僕と史上最強の弟子のヒーローアカデミア (プリエス)
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豪傑と英雄

全世界の総人口の八割が異能を持った超人社会。

そんな社会で『個性』と呼ばれる異能も持たず、ただ一つ打ち込んでいる武術の才能すらなく、それで居て誰よりも愚直に誰かを救おうとする少年が居た。

 

「龍斗ぉぉぉぉぉぉ!!」

 

「兼一ぃぃぃぃぃぃ!!」

 

少年は友だったものにその拳を打つ。

史上最強の豪傑達から学んだ全てを出し尽くす。

勝負の結果は『ムシケラ級』とまで呼ばれた少年の勝ちで幕を閉じた。

そして少年は日常に戻る。

地獄の日々へと。

 

 

「人殺しィィィィ!!この鬼!悪魔!鬼畜ぅぅぅぅ!!」

 

「HAHAHA、何を言うんだね兼一くん…私はなーんにも酷いことなんてしていないだろ?」

 

「これを見てひどい事じゃないなんてやっぱり貴方には常識というものが欠如してると思います!!」

 

少年、白浜兼一は自身の後ろでバチバチという音を鳴らす機械に目を向ける。

瞬間ーーー

 

「あっ……ぎゃあああぁぁ!!!」

 

足を滑らせそのまま体に電気が流れ、白浜兼一は悲鳴をあげる。

その意識は深い闇の中へと沈んでーーー

 

「はい、これで大丈夫」

 

なんてことは無く、史上最強の豪傑の手によって意識は戻された。

 

「えっ?」

 

「何を驚いているんだい兼一君、君にはこれからもっと強くなってもらわなくては困る、だからこそ私は……私達は君に今まで以上に厳しくする」

 

「何でですか?」

 

「それはーーー」

 

「おい、秋雨ジジィが呼んでるぞ」

 

岬越寺先生の話を遮るように、空手の達人『逆鬼師匠』が修行部屋に入ってくる。

どうやら、長老が呼んでるみたいだ。

「修行の途中で悪ぃな兼一、秋雨の代わりってわけじゃねぇが続きは美羽に頼んである。」

 

それだけ言うと逆鬼師匠は岬越寺師匠を伴って部屋を出ていく。

この時の僕は、まだ知らなかった。

僕の知らないところで恐ろしいものが蠢いてる事を。

 

 

「おい、てめぇどういうつもりだ」

 

「どういうつもり…とは何かね?」

 

「分かってんだろ、兼一はまだ知らねぇんだぞ『闇』と『ヴィラン』が手を組み、アイツの『命』を狙ってるってことを」

 

「だからこそさ、早いうちからその事を知り、覚悟を決めさせる。そうした方がいいと私は判断したんだ」

 

「アイツの精神状態くらい分かってんだろ、アイツはいま不安定な所にいる、何せ自分の親友だった奴が敵で、そいつを倒したのも自分……あのお人好しが何も感じない訳がねぇ…そんな中で自分の命狙われてるなんて知ってみろ」

 

「逃げ出す……かね?あの兼一君が?それこそありえない話だよ…彼は覚悟を決めた時その覚悟を何が何でも貫き通そうとする」

 

「それが危ういって言ってんだ」

 

「どうやら、私と君ではとことん意見が合わないみたいだ」

 

「ふんっ、そんなの昔からだろ」

 

そうだったね。

しかし、逆鬼、君だって本当は理解しているんだろう?

