは〜」

 

相変わらず…何なんだあの人

 

「大変ですね、」

 

「人が書類片付けてる間に強引に来るんだ、ほんとは迷惑なんだが…」

 

「無理やり追い出してしまえば?」

 

「んー…それもそうなんだが、下手なことすると大天狗様に怒られるしなぁ…」

 

「あー…まぁ。」

 

ある事件を境に上下関係の態度を厳しく見るようになった。

 

「なんとも…こればかりはなぁ」

 

「えっと。書類整理手伝いますよ」

 

「ありがとう助かるよ」

 

「たまに手伝ってもらってますから」

 

「んー?俺のほうが手伝ってもらってないか?」

 

そうだったかな?

 

「うーん?気のせいですよ」

 

「あっそう、まぁいいや。」

 

相変わらず小難しい書類ばかり…

上の人達の仕事って大変ですね…

 

「そういえば、今日は哨戒任務は?」

 

「今日は担当表になかったでお休みです」

 

「へぇー。そうか。」

 

「だから、私がわざわざ印鑑届けに行ったんですよ」

 

「そ、そうだったな」

 

「ん?これは?」

 

「あれ。それ、前の事件の」

 

「椿…?どこかで聞いた名前。」

 

あれ…さっきの烏天狗?

 

「あー。椿か。懐かしい名前だな。」

 

「知ってるんですか?」

 

「おう。俺より仕事のできる凄いやつだ、ただ、人里に行っちまったからなぁ、大天狗様も残念がってたよ」

 

「でも。これ見ると椿さんって私と同じ哨戒天狗ですよね。」

 

「んー。あいつはな。本来なら大天狗様の補助役職を貰えるくらいだったんだがなぁ。」

 

「何があったんです?」

 

「あいつの上司がなぁ…遊び人だったせいでいつまで経ってもことが起こらずで下っ端のまま。上司の分まで仕事してたんだ、」

 

「え?そんなにできる人だったんですか?」

 

「まぁな。それで嫌気さしてやめたんだとさ。」

 

「実はさっき、宴にいましたよ。」

 

「へぇ~、まぁ人里に住んでるとなれば巫女のとこの宴も参加するだろうな。」

 

「ですよね」

 

「さてと。こんなところかな。」

 

「終わりですか?」

 

「うん、とりあえずお昼休みで、」

 

「はい。」

 

「いつもありがとう。」

 

「ひぁ…あっと…」

 

「嫌だったか?」

 

…頭を撫でられると…なんだか…

 

「嫌では、ないです」

 

「暮葉ー?あっ!」

 

扉の音…誰か来た?

 

「あれ、甘乃じゃないか、どうした?」

 

「まーた、女の子誑かしてー!」

 

「誑かしてないぞ、仕事手伝ってくれた部下を褒めてただけだ。」

 

「ほんとに?」

 

「な?椛。」

 

「えっと…はい!」

 

「あっ、そう。」

 

「んで?なんか用事か?」

 

「昼休憩かなー、と思って。」

 

「そうだな。」

 

「一緒に人里に食べに行かない?」

 

「すまん、弁当がある」

 

「そっかー。なら仕方ない、また今度行こう。」

 

「ああ、また今度な」

 

行っちゃった。

 

「お弁当、持ってるんですね」

 

「ん?ああ、弁当な。持ってないよ。」

 

「え?嘘ついたんですか?」

 

「まぁ。この時間の人里は行きたくないからな。確かに人里の美味しいお店はいくつかあるんだけど、こんな昼間だと混んでまともにゆっくりできないから、行くときはいつも夕方か夜のピークを過ぎた頃に行くんだ。」

 

「こだわりがあるんですね」

 

「食事くらいゆっくりしたいんだ」

 

「まぁ、確かにそうですね」

 

「さてと…それじゃ俺は一眠りするかな」

 

「お昼ご飯は食べないんですか?」

 

「前話してなかったか?俺は普段昼は食べないぞ。」

 

「あれ、そうでしたか。」

 

「椛は?」

 

「私はおにぎりがありますから。」

 

「ふーん、せっかくだし一個もらっていいかな」

 

「え?まぁ、構いませんけど」

 

うーんと…何だか…複雑な気持になるなぁ…

 

「えっと、こんなので良ければ…」

 

「おお…なんだこれ…でかいな、これを3つも?」

 

「はい、具は普段あまり使いませんが、今日は魚のそぼろがどれかに入ってます。」

 

「へぇ~、入ってるといいな、んっ?これか?」

 

あぁ…私のそぼろがぁ〜

 

「あ、それです…」

 

「あっ、ごめん。」

 

「い、いいですよ。渡したんですから。」

 

「一口くらいは食べなよ。」

 

「い、いえ、そんな」

 

「ほら、あーん。」

 

ふぇぇ!いやいや…

 

「全部食べちゃうぞ?」

 

意地悪ですね…

 

「一口だけ…一口だけ…あ~んっ!」

 

「おお…食い方が…大胆…」

 

「んむぅ!んー…」

 

あぁ…恥ずかしくてたまらない…

あぁ…!もぅ〜…

 

「ははは、椛は可愛いなぁ。」

 

やっぱり…誑かしてる…のかな。

 

「おい。そんな睨むなよ、怖いぞ?」

 

「意地悪。」

 

「ははは、意地悪か。」

 

「ええ、意地悪です。」

 

「意地悪な上司は嫌いか?」

「その言い方、やっぱり…意地悪です。」

 

「ははは。俺は椛が好きだな」

 

ん…好き…?

 

「それはどういう…」

 

「可愛いし、真面目で素直だし。自慢の部下だな。」

 

「んもう…」

 

「困ったか?」

 

「恥ずかしい…です」

 

「そうか。」

 

「でも、ほんと、椛は素直で真面目でいいと思うぞ。」

 

「そうかな…」

 

なんか…嬉しいというか。

 

「少なくとも俺はそう思う」

 

「えっと、ありがとうございます」

 

…相変わらず優しい方です…

 

「まぁ、俺は一眠りするから」

 

「えっと、お邪魔しました。」

 

「うん、またあとで」

 

座ったまま寝るつもりなのかな。

座ったまま寝る…器用だなぁ…

そんな寝方で疲れ取れるのかな。

 

まぁいいや。

 

「さてと。」

 

「あれ、さっき暮葉のとこにいた。」

 

「はい?えっと甘乃さん。でしたっけ?」

 

「うんうん。今からご飯?」

 

「あっと…私もお弁当で、もう食べちゃいました。」

 

「そっかー。今日は弁当組が多いなあ、仕方ない一人で行こうかな」

 

「行ってらっしゃい。」

 

どうしようかな。

 

にとりさんの所に行こう

 

 

「おや。椛じゃんどうしたよ?」

 

「今日は哨戒任務は休みです、とりあえず将棋でもしますか、」

 

「おー、今日は暇じゃないんだ、すまないねまた今度で頼むよ。」

 

「そうでしたか、ならわかりました」

 

んー、どうしようかな。

 

んー……

 

「おっ、椛。」

 

「あれ?暮葉さん?」

 

「こんなところで会うなんて、」

 

「寝てなかったんですか?」

 

「なんか寝れなかったんだよな、昨日が休みで散々寝てたからかもしれない、まぁ暇だったから散歩しようと思って」

 

「そうでしたか、」

 

「そうだ、散歩ついてに椛がいつも哨戒任務で通る道を教えてくれよ」

 

「私が通る道ですか。」

 

まぁ、それもいいかな、

 

「うん、散歩ついでだ」

 

「いいですね、行きましょう」

 

 

「椛は千里先を見渡せるんだったね」

 

「そうです。哨戒任務にもかなり役に立つんですよ」

 

「だよな。便利そうだな」

 

「そういう暮葉さんは?」

 

「俺か?俺はあまり役に立ったことないな」

 

「確か、天眼?とかでしたよね」

 

「そう。最近役にたった試しがないからな。」

 

「そうなんですか、」

 

「俺の場合は体現してみないとわからないな、あとで特訓でもするか?」

 

彼との特訓…初めてかもしれない。

 

「はい!是非!」

 

あっ。そろそろ

 

「ここで一旦停まります。」

 

「ん?何かあるのか?」

 

「この辺は比較的見渡しやすいので普段ここで一度停まってるんですよ」

 

「そうなのか。何か見えるか?」

 

「今の所は特に何も、哨戒任務中の天狗とか妖怪とかぐらい。」

 

「そうか、ほんとに椛は働き者だな」

 

「そ、そうでしょうか」

 

「俺が椛と同じ哨戒天狗の頃は、周りは適当なやつばかりだったよ、俺は椛と同じ念入りに任務をこなしてた、特訓でも同各位なら負けはなかったし、そう思うと椛って昔の俺みたいだなって思う」

 

「そ、そんなことは…」

 

「椛は頑張り屋さんだな」

 

また…頭を撫でる…なんだか…

 

「ほ、ほら!次行きましょう」

 

 

 

「ここですね」

 

「ここは…」

 

「何かあったんですか?」

 

「ここは昔に…いや、この話はまた今度にしよう」

 

「そうですか。」

 

昔何かあったのかな

 

「さてと…」

 

「何か見えるか?」

 

「えっと…あれ?あれは…静さん?」

 

「静って…俺等と同じ白狼天狗の?」

 

「はい、その先には…哨戒中の天狗たちですね。でも様子がおかしい…喧嘩?かな」

 

哨戒中の天狗が喧嘩なんて珍しい…

 

「野次馬じゃないが、天狗の喧嘩は隅に置けない、案内してくれるか?」

 

「はい。こっちです」

 

まずいなぁ…嫌な予感

 

「あっ、いま刀を持ち出しましたね…」

 

「急ぐか…」

 

静さんがたどり着く前になんとかしたいけど…

 

「間に合わないかな…」

 

「ん?どうした?」

 

「あっ、いえ、なんでもないです」

 

むしろ静さんが先についたか…

 

「くっ…二人を相手には分が悪い…」

 

「おい!大丈夫か!」

 

「お前は?暮葉か?」

 

「椛が、二人がいがみ合うを見つけてくれて、駆けつけてきたんだが…これはどうなってる…二人ともまともじゃないぞ」

 

「止めに入ったら襲ってきたんだ…全くどうなってる」

 

「この二人って…静さんとこのあの二人?」

 

「ああ、あいつらだ…毎日のように特訓してる、おかげ様でこの二人を同時は私も手に負えないよ」

 

「静さん下がって」

 

「お前の実力はよく知ってる、でも一人で相手しきれるほどこいつら容易くないぞ。下手したら殺される。」

 

殺気が…尋常じゃない…

 

「大丈夫なんですか?」

 

「まぁ、なんとかなるさ。大丈夫だよ」

 

そんな…簡単にそんなこと言って…

 

「とにかく任せて」

 

「どうなっても知らないぞ」

 

…ほんとに一人で…

 

暮葉さんが近づくと、すぐに二人は襲いかかった、容赦のない攻め。私ならすぐにでもやられてしまうだろう…

でも、彼はそれを意図も簡単に避けていく。

 

「ははは、こりゃおもしれーな。」

 

なんで笑ってるの…

 

「わ、笑うなよ」

 

「すぐ片付けるさ。」

 

鞘も抜かずに、刀を使って二人の武器を払っていく、腹部に突きを入れて、蹲ったところを気絶させていく。

 

「手慣れてるな。流石だ」

 

「凄い…」

 

「ちなみに、天眼は使ってない。」

 

「はぁ?まったく…うちの子達も舐められたもんだ…完敗だ」

 

ん…何だろう…体が痛い…!

 

「う…ん……」

 

「どうした」

 

「椛?何かあったか?」

 

「わから…ない…苦しいの…」

 

苦しい…体が熱くて…頭が響くように痛い…

 

「椛、深呼吸して落ち着けるか」

 

「息が…苦しくて…」

 

なんでだろう…暮葉さんの声を聞くと…

すごく嫌な気がする…

 

「なんかの術だな…」

 

「なら術者がいるか?」

 

「そう遠くないとこにいるかもしれない、静さん、探してもらえるか、椛ならすぐなんだが…この調子だからな、手探りでもいいから頼む」

 

「わかった。」

 

二人きりになった…

二人きりか…

 

「暮葉…さん…!」

 

暮葉さんを見る度に嫌な気がする。

憎く…恨めしく…殺気が湧く…

理由もないのに…

理由なんていらない…

なぜ…なんで…!

 

体が言うことを効かない…

 

「椛…大丈夫か!」

 

「う、うるさい…!」

 

「椛…?」

 

「お前なんか!」

 

そんな…やめて…

 

「刀を収めて、落ち着け。」

 

「嫌だ!」

 

体が…言うことを効かない

勝手に体が動く…

こんな…

 

「危ないな…なんだ…椛も十分強いじゃないか」

 

「うるさい!」

 

普段とは思えないような…

そんな攻め方…

なんで…こんなこと、したくないのに…

 

「よっと…」

 

「うっ!剣が…」

 

武器が飛んでいった瞬間、抱き締めてくる

 

「椛…そのまま聞いてくれ。」

 

「嫌だ!離せ!」

 

…話して…聞いてるから…

 

「椛は俺が嫌いか?」

 

嫌いじゃない…嫌いじゃないよ…

 

「離せっ!ううー!」

 

「俺は…好きだぞ。真面目で素直で正直で可愛い椛が愛おしい、ずっと側にいて欲しい」

 

「なんで…」

 

「椛…?」

 

「私は…お前が…暮葉さんが…」

 

「心を落ち着かせろな。多分俺のことを考えると苦しくなるんだろう」

 

「うう…」

 

「だから。何も考えず話を飲み込め。」

 

「は…い」

 

「椛、そのまま力を抜いて」

 

言うとおりに…

 

「今はただ落ち着くだけ…」

 

「…」

 

「最後に一言だけ聞いてくれ、」

 

「はい…」

 

「椛、愛してる」

 

その言葉を聞いた瞬間、

何かが弾け飛んだ気がした。

体の痛みとか、湧き上がった感情とか

色々開放された気がした

 

「椛…?」

 

その後かな…何もわからないまま気を失ってしまった。

 

「んー…こりゃ効きすぎたか…」

 

…………

 

「さてと…困ったなぁ…」

 

静さんが戻るのを待つか。

 

「うーん…?」

 

哨戒天狗の二人のうち片割れが目を覚したみたいだ。

 

「起きたか」

 

「あれ…僕は確か哨戒の任務に…」

 

「何かの出来事で隣で寝てる相方と喧嘩始めただろ。」

 

「そうだ!えっと…なんでだっけ…」

 

「そのうちわかるさ。とりあえず安静にしてろ。」

 

「わかりました…えっとあなたは?」

 

「俺は暮葉だよ。」

 

「あ、暮葉さんでしたか、」

 

静さんも遅いな

 

「あれ…椛…?」

 

「知ってるのか?」

 

「この前。一緒に特訓してたので」

 

「そうか。どうだった?」

 

「負けはしませんでしたが、余裕のない試合でした。気を抜けばすぐにでも負けていたと思います、」

 

「へぇ~お前が言うなら、椛もそれほどの実力なんだな。」

 

「それでも、僕達は二体一で戦いましたから。個々の能力としては椛のほうが…」

 

「あー。なるほど、二体一でも余裕がなかったと。」

 

「はい。相当な実力かと…」

 

「なるほどねぇ」

 

「暮葉、無事か」

 

「ああ、まぁな。」

 

「それに満も目が覚めたみたいだな。」

 

「何があったんです?」

 

「こいつだ」

 

捕まえてきた妖怪…か

見た感じ、花か何かの妖怪だな。

 

「どうやらこいつが呪術の類を使っていたらしい。叩きのめしたらすぐに吐いたよ」

 

「なんて?」

 

「どうやら、対象者の"感情を逆転"させる術らしい」

 

「感情か。」

 

「つまり満と霧はお互いの仲の良さのその関係の何かの感情が逆転し、いわゆる犬猿の仲状態まで陥った、その後駆付けた私には普段の部下上司の関係で忠誠心か何かの感情が逆転し殺しにかかってきた、と言ったところだろうな」

 

「なるほど、感情の逆転。か」

 

「僕達が静さんを…?」

 

「心配するな、私は無事だ、お前達が襲ってきたのも単に術のせいだ、咎めはしないさ、それにそれが逆転なら、お前たちの仲の良さも私への忠誠心も良くわかったからな」

 

「そ、そうですか。」

 

「さて。問題は椛だな。」

 

「とりあえず満、霧を連れて一度戻れ、哨戒任務は次がもう回ってるからいい、」

 

「わかりました。」

 

…さぁ、椛はいつ起きるかな

 

「椛、大丈夫か?」

 

「まぁ、とりあえずは」

 

「まさかお前、女の子相手に暴力奮ってないだろうな」

 

「まさか、物理的なことは剣弾いたくらいだ」

 

「物理的なこと?どういう意味だよ」

 

「例えるなら…言葉の暴力?」

 

「そのままの意味なら逆効果じゃないか、」

 

「意味合いはかなり変わって来る」

 

「よくわからんな…」

 

「静さんが離れたあと、椛はかなりの勢いで俺の事を消しかけに来た。それこそ剣を抜いて殺す気で襲い掛かってきた。」

 

「えっ?」

 

「びっくりしたが…感情の逆転ってことはつまりは…」

 

「あぁ!なるほどな!」

 

「声をかけるたびにうるさいだなんだって、ほんとにびっくりだよ。」

 

「ほぉー。ってことはだ」

 

「察してくれ。」

 

「うんうん。それで?」

 

「あのよ…まぁ、俺も椛のことは気にかけてるけどよ」

 

「気にかけてるだけか?」

 

「ホントは、それ以上だけども」

 

「それをそのまま伝えたと?」

 

「ええ…まぁ」

 

「ははは!ほんと。お前は、面白いやつだな!」

 

「やめてくれ恥ずかしいから、」

 

「もう、これはお幸せにとしか言えねぇよな!」

 

「はぁ…」

 

これは…地雷踏んだやつか…

 

「まぁ、いい、とりあえず俺達も戻るよ、」

 

「そうだな。」

 

………

 

「う、うーん…」

 

こ、ここは…?

 

「椛、起きたか。」

 

「暮葉さん…」

 

暮葉さんの家かな…

 

「気分はどうだ?」

 

 

「体調はあまり良くないです…でも…」

 

「ん?まだ安静にしないとな。」

 

「あの…暮葉さん…」

 

「どうした?」

 

「ごめんなさい…私、あんなに酷い事を…」

 

「謝らなくていい、仕方なかったからな。」

 

「何があったんでしょうか」

 

「妖怪の術だったんだよ。感情を逆転させるっていう効果。」

 

感情の…逆転?

 

「そう、だから、椛の感情が逆転して、俺の事が憎かったり恨めしく思うようになってしまった、結果襲い掛かってしまうまでに至ったんだろう」

 

「本当に…ごめんなさい…」

 

「だから、いいって。今言ったろ、感情の逆転だって。」

 

「ん?どういう意味ですか?」

 

「俺の事を散々嫌っていたということは、その逆のことを…」

 

「え?ん?んー…」

 

つまり私は…あ…あぁぁあああ!

 

「だから椛、気にすることはないぞ」

 

「…気にしますよ!、私は恥ずかしくて!あなたは役得なだけじゃないですか!」

 

「本当にそうか?椛の素直な気持ちの現れだったと思ったんだが…」

 

「確かに…そうですけど…もう!こういうのは…なんていうか…」

 

「椛」

 

また…抱き締めて…

でも…あのときとは違って優しい感じが…

 

「椛は…俺の事が嫌いか?」

 

「嫌いじゃない…」

 

「俺は好きだぞ。真面目で素直で正直な椛が愛おしい。側にいて欲しいくらい」

 

「…私は…」

 

心も気持ちも私だって同じ…

いつも一方的に彼が話をして

私はその隙をついて話すことができない

本当に意地悪でずるい人

でも…嫌いになんかならない

 

「椛…?」

 

「ねぇ。暮葉さん。」

 

「なんだ?」

 

少し強引に向かいあってみる。

 

「ど、どうした?」

 

「やっぱり暮葉さんはずるいです。」

 

「なっ…ず、ずるいか?」

 

「はい、ずるくて意地悪です。」

 

「ご、ごめん。」

 

「私だって言いたいことは沢山あります。伝えたい気持ちもありますが、部下としての立場もありますからずっと我慢してたんです!」

 

「う…うん。」

 

「あなたはいつ一人で話を進めてばかり、私は何も言えないじゃないですか」

 

「あっ…うん、ごめんよ」

 

「だから。今日は、今日こそは…私が独り占めするんです。」

 

「椛…」

 

もう一度…抱き締めあって…

 

「私だって暮葉さんのこと、愛してます、ずっと、あなたの部下でいいとも思ってしまっています。」

 

「うん。」

 

「愛おしいのも、側に居たいのも、私だってそう。だから、あなただけで私を引っ張らないで?」

 

「わかった。気をつけるよ。」

 

「うん…ありがとう」

 

やっと伝えれた。

ずっと我慢してた

これからは私も強気で行こうかな。

そうじゃないと、また私が恥ずかしがるばかりになっちゃうから。

 

「ごめんな、椛。」

 

「…」

 

「今思うと、椛のことわかってなかったんだなって。」

 

「そうかもしれないですが…でも私のことは愛してくれていたんですよね、」

 

「うん…それは変わりない。」

 

「なら、これからはお互い様です。」

 

「ああ、わかった。」

 

「さてと、気持ちはすっきりしたんですがまだちょっと足りない感じがします。」

 

「そ、そうか。」

 

「なので、ちょっと身体動かしませんか?」

 

「特訓、するか?」

 

「はい!」

 

「それじゃ、外出ようか」

 

気がついたら、もう夜なのか…

今日はなんだか…早かったなぁ…

 

「さぁ、いつでも、どこからでもいいぞ」

 

「手加減はしませんからね!」

 

「お、おう?」

 

手は抜かない。

さっきの続きをするんです。

 

「ちょっと!ほんとにまじでやるのか!」

 

「手加減をすると、面白くないです!」

 

彼に一つ思い知らせるんですから。

 

「おい、うわ。くっ…危なっ…」

 

「防戦一方ですよ!」

 

「言ってくれるな。」

 

鞘も抜かずに刀で受けて…

まだまだ追い込まないと。

彼の本気が見てみたい!

 

「くっ、仕方ないな。ここまでなのは久々だぞ…」

 

急に目つきが変わった?

 

「刀は使わないんですか!」

 

「こいつはあまり使いたくないんだよ。よく切れすぎるから…」

 

「ふーん。面白い言い訳ですね。」

 

「まぁ、まだ大丈夫か」

 

「まだまだ余裕そうですね!」

 

そう言ったけど、攻めを強くしてみても…

次から次に避けられて、刀で受けられて

だめだ。もっと攻めないと!

 

「避けてばかり!なんで攻めないんですか!」

 

「うーん…これじゃ特訓というよりは、椛の鬱憤晴らしにしか思えないんだが…」

 

もとよりそのつもりですが…?

 

「特訓ですよ!ほら!」

 

「まぁ、いいか、俺も久々に天眼を使ってるわけだし」

 

「やっぱり…」

 

やっぱりそうだったんですね

 

「そろそろ終わろう、俺も疲れてきた、」

 

「終わらせるなんて、簡単に、なっ!」

 

また、剣を弾かれた⁉

 

「ひゃ!痛い…」

 

何…?身体がいきなり吹き飛ばされて…?

 

「……はぁ…」

 

えっ…今何が起きたの…?

 

「終わり、これ以上は俺が許さないぞ」

 

何この刀…見たことない…

私の持ってるものとは…全然違う…

 

「ちょっと調子に乗りすぎだ。落ち着け」

 

「えっと…はい…」

 

「まぁ、よく追い込んだと思うよ、俺でなければほんとにやばかっただろうな。」

 

「天眼…どうしても知りたくて…」

 

「あぁ…まぁな。そう思うのはわかるが…俺も疲れるから、できれば勘弁してくれよ…」

 

「はい…ごめんなさい…」

 

「正直あのままだと怪我で済むかどうかだったから、使わないと後がなかったのも確かだ、ほんとに、やばかった」

 

「なんていうか…」

 

「すっきりしたか?」

 

「えっと、はい。」

 

「そうか、そりゃよかった。」

 

「でも、最後何されたのかわからなかったです。あと、暮葉さんの刀も初めて見て…」

 

「ちょっとした衝撃波みたいなものだ。」

 

「そんなことができるなんて…」

 

「まぁ、一種の弾幕みたいなものだぞ、そう言うのは椛の方が得意だと思うんだけど…」

 

「近すぎて見えなかったですから…」

 

「あぁ、まぁな」

 

「その、刀は?」

 

「こいつは、昔、魔法の森の近くの変な店で買ったんだ。外の世界の日本刀とか言うらしい、」

 

「外の世界の刀…すごいですね。」

 

「ああ、さっき言った通り、よく切れる。」

 

「刀身が…なんというか、綺麗ですね。」

 

「ああ、椛が使ってるのと比べると、こっちは細身で割と長い、厚みもこいつはあまり無いな。おまけに軽い」

 

「ほんとに、すごいですね…」

 

「外の世界ではこんなものがたくさんあるらしい。」

 

「私には扱えないです。」

 

「木ぐらい、簡単に斬れるからな、容易に使うもんじゃない」

 

「そう思えば…半霊の人が同じようなものを使っていたような。」

 

「魂魄妖夢だったか?あれに似てるな。でもあれは持ちやすいように全体的に小さい。それに、これは単純に斬るための刀だ。」

 

「確かに、そうですね。」

 

「さあ、戻るか。疲れた。」

 

「はい。ありがとうございました。」

 

私も、少し疲れたかな。

 

 

 

「椛。帰らなくて大丈夫か?」

 

「今日はもう遅いですし…できれば泊めていただけたら…」

 

「うん、いいよ。」

 

「ありがとうございます。」

 

「俺はもう眠たいから。先に寝てるよ。」

 

「あの…」

 

別々のベット…なんか気に入らない…

 

「そっち行っていいですか!」

 

「い、いいけど…今日はやけに積極的だな…」

 

勢いで…やっぱ恥ずかしい…

 

「相変わらず椛は素直だよな。」

 

「い、いきなりなんですか?」

 

「ん?今だって、恥ずかしいんだろ?」

 

「うぅ…はい…」

 

「まぁ、俺もまさか同じベットで寝るなんて思わなかったから、正直気が気でないけど。」

 

それにしてもやけに落ち着きすぎですよ…

 

「へ、変なことしないでくださいよ?」

 

「んー。保証できないかな。」

 

「なっ!ど、どうしよう…」

 

出たくないけど…出たい…けど…

ど…どうしようかな…

 

「嘘だよ、いきなり襲ったりなんかしないさ。」

 

「ほ、ほんとに?」

 

「あはは、椛が可愛すぎたら、わからないな。」

 

「むぅ…」

 

ほんとに大丈夫かなぁ…

 

「そういえば。暮葉さん。」

 

「どうした?」

 

「昼間、観察地点に停まったときに何か言い出してましたけど。何だったんですか?」

 

「んー、聞きたいか?」

 

「そうですね。半端で止めちゃって。気になりますし。」

 

「面白い話はできないぞ?」

 

「面白ろくなくても聞きたいです」

 

「まぁ…昔な。あそこはもう少し広かったんだけど、」

 

……

 

あの頃は丁度今の椛と同じくらいで

哨戒天狗だった

 

その頃からあの刀も持っていて。

天眼も使えていたんだ。

 

あの広場は、天狗同士で特訓するのに最適な場所で、毎日誰かはあの場所で特訓していたんだ、俺もそのうちの一人。

 

その頃はまだ、大振りの哨戒天狗の剣を使っていたが、あることを期にあの刀を使い始めた。

 

哨戒任務を終えて、同じ哨戒天狗と特訓していた時。いきなり妖怪達がやってきて、襲い掛かってきた。

 

もちろん、俺達は天狗とはいえ哨戒天狗、見回りが専門だから、大して戦力にならない奴が大多数だ。

 

俺も必死になって戦ってた。他の仲間も戦っていたが。目の前で殺される奴もいた…俺も流石に数で押されると、仲間を庇う隙すら作れなったんだ。

 

次第に逃げ出すやつもいた。

一人の烏天狗がすぐ戻ると声をかけて、飛んでいったのを、よく覚えてる、

 

ジリ貧になってきて。俺の剣がついに欠けてしまって…それで、背負っていた、刀を鞘から抜いて構えた。

 

その時始めて刀を構えたんだ。

さっきまでと刀身はあまり変わりがない。

なのに軽くて振りも早い。

慣れるのには時間が掛からなかった。

 

その刀で攻め返したんだ。

武器が軽くなった分動きもさっきより軽くなって避けやすくなった。

 

それでも、数に圧倒されるのは変わらなかったけどな。

丁度そのときに刀の強さを知ったのと同時に、刀の恐ろしさも知ったよ。

相手の隙ができた瞬間に、振りかざしたら、相手の腕が落ちるのが見えた、

切り込むだけじゃなく。骨まで断ってしまうなんて思いもしなかった。

無我夢中になってたから。そんなことを考えてる場合じゃなくて。痛がっていたのをそのまま切り捨てた覚えがある、

 

少ししたら、上司達が来て、妖怪達が退治された。

 

妖怪達が居なくなったあと。

上司達に連れられて。

妖怪達が襲ってきたことや、他の天狗のこと。刀の話もした。

 

話が大きくなりすぎたのか。

俺は大天狗様に呼び出しもされた。

まぁ。特にお咎め無しだったから大丈夫だったけどな。

 

あの事件依頼、あの場所は誰も行かなくなってしまった。

 

それからしばらくしたあと。

哨戒任務中に妖怪達が俺を呼び出した

 

あの広場までいって。

殺してほしいと願い出てきた。

妖怪達は痛みのない最期を迎えたいって言ってたよ。

 

確かに、あの刀であれば、痛みを感じる前に命が断てる。

総確信したんだろうな…

 

俺は特に断る理由もないから。

言われたとおり一体ずつ首を落としていったよ…

 

そのうちに刀が、恐ろしく感じてきた。

よく斬れすぎるせいで、無残にも命が経たれていく。

全員の死体を見て俺は正気でいられなかった。そこから逃げたかった、でも、刀が恐ろしいはずなのに、捨てることはできなかった。

 

………

 

「それ以来、刀の鞘を抜かないようにしている」

 

「なんだか…複雑な気持ちになりますね…」

 

「だから言っただろ、面白い話はないって。」

 

「さっき鞘から抜いてましたよね。あれは?」

 

「衝撃波を飛ばすため。かな。あれ自体は弱い衝撃だ。吹き飛ばす程度の威力しかないから。安心してくれ。」

 

「もしも刀身が当たっていたら…」

 

「万が一にもそんなことはないよ、」

 

「そう…ですよね」

 

「あの時の大振りの剣は。まだ残ってるんだ、今でもたまに使ってるよ。」

 

「そう…なんですね」

 

「椛。」

 

「はい?」

 

「眠たいだろ?」

 

うん…だんだん眠たくなってきてる。

 

「今日は疲れた。」

 

「私も…疲れました。」

 

「おやすみ。」

 

「はい…おやすみなさい、」

 

 

そっと。抱きついてみる。

男の人とこんな風に親しくなるなんて初めてだから、少し恥ずかしいのはあるけど。

 

でも、とても安心感があって暖かい。

 

「暮葉さん…ありがとう。」

 




次どうしようかな

それではまた会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

単純なる出会い

どうも夢子です、

今回は出したかっただけの人です。


どうぞごゆっくり


あの巫女が言っていた。人里

 

「ここが人間の里」

 

月に比べると平和的に思える

まぁ、月は穢れを嫌うのもあるから。

こんな風にのんびりしていられないのだろうか

 

ん?この匂いは…揚げ物の匂い

腹は空かないけれど。食欲が唆られる

 

この感じだと、この店…

 

「肉カツ屋。ふむ。」

 

カツか。久しく口にしてない

たまにはいいか

 

「いらっしゃい。お好きな席へどうぞ。」

 

店内は案外狭いな…

陰気とまではいかないが、割と暗めで

少し寂しい感じはあるだろうか。

 

「ご注文が決まりましたら。お呼びください。」

 

「わかりました」

 

店員は至って普通

暗くもなく明る過ぎもせず。

 

割といい食事処。

 

メニューも…

揚げ物がメインかな。

豚カツ。鳥の唐揚げに砂肝の揚げ物。

牛カツ?牛のカツなんて初めて聞く。

これにしてみよう。

 

「注文いいですか。」

 

「はい、お伺いします。」

 

「この、牛カツの定食、お願い」

 

「かしこまりました。その他はよろしいでしょうか?」

 

「以上で。」

 

「かしこまりました。ご準備しますのでしばらくお待ちください」

 

「勘定は?」

 

「あっ、当店は後払いですので。」

 

「わかりました」

 

後払いか、食い逃げする奴もいると思うが…まぁ、ここまで治安が良ければそれをする必要もないのかもしれない

 

「狭い店内だからね、隣。失礼するよ」

 

この男…まぁいいか。

 

「こんな店に来るなんて珍しいね。」

 

「店員がそれを言うならまだわかるけれど。あなたがそれを言うのは店に失礼なのでは?」

 

「ああ、そうかもしれないな。済まなかったね」

 

「まぁでも、この感じなら、そう思うのもわからなくはないと思うわ」

 

「まあ。雰囲気が、そう思わせるからね。」

 

「そういうあなたは、なぜここに?」

 

「僕はここのカツが好きでよく来るんだ」

 

「常連ってことね。」

 

「少し高いが、それに見合わないくらい美味しいよ。」

 

「少し楽しみですね。」

 

高めなのか。他の店は少しばかり安いのだろうか。

 

「おまたせしました。」

 

「ありがとう。」

 

「ごゆっくりどうぞ。」

 

「では、先にいただきます。」

 

「ええ。」

 

確かに美味しい。

揚げ物特有のサクサク感と牛の溶けるような感触がよく合う。とても美味しい。

 

「さて僕もいただこうかな。」

 

あまりにも美味しかったから。

つい無言になってしまった。

 

「ふぅ。ごちそうさま。」

 

「なかなかにおいしいだろう?」

 

「ええ。聞いたとおり。とても美味しかったわ。」

 

「それはよかった。」

 

「こんなに美味しいのは久々ですね。」

 

「そうか。」

 

「それにしても。私に声をかけるなんてね。」

 

「ん?あぁ、ある人かなと、もしかしたらと思ったんだよ」

 

「人違いだったら?」

 

「一応聞いておくよ、純狐さんだろ?」

 

「よく知っていますね」

 

「これでも。博麗神社に参拝に行くんだ。その時巫女さんの愚痴を聞くことがあってね。あんたの話を聞いたことがある。確か月で騒動起こしたとかってね。」

 

「そういうことですね。」

 

「ただ、少し驚いたな。騒ぎを起こした人って聞いてたからもっとこう。気の荒い人かと思ってたのだが、それは勘違いみたいだ。」

 

「私は嫦娥への復讐が目的です。それ以外にはあまり興味がありませんから。ここで騒ぎを起こしたところで、不利益になるだけです。私は不必要なことはしないつもりです。」

 

「なるほど。案外良識のある人なんだな。」

 

「私が正しいというわけではありません、無益な争いは意味を成さないですから。例えて言うなら、私の復讐に他人を巻き込むのは好ましくありません。」

 

「まぁ、被害受ける側としても、それに対して報復心が生まれて悪循環ですからね。」

 

「個人的な復讐以外に、力を振るうときは、恐らく自己防衛ぐらいです。」

 

「まぁ、普通そんなもんだろう。それじゃ、俺はそろそろ行くかな。」

 

「そうですね。失礼します。」

 

 

店から出て男と別れた。

 

しばらくまた歩いていると。

見覚えのある人物を見つけた、

 

「あれ、あんたなんでここに?」

 

「博麗の巫女も人里に来たりするのですね」

 

「そりゃもちろん。でなきゃどうやって人の信頼集めれるのよ。」

 

「あなたなら妖怪退治すればいいのでは?」

 

「それをするにもまず私のことを信じてもらう必要があるじゃない。」

 

「それは確かにそう。」

 

「で、あんたはどうせ暇だから人里を散歩してたんでしょ」

 

「その通り。ここは平和でいいですね。」

 

「もちろんよ。そう何度も異変が起きても困るけど。」

 

「ところで隣のお二方は?」

 

「俺は悠と言います。」

 

「私は祐奈です。それでこの子は雪樹です。」

 

「よくお世話になってるんだ。」

 

「なるほど。巫女の知り合いですね。」

 

「数少ない私の神社の参拝者なのよ。」

 

「数少ない、ね」

 

「何よー。」

 

「別に何も」

 

「霊夢さん用事は済みました?」

 

「ええ、今から神社に帰るところよ」

 

「そうだったんですね、引き止めてすいませんでした」

 

「いいのよ。あんたらは」

 

「わざわざありがとう、」

 

「それじゃ私は帰るわ」

 

「はい、またよろしくお願いします。」

 

巫女も忙しいのだろうか。

日中一日のんびりしているイメージがあるけど…

 

「ところであなたは?」

 

「ああ。私は純狐と言います。」

 

「純狐さんって、月がどうとかって聞いたけど」

 

「まぁ、そんなところですね詳しくは知らなくても問題はない。」

 

「そうですか。」

 

気のせいか…?

何か感じるな。

女性の方からだな…

 

「祐奈さんだったかな。」

 

「はい?」

 

「なにか病気を患わっているかな?」

 

「んーと。少し前に、まだ完治はしていないみたいだけど」

 

「やっぱりそうですか。治してあげましょう。」

 

…純化できるか…?

 

「治すって?」

 

「少し大人しくしててください。」

 

…うまくいけばいいけれど…

 

「あれ…なんか。体が軽くなった?」

 

大丈夫そう。

 

「これでいいはずですが。」

 

「はい、ありがとうございます。」

 

「良かったな、祐奈」

 

「赤子の方も。少し体調が悪かったみたいだから。一緒に治してあげました。風邪か何かで具合が悪かったでしょう?」

 

「そうですね。さっきも息苦しそうにしてたので…助かります。」

 

「まぁ、あの巫女の知り合いならね。あの巫女には少し迷惑をかけたのもありますから」

 

「わざわざありがとう。」

 

「どういたしまして。」

 

ん…頭になにか…

雨か…?

 

「雨?洗濯物、入れなきゃ。」

 

「ああー。そうだな。すまない純狐さん。また今度。」

 

「ええ、」

 

さて…傘も持ってないけれど…どうしようかしら

 

どこか雨宿りできる場所は…

無意味に食事処に行くのも気が引けるし

近くの軒先でとりあえず…

 

「ひとまず雨は凌げるけれど…」

 

「あれ、見覚えのある人だな」

 

「あなたは、先程お会いした方」

 

「その様子だと、雨に降られた感じだな」

 

「生憎、傘は持ち合わせてなくて。」

 

「雨宿りできる場所を探していた。そんなところだな。」

 

「ええ。」

 

「俺の家の軒先は役に立つかい。」

 

「ここは、あなたの家だったのですね。」

 

「まぁ、あがって。」

 

広い家。その割には物が少なく感じるけれど…

 

「そんなに見渡してどうした?何か珍しいものでもあったか?」

 

「いえ、広い家で、裕福なのかと。」

 

「裕福ではないが。まぁ余裕はある程度さ、広いのには訳があるんだ、」

 

「訳とは?」

 

「もう随分昔の話になるが、聞きたいか?」

 

「まぁ、雨が止むにも時間がかかるでしょうし。」

 

「まぁ、な、」

 

「実は俺はもう何十年も生きてる半妖なんだ、この幻想郷ではよくいるだろう。」

 

「半妖。ですか、」

 

「ああ、ここには俺みたいな半妖以外に案外普通に妖怪だっている。博麗の巫女と妖怪の賢者によって作られたルールで、平和が保たれてる。」

 

「なるほど、だから巫女はあれほど強いのですね。」

 

「ああ、おかげで俺らは種族を超えて共存できる。そして俺は人間に恋をした、昔幼い頃に死に別れた同じ半妖の少女以来。久々だったかな。」

 

「死に別れた?」

 

「ああ。ちょっとした事件でな、立て籠もり犯に人質にされて、救われず犯人たちに殺されちまった。」

 

「それは…残念ですね…」

 

「当時、両思いでお互い仲良くやってたんだが、そうだな。今と同じ時期だったよ。」

 

「同じ時期?」

 

「ああ、丁度年が明けたばかりだ。」

 

「年明け早々、嫌な出来事ですね。」

 

「ああ、あの時は厄にでも取り憑かれたんじゃないかって思ってた。でも、まぁ、単に運が悪かったよ。」

 

「それで。それからどうして今は一人なのですか?」

 

「ああ、それ以来、何十年もずっと一人だったんだがな、ある異変の時、一人の女性に会って俺はその人と結ばれることになった。理由は単純、相手側の一目惚れだ。」

 

「その相手が人間だった訳ですね」

 

「そう。大人しくて清楚な感じだった。今思うと好みの女性だったよ。何度か会ううちに俺も彼女を受け入れようと思った。」

 

「しかし、半妖と人間では寿命が違いすぎるが…」

 

「彼女自身それは気にしていなかったようだ。単なる俺への愛。それが強かった。」

 

「純粋な愛ですね。」

 

「ああ。彼女の家で俺と暮らしていて。別で家を持つことになった。それが今いる此処だ。」

 

「ということは昔は二人で住んでいた。」

 

「いや、この家にはずっと一人で住んでる。」

 

「どういうことですか?」

 

「家の建設中の時、大きな地震があった、巫女の話だと、地底の仕業らしいんだが…人里は大惨事だった。建物の倒壊が激しくて巻き込まれる人もいた。」

 

「まさか…」

 

「ああ、彼女も俺も丁度食事処にいて倒壊に巻き込まれた。俺は足を怪我した程度で済んだが…」

 

「彼女さんは助からなかったと…」

 

「ああ、木の柱の破片が腹部を貫通してた。頭も大きく凹んでいて…見るに耐えなかった。当然夢だと願ったさ。でも今が、現実なんだ、」

 

「なんとも…」

 

「その後里の復旧のついでに、家は完成した、それ以来一人で住んでいるんだ。」

 

「なるほど…」

 

「広いのはそのせいさ。」

 

「一人で住むには余りますね。」

 

「まぁな。でも、広くて損はない。」

 

「確かに。」

 

「単に運が悪かった。そう思っている。だから今後も一人で生きるよ」

 

「そうですか、」

 

「今夜は雨は止みそうにないな。」

 

「そうですね。しばらくは世話になりそうです。」

 

「構わないよ。ゆっくりしていくといい、」

 

「助かります。ただ、変な真似はしないように。」

 

「ははは、今の話を聞いて、尚それを言うんだね。」

 

「まぁ…念には念を入れて。」

 

「そうか。大丈夫だよ、」

 

「それならいいのですが、」

 

「さて。俺は寝るよ。先に失礼する」

 

布団は…二つある。

まぁ、当たり前か。

 

「おやすみなさい、」

 

気がつけば雨と時計の音だけ…それでもかなり静かだけれど。とても落ち着く

布団で横になるなんて久々かもしれない。

 

「たまにはいいかもしれない。」

 

気がつくと。眠ってしまっていた。

 

 

目を覚ますとまだ雨の音は聞こえた。

どうやら雨は止んでいないみたいだ

 

「彼は…?」

 

机に置き手紙がある。

何かあったのだろうか。

 

 

起きるまで待とうと思ったのだが

仕事のこともあって間に合いそうもない。

軽い食事は用意しておいた。

もしよかったら頂いてくれ。

 

あと傘を用意してあるから

好きに使ってくれていい。

 

 

「不用心極まりないですね。」

 

食事…?

ああ。これか。

 

「握り飯か。ありがたくいただきます」

 

塩握りか、粗食ではあるが

なんだかこれも久々な気がする。

 

 

さて…傘を借りて。

次はどこに行こうか…と思ったんだが。

 

玄関から振り返ると。

家の中はとてもじゃないが

整理がされていない、

 

「1食1泊の恩もありますね。」

 

とりあえず見える程度の場所はきれいにしておこう。

 

「押し入れが…これでは布団がしまえないな…」

 

全く…

 

 

「ふぅ。これで。いいでしょう。」

 

結局、掃除洗濯水回り。

全てやってしまったな。

まぁ、たまにはいいでしょう。

昔の恩返しって言うのはこういう形だったかしら。

 

「外が晴れている、干してこうかしら。」

 

なんだか…

 

「ここまでやりきると逆に気分が良くなってくるわね。」

 

「あれ…純狐さん。まだいたんだな。」

 

「はい。少し気が変わったので。」

 

「んーと…?あれ。」

 

「どうかしましたか?」

 

「もしかして、掃除してくれていたのか?」

 

「ええ。家を出る前に何か恩返しと思いまして。」

 

「恩返しにしては…かなりやってるな。」

 

「ええ、まぁ。」

 

「ありがとう、しばらく手を付けれなかったからな、助かったよ」

 

「お忙しいのですね、」

 

「まぁ、少し前に、ちょっとした事件があってな。その後始末してて。」

 

「後始末?」

 

「自警団の一員って言えばわかるかな、収まったあとも、事件の黒幕とかその一部を探してたりするんだ。」

 

「なるほど。」

 

「今日は特に何もなかったから。昼には帰って丁度掃除しようと思ってたところだったんだがな。先を越されたと言うか。」

 

「余計なお世話、でしたか。」

 

「いーや、そんなことはない。」

 

「まぁ、泊めてもらった恩返しですから。」

 

「ああ、ありがとう」

 

「私はそろそろ失礼します。」

 

「わかった。今度会うときは食事でも奢るよ。」

 

「ご親切ありがとう。」

 

 

 

人里というのは、人の温もりに溢れているな。親切は親切で返す、

なかなかいいのかもしれない。

また今度、時間があれば寄るか、

 

そういえば

名前…聞いていなかったか…?

 

また今度会った時でいいか、

 




では、また会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

蜂と蜘蛛の好奇心

どうも、夢子です

特にネタもなく書き始めたのに
なんとなく上手くいった感じがしました。
とりあえずまぁ、これはこれでよし

ではごゆっくり


「今日は疲れた。」

 

男は用事を終えると、旧都に向かっていた。

 

「相変わらず旧都は騒がしいな…」

 

「おいお前さん、今から一杯どうだい?」

 

「すまないな牛頭、今日は疲れてるから帰って休むよ」

 

「そうかい、そりゃ。しゃーねぇか。」

 

男は誘いを断ると

真っ直ぐ帰路を進んだ。

 

 

「お帰り。今日は遅かったね、」

 

「ああ、途中であの姉にちょっと捕まってね」

 

「何もなかった?」

 

「まぁ、ちょっと冷やかされて終わったから大丈夫だ。」

 

「良かったね、ところでその袋は?」

 

「これか、見てみるか?。」

 

中は果物が沢山入っている

それもまだ新しいものばかり。

 

「ど、どうしたのこれ?」

 

「地上に行って買ってきた。」

 

「ええ!?でも地上って…もしかして、」

 

「ああ、お前が言ってただろ。」

 

「覚えてたんだ、私すっかり忘れてたのに」

 

「そりゃひどいな、俺の骨折り損だったとは」

 

「そんなことはないよ。だって私の為にわざわざ持ってきたくれたんでしょ?私は嬉しい。」

 

「まぁ、今用意するから待ってろな。」

 

「うん」

 

この二人は以前、なんともない出会いをした

 

 

男は地底に住む妖怪の類である。

名は域蜂湖蝶(いばち、こちょう)

そして家で待っていたのは

土蜘蛛、黒谷ヤマメ

 

地底で男が役所仕事から帰る途中にちょっとした出来事で出会った。

 

それ以来、男はヤマメと住むことになった

 

「急がないとな。また怒られちまう」

 

男は書類の詰まった鞄を肩からかけ、

旧都の役所を出た

 

走って向かうのは地霊殿。

古明地さとりに頼まれて、旧都の治安状態についての書類を渡すことになった。

 

書類を持っていくのは別の妖怪の担当だったのだが、その妖怪が古明地さとりにひどくやられた(精神的な意味で)ので行きたくないと駄々をこねたので。男が行くことになった

 

 

 

「あら、遅かったわね。」

 

ああ、前の妖怪がボイコット起こして俺が急遽呼び出されたんだ

 

「そう、それで書類は?」

 

これでいいだろ。

一応中は確認してある。

 

「確かに受け取ったわ。ありがとう」

 

あまり役所の妖怪を虐めてやるなよ?

 

「虐める?私は何もしてないのだけど。」

 

担当の妖怪がボイコットを起こしたのは、あんたのせいだって。

 

「うーん…私は特に何もしてないわ。」

 

そうか、ならいい。

 

「ところで貴方。」

 

ん?なんだ?

 

「なんで口を開かないわけ?」

 

なんでだろうな。

 

「教えなさいよ、何か理由があるんでしょ」

 

あんたは心が読めるんだから

俺がわざわざ口で話さなくても何が言いたいかくらいわかるだろ?

 

「それはそうだけど…でも、話をする上で何も喋らないのは失礼よ。」

 

そうかもしれないな

でもな、あんたは心を読めるんだ。

だったら読んで話が早く済んだ方が

あんたにとっても都合がいいだろ?

 

「間違いじゃないけど…」

 

それに、口で話すと心が読まれてしまう。

なら口で話さず考えを読んでもらったほうが、その先が読まれなくて助かるからな。

 

「どういうこと?」

 

あんたは心が読める。

つまり、相手が口で話しているから、心の奥底のことがわかる訳だろ?

