とある一族の落ちこぼれ (勿忘草)
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『設定』
『プロフィール』


今まで書いてこなかったプロフィール。
外見イメージなども含めて書いております。
子供たちは追加で書いていくかもしれません。

挿絵を追加いたしました。



名前:『ガタバル』

 

 

【挿絵表示】

 

 

年齢: 39歳

誕生日:9月8日 おとめ座

血液型: AB型

身長: 186cm

体重: 97kg

好きな食べ物:ロールキャベツ

好きな飲み物:トマトジュース

趣味:ウィンドウショッピング

外見イメージ:

腰までの長さを持った黒いサラサラの長髪。

たれ目など穏やかな目鼻立ちで女顔。

ゴリゴリのマッチョというよりは引き締まっている感じ。

服装は普段はロッカー風な格好をして薄手のコートを羽織っており、戦闘時には上半身裸になることが多い。。

 

人物詳細:

元は一族の中で劣等扱いを受けた人間。

出生時の戦闘力と伸びないことから一方的に『落ちこぼれ』のレッテルを張られてしまう。

そんな中、フリーザによる惑星ベジータの消滅。

その時に除籍扱いで飛ばされていく中、『バーダック』の背中を見て憧れを抱く。

それから血の滲む努力や様々な惑星を渡り歩くことで、超能力の習得や才能が開花し始める。

そんな中、『拳闘惑星』と呼ばれるセッコ・オロにたどり着き、のちに伴侶となるピオーネと出会う。

 

サイヤ人編では兄や父との戦いをする中で母や理解者、兄貴分を失ってしまいナメック星への動向を決断

ナメック星での戦い後、結婚。

長女に恵まれて幸せな日々を過ごす。

人造人間編ではイレギュラーの対処に専念。

修行の中で超サイヤ人3に目覚める。

その後、ブウ編では行方不明になっていたがその原因はミラやトワによる拘束。

復帰してからは改造によって上がった戦闘力のおかげで4へと変身可能に。

 

サイヤ人としては珍しく家事全般が可能だったり、ほかの奴等ともいい関係を築ける。

サイヤ人の戦闘好きといった面はあるが、楽しんだり相手をなめてかかる真似が一切ないシビアな奴。

『落ちこぼれ』の原因はオーバーワークや栄養失調など虐待や拷問に近い修行環境だったりなど、差別による弊害。

 

名前:『ピオーネ』

 

 

【挿絵表示】

 

 

年齢: 46歳

誕生日:10月14日 てんびん座

血液型: A型

身長: 177cm

体重: 57kg

好きな食べ物:ミートソーススパゲティ

好きな飲み物:ミックスジュース

趣味:裁縫

外見イメージ:

腰までの長さを持ったサラサラの銀髪。

キリっとした目つきの碧眼。

紅色の肌を持っており、ナイスバディ。

服装は薄手の服を着ており花柄を好む、下にはジーンズをはいている。。

 

人物詳細:

『拳闘惑星』の絶対女王として君臨し続けていた。

そんな中でガタバルと出会い、自分と同格の相手が現れたことに喜びを感じる。

その後、地球へ行ったガタバルと別れてバウンティハンターとして戦う日々。

そんなある日、ラディッツが来て一段落したので地球へと向かう。

丁度、地球ではサイヤ人が襲来しておりベジータと戦う。

大猿ベジータと戦い、総力戦の末勝利を掴む。

その後、ナメック星へは死人を出させないように同行。

ここでも圧倒的にパワーアップした力で戦いを繰り広げる。

しかし、終盤のラエンカ戦にてガタバルを庇い瀕死の重傷を負う。

その後、地球へ戻りデンデに治してもらう。

その後、ガタバルと結婚。

長女に恵まれる。

人造人間編ではイレギュラーの対処に専念。

修行の中で超サイヤ人3と同等の力を得る。

その後、ブウ編では行方不明になっていたガタバルを探し続けており、精神的にも他の事に目を向けず、冷徹な状態になっていた。

ガタバルが復帰してからは元気いっぱいになって、強化された合体13号をボコボコにする。

実は『全王様』がかつて消滅させた6つの宇宙の中で、破壊神の厚意によりキューブで第7宇宙に逃げ切れた、惑星『バンヤ』の民の最後の生き残り。

その民族の戦闘における吸収力はサイヤ人を遥かに凌駕しており、全王様が消滅させた理由は宇宙の数の多さと、いずれは『神殺し』を成し遂げる危険分子という判断から。

 

 

名前:『ニア・ルーマ』

 

年齢: 34歳

誕生日:1月16日 やぎ座

血液型: O型

身長: 166cm

体重: 47kg

好きな食べ物:鮭のホイル焼き

好きな飲み物:玄米茶

趣味:動物調教

外見イメージ:

肩までの長さを持ったサラサラの茶髪。

細長い狐のような目つきの黄色い目。

ナイスバディの女性ではあるが気にも留めていない。

服装はタンクトップやホットパンツを好んで着用。

 

人物詳細:

『拳闘惑星』で見た目がキメラみたいだったので見せ者扱いされかけていた女性。

そんな中でガタバルと出会い、キメラから人型へと完全体になった。

その後、楽しそうな惑星である地球へ行ったガタバルを追いかける形で、肉体が馴染んでから地球へと向かう。

丁度、地球ではサイヤ人が襲来しておりラブカと戦いをする。

大猿ベジータと戦い、尻尾を引きちぎろうとしたりパワフルな攻め方を続け、総力戦の末勝利を掴む。

その後、ナメック星へは死人を出させないように同行。

ここで、フリーザに滅ぼされた惑星の王女という過去が明らかになる。

潜在能力の解放から変身形態を身に着ける。

フリーザ戦では悟空達のサポートに回る。

その後、地球へと戻り平穏な生活をつづけ、ラディッツと結婚。

長男に恵まれる。

人造人間編では子育ての為。不参加。

その後、ブウ編では久々に戦闘復帰で旦那たちと一緒にハッチヒャックと戦う。

 

名前:『スパーニ』

 

年齢: 30歳

誕生日:2月9日 みずがめ座

血液型: B型

身長: 162cm

体重: 44kg

好きな食べ物:ハンバーグ

好きな飲み物:カフェラテ

趣味:編み物

外見イメージ:

肩までの長さを持ったサラサラの黒髪。

くりくりした優しい目つきの赤目。

スレンダーな体ではあるが健康的な褐色肌。

服装はブラウスやスカートを好んで着用。

 

人物詳細:

 

地球でサイヤ人が襲来してきた時にいたガタバルやカエンサの異母兄妹。

悟飯のように戦いが苦手で桃白白の自爆後は、自分が殺してしまったという自責の念から体を震わせて、戦意喪失してしまうほど。

その後、ナメック星へは育ての親であるルビコラの蘇生の為に同行。

フリーザ戦では悟空達のサポートに回る。

その後、地球へと戻り平穏な生活をつづけ、ブロリーと結婚。

長女に恵まれる。

人造人間編では子育ての為。不参加。

その後、ブウ編では久々に戦闘復帰で旦那たちと一緒にハッチヒャックと戦う。




指摘などありましたらお願いします。
ガタバルの服装を変更しました。
いいなと思っていたのですがいかんせん、戦闘する際を考えると上の服が
股半分までといった動きにくい服装でした。


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幼年時代
『プロローグ』


この度、色々な作者様のドラゴンボール小説を見て、書いてみようと思いました。
タグにもあるようにこの小説には少しキャラの強化が含まれます。



これは惑星ベジータがまだ存在する時代の話。

サイヤ人のある一族の子供が生まれた時から始まる。

その一族の名前は『ブラーナ一族』という。

彼らは代々『ある重要な立場』を担う一族であった。

 

「戦闘力が300もないとは……一族の面汚しだな」

 

父である『ラブカ』が赤ん坊の戦闘力を計測していった発言である。

赤ん坊の名前は『ガタバル』。

ラブーナ一族の次男である。

因みに兄である『カエンサ』は生まれながらに340を計測。

そして父である『ラブカ』は420を計測していたという記録が一族の書物に残っている。

ガタバル自体の戦闘力は初めから『140』を計測。

この数値は並のサイヤ人に比べても上である。

有る惑星においての達人と比べても遜色ないほどだ。

 

しかしそこは戦闘民族の水準。

自分の生まれた時の半分の力もない息子を見て、ラブカは父親としては言うべきでない暴言を吐いていた。

その言葉が後に後悔する出来事の引き金になる事も知らずに…。

 

.

.

 

そしてガタバルに対して父であるラブカは生まれてから苛烈なまでの訓練を課した。

訓練をさせることで弱い戦闘力の強化をしようと目論んでいた。

兄に比べて倍以上のノルマやスパルタ行為。

吐こうと倒れようと水をかけられて続行を余儀なくされる。

しかしサイヤ人の特性である『致命傷からの復活に戦闘力の上昇』を満たすことはできない。

その為、劇的な上昇は起こる事は無い。

さらに肉体の悲鳴を考慮していないメニューとなっていた。

それによるオーバーワークで筋肉は傷つき、毎日のように断裂を繰り返してしまう。

治す事もせずに行っていたので、筋肉などはほとんどつかずにいた。

そんな状態では才能がある兄との間は開いていくばかりだった。

 

.

.

 

無茶苦茶な鍛錬が続いて年月がたったある日のこと。

今、ガタバルは古い旧型の宇宙船の中にいた。

サイヤ人たちはオタオタとしながら動き回っている。

どうやら何か抵抗する動きがあるようだ。

ラブカは避難の意味合いでガタバルを宇宙船に入れたわけではない。

『役立たず』と言って『こんな子供はどこか辺境の星で死ねばいい』という一族からの除籍であった。

兄であるカエンサは惑星を攻め込んでいるから逃れている。

そして、自分たちには避難する術があったのだろう。

 

しかし、その行為はガタバルに大きな憧れを抱かせてしまう。

その人の様になりたいと努力をし、後々戦闘力が劇的に上がる要因となった。

『下級戦士』でありながら、ただ一人向かっていった勇敢なサイヤ人『バーダック』の背中を見る。

そして、そのままある惑星へと彼は飛んでいく。

フリーザの綺麗な花火と称した一撃によって惑星ベジータは崩壊。

ガタバルの母星は宇宙の塵へと姿を変えてしまった。

この時、ガタバルはまだ4歳であった。

 

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そして宇宙船が辿りついた星の名は……

 

「ここが惑星ズン、重力が10倍なのは惑星ベジータと変わらないな」

 

俺は足で地面を踏みしめて重力を把握する。

母星に比べて体は軽くなかったし、重さで苦しいような感覚もなかった。

だからきっと自分たちの元々の星と変わらないのだと思った。

これからは星を放浪しながら己を高めていかなければいかない。

4歳でサバイバルとは何とも無謀な事だろうか。

死ぬ可能性の方が生き残る可能性よりもはるかに高い。

 

「まずは拠点にできる星や設備の調節が必要だな」

 

宇宙船の性能が悪いわけではないが、まずは宇宙船を快適なものに変えたい。

特にほしいのはメディカルポットだ。

これから先、怪我をしたのに治せないなんていう状態はない方がいい。

 

「確か色々な惑星には特殊な力を持った種族がいるとも聞いた…」

 

家にあった本を読んでいた時に、ヤードラット星人、カナッサ星人、メタモル星人などの記述があった。

それらの種族は特殊な力に目覚めているものが多く、すごい力を持っている人々なのだ。

自分の戦闘力の向上以外にもそういった手札なりはたくさん持っておいた方がいいものだ。

 

まずはこれからの目的を定める。

今のところは環境が良く似ている事もある惑星ズンを拠点とする。

そしてヤードラット星、もしくは惑星ピタルの座標を知る人物を探す。

特殊な力に優れたヤードラットの人が知る技にはきっと今後の生活が楽になるものがあるはずだ。

そして宇宙で一番医療が発達しているという噂が有る惑星ピタルに行く。

そこで頼み込めばメディカルポットの作成は可能だろう。

俺はあては無いが目的をしっかり持って、惑星ズンを動き回るのだった。

 

.

.

 

ヤードラット星の座標は街中で人を呼び止めると、調べ物ができる場所を教えて貰えた。

そこに入ると星の座標だけでなく区域まで書かれている。

古い情報かもしれないがこれで大雑把な道筋で行くようなことはなくなるだろう。

寝床については4歳の自分が金稼ぎなどできるわけもない。

その為、木の上で過ごすなど近くの山で野宿や獣をとって食べていた。

獣の爪などで傷ついたらそこらへんの草をすりつぶしてペタペタと塗り付ける。

こんなものは気休めだがやらない事に比べればましというものだ。

数日後、座標を宇宙船に打ちこんで設定を行ってヤードラットへ向かう。

睡眠装置は使わずに体を動かしておく。

体が鈍ってしまう可能性も十分に考えられるからな。

惑星ズンに関しては帰って来れるように、出発前に登録をしておいた。

 

「あの人のように強くて勇気のあるサイヤ人になるんだ、絶対に……!!」

 

これから待ち受けるであろう困難。

辛いであろう鍛錬。

死ぬかもしれない激闘。

そういったものを何もかも跳ね返してやる。

あの日見た憧れに近づくためにも俺は心に強く刻み込んで拳を握るのであった。




ちょっと短めに致しました。
4歳でサバイバルは原作の悟飯と同じですね。
これからもこの小説をいていきますが、何か誤字だったり、矛盾など指摘がありましたらお願いいたします。

※惑星ズン『原作では魔神ブウ編の登場人物であるプイプイの故郷』
※惑星ピタル『GTで登場 医療が発達した科学と自然の惑星』
※ヤードラット星『原作では人造人間編の前の悟空の帰還時に瞬間移動を教えた民族と惑星として登場』

惑星などについては今後も後書きで書きます。

※主人公や一族の名前の由来
ブラーナ『アブラナ』
父:ラブカ『カブラの逆読み』
母:ルビコラ『コールラビのアナグラム』
兄:カエンサ『食用ビートの呼び方の『カエンサイ』』
主人公:ガタバル『ルタバガのアナグラム』


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『惑星探訪:ヤードラット 初めての修行』

会うのが目標みたいな書き方ですが、原作の話に主人公が割り込んでいくのが主な話です。
できれば、超のあの未来編までかければいいんですが……


俺が惑星ズンを出てあれから丁度一ヵ月が過ぎたころ。

どうやらヤードラット星の大気圏内が近づき始めていた。

そろそろ着陸の準備をしなければいけない。

 

「荒野があれば一番楽なんだけどな……」

 

森や集落の近くは極力選びたくはない。

理由としては自然の破壊や人への被害が甚大なものになってしまうからだ。

 

「おっ、丁度無人の高台があるな、ここを着陸地点に設定して……」

 

運よく無人の場所を見つける事が出来たのでそこに着陸する。

しかし、残念な事にクッションとか音を遮断するものがないので……

 

「何事だ!?」

 

想定したよりも大きな音を立ててしまい、それに気づいた住民達が慌てて駆け寄る。

宇宙船を攻撃されてしまうといけないのですぐさま出ていく。

 

「異星人ではないか!」

 

思わぬ客人が来たというような、この風貌がサイヤ人そのものだったからか

ヤードラットの人々は警戒心を抱いて近寄る。

 

「あんたらの中で一番偉いのは誰だ?」

 

ヤードラット星にも長老なり星の長がいるはずだ。

この中にいてくれれば話は速いのだが、そうはいかなかった。

 

「悪いが長に会わせるわけにはいかない!!」

 

そう言って拳を繰り出すヤードラット星人。

怪しいからこそ捕まえるために戦闘態勢を取ったか。

 

「ふっ!!」

 

その一撃をかわしてこちらも構えをとる。

全員が一斉に攻撃してくると負けるだろう。

多勢に無勢も良い所だ。

 

「しかも宇宙船、放り出すとか危険極まりないよなぁ」

 

破壊されたら俺はここから出られない。

出来れば話の分かる人がいたらいいのに、血の気の多い戦士型がここには多いのか。

ほとんどが構えて俺を捕まえようとしている。

 

「はぁー!!」

 

3人がかりで攻撃をしてきた。

両手で防げても確実に一撃は喰らうだろう。

一人一人の強さが戦士タイプな分、普通の奴らよりも高い。

 

「ぐっ!!」

 

腕を交差させてがっちりと守る。

相手の攻撃を耐えて時間を稼いでおく。

こうしておけばいずれこの騒ぎを聞きつけて誰かが来るだろう。

戦闘民族ではあるが、どこでもかしこでも喧嘩を売るわけじゃあない。

ましてや、今回は何か力を教えて貰おうというもの。

自分から不利になる状態は避けなければいけない前提なのだ。

 

「喰らえっ!!」

 

気弾の乱れ打ちが襲い掛かる。

高くとびあがって回避をする。

流石にやり過ぎではないかというような顔を浮かべる奴もいる。

 

「上に逃げるとはな、格好の的だ!!」

 

気を集中させて大きな球にする。

それをぶん投げようと振りかぶっていく。

 

「大丈夫だ、空を飛んで回避はできる……」

 

回避自体はできるがあとで2発は確実に来る。

仮に戦士タイプじゃない奴に動きを止められたらひとたまりもない。

 

「やめんか!!」

 

その声が響いた瞬間、全員がその声の方向に振り向く。

 

「長!!」

 

どうやらこの星で一番偉い人のようだな。

全員が戦闘態勢を解いてかしこまった状態になる。

そして俺はそれを見て着陸をして体勢を整える。

 

「どうやら幼いサイヤ人のようだが……何用か?」

 

長が重々しく口を開く。

どうやら侵略行為を続けているサイヤ人のイメージが強いようで、幼いものといえど警戒するのだろう。

 

「こちら、ヤードラットの民は特殊な力を使えると聞いて、教えていただこうと…」

 

目的を言った瞬間、ほかの民が口々に長へと言葉を投げかける。

 

「なりませんぞ、長!!」

「教えてしまうと悪用いたします!!」

「幼子であってもサイヤ人は危険です!!」

 

邪悪な気配でもあったのだろうか?

悪用するつもりもないし、別に侵略行為がやりたいわけでもないのに。

 

「おぬしらが思うようなサイヤ人ではない、現にあの子の方が強いのにお前さん達に攻撃を加えておらんじゃろ?」

 

流石は束ねているだけあって実力を見抜く目などを持ち合わせているようだ。

わざわざ、戦闘を好む種族でもないものに対して戦闘を仕掛けるような真似はしない。

今回のように、抵抗しないと危ない場面の時は仕方ないだろうが。

 

「まぁ、それを言われると……」

「我々の攻撃を避けたりしていただけですし……」

 

その言葉を聞いて、先ほどの戦闘を思い返すヤードラットの人達。

反撃をしたとして勝てるかどうかは分からないけどな。

抵抗をして心証を悪くしてしまうのは避けたかっただけの話なんだが

 

「幼子であれば2つほど教えてあげよう、しかし時間は費やすがね」

 

2つも教えて貰えるのか!?

一体どのような能力なのだろうか、とても気になる。

 

「こちらへ来なさい」

 

そう言って案内をしてくれる。

どうやらひらけた盆地あたりで行うようだが……

 

「まず、教えるものは『千里眼』じゃ」

 

千里眼?

遠くを見渡す能力だという訳か

 

「私は心も読めるんだが、遠くと言っても、訓練次第では前だけでなくそこを向いたまま後ろや左右を見る事もできる」

 

全方位が見えるようになると、仮に襲われるような事になっても、回避ができるな。

そう考えれば悪用ではなくても自己防衛に使えるものだ。

 

「そして、千里眼の習得が終われば『瞬間移動』を教えよう」

 

瞬間移動と言えば、その思った場所にすぐに行けるというものだ。

確かにこの能力は悪用すると思われても仕方ない。

 

「まぁ、これもどこにでも行けるわけではない」

 

溜息をついて説明をしてくれる。

できればもう少し手軽だったらいいのにと思っている顔だった。

 

「いった事のある場所に限定されるし、その場所に見知った人間のエネルギーを目印にしていくんじゃよ」

 

異星間の関りがないから全然重宝されておらんのじゃ。

少し残念そうに呟く。

つまり無人島や無人の星には一度訪れているからといっていけるわけではない。

そしてイメージが鮮明にできていない場合においてもその場所に行けるというわけではない。

 

「まぁ、全てが全てそんなに良い様に能力が出来ているわけではないんですね」

 

俺が言うと頷きを返してくる。

万能なものと言うわけではなく補助的なもの。

そういう見方に変えた方が良いというわけ。

 

「その通り、だからこそヤードラットの侵略は起こらないんじゃ」

 

相手だって時間を無駄にはしたくないじゃろうからな。

儂が同じ立場でも同じ意見を出していたかもしれん。

そう言って笑っていた。

 

「万能でもない能力など習得するだけ時間を費やすという見方をしておるからの」

 

それでも楽にはなるんだろうけどな。

面倒な時間だと思っているんだろう、その間に侵略をする方が速いと考えて動いているというわけだ。

 

「ちなみにこの習得には時間がかかるのでな、しばらくの間はこの星に住んで鍛錬をしなさい」

 

それは織り込み済みだ。

これがすぐに身に着けられるほどの上達速度があれば『落ちこぼれ』とは言われないだろう。

 

「何から何までありがとうございます」

「気にする必要はない、目を見れば複雑な事情がある事も心得ておるのでな」

 

そう言われて、翌日からヤードラットでの鍛錬が始まる。

幸い、重力自体が軽い惑星だったので動く事に苦労する事はなかった。

 

まず基礎として集中力を高めて遠くを見る、その後視野を広げるイメージで感じ取り、

後ろや左右に目があるように視覚が真後ろや左右に繋がっていくように考える。

これは思ったより難しく、集中力を切らすと1から始める事になる。

その為、常時高い状態を維持し続けないといけない。

 

「これはこれで鍛錬になっているな……」

 

まだ普段の状態では視覚に反映こそされないが後ろの気配などに敏感になっていく。

感覚が鋭敏になって感知できるようになっている。

 

「随分と努力をするのだな」

 

最初に攻撃を仕掛けてきたヤードラットの人が覗きに来ていた。

どうやら俺に対するイメージは取り払われたようだ。

鍛錬を始めて最初の一ヵ月は誰も近寄ってこなかった。

少しずつ、アドバイスなりやり方をしてくれるようになったのは2か月目からだ。

それまでは集中力を高めて遠くを見ている状態からあまり進展がなかった。

 

「せっかく教えていただいているんですから、必ず習得しないといけません……」

 

そう言って再び集中に入る。

もう声が耳に入る事はない、そのまま遠くを見る。

この第一段階自体は思いのほか速かった、しかし次の視野を広げるという部分に時間がかかった。

視野を広げる際に、見る方向を増やそうとすれば集中力に乱れが生まれて解除されるからだ。

 

「ふむっ、では一つアドバイスだ、繋がるイメージはまずは左右から始めた方がいい」

 

左右から?

前後の方がいいと思っていたんだが違うのか?

 

「本来の眼の位置から近い左右、さらにその左右から繋げていけば比較的楽だぞ」

 

なるほど、その理屈は理に適っている。

ただ、慣れればそのやり方じゃなくても繋げられるけどなと笑いながら言っていた。

 

それからさらに時間は立って2か月がたった頃……

 

「はっ!!」

 

視覚を繋げる事に成功した後はさらにその繋がった視覚でも遠くを見通せる状態を作り出す。

完全な習得までは秒読み段階ではある。

想像より速い習得にみんなが口々に「俺のおかげだな」など言っていて笑いあっている。

最初の疑念は完全に失われていたようだ。

 

「うむ、この吸収力はなかなかのものじゃな」

 

長がいきなり目の前に現れて声をかけてきた。

つまりこれが瞬間移動か。

俺の気力というものを読み取って現れたようだ。

 

「それでは次の段階に行こうかの」

 

そう言って瞬間移動のやり方を聞くと、なんとほとんど千里眼の基礎から変わらないのだ。

つまり、集中力を高める事。

そして遠くにいる人間を鮮明にイメージ出来る想像力が必要なのだ。

 

「千里眼は基礎的なものじゃからな、あれをしなければ瞬間移動を学ぶのには時間がかかるんじゃよ」

 

集中力以上に繋がっているイメージなどそういった想像力が養われるかららしい。

仮にやらない場合、どれだけ時間がかかるのか聞いてみる。

 

「もし順番を無視したらどれほどの費やす羽目になりますかね?」

「基礎を積んでいないわけじゃからな、多分2か3倍ぐらいかかると思う」

 

えっ、そんなにも時間を費やすのか!?

千里眼やってからの方が圧倒的に速いんじゃないのか?

 

「まぁ、そんな事にはならんようにやったから安心して瞬間移動の修行に励みなさい」

 

そう言われて、俺は瞬間移動の修行に取り組む事にする。

それからまた数か月もの時間をヤードラットで過ごす。

 

初めてヤードラットに来て1年と半年が過ぎようとした頃。

俺はようやく瞬間移動と千里眼を完全な状態で習得していた。

完全な状態と言っても千里眼が普段からできるようになった事。

そして、瞬間移動での気の感知能力が上がったぐらいのものだ。

とは言ってもヤードラットの人達は日常生活で常に千里眼をするような真似はしないのだとか。

まぁ、やったら簡単にみんなのプライバシーが分かるからね。

これを使う場面自体が遠くのものを見たり、見失った人間を探す事に使うのが主なものだからな。

 

瞬間移動を習得した事で最終的に楽に惑星ズンに戻れるかと思ったが、そうはいかなかった。

今、戻ろうとすると宇宙船に触ったまま、瞬間移動をする事になる。

惑星で人がいるど真ん中で宇宙船ごと現れると騒動しかおこらない。

そうなるのは流石に良くない。

というわけで、俺は宇宙船経由で帰らないといけなかった。

 

「この長い間、本当にお世話になりました」

 

そう言ってヤードラットの人達に別れを告げて、俺は宇宙船で飛び立とうとする。

皆が手を振って笑顔で見送ってくれていた。

初めはあれだけサイヤ人というだけで見られていたというのに。

 

宇宙船が飛び立つ時、俺は目頭に熱いものを感じずにはいられなかった。




主人公は結構速い段階で強くなっていきます。
というよりも育成ミスが原因で伸び悩んでいたというのが
主な理由です。
指摘などありましたらお願いします。


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『惑星探訪:ピタル 落ちこぼれと弱虫の出会い』

タイトルでわかると思いますが、原作キャラが登場します。
どういったストーリーかというと、主人公強化していろいろな要素が入り乱れたIFに突っ込むって感じです。
できれば超編とかビルス様まではいっておきたいですね


ヤードラット星を出発しておよそ一か月。

 

俺は再び拠点である惑星ズンに再び戻ってきた。

習得した瞬間移動と千里眼の状態を確かめる為に森に向かって行く。

 

瞬間移動について、一つ弱点らしきものを知る事ができた。

どうやら獣だったら上手く気が察知できないらしい。

何回か試してみたが全て座標がばらばらだった。

因みに気の察知が必要ではない千里眼自体は上手くできていた。

 

ヤードラットの重力は拠点に比べて軽い方だった。

その為、10倍の重力は久々だった。

しかし体が覚えていたのだろうかすぐに慣れた。

 

久々に戻ってきた拠点ではあるがどこか楽しみというかハリと言うものがない。

恐らくではあるがここの人達とあまり関わり合う事がない。

そして、獣達と戦ってはいるが戦闘力自体が上がっている実感もないからだろう。

 

「やはり、人とのふれあいなり何か楽しみを覚える事がないと心身に対して良くないな」

 

戦闘民族であるがゆえにやはりどこかで闘いを望んでいる。

ただ、それは星を侵略するのではなくその星々の戦士との戦いがしたいのだ。

強い奴に興味があるからこそ非戦闘民族であるヤードラットの時はやらなかった。

それに、修行が楽しくて闘う気は全くと言っていいほど起きなかった。

しかし今はそういった修行をしているわけでもない。

だからそう言った戦いを望む心の声が聞こえてくるのだ。

 

「次の目的地のピタルの後は少しばかり噂に満ちている惑星の近くを飛んでみるか、ここにはもう帰る事もない」

 

拠点である惑星ズンに対して面白い事がないから拠点を変える事を呟く。

一応候補としては幾つかある。

願いが叶う球があると言われているナメック星。

闘う事が好きな戦士達が集まる星、惑星セッコ・オロ

時間が2倍の長さを持つ星、惑星ティメ

星の中心に近づくほど重力が増す星、惑星ティビグラ

 

これらだけでも今の場所より遥かに興味を引く惑星があるのだ。

もしかするとこの探索を続けていく間に、同族であるサイヤ人に会えたりするかもしれない。

 

「生き残りが何人いるかは知らないが……」

 

自分の家族は自分を疎んできた。

しかし、それでも生きているかどうかは気になる。

 

「残り少なくなってしまっているだろうからな」

 

惑星ごとの爆破という事を考えれば、助かる方法は幾らか考えられる。

あの時よりも前に任務で別の惑星にいるか。

もしくはフリーザ軍自体が恩を売るために救出したか。

其れか寝返っているから許されたか。

あれだけの爆発の規模から考えてもおおよそ10人も残っていないのではないだろうか?

 

「今はそんな事を考えても仕方ない、まずは目的地へいかないと……」

 

設定をし直して、次は惑星ピタルへと向かう。

自然に満ちた中で科学の英知を詰め込んだ。

数ある惑星の中で最も医療の進んだ惑星。

 

「しかし、戦闘力は上がりつつあるのに全然手応えは無いなんておかしいな」

 

それはきっと普段から苦戦もあんまりしない森の獣と戦ってきたからだろう。

戦士と戦うなど実力が拮抗している。

もしくはこちらが低ければ、近づいたなり差がつくなりして実感できていたのだろうが。

 

「惑星ピタルまでは2ヶ月か……」

 

このように肉体の鍛錬をしながら思う事がある。

それは常に重力の負荷をかけ続ける事。

せめて普段から10倍での生活をしておきたい。

当然多ければ多いほどそれに越した事は無いのだが。

 

「一番科学が発達している惑星に行ければいいんだけどな……」

 

重力やそういったものを調整する装置があれば十分可能なのだが……

この問題自体は、今後行く予定の惑星で候補に挙げた重力の星ティビグラ。

時間の感覚を歪ませるティメを交互に行き来する事で解決できる。

科学が発達している惑星がこれを搭載できれば行き来は特に必要なくなる。

時間の感覚は無理としても重力装置は出来れば搭載したいものだ。

 

.

.

 

「これはまた雄大な自然の惑星だな……」

 

着陸してから宇宙船を降りると森が眼前に広がる。

獣達は出てこないがどうもここを抜け出して、人がいる場所にまで出れる感じがしない。

気配を感じ取ったり気を察知しようとするもこの惑星の獣か?

そいつらの数が多すぎて数が絞れない。

人が集まっている所が正確に感知できていないのだ

 

「こっちには動いている気がある……その近くには一際大きい気がある」

 

それを目印に歩いていけば森の中でも方角が分かりやすい場所に出られるかもしれない。

だが一際大きい気の周りには小さな気が幾らか有った。

おおよそ群れのボスあたりだろう。

 

そう思って歩き始める、獣道などよく観察して通っても獣を刺激しない道を探す。

なぜならば、ここは獣達の領域。

そこに立ち入っておきながら無礼な真似をしていては、向こうもいい気はしないだろう。

 

「近づいているな、もう少しで一つの気の場所に出れる」

 

相手も移動をしているが的確に追いかけている以上、距離は徐々に縮まっていく。

相手が立ち止まってさえくれれば、そのまますぐに追いつけるのに。

 

そんな事を考えていたら相手の気が停滞したのを感じた。

立ち止まっているのか、それとも相手も俺の気配を感じ取って誘っているのか?

いずれにしても追いかけていた以上このまま向かっていくだけだ。

 

「よしっ、追いついたぜ……」

 

そのまま、相手の方向に向かって的確に全速力で向かっていく。

そして、少し時間が経って人の気配を感じて向かい、辿り着いたその先には一人の人間がいた。

風貌としてはサイヤ人だろうか?

どこかで見た事はあるんだけれど思い出せない。

相手は俺の事をよく知っているようで、俺の名前を呼んできた。

 

「……誰かと思えばブラーナ一族の落ちこぼれ、ガタバルか」

 

思い出した、この見た目には覚えがある。

この人がここにいるという事はこの星を侵略する予定だったという事か?

 

「あんたが生き残ってここに居るとはな……ラディッツさん」

 

俺より年上で戦士として別の惑星に行っていたから逃れたのだろう。

まさかここでサイヤ人の生き残りに出会うとは。

言葉を発するたびに威圧感が滲み出ている。

この人は今の俺よりも遥かに強い。

仮に気の大きさが感じ取れずとも肌で感じ取れていただろう。

 

「戦闘力は274か、これは情けない数値だな…」

 

あれだけ努力したのにそれだけしか上がっていないって何なんだよ…

これはやばい数値なんじゃあないだろうか?

 

「じゃあ参考までにラディッツさんはいくらなんですか?」

 

俺はラディッツさんの戦闘力を聞いてみる。

こっちを情けないというのだから立派な数字なのだろう。

もし高くて危ないとしても、今の状況から逃げる事は不可能ではない。

幸い惑星としても近いのだろうかヤードラット星人の気を感じている。

このまま宇宙船を気にしなければ瞬間移動ができる。

 

「俺の戦闘力は628だ、ここには月もある、お前は終わりだ」

 

その数値を聞いた瞬間、体中に冷や汗が伝う。

そしてさらに追い打ちをかける言葉が発せられた。

それを聞いた時、嬉しさ半分ではあったが恐ろしさも半分あった。

 

「言っておくがあとの生き残りは俺より遥かに強いぞ」

 

生き残りは存在していたのか。

一体何人残っているのだろうか?

今回はここに来ているのだろうか、気になって聞いてみる事にした。

 

「今回はその生き残りと侵略行為のためにここへ来たのか?」

 

元々はサイヤ人は侵略行為をしてきたもの。

そしてこの服には見覚えがある。

フリーザ軍に所属をしているのだろう。

所属に関してはきっとあの惑星ベジータの滅亡より前からになるんだろうけど。

 

「違うな、周囲の星々の調査で偶然この惑星に来ただけだし、単独だ」

 

なるほど、侵略する環境として整っているかの確認というわけか。

ご苦労様と言いたくなるような場所によく来ましたね。

 

「だが、生き残りのサイヤ人がいたのは驚きだが、お前なら別だ、実はお前の兄からの伝言でな」

 

兄も生き残っていたのか。

父と母はどうなんだろうな。

攻め込んでいなかったから、滅亡と同時に死んでいてもおかしくは無いだろう。

 

「何と言っていたんだ?」

 

おおよそラディッツさんに何と伝えていたのかは想像できる。

聞かなくてもいいだろう。

しかし好奇心が勝って俺は伝言の中身を聞いていた。

 

「万が一、会ったら『処分しろ』と言われた」

 

もはや兄弟でも何でもないという事か。

なんだか悲しい気持ちすら湧かずに、冷静な気持ちになっていった。

 

「そうか……想像できるよ」

 

俺は多分変な顔をしている。

悲しい訳でもない、怒っているわけでもない。

色々な感情が入り混じって表現できていないだろう。

 

「お前の兄はざっとお前の10倍は戦闘力を誇っている」

 

ここで、俺が逃げても次に会ったら確実に塵になる。

無残な死を遂げるという事を通告したのだろう。

 

「逃げたければ逃げろ、……だが戦闘民族サイヤ人ならばどうするべきかわかるな?」

 

どうせ逃げ延びていつか見つかる事を恐れて生きる。

そんな真似をするくらいならば伝えられないように倒してみろというわけか。

俺が今、後ろ向きになってしまえばラディッツさんに瞬く間に打ち抜かれるだろう。

俺は覚悟を決めて、生き延びる為に構える。

 

「うぉおおお!!」

 

俺は雄たけびを上げて一気に懐めがけて突進をする。

この距離ならば攻撃を当てられるだろう。

しかし次の瞬間、そんな容易い思いは打ち砕かれる。

 

「遅い、遅すぎるぞ!!」

 

ラディッツさんに一瞬の間に後ろに回り込まれていた。

さらにその瞬間に、後頭部に肘、背中に膝を叩きこまれる。

重い一撃に、悶絶しそうになるが息を吐きだし体勢を整える。

 

「喰らえ、ダブルサンデー!!」

 

間髪入れずに上空に陣取っていたラディッツさんの両手から気弾が出る。

俺はその攻撃の隙を見て、瞬間移動で後ろに回り込んで頭に一撃を加える。

ラディッツさんが急降下するが難なく着地をすると見上げて俺を睨み付ける。

 

「流石に後ろに回り込めば一撃は叩きこめるな」

 

瞬間移動で攪乱をしておけばまだ何とかダメージは与えられる。

しかし、それだけでは決定打に欠ける。

がら空きの部分に全力の気弾を当てられれば…

 

「いつの間に後ろに……」

 

ラディッツさんが呟いた瞬間、木々をなぎ倒す『バキバキ』という音と咆哮が響く。

大きな豹が目の前に現れていた。

こいつが一際大きい気の正体、そしてこの周りに居た気は捕食される標的だったのだと理解できた。

 

「なっ、戦闘力1200だと!?」

 

俺の5倍、ラディッツさんのおよそ2倍。

一体どんな生態系なんだ、惑星ピタル。

 

「グルル……」

 

こちらに向かってくる。

質量の分、動きは重い。

爪の一薙ぎやタックルでも俺達を倒せるというのがあるんだろうな。

 

「ガァァ!!」

 

豹はただまっすぐに突進してきた。

避ける事自体は簡単にできるが風圧や突撃で折れた木の枝が散乱する。

 

「おい、ここは2人で何とかするぞ、お前の手でも借りないよりはましだ!!」

 

ラディッツさんの言葉に俺は頷いて手を組む。

この存在の危険性に対して俺達は瞬時に理解し、納得していた。

まずは獣の本能が優先すべき存在を見定めたのかラディッツさんに攻撃していく。

 

「おいおい、鈍すぎるぜ!!」

 

ラディッツさんが攻撃を避けてそのまま腹に一撃を加える。

豹はその一撃に悶絶こそするが、すぐに体勢を立て直す。

 

「シャイニングフライデー!!」

 

だが豹がその体勢を立て直す一瞬の間にラディッツさんは大きな気弾を一発放つ。

豹はそれを顔にもろに当てられて、煙が立ち上がる。

 

「手応えがあったぜ!!」

 

ラディッツさんがそう言ったのも束の間、豹がその煙から勢いよく飛び出して襲い掛かってくる。

気弾の一撃で煙を出したせいで反応が遅れるとは皮肉なものだ。

 

「ぐあぁ!!」

 

次の瞬間、ラディッツさんは肩に牙で噛みつかれていた。

助けないと肩から食いちぎられてしまうだろう。

 

「どりゃあ!!」

 

俺は助走をつけて思いっきり豹の顔面に蹴りをくれてやる。

その衝撃でラディッツさんから何とか引き剥がした。

 

「グルァ!!」

 

豹は仕返しと言わんばかりに爪の一撃を振るう。

俺はその一撃を回避できず、脇腹に喰らって吹き飛ばされる。

ただ無造作に振ってこれとは、でかい事の恐ろしさを思い知らされる。

 

「ガオォ!!」

 

豹が余裕綽々と言った具合にとどめを刺そうと飛びかかってきた瞬間、心の中に火が点る。

舐められて終るもんか。

まだ終わってなんかいない。

お前にとっては取るに足らない存在だろうが……

 

「……舐めんじゃあねぇ!!」

 

俺は千里眼で寝ころんだ状態からどう来るかを見極めて目玉をえぐるようにカウンターの一撃を叩きこむ。

ぐちゃりとした感触が手に広がるが、気にしてはいられない。

 

「グギャアアアア!!」

 

激痛からか大口を開けて叫ぶ豹。

耳が痛くなるがこれが好機だ、このまま決める。

 

「大口開けてちゃいけねぇなぁ、サタデークラッシュ!!」

「喰らえよ!!」

 

俺が目に突っ込んでいた腕から、ラディッツさんが口に向かって思い切りの気弾が叩き込まれる。

その一撃を叩き込んだ後、言葉を発する事もなく崩れ落ちた。

腕を引き抜くと豹の頭部の損傷が激しく息絶えている事が確認できた。

 

「戦闘力の割にはやるじゃねえかよ……」

「そっちだって流石ですよ……」

 

二人とも安堵の顔を浮かべながら肩で息をしている。

豹の攻撃で俺は脇腹を爪でえぐられた。

ラディッツさんは牙でプロテクターごと肩をやられていた。

二人とも傷は深く、血がずっと流れている。

意識が朦朧とするなか立ち上がろうとするが足に力がお互いに入っていない。

 

「おや……これは」

 

そんな中、最後に聞いたのは驚いたような声だった。

 

.

.

 

「ん?」

 

次に俺が見た景色は容器に入っている状態である人がこの装置を操作をしているところだった。

体が何かよく分からない液体に浸かっている。

気持ちがいいものだが一体これは何なのだろうか?

 

「よーし、治療完了だぁ」

 

そのような声が聞こえたと思ったら使っていた機械の上部が開いた。

どうやらここから出るようだな。

 

「あんたらサイヤ人だね、生態系を壊してた豹を倒してくれたんだろう?」

 

ポッドから出た後に声をかけられる。

惑星ピタルの人が着るであろう服を渡されて着替えている。

その最中ではあるがその言葉に対して頷いて返事をする。

 

「こちらの方はいったいどういった用で?」

 

ラディッツさんも出てきて、服を着替える。

戦闘服もボロボロにされてしまったもんな。

あの豹が強かったせいだ。

 

「俺は調査だ」

 

ラディッツさんが質問に答える。

侵略しようにも一度恩を感じているからこそ、無理にはやらないだろう。

それにこのポッドの凄さを一度報告してからどうするかを決めないといけない。

仮に惑星ピタルの人間にしか修理や設定変化ができないとなったら惑星を壊すわけにはいかないからだ。

 

「俺は自分の宇宙船にピタルのこのポッドをつけたくて交渉のために来た」

 

俺は自分の目的を伝える。

その言葉に研究者は頷いていた。

 

「それは構わんよ、作ったはいいけどピタルの者では最大限に利用できんのが現状だからな」

 

研究続きでそんなに重傷を負う機会がないんだろう。

それでは確かにこの装置もオーバーなものだ。

 

「それにあのまま豹を放っておくと危ないところだった、それを救ってもらった礼もある」

 

生態系を壊すというぐらいだからな。

突然変異種なのだろう。

するとラディッツさんが顔につけてあった機械をいじってこうつぶやいた。

 

「民族の戦闘力は150から350だし、獣達もいるがボスで300だ、あの豹には太刀打ちできなかっただろうよ」

 

どこまでの範囲で生物の強さを測れるのかわからないが、随分と便利な機械だな。

まぁ、相手の力を探る訓練がヤードラットの瞬間移動の時にあったから俺はなくても多少はわかるけど。

 

「おぉ、流石はサイヤ人の血だ、復活したら戦闘力が伸びてやがる、俺にも当てはまるがな」

 

俺が上がって少し嬉しそうな声でラディッツさんが言う。

この人、何やかんやで仲間意識が強いんだな……

 

「568までお前は上がって俺は896だ…俺の伸び率悪いなぁ」

 

思ったよりも一気に差が縮まっている。

元々満足いくように体が回復する前に苛め抜かれていた。

そういった原因から今回の様にじっくりと治した事で一気に伸びているんだろう。

もしくはこの上がり幅が大きいのが特性だったのかもしれない。

だとしたら今まで薬草とかで回復せずにこのようなメディカルポットで回復したらどこまで伸びていたんだろうか。

それが疑問であり恐ろしさを感じる所であった。

 

「気にするな、今回に関しては生き残りで戦闘力が上がっているから要観察っていう報告にしておいてやる」

 

お互いが宇宙船に乗ってピタルから去っていく時の事。

ラディッツさんが独断とはいえ、俺の事を案じてくれて危ない目に合う道を選択した。

もしかしたら、殺されるかもしれないというのに……

 

「また会えた時、今度はお互いに大きく成長していようぜ」

 

そう言って宇宙船に乗り込んでラディッツさんは帰って行ったのであった。




会いたいと主人公が思っても、相手は処分したい、もしくはもう家族ですらないと思われていて、もう目的が瓦解してしまった件について…
ラディッツがいい兄貴分みたいになっているけど
まず1人目の強化キャラはラディッツです。

指摘などありましたらお願いします。

今回出てきた惑星
『ナメック星:原作ではピッコロの故郷として出てきた、
超サイヤ人や印象の強い話が多いナメック星編で登場』
『惑星セッコ・オロ:作者オリジナル惑星、
戦闘民族だったり腕自慢の異星人たちが強さを示して夢を掴む惑星
名前の由来は円形闘技場の『コロッセオ』』
『惑星ティメ:作者オリジナル惑星、
1日が2日になる『精神と時の部屋』とは規模が違うが同じ条件の惑星
名前の由来は時間の英語である『time』』
『惑星ティビグラ:作者オリジナル惑星、
中心に近づくと重力場が強くなっていく惑星
名前の由来は重力の英語である『グラビティ』』


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『惑星探訪:ナメック星 暖かい眼差しと潜在能力』

段々強化されていってますがこれでも元が弱いし、修行不足なのであんまり伸びてません。


俺はラディッツさんが飛び立ってから数日後、ピタルから次の目的地に渡る事にした。

数日かかってメディカルポッドが搭載されたのだ。

これでケガについて悩む事は少ないだろう。

そしてこれでここにいる目的は達成された。

 

次は前から考えていた噂の絶えない惑星に向かう。

次の目的地はナメック星。

なんと集めれば願いの叶う不思議な球があるらしい。

そんなものは伝説でしかないだろう。

しかしあるのならば一度見てみたいという好奇心だ。

 

「さて…お世話になりました」

 

そう言って俺は宇宙船に乗り込んでいく。

話で聞いていたナメック星への座標を設定していく。

どうやらピタルからも近いようでここから2週間もしない間に到着するみたいだ。

 

「そっちも元気でな」

 

研究者にそう返されて俺はピタルを出発する。

さて……到着する前にこのメディカルポッドを活かして強くならないとな。

 

「まずはできる限り自分を痛めつけるところからだな」

 

ラディッツさんが言うには、サイヤ人は瀕死の状態から回復すると強くなっていくようだ。

しかし自分の体を使う場合は問題が生じる。

それは俺は力が弱いくせに体は頑丈だ。

そのせいでその基礎の段階に時間がかかってしまう。

前回の豹のように元が強い相手ならば容易にその条件も達成できるのだが……。

 

「まぁ、こればかりは悩んでも仕方ないし始めるか……」

 

といってもやり方は単純。

自分の腹に向かって力の強い気弾を撃ち込む。

気弾をコントロールできればこんな事にはならない。

しかし、今はそんな事ができないのだからこの方法がベストだろう。

 

「はあっ!!」

 

俺は勢いよく何度も何度も自分に向かって打ち込んでいく。

頑丈な体のせいかあまり思った以上にダメージが来ない。

結局意識がもうろうとするまでに到着3日前までかかってしまった。

 

「結局一回だけしか効果が期待できなかったな」

 

ピタル製メディカルポットの力で回復をしたのち、ゆっくりと休んでナメック星へと着陸する。

体を十分に休めておかないと、平穏を揺るがす者としての扱いで攻撃されたときに対処できない。

 

「おぉ……清々しい空気だ」

 

地上に降り立った瞬間、綺麗な空気が体中を満たしていくのが感じられる。

ピタルの雄大な自然から感じる空気とはまた別物だ。

しかし見れば見るほど珍しい環境で食物の実る木も畑もない。

狩りにしても獣もいそうにない穏やかな星だ。

 

「とりあえずはどんな場所か知るために探索してみるか」

 

歩けば歩くほど、牧歌的というかのどかな雰囲気が充満している。

気を探ってどの方向に人が居るのかを確認する。

そしたら南の方向へいくらかの気を感じるので向かって歩いていく。

飛んでいっても良いが、緑に染まった景色が美しいので見ておきたいと思った。

 

「ここは集落だったのか」

 

そう言いながらナメック星の人に向かって歩いていく。

流石に近づけば向こうも初めは分かっていなかったが、こちらに気づいて振り向いてきた。

すると異星人だからか警戒心をむき出しにした眼差しをする。

手を挙げて、何もしないという事を示しておく。

 

「一体、このナメックに何の用なのだ?」

 

この貫禄から察するにどうやらこの集落の一番偉い人のようだ。

とにかく用件だけでも伝えよう。

無理だった場合は何かしら手伝える事はないか聞くなり、友好的な態度で接しよう。

 

「この星に集めれば願いが叶う球があると噂で聞いたのですが、それは本当ですか?」

 

そう言うと相手は怪訝な顔をする。

しかしこの反応は相手に対して、大きな情報を与えているようなもの。

これが無いものであればそんな反応をする必要もない。

つまり、そこから考えると噂の存在は本当だという事だ。

 

「ドラゴンボールの事か、確かにこの星に存在するものだが……」

 

集落の偉い人は俺の質問に答えてくれた。

あるのならばどういった物か知りたいし、見てみたい。

俺はお願いをしてみる事にした。

 

「どういった物か見せていただきたい」

 

お願いをしたら、少しの間とはいえ俺の顔を見てくる。

中身を読み取られているような妙な感覚。

そして数瞬した後に相手は目を閉じた。

 

「うむ、邪悪な気をお前からは感じられない、いや限りなく邪悪な感じが薄いのかもしれん」

 

集落の偉い人は俺に対してそう言ってきた。

邪悪じゃないという評価はいいのだが、侵略したり戦闘する民族なのになぜそういった気がないのだろうか?

非常に不思議なものである。

しばらくすると集落の偉い人が目の前にドラゴンボールを持ってきてくれた。

 

「こんなに大きいのか!?」

 

その大きさは袋に収まるようなものではなかった。

鳥や獣も寄り付かないような肥大しすぎた果実を思わせる。

こちらが想像していた大きさをはるかに超えている。

抱え込んで持っていかないと到底運べはしないだろう。

 

「大きさに驚いているようだな、基本的に飾っていてとんでもない事態にもならん限り使わない代物だ」

 

そりゃあ、願い事を簡単に何度も叶えていてはな。

今頃ナメック星も栄華を極めていてもおかしくはない。

しかし、そういった事がないという事はこのありかたで満足をして、生活を営んでいるという事だ。

 

「集めるって言っても一体何個集めるんですか?」

 

見せてもらった中にあった模様が星1つだったのこれ以外にもまだあるだろう。

そしてそれを管理しているのが感じ取った多くの気があるほかの集落だ。

 

「7個ある、そして譲るとしても幾らかの条件が課せられており、それをクリアした勇者にのみ渡されるのだ」

 

奪う相手がいたら、これだけ大きいものは隠しようがない。

しかも実力行使をされたら、相手の強さ次第ではかなり厳しい気が……

 

「ここにいるものでは年老いた者もおるし、確かに戦闘タイプではない」

 

考えている事が顔に出ていたか。

しかし、ナメック星の人間たちには戦い向けとそうでない人がいるのか。

 

「だが異星人の並のものでは太刀打ちもできんよ、若ければさらに強いしの」

 

そう言って集落の偉い人が上に気弾を放つ。

するとそれがジグザグな軌道を描いていた。

どうやらある程度操作ができたりもするようだ。

 

「穏やかでも侵略するなら受けて立つという事ですね」

 

これならば侵略者がよっぽどの手練れの集団でもないと無理だろうな

そう思っているとにやりと笑っていた長老さんが顔を引き締めこう言い放つ。

 

「話をしていたが、最長老様に異星人の来訪として報告をしなくてはならない」

 

最長老様?

つまりはこの星で一番偉い人という事だろうか?

 

「最長老様は我らの親であり、長である、かつて自然災害で滅んだあと尽力なさって復興させたのだ」

 

なっ!?

つまり、ナメック星人は子孫を残す方法が全く異なるというわけか

しかし、そのような真似をして体の負担とかはどうなのだろう。

全てを生み出したのならば、並々ならぬ辛さがあったはずだ

 

「では行くぞ、ついてくるがいい」

 

空に浮いてそのまま集落の偉い人についていく。

思ったより速度が出るようで追い越したりはなかった。

こっちも見失わないように飛んでいたが、ピタルの時に比べて速くなっていて爽快だった。

 

「ここが最長老様の住居であられる」

 

飛行して数時間後、俺は高台にあった家に集落の偉い人とたどり着いていた。

長老さんがそう言ったら一人の若いナメック星人が家から出てきた。

長老さんと違って顔つきも体つきも違う、これが戦闘を得意とするナメック星人か。

 

「ネイルか、客人としてこの幼子を連れてきた」

 

ネイルという名のナメック星人は俺を見る。

訝しげな顔や不信感を持った目をする事はなく、しっかりとした眼差しでこっちを見据える。

邪悪な気が肌でわかるから悪人かどうかを感じ取ろうとしているのだろう。

 

「ムーリ殿、全てを最長老様はご存じです、どうぞお入りください」

 

問題ないのか、目を逸らして集落の偉い人もといムーリさんに対して道を開ける。

このナメック星人が強いナメック星人である事が肌でわかる。

今までいろいろな異星人を見てきたが段違いの強さを誇っている事が分かった。

これが戦闘タイプのナメック星人というわけか。

 

「よく来ましたね、ムーリ、そしてサイヤ人の幼子よ」

 

今まで見たいろいろな異星人や生き物の中でも大柄な部類に入る。

ムーリさんの何倍かの大きさを持ったナメック星人がいた。

流石は最長老と言われるだけあって、貫禄はすさまじい。

 

「なぜ、私がサイヤ人だと……」

 

一目見ただけで看破された。

相手の洞察力や観察眼がすさまじいのもあるが、仮にそうだとしても似た容姿が……

あるわけ無いか、だって尻尾がある。

ヤードラットで聞いた話では満月とかいう綺麗なものがあるらしいが見た事がない。

そんなモノ見てる暇があったら鍛錬を一秒でも多くする。

 

「こう見えても博識なので、異星人の事はよくわかるのですよ」

 

たぶん、俺が尻尾でばれるという事に気づいていなかったのを察して優しくいってくれる。

最長老様が俺を見ながら手招きをしている。

一体どういう事なのだろうか。

 

「すみませんね、貴方の事を知るためにもここまで近寄ってください」

 

近寄ると俺の頭の上に手をのせる。

大きく暖かみのある掌だ。

一体今から何を始めるのか?

 

「あなた、ある時期まで随分と嫌な思いをしてきましたね、まだ幼いというのに」

 

数分経った頃、最長老様が口を開く。

頭に手を置かれていただけだが、そのような事を言われるとは……

まさか手を置いて念じただけで記憶を覗いたというのか!?

ヤードラット星人たちとは違うが流石は最長老様。

こういった事ができるとは……

暖かい掌は頭からどかされる事はなく、次の瞬間。

 

「その悲しみの対価としてあなたの中に眠る潜在能力を開放いたしましょう」

 

そういわれた次の瞬間、何か壁がなくなったような感覚を覚える。

体から力が湧いてくるのが感じ取れる。

 

「こ…これが俺の眠っていたもの」

 

驚きを感じずにはいられない。

自分の中にこれだけのものが眠っていただなんて。

才能なんてないと思っていた。

それに眠っているとしても微々たるものだとばかり思っていたのに。

 

「といっても修行などでまた強くなるでしょう、あくまできっかけを与えて目覚めさせただけです」

 

その驚きに重ねるように伸びる余地があるというのが告げられる。

修行次第で俺はさらに戦えるようになるのだな。

 

「しかしなぜこのような真似を?」

 

わざわざ、初めての対面でこのような事をしてくれるのか?

俺が猫被っていたのならば暴れないとも限らないだろうに。

 

「それは貴方から邪悪な気を感じず善性があると思えた理由がはっきりしたからです」

 

そう言って、掌を頭から離す。

初めて会った人にここまで言われるのはこそばゆい。

このナメック星に来てからそう言った事ばかり言われている。

 

「その悲しかった日常はいずれ他者に優しくあれるきっかけになるでしょう」

 

それはとてもいい事だ。

誰かに優しくしてほしければ自分が優しくしていかないといけない。

自分のような存在を目の届く範囲とはいえ救えればいい。

 

最長老様の言葉を聞いて自分の考え方について整理を行う。

 

自分の思想が侵略が嫌いだという前提で成り立っているのがわかる

今まで奪って繁栄してきた戦闘民族として少しずれている精神だとは思っている。

しかし、その行為が恨みを買っていくだろうというのを感じ取っているが故の判断だ。

 

自分として大事なものは戦う事だ。。

一方的な蹂躙ではなく純粋な勝負、それこそが大事なもの。

その結果が何であれ受け止めなくてはならない、たとえ『死』であろうと。

戦闘で生き死にを決める、これも一つの戦闘民族の在り方だとは思う。

それが己の根幹であり全てだと、真剣に心の中でつぶやいていたのだった。




主人公居るからナメック星編は宇宙船いらなくね?と思ってはいけません。
瞬間移動して、もしこいつがやられたら宇宙置いてきぼり確定になります。
原作ではドラゴンボールが仕事してくれましたが……

指摘などありましたらお願いします。


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『惑星探訪:ティビグラ&ティメ 修行の日々』

オリジナル惑星での修業回です。
次回はヒロインを出す予定です。



「お世話になりました」

 

俺はそう言って頭を下げる。

ムーリさんがまた来るが良いと言ってくれた。

俺はそれに頷きで返して、ナメック星から旅立つ。

 

戦闘力の向上の為に再び体を痛めつける日々に戻る。

潜在能力の解放によって戦闘力が上がった。

 

今までと同じように体を痛めつけても効果が薄いだろう。

何故ならば自分を傷つけるというのは戦闘力が上がるにつれて頑丈になる為、致命傷を追うのは難しくなる。

それならば戦闘力をコントロールできるようになればいい話。

しかしまだ精密にできない為に普段は弱く気弾は強くというのが無理なのだ。

 

「次は重力の星、ティビグラか……」

 

一体降り立った時にどれ程の重力がのしかかってくるのか。

これで10倍が最大だったらいささか拍子抜けだ。

期待している結果が有れば一番いいのだけれど。

 

「着いたな……」

 

ナメック星から近いお陰で数日で到着した。

俺は惑星にゆっくりと降り立って環境を確かめる。

草木は生えているが、獣や人の気は感じない。

嫌な予感が当たった形ではあるが無人の星だったようだ。

惑星ズンや惑星ベジータの時と同じような重さを感じる。

 

「遠くにこれより区域『20』って表示があるから、あの表示から一歩進めば20倍の重力か」

 

因みにここは『10』と書かれた壁が有る。

どうやら最初の区域は10倍のようだ。

重さによって潰れるからか看板ではなく、建物らしきものの壁に刻まれている。

10倍の重さは慣れたものなのですたすたと歩いていく。

まず20倍がどれほどのものなのかと思って足を踏み入れた。

 

「ぐあっ!!」

 

入った瞬間、一気に上がった重力に驚くが何とか体を支える。

本当に一歩踏み入れた瞬間に重力が変わった。

歩を進めて僅かに息を整える。

きっちりと区域分けされているのがすごい。

 

「でもこれくらいは強くなる為には慣れておかないとな……」

 

俺はこれからできるだけ強くなっていかないといけない。

もし仮に今まで世話になった惑星が危機に陥った時、すぐにでも助けられるように。

最初は苦しくて満足に動けなかったが二週間ほどで20倍の重力にも慣れてきた。

この順応性の高さもまたサイヤ人の特徴なのだろうか?

 

「今なら気弾を自由に動かせるだろうな」

 

両手を合わせて試しに一発空に向かって撃った後、腕を曲げたり回したりして動かしてみた。

うまく動いてはいるがムーリさんがやったようなジグザグなんて言う複雑な動きはできない。

自由自在に動かすのは俺が思うよりも高等技術なのかもしれない。

 

目線を向こうにもっていくと重みでその場所自体に建造物が作っていけなくなったのか、白線で区切っていた。

更に床に書いているという始末。

少しでも注意が散漫になれば恐ろしい結末が待っているだろう。

 

「30倍になるとやっぱり厳しいな……」

 

20倍の時と違って体を支えるとかだけではなく、足が踏み出せず地面に重さで縫い付けられたようになっていた。

中腰のような状態から何とか態勢を整えるのに時間をかなり費やす羽目になった。

それから一ヶ月ほど30倍の重力をものにするまでかかっていた。

この頃には体が重力の重さで傷ついたりもしていたのか筋肉がついているのがわかった。

 

次の40倍の時にはまた一段と重い重力が体全体にに襲い掛かり、それに慣れるのに二ヶ月の時間を費やしていた。

初めは自然と頭がお辞儀しそうになったり腕が思ったように上がらなかったりした。

しかし流石に、二ヶ月も経ってくると動きも変わってくる。

蹴りのための足が上がったり、拳の速度が普段の重力と同じほどになっていた。

 

そして40倍の重力にも慣れたので意気揚々と次の50倍に行った瞬間……

 

「ぐああっ!!」

 

なんと区域に突っ込んだ爪先がメキメキと音を立てている。

筋肉や骨が潰れていく感覚が伝わってくる。

 

何とか力を振り絞って脱出できたがこれでは慣れる前に体が潰れてしまうと思った。

これは肉体の強度がまだここに至るほどではないという事。

骨や筋肉が更に強靭にならないといけないというわけだ。

 

その為、50倍での修業は今回は断念して次の惑星に向かう事にした。

いつかもっと戦闘力が上がってからにしておこう。

どうやら星の広さ的にまだまだ区画としては50倍で半分もいっていなかったかもしれないしな。

 

.

.

 

ティビグラでの疲れや傷を癒しながら、次は惑星ティメへと旅立つ。

 

噂では日時の長さが倍の星。

つまり修行をするときは倍の時間を使用できる。

ただ、ここで考えてしまう問題は……

 

「動く速度が半分になってしまうから倍なのか、ただ単純に倍なのか」

 

どういった要因で倍の時間を生み出しているのかだ。

前者であれば、嬉しくもなんともない。

ただただ体感する時間が倍になっているだけで錯覚なのだ。

後者であってほしいと思いながら向かっていった。

 

「こっちも無人の星で、重力は10倍ほどか」

 

すっかり重力の感覚がわかるようになった俺は惑星固有の重力を的確に見抜く。

空気はかなり薄いし気温の上下が激しい。

こんな厳しい環境で住む存在がいないのも納得である。

ティビグラも相当な強さがないと10倍の時点でしか生活できない。

そんな星では誰も寄り付かないだろう。

 

「まずは基礎的な戦闘力を上げていかないと話にならない」

 

自傷行為からの治療で2回ほど力は上がっている。

いつまでもあの方法で強くなれるとは限らない。

確実に頭打ちになる場面が出てくるはずだ。

 

そう言った上昇幅の停滞。

それを知る為に、あの時にラディッツさんが使っていた機械が有れば良かったのだが……。

その機械を手に入れるという事はあの憧れの人を殺した奴の部下になるという事。

また、惑星ベジータを滅亡させた奴の言いなりになるという事。

そんな生き方を選ぶくらいなら、命を絶った方がまだましである。

 

「はっ!!」

 

今の自分が出せる全速力の動きをして、どれほどこの惑星の空気が薄いのかを確認する。

それを踏まえてから後の動きにも注意をして無駄のない動きを行う。

無駄な動きが多いから余計な体力を消耗するのだ。

それならば無駄な動きを削いでいくしかない。

そうすれば体力切れで相手から手痛い反撃をされる機会も減っていく。

 

「しっ!!」

 

腕のスナップを利かせて最小限の動きで拳をふるう。

速度は有るし、想像上の相手に最短距離で辿り着くように打っている。

だが、ここでも構えや打つ拳、速度と言った観点から無駄について考える。

もし相手よりも先に攻撃が指一本分届けば、それだけでも十分なアドバンテージだ。

しかし指一本先に届かせても、相手を打倒できる威力になるかどうかとは疑問が残る。

その為、そのアドバンテージをどのように活かしてみるか。

そしてその活かすための戦いは、本当に今の自分で実現可能かを考えに考え抜いていく。

幸いにも惑星の特性で時間があるおかげでこういったことができるのだ。

 

.

.

 

惑星ティメに降り立って、修行を始めてから半年ほどたった。

あれから戦闘スタイルについて考えていたが、一本拳といった中指を突き出した拳の構えに落ち着いた。

そして、その構えから相手の急所を的確に射貫くようにシャドーを行っていく。

考え抜いて鍛錬を行った結果、指一本分の優位を存分に活かす動きを身に着けた。

 

速度重視の動きでも無駄を省いている。

力で相手を押すときの動きだって十分に考えた。

反撃されずに相手を打ちのめす。

その目的の遂行の為、隙を極力少なくして延々と攻撃を続けられるようなコンビネーションを考えた。

あとはこの編み出した動きが実戦でどれだけ通用するのかといった所だ。

 

見た目については背丈も伸びたし、体重も増えた。

あとは前々から手にしたいと願っていた気のコントロールも身についた。

初めは抑えておいて、戦う時には一気に放出。

これで相手の油断を誘うことはできるだろう。

 

さらに気弾の操作も自由自在と言えるほどに進歩した。

相手を追いかけるようにできる。

空中に留める事だって可能だ。

 

「これくらいでいいな、これ以上はやっていると感覚がおかしくなってしまう」

 

半年で引きあげたのは感覚がおかしい尺度にならないため。

ここに永住するつもりでなければ短期の鍛錬に使うのが一番の活用方法だろう。

半年だけでもこれだけ十分な成果が得られる。

もし、もっと長くいたらどれほどの成果を見込めただろうか。

ただ、いくらサイヤ人の若い時期が長いといってもわざわざ老化を進めるのはいかがなものだろうか。

 

「次の目的地は『拳闘惑星』セッコ・オロか……」

 

俺は宇宙船に乗り込んで座標の設定を行って次の目的に向けて発進する。

戦闘民族の血が騒いでいるのだろうか。

俺は、最も楽しみにしている惑星へと向かうのだった。




修行の描写で時間は使っていますが戦闘力は思ったよりは上がっていません。
ナメック星での潜在能力解放でもまだ土台ができてないから、解放されても努力次第の伸びしろって感じの書き方にしてます。

ちなみに一本拳で急所攻撃は超のヒットの戦闘スタイルですね。
まぁ、彼と違って時とばしがないのと、今の主人公と原作キャラとの戦闘力の差が大きいので言うほど通用しないでしょうが。

指摘などありましたらお願いします。


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『惑星探訪:セッコ・オロ 誰よりも強い女』

この物語のヒロイン登場回です。
純粋な恋愛というよりも戦って芽生えていく愛をイメージしています。


惑星ティメを出て2ヶ月ほど過ぎて、俺は目的地である『拳闘惑星』セッコ・オロに到着した。

下ろすところは正式な場所が有って非常に助かった。

今まではそんな設備がない穏やかな星。

もしくは無人の星だったからな。

 

「こんなに賑やかなのは初めて見るな……」

 

セッコ・オロに着くと目を見張った。

四方八方見渡しても人、人、人。

今までとは比べ物にならないほどの多さだった。

ズンやピタルとは違う華々しい街。

人の笑顔の多さや満ち足りた表情の数はナメック星やヤードラット星もあったがその比ではない。

 

「建物もいろいろな種類がある」

 

演劇場、酒場、宿屋と言ったように人の娯楽や居住を満たすものも有る。

人がそう言った場所に入っていったりしている。

そして、一際目を引くのは町の中心部にある大きな闘技場。

これこそが名前の由来と言われている。

 

「まぁ、折角来たんだから試合とか見ておきたいよな」

 

そしてあわよくば選手になりたい。

やはり修業をした以上、試すために戦ってみたいのだ。

 

俺は何も持たないで正面入り口から入ることにした。

しかし、警備員の人たちに阻まれてしまう。

まぁ、当然の結果ではあるのだが。

 

「チケットはどうした、もしくは入場料を払わないと中には入れないぞ」

 

確かにそんな施設はあったが、チケットを俺は買っていない。

なぜならば……

 

「金は無いです!!」

 

自信満々に言い放っているが、冷静に考えてみると情けない事この上ない。

しかし、いまだに俺の年齢は7歳。

年齢制限があるため、金を稼ぐ方法がないのが事実だ。

 

「じゃあ、残念だが入れるわけにはいかないな」

 

そう言われるとヒョイと持ち上げられて、軽く置物を置くように門から遠ざけられた。

むしろ痛い目に合わなかっただけでも良かったな。

 

「追い出されたが、力ずくで入ってみよう」

 

もう一度正面口に行って、警備員に止められるもそのままぐいぐいと力任せに押して入ろうとする。

しかし、この時うっかり体格差を忘れていた。

警備員が面倒くさそうな顔をして、ヒョイっと持ち上げるとそのまま投げられた。

 

「悪用したらあいつらの気は分かっているから後ろに瞬間移動すればいいだけなんだけど……」

 

ここはあえて戦闘民族らしく人目についてしまうが相手を気絶させるか。

本当に年が足りていれば金銭的な部分も解決はできるんだが……。

構えて三度目の突入を試みる。

 

「いい加減にしろぉ!!」

 

流石の警備員も怒っている。

しかしどうしても入りたいのだ。

だから俺は……

 

「ごめんなさい!!」

 

そういって最大速度で接近をして躊躇う事もなく喉に一本拳の拳を叩き込む。

相手が一つ短く呼吸を吐き出すと、それを最後に気絶をしてしまったのか崩れ落ちてしまった。

その横にいた人も怒りの形相で武器をふるうが、その一撃を避けて飛び膝蹴りを決める。

二人を瞬く間に昏倒させた後、声をかけても目覚めないかどうかの確認をする。

俺は確認を終えて堂々と闘技場に入り込んでいった。

 

.

.

 

「俺がこの闘技場を仕切っている、コロってもんだ」

 

今、俺の目の前には筋骨隆々の異星人がいる。

あの後に観戦をしているといきなり肩を叩かれてついてこいと言われた。

その先が支配人の部屋だった。

多分これから説教されるのだろう。

確かに警備員を気絶させて無賃で観戦していた。

 

「なんでわざわざ声をかけてくれたんですか?」

 

しかし、それをせずとも警察に突き出せばいい。

こちらには侵入していたという負い目もある。

それなのにわざわざこのような場所に連れてきている。

そうなるとなぜなのかという部分で気になる。

 

「そりゃあ試合を楽しそうな目で見ているんだ、そんなもん気になってしまうじゃねえか」

 

この目で直接見る強い者同士の戦いには心躍る。

自分ならどう戦うと考えたり、相手の隙が分かった瞬間、自然と笑みが浮かんでしまうのだ。

 

「戦っているのを見るとやっぱり熱い気持ちになりますよ」

 

そういって握り拳を作る。

そんな俺を見てコロさんが肩をたたいてきて満面の笑みでこう言った。

 

「戦いたいんだったらうちのもんになりな、入団テスト受けさせてやるからよ」

 

いきなりな話だが戦えるのなら、これ以上楽しい環境はないだろう。

しかしそれでも悪い事をやったのにいいのだろうか?

 

「あの程度はガキの悪戯で済むもんだ、警備員も内心は笑っているだろうよ」

 

そう言って大きな声で笑う。

それはそうと入団テストとは一体何をやらされるのか?

 

「難しい事じゃねぇ、この機械を使って数値を測ってどういった処遇にするか決めるんだよ」

 

そう言ってコロさんが顔につける機械に俺は見覚えがある。

まさかここでお目にかかれるとは。

 

「なぜ、この機械がこの場所に?」

 

あの時ラディッツさんが顔に付けていた機械がこんな所に有るなんて驚きだった。

しかもその手に入れた経緯がもっと驚きだった。

 

「なんか一回下っ端みたいなやつが観戦中に乗り込んできたから返り討ちにしてやった」

 

その下っ端でも機械を持っている時点で強さは1000は超えているだろう。

それでも倒せる当たりここのレベルの高さを思い知る。

 

「その時奪ったんだよ、これを」

 

そう言って横のボタンを置いて計測を始める。

想像以上に高くなっている数値を告げられて俺は驚いた。

 

「3287か……入団時の数値としては歴代2位だな」

 

この口ぶりからすると初めから高い状態で入団した人もいるという事。

しかし俺が2位という事は、才能に満ち溢れたような人材ばかりがここにいるというわけではない。

この闘技場で生きるか死ぬかの修羅場を、幾度となく潜りぬけて強くなっていった人たちだ。

 

「1位はどれくらいなんですか?」

 

ここで俺も戦い続ければさらに強くなれるだろう。

少なくてもそう思えた。

 

「確か6694を計測したな」

 

その数値を聞いて驚く。

初めの時点から倍以上の開きがある相手、いったいどんな人なんだ?

とても気になるな。

 

「そいつは今この星全体のチャンピオンだよ、今計測したらどれくらいあるんだろうなぁ」

 

.

.

 

入団テストはOKだったが、今のこの闘技場におけるチャンピオンがどういう奴か見せてやる

そう言って観客席に俺は連れてこられていた。

警備員の人には話を通してもらって、謝罪をしたことで穏便に済ませることができた。

心の広さに感謝するばかりである。

 

今回の挑戦者はいかにもパワータイプだというような体型だ。

薄い青色の肌をしていてこれでもかというほどに筋肉の鎧を見せつけている。

気合の入った雄たけびを上げていると次はチャンピオンが入場してきた。

その姿に俺は一瞬で目を奪われていた。

 

薄紅色の肌、腕も足も長く長身。

腰まである美しい銀髪が風にたなびいている。

整った顔というのだろうかとてもきれいな人だった。

しかし年齢は驚くことにプロフィールの実況で14歳と言っていた。

つまり肉体が早熟という事で整っているのだろう。

 

「試合始め!!」

 

何かしら円盤状のものを打って大きな音が鳴り響く。

それと同時に挑戦者が一目散に駆けていく。

動き自体は速いが、この勢いを逆に利用される事も有るだろう。

 

もし、カウンターを出されたりしたら一気に大きなダメージを負う事になる。

試合が始まって早々にそんな事になれば、劣勢からの巻き返しとなってしまう。

 

そうなると挑戦者は厳しい展開を強いられる。

勝つ為にはか細い勝利の糸を何度手繰り寄せないといけないのか?

考えるだけで気が遠くなりそうなものだ。

 

「どりゃあ!!」

 

挑戦者は太い腕を振り回すように一撃を繰り出す。

あまりにも隙が多すぎるな、そのまま突き出した方が速いだろう。

そんな大振りが当たるのは互いに疲れを見える場面あたりだと俺は思っている。

チャンピオンはその攻撃を軽々と避けて、その拍子に挑戦者の腕を掴んで背負い投げをする。

 

「せいっ!!」

 

挑戦者を豪快に地面へと叩きつける。

受け身を取らせる暇もない早業に大きな音を立てながら、挑戦者は背中をしたたかに打ち付ける。

背負い投げじゃなくても、カウンターでどこかしらに叩き込めただろう。

だが挑戦者が体勢を整える時間を利用するために、あえてこっちを選んだといった所か?

 

「ぐっ……」

 

挑戦者が呻いている間に、チャンピオンの追撃が始まる。

勢いのついた強烈な蹴りを挑戦者の腹に叩き込む。

挑戦者の腹の中心から何かが破裂するようなとんでもない音が聞こえた。

それだけチャンピオンの蹴りの威力が凄いという事だ。

この一撃は先ほどカウンターをやった直後でも決まっていただろう。

しかし繰り出す際に挑戦者が倒れこんでいないと、カウンターにより向上した威力で少し吹き飛んでしまう。

今回の様に追い打ちをかける際、迅速に行うための判断だったのか。

 

「おえぇ……」

 

あの一撃が重すぎたのか、挑戦者が胃液を吐き出している。

そんな状態でも息も絶え絶えになんとか起き上がる。

しかし起き上がったその瞬間を狙いすましたかのように、チャンピオンの膝蹴りが顔面にめり込んでいた。

無防備な状態であんなもの喰らってしまったら、体勢を整える暇もなく崩れてしまう。

 

「ぬぁ……」

 

そして挑戦者がよろめいた瞬間にチャンピオンが連続エネルギー弾を叩き込んでいる。

挑戦者は両手を交差してガードを固めることでその連射を受け止めている。

しかし一息つく暇もない連射で徐々に挑戦者のガードが下がってしまう。

そしてその挑戦者の防御の体勢が崩れた瞬間、チャンピオンは一気に接近をして鼻面に頭突きをお見舞いする。

 

「ちっ……」

 

挑戦者が何とか逃れようと後ろ向きに倒れこもうとした瞬間に、空いた脇腹へ突きを入れる。

その一撃から一気に勝負をつけるためか、戦意を削ぐためか知らないが怒涛のラッシュを仕掛ける。

 

「うがっ……」

 

一撃一撃が挑戦者の体をすり抜けてまるで吸い込まれていくように、当たっていく。

ことごとく急所にも入っているし牽制で挑戦者の反撃を許さないようにする間の取り方。

ベテランのような試合運びや技術だ、これがチャンピオンの成せる技といった所か。

 

ひたすらに一方的に挑戦者を打ちのめしているが、どこか違和感を感じる。

そしてその正体が俺にはわかる。

 

「この人、まるで本気を出しちゃいない……」

 

確かに挑戦者よりは強い力で対応しているがそれでも全力じゃない。

つまりそれだけ挑戦者との力の差が開いているのだ。

 

「これがうちのチャンピオンのピオーネさ、あいつは現在無敗の絶対女王だ」

 

そりゃあそうでしょうね。

だって挑戦者がボロボロなのに対して傷一つ負わず、息切れもしていない。

その時点で実力の違いは分かっている。

それに加えて本気じゃない。

挑戦者自体が弱いわけではなく、チャンピオンの強さがこの闘技場において圧倒的なのだ。

 

「ガァアアア!!」

 

なんとか挑戦者が立ち上がって力を振り絞って突進する。

しかし、チャンピオンはそれを正面から受け止めて軽々と上へ放り投げる。

そのまま飛び上がって空中で挑戦者を捕まえると瞬きさえ許さない早業を披露する。

挑戦者の脇の下に腕を差し込む。

更に挑戦者の膝の裏から絡ませるように足を引っかける。

長い手足を活かすことで挑戦者の手足を動けないように固めていく。

 

前転をするように固めていた自分の体を激しく回転させて、その勢いのまま挑戦者を地面へ叩きつける。

肉弾攻撃だがその威力はすさまじく地面に罅が入って挑戦者はピクリとも動いていなかった。

始まってからこの勝負が終わるまで5分も経たなかった。

二転三転もする事は無く終わってみれば、チャンピオンの強さだけが際立ってしまう試合内容だった。

しかし、観客はこの圧倒的な強さに魅せられているのか、歓声をチャンピオンに浴びせていた。

 

「あれが決め技の一つ『リインカーネーション・オブ・ブレイク』だ」

 

『破壊の輪廻転生』とは随分とまた大層な名前だな。

しかしあの威力を見るとそんな名前にも納得がいく。

あれ以外にもまだ技があるようだが、気弾の大技を今回見せることがないままに戦いを終わらせていた。

一体あの人に本気を出させる人がどれだけいるんだろうか?

 

「明日からはお前もあの場所に立つんだからな、がんばれよ」

 

勝者の名乗りが終わると立ち上がって、俺の頭をワシャワシャとなでながら団長は去っていくのだった。




ヒロイン紹介:
名前:ピオーネ
名前の由来:『王者のイタリア語訳:カンピオーネ』
※ぶどうにもその名前の品種はあるんですがツフル人ではありません。

現在の戦闘力:7200(普段)10128(全力)
容姿:
腰まである銀色の長いさらりとした髪。
顔は整っていてきれいである。
薄紅色の肌、蒼い瞳、長身で手足が長い。
スタイルもいいが本人に自覚はない。
年齢は14歳だが、肉体の成長が早くすでに完成の域に達している。
その為、文字通り大人と子供の体格差がガタバルとの間にある。

指摘有りましたら、お願いします


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青年時代
『時は流れ、強き戦士へと』


前回から10年経過させてますが、その合間の話はきちんと投稿します。
主人公だけではなくヒロインの戦闘力も10年で上がっています。



あの日、セッコ・オロで拳闘士になってから早くも10年近くが過ぎた。

初めの頃は相手との実力が拮抗していたので死にかけるような戦いが多かった。

しかしその都度ピタル製メディカルポットを使い、傷ついた体を癒してきた。

そのおかげで段々と力を伸ばす事が出来て、今やチャンピオンと戦う権利を持つまでになった。

惑星の力自慢、喧嘩自慢が集まるとだけあってその強さは伊達ではなかった。

しかしあの初めて見たときに戦慄さえ覚えた女性。

あれは別次元だろう。

事実、あの日から10年たった今もまだ負けていないのだから。

この惑星の生ける伝説と言われているのも納得できる。

 

「ふぅうう……」

 

息を吐き出して気持ちを落ち着ける。

今までの戦いでも、今日の戦いに勝る事は無い。

ピタルでの豹は死と隣り合わせだった。

挑戦者の権利を得るまでの今までの戦いはそれに加えて、緊張や期待が重くのしかかって苦しい事もあった。

 

今まで格上と戦った経験はあった。

しかし戦闘力では俺の方が高かった。

ここでいう格上とは経験則や引き出しの多さなどで補強されている人達の事を指している。

しかしそれでも一枚、もしくは歩数で言えば半歩先と言った部分だった。

 

初めから自分より遥かに強いと分かっている相手に挑むなどラディッツさん以来である。

しかし、そんな心とは裏腹に沸き立っている。

俺に流れている戦闘民族の血がこれから始まる戦いに対する不安を拭っているのだろう。

今までにない強者との戦い。

その喜びに打ち震えていて、感情の天秤を大きく傾けている。

 

威風堂々と入場してくるチャンピオン。

それを見て俺はこの10年で染み付いた一本拳の構えをする。

気合十分と言った表情でピオーネを見据えていた。

 

.

.

 

「わざわざ戦い見たさにこのような場所にまでくる必要があるんでしょうか?」

 

俺はある人と一緒に『セッコ・オロ』に観戦に来ていた。

フリーザ様からも仮にこの惑星にめぼしい者が居たらスカウトしても構わないと言われている。

 

「キュイさん、これでいいのですよ、一番の娯楽が戦いであるこの場所ならばいいものがみれるでしょう」

 

ルビコラと言われるサイヤ人の女性。

フリーザ軍技術部でもかなり有能かつ敏腕な人材である。

その技量や開発力はサイヤ人でありながらフリーザ様からも信用されているほどだ。

 

「お眼鏡に叶うほどのものになればいいんですがね……」

 

ルビコラは戦いが苦手で自分が前線に立つ事は頑として拒んでいる。

しかし、このように戦いを見る事は好きらしい。

よく部隊内で行われている模擬戦は観戦したりしている。

 

「ちっ……」

 

分からない程度の音で舌打ちをする。

不快感が有るのはたった一つの理由。

サイヤ人と言う種族だからなのだろう、技術系等に力を注いでいるのに戦闘力で下級兵士を超えている。

性格がよく、面倒をよく見るなど非の打ち所がない様な女性ではあるが、唯一この戦闘力の高さが気に食わない。

サイヤ人は戦わないやつでも名門だったらある程度の実力があるらしい。

血筋や才能でいくらでも伸びていく可能性を秘めているのだ。

 

「ほぉ……あの男の戦闘力が7348、仮にフリーザ軍にいたとしてもかなりのものですね」

 

スカウターで戦闘力を測定して選手の強さを見ている。

うまくいけばスカウトできるかもしれないもんな。

 

「そうですね、さて……あの女は?」

 

珍しい外見のやつだがここのチャンピオンだ。

どれほど強いのか興味はある。

 

「ほほぅ、9769とは想像していたよりはなかなかいいじゃねぇか」

 

最初に思った以上に戦闘力がありやがる。

よく見りゃこの試合場にはいないが、建物内の所々に戦闘力3000以上のやつらがぽつぽつといやがる

昔に馬鹿な奴がここにバカンスに来て、調子に乗って試合場に乗り込んだが返り討ちにあった話も納得できる。

因みにそいつはその時にスカウターまで奪われてしまい、そのまま帰った後でフリーザ様に処刑されていた。

そんな事を考えていると戦いが始まりやがった。

 

.

.

 

「はあっ!!」

 

俺は拳を顎に向かって突き出す。

その攻撃をピオーネは首を動かすだけで避けるがそれは想定内。

確かにピオーネの顔や腕は素早く動いている。

しかし流石にピオーネと言えど同時に幾つもの体の部位を連動して動かせはしないだろう。

 

「しっ!!」

 

俺はピオーネの足に狙いを定めて鋭い蹴りを放つ。

この狙いはずばりピオーネの機動力を奪って試合を優位に進める為だ。

ピオーネが顔を動かしたおかげで足に対する攻撃への反応が遅れてしまう。

そして、ピオーネはこの一撃を脛でカットする事が出来ずにそのまま受ける事になる。

ここから俺は攻撃の手を緩めずに仕掛ける事で、ピオーネの綻びを徐々に作っていく。

ピオーネはまだ実力を抑えている可能性はある、その間にピオーネに手痛い一撃を負わせる。

 

「りゃあ!!」

 

俺はピオーネの脇腹に一撃を放つ。

ピオーネがそれを避けて、俺の頭へ蹴りを放ってくる。

頭を下げてそれを回避すると次はこっちの番だ。

 

「ふん!!」

 

上がっている足が地面に着く瞬間を狙って水面蹴り。

足を払ってバランスを崩したならば、接近して間合いに入る。

体勢を整えようとしたその時を狙って、アバラの隙間を縫うように拳をねじりこむ。

 

「がっ…」

 

俺は一瞬ピオーネが呼吸を吐き出した隙を見逃さなかった。

その僅かな時間の合間に追撃で、ピオーネの顎にもう一撃効くやつをお見舞いする。

この一撃で顎を揺らされたピオーネは膝ががくがくと揺れている。

よしっ、この勝負所を逃してはいけない。

ここで攻撃の手をさらに強めていく。

この場面で使えるのは速く出せる技だ。

この技は人の借りものだが、これでいいだろう。

悩んだりした時間がピオーネに立て直しの機会を与えてしまう事に繋がる。

 

「『サタデークラッシュ』!!」

 

ラディッツさんの技を使ってピオーネが立て直す前に畳みかけていく。

ピオーネはどうやら腕で顔に来た一撃を防いだようだが、その間は腹などは無防備になっている。

その無防備な腹部を狙って飛び上がって攻撃を放っていく。

 

「かぁ!!」

 

俺が選択したのは気を宿した強烈な飛び回し蹴り。

ピオーネには腕を交差したり、後ろに飛んで衝撃を軽減する暇は無かったようだ。

その為、ピオーネは俺のこの蹴りを無防備な形で喰らった。

 

そしてその一撃の衝撃で壁際まで一気に吹っ飛んでいく。

俺はここが大技を喰らわせる機会と踏んだ。

 

ピオーネを深追いして機を逸するような真似はせず、冷静に次の一撃の為に気を貯める。

ここで相手の勢いを削ぎ、なおかつ大き目な技を見舞えばピオーネの勢いは落ちるだろう。

強引に突破を図ったとしても流石に唯では済まないはずだ。

 

「喰らえ、『コンドル・レイン』!!」

 

ピオーネに向かって高威力の気弾の雨を降らしていく。

避けるのは今の体勢が悪いから、一瞬遅れてしまうだろう。

今の体勢を立て直す動作をしてからになる為、その時間が生まれるのは普通の事だ。

そしてその一瞬が再び攻撃の手を継続させる事につながる。

 

「くぅっ!!」

 

ピオーネは腕を交差して攻撃を受けざるを得ない。

本来ならば避ける為の時間を今の立て直しで使っているからだ。

そして俺は簡単には立て直させない為に、延々と絶え間なく撃ち続けている。

これでピオーネが終わる訳が無いから俺はさらなる追い打ちの為に気弾を作る。

 

「はああっ!!」

 

俺が最後に大きなエネルギー弾でピオーネを吹き飛ばす。

勢いを削ぐ為の気弾の雨から始まり、最後に大きなエネルギー弾で吹き飛ばすという今に至るまでの一連の動作。

その攻撃には十分な手応えがあったと俺は思っている。。

ピオーネは今避ける事はできていなかったから、かなりの数が命中しているだろう。

 

「……生まれてはじめて、こんな気分は」

 

あれだけの連射を食らっても倒れる事は無かったか。

片膝をついた状態から笑みを浮かべながら立ち上がりそう呟く。

どういった気分なのだろうか?

屈辱なのか、高揚感なのか、それが気になる。

 

「だから生まれてはじめてこの気分にさせてくれたあなたに敬意を表して……」

 

構えるとさっきの状態から一気に威圧感が跳ね上がる。

少しずつではあるが言っている間にも気が高まってきている。

 

「本気で行くわ」

 

その言葉が終わると同時に気が噴き出す。

そしてピオーネの逆襲が始まった。

今までとは段違いの速度でこっちに迫ってくる。

 

「ぬっ!!」

 

俺は速度の変化に一瞬反応が遅れたが、一撃を何とか避ける事はできた。

しかしピオーネの攻撃がその一撃で終わる訳が無い。

その次に来た拳の攻撃も何とか避けるが、さっきとは違い攻撃の後に気弾が続いて襲い掛かってきた。

それを後ろに下がって避けると、驚く事に俺は後ろから頭を掴まれていた。

いつの間にピオーネが後ろに回ったのか、その動きを目で追う事が出来なかった。

 

「くっ……」

 

ピオーネが俺の頭を力強く掴んでいる。

俺はその腕を振り払おうとする。

しかしピオーネの次の行動は速く、空中に投げられる。

 

「はぁっ!!」

 

ピオーネは跳躍をして俺を追い越し、強烈な踵落としを喰らわせてくる。。

俺は回避も防御もできずに、そのまま勢いよく地面に叩きつけられる。

体中がグワングワンと揺さぶられるような衝撃が来る。

 

「くそっ!!」

 

俺はすぐに立ち上がって攻撃を仕掛けにいく。

その頭のすぐそばを強烈な蹴りが紙一重で通り過ぎる。

当たっていたらと思うと鳥肌が立ってしまう。

なんとか反撃を試みるが避けられる。

もしくは平然と捌かれてカウンターを食らいそうになっている。

変化した速度に判断が出来ても体がまだついていけない。

この上がり具合から察するに、さっきまではおおよそ7割ほどの力で戦っていたな。

 

「はっ!!」

 

ピオーネが蹴りを放ってくるから、足を上げて防御をする。

そしてこちらからカウンターを叩き込もうと試みる。

しかしここでも予想を超える事態が起こった。

 

「ぐあぁっ!!」

 

俺は繰り出された蹴りを足を上げて受け止めるが、足を透過するように衝撃が襲い掛かる。

受け止めた足は折れていないが、透過した衝撃はろっ骨を折るには十分なものだった。

防御が意味をなさない奇妙な技術。

その気になれば内臓にだけダメージを負わせたりもできるだろう。

これでは避ける事以外で、ダメージをどうこうする術がない。

 

「はあっ!!」

 

ピオーネが再度蹴りを放ってくる。

俺は受け止めようと腕で防御をする。

しかし痛みで僅かに反応が遅れてしまい直撃してしまう。

踏ん張る事もできずに蹴り飛ばされそうになる。

 

「ぬぐぅ……」

 

しかし俺が蹴り飛ばされる事は無かった。

その代わりに蹴りの痛み以外にじわりと広がるような痛みも感じる。

何故ならばピオーネはその脇腹に自分の足の指を精密に刺していたのだ。

俺の脇腹は血をぽたぽたと落としている。

まさかこんな手を使って動けないようにされるとは、予想外すぎて声も出ない。

 

そんな事を考えていたら再び頭を掴まれ、そのまま地面へ左右に延々と叩きつけられて、意識が遠のいていく。

壁に向かって投げられるが、何とか壁を蹴ってその勢いを活かし大技を仕掛ける。

この技ならば避けられる可能性はあるが当たった時のダメージも期待できる。

 

「喰らえ、『クロスリヴェンジャー』!!」

 

腕をXの形に交差させて放つ大技。

範囲も広いが弱点がある。

その弱点とは放った後、操作ができずに一直線にしか攻撃ができないことである。

 

「こっちの隙も作らずに大技とは焦りすぎたね」

 

ピオーネが飛んで避けるのが見えた。

その拍子に観客席が崩壊してしまう。

確かに大技だし、今の指摘はもっともだがこれは最強の技じゃあない。

それにあんたが避ける事だって織り込み済みの上で今の技は出したんだぜ。

次に仕掛ける技が本命の大技だ。

 

「こっちだ、『アルバトロス・ブラスター』!!」

 

ピオーネが飛んで避けた瞬間に、俺は瞬間移動で後ろを取る。

そして俺はアホウドリの形をした大きな気弾を放つ。

それをピオーネの無防備な背中に喰らわせる。

 

「きゃあぁぁ……!!」

 

ピオーネは防御や回避が間に合わず、無防備なまま気弾に呑み込まれる。

手応えは十分にあった。

そのまま気弾が壁を突き破っていき、建物がさらに崩壊していく。

 

「はぁはぁ……」

 

煙が晴れた時に現れたのはかなりダメージを受けたピオーネの姿だった。

流石にあの距離と威力では無傷と言うわけにはいかず、服が所々破れて銀髪もちぢれたような状態であった。

ピオーネは仕返しの必殺技を放ってきた。

 

「『バニッシュ・ウィップ』!!」

 

ピオーネは両手を前に出して、細長い鞭のような形状をした二本の気弾を放つ。

この一撃は今の俺の状態では受け止められない。

俺は飛び上がってこの攻撃を避ける。

 

「まだまだぁ!!」

 

しかし、ピオーネはそれを予測していたのだろう。

足に力を込めて跳躍をしてくる。

あっという間に俺よりも高く飛び上がって追い越されてしまう。

そしてピオーネはあの技のセットアップへと入っていく。

俺は体を捩って逃げようとするがその早業に抵抗は許されず、瞬く間に体を固められてあの大技の体勢に入る。

 

「『リインカーネーション・オブ・ブレイク』!!」

 

往生際が悪い俺はまだなんとか抜けようとする。

しかし、がっちりと体を固められて動く事すらままならない。

まだ指が2本動かせれば瞬間移動で抜けられたんだが、その指すら抜く事が出来ない状態だ。

俺は骨が折れてもいいから強引に外して受け身をとろうと試みる。

しかしピオーネは本来の着地地点から徐々にスライドしていく。

その瞬間、どこに俺を叩きつけるのかは確信することができた。

 

そしてその予想は外れず、俺の目の前まで別の着地地点が迫っていた。

ピオーネが繰り出した技は俺を壁に向かって叩きつけていく。

轟音が闘技場全体に鳴り響いて、壁中に罅が入ってガラガラと崩れていく。

俺は痛みで頭の中が整理できていないが、意識はなんとかぎりぎりつなぎとめている。

 

ピオーネがこっちにとどめを刺す為にとてつもない速度で接近をしてくる。

ここで俺は逆転の願いを込めて最後の技を仕掛ける。

今のピオーネの速度では気づいても速すぎる為、もはや避ける事はできない。

たとえどんなピオーネにも怯まない、逃げる事のない、強く猛々しいサイヤ人魂。

それをありったけ注いだ一撃をあんたに見せてやる!!

 

「喰らえ、『ソウル・オブ・サイヤン』!!」

 

俺は体中の気をすべて抽出したような大きな気弾を作り出す。

この技の名前はそのまま『サイヤ人の魂』だ。

正真正銘、全身全霊全力全開の気弾を、突撃してきたピオーネに命中させる。

手応えはあったがどうなったのかは分からない。

これで倒せなかったらもう負けは確実だ。

 

「はぁっ……はあっ…」

 

息も絶え絶えにピオーネは目の前に出てきた。

ピオーネの服はもはやほとんど無いも同然だった。

これについては無理もない。

俺の繰り出した気弾系の大技を3発もほとんど無防備のままに喰らっていたのだ。

 

しかしそれでもピオーネを倒す事はできなかった。

俺はもはや精根尽き果てた状態だ。

立ったままで膝や腕は地面についていないがもう指一本動かせやしない。

 

ピオーネが気を掌に集中させて大技を放つ準備を始める。

もう動くことができない俺に止める事は不可能だ。

ピオーネが攻撃を繰り出すのを見ているだけ。

せめて指が二本動けば避けられるが結局攻撃するのができないので、大した意味はないだろう。

 

「『フィナーレ・オブ・パレード』!!」

 

俺は光に包まれて、そのまま途轍もない勢いで場外にまで弾き出される。

立ち上がろうとするも目の前が暗くなっていく。

ピオーネを見ながらその暗闇に視界を覆われる。

意識が徐々に遠ざかっていく、もはや声も聞こえない。

次に目を覚ました時はメディカルルームのベッドの上だった。




闘技場が今回の戦いで半壊したので、しばらくの間は2人とも謹慎という形で惑星の旅を再開させます。
挑戦者にメタモル星人とかでもいいんですが惑星に行っての触れ合いがなくなるので没にしました。

気弾の技は戦闘力に倍率がかかるのでダメージを与える事ができてます。
現在の戦闘力
ガタバル:7348
ピオーネ:9769(普段) 13226(本気)
ルビコラ:2400
キュイ:14000

ラディッツ襲来まで残り10年
原作時間軸:
『悟空が初めて天下一武闘会に出場、レッドリボン軍と抗争』

指摘等ありましたらお願いいたします。


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『番外編:弟と謹慎』

番外編を二本組み合わせた話です。
前半は悲劇回避のための話。
後半は今後の話の流れといった感じです。
 


『世話の焼ける弟』

 

あのピタルでの約束から俺は血の滲む努力をした。

あれからおよそ3年ほどたっただろう。

俺の戦闘力も今は2000ほどになっている。

あいつは今頃どれほどの戦闘力になっただろうか?

俺は技の豊富さに磨きをかけたりなどしてきた。

しかし残念な事にナッパとの模擬戦では相変わらず勝てない。

時々相手をしてくれるベジータなんて、尚更手も足も出ない。

 

あとほんの少しでも俺の強さになるきっかけがあればいいんだが……

最近は俺の戦闘力もそこそこ高くなってしまった、

そのせいで致命傷を負う機会も減ってしまった。

それは俺たちサイヤ人にとっては死活問題ともいえる。

戦闘力が上昇する機会が著しく減ってしまっているからだ。

今、俺が持っている技の工夫次第では格上でも倒せる可能性があるだろう。

しかし、それだけでは不安だ。

やはり致命傷を負って力の底上げを望みたい。

 

「おい、ラディッツ」

 

そんな事を考えているといきなり後ろからドドリアさんに声をかけられた。

自分より年上でなおかつ上司。

礼儀的な意味合いでも『さん』づけで呼んでいる。

一体どういった用なのだろうか?

 

「どうしましたか、また出撃ですか?」

 

戦いに行っていいのなら喜んで出撃をしよう。

新しい技や、自分が強くなる機会が目の前に転がってくるわけだからな。

 

「いや、フリーザ様が最近お前が頑張っているからしばらく休めだってよ」

 

さすがにそれは予想外だった。

俺は口をあんぐりと開けた間抜けな顔をしていただろう。

ドドリアさんも吹き出しそうになっていた。

 

「俺、そんなに侵略に精を出していましたっけ?」

 

ドドリアさんやザーボンさんに比べればそこまで出撃はしていなかったはずだが……

といっても幹部に最近なったからそこの埋め合わせで俺がその分多く出撃していたな。

 

「俺がどう思ってもフリーザ様の命令だからなぁ……、休んでもいいんじゃねえのか」

 

確かにフリーザ様の命令だ。

ここでドドリアさんが独断で休ませないという事をしてそれがフリーザ様にばれたら……

うん、考えるだけで恐ろしい。

もれなく首が飛ぶだろう、職場に居られないという意味ではなく物理的な意味で。

 

「そういえば、あいつは元気にしているだろうか……」

 

ピタルの時からわずかな時間とはいえ慕ってきたあいつ。

あの笑顔を考えると、無性になぜだかここ何年かカカロットの奴が脳裏にちらつきやがる。

とは言っても赤子ぐらいの時だけどな。

もし、俺とカカロットが年の離れた兄弟じゃなければあんな感じだったかもしれない。

あの日に惑星ベジータが隕石で消えてなければ、あんな日々を毎日のように送れたんじゃないのか?

俺にとっては初めての弟分だったし、俺を信頼してくれた。

俺もそれに答えた形であの豹を退けた。

 

そんなことを考えながら俺はアタックボールという丸形宇宙船に乗り込む。

そして目的地である『地球』の座標を打ち込む。

 

「そこそこな距離のようだが、これぐらいなら問題ないな」

 

画面に必要日数が表示される。

どうやら『地球』へは18日ほどで着くようだ。

その間にコールドスリープを行わずに指や首の筋肉を鍛えよう。

基本座り続ける形だから腕立てとかができないのがこの宇宙船唯一の難点だ。

 

そして18日後。

予定通りに地球へと入っていく。

眼前に見えるその惑星の美しさに息を呑んだ。

 

「美しい星だな、今まで赤茶けていたり鬱蒼と生い茂る緑の濃い惑星が多かったから衝撃的だ」

 

誰の迷惑にもならない場所へ着陸。

どうやらかなりの山奥らしい。

明かりもなくて方向も分かりにくい。

そんな最中に咆哮が聞こえる。

その聞こえた先へ舞空術で行く。

すると見慣れた姿がそこにはあった。

 

「あれは大猿……まさか!?」

 

確かにこの星から受ける付きのブルーツ波は1700万ゼノを超えるとあった。

そしてカカロットの奴が何かの拍子で満月を見たのだろう。

理性のない凶暴な状態だから、このまま人里に行くと被害はすごいことになる。

ここは俺が何とかしないといけないぜ。

 

「がああっ!!」

 

大きな岩をひっつかんで俺に投げつけてくる。

それを俺は避ける。

なんとかカカロットの足場を崩したり攻撃を避けている爺さんがいるが、体力的にも限界なんだろう。

肩で息をしていやがる、こんな状態で続けたらどこかで踏みつぶされるぞ。

 

「ちっ!!」

 

俺は弱い気弾でカカロットの目くらましをした隙に、爺さんを抱え込んで遠ざける。

これで爺さんを気にせず心置きなくやれるぜ。

月を壊せば済む話だが、そんな事をしなくても尻尾を切ってしまえば元には戻る。

 

「ゴォオオオ!!」

 

爺さんを遠ざけた後。

カカロットを止める為に向かう途中で、カカロットは俺の居場所を本能でわかったのだろう。

カカロットがいきなり俺の目の前に迫り、叩き落とそうとしてきやがった。

舞空術で動いていたからだろう。

 

「喰らうわけにはいかねえよ」

 

まともに喰らったりしてしまうと、戦闘力の差があろうとけがは免れない。

しかし、この遅い攻撃には十分なほどの余裕を持って対応ができる。

俺は真正面からカカロットの繰り出した踏み付けを受け止めて、そのまま回転してカカロットの背中に回る。

随分とあっさりしたがこれで終わりだぜ。

 

「ウェンズデースラッシュ!!」

 

俺はこの数年の間に開発した新技で攻撃をする。

手刀に気を纏わせて威力を底上げしたものだ。

カカロットには悪いが根元からすっぱりと尻尾を切り裂く。

すると、尻尾がなくなり大猿化が解けたことで徐々にカカロットの体が縮んでいく。

これで踏みつぶされそうだった爺さんも助かっただろう。

こうして抱えると何とも軽い。

俺は爺さんの近くまでカカロットを運んでおいた。

あとは爺さんが何とかしてくれるだろう。

 

「おい、聞こえるかラディッツ、急用だ!!」

 

俺が一息ついて肩を回していると、スカウターから急ぎの通信が届く。

今回は休日なんだから切っておけばよかったな。

どうやらこの声からすると急用の中でもかなり急がないといけないようだ。

 

「ザーボンさん、どうされました?」

 

通信相手のザーボンさんに対してできる限り冷静に話す。

この慌てようにつられて俺まで慌ててしまっては元も子もない。

 

「侵略するのにいい星があってな、今から先発戦闘員として駆け付けてくれってフリーザ様直々の指名だ!!」

 

どうやら出撃命令のようだが、俺に通信するという事は俺が近いところにいたのだろう。

それにフリーザ様直々の指名とは嬉しい限りだ。

もしかすれば次の惑星は下っ端が手も足も出ないような強敵がいるかもしれない。

つまり強くなれる機会が思わぬタイミングで舞い込んできたというわけだ。

 

「はい、分かりました、今すぐそちらの惑星に向かいます」

 

俺は高鳴る鼓動を抑えながらザーボンさんに返答をする。

返答するときの声がもしかしたら上ずっていたかもしれない。

動揺しているのを悟られてしまったか、若干の不安を抱く。

 

「よし、今からその惑星の座標を送るからな」

 

そういうと一度、ザーボンさんからの通信が途切れる。

今、至急で技術部に今度攻める惑星の座標をデータにしたものを用意しているんだろう。

数分後、ピピピと宇宙船の中から電子音が聞こえたので、その言葉を解読してアタックボールに打ち込む。

これで、次の惑星に行く準備はできた。

 

「惑星の奴らが低レベルなら俺が出るまでもなかっただろうに」

 

戦闘力が100や200程度ならばフリーザ軍の下っ端でもその惑星は殲滅可能だ。

本来特殊な事情がなければ、そんな星には俺やナッパ、キュイもいかない。

もしこれが戦闘力が1000や2000がちらほらいるレベルならば呼ばれるのも無理はない。

それは俺の戦闘力と照らし合わせれば出撃する範囲内だ。

ここで声がかかるのはある意味運が悪いのだろう。

そう思いながら、俺は飛び立つ前にカカロットが抱えられるのを見届ける。

 

「はぁ…」

 

せっかく18日間もかけて着いたというのに、あっという間にとんぼ返りとは……

そう思うと自然にため息の一つも出てしまう。

 

できる事ならば明日まで地球にいて、遠くからカカロットを見ていたかったが……

どうやら、母親と同じ甘ったるい心が俺の心の片隅にもあったみたいだ。

弟に、いずれまた会う時は健やかであってほしいと願って俺は宇宙船に乗り込むのだった。

 

『これからの予定』

 

「お前たちは当分謹慎だ」

 

団長に呼ばれた俺とピオーネはその言葉を受けて肩を落とす。

原因は前の試合で闘技場の半分近くが崩壊してしまったことだ。

そしてその原因を作った張本人が俺たち。

 

幸いなことに選手は別の闘技場で試合を組めるので辞めなくてもよかった。

しかし、俺たちが戦えばまた闘技場が崩壊する。

しかも今度そうなった場合は自前の闘技場ではなく他人の闘技場だ。

そうなるとさすがに団長も面目を保てない。

その為、この惑星における最強の二人を謹慎させる苦渋の決断をする羽目になった。

団長が測定したところ、この惑星の闘技場で最高水準を誇っているのが自分のところらしく、1万を超えているのは唯一ピオーネだけらしい。

 

 

「見積もってもらったら自分たちの闘技場は比べ物にならないほど頑丈になるんだが、あいにくその再建まで時間が大幅に必要でな……

お前らはこの機会にしっかりと休んでくれ」

 

そういわれて俺達は団長の部屋から出ていく。

 

「これからピオーネはどうするんだ?」

 

呼び方としては『さんはつけなくていい』との事で呼び捨てになっている。

ピオーネは俺の事を君と呼んでいる。

 

「団長もああいってる事だし、少しばかり骨休めに惑星トゾリにでも行こうかと思っている」

 

惑星トゾリといえば、海や自然が豊かで体を休めるには最高の環境が整っていると噂の惑星だ。

この闘技場のVip席に座ったりするようなそういった人間が行っているとも聞いたことがある。

 

「そうか、ずっと戦い詰めだったんだから体を休ませてやらないとな」

 

人の事は言えないが、俺よりも長い間戦い続けた肉体だ。

流石にこういった機会がないと十分に休ませられないだろう。

そのリラックスがさらなる飛躍につながることもある。

 

「そういう君はどうするんだ?」

 

これから俺はどこに行くか、それは決まっている。

あらゆる知識を持つ全知の存在が住む星。

 

「ズノーの星へ行く」

 

この拳闘士になった10年間の間に一度来訪した事がある。

その時はなんか予約が必要とか言われてちょっと腹が立った。

当時の俺より気は小さかったので、その怒りのままに腹に鉄拳をぶち込んでやりたかった。

しかし、そこはなんとか殴りたい気持ちを抑えて予約をして帰ってきた。

その予約した日まであと少しとなったのだ。

ズノーの星で聞くのはサイヤ人についてだ。

伝説のスーパーサイヤ人だったり、およそサイヤ人の事は俺にとってはあいつを倒すのに重要だ。

あの福助人形みたいなやつが知っている事を洗いざらい聞き出してやる。

 

それ以外には『惑星スイッツ』で少し甘いものを食べてみたい。

何かに使えるだろうから『メタモル星』などで特殊な技能を手に入れておきたい。

 

「また、なんか辺鄙な所に行くのね」

 

確かに、ただ質問の為だけに行くとかいうのもおかしな話だ。

しかし、気になる事をほったらかしにできるものでもない。

 

「そっちもトゾリに行くとか言ってるが探索している間に辺鄙な所に行ってしまうんじゃあないのか?」

 

真っすぐ、目的地に着いたからと言ってそのままずっと住むわけではないだろう。

だからどこかへ拠点を移す。

その時に辺鄙な所や変わった惑星に行かないとも言えないのだ。

 

「まぁ、それはあるわ」

 

そう言ってほほ笑む。

なんだかんだで復旧するまでどれほどかかるのか、めどがつかない。

その為、色々な惑星に行って時間を使える状態にしておきたいものだ。

 

「多分、私たちが長年戻らなくてもやっていけるし、本当に骨休めして体を労ってあげないと」

 

ピオーネはそう言うと首を回しながら、宇宙船発着場を調べに行くのだった。

俺たちがいなくてもやっていけるとしても観客は復帰を心待ちにしているだろうけどな。

俺はその後ろ姿を見送って、行く予定の惑星をメモに残していつに旅立つかスケジュールを立てるのであった。




ちなみに作者が考えたラディッツの技
マンデーリング(単発のスーパードーナツ)
チューズデーレイン(ホーミング気弾を両手を空に向けた状態で延々と打つ)
ウェンズデースラッシュ(気を纏わせた手刀)
ダンシングサースデー(両手繰気弾)
これとゼノバースで出たシャイニングフライデーを加えると全部の曜日がそろいます。
指摘などありましたらお願いいたします



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『番外編:『蔑む心の醜さ』『ブラーナ一族の役目』』

時間軸的には
前半は10年間の間の話
後半が謹慎喰らって惑星探索する準備の間の話です。
後半の話は本遍につながるように書いています



『蔑む心』

 

これはまだ俺があのピタルから帰ってきた時の話。

逝ってしまえば10年近くも前の話だ。

 

「なぜ、あのゴミ屑を処分しなかったんだ、ラディッツ?」

 

帰って来て早々カエンサの奴が俺に言ってくる。

俺がピタルから帰ってきた時、ガタバルと出会った事は言ってなかった。

それなのになぜ分かったのか謎だが。

まさか……盗聴していないだろうな?

 

「やつもサイヤ人の一員だ、同族殺しなんぞ俺にはできん」

 

俺がそう言うとカエンサは嫌悪感を剥き出しにした顔になる。

途轍もなく醜く映る顔だった。

人が人を見下したりする時は、こんなにも嫌なものになるんだな。

更にその言動で嫌な雰囲気になっている。。

嫌悪感を剥き出しにした醜い顔でで俺に言い放つ。

 

「あれが誇り高きサイヤ人の1人だと!?、馬鹿も休み休み言え」

 

その言葉や大きな声に反応したのかナッパやベジータ達も来ていた。

こんなに集まった状態でいうのはかなりみっともないぞ、カエンサ。

 

「俺たち一族はエリートだ、そして我々の使命としては上に立つのはただ一人だけ!!」

 

確かに生まれながらに高い戦闘力がある事はエリートの証。

俺とカカロットは下級戦士の間に生まれた子供だ。

その為、生まれた時の戦闘なんて俺が10。

弟のカカロットは2という数字だった。

しかし同じ下級戦士の親父は何度も死線をくぐり、10000以上の戦闘力を持ったといわれている。

そう考えれば下級戦士並みでも鍛錬や努力次第でエリートに近づく事は可能なはずだ。

 

「なのにあの弱さ、他のエリートどころか中堅戦士にも劣るなど我ら一族のものではない」

 

産まれながらの戦闘力の高さでも変化する事も有るだろうに。

虫唾がはしると言わんばかりの表情。

皮膚に痒みでもあるのか掻く始末。

 

「故にサイヤ人の血を引いてすらいない、ガラクタ同然よ」

 

才能と強さの両立ができていなければいけないのか。

こいつのこの価値観はきっと惑星ベジータが崩壊する前からあったんだろう。

そして消滅して希少な存在になっているから余計に顕著になった。

止める者がいないからこそ、この見下す心が生まれていやがる。

 

「あんな弱さならば惨めな生き方しかできんさ、それならばさっさと死んだほうがまだましだろうなぁ」

 

どういった感覚で惨めというのだろうか。

あいつの生きる為の必死さすら嘲笑うのか。

生き延びて強くなりたいというものもこいつには理解できないだろう。

 

 

「草木を食って永らえて異星人に後れを取ったり、平和に解決など恥ずかしくて俺には耐えられん」

 

あいつの戦闘力から考えて異星人を殺すことができないと思っていやがるのか。

元々、殺戮を好むタイプではなく純粋な戦闘意欲があった奴だからそれでいいんだが……

 

「しかし、ラディッツの言う通りでもある、これから先どれほどの成長を見せるか次第で評価は改めねばならん」

 

ベジータがフォローを入れる。

仮に今後異星の侵略の際に実力があれば仲間に引き入れることも不可能ではない。

あいつも今頃、血の滲むような努力で跳ね上がっているだろう。

 

「俺を超えていたら十分一考の価値はあると思うぜ、カエンサ」

 

ナッパも続いてフォローを入れる。

ナッパ以上となると殆どの相手は一蹴できる、それならば軍の一員として十分な戦力になりえるだろう。

 

「見下してはいるが、致命傷を負わなくてサイヤ人の特性を活かせないお前はうかうかしていられんだろうよ」

 

そう言ってカエンサの目の前から俺はベジータとナッパと共に去っていく。

特性を活かせるほどの強い惑星にもいかずに、今の状態に胡坐をかいでいたらあいつにいずれ抜かれるだろう。

俺とナッパの戦闘力の差がだんだん縮まっているようにな。

 

ちなみになぜガタバルの生存が分かったかというとある惑星で一つだけ生命反応があった。

それがサイヤ人と同じ反応だったかららしい。

あの野郎……無人の星に行くとか、相変わらず元気なようだな。

 

『惑星侵略、結び付く糸』

 

俺の名前はベジータ。

名前にあるように惑星ベジータの王子だった。

隕石によってやられた惑星ベジータから俺たちを拾ったのがフリーザの奴だ。

親父をすでに超えていた戦闘力からか、よく出撃はさせられていた。

そのお陰でよく戦闘力が上がることもあった。

致命傷からの復活抜きでも鍛えたりすればこの俺は伸びていく。

瞬く間に俺は残ったサイヤ人の中でも一番の実力者になっていった。

 

「また出撃らしいな……」

 

傍らにいるナッパと俺が話している。

戦闘力が4000近いナッパと俺が出張れば大概どんな惑星も手に入る。

弱虫ラディッツの奴も2500と昔に比べたら大きく飛躍していやがる。

むしろナッパの方が伸びていない。

さぼっているとかではなく、もともと高い奴が伸ばすのが難しくなっているだけだ。

 

「俺も行きましょうか?」

 

そういって俺に声をかけてくるのはカエンサ。

ブラーナ一族の歴代においても最高水準の戦闘力を誇っているやつ。

そしてそのブラーナ一族には役目があった。

 

「行きましょうかも何も、俺様を守るのが貴様の役目だろうが」

 

そう、ブラーナ一族は代々『サイヤ人の王族を護衛する』職に就いていたのだ。

その為、戦闘力が生まれつき高くエリート戦士としても認められていた。

 

「その通りでございます」

 

そう言って深々を頭を下げるカエンサ。

今の俺の戦闘力14000に対してカエンサは8000。

守ってもらう事もないほどの差がそこにはある。

 

「フリーザ様に言ってから侵略に出るぞ」

 

心の中では呼び捨てにするが表面上は取り繕う。

やつの強さは桁違いだ。

そんな奴に対抗する手段は今のところない。

その為、今の俺は支配から逃れたくても逃れることができないのだ。

 

「はい、それでは行きましょう」

 

それから歩いて数分も経たない間にフリーザの部屋へ到着する。

ノックをして俺は反応を確認する。

 

「誰ですか?」

 

どうやらフリーザは部屋にいたようだ。

名乗るのもここで速くしないかどうかで怒りを買うこともある。

 

「ベジータです」

「カエンサです」

 

俺達は迅速に名乗る。

技術畑でない俺たちの名前を聞いて少しの間が空く。

おおよそ俺たちの行動や言動について考えているんだろう。

 

「お二人ですか、入ってください」

 

そうフリーザ様が言うと扉が開く。

そしてあの一人用の乗り物に座った状態でこちらを振り向いた。

 

「惑星の侵略についての御用でしょう?、ベジータさん、カエンサさん」

 

俺達が来るという事の意味をよく知っている。

俺達が次に言うであろう言葉をあらかじめ予測して話をしてきた。

 

「その通りです、フリーザ様」

 

俺達はお辞儀をしてその質問を肯定する。

すると次に出てくる言葉もいつも通りのものだった。

 

「最近よく侵略をしてくださっていますが、次はどこの惑星を侵略するつもりですか?」

 

全ての惑星に侵略の許可が出るわけではない。

何故ならば、異星人に後で売る場合もある。

その時に瘦せた土地だったり、環境が悪い、戦闘力の高い惑星の近くだという条件の星はどこも欲しがらない。

だから慎重になって侵略する惑星は吟味する必要がある。

一度、何も考えずに惑星を取ってきた下っ端があとでそれ相応の環境を取り戻すために木を植えたりさせられたのを知っている。

 

「惑星スイッツに向かおうと思います」

 

俺は全く今までとは毛色の違う惑星の名前を挙げた。

侵略の価値が無い惑星というわけじゃない。

しかし戦闘力が際立って高い数値を記録しているわけでもない惑星だ。

菓子職人や豊富な菓子の材料を蓄えている肥沃な星と考えている。

 

「またなぜ、そのような場所を?」

 

不思議がっているフリーザ。

この反応も無理はないだろう。

俺だっていつもならこの惑星を侵略する必要はあるのかと思うくらいだ。

ただ、何かしらいい影響を与えられはしないかという推測でしかない。

こういった時の勘は悪くないと自負している。

今もあくまで調査内容だけの話だが非戦闘員だらけだろうし、リゾートや甘いものを楽しむためだけの惑星だ。

侵略としても激しい運動というより、体が鈍らない運動程度に行く惑星だろう。

 

「我々の星には明らかに食の嗜好が少ないと思える節があります、それの解消の為です」

 

味の良し悪しがその日とその日で変わっている事があったりする。

さらには辛い物や甘いものなどの味の種類に乏しいこともある。

そう考えるとフリーザ軍は食に関してはあまりにも無頓着な部分がある。

食事に関してはサイヤ人である我々は量を重んじる。

しかしそうでない民族は、やはりいろいろな味を楽しんで気持ちを盛り上げようと考えるだろう。

いずれにしても美味かどうかが重要な点ではあるが。

 

「ふむ、ギニューさん達も『パフェ』なる甘味を仕事の労いの一環として考えていますからねぇ」

 

ギニュー特戦隊。

フリーザ軍における最高の精鋭部隊。

今の俺たち以上の戦闘力を誇る奴らが5人もいる恐るべき部隊だ。

ただ、あの個性豊かな言葉や風貌。

極めつけはあのよくわからんポージング。

あれらには理解しかねるがな。

 

そういうとしばらくの間考え込むフリーザ。

まぁ、こればかりは料理の班や給仕係に伝えて充実さえさせればそれで済む話だからな。

ある意味メリットはあるが、そこまで必要かどうかという天秤にかけているのだろう。

 

「技術班を労ったり戦闘後のエネルギー補給の為と考えれば十分なメリットでしょう、興味もありますしね」

 

どうやら個人的な興味とほかのメンツの事も考えればメリットが多いという事の結論に至ったようだ。

こうなると次に出る一言はほとんど決まっている。

 

「それでは惑星スイッツへの侵略を認めます、もし異常事態が起こった場合は私に緊急で知らせてくださいね」

 

そう言われたのでお辞儀をして退出をする。

これで心置きなく動きやすい状態を作った。

惑星スイッツの近くの惑星まで侵略の手を伸ばすこともできる。

ここで致命傷を負うようなことがあればそれで十分な成果だ。

 

「14000以上の精鋭がいる惑星なんぞそうはないだろうがな……」

 

思い浮かんでいた自分の考えを否定して改める。

そうそう有るはずの無いシチュエーションを考えてもしょうがない。

とてつもなく運が良ければそういった場面に出くわすだろう。

さらにそこで運が良ければ強化するための成果が手に入る。

そう考えないといけなかったぜ。

それにスイッツの侵略ができた場合、甘い食べ物を条件にして特戦隊に稽古をつけてもらう。

それを定例化させる事で今後の踏み台にしてやる。

 

「さて……どれくらいかかるか技術班から地図で算出してもらうぞ」

 

カエンサを引き連れて俺は技術班の奴らの部屋へ入っていく。

技術班の奴らはこっちを見てきていつも通りの一言を言う。

 

「ベジータ様、カエンサ様、どういった御用ですか?」

 

このいつものやり取りに俺達はうんざりしながらも用件だけを告げる。

もう少し気の利いた聞き方はないのか。

マニュアル通りの受け答えをするなんて機械と同じだぜ、

 

「惑星スイッツまで行きたいんだが必要な日数を教えろ」

 

俺がそういうと技術班が迅速に動いていく。

すぐさま座標を割り出しどの惑星を経由したらいいのか、直接赴いた方が速いのかの計算が行われる。

そして計算結果が映し出された後にこちらに振り向いて日数を言ってきた。

 

「えっと、ここからは10日ほどですね、他の惑星を経由せずに直接行った方が速いです」

 

思った以上に近い惑星のようだな。

そしてそのちょっと隣接している惑星があるようだがこれは一体何なんだ?

まぁ、今の俺からすればどうでもいい話なんだが。

 

「わかった、すぐに向かう」

 

そう言って俺とカエンサはそのまま宇宙船の発着場へ向かう。

宇宙船に乗り込んで技術班から貰った座標を打ち込んで設定を行う。

音声機能か何かで惑星スイッツへまいりますなどとほざいていた。

正直この機能は耳障りだ、必要ない。

そして俺とカエンサはコールドスリープ機能を使って、10日間の眠りにつくのだった。




カエンサはベジータの言葉はよく聞きますが、ナッパやラディッツの言うことは聞きません。
ラブカも同様です。
二人とも選民意識が強くベジータやラディッツのように殺したり、敵対するのに『動けない』や『逆らった』などの理由はありません。
『弱いサイヤ人は価値がない』、『自分たちは王の次に偉い者』という考えに根付いていて、しかもそこからの成長など全く認めていません。
その為、今のラディッツやナッパが強くなっているのに内心見下しています。
そんなカエンサとラブカの戦闘力
カエンサ:8000 ラブカ:8500
指摘がありましたらお願いします。


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『惑星旅行:ズノーの星』

今回はズノー様が一方的にしゃべっています。
ガタバルが言ってる胸糞悪い行為は頬に口づけをすることです。
あれがないと質問ダメとか、ザマスみたいに脅して聞き出されても文句言えない。


あれから数日過ぎて俺はズノーの星にいた。

一度来た事があるから、宇宙船に手を添えて、瞬間移動で来たのだ。

質問したらすぐ帰る予定の惑星だからな。

長居するつもりは微塵もない。

 

「それではガタバルよ、2つの質問をするがいい」

 

今俺の目の前にいる福助人形がこの星の主、ズノー様だ。

胸糞悪くなるような行為も終わった事だし、さっさと質問させてもらう。

それで大した情報がなければこいつの首根っこへし折って帰ってやる。

ちなみに若い事と女だと勘違いしてしまったせいで2回といったのだ。

あとで訂正はしたが、一度言った事を反故にはできず2回きっちり質問してもいい事になった。

 

「サイヤ人について知っている事、全てを教えていただきたい」

 

元々の目的はこの一つだ。

これ以外に聞きたい事なんて今のところはない。

 

「もともとサイヤ人は戦闘民族であり、母星を持たずある星々に渡りながら戦いを続けていた」

 

今の俺と同じような境遇で戦い続けてきたのか。

ある意味祖先の行動を繰り返している意味では、サイヤ人らしいのだろう。

 

「そんなある日、命からがら辿り着いたのが惑星プラント」

 

惑星ベジータは元からではなく侵略によって生まれた星だったのか。

その先住民の奴らもサイヤ人の噂は聞いていただろうから、流石に良い気はしないだろう。

 

「先住民のツフル人達に命を救われたが、ツフル人はサイヤ人の肉体に目を向けてその対価に奴隷労働を強いたのだ」

 

一瞬でも優しい民族だと思った自分がばかばかしい。

助けたからと見返りを求めてこき使うか。

恩着せがましいというかなんというか……。

 

「当時は知識が乏しく体を動かす事が得意なサイヤ人は疑わなかった、それに増長した王は更なる労働をさせていた」

 

ツフル人達の本性というよりは王の在り方に問題があるパターンだな。

恨みを買う形を自分で率先して行っている。

それに巻き込まれるのは星の民なのに。

 

「しかし年月が過ぎていき、知恵をつけたサイヤ人達はその不当な扱いに怒りを感じた」

 

サイヤ人は知恵がついていかない猿だとでも思っていたのか。

状況から考えても初めの頃から反応が変わっていた筈だ。

その時に微塵でも不思議に感じなかったのか。

 

「そのサイヤ人達を後のベジータ王が率いて大猿となったサイヤ人たちはツフル人を根絶やしにした」

 

前の段階で思いとどまっていい環境にしておけば根絶やしぐらいは免れただろうに。

そこで欲をかいたからだろう。

愚かという表現がぴったりな末路だ。

 

「その時の開発品などは今のフリーザ軍でも使用されているものが多い、戦闘服やスカウターしかりな」

 

スカウターってあの顔につけていた機械の事か?

あれを初めて見て10数年たつがようやく名前を知ったぞ。

 

「次はサイヤ人における伝説を言っていくぞ」

 

サイヤ人の伝説。

これについては俺も真偽が分かっていない。

だからこそこの福助人形に頼らざるを得ないのだ。

 

「結論から言えばサイヤ人伝説における超サイヤ人は存在する」

 

なんと伝説は本当の事だったのか。

しかしこの言葉には続きがありそうだな。

きちんと耳を傾けて聞こう。

 

「先天的に素質を持って生まれる者が伝説として伝わる1000年に一人の『超サイヤ人』である」

 

先天的という言葉から察するに、つまり超サイヤ人にも二通りのものがあるのか。

後天的というのが俺達でもなれる形の超サイヤ人なのだろう。

 

「鍛錬して戦闘力の壁を、激情によって感情の壁を越えて成し遂げる者が後天的な『超サイヤ人』だ」

 

強く有らねばならない。

そして何より感受性が高くないといけない。

喜怒哀楽が曖昧ならばなれないという事だ。

 

「後天的なものが目覚めるきっかけとして十分な強さを持っているのが前提」

 

それは当然だろう。

強くもないのになれた所で宝の持ち腐れだ。

そんなものは掃いて捨ててしまうがいい。

 

「その上で『純粋』で『穏やかな心』を持ちながら『激しい怒り』を感じた時だ」

 

強くて赤子のような純粋な心。

それは善悪でも関係はない。

つまり悪の心が多くてもなれるのだ。

きちんと条件も教えてもらったことだし、これで間違えた認識の超サイヤ人を持たせなくて済むな。

 

「ちなみに戦闘力については伝説の超サイヤ人は後天的な超サイヤ人に比べて4倍はあるだろう」

 

推定という言葉が聞こえたがあまり気にしていない。

強さを聞いた瞬間、ワクワクよりも先にその強さに思わず背筋が冷たくなって身震いを起こす。

流石に1000年に一度の伝説に恥じないすさまじい強さ。

もしも敵対してしまった場合は一人では絶対に勝てない。

なんとか逃げたとしても戦闘力が高い分、速度も相手の方が上だから捕まってしまう可能性が非常に高い。

まさに絶望の象徴であり対策も八方塞がりだ。

 

「さらに、戦闘が長引くにつれ段々とその強さは増していく、正にサイヤ人そのものだ」

 

殺戮と破壊の象徴。

高揚していく心で止められる者は無し。

敵に回したくは無いものだ。

 

「先天的な形で目覚めた者は第7宇宙に1人いる、そして後天的にではあるが第6宇宙にも1人、合わせて二人」

 

第7宇宙が俺たちの宇宙として隣の宇宙にもサイヤ人がいるのか。

もしくは逆だとしてもサイヤ人はいる、どういったモノか見てみたいな。

 

「第7宇宙にいる者の名前は『ブロリー』、そして第6宇宙にいる者は元は第7宇宙の出身で、その名は……」

 

確か生まれた当初から10000を超えるといわれた一人の天才児。

ベジータ王がその強さを危惧して処分したと聞いていたが生きていたのか。

そしてもう一人はいったい誰なのだろうか?

 

「『バーダック』という、その者は、フリーザの『スーパーノヴァ』によってのみ込まれたはずだ」

 

フリーザの名前を聞いてその人が誰なのか、ピンときた。

俺が『落とし子』になったあの日からずっと、追い続けていた憧れはさらなる高みに手を伸ばしていた。

 

「しかし、その一撃の凄まじさに第7宇宙に穴が開き、そのまま第6宇宙での惑星プラントに流れ着いたのだ」

 

生きていた事に喜びを感じる一方で目標は伝説へと変わった事に驚愕を覚える。

しかし第6宇宙とはどういうことなのだろう。

質問が出来なくなるから聞けはしないな。

 

「ここからは該当者はいないが壁を超えた場合について話そう」

 

伝説にもその先は存在するのか。

一体どれほどの力を手に入れられるのか楽しみだな。

 

「超サイヤ人を超えるには段階があって1の時は4段階に分かれている、

そのうちの3段階は鍛錬によって超えられるが最後の壁を超えるきっかけは自分の力を思うがままに開放する心

その時の形態の名前は超サイヤ人2と言う事にしておこう

この時の強さは超サイヤ人の2倍となっている」

 

ただでさえ強いのにさらに倍に跳ね上がるのか。

しかし感情の爆発で目覚めるというのは共通事項のようだ。

 

「その後は細かい段階はなくなって鍛錬や感情の起伏によって覚醒する」

「この形態は3という事にしておこう、その形態の特徴は前の2つと違いは眉毛がなくなって髪の毛が伸びる」

 

見た目にも随分な変化が現れるのか。

元々髪が長い俺が仮になったらどうなるんだ……

もし固まってしまうとかだったら地面に頭髪が刺さるとかいうシュールな絵面になるぞ。

 

「この状態は激しくエネルギーを使う為、長時間の戦いは向かない、因みに強さは超サイヤ人2の4倍となっている」

 

2に比べてデメリットが出てきているのか。

この形態は切り札的な存在としての使用になってくるな。

 

「ここからは特殊な条件下でのみ可能な変身の形態についての説明じゃ」

 

普段とは違う環境。

もしくは何かしらの制約が課されているんだろう。

 

「まず1つは金色の大猿、これは3の壁を超えたのち尻尾を持ったサイヤ人が満月を見る事で覚醒する形態」

 

すぐにはなれないと思っていたがこれはその中でも難しいだろう。

まずは1700万ゼノに当たるブルーツ波の照射があって成り立つものだ。

 

「この時の戦闘力は超サイヤ人3から潜在能力を限界以上にまで引き出した状態で、個人差があるから何とも言えん」

 

普段の400倍からさらに潜在能力を引き出した形か。

あまり詳しくは分からないが推測としては超サイヤ人3の状態の100倍ほどだろうか?

仮にそう仮定したらとてつもないパワーだな。

 

「そして理性がないため、それ以上に厄介じゃ」

 

やはりそう言った負の側面もあったか。

理性がないから目についたもの全てを破壊しつくす可能性も十分に考えられる。

 

「そしてその状態から理性を抑えた事で目覚める者が超サイヤ人4」

 

大猿の力をコントロールしてようやく目覚める力。

難易度も今までに比べて桁外れだろう。

だが変身を自在にできればこれ以上の心強さはない。

 

「大猿のパワーと超スピードを兼ね備える単独でなれる超サイヤ人の最強形態、金色の大猿から10倍の戦闘力となる」

 

おいおい、潜在能力を引き出しているのにさらにそれより強くなったら手が付けられないんじゃ……

まぁ、どうせデメリットが存在するんだろうな。

 

「超サイヤ人3の様に常にエネルギー消費を起こすような事は無い、よって気を貯めようとも解ける事は無い」

 

それは凄いな。

だが気を貯めなくても解除されないってだけで絶対何かしらは有るはずだ。

 

「ただ、これも弱点があり『サイヤパワー』というサイヤ人特有のエネルギーを回復しないと再び4になる事はできない」

 

それを聞いて頷く。

やはりそういったものが付いて回るよな。

サイヤパワーについては聞いた事がある。

俺たちサイヤ人に流れるエネルギー。

それはいかな能力でも回復せず、サイヤ人からエネルギーをもらうか時間経過じゃないと回復しないものだ。

 

「5人の正しい心が集まって1人のサイヤ人に力を注いだ場合に変身できるものが『超サイヤ人ゴッド』」

 

神の名を冠する変身とは大きく出たな。

しかし合計6人のサイヤ人となると

ベジータ王子、ナッパさん、ラディッツさん、父親、兄。

自分を含めたら男性だけでも6人いる。

あとは正しい心の判定基準さえはっきりとしていれば可能なのだろう。

 

「これは伝説の中の伝説と言われており、強さについては神の力は感じられんため、全知の中でも抜けがあるのう」

 

察知不可能の強さ。

それがどれほどの脅威なのか。

目の当たりにもしていないからよく分からない。

 

「これで私が知っているサイヤ人についての言葉はしまいじゃ」

 

そうか、それでサイヤ人についての話はお終いか。

じゃあ、次は……

 

「ナメック星で見た願いを叶える玉について全てを教えてもらいたい」

 

あれについてはあまりよくわからないままナメック星を出たからな。

願いがかなう方法や、別の形のものがないか確認しておきたい。

似たようなものを掴んでそれが悪いものであったなら被害は甚大なものになるだろう。

 

「ふむ、『願い玉』の事か」

 

そういった名前だったのか。

安直な感じの名前だが分かりやすいな。

 

「地球、ナメック星、そして第7宇宙と第6宇宙に存在する3種類のものがある」

 

緑の惑星、地球にもあるのか。

ナメック星の奴と比べてサイズはどうなのだろうか?

銀河にまたがる奴はどう見積もってもナメック星と比べて格段に大きいだろうな。

 

「共通点は薄黄色で7つ、完全なる球体、赤いヒトデ型のマークが1つから7つ入っている」

 

デザインは統一されているから見分けがつきやすいのか。

てんでバラバラだったら災いの引き金になりかねない。

 

「揃えて合言葉を言えば願いを叶える龍が出るのじゃ」

 

合言葉を言えば願いがかなうといったが果たしていくつの願いがかなうんだろうか?

まぁ、普通に考えるとさすがに1つという事になっているだろう。

 

「『願い玉』のサイズについては様々なものがある、片手で持てるほどのものから、惑星ほどの大きさとなっている」

 

想像してた通り、大きさにも差異はあった。

おおよそ、叶えられる願いのスケールもその大きさに比例しているのだろう。

しかし惑星ほどの大きさのものなんてどうやって持ち運びを行うんだ?