彼は…私達の弟子、白浜兼一はとても強いということぐらい。

 

「おい、ジジィ連れてきたぞ」

 

「ほっほ、ありがとう逆鬼君、さぁ秋雨君も座りたまえ」

 

長老に促されるまま私達は定位置に座る。

この場にはこの梁山泊に住まう、豪傑達が全員いる。

はて、今から何が始まるのか。

 

「今日は客人が来ておる、紹介しよう…彼の名はオールマイト

又の名を八木俊典君じゃ」

 

長老が紹介した人物は自分の記憶とは真逆の人物だった。

頬は痩せこけB級映画のゾンビのようなその男は、表の世界の平和の象徴だと言う。

 

「初めまして梁山泊史上最強の豪傑方…私は表の世界では平和の象徴なんて呼ばれているオールマイト…いや、八木俊典です今日は貴方方に頼みがあって来ました」

 

オールマイトはそのまま頭を床につける。

つまり土下座だ。

 

「どうか、どうか貴方方の弟子を私達…『雄英』に預けては貰えないでしょうか」



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動き出した闇!

お久しぶりです
数年振りに投稿してみました
リハビリがてらに書いていこうと思います


「どうしたんですか?さぁ、早く私はこの通り丸腰だ、まさかヒーローともあろう方達が丸腰の敵相手に負けるなんてことはないでしょう?」

 

白いフードを被った不気味な男が居た。

雑居ビルに囲まれた裏路地では、フードに隠された男の顔は見えない、しかしその口元だけは見えた。

笑っていたのだ、ヒーロー2人に囲まれたこの状況で男は確かに笑っていた。

 

「う、うぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

増強系の個性を持った男が己の力を増幅させ、飛びかかる。

 

「よっ、と……もっと真面目にして下さいよ、そんな直線的な攻撃が当たるなんて貴方々も思ってる訳では無いのでしょう?」

 

そんな攻撃目を瞑ってでも避けれる、男はそう言いながら欠伸をする。

流石にそんな男の様子に腹を立てたのか、男はこちらに目で合図を送ってくる。

コンビネーション技、それをするぞ、と。

 

「この技を避けた敵は未だいない!喰らえぃ!!」

 

「てぇやァァァ!!」

 

増強系の男の動きに合わせ、糸を出す個性の自分が相手を糸で縛り上げ上空に投げる。

特撮映画のような空中落下をしながら増強系の男は足を突きだす。

一昔前のヒーロー物でいうライダーキックとでも言えばいいのか。

 

その時、フードの男の目が光った様に見えた。

 

「でぇぇぇい!!」

 

フードの男は自分目掛け蹴りを放ってくる男の足に逆に、蹴りを食らわせたのだ。

 

「ぐっ……ぉぉぉぉ…………」

 

「ヒーローと期待してみればこの程度ですか……そうだ、どうせ貴方々はここで死ぬんだ、一つだけいいことを教えてあげましょう」

 

「私は『拳聖』緒方一神斎、貴方達に分かる様に言うならば『闇の一影九拳』が1人です」

 

「なっ……一影九拳……だと?……そんな物ただの伝説じゃ……」

 

「伝説?ハハハハ!!!おかしな事を言う、現に貴方の前にいるじゃないですか!それに我々武術家が表の世界から消えつつあるのも元を正せば貴方達のような人間が増えたからだ、だからこそ!武術を元の形に正すために闇は動き出した!!」

 

「残念ながらお喋りもここまでです……」

 

そこで言葉を切った男の目に光が宿る。

 

「緒方流数え貫手!!!」

 

 

「貴方々の弟子を……白浜兼一君をどうか雄英に預けては貰えないでしょうか……」

 

そうしてオールマイト、八木俊典は頭を下げる。

 

「馬鹿な事言ってんじゃねぇ、ケンイチの奴を預けろだと?アイツはこれから闇の連中の弟子から狙われるかもしれねぇんだぞ!!」

 

「うむ……逆鬼の言う通りだ、ケンイチ君は今やただの少年ではない、我々梁山泊の弟子……未だ我々が施した基礎工事は芽を出してない以上、我々の目の届かない場所に置くのは不安でしかない」

 

「二人の言うことは分かるね…………でも彼がここにいるのも理由があるはずそれを聞いてからでも遅くはないね」

 