俺の場合は考えを心に表して口は閉じてる。

つまり心の奥が出てこないわけだ。

その方が心を読まれなくて済む。

 

「なるほど…考えてるわね」

 

話しているうちに無駄なこと考えて

それがお前にとって揚げ足を取るネタになるわけだろ。簡単なトリックみたいな感じだ

 

「そういうことなのね。どうりで違和感がある訳だわ。」

 

そもそも口で話をするのは苦手なんでね。

 

「コミュニケーションも欠片もないわね」

 

うるせえ言ってろ

 

「それじゃもらった書類でも眺めてくるかしら」

 

眺めるだけじゃなくてしっかりと策を出してほしいね。

 

「余計なお世話よ」

 

はいはい、それじゃ、帰るから

 

「ご苦労様」

 

 

 

男は地霊殿をあとにして

旧都に向かった

 

「相変わらず。睨みが強いな…」

 

男は役所に戻って鞄を返した。

 

「睨みが強いって誰のことだい?」

 

唐突に話しかけてきたのは鬼。

星熊勇儀だった。

 

「地霊殿のお姉様の方だよ。いつも余計な話を持ち掛けてくる。面倒なんだよな。」

 

「まぁ、そう悪く言うな、元々心が読めるというだけで嫌われてきたからな、少し捻くれている部分もあるだろうさ」

 

「まぁ、それは仕方ないが」

 

「あれでも旧都の為に頑張ってるんだ、館のこともあるだろうし、まぁ悪いやつではないよ」

 

「まぁ、お互い様ってとこだな。」

 

「あんたもお疲れ様。」

 

「ああ、それじゃ、俺は帰る」

 

「おう、また何かあれば呼ばれるだろうけど、そんときはよろしく」

 

「ああ。」

 

役所を出て旧都の離れの場所に家がある。

 

その帰路途中、少し寄り道をすると…

 

「ん…?」

 

男の足が何かに摑まれている。

 

「これは…蜘蛛の糸か?にしても太いな…まぁ…あいつか」

 

大体の予想はついていた

 

「ひっかかったね」

 

声を掛けてきたのは土蜘蛛の妖怪

黒谷ヤマメだった。

 

「ヤマメだったか?」

 

「よく知ってるね」

 

「まぁ、一応旧都で少し話を聞いた程度だけど」

 

「あなたは?」

 

「域蜂湖蝶、」

 

「い、いばち?」

 

「わかりにくかったら別に覚えなくていいぞ。」

 

「が、頑張って覚えとくよ」

 

「それで、俺は帰りたいんだが。」

 

「んー。蜘蛛の糸にひっかかったってことは。私の餌食なんだけど。」

 

「まぁ。そうだよな。」

 

「どうしようかな。」

 

「何かしようにも、俺は半端な妖怪だから、抵抗するのも無駄そうだけど」

 

「半端な?ああ、あの旧都の役所の…」

 

「そうだ。」

 

「ふーん」

 

「まぁ。好きにするといい」

 

「役所の…か」

 

「どうかしたか?」

 

「いや、何でもない」

 

「そう。」

 

「あんたさ、自由になりたい?」

 

「この状態では、選択権はないだろ」

 

「そっか。ならさ、一つお願い聞いてもらってもいい?」

 

「どんなことだ?」

 

「地上の果物の料理が食べたいんだ。」

 

「つまり、地上に行って買って来て作れってことだな」

 

「そう、私が満足したら自由にしてあげる。」

 

「それはいいんだが、俺が逃げたらどうするんだ?」

 

「んー、それじゃあ。」

 

ヤマメが男の腕に触れると

男の腕には蜘蛛の入れ墨のような絵柄が出来上がっていた。

 

「これは?」

 

「簡単に言えば毒の呪いみたいなもの。私が逃げたと思ったらその呪いを強くしてあなたを苦しめるの、」

 

「なるほど。毒か。」

 

「それじゃお願い。」

 

「ああ、それはいいんだが、お前の家は何処なんだ?」

 

「私の家?旧都にあるけど。」

 

「一応教えてくれるか、そうした方があとが楽だから」

 

「う、うん、ついてきて」

 

二人は旧都に逆戻りして。

ヤマメの家に向かう。

 

「いつもここにいるんだ。」

 

「普通の家みたいだな」

 

「まぁ、ね」

 

「一つ提案があるんだが」

 

「なに?」

 

「ヤマメが問題ないなら、ここに住んでもいいか?」

 

「え?」

 

男の突拍子もない発言に

ヤマメは固まってしまっていた。

 

「ヤマメの好みとか、そういうの知っておいたほうがいいかなと思うんだ、」

 

「ああ、そういうこと…」

 

「それに、俺自体料理が得意というわけでもないから。少しずつ練習もしていきたいし。」

 

「まぁ、いいよ」

 

「ありがとう。これから世話になるよ。」

 

「う、うん」

 

男はすぐに荷支度をして次の日にはヤマメと同じ家で暮らし始めた、

 

「ほんとに住むんだね」

 

「嫌だったか?」

 

「うーん…まぁ、いきなりはびっくりしたかな」

 

「そうか、無理言ってすまないが、よろしく頼むよ」

 

「うん」

 

 

それ以来、二人は同じ家で暮らしている。

 

「まさか、本当に買ってくるなんて。」

 

ヤマメはいつも男の行動に驚かされていた。

 

「でも、やっぱり、少し楽しみかな」

 

少し待っていると男が部屋に戻ってきた。

 

「出来た。」

 

男が持ってきたのは果物を使うデザートばかりだったが、ヤマメはそれを見るととても感動していた。

 

「これが…デザート。」

 

「見たことなかったのか?」

 

「うーん。本で見たくらいだから、デザートとかで食べたことあるのはプリンとかそういうのばかりで。」

 

「まぁ、食べてくれ。」

 

男が用意したのは。

果肉入りリンゴのゼリー

苺のショートケーキ

果物盛り合わせのクレープ

など。

 

「沢山用意してもらっても一度には食べきれないよ。」

 

「もちろん俺も食べるつもりで作った」

 

「そっか、よかった。」

 

ヤマメは、悦に入りながら、そして、男は悦に浸りながらデザートを堪能していた。

 

 

「美味しかった~」

 

「美味く出来てよかったよ」

 

「まさか本当に作ってくれるなんて思わなかった。」

 

「作らなかったら俺はずっと不自由じゃないか」

 

「まぁ、そうだね。」

 

「流石にな、俺にも俺の生活があるから。ずっとここにいるわけにもいかない。」

 

「そっか、そうだったね。」

 

ヤマメはなんとなく寂しい感じがした。

 

「さてと、とりあえずこの呪いを解いてくれるか」

 

「うん。わかった。」

 

ヤマメが男の腕に触れると、

入れ墨の様な模様は消えた。

 

「消えたか。」

 

「うん。」

 

「実際のところ。俺には毒は効かないんだけどな。消してもらったほうがありがたい」

 

「毒が効かない?」

 

「実は俺は神経毒を主に使う毒蜂の、その半妖ってとこだ。」

 

「蜂の妖怪…」

 

「多分毒とかは俺にはあまり効かない。」

 

「そっか…そうなんだ…」

 

「そう気を落とすな。」

 

「…効かないってわかってて、なんで逃げなかったの?」

 

「逃げる理由はなかったからな、それにあの場合お前の餌食の状態だったから。大人しく従ってた方がいいと俺は判断した。」

 

「そっか。」

 

「さっきの蜘蛛模様もあまり見た目は良くないしな。すぐ見える位置にあるからちょっとな。」

 

「わざと、私の我儘に付き合ったってこと?」

 

「わざと…?んー…そうなるのかもしれない。」

 

「そうだったんだ…」

 

ヤマメは男の言動ににショックを感じていた。

 

毒が効かないという事実を男が隠していたこと、男への想いがあったのか、それが理由で悲しくなって俯いていた

 

とはいえ、話を持ち掛けたのはヤマメ本人であり、それも少し悔しく感じていた。

 

「気分悪くさせたかもしれない、すまない」

 

「ううん…私があなたに話を出したんだから、あなたは悪くないよ。」

 

「泣きそうになってるけど、大丈夫か?」

 

「泣いてないよ。」

 

悔しくて、悲しい。

ヤマメはただそう思っていた。

 

「ヤマメ?やっぱ泣いてるじゃないか」

 

ヤマメは気がつくと涙を流していた。

それを隠そうと手で顔を覆った。

 

「なんで…」

 

「ん…?」

 

「なんで先に言ってくれなかったの!」

 

「す、すまない。」

 

「あなたが効かないって知ってたらこんなことする必要なかった!なんであなたは私を利用したの!」

 

「ヤマメ、頼む落ち着いてくれ。」

 

「なんで…わざと…」

 

どうしても悔しかった。そして、男への想いがその悔しさを強くしていた。

 

「信じられないよ…こんなこと…」

 

「ヤマメ、」

 

ヤマメは男に向かって、毒を振りまいた、普段使うことの無いかなり強力な神経毒を。

 

しかし、男は何事もなく平然としている。

 

「やっぱり…やっぱり効かないんだ…」

 

「うん…まぁ。」

 

ヤマメはただ落ち込んでしまった。

悔しさがどこかに行ったような感じがして。

少し虚ろになっていた。

 

「ヤマメ、大丈夫か。」

 

「一つ聞いていい?」

 

「なんだ?」

 

「なんで、私と一緒に住むことにしたの、あのとき言ったのがそのままの理由じゃないんでしょ…」

 

「んー。」

 

「もしかして本当にそのままだったの?」

 

「いや、なんて言えばいいかな。」

 

男は少し考えていた

ヤマメは黙って答えを待っていた。

 

「一目惚れって言うのが近いのかな。」

 

「一目…惚れ?」

 

「うん。俺が聞いてたヤマメのイメージは確かに人気者だって話なんだが。それが強いんじゃないかなって。」

 

「どういうこと?」

 

「着飾ってて、あざとくて、そういうイメージがあったんだが」

 

「なにそれ。誰から聞いたの、」

 

「まぁ、酒場いたやつから」

 

「ふーん。」

 

「でも、実際のヤマメはそんなことはなくて、普通の妖怪なんだなって。」

 

「それって、褒めているの?」

 

「なんとも言えないかな。」

 

「あっ、そう。」

 

「でも、会ったその時は少し気が惹かれた、それは確かだし。少しヤマメのことを知りたいと思った。」

 

「そうなんだ。」

 

「それに、一緒に住むうちにヤマメのこと好きになっていって、それで喜んでもらいたくて、さっきみたいにデザートも作った。」

 

「模様を消すためじゃなかったの?」

 

「まぁ、それもあるけど、でも俺がヤマメのことが好きでも、ヤマメがそうじゃないかもしれないだろ。ヤマメが言った本来の目的っていうがそれだったしな」

 

「別に、私は…」

 

「最初、乗り気じゃなかったように見えたんだ。俺はここの生活が楽しかったけど、ヤマメがそうじゃないなら、早く済ませるべきだと思っていた。でも、ヤマメと、もう少し居たいという我儘な気持ちもあってなかなか切り出すことができなくてな。」

 

「私も、あなたと居て楽しかった。デザートも美味しくて、毎日のあなたの料理も美味しかった。だから、嫌だなんて一度も思ってない。最初は、少し驚いただけだよ。」

 

「そうか、よかった、ありがとう」

 

「これでさよならかな。」

 

「うん、まぁ。」

 

「あの。こんなことの後なんだけどさ、もう一つお願いを聞いてほしいの」

 

「今度はどんなお願いだ?」

 

「このまま、ここにいてほしい、私と一緒にいてほしい。」

 

「いいのか?」

 

「はっきりと考えたことはなかったけど、私もあなたと居て楽しかったし、貴方が仕事に行って暫く帰ってこなかった時はなんだか寂しく感じるときがあった、私もあなたの事が好きだって思い始めてたのかもしれない。」

 

「そうか…」

 

「だから、まだ居てほしいって思うときが時々あった。」

 

「なら、俺はここにいる。ヤマメと一緒に居ることにする。」

 

「ありがとう。」

 

「これからもよろしくな。」

 

「うん、またデザート作ってね」

 

「ああ、美味しかったからな。」

 

 

二人はその後も旧都で暮らしていた。

時々男は地上に出向いて果物や野菜を買い。

ヤマメと二人でデザートを堪能している。

 




暫く一人称が続いていたような気がしてたので。
たまには三人称も良いかと。

ではまた会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

普通の魔法使い。

どうも悠樹です。

今回はちょっとしたお話。

かなり短いですが。

どうぞごゆっくり


「私は霧雨魔理沙~普通の魔法使い~」

 

魔理沙はそう呟いた

 

それを聞いていた天狗、射命丸文はそんな魔理沙を不審に思っていた。

 

「魔理沙さんって、あんなに女の子みたいなことしましたっけ…?」

 

少なからず誰でもするとは思うが

文にとってのイメージではそういうふうではないのが確かだった。

 

「何か怪しい感じがしますね…」

 

文は突然そう思うと、魔理沙について思い返していた。

 

「確か…最近顔を見てなかったような…」

 

いろんなところを飛び回り新聞の記事になるようなネタを探す文にとって、ほぼ毎日いろんな人に会う

 

そして、幻想郷で有名な人物である魔理沙であれば、見かけたら話はかける、見つかったら弾幕ごっこと、よく顔を合わせる。

それも2日に一回はあるだろう。

 

ただ、文は数日の間、魔理沙と会っていなかった。

 

「なんだか怪しいですね~。少し尾行。しちゃいますか」

 

そういうと、距離を開けながら後ろをついていく。

 

 

「おーい、霊夢ー。」

 

「何よ魔理沙、また来たの?」

 

「またとは失礼な~、最近合ってなかったじゃん?だから久々だなーと思ってさ。」

 

「そう?別に私はそうは思わないわ。」

 

「ひどいなー。そんな冷たくしなくてもいいじゃない。」

 

「今日も特に何もないわよ、こーりんのところにでも言ってまたガラクタでも探してみたら?」

 

「こーりんか…そうだね、行ってくる!」

 

そう言うと魔理沙は神社を後にした。

 

 

「魔理沙さん…あんな喋り方だったっけ?」

 

文の知っている魔理沙はもう少し男口調が混ざっているだろうというが。今の魔理沙からはそういったイメージはなかっただろう。

 

「それに…あんな簡単に霊夢さんから離れない気が…まぁ、それは気のせいですね」

 

文は尾行を続けた。

 

 

魔法の森の入り口くらいにある店、香霖堂

様々な道具やガラクタも売っている。

ただし、品揃えはあまりよくない。

 

「こーりんー、来たよー。」

 

「魔理沙じゃないか、今日は何を持っていくんだい?」

 

「んー、」

 

魔理沙は暫く店内を見渡していた

 

「今日はいいや、魔法の研究に使えるものはなさそうだし」

 

「そうかい。」

 

魔理沙は店を出て、またどこかに行ってしまった。

 

「ところで、そんなところで何をしているんだい」

 

店主である霖之助は文が隠れていることに気がついていたようだった。

 

「あやや…バレてましたか、」

 

「隠れてたってネタなんか有りはしないだろうに。」

 

「それが今日の魔理沙さんがなんか妙に感じましてね、ちょっと尾行してたところなんですよ。」

 

「そうかい、確かに口調はいつもと違った気がするかな、ほら早く行かないと見失うよ」

 

「そうでした!、それでは!」

 

飛んでいく魔理沙を低空から尾行していく。

 

魔理沙が次に向かったのは紅魔館、の大図書館。つまり本泥棒、のはずなのだが

 

「ほんと、大きな扉だなぁ。」

 

普段窓を割って入る魔理沙が

大扉を開けて入っていった。

 

「ええ!ちょっ!どういう?」

 

文は魔理沙のあまりの行動に驚いた。

 

窓から覗いてみれば。

普段通り立ち読みしているが、

それを持っていく気配はなく。

ただ単にコミック物を読んでしまう、

読んではしまうを、繰り返していた。

 

「魔理沙さん?コミックなんて興味あったんですね。」

 

物珍しそうに小悪魔が話しかける、

 

「まぁ、ちょっとかなー。」

 

当たり前のように話をする。

かと思えば、何も持っていかず扉から出ていきまたどこかに向かっている。

 

「これ…絶対おかしいですよ、」

 

少なからず文の知っている魔理沙の行動ではないのだろう。

 

魔法の森に向かって飛んでいる。

おそらく人形遣いの家だろう。

 

「おーい、アリスー!」

 

返事がない、

文は遠くから窓の中を覗いているが

アリスらしき人物は見つからなかった

おそらく留守にしているのだろう

 

「うーん、いないのか、会ってみたかったのに。」

 

 

「会ってみたかった…?」

 

魔理沙の奇妙な発言を聞き逃さなかった。

魔理沙とアリスはかなりの仲良しであり。ほぼ毎日合うくらいだというのに、

 

会ってみたいなどと言うはずがない

その発言で文は確信した。

 

「魔理沙さんの姿をした誰か、ですね、」

 

「ん?誰かいる?」

 

独り言が聞こえてしまって気づかれそうになり急いで隠れる。

 

「んー。気のせいか。」

 

魔理沙はまた飛び上がり

自分の店、つまり家まで帰っていった。

 

 

文も魔理沙の家に向い後を追う。

 

魔理沙は家の前につくと。

魔法の様な何かを使い姿を変えた。

 

「やはり…偽物でしたか」

 

見た目はごく一般的な女性

多分人間か魔法使いかだろう。

 

女性は家の中に入っていく

 

窓から中を除くと、魔理沙の姿はなかった、

しかし、家の中はかなり整頓されており、以前のような散らかり具合は見受けられない

 

「うーん…魔理沙さん見当たりませんね…」

 

別の窓から除くと、そこには魔理沙がいた

しかし、鎖で縛られており、必死に藻掻いていた。

 

「もー。うるさいなー。」

 

「お前、こんなことして覚悟しておけよ!」

 

「はいはい、今あなたは動けないんだから、大人しくしてて」

 

何があって魔理沙は捕まったのか、

それを調べる必要がある。

 

「んー、次はどこ行こうかなぁ」

 

「次って…まさか何かやってないだろうな!」

 

「まだ何もやってないよ、挨拶して回ってただけだって。」

 

まだ、つまり何かをするつもりはある。

 

「この八卦炉も見てみたいし」

 

「お前、それを使いこなせるのは私だけだぞ。」

 

「ハイハイ、嘘は聞きたくないから。黙ってて。」

 

「嘘じゃない、お前が使ったところで大した威力は出ない。そういう改良をしてあるから私以外は使っても意味がないぞ」

 

「やってみようか?」

「なっ…」

 

女性が八卦炉を魔理沙に向ける。

 

「ちょ…」

 

文も少し慌てたが…

 

「やっぱやーめた、あなたにはまだ聞きたいことがあるし」

 

女性はまた魔理沙の姿になり外に出ていった。

 

とりあえず一安心といったところだ。

 

ニセ魔理沙が見えなくなったのを確認して家の中に入る。

 

「お前は!文!」

 

「魔理沙さん、大丈夫ですか?」

 

「この状況を見て大丈夫なわけ無いだろ。早くこの鎖外してくれよ」

 

「はいはい、ちょっとお待ちくださいね。」

 

その時、突然扉が開いた。

 

「あっ、やばっ…」

 

文が急いで外そうとする。

 

「何がやばいのよ。別に急ぐ必要はないわ」

 

入って来たのは霊夢だった。

 

「霊夢!来てくれると思ってたぜ!」

 

「まぁ、あんたがめんどくさいことに巻き込まれてるんじゃないかって、ちょっと気になってたのよ」

 

「なんでそう思ったんですか?」

 

「暫く見てないし、口調も女っぽくめ気持ち悪い、おまけにいつもみたいな貪欲さがない。それも、文が後ろから心配そうに尾行してたから、なんかあったんじゃないかってね。」

 

「なるほど…お前あいつを尾行してたのか?」

 

「ええ、警戒自体は緩かったので案外危なげなく尾行できました。」

 

「あんたなんで捕まってたのよ。」

 

「いやぁ…それがな…」

 

数日前魔法の研究で失敗をしてしまい

妙な煙を吸って気を失った

そして、気がついたら鎖で繋がれており、目の前にはニセ魔理沙がいた。

 

「相変わらずうまく行かないのね」

 

「あはは、まぁ進展はあったから、とりあえず良かったかな」

 

「ばか、何も良くないわよ、文も私も気づいてなかったらあんたどうやってたかわからないのよ、」

 

「あ、あぁ、すまなかったなぁ、助かったよ」

 

「とりあえずニセ魔理沙探すわよ」

 

「その必要はなさそうだ、ほら、外にもう居るからな。」

 

三人は外に出ると魔理沙の格好をした女性がいた、

 

「なっ。」

 

「あんたね、魔理沙に化けてたのは。」

 

「化けてなんかない!そいつが偽物だ!」

 

「あのね、あんた似てないのよ」

 

「なっ、」

 

「口調も性格も行動も全くよ」

 

「それならこれはどうだ!」

 

女性は霊夢達に向けて八卦炉を向ける

 

「マスタースパーク!」

 

「無駄よあなた程度では敵うわけないわ」

 

八卦炉から光が発射されるが。

霊夢は結界を張り全て防いだ

 

「なんだと…」

 

霊夢は瞬間移動をして、女性から八卦炉を奪い、また瞬間移動で元の位置に戻り、魔理沙に八卦炉を返した

 

「おー、助かるぜ。」

 

「さてと。」

 

弾幕が全く通用せずショックで動きが止まっていた女性。

それでも容赦なく…

霊夢は女性の周りに結界を張った

 

「なっ!これは?」

 

「まぁ、簡単な結界よ、あんたは今その中から出られない。当然攻撃もほとんど無意味、私の結界だから、当たり前ね」

 

「な、ならなんで魔理沙は八卦炉を構えて…」

 

「言ったでしょ、ほとんだだって。」

 

「私の場合、本気を出せば結界くらいだったら簡単に割れるぜ、流石に霊夢の大結界やそういう類にはかき消されるけど。」

 

「って事は…まさか…」

 

「そのまさかだぜ」

 

魔理沙は八卦炉を構えて…

 

「魔砲【ファイナルマスタースパーク】!」

 

八卦炉から放たれた光は結界を簡単に破り、女性を飲み込んでいった。

 

光が消えると女性はそこにはいなかった

 

「いやぁ、久々に飛ばしたぜ!」

 

「相変わらずバカみたいな火力してるわね」

 

「まぁな!弾幕はパワーだぜ!」

 

「さて、一段落ついたことだし魔理沙の奢りでお酒でも飲ませてもらおうかしら」

 

「なっ!まぁ、今回は仕方ないな」

 

「私もご一緒しますね?」

 

「文も来るのか…」

 

「そうね、文がいなかったらもしかしたらあんたそのままだったかもね」

 

「まぁ、いいぜ」

 

三人は魔理沙の家に入ると翌日の朝までお酒を飲み更かしたという。

 




ではまた会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

人と出会いと別れ

どうもK.です。

また、一月空いてしまった、まぁいいや。


ではごゆっくり


「なぁ…そろそろ帰らないか?」

 

人里でお祭りをやっている。

物部布都、蘇我屠自古と、愁の三人はそのお祭りに参加したらどうだと、神子の提案され、二人の意見を聞かず布都が無理矢理飛び出した。

 

「だめに決まっておるだろう?お祭りを楽しむのだ!」

 

「お前だけ楽しんでいればいいじゃないか」

 

「そう言うでない、ほらお主も楽しまぬか?」

 

「わ、私はいい!早く帰ってゆっくりさせてくれ!」

 

「まぁ、屠自古さん。布都さんはもうその気なんですから仕方ないです、」

 

「うう…なんでこう毎回付き合わなきゃいけないんだ…」

 

「まぁ、美味しい料理もありますし、僕は少しいただきますけど」

 

「私は亡霊だ、食事などしなくてもなんともない、」

 

「まぁねぇ。」

 

相変わらず、布都に振り回されている、

 

「ほら、屠自古さんも食べましょう」

 

「むー…」

 

愁から差し出された串を渋々受け取り

少しずつ食べる

 

「まぁ。味は悪くないな。」

 

「食べるだけでは足りないだろう!ほら飲むぞ飲むぞ!」

 

布都は二人の分まで酒瓶を持ってくる。

 

「あのな、私は飲まないぞ」

 

「僕も外で飲むのは控えてるのでお断りしておきます」

 

「うぬー、詰まらぬなぁ?まぁよい!我は飲むぞ!」

 

瓶の蓋を開け、ラッパ飲みでお酒を飲む布都。それを見て二人は呆れるしかなかった

 

「屠自古さんがいやがるのがなんとなくわかった気がします」

 

「こうなると歯止めが効かないんだよ…神子様にお叱りをしてもらうしかないんだ…」

 

顔をあわせて溜息を吐く、

 

数分後には布都は酔い潰れて床に大の字で転がっている。

 

「小腹も満たせましたし。帰りましょうか。」

 

「そうだな。こいつ頼むよ」

 

「ええ、毎度のことですね。」

 

愁は布都を背負って、二人は霊廟に帰る。

 

「おや、早かったですね。」

 

「まぁ、布都が早くに潰れてしまってね」

 

「何本飲んだ?」

 

「確か、二本?」

 

「いや、三本だ、私達にって持ってきたのを両方共飲んでるから。」

 

「あ、そうか。」

 

「全く、飽きないな」

 

「なんでそんなに飲みたがるんだろうな」

 

「さぁ、私はわからん」

 

「気分が上がって気持ちがいいからだろう、布都はそれまで考えていた嫌な出来事を、一時的に忘れることができる、と言っていた」

 

「なるほどな。気分的なことか。」

 

「ふーん。」

 

「まぁ、飲みすぎも良くない、適度がいいのだか…布都はこの調子で。」

 

「まぁ、私よりも特訓をしているし、いいんじゃないか、たまには。」

 

「屠自古が布都に優しくするなんて珍しい。」

 

「たまには、」

 

「たまには、ね」

 

「私は部屋に戻る、ゆっくりしたいんだ」

 

「ええ、ご苦労様。」

 

 

「で、なんでお前はまだいるんだ。」

 

「んー。一つお願いがあって」

 

「私にか?」

 

「ああ、今からまた祭り行かないか?」

 

「は…え?」

 

「祭りってまともに楽しんだことなくてな、一人で行くのも何だから、是非と思って」

 

「さっきの話聞いてなかったのか?私はゆっくりしたいんだ。」

 

「まぁ、そうだよなぁ。」

 

不服そうにする屠自古。

ゆっくりしたいと言ったが。

残念そうに去ろうとする愁を見て

気が変わった。

 

「おい、ちょっと待て」

 

「ん?」

 

「仕方ないから行くよ。ただ、そんな長居するつもりはないぞ」

 

「ああ、ありがとう。」

 

霊廟を出るときに神子と会った、

 

「おや、二人でどちらに?」

 

「祭り、もう少し楽しもうって思って」

 

「そう言うことです。」

 

「行ってらっしゃい」

 

人里に着くと、人の気の多さのせいか屠自古は少し気が落ち着かなかった。

 

「おい愁、頼むからはぐれるなよ。」

 

「あ?ああ、そうだな、」

 

屋台に向かって愁はホットスナックを買うが…屠自古はただ雰囲気を眺めているだけだった。

 

「あっ、あれは。」

 

愁が見つけたのは射的だった。

 

「おー。射的だ。」

 

「こういうのやるのか?」

 

「いや、初めてやるんだ」

 

愁は銭を払うと

的用の缶や木の板に上手く当てていった。

 

「大したウデだな。」

 

「結構当たるもんなんだな」

 

「そうか?難しそうだが」

 

その流れを見ていた店番が二人に話しかける。

 

「え?私がやるのか?金は持ってないぞ」

 

「タダで一回いいってさ」

 

「な、なら…」

 

屠自古は射的銃を構えて狙う

一回当たりはしたが、他は的外れていく。

 

「やっぱり難しいな、」

 

「こういうもんなんだな」

 

屠自古は銃を返して周りを見渡すとあるものを見つけた。

 

「あれは?」

 

「金魚すくいか。やってみようか。」

 

二人は同時に始めた。

 

「あ、破れた。」

 

愁は早くに終わってしまった

その隣でまだ屠自古は続いている

 

二人が終わってお互いどれだけ取れたか確認した。

 

「僕は二匹だった。」

 

「二匹?私は七は取れたぞ?」

 

「すごいな、どうやったんだ」

「んー、わからないがとにかく取れた」

 

二人は金魚を戻す

 

「案外楽しいな」

 

「人里の祭りは初めてなのか?」

 

「人里には頻繁に出入りしててな、神子さんとも知り合いなんだ、元々地底の旧都の住みだったんだが、最近神子さんに提案されて霊廟に来た、だからこういうのは初めてなんだよ。」

 

「ふーん。」

 

「そうだ、せっかくだから最後に行きたいところがあるんだ」

 

「行きたいところ?」

 

「祭りの締めと言ったら神社だって昔聞いたことがあってさ。」

 

「神社?」

 

「ああ、ついてきてくれるか?」

 

「まぁ、どうせだから行くよ」

 

人里を離れて長い階段を登る

 

「わざわざ今来なくてもいつでも来れるだろう。」

 

「まぁ、いいじゃないか」

 

二人が訪れたのは博麗神社だった。

 

「あら、珍しい客が来たわね」

 

境内につくと霊夢が箒を持って立っていた。

 

「久しぶりだな、博麗の巫女。」

 

「あんた、亡霊のクセに男がいるのね、関心するわ」

 

「それは皮肉のつもりか?」

 

「さあ、隣のあんたは?」

 

「愁です、」

 

「ああ、地底にいた人間ね。」

 

「神社なんて、久しぶりだな。」

 

「ところで何の用なの?参拝客なら歓迎するけど。」

 

「ああ、こいつが神社に行きたいっていうから、祭りのついでについてきてやったんだ。」

 

「そう、それにしてはあんたもやけに満足そうね」

 

「まぁ、楽しかったしな」

 

「お賽銭入れておいたよ」

 

「あら、ありがとう。」

 

「いつの間に」

 

「さて、それじゃ戻ろうか」

 

「だな、」

 

「わざわざお疲れ様」

 

霊夢に軽く挨拶をして神社を後にした。

 

「なぁ、屠自古さんは疲れてないか?」

 

「何を言ってるんだ?」

 

「ああ、亡霊だし、歩いているわけでもないから、疲れないか」

 

「肉体的な疲れとしたら雷使いすぎたときくらいだ、あとは基本的には気持ち的な疲れとかばかりだ、主に布都のせいで」

 

「お疲れ様だな、」

 

「全くだ、でもまぁ、たまには…」

 

屠自古は愁の背中にしがみついた

 

「おう?」

 

「重たいか?」

 

「いや、なんというか。空気で膨らんだカバンを背負ってる感じ」

 

「つまり軽いということか」

 

「うん。」

 

「お前こそ疲れてないか」

 

「まぁ、少しな」

 

「帰ってゆっくりするか」

「そうだな、」

 

 

「…なぁ、人間って、こんなにも暖かいんだな。」

 

「ん?」

 

「普段から神子様や布都としか話をしないせいか、冷たくするか、呆れているか、場に合わせるようなことしかしてなかったんだ。」

 

「そうか」

 

「だから、こんなふうに優しくされたり、親しげに誰かと触れ合うのは久しぶりか、もしかしたら初めてかもしれないんだ」

 

「なるほどな、」

 

「…ありがとう」

 

「こちらこそ、わざわざ今日はありがとう」

 

しばらくそのままだったが

屠自古はしばらくすると寝入ってしまった

 

「おや、お戻りですか、」

 

霊廟に着くと神子が待っていた

 

「そんな長く出てた覚えはないけど、遅かったか?」

 

「まぁ、そんな長くはないが。それに屠自古?」

 

「寝てるよ」

 

「ほう…珍しい。」

 

「それじゃ、」

 

愁は屠自古の部屋に向かう

 

「ゆっくり休め」

 

布団に屠自古を寝かせようとすると起きてしまった

 

「あぁ…着いてたのか…」

 

「起きたか、とっくに着いてるよ」

 

「すまなかった…寝るつもりはなかったんだが…」

 

「まだ眠たいだろ。そのまま寝るといい」

 

「そうするよ。」

 

愁は、屠自古が布団に入り込み、寝入ったのを確認すると自分の部屋に戻っていった。

 

「祭り、か」

 

部屋の隅においてある酒瓶を持ち出して

蓋を開けようとしたとき。

部屋の扉が開いた。

 

「ん?屠自古さん?」

 

「なんか、目が覚めたんだ。」

 

「そうか、にしてもなんで俺の部屋に?」

 

「…まぁ、ちょっとな、」

 

愁の隣に落ち着き。

持ってきていた本を読んでいる

 

「どうした?」

 

「ん…?うん。」

 

「まぁ、落ち着くなら、いいか、」

 

愁はお酒を少しずつ飲む。

 

「酒、飲むんだな」

 

「ああ、かなり弱いけどな」

 

「そうか、」

 

「少し飲むか?」

 

「いや、私はいい。」

 

その後は、二人はただ話さず

酒を飲み、本を読むだけだった。

 

屠自古が本の最後のページを読み終えた時、

愁もお酒を飲むのを止めて、瓶に蓋をした

 

「酔が回ってきたか、少し眠たくなってきたな。少し休むよ」

 

「そうか。」

 

愁は布団を広げて横になる

屠自古は部屋の出口の手前で少し待って愁に話しかけた。

 

「もし起きてたら、私からも一つお願いを聞いてほしい。」

 

「お願いって?」

 

「隣で寝ていいか?」

 

「いいよ。」

 

屠自古は愁の隣に行き横になる

 

「屠自古さんはこんなお願いでよかったのか?」

 

「特に思いつかなかった」

 

「お願いされなくてもいつでも」

 

「うん…?」

 

「疲れたらいつでも相手するよ。」

 

「いいのか…?」

 

「実は屠自古のことが好きなんだ」

 

「お前…そんなことを…」

 

「だめだったか?」

 

「いや…私なんかでいいのか…」

 

「うん。いい」

 

「すまない…なんというか」

 

「まぁ。屠自古が嫌なら諦めるけど」

 

「嫌ではない、むしろ、これだけ優しくされると嬉しい、嬉しいというべきなのか、なんて言えばいいんだろう…」

 

「んー。」

 

「なんて言えばいいかな、好き、でいいんだと思うけど、それがなんとなくうまく表現できなくて」

 

「そうか、ありがとう」

 

「他の誰かなんて気にした事なかったのに…何だか不思議な感じだ」

 

「俺は人間には親しい相手が居なくてな、地底の妖怪とか霊廟の屠自古達、そういう関係しかない、でも好きだと思ったのは初めてだ」

 

「そうだったのか…」

 

「会えて良かった。俺も今、すごく嬉しいんだ。」

 

「うん、私もだ」

 

二人は体を寄せ合っていた、

少しすると二人共寝入ってしまった

 

愁が目を覚ますと屠自古はまだ寝ていた。

起こさないように部屋を出る。

 

「よく眠れたか」

 

「ああ、よく寝たよ」

 

「屠自古は?まだ寝ているのか?」

 

「まだ寝てるだろうと思う、」

 

「そうか、にしてもあの屠自古が、」

 

「屠自古さんがどうかした?」

 

「まさか、他人に心を許すなんて滅多にないことだ。」

 

「そうらしいな、他人なんて気にしたことないと言っていたよ。」

 

「しかも相手は男というのも」

 

「まぁ、屠自古さんなりの気持ちがありますからね」

 

「屠自古のことよろしく頼むぞ」

 

「え?神子様の家来でしょう?」

 

「ああそうだ、だがお前がまだしばらくここに居るなら少し相手してやってくれ、正直な所、事あるごとに二人を相手するのは面倒でな」

 

「構いませんが、喧嘩されたら私では手出しできませんよ、それは頼みます」

 

「あぁ…説教は私からするよ。」

 

「なんだ?屠自古がどうかしたのか?」

 

布都が横から話に入る

 

「ん?屠自古の相手をしてほしいって話、」

 

「お主が?屠自古のか?」

 

「そうだが?」

 

「あの屠自古が…」

 

「それはそうと、布都は少しお酒を控えなさい」

 

「うぬぅ…」

 

「お酒の飲みすぎは良くないですからね。」

 

「はい…」

 

小さく返事をすると布都は自分の部屋に戻っていった。

 

「全くだ」

 

それと入れ替わりで屠自古が起きてきた。

 

「よく眠れたようだな?」

 

「神子様…えっと…」

 

「安心しろ怒っていないぞ」

 

「はい…ですが…」

 

「屠自古は布都と違って大人しくしている、まぁ、好きにしなさい。布都がまだまだ未熟すぎるのはあるが…それはそれだからな」

 

「神子様。」

 

「どうした?何か不満でもあったか?」

 

「いえ…大丈夫です。」

 

「うむ、ならよろしい、私は少し出てくるから、留守を頼む」

 

「はい、お気をつけて」

 

「神子様言ってしまったな」

 

「ああ、」

 

「あのだな…愁。」

 

「なんだ?」

 

「あまり話題として良くないことなんだが…布都のことなんだ。」

 

「布都?」

 

「私も不本意で知ってしまったのだが…あいつ、お前のこと好きらしくてな」

 

「は、はぁ。それが?」

 

「一応、なんだ、愁は布都をどう見てるのか、知っておけたらなと思ったんだ…」

 

「なるほどな。」

 

「身勝手な発言ですまない…」

 

「俺は布都の事を気にしたことはないぞ、告白されても、付き合う気はないし、はっきり言って断ると思う」

 

「そ、そうか、バッサリ言うんだな…」

 

「タイプじゃない、って言うと聞こえが悪いかもしれないが、酒の事とか…色々あるしな」

 

「まぁな。」

 

「それに、布都は仙人で修行を積まないといけないだろ?余計なことをさせたくない、」

 

「私もそれなりに修行というのはしているぞ?」

 

「うん…そうだな、」

 

「やらないといけないというわけではないが…だからといってやらない訳でもないしな」

 

「結局、布都のことは、特に考えてないってことだ」

 

「そうか、わかった。」

 

「屠自古はどうして布都がそういう風に思ってるって知ったんだ?」

 

「布都と神子様が話をしてたんだ。それで…そういう話が偶然聞こえてしまって」

 

「あ、なら神子様も知ってるのか」

 

「多分知っているだろう」

 

「なんか…神子様も大変そうだな」

 

「まぁ…特に何も言わなかったから、神子様自身はあまり気にしてないと思う。」

 

「そうか、まぁ、そうかもな。」

 

「さて、俺は部屋に戻ろうかな」

 

「本を置いたままだったな、取りに行かせてもらう」

 

「おう。」

 

愁の部屋に着くと屠自古はまた、愁の隣に座り込む

 

「自分の部屋に戻らないのか?」

 

「ん…なんとなく。」

 

「なんとなく、ね。」

 

「だめか?」

 

「駄目ではないよ。」

 

「そうか、よかった。」

 

「落ち着くのか?」

 

「ああ、不思議とな、」

 

「そうなのか、」

 

「なぁ。」

 

「ん?」

 

「なんか…済まないな」

 

「何が?」

 

「迷惑じゃないか?」

 

「迷惑って何が?」

 

「いや、私から一方的なんじゃないかって思えてきたんだ。」

 

「そうか?別にそんなことないと思うけどな、考え過ぎじゃないか?」

 

「うーん…」

 

「屠自古は冷静なのはいいけど、考え過ぎは良くないぞ。別に気楽にすればいい、布都みたいにやり過ぎは良くないが。俺は好きだから屠自古といるんだ。」

 

「うん、それなら、良かった」

 

 

「あのさ。屠自古」

 

「なんだ?」

 

「次あるとき、また人里の祭りに行こう」

 

「ああ、構わないよ。」

 

「その時まで俺が居るかわからないけど。」

 

「ん?どういうことだ?」

 

「単純に地底に帰るかもってこと。」

 

「そうか。それはそうだな」

 

「でも、地底にいても、人里で祭りがあるってわかってたら絶対に行くよ、」

 

「そうか。なら私も行って会おう」

 

「約束だな。」

 

「ああ。」

 

 

それから数日後。

訳があり愁は地底に来ていた。

 

「古明地姉妹が俺を指名で何の用で?」

 

「少しお願いがあるの」

 

「お願いって?」

 

「ある妖怪退治の手伝い。博麗霊夢のお手伝いよ、あなたにしか頼めないお願いなのよ。」

 

「わざわざ呼ばなくても、妖怪退治くらいあんたでも鬼でもできるだろ。」

 

「生憎私も鬼も忙しくて、実力のあるあなたに頼みたいのよ」

 

「はぁ、わかったよ。それで?手伝いってどんなことだ?」

 

「ここから離れた洞窟に見たことのない妖怪が現れたの、気味の悪い生き物だって聞いてるわ。取巻きが多いせいでまともに動けないって言ってたから取り巻きの気を引くのがいいかもしれないわ。」

 

「わかった、霊夢さんは?もう向かってるのか?」

 

「さっき館を出たところよ、走れば間に合うんじゃない?」

 

「ん、わかった、向かうよ」

 

 

そう遠くないところに洞窟があり。

霊夢は入り口で待っていた

 

「霊夢さん。」

 

「愁だったかしら?」

 

「ああ、古明地に頼まれて来た、」

 

「あんた人間でしょ?何ができるの?」

 

「こう見えても刀には自信がある。あと少なからず魔法の類は紅魔館の魔法使いに匹敵すると思ってくれると。普通の人間じゃないって思えばそんなもん」

 

「半霊と魔法使いを足して割った感じね、ドジしなければ十分、もし襲われたら本体は私が祓うから取巻き共の気を引いてもらいたい、できるわね?」

 

「ああ、できる限りやってみるよ」

 

洞窟の中は湿気が強く、薄暗い

そのせいか少し肌寒さがある

 

「わざわざ退治する必要はあるのか。」

 

「あんた聞いてないの?」

 

「何をだ?」

 

「目的よ、お燐がペットを探してこの洞窟に入ってから、帰ってきてないって話なのよ、それでお燐を探そうとしたら、化物がいて近づけないから退治依頼ってわけ、お燐はまだ見つかってない。」

 

「それって、その化物にお燐が襲われている可能性は?」

 

「十分に有り得るわ、だから、私が行くのよ」

 

「なんてこったい。」

 

「道中見かけなかったけど、どうやら、この奥が突き当りみたいね、」

 

「探さなくても見つかるなら話は早いんだが。」

 

広間のような場所に出ると、奥にお燐らしき少女と白斑の猫が横たわっていた

 

「うーん…ちょっと距離がありすぎるな…」

 

「静かに、上を見なさい。」

 

「おお…これはこれは…」

 

天井には虫の様な妖怪が無数に居り、その様子はハチのようだった、

 

「真ん中にある柱状の巣みたいなところに本体がいると、私は予測してる。」

 

「んー。おそらくそうだろうな。」

 

「取巻き共はこっちに気づいてるみたいね。ゆっくり歩いてお燐を助けれるか試してみましょ」

 

「襲われたら最悪応戦するしかないな」

 

「行動はハチのそれに近いわね。手を出さなければ何もしてこない、かしら」

 

「だといいんだが。」

 

特に敵意も見せずにお燐に近寄る。

お燐の所に着いても特に襲い掛かってくる様子はなかった。

 

「護衛頼むわ、私が背負うから」

 

「隣の猫は?」

 

「息がない、脈もないし、生きてないわ」

 

「そうか…そりゃ仕方ない。けど、古明地のとこのペットなんだろ?一応持って帰って知らせるくらいしないと」

 

「あーもう、わかったわよ」

 

二人は広間の出口に近寄ると。

後ろから思い切り妖怪達が襲い掛かってきた。

 

「ちっ…」

 

「なんとか振り切れると思ったのに。」

 

妖怪達は羽虫のように群がり入り口を塞ぐ、

 

「何が目的なのよ!」

 

妖怪達は何か話しているようだが

人の言葉でないため、二人にはわからなかった。

 

愁は話しかけられてると思い言葉を返す

 

「残念だがおいてくわけには行かなくてな。お燐は帰らなきゃいけないんだ、ここにいるべきじゃないんだ」

 

妖怪達は二人の言葉を理解しているようで。それを尋ねる仕草をしている

 

「んーと。お燐には家がある、お前らの此処みたいにな、そこに帰らないといけない。だから俺らは迎えに来たんだ、」

 

「話してるつもりなの?」

 

「なんとなくだ、向こうさんはこっちの言葉がわかってるだろう、多分」

 

妖怪達は話し合いをしているようで

お互いに頷き合うと引いていった。

 

「入り口が開いたな。」

 

「わかってくれた、ということかしら」

 

「おそらく。」

 

その後入り口に向かおうとすると妖怪達がまた群がり、いきなり襲い掛かってきた。

 

「なっ!」

 

「やっぱだめじゃない!」

 

「だめなのか。」

 

「ん…?」

 

霊夢は自分が襲われていないことに気づく。

 

「私には何もしてこないみたい!」

 

「俺が悪いのか?」

 

「さぁ?」

 

反撃はせずただただ避ける

 

「だから何が目的なのよ!」

 

妖怪達はまた話しているがよくわからなかった、ただ、愁に対して攻撃を繰り返す

 

「ああ…厄介ね」

 

「なんとかならないか?」

 

「先にお燐を連れて帰ってもいい?」

 

「ああ、そうだな。」

 

「それまで耐えなさい。」

 

「へいへいっ!」

 

霊夢はお燐と猫を背負って洞窟を去っていった。

 

「でっ!なんだ!俺が何したってんだ!」

 

また妖怪達は話している。

 

「頼むから!わかる言葉がほしいよ!」

 

猛攻を避け続けていると妖怪達は途端に動きを止めた。

 

その直後、柱状の巣から取巻きよりも形の変わった妖怪が出てきた

 

「お前は?…なっ!あぁ!もう!」

 

沢山居た妖怪が一斉に愁に飛びかかる

 

……

 

「お燐!お燐起きて!」

 

「とりあえずお燐とペットは連れてきたわ、ペットの方は残念だけれど…一先ず私は洞窟に戻るわ、彼がまだ残ってるから。」

 

「わかりました…どうかご無事で。」

 

霊夢は急いで洞窟に向かう。

 

霊夢は広間に着くと、妖怪達が何かに群がって捕まえている様子が見えた。

 

「なっ!愁!」

 

叫んだ次の瞬間、群がりの中心に大きな爆発が起きて、妖怪達は飛び散り消えた。

爆発の中心の所に愁がいた。

 

「ちょっとあんた!大丈夫なの!?」

 

「ああー。まぁ大丈夫とは言えねぇな、かなりキツイ」

 

「何してんのよ!あんなの人間に耐えられるものじゃないわ!」

 

「捕まりそうになったから岩で塞いだら、余計に閉じ込められちって、仕方なくな。」

 

「わたしを待てばよかったじゃない」

 

「あっ、そうだな。」

 

 

「人間…お前は…」

 

妖怪の親玉はそう呟くとまた妖怪達が集まる。

 

「なんか、腹立ってきたし退治しとくか」

 

「当たり前よ。」

 

妖怪達はまた、束になって愁に突撃していく

 

「二度も同じ手は効かない!」

 

愁は魔法と刀を駆使して、妖怪を一気に薙ぎ倒していく。

 

「さて、私は本体を叩くわ!」

【神霊[夢想封印]】

 

妖怪の親玉をめがけて飛んでいく。

しかし、親玉は避けることもなく、ただそれを受けて、倒れた

その瞬間取巻きの妖怪達も力なく地面に落ちていき、力尽きるように消えていった

 

「なんだ?案外あっさりだな」

 

「そうね、避ける素振りもないし謎だわ」

 

「人間…あぁ…」

 

親玉はまだ微かに生きていて、倒れながらも呟いていた。

 

「そんなに人間に恨みがあるのか?」

 

「恨みではない。かつて私を…この醜い私を救ったあの人間に…会いたかった…」

 

「誰だよそれは」

 

「それは…お前によく似た人間だった…」

 

「あんた、過去に妖怪を助けたことないわけ?」

 

「んーや、妖怪は助けた覚えはないが、こいつ…」

 

「何か心当たりはあるの?」

 

「昔、羽虫が虫かごの中で沢山居たのを見つけて野に返した覚えがある。ガキが捕まえたやつだろう。虫なんてその時は嫌いだったし捕まえるのなんて嫌だったが、籠の中で藻掻く姿見てたら、なんとなく可哀想に思えて、助けてやった記憶ならある」

 

「ああ…お前だったのか…」

 

「あのときのバッタみたいなやつか」

 

「概ね合っている…お礼をしたかった。しかし人の言葉もわからず我々の言葉も伝わらない、そうした未練が…私を妖怪にしたのかもしれない…」

 

「そうか、まぁ。あの時死ななくてよかったよ、でもな、お前の気持ちは今よく分かった、だから亡くなった仲間のところに行って仲良くしてこい」

 

「ああ…これであのときの仲間も喜ぶだろう…改めて…ありがとう…」

 

そう言い放つと妖怪は消え散った。

 

「これでよかったのね」

 

「まぁ、いいんじゃないか」

 

「それじゃ、私は神社に帰ろうかしら。」

 

「そうだな。俺も帰るか」

 

 

地上、人里が賑わっていた

祭りというわけではないが。

屋台などが多く並び、人が集まっていた、

 

「流石に…来ないよな…」

 

屠自古は人里の広場で周りを見渡しながら立ち尽くしていた。

 

「何やってるんだろうか、私は」

 

「おや、こんなところに居たのか」

 

屠自古に話しかけたのは神子だった、

 

「神子様、来ていたんですね」

 

「ああ、偶然な。愁は居ないのだな」

 

「地底に行ってるから、多分来ないと思います」

 

「なのにあなたはそこで待っていると」

 

「待っているつもりは…まぁでも…待っていると言うことになりますね…」

 

「約束でもしているのか?」

 

「いや、特に、また祭りがあったら一緒に行こうと話はしていたが。今日は祭りではないし。」

 

「そうだな。」

 

「霊廟に戻るか…でも…」

 

「私は先に戻っているからな」

 

「はい、」

 

神子がその場を去っていても、屠自古はまだそのままでいた。

 

「来ないと思っても…なんで待ってるんだろうか…」

 

「来ないって思っても会いたいから待ってるんだろ?」

 

屠自古はの呟きに対して答えた人物が居た

 

「この声は、愁。」

 

「里が賑わってるって霊夢から聞いてな、様子見に来たんだ。」

 

「そうだったのか」

 

「待ってたんだろ?」

 

「でも、祭りじゃない…」

 

「祭りではないけどこれはこれで」

 

「でも、屋台がもう減って」

 

「夕方だし、戻ろうか?」

 

「ん、そうだな。」

 

二人は屋台に寄ることはなく霊廟に戻って行った。

 

 

「なぁ、屠自古。」

 

「なんだ?」

 

「長く生きるのって、どんな感じなんだ?」

 

「さぁ。私は亡霊だから、生きているというわけではないけど、まぁ、楽しいこととか嫌なこととか、たくさん繰り返すだろうな。」

 

「そうだよな…」

 

「何かあったのか?」

 

「さっきまで地底にいたんだけどな、古明地に、人探しと妖怪退治をお願いされたんだ」

 

「そうだったのか…無事でよかった。」

 

「ああ、その時退治した妖怪がな…昔俺がガキの頃に助けた虫だったらしくて…」

 

「虫が妖怪になった…か」

 

「ああ、その時は俺は虫なんて嫌いだったけど、どうも虫籠の中で藻掻くのが可哀想で助けたんだ。」

 

「その虫がなんで妖怪に?」

 

「なんとも、感謝を想いを伝えたいらしく、ただ虫のままでは何も出来ずその未練だって言ってたよ。」

 

「未練…か」

 

「あのときはまだ10歳だったか…10年以上経ってるんだ。虫なんて数週間すれば死んでしまう。早ければ二三日で死ぬやつだっているだろ。なのにあいつは10年以上も…」

 

「それだけ永らえれるほど、強い意志だったんだろう。」

 

「結局は退治してしまった。あいつは逝く前に俺にありがとうだけ伝えて消えてった、」

 

「未練が消え去って生きる意味を無くしたからだろうな。」

 

「生きる意味…か」

 

「私は亡霊だ、でも…未練とかは特にない、案外不自由のないこの体で生きているだけだ、お前と違って…長く生きてしまうが。」

 

「別れるのは辛いかな」

 

「それは仕方のないことだと思う。でも、私はお前が居なくなっても忘れたりはしない、お前は老いてしまうだろうし、避けられないだろう。」

 

「うん。だから、今こういう風に思ってしまうんだろうね。」

 

「心配なのか」

 

「まぁね、俺が居なくなったら屠自古は悲しむだろう、そう思うとなんだかな。」

 

「まぁ、悲しくはなるさ、でも、さっきも言ったが、避けられないんだ。」

 

「仕方ない…か」

 

「亡霊にでもなって帰って来れたら、話は別だが。」

 

「亡霊かー。」

 

「なんにしろ、私はお前と居たいんだ。亡霊でも何でも戻ってこれるんだったら、帰ってこい」

 

「かなり無理なお願いだなそれは。でも、ありがとう」

 

「どういたしまして、まぁもう遅いし、寝よう」

 

「ああ、俺も疲れた」

 

二人は布団に入るとしばらくしないうちに眠ってしまった、

そのときの二人は幸せそうに手を繋いで寝ていた




あれ…こんな長かったかな…

3月はゲームゲームゲームゲームのお祭りで
執筆が疎かになりそう(焦り)

今年中に100話目指せるのかこれ…


ではまた会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

巫女と妖怪

どうも夢子です。

投稿ペースがおそぉぉぃ!
やばいんだよ。年内に100話目終わる気がしないよ


題名がすぐ思いついた!

ではごゆっくり


「どう?うまく行ってる?」

 

「まぁ、こんな感じなら。」

 

博麗神社、境内に氷柱が出来上がる

 

「コントロールはうまく行ってるみたいだけど…実用性は…」

 

「わかってる。まだなんとなくなんだ…」

 

道一は妖力を操る特訓をしていた。

 

「あんた、闇雲に妖力を放ってもさっきみたいに実用性のないものしかでないのよ?」

 

「うーん…実際にどうすればいいのかいまいちわからない、」

 

「氷柱、それを出したときはどんな感じだった?」

 

「どんな…こんな感じだなと思って。」

 

「そうね。簡単に言えばイメージしたのよね。」

 

「それとは遠いけど、まぁ、そんなところ」

 

「もっと強くイメージしてみなさい、例えばその氷柱を横に広げて壁にしてみようとか。」

 

「イメージか…やってみるよ。」

 

道一は氷柱を作ると、妖力を強める。

すると氷柱は幅が出来上がり鳥居と同じサイズの壁が出来上がる。

 

「なるほど…イメージか」

 

「なんとなく、じゃだめ、自分の思うように妖力を操らないと自分のものにはならないわ、暴走すると妖力に操られてしまうからね」

 

「酒は飲んでも飲まれるな、か」

 

「ちょっと違うけど、まぁ捉え方的にはあってる。」

 

道一はまた氷を操る。

 

「例えば……こうか。」

 

氷が霊夢を取り囲う様に出来上がった

 

「一時的な囲い。相手を捕える手法ね、悪くないわ」

 

「それで…こう。」

 

道一は囲いの中に霧状の冷気を発生させる。

すると囲いの中は一気に気温が下がる

 

「寒っ…これは…相手の動きを遅めるのね…なかなかいいと思うけど…寒い…」

 

「ああ、ごめん、」

 

囲いを壊すと霊夢は日向に移った

 

「ああ…日向暖かい…氷の結界と瞬間冷却。特定の相手や力の弱いものに対してはかなり強力ね。使いどころは限られるでしょうけど」

 

「イメージってのがわかってきたよ。」

 

「ところでさっきから氷ばかりだけど、確かあんた火も使えたでしょ?」

 

「ああ、こんな感じだな。」

 

道一は火を繰ると境内の上空に大きな炎の塊が出来上がった。

 

「眩しい上に距離があっても熱気がくるほど…まるで小さな太陽ね。その様子だと火の方は問題ないかしら。」

 

霊夢はすぐさま日陰に移る。

 

「疲れたな…休憩しよう。」

 

「そうねお茶にしましょ」

 

 

二人は神社の中に戻る。

 

「今日はこの辺にしてゆっくりするといいわ」

 

「もう昼過ぎだな…朝早くからやってるから、かなり長くやってたな」

 

「それだけ、妖力も付いてきたってことよ。」

 

「そうだな。やっと妖怪らしくなってきた気がする」

 

「妖怪と言っても元人間だし、まだ何の妖怪かもわからないんだから」

 

「まあ、確かにな」

 

 

「パチュリーなら知ってるんじゃないか?」

 

魔理沙が横から話を割って入ってきた。

 

「パチュリー?」

 

「ああ、あいつなら何か知ってるかもしれないわね暇だし聞いて見るくらいいいわね」

 

「どんな人なんだ?博士か何か?」

 

「大図書館の司書かつ、大魔法使い。ってとこだぜ」

 

「魔法使いか、」

 

「ついでに氷と炎についても聞けるかしらね」

 

「かもなー。」

 

「行ってみよう。ついででも何か教えてもらえるならありがたい。」

 

「行くって言っても徒歩?」

 

「遠いのか?」

 

「まぁ、ここから紅魔館までは結構距離あるぜ。歩くのは私は勘弁だな」

 

「時間かかるのか…」

 

「どうせなら飛ぶ特訓でもするか。」

 

「飛ぶ…練習?」

 

「おう。魔力だの妖力だの、ちゃんと操れるならそれくらいできるようになる、ほら、のんびりしてないで外出るぞ」

 

魔理沙に連れられてミツは外に出る

霊夢は縁側で特訓を眺めていた

 

「んー。私がたまにやってる方法でいいか」

 

「たまに?そんなんでいいのか?」

 

「余程大丈夫、というか、普通はそれなんだよ。」

 

「普段魔理沙はどうしてるんだ。」

 

「私の場合、箒に魔力を載せてそれに乗っているんだ。だから、私自身は箒に乗っているだけなんだ、あとはバランス感覚って感じだぜ」

 

「俺の場合は、自分の体に妖力を載せて体を浮かせるってことか?」

 

「そうだな。その解釈で大体合ってる」

 

「具体的には?」

 

「まず体の真ん中、丁度胸と腹の間くらいを重心にして。体の力を抜くんだ。」

 

「うん。」

 

「そうすると、自然と体が軽く感じれるからそこで魔力…ミツなら妖力を体に載せる。そして、体に載った妖力を維持しながら体を動かすんだ。」

 

「うーん…ん?」

 

ミツは僅かに体が浮き始め。

浮遊感を感じていた

 

「おっ、浮いてるぜ、そのまま体を動かすんだ」

 

「体が軽いな、でも、これは…練習が必要か…」

 

ミツは低い位置で上下左右に動いた

 

「十分なんじゃないの、あとは浮遊状態で弾幕飛ばせたらいいわ。」

 

「うーん…なかなかうまくいかないな。」

 

「まっ、そのうちだぜ」

 

「浮くだけなら。なんとかなりそうだ」

 

「それじゃ、紅魔館に行きますか!」

 

「はぁ。仕方ないわね」

 

三人は空を飛んで紅魔館に向かった。

 

そして、寝ている門番を無視して直接大図書館に入る。

 

 

 

「あら、霊夢がここに来るなんて珍しいこともあるのね」

 

「まぁ、暇潰しよ。」

 

「隣の男がこの前の妖怪だったかしら」

 

「どうも、ミツです」

 

「魔理沙は相変わらず本目当てみたいだけど、あなた達は?」

 

「ミツが何の妖怪なのかって調べれたりできるの?」

 

「妖怪、と言ってもね。どんな能力かとか経歴が分からないと」

 

「基本的には火と氷が使える。くらい…かな」

 

「火なら、火入道とかいくつかいるわ。むしろ、鬼火、天火のような怪火とかを扱えるっていう可能性があるかしら。」

 

「氷は?」

 

「氷…氷ねぇ、数少ないと思うけど…」

 

パチュリーは本を眺めて

その後霊夢達のもとに戻ってきた

 

「考えられるのは、とりあえずジャックフロスト、雪女や雪男。あと雪山の怪物でビックフットとかもいるけど…説として薄いわね」

 

「なるほど、特に他の妖怪と関わりがない…ということはあり得るのか?」

 

「火と氷が同時に使える妖怪なんてそういないから、むしろそっちでしょ。」

 

「そうね。純粋な妖怪、霊夢はわかるかしら。どっかの花好きの妖怪、多分それと同じような感じ」

 

「あれね、ハイハイ」

 

 

「妖怪の話はなんとなく理解したよ。」

 

「あと、パチュリー、こいつに火と氷について特訓してやれないかしら」

 

「私が?貴方が特訓したほうが為になるんじゃないの?」

 

「妖怪退治の巫女が妖怪に稽古つけるってのもねぇ。それに私は妖力は使わないの、魔法とも少し違うでしょうけど、あんたは七曜を使えるんだからあんたの方が適任でしょ」

 

「まぁ、基本くらいは教えてあげてもいいわ。ここだと本棚が邪魔だから、地下に行きましょう。こあ、さっき出した本と、魔理沙の散らかした本を片付けておいて。」

 

「はーい!」

 

三人は大図書館の地下に移動していく

 

「こあ?小悪魔?」

 

「ああ、パチュリーの従者みたいなものよ、悪魔との契約ってやつ、」

 

「へぇ、てことは魔女?あっ、でも魔法使いでもそういうのはできるか」

 

「まぁね。こあはもうここの住人と言ってもいいくらいだわ。見た目によらず長生きしてるから手を出すのはおすすめしないわ」

 

「契約して呼び出してるんだからそんなことはしない、手を出すつもりはないし、そもそも俺は困ってないから」

 

「そう、困ってないのね、相手は聞かないでおくわ、命が幾つあっても足りなさそうだから」

 

地下に入り階段を下った先に扉がある、

 

「ここよ。」

 

扉を開けると。

宇宙空間のような場所が広がっており

床に当たるところにはかなり大きな魔法陣(ドーム系建築物と同じようなサイズ)が出来上がっていた

 

「あの場所の下にこんな広い場所があるなんてね」

 

「実際には魔法の一種で外観を変えているだけで、この魔法陣の外は壁なのよ。まぁ魔法陣がこのサイズだから、十分すぎるほど広いのだけど」

 

「ここなら、特訓できるんだな」

 

「ええ、確か、火と氷だったかしら?」

 

「ああ、よろしく頼むよ」

 

「霊夢は何か教えたの?」

 

「特に、自分の思うようにしなさいとだけ」

 

「なら。初めからやったほうが良さそうね、いい?あなたが使うのは魔法ではなくて妖力。それはわかるわね」

 

「ああ」

 

「魔力や妖力、霊力によって生み出され弾幕として、もしくは特別な形で放つ必殺技、それをスペルカードと呼ぶわ。」

 

「スペルカード、必殺技。ということはそう数多くないということか?」

 

「そう言う訳でもないわ。私も霊夢も沢山持っている、スペルカードはその人ごとに特徴の異なる技として成り立つものなの、まぁたまに同じ様なスペルカードがあったりするけれど、名前は違うし特徴が完全一致している訳でもないから問題はない。」

 

「なるほど、特徴か、」

 

「そう、試しにあなたの思うようにイメージして妖力を操って見なさい。何か掴めたら上出来よ」

 

「霊夢に言われたやつだな。」

 

ミツは雪の囲いを作り上げた。

 

「出来るじゃない。でもそれは弾幕ではないし、スペルカードとも言えないわね」

 

「そうか…また別のを考えないとな…」

 

「スペルカードとは言えない、と言ったけれど、スペルカードの一部として使うことは可能なんじゃないかしら?」

 

「一部?」

 

「例えば…」

 

パチュリーは同じ様な囲いを大きく作り上げ、その中に弾幕である氷塊を浮かせ動かし回した

 

「脱出不可能な囲いの中で弾幕を避けなければならない。一方的な攻撃としてとても優秀だわ。ただし、それ以外の攻撃は同時にすることは難しくなるし、力のコントロールも最初の内は難しいでしょうね」

 