大きい宇宙船でも入りきらないぞ。

 

「龍神ザラマによって遥か昔の神暦に作られておる」

 

始祖はやはり神の類か。

しかもそれだけのものを作成した時点でかなり上位の存在であることは理解できる。

 

「屈折を利用していてどの角度から見てもヒトデ型の星が見えるデザインになっていて、これは特許を取得している」

 

そんな時代から特許が存在していたのか。

商魂たくましいような、ある意味人間味が溢れる神だと思う。

さて、まだまだ、説明の部分がありそうだが……

 

「ちなみに願い事を叶える際はその星、もしくはそれを作ったものの言葉で叶えなければならない」

 

つまり、地球ならば地球の言葉。

ナメック星ならばナメック星の言葉。

そして2つの宇宙にまたがるものはおおよそ、竜神ザラマの制作物である事から神の言語になるのだろう。

 

「そしてここから重大な事だが、願い玉は一度使うと1世紀近くは休ませてやらねばならぬ」

 

その人が使用してから孫か曾孫の代まで使えないのか。

そう考えたら伝説扱いもされる。

まず見つけるまでにどれだけ努力しなくてはいけないのか。

 

「理由としては全宇宙の破壊を防ぐ為である」

 

随分と大きな理由だな。

しかしそれも無理はない。

集めるだけで願いが叶うものを頻繁に使った場合、どういった事があるのか。

そこまで考え抜かないとな。

 

「使用後は願い玉の中に有る『プラスエネルギー』が減り、『マイナスエネルギー』が増える」

 

万物に宿る陽の気を『プラスエネルギー』。

また、陰の気を『マイナスエネルギー』。

そう呼称しているのは知っていた。

その大きさは当然様々で人の欲望を一手に引き受けるものがどれほどの陰の気を貯め込むのか。

想像するだけで怖気がはしる。

 

「その浄化を終える前に頻繁に使用すると全ての銀河を巻き込む大惨事になってしまうのだ」

 

しかし、そう簡単に見つけられるわけがないだろう。

この『願い玉』の存在なんて眉唾物として知られているから信じてない輩も多い。

それにそんじょそこらの奴らがナメック星に行ってもネイルさんに返り討ちにされるだろう。

また、銀河に跨る様な物を常に持ち歩く事は出来ない。

 

「これで『願い玉』について伝えられる事は全てじゃ」

 

そういった瞬間立ち上がる。

一瞬でも早くこの場所を出ようと思っていたからだ。

 

「ありがとうございました」

 

最後にわざとらしいお辞儀をして宇宙船に乗り込む。

『願い玉』というものが地球にもあるとは思わなかった。

しかし俺は使う気もさらさらないから行く予定はない。

何か急な事があれば話は別だろうが。

 

「次は惑星スイッツに行くか」

 

甘いものを食べて心を落ち着かせよう。

俺はそう思ってスイッツまでの座標を打ち込む。

これが後に大きな事件を起こすとは思わずに……。




今回の話で情報のアドバンテージではガタバルが大幅リード。
ベジータの勘違い超サイヤ人からの号泣もたぶんなくなるでしょうね。
指摘有りましたらお願いします。


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『出会ってしまった因縁』

番外編と本遍がつながります。
甘いものといえば……という事で今回は非常に濃いあの方々の登場です。
ガタバルの弱点?が判明します。


あれから数日後、俺は惑星スイッツに降り立った。

宇宙船の発着場があったお陰で安全に着陸できたのが良かった。

ただ、妙なのは丸形宇宙船が『5つ』あったのだ。

 

「団体で来るならわざわざ1人乗りを5つ用意する必要はない」

 

考えるのであればフリーザ軍のような侵略者達が仕事終わりに立ち寄ったという事。

もしくは侵略者としてここに降り立ったかのいずれか。

一体どういった奴等なのか。

もし、ここを侵略するのであれば止めなければならない。

自分の癒しのために来たのだから。

 

「ここのチョコレートパフェは今までのものに比べて一番だな!!」

 

テラス席にいた5人の団体から声が聞こえる

スカウターをつけている事からフリーザ軍の一員だろう。

 

「本当っすね、隊長!!」

 

そう言う緑の人は目が多く、背丈があまり高くない。

隊長と呼ばれた人は紫の肌で角が二本、まるで鬼のような見た目だ。

その向かいにいるのはモヒカンの筋骨隆々とした人。

それ以外には青い肌の人と赤い顔の美形の人だ。

 

「むっ、ついスカウターのボタンを押したら戦闘力1万を超える反応が近くにあるぞ」

 

通りすぎようとしたらすぐにばれた。

観光気分で抑えていなかった事が災いしたか。

あのピオーネとの激戦でついに5ケタとは感慨深い、昔の俺ならば考えられなかった。

 

「なんですって!?」

 

隊長と呼ばれている人がそう言うと、他の人達も一気に振り向いた。

しかしどこに居るのかまでは、流石に見えていないだろう。

草木に隠れようとして、今は通り過ぎようとしているからだ。

ただ、この惑星は植物からも甘い匂いが漂っている。

至近距離で嗅ぐときつく気を抜くと丸見えになりそうだ。。

 

「そこで見ている子じゃないの?、ねーぇ坊や」

 

あの僅かな草木の隙間から見られていたか。

ここまでばれては流石に隠し通せはしない。

両手を上にあげて抵抗しない意思を見せながら、俺は目の前に出ていった。

 

「この風貌、サイヤ人じゃないですか?」

 

青い肌の人が俺の姿を見て、言ってくる。

その言葉に全員が頷いていた。

フリーザ軍だったならばラディッツさんを見ているから判別できるんだろう。

 

「ふむ、バータの言う通りだな、どこか見た事のある気が……」

 

赤い顔の人が俺の顔を見て言ってくる。

誰かによく似ているのか?

考えられるのが家族だと思うが……。

其れから考えるとあの後にフリーザ軍に入ったというわけだ。

俺を星に飛ばしておき、さらには王族であるベジータ王や王子を見捨ててまで、命を永らえたというわけになる。

それは俺達の一族の役目としてやるべき行為ではないはずだ。

ベジータ王が死ぬ時は己も死ぬ時とあれだけ言っていたくせに……

 

「お前に俺たちの凄さを見せてやろう」

 

そう言って5人とも前に出てくる。

俺は脈絡のない展開の為、身構える。

戦いだとしたらこれはあまりにも厳しい。

殆どの人が今の自分を超えているからだ。

例外として緑色の人が俺より弱いが只者ではない、もしかしたら特殊な技能があるのかもしれない。

 

「その前に見せるだけの価値があるか、お前のセンスを見せてもらう」

 

格闘センスというわけか?

それならば選ぶ相手はタフそうなモヒカンの人を指名した方がいいな。

一撃は重いが入った時やその後のリカバリーなどで見せられる箇所は多くなる。

 

「今、この場でお前が最もいかしていると思うポーズをとってみるがいい!!」

 

その言葉を聞いて少し気が抜けた。

この人達は一体何を言っているんだ?

そう思ったが俺はその言葉を聞いて、俺は気合を入れなおして、今精いっぱいできるポージングをする。

まずは相手に後ろを向いてお尻を向ける形になる

そして肩幅に足を開く。

頭の上まで手を広げて肘を曲げる

そのまま勢いをつけて頭を下げていき、股の間から顔をのぞかせ……

 

「ガタバル!!」

 

最後に名前を叫ぶ。

我ながら最高に力の入ったポージングだが、さて……

 

「どういう事だ、ギニュー隊長はポーズを見せていないはず」

「まさかそのポージングを己のセンスでいけていると感じ、こなしたというのか……」

「このセンス、俺たち以上かもしれないぜ」

「こりゃガタバルちゃん、逸材じゃないの」

 

4人とも驚きの顔を見せてそれぞれの反応をする。

話を聞く限りだと、俺のポーズは隊長であるギニューさんと同じだったようだ。

まさかこのセンスを持つものが目の前にいたとは……感服するほかないな。

 

「見事だ、まさか私のポージングと同じものを己のセンス一つで選び抜くとはな」

 

「それではそのセンスに応じて我々の『スペシャルファインティングポーズ』を見せてやろう、行くぞ、お前ら!!」

 

そう言って全員がポーズを取り始める。

どんなポージングを披露してくれるのか。

 

「リクーム!!」

「バータ!!」

「ジース!!」

「グルド!!」

「ギニュー!!」

 

全員の名前が判明した。

オレンジ色のモヒカンの人がリクームさん。

青い肌の人がバータさん。

赤い顔の人がジースさん。

緑の目の多い人がグルドさん。

角の生えた紫色の人がギニューさん。

 

ギニューさん以外は左右対称の美しい形。

俺がやったポージングをやるがびしっと決まっている。

さらにそこから発展するようだ。

 

「みんな揃ってギニュー特戦隊!!」

 

叫び声と同時に所定の位置で勇ましいポージングを取っている。

素晴らしいポージングだ。

心の底からそう感じて俺は拍手をしようとしたその時……

 

「ぐぁっ!」

 

背中から俺は気弾を撃たれていた。

一体何者だ!?

セッコ・オロで今まで対戦してきた相手か!!

 

「おい、劣等種が何をもって特戦隊の方々といるんだ?」

 

この姿、忘れるわけがない。

きっと今のは冗談のつもりでやるのに力加減を間違えたんだろう。

そう思いたい。

 

「兄さんか、兄さんもバカンスなのか?」

 

そう言うと今度は顔面を蹴られる。

吹っ飛んだ先で俺はリクームさんに受け止められていた。

 

「おいおい、カエンサにとっては弟なんだろ、ガタバルちゃんはよぉ」

 

俺を心配するようにリクームさんは降ろす。

悲しい事だが、あの人が俺に対して殺気を漲らせた状態での蹴りを放った事。

そして受けた事でどう思っているのか分かってしまった。

 

「あの人にとっては弟ですらないんですよ」

 

もはや他人であり、抹消しておきたい存在なのだろう。

そう言って立ち上がる。

二回もやられて黙っているほど、俺も甘くはない。

 

「侵略するのですが……邪魔をなさるつもりで?」

 

どうやらこの星を侵略しに来たようだ。

食事の嗜好というものを取り入れるつもりだろう。

糖分は戦いの後の補給としては申し分ないからな。

 

「ここは侵略ができない理由があってな、この甘味を独占する事は出来んのだ」

 

腕を組んでギニューさんが兄さんの問いに答える。

本当に口惜しいといった感じだ。

他の人達もため息をついている。

 

「それは一体なぜですか?」

 

理由が聞けていないから質問を投げる兄さん。

その質問に対してはが、バータさんとジースさんが答えた。

 

「補足はするが一応この惑星の特産品を使って作るのはできる」

 

作成自体は可能。

つまりこの甘味自体を食べる事は別段問題はない。

 

「しかし、ここ以外の惑星では材料、職人、分量が全て同じでもここに勝る味が出せなくなるらしい」

 

しかし惑星の力か知らないがこの惑星以外でやってもこの惑星以上の味が出ない。

つまり独占できても他の惑星へ工場は作れない。

更に職人を宇宙船に招くのも無理。

其れならば現地で食べる方が良いというわけだ。

 

そして侵略の話が一段落しそうだから、そこに横槍を入れてやる。

俺は兄さんの肩に手を置いてとんとんと叩いた。

 

「む?」

 

反応して振り向いた瞬間、顔面に拳を入れてやる。

顔面にめり込んでそのまますっ飛んでいく。

振り抜いて再度構えを整えた。

 

因みにこんなものはピオーネ相手ならば通用しない。

むしろ、振り向きざまに頭突きを入れられるなど手痛い仕打ちを喰らう。

そしてそのまま腹を蹴りあげられて『リインカーネーション・ブレイク』の餌食だろう。

所詮は子供騙しの手だ、それに兄さんはまんまとかかった訳だが。

 

「お前……!!」

 

兄さんはむくりと起き上がって俺の方を睨み付けていた、

殺気を滲ませているがこの程度は何ともない。

自分も最初に俺に対して気弾で後ろから攻撃していたというのに。

それなのに、俺の方がそう言った真似をしたら、怒りをむき出しにするというのは何か違う気がする。

さて……あの日から長い月日がたった、どっちが上になったのかな?

 

「ははは、こいつはお笑い草だな、カエンサ!!」

 

その声がする方向を向くと、その人はよく知っている人だった。

惑星ベジータの王様であったベジータ王。

その息子にして惑星の名をもらった天才戦士。

 

「ベジータ王子……よくぞ健在で!!」

 

俺はお辞儀をする。

まさかこのような場所でお会いできるとは、兄さんと再会できたのも喜びではあった。

しかし、王族の方が生き残っていたのは喜びであり驚愕でもあった。

何故ならばそう言った有力な存在は全てフリーザが消したと思っていたからだ。

 

「やつの戦闘力は10387だ、どうやらこの長い年月でお前とお前の親父よりも強くなったようだな」

 

ベジータ王子はスカウターで測っておられたのか。

しかし今の言葉は一体どういう事だろう。

まさかあれほどの力の差があった兄さんと父さんを俺が越えたというのか?

 

「何を言っているのです、こいつの戦闘力が私を超えている訳が……」

 

その反応は至極当然だろう。

兄さんはそう言って確認の為にスカウターを触っている。

そして、少し時間が経ってから俺の戦闘力を見た瞬間、スカウターを顔から外して勢いよく地面へと叩きつけた。

 

「認めん、貴様が俺より上など!!」

 

そう言って兄さんは駆けてくる。

しかしこの速度は俺にとっては遅い。

比較対象がピオーネというのが兄さんにとっての運の突きだが。

俺はその動きを悠々と見切っていく、回避と同時に懐に潜り込んで腹に蹴りを叩き込んでいた。

 

「ぐぉ……」

 

兄さんが呻いている間に、俺は背中に肘鉄を食らわせて地面へ叩きつける。

しかしこれで終わりではない、俺はそのまま追撃をしていく。

まずは兄さんの顔面を蹴りあげて宙を舞わせる。

肘鉄の一撃からここまでの動きの流れに関して、一切の淀みはない。

 

「このぉ!!」

 

屈辱なのか怒りに燃えた目で俺に対して気弾で攻撃を仕掛けてくる兄さん。

しかしこのような一撃はぬるい。

ろくに鍛錬や激戦の経験、死線をくぐっていなかったのか?

俺は難なくその一撃を兄さんに打ち返した。

 

「ぐっ!!」

 

兄さんは相殺をせずにさらに飛んで避けるが、これは悪手だ。

既に空を飛んでいるのにもう一度着地前に動いてしまうと次の身動きに大きな支障が出る。

その隙にこちらが後ろに回ったり一気に接近をすればその硬直時間の分、身動きが取れないだろう。

もうすぐ、この戦いに決着がつく。

一気に速度を上げて動く、追い抜いて背中を取った。

新技のこいつで終わりだ。

 

「『エクスプロード・ウッドペッカー』!!」

 

拳の先に気を一点集中させる。

背中の急所に拳を当てて、その凝縮された一撃を捻じ込んで放つ。

『ワンインチ・パンチ』と言われる技をベースに密着状態からでも相手を倒せる技を編み出したのだ。

 

「ぐえっ……」

 

今の一撃はかなり効いたようだな。

兄さんはそのまま勢いよく地面へ叩きつけられる。

もしかしたらまだ、闘争心はあって俺の油断を誘っているのかもしれない。

俺も降りて、反応を待っていた。

 

「これは、カエンサの奴気絶していやがる……」

 

ベジータ王子が兄さんの状態を確かめていた。

そして、冷たい目で見降ろしていた。

無理もない、時間にしてみれば三分も経たない間に勝負はつき、その内容は俺の圧勝。

まだ、最大の技を出す前に勝負がついてしまった。

ピオーネとの勝負でかなりレベルが上がったようだ。

 

「貴様、どうやらエリートとしての血が目覚めたようだな」

 

血が目覚めるというより、かつての家の環境が兄さんを優先していた。

こっちにとっては劣悪な環境だっただけです。

きちんとした環境でサイヤ人の特性を活かした鍛錬を行ったり、戦闘によって傷を負い続けたからだと思う。

こっちにも気配りさえしていたならば見抜けたでしょうね。

 

「貴様さえよければ、今すぐに俺が話をつけて入れさせてやってもいいぞ」

 

それはフリーザ軍に入るという事か?

どうやらベジータ王子は真実を知らないようだな。

俺は何があろうともフリーザに頭を垂れるわけにはいかないのだ。

 

「断ります、俺はまだ未熟な身、まだ色々な惑星から技術を学んだりして力をつけなくてはいけないのです」

 

理由をつけてなんとかして断る。

あいつの手足となって働くぐらいなら俺は自分の首を吹き飛ばすか舌をかみ切るだろう。

いずれは俺がこの手で惑星ベジータの敵を、バーダックさんの敵を討つと決めたんだ。

この一族が俺を惑星ズンへ送り飛ばしたあの日に、あの背中を見てから10年以上もその思いは変わらない。

 

「そうか、折角サイヤ人ナンバー2の座につけたものを……愚かな奴だぜ、お前は」

 

そう言って兄さんを置いてきぼりにしたまま、ベジータ王子は去っていった。

どうやらギニューさん達にこの惑星の特徴を言われて、侵略できないという事が分かったのだろう。

だからこそ、その報告のために一度フリーザの元へ帰るのだ。

俺ももともとこの惑星スイッツでの目的だったパフェやシュークリームをまだ食べてはいない。

戦いの後のエネルギー補給だ。

 

「おーい、こっちのシュークリームがおすすめだぞー」

 

バータさんやリクームさん達が手招きをしながらおいしい洋菓子店を紹介してくれている。

よく見ると笑顔でみんな待ってくれているのが印象的だ。

 

フリーザ軍とはいえユーモアのあるいい人たちだっている。

実の兄弟とはいえ、一撃に殺気を漲らせる悲しい人もいる。

 

そう思いながら、俺は意気揚々と惑星スイッツの洋菓子屋に入っていくのだった。




今回は登場人物が多いですがこれ以上増えるサイヤ人襲来編とかを考えると、今のうちに慣らしておかないといけませんね。
指摘などありましたらお願いいたします。

現在の戦闘力
(サイヤ人襲来10年前:悟空はレッドリボン軍壊滅(13歳))
ガタバル:10387
ベジータ:14000
カエンサ:8000


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『惑星旅行記:メタモル星/カナッサ星』

ガタバルの怒りの恐ろしさを考えて書いてみました。
地球に行くための理由づくりとはいえやりすぎな気がしないでもない。


俺はあの後、惑星スイッツで洋菓子を食べて心を癒した。

そして、ギニュー特戦隊の皆さんと別れて、次の目的地へと俺は向かっていた。

次の目的地はメタモル星という惑星。

一人一人の強さは乏しく侵略はしやすい惑星。

しかし特殊な技能である『フュージョン』を使う事で外敵を今まで退けてきたのである。

どれ程強くなるのかは分からないがとてつもなく興味が湧いた。

仮に俺とピオーネのフュージョンが達成されれば間違いなく最強級の戦士になれる。

ただこの技能に対して、疑問がある。

 

「条件がどういったモノかわかっていないのがネックだ」

 

そこらへんはメタモル星の長老から聞けばいい。

しかし、もし同性でないとダメとか言われたら誰とすればいいんだろう。

絶対にベジータ王子や兄さんのようなプライドが高い人が合体なんてするはずもない。

 

「そうこう考えたり言ってる間にもう到着か、スイッツから思ったより近かったな」

 

一週間かからないでメタモル星にたどり着いた。

どうやら荒野やかやぶき屋根の小屋が点在している所から考えると、集落のようなものが多数ある惑星のようだな。

 

「異星人、それもサイヤ人がこの星にどういった用ですかな?」

 

着陸して宇宙船から出てきたらあっという間に囲まれてしまった。

幾らなんでも警戒心強すぎるよ、この惑星。

流石に悪評があるとはいえ限度がある。

最初のヤードラット以上じゃないだろうか?

 

「『フュージョン』を俺に教えてほしい」

 

目的はそれだけだ。

それ以外に目的などあるはずもない。

侵略しても俺には利益が全くないんだからな。

 

「あれはメタモル星に伝わる秘伝だ、どうしても知りたいのならばそなたの力を示すのだな」

 

そういうと若い男性二人が出てくる。

どうやらこの二人が『フュージョン』をするようだ

 

「『フュー……』」

 

外側に向けていた腕を内側に持ってくる。

左右対称に同じポーズを取っていく。

タカタカタカというような音が聞こえる動きだ。

ちょうど三歩分の動きだろう。

 

「『ジョン!!』」

 

腕を握り拳の状態で外側へ伸ばす。

足は片足立ちで片方の足は膝を曲げている。

間合いを考えないと腕がぶつかってしまうな

 

「『はっ!!』」

 

最後に人差し指を合わせてこの技は完了するのだろう。

眩い光が俺の目を覆う。

それが晴れて視力を取り戻した頃には一人の戦士が誕生していた。

 

「気は大きいが俺と同じほどしかないな」

 

だがその元の小ささから考えておおよそ100倍近くには跳ね上がっている。

これをマスターして力を蓄えればフリーザに勝てる。

まぁ、単独での敵討ちじゃあないんだが……。

 

「はっ!!」

 

相手が拳を突き出してくる。

俺はその一撃を難なく避けてカウンターを合わせる。

相手の速度もほぼ同じなのだろう。

相手も俺の攻撃を避けてカウンター返しをしてきた。

 

「はあーっ!!」

 

俺は相手が放ったカウンター返しの拳を掴んで空中へ放り投げる。

相手は空中で宙返りをして気弾を放ってくる。

俺はその気弾を相手に向かって弾き返す。

しかしそこに相手の姿はなかった。

 

「後ろだぁ!!」

 

相手がそう言って、後ろから蹴りが放たれる。

だがその時に、俺は瞬間移動で相手の後ろに回り込む。

 

「どりゃぁ!!」

 

相手の後頭部に俺は肘の強烈な一撃を加える。

蹴りが外れてしまって、硬直した隙の一撃。

 

「ぬがあぁぁ……」

 

そのまま相手が呻いている間に俺は掌に気を集中させた。

 

「『イーグル・フラップ』!!」

 

気弾ではなく気を集中させた掌を押し出す。

そうする事でとてつもない突風が巻き起こる。

それは不可視の一撃であり相手へ直撃していった。

相手は訳も分かっていないだろう。

吹き飛んで行って、その際に飛来する砂利や岩が体に当たっていく。

相手が何とか着地をした時には傷だらけで大きな隙が見えた。

さて……こいつでとどめを刺してやる。

 

「『アルバトロス・ブラスター!!』」

 

大きなアホウドリが相手に向かって迫っていく。

『ソウルオブサイヤン』の方が威力は高いが、あれは本当に最後の奥の手だ。

実質、普段から打てる技としてはこれが最高のものとなっている。

さあ、合体戦士はこの一撃にどう対応する!?

 

「ぬぉおおお!!」

 

真っ向勝負を相手は選んでいた。

両手で受け止めて押し返そうと試みる。

 

「「ありっ?」」

 

その瞬間、相手が元の二人に分かれてしまう。

相手も驚いた顔になっていた。

そのまま、二人の間をすり抜けてアホウドリが大空へ飛んでいくように技が外れた。

どうやらフュージョンの制限時間は思ったよりも短いようだ。

 

「うむ、制限時間いっぱいまで互角に戦われてはこちらの負けじゃ、認めよう」

 

話を聞いたところ、どうやら制限時間は30分ほどしかないらしい。

それを過ぎると今度は1時間ほど待ってから再びフュージョンをしないといけないようだ。

連続ではできないというのが難点だな。

解除後も手詰まりにならないように、個人的な強さも前提として考える必要がある。

 

「まさかここまで強い異星人に出会ってしまうとは……」

 

一人のメタモル星人は溜息をついている。

若い自分達が相手ならば打ち勝てると思っていたのだろう。

この発言から考えて侵略者たちの戦闘力はおおよそ5000くらいを推移していたのかもしれない。

 

「サイヤ人であればあの解けた瞬間に首をちぎって殺されてもおかしくないと思ったが……」

 

もう一人のメタモル星人は身震いしながら言っている。

悪評があったとはいえ、侵略目的じゃないんだからやらないよ。

戦闘で昂ってもそこらの線引きぐらいはする。

 

「教えましょう、『フュージョン』を」

 

そう言うとさっき見せてもらった動きを一つ一つ懇切丁寧に教えてもらう事が出来た。

これでばっちりだな。

 

「ちなみに条件としては『背丈が一緒』であり『戦闘力がある程度近い』という事だ」

 

戦闘力が近い者がいない為、動きだけを覚えて俺はそのままメタモル星から別の惑星に行く。

……その惑星が俺を地球に導く原因になるとはこの時は知る余地もなかった。

 

.

.

 

「此処は一体どういった惑星だ!?」

 

あれから一週間後、メタモル星から少し遠い惑星に俺はいた。

少しだけの寄り道のつもりだった。

しかし着陸直後にこの惑星の住民に襲い掛かられてしまった。

問答無用といった感じで、こちらの言葉には微塵も耳を傾けていない。

半魚人のような見た目だったが一体何者だ?

 

「にっくきサイヤ人め、待ちやがれ!!」

 

待てと言われて待っている場合ではない。

捕まったら殺しに来るだろう。

わざわざ寄り道で来ただけの惑星で命のやり取りをするとか嫌なんですけど。

 

「あの日から偶然にも生き延びる事の出来た我々の安住をこれ以上壊そうとするな!!」

 

相手はそう言って、俺に向かって槍の一突きを放ってくる。

力を振り絞っているため、その攻撃は速い。

俺は体をくるりと反転させて避けるが、相手は一人で追いかけてはいない。

どこからともなくやって来た奴の追撃で腕に一撃を食らった。

 

「ぐっ!!」

 

一体この惑星にはこいつらと同じ種族が何人いるんだろうか?

数で押し切る場合は個々の戦闘力が低くても光明を見いだせる。

その証拠に単独なら回避できるはずの槍で腕を刺された。

とにかく逃げ回って各個撃破できる状況を作ろう。

そう思った俺は気弾で目晦ましをして再び逃げ回る。

 

「甘いわ!!」

 

逃げ回っていた俺の後頭部に衝撃がはしる。

相手が放った一撃を喰らってしまったのだろう。

視界がグラグラとするし平衡感覚が狂っているが歩みは淀まない。

そのまま逃げの姿勢を保っていき、相手の追跡と攻撃を潜り抜ける。

 

「ようやく追い詰めたぞ!!」

 

追いかけっこに終わりが来るのは普通の事だ。

大人の男が多数だ、子供がいないのは別にどうでもいい。

 

「お前ら、なにのつもりだ?」

 

俺は構えながら問いかける。

こいつらの眼差しはまるでありとあらゆるサイヤ人全てを憎んでいるという様なものだ。

一体こいつらの過去に何があったというのか。

 

「バーダックというサイヤ人が我らの平穏な日々を終わりにさせて、カナッサ星の文明は崩壊した」

 

あの人がまだ第7宇宙のサイヤ人として活躍していたころか。

おおよそフリーザの裏切りの前の前兆で侵略しろと言われた惑星だろう。

飛び火しただけで特別こいつらが悪かったわけではない。

手ごろな所がたまたまこいつらの惑星だったってわけだ。

 

「そう言えばあのサイヤ人はどうした」

 

おおよそ復讐するために聞いておきたいのだろう。

残念だがお前らが束になってもあの人には勝てない。

俺よりも明らかに弱い奴らの集まりだ。

こちらが追いかけっこしていたのは弱いからではない。

 

「フリーザと戦った、惑星ベジータのために、サイヤ人の誇りを守るためにな」

 

そう言うとカナッサの人間は笑い始めた。

一体何がおかしいというのか?

 

「愚か者だ、あのフリーザとやりあうなんぞ」

 

じゃあ、黙って惑星が壊されればよかったとでもいうのか。

そう言った必死な抵抗する心がないのに、侵略者と戦ったらそりゃ壊滅させられるだろう。

 

「あの屑のようなサイヤ人にはぴったりだ、我らを壊滅させた畜生の末路にふさわしい」

 

笑いながらそんなことを言いやがった。

その瞬間、俺の頭は怒りに満ち溢れた。

気を抑えることもなく相手を睨み付ける。

 

「…り…せ!!」

 

俺は怒りからはっきりした声でいう事が出来ずにいた。

体が怒りで震えている。

もう少しで何かが切れそうになっている。

 

「何を言っているんだ、小僧?」

 

カナッサ星人が嫌みたらしい、嘲笑った顔を向けてきた瞬間。

俺の頭の中でプツンという音が聞こえた。

 

「取り消せー!!」

 

俺は怒りに身を任せて『アルバトロス・ブラスター』を放っていた。

あの人が屑ならば、何もしていない無抵抗で無関係なサイヤ人を襲うお前らはそれよりひどいじゃねえか!!

 

「ぐっ、この野郎、ほんしょ……」

 

俺は構えていた男の首を蹴りでへし折る。

謝ったとしても許さないぞ、お前ら。

 

「『レイブンリヴェンジャー』!!」

 

『クロスリヴェンジャー』から変更した技だ、事前に腕の交差をせずに腕の振り下ろしで交差させて放つ。

威力は落ちてしまったが、振り上げでも放てるので速射性に優れた技へと変貌を遂げた。

 

「ぐぁあ!!」

 

多くのカナッサ星人が吹き飛んでいく。

これで終わると思うなよ、この漲るエネルギーを全てお前らで発散してやる。

 

「『コンドル・レイン』!!」

 

女も男も無差別に打ち続ける。

避けている奴らもいるが、それ以外にダメージを負ったやつらは速い動きができなくなっていた。

 

「『ファルコン・ツイン・クラッシュ』!!」

 

両手から隼の形をした大きな気弾を放つ。

その速度は今までのどの技よりも速く、ケガをしていた奴らに容赦なく直撃する。

ピクピクと動いているがそれで終わらせることはない。

 

「『アルバトロス・ブラスター』!!」

 

その一撃でほとんどのカナッサ星人が包まれる。

その一撃が終わったころには残っているカナッサ星人は初めの半分を割っていた。

 

「まだまだ、おねんねには速いぜ!!」

 

そう言って一際大きな『アルバトロス・ブラスター』を撃って念入りに灰も残さないようにする。

一息ついたころにはカナッサ星人の姿は消えていた。

 

「やはりサイヤ人は恐ろしい民族だ、あの時に根絶やしにされていれば……」

 

俺が降り立ってから声を発する奴がいた。

どうやらあの攻撃の嵐から逃れたようだな。

睨み付けてきやがるが、こちらは何食わぬ顔だ。

元はと言えば、お前らが売ってきた喧嘩だろうが。

 

降り立って早々襲撃されて憧れを貶められて、謂れのない恨みをぶつけられる。

戦力差のある一方的な蹂躙は好まないといってきたが、自分からはする気はない。

今回に関してはこいつらの私怨から被害を被りそうになった。

しかも抵抗しなくて追い詰められたら殺されていただろう。

 

最後の抵抗という様に拳を俺に打ち込んできた。

頭痛が一瞬したが一体何を俺にしたんだ?

 

「トオロ様のようにはいかないが、お前もまたあのサイヤ人の様に未来に悩まされるがいい」

 

この言い方だと恐らく未来視をするようになる拳を撃ち込まれたか。

そう言った長老の首を引きちぎって家も何もかもを気弾で壊して、全てを更地にしていった。

一度は終わった民族、ここで終わっても結果は一緒だ。

頭が冷えてから思ったが、あのプツンとした音が聞こえてからの漲るパワーは何だったのだろう。

もしかすると理性がある状態での中途半端な超サイヤ人に近い状態だったのかもしれない。

 

俺は自分が簡単に感情の壁を越えてしまった事に驚きを。

そして殺し尽くした罪悪感を覚えながら、人の気配が全く無くなったカナッサ星から去っていった。




今回のプッツンからのパワーアップは悟飯と同じ現象です。
ただ悟飯と違って一瞬ではないからどちらといえば超サイヤ人寄りな感じですね。
今回は戦闘力が全然足りていないのでそんな事になりませんでしたが。
指摘がありましたらお願いします。


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『頭痛に導かれた絶望』

まさかの偶然による戦いが始まる。
カナッサ星人の未来予知の拳では、現在進行形の近い未来をうつしていないからこんなことが起こってしまう。



あのブロリーとの交戦以降、相も変わらず頭痛は続いている。

徐々に痛みが大きくなっている為、自分が想定していたよりも操縦や生活にも影響が出始めている。

今まで操縦の失敗で墜落してしまったり、気絶してしまって風呂で溺れたりしなかったのは運が良かったという他ない。

 

この症状が治るのが何時になるかわからない以上はセッコ・オロには戻れない。

療養できる惑星が有るのだから地道に治そう。

そうと決まればいち早くピタルに行って、この症状を治す術でも教えてもらおう。

その後にはやっておきたい事も有る。

まずは普段着をヤードラット星に行って、長に頼みこんで重くしてもらうか。

 

「さて、その前にまずは着陸する惑星を決めないとな……」

 

中継を挟まずに行けるような宇宙船ではない。

その為一度は着陸をして整えないといけないのだ。

座標を確認したところ、どうやら緑の惑星『地球』という星のようだ。

その中でも人が誰もいなさそうな土地は……

 

「ユンザビット高地という場所か……」

 

降り立った瞬間、なじみのある気を感じて驚愕した。

まさかこんな惑星にいるとは思っていなかったから。

 

「なっ、この気はまさかナメック星人!?」

 

それだけじゃない、三つ目人の気やサイヤ人の気まである。

それ以外は地球の固有の民族たちの気のようだが……。

 

「いったいどんな惑星だというんだ?」

 

気の小ささからは大したことのない平和な惑星のようだ。

もしかしたら多様な民族が何かしらの理由で求める安息の地なのかもしれない。

このナメック星人の事に関しては最長老様に聞けばいいだろう。

 

「まぁ、ここには今回降り立っただけだし、このまま瞬間移動でピタルへ行こう」

 

聞きたいことができた為、のんびりとした航行はやめる事にする。

俺はすぐさま額に指を当ててピタルへ瞬間移動をしようとする。

 

「ピタルの人の気が感じられないな…残念だ」

 

しかし思った以上に辺境の星だったようでピタルまで行けそうにない。

経由しながら行くとなると…

 

「どうやらナメック星人の気は感知できるから近いのがナメック星か」

 

因みにヤードラットも感じ取れなかった。

消去法として、自分が知っている惑星でナメック星以外に経由できる場所はない。

この質問の結果を聞いて整理した後にヤードラットとピタルに行けばいいだろう。

 

「なぜ地球にナメック星人がいたのか?」

 

この疑問は最長老様に聞かないと分からない。

俺たちサイヤ人の様に飛ばしてきたのか?

想定としては好戦的でもないから何か災害に見舞われてなんだろうな。

額に指を当てて宇宙船を忘れないように、手を添えてナメック星へと瞬間移動をした。

 

「随分と木が生い茂ったな」

 

10年前に来た時よりも木々が生え、美しい星に変わっていた。

生態系としては魚やどこかから流れ着いた獣たちもいる。

 

「おおっ!!、久しぶりだな」

 

瞬間移動した先は懐かしい顔ぶれがいる集落だった。

ムーリ長老が出迎えてくれた。

子供のナメック星人もいる。

 

「どうやらあれから何かあったようだな、話してみないか?」

 

俺は正直に言った。

10年間戦闘を続け、強くなった事。

色々な星を巡ってきた事。

同族にあった事。

そして、カナッサ星人に対する虐殺についても。

 

「怒りで我を忘れてしまったか……しかし相手側にも非があるな」

 

虐殺行為自体は咎められて、子供たちもおびえていた。

しかし元々の性格を知っている以上、自ら率先して有無を言わさず行ったわけではないと分かられていた。

相手のやったことを含めたうえで今回のこの言葉なのだ。

 

「彼らも話を聞いたり、本人では無いサイヤ人への敵対心を燃やさなければよかったのにな」

 

最初からなにもなしに襲撃されれば困惑がある。

その後に余計に怒りを刺激されて、理不尽なものだったとしたら反撃を試みる。

そのうえ、憧れた人間を馬鹿にされて黙るような性分ではない、

それらが重なって生まれたものだとムーリさんは言っていた。

 

「話してもらったがそれだけが理由ではないな、何か疑問があったんだろう?」

 

流石に年の功には勝てないか。

俺は疑問を打ち明けて真相を聞いてみた。

 

「このナメック星にかつて災害なんてありましたか?」

 

地球でのナメック星人の事で聞かなくてはならない。

元々はそれが自分の今回の目的だからだ。

 

「すまん、わしも最長老様によって生み出された子の一人、元祖ともいえるナメック星人はもはや最長老様だけなのだ」

 

ムーリさんは申し訳なさそうにうなだれる。

つまり最長老様しか知らないこと。

そうなると行くべき場所は決まっている。

 

「それでは今から最長老様のところへ向かいます、ありがとうございました」

 

そう言って10年ぶりに最長老様の元へ向かう。

あの頃の倍以上の速度で瞬く間に到着した。

成長をかみしめることができたよ。

 

「んっ、お前は……大きくなったな」

 

扉が開いて出てきたのはネイルさんだった。

筋骨隆々と言った感じではないが今の自分よりも強いのがわかる。

やはり最長老様を守る手前、力を上げていたのだろう。

 

「お久しぶりです、最長老様、お元気そうで」

 

座ったまま、あの日と変わらない貫禄と大きな包み込むような雰囲気のまま。

椅子に最長老様が座っていた。

 

「そういうあなたこそ……

久しぶりですね、ネイルより質問があると聞いたのですがどういったモノでしょうか……」

 

穏やかな変わらない声色でこちらに声をかけてくる。

この人を前にすると気が引き締まって、背筋を伸ばしてしまう。

 

「地球にナメック星人の気を感じたのですが、かつてナメック星人の間での災害などについてご存知ですか?」

 

背筋を伸ばしたまま、明瞭に伝えやすい形で語っていく。

これでわからないといわれたら、本当にお手上げだ。

 

「異常気象ですね…そして地球となると」

 

考え込むように頭を下げる。

一度は異常気象で滅んでしまったのか。

やはり、その時に死の運命から逃れるために地球に送ったか。

 

「カタッツの子です、龍族の天才児でした、まさかあの幼子が生きていたとは」

 

顔を上げて思い出したのか、声を発し始めた。

元祖ナメック星人の子供だったのか。

龍族という事は戦士型ではないため特殊な力を持った存在だ。

やはりそのナメック星人がドラゴンボールを作ったのはおよそ間違いないだろう。

 

「善性を持っていたあの子がもし邪心を持ってしまうと分かれることもあるでしょう、

元祖でも邪悪なものが一人いましたが、生まれながらの悪であればそう言った事もないのでしょうが」

 

善と悪で別れてしまう。

そうなればいくら天才的なものといえど半減させてしまうのだろう。

というよりあれだけ穏やかなナメック星人の人の中にかつて邪悪な存在がいたのは驚きだ。

 

「そうなっていたら再び一つに戻るようにお伝えください、そうすればだれにも負けないでしょうと」

 

半減したから1+1になるとかそういうレベルではないのだろう。

強さをかけあうのかもしれない。

そうなれば流石に戦闘力が1という事は無いしこのナメック星の強さを考えると確かにとてつもない力が生まれそうだ。

 

「わかりました、お伝えいたします」

 

そう言ってお辞儀をして俺は最長老様の家から出ていく。

ネイルさんにもお辞儀をして、ムーリさんのいる集落まで戻っていった。

 

「どうだった、分かったかね?」

 

帰ってくると開口一番に言ってくる。

俺は笑みを浮かべながら親指を立てていた。

 

「さすがは最長老様です、全てをご存知でした」

 

まさか、すらすらと答えてもらえるとは思ってもいなかった。

高齢であり、なおかつ痛ましい事情の事柄を何十年かも間、覚えていたいとはふつうは感じないだろう。

 

「そうか、次はどこに向かうのだ?」

 

次の目的地はピタルでもいいんだが、先にこっちに行って話をつけよう。

今の服を脱ぐか、別の服に細工をしてもらうかだ。

それを決めておかないとな。

 

「ヤードラットです、強くなるために服へ細工を施してもらおうと……」

 

力を制御できるようなものにするか、重りにするかで意味合いが違う。

重りは外せばその分上がるが、それ一つだとそれを外せばたちまちフルパワーになってしまう。

それを解決したければ手袋や靴など細分化しておくのが一番やりやすい。

 

「ふむ、そうか、また会おう」

 

「ええ、いずれまた……」

 

そう言って俺はヤードラットまで瞬間移動をしていた。

久しぶりのヤードラット星だがどうなっているのだろうか?

 

「おぉ……久しぶりだなぁ」

 

長老が瞬間移動してきた俺をすぐに見つけて、声をかけてくる。

文明の発達はあったが、素朴な雰囲気は変わっていない。

物々交換を行って毎日を過ごしているみたいだ。

10年近く前は金銭のやり取りもあったが、まさか『錬金術』とかいう奴でも身につけたか?

 

「今日は何の用だ、あれから超能力はよく使っているようだが?」

 

「はい、瞬間移動も千里眼も使っています、本日はこの服に、少し細工を施してもらおうと」

 

新しい服を長老に見せる。

『中華服』という様な珍しい服のようだが。

 

「これはまた面妖な服だな、どういった細工がいいのだ」

 

長老も不思議そうな顔でその服をまじまじと見ている。

俺も初めて見た時はセンスはいいがどういったモノなのか、不思議に思った。

 

「戦闘力をセーブできるように服の重さを変更してほしいんです」

 

何分の一にするとか超能力を活かした工夫でもいいんだが、やはり重さで制御できる形にした方が使い勝手はいい。

またいずれは重さの調節をするだけで済むのだから。

 

「うむ、上下だけでは足りんな、中に来ている服、靴、そして特製の重りをつける形にしよう」

 

そう言われて俺は追加で靴と中に着る予定の服を手渡す。

用意はできていたがさすがに上下だけでは制御を細分化できないもんな。

 

「今からどこかに行くか?」

 

このような言い方をするという事はすぐにはできないという事だ。

つまり時間をかける予定がないと待ち時間の間は暇だというのを暗に示している。

 

「ピタルで体調の診断をしてもらいますけど……」

 

本来の目的はこれである。

疑問が浮かんだり、やってもらう事があったため薄れていたが、未来視を治さないことには解決はしない。

 

「そうか、お前さんの診断結果が出るころにはできているだろう、行ってきなさい」

 

そう言われて俺はピタルに向かっていた。

時間は掛かったがこれでようやく本命の目的が果たせる。

未来視が行われている状況は精神とのズレや時に頭痛さえも引き起こす。

その為、このまま長期化してしまうと俺は廃人に近くなってしまうだろう。

それを緩和するために、頼ろうと思ったのだ。

 

「うむ……強引に治すのはほとんど無理だな」

 

すぐさま診断をしてもらい結果を聞くと、どうやら未来視によるデメリットはないらしく、

カナッサ星人から受けた一撃は不完全な状態で、緩やかに脳波への干渉を行っていたようだ。

解決としては時間がある程度経過すると自然と薄れていくと言われた。

その間の状態で異常な事態が起こらないように薬を処方してもらっておいた。

 

「力になれず、申し訳ないな」

 

診断しても解決するために何を行えばいいのか?

強烈な衝撃や刺激を与える事で緩和できても、その後が恐ろしい。

それ以外に、その時点でミスをすると症状の悪化の可能性がある。

色々考えたが無理やりに近かったり、緩和できそうにない方法ばかりだったので自然に任せるしかなかったようだ。

 

「仕方ないですよ、今度何か特別な薬でも貰いに来ます」

 

突発的な病や体の不調などを即座に解決しないと後に響く。

もしくは死ぬだろう。

そうならないために、用心深くこのピタルの力を借りて対策を打っておこう。

そう思いながら、俺は増えた記憶の未来の真偽のために再び地球へと向かう事を決意。

しかしその前にヤードラットに戻って、細工が施された新しい一張羅を受け取るのだった。




今回死なずに済んだ要因:
カカロットじゃない。
破壊しまくっていたのでエネルギー弾の威力や攻撃力のピークを過ぎ始めていた。
瞬間移動のおかげで最後以外被弾なし。
劇場版の時期より速すぎたのでまだあれほど驚異的じゃない。

見てしまった1対1の映像:
今回の戦いとは違う未来でのタイマン。

指摘有りましたらお願いします


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地球上陸編
『ガタバル、緑の惑星に立つ』


今回は原作主人公がいる星についに着陸です。
といってもまだ占いババの後の修行の悟空ですのでZにはまだまだ遠いですが。


あの頭痛から思った以上に操縦や生活に支障が出ている。

治るのがいつになるかもわからない以上、セッコ・オロには戻れない。

療養できる惑星がないわけでもない。

ピタルに行ってこの症状を治す術でも教えてもらおう。

あとは普段着の重さをヤードラット星人に行って重くしてもらうか。

 

「さて、まずは手身近な惑星は……」

 

緑の惑星『地球』という星のようだ。

一番誰もいなさそうな土地は……

 

「ユンザビット高地という場所か……」

 

降り立った瞬間、なじみのある気を感じて驚愕した。

まさかこんな惑星にいるとは思っていなかったから。

 

「なっ、この気はまさかナメック星人!?」

 

それだけじゃない、三つ目人の気やサイヤ人の気まである。

それ以外は地球の固有の民族たちの気のようだが……。

 

「いったいどんな惑星だというんだ?」

 

気の小ささからは大したことのない平和な惑星のようだが、多様な民族が何かしらの理由で求める安息の地なのかもしれない。

このナメック星人の事に関しては最長老様に聞けばいいだろう。

 

「まぁ、ここには今回降り立っただけだし、このまま瞬間移動でピタルへ行こう」

 

そう言って額に指を当てて俺はピタルへ瞬間移動をしようとする。

しかし思った以上に辺境の星だったようでピタルまで行けそうにない。

経由しながら行くとなると近いのがナメック星。

そこからヤードラットとピタルに行けばいいだろう。

 

「最長老様に聞かないとな…」

 

なぜ地球にナメック星人がいたのか。

俺たちサイヤ人の様に飛ばしてきたのか?

好戦的でもないから何か災害に見舞われてなんだろうな。

額に指を当てて宇宙船を忘れないようにナメック星へと瞬間移動をした

 

「随分と木が生い茂ったな」

 

10年前に来た時よりも木々が生え、美しい星に変わっていた。

生態系としては魚やどこかから流れ着いた獣たちもいる。

 

「おおっ!!、久しぶりだな」

 

瞬間移動した先は懐かしい顔ぶれがいる集落だった。

ムーリ長老が出迎えてくれた。

子供のナメック星人もいる。

 

「どうやらあれから何かあったようだな、話してみないか?」

 

俺は正直に言った。

10年間戦闘を続け、強くなった事。

色々な星を巡ってきた事。

同族にあった事。

そして、カナッサ星人に対する虐殺についても。

 

「怒りで我を忘れてしまったか……しかし相手側にも非があるな」

 

虐殺行為自体は咎められて、子供たちもおびえていた。

しかし元々の性格を知っている以上、自ら率先して有無を言わさず行ったわけではないと分かられていた。

相手のやったことを含めたうえで今回のこの言葉なのだ。

 

「彼らも話を聞いたり、本人では無いサイヤ人への敵対心を燃やさなければよかったのにな」

 

最初からなにもなしに襲撃されれば困惑がある。

その後に余計に怒りを刺激されて、理不尽なものだったとしたら反撃を試みる。

そのうえ、憧れた人間を馬鹿にされて黙るような性分ではない、

それらが重なって生まれたものだとムーリさんは言っていた。

 

「話してもらったがそれだけが理由ではないな、何か疑問があったんだろう?」

 

流石に年の功には勝てないか。

俺は疑問を打ち明けて真相を聞いてみた。

 

「このナメック星にかつて災害なんてありましたか?」

 

地球でのナメック星人の事で聞かなくてはならない。

元々はそれが自分の今回の目的だからだ。

 

「すまん、わしも最長老様によって生み出された子の一人、元祖ともいえるナメック星人はもはや最長老様だけなのだ」

 

ムーリさんは申し訳なさそうにうなだれる。

つまり最長老様しか知らないこと。

そうなると行くべき場所は決まっている。

 

「それでは今から最長老様のところへ向かいます、ありがとうございました」

 

そう言って10年ぶりに最長老様の元へ向かう。

あの頃の倍以上の速度で瞬く間に到着した。

成長をかみしめることができたよ。

 

「んっ、お前は……大きくなったな」

 

扉が開いて出てきたのはネイルさんだった。

筋骨隆々と言った感じではないが今の自分よりも強いのがわかる。

やはり最長老様を守る手前、力を上げていたのだろう。

 

「お久しぶりです、最長老様、お元気そうで」

 

座ったまま、あの日と変わらない貫禄と大きな包み込むような雰囲気のまま。

椅子に最長老様が座っていた。

 

「そういうあなたこそ……

久しぶりですね、ネイルより質問があると聞いたのですがどういったモノでしょうか……」

 

穏やかな変わらない声色でこちらに声をかけてくる。

この人を前にすると気が引き締まって、背筋を伸ばしてしまう。

 

「地球にナメック星人の気を感じたのですが、かつてナメック星人の間での災害などについてご存知ですか?」

 

背筋を伸ばしたまま、明瞭に伝えやすい形で語っていく。

これでわからないといわれたら、本当にお手上げだ。

 

「異常気象ですね…そして地球となると」

 

考え込むように頭を下げる。

一度は異常気象で滅んでしまったのか。

やはり、その時に死の運命から逃れるために地球に送ったか。

 

「カタッツの子です、龍族の天才児でした、まさかあの幼子が生きていたとは」

 

顔を上げて思い出したのか、声を発し始めた。

元祖ナメック星人の子供だったのか。

龍族という事は戦士型ではないため特殊な力を持った存在だ。

やはりそのナメック星人がドラゴンボールを作ったのはおよそ間違いないだろう。

 

「善性を持っていたあの子がもし邪心を持ってしまうと分かれることもあるでしょう、

元祖でも邪悪なものが一人いましたが、生まれながらの悪であればそう言った事もないのでしょうが」

 

善と悪で別れてしまう。

そうなればいくら天才的なものといえど半減させてしまうのだろう。

というよりあれだけ穏やかなナメック星人の人の中にかつて邪悪な存在がいたのは驚きだ。

 

「そうなっていたら再び一つに戻るようにお伝えください、そうすればだれにも負けないでしょうと」

 

半減したから1+1になるとかそういうレベルではないのだろう。

強さをかけあうのかもしれない。

そうなれば流石に戦闘力が1という事は無いしこのナメック星の強さを考えると確かにとてつもない力が生まれそうだ。

 

「わかりました、お伝えいたします」

 

そう言ってお辞儀をして俺は最長老様の家から出ていく。

ネイルさんにもお辞儀をして、ムーリさんのいる集落まで戻っていった。

 

「どうだった、分かったかね?」

 

帰ってくると開口一番に言ってくる。

俺は笑みを浮かべながら親指を立てていた。

 

「さすがは最長老様です、全てをご存知でした」

 

まさか、すらすらと答えてもらえるとは思ってもいなかった。

高齢であり、なおかつ痛ましい事情の事柄を何十年かも間、覚えていたいとはふつうは感じないだろう。

 

「そうか、次はどこに向かうのだ?」

 

次の目的地はピタルでもいいんだが、先にこっちに行って話をつけよう。

今の服を脱ぐか、別の服に細工をしてもらうかだ。

それを決めておかないとな。

 

「ヤードラットです、強くなるために服へ細工を施してもらおうと……」

 

力を制御できるようなものにするか、重りにするかで意味合いが違う。

重りは外せばその分上がるが、それ一つだとそれを外せばたちまちフルパワーになってしまう。

それを解決したければ手袋や靴など細分化しておくのが一番やりやすい。

 

「ふむ、そうか、また会おう」

 

「ええ、いずれまた……」

 

そう言って俺はヤードラットまで瞬間移動をしていた。

久しぶりのヤードラット星だがどうなっているのだろうか?

 

「おぉ……久しぶりだなぁ」

 

長老が瞬間移動してきた俺をすぐに見つけて、声をかけてくる。

文明の発達はあったが、素朴な雰囲気は変わっていない。

物々交換を行って毎日を過ごしているみたいだ。

10年近く前は金銭のやり取りもあったが、まさか『錬金術』とかいう奴でも身につけたか?

 

「今日は何の用だ、あれから超能力はよく使っているようだが?」

 

「はい、瞬間移動も千里眼も使っています、本日はこの服に、少し細工を施してもらおうと」

 

新しい服を長老に見せる。

『中華服』という様な珍しい服のようだが。

 

「これはまた面妖な服だな、どういった細工がいいのだ」

 

長老も不思議そうな顔でその服をまじまじと見ている。

俺も初めて見た時はセンスはいいがどういったモノなのか、不思議に思った。

 

「戦闘力をセーブできるように服の重さを変更してほしいんです」

 

何分の一にするとか超能力を活かした工夫でもいいんだが、やはり重さで制御できる形にした方が使い勝手はいい。

またいずれは重さの調節をするだけで済むのだから。

 

「うむ、上下だけでは足りんな、中に来ている服、靴、そして特製の重りをつける形にしよう」

 

そう言われて俺は追加で靴と中に着る予定の服を手渡す。

用意はできていたがさすがに上下だけでは制御を細分化できないもんな。

 

「今からどこかに行くか?」

 

このような言い方をするという事はすぐにはできないという事だ。

つまり時間をかける予定がないと待ち時間の間は暇だというのを暗に示している。

 

「ピタルで体調の診断をしてもらいますけど……」

 

本来の目的はこれである。

疑問が浮かんだり、やってもらう事があったため薄れていたが、未来視を治さないことには解決はしない。

 

「そうか、お前さんの診断結果が出るころにはできているだろう、行ってきなさい」

 

そう言われて俺はピタルに向かっていた。

時間は掛かったがこれでようやく本命の目的が果たせる。

未来視が行われている状況は精神とのズレや時に頭痛さえも引き起こす。

その為、このまま長期化してしまうと俺は廃人に近くなってしまうだろう。

それを緩和するために、頼ろうと思ったのだ。

 

「うむ……強引に治すのはほとんど無理だな」

 

すぐさま診断をしてもらい結果を聞くと、どうやら未来視によるデメリットはないらしく、

カナッサ星人から受けた一撃は不完全な状態で、緩やかに脳波への干渉を行っていたようだ。

解決としては時間がある程度経過すると自然と薄れていくと言われた。

その間の状態で異常な事態が起こらないように薬を処方してもらっておいた。

 

「力になれず、申し訳ないな」

 

診断しても解決するために何を行えばいいのか?

強烈な衝撃や刺激を与える事で緩和できても、その後が恐ろしい。

それ以外に、その時点でミスをすると症状の悪化の可能性がある。

色々考えたが無理やりに近かったり、緩和できそうにない方法ばかりだったので自然に任せるしかなかったようだ。

 

「仕方ないですよ、今度何か特別な薬でも貰いに来ます」

 

突発的な病や体の不調などを即座に解決しないと後に響く。

もしくは死ぬだろう。

そうならないために、用心深くこのピタルの力を借りて対策を打っておこう。

そう思いながら、俺は増えた記憶の未来の真偽のために再び地球へと向かう事を決意。

しかしその前にヤードラットに戻って、細工が施された新しい一張羅を受け取るのだった。




寄り道からの未来視によって定住フラグがたちました。
なぜ、わざわざガタバルは制御する必要があったのか?
天下一武闘会で乱入した場合、この時点で戦闘力1万とか力加減しても殺してしまうかもしれない。
(当時の悟空で200ぐらい)

地球にいった事で増えた新しい未来視:
天下一武闘会
タンバリンによるクリリンの死
ピッコロ大魔王と悟空の戦い
神様と悟空の特訓

指摘などありましたらお願いします。


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『お祭り騒ぎと未来一つ変わって』

今回は原作の第22回天下一武闘会に参戦です。
戦闘力の調整で、「なんで?」なシーンがあると思います。




あれから時は過ぎた。

地球に戻ってきたのは『天下一武闘会』というもので、優勝すればお金が手に入る。

その大会に参加するためだ。

最近は他の星々で賞金稼ぎのような真似をしてお尋ね者をとらえていた。

強敵がいないお陰で頭痛があったりしても勝てる状態だ。

日に日に弱まって入るが未来視はいまだに残っている。

特に鮮明になっているのは髪の毛と鼻がない少年が化け物に殺される未来だ。

武闘会の後の疲弊した状態というのも相まって一方的になぶられている。

 

「しかし、本当に力を抑えて試合をしないとな……」

 

戦闘力は測ってはいないが鍛錬そのものは続けていた。

たぶん今ならば11000か12000ほどだろう。

服と自分の気のコントロールのおかげで、戦闘力にすると100程度にまで抑えている。

抑えなければ200ほどにはなるだろうが……。

その中でもまだ大きいのは三つ目族の男とツンツン頭のチビと爺さん。

フルパワーでやってしまうと指先一つで勝負を決めてしまいそうなものだが……

 

「はじめ!!」

 

相手が駆けてきて俺は防御の姿勢をとる。

延々と相手の攻撃を受けて、打ちつかれたところに気絶をさせる手刀を入れる。

極限にまで抑えた一撃ではあるが相手を気絶させるには十分なものだ。

重りをつけなくても気を抑えれるならいらないのではないかと思うが、カナッサ星人の時の様に怒りや気の昂ぶりで思わず力が入ってしまう場合がある。

そうなったときに待っているのは惨い死体が転がってしまう状況だ。

 

しばらくこのスタイルで、負担をかけずに勝利を積み重ねる。

相手を投げて場外に落としたり、気絶させていく事で相手に実力を探られることもなく代表決定戦に進む。

 

「相手はパンプットとかいう奴か」

 

結論だけ言うと、強いのはあくまで一般的な目線だ。

この程度の速度、目をつぶったって避けられる。

俺は顎を揺らすように一本拳で相手へ一撃を見舞う。

どうやら力の制御は成功して、相手はよたよたとして倒れ込み立ち上がれなくなっていた。

 

「本選の相手は……」

 

どうやら未来視の化け物はこの場にはいない。

つまり武闘会終了後に襲撃をする形なのだろう。

棄権をしたくはないし、とりあえずできるところまでやるか。

 

「7番か」

 

くじ引きの結果、一回戦の相手は孫悟空という男だ。

だが、俺には一目でわかった。

地球における名前だろうが、この目はあの時の赤ん坊。

あやしていた赤ん坊、カカロットだ。

 

一回戦の試合、天津飯とヤムチャという男の試合だ。

ヤムチャ選手の方が天津飯選手より実力が劣っている。

 

速さにモノを言わせた連打攻撃を仕掛けるも、手の動きにばかり集中しているのか足元がお留守だ。

さらに言えば腹部など上半身もそれほど攻防一体にしている感じでもない。

隙間を縫うように腹に一撃を入れて動きをとめた後にハイキックで勢いを止めに行く。

 

「ずあっ!!」

 

案の定腹部へ一撃を食らってしまい、天津飯選手の優勢は覆らない。

掌を上下に組み合わせた構え。

どうやらとっておきの技をやるようだが……

 

「か……め…は……め…」

 

手の先に気が集まっていくのを感じる。

どうやら俺の『アルバトロス・ブラスター』の様に発射する技のようだ。

 

「波ー!!」

 

天津飯選手は不思議な手の動きをして避ける気配がない。

一体何を行うのか?

 

「かー!!」

 

気合の一声を発した瞬間、かめはめ波という技が放ったヤムチャ選手の方へ向かっていく。

気功波を跳ね返す術を持っていたとはな。

こうなれば避けざるを得ない。

しかしその避ける行為に跳躍を選んだのがヤムチャ選手の失策だった。

受け止めてすぐに上に逸らしたらよかった。

腹部にズドンという音が聞こえるような強烈な一撃を食らい地面に叩きつけられる。

 

「やっ、やめろー!!」

 

カカロットが静止を呼び掛けている。

ヤムチャ選手の目は白目をむいた状態だった。

 

「気絶しているのに……」

 

急降下をする天津飯に対して俺は気を開放してかけていき、ヤムチャ選手を抱えて攻撃から逃れさせた。

膝を曲げた状態から天津飯選手はきれいな着地をして俺を睨み付けてきた。

 

「お前、何のつもりだ?」

 

まぁ、試合中に別の選手の乱入って言うのは水を差すような行為だからな。

しかしきちんとした理由があった。

 

「あの時点でヤムチャ選手は気絶をしていた、そんな状態であの追い打ちは必要ない」

 

かめはめ波という技を跳ね返した後、地面に叩きつける強烈な一撃。

あの時点で意識がなくなっていた。

そんな中であの一撃だ、回避することもできない。

そうなれば足が折れてあらぬ方向に向いていただろう。

 

「ふん、あのまま心臓にぶちこもうとしていなかっただけありがたいと思うんだな、俺は優しいんだぜ?」

 

殺すのはルール違反なはずだ。

それを度外視する相手とはな……

 

「ヤムチャの敵はオラが討つ!!」

 

カカロットが天津飯選手に言い放つ。

お前の相手は俺なんだ。

まぁ、譲ってやってもいいか。

 

つつがなく第2試合と第3試合が終わる。

ジャッキー・チュンという老人とクリリンという少年が勝ち上がってきた。

さて……カカロットの奴がどれほど強くなったのかね

 

「オラ、負けねぇぞ!!」

 

随分と気合が入っているな。

それでこそ戦闘民族サイヤ人だ。

 

「かかってこい!!」

 

そう言うと一気に懐へ飛び込んできた。

速いことは速いがまだまだだ。

足で防いでそのまま後ろに回り込む。

 

「遅いぞ!!」

 

尻尾を掴んで放り投げる。

力が抜けるか確かめてから投げればよかったか。

着地をするその瞬間に面白いものを見せてやるか!!

 

「か……め…は……め…」

 

カカロットに照準を合わせて……着地をした。

今だ!!

驚いた顔を見せてくれよ!!

 

「波!!」

 

当たったと思った次の瞬間、カカロットをすり抜ける。

観客に死人が出ないように上に曲げて逸らした。

 

「おめぇ、とんでもねぇな、ヤムチャとクリリンの奴見てまねたんか」

 

嬉しそうに笑っているカカロット。

自分のオリジナルの技を見せても驚きが少ないと思ったからな。

そこら辺を計算したんだよ。

 

「2回も見させてもらった、あいにくああいった技は得意でな、真似る事はできるんだよ」

 

そう言って再び構える。

するとカカロットがさらに速度を上げていた。

こっちもじゃあそろそろ気を抑えるのはやめるか。

 

「甘い!!」

 

腕を掴んで蹴りを叩き込む。

そのまま蹴り上げてから後ろに回りこでカカロットの腕と足を掴んで落下する。

受け身をとれない状態でそのまま武舞台へ叩きつけてやった。

手ごたえはあるがどうだ?

 

「いってー、お前、めちゃくちゃはええなー」

 

どうやらまだまだいけるみたいだな。

しかしそんな感想を言っている暇はないぞ。

威力は弱体化しているが技を使ってやる。

 

「『コンドル・レイン』!!」

 

気弾の雨がカカロットに襲い掛かる。

かいくぐっていくがその雨の先はこの技が待っているんだ。

 

「『新・狼牙風風拳』!!」

 

一気呵成に畳みかけて拳の連打でグロッキー状態に追いやろうとする。

カカロットが足払いを仕掛けてくるが、それは織り込み済みだ。

その瞬間に飛び上がって強烈な飛び蹴りをくれてやる。

 

「ぬっ!!」

 

食らう前に体勢を立て直したカカロットが足を掴んで投げる。

しかしこの距離ならば!!

 

「でりゃ!!」

 

カカロットの顔面に拳を放つ。

しかし陽炎のように姿を消した。

くそっ、どこにカカロットは消えた!?

 

「こっちだ!!」

 

後ろに回り込んでいたのか振り向いて拳を放つ。

しかしこれも残像だった。

何度も何度もこの技をしたことで空振りを誘い、俺の懐に潜り込んできやがった!!

気を探ればよかったのだが焦ってしまったのか、それすらもうまくできずこのような手に引っかかった。

 

「しまっ……」

 

そして、そのままカカロットの拳の一撃を食らう。

体が倒れそうになるので、体を支えるために腕を伸ばす。

しかし、その瞬間、俺の体に異変が起こった。

試合が長引いていたのか、それとも偶然なのか。

こんな時に限って激しい頭痛が起こる。

それが原因か、俺は伸ばす場所の目測を誤ってしまう。

その結果……

 

「場外!、ガタバル選手場外です!!、勝者、孫悟空選手!!!」

 

武舞台に手をつくはずが、場外の芝生に手を付けていた。

重りをしても勝てるという慢心だったか、カカロットを見くびってしまったゆえの敗北。

例えばなどという言葉で敗北の事実は濁らせてはいけない。

そう思って俺はお辞儀をして控室に戻った後、会場から離れて観客席で見るようにした。

千里眼のおかげで苦労せず見る事ができる。

 

準決勝ではジャッキー・チュン選手が、天津飯選手に勝利を譲るような形でわざと場外負けをした。

若い者たちの時代の到来を喜んでいるようだった。

これで決勝戦の一人目は決まった。

しかし言葉の揺さぶりに弱いのか天津飯選手は技の切れが時折鈍っていた。

 

準決勝第2試合ではカカロットとクリリン選手の戦いだったが、やはりあの時に尻尾を掴むのを長引かせるメリットはなかったな。

きちんと弱点を克服している。

お互いの技が白熱した戦いを生んでいるがまだまだカカロットは本気ではない。

それを言い出してはいけないほど俺は抑えているのだが……

足音だけを置き去りにしたステップのようだが俺の目はごまかせない。

普段の俺ならば一撃で吹き飛ばしてやるほどの実力差だが、もしやるなら空を飛んで、あっちが飛び上がってきたところを狙い打つ。

もしくは武舞台をカカロットごと吹き飛ばす一撃で一気に片を付けてやる。

死なない程度に威力を抑えた奴だけどな。

 

ステップを繰り返してクリリン選手の目の前に現れてから、カカロットがその一瞬に手刀を8発当てて、場外に落として勝利した。

 

決勝戦は天津飯選手とカカロットだ。

この勝負が終わった後にクリリン選手が化け物に襲われるのか。

俺は控室に一度戻って、それを防ぐために息をひそめる。

肩や腕 足の付け根とふくらはぎ、太ももにつけていた、服以外の体中の重りを外して抑えていた気を開放しておく。

1つ衣装を外すだけで一気に気が高くなる。

必死に抑えてばれないようにしていた。

 

「お前さん、やはり実力を隠しておったな」

 

誰かわからないスーツ姿の老人に声をかけられる。

しかしこの気はよくわかる。

隠しているのはお互い様だろうに。

 

「ジャッキー・チュン選手だな?」

 

それを言うとにやりと笑う。

こちらと違って変装していただけだからな。

実力を隠すという敬意を払わない行為に比べればかわいいものだ。

 

「悪いが、本気でやってしまうとぶっちぎりだったからな」

 

そう言ってジャッキー選手の後ろを取り、首筋に手を当てる。

殺すことが許されていたら切っているだろうし、そうでなくても首に手刀で気絶させることができる。

この実力の差に冷や汗をかいて頷いていた。

 

「試合は見ない、それに俺は少し終わらせたい予定があるんでな」

 

神経を研ぎ澄ませた状態で相手をしたいからな。

試合を見てその興奮で人を見殺しにするような形をとりたくない。

未来を変えるためにこの力がある、運命のあるがままを求めるのではなく、運命を変えて抗うための力だ。

 

決勝戦の結果は不運にもカカロットが車にあたり、そのバウンドで地面に先に背中が着いて場外となり、準優勝。

空を飛ぶことができればそうはならなかっただろう。

今回は流派と不運が重なってしまい負けを喫したようだ。

 

カカロットの奴が忘れていた棒と袋だが届けてやるか。

そう思って拾った瞬間、誰かの気配を感じた。

 

「くくくっ、その袋の中身を渡してもらおうか」

 

化け物がそこにはいた。

翼が生えているが今までこんな外見の異星人は見た事は無い。

 

「なっ、ガタバル!?」

 

控室から出ていったはずの俺がここにいたことに驚いたのだろう。

クリリン選手が俺を呼び捨てにする。

別に構わないが、多分俺の方が年上なんじゃないのか?

 

「なんだ、お前は?」

 

振り向いてクリリン選手に声をかける。

どういった動きをしていても見ていた未来と大筋は変わらないか。

大きな違いはここに俺がいる事だが。

 

「俺はこれに参加していた武闘家だ」

 

クリリン選手が構えて言い放つ。

カカロットとの勝負で大分消耗しているだろうに。

ここは俺が引き受けないとな。

 

「そうか、武闘家は皆殺しにしろと大魔王様からの言葉でな……死ね!!」

 

クリリン選手へ突撃しにいったきた化け物を掴んで放り投げる。

その放り投げた方向へ先回りをして拳で叩き落す。

するとフルパワーでやってしまったのがいけなかったのか、相手の首から上がきれいになくなっておりピクリとも動かなくなっていた。

 

「相手を選ばないと早死にするんだぜ、もう死んでしまっているけどよ」

 

そんな事を言っているとクリリン選手が不思議そうな目で俺を見ていた。

やはり試合の時と動きが違っていたからか?

 

「あんた、悟空との勝負本気でやっていたのか?」

 

カカロットの勝負を本気でやっていたかどうか?

あくまで現在のカカロットたちの力の世界に抑えた状態で、その枠内での本気なのは間違いない。

しかし、今回の負けは受け止めている。

頭痛がなければ、最初から重りをつけなければこうはなっていなかった。

その気持ちは革新として存在している。

でもその結果も踏まえたうえでの戦い。

 

「確かに力は抑えていた、しかしそれは見くびりではない」

 

見くびってそういった事をしたのではない。

殺してしまうという実力の差を感じて、その殺すという事柄に恐怖心を抱いたのだ

仮に見くびっていたら、初めの懐に潜り込まれる事も止められず、そのままカカロットが勝っていただろう。

 

「修行の延長線で勝負をしようとして、ベストコンディションで挑まなかった怠慢だ」

 

これがピオーネならば重りを外していただろう。

自分の実力との差が分かっていたがその時に隠している気の大きさをうまく察知できず、それが後手の調整につながった。

 

「俺はこれから自分をさらに磨く、孫悟空に伝えておいてくれ

『次は負けない』ってな」

 

そう言って俺は瞬く間にクリリン選手と実況の人の目の前から消えていくのだった。




今回のガタバルの戦闘力は上下の服、インナー、靴、手袋、それ以外に体につけている分で制御しています。
さらに追加で気を抑えるとかいう器用な方法で戦闘力を落として予選突破などをしていました。

クリリンが死なずに済みました。
未来として見えている部分は変えられます。
しかし残念なことに、ここでピッコロ大魔王の騒動からフェードアウトしているので、餃子と亀仙人のじっちゃんは死んでいます。

次は23回天下一武闘会まで飛ぶか合間に頭痛完治からの復活デビューの1シーンを書くかですね。

指摘有りましたらお願いいたします。


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『痛み癒えて眼前には好敵手』

ガタバルがサイヤ人らしからぬ考えを展開しますが、ベジータが聞いたら『情けない』と一蹴するのか、もしくは悟空なら『変わってる』といわれるのか。
次回はあるキャラを強化します。
奴だってまともに修行すればサイヤ人襲来時には多少の戦力に……


あの化け物退治から2年の時間が過ぎた。

20になるころには頭痛はなくなっていた。

しかし、それでも未来が見えることには変わりはない。

あれから大魔王とのカカロットの未来が見えた。

結果はカカロットの勝利だが、その後に卵を吐き出して己の分身を作り出して爆散していた。

どうやら善と悪が分かれているようなので、最長老様からの伝言を伝えておかないとな。

 

「まぁ、これが終わってからの話だ」

 

セッコ・オロに戻ってきて再び拳闘士としての道を歩んでいた。

今日は再びあの日の焼き直しだ。

 

相手は目の前にいる。

ピオーネもまたこの数年で強くなっていた。

しかしあの日よりは近づいた背中だろう。

 

「おいで」

 

そういって手招きをする。

カウンター狙いのつもりか?

俺はじりじりと間合いを詰めて様子を探っていく。

あの日の様に突撃すればいいわけじゃない。

あの時はピオーネに油断があった。

しかし今は油断のない状態。

迂闊に飛び込めば叩き落されてしまうだろう。

 

「ふっ!!」

 

間合いに近づいて牽制の蹴りを放つ。

上下に分かれた蹴りをどうさばくのか?

 

「しっ!!」

 

間をすり抜けていくように体を縮めて飛び込んできた。

その時に瞬間移動で後ろを取り、一撃を放つ。

 

「『アルバトロス・ブラスター』!!」

 

これは避けられないだろう、まずは先制だ。

しかし次の瞬間、俺はとんでもないものを見た。

 

「なっ!?」

 

瞬間移動で避けられた。

どこにいる!?

 

「私もね、ヤードラットで学んできたの、君のを何度も見たからそれを真似したら筋がいいって褒められたわ」

 

後ろか。

俺は後ろに気弾を撃ってその推進力で距離を取る。

まさか、瞬間移動を手に入れていたとは……

これで奇襲はほとんど意味をなさなくなってしまった。

お互いが気を抜けば後ろを取られる状況なのだから。

 

「行くわよ」

 

そう言って怒涛の連撃が始まる。

蹴りも拳もそんな軟じゃない速度だ。

ヤムチャ選手の技よりも強烈で隙がない。

足元がお留守なんてことはない、凌ぐのが精いっぱいだ。

 

「そこっ!!」

 

防御の間をすり抜けてアッパーが顎に入る。

一瞬、体勢が崩れたらそこからは連撃につかまってしまう。

だが、ここは踏ん張ってあえて密着状態を作り上げた。

地球の『ボクシング』という競技での『クリンチ』という技術だ

抱きついているようなものだが、ここから投げたりもできるためこのルールでは有効な一手ではある。

 

「離しなさい!!」

 

そんな俺の意図が分かっていないのか。

ただ、抱き着いてきたと思っているピオーネは恥ずかしそうに俺の頭を打ちつける。

そんなに集中力を切らしていていいのか?

 

「『エクスプロード・ウッドペッカー』!!」

 

密着状態から強烈な一撃を見舞う。

ピオーネは気絶しそうになっていたが、そこはさすがといった所だ。

踏ん張って反撃をしようとする。

しかし拳に勢いがないのでカウンターを取る。

 

「くっ!!」

 

後ずさったその瞬間を狙って俺は大技を放つ。

あの日のような隙が無い状態での一撃ではない。

 

「『レイブンリヴェンジャー』!!」

 

速射性に優れた一撃で、隙を与えない。

瞬間移動をしても千里眼でとらえていけば特に問題はない。

 

「まだまだ、『新・狼牙風風拳』!!」

 

ピオーネが相殺したが攻撃の手を緩めはしない。

速度でピオーネを押していく。

足元をわざとお留守にして攻撃を誘う。

それをやってきたら一気に片を付けるように。

大きな罠を仕掛けていた、しかしピオーネは俺の想像を超える行動に出た。

 

「『アルバトロス・ブラスター』!!」

 

俺の技を使って今の状態を脱した。

俺に向かって撃てば自分も巻き込まれる。

だから地面に打ってその勢いで空に飛び上がった。

最大の技以外では俺の方が威力が高いものを搭載している。

つまり、推進力を活かすには俺の技の方が優れている。

そうなればこういった相手の技を盗むのも必要だろう。

 

「しかも瞬間移動で隙はなし……」

 

滞空時を狙うところだがそれもできない。

俺に向かって照準を合わせているようだがそっちがその考えならこっちにもある。

 

「『エレクトリック・パレード』!!」

 

前回の『フィナーレ・オブ・パレード』の倍ほどの太さを持つ電撃の塊が押し寄せる。

これをまともに受けてしまうと致命傷は免れない。

こっちはこれしか決め技はないんだけどな。

でも俺そのものの象徴といっても過言ではない。

 

「『ソウル・オブ・サイヤン』!!」

 

二人の最大の技がぶつかり合う。

相殺しあってその煙から出てきたピオーネとクロスカウンター。

お互いが瞬間移動も何もできない状態での殴り合い。

腹に一撃を入れれば顔面に強烈な一撃が入る。

踵落としが決まれば地獄突きを決められる。

お互いが血を流しながらも主導権を握らせるものかと躍起になる。

 

「ハアッ!!」

 

ピオーネが『バニッシュ・ウイップ』で距離を離しにかかる。

地面に打ち込んで砂煙を出してその一瞬の間に気を消した。

分かられないようにするためだろうがあの日よりは追いつめている事がわかる。

 

「逃がさん、『ファルコン・ツイン・クラッシュ』!!」

 

二発の気弾が猛烈な速度で飛んでいく。

砂煙を切り裂いていき、ピオーネの姿が一瞬見えた。

その方向に向かって一気に駆けていく。

しかしこの姿を見せていたことが罠だった。

 

「残念でし……た!!」

 

瞬間移動で駆けていた俺の真上に現れて肘打ちで俺を地面へと叩きつけた。

威力は凄まじく砂煙を巻き上げていく。

 

「ぐあぁっ!!」

 

地面に寝転んでいる俺の頭を掴み、持ち上げて地面へ叩きつける。

グイングインと音を立てて、勢いを上げながら左右に叩きつけられていく。

 

「はああっ!!」

 

ひとしきり叩きつけた後、振り回して空へと俺を舞いあげる。

そしてそのまま『エレクトリック・パレード』の構えを取った。

動きは取れるがここは、一つピオーネを騙すか。

 

「『エレクトリック・パレード』!!」

 

直撃しそうになった瞬間に俺は瞬間移動で回避する。

しかしこの時俺はあえて大きな声で叫んでいかにも食らったという雰囲気を出した。

そして攻撃が食らったと思い、力の抜けていたピオーネの後ろに陣取った。

 

「なっ……」

 

驚いた顔をしているがその一瞬の隙が命取りになる。

このまま大技を決めて勝たせてもらう。

 

「『アルバトロス・ブラスター』!!」

 

瞬間移動をする暇もない状態で直撃させた。

吹っ飛んでいき、地面を何度もバウンドをしていく。

手ごたえありというところか?

 

「まさか、食らったと思わせる迫真の演技なんてね……」

 

立ち上がって構えを取る。

ピオーネの方もダメージが積み重なって、全力から遠ざかっている状態だ。

お互いが大技をくらったり、攻撃を幾度となく受けて息を切らし始めている。

大技をもう一度当てればそれだけでこの勝負は決まるだろう。

お互いがじりじりと距離を詰めて、攻撃へ移行する瞬間を探りあう。

さて……クライマックスまではもう少しかな?

 

『カンカンカーン!!』

 

そう思った矢先、ゴングが鳴る。

前にこんな事は無かっただろ。

そう感じていたが……

 

「「えっ?」」

 

それ以上に二人そろって間抜けな声を上げていた。

あの日の様に闘技場の崩壊をさせないために勝負を止めたのだろう。

こればかりは仕方ない。

また壊したとあれば今度は除名されても文句は言えなくなってしまう。

 

ただ不完全燃焼であることは否めない。

白黒はっきりつけてこそ戦いの意味がある。

 

「随分強くなったね」

 

戻っていく間にピオーネが口を開く。

そっちだってヤードラットに行って特殊な術を身に着けていたじゃないか。

今の状態をお互いに戦闘力にしたら俺が12000前後、そっちが16000ほどだろう。

 

「行く先々の惑星で戦ったりもしたからね、致命傷は一回だけだったけど……」

 

むしろ死ななかったことに奇跡を感じる。

あいつとの戦いを思い浮かべるだけで鳥肌が立つ。

体が震えて止まらない。

 

「戦うにしても格上過ぎたら死ぬかもしれないからね」

 

うんうんと頷いている。

どうやら勝ったものだと勘違いしているようだ

あんな奴、もう二度と相手にしたくはない。

今度こそ殺されるかもしれないからな。

 

「で、これからどうするの?」

 

俺の顔を見てピオーネがつぶやく。

本気の戦いをお互いができないのならばこの場所にいてもしょうがない。

侵略するつもりはないが星々で修業を積んだり戦い続けてもいい。

金銭ならば今までのファイトマネーだってある。

宇宙為替なる場所もあるからその行く星のお金にしておけばいい。

 

「また、星々の旅だが……いい加減定住する星を見つけようと思う」

 

第一、いつまでもこんな暮らしを続けるわけにもいかない。

ナメック星なんて食物がないし、ヤードラットも強くなるための環境が整っているわけじゃない。

ズンだってもう今の俺からすれば『10倍ってなんなの?』みたいなレベルだ。

ピタルだって自然の中の獣がいるが突然変異の次元でもないとヤードラットといい勝負だ。

ティビグラとティメだって食物が全くない、最近になってようやく草木が生え始めたとかいうような環境だ。

狩りの一つでもできればいいんだがちょっといい加減そういった生活を考え直す時期だ。

20といえば本来のサイヤ人ならお嫁さんをもらったりなどを考えてもいい。

そして思うのは強ければそれでいいわけではないという事。

男だから戦っておけば全てまかり通る、体を動かしておけばいいなんておこがましい。

困っていれば支えてやる、蓄えがなければ稼ぐ。

戦闘民族らしからぬ考え方なのも今までの異星人との出会いや環境の違いを見てきたからだ。

 

話は逸れたが結論としては定住できる星は……

 

「地球は定住するのにいい環境だろうけどね」

 

ピオーネに俺は言う。

しかし強くなれる環境といえば否。

今の環境では俺たちが劇的に強くなれる事は無い。

 

「緑の惑星ね」

 

スイッツとかトゾリもいいだろうけどあまり肌に合わない。

スイッツは主にあの匂いが無理だ。

甘ったるい匂いは日常生活で常に付きまとわれると面倒である。

トゾリは住んでもいい環境なのだが、あいにく戦いや体を動かすこと、修行を切り離した生活は想像がつかない。

 

「私はしばらくの間、賞金稼ぎでもしてみようかな」

 

それもいいな。

しかしいい加減、闘技場で強いからって使いの誰かに世話してもらうとか

星の探索で狩りをして焼くだけとかいう生活から脱却しないとシャレにならんぞ。

実力に差がつくのは少し残念だが生活面の自立も目指さないとな。

なに、家事の中で体を動かしたりするだけでも肉体の強度は上がる。

絶対あんたに追いついてみせるぞ。

 

「俺は地球に行ってみるよ、穏やかな星で過ごしてみるのも悪くない」

 

とはいっても畑の開墾だとか自給自足を志してみる。

それに向こうにはカカロットもいる。

サイヤ人同士鍛えていけば十分強くなれるだろう。

 

「いつか会えるだろうが、今度こそ今日の決着をつけよう」

 

そうピオーネが言ってお互いの拳を合わせる。

そして互いが発着場で別れて別々の時間を歩んでいくだろう。

緑の惑星に行くのも2年ぶりだ。

カカロットの奴は強くなっているのか?

そうじゃなければ俺と一緒に修行をしないかと誘ってみよう。

修行相手は欲しいからな。

あとは……あのナメック星人の気の出所を掴んで話しておかないと。

最長老様の伝言をきちんとな。

だが……

 

「行った事のある惑星が拠点になるんだから俺たち発着所に行く必要あったっけ?」

 

まぁ、宇宙船預けているから念のために持って行っておけばいいか。

ただ、手ぶらで行こうと思えばいけるのが嬉しいよな。

俺は気を集中させて天下一武闘会の会場の武舞台まで瞬間移動をした。

久しぶりの地球の空気に心安らぐ。

 

「あの……ガタバル選手、今日はまだ武闘会ではありませんよ?」

 

実況のおっちゃんに声をかけられた。

目の前に現れたのに驚いていないあたり、さすがだな。

そうなのか、じゃあいつなんだろうか?

 

「来年の今日が開催日です、参加されるおつもりで?」

 

出ても出なくてもいいんだが、カカロットや天津飯選手たちの成長も見てみたいしな。

ここは出ておこう。

 

「出ますよ、孫悟空選手に借りを返すためにもね」

 

握り拳を作って参加を宣言する。

実況のおっちゃんは嬉しそうな顔でこっちを見ていた。

 

「そうですか……では今度は『本気』での勝負を楽しみにしていますよ」

 

……しまった。

実況のおっちゃんとクリリン選手とジャッキー選手には本気の強さがばれているんだった。

殺してしまわないように細心の注意を払って戦わないと……。

地球について早々、家事や定住地の事でなく戦闘面で憂鬱になるとは。

つくづく、戦闘民族であるサイヤ人らしい宿命だと思い、俺は額に手を当てるのだった。




ガタバル、地球定住計画開始。
といっても星々の旅行は見知った場所は瞬間移動で燃料費もほとんど0。
食費もたぶん拳闘士の組織がある程度負担。
こいつ、マジで金使ってなさそう……
指摘有りましたらお願いします。


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地球定住編
『誇りを取り戻した者』


ガタバルの地球人強化計画第1弾。
その初めの犠牲者、もとい恩恵を受ける男とは?
ちなみに定住の際の家事スキルなどを磨くため戦闘力の伸びが緩ーくなっていきます。


地球に到着してからはや二週間が過ぎた。

いまだに住む家は決まらず、『ビジネスホテル』とかいうところで寝食をしている。

安いのが売りなようだが寝心地もいいし、出る食事もうまい。

初日に野宿しようとしたら変な服着た人にライトで照らされた。

それ以降、毎日『不動産』とかいう家を教えてくれる場所に行って気に入った家を見つけようとしている。

 

「何か変な気を感じるな……」

 

地球に定住するためにどこかいい住居はないかと探す。

どうやら地球人は空を飛べないみたいで、歩いたり走ったりの移動が多い。

あとは車とかいう奴や自転車、バイクなんていったモノがあった。

実況のおっちゃんから『ホイポイカプセル』って奴を思えてもらって宇宙船をしまっておいた。

その途中で感じた変な気、それはまるで人間だけど人間じゃない。

亜人とも違う奇妙な感じなのだ。

 

「行ってみるか……」

 

その気を探って行ってみる。

段々近寄っているのがわかるが、どうもこの気配は機械か何かを含んだ存在の気配だ。

 

「くそっ、思ったより成果が上がらん」

 

サイボーグという奴だな。

どうやら、体の半分ほどが消し飛んだからそういう形にしたのだろう。

もったいない、俺と出会っていればピタルの先端医療で戻っただろうに。

 

「憎いぞ、孫悟空……こんなみじめな姿にしおって」

 

カカロットにやられたか。

こいつと協力して天下一武闘会までの修行をするか。

100でも200でも上がればそれだけでも十分だ、下がっていたり維持の状態ではないからな。

 

「おい、お前さん、孫悟空に何か恨みがあるのか?」

 

目の前に現れた俺を敵意むき出しの目で見てくる。

どうやら戦う、もしくは殺すつもりのようだが。

 

「そっちの実力じゃあ俺には到底かなわないぞ」

 

今の俺は服装も全力時の状態で抑え込んでいない。

気の大きさでどれほどの力に差があるのかわかるはずだ。

 

「ふざけるな!!」

 

どうやら気を感じ取ることはできなかったようだ。

拳を突き出してくるが掴んでそのまま放り投げる。

 

「このっ!!」

 

もう一度攻撃を仕掛けてくるが次は両手を掴んで攻撃の出来ない状態にする。

それなりに腕に覚えがあるなら今のやり取りでわかっているだろう。

 

「さっきの時点で差に気づかないのか?」

 

もし気づいていないのならわかるようにしないといけない。

一撃で気絶させてやれば嫌でもわかるだろう。

 

「貴様の方こそ油断しすぎだな!!」

 

そんな事を考えていたら相手の腕が抜ける。

機械仕掛けだったのか、しかもシャキンとかいう音まで聞こえた。

何か仕込んでいたのか!?

俺は後ろに跳躍してその一撃をかわした。

 

「武器を使うとは…武道家の誇りはどうしたんだ?」

 

回避した後によく腕の方を見る。

なるほど、刃物を仕込んでいたのか。

追い詰められているとはいえ、それはよくないだろう。

 

「やかましい!!」

 

そう言って外した腕をもう一度取り付ける。

避けられた以上叩き折られてしまうのも考えればそれがいい。

 

「元の体を取り戻して復讐したくないのか?」

 

復讐というよりは再戦する機会を与えるだけの話だけどな。

しかもその機会もこいつの頑張り次第って話だし。

まぁ、そんな提案をしてみる。

この提案を聞いてもその体がいいというならば、無理強いはしないが。

 

「そんな事ができるのか!?」

 

食いついてきた。

やはり武を志す者として己の肉体で戦うのを望んでいるのだろう。

殺し屋としてでなくまだわずかな形とはいえ誇りもあるようだ。

 

「その代わり俺の修行に付き合ってもらう」

 

まずは交換条件を出す。

少なくてもそれなりの技を持っていそうだし、レパートリーが増える。

なにより一人で延々とやっていく間で組手がなければどれほどのものか試せない。

 

「それでいいならば生身の体に戻してもらう、私を連れて行け」

 

随分と即答だな。

まぁ、決断が早ければその分生身に戻る時間が速いからいいことなんだけど。

 

「ところでお前の名前は?」

 

今の今までそう言えば名前を聞いていなかったな。

お前と呼ぶばかりではよくないし聞いておかないと。

 

「私は桃白白、お前は?」

 

地球は珍しい名前が多いな。

まぁ、逆に宇宙側の方が単純なのかもしれないが。

 

「俺の名前はガタバル、じゃあ行くか、宇宙に」

 

そう言って俺は桃白白に頼んで肩に手を置いてもらい、惑星ピタルへ瞬間移動をした。

宇宙船を持っていこうと思ったが、行く惑星が全て人がいるから必要なしという結論になった

ここ以外で今のこいつを生身の人間に戻せる場所なんてないだろう。

 

「地球の外でこんな世界があったとはな……」

 

ピタルの風景を見て桃白白が驚く。

まさか惑星の半分が病院なんて想像もつかないだろう。

 

「さて……診察してもらうからついて来いよ」

 

そう言って病院に入っていった。

できればいい返事が聞けたら御の字だ。

 

「半年ぐらいで終わるかな?」

 

診察してもらう順番になって診察室に入って早々、ピタルの医者に聞いてみる。

ピタルの医者は何の事か理解して桃白白の顔や不完全な部分をじろりと見ている。

流石に脳や無事なところ以外は移植するしかないだろう。

その手術や復元にかかる期間を考えても無茶な申し出だろうか?

 

「馬鹿なことを言うな」

 

やっぱり無理か。

こりゃあ次の天下一武闘会までに強くはできないぞ。

 

「半年『も』かかるわけがないだろう、手術と復元両方合わせて1か月半、なじむのに半月、2ヶ月あれば十分だ」

 

そう言われた瞬間俺はつまずいて転びそうになった。

まさかそれより早く治るという言葉が返ってくるとは思っていなかったからだ。

俺はピタルの医者の凄まじさを目の前で見ながら桃白白の治療の間、俺は地球にいったん戻って不動産屋に行って

都にするか、郊外にするか考えたり部屋の間取りや、家電製品店なるものを見て生活の準備を進めていた。

どうも家電製品店を見ると『カプセルコーポレーション』という名前とロゴをよく見かけた。

有名な企業なのだろう。

 

そしてピタルでの医療で2ヶ月経った頃、そこには完全な生身の男がいた。

やはりピタルの人たちの医療技術はすさまじい。

体に癒着して完全になじんでいるから継ぎ目のようなものも見えないし、目や耳などほかの無くなっていた部分もきちんと存在して不自然な形になっていない。

 

「ふははっ、これだ、この肉体だ!!」

 

軽快な動きで喜びを表す。

機械の体ではうまくできなかったものも悠々とできているのだろう。

生き生きとしている。

 

「恨みを買ったりしていたら、またこうなるぞ、殺し屋はもうやめておきなさい」

 

医者が桃白白に言う。

今回サイボーグになったのも依頼の成り行き上、カカロットとやりあったからだろう。

カタギに戻って真っ当にした方がいいと思うぞ。

 

「殺し屋を廃業しろと?」

 

またここにあれだけの状態で来たらあきれられるぞ。

この人たちは凄腕だが忠告を聞いてくれないやつは治療しないからな。

ここは素直に頷いて殺し屋以外の稼ぎ方を学ばないと。

 

「私は恩人との約束は守る男だ、仕方あるまい」

 

考え込んでいたが、仕方ないと言って頷く。

『殺し屋』桃白白ではなく『武道家』桃白白が生まれた。

さて…次の段階に進むか

俺は宇宙船を使ってある星へ向かう事にした。

 

「この……重さは一体なんだ、ガタバル?」

 

現在惑星オモミーで特訓をしている。

ティビグラと違って部屋に分かれていてそこではクリアした部屋の重力によって次にはいれる部屋のロックが解除されるのだ

俺の状態では現在50倍までしか利用できない。

だがティビグラと違ってここは2倍や3倍と細かい部屋がある。

だからここの3倍重力で鍛えさせるというわけだ。

俺はあの超重力の服装とさらにこの部屋の負荷だ。

インナーと靴ぐらいは外してもよかったんだけどな。

流石にそれをやると先に音を上げたみたいにみられるのでやめておく

 

「今、お前の体重は部屋のせいで3倍ほどだ、一回跳んでみろ」

 

どれほど跳躍できるかで実力の判断ができる。

サイボーグから戻ったばかりだから全然跳べなくても特に問題はない。

 

「ぴょっ!!」

 

うむ、あんまり跳べていない。

だが想像よりは跳んでいるな。

サイボーグをやめて力は下がっただろうが、生身の方が恩恵は受けるからな。

確実に実力は伸びるだろう。

 

「ここで今から半年過ごす」

 

その後は地球に戻って重力に慣れながらの鍛錬だ。

戦闘力としては赤ん坊の時の俺と同じ250ほどを目安にしておこう。

 

「それでも孫悟空にかなうかわからないのか?」

 

あまりにも時間が短いからな。

それにサイボーグ状態での強さにうぬぼれていたようだし、生身の状態は何年ぶりだ?

もっと早ければカカロットを超えるぐらいの強さには仕立て上げられただろう。

地球人のレベルを底上げして俺といい勝負ができるような奴らが増えてくれればそれだけでいい。

 

「まず、なまっている体の錆を落とさないと話にならんだろう」

 

ぐぅの音も出ないほどだと自覚していたのか。

無言でうつむいている。

 

「そうだな、じゃあよろしく頼むぞ」

 

そう言って俺と桃白白との修行が始まる。

とはいっても基礎体力の向上なり、基礎的な訓練をするのが一番の方法である。

元々の強さを取り戻しつつはあったのだが、厳しい環境に身を置いていなかったのでいまいち実感がなかったのだろう。

ここにきて60日目でようやく10倍の状態にも慣れてきていた。

とはいってもリハビリのようななじむような緩やかな動きの範囲だ。

戦闘にはまだまだ程遠い動きでしかない。

 

「うむ、こうしてみると兄の武術にもまだまだ無駄な動きがあるな」

 

そう言いながらタメを作ってその後に体を回して蹴りを放つ。

速く動くだけでなく無駄を削いで相手を効率よく倒す。

殺し屋時代のスタイルと今の武術の融合。

それを完成させてさらなる高みを目指そうとしている。

 

「あと数か月だ、ちゃんと慣れておけよ」

 

俺は俺で新技を考えながらの特訓だ。

相手から盗むだけではいいものが生まれそうにないからな。

 

そんなこんなで4か月が過ぎここでの生活も半年が過ぎた。

リハビリから本格的な動きになってはいるがそろそろ切り上げの時期だ。

戦闘力もサイボーグの状態の時と同じぐらいの実力になった。

体の慣らしが多かったせいで250に到達はしていない。

だがそれは地球での特訓でどうにかなるだろう。

俺の方の戦闘力は12700ほどだ。

 

「『鶴首落葉』!!」

 

人形の首を足で挟み、跳躍。

錐揉み回転をしながら落下する。

新技を開発しているが見るからに威力が高い。

気功波の技よりも卓越している。

 

「『水月柘榴』!!」

 

人形のみぞおちに両拳を撃ち込んで貫き、そこから掌を開いて割くようにする。

殺しの技に近いテイストのようだが、威力を抑えたりして貫かずに打ち込むだけで十分なものになる。

技のレパートリーとしては少なかったが、それでも徒手空拳における技を開発して近接寄りの戦闘スタイルを見せる。

 

「この今の私を天津飯達に見せてやりたいな、やはり武は研鑽すれば技や力を試したくなる、忘れていた久しい感覚だ」

 

完全に殺し屋としての姿はなく、純粋な武道家の血が目覚めている。

自分の成長が楽しいのだろう。

しかし天津飯選手とどういった関係だ?

 

「じゃあ、次の天下一武闘会に出ればいいだろ、俺も出るつもりだからな」

 

地球に戻って4か月特訓をしたら天下一武闘会だ。

それまでに地球の重力に慣れつつ体の切れを戻さないとな。

 

「それはいいな、そこになら孫悟空もいるだろう、借りは返すぞ……武術でな」

 

屈伸をして深呼吸をしてやる気十分だ。

俺もカカロットに借りを返す立場だ。

また本気を出さないように抑えて戦わないとな。

激怒するような状況にはならないだろうから重い服装をやめておこう。

 

「さぁ……お前さんにとっちゃ8か月ぶりの地球だぜ」

 

そう言って俺は桃白白とともに惑星オモミーを後にして地球へと瞬間移動をするのだった。




まさかの桃白白さん更生による戦力入り。
この小説ではきれいな白白さんで居てもらいます。
まぁ、鶴仙人は汚いままでしょうけど。
参加時の戦闘力としては天津飯より若干上で戦闘経験の差で優位に立つといった感じです。

指摘有りましたらお願いします、


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『狼の牙をへし折る時』

今回は天下一武闘会です
.
.
となっている部分は視点変更です。
前半ガタバル、一部悟空、再びガタバル、後半桃白白です


 

4か月の間の特訓で桃白白は体のキレを地球の重さと合いまった形にする事ができた。

3倍の重力など負荷が大きい時のままのキレだとどこか重苦しくなってしまっていたり、むやみに捻ってしまっているといった事が起こってしまう。

戦闘力としては何とか250にまでは持って行けたかな?

そうでなくてもいい線まではいくだろう。

 

「さて……そろそろ行くか?」

 

もう会場が開くころだ。

受付を済ませておかないと遅刻で出場不可なんて話にもならない。

 

「そうだな、新しい道着で行くか」

 

そう言って桃白白が着替える。

俺は選択していた動きやすい形の服にした。

 

この4か月で家は決まった。

その中に洗濯機や家電製品を入れて生活をしている。

宇宙為替で換算するとかなりお金の蓄えはあった。

家もそのままお金で一括で払い、なかなか広めの家にした。

場所は西の都から外れた郊外。

山もあるし畑も作れるが、町まで15分から20分ほど。

 

仕事をするならば警察官だったり、それでなければいい笑顔で食べ物屋のお兄さんみたいに声をかける。

色々と選択肢はある。

長い間は働かないでもいい蓄えがあるからといってもいつ何が起こるかわからない。

それならば働いて、万が一の可能性に備えておかないといけない。

 

「じゃあ、行くぞ」

 

そう言ってお互いが会場まで向かう。

距離はなかなかだが泳いで走って数時間もすれば着くものだ。

結局会場の受付が始まって少ししてからだったのですぐに受け受けをすまして、俺たちはクールダウンをする。

ウォーミングアップも終わっているから十二分に実力が発揮できるな。

 

100人にも満たない参加者。

その理由は3年前のレベルの高さのようだ。

今回も天津飯、餃子、クリリン、カカロット、ヤムチャがいる。

選手とつけていくのは面倒だから省略することにした。

どうやらジャッキー選手は出ていないようだ。

 

「ブロックはお互い分かれたな」

 

くじを引いた結果。

お互いのブロックは分かれる。

戦いたければ本戦トーナメントへ出場しなければいけない。

 

大会が始まると空気は一変。

呼ばれて上がるが今回は3%ぐらいに抑えないとな。

3年前は2%で頭痛によって負けたが今回は頭痛もないからな。

ちなみに若干上がって12800だから1%で128、3%で384ほどだ。

それでも高いかもしれないぞ。

 

「試合、始め!!」

 

言われた瞬間相手の足を掴んでそのまま回転させる。

前に知った『ハンマー投げ』という競技の様にだ。

そしてそのまま目を回した選手を放り投げて場外に落とす。

 

次の対戦相手には『ドロップキック』。

そのまた次の相手には『ラリアット』。

『プロレス』という格闘技の動きをして相手をなぎ倒す。

真剣に武術でやってしまうと昏倒させる際に力加減の調整が面倒になる。

相手を吹っ飛ばす戦い方ならうまくできるからそれでやってみる。

 

そんな事を繰り返していたら代表決定戦にまで勝ち進んでいた。

武舞台に上がるとそこは見たことのある選手がいた。

 

「これはこれは、ヤムチャか……」

 

目の前にいるのは3年前も本戦で見た選手、ヤムチャ。

実力はあるのだから油断は許されない。

 

「実力についてはクリリンから聞いている、本気で来てくれよ」

 

そう言って構える。

100%を出すわけにはいかないんだよ。

この武舞台や会場がボロボロになりかねないからな。

それでもまぁ、相手に対してできる限りは善処しよう。

 

「はぁっ!!」

 

一本拳で鳩尾を狙いに行く。

それを避けるが裏拳で顔面を狙う。

 

「くっ!!」

 

ヤムチャは首を動かして避けるがそんな速度で大丈夫だと思っているのか?

俺は横に振りぬかず斜め上に行くようにして、その後振り下ろす。

フェイントをかけたというわけだ。

 

「ぐあっ!!」

 

一撃を食らって前のめりになっているヤムチャの顔に膝の一撃を見舞う。

すんでのところで後ろに飛ぶが、鼻血が出ていた。

 

「くそっ!!」

 

仕返しという様に飛び上がって攻撃をしてくるが、相手の隙がない状態でそんな技を仕掛けてなんだというんだ?

俺は避けてそのままカウンターで背中に肘を撃ち込んで叩き落す。

 

「ちっ!!」

 

足払いをしようと試みたようだが悠々と避けるように飛び上がる。

その着地を狙っているようだが考えが甘いぞ。

 

「はっ!!」

 

息を爆風の様に吐き出して一瞬ブレーキをかけてそのからぶった攻撃にカウンターを合わせる。

3年前にカカロットがチャパ王という選手にやった手口だ。

 

「ぐふっ…」

 

背中をしたたかに打ち付けてダウンする。

なす事すべて先を読むように手を打つ。

正直この勝負が未来視できたわけではない。

しかし実力差でこんなことができるのだ。

 

「なんてことだ、まるで俺が子ども扱いじゃないか……」

 

それ以上の差に感じてもいいんだけどな。

なんだか掌を上に向けて唸っている。

一体何をするつもりだ?

 

「とっておきの技だ!!」

 

気を集中させて丸い球にする。

それを投げつけるのか、それじゃあ避けられておしまいだぞ?

 

「『繰気弾』!!」

 

投げてきたのを避ける。

しかしホーミング型のようで追いかけてくる。

だが仕組みはヤムチャの手動。

だったらヤムチャの腕と指をへし折ればいいのだが、そんなことはしなくてもいい。

 

「何っ!?」

 

立ち止まった状態になれば即狙うとはな。

向かってきた気弾を掴んで握りつぶす。

この系統の技は回避し続けても意味がない。

相殺するなりしておいて無力化するのが一番だ。

 

「今度はこっちの番だ!!」

 

そう言って俺は『狼牙風風拳』で攻撃を始める。

前回の倍以上の速度で手数を多くして反撃できないようにする。

受け止めてはいるが掠ったり体に幾らか攻撃が入っている。

 

「まさか、俺の技を使ってくるとはな……」

 

反撃を試みようとしているが時折テンポを変えてその隙を与えない。

相手にペースを渡さず、自分の戦い方を貫くのが勝利への近道だ。

さて、どうする?

 

「同じ技なんだ、弱点は分かっているぜ!!」

 

むしろそれは弱点を改善する気がないという事ではないのか?

弱点は足元。

だが見え見えのそれは唯の罠だ、これに食いついたら勝負が決まる。

しかしその機微に気づかないヤムチャは俺の足元を狙おうと足を動かす。

 

「てぇい!!」

 

足を狙ってきたヤムチャに対してブレーキをかける事で蹴りの空振りをさせる。

その無防備な状態から懐へ入り込んで肘を食らわせる。

そこから再び『狼牙風風拳』を放つ。

本気で来いといったからな。

といっても100%なんてものは出していない。

あくまで前回の自分より強いようにふるまっている。

延々と続く攻撃に完全に伸びてしまったヤムチャの胸倉をつかんで放り投げる。

緩やかな放物線を描いて場外へヤムチャは背中をつけた。

 

「場外、選手番号27番、天下一武闘会進出決定です!!」

 

これで俺も8人の中に入った。

あとは桃白白だが、どうやら奴も餃子に勝ってそのまま本選出場を決めたようだ。

 

「ヤムチャが負けた……」

 

カカロットの奴が驚いていた。

一方的な試合内容だったからか?

それとも俺の事を忘れていて全く無名の選手に負けたと思っているのか?

 

.

.

 

ヤムチャの奴が見たことねぇ奴に負けていた。

いや、どこかで見たことあんだけどおもいだせねぇ。

ヤムチャの技が全然きいてなかったし、ヤムチャの技で倒していた。

さっきは桃白白の奴が餃子を倒していたし、だれかわかんねぇ奴にいきなり『バカ』って言われた。

 

「ワクワクすっぞ」

 

つえぇ奴と戦える。

ピッコロ大魔王の生まれ変わりもいるしな。

試合が待ち遠しいぞ。

オラは肩を回して最後の代表が決まるところを見に行った。

.

.

 

カカロットの奴が去って行ってしばらくすると代表選手が決まったといわれた。

本戦会場に移動をする。

くじ引きで1から8の数字に応じて対戦相手が決まる。

 

「ガタバルさん」

 

実況のおっちゃんに呼ばれる。

するとカカロットが思い出したような顔をする。

こいつ、忘れていた方か。

天津飯やクリリンも見ている。

ナメック星人もいるがあれが悪に分かれているかもしれないやつか。

善の方がいたらそっちにも声をかけようと思ったんだが。

 

「5番だ」

 

クリリンと戦う事になった。

勝ったら、ナメック星人の奴と戦う可能性があるな。

そんな事を考えていたら、桃白白と天津飯の試合が始まった。

 

.

.

 

「さて、やるぞ……天津飯」

 

稽古ではなく実戦での比べあい。

果たしていつぶりだろうか?

サイボーグの状態になってからはあっていないから実に6年ぶりだ。

成長をみせてもらうぞ!!

 

「はあっ!!」

 

私は気合の一声とともに駆けて行った。

 

「しっ!!」

 

天津飯は横滑りに動き、俺の首筋を叩こうとする。

しかしその攻撃はすり抜けていった。

残念だったな、お前が視認していたのは残像だったのだ。

気配を出して接近をする。

その気配を感じて後ろを振り向くがそれもまた残像。

再び探ろうとした瞬間、腹部に拳をめりこませた。

 

「相変わらず目に頼りすぎだな」

 

目で追わず、気配に騙されることなく攻撃を待っておけばこのようなことにもなるまい。

しかし、筋肉はつけていたようで今の攻撃はそれほど効いておらんかったか。

 

「はっ!!」

 

攻撃を気合とともに放ってくる。

その攻撃を避けようとすると、頭に手をかざしていた。

 

「『太陽拳』!!」

 

しまった!!

目くらましをされてしまうとは不覚。

気配を感じ取れるが上空だ。

まさかあいつ……

 

「『どどん波』!!」

 

よかった。

もし『気功砲』だったら回避もできない状態で食らう羽目になっていた。

転がってあたっても問題がないように回避をする。

視力が戻るまではなりふり構わずに時間を稼がんとな。

 

「白白さん、棄権してください」

 

みっともなく避けている俺にでも嫌気がさしたか?

私に対して天津飯は棄権しろなどと言ってきた。

普通に考えたらあんなに眩しいものを食らって平然とはしてはおれん。

まだ、お互いが全力になっていないだろう。

お前の本気を見せてみるがいい、天津飯。

 

「そっちが棄権するべきだぞ、天津飯!!」

 

全力の動きで天津飯の懐に潜り込む。

離れようとするがそれより速く鳩尾にひねりを加えた両拳を入れていた。

新技である『水月柘榴』が決まった。

 

「がっ……」

 

呻いて前のめりになるがそれをしてしまうと、こっちの攻撃が続いて入るだけだ。

私は天津飯の首に両足をかけて跳躍をする。

そのまま錐揉み回転で地面に叩きつけようとする。

しかしさすがは天津飯、すぐに対策を打ってきた。

 

「『四妖拳』!!」

 

肩口から新しい腕を出して私の足を振りほどく。

そして一撃を食らわずに別地点に着地をした。

 

「ハアッ……」

 

息が上がってしまう。

今度はスタミナをつけるべきだな。

年を取ると激しい動きや緊張感は体力を著しく奪う。

 

「先ほどは失礼しました、まだこれだけの動きをするとは」

 

天津飯が詫びてくる。

分かればいいのだ。

サングラスでもかけていればあの技には対応できた。

あんなに転がって避けるような必要なんて微塵もなかっただろう。

 

「しかし、負けるわけにはいきません」

 

そう言うと天津飯が目の前から消えた。

気配は左右にあるから地面を左右交互に蹴りながら近づいているのか。

目の前に現れるまで待たない。

もぐらたたきのようにどちらかに現れる天津飯をタイミングを見計らって狙えばいい。

 

「そっちだ!!」

 

左を叩きに行く、しかし拳が通り過ぎた。

右が正解だったか!!

 

「裏です、白白さん!!」

 

そう言って右から蹴ってくる天津飯。

私はにやりと笑っていた、なぜかと言えば……

 

「なっ!?」

 

天津飯の蹴りも通りすぎたからだ。

私の裏をかいたつもりだったようだが裏の裏だ。

年上の私に騙しあいで勝てるとでも思ったか?

 

「私の方が一枚上手だったようだな!!」

 

手刀で首筋を狙い気絶させようとする。

しかし再び天津飯の体を通りすぎた。

まさか……

 

「裏の裏のそのまた裏です!!」

 

そう言われて蹴り飛ばされる。

くそっ、こいつどれだけ残像を作ったんだ!!

 

「やるではないか」

 

食らっているのになぜか嬉しくなる。

弟弟子が一杯食わせるとは。

 

「そちらこそ……」

 

天津飯も笑っている。

これこそが武道だ。

久しぶりに殺し屋として活動したために枯れていた細胞が一つずつ蘇ってくる。

やはりいくら殺しの技を磨いても心底はそれだったというわけだ。

こうしてみると思ってしまう。

真っ当に極めておけばよかったと。

私はなんと無駄な時間を過ごしたんだと。

 

「行くぞ、天津飯、私を超えて見せろ!!」

 

そう言って駆けていく。

徒手空拳を最後に選んだ。

やはり武道家であるならば最後に肉体でのぶつかり合いを選んでもいい。

 

「うぉおおお!!」

 

私の怒涛の連撃をさばき続ける天津飯。

蹴りも拳もすべてが急所を狙っている。

一瞬でも喰らってしまえば攻撃は縦続けに入るだろう。

そしてそれだけ急所の攻撃を食らえばノックアウトは免れない。

だが、私のスタミナ全てをかけて放つ連撃。

その名も……

 

「『鶴翼の舞』!!」

 

これを耐えきれば私の負けだ。

体力は欠片も残らないだろう。

軽く押すだけで倒れ込んでしまう。

数にして百を超える超高速連打にカウンター一つ合わせられない天津飯。

何をやっているんだ、次世代を担うのだぞ!?

さっきの超えて見せろは『超えさせない』ための意思表示ではない。

本当に私を超えて、私より若いお前がさらに武道家として飛躍してほしい気持ちから出た言葉だ。

 

「ぬぉおおおお!!」

 

打たれ続けながらも拳を突き出してきた天津飯。

そうだ、そうやって気迫を見せろ。

隙あらば叩き込んで来い。

 

「しっ!!」

 

蹴りでカウンターを試みる天津飯。

私の連打を一瞬薙ぎ払ったがそれではまだまだ体までは届かんぞ。

 

「『四妖拳』!!」

 

薙ぎ払った隙に腕を増やしたか。

確かに手数を拮抗させるにはいい判断だ。

 

「ぐぬっ!!」

 

体を二本の腕で守りながら違う二本の腕でカウンターを狙う。

しかし思ったより成功はしない。

だが私もさっきに比べて体に打ち込めなくなっていた。

 

「こうなったら……」

 

そういった瞬間、天津飯は防御を解いた。

一体何をしている!?

無抵抗な状態ではないか、そんな状態でこの連打を食らうと死ぬぞ!

防御を寸前で固める気も全くない。

 

「くっ!?」

 

殺してしまうと思った私は一瞬とはいえ速度を緩めてしまった。

その瞬間、天津飯の拳が私の腹部にめり込んでいた。

私は思わず膝をついてしまう。

 

「すみません、食らってでもカウンターを打つつもりだったのですが……」

 

肉を切らせて骨を断つやり方か。

無茶な真似を。

武道家としての私だったからいいものを、殺し屋の血が濃い状態ならば心臓に打ち込んだり貫いていたぞ。

 

「まさか今の私が殺し屋ではないからという理由であんな真似をしたんじゃないだろうな?」

 

念のため聞いてみる。

もしこれで頷いたら大馬鹿者だ。

相手が寸前で心変わりするかもしれない、そんな中で信用をするものではないぞ。

 

「そんなつもりはありませんが、真っ当にカウンターを取るにも難しかったので差し違える覚悟でやる気でしたので……」

 

そうか。

まぁ、それも若さであると認めよう。

もう、私の体力はろくに残っていない。

これ以上やっても無様にすがるような戦いを続けるだけだ。

 

「参った、私の負けだ」

 

降参の一言を述べる。

天津飯が驚いた顔をしているが、仕方あるまい。

 

「桃白白選手、降参!!、この試合天津飯選手の勝利!!」

 

実況の者が勝者の名乗りをする。

その時になってようやく天津飯が口を開いた。

 

「どうしてなんです、どうして降参をするんですか!?」

 

まったく棄権しろと言ったり、なんで棄権するんだと言ったり忙しい奴だな。

 

「年には勝てないんだ、あれ以上やってもお前が勝つ、次の試合もがんばれ、応援しているぞ」

 

そう言って控室に戻って、戦いによって熱くなっていたと息を大きく吐き出したのだった。

 




神様かヤムチャのいずれか落とす場合となってヤムチャにしました。
今回、桃白白は原作よりもかっこいい負け方という事でああいった書き方になっています。
亀仙人みたいに天津飯の成長に喜んで、武舞台から飛び降りて場外とかやったら、天津飯が2大会連続同じ勝利の譲られ方になるので没にしました。

指摘有りましたらお願いします。


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『鬱屈とした制限』

観戦の目線が多いです。
次回からZに入っていきますが、その5年間の間の話でいくつかやっていこうと思います。
100%を運よく防御できて被害少ないのは再生持ちのピッコロさんだけでした。



第一試合の熱戦の声援はすごかった。

前回優勝者の天津飯。

その兄弟子の桃白白。

それに恥じない戦いぶり。

もしあの場で思いやらずに一撃を叩き込めたなら勝てただろうが、殺す可能性があった。

去年までの殺し屋だった桃白白ならまだしも、今の武道家である桃白白にあの場面で攻撃をする事はできない。

 

「さて、次の試合でも見るか…」

 

俺は立ち上がってカカロットの試合を見る。

動きから見てあいつも重りをつけているな。

それでもあの女性には勝てるだろう。

天津飯相手ならば外さないと無理だろうが。

 

試合が進んでいくと衝撃の事実が出てくる。

会った事のある女性の事を忘れているとか、『お嫁さん』にもらうとか。

あいつ、絶対『お嫁さん』の意味わかってないよ……。

そして案の定、クリリンに聞いている。

その瞬間、転がってしまったわ。

 

結論としては勝利したら名前を教えてもらえるという事でカカロットが拳の風圧で場外まで飛ばした。

あいつもかなり強くはなっているな。

桃白白じゃあ今のカカロットには勝てなかっただろう。

というよりもしかしたらあのナメック星人以外は無理じゃないのか?

自分は抜いたうえで考えた結論だが。

 

そしてさらに試合後に衝撃が。

約束を守る形とはいえ武舞台で結婚宣言。

……あれ?

もしかして俺、年下のサイヤ人に恋愛面において追い抜かれたって事じゃね?

これはちょっと由々しき事態だ。

今まで戦ったり放浪した付けがこんな場面で、目の前で起こるなんて!!

でも、ほら……20数年で会った異性なんてピオーネしかいないし……

だからそこは情状酌量の余地あるよね。

 

そんなこと考えていたら俺の試合だ。

クリリンも調子狂っちゃうとか言っていた。

その気持ちわかるよ。

 

「クリリン、3から100までの数字で好きなの言ってくれ」

 

舞台にお互いが立つ前に質問しておく。

速い話、この数字に合わせた実力にするだけだ。

1ならこっちが負けるし2なら前回とさほど変わらない実力になる。

その為下限を3にしての質問だ。

 

「じゃあ……俺たちの試合の数字ってことで3でお願いします」

 

3%……384だな。

まぁ、仮に高い数字を言われたら死なないように気を付けたらいい話だし。

徒手空拳の一撃で貫通させなきゃいい。

あとは両手を使わないで勝負するぐらいか。

 

「試合、始め!!」

 

その言葉と同時にクリリンがこっちに来る。

横に避けると、跳躍でこっちの動きについてくる。

全ての攻撃は防いでいるがまだまだ相手の勢いは止まらない。

とにかく俺に攻撃を出させないようにしていく算段か。

じゃあ、そろそろギアを上げるか。

 

「ふん!!」

 

腕を掴んで頭突きをする。

その腕を振り回して場外の壁に向かって投げる。

なんと、場外に行くと思ったが宙に浮いているじゃないか。

だが、それがどうした。

 

一瞬でその上に行って膝を腹部に蹴り入れる。

手ごたえは十分だ。

しかしまだまだ粘るようでかめはめ波で武舞台まで戻る。

だがもう終わりだ。

なぜならその場所に先回りをしているからだ。

その状態から後頭部に拳を振り下ろしてやる。

そのまま叩きつけられてしまいダウンだ。

 

「これが実力差だぜ……」

 

気功波を全く使う事もなくクリリンを叩きのめす。

これでも3だ、もしもおでこの焼き印と同じ6とか言ってたらこの倍の強さでやっていたことになる。

 

「ぐぐっ……」

 

立ち上がって続行するようだな。

構えるがクリリンは上空に飛び上がる。

それを追うように俺も上空へと飛んでいく。

 

「波ー!!」

 

俺に向かってかめはめ波を放つ。

最後の手段と言いたいようだが甘すぎる。

教えておいてやるよ。

格上相手に隙を作らずに大技は決まらないってことを……

息を大きく吸い込んで迫ってくるかめはめ波に向かって。

 

「かあっ!!!」

 

気合を放ってかき消した、

そしてそのまま懐に潜り込んで腹部に拳を叩き込む。

蹴りと拳両方喰らってしまえばさすがに限界だったか。

白目をむいてしまっている。

抱えたまま、武舞台に降りて実況の人に見せる。

何が悲しくて男を抱えないといけないんだ。

 

「クリリン選手気絶しております、よって勝者…ガタバル選手!!」

 

あっけない試合だったからなのか、みんなが黙り込んだような形になってしまった。

あれでもまた実力には程遠いんだよな。

次のナメック星人の時はどうする?

因縁があるようだしカカロットと戦わせてみるか。

それとも倒して俺がカカロットと再戦をするか。

 

「まぁ、カカロットにここは譲るか」

 

因縁の対決を優先する。

俺だってフリーザが他人に倒されたら納得できない。

そういうものだ。

きっとカカロットもあのマジュニアと戦うつもりでいるだろう。

とりあえず俺は片隅で見てみることにした。

 

「隣いいか?」

 

桃白白が聞いてくる。

別に構わない。

俺は無言で頷き少し場所を開けた。

 

始まると無名のシェン選手の動きがすさまじいものだと分かる。

だが変な違和感もあった。

まるで本来の人間の力じゃないような……

行ってしまえば憑依をしているような感じだ。

 

「両方とも今の私より強いな」

 

桃白白が言ってくる。

確かに今のお前よりは強いだろう。

しかもマジュニアの動きを見ると重りをつけていやがる。

 

「魔封波だ!!」

 

シェンが大きな声で技を言う。

その前に取り出していたものは酒を入れるとっくりという奴ではないか?

そう言って放つ技は渦を巻いたような波動だった。

段々とマジュニアに迫るが……

 

「魔封波がえし!!」

 

なんと跳ね返したのだ。

まさかそんな技術まで持っていたとは驚きだ。

そしてそれを食らったシェンからナメック星人が出てきてとっくりの中へ入っていく。

すぐさま出てこられないように栓をした。

そのまま気絶していてシェンは10カウントを数え終えてから目覚めた。

その体を使っていたナメック星人がいなくなったんだから、本人は何が何かわからないままだった。

 

これで4人が出そろった。

まず次の試合で決勝戦に行くのはカカロットだろう。

天津飯との試合が始まった。

最初は天津飯が押したり拮抗している状態だ。

だがまだ重りを外してはいない。

それに息を切らしていない。

 

そしてカカロットに対して天津飯が3年前から、スピードがあまり変わっていないといって速度で翻弄する。

ちゃんと相手の攻撃や動きを観察しておけば違和感を感じるだろうに。

気の大きさを察知できていないのかもしれない。

カカロットが道着を脱ぎ始めた。

ついに本領発揮といった所か。

全て合わせて100キロの重り。

外した分、どれだけ力が上がったんだ?

 

目で追う事が出来ず天津飯は帯を取られる。

この一連の動きで確信した。

5%も出したら勝てるだろうと。

つまりまだカカロットたちの戦闘力は1000にもなってはいない。

 

天津飯は4人に分かれた。

これを見て俺はため息を、桃白白は怒りをあらわにした。

きっと俺たちは弱点に気づいたのだろう。

フュージョンに自分を使えるのはなかなか面白いが……。

 

一度はカカロットをとらえるが、その直後にカカロットが弱点を2つも見つけたといっていた。

俺たちは天津飯がお前に技を食らわせる前から見抜いていたぞ。

1つは桃白白も言っていたが『目が良すぎるから頼ってしまい察知ができない』こと。

もう1つは『4人に分かれたことによる戦闘力の分散』

『太陽拳』という技を使ってカカロットは天津飯に視界を奪う。

そしてそのまま4人の天津飯を確実に1人ずつ場外に落としていった。

 

「やはり孫悟空が残ったか、残念だ……」

 

桃白白はどうやら弟弟子である天津飯に残ってほしかったようだ。

まぁ、気持ちがわからないわけではない。

さて……行ってくるか。

 

武舞台に上がると不敵な笑みでこっちを見ている。

そしてマジュニアが口を開いた。

 

「お前を塵にしてやろう……」

 

できるならやってみろ。

俺が大サービスで10%ほどの実力で相手をしてやる。

10%となると1280か。

 

「始め!!」

 

実況のおっちゃんの一言で勝負が始まった。

 

「はああっ!!」

 

マジュニアが迫ってくる。

拳を足で受け止めて、そのまま踏み台にして跳躍。

踵落としを決めようとするが避けられた。

用心深い動きだ。

 

「なかなかいい動きをするな」

 

そうはいっているが重りを外す。

戦力の差の分析は上手なようだな。

 

「しゃっ!!」

 

腕を伸ばしてくるが、その腕を掴んで動かせないようにする。

そのまま引っ張ってこっちの間合いに誘い込む。

 

「ちぃっ!!」

 

目から光線を放つがブリッジで避けて腹をけり上げる。

空中に舞っている間に一気に跳躍で追い越した。

 

「そらっ!!」

 

地面へ叩きつける。

そのまま急降下で再び腹部へ攻撃。

頭突きでズンッと響くような音を立てていた。

 

「げほっ!!」

 

とっくりが腹から出てきた。

拾ったのはいいがこいつをどうしようか。

 

「ガタバル、こっちにくれー!!」

 

カカロットが言うから投げ渡した。

マジュニアの奴はしまったという様な顔をしている。

 

「許さんぞ、バラバラにしてくれる……!!」

 

怒りに震えているようだ。

だが実力差は感じているだろう。

今のお前では俺には勝てない。

勝利を譲る形であっても、勝負はしておかないと格好がつかないんでな。

 

「かぁっ!!」

 

巨大化をしたようだが……

的がでかくなっただけでしかない。

 

「死ね!!」

 

拳を振るってくるが受け止める。

重量はあるがこの程度でやられる俺ではない。

お返しという様に顔面に一撃を食らわせる。

場外にはならないがたたらを踏んで後退する。

 

「がはっ……」

 

血を吐き出し体の大きさをすぐに縮めてきた。

だが、今から何をする気だ?

 

「かぁっ!!」

 

手から気功波を出す。

それを難なく弾くがむやみやたらに投げつけてくる。

 

「貴様をとらえるにはこういう方法しかないんでな、新技だ、『魔空包囲弾』!!」

 

そう言って腕を動かすと一斉に俺に向かって迫ってくる。

まさか戦いの中で閃かせてしまうとはな。

だがこれならば、まだ耐えられる。

 

「どりゃあ!!」

 

そう思っていた最中、いきなり後頭部に衝撃が走る。

マジュニアがこの気弾とともに俺の背後に忍び込んでいたのだ。

 

「くそっ!!」

 

実力差がいくらあっても、相手に対して後手に回って戦っている以上対応するのが主になる。

本来、自分から仕掛けにいって主導権を掴みに行くのだが、そうじゃないからな。

 

「流石だな……んっ?」

 

俺の雰囲気が一変したのを感じ取ったのか。

その通りだ。

 

「もう……いいや」

 

もう、自分のペースで戦う事が出来ていないことに苛立ちを感じている。

一撃だけ、本気の100%でお見舞いしてやる。

 

「終わりだ……」

 

音を置き去りにするように、一瞬で懐に忍び寄る。

マジュニアは何とか体を動かす。

聴覚の良さで風を割く音でも聞いたか。

しかし遅すぎる、そんなもので避けられるか!!

 

「ふんっ!!」

 

拳は何とかショルダーブロックをしていたマジュニアの肩ごと引きちぎった。

観客は悲鳴を上げるがマジュニアはにやりと笑って腕を生やす。

まさかナメック星人にそんな能力があったとはな。

 

「さっきのは全力の一撃だった、あれをそんな方法で対処されたらこっちの負けだ」

 

もっともらしい理由をつけて場外へ飛び降りる。

この瞬間、マジュニアの決勝進出が決まった。

マジュニアは納得いかない顔をしている。

こんな武舞台で場外負けのルールじゃあお前も俺も本気を出せないだろう?

 

「どうしても白黒つけたいなら、この武闘会が終わってからだ」

 

そう言って控室に戻っていく。

10分後、俺は決勝戦をいい席で見ようと舞空術で屋根の上まで行った。

 

決勝戦というだけあって見事なものだ。

お互いが実力を測りながら初めはやりあう。

 

その後に動きを速めていき、徐々にボルテージが上がっていく。

カカロットの超かめはめ波の一撃を食らいマジュニアのターバンがなくなってあたりが騒然とする。

それよりさっきの腕再生の方がよっぽど騒然としそうなものなんだが……

 

戦いが佳境に入ってくるとお互いが策もない殴り合いになってくる。

巨大化も使えないし、気功波の無駄うちも体力の意味を考えるとできない。

最後にマジュニア改めピッコロが大きな賭けに出た。

体中の気を爆発させて、その強烈な一撃でカカロットを吹き飛ばそうとしたのだ。

 

……結果はカカロットがこらえてそのまま一気にラッシュ。

その後、地面に大の字になっていたピッコロへかめはめ波を放つ。

ピッコロの気を感じる以上、まだ生きているな。

カウントで有頂天になっていたところをピッコロの不意打ちにやられて肩を貫かれる。

 

そこからピッコロの逆襲は始まる。

カカロットを転ばせたら、瞬く間に両足を膝で折る。

そして最後の腕を光線で痛めつけた。

その後、上空からカカロットを狙うが、お互いに詰めが甘い。

殺せない以上、カカロットは仕方ないが、ピッコロも飛び上がらずに馬乗りの状態で延々と殴るなど地味なやり方でも殺す、もしくは勝てただろうに。

 

最終的にはカカロットが舞空術で人間砲弾と言わんばかりに勢いが強い頭突きをピッコロにくらわせて場外へ押し出した。

これで第23回天下一武闘会は終わりとなった。

勝利後にカカロットが変な豆で傷を治し、ピッコロにも与えると傷が治った。

今日のところはおしまいだと言い、そのままピッコロは去っていった。

去り際にこっちを見ていた。

いつでも来るといい、俺は待っているぞ。

 

カカロットはどうやら神様になるのを拒んだようだ、

そのまま綺麗な奥さんと一緒に雲に乗って飛び立っていった。

桃白白はしばらくは仕事を探すため、亀仙人のところに行くらしい。

鶴仙人と全く違う道を歩んでいるという事で嬉々として迎え入れていた。

 

……さて、俺も帰るか。

ピッコロとの約束もあるし、今見える未来が真実ならば強化は急務だ。

肩を回し、未来に対して気合を入れて家路につくのだった。




今回はちょっとごちゃごちゃです。
みにくければ申し訳ございません。
これで無印部分は終わりです。
Zでようやくフリーザや因縁の相手などが書けます。

指摘などありましたらお願いします。


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『血肉無くして沸き踊る事は無い』

今回は天下一武闘会から今後についての修行の話し合いといったような話です。
よく考えるとなかなかに濃い3ショット。
女顔サイヤ人、体色緑で2mの巨人、中華服着て柱に飛び乗る老人。


あの天下一武闘会から半年。

 

「ふんっ!!」

 

ピッコロの奴があの試合が納得いかないという理由でほとんど3日に一回のペースで勝負を挑んでくる。

段々強くはなっているようだがまだまだ俺の10%には至らない。

 

「よいしょ」

 

突っ込んで攻撃してくるが追い詰められると荒っぽい動きになるな。

後ろに回って首筋に手刀を叩き込んで気絶させる。

 

「相変わらず鮮やかなものだな……」

 

いつの間にか桃白白がいる。

こいつもあれから重りを増量して高負荷なトレーニングを続けているようだ。

 

「仕事はどうした、見つかったか?」

 

俺たちは仕事を探したり、家事にいそしむ日々を過ごしていた。

俺は俺で何とか仕事を見つける事が出来た。

あの天下一武闘会でピッコロに対して圧倒的だったのと、わざと負けたことから強さが周知に知れ渡っている。

そこで国王直々に防衛軍への所属を言い渡された。

初めは一番下から始めさせてもらうように頼み込んだ。

国王は強いのだからそれなりのポストを渡そうとしたようだが。

 

「西の都のバーで用心棒として雇ってもらえた、場合によってはバーテンダーの仕事も任せてもらえるらしい」

 

お互いが真っ当な職業に着いたというわけだ。

先立つものがないといけないし、日常からあまりにも逸脱すると定住している手前、問題が発生する。

市役所なるものに戸籍を取得とかで手間取ったからな。

そういった一般的な地球の常識がほとんどない状態からのスタートだから、町ゆく人を観察したりして、模範的な行動をしている人間の行動を真似ている。

 

「お前ら、苦労するな……」

 

お前は山に住んでいるからな。

しかもお前、もともと神様の半分だし、大魔王の分身だから一般常識とか生まれた直後から知ってるから人里降りてもOKだろうが。

 

「しかし今の私たちの実力を試せる機会がないな……」

 

3人で組手をするもピッコロたちが拮抗していくだけで、俺には手も足も出ない。

そのせいでどれほどのものか理解ができないのだ。

 

「天津飯やクリリンも呼んでみるか?」

 

もしくはオモミーに3人で行って鍛錬してみるか。

確か向こうには組手ロボットもあったはずだ。

ただし上限がそのクリアした人間によってかわるが。

 

「やつらを呼んで大所帯になってしまえば効率は悪い、やめておけ」

 

ピッコロが言う事も一理ある。

だが、俺たち3人が強いだけでは相手が多ければどうするかという話だ、

 

「まず私が強くなれば天津飯と餃子の面倒は見れる、その後にクリリンとヤムチャを連れてきたらいい」

 

確かに一人一人が誰かを担当すればいい。

しかしこの流れである疑問が出てきた。

 

「待て、ピッコロが誰かを受け持つ事は無いのか?」

 

たぶんこの話の流れとしては、俺がクリリンとヤムチャをみるだろう。

そうなるとピッコロは一人でやることになる。

 

「こいつは自己研鑽をしてもらった方が強くなる」

 

まぁ、今まで俺たちと出会ってない間は一人でやっているからな、納得。

ピッコロは個人でやるという方向性でいいことにしよう。

俺との組手など実力が近しいもしくは上のものとしかやらないという事だ。

 

「俺もわざわざ教えてやれることがあるとは思えん、あいつらはああ見えても基礎はしっかりしているからな」

 

つまり基礎もできていない未熟者ならばまだ教えてもいいという事だろうか?

そんな奴はそうそういないとは思うがな。

 

「さて……念のため宇宙船をホイポイカプセルに入れたまま行くぞ」

 

俺が死んだら帰れず宇宙の藻屑になるのでそうならないように宇宙船を持ったままオモミーまで瞬間移動。

半年の間にエントランスができて地球でいうホテルのようになっている。

流石に簡素な状態すぎたよね。

 

「何名様のご利用ですか?」

 

受付の人が言う。

えっと……

 

「大人一名、シニア一名、小児一名で」

 

年齢で分けると俺が22で桃白白が100歳を超えている、ピッコロなんて4歳だ。

大人3名の区切りにはできずに告げると……

 

「わざわざ区分けせんでもいいだろうが…」

 

ピッコロが肩に手を置いている。

ちょっと怒っているみたいだが。

 

「だって、お前の年齢と桃白白の年齢はごまかせないだろ」

 

年齢ごまかそうにも計算上はどう考えても小児の部類だろう。

するとピッコロは声を荒げて言い放つ。

 

「受付も誰が小児かわかってなかっただろうが!!」

 

あぁ、それもそうか。

すまん、今度からは大人3名で統一しておく。

 

「強さを測りたいのだが……」

 

俺たちを無視して桃白白が受付の人に言う。

測定器を渡してくれたようだが、スカウターとは違う形状のようだ。

 

「こちらに手をかざして力を発揮してくだされば測定できます」

 

そう言われて桃白白が一番に測定を始める。

あの優勝した時のカカロットが400あるかどうかだが、どうだ?

 

「389か」

 

かなり高くなったな、体を苛め抜いているようだ。

重りをつけているのと俺との組手も手伝っているのかもしれないが。

 

「482だな」

 

ピッコロの測定値も高い。

今は新婚生活真っただ中のカカロットを超えているだろう。

あいつ、元気でやっているかなぁ……

 

そして俺の測定。

見る見るうちに数値が跳ね上がり、10000を超えたあたりで……

 

「あの、Eって出たんですけど……」

 

測定不能という事か?

ちょっとそいつは困るな。

 

「すみません、そちら上限1万までで……こちらでお願いします」

 

そう言われて差し出された機会に手をかざして力を発揮する

すると瞬く間にケタ数が5ケタに到達して……

 

「13008か、伸びてないな」

 

二人ともあんぐりと口を開けていた。

そんなに驚くことだったか?

 

「お前、本当にどれだけ手加減していたんだ……」

 

ピッコロが気になっているのか、聞いてくる。

これはごまかさずにすべて正直に言った方がいいだろう。

 

「最後のあの拳以外5から10ぐらいに刻んでいた」

「今やっているあの組手は?」

 

次は桃白白が聞いてくる。

今やっている組手の方は……

 

「5だな、5でも650だからいい感じだろう?」

 

10でも多いぐらいだ。

100なんて出したら、運が悪ければ死んでしまうだろう。

二人ともため息をついているが鍛錬する前からへこんでいたら効率悪いぞ。

 

「さて……今日は何倍で行くかな」

 

3倍の部屋に行くか。

組手ロボットは借りてもいいがある程度自己責任という事のようだ。

まぁ、うぬぼれた奴が上限いっぱいとかしたら死人が出るからね。

 

「さて……近い状態から20ほど上にして」

「俺は30にしてみるか」

 

桃白白とピッコロは同じ部屋で組手をする。

二人とも圧倒的な差での組み手にしていないあたり心得ている。

 

「俺は別の部屋に行くからな、何かあったら言ってくれ」

 

「10倍で、組手ロボの上限確認と……」

 

「100000か……うん、せめて20000にしてみるか」

 

うぬぼれではなく、きっとピオーネならば次に会ったときはこれぐらい強くなっているだろう。

向かい合って数秒後、戦いが始まった。

 

「ピーガガー、ピー」

 

機械音が凄い。

速いのは速いのだが……

 

「そんなでかい足音立てて近づいたら流石にバレバレじゃあ!!」

 

カウンターで一撃を叩き込む。

機械ではあるがそう言った一撃のダメージは再現されるようだ。

 

「『エクスプロード・ウッドペッカー』!!」

 

追撃の一撃で壁にめり込ませる。

そのまま畳みかけていくように蹴りを頭部に放つ。

 

「ピッピー!!」

 

カウンターだが……

その腕を取って、バックドロップを決める。

するとしんと静まり機能を停止した。

壊れたのではなくノックアウトの判定という事だろう。

 

「こんなんだったら、参考ならないじゃねえか!!」

 

絶対これ古い型だよ。

20000でのピオーネならもっと鋭い攻撃するし、不要に壁にめりこまない。

絶対あの壁を蹴ってからカウンター喰らわせてくる。

 

「アンドロイド型がありますが……」

 

あれより新しい型がないか聞いてみる。

すると最新型の人間タイプがあったみたいだ。

 

「そいつでお願いします」

 

しかしなぜか受付に注意をされる。

どうも半年前に1週間ほど滞在したもののデータを反映させているらしく、このアンドロイド型は異様なほど強くプログラムをされているようなのだ。

 

「さて……20000にしてと」

 

アンドロイド型の強さを設定して開始ボタンを押す。

すると見覚えのある構えをしていく。

やっぱりいろいろな所にいって鍛錬していたか……

 

「ピオーネそっくりの動きができるアンドロイドってわけか!!」

 

さっきの旧式よりはるかに速く性能の差がすさまじい。

あれ、どれだけ古かったんだよ。

 

「はっ!!」

 

後ろに回り込んでいた一撃を受け止めて投げる。

壁にぶつけるとかではない。

距離を取るためにやったことだ。

 

「しゃあ!!」

 

地球で学んだ格闘術。

ブラジリアン柔術という奴だ。

相手に高速でタックルを仕掛けて、体勢を崩していく。

その後にイヤーカップや相手が亀のような体勢をとるまで苛烈な攻めを続けて絞め落とす。

理にかなったすさまじい格闘術だ。

 

「ピガッ!!」

 

しかしその高速タックルをする顔面をめがけて蹴りが飛んでくる。

こいつ、センサーに頼って対応しやがったな!!