「先日……ヒーロー二人が殺害されました……駆けつけた時には既に一人は死亡、もう一人も瀕死の重体でしたが彼は最後にこう言い残しました……」

 

「『闇はいました……既に動き始めてます……我々が出会ったのは一影九拳が1人……拳聖緒方一神斎と名乗る男でした……』」

 

「緒方……また奴なのか!!!」

 

常に冷静である秋雨が拳を握り畳に叩きつける。

 

「落ち着くね秋雨……しかしこれで奴の言っていた闇が動いたという言葉も信憑性を増したね……どうする

 

「どうするもこうするもねぇ、闇が動いたのならこれからケンイチは闇の弟子に狙われるはずだ」

 

「皆の気持ちはわかる、我々の意見はともかく、ここは長老の考えを聴こうではないか」

 

「うむ……わしはケンイチくんを雄英に預けてもいいと考えておる……風の噂じゃが闇とオール・フォー・ワンは手を組んでるそうじゃ、ならば我ら梁山泊とヒーローが手を組むのも一つの策でもあるが全ては……」

 

「ケンイチ君次第……」

 

「そういう事じゃ……」



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弟子と生徒

前回誤字指摘で馬師父の口調の〜〜ねの部分がカタカナであると指摘を頂きましたが漫画版見る限り「〜〜ね」と表記されてるのでこっちで通していきます


都内某所

 

「何だって先生はこんな奴らを此処に連れてきたんだ……」

 

1人の男が忌々しげに呟く、それを聞いた別の男がその言葉を鼻で笑いながらいう。

 

「それはこっちのセリフさ、連合だかなんだか知らないけどオレ達の邪魔はしないでくれよ?史上最強の弟子を殺すのはオレたちYOMIの仕事だ、希望の象徴とか言われてる奴は勝手にしてくれても構わないけどね」

 

「チッ……一々癪に障る言い方だ……」

 

「おっ、殺る気かい?別にオレは構わないけど?」

 

一触即発の雰囲気が部屋を包む。

敵と闇、交わるはずのなかった者達が道を同じくする。

敵と闇の生徒と弟子もまた道を同じくする。

それはきっと、誰にとってもいいことでは無いのだろう。

 

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!人殺しー!」

 

桜の花が咲いた道を少年が走っている。

 

「あっ、岬越寺先生おはようございます!!」

 

「やぁおはよう」

 

バレー部の女の子達がすれ違いざまに挨拶をかわしていく。

その姿を見送った後、男は手に持った縄を振りかざした。

 

「ケンイチ君!君は何故ペースを落としてるのだね!!さぁもっと早く!風のように走りたまえ!」

 

「ぎぃぃええぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

少年、白浜兼一がこうなったのは遡ること数週間前だ。

 

 

「え、僕が雄英に……ですか?」

 

僕は美羽さんに呼ばれて師匠たちが集まる広間に来ていた。

お客さんが来ているようだけどなんの用かと聞けば、何と僕を雄英に推薦受験させたいということだったのだ。

思わず聞き返してしまったのは仕方ないだろう。

 

「うむ……私としては君はまだ基礎工事を行っている所であるから我々の手から離れるのは認めがたいことではあるが長老としては個性持ちの子供達と手合わせを行っていくのも君の成長に繋がるとのお考えなのだ」

 

「ほぇ〜……いや!まま待ってくださいよ!受けるも何も僕は無個性ですよ!?どうやったって個性持ちの子達に勝てるわけないじゃないですか!?」

 

「おいケンイチぃ……お前のそのやる前から諦めるくせいい加減直せ……なんたってお前は俺達の弟子なんだぜ?個性持ちの1人や2人どうってことないだろ」

 

「さ、逆鬼師匠まで!?」

 

「ケンちゃん……」

 

「長老……僕、無理ですよ……」

 

「大丈夫じゃケンちゃん、お主は充分強くなっておる。それに何時だってケンちゃんの闘いは自分より強い者達との闘いだった。ケンちゃん……お主は儂ら『梁山泊』の弟子なんじゃよ?怖がることなんてないんじゃよ」