「同時攻撃ができない上にコントロールが難しい、リスクが伴うな」

 

「スペルカードというのはそういうものよ、必殺技を同時に使うのはとてもとは言えないけど力の無駄遣いに近いわ」

 

「無駄遣いなのか?相手を倒すには丁度いいと思うが…」

 

「命を取り合うような戦い、ならね。そもそもスペルカードは【弾幕ごっこ】の為に作られたもの。」

 

「弾幕ごっこ?」

 

「ええ、大まかなルールとしては、被弾を防ぎながらいかに自分のスペルカードを美し魅せるか、必ずしも相手を倒すことが勝敗を決めるわけではないのよ、まぁ美しく見えないスペルカードもいくつかあるのだけれどね」

 

「なるほど…美しく見せるか、」

 

「だから、スペルカードは一枚ずつ使うの、合わせて使ってもごちゃごちゃするだけよ」

 

「確かに、そうだな。」

 

「話が逸れたけど。あなたの思うように弾幕を飛ばして。もしそれに特徴があるのならスペルカードとして扱うことができるわ。」

 

「いくつか特訓してみないとわからないな、闇雲に弾幕飛ばすだけじゃだめってことだな。」

 

「中にはただ弾幕を飛ばすだけのスペルカードもある。でもそれは極めて高度なものが多いわ。本人の知識、経験、練度、そして、弾幕を飛ばすタイミング、それらを把握仕切ってできる芸当だから。」

 

「いずれにしても。特訓したほうが早そうだな」

 

「そうね、私を狙うようにいくつか弾幕を飛ばしてみなさい。まずはそこからよ」

 

「わかった。」

 

ミツはパチュリー目掛けていくつも弾幕を飛ばす。氷の棘や火の玉など簡単な弾幕ばかりでパチュリーには掠りもしなかった

 

「弾幕を飛ばしても一方から飛ばすだけなら避けれてしまうわ。あなたも動くのよ、ほら飛びなさい。」

 

「飛ぶのはできても、飛びながらはまだ…」

 

「飛ぶのができるならあとは力のコントロールだけ試してみなさい。」

 

ミツは体を高い位置まで浮かせた。

 

「コントロール…か」

 

「森にいる弱小の妖精ですらできるんだから、あなたにできないはずはないわ。できなければ妖精以下よ」

 

「それはまずいな!」

 

ミツは宙に浮いたまま、パチュリーを狙うように弾幕を飛ばす

 

「ほら、できるじゃない。もっと密度を上げるのよ。闇雲でもいいからまずは弾幕を打つ練習よ。」

 

 

「なかなかにスパルタねぇ…」

 

霊夢は地上から二人の特訓を眺めている、

 

「なんだ?いつの間にいなくなったと思ったらミツの特訓してるじゃないか。」

 

そこに魔理沙がやってきた。

 

「まぁ、私が教えるよりかはパチュリーのほうが絶対マシだからね」

 

「霊夢だからなー。特訓してる途中で祓っちゃうよな」

 

「祓うって…あんた私をなんだと思って…」

 

「いや、霊夢の弾幕は妖怪に利き過ぎるから…」

 

「ああ…まぁね…そういえば妖怪だったわね……それにしても彼、元人間にしては覚えが早いわ」

 

「将来有望だってことだろ、良かったじゃないか」

 

「そうね、私の仕事が減るかもしれないわ、」

 

「んー、どうせ霊夢が全部持ってくんだから少し楽できる程度だろ、それに妖精が勝手に暴れてたときみたいな小規模なら、霊夢が介入しなくても終わるかもしれないぜ」

 

「まっ、そのときはその時よ」

 

「お話の途中で何ですが、あの、パチュリー様は?ていうか魔理沙さんまた本盗ってませんか?」

 

「ああ、パチュリーは取り込み中だ、それと本は盗ってないぞ?眺めてただけだ。」

 

「そうですか…どうしようかな。」

 

「取り込み中?何か実験でもしてるのかしら?」

 

話に割り込んできたのはレミリアだった

 

「今ミツの特訓をやってるのよ」

 

「ミツ?誰よそれ」

「ほら、パチュリーの向いにいる男だよ」

 

「お嬢様、どうしましょう」

 

「パチュリーに弄ばれてるわね。いい気味だわ」

 

「特訓だって言ってるでしょ」

 

「特訓ねぇ、なんでパチェが?」

 

「霊夢のちょっとしたお願いだぜ。あいつ妖怪なんだがまともに力を使いこなせてないんだと。だから適任そうなパチュリーにって訳だぜ」

 

「ふーん。実際、どんな状態なの?」

 

「簡単に言えば、やっと飛びながら弾幕が打てるようになった、くらいだわ、飲み込みは割と早いからすぐにでも実用レベルになるでしょうね。」

 

「へぇ~、霊夢が言うのだから相当なんでしょうね」

 

「まぁな、霊夢直々に特訓してるくらいだしな。」

 

「でもなんでわざわざ妖怪の世話をしているのよ。別に妖怪なら野放しでも自然と力なんてつくでしょう?」

 

「彼、元人間なのよ、あと…異世界から紫が博麗神社に連れてきた、あとはお願いねと言って紫は何処かに行ってそれから顔を見せてこない。嫌な予感がするのよねぇ…だから、一応。」

 

「また、妖怪の賢者なのね…」

 

「だから、面倒事になった時彼が何もできないままじゃ困るから」

 

「なるほどね。」

 

四人はミツの特訓を眺めながら話をしていた。

 

「一旦止め、疲れたでしょ」

 

「ああ、まぁ…」

 

二人は霊夢達のもとに行き、ミツはその場に座り込んだ。

 

「初めてこっちに来たときの特訓みたいに疲れた…」

 

「疲れたと言っても、飲み込みが早くて優秀だわ、ひとまず下等妖怪や名もない妖精程度ならもう敵じゃないわ。」

 

「パチェがそこまで言うのも珍しいわね」

 

「待たせて悪いわねレミィ、お茶でしょ?」

 

「ええ、上で待ってるわ。」

 

「まだ少し気になることがあるからその後行くから。」

 

レミリアと小悪魔は図書館に戻っていった。

 

「それで、気になることって?」

 

「霊夢、あなたが彼に指南しているとき、妖力に何か違和感はなかった?」

 

「まぁ違和感しかないわね。それが?」

 

「氷と火、どちらかといえば氷が強い。それ以外に何かあるわ絶対。」

 

「多分そうでしょうね、私も考えていたんだけど、力の引き出させ方までは知らないから放ったらかしにしてたのよ。まぁそのうちわかるでしょ、って思ってた。」

 

「なんとなく、わかった気がするのよ、ミツ、大きな氷を出しなさい。できるだけ平面で壁みたいのものをね。」

 

「ん?こうだな?」

 

凹凸のない大きな氷の壁が出来上がり

それには四人の姿とその背景が写っていた

 

「デケェなぁ。妖力が強いってことか?」

 

「潜在的な妖力は今の特訓でかなり引き出した。それではなくて、彼にはもう一つ力がある。」

 

「鏡の力、かしら」

 

「多分それだと思うわ、まだ孤立した力として出せていないだけ、今でも氷と合わせて反射鏡として出せていて十分役に立つでしょうけど、そのうち真っ当な力になるわ」

 

「鏡か…」

 

「力のコントロールは十分に出来ているわ、でも鏡の力がどんなものか理解出来ていないから、他の力を使うときに同時に出てきてしまう。疲れやすいのもそのせいよ、」

 

「鏡…鏡か…えっと…」

 

「待ちなさいミツ、離れた所で試しなさい、力が暴発されては困るから。」

 

「あぁ、すまない」

 

ミツは飛んで高い位置に行き。

目を閉じてひたすら集中していた

 

「鏡…これは違うな…火だな…火は、いいんだよ」

 

 

「あいつ何してるんだ?」

 

「多分、自分の中にある力を探しているわね。」

 

「探す?そういうのわかるのか?」

 

「私達みたいに潜在能力の高い者なら、無理な話ではないわ、火事場で出るものもあれば今のミツのように探して引き出せる時もある」

 

「なら私にもありそうだな」

 

「可能性としてゼロではないわ、ただし闇雲に探しても見つかるものじゃないのは確かよ」

 

「ならどうやって見つけるんだ?」

 

「さっき言った通り、火事場で突発的に出るか、体内の主要な力の中からごく僅かに感じるか感じないかって具合の物を探すのよ。あとはその人の脳内の働き具合の問題になる。」

 

「発見力の問題ってことね。」

 

「その通り。」

 

「もう私には追いついていけないぜ…」

 

「魔理沙はそれをする必要がないくらいしっかりと力を使いこなせていると思うから気にしなくてもいいことよ」

 

「上手く行くかしら」

 

パチュリーはミツの向かいまで行く

 

「鏡の力…こうか!」

 

ミツの目の前に大きな鏡が出来上がる、

 

「上出来よ。」

 

「なるほど…力を引き出すってのはかなり体力を消耗するんだな」

 

「あとはそれを自由に使いこなせたら十分よ。あとはいつも通り弾幕とするか特殊な形とするかってところね」

 

「ああ、また特訓だな。」

 

「あとは自分で何とかしなさい。私の役割はここまでよ」

 

「ああ、ありがとう。」

 

「まぁ、レミィも待っていることだし上に戻るわ、満足いくまでそこで特訓してていいから、霊夢、あとは頼むわ」

 

そう言ってパチュリーは図書館に戻っていった

 

「えー。結局私に振るわけ?魔理沙、代わりに相手してあげてよ」

 

「仕方ないなぁっと。」

 

魔理沙は箒に跨ってミツの向かいまで行く。

 

「実戦形式でいいだろ?そこまで特訓したんだから、あとはモノにするんだ、その方がいいぜ」

 

「まぁ、よろしく頼むよ」

 

魔理沙は星をいくつも飛ばしていく

 

「結構…避けるの厳しいな…」

 

「まだまだ行くぜー」

 

魔理沙はミニ八卦炉を構えた。

 

「あっ!魔理沙それはまだ早いってば!」

 

「ものは試しだぜ!ちゃんと避けろよ!」

 

「なっ!なんだ!?」

 

「恋符【マスタースパーク】!」

 

ミニ八卦炉からはビームのような光が放たれ、そしてミツ目掛けて一直進に伸びた。

 

「こ!こんなもの避けれるか!」

 

ミツは咄嗟に力を放つと鏡が作り出される。

 

「あっ、やべ。」

 

その鏡にマスタースパークが当たると、はね返って魔理沙に向かっていく。

 

「いやいや!それは聞いてないぜ!ちょっ、まって!うわっ!」

 

魔理沙は逃げ切れず、直撃し、光に飲まれた。

 

「なんとかなったでいいのか?魔理沙!大丈夫か!」

 

「はぁ…自業自得よ…」

 

魔理沙は床に倒れていた。

 

「大丈夫か?」

 

「ああ…大丈夫といえば…な…最低限まで抑えたはずなんだが…結構効いたぜ…」

 

「あの様子だと反射した際にカウンターによる火力の増幅が起きたんでしょ。まぁ魔理沙の負けね」

 

「そんなことがあり得るのか…」

 

「相手のスペルカードに対して使うカウンタースペルカードはいくつか存在はすると思うわ、カウンターはかなり優秀な手段だからね、私もそれを使われるのは流石に勘弁だわ」

 

「まぁ霊夢のスペルカードは威力がよろしくないもんな。」

 

「とにかくまぁ、こんなもんでいいだろ、十分強いぜ」

 

「疲れたな…休みたい。」

 

「神社に戻ってお茶入れてあげるわ。」

 

「ああ、ありがとう。」

 

三人は大図書館に戻り、

パチュリーに一言添えてから大図書館をあとにした。博麗神社に戻る途中、魔理沙はどこかに行ってしまい、霊夢とミツだけ神社に戻ってきた。

 

「疲れた…」

 

「ご苦労様。ほら、お茶」

 

「ありがとう」

 

二人は黙ったままお茶を飲んでいたが、ミツはある人物に気づいていた。

 

「なぁ。紫さん、だったかな。いるんだろ?」

 

「あら、もう私の妖力に気付けるようになったのね、感心するわ」

 

「まぁ、おかげさまでな」

 

「全く、連れてきて放置している間、紫は何してたわけ?」

 

「野暮用を済ませてただけよ。式がしつこく仕事しろって言うからさぁ…」

 

「ならこいつは何のためにここに来たわけ?」

 

「敢えて言うなら、異変が起きたときの協力者となれば良いかと思うくらいよ、深い意味はないわ」

 

「ああ…そう… 」

「なによそれ…」

 

「まぁ実質このあとも私はしばらく手が離せないから、万が一のときにはミツを使って上げなさい」

 

「あんた…まぁ、いいわ。」

 

「なんだかなぁ」

 

「それじゃ、あまり空けると式がうるさいから、帰るわ。」

 

「そう。」

 

そういうと、紫はスキマの中に消えていった。

 

「なんていうか、何者なんだよ」

 

「よくわかんないわ。」

 

「まあ、いいや。」

 

「特に意味もなくここに連れてこられて。あんたも大変ね。その上利用される立場にあったなんてね。」

 

「…そうだな…利用…か」

 

「どうしたの?」

 

「そもそも…なんで俺は妖怪なのか。それを聞くのを忘れていた。」

 

「そういえばそうね。」

 

その時、神社の襖が開いた。

 

「誰よ。声も掛けないで入ってくるのは」

 

「ああ、これは失礼、いるとは思わなかった」

 

入ってきたのは八雲藍だった。

 

「なに?居なかったら勝手に入っていいわけでもないのよ?」

 

「いや…土産物を持ってきたのだが…先程外へ出ていくのを見たからな。てっきり居ないものかと思っていたのだが。すまない」

 

「まぁいいわ、それで土産物って?」

 

「ああ、異国の菓子だ。」

 

藍が持ってきたのは紅葉饅頭だった。

 

「菓子?饅頭?」

 

「へぇー。紅葉饅頭か、久々に食べるなぁ」

 

「日本で土産物として送ることがあるというので、少しばかり使いを出して買ってこさせた。主にミツ殿への謝罪の意を込めているが…」

 

「俺か?」

 

「ああ、紫様が失礼をしたと聞いたのでお詫びにと思い。確か紅葉饅頭が好物だと…」

 

「失礼?そんなことあったか…?まぁ、好きなのはそうだが誰から聞いた?」

 

「ミツ殿のご友人から、一時これを買い込んて食べてばかりいたと聞いたのだ」

 

「ああ、間違いじゃないなぁ。ありがたく頂戴するよ。」

 

「ああ、この度は済まなかった」

 

「まぁいいよ、どの道幻想郷で生きなきゃいけないんだし、どんな形でも、」

 

「今後共、よろしく頼む」

 

「ああ、それはそうと一つ質問だ」

 

「質問ですか?」

 

「俺が妖怪になった理由ってわかるか?」

 

「ミツ殿は、一度命を落としかけている。そこから神隠しによる強制転送、その時、幻想郷で消えかけた魂の力達が奇跡的に貴方を助けたと紫様は言っていた」

 

「死にかけた…のか?ん…?」

 

「バスがトラックに衝突した時、貴方は衝撃で体の節々が砕け窓ガラスが臓を貫いていた。」

 

「はっ…なんだって…?」

 

「あのまま落ちていたら血の匂いに釣られて魚の餌食だっだろうな。」

 

「なんだと…」

 

「結果的に助けられたってことよ。」

 

「妖怪化したのもその魂達のおかげってことか。」

 

「そういうことだと思われる」

 

「まぁ…だから、いろんな力が使えるわけなんだな」

 

「ああ、そうかもね」

 

「それでは、私はこれで」

 

「ああ、紅葉饅頭のことはありがとうな」

 

藍は頷くと神社をあとにした

 

二人は暫く話をせずミツはお茶を飲んでいて、霊夢は横になっていた。

 

 

 

「霊夢、起きてるか」

 

「ん、うん」

 

「例えば…俺が悪事を働いたとして、お前は俺を祓うよな。」

 

「そうね、あんたが本当に悪かったならね」

 

 

「なんかやるつもりなの?」

 

「いや、特に」

 

「そう。」

 

「疲れたな…」

 

「こっち来て」

 

「ん?わかった」

 

ミツは霊夢と向かい合わせで横になる

 

「あんたはこれから先、どうしたいの?」

 

「…特に目的は見つからないな。」

 

「無理に探す必要はないと思うわ」

 

「まぁ…な」

 

「私だって何か起きない限り私から動く気はないし。面倒だから動くこともしない。」

 

「そうか。」

 

「それに、変に動いて空回りするとまた面倒だから、はっきりわかるまで何もしない方が良かったりするのよ。」

 

「…うん。」

 

「あんたが何をしたくてどういうふうにしたいかは好きにすればいいけど、面倒だけは起こさないで頂戴」

 

「霊夢には世話になってるしな。特に何か起こすつもりはないけど。」

 

「のんびりすればいいじゃない。あんたはまだこっちに慣れてないんだから」

 

「まぁ、そうするよ」

 

二人はそれから話さず静かに寝入り

しばらくすると二人は抱き合うようにして寄り添っていた。




あー。次の話を書き始めなきゃー。
間に合わなくなるー!

また会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

猫の姿の魔法使い

どうも悠樹です。


どうぞごゆっくり


紅魔館の隣の大図書館での出来事…

 

「パチュリー様!ちょっと来てください!」

 

「何よ、」

 

「ね、猫です。」

 

「そうね、黒い毛並みが綺麗な猫ね、何があったか気絶してるけど」

 

「どこから入ってきたんでしょう?」

 

「さぁ。外に出しておきなさい。」

 

「えー。外に放置は可哀想ですよ!」

 

「飼うわけにはいかないわ、こあの私室で飼うなら、話は別だけど。」

 

「私の部屋…」

 

「仕事と世話をしっかり両立させれるなら構わないわ。」

 

「あっ…これだめなやつだ…」

 

二人はそんな会話をしていると別のある二人組みがその現場に来てしまった

 

「見て!暁!猫だわ!」

 

「おー、猫ですね〜、でも気を失っているみたいですよ」

 

「あ、フランに暁。本を借りに来たの?」

 

「ああ、新しい本を借りにな、でも、なんでこんなとこに猫が?」

 

「ねぇ、この猫さん動かないよ?どうしたのかな。」

 

「気を失っているみたいですね。」

 

「困ったわね。外に出すにもこあが拒むし、ここで飼うわけにも行かないし」

 

「うっ…ううん…ここは?」

 

猫は目が覚めると目をこすった

 

「ねぇ、暁、今のは幻聴なのかな?」

 

「そう信じたいのですが…」

 

「すまない、ここはどこだか教えていただけるか、」

 

猫はそう話す

 

「やっぱり幻聴じゃないわ。」

 

「ええ、この猫。」

 

「猫が喋ったぁ?!」

 

こあが叫ぶ

 

「こあ、うるさい。」

 

「はいすいません…」

 

「さてと、言葉が通じるなら対応が楽だわ、ねぇ猫、貴方、名前は?どうしてここにいるか分かるかしら」

 

「先に質問したのだが…まあいい…名前…名前はなんだったか思い出せん…どうしてここにいるかと言われたら気がついたらここに居たとしか、覚えていることは何かに名を呼ばれて声を追っていたら突然何かに襲われそれから逃げていた、そうしているうちにここに来て今に至る」

 

「何かに名前を呼ばれていたのに。自分の名前がわからないの?おかしいと思うな」

 

「うむ…気絶の間に記憶でも無くしたのかもしれぬ。」

 

「そう。自分が猫と言う自覚は?」

 

「少し前…と云っても何十年も前か、以前は人だったのだがな。魔法を掛けられこうなった。魔法と言うよりか呪い、呪術の類だな」

 

「ふーん…もとに戻る方法とかわかるの?」

 

「それが、全く」

 

「そう。」

 

「ここは書斎か?」

 

「書斎というよりかは図書館。まぁあまり違いはないけどね」

 

「もしかしたら、猫さんの呪いを解く方法とかわかったりしませんか?」

 

「もしかしたら、ね。猫はもとに戻りたいと思うの?」

 

「まぁ、元は人だからな。本来なら戻るべきだろうな。」

 

「そう。」

 

「ねぇ、パチュリー?」

 

「どうしたのフラン?」

 

「せっかくだから戻してあげようよ。」

 

「そうね。それがいいかもね。」

 

「名前を教えていただけるか」

 

「私はパチュリー、隣にいるのが助手の小悪魔。」

 

「わたしはフランドールよ、フランって呼んで!、あと執事の暁!」

 

「パチュリーにフラン、そして小悪魔と暁か、よろしく頼む。」

 

「ちなみに私たち以外にもまだいるから、自己紹介はあったときにして。あと。レミリアには失礼の無いようにね」

 

「レミリアか。わかった。」

 

「できれば…様付けしたほうがいいかなぁ…お姉様は…変なところ厳しくしてるから…」

 

「ん?まぁ、わかった」

 

「それじゃ、パチュリー、本借りてくね!」

 

「ええ、また来て頂戴。」

 

暁とフランは図書館をあとにした

 

「さて猫。」

 

「うむ、猫、猫と単的に呼ばれるのはあまり気が良くないんだが…」

 

「なに?ニャンコとかお猫様とでも呼ばれたいの?」

 

「そう怒るな…」

 

「猫で十分じゃない」

 

「パチュリー様。それでは芸がないです」

 

「生き物の名前なんて考えたことないもの。」

 

「それじゃ!」

 

「毛並みも黒いし、クロでいいわ。」

 

「あー!私から言おうと思ったのにぃ…」

 

「クロ…か、まぁいい」

 

「とりあえず仕方ないからここに居なさい。何かから逃げたって言ってたみたいだしその格好じゃまともに戦えないでしょ。匿うくらいならいいし、人に戻る方法が見つかるまではここにいればいいわ」

 

「助かる。一応人であった頃は魔法使いだったからな、この格好でも魔力自体は使うことができるがあまり使いすぎては疲れてしまう。呪いを魔力で押さえつけて人の姿を一時的に取り戻すこともできるが…あまりにも負荷が大き過ぎる。」

 

「何でもいいわ、面倒だけは起こさなければ好きにしなさい。」

 

「わかった。」

 

パチュリーは机に戻る。

 

「さて…これだけ本があると目的の本を探すのも一苦労だな…」

 

「クロさん何か探すんですか?」

 

「ああ、呪術や魔術に関する本だ。たくさんあるだろうとは思うが…」

 

「こっちですよ、っと」

 

小悪魔はクロを抱き上げ本棚の前まで向かう

 

「…こう、なんというか…娘っ子に抱っこされるのは恥ずかしいものだな…」

 

「えへへー。猫なんて滅多に見れないですし抱っこできるだけでも役得ですね〜。」

 

「一応、男であって人であれば数千年は生きているのだがな…」

 

「でも今は猫なんですよ?いいじゃないですか〜」

 

「仕方あるまい…」

 

本棚の前に着くと小悪魔はクロを降ろした。

 

「ここの本棚、1列目から24列目まで全部呪術に関する本です。魔術の本はまた別なのでここを見てからにしましょう。魔術の本が読みたいときはまた声をかけてください。抱っこして案内します!」

 

「ああ、抱っこはともかく、ありがとう」

 

「あっ、本届かないですよね取りましょうか?」

 

「いや、魔力で引き寄せるか、自分で飛ぶかなんとかする。」

 

「どうせだから手伝いますよ?」

 

「…サボりたいのと、私を抱っこして癒されたいのが本音だな。そうは行かない」

 

「あ~…全部バレバレだった〜…」

 

「とりあえず自分の仕事というものを済ませてくるといい、それで時間があるのなら、ぜひ手伝ってもらえると助かる」

 

「はぁーい、ではまた呼んでくださいね!」

 

クロは気になる本から手当り次第に探って行った。

 

……

 

「はー…なかなかうまくいかないものね…」

 

その頃パチュリーもクロの呪いを解く方法を探していた、

具体的には解呪系の術をいくつか覚えようとしているのだが、まともに成功していない

 

「新しいことを覚えるのは疲れるのね…仮眠しようかしら…こあ?ちょっと来なさい」

 

「あーい、パチュリー様どうしました?」

 

「ちょっと仮眠をしてくるわ。しばらく留守を頼むわね、猫はどこにいる?」

 

「呪術関係の本の近くにいるはずですよ」

 

「わかった寄ってみるわ」

 

パチュリーがクロの所に向かうと…

 

「あら、寝てるわ」

 

本を広げたままその場で横になっていた。

 

「猫とはいえ、疲れて寝ることもあるのかしら。そこで本の上で寝られても困るし。仕方ないわね。」

 

パチュリーもクロを抱っこし、自室まで向かう

 

「ゆっくり休みなさい、」

 

クロを抱っこしたままパチュリーは寝た

 

「パチュリー様…それは反則過ぎます…」

 

部屋を覗き見ていた小悪魔が呟いた

 

 

クロは目が覚めると妙な感じがしていた。

 

「うん…?本を呼んでいるうちに寝てしまったか?しかし…ここは…?」

 

起き上がろうとしても体が動かず、何かに掴まれている。

 

「困ったな…これでは続きが探せぬ…」

 

体を動かすと何かに触れた

 

「ん…?この柔らかいものはなんだ…?」

 

ふにふにと繰り返すうちにそれが何かわかって触れるのをやめた

 

「これ以上はやめておいたほうがよさそうだ…掴まれているとはいえ、寝ている娘っ子の富んだ胸を揉むなど…品が悪い」

 

仕方なく大人しくすることにした

 

少ししたあと、部屋をノックする音が聞こえた。

 

「パチュリー様ぁ、起きてますかー」

 

小悪魔がパチュリーを起こしに来た。

 

「おいパチュリー。使いの者が呼んでおるぞ。」

 

「ううん…?こあが?」

 

「そうだ、起きろ。私もそろそろ体を動かしたい。早く離してくれないか。」

 

「ん?あっ…」

 

パチュリーは起きて座り込み、自分の状態を確認すると少し恥ずかしくなっていた

 

「ごめんなさい、ちょっと…その…」

 

「…言わずとも察することくらいできる。まぁ猫である以上こういうことは避けれまい。」

 

「案外…抱っこするのが気持ち良かったのよ…」

 

「あのな…いや…もう何も言わん。ほら、呼ばれているのだ早く支度して行け。」

 

「ええ、そうだったわね」

 

パチュリーとクロは部屋から出ると、

レミリアが待っていた

 

「パチェ?!猫!なんで猫がいるのよ!」

 

「レミィ落ち着いて。」

 

「あっ…そうね。」

 

「お姉様、この猫さん元々人だったんだよ?戻してあげようと思ってパチュリーは頑張ってるのよ。」

 

「そ、そうなのね、」

 

「名はクロと言う。今はそう呼んでほしい」

 

「レミリア・スカーレットよ。フランの姉で紅魔館の主。無礼の無いようにすることね」

 

「うむ。今後共宜しく頼む」

 

「パチェ、そろそろお茶の時間にしようと思うのだけど。」

 

「もうそんな時間なのね。残念だけれど、もう少し彼の呪いについて調べたいから、今回はパス、次は行くわ」

 

「わかったわ、見つかるといいわね」

 

レミリアは図書館を出ていった

 

「レミリアは…あれか、彼女自身は高貴を装っているが。我儘で意地っ張りな所があるんだな。」

 

「…あの数分でよく分かったわね。」

 

「まぁ、あの手の性格は読みやすいからな。そんなもんだ。」

 

「そう。」

 

「いいのか?茶会の誘いを断っても。」

 

「まぁ、いいのよ。久々に面白いことしてるわけだし」

 

「面白いか?」

 

「ええ、呪術なんて触れたこともないからこれを期に慣れてみようと思ったわ。魔法と違って扱いにくいのはあるけどね。まずは貴方の解呪からやらないといけないし」

 

「生憎、私も呪術は触れたことがない、基礎から学ばねばならないからな。お互い様か」

 

「そうね。さてと…」

 

パチュリーはクロを抱っこして、呪術本の本棚まで向かう。

 

「…むぅ…」

 

「あら、不機嫌?」

 

「期限を損ねているのではなくてだな…なんというか…その…頭の位置が良くないんだ」

 

「あら。胸に当たってたわ。ごめんなさい。」

 

クロとパチュリーは本を手に取り呪術について調べ始める

 

「先ほど眠っていたときも…同じような状態にあってだな…かなり大変な思いをしていたのだ…」

 

「ふ〜ん。胸は嫌いなのかしら」

 

「何千年と生きていても。人の体には目を背けたくなる…それだけは何故か変わらないのだ。」

 

「案外、ピュアなのね。」

 

「純粋なのではない、一種のトラウマだ。」

 

「トラウマ?」

 

「お前は、目が覚めたら裸にされた状態で縛り上げられ。目の前に同じ様に裸の人間が大量に居たらどう思う。」

 

「…そんな状態になったことないからなんとも言えないけど、まぁなんというか。嫌になるわね」

 

「…正直な話、怖かったよ、あの頃はまだ弟子として修行の身だった。そんな中、所謂魔女と言われる者達に捕まり。禁忌と言われる魔法の生贄にされかけたのだ。」

 

「生きてるってことは、助かったのね。」

 

「ああ、魔法の実験は妨害が入り失敗、生贄に集められた人間は逃げたが何人かは魔女に殺された。私はなんとか逃げることができ、無事、師の元まで帰ることができた」

 

「でも、それが忘れられないわけね。」

 

「ああ…無造作に集められ身包みを剥がされた。人の裸を見るとあの光景を思い出して嫌な思いをする。トラウマというのはそういうものなんだと…しっかり叩き込まれた。」

 

「知らなかったとはいえ、悪かったわ。今後は気をつけるわ。」

 

「済まないな。」

 

話を止めてクロとパチュリーは呪術に没頭した。

 

何時間も経ったとき。パチュリーはまたクロが寝てしまっていることに気づいた。

 

「本はベットじゃないのだけど…」

 

パチュリーはクロを抱き上げ自室に向かう。

 

「せっかくだから。」

 

パチュリーは部屋においてある中心の凹んだ座布団にクロを寝かせ、軽い毛布を掛けた。

 

「これなら、気持ちよく寝れるでしょ」

 

パチュリーは部屋の扉を静かに閉め、

図書館に戻る。

 

「呪術か魔術…ね」

 

そう呟いてまた呪術を学び始めた。

 

……

 

クロは目を覚まし。近場に置いてあった小さな皿から牛乳を飲んでいた。

 

「丁寧にここまで用意するのか…ありがたいといえばそうなんだが…」

 

しかし、猫として扱われるのを少し疎ましく思い複雑な気持ちになっていた。

 

「あっ、クロ、起きたのね」

 

丁度パチュリーが部屋に戻ってきた

 

「ああ、わざわざ私のためにここまでしていたと思うと感心してしまって感謝する。」

 

「小悪魔のしわざよ。全くだわ。」

 

「また娘っ子か…」

 

呆れながらも牛乳を飲み干した

 

「ねぇ、クロ、一つ聞いてもいいかしら」

 

「なんだ?」

 

「借りに呪いを解く方法が見つかったとして、あなたはそれを真に受けてくれるのかしら」

 

「それは、もちろんのとこだ」

 

「なら、魔法でも呪術でも、あなたは過去にトラウマだった被験者と同じ様な状態になってしまう。それは克服できるの?」

 

「…薄々気づいてはいたんだ、言われなくとも我慢しなければならないんだ。いざとなれば取り押さえてもらっても構わない。」

 

「私はあなたの意思を尊重するつもりよ、あなたが自分からその気にならない限りは呪いを解くことはしない、第一初めに探し始めたのはあなたな訳だから。」

 

「なんのためにそこまでする。」

 

「…最近…他人の苦しい思いをする姿を散々見てきたのよ。フランドールといい。レミィの執事のハルといい、暁だってそう。そんなことばかりで私も少し嫌気が指してきてるのよ。」

 

「なら、なぜ協力する。放って置けばよかっただろう。」

 

「私のテリトリーを勝手にされるのはごめんだわ。面倒事だけは勘弁だから、何か起きる前に先に終わらせておきたい。最初はそう思っていたのだけど、気が変わって最後まで付き合ってあげようと思っていた。」

 

「…」

 

「トラウマの話を聞いてから散々苦しまなくて良い方法はないか探してみたわ。現状、今の私にできる限りでは、薬品による解呪を試みること、でもそれは、現状猫としての体のあなたにはリスクが大きすぎて人の体に戻った時に後遺症が考えられるから現実的ではなかったの」

 

「薬品かソレはあまり望ましくないな、結果的に何もできなくて、例え失敗したとしても、誰もお前を責めたりしないんだが、なぜそこまでする」

 

「情が移っただけよ。」

 

「情か…」

 

「だから…あなたには聞きたかったのよ。」

 

「何を?」

 

「人の姿に戻りたい?」

 

「…失敗しても。誰だろうと責めはしない、不可能ならそれはそれで諦める。確証があるのなら先程言ったとおり真に受ける。」

 

「質問の答えになってないわ。」

 

「……ああそうだよ、人の姿に戻りたいさ、でもな怖いんだよ。」

 

「クロ。私にはあなたが人を嫌う理由はわからないけれど、怖いのなら克服するべきだと思うわ。私だって引き籠りで全くの他人と接するのは好きじゃないわ。でも貴方と会って情が移って変われたのは確かなのよ」

 

「それは、私がこの可愛らしい姿だからだろう?」

 

「いいえ。姿見た目じゃないわ、私にはまだ表現しづらいけれど、きっと相手を思いやることだと思うわ。」

 

「…お前が変われて…私が変われるという確証はないぞ…」

 

「ええ、そうかもね。でも、あなたにもその確率はあるわ。」

 

「…一応聞いておくぞ。私が人に戻れる方法は見つかったのか。」

 

「ええ」

 

「一体何だ。」

 

「魔法でも呪術でもない。御祓いよ。」

 

「御祓い…?ああ…そうか…博麗霊夢か」

 

「そう。魔法や呪術でも解呪はできるでしょうけど失敗するリスクと、時間がかかる。でも、御祓いなら、失敗することもなければ準備に時間もかからない。それにあの霊夢のことだから、祓えない呪いなんてないわ。最悪、神降ろしをしてもらうだけよ。」

 

「本人にはそれで了承をもらっているのか」

 

「既にね。」

 

「なんとも、準備が良すぎるとしか言えん」

 

「霊夢はいつでも神社に来なさいと言ってたわ。」

 

「いつでも…なのか」

 

「霊夢は基本暇してるから」

 

「はぁ…なんとも先程まで意地を張っていた自分が恥ずかしく思えてくる」

 

「意地を張るのは皆同じことよ、私もレミィも貴方も。」

 

「そうだな。落ち着いた頃に、巫女に会いに行くとするよ。」

 

「そう、その時は声をかけて頂戴。」

 

「ああわかった。」

 

……

 

その次の日のこと。

 

「パチュリー、そろそろ博麗の巫女の所に行こうと思う。」

 

「そう、わかったわ。こあ、留守を頼むわね」

 

「わかりました、あまり遅くなりませんよね。」

 

「多分ね」

 

クロはパチュリーの肩に乗り、ついていく、

 

神社に着くと霊夢が境内で待ち構えていた。

 

「あら、お待たせしたかしら?」

 

「別に待ってはないわ。それでその肩の猫がクロね。」

 

クロは肩から降りて霊夢に近づく。

 

「うむ。よろしく頼む、」

 

「…なんというか。ほんとに喋るのね。」

 

「まぁね。」

 

「まぁいいわ。呪いを解きに来たんでしょ」

 

「ああ、お願いしたい。」

 

「そのままそこでいいわ。パチュリーはちょっと下がってなさい、」

 

 

 

パチュリーが離れると、霊夢はお祓い棒を持った。

 

しかし…何かを考えている様子ですぐには御祓いを始めなかった。

 

「どうかしたか?」

 

「あんた…一体?」

 

霊夢が顔を顰める。

 

「いや、まぁいいわ。始めるわよ」

 

御祓い棒を持ち直し御祓いを始める、

少しもしない内に御祓いは終わってしまった

 

「終わったかしら。」

 

「これでおわりよ。」

 

「うむ、体が軽くなった感じがするな」

 

「まぁ当然ね」

 

「先程、首を傾げていたが?何かあったか?」

 

「全部払ったあとだからもう問題ないんだけど…」

 

「なんのことだ?」

 

「さっき、改めて見てたら。怨霊とか呪いとかそう言った類が異様なほど取り憑いてたのよね…」

 

「そうだったのね…」

 

「いや…あれだけ憑いてて正気を保てるわけ無いと思うんだけど…振り切って相殺し合ってたのかしらね。」

 

「なるほど。」

 

「ところであんた。いつまでその姿なわけ?」

 

「ああ、戻れるのか?てっきり自然に変わるものかと思っていたが」

 

「そういうもの?」

 

「さぁ?」

 

「早く戻りなさいよ。」

 

「わかった。」

 

クロは足元に魔法陣を張り光が走ると。

姿が人に戻っていた。

 

「ふーん…魔法使い…ね、そのまんま、それっぽい服装ね」

 

「まぁな。」

 

「霊夢、はいこれ。報酬よ。」

 

パチュリーが渡したのはお金の入った袋だった

 

「あら、ご丁寧にどうも」

 

霊夢は渡された袋の中身を覗くと目を丸くして驚いていた。

 

「パチュリー、もしかして」

 

「しっかりとしたお金よ、魔法で出したわけでもないからね。」

 

「あんた。案外金持ちなのね…」

 

「私は最低限しか持ち合わせてないの、レミィにお願いして用意してもらったのよ。」

 

「へぇ…あの我儘お嬢様がねぇ…」

 

「まぁ、とにかくこれで一件落着ってとこかしら。」

 

「そうだな。博麗の巫女。世話になった。」

 

「まぁ、また何かあれば来なさい」

 

クロとパチュリーは紅魔館に戻ると

小悪魔がすぐさま駆けつけた

 

「おかえりなさい、パチュリーさ…ああ!」

 

「こあ、戻ったわ」

 

「そんなに驚いて何かあったか?」

 

「クロさんが…人に戻ってるー!」

 

「ああ、また猫の状態で抱っこされるのは勘弁だからな?」

 

「ううー…まぁ仕方ないですね。」

 

「こあ、また魔理沙が来てたわね」

 

「そうなんですよー…まぁ、本は減ってないので立ち読みして帰って行ったみたいです。」

 

「そう。片付け頼むわね」

 

「は〜い。」

 

小悪魔は散らかった本のもとに戻っていく。

 

「さて、クロ。色々と思い出せたことってあるんじゃない。自分の名前とか。」

 

「ああ、私の名前はクローランノ・ラフ・ウィザード、この名でいつも通していた。本名はクロフォード・ラフ。」

 

「長ったらしくて面倒だからクロでいいわ」

 

「その方が呼びやすいだろうね」

 

「魔法使いと自称するからには、それなりの自身があるのでしょう?」

 

「まぁ、それなりにはね、ただここには沢山本がある、もっと勉強できるかもしれないな。」

 

「いつでも読みに来るといいわ」

 

「むしろ、しばらくここに滞在させてもらえないか?ここでなら、私の知らない魔法だけじゃなくて色々な知識を深めることが出来そうだ。」

 

「仕方ないわね。まぁ部屋はあるから好きにしなさい。こあ、ちょっといいかしら。」

 

「はーい、なんでしょう?」

 

「クロはしばらくここに滞在するって言うから、部屋を用意してあげて。空き部屋を住めるようにしなさい。」

 

「かしこまりましたー!すぐ用意します!」

 

小悪魔はすぐに空き部屋掃除に向かっていった。

 

「あの娘っ子は元気だな」

 

「多分、貴方のこと気に入ってるのよ。」

 

「好まれるのは悪いことではないけど。最低限魔法の研究だけは邪魔されたくないかな。」

 

「それは私も同じことだから、多分大丈夫よ」

 

「それならよかった。」

 

「さてと…私はクロが来る前の研究の続きでもしようかしら」

 

「悪いね、世話になったよ」

 

「まぁ、手詰まり状態手前まで来てたからいい気分転換になったわ。」

 

「まぁ、私も同じことがあるだろうけれどね、もし手伝うことがあれば声をかけてほしい。」

 

「ええ、助かるわ」

 

「それじゃ、私も気の引く本を探しに行こうかな。」

 

「それじゃ、また後で」

 

「ああ、今後共宜しく。」

 

クロは結局呪術の本を眺めていた。

パチュリーは魔法の研究をしており。

小悪魔が部屋の用意が終わるとクロはへやに篭りきりになるときが多々あるという。

 

 

また紅魔館(大図書館)に一人住人が増えました。

 




眠たいぃ…

ああ…体調が優れない…

良くならなぃぃ…!


ではまた会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

鬼と天狗

どうも、悠樹@夢子&松K.です。

令和になっちゃったなぁ。

5月だなぁ…

題名ありきたりだなぁ…!

ではごゆっくり


妖怪の山の夜。

 

群れから離れた鹿が獣道から逸れて歩いていた。キョロキョロと首を動かして視線を正面に戻したとき。

一本の矢が、鹿の首を貫いた。

鹿は息絶えその場に倒れる。

 

「よし、これで肉の確保ができた、って、ああ…矢が折れてるな。また一本無くなったか。仕方ない、肉の対価だ。」

 

矢を射ったのは、山の白狼天狗。

 

「さて、帰るか」

 

と、思った矢先、雨が振り始める

 

「まぁ…雲行きは怪しかったからな…」

 

鹿を獲物袋に入れ、担いで歩き始める。

 

「雨が降っているし家まではそう遠くない、急ぐか」

 

雨だけではなく、血の匂いに誘われて他の肉食の動物や妖怪がやってきてもおかしくはない

 

そんなときに天狗は立ち止まってしまった。

目の前に普通はありえない光景が見えたのだ

 

「こいつは…」

 

道の真中に一人の少女が寝転んでいる。

しかし単純に寝ているのではない。

呑気な表情をしており、顔が赤く手元に青紫の瓢箪がある。

 

「困ったな…こいつは俺の手に余る…が。そんなこと言ってる余裕はないな。」

 

仕方なく少女も担いで帰路を急ぐ。

雨は強くもなく弱くも無い。

 

家に帰り着くと、雨はより一層強くなっていた。

 

「全くだ…」

 

普段防雨着を使うのだが。

今は少女に着させていたため、天狗はずぶ濡れだった。

 

少女を布団に寝かせ、

天狗は濡れた服から着替える

 

狩り獲った獲物達を処理して保存庫に仕舞い込み、天狗は椅子に座って眠った。

 

 

翌日

天狗は窓から差し込む太陽の光で目が覚めた。

 

「っ…明るいな。うっ、眩しい…」

 

視界が戻ると、少女が寝ているのが見えた。

 

「気持ちよさそうに寝やがって。」

 

寝相が悪いのか、掛け布団がめくれている

 

天狗は台所に向かうと朝食の支度をする。

その匂いに釣られたのか少女が目を覚した。

 

「ふぁぁ〜っ…はぁー。良く寝たなぁ。あれ!ここどこだ?」

 

「よく眠れたなら良かったよ」

 

天狗は呆れたように返事をする

 

「まさか、拉致ではないだろうな!」

 

「外に放り出されたくないなら少し静かにしててくれ。」

 

少女は気に食わなかったがその通りにしていた。

 

天狗が机を広げ、朝食を持ってくる。

 

「ほら、朝飯だ。」

 

「お主、私が誰だか知っているよな」

 

「山でお前を知らないやつはよっぽどの世間知らずか最近の天狗達だろ。」

 

天狗は食事を進めていくなか、少女は箸すら持たずにいた。

 

「口に合わなかったか、俺は酒を飲まないからな、酒のつまみとか普段ないんだよ、今はそれで我慢してくれ」

 

「いや、もちろん用意されたからには頂くが…」

 

「んー、何かあったか」

 

「お主、私を知っていてなぜ助けたんだ」

 

「はぁ?」

 

天狗は食べ終えると理由を話した。

 

「別にお前を襲う理由はない。下心も無ければ昔の報復を今更掘り出す義理もない、単純に雨降りなのにお前が道で寝てたから保護したんだ。それ以外に理由はない。」

 

「そうか…」

 

「少し考えすぎだ、早くしないと冷めるぞ」

 

「ああ、済まないね、いただきます」

 

少女は食事を済ませた

 

「ごちそうさま。」

 

天狗は少女から食器を受け取ると台所に向かい食器の洗い物を済ませた。

 

「どこか痛むところはないか」

 

天狗は部屋に戻りながら少女に聞く

 

「いや、問題ないな。」

 

「うん、ならいい。」

 

「お主本当に何も思ってないのか?」

 

「くどい、その話題はもういい」

 

「すまない…」

 

「たしか、伊吹萃香だったか?」

 

「そうだ。」

 

「だよな。」

 

「お主は、あのときの天狗だろう…確か名前は」

 

「白狼天狗、葉月」

 

「やはりそうだよな…」

 

「懐かしいな、しばらく見ないと思ったが」

 

「人里や旧都、あとは霊夢の所に居たりしてたぞ。時折山の神社にも顔を出してる。」

 

「山に来てなかったわけじゃないんだな。まぁ、鬼を見て恐れるのは昔の奴らくらいだろうけど。」

 

「今でも怖がるやつがいるのだな」

 

「まぁ極少数だな。」

 

「ふむ。」

 

「あの頃は懐かしい。」

 

「ああ、お主には特に世話になった覚えがあるな。」

 

「ああ?世話になったって、少し小言言っただけだろ。」

 

「その小言が大目玉のように感じたな。」

 

「そうか。そんなつもりは無かったがな。」

 

「それにお主には悪いことをさせた。」

 

「ああ、演技のやつか」

 

「お互い力があるのにも関わらず、負けを演じさせるのはお主も気持ちがよくなかっただろうに。」

 

「ああ、まあ少しでも勝ち目があると考えた馬鹿どもにはいい薬だったろ。あの場で俺が勝っていたらお前が来た意味が無くなる」

 

「うむ。まあな。」

 

「それに、力があるって言っても、あの後結局俺は勝ってないからな?」

 

「あれは…勇儀が割り込んできたから、負けとも言えないだろう。」

 

「そうか?」

 

「あのままであれば私の負けだ。」

 

「勝てる見込みはないと思ってたのだがな」

 

「お主の技には勝てん、それははっきり言える」

 

「そんなに俺の幻術が手強いか。」

 

「視界と音を塞がれては嗅覚しか使えないからな。その状態で互角に戦えなんて無理矢理過ぎる、嗅覚なんて普通はほとんど感じ取れないからな」

 

「その状態でも俺を捉えて戦ってんだからな、感心するよ」

 

「最低限しかないが、犬っぽい匂いと後は空気の流れだけは読めた、ギリギリだったのだぞ」

 

「ま、勇儀のせいで台無しか。」

 

「うむ、割り込まれては話にならんからな、

そういえば、お主はまだ山で働いているのか?」

 

「ん?いや、天狗社会とはおさらばしたよ。たまに手伝えって呼び出し食らうときはあるけど、正規ではないからな。断っても怒られはしない。」

 

「ほう。」

 

「それに、今は人間みたいに自給自足の生活だ。動物を狩って肉を摂り、畑を作って作物を育てる、水は近場に川がある。水もきれいだ、十分に過ごせる。」

 

「自給自足か、なんとも面倒なことをするな」

 

「まぁ、働くか自給自足かって言われたらどっちもどっちだからな。面倒なのは変わりない、ただ、自給自足のほうが個人的なゆとりがもてる。」

 

「確かに仕事に追われるストレスがないからな。」

 

「ただし、失敗したときのリスクは洒落にならない。」

 

「決して簡単ではないだろう?」

 

「当然だ。作物の管理、狩り、水の確保、作物は天候のせいで駄目になることがあるし、狩りは獲物が見つからなければ終わらない、狩りの途中で妖怪に襲われたりもする、土砂が起きれば川が汚れて水も使えなくなる。案外大変なんだよ。」

 

「それをお主はやり続けているのだから尊敬に値するな。」

 

「褒め言葉として受け取っておくよ。」

 

「他の天狗とは会うことが減って寂しく思うことはないのか?」

 

「親しくしてたやつは居たけど特に寂しいとかそういうふうに思うことはない、定期的に顔合わせにここまで来るやつもいるからな、その辺は気にしたことない」

 

「なるほどな、会いに来るのであれば心配もなさそうだな」

 

「呼び出し食らうときに合う事だってある。」

 

「それにお主のことであれば嫁など簡単に見つかるだろうな」

 

「それが、真逆だよ。欲しいと思った事はないが、自給自足の生活がおかしいって俺は選ばれないそうだ。」

 

「なんと、それは意外だな。」

 

「まぁ、単純に面倒だからな。」

 

「それだけの理由となると。余程怠慢に思えてくるぞ…」

 

「怠慢なんだろ、仕事して遊んで暮らすほうが奴らの身に合うんだろう」

 

「嘆かわしいというべきか。」

 

「気にしてたらキリないからな。」

 

「そうだな。」

 

「ところで、」

 

「ん?」

 

「いつまでここにいる?昼飯晩飯くらい出せるが。」

 

「久々に話もして満足したからな。すまんな世話になったぞ。」

 

「そう大したことはしてないけどな、気が向いた頃にでも来てくれ」

 

「おう」

 

そう言って萃香は家を出た。

 

 

 

「懐かしいやつだ。」

 

そう呟いた。

 

 

 

葉月が川辺に水を汲みに来たとき。

他の天狗が川辺にいた。

 

「困ったな。あんなことされちゃ、水汲みできない。」

 

女の天狗が汗を流しに水浴びをしている。

裸でいるため下手に近づけば大変なことになる上に、離れていても音を出せば怪しまれる。

 

「家の水はまだ数日持つが…晴天が続くとは思えない。できれば早くどいてもらいたいな。」

 

数分後、視線を川に戻すと女天狗が居なくなっていた

 

「ああ、動いてくれたか、助かる」

 

「何が助かるのよ」

 

「水を汲みに来た、堂々とそんなことも言えないから、このように離れた場所で待っていた」

 

「ふーん、覗きではなかったのね」

 

「ああ、始め川辺に近づいたときは、居るとは思わなかったから、少し裸がみえてしまったな、すまない」

 

「まぁ。悪気がないならいいわ、それに私があんたの邪魔だったのも確かだし。お互い様ってことにしとくわ」

 

「そうして貰えると助かるな。」

 

葉月は川辺に行くと水壺を持ち出し、川の中に投げつけた。

 

「何投げてんの。割れるよ?」

 

「見てみろ、割れてなんかない、それに際限無く水を吸い込んでいる。」

 

「あっ、本当だ。魔法道具の類か?」

 

「そう思うか?」

 

「まぁ、普通そう思うけど。」

 

葉月が合図すると水壺は戻ってきた

 

「タネが知りたかったら来るといい。」

 

「ん、まぁ暇だし行ってみようかな」

 

葉月は家まで戻って、貯水槽に水壺を置いた、すると水壺から先程の水が溢れ出し、貯水槽から溢れるギリギリまで水が入った

 

その後水壺は破片も残さず消滅した。

 

「え?壺が無くなった…?」

 

「今の壺は幻術。幻の一種だ。水は本物だぞ。」

 

「それじゃ、幻の中に水が入ってたってこと?」

 

「そうなる。幻であれば際限無く吸い込める、ほしい分だけ出して後は消してしまえばいい。かなり便利だ」

 

「消えた水はどうなったの?」

 

「幻と一緒に消えるから、どこにも無い。壺に残った分は無駄になってしまうな」

 

「まぁ、川の水だからそんなに気にしなくてもいいか」

 

「だな。」

 

「ここ、あんたの家なの?」

 

「そうだ。川からも近いし土壌もいいから作物もよく育つ、」

 

「宿舎はどうしたのよ?」

 

「あれは、主に哨戒天狗用だろ。」

 

「そうだけど、あなた階級無しでしょ?宿舎の在籍あるはずなのに個人宅持ってるなんて何者なの?」

 

「階級無し、ああ、そうか。そんなのもあったな。」

 

「えっ?もしかしてあんた…?」

 

「俺は哨戒天狗じゃないし、山の大天狗の監視から外れてるんだよ」

 

「まさかはぐれ…?!本当に居たのね!」

 

「ちなみに俺は大天狗公認はぐれ、無意味に捕まって連行されたことが何度もあるが、お咎めは喰らったことないしその場で解放、ご帰宅だったぞ」

 

「そうなんだ。」

 

「んで、お前はどうするんだ。連行してみるか?」

 

「別に、連れて行ったところで無意味ならいいわ、それに私今日休みだし。」

 

「そりゃ、よかった。無駄な時間過ごさなくて住むよ」

 

「そうね。無駄な時間ねぇ」

 

「飯くらい食っていくか丁度日も高いし、そろそろ昼飯にしようと思ってたんだ。」

 

「おっ、それなら、お言葉に甘えようかな。」

 

葉月は女天狗に昼飯をご馳走し。

女天狗は満足したところで葉月の家を後にした。

 

 

 

「名前聞いてなかったな。」

 

そう呟いた

 

……

 

葉月の家に一人の来客が来ていた。

 

「おーい、いるか!」

 

「はーい、少しお待ちー」

 

玄関のドアの先にいたのは…

 

「おや、こりゃ驚いたなぁ」

 

「久しぶりだな、葉月よ。」

 

「大天狗さんが、こんなところまでどうしたんですかね、まぁ上がって、お茶出しますよ」

 

「うむ、お邪魔する」

 

二人は机に面と向かって座る

 

「んで、どうしたんで」

 

「ああ、先日はぐれの報告があった。」

 

「へぇ、はぐれの報告、それが?」

 

「それがな…ある哨戒天狗が報告を寄こしたのだが…報告を寄こした天狗の同期の天狗とその上司が囚われてしまったそうなのだ。」

 

「普通は逆だな。おかしいと思うぞ」

 

「報告によれば…鬼と面と向かって戦えるほどの実力者とか。実際のところどうかわからんが、私でも鬼の実力を知らん、それ故に実際の実力がどれほどかわからぬ。」

 

「単刀直入いえば、俺に行ってほしいと」

 

「そうだ。以前鬼と戦ったと聞く、それにはぐれであるお主であれば騙しを効かせて助ける事もできると思うだろうからな。最悪、はぐれのものを殺してしまってもいい。」

 

「まぁ、あんたの直々のお願いならばいいか、それにお願いってのは断れない性格だしな。こういう面倒そうなの聞いて真面目に引き受けたくなってしまうんだよ。」

 

「おお、助けてくれるか」

 

「そういうことだ、詳しい話は?、ここでできるなら早いが」

 

「うむ、北山の中腹ほどの検問所の近くで事は起きた。はぐれは検問所を定期的に確認しに来てははぐれを増やそうとしているのだろう。検問所は新人が多いからな、厄介なのだ」

 

「んじゃ、まずは検問所までいきますか」

 

 

大天狗は他にも用事があると、そのまま別れた。

 

話をしていた検問所の近くまで着くと、

葉月の後ろから何かが追ってきていた。

 

検問所の前、獣道からそれて木陰に行くと

葉月の天狗が話しかけてきた。

 

「おっ、お前さんは新人かな?」

 

「んあ?新人だったらどうしたよ。」

 

「こっち来ないか、とっておきの訓練施設があんだよ。」

 

「んー。訓練は間に合ってんで、俺はいいや。」

 

「いやいや、あんた、階級無しだろ?天狗社会の甘ったるい訓練より、もっと身につくのがあるんだよ。」

 

「へぇ。それは鬼にも勝てるくらいのか?」

 

「そうだなぁ、本人次第でそうかも知れないぞ、」

 

「それじゃ、その話乗って見ようかな。」

 

「へへ、こっちだぜ。」

 

名も名乗らない天狗についていくと、

洞窟の中に連れて行かれ、

そこには何人もの階級無しが集まり、厳しい訓練をさせられていた、

 

「なるほど、階級無しからこの訓練なら、場合によっては宝石みたいな実力は手に入るな。」

 

「だろ?あんさんもどうだい?」

 

「ちなみにあんたも相当の実力を持ってるんだよな?」

 

「そりゃ、もちろん。」

 

「それじゃ、俺に試してくれないか。」

 

「いやぁ、階級無しだろ?それじゃ、底が知れてるぜ。」

 

「階級無しがどれだけできるか試すのもあんたら、【はぐれ訓練師】の仕事だろ。」

 

「…わかってんだな。」

 

「そりゃ、こんなの見せられたら察しもつくよ」

 

「まぁ、こっち来いよ」

 

言われた通りについていくと、大きな広間に着いた

 

「へぇ、こりゃまた立派だな」

 

「まぁな、古い施設だが、まだ十分に使える。それじゃ、容赦はしねえぞ」

 

「かかってこいよ。」

 

天狗は哨戒天狗用の刀を抜き襲いかかる、

一端の天狗とは比べ物にならないほど。

技などは磨かれている。

しかしどれも葉月には届かなかった

 

「ほほぉ、こりゃなかなかだね」

 