 

「くっ!!」

 

避けたと思ったらすさまじい風圧を感じる。

どうやらジェット噴射による超高速移動をしているようだ。

さっきとは違い一瞬の間に音がするだけで見分けにくい。

 

「瞬間移動は搭載していないが、その分体術に振り分けていやがるから、強さの設定以上に内部では高い計算なんだ……」

 

連打を必死にさばきながら相手の攻撃を分析する。

しかしこれはあくまで機械。

徐々に本来のピオーネの動きとはかけ離れていく。

 

攻撃にフェイントがなく高速連打。

それでは俺の目が慣れてしまえば意味がない。

気功波がうてないとしても距離や間合いの取り方ができていない。

この距離ならある程度セーフティだろうという予測の間合いだ。

 

「センサー頼りじゃあ……」

 

最高速で接近した次の瞬間にバックステップ、再度接近。

距離からの算出になるため一度近接から遠ざかって見失ってしまうようになる。

そして、そのタイムラグに最接近をしたら感知されずに懐まで接近できる。

 

「もうお終いだ!!」

 

技を延々と叩き込んで相手の反撃を起こさないようにしてノックアウトによる機能停止に追い込む。

ため息をついて思う事、それは……

 

「やっぱりピオーネ本人じゃないと楽しくないぜ」

 

機械よりも生身の相手と戦ってきた。

機械では人の気配がないし、そういった相手を騙すという様なこともない。

駆け引きがなく戦闘力指標だけの機械ならば悪いが、隔絶されたような次元でもないと組手にはならない。

 

「50倍部屋で体苛め抜いた方が効率はいいな……」

 

そう呟いて組手ロボットを返却する。

ちょうどピッコロたちもいたがどうやらこの鍛錬で一日で戦闘力が5も上がったらしい。

さて……俺は?

 

「13010……鍛錬部屋変えてみるかな」

 

全然上がっていない現状にため息をついて今日のところは地球に帰るのだった。




ちなみに空気の薄さとかではなく重力だけなので、高負荷でもない限りは
神様のところでも悪くはない。

指摘などありましたらお願いします。


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『金属生命体との戦い:カカロット子育ての日々』

超の設定を再び使いました。
次回はラディッツ視点の日々を書いたりをする予定です
最後に悟空の話を書いています。


 

地球に戻ったり、オモミーに行く生活を繰り返して半年。

もうカカロットが結婚してから1年ほど経ったようだ。

最近の未来視では地球にサイヤ人ではない誰かの襲来が見えていた。

さっき、その未来視の正体が分かったのだ。

 

「メタルマンとか言っていたな……」

 

どうやら昔の因縁があるような奴らがその仕返しにだまして連れてきたのだろう。

若すぎる奴なのが印象的だった。

細身で歴戦の勇士の雰囲気でもなければ初めて戦いますというような感じ。

 

「畑のこの時期に勝負してたら腐るかもしれないんだよなぁ……」

 

開墾して折角春先に実ってきた作物。

先にとっておかないと放置してダメになりましたなんて話にならない。

だからこそ、少し手伝ってもらおうと思い2人を呼んでいた。

 

「まさか武天老師様と同じことをやるなんてな……」

「まぁ、久々にやるのも悪くないじゃないですか」

 

クリリンとヤムチャは快く来てくれていた。

二人は元々農業の手伝いをしたこともあってその動きは素晴らしい。

瞬く間に収穫を終えてそれを農協に輸送して用事は終わった。

 

「しかしわざわざ俺たちを手伝わせるなんて何かあったのか?」

 

まぁ、いきなり呼び出してこれを手伝わせるって言うのは不信感あるわな。

一人で収穫したらいいだけの話だし。

 

「実はこれから戦いがあってな……」

 

正直に打ち明ける。

ついていきたいと言われた場合は気を付けてもらわないといけない。

もしあの若いメタルマンとかいう種族が二人を狙わないとは限らないからだ。

 

「俺たちも一緒に行くって事か?」

 

そのつもりは無くただの手伝いで呼んだのにな。

どうしたものか?

あの騙して連れてきたやつも戦闘力は低いが、今の2人よりは上だし。

死ぬ前に撤退させればいいか。

 

「ちゃんと死ぬような危険の時に撤退するなら構わないぜ」

 

そう念を押して俺は相手が待つ場所まで飛んでいく。

相手の戦闘力を見極めたうえで帰りたいなら帰ればいい。

 

「来たか……」

 

自然のある場所での戦いとなる。

相手は腕組みをして今かと俺を待っていた。

 

「お前、そいつは傭兵ではないだろ?」

 

降り立ってすぐに質問をする。

傭兵から雇うのであればまだベテランの奴を用意する。

しかしそうではなくわざわざ若い奴を選んでいる。

実戦経験が浅いであろう、もしくは明らかな素人。

その時点で矛盾している。

 

「その通りだ、こいつはある惑星の若者だ」

 

やはりその通りだったか。

もっといいやつを呼べただろうに。

それともそれを差し引いても戦闘力が高かったか?

 

「連れてきたのは俺への恨みか?」

 

セッコ・オロ、もしくは別のところで恨みを買ってしまうようなことがあったか?

思い出せない。

しかし相手の目を見ると怒りに満ちているあたり俺への恨みで十中八九間違いないだろう。

 

「無論だ」

 

憎しみの目だ。

平然とその言葉を肯定できるとはな。

まぁ、そっちの方が気にしなくて済む。

 

「お前こそ、そこに連れているのは何者だ?」

 

クリリンとヤムチャを見ている。

援軍がいるとは予想外か?

でも、こいつらを勘定に入れてきたわけじゃあないぞ。

そこは勘違いしないでくれよ。

 

「ここにいる地球人が相手をするわけじゃない、気にするな」

 

今のこいつらがその若者と戦えば、瞬く間に殺される。

隠している気だけでもこいつらより強いのがはっきりとわかる。

気のコントロールもできるとは、なかなかの相手と認識した。

 

「だが邪魔をされては面倒だ、俺が相手をしよう」

 

そう言って構える。

強さとしては戦闘力として500もない。

どうやらセッコ・オロでの対戦をしたものではない。

漂流先で何かしらの要因で恨みを買ったか。

 

「かかってこい」

「地球人をなめるなよ!!」

 

ヤムチャとクリリンが構える。

お前ら、ちゃんと協力して戦えよ。

死ぬ前にマジで撤退をしてくれないとあとで困るからそこも気を付けてくれよな。

 

「シュー!!」

 

その拍子にメタルマンが気を開放する。

想像したようにかなり大きいが……

 

「俺よりは小さいな!!」

 

俺も全力で気を開放する。

風が巻き起こり、落ち葉や砂塵が巻き上がる。

それが止んだ時、空気がさらりと頬を撫でた。

 

「オラァ!!」

 

一気に接近して拳を撃ち込む。

えらく頑丈ではあるがまだ拳が壊れるようなものじゃない。

相手は少し後ずさりをしたが重いからか足元がどっしりとしており、大きく体勢を崩さない。

 

「ポー!!」

 

一撃の仕返しという様に、相手も拳での一撃を放つ。

交差して受け止めるが、体が金属だからか非常に重い。

戦闘力に換算はしても10000はある。

 

「だが終わりだ…」

 

腕を取って柔道の一本背負いのように投げる。

相手が背中を打ち付けた瞬間に飛び上がって照準を合わせた。

 

「喰らえ、『アルバトロス・ブラスター』!!」

 

これで決まる。

実戦経験の浅さがもろに出ている。

まだ経験豊富な奴なら問題なく捌けただろうに。

しかし、次の瞬間目を疑う光景があった。

 

「『アルバトロス・ブラスター』が分散しただと!?」

 

受け止めるわけでもなく、逸らしたわけではない。

メタルマンの体に当たった瞬間、気が細長い煙のように飛び散ってしまった。

まさか、こんなことが起こり得るとは。

ピオーネでもこんな芸当は……できないと言えないのが悲しい。

 

「メタルマンの中でもこのビック・ラコイタは突然変異の存在だ、気弾攻撃を無効にする力が備わっているんだよぉ!!」

 

復讐のためとはいえどんな掘り出し物用意してんだ、こいつは……。

まぁ、そんな特殊な存在には必ず弱点があるもんだ。

それも自分すら気づかないようなものがな。

 

「なんて奴だよ……勝つには肉弾戦しかないじゃないか」

「あんな頑丈な奴にどうやって戦うんだ……」

 

2人とも取り巻きの奴を2人で協力して倒していた。

しかしというかやっぱりまだまだだな。

傷つきすぎだ、狼牙風風拳で翻弄して、その隙に上からかめはめ波などコンビネーションを活かせばもっと速く、ダメージも少なく終わらせることができただろう。

やはり比べてみるとピッコロたちの方が十分強い。

今や684と759だからな。

じっくりと慣れていくんじゃなくて、10倍から始めたり厳しい状況で鍛錬したら、もっと早くに1000はいけるんだが……。

 

「シュポー!!」

 

メタルマンが突進してくるがそれを避ける。

勝負を続けていくうちに気づいたが段々と速度が上がっている。

どうやらこいつは運動をして熱を発したりすればその分戦闘力に転化されていくようだ。

戦闘における気弾攻撃以外のすべての行動が当てはまる。

というよりは極論として言えば動けば熱は発する。

戦闘が長引けば長引くほど強くはなるが、最終的にはその強くなっていく状況に体が耐え切れない。

もしくは熱量が自分の限界を超えてオーバーヒートを起こしてしまうだろう。

そしてまだ今の差では一気に決める事も不可能ではない。

 

「騙されているんだぜ、お前はよぉ!!」

 

アッパーで殴り飛ばして宙に舞い上がらせる。

気弾が肉体で分散されるという驚異のスペックを見せていたが、殴打に関してはそういった力を発揮しないのは確認済みだ。

そこからは地面に叩きつけてジャイアントスイングをする。

放り投げて岩に激突させる、追撃をしないで相手のあの肉体のからくりの攻略法を考えてみる。

相手の体へのダメージ、手ごたえはあるがむくりと起き上がってくる。

急所が分かりにくいからいくら拳を打ち付けても効果がわからない。

 

「こうなったら……『レイブンリヴェンジャー』!!」

 

ピンとひらめいた俺は気弾攻撃を再び放つ。

当然のようにラコイタに弾かれるが……

この状況は織り込み済みだ。

 

「もう一発!!」

 

オーバーヒートさせて勝負をつけるのではなく、この分散を連続的に発生させた場合にタイムラグはないのか?

その確認のために速射性に優れた技を放つ。

すると……

 

「シュ……」

 

僅かに後ずさりをする。

やはり一度やったら連続でやる場合、分散できる気弾の量が少ない。

ならばこれで一気に追い詰めるか……

 

「おらぁ、『コンドル・レイン』!!」

 

全弾、ラコイタめがけて連射する。

ラコイタはずっと分散を続けていき段々と後ずさりをしている。

分散に頼らずに腕で防御をすればいいがやはりこれは素人だ。

そう言った計算もなく自分の体が弾いているから任せようという事だろう。

段々量が減っている事に気づいていれば、即座に腕で防御したり高速でバックステップを踏んでやり過ごすのがベストな判断だ。

連射でようやく分散ができずに直撃した瞬間、ラコイタは原因に気づいていないからか、驚愕の顔をする。

それを見た俺は片手で連射を継続しながら額に指を当てて瞬間移動をした。

 

「終わりだ、『アルバトロス・ブラスター』!!」

 

ラコイタの背後から俺の最大の技を放つ。

ラコイタの分散が機能せず、俺の最大の技が背中に直撃する。

そのまま地面をバウンドしながら吹っ飛ばされていったラコイタは『ピーガガーピー』という音を立てて、動かなくなった。

どうやら気絶したようだ。

これでロボットじゃないとか驚きしかないわ。

 

ラコイタはその後、起き上がって自分の星の宇宙船を呼んで帰っていった。

騙されていたことに怒って雇い主を空の果てまで殴り飛ばしたことは笑ってしまった。

あんな剛腕の一撃を食らったら死んでしまったんじゃないだろうか。

それにしても久しぶりに全力で戦ったぜ。

そんな事を思っていると、わずかに未来が見える。

 

「ラディッツさんが地球に来るのか……」

 

ラディッツさんが空を飛んでいる映像が見える。

そしてその傍らには幼子がいる事も。

あのプロテクターではなく、地球人の服を着ている以上はラディッツさんの子供ではないようだ。

カカロットに似ていたが…仮にそうだとしても知らせは全くなかったぞ。

一体どういう事だ?

 

「しかし今すぐではないな……」

 

幼子の年を考えたら3か4歳ほど。

カカロットたちに子供ができていたとしても今から3年か4年の猶予はある。

 

「やっぱりおぼろげに見えていたビジョンは嘘ではなかったか」

 

おぼろげに見えていたのは地球を戦場にしたサイヤ人同士の対決。

それに対して戦力差は歴然。

それを解消するためにはある程度の鍛錬が必要だ。

神様の重りをやっていない天津飯、ヤムチャ、クリリン、餃子は神殿で鍛錬をした方がいい。

ピッコロと桃白白は元々重りをつけたり、2倍か3倍の重力で既にトレーニングを経験済みだから、今更重りなんていらない。

だが修行をやるにしてもカカロット抜きでだ。

もしあの幼子がカカロットの子供なら、今から子育てに忙しくなる奴を引っ張り出す気はない。

親としての自覚を持たせないとな。

親の愛情に飢えた子供にしてはならない。

そう思って俺はクリリンとヤムチャと一緒に戻っていくのだった。

 

.

.

 

「悟空さ、悟飯ちゃんの面倒見てほしいだ!!」

 

チチが大きな声を出す。

今チチは料理をしているところだ。

手を離せないからオラが悟飯をあやす。

オラたちが結婚して10か月後に生まれた子供だ。

最初は病院は嫌だったけど、チチを連れて何度も行き、そして腹が膨らんでいった。

チチが腹が痛いっていうから連れて行ったら、そのちょっとした時間の後に悟飯が生まれた。

爺ちゃんと同じ名前だけどこれには理由があって、色々な名前をチチと牛魔王のおっちゃんが考えていた。

爺ちゃんは参加していなかったけど、その時オラが腹減ってご飯って言ったら気に入っちまった所からそうなった。

爺ちゃんは最初聞いた時には笑って許してくれた。

 

いないいないばぁをすると泣き止む。

しかしすぐにぐずりだした。

 

「あぁ、悟飯おめぇ、大きい奴したんか」

 

オラの鼻がいいお陰ですぐに原因がわかる。

でもチチはそんなんじゃなくてもわかってる。

爺ちゃんにも一回見てもらったけど爺ちゃんも同じように匂いじゃなくてもわかってた。

 

「すげえなぁ……」

 

オラは素直に感心しながら悟飯のおむつを替える。

すると気分がいいのか笑顔になった。

 

「チチ、悟飯のおむつ替えたけど残り少ねぇぞ」

 

袋の中にはあと10枚もない。

そういったらドアが開く音がした。

みると牛魔王のおっちゃんと爺ちゃんが来ていた。

亀仙人の爺ちゃんには内緒だけど二人とも言ってないみてぇだ。

おっきくなってからブルマやクリリンに見せるんだ。

二人ともきっと驚くぞ!!

 

「おっとう、おむつ買ってきてくれたのか、ありがてぇべ!!」

 

こうやって牛魔王のおっちゃんと爺ちゃんは悟飯のおむつとかをよく買ってきてここに来てくれる。

それも少なくなってからだ。

いつの間にそんなの身に着けたんだ?

 

「しかし悟空も、立派に父親じゃのう」

 

爺ちゃんがそう言ってふぅと一息をつく。

オラは修行もしてぇんだけど、そうなるとチチが一人で全部しねぇといけねぇし……

悟飯が大きくなるまではうんと我慢して、あとでクリリンやガタバル、ピッコロに追い付かねぇとな。

 

それまではオラもがんばって悟飯の面倒を見っぞ!!

悟飯を抱きかかえながらオラは今、大事なものをもう一度確認した。




まさかの超のメタルマン出現。
老界王神のじっちゃんでも初めて見る種族だったのですが、ガタバルへの恨みで誰かが引っ張ってきました。
次回からは別視点での話も必要になってくると思います。
指摘などありましたらお願いします。


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『弱虫なんてもう居ない』

今回はまさかの1話丸々ラディッツ回。
彼も着実に力をつけていった数年間と出世をご覧ください。
しかし強引な理由で時間を過ぎさせているけどそこは反省しております。
次回あたりは悟空の子育てや生活と、このラディッツの話の続きを話を分けてお送りする予定です


「ラディッツ、フリーザ様から呼び出しだ」

 

ドドリアさんが俺に声をかけてくる。

今や前線で誰かを下につけての活動もしている。

あのころに比べたら雲泥の差だぜ。

 

「わかりました、ドドリアさん」

 

あれからさらに月日は過ぎ去って俺の戦闘力も上がった。

今や3800で前線で戦う一員だし、部下も付いた。

一時期伸び悩みはしたが、かつてのナッパに迫る勢いだ。

そのナッパはあまり上げる事が出来ずに5000だ。

タフすぎて致命傷を負う事は無い。

その為、肉体の鍛錬でしか今のナッパに強くなる術はないのだ。

もしベジータが力加減を誤れば死んでしまうから仕方のない判断ではある。

 

「フリーザ様、ラディッツです」

 

フリーザ様の部屋の前でノックをする。

すると自動で開きこちらに振り向いて早々と本題に入り始めた。

 

「随分と前の話になってしまうのですが……惑星カナッサというものがありましてね」

 

カナッサ星人がいたところだな。

かつて親父が攻め込んだとは聞いたことがあるが、まさか生き残ってたのか?

 

「その星を開拓しようとしたのですが、誰かが人や家を壊滅させていたんですよ、それも真っ新にねぇ」

 

 

どうやら部下から送られてきた映像は侵略予定前に壊滅状態だったらしい。

しかし自然やそういったものへの害はなく動物はいた。

その代わり星の住人や住居の部分だけが全く存在のない状態だったのが確認できたようだ。

 

「その手口があなた方サイヤ人が滅亡させて来いと言ってやった時と酷似しているのです、心当たりはありませんか?」

 

サイヤ人の手口……。

最近俺たちがそこに行ったという渡航歴はない。

カカロットも可能性はあるが一番高いのは……。

 

「一人だけ……ここにはいませんが」

 

ターレスとも思うがあいつの後は自然が死んで赤茶色のような星に変わってしまう。

そうではなく自然が生き残るのであればあいつだ。

 

「誰です?」

 

ここにいないとなると別動隊か?

もしくは見逃してしまっていたのかというような不思議な顔をする。

確かにあいつの存在は誰も言ってなかったからな。

カエンサやラブカは一言も口に出さない。

俺たちサイヤ人、もしくはギニュー特戦隊が知っている。

 

「ガタバルといい、カエンサの弟です」

 

カエンサ達は黙っているが、きっとルビコラだったらあっという間に教えてもらえただろう。

少なくても自分の腹を痛めて産んだ子供だ。

心では裏腹にどれだけガタバルに愛を注ぎたかっただろう。

だがそれを許さぬラブカを恐れてしまったのだろう。

当時の戦闘力差は倍ほどもあったらしい。

夫婦喧嘩など生易しいものではなく一方的に暴力を振るわれかねない。

それでは愛を注ぐより己の命を優先したくもなるものだ。

 

「カエンサさんは黙っていましたがなぜでしょうか?」

 

確かになぜ今まで、サイヤ人の戦力について黙っていたのか。

その疑問が生まれる。

しかし、あいつらには明確なその存在を認識したくない理由がある。

 

「ガタバルは生まれながらに低い戦闘力であったが故、そして成長が見受けられないとのことで見下しております、それに存在を抹消したいのでしょう」

 

エリートの血筋にふさわしくない。

そう言った理由だけで低い戦闘力を持つ子供であったあいつは蔑まれた。

それこそ下級戦士の俺以上に。

外での理由は『エリートなのに』ではなく基本的にラブカとカエンサの振る舞いがあったから。

 

奴らは滅亡前から『自分たちはお前らより上』という雰囲気を滲ませていた。

それゆえに比較的弱かったガタバルはいじめられる。

そいつらを倒せないから家ではさらに蔑まれて迫害をされる。

本来は守ってやるべき存在さえも一緒になって奴を傷つけていたのだ。

カエンサが守ってやったことなんて一度もない。

むしろ無視をして目の前を通りすぎていったぐらいだ。

俺も一度遭遇してやめろと言ったが一緒になってやられた。

 

「まったく、嘆かわしい……ちなみに戦闘力はいくらでしょうか?」

 

ため息をつく。

今は戦力が多ければそれだけでいい。

あいつにもいい環境を与えてやれる。

もし、フリーザ軍に居たらターレスやドドリアさんが教育をして頭角を現しただろう。

 

「この惨劇を見るに11000は確実にあるかと……、もしくは感情の昂ぶりでそれ以上を一時的に引き出したのではないかと」

 

穏やかな奴が怒った時、一時的に戦闘力が上がっていたのを見たことがある。

あの時は故障かと思ったが、これを見るに故障ではなく本当のようだ。

その時の戦闘力が何倍に膨れ上がるかで危険度も変わる。

そして一つの疑問はその状態で大猿になればさらに10倍になるかどうかだ。

 

「あれ……カエンサさんの戦闘力って確か」

 

フリーザ様が首をかしげる。

気づいてしまったようだ。

今のガタバルの戦闘力の方がすでに……

 

「9200ですので、逆転しております」

 

兄であるカエンサを大幅に超えているのだ。

ベジータの報告以降、頑張っていたが1200しか上がっていない。

いままで生半可にしかやらずに見下していた付けだろう。

あとはベジータ達のように手加減知らずが多いから組手もできない。

親子そろって残念な奴だぜ。

 

「しかし、なぜあの隕石の衝突から逃れたのでしょうね?」

 

惑星ベジータの隕石の衝突ではガタバルの逃れ方は気になるのだろう。

カエンサ達はフリーザ様に忠誠を誓い、ベジータ王を裏切ることで生き永らえた。

俺はベジータといてその時に命令無視で生き延びる事が出来た。

 

「ラブカが除籍という形とのたれ死ねばいいという考えで『飛ばし子』を行ったからです」

 

あいつに聞いたらこう言っていた。

まさか生き延びると思わなかったようだが。

しかもそのせいで痛い目にあわされるとは情けないぜ。

 

「なるほど……」

 

もうなんだかフリーザ様からラブカとカエンサに対する評価がガンガン下がっている気がする。

しかしあいつらが言ってたことだからな。

報告の際にいいように言える内容なんて微塵もない。

あいつらの態度が違っていたら『生かそうとした苦肉の策なんです』とも言えたんだが。

 

「もし、今後会う事が出来たなら私が直々に勧誘していたとお伝えください」

 

あいつが素直に来てくれるとは限らないがな。

それにラブカたちが絶対にいびるだろう。

それは間違いではない。

 

「はい」

 

しかしそんな事を真っ向から言う必要もない。

会えたなら伝えておこう。

 

「それでは、話がしたかっただけなので……」

 

そう言われて俺は下がる。

あいつと会おうとしてばれたらカエンサやラブカに目をつけられるからなぁ

それに偶然という形で何とかするしかない。

最近行った事のある惑星を洗いざらい見ていくしかあるまい。

 

「何年かかるんだろうなぁ……」

 

反応を遡ろうにももともと登録されたものではない。

あいつの行きそうな場所……

 

「ピタルぐらいしかないな……」

 

初めて会ったあの惑星から情報を集めて、そこから巡っていくしかない。

俺は久しぶりにピタルの座標を打ち込んで、ガタバルの捜索にいそしむのだった。

 

.

.

 

数か月後、俺はピタルに到着した。

前回、出発した惑星フリーザよりは遠いからな。

ちなみに惑星フリーザは何個もあるからその後に番号が振られている。

 

「何年ぶりかな、ラディッツ君」

 

医者がこっちに振り向く。

前回はメディカルポットがほしかったり技術の観察だったが、今回は全くの別だ。

 

「ガタバルは来ていないか?」

 

あいつなら絶対にここに一度きりしか来ないという事は無いだろう。

つまりこいつらならば重要な情報を持っている可能性は非常に高い。

 

「彼ならば、男性のサイボーグを連れてきていたよ」

 

あいつはまたなんでそんな奇妙な奴とつながりがあるんだ、

機械で発達している惑星にでも行ったのか?

 

「生身に治しただけだがね、どこの惑星出身か聞き忘れたな、しかし見た目は君たちサイヤ人と同じだったよ」

 

生身の部分がわざわざ隠されていなかったのか。

復活した時の見た目から考えて、つまりはそう特殊な生命があまり住んでいない惑星だ。

絞り込めそうではあるんだが……

 

「しかし確実な情報が欲しいな」

 

できれば100に近い可能性を割り出して見つけたい。

あいつの渡航の内容としてはスイッツにもいっているようだし聞いてみるか

 

「一度きりですね、よくこられるギニューさん達といたんですけど……」

 

スイッツに着いたら甘い匂いで咽そうになった。

その後手掛かりがないのでいろいろな店に行って聞き込みをしたが外れ。

聞き込みのため、甘いものを摂取しすぎたので少し口が甘ったるかった。

 

「彼なら来たが……服を重くしてくれって言いに来てから来とらんよ、元気にやっとるじゃろうな」

 

ヤードラットもだめか。

あいつの活動が止まっているところが分かればそこに定住か、最悪死んでいることもわかるんだが……

あいつの居場所を知っているやつがこの広い宇宙のどこかにいるはずだ。

フリーザ様から呼ばれて戦ってすぐに再捜索。

そのせいでかれこれたかだか3つの惑星の行き来だけで2年が過ぎた。

中継できる惑星フリーザがなかったりする惑星もあるし本当に遠いところではかなりの時間を使うからだ。

戦闘力も上がらないから余計に苛立ちも募る。

 

「まだまだナメック星とかティビグラとティメって多いな……」

 

しかも中継する惑星フリーザはこの3つの近くにはない。

つまりこれ1つ1つ探って行くのに半年か1年はかかるのだ。

 

「ナッパかベジータに手伝ってもらった方がよかったんじゃないのか?」

 

まだ2つずつ探れるから3ついってそれで無理なら、どこかに全知の奴がいるらしいからそいつを頼ろうという事も出来た。

しかし今となってはもうそれもできない。

部下に頼んでもカエンサやラブカに言ってしまえばそいつらの首が飛ぶ。

比喩ではなく物理的にだ。

だから俺が単独調査の体で動くしかなかった。

俺はため息をつきながら招集された星へと向かっていった。

 

.

.

 

「まさか大怪我になるなんてな」

 

招集された星で部下を庇った結果、肩口から切り裂かれてしまった。

メディカルポットに入って休養をする。

戦闘力は4100とあまり伸びない。

首をコキコキと鳴らしていると部下が困ったような顔でこっちに向かってきた。

 

「すみません、まさかこんなことになるなんて」

 

仕方あるまい。

ただ言えるのは相手の状態を確認せずに浮かれてはいけないぞ。

これでなりふり構わないやつなら自爆をしてくるからな。

 

「あの、こんな噂聞いたことありますか?」

 

別の部下が椅子に座ると同時に話しかけてくる。

噂話はよく聞くんだが……

 

「最近宇宙のバウンティハンターで100%捕縛の凄腕の女がいるんですよ」

 

100%捕縛といっても絶対、ぼこぼこにしているだろう。

後、高難易度な捕縛対象でないと100%は守れるぞ。

 

「10000ぐらいの奴なら平然と倒しているらしいです、遠目から計測したら17700ほどらしくて……」

 

おいおい、ベジータより強いんじゃないのか?

あいつでも今17500ぐらいだったんじゃ……

 

「そいつ、しかもセッコ・オロでの最強の女らしいんですが、キュイさんが2回目見に行った時ガタバルとかいう奴と戦っていたみたいです」

 

おい、お前今いいこと言った。

すごい良いこと言ったぞ。

キュイに聞きに行けばいい、いやスカウターの通信機能を使おう。

部下にはその女のエネルギー反応を調査してもらう。

 

「キュイ、俺だ、ラディッツだ」

「あん、ラディッツなんかが俺に何の用だ?」

 

キュイは俺を下に見ている部分がある。

戦闘力の差でえらいと思っているのだろうが、強いだけでは部下は慕ってこない。

現にあいつの部下0人だからな。

俺にはいらねぇとか言っていたが、居たら大怪我を追うような囲まれ方もしないだろうに。

 

「すまんな、一つ質問したいことがあって」

「なんだよ?」

 

簡潔に用事を済ませないと、不機嫌になっていくからな。

結構こらえ性がないし聞き上手ではない。

この点はドドリアさんやザーボンさんの方がうまい。

流石は幹部といった所だ。

 

「セッコ・オロに昔見に行った時、男の方はガタバルという名前で試合に出ていたのは確実か?」

「あぁ、このキュイ様の記憶力は確かだ、間違いない、女の方はピオーネっていう名前だったぜ」

 

これで確定だ。

このピオーネという女を追えば必然的にガタバルの足跡がわかる。

あとは部下の情報次第だ。

すぐに行ける準備をしておかないと。

 

「ありがとうな、フリーザ様にはお前の報告で大きく進展したと伝えておく」

「そんな重要なことだったのか……ちゃんと良いように伝えといてくれよ!!」

 

キュイが真剣に言ったときは吹き出しそうになったが通信を切る。

どうやったらこの有力な情報をくれた事実を悪いように報告できるのか……

すると部下がピオーネの渡航歴を洗い出して現在の惑星を確認してくれていた。

次の目的地のパターンを割り出すことにも成功したようだ。

 

「ウェアキラか……」

 

火山だらけの惑星で有名で多くの凶悪な犯罪者がいると聞いたこともある。

ここからは遠いがあいつの情報のためにはいかないとな。

 

「高速の宇宙船を用意してもらうように頼んできてくれ!!」

 

俺は気合を入れなおして犯罪者まみれの惑星へ向かうのだった。




ラディッツさん、地球に行こうとならずに片っ端からやってしまい、時間を浪費するの図。
ラディッツはフリーザ軍の地位でいえば強さよりは
人望のある中堅どころといったポジションです

指摘などありましたらお願いします。


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『カカロットの生活風景:ラディッツの灯台下暗し』

前半は悟空の話。
後半はラディッツの話です。
次回はガタバル達の仕事風景の予定です。


「悟空さ、買い物に行ってきてほしいべ」

 

悟飯が3歳になってからというもの、オラはこうやってチチの家事手伝いをやっている。

一回色々な家事を試した見たけど洗濯物を干したりするのはダメ。

干すのは無理でも畳むのはいけたけどな。

料理もできねぇ、獣焼いたりばっかだったしな。

食う事ならうまくできる自信はあっけどな。

だったらオラには何ができる?

考えたら修行で鍛えた体使った力仕事と買い物だ。

時々働けっていうけどオラはそういったスーツなんて持ってねぇ。

同じ道着しか何着も持ってねぇもんな。

働くのは考えさせてくれっちゅう事で、今は自分で食べるものを自分で育てるっていう話で農作業をやってる。

昔に亀仙人のじっちゃんところで修行でやっていたことを思い出す。

 

やっぱり体を動かすのは性に合うという事で今は落ち着いた。

もし、働けって言われたら服装自由でこんな感じの仕事の場所に行く。

でも修業はしたいってことは伝えておかねぇとな。

 

「今日はどこに行くんだ、チチ?」

「八百屋さんと魚屋さんだべ」

 

そう言うとチチは魚の絵と野菜の絵を描く。

漢字ってのは一応わかってんだけど、絵とかにしてもらわねぇと分かりにくい。

牛って奴の線がはみ出てねぇからなんて呼んでいいかわからねえし、鳥って漢字で買ってきたら違うって言われた。

それからはそんな事のねぇように絵とどれくらい買ってくるんか書いているメモを渡された。

 

「じゃあ、気ぃつけて行ってくっぞ」

 

空を飛ぶのはいいけど人の目につかねぇように気を付ける。

変な目で見られるってチチからは言われてるしな。

ちょっと駆け足で行ってみっか。

 

「ふぅっ、やっぱりパオズ山から人里までは距離あんな」

 

木から木に飛び乗ったり、獣道を突き進んだりして、速くなるように行ってたら道着に草とかいっぺぇ付いた

またチチにどやされっぞ。

人に見えねぇ山だったら空飛んでもいいな。

 

「さて……まずは魚屋さんだ」

 

魚の絵の横に『アジ その店にあるだけ 1回』って書いている。

あるだけってことは全部だな。

全部って書いたらいろんな魚屋さんの奴をオラが買ってくると思ったんだろう。

だって『全部』だし店の数も書いてねぇもんな。

 

「おっちゃん、アジっちゅう奴全部くれぇ!!」

 

おっちゃんは驚きながら氷を山ほど入れて、丁寧にアジを入れていってくれた。

なんかいっぱい買ってくれたおまけでタコももらった。

もしかしたらチチの奴こういうのも考えてんだろうな。

次の野菜屋でも同じように色々な野菜をおまけでつけてくれた。

野菜はリュックサックに詰め込んで、急いで帰らねぇとな。

魚がだめになったら晩御飯がどうなっちまうか。

 

「悟空さ、一杯おまけしてもらっただか!!」

 

帰ってきて店の人が入れてくれたって言うとチチは驚いていた。

オラはよくわかってねぇけどな。

これから悟飯の塾があるらしい。

悟飯はえらい学者さんちゅう奴になりたいんだとか。

その為には勉強がすげぇ大事みてぇだ。

オラは12の時にじっちゃんの修行でしてからそんなこと全然してねぇ。

 

「お父さん、行ってきます」

 

そう言って悟飯の奴が牛魔王のおっちゃんと一緒に行った。

オラがあれくれぇの年ならあんなことはしてなかっただろうな。

ずっと山で魚取ってたし。

 

「悟空さ、仕事する気はねぇだか?」

 

チチがまた言ってくる。

働く前にまたピッコロみてぇな奴が来ねえとも限らねぇし……

地球自体が終わったらオラ達も死んじまうし。

 

「うーん、平和だって言ってもいつまたピッコロみてぇな奴が来るかわからねぇからなぁ……

あとなんだ、サラリーマンちゅうのはオラできそうにねぇや」

 

働くにしてもやること言っとかねぇと、オラ自身にできねぇことやってもしゃあねぇもんな。

なんかあんな服着てとかってのはなんだか難しい。

そう言ったらチチは頷いていた。

 

「悟空さに会社勤めはできそうにねぇだ」

 

やっぱりそうか。

じゃあやっぱり力仕事なり、猟師って人みてぇに猪とか熊とるか?

それ以外だと誰かに戦い方教えるぐれぇしかできねぇぞ。

 

「やっぱり、悟空さは体動かした方がいいだ」

 

そう言うとチチがそう言った雑誌を渡してきた。

文字は読めるけど小さいな……

 

「最初はすこしずつでもいいだ、ちょっとずつ増やしていってけれ」

 

そう言うとチチはまた家事に戻っていった。

うん、重いもの持ったりするみてぇだしこういう方がオラはいいな。

ぺらぺらと本をめくりながら探し始めた。

 

.

.

 

「ようやく着いたな」

 

部下のおかげでウェアキラへ到着することができた。

火山まみれの惑星で気温もかなり高い。

ここで凶悪な犯罪者が日々悪事を働いて逃げているらしい。

よくこんなところ選んだな、ここなら手が入らないとでも思ったのか?

 

「手ぇあげな!!」

 

こん棒か何か武装したやつらだが、こいつら犯罪者か?

俺を人質に取ろうとしているようだが……

 

「悪いが上げる気はない」

 

跳躍して後ろに回し蹴りを放つ。

相手は吹き飛んでいったがあれは下っ端レベルか?

 

「てめぇ!!」

 

瞬く間に囲んできたがそんなものでどうにかなる俺ではない。

俺は空に浮いて両手を下にかざす。

固まった状態でこいつをやると相手は大きな痛手を負う。

多人数で決まった時は爽快だぜ、形成も逆転するしな

 

「ダブルサンデー!!」

 

相手が吹っ飛んで何人かは気絶したりダメージが大きかったからかけいれんを起こしている。

それ以外は岩盤に打ちつけた痛みでうめいている。

一気に壊滅状態だな。

 

「お前ら、何をやっているんだ!!」

 

一際大きい体の奴が現れた。

スカウターに頼らない方法を考えているが、どうも探るような真似をできない。

結局スカウターの数値に頼っている。

 

「お前が首領か」

 

だがこればかりは判別がつく。

他の奴らと違うのが見てわかるからだ。

構えて相手の動きに合わせて動けるようにする。

 

「はぁっ!!」

 

拳を振り上げてくるのを見計らって、その間に技を仕掛ける。

こんな隙が多ければそうしてくださいと言っているようなものだぜ。

 

「『マンデーリング』!!」

 

相手を気で作ったわっかで縛る。

この強度はかなり高く、あの力自慢のナッパでもてこずる。

戦闘力の差はあるがカエンサやラブカ、ベジータにも少しの時間ならば通用するすぐれものだ。

この間に最強の技で一気に決める。

 

「『ウィークエンド』!!」

 

二本の紫色の太い気弾が直撃して相手をはるか遠くにまで吹き飛ばしていく。

たぶん戦闘力としては3000の後半ほどか?

それなら俺でも倒せる。

もしくは主要な奴は先につぶされていたのか?

 

「生きているか、弟ぉ!!」

 

岩陰からもう一人同じ顔の奴が出てくる。

急いで駆け寄っていく。

まさか兄弟だったとはな。

なんか悪いことした気分だぜ。

相手は死んでいないけどな。

 

「兄貴、後ろ……」

 

そう言われて俺も相手もその方向を向く。

するとそこには銀髪で紅色の肌を持つグラマーな女がいた。

しかしその気迫がスカウターを見なくても戦闘力が高いというのを本能的に感じ取れる。

そしてそれを根拠に俺はすぐに悟った。

こいつこそが探していた凄腕の宇宙バウンティハンターの女、ピオーネだと。

 

「あなたたち兄弟が今回の標的ね」

 

俺と相手を見て判断をする。

もしかしたら原住民を襲う悪人に俺が見える場合もあるからな。

写真があるおかげでこう言ったトラブルも少ないのだろう。

 

「ぐぉおっ!!」

 

ここで逃げても無駄だと判断したのか。

はたまたただのやけっぱちなのか。

それはこいつらにしかわからない事だ。

雄たけびを上げながら二人がピオーネ挟むようにして攻撃を仕掛ける。

だが驚いたり動揺したそぶりを全くピオーネは見せない。

 

「あなた達……」

 

構えを見せる事もなく軽やかに相手の攻撃を避けて次の瞬間、風が通り過ぎる。

一体何をしたのかわからない。

見えなかったのだ。

つまりそれだけ力の差があることの表れだろう。

 

「弱いわ」

 

しかし次の瞬間、ゆらりと崩れるように二人の賞金首が気絶していた。

これはベジータと同格と言われても納得の強さだ。

だが、こいつと二回も戦ったガタバル……お前はどれほど強くなったんだ?

 

「さて……あなたはいったい何者?」

 

あいつらを縛ってひと段落したところで俺に向き直り声をかける。

同業者には見えない格好だから気になったのだろう。

ここは正直に言って情報を引き出せるように警戒心を解くか。

 

「俺はあんたに尋ねたいことがあってここまで来たサイヤ人だ、名前はラディッツ」

 

笑みを浮かべて俺は自己紹介をする。

ザーボンさんから教えてもらったが仏頂面で受け答えするのと、笑顔で受け答えをするのとでは体感的に倍は違うらしい。

ただ場所や場面を選ばないとマイナスに働くこともあると言っていた。

 

「丁寧に自己紹介をしてくれてありがとう、私の名前はピオーネ」

 

こっちの自己紹介に対してむこうも名乗る。

やっぱり当たっていたか。

これで別人だったら本当に無駄足になってしまうところだったぜ。

早速本題に入らないとな。

 

「ガタバルという男の所在について何か知っている事は無いか?」

 

ガタバルという名前にピクリと反応をする。

どうやらこの反応を見るに、あいつが言った場所を知っているだろうな。

どこなんだ、見落とした星か?

 

「あの子なら確か4年ぐらい前に私と戦った後に『地球に行く』って言っていたわ」

 

『あの子』呼ばわりってことはあいつより年上か。

それにしても地球とは……

最後にダメもとで調べに行こうと思っていた場所にいたとは。

これが灯台下暗しという奴だな。

あとでピタルに行ったときにサイボーグの男のカルテを盗み見たら、わかったかもしれないと言われたときはそんなものがあるのかと驚いた。

フリーザ軍じゃあ、メディカルマシーンにばかり頼っているからな。

どちらにせよあいつには再会できていたというわけだ。

 

「私ももう少しひと段落したら、次の目的地にしてのんびり過ごす気だわ、もう十分賞金稼ぎとしてはやっているしね」

 

流石にこれだけ賞金稼ぎをやっていたらもう働いたりする必要もないだろう。

それだけじゃなくて、セッコ・オロでのファイトマネーでかなり稼いでるはずだろうからな。

働かないで修業三昧。

戦う事を生きがいとするサイヤ人には最高の環境だ。

絶対嫌われたり嫌な顔をされそうな気がして仕方ないけどな。

とは言ってもこいつがサイヤ人じゃない以上、どこかで働いたりしてそうなものだが。

 

「そうか、また会えるといいな、あんたには感謝するぜ」

 

そう言ってすぐに地球の座標を打ち込もうと宇宙船に向かう。

するとピオーネが俺を呼び止めたから、足を止めて振り返った。

 

「あの子に会えたら元気で私はやっていると伝えてほしい」

 

二回戦ったこともあるから少なからず親しい間柄なのだろう。

あまり表には出さないがあいつを心配している事が伝わる。

そしてあいつもこの女を心配しているに違いない。

あいつはカエンサやラブカと違って人を思いやる心に溢れている、ちょっと特殊というか不思議なサイヤ人だ。

 

「わかった、きちんと伝えておく」

 

そう言って俺は乗り込んで1年後の地球到着に向けて飛び立つ。

いつぶりに会うかもしれないカカロットとガタバル。

あいつらの成長をサイヤ人流で確かめてやるのも悪くない。

その為には速めにコールドスリープを解いて体をほぐす時間を用意しておかないとな。

少しだけコールドスリープの期間を再設定しておく。

 

「これで寝坊しないで済むな」

 

地球の着陸地点はできるだけ果ての方。

人里で他人に迷惑をかけてはいけない。

地球には地球のマナーがある。

あいつを探している間に惑星間のマナーについて随分と考えさせられる羽目になったからな。

 

「忘れないようにしないとな」

 

あくびを一つして眠りにつく。

次に目覚めるのは半年後。

半年寝て、半年体をほぐしておく。

これで十分サイヤ人流の成長の確認はできるはずだ。

 

.

.

 

……それと一日遅れで、また別のアタックボールがある惑星から地球に向けて発信した。

そのアタックボールもまた1年間の渡航による、地球着陸という奇妙な一致。

それは今のラディッツ。

地球にいるガタバルやカカロット。

ピッコロたちも知る由はなかった。




悟空の働く意欲は高いようで低いといった感じです。
たぶんデスクワークじゃなくて重いものを持ったり修行に近い内容なら
働くかもといった感じです。
指摘などありましたらお願いします。


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『ガタバルと桃白白の仕事風景:ラディッツ着陸』

年齢を少し変えています。
以前感想で返信したのですが、冷静に計算すると
ガタバルの母親が12で出産とかいうあかん状態でした。
その為17でカエンサ、20でガタバルという計算になるように変更いたしました。


「今日はこの場所の紛争を終結させてきてほしい」

 

国王様から直々の命令。

ここ数年で小さな紛争はすくなくなっている。

しかし根絶されたわけではない。

だから常に今回のような任務があるのだ。

 

「わかりました、行ってまいります」

 

ここで勤続してから3年間、ただの一度も取りこぼすことなく、死者がいない中の任務遂行。

間違いなくこの防衛軍は最強級と言わざるを得ない。

今日もそんなメンツを引き連れて紛争地域に赴いた。

 

「さて……今日もよろしく頼みますよ!!」

 

紛争地域で主にやることは、俺が最前線に立ち相手を気絶させる。

傷ついた人の回収や治療が部下の役目。

武装していても首筋に一撃を加えたり腹部へ蹴りを入れると倒れるのだ。

銃弾も掴むことができるし、最悪気弾で迎撃すればいい。

 

「りゃあ!!」

 

相手を掴んで放り投げる。

何人か巻き込んで当たっていく。

背中を打ち付けて起き上がることができていない。

 

「てぇい!!」

 

さらに片方の相手も回し蹴りで何人かまとめて吹き飛ばす。

横薙ぎに倒れ込むが、蹴りの威力で吐いてしまったようだ。

相手もだんだんと青ざめている。

まさか武器を持っている自分たちがこうも圧倒的にやられるなんて想像していなかったのだろう。

 

「どちらもこれから先、争わないならやめるが……どうする?」

 

初めから話し合いでの解決はできない。

その為武力を俺が見せて相手に対して有利な状態を作る。

その後の交渉はお互いのえらいさんがやればいい。

国王様がおせっかいともいうべき理由で派遣して様々な国の紛争を止めている。

そのおかげでこの数年で何度もこの国は表彰されている。

全世界を恐怖に陥れるであろうピッコロ大魔王が手始めにこの国を襲おうとした。

だからこそ他の国の安全や争いに気をかけるのだろう。

 

「わかった、これ以上やっても我々はお前には勝てない」

 

そう言って軍を引き上げる。

それを見て片方も引き上げる。

力を見せたのちに解決をさせる。

このやり方には穴はあるかもしれないが一番現実的だ。

俺がこのような力を持っているからできる事だが、自分たちより恐ろしい外敵が今後現れないとは限らないという事を暗に諸国に伝える。

そうすることで密接な助け合いや親密な関係を築き上げられる。

 

「終わったから怪我人の回収をしなくては」

 

両軍の間を飛び交い、ケガをしている人間を助ける。

瓦礫をどかしたり、火の手が上がっているところを突っ切ったり。

ある意味、戦いよりも重労働な場面もある。

一度激流にながされそうになっている兵士を泳いで追いかけたこともあるし、足元が崩れ落ちる中での救出作業もあった。

人に舞空術を見られないために必死に足の力でこらえていた。

もっとこの武術を持っているという事が周知に知れ渡って常識になれば多用して、より多くの人が救えるんだが……。

 

「今回はそんなに時間がかからなかったな」

 

ひどい時は長くて移動だけでも結構な日数が掛かる。

さらにその到着した先でも紛争を止める以外の部分での時間の消費もある。

止めるよりも前の紛争によって、亡くなってしまった人の埋葬なども行うからだ。

移動時にも時間が長い場合はお互いの体臭などが鼻に着いたり、不快感があったり、清潔という観点から遠ざかる。

清潔でないと最悪、病にかかる可能性も高くなるし、不快感はお互いの不和を引き起こしてしまうので、そう言った所から速ければ速いほどありがたい。

それに速い時は本当に速く表彰されるのが不思議ではないと思えるほどだ。

 

「この気は……」

 

そんな事を考えていると冷や汗が一筋伝っていく。

気が凄まじいとかではない嫌な予感だ。

しかも上からその嫌な予感の元凶を感じる。

一体何があるのかもと思い、千里眼を使って、宇宙単位で見てみる。

するとサイヤ人やギニュー特戦隊が乗っていた丸形宇宙船が徐々に近づいているのがわかった。

もう一つ後ろにいるが高速型なのか、前の宇宙船との差を縮めつつ接近している。

5個でないという事はギニュー特戦隊はない。

一人、もしくは二人。

それで考えられるのは……。

 

「これは早く戻らないとな……」

 

この事態はピッコロや桃白白にも伝えておかないと。

もし最悪のパターンだったなら地球が終わってしまうかもしれない。

対抗手段がないとは言わないが、それまでの時間を稼ぐだけにどれだけの犠牲を払うのか。

あいにく部下が見ている前で瞬間移動はできないが速く動くことはできる。

この場所から国王のところまで帰ってくるぐらいならば今の兵士たちで問題はない。

 

「ちょっと、急用ができてしまったので今日はこれで帰らせてもらう、国王様には先に報告するから各々のペースで帰還してくれ」

 

そう言うと兵士は頷く。

こういった終了後の場合はなかなか緩いのか、平然とOKを出す。

夜になるのでどこか宿をとるだろう。

指揮を取れる奴に隊長代理を任せて俺は大急ぎで国王のいるキングキャッスルへと向かった。

 

「全力で行けば数時間もかからない……」

 

千里眼で動きを見ながら全速力で木から木へ飛び移るように駆けあがっていく。

人の目に止まることの無いように山を越えていく。

結局着いたのは二時間後。

夜の10時に国王様に報告をして明日の任務を外させてもらった。

ピッコロ大魔王以上の脅威が接近していると言ったら信じてもらえた。

宇宙船の到着までは残り半日ほど。

明日の朝から昼の間だろう。

 

人気がいないところまで行って瞬間移動して桃白白のバーに行った。

 

.

.

 

「この嫌な汗はなんだ……」

 

バーの用心棒を始めて早3年。

今や独立をしているのでバーテンダーだ。

凝った趣味といった感じでこれがなかなか面白い。

銘柄を集めているから組み合わせを考えるのもいい。

武道家が酒を飲むなどけしからんという意見もあるが酔拳があるからな。

しかし今日に限って手が滑り、瓶を取り落としてしまいそうになった。

よく見ると手にじわりと汗がにじんでいた。

しかも手汗というよりは脂汗、冷や汗に近いものだった。

 

「長く生きているからか、こういった勘は強い……」

 

そう思っていると扉が開く。

そう思って振り向くと、そこにいたのはガタバルであった。

 

「何か飲むか?」

 

そう言ってグラスを置くがいつになく真剣な目をしている。

これは何か一大事が迫っているのだろう。

あれから3年間、全員が2倍の重力での訓練をしてきた。

2倍ぐらいならば、あの時の用意20キロの重りを両腕や足につけていた方が効率はいい。

しかし神が認めない限り、神殿には入れないのでそれは仕方なしといった所だ。

私とピッコロは3倍か4倍でやってきていたし成長をしている。

まだまだ体を苛め抜けばさらなる高みには行ける。

きっと今ならば子育てに忙しい孫悟空を超えているだろう。

ピッコロの奴には追い抜かれているがな。

そんな我々でも厳しい相手が襲来するのか?

 

「明日の朝から昼にかけてとんでもない相手が地球に来る」

 

ガタバルが重々しく口を開く。

嫌な予感の正体はやはりそう言った脅威によるものか。

こいつもやはり感じ取っていたか。

だが、私たち二人が分かっているという事はきっとピッコロもすでに知っているだろう。

 

「どれほどの相手だ?」

 

強さについて聞いておかねばなるまい。

もし、本当にとてつもない場合は助っ人に天津飯達を呼んでも、今のあいつらでは力にはならんだろう。

 

.

.

 

「上下するが最悪のパターンは俺以上が一人、俺と同格が一人と考えた方がいい」

 

ベジータ王子と父さんならばそれぐらいだ。

あいにく見えた未来ではラディッツさんが来ていたが、ブロリーの時の例もあるから、もしかしたらそれは後々なのかもしれないしな。

そうでなくてもサイヤ人ではない可能性を含めれば、自分以上が二人という場合もあり得る。

しかしフリーザにわざわざ逆らってまでこの星に攻め入るメリットはあまりない。

ちなみにメリットというのは己の死を覚悟してまでという意味だ。

地球自体の価値は高いだろうからフリーザだって気にいるだろう。

 

「うむ、やはり天津飯達でも手を借りた方がいいか?」

 

桃白白が言ってくる。

確かに本来ならば必要ないと言いたいところだが、地球が滅亡する可能性もある。

今は猫の手も借りたいといった所だ。

連れてきてもらった方が僅かな戦力にはなるだろう。

 

「遠距離での援護や待機でいつでも駆けつけられる状態にしておく分には困らない

でも相手が最悪のパターンだったら隠れておいた方がいいだろうし来ない方がいい

死ぬ可能性の方が確実に今回は高いからな」

 

ベジータ王子が来たらあの人にかかれば俺以外はきっと対抗できない。

あれだけの実力ならば塵を吹き消すぐらい簡単なことだ。

しかもそこに兄さんが来たらもはや詰みも同然。

前回は運良くベジータ王子が手を出さずにいてくれただけの話だ。

 

「まぁ、こればかりは死を覚悟してやらざるを得ないな」

 

桃白白が息を吐き出す。

これを回避してもドラゴンボールの存在に気づかれたら一巻の終わりだ

願いがかなうとか誰もが欲するものだ。

それで不老不死とかやったら手を付けられなくなる。

 

「まだましなパターンだったらいいんだがな」

 

視察程度の雑兵なら追い返せる。

5000ほどの奴らでも問題はない。

スカウターを壊したり宇宙船を壊してしまえば、通信や反応が途絶える。

その反応の途絶えた場所がよくわからない惑星だったら特に問題はないだろう。

 

「どちらにせよ、明日に備えておくしかないだろう」

 

そう言われて俺と桃白白は別れる。

フュージョンについて言っておいた方がよかったかもな。

 

.

.

 

行ったか……

今からかきいれ時になるというのに胸にもやもやが残るな。

しかし客に悟られるわけにはいかん。

明日の臨時休業だけを伝えてしっかりと仕事をしなくてはな。

きれいに畳んでいる武道着を確認して銘柄の酒の少ないものがないか在庫の確認。

どうやら今日の客にふるまう分の在庫は十二分にあるな。

それに一品の材料も申し分ない。

 

「さて……始めるか」

 

そう言って数分後、客が扉を開ける。

会社帰りの後の二次会だったり、軽く飲める場所として認知されている。

兄も一度訪れてわだかまりは解け始めてはいるが、いまだに変わってはいない。

亀も鶴も関係なく切磋琢磨せねばならない。

ピッコロのような奴らが現れた時に協力をしなければこの地球は終わる。

そう言ったのだがな。

 

「マスター、酒をお願い」

 

そう言われて客が飲みたい銘柄をシェイカーに入れて振る。

時にはストレートでグラスを渡すこともあるが、カクテルはおおむね好評だ。

 

「明日は急用が入ったので、臨時休業にいたします……」

 

そう言ってお客一人一人に詫びを入れる。

それにサービスとして食事を簡単なものだがつける。

みんなが残念な顔をしてみていると少しうれしい。

ここを行きつけにしているお客様もいらっしゃるという事だ。

 

それから数時間後、閉店時間となって店を閉める。

張り紙で達筆な字で臨時休業の旨を記述しておく。

 

「これで用意は万全だ、休養を取って明日に備えておくか」

 

そう言って舞空術をする。

夜の闇に隠れているしバーテンダーの服は黒が基調だ。

カーカーと言いながら飛んでおけばカラスに間違われる。

うまいやり方かといわれると首をかしげるが、人にばれないようにするためにはこういった姑息というかつまらん手を打つのも必要だ。

 

家に着いたらすぐに服を脱ぎ、風呂に入ってさっぱりとした後、少し体をほぐして布団へ潜る。

さて……賽は投げられたのだ。

最悪の出目か最善の出目、もしくは中ほどの出目。

どれが出るかなど賽が地面に着くまでわからない。

気を引き締めて臨まねばならんと再度心に決めて眠りについた。

 

.

.

 

そしてその翌日……

朝の9時と思った以上に速く1つの宇宙船が到着。

着陸地点は人の手が入っていない山奥の一角。

野生動物もいないので被害はないまま着陸ができた。

そこから出てきたのはラディッツ。

久しぶりの地球の空気をいっぱいに吸い込んでいた。

 

.

.

 

「相変わらずいい空気だ、澄んでいやがる」

 

俺は空気を吸い込んでさっぱりとした気分になる。

着陸地点が氷河だったり高地だったりはあったが、このプロテクターでは寒さを完全に防げない。

その為、山手の方にした。

 

「さて……スカウターを使ってと」

 

スイッチを入れたとたん、戦闘力の強い奴らがあちらこちらに居やがることに気が付いた。

 

「560、542、476、432……」

 

なかなかこののどかな星にしては強い奴らだ。

しかしそれより大きな反応が4つ。

 

「2238、1986、619、こっ、こいつは!?」

 

2000を超える反応はカカロットか?

それ以外に1500を超える反応も一つ。

619も悪い数値ではない。

しかし、最後に算出された数値に驚きを隠すことはできなかった。

今の俺をはるかに超えた戦闘力だったからだ。

今の俺も4792、しかし計測したものは……

 

「6788……これがガタバルだな!!」

 

確信にも似た予感。

しかしいきなりその反応が消えた。

故障ではないのか?

そう思ったがどうやら戦闘力をコントロールしたようだ。

あいつ……俺が来るのが分かっていたのか?

 

「まずは2000の方を当たるか」

 

そう言ってその方向へ高速で進んでいく。

ちなみに宇宙船は抱えたままだ。

地球ではシュールという言葉で表現されるらしいが、山なんぞ上空から見ないと判別がつかんからな。

 

数時間したら、その2000の戦闘力の持ち主の元にたどり着く。

1900を計測したやつもそこにはいた。

うむ、この二人だとしたら600の奴がカカロットか。

あいつ、頭を打ってしまったんではなかろうな?

もしくは子育てでもしているかだ。

あいにく奴の年齢はもうサイヤ人の結婚適齢期に入っているからな。

確か22だったか?

ガタバルが26、俺が29、ベジータは29だ。

戸籍の計算ミスがあったらしくルビコラは現在46、ラブカは50、カエンサは俺たちと同じ29だ。

 

「誰だ、貴様?」

 

緑色の肌の奴が俺に言ってくる。

口が悪い奴だぜ。

 

「宇宙船を持っている事を考えれば昨日からの嫌な予感の正体はお前か」

 

構えた武道家が言ってくる。

ほぅ、勘は鋭いようだな。

 

「やめろ、争う気はない、人探しのためにここに来た」

 

そう言うと敵意が薄れていく。

あいにく争ってこいとかこの星を滅ぼせとは一言も言われてはいない。

それならば友好的な手段も一つの手だ。

これはザーボンさんやギニュー特戦隊から教えてもらった。

 

「誰を探しているんだ?」

 

緑色の肌の奴が言ってくる。

構えを解かないところを見ると用心深いのだろう。

 

「ガタバルという男だ、あるお方の命で奴を探しに来たのだ」

 

そう言うと驚きの顔を見せる。

この反応、間違いなく知っているな。

 

「あいつならこの方向をまっすぐ行ったところに家を建てている、畑が目印だ」

 

あいつ、どうやら地球の環境になじんでいるようだな。

まぁ、有力な情報をもらっただけでもありがたい。

俺は礼を言い、お辞儀をして向かう事にした。

しかしその直後、600を計測していた奴が凄まじいスピードでどこかへ向かっている。

ガタバルもいいが、カカロットを一目見ておくか。

あの時は小さなガキだったあいつがどう成長したのか。

 

「お前の成長を見せてもらうぞ……カカロット!!」

 

俺は速度を上げて追い越しかねないほど早く、カカロットを追いかけるのだった。




次回からZの話に本格的に入っていきます。
指摘などありましたらお願いします。


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サイヤ人襲来編
『サイヤの価値は』


ラディッツと悟空の再会。
そして突如訪れる悲劇。
果たしてラディッツの後ろの宇宙船に乗っていた奴の正体とは?


オラは今亀仙人のじっちゃんの家に向かっている。

腕には息子の悟飯を抱いたままだ。

舞空術じゃなくて筋斗雲を使うのは振り落とされねぇためだ。

相変わらず筋斗雲は速い。

家からちょっと時間が経っただけで海の方まで来た。

でも、一つ恐ろしいことが起こっている。

後ろの毛がむずむずする。

なんかとんでもねぇ気配が徐々に近づいている気がする。

 

「ガタバルやピッコロじゃねぇし……誰だ?」

 

オラの知り合いにはこれだけの気をめちゃくちゃに出してまで近寄る奴はいねぇ。

ピッコロだってわざわざ来るならばわからねぇように来るだろう。

 

そんな事を考えているとじっちゃんのところが見えてくる。

最近は爺ちゃんもじっちゃんとよく話したりしているみてぇだ。

でも悟飯の事は言ってくれてねぇみてぇで安心したぞ。

 

「悟飯、あれが亀仙人様の家だぞ」

 

そう言って降り立とうとしたのと同時に、砂を巻き上げて一人の人間が着陸してきた。

さっきから感じてた気の正体だ。

 

「久しぶりだな、カカロット……」

 

尻尾を見せながら変なことを言ってくる。

オラは孫悟空だ、カカ何とかちゅう名前じゃねぇぞ。

 

「どうしたんじゃ、悟空?」

 

亀仙人のじっちゃんとクリリン、ブルマが出てきた。

相変わらずだな。

でも、クリリン、おめぇまだじっちゃんの所にいたんか?

 

「カカロットの家ではなかったのか、それと抱いている子供はなんだ?」

 

分からねぇ奴がなんか言ってくる。

でも、ここに来たのは悟飯をみんなに見せるためだった、すっかり忘れていたぞ

 

「オラとチチの子供だ、名前はじっちゃんと同じ孫悟飯っていうんだけどな」

「はっ、初めまして……」

 

そう言ったらみんな驚いてた。

クリリン、じっちゃん、ブルマだけじゃなくて髪の長い奴もだ。

一体、こいつはオラとどういった関係なんだ?

 

「あの、おじさんは誰ですか?」

 

悟飯が話しかける。

おい、危なかったらどうするんだ、気ぃつけねぇと

 

「まぁ、確かにおじさんだな、血縁上の」

 

そう言った瞬間、またみんなが驚く。

今、そんなにすげぇこと言ったんか?

 

「自己紹介が遅れたな、俺の名前はラディッツ

生まれは惑星ベジータで種族はサイヤ人、お前らでいうところの宇宙人だ

そして俺とカカロット、いや……悟空の方が分かりやすいな

悟空との関係は兄弟だ、俺が兄にあたる」

 

兄ちゃん!?

オラに兄ちゃんがいたんか?

 

「どうやら思い出せていないあたり、昔に頭を強く打ったな、それに後ろから追いかけていた時に尻尾がなかったがどうした?」

 

なんでそんな事までわかんだ?

確かにオラはうんとちいせぇころに打った、その傷は今でも残っている。

尻尾については神様が切ってくれたことを正直に言った。

するとため息をついていた。

 

「サイヤ人の潜在能力の源が尻尾だというのに……まぁ、体の中に内在するかもしれんと前向きに考えておくか」

 

そう言えば一体どういった用で来たんだ?

気になるな。

 

「俺たちは惑星を他の異星人に売りつける地上げ屋をしている、抵抗しなければすでに開拓している惑星に移民する機会を与える

確かに同じ水準とはいかないかもしれないし、移民たちが多すぎて文化交流にこまる可能性もあるけどな

まぁ、抵抗したり敵対するならばやむを得ないがな、俺たちは悪人だが戦闘民族だ、戦う機会に対しては前向きに考える」

 

なんだ、悪い奴なんか。

でも、むやみやたらに殺していねぇのかな?

 

「基本的に命との天秤だから移民する方がいいのだが愛着が強い奴が多すぎて困る

強引に捕虜にして一番上に送り待遇を考えてもらっているがな、殺すのに惜しい人材って言うのがやはり多い」

 

ピッコロよりは悪いが極悪人じゃねぇな。

なんかこう憎めない感じがする。

 

「まぁ、記憶を無くして獰猛じゃないお前を勧誘しても首を縦には振らんだろう」

 

悪いことに手は貸したくねぇからな。

でも、なんか用事はまだあるみたいだけんど……

 

「今回はガタバルの勧誘、そして……お前と戦ってみたいからだ」

 

そう言った瞬間に気があふれ出す。

この気はガタバル以上……

体が震えちまっている。

 

「今すぐか?」

 

そう言うとにやりと笑う。

どうやらやる気満々だと思われたみてぇだ。

 

「向こうに強い奴らがいたそいつらのところまで俺が案内をする、ガタバルも気づくだろう」

 

たぶんピッコロと桃白白の事だろう。

天津飯達じゃなさそうだ。

悟飯を抱いたまま筋斗雲を使って兄ちゃんを追いかける。

そうしていると大きな気が出てきた。

それを機械でわかってんのか、兄ちゃんは笑う。

 

「あいつもどうやら俺たちと同じ方向に向かっているぞ、カカロット!!」

 

やっぱりガタバルだったか。

あいつの本気ってどれくらいなんだ?

 

「くっ、速すぎる……俺達より遠いのに先に到着しかねんぞ」

 

そう言って数分も経ったら到着した。

宇宙船を置いてたんか。

これ見たらブルマの奴、喜ぶんじゃねぇか?

 

「降りろ、カカロット」

 

そう言って着陸する。

オラも雲から降りてピッコロたちに挨拶をした。

やけにガタバルがきょろきょろしてるけど一体何があったんだ。

 

「一体何をきょろきょろしていやがる?」

 

そう、兄ちゃんが言うとガタバルが口を開いた。

 

「もう一つの宇宙船が速度を急激に落としたんですよ」

 

それを聞くと兄ちゃんは驚いている。

あれ、一人で来たんじゃなかったんか?

 

「そんな、俺が地球に行くのを知っているのはフリーザ様だけだぞ!?」

 

一体何が理由でそこまで冷や汗かいているんだ。

そんなにまずい事なのか?

 

「ガタバル、俺とともにフリーザ軍に来る気はないか?」

 

兄ちゃんがガタバルを誘う。

するとジェスチャーで右の耳を叩く、どういうことだ?

 

「通信機能を切れって事か?」

 

そう言うとガタバルが頷く。

もしかして聞かれたらまずい事でもあんのか?

 

「ラディッツさんには悪いが俺は惑星ベジータを滅ぼした本人に頭を下げる気はない」

 

そう、ガタバルが言うと兄ちゃんは驚く。

隕石だと兄ちゃんは本気で思っていたんだろう。

 

「あいつはサイヤ人の伝説に対して万が一の可能性を摘み取るために惑星ベジータごとサイヤ人を根絶やしにした

あんたがどうやって生き延びたかは知らないが、ナッパさんは送られていてカカロットと俺は『飛ばし子』

俺以外の家族はフリーザに寝返って命を永らえた」

 

次々とガタバルが言っていく。

まさかそんな真実があったなんてと兄ちゃんは呟いていた。

 

「そして、最後まで唯一人フリーザに立ち向かった戦士はバーダックと言う」

 

それを言うと兄ちゃんは目をつぶって悲しそうにつぶやいていた。

 

「そんな、親父が……」

 

兄ちゃんの父ちゃんってことはオラの父ちゃんでもある。

最後まで悪い奴に立ち向かうなんてかっけぇ事したんだなぁ。

 

「だから俺はフリーザを倒すために今までやってきた」

 

そう言うと気を高めて全力で行くみてぇだ、どれだけでかくなるんだ?

 

「はあぁぁぁ……」

 

兄ちゃんの時よりも大きくなっていく。

機械で見ているようだけどどうなってんだ?

 

「8200……9500……11200……13100……」

「ふっ!!」

 

上昇していくなかでピッコロたちもじりじりと後退していく。

なんてプレッシャーだ……

どれだけ天下一武闘会の時は手加減してたんだ。

 

「14230か……その力が味方にならんのは惜しい」

 

そう言うと同時に兄ちゃんがガタバルに仕掛ける。

速くてオラの目で追いきれねぇ。

 

「しっ!!」

 

兄ちゃんが真正面から後ろに回って攻撃を仕掛けるけど、ガタバルが馬蹴りで吹き飛ばす。

一瞬で上に回って地面に叩きつけようとするがそれを軽々と着地をして技を仕掛けていく。

 

「『マンデーリング』!!」

 

輪っかがガタバルの胴体にはまる。

それを力づくで引きちぎるが……

 

「『ダンシングサースデー』!!」

 

両手でヤムチャの技を出す。

操っていく中で段々ガタバルの逃げ道がなくなってきた次の瞬間……

 

「弾けろ!!」

 

手を叩き爆発させる。

それを耐えたが、兄ちゃんの大技の射程圏内に入っていた。

 

「『ウィークエンド』!!」

 

二本の太い気弾がガタバルへ迫る。

しかしガタバルは冷静な目で……

 

「『ファルコン・ツイン・クラッシュ』!!」

 

同じように二本の気弾で相殺をする。

そしてそのまま兄ちゃんの懐に入っていき、顔を殴る。

 

「『チューズデーレイン』!!」

 

その殴られた瞬間に後ろに飛んでいた。

そして大量の気弾をガタバルに向けて叩き込みに行く。

 

「『コンドル・レイン』!!」

 

同じような技で相殺をする。

衝突しあって砂煙が上がる中、兄ちゃんは一気に懐に潜り込んでいた。

 

「『ウェンズデースラッシュ』!!」

 

手刀に気を宿して斬りに行く。

それを避けてはいたけど薄く肌が斬られていた。

 

「『アングリー・フラミンゴ』!!」

 

踵落としを兄ちゃんに直撃させる。

片手で防いでいたけど、腕が痺れたのか片手が上がっていなかった。

 

「『エクスプロード・ウッドペッカー』!!」

 

顎にアッパーを放つ。

当たると思った次の瞬間、寸止めをしていた。

技のダメージが大きいわけでもないからか。

首をコキコキと鳴らしていた。

 

「あのアッパーを止めてなかったら負けていたな、

あの女と二回も戦うだけの事はあるぜ……」

 

兄ちゃんもダメージは少なかったのかぴんぴんとしている。

さっきの言葉にガタバルは反応してたけどどういう事だ?

 

「あいつが言っていたぞ、元気でやっているから気にしないでってな」

 

それを聞くとガタバルは笑う。

次はオラやピッコロの番か。

 

「3人でかかってこい!!」

 

その言葉を聞いた瞬間、一斉にピッコロと桃白白が走る。

二人がラッシュをするけど片手と片足で受け止めている、余裕あんな。

オラも一緒に攻撃すっぞ!!

 

「やぁ!!」

 

両手を使って次々と受け止める。

しかし、桃白白が気を高めて一気に連打の速度を上げる。

 

「戦闘力を手足に集めて、器用な奴だぜ……」

 

そう言うと構えて本気になった。

あの連打全部捌く気か!?

それにピッコロも下がったし、何をする気だ?

 

「はぁぁああああ!!」

 

桃白白の攻撃を避けて時に拳を打ち合わせたり逸らす。

徐々に速度が増していくからか段々と顔に余裕がなくなってきてんぞ!!

 

「捕まえたぞ!!」

 

両手を掴んで腹に蹴りを叩き込む。

そのまま上空にいる桃白白に技を出そうとするのをオラが止めに行く。

 

「『かめはめ波』!!」

 

声に気づいた兄ちゃんが振り向いてすぐに対応する。

これで一旦、桃白白の方は大丈夫だぞ。

 

「くそっ!!」

 

片手で受け止めたけど、その隙に桃白白は無事に舞空術で体勢を立て直した。

そして、久しぶりにあの構えを見る。

 

「『気功砲』!!」

「ちっ!!」

 

素早く後ろに下がって避けた。

相変わらずの威力だ、煙がすんげえ上がっている。

そんな時に……

 

「『魔貫光殺法』受けてみろー!!」

 

ピッコロの奴の新技が放たれる。

兄ちゃんは上に飛ぼうとするが、桃白白が構えているのを見て諦める。

すると歯を食いしばって……

 

「『シャイニングフライデー!!』」

 

技に向かってでかい気弾を撃つ、膝から力を抜いていたんか、その反動で一気に後ろ向きへ飛んでいく。

しかし速度が速く顔に迫っていく。

しかしその刹那……

 

「『ダブルサンデー』!!」

 

さらに上に向かって技を放つ。

その勢いを利用して地面に自分から陥没をする。

そして起き上がってくる。

額にわずかに掠ったのか一本線ができていて、そこから血が流れていた。

 

「3人だとここまで余裕をなくすとはな、なかなかいい技を揃えていやがる……」

 

起き上がってすぐだから隙だらけだ。

尻尾掴んでやっぞ!!

 

「ぬっ、カカロット!?」

 

兄ちゃんが振り向くがもう遅い。

尻尾をしっかりと握って力を込めている。

 

「油断したな、尻尾掴んだぞ!!」

「ぐっ……しまった」

 

そう言って体勢がだんだんと力の抜けたものになる。

そして手が地面に着いた次の瞬間…

 

「かかったな、カカロット!!」

 

にやりと兄ちゃんが笑う。

そう言うと気弾を地面にはなってその勢いでオラを跳ね飛ばす。

まさか克服できていないふりなんて……

オラが天下一武闘会でクリリンにやったことだけどまさかやられるなんて思ってなかったぞ。

 

「カカロット、サイヤ人だ、弱点の克服をまるでしないなんてことをするわけがないだろ」

 

そう言われて殴られる。

硬い拳だ。

頭がグラグラしちまう。

 

腹を蹴って宙に浮かされた。

高く飛び上がってオラを地面に叩きつける。

こんなに強いなんて……修行しとくんだった。

そんな事を考えていると……。

 

「うわぁーん!!」

 

オラがやられているのに我慢できなかったのか。

悟飯が泣きながら兄ちゃんに向かって後ろから頭突きをした。

兄ちゃんが吹っ飛んでいく。

そのまま飛んで行ってピッコロに受けとめられていた。

 

「ググッ、まさか戦闘力がカカロット以上を一瞬とはいえ計測するとは……」

 

起き上がっているけどダメージはあったみてぇだ。

これで勝ち目が出てきたぞ。

立ち上がろうとした次の瞬間……

 

「……己の子供に守られる奴、弱き存在に価値はない……死ね」

 

オラの胸を気弾が貫く。

一体何者なんだ?

 

「がっ……」

 

ピッコロの時と違って死んじまうのがわかる。

いてぇし口からすげぇ多い血が出てきた。

 

「苦しまずにやったつもりなんだがな……もう一発やっておいてやる、

慈悲に感謝しろ」

 

その言葉を言った相手の顔は見れなかったけど、オラの腹にでけぇ穴が開いていた。

気が付いた兄ちゃんやピッコロ、桃白白、ガタバル、悟飯がやってくる。

攻撃してきた方向を兄ちゃんがいる、そして……

 

「俺の弟をこんな目に合わせたな……」

 

そう言って怒った目で睨み付けていた。




一体誰が悟空を殺害したのか?
今回でラディッツ味方フラグが完全に立ちました。
ラディッツさんの手合わせについては
カカロットと悟飯以外が1500を超えていたから、ナッパよりも地味にひどい戦いになっていた模様。

指摘有りましたらお願いします。


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『誇りって何ですか?』

悟空殺害の犯人とは?
そして恐ろしい予告。
果たして地球をみんなで守れるのか!?


いきなりカカロットが殺された。

子供は泣きじゃくっている。

なぜ故、いきなり奇襲されなくてはいけなかったのか?

接点もないはずのこの人に。

 

「いったい何のつもりだ、カエンサ?」

 

兄さんとは呼ばない。

あの日の戦いから尊敬の念も情もないこの人に何も言う気はなかった。

 

「弱いサイヤはサイヤにあらず、むろん貴様もな!!」

 

そう言って気弾を放つが……

 

「ぜりゃあああああ!!」

 

手刀で弾き飛ばす。

この程度の気弾ならば何発来ても同じことだ。

 

「少しはやるようだな、いいだろう」

 

そう言って降り立つ。

こいつ、スカウターでラディッツさん達の通話を盗み聞きしたか何かしたな?

 

「いったいどうやって地球にラディッツさんが来ることを知った?」

 

確証を得るための質問をする。

しかし返ってきたのはもっと非道な行為であった。

 

「あいつの部下を拷問したら吐いたんだよ、3人ぐらいは口を割らなくて殺したがな、まぁ当然吐いた奴も裏切り者と言って消しておいてやった」

 

なんて残酷な真似を。

もはや王を守る仕事を誇りにした人間ではない。

殺戮を好むサイヤ人でもない。

ただただ邪悪なもの。

己の欲を貫き通し、そのためには誇りも捨て同族を殺す。

こいつと同じ血が流れているというだけで反吐が出る。

 

「喰らえ、『エビルワルツ』!!」

 

指先から速射性に優れたビームを何発も出してくる。

しかしその程度ならば……

 

「『アルバトロス・ブラスター』!!」

 

全てを一気に飲み込む大きな気弾で消し飛ばす。

いっておくが容赦はしないぞ。

 

「ふん、そんな技で消したところで……」

 

そんな事をいっているが、目で追いすぎだ。

さて、背中に瞬間移動でもしてやるか。

額に指を置いてすぐに行動に移す。

 

「『エクスプロード・ウッドペッカー』!!」

 

瞬時に後ろに回って背中に一撃。

前回と同じように手ごたえはあるが、これで終わらせはしない。

俺は追撃のために構えている。

すると次の瞬間……

 

「はぁっ!!」

 

何と俺を狙わず、ラディッツさんの宇宙船を気弾で破壊した。

さらに……

 

「かぁ!!」

 

まばゆい気を発して一瞬の間に消えた。

気を追う事ができるから問題はない。

しかし厄介なのは…

 

「あいつ、スカウターまで壊していきやがった……」

 

ラディッツさんの宇宙船だけではなくまばゆい気を発した一瞬の間にスカウターを破壊したのだ。

大きな気弾でラディッツさんごとやろうとしたが避けられたんだろう。

残っている全員にカカロットの事を任せて、気を追い続けていく。

結構、縦横無尽に動いているようだが筒抜けだ。

 

「で……ここを選んだか」

 

人里から離れた山。

このまま逃げ切る気のようだがそうはいかないぞ。

 

「ひゃあっ!!」

 

木々が揺れるのを感じて構えた。

声を上げて勢いよく木から出てくるがそんな程度の事で……

 

「俺を欺けるかぁ!!」

 

平然と捕まえる。

しかしその捕まえた相手は……

 

「なっ、一般人だと!?」

 

そして後ろから攻撃をされる。

まさか無関係な奴らまで巻き込むとはな。

 

「どこまで下種なんだ、てめぇは!!」

 

そう言うも延々と木から飛び降りさせられる人々。

捕まえなければ死んでしまう。

気の大きさから判別できるが、見捨てられない心が枷になっている。

 

「ぐあっ!!」

 

背中を気弾で撃たれる。

最大限に張り巡らせているからダメージはいうほど負っていない。

しかし積み重なるとそれだけで厳しいものになる。

 

「うわぁあああ!!」

 

またもや木から飛び降りてこっちに向かわされる一般人。

掴もうとした次の瞬間、思いがけない援軍がいた。

 

「大きな気を探ってきたらお前だったか、ガタバル」

 

天津飯がそこにいた。

さらにもう一人女性を助けているのはランチさん。

餃子は動きをゆっくりにしてから丁寧に受け止める。

 

「はぁっ!!」

 

俺が再び捕まえたと勘違いしたのだろう。

十分な確認も行わないまま、天津飯に向かってカエンサが攻撃をしようとするが……

 

「『アングリー・フラミンゴ』!!」

 

踵落としで地面でバウンドするほど強烈な一撃を加える。

しかし、宇宙船を事前に呼んでいたのか這いずって辿り着いていた。

しぶとい野郎だ。

 

「1年後、この星を狙う……ドラゴンボールとやらの事が聞けたんでな」

 

こちらを見ながら笑みを浮かべて言う。

俺たちはドラゴンボールについて話していない。

つまりピッコロたちが言っていたのを受信したんだろう。

どこかにスカウターを置きっぱなしにしておいてあの場を去ったのか。

よりにもよって最悪の情報を与えてしまった。

だが、それならばラディッツさんにベジータ王子へ伝えられるのでは?

そう考えると邪悪な笑みを浮かべてカエンサが言い始める。

 

「それには俺にしか通信できんようになっているのさ、貴様に都合のいい事なんて一つもやるものかよ」

 

そう言って飛び立っていく。

こんなにも気分が悪いのは初めてだ。

天津飯達も何があったのかと気になっているようだ。

 

「実はあいつは俺の兄だ、今は縁も切れているがな」

 

そう言うと天津飯達は驚く。

まさか兄がいたのかと、そしてあんな変なものに乗っている時点で何者かという質問も来た。

 

「実は宇宙人だ、戦闘民族なんだ、俺も孫悟空も」

 

カカロットという名前で言ってもわかってもらえないからな。

孫悟空で伝えると目を丸くして信じられないという様な声を出していた。

 

「なっ、孫も宇宙人だったのか!?」

「頭を打ってしまうと忘れてしまうんだろうな、自分は地球人だと本気で思っていたからな」

 

尻尾がある人間がいるかという話だ。

まぁ、人里に降りていないからそう言ったこともわかっていなかったんだろう。

 

「そして今回あいつがやったことは暇つぶしのような感覚で孫悟空を殺した」

 

宇宙船で飛び立っていった方向を指さして今回しでかしたことを言う。

目的は相変わらず俺の抹殺だったのだろうが気まぐれか琴線に触れたという理由でカカロットにターゲットを切り替えた。

本当に面倒な奴だ。

 

「なっ、孫の奴を!?」

 

不意打ち同然の方法だったし。

理由が相変わらずの価値観っていうだけで気分が悪い。

 

「さらに俺が極悪人だという事を流布して自分は安全なポジションに収まっておくのだろう」

 

あいつの事だ。

ラディッツさんは自分が来た時には死んでいて、俺が無残な姿で殺したなんて言うのだろう。

そうすれば少なくてもラディッツさんを慕う奴らの敵意は俺に向く。

 

「でも、孫はドラゴンボールで生き返れる」

 

まだ、それが救いだが……

できれば使いたくもないんだがな。

 

「下らんこと以外なら仕方なしとみるか」

 

ギャルのパンティとか若返りとか、世界征服とかそう言うのはダメだが蘇生という意味では

極悪人でなければいいものとしよう。

 

「1年後に備えて全員で修業だな、神様にお前たちは鍛えてもらってもいいだろう」

 

重りを持った状態や空気が薄い環境での鍛錬でスタミナを上げておかないとな。

そう言う部分でどうにかしないと話にならない。

俺一人でどうかできる範囲を超えてしまった。

 

「白白さんに助力を仰がないと……」

 

大丈夫だ。

あいつならすでにその場所に居合わせている。

事の重大さはよくわかっているだろうし、今回年長者という部分もあり、かなりの戦力として数えられる。

 

「何人いるんだろう、天さん?」

 

ベジータ王子、ナッパ、カエンサ、ラブカ、ルビコラ。

サイヤ人だけなら5人。

俺が相手の出来る範囲はカエンサとラブカの二人。

無理をしたらベジータ王子を相手に時間稼ぎはできる。

布陣としてはその時の戦闘力の部分から割り当てないといけないだろう。

今の推測からでも厳しいのは確実だろうが。

 

「5人だが俺以上が一人、およそ同格が二人だ」

 

カエンサとの間にある差がどれほどのものかはわかっていない。

ただ、あんな手を使ったという事は俺よりも下とみてもいい。

それなら勝機は十分にある。

 

「お前以上がいるとはな……」

 

天津飯も息をのむ。

俺だってあんな来襲があるとは思わなかったよ。

あれだったらまだベジータ王子が来てくれた方がまだましだった。

あの人はちゃんと理由を説明したらサイヤ人を鍛えたりするのは渋々ながらやってくれるだろう。

それに超サイヤ人の成り方を知っているといえば、フリーザを倒す唯一の武器なのだから引き換えに引き下がってくれただろう。

 

「対抗手段がないとは言わんが奥の手がある」

 

奥の手とはフュージョンを使う事だ。

確か戦闘力が低い方の人間から幾らか倍にしたのが戦闘力になる。

100倍ぐらいだとメタモル星人は言っていたが……

仮に俺とラディッツさんならば4500の100倍だから450000。

十分今回の襲来では追い返す力になる。

 

「まぁ、それ以前に謝りに行かないといけないから、天津飯またな」

 

身内とは思いたくないが、縁は切れたがあれでも元は兄。

兄のやらかしたことを謝るのが俺の役目。

殴られても仕方ない。

そう決心してチチさんの所へ向かっていった。

 

「ここだな……」

 

ノックをして出てくれるのを待つ。

あいにく分かりやすい山奥だったため、来るのは数時間だった。

 

「おや、ガタバルさん、久しぶりだべ」

 

出てくれたか。

さて……単刀直入に言うべきだな。

 

「立ち話もなんだから入るべ、悟空さはいねぇけどな」

 

カカロットの名前を聞くと申し訳なさが募る。

 

「で、何の用なんだべ?」

 

意を決して俺はカカロットが殺されたことを告げる。

息を吸い込んで一息に言い放った。

 

「実は孫悟空が今さっき殺された」

「なっ、嘘だべ、冗談でもいっていい訳ねぇべ!!」

 

俺の言葉を否定して前のめりになるチチさん。

信じられないのは分かる。

しかし疑いようのない事実。

これがピッコロならまだ憎しみがあるとかで済むんだが……

 

「殺したのは誰じゃ?」

 

老人が悲しい目をして問いかけてくる。

牛のヘルメットをかぶっている人がチチさんをなだめている。

 

「俺の兄です、不意打ちで心臓と腹部に穴をあけて……」

 

それを聞いた瞬間、俺にまで怒りの目を向けてくる。

俺がたきつけたわけじゃないが、確かに俺にも責任の一端はある。

 

「ガタバルさんのお兄さんと悟空さの間にどういった因縁があるんだべ!!」

 

それを聞くとまた俺は、言葉を無くす。

これが因縁があったり、命の危険を感じて思いがけずならばまだいいのだが……

 

「ないんです……弱いとか下等という理由だけで

まるで地球人がコンビニを利用するような、それが当たり前だという様に」

 

何とも思わず、感情もなく平然と殺した。

あいつにとっては強さこそが全て。

選ばれた血統こそが全て。

弱いサイヤ人、最下級のサイヤ人などサイヤ人ではない。

風で飛ばされるたんぽぽの綿毛ほどの価値もないと真剣に考えている。

 

「そんなのひどすぎるべ!!」

 

おいおいと泣き続けるチチさん。

ドラゴンボールで生き返るとは言ってもこんなのはないよな。

 

「で……悟飯は?」

 

牛のヘルメットをかぶった人が問いかけてくる。

多分、誰かが連れていっただろう。

殺されないように強さをつけてやるために。

 

「ピッコロに連れていかれたと思います」

 

あのスカウターを切っていないならば自分たちが一年後に再び来ることも筒抜けだったはずだ。

自分と自分の予備で送受信ができる。

つまりドラゴンボールの事を聞く代わり重要な部分を話すリスクもある。

 

俺達以上のスパルタで案外、教えるのはうまいピッコロが師匠になるだろう。

結構桃白白と俺では気の扱いやある程度体術が出来上がってから教えないとうまくいかない可能性がある。

ラディッツさんは技は多いが今のあの人は甘くなりそうだからちょっとな……

 

「なんで連れて行ったんじゃ?」

 

爺さんが聞いてくる。

まぁ、殺すつもりはないだろうけど念のため言っておかないとな

 

「一年後にまた来るんで鍛えるのかと、次に真っ先に殺されるのは悟飯になりますからね……」

 

あの野郎の価値観では最下級戦士の子供も、弱いも当てはまれば間違いなく殺すだろう。

それから逃れるには撃退することだ。

 

「悟飯ちゃんを避難させればいい話だべ!!」

 

一理あるがあいつらはその程度で見逃すほどの奴らではない。

避難させたりしても別動隊か何かで抹殺しかねないだろう。

家だってやるだろうし、人里ごと巻き込んでしまうのも容易に考えられる。

 

「それが、どこにいても分かる機械を持っているから逃げられないんですよ……」

 

しかもスカウターがある。

およそ予備を持って動いているだろう。

壊したりしたところで焼け石に水。

だから八方塞がりなのだ。

 

「俺やピッコロが頑張ればいいと思っているだろうけど相手も強いからその最悪の結果は普通にあり得てしまうんですよ」

 

平均値を大きく押し上げてはいるがサイヤ人のレベルと比較しては低い。

1年で2000から2500にクリリンたちが上がっても相手はそれ以上だらけ。

ピッコロと悟飯が3000後半まで伸びて、桃白白も3000前半。

ラディッツさんが6000まであれば、何とか総力戦で五分まで持ち込めるか?

合計すると人数としてはクリリン、ヤムチャ、天津飯、餃子

ピッコロ、桃白白、悟飯、俺、ラディッツさんの9人。

カカロットが蘇って10人だ。

2000が4人で8000。

3500と仮定して7000、3000ジャストで合計10000。

ラディッツさんの6000と俺が15000に上がった場合としても21000。

蘇ったカカロットの数値を除いた49000が推測可能な合計値だ。

クリリン達4人でカエンサ、ピッコロ達3人でラブカ、ラディッツさんがナッパ、俺がベジータ王子。

ルビコラに関してはカカロットに任せておいて問題はないだろう。

これが最善だとしても全滅の恐れがある布陣だ。

しかも追加で誰かが来る可能性も否定できない。

 

「どうしようもないほどのピンチじゃな……」

 

爺さんもため息をつく。

今回ばかりはどうしようもないという言葉の通りだ。

 

「悟空さが生き返っても勝てる見込みは?」

 

そんな確証はない。

俺たちに助っ人がいたら話は別。

しかしその相手がどこにいるかわからない。

瞬間移動でもいいが、時間がどれだけかかるのか……

 

「もう、じたばたしても確定してるんで……やるだけですよ」

 

因縁を断ち切るために。

地球を守るために全力を尽くすのみだ。

 

「悟空さの敵取ってきてほしいだ、ガタバルさん!!」

 

チチさんの言葉に腕を上げて答える。

俺としてもそれをしておきたい。

もう二度とこんなことを引き起こさないためにも。

 

俺は全員と合流するために舞空術で向かっていく。

再び戻ってくるとそこにはクリリンと天津飯、餃子がいた。

ヤムチャはこのことを知らないからな、無理もない。

ピッコロと桃白白が1年後の来襲について伝える。

やはり筒抜けだったか。

それとカカロットの死体はそのまま神様の力で送られたらしい。

あの世で修業でもさせられるのかな?

まぁ、やっておいてもらわないと困る。

戦力として数えておきたいからな。

正直猫の手も借りたい、藁にも縋る。

そんな俺たちの状態だ。

 

「あの女も地球に来るとは言っていたがこの時期に重なってくれればな……」

 

ピオーネが来たら戦局はひっくり返る。

ベジータ王子は分からないがそれ以外の相手は確実に倒せる。

だがそんな都合のいい展開なんてあるはずはない。

 

常に思い描くのは最悪の展開。

それを脱するための策。

今、地球に未曽有の危機が迫ろうとしていた。




感想の予想通り、カエンサが悟空殺害の犯人です。
もはや誰ンサなんだというネタぐらいバレバレだったというわけですね。
予想にありましたがルビコラは愛を注いだら虐げられるのを恐れていただけで、根っからの選民主義ではありません。
むしろガタバルよりの思想の持ち主です。
父親似がカエンサ。
母親似がガタバルといった感じです。


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『あの世とこの世の修行風景』

何話かに修行を分けようとしましたが一つにまとめました。
次回からはサイヤ人の襲来を書いていきます。
当初はもう少し速い話数で入るつもりが日常部分書いていたら長引きました。


とりあえずはこの状況を打破する方法を全員で模索した結果。

ラディッツさんと桃白白は悟飯とピッコロの修行に混ざる。

と言っても悟飯は半年サバイバル。

その後にオモミーで全員の底上げが必要だ。

俺は自分の戦闘力上昇と錆を落としに行く。

ああも簡単に心が揺らいでしまうとは。

もっと冷徹に、敵とみなした者には限りなく冷たく戦う。

氷になるのだ。

 

「その前にピッコロ、お前について話がある」

 

かなり時間は経ってしまったが、仕方ない。

こういった危機に見舞われない限りは俺の今から言う事に耳を傾けない。

 

「なんだ?」

 

ぶっきらぼうに声をかける。

カカロットがやられたことや腹の立つことが続いたからかピリピリしている。

 

「お前がどういった存在なのか、根底から知っているんだが、神と再び融合する気はないか?」

 

俺は最長老様から言われたことを伝える。

どんな相手にも負けないほどのスーパーパワーアップができるという事を。

 

「ふざけたことを言うな、奴ともう一度同化するなどごめんだ!!」

「そうか、今回の襲来なんて歯牙にもかけずに終われるんだが……」

 

あまりの剣幕で言ってくるから、どうやら本当に嫌なことなのだというのは理解できる。

藪蛇をつついたかと思い反省をする。

 

「たとえどれだけ強くなれたとしても、再び別れる日が来るのは目に見えている、それならばこのままでいい」

 

そう言ってそっぽを向く。

伝えておきたい事も伝えたし、行ってくるか。

『戦闘惑星』に。

 

首を鳴らし、人気のないところで瞬間移動。

何年振りかもわからないが帰ってきた。

団長に挨拶をしようとしたらなんか変な光景が目の前に広がっていた。

 

「で……これはなんだ?」

 

倒れている闘士たちが多いが一体何をしでかしたんだ?

そんな事を考えていると団長は笑いながら口を開く。

 

「なに、とんでもねぇ珍獣が見つかってよ、それを狩ったやつには賞金を与えようと思ってな」

 

円形闘技場にはでかい化け物がいた。

ヒグマの大きさに、馬の脚、ヒクイドリのような嘴とかぎづめ、腕はゴリラ。

戦闘力の計測では12000。

どう考えてもピオーネか俺かのレベルじゃないか。

 

「まぁ、錆落としだ、やってやる」

 

降り立って手招きをする。

それに気が付いたキメラが攻撃を仕掛けるがむちゃくちゃな構造のせいで動きが悪い。

 

「ふんっ!!」

 

かいくぐったかぎ爪を手刀でへし折って、飛び回し蹴りで嘴に罅を入れる。

火を吐いてくるが、懐に潜り込む最大の機会だ。

 

「てりゃあ!!」

 

腹部に拳を叩き込む。

急所を的確に打ち抜いた。

だがここで攻撃を緩めない。

そう思った矢先、まさかの体に追加された一部分が見える。

 

「ギャオオオオ!!」

 

尻尾が蛇のようにうねっている。

痛みを感じたりすれば進化するのか。

何とも奇妙な奴を連れてきたものだ。

 

「がぁっ!!」

 

尻尾を掴みに行く。

馬の脚で蹴りを放つが、その足を紙一重で避けて回り込む。

しかし次の瞬間、尻尾の変化に驚きを隠せなかった。

 

「硬質化していやがる……」

 

うねっていたものに節が大量にできてなおかつ固いものになっていた。

こりゃあ長期化すればするほど危ないな。

 

「『太陽拳』!!」

 

目つぶしをしていく。

相手が隙だらけの状態になった瞬間、一撃を放つ。

 

「『アルバトロス・ブラスター』!!」

 

腹部の大部分か焦げ付き、煙を上げる。

まだまだおわらないぞ。

 

「『ファルコン・ツイン・クラッシュ』!!」

 

速い技についていけずさらに腹部へ攻撃が当たる。

そこに三回目の技。

最大の威力を放つ技で決める。

 

「『ソウル・オブ・サイヤン』!!」

 

攻撃の追加ダメージという点で『エクスプロード・ウッドペッカー』と同じものだが、さらに気を集中させて小型の『アルバトロス・ブラスター』を叩き込む。

最大ダメージを叩き出せる技を組み合わせた。

 

キメラが体勢を崩して背中から盛大に倒れ込む。

しかし次の瞬間……

 

「ふぅ……」

 

脱皮をしたのだ。

腕の太さとか外見も完全に変わっていた。

まさか獣の集まりが人化するとは想像もできない。

しかも女にだ。

 

「服を着やがれ!!」

 

俺は服を脱いで投げつける。

ズボンもまとめてだ。

パンツ一丁だが、女の裸を衆人環視の中晒してはいけない。

 

「ありがとうねぇ~」

 

随分ゆっくりした人だな。

しかもこの見た目。

なんか地球の言葉で胸が大きいことをなんていうんだったっけ?

人化したのはいいがさっきの方が戦いやすくないかな、気のせいか?

 

「いやー成長期からの成熟期が長引いて、あんな見た目になったんだよ」

 

キメラみたいな成長期って何なんだよ、

それともなんだ、あの見た目相応の動物の機能を手に入れるのか?

尻尾はないけど、馬の脚力とゴリラの腕力。

ヒグマ並みの背の高さはないのか……。

でもこれがキリンとかシマウマの柄が反映されたらと思うとぞっとする。

 

「……団長どうする?」

 

気の大きさもまだわかりにくい。

しかし、これは覚醒直後だからまだ全力じゃないだろう。

 

「服を着てちょっと実力を見せてもらうか?」

 

そう言うと数分後、服に袖を通した俺と女性が向き合う。

徐々になじみ始めるだろうがこの状態ではやはり低い状態だろう。

 

「ところで名前は?」

 

そう言えば名前を聞いていなかった。

動物状態なんて叫び声だったし。

 

「ニア・ルーマだよ、よろしく……ねぇ!!」

 

自己紹介と攻撃を同時にしてくる。

なかなか実戦的な考えだ。

不意打ちではあるがまだ、己の力のみの不意打ち。

しかも聞いたこっちに非があるようなものだ。

 

「俺の名前はガタバル、よろしくな!!」

 

足を掴んで放り投げる。

しかしその着地の際に、やはり馬の脚力を引き継いだのか。

バネのように跳ね返ってきて俺に肘打ちを食らわせる。

だがそこで負ける俺ではない。

食らった瞬間にのけぞってブリッジの体勢で腹部をけり上げる。

 

「ぬぐっ……」

 

腕を交差して、わずかなダメージに抑えていたようだ。

反応のいい動物、シマウマの目を引き継いでいたらどれだけの脅威になっていたか……。

 

「『キャットパレード』!!」

 

俺の気弾と同じように猫を象ったものが射出される。

それはホーミング型気弾で避けるのだが、まるでじゃれつくように追尾をしてくる。 

 

「『ドッグ・シャープ・タスク』!!」

 

二発の気弾が襲い掛かってくるが、避ける。

壁を貫通するところを見ると、魔貫光殺法と同じ系統の技だ。

 

「『ギガンテック・ホース・スタンプ』!!」

 

回避した俺に強烈な踏み付けを放つ。

さらにそこに馬蹄型の大きな気弾を追加していく事でさらに追撃をさせている。

 

「ちぃ!!」

 

腕を交差して受け止める。

馴染んでいないにしても脚力とかは高い。

その状態をうまく利用している。

 

「『ワイルド・ハンマー』!!」

 

両腕を力いっぱいに振り下ろす。

再び腕を交差して受け止めるが……

 

「ぬぉおお!!」

 

ゴリラの腕力の凄まじさに舌を巻く。

そのまま勢いだけで俺を空中から地面まで追いやった。

 

「だが……舐めるなよ!!」

 

地面を蹴ってその勢いのまま飛び蹴りをニアの腹に叩き込む。

一気にラッシュを仕掛けて急所を隙間なく穿ち続ける。

 

「ぬぅうう……」

 

唸り声を上げているが聞いているのは明白だ。

顔に出すのは相手に有益な情報を与えるぞ、我慢した方がいい。

 

「気の大きさもまだ不安定だが、一撃の重さはかなり厄介だな」

 

多分12000から今は落ち込んで10000あるかどうか。

その差を動物の力で補いつつあるがやはりわかってしまう。

 

そんな事を言っていると団長が止めに来る。

実力は見れたからいいというわけだ。

きっと俺とピオーネがいない今この闘技場の花形が新しく誕生したというわけだ。

 

「あれ、ここにいないの?」

 

いてもいいがそれは平穏を望むときでしかない。

今の俺達にそんな余裕もない。

そして最大のライバルとの戦いで完全燃焼できなければ意味もない。

 

「地球に帰るんだよ、危ないことがあるからな」

 

もとは錆を落として1年後に備えるための準備だった。

だが想像以上の大物と戦えたのは大きな収穫だった。

 

「私も行ってみたいなぁ~、でも体なじんでないからな~」

 

多分緑の惑星とか噂があるのだろう。

もしくは危ないことに興味でもあるのか?

好奇心の旺盛さは時に危険だぞ。

 

「そうか、だったらどこの惑星かだけ教えておく」

 

だが、それを言って聞くようなタイプの人間ではない。

そう言って団長に後で渡しておくように伝えて地球の座標を書いたメモを渡しておく。

 

「さて……錆は落とした、自分を高めていくか」

 

そう言ってオモミーへ行って50倍の強さで肉体強度を戦闘力に見合ったレベルに引き上げる。

タフさがないと今回の戦いは乱戦も予想できる。

スタミナが切れたらむしり取られていくだろう。

 

「はぁ、これで名実ともに14000台だ」

 

その肉体強度に合うまでに3か月をかけてしまう。

全然攻撃を食らう機会もねぇから、鈍っていたな。

速度も何もかも一新された。

実戦の錆は落ちていたがチューンナップできてなかった。

 

「むしろこれでよくニアに勝ったな……」

 

今頃あいつも馴染んでいるだろう。

それにピオーネも今の俺よりも強い状態なのは明白。

 

「俺は強い女にばかり出会うな」

 

苦笑いのようだが自分より強い奴らがいるというだけで心は盛り上がる。

そいつらに追い付きたいと思い、鍛錬にも熱が入るからだ。

戦闘力の伸びは悪いが今は少しでも前に進むことを考えていた。

そして残り半年になる時に神様の修行を終えた天津飯やクリリンたちと合流。

ピッコロと悟飯、ラディッツさんに桃白白も連れてオモミーへ向かう。

 

「俺たちは3倍でやってみるか……」

 

ヤムチャとクリリンが入る。

3倍でも慣れたらすぐに4倍の部屋に入っていくように忠告をした。

今回はのんびりと修行に興じるような事は無い。

短期間で濃密にして大きな成果を上げる。

 

ラディッツさんと俺が10倍の部屋に入っていく。

肉体強度の限界に挑み、メディカルでの回復にかけてみる。

ラディッツさんの戦闘力をナッパたちは超えてくると考えている。

だからこそぎりぎりまで強化にいそしまないといけない。

 

桃白白は天津飯達と4倍の部屋。

ピッコロは悟飯と5倍の部屋に入っていった。

確実に悟飯はスパルタを強いられるだろう。

 

全員の死に物狂いでの日々が始まる。

鬼気迫る勢いで肉体を苛め抜く。

無駄な動きを削ぎ落とし、気弾の精密さ。

どこまでも強くなるために俺とラディッツさんは考える。

 

「これでもわからないんだからな、あいつのせいで俺たちが大いに迷惑だ」

 

カエンサが乱入なんてしなければカカロットは死なずに済んだ。

この騒動の原因をだれに問うべきか?

任務を言い渡したフリーザには私怨はあるが今回の責任はない。

それこそ、『坊主憎けりゃ袈裟まで憎い』という奴だ。

それを実行したラディッツさんに非はあるか?

全然ない。

ただ成長したカカロットの力を知りたくて手合わせをしただけだ。

 

「あんなのが兄だと思うととても悲しい……」

 

そう言うと肩を叩いてくる。

同情してくれているのだろう。

 

「お前は本当にあいつで嫌な思いばかりするな」

 

虐げられて、惑星に飛ばされた。

惑星に飛んだのは死ななかったからよかったが……。

それだけが前向きであってサバイバルをしたり死線を超えてきた。

セッコ・オロという安住の地もあることはある。

そうでなくてもナメック星とヤードラットも俺にとっては故郷同然だ。

惑星ズンも悪くはないが、結局あそこよりもナメック星とかの方が肌に合っていた。

 

「一回、ベジータ王子と行動していた時に偶然会った時も蹴り飛ばされましたからね」

 

しかも不意打ちで殴られたし。

ギニュー特戦隊の皆さんと一緒にいただけで。

 

「しかもその時に完璧にお前が倒したんだろ、ベジータが笑って教えてくれたぜ」

 

3分かからずに勝負終わりましたからね。

今回だって一般人を巻き込まなければ普通に勝負終わってましたよ。

 

「あいつの戦闘力自体はあまり上がってないんだ」

 

だからと言って補い方が下種すぎませんかね?

策とかじゃなく不意打ちって……

いや、不意打ちも立派なものではありますけど、やりすぎたらただただダーティな奴ですよ。

しかも一般人の巻き込みとか、あの人たち何の関係もないのに高い木から飛び降りさせられるとかえげつないわ。

 

「強いから致命傷を負わないし、組手ではベジータとやると死ぬから嫌がった結果、並みの鍛錬しかしてこなかったんだよ」

 

そりゃ伸びませんよ。

俺も確かに怠けたレベルのぬるい時期はあったけど、自分を痛めつけてきた時の伸びは十分にある。

 

「多分もっとダメな手を打ってくるかもな、ラブカも含めて……」

 

あれ以上最悪な手段ってどういったものなんですかね?

しかも父親であったラブカも同じってもう誇りとかないじゃん。

ただの下種な悪人だよ。

あいつらがサイヤ人って名乗ること自体が、サイヤ人の種族を穢してないかと思えて仕方がない。

 

「とりあえず目の前にあるこの状況に対してどこまで強くなれるかだな」

 

そう言って修行を再開する。

そして全ての修行が終わり余裕をもって1か月半前に地球に戻る。

最後は各々の調整という部分だ。

悟飯は引き続きピッコロが始動するようだがな。

 

最終的な戦闘力の数値は

ヤムチャ:2317

クリリン:2691

天津飯:2932

餃子:2028

桃白白:3289

ピッコロ:4228

悟飯:3788

ラディッツさん:6021

そして俺が15678

元々の予想を若干超えた数値なのにひとまず安心をする。

カカロット、お前の方はどうなっているんだ?

せめて3000ぐらいには伸びていてくれよ。

俺は心でそう念じながらあの世のカカロットに対して懇願した。

 

.

.

.

 

時間は半年前に遡る。

死んでから肉体を持って界王様に会うためにオラは蛇の道って奴を走ってようやく着いた。

その後界王様に会って修行をつけてもらっている。

 

「はぁっはあっ!!」

 

サルのバブルスを捕まえるのにオラは頑張っている。

ちなみに重い服を着たまんまだ。

どれだけその1年後に来る相手が強いのかって聞いたら界王様より強いらしい。

界王様の戦闘力は7000ぐらいで、閻魔のおっちゃんは6000ぐれぇらしい。

兄ちゃんよりつえぇとはオラ驚いたぞ。

 

「しかしあのなんか幸が薄そうな女顔のサイヤ人は強いのう」

 

ガタバルの事か?

めちゃくちゃつぇえもんな。

兄ちゃんを軽く倒しちまったんだし。

 

「しかしそいつでも一人だけそのサイヤ人にかてんみたいじゃな」

 

ガタバル以上の相手がいるのか。

ワクワクすっぞ。

界王様の修行で追いついてやるからな。

 

そして2か月後……

 

「うぉおおお!!」

 

バブルスの背中が見える。

頭から突っ込んで手を伸ばして腰部分を掴んで持ち上げる。

ようやく捕まえる事が出来た。

界王様は笑ってたみてぇだけど、もしかして速かったんか?

だとしたら嬉しいぞ。

 

次はグレゴリーっちゅう奴を金づちでたたく修行だった。

これもバブルスの時とおんなじように2ヶ月ぐらいでたたいた。

流石にこんなに早くたたいたのは閻魔のおっちゃんでもなかったらしい。

むしろ閻魔のおっちゃんは叩くのと捕まえるので何年か使っちまったって言ってた。

 

さらにそれから2ヶ月ぐらい修行は続いた。

その間に界王様から新しい技を伝授してもらえた。

 

「悟空よ、界王拳は2倍までにしておくんじゃぞ」

 

体で調整したらとんでもねぇ痛みが来る。

今のオラだと2倍までが無理なくできる状態らしい。

 

「そして元気玉はどうしようもなくなった時に一発だけ使うんじゃぞ、連発したら地球ごと危ないからな」

 

そう言われて技の危なさをもう一度教えてもらった。

サイヤ人が来るのっていつぐらいなんだろうか?

 

「何、あと1日半ぐらいはあるし……ああっ!?」

 

なんてこった。

界王様にも間違えがあるらしい。

オラがあの蛇の道から現世に戻る時間を計算に入れてなかった。

今から戻っても半日の遅れが出る。

みんなが無事だったらいいんだけど……

すぐに亀仙人のじっちゃんに伝えて蘇らせてもらった。

この間にも時間は経っている。

オラは必死に蛇の道を走り始めた。




修業回はかなりのダイジェストにしました。
次回から悟空不在のサイヤ人戦が始まります。
果たしてどうなるのか!?
指摘有りましたらお願いいたします。


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『下衆乃二乗乃解 悍』

タイトルは下衆の二乗=悍ましいを漢字にしました。
最悪のバトルロイヤル、まずは誰が脱落か!?


ついにサイヤ人の襲来だ。

千里眼で常に見ているがある山の頂上に到着する大型と小型の宇宙船。

都の方にはどうやらいかないみたいだ。

 

まだ全員は集合していないようだな。

ピッコロと悟飯、ラディッツさんが集まっている。

そこから近くてクリリン、天津飯達、遠いのがヤムチャだ。

 

「さて……いくか」

 

行くのは宇宙船の方だ。

相手の挙動を先に止める。

多くの敵を向けさせないためにもな。

 

「相手も向っている……」

 

徐々に離れていく気配、大きさから感じ取ってベジータ王子たちだ。

そしてそこから二手に分かれた気。

……こっちだな。

 

「因縁を断ち切らねばならない!!」

 

その気に向かって一直線に向かっている。

迂回などをして時間を稼いでいるのか、方向感覚を失わせようとしているのか?

もしくは一般人の誘拐だな、こりもしない。

それならば、これで完全に止められる。

額に指を当てて瞬間移動をする。

 

前回は逃げ回っていると早合点した俺の落ち度だ。

しかし相手のやり口が分かっていればそんなことはさせない。

目の前にすぐに出てきてやったぜ。

 

「どこに行く気なんだ?」

 

「まさか変な術まで身に着けていたとはな……戦闘力で劣る雑魚の処世術だ」

 

どうやらラブカも一緒か。

ルビコラは構えてはいない、戦闘する気がまるでない。

だが……

 

「やっぱり嘘の報告でこんな真似をしていたか……」

 

気の大きさから考えて戦闘力は3000から4000ぐらいの奴らが3人。

俺に対する憎悪の目。

 

「隊長の敵……」

「許さんぞ……」

「あの人が受けたものを倍にして与えてやる!!」

 

ラディッツさんの部下だった。

……あの人慕われているな。

 

「そうだ、貴様の大事な隊長を無残に殺したこいつに復讐しろ!!」

 

そういうと一斉に飛びかかってくる。

コンビネーションは抜群だ。

本来の戦闘力を三位一体で倍以上の上昇をさせている。

 

「ぐっ……」

 

謂れもない怒り。

カナッサとは違い、怒りが臨界点に達しない。

あるとしてもカエンサにだ。

この人たちに対する怒りは沸いては来ない。

 

ラディッツさんの反応を悟られないようにする為だろうが。

おおよそ没収したのだろう。

スカウターをつけてはいない。

 

「ふんっ!!」

 

一本拳で急所を突く。

その呻いている隙に持ち上げて迫っている相手に投げる。

後ろ回し蹴りで距離を開けさせて、体勢を立て直す。

 

「強い……」

「正々堂々としているが、本当に無残に殺したのか?」

「さっきだって上空に投げて大きな気弾を使えば俺を殺せただろう」

 

全員が疑問を持ち始める。

悪いが疑問を持ったまま戦うと痛い目見るぜ!!

 

「しっ!!」

 

相手に接近をして膝を叩き込む。

跳ね上がった体を抱えて地面へ叩きつける。

 

「ラァ!!」

 

後ろからの攻撃、相手を認識したうえで後ろからの攻撃は不意打ちではない。

頭を下げてかわす。

千里眼も全開で回避からのカウンターも冴えさえだ。

 

「うぉおお!!」

 

かわした方向に回り込んでいたのだろう。

顔面に一撃を食らい、わずかに後退する。

すると腰から抱え込まれて頭から地面に叩きつけられる。

 

「随分と肉弾戦が得意なようで……」

 

むくりと起き上がると気弾を放る構えをした人が左右に分かれている。

三人とも均等な位置に陣取っていた。

 

「『トライデント・スパーク』!!」

 

三又の太く大きな気弾が迫りくる。

全力の大技というのは理解できた。

ならばこちらも相対するのみ。

 

「『アルバトロス・ブラスター』!!」

 

相手の気弾と接触をして押し合う状態になる。

このまま気を一気に放出すれば押し返せる量だと判断できた。

だが、まだその場面ではない。

相手の放出量が少し緩んだ時に狙い撃つ。

そう考えた次の瞬間、カエンサが大きな気弾を作っていた。

千里眼で集中しながらも一挙一動を見逃すまいと思い、見張っていた。

 

「まさか……」

 

思い浮かぶのは最悪の行動。

まさかそれをやるというのか?

何も言わずに指をくいっと動かす。

その気弾はちょうど斜め気味に分かれていた一人の戦士に向かっていた。

 

「ちっ!!」

 

技をやめて一気に回避をする。

そしてすぐに瞬間移動で迫っている気弾の目の前に来て受け止める。

 

「なっ!?」

 

他のメンツもその攻撃に気づく。

そして仲間を引っ張っていく。

ありがたい、あとはこの攻撃を弾き飛ばすだけだ。

 

「うぉおおおおお!!」

 

遥か高くに弾き飛ばした。

だが…

 

「もう一発」

 

追加でもう一撃、俺に放たれる。

避けてしまうと相手に当たる。

裏切られた人を見捨てることはできない。

優しさなんて捨てようと思って捨てられるものではない。

俺は弾き飛ばした直後、直撃する形で気弾を食らった。

 

「ぬぐぐ……」

 

かなりのダメージを負ったから呻きながら、むくりと起き上がる。

見捨てたら確実に今後ろにいる人は死んでいたぞ。

 

「あがが……」

 

さっき後ろから攻撃された人は体を震わせながら声にならない声を上げている。

どうやらいきなりの攻撃で腰が抜けたようだ。

 

「なんで俺たちごと巻き込むんですか!!」

 

隊員が怒りの声を上げる。

まさか味方から無情な一撃を食らうなんて予想外だったからな。

それに上空で俺の真上から放つことができたはずだ。

なのに、なぜ隊員の人ごと巻き込む必要があるんだ?_

 

「それはお前らがただの駒だからだよ」

 

予想より斜め上の下種の発言が飛んできた。

自分たちが嘘を吹き込んで戦わせているのにこの仕打ち。

あまりの醜悪さに吐き気を催しそうだ。

 

「ラディッツが生きていると言っているのに有無を言わさず襲い掛かるなんてひどい奴らだぜ……」

 

自分たちからけしかけておいて何をいまさら……

そう怒りを露わにしていると、徐々にカエンサとラブカの顔が歪んだ笑みの形へ変わっていく。

 

「お前らがのこのこと俺に騙されてついてきたのは傑作だったぜ!!」

「しょせん利用される側は雑魚一人仕留める事もできん愚か者よ!!」

 

ラブカとカエンサが身の毛のよだつような高笑いをする。

そして次の瞬間さらに恐ろしい行動をとってきた。

 

「はぁ!!」

 

ラブカがなんといきなり母さんであるルビコラを抱えこむ。

一体何をする気なんだ!?

 

「それぇ!!」

「きゃあっ!?」

 

こっちに向かって力一杯ぶん投げてきたのだ。

息子のカエンサがやっても驚愕なんだが、まさか旦那であるラブカがやってくるとは。

 

「くそっ!!」

 

このままでは地面に叩きつけられて死んでしまう。

そうならないように地面に落ちる前に受け止める。

 

「ふぅっ!!」

 

何とか当たる前に受け止める事が出来た。

今、母さんは俺の腕の中にいる。

この人の腕に抱かれた事など数えるほどだった。

でも、この人を抱えてわかることがある。

この人は暖かい人だ、少なくてもあの二人とは違う。

 

「しっかりと抱えておけ、その不要な女をなぁ!!」

 

ラブカが巨大な気弾を俺めがけて放つ。

こいつら……どこまで性根が腐っていやがるんだ!?

 

「ぬぉおお!!」

 

くるりと体を回転させて背中で受ける。

逃げ傷ではない。

ただ正面から受けられないが故の行動だ。

 

「私が不要……」

 

母さんはショックを受けている。

そりゃあそうだ。

まさかここにきて家族でありながら、ラディッツさんの隊員と同じ駒扱いなのだから。

 

「貴様がいたからこのような出来損ないが生まれたのだ!!」

 

ラブカが俺を指さして言ってくる。

戦闘力としてはそうだろうがそれは生まれた時の話。

今はお前らよりも上だろう。

人間的にも、戦士としてもあんたたちよりはよっぽどましなものだろうが。

 

「あんたも知っているだろうが、生まれた時の戦闘力で最大を計測した……」

 

カエンサも話し始める。

生まれた時の戦闘力という事は、あれからもしかして新しく子供が生まれたのか?

 

「『あれ』はお前との間に生まれた子供ではない」

 

つまり別の女性との間にどういった経緯か知らないが子供を作った。

うん……地球で言えば最低のモラルを持っているわ、この男。

 

「故に決断した、強い女と強い男でこそ強い一族は生まれる、たかだか4000の女であるお前など今後不要という事だ」

 

速い話、強い女と今後強い子供を作るから弱いお前は捨てますって事か。

腐った根性の持ち主だな……。

こいつに性格が似なくて本当に俺はよかったよ。

ある意味『飛ばし子』になった利点だったかもしれない。

 

「だから今ここで……」

 

カエンサとラブカが手を上に上げて気を高め始める。

……まったくもってえげつない奴らだ。

母親に似て本当に幸せだったと思う。

 

「「死ぬがいい」」

 

その言葉を最後に雨あられのように気弾が降り注ぐ。

背中に覆いかぶさり何とか母さんを守る。

だが、意識は遠のいていく。

防御の体勢もろくに取れないまま受けているのだから。

 

「とどめだ、これで一族の汚点は消える……」

「この二人と異星の強い女たちでさらなる一族を目指すのだ……」

 

その言葉を最後に聞き、俺は大きな気弾が迫りくるのを避ける事すらできない。

 

「ごめんね」

 

そう言って俺の腕の中から抜け出していた母さんが気弾の前に立つ。

一体何をする気なんだ!?

 

「今までの償いをここでさせて……」

 

構えて迎撃をしようとする。

止めなくてはいけない。

嫌な予感がする、ここで止めないと!!

しかし体が言う事を聞かない。

動け、動いてくれ!!

 

「『ピーコック・フラッシュ』!!」

 

クジャクを象った大きな気弾を放つ。

その大きさはかなりのものであった。

 

「なっ……まさかこれほどの技を!?」

 

気弾とぶつかり合う。

二人の気弾との威力には差があっただろうに徐々に押していく。

時折、バチバチと雷のような音を立てて気が高まっている。

どうやら潜在能力さえ絞り出しているようだ。

 

「女とは言えサイヤ人……サイヤ人をなめるなぁ!!!!」

 

そう言って力を爆発させる。

なんと二人分の気弾を一人で戦闘力の差があるにもかかわらず相殺しきった。

とてつもなく凄まじいものを見た。

しかし次の瞬間……

 

「がっ……」

 

腕で腹部を貫かれた母さんの姿があった。

それをやっていたのはカエンサであった。

 

「親殺しはサイヤ人としての本能かもしれない……でも最低の行為よ」

 

そう言ってゼロ距離で気弾を放つ。

しかしさっきの打ち合いで全力を使い果たしたのだろう。

煙が上がっただけで大したダメージにはなっていなかった。

 

「あなたなんて……この子に比べれば最低の息子だわ」

「俺も情に突き動かされ弱い奴を救うあんたなんて最低の親だと思っているよ」

 

そうカエンサが言って母さんを吹き飛ばす。

実の親にこんな仕打ちをするのか…。

俺は目の前の光景が信じられず呆然と立ち尽くす。

 

「親も守れぬとは情けないサイヤ人が……」

 

その親を殺したサイヤ人が何を言っているのかと思う。

だが体も心もこの光景を受けいれられず、体勢を整えることもできない。

俺の方に振り向いたカエンサは俺を気弾で同じように吹き飛ばす。

呆然としていた俺は無防備に受けてしまい、したたかに背中を打ち付けてしまった。

守れなかったことに憤りと悲しみを感じる。

意識が朦朧とする中、這いずるように母さんの元へ向かう。

触れた指先からは心から優しい、抱えた時の温もりさえそこにはなかった。

 

「さて……あとはお前らだ」

「死人に口なしとはよくいったものよ」

 

そう言って隊員に向かって二人とも手をかざす。

大きな気弾を放ち隊員も吹き飛ばす。

しかし全員、何とか息はあるようだ。

 

「……ほかの奴らに所に助けに行くぞ」

「いや、俺たちほど仲間思いな奴らはいないなあ」

 

そう言い残して飛び去っていく。

何を言っていやがるんだ。

お前らほど最低な奴らは見た事は無いぜ。

何とか立ち上がろうとするが体がふらつく。

 

「あの……」

 

ボロボロの隊員の人が見降ろしながら、声をかけてくる。

敵意はないようだが……

 

「ルビコラ様と我々の敵を討ってくれませんか?」

 

討ちたいがこの体ではどうしようもない。

戦えるほどの力はない。

そう、息も絶え絶えに言う。

 

「ある方から質は一番悪いのですがもらってきた秘密兵器があるのです」

 

そう言ってポケットをまさぐり始める。

質が悪いのに秘密兵器とか何を言っているんだ?

 

「あった!!」

 

ボロボロの隊員の人が俺の目の前に奇妙な実を差し出してきた。

そして……

 

「さぁ、敵討ちをしに行きましょう」

 

目を輝かせながら言い放つのであった。




またもやハートブレイクイベント発生。
母親であるルビコラは優しいサイヤ人で、
ラブカからのDVなどを恐れたが故に、愛を注げなかったことを後悔しているという事になっています。
カエンサやラブカは下衆ですがルビコラはいい人。
その母親に似ているからこそ、不思議なサイヤ人という位置づけにガタバルはなっています。
異母兄弟に当たる新キャラは女の子です。
なんで女キャラを連発しているのか?
ナッパやラディッツにも春を訪れさせるためです。
カエンサの春?、知らんな。

指摘有りましたらお願いします。


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『さらば鶴の闘士』

今回も引き続きハートブレイクイベント発生します。
原作屈指の激戦にして死者大勢のサイヤ人襲来編。
まだまだ別れは続きます。


「ウォーミングアップはおしまいだぜ」

 

そう、ヤムチャが言って相手を見る。

かめはめ波で粉々になった栽培マンという奴との戦いを終えたのだ。

天津飯と桃白白、俺、悟飯、クリリンが一人ずつ倒した。

6人いた栽培マンは今のヤムチャで最後だった。

 

「いいだろう、ナッパ!!」

 

そう言うと巨漢の男が前に出る。

見た限り力で押すようなタイプだが……

 

「お前の戦闘力は6500……ラディッツが肉薄していやがるから気を付けろ」

 

ラディッツの強さをあの機械で確認したのか。

俺たちの数値も確認しているなら一人ずつ相手にしているようでは、後でコンビネーションでやられたら無理だというのは理解しているはずだ。

 

「スパーニ、貴様の戦闘力は13000だ、ここにいる奴らが束になっても勝てん、がんばれ!!」

 

13000……ラディッツ2人分か。

とんでもない隠し玉を用意していたみたいだな。

 

「わっ、わかりまひたぁ!!」

 

あいつ、緊張していやがるな。

噛んでしまうあたり、悟飯と同じで初めての戦闘といった所か?

 

「なんだか戦うのが好きそうじゃありませんね」

 

確かにな。

お前によく似た気性なんだろう。

実力が折り紙付きなのもな。

 

「だが、気を付けないと死ぬぞ、気合入れろ」

 

俺は忠告をしておく。

油断は今回に限って死を身近にさせてしまう。

あの栽培マンという奴でも自爆をされて死ぬ可能性はあっただろうからな。

 

「ハイっ、ピッコロさん!!」

 

いい返事だ。

戦うのは好きではないがやるべきことは分かっている。

ビビり症や怖がるのがないのが救いだ。

 

「はぁあああ!!」

 

天津飯達がスパーニという女と戦い始めた。

ラディッツは一人でナッパという男と戦う様だが……

 

「天津飯達の方に行くぞ!!」

 

死人が出る可能性が高いのは天津飯達だ。

そしてクリリンたちがラディッツの加勢に向かう。

孫悟空の奴が来るまで時間が持てばいいけどな。

 

.

.

 

「はあっ!!」

 

俺と白白さんが攻撃を仕掛けて、餃子の超能力で拳などに痛みを走らせる。

その一瞬の隙で攻撃を避けていく。

しかし相手の速度はガタバルの本気と遜色ないのか。

目で追うのが難しい。

12の目があればとらえられるが死にに行くようなものだ。

 

「はいっはいっはいっ!!」

 

手足をせわしなく動かして連打を放ったり、足払いをしたり多岐にわたって攻撃をつなげてくる。

しかし雑な部分が見え隠れしている。

まるで今日が初めて実戦を行うような、そんなイメージだ。

鍛錬だけでこの高みに立っているとはすさまじい女だ、驚嘆に値する。

 

「『どどん波』!!」

 

餃子が援護の一撃を放つが、それを片手で受け止める。

反応が速い。

 

「『渦巻十枝』!!」

 

指を組み合わせる形に腕を回しながら10本の『どどん波』を放つ。

オリジナルの技のようだが強さの差があるからか、技の速度と威力が段違いだ。

 

「『激烈光弾』!!」

「『魔閃光』!!」

 

ピッコロと悟飯の技がスパーニに向かっていく。

しかしさすがの反応の速さでその技に対して真正面の体勢になる。

 

「はあぁ!!」

 

片手ずつで弾き飛ばす。

もう少し、こっちが隙を作っていたら当たっていただろう。

実戦経験が浅いながらもなかなかのものだ。

強さでカバーしているあたり末恐ろしい。

 

「だああああっ!!」

 

悟飯が果敢に挑みに行く。

相手は何とか弾いているが戦いづらそうだ。

まるで子供を殴っていいのか迷う姉のような……

 

「えぇい!!」

 

腕を掴んで軽く放り投げる。

ピッコロは何かに気づいたのか、背中に回りこんだ。

 

「随分と隙だらけだな、尻尾掴ませてもらったぞ」

 

そう、この女性なにかと隙がある。

強さゆえの油断ではなくだ。

 

「えっと……ごめんなさい!!」

 

そう言って力を籠め始める。

そう言えば孫から聞いたことがあるぞ。

尻尾をその気になれば自分から引きちぎれると。

 

「おい、スパーニ、お前さんは尻尾を鍛えているだろうが!!」

 

巨漢の男がそう言うと力を抜いていく。

まさか緊張でそんな事も忘れていたのか?

 

「本当にあいつはしっかりしろよ……」

 

そう言った瞬間ラディッツの拳が顔面にめり込んで殴り飛ばすことに成功していた。

しかしタフなようでにやりと笑っている。

 

「こっちとラッシュで張り合えたかと思えば殴り飛ばしてくるとはな、ずいぶん成長したじゃねえか」

 

そう言う相手にヤムチャが仕掛けに行く。

狼牙風風拳を放つが相手の目線を足元の向けさせないためにラディッツとクリリンが気弾を放ってサポートをする。

 

「『サタデークラッシュ』!!」

「『かめはめ波』!!」

 

ヤムチャのラッシュにかまいっきりになっていた相手は両腕を交差するもダメージを負う。

と言っても期待したほどに比べてしまうと少ないが。

 

「まぁ、こっちもいい加減に何とか打開しないとな」

 

他人の事も気になるが、この女への攻撃をどのようにしていくか。

ダメージはお互いにないのだが、このままだと自力で押し切られかねない。

 

「『鶴翼の舞』!!」

 

白白さんが先に大技を仕掛ける。

まだ序盤の様子見の段階だというのに、まるで終盤の決めに行くほどの速さだ。

 

「ぬぬぅ!!」

 

弾いてはいるが徐々に体に入っていく。

回避をすればいいのだが、回避をしたり防御方法などのイロハがあまりにも未熟なのだろう。

 

「はぁああっ!!」

 

白白さんが避けた先を読んで拳を突き出す。

素晴らしい読みだ、相手の軌道にドンピシャといった所。

これは確実に顔に当たる。

完璧なタイミングと思ったのだが次の瞬間、恐るべき身のこなしを見せていた。

 

「やあっ!!」

 

頭突きで放たれていた拳を砕き、その勢いのまま回し蹴りをアバラに叩き込む。

戦い嫌いでも戦闘民族の本能が攻撃をさせる。

しかもすさまじい威力を伴う。

 

「まさかカウンターをあの瞬間でするとはな……」

 

拳が砕けてしまいさらにアバラもへし折られた白白さんがほほ笑んでいた。

あの一瞬であり得ないほどの攻撃を繰り出している。

今、拳が砕けて脂汗をかいている白白さんを見ておろおろしているあたり、心根は優しい女性だ。

多分、殺そうとかも思っていない。

ただ、虎や象が軽くやっても死ぬようにそう言った力の差による不慮の事故はあり得てしまう。

 

「天津飯、餃子、ピッコロ、悟飯……死ぬんじゃあないぞ!!」

 

そう言って駆けていく。

迷いの生じた相手の攻撃を避ける。

そして背中に回り片手とはいえ羽交い絞めにしていた。

まさか……

 

「やめてください、白白さん!!」

 

次に何をするのかわかってしまう。

そこまでしなくても打開策はあるはず。

早まってはいけない。

そう思い、俺は声を張り上げていた。

 

「少しぐらい、兄弟子にいい格好させろ……さらばだ!!」

 

そう言って全身が光り大爆発を起こす。

すさまじい勢いだ。

倒すために自爆をするだなんて……

まだ、勝てる可能性もあったでしょうに……

腕とアバラを折られて足手まといになるまいと……

 

「白白さん……白白さーん!!」

 

煙が晴れると、スパーニが体を震わせていた。

かなりのダメージは負っているようだが致命傷じゃあない。

無駄死にだったのか……

 

「あああ……」

 

申し訳なさそうな悲しい目をするスパーニ。

白白さんの自爆を『自分が殺した』と思っているのだろう。

まさかの戦意喪失の状態である。

 

「どうする、続けるのか?」

 

ピッコロが聞くと力なく首を振る。

あの岩陰にいた男も、巨漢の男もため息をついていた。

 

「実戦経験積ませておけよ…」

「優しすぎるのがここまでダメな方向に転がるとは予想外だ……」

 

そう言っているのが聞こえたが、徐々に嫌な雰囲気の気が近づいてくるのを感じる。

まさか……

 

「ガタバルの奴、しくじったというのか!?」

 

ピッコロとラディッツが大きな声で言う。

強さを間近で見続けた奴らだからこそ異様なことになっているのがよくわかるんだろう。

 

「やつの戦闘力から考えてあの二人が勝つ可能性は低い……何かしたな?」

 

岩陰にいる奴も不思議な顔で言っている。

あいつの心根も優しいものだ。

前回のように人質か何かを取られたのかもしれん。

厄介な状態ではあるが嘆いている暇はない。

 

「厄介な相手が戦意喪失の状態なのが救いではあるがこの速さ……直に来るぞ!!」

 

そう言って構えて上空を見ているピッコロ。

大きさだけならばさっきまで圧倒的だったスパーニよりは小さい。

ラディッツの奴とナッパの戦いもかなり拮抗している。

タフすぎて計測された戦闘力以上の数値になっているんだろう。

8000か8500はあるんじゃないのか?

 

「いい加減倒れろよ、『シャイニングフライデー』!!」

「こっちのセリフだ、『ジャイアントボム』!!」

 

二人の技が衝突しあい、爆発を起こす。

その爆風からクリリンやヤムチャが攻撃を仕掛ける。

 

「うざってぇな!!」

 

そう言って人差し指と中指をくいっと持ち上げる。

すると周囲が爆発を起こす。

こんな範囲攻撃もあったのか……

 

「くっ、『ジャイアントストーム』をかわしきるとはな……」

 

相手もかなり焦りが生じている。

三人のコンビネーションが即興とはいえ翻弄できている。

こんな状況とはいえしっかりと勝たないと、戦闘民族の名が泣くというプライドなのだろうか?

各個撃破ができない分、余計に苦労するだろう。

 

「こうなったら……」

 

そう言ってヤムチャの方へ向き直る。

もはや防御を捨ててでも一人ずつ倒す気か。

 

「オラァ!!」

 

ヤムチャの攻撃を受け続けながらも反撃をする。

クリリンが近づいた瞬間に、ジャイアントスイングで投げる。

それを受け止めている間にラリアット。

さらに二人まとめてバックドロップ。

流れるような怒涛の攻撃。

ヤムチャのダメージは深刻なものになっていた。

 

「次はそこのチビだ!!」

 

クリリンに向かっていく。

しかし……

 

「『マンデーリング』!!」

 

ラディッツが捕獲をする。

それをぶち破って睨みを利かせていた。

だが……この均衡がたやすく破られる。

 

「ナッパよ……ラディッツ程度に押されるとはな、もはや貴様も必要ない」

「カカロットのガキ、お前も我らにとっては不要なもの……死ね」

 

岩に二人の邪悪な気を放つサイヤ人が立っていた。

一人は味方であるナッパに。

そしてもう一人は悟飯に向けて掌を出していた。

 

「こいつらがガタバルを……」

 

近づいてきた気の大きさや方向から考えてこいつらがガタバルを倒した奴ら。

しかし岩陰にいたサイヤ人が不思議そうな顔をして質問をした。

 

「おい、ルビコラはどうした?」

 

もう一人いたのか。

どうやらそれだけはガタバルが倒したのか。

 

「ガタバルに殺された、本当に残念だった、救ってやれなかった」

「母親殺しとは……悍ましい奴に育っていたよ」

 

母親を殺しただと!?

あいつの性格からして考えられない。

それにこの邪悪な気、もしかして……

 

「ベジータ、おおよそこいつらの事だ、

ラディッツは生きていたんだ、嘘をついているかもしれねぇ」

 

やはりそう思うよな。

あいつの性格上からして考えられない。

 

「知らないのか、ナッパ?」

 

そう言って気弾が圧縮されていく。

まさか本当に味方に対してあんな一撃を……

 

「弱いサイヤに生きる価値はなく、口を開く価値もないのだという事を」

 

そう言って一撃が放たれる。

しかしさすがはタフな男だ。

 

「うぉおお!!」

 

拳で叩き落す。

喧嘩をするのならば上等だという様に。

 

「なかなかいい攻撃だったぜ、腕が痺れたじゃねえか」

 

不敵な笑みを浮かべるナッパ。

しかし相手の攻撃は終わりではなかった。

 

「まだ、もう一撃があることを忘れていたな……

『フォルティッシモ・レクイエム』!!」

 

あまりにも巨大な一撃をナッパに向けて放つ。

あまりの大きさに身がすくんで誰も動けない。

 

「貴様も、不要な存在としてサイヤの歴史から抹消されるがいい!!」

 

気弾が収まった時、地面は陥没していた。

そしてその中心には横たわる形で倒れていたのだった。




あの愛溢れる死があってもドラゴンボールで生き返れるというのがシリアスぶち壊しの要因。
今回で桃白白さんが死にました。
原作の餃子ポジを埋める仕事です。

ガタバルの異母妹に当たるスパーニの年齢は18です。
フリーザ軍で鍛えられたので戦闘力は非常に高く潜在能力もあるが、
ルビコラに育てられたことで戦いが不得意な優しい女の子。
原作の初期悟飯と同じような感じです。
少しでも非情に育っていたら桃白白の自爆で戦意喪失になんてならない。
ガタバルと言いスパーニと言い、カエンサ以外はラブカの血が薄すぎたようです。


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『思わぬ援軍』

前回、最後に犠牲になったのはミスリードを誘えたのでニヤリとしました。
改心フラグが徐々に立っていきます。
ベジータはナメック星で確定なので放り投げていますが。


俺はカエンサの奴の巨大な気弾の一撃を食らった。

……そう思っていた。

だが現実としては俺は無傷だった。

なぜ無傷だったのか?

それははっきりとわかっている。

当たる寸前に俺を突き飛ばした奴が居た。

そいつが俺を庇ったんだ。

 

「なんで……」

 

わざわざ庇う必要があったか?

見捨てればいいのによ。

 

「なんで俺を庇ったんだよ、ラディッツ!!」

 

俺の前に立って一撃をもろに受けていたんだろう。

ぶすぶすと煙を上げている。

クレーターの真ん中で力なく横たわっていた。

 

「わからない……でも仲間だった奴がたかだか仕留められないだけで

殺されないといけないのかって思うと体が勝手に動きやがった」

 

こいつ……優しい心を持ちやがって

昔のお前なら体がすくんだとか理由にしていただろうに。

 

「俺を見捨てたら地球は守れたかもしれねぇのに……ラディッツ、お前は馬鹿野郎だぜ」

 

そうは言うが俺は心の中で称賛していた。

俺が同じ立場だったならこんな真似はできなかっただろうからな。

 

「馬鹿野郎でも、仲間を大切しないとな」

 

そう言って目がかすんでいるのか俺の方向を向かなくなってきた。

俺はこいつの敵を討ちたいとも思えてきた。

俺のせいでこうなったんだからな。

 

「……ベジータ!!」

 

ベジータに声をかける。

地球人との戦いだったが本当に面倒な相手を忘れていた。

こいつらならば弱ったベジータでさえも攻撃するだろう。

 

「ナッパ……構わん、やれ!!」

 

ベジータもこいつらの行動は目に余るのか了承の言葉を言う。

俺はラディッツの敵を討つために、地球人の見方を一時的にする。

 

「あと……ナッパ、『弱虫』が抜けていたぜ」

 

ラディッツが最後に言ってくる。

お前の今の行動を見て、今まで強さこそすべてだと思いお前をなじってきた自分が情けないぜ。

強いからすごいんじゃねぇ。

心も強くないと本当に強いサイヤ人にはなれないってこと。

お前を通して見せてもらったぜ。

 

「お前はもう弱虫なんかじゃあねぇよ」

 

そう言ってラディッツが息絶えたのを見て目を閉じさせる。

チビに頼んでボロボロにラディッツの死体が鳴らねぇように遠ざけてもらう。

 

「仲間殺しとは許せねぇ!!」

 

俺はカエンサの方へ向かっていく。

元々殺そうとしていたんだ。

反撃されることだって予想内の行動だろ?