 

「…………分かりました!!僕は雄英を受けてみます!」

 

「よく言った!!皆聞いたのう!」

 

「はい長老、ケンイチ君、君の選んだ道は辛く険しい道だ!だからこそここにある作戦を実行に移すとする!!」

 

「名付けて!!雄英なんか怖くない!!地獄の訓練週間!!を始める!!」



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制空圏

入学試験から入学までの間飛ばして投稿します
間の話は中々纏まらないので纏まり次第投稿しようと思います


「…………爆豪くん……どうしてだ……」

 

自分でも驚くほど冷ややかな声が出た。

それ程までに今の自分は怒っている。

 

「あ?……ッチ……俺がクソナードをどうしようがテメェには関係ねぇだろ」

 

「あるさ……彼は僕の友達だ……友達がここまでやられて黙っていれるほど僕は優しくない……」

 

彼の返答を聞いて無意識のうちに拳を握っていた。

 

「ごちゃごちゃうるせぇよ無個性の癖に」

 

「爆豪くん……今の君はヒーローの卵なんかじゃない……ただのヴィランだ」

 

「ーーー!!さっきから偉そうに言ってんじゃねぇぞ!!」

 

「トサカに来てるって言ってんだよ!!僕は!!!!」

 

お互いに1歩も譲らない、譲れない。

 

「少しばかり武術を習ってるからって調子乗ってんじゃねぇぞ!腑抜け!!」

 

「ッ!!!」

 

目の前で爆発が起きる。

それを間一髪のとこで回避し、後ろに跳ぶことで爆豪くんとの距離を開ける。

 

「……ふぅ……」

 

呼吸を整え、怒りを沈める。

 

「……コォォォォォォォ……」

 

静の気を練り制空圏を築いていく。

 

「何するつもりか知らねぇがそんなんじゃ俺はやれねぇぞ!!」

 

怒りのまま爆豪くんは右の大振りの一撃を放つ。

それを受け流していく。

拳が受け流されたら蹴りを、蹴りが無理なら両手を。

彼が繰り出す連撃を全て制空圏で受け流していく。

 

「ーーーッ!!何で一つも俺の攻撃が当たンねぇんだ!!」

 

「僕と違って才能がある君なら見えるだろ」

 

「……何?」

 

「今僕が築いたのは制空圏……僕の手の届く範囲のここからここまでに来る攻撃は僕には届かない」

 

「制空圏………んだよそれ……」

 

爆豪くんの顔に初めて焦りが見えた。

 

 

なんて子だ。

話だけではにわかには信じれなかったが、彼はあの歳にして既に制空圏を会得している。

きっと地獄なんて表現なんて生ぬるい修行をしてきたのだろう。

流石は梁山泊史上最強の豪傑方の弟子と言ったところか。

そして、彼の精神。

驚くほどの善良な精神、普通であればあれ程までの力を得たら増長したりするものだと言うのにそんなことも無く何処までも他人を思いやれる精神。

認めよう、彼は既にヒーローだ。

しかし、しかしだ。

 

「闇と『奴』はそこまで優しくないぞ……ケンイチ少年……」

 

 

尾白はモニターの映像を1秒たりとも見逃してたまるかと瞬きすら忘れるほど凝視している。

自分と同じ武術を学んだ無個性のクラスメイト。

彼の戦い方は尾白の理想としたものだ。

力ではなく柔、動ではなく静。

他のクラスメイトは気づいてないが尾白はそれに気づいていた。

 

『あれは間違いない……制空圏…………』

 

『先に開展を求め後に緊湊に至る』

 

武術家にとっての常識。

尾白は自分と同じ歳にも関わらず既に自分より上のステージに立つ白浜に憧れと、その領域に至るまでの修行を想像し恐怖を抱いた。



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