「お前…?何もんだ」

 

「俺か?あんたと同じはぐれだよ。」

 

「へぇ、」

 

天狗の攻撃の隙をついて、葉月は一発腹に拳をぶつけた

 

「うぐっ!」

 

「鬼に教わった拳骨は効いたか?」

 

「何言ってんだ、おまえ…」

 

「本当に鬼に勝ちたいならまずは俺に勝ってみろ。」

「舐めやがって…!」

 

天狗はまた襲いかかるが。

葉月は幻術を駆使して。

天狗の視界を奪い、周囲の音を消した

 

「なっ!」

 

葉月は視界を戻し、天狗の前に幻影を纏って姿を現した。

 

「お、お前!その姿は!」

 

幻影の葉月の姿はまさに鬼であった

 

「な、なんだよ…」

 

天狗は何も出来ず膝から崩れ落ちた。

 

「はぐれねぇ。」

 

葉月は幻影を振り払って、幻術を使い天狗を縛り付けた。

 

「ま、途中からわかってたと思うが俺はあんたらの存在を知っていて近寄らせてもらった。そんでこの通りだ。」

 

「鬼に、勝たなきゃいけねぇんだ。」

 

「鬼に勝ってどうする。第一、お前は山を支配していた鬼を知っているのか。」

 

「話を聞いただけだ。でも、山で好き勝手やって挙句どこかに消えた、仕返しを狙ってたやつはいたはずだ、それに、鬼と面と向かって戦って負けたやつがいるって話なら尚更なんだよ。」

 

「その、鬼と戦ったってのは俺だな」

 

「は?そんなわけ無いだろう。何年も前だ、はぐれが戦ったなんて聞いてないからな、嘘も大概に…」

 

「嘘なんかじゃないね。」

 

横槍を指してきたのは、話題になっていた鬼

 

伊吹萃香だった。

 

「お、こりゃ有名人のご登場だな」

 

「いやぁ、有名人なんかじゃないよー。ただの鬼さ」

 

天狗は唖然とした表情でただ驚いていた

 

「お前が。鬼?」

 

「そうだよ。」

 

「こいつが鬼、それで俺はこいつに負けた」

 

「そんな、こんなガキが鬼なわけ、その角も、どうせ飾りなんだろ。」

 

「まぁ、さっき俺が見せた幻影からすれば可愛らしいしな、ちっこいし、

 

「ちっこいは余分だぞ」

 

「ふざけてる…」

 

「お前、鬼に勝ちたいんだろ?やって見るか?」

 

「がおー、鬼だぞー、食べちゃうぞー。なんてな、ははははは!」

 

「どうだ?こんな可愛らしくて、ちっこくて、愛嬌たっぷりの鬼だぞ。」

 

「だから、ちっこいは余分だ」

 

「もう…いいや…」

 

「おっ、諦めた」

 

「それがいい。」

 

その後、萃香がはぐれ達を見張っているうちに葉月はほかの天狗を呼び寄せ、主犯となるはぐれ達を捉えた。

 

無理矢理連れて行かれた天狗達はそれぞれの配属先に戻り、仕事に戻ることができた。

中には厳しい訓練の末、実力をつけたものもいるが、しばらくははぐれに関わったというペナルティのせいで新人のままらしい

 

北山の検問所を訪れると助けられた天狗の中に葉月を知る天狗がいた。

 

「あっ!あんたは!」

 

「この前の天狗か」

 

以前川で会った女天狗だ。

 

「まさかあんたが助けてくれるなんて思わなかった。ありがとう。」

 

「お礼は俺じゃなくて、大天狗と、お前の部下達に言ってやれ。」

 

「なんで大天狗様?」

 

「あいつが俺にお願いしてきたんだ」

 

「はぐれに…大天狗様が…」

 

「はぐれっていっても、俺はあくまではぐれの肩書がある程度だ。呼び出されたら出ていくからな。」

 

「ねぇ、あんた名前は?」

 

「葉月。」

 

「葉月?葉月ってあの…鬼と戦ったって…」

 

「まぁ、そうだな。」

 

「あ、あんただったのか…」

 

「どうした?」

 

「ねぇ!あんたって鬼に勝てるの?」

 

「鬼に勝ってどうしてほしいんだ」

 

「報復よ!私の両親を痛めつけた罰を与えてやりたいの!どんな形でもいいから!」

 

「呆れた、またそれか」

 

「呆れたって何!鬼のせいで私の両親は!」

 

「両親はどうなったよ?」

 

「両親は…あれ…あのあと普通に暮らしてて…なんで…あれ?」

 

女天狗からは涙が流れ始めていた

 

「確かにあいつは横暴なことをした。それは変えられない事実だ、でも、必ずしも悪事だったかどうかといえばそうではないんだ。」

 

「でも、みんな辛い思いをしたのよ!」

 

「それくらい天狗達はだらけてたんだろ?食って遊ぶだけようなやつもいれば仕事を部下に投げつけて遊び呆けるやつもいる。当時の俺の上司は女遊びばかりだ。それでも尚腐敗に向かっていたところに鬼が来て。だらけた天狗達を支配した」

 

「…なんで…」

 

「支配しないといけない理由があったとしたら?」

 

「理由…そんなのあるわけないわ。」

 

「そうだな、あいつが誰の知り合いか知ってるか?」

 

「誰なの?」

 

「博麗霊夢だ、あの巫女だ。」

 

「なっ…!」

 

「巫女の知り合いとなれば妖怪の賢者もそこに交える。巫女と賢者が動いていたら鬼が起こしたことなんて可愛いものだ。」

 

「下手したら巫女がくる…」

 

「洒落にならないことが起こるな」

 

「でもなんで鬼が…」

 

「あの鬼はここに来てちょっとした異変を起こしたんだ、結果的に霊夢が解決したって聞いてるけど、」

 

「それで、今度は山をってことね。」

 

「いやいや、霊夢が解決したあと、鬼と霊夢は仲良くなって。山を紹介されたらしいんだ。それで、だらけている天狗を見て行動に移したんだろ。」

 

「なんで、山を」

 

「霊夢は幻想郷を護るために生きてる、それを少しでも手伝うって思ったらしい。幻想郷の中でもかなり大きな存在である山が駄目になったら、大変なことになるだろ、霊夢や賢者が動いてもいいが、天狗がどうなるか。」

 

「鬼が…私達のために?」

 

「だな。」

 

「でも…暴力振るったり、圧力かけたりしたことには変わりないわ。」

 

「あいつが無意味にそんなことするとは思えないが。まぁ何か意味があってのことだと思うぞ。そこまではわからん、それに自己防衛だってあり得るしな」

 

「もう。話聞いてたら、すっかり気が失せたわ。」

 

「萃香を悪く思わないでやってくれ。幻想郷に来るまでは独りでいることのほうが多かったらしいからな。良い印象ではなかったが名の知れた存在に慣れたのが嬉しかったんだろうと思うんだ。」

 

「そうよね…よく考えたら汚れ役みたいな感じよね…正しい方向性に戻そうとして、結果的良くなっても評価は最低みたいで。なんだか悪いことした気分だわ」

 

「まぁ、合ったときにでも仲良くしてやってくれ、可愛らしくてちっこくて愛嬌たっぷりの鬼だ、余程酔っ払ってなければ親しみやすいからな。」

 

「わかったわ、とにかく改めてありがとう」

 

女天狗は検問所を後にして、山を登っていった。

 

 

葉月は家に戻ると大天狗が軒先で待っていた

 

「おお、戻ったか」

 

「どうしました?」

 

「いや、無事はぐれの一件が終わったと椛から聞いたのでな。礼の品を持ってきたんだが。」

 

「ああ、ご丁寧にどうも。」

 

「あと、もう一つ、品ではないしあまり気のいい話しではないのだが…」

 

「なんですか?」

 

「近日、よく鬼を見かける、その鬼がどうも昔暴れていた鬼だそうで。お前さんにとってあの鬼は…」

 

「その話はしないって約束したでしょ。別にもう恨んでなんかないですよ、親離れはいつかしなきゃいけなかったんですし。」

 

「うむ、しかし…」

 

「今になってあいつと会って解ったんですけどね。俺はあいつのこと別に嫌いじゃないんですよ。恨みとか憎しみとかそういうの不思議とないですし。割と可愛らしいやつだと思ってますから」

 

「お主がそう言うなら。まぁ、水に流せておるのだな。いらぬ心配だったようだ。」

 

「それに、両親が亡くなったのも見届けたし、悔いはないですよ。」

 

「うむ、わかった!また何か手に負えないことでも起きたらそのときはよろしく頼むぞ。」

 

「まぁ、その時があればですけどね。」

 

大天狗は家をあとにして帰っていった。

その数分にも満たないくらいに、一人の少女が家に来た。

 

「ずっと隠れてたんだろ?」

 

「まぁ…出るタイミングは見計らうよ。」

 

「酒でも飲んでくか?時間もあるしツマミくらい用意してやるよ。」

 

「それなら、少しお邪魔するよ。」

 

二人は家に入ると萃香は机に向かって座って待っていた。

 

「ほら、煮付けと干し魚。」

 

「おお。すまないね」

 

「俺は酒は飲まないからなぁ、」

 

「飲めないの間違いだろう?」

 

「そうとも言う。昔っから弱いんだ。弱い酒でもすぐ倒れるくらいに弱い。」

 

「うむ、弱いなら無理に飲むものでもないからな」

 

「それにしても今日はやけに大人しいじゃないか」

 

「いやまぁ…あんな話聞いたあとに呑気にするのもバチが当たると思ってな」

 

「ああいいよそういうのは、俺はお前のことは好きだし、ここに来ることは拒まないからな。好きにしてくれていい」

 

「その好きってのは…」

 

「単純に異性としてだな」

 

「しれっとそういうことを言うな!恥ずかしいだろう…」

 

「久々に会ったからだろうな、お前とこうして話していると楽しかったりするんだ。」

 

「お主なぁ…」

 

「まぁ、単に好きって伝えても、そりゃ迷惑だよな。」

 

「もうちょぅとなんか前振りはないのか。」

 

「不器用だからな。」

 

「嘘を言うな、演技も幻術も仕事も一人前のくせに何をいうか。」

 

「それとこれとは別だろう?」

 

「そうだが…ああもう…酔が覚めるわ!」

 

「ありゃ、それはすまなかったな。」

 

「本当に私のことが好きなのか?」

 

「まだ表面的にしか見れてない状態だけど、今はそう思ってる。」

 

「なんだ、えっと…どうすればいいのかわからないぞ…」

 

「気にしなくてもいい、会いたくなったときに来てくれればいい。俺も無理は言わない」

 

「なんでだ?たまにでいいのか?」

 

「ああ、勿論俺は一緒にいたいと思う、けどな、俺は天狗でお前は鬼だ、種族のことや昔の山のこともある。」

 

「それはそうだが。」

 

「それに、萃香は他の身内の事もあるだろう。」

 

「そんなのは、どうにでもなるが」

 

「その時が来たら。でいい、俺もいきなりは困るから。」

 

「わかった。」

 

「あっ、ツマミ、上手くできてるか?」

 

「ああ、味も濃くて風味良しだからな。酒によく合う。」

 

「そりゃよかった」

 

「お前の作る飯は本当にうまいよ」

 

「おう、ありがとうな」

 

「その…なんだ。私もいつかお返ししないとな」

 

「無理にしなくてもいい、俺が好きにやっていることだ、」

 

「いつか、私もここに住ませてもらおうかな」

 

「構わないが、大変だぞ?」

 

「お主と同じ暮らしをするんだ。それくらいの覚悟はあるさ。」

 

「そうなれば、少しは楽になりそうだ。」

 

二人はその後も談笑を続けていた。

 

 

その数日後、山に鬼が住んでいるという噂を広がったそうだ。

 




元号変わってもどんどん書きます!


また会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

二人のチルノ・潜在する異変

どうも。悠樹です。

チルノのお話、多分これで五回目くらいだと思う。

偏りありすぎるだろうか…

ではごゆっくり


「ふぁ〜ぁ〜…」

 

「チルノちゃんさっきからあくびばかり。眠たいの?」

 

「うーん。ちょっとお昼寝しようかな」

 

「そっか。お昼寝しよ、」

 

「うん。」

 

霧の湖の畔、岩陰で横になるチルノと大妖精。

 

二人は暫くの間お昼寝をしている。

 

はずだった。

 

……

 

「うーん…」

 

チルノは寝心地が悪く。目が覚めた

 

「うん?ん?えっ?!」

 

しかし…目が覚めて見えたのは木と雪ばかり。

 

「えっ?これどうなってるの?!」

 

寝ていたはずの岩陰もなく、隣に大妖精もいない。

 

「何よこれ…?」

 

ただ、困惑するばかりだった。

 

「おい!お前さん無事か!」

 

近くから声がする

 

「だ、だれ!」

 

「近くの村の者だよ。お前さん、雪の中で寝ちまって無事で良かったよ」

 

「村…?」

 

「おう、すぐ近くに村があるよ、ここらは賊が出るから危ないからね、ついておいで」

 

「ちょっとまって!人里のことでしょ?それに賊ってどういうことよ!」

 

「人里?お前さんこの辺の子じゃねぇのか?」

 

「そうよ!あたいは幻想郷の妖精なのよ!」

 

「幻想郷の妖精…?聞いたことはないが…とりあえず詳しい事は村で話そう、さっきも賊が徘徊してるのを見たからな危ない」

 

「う、うん。」

 

疑心暗鬼になりながらも、男についていくチルノ、

 

少し歩くと人が頻繁に歩いたとされる道につく。

 

「あとは道なりに行くだけだな。」

 

「なんにもない…」

 

「幻想郷ってのはどんな感じなんだ?」

 

「どんな感じか…?うーん…説明しにくいなぁ…」

 

「そうかぁ…まぁ後でいいか、ところで、お前さんそんな服で寒くないか?」

 

「寒くないよ、あたいは氷の妖精だから!」

 

「妖精ってのはそういうもんなのか?」

 

「んー、あたいは寒さに強いけど、そうじゃない妖怪とか妖精はいるよ?」

 

「お前さんが特別寒いのに強いってことだな」

 

「そういうこと!」

 

他愛もない会話をしていると、歩いている場所が次第に雪の溶けた道になっていた。

 

「ん…ちょっと待て」

 

「どうしたの?」

 

「足跡が多い…見慣れない足跡だな?」

 

「まさか、さっきの賊ってやつなんじゃないの」

 

「かもしれない。どこかに潜んでいるか、先回りされてるのかもな、警戒していこう」

 

「わかった。」

 

「この辺の木々は人一人くらいなら簡単に隠せてしまうくらいに大きい。足元の雪に足跡がないか注意して見るんだ」

 

と、言われてすぐ、チルノはそれらしきものを見つけてしまい、言葉も出ず男の服を引っ張った。

 

「ん?どうした?」

 

「あれって…そう?」

 

「…移動したあとならありがたいが」

 

「やばいよね…」

 

「相当な、走れるか。」

 

「飛べるからついていける。」

 

「すぐ走るぞ!」

 

男は手に持っていた猟銃を肩にかけて走り始めた。チルノは氷の羽を出して後ろを飛んでついていく。

 

ふと振り返ると人影が何人が追いかけてきていた

 

「やっぱり来てたよ!」

 

「何人くらいいる!」

 

「4人くらい!」

 

「分が悪い…」

 

「なら追い返す!」

 

「何?!」

 

チルノはその場で止まって振り返る

 

「おい無茶だ!何するつもりだ!」

 

「こういうことさ!」

 

チルノは構えた。

 

「凍っちゃえ!パーフェクトフリーズ!」

 

弾幕は見事に命中し、追いかけてきていた者達は氷に包まれ身動きが取れなくなった

 

「お前?何もんだ?」

 

「いいから逃げよ!」

 

「そうだな!」

 

二人は一気に距離を離して無事に村の前まで辿り着いた。

 

「おかえり、アル、息を荒げてどうした。それに隣の子は?」

 

「はぁ…ああ。途中でこの子を見つけてね、村に戻るときに賊に付けられて追いかけられてたんだが、この子に助けられたんだ。」

 

「間一髪だったわけか、気をつけろよ」

 

「ああ、一先ずこの子も村に入れてくれ」

 

「荷物検査は?」

 

「この格好で凶器云々を持っている風にみえるか。」

 

「いや、ないな、さあ、ようこそいらっしゃい」

 

アルと呼ばれる男とチルノは村に入った

 

「案外、広いね」

 

「人数の割には家畜と畑が充実してるからな、土地は余ってるよ」

 

「そっか、村って聞くと細々としてるイメージがあったから、なんかごめん」

 

「いや、謝ることじゃないさ、」

 

「アルや、おかえり、どうだったかね」

 

「いや、見当たらなかった。もう諦めるよ」

 

「そうかい…」

 

「何か探してたの?」

 

「家畜の豚の子が一匹逃げ出したみたいでね。何時間か前だからもう見つけるのは難しい、生きているかも怪しいしな。」

 

「賊に捕まったんじゃない?」

 

「その可能性もある」

 

「仕方あるまい、家畜の余裕はあるから、一匹逃したところで問題なかろう」

 

「まぁ、そうだな。」

 

「そういえば、名前を聞いてなかったな」

 

「あたいはチルノ!氷の妖精よ!」

 

「チルノとな…?」

 

「チルノ?」

 

「そうよ!ここって幻想郷じゃないの?」

 

「幻想郷…なるほど、賢者と同じ世界の住人なんじゃな」

 

「わかるの?」

 

「昔、わしがまだ若い頃じゃな、この村はある妖怪に助けられたことがあってな、その妖怪は自分のことを妖怪の賢者と言っていたのだ、結局、あやつは幻想郷に帰ると言ってその後から姿を見せんのだ。」

 

「それよりも、チルノって…」

 

「うむ。珍しいことがあるものじゃ」

 

「あたいがなにか?」

 

「俺の妹と同じ名前なんだ。」

 

「そうなんだね。」

 

「ああ。」

 

「アル、この子はお前のところで預かるといい。」

 

「俺か?まぁ構わないけど」

 

「幻想郷に戻るにも時間がかかるじゃろう、それ以前に戻る方法も探さねばならん。賢者が迎えに来れるなら話は早いのだが。」

 

「気づいてくれたら、迎えに来てくれると思う」

 

「うむ。それまではここにいるといい。」

 

「わかった。」

 

老婆と別れチルノはアルについていく。

 

「ここだ、さあ上がって。」

 

「おじゃまします。」

 

家の中に入ると良い匂いがしていた。

 

「ああ、もうそんな時間か。」

 

「美味しそうな匂い、お腹空いちゃうな」

 

「妖精でも腹は空くんだな。」

 

「まぁね。」

 

台所から聞こえる音が静まると少女が一人出迎えてきた

 

「お兄ちゃんおかえり」

 

「チルノ、ただいま。」

 

「あれ、お客さん?」

 

「えっと、こんにちは、でいいかな。」

 

「は、はい!こんにちは!」

 

「この子、お前と同じチルノって言うんだ。」

 

「えっ?」

 

「初めまして、あたいはチルノ、氷の妖精よ、よろしくね」

 

「う、うん、よろしくねチルノちゃん」

 

「う〜ん…」

 

「どうしたの?お兄ちゃん」

 

「ややこしくなりそうだなって」

 

「かもしれないね…」

 

二人のチルノは顔を悩ませた

 

「困ったね。」

 

「今日偶然なのか、二人とも青い服だし、身長は俺の妹が高いけど。」

 

「とりあえずご飯作ってくるから、机の用意お願い」

 

「ああわかった、ありがとう」

 

二人は食卓用の机を用意して準備をしていた。

 

「あっ、氷の妖精、なんだよな。」

 

「うん」

 

「熱いものとか食べれるのか?」

 

「熱すぎなければ大丈夫だけど。」

 

「そうか、」

 

「おまたせ。」

 

妹チルノが持ってきたのは大きめの土鍋

蓋を開けると湯気が立ち、とてもいい匂いがする。

 

「わぁ!すごく美味しそう!」

 

「久々の鍋だな」

 

「うん、少なめに作るつもりだったんだけどお客さんもいるし、追加したんだ」

 

「そうなんだ、ありがとう」

 

三人は机に向かい鍋から具を取り食べ始める

 

「んー!美味しい!」

 

氷チルノは満足気に食べ続ける

 

「ふふ、喜んでもらえて良かった」

 

「うん、うまいよ」

 

「お兄ちゃんも、ありがとう」

 

 

「二人で暮らしてるんだね。」

 

「ああ、両親は村が賊に襲われたときに亡くなっちまった。」

 

「私はその時まだ赤ん坊だったから、顔を覚えてないし…家族って思えるのはお兄ちゃんだけ。」

 

「でも、チルノも家族と言える人はいないんだよな。」

 

二人のチルノは同時にアルを見た

 

「うん、妖精チルノの方」

 

「確かに居ないけど、大ちゃんやレティさん。それに、幻想郷のみんながいるから寂しくはないかな。」

 

「そうか、仲はいいんだな。」

 

「私もお兄ちゃん以外に村のみんなと仲いいから同じかな?。」

 

「そうだな。村のみんなも仲いいからな」

 

「同じだね」

 

三人は談笑しながら食事をしていた。

この村の成り立ち、兄弟の話、幻想郷の話、それぞれ話していた。

 

「うーん!お腹いっぱい」

 

「美味しかったぁごちそうさま。」

 

「いやぁ、こんなに食べたのは久々だ」

 

三人は満足していた

 

「片付けないとね」

 

妹チルノは食器を台所に持っていく

 

「水冷たいけど平気か?」

 

「お水冷たいなら、手伝うよ」

 

「いいの?」

 

「あたいは氷の妖精だから、冷たいのとか寒いのには強いんだ」

 

「そっか、ならお願いしようかな」

 

氷チルノは教えてもらいながら食器洗いなどを手伝っていた、

 

「ほんとに平気なんだね」

 

「まあね。」

 

「ありがとう、もうあとは自分でやるから休んでていいよ」

 

「うん、わかった。」

 

氷チルノは部屋に戻ると布団が敷かれていた。

 

「もうお布団敷くの?」

 

「外も暗いからな、俺も走ったりして疲れたし腹一杯で眠たくなってきた。」

 

妹チルノも部屋に戻ってきていた

 

「お兄ちゃんはお腹いっぱいになるとすぐ眠たくなるよね。」

 

「あんまりよくないけど眠いのを我慢するのも良くないなぁ」

 

アルは布団に潜り込んだ

 

「おやすみ。」

 

「う、うん、おやすみ」

 

三人は別々の布団で寝た。

 

 

夜中、氷チルノは目が覚めてしまった。

 

「う~ん、んぅ?」

 

気がつくと同じ布団に妹チルノが居た。

 

「えっと…どうしよう」

 

「少しだけ…いいかな…」

 

「う、うん。」

 

妹チルノは氷チルノの隣の腕を掴んでいた

 

「どうしたの。」

 

「お兄ちゃんと布団を分けて寝るようになってから久しぶりで。」

 

「寂しかったの?」

 

「うん。」

 

「そっか。」

 

「チルノちゃんは寂しくない?」

 

「どうして?」

 

「だって、幻想郷のみんなと会えないのかもしれないんだよ?」

 

「そんなことない、いつか大ちゃんも気づいてくれる、賢者…紫さんも気づいてくれるはずだから。」

 

「そう、言い切れるんだね」

 

「だって、あたいは幻想郷の住人なのよ、突然消えたら誰かしら気づくはずなんだもん。」

 

「そっかそうだよね。」

 

「あたいは寂しくても我慢するって決めてるからね」

 

「なんで?」

 

「だって、寂しくて泣いても、何も変わらないもん、その分何かしていたほうが寂しさも紛らわすことができるから。泣いてたら強くなんてなれないし…あっでも、負けて悔しくて泣くことはあるかな。でも負けたってことはもっと強くなれるって思えるから、泣くよりかは笑顔で元気でいたいかな」

 

「チルノちゃんは強いね…」

 

「そうよ。あたいは幻想郷でとっても強いって有名なんだから。」

 

「そっか話聞いてると、私も元気になっちゃうな」

 

「うんうん、元気が一番だよ。」

 

「話聞いてくれてありがとう、私戻るね。」

 

「うん、おやすみ」

 

妹チルノは自分の布団に戻り寝入った

 

「本当は寂しいし帰れるかわからなくて不安なんだけどね…」

 

氷チルノは泣きそうになりながらも

そう呟いて眠った

 

 

 

「うーん…何なの…?」

 

翌日。チルノは目が覚めると外が騒がしいことに気がついた。

騒がしいと言っても聞こえる音からは楽しそうな風景は思い浮かばなかった

 

「お祭りではなさそう…なんだろう?」

 

窓を除くと刃物や棍棒を持った集団がいた。

 

「え?まさか…」

 

「チルノちゃん隠れて…」

 

妹チルノは小声で氷チルノに呼びかけた。

 

「でも、村のみんなは?」

 

「隠れてると思うから、早く!」

 

その時…氷チルノは賊の一人と目が合った。

 

「あっ、目が合った…やば…」

 

「チルノちゃん…」

 

賊は氷チルノ目掛けて向かってくる。

とっさに家を飛び出し広場の高台に乗る

 

「あんたら!この村にひどいことしたら!あたいが許さないからね!」

 

チルノの言葉を聞いて賊の中でも一番な派手な服装をした男が話しかけてきた。

 

「ほ〜?ガキが何ができるんだ?」

 

「こういうことさ!」

 

チルノは、たまたま飛んでいた野鳥に向かって弾幕を飛ばし、野鳥を氷漬けにした。

 

「何もんだてめぇ」

 

「幻想郷の妖精!チルノだよ!」

 

「妖精だぁ?またおもしれえこと言うじゃねえか」

 

「痛い目に遭う前に早く出ていけ!」

 

「やれるもんなら、やってみやがれ。」

 

「どうなっても知らない!」

 

チルノは氷の羽を出して空に飛び上がる。

 

「何?!飛ぶのは聞いてねぇぞ!」

 

「妖精だって言ったでしょ!」

 

「空に飛ばれちゃ何もできねぇ!退避!退避だ!隠れろ!」

 

「逃さないよ!コールドディヴィニティ!」

 

チルノが放った弾幕は賊達に命中した。

 

「なんだこれ…これが…この前痛手を負って帰ってきた奴ら言ってい…た…」

 

賊達は氷漬けになった。

 

広場が静かになったことに気づいて、村の人々達は家から出てきた。

 

「これは一体…?」

 

老婆が広場の賊達に気づく

 

「賊達が襲ってきたんでしょ。あたいが氷漬けにしたの。」

 

「これでは…死んでしまうのでは…」

 

「大丈夫。確かに氷みたいに冷たいけど、冷凍保存みたいな感じだから死んじゃうことはないよ」

(いわゆるコールドスリープみたいな感じです)

 

「そうか。それならばまぁよいか」

 

「チルノちゃんは、怪我はない?」

 

「あたいは大丈夫だよ、怪我一つないから!」

 

「よかっ…っ?!」

 

弾幕課から逃げ隠れていた賊が妹チルノを捕らえた。

 

「い、嫌っ!」

 

「おとなしくしやがれ!」

 

賊は妹チルノに刃物を突きつける

 

「チルノ!」

 

アルが飛び出し賊に立ち向かおうとする

 

「来るんじゃねぇ!」

 

賊は近くまで来たアルに刃物を投げつけた。

刃物はアルの足に当たってしまい、その場でしゃがみこんでしまった。

 

「お兄ちゃん!」

 

「チ、チルノ…」

 

「そこの妖精も!妙なことをすればこのガキがどうなっても知らねぇぞ!」

 

「せこい手使って…」

 

「空を飛べるお前が言うな!」

 

「いいからチルノちゃんを離しなさい!」

 

「へっ!返してほしけりゃついてきな!」

 

賊はそう言うと村を出て走り去って行った

 

「チルノ…今行くぞ…くっ…」

 

「お兄さんは休んでて!足が使えないんじゃだめだよ」

 

「でも…」

 

その時、チルノは何かに気がついて上を向くと、チルノは確信が持てるあるものが見えた

 

「私が行くからまってて。大丈夫、絶対帰ってくるから」

 

そう言ってチルノは村を飛び出した。

 

………

 

「暇ねえ…」

 

「なぁ、暇なら私と弾幕ごっこしようぜ?」

 

「やだ面倒くさい却下」

 

「なんだよ、暇なんだろ?」

 

「魔理沙との弾幕ごっこはただただ疲れるだけだからいやよ。」

 

「霊夢は釣れないなぁ。最近マスパを撃つ相手がいなくて詰まらないんだよなぁ」

 

「あんなの頻繁に撃つほうがおかしいわよ」

 

そんないつも通りのやり取りをしていた。

 

「お二人とも暇そうね」

 

そこにやってきたのは八雲紫だった。

 

「紫、珍しいわねここに来るなんて」

 

「ちょっと協力者を探してたのよ」

 

「協力者?」

 

「ちょうどいいから二人とも手伝いなさい、厚着をしてね。」

 

紫は二人の服に似合う上着を渡した

 

「何だよこれ、こんな上着来たら暑いぜ」

 

「すぐにわかるわ、ほら付いてきて。」

 

紫は霊夢達を連れてスキマに入って行った。

 

…………

 

チルノはひたすら雪道を進んでいた。

僅かに聞こえる妹チルノの声と真新しい足跡を頼りに追いかける。

 

「絶対助けてみせる!待ってて!ってわっ!」

 

速度をつけていると、目の前にスキマが現れ勢いよく飛び込んでしまった

 

「ふふっ、妖精はどこに行っても元気ね」

 

「紫さん!迎えに来たの?」

 

「そうよ、その前にやることがあるでしょう?」

 

「うん!手伝ってくれる?」

 

「もちろんよ。そのために他の二人も連れてきたのだから。」

 

「二人?」

 

「霊夢と魔理沙、先に賊達の根城に向かってもらってるわ。」

 

「ありがとう!」

 

「ほら、行くわよ」

 

スキマを抜けると崖まで来ていた。

 

「二人とも、凄いところに追い込んでるわね」

 

「紫、どこ行ってたのよ」

 

「主役を連れてきたわ。」

 

「助けに来たよ!チルノちゃん!」

 

「何言ってんだお前?」

 

魔理沙が氷チルノの発言に混乱していた

 

「捕まってる女の子はチルノって名前なの。」

 

「ああ、そういうことか」

 

「面白いこともあるものね」

 

賊のリーダーは追い詰められながらも、ずっとやり取りを眺めていた

 

「っじゃなくて!チルノちゃんを離して!」

 

「ふん!返してほしければ自力で助けてやるんだな!」

 

「あんたねぇ、立場わかってんだったら早く話しなさいよ。」

 

「うるせぇ!」

 

「うーんテンプレみたいな悪役だな」

 

魔理沙が呟く

 

「めんどくせー!こうなったらヤケだ!」

 

賊のリーダーは妹チルノを崖から投げ飛ばし、自分自身は刃物を腹に差し込み自害した。

 

「あんた何してんのよ!」

 

氷チルノは他の三人より早く動き、同じ崖から飛び降りた。

 

「絶対助ける!」

 

妹チルノより早く速度を出して落ちる。体を掴んで地面に付いたとき自分が下になるように姿勢を整える。

 

霊夢は亜空穴を使って二人のチルノを受け止め、紫は落ちる三人を回収するようにスキマを出す。スキマから出ると魔理沙の箒の上で、魔理沙は三人を上手く受け止めた。

 

「無事のようね」

 

「ほんとどうなるかと思ったわ」

 

「チルノちゃん?大丈夫?気絶してるのかな」

 

「心配しなくても生きてるぜ、ちょっとしたショックで意識がないだけだな」

 

「よかった…」

 

「私達はもういいわよね。帰っていい?」

 

「ええ、ありがとう」

 

霊夢と魔理沙はスキマを通って先に幻想郷に帰っていった

 

チルノ達は村に戻ると村の人達が集ってきた。

 

「無事なのか?」

 

「うん!」

 

老婆は紫を見て話しかけた

 

「お前は…賢者か…?」

 

「あら、何年も前のことを覚えている人間がいたのね」

 

「わしが幼かった頃のことじゃ、懐かしい、お主は変わらぬのだなぁ」

 

「私は変わらないわよ」

 

そんな会話の傍ら、氷チルノは妹チルノをおぶってアルのところまで行っていた。

 

「アルさん?起きてる?」

 

「チルノか?」

 

「助けて帰ってきたよ」

 

「チルノ…ああ良かった…本当にありがとう…」

 

兄の声を聞いたからか妹チルノは目を覚ます。

 

「ここは…家…?」

 

「うん帰ってきたんだよ」

 

「チルノが助けてくれたんだね。」

 

「あたいだけじゃない、紫さんと霊夢と魔理沙も手伝ってくれた。」

 

「チルノちゃん、ありがとう。」

 

「うん!」

 

話を隣で聞いている紫。

区切りがついたと思い話しかける

 

「チルノ、そろそろ帰るわよ」

 

「そうだね、みんな心配してると思うから早く帰らなきゃ」

 

「大妖精が泣いてたわ。」

 

「えっ…あの大ちゃんが…?」

 

「ええ、それも随分大泣きよ」

 

「ちょっと見てみたいかな」

 

「意地悪言ってないで行くわよ」

 

「わかった。」

 

「行っちゃうんだね」

 

「うん、幻想郷に帰るの。」

 

「そっか。」

 

「チルノちゃん。ごめんね。」

 

「ううん、チルノちゃんが居なくなるのは仕方ないよ。お兄ちゃんの足のこともあるし、チルノちゃんがいなくても頑張っていくよ」

 

「うん!それじゃあね!」

 

チルノと紫はスキマに入り、村から出る。

 

少しも歩かないうちにスキマから出るとそこは博麗神社の境内だった

 

「帰ってきたんだね。」

 

「ええ、そうね」

 

「博麗神社…そんなはずないのに懐かしく感じるなぁ。」

 

「ほら、あとは好きにしなさい。」

 

「うん、ありがとう」

 

チルノは紫に礼を言い、霧の湖まで向かった

 

「大ちゃん大丈夫かなぁ。」

 

チルノは空から大妖精を探すと

いつもの昼寝をする岩場にいた。

 

「大ちゃん、ただいま。」

 

「チルノちゃん!」

 

大妖精はすぐさま飛びついた

 

「すっごい心配したよ?大丈夫?怪我してない?」

 

「だ、大丈夫だよ。あたいは強いんだから、そんな簡単に怪我なんかしないよ。」

 

「そ、そうだね。」

 

「ふぁ〜ぁ〜。」

 

「チルノちゃんまたあくびしてー」

 

「うん、頑張ったから疲れちゃったな」

 

「また、お昼寝する?」

 

「そうだね、」

 

岩陰で横になる二人。

大妖精はすぐに寝入ってしまうが

チルノは何故か寝付けずにいた。

 

「眠たいのになぁ…」

 

仕方なく湖を凍らせながら散歩をしていた。

 

「お暇のようね」

 

「またあったね」

 

湖の真ん中で顔を合わせたのは紫だった。

 

「この時間はお昼寝じゃないかしら?」

 

「お昼寝しないときくらいあるよ。紫さんはどうしてここに?」

 

「あなたに話があってきたのよ」

 

「あたいに?」

 

「そうよ。」

 

「話って?」

 

「以前あの村に私が寄ったことがあるというのは知っているわね。」

 

「うん、村を助けたって話だね。」

 

「そう。ただ私自身その事実に驚いているのよね」

 

「なんで?たまたま寄っただけじゃないの?」

 

「いいえ偶然じゃないわ、あなたも同じ理由同じ方法であの場所に行ったのよ。」

 

「同じってことは…」

 

「私も昼寝をして気がついたらあの場所にいた」

 

「やっぱり…」

 

「ただ、いくつか気になるのよ」

 

「あたいも何かおかしいと思うな。」

 

「以前私が居たときも冬で雪が積もっていて、賊達が村を襲っていた。そしてその時会った少女があなたを迎えに来たときに私に話しかけてきた老婆で、名前はレティだったわ。」

 

「あのお婆さんレティって名前だったんだ…」

 

「それだけじゃない。私があの場所にいた時も、昔ある人物がこの村を助けた、と言っていた」

 

「うん。やっぱそうだよね。」

 

「強く関わりすぎると面倒だからすぐ幻想郷に戻ってきたのはいいけど、ずっと引っかかっていたのよ」

 

「同じ体験をしたあたいがいるからこそ何かわかるかもしれないって事でしょ。」

 

「そう何かわかる気がするのよ、また誰かがあの場所に行くことになる可能性があるとも言えるから。何か探らないといけない。」

 

「あたいにはわからないかな」

 

「そうね。私にも確信的な部分は無いだから、探すしかないわ…」

 

「紫さんが頭を悩ませるなんてね」

 

「気づかぬうちに異変が起きていたのかもしれない、そう思うと私としてはあまり好ましくないのよ。大したことないなら思いつめず式にでも処理させるのだけど。異世界が関わるとなるなら話は別、深刻な可能性だってあり得るわけだから」

 

「私にできることはないんじゃないかな…」

 

「直接的にできることはないけれど、あなたはこの幻想郷では知名度があるし吸血鬼のところや人里とか活動範囲が広いでしょから、なにか分かれば協力してほしいわ。」

 

「うん。手伝えそうなことがあったら呼んで。」

 

「ええ、しばらく忙しくなりそうだわ。」

 

紫はスキマに入り込んでどこかに消えた

 

チルノは岩場に戻り横になり眠った

 




繋げ方に困る締まり方になった…

ではまた会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

二人のチルノ・亡霊魔女と妖精

どうも、チルノが大好きなK.です。

ポケモンカードに沼った。
まだ半月経ったかなくらいなのに8万程溶けてる

そんなことより前回の続きのお話です。
チルノと紫という殆ど無いカップリング。
誰がそんなの求めるのかっていう。

ではごゆっくり


八雲紫はあるものを探していた

幻想郷は紫にとって庭の模型図同然だが、それでも見つからないものがあった

 

「まぁ…見当たらないのが当たり前よね。」

 

「何か探されているのですか?」

 

「あってはならないものをね。ただ見つかったらそれはそれで良くて悪い。少なからずすぐには見つからない」

 

「無いもの探し…異変の予兆とかですかね?」

 

「予兆ではないわ原因の方よ」

 

「既に事は始まってるのですね。」

 

「そう、だから私が動かないといけない」

 

「私でよろしければお手伝いいたしますが」

 

「それには及ばないわ。協力者は既にいるし藍は私が居ない間しっかりと幻想郷の監視をして頂戴」

 

「かしこまりました。ところでその協力者というのは誰ですか?」

 

「チルノ、氷の妖精よ。」

 

「あの妖精ですか?何故彼女なんです?」

 

「私以外に唯一異変に触れた…関わった人物だからよ、恐らく彼女が必要になるわ」

 

「そうなんですね。博麗の巫女は?彼女は動かないのですか?」

 

「まだ幻想郷には目に見える直接的な影響がないわ、だから巫女が自発的に動いたとしても無駄よ。さっきも行ったとおり幻想郷にはないものを探しているから私は居ないといけないけれど霊夢は必要ではないわ。私の読みが間違わなければそれほど脅威でもないでしょうから」

 

「わかりました。ひとまず私はこれで」

 

「ええ、頼んだわ。」

 

 

紫は幻想郷を一通り見回した。

冥界、天界、旧都や人里。

どこを寄っても探ってもそれは見つからなかった。

 

「あと考えられるとしたら。一つしかないわね」

 

そう呟くと、霧の湖に向かった。

 

湖の畔の岩陰でチルノと妖精妖怪達が集まっていた

 

「少しお時間よろしいかしら?」

 

「紫さん。いきなり来るんだね…」

 

チルノ以外は身を強張らせ緊張しているようだった

 

「みんなちょっと待ってて。」

 

チルノは湖を凍らせ話の聞こえないところまで離れた。

 

「紫さんが来たということは何かわかったのかな」

 

「わかったこと、そうね。確信的な部分はないけれどこの幻想郷では見つからないから、貴女に協力してもらおうと思うわ。」

 

「いいよ。どんなこと?」

 

「またあっちに行くわ」

 

「…んーと、ここにはなくて向こうに原因があるかもってこと?」

 

「ただし向こうに行くのは私と貴女の二人だけ」

 

「霊夢とか魔理沙は?」

 

「彼女達は万が一幻想郷に何かあったときに動ける状態でいて欲しいから連れて行かないわ。そもそもこの話を知っているのは私とあなたとあの二人だけだけど」

 

「他の人は知らないんだ」

 

「まぁ、知る必要はないし大袈裟なことであれば噂くらい自然と耳にも入るでしょう、誰も知らないってことはそういうことよ」

 

「わかった。どうすればいい?」

 

「ひとまずついてきて頂戴、その前に友達には一言掛けておきなさいよ。」

 

「あっ、うん。」

 

チルノは妖精達のもとに戻りまたしばらく会えなくなると話をすると酷く心配された。

 

「大丈夫だよ、紫さんは味方だしあたいは皆んなより強いんだから必ず戻ってくるよ。」

 

そう言って妖精達と別れた。

 

 

「もういいかしら?」

 

「うん、行こっか」

 

二人はスキマの中に入っていく

 

「向こうに原因があるっていうのは、確証はないんだよね?」

 

「そうね。でも幻想郷では何も見つからなかっただから、異変だとして原因があるなら、向こうにあると考えられるわけ」

 

「消去法的にって感じかな。」

 

「案外賢いのねまぁ、そんな感じよ」

 

スキマを抜けると。

一面雪と木ばかりだった。

 

 

「やっぱり雪だらけだね〜。」

 

「同じ景色ばかりでつまらないわ」

 

「村に向かってみる?」

 

「まぁ、情報収集からね。」

 

そう話をしていると二人を見かけた人間がいた

 

「おいあんたら。見かけない身なりだなどこのもんだ?」

 

「えっ?あたいらは幻想郷から…ってあぁ!」

 

「おまっ!この前の妖精だなぁ?!」

 

「あの村にまだ襲いに行ってるなら許さないよ!」

 

「襲いになんか行かねぇよ!」

 

「なら結構!」

 

「お話の最中で遮って悪いけど、この辺に書斎的な場所はないかしら?」

 

「いーやぁ…書斎かぁ…村ごとに規模や内容が違うからなぁ」

 

「そう…あともう一つ。この雪はいつまで降るとかわかるかしら?」

 

「それに関しては…俺も気になってる、ただ昔っからずっと降ってるから自然現象とは思えねぇんだよな」

 

「訳があるのね。話して頂戴」

 

「俺の親父が生まれるもっと前から雪は積もって…ずっとこのままらしいんだ。実の所俺は太陽と言うものを見たことがない。そんな具合にずっと晴れないんだ」

 

「何が原因なのかしらね」

 

「そりゃ、誰かの仕業だろうな。俺達も何で雪降らせてんのか知りたいくらいだ、聞いた話じゃそれこそ同じ時期にくらいに魔女の話が上がってたからそれかも知れないが」

 

「魔女の仕業?魔女が居るの?」

 

「そうさ、お前達が世話になった村が魔女に関わってるって、俺が住んでいる村の古い本に書いてあった。それで皆んな躍起になってあの村を狙ってんだ。俺はもう勘弁だけどな、別に太陽が拝めなくてもこうして生きてるしわざわざ他人襲う必要はもう無えと思ってんだ」

 

「その本読ませてもらっていいかしら」

 

「俺は構わねぇよ、まぁ村まで案内するぜ」

 

男に連れられてこの前とは別の村に向かう

 

「村と言うには広いわね。」

 

「まぁ町って感じだな。書庫はこっちだ」

 

書庫に入るとたくさんの本が棚に並べられていた。男は本棚の先の扉に入っていく。

 

「えっと。これだよ」

 

紐で括られた本を手に取り読む

 

 

最近ずっと雪が降っている…

戦争が終わって暫くしてからずっとだ。

 

今日も雪が降っている

これでは作物も育たないし皆も寒さに凍えてしまう何故ずっと雪が降っているのだろうか

降り始めてから数日は経っているな。

 

雪が降り始めてから数百日は経つ

作物も死んでしまうし、家畜たちも耐えきれず凍死したりしてきた。寒さに耐える方法を探さなければ。

 

雪が降り続けて約数千日。

自然現象ではありえない。

何が原因なのか調べなければ…

噂になっている魔女というのがこの降り続ける雪と関係があるのだろうか。

しかし誰も見たことがないし、噂になっているだけだ。他の村でもそれらしい話は聞いたことがないという…

 

戦争が終わったあのあとに何かあったというのか…?

 

いくつか他の村を巡ってみた。

どれも雪に耐えなんとか暮らしているが

ひとつだけ滅びた村があった、その村は雪に埋もれていた様子だったから降り始めたのと同じくらいに滅びているだろう。

ただおかしな事に人の声が聞こえる。家の跡地から楽しそうな会話や。叱りつける声。場所によっては歌すらも聞こえるが人影はない上に同じ情景を繰り返している。

この村は恐らく戦争で滅んだ村だろう…

戦争の被害に遭った村だ…この様子だと武器や兵器はなく。荒れ方から察するに拠点とされている。

 

村の中から一つのキレイなアクセサリを見つけ持ち帰るとした。長い間放置されたはずなのに比較的新しい様子だ

青白いブローチ。

何故だろう、これを見るたびに悲しい気持ちになってしまう。魔法の一種なのだろうか

開閉式のブローチの中には二人の少女が映っていた。この少女達は知っている、レティとチルノだ、幼い頃よく一緒に遊んだ

 

そうか…あの村が滅んだのか…

子供の頃よくお世話になったあの村が滅んでしまったのか。

大人になってから忘れてしまったが。

まさか…そんなことが…

 

 

「チルノとレティ…?」

 

「ねぇ、おかしくない?」

 

「この二人…」

 

紫とチルノは明らかにおかしな現象に気づいた。

 

「どうしたんだ?」

 

「本というよりかは日記だけれど。おかしなことになってるわ。」

 

「どういうことで?」

 

「チルノとレティこの二人は雪が降り始める前から亡くなっている?」

 

「なのに、紫さんはレティに会っていて、あたいはチルノ…妹チルノに会った」

 

「顔も見た目も全く同じ…何故?」

 

「お、俺は実際にその二人のことは知らなかったからな、あとはお前らに任せるぜ。」

 

男はその場を後にした。

 

「仮にあの村が一度滅んでしまったとして…どういう過程を経てあれだけ栄えているのか。」

 

「それよりもどうしてこのチルノとレティが二人並んでいるかじゃないの?」

 

「私がここに来た頃はチルノは居なかった、でもチルノの時は妹としてこのチルノがいて昔からいたかのように老婆のレティがいる。」

 

「絶対おかしいよ。」

 

「おかしなことになってるわ。まだ先があるわね、読んでみましょう」

 

 

滅びた村の場所にもう一度向かうと、いくつも墓が建てられていた。

以前のような声は聞こえてこない。

 

私のもの以外に足跡がある、他の誰かがここに来て死者達を弔ったのだろうか。

この村のことを知っているのだとしたら話が聞けるかもしれない。

 

 

後日あの村を訪れたとき一人の少女がいた、あれは恐らく人ではないだろう。

宙に浮いて移動している

 

昔の噂の魔女かも知れない。仮にそうだとしたら関わるのは危険だ

しかし、ここにいるということは彼女は村の生き残りかも知れない…そうなのだとしたら村のことについて聞けるかもしれない。

 

村を訪れたとき。魔女らしき少女と鉢合わせになった。

少女は何も言わずその場を立ち去ってしまい、話すことはできなかったが

ただこの村に頻繁に来ているようだ

次会う時は話を聞くべきだろうか

 

数日後、村をまた訪れると。

少女が墓参りをしている様子が見えた。

やはりこの村の生き残りだろう。

墓参りを終えたあと話しかけるとしよう。

 

 

「あなたはなぜここに居るの。」

 

先に少女が話しかけてきた

 

「戦争が起きたあと、この村だけは滅びてしまった、何かできることはないかと思ったんだ。」

 

「あなたに何ができるの。お墓参りくらいでしょう。」

 

「かもしれないな…そうだ、このブローチ、君に渡しておくよ。村の出口付近で見つけたもので、雪に埋っていたんだ。」

 

少女はブローチを受け取ると。強く握りしめている。

 

「ありがとう、これ探してたんだ。」

 

「名前教えてもらえないだろうか。」

 

「私の名前はチルノ。あなたは?」

 

「私はリンだ。」

 

「そう。」

 

チルノ、幼い頃とすっかり変わってしまっている…ブローチの持ち主だったのか。

となれば彼女は亡くなっていなかった。

生きていた。少しホッとした気分だ

しかし、レティや他の皆は恐らく…

 

「レティ…会いたいな…」

 

レティは助からなかったのだろうか…

 

「村の事は残念だが…君はこの村にいたのだね」

 

「そう、そして戦争に巻き込まれた。私は村の外に逃げて助かったけど、私以外はもう居ない。」

 

「やはりそうなんだね…」

 

戦争に巻き込まれたか…

 

「もう行くね。」

 

「どこの村に住んでいるんだい?また話をしたい。この村について教えてほしい」

 

「…村には住んでない。」

 

村に住んでいない…?