 

「ふん、勝てるとでも思っていたか?」

 

カウンターを仕掛けてくるがこっちをあまり舐めるなよ。

その一撃を片手で受け止めて顔面を殴る。

相手も足腰が強い分あんまりダメージは与えてはいない。

しかしそれ以外に重要なことの確認をすることができた。

 

「お前の手から血の匂いがするぜ、やっぱりガタバルがルビコラをやったってのは嘘だな!!」

 

その受け止めた時の手から漂った匂い。

それは血の匂いだ。

人を殴った返り血にしてはあまりにも濃い。

手の全体が血に濡れた匂いだった。

だからこそ確信をもって俺は言う。

その言葉にスパーニは驚愕の表情を浮かべている。

まさか兄が殺すなんて想像できないもんな。

 

「どりゃあ!!」

 

口を開けてゼロ距離に近い状態で『ジャイアントレーザー』を放つ。

しかしカエンサだけでなく二つの気弾で相殺をして目の前に現れたのは……

 

「ラブカ!?」

 

俺の邪魔をしてあの一瞬でカエンサと役目を入れ替えやがったか。

だがそれがどうした。

腰から持ち上げて叩きつける。

背中を打ち付ける前にくるりと回って着地をした。

 

「『ジャイアントハンマー』!!」

 

ラリアットを放つ。

腕で受け止めるがまだ終わらねぇぜ!!

 

「『ジャイアントスタンプ』!!」

 

蹴りで突き放す。

その威力は体に響いたか、片膝をつく。

 

「ラブカ、とどめだぜ!!」

 

そう言って俺は全力でラディッツの技である『ウィークエンド』を放つ。

あいつのようにはならねぇ荒っぽい感じだがせめてものあいつにできる弔いの形ってもんだ!!

 

入れ替わったカエンサはカカロットのガキたちと戦っている。

元々の戦闘力の高さからかなり優勢に進めていやがる。

三つ目族の奴の腕がへし折られていたりしている。

 

「うぉおおお!!」

 

危機的な状態になったからか、カカロットのガキの目つきが変わる。

そういや、眠っていた力の事をなんていうんだったか?

まぁ、それを引き出したカカロットのガキに蹴り飛ばされる。

俺でもかなり痛いダメージになっていただろうな。

 

「貴様如きがよくも俺の顔に蹴りを…」

 

蹴り飛ばされた岩に突っ込んだのが相当頭に来たのだろう。

青筋を浮かべて憤怒の形相で睨んでいる。

 

「死ねぇー!!」

 

腕に集めた気弾を放つ。

ガキ相手に容赦がないのはサイヤ人ではあるが、こいつがやると嘘に思えてくる。

ただ弱い者や自分に合わないものを消して、強きに媚を売る。

ただの姑息な悪党だ。

サイヤ人の誇りなんて惑星ベジータとともに消し飛んだのだろう。

 

「うわぁああ!!」

 

カカロットのガキにカエンサが一撃を放つ。

避けきれない状態まで痛めつけてからとはとことん腐った奴だぜ。

しかし次の瞬間……

 

「悟飯!!」

 

ナメック星人の野郎が一撃の間に割り込んでいやがった。

それはまるで親が子供を守るように。

体全体で受け止めていた。

体からラディッツのように煙を出してゆっくりと崩れ落ちていく。

逃げろと言っているあたり、自分たちとの戦力差を冷静に考えていやがるな。

 

「死ぬなよ……悟飯」

 

そう言って目を閉じていく。

あいつらの不意打ちや弱い奴を狙う方法、人の情に訴えるやり方。

どれもこれも成果としてみればすごいがサイヤ人として人間としてみた時あまりにも醜悪に感じる。

 

「うぁああああ!!」

 

カカロットのガキが泣き叫ぶ。

徐々に戦闘力が上がっていく。

急いでスカウターの計測をすると凄まじい数値を叩き出している。

 

「10600だと……」

 

まさか感情でここまで跳ね上がるとは想像をはるかに超えている。

これならカエンサもただでは済まない。

あいつの戦闘力は11600。

ラブカが12000。

 

「ぬぉおおおおおお!!」

 

両手で必死に受け止めて後ろに下がっていくカエンサ。

そして岩をいくつかぶち抜いた先からゆっくりと煙を薙いでカエンサが出てきた。

かなりのダメージはあったようだが……

 

「今度こそ死ぬがいい……」

 

手を前に翳して気弾を放つ。

しかしまたもや誰かが割り込んできた。

そして腕を振り上げて……

 

「『ワイルド・ハンマー』!!」

 

そう言って気弾をカエンサに対してはじき返す。

それを避けているが驚愕の顔を浮かべていた。

 

「戦闘力13000だと!?」

 

割り込んだのは女だった。

それも飛び切りの美女だ。

 

「カエンサの方ばかりを見ていていいのかね?」

 

そう言ってラブカが気弾を放つ。

隙があると思っていたようだが甘いぜ

 

「ふんっ!!」

 

俺がもう一度叩き落す。

そしてカウンターを叩き込んでいく。

 

しかし空中へ飛んでいく。

大きな気弾を俺に向かって二発撃ってくる。

叩き落しても無駄だと言いたいのだろう。

だがそんなので怯む俺じゃあねぇ、両方叩き落してやるぜ!!

そう思って構えた瞬間……

 

「あなた達なんて親でも兄弟でもない!!」

 

スパーニが割り込み、叫んで放たれた一つの大きい気弾を弾き飛ばしていく。

やっぱりこいつに冷徹な戦士は無理だったか。

 

「子供は狙うし、あの人を殺したのに他人になすりつける、貴方の娘であることが私は恥ずかしいわ!!」

 

そう言って降り立つ。

だがラブカは次の一撃を俺に寸分たがわずに打ってきた。

娘から言われても動じていないところを考えるとこいつらは本当に同族意識がまるでない。

 

「シュポー!!」

 

俺の前に割り込んでくる影が一つ。

煙が上がるような音を発して俺の前に立つ。

金属でできたような見た目だが凄いことにもう一つの気弾を霧のようにしやがった。

腕を上げるという事は味方か。

どうやらガタバルの知り合いみてぇだが……

 

「心強いぜ…」

 

これなら俺達も十分に戦える。

形勢逆転だな。

そう思っていると凄まじい戦闘力を計測した。

 

「戦闘力22000……ベジータと同じ数値だと!?」

 

俺は振り向く。

すると岩陰でベジータの上から見下ろす紅色の肌で銀髪の女がいた。

 

「退屈そうなあなたの相手は私がするわ、戦いましょう」

 

さらにラブカたちが向かってきた方向からはさらなる気が感じ取れた。

戦闘力22000を同じく計測していやがる。

ガタバルが何かしらの方法で復活しやがったか。

 

「くくく……お前らのめでたい頭には笑いがこみ上げるぜ」

 

そう言ってカエンサとラブカがごそごそと奇妙な木の実を取り出した。

ターレスの奴はサイヤ人にはベジータにしか渡していないって言ってた……

あいつがわざわざ嘘をつくとは思えない。

つまりあいつらくすねやがったな!!

 

「助っ人が来ようが裏切ろうがお前らは勝てないんだよ!!」

 

かぶりつくと徐々に戦闘力が上がっていく。

さっきまで12000と11600だったのにあの木の実を食べただけで16000と15700に上がっていた。

 

「さて……お前らの助っ人を超えたぞ」

 

そう言ってカカロットのガキと女をカエンサは吹き飛ばす。

ダメージ自体は女が受けたからガキの方はそれほどだが……

 

「シュシュポ……」

 

こっちの助っ人も力で負けてしまい片膝をついている。

スパーニと俺が引き剥がすが俺はスパーニにカカロットのガキを助けに行くように伝える。

大の男が女に庇われてても足も出ませんとは言えない。

ここは踏ん張るぜ!!

 

.

.

 

「ぐぅ!!」

 

女の人、ニアさんが殴り飛ばされる。

あの木の実を食べてからさらに強くなったみたいで、こっちの攻撃は避けられている。

僕にはあまり無茶をしないように言うけど、ピッコロさんに教えてもらった事の中に逃げ出すことはない。

最期の言葉には逃げろとはあったけれど、敵は取りたい。

だから僕は戦うんだ!!

 

ナッパって人もラディッツおじさんの代わりに頑張ってくれている。

ベジータって人は別の女の人と戦っているみたいだ。

すごい気のぶつかり合いをしている。

 

「きゃあ!!」

 

ニアさんが頭から叩き落されてけがをする。

僕はその後ろから攻撃を仕掛けるけど避けられる。

 

「邪魔なハエが!!」

 

頭を掴んで地面に叩きつけられる。

そう言って拳を突き出してくると僕は空に浮いていた。

 

「き、筋斗雲……」

 

父さんが下りてきた。

しかしスパーニさんがすぐに駆け寄って事情を話して、ベジータって人の場所に向かおうとする。

僕に父さんは仙豆をくれた。

どうにか粒が多かったみたいでニアさん、スパーニさんと三等分するように渡してくれる。

ヤムチャさんとクリリンさんとナッパさんにも三等分するように渡していた。

天津飯さんと餃子さんも渡していたけどガタバルさんや白白さんのことを聞いていた。

 

そして父さんが向かっていこうとすると男の人が後ろから父さんを狙い打つ。

しかしその気弾は片手で弾き飛ばされて空へ消えていった。

ガタバルさんもようやく着いたのだ。

 

「ニアにラコイタ……ピッコロにラディッツさんまで……」

 

まだ僕たちは仙豆を食べていないだけでけが自体は治るんだけども

こんなに怒っているガタバルさんを見たことがない。

 

「桃白白は……」

 

天津飯さんに聞いて自爆したことを聞く。

スパーニさんは申し訳ない顔をしていた。

 

「ピッコロさんは僕をあの人から庇って…」

 

そう言うと頭を撫でてくれていた。

よく頑張ったと言ってくれた。

 

「ラディッツおじさんはあの人を庇うためにあの人の攻撃を……」

 

ナッパさんと男の人を指さす。

徐々に顔が歪んで怒りの形相へと変わっていく。

雰囲気ががらりと変わっていくようだった。

 

「ちなみに俺の予想だとあと一人女の人がいたはずだが?」

 

そう言うから僕はベジータって人と戦いに行ってお父さんが助っ人として言った事を話す。

少しだけ気が気じゃないようだったけど、どういう関係なのかな?

 

そして僕が言っていた二人の男の方を向く……

 

「ふん、この死にぞこないが……」

「今度は腹を貫いてやる、あの女のように!!」

 

そう若い人の方が言った瞬間、ガタバルさんの堪忍袋の緒が切れたのか

ガタバルさんから最初に着いた時以上の気があふれ出す。

 

「あの女……母さんのことか、母さんの事かー!!」

 

僅かに逆立った毛と目つき。

僕がピッコロさんを殺された時を遥かに超えている。

僕はこの状態になんだかいつものガタバルさんじゃないような違和感を感じる。

でもこれだけは確信して言える。

 

「この勝負……ガタバルさんの勝ちだ」

 




今回の犠牲はラディッツとピッコロです。
重傷はヤムチャと天津飯。
無傷に近いのは餃子とクリリン。

ターレスさんからくすねたりしておかないと助っ人陣にフルボッコされてしまってました。
用心深いですね。
ベジータの奴はガタバルが食べたレベルと同じ質のものです。
今回最後のやつはカナッサ星人の時のように
超サイヤ人にはなれないけど怒りで引き出された状態です。
指摘有りましたらお願いします。


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『疲労困憊 傷まみれの戦士たち』

覚醒には時間制限があるように書いています。
当然ガタバルの戦闘力が上がれば上がるほどその継続時間が伸びます。
ちなみにガタバルの怒り状態(疑似超サイヤ人)の倍率は30倍です。
この時に大猿になっていたら30x10で300倍ですが
確実に体がもたないでしょう。
ピオーネの恐ろしい特殊性能が判明。


「もう許さないぞ、お前たち……」

 

そう言って俺は動き始める。

どうやら俺がラディッツさんの部下から貰った実と同じものを食べていたらしい。

だからニアとラコイタが苦戦していたのか。

だがそれ以上に不安なことが出てきた。

ピオーネと今戦っているベジータ王子にも渡されているとしたらあいつでも勝てないのではないだろうか?

すぐに助太刀に行かないとな。

 

「どう、許さないんだ?」

 

カエンサがそう言って無造作にニアへ気弾を放つ。

どこまでも救いようがない奴らだ。

 

「ふんっ……」

 

指二本で遥か彼方に弾き飛ばす。

そのまま前蹴りで蹴り飛ばす。

 

「がっ……」

 

地面に叩きつけられて胃液を吐き出す。

そこに血が混じっているようだが起き上がる前にすぐに仕留めてやる

 

「死ね、『アルバトロス・ブラス』……!?」

 

放とうとしたら宇宙船が腹に直撃する。

まさか逃げ切るつもりか!?

そうはさせまいと宇宙ポッドを壊そうとする。

しかしここで疑問が出てきた。

こいつらの事だ、誰かからくすねたものの可能性がある。

 

「はぁはぁ……お前のその状態にはかなわんから逃げる」

 

軽く蹴っただけで致命傷か。

這いずりながら宇宙船に近づこうとする。

宇宙船を壊すのはためらうがあんたらをこの世から消すことに躊躇う事はもうないぜ。

 

「『コンドル・レイン』!!」

 

地面へ気弾が幾度となく直撃する。

カエンサにも当たっているが何とかして耐えているようだ。

 

「くそっ……」

 

宇宙船には乗らせない。

乗る隙すらも与えはしない。

 

そう思っているとラブカが何かを投げてきた。

反応したがそれはピッコロの死体だった。

 

「ふんっ!!」

 

片手で掴んでそのままニアに渡す。

しかし今の隙で宇宙船にカエンサが乗り込んでいた。

上空にあと一つ宇宙船がある。

あれはラブカが乗るために用意したやつか。

 

そんな事を思っていると徐々に気が膨れ上がっているのが感じられる。

方向はピオーネとカカロットがいる場所だ。

ベジータ王子が何かをやったのか!?

 

そこへ悟飯やニアが向かう。

クリリンと天津飯、ラコイタ。

5人が向かうも、ナッパやヤムチャは待機。

あれだけの大きな気に太刀打ちしても返り討ちに会ってしまう。

 

「……悪運の強い奴だ」

 

それだけ言って俺は腹に蹴りを打ち込んでから飛び去っていく。

殺したかどうかは定かではないが、敵を討つ気持ちより優先するべきことができた。

ラブカとカエンサなんてどうでもいい。

ピオーネの方が心配だ。

あの女が負ける事は無いと思いたい。

 

「カカロットの気もかなりぶれていやがる……」

 

一体何をしたのかは知らないが大きくなったり小さくなったりしている。

ニアと悟飯がいたので追い越す。

あれだけ憎んでいる相手をほったらかしてまで来たことに驚いているようだな。

到着したらもうすでに居たクリリンと天津飯が構えている。

 

「はははははっ!!」

 

カカロットを尻尾で弾き飛ばしていく。

その隙にピオーネが一撃を放っている。

ピオーネの気が着陸時点の時に比べて確実に上がっている……

もしかしてピオーネに備わっている能力は……

 

「この女ぁ、俺が実を食えば同じように強くなりやがって……この大猿の俺様と同等になる気かぁ!!」

 

ベジータ王子が絶叫をしてピオーネに拳を振るう。

やはり予想した通りか。

ピオーネに備わっている能力、それは……

 

「『自分より強いものと戦うとその力と同等に成長する』能力」

 

当然、基礎の鍛錬次第で上がるがこれは俺たちサイヤ人さえもはるかに凌駕する才能。

まさかピオーネの正体は計り知れないとてつもない存在なんじゃないのか?

 

「ふん!!」

 

ピオーネが成長段階のうちに叩いていこうという魂胆のようだ。

そして当然のごとく……

 

「うあっ!?」

 

重い一撃を受けきれずに吹っ飛びそうになるのを俺が服を掴んで止める。

流石のピオーネでもすぐにそこまで強くなるのは無理なようだ。

 

「ガタバル……」

「俺も協力するぜ」

 

そう言って服を離す。

カカロットの奴が俺たちを見ながら言ってくる。

 

「すまねぇ、ちょっとすげえ技使いてぇんだけど集中してぇんだ、時間作ってくれ!!」

 

こいつは……

こんな場面で時間を作るなんて難しいに決まっているだろうが!!

 

「仕方ないね」

 

ピオーネが構えて突っ込んでいく。

この……

 

「二人の方が確実だろ!!」

 

無茶をしてほしくないんだよ。

ただでさえ友が死に、母が死に、兄貴分が死んだのだ、ショックが大きい。

そのうえお前まで失ってしまったら……。

もちろんそんな事を言いはしない、恥ずかしいから。

 

「オラァ!!」

「はっ!!」

 

お互いが両サイドから頬に蹴りと拳を叩き込む。

後退した瞬間に追撃の一撃を放つ。

 

「『エレクトリック・パレード』!!」

「『アルバトロス・ブラスター』!!」

 

俺たちの大技を叩き込む。

これで少しでもダメージを与えられればいいんだが。

 

「『ギャリック砲』!!」

 

片手ずつの一撃で押し負けてでもダメージを減らす。

大猿の状態のせいで皮膚が固いのか大したダメージにもなっていない。

 

「喰らえ!!」

 

大きく振りかぶって拳を突き出してくる。

俺とピオーネが受け止めようとする。

そして手を前に出した次の瞬間……

 

「ぐあっ!?」

 

体にいきなり激痛が走り反応が遅れる。

そのまま一撃を食らってしまい、地面に叩きつけられる。

力が萎んでいく。

どうやらあの状態の時間が切れたようだ。

 

「ガタバル!?」

 

ピオーネが俺を心配して声をかける。

その隙を逃すまいとベジータ王子の一撃が当たり、岩盤近くまで殴り飛ばされる。

それにカカロットが当たり一時的に中断される。

すぐにピオーネは逆襲を始めるが最悪の場面だ。

体が軋んで動けない。

 

「大丈夫ですか!?」

 

悟飯が駆けよる。

ニアは尻尾を千切ればいいと知って動き始めている。

 

「問題ないが……体は動かない」

 

そう言うと三等分したような豆をさらに半分に割って俺に渡す。

これを食えという事か?

 

「これで少しでも体が動けばまだ可能性はありますから!!」

 

そう言われて口に含んで咀嚼を行う。

少しだけ体の軋みは収まって戦える状態にはなった。

しかも戦闘力も上がっている。

 

「なんとか……できそうだが」

 

そう言っているとまばゆい閃光が走る。

天津飯の奴が太陽拳を使ったらしい。

その時間を使ってカカロットの技の再充電が始まる。

ピオーネもどうやら起き上がった。

 

「喰らいやがれ!!」

 

ベジータ王子が口から光線を出す。

カカロットに当たるかと思った次の瞬間…

 

「『気功砲』!!」

 

天津飯がカカロットに当たらないようにするが、ベジータ王子の神経を逆なでしてしまう。

ベジータ王子は一度カカロットではなく直線状という事もあって天津飯への攻撃を開始した。

 

「ふん!」

 

片足を掴んで握りつぶす。

バキバキという音が聞こえてきた、

そして片足が不安定な所にベジータ王子は容赦なく一撃を見舞う。

 

「吹っ飛べ!!」

 

腹部に一撃を食らいそのまま岩を何度も砕き、そのままピクピクとしている状態だった。

幸いにも気が小さくはなっていないが、速くしないと命が危ない。

 

「『気円斬』!!」

 

クリリンが尻尾を切るための技を使う。

ずっとニアはしがみつくような形で引きちぎろうとしていたが一向にうまくいかない。

激しく動き回っているからとも考えられるが。

 

「ちっ!!」

 

飛んで避けられる。

だがその飛んだ先には悟飯がいた。

 

「『魔閃光』!!」

 

顔面に一撃を決める。

そこでよろめいた瞬間にニアが尻尾ごとベジータ王子を持ち上げてぐるぐると回す。

ゴリラの腕力ってすごい。

 

「だあぁあああ!!」

 

雄たけびのままぶんなげる。

そのままベジータ王子は背中を打ち付ける。

 

「よくやったぜ、ニア!!」

「この場所なら……」

 

尻尾が完全に見えている。

引きちぎらなくてもこの方法でも大猿状態は終わる。

 

「「尻尾をそのまま撃ち抜けばいい!!」」

 

二人とも構えて気を高める。

最大の技で照準を合わせる。

 

「『ソウル・オブ・サイヤン』!!」

「『クライ・エクスキューション』!!」

 

俺は深紅色の気弾を。

ピオーネは渦を巻いた槍のような青白い気弾を。

ベジータ王子の尻尾に向かって同時に放っていく。

 

気弾が直撃して煙が晴れていく。

俺もピオーネも仙豆の欠片の力はかなり失われている。

再び体が軋み始めている。

 

「よくも俺の尻尾を……」

 

そう言って徐々に体が縮んでいく。

もうすでにピオーネも戦闘力を使い切っている。

俺もだ。

あとはカカロットの大技。

ニア、クリリン、悟飯。

……俺の大猿が残っているな。

 

「ピオーネ、離れておけよ」

 

そう言ってベジータ王子の前に立つ。

さて……始めようか。

 

「俺様に勝てるとでも?」

「流石に今のあんたとならいい勝負はできるだろう」

 

一本拳の構えをして気を高める。

正直いい勝負ができるなんて微塵も思っていない。

 

「舐めるなよ!!」

 

そう言ってラッシュを放つ。

さっきまで疲労困憊だったり尻尾が斬られていた奴の動きではない。

 

「せいっ!!」

 

リーチを活かしてカウンターを取る。

拳を軽々と受け止めているあたり反応がいい。

 

「ふんっ!!」

 

蹴りを放ってくるが腕で受け止める。

その蹴りを引き戻さずに僅かに前に出すことで足をかけて飛び上がる。

追撃の二発目の蹴りを放っていた。

 

「ちっ!!」

 

頭を下げて回避をしたらアッパー。

そのアッパーを紙一重で避けて肘打ち。

均衡は保てているが、カカロットは技を放たない。

痺れを切らしたニアが攻撃を仕掛ける。

流石に速く勝負を決めておきたいからな。

 

「邪魔をするなぁ!!」

 

そう言ってギャリック砲を放つ。

大猿の時に体力を消耗していたニアは回避せざるを得なかった。

だがその回避先にベジータ王子が回り込む。

 

「寝ていろぉ!!」

 

後ろ回し蹴りで蹴り飛ばす。

殆ど完璧なタイミングでの奇襲だったニアをあしらうあたり、やはり余力がおかしい。

今のニアではピークを過ぎ去って7000弱。

クリリンと悟飯はいまだに無傷。

天津飯は重症。

カカロットも同じく。

俺も12000ほどだ。

しかし多分ベジータ王子は20000ほどの余力。

実質この状況を切り開くのは悟飯とクリリンぐらいだ。

 

ピオーネも俺と同じで体に痛みがあるのかところどころしかめ面になっている。

戦闘にしてみれば低下しているとはいえ唯一の六桁台。

俺の大猿で120000だがおそらく今のピオーネは低下していてそれくらいだ。

本気なら多分2.5倍ほど……30万はあるんじゃないのか?

 

「ていっ!!」

 

悟飯がベジータ王子の顔面を蹴り飛ばす。

まるでカエンサにやった時と同じだ。

 

「お前をやっつける……!!」

 

ついに本気になった悟飯が牙をむく。

構えてベジータ王子に向かう。

今の悟飯は潜在能力のおかげで無様な戦いにはならないだろう。

 

「俺を忘れるなよ!!」

 

ベジータ王子が悟飯を倒そうと拳を突き出したのを受け止めて投げる。

そしてその投げた先では起き上がっていたニアが両腕を振り上げていた。

 

「『ワイルド・ハンマー』!!」

 

肩に攻撃が当たって地面に叩きつけられる。

今のが全力だったのかニアが倒れ込む。

その間に俺は浮かんでいた球を見る。

 

「オォォォ…」

 

体が膨れ上がっていく。

バリバリと音を立てて服が破けていく。

理性はある。

さて……

 

「流石のあんたもお手上げだな……ベジータ王子ぃ」

 

ズシンズシンと音を立てて向かっていく。

流石にこれは想定外だったか?

 

「ふん、パワーボールを壊してしまえば済む話だ!!」

 

そう言ってパワーボールに攻撃を放つ。

しかしそれを追ってきた気弾に相殺される。

 

「この女ぁ、どこまでも俺の邪魔を!!」

 

ピオーネが相殺していた。

これで尻尾を斬る以外方法はないぜ。

 

「ふんっ!!」

 

俺は岩を砕くようにベジータ王子へ一撃を見舞う。

それを避けるが風圧で体勢が崩れたのを見逃さない。

尻尾で叩き落とそうとする。

しかしそれを見てベジータ王子が笑う。

一体どうしたんだ?

 

「そんな尻尾を振り回したらせっかくの意味がないぜ!!」

 

そう言ってクリリンの気円斬を真似るが甘い。

その本人が近くまで迫っているのに気づけないとはあんたらしくもないぜ。

 

「くっ、投げる暇が……」

 

クリリンを殴り飛ばすが、注意力散漫だったからか十分な威力にもならず

すぐに起き上がられている。

 

「やあっ!!」

 

悟飯に一撃を食らって体勢を崩す。

そして俺の一撃が掠る形で当たって地面に叩きつけられる。

 

「これで終わったか……?」

 

反応はない。

流石にこれだけボロボロならば死んだかもしれない。

そう思った瞬間……

 

「はぁ!!」

 

気弾でパワーボールとかいうものが壊された。

まさか死んだふりだなんて……

いや、異常なまでに頑丈なんだ。

今のは僅かに意識が飛んでいただけ。

すぐに覚醒したんだ。

縮んでいく間にそれを理解した。

 

「このベジータ様をここまで追い詰めるとはな……」

 

そう言った瞬間、カカロットの凄い技がベジータ王子に直撃する。

凄まじい力と光で勝負が決まったとみんなが安堵する。

しかしさすがはベジータ王子、あれだけの一撃を受けても舞空術で降りてきた。

 

「貴様ら、どこまで隠し玉を持っていやがるんだ……!!」

 

そう言って体中の気を爆発させて俺たちに攻撃をする。

すぐにクリリンを捕まえて殴り飛ばす。

天津飯ほどではないがかなりのダメージでピクピクしている。

カカロットの方に次は向かっていく。

 

「くそっ!!」

 

止めようとするが、仙豆の効果が完全に切れる。

再び体が地面に叩きつけられてしまう。

先ほどとは比べ物にならない激痛だ。

歯を食いしばって立ち上がるがたぶん一撃を放てるかどうかだ。

 

「止まりやがれ、『アルバトロス・ブラスター』!!」

 

大技を放つ。

真っすぐにベジータ王子に向かっていくが……

 

「『アホウドリ』の名を冠するには今のお前の力じゃ貧弱だ」

 

そう言って握りつぶされる。

俺は膝をつき力を使い果たして倒れてしまう。

カカロットも力を使い果たしたからか瞬く間に殴り飛ばされて地面に叩きつけられてしまう。

 

「次はお前だ、カカロットのガキ」

 

そう言って悟飯に向かう。

まずい、ピオーネの奴が最後の砦だ。

しかしここで助けなければ悟飯を殺しかねない。

動かしてやる。

這いずってでも。

全裸状態で石が筋肉に食い込もうが知らない。

皮膚が擦り切れようが構わない。

止めて命を救うまで。

 

「はぁ……はあ……」

 

息も絶え絶えに向かっていく。

徐々に悟飯へ近づくが悟飯の目は覚悟している。

戦うこと。

そして倒すこと。

余計な心配だが、殺されたくはない。

俺は歯を食いしばり、この戦いで死んだ奴ら今も倒れているやつらの事を思い浮かべる。

 

「うがぁあああ!!」

 

殺されてしまうという心が激痛を凌駕した。

守らなければいけないという思いが再び立たせた。

 

「このベジータ様に勝てるわけがない!!」

 

そう言って悟飯にラッシュで勝つ。

いくらあの人でも俺達との戦いやダメージで無傷じゃあない。

 

「シャ!!」

 

攻撃を放つが受け止められる。

しかしそこで怯むわけがない。

 

「ラァイ!!」

 

後ろ回し蹴りで一撃を加える。

体勢が崩れたのを見てそこにすかさず悟飯が気弾を放つ。

それを素早い動きで上空に逃げて回避。

俺がそれを追いかける。

追いついた瞬間、にらみ合うように俺とのラッシュ合戦が始まった。

その間にもピオーネの気がだんだん上がっていっている。

一体何を狙っているんだ?

 

「ふっ!!」

 

フックで俺の顔を打つが脇腹に俺も蹴りを食らわせる。

徐々に戦闘力の差が縮まっている。

しかし体に鞭を打っている状態だ。

心で動いている今がどこまで持つか。

それだけが恐ろしい。

 

「こうなれば……『ビッグバン・アタック』!!」

 

そう言われたとてつもない気弾が迫りくる。

避ける事もかなわない一撃をもろに喰らって地面に叩きつけられた。

 

「この俺様も火事場の馬鹿力で新しいとてつもない技が生まれたぜ」

 

そう言うが声は聞こえていない。

意識は朦朧としている。

普段なら服が多少のダメージを雀の涙程度だが軽減してくれるのに今回はそれがない。

全裸で強烈な一撃を食らったのだ。

 

「こっちもとてつもない技が生まれたわ」

 

ピオーネが構えている。

俺の様に何かを象った気弾のようだが……

 

「『グラトニー・オブ・ザ・ホエール』!!」

 

とてつもないでかさに見合うクジラ型の気弾だった。

これにはさすがのベジータ王子も驚愕を隠せない。

 

「この……最後の最後までぇええ!!」

 

直撃して俺以上の勢いでそのまま地面に叩きつけられて何度も地面をバウンドする。

流石のピオーネもあれで全部の気を使い果たしてしまい、肩で息をしている。

悟飯もかなり疲れた表情だった。

ここにいる全員が疲労困憊だった。

だが最後までベジータ王子は気絶することはなく宇宙船を呼んでひきかえしていくのだった。

クリリンがあきれて『あいつ不死身かよ』と言っていたが本当にそう思えるほどだった。

俺たちの大技を合計しても確実に5発以上は受けている。

しかも大猿解除後も含めてしまうとさらに多くなるだろう。

 

死者は

桃白白

ピッコロ

ラディッツ

ルビコラの4名

ケガをした人は

骨とか折れているという意味合いでは

カカロットと天津飯とクリリン

俺とピオーネとニア

カエンサとラブカで8名

軽傷者は

悟飯とナッパと餃子

ヤムチャとラコイタ

スパーニとラディッツの3人の部下

で9名

 

死者と重傷者を合わせた数と同じぐらいけがをした人間もいる。

誰一人としてこの戦いで無傷な状態だった奴などいない。

肉体的にも精神的にも傷を負ったやつらがいる。

ただひとまずは束の間の平和に安堵の息を吐こう。

あいにく俺にはピッコロをよみがえらせる手段はある。

だから桃白白もラディッツさんもよみがえらせることができる。

そして母であるルビコラも。

全員のケガが治ったりひと段落したら話さねばいけない、そう考えながら俺はもう一度気合を入れて仁王立ちをしていた。




文面だけ見たらピオーネの特殊性能の恐ろしさが分かります。
サイヤ人以上の成長速度を持っている異質な存在。
なぜこんな特殊な性能を持っているのかは次回にちらりと書いていこうと思います。

ついにインフレ真っただ中のナメック星編に突入します。
ナメック星でも今回逃げ切ったカエンサとラブカは暗躍します。
逃がしてしまったのは単純に憎しみを晴らす以上に
ピオーネを失う事が嫌だったからという形です。
指摘などありましたらお願いします。


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ナメック星編
『ナメック星へ』


一つの話に詰め込みました。
ターブルは感想の時にまだ出す気はないとあったのですが、
折角サイヤ人多く出るので全員集合という形で登場させることにしました。
ちなみに戦闘力自体は14000ほどの想定。
アボとカドは17000ほどです。
そしてさらりと息をするように外道行為をこなすカエンサとラブカ。


仁王立ちの状態からとりあえず天津飯を抱える。

目は霞み始めてはいるがまだ死ぬ事は無いだろう。

畑にカエルが居たら瞬間移動でもできるんだが……

 

「んっ……」

 

ばらばらと音が聞こえてきた。

どうやら上空から誰かが来ている。

上陸をしたがこの気は知っている。

亀仙人様だ。

 

「とりあえず重症な奴は運んでもらわないとな……」

 

体中軋んでいるが天津飯とカカロットは骨がいかれている。

その時点で病院直行組だ。

 

「悟飯、お前もあれに乗っていけ」

 

悟飯もこの年齢だ。

今回の戦いの傷は癒さないといけない。

そんな事を考えていると気が近づいてくるのがわかる。

ナッパとヤムチャ、餃子

そしてスパーニだったか。

 

「悟飯ちゃん!!」

 

チチさんが出てきた。

悟飯が大したケガじゃなくてほっとしているようだ。

 

「チチさん、悟空と天津飯は重症なんで優先して運んでやってくれませんか?」

 

そう言うと振り向くが、次の瞬間、驚愕の顔に変わり、悟飯の目を覆いながら大きな声で言ってきた。

 

「なんで全裸なんだべ!」

 

あっ、大猿になってしまって服が破れたんだったわ。

替えの服なんて俺持ってないんだけど……

 

「戦った時に服が破れたんですよ」

 

堂々と向いている。

俺は悪くない。

さて、カカロットも抱えてと……

 

「亀仙人様、あとのメンツや死体の回収は済みそうですよ」

 

向かってきていたナッパがピッコロをヤムチャが運びに行っていたラディッツさんを抱えていた。

そしてラディッツさんの部下が俺の方を向き、俺に抱えるように言ってくる。

 

「この方を丁重に弔ってください、ルビコラ様を……」

 

あまりにも冷たい体。

死んでいるんだと実感すれば涙がこみ上げてくる。

 

「あと、替えの服です」

 

ベジータ王子が来ていたような服を渡されて着てみる。

重さもほとんど感じない。

だが耐久性はベジータ王子を見ていてわかるようにかなりのものだ。

 

「それじゃあ、重症でないものは自分で来ることにして病院に全員で行きましょう」

 

ブルマさんがそう言うので乗り込んでいく。

と言っても天津飯とカカロットが優先だ。

ニアとクリリン、悟飯の5人で行く。

ラコイタは今回は助っ人としてきたがこれ以上は関わらないので母星に戻るとのこと。

ラディッツさんの部下たちも飛び立っていった。

ナッパさんはどうやらここにしばらくいるようだ。

 

とりあえず俺は自宅に帰ってメディカルポットがあるのでそれを持って病院へ行く。

俺とナッパさんは良いが女性であるピオーネはニアに頼んでやってもらおう。

 

「今回、死んだのは今クリリンから聞いた……」

 

天津飯の沈痛な顔。

そして悟飯の顔を見て、みんなの絶望的な顔。

ナッパさんは体を震わせていた。

 

「ピッコロ、桃白白は分かるし、悟空の兄であるラディッツも分かる……しかしあの女性は誰じゃ?」

 

ナッパさんは無言だった。

スパーニもさめざめと泣いている。

 

「俺の母親です、名前はルビコラ」

 

そう言うと驚いた顔を浮かべている。

確かに俺の家族構成を知っているのはチチさんぐらいだ。

 

「なぜ、母親であるこの者が死んだんじゃ、まさかおぬしが……?」

 

亀仙人様が言うが、それをナッパさんが遮る。

この人としても感じる事はあるんだろう。

 

「爺さん、こいつは俺たちサイヤ人の中でも優しい特殊な奴だ、こいつが人を殺すなんてマネするタマに思えるか?」

 

それは大きな誤解で外道と極悪人ならば流石の俺も殺しかねんぞ。

今回のように自分のためだけに他人を巻き込むからな

 

「うむ、すまんな、では誰がやった?」

 

亀仙人様が聞いてくる。

できればこういうのを言う気にも慣れないのだが……

 

「かつてカカロットを殺した男、俺の兄カエンサ……」

 

カカロットを指さして言う。

まさか同じ相手に二度もやられるとは思わなかった。

 

「なっ……息子が殺したというのか」

 

ヤムチャたちも驚愕の顔を浮かべる。

まさか味方からやられていたとは予想外だろう。

しかも息子にだ。

 

「それも旦那である父親もグルになって……」

 

スパーニが重々しく口を開く。

お前もつらいだろうに。

あの人が育てたからこそ、お前の母親の血が濃いからこそ。

俺と同じ優しい心のサイヤ人となったのだから。

 

「まずは母を俺に向かって投げてきた、俺はそれを受け止めるが特大の気弾を放たれてしまい

当然、受け止められず背中を向ける形で食らった

その一撃を延々と受け続け、庇っている間に大技が放たれたが、母は俺を庇いその一撃を相殺したのち、腹を兄に貫かれた」

 

なぜ、そんな事になったのか。

その詳細を事細かに話す。

自分としても絞り出すほどの声になることもあった。

一息つけるように伝え終えた時。

 

「なんと、悍ましい真似を……」

 

全員が青ざめるような顔をしていた。

そして背中を叩いてくる。

目の前での肉親の死。

それを考えうる限りの最悪の形で迎えた。

それを感じたからなのだろう。

 

「その真実を知りスパーニ……俺の異母兄妹に当たる奴は俺たちの味方をしてくれた」

 

頭に手を置く。

びくりと体を震わせているが気にするな。

桃白白の事も圧倒的な戦闘力であいつなりにけじめをつけた結果。

カエンサやラブカとの関係もあるがあいつらはあいつらでお前はお前。

それは割り切って判断しているぞ。

 

「今回もうすでに帰ったラコイタもその一人だ、ピンチだと勘づいてきてくれた3人が居なければ全滅も十分にあり得ただろう」

 

あの二人も実を食べていたし、俺が二人をボロボロにできたところで

その後のベジータ王子との勝負の間に時間切れでじり貧だっただろう。

確実に天津飯とクリリンが死んでいた。

生き残れたとしても全員が重症なのは間違いなかっただろう。

 

「ピオーネとニアにも感謝している」

 

わざわざ危機を察知したような示し合わせたタイミングでの来訪。

これほど感謝することはない。

死屍累々になっていただろうからな。

 

「もともと来る予定だったから気にしないでいいよ」

「私もそうだからね、気にする事は無いよ」

 

そう言えばニアは地球に行きたいと言っていたし、ラディッツさんからもしばらくしたらピオーネが地球に来るとは言っていたな。

まぁ、それを差し引いてもここにいるメンツが生き残れた理由の大半を担っているんだ。

感謝の言葉も自然に出るというものだろう。

 

 

「とりあえずクリリンから聞いたんじゃがナメック星というところに行くらしい」

「ああっ、ドラゴンボールですね」

 

亀仙人様が言うから答える。

ピッコロをよみがえらせるためにも必要だからな。

何個叶えられるかは知らないが少なくてもそれが一番優先する内容だろう。

 

「おぬし知っておったのか?」

「昔2回訪れて、ドラゴンボールがあるのは確認しています」

 

そう言うと全員が目の色を変える。

希望の可能性が見えてきたからだろう。

 

「瞬間移動で行ってきたら?」

「帰ってこれない可能性だってあるだろ……」

 

ピオーネの提案は残念だが今回は受け入れられない。

もしかしたらベジータ王子の通信のせいでフリーザ軍のほかのメンツにばれているかもしれない。

そうなれば俺たちが先発隊として行って後発で誰かが来ないと結局は人手不足になる。

 

「それにみんな連れていけても俺が死んだら地球に戻れないから宇宙船は結局必要だし……」

 

瞬間移動が可能なのは俺とピオーネの二人だけだ。

その時点で俺が行くならピオーネも行かないと意味がない。

両方のうち、いずれか片方に万が一の事があっても大丈夫なように。

 

「でも宇宙船って基本一人乗りしか私たち無いけどね」

 

ニアがお手上げという様な顔をする。

スパーニもナッパさんも頷いている。

 

「俺の奴は設備整えているから3人まではいけるぞ」

 

そう言って付いてこれる奴が多いことを伝える。

まぁ、無理をしてついてこなくてもいいんだけどな。

 

「あとは母さんの宇宙船を使うことだってできる」

 

これで合計すると……

俺で3人分

スパーニ、ニア、ナッパさん、ピオーネ、母さんの一人乗り宇宙船で8人。

ここからだれがついてくるかの相談だ。

 

「悟空の奴が乗ってきたやつがあるはずじゃが、悟飯なら知っておるじゃろ?」

 

亀仙人様がそう言う。

確かにカカロットの宇宙船の存在を忘れていた。これで9人はいける。

さて……誰が来るんだ?

 

「俺は……白白さんの…復活のためにも行かせてもらうぜ」

 

天津飯が絞り出すような声で言ってくる。

気持ちは分かるが無理するな。

すると次はブルマさんが直々にクリリンを指名する。

ヤムチャでもいいのだが今回でかなりの活躍をしたという事で抜擢した。

 

「僕も連れて行ってください……」

 

悟飯もピッコロをよみがえらせたい一心。

そして今後再び来るであろうサイヤ人の襲来。

その為には自分にできる事をしたいとチチさんに面と向かって言う。

ピッコロの鍛え方のおかげで肝も据わったな。

 

そんな事を話していると窓から黒い人が声をかけてきた。

名前はミスター・ポポと言い神様の付き人のような存在らしい。

数時間後、ブルマさんから聞いた話によるとユンザビット高地で宇宙船を発見。

そのメンバーにクリリン、天津飯、悟飯、ブルマさんの4名。

そして俺の宇宙船には俺とナッパさんとピオーネ。

それ以外は一人乗りだがニアとスパーニも協力するとのことだ。

ニアは一緒に戦った仲間だし助けたいとのこと。

スパーニは桃白白に対する償いと母さんをよみがえらせたいという気持ち。

 

9人でナメック星に行く。

地球が手薄になることを考えればヤムチャと餃子が残ったのはある意味良い事だろう。

 

 

「ブルマさんが言っていたのは10日間……メディカルポットを使っても天津飯とピオーネで一週間はかかるぞ」

 

サイヤ人のような再生力があるわけじゃあない。

ましてや内臓に損傷がある。

治るのに10日以上かかる可能性はある。

そうなったら誰を治すかは優先しないといけない。

ちなみに仙豆ができるまでカカロットは待機するらしい。

まぁ、運ぼうとしたら医者に強く言われるからな。

 

「結局天津飯を優先する形になったな」

 

ニアやクリリンは比較的ましなものだったため、ピタルへの瞬間移動で病院に連れて行った。

医者をカカロットのために呼ぼうと思ったが、あいつ医者嫌いだからな。

ピタルの医療で一週間でクリリンやニアたちは全快の状態になった。

あとは天津飯だったが同じく一週間ぐらいで治った。

裸で入らないといけないからブルマさんに使い方を教えてピオーネはやってもらった。

結構ひどいけがだったのに一日半では治るあたり凄いなと思った。

 

そして最後に俺が入る。

体が軋む中一週間以上、事後処理にかまっていた。

桃白白の店の臨時休業と防衛軍への有給取得。

そんな事もあって瞬く間に過ぎていった。

一日がかりで治った時、体から清々しいほどの力が溢れていた。

 

「こいつは凄いぜ……」

 

気を放出すると上昇具合がどれほどのものかを知る。

今の俺の戦闘力ならば4万近いんじゃないだろうか?

もしかしたらベジータ王子を超えたかもしれない。

それにこのナメック星に行くまでの間、地獄の特訓を施す。

到着した時俺たちの力がどれだけ上がっているのか楽しみだ。

 

「じゃあ出発するわよ」

 

翌日、ブルマさんの一声で全員が各々の宇宙船に乗ってナメック星へ向かう事となる。

ニアとスパーニは14日でナメック星到着予定。

俺たちは10日。

ブルマさんたちは一か月ほど。

 

「飛び立って早々だが修行するか?」

 

そう言って立ち上がると二人がにやりと笑う。

ちなみにメディカルポットは自動治療可能にしてもらった。

ピオーネの時だけ不便になってしまうからな。

 

「重力は20倍から始めるぜ」

 

そう言ってスイッチを押す。

一気に宇宙船の中の重みが増す。

この10日間でどれほどの力をつけられるのか。

皆をよみがえらせるために、俺たちが生き残るための、研鑽が始まった。

 

.

.

.

 

俺の名前はターレス。

坊ちゃんに神聖樹の実を渡しておいたが食ったんだろうか?

まぁ、仲間は大事にしねえとな。

仮にも絶滅の危機にある俺たちサイヤ人の王子だ。

 

「しかしなんで数が合わなかった?」

 

在庫管理をした時に下級のものとはいえ2つくすねられていた。

部下がとった事は無い。

かといってフリーザの奴が知っている訳もない。

 

「多分もう食っていやがるから返してもらうのは無理だろうよ……それに」

 

この極上のものが奪われていないだけよかった。

こいつを食えばたちまち10倍近くにまで跳ね上がるだろう。

これを食ったのがフリーザとかならば永遠に奴に頭を垂れる人生になっちまう。

 

「それにしても奴ら、遅いな……」

 

部下が一向に戻ってきやがらない。

一体何があったっていうんだ?

そんな事を考えていると……

 

「ンダァアアアア!?」

 

奥の部屋から悲鳴が聞こえる。

何があったんだ!?

 

「今のはカカオの声だ!」

 

そう言って部屋にかけていく。

扉を開けた時、目の前に広がっていたのは惨状だった。

 

襲われていたのはカカオだけじゃない。

レズンとラカセイも息絶えていやがる。

血を流しているのと首をねじ切られた死に方だ。

アモンドなんて体中が焼けただれている。

高威力の気弾を至近距離でぶち込まれたな。

 

「あ、がが……」

 

体中から夥しい量の血を流しながらダイーズがこっちに這ってくる。

一体どいつがこんな真似を……。

 

「ダイーズ、何があった!?」

 

「二人組……サイヤ人が俺たちを殺して……狙いは在庫の神聖樹の実だ」

 

サイヤ人で二人組だと……

しかも神聖樹の実を持っていったという事は前回くすねた奴と同じだな。

 

「きっ…とあらか…た持ってい…かれた…」

 

それは構わねぇ。

だが俺の部下をここまでやりやがるとは……

徐々にダイーズの目の焦点が合わなくなっている。

 

「す……ま…ない」

 

その言葉を最後にダイーズは死んでいった。

クラッシャー軍団を全滅とはな。

ここまで表立って喧嘩を売ってくるとは思わなかったぜ。

 

そう思いながら全員の死体を運んでいくと指先で血文字を書いているのを見つけた。

ダイイングメッセージって奴だな。

 

「ナメック星……犯人はカエンサとラブカか」

 

あいつらがやったのか。

自分たちの強さのために殺すとはな。

しかも俺が今まで私利私欲とはいえ血の滲む努力で手に入れたものを奪う形とは…

 

「この恨みと敵は晴らさせてもらうぜ、外道なお馬鹿さんども……」

 

そう言って俺はナメック星の座標を打ち込んで飛び立つのだった。

 

.

.

.

 

「グレ……分かってくれないか」

 

僕は妻である女性に告げる。。

なぜこんな状況になってしまったのか。

それは今まで交戦してきた辺境に飛んでいるフリーザ軍の兵士たちとの戦いが背景にある。。

フリーザ軍の別動隊の中でも実力者だったアボとカド。

彼らとの戦いは熾烈を極めていた。

僕ではなんとか時間を稼いでしのぎ切るのが精いっぱいだった。

そんな最中、フリーザ軍ではナメック星という惑星に本隊が飛んでいるらしく

その助っ人にアボとカドの二人も行った。

願いの叶う球があると噂に聞いたことのあるナメック星。

そこでもしフリーザたちが願いを叶えるとこの銀河は終わってしまう。

それならば僕もナメック星に行かないと。

奴らを止められるのは僕なんだ。

 

「でも……死ぬかもしれないんでしょう?」

 

今までも楽ではない戦いのせいで重傷を負ってきた。

今回の危険度はその比ではない。

確かにグレの言う通り、死の危険が十分に付きまとってくる。

 

「だとしてもここで止めないと、奴らに次攻め込まれたときも確実な死が待っているだろう」

 

フリーザが来てしまったら僕程度のちっぽけなサイヤ人ではなすすべなくやられてしまう。

兄さんでも勝てそうにない相手に僕がかなうとは思っていない。

 

「もう止めても行くのでしょ……?」

 

そう言われて僕は頷いた。

止めても行くよ。

行かなければ未来の目線で死ぬ。

行っても死ぬ可能性はある。

 

「いずれにせよ死ぬ可能性があるのなら、あがいてから死ぬよ」

 

そう言うとグレは何も言わずに後ろを向いた。

見ていると死を思い浮かべて辛いのだろう。

大丈夫だよ、負けないさ。

そう思って宇宙船に乗り込む。

何で自信があるように負けないなど思ったのか、それはきっと……

 

「僕にも薄いかもしれないけど、確かに戦闘民族サイヤ人の血が流れているんだから……」

 

そう言って僕はナメック星へと旅立った。




ナメック星編、ターレスとターブル参戦。
スラッグさんも出せばよかったのですが……
ちなみに在庫で貯蔵していたレベルは劇場版のものではないです。
だから絶望的に奴らが強くなることはありません。

指摘などありましたらお願いします。

地味に名前の由来を忘れていたので追記しておきます。

ニア・ルーマ 『アニマルのアナグラム』
ビック・ラコイタ『驚いた時に使う言葉『びっくらこいた』』


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『エンカウンター』

ナメック星編開始です。
いきなり主人公じゃない人のメイン回となっております。


ナメック星に着いたのは出発してから9日ぐらいたったころだ。

最初はどうしたものかと悩んでいたがフリーザの機嫌を損ねないように

何か手土産でももっていかないとな。

 

「しかしまさかあの坊ちゃんに弟がいたなんてなぁ」

 

そう言って隣で寝ているやつを見る。

昨日にまさかの初めての遭遇がサイヤ人とはお互いに目を丸くして驚いたぜ。

なんやかんやで利害は一致していないがともに行動をすることになった。

お互いの目的はバラバラだがフリーザ軍所属のメンツを追いかけている部分は共通している。

だからこそ人手を多くして戦う腹積りだ。

 

「実を半分こにしたらいいだけだしな」

 

戦闘力の増強としては一人で丸のまま食べたら効果がなくなるが食う前に割ってしまえば分けられる。

実にも線があってその線に沿うように割ればきれいになる。

 

「おはようございます」

 

目をこすりながら声をかけてくる。

おはようさん。

 

「で今日はどうするんだ?」

 

予定としては集落にでも行っておくか。

ドラゴンボールって奴を持ってさえいれば無駄に殺されないだろう。

 

「相手は願いを叶えるために集めるでしょうから、先にこっちが一つでも持っておけば相手は叶えられません」

 

やっぱりその発想に行きつくよな。

俺にはスカウターがあるからそこでフリーザたちとは違う方向でナメック星人を探せばいい。

 

「僕は『気』を探れるのでそれがなくてもいいんですが、念のために」

 

スカウターなしで探れるとかすごいな、教えてくれよ。

とりあえず住民を殺して奪うのは辞めておく。

外道な奴らに部下をやられてしまったからか、己のために罪のない奴らをやるのが馬鹿馬鹿しくなった。

それにあいつらと同じ世界にまで落ちたくはない。

腐っても鯛でいたいってやつだ。

 

「しかし、相手の中でも危険度が高いので最悪のパターンはギニュー特戦隊だな」

 

確実に実を食べないと対処ができない。

ここに来るまでの間に致命傷に近い傷を自分でつけてはいた、どうやらターブルの奴もやっていたらしいが測定しても25000と20000。全然上がっていない現状に頭を抱える。

 

「えぇ……でも今のところはいないですよ」

 

あいつらは大きいからわかりやすい。

俺たちはナメック星人たちの集落に向かっていく。

途中で鳥肌が出るような不吉な予感がした。

誰かが死ぬとかそういったものじゃない、とてつもない予感。

このナメック星に来たことを後悔しそうな予感だ。

 

「まぁ、フリーザ様相手に楯突くかもしれないってのを考えるとそうもなるか」

 

勘違いされてしまう可能性はある。

そう考えたら言い訳をしないで渡さないとな。

俺だって実を食えば何とか戦えるだろうが、どう考えてもあれは違う。

あれ以外に俺の今までの経験上から見て……

 

「変身型の宇宙人だろうな」

 

見た目のカモフラージュとかいろいろな目的があるが絶対にそれとは違う理由がある。

言ってしまえば、戦闘力を抑えるためとかだ。

普段でもすさまじいのに開放したら惑星単位で力を振るう事になる。

それゆえに力を抑えているのだ。

 

「見えてきましたよ」

 

緑色の皮膚を持っている民族がたくさんいる。

こいつらがナメック星人か。

さて……単刀直入に言うか

 

「お前たちは何者だ!?」

 

全員、臨戦態勢になる。

気を開放しても3000ほどの戦士型。

そうではない方も1000近い。

並の戦闘員ならやられている。

 

「噂の奴らと同じ服を見ているようだが……」

 

もうすでにフリーザ様が虐殺していたか、ここに来るのも時間の問題だな。

死にたくはないだろうからな。

ここはひとつ体を張る形で貰っていくか。

 

「来た時に渡さなければ殺される、俺に渡して俺をお前らが売るんだ」

 

俺を目の敵にして追いかけてくるだろう。

そうなればナメック星人を殺すという真似はしないだろう。

 

「俺が持っているんだから俺を狙いに来る、お前らが死ぬ可能性は減るだろう

それに同じ服装の奴らだったし、聞き分けよく渡させてもらったとでも言え」

 

リスクは高いし、楯突いたように思われるが手土産とでも言えばいい。

ナメック星人は死なないし、どうせ集めてもどうこうできそうにないだろう。

お互いにメリットがある形での譲渡だ。

 

「お前たちが私たちを売る可能性は?」

「売っても何の得にもならねぇから売るわけがない」

 

他の持っているやつらの場所聞くぐらいしかないだろうが。

それにスカウターがあれば事足りるし。

 

「さて……貰おうか」

 

そう言った瞬間、気弾が襲い掛かる。

ナメック星人に向かっていた奴を弾き飛ばすが手が痺れやがる。

まさかこんなにも早く対面するとはな。

 

「人のものをかすめ取る気かな、ターレス?」

 

カエンサが意地の悪い笑みで言ってくる。

あの在庫の分食い尽くしやがって強くなったから自信満々だな。

だけどこっちも実がある以上は五分に持ち込める。

 

「そっちこそ泥棒の真似をしやがって、ここでは俺が貰う予定だったんだ」

 

そう言って構えるが余裕の笑みを絶やさない。

およそ戦闘力に換算したら200万を超えていやがる。

ラブカも同様だろう。

極上品を奪われなくてよかったぜ。

 

「貰うなどサイヤ人として生ぬるい、奪えばいいものを!!」

 

そう言って雨のように撃ってくる。

こいつ、見境ねぇな。

仕方ない、全部食うのもしゃくだがここで半分にした実を3個食えばこいつらに追い付けるだろ。

 

「おい、ターブルこいつを食え!!」

 

半分に割った実を二人でかぶりつく。

力がみなぎってきたぜ。

 

「それがどうしたぁ!!」

 

俺たち二人を殴り倒す。

さらにラブカが気弾を撃ってきやがった。

くそったれどもが。

人の回しで相撲を取りやがって、反吐が出るぜ。

 

「ぐぅ!!」

 

ラブカがターブルを締め上げる。

こいつら、マジで強くなっていやがるぜ。

実を半分こに素早く行う。

俺が頬張ってもまだターブルを救うには足りない。

隙を作らねぇと……

 

「はっ!!」

 

何を思ったのか集落の若者が飛びかかっていく。

なんて無謀な真似をしやがるんだ、殺されるぞ!!

 

「ハエが目障りだぞ!!」

 

そういって手刀で腕を切り落として蹴り飛ばす。

死んではいないが致命傷を負っただろう。

しかしその間にターブルが抜けだしてこっちに来ていた。

 

「もう二つとも食いやがれ!!」

 

そう言って俺は押し付ける。

二人ともにやにやとしながらこっちに近づいてきやがるが、今にその顔を変えてやるぜ。

 

「はいっ!!」

 

ターブルと俺が食って致命傷を治しつつ強力なパワーアップを起こす。

今の感覚なら超えているかはわからないが確実に言えるのは……

 

「さっきのようにはいかないぜ」

 

そう言って拮抗した戦いを始める。

肘打ちをすれば頭突きを返す。

蹴りを撃てば拳を撃ってくる。

しかしどこか違和感を感じる。

まさかこいつら……

 

「お前ら、まだ隠してやがるな!!」

 

どこか抑えたような勝負だ。

上がりすぎた戦闘力を試すための慣らし運転だったってわけか。

 

「見抜くあたり、さすがといった所か」

「誉めてやろう」

 

そう言った瞬間、気が立ち上る。

冷汗が背中を伝った。

 

「こりゃまずいぜ……」

「はい……」

 

俺たちが220万ほどだとしてもこいつらは280万ほどだ。

まさかここまで食い荒らしていたなんてな。

 

「さて……終わらせてやるぞ」

「ターレス、しょせん貴様は搾取されるものだったというわけだ」

 

どこかで大きな音がしやがった。

でも今そんな事を考えたところで事態は好転しない。

 

「くそっ!!」

 

破れかぶれと言っても問題ないほどの速度で殴りかかる。

ターブルはギャリック砲を撃ってラブカを狙う。

 

「遅い!!」

 

拳を掴まれて捻りあげられる。

ターブルの方は両手で受け止められたようだ。

 

「さて、終わりにしてやる!!」

 

プロテクターを砕くような蹴りで地面をバウンドする。

体を動かそうとするが実力差が結構ある状態だ。

クラッシャー軍団の敵も討てないまま終わっちまうのか?

それだけはあってはいけない。

せめてあと一人でもこの状況で同格の仲間がいたら……

歯を食いしばって立ち上がろうとする。

 

「死ね!!」

 

巨大な気弾が俺とターブルに向かってくる。

俺たちの最大の技を向かって放つのみだ。

 

「『キルドライバー』!!」

「『アルファ・スターダスト』!!」

 

二人の技がぶつかる。

押してはいるがラブカの奴も重ねていこうとしていやがる。

くっ、今放たれたら……

 

「『アルバトロス・ブラスター』!!」

 

劣勢に立たされそうになっていた俺たちに加勢したのは大きなアホウドリの気弾。

その一撃は相殺して、ラブカの気弾すらも打ち消した。

どうやら助っ人が来てくれたようだな。

少しだけ安心したからか、膝から崩れそうになる。

それをターブルが支えてくれるが一体何者なんだ?

 

「お前らの相手はこの俺だ」

 

女顔だが修羅のような闘気。

坊ちゃんやラディッツから聞いていたがこいつがブラーナ一族の除名者。

 

「ガタバルか……」

 

この気の大きさ、どう考えてもナメック星人の奴らと変わらないんじゃないのか?

だが、よく見るとところどころ腕や足に傷がある。

一体どういう事なのか、見当がつかないぜ。

 

「この場面で来ても大した役目なんてお前にはあるまい、死ねぇ!!」

 

カエンサが飛びかかって攻撃を放ってくるが、涼しい顔をしている。

こいつのこの余裕はなんなんだ?

 

「随分と大ぶりな攻撃だな……」

 

そう言って蹴り飛ばす。

一瞬の間だけ戦闘力をコントロールしやがったのか。

なんて器用な真似をしやがるんだ。

 

「油断しすぎだな、まだ地球でやった時の方が張り詰めていた印象だぜ」

 

攻撃をさばきながら平然と言っている。

このまま倒れてみているわけにはいかない。

助けないとな。

 

「言ってくれるな……じゃあフルパワーだ!!」

 

おいおい。まだ本気じゃなかったのか!?

俺たちの時は一体何割ぐらいで戦っていたんだ?

 

「こいつ……」

 

在庫に上物貯めすぎてたつけだ。

これはやばい。

だがガタバルはにやりと笑っていた。

 

「お前らの欲しいものはこれだろう?」

 

いつの間に手に入れていたんだろうか?

そしてどこから取り出したんだと疑問に思うが見せていた。

大きな球でヒトデのようなマークがある。

これがドラゴンボールか。

 

「お前らがこの二人を見逃すというならば、こいつをくれてやる」

 

こいつらの任務としてはこれの確保なだけだ。

こいつらが俺たちが反逆の一員と流布する危険性はあるが命には代えられない。

 

「もし、いやだといえば?」

 

今、優位だから取引もうまく進められると思っているようだな。

悪いが、俺がガタバルの立場なら断った場合の方法はひとつだ。

 

「これを壊すまでだ、俺たちの願いも無理だがお前らの願いもかなわない」

 

やっぱりその結論になるよな。

苦い顔をしていやがる。

これは飲まざるを得ないだろう。

 

「仕方あるまい、あのお方の怒りを買うほど命知らずではない」

 

そう言うと手を差し出す。

よこせという事だろう。

 

「じゃあ、持って行け!!」

 

そう言って投げて渡す。

こいつら相手に近づいて渡すなんていいことないからな。

いい決断だ。

 

「さ……あんたらを運ばないとな」

 

そう言って俺に近づいてくる。

ターブルと俺をヒョイと持ち上げてナメック星人たちのところまで連れていく。

 

「なんで俺たちを助けた?」

 

俺は素朴な疑問として聞いていた。

見ず知らずの同族を助けてもお前にいいことなんてあるはずがないのによ

 

「あんたらはいたずらに殺そうとしない、良いサイヤ人だ」

 

殺すのが嫌になっただけだ。

俺はそんなにいいサイヤ人なんかじゃねぇ

ターブルは別だろうけどな。

 

「この者たちを癒そう」

 

そう言ってナメック星人の老人たちが俺とターブルに手をかざす。

するとみるみるうちに傷は治り、痛みが薄らいできた。

 

「感謝します」

 

ターブルが一足先に起き上がって礼を言う。

俺も少し遅れたが頭を下げて礼を言う。

 

「しかし、ガタバルよ、あの邪悪な者たちにドラゴンボールを譲ってよかったのか?」

 

長老がガタバルの事を呼び捨てにしている。

なるほど、すんなりもらえたのは顔見知りだったからか。

合点がいったぜ。

 

「なぁに、今頃二人がきちんと回収して1つはこっちのものになっています」

 

一人で来たわけじゃなかったのか

頼れるメンバーが来ているようだ。

 

「それにあと2週間で援軍が来ますんで」

 

こいつ、このドラゴンボールの争奪戦に真剣に取り組む気か?

フリーザ相手に喧嘩を売ることになるってのに……

まぁ、俺もどうせあいつらのせいでこいつの仲間扱いされるんだ。

一蓮托生って思うか。

 

「ここに二人いるんだ、味方になってやるぜ」

 

ターブルと俺が肩を組んで宣言する。

俺の目的はカエンサとラブカを殺すこと。

ターブルの目的はアボとカドを倒すこと。

さっき、命を救われたわけだ。

俺は同族に対しては慮る男だ。

きちんと恩は返すぜ。

 

「フリーザの敵に回ることは死ぬ可能性があるんだぞ?」

 

ガタバルが確認のために言ってくる。

さっき死んでた命だ、だったら使ってやろうじゃねぇか。

ターブルも毅然とした面だ。

 

「フリーザをいずれは倒す予定だった、それが速くなっただけだぜ」

「あいつを倒さないと悲劇に見舞われる惑星が増えるんです」

 

そう言って決意表明をする。

するとガタバルが口を開いてきた。

 

「そこまでの覚悟があるならもう止めない、

そして現状フリーザ軍はどれくらいドラゴンボールを確保している?」

 

多分噂になっている程度だから今まで一個だろう。

だが、カエンサ達が持っていくので二個。

そしてガタバルの仲間の奴で三個目。

それを伝えるとガタバルは考え込んだ。

 

「隙を見て盗みに行くしかないな」

 

数分考えた結果がそれだったようだ。

揃えるためにはフリーザの宇宙船に忍び込まないといけない。

だがその危険な賭けはまだ早い。

俺たちはとりあえず、ガタバルの仲間との合流で同意した。

聞いたところ、強さはかなりのものでガタバル級が一人とナッパが来ているらしい。

あいつも苛め抜いたなら強くなっているだろう。

 

「まずはここから近い村のドラゴンボールをこっちが確保しておけば無駄にナメック星人は死なないだろ?」

 

俺はガタバルに提案の形をとって話す。

きっとその集落や村の全員を殺して奪うはずだ。

しかし元から素直に渡すか、ないと知れば犠牲の数は少ない。

その注意喚起を行う。

今回の村の様に俺達の居場所を吐く形にしたらいいんじゃないか?

 

「そうだな、一つでもあれば相手は奪わないと無駄になる

そして持ち運ぶのは一つで十分だから

もし、複数保持するんであればそこから離れた場所に埋めたらいい」

 

水の中に沈めるとか、とりあえず隠すのが優先だ。

散らばった形で保管したといえば相手も躍起になって探す。

それでナメック星人に聞いても分からない。

俺たちを狙いに来てナメック星人は死なない。

 

「じゃあ、合流しに行くか?」

 

ガタバルに聞いて俺とターブルは立ち上がる。

いつでも行けるほどに体力も傷も回復はした。

 

「そうだな、その後に少し今後狙う場所などの話をしよう」

 

そう言って俺たちは宙に浮かんでいく。

そしてガタバルが方向を指さす。

どうやら戦闘力の大きさを感知する術があるようだ。

世話になったナメック星人たちにお辞儀をして、合流の場所に俺たちは飛んでいく。

 

待っていろ、カエンサ。

待っていろ、ラブカ。

今度は絶対にお前らをクラッシャー軍団がいる冥界に落としてやるからな。

 

そう言った思いをガタバルに悟られることなく。

煮えたぎる怒りを胸の内に秘めながら。




戦闘力変遷
ガタバル:270万(8100万)
ピオーネ:320万
ナッパ:170万
ターレス:250万
ターブル:200万

カエンサ:300万
ラブカ:315万

神聖樹の実でのドーピングで大幅アップ。
デメリットとして戦闘方法に慢心がある。

ナッパとガタバルが急激に上がったのはひとえにピオーネとの組手で
ボロボロになった後のメディカルポットによる蘇生です。
ガタバルの()内は怒りモード。
実はカエンサ戦ですでに制御できていたが
フリーザとの勝負を見据えてあえて使わなかった。
あと宇宙船崩壊の危険性からか、この形態でピオーネとの組手は行っていない。

指摘などありましたらお願いします。


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『迅速に摘むもの』

今回でフリーザたちから奪還を考えます。
そしてアボとガドは悲惨な目に。



上陸して、すぐに私たちは別行動をとった。

大きな気の方にあの子が行って私たちは集落の方に行く。

どうやら因縁がある相手のようだし、そこは横槍を入れない。

 

「おい、ピオーネさんよ、どうやら集落に近づいてきたようだぜ」

 

ナッパという人が声をかけてくる。

この人と同時に動くのは万が一の場面でバラバラなのを避けるためのようだ。

あと4日ほどで援軍が到着するし、息をひそめながら機会をうかがう。

 

「でも向こうから邪悪な気が近づいているわ、二つが一つになった感じの気が……」

 

どうやら別に動いている相手がいるようね。

あの地球で戦った男ではないようだし……

 

「このままだと集落で鉢合わせになるわ、私がやってくる」

 

そう言って飛び立っていく。

ナッパさん一人でもどうとでもなるんじゃないかしら。

 

「フュージョンではないみたいだし……合体型の宇宙人かしら?」

 

そんな事を考えていると速い速度で向かっている。

こっちの接近に気が付いたようね。

 

「近づいていたのはお前か…女」

 

目の前に現れた相手が言ってくる。

そう言っている相手をよく見ると……

紫色の皮膚。

とげとげが生えた見た目。

なんだかアンバランスっていうか……

 

「ずんぐりむっくりって奴かしら、変な果実に顔をつけたらこんな感じになりそう」

 

はっきり言ってあまりかっこいいとは言えない。

まだ闘技場にいた亜人の方がいい顔をしていたわ。

 

「うるせぇ!!」

 

顔に赤みがさして声を荒げる

よく見ると腕は太いわね。

力で押すタイプと予測したわ。

 

「いいから始めましょう、こっちも強いわよ」

 

そう言って私は構える。

掌を上下に開いた形で片手を顔の前。

もう片方を腹部に。

準備は整った。

 

「言っていろぉ!!」

 

拳を振るってくるけれどカウンターで顔面に一撃。

力押しの予測通り大振りだから平然と後手でも叩き込める。

ただし、手応えから見てあまり効いていないようだわ。

にやりと笑っている。

 

「今の俺の戦闘力は……400万だ、ギニューも勝てない、機甲戦隊の奴らもな!!」

 

そう言うと蹴りを放ってくる。

残念だけどでかい力なだけで百戦錬磨ではないわ。

あの子の方が私にどう攻撃を当てられるか、計算する。

服に着られているのと一緒。

戦闘力に振り回されているだけ。

 

「ふんっ!!」

 

蹴りを掴んで投げる。

そのまま後ろに回り込んでいく。

こういう地道な技を駆使してこそ戦闘は組み立てられるものよ。

 

「『エレクトリック・パレード』!!」

 

大技が直撃する。

そのまま地面に落下していくがそれを追いかけて体を拘束する。

徒手空拳の大技で一気に骨をへし折らせてもらうわ。

 

「『リインカーネーション・ブレイク』!!」

 

地面に叩きつけてボキリと嫌な音を立てていた。

死んでいるんじゃないかしら?

そう思っていると起き上がってきた。

 

「くそぉ!!」

 

どうやら片腕が折れたのね。

じゃあ戦う事は可能だわ。

 

「勝てはしないんでしょうけど」

「喰らえ、『ワハハノ……』ぐえぇ!?」

 

顎を蹴りあげる。

隙を作らないで大技なんてむだむだ。

 

「あなたの強さの水準まで上がっているけれども、同じ強さのはずがこれだけの差を生んでいる理由は分かる?」

 

自分の体から妙に力がみなぎるのがわかる。

そして今、顎を蹴りあげたらダメージがあった。

つまりこの紫のと同じくらいの強さってわけね。

 

「知らねぇよ!!」

 

そう言って頭突きをしようとするけれど頭を掴んで締め上げる。

万力のような力で相手の頭蓋をすりつぶすように。

 

「戦闘経験量と切磋琢磨できる相手がいないことよ」

 

そう言ってさらに強くぎりぎりと締め付ける。

体勢を崩した瞬間、上空へ放り投げる。

これで終わりね。

 

「悪の芽は摘むわ、冥界に行っておいで、アホウドリに啄まれてね」

 

照準を合わせて気を高める。

フィニッシュの技があの子の技なんてね。

さて、この距離なら外さないわよ。

 

「くそっ…俺がこんな女なんぞにぃ!!」

 

悪態をついているけれど、もはや逃れるすべはない。

最期に無念さをかみしめて終わりよ。

 

「女って失礼ね、私の名前はピオーネ、冥土の土産に覚えていきなさい、『アルバトロス・ブラスター』!!」

 

体に直撃して大きく煙を上げる。

塵にはなっていないようだけど……

ンっ、気が一つじゃなくなっているわね。

どういう事かしら?

 

「ぐぅう……逃げるぞアボ!!」

 

煙が晴れたら二人になっていた。

どうやら二人に分かれる事でダメージを折半したようね。

死なないにしてもよく保てたわね。

息も絶え絶えに逃げていく相手を見ているとナッパさんがこっちに来る。

どうやら平穏に手に入れる事が出来たようだ。

話を聞くとあの子の名前を出したらすぐにくれたとのこと。

いやぁ、見知っているってのは大きいわね。

 

「さぁ、合流しましょうか」

 

そう言って私がボールを受け取って運んでいく。

あの子の気だけじゃなくてもうあと2つ接近しているけれど……

一体何があったのかしら?

 

.

.

 

「ピオーネの奴、誰か倒したな……」

 

大きかった気が二つに別れて逃げていった。

この場合は合体型かフュージョンかの二択だ。

 

「この気はアボとカドですね……あいつら合体できたとは」

 

ターブルが言ってくる。

そう言えばそいつらを倒すためにここに来たんだったな。

 

「時間的には10分足らずだったな……」

 

ターレスが驚いている。

気の大きさだけでいえばさっきのカエンサとラブカを凌駕していた。

そのレベルを瞬く間に倒している。

 

「また強くなってしまったな……」

 

段々置いてきぼりにされているような気がする。

まぁ、気にしないのがいい事だが。

 

「もし、同じ強さなら戦闘経験の差がものを言いますからね」

 

ターブルが言う事に俺は頷く。

あいつの戦闘経験を覆すサイヤ人の特性で張り合えるが、それがなければもっと大きな差になっているところだ。

そして今回の相手もあのピオーネの戦闘経験の差にやられた。

あいつに勝てるのは正直なところフリーザぐらいだろう。

それも全力ですぐに畳まないといけない限定条件でだ。

 

「あいつを死なせはしない、この命に代えてもな……」

 

何故だろう。

あの襲来の時から今まで以上に気をかけている。

失いたくない。

あいつのことを守りたい。

あいつの笑顔が見たい。

おかしいな。

前はあいつに勝ちたい事で寝ても覚めてもイメトレをしていたのに。

今は寝ても覚めてもあいつが心配な気持ちでいっぱいだ。

 

「恋ですか?」

 

そう言われたらとたんに顔が熱くなる。

こいつは何を言っているんだ?

胸が苦しくなるといった症状はあるが……。

 

「分からないな、それがどういう事を意味するのか」

 

恋だとすればなんだというのか。

一体どうすればいいのか。

それすらわかってない。

 

「どうやらこの坊や、恋を知らないみてぇだな、初心な野郎だ」

 

ターレスがにやにやとしている。

だって、そんな経験はないからな。

任務で女性から感謝されるが、それ目当てじゃないし。

命を救う、守ることが最重要なのだ。

 

「二人ともそんなこと言ってたら合流だ」

 

手を振ってこっちに合図を送る。

あっちはドラゴンボールの取得に成功。

こっちもリベンジで奪い返さないとな。

 

「そっちは横槍が入ったみたいだね」

 

ピオーネがターレス達を見て言ってくる。

俺がこいつらを仲間にしたのと引き換えにドラゴンボールを手放したのを察した。

 

「代わりに二人強力な仲間を引き入れた、奪還するよ」

 

こうなれば単純明快な方法で手に入れるしかない。

あいつらを殴り飛ばす。

もしくは入隊をして寝首を掻く形で奪い取る。

 

「これからは村に居候か?」

 

ナッパの話に頷く。

一つ持っておけばそれだけで問題はない。

そして拠点防衛。

この二つをしておけばいい。

わざわざ頭領が出張ってきた場合は素直に渡させる。

 

「ナメック星人の犠牲は極力なしで行く」

 

虐殺されない方法はへりくだって渡すこと。

相手をむやみに刺激しないで済むからだ。

 

「相手陣営はフリーザを除けばカエンサとラブカが要注意人物に繰り上がった」

「私が戦ったやつも強さとしては要注意よ」

 

相手の戦力について分析を行う。

それ以外は気にせずに行ける。

あいつら相手はターレスと俺で何とかする。

ピオーネが戦っていた奴はピオーネとターブル。

ナッパさんは俺たちについてくる。

 

「あいつらに特殊な技能があると思うか?」

 

ターレスが聞いてくる。

フュージョンは知らないし、ヤードラットも行っていないだろう。

ただ、ひたすらな戦闘力での蹂躙が奴らの方法だ。

 

「多分、そんなものはない」

 

だが、奴らは情に訴える事はする。

人質なり虐殺なりなんでもござれな奴らだ。

 

「だったらサイヤ人の特性以外は特に気をつけなくていいわけだ」

 

そう言う事になる。

今回、あいつを追い詰める方法は致命傷を与えるだけではない。

ここから逃げられる可能性は少ない。

フリーザの宇宙船が壊れれば奴らはどうしようもないのだから。

 

「袋小路に追い詰めてやるさ」

 

手を動かしてあいつらへの憎しみを募らせる。

ターレスも気を噴き出させる。

 

「もう行く気ですか?」

 

ターブルが聞く。

いや、あいつらが動き始めているからな。

 

「あの方向に向かって動き始めた……行くぜ!!」

 

そう言って飛んでいく。

あいつらのフットワークが軽すぎる。

どこかで中継したな。

 

「あいつらはお前らの獲物でいいのか?」

 

ナッパさんが聞いてくる。

当然だ。

あいつらには俺がけじめをつけさせる。

 

「ナメック星人が渡さなかったらあいつらためらいなくやるだろうからな」

 

そう、ターレスが言うとターブルも頷く。

厄介なことにフリーザたちは渡せば次の場所を教えろというだけで済む。

そしてそこで教えれば利用価値次第で生き残らせるだろう。

そうではなく聞いた後でも殲滅するような輩だ。

 

「今回、重要になるのはナメック星人たちの信頼ですね」

 

ターブルの言葉に俺は頷く。

彼らの協力なくしてナメック星のドラゴンボールは使えない。

それに奴らが躍起になって最長老様に手を出せばその時点でおしまいだ。

 

「やつらはそれを知らない」

 

そこを利用する。

ナメック星人に演技で悪者になってドラゴンボールを奪い取る。

その後にターレスとナッパさんと一緒に手土産として宇宙船に忍び込む。

 

「私たちが遊撃としてドラゴンボールから守っている形にすればいい」

 

瞬間移動で行き来してしまえばその間はドラゴンボールの行き来はなくなる。

フリーザたちの軍でも無理な戦闘力となれば俺たちが用意できる。

使い捨てとして裏切り者の汚名をかぶされたターレスとナッパを使い続けるだろう。

そこで重傷を負ってさらに回復で戦闘力を上げる。

抗戦の時にあの状態の俺とピオーネが戦うのが仕上げ。

その過程ではきっと今頃向かってきているベジータ王子との戦闘なども含まれる。

 

「居候をしてその人たちに演技を頼む、ナメック星人たちと俺達の壮大な嘘の始まりだ」

 

飛びながらの作戦会議は順調なものとなる。

拠点はムーリ長老の場所。

それを目標に飛ぶこと、数時間。

気の消失を感じる事もなく集落へとたどり着いた。

 

「おぉ……こんな時に限って来てしまったか」

 

俺の顔を見るや否や、申し訳の無い顔をする。

やはり今起こっているこの状況を全員が認知していたか。

 

「お前が持っているのはツーノの所の奴か、奴は死んでいないから譲り受けたのだな」

 

気の感知能力を持っているからな。

殺していたら筒抜けだ。

 

「ピオーネ、後の話し合いは頼んだぜ」

 

そう言って額に指をあてる。

肩にターレスが手を置く。

任せろという様に親指を立てる。

さぁ、ナメック星での第2ラウンドだ。

 

「どこに行く気だ?」

 

目の前に現れてやる。

驚いた顔をしているな。

 

「スカウターの距離からは考えられない、故障か?」

 

スカウター頼りか。

いつまでもそんなだったら強くなれないぜ。

目に見える数値を頼るからな。

 

「お前らを倒すために俺はいるんでな」

 

ターレスは構える。

さて、こっちも気を高めて同じほどにするか。

怒りの状態を制御した俺の本当の力。

2倍ではなく1.5倍ほどまでに制御。

フルパワーでやってしまうと目をつけられるからな。

 

「さて、同じようにはいかないぜ」

 

そう言ってすぐに肘打ちを当てる。

戦闘力の差があってもやりようで相手の土俵に入り込まない方法はある。

吹っ飛ぶ瞬間に足を掴んでジャイアントスイングをしてラブカに投げつける。

 

「ぬっ!?」

 

ラブカが上空に飛んだ瞬間、そのうえで待ち構えていたターレスがにやりと笑う。

お前らは甘く見すぎだ。

俺たちのコンビネーションを。

即席でも同じ目的で動く者同士。

どうしてほしいかなんて汲みとれる。

 

「『キルドライバー』!!」

 

直撃して地面に落ちていく。

これでラブカへのダメージは大きくなった。

 

「まず一人!!」

 

ターレスが向かっていく。

あいつ、危機感なさすぎるな。

こいつらの場合はラブカならずっとラブカに注意しておかないといけない。

気を逸らしたら後ろからやられるぞ。

 

「『クラウン・デュエット』!!」

 

2つの大きな王冠型の気弾を出す。

俺はさらに気を高めてその気弾を二つとも素早く叩き返す。

 

「なっ!?」

 

完全に決まったはずの不意打ちが見事にはじき返されたことに驚いていた。

すぐさまこっちの攻撃に対して防御の構えを取って難を逃れようとするが、もう無駄だ。

 

「『アルバトロス・ブラスター』!!」

 

技の後の硬直により無防備な状態で、俺の大技がほとんどゼロ距離で直撃。

この一撃で流石に強靭なこいつも白目をむいて気絶をしている。

 

カエンサはどうやらターレス相手に優勢に進めている。

盗人して強くなった力はすさまじいもののようだな。

だが、それもここまでだ。

俺とターレスが交代をしてカエンサと向き合う。

優勢とは言えどお互いに無傷ではない。

 

「あんたの勝ちはもうないぞ」

 

今の俺は戦闘力を高めている。

これは全力ではない。

どうなってしまうか。

 

「観念するんだな!!」

 

そう言って前蹴りを叩き込む。

防御をするが、これの目的は距離感を測るもの。

その防いだ足を踏み台にして、ムーンサルトキックを当てる。

 

「ぬぐっ!?」

 

強烈な一撃を頭に喰らってしまい、頭を抱えながら痛みに悶える。

正面に居たら顔面に蹴りを叩き込んでいたんだけどな。

背中に着地した俺の位置を把握もしないのか?

 

「だりゃあ!!」

 

背中のプロテクターごと打ち砕く。

血を吐き出している。

あっけなく勝負はついた。

強さにおぼれすぎで隙だらけだ。

やはり地球の時よりも精神面は余計に弱体化しているな。

 

「終わりだ……と言いたいが」

 

とどめを刺さずに首を締めて意識を落とす。

そして抵抗できないようにこいつらの腕と足をへし折っておく。

これでこいつらを手土産にフリーザと面会ができる。

ドラゴンボールの場所は誤報なり、ピオーネたちの場所に誘導させて

一週間で一つ回収のスケジュールを二週間ぐらいにしてやる。

 

へし折っておきながら猿轡をかませて。縄で縛り厳重にした状態でこいつらを運ぶ。

ナッパさんを迎えに行って、事情を説明して行動に移しに行く。

壮大な嘘による宇宙の帝王をたばかる計画を始める。

コケにしてやるよ、これほどない屈辱を与えたうえでな、フリーザ。

俺はカエンサを抱えながらフリーザの宇宙船へ向かっていくのだった。




速い話、村長連中とグルになって
ドラゴンボールをたらいまわしにして時間稼ぎを行うというわけです。
指摘がありましたらお願いします。


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『帝王の懐』

あけましておめでとうございます。
フリーザ登場回です。
戦闘力アップイベント発生。
ギニュー特戦隊は早めの到着スケジュールをくまれます。


二人を気絶させてから空を飛ぶこと2時間ほど。

今、俺たちはフリーザの宇宙船に向かって進んでいる。

俺が迷わないようにナッパさんとターレスさんが先導する形で案内をしてくれている。

二人とも、カエンサとラブカを一人で抱えている俺を気遣っているが、ここからが本番だぜ?

お互いが作戦をしくじって死なないように気を付ける。

 

「開始早々こいつらを強くさせてしまうのは癪だが……」

 

ナッパさんが苦い顔で言ってくる。

こいつらは今回のケガでメディカルポッドに入れられるだろう。

そうなるとこいつらはさらに強くなる。

 

「大丈夫だ、この計画を成功させれば全員一回はポッドに入れるんだからな」

 

まずピオーネとの交戦で2人が敗北して時間を引き延ばす事ができる。

さらにその時に俺が二人が戻ってこないことに気付いて、宇宙船から出ていく。

その往復だけで時間をさらに費やすことができる。

この工程の間に俺達でのドラゴンボールの取得は不可能。

これで時間をつぶすことに成功する。

その後に取ることができても一か月は使っている。

作戦で1つは貰うし、その計画で2つ目を取る。

今2つあるから、合計4つがフリーザの所にある形となるがこちらの陣形はそろっている。

そして、ピオーネがその隙に1つをもって隠す。

そして後の2つのうち1つは最長老様の場所だ。

あそこは反応が少ないし、最後にするように進言しておけば危害はないだろう。

そしてこっちが5個目を取ったら即座に動く。

2つはこちらが持っているし、うまくできるようにあと一人でも面子が都合よくいれば完璧だ。

星全体で帝王を騙すという壮大なプラン。

 

「それからあとはどうとでもなるさ」

 

そう言って宇宙船へ到着する。

どうやら番人がいるようだな。

 

「カエンサとラブカをメディカルポッドに入れろ」

 

ターレスとナッパさんが二人を下ろす。

驚愕の顔で番人が駆け寄る。

 

「いったい誰がこんな真似を……」

 

よしっ、ここからが芝居の始まりだ!!

俺は即座に二人の背中を貫く。

血を吐いて倒れ込むが致命傷にならない程度に収めた。

 

「番人さんよ、こいつらも追加だなあ!!」

 

二人が崩れ落ちていく中、高笑いをして相手を睨み付ける。

さて、どう出る?

怒りに身を任せて突っ込んでくるか?

それとも任務を全うしてメディカルポッドに入れるか?

 

「くそっ!!」

 

番人が悪態をついて光線銃を撃ってくる。

避けると煙がもうもうと立ち上って視界をふさぐ。

今の奴は煙幕を出すためだったのか。

煙が晴れたら目の前から4人の影がこつぜんと消えていた。

メディカルポッドに入れる方を優先したか。

あいつなかなかいい奴だ。

計算ができる任務遂行者は好かれるぞ。

 

さて、これであいつらも裏切り者の汚名を被ることなく軍に潜入ができた。

カエンサやラブカをやっておかないと、ナッパさんとターレスの二人は汚名を被って、これからの作戦に面倒なことになる未来図が浮かぶからな。

そして俺はナメック星人たちへの知識を武器に潜入することにする。

まだ帰ってきていないようだし宇宙船の門の近くで待ち伏せだ。

いつ戻ってくるかはわからない。

だがこっちにとっては何の問題もありはしない。

フリーザの奴が返ってくるまで何時間でも何日でも待ってやる。

 

「おやおや……これはとんだ珍客ですねぇ」

 

そう思うこと数時間。

宇宙船に降りてきた3つの影。

1つはボール型の移動機器に乗っている。

あの惑星ベジータが崩壊した日から一切変わらない面影。

フリーザがそこにはいた。

俺は拳を強く握って今すぐにでも殴りかかりたい衝動を必死に押し殺していた。

 

傍らにとげとげが生えた薄ピンク色の肌の男。

薄い青色の肌で美形の男。

どうやら二人ともボールは持っていないようだが……

 

「はじめてお目にかかります、私の名前はガタバル

ラディッツさんから名前を聞いたりしていませんか?」

 

そう言って自己紹介する。

俺からしたら初めてではない。

だがもしフリーザがあの宇宙船越しに俺の顔を見ていたのなら気づくだろう。

 

「こちらこそ、丁寧なあいさつありがとうございます

ラディッツさんから聞いてはいましたが、彼を殺害したのは貴方だとあの二人から聞いているのですが」

 

初対面のものに行う様なあいさつだ。

見えていたが忘れているのか?

もしくは見えていなかったのか?

いずれにせよ分かっていなかったのであればこれが初対面という形になる。

これからの作戦が一層やりやすくなる。

 

ラディッツさんを殺したのが俺と言いながらこちらを観察する。

本当にそんな事をするのかというのを確認したいのだろう。

しばらくしてからため息をつく。

 

「あの二人は嘘の報告をこのフリーザに対して行ったというわけですね」

 

嘘の報告をされたことに少しイラついたのか、口元がひくひくしている。

これは後で粛清もあり得るな。

心の中でざまぁみろと思った。

今まで人に擦り付けたり下衆な真似をしてきたツケ。

自業自得だ。

 

「確かにこいつからはそう言った行為をする雰囲気はありません」

 

美形の男が言ってくる。

確かに嬉々として殺したりはしていないが、まったくしないっていうほどでもないぞ。

 

「珍しくサイヤ人にしては穏やかって感じですね」

 

頷くようにピンク色の男が言う。

こいつらの実力は低く見えるが鍛錬なしで来ていたら負けていたな。

 

「ルビコラさんの血が強く残ったのでしょう、教育のたまものでもありますが」

 

スパーニの事も示しているのだろう。

あいつと俺はサイヤ人としては穏やかな部類だ。

母さんがそういう風に育てたという事だ。

俺はあんな下衆な思考を持ったり、殺戮を好むような奴にならずによかったと心底思っているよ。

 

「わざわざここに来たという事は、このフリーザに対して何か用でもあるのでしょうか?」

 

察する力があるのがいいね。

こっちは頭を下げながら言葉をつなぎ始める。

 

「えぇ、この度のナメック星のドラゴンボールの探索の一員に加えていただきたいと」

 

フリーザの口角が上がる。

殊勝な申し出だとでも思っているのか?

いずれ裏切り、お前の野望を無為に返す獅子身中の虫だぞ?

 

「引き入れてお前はフリーザ様にどのようなメリットを与える?」

 

美形の男が言ってくる。

少なくても大きなメリットをもたらす材料を持っているぞ。

 

「私はこの場所で数か月ほど過ごしてきた過去があります、

その信頼を利用してドラゴンボールを奪いとれます」

 

ますますフリーザの笑みが強くなる。

口を割らない相手がいても場所の特定は容易であることが分かったのだ。

 

「戦闘面では信頼できるのか?、雑魚に負けるようではまだまだだぜ」

「ドドリアさん、やめておきなさい」

 

ドドリアという人が笑いながら構える。

フリーザの奴、強さを感じ取っているのか?

 

「それではやってみますか?」

 

脱力した状態で構えてみる。

信頼に足る実力を示せというのならば受けて立つまでだが……

 

「仕方ありませんね、それでは合図をしますので始めなさい」

 

そういって手を叩く。

その瞬間、俺はドドリアの懐に忍び込む。

腹に一撃を放つと豆腐かと勘違いするほど柔らかかった。

貫いたり、はらわたの感触はないが相当なダメージだったろう。

悶絶して前のめりになっているところを踵落とし。

僅か20秒近くで勝負はついた。

 

美形の人が驚いた顔を浮かべている。

フリーザは当然だという様な顔だが。

 

「だから言いましたのに、ザーボンさん、ドドリアさんを担いでいきなさい

私は彼とお話をいたしますので」

 

そう言われて宇宙船を案内される。

ターレス達が回復したようですぐに俺の目の前に現れた。

 

「フリーザ様、地球よりのご帰還遅れて申し訳ございません

このナッパ、償いの意味を込め粉骨砕身の覚悟でこの度のドラゴンボール集めをいたします」

「多い方が効率化ができると思い、出しゃばった真似をしておりますがどうかお許しください」

 

膝をついて頭を下げる。

従順な存在だという事に気をよくしたのか。

それとも裏がないという様にみられたのか。

 

「二人とも彼と今後は行動を共にするように、サイヤ人3名もいればすぐに集められるでしょう」

 

ナメック星人の信頼と土地勘。

その二つを悪用することで順調に奪える。

誰が持っているのかなんて言う必要はない。

 

「カエンサとラブカについてはいかがなさるつもりで?」

 

あの二人を計算に入れていないなんてことはないだろう。

一体どうするのか?

 

「彼らには私自ら、監視をしておきます」

 

嘘の報告をするから。

また先走ってとんでもない災厄を呼び込んでも仕方ない。

あいつらは自業自得といった所だ。

 

「彼らの事です、いずれはこのフリーザを裏切るでしょう」

 

あいつらは強い奴に尻尾を振る。

もしくは大きな利をもたらすものにだけ。

だからこそ厄介なのだ。

後ろから狙撃されることを考えて奴らを管理しないといけないのだから。

 

「当然その後に行くべき場所は兄さんのところぐらいしか寄る辺はないでしょうが」

 

クウラだったか?

宇宙を旅した時代に一度だけ耳にしたことがある。

冷徹で無慈悲な存在なのは似通っているが味方も少数精鋭。

孤高の存在だと。

 

「ギニューさん達も監視要員で呼ばないといけません、もしかすると彼らの犠牲も加味しなくては」

 

あいつらの事だからそう言った事も普通にするだろう。

あいつら二人のためにどれだけの他者が犠牲になって迷惑をかけるのか。

 

「もし、彼らが私の邪魔をしたり厄介ごとを持ってきた時は伝えなさい」

 

そう言って詳細なことを聞かずにフリーザは去っていく。

これで俺たちは独断でフリーザからの任務という名目を使い動ける。

ピオーネとの交戦によるナッパの強化、ターレスの強化。

俺の攻撃で上がったが175万のナッパ、255万のターレス。

浅めの傷にしておいたからな。

伸びは悪いがそれ以上の収穫はあった。

 

「まずは計画を進めるぞ…」

 

そう言って上空をさまようように動くこと6時間。

一つの集落を見つける。

しかしそれはすべて引き払ったもぬけの殻の状態。

そんな集落を事前に作っておいた。

ここに住んでいたナメック星人は洞窟を利用していたりツーノ長老の所やムーリ長老の所に厄介になっている。

当然雑貨系統も忘れずに。

腹いせを装って数件の家を壊すだけだ。

そこにドラゴンボールを用意してもらい、報告ではそのままを伝える。

 

その計画はムーリ長老やツーノ長老から全ての場所に伝えられている。

それらの連携で可能にする。

 

今から始めるのは伸るか反るか。

一世一代の演技だ。

名優になれるか大根役者か二つに一つ。

 

「……誰の気配もないじゃねえか!!」

 

ターレスが怒って声を荒げる。

それに倣うようにナッパさんが言葉を放つ。

 

「小癪なことしてくれやがって、ナメック星人がぁ……!!」

 

指を上げて家を3件ほど吹き飛ばす。

ドラゴンボールのある民家ではなかったな。

 

「腹が立つのは分かるが万が一の事もある、探した方がいい」

 

そう言って降り立って家の中を探る。

そして無かったら……

 

「くそったれがぁ!!」

 

壁に拳を打ち付けて出ていく。

後で帰ってきて住むこともあるので、あまり家の損傷を大きくしない。

 

「ここもないぜ!!」

 

ターレスは扉を蹴破って出てくる。

ナッパさんは最初に壊したから首を振って、ドラゴンボールがないことだけを示していた。

 

「一番偉い人が居そうな家探すぞ!!」

 

草の根分けても探し出せという様に必死な演技で家を洗いざらい調べる。

そして片手で数えられるようになってきた時に……

 

「見つけたぞ!!」

 

そう言ってナッパさんが抱えてきた。

これで任務は完了だ。

フリーザに伝えればいい。

3人でまとまって戻ってきた。

時間の感覚は夜なのだが明るいせいか、今が本当に夜なのかわかりにくい。

どうやら太陽がいくつか見えるだけで、月はないのだろう。

大猿になることができないとフリーザに反旗を翻すときに難儀なことになるな。

 

「フリーザ様、この通りドラゴンボールがありましたが奇妙なことがありまして……」

 

幸いドラゴンボールは置いていたが奴らが結集しようとしているのではないか?

面倒なことになりそうだから伝えておかないと。

 

「どういった事でしょうか?」

「もぬけの殻の状態になっていまして……我々の事を噂しているのかドラゴンボールだけおいて避難しています」

 

村で見た内容をそのままに伝える。

一体どういった反応を返すのか見ものだ。

 

「結集したところで大したものではありません、無駄な殺生をせずに利益をとれるならそれで構いません」

 

殺生なしで利益が取れるなら構わないと。

拠点防衛に考えをまとめているとは思わないのか?

 

「それでは引き続きドラゴンボールの獲得にいそしみます」

 

そう言って宇宙船を出て、次の目的地に移動する。

次の目的地は片道にして6時間ほどかかる道のり。

この時点でニアとスパーニが着く。

奴らは最長老様に潜在能力を引き出してもらえばいい。

 

幸先のいい形で不信感を募らせてはいない。

次の計画としてはナッパさんとターレスがピオーネにやられる。

俺も一緒にいたが二人がとどめを刺されないように逃げてきたといえばいいだろう。

その後に二人の回復をさせておくがラブカとカエンサに対して目を光らせる。

あいつらがしでかした事でこっちの立場が悪くなることは想定しておかないとな。

今この策を講じている間、仮にあいつらと遭遇した場合、あの二人の相手は後発と先発隊の女性陣とターブルだ。

 

「うまくいけばいいがまだまだ初めの細工が成功しただけ……」

 

あいつらの心配も大事だが俺たちを失敗は許されない。

 

薄氷を踏み砕かないように。

細い糸を取り落とさないように。

階段から足を滑らせないように。

この作戦においては慎重に慎重を重ねて、完遂をしなければならない。

 

失敗とは死を意味する。

失敗すると全てが終わってしまう。

そのような極限の中で手に汗を握り、冷や汗を背中が伝う。

地獄へ足を踏み込んでいた。




新年一発目の投稿です。
次回でニアやスパーニとの合流を書いて原作に徐々に近づけていきます。
馬鹿二人がやらかしたせいでフリーザ様の警戒心をあおり、ギニュー特戦隊が原作軸より速く到着予定です。

指摘有りましたらおねがいします。


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『集結のサイヤ人』

久々の更新です。
実はナメック星編のラスボスにクウラ出そうとしていましたが、
少し今後の為に路線変更を行います。
それに伴って味方サイドが増えていきます。


あれから半日の飛行で集落を狙おうとした作戦の結果。

もれなく二人がメディカルポッドに直行させられた。

ピオーネが瞬間移動で俺たちの邪魔をしてきた。

芝居のはずがあいつは真剣に倒しに来た。

結局ターレスとナッパと引き連れて戻る羽目になった。

 

ターレスの肋骨数本を蹴り一発でへし折って、あのナッパさんの腹を貫くという離れ業。

やりすぎだとは思うが、迫真だからこそ意味があった。

結果としてフリーザからはお咎めなしで治療を受けさせることができた。

いきなり出てきたという事で神出鬼没であること。

全員が束になってようやく勝てるかどうか。

もしドラゴンボールの争奪にあの相手が加わるのならば計画が

相手を迂回していくルートになるため時間がかかるという事まで伝えた。

 

「あの100%の遂行者と言われたピオーネがまさかこのナメック星に来ていたとは……何を願うつもりでしょうか?」

 

フリーザでさえ考え込む。

一筋縄ではいかないというのをわかっているのだろう。

しかしここで計画を緩めるといつピオーネに主導権を奪われるか。

それだけが懸念材料だ。

 

「仕方ありません、二手に分かれての散策をいたしましょう」

「少しでも獲得できる可能性を上げるんですね」

 

俺たちが交戦している間に手に入れる。

もしくは本隊が交戦している間に手に入れる。

確率は上がるが欠点もあるだろう。

俺は土地勘で行けるが他はしらみつぶしの探索になるからだ。

 

「その通りです

まぁ、もぬけの殻なり、渡して殺さないでほしいという態度であればいいんですがね」

 

ピオーネに太刀打ちできる相手はカエンサとラブカぐらいだ。

本気のフリーザなら話は別だが。

 

「とにかくお互いが収穫なしで犠牲があろうとも今回は不問にいたしましょう

ピオーネの噂を考えるとどうあがいても今の戦力では順風満帆に行くことはありません」

 

雑兵たち、幹部を問わず多大な犠牲を払う危険な探索へと状況は一変。

それならば確率論を考える。

 

「我々でも食い止めて時間稼ぎがせいいっぱいですからね……」

 

ターレスとナッパが無理だし俺もそんなに優勢にはならない。

という事を装う。

30倍で殴り合えば倒すことはできる。

だがバレてはいけない。

それに長引いてしまうとピオーネが強くなってしまい余計な厄介ごとを増やす。

最後の切り札と言ってもいいだろう。

 

「一度の遭遇で1つ取得、迂回ルートを使用……

当初の予定を大幅に下方修正しましょうか」

 

もっと早い段階で多くのボールを手に入れるという事。

しらみつぶしでも5個は確保できていたであろう。

それがピオーネの出現で現在3個から停滞があり得る。

 

「相手が神出鬼没なので気を付けて……」

 

フリーザはそう言って左右に分かれて飛んでいく。

しかしここでフリーザはミスをしている事に気が付いたのか急いで戻っている。

焦りが生んだ一瞬のミス。

 

神出鬼没の相手に対して手薄の本拠地。

それは奪ってくださいと言って家を空けるのと同義。

 

「くっ……これではどう頑張っても即座に7つ揃えるのは難しいでしょうね」

 

苦々しい顔をして虚空を睨むフリーザ。

それを見てにやける。

このまま時間が過ぎていけばいい。

 

「あいつらも予定より早く着くかもな」

 

空を見上げると宇宙空間から2つの丸形宇宙船の接近を感じる。

あいつらは先に最長老様から引き出してもらっておいた方がいい。

 

「速くいこうぜ」

 

ターレスとナッパさんが声をかけてくる。

とにかく、今の状況から厄介な場面を想定すると……

 

「妨害からの第3戦だな」

 

あいつらとの戦いで邪魔をされたら面倒だ。

フリーザの方もピオーネに精神さくからあの二人を常に監視できることはない。

 

「分かった、そっちに向かう」

 

上昇して3人で目的地へ向かう。

そして、その勢いのままナメック星の集落に向かう。

しかし、後ろから来た気配に振り向く。

 

「お前らか、アボとカドでいいのか?」

 

赤色と青色のとげ人間がいた。

こいつらがピオーネにやられてしまったやつらか

 

「その通りだ、お前らについていく」

 

これは監視のつもりか?

いずれにせよこいつらからの追跡からは逃げ切れるいい。

 

「悪いが裏切りを勘ぐっているなら早計だぜ」

 

いずれは行うだろう。

だが今ではない。

 

「速くいかないと意味がないんでな」

 

そう言って一気に振り切るようにアボとカドを置いてきぼりにする。

必死に追いかけようとするがその道をふさぐように影が出てくる。

 

「ようやく見つけたぞ、お前ら!!」

 

ターブルが割って入る。

残念だがお前らを援助するような話はないんでな。

俺たちはドラゴンボールを集めないと。

 

 

.

.

 

ようやく見つけた宿敵。

ここで逃すわけにはいかない。

ガタバルさん達は見捨てるような形で向こうへ飛んでいった。

 

「くそっ、このタイミングってことはやはりお前とあいつらは……」

 

そう言った瞬間、気弾で攻撃をする。

わざわざ勘ぐっているが、そんな事も許さない。

 

「喋っている暇があるのか?」

「こいつ、甘さがなくなっていやがる……」

 

構えているがそんな口を開いているような、悠長な気持ちだったらこっちが勝つぞ?

こいつらの合体の暇も与えない。

ピオーネさんのおかげで見抜いた重要な部分。

それを活かしてこいつらを倒す。

 

「『サジタリウス・ペイン』!!」

 

両手で一本ずつ、貫通力を持った気弾を放つ。

アボが避けるがカドには掠る。

そのままカドの後ろを取って頭を掴み、地面へ急降下。

アボが助けようとした瞬間に、カドを投げてアボにぶつける。

そのまま二人まとめて、一気に仕留めにかかる。

 

「『タウルス・スタンプ』!!」

 

カドの足を持ったまま地面へ落ちていく。

受け身を取ることもできずにそのまま落下をしていく。

最後に頭に足を当てて、落下の衝撃を与える。

ターレスさんから貰ったあの果実で一気に戦闘力が上昇しただけでなく、技のインスピレーションも働いている。

 

「カド、大丈夫か!?」

 

アボが聞くが返答がない。

ピクリとも動いていない。

気絶かもしくは死んだか

 

「お前も同じようになる」

 

そう言ってアボを気弾で攻撃をする。

カドがピクリと動いたが気にしない。

次はお前の番だという様に。

睨みつけながらじりじりと近づく。

 

「ヒィイイイ!!」

 

叫んで逃げるが、その瞬間目の前で吹き飛ばされる。

気弾でやった相手がいるという事だ。

 

「敵前逃亡は許されない、愚か者め」

 

カエンサが目の前にいた。

逃げ回らないといけない。

この相手は今の自分を大幅に凌駕している。

 

「気にするな、お前を相手にするつもりはない」

 

狙っているのはあの3人か。

そう言うとこっちには目もくれず去っていく。

ラブカという男がいないところを見ると単独行動のようだ。

きっとピオーネさんの動きを気にしたフリーザの隙をついたな?

 

「こっちも他の集落の見張りをしておかないと……」

 

そう言って僕はその場所から遠ざかっていった。

 

.

.

 

「ここから降りて向かってくれ、ターレス」

 

俺は集落の近くで降りるようにターレスに言う。

気配が近づいてくる。

この気は一つしかない。

 

「また……あいつか?」

 

ターレスがカエンサかと聞いてくる。

俺もそう思いたいがこれは別人だ。

 

「いや……なんであいつがコントロールする方法を手に入れていたのかは知らないが別物だ」

 

どうやって手に入れたのか。

これ以上の助っ人はないだろうが、諸刃の剣も甚だしい。

 

「まさか俺がこの星に来て初めて寒気を感じたことと関係があるのか?」

 

ターレスの奴との関係は特にない。

だが一つ、ある点を踏まえればそれとこの気は……

 

「大有りだ」

 

俺は苦笑いとともに接近を待つ。

この間に一つ回収してくれればそれだけで万々歳だ。

 

「……ロットォ」

 

遠くから声が聞こえてくる。

風を割くようにしてこっちに来ている。

 

「来るならきやがれ……」

 

構えて気を高める。

折角の秘密兵器もこいつ相手には使わざるを得ない。

 

「カカロットォ!!」

 

大きな影がターレスの方に向かおうとするがその道をふさいで俺は立ちはだかる。

お前が行くと作戦のすべてが瓦解する。

 

「何のつもりだぁ……、ガタバルゥ……」

 

白目をこっちに向けて、悪魔のような笑みを浮かべながら莫大な気による圧迫感を俺一人に押し付けてくる。

伝説の超サイヤ人ブロリーが俺の目の前にいた。

 

「お前の知っているカカロットではないぜ、人違いだ」

 

そう言うが目の前に大きな拳が迫りくる。

こいつ遊んでいるがあれからさらにパワーアップをしていやがる。

パラガスさんはどうしたんだ?

 

「やめろ、ブロリー!!」

 

パラガスさんがブロリーに呼び掛ける。

腕を光らせている。

よく見ると頭に輪っかがあるが抑制装置か?

 

「うるさい、親父ぃ!!」

 

そう叫んでさらに気を高める。

今のこの状態なら……

 

「があああああ!!!」

 

疑似超サイヤ人で相対する。

フリーザが気を感知できたら終わりだが……

 

「くっ……伝説の超サイヤ人状態が収まっているが超サイヤ人は止められんか…」

 

心配しないでくれ。

この状態から考えて普段の10分の1以下の状態だ。

ここからあの状態になっても4倍。

 

「今のお前の戦闘力はおよそ5000万と見た!!」

 

顔面を蹴り飛ばす。

くるりと体を空中で止めて突撃をするが回避。

 

「フンッ!!」

 

しかしその回避された瞬間に気弾を放ちその勢いで後ろに立つ。

こいつの戦闘センスの高さには舌を巻くぜ。

 

「ハアッ!!」

 

裏拳を受け止める。

その勢いで飛んでいく。

 

「しゃあ!!」

 

突撃してきたブロリーの腹部に拳を打ち込む。

腹部の衝撃を腹筋で消し飛ばしたようだがまだ追撃は行う。

 

「どりゃあ!!」

 

腕を掴んで投げ飛ばす。

地面に叩きつけたがむくりと起き上がる。

相変わらずタフな奴だぜ。

 

そんな事を気にしていたら後ろから気配がやってきた。

ブロリーも一瞬気を取られたのか、その方向を見る。

 

「よしっ、静まれ!!」

 

そう言ってブロリーの抑制装置を起動する。

髪の毛の色も普通になって気の大きさも減っていく。

とりあえずはこれで問題はなくなったな。

 

そう思った瞬間、腹部を貫かれていた。

くっ、相手の速度を気に留めていなかった油断か……

 

「おい、ガタバルっ!!」

 

パラガスさんが受け止める。

この人、反応速いな。

ブロリーがわなわなと震えているが大丈夫なのか?

 

「許さん……」

 

そう言うと抑制装置に罅が入っていく。

あいつ、まさか破壊よりも重要なことでも見つけたのか?

 

「あの人はこの俺に安眠をくれた恩人でもある、その人を後ろからとは……」

 

罅が入っていた抑制装置を握りつぶす。

パラガスさんもおしまいだという顔で俺を運んでいた。

 

「許さんぞぉおお!!!」

 

伝説の超サイヤ人の一撃は絶望を叩きつける。

その一撃は防御すら許さない。

交差をして受け止めるがその腕ごと粉砕して殴り飛ばす。

岩山を2つ3つ壊していった。

 

「ふんっ、死んだか」

 

そう言って普通の状態に戻るが本当の強さはこれか。

おおよそ戦闘力に換算したら最高の状態はきっと10億を超えているんじゃあないのか?

俺はパラガスさん達の宇宙船のメディカルポッドで回復をした。

30分で回復したのですぐに復帰。

事情を話しておき、二人には隠れておいてもらう。

これで大きな切り札を手に入れたことになる。

 

「さて……二人はどうなったんだ?」

 

フリーザの宇宙船に戻ると二人とも頭を下げていた。

どうやら一つは取れたが宇宙船の中から二つなくなってしまっていたようだ。

差し引きなしの状態になってなおかつ俺がいない状況。

それで怒られていたみたいだ。

 

「しかし、ピオーネを封じない限りはこの展開が続くぜ」

 

ターレスがため息をつく。

こっちが3つで向こうは2つ。

残り2つの争奪戦は激化するだろう。

しかもあと少しであの二人の到着。

膠着状態になってしまう。

他のメンツが来るまでの時間、きっとこの均衡が崩れる事は無いだろう。

半ば確信めいた予感がある。

 

未来視ができていないわけではない。

自分がそのまま動いた場合の未来であり、他者の干渉を含めた複雑な未来の変化を補足しているわけではない。

それまで見えていれば始めからブロリーを見つけてフリーザを倒すのに協力してもらえば終わっていたからだ。

 

「あと、カエンサの奴が見つかったみたいでアバラがほとんど全部が粉砕骨折だったってよ」

 

ナッパさんが言ってくる。

あの人タフだな。

あんな一撃を食らったら死んでいてもおかしくないだろうに。

それともブロリーが抑制装置解除後の上昇前に殴り飛ばしたのか?

 

「アバラだけじゃなくて腕も折れてたな、ありゃ酷いもんだ」

 

受けても折れる剛力。

まず、あいつが俺がやられたから伝説の超サイヤ人になるなんて想像できなかった。

当時、俺は安息のためにカカロットや赤子をあやさせてもらっていた。

その結果としてブロリーが安眠できただけで、はじめからそのような見返りを求めていたわけじゃあない。

 

「これであいつらの邪魔を受けることなく集められるな」

 

そのターレスさんの言葉に俺は頷く。

味方に後ろからやられるといった状況がなくなった。

その影響は大きいだろう。

フリーザに表向きの忠誠を見せてこれからより一層精進することを伝えて今日は三人、眠りにつくのだった。

 

.

.

 

そしてその三人が眠りから覚めた時、予定より速い航行になっていたのか。

スパーニとニアがナメック星に降り立ったのだった。




まさかのあいつが味方サイドに。
切り札にはなりますがあいつはきっとセル編あたりは小休止の予定です。
日常編に使っていこうかと。


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『獣の女王』

ニアの過去が判明。
因縁が絡み合います。
敵サイドでは犠牲者がついに出ます。


私たちは上陸してからすぐにある所にいた。

スパーニはフリーザ軍だから別行動でもいいんだけど、その前に誰かと連絡を取るという事で動き回っていた。

すると高い岩山が見えたのでその方向に向かっていった。

 

緑の皮膚を持った人たちが多くいたがこれがナメック星人なのだろう。

話をすることもなく、一心不乱に目的地へ。

 

数時間ほど飛んでいくと、その高い場所に着いた。

こんな所に家があるところを見ると、ここは偉い人がいる場所に違いない。

 

「何の用だ?」

 

強そうなナメック星人の人が出てきた。

敵対する気はないですよとアピール。

するとスパーニの方をじっと見て一言。

 

「ヤツによく似ているな、いいだろう、入れ」

 

奴ってガタバルの事?

来たことあるって言っていたけれども顔見知りだったのね。

入った先にいたのはこの星で最も偉いと言われる最長老様という人だった。

大きなナメック星人だ。

しかしその柔和な笑みは落ち着きをくれる。

後ろにあるのがきっとドラゴンボールね。

なぜ、ここに来たのかの説明をすると頷きながら一言。

 

「邪悪であるがゆえに再び別れる事をあの子は懸念したのでしょう、彼が伝えたとしても決めるのは本人」

 

ため息をつくわけでもなく悟ったように遠くを見ている。

 

「それと、彼は欺くために今戦っていますね、この星へ訪れた巨悪と」

 

きっとガタバルの事だろう。

スパーニは青ざめているけれど一体どういう事なんだろう。

 

「近づいてください、彼の助けになるでしょう」

 

そう言うとスパーニの頭に手を置く。

そうしたら、次の瞬間…

 

「凄い、力があふれ出てるよ……」

 

驚いた顔でこっちを見てくる。

何倍かには膨れ上がったようだけど…

 

「あなた方二人は眠りすぎなほどですね、呼び起こしがいがありそうです」

 

そう言って最長老様は微笑んでいた。

そして次の私の番になった直後……

 

「あなたの過去……まさかあの惑星『ズー』の王女だったとは」

 

記憶を読み取られたみたいね。

あの珍獣みたいな蛹になる前に、惑星は滅んだ。

皆がニア王女と呼んでいた日々。

それを壊した者は……

 

「今、この星にいる巨悪と同一人物のようですね」

 

なるほど。

因縁の糸は複雑に絡み合っていたのね。

 

「あなたには変身能力が付いたかもしれませんね」

 

なるほど、戦闘力の増強=変身というわけね。

基礎の値に対して、幾らかの倍率がかかっていく。

地球でいきなり覚醒したガタバルと同じような奴だ。

 

「しかしこれでもあの巨悪に立ちはだかれるか……」

 

それほどまでに恐ろしい相手。

そうでなければ意味がない。

私の星はその存在に滅ぼされた。

 

「そして蠢いている邪悪があります、それはもしやすると巨悪さえ凌駕する存在です」

 

あの二人かもしれないね。

スパーニも頷いている。

あいつらは全く厄介な存在だ。

害悪をなし続ける、邪悪。

 

「彼らを助けに行くか、もしくは潜むか、それはあなた方の決断になるでしょう」

 

そう言われて私たちは外に出る。

どうするか?

スパーニは一度戻って、事情を説明しないといけない。

そう言う事で別れた。

 

私はピオーネさんの気を探って向かっていく。

すると、二つの気が接近してきている。

大きさは解放される前の私たちと同じぐらいかそれより若干大きい。

 

「これはこれは……ニア王女じゃねぇか」

「カド、こりゃあ合体でつぶしちまおうぜ」

 

私の惑星を滅ぼした奴についていた赤と青のとげ人間。

まさか、この星にきての相手があんた達なんて。

そんな事を考えて構えたら体が重なって光り輝く。

その光が消えた時、目の前にいたのは紫色になったとげ人間だった。

 

「これで終わりだ、ズーの歴史もな!!」

 

そう言って突撃してくるが避ける。

直線的な攻撃だからいいが速い。

 

「変身した方がいいみたいね……」

 

やり方はきっと気を高めて強くなるイメージを固める事。

集中してどんな姿になるのかを考える。

 

体が大きくなっていく。

牙が生え、匂いに敏感になる。

目の視野は後ろまで見渡せる。

爪は伸びて腕と足の筋肉は絞られている。

自然と、四足歩行の構えになる。

 

「いきなり、3メートルを超える巨体になっただと!?」

 

相手は驚いているみたいね。

伸縮性の服にしておいてよかったわ。

スパーニから予備の戦闘服をもらっておいて正解ね。

 

「ハアッ!!」

 

一気に突進をする。

自分でも今までとは比べ物にならない速度で迫る。

避けようとしたらそれに合わせて動ける。

動きの可動域まで上昇している。

 

「ぐああ!!」

 

突進が脇腹へ直撃して吹き飛ばしていく。

その追撃に吹き飛ぶ方向までかけていく。

 

「ぐぅう……なんて威力、そしてどこに行きやがった!?」

 

相手がきょろきょろと左右を見ている。

あの機械で探ればいいのに。

冷静さを欠いてしまっているわね。

 

「上よ、『ワイルド・ハンマー』!!」

 

両肩に全力で食らわせる。

地面に向かって一直線だが、さらに先回りをする。

今の一撃で相手の肩の骨が折れたことは感触でわかる。

 

「終わりね、『ブレイク・エレファント・スタンプ』!!」

 

体が大きくなったから技名も変えてみた。

相手の腹に両足がめり込む。

バキバキとか音が聞こえたわ。

 

「あれ……びくびくして痙攣してるけど、もしかして……」

 

地面に叩きつけられてから一向に起き上がってこない。

これ、もしかして致命傷負わせちゃった?

 

そんな事を考えていると、一つの気が近づいてきている。

速かったわね、スパーニ。

変身は解いておこう。

 

「ふぅ……」

 

溢れる力が凄いけれど使いにくい。

まだまだ慣れていないからこれからは鍛錬あるのみね。

 

「ニアさん、あの人は処分らしいです」

 

辿り着いたスパーニが開口一番言ってくる。

そう言うスパーニは悲しい目をしていた。

どうやら、ここ連続の失態が逆鱗に触れたみたいだ。

 

「このまま放っておいても良いわけ?」

 

こくりと頷く。

それならこのままにしておこうかしら。

私とスパーニはナメック星人の集落に行くのではなく、ピオーネさんの気を目当てに進む。

あの人はどうやら動いていないようだ。

 

「洞窟でもないようだし……」

 

集落にずっといるのかしら?

そう考えていたら接近してくるのがわかる。

気づいたのね。

接近の速度はかなりのものだ。

こっちも合流のために飛んでいるが、基礎の値に差がある。

そのこともあってこっちの倍以上の速度で追いついてきた。

手を振って待ってくれている。

 

「二人とも早めに来てくれてありがとう」

 

そんな事を言うピオーネさんの傍らに男性がいるのがわかる。

サイヤ人のようだけど……

 

「この子は先に来ていたサイヤ人の片割れよ」

 

つまり何かしらの理由があってここに来た。

そして利害が一致する形だから、協力しあっているのね。

 

「ちなみにあの子とナッパとターレスって奴が今は潜入中よ

あとは、どこかでとんでもない気を感じたのだけれどすぐに収まったわ」

 

サイヤ人たちで動いているのね。

クリリン君たちが来るまでの時間の間はドラゴンボールの奪い合いが主になる。

話を聞くと全部の村でだますための大掛かりな行動をとっているみたい。

とんでもない気の正体も気にはなるけれど、今はこっちが優先ね。

 

「今、どれくらい集まっているんですか?」

 

どれだけ集まっているのか。

収穫が全くなしとは思わないけれど。

 

「まだこの1つよ、1つだけ守れば相手も叶えられない」

 

確かにそれはその通りだ。

向こうが3個ぐらいだったらいい感じなのだが……

 

「相手の妨害はしているけどね」

 

こっちも最長老様の後ろにあった奴貰い損ねたし、相手に有利な状態を作っているわね。

相手の戦闘員を減らしたのは良い事なんだけどね。

まだまだ隠し玉の戦闘員がいないわけじゃないだろうから、安心できないけど。

 

「あの子の親と兄の邪魔は厄介だからね」

 

ピオーネさんが言った瞬間、最長老様の言葉を思い出す。

あの二人の事も伝えておかないとね。

今、一番大きな悪より恐ろしいものに成長しかねないという事。

 

「あの性格や思想があの子とスパーニに影響しなかっただけでも儲けものだよね、あれは倒さないといけないね」

 

ピオーネさんに話した結果、あの二人を倒すという結論に達した。

あれは確かに倒さないといけない相手だ。

ガタバル達の因縁とは言えど、いずれはこちらに攻撃を仕掛けてくる。

放ってはおけない。

 

「私もあの二人は倒しておかないといけないと思います」

 

スパーニが頷きながら同調する。

巨悪を倒した後のターゲット。

あいつらも危険視する方向を決める。

 

「スパーニはこのボールを持っていきなさい、別にあと3つは当てがあるから、

それにいざとなれば奪って見せるわ」

 

スパーニに持たせることで不信感無く、相手の宇宙船に戻せる。

あとは相手の隙を狙っての略奪。

この繰り返しで時間を稼ぐ。

 

「相手がどう動くか、それが大事ね」

 

しばらくは様子見だと思う。

なんせ、あの処分される奴が虫の息だとわかったら相応の強さだと予測され、相手の警戒を上げることになる。

そうなると、本拠地を襲撃される可能性とかを危惧する。

それで自分たちから探し出せなくなる。

この場面で動くのは、今潜入しているガタバル達とあの二人。

 

「相手の動きが遅くなればなるほど、こっちは嬉しいわ」

 

ピオーネがそう言って伸びをする。

確かに今の状況からはこちらは万全じゃない。

人海戦術で質を補ったりしないとね。

 

「警戒している分、どこか隙を出してしまう」

 

どこもかしこも万全というには難しいだろう。

一か所でもゆるくなってしまったらそこから侵入してしまえばいい。

ドラゴンボールを一つ奪えば、取り返しに来る。

それで向かってくるのがスパーニならばボロボロにすることで回復させて強化も図れる。

 

「相手を手玉に取り続けた時、一番恐ろしいのは最後にとんでもないどんでん返し」

 

それをやってくるのはきっとあの二人。

まったく、あいつらって生きてる意味が本当にあるのかな?

あいつらがいると無害な人たちを巻き込んで最悪のパターンになるイメージしかわかない。

 

「そういえばナメック星人の犠牲ってどうなっているの?」

 

この星の住民で奪われないように抵抗しているだろうし、犠牲者の一人二人は確実に出ているわよね?

そう思って聞いたら、まさかとも思える驚きの答えが返ってきた。

 

「今のところ、犠牲者は一人も出ていないわ、重傷者が一人出ただけね」

 

ガタバルの欺きで先んじて住民が避難しているのと、噂で知られているピオーネさんの強さに慎重な動作を取るようになっているのか。

少し集落を偵察してくることはあっても、攻撃される範囲まで入ったりなどの必要以上の接近はないようだ。

 

「僕とターレスさんのためにカエンサ達に飛びかかって大怪我を負いました」

 

一体どういう経緯でそういう事になったのかしら。

話を聞いてみると面白そうね。

 

「ターレスって人は部下をあいつらに殺されたみたいよ」

 

うわぁ、そりゃ敵対するわ。

しかも理由はなんか強くなれる木の実を分捕るためだとか。

えげつないわね。

つまりあいつら地力の鍛錬を全くしないでこの星に乗り込んできたというの?

修行もしないとか戦闘民族の誇りすらどこか彼方に放り投げているじゃない。

 

「僕は赤と青のとげが生えた奴を倒すために来たんです」

 

あの、さっきまで私が戦っていた処分対象になってしまった奴ね。

あいつらと戦えるだけ戦力としては十分なはず。

私も変身抜きじゃ絶対負けていたという確信があるわ。

 

「そいつらはもう逆鱗に触れて処刑だってさ」

 

そう言うと驚いた顔をする。

そう言えば名前は聞き忘れていたんだけどターブルっていうらしい。

 

「あいつらでも失敗続きになるほどこのメンバーの強さが恐ろしいですね……」

 

まぁ、この面子で今のところ最強なのは多分変身した私だけど、普通の状態ならピオーネさん一択だと思う。

 

「それでもこの星に潜む巨悪には手も足も出ないでしょ?」

 

その言葉にスパーニが頷く。

やはり一番上の恐ろしさは肌で感じているのね。

 

「底知れないものがあの人にはあります、まるでいくつもの力を引き出しのように隠している予感がします」

 

そう言われて予想を立てる。

普段から毛先ほども出さずに行動をしている。

数字で言うと1パーセントにも満たないほどのごくごく少ない戦闘力にコントロールをしている。

もしくは変身型宇宙人ならば複数回可能。

いずれにしてもこちらの想像を超えてしまうものであれば手も足も出ない。

 

「まあ、相手が本気にならないように今しばらくは一進一退の状況を演じておきましょう」

 

ピオーネさんの言葉にうなずき、スパーニを相手側に帰す。

不信感を無くして相手の懐事情を丸裸にする。

欺きは順調に進んでいく。

これならばクリリン君たちが来るまでは持ちこたえられる。

そう、私たちは確信したのだった。




まさかのOVAの猛者も上司の逆鱗の前には死を覚悟しないといけません。
きっと最終形態を拝んでから消されたでしょう。
次回ぐらいはダイジェストにして、速くクリリンたちが出せるようにしていきたいですね。


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『地球人上陸』

久しぶりの投稿です。
次回からクリリンたちも絡んできます。


あれから数日の時間が経った。

ドラゴンボールは現在4つ。

俺たちの奪取に狙いを合わせたかのようなピオーネの出現。

さらに潜在能力が上がって変身能力を身に着けたニア。

奪っても奪い返されるシーソーゲームになっていた。

スパーニはその経緯で戦闘力が上がって入る。

あとはベジータ王子が強化されれば、反旗を翻す準備は整うだろう。

 

「ガタバルさん、持っていかれました、追いかけなさい!!」

 

またもや侵入を許してしまう。

警護は完璧なのだが瞬間移動の前には無力。

全部奪う真似をするとフリーザが出る。

それをしないための策だろう。

 

「はい!!」

 

そう言ってピオーネを追いかける。

これも俺たちの作戦の一つ。

お互いの戦闘力を上げるためのマッチポンプだ。

 

もはや基礎戦闘力が300万を超え始めている俺は超サイヤ人への変身を感覚的につかんでいた。

その状態で戦っていく事でさらに鋭敏な感覚として養う。

疑似的な形で上がっていく状態の俺とピオーネが戦い、ピオーネの戦闘力は上がり

俺は確実なステップアップができる。

 

「はぁ!!」

 

しかしお互いの戦いにそう言った思惑があったとしても真剣に戦いあう。

お互いが命を奪い合うように、決して手は抜かない。

 

「しっ!!」

 

段階的な上昇のため、ピオーネの基礎戦闘力はあまり上がってはいない。

マックスでやりあっては不信感を抱かせる。

とどめを刺す余力はないがドラゴンボールを持ち帰ってくる。

それを幾度となく演じ続ける。

 

「今回も奪取してくれるのは助かるんですがねぇ……」

 

フリーザからも困ったという様な顔だ。

最近は徒党を組んだピオーネにナッパさんとターレスがニアの相手をしている。

スパーニはターブルに止められている。

また、一番の危険因子が手柄を奪うために邪魔をしてくるときもある。

ギニュー特戦隊の招集が速くなっていくと言っていた。

本来の惑星の攻め込みを中止してでも奴らの監視をしていないと迷惑らしい。

 

「処分しようとすると雲隠れされるんですよね……」

 

相当ピリピリしている。

ザーボンやドドリアを警護に当てているから何とかあの二人がなだめておけば普通に問題はない。

 

「あいつらはもうこちらに任せてください」

 

あいつらはもはや消さねばならない。

このナメック星が奴らの墓場になる。

 

「いえ、そこまで背負っていただく必要はありません、初めに言ったようにあなたはドラゴンボールの収集にお勤めなさい」

 

そう言われてまたもや収集に向かう。

シーソーゲームのせいで時間だけが過ぎていき、今や20日ほどこの流れを繰り返している。

さらに困ったことにそのうちの1つをピオーネたちがある場所に奪った後に放置をしてしまった。

それはブロリーがいる場所だった。

抑制装置がないし、俺たちが話している間に昂ってしまえばおじゃんになる。

ましてやターレスを連れて行ったら地獄を見るだろう。

 

「あいつに守らせるとか究極の一手だろ……」

 

あいつから奪い取るくらいなら集落攻め落として自分たちでリーチかける方が得策だ。

無茶をすれば壊滅状態に陥ることはほぼ間違いない。

その為4つの奪い合いになってしまう。

隙を見て別の集落に行こうとしたらピオーネに追い付かれるせいで集落の奴らが巧みにドラゴンボールを隠蔽して逃げ回る。

 

「翌日にはクリリンたちも来る」

 

戦力としては心もとないが人員が多ければそれで十分になる。

打倒フリーザについては一人でも多い方がまだやりようがある。

 

「あの面子には先に最長老様の家に行ってもらって強化させる」

 

現状の戦闘力で10000を超えてはいない。

天津飯達で15000もあれば多少はやりあえる。

ギニュー特戦隊でも気功砲や気円斬など工夫さえしておけば善戦は可能だ。

 

「ギニューさん達も呼んでおきますか、今からだと最短でもそこそこは掛かりそうですが」

 

フリーザがついにあの台座から降りて動いていた。

本気になったというわけか?

 

「今の間にカエンサとラブカの処刑を始めます」

 

そう言うと二人を探し始めた。

あの二人は逃げようとしているだろう。

だが流石は悪の帝王。

その思考回路なんてとっくにわかりきっていた。

出口に先回りをしておき、物音に騙されることなくじりじりと距離を詰めていく。

 

「少々てこずらせてくれましたね」

 

二手に分かれていたため逃げ切られる。

それを確信した以上一人だけを捕まえる戦法を取っていた。

その結果、カエンサを捕まえて眼前に立ちはだかるように仁王立ちをしていた。

 

「そっ、そんな……どうして」

 

その疑問に対して、冷徹にフリーザは言ってのける。

 

「部下殺しとこの任務での失態、虚偽の報告、いずれも私をコケにするには十分すぎる内容でしたね」

 

もうこうなれば覚悟を決めるしかないぞ。

お前らの命運もここで尽きたな。

 

「まだ…俺達には運がある!!」

 

そう言って俺の方を向く。

一体何をする気だ?

 

「こいつこそ裏切り者でしょう、いくらなんでも遅すぎやしませんか?」

 

俺を売って時間稼ぎのつもりか?

遅すぎたとしても常に全線で個数を維持している部分では評価されているぞ。

 

「相手が相手でしょう、それとこれとは別問題

彼に裏切りのメリットはないはずですが」

 

ピオーネの恐ろしさを考慮したうえでの計画だ。

確かに裏切る予定はある。

しかし、それは今じゃない。

メリット自体も特にない。

自己満足に近いものだ。

 

「こいつは『飛ばし子』ですのであの時のあなたの行為を知っております

幼心に抱いたものは拭えないかと」

 

怒りを抱いている。

もしくは憎んでいるとでも言いたいのだろう。

お前らのように頭を垂れて忠誠を誓うばかりのサイヤ人ではないからな。

 

「恐怖の可能性もあるはずですがね、あなた方が飛ばして裏切り者かもなどという疑惑は無駄な議論です」

 

確かにそれもそうだ。

同じように生き残らせる進言をして戦力としての教育もできた。

そう言った努力をせず、今になって言ってくる。

 

「フフッ、無駄でも時間は稼いだ!!」

 

そう言って何かを投げてきた。

地面に当たった瞬間に炸裂をする。

技術班に作らせていたものなのか?

凄まじい光と音で平衡感覚、および視力を奪われる。

 

「閃光弾とは、くすねやがったな!!」

 

フリーザが粗野な形で怒りの声を露わにする。

俺はすぐに飛び立って二人を追いかけていく。

気を感じ取れるが平衡感覚が狂っているためふらふらとしか行けない。

 

「はあっ!!」

 

頭に一撃を食らって落とされる。

起き上がる前に蹴り飛ばされる。

立ち上がることも上手くできない。

 

「まずは逃げる事が精一杯」

 

そう言って音が遠ざかっていく。

ちらりと見えた機械は一体何なのか?

 

「あの状態から追いかけても無理でしょう……」

 

逃がしたことを伝えたらあの閃光弾のせいでぐったりとしていたフリーザ。

追いかけるための動きが自分が全くできていなかったのもあって不問となった。

だが、機械の事を伝えると技術班に聞く。

 

「試作段階のものを持っていかれていますからね……」

 

技術班の人たちも頭を抱えているが試作段階であり完成品を持ち去ったわけではない。

 

「武器系統は試作では暴発、そうでなくても予期せぬ故障がありますから」

 

フリーザも懸念する必要はないとは言う。

あいつらがいくらポッドを使って、地球以外の所に逃げても無駄。

 

「これで彼らは完全に私の敵……というわけですねぇ

サイヤ人の中にも虫けらは居るもの……あなたも裏切ればどうなるかわかっていますね?」

 

フリーザは俺を睨み付ける。

あの場では無駄だと分かっていても裏切ってはいけないとくぎを刺しておこうと思ったのだろう。

 

「分かっていますよ」

 

当然、死が待ち受けている。

だがそれを含めてここに来たのだ。

ここで追い打ちをかけるつもりはない。

 

「分かっているならば問題ないです」

 

俺は再び宇宙船を出てターレスとナッパさんを集める。

あの二人に今回の事を伝える。

今回の騒動で思いがけない事態になったため、一足早く裏切るタイミングを決めないといけない。

 

明日にはクリリンたちが来るし、まだ宇宙船が他にある。

その詳細不明の宇宙船の着地場所を予測する。

 

「ベジータじゃねえのか?」

 

ナッパさんが言ってくる。

よし、良い援軍だ。

もうあと一週間の間にこの戦いも大詰めを迎えるだろう。

 

「フリーザの裏切りの時間稼ぎは済んだか?」

「あと少しだ」

 

ターレスが言ってくるので答える。

もうそんなに時間を取る事は無い。

 

「もう一度援軍が来る、そいつらの強化次第で時間は縮まるだろう」

 

フリーザの方もギニュー特戦隊が来る。

正直、俺たちはカカロットとベジータ王子の強化が優先だ。

クリリンと天津飯、悟飯は最長老様の場所で上げてもらえるだろう。

 

「ギニュー特戦隊なら今の俺達でも倒せる」

 

それはそうなんだが、フリーザに対してたばかっていたことを暴露するのは最後の最後まで置いておく。

あいつらでもなんとかなる相手なのに俺たちが手出しをする必要はない。

 

「ベジータ王子と交渉をして村人の虐殺を止めさせる」

 

ドラゴンボールを出さなかったら平然とやりかねないしな。

それに最高の交渉材料がある。

それは超サイヤ人への変身方法。

痛い目も見てもらうだろうが、それを差し引いても十分利益のある交渉だ。

 

「明日に地球人が到着、それと同時ぐらいにベジータか」

 

ナッパさんが言うがその通りだ。

その後にカカロットが即座に出発をするなれば一週間ほどで全員が揃う。

激戦になるかもしれない。

奴らの消息が不明である以上どうにも嫌な予感がぬぐえない。

 

「明日には明日の風が吹くってことで今日は落ち着こうや」

 

ターレスがそう言って宇宙船へ戻る。

全員が意気消沈する中、フリーザの言葉で持ち直した。

俺たちは捜索とドラゴンボールの2つを任される。

あいつらの足取りは気で感知できるはずだ。

 

「あいつらが盗んだ機械がどういったものが分かれば狙いも多少は分かるけどな」

 

あいつらの事だから楽な戦力増強。

それかこっちの妨害のための道具。

いずれにせよあいつらはフリーザに見つからずに、自分たちが死なない方法を考えないといけない。

ついにあの二人の命運が尽きたと思ったが、あいつらの運の良さと生きる執念。

それこそが奇跡を起こしたのだろう。

まったくもって運命を決める存在は節穴なのか。

起きても大した価値のない二人の命を引き延ばした。

 

「考えてもしょうがない……」

 

そう言って寝床に入ろうとする。

しかし不意にナメック星人の遠くの気が一つ消えたのを感じた。

一体何が起こってしまったんだ?

 

.

.

 

「我らの供物となるがいい」

 

そう言って首を掴んでいるのはラブカ。

大きなナメック星人がなすすべなく負けてしまったのだろう。

ぐったりとしている。

 

「この『ドレイン・パース』を使ってこいつのエネルギーや能力を俺たちのものにする」

 

そう言って装置を使いナメック星人のパワーや能力を奪う。

戦闘力や能力の強さは二人に均等に分け与えられる。

 

しかし『ドレイン・パース』はその一度で壊れてしまう。

 

「やはり試作品だったか……」

 

そう言って気功波で粉々にして消し去る。

だがもう一つ片手に握っている機械。

それを見つめながらカエンサはこのナメック星での屈辱を思い返す。

 

「これを使えば、あの屈辱は全て拭い去れる」

 

そう言って憎悪に満ちた瞳を星が瞬く空へと向ける。

憎悪が徐々にその瞳に捉えた星々を黒く塗りつぶすように空へと隠れていった。

 

.

.

 

そしてその闇夜が明けて日が昇り清涼な空気がナメック星を満たす頃。

昆虫のような形の宇宙船がナメック星に降り立つ。

 

そこから現れたのは幼い少年と年頃の女性。

頭に印のついた青年。

三つ目の青年。

 

クリリン、天津飯、孫悟飯、ブルマ

 

地球人たちの上陸。

それを素早く感じ取ったニアとピオーネが迎えに行く。

そしてクリリンたちが到着したと同時刻に孫悟空が出発。

ついにナメック星の戦いも佳境に入ろうとしていた。

 

.

.

 

そしてその少し後。

ナメック星に着陸をしようとする宇宙船のうちの一つ。

キュイという奴が乗った宇宙船。

 

「くくく……ベジータを殺せるぜ」

 

そう言っているキュイ。

最近のフリーザはいらだちが募っていたからか。

援軍になるであろうベジータとはいえ、命令無視でここに来たことに憤りを感じて抹殺をキュイに命令した。

 

しかしそのキュイの思いはあっけなく打ち砕かれる。

 

 

「なんだ、ありゃ……」

 

手をかざして宇宙船に向かって気弾が放たれる。

当然、宇宙船の状態で避けられるわけもなく……

 

「うぐぁああああ!!」

 

宇宙船が壊されたまま、海へドボンと音を立てて落ちていった。

 

「くそっ、こんなつもりじゃ、プハアッ!!」

 

湖から顔を出すキュイ。

その後、自分の顔を上げてその落としてきた奴の顔を見ようとしたがそれは叶わない。

 

「ぐあっ!?」

 

その顔を掴んで上空へ放り投げる。

そして狙いをつける。

 

「やめて……やめてくれー!!」

 

キュイが叫ぶが聞く耳を持たない。

そしてそのまま技名を言って攻撃を放った。

 

「『アルバトロス・ブラスター』!!」

 

その技に包まれて塵となる。

その様を見てガタバルは一言呟いた。

 

「ふんっ、汚い花火だぜ」

 

こちらの障害にしかなり得ない雑魚。

その邪魔な分子を即座に取り除く。

遅かれ早かれ殺されていただろうという確信がガタバルにあった。

そしてガタバルはベジータの方へ向かっていく。

ついにナメック星における本当の戦いが始まろうとしていた。




馬鹿二人が邪魔をしてきたおかげで時間稼ぎがしやすかったという。
最後に消されたナメック星人はスラッグさんです。
これでまた楽して強化の二人。
指摘箇所などがありましたらお願いします。


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『帝王の裁決』

今回でナメック星編の佳境です。
これからはギニュー特戦隊などとの
原作の奪い合いに近くなるんで、少し気を付けます。



着陸してから俺はすぐにベジータ王子の方向へと向かう。

俺はベジータ王子との戦いでベジータ王子に超サイヤ人について知らせなくてはならない。

 

「あっという間だなぁ」

 

すぐにベジータ王子を見つけて俺は目の前に降り立つ。

地球で戦ったときは脅威だったのに今では赤子の手をひねるほど簡単に思えるよ。

 

「ガタバルか、貴様その服は……」

 

戦闘服を見て驚いているようだな。

しかし、次の瞬間にやりと笑う。

どうやら俺の計画をくみ取ったようだ。

 

「あなたに会いに来たんですよ」

「大方連れて来いというものだろう?」

 

やはりそう言った方向で考えるか。

こっちからすればそんなつもりは全くない。

 

「超サイヤ人への成り方を教えるつもりでしてね……」

 

その言葉を聞いた瞬間、ベジータ王子が驚く。

伝説であるはずの存在を俺が知っているのだから。

 

「貴様……なぜ成り方を?」

 

ズノーの星で聞いただけだ。

俺自身は伝説の存在でどうやってなれるのかは特に知らなかった。

 

「全知の星で聞いたんですよ、それには更なる発展形についても知っているという事がありました」

 

伝説の発展などもはや眉唾物の類だ。

しかし信用に足るだけの説得力があった。

 

「なるほどな、教えてもらおうか」

 

そう言いながらも構えている。

こちらがやはりやめたといったときに力ずくで聞き出す気か?

 

「いいですよ、でも……」

 

俺からすれば好都合だ。

一気に接近して脇腹に重い蹴りを叩き込む。

バキッといい音が鳴って横に飛んでいく。

 

「がはっ……」

 

こっちを睨み付けながら呻いて血をわずかに吐き出す。

やはりかなりの差がついてしまっているな。

今のもかなり力を抑えたものだし。

 

「瀕死になって強くなってもらう必要があります

そして善悪を問わない純粋な心をあなたがもち、心の底から怒ればその変身はできます」

 

それを理解したのか、苦笑いを浮かべながらこっちを睨んでいる。

戦闘力がある程度ないとなれないからな。

完膚なきまでに痛めつける。

 

「理解はしたが、こちらも手出ししない主義ではないんでな!!」

 

左拳を突き出す。

この程度の速度、今の自分ならば目をつぶっていても避けられる。

 

「その程度が限界なんだよ!!」

 

腕を掴んでへし折る。

頭を下げて痛みで歪んだ顔を見せまいとする。

 

「俺をそんな目で見下すなぁ!!」

 

俺への怒りでぞわりとベジータ王子の毛が逆立っていく。

蹴りを放つがそれを全然速度が乗っていない。

その蹴りを紙一重で避けてそのまま気のビームで貫く。

 

「ぐうっ…!」

 

地面に落ちていく間に次は右肩へ肘の一撃を叩き込む。

肩の骨がバキッと鳴っていた。

 

「がああっ……」

 

もう両腕もやられている。

片足、肋骨も。

生死の境をぎりぎりまで見極めて回復をさせる。

それが重要なのだ。

 

「このベジータ様をなめるなよ!!」

 

圧倒的な実力差に対するふがいなさの怒りなのか、一気に気が噴き出していく。

俺が実力をつけて、一度経験してようやく至った場所にこんな短時間で至るとは恐れ入る。

あの時の俺もこんな感じだったのか。

白目をむき、一気に気が溢れている。

 

折れた腕でこっちに一撃を放つ。

 

「どうやら気絶をしたようだな」

 

しかし、痛みが先に神経の伝達を打ち切って気絶させた。

そう言って俺はベジータ王子を上空へ放り投げて気弾の一撃を放つ。

吹っ飛ばすような一撃でそのまま遠くまで飛んでいく。

方向は集落でターブルやピオーネがきちんといる場所。

 

その方向を見てから俺は別の集落でのドラゴンボールを手に入れに行く。

これが成功すれば奪い合ってきたこの均衡が崩れる。

こちらが5個。

ピオーネ達が1個。

最長老様の家に1個。

俺たちが、即合流をすれば一気に6個で、あっという間に7個へ王手がかかる。

さらに俺がナメック語を使えるためその時点で願いがかなう。

 

「おっと、ベジータ王子の気が回復したか」

 

すぐに気弾は目的地まで飛ばしたらしい。

そして即座に治療。

一気に大きくなっているところを考えると相当痛めつける事に成功はしていたようだ。

 

俺は一つのドラゴンボールを奪い取って、5個目のドラゴンボールを運ぶ。

今までの拮抗した状態の奪い合いにもようやくひと段落着く。

少し隠せる場所はないかと思い、上空を回っていく。

そんな事をしていると突然後ろから気弾を誰かが撃ってきた。

弾くことは弾くがその相手を見たまま俺を言葉をつなぐ。

 

「なぜこんな所にいるんだ、フリーザ様……」

 

あの乗物から降りて浮遊している。

ドラゴンボールが残り一つという状態になったことでついにこのような状態になったか。

 

「そのドラゴンボールを隠すような仕草をしていましたねぇ、やはりそうでしたか……

まあ、あなたが裏切るのはあの入隊を認めた時点で分かっていましたよ」

 

つまり俺はあんたの手のひらを駆けずり回っていたってわけか。

それにしては随分と悠長だったな。

自分よりサイヤ人が強くなるわけがないと高をくくっているのか?

もしくは最低限の動作で最大限の成果を出すためだったか?

 

「あの親とは違う、殺意と怒りをその目に宿していた、あんなものバレバレですよ」

 

あの二人のように下衆な企みではない、純粋な殺意を抱えたがゆえにバレたか。

もう少し微笑んで敵意を隠せばよかったな。

 

「7つ揃える前に俺の首を落とすわけか」

 

願いを叶える方法を知っているのは現地のナメック星人を除いて俺だけだ。

俺を倒さなければ7つ集めた瞬間、全ての願い事を叶えられる。

リーダー格になっていた俺を狙うのは当然のこと。

偶然で狙ったのであればさすがは帝王と言いたいがな。

 

「その通りです」

 

徐々に気が高まっている。

この程度ならば赤子の手をひねるように倒せるがこんなものではないはずだ。

 

「あなたにはその裏切りをにおわせながら誠心誠意仕えた褒美として……」

 

そう言った瞬間、体から気が立ち上り、姿を隠す。

その煙が晴れる前にこちらも臨戦態勢をとる。

 

「最終形態で殺してあげるよ」

 

これがフリーザの最終形態か。

すらっとした見た目ではあるがその中にある気の大きさは尋常ではない。

 

「こっちも抵抗はするぜ」

 

フリーザは緩やかに蹴りを放つ。

その相手の攻撃をいなして裏拳を放つ。

戦いの合図はそれで十分だった。

 

「はあっ!!」

 

裏拳を尻尾で防ぎ、腕に巻きつかせる。

しかしその尻尾で巻きつかれる瞬間、拳を開いて掌の状態にする。

その掌で尻尾を掴み、爪を食い込ませる。

 

「ぐっ!?」

 

肉に食い込んで痛いのか、わずかに顔を歪ませる。

そのまま掴んでジャイアントスイングの要領で投げ飛ばす。

 

「『ツイン・ファルコン・クラッシュ』!!」

 

投げ飛ばした先に気弾を放つ。

しかし、さすがに相手も百戦錬磨の存在。

その攻撃に対して……

 

「ふんっ!!」

 

足を向けたままで一つずつ蹴るようにして相殺をする。

さらに、その推進力を利用して俺の頭上に立ち、にやりとほほ笑む。

 

「綺麗な花火にしてあげますよ!!、『デスボール』!!」

 

大きな赤紫の気弾が落ちてくる。

これが惑星ベジータを滅ぼした一撃。

そう思うと自然に力が入る。

 

「があああ!!!」

 

腰を落とし、叫び、受け止めて投げ返す。

まだまだあっちが余力を残している証拠だろう。

それを避けてはいるがにやにやと笑っていた。

 

「まさか僕の30%と互角とはね……じゃあ50%で塵に変えてあげるよ」

 

まだ余力を残しているのか。

こっちは全力なんだがな。

 

「ひゃっ!!」

 

50%で相手をするといったフリーザ。

こっちの腹に一撃を叩き込む。

速いがそれならこっちの方がまだ上だ。

それよりも強い力と速度で対抗をする。

 

「りゃあ!!」

 

頭に拳骨を振り下ろす。

瞬間のよろめきを逃がさない。

頭が下がった瞬間に膝を側頭部に蹴り入れる。

 

「ぬぅ……」

 

呻く暇すら与えない。

腹部に拳を当てて一気に突きを放つ。

 

「『エクスプロード・ウッドペッカー』!!」

 

その一撃でフリーザが地面に叩きつけられる。

さらにこっちは気を高めて全力の状態の一撃を放つ。

 

「このぉ!!」

 

地面から勢いよく飛び出すフリーザ。

その顔には怒りがある。

しかしそんなことは気にも留めない。

 

「『アルバトロス・ブラスター』!!」

「『デス・イクスパンション』!!」

 

こちらの技に対して新技だろうか小さな気弾を繰り出してくる。

しかしその小さな気弾が徐々に膨張していく。

アルバトロス・ブラスターを包み込んでそのまま俺に向かうのではなく大爆発を起こす。

まさかそんな技だったとはな。

フリーザはもう一度空中に上がってきた。

 

「こうなれば大盤振る舞い、80%だぁ!」

 

そう言うと俺の顔面に一撃を見舞う。

吹っ飛ばされて頭がグワングワンとする。

こっちの攻撃の弱所を見抜いて相殺する。

強者が持ち得るものを持ち合わせている。

やはりこいつには超サイヤ人への覚醒をして圧倒的な差での勝利が最善の一手だろう。

しかし、そんな隙など、きっかけなどあるわけもない。

 

「ひゃひゃひゃ!!」

 

背中に回り、横に回り、縦横無尽に攻撃を加える。

防御を固めるが手数が多すぎて徐々にダメージを負う。

フルパワーでも防御の隙間を縫うようにやられては無理もない。

 

「このぉ!!」

 

尻尾で目を打つ。

まさかこのような真似をするとは思わなかったのか。

モロに目に喰らって顔を押さえる。

 

「今度はこっちの仕返しの番だ!!」

 

全力で突っ込む。

腹部に一撃。

踵落とし。

背中に肘打ちで地面に叩きつける。

 

「舐めるなぁ!!」

 

馬蹴りで顎に一撃を入れてきて尻尾で脇腹を薙ぐ。

横っ飛びに吹っ飛ばされたかと思うとすぐに先回りをして頭を掴む。

 

「猿の分際でこの俺に勝てると思ったかぁ!!」

 

ぶんぶんと左右に振り回して地面に叩きつける。

何とか力を振り絞って叩きつけられる前に衝撃を軽減する。

解こうにも勢いが強すぎて、風圧などの兼ね合いで解くことができない。

そして上空へ飛びあがり俺に技を食らわせるために放り投げていく。

 

「お前もこの一撃で終わりにしてやる、惑星ベジータとともに塵になったあのサイヤ人のように!!」

 

その言葉を聞いた瞬間、体中の血が沸騰しそうな錯覚に陥った。

頭が真っ白になっていく感覚。

あの惑星カナッサの時のように。

 

「あのサイヤ人……バーダックさんの事か?」

 

ただ、あの日と違うのは真っ白になっていきながらも自意識を保てているという事。

あの人への侮辱は許さない。

あの人は最後までサイヤ人としての誇りを保ち、、サイヤ人のために戦ったのだ。

 

「バーダックさんの事かー!!」

 

その思いを怒りとともに大きな声で叫ぶ。

その瞬間、何かの壁を超えた感覚。

そして、漲るような力。

だが、体へ蓄積したダメージはその漲る力の持続時間を削りきってしまっていた。

 

「うぉおおおお!!」

 

押し返していくが徐々にデスボールにのみ込まれていく。

徐々に漲る力が減っていくのがわかる。

しかしそのわずかな時間でもあきらめるわけにはいかない。

歯を食いしばり、力を振り絞ってなんとか押し返す。

だがそれでもすべての威力が無効化できたわけではない。

あの質量により生まれた衝撃波の余波が、力が抜けた自分にそのまま襲い掛かる。

その衝撃はすさまじく成す術のないまま水面へ強烈に叩きつけられていた。

 

.

.

 

「一瞬見せたあれは……見間違いでしょうか?」

 

金色の髪の毛を見てぞっとしたのは秘密だ。

一瞬、伝説の超サイヤ人かと思ったが落ちた時には黒い髪に戻っていた。

仮に伝説の超サイヤ人とは言ってもほぼ全力のデスボールをはじき返して死んでしまっただろう。

サイヤ人としてはあり得ない振る舞いをしてあの実力。

彼はきっと突然変異の類だったのでしょう。

それがあの惑星ベジータの崩壊による放浪でその才能が開花した。

 

「私を超えるサイヤ人は居ない……」

 

そう言って宇宙船に戻ると大勢の部下たちが気絶をしていた。

何事かと思い、ザーボンさん達を探すとザーボンさんは気絶をしているがドドリアさんは首から上が分かれてしまっている。

そして見当たらないやつらを考える。

 

「ターレス、ナッパ、スパーニ……いずれもサイヤ人ですね」

 

やはり徒党を組んでこのフリーザに対抗する腹積りでしたか。

良いでしょう。

それほど強く絶滅をあなた方が願うのならば今度こそサイヤ人を絶滅させましょう。

半分とはいえど血が入っているのも例外にはしない。

たとえ4分の1でも8分の1でもわずかにでも残っていればそれを消す。

サイヤ人の血脈はこのナメック星で根絶やしにする。

この星が奴らの墓場なのだ。

すでに海に墓標を一つ立ててやった。

それ以外にもピオーネもきっと協力者ですね。

彼女も海に沈めてあげましょう。

関係するものも同じくこの星を墓標にしますか。

 

「彼よりも弱い貴方たちなんてしょせんは巨象に挑む蟻のようなものなのですよ」

 

そう言ってドドリアさんの頭を踏み潰す。

ギニュー特戦隊が来るまではこのまま全員が起きるまで待っておきましょう。

今持っているボールは5個。

これでスカウターが届けば残りのボールの捜索は楽なものだ。

もうあと少しで私の不老不死は叶う。

 

そんな事を思っていると腹部や肩に激しい痛みがはしる。

あいつにやられた傷や火傷の箇所だ。

やはりあのガタバルを教育でわが軍の従順な戦士にできていたならば最高の副官になっていただろう。

惜しい存在を無くしたものだ、サイヤ人でなければ最高の人材だったのに。

少しばかり残念な気持ちのまま、メディカルポッドに入り戦いの傷を癒すのだった。




ベジータの才能で疑似超サイヤ人覚醒です。
見下されて、痛めつけられた怒りでまさかの習得。
そしてガタバルが超サイヤ人になりましたがボロボロすぎて即解除です。
フリーザには最初からお見通しの上でターレスやナッパも動かしていました。
そして5個に差し掛かったところでこれからはスカウターを使って捜索すればいいという事で手を下しに来たという感じです。

指摘や誤字などの報告ありましたらお願いします。


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『命永らえて』

今回は少し時間が飛んでいます。
そして最悪の黒幕登場という形です。
クウラの予定でしたが路線変更からブロリーを出せるようになりました。


俺はどうしてしまったのだろう。

閻魔様とかいう奴の下っ端の鬼が目の前にいる。

 

「もしかして死んだのか?」

 

俺は目の前の鬼に聞いてみる。

全然状況がつかめていない。

 

「いや、死んでいるのかわからないオニ」

 

死んでないけど、とりあえず迎えに来たって事か。

思った以上にやる気があることで。

 

「つまり仮死状態で待機?」

 

そうなれば考えられるのは死んでるかどうかわからない。

半分こっちの世界に足を突っ込んだって事だ。

 

「そうなっているオニ」

 

待機せずにこのまま生者の世界に帰れと言われた方がよっぽどましだ。

まだ全然終わっていないからよ。

 

「情けないぜ、小僧」

 

そんな事を考えていると声が聞こえる。

その方向に振り向くとサイヤ人がそこにはいた。

 

「トーマさん、もしかしてこいつを送り返すオニ?」

 

トーマというのか。

送り返すって事は仮死状態から復活させてくれるってわけか。

 

「たり前よ、あのフリーザにもう少しで勝てそうだったんだ、それに段々透けていやがる」

 

確かに透明感が増したな。

次やったら勝てるとは思う。

しかし、一度負けたサイヤ人が何度も挑んでいいのか?

 

「閻魔様はいいと言っていたオニ?」

「地獄からつなげて界王様から許可取った、事情を説明したらいいってよ」

 

そう言うものか。

どうやらフリーザを倒せる可能性があるというのは随分といい形に見てもらえたようだ。

 

「お前らわざわざ来たのかよ」

 

気配を感じて構える。

するとそこには3人のサイヤ人がいた。

 

「私の名前はセリパ」

 

珍しい女性のサイヤ人だ。

珍しいとは言ってもスパーニと母さんを見ているから何とも言えないが。

 

「俺の名前はパンプーキン」

 

大きな体のサイヤ人だ。

肥満に近い奴は初めて見るな。

 

「俺の名前はトテッポ」

 

凄い頭髪だ。

これならナッパさんのようにまるっきりない方がいいんじゃないのか?

 

「さて……4人から贈りもんだ」

 

そう言うと囲い始める。

そして気を高めていく。

4人の気が徐々に共鳴して俺を包み始める。

まるで電気を帯びるようにバチバチと音を立てて俺の力が強くなっていく。

 

「俺たちサイヤ人の力、『サイヤパワー』をお前に渡す」

 

そう言ってもう一度気を高めるとその力は俺に注がれていく。

一気に俺の気が増えて普通の状態でありながらあふれ出していた。

 

「これがサイヤパワーか……」

 

体から漲るパワーを実感して手を開いて閉じてを繰り返す。

基礎戦闘力が一気に上がったのがわかる。

もう一人いたらゴッドの道も開けただろうが、それについては今はどうでもいい。

 

「へっ、お前を助けたお人よしがいるって事だ」

 

さらに俺の体の透明度が増していく。

仮死状態から誰かが救ってくれたのか?

あんな水面の底にいた俺を、どうやって見つけたんだろうな。

 

「地獄に来るにはまだ速いって事だ、きばりな小僧」

 

完全に足元が消えて、徐々に下から俺は消えていく。

トーマがそう言うと目の前が再び真っ暗になるのだった。

 

.

.

 

「親父ぃ、水底に居たぞ」

 

俺はガタバルを引き上げる。

大きな音が聞こえた方向へと向かっていたのだ。

バシャンと何かが水に落ちたような音だった。

 

「星が震えるほどの戦いだったからな」

 

大地が大気で崩れるほどの状態。

徐々に岩が削れたりなどもあった。

時間にして三十分ほどたったところでさっきの音が聞こえた。

方向は分かるが湖のどこに落ちたのかはわからない。

そのせいで今になって見つかったという事だ。

 

「メディカルポッドに入れて起動させろ」

 

親父がそう言うからすぐに入れて起動させる。

すると回復力が上がっていたのか数分すると目を開いている。

それを見て俺たちはメディカルポッドから出す。

 

「ありがとうよ」

 

簡潔ながら礼を述べる。

そして俺たちがあの大きな球を持っている事でにやりと微笑む。

 

「もう、隠せないだろう?」

 

あれだけの大掛かりな戦いの後に願い事を叶えられないとあってはこの星ごと爆破されるだろう。

それのためにこっちは全てのドラゴンボールの所在が明らかになった状態で再度フリーザとの集めあいをしないといけない。

 

「お前もパラガスさんもスカウターでばれるだろう……しかし来てくれるか?」

 

もはや戦力として数えなければならない。

すぐにでも決着をつけられるように体勢を整えておかないとな。

 

「あんたが来いというのなら行かせてもらう」

「我々もやはり故郷をやられた相手を見逃す気はない、ベジータ王は嫌いだったがな」

 

二人とともに飛び立とうとする。

しかしどこかで戦いが始まっていた。

この気はよく知っている。

ギニュー特戦隊の人たちの気だ。

 

「俺がフリーザと戦って何日たったんだ?」

 

そう言うと指折り数え始める。

サイヤ人の生命力とはいえよく大丈夫だったな。

それとも冷たい水が体を冷やし切って冬眠の状態にまで押しとどめたのか?

 

「そんな事を言っている暇はないぞ」

 

パラガスさんが飛んでいく。

この人も死線はかいくぐってきているはず。

少なくても地球人よりは戦力になってくれるだろう。

 

.

.

 

「まさかこんなにも地球人たちが強くなっていたとは……」

 

ギニュー特戦隊にまんまと出し抜かれてボールを奪おうとしたところ邪魔をされて今のような戦いとなっていた。

ギニューの野郎を追いかけようにも気が増えて感じられる、つまりもう既にフリーザが近くにいる状態、目を盗んでいくにもリスクが大きい。

 

そして戦いが始まり数分後、俺の目の前で横たわっているグルドがそこにはいた。

あの三つ目の野郎に超能力は通用せず、腹に一撃をくらわされてそのまま昏倒しやがった。

次はターブルの奴がバータとやりやがる。

あいつの性格上、とどめを刺す事は無いだろう。

だが、仮にもこの俺の弟。

無様な戦いになる事は無い。

 

「『ブルー・ハリケーン』!!」

 

バータが己を中心に回転をして風を巻き起こす。

その中に入ると風圧で切り刻まれるだろう。

だがこの技には大きな弱点がある。

 

「中心のあなたには風はない!!」

 

そう、中心のバータは回転を続けるため無防備な状態となる。

その為、ターブルは気功波の連打で風のバリアのようになっている竜巻に綻びを作る。

 

「『スタート・コメット』!!」

 

竜巻の綻びに向かって一気に攻撃を仕掛ける。

足から気功波を放ち、その推進力を活かして体全体でぶつかる。

スクリュー回転を加えて弾丸のごとくそのままバータの腹にめり込む。

バータは吹っ飛んで起き上がらなかった。

あまりにもあっさりとしていた。

 

ジースの野郎がいなくなってやがった。

一体何をしに行ったんだ?

 

リクームの相手はニアという女だ。

 

「『リクームイレイザーガン』!!」

 

いきなり大技を放つ。

それを片手で受け止めて接近する。

 

「『エレファント・ナックル・マシンガン』!!」

 

拳の乱打だがまるで暴風の嵐だ。

振り切った拳の勢いでもう一度放つ。

それを受け止めても吹き飛ばされてしまう。

リクームの奴は腕を交差して延々と攻撃をやり過ごす。

 

「『ドッグ・シャープ・タスク』!!」

 

防御が下がり気味な所に気弾を放つ。

両肩に傷が入る。

こうなるとこの女の独壇場だ。

 

「『ギガンティック・ホース・スタンプ』!!」

 

踏みつけた太ももあたりに大きな馬蹄型の痕ができる。

大腿骨がへし折れる音とともにリクームの心の折れる音が聞こえたような気がする。

 

「『ワイルド・ハンマー』!!」

 

頭にとてつもない衝撃が走るような音が聞こえる。

そのまま地底にまで響くような音だ。

頑丈なリクームだからいいものの他の奴らなら頭がそのまま飛んでいたかもしれん。

 

「こいつらもまた地球からここに来る間に強くなりやがったか」

 

そんな事を考えていると一つの気の接近を感じた。

この気はカカロットか!?

残念だったな、もう戦いは終わっているぜ。

 

リクームは倒れたし、ここからドラゴンボールを持ち運ぶだけだな。

 

「後ろから失礼」

 

戻ってきていたジースがいつの間にかギニューを引き連れてあの女の後ろに立っていた。

声に反応して女が振り向いた瞬間。

 

「チェーンジ!!」

 

ギニューの声が響きまばゆい光が走る。

その発行が止んだ時。

 

「ぐっ……」

 

ギニューとあの女の気が変わってた。

うわさでは聞いていたがギニューは体を入れ替える能力があると聞いている。

ギニューの奴があの女の体と入れ替わったのか。

ターレス、ナッパ、スパーニの3人は雰囲気だけで飲まれる。

 

「ハアッ!!」

 

一瞬の間に動くギニュー。

3人とも昏倒させられていた。

緩やかに繰り出しては見たが綺麗に相手を気絶させるコースに決まったのだろう。

 

「うぉおお!!」

 

俺は突撃して拳を繰り出していた。

俺はサイヤ人の王子だ。

他の奴らと同じように飲まれるわけにはいかん。

ましてや昏倒するわけにもな。

 

「遅い!!」

 

そう言って俺の拳を掴む。

だがこれは囮。

逆の手から気功波を放つ。

 

「『ビッグバン・アタック』!!」

 

成す術もないまま直撃した。

馬鹿な野郎だ。

あの女は強いが、さすがにこの距離だと……

そう考えた瞬間、首を掴まれて地面に叩きつけられる。

 

「がっ…」

 

ギニューには傷一つついてはいない。

その人間の潜在能力を呼び起こして使役するという噂も本物か。

 

「この体、素晴らしい、サイヤ人の力を遥かに超えている!!」

 

満面の笑みで手を広げるギニュー。

しかし次の瞬間、後ろから一撃を見舞われる。

 

「人の体で好き勝手はやめてもらえないかしら」

 

ピオーネの奴が構えている。

俺の最大技でもダメージがないギニューなど瞬殺だぞ!?

 

「私の体の戦闘力は120000、お前の体に比べれば月とスッポンほどに違う!!」

 

ギニューが拳を繰り出していく。

それを掴んで放り投げる。

いつの間に後ろに回ったのか頭を打ち付け手締めへ叩きつける。

足を持ってぐるぐると回し、石に向かって投げる。

 

「くっ!!」

 

石を気功波で砕くがその一瞬の隙を見逃さない。

腹に膝をぶち込んで胃液を吐き出させる。

自分の体と言えど容赦のない女だ。笑えてくるぜ。

 

「なっ……スカウターが壊れた!?」

 

スカウターの計測値がおかしなことになっている。

元々のギニューを遥かに超える戦闘力になっているのだ。

ジースの奴も意味が分からないといった顔を浮かべている。

 

「まさか、チェンジで手に入らないものがあいつ自身には存在するのか……」

 

ギニューも驚きを隠せない。

そしてここから持ち主の逆襲が始まる。

 

「ハアッ!!」

 

ギニューボディになった女が飛び膝蹴りを放つ。

それをギニューが掌で受け止めた瞬間に、その勢いで飛び上がる。

身体の構造で相当な負荷をかけてる。

 

「まだまだ!!」

 

女が後頭部に蹴りを放つ。

ギニューが頭を下げて回避をする。

女がそれを見て気弾を放つ。

距離を取るのもいいタイミングだ。

 

「徐々に速く攻撃が重くなっていくな……」

 

構えたギニューは警戒しながら動き始める。

だがもう動き始めたらあの女は止まらない。

構えた瞬間、すでに懐にいる。

 

「しっ!!」

 

ガードをすり抜けるようにアッパーを放つ。

後退してギニューは距離を開こうとする。

しかし、足から気功波を放ちその推進力で肘打ちを顔にめり込ませる。

その一撃でよろめくと、そのまま抱え上げて地面に叩きつける。

一撃の勢いの良さで地面をバウンドする。

 

「ぐぐぐっ…」

 

起き上がるが戸惑いからか困惑の表情を向ける。

その隙は逃さない。

そのまま顎に飛び蹴りを放つ。

跳ね上がった顎に向かって気弾で顔面へ攻撃。

 

「ぬあぁ!!」

 

顔を痛みからか抑えるギニュー。

がら空きの脇腹へ強烈な蹴りを見舞う。

バキバキという音が聞こえた。

 

「この体の強さがありながらなぜ……」

 

だがギニューは困惑を浮かべながらもにやりとした。

そして再び腕を広げる。

 

「『チェーンジ』!!」

 

その一言でまたもや女とギニューが入れ替わる。

そしてギニューが自分の体に戻った瞬間……

 

「ぐああああっ!!」

 

溢れる力と体の負荷が一気に押し寄せたのか、のたうち回っている。

苦しそうだな。

 

「ハアハアッ……」

 

すぐに起き上がるが体は相当な無理をしているのがわかる。

脂汗をかいてその動きに精彩を欠いている。

 

「残念だったな、ギニューさんよ、あんたはその体に戻っても慣れていない、今なら俺でも勝てるぜ!!」

 

そう言って俺がギニューに攻撃を仕掛ける。

腕を伸ばし受け止めようとするが、体勢を低くして懐に潜り込む。

 

「舐めるなよ!!」

 

バックステップで俺を懐に入れない。

俺が次の攻撃を放つと同時に忌々しい奴も到着した。

 

「カカロット……」

 

ギニューもその存在に気付いたのか。

俺ではなくカカロットの方へと向かう。

 

「貴様だけでも倒さねばな、サイヤ人に徒党は組ませてはならぬ!!」

 

そう言うとカカロットが構える。

その動きに俺がバカにされたと感じたのかターブルが突撃をする。

 

「やめておけ!!」

 

俺の声で静止をするが、ターブルが向かっている隙にカカロットは手痛い一撃をギニューから食らう。

地面に叩きつけられて、そのまま気弾が雨霰のように飛び交う。

カカロットの気が徐々に弱まっていく。

 

「俺がいる事を忘れるな」

 

カカロットに死なれても困る。

徒党を組んでフリーザを倒す算段が狂ってしまうからな。

元々ガタバルの奴もその腹積りだった。

それがあのようなことになってしまった以上、俺と女が率先して指揮を執る。

 

「くっ!!」

 

カカロットから視線を外して俺に対応する。

その隙にカカロットのガキがカカロットを連れていく。

 

「チェンジの後のお前でもこうなれば形無しだ!!」

 

俺はギニューに対して気弾を撃つ。

これを連射する形で目くらましをする。

 

「そう言ってこのような子供だましか!!」

 

捌いていくが徐々に俺が近づいていることには気づいていない。

そして防御が一瞬甘くなった隙に懐に入り込んで腹に一撃を与える。

 

「がっ……」

 

悶絶する隙に頭を掴んで膝にぶち込む。

鼻が折れただろう。

そのまま流れるように角をもって振り回す。

 

「フンッ!!」

 

空中に向けて放り投げた。

そしてそのまま照準を定めて……

 

「『ビッグバン・アタック』!!」

 

光線がギニューを飲み込む。

片はついただろう。

しかしあれだけの戦闘力の状態。

頑丈すぎる肉体は消し飛ばされることなく落ちていく。

それをジースが受け止める。

これで全員、特戦隊は倒した。

あとはフリーザの宇宙船に忍び込んでドラゴンボールを奪う。

そんな事を思っていると大きな邪悪な気がどこかで立ち上る。

このナメック星の空を覆いかねないほどの気だ。

一体何が起こっているのかはわからない。

 

「お前ら、大丈夫なら移動するぞ」

 

そう言って飛び立つ準備をする。

カカロットはナッパが背負っている。

 

「もたもたするなよ、どうなっても知らんぞ!!」

 

小さな気がこっちに向かっている。

フリーザの気は停滞している。

この隙を逃したら無理だ。

 

「しかし地球のドラゴンボールを復活させるのが目的とはな」

 

確かにそうしておけばわざわざナメック星にまではいかなくていいからな。

その理由であればあのナメック星人に関してはよみがえらせてもいいだろう。

ただ、今不老不死に対する気持ちが減っている。

奴が言っていたように強くさえなってきっかけを掴めたならば超サイヤ人となりフリーザの打倒は可能だ。

どちらにせよ、もはや激突は避けられない。

 

「おいおい、なんだこれはよ!?」

 

ターレスが大きな声を上げる。

確かにいきなりとんでもない状態になった。

空が真っ暗になってしまったのだ。

すると地球人の奴らも驚いた顔をしている。

ナメック星人のガキがこっちに来ていたがその顔は驚愕に染まっていた。

 

「これはドラゴンボールだ、フリーザが呼んだのか!?」

 

地球人がナメック星人のガキを見ながら叫ぶ。

何という事だ。

こうなったらもはや全宇宙はフリーザの天下だぞ。

するとナメック星人のガキがこういってきた。

 

「ナメック語でないと呼べないはずです、それにあいつらはそういったものを知っているとは思えません」

 

つまりナメック星人どもがしゃべられる独特の言語でないと意味がないのか。

それならばフリーザが人質に取ったという可能性は……

いや、フリーザの気はようやく向かい始めたところだ。

やたらでかい気が二つだが邪悪な感じはしない。

 

「おい、ナメック星人のガキ、ナメック語を喋れる異星人は存在するのか?」

 

俺は聞いてみる。

そうでもないとそいつが呼び出した以外考えられない。

すると頭を抱えながらガキは呟いた。

 

「……そう言えば昔にこの星に来た人が居たそうでその人には教えたようです」

 

居たそうという事はこいつは他人から聞いたってわけか。

思い出してさえくれればいいんだが……。

 

「あっ、ムーリ長老が言っていました、ガタバルという人が喋られると」

 

あいつ、生きていたのか!?

じゃあ、あいつがこの状況を作ったというわけか。

死んだふりなどサイヤ人としてあるまじき行為だが今回に関しては……

 

「いや、あれは本当に死んでいたんだろうな」

 

あいつがそんな器用な真似をしてだますことができるとは思えない。

計画をすべて見抜かれていたらしいからな。

おおよそ、本当に仮死状態になったものをフリーザが見逃したといった所だろう。

 

.

.

 

「これでピッコロを蘇らせてこの星に連れてきた、あと一つの願いはどうしたものか……」

 

俺は既に願いを叶えていた。

 

あの後、フリーザの宇宙船へ到着すると近くに何かを埋めた跡があった。

それを掘り起こしたら7つのドラゴンボールが出てきた。

まさか埋めたら気づかないとでも思ったのだろう、浅はかな奴が居たものだ。

さて、俺は呼び出すために必要な条件を知っている。

フリーザを出し抜ける最後の秘策と言っても過言ではなかった。

 

「『タッカラプト・ポッポルンガ・プピリットパロ』!!」

 

その条件はナメック語でいう事だ。

叫ぶと空は暗くなり大きな光の柱が出てくる。

それはたちまち竜の姿へと変わっていき、夢をかなえるための存在だと感じさせる。

 

「『ドラゴンボールを7つ集めしものよ、願いを3つまで叶えてやろう、言うがよい』」

 

その言葉を聞いて、すぐに全員の蘇生を願うも一人ずつとなっていた。

それならばピッコロしかもう蘇らせる候補はないだろう。

そのように言おうとしたとき、界王様という人から通じて俺にピッコロから伝えられた。

蘇った後に、フリーザとそして巨悪の気配。

その二つを倒すために転送しろと。

俺はやめた方がいいというが譲らないピッコロに折れる形でその願いを叶える。

 

そして3つ目を叶えようとしたとき……

 

「最長老様の気が消えた……!?」

 

それと同時にポルンガも消えて空も晴れる。

フリーザの気がこっちに向かっている。

それ以外の気もこっちに来ている。

一体誰がそんな事をしたんだ?

そんな事を考えていると恐ろしい速度でこっちに向かってくる気がある。

邪悪な気がそこにはあった。

 

「ブロリー、パラガスさん……フリーザよりも先に始末しないといけない奴が居ます」

 

俺がそう言って3人で向かっていく。

俺以外の二人も気は分からなくても本能で感じ取っているのであろう。

嫌悪感をむき出しにしたような顔で飛んでいる。

 

「『ネイビー・ティアーズ』!!」

 

女の声が聞こえて下から気功波が放たれる。

その攻撃を捌いて俺たちは降り立つ。

その攻撃の主を見た瞬間、俺は凍り付いた。

 

「母さん……いや、お前は!!」

 

母さんの顔をしていて妖艶な女性ではあるが気の種類が違う。

あの人とは真逆の気だ。

 

「ふふふっ……」

 

ほくそ笑んだその顔にはどこか邪悪さがにじみ出ている。

そして気を探ると驚愕の事実が明らかとなった。

 

「お前というのも語弊があったようだな……お前らという方がよかったようだ」

 

まさか、こんなことがあるとは……

技術班の試作段階の機械の仕様の代償か?

 

「まさか、二人が融合しただけではなく女になってしまうとはな、『カエンサ』と『ラブカ』よ」

 

そう言うと顔がさらに悍ましい笑みへと歪んでいく。

こいつら、もはや強さのために性別と一個体としての生存までも捨てやがったか。

サイヤ人の気だけではなくナメック星人の気まで感じられる。

種族としての誇りさえも完全に捨てた存在。

 

あの時、地球でどんなことがあっても消しておくべきだった。

後悔しても、もう遅い。

俺は睨み付けるようにして構える。

最悪の親子喧嘩であり、兄弟喧嘩が再び始まろうとしていた。




黒幕はあの親子にしました。
クウラの予定でしたが、クウラはまだどこでも出せますので保留にしました。
まぁ、速く退場願いたい人もいるでしょうけど、
こいつらまだまだ作者的には使いつぶせるのでどうするか考えてはいます。
何か指摘などありましたらお願いします。


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『蹂躙の女帝』

今回は相手の完全優勢のシーンが非常に多いです。
さらに犠牲者も出ます。


戦いが始まったのは互いに構えたその直後だった。

 

「はああっ!!」

 

風を切るようにすさまじい速度でいきなりこっちへ向かってくる。

二人が一つになったとだけあってすごいパワーアップをしている。

 

「だが……」

 

その攻撃を避けて足払いを仕掛ける。

相手もそれは回避をする。

こちらも四人のサイヤ人から授かった魂がある、やすやすとやられるわけにはいかない。

 

「こっちも負ける気はないぜ」

 

超サイヤ人になれるだろうが、今はこの状態で相手の手の内を探っておきたい。

長丁場になりそうであればすぐになってつぶすのみだ。

 

「かあっ!!」

 

気功波を撃ってくるがそれを避けて懐に潜り込む。

しかし懐に入った瞬間、ノーガードになる。

まるで殴ってくれという様に。

当然のごとく、顔面に蹴りを叩き込んでやった。

 

「貴様、仮にも母親の顔でしょうに!!」

 

なるほど、それで躊躇うと思ったのか。

中身がお前らだからそんなものは微塵も存在しない。

馬鹿すぎるだろ。

 

「言っておくけれど……」

 

相手がにやりと笑い、一気に力を噴出させる。

カカロットの界王拳のように増強する術を身に着けたか?

 

「今の力はさっきの五倍よ!!」

 

感覚的に4000万ほどと見受けた。

その5倍は2億。

俺の戦闘力はサイヤパワーを受け取ったことで飛躍的に上昇した。

地獄でも鍛錬を続けてきたサイヤ人たち。

その人たちがかつて落ちこぼれと揶揄された俺に希望を授けてくれた。

そう思うだけで力がみなぎる。

今の俺は1000万ほどの戦闘力。

だが疑似超サイヤ人の出力を今の5倍から一気に30倍に引き上げる。

 

「ならば俺もそれに相対しようか」

 

攻撃を受け止めて上空へ放り投げる。

そのまま上に位置するように追い越して頭へ強烈な一撃を放つ。

 

「『アングリー・フラミンゴ』!!」

 

踵落としの威力で地面へと落ちていく。

その姿めがけてさらに技を放つ。

 

「『コンドル・レイン』!!」

 

雨のように気弾が降り注ぐ。

それをかいくぐって上昇して攻撃を放つも……

 

「なっ!?」

 

こいつらは目で追う事しかできてはいない。

ブロリーぐらいなら騙されないのだが。

 

「残像だ、『エクスプロード・ウッドペッカー』!!」

 

その一撃で吹っ飛ぶ。

その瞬間、追撃の一撃を放つ。

 

「『アルバトロス・ブラスター』!!」

 

 

「ぬおおおおっ!!」

 

再び、気を膨れ上がらせて何とかこの一撃を弾き飛ばす。

だが、ここにきて大勢の気がこちらに向かっている事に気が付いた。

 

「やはり生きていたか……」

 

カカロットたちを振り切る形ですぐにここまでたどり着いたのがフリーザ。

その後にカカロットたちも到着する。

ピオーネはまだぴんぴんとしている。

カカロットとベジータの二人もそれほどやられていない。

他のメンバーはかなりのダメージを負っている。

ナッパやターブル、ターレスは額や手足から血を流したりしている。

スパーニやニアは目はしっかりととらえているが血を多く流したのがぐったりしている。

ピッコロと天津飯や地球人のメンツはサイヤ人たちが庇っていたのか軽傷で済んでいる。

 

「ガタバル、お前の相手はあいつか?」

 

ベジータ王子が死線を向けているので頷く。

フリーザは即座にその正体に気づき、攻撃を仕掛けていた。

 

「『ラブカ』と『カエンサ』の融合……すなわち『ラエンカ』といった所でしょうか」

 

命名をする余裕まであるらしい。

だが、今のフリーザとラエンカの差は大きい。

 

「お前も今の私には勝てない」

 

ラエンカが拳を掴んで放り投げる。

そのまま技を放つつもりか?

 

「『レクイエム・バズーカ』!!」

 

太い気弾を放っていくが、俺がその攻撃を遮る。

あいつが徐々に力を上げているようだが一体何を行うつもりだ?

 

「あいつらの目が気に食いません」

 

攻撃をむざむざと食らいそうになったあの瞬間、見下すような笑みを浮かべていた。

こいつら、自分たちの実力部分は皆無なのにこの自身や態度はなぜ生まれるのか。

 

「呉越同舟と行くか、フリーザ?」

 

俺は奴らを睨み付ける。

そして提案をフリーザに対して行う。

それを聞いてにやりと笑い構える。

 

「後ろから撃つんじゃあないぞ!」

 

当然だ。

憎い相手であるが、それ以上に不快感を出してきた相手。

それを倒すためには協力を惜しまない。

 

「「ハアッ!!」」

 

同時に左右からラッシュを放つ。

フリーザの方への意識が薄く、俺の攻撃に重点的に対処を行う。

 

「甘い!!」

 

即席のコンビネーションの綻びがあったのか。

俺とフリーザの頭を掴み打ち付け合わせる。

頭がちかちかするところに重い蹴りを叩き込まれて飛ばされる。

 

「ガタバル!!」

 

ターレスとニアが向かっていく。

しかし焼け石に水といった所。

あっという間に二人を掴みあげて上空を放り上げていく。

 

「『ボーダーレス・マーチ』!!」

 

超高速攻撃を放つ。

二人まとめて乱打を見舞わせる。

成す術の無いまま、二人は体を殴られて地面に叩きつけられる。

 

「ぐぐぐっ……」

「うう……」

 

二人が呻いているのに我慢できないのか、ターブルとスパーニ、ナッパさんが向かっていく。

俺も起き上がって攻撃を放っていく。

 

「わが娘と言えど……」

 

その言葉を言って回転していく。

くそっ、こいつとの実力差がひどすぎる……

スパーニを庇うために動くしかない。

 

「容赦はしない、『プレリュード・ハリケーン』!!」

 

竜巻のようになり気弾を縦横無尽に打ち続ける。

避けていくと解除してターブルとナッパさんが一撃を見舞われる。

 

「次はお前だ、『フィニート・デスティニー』!!」

 

螺旋状の槍を模した五本の気弾がスパーニに襲い掛かる。

俺が動こうとするよりも早く巨体が前に出ていく。

その巨体が気弾を放ち、たちまち総裁をしていく。

 

「動いてもいいよなぁ……?」

 

ブロリーが痺れを切らして参戦していた。

と言ってももうすでにボロボロのメンバー。

もっと速くに言っておけばよかったな。

 

「すまん……」

 

あいつの気がなぜか膨れ上がっている。

まさかあいつ……

 

「この高揚感!!、全能感!!、私の前ではお前らは塵芥のようだ!!」

 

喜びの極みに至っている。

すると奴の目の色が変わり始める。

こっちももはや様子見など言ってられない。

 

「かあああっ!!」

 

超サイヤ人になって奴に攻撃をする。

しかし次の瞬間、腕をへし折られて腹を貫かれて投げられる。

 

「がはっ……」

 

息も絶え絶えに何とか立ち上がる。

奴の髪の毛は金色に輝いていた。

 

もはや太刀打ちできない。

だが俺は一つの方法がある。

 

「ガタバル!!」

 

カカロットが俺に向かって豆を投げてくる。

地球では一度欠片を食ったが……

口に含んで噛んでいくとたちまち傷がいえていく。

凄い代物だな。

これなら戦線復帰もすぐにできる。

そんな事を思っているとピオーネがそばにいた。

 

「『あれ』で倒しちゃおう」

 

お前もあの方法に気が付いたか。

仕方ないよな。

誰かが時間を稼いでくれればいいんだが。

 

 

「よくも私の獲物を!!」

 

そんな事を思っていたら動く影が一つ。

フリーザが突っ込むが尻尾を引きちぎられて腕を折られて叩きつけられる。

 

「うぉおお!!」

 

さらにピッコロも突っ込む。

ネイルの魂がある以上、最長老様の仇だからな。

 

「何人寄って来ようと!!」

 

そう言おうとした瞬間に天津飯が頭に手をかざして気を高める。

目つぶしが通用するのか!?

 

「『太陽拳』!!」

 

ラエンカが目つぶしをされて一瞬目がくらむ。

ガードをするがピッコロが構える。

 

「『激烈魔弾』!!」

 

零距離で大きな気弾を食らう。

ぶすぶすと煙が上がるだけだ。

やはり実力差の大きさが響いている。

そんな事を思っていると……

 

「『ビッグバン・アタック』!!」

 

ベジータ王子が大技を追撃で放つ。

だがその風貌は大きく変わっていた。

超サイヤ人として覚醒してしまっていたのだ。

 

「貴様にやられていくあいつらを見ると怒りで壁を壊したようだ……」

 

ラエンカに対して構えて言う。

ラエンカは攻撃を食らっているのに苛立っているのか。

修羅のような形相になって気を膨れ上がらせる。

 

 

「腹いせにまずあなたにするわ!!」

 

その言葉を言った瞬間目の前から消えた。

一体誰が標的になった!?

 

 

「えっ……」

 

その声の主はクリリンだった。

踵落としでずたずたの形で左右に真っ二つにした。

その後、上下に分けてそのまま気弾で完全に塵にした。

 

「よっ、よくもクリリンを……」

 

カカロットの親友だった男。

それを無残にやられたのが最後の一押しとなったようだ。

カカロットも超サイヤ人として覚醒する。

 

「やるわよ!」

「あぁ!!」

 

二人の超サイヤ人が向かっていくも実力差が響いている。

ピッコロや天津飯も戦力としては数えられないし、スパーニやニアはブロリーが庇う形で戦線から離脱させている。

 

「「フュー……」」

 

二人並び、腕を伸ばしとことこと歩き始める。

 

「「ジョン!!」」

 

腕を互いに遠ざけるように拳を握った形で横に振る。

 

「「ハッ!!」」

 

最後に人差し指同士とくっつける。

完璧な成功だ。

二人の戦闘力が混ざり合い、意識も混ざり合う。

俺たちはガタバルでもなければピオーネでもない。

しいて言うのならば……

 

「俺はおまえを倒す者、『ガターネ』」

 

女性の肉体でありながら、言葉遣いは男。

この体に漲るパワー。

これならば……

 

「ハアッ!!」

 

ラエンカへ攻撃を仕掛ける。

体が軽い。

奴の眼前まですぐにたどり着いた。

 

「ぬっ!!」

 

虚を突かれる形になったのか。

何とか防ぐもブロリーの一撃を食らい、膝をつく。

その隙をついて横なぎに払われる。

 

「よくも見下してくれたな、この腐れ外道の猿が……ゆるさんぞ!!」

 

横なぎにした正体はフリーザだった。

見た目が随分と様変わりしている。

硬質化した皮膚が板のように張り付いている。

そして肘や膝からは棘が出ており、尻尾は鱗が生えて大きくなっていた。

さながらライトアーマーを纏った感じになっている。

顔もマスクのようなもので隠れている。

 

「随分と変わったな」

 

そう言って並び立つ。

カカロットとベジータ王子もあとは俺たちに任せると判断したらしい。

ブロリーとフリーザを除いた全員が離れていく。

 

だが、これが愚策だった。

ラエンカはその隙を狙い後ろからマシンガンのように大きな気弾を放つ。

着弾して大きな音を立てる。

それと同時に気が二つ消えてしまった。

煙が晴れた頃に二人の姿がなくなっていたからだ。

それが当たったのは天津飯とナッパだろう。

天津飯はピッコロと悟飯を、ナッパはターブルを庇った。

あいつらを生きて戻らせようと思っていたのに……

 

「ハッ!!」

 

ブロリーが飛び膝蹴りを放つ。

それを受け止めるが横からのフリーザの攻撃への対処が遅れる。

 

「ちっ!!」

 

その一瞬はあまりにも遅い。

俺は懐に潜り込みアッパーを放つ。

顎を跳ね上げたと同時にフリーザがデスビームを放つ。

それは頬を数める程度で終わったが、こちらに勝利の天秤が傾きつつはある。

 

「まずは貴方から倒させてもらうわ、『スタッカート・ネット』!!」

 

ブロリーとフリーザに網状の気弾を放つ。

二人とも食らってしまうがダメージはない。

分断のための一撃だろう。

 

「これで一対一だ」

 

こちらに視線を向けて構える。

分断しないと勝てないような相手ではないはずだがな。

 

「いいぞ、受けて立ってやる」

 

腕組みをした状態から緩やかに構える。

思考も混ざっているがこうもサイヤ人らしくない受けの姿勢とはな。

 

「はぁっ!!」

 

相手が上段蹴りを放つ。

それを前進で威力が乗る前に防ぐ。

そして掌底をそのまま顎へ放つ。

 

「ぐっ!!」

 

首を捻って顎でも比較的揺れにくい場所へ衝撃を逃がされる。

だが、その手を顎に当てたまま、片方の腕を太ももに回す。

体勢を崩させてそのまま脳天直下で膝に叩きつける。

 

「くぅ!!」

 

手を出してその一撃も防ぐが、休む暇を与えない。

脇腹へ攻撃を放つ。

それをスウェーバックで避けるも掠る。

 

「受けではなく一度の様子見から乱打の沼に引きずり込むスタイルだったか」

 

しかし超サイヤ人から徐々に力が増えている。

潜在能力がまだ残っていたか?

忌々しいやつだ。

 

「はっ!!」

 

相手がネットに捕らえられた二人に気弾を放つ。

動けない二人はもろに喰らうが堪えた様子はない。

 

「『クレッシェンド・チェーン』!!」

 

さらに束縛を行う。

全く……ここまでして多勢に無勢が嫌なのか?

 

「あなたのそのフュージョンが解けるまでは、あの二人は動かずにいてもらうわ」

 

こいつ、博識なナメック星人を取り込んだからか。

確かにこれが解けてしまうと詰まっていた差は意味をなさない。

上昇した値がどうなるかも未知数。

サイヤ人同士ではないから超サイヤ人にもなれない。

 

「そしてここからはいかなる手を使っても解けさせる」

 

そう言うと空中からとらえられていた二人ごと地上に移す。

それに続いて地上に降りようとした瞬間。

 

「『フォルテシモ・バスター』!!」

 

巨大な気弾をこっちにめがけて放つ。

回避をしていくと、今度は連射した気弾で弾幕を張られていた。

 

「はあああああっ!!」

 

全ての気弾を吹き飛ばして地上に降り立つと今度は地面に手を付けて爆散させる。

煙が上がってたちまち姿を消す。

目くらましからの攻撃かと思い、構えるも動いていない。

カウンター主体にすることで時間稼ぎでもするつもりか?

 

「はっ!!」

 

しばらくして、後ろから出てきた。

だがこれは残像だ。

俺には気でわかる。

 

「『アレグロ・ネイル』!!」

 

爪を見せるような仕草から、連続で薙いで行く。

気を宿した一撃だからこそ、地面をえぐり取り続ける。

 

「しっ!!」

 

その隙を狙って攻撃をするが、バックステップで射程圏内から外れていく。

ヒットアンドアウェイでやり過ごすつもりのようだ。

しかしそれは俺には通用しない。

何故ならば……

 

「どこに逃げようというんだ?」

 

瞬間移動があるからだ。

すぐに後ろに陣取り攻撃を放つ。

 

「それが狙いだったのよ!!」

 

こっちが業を煮やして攻撃するのを待っていたのか!?

こっちの腕を取り、投げられる。

 

「さて……この距離ならば外さない『デクレッシェンド・セパレート』!!」

 

螺旋の軌道を描いて俺に一撃を加える。

体内でとてつもない奇妙な感覚が生まれる。

まるで繋がっていた糸がほつれていくような……

 

「あの機械の原理をこの技に応用した……成功していたならば、貴方たちは時間制限より速く再び分かれる」

 

まさかフュージョン解除の技を持っていたとは……

速く決めないとまずい!!

 

「ハアッ!!」

 

こっちの攻撃を避けていく。

徐々に自分たちの感覚がずれていく。

当たるはずのタイミングでも紙一重で避けられる。

防御をしたはずがすり抜けて当てられる。

 

「くっ……」

 

精神的な焦りではなく、初めての奇妙な感覚。

それに対する拒否反応、嫌悪感からか。

じっとりと冷たい汗が伝う。

それが目に入る。

 

「隙あり、『クレッシェンド・チェーン』!!」

 

目元を拭った瞬間に鎖が巻き付こうとする。

それを気弾で壊して距離を詰める。

だが、目の前にあったのは立派な壁だった。

 

「『スペルボ・ウォール』、これで通さない」

「甘く見るな、『グラトニー・アルバトロス』!!」

 

時間稼ぎの壁のつもりだがそれであきらめるわけがない。

いつもより大きく、嘴を開けた状態のアホウドリの気弾。

その嘴は壁をたやすく破りそのまま相手を飲み込もうとする。

 

「喰らいやがれ、『エレクトリック・シュービル・マグナム』!!」

 

雷を纏ったハシビロコウが相手に向かって飛翔する。

直撃していき、煙が上がる。

これで一気にダメージを与えられたか?

 

「危ないわね……『ディナミコ・レギオン』」

 

しかし相手には直撃しておらず、何人もの複製が壁になって防いでいた。

囮の分身を気で生成したのか?

こいつ、気のコントロールが強化されていやがる……

そんな事を思っていると急に体が重くなる。

 

「どうやら成功していたようね、自分よりも実力が下でない限り効果がないでしょうけど……

結果はもう出るわ、カウントダウンをしましょう」

 

眼前に迫っている。

しかし、俺たちが分離しても問題はないと思えた。

自分たちがボロボロになったわけではない。

それに、今二人が鎖と網を引きちぎって開放されたからだ。

 

「3,2,1……」

 

身体が完全に分離していく感覚。

俺とピオーネが分かれていく。

視界は揺らいで俺の視線はピオーネをとらえる。

互いの戦闘力は上がっているというのを肌で感じる。

 

「0!!」

 

奴がそう言って邪悪な笑みを浮かべた瞬間……

魔法が解けるように俺たちは再び、二人に分かれてしまった。

俺たちは悔やむこともなく互いに頷き再び構えてこの邪悪な女帝へ戦いを挑むのだった。




まさかの対戦相手が特殊技を習得しているというパターン。
一応補足ですがフュージョン解除については
今回はまだガターネが成長しきれていなかったから通用したというだけです。
さらに実力差があれば通用しないという発言から変身倍率が高いポタラには原則的に効きません。
フリーザのオリジナル新変身はクウラをさらに軽めの外装にした感じです。
指摘などありましたら、よろしくお願いします


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『深い哀しみとともに』

今回でナメック星編のクライマックスが近づきます。
最後はどう着地点を作るかも考えています。


「はあああっ!!」

 

ピオーネとのフュージョンから分離はしたが力は上がっている。

これと超サイヤ人で何とか肉薄はできる。

 

「はあっ!!」

 

ピオーネも同様に突っ込んでいく。

左右からの攻めに腕を交差して待つラエンカ。

だがそれで対応はできない。

 

「甘い!!」

 

足元からフリーザの尻尾が絡めとる。

そして体勢が崩れたところに……

 

「『ギガンティック・ミーティア』!!」

 

ブロリーの大技が入る。

だが戦闘力の差が開いていたことが災いしたか。

煙が晴れた時に首根っこを掴まれる。

 

「ハッ!!」

 

俺がその隙に蹴りを叩き込もうとするが、ブロリーを放り投げてくる。

受け止めていく間に飛び上がって相手に大技を放たれる。

 

「『ナイトメア・オーケストラ』!!」

 

ありとあらゆる形状の気弾が乱れ撃たれる。

俺はブロリーを庇う形で受け止める。

一撃は軽いがこれらをやり過ごせばそのままこっちの攻勢に転じられる。

 

「ぬぉおおおお!!」

 

隙の無い状態ではあるが延々と受け続ける。

腕を交差して気を集中させる。

集中が途切れればそのまま雨霰のようなこの攻撃にさらされる。

 

「追撃だ、『エストロ・ビッグバン』!!」

 

攻撃を受け続ける最中、さらなる一撃が放たれる。

深紅色の巨大な気弾が迫ってくる。

構えて受け止めようとするが……。

 

「『デス・イクスパンション』!!」

 

それよりも速くフリーザが相殺の一撃を放つ。

気弾を包み込んで大爆発を起こす。

その隙にピオーネが羽交い絞めにして肉弾戦の大技を繰り出す。

 

「『リインカーネーション・ブレイク』!!」

 

地面に叩きつける瞬間に関節を外して逃れる。

いかなる手でも脱出能力が存在するとは。

 

「次はこっちの番!!」

 

そう言うとピオーネの両足を持ち上げて地面に向かって叩きつける。

その瞬間、俺が割って入りこめかみに蹴りを入れる。

 

「ぬっ!!」

 

その拍子に離すが次は俺の足を持ちそのままぐるぐるとぶん回す。

そしてそのままフリーザの方へ。

 

「受け止めるわけがないでしょう?」

 

そう言って避ける。

だがそれこそが罠だった。

 

「『ディスティント・ブレード』!!」

 

フリーザの尻尾を切り裂く。

ラディッツさんの技によく似ている。

 

「ぬあっ!!」

 

フリーザが痛みに呻いた隙に腹に一撃。

膝を顎に叩き込んでさらに追撃。

蹴りあげて空中に同時に飛び上がる。

 

「仕上げだ!!」

 

そして腕を肘打ちでへし折り、そのまま腹に手を当てて気を高める。

フリーザに身動きを取らせないように脇に折れた腕を挟む。

 

「『フィニート・デスティニー』!!」

 

両腕と両足。

腹部へと突き刺さり爆散する。

煙を上げて白目をむいてフリーザは墜落していった。

 

「まずは一人……次は」

 

ラエンカの視線がこっちには向かない。

次はブロリーか!?

 

「お前だ!!」

 

予想通りブロリーへ向かっていく。

俺も加勢へ向かう

 

「ぐぐぐっ……」

 

力比べでも戦闘力の差が出ているのか。

片膝をつきそうになる。

しかし戦闘センスの高さは折り紙付きだ。

力を抜いてそのまま相手が覆いかぶさるようになり体勢を崩したところで……

 

「ハア!!」

 

蹴りあげて、それと同時に上昇。

あっという間に追い越してそのまま再び地面へ叩きつける。

 

「『ブラスターメテオ』!!」

 

四方八方に気弾が放たれる。

転がって避ける相手に容赦なく第二波を放つ。

 

「『ギガンティックバスター』!!」

 

掘り起こすようにアッパーを浴びせる。

その後に回し蹴り。

そして吹っ飛んだところに走って蹴り上げようとした瞬間。

 

「『アンダンテ・フラッシュ』!!」

 

目晦ましでブロリーの攻撃態勢が一時的に解かれる。

視覚にどうしても意識が集中するからな。

これは嫌な感じがする。

そう思うが俺もまた、光を浴びてしまい助けに行けない。

 

「『インフェルボラート・ニードル』!!」

 

 

輪郭を取り戻した時。

俺の目が捉えていたのは、無防備に技を食らい腹部を貫かれたブロリーの姿だった。

 

「がはっ……」

 

俺は捉えた姿に驚愕を覚える。

まさか貫通する技とはいえブロリーの腹部が……

腹部を貫かれた状態で蹴り飛ばされる。

ブロリーはピクリとも動かなかった。

 

「二人目!!」

 

そう言ってさらに気炎を吐いてこっちを睨んでくる。

俺の方に視線を向けている。

 

「さ……次は」

 

構えて、獣のように舌なめずりをする。

次の瞬間目の前から消える。

こいつの考えそうなことは……

 

「そこだ!」

 

後ろからの攻撃を防ぐ。

その攻撃を取って放り投げる。

その放り投げた方向へ疾走していく。

そしてスライディングで体と地面の間に足を潜り込ませて……

 

「『クライベイビー・フラミンゴ』!!」

 

突き上げるように爪先を捻じ込んで蹴る。

叩きつけるのと対をなす系統の蹴り技。

 

「ぐあっ!!」

 

相手の背中をとらえた状態で放つ技。

受け身や対応を遅らせるために速度に重きを置いた技を放つ。

 

「『ファルコン・ツイン・クラッシュ』!!」

 

背中に隼の嘴が刺さる。

ラエンカは受け身を取れずに地面へ落ちていく。

 

「今度はこいつだ、『レイブンリヴェンジャー』!!」

 

地面に落ちた相手には容赦しない。

そのまま一気呵成に畳みかける。

 

「くっ」

 

転がって避けるが無駄だ。

広範囲の攻撃であればいい。

 

「『コンドル・レイン』!!」

 

広範囲に相手に降り注ぐ。

この状態から追撃の用意をする。

 

「上ならば……」

 

そう言って飛び上がる。

だがそれは的にしかならない。

気を高めて照準を合わせる。

相手も上空で体勢を整えて、両手を掲げる。

 

「『レドゥマンアンサンブル・メテオ』!!」

 

滅茶苦茶に大きな隕石を思わせるような気弾を二つ。

俺に向かって放つ。

いくらなんでも大味すぎやしないか?

 

「『アルバトロス・ブラスター』!!」

 

こちらも大技で対抗する。

直撃した時さりげない違和感を感じる。

これだけの大質量なのに、一つ一つの威力が若干弱いのだ。

一つを打ち消してもう一つの隕石へ向かっていく。

 

「もう一度……『レドゥマンアンサンブル・メテオ』!!」

 

連続の大技で俺は何が起こったのか悟る。

なるほど、そう言う事か。

最初の方は威力を抑えておく。

こちらの大技を誘発してその後に本来の威力を放つ。

相手にしてやられた。

 

「あっけなかったな、三人目!!」

 

作戦にはまってしまい、技で押し負けてしまったのだ。

実力の差を埋めきれずにこうなってしまうとはな。

隕石に飲まれていく。

そう思った最中、俺の前に影が割り込んでいた。

 

「大丈夫……?」

 

ピオーネが俺の目の前に立ちはだかり俺を庇っていた。

俺は目の前の光景が信じられなかった。

俺を庇わなければ、お前なら勝てたのに……

 

「体が勝手に動いたわ……泣いているの?」

 

頬に伝うのはなぜだろう。

俺は今の状況に茫然自失している。

 

「一番厄介な奴がバカな真似をして勝手に倒れてくれたか、これで残り一人!!」

 

ピオーネはそのまま膝をついて緩やかに倒れ込んだ。

ブロリーも腹を貫かれてしまった。

フリーザでさえ尻尾を斬られてしまい腕が折られている。

残ったのは俺一人。

誰もが気の反応がなくなっている。

 

「おそらく死んだな、やはりこうなったか」

 

死んでしまったのか?

集中して探ろうにも頭の中がぐしゃぐしゃでろくにまとまらない。

 

「貴様はしょせんだれ一人守れないのだ!!」

 

その言葉が胸に突き刺さる。

そうだ、俺は……

 

「情けねぇ……誰一人として守ることができねぇ……」

 

歯を食いしばり、今までの多胎を反芻する、

自分ができたことなど何があったのか。

 

「あの時も…」

 

1年前。

カカロットがやられた時も何もしてやれなかった。

 

「あの時も……」

 

地球では母さん、慕っていた兄貴分、よき理解者だった二人の友。

そいつらの窮地にも何もできず、目の前で失うだけだった。

 

「そして今この時も!!」

 

悲しみが胸を打つ。

こんなことにならずに済んでいたはずなのだ、そう……

 

「俺にもっと力があれば!!」

 

拳を地面に打ちつける。

握り拳から血が滴る。

雷が落ちていく。

 

「いきなり天変地異か?」

 

そのような事をラエンカがつぶやくが耳には入っていない。

そうしている間にも雷は落ち続ける。

そして……

 

「うぉおおおおおー!!」

 

雷が俺に落ちる。

しかしそれは天罰ではなく恵みともいうべきもの。

感情の爆発、そしてこの雷撃が引き金となり、俺の壁が取り払われたような感覚。

まさかこうも早くに……

 

「いったいなんなんだ、何が起こったー!!」

 

そう言ってラエンカが俺に一撃を加える。

その一撃の感触を確かめながらお返しに一撃を放つ。

 

「お前……本気で打ったのか?」

 

驚きの顔を浮かべるラエンカに言い放つ。

俺自身、ここまで差が開いて逆転をするなんて想像していなかった。

 

「お前の攻撃がくすぐったいぜ」

 

俺はこいつに勝てるという確信を抱き、敵を討つと心に決め構える。

待っていてくれ。

必ずお前らを蘇らせてみせる。

 

「これは宿敵の分!!」

 

腹に一撃を食らわせる。

相手がくの字に曲がるがまだ手を緩めない。

 

「これは弟分の恨み!!」

 

踵落としで地面へ叩きつける。

バウンドしたが照準は完璧だ。

 

「そしてこれが……」

 

気を高めて雷を纏わせる。

全てを込めた俺の一撃。

 

「愛した女の分だ!!」

 

新技を放つ。

雷を纏った『エミュー』が疾走する。

その一撃はまさに弾丸。

飲み込むことなくその勢いのまま相手を吹き飛ばす。

 

「がはっ……」

 

地面を何度も跳ね回っていく。

その起き上がろうとする頭を踏みつける。

 

「あの日も言ったがもう謝っても許さない……いや、命乞いをしても殺す」

 

足をどけて起き上がった瞬間に『アルバトロス・ブラスター』を叩き込む。

相手が再度吹き飛ばされるがその後ろに瞬間移動で回り込む。

 

「『ソウル・オブ・サイヤン』!!」

 

金色に変わった気弾を放つ。

その一撃は強く相手を戒めるように飲み込んでいく。

そのまま成層圏とまではいかない。

斜め上空へ飛んでいく。

その方向へ追尾して俺も向かう。

 

「うぉお!!」

 

吹っ飛んでいく相手を追いかけて地面に叩きつける。

弔いの連撃はまだ終わらない。

 

「『デスボール』!!」

 

まずはフリーザの一撃。

受け止めてはいるが出力が段違いだ。

 

「その程度で何とかなるものかぁ!!」

 

一気に力を振り絞り地面に着弾させる。

相手を飲み込んでいく。

 

「綺麗な花火とはいかなかったが……」

 

まだとどめを刺してはいない。

相手の首根っこを掴んで地面へ叩きつける。

逆の手で気弾を凝縮する。

 

「お前は間違いなく屑だった、合体をしようとも変わらなかった……しょせん、屑は屑なのだ!!」

 

徐々に気弾が膨張していく。

そしてそのまま地面を抉り取り……

 

「『ギガンティックミーティア』!!」

 

大爆発を引き起こす。

相手は煙を上げて何とか立ち上がろうとするがまだあと一撃残っている。

髪の毛を掴んで上空へ放り投げた。

 

「冥土の土産へ網膜に焼き付けろ、『エレクトリック・パレード』!!」

 

雷撃の光線が皮膚を焼き尽くすように、ラエンカを飲み込む。

確かな手ごたえがあった。

 

「ちっ、肉体強度は高いみたいだな」

 

手応えはあったがまだ眼光は爛々と輝いている。

ボロボロでも勝算があるのか?

 

「こうなれば相打ちしかない……」

 

そう言うと両手を重ね合わせてさっきの『レドゥマンアンサンブル・メテオ』を合わせてとてつもなく大きな気弾にする。

まさかこいつの狙いは……

 

「私もお前もこの星ごと終わればいい、『エグアーノ・シュルス』!!」

 

やっぱりそうだったか。

ナメック星を爆破させて道連れにする。

俺は構えて押し返す。

 

「でりゃあああああ!!」

 

それを避けるラエンカ。

その隙に後ろに回る。

零距離で俺の最大の技をくらわせる。

 

「貴様の失ったものを垣間見ろ、『ソウル・オブ・サイヤン』!!」

 

地面へ陥没していく。

死んでしまったか?

そう思うが笑い声が聞こえる。

どうやら生きてはいるみたいだ。

 

「くくくっ……」

 

やられすぎておかしくなったか?

状況判断もろくにできていないのだろう。

今からとどめを刺そうと構える。

 

「何がおかしい?」

 

だが聞かずにはいられない。

何か企みがあるのだろう。

それが末期の言葉になるのだから。

 

「地面に陥没している以上楽なものだなぁ、と思ったのよ」

 

そう言った瞬間、冷や汗が滴る。

まさか、わざと今の技を食らったのか!?

俺は髪の毛を掴んで引き上げようとする。

 

「『エグアーノ・シュルス』!!」

 

ナメック星の地面、地中奥深くにまで衝撃が走る。

ダメージの重さから、即座に爆破はしない。

しかし、時間の問題だ。

 

「これで引き分けだ、貴様の性格上、どうあがいてもな!!」

 

そう言われて苦笑いを返す。

ナメック星人やカカロット達を見捨てられない。

俺一人だけが瞬間移動をしても意味はないだろう。

 

「お前の死も決定的なことだがな」

 

構えて睨み付ける。

逃げる事の出来ない死を、そのまま星の塵になる運命。

しかし、それよりもいち早く土塊に返してやる。

 

.

.

.

 

「まだか、神よ!!」

 

俺はいきなり跳ね上がったガタバルの気を感じた瞬間、すぐにテレパシーを送った。

奴が激怒しているだろうとすぐに感じ取れたのだ。

おそらくピオーネとあのサイヤ人、そしてフリーザが『致命傷』を負ったのが原因だろう。

あいつの事だから、ショックや頭に血が上って死んだと錯覚しているかもしれない。

 

「ピッコロよ、今ポポが集まったとの連絡がきた!!」

 

よしっ、これで準備は整った。

地球のドラゴンボールで願う事は1つ。

このナメック星で失った命の復活。

それで最長老様も蘇る。

そしてナメック星のドラゴンボールでの願いは……

そんな事を考えていると地響きが起こり、いやな汗が噴き出る。

 

「この星からラエンカを除くすべての存在を地球に送る」

 

それがこのナメック星のドラゴンボールで行う最後の願いだ。

星が終わる。

そのイメージが鮮明に浮かび上がってしまったのだ。

 

「ピッコロよ、願いを言ってくれんか?」

 

神の奴が言ってくる。

うっかりしていたぜ。

 

「このナメック星で失われた命の蘇生だ」

 

異星間での蘇生は初めての試みだ。

上手くいけばいいのだが……

 

「分かった、待っておれ」

 

どうやらミスターポポに伝えたのだろう。

あとはこの空が暗くなるのを待つのみだ。

しばらくすると空が暗くなる。

異星間での生命の蘇生ができたようだな。

速かったのはどうやら失われた命そのものが少なかったからか。

 

「よしっ、次の願いだ」

 

俺は界王に飛ばして今の状況を説明する。

そして最長老に伝えてもらえるようにする。

これで準備は整った。

この星での戦いに終止符を打つ、最後の行動を始めるのだった。




切り札は安直ですが超サイヤ人2への覚醒です。
この変身で実力ナンバー1になりました。
怒りで1へ、哀しみで2へ。という形にしました。
人造人間編ではインフレを考えないとブロリー、ピオーネ、ガタバルの3名は強すぎて戦力外とかいうオチになるので気を付けます。
指摘などありましたらお願いします。


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『悪党は星を抱く』

今回でナメック星編は終わりです。
結構ダイジェストっぽくはなってしまいました。
最後になんか恋愛要素入れてます。


空が一気に暗くなる。

俺はこれがポルンガを呼び出したことだというのがわかっていた。

最長老様の復活である。

どうやら界王様はこいつを残してそれ以外を地球に移動させるようだが……

 

「変えてくれ、その願いを」

 

敵を討って終わらせる。

だから俺とこいつという願いにしてくれと言った。

今のこの俺を止めるすべはないと判断をしたのだろう。

近くにいるナメック星人に頼んでその願いを叶えさせることにしたようだ。

 

「これでお前はもう俺にやられる運命しか残っていない」

 

そう言ってさらに威圧感やプレッシャーを相手にぶつけるように構える。

絶対に逃さないという意味を込めて。

 

「いや、貴方は逃げられないまま星とともに命を散らすのよ」

 

そう言った瞬間に駆けていく。

言葉は強いが体がついていっていないのだろう。

僅かに反応が遅れる。

 

「しっ!!」

 

顔へ拳を放つ。

しゃがんで避けるが足がふらついている。

 

「かあっ!!」

 

足を薙ぐように強烈な下段蹴りを放つ。

それをカットするがよろめいている。

 

「『アングリー・フラミンゴ』!!」

 

よろめいた瞬間放たれた踵落としはまともに頭部に当たる。

そのまま前のめりに倒れ込もうとするが、それを許さないように追撃の一撃を繰り出した。

 

.

.

 

「デンデ、私だ」

 

僕は蘇られた最長老様より今の事をすべて伝えられる。

そして即座にポルンガの方向へと向かうように言われた。

ガタバルさんの願いと恨み。

それを考慮した内容だった。

 

それほどの距離はない。

そうこうしている間にポルンガの目の前にまでたどり着く。

 

「すー……」

 

失敗してはいけない。

その緊張をほぐすために深呼吸をして願いを言おうとする。

だが次の瞬間……

 

「悪いがその願いは俺が貰う」

 

僕を押しのける影があった。

そう言って速い言葉で願いをポルンガに言っていた。

それをポルンガが了承した時、僕はヒュンッという音とともに消えていた。

 

.

.

 

「だりゃあ!!」

倒れ込もうとしたときに突き上げるように腹部にアッパーを放つ。

浮き上がって体はクの字に折れ曲がる。

そのまま横蹴りでこめかみに打ち込む。

 

「うぁ……」

 

とめどない連撃で相手はもうボロボロになっている。

既に幾度の大技でグロッキーな状態だ。

しかしこんな悪党はもっと痛めつけてやらないとな、今の俺はそんな思いで容赦のない追撃を行っていた。

 

「『イーグル・フラップ』!!」

 

猛烈な砂利や岩を伴う突風を放って吹き飛ばす、そのまま速度で追い越し後ろに陣取る。

後頭部に膝蹴りを叩き込む。

 

「ぬあっ!?」

 

相手が前のめりに膝をつく。

もはや立ち上がるのも厳しいのだろう。

髪の毛を掴んで地面に叩きつけてやる。

 

「オラァ!!」

 

当然一度で終わらせはしない。

それこそ何度も叩きつける。

ぐったりとしたならばそのまま上空に持ち上げて最後の大技を放つ。

痛めつけてやりたいが反応がないとつまらないからな。

 

「『アルバトロス・ブラスター』!!」

 

アホウドリが悪鬼を飲み込んでいく。

そしてそのまま空高く成層圏を抜けてアホウドリは飛翔した。

地面に墜落していく。

流石にこれだけくらえば死んだだろうか?

反応も無ければピクリとも動かない。

塵にできればよかったんだがどうやら頑丈さとしぶとさは相変わらずのようだ。

 

「さて……帰るとするか」

 

敵討ちは終わっただろう。

そう思って、地球に戻るために瞬間移動をしようとしたが上手くできない。

 

「くっ、何故できないんだ!?」

 

原因を調べようとして自分の気を振り絞ってみるが気がほとんどない状態だった。

それならばできないのも仕方がない。

怒りに身を任せて大技を連続して放った代償か。

カカロットの元気玉のように気を集めても間に合うか?

物は試しだというように両手を空に向けようとしたその時。

 

「おい……」

 

そんな事を考えていると声が後ろの方から聞こえる。

声の方向へ振り向くと仏頂面で巨漢のナメック星人がそこにいた。

なぜこの場所にまだナメック星人がいるんだろうか?

ドラゴンボールの願いで俺とこいつ以外はこの星にもう居ないはず。

待てよ……

 

「願いを叶えたのはあんただったってわけか!?」

 

予想ではあるが願いを叶える役目は他の人だったはず。

しかし願いの内容が変わっていた。

だけどそれならば納得できる。

願い事を自分で言えば俺とラエンカ、そして自分の3人を残すことは不可能ではない。

 

「その通りだ」

 

そう言うとずしんと重々しい音を立てて徐々に近づいてくる。

こうしてみるとピッコロよりも大きい。

老いた見た目とはいえど威圧感や圧迫感はある。

一体どういった理由で残ったんだ?

 

「若い奴が怒りにかられるとこういう後先を考えない事態に陥るだろうと思ってな」

 

耳が痛い。

現状、その通りだしな。

相手に今までの恨みなども踏まえてやりすぎたと思っている。

確かにもう少し考えて技を放つべきだったと後悔している。

 

「この母星で余計な血を流させなかったお前に俺がしてやれることだ」

 

そう言って俺に触れて気を与える。

確かにこれで瞬間移動ができるようにはなったが……

どうしてわざわざ残ろうと思ったんだ?

 

「やつらにエネルギーを吸い殺されてから生き返った時に、あいつらに一泡吹かせようと思っていたんでな」

 

なるほど、あいつらが殺したのは最長老様だけではなかったのか。

そう言う理由だからわざと残ったのか。

俺を逃がすために、気を与えるために。

 

「じゃあ、掴まってくれれば……」

 

だが同じように地球には行ける事になった。

体に触っていればそのまま同じように瞬間移動ができる。

しかし相手はそれを拒否していた。

 

「仮にお前か俺に触れてしまうと奴も一緒に来る、それはやめておこう」

 

確かにそうなってしまうと厄介ごとになる。

しかし、そんな事も知っていたか。

本当にナメック星人の知識の多さには常に脱帽させられる。

 

「だから俺が……」

 

そう言って上にのしかかるようにして押さえつける。

老いていても気絶した相手を重量で押しつぶすようにすれば問題ないもんな。

 

「こいつを力の限り押さえつける、そして星とともにこの命を散らす」

 

そんな事をしなくても……

そんな気持ちが顔に出ていたのか、ナメック星人は俺を睨んで声を発する。

 

「お前のような若造に心配されるいわれはない、速く行け!!」

 

よく見ると徐々にあいつが押し返している。

俺は額に指をあててお辞儀を返し、地球へ瞬間移動をする。

 

.

.

 

「そうだ、それでいい」

 

あの若造が瞬間移動をしたと分かった時、俺は微笑んでいた。

善きことをして笑うなど遠い記憶の果てにある程度だったな。

 

「あいつらの血が流れたのはごくわずか、きっと蘇ってもいる」

 

今回の失われた命は地球とやらのドラゴンボールのおかげでどうにか解決したのだろう。

カタッツの子供はやはり天才だったな。

 

「兄者よ、これで良かっただろう?」

 

人は死ぬ間際、かつての事を思い出す。

それはこの俺とて例外ではない。

かつては互いに天才児と呼ばれたナメック星人の双子。

それがどこで狂ってしまったのだろう。

それはきっとあの選定の時だった。

 

「最長老に兄者がなってから、俺はナメック星人にあるまじき心に取りつかれた」

 

それは嫉妬という心だった。

お互いが今までその道のために歩み続けてきた。

才能も同じほどだった。

やってきた修行も一緒だったし、陰の努力も絶やす事は無かった。

なのになぜ俺ではないのか?

そのような気持ちが徐々に俺を飲み込み、俺は荒れていった。

 

「言いようのない兄者への羨望、そしてどうしようもない悲しみや苛立ちは暴力となった」

 

どいつもこいつも俺が最長老になれなかったことをなじり始めた。

そう言った奴を腕一本で、暴力で黙らせてきた。

むろん、その行為が兄者の顔を汚すことになるとはわかっていた。

でも一度狂った歯車は止められない。

行為を止められなければ、もしくは見過ごしていると言われれば、いかに素晴らしい資質を持つ兄者とて最長老の座を追われる。

俺はそうなればいいと望んでいた。

いつの間にか気持ちは歪んでいき、邪悪な心だと言われてしまった。

 

「兄者……俺が間違っていたんだな」

 

本当ならば、選定されたあの日に踏ん切りをつけて兄者を陰で支えていけばよかった。

それもせず、ナメック星人としての使命感から逃げ、そして母星の災害からも逃げてしまった。

 

「悪に狙われていると聞いた時、俺の心がざわめいた」

 

なぜかは知らない。

心の片隅のどこかで眠っていた、母星への思い。

兄者に対して償いたいという思い。

それが俺を突き動かしたのかもしれない。

 

「しかし、来てからは大した真似もできずにあの体たらく」

 

戦ったが手も足も出ずに吸収されてしまい、殺された。

そして蘇った時に俺がよみがえってから兄者の蘇生を感じ取った。

あいつに言った一泡吹かせたいという思いは、奴らに兄者が殺されたからというのも含まれている。

 

「だが、最後にこんな役回りができて良かった」

 

今回のこのナメック星の戦いにおける最大の功労者。

その男を最後に死なせずに済んだ。

善意からの行動は最初で最後という形になっただろうが、俺としては満足だ。

 

「段々と星が縮んできたな」

 

そう言うと俺は巨大化をしてさらにのしかかっていく。

一つ、とても大事なことをやり終えた。

その気持ちからか、俺は星がこの宇宙に輝く一つの花火になるその瞬間まで微笑みながらいられた。

 

.

.

 

「ふう……」

 

俺は瞬間移動で地球に無事につくことができた。

すると不意に背中を叩かれた。

叩いた相手は……

 

「まったく勝ち逃げは許しませんよ」

 

フリーザだった。

まさかお前がこんなリアクションを取るなんてな。

そんな事を考えていたら今度は髪の毛をぐしゃぐしゃとなでられる。

おいおい、力強すぎだぜ。

力加減を間違えたら脳震盪を起こしちまうよ。

 

「無事でよかったです」

 

黒髪に戻ったブロリーだった。

お前も無事だったか。

なら当然あいつも……

 

「お帰り」

 

ピオーネが何のリアクションもなく微笑みながら真正面から言ってくる。

ああ、帰ってきたよ。

その代わり一人が犠牲になったけど。

 

「お前ら3人も蘇ってよかったよ」

 

そう言うと3人とも笑い始めた。

一体なんでだ?

あの時確かに気は感じていなかったはずだ。

 

「実はあの時我々は致命傷だっただけで、蘇生されていませんよ」

 

何だ、そう言う事だったのか。

そう言うとデンデが手を上げている。

お前が治療してくれたのか。

 

「そうだったのか、それはよかった」

 

死んでしまったと思い、落胆していた。

それからの怒りで超サイヤ人の壁を超えた。

もし、冷静でいられたならばきっとその致命傷は分かったはず。

そうなっていれば壁を超えることはできなかっただろう。

 

「えぇ……ですから貴方の怒りの声は耳に届いていましたよ」

 

そう言われて俺は何を言っていたのかを思い出そうとする。

数分前の事だが怒りすぎていたり、戦いで痛めつけたいという思いが強すぎて、断片的にしかすぐに思い出せそうにない。

 

「宿敵の分と言って、デスボールを放ち相手を気絶一歩手前にまで追い詰めてましたねぇ」

 

あ、そんなこと言っていたな。

まず最初の一撃を叩き込んだんだった。

そして確か次は……

 

「弟分の恨みと言って俺の最大の技で相手はもはやダメージを抑えられず地面に伏せた状態になりました」

 

そうだったな。

段々記憶の糸がつながってきたぞ。

あれ、確か俺がピオーネの時の技を放つときに言っていたのは……

 

「そして私の技を放つときは……確か『愛した女』とか言ってたわよね?」

 

そう言った瞬間、蘇っていたクリリン、ニア、スパーニはにやにやと笑っている。

天津飯とピッコロは首をかしげる。

ターレスやナッパさんは声を出して笑っていた。

 

「あれって本当の事なの?」

 

真剣な目で言ってくる。

初めて会ったあの日から、相対したあの日から。

きっとずっとあの時から意識はしてきた。

はっきりと異性だという意識をしたのはあの地球での激戦。

多くの仲間を失っていてお前まで失いたくないと思ったあの時。

 

「冗談で女性を愛せるわけがない、本当の事だよ」

 

真っ向から肯定をする。

もう隠せるものでもない。

抑えられるものでもない。

死んだと思ったあの時、胸が張り裂けそうだった。

あんな思いは二度と味わいたくはない。

 

「恋愛の駆け引きは下手だね」

 

そう言うとそっぽを向く。

俺もそれに倣う様に背中を見せる。

きっとお互いの顔は今真っ赤なのだろう。

それを見られたくないからこそそっぽを向いたのだ。

 

「お前は俺の事が好きか?」

 

あえて逆に問う。

今、急がないといけないわけじゃない。

ただ、とても気になった。

人に聞いているのだから、俺も答えが欲しかった。

 

「寝ても覚めても君の事を意識していたよ、私も君の事が好きだ」

 

ピオーネも飾らずに肯定をする。

顔を紅く染めたうえでの告白なのだろう。

そう思うと、あの悲しみに重なってたまらなく愛しく思えた。

俺は後ろから近付いて抱きしめた。

離したくない、離しはしないという様に。

 

よくよく考えればこんな衆人環視の中での告白や抱擁。

これは恥ずかしすぎる。

カカロットの天下一武闘会での結婚宣言に近いものがある。

そんな事を考えているとベジータ王子が上空に気弾を撃つ。

そして握りつぶすことでまばゆい光を空に映し出した。

 

「へっ、綺麗な花火だ」

 

どうやら祝いの言葉の代わりに行動で示したのだろう。

それを皮切りにみんなが拍手や口笛を吹く。

なんだか騒々しいが俺の愛の告白がこの長い旅の終わりを思わせたのだった。




スラッグさんにはオリ設定として最長老の双子の弟という事にしています。
最初は純粋でしたが徐々に自分を抑えきれず邪悪へと変わっていくという形にしました。
指摘などありましたらお願いします。


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人造人間編
『戦いの後』


久々の日常回です。
最後に人造人間編の部分をちらりと書いています。
トランクスも言いましたがパラレルワールドみたいなものなので
全然今歩んでいる歴史とは違う感じに未来はねじれています。


ナメック星での戦いから全員の居住が決まる。

ベジータ王子とナッパさんはカプセルコーポレーションへ。

ターブルは近々地球に定住予定という事で一時的に宇宙を経由して戻ることになった。

当然、その行く方法は俺の瞬間移動である。

フリーザたちも同様に無くなった宇宙船を調達しなければいけない。

だからナメック星人とサイヤ人以外は地球にとどまらなかった。

 

「で……なんでみんなここに集まってんの?」

 

ところせましと女が3人、男が4人。

ターレス、パラガス、ブロリー。

ニア、スパーニ、ピオーネ。

俺を含めた7人が俺の家にいる。

広い家とはいえ密度がきついわ。

隣に家建てておくか?

 

「俺たち、地球の金がないし……」

 

おう、それだったら働けや。

お前らこのまま居候を許すと思うなよ。

 

「まず地球の構造をよく知らないからな」

 

それこそうろつけ。

お前ら、結構家にこもってばっかりじゃないか。

 

「とりあえず、バイト受かりました……」

 

何で狂戦士のはずのお前が一番まともに行動しているんだよ……。

ちなみに女性陣はすでに全員アルバイトか何か職についている。

あいつらの順応性の高さに驚くわ。

 

「とにかく働け」

 

そう言うととぼとぼと出ていく二人。

ブロリーは通帳を作るといったので同伴した。

とりあえず、地球の常識を学んで来い。

 

「それにしても、ドラゴンボールの使用あれだけして問題ないんですか?」

 

そうだよなぁ……

俺は頭を抱える。

生き返った奴らの事を考えれば桃白白とラディッツさん、母さんを蘇らせる。

その後、ナメック星のみんなを星に帰す。

それでいい。

だがこの短期間で3回もの使用。

いい加減にしないと恐ろしい事が起こってしまう。

 

「まあ、それでも今回は仕方ないか」

 

ため息をついてどうしたものかと悩む。

しかし解決策はどうしようもない。

しいて言うならば控えるしかないだろう。

 

「そう言えばカカロットは?」

 

そう言えばお前、戦いたがっていたもんな。

今やりあっても圧倒的にお前が勝ってしまうだろう。

運が悪ければあいつがそのまま死んでしまうぞ。

 

「ああ、あいつなら今頃は……」

 

.

.

 

オラは久々に悟飯と一緒に出掛けていた。

ウパやボラに会いに来た。

聖地カリンもカリン塔以外の場所は本当に久々だ。

 

「悟空さん!!」

 

ウパが出てくる。

それに続いてボラが出てくる。

 

「久しぶりだね」

 

そういって手を差し出してくる。

オラも手を出して握手をする。

 

「それでここに何のようで来たんだい?」

 

ボラが言ってくる。

確かに何の用事で来たのかは伝えていねえなぁ

 

「オラ達もおめえらのような生活をしばらくやってみようって思ってよ、悟飯もいるから久しぶりにな」

 

せっかくの休みだ。

戦いもしばらくないだろうし、地球の時の約束。

釣りでもしようって奴を思い出したからな。

 

「いいだろう、民族の衣装だ、着るがいい」

 

そう言って服を渡される。

昔はもっと少なかったイメージなんだけどなぁ

 

「いやー結構スースーすんなぁ」

 

今になって着てみると風通しがいい。

しかししっかり隠せている。

なかなかいいもんだ。

 

「こんなに軽装なの初めてです」

 

悟飯も道着ぐらいだもんな。

上半身に羽織るだけでズボンのみなんつう格好はしたことねえもんな。

 

「山でキノコや獣をとり、湖で魚をとる、そういった生活だ」

 

何だ、オラが昔山奥でやってた生活と一緒か。

悟飯もピッコロに修行つけてもらったのと変わらないと言っていた。

 

「まあ、やってみっか」

 

そう言ってオラは山に猪か熊を取りに行ってみる。

悟飯は湖で魚をとる予定だ。

しばらくは気持ちをさっぱりさせていかねーとな。

そうしねーとナメック星やサイヤ人で疲れちまっているからボロボロになったままじゃ何もできない。

チチにも理由は説明している。

オラたちは久しぶりの親子の時間を満喫するのだった。

 

.

.

 

「今回の戦いに置いて俺たちは無様だった」

 

そう言って俺はナッパとともに修行をしていた。

ガタバルの奴が口うるさく『働かざるもの食うべからず』というのでブルマの仕事を手伝っている。

とは言っても力仕事ぐらいのものだ。

時折、試作品の実験に付き合っている。

精密機械とか言うのは俺達には扱いがわからないからな。

壊してはいけないということぐらいだ。

 

「確かに手も足も出なかったな」

 

ナッパも頷く。

フリーザとの戦いの時点でお前は脱落していたからな。

 

「ヤツに頼み込んで修行をつけてもらうか……?」

 

ガタバルの奴に頼み込む。

いずれは奴を超えるために。

最強のサイヤ人であるためにな。

 

「あいつの修行って甘いんじゃないのか?」

 

それは無いだろう。

あの弱虫ラディッツをわずか1年でお前と互角になるまで引き上げた。

言ってみれば名伯楽。

あいつほど指導力がある奴もいない。

それにお前も体験したはずだぞ?

 

「重力室を作ってもらうしかないな」

 

そう言うと俺はブルマの父親に頼み込む。

カカロットより厳しい環境での修業。

300倍の重力室だ。

超サイヤ人をやらずに慣らしていけば基礎の戦闘力も上がる。

あいつ曰く壁を超えるには戦闘力の向上が必須らしいからな。

 

「慌てずに開発してくれとは言ったが……」

 

焦りがあるのは事実。

今度にあり得るフリーザとの戦い。

伝説の超サイヤ人と呼ばれる、俺達とは一線を画した存在。

あいつを超えてみたい。

そう言った思いが渦巻いている。

 

「今のところは今まで通りの修行をするしかないだろうぜ、ベジータ」

 

そう言ってナッパが模擬戦のために構える。

お前が仮に超サイヤ人になった時どんな見た目になるんだ?

 

「そうだな……」

 

俺も構えて容赦なくナッパへ攻撃を仕掛ける。

いずれ来る巨悪に備えて。

 

.

.

 

カリンでの生活も1週間が過ぎた。

初めこそリフレッシュや落ち着きはできたが徐々に慣れすぎていく。

十分お互い堪能したし、ウパやボラにいってカリンから去っていった。

その後、チチの言いつけで悟飯の勉強の邪魔をせず、オラは仕事を探すことになった。

結局仕事は見つけられず自給自足で多少は賄うってことで、家の近くの山を切り開いて農家をしようという話をつけた。

 

「お父さん、お母さんからお弁当です」

 

悟飯が弁当を届けてくれる。

気弾とかなしで木を切り裂いたりなんて手間がかかる。

チチからするとその木も立派なもんだからやめろって事らしい。

 

「しかしさすがにこれだけ広いとすぐには無理ですね」

 

まあな、亀仙人のじっちゃんの時はすでに畑があったもんな。

クリリンの気円斬使ったら早く済むんじゃねえか?

そう思ったオラは悟飯には黙ってもらって技を使ってみた。

 

「『気円斬』!!」

 

上部分と根っこに近い部分。

その箇所を落とすために2つ放つ。

 

ズバズバと音を立てて綺麗に切り揃えられていく。

倒れそうなやつを全部抱えて別の場所へと運ぶ。

あっという間に一区画が整地された。

それを久々に手を使って掘り起こしていく。

綺麗な形にはなるころにはお昼ご飯の時間だった。

 

「今日もうめえなあ」

 

あっという間に弁当箱を空っぽにしたオラはまた気円斬での整地をする。

このペースなら一週間もすりゃあ、畑の前の状態になるだろう。

あと、ガタバルから瞬間移動を教えてもらわないとな。

あれはオラもやってみたい。

絶対に役に立つだろうしな。

伸びをしながらにやりと笑った

 

.

.

 

あれから一か月以上の時間が過ぎていった。

結局ターレスは建築系統の仕事に就いた。

パラガスはカジノのディーラーをやっている。

二人ともどうやら上司に気に入られているようだ。

ブロリーは警備員で凶悪犯罪者を取り押さえている。

 

「ただなあ……」

 

あいつらが金を入れてくれるのはいいが家を買ってくれと思う。

厄介払いではないがいつまでこの家にいるつもりなんだ?

宇宙為替でそれなりの財産ぐらいあいつらも持っているだろ?

 

「憂鬱な顔をしてるね、お兄ちゃん」

 

スパーニが話しかけてくる。

スパーニは飲食店のウェイトレスで働いている。

整った顔立ちとかわいい仕草で、今やスパーニ目当てでくるお客さんもいるらしい。

 

「だって……母さんもここに入ったらさすがに寝るところがなあ」

 

そう、ドラゴンボールで蘇った後に住むにはもはや広さがな。

その為にも近くに家を建てるしかないだろう。

 

「女性宅、男性宅ってのも地味にきついぞ……」

 

家事担当が俺とピオーネ、そしてスパーニ。

男女にいるが、俺にも仕事がある。

残った男性陣、あいつらの家事の出来なさは異常だからな。

ブロリーは柄物の服と白い服を一緒に洗濯。

ターレスは皿を割りまくる。

パラガスは黒い炭のような物体を作りやがった。

 

「まだブロリーさんは……」

 

ブロリーのミスは解決策があるからな。

ネットにさえ入れれば問題はない。

他の2名に至っては力加減と調理のイロハの無さ。

マジで部下任せだったんだなとダメな方向で感心する。

 

「ニアもまだましな方だよ」

 

ニアは今動物園の飼育員をしている。

ニアがやってしまったのは掃除箇所の順番ミス。

床をやってから天井をしたぐらいのミスだ。

それは普通に言えば治せる範囲内。

だからあの男二人が完全に足を引っ張るだろう。

 

「ピオーネさんは完璧に近かったね」

 

色々な所で文化を学んできたのだろう。

俺ほどではないが家事全般が高い水準でできていた。

今、あいつは国王直々の警備を行っている。

俺よりも上の立場になってしまった。

今やこの地球で最強の軍隊を率いている俺をも超えている。

 

「あいつ、本当にどうやって自分を売り込んだんだろう?」

 

謎しかそこにはない。

俺の名前を出したのだろうか?

それならばなれる事もあるのだろう。

今の護衛よりもどう考えても格上だからな。

 

「普通に真正面から殴り込みにいって直訴をしたそうだよ」

 

あいつも地味に地球の常識が欠如していたか。

警察が出てくるレベルだぞ。

まあ、国王がフォローしたから何ともなかったんだろう。

 

「まあ、働いているし問題でもないからいいか」

 

そう言って今日の晩御飯を考える。

食費というかエンゲル係数が非常にやばい事になっている。

貯蓄があって本当に良かったと胸をなでおろしてる俺がいた。

 

.

.

 

「やっとだな」

 

あのナメック星の爆発から130日。

ようやくあの地球での戦いで失った命を生き返らせられる。

この間の3か月にある程度の整理は行っておいた。

あいつらが職を見つけて、有能なのか正社員に格上げされた。

そして広さを考えて家も別々になった。

当初の予定の隣ではなく1キロほど離している。

流石に物音も筒抜けというのは困るからだ。

部屋割りは俺とピオーネ、パラガス、ターレス。

ニア、スパーニ、ブロリー。

何とか家事は全員が平均レベルになった。

正直に言えば、部下に気弾を教えるよりしんどいと思えた。

ちなみに部下たちには気弾や舞空術についての説明は行っている。

と脱線したが……願いを叶えるか。

 

俺が今回願いを叶えるための言葉を発する。

ナメック星の時以来だな。

そのことをブルマさんに言ったら怒られた。

確かにナメック星にブルマさんがいかなくてもよかったもんな。

 

「『タッカラプト・ポッポルンガ・プピリットパロ』!!」

 

叫ぶと空は暗くなり大きな光の柱が出てくる。

それはたちまち竜の姿へと変わっていった。

 

「『ドラゴンボールを7つ集めしものよ、願いを3つまで叶えてやろう、言うがよい』」

 

相変わらずの口上だな。

今回はきっちり使って終わりにするぜ。

何回も使うのは嫌だからな。

 

「『まずは地球でサイヤ人の襲来によって死んだ、もしくは殺されたものの人数の上限を消してほしい』」

 

これで一度に皆を蘇らせられる。

これをしないと一人ずつで待たせるばっかりだからな。

 

「『分かった、その願いを叶えよう、今この瞬間から蘇生人数の上限はなくなった』」

 

時間経過はなく、ただ制約をポルンガの中ではずうという感じだった。

それじゃあ、2つ目の願いを叶えさせてもらおうか。

 

「『地球でサイヤ人の襲来によって死んだ、もしくは殺されたものをここで蘇生させてほしい』」

 

この願いで目的は達成できた。

あの時に死んでしまった奴ら全員問題なく可能なはずだ。

別に極悪人とか種族などの制限は設けていないからな。

 

「『分かった』」

 

そう言うとヒュンッという音とともに三人がここに現れる。

ラディッツさん。

桃白白。

ちなみに自爆していたが肉体と服はサービスで元通りにしてくれたようだ。

いい仕事するなぁ。

そして、母さんが現れた。

三人とも抱きつかれるか囲まれて叩かれる。

 

ナッパさんやベジータ王子はラディッツさんを。

天津飯と餃子は桃白白を。

母さんはスパーニが。

俺も祝福したいが、優先しないとな。

 

さて……最後の仕上げだな。

 

「『最後の願いだ、ナメック星人全員を居住可能な惑星への移動をしてほしい』」

 

それを言うと驚いていた。

一人ずつ蘇らせるから自分たちは後になるだろうと思っていたのだろう。

最長老様は分かっていたのか笑っていた。

 

「あなたは相変わらずですね」

 

最長老様が声をかけてくる。

優しい声色で包み込むように。

 

「また、いずれ会いましょう」

 

そう言うとみんなナメック星人が消えていく。

あれ、ナメック星人としか言っていないから……

 

ピッコロの方を見るがそんな事は無かった。

よかった、ポルンガがそこは空気を読んでくれたみたいだ。

 

「『では、さらばだ』」

 

石になっていき、ドラゴンボールもナメック星へと移動していった。

これですべての清算は終えた。

そんな事を考えていると、久々に頭の中にぼんやりとした未来が見える。

俺が誰かと戦っている未来。

その正体は……

俺はある一点の方へ視線を向けて呟いていた。

 

「山吹色の道着だったが……悟飯か?」

 

その呟きの答えは誰も知り得ることの無いもの。

新たなる戦いの予感がそこにはあった。




まさかの働かないサイヤ人が全員定職に就くという驚き。
メカフリーザ襲来はたぶんなくなってしまいました。
指摘、ありましたらお願いします。


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『サイヤの春到来、そして1年後』

今回で人造人間編の前置きをやっています。
なんか恋愛要素入れてます。



「あの幻覚は一体何だったんだ?」

 

山吹色の服という事はカカロットが武術を教えているのだろうか?

ピッコロでないあたりに驚きを隠せない。

それだけではない。

あの幻覚の時に見た悟飯の年齢はどう考えても今より一回りほど違う。

 

あれからそのことだけを考えていた。

皆が仕事に精を出し、俺たちは親子水入らずの時間を過ごしたり充実の日々を過ごしていた。

時にはベジータ王子と300倍の重力室で超サイヤ人の先を見ていく鍛錬。

あの時は感情が臨界点を超えていたからだが、今の俺がやったらあとで体が軋む。

基礎的な戦闘力の最低ラインがまだ足りていない可能性はある。

もしくは壁を見つめられればとっかかりもあるだろうが……。

 

「人と出歩いているときによそ見はよくないんじゃないかしら?」

 

そう言って耳を引っ張られる。

ピオーネと出かけているのだ。

二人とも仕事がなく、ましてや恋人同士になったというのにそう言った事がまるでない。

だから二人で出かけようという事になったのだ。

 

「すまない、どうしても平和すぎて……」

 

今まで激戦続きだったからな。

もしかしたらひょっこり敵が出てくるんじゃないかと。

 

「こうしていられるのも平和だからでしょ」

 

そう言って腕を絡ませてこっちに引き寄せる。

柔らかい感触だ。

戦っているときは気にならないが何気ないこんな時は意識してしまう。

女性だという事を。

少し緊張でドギマギする。

 

「あぁ、そうだな……」

 

俺を引っ張るように前に進んでいく。

緊張している俺を見て悪戯を成功させた小悪魔のような笑みを浮かべて。

 

「あと、当たっているんだが……」

 

胸が当たっている。

意図しているのか、偶然なのか。

こういった女性とのふれあいや行動はまるでない。

だからこそ混乱し続けている。

頭が正直パンクしそうなレベルだ。

 

「あら、当てているんだけれど?」

 

意図していたのか。

俺だって男だぞ?

そういう気持ちを催さないわけではない。

ましてや惚れた女。

ケダモノになっても仕方ないのではないだろうか?

もしかしたら俺を押さえつけられるから余裕を持っているのかもしれない。

 

「とにかく買い物をしようか……」

 

冷静さを何とか保ってピオーネを逆に引っ張る。

こうでもしないと頭が顎を揺らされたわけでもないのにグワングワンする。

 

「はいはい」

 

にやにやとした笑顔で俺に引っ張られている。

戦いから離れればこんな女性だったんだと改めて思う。

今まで恋を互いに知らなかった。

だからこそお互いのあるがままをさらけ出すように触れ合っていく。

それゆえにこんなにもギャップを感じる。

 

「今日の予定は喫茶店?」

 

ちなみにスパーニの所ではない。

スパーニの所に行くと迷惑をかけてしまう。

一度言ったときにあいつが『お兄ちゃん』と呼んだ瞬間、一気に視線がこっちに向いた。

その後の処理がてんてこまいだった。

見た目が全然違うから事情が複雑なんだよな。

 

「その後水族館だよ」

 

当初動物園とか言っていたが、そうなるとニアに会う。

知り合いの職場に行くのは気が引ける。

カプセルコーポレーションとはわけが違うからな。

 

「随分と考えたね」

 

そりゃあ考えるよ。

楽しく二人で過ごせるようにな。

一人だけ満足するようなのはよくない。

それならば一人でその場所に行けという話だ。

 

こうやって何度も今この時が平和であることへの感謝。

そして恋の成就の喜びをかみしめる。

しかし、そんなときまたもや未来が見える。

それは強い相手の襲来。

青い肌をした男女。

女は杖を持ってまるで魔法使いのような奴だった。

男は筋骨隆々としていて武人のような雰囲気を出している。

それ以外にも敵の影はあるようだ。

 

「平和の時はあと1年もないな」

 

そう俺は呟く。

だがせめて、今この時だけはそんな事も考えずにいさせてほしい。

そう思うと、今この瞬間が尊く感じる。

この人がたまらなく愛しく思える。

俺は思わず力を込めて、強く引き寄せて抱きしめる。

言葉での愛しているなど俺たちの間には要らない。

抱きしめるときの鼓動の速さが、熱が、言葉よりも雄弁に語っているはずだから。

抱きしめるという事よりも少し先を望んでいた。

人通りも多いこんな場所。

きっと見られてしまうだろう。

だからどうしたと言いたい、見られて困るようなことじゃない。

愛する者へのこの行為を恥ずかしいと思うなら、誓いさえもできないだろう。

俺はピオーネの顎をわずかに引き上げる。

その唇に己の唇を重ね合わせていた。

 

「はあっ……」

 

離すと赤い顔が目の前にある。

俺もきっと同じだろう。

お互いが言葉を発さない。

しかし分かっている事がある。

 

「ずるいわ……」

 

赤い顔のまま、ピオーネは呟く。

それは今言ったようにずるい真似をしたという事。

さっきのさっきまでからかっていたのに、不意打ちの口づけ。

そんな事をされるなんて予想だにしていなかった。

一気にからかっていたはずのピオーネは丸め込まれたようなものだ。

 

「これくらいは許してほしいね」

 

そんなことを言うと手を握るのをやめてさっさと歩いていく。

あれは拗ねてるな。

年上なんだからリードしていくはずだったのに、まんまと意地悪をし返されたのが嫌だったんだろう。

 

「俺を子ども扱いするけど十分子供っぽいところはあるよな……」

 

俺は呟くと急いで追いかける。

捕まえた時に、腕を絡ませられて再びリードをとられからかわれる。

この瞬間を噛みしめていく。

幸せをようやくこの年になっていっぱい感じられるのだと実感した。

 

.

.

 

俺とピオーネが恋人としての中を深めておよそ1年も経とうとした頃。

スパーニに俺は呼び出された。

 

「で……何かあったのか?」

 

そう言うともじもじし始めるスパーニ。

何か恥ずかしい事を言おうとしているようだが……

 

「お兄ちゃんは私に好きな人ができたって聞いたら笑う?」

 

いや、笑わないけど?

というより、お前の心を射止めた奴は誰なんだ?

それに最近はサイヤ人に恋愛ブームでも来ているのかと思うような状態だ。

 

ニアもラディッツさんが気になると言っていた。

仕事で今は動物園のショーをするときの調教師にラディッツさんが呼ばれている。

元々はペットショップのアルバイトや生態系等を調べていたところ知識豊富になったらしい。

そこに目を付けた動物園の園長がラディッツさんを引き抜いて調教師として就職させた。

すると、瞬く間にラディッツさんの言葉を動物たちは聞いてくれるので人気の調教師となった。

ショーは大人気らしい。

 

そういう事で同僚となり見ていくうちに、動物への触れ合い方。

人間関係。

時折自分に駆ける優しい言葉。

ひたむきな努力。

それらの要因でニアは気になる男性だと言っていた。

 

ナッパさんは桃白白の娘を紹介されていた。

お互い女っ気なし、貰い手なしの状態だったので独り身の辛さから話が合う。

あいつに娘がいたことが驚きだが。

なかなか人生経験豊富なのでこのままいくとお見合い結婚のような形になるだろうとは言っていた。

 

ターレスとパラガスについては、パラガスはもう二度とほかの女性を愛する気はないという事らしい。

指輪をささげた人が惑星ベジータの崩壊で死んだ。

その日から、異性を愛さずにまっすぐに進んできた。

このまま死ぬまでその道を歩むらしい。

 

ターレスは良い女性たちだが、俺の好みではないと言っていた。

あいつ自身、ナンパとかも特にしないからしばらくの間は春が到来しないだろう。

あいつ、結構マイナス部分が多いな。

 

……と脱線したが一体好きな人って誰だ?

俺がスパーニに聞くと頬に手を当てて恥ずかしそうにつぶやいた。

 

「ブロリーさん……」

 

……あいつか。

コミュニケーションはカカロット以外ならほとんど問題なし。

今まで同居期間もあったからその関連からか?

 

「あの人、喫茶店に何度も来てくれるんだけど一回、チンピラに絡まれちゃって……」

 

どうやら、その時に手を掴んでスパーニを守ったらしい。

庇った際に、広い頼れる背中。

そういう肉体面だけではなく、不器用ながら見せる優しさ。

そういったものに惹かれたのが始まり。

 

それからスパーニは休みの時にブロリーをお出かけに誘ったり、食事をお互いにしたりなどする。

初めこそ、お互いがうまくしゃべられずにいたのだが距離感が縮まっている。

ブロリー自体は意識していないのだろうと思っているらしい。

だから告白をする前に俺にブロリーがどういった奴かを相談したかったのだろう。

 

「言っとくがあいつは相当寡黙だからお前がひっぱっていかないとつらいぞ」

 

まずこれは同居生活内で知っているだろうが一応忠告。

あいつが何に興味を持つかは不明。

バイタリティが相当高い女性でないとあいつとのバランスは難しいだろう。

もしくはのんびり牧歌的に静かな生活を望むのならあのままでも問題はない。

 

「でも、出掛けた時は食べたいものとかどの服の方がいいかとか言ってたけど?」

 

そういったでかける場合のコミュニケーションではないんだよなぁ。

そうじゃなくて日常生活でもその状態を維持しないと意味がないんだよ。

意思疎通を図る際に難しいからな。

 

「まあ、お前が好きになった相手はよっぽどのことがない限りは俺は止めないよ」

 

自由だと思っているしな。

ただ、結婚とかになると少し気まずい。

 

「あいつに兄さんって呼ばれるようになるのか……」

 

今まで同居していた奴がいきなり義理の弟。

それは少し驚くよな。

今の発言は呟く程度なので聞こえてはいない。

 

「ありがとう、お兄ちゃん」

 

そう言われて俺は家から出る。

するとまたもや未来が見える。

地球に迫る宇宙船。

その形はフリーザの宇宙船によく似ている。

だがこの胸のざわめき……。

 

「どうやらフリーザでは無いようだな」

 

首をコキリと鳴らして空を見上げる。

距離にして考えるとあと2日ほどか。

信頼こそはあるがこれはどうせみんな感じるだろう。

 

「あの敵の影もどうやら同じタイミングのようだしな」

 

カカロットやブロリーにあっちは任せよう。

俺は未知の相手の中でもフリーザに関係がある方ではなく完全に正体不明の存在を叩かないといけない。

深呼吸をして来るべき的に心を向けていた。

 

.

.

 

「さて……行くか」

 

フリーザの宇宙船によく似た形態の宇宙船が地球に接近している。

それを知ったピオーネ達はすでに宇宙船に向かっていた。

俺は途中で気を消して別の方向へと向かう。

あっちにはベジータ王子が基礎戦闘力を上げているし、切り札のブロリーとピオーネもいる。

 

「だからお前らの相手を俺はできる」

 

そう言って俺は男の武人を睨み付ける。

肌は青く目つきはきつい。

未来視のおかげでこいつらの居場所は分かった。

女の方は気を感じ取れるがこいつ……

 

「お前、機械人間か?」

 

気を全く感じられない。

死人を使役するネクロマンサーならその可能性もあるが、こいつからはそう言った肉体を加工した独特の感じもない。

だからこそ、推測ではあるがその結論を導き出した。

 

「違う、俺は人造人間だ」

 

生体ベースで作り上げられたナノマシン等による強化された存在か。

偉いものを用意したな。

 

「何故、お前らはこの場所にいる?」

 

警戒心を緩めず質問を投げかける。

こいつらは今回の宇宙船の近くに居なかった。

あいつらの仲間ではないようだがどういった目的なのか不透明なままだ。

 

「調査よ、サイヤ人の強さのね」

 

そうは言うがこいつらからは悪意が見え隠れしている。

調査だけが目的ではない。

あの密集した場所へ連れて行ってはいけない。

 

「残念だが調査対象は俺一人だけだ、そしてその結果も虚しいものになる」

 

気を高めて臨戦態勢に入る。

いつでもこいつらに攻撃が仕掛けられるように。

 

「言ってくれるわね、ガタバル……」

 

なぜ、俺の名前を知っている?

調べていたのかもしれないが得体が知れないからこそ、ただ名前を把握しているだけでも不気味さがある。

 

「サイヤ人の強さを知っておく際にあのナメック星での戦いのあなたを見た以上、優先すべき対象だからよ」

 

そうかい。

そんな評価が貰えるとは光栄だな。

でもブロリーとピオーネを狙った方がよかったぜ。

 

「あなたの力を吸収して目的を手中に収める」

 

注射器のようなものを出す。

あれで俺の気を吸い取ろうって事か。

そんな隙を見出させるとでも思ったか?

 

「はあっ!!」

 

俺は超サイヤ人となる。

2になるよりは相手を観察したい。

素性が知れていない以上、探りたいからな。

 

「流石ね……ミラ行きなさい、久々の大物よ」

 

女が言った瞬間、男が向かってくる。

拳を受け止めるがこの重さ……。

忌々しいあいつらと同じレベルだな。

だが俺もあの日から強くなった。

今の俺ならばこの程度に怯みはしない。

 

「シャァアアア!!」

 

こっちはラッシュを仕掛ける。

右肘の一撃から始まる。

左足からの回し蹴り。

右足の前蹴り。

左手からの掌底。

 

「ふんっ……」

 

いずれの攻撃も避けていく。

残念だ。

どういった受け方をするのかを見たかったのだが。

足運びのベースは速度を重んじたスタイル。

クリリンか悟飯あたりだ。

打撃はベジータやナッパがベース。

技は俺がベースか?

 

「まだまだ完全な状態ではないけれど、超サイヤ人並を想定して作り上げたわ」

 

女が言ってくる。

細胞単位から作り上げているが、まだ学習段階を負えたり完全な調整を行っていないのか。

ただ出力が強いだけの兵器。

だが……

 

「お前を作った奴も大概だがお前の細胞の中にはピオーネも入っているんだろ?」

 

あの能力がないとしても圧倒的な戦闘センス。

あいつの細胞抜きに作っても、究極には至れないだろう。

 

「あぁ、トワが解明できないものがあるが入れておいたらしい」

 

あの能力についてか。

ピオーネ自体を支える精神、魂とも呼ぶべきものから成せるもの。

細胞だけを奪い取っても、もしくはギニュー隊長のように体を乗っ取ってもできない。

欠片程度に能力を発揮できてもあまり意味はなさない。

 

「さて…行くぞ!!」

 

避けられない速度で連打を叩き込む。

さっきより動き方が徐々に変わっているが関係ない。

どこに動くか視線と足運びでわかる。

300倍で特訓をしえ行く間に動きの無駄は減っていく。

 

「ちっ……」

 

頬に掠った腕を掴みに来るがその前に腕を引く。

そして大技を繰り出す。

 

「しゃおら!!」

 

倒れ込むような回し蹴りをこめかみに放つ。

反応速度もかなりのものだ。

俺の足を即座に掴む。

掴んだ瞬間、足へと伝わるパワー。

どうやらニアの腕力も持ち合わせているな。

 

「だが、その足は囮だ!!」

 

延髄蹴りを放つ。

見事に首に決まる。

相手は俺の足を放すが、頑丈な手応えでこいつのベースの全貌が明らかになる。

 

「頑丈さはブロリー、腕力はニア、脚力はカカロット、動きのベースは悟飯、打撃ベースはベジータ、投げ技ベースがピオーネ、気弾技のベースは俺」

 

随分と贅沢なラインナップを揃えたもんだ。

だが今の俺からすればその集まりを十分に発揮できうる能力ではない。

 

「やるな……だが!!」

 

頭に手を当てる。

しまった……その技に対する警戒を怠ってしまっていた!?

 

「『太陽拳』!!」

 

そう言ってまばゆい光が目を覆う。

女の方に気をつけないといけない。

 

「甘いな……」

 

その呟きとともに針が刺さる。

力を吸い取られる感覚だ。

身体を捻って何とか引っこ抜くが奪われた分は返ってこない。

 

「お前もあの注射針を持っていやがったか」

 

女だけが持っていると思ったがそうではなく両方が持っている。

その警戒を緩めてしまうとは。

幸せな気持ちに包まれすぎて少し勘が鈍ったか?

 

「だが……」

 

俺は仙豆をかじる。

俺も一つぐらいは貰っている。

だが次の瞬間、相手は二人とも並んでいた。

 

「任務は終わった、いずれまた会いましょう、貴方の力を使って強くなったミラとの戦いを楽しみにしていなさい」

 

そう言って杖を叩くと俺の瞬間移動のように目の前から消えた。

あいつら、本当に何者なんだ?

しかも様子見に近かったようで2を出す前に消えられた。

 

そんな事を考えていると上の岩山から足音が聞こえる。

段々と無駄はなく飛び跳ねるように最短距離でこっちに向かってきている。

俺はさっきのような油断を消すために、集中をして音の方向を感じ取る。

千里眼で方向を探るが足運びがうまいのか岩の砕ける感じと影しか目には映らない。

 

「だが……」

 

俺は構えて攻撃を待ち続ける。

すると風を切る音が聞こえた。

方向は後ろからだ。

いかなる時も風を切る音までは攻撃態勢で消すことはできない。

一体その相手は何者だ。

 

「はあっ!!」

 

攻撃を掴んで相手の方を見る。

するとそこにいたのは山吹色の服を着た男。

精悍な顔立ちをしているがこの顔はよく知っている。

 

「くっ、『魔閃光』!!」

 

握っていた拳を引き剥がし、超サイヤ人になって技を放つ。

俺はそれに対して超サイヤ人2を開放して……

 

「ぜりゃあああああ!!」

 

魔閃光を空へと弾き出す。

きっと宇宙にいって名もない小惑星に当たるだろう。

 

「今の技とその風貌で確信した、お前……」

 

相手は恨みを込めた視線で俺を見ている。

警戒しているし、構えも解いていない。

 

「未来の孫悟飯だな」

 

何故、どういった経緯で来たものかはわからない。

だが俺の未来視で見たその姿と変わらない。

これが新たなる戦いの始まりだと確信を抱いた。




スパーニの春はブロリーというとてつもないツーショット。
確か昔没案で桃白白の娘があったらしくそれを使用でナッパの春。
ラディッツさんはジョブチェンジしてニアとの春。
ターレスはザンギャあたりにしようと思います。

ゼノバースキャラがようやく登場。
今後どういった動きを彼女たちがしていくのか。

そして、クウラ襲来。
メカフリーザより厄介な二人できています。
次回はこの辺りを書く予定です。

最後にガタバルを襲撃してきたのは人造人間編の未来悟飯です。
原作で死んでいるはずの未来悟飯は生きています。
腕も健在という設定です。
そこらへんも書いていきます。

指摘有りましたらお願いします。


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『明かされる未来』

何故、前回の最後で悟飯が襲ってきたのかの解説。
そして人造人間との戦いの通告。
パラレルワールドについては後書きに書かせていただきます。



「くそっ!!」

 

悟飯が攻撃を仕掛けてくる。

超サイヤ人同士のぶつかり合い。

向こう、遠くでの激戦ではブロリーやピオーネは出ずにカカロットやベジータが戦っていた。

しかし、どこかもう一つ分断していたのか一つの気が大きく膨れ上がり、別の一つの気を完全に消した。

だが、その気の持ち主に心当たりはない。

 

「お前、単独で来たわけじゃないな?」

 

そう言うが聞く耳持たずに攻撃をしてくる。

苛烈なようだがさっきの男の方がまだ強い。

超サイヤ人同士で強いと思ったが基礎戦闘力に大きな差がある。

 

「ハッ!!」

 

手を前に出して気合で吹き飛ばす。

その吹っ飛んでいる間に構えて気を高める。

どう捌くか見ものだな。

 

「『アルバトロス・ブラスター』!!」

 

アホウドリが相手を啄もうとする。

悟飯は気を高めてあの技の構えをする。

 

「『か……めは……め波ー』!!」

 

ぶつかり合う。

どうやら全力を出しているようだが……

 

「ハアッ!!」

 

平然と打ち勝ってそのまま技を上空へと向かわせる。

俺との実力差を痛感したはずだろ?

 

「くそっ……」

 

 

恨みがましい目で俺を見ている。

一体、俺と悟飯の間に何が起こったというんだ?

 

.

.

 

オラ達が戦っているときに一人の男が乱入してきた。

フリーザの兄貴にオラとベジータがいい勝負を繰り広げている中におどれえた顔で来ていた。

でも、実力は凄くてフリーザの父親を遠くまで連れて行ってあっという間に倒した。

 

「さて……と」

 

オラはその気をたどって瞬間移動をする。

一体何者なのか聞かねえとな。

 

「驚きました、未来ではフリーザが来て、その後に悟空さんが戻ってくるはずだったのですが」

 

未来?

どういう事かわからねえぞ

そんな事を考えているとピオーネが瞬間移動でここに来た。

 

「それに見知らない顔がいますし」

 

そう言ってピオーネを見る。

未来ってところではこいついないんか?

 

「俺の事を全く知らないのでは困りますよね」

 

そう言えばそうだったな。

オラは全くおめえのこと知らねえぞ

 

「俺の名前はトランクス、なぜ超サイヤ人になれるのかというとベジータさんの息子だからです」

 

ベジータの子供かぁ……

あいつも結婚して子供できんのかぁ……

相手は誰だ?

 

「そして……なぜ来たのかというと」

 

そんな事を言った瞬間、遠くで音がした。

この気はガタバルだ。

それと戦ってる気はまさか!?

 

「おめえ、一人で来てねえな!!」

 

そう言うと俯く。

オラに都合が悪いんだろう。

そりゃそうだ。

もう一つの気は……

 

「悟飯と一緒に来てんだろ!!」

 

どうやってかは知らないけど悟飯と一緒に来ている。

そしてガタバルと戦っている。

 

「どうしても来ると言ってきかなくて……無理もないんです」

 

今のあいつからは考えられねえほどだな。

そんなにもガタバルと戦うために来ないといけない理由があったんか?

 

「これから3年後に来る激戦と悲劇を止めるためには……」

 

そうは言うが今のガタバルと悟飯じゃあ、ガタバルの方が圧倒的だぞ。

技に打ち勝っても上に逃がしたりして、あいつなりに殺さないようにしている。

 

「それはそうと3年後に何があるの?」

 

ピオーネがトランクスに聞く。

重要なことを伝えるために来たんだろうな。

気になるぞ。

 

「人造人間という存在に襲撃を受けるんです、開発者は元レッドリボン軍の科学者ドクターゲロ」

 

まだ、レッドリボン軍の奴が居たんか。

あいつらも懲りないやつらだな。

 

「その戦闘力は非常に高く少しずつ追い詰められています」

 

苦い顔をしてトランクスが言ってくる。

悔しいんだろうな。

 

「本来なら一網打尽にされてもおかしくないのですが、散開していたことや途中で追跡が止むなどという事があって……」

 

追跡が止むってことは第三者の味方がいるんじゃないか?

そう、ピオーネが聞くと……

 

「確かにユンザビット高地に一つ大きな宇宙船がありましたが……」

 

全く、そんなモノには心当たりがありません。

トランクスがそう言った。

 

「ベジータでもかなわねえのか?」

 

「はい、超サイヤ人になってもまだ奴らの方が上なんです……」

 

いつ、全滅してもおかしくありません。

そう、トランクスは言った。

現に追跡はやんでいたが、すでに天津飯と餃子。

ヤムチャに一番重要なピッコロがやられている。

残っているのはベジータとトランクス、悟飯にクリリン。

だけども、ここでオラの名前が出てこない。

 

「オラはどうなっちまったんだ?」

 

まさか、やられちまったのか?

強い奴と戦って死んだちゅうんならしゃあねえか

でも、トランクスの奴は首を振る。

 

「あなたは人造人間ではなくまもなくある男と戦います、そして殺される……」

 

それも一方的に。

最後にトランクスはそう付け加える。

一体オラは誰にやられちまうんだ?

 

「はい、その男の名は……」

 

.

.

 

あれからどれくらいの時間が経っただろう。

全ての攻撃は捌かれ、徐々に攻撃を受けてふらついている。

しかし悟飯はあきらめないでこっちに向かってくる。

 

「お前が……お前が……」

 

白目をむいたままぶんぶんと腕を振ってくる。

もはや息も絶え絶え。

ここまでの強い精神力に舌を巻く。

 

「ハッ!!」

 

腹部に一撃を加える。

気絶させるための一撃だ。

めり込んで内臓を揺さぶった手応えがある。

 

「ぜりゃあ!!」

 

しかし悟飯はこらえる。

攻撃が当たった瞬間にカウンターを合わせる。

一度喰らわないと意見から捨て身の方法、諸刃の剣だ。

だが、確信した。

こいつは戦士になっている。

何かしらの要因で心に変革が現れたのだろう。

 

「俺がお前を倒さないといけないんだぁ!!」

 

そう言って俺の頬を殴ってくる。

一気に爆発的に気が上がった。

そう言った所は未来も現在も変わらないか。

 

「喰らえ、『ファイナル・フラッシュ』!!」

 

これはベジータの技か?

技のレパートリーがかなり豊富だ。

 

「まだまだだぞ、『太陽拳』!!」

 

次は天津飯の技だ。

目くらましをされても気を感じ取れる以上問題はない。

しかし悟飯は気を消したのか、感じ取れない。

 

「時間稼ぎのためだ、この技のための……」

 

距離をとっていた。

視力が戻るまで仕掛けてこなかったのはあの技の為か。

 

「『魔貫光殺法』、受けてみろー!!」

 

ピッコロの技だ。

一転集中させて戦闘力の差を埋めたみたいだが……

 

「……喰らうとでも?」

 

両手で受け止めてそのまま二回目の宇宙空間への弾き出し。

超サイヤ人2にならなくてもこれだけの差があるんだ。

爆発的に上がって魔貫光殺法で底上げしても弾き出せるほどの差が。

 

「くっ……」

 

再び距離をとって攻撃のリズムをとろうとする。

流石に万策尽きたはずだ。

 

「なぜ、そこまで俺を恨む?」

 

勝てるはずの無い相手に食らいつくとはらしくない。

意固地になる理由は一体何なんだ?

そう思って質問すると悟飯は怒りを露わにして大声で叫んだ。

 

「お前が……お前がぁああああ!!」

 

両手を上げてでかい気弾を作りだす。

もはやそのような手しか打てないか。

 

「だが……」

 

2になって腹部に一撃を加える。

悟飯の気が萎む。

今の一撃で狙い通り気絶したようだ。

 

「俺を倒すにはそれでは届かない」

 

仮に直撃してもそれほどの痛手にはならなかっただろう。

そう言って腕に抱え上げる。

 

「とにかく、知らない気の奴にまで届けるか」

 

指を額に当てて瞬間移動をする。

どうやら、今のところピオーネやカカロットといるようだ。

 

 

.

.

 

「悟飯さん!!」

 

俺の前にいきなり現れたのは因縁の存在。

どうやら瞬間移動をあいつも持っている。

肩に抱えているのは悟飯さんだ。

 

「ほらよ」

 

俺に悟飯さんを渡してきた。

触れた時に体に温度があるのがわかる。

どうやら殺されてはいない。

しかもダメージ自体はひどくなく、流血もしてない。

 

因縁がある相手だから身構えていた。

だが目の前にいるこの人を見て疑問に思う。

殺すのが好きというわけではない。

こんなにも未来と乖離しているのか?

 

「あと……カカロット、薬だ」

 

そう言って悟空さんに薬を投げ渡す。

どうやらウィルス性の心臓病に聞く特効薬らしい。

パラレルワールドになっていたとしてもこの間の時間軸は自分たちの未来と繋がっている。

悟空さんはあのままなら病に伏せて死んでいたのかもしれない。

 

「こいつも普段は冷静だろうが、全然冷静になれちゃいない」

 

首を鳴らして悟飯さんを指さしながら言ってくる。

自分がなぜうらまれているのかを全く理解できてない。

まあ、そのことも話していけばいいだろう

 

.

.

 

「あなたの話を今しようとしたところですよ、ガタバルさん」

 

そうだったのか。

未来の俺はどんな人間なんだろうか・

 

「そして何故、悟飯さんに襲撃されたのか、それは……」

 

まあ、気になるよな。

現代ではそんなに険悪ではないし。

一体何があったのだろうか?

 

「あなたが悟空さんを殺したからです」

 

その一言は俺にとっては衝撃的だった。

だが、さっきの俺の行動からなぜそうなったのか導き出せる答えがある。

 

まもなくカカロットはウィルス性の心臓病にかかる。

その為、合間の時間を塗って薬をピタルに取りにいった。

だが、あくまで未来視は自分がかかわったことのある人間でないと意味がない。

 

つまりこれは仮説だが……

未来の俺はきっとカカロットの子守をしておらず、その後にカカロットにも会わなかった。

そして初対面で見た時に、その未来を見てしまったのか。

はたまた、いやな予感として感じ取ったのか。

病による死ではドラゴンボールも意味をなさない。

そして、なってからでは遅い。

だからこそやむを得ずに殺したのだろう。

 

「そうか、それならば無理もない」

 

だが言った所で理解はされない。

未来視などなった奴しかわからない。

 

「だが未来の俺とこっちの俺は別物だ」

 

全然違う未来を歩んでしまった自分。

心根が一緒であればそう言った理由だ。

もし違うのであれば……

 

「きっとサイヤ人の本能に目覚めてしまっている」

 

気ままにさすらい、気ままに星を蹂躙する。

そしてその暁に美味な食物をむさぼり、酒に酔う。

力を欲し続ける貪欲な存在。

その過程で救った星もあるだろうが。

 

「しかもそうなっていたらきっと……」

 

ピオーネやニアたちにはセッコ・オロで出会えていないだろう。

セッコ・オロへの定住はなく星を回り続けてその星を滅ぼす。

その生活のサイクルで強くなっていくのだから。

 

「あなたは確かに俺たちが未来で見たあなたとは違うかもしれません、しかし……」

 

どうやら警戒しているようだな。

全くこいつらは……

 

「仮にお前らの想像通りなら……お前らを見逃すとでも?」

 

ここで間違いなく消していただろう。

いきなり襲われて殺意を向けられる。

カナッサの時もそうだが過去の人間の行為を現代の奴にぶつけたり、未来で起こったことで過去の同一人物に攻撃するのはやめろ。

それはあくまでIFで生まれた存在だから。

 

カカロットたちの周りは今と変わらないが、俺という存在がいなくなっている事で考えられるのは……

あの二人が地球に来ないが強化されていない分、ラディッツさんでカカロットはたぶん死んでいる。

サイヤ人の戦い、助っ人がいないのでほとんど全滅だろう。

ナメック星、ターレスやターブルの助けなしで悍ましい激戦になる。

……あれ?

……より下種な状態で殺しているだけで、あいつらが本来殺すべき立場になる人間の仕事奪っているんじゃね?

 

「それもそうですね……」

 

消される可能性を考えたのか俺の言葉に頷く。

カカロットが教えてくれたがどうやらベジータの未来の子供らしい。

名前はトランクス。

下着のような名前という事は……

やめておこう、変にこじれるとこいつの存在は消えてなくなる。

 

「ちなみに聞くが、未来の俺について知っている事は?」

 

どうこうできるわけじゃない。

しかし、次の相手が何かしらの因果で自分自身だったなら情報が欲しい。

3年間の鍛錬にも身が入る。

 

「一つだけ確かなことがあります、俺や皆さんとは違う独自の全く知らない超サイヤ人を身に着けています」

 

なんかすごい嫌な予感がする。

髪の毛の色が金色じゃない場合は最悪の可能性がある。

仮にそれならばもはや勝ち目は万に一つもありはしない。

 

「それってもしかして6人のサイヤ人を介した変身?」

 

俺は念のために聞く。

心のどこかでそうではないことを願いながら。

 

「いえ、単独でしたが……」

 

少し安心して胸をなでおろす。

じゃあ、超サイヤ人4の事か?