 

「私は雪の魔女。村になんか住めない。」

 

「魔女?本当にそうなのかい?」

 

「あなたの住む村から北にずっと行けばわかるわ」

 

そのままチルノはどこかに行ってしまった。

 

「わかった、今度向かう」

 

………

 

 

「ここまでのようね」

 

「この村からずっと北に向かえばいいんだね」

 

「そうね。そうすれば魔女の正体がわかる」

 

「でもその前に気になることがあるの」

 

「何かしら?」

 

「もう一度あの村に行こう。」

 

「わかったわ。」

 

 

二人は村の人達に挨拶だけして村を去った

 

同じ景色のまま進み続け以前世話になった村についた。

 

「おや賢者様!それにチルノまで!また来てくれたんだね」

 

「ええ、少し用事があってね」

 

「チルノちゃん居るかな」

 

「あの兄弟なら、家で仲良くやっとると思うが?」

 

「わかった、ありがとう」

 

二人はアルと妹チルノの家を訪ねた

 

「チルノちゃん!久しぶり!」

 

「うん、久しぶり。」

 

「入って入って!」

 

二人は妹チルノに連れられる。

 

「また会いに来てくれたんだね!」

 

「うん、でもね、あたい今気になることがあるの。」

 

「どんなこと?」

 

「チルノちゃんは魔女の噂を知ってる?」

 

「うん。知ってるよ。」

 

「その魔女も名前がチルノっていうんだ、それも知ってる?」

 

「……うん。」

 

「そのチルノちゃんの親友にレティって幼馴染みの女の子がいるんだ。」

 

「うん…わかるよ」

 

「昔、男の人がある村に訪ねてね、青白いブローチをその魔女に渡したの。そのブローチにはチルノとレティが二人仲良くしてる写真がはいってるんだ。」

 

「チルノちゃん。」

 

「うん。」

 

「お兄ちゃんは寝てるかな、二人とも付いてきてここでは話せないから。」

 

妹チルノに連れられて村を出る。

 

「ここからずっと北に行けばわかるよ。私は先に行っているね。」

 

妹チルノは北に向かって飛んで行った

 

「チルノ、あなたわかってたのね」

 

「ブローチ。家の壁に飾ってあったんだ。」

 

「なるほどね。」

 

二人は振り返るとそこにあったはずの村が荒れ果てた姿の村になっていることに気づいた

 

「これは…」

 

「紫さん魔力感じてなかった?」

 

「いいえ全く」

 

「私だけだったんだね」

 

「あなたには感じていたの?」

 

「結界の様な何かがあったよ。」

 

「何故かしら…全くわからなかったわ」

 

「とにかく、行こう」

 

二人は雪の中をひたすら進んだ。

 

道中櫓のような建物を見つけ寄ると。

人間が一人雪を被りながら力尽きていた。

 

「こんなところで力尽きるなんてね。」

 

「この人も、魔女を追っていたのかな。」

 

「…紙切れがあるわね。」

 

……

 

結局、魔女については何もわからなかった。

村で書いた日記は誰か読んでいるだろうか。

私は雪が振り続ける原因を知りたかったが…誰かが解明しても私には伝わらないだろう。この紙切れを手にするものがいたなら。ここから引き返すといい。

この先は吹雪が強すぎる。前も見えないくらいに雪風が強く、体力が削られすぎて動けなくなる。私がそう…だ。だから魔…についてはもうあきら…てほしい。

 

だんだんもじもかけないく らいになつた

 

ここでおしまい…か。

 

……

 

「あの日記の人間かしら。」

 

「きっとそうだね。」

 

「吹雪は自然に起きているものでないわ。魔女の仕業でしょうね」

 

「うん。雪に混じれて、何か違和感を感じる。」

 

「何か感じるのかしら?私は何も…」

 

「そっか。なんでだろう。」

 

二人は吹雪の中をまた進み続けた。

かなり進み続けたとき、崖に辿り着いた。

 

「落ちたらおしまいね」

 

「でも下からは何も感じないや」

 

「深すぎて何も見えないわね、崖の向こうに何かあるわ。あれは…城?」

 

「城っぽいね。行ってみよう。」

 

崖を飛んで越え。城まで辿りついた

 

「ここまで来たからにはしっかりと終わらせないと行けないわ。」

 

「紫さん。下がって付いてきて。」

 

「…あなたにそれを言われるのは癪だけれど、全く以て魔力が感じ取れないものね。仕方ないわ。」

 

「これ、魔力なんかじゃない。もっと違う何か…」

 

「私が感じ取れないのだから、妖力や霊力とも違うのでしょう?」

 

「うん、そういう類じゃなくて…力というよりなんだろう…」

 

「とにかく進みましょう。」

 

二人は城に入ると。

ガラスのような氷の広場が出来上がっていた

 

 

「綺麗ね。」

 

「綺麗だけど…」

 

「いらっしゃい、よく来たね。」

 

広場の奥には魔女がいた。

 

「貴方が魔女ね。」

 

「そうよ。」

 

「綺麗なドレスだね。」

 

「そう言ってくれると嬉しいな。雪の結晶をイメージして作られてるの。昔、村が戦争で亡くなる前、結婚式で来たドレスなのよ。」

 

「そっか。」

 

「…あのお兄さんは昔の結婚相手だった、あの村は私の映し出した幻影、私の魔法で作っていた。」

 

「貴女が居なくなった途端荒れ地に戻っていたわね」

 

「そう、関係性も何もかも私の思うように作り上げた。あの村で唯一生き残った私の最後の居場所にしたかった。」

 

「寂しかった。そうでしょ。」

 

「…寂しくても泣かないって、チルノは言ったよね。」

 

「うん、泣いても強くなれない何もいいことはないよ」

 

「うん…」

 

「貴女は何故、魔女になったのかしら。」

 

「チルノはわかると思うけど、わたしの気持ちが賢者にはわかるかしら。」

 

「言われないとわからないわ。」

 

「紫さん。少し、話をさせて。きっと私のほうがいい。」

 

そう言われてまた癪だったが素直に引き下がった。

 

「…わかったわ」

 

「ねぇチルノ。あなたは今、友達がいるよね?」

 

「うん、大ちゃんやルーミア、リグルにミスチー、みんないるね。」

 

「でも、私はみんな居なくなってしまった。同じ境遇に遭ったらあなたはどう思う?」

 

「そうだね。悲しいかな。悲しいけどそれは仕方ないよ、あたいにはどうしようもないもん。その時は泣いちゃうかもしれない、でも、きっと何かできることを探すと思う。」

 

「そう。強いんだね、チルノは」

 

「あたいは妖精だから、あんたよりもできることは少ない、幻影を作ることなんてできないし、きっと本気で戦ったら勝てるかどうか分からないな」

 

「私は誰かと居たかった。戦いたくなんてない。」

 

「そうだね、あたいも前は独りぼっちだったから、すごくわかるよ。」

 

「でも私はその逆。前はみんな居たのに、今は誰もいない。」

 

「だから、幻影を作り上げた。そうなんだね。」

 

「うん…だからね。私はずっとあの場所にいるつもり。」

 

「そっか。あたいね気になることがあるの。」

 

「どんなこと?」

 

「あたいや紫さんは、幻想郷にはない力でこの世界に来ちゃったの。だからその原因を探しに来たんだ。それで魔女の話を聞いてあんたに会いにきた。」

 

「どうしてなのか分からないけど。私のせいかもしれないってこと?」

 

「この世界に原因はあるの。」

 

「…どうしてそう思うの」

 

「まず知りたいのは。あんたはなんで魔女になったの?亡くなってるはずでしょ?」

 

その発言に紫は言葉を抑えなかった

 

「チルノ、あなた何言ってるのよ、 日記を読んでいたじゃない。」

 

「うん、読んだよ、でも結局二人とも生きてないんだ。」

 

「何を根拠に言ってるのかしら。」

 

「だって、この世界に戦争が起きているのに、幻想郷に魂は来てない。花も乱れてない。そしてこのお城。普通の魔法じゃなくて、その魂の結界みたいな感じがする。」

 

「チルノ、わかるのね」

 

「ねえ。教えて。亡くなってる筈なのに、なんであんたにだけ魂が集まったの?魔女になった理由は…」

 

「私は魔女なんかじゃない。」

 

「なら何なの?」

 

「ただの…亡霊よ…」

 

「そっか。」

 

「村は平和で治安も良くて。村の皆は幸せだった。私も結婚をして幸せだった。なのに…戦争に巻き込まれて…全部亡くなって…許せない…」

 

「それが未練になって、亡霊として残った、それで魂達はあんたに取り憑いた。」

「なんで…私はここにいなきゃいけないのかわからない、あのとき…みんな死んで。私一人、魂だけ取り残されて…」

 

「戦争をまた起こさないため、じゃないかな」

 

「確かに、この長く続く雪は私がやったことよ。でも。まだ襲う襲われるが残ってるわ」

 

「皆戦争のことよりどうしたら豊かに生きていけるかって頑張ってる。雪が振り続けると作物も動物も耐えれないよ、だから、仕方なく奪うしかないんじゃないかな」

 

「雪を降り積もらせる必要はないのね」

 

「今はね、また戦争が起きたときがあるかもしれないけどさ。そのときは誰かが良くないって思うはずだよ。あんたは十分活躍したと思うよ」

 

「そっか…」

 

チルノは亡霊魔女に近づく。

 

「…こないで」

 

「なんで?」

 

「私は…」

 

「もっと近くで話がしたいな」

 

「私は嫌、だから近寄らないで!」

 

魔女は吹雪を起こしてチルノを離そうとする

紫は吹雪の来ない上空まで避ける

 

「すごく冷たいな…ねぇ、もう一つ言わせて」

 

「…」

 

魔女は俯いたままだったがチルノは話した

 

「あんたを悪く言うつもりはないけど。多分幻影は他の世界に影響すると思う。」

 

「なんで…?」

 

「本来この世界にはありえないことだからだよ、他の村も誰も、魔法とかは何も使えない。この世界にはそういう力は存在してないから。なのにあんたが無理矢理使っている。だから他の世界に影響するの」

 

「だから何よ!私は独りは嫌!」

 

「そうだね…確かに独りぼっちは私も嫌かな」

 

チルノは更に近付こうとする

 

「来ないで!」

 

魔女は更に吹雪を強くした

 

「雹符【ヘイルストーム】」

 

チルノの周りには氷の竜巻が出来上がり吹雪を打ち消していく

本来の力である雹は出していなかった

その状態で魔女に近付いた

 

「来ないでよ!」

 

チルノは魔女に抱きついた。

 

「独りが嫌ならみんなの所に行こう。寂しくもないしレティや他の人たちも、きっと待ってるよ」

 

「私…私は…」

 

魔女は吹雪を止めると涙を流し始めた。

 

「なんで…あなたはそんなに強いの…」

 

「あたいそんなに強いかな、でも他にも強い人はいっぱいいる。だから強くなろうと考えないといけない。」

 

「私は…強くなくてもいい!でも…寂しいのだけは嫌…」

 

「うん、みんなの所に行ってもう一回幸せになろう、そうすれば寂しくないよ」

 

「うん…うん…!」

 

魔女は少しづつ体が薄まっていき。

時間が経つと姿は消えた。

魂はそこに取り残されてしまっていたがそのうち消えた

 

「終わったわね」

 

「うん。帰ろう。」

 

「ええ。」

 

紫とチルノはスキマ入り込んだ

 

暫くすると城は日の光を浴び溶け始めた

 

 

……

 

チルノと紫は博麗神社に来ていた。

 

「うわ、紫何しに来たのよ」

 

「暫く留守にしてたけどこっちは何か起きてないかしら」

 

「なんにも。いつも通り暇よ」

 

「そう、それならいいわ」

 

「あれから何も起きてないんだね」

 

「…ていうかなんであんたらがペアで来るのよ。おかしいわねぇ、何か起こるわ」

 

「そのカンは外れよ」

 

「言ってなさいあとに何か起こるわ」

 

「ううん。もう何か起きたあとだから。外れだよ。」

 

「そうなの?」

 

「ちょっと異世界で色々あったからこっちにも影響が出てたのよ。チルノが居なかったら面倒だったかもしれないわ」

 

「へぇ、チルノがねぇ。」

 

「…正直に二度と起きてほしくないわ」

 

「なんで?」

 

「だって、チルノに指図されるのよ!?賢者である私がただの妖精に。それに場の流れも読み取れないし魔力とかそういうのも感じ取れないし最悪だわ。ほんと」

 

「あはははっ!チルノに指図される紫って、それは面白いわねぇ、」

 

「屈辱よ屈辱!」

 

「えぇ…そこまで言わなくても。」

 

「まぁ、チルノには感謝してるわ、私ではどうにもならなかったでしょうし適材適所って意味合いではお互いに良かったと思うわ。」

 

「うん。良かった。かな」

 

「まぁ、いいわ、じゃあね」

 

紫はスキマに入り込んでどこかに行った

 

「チルノもほら、しばらく居なかったなら妖精達も心配してるでしょ」

 

「うん。」

 

「…なんかあるのね」

 

「向こうにいた、異変の原因がね、昔の自分を見てるような感じがして。凄く気が落ち込んじゃって。」

 

「昔の自分ねぇ。」

 

「あたいと同じ名前だから尚更、心に残っちゃってる」

 

「同じ名前。へぇ。そりゃ結構来るわね」

 

「…もう少しだけ。ここに居ていいかな」

 

「構わないわ。お疲れ様」

 

縁側で隣同士で座り込む。

そのうちチルノはうたた寝をしてしまったので。霊夢がチルノに膝枕をしていた。

 

そのうち霊夢も座った姿勢のままうたた寝をしてしまっていた。




チルノが頑張るお話。

ではまた会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

小さな出会いの大きな想い

どうも夢子です。

やばっ投稿遅いかな(汗

最近暑かったり涼しかったりと。
大変ですね。

それではごゆっくり


博麗神社に一人の男が来ていた。

 

神社縁側で霊夢と男が話をしていると。

一人の少女が割り込んできた。

 

「ねぇ霊夢!おやつまだ?」

 

「さっきあげたでしょ。」

 

「この神社にも参拝客が増えたな」

 

「参拝客じゃないよ、私はこの神社の護り神やってるの」

 

「はいはい、自称だけどね。」

 

「初めまして。宜しく」

 

「うん!私は高麗野あうん!」

 

「こまのあうん、っていうと。見た目とかは狛犬から来てるのかな?」

 

「そうだよ!でも普通の狛犬の守神は二匹一対だけど、私は一人で二匹分なの!」

 

「へぇ〜特別なんだね」

 

「そう!特別だよ!」

 

あうんは男の横に座り

男はあうんの頭を撫でた。

 

「ふふ〜ん♪」

 

あうんは笑顔で喜んでいた

 

「ははは。かわいいな。」

 

「あんたら初めて会うにしては仲良さそうね」

 

「普段霊夢は撫でてくれないから、なんか余計に嬉しいなぁ。」

 

「見ず知らずの男に撫でられて嬉しいの?」

 

「確かに知らない人だけど、悪い人じゃないでしょ?」

 

「まぁね。それは確かにそうよ」

 

「名前は何て言うの?」

 

「五月雨って呼ばれてる。」

 

「さみだれ?雨のお名前だね」

 

「ああ、俺の家はちょっと特殊でね。その時の季節とか自然にまつわる名前にするんだ。俺は雨季の早いうちに生まれたから五月雨らしい。」

 

「五月雨さん。いい名前だと思うなぁ」

 

「はは。ありがとうな」

 

「俺の家って言っても、もうあんただけでしょ」

 

「まぁ…仕方ないけどな。そればっかりは」

 

「んー?何かあるの?」

 

「五月雨の家は妖怪に襲われたのよ。それでこいつだけ何故か生き残った。」

 

「そっか…」

 

「家族はみんな死んじまって俺は取り残されてしまったな。」

 

「生きるのは辛い?」

 

「う〜ん…たまに家族が恋しくなるけど、そういうときはここに来るようにしてるからな。」

 

「なんでここなのよ」

 

「話をする相手が霊夢くらいしかいないんだよ。」

 

「あんたねぇ…そんなんでよく人里で仕事できるわね」

 

「お仕事は何してるの?」

 

「自警団、人里を護ってるんだ。」

 

「私と同じだ。護ってるんだね」

 

「まぁ、そうだな」

 

「こいつ強いからね、下手に喧嘩売ったらもう妖怪なんてイチコロなのよ?束で掛かったっても勝てるやついないわよ?」

 

「え?!そんなに強いの?」

 

「霊夢、話を盛りすぎだ、確かに妖怪程度なんてことないけど、束でかかられたら俺でもきついよ」

 

「まぁ、いいじゃない。」

 

「良くないんだが…」

 

「強いんなら人里をしっかり護れるね!」

 

「ああまぁ、そうだな」

 

「ねぇねぇ、五月雨さん」

 

あうんは縁側で座る五月雨の隣で横になり膝枕を要求した。

 

「膝枕?俺はいいけど…」

 

頭を乗せて横になるあうん。

やはり満足気に笑顔だった

 

「あんたねぇ…」

 

「ふふ〜ん♪」

 

あうんは満足気に膝枕を堪能していた

五月雨はまた頭を撫でていた。

 

「もうすっかり懐かれてるじゃない。」

 

「そうみたいだな」

 

少しするとあうんは寝入ってしまった

 

「この姿勢のまま寝るのか…弱ったなぁ…」

 

「甘やかすからよ。」

 

「こうやって甘えて生きるのが幸せなんだろうか。」

 

「さぁね。」

 

五月雨はあうんをそっと抱き上げ

霊夢の部屋の布団に寝かせた

 

「それで、あんた本気なの?」

 

「さっきの話か?」

 

「ええ。別に私は止めないけど」

 

「止めないんだな、まぁ、家族は居ないし護るものもない。人里だって俺が居なくても問題ないだろう。」

 

「ただ、自警団の知り合いが減るのは私としては都合は悪いわ。」

 

「純粋に人手が減るという意味ではそうだろうな」

 

「あのねぇ、人里に何かあったときあんたらが私に伝えに来ることが多いでしょ。人手減るだけでも困るのよ。」

 

「まぁな。」

 

「あんたがそのつもりなら、止める理由は何もないから勝手にすればいいけど。あとの事考えて頂戴。」

 

「後の事か。」

 

「まぁ、単純に参拝客が減るからそれも残念ね」

 

「もうお賽銭も入れることもないな」

 

「さぁね、たまには寄りなさいよ?」

 

「どうだろうな」

 

「それにあんた。まだあうんに懐かれたばかりじゃないの、私以外にも話し相手いるでしょ?」

 

「人里には大した話し相手は居ない、たまに寄るのは竹林くらいだな。あうんのことは飲み込んで忘れるしかないな…」

 

「竹林ねぇ…」

 

「まぁ、そろそろ里に戻って片付けをするよ」

 

「あっそ」

 

「ああ。それじゃ元気でな」

 

五月雨は博麗神社にお賽銭を入れて去った

 

「馬鹿ねぇ。家族を失うと考えも変わるものなのかしら。」

 

「大切なものが亡くなったのだもの。わからなくもないわ。」

 

霊夢の呟きに応えたのは紫だった。

 

「あんたまた来たの」

 

「暇だったから覗きに来たのよ」

 

「何もないわよ。」

 

「そう。あなたも暇そうだものね」

 

「暇つぶしでもしてこようかしら。」

 

そう聞いて紫は何も言わずスキマに入り込んでどこかに行ってしまった。

 

「さてと。」

 

「んぅ…?」

 

あうんは目を覚ましと見回す。

 

「あら、お早いお目覚めなのね。」

 

「うーん、五月雨さんは?」

 

「探してきたら?人里か妖怪の山よ」

 

「山?なんで山?」

 

「ほら、早く行かないと会えなくなるわよ」

 

「会えなくなるってどういう…?」

 

「本人に聞きなさい。」

 

霊夢はそういうと立ち上がってどこかに飛んでいった。

 

「どういうこと…?」

 

あうんはなんとなく嫌な感じがして

人里に向かうことにした。

 

 

あうんは人里に着いて隈無く探すが、五月雨の姿はなく、気配も感じない。

 

「あれ…どこ…?」

 

途中、台車に荷物を詰めた人物を見つけ、五月雨と同じような匂いがすることに気が付いた。

 

「ちょっと?良いですか?」

 

「うん?妖怪お嬢さんが何かな?」

 

「五月雨って人を探してて…この荷物はもしかして…」

 

「おお知り合いかい、五月雨さん里を出るって話をされてね」

 

「えっ?里を出たの⁉」

 

「ああそうだよ。荷物は無理やり押し付けられてね何か持っていくかい?」

 

「荷物はいらないけど…どこに行ったかわかる?」

 

「今頃里はもう出てどこかいるだろうねぇ、行き先は話してくれなかったよ」

 

「そっか…どうしよう」

 

「探すのかい?」

 

「もちろんです」

 

「五月雨さんな…悲しくて虚ろな目をしてたからな、なんか碌でもないこと考えてなきゃいいけど。頼むよ。また帰ってくるかもしれないから、荷物はまだ倉においておくよ、見つけたらどうするか聞いてくれるとありがたいね」

 

「わかりました!」

 

あうんは勢い良く飛び出し、妖怪の山に向かった。

 

道中、微かに五月雨の匂いがしたが、

山に近づくにつれて匂いは感じ取れなくなっていった。

 

「どこにいるの?」

 

あうんは小さい妖怪達を差し置いて五月雨を探した。

 

「んっ?違う匂いがする…霊夢…?」

 

五月雨以外にも霊夢も山に来ているようだった。

 

「霊夢よりも…」

 

あうんは中腹まで来ると、五月雨の匂いを感じ取れた。

 

匂いの強い所まで急いで向かうと。

 

「…ふぅ…」

 

川辺に五月雨が居た。

 

「五月雨さん!」

 

「あうんか。」

 

「こんなところで何してるの?」

 

「何してるか、んー…」

 

「人里から出てったって聞いたよ、なんでなの?」

 

「なんでだと思う?」

 

「答えて?」

 

あうんは五月雨の隣まで近寄り座り込む。

 

「あうんは何で俺を探してたんだ?」

 

「霊夢がもう会えないかも知れないって言うから。心配になって…」

 

「もう会えない?んー…また話を盛ったな。」

 

「どういうことなんだろう…」

 

その話の途中、霊夢も川辺に辿り着いた

 

「あっ、いた?」

 

「なんだ、霊夢じゃないか」

 

「どう?山篭りは」

 

「どうって言ったって、まだ数時間しか経ってないんだが」

 

「そうね。」

 

「何しに来たんだ?」

 

「暇つぶし、あんたが何かしてるなら邪魔でもしようかと思って」

 

「妖精の真似事でもしてるつもりなのか?」

 

「んー。かもねぇ」

 

「あうんも心配かけたな。」

 

「えっと…どういうこと…?」

 

「俺はしばらく山篭りをする、天狗達が大人しくなった山なら普通に生活できるだろう。ちょうどいい場所見つけて守矢と鬼に家とか頼んで山で過ごすんだよ。」

 

「なるほど。」

 

「まぁ、霊夢が変な話に持ってくから勘違いさせたなぁ、済まない」

 

「変な話ねぇ。」

 

「もう、ほんとに心配した…良かったぁ」

 

「ま、いいわ、まだ面白い事はなさそうだし神社に戻ろうかしら。」

 

「ああ、またな」

 

退屈そうに欠伸をして、霊夢は飛んで神社に帰っていった

 

「山に住むんだね。」

 

「ああ、まぁな。人里は俺には住みにくくてな。」

 

「そっか。あっそうだ。」

 

「どうした?」

 

「荷物とか、どうするって質屋の人が聞きたがってた。」

 

「あれな、後で受け取りに戻るつもりなんだ、住む場所が確保できてから受け取りに行こうと思ってる」

 

「しばらく倉に置いておくって言ってたよ。」

 

「そうか、教えてくれてありがとう。」

 

「お家完成するまでどうするの?」

 

「しばらくは野宿だろうなぁ…」

 

「そっか、博麗神社にでも泊まればいいのに。」

 

「おう、それも悪くないな」

 

「それじゃあ、私も神社に戻ろうかな。」

 

「おう、また今度博麗神社に寄るよ。」

 

「うん、またね。」

 

あうんはその場を後にして博麗神社に向けて飛んで行った。

 

「どうしようかな。でも…」

 

五月雨はそう呟いて考え込んでいた

 

 

……

 

数日後の事、

 

一人の少女。烏天狗の楓が博麗神社に来ていた

 

「霊夢さん居ないかな」

 

楓は境内を見渡すが霊夢の姿は見えなかった

 

「今戻ったわ。何の用かしら?」

 

先程まで出かけて居たようで、遅れて神社に戻ってきた

 

「手紙です。霊夢さんとあうんさん?って方に」

 

「受け取るわ、ありがと」

 

「はい確かにお渡ししました。それではこれで。」

 

「ええ、ご苦労様」

 

楓は神社を後にして人里に向かって飛んで行った

 

「さて。自称守護神はどこかしら。」

 

探さずとも縁側で伸びて昼寝していた。

 

「あんたねぇ…ほら起きなさい」

 

「んんぅ…ふぁぁ…」

 

軽く体を揺するとあうんは起きた

 

「五月雨から手紙。」

 

「五月雨さんから?」

 

「ほら、早く受け取りなさいよ。」

 

あうんは手紙を受け取り、読み込む

 

「全く手紙なんか寄越さずに神社までこればいいのに。」

 

「私ちょっと出てくるね」

 

「五月雨の所に行くんでしょ。好きにしなさい」

 

「うん、またね。」

 

あうんは勢い良く飛び出し。山に向かった

 

「はぁ…ほんと最近は色んな事があるわ。全く誰のせいかしら。」

 

「さぁ?誰のせいなのかしらね」

 

紫が返事をするように呟く

 

「知っているような口振りね。」

 

「知っていたらこんな所に居ないわ。」

 

「ふ〜ん。まぁいいわ。」

 

「異変…と言うには当て嵌まらないかしら。」

 

「幻想郷自体が迷惑被ってるわけじゃないから。異変とは言えない。」

 

「なら。怪奇現象?」

 

「例のオカルトじゃあるまいし。変な珠も無いからそういうのでも無さそうよ」

 

「さて。どう対処するのかしら?」

 

「あんた。放置してるんでしょ?」

 

「直接的でも間接的でも。幻想郷の脅威でないなら気にしないから別に構わないわ。」

 

「あっそ。」

 

 

あうんは妖怪の山に来ていた。

 

微かに覚えている五月雨の匂いを探して山を登ると以前の川辺に着いた

 

「ここは。」

 

「おう、よく来たな」

 

川辺には五月雨が居て水を汲んでいた。

 

「手紙、貰ったよ。」

 

「読んでくれたんだな。」

 

「うん。あの…」

 

「とりあえず水置きたいから。家まで案内するよ、」

 

「わかった。」

 

五月雨は両手に桶を持ちながら歩き始め、あうんはそれについて行った

 

遠くない場所に開けた広場のような場所があり、そこに家が建っていた

 

「立派な家だね。」

 

「そりゃ、鬼と守矢の神様達だからな。」

 

家に入り、水を貯水槽に入れる。

 

二人は机で向かい合いお茶を飲みながら話す

 

「鬼に好かれてるの?」

 

「ちょっと前に弾幕勝負やらなんやら、やり合った事があってな、負けたんだが気に入られたみたいなんだ」

 

「鬼や神様か…私は勝てないかなぁ」

 

「まぁ、接戦ってわけでもないけどな。一方的な負けだけど。面白い戦法だってさ。」

 

「どんなことしたの?」

 

「どんなことか…特に何も。弾幕勝負と言っても俺は得意じゃないしそんな綺麗でもない。俺の持ってるスペルカードを出し切ったってくらいか」

 

「じゃあ、スペルカードが面白いって思われたのかな」

 

「かもな。」

 

「それで、あの。さっきの手紙の事なんだけど。」

 

「ああ。済まないな話逸れちまって。」

 

「書いてあったこと、ほんと?」

 

「嘘じゃないぞ。ただ勢いで書いたから…余りうまくないけど。」

 

「…えっと…こういう時なんて言えばいいのかわかんない…」

 

「俺は…そうだな、お前が好きだ」

 

「ちょっとまってよ…心の整理も出来てないのに…えっと」

 

「お前らしくでいいと思うぞ。」

 

「…私、このお家も貴方も護るから。だから…私の事も…護ってね…?」

 

「あぁ。わかった。」

 

「よろしく…おねがいします…でいいかな。」

 

「ああ、よろしく」

 

 

 

あうんは霊夢に一連の話をすると

霊夢は何気なく当たり前の返事だけをした。

 

あうんは挨拶を終えるとまた山に向かって

そして五月雨と一緒に暮らしていた。

 

 

 

「紫?居るんでしょ?」

 

「ええ、居るわよ?」

 

「どう思う?」

 

「どう思うも何も。ただのハッピーエンドじゃない?」

 

「そうだけど、そうなんだけど、気に入らないのよ」

 

「嫉妬してるの?」

 

「そうじゃなくて。うーん…なんか引っかかるのよね」

 

「そう。私は別に構わないわ。幻想郷が平和ならそれはそれで。」

 

「それもそうね。」

 

紫はスキマに入り込んでどこかに行ってしまった。

 

「異変では無い。まぁいいわ、」

 

霊夢はそう呟いてまた暇を過ごしていた

 




最近また誤字脱字が増えたような…


それではまた会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

恩返し

どうも悠樹です。

過去話の人達がたくさん出てくるお話

どうぞごゆっくり


目が覚めると外は雪が降り積もっていた

 

「肌寒いな…」

 

隣のベットではまだチルノが寝ている。

 

「やっぱり。寒いのには強いんだろうな。」

 

上着を着て寝室を出たとき。

一瞬、めまいのような感覚に陥った

 

「寝起きだからか?さっきから体がおかしいな…」

 

倦怠感が治まらず。なんとなく寒気がする。

 

「熱があるのか?…今日は大人しくするか。」

 

軽くお茶を飲み寝室に戻ると丁度チルノが起きていた

 

「ああ…レイ、おはよう」

 

「おはよう、今日は出掛けるんだったよな?」

 

「うん?レイ、顔赤いよ?」

 

「赤いか?そうか…」

 

「熱があるのかな。出かけないほうがいいよね」

 

「いや、大丈夫だよ。寝ておけば治るさ」

 

「ほんと?気をつけてね」

 

チルノは身支度をすると家を出た。

 

「さてと…もう一眠りしよう…」

 

ベットに戻るが次第に体の節々に痛みを感じてきていた。

 

「もうこれは風邪だな…」

 

寝ようにも寝付けないので

とりあえず食事を済ませて薬を飲む

痛み止めとか効くだろうか…

 

薬の副作用からか眠気が来たおかげで

ようやく寝付くことができる

 

ベットに戻ると少しもしない内に寝付いた

 

……

 

起きてすぐ

やはり寒気は止まらなかった。

 

「あー…これはしんどい…」

 

薬の効果が切れたのか体中に痛みが走る。

 

「水分は取らないと…」

 

寝室を出てお茶を飲む。

小腹を埋めるのにパンを少し食べ。

また薬を飲む。

 

そうして寝室に戻ろうとした時。

家の入り口の扉のドアノブを動かす音だけが聞こえた。

 

「うん?チルノなのか?」

 

その後抵抗するような唸る声と怒鳴る男の声が聞こえた。

 

「おいっ、まさかっ…!」

 

慌てて家から飛び出す。風が吹いていて冷える

いや冷えるどころか震える。

 

気を失っているチルノを担いで男達が走っていた。

 

「待てっ!待てよ!」

 

思うように体が動かない。

 

「クソッ…」

 

飛ぶ力はなくとも走れはするが速度が出ない。どんどん遠くに行ってしまう。

寒さのせいもあるのか体が動かなくなって来ていた

 

「せめて紅魔館に…ああ…クソッ…」

 

積もる雪に足が取られて歩くことすらままならない。

 

「ああ…最悪だ…」

 

「何が最悪なのよ」

 

「その声は…博麗の巫女か」

 

返事をしたのは霊夢だった…

 

「あんた。風邪?ちょっと大丈夫?」

 

「いや…なにも大丈夫じゃない…頼むからチルノを助けてくれ!」

 

「えっ?ちょっと。どういうことよ。」

 

「チルノが誰か知らないやつに攫われたんだよ!俺はいいから早く助けに行ってくれ!多分人里だろ…」

 

「あんたはどうするのよ、」

 

「近くに家がある…なんとか自力で戻るよ…」

 

「そんな状態で自力ってあんたね…」

 

「頼むから早くチルノを…」

 

霊夢は腕を掴むと立ち上がるのに協力してくれた。

 

「まともに動けないのに自力とかバカ言ってんじゃないわよ。」

 

「すまない…でもチルノが…」

 

「あー…もー…めんどくさいなぁ…」

 

霊夢はそう呟くと思いっきり叫んだ。

 

「ちょっと紫!手伝いなさい!」

 

そう叫ぶと紫はすぐに隙間から顔を覗かせた

 

「叫ばなくても聞こえてるわよ」

 

「チルノをさらった男達が人里に向かってると思うから探して。すぐ襲わず根城を特定して頂戴」

 

「珍しく乗り気ねぇ。」

 

「文句ある?早くして」

 

「わかったわ」

 

紫はスキマに入って消えていった

 

「ほら、しっかりしなさい。」

 

「そうは言っても体がほとんど動かない…立っているだけでもかなり苦しいんだ…」

 

「家ってあれね?」

 

「ああ。そうだ。」

 

無事に家に戻り寝室のベットに寝かせてもらえた。

 

「全く…ほんと世話焼けるんだから。」

 

「すまない…」

 

「あとは任せなさい。」

 

「ありがとう。」

 

「さて。私の機嫌を損ねたことを後悔させてやるわ」

 

霊夢は鬼の形相で家を飛び出していった。

 

……

 

人里に着くと紫がスキマから出てきた。

 

「見つかった?」

 

「ええ。」

 

「足止めとかしてるわよね。」

 

「もちろん。」

 

「あっ!霊夢さん!」

 

話しかけてきたのは郵便屋の椿。

 

「なに?忙しいから手紙ならあとにしてくれる?」

 

「あっ、ハイ…」

 

「いいや、むしろあんた協力しなさい」

 

「えっ?えっと今は…」

 

「今の彼女に逆らうのはおすすめしないわよ?」

 

「えっ…あっ…ハイ…」

 

半ば無理矢理だけど、一人追加できた。

 

「あと…もう一人欲しいわね。」

 

「悠でいいんじゃない?」

 

「そうね」

 

歩くのが面倒だったから紫のスキマで近道したけど、悠の家を訪ねても反応がない

 

「居ないのかしら。」

 

「ああ、霊夢?今戻ったよ」

悠と祐奈は手に袋を持ってる。

買い出しから帰ってきたところかしら。

 

「買い出しご苦労様。早速で悪いけど、悠を借りてくわよ」

 

「荷物だけ置かせてくれるか。」

 

「早くしなさい」

 

少しすると悠はいつもの木刀持って出てきた

 

「霊夢と紫が二人で居るってことはなんかあったんだよな。」

 

「大したことはないけど。相変わらず木刀なのね。ちゃんとした刀を持てばいいのに」

 

「あくまで護身用だからな殺傷性はなくていい」

 

「あっそ。それで紫、足止めの方は?」

 

「そろそろ向かいましょう。ちょうどいい頃合いだと思うわ。」

 

スキマを通り抜けると。

廃墟のような場所の手前についた

 

「ここが根城?」

 

「みたいよ」

 

「廃墟というか…」

 

「廃墟だな。」

 

「廃墟が住処なんてだらしない。容赦なく潰してやるわ。」

 

「今日の霊夢は殺気が強いわねぇ…?」

 

「私の機嫌を損ねたのが悪いのよ」

 

「ちょっと先に見てくる、退魔札とかあると良くないからな。」

 

「そうね、丁寧にいきましょ。」

 

 

扉を開けるとそこは広場になっていて奥の方で手足を縛られたチルノがいた。

 

「輩達は奥の部屋か?」

 

チルノ以外の姿は見えないが

奥の方の小部屋は電気がついているようだ。おそらく輩達はそこにいるだろう。

 

「さて、丁寧にって言ってたからな、強行突破はやめておくか。」

 

入り口で軽く見渡すと。何箇所か札が張り付いていた。

 

「察しの通りってことか。」

 

一枚ずつ丁寧に札を剥がし、すべて破り割いて効果が出ないように処理する

 

「うまく行けば気づかれずに済むな」

 

チルノの所まで行くと足音に気づいたのかチルノが目を覚した。

 

「あなた誰…?」

 

「君を助けに来た。騒がないようにしてくれよ?」

 

「う、うん…」

 

相当怖かったのだろう顔に涙の流れた痕が見える。チルノを傷付け無いように手足の紐を解く。

 

「とりあえずチルノは無事だが。どうする?」

 

紫に話しかけてみる。

 

「輩達は?」

 

「こちらに気づかず小部屋の中で浮かれて騒いでるみたいだ。」

 

「いいわ、戻ってきなさい。」

 

「おっけ、」

 

「えっと…あの…」

 

「心配しないで、俺以外にもいるからな。」

 

「ありがとう…」

 

「歩けるか?」

 

「大丈夫。」

 

無事に気づかれずに廃墟を出ることができた。

 

「チルノ。無事?」

 

「うん。霊夢、みんなありがとう。」

 

「さてと。」

 

「まさか行くのか?」

 

「どうしようかなって思ってる」

 

「また来るかもしれないわよ?」

 

「そうね、また面倒事起こされても困るから。突入するわよ」

 

霊夢は勢いよく扉をあけた。

広場ではチルノを探す輩達が忙しそうに動き回っていた

 

「あんた達は何を探しているのかしら?」

 

「うげ…博麗神社の巫女…」

 

「博麗の巫女だからどうしたってのよ。」

 

「お前ら札は貼り直したんだ、どうってことないだろ」

 

「そうだったなあ。」

 

「いつの間に?」

 

輩達は集まると武器を構え始めた。

 

「確かに上手く力が使えない…」

 

「霊夢。紫。あと椿とチルノ。四人とも力が使えないのか?」

 

「私は駄目ね。」

 

「妖力が使えないんじゃスキマも意味ないわねぇ。」

 

「えっと…僕居る意味…」

 

「氷が出ない…」

 

……

 

「しまったな。俺以外は駄目か」

 

困ったことになった。

まさか札を貼り直してあったとは。

 

「四人とも下がってくれ。」

 

「あんた。もしかして一人でやる気?」

 

「それ以外あるか?」

 

「おう、いい度胸じゃねえか、札が効果ないってことはお前は人間か」

 

「人間じゃ悪いか?」

 

「お前は、そこの妖精のイタズラには遭ってないんだな。」

 

「いや。散々嫌な思いさせられたよ。懐かしいな。思えばこんな大人しいチルノも違和感あるね」

 

「散々な目に遭ったならお前も同じじゃねえかそこをどけよ。俺達はその妖精を許さねぇ。イタズラばかりしてきたその報復を今思い知らせてやるぜ。」

 

「残念だがそうはいかない。俺も頼まれてここにいるわけだし。それに俺は別にチルノが憎い訳じゃない。人間が妖精にイタズラされるなんて日常的なものだ。チルノは改心して大人しくなったんなら別に害もないし、そっとしてやればいいだろ?」

 

「言っただろ、散々イタズラされたその報復だって。」

 

「報復ねぇ。」

 

「邪魔なんだよどけよ。」

 

「やだね。断る」

 

「ならおめえから痛い目にあわせてやる!」

 

輩達は鉈や鎌を改めて構える。

 

「野蛮だな…ほんと」

 

そう言って歩いて近寄る

 

「気をつけて…」

 

チルノは呟いた。

 

輩達は襲い掛かってきたが

一人ずつ薙ぎ倒していく。

武器を振ってくるが弾き返して横腹に一撃与える。

 

三人ほど捌いたところで。一人が遠くで鉄砲を構えているのに気づいた。

 

「うーん…鉄砲か」

 

「ちょっと!流石に鉄砲はまずいでしょ!」

 

「へへっ、いい気味だぜ」

 

「この位置…避けたら…」

 

そう。避けたら誰かに当たる。

かと言ってまともに受けたら死にかねない。

 

「まぁ、避ける必要はないからいいか。」

 

あからさまに輩達が下がる。

 

「わかりやすいなぁ…」

 

木刀を構え直す。

 

「へへ、お前もここで終わりだな。」

 

男はそう言いながら発砲した。

 

「さぁね…」

 

弾速はそう早くはない。

弾道も真っ直ぐ。

弾が落ちるまでには距離がいるから

恐らく真っ直ぐ飛んでくる。

 

「まぁ。余裕だな」

 

木刀で弾を弾き返す

跳ね返った弾は発砲した本人の足に当たる

 

「えっ?あんた今何したわけ?」

 

「何って。弾き返しただけだが?」

 

「さも当たり前みたいに言わないでよ。馬鹿じゃないの?!」

 

「こうでもしないと俺か誰か当たるし…」

 

「いやそうだけど…」

 

「てめえ…魔法でも使えるのかよ…」

 

「仮に魔法だとしても魔力は札でかき消される。紛れもない実力って事だよ」

 

「てめえ…」

 

「観念するんだな」

 

偶然足元にあった退魔札を破り割く。

 

「霊夢。これでどうだ?」

 

「まだどこかにあるみたい。」

 

「厄介だなぁ…札って」

 

視線を輩に戻すと別の男が先程の鉄砲を受け取り構えていた

 

今度は俺を狙わず直接チルノを狙っている様子だった。

 

「質が悪い。間に合うか?」

 

走って射線に入る

 

「邪魔なんだよ!」

 

輩はそう言いながら発砲した。

 

そしてその弾丸を跳ね返す。

ギリギリでうまく跳ね返せなかったからか。

弾丸は天井にあたった。

 

「そろそろいい加減にしないと俺も容赦しないぞ。」

 

「いい度胸だ!やってみろ!」

 

喧嘩を売られた気がして凄く腹が立った

 

「わかった。後悔するなよ?」

 

また一人が襲い掛かってくるが

武器を弾き返し木刀で捌く

悶え苦しんでいるが気絶するまで叩き倒した。

 

「ほら、次は誰だ。」

 

「お、おめえ…ホントにやるのかよ…」

 

「いい加減にしないと容赦しないぞって言ったらやってみろって言ったじゃないか。」

 

「ゆ、悠?その辺にしておきなさい?」

 

「霊夢。俺はケンカ売られた気分で凄く腹が立ってるんだ。だから立ち向かってくるやつには容赦しないって。」

 

「あんたねぇ…」

 

また輩は発砲した。

 

「また撃つのか。」

 

弾き返すと弾丸は発砲した本人に当たる

 

「う…腕が…」

 

「まぁ腕でよかったじゃないか、胴体や頭に当たってたら一大事だもんな。」

 

「巫山戯たことしやがって…」

 

「おい、俺は巫山戯てない、大真面目だぞ。」

 

「てめぇ…」

 

「次は気絶で済ませないが。どうする?多分死ぬぞ?」

 

「ヒッ…」

 

「ほんと、これが木刀で良かったよな、本物の刀だったら今頃…」

 

「もういい!勘弁してくれ!」

 

輩達が白旗を上げるように叫んだ。

 

「もうこんなことはうんざりだ…」

 

「それがいい。」

 

そう言い放って霊夢達の所まで戻った。

 

「こ、ご苦労様…」

 

「うん。終わった。」

 

「人間って怒らせると怖いのね。」

 

「まぁ、紫のような妖怪には太刀打ちはできないよ。弾丸は弾けても弾幕は弾き返せないし。」

 

「そうね。そこは認めるのね。」

 

「事実だからな。幽香さんに一度も勝ったことがないし。手も足も出ないからな。」

 

「あれは特例だから…」

 

「そうなのか?」

 

「まぁ、彼女はね。」

 

「あの…とりあえず出ませんか?」

 

「そうね。椿。ありがとう、特に何もしてないけどご苦労様。手紙あるんでしょ?」

 

「あっ。えっと。はい確かに、それでは僕はこれで…」

 

椿は飛んで次の配達先まで向かっていったようだ

 

「どうする。自警団に突き出すか?」

 

「そうね。そうしましょ。」

 

「私はチルノを送ってくわ。」

 

「スキマって便利ね、お願いするわ」

 

……

 

「ほら、こっちよ。」

 

紫さんに連れられてスキマを通り抜けると

家の中に繋がっていた。

 

「ありがとう。もう大丈夫だと思う。」

 

「今後も気をつけなさい。彼は寝室だと思うから、ちゃんと一緒に居てあげるのよ?」

 

紫さんはそう言ってスキマに入り込み消えていってしまった、

 

「そうだった、レイ熱があるって言ってた」

 

寝室に戻るとレイは寝苦しそうだった。

レイは私に気づくと体を起こそうとしていた

 

「ああ…チルノお帰り…」

 

「無理に動かないで。風邪辛いだろうから…」

 

「自分のことよりチルノのことの方が心配だったからな…これくらい…」

 

「…心配かけてごめんね。もう大丈夫だから無理しないで?。お茶もってくるね。」

 

「ありがとう…」

 

寝室から出ると玄関をノックする音が聞こえた。

 

「誰だろう?」

 

扉を開けると、訪ねてきたのは霊夢だった

 

「霊夢さん。どうぞ」

 

「入るわよ。」

 

後ろに続いて永遠亭の永琳さんがついてきていた

 

「風邪なんでしょ?」

 

「えっと…多分」

 

「妖怪が高熱出して苦しむのは滅多にないことだから、霊夢から話を聞いて少し気になったのよ。」

 

「ただの風邪じゃないこともありえるんですか?」

 

「むしろ。普通の風邪の可能性は低いわ」

 

「あの…レイはどうして…」

 

「その為の私よ。」

 

お茶を持って寝室に戻る。

 

「レイ。お茶飲んで。」

 

「おう…ありがとう。」

 

「貴方ね、具合はどう?」

 

「最悪…とは言いたくないが。体は痛いし体を起こすのも辛い。熱も引かないしって感じにいろいろ来るよ。」

 

「そう。それだけ?」

 

「特に他は。」

 

「確かに見た感じ麻疹とかがあるわけでも無さそうよ。」

 

「まさかねぇ…」

 

永琳さんはレイを診察しているけど…

 

「そのまさかのようね。」

 

「どうなんですか?」

 

「ただの風邪よ」

 

「えっ?」

 

「妖怪が高熱出してって話はどこいったのよ」

 

「言ったでしょ。可能性は低いってだけ。」

 

「運がいいのか悪いのか…全くね」

 

「そういう訳だから。日にちが経てば治るわ。」

 

「そうか…よかった…」

 

「ただし無理は禁物。妖怪が風邪になるような強力な病原だったって訳だから、解熱剤飲んで熱が上がり過ぎないようにしなさい。あと食事もしっかり食べるのよ。チルノ、しっかりと診てあげなさい。」

 

「はい。えっと…はい!」

 

「何かあったら、すぐ呼んで頂戴ね。」

 

「ああ…ありがとうな。」

 

霊夢さんと永琳さんは帰っていった。

 

「えっと…」

 

「世話かけて…すまないな。」

 

「ううん、いいよ。早く元気になって欲しいし。」

 

「ありがとう。」

 

「ご飯持ってくるから。ちょっと待っててね」

 

寝室を出ると台所に人がいた。

見覚えのあるメイド服。

咲夜さんだった。

 

「あれ。なんでここに?」

 

「博麗の巫女に頼まれたのよ。」

 

「でも…レミリアさんのことだってあるし。」

 

「ハルがいるから大丈夫よ。それに。レイにはお使いとかいろいろ頼まれて貰っているから。そのお返しだと思って貰えばいいわ。」

 

「わかりました。」

 

「はいこれ。お粥よ、風邪で喉が荒れたり喉の通りが悪かったりするから。固形物よりも食べやすいのよ。味付けも他の具材も入ってるわ。これ食べさせて薬飲ませればいいでしょ。作り置きしてあるから足りなくなったらまた言って。」

 

「えっと…ありがとうございます。」

 

言葉が出ない…

 

「お礼ね。貴方からありがとうなんて聞くのは久しぶり。」

 

確かに…咲夜さんにお礼を言うのは久しぶりかな…

 

「まぁ、いいわ、それじゃお幸せに」

 

咲夜さんは、ふとした瞬間にもう居なくなっていた

 

お粥を持って寝室に戻る。

 

「この匂いは…昼間と同じか…」

 

「昼間と同じ…?」

 

「ああ、咲夜さんが来てな。お粥作ってくれてたんだよ。」

 

「そうなんだ。」

 

「ほんと…世話かけてばかりだな…」

 

「ううん…気にしないで。みんなレイにお世話になってるから。きっとお礼だと思ってるよ。」

 

「そうか…」

 

「だから、早く良くなってね?」

 

「ああ、ありがとう。」

 

「でも…なんで風邪になんかなるんだろ。」

 

「一昨日くらいに。人里の医院の手伝いしてたからそこからもらってきたのかもな。」

 

「そっか。それは確かにあるかもね、」

 

「なんにしろ。しばらくはゆっくりしないとな」

 

 

その後。レイは数日で風邪が治った

その数日にチルノが体調不良になったとかならなかったとか。

 




ではまた会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

魂が入り込む刀

どうも夢子です。


どうぞごゆっくり


白玉楼を訪ねていた、

 

「すいませーん!」

 

「はいはーい。」

 

出迎えたのは男性…?

 

「どなたですか?」

 

「あっ。えっと橘って言います。ここが白玉楼で合ってますか?」

 

「ええ。そうですけど?何のようですか?」

 

「魂魄妖夢って言う人を探してるですが…」

 

「人っていうか半霊っていうか、まぁ、それで?」

 

「刀の稽古をつけてほしいと思ってここに来たんです…」

 

「ほう。刀の稽古ねぇ…本人に聞いてみないとな。とりあえず上がって。」

 

「ありがとうございます、お邪魔します。」

 

開けた和室に案内されると一人の女性がいた。

 

「あら、お客さん?」

 

「あれ、幽々子様こんなところで。どうしたんですか?」

 

「たまたまここにいるだけよ?」

 

「そうですか。橘さんだっけ。お茶持ってくるので座って待っててください。」

 

「えっと。はい。」

 

向かいに座ってる人…幽々子様って…ことは、前に聞いた妖夢さんの知り合いの方だったっけ。

 

「貴方、妖怪ね。」

 

「えっと…そうですが…」

 

「半妖にしては。力が弱いわね。」

 

「力が弱い?…普通の人間と同じように勉強して寝て遊んで…そんな生活ばかりだから気にしたことありませんでした。」

 

「ならなんで稽古をつけてもらおうと思ったのかしら?」

 

なんで稽古の話を知っているのだろうか…?

 

「色々とあって…」

 

「ふーん、そう。色々ね」

 

「基本的には自衛の為です。」

 

「そう。持ってきた木刀も自衛の為のものなのね?」

 

「これはそうですね。家に置いてあったものです。所謂泥棒対策として。」

 

「そう。」

 

「お茶、お持ちしました。」

 

お茶を持ってきたのはさっきの男性ではなく別の女性だった。

多分この人が魂魄妖夢さんだ。

 

「私に稽古を付けて欲しいって聞きましたが」

 

「剣術を教えてもらいたくて。」

 

「剣術ですか…剣術と言うよりかはそうですね…」

 

「基礎と応用で充分じゃないかしら?それ以降は個人の動きによるわ。」

 

「そうですね。それが良さそうです。」

 

 

道場ようの場所に移る

 

「その木刀は使い古してあるようですね」

 

「元々知り合いのものなんですけど、要らないってもらったものなんです…知り合いは昔、人里でよく暴れてたので…それで。」

 

「なるほど。あなた自体は握ったことはあるのですか?」

 

「とりあえずは、数回。」

 

「わかりました。とりあえず構えの姿勢はわかりますね?」

 

「はい。」

 

青年は木刀で構えの姿勢をとる。

両手で握り締め。しっかりとした姿勢だった。

 

「構えの姿勢は問題なさそうですね。」

 

「はい。ありがとうございます。」

 

「振りかざしたりとかはしたことありますか?」

 

「はい。一応寺子屋の道場に通っていた頃や最近でも多少は。」

 

「なら、とりあえず基本のおさらいからですけど。いいですか?」

 

「はい。」

 

「まずは。攻めの練習と守りの練習をしますよ。」

 

「はい!」

 

一先ず受け身からですね

 

「守りの姿勢もできてるようですね。実践ではしっかり構えるといいですよ」

 

「わかりました」

 

実際に振りかざしてみてもしっかりと刀で受け止めれている。少し押してみても、反発して押し返して来る。

 

「守りは十分ですね、攻めの練習をします」

 

「はい。」

 

振りかざして来るのを刀で受け止める。

人間の青年くらいの力ではない…

少なくとも妖怪の力程は出してきている

半妖なのはわかるけれど…

とりあえず反発して下げないと。

 

「これでは…」

 

攻めの姿勢が強すぎる…

私が防戦一方のような感じになってる…

大きく下がらないと…

 

「えっと…」

 

「手を止めましょう、十分です。」

 

「わかりました」

 

刀の振り方も守りも十分過ぎる程にできてる。

 

「本当に数回だけなんですか?」

 

「えっと…はい。」

 

上達が早かったのか、元々持ち合わせていたセンスなのか…

 

「まぁ、刀の稽古という意味では初心に帰って頂けたと思います、守りも攻めも十分ですし、刀の扱いもしっかりとできてますよ」

 

「ありがとうございます。」

 

「軽い実践形式でやってみましょうか」

 

「是非お願いします。」

 

お互いに構える…

 

私から攻めてみよう…

 

刀を振りかざしても。一発も通らない…

それどころか軽く往なされている

一旦下がると詰められて防ぎ切るまでが長い…押しの力が強いせいか反発して相手を下げることも難しい。

 

本当に素人…?

もしくは数回の経験が半端じゃないのだとしたら…誰がこんなにも指南できる…?

 

「妖夢。今は考えず向かいの相手に集中しなさい。」

 

そうだ、考えている暇はない。

 

こうなっては容赦していられない。

一度下がって。相手が詰めてくるのを待つ。

 

大きく振りかざしてこれば…

 

「甘い!」

 

「くっ…」

 

カウンター…決まって良かった

 

「お疲れ様でした。」

 

「負けました…」

 

「十分じゃないの?妖夢にあれだけ詰めることができるなら。」

 

「幽々子様、先程は申し訳ございませんでした…」

 

「いいのよ、あの局面なら考えたくなるのもわかるわ。でも。そこがあなたの甘いところよ。頑張りなさい」

 

「はい、精進します。」

 

「稽古。ありがとうございます。」

 

「ええ。でも驚きました。数回しか刀を握ったことがないというのに。あれだけの実力つけれるのですね。」

 

「生まれ持ってのセンスね。」

 

「やっぱりそういう人はいるのですね。」

 

「あなたもそうだったでしょう?」

 

「まぁ。それは確かに。」

 

「両手に一本ずつ刀を持つなんて簡単なことじゃないわ。」

 

「…話が逸れましたが、今日はこれでお終いにしましょう。また今度機会があればお相手します。」

 

「わかりました。ありがとうございました。」

 

「ご苦労様。」

 

木刀を背負って青年は帰っていった…

 

「幽々子様。」

 

「何かしら?」

 

「半妖にしては。力が強すぎると思いませんか」

 

「普段は妖怪としての力は弱くても物理的な力は強いってことね。」

 

「妖怪としての力も強かったと思いますが…?一瞬だけでしょうか…」

 

「何か特別な妖怪ね。」

 

「特別な?」

 

「木刀を構えているときの彼は、明らかに初め見たときと風格が違っているもの、彼は木刀以外に刀を持っているでしょうね。木刀の扱いにも慣れているでしょうけど、他の刀も使えこなせるわ」

 

「なるほど…」

 

「寺子屋で触ったとか、数回だっていうのは…現実的とは思えないけれど。少なからず彼が低レベルではないのは確かね」

 

「彼は一体…」

 

「単純に自身が無かったのでしょう。彼自身自分が妖怪だっていう自覚はあると思うけれどそれがどこまで理解しているかだと思うわ。」

 

「自身がない…迷いがあったようには思えませんでしたが…」

 

「深い理由は話さなかったわ。ただ自衛のためとは言ってたわね」

 

「自衛…そうですか」

 

 

……

 

妖怪の気配…弱い気配だから心配はない…

いや…この気配は…

 

「今日は二人とも不在なのよねぇ…」

 

仕方なく出迎える

 

……

 

「いらっしゃい。今日も稽古?」

 

「幽々子様。はい、稽古に来ました」

 

「やっぱそうよねぇ。生憎だけど今日は妖夢は出掛けてるから。刀の稽古は無理そうね。」

 

「そうですか…また日を改めて…」

 

「まぁせっかく来たんだからお茶でも飲んでいきなさいな。」

 

「はあ…ではお言葉に甘えて。」

 

部屋で待っていると幽々子様がお茶を持ってきてくれた

 

「幽々子様がお茶を…?」

 

「そうよ。今日は私しかいないもの。」

 

「えっと…ありがとうございます」

 

「いいのよ。」

 

幽々子様と二人か…

 

「緊張してるかしら?」

 

「え、ええ…まぁ…」

 

「ふふ。ならその緊張感を生かして、特訓でもしましょう。」

 

「えっ?」

 

「こっちよ。」

 

屋敷を進んでいると周囲がいつの間にか見覚えのない風景になっていた。

 

「ここは…?」

 

「冥界よ。安心しなさい。死んだわけではないわ」

 

「冥界…」

 

「当然のことだと思うけど飛べるわね?」

 

「それはもちろん。」

 

「なら、弾幕を避ける練習はしたことあるかしら?」

 

「それは…ないですね。」

 

「なら、早速特訓しましょ。」

 

「えっと…はい。」

 

「ただ避けるだけでは面白くないわね…ルールをいくつか決めるわ。」

 

「ルール…ですか。」

 

「刀の使用禁止。地上にいられるのは二秒だけ。」

 

「なるほど…」

 

「目的としては、そうね。私は動かないから私の手の届く所まで来れたら上々。ただし被弾したら即座にもとの位置に戻すわ。」

 

「被弾を一切せずに幽々子様の近くまで行くと、」

 

「そういうこと、それじゃ始めるわね」

 

幽々子様はかなり遠くまで離れてしまった

 

「かなり遠すぎませんか…」

 

それも当たり前か。遠ければ避けやすいが近ければ近いほど弾幕は避けにくくなる。

そう思えばいい特訓かもしれない

 

距離があるうちは簡単に避けて進むことができたが、半分まで来たところでそんな余裕はもうなかった

 

「こんなにいきなり難しくなるのか…」

 

避けるのに必死で前に進めてもさっきよりもペースが遅い。

 

「武器が使えない上に陸にも降りれない…こんな状況で…どう進めば…」

 

活路の開き方がわからない。

避けるばかりでは何も進まない。

 

「どうすれば…」

 

考えれば考えるほど後退してしまっている…

 

「考える…?」

 

この前…幽々子様が妖夢さんに行っていたことを思い出す。

 

(考えず向かいの相手に集中する。)

 

今の状態なら幽々子様の弾幕対して…

 

「一定の動きがあるわけでもない…規則性もない…なら。直感しかないのか…」

 

安全圏で考察する…

 

「手段は選べない。」

 

一つわかることは。

僕に向かって飛んでくる数は少ない。

浮遊して動くだけの弾幕が大半。

なら…

 

「さっきよりも早く進まないと。」

 

移動速度を上げて。なるべく浮遊して動くだけの弾幕を避ける。

 

「向かってくる弾幕は自然と避けれる。なら気にするのはその場にあるものだけ…」

 

とは言え油断はできない。

 

「上出来じゃない。」

 

危ない局面もあったが。なんとか声が届く所まで来れている。

 

「でもこれからよ?」

 

そうだ、最もこれから、密度が濃くなる。

その上向かってくる弾幕も無視はできない。

 

「早く…」

 

見るのは幽々子様じゃない…今はまだ弾幕だけ見ればいい…

 

「さすが妖怪と言ったところね。」

 

あともう一息なのに。

ほとんど壁のような弾幕…

避けるも突破もできない…

 

「くっ…こんなの…」

 

「まぁ、おしまいね。」

 

四方八方から弾幕が襲ってくる…

とっさの判断だった…急降下して、地面を蹴って後ろに避けながら上昇する。

 

「あら…あれを避けるなんて…大したものだわ」

 

「はぁ…」

 

息が続かない…

 

「お手上げです…」

 

「そう?もう一息じゃない」

 

「…これ以上はちょっとキツイですよ…」

 

「まぁ、無理をするのは良くないものね」

 

地上に降りて一息つきながら来た道を戻っていく

 

屋敷に戻るとお茶が用意されていた。

 

「妖夢、戻ってたのね」

 

「はい。今日はそこまで用事無かったので。」

 

「そう、そのまま稽古するのかしら?」

 

「私は構いませんが?」

 

「いや…休ませてください…というか今日はもう無理ですって…」

 

「冥界まで行ってたんですよね。何されてたんですか?」

 

「弾幕を避ける練習。」

 

「…なるほど…ね…武器を使わない例のアレですか…」

 

「そうよ。もう一息だったのだけどねぇ。」

 

「まぁ、普通に考えて無理難題ですからね。」

 

「本人は気づかなかったみたいだけど。惜しいとこまでは動いてたのよ?」

 

「惜しいところまで…?あれがですか…?」

 

「そうよ。急降下したのは覚えているかしら?」

 

「ええ、それは覚えてます」

 

「降りた先正面には何があった?」

 

「何があったか…何が…?ん?何もなかった…な…何もなかった」

 

「つまり、あの場で下がらずに進めば私に近づくことができたのよ。惜しかったわね」

 

「とっさの判断ミスか…」

 

「でもあれでいい、貴方には余裕が無かったのならね。実際の場合では詰めすぎるより一定の距離を保って攻めるときに一気に攻めればいい。」

 

「わかりました。」

 

「私からはこれくらいかしらねぇ」

 

「また機会があれば来ます」

 

「ご苦労様。」

 

……

 

「今日は何を買って帰ろうかな…」

 

最近…幽々子様のおやつもまた減ってきたし…

 

「たまにはお団子買って帰りましょう」

 

兎の屋台から団子を受け取ったその直後、

何か大きな物音がした。

音的に人里の中だ

 

「なんですか今の音は?」

 

煙の上がった所まで向かう途中

誰か見覚えのある人とすれ違った気がする…

そんなことを考えるよりも事件のある場所に向かうと妖怪達が宿舎を襲い込んでいた

 

「また妖怪が暴れて…!」

 

刀を構えると、

後ろから誰かが走って来た。

 

「下がって。」

 

見覚えのある顔。

橘さんだった。

 

でも普段と表情が違う、

風格も何もかも違う

でも彼は素人当然のはず…

 

「あなたこそ下がって。」

 

「…」

 

何も言わずに妖怪達の群れの中に飛び込んでいった。

 

「ちょっと!」

 

圧巻だった。

傷一つ付かず敵の攻撃に触れることもなく、

暴れていた妖怪達を斬っていった。

暴れてたのは二匹や三匹ではない。

十とか十五は居るはず…

 

気がつくと妖怪の屍だけが並んでいた。

 

「あれ…?私が来た意味ない?」

 

いつの間にか横に博麗の巫女がいた。

 

「霊夢さん。」

 

「あんたの仕業?ってわけでもなさそうよね。何これ?」

 

「えっと…」

 

私も少し驚いている。

 

「橘さん…どうして…」

 

「まだ一匹中にいるみたいね。退治しましょ」

 

「いえ!その必要はありません!この気配は…」

 

いつもと違う妖気…

でもその中に確かに橘さんの気配はある…

 

「なんでよ。暴れてたのって妖怪なんでしょ?」

 

「この妖気は…別です。」

 

半壊の宿舎から橘さんが出てくる。

 

「終わりましたよ。」

 

「終わりましたよって。あんたも妖怪じゃないの。」

 

「そうだね。妖怪だ。退治するの?」

 

「あんたが元凶なら退治するけど。そうじゃないなら理由もないし、面倒そうだからやめておくわ」

 

そう言って、霊夢さんは帰っていった。

 

「あの…橘さん?」

 

「なんですか?」

 

意味もなく引き止めてしまった…

でも聞きたいことが山程ある

 

「その刀はどこで…?」

 

「刀…どこで…か」

 

何か後ろめたいものでもあるのだろうか…

 

「家まで来てください。ここでは話せません」

 

「…わかりました」

 

橘さんの家は人里の端の方にあり、小さな借家だった。

 

「ここに一人で…?」

 

「そう、あがってください」

 

一人暮らしの最低限のものしかない…

 

「それで、さっきの話だけど、」

 

「その刀は…」

 

「神刀って言われてる、古い刀。」

 

「神刀…?」

 

「御霊の宿る刀なんです。」

 

「そんなことが…」

 

「私は確かに妖怪です。でもまだ私としての力が弱い。だから。特訓が必要だった」

 

「でもあの様子だと。」

 

「あれは…刀の御霊の力です…」

 

「御霊の力…」

 

「力というよりかは、御霊が身体を操っていると言うのが近いかもしれません。」

 

「身体を操る?」

 

「この刀は私が世話になった人間が持っていた刀で…その人は刀鍛冶だったのですが。神様が宿る刀だと言って私に渡されました」

 

「神様?」

 

「何の神様なのかもわからず、名前もわかりません。ただこれには御霊が宿っていてその御霊に願えば力を貸してくれる。その代わりに身体を一時的に受け渡す。そういう仕組みになってます」

 

「なるほど…」

 

「でも…この刀は私にしか答えてくれないみたいで…友人や別の妖怪には反応しなかったんですよね…」

 

「貴方だけの刀なんですね。」

 

「そうですね…」

 

「色々と納得しました。」

 

「それは良かったです。」

 

「また今度特訓がしたいときはいつでも稽古できますから。」

 

「…まぁ、その時が来たらですね、」

 

「はい。では失礼しました」

 

……

 

その後何日経っても橘さんは来なかった。

特に気にはしてなかったけれど

幽々子様から話しかけられて思い出した

 

「刀の稽古の妖怪。覚えてるかしら?」

 

「えっと…橘さんでしたよね。」

 

「彼、行方不明になったみたいね」

 

「えっ?」

 

「家には刀だけ残してあって。彼だけ消えた。」

 

「どういうこと…?」

 

「あの刀。私も見たけれど。やっぱり妖刀ね」

 

「妖刀…?彼は御霊の刀だって…」

 

「そう言われて渡されただけ。でも、本当は妖怪の魂を吸って鍛えられる妖刀。」

 

「なら。彼が力を借りると言っていたのは?」

 

「それは間違いないわね。持ち主身体を操って力を振るう刀だもの」

 

「そんな…」

 

「だからあの刀に彼は喰われた。」

 

「…そうですか…」

 

「まぁ、今となっては他人事よ。そう深く思い詰めることはないわ。」

 

「そうですね。」

 

 

結局あの刀はある貴婦人の家に買い取られ

商売道具になったとか。

 




また会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

盲目と約束

どうも悠樹です

ちょっとした小話です。


ではごゆっくり


あのときの約束…覚えてる?