いずれにせよ今の自分が単独で相手をするにはどうしようもない。

 

「それなら敵対しないことを望むしかないな」

 

そう言って俺は去っていく。

悟飯が起きての一悶着は面倒だ。

それに俺が余計な口を滑らせないとも限らない。

話の補填はピッコロたちがしてくれる。

 

「いいの、誤解を解かなくて?」

 

ピオーネが追いかけてくる。

俺はその言葉に頷いて返す。

実際、自分たちの目で見て、耳で聞いてそれで納得するしかない。

それは現代の俺がやるものではなく、あいつらが未来の俺に問いただす事。

 

「家に帰ったらあの青年が教えてくれたこと、貴方にも伝えるね」

 

どうやら重要な話があったらしい。

それは聞いておかないとな。

そう考えているとブロリーとスパーニが合流。

4人で家路につくのだった。




パラレルワールドは主に『ガタバルが一度も地球に来なかった場合』の世界です。
現代時空と違う歩み方をしたのでガタバル自身も性格が変わってしまっています。
その為、地球は原作時空をたどってしまい、人造人間編の前に地球に降り立って病に倒れる前に悟空を殺害。
そうすることでドラゴンボールを使用しても問題なく蘇生ができる。
なってからの殺害では蘇生の際に病が残ってしまう危険性もあるのでやむを得ない。
というところです。


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『未来の鼓動』

パラレルガタバルメイン回です。
ブレブレな心というキャラになっています。



「悪い夢を見たな……」

 

そう言って首を鳴らす。

俺がいるのは宇宙船用に生命運動を変えた機械惑星『ビッグゲテスター』の寝室。

それは非常に大きくかつて戦ったナメック星人の宇宙クルーザー以上だ。

そのナメック星人は俺との戦いの中で死んだ。

悪の塊なんぞ、更生するかしないかはわからない。

一度死んでみたり、己の意識を変える出来事がない限りは。

 

「おいおい、重役出勤か?」

 

出勤も何も予定としては待機でしょうが。

この人も生命反応でサイヤ人を確認したら拾う様に部下に指示を与えた結果、拾う事が出来た。

本機が上陸しなくても、小型の偵察機でできるからな。

 

「そう言ってやるな、顔色が悪いところを見ると何かしらあったんだろう」

 

もう一人の人がからかっている相手をいさめる。

この人も同じように死にそうだった所を回収した。

それ以外には離反しようとしていたり、ある星での生活を営んでいたもの。

北の銀河を荒らしまわっていたもの。

それで合わせて合計、自分を含めて11名。

そこに先兵になる人や頼りになる人のスカウト。

それらを繰り返すことで大所帯となった。

 

「とりあえずは昨日と同じように散開して奴らの動きを見張る事」

 

この星に人造人間という奴らが現れた。

気は感じ取れなくても肉体から発せられる静電気等の電磁波が普通の人間とは違う。

技術班の解析の結果、元は人間だった存在に有機質のナノマシンなどを使用。

そうすることで人間の機能を持った超人が生まれる。

その代わり、ナノマシン等の静電気がこのように感知される。

気がわからないなら、違う方向性のアプローチをかける。

 

「しかし、あれだけどうのこうの言われた奴が今や……」

 

そんなつぶやきが聞こえたがメインルームに入っていく。

もう、すでに指示を待っている人たちもいた。

 

「今日の任務は引き続き人造人間の監視だ、抑える際のメンバーは……」

 

人造人間を同時で二人抑えらえるメンバーとなると考えないといけない。

そう考えると……。

 

「俺は単独で中央都を」

 

俺ならば確実にあいつらを抑えることはできる。

二人がかりでも悠々と超サイヤ人でな。

 

「ナッパさんとターレスで東の都を、ブロリーはスパーニと一緒に西の都へ、ラディッツさんとターブルで南の都へ

各自、命の危険性を感じたら即座に離脱して俺に知らせろ」

 

基本的には人命を守るための戦い。

近づけさせなかったり、大猿になってでも食い止めるという算段だ。

戦闘力の差はあれど質量差で拘束すればいい。

修行を積んで強くなっているだろうから、ズタボロになりはしないだろう。

ブロリーと俺に頼るだけのメンツではない。

 

「人類崩壊を防ぐためにもこうするしかない、こっちのカバーの遅れで死んだ面子もいるんだからな」

 

ナメック星人のピッコロ。

三つ目族の天津飯。

地球人のヤムチャとチャオズ。

こちらが抑えるのが間に合わずに命を落とした奴もいる。

 

「しかしカカロットは……」

 

ラディッツさんが苦い顔で言ってくる。

俺だってできれば同族を殺したくはない。

しかしやむを得ない事情があった。

 

「あんな死相が出ている状態で放っておけば病に伏せて死んでいる」

 

カカロットを一目見た瞬間、危ないと思った。

ピタルに行って、間に合うかはわからない。

瞬間移動で渡すことはできてもカカロットが気を消しているとそうはならないからだ。

まだ、自分が速くに来ておけばこうはならなかったんだけどな。

 

「たとえ恨まれてもまだ……可能性を残しているだけましだ」

 

ナメック星のドラゴンボールを頼ることになるだろうが、殺すことにした。

今、安置室にて犠牲となった人々、全員の死体は厳重に保存している。

ゾンビや骨だけというのも問題だからな。

 

「さて……奴らに日課を行うか」

 

そう言って俺がゲテスターの機能で隠した部屋へと向かう。

そこには二人の男が横たわっていた。

唸りながら体をよじらせている。

まるで大きな芋虫だ。

 

「うぅ……」

 

呻きながらなんとかこちらに顔を向ける。

弱弱しい目だ。

見ていると爽快な気分になる。

 

「パワードレインをしたことでお前らの戦闘力は……」

 

ゲテスターでこいつらの戦闘力を俺が吸い取った。

顔面を蹴ってやる。

面白いように跳ね回る。

 

「すでに5しかないんだもんな」

 

もはやただの地球人と同じほどだ。

サイヤ人として威張ってたお前らがこうなると滑稽で仕方ない。

ビッグゲテスターを手に入れたのはティビグラを出て3年後。

それから2年かけてラディッツさんとナッパさん以外のサイヤ人たちを集めた。

その日から今までこのように虐げる毎日を行っている。

生かさず殺さず、自分たちがやってきたことの思いを知らせるように、執拗に痛めつける。

自殺もできないように設定された部屋だ。

 

 

「お前……」

 

何とか声を絞り出そうとする。

俺はそれに反応して、冷たい目で見降ろして近づいていく。

その目はまるで養豚所に並んでいる豚を見るような目だ。

 

「おいおい……お前らが散々教えてくれたことだ、『弱い奴は人にあらず』だろ?」

 

頭を掴んで引き上げる。

俺から座り込んでこいつらの目線に立つ事は無い。

何故ならば俺の方が強いからだ。

それこそドレインをする前からな。

 

『飛ばし子』になってから、さまざまの星を旅していた。

ティビグラで何年も過ごし、肉体がサイヤ人の限界を早い段階で超えた。

それこそ進化ともいう程に。

星の中心に至り、普通に動けるまで丸10年かけていた。

その為、星から出た時自分は本当に居るのかと不思議に思ったくらいだ。

この地球に来るまで鍛錬をし続けてきた。

その過程の中で超サイヤ人にも目覚めた。

己を苛め抜き、お前らの言葉を実践するために……

 

「喋ろうとしてんじゃあねえよぉ!!」

 

『弱肉強食』という一つの考えをな。

拳を顔面に叩き込んで歯をへし折る。

もう頬骨にも罅は入っている。

身体のありとあらゆる箇所に損傷がある。

ゲテスターの機能で死なない程度にはしている。

死なれてしまうとつまらないからな。

 

「実の兄弟や親にずっとこんなこと……この場面を見たらどう思う!?」

 

今まで自分たちはこっちを虐げてきたくせに……

立場が変わったらこんなことをほざいてくる。

俺は耳をほじくりながら聞いていた。

 

「きっとお前らが威張り散らしていたサイヤ人や、お前らを快く思わない人がこの姿を見たらこういうだろうぜ」

 

耳から指を抜いて、息を吹きかける。

下らんことを聞く気にもなれない。

お前らを何年も虐げてきたのは唯の暇つぶしだ。

ひと思いに殺さないのもお前らが面白おかしく、救いの声を上げるのを聞くため。

絶望に染まり涙を流した顔をさらに蹴り上げ、殴り、さらに醜くして笑うため。

その気になれば、象が蟻を踏み潰すように軽々とやれる。

 

「『いいぞ、もっとやれ!!』ってな」

 

だがそれでは地獄に落ちた、こいつらが威張り散らして虐げたサイヤ人たちは納得しない。

何倍もの責め苦を与えてやれというだろう。

こいつらに苛立たされたりした人間も、怒りを晴らしてくれと、恨みを込めて執行しろというだろう。

殺すよりもひどい生きながらの地獄を感じさせてやれと。

 

「悍ましい処刑方法もあるんだぜ」

 

そういって手に気を宿して刀のようにする。

今から行うのは生身の人間の肉を削いでいくという処刑方法。

その激痛たるや、悲惨なものだろう。

だが……

 

「お前ら相手には躊躇なんてない」

 

そう言って俺は腕を無造作に振り下ろす。

肉は削がれて血が出ている。

良いぐらいのぎりぎりだ。

噴き出すほど切ったらあとが面白くない。

 

「あがが……」

 

痛みでびくびくと震えている。

まだまだ、こんなものでは終わらせない。

ゲテスターに出血を止めておくように伝える。

 

「毎日、お前らの肉を削いでいってやる……」

 

手を構えたまま微笑む。

明日からもこの処刑が続くことだけを告げて部屋を出ていく。

次にやることは……

 

「ゲテスター、人間レベルを下げている惑星はあるか?」

 

人間レベルとは全宇宙を総合して算出される人類のレベル。

今、この宇宙船の搭乗者だけでも平均はそこそこある。

俺が強さ、知能の総合では5ほどある。

邪悪な行為をやめれば7にはなれそうだと言われた。

 

「『1に満たない惑星が11あります』」

 

そんなにもあるのか。

何年も繰り返すこの行為に終わりはない。

俺の望む理想郷が出来上がるまでは。

 

「そうか……その中でも人間レベルが個別で高い男女は抽出できたか?」

 

俺はどうせ0に近い数字だと思っている。

人間レベルは惑星の風土などに比例する。

ナメック星は発展こそない牧歌的な星だがその実高い、

つまり1にも満たない星なんて期待はできない。

 

「おおよそ5名ほどですね11の惑星の人口は1200でしたので、1%ほどでしょうか」

 

やはりその程度か……むしろ多い方だな。

今まで数える事、50の惑星から人間レベルが高い存在のみを選別。

それ以外を力に変え、その後の星は神聖樹の養分へする。

見事なまでに無駄がない。

何年間もの間、こうやって星の死を与え続けている。

 

「そいつらは生かして別の惑星に飛ばせ、あとは俺のエネルギーに変える」

 

それこそが俺の行う邪悪な行為。

弱い存在の淘汰、間引き。

知能レベルのみが突出して高い生命はいかしたりなどはするが両方見込みなし。

そう判断された存在を対象とする。

子供でも関係はない。

かつては自分がやられたこと。

本来ならやるべきではないが大きな野心のための行為。

 

「死ぬまでに第7宇宙のレベルを格段に上げたい」

 

この目で繁栄された宇宙が見たい。

その為に成長を望んでいれば1に満たない星が平均レベルを上げるまでどれだけの期間がかかる?

ましてや優れた星が衰退されないとどう断言できる?

俺が死んでからもそれが実現されるとは限らない。

 

「だからこそ摘み続ける、下げている存在を……」

 

それが実現されれば邪悪なこの行為も打ち止め。

これが終わった暁には、優れた文明、人、技術が溢れた銀河が出来上がる。

 

「礎の為ではあるが……」

 

きっと間違いなく地獄に落とされるだろう。

この行為を善と言えば、何が悪なのか問わねばならない。

今、自分が奴らにやっている処刑も受けよう。

死んでから償う日々が始まる。

 

『弱肉強食』こそが絶対の掟。

弱い存在には一瞥もせずに振り返らない。

だが実現した時は間違いなくこれだけは言える。

奴らの犠牲無くして繁栄はしなかったと。

 

「だが時に疑問がある」

 

母の俺の見る目が変わっている事に。

強いサイヤ人だから喜ぶかと思った。

だが悲しい奴を見る目で俺を見ている。

恐れを同時に抱いているような感じだ。

 

「強ければそれでいいんじゃないのか?」

 

あの目を見るたびに、自分の中にある絶対の掟が揺らいでいく。

同時に何が足りないのかを知りたい。

そんな時、コールが鳴り響く。

 

「どうやら動き出したようだ」

 

人造人間が向かったのは中央都。

ちょうど俺の担当区域だ。

俺はそれを追いかけていく。

ブロリーたちの影も見える。

無事、担当の場所へ向かったようだ。

 

「遅い奴らだな」

 

風を切り裂き、時には音を置き去りに。

最高速度で向かい、人造人間の眼前に俺は居た。

 

「あんたが邪魔をしている奴らの元締め?」

 

自分以外のメンバーが幾度となく邪魔をしている。

担当もバラバラに毎度の様に行っている。

それだからか、すごい偶然だが今までこいつらに俺は遭遇しなかった。

 

「お前ら…」

 

俺は質問に頷く。

それと同時に懐まで接近して、二人の頭を掴んで地面へ放り投げる。

着地をするときに地上に降り立って奴らの体勢が低い状態を確認して言い放つ。

 

「頭が高いぞ」

 

その言葉で怒りに燃えたのか、起きあがって二人がかりで攻撃を仕掛ける。

その程度でどうにかできるとでも思っているのか?

 

「殺してやるよ!!」

 

弱いのになんて無礼な物言いをする馬鹿どもだ。

超サイヤ人の状態になって圧倒するか……。

フルパワーを、特別に拝ませてやる。

 

「ハアッ!!」

 

俺の気は膨大なものに膨れ上がる。

髪の毛は茶色。

上半身は大猿の状態。

超サイヤ人と大猿を組み合わせたオリジナルの変身形態。

ズノーの星でかつて聞いた『超サイヤ人4』を細分化した状態ともいえる。

 

「さらに大盤振る舞いしてやるよ」

 

この先に行きついた超サイヤ人を見せてもいい。

そう思った俺はさらに力を開放する。

茶色だった髪や体毛はオレンジ色になっていた。

この気の奔流で実力差がわかるだろ?

 

「だから何?」

 

そう言って死角から蹴りを繰り出す。

まあ、二人がかりだからな。

背面と全面同時攻撃でも何でもどうぞ。

当然死角からの蹴りなんて全然問題ない。

当たれば勝てるだろう、しかし……

 

「甘いな!!」

 

千里眼で丸見えだ。

ヒョイっと軽々と避ける。

手をクイクイとして手招きをする。

 

「はあああああっ!!」

 

「なあ、もっと本気で来いよ……」

 

指一本ですべての攻撃を受け止める。

そして指をねじらせて腹部にめり込ませる。

 

「がっ……」

 

腹を抑えてうずくまったところを顎を指で突き上げる。

その威力で体が宙に浮いたところで……

 

「壁に当ててやる」

 

額を指で突いてやると、そのまま吹っ飛んでいき壁に当たってめり込んだ。

 

さて、これだけの差があるがどうするんだ?

指一本で女の方の人造人間を圧倒する。

逃げろとジェスチャーを送って促すが……

 

「ひいいいいい!!」

 

それよりも前に俺を化け物でも見るような目で見て怯えたような声を上げる。

それが始まりか俺から蜘蛛の子を散らしたように子供も大人も逃げていく。

助けたというのに……

 

「そらそら!!」

 

攻撃を放っていく男の人造人間。

それを片手ですべて捌いていく。

上空へ打ち上げられて人への被害は皆無。

だが、こちらに礼もせずにさっきの奴らと同じように怯えた目で逃げようとする。

 

「おい!!」

 

何のためにこんなことをしているんだ。

お前らを救うためだぞ?

なのに……

 

「助けてやったんだぞ、礼ぐらい言ったらどうなんだ!!」

 

その言葉にすくむも逃げていく。

こいつらは何様のつもりなんだ……

そのやり取りを見ていた人造人間たちが笑い始めた。

 

「何がおかしい!?」

 

何か笑える部分があったか?

普通に考えても、助けられたら礼を言うのが普通だ。

すくんで逃げだす方が失礼だろう。

 

「きっと、あんたの強さをみんな頼っているだけさ」

 

その言葉に腹が立つ。

強くなければ守れない。

強くあらねばならない、弱者であっては誰も見てはくれない。

そう信じてきた自分にとって強さを頼られているというのはこれ以上ない名誉だ。

それなのに笑って言われると、怒りがふつふつとわいてくる。

 

「黙れ!!」

 

俺はその口を閉じるように言う。

そんな事があるわけないと、ありったけの声で沈黙させようとする。

しかし男の方の人造人間が、女の方の言葉を引き継いで言葉を投げかける。

 

「誰もお前を慕ってなんていない」

 

その言葉に一瞬、目の前が真っ暗になる。

皆のあの信頼が嘘なわけがない。

あの慕っていた態度がまやかしなわけがない。

 

「黙れ、黙れ、黙れー!!」

 

俺は二人の言葉を否定するように攻撃を仕掛ける。

認めたくない思い。

あの目を見てしまった疑惑。

それが入り混じり不信感を抱かせて、きっぱりと否定ができない。

 

「さて、揶揄えたし帰るか……」

 

目の前で光を当てられた。

視力を一時的に奪われる。

視界が良好になるころには奴らは去っていた。

 

「俺が間違っていたのか……」

 

絶対の掟が、心の中で崩れ去っていく。

強ければいいんじゃあないのか?

どうすれば慕ってもらえる?

どうすれば……

そんな自問自答が延々と続く。

俺は呆然としたまま宇宙船に戻っていく。

 

「ゲテスター、今から今まで壊した星々を再生させるならば幾らほどかかる?」

 

計画を一度白紙にする。

奴らの言葉が胸の中のモヤモヤとして残っている。

俺の行動が間違いだったのかどうかを知るために己の志した繁栄すらも投げ捨てる。

犠牲になったやつらからすればいい迷惑だ。

 

「『戦闘力を還元さえしていただけたら2年ですべてを終わらせられます』」

 

星を創造するためのビッグバンを引き起こす気のエネルギーが必要だ。

それには俺の戦闘力をビッグゲテスターが放出して能動的に引き起こす。

そして星の大きさはそのビッグバンの力に比例する。

 

「どれほどの還元をすればいい?」

 

ただ、星を作るだけではない。

俺の野心の目的。

その状態まで星の環境を整えれば、あるいは……

 

「『あなたが望む水準を全ての星々の環境にあてはめたら現在の戦闘力の3分の1を失います』」

 

1億8000万から1億2000万か……。

惑星の環境が低い分、神聖樹の恩恵を受けられなかったから今まで手に入れた吸収以上の吐き出しだ。

だが……

 

「それで構わない、力は修行で手に入る」

 

あとは再生後、ナメック星に行って償うための行動をすればいい。

許されはしないだろう。

だが、知らないといけない。

どうすればあの目をされずに済むのか。

恐れられることなくいられるのかを。

 

「『人の上に立つこと、その事柄と最強の戦士であり続けることは必ずしも一致しておりません』」

 

そういう事か。

無敗で居たからこそ、『弱肉強食』の理念に憑りつかれていたからこそそういう考えに至らなかった。

強ければみんながついてくると思っていた。

 

「『知りたいのならば、時を越え出会うしかないでしょう』」

 

一体どうやって時を越える?

俺はタイムマシンを持ってはいないぞ。

まさかお前がそれをしてくれるのか?

 

「誰にだ?」

 

そうでなくても画期的なアイデアがあるのだろう。

もしくはそういったものを開発している奴から奪うか同乗するかだ。

同乗するのも重量オーバーにならないように体を小さくできる装置でも開発してもらおう。

ただ、一体時を越えたとして誰に出会うんだ?

 

 

「『過去の貴方……トランクスと孫悟飯が出会った時代の貴方にです』」

 

確かに己を見れば何かがわかる。

分からなくても収穫は必ずある。

ただ、あいつらがタイムマシンを持っていたのか。

とりあえず、俺たちの世界から何年前に飛んだのかをあいつらに聞いて乗せてもらおう。

 

「ゲテスター、俺はとりあえずみんなに打ち明けるよ……」

 

自分の償い、残酷な行為を。

ただ、その行為をして後悔したかと言われればそれは無い。

それが正しいと信じて疑わなかったから。

見つめなおすために、奴らの言葉を覆すため。

もう、あの目に罪悪感や不信感を抱かないために。

俺は過去の己に会う事を決意した。

 

.

.

 

だが俺は知らなかった。

自分が邪悪だと感じていたことは普通にブロリーたちもやっていたことだってことを……。

ターブルや母さん、スパーニは償うといえば頷いていたが逆にそれ以外は『えっ、お前普通だろ?』という反応だった。

俺は今までの自分の行動が善なのか悪なのかを信じられなくなっていた。




邪悪に書きたかったけど現代がいい奴すぎて下種野郎にしにくくなっている……
本来、破壊神や界王神が行う領分に首を突っ込んでいるというのがパラレルガタバルが行っていた惑星の間引き行為。
ターレス+クウラの手段という無駄のなさで力を底上げしていました。
原作の超ではビルス様は破壊をしない、界王神は低いのを長い目で見るというので放置と神らしいことができていないという。
さりげなく見ると惑星は戻すがあいつらの処刑はやめると言っていない模様。


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『この世で最も強い花嫁』

今回は日常回です。
最後に少し未来編があります。


あの未来から来た青年が話していた内容をピオーネから聞いた。

どうやら3年後、人造人間といった存在がこの地球で大暴れをするらしい。

その時に死んでしまった面子を聞いたが……

 

「そいつらに護衛でターレス達が着けばよくない?」

 

まだ超サイヤ人になれない分、基礎戦闘力を高めて一時的に界王拳で何とかするという方法になった。

ナッパさんもターブルもそれでいいらしい。

 

「あの3人も十分なれるだけの強さはあるのになぁ……」

 

あいつらが激怒するタイプではないからかな?

穏やかな生活に慣れつつあるが、時々は真剣に勝負がしたいとターレスとナッパはいっていた。

何か『王子』とか『さん』づけはやめろと言われたのでやめた。

 

「まあ、そんな事はこの事に比べればどうでもいいや」

 

俺はパンフレットを見ながら場所の検討をしていた。

お互いを思いあってもう1年。

いい加減、薬指につけるものが欲しいと言われた。

つまりは結婚である。

どこがいいかと聞くがそれほど場所は考慮していないらしい。

思い出に残るような形であれば問題ない。

 

「やはり大勢収容可能な施設か……」

 

まず最低条件はそれだ。

知っているだけでも関係者で100名近くはいる。

あっ……減らさないといけないじゃん。

ピッコロとかみんな来たくなくなるもんな。

施設は見直せるな、次の悩みは……

 

「スピーチできる奴皆無なんですけど……」

 

セッコ・オロの知り合いなんか10年以上あってないし、それ以外の奴ら最近だし。

ピッコロと桃白白当たりしかないわ。

最悪、悟飯に頼むかもしれん……

 

「もう、それなら誓いの言葉をしてそれが終わった後にどんちゃん騒ぎでもいいんじゃないかしら」

 

それもいいな。

むしろ人となりなんてみんな知っているのに今更スピーチとかで長所述べてお幸せにってのもおかしい。

これで悩みは解決した。

あとは日取りだな。

 

「厳しそうな面子は社会人組だな」

 

有給とれても仕事の量で左右されるブロリーとか除外したら、基本は山籠もりとか修行の放浪組ばっかり。

 

母さんは家に居るからこの場合の優先順位は誰だ?

 

「まずは妹さんでしょ」

 

そうだったな。

休みの都合はつけてもらわないと。

その基準でいけば……

 

「スパーニとブロリーはこっちでやるから悟飯やカカロットは任せていいか?」

 

一人で全員探すのは骨が折れる。

基本的に気を消したりしている奴らもいるしな。

集まっているナッパとベジータは楽だけどね。

 

「任せて」

 

そう言って二手に分かれる。

スパーニやブロリーのお昼休みを狙ってみる。

その後はナッパとベジータだな。

 

ウェイトレスでお昼休みになって裏口から出てきたスパーニを見つけたので声をかける。

舞空術を都市部で使えないから、足で辿り着くまで時間がかかる。

信号無視はしない、全速力で走らない。

この2つを守るだけで面倒だ。

 

「1か月後の日曜日に予定を開けておいてくれないか?」

 

用件を告げると首を傾げられる。

まあ、それは無理もない。

 

「分かったけど、どうしてなの?」

 

理解はしているがなぜなのか。

その説明はしていないからな。

 

「実はこの度、ピオーネとの結婚式でな、今こうやって招待状を送る前に告知というわけさ」

 

招待状を送れたらいいんだがよくよく考えると住所を知らない。

だから自らの足で知らせて招待状を手で渡す。

その際に返信先の記述があれば問題ないだろう。

 

「おめでとう、何が何でも行くね」

 

そういうと満面の笑みで祝福してくれた。

次はブロリーだな。

 

「おーい、ブロリー」

 

警備の休憩時間だったのか、水分補給をしているブロリーを見て降りる。

こっちの声に反応してこちらに声をかけてくる。

 

「珍しいですね、何かありましたか?」

 

確かに他人の仕事中にお邪魔することはめったに無い。

今回は急いで準備を早くできる状態にまで持っていきたいからな、申し訳ない。

 

「要件としてはこれだけなんだが、1か月後の日曜日に予定を開けておいてくれないか?」

 

用件を告げるときょとん顔になる。

まあ、それは無理もない。

いきなり言われてすべて理解したら大したもんだよ。

 

「どうしてですか?」

 

当然のように質問が飛んでくる。

俺は笑いながらブロリーに説明をする。

 

「実はピオーネとの結婚式をすることになったんだ、だから今こうやって招待状を送る前に告知するために廻っている」

 

「いい事ですね、絶対に開けておきます」

 

深々と礼をして言ってきた。

よしっ、これで二人。

とりあえずは全員に伝えて用意をしないとな。

 

ベジータとナッパはカプセルコーポレーション。

クリリンは武天老師様の家。

天津飯と餃子は旅に出ていたので瞬間移動。

桃白白はバーに居るので話を早くにつけて営業の邪魔をしないようにした。

 

「とにかくできる限りのメンツには声をかけた」

 

そう言うとピオーネもかぶらせずに声をかけることができたらしい。

そのお陰で思ったよりはいいペースではないかと思えた。

 

.

.

 

計画してから一ヶ月。

東奔西走しながら出席者を集めた。

四苦八苦して用意を整えた。

その甲斐もあって、知人も多いにぎやかな結婚式となった。

 

計画が始まってから危惧していたスピーチ。

しかしそこは年長者という事でラディッツさんが名乗り出てくれた。

小さい時から知っていたことなど長所を述べてくれた。

形は整い式は順調に進む。

お色直しが終わり、食事を行う。

そして最後の場面。

愛の誓いを立てる時。

お互いが中央に立って神父を見据える。

神父は書を開き、俺に視線を向け厳粛な態度、声で誓いの言葉を言い始める。

 

「病める時も、健やかなる時も

富める時も、貧しき時も

喜びの時も、悲しみの時も

汝はこの人を愛し、慈しみ、敬い、慰め、助け

その命が尽きはてて、死が二人を別つその時まで、真心を尽くすことを誓いますか?」

 

神父の言葉を一つ一つ噛みしめる。

そして俺は神父の言葉に頷き答える。

 

「誓います」

 

これで誓いの言葉は終えた。

次はピオーネだ。

 

「病める時も、健やかなる時も

富める時も、貧しき時も

喜びの時も、悲しみの時も

汝はこの人を愛し、慈しみ、敬い、慰め、助け

その命が尽きはてて、死が二人を別つその時まで、真心を尽くすことを誓いますか?」

 

ピオーネにも同じ内容の問いをする。

当然ピオーネの答えも……

 

「誓います」

 

満面の笑みで神父の問いに答える。

神父は両省の意味を込めて会釈で返す。

 

「よろしい、それでは指輪交換ののち、誓いの口づけを」

 

その言葉に従い、互いの薬指に指輪をはめる。

誓いの指輪は祝福するように輝いている。

ヴェールをとり、頬に手を当てる。

 

「動くなよ……」

 

頬に当てた手が震えるのを感じる。

歯が当たってしまいそうだ。

 

「ふふ……」

 

不敵な笑みを浮かべて逆の俺の頬にピオーネが手を添える。

そして次の瞬間グイッと引っ張られるような感覚があった。

 

「むぐっ!?」

 

唇が重なっていた。

こっちがするよりも速く口づけを交わす。

 

「……あの日の仕返しよ」

 

唇が離れた時、はにかんだような笑みで言われる。

祝福の声が聞こえてくる。

これで本当に夫婦になったんだな。

そう思うと胸が温かくなる。

……ただ、男性陣はじっとピオーネと俺を見ていた。

意味ありげな目線だがなんだ?

 

「子作りでも考えているんじゃないかしら」

 

小声でピオーネが言ってくる。

そう言えばそう言った慣例のようなものがあったな。

俺もピオーネとの子供は……

 

「何人欲しい?」

 

またもや小声で言ってくる。

まるでその目は豹や猛禽類のように鋭い。

こちらの欲望を受け止めてあげるから、正直に白状なさいという事なのだろう。

 

「天の授かりものだから、そこは……」

 

そう言ってはぐらかす。

性的な話も平然と言ってくる。

このままいくと常に主導権を握られてしまう。

危機感を覚えながら、自分が旦那として威厳のある振る舞いを心がけようと心に決めた。

 

.

.

 

未来のビッグゲテスターにて……

 

「これが『ミクロベルト』か?」

 

ビッグゲテスターの技術班に依頼していたものが届いた。

機能としては身体に装着してボタンを押したら小さくなる。

潜入にうってつけだ。

 

「はい」

 

こいつも渡すときに手が震えていて少し怯えている。

困ったな、あの人造人間たちに好き放題言われた日から部下の目を見てしまう。

気づいたことがあった、どうやら自分は下衆にはなれない性分だったらしい。

こういう目の奴らを処刑する気にもなれなかった。

自分に非があるのだと認めざるを得ない。

現代の自分はこれに輪をかけたお人よしなのだろうな。

自然とそう考えてしまう。

 

「ありがとう、休んでいてくれ」

 

労をねぎらう様にそう言うと、頷いて部屋から出ていく。

俺は出ていったのを確認すると早速使ってみる。

徐々に身体が縮んでいくのがわかる。

これは凄いもんだ。

 

「そしてこいつを押せば……」

 

一瞬で元のサイズに体が戻る。

急激なサイズの変わり方による不快感などもない。

これでトランクスたちのタイムマシンに乗れる。

とは言ってもビッグゲテスターの技術で作るのは不可能なのか?

 

「『非常に時間を要するでしょう、そういう意味では開発者は天才の域に達しております』」

 

そうなのか。

しかし、人類を守り続けていくしかないのももどかしい。

俺が壊すよりもあいつらの方が壊したいだろうし。

俺自身が、今の自分から変わるためのきっかけが見つからない。

何が足りないのかが全然見えてこない。

振る舞いを変えた程度ではみんなの視線が変わるわけではない。

 

「まあ、動物で言えばガゼルやシマウマにいきなりライオンが優しく近づいても不気味なだけだ」

 

しかも牙も爪もギラギラしてそうな状態のライオンだ。

そりゃどんなに怖いもの知らずな奴も怯える。

前に逃げられた時も、きっと一般人の奴らはあの人造人間があんなにやられていることから、今度は自分たちがやられるかもしれないと思った。

しかも明らかに自分たちを襲う化け物を遥かに凌駕した化け物に。

 

「……考えれば、本当にダメじゃないか?」

 

強いだけではだれもついてこない。

それはなぜなのか?

怖いのだろう。

いつ、自分たちにその強大な牙を向けないかというのを考えているのだ。

俺は別に暴君になるつもりはまるでないのだがな。

 

「少し街に出てみるか……」

 

皆に声をかけて出てみる。

街頭には娯楽のようなものがありきらびやかな装飾が施されている。

どうやら人造人間たちの襲撃はこっちではないようだ。

 

「しかし、これはなんだ?」

 

箱の中で人が動いている。

自分たちの宇宙船でもこういった通信はあるが……

誰かがカメラというものを持って撮っているのか?

 

「ふむふむ……」

 

どうやら動物を集めた映像のようだ。

ライオンを見ると、まるで今の自分だと思えた。

弱い動物では満足できなくなってしまった存在。

バッファローどころかおそらく象でも物足りないはずだ。

それこそ鯨という象よりも大きな海洋生物でもない限り。

そしてそのライオンにはどんな動物も寄り付かない。

本来強いオスに惹かれるはずのメスのライオンですらも……

 

「やはり、今の状態ってやばいんじゃ……」

 

まさか同族にも避けられているとか……

そんな事を考えると、母さんの目を思い出す。

そういう事か……

 

「どうしようかねぇ……」

 

気分転換のつもりが憂鬱な気持ちを抱えたまま、溜息をついてビッグゲテスターに戻る。

どうやら、俺が出掛けている間にトランクスと孫悟飯の会話を拾ったのか、現代に行く時間を知ったらしい。

3年後らしく、こちらの星の再建と償いが終わったころのようだ。

それまでは鍛錬をしておこう、今抱えているこのモヤモヤを吹き飛ばし、答えに近づくために。




ようやくガタバルの独身生活に終止符が打たれました。
恋愛ターンばかり続かせてすみません。
未来編、結局自分に下衆行為は無理と気づく。
そして徐々に自分のダメ人間具合に気づかされるという……

指摘有りましたらお願いします。


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『戦いの騒めきから聞こえる小さな鼓動』

今回は日常回です。
次回あたりから未来につながる残りの2年半の日々を書いていく予定です。



あの賑やかな結婚式からはや一ヶ月。

今、俺達はみんなから説教を受けている。

原因は一つだ。

 

「お前も年頃の男だから、とやかく言うつもりはないがな」

 

ベジータも激怒ではないが呆れたような感じだ。

ナッパもうんうんと頷いている。

 

「女性なんだから慎んでください!!」

 

ピオーネもスパーニに怒られている。

確かに結婚してからというものは……

 

「子作りを毎夜毎晩してすいません……」

 

お互いが異性の人間とそう言った関係になったことがない。

だから、タガが外れたようにお互いを深く求めあう。

全力で二人で愛し合う。

それこそ壊れるようにだ。

超サイヤ人2でやれと言われた時は冷や汗が出ていた。

 

「二人とも全力だから音も大きいし声も大きくて寝れません、昔を思い出します」

 

ブロリーが言ってくる。

すみません。

安眠を妨げる気はないんですけど……

 

「もう宇宙しかそういう営みできないんじゃない?」

 

いや……

流石にその為だけに宇宙行くのもやだよ。

 

「山奥でやればいいんじゃないのか?」

 

ピッコロがそういうとみんなはそれでいいじゃないかという話になる。

だが……

 

「そんな獣同然の扱いはやめてあげましょうよ……」

 

ターブルが止める。

防音設備と衝撃吸収材使えばいいじゃないですか。

皆それを聞いた瞬間、『その手があったか』という顔をしている。

 

「しかし、そんなに溺れてしまうものか?」

 

ターレスが言ってくるがそれについてはよく分からない。

俺たちは初めての男女同士だからな。

その全てが愛おしいし、全てが欲しい。

夜の生活においても、普段の日常においても。

全力で愛しあいたいのだ。

その結果がそちらにまで大迷惑をかけているのだがな。

大変面目ない。

 

「まあ、母さんは速く孫の顔見れるからいいかもしれないけど、節度は守ってよね」

 

スパーニはそう言って出ていく。

それに続くようにみんなが出ていく。

恥ずかしかった。

だが、俺は後悔していない。

ピオーネだって後悔の色を浮かべていない。

愛し合う男女が一つ屋根の下。

何があっても不思議じゃない。

 

「とりあえず改築しないとまた来るよね?」

 

それもそうだな。

建築業者……ターレスに頼めばいいか。

だがそんな考えは杞憂だった。

翌日、そう言ったパンフレットをもって業者仲間を連れてきたのだ。

 

「しばらくの間は住めなくなるからどこかで休んでおけ」

 

そう言われて家具系統はホイポイカプセルに入れて移住の準備をする。

カプセルコーポレーションで居候させてもらうか?

それともピッコロのように山籠もりか?

いずれにせよ、住む場所は問題じゃない。

定住前は平然とサバイバルをやってきた二人だからな。

 

「久しぶりに戻ってみない?」

 

そう言われてピンとくる。

セッコ・オロだな。

悪くはないが、今はどうなっているんだろう。

強い奴が居たらいいが居なかったらため息の一つでも出てしまいそうだ。

 

「まあ、それでもいいな」

 

どうせならカカロットも呼んでいくか。

あいつの事だから強い奴を見れると聞けば喜んでくるだろう。

 

.

.

 

数分後、俺とピオーネはカカロットとベジータ。

たまたま非番だったニアとラディッツもいる。

 

「とにかくいっておくが勝負できてもつまらないぞ」

 

ゴング鳴らされて途中で終わるからな。

そう言うとニアが首をかしげてそんなことなかったけどと言ってきた。

 

「団長の奴……」

 

きっと俺とピオーネだから安全策取りやがったな。

一回半壊にまでやってしまったから無理もないか。

 

「さ……行くぞ」

 

そう言って瞬間移動をする。

目の間に現れたのはきらびやかな装飾を施して発展している闘技場だった。

見る限り頑丈な建材にしているな。

どこかで見た光沢が観客席の素材になっている。

 

「ラコイタの体と同じ素材か」

 

もしくはそれに近いもの。

これで心置きなく気弾系の技は使えるな。

しかしこれだけの良質な素材……

確実にスター選手がいるな。

 

「おっ、あいつすげえなあ」

 

どうやら想像していたよりもレベルが上がっているようだ。

女性ランキングと男性ランキング、総合ランキング。

歴代連勝記録なども掲載されている。

 

「お前らの試合が載っているぞ」

 

そんな過去の遺産なんてどうだというんだ。

今やりあったらこの星ごと崩れちまう。

戦闘力が1万を超えていただけで騒がれた時代。

でも今はそれではランキング最下位にも劣ってしまうだろう。

 

「今や廃れたものでしょうね……」

 

そう言って声をかけてきたのは三つ目族の男。

こんな映像よりはるかに強くなっているからな。

参考にすらならないさ。

 

「もう、昔ほどの動きなんてできないだろうな」

 

そう言ってもう一人出てきたのはフリーザによく似た見た目の奴。

一族のようなものだろう。

こいつの気の大きさでわかる。

 

「あなたが今のランキング一位?」

 

ピオーネも気づいたようで声をかける。

そんなピオーネを見て一言。

 

「老婆が何か言っていますねぇ」

 

その瞬間、空気が凍った。

厳密に凍ったわけではなく気温が著しく下がったという意味なのだが。

ピオーネの年齢はまだ30そこそこだ。

地球人目線で言ってもまだまだ老婆には程遠い。

 

「もう一度言ってもらえないかしら?」

 

こめかみをひくひくさせて訂正を願うピオーネ。

しかしその願いは無情なものだった。

 

「ああ、言ってやろう、年甲斐もない恰好なんぞしてまるでインバ……!?」

 

三つ目族がその男に変わって言葉を放つ。

奴の言葉に俺がピオーネよりも速く反応する。

その先の言葉を言わせない。

その強い意志を持って喉へ地獄突きを放っていた。

ピオーネよりも俺が先に切れてしまった。

 

「お前ら二人とも倒してやるよ」

 

その言葉にピオーネも頷く。

俺たち二人の逆鱗に触れたんだ。

死んでも文句は言えないぞ。

 

.

.

 

申請した結果、すぐに試合は決まった。

昔の人たちも、奴らに引退に追い込まれたりなどでかなりいら立ちは募っているらしい。

再起不能になるまでやられた奴もいれば半ば奴隷扱いをされた人もいる。

団長が黙認しているのはあくまで興業であり、壊されたのはロートル勢。

引退しようか迷っていた状態でのこれなので何とも言えないようだ。

 

「『驚くなかれ、公での試合は実に10年ぶりとなります』」

 

ニアの時は試合ではなかったからな。

しかし実況もいい奴になったな。

皆盛り上がっている。

 

「『グレイテスト・ブライド』ピオーネ!!」

 

『最も強い花嫁』とは……

その通りだが、この二つ名自分でつけたのか。

 

「『バトルスピリッツ・モンスター』ガタバル!!」

 

腕を上げて歓声に応える。

この感覚、本当に久しぶりだ。

 

「対するのはチャンピオン『絶対零度』フリズド!!」

 

大方『フリーズドライ』から来ているな。

フリーザと同じ種族のようだが、まるで見た目はエクレアのようだ。

これがどれだけの変身を残しているかで戦い方も変わる。

 

「そして、現在ランキング1位『不逃眼』トライ!!」

 

千里眼か何かができるのか?

悪いが俺たち二人ともお前の二つ名と同じ行為はできるぞ。

まあ、1位とチャンピオンのコンビなら多少は面白いんだろうな。

 

「お前ら、覚悟はできてるか?」

 

お互いが敵に向かって構える。

全力の構え。

俺は一本拳を。

ピオーネは手のひらを上下に向けた構え。

 

ゴングはない。

じりじりと互いが相手の制空圏を狭める。

タッグだからというコンビネーションはいらない。

目の前にいる生意気なガキをつぶす。

その共通認識があれば十分だった。

 

「はっ!!」

 

空気を切り裂いて一撃を繰り出す。

その一撃を軽くいなしたが、その腕を掴んで延髄切りを繰り出す。

それを頭を下げてかわすが、挟み込んでぶんなげる。

 

「はいっ、まずコンビネーション一発」

 

投げた相手が背中を打ち付けた瞬間、ピオーネのジャンピングニーが腹部に直撃。

相手の腹部の奥までしっかりと膝がめり込んでいる。

 

「がはっ!!」

 

腹部から空気をすべて吐き出すかのように声を上げる。

肋骨いってなければ大したタフさだが……

まだ超サイヤ人にもなっていないし、ウォーミングアップでこれとは舐めすぎじゃないの?

 

「『電光石火の早業でフリズド選手にダメージ』!!」

 

こんなもんじゃあ俺達にはかなわないぜ。

さて……三つ目族の男がピオーネに向かっていっているがどうなるかな。

 

「ハアッ!!」

 

脇を閉めていいパンチだがまだ甘い。

低い体勢をとったピオーネが瞬く間に水面蹴りを放って転ばせる。

即座にジャイアントスイングの形をとる。

 

「それ!!」

 

斜め上に投げていく。

あっちにも舞空術はあるだろうがこっちには瞬間移動がある。

 

「あぁ、最高のポジションだ」

 

先回りをして相手を見る。

角度といい滞空といい最高の投げだ。

 

「なぜならここが……」

 

右斜めに立って気を高める。

当然、技の準備だ。

 

「えぇ、この場所が……」

 

ピオーネは左斜めに立っている。

いつもよりも気を高めている。

むろん俺もだ。

このガキどもは逆鱗に触れたのだから。

 

「「『技を叩き込みやすい場所』!!」」

 

そう言って二人とも同じ技の構えをする。

一度やってみたいと言っていたからな。

 

「かーめーはーめー……」

 

俺は下に構えて放つときに突き上げるように出す系統だ。

何年ぶりに放つだろうな。

……天下一武闘会でまだ天津飯が悪いころだったからな。

およそ10年ぶりぐらいだ。

 

「かーめーはーめー……」

 

ピオーネは目でとらえて常に照準を合わせる形。

まるでスナイパーのような構え方だ。

 

「「『波ー』!!」」

 

息を合わせて放った二つの気の渦は一つにまとまる。

普段の技よりも凄まじい速度で相手に迫っていく。

相手を飲み込んでいき、壁にぶつかった分は雲散霧消する。

だが煙の大きさがその威力の高さを物語っていた。

 

「『トライ選手、ダウーン!! 凄まじい一撃だー!!』」

 

煙が晴れてくる。

その中に影が一つ。

相手はゼハゼハと荒い息を吐きながらも立っている。

どうにか致命傷は逃れたようだが……

 

「戦えるのかい?」

 

ピオーネが冷たい声で言う。

それだけダメージが大きいという事。

これ以上やったら死ぬぞと暗に示している。

 

「舐めるな……」

 

そう言うと気があふれ出す。

どうやら変身形態があったようだが……

 

「残念だ……」

 

俺とピオーネの全力には届かない。

というよりも四妖拳使った天津飯みたいなものだし……。

もう少し、大掛かりなものかと思っていたんだけどな。

フリーザの変身の後だとどうも物足りない。

 

「こっちを見ろぉ!!」

 

フリズドが攻撃を仕掛けてくる。

変身を終えているようだがその見た目は異質だった。

岩のような肌。

体躯は縮んで幼年期の悟飯ぐらい。

尻尾だけが不釣り合いに大きく、肘からは長いとげが飛び出ている。

 

「ぬぅ……」

 

その一撃を受けるが見た目の岩のように重い。

さらに素早さはさらに上がり、受け止めた次の瞬間、脇腹に攻撃が来る。

 

「質量を無視した動きだな」

 

腕を掴んで放り投げる。

岩の重さを感じるが、動きは機敏。

だが……

 

「これで問題はない!!」

 

超サイヤ人で対応する。

2になるほどの脅威ではない。

ピオーネの相手もどうやらそのレベルにまで気を開放した。

腕は6本。

目が側頭部と後頭部に3つ目が増えて合計12の瞳。

 

「これが純粋な三つ目族の力なのね……」

 

ピオーネの呟きが聞こえる。

しかしそんな事を言っても圧倒的な姿に変わりはない。

だが、ここに俺との違いがあった。

……気の毒だな、あいつ。

 

「トライが押されているだと!?」

 

全ての攻撃に対してカウンターを合わせる。

掴もうとすればゆらりと揺れてその腕をとり空気投げ。

全力で相手に対して対峙をする。

かつての絶対女王の姿を見せつけていた。

 

……情けないな。

強くなったからと言ってどこかで格下だと思い込んでいた。

未来の孫悟飯の時も、今も。

だけども初めてあの姿を見て美しいと思った頃はただ純粋に…

 

「全力で戦っていたはずだ…」

 

俺は超サイヤ人2になる。

目の前にいる相手を全力で倒すために。

 

「なっ、体中から電撃が出ている!?」

 

驚いている暇はない。

俺は懐に入り込んで腹部へ一撃を入れる。

ズシリとした手ごたえ。

岩のような肌さえも関係なく内臓を揺さぶった感覚。

 

「げはっ……」

 

クの字に曲がった相手からは息を吐き出す声と悶絶の顔。

その顔に向かって踵落としを振り下ろす。

顔面に踵がめり込み、そのままバウンドして闘技場の床に伏せる。

ピクリとも動かない姿を見て勝利を確信した。

 

ピオーネの方も相手が白目をむいて変身が解けていた。

腕が折れているな。

投げた拍子だろう。

汗一つかかずに息も乱れていない。

圧倒的ではあったがかつての最強が帰ってきたことに観客は興奮している。

ましてやコンビを組んでいるんだから、ひとしおだろう。

 

だが俺は一つ溜息をついて不満げにつぶやく。

 

「物足りないな……」

 

超サイヤ人2になったらわずか2発の攻撃でノックアウト。

ピオーネのフルパワーを受けたトライも30秒足らずでやられていた。

 

「私も完全燃焼できていないわ」

 

肩をぐるぐると回して残念そうな顔をする。

チャンピオンと1位だから、楽しめると思ったが今の俺達にはあまりにも残念な結果だ。

これならブロリーの方がよっぽどいい。

 

「カカロット、ベジータ!!」

 

俺は大声で観客席を指さす。

ラディッツさんとニアは考えをくみ取ったのか。

『俺たちはやめておく』と視線を送る。

 

「勝負しようぜ」

 

二人を手招きする。

手をクイクイと挑発するように。

かかって来いよと表して。

 

「バトルロイヤル方式でいいんだな?」

 

そう言って降りてくるベジータ。

カカロットを狙うつもりだろうがそんなことは許さない。

 

「こんなとこで勝負なんてオラわっくわくすっぞ!!」

 

そう言ってカカロットも降りてくる。

その瞬間、俺はカカロットを攻撃する。

降りた時点で戦いは始まっているんだぜ。

 

「おっと!!」

 

しゃがんだところにピオーネが投げっぱなしジャーマンで放り投げる。

ベジータがそこで待ち伏せをしている。

超サイヤ人で全力の構えだ。

 

「喰らいやがれ、カカロット!!、ギャリック……!?」

 

だが、ここでベジータは間違えている。

俺が投げてコンビネーションが図らずも完成した時に脳裏によぎったのは。

 

「お前ら二人共の脱落だ、『アルバトロス・ブラスター』!!」

 

二人を落とすこと。

バトルロイヤルってのがどういったものか教えてやらないとな。

 

「ぐっ!!」

 

カカロットは瞬間移動を。

ベジータは地面に向けて撃つことで逃れる。

俺は避けられたという認識と同時にピオーネの方へ注意を向ける。

 

「『クライ・エクスキューション』!!」

 

気弾が襲い掛かってくるがそれを掴んで投げ返す。

投げ返した瞬間に目の前から消える。

瞬間移動か?

 

「『ビッグバン・アタック』!!」

 

ベジータの攻撃が襲い掛かってくる。

それをピオーネを目視してそちらの方向へ弾き飛ばす。

その弾き飛ばした瞬間、カカロットが迫ってくる。

 

「シャア!!」

 

カカロットが繰り出した蹴りを掴んでジャイアントスイングをする。

しかし後頭部へ鋭い痛みが走って取り落とした。

そのカカロットをベジータがギャリック砲で追撃する。

俺は後頭部の痛みを与えた相手、つまりピオーネへの反撃を試みる。

 

「うぉおおおお!!」

 

超サイヤ人2で一気に近づいて攻撃を仕掛ける。

相手も全力で相対しようとするが、その反応は僅かに遅れる。

腕をとり上空へ投げる。

それを瞬間移動で先回りして上を陣取る。

 

「ラァ!!」

 

頭に一撃を放とうとするが、残像に騙される。

だがこっちもそういった対策は取っている。

 

「はいっ!!」

 

腹をけり上げるピオーネ。

しかしこちらも残像で返す。

だがその瞬間、声が聞こえる。

 

「『ギャリック砲』!!」

 

ベジータが俺に向かって一撃を放つ。

そしてカカロットは……

 

「『かめはめ波』!!」

 

ピオーネに向かって放っている。

その攻撃をまるで示し合わせたように行動を起こして、無効化した。

 

「「はあっ!!」」

 

俺はギャリック砲をカカロットの方へ弾く。

ピオーネはベジータの方へと弾く。

そして瞬間移動。

避けた先の二人の背中にたどり着く。

 

「終わりだ!!」

 

肘打ちでカカロットを叩き落す。

カカロットは地面に叩きつけられてむくりとは起き上がらずに超サイヤ人が解けてしまった。

 

「ぐああああっ!!」

 

ピオーネが頭から投げ技でベジータを落とす。

頭を打ちつけたあと、ふらりと起き上がることもなくそのまま超サイヤ人が解けた。

瞬く間に二人がノックアウト。

超サイヤ人2レベルの二人と超サイヤ人1レベルが混ざるとこうなるのは分かっていた。

しかし、チャンピオンたちよりも歯ごたえがあった。

あとは、ピオーネだけだ。

 

「はっ!!」

 

こめかみに蹴りを放つ。

頭を下げるがその途中で止めて踵落としに切り替える。

 

「ぬっ!!」

 

足を掴まれて投げられそうになる。

それを舞空術で逃れようとする。

 

「『バタフライ・ウィンド』!!」

 

バータの技のように風を起こす。

そのせいで身動きが十分に取れない。

 

「『リインカーネーション・ブレイク』!!」

 

そのまま、身動きできない俺を固めてそのまま回転して地面に落下する。

懐かしの技を乱発する。

 

「ぐううっ……」

 

地面に頭から叩きつけられず腹を打つように叩きつけられる。

肺の空気を全て吐き出すような一撃だった。

 

「まだまだ!!」

 

追撃をするつもりだがそうはいかない。

俺は瞬間移動でほんのわずかに距離をとる。

長距離を移動すると思っていたピオーネの裏をかく。

 

「『太陽拳』!!」

 

そしてその隙を利用して目晦ましを放つ。

このまま最大の技を叩き込んで主導権を一気にとる。

今の状況は劣勢だ。

それをひっくり返さないといけない。

 

「これで……」

 

『ソウル・オブ・サイヤン』の構えをして突っ込む。

そのまま、腹部へ一撃を叩き込もうとする。

しかし、次の瞬間……

『ドクン』と小さい音ながらも力強い鼓動の音が聞こえる。

さらに、未来が見える。

ピオーネの腕の中ですやすやと眠る子供。

その映像を見た瞬間、俺は寸止めをしてしまっていた。

 

「隙あり!!、『エレクトリック・パレード』!!」

 

その隙をつかれてしまい、逆に最大奥義を叩き込まれる。

体中に雷が走ったように痺れてしまう。

意識が徐々に落ちていく。

 

「『勝者、ピオーネ!!、いまだ女王の貫禄は衰えず!!』」

 

これで3戦3敗か……

その言葉を聞いた時、意識は完全に闇の中に落ちていった。




少し下ネタというかHな感じの事をちょこっと書いています。
子供フラグが今回で立ちました。
次回からは他のキャラにスポットを当てていきます。
指摘などありましたら、お願いします。


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『現代は春満開,未来は危機到来』

今回も日常回です。
未来編からの襲来を考えた結果、こんな形になりました。


あの未来を見て数か月。

今やピオーネは臨月の状態だ。

結婚してからあれだけ子作りに励んでいた一か月。

きっと早い段階で子供はできていたのだろう。

しかし腹のふくらみ自体には気づかなかった。

あの数か月前の試合の後、病院にいって検査をしたところ子供がいると言われた。

その時点では今は妊娠1か月だが徐々に大きくなるでしょうと。

そのことをみんなに伝えると祝福された。

母親は満面の笑みだった。

年齢的に孫に近くなるパラガスも、ハーフとはいえ幼いサイヤ人の誕生に喜んでいる。

そして、それ以外の事でも進展があった。

それはスパーニも結婚を考えているという事。

ブロリーもそのことを一緒になって伝えに来た。

 

「母さんに言うのはいいが俺に伝える必要ある?」

 

俺にスパーニの恋愛を止める権利ないよ?

自由に恋して幸せになればいい。

飛び切り邪悪で悲しませるの確定な奴なら止めるかもしれないけど

 

「だって、一応は血の繋がっている兄だし…」

 

母親分だけどな。

礼儀作法なんてもの覚えやがって……

昔の狂戦士はどこに行ったのか。

 

「日取りとか決まっているのか?」

 

急にでも構わないのだが、できれば余裕が欲しい。

俺とピオーネなんか休暇取る相手が国王様だからな。

自営業とか一社員とはまた違う重圧がある。

 

「1か月後だ」

 

それくらいなら休みが取れる。

ニアとかラディッツさん達も呼んでおけよ。

賑やかな結婚式にまたなりそうだ。

 

「それにしても随分とぬるい鍛錬のようだな」

 

器具を見て言ってくる。

それはあくまで一般人用の器具だ。

自分用の特設の鍛錬場はある。

 

「実は最近ある男を鍛えていてな……」

 

とは言ってもそこまで厳しいやり方ではない。

せいぜい重りをつけさせる程度。

謙虚であることを常にいいながらかつての天下一武闘会のビデオなども見せている。

 

「その男の名前は?」

 

ブロリーとしても気になるのだろう。

少し食い気味に聞いてきた。

内緒にすることもないんだから普通に聞けばいいのに。

 

ちなみにぬるい鍛錬とは言っていたが戦闘力だけなら今のお前が確か2000万。

俺が4000万。

今のお前と互角なんだ。

伸ばそうと思ってはいるが、最近はこう言った事が目白押しだから緩やかにしか上がっていない。

せめて、これからは生まれてくる子供の面倒と妻の支えになってやりたい。

その為には戦闘力を落とすこともいとわないさ。

 

「マークっていうんだ、クリリンと同じぐらいの年だな」

 

最初は傲慢な態度があったが、少しひそめて自分の身の上を見ながら話すようになった。

当然のように悟空や天津飯を見て驚いていた。

一般人レベルではないからな。

 

「クリリン……あの禿げ頭か?」

 

こいつ……勘違いして天津飯と混同してそう。

人の区別ちゃんとつけてるのか?

 

「焼き印が6つある奴な、あとあいつのは剃っているぞ」

 

あいつ天然ハゲじゃないからな。

天津飯とナッパからしたらちょっとむかつくだろう。

 

「そうなのか……」

 

ブロリーは少し首をかしげていた。

何故髪の毛を剃るのかわからないもんな。

俺たちサイヤ人は不思議に変わる事は無い。

だから剃ったり切ってしまうと二度と生えない可能性だってあるんだ。

 

「まあ、そいつは戦力としてではなく何となく目についてしまったんだ」

 

何か人を引き付ける才能かな?

それで興味を持って指導しているんだ。

 

「舞空術と気功波さえできればいいし、一般人から逸脱しない程度にするさ」

 

あの大会からおよそ7年以上。

一般人レベルに落ち着いているだろう。

実況のおっちゃん、どうなったかな?

 

「そうか……そう言えば人造人間なんだが」

 

ベジータと悟空も修行に勤しんでいる。

悟飯たちでさえがんばっているのに、俺たちは緩やかに時間を過ごしている。

だが、今までの戦いの日々。

その骨休めでもある。

 

「お前と俺、ピオーネの3名は最戦線には立たない」

 

未来の悟飯を一蹴したのだ。

それより相手が少し強いのか、拮抗なのか。

いずれにしても、そんな俺と実力が近いブロリーとピオーネ。

出ていくと瞬く間に事態は収束する。

あいつらもフリーザとの戦いから、俺たちにおんぶにだっこでは納得しないだろう。

それに、いやな予感はしている。

人造人間の二人だけで済むわけがないだろうと。

 

「だが、スパーニを守るためならば……」

 

お前にも守るべき意思が芽生えたか。

どんなことがあっても守りたい相手、その為に力を振るう。

その為ならば前線に立つのもいいだろう。

 

「こっちもピオーネに危害が加えられるのであればやむを得ない、それは例外だ」

 

それでもあいつらが止めるかもしれない。

あいつらの実力で何とかなる相手であれば問題はないんだが。

 

「とりあえずは、目の前の結婚式なんだが……」

 

スピーチする内容がほとんどないだろうからな。

すぐに誓い合うぐらいしかないだろう。

お前の普段を見ているとはいえ、事細かなスピーチは難しいわ。

 

「とりあえずは参加人数は集まるよ」

 

声をかけていけばな。

カカロットも呼ぶのか?

 

「サイヤ人は呼びます」

 

カカロットをこういった晴れの舞台で憎むような真似、暴れるような真似はしない。

今は制御ができるようにはなっている。

とは言ってもスパーニを傷つけないために血反吐を吐くほどの努力をしていたのを知っている。

 

「地球人のメンツもそこそこいるな」

 

ブルマさんに頼めば大きい所借りれそうなのに。

基本呼び捨てにはなるが時折さん付けになる人はいる。

 

「やはり、前回そっちがやったような場所にしておきましょうか」

 

そうなるよな。

スパーニも雑誌見ながら広いところ選択している。

これで場所さえ決まれば、あとは招待だ。

あいにく全員の居場所は分かっている。

とは言っても家がある奴限定だけど。

ピッコロは分からないし、天津飯はさすらっている。

面倒極まりない奴らだぜ。

天津飯に至ってはそろそろ身を固めろよ、あの三つ目ハゲ。

 

「とにかく、また正確なこと分かったら教えてくれよ」

 

そう言うとブロリーたちは帰る。

とはいっても近い家だから少し離れるようものだ。

困ったら頼れるという事でこの方法をお互いに良しとしている。

後、俺たちに言っていたことにならないため防音と衝撃吸収の設備は整えた。

お節介かもしれないが、万が一という事だ。

 

「これで結婚式の招待が何件かしら?」

 

ピオーネの言葉にため息をつく。

皆がみんな結婚ラッシュなのだ。

一週間後にはラディッツ。

その一週間後にはナッパ。

そして二週間後にブロリー。

めでたい事はいいのだが、国王様に有給休暇取るこっちの身にもなってくれ。

 

「3件だな、しかしこんなに幸せ積み重ねていいのだろうか?」

 

既に言われて1年が経とうとしている。

未来の世界ではどうなったのだろうか?

せめて生き残っていてほしいのだが。

 

.

.

.

 

「さて……今日の進捗度は?」

 

俺はビッグゲテスターに話しかける。

惑星復興プロジェクトを実行している。

自らの戦闘力を高めながら、己に足りないものの自問自答。

強さとは何なのか。

語る背中とはいったいどういったものなのか。

今の自分の在り方をどう変えればあの怯えた目や、哀しい目をされない人間になれるのか。

それらを追及していった。

結論が出かかっているというのに、明確にはならない。

 

「『現在のところ全復興に対するパーセンテージは57%、予定よりもはるかに速い段階です』」

 

自分のエネルギーだけではない。

どういった理論かは知らないが当初の予定である二年で考えた場合の予測を大きく短縮している。

 

「『きっと周囲の復興予定の星が一度のビッグバンによって予定より早く生み出されたからでしょう』」

 

まとめて誕生したのか、納得。

今の状態でシミュレートを行うとどれくらい速いのか、聞いてみる。

 

「『一年八か月ほどに短縮可能です』」

 

なるほどね……

そりゃあ、良い。

その分、己の在り方を見つめなおし、今回還元で失った分の強化をしないとな。

 

「『緊急事態発生、緊急事態発生』」

 

特別な警報が鳴る。

しかしこの室内にのみだ。

つまり、なぜなのかという理由は分かる。

 

「やつらが何かやらかしたか?」

 

行ってみるとそこには血が点々としている状態とはいえ、もぬけの殻。

どうやら脱走したようだが……。

 

「『彼らの行き先は山奥です』」

 

そんな場所に一体何をしに行ったんだ?

生き延びるために当ての無い旅をしたのか?

 

「『きっとある人物を探しに行ったのでしょう』」

 

この星の生体反応を確認するか……

それをビッグゲテスターに伝えるとすぐに画面に視認化させてきた。

どうやら老人のエネルギー反応に向かっている。

あいつらの目的は老人に会う事か?

 

「老人の反応のある場所に向かう」

 

そう言って飛び立とうとする。

しかし、そんな場面で来訪者がきた。

 

「『表情認証……トランクスと孫悟飯となっております』」

 

この星の住民のデータを自律型で取得している。

この西の都の住民で重要な人物のデータはすでに入っている。

ベジータやクリリン、ブルマも入っている。

 

「通してやれ」

 

そう言ってメインルーム。

俺のプライベートな場所へと案内させた。

 

「初めましてになるのかな?」

 

一目見るなりそう言った。

目つきもベジータやカカロットによく似ている。

 

「一つ質問してもいいですか?」

 

ソファに座って孫悟飯が口を開く。

大方あの事だろう。

 

「どうぞ」

 

別にその内容を隠すこともない。

あれにはきちんとした答えがある、理由がある。

 

「何故、父……孫悟空を殺したんですか?」

 

やはりその内容について聞くか。

何の理由もないわけではない。

今までとは勝手の違う理由だった。

 

「やつの顔には死相が出ていた、俺は未来は見れないがどういった原因での死相かわかる

そして、それは病の死であった、おそらくウィルス性の心臓病だろう」

 

病であんなくっきりとしたものが出るのは特効薬がこの地球に無いような病。

そうなると新型のウィルスの可能性がある。

そして時間ぎりぎり。

やむを得ない事情だったことも話した。

 

「やはりそう言った理由があったんですね」

 

『やはり』?

こいつら過去に行ったときにまさか…

 

「俺たちは過去でのあなたを見ました、しかし……」

 

それからトランクスと孫悟飯の言葉には驚きの連続だった。

過去の自分が今の自分とは全く違う道を歩んでいたという事。

そして平然と孫悟飯を退けても命をとらなかったという事。

聞けば聞くほど『仁』に溢れている。

 

「そうか、それならば余計会ってみたくなった」

 

今の己と全く別の道を歩んで強い。

そのことが興味をそそる。

自分が変わるきっかけを自分自身がくれる。

少しおかしな気がしないでもない。

 

「あと……どこへ行こうとしていたのですか?」

 

老人の反応があった場所に行くことを言うと首をかしげている。

一体どういう事なのだろうか?

 

「山奥に住む民間人の反応ではないのですか?」

 

そうは言うがわざわざ民間人にあいつらが会いに行くのだろうか?

まぁ、こっちが痛めつけすぎた肉体の回復のためにって可能性もある。

 

「山奥は確かに人造人間の創造主がいたはずですが殺されていますし……」

 

死人に会うことはできない。

だが少し疑問がある。

死体を人造人間にすることはできないのか?

 

「行かないとシャレにならない事態もあるだろう」

 

そう言って結局準備をする。

トランクスたちは人造人間の襲撃に合わせて去っていった。

 

「さて……ここら辺のはずだが」

 

そう言って目に入ったのは何か歪な棺桶。

そこに誰かの遺体を運び入れていく。

明らかに異常な存在。

それを追いかける。

 

「ぐっ!!」

 

それを食い止めようとする一つの影。

その影の正体は……

 

「お前は一体何者だ?」

 

町を襲撃している存在とは全く違う系統の人造人間。

老人の外見をモチーフにしたようだが……

 

「何者か知りたいか、いいだろう、儂は……」

 

そう言った瞬間、気を感じ取り、そいつの周りがスパークする。

確かにこれは全く違う存在だ。

 

「人造人間21号だ!!」

 

どうやらナノマシンを中心にしたが19号や20号とは違う。

永久炉心をやめた代わりにそこで使う容量を戦闘部分に割いた。

その為、気を悟られないメリットは失ったが、強さはこちらが上という形状になったのだ。

 

「……未来によって作り上げられた存在か!!」

 

つまりこの時間よりも先の未来からやってきた。

それによって作り上げられた強力な存在。

だが……

 

「創造主は消えたはずだが?」

 

俺は単純に疑問をぶつける。

できる限りの情報を引き出すために。

 

「お前らもいずれ分かる」

 

しかし相手はそっけなかった。

既に準備を終わらせたからなのだろう。

そう言って機械に乗り込んで消えていく。

だが、その瞬間に見えたのだ。

 

「あいつら……改造される気か?」

 

奴らが乗り込んでいたのを。

あの二人は俺の拷問から逃れ、復讐のためにサイヤ人を捨てる判断をした。

俺の失敗が新たな火種を生んでしまうとはな……

俺は申し訳ない気持ちで額を叩き、トランクスたちに伝えるために再び来た道を戻っていた。




今回の黒幕はセル+αの予定です。
現代組達でも厄介な奴らを考えた結果、滅茶苦茶なてこ入れがあります。
指摘などありましたらお願いします。


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『瞬く間に過ぎるのは幸せだから』

今回で日常回が終わりの予定です。
ガタバルの強化が早足なのは今後の話の組み立ての部分で必要だからです。
基礎戦闘力がないのになってしまって、倒れたりするのは半分様式美みたいなものです。


「よしよし、ご飯だぞ」

 

そう言ってわが子の前に食事を持っていく。

スプーンで食べる姿は愛くるしい。

目を離さないようにして俺とピオーネも食事をとる。

あれから子供が生まれて早1年半。

未来の孫悟飯たちから言われた日まで残り半年。

戦闘力はほとんど現状維持で保ってきた。

ブロリーも同様だ。

 

「こんなに幸せだったら半年後の事が嘘のようね」

 

俺はその言葉に頷く。

愛しい人が目の前に居て、守るべきわが子がいる。

そして周りには頼れる仲間と笑いあう。

これ以上ない幸せがある。

それを崩されてしまう事が想像できない。

 

「ターサも守っていかないといけないな」

 

そう言ってわが子を撫でる。

子供は多ければ多い方がいいとピオーネは言うがこの激戦の予知がある以上はやめておくべきだ。

そう言ってなだめた。

ただでさえ育児に追われているというのに。

 

「そうね、今まで守る人が一人から二人、必死になるわ」

 

そう言ってお互いが決意を固める。

次の相手は厄介なことになると考察をしている。

人間には気があるが、人造人間となるとどうなるのか?

もし、感知できなければその分先制パンチを食らう事になる。

千里眼で見渡さないとな。

 

「だが、あくまで奴らのサポートに徹するのが今回の役目だ」

 

カカロットやベジータ、ナッパにターレス。

それ以外にもクリリンや天津飯。

あいつらが今回ばかりは自分たちにやらせろと言ってきた。

フリーザの問いの自分たちの体たらくを嘆き、いつまでも頼る気はないと。

その代わり、本当に危険な時は助けには入るという約束である。

 

「ブロリーさんもスパーニちゃんのサポート以外は参加できないしね」

 

あいつも俺たちと同様に参加不可能。

最大戦力を軒並み欠いた状態であいつらは頑張らないといけない。

 

「神様とやらも『精神と時の部屋』を教えてくれたが……」

 

そこで鍛えても使い道がない力。

これほど今までで虚しい事もない。

守るのはいいが、やはりそこは戦闘民族。

最前線に立ちたいと心のどこかで思ってしまう。

 

「あそこで鍛えたらきっとあなたは今の壁も超えていくよね」

 

つまり超サイヤ人3への変身か?

嫌なわけではないがあれは弱点があるからなぁ。

その後はターレスにある技を教えてもらわないと。

 

「そうは言うけど俺と組手していればその域まで達するじゃないか」

 

そう言うとピオーネが笑う。

しかしいまだに正体がわからない。

ズノーに聞きたくはない。

だが、もしすべての事をご存知の神様がもう一人いれば……

 

「とにかく今の自分たちは誰も死なせないこと、それが最優先」

 

そう言ってお互いが頷く。

いまだに超サイヤ人に目覚めていないやつらもいる。

そいつらを守るのも重要。

 

「それに未来からの襲来も視野に入れないとね」

 

そうなのだ。

トランクスたちよりも未来の世界からとか、タイムマシンがある以上、別の時間の人物の襲来も考えられる。

仮にとんでもない未来から化け物のような存在が来たらどう対応すればいいのか。

 

「そんな顔したって問題ないよ、そういうイレギュラーが私たちの標的なんだから」

 

それもそうだな。

フュージョンでも何でもやりようはある。

相手がどういった存在かわからない。

そういった未知の状況だから少し警戒しているだけだ。

わが子を抱きかかえながら、次の相手が今の自分たちとどれほどの差があるのかを考えていく。

 

「きっとあの部屋に入っておいた方がいいな」

 

万全を期して相手を倒す。

サイヤ人でも相手に対する油断を持つ奴はいる。

そういったものは俺にはない。

常に相手に全力。

確実に息の根を止める。

ワクワクとかドキドキする感覚は全くないわけではない。

しかし楽しむ事は修行以外ではそうめったに無い。

命のせめぎあいでそんなものを考えてはならないからだ。

だが例外的にピオーネの時だけは心が高鳴ってしまう。

それはきっとあの日、セッコ・オロで見た時からの憧れだから。

そんな人に認めてほしい、ほめてほしい。

だから全力を出している。

この人の前ではいつまでも子供のままの戦う理由で相対できる。

 

「今からでも行きましょうか」

 

そう言って俺たちはスパーニたちを誘い、神様の神殿に赴く。

説明を受けたのはいいが、俺たちは子供の面倒を見る役割としてスパーニとピオーネが先に入る。

その後に俺とブロリーが入る。

ちなみに2日間以上の滞在は不可能。

それ以降は空間が閉じて二度と出られない。

 

「子供の面倒を見るために一人ずつ入れば良かったのでは?」

 

ブロリーにそう指摘されたときは、それでもいいなとは思った。

しかし、折角2人入れるのなら最大人数入ってやった方がいいだろう。

 

「お前の今の状態の先を開放させておかないとな」

 

俺たちは胡坐をかいている状態だ。

奴らに任せて弱くなってもよくない。

だから常に先に行っておく。

 

「この状態の先……ありますかね?」

 

この先は俺も聞いてはいない。

『伝説の超サイヤ人』の先となると『伝説の超サイヤ人2』か。

きっとこんな形態にまで至った存在など後にも先にもいないだろう

およそ強さは従来の比較と同じ俺の超サイヤ人2の4倍。

味方陣営にとってもかなりの強化につながる。

 

「ダメもとだな、基礎を上げることもできるから無駄な事は無い」

 

そう言って二人して子供をあやす。

俺たちの子供がうまれて2歳と数か月。

1つ違いで生まれたのがスパーニの子供。

名前は『ロマネ』という女の子だ。

おどおどしたような人見知りはブロリーの部分を引き継いだんだろう。

だが時折見せる動きの活発さはスパーニを彷彿とさせる。

二人の特徴をしっかりと持っている子供だ。

 

「そうですね、守りたいものが増えた、かつての自分からは考えられない……」

 

この地球が、そしてスパーニがお前を変えた。

あの日、ナメック星で俺を守ろうとしたときに見せたお前の姿。

そして地球に来てから、コントロールしようとした努力。

それを俺は知っている。

 

「本来の性格からあの状態になってかけ離れただけだ、それが正しいんだろうよ」

 

普段の性格からあれは180度変わっている。

怒りとか不断にため込まれた感情の爆発でそのまま影響しているんだろう。

つまり普段から貯め込まなかったり、それ以上の幸せな感情があればそこまでコントロールが難しいわけではない。

 

「ただ、昔ほど力が溢れてくる感覚はないです」

 

つまり、理性的になった代わりに成長が緩やかになってしまったのだろう。

あるがままに暴れれば大切な人を守れない。

しかし抑えると成長が遅くなる。

それこそ、俺たち普通の超サイヤ人並みに。

 

「今回の修行では存分に開放して良いだろう」

 

そういった話をしながら子供の面倒を見て1日経つのを待つ。

出てきた時に感じたのはピオーネの基礎も上がったことは上がった。

しかし、一番はやはり……

 

「お前もなったか、スパーニ」

 

スパーニも超サイヤ人になっていた。

伝説とは言えど、後天的な素養でなれる。

ゆえにこれほどまでに多くなったのだろう。

 

「かなりしんどかったけどね……」

 

怒りによって目覚める以外にも哀しみもあるからなぁ

いずれにせよ、優しいお前が想像して何とか目覚めるのに、多大な努力をしたのは分かる。

 

「次は俺達だ、いくぞ!!」

 

そう言って子供たちを渡して入っていく。

重力は10倍だが、空気は薄い。

さらにはあまりにも広い空間。

精神面が狂ってしまう場所だな。

 

「いきなり実戦形式で今の互いの実力を見合うぞ」

 

そう言って超サイヤ人2になる。

それを見てブロリーも変身するが……

 

「修行の大事さをよくわかっていやがる」

 

抑えていない全開の狂戦士状態だ。

成長度合いをとったようだ。

しかし、この発展の感情の発露はどうなるのか?

その解明さえできれば、俺もブロリーに教えられるのだが。

 

「ハア!!」

 

ショルダータックルで突撃をしてくるのをいなして背中に肘打ちを叩きつける。

筋肉の分厚さでわずかに弾かれてしまう。

これでは針が刺さった程度だろうな。

 

「ヌン!!」

 

腕を後ろに回して俺の頭部を掴みそのまま勢いをつけて前に振りかぶり叩きつけようとする。

その瞬間に体を捻って逃れる。

だが、それを読んでいたのか腹部に爆弾が爆発したような衝撃が走り飛ばされる。

 

「逃れるのはうまいって知っているからなあ、ネズミ……」

 

にやりと笑っている。

学習部分とかも考えると、相手を痛めつける部分が強いだけで吸収力も跳ね上がるからな。

あまりにも恐ろしい戦士だ。

 

「じゃあ、こっちも行くぞ」

 

トントンと跳ねてすぐに懐に入り込む。

そのまま上段蹴りを放つ。

ガードをするブロリーの腕の内側に足を潜り込ませて延髄切り。

そのまま前のめりになったところに反転をして、膝を後頭部に押し当てて叩きつける。

 

「ぐっ!!」

 

痛みに呻くこともなく即座に起き上がってソバット。

こちらが受け止めようとするとフェイントだったか、その足を止める。

 

「はあっ!!」

 

腕を伸ばし、頭を掴まれる。

そのまま地面に叩きつけられて陥没する。

 

「終わりだぁ、『ギガンティック・ミーティア』!!」

 

大技を掴まれた状態から外せずもろに喰らってしまう。

超サイヤ人2で互角の実力のため、耐えきることができる。

後ろに下がって距離をとろうとするが……

 

「フンッ!!」

 

フライングボディプレスを見舞ってくる。

避けきれずに受け止めるが衝撃で片膝をつく。

一度主導権を握られるとこいつから取り戻すのは骨が折れるな。

攻撃の嵐が一向に止まない。

 

「シッ!」

 

しかしそうはさせまいとこちらも手は打つ。

尻尾で目を打ってその隙にブロリーを持ち上げる。

今から繰り出すのは脳天から叩きつける危険な技だ。

 

「シャッ!!」

 

叩きつけてみるが手ごたえはない。

その強靭な首の筋肉がクッションになっていた。

そのまま勢いをつけて起き上がる。

 

「シッ!!」

 

起き上がってきた時に喉へ一本拳。

急所を抉るように戦ってみる。

 

「があっ!!」

 

しかし痛覚すらも遮断されているのか、反撃をされる。

だがその攻撃をかいくぐればいい。

 

「これならどうだ!!」

 

後ろに回り、膝裏を蹴って体勢を崩す。

がくりと崩れた後に足を掴んでジャイアントスイングで放り投げる。

そして照準を合わせて……

 

「『アルバトロス・ブラスター』!!」

 

両手を前に出していつものように決めにかかる。

だが、流石はブロリー。

こっちの技に対して、反撃の一撃を放ってきた。

 

「『ブラスター・シェル』!!」

 

技がぶつかり合う。

こいつの技の威力は普通のものでもかなりえげつないものだ。

俺の大技が勝っても大半の威力を削ぎ落せるんだから。

 

「だが……もう一発だ!!」

 

ナメック星で教わったことはある。

一撃を打ってもそこで決められるという気持ちを持たないこと。

相手が完全に抵抗できずに飲み込まれるまでは追撃すべきだと。

もう一発ブロリーに向かって『アルバトロス・ブラスター』を放つ。

 

「ぬぐぅううう……」

 

技を出せないブロリーはほぼ無抵抗で飲まれる。

だが……

 

「まだ、終わっていないぞぉ!!」

 

笑いながらこっちへ猛スピードで突っ込んでくる。

こっちの一撃がぬるかったわけではない。

身体から煙は上がっているし手応えもあった。

だが一つ確かなこと。

徐々にこいつは成長している。

戦いの中でだ。

だが、ピオーネの方がこいつより成長速度が速いって思うと改めて何者なのか疑問が残る。

 

「らあっ!!」

 

突っ込んできたブロリーが繰り出した一撃とタイミングを合わせる。

クロスカウンターで互いに吹っ飛んでいく。

互いが血を吐いて再び構えて向き合う。

ブロリーも笑っている。

俺も口角を上げて微笑んでいた。

 

今、お前とこうして全力で争えること。

そして、家族があること。

幸せの絶頂に今、俺はいる。

ああ、それはとても……

 

「楽しい事だなぁ……」

 

あふれ出る力。

地面に髪の毛が触る感触。

額を拭おうとすると眉がなくなっているのを感じた。

またもや、壁を越えたようだな。

怒りと悲しみ、そして楽しみ。

それが俺の覚醒の条件となっている。

 

「さ……第二ラウンドといこうか?」

 

そう言ってじりじりとブロリーに接近をする。

ブロリーも本能では危うさを感じている。

しかし、今までの己を鑑みてひいてはいけないと判断をした。

言ってみれば強い猛獣が不利だと言って尻尾を巻いて逃げるのかというわけだ。

構えてこっちの攻撃を受け止める判断をした。

 

「ハッ!!」

 

飛び蹴りを放つ。

それを受け止めはするが後ずさっていく。

速度で超えて後ろをとり、肘打ち。

 

「ぐっ!?」

 

反撃を試みるも動きが今の俺にとっては遅い。

全てを紙一重で避けてカウンターをとり続ける。

ダメージが入っているのは分かる、

 

「うぉおお!!」

 

しかし、怯むことなく何度も放つ。

こちらの速度もお構いなしに当たってしまえという感じだ。

 

「それでいけるほど甘い俺じゃねえよ」

 

そう言って避けては足を蹴る。

機動力も奪っていく。

相手に得意な戦いの場を作らせないようにする。

それも重要な方法だ。

ほいほいと相手の土俵に入るなんてマネは、例えるなら食材が料理してくださいとまな板に乗るようなもの。

そんな事を思いながら何度も打ち続けたが、徐々に疲労が蓄積していく。

相手に攻撃をするのに、何の不自由もないなどありはしない。

何かしら代償は必ずついてくる。

その主なものが体力だ。

 

「本当にお前の体、どうなっているんだ……?」

 

俺は疲労からか、肩で息をしていた。

おおよそ百を優に超える連打。

しかも全てが全力の蹴りと拳。

それらを肉体で受け止めている。

こいつの強靭な肉体には毎回驚かされる。

 

「フフフッ……」

 

ドンッと爆発する音を立ててバチバチと電撃を体に纏っている。

威圧感からしても壁が壊れてはいない。

いってみれば超サイヤ人1.5のようなものか。

 

「気が高まる、力が溢れる……」

 

そう言って『オメガブラスター』を放ってくる。

それを避けるが威力も速度も上がっている。

正直、時間の尺度が狂っているのでどれほど戦っているのかわからない。

しかし、お互いになって間もない状態。

それが何を意味するのか。

 

「これで終わりだ!!」

 

そう言った瞬間、ブロリーがふらつく。

俺が初めて超サイヤ人に目覚めた時と一緒だ。

本人が気づいていないだけダメージは確実にあったんだろう。

そのせいですぐに解除された。

 

「ンっ!?」

 

ブロリーが倒れた瞬間、俺の視界も揺らぐ。

それもそのはずだ。

目覚めた後にあれだけの連打や攻撃、こちらも限界が来ていた。

俺も疲れからくる睡魔に身をゆだねて静かに倒れ込んだのだった。




強化イベントでブロリーたちが完全にイレギュラー担当へ。
ちなみに今のブロリーは『伝説の超サイヤ人』が『超ベジータ』みたいになった状態です。
この状態の倍率は超サイヤ人2の3倍が基準値です。
(伝説の超サイヤ人2がノーマル超サイヤ人2の4倍に当たるので)
しかし今回で3に目覚めたので基礎値の問題や時間限定でまだガタバルの方が上ですが。

久しぶりの後書きでの名前の由来
ガタバル達の子供:ターサ 『アブラナ科の野菜:タアサイ』
ブロリー達の子供:ロマネ 『ブロッコリーの仲間:ロマネスコ』
調べたらアブラナ科の野菜にブロッコリーがあって驚きました。

指摘など、ありましたらお願いいたします。


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『未来からの襲撃』

今回からセル編です。
敵陣営がややこしくなっているので後書きで詳細をお書きします。
未来ガタバルの別スタイル超サイヤ人についての倍率は1は50x10で、2は100x50にしてます。
インフレしてますが、こいつは今回メンタル変化が目的なので基本的に参戦しません。


あれから半年。

ブロリーの基礎値は上がったのだが結局壁を完全に超えることはできなかった。

それでも基礎の戦闘力が2500万から6500万にまで跳ね上がったのはやはり天才的な才能といえる。

俺も同じ7000万ほどだがもし超サイヤ人3に目覚めていなければ惨敗だった。

そして結局ピオーネは俺との組手であっさりと俺と同格になる。

もはや様式美である。

 

「今日が人造人間襲撃の日か」

 

そう言って俺は先に島ではなく、そこに近い都市部にいた。

ブロリーと2人でだ。

スパーニとピオーネには子供の面倒を見てもらっている。

 

「もし、相手が悪人なら島よりこっちの方が可能性が高い」

 

見渡すためだけに島を利用している可能性がある。

それならば見つけた場合すぐにもう向かっているだろう。

 

「見つけたぞ……」

 

ブロリーがつぶやく。

その方向を千里眼で見渡すと、確かに怪しい奴が居る。

だがそれ以外にも、気はないものの気配自体が存在する。

その数は……

 

「6もの気配……」

 

2人と聞いていたにもかかわらずこの多さ。

前回、来た時のせいで時間のねじれが生じたのかもしれない。

 

「俺はベジータ達の方へ行く、あんたは他の気配の所へ行ってくれ」

 

ブロリーがそう言って飛んでいく。

ヤムチャの奴の気に乱れが生じたが、どうにか救出されたようだ。

こっちも変な気配を感じた方向へ向かっていく。

憎悪なのだろうか、それとも何かしらの因縁があるのか絡みつくような視線が捉えている。

 

「悟飯でもないだろうから、いったい何者だ?」

 

初めての感覚。

こういった視線を向けられた事は無い。

女性から熱っぽいものを向けられていた覚えはあっても、こんな不気味な絡みつくものではなかった。

 

「まさか、未来でまだ俺を恨んでいる奴が居るのか?」

 

未来の俺よ。

敵を作るのは構わない。

だが、現代の俺にその付けが回っているんだよ。

もう少し、行動を改めてくれ。

 

「んっ……」

 

岩山の上の方にその視線を送っている気配を感じ取る。

こっちが向かっていくと、相手はさらに険しい岩山へ移っていく。

こっちに来いというのか?

良いだろう、ついていってやる。

 

「ようこそ、現代へ

未来からの襲撃者……」

 

そう言って2人の人造人間の前に俺は立つ。

鬼ごっこのように動き回った結果、岩山の風が吹き荒れる頂点で相まみえることとなった。

その姿は忌々しい存在。

まさか未来でもそう言った強さの求め方をするなんてな。

どんな時間の過ぎ方をしても変わらないのか。

 

「お前に虐げられることもない強さを手に入れた」

 

そうか。

こいつら、未来の俺だと思い込んでいるのか。

だが、間違っているぞ。

 

「すべてあのお方のおかげ!!」

 

力を開放したようだ。

気は感じられないが威圧感というものが跳ね上がった。

だがこの戦闘力のレベルなら……

 

「あのお方の邪魔をするものは死ぬがいい!!」

 

そう言って二人同時に飛びかかってくる。

俺は超サイヤ人になってその攻撃をいなした。

やはり、感じたとおりだ。

こいつらは……

 

「今の俺の超サイヤ人にも劣っていやがる」

 

戦闘力を削ぎ取られでもしたか?

そしてこの有様……

 

「利用されるあんたらが愚かなのさ」

 

世界は違えど、かつて言った言葉の意趣返しだ。

大方強くなることだけを考えていたのだろう。

 

「くくく……」

 

そう言って笑い始める。

前回のナメック星のように地球を壊すつもりか?

悪いが、それはさせない。

最大限の警戒で構えていく。

 

「我々の強さの真骨頂は回路によって一致する……」

 

二人が前後に重なっていき、徐々に輪郭が崩れて発光する。

その光が止んだ時、長身痩躯の白髪のサイヤ人型の人造人間がいた。

エネルギーというか威圧感が跳ね上がっている。

 

「一族突然変異種の潜在能力、とくと見よ!!」

 

ベースは未来カエンサのようだ。

確かに調べたところ、こいつは『アブラナ科』の野菜ではなく『カブ型の野菜』だった。

基本的に一族の名前の法則から外れるというのはとてつもないものを秘めている証拠だ。

潜在能力は歴代最高峰の突然変異の存在だったのだろう。

 

「はあ!!」

 

拳を振ってくる。

超サイヤ人を越えてはいる。

だが2に匹敵するほどではない。

それじゃあ、速く勝負を決めるか。

 

「ふんっ!!」

 

拳を受け止めて放り投げる。

空中でブレーキをかけているがこちらは後ろに陣取った。

 

「はっ!!」

 

手刀を首筋に繰り出す。

目は後ろにない。

そう思っていると、なんと首と腕の関節が回転して受け止めた。

機械の体だからできる芸当だな。

 

「受け止めてもこれをやられたらおしまいだな」

 

そう言って受け止められた手に気を集中させる。

指先から4本もの『デスビーム』を直撃させた。

 

「ぐああっ!!」

 

装甲が固いのかダメージは少なかったようだ。

貫通はせずにブスブスと煙を立てるぐらいになっている。

その隙に超サイヤ人3になる。

速く勝負を決めて応援に行かないとな。

 

「呻いて目を隠してたらダメだろう?」

 

そう言って腹部に蹴りを叩き込む。

くの字に曲がった背中に肘打ち。

そのまま腰を持ち上げて地面へ頭から叩きつける。

 

「ただの連打でこうもボロボロになっちまうのかい?」

 

確かに2の時の4倍にはなっているが開きすぎたのか?

相手はガタガタで装甲がむき出しになっている。

腹部には穴が開いており、背中には大きな陥没。

頭からはひびが入っている。

 

「そこまでだ、データ観測ご苦労だった、暇をやろう」

 

そんな低い老人の声が響いたかと思うと人造人間の胸から手が飛び出してきた。

心臓から何かを抜き出すように持ち上げる。

機械の腕のため、ぐしゃぐしゃと探る時に無機質な音が響く。

ぐちゃっと握りつぶしたような音を立てて返り血を浴びていた。

心臓は生身だったようだな。

その手に何か握られているようだが……

 

「ゲ、ゲロ様…」

 

そういって崩れ落ちたカエンサの頭を踏み潰す。

哀れな末路だ。

現代も未来もこんな結末とは悲しい奴らよ。

 

「暇はやったぞ、永遠にな……」

 

白髪の老人の人造人間がそう言って逃げ去る。

煙幕をやられてしまったので見分けることはできなかった。

 

しかし、そんな中あまりにも膨大な気を近くに感じる。

それはどちらかといえば『ここへ来い』と誘っている。

その気の方向へ俺は向かっていった。

 

.

.

.

 

「回収、感謝するぞ……」

 

『現代の』合体13号が連れてきた現代のワシを見る。

死人だったトランクス世界のワシには人造人間化を施してすぐに回路一致による合体を行った。

その後、『自分たちの未来』で緊急停止をしていた奴らを目覚めさせた。

『未来ではナンバリングが変わってしまった13号達』を即座に合体させて、ナノマシンを抜き取って自分の力に変えた。

そして今、あの役立たずの合体23号のナノマシンを埋め込む。

 

「溢れる力だ……」

 

『未来における合体13号(通称:合体15号)』のナノマシン。

そして今、回収したばかりの現代のワシのナノマシンを加えて今の自分の合算された号数を計算する。

 

「現在の号数は79か……」

 

現代のワシの20号

未来の合体23号

未来の合体15号

今の自分の21号

 

そして……

 

「貴様ももはや用済みだ!!」

 

そう言って抜き手を繰り出す。

徐々に若返っていったワシの背丈は今や170ほど。

リーチもそれに見合う。

油断している合体13号の腕を貫く。

 

「ぐぅ!?」

 

呻く合間に首まで飛びあがる。

そのまま、足を四の字にして首を締め上げる。

そして体をぐるりと回転させれば……

 

「があっ……」

 

首がビキビキと鈍い音を立てて折れ曲がっていく。

何とか力任せに引き剥がしたようだが……

 

「お前の負けは確定しているぞ」

 

そう言って目を抉り取る。

そして耳を引きちぎり、歯をへし折る。

 

「んがああ!!」

 

突進してくる相手の膝を踏み台にする。

その時に膝の皿を踏み砕き、その勢いで顎に膝を叩き込む。

顎もぐしゃりという音を立てて壊れた。

 

「ぬぅ!!」

 

まだやる気なのだろう。

蹴りを壊れていない足で行う。

しかしその反抗も虚しく、ワシはその足を掴み、捻って壊した。

人造人間を作る際に、人間の体の構造は頭に叩き込んでいる。

その体の構造を応用したのだから、壊し方も熟知しているのだ。

 

「お終いじゃ」

 

そう言って赤子の手をひねるが如く13号を壊しきった。

そして抜き出したナノマシンを埋め込んだ。

肉体の強度と戦闘力が今まで以上に上がっていく。

後、試みとして戦力を増やすクローン化の作成も進んでいた。

未来の20号の毛髪からの培養だ。

 

「この冴えわたる頭脳さえあれば、今までよりも強い回路を持った女の人造人間が作れる」

 

基本ベースが男性の方が強くなってしまうのが人造人間の性である。

それを改良できてしまえば、今の自分の想像を超えてしまうほどのものが生まれる。

これも孫悟空への復讐のため。

今頃、未来から来た奴らもいるし、セルも動いている。

3年間、誰にも知られず積み重ねた計画。

 

「レッドリボン軍の再興はもうすぐ目の前だ!!」

 

ワシは手を広げ、満願成就に思いをはせて高笑いを響かせるのであった。

 

.

.

.

 

「俺を呼んだのはお前か?」

 

そう言って相手を見る。

頭髪の形状や目つきは少し違う。

百戦錬磨の風格を漂わせている。

だがその姿には見覚えがある。

いや、ありすぎる。

何故ならば……

 

「その通りだ」

 

その声の主はくるりと振り向く。

この世に生まれて二十八年間。

苦しかろうとも、楽しかろうとも。

喜びの時も、哀しい時も。

怒れる時も共にあった。

そう、自分の肉体そのものなのだから。

 

「お前の目は自分とは違うな」

 

強さだけを求めていた。

その根底が揺らいだことによる決断を委ねているのだろう。

 

「それはこっちも同じだ、幸せまみれの面しやがって……」

 

過去に悲しいこともたくさんあった。

それでも、前を向いてきた。

その結果が今の幸せな日々ならば、それなりの対価を支払った。

それは自分にしかわからないことだが。

 

「お前の力の源を……教えろ!!」

 

そう言うと、一気に接近をしてくる。

速い、率直にそう思えた。

基礎がしっかりしていないとこの動きはできない。

 

「グッ!!」

 

紙一重で避けて裏拳を放つ。

それを蹴りで防ぐ。

構えも戦い方もまるで違う。

受けるのも攻めるような受け方、防ぎ方だ。

 

「があっ!」

 

ショルダータックルを放ってくる。

それに合わせてこっちも跳び後ろ回し蹴りで対応する。

タックル同士を狙っているのは分かるが距離や対応のタイミングが悪かった。

今の感触から、正直に言うとあっちの方が今の自分よりも強い。

 

「だが……」

 

負けるわけにはいかない。

未来から聞いたトランクスたちの言葉を鵜呑みで考えると悪人。

そうなると全員やられてしまうかもしれない。

俺が今一番強いんだ。

そんな俺が負けるという事は大切な家族を危険にさらすという事。

強いのならば守らねばならない。

自分を慕ってくれる人。

自分が慕う人。

友人や弟分など多くの人々が頭に浮かぶ。

それらのつながりを壊すわけにはいかない。

 

「はあああああ!!」

 

相手が右の拳を繰り出す。

ミドルレンジ。

もっとも体重が乗る場所で放たれた一撃。

 

「しゃああああ!!」

 

こっちもそれにあわせて拳を突き出す。

どちらも最大の威力で放つ拳。

この一撃で勝負が決まることは互いにわかりきっていた。

 

「「がはっ!!」」

 

互いに同じような声を出す。

顔に拳がめり込み首から上が跳ね上がる。

その衝撃で足が浮いて地面から離れてしまう。

クロスカウンターで互いが吹っ飛んでいった。

俺はしたたかに背中を打ち付けて、二回か三回ほど転がっていく。

未来の俺はそのまま数メートル飛んでから地面に足をつけるものの、衝撃に耐えきれずに両膝をついていた。

 

「ぬぬぬっ……」

 

俺は立ち上がろうとする。

未来の自分も体を支えようとする。

しかし、未来の俺は足が動かない。

 

「ぬあっ!?」

 

未来の俺の支えた手が滑ったのか、そのまま体勢を崩してうつぶせに倒れ込んだ。

足もがたがたで、どうやら立てないらしい。

 

「ぬおおおぉおお!!」

 

何とか、俺は立つことができた

深く相手の拳より入れられたんだろう

もしくは顎に当たってそのまま脳が揺らされてしまったか?

 

「なんで……俺の方がお前より強いのに」

 

互いに超サイヤ人抜きの戦いをした。

理屈ではかなわない事をやっただけだ。

それはきっと今、地に伏せているお前がよくわかるだろう。

基礎戦闘力が明らかに自分が上なのに負けた理由がな。

 

.

.

.

 

「ちくしょう、背中に守りたい人間を背負っているのが見えやがる」

 

去っていく姿にブロリーやターレスの影。

それ以外にも多くの影がそこにはあった。

そして、奴の背中が一瞬大きく映る。

守る事だけを考えて、内心はどこかで守るべき対象を冷ややかに見ていたのかもしれない。

心を通わせあい、信頼しあえるからあんな生き様や大事な人間が背中で語られているんだろう。

 

「自分に足りないものってあれなのかな?」

 

きっとまだあるかもしれない。

この場所に来て己の過ちが見えた。

やはり来て正解だったと思える。

きっと帰るころには、現代の自分の在り方やほかの人間の在り方で己を変えるきっかけは作れるはずだ。

 

「あんな目で見られたりは二度とないようにしないとな」

 

『最強』にとらわれることの無い在り方。

それを己の糧にしなくてはならない。

 

「よっこいせ」

 

起き上がって空を見上げる。

あの拳から伝わってきたもの。

それを反芻して微笑むのだった。




未来から来たゲロはセルと同じタイムマシンに乗って来て研究を行っている設定です。
ちなみに合体21号となっていますが
21号が『セル未来のゲロ』で22号が『トランクス未来で死んだゲロ』です。
合体21号の目的は『究極の人造人間』の作成で、それで『号数が100になるように合体したら完成』というモードで動いています。
※合体を別の個体がすでにした場合その号数での計算となります。
13~15号が未来でナンバリングがずれたのは作者のオリジナル設定です。
現代の17,18号が未来では19号,20号なので16号に相当する18号を欠番にした後『15,16,17号』としての設定です。

指摘などありましたらお願いします。


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『庇護なる芽生え』

未来ガタバル回です。
クローン20号も変わるきっかけの存在としてのものです。
人造人間のナンバリングなどで混乱させてしまいますがすみません。


あれから放浪するように散策をする。

トランクスたちはどうやら目的として合流できたようだ。

あの時、ミクロバンドで忍びこの世界に来た。

だがあの足部分にしがみついてきた奴が居る。

 

「20号の奴が追いかけてくるとは思わなかった」

 

何故に追いかけてきたのか。

わざわざリスクの高い真似は必要ない。

自分たちが壊される危険性を考慮して、今の間につぶすつもりだったのか?

 

そんな事を考えていると町に入っていく。

どうやら大きな都のようだ。

人もたくさんいるしおしゃれな格好をした男女が歩き回っている。

 

街中を歩いているとある男性が店から出てきた。

しかし次の瞬間、後ろから殴られて何かを取られる。

治安が悪いな。

そう思いはしたがそいつを追いかけていた。

切羽詰まった顔で男性は追いかけようとしていた。

頭から血を流しているにもかかわらずだ。

こう考えると都会の奴らは情が薄い。

凶器を持っているからだろうが怯えて誰も近寄らない。

 

「返してもらおうか」

 

俺は追いかけてすぐにその奪った相手の前に立つ。

車に乗り込もうとしたが……

 

「フンッ!!」

 

車を蹴り飛ばしてひっくり返す。

逃げられると思うなよ?

 

「うっ、うわぁ!!」

 

驚きながら攻撃を仕掛けてくる。

随分器用な真似をしてるが、こんなもの避けるまでもない。

 

「シャア!!」

 

蹴りで凶器を切り裂く。

カランカランと音を立てて転がるさまを見て相手は冷や汗をかいていた。

 

「素直に返した方が身のためだぞ」

 

次はもう命はない。

そう、相手は本能的に感じ取ったのだろう。

そそくさと取り出してこちらに渡す。

そのまま後ろを向かずに去っていった。

これにて一件落着か。

 

「さて……渡しに行くか」

 

一体何をとったのだろうか。

気にはなるが上はふんわりというか手触りのいい箱だ。

傷もついていないことだしこれでいいだろう。

 

「ありがとうございます!!」

 

男性が嬉し涙を流している。

そんなに戻ってきて嬉しいのか。

この感謝の言葉で満たされる。

しかし気になるのは一体何なのか?

どうやら殴られた場所は『宝石店』の前だったらしい。

 

「一体何が入っているんだ?」

 

聞くとどうやら男性はプロポーズの予定だったらしい。

その告白のための指輪を宝石店で買ったのだ。

それと同じものがまだ宝石店にあると聞いて、別段結婚の予定があるわけでもないが興味本位で見に行った。

 

「これが『ラピスラズリ』か」

 

男性が買った指輪と同じものを宝石店で見せてもらった。

非常に美しい瑠璃色の宝石だった。

これを送られれば女性も相思相愛であれば受け入れるだろう。

まあ、相思相愛であれば宝石がなくても問題はない。

言葉ではなく形が欲しいという事なのだろう。

 

「いいモノ見たな、どこかへ泊まろう」

 

地味にお金は今回の旅でも不慮の事態がないように持っている。

宿泊施設にとまらないと俺にとっては肩身が狭いだろう。

 

「しかし、そうは言っても多少の調査はしないとな」

 

そう言って、俺は宿泊施設を探す前に険しい岩山や荒野に来ていた。

悪人どもが身を隠すにはうってつけの場所だ。

何より千里眼で人の手で作られた洞窟を見つけた。

そこに行けば何かがわかる。

 

「相手も着実に手を伸ばしていやがるってわけか」

 

そう言っていると気配を感じる。

よく見ると白髪の青年がそこには居た。

見てきた人造人間にあんな奴はいない。

雰囲気も普通の奴らとは違っている。

目には人生の知識を蓄えた光がある。

 

「技術の全てをつめ込んだような奴だ」

 

全力を尽くして作られた存在。

その完成形のために何かを調達しているのか?

アジトに何があるのか?

その確認をする。

今回の敵は間違いなく奴らなのだから。

 

「偉いもんだな、これは……」

 

入った直後、目に飛び込んできたのは異様な数の機械。

その中には人工生命体を作るような試験管などの器具も見受けられる。

そして不自然な地面があった。

 

「地下に何かがあるな……」

 

そう言って地下に潜り込んでいく。

その部屋の中にあったのは夥しい数のコンピューター。

試験管やクローンの作成についての論文。

人造人間についても書かれている。

 

「そして中央にあるのは……」

 

細胞単位から作られる人造人間。

その膨大な演算を行っている。

だが違和感があった。

この時代にそぐわないようなあまりにも高次的な演算がいくつも含まれている。

 

「俺が見た時の人造人間もこの時代に来ていたのか」

 

そうなればこれは壊しておくべきだ。

現代の奴らにとっても厄介な相手をみすみすと生んでしまうからな。

 

「『レオパルド・ストローク』!!」

 

腕に気を宿して一振りする。

すればその風圧で紙は舞い上がり、気で焼き尽くされていく。

その勢いはやまずに最重要な機材を粉砕していき塵一つ残さない。

たった一撃で全壊した。

数瞬前まで『研究所』だった場所の残骸が無残にもちりばめられている。

最後にその残骸からは何も起こらないように念入りに気で消し去っておいた。

 

「上に戻ってきたが……」

 

人が入っているカプセルを見つけた。

さっきの地下で見た論文。

そしてこの中に入っている女性を見て察する。

 

「どうやら20号のクローンのようだ」

 

クローンにして眠らせた状態で改造、機能停止による睡眠状態。

何かしらの機能を組み込むために眠らせたか?

そうでもなければ、即座に目覚めさせても支障はないはずだからな。

 

「これが目覚めさせるボタンか」

 

特に何も考えずに押す。

襲い掛かられても問題ないという自負からだ。

徐々に機械のフタが開いていく。

 

「んっ……」

 

光を遮断するフィルタだったのだろう。

本能的に眩しさに顔を背けながら、子供が目をこするような仕草で目覚める。

目を開けてこちらを見てくるが、何か名前を付けてあげないとな。

人造人間何号というのも可哀想だし…

 

「お前の名前はラズリだ」

 

瑠璃色の目を見た時、不意にあの宝石の名前が頭に思い浮かんだ。

ラピスだと男の名前みたいだからな。

下のラズリの方が女性らしいだろう。

 

「終わったから行かないとな、お前はどうする?」

 

そう言うと服を掴んでくる。

鳥や動物の刷り込みに近い現象だ。

初めて目にした俺に懐いている。

なるほど、クローンで作ることでこの機能を組み込み忠実な存在を作る。

考えたもんだ。

 

「じゃあ一緒に行こうか……」

 

もうこうなると放置するわけにもいかない。

連れて行かないと。

そういって手を取る。

空は飛べるようだ。

一般人をここまでの力にするとは恐れ入ったな。

 

.

.

.

 

折角、完全体になったというのに研究所に戻ってきたらこの惨状。

憤怒が体をこみ上げる。

『現代』のセルは見事に消されていた。

さらには……

 

「20号を連れていきおったな……」

 

せっかくここまで完成させることができた力。

それを目覚めさせたのだろう。

そして創造主であるワシではないものについていった。

従順なものとしても完成していたのだ。

悲願であった強く従順なもの、復讐の力。

それらを盗人にかすめ取られてしまったのだ。

 

「許さんぞ、血祭りにあげてやる!!」

 

叫びながら壁を叩く。

その一撃はすさまじく、洞窟を半壊させてしまった。

生き埋めにはならずに済んだ。

今からはセルのように放浪するまでだ。

盗人を探して殺すためにな。

 

.

.

 

「お前ら……そんなに目くじら立てるなって」

 

現代の俺が、未来の俺がいる事を伝えたのだろう。

そしてトランクスと悟飯が俺を見た後、視線をラズリに向けた瞬間襲い掛かったのだ。

それを食い止めたら、今度はなぜかばうのかという様に俺を睨んでいる。

 

「これはこの現代で別に生まれたものだ、しかもクローン体でな」

 

そう言ってラズリの頭をなでる。

目を細めて気持ちよさそうにする。

まるで小動物のようだ。

 

「ドクターゲロはやはり悍ましい技術者ですね」

 

クローンと聞いて青ざめるトランクス。

確かに地球では倫理問題とやらもある。

宇宙の中でもあまりいい顔はされない。

 

「お前らは刷りこみっていう機能は知っているか?」

 

まさか、こんな動物の本能的なものがあったのは驚きだった。

きっと何かしらの改造を施した際に、自分の言う事を聞くようにしたかったのだろう。

悪人にならないように俺が保護をしたのは間違いではなかったはずだ。

 

「確か動物が最初に見たものを親と認識することですよね」

 

悟飯が言ってくる。

親としての認識か。

まあ、別に構わないのだが。

どういった見方を今後こいつにされるのだろう

あと、これは俺が教育して育てていくしかないのか?

見た目はもうすでに18歳ぐらいだぞ。

この状態のこいつをドクターゲロの奴はどうするつもりだったんだ?

 

「そうだ、俺が目覚めさせたため俺に懐いている、そしてこっちには善悪がいまだにない幼い子供のような存在だ」

 

だが悩んでも仕方ない。

吸収力が高ければ分かっていくだろう。

もしくは知能は水準としてあるが目覚めた直後で脳が働いていないだけかもしれない。

今後に期待というわけだ。

 

「じゃあ、うまくいけばこっちの味方に……」

 

トランクスは笑顔でいってくる。

確かに期待はしたいけれど、そうそううまい話というわけでもない。

 

「実力はまだ未知数だが善の存在としてこちらの戦力になってくれるだろう」

 

未知数というのはあくまで強いというわけではない。

従順になった結果、弱い状態の可能性もある。

いずれにせよ、こいつの面倒を見るのは俺だ。

気を付けないとな。

 

「ちなみにお名前は?」

 

俺が人造人間という様な呼び方をしないように配慮したのをわかっているか。

まあ、名前の区別としては番号よりはるかにましだろう。

 

「ラズリと名付けた、未来に連れて帰る予定だ」

 

このまま、全てが終わった後にこの世界においてしまうと、今の人造人間とごっちゃになってしまう。

そして懐いている以上、引き離すわけにもいかない。

もっと言うと、俺たちの世界の存在だ。

それならば連れ帰るべきだろう。

 

「まあ、現代と混乱があるのでそれでいいかと」

 

そんな事を話していると一つの気配が下りてきた。

どうやら俺達の世界の20号のようだ。

ちなみにこの世界では番号ズレがあって、17号、18号らしい。

 

「あんたら、それが現代の私かい?」

 

20号がラズリを見るなり言ってくる。

そうではないと否定しないとな。

 

「違う、俺達よりもさらに未来の存在が作ったお前のクローンだ」

 

こうしてみると違いがよくわかる。

善の人造人間。

悪の人造人間。

姿、形も同じなのにあまりにもその眼の光には違いがあった。

片や、勝手に改造された絶望に染まった目。

片や、明るい光に満たされた目。

その差は歴然である。

 

「そうかい、まあ関係ないね」

 

そう言ってラズリに気弾を放つ20号

その気弾を俺が庇う様に弾き飛ばしていた。

避ける仕草がまるでない。

本当に無垢な存在なのだろう。

 

こいつを守ってやらないといけない。

そう考えた瞬間、何かの歯車がかちりとはまった音がする。

自分が今までどこかわからないところに迷い込んだままだった中に一筋の光が見えたような感じだ。

 

「俺が何とかしないとこいつは死んでしまうんだ……」

 

今、俺がなんとかしないと本当にラズリは死んでしまう。

トランクスたちのいう事は聞いてくれないはずだからな。

本当に自分が救ってやるべきもの。

それが今ここにいる。

 

「……」

 

無言で気弾を放つラズリ。

さっき弾き飛ばした瞬間に気弾の作り方を身に着けたのか?

 

「くっ!?」

 

20号は飛んで回避をするが、ラズリがそれより速く後ろをとって踵落としを決める。

地面に叩きつけられる20号を見て思った。

ラズリの方が明らかに強い。

徐々に機能的なものが目覚めてきているのだろう。

だが人殺しにはさせない。

 

「大事な人の前で負けるわけにはいかない」

 

機能も頭、身体も完全に目覚めてしまったようだ。

大事な人ってなんだかこそばゆいな。

今までそんな事を言われたこともない。

 

「くっ……」

 

20号は起き上がる。

しかし、その顔には焦りがあった。

まさかこんな差があったのは予想外だろう。

 

「ラズリ、見逃すんだ」

 

俺はラズリに指示を出した。

俺たちが手を下さねばならない。

特にトランクスや悟飯はな。

 

「良いの?」

 

そう言って振り向いてくる。

俺は頷いてこっちへ手招きをした。

 

「あとは俺たちに任せるんだ」

 

そう言った隙に逃げ去っていく。

どうしようもないと理解したのだろう。

 

「あの人は私で、私はあの人なの」

 

そう言って寄りかかってくる。

まさかとは思うが……

俺の額に冷や汗が伝る。

 

「私はあの人と同一化できるの」

 

やっぱりそうだったか。

きっと主人格は強い側になるんだろう。

そうなるとおまえは消えない。

だからあいつと融合することは止めない。

もし、そうでないならばやめてほしいがな。

 

「とにかく、事情を説明して悟空さん達と合流しましょう」

 

まあ、それでいいのか

仮にラズリを壊そうとした瞬間庇う。

その結果で俺だけはずれにされようが構わない。

 

「それじゃあついてきてください」

 

悟飯がそう言って舞空術で浮いていく。

ラズリも浮いていく。

俺はそれを見ながら並び立つように浮き上がった。

全員が同じ目線になった瞬間、一気に目的地へと向かっていく。

風を切る音を四つ伴って、俺は現代のカカロットたちに会いに行くのだった。




今回でゲロ陣営はセルとゲロのみとなりました。
ラズリは公式での18号の名前です。
これから先は修行回などでやっていく予定です。

指摘などありましたらお願いします。


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『黒幕と失踪事件』

今回で黒幕登場です。
セル自体はまだ初期段階の原作での神様融合前で動き回っているところです。
ちなみに戦闘力についてですが
ドクターゲロ 70億(50%)
現代ガタバル 7000万 (21億→35億→70億→280億)
※()内は疑似超サイヤ人から超サイヤ人3までの上昇
ピオーネ 280億
ブロリー 6500万(130億→195億) 
※ ()内は伝説の超サイヤ人から伝説の超サイヤ人1.5までの上昇
ラズリ 10億
未来ガタバル 1億2千万 (600億→6000億)
※()内は大猿超サイヤ人から大猿超サイヤ人2までの上昇

数字にすると未来がおかしいですね……



今、俺の前には4人の人間がいる。

一人はトランクス、ベジータの息子。

一人は孫悟飯、カカロットの息子。

一人は、未来の自分。

だがその横にいる女性に関してはため息をつくしかなかった。

 

「まさか、こんなものまで相手が用意しているなんてな」

 

話を聞いてみるとクローンの18号らしい。

名前はラズリとつけて味方として同伴しているようだ。

随分と懐いているようで、未来の自分から離れない。

 

「だが、ラズリ以外はカプセル自体がなかった、そういうことから向こうも時間が足りなかったんだろう」

 

そう言われると、脅威は薄れた。

一つに注ぐことで相手もやりやすかったのだろう。

 

「それはそうと、三日ほど逢わないうちに雰囲気が少し変わったな」

 

なんだか柔らかくなったな。

おおよそ、この女性との出会いが大きく起因しているのか。

もしくはあの戦いが僅かなきっかけになったのかもしれない。

 

「そうか、そう言われると嬉しいよ」

 

そう話し合っているとカカロットたちも来た。

家に居るわけでもなく、神様の神殿にいるわけでもない。

奴らには悪いが索敵をしているのだ。

戦うのはあいつらだがその過程はとやかく言われていない。

 

「ひゃー、未来のガタバルは見た目全然違うな」

 

それもそうだな。

ワイルドな髪形になっていて昔傷が頬にある。

女顔ではあるが凛々しさが段違いだ。

それに力も全然違うぞ。

 

「一体どうなってやがる……」

 

ベジータは強さを感じたようだ。

冷や汗をかいている。

ターレス達も苦笑いだ。

 

「まあ、今のところの戦力の把握は必要だな」

 

羅列していくと十分な戦力はこちらにある。

だが未知数の怪物がいるという事で相手に対する警戒は怠れない。

イレギュラー対策は未来の俺、ブロリー、ピオーネ、現代の俺の4名。

 

「前に見た青肌の奴らもいるからな」

 

明らかに魔術を使える杖を持っていた。

何かしらの手立てでさらに強くなっていたとしたら、なかなかの相手だろう。

それを言うと全員見てくる。

そう言えば話していなかったな。

 

「未来の悟飯が挑む前に戦ったが実力は悟飯とあんまり変わってはいなかった、当時ではな」

 

人造人間らしいから、もしかしたら男の方がかなり実力が伸びているかもしれない。

あの女の魔術も何かわからないがな。

瞬間移動はできるみたいだが。

 

「そう言えば最近他の町で大勢の人間たちが失踪しているらしいが、何か知らないか?」

 

ナッパさんが聞いてくる。

ニュースにはなっているが心当たりは……

 

「まさか、あのへんな奴の隠し玉か?」

 

未来の俺がつぶやく。

どうやらラズリを連れ出す際にドクターゲロの研究所を壊し切ったらしい。

その時に地下で見た奇妙な生命体。

それが未来でも作られていたのならば、今回の黒幕が連れてきたという事。

そしてその黒幕は全員が驚いた。

仮にドクターゲロと仮定するのであれば、若返っているらしい。

完全なイレギュラーだろう。

 

「機械の肉体が化学反応を起こして超越し始めているのかもな」

 

単純に考えてもピッコロたちの同化と同格のものだろう。

何度も繰り返していけば強くなってきた俺達でも厳しい。

きっと今の悟空達では全くかなわない怪物だ。

 

「そのドクターゲロはこっちが担当する」

 

だからお前らはもう一つの方を担当してくれと目で合図をする。

それに関しては反論はない。

戦うのではなくあくまで調査。

一人で勝手に突っ走っていい場面ではない。

あの時のフリーザのように作戦を立てた結果自分の独りよがりな場面もあった。

今回はそこから学んで、準備万端な状態にしておこう。

 

「お前らに勝算はあるのか?」

 

ベジータが言ってくる。

俺たちはにやりと笑っていた。

自分同士なのだから次にいう言葉も予定調和である。

 

「やる前から勝つも負けるもあるかよ」

 

そう言うとピオーネが笑っている。

ブロリーはその言葉に頷いている。

 

「生意気なこと言うようになったよな、お前も」

 

ターレスが言ってくる。

確かに昔に比べたら自信はついていた。

でも、それはたゆまぬ努力の成果だ。

生半可な決意では言っていない。

 

「とりあえず、解散して調べた方がいい」

 

未来の俺がラズリの手を握り飛び立とうとする。

それをベジータが引き止める。

 

「未来から来たお前らはとにかくカプセルコーポレーションで居候しろ」

 

放浪をすると連携が取りづらいんじゃないかというベジータの配慮であった。

とは言ってもあいつもあいつなりに子供と触れ合う俺たちを見て感じるものがあったらしい。

 

「そう言えば『精神と時の部屋』におめえらは入ったんか?」

 

俺とブロリーに悟空が聞いてくる。

その言葉に頷く。

すると驚いた顔をしていた。

 

「じゃあ、おめえら超サイヤ人の壁を越えたんか!?」

 

元々ブロリーは壁を越えた超サイヤ人より強いという補足を入れたうえで、それに同意する。

でも、それを凌駕するかもしれないイレギュラー。

気を引き締めてかかるしかない。

 

「お前らはこれからだろう、がんばれよ」

 

そう言って未来の俺とラズリ、ピオーネ、ブロリーで向かっていく。

目的地は分からない。

相手の場所の特定ができていないからだ。

微弱な電磁波が出ているのならやりようもあるだろう。

そういった真偽も定かではないから何とも言えない。

 

「しかし千里眼でも世界中見渡せないのは苦労だな」

 

上で宇宙まで見れても平面状にも限界はある。

全てを見渡す目があれば楽なんだけどな。

言ってみれば神の目というか……

 

「神様に聞けばいいじゃないか」

 

見落としていた。

戦闘力やそれ以外にも特殊な技能を持っている。

それならば聞いた方がいいと俺は神様の神殿に向かった。

 

「先客にピッコロがいたか」

 

どうやら二人で重要な話があったらしい。

神様がどうかを拒む理由があるらしく、その危険度で決断するらしい。

それまでピッコロはここで待つようだ。

 

「お前、次の相手の居場所でも聞きに来たか?」

 

流石に勘がいいな。

それでもない限り、部屋も使い切った俺たちは避難ぐらいしか利用できないぞ。

 

「気で探れないからな、やはりきついもんだ」

 

そう言って神様に聞きに行くと、どうやら狡猾に隠れているらしい。

今、向かってもすれ違ってしまうという忠告は貰った。

青肌の奴らは見えていないようだ。

 

「とにかく、その危険な奴に関しては悟空達が来るかもしれない、最近ニュースで失踪した人間が多いからな」

 

そう言って神様の神殿から去っていく。

雪山の奥地にどうやら本拠地を移したようだ。

険しい岩山よりも面倒な場所。

しかもすれ違うという事はいろいろな場所に点在させたかもしれない。

雪山から全員で見つけるために散開する。

確率を少しでも上げるための方法だ。

 

「俺たちの仕事も危険度が高くて困るな」

 

そう言って首をコキリと鳴らした瞬間、殺気が後ろに迫る。

それに気づいてすぐさま超サイヤ人2で対応をする。

 

「盗人め、殺してくれる……」

 

口調は老人。

しかし非常に若々しい見た目。

どうやらこいつが……

 

「ドクターゲロはお前か?」

 

そう言うと相手はにやりと笑っていた。

知っているとは思わなかったのだろう。

 

「その通りだ」

 

そう言って駆けてくる。

どこか戦闘のスタイルが似ている。

どうやら未来のあいつらも融合したようだ、目の前で抜き取られていたから妥当ではあるが。

 

「お前の目的はなんだ?」

 

未来から来て望むものは一体何なのか。

おおよそろくなものではないだろう。

すると狂気を孕んだ目でこちらを見ながら言ってきた。

 

「孫悟空への復讐、そしてこの技術でもう一度再興させることだ」

 

妄執にとらわれた怪物。

こいつはここで潰しておいた方がいい。

こちらも構えて臨戦態勢に入る。

もうお話の時間は終了だ。

 

「『ジュール・バレット』!!」

 

相手の攻撃が放たれる。

といってもバリアーを張り、ジェット噴射の音が鳴り響く。

俺はその瞬間腰を落とす。

避ける先を読んでの攻撃の可能性もある。

それならオタオタせずに受け止められる体勢をとる。

 

「ぬぐぅ!!」

 

腰を落としたまま、受け止めて放り投げる。

すると指を銃の形にしてこちらに照準を合わせる。

 

「『ボルツ・マグナム』!!」

 

電撃の弾丸が放たれる。

避けたら今度は掌を出してくる。

 

「『ウェーバ・キャッチ』!!」

 

ゲロの方に吸い寄せられる。

何とか引き剥がすが間合いにはまってしまう。

搦め手のような技まで完備とはな。

 

「『カタストロフィー・ラプラス』!!」

 

全てを壊すようなでかい斧型の気弾。

受け止めるための姿勢を整えられずに直撃する。

そのまま勢いよく地面へ一直線に叩きつけられる。

 

「ゴホッ!!」

 

肺の中の空気を吐き出してしまう。

何とか整えるが、まさか多彩な技を持っていたとはな。

 

「ふむ、5割でこれとは孫悟空への復讐には十分か」

 

どうやら勝ったと思っている。

こっちが全く技を出していないのにな。

おめでたい野郎だぜ。

 

「後ろだぜ!!」

 

そう言って背中から大技を放つ。

前に聞いた話によると気弾の吸収や相手のエネルギーの吸収を掌で行い、自分のパワーに変換できるらしい。

ならば背中からやってしまえば問題はない。

 

「『アルバトロス・ブラスター』!!」

 

だが相手が不敵に笑う。

バリアーを張ることでダメージを軽減したのだ。

気を込めた様子はない。

どうやらオートシステムとして組み込んだようだ。

 

「吸収によるオーバーフローを狙われてしまう危険性があるんでな、貴様ら知恵者への対策よ」

 

掌の吸収機能を無くしたようだ。

確かに狙っていた。

掴んだ瞬間、一気に気を爆発させたりしてその推進力で腕をもぎ取ったりなんてのもな。

 

「その対策のせいでこっちは有利に立ったけどな」

 

一瞬の間に真正面に立って攻撃を仕掛ける。

超サイヤ人2で押されるところだった。

引き寄せる技があったことで面食らったが問題ない。

 

「ぬぅ!!」

 

腕を交差して受け止められたかと思ったら、関節を外す技を仕掛けられる。

その一撃を食らわないように攻撃を繰り出し続けることにするか。

 

「せいやぁああ!!」

 

右肘を出す。

受け止められそうになった瞬間、後ろに跳躍。

そのまま後ろ回し蹴りを放つ。

 

「甘い!!」

 

手を前に出して受け止める姿勢のようだ。

こっちがフェイントをかけることもできないとでも思ったか?

その掌を乗り上げるように再度回転して蹴りを叩き込む。

 

「そっちの方がよっぽど甘いんじゃないか」

 

ゲロが起き上がってくる時に、俺は口角を上げて挑発するような笑みを浮かべる。

ただ、今の一撃の手応えと想像と離れた感じ。

僅かな違和感を感じていた。

 

「まだ、完璧になじんでいないのか?」

 

それは今の状態が本当に最高と言えるのかどうか。

かなりの数のナノマシンを加えているはずだ。

それにしては実力が伸びていない。

俺の超サイヤ人2と張り合える実力で済むはずがない。

もっと力を手にしているはずだ。

 

「見抜けるとは目が高いな、今はまだ実力にして50%ほどだ、今のお前の是力には100%でもかなわんかもしれん」

 

しかしその言葉の割には余裕が見てとれる。

たぶん自分でもどこまで伸びるのか想定できていない。

もしくはさらなる隠し玉をどこかで用意しているのかもしれない。

 

「老人体からこれほど若返っているから再度自己改造によるアップデートしないといけなかったのだ」

 

そう言うと軋んでいるような音が聞こえる。

まるで肩がこっているかのような……

そしてビキビキと音を立てて外装か何かが剥がれ落ちていく。

 

「今の衝撃で……外装『は』完璧だ」

 

そう言った瞬間、後ろにいた。

速度が上がったことを示したいのだろう。

だがこっちも裏拳で対応する。

 

「フンッ!!」

 

それを避けて蹴りを繰り出してくる。

切れのいい一撃だ。

俺はそれに合わせて頭突きで応戦する。

 

「ちっ!!」

 

再び距離をとろうとするが、そうはさせない。

足を戻す前に掴んで引き寄せる。

体勢を崩したところに肘打ちを叩き込む。

さて……、我慢比べだ。

 

「『コンドル・レイン』!!」

 

気弾の雨をバリアーで防ぐ。

だが、そこにさらに追撃で『レイブン・リヴェンジャー』を叩き込む。

どこまで持つのだろうか?

仮に18号たちと同じような永久の動力炉があっても、タイムラグ程度はあるはず。

その隙に最大の一撃を叩き込む。

 

「目の付け所は良いが、残念だったな」

 

バリアーを解いて攻撃を弾き飛ばす。

そのまま急接近して殴り飛ばされた。

こいつの拳は重いな。

しかし、残念という言葉が引っかかる。

まあ、予測できるのは永久の動力炉をやめた分、バリアーやパワーアップに切り替えたのだろう。

こっちに対抗しやすくするため、基礎的な戦力を上げるような改造にしたのかもしれない。

 

「私はこの融合による力のため、永久動力炉をやめた」

 

何故ならば、ほかの融合したやつらにも組み込んでいなかったからな。

相手がそう言った瞬間、合点がいった。

 

「その代わり、強大パワーを向上させた、その結果今のお前に匹敵したのだ」

 

まだまだ伸びる余地はあったが、あと一人同格の知能がいないせいで完成形が朧気だった。

その為、不完全な状態での自分を晒しているがな。

と付け足して言っていた。

つまり本来ならば俺を歯牙にもかけないほどの強さになってもおかしくはなかった。

 

「天才は天才でないと分かれないってのは本当のようだな」

 

そうは言ったが、にやりと笑っていた。

どうやらまだ、強くなる余地はあるというのか?

 

「外面は目覚めても、内面がまだ足りていない、これが完全ならお前に負ける事は無い」

 

アップデートがまだ終わっていないのだろう。

しないといけなかったとは言った。

しかし、完了したとは言っていない。

 

「お前は今ここで倒しておかないと面倒になるってのは分かった」

 

時間経過で強くなってしまうのなら危ない。

今でこの強さなら、超サイヤ人3と同格になってしまうだろう。

そうなると厄介なことこの上ない。

 

「それにまだ隠し玉もあるのだろう?」

 

一応疑問から、確信に近づくために質問を投げかける。

こういった奴の腹の中は分からない。

真実を言った所でその言ってたことを撤回したりして、嘘で事前に惑わせるなんて普通の事だ。

さらに頷いても第二、第三の隠し玉が存在する場合がある。

優位に立つ術が山ほどありましたなんてのも、こういう奴なら十分にあり得る。

 

「さあな」

 

肩をすくめてはぐらかす。

時間稼ぎもできるから、引き出したいとこっちが躍起になっていくのを狙っているのだろう。

だがそんなものに乗りはしない。

口がなくなるだけだと思い、攻撃を放つ。

 

「驚いたな、強くなると聞いて嬉しくなって待つものだとばかり」

 

それは他のサイヤ人相手にやってくれ。

俺はそんなに酔狂な方ではない。

 

「自分を危機に追い込む愚か者なんてここにはいないぞ」

 

未来の俺も強いからと言って相手が同格になるまで待つことはしないだろう。

ラズリは未来の俺の言葉を聞くだろうし問題はない。

ブロリーとピオーネも面倒ごとは嫌う。

つまりここにいる奴らに強くなるから待ってくださいは通らない。

強くなる前に叩き潰すのがセオリーである。

 

「まあ、その時の為にこれがある……」

 

そう言って体に気を集中させる。

まさかそいつを放つつもりか?

 

「『ハーミット・ルーメン』!!」

 

身体から爆発するような気を発する。

しかしその衝撃とかは感じられない。

つまりこれが意味することは……

 

「あいつ、体全体での太陽拳を……」

 

その隙に逃げていったのだろう。

まさか、あんな大仰な方法で逃げていくとは。

即座に仕留められなかったのも、相手を探ろうとしすぎた結果だ。

 

「結構ナメック星からの悪癖かもしれんな……」

 

思い返して溜息をつく。

ナメック星の爆発の原因でもある。

今回の勝負に関してはこういった行為を続けていると危険な場面が増えてくる。

 

「おーい」

 

そんな事を考えていると、ピオーネがやってくる。

思ったより遅かったが何かあったのか?

 

「全然、みんなの気が感知できなくて今できるようになったんだけど」

 

まさかジャミングする機能をここ一帯に仕掛けていたのか。

戦う前に準備をしておくとは用心深いことこの上ない、

 

「とにかく逃げられはしたが強さはかなりのもんだ」

 

皆が集まった時ので話を進める。

現在の強さはあいつの申告ではあるが50%で超サイヤ人2並みだと伝えた。

そのうえで相手には伸びしろがあるから最大でも超サイヤ人3まではあるかもしれない。

あいつが真実を明らかにしたとも思えないからだ。

つまり単純明快に言うと……

 

「カカロットたちでは絶対に勝てない」

 

ブロリーがつぶやく。

そして今の自分でも厳しいというのをつけ加えた。

とは言ってもまだあの状態ならぼこぼこにできるだろう。

俺たちのうちラズリを除いた4人が当たれば奴は壊せる。

 

「ン?」

 

そんな事を考えていると、ふとどこかで気の乱れを感じる。

一体何が起こっているのか。

邪悪な予感がする。

きっと失踪事件の首謀者がこの気の乱れの原因だろう。

再度合流のため、俺たちはひとまずベジータ達の気を探って接近していくのだった。




黒幕はドクターゲロです。
まだ隠し玉は用意しています。
廃墟の未来で作った奴だったり、融合の際に回路見込んで作ったわけではないからえげつないパワーアップはしていない設定です。
インフレしすぎたら、セル編なのにゲロがGTの超17号より強くなるので……といった所です。
ドクターゲロの攻撃名の由来は明るさやエネルギーなどの単位名です。
指摘などありましたらお願いします。


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『邪悪な存在』

今回でセル登場です。
多分、フリーザ編よりは日常回を除けば短くなる予定です。


俺は現代の俺が戦った後に合流したやつらを見て溜息をつく。

こいつら超サイヤ人の壁を越えてはいない。

まだまだ発展途上なのだろうがあの白髪の青年……ドクターゲロには叶わない。

それが顔に出ていたのか。

納得できないという風にベジータが噛みついてきた。

 

「見るなり溜息とはどういうつもりだ!!」

 

まあ、態度が悪かったのは謝るが、それなりの理由がある。

正体不明の怪物までいるんだからな。

そいつと人造人間という相手。

どれかを倒してもらうのが役目なのに実力が低ければ意味がない。

 

「修行に行った方がいい、溜息については謝るがな」

 

そう言ってラズリとともに神殿から下へと向かう。

ピッコロの奴が向かっていったようだが、これならば追いつくな。

気を現代の自分の何分の一かに抑えて超サイヤ人になる。

追いつくためにいちいち地球全体が震えるフルパワーを使う事はしない。

ラズリを背中に乗せるような形でピッコロを追いかける。

 

ジンジャータウンという町に来た。

ピッコロの奴も見つけたが、あまりにも異様な光景だ。

衣服だけが残っている。

俺がかつてやったゲテスターによるエネルギー吸収の跡のようだ。

すりつぶすのではなく、その人間に針の触手を突き刺して養分を吸い取るといったモノ。

 

「こいつは吸収型の相手だぜ」

 

そう言ってピッコロの前に降り立つ。

身構えていたが風貌と雰囲気で察したのか。

すぐに別の方向を見て集中している。

 

「気配がちかづいてきているな」

 

ヒタリヒタリという様な音。

緩やかな音だがまるで足を濡らしたかのような音。

そして二歩目で感じ取ったがそこそこ大きい。

さらに体重は軽く身のこなしがいいもの。

 

「お前がこの事件の首謀者か、昆虫野郎」

 

その姿は虫のような形だった。

ピッコロとの会話を聞いていくとどうやら抜け殻があったらしい。

そして相手の目線はラズリへと向いた。

 

「まさか、こうもすぐに18号を捕まえられるとはな!!」

 

そう言って飛びかかる昆虫野郎。

とにかく尻尾を掴もうとするが……

 

「来ないで!!」

 

そう言ってラズリが突き飛ばす。

相手は受け身をとったが冷や汗をかいていた。

想定以上だという事か。

 

「この一撃の重さ……お前は本当に18号か?」

 

俺はラズリの前に立って昆虫野郎に対して伝えてやることにした。

多分吸収しても思った結果になるのかがいまいちわからないからな。

 

「これは未来のドクターゲロが作ったクローンだ、ラズリにも伝えている」

 

最初聞いた時は泣きそうな顔になっていたが今は落ち着いている。

どんな状態でも離れなかったからか信頼の眼差しで見られていた。

こそばゆいものを感じる。

 

「なるほど、吸収しても自分の計算が狂ってしまう可能性があるな」

 

残念そうに言っている。

さて、とにかく聞き出すことは聞きださないとな。

 

「ここは俺に任せろ」

 

そう言ってピッコロが昆虫野郎と戦うらしい。

そう言って気をお互いに噴出させた瞬間、ぞわりとした。

昆虫野郎からは複数の気が感じ取れたからだ。

カカロット、フリーザ、ベジータ、ピッコロとわかるだけでも4つ。

異質な気ではあるが、種は分かった。

こいつも別のタイプではあるが人造人間だ。

おそらくは人の細胞を組み合わせて培養から育てられた存在。

いずれにせよ、真実はピッコロが聞き出すだろう。

 

「だっ!!」

 

いきなり大きな気功波で吹き飛ばしにいく。

相手は踏みとどまるがピッコロに殴り飛ばされてしまう。

その先へ回って肘打ち。

戦いの流れとしてはピッコロが優勢に進める。

 

気弾を避けられる速度で連射をするが巧みな気のコントロールで昆虫野郎を包囲する。

避けられない状態で次々と気弾を食らってダメージを負う昆虫野郎。

だがその煙からだまし討ちのようにしてピッコロの背後に回る。

かなりしんどそうな中、一瞬の隙をついてきたようだな。

 

「ぐあっ!!」

 

体をよじるが腕を刺されてしまった。

再生能力があるナメック星人にとっては痛手にはならないだろう。

 

「ぐっ……」

 

食らったピッコロは苦悶の表情を見せる。

しかし俺にはわかっている。

あれは芝居だ。

情報を引き出すために行なっている。

大根役者ではない。

れっきとした芝居だ。

 

その芝居が功を奏したのだろう。

昆虫野郎は気前よく情報を提示していた。

名前はセルといい、ドクターゲロが作成を試みた別の考えによる人造人間。

最初に予想したように細胞をいくつか組み合わせたものらしい。

 

特殊な生命体と認識された現代の17号と18号を吸収することで完全体へと進化する。

最強の存在とは言っているがきっと現代の俺の本気には叶わないだろう。

気を感じた中に現代の俺やピオーネという女、ブロリーの3人の気はなかった。

現代のスパイロボは『俺が昔から地球に来ていたら』という世界の状態。

つまりは現代の俺やピオーネ、それ以外にもブロリーたちの細胞でさらに強力なこいつを生み出せる。

未来では『俺が人造人間の動作手前に来た世界』だから俺の細胞やピオーネの細胞はないセルなのだ。

だから、驚異的なパワーを獲得できなかったのだ。

 

「もう十分な情報をもらったんじゃないのか?」

 

そう言うとピッコロがにやりと笑う。

腕をへし折って、新しい腕を再生させる。

セルの奴もピッコロの細胞があるのに気づかないとはドジを踏んだな。

 

「ここは仕切り直しだな、『太陽拳』!!」

 

このままでは危ないと読んだのだろう。

そう言って体から発光して目の前から消え去る。

どうやら気を消したようだが、獣のような勘ですぐに当ててやる。

これ以上、人間のパワーを吸い取り続けたら厄介極まりない。

 

「お前は他の奴らに報告してくれ、俺は探す」

 

ピッコロにそう言って互いに去っていく。

ちなみにお前と呼んだのは俺の前で名前をピッコロが名乗っていない。

もしくは誰も呼んではいない。

だから不自然さを取り払うためにお前と呼んだのだ。

 

「で……お前さん遅いな」

 

何故かセルの方向に先回りをしてしまっていた。

勘がさえわたっているのもあったが、セルも驚愕の顔をしている。

だが、そんなセルの後ろから青肌の男女が出てきた。

 

「未来のガタバル……あなたの実力ってどれほどなのかしらね?」

 

そういったかと思うといきなりセルを黒い靄で包んでいく。

徐々にセルの戦闘力が上がっているのがわかる。

これはまずいな。

そう思って攻撃を仕掛けるも……

 

「ヌン!!」

 

青肌の男が食い止める。

無駄なあがきをしやがって!!

少しだけ力を開放した超サイヤ人でひねりつぶしてやる!!

 

「どりゃあ!!」

 

一発でガードごとぶち抜いて殴りとばす。

相手はあの一撃の脅威に荒い息をついている。

向かおうとしたが、遅かったようだな……

 

「完全体としての強さはいかがなものかしら……」

 

こいつ……魔術師だったか。

セルを特殊な条件を無くして完全体に変貌させやがった。

 

「ふんっ、言いなりになっているようなことが癪だが、試運転に丁度いい」

 

そう言って駆けだしてくる。

試運転扱いねぇ…

俺は向かってきたセルの頭をそれを超える速度で横から押さえつける。

 

「随分とのろまだな……」

 

速度に自信ありという様だったが今の俺には止まって見える。

これでも全力にははるかに遠いぞ。

人造人間どもの時も正直全力といった感じはしなかった。

お遊びで一方的に倒そうとしていたぐらいだ。

 

「ちなみにどれだけの戦闘力を想定しているんだ?」

 

聞いてみると現代のカカロットたちを超えているような状態らしい。

ここから17号と18号を吸収させたら俺の出番になってしまう。

だが、奴らにも思惑はあるだろう。

 

「はあっ!!」

 

蹴りを放ってくるがそれを掴んでもぎ取ってやる。

放り投げるとゴロンと音を立ててセルの足が転がった。

 

「ぐっ!?」

 

再生させて立ち上がるが背中に俺は居た。

全く舞空術があるのにこんな仰々しい羽根なんて……

 

「ただの重りに過ぎない!!」

 

引きちぎって気弾で消滅させる。

振り向いてきた瞬間、蹴りを放つ。

それこそこの一撃の瞬間だけ大猿超サイヤ人1の全力で。

 

「ぐがあああああっ!?」

 

ブチブチと防御している箇所の筋繊維がちぎれていく音。

徐々に威力に耐え切れずガードした腕がちぎれて飛び散る。

メキメキとアバラのへし折れる音。

そのアバラが開放性の骨折を伴って右肺部分から骨が露出する。

蹴りを振りぬいた時……

上半身と下半身が別れながら、上半身だけ回って地面に叩きつけられるセルの姿があった。

その時の蹴りに俺は奴の気脈を乱すようにした。

気を消せなければ町で生体エネルギーの採取ははかどらないだろう。

 

「時間切れね……」

 

そう言うと、再び黒い靄がセルを包む。

靄が晴れるとセルの体はくっつき、初めの形態へと戻っていた。

気脈の乱れは若干ある。

気を引き出すときに乱れたり、今の間でもわずかな気の漏れがある。

 

「この男を倒したいのなら私の手駒になりなさい」

 

女が提案をする。

やはりそう言った狙いがあったか。

只でやってくれる善良な奴ではないと思っていたが……。

 

「断る、自分らしいままでいたい、私は私の目的を達成して見せる」

 

そう言うセルの気が高くなっている事に気が付いた。

魔術によって変身させられた分、戦闘力が見つけた時よりも上がってしまったのだろう。

サイヤ人の細胞のおかげでさっきの致命傷からの上昇もあったというわけだ、

天才的な細胞や遺伝子の成せる技だろうな。

セルは飛んでいきどこかへ行った。

追いかけていこうとするが……

 

「おおおおおお!!」

 

青肌の男がタックルを繰り出してくる。

不意打ちとはいえ雪辱に燃えているのか。

それを受け止めて距離をとる。

 

「お前も吸収して強くなれるなら、なぜ俺から奪おうとしない?」

 

現代の俺の気を感じ取っている。

かなり強い事は強いのだろう。

だが全然満足もしない。

俺の全力の欠片程度で圧倒的なのだ。

 

「貴様の力をもらってしまうと確実に自己崩壊を起こすだろう」

 

つまり強大なパワーに耐えられないって事か。

それならば仕方あるまい。

そう考えた刹那、女が杖で地面をたたく。

するとシュンッと音がして目の前から消えた。

 

「瞬間移動の魔術、凶暴化による強化魔術」

 

あいつらが第三勢力か。

邪魔をされてしまうと面倒なことになる。

そんな事を考えているとラズリが岩山の陰から出てきた。

あの青肌の奴を見た瞬間、隠れるように言っておいた。

巻き込まなくてよかった、大怪我どころでは済まなかっただろう。

 

「この事も伝えないといけないな」

 

そう言ってピッコロたちの気がある方向へ向かっていく。

現代の俺やブロリーもそこへ集まっている。

風を切るように、音を置き去りにするように瞬く間につくように速度を上げていた。

 

「ムー……」

 

着いた後のラズリの機嫌が悪かった。

揺られたのが嫌だったんだろう、申し訳ない。

 

「…と今回の別の相手についての情報だ」

 

みんなに伝える。

完全体にしたので相手は強化ができるという事。

もしかすると誰かを洗脳して敵にすることも可能ということ。

そのうえで敵に回ってほしくないやつには気を付けるようにした方がいい。

そう言うとみんなが十人十色という様に別々の人間を見る。

 

「とにかくピッコロから教えてもらったセルと、俺たちの発見した未来のドクターゲロ、そして青肌の男女が今回の敵」

 

現代の俺が敵の戦力をもう一度おさらいする。

セルや人造人間たちはカカロットに任せて未来のゲロと青肌の男女が俺たちの担当。

敵を袋叩きにする性分じゃないのが悔やまれるな。

それができればこんな7人程度、すぐに何とでもできるのに。

 

「おめえらもこの部屋に入ったらどうだ?」

 

カカロットが言ってくる。

今、誰が入るかの話だったらしい。

カカロットは現代の悟飯と入るようだ。

未来の悟飯はピッコロと。

ベジータとトランクス。

ちなみに、現代の俺やブロリーはすでに修行済。

 

「最後に入るよ」

 

星の再建で失った戦闘力の復活。

その目的があるからな。

 

伸びをして、次の相手の動向を予測する。

そんな中、現代の俺とピッコロが近づいてくる。

 

「今回の戦いに出ていくのか?」

 

ピッコロが聞いてくる。

俺は今、ラズリの命を狙う未来の20号や青肌の男女ぐらいしか相手にしない。

守るべきものをほったらかしてまで、勇んで戦うようなこともしない。

さっきの奴は追いかけていくといった手前、、そうなっただけだ。

基本的にラズリに危害が及べばを前提とした守る戦いだ。

最前線に出ていくつもりは微塵もない。

 

「現代の俺がやられたら出るさ」

 

そう言うと苦笑いをする。

おおよそ、現代の俺はカカロットたちが言ってきたり、もしくは命の危険があれば出るという事だろう。

流石は自分、考え方が似通っている。

 

「まあ、あいつらの修行が終わった時を楽しみにしておこうぜ」

 

そう言って『精神と時の部屋』を見る。

どれほど、伸びるのかはわからない。

超サイヤ人の壁を超えることができればいいが、第一段階の発展形で、きっと2にはなれそうにもない。

基礎的な戦闘力がある状態ではないこと。

時間も2年あるからといってもそう簡単なものではない事。

多分2になるきっかけを見つけられないのではないだろうか

そう思うと途端に背中に冷や汗が伝っていく。

 

 

できる事ならば、自分が前線に出て地球が崩壊しませんようにと俺は願うのだった。




原作に比べては強くなっているけど2になれるかはきわどいです。
ベジータは一時期修行つけてもらって、一番2に近いキャラとなっています。
指摘などありましたらお願いします。


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『最強の人造人間』

劇場版キャラ参戦です。
インフレだけではなく、普通に覚醒の為なりのイベントをつぎ込みます。
もう少しでこの人造人間編も終わりそうです。



「流石に完全に防ぐことはできないか……」

 

セルの最近の動向を伝えられる。

あの後ピッコロと17号が交戦。

その隙にセルが襲来。

あらゆる手を使い、17号を吸収したらしい。

現代の俺がゲロの方は止めてはいるようだが、あまり進展がない。

青肌の奴らもあれっきりだ。

 

「最悪なのはサイヤ人の悪い癖が出るかもしれない」

 

今のセルを超えてしまうと、次の標的は完全体となる。

それにするために18号をわざと吸収させるかもしれない。

そうなると手を付けられない。

少なくても前線に出ない人間を除いた話だが。

 

「あいつらの不安要素を除いてやるか」

 

ラズリとともにベジータの方へと向かう。

どうやら移動しているらしい。

トランクスも一緒だ。

目的はセルだろう。

クリリンも同じ方向へ移動をしているようだ。

何かしら重要なことがあるのかもしれない。

わざわざクリリンがベジータ達のように前線に出るリスクも必要ないからだ。

 

「止まって!!」

 

ラズリがいきなり叫ぶ。

一体何事かと思い、急ブレーキをかける。

すると目の前が光り、人型を形作る。

 

「何者だ!!」

 

戦える態勢で相手に問う。

光が晴れない限り、正体不明としか言いようがない。

そんな事を考えていると聞き覚えのある声が聞こえた。

 

「つれないものね」

 

光が晴れた時、目の前にいたのはミラとトワ。

そして抱えている布が一つ。

随分大きいが一体なんだ?

二人が秘策有りという雰囲気を纏って現れた。

 

「久しぶりに見たと思ったら……」

 

俺がそう呟くとかぶせていた布をとる。

すると目の前にいたのは未来の18号だ。

気絶しているのだろう。

こいつら、まさか……

 

「はい!!」

 

魔術でラズリを引き寄せる。

止めようとするが割って入るミラ。

腕を掴んで放り投げる。

邪魔をしやがって!!

そう思っていると今度はトワが透明な壁を作り出す。

 

「ラズリ!!」

 

打ち破ろうと変身をして殴りつけて割っていく。

しかし、わずかに遅かったのか未来の18号と重なり合っていく。

ミラの奴がにやりと笑っている。

何かがこみ上げていく。

今までとは違う、胸を締め付けられる感覚。

止めないとまずい。

 

「させないというのを忘れているのか?」

 

駆けだした俺を追いついていたミラが止める。

こいつは何度も何度も……

 

「邪魔をするなぁ!!」

 

ラズリの方へと向かおうとして蹴り飛ばしにかかる。

しかしバリアのようなもので防がれていた。

 

「この程度!!」

 

ビキビキと音を立ててバリアーを壊していく。

だが間に合わなかったのか、激しい光に包まれていた。

 

「くっ!!」

 

光が晴れた時、髪と背が伸びていて、さらに体つきが女性らしくなった姿があった。

どちらが主人格となったかはわからない。

目を開けて、手を閉じて開いてを繰り返す。

首を鳴らして、伸びをして確認をしたのだろう。

 

「うん……力がみなぎる」

 

その声はラズリのものだった。

どうやら主人格は乗っ取られずに済んだようだ。

俺はその事実にほっとする。

 

「さて……」

 

しかしそれも束の間。

トワが杖を振りかざした瞬間、ラズリの目が変わる。

紫色のオーラがラズリから噴き出す。

そしてこちらへ突っ込んでくる。

 

「ぬぐっ!!」

 

腹部へ人間ロケットと言わんばかりに突撃してくる。

それをモロに喰らって後退する。

すると目の前から消えたと思うと背中に肘打ち。

足を持たれてジャイアントスイングで投げられる。

 

「まさか、強化したらこれほどまでに……」

 

今のフルパワーの自分を凌駕する身動き。

合体でどれほどの強さになったかは知らないが、その後にされた強化の恩恵が凄まじい。

 

「でりゃあ!!」

 

地面に叩きつけられるとそのままうつ伏せにされてキャメルクラッチ。

ギリギリと締め上げられる中、何とかロックを外す。

体勢を立て直す。

 

「潰しあいなさい、彼らの目的が終わるまで…」

 

トワの呟きが聞こえてくる。

一体どういう事だ?

 

「はっ!!」

 

そんな事を考えていると攻撃が迫る。

ムーンサルトキックを放っているが、この瞬間を逃さない。

足を掴んで抱え上げる。

これで勝負は終わったも同然だ。

 

「こっちが無様に受け続けるだけとでも思ったのか?」

 

腕や足の攻撃も届かないように高くラズリを持ち上げる。

持ち上げることは不可能ではない。

これでは超速度で逃れても追尾はしやすい。

 

「でも、こうすればいいのよね」

 

そう言って反発しあう様に弾かれる。

魔術でやりたい放題のようだ。

ここまでやられると流石に……

 

「久々に怒髪天を突いたぞ、ガキ……」

 

髪の毛は伸び、金色の体毛を持った大猿超サイヤ人になっていた。

元々の能力はなれる水準だとゲテスターも言っていたが、いかんせんきっかけがなかった。

今、どうやらラズリに対して好き放題している事に怒りを感じて覚醒したようだ。

 

「なっ!?」

 

腹へ一撃を叩き込みにいく。

大きな盾を出現させていたがそれも壊しきる。

風圧で少し下がってはいたがまだ追撃はやまない。

 

「『ペリウィンクル・カローラ』!!」

 

花びらのように舞う気弾の乱射。

不規則な軌道、その質量に避けることはできない。

バリアーを張っているが、それをするぐらいならば逃げればいい。

 

「『クレイン・グレネード』!!」

 

次に放つのは鶴の形の気弾。

相手のバリアーを打ち破っていくも男が間に割って入り相殺する。

 

「『シザース・ウィンド』!!」

 

強く空気を押し出すように、相手に放つ。

その動作で生まれた切り裂くような風は男の頬や、女の手に切り傷を作っていく。

 

「『ムーン・デストロイヤー』!!」

 

巨大な満月を模した気弾を相手に放つ。

その一撃にはさすがに危機感を覚えたのだろう。

ラズリの洗脳を解き、全神経を転移に集中させているのが見て取れる。

感情もなさげな奴らが一筋とはいえ冷や汗をかいているのがいい証拠だ。

 

「はっ!!」

 

そう言うと目の前から消えていった。

俺も臨戦態勢を解いて気弾をコントロールして小さな飴玉の形にして宇宙空間へ打ち上げる。

どこかへ当たってしまっただろうが気にしてはいけない。

俺はそしてラズリの方に向かう。

 

「ううん……」

 

眠い場面から起きるような声。

まるで数日前あのポッドから出した時と同じだ。

目をこすりながら一言呟く。

 

「おはよう……」

 

それに対して笑顔で答える。

既に大猿超サイヤ人3は解除しておいた。

 

「おはよう、ラズリ」

 

相手を追い払うことはできたが、どこかで大きな気を感じ取れる。

セルの気が一気に膨れ上がっていた。

最悪の事態になってしまったようだな。

 

しかもさらに嫌な予感がする。

怒りに身を任せたが故の軽率な行為がさらなる災厄を呼び込む予感。

 

「とりあえずは全員と相談だな」

 

そう言って俺たちは一度神様の神殿に戻る。

するとピリピリした雰囲気がそこにはあった。

 

.

.

.

 

厄介ごとをベジータが増やしてきた。

セルとの実力差がついたためにサイヤ人の本能で完全体にわざとさせたらしい。

そしてその結果は惨敗。

一体、何がしたいのか理解に苦しむ。

 

しかも別の方向で滅茶苦茶にでかい気を感じたと思ったら、上空に高密度な気弾を放っていたし。

その正体が目の前に現れたけどね。

未来の俺よ、どう考えてもやりすぎだ。

あれのせいで宇宙空間で動いている影がある。

 

「あの担当はターレスとブロリーとスパーニ、ニアにラディッツさんあたりに任せよう」

 

俺は引き続きゲロ、ミラとトワの監視。

ピオーネがいるから特に問題はないだろう。

 

「こっちはいつでも動けるようにしておく」

 

未来の俺は自由に動くようだ。

正直あんなパワーを存分に発揮されたら地球が危ない。

それどころか、災厄をもう一つ増やしかねない。

 

「まあ、それで行こうか」

 

そして未来の俺が『精神と時の部屋』へ入っていく。

随分と様変わりしたラズリさんを見てトランクスと未来の悟飯は『区別がついていいですね』と言っていた。

残念だけど未来の奴との合体だからもう居ないも同然だぞ。

状況的にまともに恋愛することがないから、女性を見てそう言った事はあまり抱いてないのか?

 

「おい、セルの奴が!!」

 

クリリンの奴が叫びながらこっちに来る。

『お前さんが緊急停止したらよかったのに』とかいうのはひとまず置いておこう。

どうやらテレビ局に忍び込んで数日後にまとめて相手をしてやるという事らしい。

 

「随分と自信があるようだな」

 

俺はこの話を欠伸をしながら聞いている。

やるべきことは終えているからな。

今すぐ相手をしてやってもいいのだが……

 

「オラたちに戦わせてくれ、頼む」

 

カカロットとベジータが直々に言ってくる。

それには仕方ないと思い頷く。

初めからそう言った約束だからな。

 

「勝算があるのなら構わない、万が一のことがあったら未来の俺がやってくれるかもな」

 

そう言うとにやりとしていた。

青肌の奴ら担当でもあるが今のあいつなら赤子の手をひねるよりも簡単だろう。

 

「いや、分からねえ」

 

カカロットがそんな事を言った瞬間、溜息が出る。

勝算がないのに戦わせてくれとか、大馬鹿者にもほどがある。

普通に考えてみろ。

それなら俺が出張ってやった方がましだろうが。

命を無駄に散らすとかいうのはご法度だぞ。

 

「だってやってもないのに分からねえさ」

 

まあ、それもそうだが……

そんな事を考えているとベジータが俺に言ってくる。

 

「勝つか負けるかで戦う事を決めるサイヤ人は居ない、フリーザの時のお前はそんな事を考えていなかったはずだが?」

 

そう言われると耳が痛い。

確かにフリーザの時は覚醒できればいける程度で確実な勝ちなど考えずに挑んでいた。

だが、俺たちはもうそんな自分だけのために戦うわけにもいかない。

子供がいるし、妻もいる。

まあ、悟飯の時に死んだ時点でカカロットにいっても無駄か。

 

「だが、お前の気持ちがわからないわけでもない」

 

そう言って気を高める。

次に入ってどうにかできる可能性を増やすようだ。

 

「行くぞ、トランクス!!」

 

そう言って入っていく。

トランクスは驚いた顔をしながらもついて行く。

未来の悟飯は微笑んで見送っていた。

 

「あいつもなんやかんやでわが子に伝えたいんだろうな」

 

強いサイヤ人であると同時に自分の血を分けたものに何かを伝える。

穏やかではある。

しかし前にいっていたことが頭をよぎる。

昔のように凶暴ではないという事。

其れが技や動きを鈍らせてはいないかという懸念。

 

「その懸念は鍛錬で拭える」

 

ブロリーだって抱いた懸念だった。

俺との鍛錬で守る為に制御をしながらもその威力や動きは鈍らなかった。

ただ凶暴な時の方が挙動が読みにくくなったり、伸び率という面では優れている。

他人を巻き込む場面でなければその状態でもいいだろう。

 

「さて……」

 

地球へと向かっている相手。

そいつらはかつて文献に載っていた一族だ。

 

「ヘラー一族か」

 

そう呟いた瞬間、空から声が聞こえた。

切迫しながらも怒っているような声だ。

 

「おーい、なんで封印が解けておるんじゃ!!」

 

これが界王様か。

正直に伝える事にしよう。

 

「実は先ほどまで戦闘していて、その際に宇宙に向けて放った一撃が封印を解いてしまったようで……」

 

そう言うと界王様は溜息をつく。

折角、封印したのに不慮の事故とは言え壊されたんだからな。

 

「大丈夫です、そいつらは地球に来ていますが一網打尽にいたしますので」

 

そう言うと『当たり前だ』と返された。

まあ、こっちがまいた種だからね。

 

「くれぐれもしっかりと頼むぞ!」

 

そう言って空からの声は途切れた。

ブロリーたちでもいいんだが俺が出て、ゲロかミラをブロリーたちに任せるか。

瞬間移動で行けるし、あいつらぐらいなら苦戦もせずにいけるだろう。

 

「作戦会議というか割り振りをしないと」

 

そう言って俺はみんなを集める。

秘策は分からないがベジータもいるから安心はできるだろう。

それ以外のイレギュラーの対処が重要だ。

戦力のバランスとかも加味してな。

 

「これだけいたら上々だな」

 

数分後、集まったメンバーはピオーネ、スパーニ、ブロリー、ターレス。

ナッパとターブルは今回はセルゲームへの参加をするらしいので除外。

未来の俺もセルゲームを担当するので除外となる。

予定がないこの数名が主なメンバーだ。

ちなみに桃白白は第二形態のセルの足止めで疲労困憊となっていて不参加。

奴曰く『老体に気功砲撃たせすぎ』とのこと。

天津飯の負担を減らすためとはいえ身を削りすぎだ。

 

「ミラとトワについてはスパーニとブロリー」

 

単独で奴らと勝負するわけにはいかない。

何かしらの搦め手でこっちの弱点を突いてくるだろう。

だからこそ超サイヤ人へ変身可能な二人をあいつらにぶつける。

 

「ゲロに関してはピオーネ」

 

一人でも真正面の勝負にならざるを得ない。

実力ならばすでに超えている。

拮抗した状況を逐次作れるピオーネが最適だ。

 

「地球に向かっている異星人は俺とターレス」

 

界王様にああ言った手前他の奴に任せるのもな。

一番楽な所をとった様で申し訳ない。

さっさと片づけたらすぐに救援に行くからな。

 

「勝負がすんだらすぐにカカロットたちの救援、もしくはほかの奴を助けよう」

 

なんだかんだで一番の激戦区はセルゲームだろう。

秘策があったらいいのだが、あのカカロットの態度に一抹の不安が残る。

当日までは修行と索敵。

これで準備を進めていく。

全員で拳を突き出しあって合わせる。

この秘密裏の激戦を解決することを決意するのだった。




まさかのボージャック達の襲来。
サイヤ人3という時点で襤褸雑巾になるのが確定ですけど。
ちなみにこの後の予定ではブウ編の敵はオリキャラまみれになりそうです。

指摘などありましたらお願いいたします。


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『秘密の大激戦』

今回は短い戦いを詰め込みました。
次はセルゲーム編を少し書いていこうかと思います。


戦う時が来た。

全員が所定の位置に向かっている。

ゲロやトワたちの場所については、占いババ様によって看破できた。

あいつら、自己研鑽にかまけて重要な部分の崩壊をさせていない。

今まで活用していなかった自分たちも偉そうには言えないが。

 

「俺が役に立つのか?」

 

どうやらターレスは超サイヤ人になることができず、基礎的な潜在値が高いタイプのサイヤ人のようだ。

現在の戦闘力は4000万ほどだ。

急なもので、あと1日分使えるのを切り上げての参戦だ。

界王拳を50倍にできれば体の負担は大きいが一時的に超サイヤ人と同じぐらいにはなる。

 

「大丈夫だ、フュージョンもやれるだろ」

 

いざとなればこの手がある。

両方が超サイヤ人ではないから変身は少々心もとないが十分いけるだろう。

さて……

 

「お出ましだ!!」

 

超サイヤ人2で臨戦態勢となった。

3は場合によっては時間稼ぎで形勢逆転されるからな。

目の前に現れたのは5人の相手。

一人は女性だがそれ以外は男性。

随分とむさくるしいな。

 

「俺はあの女性をもらう」

 

そう言ってにやりと笑みを浮かべたターレスは女性へと向かう。

その合間に俺も一人の相手を蹴り飛ばす。

 

「ぐはっ!!」

 

アバラが全て折れたのか。

激痛でのたうち回っている。

そいつを持ち上げて……

 

「『アルバトロス・ブラスター』!!」

 

気弾で吹き飛ばす。

死んではいないがピクリとも動かない。

その圧倒的な力に相手の一人が冷や汗をかく。

 

「そんな、ブージンが一瞬で……」

 

そう言っている相手に蹴りを放つ。

こんな時に一瞬でも気を抜くとはな。

封印されている間になまったか?

 

「ゲボッ!!」

 

相手は一撃の威力に地面を転がる。

その後、膝をついたまま起き上がろうとするも、血を吐いていた。

 

「ぬう!!」

 

何とか耐えきっているようだな。

近づいてきた俺の足を掴んで持ち上げようとするが……

 

「何がしたいんだ?」

 

僅かにも動く事は無い。

戦闘力の差といってもいいだろう。

俺は頭を掴んで持ち上げる。

 

「俺はな、早く助けに行きたいんだよ」

 

そう言って万力のように締め上げる。

徐々に締め付けに耐えられなくなってきたのか。

相手は声も発することもできない。

 

「落ちていけ」

 

その腕を首に回して締め上げる。

もがいて抵抗するが数秒も経たない間に白目をむく。

そうなった相手を剣士へと投げつけてやる。

 

「ふんっ!!」

 

投げつけた奴を剣でいなして回避する。

どうやらこの卓越した剣捌き、ナンバー2のようだな。

でも……

 

「お前もこいつらのようにやられたいか?」

 

一度忠告をする。

二人倒したがこれに毛が生えた程度ならば俺にやられるだけ。

素直に帰ってくれた方がましだ。

だが聞いてくれるような相手ではない。

 

「ほざけ!!」

 

剣を振り下ろしてくる。

だがこんなもの……

 

「はあっ!」

 

俺の手刀に劣る。

パキンといった音を立てて、綺麗に折れていた。

そしてその手刀を腹に捻じ込む。

 

「がふっ!!」

 

後ろに飛んで距離をとる。

気が高まっている。

どうやら変身できるようだ。

 

「ちなみに名前を聞いておこうか」

 

構えて相手の名前を聞く。

せめてもの礼儀だ。

自分が仮に負けた時、名前も知らないでは格好がつかないしな。

 

「俺の名はゴクア、貴様を倒すものだ!!」

 

攻撃を仕掛けてくる。

しかし、2には遠く及ばない。

その腕をとって地面へ背負い投げをする。

その叩きつけられたゴクアに向かって俺は腹に拳を当てて技を放つ。

 

「『エクスプロード・ウッドペッカー』!!」

 

その一撃で地面にゴクアはめり込む。

舌を出したまま失神状態となる。

そうなったゴクアを相手の方へと転がすように投げてやる。

 

あとはお前だけだな。

そういった目線を相手に向けると、ゴクアを蹴り飛ばしていた。

 

「そのような相手に苦戦をするな、ザンギャ!!」

 

そう言って女を掴んで俺の方へと投げつける

気弾を女の後ろから放つ。

俺を倒してその後ターレスをやる気か?

だが……

 

「甘いんだよ!!」

 

獲物を横槍でやられて黙るような奴じゃない。

それを庇っていくのはターレスにとっては当たり前だ。

ザンギャと呼ばれた女性を抱えて気弾から逃れさせる。

その後の気弾を俺が握り潰す。

 

「なぜ、庇う?」

 

相手がターレスに言う。

するとターレスは不敵な笑みを浮かべて相手に向かってこう言った。

 

「俺はこの女が気に入ったからだ、いい女を守るのは当然だろう?」

 

そう言ってターレスは女を庇うように場所を離れる。

女は戦意喪失している。

こいつらを避難させた方がやりやすいな。

 

「ターレス、そいつを連れて離れろ」

 

そう言って徐々に気を高めていく。

それを察したターレスが有無を言わさず女を抱えて飛んでいく。

 

「逃がすか!」

 

相手がそう言ってターレスに気弾を放つがそうはさせない。

目の前に現れて気弾を受け止める。

本気で相手をしてやる。

部下は2だったが、親玉には3がいいだろうしな。

圧倒的だったから2でも行けそうな気がする。

 

「はあっ!!」

 

地球が震えるような感覚だ。

毎度、この変身からのフルパワーは慣れないな。

 

「さて……始めようぜ」

 

フルパワーになった俺が相手を睨み付ける。

相手もこのままではまずいと思ったのか変身をする。

しかし、こっちは遊ぶつもりはまるでない。

 

「はっ!!」

 

腕をとってへし折る。

呻いている間に腹に一撃。

一方的なショーの幕開けだ。

 

「グッ!!」

 

飛び上がるが足を掴んで力任せに地面へ叩きつける。

地面が陥没している。

そこから起き上がろうとする前に一撃を繰り出す。

 

「『コンドル・レイン』!!」

 

相手はガードをする。

だがそんなガードの隙を見逃しはしない。

そのまま同時に接近をして、膝蹴りを相手に叩き込む。

 

「ぬぅう!!」

 

立ち上がろうとするがそうはさせない。

足払いをしてそのまま馬乗りになる。

 

「お前は仲間殺しをしようとした」

 

俺はそれを最も嫌う。

ゆえにこいつには重い罰を。

死に至る可能性があるほどに叩きのめす。

 

「だからお前には躊躇しない」

 

鉄拳を顔面に叩き込む。

左の次は右。

右の次は左。

マウントポジションで細かいパンチの中に大きな一撃を混ぜる。

 

「がぁ…」

 

徐々に血まみれの顔になっていく。

顔は腫れあがり、見るも無様な姿だ。

いつの間にか起きている仲間も恐怖の面持ちだ。

 

「うおおおお!!」

 

何とか恐怖心を振り切ったのだろう。

ブージンとやらが超能力か何かで俺の動きを止める。

だがこの程度では一瞬あればいい方だ。

 

「かあ!!」

 

気合で振りほどいた隙に相手が何とか間合いから遠ざかる。

だがもはや肩で息をしており、その眼には勝利の二文字が存在していないことを表している。

 

「ぬううう!!」

 

時間を稼ごうと剛力の男がショルダータックルを仕掛ける。

こっちもそれに負けじとショルダータックルで応戦する。

 

「ぐああっ!!」

 

男が吹き飛んでいく。

まあ、超サイヤ人2で圧倒的にやられた奴らが3を相手に抵抗できるはずもない。

一瞬の間に一人が戦闘不可の重傷を負った。

その間にブージンを殴りつけて二人目も起き上がれないようにする。

ゴクアは背中から肘打ちをして肩の骨をへし折っておく。

そして膝裏を踏み砕くことで這ってしか移動できないようにしておいた。

 

「こいつら連れてさっさと帰れ」

 

十分に実力差は見せつけた。

これ以上やるなら殺すことになる。

今でも殺さないように細心の注意を払っているのだ。

二度と地球にはくるんじゃない。

 

そう考えていると地球が震えた。

この気はあまりにも凶暴だ。

それゆえにすぐに特定ができる。

 

「ブロリーたちに何があった!?」

 

青肌の奴らの方へ向かいたい。

しかしこいつらが邪魔だ。

やはり消しておくべきか?

そう思って上空から奴らに向かって『アルバトロス・ブラスター』を放とうとしていた。

 

.

.

 

「お前らがトワとミラか」

 

俺は相手を見据えて言っている。

気味が悪いというか、相手の力を正確につかめない。

 

「ああ、その通りだ」

 

男、つまりミラの方が構える。

スパーニもすでに超サイヤ人だ。

俺も変身をする。

 

「お前たちの悪だくみは実現させない」

 

おおよそ、横槍を入れて『セルゲーム』をめちゃくちゃにするつもりだろう。

さて……スパーニにトワを任せよう。

 

「できるかしら?」

 

トワがそう言った瞬間に既にスパーニが横に回り込んでいる。

臨戦態勢は整っている。

あまり甘く見てると大怪我するぞ。

 

「残念だったわね」

 

バリアーで防いでいるようだが……

俺がこう動けばどうする?

ミラを抱え上げてバリアーに向かって投げつける。

そして俺はそれと同時に駆けだす。

 

「ふん!!」

 

ミラが反転して着地をするがさらにそこへタックルで衝撃を与える。

バリアーに近い中、大男同士の衝突。

 

「ぐっ……」

 

バリアーへミラと俺の体が当たる。

その衝撃でバリアーが破られてしまう。

 

「スパーニ!!」

 

スパーニにすかさず指示を飛ばす。

それを承知したスパーニが回し蹴りでトワに一撃を加える。

こっちはミラを抱え上げて後ろに向かって投げる。

身体を逸らして地面に叩きつけるように。

 

「うぐっ!!」

 

地面に叩きつけられたのが効いたのか僅かに呻く。

こっちは攻撃の手を緩めない。

頭を掴んでそのまま一撃を加えにいく。

無論、フルパワーだ。

 

「『ギガンティックミーティア』!!」

 

ミラを中心に大爆発が起こる。

大きくダメージを与える事はできただろう。

だが奴からエネルギーが漏れているような気がする。

 

「俺たちは今までありとあらゆる細胞を採取した……」

 

人造人間としてのグレードアップの為に色々したようだ。

きっと俺やガタバルの細胞があるだろう。

 

「キリをお前から手に入れれば俺はあの男を越えられるかもしれない!!」

 

そう言って吸収用の器具を取り出す。

結構前にガタバルもやられたと言っていたな。

気を付けないと。

 

「『紅葉挫き』!!」

 

スパーニの方も圧倒している。

サポートする前に攻撃を仕掛けて隙を作らないようにしている。

足を払ったり、投げ技や打撃技。

 

「『渦巻十枝』!!」

 

今のように時には気弾技の牽制をしている。

同時に接近して上下の掌に気を集中させる。

 

「『花弁双掌』!!」

 

その一撃を食らってこちらに飛んでいく。

その時の不敵な笑み。

まさか!?

 

「察したようね、ご名答!!」

 

トワは魔術で俺の動きを封じる。

まさかわざと食らって距離を詰めてくるとは。

 

「ぐっ!?」

 

それを見てミラが器具を構えて突っ込んでくる。

気を振り絞って解こうとする。

しかし器具が突き刺さるまで解けそうにはない。

もがいているが間に合わない。

 

「はっ!!」

 

俺の前にスパーニが立って突き刺される。

吸収されていき、超サイヤ人も解けていく。

俺は愛する者に守られたのか……

スパーニは力を吸い取られたのが効いたのか、倒れ込みそうになる。

 

「この女の気ではまだ足りん、邪魔をするな!!」

 

自分のふがいなさを嘆く暇もなく相手の動きは止まらない。

そう言ってスパーニを殴り飛ばす。

その瞬間、頭に血が上っていく。

 

「お前らがやっておきながら、スパーニに責任を擦り付けやがって……」

 

目の前が真っ白になっていく。

久々の感覚だ。

訓練以外ではしていなかったこと。

プツンと音を立てて今までとは違う自分を感じ取っていた。

 

「決めた……貴様らを血祭りにあげてやる」

 

そうは言うがスパーニを抱えて仙豆を食わせる。

どうやら人造人間でカカロットが吸い取られた時と同じで治療は可能なようだ。

 

「うぅ……」

 

ぐったりとしている。

どうしたものかと悩んではいたがそんな時にガタバルが目の前に現れる。

 

「巻き込まないように連れていくぞ!!」

 

そう言ってスパーニの腕をとる。

理性を完全に失う前に、最後に親指を上げて答える。

頼んだぞ。

こいつらを倒してピオーネさんの救援に向かうようにしておく。

 

「ウォオオオオオ!!」

 

今までとは違う速度。

相手の後ろをとって一撃をくらわせる。

トワが器具を突きさすが……

 

「なっ、吸い取りきれない!?」

 

器具が壊れてしまう。

相手は驚愕していたがそんなものは今の自分にとってはどうでもいい。

 

「当たり前だぁ、こんなにも力が溢れている俺の力をそんなちんけなもので測るなどできん!!」

 

壁を超えた今の自分の興奮は冷めやらない。

何故なら今の状態ならばガタバルに匹敵するからだ。

 

「この感覚はいつも素敵だな、力が溢れて漲る感覚はなあ!!」

 

トワを蹴り飛ばして、ミラを殴りつける。

飛んでいくミラより速く後ろをとってラリアットを放つ。

地面に叩きつけられるミラの腹に膝をぶち込む。

 

「『アングリー・ギガンティック・ツイスター』!!」

 

持ち上げたミラを上に投げて回転を加えたアッパーを叩き込む。

その回転から落下する途中で自らの体を高速回転させて裏拳や頭突きを加える。

己を台風の目をした暴力に満ちた暴風が徐々にミラの体へ傷を負わせていく。

 

「とどめだ!!」

 

飛び上がり、ミラの足を掴んだまま錐揉み回転を加える。

受け身不可能の大技だ。

地球人が行う格闘技の技に少しアレンジを加えたもの。

だが、自分の体の大きさともなればすべてが必殺技だ。

 

「がはっ……」

 

空気を吐き出すようにミラが声を出す。

しかしそれが最後だったようだ。

目は白目をむいて気絶している。

スパーニの分も果たしておいた。

 

トワの方へ向かおうとすると杖を掲げて不敵な笑みを浮かべていた。

一体何を企んでいる?

 

「まさか離れていたら瞬間移動できないって思っていたのかしら?」

 

そう言うと杖が光ってミラを引き寄せていた。

まさか人造人間だから反応するようにしているのか!?

 

「今回の悪だくみはもうお終い、今度は楽しませてあげるわ」

 

そう言ってまたもや消えた。

見つけられない場所に隠れるつもりか?

そんな事を考えていたらガタバルさんが戻ってきた。

スパーニとターレスは離脱。

俺達でピオーネさんの所へ向かいに行く。

 

「ちなみに相手はどうしたんですか?」

 

そう聞くと溜息をついている。

どうやら相手が退散をしなかったようだな。

 

「とりあえずはあいつらより強い悪人の場所に届けておいた」

 

従順で頼れる兵隊に育ててくれるだろう。

そう言って何とかなったという顔をしていた。

面倒ごとを増やしたのか、もしくは押し付けたのか。

まあ、いずれにしても今の自分たちにとってはピオーネさんの方が優先だ。

無駄なことを考えるのはやめて飛び立っていくのだった。

 

.

.

 

「まさか今のあの子に匹敵するほどの手を隠していたなんてね……」

 

私は構えながら相手を見る。

初めは圧倒できていたが相手が追加でナノマシンを埋め込んでから互角の戦いになっている。

 

「自壊のリスクとの戦いの結果だ、こうでもしないと勝てない」

 

そう言って向かってくる。

速度もかなりのものだ。

 

「だりゃりゃりゃ!!」

 

速射砲のように貫手や拳が飛んでくる。

一つ選んでカウンターを放つがヘッドスリップでかわされる。

その瞬間に後ろ回し蹴りで顔面を狙う。

 

「ヌン!!」

 

腕を交差して受け止める。

反応もいい。

 

「本来ならばリスク回避をするのが科学者なのだが、久々に確率に逆らってみたよ」

 

そう言うと足を掴んで振り回す。

一定の速度でグイングインと振り回されていく。

その間に何列にも連なった気弾を放出する。

一体何を始めるのかしら?

 

「『ナイトメア・ペンデュラム』!!」

 

向こう側の気弾に当てたと思ったら、さらに腕をダイナミックに振り回す。

そして加速したまま反対側の気弾へ直撃。

それを三度繰り返す。

 

「終わりだ!!」

 

最後に気弾ごと地面に叩きつけられる。

まさかこんな技を使ってくるなんて。

 

「でも効かないわよ」

 

頑丈なんだから。

今のが致命傷になるほど軟じゃない。

 

「流石にそれは無いだろう……」

 

まあ、超サイヤ人3並みのパワーで無傷なんて訳は分からないでしょうけど。

あの子の最大技を食らったりしているんだから耐久力は上がってしまう。

しかも、お互いが遠慮なしの鍛錬ということでボロボロになる。

 

「こっちの番ね」

 

相手に向かって攻撃を仕掛ける。

雷を起こす。

相手が機械なのならば効くかもしれない。

 

「『エレクトリック・パレード』!!」

 

雷のどでかい光線を放つ。

相手が避けられないようにする手はある。

 

「大技は隙を作って放つものだ!!」

 

そう言って回避行動をとるゲロ。

そんなのは私があの子に何年も前に言った事よ。

私がそれをしないとでも思って?

 

「瞬間移動なら常に背後よ」

 

背後からの光線で飲み込まれていくゲロ。

バリアーを何度も張りなおしているけど、それでも割られ続ける。

 

「『アンペア・フェイファー』!!」

 

大きい電流の弾丸が放たれる。

あの子は前に、電圧の弾丸を一度放たれたようだが。

こっちはカウンター技といった所ね。

 

「『トール・フリッカー』!!」

 

雷撃を右腕で受け止めてその気を足に流してさらにカウンター。

片腕でゲロも受け止められずそのまま蹴り上げられる。

 

「体が壊れるような真似をよくできるな」

 

確かに一歩間違えれば心臓に大量の電撃が流れるかもしれない。

しかしそれでも……

 

「体が壊れるかもしれない選択をしても損はしないわ」

 

だって私は科学者ではないから。

危険だなんだの回避をして食らうぐらいなら、こういった事をする。

 

「私は空中戦、地上戦、隙がないわよ」

 

そう言って飛び上がって間合いを詰める。

相手に一撃を叩き込む準備はすでに終わっている。

 

「でも、ワシは負けないよ」

 

あの子に似た構えをする。

どうやらサイヤ人のデータもあるようね。

 

「残念ね……」

 

その構えの弱点も分かる。

揺さぶられた場合にわずかに隙が生まれてしまう。

内側から外側と逆への対応が遅れてしまう。

その隙をついて腕を掴む。

 

「『ポテンシャル・フック』!!」

 

弾力に富んだような感覚を感じる。

そのままつかんだ腕が弾かれる。

 

「むっ!!」

 

体勢を立て直すその隙にゲロも大技を仕掛ける。

隙を作ることに成功しているからね。

 

「『カタストロフィー・ラプラス・ライ』!!」

 

雷を纏った巨大な斧型の気弾を放つ。

それを受け止めるために構える。

 

「認めよう、貴様が地上と空中においてワシより強いとな!!」

 

歯をギリリと悔しそうに噛みしめる。

ここで一発逆転という事かしら。

 

「喰らえ!!」

 

大声で振り絞ったかのように放つ。

さらにそれに合わせて突っ込んでくる。

玉砕特攻とはらしくなさそうな手を……

 

「この一撃をいなせば……」

 

手を出してその一撃を受け止める。

しかしその瞬間、違和感を感じる。

想像より遥かに下の威力の一撃だった。

それを見てゲロはにやりと笑っていた。

まさか、あれは完全に……

なるほど、『ライ』は雷の『ライ』ではなく嘘の『ライ』だったのね。

 

「地上も空中も劣っているのは変わらん、でもな……」

 

受け止めて無防備だった私にタックルが決まる。

吹っ飛んだ私に照準を合わせて、最大級の気の高まりを感じられる。

 

「頭脳戦はワシの勝ちだ」

 

今度は正真正銘の巨大な斧型の気弾を放つ。

だがその一撃は当たらずにすり抜けていく。

瞬間移動ではなくても避ける術はあるのよ。

 

「なっ!?」

 

完璧に決まったはずの一撃を避けられたゲロは驚く。

そんなゲロの背中に立って私は呟いた。

 

「熱探知のセンサーでもつけておくべきだったわね」

 

そうすれば、今の残像を見抜いて対応もできた。

戦闘力やバリアー以外のこまめな機能も必要だという事。

それをわかってもらえたかしら。

 

「残像拳か……」

 

悔しそうな顔。

しかし清々しい顔だった。

きっと全ての策を使ったからだろう。

 

「『エレクトリック・パレード』!!」

 

二回目の大技を食らう。

もはや抵抗する力も残ってはいないゲロ。

そんなゲロを雷光を伴った光線が包み込んでいく。

 

「ガハッ!!」

 

地面に叩きつけられて大の字になっているゲロ。

もう、指一本を動かせそうにないといった顔だ。

 

「命は取らないのか?」

 

ここで命をとれば知能として最高峰の人材を無くすことになる。

未来で、その知識を活かしてもらった方がよっぽど有益だ。

 

「科学者として正しい事に使いなさい、トランクスたちの為にもね」

 

そう言った瞬間、ゲロが微笑む。

それは善人がやるようなことを自分に頼んでいいのかと問うような笑みだった。

 

「勝者に従おう、命を救われたんだからな」

 

こっちの目を見返して笑いながら言ってくる。

若くなりすぎたから素直で柔軟な頭になったみたいね。

 

「こっちも救う相手がいるから行くけれど、ちゃんとトランクスたちと一緒に貴方も未来に帰りなさい」

 

そう言って去ろうとした瞬間、目の前に二人が現れる。

戦ってきた顔ね。

二人は私を見てお疲れさまという目を向けてくる。

そっちこそと視線で貸して、初めに決めた時のように拳を突き出す。

それを合わせた時、秘密裏の激戦は終わったと実感できた。




未来ゲロが若くなりすぎたせいで味方サイド行き。
他の奴らのナノマシン入れすぎたのも影響してます。
今回の救済枠はザンギャのみのはずが、意図せず増えました。
地味に救われてないのはザンギャ以外のボージャック一味です。
指摘などありましたらお願いします。


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『大団円』

セル編が今回で終了です。
次回からはブウ編に飛んでいく予定です。
一気に時間が飛びます。


カカロットの奴がセルと戦うようだ。

観戦扱いなのはあいつが自分たちでやるというからだ。

その前に戦っていたミスターサタンとかいう奴も一般人とは違う。

流石は世界チャンピオンといった感じだ。

殴る時に一瞬だけ気を集中していた。

しかも狙いは頭部。

運がいいという事。

そして急所を狙える大胆さ。

 

「ぬっ!?」

 

セルも油断していたが、顔を引き締めて回避。

やはりあの箇所に損傷なりダメージがあると危ないようだ。

ただ、仮に核だとしても頭部内からの移動。

もしくはすべてを塵に返さないと無理といった可能性もある。

 

「落ちろ」

 

そう言ってセルが叩こうとするが本人は時間稼ぎをしようとしている。

残像でかわして腕をとり、場外へ投げる。

 

「ふん!!」

 

舞空術で浮こうとしたその瞬間を狙いすましていたのだろう。

サタンは助走をつけていた。

 

「でりゃあー!!」

 

飛び蹴りがセルに当たる。

体勢が悪かったな。

場外へ一直線。

まさかの伏兵にやられるか。

 

「負けてたまるか!」

 

セルが足を掴んで先に場外へと投げる。

舞空術ができない低い弾道。

さらに技後硬直。

サタンは場外となってしまう。

セルは何とか場内に着地ができたようだ。

ネズミか何かと思って油断するから危なっかしい。

ライオンは弱い奴を相手に余裕綽々で狩りはしない。

そのように敵に合わせるより全力で戦わないとな。

 

「次はオラだな」

 

そう言って武舞台に上がる。

何かしらカカロットにミスターサタンが耳打ちしてたが……

それを聞いたカカロットは微笑んでいた。

 

その戦いは激戦といえば激戦だった。

俺やラズリの目、あと一人を除けばの話だが。

これだったら超サイヤ人2で圧倒できる。

それになれていないのだろう。

きっかけがないと壁を超えるのは厳しい。

あの現代の孫悟飯は戦いは苦手なようだ。

話し合いでは解決できない、赴くままに開放してもいいのだ。

 

「おめえの出番だぞ!!」

 

そう言って現代の孫悟飯を呼ぶ。

ピッコロが止めるが向かっていく。

これが秘策だというのか?

現代の孫悟飯は悪とわかっていても嫌がっている。

説得をしようとする。

しかしそんな時大きな声をかける人物がいた。

 

「そいつを倒せるんだ、自分を開放するんだ、感情のままに!!」

 

それは未来の孫悟飯だった。

でもそんなことできないと首を振る。

 

「そうしないとみんなやられるんだぞ!!」

 

その言葉に目が変わる。

自分の痛みより他人の痛みで目覚めるタイプか。

自分のために拳を握ったことがないのだろう。

それが今、枷になっている。

 

「うぅぅぅ……」

 

徐々に気が高まっている。

優しすぎるがゆえに難しいのだろう。

 

「ぐぐぐ……」

 

身体に電撃を纏い始めた。

セルの奴はニヤニヤして見過ごしているが、後悔するぞ?

 

「待ち続けていても仕方ないな、最後の一押しをしてやろう」

 

セルの尻尾から子供のような存在がわらわらと出てくる。

仲間を痛めつけさせようというわけか。

セルが指をさすとセルの子供……『セルジュニア』と呼ぶか。

奴らが他の戦士に向かっていく。

 

「やめろー!!」

 

悟飯にとってはそれが一押しとなったのだろう。

そう言った瞬間、気が膨れ上がった。

仲間の危機に壁を打ち破る力が湧いたのだろう。

セルの子供のような存在に向かっていく。

ちなみに俺とラズリは気弾で一瞬の間に始末をした。

 

「この程度でベジータ様がやられるかぁ!!」

 

ベジータもそこそこの苦戦は強いられていたが倒しきる。

トランクスと未来の孫悟飯は協力して二体を撃破。

それ以外は全部現代の孫悟飯が倒す。

このまま一方的にはなるかもしれない。

しかし不安がある。

未来の孫悟飯の近くへ寄る。

 

「気を付けろよ」

 

俺も全力で何とかするがいけるだろうか。

秘策があまりにもガバガバなのだ。

慣れてもいない超サイヤ人2になってしまった。

軽い興奮状態になるというのに……

 

「あのガキに増長が生まれるかもな、興奮と圧倒的な差に酔ってしまいかねん」

 

流石はベジータ。

俺の懸念を完璧に代弁してくれた。

それがどういった事につながるのか。

そんな事を考えていると現代の俺達も到着した。

未来が見えているのだろう。

臨戦態勢である。

 

「やつにはフリーザの細胞もあるからな、なりふり構わないことしてくるぞ」

 

一挙手一投足に目を見張らせている。

何が起こるだろうか。

 

そこからは一方的だった。

僅か二発の拳でセルが血を吐く。

地球崩壊のかめはめ波もさらに大きなかめはめ波で飲み込む。

セルの体がボロボロになった時、懸念していたことが起こる。

カカロットがとどめを刺せといったときに、まだ早いといったのだ。

さらに痛めつけてやらないといけないと。

 

「追い詰められた時に何をするか分からんぞ!!」

 

ベジータが大きな声でやるように促す。

未来の孫悟飯達も速くするべきだというがセルが襲い掛かる。

力に頼った変身では勝てない。

案の定カウンターで側頭部に罅が入るような強烈な蹴りを食らう。

 

「げぼぉ!!」

 

大きなダメージを受けた衝撃か。

はたまた本能か。

18号を吐き出した。

それをクリリンが受け止める。

こういう所で点数稼ぎか、狡い奴だぜ。

お前がある時に緊急停止をしておけば今の状況はなかったんだ。

 

「許さん、許さなぁーい!!」

 

そう言って徐々に膨らんでいく。

やっぱりこういった手を打ってきやがったか。

仕方ない。

 

「どいてろ」

 

現代の孫悟飯を下がらせてセルに触れる。

爆発前にだ。

手のひらに気を全て集中させる。

爆破の時にそれより遥かに大きい気で包み込む。

それで爆発の被害を打ち消すのだ。

 

「終わりだぁ!!」

 

そう言ってセルが発光する。

大猿超サイヤ人3の全力を使う。

 

「はあああああ!!」

 

大爆発を起こすがそれ以上の莫大な気がセルを包み込む。

地球への衝撃はなかった。

しかし爆発の中心には大きなクレーターが残る。

 

「俺の役目は完了だな」

 

肩で息をしながら一息つく。

しかし次の瞬間、気を感じ取る。

それに気づいたのは……

 

「避けろ、トランクス!!」

 

そう言ってベジータがトランクスを蹴り飛ばす。

だが間に合わなかったのか、脇腹を削り取られたような状態だ。

血を吐いている。

 

「未来の悟飯、すぐにデンデの所へ連れていけ!!」

 

そう言ってトランクスを抱えさせる。

ギロリという様に睨み付ける向こうにはセルがいた。

吐き出したというのに完全体になっている。

どうやら奇跡的に核が残っていたか……

 

「トランクスだったか、まあどうでもいい……」

 

そう言った瞬間、気が噴き出るのを感じる。

わなわなとベジータが震えていた。

 

「どうでもいいだと……、よくも…よくも…」

 

雷光を纏っていく。

まさか、こいつも……

 

「俺のトランクスをー!!」

 

2に目覚めてた。

その速度は現代の孫悟飯を凌駕している。

目覚めてはいないが鍛錬による戦闘力の基礎値の差が生まれたか。

 

「クソッタレがー!!」

 

腹に一撃。

顔に膝をぶち込んでのけぞらせる。

反応できない速度で延々とセルを殴りつける。

 

「がはぁ……」

 

セルは血反吐を吐いている。

とどめはどうするつもりだ?

 

「悟飯、かめはめ波だ、俺に合わせろ!!」

 

何とベジータから連携技を言ってくる。

とどめは本来現代の孫悟飯にやらせたいのだろうが、自分の気が済まない。

だからこそ、この提案なのだろう。

 

「はい、ベジータさん!!」

 

お互いが気を高めていく。

セルもその状況に応じて技を放ちに行く。

 

「かめはめ波ー!!」

 

全力のかめはめ波だ。

太陽系は吹き飛ぶだろう。

だが緊迫感はさっきの自爆よりはない。

 

「ファイナル……」

「かめはめ波ー!!」

 

ベジータの技名にかぶさる形で同時に技が放たれる。

合わさっていきセルのかめはめ波とぶつかる。

 

「ぬああああああっ!!」

 

抵抗することも許されない。

瞬く間に押し返されていく。

一人ならほぼ互角だったのに二人が相手。

その違いは絶大。

 

「こんな…ことが……」

 

セルは絶望の顔のまま消滅していった。

あまりにもあっけない戦いだった気がする。

まあ、自爆の時に俺がいないとカカロットが瞬間移動で何とかしないといけなかっただろうな。

 

「終わったな……」

 

そう言って俺は去ろうとする。

だが現代の俺が腕を掴む。

 

「まだ大団円がある、ここを去るには速いだろ」

 

喜んでばかりもいられない。

あの日に置いてきた仲間たちも待っているだろう。

速くあいつらと話さないと。

 

「少しぐらいは良いんじゃないのか?」

 

ゲロが声をかけてくる。

お前さりげなく味方側になっているのかよ。

今後は俺たちの世界の復興に力を貸すらしい。

まあ、お前の科学力は力になるだろう。

 

「こう言っている事だ、タイムマシンについても明日の方が都合がいいだろう」

 

いや、それはトランクスたちの判断なんだが。

そう考えたところで溜息をつく。

俺がいくら焦ってもあいつらの決断次第だ。

今日休むと言ったら待つしかあるまい。

 

「分かった」

 

そう言うと一度全員が散開をする。

報告をするために。

また、今夜のパーティーの為に。

 

「それにしても有意義な時間だったな」

 

自分の心が温かいもので満たされている。

それがどういった表現なのかはわからない。

しかし、ここに来る前の自分の心のとげはなくなった。

悩み事もきれいさっぱりと。

背中で守らねばならないと思った。

セルの自爆の時は間違えれば地球の崩壊。

全員が死んでいたんだから。

 

「私も幸せだな……」

 

ラズリが呟く。

お前もそういう気持ちでいるんだな。

少し笑みがこぼれる。

心の理解者がいるだけでも救われる。

 

「でも……」

 

なんだかわからない胸のざわめき。

現代では今後恐ろしい事が起きそうな……

 

「顔色が悪いよ?」

 

ラズリに心配される。

あいつらだって強いはずなのになぜ不安を感じるのか?

 

「気にしすぎかもな」

 

ラズリに笑顔を返す。

パーティーまでまだ時間はある。

カプセルコーポレーションで手伝うか。

 

そして大団円を迎える。

サイヤ人の胃袋を満たす、沢山のご馳走。

そして腹が満たされた後は……

 

「勝負だ、カカロット!!」

 

ベジータがカカロットと戦おうとする。

全くこんな晴れ舞台で……

そう思って動こうとすると横から衝撃が来る。

 

「戦ってもらおうか……」

 

現代の俺が俺の精神的な成長を見たいらしい。

数日前の俺とは違う。

後悔するなよ?

 

そう言ったように食後の運動を始める。

気弾なしの殴り合い。

超サイヤ人抜きでのやりあい。

その結果は前回とは違い、俺が勝利を収めた。

とはいえど辛勝であることは変わらない。

やはり、すぐ目覚めて変わったばかりの俺とはわけが違う。

拳が固くて重い。

今までの歩んできたものを太い幹になっているようだ。

 

「少しはいい手土産ができたよ」

 

そう言って腕をとって引き起こす。

そして夜が明けて、出発の朝。

タイムマシンに乗り込むトランクスと悟飯。

俺たちはミクロバンドでトランクスのポケットに入っている。

小さな姿でも感謝を込めて手を振る。

目の前の景色が霞む。

そして着陸した自分たちの世界は……

 

「待っていたぞ、トランクス」

 

出迎えるのはベジータ。

それ以外にはブロリーもいる。

どうやら協力をしていたようだ。

 

「ただいま、父さん」

 

そう言って挨拶を返すトランクス。

しかしよく見ると三人とも重症に近いけがを負っている。

スパーニたちは無事なようだが……。

 

「一人だけだったんだが、見た目が変わってしまってな……」

 

17号の眠っていた回路が呼び覚まされたらしい。

しかししょせんは荒廃している状態でできたもの。

ゲロが強さについて例えを言ってくれた。

 

「あの状態の17号では目覚めても第二形態のセルと完全体の中間ほどだろう」

 

そう言うが今のブロリーたちでは厳しいのだろう。

現代みたいに血の滲む鍛錬をしていないからな。

これからはきちんと鍛えなおすか。

 

「分かりました、行ってきます」

 

そう言ってトランクスと悟飯が飛び立つ。

俺たちは二人を抱えて治療することにした。

 

「ちなみにトランクスたちはどれほど強くなった?」

 

ベジータが俺に聞いてくる。

多分想定すると……

 

「今のお前よりは強いかな」

 

セルの第二形態と互角ほどの強さのベジータ。

それよりは強いが完全体には劣るブロリー。

 

「そうか、なら勝てるな」

 

そう言ってベッドに横になるベジータ。

17号が強くなったせいで町の荒廃は進んでしまった。

だが、天才科学者が複数いれば多少は楽になる。

 

「だから安心して寝ておけ」

 

俺はトランクスたちがいる方向を見て気を探る。

17号の気は感じられない。

それでも数分後、二つの気が動き始めたのを感じ取る。

 

「あいつらの勝ちだ」

 

清々しい顔で戻ってきた。

だが、まだ大事なことが残っている。

それは三年後に襲い掛かってくる恐怖。

今やってしまうと何かしらの因果が生まれる。

それは避けないといけないことだ。

 

お互いが鍛錬をして三年後。

ブロリーも伝説形態の2になることができた。

ベジータやトランクスたちも2になっている。

俺はナメック星に赴いてドラゴンボールをすぐに使い人造人間に殺された人たちの蘇生。

ゲロやラズリは復興の手伝い。

初めはラズリも警戒されたが、人当たりの違いと献身的な動きですぐに打ち解けた。

 

「ワシのけじめだ、ワシの不始末はワシが解決をする」

 

そう言ってセルの方向へと向かう。

動き始めたセルを瞬く間に消滅させていた。

躊躇いのない動きだった。

自分が創作したものではないかららしい。

 

とりあえずこれで一息はついた。

未来は安泰かもしれない。

報告をしに現代に行きたいがタイムマシンの充電よりも街の復興に力を注いでいた。

 

「まあ、お前らなら元気にやっているだろう?」

 

空を見上げてそう呟く。

一時の平和を噛みしめながら。




早足な気がするセル編。
彼らはまだ未来トランクス編で出番は残っています。
もしくは少し考えています。
指摘などありましたらお願いします。


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魔人ブウ編
『幸せ色は薄く濁る』


今回から魔人ブウ編ですが、かなりのバトルの頻度になったりするかもしれません。
もしくは駆け足になりがちになるかもしれないです。


セルとの戦いから7年。

 

あれから自分の甘い心を解消するために学生で居ながらも修行を続けている。

ピッコロさんはいつだって僕の中では尊敬する師匠だ。

父さんたちとは違う方向で研鑽してくれる。

 

「良い攻撃だ、悟飯!!」

 

慢心はなくなっている。

強さは今は劇的に上がる事は無い。

でも少なくてもセルとの戦いから落ちてはいないことは分かる。

 

「あれから速いものですね」

 

未来のトランクスさん達はあれから姿を見せていない。

未来がどうなったのか気にはなるけれど……

 

「報告する暇もないほど奴らも復興に力を入れているんだろう」

 

そうピッコロさんが言うと僕は頷く。

そうだとしたら嬉しいからだ。

ちなみにセルとの戦いに関しては、ミスターサタンさんがセルを倒したという事になっている。

元々は世界チャンピオン。

さらに人気は出るかもしれないし、面倒ごとを増やしてしまう事になる。

でも、僕たちが人気者になったりすることに比べれば……。

きっとこれが正解だったんだろう。

今や、世界中がサタンさんが居たら地球は救われると考えているくらいだ。

 

「それでは学校がありますので……」

 

そう言って道着から普段着に着替えて学校へと向かう。

母さんには体を動かすぐらいだと言って許してもらった。

きちんと勉強もするからという約束で続けさせてもらってる。

 

そんなふうに学生生活をつけていると、トラブルが起こってしまった。

『グレートサイヤマン』として街中の悪人を退治していると、サタンさんの娘のビーデルさんにばれてしまった。

学校にいるから僕の声と名前をよく知っていた事。

そして思わず呼びかけに応対してしまった事。

これらが原因だった。

それを理由に『天下一武闘会』へ出場するという事になった。

 

「父さんも出たらどうかな?」

 

一応誘ってみる。

了承してくれても母さん次第なんだけど……

 

「でもチチが……」

 

優勝賞金について母さんが聞いてきたから伝える。

するとおじいちゃんの財産が減ってきたから、ここで稼いでほしいと切実に言ってきた。

修行をつけてもらう事になるなんてセルの時以来だな。

父さんは界王様の所へよく行っているみたいだし。

 

「カカロットが出るなら俺も出るか」

 

ベジータさんを誘ったら快く返事をしてくれた。

数年前は差があったがどうなっているか知ってみたいと言われた。

 

「でも僕は現状維持か少し強くなったぐらいですよ」

 

そう言うがにやりと笑っていた。

それはまるでまだ隠し持っているだろうと問いただすように。

そんな雰囲気を感じ取ったトランクス君が近寄ってきた。

 

「悟飯さんとパパが戦うの?」

 

そうなったらいいんだけどね。

お互い一回戦で当たらないと厳しいかな。

温存して勝てるような相手じゃないし。

他の人たちも誘う事を伝えてカプセルコーポレーションを出る。

 

「ピッコロさんも出てみませんか?」

 

父さんやベジータさん以外にも誘いはかけてみたけれどそんなにいい結果は得られなかった。

ラディッツさんもニアさんも出ないと言っていた。

ヤムチャさんも同様だ。

 

「久しぶりだからな」

 

そう言ってほほ笑む。

しかしその顔も一瞬で引き締まって僕の方を見てきた。

 

「一度でいいからお前と戦ってみたかった」

 

そう言えば組手というだけで真剣勝負はなかったですもんね。

師匠越えをさせてもらいます。

それが僕にできる最大の恩返しですから。

 

クリリンさんの所へと向かう。

クリリンさんは最初にピッコロさんたちが出るからやめようかと悩んでいた。

しかし18号さんが一緒に出るから出るように言われて出場を決めた。

 

これでめぼしい人を集めることはできた。

最後に出てもらうのを頼むのは……

 

「なんだかここ一帯が淀んでいるというか……」

 

畑も枯れ果ててしまっている。

それどころか動物の死体がそこらに転がっている。

とりあえずは気功波で塵に還しておく。

風で異臭も流れてくれればいいのだが。

ある人を誘うためにここに来た。

快く受けてくれるといいんだけれど。

 

「失礼します……」

 

目に飛び込んできたのは暗い家の中。

扉を開けると振り向いてきた。

ターサちゃんは寝ている。

僕は要件をピオーネさんに伝える。

適当な相槌を打ちながら頷いている。

全く興味はない感じだ。

 

「ピオーネさん、出ましょうよ」

 

そう言うと睨み付けられてしまう。

あのセルの戦いからしばらくしてからピオーネさんは戦う事を完全にやめている。

その原因はたった一つ。

目の下にひどいクマができているのもそれが理由だ。

 

「あの子がいなくなったのによくものうのうと……」

 

そう言って顔を掴まれてしまう。

扉を開けられて投げ出された。

……そうなのだ。

ある日を境にガタバルさんは僕たちの目の前から消えた。

死んだわけではないはずだ。

だが気は感じられなくなっていた。

人造人間になっているのなら、占いババ様に聞けばいい。

しかしそれでも見つからない。

ありとあらゆる方法でみんなが探したが見つからなかった。

 

「もしかしたら世界中の人が来るので、あの人が参加する可能性だってあるかもしれないんですよ!」

 

そう言って扉を叩く。

するとガチャリと僅かに開いた。

 

「本当なんでしょうね?」

 

もし、嘘だったならばそのまま消すといった目だ。

言葉に出さなくても大事に思っているんだな。

 

「騙されたと思って……」

 

そう言って参加をしてもらった。

ブロリーさん達も同じ理由で誘うと参加すると言ってくれた。

ちなみにラディッツさんが断ったのもガタバルさんの捜索のためだ。

この天下一武闘会の誘いが功を奏したらと思う。

僕たちもガタバルさんを見つけたい。

一体どこに行ってしまったんだろう……

 

.

.

 

「メチカブラ様」

 

ワシを呼ぶ声がする。

こっちも忙しいというのに。

魔術をしているのが見てわからんのか。

 

「兄様の場所につきましては?」

 

トワが聞いてくる。

我らが王の場所は突き止めておいた。

まさかあの鼻垂れ小僧だとは思わんかったがな。

 

「人間界だ」

 

ワシの弟子であったバビディのガキであるバビディ。

そやつが魔術で操っておる。

ワシならば解ける。

しかし、コケにされた恨みや怒りがその程度で収まるはずもない。

トワがミラを強化してきたのも兄であるダーブラをとり戻すためだ。

そして人間界を飲み込む。

 

「アブーとラカンを呼んできますね」

 

ダーブラの側近も必要だ。

そう思っているようだがまだまだ甘い。

出し惜しみや小出しをする必要はまるでない。

 

「テクマツーとチチン、そしてマハリにクマハ、リタ、ヤンバラ、トリプヤンも呼べ」

 

総力戦だ。

邪神像も用意しておけ。

完全なる我らの力を見せつける。

まずは見せしめに……

 

「このブロリーという奴を倒そうか」

 

こいつを倒して勢いをつける。

皆が強いという自覚を持てば化ける。

 

「こいつはかなりの強敵でございます」

 

分かっておるわ。

だからこそだというのを分かっていない。

甘い奴らよ。

 

「初陣はワシが飾る」

 

だからお前らはついて来い。

そう言って人間界への扉を開く。

今、大願成就の時。

 

「かあっ!!」

 

杖を掲げて次元の扉を開く。

こいつらが手も足も出ない魔術師こそ、このワシなのだからな。

この程度は朝飯前よ。

こいつらが人間界にいけたのもワシがいたからだ。

 

「お前らも後で来るがいい」

 

そう言ってワシは人間界の高地。

『ユンザビット』へと降り立ったのだった。

 

「まずは座標の把握だ……」

 

瞬間移動も座標が分かっていなければ岩に埋もれてしまいかねんからな。

『あのお方』のように清くはあれなかった。

清い心があったならば、野望に染まらなければ魔界からでも人間界を見れただろう。

 

「では向かうか……」

 

そう言ってワシは初陣の獲物の元へ向かうのであった。




まさかの主人公のガタバル失踪で始まる新章。
そして今回の相手はスーパードラゴンボールヒーローズで実装されたメチカブラを首領とした暗黒魔界の精鋭と魔人ブウ復活を企むバビディ陣営です。

今回の敵の由来は
『テクマツー』:『【テクマクマ】ヤコン』:クマが二回続くことから
『チチン』:『【チチン】プイプイ』
『アブー』:『【アブ】ラカダブラ』
『ラカン』:『アブ【ラカ】ダブラ』
『マハリ』:『【マハリ】クマハリタヤンバラヤンヤンヤン』
『クマハ』:『マハリ【クマハ】リタヤンバラヤンヤンヤン』
『リタ』:『マハリクマハ【リタ】ヤンバラヤンヤンヤン』
『ヤンバラ』:『マハリクマハリタ【ヤンバラ】ヤンヤンヤン』
『トリプヤン』:『マハリクマハリタヤンバラ【ヤンヤンヤン】』
ヤンが3回続くことから『トリプル+ヤン』

まだいますがなんと前回よりも多い9人の敵が追加です。

指摘などありましたらお願いします。


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『謎の戦士、サラガドゥラ』

新キャラ登場です。
さらに早くも劇場版参戦。
このブウ編はスーパードラゴンボールヒーローズのネタを結構使う予定です。


天下一武闘会当日。

昨日、スパーニの野郎が血相を変えてここへ来た。

ブロリーが忽然といなくなったのだ。

一体何が起こっていやがる。

 

天下一武闘会の予選は昔の予選方式にするらしい。

パンチマシンの数値でやろうとしていたのをミスターサタンがやめたらしい。

マスコミも入らないでくれと言っていた。

普段なら通すが、試合でフラッシュをたかれることを考えたらいやなのが理由だ。

 

しかし予選を見る限りどいつもこいつも雑魚だ。

カカロットや悟飯の奴も残った。

トランクスたちは子供の部だから免除されたらしい。

 

本戦に残っているのは俺とカカロット。

悟飯やピッコロもいる。

だがその一方でおかしな奴が居た。

覆面野郎だ。

妙に胴が長いが手足が短い奴。

 

「それでは五十音順でお呼びいたします」

 

そう言ってまずは正体不明のキビトという奴が呼ばれる。

そいつが7番を引いて次のクリリンは1番。

そして悟飯の奴が8番を引き、キビトという奴との試合が決まる。

 

「サラガドゥラ選手」

 

そう呼ばれて進んでいく。

ゆらりと揺れて歩を進めた瞬間にただならぬ雰囲気を感じた。

俺は一瞬の間に天津飯の眼前にいた。

 

「天津飯、餃子に頼んであのフード野郎の相手を俺に細工しろ」

 

あいつと戦ってみたい。

カカロットとの決着が大事だが、奴に勝てばその願いも叶う。

ここは興味を持った相手を倒したい。

 

「分かった、第何試合だ?」

 

クリリンの奴が1番を引いているからな。

ここは俺が3番で奴が4番が望ましい。

 

「第二試合で頼む」

 

そう伝えた直後、奴がくじを引く。

すると3番を引くが天津飯は驚いていた。

 

「まだ、餃子が超能力発動してないのに引いたぞ」

 

元々の運がいいのか。

これで後の奴らの番号を操作してもらえばいい。

 

「ベジータさん」

 

審判が呼んでくる。

頼んだぞ。

 

「4番ですね、第2試合です」

 

あのフードの下の面を拝ませてもらうか。

俺は場合によっては悟飯と約束した超サイヤ人禁止のルールを取っ払う事にした。

 

「クリリンの奴には悪いがな」

 

この第一試合は勝つだろう。

しかし勝っても次の相手は正体不明の野郎か俺か。

まあ、俺はカカロットと戦えればいいから、後日約束したらくれてやっても構わん。

 

「ベジータ選手、サラガドゥラ選手、両者あがってきてください」

 

そう言われて上がっていく。

奴と向かい合わせになるから声をかける。

しかし、無言のまま所定の位置に立つ。

 

「無視か、かまわんがな……」

 

そう言って構えた瞬間。

奴が前に手をかざす。

すると空間に穴が開いていく。

幸い、俺と審判にしか見えないようにしているようだが……

 

「……」

 

その空間から人一人は優に収められそうな布袋が出てきやがった。

それをカカロットたちに向かって投げる。

その中には……

 

「ブロリー!!」

 

なんと、ボロボロになったブロリーが居やがった。

こいつが一人でやりやがったのか?

 

「面白い……このベジータ様が相手をしてやるぜ!!」

 

悟飯との約束を破って気を高める。

こいつの気が感じ取れない。

今の俺で勝てるか?

 

「始め!!」

 

その言葉と同時に駆けだしてくる。

思っていたよりも速い。

ひゅんひゅんと風を切るような音と共に拳が繰り出される。

 

「チッ!!」

 

蹴りを放つ。

しかしその蹴りに合わせて手を出し後ろへ飛ぶ。

そのまま後ろ回し蹴りを食らってしまう。

 

「ぐあっ!!」

 

武舞台から出る事は無いが、まさか俺がこうも簡単に一撃を許すとは。

顔が隠れていて表情は分からない。

さらに無言でこっちに向かってくる。

この不気味さがこの相手の恐ろしさに拍車をかけている。

 

「技を借りるぞ、『気円斬』!!」

 

すると反応があった。

その技を受け止めて握りつぶす。

 

「どうやらこの技を食らうのは嫌なようだな」

 

回避をするでもなく握りつぶす。

操作されて僅かに掠るのも嫌。

それが感じられる。

 

「……」

 

無言で構えてくる。

気弾の技のようだが……

 

「……」

 

禍々しい漆黒の気弾。

それを避けると次は螺旋状の気弾だ。

かいくぐっていくがこいつの戦闘センスがかなりのものだとうかがえる。

放ちながら的を絞らせないように円形へと動き回る。

 

「……」

 

ビキビキと音を立てている。

肉体の骨格を凌駕するような一撃。

自らの肉体への負担を考えない一撃。

 

「チッ!!」

 

腕を交差して受け止めようとする。

しかし想像以上の威力に俺は驚きを隠せない。

 

「がっ!?」

 

腕ごと俺の肉体を浮かせたのだ。

さっき食べたばかりのものが胃を遡ろうとする。

まさかこれほどとはな……

 

全員が驚愕の顔で染まっていやがる。

それもそうだ。

ダメージらしいダメージを与えてはいないのだから。

 

「『もうそこらで終わりにしておけ』」

 

どこかから声が聞こえやがった。

その声に従って奴は場外に行こうとする。

いや、従ってというよりもこれは……

 

「お前、操られていやがるな」

 

そう言ってフードの顔の部分を掴む。

その拍子に顔が露わになる。

するとその顔には仮面が付けてあった。

金色のピエロマスク。

そして逆立った白い頭髪。

 

「本当に別人だったか」

 

まさかとは思ったが残念だった。

仮面もはがせそうにない。

 

「場外!! 勝者、ベジータ選手!!」

 

だが、違和感は残っている。

本当にあの姿が本物なのか?

 

「『そこで待機だ』」

 

そう言われて座り込む。

動かしているのは声の主だろうか?

しかし顔が見えない。

水晶玉か何かで監視してたとしてもそれだけで俺を圧倒する力やブロリーに勝てるとは思えない。

おおよそ本能部分だけでも開放しているのか?

 

「しかし、外れたらいいんだがな」

 

そんな事を言っていると徐々に試合は進む。

だがここで異様なことが起こる。

悟飯の奴が変な奴らに器具を刺されてしまう。

それで気を吸収した後に飛び去っていく。

 

それを見たサラガドゥラに新たな指令が飛ぶ。

何かしら関係があるのか?

 

「『追いかけろ』」

 

そう言って追いかけていく。

しかし速度は抑えている。

あいつを泳がせるつもりだろう。

 

「こっちも追いかけた方がいいな」

 

そう言って追いかけるがあの女は来ない。

失望の眼がありありと出ていやがる。

そんなにショックだったか?

もしかしたらこの事態が奴につながっているかもしれないぞ。

 

「オラも悟飯が戻ったら追いかける」

 

カカロットもそう言う。

ブロリーも首を鳴らしていた。

 

「やつには借りがある」

 

そう言えばサラガドゥラにやられているんだったな。

リベンジをするのならばお前が先着。

俺は二番か。

ようやくあの女が重い腰を上げる。

 

「仕方ないわね」

 

俺たちと同じ速度で動く。

流石に修行をさぼっていたとはいえこういった面は未だに鈍っていないか。

ピッコロとクリリンもついてくる。

これで界王神とキビトという奴を含めて9人。

 

「死なないように気を付けろ」

 

相手の懐に忍び込もうとしているんだからな。

しばらくしていると地中からせり出している宇宙船を確認する。

サラガドゥラは離れたところで腕を組んでいやがる。

そしてその傍らには青肌の老人が居やがった。

青肌の男女と関係が深いと見たが……

 

「あれはメチカブラ……」

 

界王神いわくバビディを超える魔術師。

暗黒魔界を統べる者らしい。

 

「『来い』」

 

そう言って杖をかざすと空から降りてくる何人かの戦士。

一人は熊の人形を両手につけた少女。

一人はゴスロリチックな洋装の少女。

一人は痩せた緑色の剣士。

一人はマッチョな赤色の男。

二人は双子の男。

一人は褐色肌の女。

一人は白い肌の女。

一人は三面六臂の男。

そしてブロリーは見覚えのある青肌の男女。

 

「『暴れろ』」

 

そう言った瞬間、青肌の男女以外の先に現れた9人から紫色の気が噴き出す。

強化をしたようだ。

界王神の奴も苦い顔をしている。

 

「やつら……セル並みかそれ以上になっている奴も混ざっているぞ」

 

ピッコロも臨戦態勢を整える。

三面六臂がパーフェクトセル以上。

緑色の剣士と赤い肌のマッチョがセル並み。

褐色肌と白肌はセルの第二形態。

双子はセル第一形態といった所だ。

それ以外の少女はクリリンでもいけるかぐらいの存在だ。

 

「来るぞ!」

 

こちらに目線を配ると襲い掛かってきた。

それと同時に宇宙船の扉が開く。

そこにバビディという奴が出てきた。

緑というよりは黄緑色のハエのようななんだか見た目は奇妙な野郎だ。

だがその傍らにいる奴を見て青肌の女性の反応が変わる。

 

「お兄様、おひさしぶりです」

 

そう言うと赤いマッチョと緑の痩せ型剣士も瞬時に向かっていった。

どうやらあの二人は側近か?

 

「まさかあの女性、ダーブラの妹とは……」

 

界王神も事情通ではないらしい。

まさかといったような顔だ。

 

「魔界の王の妹、魔術に精通していて当然ですな」

 

キビトの言葉になるほどとブロリーが言う。

瞬間移動や強化の術。

そう言った事は当たり前にできることに納得ができたらしい。

 

「ダーブラは僕の味方なんだよ、やっちゃえ!!」

 

そう言ってダーブラに攻撃させようとする。

だがメチカブラの眼が光った。

 

「いい加減にしろ、小童が」

 

そう言って杖を突きつける。

それを見て蒼くなるがすぐに余裕を取り戻す。

 

「そんな事をしても無駄だよ、パパのお師匠様のようだけど、僕はパパよりすごいんだから」

 

そう言って目の前から消えやがる。

ダーブラも同じだ。

 

「フンッ、ミラとトワ、行くぞ、お前は『止めろ』」

 

そう言ってサラガドゥラを放置のまま宇宙船に乗り込もうとする。

再度こっちに向かってくる相手。

 

「いくよ、ヤンバラ!!」

 

そう言って褐色の肌の女がブロリーに攻撃を仕掛ける。

それに合わせて白肌の女も仕掛ける。

 

「リタ、気をつけてね!!」

 

どうやら褐色の女の名前はリタ。

白肌の相手はヤンバラ。

 

「はああ!!」

 

同時の攻撃を腕を交差して受け止める。

足払いを仕掛けると後ろへ跳躍して距離をとっている。

 

俺の方には三面六臂の相手が向かってくる。

一番強い俺を選ぶとは目が高い。

しかし、宇宙船に入らせてもらう!!

そう思ってかわしたが……

 

「……」

 

サラガドゥラが攻撃してくる。

ここは奴の目が届く場所ではないはず。

これでどういった仕組か確信を得た。

本能だけは解放させている。

それで命令に応じて体が動いている。

本能だからこそ体に染みついた動きをあいつは常にしている。

だがあの武闘会のときでの振る舞いを冷静に考えたらその通りだ。

 

『それくらいにしておけ』で無防備に攻撃を食らうでもなく場外に出る。

『待機しておけ』で居眠り。

『追いかけろ』で速度調整。

 

「しかし、どうやら忠実にこなすというのは変わらない」

 

俺が近づいていないから硬直している。

ジェスチャーで誰か侵入させようとする。

幸い、相手の数と俺達の数に穴がある。

 

「くっ!」

 

ピッコロは二人を相手にしていやがる。

隙がないといった感じだ。

クリリンも二人の少女に防御を固めており、侵入の隙を見いだせていない。

余っているのはピオーネあたりだが……

 

「なんだ、あのやる気の無さは…」

 

突っ立っているだけ。

お好きにどうぞと言わんばかりの無防備。

いっそ、死なせてくれと言わんばかりの覇気の無さ。

目にキラリとした光もない。

あの最強の女が愛しいものが無くなった途端、このざまだ。

 

「……」

 

止めるといった指令だったがさすがにあの覇気の無さに触発されたのかサラガドゥラが動く。

だがそれをするという事は……

 

「がら空きになった、行くぞ!!」

 

そう言うが奴のリカバリーは速い。

あっという間に手の届く範囲まで行くが……

 

「はっ!!」

 

界王神も近づいていたのだろう。

悟飯を硬直させた超能力でサラガドゥラを止める。

 

「くっ、入れるのは少ないです!!」

 

どうやら超能力があまり効いていない。

速くも動き始めている。

ここは……

 

「カカロット、悟飯、行って来い!!」

 

俺まで行くと兵站が崩れる。

あの女が仕事をすれば俺も入れたが……

界王神とキビトも入っていく。

あとは頼んだぞ。

 

「良いのか?」

 

ピッコロが聞いてくる。

これ以外に手はほとんどない。

俺の本気でこいつらをまとめてつぶす。

その後に侵入すればいい。

 

「はああああああ……」

 

天下一武闘会では髪の毛が金髪になる程度で済んだが、これは使えなかった。

流石に……

 

「髪の毛が伸びて、眉が無くなったなんて言い訳できないからな」

 

超サイヤ人3で一方的な展開にしてやる。

八面六臂の奴の前に立つ。

 

「終わりにしてやるぞ」

 

そう言って腹に一撃。

そしてそのまま蹴り上げる。

六本の腕で防いでいたとしても浮き上がるようだ。

 

「がっ……」

 

浮いた瞬間に飛び上がる。

だがその隙を見逃さないやつらがいた。

 

「シェエアア!!」

 

剣を振るってくる。

どうやらカカロットと悟飯が抜けたからその焙れた奴らが俺を狙ってきやがった。

界王神やキビトの相手が居なくてよかったぜ。

このレベルでもコンビネーションがあれば厄介だからな。

増えれば増えるほど面倒だ。

 

「うぉおお!!」

 

ピッコロが気を爆発させて双子を吹き飛ばす。

そして何かを閃いたのか。

にやりと笑う。

 

「ほら、止めてみろ!!」

 

掴んだ双子を入り口に向かって投げる。

なるほど、その手があったか。

 

「……」

 

そしてその考えは裏切られなかった。

命令を本能で完璧に遂行するサラガドゥラ。

双子の片割れの腹に一撃を叩き込んで弾き出す。

そして時間差で投げ込まれた奴は……

 

「……」

 

殴ってピッコロに渡そうとしてきた。

しかしピッコロは避ける。

これで二人撃破だ。

 

「随分と粘っていたが終わりだ!!」

 

病み上がりの体とはいえ後れを取るわけもない。

ブロリーも女二人を気絶させている。

クリリンもどうやら息も絶え絶えの状態ではあるが何とか勝利を掴みとっていた。

あとは俺だけだな。

そう思って構えた瞬間、けたたましい声が聞こえる。

 

「『こうなったらお前らの場所を変えてこれで蹴りをつけてやる!!、パッパラパー!!』」

 

呪文のような言葉が聞こえた瞬間、カカロット達が現れる。

そしてそこにはミラとトワ、メチカブラもいる。

ダーブラの奴も額に有った文字が消えている。

バビディは二つの『オルゴール』を掲げる。

 

「ある魔術師から奪ったこの『オルゴール』を使ってお前らを一網打尽してやる!!」

 

そう言うとオルゴールの音色が響きだす。

すると二人の男性が出てくる。

これが切り札か?

そう思った直後、共鳴するように立ち上った存在が合体する。

実体化をして地面に降り立った。

 

「こいつは……」

 

邪悪なエネルギーを固めたような存在。

そしてデカすぎる。

俺たちの大猿などの比ではない。

 

「行け、『ヒルデガーン』!!」

 

額に文字を浮かべた存在が突進してくる。

速い奴だ、しかしこの対処法は分かっている。

 

「こうすればどうする!!」

 

サラガドゥラを利用すればいい。

避けて入り口に行くように誘導する。

それを……

 

「……」

 

殴り飛ばそうとする。

それを肉体で受け止めるヒルデガーン。

 

「ギィイイイイアアアア!!!」

 

カウンターで一撃を叩き込む。

その一撃は重く後ろに飛んだにもかかわらず吹き飛ばした。

 

「『全力でやれ』」

 

そう言った瞬間、気が立ち上る。

掴みどころのない淀んだ気。

 

「……」

 

サラガドゥラが消えた。

ヒルデガーンの懐に入り込んでいた。

そして……

 

「……」

 

アッパーで浮かせる。

空に浮かせた方向へ先回りをするとそのまま地面へ叩きつける。

大質量でも戦いの型が崩れない。

 

「ガァアアアアア!!」

 

咆哮を放つがそれはまるでそよ風だという様に歩を進める。

それどころか……

 

「……!!!!」

 

声にならない声で咆哮を放つ。

それを見たメチカブラは苦い顔をしている。

何かしらの不都合があるのか?

尻尾を掴んで持ち上げる。

それを宇宙船に向かって叩きつける。

それを感じ取ったバビディはその周りと自分をバリアーで守る。

 

「ギィイイイ!!」

 

尻尾を伸ばして悟飯を狙う。

なるほど、狙いを変更して攪乱させていく気か。

 

「こんなもの!!」

 

そう言って避けて攻撃をする。

しかし驚愕の光景があった。

 

「これはっ!?」

 

煙のような形にヒルデガーンとかいう奴が変わっていく。

まさかこんな真似ができるとはな。

実体化しないとダメージが与えられん。

 

「くっ!!」

 

後退して様子見をする悟飯。

だがそこにサラガドゥラが来る。

 

「……」

 

本能で戦っている。

しかも気が常に噴き出ている。

さらに大きくなっているような感じさえする。

 

「どいて」

 

そう言って悟飯を掴んでどかすピオーネ。

ついにやる気になったか。

 

「きっとこの怪物は強化されているから私かブロリーじゃないと対処は難しいわ」

 

そう言ったピオーネにヒルデガーンが牙をむく。

大きな尻尾を振っていく。

それを下がって回避する。

相手が幻影になっていく、これの打開策は何処にある?

 

「……下らないわ」

 

ピオーネが攻撃を放つ。

するとヒルデガーンの顔が歪んでた。

一体何が起こった!?

 

「……」

 

サラガドゥラも同じように蹴り飛ばす。

ピオーネも大概だがこいつは一体何者なんだ。

 

「幻影とはいえど魔術の類、殺気を宿して気合の拳を放つとか魔族の方法で打開できるのよ」

 

ガタバルを探し続けていた中でピッコロに教わったらしい。

殺気に満ちた拳を旦那に叩き込むつもりだったのか?

 

「…グゲェエエエ」

 

実態を表しながら疲労困憊といった感じのヒルデガーン。

身体にかなりの傷を負っている。

その上には勝者の余裕を纏ったサラガドゥラが座っていた。




ブロリーと超サイヤ人2ベジータ、さらにはヒルデガーンを圧倒する謎の戦士サラガドゥラ。
彼はいったい何者なのか。
そしてピオーネは旦那不在によりヒロイン指数ダダ下がりです。
たとえるなら原作でセル編後にサボった悟飯ぐらいに落ちてます。

指摘などありましたらお願いします。

サラガドゥラ 
由来:『【サラガドゥラ】・メチカブラ・ビビディ・バビディ・ブー』


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『魔人と邪神と魔神』

無能な界王神返上。
とは言っても戦力的には力になれないですが……。
スーパードラゴンボールヒーローズで出てきた魔神ダーブラと魔神トワ。
オリ設定で出すことにしました。
さらにオリキャラ魔神で完全に相手をする面子が揃いつつあります。


「……」

 

全力でヒルデガーンとかいう奴と戦った結果がこれか。

傷はあるがヒルデガーンに比べれば綺麗すぎる。

だが、違和感を感じる。

さらなる災厄が待ち受けていそうなそんな感じだ。

そんな事を考えているとバビディの声が響く。

 

「『よくやったよ、ヒルデガーン、魔人ブウの復活だー!!』」

 

そう言った瞬間、宇宙船から桃色の煙が黙々と立ち上る。

それは徐々に形を作っていく。

なるほどな。

ヒルデガーンが与えたダメージは少ないが一撃は弩級。

いつの間にかエネルギーは溜まりきっていたのか。

 

「ブウー!!」

 

そんな言葉とともに現れたのは桃色の風船に手足がついたような奴。

柔和な笑みが不気味だ。

界王神の奴だけが知っている姿。

それに怯えるような目を向けている。

どうやらあいつが魔人ブウで間違いはない。

 

「僕を裏切ったダーブラと遊んでくるんだ、殺したってかまわない」

 

封印するぞと脅したりしてブウに言う事を聞かせている。

こいつは見る限り、不安定というかサラガドゥラと同じ掴み所のない気だ。

あと、こいつは無邪気なだけだ。

善や悪とかの線引きがない。

 

「あそぶぞ」

 

そう言って向かっていく。

こいつは速い。

超サイヤ人2では太刀打ちできない。

 

「おのれ、舐めるな!!」

 

拳を放つが避ける。

そして残酷な一撃を放つ。

 

「ほい!!」

 

なんと目潰しを使いやがった。

目から血が出ている、失明する一撃だ。

それを蹴り飛ばしていく。

 

「おまえ、つまんないぞ」

 

セルくらいの強い奴を『つまらない』の一言とはな。

しかし、メチカブラが奴に指令を飛ばす。

 

「『時間を稼げ』」

 

そう言うとメチカブラは全員を集めてダーブラの方へと向かっていく。

ミラの奴だけサラガドゥラと共闘のようだ。

 

「勝負だ、魔人ブウ」

 

ミラが構えるとにやりと笑う。

だがそんな構えなど戦いの合図ではない。

ここは殺し合いの場だ。

 

「……」

 

それを魔人ブウに教えるように顔面に蹴りをサラガドゥラがぶち込む。

続いて腹。

そして拳を開いて気を集中させる。

 

「……」

 

腹を貫く気弾。

そして蹴り飛ばす。

だがそんな程度で緩めはしない。

気弾の雨を降らせてブウへの追撃をする。

 

「お前、容赦ないな……」

 

ミラもここまでやるとは思っていなかったらしい。

『時間を稼げ』でまさか倒すなんて予想外もいいところだ。

 

「……いまのはいたかったぞ」

 

怒っている。

だがその笑みは楽しそうだ。

 

「おまえをクッキーにしてやる!!」

 

そう言って光線を放つ。

サラガドゥラは気弾をぶつけて後ろへと回り込む。

気弾が丸形のクッキーに変わっていた。

 

「……」

 

バックドロップでブウの頭を地面に埋める。

地面から出てきたブウは怒り心頭だ。

ころころと表情を変えやがる。

 

「おまえなんか……きらいだー!!」

 

気の大爆発だ。

それを超サイヤ人3の俺とカカロットで防ぐ。

サラガドゥラが対抗して同じ技で抑え込もうとする。

 

「バリアー!!」

 

バビディも防いでいる。

俺達も自分の気を全力で注ぎ込んで難を逃れようとする。

 

「ふう……」

 

満足げな顔を浮かべているブウ。

しかし、次の瞬間その笑みをさらに広げた。

無傷な状態で立っているサラガドゥラ。

 

「おまえ、おもしろいな」

 

そう言ったブウにミラが横から殴り掛かる。

ブウの体を貫いたがこれで怯みはしない。

 

「おまえもあそんでくれるか?」

 

腕をとって放り投げる。

それを追い越して地面へ叩きつけると気弾をミラに向かって投げつける。

 

「舐めるなよ!!」

 

その気弾を弾き飛ばすとブウは腕に気を集中させてさらに殴り飛ばす。

それをサラガトゥラがかき消す。

 

そんな中、あいつらはダーブラを治療して、儀式を始めようとしていた。

止めようとしても最強の壁が阻む。

しかも魔人ブウとの諍いに首を突っ込むことになってしまう。

 

「ダーブラ様のさらなる高みに至るための贄こそが我ら」

 

痩せた緑色の剣士と赤いマッチョの男。。

二人が跪きその体は光の粒子となる。

 

「トワ様の為にこの身を捧げると誓いました」

 

手に熊人形をつけた少女と洋装少女。

そいつらも重ね合わさるようにトワの近くに寄る。

 

「『溶融せよ』」

 

その言葉を発すると光の粒子となった奴らが入り込んでいく。

気の高まりを感じる。

さらに三面六臂の奴、双子、褐色肌の女、白肌の女の五人も重なっていく。

 

「気を付けろ……」

 

光が晴れた時に感じた気で抱いたのは一つ。

最悪の場面だという事。

超サイヤ人3と同格かそれ以上になりやがった。

まだトワとミラはましな方だが。

無理をしてでも止めるべきだったか。

 

「人から神に至ったようだな」

 

姿ががらりと変わったダーブラ。

だが変わって間もないから不安定なのだろう。

トワも同様だ。

一人、巨躯の女へと変わった魔神もいる。

 

「魔神リーサです……」

 

界王神が呟く。

どうやら、滅茶苦茶な存在だったらしく来るべきの時に備えて力をセーブするために分かれていたようだ。

こいつはブロリーに任せた方がいいかもな。

 

「来るか?」

 

超サイヤ人3で俺は構える。

だがメチカブラが一度自分の陣営をちらりと見た後……

 

「みんな、不安定だからな、まずは再度整えるか」

 

そう言って、杖で地面を叩いた瞬間、黒い渦が出てくる。

これが暗黒魔界への扉というわけか。

一気に突入するのもいいが……

 

「『戻れ、帰るぞ』」

「はっ!!」

 

メチカブラがサラガドゥラに言い切る前に界王神がサラガドゥラへ超能力を放つ。

一体何を考えているんだ?

 

「くっ、小童が……こうなっては再度回収せざるを得ない」

 

徐々に渦へと沈んでいくメチカブラ。

ミラは来るものだとばかり思っていたから既に渦の中だ。

誰も回収はできない。

そしてメチカブラたちは一度、暗黒魔界へと帰っていった。

 

「一体何をしやがった、界王神?」

 

何でサラガドゥラが戻らなかったのか。

体の動きが止まっていたのは分かっていたが……

 

「彼の聴覚を一時的に遮断したんです」

 

聴覚の遮断。

つまり、命令部分にメスを入れたわけか。

 

「『戻れ』と言い終わった瞬間に遮断しました、これで彼の本能がどう作用するか……」

 

帰巣本能というわけか。

突っ立っているサラガドゥラはまるで電池が切れた玩具のようだった。

 

「おい、どうした、うごかなくなったぞ?」

 

ブウがポンポンと叩いている。

そして……

 

「きえちゃえ」

 

気を高めていく。

少なくともヒルデガーンの時は悟飯を助けている。

極悪人ではない。

 

「うぉおお!!」

 

それを感じ取った悟飯が横蹴りを入れる。

ブウが地面に転がる。

 

「お前なんか、僕がやっつけてやる!!」

 

そう言った瞬間、悟飯から荒れ狂うような気が溢れる。

やはり、こいつは……

 

「感情の爆発力が他の比じゃない」

 

だが、それでも……

そんな事を考えていると新しい影が来る。

何でお前らはここにきてしまったんだ。

 

「悟天、トランクス……帰れ!!」

 

これは子供の入る余地ではない。

悟飯はかつて俺達と五歳の時に対峙している。

だがそれとは規模が違う。

力が段違いだ。

 

「ピッコロ、二人を連れていけ」

 

俺は悟天とトランクスをここから引き離すようにピッコロに言う。

ここから先は俺達でないと厳しい。

 

「クリリンもここはオラ達に任せてくれ」

 

カカロットもクリリンに退却するように言う。

その言葉に頷いてピッコロについて行き退却する。

 

「あのデカブツも治っているからなぁ」

 

ズシンズシンと音を立てていやがる。

しかもパワーがさっきよりも上がったようだ。

 

「少しだけ手伝ってあげるわ」

 

ピオーネが屈伸をして構えをとる。

正直、時間経過によっては俺たちの敗走もあり得る。

 

「逃げる準備はしておけよ!!」

 

そう言って各々の相手へ駆け出す。

しかし相手は超弩級の化け物。

ブロリーが引き寄せて、ピオーネが一撃を叩き込む。

 

「ぐあっ!!」

 

悟飯が魔人ブウとやりあっている。

ブウの方が有利になっている。

時折、界王神がフォローを入れるもまるで効いていない。

頑丈さが段違いだ。

 

「『かめはめ波』!!」

 

頭をぶち抜きやがった。

それでも再生しやがる。

こいつを倒す方法は再生できないくらいに粉々の状態にすること。

だが煙が起こらないようにしないといけないとも感じている。

復活の時は煙で出てきたからだ。

 

「もうおまえはあきたぞ、きえちゃえ」

 

悟飯にだけ集中させている。

サラガトゥラに放とうとした気弾の一撃だ。

でかい一撃が放たれる。

悟飯は回避の体勢をとろうとするが後ろを見て諦めた。

 

「くそっ、ピオーネさんに……」

 

受け止める気だ。

悟飯は避けられない。

よければ当たってしまう。

ピオーネにそんな技が効くわけがないのに。

悟飯に直撃しようとしたその刹那……

 

「……!!!」

 

声にならない叫びが響く。

悟飯より遥か速くに割り込んでいた。

悟飯を庇ったのか、それともピオーネを庇ったのか。

それは分からない。

しかし無防備という事は……

 

「………!!」

 

二人とも気弾の餌食となる。

ダメージこそサラガドゥラがでかいが、悟飯もかなり受けるだろう。

身動きをとれずに空を飛んでいく。

 

「くっ!!」

 

界王神が気弾を超能力で爆発させた。

速く救出してやってくれ。

 

「行きますよ、キビト!!」

 

そう言っていこうとする界王神を追いかけようとするブウ。

その姿に向かって俺は言い放つ。

 

「次は俺が遊び相手だ、ブウ」

 

こっちを向いてバウンドしてくるブウ。

やる気はあるようだな。

 

「おまえ、たのしませてくれるのか?」

 

嬉しそうな笑みを浮かべやがって。

無邪気だからこそ厄介だ。

こいつにブレーキを掛けられる存在さえいれば……

 

「それはお前の感じ方次第だ」

 

頭の触覚みたいな場所を掴んで殴る。

カカロットは邪神の相手をしていやがる。

ここは俺が踏ん張る。

 

「だりゃりゃりゃ!!」

 

肘。

頭突き。

膝。

 

目にもとまらぬ位の連撃を頭部に集中させる。

流石に脳みそが揺れるだろう。

 

「ふんっ!!」

 

ポコンと小気味のいい音を立ててへこんでいた箇所が戻る。

こいつの構造は本当にどうなっていやがるんだ。

 

「心臓ならどうだ!!」

 

左半身に狙いを定める。

流石にこれならば……

 

「『ビッグバン・アタック』!!」

 

左半身を消しとばす。

ここで追撃をやめない。

 

「『ギャリック砲』!!」

 

次は頭を吹き飛ばす。

まだまだ終わりはしない。

再生が始まる前に肉片すら残さんほどの攻撃の嵐をお見舞いしてやる。

 

「『魔閃光』!!」

 

悟飯の技を借りて、右半身を吹き飛ばす。

あとは下半身だけか。

 

「『ファイナル・フラッシュ』!!」

 

下半身も消しとばす。

手応えはあった。

五体がこうもバラバラになれば流石に……

 

「……」

 

無言でムニュムニュと肉片が動き始める。

それは小さな魔人ブウとなっていきやがる。

それが徐々に集まっていき、またあの姿へと戻りやがった。

こいつを消す方法はもはや一つだけという事が判明した。

 

「クソッタレ……」

 

それと同時にどっと疲れが噴き出してくる。

力が抜けていくのがわかる。

大技をこの形態でかなり放っていたからな。

 

「くそっ、時間切れだ……」

 

気が萎んでいきやがる。

3の制限時間を俺もカカロットも超えやがった。

不死身の肉体を細胞一つ残さずに消しとばすには火力が不足していやがる。

これじゃあ3の気を最大まで貯めて消し飛ばすのもできん。

体力の消費が想像以上に著しい。

 

「どうしてもどったんだ?」

 

不思議な顔をしていやがる。

まあ、いきなり見た目が変わったらわからないな。

 

「時間が決まっているんだよ」

 

苦笑いをする。

つまらなくなったという理由でやられるだろうからな。

 

「お前の不死身の肉体に今の俺では対抗できない」

 

戦えても持久戦になると無理だ。

一つだけ手はあるが……

ピオーネやブロリーでもきっとこいつを倒すことはできない。

俺たちの方が戦力的には上だろうが不死身の肉体となるとな……。

 

「そうか……バイバイ」

 

とどめを刺そうと気を高める。

だがカカロットは諦めてはいない。

頭に手をかざして……

 

「『太陽拳』!!」

 

ブウとヒルデガーンの目を晦ませる。

その隙に俺の手を掴んでいる。

ピオーネもブロリーの腕を掴んでいた。

 

「仕方ないな……」

 

そう言って神の神殿に戻った。

クリリンやピッコロ。

悟天やトランクスもいた。

 

「パパ!!」

 

トランクスが寄ってくる。

どうやらすでに避難はしていたようだな。

 

「まさか負けたの?」

 

トランクスが不安な顔をする。

その頭に手を置く。

 

「不死身の肉体をどうにかすれば勝てる、気にするな」

 

あれさえなければ勝てる相手だろう。

色々な手を試そうとした結果、時間切れだ。

 

「そう言えば悟飯さんは?」

 

聞いてくるか。

チチもいるし隠すべきじゃないな。

 

「大ダメージを負っていて、界王神が探しにいった」

 

サラガドゥラが庇った事も言っておく。

あの二人は敵同士ではないから問題はない。

 

「死んではいないが、気が感じられない以上、界王神たちがどこかに連れて行ってるかもな」

 

考えられるのはかつてカカロットが修行した界王星。

それを聖域にしたような場所だろう。

 

「界王神様たちの世界だろう、遠い宇宙かもしれないな」

 

ピッコロがそう言う。

チチも安心している。

 

「だが脅威は終わってはいないようだがな……」

 

下界の方では地響きがする。

邪神と魔人の最悪の行進が始まろうとしていた。




次回は悟飯視点のゼットソード振り回し回になります。
老界王神の登場ですね。
帰巣本能とか動物扱いのサラガドゥラ。
彼については次回掘り下げます。
指摘などありましたらお願いします。

由来:
リーサ:『魔法使いサリー』


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『秘められし過去のサラガトゥラ』

バトル全くなしの話です。
封印した相手はビルス様です。
サラガドゥラがどういった存在なのかの話です


今、僕は『ゼットソード』という剣を一心不乱に振っている。

 

界王神様があれから僕を治してくれて、サラガドゥラさんも共に界王神界へと行こうとした。

帰巣本能が凄くて帰ろうとするから、何度も超能力で止めながらキビトさんのおかげでようやく行けた。

帰れないことにふて寝をしている。

言葉を話さないけど人間臭すぎる。

 

「しかしこの者まで連れてくる意味はあったのですか?」

 

キビトさんが言っている。

界王神様はサラガドゥラさんを見ながら一言。

 

「悪人には見えないでしょう」

 

そう言った瞬間、起きる。

界王神様の肩を叩く。

帰らせろとジェスチャーをしている。

 

「駄目です、見届けなさい」

 

すると座り込んで見始める。

徐々に本能以外のものが見えてきたような……

 

「メチカブラの支配から逃れたことで目覚めようとしているのでしょう」

 

しかしそう思った瞬間、岩を持ち上げていた。

まさかそれを投げるつもりなのだろうか?

 

「ははっ、良いですよ、豆腐みたいにスパスパと斬れると思いますよ~」

 

すると界王神様が待てと手で制する。

そして黒い四角の物体を出現させた。

 

「宇宙で一番固い物質『カッチン鋼』です、これを試してみなさい」

 

そして受け取ったサラガドゥラさんが振りかぶる。

全力で投げてきた。

居合の要領で斬りにいく。

 

「はああっ!!」

 

気合一閃。

『カッチン鋼』が切り裂かれる。

真っ二つになった後、手の中の物の感触がない。

 

「あれっ、ゼットソードがない!?」

 

そう言って振り向く。

するとそこにはおじいさんのような界王神様がいた。

 

「あの、貴方は……?」

 

僕は恐る恐る聞く。

するとどうやら今の界王神様の十五代前の界王神。

遠いご先祖様らしい。

 

「で、なんでこの聖域に二人の人間が入り込んでおるんじゃ?」

 

頬をポリポリとかきながら界王神様に聞く。

それについての事情を話し始める。

魔人ブウの復活と邪神ヒルデガーン。

そしてメチカブラによる人間界の侵略。

 

「あの小僧がそんな真似をの~」

 

頭をかきながら呑気に言っている。

しかしメチカブラの事を小僧扱いなんて……。

 

「ご先祖様はメチカブラの事をご存じで?」

 

そう言うと溜息をつく。

そして昔話のように語り始めた。

 

「知っとるよ、なんせ奴もあいつの兄もこのわしの弟子じゃったからな」

 

なんとと界王神様が驚く。

しかし、それならば魔術の精通も納得だという。

 

「どういった経緯なのですか?」

 

だがこの聖域ともいえる場所に何故奴らが来たのか。

侵略目的で来たのだろうか?

 

「わしが魔術を使えると噂で知ってここに来たんじゃよ、昔は聖域と言えど入ろうと思えば入れたからな」

 

それを言うとずっこけそうになる界王神様。

そして起き上がって苦笑いをしながら一言。

 

「そんなにたやすい聖域だったのですね……」

 

そう言って再び座る。

今でこそこんなに厳重なのに昔はそんなものだったのかとつぶやいていた。

 

「わしに教えを乞うた二人はそれはそれは素晴らしかったわ、特に兄の方がな」

 

過去を思い返し、喜んでいる。

自分の知恵を全て授けてもいい弟子に出会えたのだから。

きっと、ピッコロさんも僕が強くなる時こんな気持ちだったんだろうか?

 

「そんなに優れたお弟子さんをとれるほど凄腕だったんですね」

 

僕は素直に称賛する。

すると鼻高々という様に腰に手を当て、胸を張る。

だがすぐに暗い顔になる。

 

「でもそんなある日、今の魔人ブウほどじゃないが悪い奴に些細なきっかけであの『ゼットソード』に封印されたんじゃよ」

 

気が遠くなるほどの封印。

よく気が狂わなかったな。

そこは流石は神様だというべきなのだろう。

 

「わしが封印された時に兄は激昂してそのものへの対抗の為に『魔界』を作った」

 

そう言う経緯があったのか。

きっとお兄さんとは分かり合えたのかもしれない。

 

「『暗黒魔界』をですか?」

 

界王神様が聞く。

すると老界王神様が首を振る。

 

「いや、昔の魔界はこの界王神界を真似たんじゃ」

 

つまり楽園をモチーフに作ってみたのか。

邪悪なものを初めから制作したわけではないんだ。

 

「しかしその兄も守り神や全ての力を駆使した結果、わしのように封印をされた」

 

しかもかなり強かったらしい。

もはや一介の魔術師を遥かに凌駕していたようだ。

それでもかなわなかった人って一体何者だ……?

 

「その二度にわたるショックかは知らんがメチカブラの奴は変わった」

 

尊敬できる師匠。

自分よりも優れていた慕うべき兄。

それを失って変調を起こさないなどあるだろうか?

今、現在進行形で最愛の人が居なくて徐々に駄目になっている人がいる。

あの人を見ているとメチカブラさんの変化も仕方ないと思える。

 

「どのように変わってしまったのですか?」

 

界王神様が聞く。

すると溜息をつく。

相当気を揉む出来事だったのだろう。

封印されていても意識はあったり感覚もあったのだろう。

 

「『魔界』を『暗黒魔界』に変えて、守り神を邪神に変えた、そして輝いていた光を落とし暗黒郷に変えたのじゃ」

 

180度違う世界に変えたのか。

そこからトワやダーブラ。

そしてテクマツーやチチン、アブーやラカンなどの側近。

リーサといった突然変異の存在などで帝国を作り上げた。

邪神は出てこなかったがかなり危ない相手かもしれない。

 

「そう……偉大なる兄にしてわしの最高の弟子の偉業を台無しにしおったんじゃ」

 

強く拳を握り締めて怒りを露わにする。

弟子の成長を喜んでいた。

自分にとって最高の弟子の功績を穢した者がその弟子の弟。

怒って当然だろう。

 

「ちなみにその兄の名は?」

 

界王神様が聞く。

すると溜息をつきながらその名前を言った。

 

「その男の名前はな、『サラガドゥラ』じゃよ」

 

その言葉を聞いた瞬間、僕は手を挙げていた。

同名だからもしかしてと思う。

 

「同じ名前の人がいるので見ていただけませんか?」

 

そう言って連れてきて仮面を見てもらう。

ピエロマスクを見て老界王神様はふきだした。

 

「これはまた随分と面白い仮面にされたのう」

 

笑いながら言っていた。

だが仮面に触れて探った結果、一気に顔が険しくなる。

その瞬間、纏っている空気が変わった。

 

「メチカブラの奴、生きた人間に付けよったな」

 

怒りに満ちた顔。

さっきも怒っていたが、それに上乗せされたような感じだ。

 

「そうするとどう変わるのですか?」

 

流石は神様といった所だろう。

その怒りや剣幕ににのまれそうになる。

しかし、恐る恐る聞いてみた。

すると口を開いて説明してくれた。

 

「容姿が変わるんじゃよ、サラガトゥラの髪の色と体格にな」

 

じゃあ子供に着けてしまうとかやっていたら……

そんなの別人すぎて同一人物なんて思わないぞ。

 

「つまり、これが付けている本来の肉体ではないということですか」

 

ちらりと覗く肌の色は僕たちと変わらない。

どうやら肌の色は影響されないようだ。

大きいフードなのだが、子供につけたか成人男性に装着していたのかな?

できれば女性は嫌だな。

場合によっては心に傷をつけかねないし。?

 

「その通りじゃ、今からこいつを外すが生きた人間の意識は兄であるこいつに任せんといかん、じゃから壊せ」

 

そう言って魔術で仮面を外していく。

徐々に外れていくがその付けられていた人はうつ伏せになって倒れ込んだ。

外れた時に髪の毛の色が黒くなっていた。

 

「触って変な目覚めになるかもしれんからやめておけ」

 

起こそうとする僕たちを止めて仮面をくるくると回す。

どこかおかしなところがあるのか確認しているようだ。

 

「壊せば老界王神様のように封印が解けるんですか?」

 

ちなみに聞いておく。

間違えて死ぬとかないですよね。

 

「そうじゃ、カッチン鋼で押しつぶすか剣状にしたやつで切り裂け」

 

そう言って仮面を置く。

それを見て界王神様が再度カッチン鋼を取り出す。

 

「それでは、悟飯さん頼みます」

 

瞬く間に剣状に加工されていく。

それを投げ渡される。

ズシリと重みのあるものだ。

 

「はあっ!!」

 

気合を入れて振りかぶる。

剣状に加工されたカッチン鋼を突き立てて仮面を壊す。

すると仮面から光が出てその光が晴れた時、一人の男性が現れた。

 

「悠久の時、眠っていた……」

 

首を鳴らして見渡すとたちまち顔が驚きに染まっていく。

そして声を発する。

 

「ここはもしや界王神界か!?」

 

その問いに答えたのは老界王神様だった。

さっきまでの顔とは違い、真剣な顔つきで。

 

「そうじゃよ、サラガドゥラ」

 

その声に振り向くサラガドゥラさん。

見た目は白い髪を無造作なワイルドヘアにしたような形。

体格は背が高くピッコロさんのような感じだ。

肌の色はメチカブラたちと違い、僕たちと同じ色だ。

何故なんだろう。

 

「お師匠様……お久しぶりです」

 

土下座をして挨拶をする。

気が出ているが、そんな事は気にも留めない。

 

「封印から解放されて何よりです」

 

そう言ったサラガドゥラさんの頭をはたく。

そんな事はどうでもいいといった感じだ。

 

「お前の馬鹿な弟がやらかしとるんじゃから責任とらんかーい!!」

 

そう言ってフードを指さす。

それを見て一瞬で把握したのか、険しい顔になっていた。

 

「分かりました、目覚めさせます」

 

そう言ってフードの人の頭に当たる部分へ手を触れる。

そして呪文を唱える。

幻影としての鎖が浮き出し始めた。

 

「はっ!!」

 

そう言うと鎖が砕け散る。

どうやら術を解いたようだ。

 

「それではこの者を下界に連れて休ませて参ります」

 

抱えて頭を下げる。

体格が普通に老界王神様どころかキビトさんよりでかい。

その為アンバランスに見える。

 

「地球という星にお願いしますね」

 

界王神様の言葉に頷く。

やはり根が悪い人ではなかった。

そして一瞬だけ覗いた顔。

あのフードの奥はまさか……

 

「カイカイ!!」

 

呪文を唱えてサラガドゥラさんが消えた。

僕たちは勝てる。

それを確信する。

 

「メチカブラさん、あなたはやってはいけない事をきっとしましたよ……」

 

その相手には聞こえない声を放つ。

 

「お前さんの潜在能力を限界以上に引き出してやるぞ、こっちへ来い」

 

儀式に5時間。

パワーアップに20時間。

僕の周りを腕を振りながら歩き回る老界王神様。

 

「皆さん、がんばってください……」

 

すぐに助けになりますから。

そう思いながら僕は老界王神様のパワーアップの儀式に臨むことにした。




サラガドゥラは仮面が本体の存在でした。
ビルス様センスによるピエロマスクへ封印です。
封印された仮面には自我はなく、また宿主の意識を奥深くに封印した結果です。
メチカブラの老界王神様の弟子はオリ設定です。
仮面を装着されていた人物とは何者なのか。
冷静に考えると2mのガタイで。破壊神相手に肉弾OKの魔術師とかえぐいですね、サラガドゥラ。

指摘などありましたらお願いします。


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『暴れる二人』

二人とは何者なのか。
そして実体を取り戻したサラガドゥラの本格的な戦闘です。


魔人ブウたちの行進は止まらなかった。

一度、悟空の戦いの後でブウがバビディを殺したことでヒルデガーンも自由となる。

両方が別れていく。

ミスター・サタンがブウとの接触を図っていた。

俺たちのような力を持ってはいない人類の希望だろう。

 

「案外、奴は本物の救世主になるかもな」

 

そう言って下界から目を背けるとだらしない女が見える。

相変わらずだな……

 

「いい加減にしろよ、ピオーネ……」

 

溜息をつく。

神の神殿に戻ってずっとこの調子だ。

トランクスと悟天を『精神と時の部屋』に入れて準備万端にしているのに。

ターサとロマネが次には入る。

ラディッツやターレスの子供であるハツカやサニーもその後に入る。

 

「あのねぇ……私はあの子がいない地球なんてどうでもいいの」

 

目にクマを作った状態で睨み付けてくる。

まさかの爆弾発言に全員が凍り付く。

人類が滅亡しようが構わないと言っているようなものだ。

 

「あんたらが貧弱だったからあの子に負担が来た、きっとあの日もそうなのよ」

 

ゆらりと立ち上がって恐ろしい剣幕でベジータや悟空に近づいていく。

行方不明になった日。

奴は一人でしょい込んで戦いにいった。

助けを呼べなかったのか。

ブロリーたちが到着した時にはもうすでに消えていた。

 

「言いすぎだ、奴らも協力して探しただろう」

 

そう言った俺を冷笑する。

見つけれていない時点で意味がない。

探したから罪滅ぼしになると思ったら大間違いだ。

そう言った笑みを浮かべている。

 

「んっ……?」

 

雰囲気が悪くなっていた、そんな時。

気配が感じられる。

カリン塔の方か?

そう思って下をのぞき込もうとした瞬間。

跳躍でこの神殿に降り立ってきた。

 

「お前は何者だ?」

 

ベジータも悟空も臨戦態勢になる。

こいつはまるでつい最近見たような雰囲気だ。

 

「俺の名はサラガドゥラ、あの金色のピエロマスクに封印されていた者だ」

 

何だと!?

こいつの抱えているフードに目が行く。

 

「それはなんだ?」

 

聞くとどうやらモゾリと動く。

人間か、何かが入っている。

 

「これは俺の弟のせいで日々を奪われた哀しい人だ」

 

そう言って歩き始める。

『精神と時の部屋』の方向だ。

勘で見抜いたか?

 

「待ってくれ、今はガキどもの鍛錬で……」

 

止めに行く。

ここで止まってしまうとブウたちへの対策が危ない。

そう思って腕を掴む。

 

「5分だけ貸してくれ、邪魔はしない」

 

しかしその腕を筋力で弾く。

そして、グイっと顔を近づけて言ってくる。

なんだか有無を言わさない迫力がある。

 

「絶対に邪魔はするなよ…」

 

真剣なまなざしに俺は渋々ながら了承した。

俺の聴覚で聞き取れた『哀しい人』。

もし、それが今の俺達にとって最高の朗報だったなら……

 

「そろそろ5分だが……」

 

そう言った瞬間、悟天たちが慌てて出てきた。

一体なんだ?

 

「ピッコロさん、なんで男の人が二人もいるんだよ!!」

 

男が二人?

やはりあのもぞもぞしてたのは人間か。

 

「違うよ、トランクス君、あれは女の人だよ!!」

 

女?

食い違っているがどっちが正しいんだろうか。

 

「馬鹿だな悟天、ありゃ女の顔した男だよ」

 

女の顔。

そのワードでピンとくる。

やはりあの中身は……

 

「じゃあ、オカマかな?」

 

そう、悟天が言った瞬間、何者かが悟天の頭を掴む。

その顔は4年ぶりに見る顔だ。

 

「随分と生意気な口きくようになったな、悟天……」

 

にやりと笑って手を放す。

くるりと悟天は着地をするがきょとん顔だ。

 

「僕、おじさんの事なんて知らないよ?」

 

無理もない、まだお前が3歳の時に失踪したからな。

トランクスは必死に思い出そうとしている。

 

「ピオーネの奴、寝てるのか?」

 

そう言ってきたので頷く。

大の字になってへそが見えている。

同じようにターサも寝ている。

それを揺すって起こす。

 

「起きてくれ、ピオーネ」

 

そう言うとうっすらと目を開ける。

目をこすり視界を通常の状態に戻した後、ガタバルの顔を見た瞬間。

 

「うぇ……えん」

 

声を押し殺すようにピオーネが泣いた。

それこそ、初めてだという様に。

滝の涙を流していた。

 

「お父さん!!」

 

ターサも飛びつく。

家族団欒のワンシーンだ。

ガタバルが撫でて宥めて泣き止ませる。

そしてピオーネが立ち上がった時、あのだらしない姿が霧散した。

セルやフリーザと戦った時の凛々しい姿だ。

 

「同一人物とは思えないな……」

 

苦笑いをしてしまう。

ガタバルが愛妻家だというのは知っていた。

だが、言葉にしないだけでピオーネもまたガタバルを愛している。

だからこんなことが起こったのだ。

もう二度とあんな姿を晒しはしないだろう。

 

「で、なんでどこを探してもいなかったの?」

 

確かにそれもそうだ。

仮面が付いた程度では占いババの占いからは逃れられない。

 

「それは俺が説明する」

 

そう言ってピオーネの横に立つ。

確実に事の流れや顛末を知っているのはこの男だ。

 

「あなた誰?」

 

初対面だからな。

警戒した一言は出るだろう。

だが、そいつがお前の旦那をここに連れてきてくれた恩人だぞ。

 

「俺の名前はサラガドゥラ、あの仮面の封印が解けた姿だ」

 

それからサラガドゥラがピオーネやベジータ、悟空に憶測ではあるがと前置きを置いて話す。

弟であるメチカブラがガタバルに仮面をつける前に、魔術で意識を完全に埋没させていたこと。

その後に暗黒魔界に送ったこと。

そして意識が埋没した状態で自分を装着したこと。

それで見た目などが変わってしまい、自分も封印状態で外れなかったこと。

だから別人扱いになったことで、占いババの占いに引っかからなかったのかもしれないという事。

ようやく、孫悟飯のおかげで封印が解けたので、魔術を解除してここに運んできたこと。

 

「つまりあの青肌の爺さんがいけないのね……殺すわ」

 

そう言った瞬間、禍々しい気が立ち上る。

今までどんな奴よりも怒りに満ちた、どす黒い気だ。

メチカブラの奴、地雷を踏みやがったな。

俺たちの陣営で最悪の地雷を。

 

「いや、弟の不始末は俺が付ける、休んでおいてくれ」

 

クマがまだとれていないことを心配したサラガドゥラが言ってくる。

筋は通っているが……。

そう考えているとガタバルが手で制していた。

 

「待て待て、被害者である俺が行くべきだろ?」

 

ガタバルもやる気満々だ。

気が噴き出した瞬間、セルのときよりも何倍も強くなっていやがる。

きっとあいつらが肉体を強化していやがったな。

 

「むっ……これは」

 

サラガドゥラが感じ取っている。

同族故に働くセンサーか。

 

「俺の標的は決まった」

 

そう言って飛び降りていく。

ガタバルも動こうとする。

 

「私も行く!!」

 

そう言うピオーネの首に手刀を入れる。

気絶したピオーネを抱えて俺に手渡す。

 

「寝かせておいてくれ」

 

その言葉を言って飛び降りていく。

あいつ、病み上がりの肉体で大丈夫か?

月がでている闇夜に戦うなんて……

 

.

.

 

「お前がヒルデガーンか」

 

『精神と時の部屋』の時間が僅かに残っていたのだろう。

5分の間に今の状況を聞いておいた。

次の相手が危ういという事も。

 

「グガアアアアア!!」

 

幻影になって向かってくる。

だが……

 

「幻影になっても攻撃するときは実体になるだろ」

 

超サイヤ人3で対応する。

懐に飛び込んで攻撃が当たらないポジションに着く。

尻尾で薙ぐために実体化する。

それを見て尻尾を持って地面へ叩きつける。

 

「グルルルル!!」

 

ヒルデガーンが唸りながら起き上がる。

ダメージを受けないように幻影になっていくが……

 

「はっ!!」

 

目に見えない威圧感。

殺気。

そういったものを宿して放つ一撃。

こういった相手と戦った経験がなくても予測はできる。

いずれそのような摩訶不思議な相手と出会った時の為に、セルとの戦いの後から行方不明扱いになった日まで鍛錬はしておいた。

 

「グゲエエエ!!」

 

呻くヒルデガーン。

俺がこのように鍛錬をしてきたのはのピオーネに勝ちたいからだ。

惚れた女に見直してもらいたい。

その一心だ、

それを4年間奪った憂さ晴らし。

お前で少しは晴らそうか。

 

「シャアアア!!」

 

尻尾を振り乱して攪乱をしようとする。

縦横無尽にあいつが動く中、延々と一撃を当てる。

的がでかいだけ。

攻撃が当たるのであればこれほど楽な相手もいない。

 

「バアアアッ!!」

 

大きな羽根で羽ばたく。

それと同じタイミングでとび上がる。

 

「ウゴオオオオオオ!!」

 

大きな光線を口から出す。

地球から宇宙空間へ飛び出していく。

それを避けた瞬間。

 

「あっ……」

 

久々に見た眩いもの。

満月が思わず目に入ってしまった。

 

「満月……」

 

ドグンと心臓が強く鼓動する。

それは徐々に大きくなる。

自分の中にある凶暴な力。

それが鎌首をもたげて表に出てきていた。

 

「ガアアアアアアア!!」

 

意識はそこから途切れていた。

再び戻ったのは、体に傷ができたその痛みで徐々に意識が深い部分から浅い部分へ覚醒した時。

ヒルデガーンも何度か攻撃を浴びたのだろう。

深刻なダメージだった。

こっちの掌は血塗れ。

ヒルデガーンの尻尾は千切れていて、ところどころがひしゃげている。

 

「グゥウウ……」

 

その姿を見てまたもや凶暴性が顔を出そうとする。

意識が途切れそうになる。

しかし留まるために『思い出』を思い返す。

 

「満月を見て意識が飛んでしまっていて、今もまた飛びそうになったが…」

 

脳裏に浮かぶのはピオーネの姿。

ターサの笑顔。

ブロリーとの修行の日々。

ベジータとの話し合いや研鑽。

ピッコロと桃白白の育んできた男同士の友情。

頼れる兄貴分の結婚式。

フリーザとの死闘。

 

「今日からまた同じように歩んでいける……」

 

それらが大猿として暴れようとする意識を留めていく。

そしてその力を凝縮して内側に収めていく。

暴れだしそうな野性ともいうべき原点の力。

 

「その『喜び』が俺をさらなる進化へと導いた!!」

 

俺の髪の毛は黒くなっていった。

上半身は大猿の状態で紅い毛に覆われている。

これこそが単独における変身の最強形態。

サイヤ人のあるがままの集大成。

 

「これが……超サイヤ人4だ!!」

 

.

.

 

「ガタバルの気が異常なほどに膨れ上がったか」

 

俺は一面を見渡す。

闇に溶け込んでいる様だが……

 

「下らんかくれんぼはやめにしろ、メチカブラ」

 

そう言うと現れる。

ダーブラやトワもいる。

見た目が様変わりしたようだがな。

 

「お前は誰に牙を向けたか分かっているのか?」

 

俺がメチカブラを睨み付ける。

するとびくりと体を震わせて恐る恐る口を開く。

 

「だけど、封印を解くために……」

 

あんなやり方でなくても問題ないはずだが?

言い訳をすればするほど、お前は痛い目を見ることになるぞ。

 

「俺は誰だ、言ってみろ」

 

震えているメチカブラに問いかけをする。

お前が喧嘩を売ったのが何者かを再確認しろ。

そしてそれが正しいのか間違いなのか噛みしめるがいい。

 

「貴方は我が兄……サラガドゥラ様です」

 

気絶しそうなほどの俺の怒気に耐えたメチカブラが震えたまま問いに答える。

そうだな、俺はお前の兄。

そして俺との魔力の差を十分承知していながら逆撫でをしまくったというわけだ。

 

「俺の肩書きを言ってみろ」

 

さらなる絶望を。

ダーブラたちの知らぬ世界の真実を先達として。

誰よりも知っているべきお前の口から言ってやるがいい。

 

「あの魔界の創造主にして……『魔神』サラガトゥラです」

 

その通り。

俺は『魔人』ではない。

かつて神の領域に足を踏み入れた『魔神』なのだ。

俺は自己研鑽を創造した後に積んでいった。

何故ならば、お師匠様の仇を打つために不十分な力で挑むことは失礼だから。

こんな不肖な弟子をとった師匠はさらに愚か者だと蔑まれないために。

 

「最後に……俺が下す判決を言ってみろ」

 

聡明なその頭で弾き出してみろ。

俺の作った世界をハチャメチャにした。

下らん輩を増やして帝国を作り上げた。

さらには正当な手段で壊すなりを考えなかった。

つまりは俺を見捨てた、俺の功績を侮辱した罪の重さを。

 

「すなわち……極刑」

 

さらに震えながら最後の問いに答える。

何故震えるのか。

それは俺が極刑といえばその事実を覆すことはできないからだ。

逃げるしかない。

抵抗しても無意味だとメチカブラは知っている。

 

「正解だ!!」

 

そう言ってメチカブラへと駆け出す。

それに割り込む影が一つ。

巨躯の女だが……

 

「目障りだ!!」

 

そう言って蹴り飛ばす。

大方あれは……

 

「儀式をしてなったような『魔神』が俺にかなうとでも?」

 

こっちは守り神の力を借りずとも、儀式をせずとも己の力だけで魔神へと成ったのだ。

あの破壊神に勝つためのバックアップで使用したんだ。

つまり……

 

「お前らのような『魔神』とはな……格が違う!!、力が違う!!、覚悟が違う!!」

 

そう言って全力で気を吹き出させる。

およそ7000万年以上も昔。

お師匠様が封印されて破壊神に挑んでから戦えなかった。

それが今や全力を尽くせる。

その喜びに……

 

「60兆個の細胞が一つ残らず打ち震えている!!」

 

そう言って魔神リーサとやらに突っ込む。

奴の反応速度を超えてこめかみに蹴りを叩き込む。

ぐらりとした所を腕を掴んで引き寄せる。

 

「ふんっ!!」

 

肘打ちでダメージを負わせる。

腹へ蹴り。

脇に腕を差し込んでのジャーマンスープレックス。

 

「くっ!!」

 

何とか蹴りを当てるリーサ

しかしこんな一撃なんぞ……

 

「くすぐったいだけだな」

 

そう言ってカウンターで殴り飛ばす。

ドガンと岩に当たる。

この感触は気持ちいい。

手応えがあるのがこんなにもいいなんてな。

リーサはもう死ぬ運命だ。

俺は漆黒の気を集中させる。

 

「『フィアー・パンデミック』!!」

 

カラスの羽根を模した気弾がリーサを包んでいく。

リーサの抵抗は無意味だ。

それは引っ付けば重く、そしてお前の気を吸い取る。

只の気弾ではなく魔術との合成気弾。

まさか馬鹿正直にただの気弾を撃つとでも?

 

「ぐっ!?」

 

さらに蹴りや拳にも魔術を宿しておいた。

お前の反応と体の動きをずれさせる術だ。

お前は目に見えている攻撃を避けようとするだろう

しかし身体は脳の指令から到達した後、わずかに体が遅れて反応をするようにした。

 

カラスの羽根が玉状になって包んでいく。

それを俺が指を一本一本閉じていくとリーサを包んだ弾が縮んでいく。

そして俺が握り拳を作って……

 

「ふんっ!!」

 

気合を込めた後、ゆっくりとその掌を開く。

リーサは闇にのみ込まれるように消滅した。

スマートな死とはこういうものだ。

理解できたか、メチカブラ?

 

「…トワよ、邪なるものを召喚せよ!!」

 

それに恐怖を抱いたのだろう。

何とか人員を増やそうと画策したメチカブラ。

それにしたがって即座に召喚を行う。

どこかで魔力によって呼び出されたのだろう。

魔力のうねりを感じる。

それに気をとられている隙にメチカブラは消えていた。

 

「消える前の置き土産があるはずだ……

 

自分の失態を拭わないといけない。

そう思った俺は探しはじめる。

久々の戦いで昂りすぎたことは反省だ。

しかしそんなものは見受けられなかった。

『魔神』となったことで魔力の隠蔽が可能になったか。

こうなってくると水晶玉のような媒介が欲しいな。

魔力を通して見る事を妨げられていた場合の保険になる。

便利なものは有って損はない。

 

「一度あの神殿に戻ろう……」

 

そう言って俺は瞬間移動をした。

 

.

.

 

サラガドゥラが去っていった後。

トワの魔術によって生み出された異なる時空の邪な思いは……

 

「……ジャネンバ……ジャネンバ、ジャネンバ」

 

静かに胎動していた。

それは小さな状態から徐々に肉体が変わっていく。

どうやらまだ全然この戦いは終わりそうにもなかった。




主人公、ブウ編4話にて復帰。
そして4に覚醒。
今後はブルーツ波の過剰な取り込みによる限界突破の底上げぐらいです。
事前に言いますがガタバルのゴッド化はありません。
そしてCMで今最新のジャネンバ:ゼノ参戦です。
指摘などありましたらお願いします。


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『時空からの敵襲』

トワの魔術による『悪役・ゼノ』軍団との対決です。
強化予定が二人います。
ちょっと話数がかかるかもしれません。


ヒルデガーンを超サイヤ人4で倒してすぐに神殿へ向かう。

最終的には殺気がなくても攻撃の時に最大の一撃をお見舞いして灰にしてやった。

この力の目の前には魔人ブウもメチカブラもどうしようもない。

だが、そんな俺を待っていたのは機嫌の悪いピオーネだった。

どうやら一緒に戦いたかったらしい。

でも、あんな不健康な状態はなぁ……

 

「でも……胸騒ぎがするな」

 

まだ脅威は終わっていない。

さらなる相手の一手が全員出動の可能性さえある。

そうなると厳しいぜ。

 

「いや、それは間違っちゃあいない」

 

サラガドゥラが口を開く。

どうやら一人倒したが逃してしまったらしく、そいつらが呼んだものが見つけられなかったらしい。

今、水晶玉で見つけに入ってはいる。

 

「見つけても手遅れな可能性はあるな……」

 

同じような奴の反応がいくらもあるらしい。

トワが『時空の異なる奴』を呼んだという事だ。

場合によってはとんでもないことになりかねない。

 

「今のところ、反応は?」

 

険しい顔になっていく。

そして口を開く。

 

「どいつもこいつも邪悪だが……」

 

結構な数があるらしい。

しかもトワの魔術でパワーアップしているようだ。

仕方ないな……

 

「何人呼んでおく?」

 

カカロットやベジータのいずれか一人、ブロリーをそこに加えて五人か?

それとも別の奴にしておくか?

 

「悟空やベジータも疲れている、ここは俺が出よう」

 

そうか、なら今回のメンツはいつもとは全然違った感じだな。

俺たちはすぐに集合させる。

そして集まった面子は……

 

「こんな老兵でも力になれるならばな……」

 

桃白白が苦笑いだが参戦してくれた。

その横には今まで戦ってきていなかった面子もいる。

 

「俺もいつぶりだろうな、修行はしてたがよ」

「そうですね、力になりますよ」

 

ナッパとターブル。

この3人で一つの邪悪に立ち向かう。

 

「俺達も出る」

 

ラディッツさんとニア。

そこにスパーニが加わった3人。

 

「今回ばかりは俺も本気の暴走になるかもしれないからな……」

 

ブロリーもいつになくやる気だ。

単独でやりたいというのもそれが理由だろう。

暴走してしまうとスパーニを傷つけかねない。

 

「単独で俺も行こう」

 

サラガドゥラも頷く。

もとは俺の不始末だと言っている。

それにまだ、メチカブラにも奥の手は残っている。

だからすべて潰しておくべきらしい。

 

「少し準備運動がてらに倒しましょうか」

 

ピオーネが伸びをする。

話を聞くとこの俺が失踪してからの間、鍛錬もなし。

実戦も俺の戦ったヒルデガーンのみ。

ピッコロいわく、だらけまくっていたらしい。

すまない、その全責任は俺だ。

10人がかりとはいえ仮面をつけられた俺のな。

 

「俺とターレス達でもう一つだな」

 

ピッコロも参戦するらしい。

カカロットやベジータは疲れているから今回の参戦はなし。

さらにクリリン達に子供たちは任せておく。

 

「じゃあとにかく今教えてもらった場所に行こう」

 

そう言って神殿から飛び降りる。

お互い戦いが終わればすぐに助けに行くようにする。

犠牲者0で奴らの鼻を明かしてやろう。

その気持ちが全員の胸に宿っていた。

 

.

.

 

「どうやら俺たちの相手だな」

 

小さなフードの相手。

これも呼ばれたのか?

 

「この世界が目当てか?」

 

そう言うと邪悪な気が溢れる。

どうやら野望をがっつり抱いたやつだ。

フードから覗く目が光っている。

 

「お前らの首をとることを手始めにこの星を侵略しよう」

 

笑いながら言ってくる。

随分と甘く見られたものだな。

まあ、そんなガキみたいな奴には一言こういうだけだ。

 

「寝言は寝ていいな」

 

そう言って俺たちは構える。

この3人を一気に相手して勝てると思っているのか?

 

「この世界の支配者であるガーリックJr様に屈服するがいい」

 

そう言うとフードを脱ぎ去って体が肥大化していく。

筋骨隆々の男が目の前に現れた。

 

「どうやら変身型か」

 

そう言ってまずは俺が突っ込んでいく。

コンビネーションの前段階だ。

ターブルに白白、頼んだぜ。

 

「うぉおお!!」

 

手四つで組み合う。

グイグイ押していこうとするが、相手も腰を落としてどっしりと受け止めていやがる。

胸元にある黒い球がこいつらの力の源か。

 

「でも……」

 

一瞬力を抜くと相手は覆いかぶさるようになる。

それに対して腹に膝を叩き込む。

そのまま上へ蹴り上げると白白が奴の体勢を崩していく。

首を足で抱えて錐揉み回転をして落下する、

相手は受け身をとれずに地面へ叩きつけられた。

 

「『鶴首落葉』」

 

むくりと白白は起き上がって距離をとる。

深追いは禁物。

戦いのイロハにおいてはこちとら大ベテランだぜ。

 

「ドーピングで戦闘経験は稼げねえ」

 

相手は背中をつきながら怒りの形相を向けていた。

まだ戦いは始まったばかりだ。

いくら強くなったからって見くびるものじゃあないぜ、小僧。

 

.

.

 

目の前にいるのは武骨な機械。

こちらを見ると向かってくる。

 

「どうやらこれは人造人間のようだな」

 

機械ベースなのかもしれない。

まあ、結構久しぶりの本格的な戦いだ。

気合をいれないとな、

 

「この『ハッチヒャック』にはかなうまい、特に貴様らサイヤ人は念入りになぶってくれる」

 

発明者を見てピンとくる。

この背丈の低さ、そして開発力。

 

「ツフル人か?」

 

ターレスが言う。

俺たちサイヤ人に絶滅させられた先住民。

異なる時空でもその因縁があるのか。

 

「その通り、今こそ貴様らサイヤ人を絶滅させてやる」

 

そう言ってハッチヒャックの前に立つ。

そして胸に手を当てた。

 

「このドクター・ライチーの魂も動力にして、我が怨念で強くなれ、ハッチヒャック!!」

 

そう言うと紫色の泥になるとハッチヒャックの肉体に入り込んでいく。

それが共鳴を起こすように爆発的に圧力が増していく。

まさに復讐のための集大成だ。

 

「いくぞ、全員、気を緩めるなよ!!」

 

俺とスパーニは超サイヤ人となる。

ターレスは界王拳。

ザンギャはそのままの構えだ。

ニアも変身形態となり、対戦の準備は整った。

ハッチヒャックに向かっていくのだった。

 

.

.

 

「異なる時空とはいえ、これはきついな……」

 

俺の目の前にいるのはクウラだ。

胸に黒い球が埋め込まれている。

 

「ナメクジ如きが俺の相手になるとでも?」

 

冷笑するように言ってくる。

俺はあの時、神と同化していなかったからな。

今の俺は努力をしてきた。

そう易々とやられるわけがない。

 

「俺を簡単に倒せると思うなよ!!」

 

ターバンを脱いで全開の体勢をとる。

少しも気は抜けない。

相手も冷静にこっちの実力を見ている。

 

「お遊びなんてものは無しだ」

 

最終形態となって向かってくる。

帝王の兄、クウラ。

たとえ時空が異なろうとも強さは色褪せずさらに鮮明なものとなっているだろう。

俺は集中して相手を見据えるのだった。

 

「はああっ!!」

 

凄い風圧と共に拳が来る。

だがそれを避けて腕を伸ばす。

 

「ふっ!!」

 

その腕を避けるが今度は俺がその腕を奥の方へと縮める。

そうすれば従来とは違い、距離を詰めるのに使える。

 

「成長しないと思うな、『爆力魔波』!!」

 

横っ面に喰らわせてやる。

手応えはあるがこの程度でやられるわけがない。

距離をとって様子を見る。

その間に技の準備をする。

 

「弱い癖にやってくれる……」

 

煙をあげながら睨んでくるクウラ。

しかし、その一撃で済むと思うなよ。

 

「『魔貫光殺法』!!」

 

その一撃の速度に驚くクウラ。

回避をするが睨んだ分対応が遅れたのだろう。

完全に回避できたはずが肩を貫かれていた。

 

「この俺の肩をよくも……」

 

戦闘は知恵を絞ればどうにかなることもある。

一人で勝つのが難しい。

ならば救援を待つ。

俺は今、クウラから冷静さを奪って時間を稼ぐための一手を張りめぐらせていた。

 

.

.

 

「俺の相手はお前か?」

 

海賊のような恰好をした大男。

かなりの実力を誇っているようだな。

はだけている胸から見える黒い球から邪悪な気配がする。

 

「このボージャックに何という態度だ」

 

相手は構えている。

余裕綽々な態度だ。

鼻で笑っている。

 

「貴様こそ…この俺にそんな態度をとっていていいのか?」

 

その余裕をなくしてやる。

全力の力で一気に距離を詰める。

そして拳を奴にめがけて放った。

 

「ぬぅ!?」

 

腕をへし折った感覚がある。

防御していたにもかかわらずだ。

さらに持ち上がってしまう。

奴の足が地面から離れていたのだ。

 

「ごはっ……」

 

うつ伏せになって倒れ込む。

それを持ち上げて放り投げる。

俺はそこへ全速力で追いかけていって……。

 

「貴様には岩盤がお似合いだ!!」

 

ラリアットで岩盤へ叩きこむ。

相手は血を吐いている。

 

「お終いだ」

 

そう言って別の所へ助けに向かおうとすると足が掴まれていた。

相手は姿を変えて全力を出している。

 

「それなら初めから全力で来い」

 

そう言うと突進するように猛烈な勢いで向かってきた。

相手も全力で立ち向かっている。

初めの一撃の重さでこちらの危険度は十分に把握したはずだ。

 

「姿が変わったところで同じだ!!」

 

そう言って拳を顔面へと振るう。

これをどう対処する?