 

……

 

「ここ…どこだろう…」

 

森の入り口でよく見かける果物を探していたはずが…いつの間にか見覚えのない場所まで来てしまった…

 

「迷った…どうしよう…」

 

いつも目印にしている木や景色も見えない…

 

「奥に迷い混んでないかな…」

 

「迷子かな?」

 

「あっ…」

 

後ろから声が聞こえた…

振り向くと羽のある女の子…

妖怪少女がいた。

 

「もうだめだ…」

 

「ねぇ、迷子なの?」

 

「うん…」

 

「そっか。人里の子供かな?」

 

「そうだよ。」

 

「連れてってあげるね。」

 

「えっ?良いの?」

 

「だって、迷子なんでしょ?」

 

「そうだけど…」

 

「ほら、おいで。」

 

少女におんぶしてもらう。

 

「入り口まで向かおっか」

 

「うん…ありがとう。」

 

「どういたしまして。ところでどうして森に来たのかな?」

 

「入り口の近くの果物を取りに来てて…」

 

「そっかそれで迷い込んだんだね。かなり奥まで来ちゃってるよ?」

 

「そうなんだ…」

 

「入り口まで距離もあるし少し歌を聞いてもらおうかな。」

 

「えっ?う、うん…」

 

少女は歌った。

とても綺麗で素敵な歌声で。

聞き入ってしまう。

 

子守唄のようでだんだん眠たくなってくる…視界が霞んで…ねむたくて…

 

「また。会いに来てね?」

 

「う…うん…」

 

それからまた歌を聞いていると

眠ってしまっていた

 

「すぅ…ふぅ…」

 

「ふふ、今はお休み」

 

……

 

目が覚めてからのことだった…

 

「うぅ…んぅ?」

 

目線に薄っすらと光を感じる

でもそれがどんなものかはわからなかった。

 

「どうなってるんだろ…」

 

目を開けている感覚はあるのに何も見えない…

 

「ここどこ…」

 

何度目を開け直しても。どこを向いても何も見えない…

 

「目が…視えない…?」

 

「目が覚めたのね!」

 

母の声がするが。

声の方を向いても何も見えない…

 

「母さん?どこに居るの?」

 

「何処って…ここにいるわ!」

 

「ここって言われても…わからないよ…」

 

「目の前にいるわ?」

 

「何も…視えないよ…」

 

「まさか…貴方…目が…」

 

母が心配して医者を幾つも呼んでくれたが

永遠亭の医者にも治せないような状態だって聞いた

 

目が視えなくなった…

なんで視えなくなってしまったのか…

 

「目が視えないのか…」

 

食事も自分一人では満足にできない

寺子屋にも行っても聞くことしかできない…

外で遊ぶこともできない

 

「何もできないや…」

 

不便でならなかった

人と話したりすることはできても、相手が見えないと何故か不安になってしまう。

聞き取りをしても書き記すことができない

両手は使えるが、掴むものすら見えないとうまく使いこなせない。

 

「どうしようか…」

 

毎日毎日何もせず介護されて過ごす…

 

「何かできる事はないのかな。」

 

話したりはできるのなら…

歌うことはできる。

 

「歌っても…何かあるわけでもないし…」

 

特別歌が上手いわけでもない…が

練習して見る価値はあるだろうか

歌の練習や作詞をしてみるが

なかなかうまく行かず年月だけが過ぎていく

 

ある日の夜のことだ、

作詞を終えた歌を練習し終えた頃。

 

「歌、上手だね。」

 

私の声を聞いていた人がいる。

 

「誰だ?」

 

「誰だと思う?」

 

聞き覚えのある声、

でも最近のことではないと思う

 

「あのときの約束…覚えてる?」

 

約束…そうか、この声の持ち主は…あの少女だ

 

「会いに来てほしい…だったかな。」

 

「そうだよ、私待ってるからね」

 

「目が視えない…その約束は果たせるかわからないよ」

 

「なら目が視えるようになったら会いに来てほしい」

 

「もし目が視えるようになったら」

 

羽ばたく音とともに少女の気配は無くなって

 

その日はその後すぐに寝た。

 

次の日のことだ。

目が覚めて目を開くと証明の光がとても眩しく見えた。

 

「あれ…?視える…?」

 

目が視える。

手も見えて、壁と天井もわかる

 

起き上がると初めて見る景色ばかりだった

 

机には歌詞の書かれた冊子がいくつもあった

 

「今までの景色とは全く違う…」

 

「おはよう。気分はどう…?」

 

「おはよう母さん、目が見えるってとても不思議だよ。」

 

「えっ?、今なんて…」

 

「なんでだろう。目が見えるようになったんだ」

 

「本当に見えているの?」

 

「ああ。今日はよく晴れてるよ。空なんて久々に見た。」

 

「よかった…ほんとに良かった…」

 

「ちょっと出かけてくるね。」

 

「どこにいくの?一人で行ける?」

 

「大丈夫だよ。昔よく言ってた森に行くだけだから」

 

「そう…気をつけてね。」

 

家を出て里を出る。

 

見覚えのある森だ…

入り口の脇にある小道、奥に行くほど木々は多くなって道という道は見当たらない。

 

その先に小さな広場があった、

 

「来てくれたんだね。」

 

「約束。だったからね、」

 

「ありがとう。」

 

「君はずっとここにいるのかい」

 

「そう思う?」

 

「ちょっと疑問に思っただけさ。それと僕の視界を奪ったのも君だろう?」

 

「そうだね。」

 

「なんで、視界を奪ったのか。それも疑問に思ったな。妖怪なら回りくどいことはすることなかっただろう?」

 

「私はね。子供は襲わないの。」

 

「そうか。優しいんだね。」

 

「だけど。大人はそういうことは少ない。」

 

「僕も覚悟はしているよ、」

 

「あなたは、どうかな。」

 

「抵抗する手段がないかな。」

 

「そっか。ならまた歌を聞いてくれる?」

 

「構わないよ。」

 

少女は歌い始めると。

視界が霞んでまた、何も見えなくなった。

そして次第に眠たくなってきてしまった。

 

「素敵な歌声だな…」

 

「ふふ、嬉しい。みんなそういう前にどこか言ってしまうから。」

 

「そうか…」

 

歌に聞き入っていると。

いつの間にか眠ってしまっていた

 

「ふふ。おやすみなさい。そして、さようなら」

 

それから私の視界が戻ることはなく。

眠りから覚めることもなかった。




少しだけ報告を。

次回以降数話は同時間に連続投稿になります。
というのも。ロングシナリオになるからということですので

二月くらい空くんじゃないかな…


また会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

生まれた理由

どうもむつさんです
(今後はむつさんで通します)

4話連続投稿です。
遅くなりました9月に投稿かなとか言って遅くなりましたごめんなさい許して…

まえがきはこれだけ
あとがきは四話目のラストにだけ

ではごゆっくり


雨が降り続ける中、魔法の森のある広場に物が放り込まれた、そのすぐ直後に、ゴミや瓦礫の山が雪崩を起こすように崩れた。

 

……

 

わたしの初めての一日は…

雨の降る冷たい朝から始まった…

 

 

「痛い…ごつごつしてる…」

 

聞こえてくる【声】に違和感を感じる…

 

「あれ…わたし…?」

 

人の身なりをしてる…

これは一体なんで…

 

「あっ!唐傘…あれ…唐傘は…?」

 

必死になって探したが

瓦礫の山ばかり。

 

「いた!よかった…」

 

地面の上に力なく倒れていた…

 

「起きて…唐傘…」

 

唐傘は薄っすらと目を開けると起き上がって露先を広げ、私を雨から防ごうとしていた。

 

「ありがとう。でもこれじゃ雨を防げないね…」

 

生地に穴が開いていたり、破れていたり…

 

「私達…どうして生まれたんだろ…」

 

唐傘の中棒を持って肩にかけて歩く…

 

瓦礫やゴミ溜まりの外は森ばかり…

 

「どうしよう?」

 

宛もなく森の中に入り、道らしき場所を歩いていると、後ろから何か気配を感じた…

 

振り返ると見たことのない生き物がそこにいた。

 

「ひゃっ…」

 

怖かった、見たこともない、

恐ろしい…そればかりで必死に逃げようと走った。

 

でもボロボロの体では逃げることもまともにできなくて、飛んで逃げようとすると足を何かに掴まれた

 

解く間もなく引っ張られて地面に叩きつけられる…その直後にまた手足を植物のようなもので縛られた。

 

「い…いや…!離してよ!」

 

藻掻いても暴れても齒が立たなかった。

化物の方を向くと刃物のような手をこちらに向けて嗤っているようだった。

 

「いや…いやだよ…殺されちゃうよ…」

 

恐ろしさのせいで考えも纏まらなくて体も動かない…

もう何もできなかった…

 

「やめて…こないでよ…」

 

化物は高笑いをすると手を大きく振り上げる

 

「ひゃっ…」

 

怖さのせいで目を瞑ってしまう…

 

その瞬間轟音とともに地響きのような揺れが起きた。

 

ゆっくりと目を開けると目の前の化物は居なかった。気がつくと手足も自由になっていた。

 

「えっ…何が起きてるの…?」

 

「大丈夫か?」

 

「あなたは…?」

 

「私は霧雨魔理沙。普通の魔法使いだぜ!」

 

「魔法使い…?」

「そうだぜ、っとのんびりしてられないな、ここにいると危ないからほら早く後ろに乗れ」

 

「えっ?う、うん…」

 

その場の状況が飲み込めないが…箒に跨ると浮き始めた。

 

「あっ…唐傘!」

 

唐傘は呼ぶとすぐ飛んできた、

 

「その傘、大切なものなのか?」

 

「とても…とても大切。」

 

「そうか。ほら行くぞ、捕まってろ!」

 

勢い良く上昇すると空に飛び上がった。

 

「え、ええ…!?」

 

「空を飛ぶのは初めてか?」

 

「う、うん…というか。私は…」

 

「んー、話はあと、安全なとこに行こう。霊夢のとこでいいか」

 

森の上を飛んでいると地上から植物の種のようなものが幾つも飛んできた。

 

「やっぱりさっきの砲戦花か…邪魔だなぁ…揺れるぞ!しっかり掴んでいてくれよ!」

 

箒が四方八方に揺れる…

 

「なんなのこれ…」

 

「飛行物を無差別に攻撃する植物だよ。全く迷惑極まりないぜ。」

 

森を抜けるともう種は飛んでこなかった。

 

「危なかったぜ…」

 

「小さい種みたいだったけど…」

 

「確かに小さいけどな、あれは脆いんだよ、何かにぶつかると砕けて酸性の液体をばら撒くんだ。当たると服が溶けたり、皮膚に触れると炎症を起こしてすごく痛いんだ…」

 

「そ…そんなものなんで飛ばすの…」

 

「私も知りたいぜ…というか誰があんなもの森に植えたんだよって思うぜ」

 

確かにそうだ…こんな危ないもの誰が植えるのかな…

 

「さて、見えてきたぜ。」

 

魔理沙が指差した先には、何故か見覚えのある建物があった。

 

「ふぅ〜。無事到着だぜ!」

 

「ここは…」

 

「博麗神社。知らないのか?」

 

「あんたまた面倒そうなの連れてきたわね…」

 

赤い服の人間が近づいてくる…

 

「妖怪に襲われてたからな。助けてやっただけだぜ!」

 

「まぁ、助けたその子も妖怪だけどね」

 

「うえっ!そうなのか!?」

 

赤い服の人間は私を睨んでくる…

 

「あんた…唐傘お化けね。」

 

「えっ…わかるの?」

 

「まぁ、カンもあるけど、手に持ってる唐傘と、あんたのその様子見たら大体わかるわ」

 

「わたしはわからなかったぜ…」

 

「あんたほんとそういう所鈍感よね」

 

「さ、さぁ?」

 

「自己紹介まだだったかしら。私はこの神社、博麗神社の巫女。博麗霊夢よ。」

 

「み…こ?」

 

「そうね。簡単に言えばお祓いとか、妖怪退治とかやってるわ。」

 

「妖怪…退治…」

 

「ああもう…あからさまにそんなこわばった顔しないの。妖怪退治って言ってもこの幻想郷に対する脅威が主だから、安心しなさい」

 

「うぅ…私は…」

 

安心しているのか…していないかもしれないけど、急に疲れが体を襲ってきて…膝から崩れて座り込んでしまった

 

「ちょっと。大丈夫?」

 

「雨も降ってるわけだし、少し休ませてあげようぜ。」

 

「神社で妖怪を休ませるのもおかしな話だけど…もう。仕方ないわね、魔理沙頼んだ」

 

「わたしが?そんな雑なぁ…」

 

魔理沙は私をおんぶすると。

神社の建物の中に入る。

 

何か祀ってあるのかと思ったけど…

そういうわけでもなかった…

 

「布団、用意したからしばらく横になって休んでなさい。」

 

「えっと…あの…」

 

「ありがとうでいいわ。感謝の意思表情くらいなら言わなくてもわかる、今はいいから休みなさい」

 

「ありがとう。」

 

布団に入って横になる…

すぐ寝付けるかと思ったけど、

なぜか眠れなかった

 

「唐傘なんて抱きしめて寝ちゃって」

 

「大切なんだってさ」

 

「そう。だけど。ちょっと気になるわね。」

 

二人がまだ話をしているのを聞いていた

 

「何が?」

 

「唐傘もボロボロだし服も破れたり穴が空いてたり。まさかね…」

 

「どういうことだよ。」

 

「魔理沙は付喪神って知ってるわね」

 

「ああ、道具に魂が、ってやつだな」

 

「そう。付喪神が生まれるには理由があるわ、簡単に言えば。道具に霊魂が宿って変化するってやつ。昔の表現だと百年経つと変化するとかって説があるらしいけど実際にはこの子は…」

 

「霊夢って博識なんだな…」

 

「あのね、妖怪退治とかしてたら自然と気になるものなのよ。調べる場所ならあるし。そりゃ知ってることだって多いわ、」

 

「んで、こいつがどうしたんだ?」

 

「多分。霊魂が取り付いた理由が怨念とか恨みなんじゃないかって思うの。」

 

「唐傘だから捨てられた…とか?」

 

「付喪神って、使い手の愛着によって生まれたり、捨てられたりしたときの恨みや憎しみで生まれるって説もあるのよ。」

 

「へ、へぇ…そうなのか…」

 

私…捨てられたの…?

 

「この子は捨て傘とか忘れ傘。そんな所じゃないかしら。」

 

「そういうことか…」

 

「実際の所はわからないわ。この子が生まれた経緯を調べる方法なんて無いわけだし、聞き出すのもこの子に悪いわ。悲しい結末の結果、この子が生まれたのなら尚更ね。」

 

「残酷なんだな…」

 

「でも、それは私達と同じ人間がやったことなのよ、もし本当にこの子が人間から捨てられたのなら、過去を思い出したこの子が人間を襲わないことを祈るわ」

 

「だな…その時があったら…」

 

「最悪私はこの子を祓わないと行けないわけでしょ。それだけは勘弁ね」

 

「なんだ?優しい言い方するな」

 

「煩いわね。仕方ないでしょ。」

 

「まぁ、最近の霊夢は妖精達に甘いもんな」

 

「そういう貴方も妖精達に好かれてるでしょ」

 

「ははっ、確かにな」

 

「今日は来ないのかしらね。 」

 

「あいつらがいないと静かだよな」

 

「今はいないほうが良いわ怪我人もいるわけだし」

 

「怪我人、人じゃなくて妖怪だけどな。」

 

「どっちも変わらないわ」

 

…どうしてだろう…

胸が苦しくて…悲しい…

 

「ねぇ…」

 

「あら、起こしてしまったわね」

 

「ううん…ずっと起きてた…」

 

「そう、どうかした?」

 

「私…捨てられたの…?」

 

「ああ、さっきの話ね、あくまで可能性の話よ事実かどうかは私には分からない」

 

「でも霊夢、こいつを見つけたとき魔法の森にいたんだけど、近くにあの広場があったんだよ…」

 

「あの場所って?…もしかして」

 

「ああ…人里では掃き溜めって呼ばれてる。」

 

「…魔理沙が見たのなら誤魔化しようがないわね。」

 

「掃き溜め…?」

 

「人里にはね。要らなくなったものや処理できなくなったゴミを魔法の森のある広場に捨てていくような人間がたまにいるのよ、私や魔理沙みたいに幻想郷を護ってる側からすれば迷惑極まりないわ。」

 

「じゃあ…やっぱり私…要らなくなったから捨てられたんだね…」

 

「心苦しいとは思うけれど、そういうことになるわ。」

 

「そうなんだ…」

 

胸が苦しくて…悲しい…辛い…

そんな気持ちで一杯だった…

涙が溢れて流れてくる…

 

「泣きたくなるのはわかるけれど…私達には止められなかったことなのよね…」

 

「ああ…そうだな…」

 

「私…これからどうすればいいの…」

 

「ああ…困ったわね…」

 

「いやまぁ…残酷すぎるのはあるけど…起きてしまったのは変えようのない事実なんだよな…」

 

「なんで…私は生まれてきたの…なんでこんなに苦しくて…悲しい思いをしないと…」

 

「そうね…貴方名前はまだ無いわね?」

 

「名前…?」

 

名前…何か引っかかるような気がして…

 

「えっと…名前…」

 

「霊夢、生まれたばかりなんだから名前なんてあるはずないぜ」

 

「ううん…名前ならある…」

 

「なんて?」

 

古いような記憶…

薄っすらと浮かぶ風景…

その風景に映った景色は

まるで懐かしいような…新しいような…

その中で誰かが私の名前を呼んだ

 

「多々良小傘…私の名前は多々良小傘。」

 

「どういうことなの?」

 

「分からない…わからないけど、これが私の名前…」

 

「誰が名付けたんだ?」

 

「この子がまだ傘でいた頃の使い主じゃないかしら。それなら話は通るわ。」

 

「その時の記憶って残ってるものなのか?それに、傘にわざわざ名前をつけるなんて酔狂なやつだな」

 

「さぁ?でも記憶に残ってる訳だからこの子は名前を覚えてるんでしょ」

 

「ああ、まぁそうだな。」

 

傘でいた頃の私の使い主…

どんな人間だったのかな…

 

少し…思い出せそうな気がする…

思い返そうとするほど…

さっきと同じ感覚になる。

 

懐かしいような新しいような、

そんな風景ばかり頭に浮かぶ…

でもその度に悲しい気持ちで胸が一杯になるのと同時に…嫌な風景も思い浮かぶ…

 

「さっきからどうしたのよ。」

 

「あっ…何でもない…」

 

「言いたいことがあるなら言うのよ。」

 

「…えっと…言いたいことはあるけど…なんていえばいいのかわからなくて…」

 

「妖怪として生まれたばかりなんだから話下手でも仕方ないぜ。纏まってから話をしてくれ」

 

「うん…」

 

また布団に横になる…

胸が苦しいのが収まらない…

何か考える度に捨てられたという事実が頭を過ぎって胸が苦しくてなる。

その度に涙が止まらなかった。

 

「…魔理沙ちょっと席を外して頂戴。」

 

「えっと…なんとなく察したぜ、丁度いいやこーりんのとこにでも行くかな」

 

魔理沙は外に行ってしまった…

 

「多々良って呼べばいいかしら?それとも小傘?」

 

「…どっちでも…」

 

「ちょっと隣失礼するわね」

 

すぐ近くまでの巫女は来ていた。

何かされるのかもしれない…

でも今の私には抵抗する余力は微塵もない…

 

「ねえ、小傘。」

 

「…うん…」

 

「確かにあなたは今すごく苦しくて辛いと思うわ」

 

「うん…涙が止まらないよ…」

 

「そう…ね、起き上がってこっち向けるかしら?」

 

「えっ?う。うん…」

 

言われたとおりにすると、

巫女は…霊夢は私を抱きしめた…

 

「えっ…えっと…」

 

「辛いことや悲しいことは誰にでもあるわ。」

 

「それは…あなたにもあるんですか…」

 

「もちろんよ、私はこの幻想郷を護ってきて、辛かったり悲しい思いを幾度と経験したわ。だからこそわかる事ことがあってね」

 

「どんなこと…?」

 

「辛いことや悲しいことがあった分、それと同じくらい嬉しいことや楽しいことがあるってこと。小傘はまだ生まれたばかりでいきなり苦しくて辛い思いをしてる。でもその分、小傘はきっと楽しくて幸せに生きることができると思うわ。」

 

「楽しくて幸せに生きる…」

 

「そう。傘でいた頃は辛かったかもしれない、今も辛いと思うわ。でもこれからはきっと楽しくなる。私が保証するわ。」

 

「ほんと…?」

 

「ほんとよ、私のカンは当たるから安心しなさい」

 

「わかった…」

 

しばらくそのままの姿勢だったけど。

とても気持ちのいい暖かさだったからか気がついたら眠っていた。

 

……

 

「この傘お気に入りだからね。」

 

「はぁ?そんな地味な傘が?」

 

「奇抜すぎたり無色透明よりいい、それに地味でも愛着があるなら気にすることはないよ。」

 

「よくわかんねぇな。」

 

「君みたいにすぐ代え物を用意する人にはわからないかもしれないね。」

 

「仕方ねぇだろ。天気なんてわかんねぇし。」

 

「だからこそ、持ち歩くんじゃないか」

 

「そういうもんなのかね。」

 

「私はそう思うよ。」

 

「へぇ、そうかい。」

 

「それに、道具でも大切にすれば、いつか答えてくれるさ。」

 

「傘に口なんかねぇよ。」

 

「ははは、確かにそうだね、でも、付喪神になってくれたら、答えてくれるかもしれないよ?」

 

「百年経たないと生まれねんだろ?その頃にはあんたは死んでる」

 

「確かに。まぁ、いつかそのうちさ。」

 

「あっそ…」

 

「どちらにせよ、僕はこの傘が……」

 

……

 

目が覚めると見覚えのある風景に戻ってきていた。

 

「ここは…神社、さっきの…夢…?」

 

周りを見渡しても霊夢が隣で寝ているだった

 

「夢…か…」

 

少し経つとまた眠たくなったので

再び寝ることにした。

 




次の話に続きます


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

和やかな一日

前話の続き


 

「小傘!起きなさい!」

 

二度寝から目が覚めるときは霊夢の声で起きることになった。

 

「んぇ…」

 

「ほら、いつまでも寝てちゃ駄目よ。人間みたいにぐうたらすると変な神様に取り憑かれるわよ。」

 

変な神様って何だろう…

 

「う〜ん。」

 

仕方なく体を起こす。

 

「おはよう小傘」

 

「うん…」

 

「体は起きてても頭はまだ寝てるのね…」

 

「う〜ん…まだ眠たいよ…」

 

「疲れてるのかしらね。」

 

外から元気そうな声が近づいてくる…

誰だろう…人間の子供かな…

 

「あ…もう来たのね…」

 

霊夢は襖を開けると外で子供のような身なりの子達が遊び回っている…

 

「えっ…?」

 

「あんたは知らないと思うわ。あの青いのはチルノ、その隣にいるのが大妖精で。赤っぽい服のがサニー。サニーの隣にいる青い服がスター、でまた隣にいるのがルナチャイルドだったかしら。あとあの犬みたいなのがあうんね。」

 

「えっと…チルノと…スターと…」

 

「別に覚えなくていいわ、あの子達は勝手に遊んでるだけだから。」

 

「そ、そうなの?」

 

「絡まれたときだけ相手してあげなさいな。」

 

「わかりました。」

 

「さてと。魔理沙はまだかしらね、」

 

「昨日の白黒の…?」

 

「そう。」

 

「あの人も遊びに来るんですか?」

 

「そんな感じ、でも今日は用事があるから早く来て欲しいんだけど、」

 

「おーい!霊夢!待たせた…おぶぅ!」

 

境内に着陸した瞬間チルノとぶつかっている…

 

「ちゃんと周りくらい見なさいよ。」

 

「ぶつかってくるほうが悪いんだぜ…」

 

「あの子達が遊び回ってるのなんていつものことでしょ?」

 

「そりゃそうだけどさ…」

 

「それで、話は付けて来たの?」

 

「おう、バッチリだぜ。」

 

「すぐでもいいのかしら?」

 

「いいんじゃないか?」

 

「じゃあ出発ね。」

 

「どこに行くの?」

 

「あんたも付いてきなさい。」

 

「ほら、後ろ乗るんだぜ。」

 

「え?、う、うん。」

 

箒に跨ぐとまた飛び上がる

 

「良い天気ね。梅雨時期とはいえこんなにカラッと晴れたのは久々じゃないかしら。」

 

「そうだな、最近曇ってばかりで暗かったしな。いい景色だぜ。」

 

幻想郷を空から眺めるのは。本当にいい景色で、明るくて気分のいい風を感じてとても爽やかだった…

 

「初めて…こんな景色見た」

 

「そうだよな、えぇと…小傘でいいか?」

 

「うん。いいよ。」

 

「小傘は…えぇと…なんていうか、どんな服が着たい?」

 

「服?」

 

「そう。服だ、破れかけてるのをいつまでも来てるわけにはいかないだろ?だから小傘の服をどうしようかって思ってな」

 

「それで、魔理沙の彼氏に頼もって算段よ。」

 

「彼氏じゃねぇって!こーりんはそういうのじゃないんだぜ。」

 

あからさまに顔が赤くなってる…

 

「好き…ってこと?」

 

「だ、だからそんなんじゃ…」

 

「ま!前!」

 

「魔理沙ー。前見て」

 

「わわっ!」

 

何かにぶつかりそうになった…

物凄い速度で何かが飛んでいた…

 

「いつになく早かったわねぇ。」

 

「急いでたのか?」

 

「さぁね、興味ないわ、どうせろくでもない記事書くんでしょ」

 

「まぁ、ろくでもない記事の方がありがたいけどな。」

 

「そうね。異変を取り上げられたら私達が動かないといけないもの、面倒だわ」

 

「さっきのは…何だったの?」

 

「射命丸文。烏天狗の記者で新聞売りよ、あることないこと何でも記事にしてるから、胡散臭い記事は見ないほうがいいわね。」

 

「たまーにやばい記事が本当の話だったりするからな隅には置けないやつだな。」

 

「あんなに早いんだ…」

 

「情報は速度が一番だってさ。」

 

「へ、へぇ…」

 

しばらく話しながら飛んでいると。

また森に近づいていた。

 

「ねぇ…こっちの方って…」

 

「…ああ、安心しろ森には入らないよ、手前のある店に用事があるんだぜ。」

 

「そっか、よかった。」

 

「そろそろ砲戦花の射程でしょ、降りましょ」

 

「おう、そうだな。」

 

地上に降りて少し歩くと小屋のようなお店がぽつんと建っていた。

 

「ようこそ香霖堂へ。おや、魔理沙と霊夢じゃないか、それと例のお連れさんかな。」

 

「おーす。昨日ぶりだな。」

 

「霊夢がここに来たということはあの話でいいんだね」

 

「そういうことよ頼むわ。」

 

「了解したよ。」

 

男の人…

 

「うーん…初対面で話をするのはやはり気まずいね。」

 

「まぁな。小傘もまだ話上手でもなさそうだしな。小傘、さっきの服の話覚えてるか?」

 

「うん。覚えてる、あ、て言うことはこの人が彼氏さ…」

 

「だから!」

 

「ははは!霊夢も教え混むのが早いなあ」

 

「こーりんは黙ってくれ!」

 

「おやおや、僕が黙ってたら話が進まないだろう?」

 

「いやそうだけどさ…」

 

会話を遮るように頭上から鈍い音が聞こえてくる。

 

「な、何?」

 

「ああ…また住み着いてるのか…」

 

「この前の妖精?」

 

「そう。気がついたら住み着いてるんだ、彼女がいると雨が絶えないからね、ちょっと困ってるんだ」

 

「屋根裏だったわね」

 

「うん、見て来るかい?」

 

「面白そうだな」

 

「家の裏手のはしごから入れるから、見てきてくれると助かる。」

 

「私も行こうかな…」

 

店を出て裏に回ると金属のようなものでてきたはしごがあった。

 

「これはしご?なんか高そうなものおいてあるわね…」

 

眺めている間に先に登って覗いてみた…

 

「うーんと…どうなってるのかな…」

 

「どう何か見える?」

 

妖精らしき姿と翼の生えた妖怪らしき姿がいがみ合って掴み合っていた

 

「私の本よ!返しなさい!」

 

「嫌よ!これは私が拾ったの!」

 

「盗んだの間違いじゃないの!」

 

「えぇと…」

 

多分下の二人には聞こえてない…

 

「小傘?どうしたの?」

 

「なんていうか…喧嘩してるんだよね…」

 

「喧嘩?」

 

「本を取り合ってるんだと思うけど…どうしよう…」

 

「あの名無し妖怪(朱鷺子)ね、ちょっとどいて。」

 

「う、うん。」

 

霊夢は屋根裏に登って行くと奥に向かっていった。

 

「おっ、どうするんだろなぁ〜」

 

魔理沙さんとあとをついていくことにしてみた。

 

「あんた達、ちょっと大人しくできないわけ?」

 

「あ、あなたは…あのときの巫女…」

 

「ひぃっ…」

 

妖精は何も言わず本を投げ捨てて逃げ去って行っちゃった。

 

「顔見るだけで逃げ出すなんて…失礼なやつね、ほら、あんたのなんでしょ」

 

「あ、ありがと。」

 

「にしても何でこんなとこにいるわけ?」

 

「でっかい図書館から本を借りたから、静かな場所で読もうと思ったら。何かすごく早いものにぶつかりそうになったの。それでびっくりして本を落としちゃって…」

 

「それで。さっきの妖精に横から拾われたわけね。」

 

「そう…でもあなたのおかげで助かったわ。図書館の司書さん魔法使いだって聞いてるから本なくしたら何されるかわからないし…」

 

「司書ってパチュリーのことか?」

 

「名前は知らない…でも帽子に月の髪飾りがついてたよ。」

 

「パチュリーね。」

 

「だな、あいつはそんな悪いやつじゃないからな。心配ないと思うぞ。」

 

「そっか。ちょうどここで本読んでいようかな」

 

「ここは薄暗いでしょ。」

 

「外の光で明るいから。」

 

「どっちにしろ目に良くないぜ。」

 

「下で読めばいいのに。」

 

「下って?」

 

「えっと、お店の中ってこと」

 

「でも…」

 

「いいじゃない。ここで読むよりは」

 

「う、うん…」

 

屋根裏を降りてお店に戻る…

 

「おや、一人増えたね。屋根裏にいたのは君だったのか、朱鷺子。」

 

「またその名前で…妖精に本を盗まれたから奪い返しに来ただけよ。」

 

「朱鷺子?」

 

「この子は名前がないらしくてな。朱鷺の妖怪だっていうから、朱鷺子って名前にしたんだ。」

 

「へえ〜そうだったんだな。」

 

「それはさておき、もう一人のお客さんの服をどうにかしないとね。」

 

「そうだったわね。どうするの?」

 

「どうするもこうするも、希望があるならそれにするけど。何かあるかい?」

 

「服…どんなのがあるの?」

 

「例えば、今僕が来ているような和服、隣の魔理沙のような洋服、あとは礼装として使われるスーツとかいろいろあるね。」

 

「和服…どうなんだろう」

 

「簡単に言えば今僕が来てるような服の事だからね。これは着物、ニッポンの代表的な服とも言える。」

 

「洋服は?」

 

「ニッポン以外から取り入れられた服のことさ、度が過ぎると隣の魔理沙のような服になる。ワンピースとかシャツも洋服として見られることが多いね」

 

「度が過ぎるって…」

 

「ちなみに今君が来ているのは、おそらくワンピースに近いものだろう。ボロボロでやぶれかけているから何とも言えないが、希望であれば今のその服と同じ様に服を作ることも不可能ではないよ。ただしサンプルが必要だからその間仮の服を着ていてもらうことになるから、君が問題なければそれでも僕は構わない。」

 

「さらっと尋常じゃないこと言うのね。」

 

「あくまで提案だよ、これはあまりおすすめできない。僕の趣味が混じりやすいからね、本人の理想より離れるケースが多いから後悔する人が多いんだ。」

 

「毎度私の巫女服は修繕して貰ってるけど、わたしはこれ気に入ってるわよ?」

 

「そう言っていただけるとありがたいね。さて、どうするんだい?」

 

「同じような服で…いいかな。」

 

「提案のつもりだったんだけどね…そういうことなら仕方ない。」

 

「仮の服を調達しないとな。」

 

「裏手の蔵に小さめの和服があると思うが、それでいいかな。僕では小さくてね、一度も着ないまま文字通りお蔵入りだよ」

 

「まぁ…仮だから…」

 

霊夢に持ってきてもらって着替えてみると…少し暑苦しく感じた…

 

「あの…すぐ終わりますか?」

 

「うーん…すぐには終わらないかな。早くても一晩はほしいね。」

 

「本を読んでいればすぐだよ?」

 

「本読むだけなのにすぐなの?」

 

「そうだよ。集中して読んでいると時間を忘れちゃうんだよね。でも何かを待つんだったら丁度いいんじゃないかな」

 

「確かにね。」

 

「うーん…本はいいかな。」

 

「一先ず僕は作業に取り掛かるよ。」

 

「わかったわ、」

 

「おう、たのんだぜ!」

 

「朱鷺子だっけ?どうする?」

 

「わたしはここで本を読んでる。」

 

「そう、わかったわ。」

 

「ああ、そうだ、ちょっと待った」

 

「どうしんだんだ?」

 

「唐傘もついでに修繕しよう。そのほうがいいだろう?」

 

「でも…唐傘は…」

 

「なにか離れたらまずい理由があったりするのか?」

 

「ないけど…心配で…」

 

唐傘も不安そうにしてる…

 

「こーりんなら大丈夫だよ。」

 

「…変なことしないでくださいね…」

 

「あはは…そこまで言われるか。」

 

「まぁ、彼に頼めば間違いはないわ、私が保証する」

 

「そ…そこまでいうなら…待ってる。」

 

「わかった、任されたよ」

 

唐傘も不安そうにしていたけど。

我慢してもらうのかいいかもしれない…

 

「同じような布地で直せるだろう」

 

「まぁ、私達はどうせやることはないし、私は神社にでも戻ろうかしら。」

 

「そうだなぁ〜」

 

「そうかい、明日の昼前には仕上げておくからちゃんと取りに来てくれよ?」

 

「わかってるわ。それじゃ」

 

お店を出ると。日差しが眩しかった。

 

「唐傘がいないから…」

 

「そうね、日傘代わりにもなって便利よねぇ。」

 

「まぁ、少しの我慢だぜ」

 

「そういえば小傘は妖怪だけど、飛べないの?」

 

妖怪…

 

「多分、飛べると思う、」

 

「試してみてよ」

 

特に違和感もなく身体が浮いて、好きなように動けた。不思議と変な感じはしなくて慣れた感じだった…

 

「問題なさそうね。」

 

「自分で飛ぶのは初めてじゃないのか?」

 

「多分初めて。でも…すごく慣れた感じがするかな。」

 

「ならいいんじゃない?ほら、神社に戻るわよ」

 

自分で空を飛ぶのはとても気持ちが良かった、空も晴れていて景色も綺麗だった。

そんな景色に見とれていると気が付いたらすぐに神社に戻ってきていた

 

「まだいたのね」

 

妖精や妖怪達はまだ遊んでいた

 

「れいむ!おかえり!」

 

「はいはい、あんたらも飽きないわねぇ」

 

「まりさ!まりさ!」

 

「この人誰?」

 

「あの、多々良小傘っていうの。よろしくね」

 

「小傘さんだな!よろしく!」

 

一気に話し掛けて来るから…

混乱しちゃうな。

 

「ほら、あうん、遊んであげて。」

 

「ちょっと…バテちゃって…疲れて…」

 

「お疲れ様だぜ」

 

「ほらあんたたち、ここは遊び場じゃないんだから、向こうで遊んでなさい」

 

「わかった!」

 

妖精達は神社から離れていった…

 

「元気なんだね…」

 

「あの子達はいつものことよ、あうんもご苦労様。」

 

「疲れましたよぉ…冷たいものが飲みたいです…」

 

「はいはい、お茶持ってくるから。」

 

「あうんさんは…その…」

 

「どうかしたかな?」

 

「服がなんというか…」

 

「あうんの服は外の世界のアロハシャツとか言うのがモデルになってるって、こーりんが言ってたな」

 

「アロハシャツ?そうなんだ、自分でも気にしたことなかった。」

 

「服装なんて人それぞれだからな。」

 

「そっか。」

 

「ほら、持ってきたわよ、魔理沙と小傘も。」

 

「いやぁ!ありがとうございますー!」

 

「冷たくて美味しい。」

 

「なぁ霊夢。」

 

「んー?」

 

「宛先どうしような」

 

「そうねー。」

 

「その返事は興味ないときの返事だな」

 

「だって、妖怪よ?最後は勝手に生きてもらうしか無いわ。わざわざ宛先まで用意するのも独り立ちの邪魔でしょ。」

 

「なるほどな。霊夢らしいな。」

 

「別にあうんみたいにここにいるでもいいけど。そのうち追い出すかもねぇ」

 

「ええっ!私いつか、追い出されるんですか?!」

 

「あんたは別に構わないわ、だって護り神でしょ、護り神は必要ないけど妖精妖怪達の相手してくれてるからある意味助かってるわ」

 

「そ、そうですか…安心していいのか何なのか…」

 

「うまく使われてるだけだな」

 

「ですよねぇー…」

 

「まぁ、小傘も行きたい場所に行けばいいわ。」

 

「はい…」

 

「でも、しばらくはここに居なさい。幻想郷に慣れてからのほうが何かと楽だから。」

 

「わかりました」

 

「霊夢さんはお優しいですよぉ。毎日甘えたくなりますからねぇ。」

 

「ほんと最近の霊夢は気持ち悪いほどに優しくやったよな。」

 

「祓われたくなかったらそういう発言は控えなさいよ」

 

「急にキレるなよ…」

 

優しいのか怖いのかわかんないや…

 

「でも、小傘さん?は妖怪なんですよね。」

 

「そうね、唐傘おばけよ。」

 

「ならここにいるのもある意味場違いなんじゃないですか?」

 

「あんたも同じようなもんでしょ。」

 

「やだなぁ、私は狛犬で護り神なんですから。場違いなわけ無いですよ」

 

「はいはい、別に妖怪でもなんでも私に害がないなら構わないわ。それに調子に乗ったら怒る程度で済むでしょうし」

 

「霊夢が言うなら、別に暫くここにいてもいいんじゃないか?」

 

「うん。そうする、」

 

「さってとー。私はパチュリーのとこにでも行ってこようかな」

 

「そう。またね。」

 

「おう、またなー!」

 

「霊夢さんはどうするんですか?」

 

「何も、晴れてて暑いから外に出る気は無いわ。」

 

「何もしないんですか…」

 

「敢えて言うなら昼寝かしらね」

 

「昼寝…」

 

「よし、膝枕してもらおう!」

 

「昨日も膝枕してあげたじゃない…」

 

「いいじゃないですかー、減るもんじゃないんですよ。」

 

「全く…」

 

膝枕…気持ちよさそう…

 

「何よ。二人分はないわよ」

 

「う、うん。」

 

「全く、こうなると何もできないのよね。」

 

「動けなくなるから…」

 

「まぁ、いいけど、愛くるしいから」

 

…私はこんなに大切にされたのかな…

でも捨てられたんだ…

 

「どうかした?」

 

「…私は本当に捨てられたんだなって…」

 

「落ち込んでいても仕方ないわよ」

 

私を捨てた人間…

 

「いつか会えるかな。」

 

「あんたを捨てた人間に?」

 

「うん…聞きたい…私を捨てた理由が聞きたい」

 

「そう。逆に、あなたを大切にしていた人もいるかもしれないわよ。」

 

「…もしいたのなら…その人にも会いたい。」

 

「きっといるでしょうね。」

 

「人里…だよね。」

 

「今度、一緒に行くことにするわね。」

 

「うん、今は昼寝かな。」

 

「そうね。昼と言うには少し遅いわ、もう日か落ちかけてきてるもの」

 

「そっか。」

 

「でもまあ、いいわ。」

 

外を眺めると橙色の空が広がっていて。眩しい日差しが部屋の中に入ってきていた。

 

視線を戻すと霊夢さんはすでに眠っていた。

 

「もう寝ちゃってる…」

 

敷きっぱなしの布団に横になって。

また一日を終えるように眠った。




次の話に続きます


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

想い人を探して

前話の続き


目が覚めると。霊夢さんは近くには見えなかったが外では騒ぐ声とそれに受け答えする霊夢さんの声が聞こえた。

 

「外にいるんだ…何して…えっ!」

 

襖を開けるといきなり誰かが飛び込んでぶつかった…

 

「あいたた…」

 

「あっ…ごめんなさい」

 

「あなたは…ルナだったかな…?」

 

「そう…ぶつかってごめんなさい。」

 

「いいよ、大丈夫。」

 

頭を撫でてあげるととても嬉しそうにして、もっと頭を寄せてくる…

 

「あー!ルナばっかりずるいー!あたいもなでてー!」

 

みんな寄ってきちゃって…

 

「ええと…順番にね?」

 

妖精たちを順番に撫でてあげる。

みんな可愛いな。

 

「あ、あれ?あうんさん…」

 

「えへへー、私も撫でてほしいなあ、なんて。」

 

尻尾も振って期待してるみたい…

 

「もう…」

 

仕方なく撫でてあげるととても気持ちよさそうにする…

 

「こらあうん、あんたが便乗してどうすんのよ、」

 

「いやぁ、流れでさぁ…」

 

「あんたねぇ…膝枕してるときだってそうじゃない。」

 

「あれは格別ですねぇ…ほんとでも彼女もとても優しい撫で方で…いやぁ…ほんといいですよ!」

 

「何言ってんのよあんた…」

 

「あ、あはは…」

 

気持ちいいなら…それはそれでいいかな、

 

「さぁ、まぁいつまでも戯れてないで、服を受け取りに行くわよ。」

 

「そうですね。」

 

「ええー、もう行っちゃうんですかー…」

 

「また妖精達の相手をしてくれてたら、膝枕でお昼寝させてあげるわ。」

 

「任せてくださいな!」

 

「それで、いいんだ…」

 

「いいらしい。ほんとわかりやすいやつ、」

 

私も少し期待しながら、服を受け取りに向かう。

 

「おーい!霊夢!」

 

あの声は…魔理沙さん、

 

「魔理沙じゃない、今から向かうとこよ」

 

「おう!そうか!一緒に行くぜ」

 

「まぁ、彼氏に会いに行くのも、当然よね。」

 

「だから…その話はよしてくれよー…」

 

「服出来てるかな。」

 

「ほら、ついたわよ、」

 

地上に降りて店に入ると、私の服の隣に似たような綺麗な服があった。

 

「ようこそ、昨日の服、出来上がってるよ。」

 

「あ、はい!」

 

「出来る限りは近く作ったつもりだけどね、気に入らなかったら作り直すよ。」

 

「えっと…着てもいいですか?」

 

「構わないよ、ちょっと席を外すかな。」

 

こーりんさんがお店を出てから着替える…

 

「うんと…こんな感じ…?」

 

「よく似合ってるじゃない」

 

「向こうの服とデザインはほぼ一緒なんじゃないか?特に違和感はない感じだぜ」

 

「うん!」

 

「おいこーりん!もういいぜ。」

 

「はいはい、おー、似合ってるじゃないか。」

 

「ありがとうございます!」

 

「喜んでくれて光栄だよ。」

 

「あの…唐傘は?」

 

「しっかりと修繕してあげたよ」

 

「ありがとう…よかった…」

 

「それと、中棒に名前らしき文字があったんだが…消さずに残しておいたよ。多分持ち主だった人間が書いたんじゃないかと思ってね。」

 

なんて書いてあるのかわからない…

 

「読めない…」

 

「まぁこれで、どこ行っても恥ずかしくない格好にはなったわね。」

 

「そう…だね。」

 

「それで、これからどうする?人里にでも行く?」

 

「人里…」

 

「あんたの生い立ち調べてもいいんじゃない、捨てた人間とあんたを大切にしていた人間がいるなら、探してみる価値はあると思うわ。」

 

「…私を大切にしていた人間…」

 

私は捨てられて…

その前は大切にされてた?

 

「いるのかな…」

 

「さぁ?探してみるのが一番早いわ。彫りを入れるくらいだもの。きっと居るでしょ。」

 

「そうだぜ。ほら、人里行こうぜ!」

 

「うん。行こう、唐傘。」

 

キレイになった唐傘。

唐傘も私の服も、キレイになって。

…これが…私の本来の姿…なのかな、

 

「また困ったら来るといい。」

 

「はい!ありがとうございました!」

 

お店を出ると、空は曇り掛かっていた。

 

「あれ、さっきまで晴れてたのになぁ」

 

「曇ってる…」

 

「雨降る前にさっさと行きましょ」

 

人里に着くと傘を持って歩く人が多くいた。

曇り空も段々と薄暗くなって今にも雨が振りそうだった。

 

「来たのはいいけど…どうやって探せばいいかな…?」

 

「そうね、とりあえず散歩がてら歩いてみる?」

 

「そろそろ雨降るのに?」

 

「傘さした方がわかりやすいでしょ?」

 

「なるほど、それはそうだな、でも私も霊夢も傘を持ってないぜ?」

 

「雑貨屋にでも寄りましょう。」

 

霊夢さんについていくと。

色んなものを売っているお店についた、

 

「さっきのお店とは…ちょっと違う。」

 

「こーりんのとこの店は基本的に外の世界の物が多いからな。こういう雑貨屋はしっかりと売れるものだけ売ってる感じだ。」

 

「傘も売ってるんだね…」

 

「もちろんよ、雨を凌ぐには傘がいいもの」

 

「小傘からすれば複雑な気持ちにはなるだろうな」

 

話をしていると、一人の男の人が駆け込んできた。

 

「雨降ってきそうだな…傘用意しないとな…」

 

「あっ…えっ…?」

 

初めて見たはずなのに何故か懐かしく感じる…

 

「あなたは…もしかして」

 

「んあ?俺のことか?」

 

「小傘?どうしたの?」

 

夢に出てきた人に似てる…

この人もしかして

 

「あの…その傘は…何本目、ですか?」

 

「なんか、妙な質問してくるな、何本目か?…いや覚えてないな。10はとうに超えてる。」

 

「…そんなに…」

 

「ちょっと待った、お前その傘、見覚えあるな…」

 

「…そうですよね…」

 

「でも、あのときボロボロだったから捨てたはずなんだがな…」

 

やっぱりそうだ…

間違いなかった

 

「ねぇアンタ今なんて?」

 

「え?だからボロボロになっていたから捨てたって、」

 

「そうか、そういうことか。」

 

「な、なんだよ、壊れた物は捨てるだろ?俺間違ったこと言ったか?」

 

「ううん…間違ってない、確かに壊れたら使えなくなるもんね…」

 

「ど、どうしてそんなに悲しい顔してんだよ」

 

「あなたはなんでこの傘を知っていたの?」

 

「知り合いが傘を忘れたって言ってたから探して届けようと思ったんだが、見つけたときには雨風に晒されててな。ボロボロで壊れてるもんだから使える状態じゃなかったんだよ、それで仕方なく捨てたんだ。」

 

「なるほどね、それは本人には伝えてあるの?」

 

「い、いや…なんか申し訳なくて…伝えてないんだよ…」

 

「なら今でも探してるのかしらね」

 

「どうだろうなぁ…正直なところ俺もわからない、ただ、お気に入りだって言ってたな。」

 

「お気に入り…そうだったんだ。」

 

なんとなく、心が昂って。

嬉しいけど。でも、もう忘れられているんじゃないかって思ってしまう。

 

「その傘は直したのか。」

 

「はい…」

 

「そうか、傘を直せるやつがいるもんなんだな、感心するよ。」

 

「それと…私は…」

 

「…なんとなく察したんだが、お前妖怪ってことだろ。」

 

「よく分かったわね。」

 

「まぁ、なんとなくな、でも唐傘お化けか、付喪神だったか?」

 

「そうだぜ、」

 

「あいつ…大切にしてたからな、いつか答えてくれるとか言ってたよ」

 

知ってる…夢に見たから…

 

「…会いたい…また会いたい…」

 

「普段は人里の外にいるからな…夕暮時に家に戻ることが多いが、最近は見てないな。」

 

「夕暮時…わかりました」

 

「その…すまねぇな…」

 

「いいんです。あなたが捨てていなかったら…私は生まれていなかったから」

 

「それはそうかもしれねぇけど…そんなずっと悲しい顔されてたらこっちも申し訳ねえよ。」

 

「まぁ、掃き溜めにゴミを捨てるなんて、私からすれば言語道断なんだけどね。」

 

「う…巫女にそんなこと言われたら…頭上がんねぇ。」

 

「今回は小傘のこともあるし許してあげるけど、今後ないようにね?」

 

「わ、わかったよ…物は大切にしないとな…」

 

「あのっ!」

 

「どうした?」

 

「中棒に名前らしき文字があって…なんて読むのかわからなくて…」

 

「中棒に?」

 

「なんて読むかわかりますか?」

 

「それハンドルネームだな。(Rain)レインって読むらしい。外の世界の英語って言ってたな」

 

「ハンドルネーム…ですか。」

 

「聞いて回れば誰かしら知ってるだろう。探すなら他も当たって見てくれ。」

 

そう言うと男の人は傘を持って店を出ていった。

 

「まぁ、なんとなくはわかったんじゃない?」

 

「うん、」

 

私は彼に捨てられて生まれた…私は捨てられる前、忘れ物として置いて行かれた…雨風に、晒されてボロボロになって…

 

「まだお昼だね。」

 

「夕暮れ時ねぇ…まだしばらく時間はあるわよ。」

 

「でも、さっきの男は最近見てないって言ってたんだぜ、時間があるなら情報収集してもいいんじゃないか?」

 

「そうね。そうしましょ」

 

店を出て団子屋や食事処に寄ってレインという人について聞く。

 

でも、レインという名前を知ってる人は居なかった。

 

「誰も知らないのかな…」

 

「ハンドルネームだからな。本名の方がわかりやすいのかもしれないぜ、」

 

「聞けばよかったわね。ハンドルネームだけだと、当人が言い広めない限り知らなくて当然ね。」

 

「とまぁ、丁度良く日も傾いてきたことだし、少し里の外でも行ってみるか?」

 

「うん、もしかしたら見つかるかもしれないね。」

 

「それじゃ、私は北の方見てくるぜ。」

 

「小傘と私は南から。」

 

「その他の入り口は…?」

 

「基本的には北と南が入り口だから。」

 

「でも、最近見ないって言ってたから…もしかしたら別の所からとか、ないかな」

 

「可能性としてはあり得るでしょうけど、そんなこと言ったらきりが無いわ。何箇所もあるんだから。」

 

「そっか、そうだね。」

 

「でも、すぐわかるものなのか?小傘は特徴とか思い出せたりしないか?」

 

特徴…夢に見たときは…後ろ姿だけだった…

でもなんとなく…

 

「黒髪で…青い服。髪は後ろだけ少し長かったかな。それくらいしか覚えてないかも…」

 

「黒髪で青い服はたくさんいるぞ…髪の長さが頼りって感じだな…」

 

「なんにしても情報量が足りなさ過ぎね。」

 

「ごめんなさい…」

 

「あなたが謝ることではないわ、私が興味本位で手伝ってるだけだから、最近暇だったから。良い暇つぶしになるわ」

 

「えっと、ありがとう、」

 

「ほら、もたもたしてると見逃すかもれないから行くわよ」

 

人里の南側の入り口。

 

人気の多い場所。

どこを見ても人集り

見覚えのない人ばかり…

 

「どう?」

 

「ん…やっぱりわからないかな。」

 

「まぁ、そうよね。」

 

「うん…」

 

雨が振り始めてくる。

仕方なく傘を広げた

 

「今日は諦めて神社に戻りましょ」

 

「そうだね。」

 

そう思って歩き始めたその直後。

後ろから何かを感じて振り向いたけど

そこには見覚えのない人達しかいなかった。

 

「おう、霊夢先に戻ってたんだな。」

 

「そっちはどう?」

 

「いーや、収穫無しだな。」

 

「そう、私達は神社に帰るわ。」

 

「だな、私も帰るぜ」

 

そう言って魔理沙さんは箒に跨って飛んでいった。

 

「帰りましょうか。」

 

「はい…」

 

「入り口までは歩いていきましょ。もしかしたらがあるかもしれないから。」

 

「わかりました。」

 

万が一…

可能性としてはあり得るけれど。

 

「おい。あんたらさっきの!」

 

声を掛けてきたのはさっきの男性だった。

 

「あら、丁度いいところに。」

 

「まだ探してるんだったら言っておく。あいつ今日はまだ里に戻ってきてないかもしれない、さっき家を訪ねたんだが、留守だったんだ。明日以降にするといい」

 

「ありがとう。今日は諦めようって話をしてたところなのよ。家を知ってるなら教えてくれないかしら?」

 

「ああ、里の北口付近にある黄桃甘味っていう甘味屋の2つ隣の青い家だ。雨宮って張り看板が扉についてるはずだから、すぐわかると思うよ。」

 

「わかりました、ありがとうございます。」

 

「おう、そんじゃな。」

 

男の人は家に帰っていった。

私と霊夢さんも神社に帰った。

 

「今日は止みそうにないわね。」

 

「雨。どんどん強くなってる。」

 

「これだけ降ると明日には晴れてくれるといいんだけど。」

 

「カンは?」

 

「んー、昼くらいまでは降ってるんじゃない?」

 

「そっか、夜は晴れるといいな。」

 

「そうね。」

 

「明日は会えるかな。」

 

「会えるといいわね。」

 

「雨宮…」

 

「何か思い出せる?」

 

「…わからないかな。特に何も。」

 

「そう、まぁ会えたら色々思い出すでしょ。」

 

「そうかな…」

 

「まぁ、今日はもう寝ましょ。」

 

「うん…おやすみなさい。」

 




続き話に続きます


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

主と付喪神

前話の続き


「うぅん…なんの音…?」

 

ガタガタと揺れる何かの音で目が覚めた。

 

「雨強すぎね…」

 

「嵐みたい…」

 

「まぁ、そんな日もあるわ。」

 

まだ日は登っていないと思うけど、

外は夜のように暗かった。

…もしかしてまだ深夜…?

なわけ無いよね…

 

「二度寝してもいいんじゃないかしら。」

 

「朝…だよね?」

 

「多分ね。」

 

「外…暗い…」

 

「これだけ天気悪いと仕方ないわ、お天道様も隠れるでしょうね。」

 

「うん…」

 

「まぁ、少ししたら止むでしょ。降り始めてから時間も経ってるから。」

 

「そうだね…」

 

「それに、止んでからすぐ行けば、会えるかもしれないわよ?」

 

「そうかな…」

 

「さぁね、あくまで可能性があるってだけ、絶対とは私も言えないわ。」

 

「でも、会えるかもしれないなら…」

 

「その価値はあるわね。」

 

「止むまでどうしようかな…」

 

「果報は寝て待て。」

 

「寝過ごしちゃうよ?」

 

「その時は普通に探しに行けばいいじゃない」

 

「そっか、そうだね。」

 

改めて外を見てもまだ嵐のまま。

襖が揺れる音で上手く眠れなかった。

隣を見ると、何もなかったかのように気持ちよさそうに眠る霊夢さんがいる…

 

「こんな騒がしいのに寝れるんだ…」

 

そう言って布団に入り直すたけど。

やっぱり眠れなかった。

 

しばらくすると風が弱くなっているような気がした。襖はおとなしくなり、風の音もしない。

 

「唐傘…」

 

唐傘を差して外に出ると雨はまだ降っていた。

 

「雨…か。」

 

傘を差したまま、空を飛ぶ。

 

「なんか。不思議だなぁ。」

 

雨が降っているのに少しも気分が落ち込まない。それどころか。

ちょっと楽しい。

 

「雲は暗いけど。でも雨は…好き、かな」

 

誰に言ったわけでもないけど。

そう思って呟いた。

 

「そろそろ戻ろう。ちょっと服が濡れちゃったし。」

 

博麗神社に戻って。

部屋に入ると、霊夢さんが起きていた。

 

「探しに行ってたのかしら?」

 

「ううん。ちょっと散歩?空飛んでるから散歩とは言えないけど。」

 

「そう。」

 

「ちょっと疲れちゃったかな。」

 

「まぁ、ゆっくりするといいわ。」

 

布団に入ると。

少しもしないうちに眠たくなって。

寝入ってしまっていた。

 

……

 

 

「おい雨宮、いつもの傘持ってないんだな。」

 

「あの傘は、壊れてしまってね」

 

「壊れたのか」

 

「うーん…どうしたものかな」

 

「まぁ、今日は晴れてるだろうから大丈夫だろ。」

 

「まぁね。」

 

「結局どうするんだ?」

 

「どうしようかな。中棒はまだ使えそうだったんだけど布地がなぁ。」

 

「傘を直すのはそう簡単じゃないだろ?」

 

「だろうね…仕方ないか、別で買った傘もなかなか気に入ってるし。使ってようかな。」

 

「ふーん、あの傘は?どれぐらい使ってたんだ?」

 

「うーん…3年くらい?」

 

「そんなもんだったけ。お前のことだからもっと長いと思ったが。」

 

「傘は寿命短いってのもあるし。ここ最近嵐も多かったから仕方ないかもしれないね。」

 

「また何年か使い込むんだろ?」

 

「そうだね、丈夫そうだから5年は持ってくれるといいな。」

 

「いやいや、幾ら物の扱いが良くても5年は厳しいだろう。」

 

「まぁ、持ってくれたらって思ってるよ」

 

「まぁ、物持ち良ければ。」

 

「そうだね。唐傘か。初めてかもしれないね。」

 

……

 

「うぅん」

 

まだ眠たい。布団で横になってよう…

 

「誰かいないかな。霊夢さーん」

 

外から声が聞こえる…

男の人の声だ…

 

「居るわよ何の用かしら?」

 

霊夢さんも居るんだ。

 

「知人から聞いたが俺を探してるって」

 

「私が?あんたを?」

 

「勘違いか?」

 

「ちょっと勘違いね、まぁ、間違ってはいないけど。あんた名前は?」

 

「雨宮翠蓮。聞いてなかったのか?」

 

「雨宮翠蓮ね、知ってるわよ」

 

「なら何で聞いたんだ?」

 

雨宮翠蓮…なんか聞いたことあるような…

眠たくてうまく考えが纏まらない…

 

「念の為の確認よ。ちょっと待ってなさい。」

 

「あ?ああ。」

 

 

 

「小傘、起きなさい。」

 

「うん…なんとなく起きてる…」

 

「探してた人が自分から来てくれてるわ。会って来なさいよ」

 

「んー…ううん?」

 

雨宮…

そうだ、思い出した。

 

「ほんと?」

 

「ええ、早く起きてほら。」

 

外に出ると縁側で座る雨宮さんがいた。

 

「あのっ…」

 

「こんにちは、探してたのっていうのは君なのか?」

 

「はい…えっと…」

 

「はじめまして。俺は雨宮翠蓮。君は?」

 

「多々良小傘…です。」

 

「多々良小傘…?その名前は誰から?」

 

「貴方は…この傘覚えてますか?」

 

「ああ。よく覚えてるよ。お気に入りの傘だったんだ。なぜ君が?」

 

「貴方が置き忘れてから。この傘は…私はいろんな人に持たれて。いろんな人に置き捨てられて…結局ボロボロになって捨てられてしまったんです…」

 

「そうか…そうだったのか…」

 

「それで私は、貴方に大切にしてもらった恩と、散々棄てられた恨みから付喪神になって、今やっと…貴方に逢えました。」

 

「君は…本当に小傘なんだね。」

 

「はい…変かな…」

 

「いや、とても素敵だと思う。」

 

「ほんと…?」

 

「服も唐傘も君にとてもよく似合ってる。」

 

「よかった…嬉しい。」

 

「あんた、小傘と会えて何かないの?」

 

「えっと、何かって?」

 

「…いや、いいわ、私の思い過ごしってことにしておくわ。」

 

「一体なんのことなんだ?」

 

「あの…霊夢さん、実際にこの姿出会うのは初めてだから…」

 

「まぁそうよね。」

 

「あの…雨宮さん。」

 

「なにかな?」

 

「えっと…私…雨宮さんと一緒に居たいんです」

 

「んーと…?一緒に?」

 

「だめですか…?」

 

「うーん…気持ちはありがたい」

 

「もしかしてあんた?」

 

「まぁ、結婚はしてないんだけどね。」

 

「ってことは…お相手がいるんですね。」

 

そうだ…彼にだって…好きな人がいる…

 

…悲しい…

ただそれだけだった。

また捨てられたのかと思ってしまう…

そんなことないってわかってるのに…

 

「小傘、小傘?」

 

気が付いたら泣いていた。

胸が苦しくて。声も出なかった

 

「泣かせてしまったな…うーん…」

 

「落ち着きなさい、小傘。」

 

「…なんて言えばいいかな」

 

「私は…忘れ傘だから…」

 

「でも、俺は小傘に会えて嬉しいよ、失くしたと思っていたのに、こういう形で再会出来たことがとても嬉しい。」

 

「うん…付喪神…だからね…」

 

夢で言ってた…

 

「本当にありがとう。付喪神になってしまうと記憶を失うって諸説には聞いてたが憶えてくれてるとは思いもしなかった。」

 

「うん。何度も夢に出てきてたの。憶えていたというより、思い出した…かな」

 

「そうか。」

 

「これからも忘れないよ。一緒に居られなくても、大切にして貰った日々も恩も絶対忘れない。」

 

「ありがとう。それとごめんな」

 

「いいの、私は妖怪だから、人間と一緒に居られなくても仕方ないよ。」

 

「そうね。あんたは妖怪だものね。」

 

「霊夢さん?」

 

なんのこと?

 

「何でもないわ。」

 

「それじゃ、俺は里に戻るよ。この後まだ用事があるからね」

 

「わかりました。」

 

「明日。改めて家に来てくれると嬉しい。」

 

「…うん」

 

雨宮さんは神社を後にして行ってしまった。

 

「わかりやすいやつね。」

 

「えっ…?」

 

「隠し事よ。」

 

「隠し事…?」

 

「とにかくあんた、必ず会いに行きなさい。わかったわね?」

 

「えっ?う、うん。」

 

気がつくと日は傾いていて、もう夕方だった

傾いた日差しがなんとなく寂しさを助長しているように感じる…

 

「小傘は付喪神になれて嬉しかったかしら」

「うん?」

 

「付喪神になれて、妖怪になって彼に会えて。彼のことをどう思ってる?」

 

「えっ…?どういうことですか?」

 

「単純な話よ彼のことどう思ってるのって」

 

「どう思ってる…?んー…なんていえばいいかな。好きだけど、それだけじゃなくて…一緒に居たくて。」

 

「そう。それならそれでいいわ。」

 

「うん。」

 

傘でいた頃の気持ちはもう思い出せない。

でも彼を見て思ったことは。彼と一緒に居たいという気持ちが溢れて止まなかった

 

好きだっていうのは確かだと思う、

でもそれ以上に何か感じていて…

それがイマイチまだよくわからない

 

どう表現すればいいのかな

 

「小傘の気持ちが、彼にしっかり伝わってるといいわね。」

 

「うん。もう一度…伝えたいな。」

 

「そうね。」

 

日が沈んで暗くなる頃部屋に戻った。

くしゃくしゃの布団を軽く整えて寝転んだ

 

相変わらず霊夢さんはすぐ寝付いている…

 

明日…何を話すのか不安で…

うまく寝付けない…

なんて言えばいいのかわからない

雨宮さんにとっての私は、一体どんな存在なのだろう…

 

考え事ばかりで眠たくならない。

次第に胸が苦しくなってきて、なんだか寂しくなる…

 

「…なんでだろ…あれ…?」

 

気が付くと涙が流れてる。

 

…きっとこの気持ちはこわいってことなんだ

不安で怖くて何が起きるかわからなくて。

 

何かに掴まりたくて、

誰かと居たくて。

誰かに支えてもらいたくて。

必死に助けを求めて…

 

「でも…今の私には…」

 

妖怪として此処に来て…

まだ日は浅い…

頼れる人も少ない…

 

霊夢さんはすぐ寝てしまうし…

それに妖怪退治の巫女に頼むのも…

 

「小傘。」

 

「うっ…」

 

起こしてしまったのかな

 

「こっちおいで。」

 

誘われて同じ布団に入る…

 

何も言わないでそっと寄ってみる…

霊夢さんは何も言わず腕で抱きよってくれた。

 

何故だろう…さっきまでの不安感が無くなって…とても暖かくて。

なんだか眠たくなってきた…

 

ふと横を見ると。

霊夢さんは気持ちよさそうに寝入ってる。

 

眠たくてうまく考えが纏まらない…

もう寝よう…

 

……

 

 

起きた感覚はないのに。

どこかを歩いている感じがした。

 

ひたすら続く真っ暗な道。

歩いていく度に。

色々と考えが浮かんでくる。

 

小傘…

私の名前は多々良小傘…

 

付喪神としてこの幻想郷で生まれて

私は…唐傘お化けの妖怪になった。

 

こんな私が誰かの役に立つのかな…

 

見ず知らずの私に。

いろんな人が優しくしてくれている

それなのに私は。感謝の言葉を返すことしかできない。

 

自分の存在価値は一体なんだろうか。

唐傘は雨傘として役に立つけれど。

私自身は…?

せめて。誰かに必要と思って貰えるようになりたい。

 

誰かと共に居て。

幸せに生きていたい。

 

私だけの価値がほしい…

 

……

 

目が覚めると。眩しい日差しが当たっていた

 

「うん…朝…?」

 

「おはよう小傘」

 

「おはよう…」

 

「ほら、お茶飲んでしっかり起きなさい。」

 

「うん…」

 

まだ眠たい。

でも、お茶が渋くて眠気が飛んだ気がした

 

「そっか。今日になったんだね…」

 

不意に思い出す昨日の出来事…

また少し、不安になる。

でも…話はしたい。もう一度…

 

「人里に行ってくるね。」

 

「うん。行ってらっしゃい。」

 

博麗神社を出て。

人里に向かった。

 

家の場所…確か…

 

「北口の甘味屋の2つ隣の青い…」

 

青い家というより。青緑…

 

「ここでいいのかな。」

 

恐る恐るノックをする。

 

「はーい、どなた?」

 

「こんにちは。」

 

「あ、小傘さん。」

 

「えっと…改めて話があるって…」

 

「立ち話じゃなんだから、上がって。」

 

「おじゃまします。」

 

部屋はきれいに整えてある…

一人で暮らしているのかな。

 

「お茶、飲むかな。」

 

「あっ、ありがとうございます。」

 

「粗茶だけど。」

 

嫌な苦味がしない、渋味の薄いお茶。

結構好きかも。

 

「話とは言ってもね。大したことないんだよ」

 

「どういう話なんですか?」

 

「昨日は済まなかった、俺も驚いてて気持ちが追いついてなくて。まさか本当に付喪神になってるとは思わなくて。最初は何かの間違いじゃないのか疑問に思ったんだ。」

 

「うん…」

 

「でも、わざわざ嘘をつく必要はないし…唐傘の中棒にある彫り込み。それで確信したんだ。あのとき失くしてしまった唐傘なんだって。」

 

「覚えていたんだね。」

 

「いろんな物を大切に使ってきた。唐傘は勿論、靴や服。でも付喪神として出てきてくれるのは始めてだ」

 

「物を大切に…だね。」

 

「それでな」

 

「うん、」

 

「色々と考えたんだけど小傘は付喪神になっても、俺のことを覚えてくれていた、それだけじゃなく、探してくれてた。だから俺はその気持ちを受け取りたい」

 

「なら…一緒に居てもいいの…?」

 

「うん、もうどこにも忘れない」

 

「ありがとう…!」

 

嬉しさが溢れて堪らなくて…

彼に抱きついていたい…

 

「おおっ!?」

 

「嬉しい…すごく嬉しいの」

 

「あはは、良かった」

 

そっと抱きしめ返してくれる彼

 

霊夢さんとは違った暖かさがあった

胸の鼓動が止まらなくて愛おしかった

でも、緊張が切れたのかすぐ疲れがきていた…

 

「あれ、小傘?」

 

どれぐらいだろう…

憶えてないけど長い間そのままだった気がしていつの間にか眠気が強くなってきていた

 

「おやすみ小傘。」

 

微かに聞こえた彼の声はどんどん小さくなっていたけど…ついに眠ってしまったけど、心に染み渡る心地良い暖かさはいつまでも変わらなかった。




連続投稿すいませんでした
話数稼ぎとか言われても文句言えません(後悔はしてない)

ある絵師様のある絵を見て書きたくなったんです


ではまた会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

知られざる話

どうもむつさんです

長々と時間かけすぎましたかね…


ではごゆっくり


用事があって人里に来ていた。

 

山で悪事を働いた妖怪が人里に逃げ込んだという。

 

「全く…手間かけさせないでほしいですね。まぁ、哨戒任務よりマシですけど…」

 

広場の方から騒ぎ声が聞こえる。

何かあった?

例の妖怪じゃなきゃいいけど。

 

ひとまず向かってみますか。

 

「…案の定ってやつですか?全く…」

 

山蜻蛉…生き物を捕食して養分を吸って活きるという趣味の悪い妖怪

 

普段は妖怪の山で動物の子供を攫うことが多いんですが…

ついさっき。天狗の子供を攫っていたことが発覚して、罰から逃げるために人里に忍び込んだのだとか

 

無論攫われた天狗の子供は無事だ。

 

「そこの妖怪!!!」

 

「ヒエッ!もう来たのかよ!」

 

「山で騒ぎをおこした挙句、人里まで逃げ込んできて、ここまで騒がれるなんてあなたも無様ですね」

 

「う、うるせえ!」

 

「天狗の子供を攫った罰。しっかり受けてもらいます。」

 

「何言ってんだ人里でやるってのか!」

 

「もちろんです。上の許可も貰ってます、妖怪が妖怪を襲う分には霊夢さんも文句は言わないでしょうから。」

 

「なっ!ふざけやがって。近寄るんじゃねぇ!こいつがどうなってもいいのか!」

 

人間を人質に…また小癪な…

剣を抜いた矢先に、思いもよらぬ手を取られたな…

 

「それ以上近寄るな!」

 

「人間を人質に取るなんてまた馬鹿なことをしましたね。さらに罰が重くなりますよ。」

 

「あっ、椛?ちょっとどうなってるのよ。」

 

「霊夢さん?来たんですか。」

 

「あんたなんで人質なんて取られてんのよ。」

 

「ちょっと騒ぎに駆けつけるのが遅くなりました。」

 

「何よ、あんな低俗に追いつけなかったわけ?」

 

「空を飛ばれたらトンボには流石に追いつけないですよ、向こうは羽があるんですし」

 

「あんたの上司より遅いでしょ。」

 

「まぁ間違いじゃないですけど」

 

「どうするかしら。」

 

「へへ、こんな状況じゃ巫女も手出しが出来ねぇなぁ」

 

「うるさいわねぇ。」

 

「ああ、確かに二人は手出し出来ないかもな。」

 

「なんだ?オメェ。捕まっててどういうつもりなんだ?」

 

ほんとにどういうつもり…?

 

「馬鹿な妖怪だ。なぁ巫女さんよこいつはやってしまってもいいんだよな」

 

「ま、まぁ人里でこれだけ騒ぎ起こしちゃってるし私は別に構わないけど。」

 

「うん、わかった」

 

「な、なんのつもりだっ…うぐっ?!」

 

鈍い音と共に山蜻蛉が後ろに引き下がる

横腹から虫特有の血が流れてる

何をしたの?

 

「小刀だと…」

 

仕込み小刀…?

 

「相手が悪かったな。椛さんだったかな。どうするんですか。連れてくんなら手伝いますけど。」

 

「まぁ、もとより連行しないで斬り捨てるつもりだったからどちらでも」

 

「ならその剣貸してもらっていいですかね。個人的に腹が立ってるんですよ。」

 

「酔狂な人間…投げますよ。それっ!」

 

「ありがとうございます、借りとか作りたくないんだけどまあいいや」

 

いや別にいいけど…

 

「人間風情が俺なんかに…!」

 

「峰打ちになったとはいえ思いきり力込めた筈なんだがあんまり効いてないか」

 

「チクショウ…痛え…」

 

状況が読めない…

何なのこの人間…

 

いや人間じゃない…?

 

「ちょっと重たいなこの剣。まぁどれも同じか」

 

ちょっとどころじゃないと思うのだけど

 

「クッソ…こんなところで」

 

「もう一度言っておくよ。相手が悪かった」

 

山蜻蛉の頭が斬り落とされる…

 

「汚い色してるな…臭いし」

 

「…私神社に帰るわ。後始末宜しく。」

 

「霊夢さん?わ、わかりましたなんとかします。」

 

霊夢さんの様子がおかしかったような…

 

「剣、返すよ。ありがとう」

 

「はい、どういたしまして。ちょっと気になったのですが、あなたって人間じゃありませんよね」

 

「それが何か?」

 

「いや、特に何もないんですけど」

 

「人里にも妖怪くらい住むでしょう。」

 

「まぁ、それは確かに。」

 

「こいつ山蜻蛉でしたっけ」

 

「よく知ってますね。」

 

「ああ、いつか怨み晴らしてやろうと思ってたんだよ。僕の家族がこいつに襲われたんだ、駆けつけたときには遅くて、連れ去って逃げられたんだ」

 

「それで、腹が立ってるってことなんですね」

 

「そうだ、だから丁度よくこいつがやってきてくれたのが運が良かったのか悪いのか。」

 

「そうですか、結果的には良かったですね。」

 

「まぁ、そうだな、これで一つ悩みが消えたし。ありがとう。」

 

「いえ、こちらこそ面倒事一つ減ったのでお互い様です。」

 

「それじゃ、俺は帰るから。またあったときにでも借りの話しさせてくれるとありがたい」

 

「わかりました、別に気にしてませんが。人里によることがあればお伺いしますね。」

 

人里を後にして山に報告をしたあと

山の哨戒任務の続きをしていた。

 

「あんなことあったあとだし、流石にざわめいてますね。」

 

「おーい!椛ー!」

 

「あ、文さん」

 

「蜻蛉はどうなりました?」

 

「ああ、もう亡くなりました。人質に取った人間に返り討ちに遭って。」

 

「あ、そっか。まぁ仕方ないかな」

 

「何かありました?」

 

「天狗の子供を攫ってたのはみんな知られていると思うんですけど、あの妖怪実は人間の大人すら襲ってたって噂が流れてたんですよ」

 

「後の祭りですけど。ちょっと気になりますね」

 

「私は実際に目視してないので記事にはしませんしあくまで噂なんです、それと、山の麓の小屋で何人もの人間が萎れて倒れてるんじゃないかって話しを聞いたんですよね。」

 

「ん…?山の麓の小屋?そこって確か?」

 

「そうです。猪の妖怪がいた小屋です。転居したので空き巣状態なんですが、知らないんですか?」

 

「初耳です。」

 

「そうですか。私は気になったので見に行ったんですが…どうもそれらしい痕跡とかは全く見つからなかったのでガセネタなのかって思ってたんですけど。」

 

「この話っていつ頃知ったんですか?」

 

「その噂を私が聞いたのは蜻蛉が追われる前、天狗を襲った話よりもっと前からですよ?」

 

「…もしかしたら…」

 

「なんですか?」

 

「い、いえ」

 

「まぁいいや、今は蜻蛉の話で持ち切りですし、」

 

「忙しそうですね」

 

「まぁねえ。それじゃ」

 

一言挨拶すると文さんはどこかに行ってしまった。

 

「やっぱり…気になってしまうんですよね」

 

先程話していた山の麓の小屋に向かう…

猪とは親しかったから場所はなんとなく覚えてる。

 

「確かこの辺のはず…あった。」

 

空から見回ればすぐ見つかる。

 

「ん…?」

 

近づくと何か悪寒が走る、その直後に変な匂いがした。

 

「なんでしょうか…」

 

小屋の扉を開けた瞬間。

鼻が曲がるような腐臭に襲われた。

 

「うへぇ…なにこれ…」

 

袖を鼻に当てても匂ってくる…

食べ物の腐ったときの強烈な匂いばかりする…今すぐ燃やしたい…

 

「山蜻蛉の匂いもする…」

 

あまり好きな匂いじゃない…でもやっぱり…ここに来ている…

 

「血生臭い…匂いもする…?」

 

ただ食べ物が腐るだけなら。血の匂いなんかしない。

 

「寝室…ですかね…」

 

扉を開けると目の前に…遺体…?

 

「人間の女性と…子供ですか…」

 

女性は窶れているように見える。

山蜻蛉に養分を吸われたのかもしれない。

 

「息もしてないし、脈もない。」

 

女性はもう亡くなっている

 

「子供の方は…まだ生きてるかな…」

 

微かに何か感じる。

妖力のような霊力のような…

恐らく父親の方は人間じゃないのだろう…

 

「いや…息も脈もない…」

 

仕方ない…か

 

「ん…人間じゃない…?」

 

そうかこの二人とも…

 

(山蜻蛉に家族を連れ去られて)

 

そう言う事か…

 

とりあえず匂いがきついので外に出たい…

 

小屋を出て空を飛ぶ

「ああ…空気が美味しい…」

 

小屋のことは上に話すべきなのか…

山蜻蛉がいない今…調べれることは少ないし、後の祭りなのも確かだし。

 

「彼には伝えるだけ伝えてみるかな…」

 

人里に向かった途中でふと気づいた

 

「あっ…名前聞いてない…」

 

人里が見渡せる場所で千里先まで見通してみる…似た人物は沢山いるが…よく覚えてるからすぐわかる。

 

「見えた」

 

急いで彼のところに向かった、

 

「ちょっといいですか」

 

「はい?あれ、君は今朝の天狗か」

 

「お話があって。」

 

「うーん、今のほうがいいかな?」

 

「あっいえ、すぐにと言う訳じゃないのですが…」

 

「買い物しながらでもいいかな。」

 

「まぁ、別にいいですけど…」

 

「妻も子供もいないと、家の仕事も大変だ」

 

「その…ご家族のことなんですが」

 

「僕の?あっ、ここの八百屋寄るからちょっと待って」

 

「は、はい。」

 

少し待つと、両手に袋を手に持って戻ってきた。

 

「片方、持ちましょうか?」

 

「いやいいよ、僕の荷物だからね。」

 

「そうですか。」

 

「それで、僕の家族の話だっけ?」

 

「妖怪の山の麓に一件の小屋があるんですが…住者の妖怪が消えてから空き巣状態だったんです。」

 

「ふむ。」

 

「その小屋に山蜻蛉が居座っていたみたいで調べたところ、二人の人間の遺体が見つかりました。片方は女性、もう片方は子供」

 

「なるほどね。」

 

「気になったのは、子供の方は純粋な人間ではないということ、多少ですが、妖力のような気配がしました」

 

「うん。山蜻蛉がいたという痕跡は?」

 

「リビングに当たる場所で山蜻蛉の臭いがしました。。間違いないかと。」

 

「そうか。勘違いじゃなくてよかったよ」

 

「どういうことですか?」

 

「ほら、人違いなのに怨んでたんじゃないかなって後から考えていたんだ。」

 

「まぁ…それは。」

 

「でもそうか…わかっていたことだけど、二人とも亡くなってるか…」

 

「…はい。あまりお見せできる状態ではないですし。何よりあの小屋…腐臭が酷いので…」

 

「腐臭ね、住者が残していったものか」

 

「はい…二度と立ち寄りたくないくらいに…」

 

「あはは、そこまで言うんだね。」

 

「まぁ…」

 

「いいや、結果はわかったし。報復も果たせた。わざわざ報告ありがとう。」

 

「はい、あなたには話すべきかと思ったから」

 

「そうだなぁ。また借りができた。」

 

「お気になさらず。」

 

「すぐそこまで来てるから食事だけどうかな。料理には自信があるんだ」

 

「なら、お言葉に甘えて。」

 

「ついた」

 

「おじゃまします。」

 

家の中はちょっとだけ荒れてる。

まぁ、仕方ないですよね。

家族居なくなった直後ですから。

 

「あ、ごめん。すぐ片付けるよ。」

 

「いえ、気にしないで。」

 

料理雑誌や生活系の雑誌ばかり。

時折新聞が少し。文さんのところの新聞かな

 

「今作るからもう少し待ってて。」

 

「はい。」

 

少し待つと美味しそうなオムライスを持ってきてくれた。

 

「おまたせ。どうぞ食べて」

 

「いただきます。」

 

味もしっかり付いてて、

卵にいい感じに包まれてる。

人里で食事なんて久々かもしれない。

飲食店じゃないから。

あまり関係ないか

 

「うん、美味しいかったです。ごちそうさまでした」

 

「よかったよ。」

 

「ありがとうございました、それでは、私はこれで。」

 

「ああ、名前、聞いていいかな。」

 

「犬走椛です。」

 

「犬走さんだね。僕は朝霧。カマイタチの類の妖怪だよ。あれほど強くはないけどね」

 

「やっぱり妖怪なんですね。」

 

「まぁね、気づいてたと思うけど」

 

「ええ、それでは」

 

山に戻る途中霊夢さんが後から追いかけてきていた。

 

「何か御用ですか?」

 

「さっきの妖怪に会って来てたのよね」

 

「ええ、何かありました?」

 

「うーん、なんか嫌な予感がするのよね、なんというかあいつから生気を感じられなかったというか」

 

「そうですか?別にそんな感じしませんでしたが…買い出しも楽しそうでしたし、話していてもそんなような雰囲気でもなかったですよ?」

 

「そう…何か嫌な感じというか。そんな気がするのよね。まぁいいや。気をつけなさいよ。」

 

「まぁ、はい。」

 

霊夢さんと離れてから山の家に戻る途中。

かなり強い風が吹いていた。

 

「嫌な予感ってのはコレのことなんですかね」

 

妖怪の山では風が吹くなんてよくあること

天狗が風起こしをしたり、そうでなくでも妖怪達が喧嘩をすれば風くらい吹く。

酷いと地響きとかするし

 

でもいつも感じるそれとは違う。

悪寒のような感覚とわざとらしい風

 

それと、さっきから気配は感じてた。

 

「居るんですよね隠れてないで出てきてください」

 

そういった瞬間、後から殺気を感じて盾を構える。

案の定盾に何かがぶつかってきた、

 

「やっぱり貴方ですか。」

 

「流石は山の天狗」

 

「貴方よりもっと早い天狗を知ってますから」

 

「そりゃ敵わんな。」

 

「何のつもりですか。わざわざ私に斬りかかる理由を教えてください、自己防衛だけで事を解決させるのは嫌いです」

 

「知りたいか?お前にはわからないと思うが」

 

「決めつけは好きじゃありません」

 

「そうだな…あんたは目の前から大切なものが亡くなったらどう思う?」

 

「まぁ、悲しいですかね」

 

「表現しきれない哀しみに襲われるんだ。それも、割り切る決意ができるまで毎日な。」

 

「私には何も言えません」

 

「だろうな。でもそれだけじゃない…」

 

「どういうことですか…?」

 

「俺は何度も味わってきた。知り合いの妖怪も人里の隣人も、家族も。ここ数日に次々に亡くなった…こんなことってあるか…」

 

「妖怪であるなら別れはいくつもあるはずでしょう?」

 

「ああ、それは間違いない。一度に亡くしたものが大き過ぎたんだ。亡くしたときの哀しみが大きすぎた…」

 

「そうですか、それが私を襲う理由と何が関係しているんですか」

 

「あんた、実力はあるんだろ。」

 

「まぁ、並大抵の妖怪には負けるつもりはありませんけど。」

 

「…手合わせ願いたい。本気で来てくれ。」

 

「嫌です。」

 

「なぜ断る。」

 

「命を断つつもりなら他人を巻き込むのは迷惑極まりないですよ。あなたがどれだけ悲惨な思いをしたところで全くの他人である私には関係ありません。」

 

「…」

 

「手合わせをする分には構いませんが、私は手合わせで誰かの命を奪う気は無いです。勝手にしてください。」

 

「そうか…」

 

「そもそも、妖怪でありながらその態度は酷いですよ。人間以下です。そこから見直したらどうですか?」

 

「散々な言われようだな…」

 

「自殺願望の妖怪なんて私は初めて見ましたね。死神にでも頼んだらどうですか、そのほうがまだマシですよ。」

 

「ははは…参ったな…」

 

「頭冷やして考え直してください。出会いや別れなんて妖怪には人間より多くありますし、嫌になることなんていつものことでしょう。ましてや人里で平和に過ごしているならもっと何かに熱心になって生きたらどうですか。そのほうが嫌なことあった分楽しく感じるのは大きくなるでしょうし」

 

「何も言い返せないな…」

 

「夜も遅いですから、帰って考え直したらどうですか、私も帰りたいので。失礼しますね。」

 

「あ、ああ。」

 

振り返ることもなく家に帰った

ふと思い返すと少し言い過ぎたかもしれない…

 

でもまぁ。もう過ぎたこと

 

 

「今日は色々ありすぎましたね…」

 

疲れすぎてるのか逆に寝付くのか遅かった。

それと、普段より風が強く少し騒がしく感じていた。

でもそんなことを考えることもなくいつの間にか寝ていた。

 

 

翌日、いつも通り山の見回りをしている、

 

「今日は晴れているから明るくて見渡しやすい」

 

そう呟いていた矢先に嫌なものが見えた。

 

傷だらけの妖怪の遺体。

 

「この傷は爪痕じゃないですね。」

 

爪よりも鋭利な切り傷が多い。

ただどれも浅い。

胸元に一箇所だけある大きな刺し傷で死に至ったようだ…

 

周りを見渡しても特に何もなく

目の前の遺体からの血の匂いしかしない。

気配もなく他に妖怪は近くにいない。

 

「遺体も冷たいから時間が経ってるみたいですね。誰も気づかなかったのでしょうか?」

 

死肉を貪る妖怪はいるし、

血の匂いに反応する妖怪だっている、

 

争った形跡もないし…

 

「切り傷か…」

 

なんとなく思い出ごす、昨日の夜の出来事

 

「かまいたちの妖怪…?」

 

急に襲ってきた彼なら、他に手を出しても不思議ではない。

傷が刃物痕だとすれば彼の所行の可能性はあるが。それだと昨日の彼の希望とは真逆になる…

 

仮に彼だとしても自分から消えたがっていたのに、妖怪を殺す理由はあるのだろうか…

 

「まだそうと決まったわけじゃないですが…」

 

不可解な点が多い。

妖怪が死ぬなんて日常的にあることではないし、こんなに呆気なく殺されるのも数少ない。

 

「…何にしても。不穏ですね。」

 

あれだけ感づいていたけれど、博麗の巫女は動くのだろうか。

 

「山の問題でもありますが、こういうときは外部の協力者は何かと役に立ちますし…単独だと少し不安はありますね。」

 

そうは思いながらも調査をする

遺体はそのままでしばらく辺りを見回してみる。

 

「この付近には何もなし」

 

荒らされた形跡や争った痕跡もない

この様子だと直ぐには見つからないかもしれない。

 

「策としては望ましくないけど、経過観察。十分注意しないと。」

 

一日山の調査をしたけど

結局その日は先の謎の遺体以外何も見つけることはできなかった

 

あの日から数日、変死体周辺に限らず調査しても特に何も動きがなかった。

 

山全体。平穏な感じが続いていた。

 

「まだ気がかりではありますが…でも他にもあれを見つけた人がいるはずなのに。何故誰も声を上げないのでしょう…」

 

かく言う私も報告も何もなしだが…

変死体がある、と言うだけで報告するものかどうか悩むところでもある。

 

「一体…何でしょう…」

 

そう思いながら、変死体のもとに向かう。

 

雨が降っているせいで少し気配が読み取りにくい。ノイズのような感覚が混じる。

 

「まだここにある…」

 

依然として変死体はそのまま。

少しづつ枯れてきてはいるが。

何かに荒らされた形跡はない。

 

空に飛んで周りを見渡す。

気配は感じ取れないが。特に何も見えない。

 

一時間近く飛んで周りに何かないか探していた。

 

ふと視線を変死体の方に戻すと。

そこには何もなかった。

 

そう。なくなっていた。

 

「えっ?!」

 

位置を間違えたのかと周りを見渡すと

小人のような何かが変死体をひきずっていた

 

「どこに向かって居るのでしょう…」

 

気付かれないように上空から付けていると。

岩場の穴倉のような場所に入っていった。

 

「ここが…巣?」

 

薄暗い洞窟かと思ったが。

直ぐ突き当りが行き止まりになっていた。

そこに、先の小人がいた。

 

その小人は…ひきずって持ち込んだ妖怪を食べていた。

 

「うわっ…」

 

気持ち悪い雰囲気と骨を噛み砕く音が響く。

 

その隣で人型の何かが倒れている。

 

「あれは…人間…?」

 

人形のようで全く動かないが、

まるで生きているように肌身はしっかりしている。

 

「これは一体…?」

 

困惑していると、

後ろから殺気を感じた。

この感覚はよく知っている。

嫌な予感だ。

 

盾を構えて振り向くと。

盾に何かがぶつかった。

 

「…」

 

「あなたですか。」

 

かまいたちの妖怪。

でも以前とは違う。

みすぼらしい服装に、窶れた格好

意識はまるで獣のよう…

 

「…コロス…」

 

「話はできる状態じゃない…」

 

あまりにも動きが弱々しく。

最初の一撃で力を使い果たした様子だった。

 

「こんなところで殺されるつもりはないっ!」

 

蹴り飛ばすと動かなくなったが

息はしているようだ。

 

その様子を見ていた小人のような何かが襲い掛かってきた。

それもまるで子供のお遊戯のようで

軽く避けるだけで転んで倒れ込んだ。

そのまま起き上がる様子は無かった

 

「一体…」

 

何もわからないまま困惑していると

異様なまでの妖力を感じた。

それもすぐ近くに。

 

「なんですか…?!」

 

身の危険を感じてすぐに洞窟を出るために走る…そんなに距離がなかったはずなのにいつまで経っても出口が見えない。

 

「どうして?まさか…」

 

振り向くとさっきの行き止まりがすぐ近くに…

 

「何かの魔法…」

 

「…テング…テング…」

 

「誰っ!?」

 

いきなり聞こえてくる女性の声。

声の方を向くとさっきまで倒れていた女性がぐったりした姿勢をしたまま宙に浮いている。

 

「貴方の力ですね。」

 

「テング…コロス…」

 

「こっちも同じですか…」

 

まともに話のできる状況じゃない。

 

構える暇もなく魔法による弾幕を飛ばしてくる。

 

「威勢は充分ですが…大したことはないですね」

 

単調な弾幕をばかり。

避けながら詰めていく。

 

弾幕が途切れるタイミング

そこを狙って一太刀浴びせようとしたが

結界のようなものが張られていて歯が立たなかった、

 

「攻撃はゆるい割に。守りは鉄壁並ですか…」

 

一度下がって体制を取る。

手元に妖力を集中させる…

 

すると何故か見覚えのない感覚があった。

剣が軽く感じ、いつの間にか形状が変わっていた、

大太刀に白い大きな紅葉の装飾。

どこか既視感のある風格だった。

 

「長年使ってきた証。ですかね。」

 

再び詰めて振りかざす。

結界がまるで紙を切るかのような感覚だった

 

当然結界越しに謎の女性を斬る。

 

「ウゥ…」

 

先程蹴りつけた妖怪が小さく唸る

 

「カゾク…マモル…」

 

弱々しく立ち上がるがすぐ倒れ込んだ

 

「テング…テング…」

 

「椛。」

 

後ろから声が聞こえて振り向くと

 

「文さん。」

 

「怪我は…無さそうですね。」

 

「まぁ、大したことないです。ですが…」

 

「この三人見覚えあるんですか」

 

「山蜻蛉に襲われた人間と妖怪の子供、立ち上がろうと弱々しく動いてるのはその親。なぜこうなったのか意図はわかりませんが」

 

「貴方は放置された妖怪の遺体を覚えてますか?」

 

「ああ、そこにある遺体ですか」

 

「え?ああ、あれなんですね」

 

「あれが何か」

 

「あれは山蜻蛉なんですよ。」

 

「あれが?でも人里で確かに首を落とされたはずなのに…」

 

「切り落とした後、山蜻蛉はどうしたんですか?」

 

「私は何も触らず…」

 

「多分人間も触らず放置したでしょうね。」

 

「それで…生きていたと?」

 

「恐らく…」

 

「有り得ないとは思いますが、そうなります。擬態くらいはできると思いますから見覚えがないのは仕方ありません」

 

「仮に生きていたとして…山蜻蛉に襲われたはずの二人は生きてる、というか妖怪になっているし…もう謎だらけじゃないですか?」

 

「大体察しはつきますけどね、」

 

「どういうことですか?」

 

「この二人は別の妖怪の呪術を掛けられたからだと思います。ただの呪術ではなく死屍に関連したものでしょう。なので妖怪ではなく生ける屍ですね」

 

「男の方は」

 

「家族への愛に溺れたんでしょうね、それでまともな神経を失ったと見ていいでしょう」

 

「女性は弾幕で襲ってきましたね、そこで倒れてる子供は何もできないでそのまま倒れ込んだままで」

 

「人間の女性でも霊力は有るでしょうからね、さっき感じた妖力の方はこの子ですか?」

 

「いや…」

 

誤解されないように手元の剣を見せるかな

 

「これのことじゃないですか。」

 

「いつの間にそんな大層な剣を…」

 

「貰ったわけじゃなくて。手元に妖力を込めたら剣が反応したんです。」

 

「応えてくれたわけですね。」

 

「はい、びっくりしましたね」

 

「さて、どうしましょうか」

 

「ここで楽にさせたところで。さっき話した術者がまた繰り返す可能性がありますよ。」

 

「仮に男が術者だとしたらそこで打ち止めですね。」

 

「念の為、首は落としておきましょうか。」

 

かまいたちの妖怪と子供、二人とも首を落とす。女性の方は既に動かなくなっていた。

 

「これで、終わりだといいんですけどね。」

 

そう呟いて、私達は岩穴を後にした

 

 

それから数日後ふと思い出して岩穴まで訪れる。

 

そこで目にしたのは3つの骸だけ。

 

「終わりましたね。」

 

人型の骸が3つ。例の家族。

静かに倒れているだけだった。

 

「もうここには用事はありませんね」

 

特にすることもなく岩穴から出た。

 

「あれが末路ですか」

 

振り返ってそう呟いた

 

最後まで見届けたが、結局、大事にはならなかった

山蜻蛉やかまいたちの妖怪

猪の小屋、岩穴での出来事

色々とあった

大したことないと言えば少し違うが…

私以外が結末を知る必要はない。

幻想郷では大きな問題ではないのだから

 

 




やばいもう一月半しかないやばい

あと三話とか無理なんじゃないか。
あ…あぁ…
なんとか頑張ろう…



また会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

甘味のする出来事

どうもムツサンです

お砂糖ぶちまけました
深い理由はありません

ではごゆっくり


「…さ、寒い…」

 

暗いし…寒い…

ここはどこだろう…?

 

哨戒任務中に謎の歪みに飲み込まれて…

気が付いたら見覚えのない場所に…

 

「ここはどこなんでしょう…誰かいないかな…」

 

砂ばかりの場所に、遊具?

ところどころ木々がありますが…

 

「困った…それより…寒い…」

 

耳を澄ますと後ろから足音が…

 

「あ、あの!」

 

「はい?…え?!」

 

「あの…ここはどこなんでしょう…」

 

「えっと、ここは公園、だけど?」

 

「公園…?」

 

「ちょっと待った。んーと」

 

寒い…とにかく寒い…今やっと気が付いたけど、雪も降ってる…

 

「よかったらこれ飲んで。寒いんだよね」

 

「あっ!ありがとうございます…」

 

ボトルの容器の飲み物?甘くて温かい…まだ寒いけど震えは止まってきた

 

「訳がありそうだな…こっち来て」

 

「は、はい…」

 

「あと、これ上着、一先ずこれ着てれば多少はマシでしょ」

 

「ありがとうございます…」

 

とても分厚い上着…暖かい…

 

「あなたはいいのですか?」

 

「さっきまで走ってたから大丈夫」

 

「そうですか」

 

少しついていくと一つの家についた

 

「ここは?」

 

「僕の家上がって。」

 

「外の寒さとは格段と違う…暖かい…」

 

「暖房付けておいて良かった」

 

「あ、あの…」

 

とりあえず今どうなってるのか…

 

「はい、ココア、さっき渡したやつだよ」

 

「ありがとうございます。」

 

あぁ…温かい…

って、そうじゃなくて。

 

「あの、一つ聞きたいことがあるんですが…」

 

「まぁ。」

 

「ここはどこですか?」

 

「日本、かな」

 

外の世界…

 

「日本…そうですか…」

 

「しかし困ったな、言葉は通じるみたいだけど。どうしたもんかな」

 

「えっと…」

 

「お腹空いてない?」

 

そう思うと…確かにお腹は空いてる…

 

「はい…」

 

「いま用意するから。」

 

「あの…」

 

「まぁ待って、何をするにもまず落ち着いてからだよ。」

 

それは確かに…

 

 

本当に困った…

外の世界に来てしまってる…

妖怪の賢者は早く気づいてくれないかな…

山の皆も心配してしまうだろうし。

 

「大丈夫?まだ寒いかな」

 

「あっ、いえ、大丈夫です」

 

「煮物、温めて持ってきたから、良かったら食べて。」

 

「ありがとうございます。」

 

魚の煮付け…温かくて美味しい。

 

「それにしても、どうしようかな。」

 

「えっと、ご馳走様でした。」

 

「片付けてくるよ。」

 

何から何まで…

 

「うーん…」

 

「どうしようね。」

 

「困りました…」

 

「暫くはここにいても良いけど。」

 

「それはすごくありがたいんですが…私も帰らないと行けなくて…」

 

「異世界の人か。」

 

「そうです。幻想郷っていう世界に居たのですが…謎の歪みに巻き込まれてしまったみたいです」

 

「なるほどね。んー、見た感じ犬?」

 

「いや…狼です。白狼天狗です。」

 

「白狼天狗?天狗って聞くと鼻が長かったり、翼生えてるイメージあるけど…」

 

「そうですね。そういう天狗が多いですがそうじゃない天狗もいますよ」

 

「なるほどね、天狗ってことは妖怪か」

 

「はい、そうとも言いますね」

 

「へ〜妖怪かー、珍しいこともあるもんだな。」

 

「まぁ…私は困るんですが…」

 

「帰る方法はどうするんだ?」

 

「それが…幻想郷のある妖怪が気付けば迎えに来てくれます」

 

「最悪の場合帰れないわけか。」

 

「私はそんなことはないと思いますが、どれぐらいかかるか…」

 

「まぁ、そのうち来るなら気長に待つしかないか。」

 

「そうですね…」

 

「とりあえず、その耳と尻尾は隠すなりしないと。」

 

「そうですね…人間に化けて見えなくするくらいはできますから、それは問題ないかな。」

 

「それは良かった。化けるって言っても大して変わりないだろうけど。」

 

「これが自然体ですから…」

 

「まぁね。」

 

「突然ごめんなさい、これから暫くお世話になります…」

 

「構わないよ、一人でつまらなかったからね。名前聞いていいかな?」

 

「犬走椛と言います。」

 

「犬走さんね。読みにくいな、まぁいいか」

 

「気軽に椛でもいいですよ。」

 

「わかったよ。僕は荒原一登」

 

「かずとさんですね。」

 

「まぁ同じく気軽に呼んでくれて構わないよ、その方が慣れてるからね」

 

 

「わかりました。えっと。どうしましょう…」

 

「そうだなぁ。今日はもう暗いし、寝るとするかな」

 

私はさっき起きたばかりなんだけど…

二度寝…しますか。

 

「そ、そうですね…」

 

「こっち、客間にしてるから、好きに使ってくれていいよ。」

 

隣の部屋丸ごと客間?

 

「わかりました。ありがとうございます」

 

ベットではなく布団なのは。

ちょっと安心感ありますね

 

少しもしないうちに。気が付いたら寝てしまっていた。

 

 

「ん…んー…?」

 

部屋の外からの甘い匂いに誘われて目が覚めた。蜂蜜のような甘い匂い。

 

「朝ですか…」

 

軽く伸びて服を整える。

着替えたいところだが…

代わりの服なんてあるはずがない…

 

「一先ず。」

 

部屋の外に出ると、パンの焼けた匂いと甘い蜂蜜の匂いが広がっていた。

 

「朝食食べるかい。」

 

「はい。」

 

焼きたてのパンが並んでいた。

見慣れない形のものが多い。

 

遠慮なく頂くが。どれも美味しい。

蜂蜜を軽く塗って食べると尚更

 

「ごちそうさまでした。」

 

朝食にしてはお腹がふくれた。

 

「さて…と、ちょっと着替えてくるから」

 

「え?あ、はい」

 

どこか出かけるのでしょうか。

私はこの格好のままだし…

この格好では…外の世界ではおかしいと思われるでしょうし…

 

「おまたせ。あとは椛さんの服だね。どうしたもんかな。」

 

「うーん…」

 

「身長差もあるから僕の服だと少し大きいだろうし。仕方ない…ちょっとこっち来て。」

 

「はい。」

 

案内されたのは別の部屋…

 

「妹の服なら着れるかな。たぶん大丈夫だと思うけど。」

 

「妹さんに、許可は取らなくていいんですか?」

 

「妹と両親はしばらく出かけててね。年明けて半月くらいまで居ないんだ」

 

「え?それまで一人で?」

 

「そう。僕は自分のやりたいことに向けて勉強してる。旅行とか好きじゃないのもあるけどね。」

 

「そうなんですか…」

 

「まぁ、大丈夫だよ。洗濯して戻しておけば文句言わないと思うから」

 

「まぁ…気は引けますが…仕方ありませんし…」

 

「それじゃ、着替えたらまた声かけて」

 

かずとさんが部屋を出たあと。タンスや戸棚の中を見てみる。

 

「おとなしい服が多いですね。」

 

少し安心した。

大図書館でみたときの外の世界は服が派手すぎる物が多かったから少し不安だったけど…

 

これなら大丈夫そう。

着替えてから大きな鏡で自分を見直す。

 

「うん。いいかな。」

 

茶色が基調の服装。

ちょっと地味さがあるけどこれでいい

派手じゃなければとりあえずいい

 

「こんな感じ、でしょうか」

 

「うん、いいと思う。」

 

「それで、何故着替えを?」

 

「今日の買い出しに行く。」

 

「外に出るわけですね」

 

「嫌だった?」

 

「いえ、大丈夫です」

 

「靴は…」

 

これも妹さんの…

サイズがピッタリなんですよねこれが…

 

「ピッタリだな。」

 

「ええまぁ…」

 

「スーパーとコンビニに行くから。」

 

「えっと、はい。」

 

全くわからない…

 

「まぁ、ついてきて」

 

外に出ると、雪が積もっている

昨日の夜から降っていて積もったようだった

今はもう雪は降っていない

寒いけど。白い景色が広がっていて少し綺麗

 

「物の見事に積もったな」

 

「寒い…」

 

首筋周りから冷たい空気が入って来る…

 

「上着足りないか?」

 

「肌は大丈夫なんですけど…」

 

「なるほど。なら」

 

「あっ…」

 

首元にマフラー…暖かい。

 

「かずとさんはいいんですか?」

 

「大丈夫。寒いのには強いんだ」

 

「そうなんですね。」

 

「まぁね。」

 

「なんで寒いのには強いって思えるんですか?」

 

「椛さんは雪女って知ってるかな。」

 

「まぁ、わかりますが」

 

「これは本当の話なのかわからないし、多分そんなことはないと思うが。

母側の祖先が雪女かそれに近しい存在なんじゃないかって言われててね。

うちの家系で母と俺は寒さに強いんだよ。母側のおばあさんもそうだった。

噂話程度にしか聞いたことないし、まぁ雪女ってことはないんだろうけど、寒さに強いってことは間違いないかな」

 

「なるほど」

 

「だからまぁ大丈夫だよ。」

 

「わかりました」

 

少し歩くと大きなお店に着いた

 

「ここがスーパー?」

 

「そう。スーパーマーケット。」

 

中に入ると様々な食材が目に写った。

見覚えのあるものから幻想郷では滅多に食べれないものまで沢山ある。

 

「すごい…」

 

「そうかな。」

 

「幻想郷はこんなに栄えてないのでちょっとびっくりしました」

 

「幻想郷ね」

 

「私の世界ではこんな大きなお店見たことないですね。」

 

「まぁ、総合的にいろんな食品が置いてあるからね。大きくもなるよ。」

 

広い上に棚がたくさん…

 

「迷路みたいで迷いそうですね…」

 

「そうならないようにちゃんとついてきてね」

 

加工品も見覚えのないものばかり。

いい匂いもするし。

不思議な感覚。

 

「あった。」

 

「それは?」

 

「薄力粉。」

 

「粉、ですか。」

 

「そう。ケーキの材料でね。」

 

「ケーキ?デザートに出る…」

 

「そう。」

 

「お菓子作られるんですね」

 

「ちょっとした趣味だね。今日はケーキを作ろうと思って。」

 

「そうなんですね。」

 

「普段は簡単なものが多いけど、今日は…ん?誰か呼んでるな」

 

今日は…なんだろう。気になる

 

「あ、加賀美か。」

 

「ここにいるってことはまた菓子づくりか?」

 

「まぁね。今日はケーキ作るから」

 

「へ〜。彼女に作ってあげるんだな。」

 

「彼女?ああえっと」

 

「いや、私はそんなんじゃ」

 

「違うのか?」

 

「うん。訳あって一緒にいるだけ。」

 

「んー、お前の事だから彼女居てもおかしくないと思ったけど、なんだ違うのか。」

 

「お前は彼女と一緒じゃないのか?」

 

「生憎、仕事入ったらしくてさ。夜会う予定。」

 

「ふーん。お幸せにな。」

 

「お前も、早く相手見つかるといいな、隣のお方でもいいとは思うけど。」

 

「あの…私は…」

 

「ははは、余計なお世話だよ」

 

「それじゃまたな。」

 

少し…恥ずかしいというか…

 

「ちょっかい出してくることは多いが。根はいいやつなんだ。」

 

「そう、ですか」

 

「さぁ。他のも探さないとな。」

 

いくつか他の食材を買ってお店を出た。

 

「そんなに沢山は買わないのですね」

 

「買っても余らせちゃ勿体無いからね。必要な分だけ買うのがいい。」

 

「確かに。」

 

さっき言いかけた話…

やっぱり気になるから聞いてみよう…

 

「そういえば。さっき言いかけて呼ばれたときの話なんですが。」

 

「えっとなんだっけ。」

 

「今日は…って言いかけた時の」

 

「ああ、今日はね、クリスマスなんだ」

 

「クリスマス、というと…」

 

えっと…クリスマス…

確か大図書館で目にした単語だ。

 

「キリストがどうとかっていう日だね、巷ではもうそんなのお構いなしで男女のカップルが幸せに時を過ごすなんて風習になってる」

 

そうか…クリスマスか…

 

「だからさっきの方は…」

 

「そう。椛さんを俺の彼女だと思ったんだろうな」

 

「なんというか…」

 

「恥ずかしいかい?」

 

「え、ええ…」

 

顔が熱い…

別に嫌というわけじゃないけど…

なんだろう…

 

「まぁこんな時期だからね勘違いされても可笑しくないよ。でもまぁ僕も悪い気はしないけどね」

 

「わ、私も悪くは思ってません。」

 

「そう、それなら良かった」

 

幻想郷では男には縁がなかったからか…

少し気恥ずかしい…

 

「あっ、ちょっと待っててすぐ戻るから」

 

「はい。」

 

コンビニかな…さっきの大きなお店に比べて小さい。

 

「おまたせ。さて。帰ろうか」

 

「はい。」

 

家に帰り着いて。

買ったものをしまっていく。

 

「あっ。」

 

「どうしました?」

 

「買うもの間違えただけ。でも代用できるから大丈夫。」

 

「そうですか。」

 

「それに。今日使うものじゃないから。」

 

「なら大丈夫ですね。」

 

「さて、もう昼か。」

 

「ですね」

 

「そうだなぁ。昼飯用意するからちょっとまってね。」

 

「はい。」

 

しばらく待っていた。

部屋を見渡すと、やはり見慣れないものが多い。

ただ、あの映像の映る機械だけはなんとなくわかる。

似たような物が河童の工房にあると思うから

 

「何か、不思議。」

 

「何が不思議?」

 

「あっ、えっと。」

 

いつの間にか戻ってきていた…

机にはパンケーキが…

 

「幻想郷と違うし、飾りや家の造りも違うなって。」

 

「ああ、そういうことか」

 

「はい。そう思うと。幻想郷はあまり発展してないかな」

 

「何にしても。住んでる世界が違うのは確かだからね。不思議に思うのは間違いじゃないよ。」

 

「そうですね。」

 

「ほら、冷めないうちに食べよう、」

 

「はい、いただきます。」

 

ほんのり暖かく。甘い

 

「そういえば、椛さんは天狗なんだよな」

 

「はい。どうかされましたか?」

 

「天狗って、団体で活動することが多いって、書籍で知ってるんだが、実際はどうなんだ?」

 

「間違いでは無いですね。私は主に山に居ます。その山で天狗同士での上下関係や妖怪としての上下関係などがある感じですね。あの山には天狗以外に河童や別の世界から来た神社もありますから。」

 

「へぇ~、人間関係はしっかりしてるんだな。」

 

「人間…ではないですけどね。まぁ社会的な感じです。」

 

「なるほどね。治安は良さそう。」

 

「そうですね。治安は悪くないです、私は哨戒天狗として欠かさず見張りをしてますし。」

 

「見張りをしてるのか」

 

「そうです。実は私はまだ下っ端くらいの天狗なので、あまり大した仕事はさせてもらえないんですよね。まぁ困ってはいないし私の能力も見張りに凄く適してるので悪く思っていません」

 

「なるほどね。そうか妖怪だから自分の力のこともあるのか。」

 

「私が適した能力があるだけでそうじゃない人もいます。下っ端なので上司に用事遣わされたりしますからね。まぁ上司には慣れてるので悪い気はしません、酒酔いするとかなり面倒ですけど…」

 

「まぁ自分が納得してるなら、良いと思う。」

 

「はい。今の所不満はありませんね。」

 

「そうか。しっかりした世界だな。こっちとは違うなぁ」

 

「まぁ。世界が違えば基準も人々の不満も違うでしょうから、仕方のないことだと思います」

 

「だな。食器片付けるよ」

 

「ありがとうございます。」

 

みんな心配してるだろうなぁ

でも帰る方法はないし。

しばらくはここにいるしかないのかな。

 

 

「ふぁ〜…」

 

満腹で眠たい…

うたた寝しそう…

 

「眠たかったら。客間使ってもらっていいから。」

 

「わざわざありがとうございます。」

 

少しだけ。昼寝しますか。

あまり気が引けますが…

 

……

 

窓からの夕陽が眩しくて目が覚める…

 

「ううん…」

 

どこからか甘い匂いがする。

美味しそうな匂い…

 

「んー…」

 

客間を出るとキッチンカウンターの上に大きなケーキが堂々とおいてあった。

 

「おおぉ…これは。」

 

「ん、おはよう。」

 

「おはようございます。すごいですね、本当にかずとさんが作ったんですよね?」

 

「まぁな。でも作ってから考えたんだが、食べ切るのに数日かかるなぁ。」

 

「あ…確かにそうですね…」

 

「まぁ、食べようか」

 

「は、はい。」

 

適当に切り皿に分けていく。

 

「2つもいらないかな…残ったのは知り合いにでもあげるか。」

 

「残しておくと悪くなりますからね…」

 

「まぁね、それじゃ、いただきます」

 

「いただきます。」

 

うん。美味しい、

生地もふわふわしていてクリームもとても美味しい、単純なショートケーキでも今まで食べたもので一番美味しい。

 

「すごいですね。こんな上手に作れる人が居るなんて。」

 

「でもプロのパティシエには及ばないよ」

 

「パティシエというと、お菓子職人ってことですよね」

 

「そう。パティシエはお菓子を作るのが仕事だからね。プロには勝てないよ」

 

「それでも、美味しいです」

 

「まぁ、そう言ってもらえるとありがたいね。」

 

…ん?この感じ…

 

「あれ、もしかして」

 

「どうかした?」

 

「迎えが来たかもしれないです」

 

「よく気づいたわね」

 

歪んだ空間…スキマから出てきたのは…

 

「紫さん、来てくれたんですね」

 

「まぁ、どっかの烏天狗と河童が騒いで煩かったから」

 

「はぁ…なるほど」

 

「と、その前に私もそのケーキ頂けないかしら?丁度小腹が空いてたとこなのよ」

 

「ああ、構わないよ。」

 

「どうも。」

 

「彼女が妖怪の賢者なのか。」

 

「そうですね、私達にとってなくてはならない存在です。」

 

「まぁねぇ。このケーキとても美味しいわね、貴方が作ったのかしら?」

 

「原材料以外は、生地とクリームは手作り」

 

「私が自信持って貴方を言うわ、あなたはきっと立派な菓子職人になれるわ。私が言うんだから、胸張って頑張りなさい」

 

「お褒めに頂き光栄です。と言ったところかな」

 

「あら、堅苦しいのはいいわ、精進するといいわ」

 

「ありがとう。あくまで趣味の範疇だから、菓子職人になるかどうかはわからないよ」

 

「勿体無いわ。まぁ好きになさい」

 

「紫さんに褒められるってことはやっぱりすごいです。」

 

「さて、天狗、早くいつもの服に着替えなさい。戻るわよ」

 

「はい、少々お待ちください」

 

 

「さて、貴方には世話になったわね」

 

「とんでもない、大したことはしてないよ」

 

「でもよく妖怪相手に怯まずに居られるわね」

 

「わざわざ聞く意味はあるのか、気づいてるとは思うけど」

 

「わざわざ言う意味もないわ」

 

「俺が陰陽師の末裔だってね。」

 

「そう、そして雪女の末裔」

 

「それ本当かどうか怪しいんだよな」

 

「あり得なくはない話よ」

 

「どうでもいいさ、人間として生きてるんだ、他と変わりない」

 

「そう。いつでも歓迎するわ。」

 

「まぁ、気が向いたらね」

 

 

「戻りました…っていつまで食べてるんですか…」

 

「だっておいしいんだもん」

 

「ほはは!食べたいだけ食べてくれ、無くなってくれた方が助かるからな」

 

「ごちそうさま。それじゃ、私達はお暇させてもらうわ」

 

「おう、さようならだな」

 

「はい、お世話になりました」

 

……

 

結局、世話になりっきりだった。

何もお返しできずに幻想郷に戻ってきていた

相変わらず、文さんと飲み屋台まで来ている

 

「椛、元気ないですねえ、そんなにクリスマスが惜しかったんですか?」

 

「惜しくないです。ただ少し後悔はしてるし、満足はできなかっただけ。」

 

「椛さん、隣、お邪魔するよ」

 

「あれぇ、椛の知り合いの方ですかぁ」

 

聞き覚えのある声…

誰だっけ…

酔が来てるせいで上手く思い出せない

 

「貴方は…」

 

青白い着物…あれ…見覚えはある?

 

「もう結構酔ってるじゃないか。」

 

思い出せない…えっと

 

「うーん…ごめんなさい、思い出せない」

 

「忘れるなんて悲しいな。」

 

「酔ってて少し考えが…」

 

「かずとですよ。ケーキ作って上げたじゃないですか」

 

あ…あぁっ!?

 

「えっ?!なんで貴方がここに?」

 

「紫さんにこっち来ないかって誘われたんだ。」

 

「はぁ。物好きですね…」

 

「まぁね。」

 

「へぇ~、椛に男がいたんですねぇ」

 

「ち、違いますよ、訳ありで知り合っただけですから。」

 

「ふ〜ん、それにしても仲良さそうですねぇ」

 

「ははは、まぁな。」

 

「まぁ…今後もよろしくお願いします…」

 

「ん?おう、よろしく」

 

「そのよろしくは、どういうよろしく何ですかねぇ」

 

「い、嫌だなぁ、幻想郷の住人としてですよ…」

 

「俺はどんな形でも構わないよ」

 

「らしいですよ椛。」

 

「ちょ。ちょっと!私はそんなつもりは」

 

「椛、素直になって良いと思いますよ?」

 

「勘弁してくださいよ…」

 

……

 

赤面する椛にそれをイジり倒す文

それを横で眺め笑うかずと

 

三人は夜が明けるまで飲んでいた。




クリスマスとか一時間で終わります
仕事上がりにゲームして終わり


ではまた会えたら会いましょう
良いお年を


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

人と河童の僅かな時間

どうもむつさんです。

寝る前にちまちま進めながらなのでとても遅くなりました。


ごゆっくりどうぞ


里で建築業をやっている男が、妖怪の山の検問所まで来ていた

 

……

 

「通行証はあるか。」

 

「これでいいか?」

 

上着の内ポケットから通行証を出す

 

「いつものように河童の所まで行くのか」

 

「そうだな。」

 

「わかった、同行する。」

 

「大丈夫だ。一人で行ける」

 

「すまないが理由があって、今は外からの来訪者には同行しないといけないんだ。」

 

「わかった」

 

検問を越えて河童のところに向かう。

 

「同行を付けるということは何かあったんだな」

 

「これからある。」

 

「天狗の集会と言ったところか?」

 

「だとしたらどうする、襲うか?」

 

「興味ない」

 

「だろうな。」

 

「そんなことしたら自分で首絞めてるようなものだ、山に入れないんじゃ仕事も捗らない」

 

「まぁ、河童の機械は便利だからな」

 

そんな風景の最中、一匹の妖怪がこちらを睨んでいる、いつ襲おうかなんて気を張っているんだろう

 

「気づいてるとは思うけどさ。」

 

「わかってるよ、いつでも構える用意はしてる」

 

そんな警戒もお構いなしに。

獣の様な妖怪が飛びかかってきた、

 

「藪から棒に…」

 

「人間は下がっていろ。多分狙いはお前だ」

 

「そのほうが都合がいいんだよな」

 

背負っている大きなカバンから一つの機械を取り出す

 

「何だそれ…」

 

「電ノコ、普段は木を切り倒すのに使うんだよ」

 

「木?!お前まさか」

 

電ノコの電源を入れて構えた

 

「妖怪に襲われるときはいつもこいつを使ってる。」

 

動く刃に血のような紅い色が染みついているのがよく見える

 

「いつも?!一度や二度じゃないのか…」

 

「まぁな、襲ってくるなら反撃するしかないだろ。」

 

「そ、そんなもの使ったら…」

 

何も知らない獣の妖怪が飛びかかって来る。

 

「バカなやつだ」

 

薙ぎ払うように妖怪に向かって電ノコで斬りつけると、妖怪は異様な叫びを上げながら真っ二つに裂け地面に落ちた

 

「これが…電ノコ…」

 

「本来は木を切り倒す道具だ、頑丈かつ鋭利、力も強い上に何枚もの細かい刃で繰り返し切り込むから相当な力を持ってる、やろうと思えば鉄も斬れる、おすすめはしないけどな」

 

「皮なんて一瞬じゃないか…」

 

「取り扱い注意ってね。」

 

「こんなもの向けられたら…」

 

「あんたの剣も真っ二つだな。」

 

「やめてくれ、想像するだけでも寒気がする」

 

「安心しな、襲われない限りは使わない」

 

「ま、まぁ…」

 

そんな会話をしていると、河童の工房まで着いた

 

「おお、また来たんだね」

 

「にとり、今日はホバリングシューズと水平器とマジックアームを頼む」

 

「はいよ〜また建築だねぇ」

 

「今回のはちょっと大きくてね。」

 

「ハイハイ。向こうの椅子で待っててくれるかい」

 

「はいよ」

 

返事をするとにとりは奥まで道具を取りに行く

 

「河童とは仲がいいんだな」

 

「まぁ、この工房を建てる時も手伝ったし、いくつか河童からのお願いも聞いてるからな。」

 

「ふーん。まぁお互い様って感じか。」

 

「そんなもんかな」

 

「おまたせ〜。」

 

「おう、ありがとう。」

 

「いつもどおり。終わってから返してくれよ、一応動作確認はしたけど、調子悪かったり動かなかったら他のものに取り替えるからまた持ってきて。」

 

「いつも助かってるよ。ありがとう」

 

「礼はいいよ。こっちのほうが助かってんだから」

 

「ははは、そんじゃまた来るよ」

 

「はいよ〜、天狗さんもお疲れ様」

 

外に出て検問所まで何事もなく戻った。

 

「それじゃ、私はここまでだ」

 

「お勤めお疲れ様です。世話になった」

 

「まだ山を出たわけじゃないから気を抜くなよ。まぁ大丈夫だとは思うが」

 

「まぁな。それじゃ」

 

山を降りて人里に帰り着く。

 

……

 

里の南側。大きな空き地に居た。

 

「うーん。設計図通りにやるとは言ったが、これは余るな…どうしたものか」

 

建設予定地が広いため土地の大きさに合わせて立てることもできるが。

設計図はそれより2割ほど小さい

 

「幅を余らせる理由でもあるのか。」

 

そんなことを呟いていると

一人の人間が話しかけてきた

 

「あんたが浦さんか」

 

「ええ、浦上といいます。」

 

「依頼した春宮だ。よろしく頼むよ」

 

「はい。承りますが、ひとつだけ質問をいいですかね」

 

「何かな?」

 

「予定地の広さよりも小さめな設計で、2割ほど余ってしまいますが、何か理由があるのかね?」

 

「ああそうだな、できる限り左右どちらかに寄せて建ててほしい、蔵を他にお願いするつもりだからな。」

 

「なるほどな、そういうことなら了解した。」

 

「頼んだよ」

 

河童から借りた機械を身に着けて作業に取り掛かる。

 

数日に渡り建築を済ませた

空き地だった場所に立派な戸建ての家が建ち、近くの住人達は羨ましそうに眺める人も居た

 

「流石は浦さん、評判通りの素晴らしい腕前ですな」

 

「まぁ、そう言って貰えると助かります」

 

「あとは知り合いに蔵を頼むよ。ありがとう今回の依頼費だよ。受け取ってくれ」

 

「毎度あり。また何かあったら呼んでくだい」

 

「ああ、そのときは頼むよ」

 

借りた機械を返すために、

現場をすぐ片付けて山に向かった

 

「通行証はあるか?」

 

「これでいいな」

 

「確かに確認した。だが気をつけろよ、最近妖怪共が荒れ気味だからいつもより辛辣な空気が漂ってる。」

 

「忠告ありがとう。」

 

検問所を抜け何事もなく河童の工房に着く

 

「にとり。返しに来たぞ」

 

入り口で呼んでも返事が聞こえない

 

「にとり?」

 

失礼かもしれないが上がり込んでにとりを探す。奥の襖を開けるとはだけてる状態で寝ているにとりを見つけ。襖をすぐに締めた

 

「なんというか…」

 

「あっ、ご、ごめん」

 

「いや、俺も悪かった。機械を返しに来たぞ」

 

「ちょ、ちょっとまってて…」

 

いつものように入り口近くの椅子で待っていた

 

「ごめん、受け取るよ」

 

「今回もありがとう。とりあえず不調とかは無かったからすんなり終わったよ」

 

「そりゃよかった」

 

「それじゃ…」

 

「あ、あの…さ」

 

なんとなく嫌な予感はしていたが

やはり呼び止められた

 

「きょ、今日、泊まっていかないか?」

 

「お前なぁ…」

 

「その…ちょっと疲れちゃってさ…」

 

「仕事終わってすぐ返しに来てて俺も疲れてるんだ。」

 

「その…私はお前と親しいつもりで、他に連れも居ないし。というか好意自体はずっと前からあるわけだから…」

 

「ちょっと落ち着けよ、俺も気持ち自体を否定するつもりはない。ただタイミングが悪いんだよな。」

 

「うう…」

 

「せめて支度だけしてからもう一度来させてくれ。」

 

「そ、それは構わないよ!」

 

「それじゃ、一旦帰るよ。」

 

「ちゃんと戻ってきてよ?」

 

「わかってるよ。」

 

……

 

困った…といえば少し語弊があるだろう…

少し緊張に似た感覚がある、いや、間違いなく緊張感だろう…

 

「にとり、戻ったぞ」

 

「えっと。夕飯用意したんだけど。食べるかな」

 

「ありがとう、頂くよ」

 

普通の夕飯。ちょっときゅうり料理が多いくらいだ。

 

「どう。美味しい?」

 

「うん、旨いよ。俺も料理する方だけど、これだけ上手く作れるのは羨ましい。」

 

「よかった。」

 

「ごちそうさま。」

 

食器を片付けて部屋に戻るとにとりが俯きながら机を片付けていた。

 

「どうした。」

 

「あっ、いや…あの。」

 

俯くにとりの正面に座って声をかける

 

「まぁ。俺も慣れないことばかりだからな。気持ちはわからないでもない」

 

「普段は仕事柄での話しかしないから。いざこういう状態になるとどうすればいいのかわからないんだ。」

 

「普段と同じようにしてくれればいい、まぁ、初めは難しいかもしれないが、そのうち慣れるだろう。」

 

もっとも、今後も泊まることがあるならの話だが。

 

「なんだか…いざ近くにいると上手く話せないというか。」

 

「まぁ、ゆっくりな。」

 

布団を広げてとりあえず横になる。

少し気まずい感じはするが…

 

「にとり?」

 

軽い寝声が聞こえてくる。

目線を向けると寝入ってしまっている

 

「寝てるのか…早いな」

 

まぁ、無理に起こす用事もないから

おとなしく俺も寝ることにした。

 

……

 

翌朝、目を覚ますと

にとりは隣に居なく、

部屋の外から金属がぶつかり合うような音が聞こえてきていた

 

「もう起きてるのか…」

 

仕事疲れか、少しばかり気怠い。

まぁいつものことなんだが。

 

「あっ、おはよう。起きたね」

 

「朝は早いんだな。」

 

「まぁね。そのほうが時間が有意義に使えるし」

 

「確かに。」

 

「仕事上がりで疲れてるのに無理言ってごめん。」

 

「まぁ、少し驚いたよ。」

 

「だよね…」

 

「たまにならいい、俺も仕事してるときは人里に居ないといけないし。仕事のない日とかなら大丈夫。」

 

「うん、その時は声かける、朝ごはん用意したよ」

 

「ありがとう、いただくよ。」

 

きゅうり多めの朝食、

どこから持ってきてるんだろうか

 

「ごちそうさま。」

 

食器を片付けて部屋に戻り荷支度をしないと

 

「…ねえ。ちょっとだけ。いいかな。」

 

「どうした…?」

 

何も言わずに背中から乗っかるように抱きついてくる。

 

「心配か。」

 

「心配、というか…」

 

「大丈夫、また来るさ」

 

「うん。」

 

にとりが離れて、玄関まで向かう。

 

「それじゃ、また今度な」

 

「また仕事があるときにでも来て」

 

お互いに挨拶を済ませて

工房を後にして山を下った。

 

……

 

また今度…

その言葉がとても寂しく感じた。

 

「…またいつか別れるときが来る…一期一会ってこの事かな」

 

そう思えば少し気が楽になるだろうか…

なのに、気が付けば彼のことを思い出し。

いつ来るかなんて考えてしまう。

 

機械たちのメンテナンスをしていても、新しい機械を試作していても、何故か彼のことを思い出す。

 

 

あれから数日経っても。

何故か彼の事を考えている

 

いつからかあまり覚えがない。

また、人間に、彼に恋している…

 

「…なんでなんだろうなぁ…」

 

考えても尽きない。

 

夏の温かい陽気に当たりながら黄昏れていると工房の入り口で足音が聞こえた。

 

「にとりー」

 

聞き覚えのある。女天狗の声だ。

 

「あ、椛どうした?」

 

「暇つぶしに来た」

 

「将棋するかい?」

 

「負け越しだからねー」

 

「構わないよ」

 

「うん、でもなんか元気なさそうだね」

 

「え?そんなことないけど。」

 

「なんか悩んでる?最近機械でうまく行ってないとか」

 

「いや、機械のことは何もないけど…」

 

「その様子だと、考え事だね、」

 

「うーん。そんな感じ」

 

「よしじゃあ、今日はにとりの相談事聴いて暇潰すよ。」

 

「話聴いて暇潰すなんて、また上から目線な」

 

「でもその状態で将棋やっても上手く行かないんじゃない?」

 

「まぁ確かにそうかも」

 

「ほらほら、話してよ」

 

「なんていうかね。人間を気に掛けててさ」

 

「あの、建築の仕事熱心な男?」

 

「そう。なんか気が付いたら気に掛けるようになって。恋してるのかなって」

 

「いやもうそれは、うん。」

 

「だよね、でもなんかさ」

 

「男に欠点でもあるなら悩むのもわかるなぁ」

 

「いや、非の打ち所は全く持ってないんだよ、仕事熱心で真面目で優しくて思い入れもあるし」

 

「うんうん、ならなんで悩むの?」

 

「相手は人間なんだよね…だから私は長く生きるけど彼は先に死んでしまうんだよ…」

 

「まぁそれは当たり前のことだから仕方ないよ?私は経験したことないからわからないけどさ。でもお互いいつか会えなくなるなんて人間同士でもある事なんだから。彼からすればそれは全うなことじゃない?」

 

確かにそれは間違いない。

あのときもそうだった

 

「別れが辛いって言うならそれはにとり次第だけど、お互い愛して、最期を見届けてあげたいならいいと思うな。」

 

「わかっているんだけど…」

 

「何か引っかかるの?」

 

「また辛い別れが、なんかね…」

 

「あれ、二回目?」

 

「うん、昔、人間と愛し合ったことがあるんだ、その時の彼は私が妖怪だって知ってて付き合ってて。結局彼は老衰で亡くなった。悲しかったし時が戻ればなんてことも思ってた。数年間虚無感に沈んでた」

 

「そんなことあったなんて初耳」

 

「うん、同じ河童仲間でも知ってるのは少ない」

 

「なんていうかさ、仕方ないっていい方は悪いけどさ、別れは必然だよ、でも例え彼が亡くなってもにとりが本当の意味で忘れないならそれでいいと思う。昔の彼のことだって覚えてるわけだし」

 

昔の彼だってたまに思い出す。

だから忘れてないのかな

 

「私は、応援するよ」

 

「ありがとう。」

 

「さてと、丁度いい暇つぶしになったから、私はもう行こうかな」

 

「また今度来たときは将棋の相手をするよ」

 

「今度は負けないからね。」

 

椛は工房を出て勢い良く飛んでいった。

 

「もう少し。頑張ろうかな、」

 

そう呟いて機械のメンテナンスに戻る

 

……

 

その日の仕事を終え、帰宅していたときのことだ。服装からして同じ建築の仕事関係であろう男が訪ねてきた

 

「貴方が浦上さんですかね?」

 

「ええ、そうですが貴方は?」

 

「竿丈といいます貴方と同じ建築業をやってるんです。」

 

「同業者の方でしたか。それで何用です?」

 

「一つお願いがありましてね。是非とも仕事道具を貸していただきたいんですが」

 

「俺個人の所有物なら仕事外のときであれば貸せなくはないがそれ以外はダメだ。」

 

「全部浦上さんの道具ではないのですか?」

 

「一部の道具は借り物でね、安々と他人に貸せる物じゃないんだ。」

 

「であれば直接お願いしに行きますので教えていただけないですかね」

 

「教えたところで断られると思うぞ?」

 

「なるほど…わかりました、無理なものは仕方ないですね」

 

「残念だがそういうことだ」

 

「一応お聞きしますが…河童の技術ですよね」

 

「ああ、察しがいい。間違いないよ」

 

「わかりました。」

 

「もう一つ行っておくと妖怪の山に行かなきゃいけないからな。」

 

「山に?!」

 

「通行証は必須だそれに、検問所で怪しい目で見られても通してもらえない。」

 

「なら何故浦上さんは…」

 

「信用だよ。」

 

「信用…?」

 

「俺は妖怪の山の妖怪達によく知られている。尚且つ、山の妖怪達からの信用がある。」

 

「それなら通行証なんていらないのでは?」

 

「社交辞令的なものさ、最低限のルールと言ったほうがわかりやすいかな。」

 

「最低限のルール」

 

「そう。人間の誰もが自由に立ち入れるわけではない、まぁ一部例外はあるみたいだが」

 

「浦上さんも例外なんですかね」

 

「いいや、俺は信用を得ているからってだけだ。」

 

「なら、例外とは…誰のことで」

 

「そりゃこの幻想郷の問題事に関わる者達だな。巫女とか吸血鬼とか」

 

「そうか…」

 

「まぁ、諦めてくれ」

 

「仕方ない。」

 

男は肩を落として去っていく。

ダメ元みたいな感じだったが。

もとより自分の道具も貸す気はない

 

「さて、帰るか。」

 

家に帰ってそのまま寝た。

 

その数日後。今の仕事を終えて山を登り。河童の工房の手前まで来ていた。

 

「おい。そこのお前」

 

聞き覚えのない声だ。

ヘビの妖怪だ

 

「私に用ですか。」

 

「そうだ。貴様。名は何という。」

 

「浦上。名前がどうかしたか?」

 

「浦上…以前山に来た人間がその名をあげて盛大に罵声を叫んでいたな…」

 

「酔狂なやつがいるもんだな」

 

「貴様は悪人なのか?それともあの人間が嫉妬をしていたのか」

 

「後者だろう。私は全うな普通の人間だ、建築を営んでいるだけだが。誰かに妬まれるようなことはした覚えない」

 

「そうか。人間にも変なやつがいるものだな」

 

「結局、そいつはどうなったんだ?」

 

「聞いていて不愉快だし煩いから食ってやったよ。全く。この山は吐き溜めた感情を叫ぶところではないのだがな」

 

「食ったのか。」

 

「おや、知り合いでも?」

 

「名はなんて?」

 

「自分のこと様付けしていたな、確か竿なんたらって言ってた気がするぞ」

 

「ああ、竿丈の若い奴か」

 

「やはり知り合いか。」

 

「んや、知り合いというのには程遠いが顔と名前を知っている程度」

 

「なるほど。いまさら吐き出したところで、もう骨だけだ。」

 

「だろうね。用件ってそれだけか?」

 

「まぁ、その竿丈という人間が、河童の機械のことも言っていてな。恐らく貴様のことも指して何かあるのかと思ったのだが」

 

「ああ、以前河童の道具を貸してくれとお願いされてね断ったんだよ。」

 

「なるほど。それで嫉妬をして山にまで来ていたわけだな」

 

「多分な。検問所もよく通してもらえたもんだ。」

 

「確かに貴様は顔馴染みだからな、検問も通るだろう。それ故下手に手出しすら出来ぬが、あの様な人間がどうして検問を抜けれるものなのか」

 

「さぁ、今となってはわからないけど検問をせず抜けてきた可能性は否めないな。」

 

「やはり、食って正解だったか」

 

「かもしれないな。」

 

「ふむ、まぁそういったところだ。時間を取らせたな」

 

「まぁこっちも仕事終えたところだから構わないよ」

 

「さて、陽もまだ高いな。一眠りつくことにする。」

 

「おう、またな」

 

ヘビの妖怪は見えなくなる程遠くに行ってしまった。

「相変わらず、顔が広いんだね」

 

河童、にとりの声だ。

 

「広めた覚えはないんだけどな。」

 

「まぁいいじゃん。ここが妖怪の管轄とはいえ下手に手出しできない人間なんて少ないんだ。」

 

「そうか。道具、返しに来たぞ」

 

「受け取るよ。とりあえず工房まで行こう。」

 

 

「そういえば。なんだけどさ」

 

「うん?」

 

「今日は空いてるの?」

 

「まぁ、仕事は終わって返しに来たわけだしな」

 

「そうだよね」

 

「泊まってこうか?」

 

「うん。夕飯用意するね」

 

「ありがとう」

 

いつものようにきゅうり多めの料理。

 

「1つ、聞いていい?いや、1つじゃ収まらないかも」

 

「何だ?」

 

「あんたって人間に恋人っているの?」

 

「割と直球な質問だな、人間に限ってわざわざ聞く必要あるか?」

 

「いや、特に深い意味はないんだけど。」

 

「恋人はいない。」

 

「それなら、さ」

 

「付き合ってくれってことだな」

 

「うん、まぁね」

 

「俺は先に死んじまうし、それはいいのか?」

 

「…大丈夫だよ。慣れてる」

 

「慣れてる。そうか。」

 

「えっと…うん。」

 

「でもまぁ。仕事もあるから。休みのときくらいしか会えないけど、それでも構わないか?」

 

「仕方ないよ。大丈夫」

 

「わかった、それなら…」

 

その日以降。仕事を受ける数を減らすようにした。彼女との時間もあるし。

あとは。単純に仕事を詰めすぎて疲れているのもある。

 

「ねぇ。次の休みは?」

 

「明日から数日。また来るよ」

 

「あれ?まだ仕事残ってるんじゃないの?」

 

「次の仕事は妖怪の山なんだ」

 

「それなら」

 

「ああ、また里の現場を取るまでは夜は工房の方に帰るよ」

 

「わかった。」

 

それから数十年は妖怪の山での建築をしていた、ただ、やはり俺は人間…いつか別れが来るだろうと思うところはあった。

 

そして、ある日。現場終わりで気を抜いてしまったのか。工房の入り口で気を失ってしまった

 

「ちょっと!大丈夫?」

 

声は聞こえるが意識は朦朧としてしまう。

 

「ねぇ!ねぇ!!」

 

次第に声は聞こえなくなった。

 

………

 

「大丈夫…?なんですか?」

 

「もう仕事は辞めるべきでしょうね」

 

「そんな…」

 

「彼も良い歳よ。人間でしょ?」

 

「歳…」

 

「彼の話は聞いてたし。人間なのに顔が広がったものよ。まぁ安心なさい、仕事で疲れきったのでしょう。暫くは手を貸して上げる必要があるでしょうけど、今の所は命に別状はないわ」

 

「それなら、私が側にいてあげないと」

 

「そうね。私はここまでよ。あとはあなたが頑張りなさい。」

 

「わかりました。」

 

竹林の医者が帰ったあとは、ただ静けさだけが広がっていた。

彼はまだ目を覚まさない…

 

「なんとなく。わかっちゃうんだ。」

 

そう。前もそうだった。突然意識を失ってそれから寝たきりだった。

目を覚した頃にはまともに生活もできず。

会話すらままならない状態でひたすら世話をしていた。

 

「でも、私は愛してるから。」

 

軽く口付けを済ませると。

工房で機械の試作の続きをしていた。

 

数時間後、襖を開ける音が聞こえて振り向くと、ぐったりした彼が座り込んでいた

 

「大丈夫?具合は?」

 

「まぁ…良くはないな。」

 

「立てる?」

 

「多分立てるだろうけど。その元気もない。」

 

「ゆっくりしてて、いま食事用意するから」

 

「すまないな。」

 

食事を済ませても彼はまだ疲れた様子だった。

 

「もう一眠りするよ」

 

「うん。」

 

私も疲れていたからか眠たさが来ていた。

布団を広げ、隣で寝ることにした。

 

余程疲れていたのだろう。

彼はまだ布団から出ていない

 

「大丈夫かな。」

 

外を覗くととっくに日は上に昇っていた。

昨日寝たのは夜中だったとはいえ、私も寝過ぎたかもしれない。

 

「結局寝ちゃってたんだ」

 

布団から出て食事の用意をする、

机に並べたあと彼の元にいく。

 

「食事の用意できたよ。まだ寝てるの?」

 

起こすのに体を揺するかおかしなことに気づいた…身体が動いていない…?

 

「あれ?」

 

おかしい。呼吸をしていない…?

 

「待って…!えっ!?」

 

急いで人工呼吸をして…

少し待っても息をしていない…

 

「そんな…」

 

脈はあるのに…

 

「ちょっと」

 

聞き覚えのある声…

 

「竹林の…」

 

「胸騒ぎがしたから来てみたけど、人工呼吸をしてるってことは…」

 

「彼…脈はあるのに息をしてなくて。」

 

「そう…」

 

竹林の医者が彼に触れると残念そうな顔をして…

 

「もう助からないかもしれないわね…」

 

「なんでですか…?」

 

「肺をやられてる…潰れている訳じゃないけど。内側から枯れてるような感じね」

 

「枯れてる…?」

 

「さっきの人工呼吸も負荷が掛かってるかもしれないわ…」

 

「え…?どういうことなんですか?」

 

「枯れてるというか…わかりやすく言えば…そうね、触れたらすぐにボロボロになる炭の様な感じ。」

 

「えっ…!?でも昨日は命に別状はないって…」

 

「確かにあの時は何も感じなかった。その後に何かあったかもしれないわ…」

 

「でも。私は何ともないし…隣で寝ていたから誰か来ていたらわかるはずなんだけど…」

 

「潜伏していた感じかしらね…どちらにせよ…ここまで肺が崩れていたら私にもどうにもできないわ。」

 

「方法はあるんですか?」

 

「ない…といえば嘘になるけど、私には判断できないわ」

 

「どうすれば…?」

 

「何らかの方法で彼が亡霊として目覚めるか、あるいは妖怪化するか。あとは…蓬莱の薬…」

 

「不老不死の…」

 

「あれは…本人の意志なく使うものではないから…私からはあれは提案できないわ」

 

「……そう…ですか…」

 

「残念だけれど…」

 

「…わかりました…結果は結果ですから…」

 

「あれから目は覚ましたの?」

 

「一応、食事をするのに。」

 

「そう。」

 

「もう。起きないんですね…」

 

「そうね。どうするかは貴方の判断に任せるわ。」

 

医者が帰ったあと人里に向かった。

 

「ここか。」

 

立ち寄ったのは本屋

 

「いらっしゃいま…にとりさん?」

 

「小鈴…じゃないんだったね。鈴音。本を探してるんだ。」

 

「どんな本です?」

 

「人間が生命が絶えたあと…どうすればいいか知りたい。」

 

「それって…」

 

「そういう本。ある?」

 

「あるかな…本の一角にあるくらいだと思うけど」

 

「そっか。」

 

「でも基本的には、葬儀をして巫女に祓ってもらってから火葬するって。」

 

「そうなんだ。わかったありがとう。」

 

山の工房に戻る…

 

「起きてるなんて、奇跡は…ないか」

 

布団で寝たまま目は覚まさない。

でももう脈もかなり弱くなってる

 

「私。一緒に暮らせて凄く楽しかったよ。喧嘩もしたし、でもその度仲直りもした。浦さんのご飯も大好きだし。仕事上がりに相手してくれて、本当にありがとう。」

 

「あなたが居なくなるのは寂しい、忘れたりしない。あなたに合う前の生活に戻っちゃうけど、またきっと思い出すから。」

 

「だから……おやすみ、さようなら…」

 

工房を出て博麗神社に向かった。

 

 

「あら、珍しいね。」

 

「ちょっと用事があってね。」

 

「面倒なのは嫌だよ?」

 

「ちょっとお祓いしてもらうだけだよ。」

 

「お祓いって…」

 

「着いてきて。」

 

巫女を連れて工房まで行く。

 

「ここって、あなたの工房よね。特に大した妖気とかそういうの感じないよ?」

 

「この場所じゃなくて。こっち。」

 

奥の部屋に案内すると。

もう動かない彼がやっぱりいた。

 

「葬儀は済ませてあるよね」

 

「生憎…そういうの詳しくなくて、でもしっかりお別れの挨拶は済ませたよ…」

 

「そう。それなら。まぁいいか」

 

巫女はお祓いを初めると

僅かに彼が笑顔になっているように見えた。

多分錯覚だろうとわかっていても。

彼の笑顔が見れたという事実が嬉しくて。

胸が苦しくなった…

 

程なくしてお祓いは終わる…

 

「泣かないの。お別れの挨拶はしたんでしょ。」

 

「したけどさ…どうしても…出てきちゃうもの…だからさ」

 

涙ぐんで震える声しか出なかった

 

「まぁ…あとは火葬だね、宛はあるの?」

 

「ないよ…でも火を使うなら藤原にでも頼もうと思って。」

 

「不死鳥の藤原妹紅か。手配しておくけど火葬するなら山降りたところでやってよ?山火事とか勘弁だから。」

 

「わかってる。」

 

巫女が帰り彼を木製の棺に移動させたあと

山を下って平原まで降りた。

 

「ここなら良いだろう、自分でやらなくていいのか?」

 

「火は苦手なの知ってるでしょ?河童に熱気は大敵だからさ。」

 

「まぁ、そう言うなら仕方ない。」

 

棺を中心に燃焼が始まった。

よく晴れた良い天気なのに、少しずつ炭になっていく周りの藁と棺だけが見えた

 

「燃え尽きるまで居てやれよ。」

 

恐らく妹紅はそう言って竹林に戻っていったのだろう。全く見向きできなかった。

 

「また、終わっちゃった。」

 

夕暮を過ぎて夜になってもまだ燃える炎。

何かを考えることもせず。私はただ燃える炎だけをひたすら見つめていた。

 

 

炎が燃え尽きた。

 

「ほんとに、さよなら」

 

一言だけ済ませて

工房に戻った




眠たいので寝ます

また会えたら会いましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

記される物語

どうも。むつさんです。

なんだかんだ100話目です。
100話目でありながら、またダラダラと書いてました。
もう薄い内容してます。


それではごゆっくり。


何故か神社にたくさん人が居る…

 

「あの…霊夢さん?何故お酒を…?」

 

「あぁ?なによぉ。お酒くらい飲ませなさいってのぉ。」

 

「おお、早苗おかえり〜」

 

「諏訪子様、これは一体…?」

 

「まぁまぁ、一先ずお前も座れよ」

 

霊夢さんに

魔理沙さん。

妖夢さんに幽々子さん。

賢者と化け狸…

あと河童と新聞屋の烏天狗とその部下。

旧都の妖怪達まで…

鬼もいるし…

 

 

「ど、どうして守矢神社で宴会なんてやってるんですか?」

 

「そりゃ、今回でっ…うわっ!」

 

「魔理沙ぁ。ほら飲むわよ〜」

 

「私から説明するわ」

 

賢者直々に…?

何かあるのでしょうか…

 

「今回で話数が100話目になるのよ。これはその記念の宴会。」

 

「ああ…そういう…メタみたいなこと言わないでくださいよ…せめて何か包んで…」

 

「嘘を言ってもつまらないでしょ?」

 

「嘘…というか。何か別の言い方なかったんですか…」

 

「別にいいじゃない。」

 

「まぁ…ちゃんと理由があるならいいですけど。」

 

「まぁ、おめでたいことよ?」

 

「まぁ確かに」

 

「ほぉらさなぇー、こっち座りなさぁい」

 

「や、やめておきます。」

(絶対飲まされる…)

 

「ほ、ほら霊夢。こっちで飲むぞ。」

 

「ねえ、諏訪子様。」

 

「ん?なんだい?」

 

「いや、なんでもないです、外回りの続き行ってきますね。」

 

「おお、行ってらっしゃい。」

 

「今回は、貴方になりそうね」

 

「べ、別に何も起きませんよ。多分…」

 

……

 

「とは言ってもなぁ。筆者次第だからね。」

 

「そういうこと言うと、筆者に駆り出されるわよ?」

 

「おお怖い怖い」

 

「まぁりぃさぁ〜…すぅ〜…」

 

「もう潰れたの?相変わらず早いわね」

 

「私も限界だぜ…こいつの相手は毎回疲れるんだ…」

 

「毎度毎度ご苦労様ね」

 

「疲れて寝るなら帰れよ〜」

 

「仮眠取らせてくれ…」

 

「全く。二人とも早いなぁ」

 

「魔理沙は被害者だな。」

 

「まぁとりあえず。私はこの辺でお暇するわ。これから少し忙しくなるから。」

 

「お得意のスキマで挨拶回り?」

 

「そうよ、夕暮れになる前には済ませたいもの」

 

「はいはーい。後のことは任せておいて」

 

「それじゃ、頼んだわね」

 

……

 

「おかえりなさいませ、紫様。」

 

「お帰りとは言っても、まだ用事があるのよ。」

 

「挨拶回りですよね。お気をつけて」

 

「そうそう、その前にお茶だけ済ませてくわ。」

 

「淹れますね」

 

「例の超能力者からもらった麦茶があったはず…あった。」

 

「ペットボトル、でしたっけ」

 

「うん、冷たくてあっさりしたお茶って気分いいわねぇ」

 

「あの…今度私にもいただけないでしょうか…?」

 

「わかったわ、また貰って置くわね。それじゃ行ってくるわ。」

 

「はい、お気をつけて」

 

……

 

初めは…白玉楼

 

「幽々子〜?居るかしら?」

 

「おや、幽々子様とお酒でも飲みに来たのか?」

 

「あら、お目当ての人が出迎えなんて珍しい。」

 

「ということは」

 

「貴方を探してたのよ」

 

「目的は?」

 

「お話、簡単な挨拶よ。」

 

「はぁ。挨拶というのは」

 

「正確には再確認、かしら」

 

「再確認?」

 

「この幻想郷の住人達のね。」

 

「うん。そういうことか。俺は無事だよ、暫くは死ぬ予定はない。今後もないと思うけどそれは今後の事次第。頼むよ」

 

「まぁそれならいいわあなたは協力してくれそうだし。それじゃ、次に向かうから。」

 

「おう、またな」

 

……

 

次は…吸血鬼の所に

 

「あら、男二人で料理なんて珍しいわね。」

 

「メイド長は今図書館の地下で作業中なんでね。そういうあんたこそここに来るのは珍しいんじゃないか?」

 

「挨拶に来ただけよ。貴方達にね」

 

「あの…初めまして。ハルです」

 

「ええ初めまして、妖怪の賢者、八雲紫よ、覚えておくといいわ」

 

「ハル、白菜取ってくれ」

 

「白菜なんて頼んでましたっけ?」

 

「いや、頼んでないけど、あるはず」

 

「ああ。確かにあるや。はい」

 

「ありがとう」

 

二人とも仲良くやってる

 

「私はお邪魔かしらね」

 

「いや、そうでもないが、ただ相手してやれそうにはない。すまないね」

 

「まぁ顔見れただけで充分よ。また後で手料理を頂きに来るわ」

 

「賢者様に食べてもらえるなら光栄だな、まぁ手料理を振る舞えるかまだわからないけどな、レミィたちに挨拶してくるなら地下まで行ってくれ」

 

「彼女達に用は無いわ、私を頷かせるような料理、期待してるわね。それじゃご機嫌よう」

 

「それは賢者の働き次第だな、また今度な」

 

割としっかりやっているのね。

 

………

 

さて近いところに行くかしら

 

「お二人さん、お元気かしら?」

 

「紫さん?いきなりどうしたの?」

 

「何か用事でもあったか?」

 

「挨拶回りよ。」

 

「なるほど、挨拶回りね」

 

「他にも行くんですか?」

 

「まぁそうね、まだ人里の方にも行くし?」

 

「お茶は要らなさそうだな」

 

「また今度でいいわ」

 

「それで、他には?」

 

「ひとつだけ質問いいかしら」

 

「なんだ?」

 

「貴方はもう気づいているのかしら?」

 

「なんとなくだな。でもそれを異変と思うかどうかはそっち次第だろ、俺には大した関わりは無い…訳でもないか」

 

「そうね、少しは何かしら検討してもらえると助かるわ、それじゃあ失礼するわね」

 

話に割り込むこともなく大人しいチルノ、イメージ大きく変わったわね、それでも実力者なのは変わらないと思うけど

 

さて次は…先に向こうから

 

……

 

人里の離れの森の中

一軒の家。

 

「久しぶりね」

 

「あれ、紫さん。どうしたの?」

 

「彼は?」

 

「後ろだぞ」

 

「あら」

 

私の後ろを取るなんて

いつからいたのかしら。

 

「そんな身構えるなよ」

 

「いきなり背後から話しかけられたら、普通身構えるものよ?」

 

「そういうもんかね」

 

「まぁ、貴方も元気そうで何より。」

 

「ああ、あの悪だぬきのおかげさまでな。」

 

「なかなかに厄介な妖怪なのよ?まぁ、野放しにしても今の所は問題なさそうだから構わないけど」

 

「助かってるわけだからいおんだけどな」

 

「彼女は絡んでるかもしれないから。一応会いに行く予定よ。」

 

「外の世界の妖怪ともなれば。考えられなくもないからね」

 

「それじゃ、次行くかしら。」

 

「またな。」

 

……

 

次はとりあえず人里にいく

 

新婚夫婦は…元気そうで何より

 

「居るなら出てこいよ。」

 

「あら、察しのいいのね」

 

「気配消してないんだからバレバレだぞ」

 

「あら、消してないわけじゃないのよ?」

 

「なら、消し切れてないぞ」

 

「まぁ、ここなら別に構わないけどね、これも花の妖怪のお陰かしら?」

 

「花の妖怪ねぇ、何か用事か?」

 

「いいえ、用事というより、単なる挨拶よ。」

 

「ふ〜ん、挨拶だけじゃないんだろ?」

 

「ホント、察しのいい人間だこと。」

 

「お前が隠し事下手なだけだろ」

 

「そうかしら?どちらにしても貴方達は巻き込むつもりは無いわ、ただ無関係と言うわけには行かないから見に来ただけよ」

 

「巻き込まれたくはないけど、どうしてもと言うときは仕方ないな。」

 

「そうね。」

 

…この気配は妖怪。

 

「こんにちは。」

 

「ルーミアとトウヤさん。」

 

「あれ、紫さんが何でここに?」

 

「ちょっとした挨拶よ、宵闇の妖怪も大人しくなったものね。」

 

「御札のせいかな。まぁ外すつもりはないし、別にいいんだけど。」

 

「貴女程の妖怪が人間と一緒に居るなんてね。」

 

「だって霊夢が札外すなって言うんだもん。」

 

「まぁ、今貴女に暴れてもらうには困るもの。そのままでいて頂戴。」

 

「まぁ、暴れるつもりはないけど。」

 

「それで、挨拶って?」

 

「トウヤだったかしら。貴方は、わからないかしらね」

 

「何の話だ?」

 

「いえ、気にしないで、ただ一つ言うとするなら、身の安全だけは確保しなさい」

 

「紫さんが人間に忠告なんて、珍しいね」

 

「こればかりはね、貴方も必要なときは手伝ってもらうわよ?」

 

「その時は霊夢に聞いてよ?札外しても良いかって」

 

「暴走しないわよね?」

 

「今更暴走なんて。もう子供じゃないよ」

 

「その身なりでよく言えるわね、とまぁ、そろそろ失礼するわ。まだ寄る場所があるから」

 

……

 

天狗達はどうしてるかしら

 

「はいはい。お待ちしてましたよ」

 

「その対応。さも来るのがわかってたような感じね。」

 

「まぁ…手紙配達してるときに見かけましたし…」

 

「そう。それで楓には以前声を掛けたわね。どう思うかしら?」

 

「賢者が普段意識する異変とは違いますかね。あくまでこれは日常的で断片的な部分を記してるだけです。」

 

「確かにそれは私も感じているわ。【脅威】ではないということよ」

 

「単的見れば脅威ではありません。ですがこの幻想郷に確かに【物事】を起こしているのは間違いありません」

 

「それがいつか異変もしくは脅威となる可能性がある。と言いたいのね」

 

「ええ、なので私もその一部ではありますが、それを受け入れるならば必ずどこかで綻びが生じて異変が起きます。これは間違いないでしょう」

 

「そうね。起きること自体は避けられないわ」

 

「それでも受け入れるならいつか言った通り異変が起きます。ただ、受け入れずに異変を回避すると言うならば全て無かったことにするのが最善策でしょうか」

 

「選択肢としては悪くないわ、ただ、それすると色々と虚しいわね。」

 

「虚しいことはありません、いや、残らないの方が正しいですね。賢者の貴女すらその物事を忘れて過去に戻るだけですから」

 

「唯一彼だけがその事実を覚えていられるわけね」

 

「まぁ、彼がこの物事の原因と言っても過言ではありません」

 

「原因どころじゃないわね、黒幕とかそういうものよ」

 

「我々は忘れることができるので虚しいことはありません。」

 

「彼がどう思うかしら」

 

「そんなことは我々には関係ありません。仮に全て無かったことになったとしても、彼が道筋を作った結果です。悔やんだところで自業自得です。」

 

「割と辛辣ね」

 

「ただ、私はこのままでいて欲しいですよ、ここから消えるとなればどんな世界に飛ばされるかわかりませんから。」

 

「それは、他も同じよ」

 

「なので、もし受け入れるならば、私は全面協力します、それでも受け入れないのならば諦めてその時を待ちます」

 

「ちょっと待って、私の判断を乞うわけ?」

 

「最終判断は異変解決に携わる人達なのでは?」

 

「それはそうなのだけど。ここまで核心的なことを話せるのは貴女と霊夢くらいなのよ」

 

「私はあくまで部外者なので、最終判断まで来たら決定権はないでしょう」

 

「そう…ね」

 

「私はここまでです」

 

「わかったわ。あと。あの狸のところにも行ってくるわ」

 

「彼女は外の世界から来たんでしょう?」

 

「貴女はこの物事の一部だけれど、彼女は幻想郷の一部なのよ」

 

「なるほど、こちら側ではないんですね」

 

「そういうことよ」

 

……

 

面倒ね、霊夢は起きてるかしら

 

「お、紫おかえり〜」

 

「起きてるのね霊夢」

 

「いやもう…覚めたわ…」

 

「もしかして戻したの?」

 

「……ええ…」

 

「そう…程々にしなさいよ」

 

「い、いつものことじゃない」

 

「そうね。度が過ぎても体に良くないわ」

 

「わかってるわよ…」

 

「それで、話があるんでしょ?」

 

「そうね。ちょっと準備するわ。」

 

「準備?話するだけでしょ?」

 

スキマを開いて…

 

「…っ!?な、何事じゃ?」

 

「ああ、このタヌキね。」

 

「さて。貴女の知ってることを話して頂戴。」

 

「全く…人使いの荒いやつじゃな…」

 

「シバかれたくなかったら早く話しなさい」

 

「…まぁ物事については共通情報だと思うが。次の出来事についてはわししか知らないだろうな」

 

「次の出来事って?」

 

「もし万が一受け入れた場合の次の出来事」

 

「時系列的な事柄から見てということね」

 

「二人ともある程度感づいていると思うが。何か凶悪な何かが控えておるんじゃよ」

 

「現実的では無いわ、皆には協力するように言ってはあるわ。多少は力になるでしょう」

 

「その様子だと受け入れる気はあるみたいじゃな」

 

「別に私は構わないけどね、何が来ても私は異変だろうか脅威だろうが退治するだけよ」

 

「まぁ月にでも放り出せばいいんじゃないかしら」

 

「そう簡単に上手く行くものならいいんだがな」

 

「どちらにしても。私は受け入れるつもりよ。異変が起きるなら解決するだけ。犠牲は起きてもそれは仕方ないわ。」

 

「霊夢が言うなら私は構わないわ」

 

「そうか。ならわしからの話はここまでじゃな」

 

「それで、何かってのはいつ来るのかわかるの?」

 

「お主らが受け入れるならもう来るじゃろう」

 

「気づいてると思うけど霊夢。これって」

 

「早いわね」

 

何か感じる。

禍々しい何か。

 

「お邪魔するわ」

 

「月の姉妹、何故ここに」

 

「月からでも感じるよ、この穢らわしい感覚、非常に不愉快だからな」

 

「なるほど。それだけ影響力があるわけだ。」

 

気がつけば外は暗い。

まだ昼だったはずなのにこんなにも暗くなるなんて。空も赤紫のどんよりした雲が見渡す限りに張り巡らせてる。

 

「全く、何が出てくるのかしらね」

 

「何が出てきても退治するだけよ。さっさと消し飛ばしてやるわ」

 

「相変わらず威勢のいい娘だ」

 

「依姫も同じような感じじゃない?」

 

「似た者同士じゃな。」

 

「余計なこと言ってる暇ないんじゃないかしら」

 

「そうね。」

 

タヌキ以外が一斉に空に飛び出す。

 

「先に釘刺しとくけど。扇子使うの禁止よ」

 

「もちろんよ。余計なものまで飛ばしちゃうもの」

 

「地球を余計なもの扱いね」

 

奇妙な空模様…

 

「さて、元凶はどこかしら」

 

 

しばらく空を飛んでいると人影が見えた

 

「あれって。」

 

「見た感じは人間ね」

 

「空を飛んでいる以上は只者でない可能性もあるわ」

 

「…っ!止まりなさい!」

 

「…っ?!なによこれ…?」

 

あの人影から放たれたこの感覚は一体…?

殺気とは違う…怨念や復讐心とも違う。

悲しんでいる…?一体何者なの?

 

「どうするの?紫」

 

「空に向かって扇子振ったらあの雲消し飛ばせないかしら。」

 

「豊姫様…そんなことしたら星まで消し飛びます」

 

「そうね。下手したら月まで届いてしまうかしら」

 

余裕あるのね。

 

「どうやら。敵意は無いようですが。」

 

「なら無視して他を当たりましょう。」

 

「迂回しましょうか。」

 

右に逸れて探して回る。

次第に稲光がし始めて

雷が落ちたとき。

大きな妖怪のような何かが一瞬だけ見えて、先程から漂っている嫌な気配がより一層強くなってく

 

「扇子振っていい?」

 

「だからダメだって言ってるでしょ」

 

「この気配…私達でも生き残れるかわかりません。」

 

「神様でも降ろしたらどうなのよ。」

 

「そう簡単に言わないでください。」

 

そんな話をしてると。

かなり濃く暗い霧がかかり始めた。

 

「離れるとお互いの位置すら分からなくなりそうね。」

 

「小細工はいらないからさっさと出てきて欲しいんだけど」

 

「まぁ、そうは言ってもね。」

 

「吸血鬼が出たときもこんな感じだったと聞くけど。どうなのかしらね」

 

「あいつらだったらとっくにふっ飛ばしてるわよ。それに、幸せの最中に居るような奴らがわざわざこんな回りくどいことする意味がわからないわ」

 

「そう。」

 

「地獄の妖怪って訳でも無さそうね」

 

「そもそも地上を嫌うから出てくることがないわ」

 

「天人とか?」

 

「地上征服して支配するってなら上等よ。掛かってきなさい。」

 

「殺気立ってるな…」

 

「霊夢は異変のときは大体こんな感じよ。」

 

「月に来たときは、ただの面倒くさがりに見えたが。」

 

「あの時は吸血鬼の我儘に付き合わされただけよ。魔理沙が変なこと言い出して仕方なく手を出しただけ。悪意はないわ。」

 

「その割には。まぁ、あれも演技なわけか」

 

「そう思ってて頂戴。」

 

「さて、奥のシルエットがそうかしらね。」

 

「黒い影ね。」

 

「待ってください。さっきの人影が…」

 

「なにか関係でもあるのかしらね」

 

「無かったら出てこないでしょうね」

 

人影は段々と黒い影に近づいていく

しかし、結局のところ人影は黒い影に飲み込まれてしまった。

抵抗する様子もなく飲まれた

 

「何よ、拍子抜けね」

 

「何なのかしら」

 

「いえ待って」

 

黒い影が次第に薄れていき。

それと同時に霧も晴れていった

霧だけじゃない、不気味な雲も消えていく

 

「あら。」

 

「空が晴れていく。さっきまでの気配も嘘のように無くなって。」

 

「何だったのかしらね。」

 

「まぁ、いいんじゃない。」

 

「よくわかりませんが、私達は月に戻ります」

 

「そう。お疲れ様」

 

姉妹は月に帰って行ってその場から見渡してみたけれど。特に異常は見受けられない

いつもの幻想郷。と言うには少し程遠いかしら。人里も少しざわついてるように見える

 

「ほんと。何だったのかしらね」

 

「まぁいいわ。」

 

霊夢と別れて紅魔館に行く。

思えば少し気掛かりなことがある。

あの吸血鬼が何も気にせず引き篭もるとなると何かあるのかと、少し考えてしまった。

 

「気になるものは仕方ないわ。」

 

紅魔館の地下で作業をしてると言ってたはず

 

「どういうこと?」

 

スキマから出ず、地下空間を覗くと大きな宴会場が出来上がっていた

 

「作業って。」

 

スキマから出て吸血鬼に話を伺う。

 

「一体何事かしら」

 

「あら妖怪の賢者。来るのが少し早いかしら?」

 

「また宴会でもするのかしら」

 

「この風景を見て宴会以外考えられるとでも?」

 

「さっきも守矢神社で宴会開いたのに今度はこんな地下の辛気臭いところで宴会だなんてね」

 

「神社の狭いところで宴会を開くのも良いわ。でもね私はこういう盛大な宴会のほうが好みなの。招待状は既に渡してあるから時期に集まるはずよ。」

 

「そう、まぁ一段落ついたところだから、せっかくだし私も参加させて貰おうかしら」

 

「構わないわ、台無しにしなければだけれどね。」

 

「わざわざ嫌味なことするほど悪趣味じゃないわ。」

 

「そう、それなら良いわ」

 

妖精メイド達もよく働くものね。

暇そうに見ていると。見覚えのある面子が集まってきた。

 

「招待状送った相手がまさかね。」

 

「あれ、紫さん来てたんですね」

 

「楓達天狗まで招待状もらってたのね」

 

「そうですね、ほぼ全員、貰ってますよ」

 

「そういうこと。」

 

「そうです、ただ小傘さんの所はお断りされましたが。」

 

「仕方ないわ。色々あり過ぎたもの」

 

「まぁ、二度程散々な思いしていますから」

 

「それにしても。よく集まったわね。」

 

「そうですね。恐らく。彼の意向でしょうか」

 

「彼…ね。」

 

「はい。ですから。集まるのだと思います」

 

「そう。それなら私も彼に甘えてみようかしらね。たまにはこういう宴を楽しむのも悪くないわ。」

 

「さっきも神社で宴をしていたのでは?」

 

「様子見程度にしか居なかったのよ。何も飲み食いしてないもの」

 

「そうですか。」

 

「それに。紅魔館の執事達の手料理を頂く約束もしてるから。」

 

「彼らの手料理はとても美味しいですよ。私も何度か頂きましたが、星5つと言っていいでしょうか。」

 

「あら、期待しちゃうわね」

 

「皆さん揃ったようですし。私達も行きましょう。」

 

………

 

彼…この幻想郷の物語を書き記す者。

私であり筆者でもある。

 

途中の空の話が謎だったね

ちょっと間伸ばししたかったんだよ。

なんで間伸ばしする必要があるかって?

紅魔館の面子が宴会の準備するためかな。いきなり宴会じゃ、ちょっと展開早すぎるから。

 

誰に話しかけてるかって?

独り言に近いかな。

もしくはいま【この文字】を読んでいる読者への一方的な押し付けみたいな感じでもあるかな。

 

たくさんの物語があり、

たくさんの思い出がある。

それが私の書き記した物事。

 

誰かの記憶の片隅に残るなら。

 

それはそれで喜ばしいことですが、

忘れてしまっても構いません。

気が向いたときに、懐かしい程度にまた読んでいただくのも良いかもしれません。

 

 

それでは

また会えたら会いましょう。



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。