 

「ぬがぁ!!」

 

食らってから拳を出してきた。

こっちの拳に合わせてのクロスカウンター。

口の中が切れたのか血が出ている。

それを吐き出して、相手を見据える。

 

「燃えるなあ……」

 

自分と同格の者がいる。

その楽しさに体がゾクゾクとしはじめる。

さあ、もっと来い。

お互い全力で楽しもう。

 

.

.

 

「はずれかあたりかわからないわね」

 

蒼い肌をした男。

どうやら人造人間のようね。

胸のあたりに黒い球が埋め込まれている。

 

「ソン……ゴクウ……デハナイ、オンナ、ショウサイフメイ……」

 

どうやらお目当ての相手ではないみたいね。

いずれにせよ潰すのだけれど。

 

「分からないまま塵になればいいわ」

 

そう言って駆けていく。

相手も反応をするけれど遅い。

そのまま後ろをとって背中に手刀を突きさす。

 

「装甲が固いから防御が甘いの?、それとも……」

 

私が女だからって見くびっているのかしら?

だったらそのおつむに覚えさせなさい。

私は今、この地球上で最も強い女よ。

 

「ガアッ!!」

 

裏拳を放つが避ける。

そのまま腕をとって受け身をとれないように投げる。

 

「グヘェ!!」

 

起き上がろうとする相手を見下すように見る。

そして笑みを作って手招きをする。

そして一言。

 

「かかっておいで」

 

すると急いで相手は立ち上がる。

相手が煙をあげるように怒りを露わにする。

私は貴方なんかに負けないわよ?

構えて相手を迎え撃つ備えをしていた。

 

.

.

 

「元凶とは言わないが、これがトワの呼んだ奴だな」

 

ふわふわしたような巨人。

だが恐ろしい相手なのだろう。

そう思っていると胸に黒い球が出てきた。

そこから強い魔力と邪悪な力を感じる。

トワは召喚と強化を同時に行なったようだな。

 

「いくぞ」

 

そう言った瞬間、空間が歪む。

魔術が使えるのか。

だが……

 

「歪曲した空間からお前に繋げれば意味はない」

 

そう言って攻撃を仕掛ける。

穴の無いようにするか、バリアーの方がいいだろう。

 

「ジャネンバ!!」

 

身体を柔らかくしてそのまま跳ね回る。

攻撃をバリアーではない方法で無効化したか。

探りを入れずに硬質化させた方がよかったな。

 

「ジャネンバ、ジャネンバ!!」

 

虹色だったり、赤色の球を転がしてくる。

避けていくが玉を浮かせたりしてこっちの距離感を逐一狂わせる。

さっきの空間歪曲とは違うが……

 

「結局は同じことだ、この太っちょ!!」

 

踵落としを放ちながら言ってやった。

瞬間移動がなくても球に乗り移らず、単純な速度で行けばいい。

探るためとはいえ相手に失礼な真似をしたな、遊びすぎた。

 

「ジャネ!?」

 

一瞬、動きが止まってもろに踵落としを受ける。

これで相手の弱点が分かった。

あまりにもあからさますぎた、誤魔化しがきかないくらいにはな。

 

「お前、悪口を言われると全力を出せなくなるんだろ」

 

そう言って首を鳴らす。

そうと分かればすぐにお前をつぶすだけだ。

俺は楽しんではいるが無為に時間を延ばす趣味はないんでな。

 

.

.

 

「トワの奴、二度と見たくない面を用意しやがって……」

 

まさか時空を超えていてもこいつらがいるなんてな。

溜息しか出ない。

相手の嫌がることをすることにかけてはプロフェッショナルだわ。

 

「酷い言い草だな」

 

肩をすくめながら、にやけ面をしているカエンサ。

胸の黒い球が妖しく光っている。

 

「全くだ」

 

その横で腕組みをしながら頷くラブカ。

こっちは煌々と光っている。

きっとこれがトワの施した強化魔術の名残だろう。

 

「この歴史からお前を抹殺してやろう」

 

カエンサがそう言って気が高まっていく。

球が光っていく。

この気の増え方は……

 

「はあっ!!」

 

強化の恩恵を受けすぎだな。

超サイヤ人3とは……

 

「劣等なる存在はここで淘汰されるべきだ」

 

ラブカも同様に超サイヤ人3となる。

トワの奴、やりすぎだな。

きっとデメリットがあるはずだ。

俺からすればどうでもいいことだが。

 

「こいよ、未来からも、異なる世界からもお前らは抹消してやる」

 

そう言って気を高める。

これが異なる時空のお前らも知らない。

究極形態の一つ。

 

「超サイヤ人4だ」

 

それを見た同時に仕掛けてくる。

しかし……

 

「くすぐったい」

 

ラブカの蹴りを食らうが全然効いていない。

足を掴んでそのまま地面へ叩きつける。

 

「グフッ!!」

 

肺の空気を全て吐き出したような呼吸。

只の投げですら、超サイヤ人の必殺技並の攻撃になっている。

 

「くっ!!」

 

拳を振るってくるがそれより圧倒的な速度で拳を叩き込む。

人中や股間といった正中線に。

 

「グヘラッ!!」

 

その攻撃に吹っ飛んでいき、うずくまる。

二人ともこの程度なのか?

 

「『イービル・カンテラ』!!」

 

黒い光による太陽拳だ。

しかしこの程度、通用しない。

そう思っていると…

 

「『シュバルツ・ケージ』!!」

 

黒い気功砲を食らう。

僅かに吹き飛ぶ。

効かないと思って立ち上がろうとすると……

 

「はっ!!」

 

足元を崩されてつまずく。

跳躍する暇もなかった。

 

「『はっ』!!」

 

なるほど、フュージョンで対抗しようとしたんだな。

実力差を埋める方法の為に時間を稼いでいたのか。

 

「これならどうだ!!」

 

そう言ってアッパーを顎に決められる。

体勢を整える前だったから、避ける暇もない。

しかし……

 

「さっきと変わらずくすぐったいだけだ」

 

そう言って立ち上がって相手を見る。

そしてブロリーではないがこの言葉を言ってやる。

慈悲の欠片がまるでないのだと印象付けてやる

 

「お前らを血祭りにあげてやる」

 

そう言って気をふき出させる。

そして奴に向かって歩を進めるのだった。




ちなみに戦いのメンツは
『ガーリックJr・ゼノ』 VS 『ナッパ・ターブル・桃白白』
『ハッチヒャック・ゼノ』VS
 『ターレス・ラディッツ・ニア・スパーニ・ザンギャ』
『クウラ・ゼノ』VS『ピッコロ』
『ボージャック・ゼノ』VS『ブロリー』
『合体13号・ゼノ』VS『ピオーネ』
『ジャネンバ・ゼノ』VS『サラガドゥラ』
『カエンサ・ゼノ&ラブカ・ゼノ』VS『ガタバル』
です。
劇場版から掘り起こしました。

指摘などありましたらお願いします。


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『冥界よりの贈り物』

味方サイド、敵サイド問わずの強化回です。
強化2人の予定が大幅に増えました。
軽くやるつもりが思い切ってやってしまった結果です。


ジャネンバと命名した巨人との対決。

それぐらいしか喋っていないからな。

悪口を言うと一瞬動きが止まる弱点を利用していく。

魔術をそのまま全部返してやるのも、相手に屈辱を与えられそうだが……

 

「時間がかかってしまうとほかの奴らの救援が遅れてしまう」

 

懐に忍び込んで、硬質化の魔術をかける。

弾力のある肉体は石ぐらいの硬さになっている。

氷塊にしておいた方がよかったか?

 

「これで終いだ!!」

 

拳で一撃を放つ。

石となった肉体に罅が入る。

崩れ落ちていく。

 

だがそれが失策だと気づくのはすぐだった。

砕けている体から邪念が溢れてきた。

それは人の形のようになり剣を持った紫と赤を基調とした禍々しい存在。

 

「ゲギャギャギャ!!」

 

笑いながら剣を天に翳していく。

すると空に黒い穴が出来上がった。

しかも現在進行形で広がっていやがる。

 

「あの黒い天空の穴は……」

 

冥界へとつなげやがったな。

閉じるにはこいつを倒すのが一番の手だ。

前に戦ったリーサは『消滅』だからいいが……

 

「ヒルデガーンが復活しやがる」

 

さらに厄介な相手が来やがる。

誰の元へ行くのかは知らないが。

 

.

.

 

「もう終わりか?」

 

あれから何とか相手は逃れている。

だが速度も何もかも3のフュージョンでは4単体には勝てない。

 

「ぐぐぐっ……」

 

起き上がろうとする。

だが悠長に待ってやるほど俺はお人よしではない。

修行ならまだしも、親しい奴らならまだしも。

最も憎い奴らなら憐憫も何もない。

 

「まあ、こっちが終わらせたいんでな、消えろ」

 

そう言って気弾を放つ。

だがその瞬間、不気味な雰囲気が取り囲む。

空には黒い穴が開いている。

あれが原因か。

 

「しかも怨霊が壁になっているのか……」

 

何人ものカナッサ星人が前に立って防いでいた。

実態を持たない、煙のような肉体で何重にも防御したのか。

 

「カナッサ星人……」

 

まだ若かった青年時代に滅亡させてしまった。

そいつらが血走った目でこっちを見ている。

 

「そいつもサイヤ人だが味方をするのか?」

 

サイヤ人を憎んでいたはずだ。

そんな奴らがサイヤ人に味方をするなんてな。

 

「構わない、サイヤ人同士が潰しあうし、何よりお前が最も憎い」

 

そう言って怨霊たちが奴らの肉体へ入っていく。

それは徐々に気を不気味なものへ変質させていく。

さらには……

 

「『月の光の霊』となって汝に手助けしよう」

 

怨霊でも特殊な力は健在なようだ。

光の粒子となって同じように入っていく。

月の光をその身に受けた奴らは……

 

「グガアアアアア!!」

 

大猿に変化した。

フュージョンの金色大猿……。

4になっていないのが救いだな。

 

「尻尾を千切っても高出力のブルーツ波じゃ意味がない」

 

奴らの特殊な力がどれほどのものか。

カナッサの奴らの怨念が入り込んでさらに強くなっていやがる。

これは骨が折れそうだな。

 

「負ける気はない」

 

ずしんと音を立ててこっちへ向かってくるのを見ながら再度構える。

時空を越えようと単体の力ではなく誰かの力を借りてないとまともに戦えないなんてな。

まあ、それはカナッサ星人にも言える事なのだが。

 

「つくづく惨めな奴らだぜ」

 

.

.

 

「どうやら味方をするわけでもないようだな」

 

黒い穴から来た奴らは巻き込まれない場所でニヤニヤとみていた。

両方とも悪事を働いている。

ならば怨霊どもからすれば共倒れしてほしい。

だから干渉することはない。

 

「貴様は直に死ぬ」

 

クウラが構える。

実力差が埋まっていないのは時空の中で強い時期のクウラを呼んでいる。

生身にしたのは強化の都合上の問題か?

 

「扉が開いている以上、何回でも蘇って貴様を倒す」

 

俺は冥界の扉だと勘づいて笑う。

死んでもこの怨霊たちのように、何度もお前に向かっていくだけ。

時間を稼ぐというのは重要。

なりふり構わない。

お前らを一人でも放置すると地球がさらに危うくなってしまう。

 

「はっ!!」

 

拳を振るうが奴は冷静に動く。

尻尾を巻きつかせてくる。

 

「ちっ!!」

 

それを察知して腕を引っ込める。

するとタックル気味にこっちへ接近をする。

 

「くっ!!」

 

距離を折ろうとすると尻尾が足に巻きつこうとする。

それを回避しようとすると頭が動かない。

 

「ふんっ!!」

 

そのまま剛力で地面に顔面をめり込まされる。

そして、気が球状になっていく。

もがいてみるが力強くて振りほどけない。

 

「『スーパーノヴァ』!!」

「ぐわああああ!!」

 

閃光とともに技が炸裂した。

爆発で吹き飛んでいく。

地面に何度もバウンドして叩きつけられる。

 

「あっ……がっ…」

 

モロに大技を食らってしまった。

意識がグワングワンして定まらない。

 

「虫の息だな……」

 

吹っ飛んでいった俺に向かってくる。

起き上がることができない。

そんな時、目の前に影ができる。

新手か!?

 

「カタッツの息子よ、立て」

 

そう言って俺を立たせる、巨躯のナメック星人。

さらにそこには、父ともいえるピッコロ大魔王。

 

「息子よ、お前をベースに同化をしろ」

 

進み出て言ってくる。

確かにもうそれぐらいしか対抗手段はない。

だが、奴が待ってくれるとでも?

 

「時間は稼いでやる」

 

そう言って巨大化したナメック星人がクウラへと向かっていた。

速くしないと危ないかもしれん。

 

「本当の意味で神と同化したわけではないからな」

 

ピッコロ大魔王が言う。

確かにそう言えばそうだな。

 

「どうやら地獄の生活で、邪悪な心もないようだな」

 

同化による邪心の問題についても心配はない。

穏やかになっている。

 

「同族と親がいたからな」

 

地球人の影響で変わったからな。

正常な環境であれば邪心も薄れるか。

 

「速く済ませよう、胸に手を置け」

 

そう言って胸に手を置く。

力が流れ込んでいく。

本当の意味で一人のナメック星人となった。

 

「力がみなぎる……歯車がようやくかみ合った感じだ」

 

手を開閉して手ごたえを感じる。

今なら超サイヤ人2の悟空にも勝てるな。

そんな事を思っていたら巨躯のナメック星人がこちらに飛ばされてきた。

 

「最後の仕上げに俺と同化するぞ」

 

短時間の間にここまでやられるとはな。

再生を使ってもこれでは隔絶された次元の相手だったというわけだ。

 

「あんたの名前は?」

 

起き上がってきた相手に問う。

同化してしまうとあんたはいなくなる。

しかしあんたの名前を覚えておけばあんたが生きていたという証人に俺がなる。

 

「スラッグだ、最後に覚えておいてくれ」

 

そう言うと胸に手を置かせる。

そして再度、力が流れ込んでくる。

その力は今のベジータ達といい勝負ができそうなほど、もしかすれば超えたかもしれない。

自分でも驚いてしまう。

 

「こざかしいナメクジどもが!!」

 

追いついたクウラが拳を振るってくる。

さっきまでならばこの拳を回避するのが精いっぱいだっただろう。

でも今ならば……

 

「ナメック星人2人から託されたのだ、その拳で俺は倒せんようになったぞ」

 

そう言って悠々と受け取められる。

そのまま引き寄せてクウラを蹴りとばす。

溢れるパワーだ。

これならば勝てる。

三度目の超パワーアップはまさに奇跡の贈り物であった。

 

.

.

 

「恨みつらみを持った人生のようだな」

 

俺はボージャックに対して笑う。

こっちと同格の相手。

怨霊はいるがどっちも悪事をなしてきた。

共倒れをしろと願っている。

ゆえに援助はしない。

 

「そっちも言えはしない」

 

そう言って向かってくる。

それに対応するように蹴りを繰り出す。

 

「ヌン!!」

 

それを見て相手も蹴りを放つ。

鏡のように同じ軌道と足で放つ。

さっきからこのようなやり取りが続いている。

どちらも譲らぬ同じ攻撃。

 

「『ブラスター・オメガ』!!」

 

そう言って技を放つと同じように気弾の技を衝突させる。

ここまで同じように攻撃をするなんてな。

思わず笑みがこぼれてしまう。

隠すつもりも全くないけれどな。

 

「お前ら、来てくれたのか…」

 

煙が晴れた時にボージャックの呟きが聞こえる。

すると、後ろに数人の仲間と思わしき相手がいた。

そいつらがこっちを見てニヤリと笑っている。

 

「俺には頼もしい部下がいるんでな」

 

俺にはいない。

そう思っていると部下の魂が入り込んでいく。

徐々に力が上がっている。

俺は自分が不利になると分かっていながら、止めはしなかった。

強い相手であればなおさら楽しい。

そう感じたからだ。

 

「終わったか?」

 

少し飛び跳ねて待っていた。

奴からさらに力が漲ったのがわかる。

 

「はああっ!!」

 

拳を放つとそれを掴んで地面に向かって投げられる。

その速さに受け身をとれず叩きつけられる。

 

「どりゃあああ!!」

 

ジャイアントスイングをされる。

普段ならば筋力で弾き飛ばせるものが、強くなったボージャックの筋力を振り切れず振り回される。

岩山に向かって投げられるが、足をつければ……

 

「『ギャラクティック・タイラント』!!」

 

そんな事を考えていた最中、タックルで吹き飛ばされる。

上空に高く投げられて、拳と頭突きを見舞われる。

膂力の凄まじさに脳が揺らされ、反撃ができない。

そして最後に斜め気味に蹴り落とされる。

その一撃は岩山を何個も砕き、俺は埋もれていく。

最後に大爆発を起こしてさらにダメージを与えられた。

体を打ちつけた痛みや気弾のダメージよりも一つの気持ちが俺の気を高め、力を溢れさせていく。

 

「楽しい……楽しい…!!」

 

岩を吹き飛ばしながら笑みを浮かべる。

徐々に気持ちが高ぶってくる。

その上昇に伴って首の後ろがチクチクとする。

髪の毛が伸びていく。

 

「最高の気分だあああああああ!!」

 

思うがままに気を開放した。

髪の毛は地面につきそうなほどに伸び、眉の無い顔。

そして今まで以上に体中の気が漲る感覚。

感情や本能のままに顔面へ拳の一撃を放つ。

漲る力を制御せず放った一撃の重さはガードを貫くようにボージャックを吹き飛ばす。

 

「思った以上に差がついたか……?」

 

強化されているから、この状態でも渡り合えると思ったが想像以上にこっちの変身が凄かった。

そう言えば昔、ガタバルから2にもなっていないころに『お前の2は俺の3と同等』って言われたっけ。

じゃああの俺の3はあの人の何倍かの力がある。

この差にも納得だな。

 

「ぐはあああっ!?」

 

そうと決まれば楽しめなくなったわけだし、すぐに勝負をつけよう。

嬲らず、できるだけ迅速にな。

その吹っ飛ぶよりも速くに奴の上を陣取る。

ニードロップで地面へ叩きつけると頭を掴んで引きずっていく。

抵抗を微塵も許す気はない。

 

「このまま終わりにしてやろう……!!」

 

引きずっていた肉体を岩盤に向かって投げる。

その勢いを超える速度で腹に照準を定める。

ラリアットを衝突と同時に決めていた。

岩盤に罅が入るとその威力は衝撃波となって突き抜けていく。

その凄まじさは遠くに響いていた。

 

「がふっ……」

 

ずるりと岩盤から仰向けに落ちていく中、とどめのために再度頭を掴む。

気を高めて放つのは最大の奥義。

攻撃の手を緩めず、一方的に決着をつける。

楽しませてくれた敵へのせめてもの礼儀だ。

 

「『ギガンティック・ミーティア』!!」

 

その一撃を食らったボージャックは死ぬ事は無かった。

部下たちによる強化が死を防いだのだろう。

しかし、虫の息には変わりない。

 

「さて、助けに行かないとな」

 

速くしないと危うい事になる。

俺は首を鳴らして、助ける場所へと向かった。

 

.

.

 

「ぐはっ!!」

 

特殊な力を使う隙も与えずに連撃を続ける。

白白が距離を詰めさせずに気功砲。

そして俺が地面に力で叩きつける。

ターブルが起き上がってきたところへ大技。

このサイクルを繰り返して相手の心をへし折る。

 

「ふんっ!!」

 

足の骨を踏み砕く。

黒い穴から来ている邪悪なエネルギー。

おおよそサイヤ人に恨みを持つ死者がここに来る。

 

「さらに強くなるかもしれねぇな」

 

そうならねぇように手を打つ。

腕をへし折る。

容赦はない。

 

「うぐぁあああ!!」

 

怨霊が入って治っても何度もこいつの骨をへし折り続ける。

俺たちは力がない。

だからこういった隙も突く。

 

「怨霊どもが来たぞ」

 

白白が言ってくる。

一度転がるように距離をとる。

入った直後に再度へし折る。

 

「凄い数入っていくな」

 

殺し屋時代のつけが凄いと呟く白白。

俺たちサイヤ人も一緒だぜ。

 

「でも、これで……終わりだ」

 

馬乗りになって殴り続ける。

重力と重量。

はね飛ばせない筋肉。

奴の抵抗の一手はなくなっていた。

 

「がっ……はっ」

 

息も絶え絶えになっているガーリックJr。

俺たちの仕事は終わりだ。

最後の仕上げも忘れないで行っておかないとな。

 

「フンッ!!」

 

手足をへし折る。

抵抗もできないように。

顔を踏み砕いて、歯を無くしておく。

術を使えないように。

白白と俺の二人でやっておいた。

殺さないのは嫌な予感がするからだ。

 

「ここまでやっておけばいいだろ?」

 

白白に聞くと苦い顔をする。

今回のように怨霊になっているからな。

 

「殺しておくのがベストだが今の状況の最善はこの程度だろう」

 

そう言って地面を掘って首だけ出した状態で放置。

身動きがただでさえ取れないのに追い打ちをかける。

 

「時限爆弾を置いておく」

 

白白がそう言って爆弾を置く。

といっても首を動かしても押せない、もしくは壊せない場所に。

起動スイッチを押せばカウントダウンが始まる代物だ。

用意周到、これで奴が乱入することはできない。

 

「さて……助けになるかわからないが行くか」

 

そう言って全員で他の場所へと飛ぶのだった。

 

.

.

 

ハッチヒャックの力に悩まされる俺たち。

ニアのパワー以上で俺とターレスの三人でようやく止まるほど。

攻撃を仕掛けられるのがスパーニとザンギャの二人。

 

「このままいくとじり貧になるな……」

 

頑丈故に決定打が欲しい。

だが、攻撃に割けるメンツがこの二人。

挙句の果てには黒い穴から怨霊がぞろぞろと来ていた。

 

「これはきついな……」

 

そんな事を言うと頭に手を置かれる。

そこには四人のサイヤ人。

ニアの後ろには動物の体をした人たち。

ターレスの後ろには部下だったクラッシャー軍団。

スパーニの横にも女性がいた。

 

「バーダックの息子が情けないこと言ってるんじゃあねえ」

 

親父の事を知っているのか!?

そして俺を取り囲む。

 

「あのラブカのガキにもした事あったが久しぶりだな」

 

ガタバルにもしていたのか。

体から力が漲ってくる。

全員が各々の面子に力を捧げている。

 

「俺達じゃああの機械にはかなわねえ、しかもツフル人の怨念がぎっしりときたもんだ」

 

だから俺に託したってわけか。

あいつらも託されて力が漲っている。

これなら多少は……

 

「あとは任せたぜ」

 

そう言うと消えていく。

託された仕事はこなさねえとな。

 

「はああっ!!」

 

壁を越えた俺の超サイヤ人2とターレスの超サイヤ人。

それ以外にはニアとスパーニの強化。

 

「いくぜ!!」

 

突っ込んでいく。

バリアーでわずかに弾かれるが、それを予測したうえでジェスチャーを送る。

 

「『キルドライバー』!!」

 

バリアーに向かって放っていく。

そこへ一点集中させていく。

 

「『ワイルドハンマー』!!」

 

バリアーに罅が入る。

そこにスパーニの技が放たれる。

 

「『ガルガンチュア・サン』!!」

 

巨大な火球を落とす。

それはハッチヒャックのバリアーを食い破っていく。

完全に割れた瞬間に俺の技を叩き込む。

 

「『ウィークエンド』!!」

 

それを腕を交差して受け止めるハッチヒャック。

後ろががら空きだぜ。

 

「『ティアーズ・スピアー』!!」

 

藍色の槍状の気弾が突き刺さる。

その一撃は効いたようだが……

 

「……ハアッ!!」

 

自己修復をしていく。

こいつは骨が折れるぜ。

全員が構えなおしてハッチヒャックに視線を向けた。

 

.

.

 

人造人間が攻撃を仕掛けてくる。

それをいなし続けている。

周りはぐるぐると亡霊が旋回しているけれど気にも留めない。

少々不気味な雰囲気があるってぐらいね。

 

「そろそろ本気で来てくれないかしら?」

 

そう言うとガガガと音を立てる。

まだまだ隠していたのね。

 

「来なさい」

 

そう言うと一気に速度を上げて近づいてくる。

だがそれよりも速く接近して抱え上げる。

速度をつぶすやり方もあるのよ。

 

「いなしてばかりだったから意外だったかし……ら!!」

 

そう言ってボディスラムをする。

それに対して回転しながらうつ伏せで着地をする。

 

「ゼアッ!!」

 

その体勢のまま、馬蹴りを放つ。

しかしそれを掴んでレッグブリーカーをする。

 

「甘く見てるなら……壊すわよ」

 

ミキミキと音を立てている。

それに危険信号が出たのか、相手が力づくで外す。

 

「オンナ……オマエツヨイ」

 

そう言って構えてくる。

全く失礼なやつね。

 

「女って呼び方はやめなさい、ピオーネって名前があるの」

 

そう言って腹に拳を入れる。

そろそろいなすのもお終い。

決めに行くわ。

 

「きっと倒せば蘇る」

 

頭突きや肘打ちで肉弾戦でもダメージを与える。

強化されていても地面に足がついているから転がせる。

見えているからいなせる。

たかだかデータで生きた人間の拳や技術の解析ができるわけないでしょう。

 

「だから機能停止程度に収めないと」

 

足を壊す。

鋼鉄でできた足でも関係ない。

 

「ガアアッ!!」

 

拳を振るうけれど今度は投げる。

そのまま、肩を地面に叩きつける。

肩の装甲に罅が入る。

立ち上がった所にさらに一撃を放つために気を高める。

 

「ヌゥ…」

 

背中を打ち付けて地面をバウンドする。

そして起き上がろうとする相手に照準を合わせる。

 

「『エレクトリック・パレード』!!」

 

雷撃が相手を包む。

ボンボンとショートする音を立てていく。

その一撃が終えた時、相手は動けなくなっていた。

 

「ソンショウリツ……80パーセントヲコエタ…キノウ……テイシ」

 

そう言うとばたりと倒れてしまう。

これで終わりなのね。

しかしそれにしても……

 

「気持ちがいつもよりも強い力を引き出す事ってあるのね」

 

正直ここまで圧倒できるのは予想外だった。

体が軽くて、技もキレキレ。

あの子に今の戦いを見てもらいたかったわ。

伸びをして、私は別の場所へ助けに向かうのだった。




今回強化されたのは
敵サイド
『ラブカ・ゼノ&カエンサ・ゼノ』
(カナッサ星人の怨念による金色大猿化+パワーアップ)
『ハッチヒャック・ゼノ』(ツフル人の怨念によるパワーアップ)
『ボージャック・ゼノ』(仲間からの気の譲渡)
味方サイド
『ピッコロ』(冥界から来たスラッグとピッコロ大魔王との同化)
『ラディッツ』(トーマたちからのサイヤパワーの譲渡)
『ターレス』(クラッシャー軍団からの気の譲渡)
『スパーニ』(母親からの気の譲渡)
『ニア』(故郷の人たちによる気の譲渡)
『ブロリー』
(戦闘を楽しみまくった結果、伸び率オーバーフローして伝説3へ覚醒)

スラッグが出なかった理由はピッコロさんの強化の為です。
ジャネンバを出したので使えるなと思いました。
指摘などありましたらお願いします。


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『最悪の時限爆弾』

今回はガタバルとサラガドゥラの戦いです。
次回には遡ってのピオーネとピッコロの戦いです。


『』

 

「あいつらが移動したって事は勝負が終わったな」

 

しかしあと三つ、ここ以外に強大な邪悪がある。

これらを仕留めないと俺もこいつを倒せない。

マラソンマッチは精神力と体力を著しく奪う。

まだまだこれから先あいつらの襲撃もある。

 

「ここで足踏みする余裕はない」

 

奴らの狙いがわかっているからだ。

トワたちの狙いはこの大きな歪みや冥界の邪悪な力。

それを邪神像に加えること。

それによってとてつもない力の蹂躙を行う。

 

「これほどの力となると神に至ってしまうぞ」

 

かなりの実力者集団に魔術で強化をしている。

冥界の怨念の凄まじさ。

 

「ゲギャア!!」

 

剣を避けていくが時間稼ぎしかない。

あいつら全員が決着をつけてくれないと身動きが取れない。

 

「なんか貧乏くじ引いたんじゃないか?」

 

真剣白羽取りをして腹に蹴りを食らわせる。

ここいらで相手にダメージは与えないとな。

 

「『ペイン・ジャッジメント』!!」

 

純白の鎌の気弾がジャネンバに突き刺さる。

そこから血に染まっていく。

突き刺さった鎌は一つにまとまって俺の手に帰ってきた。

 

「よく考えたらお前を封印したらいい気がしてきたよ」

 

そう言って剣を鎌でたたき折る。

鎌を投げつけて爆散。

速く全部決着ついてくれよと思いながらジャネンバを見ていた。

 

.

.

 

「ガハッ!!」

 

一撃を食らって地面を転がる。

あれから数分間やりあっているが全くと言っていいほど好転しない。

大猿相手になると質量差がでかい。

かといって大猿になると力の差が広がる。

ただでさえ今、広がっているのに。

 

「ぐははははっ!!」

 

踏みしめてこっちへ来る。

時間切れさえしたら一気に押し切れる。

フュージョンしていない超サイヤ人3の大猿なら勝てる。

 

「まあ、都合よく時間稼ぎなんてさせてくれないだろうがな」

 

それでも策を考えないといけない。

オーソドックスだが尻尾をやるか。

その為にある技を放つ。

 

「『太陽拳』!!」

 

目元に眩い光を浴びせて離脱を図る。

だがその直後、腹に拳がめり込んで殴り飛ばされる。

岩山を砕いて突き抜けていく。

呼吸がうまくできない。

口の中に血が充満する。

 

「ペッ!!」

 

血を吐き出して見据える。

目くらましも効かないなら、次はどうする?

 

「随分とやられたな」

 

救援が来ない。

いや、来れないのかもしれない。

 

「あいつらの相手も海千山千だからな」

 

頼ってばかりじゃダメなんだ。

ただでさえ4年間負担をかけ通しになっていた。

ここで一つでもあいつらに返したい。

 

「終わりだ、『ナイトメア・クロー』!!」

 

腕を薙いだだけで縦状の五本の衝撃波。

その攻撃は通用しない。

 

「ふっ!!」

 

瞬間移動で後ろをとって尻尾を掴む。

剛力でぶん回す。

徐々に浮き上がっていく肉体。

 

「だりゃあああ!!」

 

上空へ向かって投げる。

さらに瞬間移動で後ろをとる。

 

「『アルバトロス・ブラスター』!!」

 

尻尾に向かってアホウドリが突っ込んでいく。

ついばむでも食いちぎっていく。

超サイヤ人4になってから技の威力が根本的に上がっている。

この名前に勝っている。

 

「ぐがががが……」

 

やはりカナッサ星人も尻尾がなくなると効果がないというのは考えていなかったようだ。

縮んでいく。

徐々に気が萎んでいく。

 

「『コンドル・レイン』!!」

 

怨霊たちを追い払うように気弾の雨を降らす。

少しばかり真正面から行き過ぎていたな。

強くなって慢心のようなものでもできていたか。

反省、反省。

 

「こんなにも強くなっていたとは……」

 

怨霊たちも驚いている。

技に当たることを恐れて離れていく。

中に入っていても恐怖心をあおられるのだ。

自分たちが担ぎ上げた神輿を放り投げてでも安全をとるか。

 

「臆病な奴らは頼りにならないな」

 

そう言ってじりじりと近づいていく。

だが離れていたカナッサ星人たちの抵抗。

光球となって突撃をしてくる。

 

「くっ!?」

 

それを避ける。

だが一瞬であの光が何かを理解する。

全てを月の光に変えて奴らの体に注ぎ込むという荒業をしやがった。

 

「うぉおおおおおお!!」

 

奴等が雄たけびを上げる。

さらに気が上がっていく。

地球どころか宇宙全体が震えるような……

 

「なんてことだ……」

 

髪は紅く、上半身は大猿。

つまりこれが意味することは……

 

「超サイヤ人4のフュージョンとかカナッサ星人の有能さか……」

 

臆病といった前言を撤回する。

構えるが目の前から消える。

 

「ぐが……!?」

 

一瞬の間に両肩と腹に一撃。

くの字のまがった所にこめかみへ回し蹴り。

かろうじて防ぐが数回地面をバウンドする。

 

「尻尾はないし、あいつらもこれで無理なら冥界に戻るだろ……」

 

その前にこっちが死ぬかもしれないけどな。

起き上がろうとすると頭を掴まれる。

円盤投げのように投げられる。

しかしこれならば問題ない。

 

「瞬間移動で岩にぶつかる前に回避……!?」

 

瞬間移動以前に感知される。

後ろをとる瞬間に裏拳。

再びバウンドさせられる。

 

「死ね」

 

そう言って紫色の巨大な気弾を放つ。

避けられない。

腰を落とし踏ん張って受け止める。

 

「ががが……」

 

がりがりと地面を削るように後ずさりさせられる。

奴等はにやにやと笑っていやがる。

そしてその巨大な気弾を爆発させる。

 

「ぐああああっ!!!」

 

吹っ飛んでいく。

しかしその俺を受け止める影。

 

「遅れてすまん」

 

ブロリーだった。

てっきりスパーニの方に行くとばかり思っていたが。

 

「あの人の方がスパーニに近いからな」

 

そう言う事か。

だがここでお前が来ても時間を稼がないと元も子もない。

3のフュージョンから時間はたっているしその後に4になっている。

 

「あの強さはずっとじゃないから気を楽にして踏ん張っていくぞ」

 

そう言うと仙豆を渡される。

それを口に含んで万全の状態になる。

 

「そんなボロボロじゃあ無理だろう?」

 

にやりと笑うブロリー。

そして超サイヤ人3へとなる。

やはり俺達とは一味違った強さだぜ。

こりゃあ、この騒動が終わった後は……

 

「死ぬなよ……」

 

そう言って構える。

向かう相手が危なっかしい。

流石に4が相手だと危なすぎる。

ましてやフュージョンだからな。

 

「ガハッ!!」

 

あっという間に蹴り飛ばされる。

瞬間移動で受け止める。

ものの数秒であの頑丈なブロリーが大ダメージとは。

 

「俺も悪魔だが、あっちはそれ以上だな……」

 

そう言って笑みを浮かべる。

あと少しだ。

情けないぜ、両方とも覚醒しているにもかかわらずこの有様。

 

「『太陽拳』!!」

 

目くらましをしてその隙にブロリーの場所へ瞬間移動。

気を消して時間稼ぎをする。

きっと30分の間の変身のうち超サイヤ人3になれるのは20分ほど。

4の場合は10分ほどとみた。

 

そんな事を考えていると気が動くのが感じられた。

ピッコロやターブルたちがサラガドゥラの方へと向かう。

そしてこっちに来ているのはピオーネ達だ。

 

「嫁には格好いい所見せないとな」

 

首を鳴らしてブロリーも笑って前に出る。

時間を稼いでくれ。

 

「『ブラスター・オメガ!!』」

 

その一撃を軽やかに避ける。

だがその軌道を読み切って背中から組み付く。

 

「んがぁっ!!」

 

それを力任せに振りほどこうとした瞬間、俺はブロリーの近くに瞬間移動をする。

これでまた時間を稼げた。

 

「あいつが大猿の時に遊んだお陰でもう少しで時間切れになるかもしれない、現に振りほどく力が拳を食らった時より弱かった」

 

ブロリーに言う。

それならばとタックルを仕掛ける。

そのタックルに対して膝をぶち込むことができなかった。

反応速度も遅くなっている。

 

「ぐがあっ!!」

 

力任せにタックルを切って飛び上がる。

全力の気弾を放とうとする。

受け止められないからという理由だろう。

 

「終わりやがれー!!」

 

そう言って気弾を撃とうとする。

だが異変が起こる。

気弾が萎んでいったのだ。

そして徐々に髪の毛の色が変わっていく。

 

「なっ!?」

 

そんな驚愕の声を二人そろってあげる。

超サイヤ人3でもない通常状態に分かれた二人が目の前にいた。

 

「惨めと人に言ったのは撤回するがよ……」

 

分離した片方の肩を叩く。

カナッサ星人どもの力を借りても超サイヤ人4にはなれない。

あいつらの特殊な力を全てを振り絞ったうえでの切り札。

 

「流石に何百人も一人、二人で相手をしているようなものだからな」

 

ブロリーも片方の肩を掴む。

奴等が青ざめても関係ない。

その身一つで立ち向かう事もしなかった。

その代償が今からの反撃だ。

 

「もう容赦はしない」

 

二人で同時に殴る。

吹っ飛んだ瞬間に俺が速度で先回りをして掴む。

 

「そりゃあ!!」

 

ブロリーの方向へ戻っていくように投げてあてる。

バウンドしていくとそのまま頭を掴んで終わりにする。

痛めつけかえす時間すら惜しい。

 

「『ギガンティック・ミーティア』!!」

 

即座に技を使い、地面を中心に大きく陥没をする。

死んではいないがズタボロの状態。

カナッサ星人たちが入り込む余地もないだろう。

 

「こっちも終わりだな」

 

投げつけた相手の後ろをとり上空へ蹴り上げる。

そして再度叩きつける。

そして最大の気弾の技、最強の一撃を放つ。

 

「『パッション・アーケオプテリクス』!!」

 

始祖鳥が滑空するように突撃をしていく。

そのまま当たって飲み込んでいく。

地球そのものへのダメージより、こいつへ集中させた。

命はあるが虫の息。

俺たちは仙豆もないことを確認するとのろのろとした動きで助けに行こうとする。

 

「おーい」

 

そう言うとピオーネ達が下りてきた。

話を聞くと、どうやら到着して一気に数の暴力で押し切ったらしい。

どうも相手は最大の技を放つのに15秒もタイムラグがあるという欠陥機械だったようだ。

 

「女の方が強いんだなと改めて思うよ……」

 

そう言ってブロリーに苦笑いを返していた。

その言葉にブロリーも異論はないという様に頷いていた。




超サイヤ人4のフュージョンとかいう最強奥義が敵に使われた状態という珍しいケースです。
ただ、慢心しすぎて時間制限を忘れるという、味方恒例行事を相手もやらかした感じです。

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『遊ばず、慌てず、葬らず』

前回の超サイヤ人4のフュージョンの敗因:遊びすぎ
3のフュージョン+フュージョンのまま金色大猿+超サイヤ人4のフュージョンなんて時間配分しっかりしないと解除して当然です。
結構無理やり臭い勝ち方ですいません。



ガタバルとブロリーの戦いが終わる数分前。

比較的早かったナッパたちはピッコロの元へ。

ピオーネは瞬間移動でラディッツたちの元へ。

各々が助太刀に行っていた。

 

.

.

 

「フンッ!!」

 

ボディブローを叩き込む。

相手がくの字に曲がったところを狙って顎を揺らす。

ローキックで機動力を奪う事も忘れない。

 

「うぐっ……」

 

肉弾戦で主導権を掴まれたクウラは、俺の周りを旋回しながら攻撃のタイミングをうかがう。

隙があまりにも見当たらないのだろう。

汗をかきながらじろじろと穴を探している。

 

「があっ!」

 

破れかぶれのタックル。

それを回避すると気弾の推力を活かして追尾する。

 

「はっ!!」

 

気合砲で弾くが、尻尾を絡ませて道連れにする。

それを回避すると体勢を変えて肘打ちを食らわせてくる。

 

「実力に差があろうとも諦めるという選択はないのでな」

 

そう言って俺の腰を抱え込んで脳天を地面に叩きつけようとする。

力があるからこそのパワフルな一撃。

振りほどいてみたが足に頭部を挟まれて回転をつけて投げられる。

 

「ちっ!!」

 

岩山で反動を活かして反撃をする。

ダメージはチクチクと与えられてはいる。

遊びがないから早く終わると思ったが存外タフで粘ってくる。

 

「決定打としては魔貫光殺法が望ましいが」

 

激烈魔弾と魔空包囲弾、爆力魔波。

これらの技は威力は上がっていても堅い装甲を壊すのは骨が折れる。

現に拳を打ち付けても罅が入らない。

 

「変身が解けるほどの大ダメージとなると……」

 

悟空かベジータの技を借りる方がいいな。

奴等は一気に爆発させるようなイメージだ。

 

「はああああっ!!」

 

クウラが突進してくる。

意趣返しと言わんばかりにショルダータックルを伸ばした腕で絡めとってやる。

 

「『魔閃光』!!」

 

悟飯に初めて授けた技。

師匠である俺も使えて当然。

その一撃で距離を離す。

 

「『ファイナルフラッシュ』!!」

 

ベジータの技を放つ。

奴は腕を交差して腰を落とす。

さらに膝を抜いて耐える準備をしていやがった。

 

「ちっ……」

 

百戦錬磨とだけあってこういう部分は一流だ。

こっちも隙を見せないようにはしているけれど、向こうも隙が見当たらない。

分身して隙を作らせるか?

そんな事を考えていると声が響いた。

 

「『新・気功砲』!!」

 

桃白白が一撃を放つ。

クウラが耐えようとした姿勢を一瞬崩される。

立て直そうとしたら次はナッパが技を放つ。

 

「『ジャイアント・ストーム』!!」

 

指を上げて足場を爆発させる。

それを跳躍で避けたクウラを待っていたのはターブルだった。

 

「『ギャリック砲』!!」

 

地面に叩きつけられるように三連続の技を受けるクウラ。

さらには俺の技が飲み込んでいく。

装甲ははがれていきむき出しの腹部が見える。

 

「今のは効いた……」

 

ゼハゼハと息を吐き出してナッパたちを睨み付けながら言葉を発する。

だがそんな隙を見逃しはしない。

俺は『魔貫光殺法』の構えをとる。

桃白白が懐に忍び込むと、筋繊維の縫い目に差し込むように指を突きさしていた。

 

「『水月柘榴』」

 

鳩尾の肉が裂ける。

殺し屋の技の本領発揮というところだ。

 

「『ジャイアント・スタンプ』!!」

 

ナッパがその傷口に蹴りを叩き込む。

容赦のなさはターブル以外は持ち合わせている。

 

「さあ、覚悟は良いな……『魔貫光殺法』受けてみろー!!」

 

そう言って攻撃を放つ。

クウラが避けようとした瞬間……

 

「『スタート・コメット』!!」

 

ターブルが上空から頭突きを放っていた。

クウラの死角からの見事な攻撃だった。

 

「がっ……」

 

頭突きの一撃でわずかによろめく。

その結果、クウラは回避できずに腹を貫かれていた。

 

「人の繋がりの恐ろしさよ……」

 

そう言うと倒れ込んでいった。

だが武人としての気持ちが多少あったのだろう。

全力を尽くした顔にはかすかな笑みが残っていた。

 

.

.

 

「来たわよ」

 

そう言うと全員が振り向く。

瞬間移動ができるのはここにいるメンツのほとんどは知っているものね。

随分と淀んだ空気を纏った相手だわ。

そんな事を考えていると気がいきなり膨れ上がったのを感じる。

 

「向こうの気が大きく!!」

 

スパーニが向いた方向。

それはあの子の方向。

そしてブロリーが向かった方向。

 

「さっきの獣のような気よりも遥かにあの子を超えているわね」

 

速く決めて助けに行ってあげないと。

あんな相手と勝負したら死んでしまうわ。

私も例外ではないでしょうけど。

 

「すぐに決めてあげるわ!!」

 

相手に向かっていく。

蹴りを放っていくとガードされる。

固い体ね。

ガードされるのは織り込み済み。

その上で相手を確かめる。

 

「大技を誘いましょう」

 

隙がでかくなる。

そうなれば確実に攻撃を当てられる。

 

「はい!」

 

そう言って私たちは劣勢を演じる。

攻撃を食らえば必要以上に吹っ飛んだり肩で息をする。

ラディッツやほかの人たちは距離感を保ちながら這いずるように動く。

 

「しまった!?」

 

私とスパーニが同時に倒せるであろう範囲に入り込む。

すると相手の反応があった。

一気に倒すための大技を放とうとする。

十字に腕を構えて気を高める。

 

「『リベンジャー・カノン』!!」

 

一撃が放たれる。

この攻撃に妙に既視感があった。

 

「昔X字にあの子が打っていた技ね……」

 

十字型になっただけで、技の本質は一緒。

直線状だから避けたらいい。

放ってから考える。

放つ前に気の充填が長かった。

 

「もう一回撃たせるわよ」

 

違和感を確信に変える。

その為に再度攻撃の間合いに入る。

 

「エネルギー……」

 

気が高まっていく。

そしてカウントをすること15秒後、技が繰り出された。

それを回避すると同時にため息をつく。

 

「こいつ……大技にきっかり15秒使ってるのね」

 

つまり15秒より速く気を貯めて集中砲火すればいい。

だからこいつはとんだ欠陥品ね。

パワーとかを高めただけのでくの坊よ。

 

「相変わらずとてつもない観察眼だ」

 

そう言うターレスが技を放つ。

普通に考えなさすぎよ。

相手をよく見ないと勝利は確実なものにしにくいわ。

 

「次、放ったら一気に決めてお終いよ」

 

だから散開しなさいとジェスチャーする。

間合いには私が一人入っておけば何の問題もない。

 

「『リベンジャー……』」

 

遠距離の技をきちんと習得、もしくはインプットかしら?

それをしてなかったのが主な敗因ね。

各個撃破する手段があれば、もう少しましな結果だったでしょうけど。

 

「『渦巻十枝』!!」

 

スパーニの技が当たる。

相手が貯めてる間に喰らう。

バリアーもなく純粋に無防備。

 

「プロレスラーじゃないんだからさぁ……」

 

私はため息をつく。

こんな弱点をさらけ出してしまったらどうなるかというと……

 

「『キルドライバー』!!」

「『ウィークエンド』!!」

「『レオパルドテイル』!!」

「『アイシクル・レイ』!!」

 

全員の大技を食らうのみ。

しかも全員が一点集中させる。

接近させなければ、もしくはしなければこんなにも脆い相手だったのね。

 

「ガガガ……ピー」

 

もうもうと煙をあげて停止した。

来てから数分で終わってしまったわね。

皆はどうやら真正面から力でやろうとしてたみたい。

 

「時間に余裕がないからね」

 

普段ならそれでいいけどあんな大きな邪悪な気。

あれが相手だったら、速くしておかないと死人がたくさん出てしまうわ。

 

「瞬間移動はどうする?」

 

ラディッツが聞いてくる。

それはそうしたいのがやまやまだけど……

 

「あの子の近くに出て流れ弾で死んじゃう可能性があるから舞空術で行きましょう、それほど遠くでもないわ」

 

そう言って舞空術で全員向かう。

そんな中、向こうで異変が起こる。

大きかった気が急激に萎んだのだ。

 

「フュージョンでやってたみたいだな」

 

ターレスが言ってくる。

じゃあ、あの獣の時もフュージョンから変身したのね。

時間制限が来たってわけか。

 

「力に溺れて遊ばなければあの二人をやれただろうに」

 

ザンギャも言う。

全くその通りね。

時間経過を考えないのはダメダメよ。

 

「一旦合流してから、サラガドゥラさんの場所へ向かいましょう」

 

そう言って合流の為に向かっていく。

数分後、到着した時にすぐに倒して向かったと言ったら苦笑いをしていた。

失礼ね。

少しばかり説教でもしてあげようかしら。

そう思いながら地面へと降り立った。




前回から遡っての戦い。
次回のサラガドゥラVSジャネンバ・ゼノはそのまま話をつなげます。
メチカブラの奥の手を出していったり悪ブウを出せるようにしていきます。
最近、短めばかりで申し訳ありません。

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『邪神降臨』

最近、インフレしすぎてすいません。
4と同格程度に収めておけばよかったのですが勢いのままにやりすぎました。
今回もインフレをしていますが、神の次元はこれで打ち止めにする気です。
次回以降はむちゃくちゃにならず、混乱させないようにいたします


「全員が勝っているし、ここは俺が締めるのみ」

 

ジャネンバを見て構える。

トワにできて俺にできない事は無い。

時空間に戻すこともできる。

 

「ただそれをしても鼬ごっこ」

 

お前を消して冥界を閉じた後、時空間にいた奴らも消滅させる。

あいつらの場合は『蘇生』が可能なんだ。

だが俺の手にかかれば閻魔の場所にもいかない。

歴史上からの抹消に他ならない。

どこにもお前らがいた痕跡も残さない。

もっとも残酷な終わりを告げよう。

 

「ゲギャア!!」

 

剣がなくなり気弾と殴り合いしかないジャネンバ。

魔術は巨人の時でこっちに劣ると分かっているのだろう。

 

「甘い!!」

 

拳を取って投げる。

地面に叩きつけられる前にくるりと着地をする。

だがその一瞬の間に腹に爪先を蹴り込む。

筋肉から内臓へ衝撃がいきわたる様に振りぬいていく。

 

「ゲガ……」

 

うずくまるジャネンバ。

その背中に肘打ちを入れる。

地面にうつ伏せになる。

 

「『レイジ・アクエリアス』!!」

 

水瓶を持つような構えから藍色の気功波を放つ。

押し流すように延々とした放出。

受け止めきれずに呑み込まれていく。

 

「お終いだ!!」

 

気功波が渦を巻き、ジャネンバを捉えて叩き落す。

手応えは十分。

起き上がれたとしても相手の戦闘意欲を根こそぎ奪い取ったという確信もある。

 

「どうやらこっちも決着がついたんだな」

 

いつの間にか到着していたガタバル達。

ジャネンバを見て言ってくる。

奴はすでにピクピクと動いているだけで抵抗することはできない。

 

「ちょうど終わった所だ」

 

そう言って魔術を使う。

お前らが殺していなかったおかげで面倒ごとは増えなかった。

 

「『バミューダ・デスアピアー』!!」

 

ジャネンバと奴等が散開していたところ。

累計、六箇所を起点にした魔術。

それを魔術で見通して指を鳴らす。

するとたちまち全てを飲み込む黒色の三角錐が立ち昇る。

 

「クロノア様、手を煩わせてしまい申し訳ございません」

 

時の界王神と言われているお方。

仮面に封印される前に一度お会いした。

絶対手を出すなと口が酸っぱくなるほど止められたのにも関わらず、怒りのまま破壊神ビルスと戦ってしまった。

その罪悪感が締め付ける。

聞こえているとは思えないがその方に言葉を述べる。

 

「はっ!!」

 

徐々に手を合わせていく。

パンッと手拍子するように手を完全に合わせるとキュインという音を立てて三角錐ごと消滅した。

 

「これで終わりだ」

 

その一連の動作を見ていた奴らが驚く。

大丈夫だ。

この技はお前らのようにプラスエネルギーが高い奴には通用しない。

マイナスエネルギー、つまり邪悪な度合いが強すぎた場合に通用する。

 

「見事な腕前ですな、我が兄よ」

 

現れていたメチカブラが下りてくる。

やはり目的はそれだったか。

邪神像が妖しく光っている。

 

.

.

 

目の前にメチカブラが現れた瞬間、空気が変わる。

邪悪な気が煙のように漂っている。

言ってしまえばそこに全て今までのやり取りをまとめたような感じだ。

 

「ぐぐっ……」

 

圧迫感に耐え切れない面子は下がっていく。

それでいい。

動ける俺で止めてしまおう。

そう思い殴りかかる。

 

「我が身に宿れ、邪神『エコトゥーク・アザラ』!!」

 

しかしそれよりも速くメチカブラが邪神を乗り移らせる。

邪神の黒い影がメチカブラを呑み込んでいく。

拳を打ち込んだところで影に手応えは存在しない。

その影からずるりという様な擬音を立てて現れたその姿。

それはどこか遠い記憶を思い起こさせるような姿だった。

 

「ちっ……嫌な姿を見せてくれる」

 

そう言うサラガドゥラ。

地味に汗をかいている。

 

「『ボンベイ』みたいなやつだな」

 

真っ黒い毛に覆われた猫。

目は丸く大きい。

色は金色。

特徴を捉えた見た目だ。

 

「いくぞ……」

 

そう言って俺に向かって手を前に出す。

すると次の瞬間、弾き飛ばされる。

その威力は凄まじく、胃を揺さぶられて嘔吐しそうだった。

 

「俺とサラガドゥラに任せて逃げろ……」

 

一撃で確信した。

時間を稼げそうな相手じゃない。

つまりピオーネの特徴を活かせない。

 

「こいつを利用した時の全盛期の自分と同格だ」

 

あの時空の邪悪な奴らのオンパレードはこのためか。

だが……

 

「おかしいな、ヒルデガーンのパワーがない」

 

そう言ってメチカブラが首をかしげる。

本来ならばその中に入るべき存在がいない。

 

「確かに消滅はさせていなかった」

 

つまり自分たちとは違う存在がヒルデガーンを叩きのめした。

一体何者だ?

 

「んっ……?」

 

どこかでさらに悪の気が膨れ上がる。

ピッコロが気づいたようだ。

 

「魔人ブウの気が変わっただと……!?」

 

トワとミラがやりやがったか?

もはや子供たちに任せるしかない。

 

「俺達で向こうは対処する」

 

そう言ってピオーネの瞬間移動で神殿へと戻る。

これで憂う事は無い。

思う存分暴れるだけだ。

 

「はっ!!」

 

全力で殴りにかかる。

しかしそよ風のようにひょいと回避されてしまう。

 

「だりゃあ!!」

 

回し蹴り。

紙一重で避けられる。

だが……

 

「ふっ!」

 

その足で着地前に相手の足を踏みつける。

そして膝を叩き込む。

 

「ぬっ!?」

 

相手も驚く。

格上と勝負した回数は多い。

戦闘力に天地の差があっても当てる小細工はあるんだ。

 

「シッ!」

 

目つぶし。

首を振って逃れるがそのまま上に動かして耳を掴んで頭突き。

 

「『ソウル・オブ・サイヤン』!!」

 

今の自分の全力の一撃。

これが通用しなければおしまい。

相手がまだ油断しきっている、強さに酔っているこのタイミング。

 

「ぬあああああっ!!」

 

相手は受け止めきれずに喰らっていく。

零距離だったし手ごたえはある。

 

「はあはあ……」

 

肩で息をしながら相手の吹っ飛んだ方向を見る。

だが次の瞬間……

 

「うぐっ……」

 

顔面を掴まれて地面に叩きつけられていた。

それをこっちに寄せてサラガドゥラが逃れさせてくれた。

 

「休んでおけ、一息ついたら下がれ」

 

そう言ってサラガドゥラが前に出た。

気を全開にしたようだがまるで感じ取れなかった。

 

.

.

 

「今度は逃さんぞ、神としての全力を見せてやる」

 

そう言って懐に入りこむ。

狙う場所はどこでもいい。

どういった反応をするのか。

奴がどれだけ力を得たのか。

それを知るための呼び水でしかない。

 

「シャア!!」

 

腹に一撃を放つ。

浮き上がらせるようなアッパー。

 

「かっ!!」

 

こっちの肘に交差した腕を組ませて防ぐ。

だがその拳を開いて顔の方へ向けて気弾を放つ。

 

「へっ!!」

 

メチカブラは首を動かして避ける。

それと同時に体を捻って飛び上がっていく。

 

「はあっ!!」

 

跳び後ろ回し蹴り。

それを今度はこっちが受ける。

ジンジンと腕が痺れるような一撃だ。

 

「フンッ!!」

 

足を掴んで引き寄せる。

間合いに入っていく。

奴が拳を顔に出す。

その瞬間、こっちは脇腹にめがけて突き出す。

 

「がふっ!!」

 

クロスカウンターとなる。

奴も後ずさるが俺も血を吐き出す。

こっちもダメージを受けてはいるがあっちも喰らっている。

 

急に強くなっただけでは、本来の力を出すことはすぐにはできない。

今のも本来なら俺だけ食らうようにできていてもおかしくはない。

そう言った意味では戦闘力の差が途方もなく隔絶された状態であっても、小技を使い最大出力をやったガタバルの攻撃は正解だった。

 

「それを差し引いてもの話だが、俺でも厳しいとはな……」

 

今の奴の力はアザラの力を借りた時の俺と同等だ。

アザラ抜きの俺では奴が優勢になるのは当たり前。

といっても奴は自力が少ないから完全に操れはしない。

あいつが力の大きさに耐え切れずパンクするまで待つという手もある。

だがその間好き放題されるのも、いやなもんだ。

 

「サイヤ人の月の新円に満ちる力に頼るしかあるまい」

 

あの敵も月の光を浴びて強くなった。

だったらこいつの力を借りるしかない。

俺の魔術を使う。

 

「暴走したらすぐに解除する」

 

勝つためには望みの綱を手繰り寄せるしかないんだからな。

自分が二人いたら話は別なんだけど。

 

「『ルナティック・ギルティ』!!」

 

月の光を浴びていく。

1700万ゼノを超える遥かな光の量。

これはこの戦いだけの強化。

普段からこの限界突破を出せるわけではない。

 

「まあ、そこは修行次第だろうがな」

 

これで戦力としては申し分ない。

構えて相手を見る。

第2ラウンドと行こうか。

 

「情けないな、兄よ」

 

なんとでも言え。

おまえも邪神と自分で2人だ。

数を揃えただけだぞ。

 

「負けた言い訳でも作っておけ、メチカブラ」

 

そう言って突撃を開始した。

 

.

.

 

「この力は……」

 

サラガドゥラが魔術を俺にかけてから異変が起こる。

きっとフルパワーを超えるフルパワー……超フルパワーを引き出されているのだろう。

抑えきれずに真っ赤な気が噴き出していく。

理性が飛びそうになるのをぎりぎりで何とか押さえつける。

四肢にも五臓六腑にも凶暴な力が渦巻いている。

速く奴を殴りに行けと細胞の全てがはやし立てる。

 

「うぉおおおおお!!!」

 

叫んで一気に間合いを詰める。

自分の体とは思えない速度だ。

 

「ぐっ!?」

 

何も考えず思い切り一本拳を振るう。

急所だったり、効率だったりを全て度外視した力任せの圧倒的な暴力といえる一撃。

腕を交差して防いだメチカブラを後ずさりさせる。

そのまま蹴りを放つ。

 

「ぬっ!!」

 

メチカブラは蹴りを防ぐが足元がぐらつく。

その足を持ってジャイアントスイングをする。

そのままサラガドゥラへ投げる。

 

「『タウルス・ブレイク』!!」

 

勢いをつけた両腕で相手を挟んでかちあげる。

挟む際に肋骨が折れるベキベキとした音が聞こえた。

パワフルな一撃だ。

かちあげられた相手は宙を舞う。

 

「『アルバトロス・ブラスター』!!」

 

アホウドリが飛翔する。

一気に呑み込んでいく。

いつもと違い、深紅色のアホウドリへと変貌していた。

 

「『解除』」

 

メチカブラが背中から落ちた時にサラガドゥラが俺の魔術を解除する。

何故やったんだ?

 

「お前の限界を大きく超えている、これ以上は危険水域だ」

 

そう言われた瞬間、膝からガクンと落ちる。

疲労が凄い。

引き換えに奴へダメージを負わせた。

 

「実力が伴ってもいない者が守り神であったアザラの像を軽々しく使ったツケは必ず来るからな、覚悟しておけ」

 

そう言って俺を抱えるサラガドゥラ。

一体どういう意味なんだ?

 

「魔人ブウが最優先だ、つかまっておけよ」

 

そう言って神殿へと向かっていった。

最後にもぞもぞと動いていたがもはや戦えるような状態ではなかった。

邪悪なエネルギーが徐々に抜けて、再びあの像へと戻る。

まだ、奴らの野望は終わらない。

妖しく輝く邪神像がそれを物語っていた。

 




邪神像によるパワーアップがメチカブラの奥の手です。
サラガドゥラが昔に使用した時よりやばいのは怨念と時空の6人の巨悪によって生み出されたマイナスエネルギーが原因です。
今回の魔術によるガタバルの一時的な強化は、強さの最終地点まで引き出したといったところです。

名前の由来
『エコトゥーク・アザラ』:『エコエコアザラク』
アナグラム+『エコ』が2つで『エコトゥー』
ちなみにメチカブラの外見が猫の種類であるボンベイになったのは、昔と違い邪神像に変わっていたから。
昔は普通に気が溢れるなどの強化のみで外見の変化はなかった。

指摘などありましたらお願いします。


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『魔人の秘策と援軍』

ヒーローズネタを何度も使っている件について。
援軍についての説明は後書きで行います。
ガタバルの強さは体ボロボロでスケールダウンしてます。


「痛い……」

 

体中が軋んでいる。

筋肉痛と頭痛。

その痛みが体を支配している。

戦う事もままならない。

食事も当然無理。

 

「今の俺は痛みの奴隷だな」

 

そう言ってうつぶせの状態のまま眠ろうとする。

 

「すまなかった」

 

サラガドゥラが謝る。

どうやら魔術で強化したのは完全に限界を突破させた状態。

その力はかつて戦った破壊神の力の半分、

つまりアザラの像を使ったときの自分と同格。

 

「段階を踏ませて徐々に限界を超えていかないといけなかった」

 

あの場面はそれしかなかったんだろう?

だったらそれが最善だ。

それをとやかく言うのは間違いだ。

 

「あっちはどうなってると思う?」

 

あっちというのは魔人ブウと悟天たちの戦い。

到着と同時に『精神と時の部屋』での戦いが始まったらしい。

 

「あの天才のチビ共なら超サイヤ人3のフュージョンをしているかもな」

 

ピッコロが言ってくる。

おいおい……フュージョンで合わせるのもかなり難しいのに2年とはいえいけるのか。

 

「カカロット達は?」

 

すると返答が帰ってくる。

どうやらミラやダーブラと戦っているようだ。

 

「しかし、これで相手陣営も崩壊か」

 

メチカブラのあれも一回使ったら次まで怨念の貯蔵に時間がかかるだろう。

あんなにも大量の奴をやろうにも何度もやるとそれこそさらに災厄をまき散らす。

 

「だがあの邪神像を使ったツケって何なんだ、サラガドゥラ?」

 

そう言えば聞き忘れていた。

ただ事ではない力を手に入れた代償ってのを知りたい。

 

「身の丈に合わんことをすればアザラの怒りを買う、仮にも神の依り代だからな」

 

肩をすくめて言ってくる。

おどけた風にしたいようだが危ないという印象は薄れていないぞ。

 

「邪神でなければまだ人の信仰への不義理から天罰で済んでいたが…」

 

雷撃程度で懲りる奴じゃあないけどな。

そういって手に力を集中させている。

一体何がしたいんだ。

 

「あの馬鹿が邪神にしたことで怨嗟の声や怨念や邪悪のエネルギーをダメージとして受け続ける」

 

精神的にも肉体的にも厳しい目に合うのか。

まあ、自業自得だな。

 

「あいつレベルを破壊神の半分並みの力にまで引き上げたダメージなんて考えるだけでも悍ましい」

 

あの倍ほどある破壊神。

聞いた話だがあの状態を恒常的に出せてもあれが限界値。

基礎値をさらに鍛えて突破する以外ないのだろう。

 

「良くて廃人かもしれんな」

 

溜息をつきながら言ってくる。

良くてそれとか、本当に安易に力がないものが使うものじゃないな。

 

「悪い場合は?」

 

おおよそ予想はつく。

ただ確信がない以上はもしかしたらという期待がある。

これ以上の事態の悪化はなくなってほしいからだ。

 

「邪神像の供物として呑み込まれる」

 

やっぱりそういう奴か。

溜息をついて殺菌で戦っていた方向に首を向ける。

そうなると実質残りはトワ、ダーブラ、ミラの3人。

だがそれ以外に正体不明の存在。

ヒルデガーンを倒した相手。

それが悪かどうかで結果が変わる。

 

「あの二人は寝てもらっているのか?」

 

ヒルデガーンによって縛り付けられていた勇者兄弟。

奴等は戦う事も出来ず疲労困憊。

その治療のためここで休んでいた。

 

「仙豆も俺たちが使ったもんな」

 

ブロリーが頬をかく。

俺とお前が二人そろって相手と死にかける戦いをした。

 

「まあ、それじゃなくても後がどうなるかだ」

 

3の弱点を知っていない面子が多すぎる。

ブロリーの奴は例外だからほっといてもいいだろうが。

そんな事を言っていると魔人ブウが出てきた。

 

「ゴテンクスから逃げてきたか……」

 

ピッコロが呟く。

ボロボロのまま出てきやがった。

だが僅かに空いた瞬間、気がないのを感じる。

 

「18号とクリリンを殺しやがったな」

 

そう言って体の痛みを押して立ち上がる。

甘えている場合じゃねえ。

全員、連戦で精神力と体力が削られている。

 

「二人の仇は打たせてもらう!!」

 

魔人ブウに殴りかかる。

超サイヤ人3でだ。

4になると限界がきたら今の状態なら意識を本能が断ち切る。

 

「ふん!!」

 

受け止めて投げられる。

だが腰を掴んでいく。

 

「ぐっ!?」

 

道連れにされることを嫌がったのか投げを途中でやめた。

不死身なのにな。

 

「おまえ、なかなかやるな……」

 

そう言ってドロリと溶ける。

そして俺の足に来る。

嫌な予感がして、跳躍をして避けようとする。

しかし……

 

「がっ!?」

 

ずきんと痛みが走って跳躍が低くなる。

すると縄状になったブウが巻き付いていく。

 

「ぐぐぐ……」

 

腕を中に入れることで首絞めを防いでおいた。

だが締め付ける力はかなり強い。

ぎりぎりと音を立てている。

 

「このままタコみたいにグニャグニャにしてやる」

 

にやにやと笑いながら力を強めていく。

ブウだけを殴られる状態でもない。

仕方ないな。

俺は神殿から飛び降りる。

舞空術を使うのはスレスレだ。

チキンレースの始まり。

 

背中から落ちてもブウが下敷きになるだけ。

だったらどこかでこの状態を解除する。

 

「ぐぐ……」

 

勢いがついているのにまだまだ地面は見えない。

どうする?

流石のお前でもこれをむざむざと受けたくはないだろう。

 

「やめだー!!」

 

そう言うと解いて自分は舞空術で浮く。

こっちもそれに倣って舞空術でお互いが向き合う。

 

「頭を使ったようだが、こういった馬鹿馬鹿しいやり方もあるんだぜ」

 

あんな真似をしなくてもどろりとした瞬間から、回避に専念する。

今回の動きの悪さから少しやり口を変えた。

 

「チビどもから逃げたようだが……」

 

超サイヤ人3フュージョンは凄いが元の戦闘力がどれほどなのか。

天才とは言うが潜在能力だけ見ると悟飯がナンバーワンだし。

 

「俺もかなり強いぞ」

 

そう言って蹴りを放つ。

手のひらで受け止められる。

それを軸にして回転。

 

「シッ!!」

 

延髄切りを決める。

だがブウも易々とは食らわせない。

喰らう瞬間に前にステップして軽減する。

 

「チッチッチ……」

 

こっちには効かないぜと言いたいようだ。

この疲労度で長時間運用不可というのはしんどいな。

毎回思うが仲間をやられた後に、頭に血を登らせて後先考えないのはダメだ。

 

「お前を潰すだけがいい事じゃあない」

 

何かこいつには隠れたものがある。

それは俺ではわからないが。

 

「ヌヒヒヒヒ……」

 

腕を伸ばして巻き付いて来ようとする。

それを避けると同時に伸ばしていた足が脇腹を捉える。

それを振りぬかれてすっ飛んでいく。

 

「くっ!!」

 

着地して拳を振るう。

回避されてカウンターを食らう。

 

「ぐはっ!!」

 

気が萎み始めている。

体の軋みがよりひどくなっていく。

3でも全力で挑めないとはな。

 

「おまえよわくなっていくな、きえていけ」

 

そう言って手を前に出す。

こうなったら……

 

「お前を塵一つ残さない手はあるんだよ……」

 

体を震わせる。

気を延々と高めていく。

生命力をつぎ込むように。

 

「おれはつまらないあいてはいいんだ」

 

そう言うと腹にきつい一撃が入る。

意識が飛びそうだ。

頭に頭突きを食らう。

そのまま腰からすくい上げられて投げられそうになる。

 

「どりゃあー!!」

 

力を振り絞って投げを返す。

地面に全力で放り投げた。

 

「たりないなぁ……」

 

地面スレスレでブレーキをかける。

仙豆があればなあ。

万が一に備えてデンデを隠しているから回復できなかったし。

 

「おわりだ……」

 

そう言って気弾で上空に打ち上げられる。

意識が遠のいていく。

それを受け止める影。

 

それはあまりにも意外な存在だった。

 

「なんでお前が俺を助ける……」

 

そう言った直後、上空からフュージョンのチビとピッコロが来ていた。

ピッコロに向かって投げる。

それを受け止めていた。

 

そいつは指をぱきぱきと鳴らして魔人ブウを見る。

そして向かっていった。

 

.

.

.

 

おおよそ久しぶりの地球。

それだというのにこの荒れ具合。

その元凶とガタバルの戦いを見ていた。

本調子ではない肉体でもあそこまで拮抗したようにできるのは凄い。

 

「助けるか……」

 

死なれると困る。

そう思って追いついて受け止めていた。

驚いたような顔をしている。

相変わらず失礼な奴。

 

「お前、どうやってここに?」

 

そう言って近づいてきたピッコロに投げて渡す。

さ……次はこの桃色の魔人。

宇宙単位が危なくなるような相手。

あの邪神よりも危ない印象。

 

「始めるか」

 

そう言って向かっていき、頬を殴る。

なかなかの反応だけど回避準備が遅い。

 

「はっ!!」

 

腹を殴って気功波を放つ。

それは貫通をするが手応えがない。

すり抜けたような印象。

 

「ムムム……」

 

モニュモニュと体が動いて再生をする。

不死身のような相手。

細胞を一つ残さず消し飛ばすくらいの火力がないと厳しい。

疲労とか溜まりそうにもない。

 

「シャー!!」

 

相手が接近をする。

速度が上がっている。

 

「ぐっ……」

 

肘の一撃を受け止める。

すると風車のように回って踵落としを放ってくる。

 

「ふっ」

 

後ろに下がって避ける。

すると次は体を弾丸のようにして突っ込んでくる。

矢継ぎ早のラッシュ。

 

「ぬぬぬ!!」

 

力で受け止めるが顔をこっちに向ける。

こっちが本命か。

受け止める事を予測するなんて予想外だ。

 

「があっ!!」

 

口から気功波を放つ。

それを右手で防ぐ。

踏ん張って歯を食いしばり耐えきる。

左手で薙ぐように気功波を上下に放った。

 

「ぐああああっ!!」

 

折角、策を凝らしたにもかかわらずノーダメージ。

それどころかカウンターで左半身を気功波で吹き飛ばされる。

 

「おまえ、なにもの?」

 

再生した魔人が怒りの形相のまま言ってくる。

聞かれては答えないわけにもいかない。

 

「あれから10年……新たなる自我に芽生えた、『ラエンカ』」

 

あの邪悪な二人が混ざってできてしまったのが私。

しかし宇宙に放り出された後、ビッグゲテスターに漂着。

あの二人の悪運だったのかもしれない。

 

そして徐々に肉体と精神は引っ張られて行き、彼らはどこかへと消えた。

そこで産声を上げたのが私。

女性とはどういった存在なのかさえも自我としてあいまいだった。

それをビッグゲテスターの力で学習をしていき、常識や善悪を知った。

すると同時に自分を生み出したきっかけの存在に吐き気を催した。

正直苦しかった。

 

「謝って許されなくても私の道はこれなのよ」

 

混ざり合って生まれた原因の二人の悪行はゲテスターの機能のおかげで知っている。

それは罪として大きすぎるもの。

償いとしてはおかしな話だがやっていない自分がサイヤ人として戦い続ける。

善悪を知るがゆえに、ヒーローのように。

自我が芽生えた10歳の少女ともいって差し支えない存在、純粋な思い。

邪悪という負の存在が二つまじりあい計算式のように正の存在へとなった。

 

「貴方を倒して地球の平和を、宇宙の平和を返してもらうわ……変身!!」

 

そう言いながらポーズをとって全開パワーで相手をする。

さて……覚悟はOK?

 

.

.

 

「なぜ、あの極悪人が俺たちの味方を?」

 

ピッコロが呟く。

きっと考えられるのは……

 

「精神と肉体の不一致であいつらの意識は埋没、もしくは消滅した」

 

男性から女性へと変わった。

それどころか二人の人間が入っていたようなもの。

異常な状態が正常に戻るにつれて奴らの意識は薄れていったんだろう。

 

「ナメック星で戦ったのが『ラエンカA』としたら、そのAが消滅して新しく女性一人の自我として生まれたのがさっきの『ラエンカB』」

 

そう言うとピッコロも納得する。

そう考えたら少しでも女性言葉で溶け合えていたあいつらの異常さが際立つ。

 

「別人という事か……しかし」

 

ブウを相手にあそこまで戦えるとはな

そうピッコロが呟いて頷いた。

かなりの修練を10年で積んだのだろう。

怠け者だったあいつらとは雲泥の差だな。

 

「だがブウの奴も何か企んでいやがる」

 

あの目は死んではない。

まだ、策を練りながら勝ちを探している。

確かデブを吸収してあれになったんだよな……

 

「ああああああっ!!」

 

ブウが叫び始める。

さらに気を高めて震え始める。

そして……

 

「自爆しやがった……」

 

本気でやれば地球ごと吹っ飛ばせるだろう。

あえてそれをしなかった。

再生できるから逃避の為に自爆したのだろう。

気を感じないし一体どこへ行きやがった。

 

「やつの狙いが何かだ」

 

誰かの吸収ならば疲労困憊の俺は吸収する必要はないだろうがピッコロやゴテンクス。

神殿に行けばスパーニやブロリー、ピオーネもいる。

 

「逆に容赦なくやりそうなやつらの巣にブウも行かんだろう……」

 

細胞一つ残さずに消し去るとかいうサラガドゥラもいる。

絶対、俺がブウの立場なら神殿はいかない。

そうなると狙いは……

 

「カカロット達か!」

 

ダーブラたちの戦いに乱入してその隙に吸収。

超サイヤ人3が2人も吸収されたらきついぞ。

 

「痛みがあっても関係ない!!」

 

集中をして瞬間移動をする。

するとカカロット達の近くに出る。

目の前にあったのは拮抗した展開だった。

 

「ぐっ!!」

 

ベジータは3と2を行き来するようにして燃費を抑えながら戦っている。

知らないやつが多いと思っていたがいち早く気付くのはやはり天才か。

 

「ていや!!」

 

それと違いカカロットは常時3で戦っている。

多分気づいていないのだろう。

ピッコロに戦う準備をするように目配せをする。

 

「なんでパパは3を使わないんだよ!!」

 

トランクスが言う。

まあ、気づかないのも無理はないか。

手を抜いている訳じゃあないんだ。

 

「実はトランクス、あれは長く持たないんだ、それをベジータは知っているからああしているんだよ」

 

そう言うとトランクスは『パパってすごいんだ……』と呟いていた。

本来、一番早くなれる俺が教えないといけなかった。

それを自力で探し当てるんだからな。

 

「ばあっ!!」

 

そんな事を考えていると魔人ブウが来た。

強さも変わっていない。

やはり策を練っているのか?

 

「おれもまぜろぉ!!」

 

そう言ってカカロット達の所へ突撃する。

しかし無策にしか見えないこの特攻。

 

「邪魔だ!!」

 

当然のようにダーブラに阻まれる。

そのダーブラへ拳を振るう魔人ブウ。

だが奴の方が武器や魔神化で強くなっている。

 

「ふん!!」

 

拳をいなして一瞬で剣を振るう。

スパンという音が聞こえ、頭の触角を切り落とす。

お菓子にする光線を出せるんだったな。

 

「戦いにむやみに水を差すんじゃない」

 

そう言ってダーブラに続いてミラが腕を引きちぎる。

それを無造作に投げ捨てた。

 

「くくく……」

 

にやりと笑う。

作戦通りだという様に。

再生もせずに不敵な笑みは一体なんだ?

そう思って注視するとピクリと動いて僅かに溶けたのが見える。

 

「気を付けろ、あの触角が策の一つだ!!」

 

頭についていた触角がグネグネと動いてアメーバのように変化して飛びかかる。

ピッコロがカカロット達を庇おうと動く。

俺はトランクス達を庇おうとする。

しかしその標的は違っていた。

 

「ぐっ……」

 

なんとダーブラを標的としていたのだ。

しかもそれだけにとどまらない。

 

「むぐぐっ……」

 

ミラまでも餌食となる。

よくよく考えたらこいつらに仲間意識はなかった。

 

「いただきー!」

 

そう言って引き寄せると肉巾着が体に付着して混ざり合う。

唸り声をあげながらグニャグニャと変化をする。

 

「フフフッ、これは貴様らを抹殺するための進化だ」

 

体は巨躯となり、さらに赤い縁取りや顔へ刺青が入ったようになっている。

邪悪な気は一気に膨れ上がった。

 

トワが憎しげな顔をしている。

いつの間に回収していたのか、邪神像を持っている。

何をするつもりなのだろうか?

 

しかしその思考より速くブウが動き出す。

俺が蹴り飛ばされる。

ピッコロが槍で腕を突きさされる。

 

「はあっ!!」

 

カカロットとベジータの頭を瞬時に掴んで打ち付け合わせる。

強くなっていやがる。

超ゴテンクスとラエンカも向かおうとする。

魔人決戦は新たな仲間とさらなる脅威への変化で第2ラウンドが始まった。




邪悪の塊だったはずのラエンカの援軍。
これについて話の中にもありますが
『合体直後』こそ混ざって一人になっていましたが、
女性の体というずれや混ざった意識が維持できず崩れていき、どこか奥底か片隅で埋没しました。
その結果、記憶は保持したまま新しい自我の『ラエンカ』が生まれました。
それは漂着したビッグゲテスターの教育などで常識や善悪を知ってしまい、『善』を成すために自分の元になった存在の償いをしているという事です。

指摘などありましたらお願いします。


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『復活の邪悪』

今回、黒幕出現です。
悟飯が地味に4になれるような書き方になっていますが、あいつ尻尾はまるで鍛えてないんですよね……


「かあっ!!」

 

カカロットとベジータを同時に蹴り飛ばす。

俺が気功波を放つが……

 

「ふっ!!」

 

息を吹きかけるとこっちに飛んでくる。

それをピッコロが弾く。

 

「今のお前は足手まといだ、神殿に帰れ!!」

 

そう言って俺を放り投げる。

ゴテンクスも戦っているのに……

 

「ゴテンクス、こいつを連れていけ!!」

 

ゴテンクスを吸収されても困るという事だ。

超サイヤ人3のフュージョンが取り込まれてしまうとな。

 

「お前はどうするつもりだ」

 

俺はピッコロに聞く。

あいつらの強さは半端じゃないぞ。

お前が強くなっているとはいえ……

 

「俺は時間を稼ぐ!!」

 

逃がすためにそこまでするか。

お前が死んでも確かに昔のようにドラゴンボールはなくならないが……

 

「ピッコロさん、俺も残るぜ!!」

 

そうゴテンクスが言うとベジータが睨む。

今の場面は完全に変わったんだと。

吸収できたりする相手がいる以上、お前らはここに居てはいけない。

 

「お前もこいつと一緒に帰っておけ」

 

油断とかするだろうからな。

そう呟いていた。

だがお前らも相手に合わせて戦う時があるがそれは慢心というものだぞ。

 

「吸収されるのがオチだ、ここはできる限りそうならないようにする」

 

ピッコロも釘を刺す。

こいつらがそう言った事を徹底していたらクリリンたちは死んでいなかった。

 

「私も食い止めるわ」

 

ラエンカも構える。

4人でも優勢をとれそうにない場面。

それだけのパワーを奴は持っている。

 

「ひゃひゃひゃ!!」

 

そう高笑いをすると俺に向かってくる。

既に死にかけの俺を狙うとは。

奴等の知能を手に入れたのは正解だったな。

 

「だが……」

 

お前の考えは相変わらず空っぽだぜ。

俺は手のひらに全ての気を集中させる。

超サイヤ人3のゴテンクスの速度にこの推進力。

お前は追いつけるか?

 

「『ソウル・オブ・サイヤン』!!」

 

真正面から無防備に喰らう。

薄っぺらい断末魔をあげる。

その推進力で一気に奴が追いつける可能性は無に返る。

 

「凄いな、あんな威力の技打つなんて……」

 

驚いた顔をしてゴテンクスが言ってくる。

お前がきちんと運ぶと信頼してるからな。

だから残りかすもないほど絞り出した。

 

「おっ……神殿だぜ!!」

 

推進力と超サイヤ人3の速度でまっすぐ行けばこんなものだ。

後は頼んだぜ。

 

.

.

 

「あいつ……無茶しやがって」

 

そう言って俺はブウへ攻撃を仕掛ける。

再生を終える前に一撃を放つ。

これでさらに時間を遅らせる。

 

「ピッコロ、次頼む」

 

そう言って俺はもう一度気を貯める。

カカロットの奴に解除しておくように伝えておく。

 

「カカロット、あまり3を使うんじゃない、ここは時間を稼ぐんだ」

 

カカロットもそれを聞き入れて2に戻す。

矢継ぎ早の連打で万全の状態にさせない。

 

「『爆力魔波』!!」

 

ブウをまたもや吹き飛ばす。

徐々に再生速度が鈍っている。

だが、これはダメージがあるわけではない。

タイミングをずらすために行なっていやがる。

 

「『アリゲーター・バイト』!!」

 

ワニ型の気弾が嚥下するようにブウを呑み込む。

消えたわけではない。

煙状にしたところをピッコロがあらかじめ放っていた気弾で取り囲む。

 

「『魔空包囲弾』!!」

 

ブウは再生できずにまだ黙々と漂っている。

その時に大きな気を感じる。

これは誰だ!?

 

「『魔閃光』!!」

 

技で分かった。

悟飯の奴がようやく到着したのだ。

全く、25時間以上も待たせやがって。

再生してきていたブウの腹に穴をあける。

随分と気が様変わりしていたな。

甘さもどうやらなくなっているようだ。

 

「悟飯、25時間以上かかっていたが何かトラブルでもあったのか?」

 

ピッコロの言葉にバツの悪そうな顔を浮かべる。

すると儀式が終わった後に大きな石臼でコーヒー豆を挽かされていたらしい。

するとピッコロは何を感じ取ったのか、そうかと笑っていた。

 

「父さんたちも下がっていてください」

 

悟飯がそんな事を言いやがる。

自信に満ち溢れているのがわかる。

俺達も3をだましだましとはいえ結構使っていたからな。

ここは素直に従っておこう。

 

「はっ!!」

 

膝蹴りを叩き込みに行く。

それを回避しようとブウがすると腕を横薙ぎに振るって腰の回転を利用して軌道を変化させる。

 

「ぐえっ……」

 

脇腹に膝がぶち込まれる。

横移動していくのを気弾で逃さない。

 

「だりゃりゃりゃ!!」

 

腹に拳を叩き込む。

連打でブウに何もさせない。

上に蹴り飛ばしてそれを追い越していく。

 

「『かめはめ波』!!」

 

腹に穴どころか上半身を消しとばす。

さらにそれを蹴りあげて殴る。

ブウが煙を出して回避する。

 

「無駄だ」

 

気を感知できる悟飯には何の意味もない。

再生はできたようだがそれでも煙が晴れた時にはボロボロの顔のブウがそこにはあった。

遊んではいないが、さすがに細胞一つも残さずに消し飛ばすのは難しいだろう。

3で貯めてつぶすのも無理があるだろうし、悟飯にぶっつけ本番でそれならいけると太鼓判を俺達も押せない。

 

「ガハッ……」

 

超サイヤ人3並みの強さを持った奴2人を吸収したブウ相手に優勢をとっていやがる。

セルの時から修行をさぼらないし、潜在能力最高峰ときたらこうなるか。

 

「くそぉ!!」

 

やけくそになって槍をピッコロに投げる。

師弟関係を狙ったか?

悟飯がすぐに止めようとするが間に合いそうにない。

 

「こんなもの……」

 

難なく避けようとしたピッコロ。

それを見てブウの奴がにやりと笑う。

そして頭の触角から光線を出しやがった。

 

「なっ!?」

 

槍を光線でぶよぶよのアメーバへと変えてピッコロを覆う。

無駄に知識をつけやがって!!

 

「いただきー!!」

 

ピッコロも吸収されてしまった。

3が3人分……

もはや手が付けられない。

フュージョンをしようにも時間を与えてくれるような相手じゃない。

カカロットに言って瞬間移動で救援を頼ませるか?

 

「よ…よくも……」

 

わなわなと悟飯が震える。

こんな時の悟飯に無駄に声はかけない。

どうなるかは俺がよく知っている。

 

「ピッコロさんをー!!」

 

怒りで爆発的なパワーを獲得している。

それどころか下の道着で何かが動いていやがる。

 

「うあああああ!!」

 

気を引き出した時、ついに道着の一箇所が破れる。

どうやら修業はそのためだったのか。

悟飯の尻尾が生えていた。

地球で俺と戦った時以来だが、どうやら老界王神とやらは知識が凄いな。

完全に生えそうにない尻尾を再生させる術を持っているなんて。

 

「『爆力魔閃』!!」

 

一撃を放ってブウを吹き飛ばす。

再生しようともごもご動いているブウに蹴りを叩き込んでいく。

セルの時とは違い、修羅が宿ったかのような連打。

ピッコロを吸収したのが間違いだったな。

 

「ハア!!」

 

しかしそれでも再生をする。

流石に悟飯もあれだけのラッシュをすると疲労が見え始めた。

こうなったら俺達も出ないとな。

いつの間にかラエンカの奴とトワが消えている。

何があったんだ?

 

「こうなったら……」

 

そう言って悟飯が俺とカカロットにイヤリングを渡す。

一体何のつもりだ?

 

「この『ポタラ』をつけると合体することができるんです」

 

確かにカカロットと俺が合体すればすぐに倒せるだろう。

それにフュージョンの動きをする時間もいらないしな。

 

「神様なら一生ですけどそうでなければ1時間らしいです」

 

できる事なら相手に対抗して合体というのは嫌なんだがな。

ましてやライバルのカカロットとなんて。

だが、今の状況を逆算すると手段を選べる余裕もない。

 

「時間制限があるなら……いいか」

 

俺たちが無理となるとブルマやトランクスにもいくだろう。

それなのに個人の意地を張っている場合じゃない。

 

「つけたか、カカロット!!」

 

カカロットに声をかける。

すると左耳にばっちりとつけていた。

おれは右耳だ、ばっちり変身できる。

 

「おう!!」

 

そう返事をするとお互いがぶつかるように合体をする。

このあふれ出すパワー。

ポタラは凄い代物だな。

 

「ベジータとカカロットでベジット……そして!!」

 

この力でも戦える。

いい勝負になるだろう。

だが本気で戦うご飯を見ていてそんな余裕を出してはいけないと思った。

その為、前回のパワーを発揮してブウと戦う。

 

「超サイヤ人3ベジットだ!!」

 

両方が3になっていたからできた事。

この力に悟飯も驚きを隠せない。

俺もこれならばブウに絶対勝てると思う。

しかし今回はただ倒すんじゃなくて、ピッコロを救う方法を考えながら戦う。

それを頭において悟飯を下がらせる。

どれほどの差が生まれてしまったのか、それを知るためにまずは前に出た。

 

.

.

 

「これで『肉体』は準備したわ」

 

ブウが人々を壊滅させた時の瓦礫から赤ん坊を引きずり出した。

これは後の利用する器。

生死は問わない。

 

「そして下がった時に貴方を捕縛した……」

 

ラエンカと呼ばれていた女性を見て笑う。

これでお兄様を助ける術を見つけた。

 

「この計画の終着点はこれ」

 

メチカブラ様が呑み込まれた邪神像。

この神そのものを赤ん坊に宿す。

力だけを授けるのではなく、そのものを降ろす。

 

「当然、神の力や技はあり、肉体はある」

 

しかし心がない。

飛び切り邪悪な心。

それを埋没させているこの女から引きずり出して赤ん坊に宿す。

その心と神の力に引きずられて肉体は完成する。

 

「圧倒的な力で私たちの逆転は成されるのよ」

 

そう言った私にラエンカは睨む。

何か不満でもあるのかしら?

 

「今からでも遅くないわ、その計画は必ず頓挫する」

 

何を根拠に言うのかしら。

まさか勘だなんて言わないわよね?

 

「理由を聞かせて貰えるかしら?」

 

それでも一応聞いてみる。

すると真剣な面持ちで赤ん坊を見ながら言ってきた。

 

「やつらは恩とかそんなものは感じないし、やるだけ自分が不幸になる、あんたの手駒になりはしないよ」

 

やるだけ無駄と言いたいのね。

でも、素直に私が聞くわけがない。

助けるための手段は正邪を問う事は無い。

 

「不幸になるかは私の心が決める事、手駒にできない理由がないわ」

 

そう言ってラエンカから邪悪な意思を引きずり出す。

それを赤ん坊の中に入れ込む。

もはや埋没した意識も長い年月で混ざり合っていた。

 

「さて……自由にしてあげるわ」

 

そう言って自由にした瞬間、悍ましいものを見るような目でここから立ち去る。

そして私は赤ん坊の変化を見続ける。

肌は徐々に黒く染まっていく。

朝ぐらいのではなく闇夜を表すような黒。

その邪悪な心を表したような色。

背丈は伸びていき、筋骨隆々の姿になる。

 

「うおおおおお!!」

 

雄たけびを上げて産まれたもの。

それは漆黒の肌に、それよりも濃い黒い髪を持っていた。

気が立ち昇っているが天を衝く。

それは曇天を呼び寄せる。

マイナスエネルギーが集約されたような存在。

それが人の形を持っている。

 

「心も別の存在、技も別の存在、体も別の存在、そんなツギハギだらけの貴方の名前は……」

 

そう言った瞬間、腹を貫かれる。

邪悪な笑みを浮かべていた。

さらに蹴り飛ばされる。

驚愕はそれだけにとどまらず肉体が別れていく。

一人の肉体だというのに!?

 

「俺はラブカ……」

「俺はカエンサ……」

 

見た目の肌の色が変わったわけではない。

力は半分ずつのようだが。

顔つきとかも全然違う。

 

「「さて……血祭りにあげてやる」」

 

そう言って彼らとは別の方向へと飛んでいった。

それはあのガタバルが飛んでいった方向だった。

 

「なんてこと……」

 

計画は頓挫してしまった。

あのラエンカが言うように。

扱いきれない邪悪だったなんて。

 

「私じゃあもう止められない……」

 

体を治癒しながらその方向を見て取り返しのつかない事をしてしまったと後悔した。




ナメック星編から10年ぶりに復活。
精神体から肉体を手に入れたので次は確実に灰にできます。
邪神から得た力といってもメチカブラの分だけです。
貯蔵分はメチカブラが全部使いましたので。

指摘などありましたらお願いします。


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『赤い糸より太くて堅い血の鎖』

魔人ブウ編ももう少しで終わりです。
原作と同じ形で決着がつきますのでそこそこダイジェスト気味になるかと思われます。
ブウ編が終わったら『神と神』や『復活のF』に入りますね。


「トワの気が減ったと思ったらまた増えた……」

 

サラガドゥラが呟く。

神殿で俺はサラガドゥラから『復活エネルギー』をもらって回復できた。

どうやら界王神様に従事したものが使えるようになるパワーらしい。

デンデは避難させないといけなかったからな。

表立って回復させることはできない。

 

「この邪悪な気は身に覚えがある」

 

ありすぎると言ってもいい。

ラエンカから引きずり出したのか?

こうなったらここにいるサイヤ人に協力してもらわないと。

もう少ししたら来るだろうからな。

 

「ターレス、スパーニ、ラディッツ、ナッパ、俺にサイヤパワーをくれ」

 

超サイヤ人4をフルパワーにして戦う。

5人いるからゴッドという手もあるのだが一刻を争う今で博打は打てない。

ならば、それしか完全に確実に奴らを消す方法はない。

サラガドゥラが戦えばおしまいなのだろうが、それでは意味がない。

 

「ブロリーは?」

 

スパーニが疑問と感じたのか言ってくる。

ブロリーとピオーネは最後の砦。

ヤムチャたちもいるが頼ってはいけない。

 

「デンデを念のために界王神界に送ってきてくれ」

 

そう言ってサラガドゥラに頼む。

するとすぐに『カイカイ』と言って瞬間移動をした。

もうあの新しい界王神様とキビトのメリットは何なんだろうかと思う。

 

「さ……この間に始めようか」

 

ぐんぐんと近づいてくる。

気を高めて力が注がれる。

徐々にこっちの力が漲ってくる。

 

「はあっ!!」

 

ブロリーが飛び降りた。

想像していた以上に相手が速すぎる。

あいつら、邪神像の依り代になってパワーアップしたな。

相変わらずの他力本願の力。

 

「頼んだぜ」

 

時間をもう少し稼いでくれ。

4になってからの激戦続きでサイヤパワーはほとんど枯渇している。

 

「弾けて混ざれ!!」

 

ある声が響く。

その正体はパラガスだった。

まさか来てくれるとは。

 

「ブロリー、お前の真価を見せるんだ!!」

 

そう言って下がっていく。

念のため、パワーボールを壊しておいたようだ。

 

「ナイスだぜ、親父ィ……」

 

あっという間に金色の大猿になる。

奴等も超サイヤ人3で対応するがブロリーの猛攻はすさまじい。

しかし慣れない変身なのだろう。

大猿になったのもどうやら初めてらしい。

 

「だが……俺がフルパワーになったら!!」

 

すぐに潰してやるからな。

頑張ってくれ。

 

「ぐぐぐ…」

 

ピオーネも何とか粘っている。

徐々に増える戦闘力。

しかしその差は歴然。

珍しくこっちから攻めて相手に先手を取らせないようにしている。

 

「よしっ!!」

 

フルパワーにようやくなった。

全員息切れをしている。

それだけ集中してサイヤパワーを送ってくれたという証だ。

 

「済んだか……」

 

下卑た笑みを向けてきたラブカとカエンサ。

その手にはピオーネとブロリー。

ブロリーは変身が解けていた。

二人とも時間を稼ぐためにがんばってくれていた。

 

「返してやる」

 

そう言って投げられたブロリーとピオーネを受け止める。

普段から慣れていたのなら倒せたであろう大猿状態。

二人ともこいつらを倒そうとせず俺の因縁に慮った結果こうなった。

勘違いするなよ、馬鹿二人。

 

「きちんとしてたらうちの嫁も義理の弟もお前らに負けるわけがないんだよ」

 

サラガドゥラが戻ってきたので二人を頼む。

復活パワーでピンピンとはしている。

言うほどダメージはなかったらしい。

その代わりブロリーは尻尾が中途半端に無くなっていた。

 

「ここら辺は結界を張るから思う存分暴れてこい」

 

そう言ってサラガドゥラが送り出す。

さて……今度は容赦なく塵にするか。

 

「どりゃあ!!」

 

殴りかかってくる。

それを回避してこっちも態勢を整える。

 

「お前らが血祭りにあう番だぜ」

 

とにかく各個撃破という事でカエンサへと向かう。

奴も3になって構えてはいるが……

 

「俺の方が強い!!」

 

一気に4になって押し切ろうと試みる。

手加減も出し惜しみもなし。

フルスロットルで相手をする。

 

「はっ!!」

 

足にローキックを放つ。

理由は至極単純。

逃げられないように、逃がさないように機動力を奪うためだ。

 

「あがっ!?」

 

受けきったはずのカエンサが素っ頓狂な声をあげて崩れ落ちる。

その理由は隔絶された強さだった。

戦闘力の差が酷く、受けたはずの足があらぬ方向へと曲がっている。

つまり今のローキックでカエンサの足はへし折られたのだ。

 

「まだいくぞ……」

 

喉に一本拳を叩き込む。

痛々しい痕を残して、相手は呼気を吐き出す。

 

「かはっ……」

 

喉に手を当ててうずくまりそうになる。

その隙も逃しはしない。

耳を掴んで顔面に膝をぶち込む。

 

「ぐへらっ!!」

 

鼻の骨が折れてぐちゃりという音。

顔の一部に損傷を与えた手応えはあった。

 

「セイ!!」

 

とどめに脇腹を蹴り、肋骨をへし折る。

血まみれの顔から見て取れる苦痛の形相。

内臓に突き刺さってはいないが相手の肉体はガタガタだろう。

流れるように、殺しかねない威力の一撃を延々と入れ続けた。

だが奴らはにやりと笑う。

二人だからな、あの技をするつもりだろう。

 

「『フュージョン、ハッ!!』」

 

ボロボロの肉体であってもそれで回復するというわけか。

随分と余裕ぶっているようだが、その力も残念だが……

 

「俺の4にはかなわない」

 

そう言って腹を貫きにいく。

しかし硬質化した皮膚が表面にめり込ませる程度に抑えた。

とはいっても衝撃に呻く。

 

「戦闘力が上がっていても差は縮まっただけ」

 

腕をとってそのまま逆向きの一本背負いで放り投げる。

腕はへし折れる。

受け身をとれないまま地面へ思い切り顔を叩きつけられる。

 

「ぜりゃ!!」

 

背中に膝をぶち込む。

肩甲骨が折れたのではないか?

相手が立ち上がろうとするとこっちは頭部へ蹴りを見舞う。

 

「俺には叶わないんだよ!!」

 

頭部が跳ね上がりもう一度戻ってくる。

千切れたわけでも支える骨が折れたわけじゃないもんな。

それをもう一度蹴り飛ばす。

抵抗をしようとするが立ち上がれない、腕は折れている。

舞空術も撃ち落されてしまう。

 

「お前らはここで死ね」

 

奴等を何もさせずに圧倒的に打ちのめしていた。

フュージョンとはいえ、実力が追いついていなかった。

どうであれ、ようやく因縁に決着をつけるときが来た。

 

「とどめだ、やっとお前らの運命から俺も母も、スパーニも、そしてラエンカも解放される」

 

そう言って気を高めた時に、サラガドゥラの切羽詰まった声が聞こえる。

一体何が起こったんだ?

 

「界王神界に移動しろ!!」

 

理由を聞く前に動けと目が訴えていた。

そう言ったサラガドゥラに従って瞬間移動をする。

奴が俺の足につかまっていようがお構いなし。

消えた刹那に見えたのは地球の大爆発だった。

 

.

.

 

「何とか間に合ったか……」

 

そう言って掴まっていたカブンカを引き剥がして蹴り飛ばす。

ここにいるのは縮んだ魔人ブウ。

それに相対するのがピッコロ、ラエンカ、悟飯、ベジータ、カカロット。

トワとダーブラ、ミラもいた。

 

それに疲労困憊のサラガドゥラ。

ピオーネ、ブロリー、スパーニ、悟天、トランクス。

それ以外にもヤムチャや天津飯たちもいる。

 

「これ以上は足手まといになっちまうな」

 

肩で息をしながらそう言って老界王神様とナメック星に俺とカカロット、ベジータの三人を残して瞬間移動する。

トワも魔術でダーブラや悟飯たちを移動させた。

これで誰の邪魔も入らない。

 

「カカロット、そこの魔人ブウが地球を破壊したのか?」

 

一応確認をとる。

そうでなければ第三勢力にやられたことになるからな。

 

「そうですよ、ガタバルさん!!」

 

何とカカロットが答えるわけじゃなく送るのを忘れていたのだろう。

ミスター・サタンがその問いに答えた。

お前も死ななかったんだな。

セルの時から鍛錬を怠っていないようで安心したぞ。

 

「じゃあ、別にいいがお前はそこを離れておけよ」

 

そう言って俺はカブンカの方へと向かう。

奴はどうやら治癒することができるようになったらしい。

邪神の力によるものだろう。

 

「しかし……」

 

腹に一撃を加えて、うずくまった所を上空へ蹴り飛ばす。

ブウのように煙になっても再生はできるのか?

もしくは再生にナメック星人のように体力を使うといった決まりはあるのか?

 

「俺は何度でもお前を痛めつける」

 

そう言って照準を合わせる。

始祖鳥は上空から撃ち落とす技。

それにふさわしい技の名を冠した一撃。

 

「『プライド・オブ・ラクタパクシャ』!!」

 

今までの中でも最大の大きさの鳥型の気弾。

それが奴に向かって飛翔する。

 

「ぐっ!!」

 

体を捻って逃れようとする。

しかしその瞬間その体を掴むように腕が出てきた。

今までと同じ鳥型だったはずなのに、人と鳥が一緒になったような……

 

「うわあああああ!?」

 

さらに炎に包まれて真っ赤に燃え上がる。

呑み込んでなお焼き尽くす。

その炎が消えた時、赤い翼がはらはらと舞っていた。

 

「まだ、生き延びてやがるだと……」

 

だが様子がおかしい。

まだ10分も経っていない。

だというのに奴らの気は別れていた。

 

「フュージョンが解けるほどの大ダメージか」

 

そう言うとぎりぎりと歯ぎしりをしながら二人とも立ち上がる。

目に狂気をたたえてやがる。

もはや超サイヤ人になってもダメージで著しく力は落ちている。

どうやら次にあの一撃を叩き込めば塵となってお終いだ。

 

「「こうなったら……」」

 

手を上に向けて気弾を作り出す。

自爆でもない、こいつらまさか……

 

「「お前らから消してやる!!」」

 

そう言ってカカロットとベジータに向かって投げる。

一人ずつ戦っているからベジータは何とかできるが、カカロットは……

 

「避けろ、カカロット!!」

 

そう叫んだ瞬間、信じられない光景があった。

跳躍して魔人ブウがその気弾を蹴り返す。

着地と同時に……

 

「ペッ!!」

 

太っちょの魔人ブウを吐き出して整えたのか。

そして……

 

「ンギャギャギャオオオー!!」

 

ラブカに怒りの矛先を向ける。

俺にはなぜブウがそうするかわかる。

正義感でも善意でもない。

獲物を横取りしようとしたからだ。

そんな存在は本能的に許せない。

だからこそ……

 

「ブウ、それは俺の獲物なんだよ!!」

 

ブウに向かって後ろ回し蹴り。

ブウを遠くへ蹴り飛ばす。

そしてジェスチャーで遠くに居るラブカは俺がやることを示す。

 

「チィィィ……!!」

 

怒りの形相を向ける魔人ブウ。

まるで駄々をこねる子供のようだ。

するとカカロットではなくおもちゃを取られたような怒りからか俺を睨む。

仕方ない……

気弾で吹き飛ばしてその隙にとどめをラブカにさしにいこう。

 

「「シャアアアア!!」」

 

全く同じ雄たけびを上げて向かっていく。

敵が全員自分に矛先を向けたのは不幸中の幸いか。

カカロット達は、この間にどうやってブウを倒すかを考えていた。




ブロリーとピオーネの敗因:
単純に不慣れな大猿だったり時間稼ぎしてただけ。
大猿ブロリーなら勝てて当然の相手です。
ピオーネもまだ4のガタバルと勝負したりはしてないので戦闘力伸びてません。

あと2話か3話ほどでブウ編は終わる予定です。
指摘などありましたらお願いします。


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『さらば因縁よ』

数話と言っていましたが一つにまとめられました。
次回からは日常回を少し挟んで『超』のストーリーに入っていきます。



「ふんっ!!」

 

腕を伸ばしては縮めて距離を詰めるブウ。

引き離そうにも伸縮速度が速すぎる。

 

「ヒャヒャ!!」

 

腕を伸ばして俺を捕まえる。

どうやら俺が邪魔をしたから俺の邪魔をしたいようだ。

それならば受けてたってやる。

 

「はあっ!!」

 

気合砲で飛ばす。

指でクイクイとかかってこいとやる。

その姿に怒りを感じたか、叫び声をあげて向かってくる。

 

「フンッ!!」

 

拳を避けて地面に向かって殴る。

バウンドしたブウを掴んで気弾を放つ。

首が無くなる。

 

「ヒヒヒ……」

 

一瞬で首が生えて不気味に笑う。

だがそれがどうした?

 

「ライッ!!」

 

次は下半身を全て吹き飛ばす。

にょきっと生やしたところに上半身を消しとばす。

 

「モグラたたきみたいになってきたな」

 

交互に半身を吹き飛ばしている。

あいつはだらだらとやっているみたいだが汗をかいている。

どうせ早く再生しても次も吹き飛ばされてしまうからだ。

 

「ハアアアッ!!」

 

死にぞこないの男二人が不意打ち気味に気弾を放つ。

それをブウは弾く。

俺もそれと同時に回避する。。

しかしそれは計算ずくだったのか。

ミスターサタンとカカロットに当たりそうになる。

 

「ちっ!!」

 

カカロットの分はベジータが弾き飛ばす。

そしてミスターサタンの分は……

 

「おまえ……サタンねらったな?」

 

そう言って太っちょのブウがカエンサの方に歩んでいく。

その顔は怒りに満ちている。

 

「ケケー!!」

 

迫ってくるブウを殴り飛ばす。

それが太っちょのブウに当たってしまう。

すると二人ともニヤリと笑って戦いを始めた。

これで俺は心置きなくとどめをさせる。

 

「言い残すことはあるか?」

 

せめてもの情けだ。

一言ぐらい聞いてやるぞ。

すると目くらましをしてきた。

 

「ゼハゼハ……」

 

どうやらもう一回フュージョンをするようだ。

傷は癒えるかもしれないし、サイヤ人の特徴もある。

僅かな可能性にかけてみるか?

 

「ハアアアア…」

 

息を吐き出して突っ込んできた。

手四つの形で組み合う。

だが、こんな程度じゃあ……

 

「だら!!」

 

ぐんっと押してやる。

相手が後ろに下がったらすかさず膝蹴り。

手を離して受け止める。

 

「はあっ!!」

 

気弾を放つ。

連続で何度も何度も。

近づけないようにする。

 

「ガアアアアア!!」

 

叫んで喰らいながら突っ込んでいる。

そんなものはただのやけくそだ。

 

「そう来たらこうしたらいいだけだ」

 

足元に拳を振るう。

その衝撃で体勢が崩れる。

気合砲で斜め上へ突き上げる。

 

「『マンデーリング』!!」

 

久しぶりに他人の技を使う。

相手の隙の作り方に重宝する技。

ラディッツさんには感謝だな。

 

「ぐっ!?」

 

締め付けられて身動きが取れない。

さあ……

 

「死刑執行の時間だ」

 

腕に気を集めていく。

さっきと同じ灼熱の鳥型の気弾。

4の時限定の最強の技。

 

「『プライド・オブ・ラクタパクシャ』!!」

 

気弾を撃つがかき消されていく。

そのまま腕を掴んで懐へ招き入れる。

鳥が翼を広げて包み込んでいく。

そのまま灼熱の存在へと姿を変えていく。

もがくが灼熱をどうこうできはしない。

 

「クソォオオ……!!」

 

煙が出ないように360度、灼熱の鳥の中。

徐々にその大きさは収縮していく。

そして眼前から鳥が消えた時。

奴等の細胞は塵一つ残らず焼き尽くされた。

サラガドゥラのように消滅させられたら楽だったのに。

 

そんな中、向こうで激戦が行われていたのだろう。

ボロボロになったベジータと太っちょのブウ。

サタンも死んではいないがダメージはある。

 

「いっけー!!」

 

カカロットの声とともに腕が振り下ろされる。

とてつもない元気玉がそこにはあった。

サタンの力があってのものだろう。

今や、世界中の一般人はサタンの言葉を信じている。

 

「ギギギ……」

 

ブウがカカロットの元気玉を押し返そうとする。

全人類の希望を乗せた一撃をたった一人で。

 

「お前、凄い奴だな……」

 

ただ一人孤独に生きた怪物。

太っちょとベジータをやっつけて、ダメージがあるにもかかわらず迎え撃つのか。

 

「ぐぐぐ……」

 

カカロットの体力が足りてはいない。

だがドラゴンボールがある。

この勝負は勝つことが決まっているようなもの。

 

俺はカカロット以外の面子を連れてもうナメック星に向かっていた。

これ以上は何の意味もない。

 

「終わらせてきたぜ」

 

すぐに瞬間移動でナメック星へ向かう。

どうしたものかという様な顔だ。

やはりカカロットの体力がないのが問題のようだ。

俺かピオーネがもう一回行って体力を回復させるか?

 

「俺が行く」

 

サラガドゥラが立ち上がる。

どうやら体力は回復したようだ。

 

「鼻垂れ小僧が目ざめさせたもの、弟の弟子とはいえ不始末は師が取らねばならない」

 

そう言うと目の前から消える

界王神界へと移動した。

 

「あいつに任せておけば大丈夫じゃろ」

 

そう言って水晶玉を見つめる。

こんなこと平然とできるとか凄い人だな。

 

水晶玉を見つめていると、サラガドゥラがカカロットの体力を回復させるのではなく二人で放ちにいく。

『復活パワー』をやる時に隙が生じる可能性があるからだ。

カカロットはブウに賛辞を送っていた。

たった一人で自分たちと立ち向かってきたこと。

そしていつかは善人になって勝負しようという約束。

最後にまたなと一言を放ってサラガドゥラと一緒に力を振り絞る。

 

断末魔をあげることもなく塵一つ残さずにブウは消えた。

その事実に界王神は安堵する。

……そう言えばお前さんは役に立ったのか?

 

「一応、悟空さん達を界王神界に連れていくお手伝いはしましたよ」

 

キビトと合体していたからか。

まあ、それだけでも功績はあるよな。

ただ、全人類へのテレパシーができないのは痛いな……

 

「不勉強なだけだ、俺はできる、師が凄かったからな」

 

サラガドゥラが戻ってきて欠伸をする。

その一言を聞いて老界王神様がにやりと笑う。

何故界王神は呼び捨てなのに、老界王神は様付けなのか?

それは単純に俺の解放に力を貸してくれたから。

 

「な、なんでこいつが!?」

 

悟天が太っちょのブウを指さす。

お前ら、熱中しすぎで気づかなかったのか?

 

「こいつはやっておかないといけないだろ!」

 

クリリンがそう言うとヤムチャもそうだそうだとはやし立てる。

だが、それを止めたのはサタンだった。

 

「私が責任を持ってみますから保護をしますから!!、今回は見逃してください!!」

 

太っちょのブウの前に立ってヤムチャとクリリンを止める。

こいつら、今のお前より強いのによく前に立ったな。

 

「サタンが保護するのか?」

 

こいつと仲がいいから制御はできるだろう。

それにこいつ自身は無邪気だから区別をつければ学習していく。

 

「はい!!」

 

そう言って頷く。

だから見逃してほしいと土下座をしている。

 

「確かに馬鹿な奴らが犬をやったりトワがちょっかい出さなかったらあのガリは生まれなかったからな」

 

俺はこの提案に賛成をする。

しかし地球人は太っちょの時に壊滅させられた。

その恐怖については対処が必要だろう。

このまま戻るわけにもいくまい。

 

「どうしたら人間達からブウの恐怖が消えるんだよ!!」

 

トランクスも言ってくる。

だがその解決策は十分目の前にあるだろ。

 

「ドラゴンボールで記憶から消したらいい」

 

ブウに対する恐怖心を無くす。

どうせ願いはあと一つ残っているのだ。

 

「それしかむしろ手はないな」

 

ピッコロも頷く。

それ以外はやはり無いような気がする。

 

「地球の人達から一気に消去するには最適解ですよ」

 

悟飯もさすがに今回ばかりは致し方なしといった所だ。

半年近くだったりわざわざ引きこもらせる事もないんだからな。

 

「まあ、今回はこの二人がいないとオラとベジータは負けていたし…」

 

そう言うとベジータも舌打ちをしてサタンに詰め寄る。

そして……

 

「きちんと管理しておくんだな、もし次、今回のようなことになったらもうその時は有無を言わさんぞ」

 

それだけ言って後ろへ下がる。

消そうとしないだけましだろう。

 

「そういう訳でデンデ、治してやってくれ」

 

そう言って俺がポルンガの前に立つ。

10年ぶりにこいつに願いを言うんだな。

昔取った杵柄。

流暢にナメック語を話す。

初めて聞く本場の幼子たちも驚いている。

 

そしてポルンガがOKと指で丸を作った。

数分後、地球中からブウの記憶は消えたといった。

これでサタンが『見知らぬ存在』から世界を救ったになるだろう。

手柄は持って行ってもらった方がいい。

正直持っていても面倒な名誉だからな。

 

「とにかく界王神界に戻りましょうか」

 

そう言ってまずは老界王神様とキビト神が帰る。

サラガドゥラは地球に皆を送り届けた。

カカロットとベジータ、俺とピオーネ、ターサは残る。

ちなみにトワたちは暗黒魔界に帰った。

奴等も今回で随分と力を使ったようだからしばらくは回復に回すらしい。

 

「何十人も一気に送るのって難しい」

 

しばらくしてサラガドゥラが帰ってきた。

そして界王神界まで俺達を送り届ける。

すると老界王神様が呆れていた。

 

「ここまで見事に頑丈な聖域を壊すとはの……」

 

まあ、復興はこいつとワシがおりゃ十分だがな。

そう言って笑う。

サラガドゥラはもう暗黒魔界に帰る気も失せているらしい。

復興させたのち、地球へ行くか。

もしくはここに住むと言っていた。

 

「そうか」

 

俺はてっきり地球に来て居候するのかと思った。

なんだかんだできっとこいつとはいい関係を築けそうな雰囲気があった、

 

「困ったらいつでも言ってくれよ」

 

去る前にそんな事を言ってくる。

お前に頼らなきゃいけない相手なんてそうはいないだろう。

それに俺も強くならないとな。

 

「あと、あのブロリーとかいう奴の尻尾を治すから伝えておいてくれ」

 

今回の勝負で千切れてしまったからな。

再生させないと困る。

もう話すこともみんな終わったみたいだ。

 

カカロットとベジータが瞬間移動ですぐに帰る。

あいつら、そんなに早く帰りたかったのか?

疲労困憊なんだからゆっくりすればいいのに。

 

「じゃあ俺達も帰るか」

 

そう言ってピオーネの手を握る。

ターサがピオーネの手を握る。

瞬間移動で地球へと戻った。

デンデとポポ、そしてピッコロしかいない神殿。

今回ばかりは全員がしんどかったのでパーティも後日になるようだ。

 

俺たちは3人とも神殿から舞空術で飛び降りる。

そして、しばらくすると地上に降りる。

ここからゆっくり歩いて帰るか……。

そんな事を考えているとターサが手を差し出してきた。

 

「お父さん」

 

その呼びかけに応えるように手を取る。

強くは握らず、優しく。

まるで陶器を扱うように。

 

「お母さん」

 

ピオーネに呼び掛けるとピオーネも応える。

俺と同じように投棄を扱うような優しさで握りしめる。

するとターサが両方の手に力強く握り返す。

それが心地よかったのかターサが満面の笑みを浮かべる。

そしてピオーネと顔を合わせる。

二人とも思わずほころんでしまう。

帰ろう、4年ぶりの我が家へ。

二人でターサの手を握り家路へとつくのだった。




魔人ブウ編が終わりました。
反省点としてはゼノのバトルで4フュージョンを出してみたりなど
正直、強さを時間制限有りとはいえインフレさせすぎた感じになりました。
しかし次からは明確な指標でもある存在が出てまいりますので、幾分かは楽になりそうです。

指摘などありましたらお願いします。


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『神と神』編
『平和な中の眼覚め』


少し短いです。
今回から『超』に差し掛かっていきます。
敵陣営の強化はあまりごちゃごちゃした系統は無くなります。


ブウとの戦いから翌日。

ある意味最大のピンチに見舞われていた。

 

「仕事行ってない……」

 

サラガドゥラの仮面をつけられていた四年間。

おれは喋ってもいなければ人間界に戻っていない。

つまり仕事を無断でなんと四年も休んでいたことになる。

 

「大丈夫だって……私も似たようなものだし」

 

ピオーネは俺の失踪以降全然仕事にはいかず捜索していたらしい。

大変申し訳ございません。

 

「とりあえず国王様たちに事情説明しないと……」

 

そう言って説明したが、さすがに四年間も留守にしたのは問題だった。

その為仕事は首になってしまったのだ。

いまさらといった感じである。

 

「貯金ならあるし……」

 

そう言って通帳を見る。

夫婦そろってファイトマネーがあるにもかかわらず勤続していた。

その為、もはや暮らしに困ることもない。

 

「年齢的にもね……」

 

今からは難しい。

ならば悠々と過ごした方がいい。

幸い、遊んで暮らせる金っていうのか?

その単位は持っている。

 

「自給自足したらいいし」

 

食事は釣りに行ったり畑を継続して行えばいい。

少なくても子供を養える分の蓄えはある。

 

「悩み解決したね……」

 

そうだね。

しかも数分もかかってないよ。

節制はできるし。

 

家に帰ろう。

そんな事を考えているとブロリーが来た。

時々ゲリラって感じで舞空術で来ないでくれ。

 

「尻尾を治したいんだけど……」

 

ああ、千切れたもんね。

悟飯の尻尾を治した実績もあるし老界王神様の所に行くか。

あいつ学校でどういった格好するんだろう。

 

「ちょっと行ってくるわ」

 

そう言って瞬間移動。

するとサラガドゥラが出迎えてくれた。

どうやら本格的に界王神見習いとして過ごすようになったらしい。

たった一日で進路決めてるのか、速すぎんよ。

 

「お師匠さんに治してもらうのか?」

 

その前に綺麗に切断しておいた方がいいんじゃないのかといわれる。

それを老界王神様に聞いてみた。

 

「途中からじゃと歪になりかねんからのう」

 

そういう訳でサラガドゥラが斬り飛ばしてくれた。

そしてコーヒー豆ひきが始まる。

ガリガリと音を立てる。

 

「悟飯の奴はどれくらいで生えたんですか?」

 

長かったら根気はあるが万が一暴走したらまた界王神界の被害がでかくなるからな。

すると顎に手を当てて時間の計算をしている。

 

「あやつは元々切られとっただけじゃからな、数時間で生える兆候有りで出したんじゃよ」

 

あいつも数時間あればいけるじゃろう。

そう言ってマグカップを出していた。

 

「お前さんも昼寝ぐらいしておけ、退屈なだけじゃぞ」

 

そう言って昼寝をする。

すぐに微睡んで夢の中に入っていく。

 

.

.

 

「媚びを売る奴は嫌いだ」

 

そう言って歩いているのは紫の猫型の人。

それを先導するのは杖を持った柔和な笑みの人。

 

「良いではありませんか、予言魚さんも言っておられたのでしょう?」

 

そう言うとぽりぽりと頬をかく。

そして気だるげに溜息を吐く。

 

「出来損ないの子供とは言ってないだろ?」

 

ぶつぶつと言いながらいらだちを隠さずに進んでいく。

気難しい存在だな。

 

「しかし折角勧められたのですしその者に触れても損はありませんよ」

 

ホホホと笑いながら言っている。

その態度に苛立っているようなそぶりをしながらそのまま俺の顔を覗き込む。

 

「破壊されたらお終いなのにね……」

 

そう言って掌で頭をポンポンとたたく。

これでいいのか?といった顔で付き人を見る。

 

「ええ、これで十分でしょう、ビルス様」

 

神の加護は与えられました。

幸か不幸かは分かりませんがね。

生き残れるでしょう。

 

とその付き人のような人が言っていた。

紫の猫のような人はビルスというらしい。

 

「フリーザに頼んでおかないとね」

 

欠伸をして首をコキコキと鳴らす。

まさか惑星ベジータの崩壊は……

 

「ベジータ王が生意気な態度をとるからね、いい加減にしてほしかったんだよ」

 

ましてや僕を知っていながら、小馬鹿にするような真似をするなんてね。

随分と『破壊』されたいらしい。

そう言ってにやりと笑っていた。

善でもなく悪でもない。

ただ破壊の神としての責務を果たしている。

そんな風格と威厳が漂っていた。

 

「帰るぞ、ウィス……眠くなってきた」

 

ウィスという付き人を呼び、光の帯となって惑星ベジータから去っていった。

 

.

.

 

「はっ!?」

 

不思議な夢だった。

赤ん坊のころの夢のようだが第三者の目線から見ていた。

破壊神ビルス。

そんな存在がかつて惑星ベジータに訪問していたとは。

 

「結構熟睡しとったのう」

 

笑っている老界王神様。

とにかく聞いておくか。

 

「あの……破壊の神についてお聞きしたいのですが」

 

そう聞くと苦い顔をする。

嫌な記憶だろうからな。

 

「ビルス様について聞くなんて物珍しいのう、35年前に眠られたし、余計なことをせんかったら破壊もされんよ」

 

俺がまだ幼い時だから間違いない。

そんな事を考えていると目の前に映る未来。

 

「『超サイヤ人ゴッドを知っているかい?』」

 

起きているじゃないか。

しかもカカロットに聞いている。

カカロットが3になっているからきっと遠くない。

 

「『やべえぞ、地球じゃブルマの誕生日パーティーだ……』」

 

いや、お前は何修行しているんだよ。

界王星に来てまで人の誕生日に行かないって何なの?

未来とはいえ内心突っ込みたい。

 

「未来が見えるんですけど、きっと……!?」

 

そう言った瞬間、体中の毛が逆立つ。

今ここに来ている訳じゃない。

ただ、確かな予感。

しかもこういう嫌なものに限ってあたってしまう。

 

「目覚めてしまったのではないかと……」

 

そう言うとすごい剣幕で冗談は言うなと怒られる。

もし目覚めていたらどれだけの星が犠牲になるのか……

怯えながら呟いていた。

 

「でも破壊することには秩序や何かしらの理由があるのでは?」

 

極悪人だらけの惑星。

文化レベルが発達していない惑星。

人が住めない環境の惑星。

もしくは小惑星など。

そう言った事柄の星を破壊しているのではないのだろうか?

 

「無いんじゃよ」

 

汗をかいて言ってくる老界王神様。

理由がないって事は完全に……

 

「気まぐれで破壊をされると……」

 

その言葉に頷く。

かなり恐ろしいな。

まるで災害のような……

通りすぎるまで待つしかない、もしくは逆鱗に触れないようにしなくては。

 

「出会っても戦いを挑むんじゃないぞ……」

 

大丈夫です。

ブウの時にまだ自分がその域に達していない事に気が付きましたので。

カカロットみたいに挑みませんよ。

ただ、向こうに力を示せと言われたら話は別ですが。

 

「あのお方から来いと言われた時だけじゃぞ」

 

そう言ってブロリーの方に目を向ける。

あいつの尻尾が徐々に生えている。

いい汗かいていますという、素敵な笑顔で回している。

 

「そう言えば……」

 

サラガドゥラが声をかけてくる。

マグカップを出現させていた。

もう飲む気満々じゃないか。

 

「あの女についてはどうなった?」

 

ああ、ラエンカの事か。

奴は地球に定住している。

しばらくの間はゲテスターで住むらしい。

ホイポイカプセルがあっても街中であれは不自然だからのようだ。

 

「とにかく、警察官になるらしい」

 

秩序を知ってヒーローアニメを見ているような女。

そして『正義の味方』ともいうべき警察官の姿に憧れたらしい。

するとそう言った勉強をゲテスターと行っている。

 

「戦力にはなりそうだな」

 

サラガドゥラはこれで終わりではないだろうと言っていた。

まだまだ波乱はある。

そんなときに戦えるのが少ないとお話にならない。

 

「まあ、あれ以上となると神の次元だろう」

 

そうだったら俺が出る。

そう言ってお湯を沸かしに行った。

 

「ビルス様には勝てん、ちょっと前に悟飯の儀式の途中で来た孫悟空にもいっておけ」

 

そう言って再三の忠告を受ける。

ベジータなら脅威を知っているだろう。

ナッパはどうなのだろうか?

 

「お前の父親は踏まれている王を助けはしなかったんじゃないか?」

 

つまり親は知っていたのだろう。

だが……

 

「母親だって知っているはずですよ」

 

王妃の護衛だったり侍女のようなこともしていたからな。

また、家に帰ったら聞いておこう。

 

「星の破壊には目を背けておけ、何があってもじゃ」

 

そう言ってブロリーに挽かせるのをやめる。

そして俺を呼ぶ。

 

「尻尾を引っ張り出せ」

 

老界王神様が言う。

確かに半分ほど出ているけれど……

 

「無理やりではないから痛みもないじゃろう」

 

そう言って俺に尻尾を掴ませる。

随分と太くてごわごわしているな。

 

「超サイヤ人3ぐらいならいけるじゃろ」

 

そう言うので超サイヤ人3で引っ張りに行く。

徐々に抜かれているがブロリーは表情が変わらない。

それどころか欠伸をしていやがる。

 

「ぬぬぬ…」

 

慎重になっていく。

千切れないように。

少し進めば深呼吸。

もう一つ進めば深呼吸。

そうやって地道に僅かに引っ張り続ける。

 

「ストップじゃ」

 

そういわれて手を止める。

綺麗な尻尾がそこにはあった。

ブロリーも腰に回して手触りを確かめて満足そうな顔を浮かべる。

 

「成功ですね」

 

老界王神様に言ったら頷く。

そしてコーヒーを入れて一杯飲んで一息ついた。

 

「今日の所はこれで帰ります」

 

コーヒーを飲み終えて他愛もない話をした後。

そう言ってお辞儀して瞬間移動で帰っていった。

 

「折角ゆっくりできるんだし、どこか出かけたりしない?」

 

家に帰ってからピオーネに言われる。

そうだな。

あの仮面をつけた数年間。

その空白を埋めないと。

そう言った事をしても罰は当たらないはずだ。

 

「平和な今に感謝するかな」

 

首をコキコキと鳴らしてピオーネに言う。

その言葉に笑顔を浮かべる。

ピクニックに行ってもいい。

旅行で羽を伸ばしたっていい。

しばらくはゆっくりとしていこうと心に決めるのだった。




次回あたりは悟飯の結婚式だったりの日常回をやって、そこからビルス様登場に上手く差し掛かればと思います。
指摘などありましたらお願いします。

追記
4年後という設定でしたので多少改稿いたしました。


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『新たな生命』

今回も短めです。
ちょっとR指定喰らいそうな表現があります。
とにかくピオーネの正体は次回に説明させます。


4年間を埋めるように色々な場所へ行った。

遊園地。

ピクニック。

海。

山。

旅行。

 

色々な場所でターサとピオーネが楽しむ。

それだけで心が満たされた。

だが帰ってきた後にターサからこんなこと言われてしまうとは…

 

「妹か弟が欲しい」

 

どうやら旅行先で弟をおんぶしたり、妹を心配する兄妹を見て羨ましかったらしい。

それを言われてどうしたものかと汗をかいて助力をピオーネに求めるが……

 

「欲しいのね……」

 

そう言ってこっちを見る。

その瞬間、身が竦んで動けなかった。

 

「今日からしばらくの間、一人で寝ていい子にしてればきっとお姉ちゃんになれるわ」

 

子供には女神のような微笑み。

しかしそれはこっちからすれば肉体の限界に挑み続けるようなものであった。

お願いです、今度はわがまま言わずに普通の形態で励まさせてください。

超サイヤ人4でとか言われたら子供がどんな潜在能力を持っているかわからないから。

そして今後のブロリーの方にも当てはまる。

ターサが現にブウの時の修行で3になっていたらしいし、ロマネの方もオンオフ切り替えできる『伝説』という有様だった。

 

「本当?」

 

キラキラした目でターサが言う。

それに頷いて、嬉々として買い物に誘う。

覚悟を決める。

 

「お手柔らかに……」

 

そう呟いて俺も一緒に出掛けた。

体がもつだろうか?

久々だしあれから年は取っている。

多分サラガドゥラの仮面をつけてなければもっと早い段階で兄弟ができていただろう。

確信している。

 

「とは言っても……」

 

超サイヤ人4でやれと言った所で壊れる。

身体強度がまるで追いついていないのだ。

だから絶対にない。

 

「流石に壊れるほどとかは無しにしてほしい」

 

結論から言うと無理だった。

3の状態では力を押さえつけられてしまう。

男性としての尊厳が4を使用させた。

その結果、ピオーネが例え女傑であろうとも気絶と覚醒を繰り返していく。

流石にまずいと思って3にしたら逆襲されて背中に爪を立てられる。

時には首筋に噛みついてでも4の解除を許さなかった。

肉体の強度が徐々にその次元で上がっていく事を感じ取っていた。

いつ、いかなる時も強くなる。

せめてこういう時ぐらいはそうならなくてもいいのだが…

 

「結果……こうなるか」

 

それから数か月後。

ピオーネが膨らんだ腹を微笑んでさすっている。

検査結果は男の子。

 

「ふふふ……」

 

ターサは喜んでいるし、ピオーネも喜んでいる。

だったらいいんじゃないかな。

男の尊厳は今回は守れたし。

 

「じゃあ、仕事に行ってくる」

 

あれから結局は仕事をブルマさんに斡旋してもらった。

といっても機械系統のテスター。

シェルター室でどれだけ激しく動いたらいけないかの実験。

パートナーはベジータ。

 

お互いが向き合って構えをとる。

あくまでスパーリングで。

 

「超サイヤ人4でこないのか?」

 

そう言って蹴りを繰り出すベジータ。

元の戦闘力同士ならば差がある。

その為に受け止めて投げる。

 

「耐久テストで壊す事確定のテストをしてどうする」

 

ベジータが着地をする。

そこに突っ込んでいく。

 

「はっ!!」

 

超サイヤ人で突っ込みを食い止める。

だが腕がフリーだ。

 

「『ファイナルフラッシュ』!!」

 

ベジータのお株を奪う一撃。

それを超サイヤ人2でかき消す。

俺もならって超サイヤ人2になる。

 

「いくぞ!!」

 

そう言って気弾を撃ってくるベジータ。

弾幕になって迫ってくる。

それを尻尾で打ち払う。

 

「ふっ!!」

 

同時に接近していたベジータのタックルを受ける。

壁の衝撃吸収材が仕事をする。

しかし……

 

「『エラー発生、自動ロックを解除します』」

 

罅はないが衝撃がキャパシティを凌駕した。

どれくらいの衝撃を想定していたのかな?

 

「ベジータと孫君が超サイヤ人で戦ったぐらいね」

 

車の衝突なんて比較にならない衝撃だと思うんだが。

まあ、地球全体で被害を被るようなことがあれば無理もないか。

 

「しかしあんたも仕事がなくなったっていったけど、頭下げてまで働きたいなんてね」

 

笑って言ってくる。

だって養うべき立場なんだよ?

そう言うとさらに笑われた。

 

「ベジータなんて時々しか手伝わないし、孫君も働かないからね」

 

ターレスやブロリーに関しては強く言ったからな。

スパーニやラエンカもサイヤ人ではあるが女性という事で戦闘意欲が薄いのか、すぐに勤労活動を始めようとしていた。

 

「戦闘民族だからな」

 

そうは言うがお前さんは地球基準ではかなり危ない状況だぞ。

確か『ヒモ』っていうらしい。

トランクスたちも理解してくれているのかな?

 

「そう言えば子供ができたんだって?」

 

ブルマさんが言ってくる。

一体誰から聞いたんだろうか?

 

「ちょっと前にトランクスが孫君の家に行った時に見かけたらしいわ」

 

なるほど。

そりゃあ気づかないわけだ。

なんて伝えたのかな?

 

「おなかが凄い膨らんで豚さんみたいだって……」

 

その瞬間、超サイヤ人4になっていた。

そして一瞬でトランクスの前に瞬間移動していた。

 

「トランクス……組手の時間だぁ」

 

髪の毛を掴んで立たせる。

少し怯えているが関係ない。

超サイヤ人で逃げるが無駄だ。

 

「どこに行くんだ、組手だぞ」

 

くるりと背中を向けて逃げ出そうとするが気弾を放つ。

避けたから握りつぶす。

指をさして言ってやった。

ブロリーの方が圧倒的に似合いそうな言葉を。

 

「血祭りにあげてやる……」

 

そう言って超サイヤ人のトランクスにじりじりと近寄る。

流石に覚悟を決めたのか。

目つきが変わってこっちを睨むようになる。

 

「やれるもんならやってみな!!」

 

蹴りを指一本で止める。

にやりと笑って距離をとる。

 

「ハエが止まるような蹴りだな、トランクス」

 

そう言って蹴りを返す。

両腕で受け止めるが吹っ飛ばされる。

廊下だから蹴る方向を間違えなければいい。

 

「くっ……そー!!」

 

突撃をしようとするトランクスをベジータが止める。

そしてこっちを見てくる。

 

「ここで暴れるのはよくない、場所を移すぞ」

 

くいっと指で合図をする。

それに応じて向かっていく。

岩場に着くと同時にベジータが超サイヤ人3になる。

トランクスはすでに見物人だ。

 

「子供の悪口に目くじらを立てるのは大人げないぞ」

 

ベジータがそう言ってくるのを聞き流す。

許すわけがないだろう。

自分の悪口なら許したが嫁と子供の悪口は絶対に許せない。

 

「じゃあお前はターサがブルマさんの悪口を言ったら許すか?」

 

そう返してやると顔をゆがめる。

そして間髪入れずに答えてきた。

 

「許さんな」

「そう言う事だ」

 

ベジータの答えが合図になる。

お互いが3で勝負をする運びになっていた。

理由は4は隔絶されすぎて戦いにならない。

それを二人の共通認識として持っている。

一回やりあったが、一方的過ぎて話にならなかった。

 

「ふんっ!!」

 

ベジータの拳を受けとめる。

それを軸にして回し蹴りを放つ。

 

「はっ!!」

 

ベジータが上体反らしで避ける。

そこから回転して肘打ちを放つ。

 

「ちっ!!」

 

肘打ちが頭に掠るがすかさずアッパーを顎に掠らせる。

ベジータは僅かに後退して追撃を止める。

それで再び距離が開いた。

 

「はあああああ!!」

 

気弾の弾幕を放つ。

それに腕を交差して受け止める。

しかしそれは失策だった。

低空タックルを同時に仕掛けていた。

目線の高さとのミスマッチが隙を生む。

足を抱えこむとそのまま持ち上げる。

 

「だりゃああああ!!」

 

抱え込んだ手を組み替えて頭と腰を締め付ける。

そして抱え込んだまま回転をする。

その猛烈な勢いのまま上空へと俺を投げる。

照準をきちんと合わせている。

 

「『ファイナルフラッシュ』!!」

 

これは避けられない。

体を捻る隙も与えない。

こういった戦い方はカカロットはできない。

流石はベジータ。

敵に回したくない男の筆頭なだけはある。

ブロリーのような暴走したらとかではなく通常でこんな戦い方をされるのは厄介極まりない。

 

「うああああ…」

 

避けられず一撃を食らう。

だがそれでやられる俺じゃない。

油断をしていないベジータに向かってこっちも最大の技を放つ。

 

「『アルバトロス・ブラスター』!!」

 

それを読んでいたという様に気を高めていた。

連射できるほど修行していやがったか。

それよりも仕事しろよ、仕事を。

 

「『ファイナルフラッシュ』!!」

 

技がぶつかり合う。

俺のアホウドリが光を食いちぎってベジータへと向かう。

それを受け止めるが……

 

「俺の間合いだ!!」

 

瞬間移動で懐に忍び込む。

一気呵成に畳みかける。

 

「はっ!!」

 

脇腹に一撃。

一本拳のわずかに飛び出ている指が捻じ込まれる。

肘打ちで顔をかちあげ、頭突きで鼻を潰す。

ローキックで体勢を崩して、腹にアッパー。

延々とベジータに反撃のタイミングを見出させない。

心を圧し折る猛烈な攻撃、連打に次ぐ連打。

ベジータが血だらけの顔になり超サイヤ人が切れるまでその惨劇のごとく嵐はやまなかった。

その嵐の後に残ったのは血まみれの自分の拳とぐったりとしたベジータだけだった。

 

「パパ!!」

 

トランクスが駆け寄る。

それを止める。

ベジータを抱えてカプセルコーポレーションに戻る。

メディカルポッドに放り込んでおいた。

 

「まあ、一時間もしないうちに治るだろ」

 

そう言って待っていた。

トランクスが睨んでいる。

元はといえばお前が逃げずに謝れば良かっただけだぞ。

俺が怒らないとでも思ったのか?

4年間いなくても愛の重さも大きさも変わらないんだ。

それならば、罵倒することの恐ろしさを知っておかないとな。

 

「負けたのか……」

 

ベジータが目を覚まして服を着る最中に言ってくる。

そりゃあ、お前……俺は改造で強くなっているからね。

それがなくても負ける気はしないけれど。

 

「トランクスに言っておけよ」

 

次はない。

ベジータが止めても、間に入っても。

必ずお前を塵にする。

ピオーネやターサへの罵倒はそれほど重いもの。

妊娠したのは愛ゆえに。

それを動物のようだと言われて怒らぬ奴はいないだろう。

 

「分かっている」

 

ベジータも頷く。

そして、次は負けないと呟いていた。

 

そしてそれからさらに時間は経った。

ブウの戦いからちょうど一年ほどたった頃。

 

「有難う」

 

ただその一言だけ言ってピオーネの手を強く握っていた。

第二子の誕生だった。

男の子だった。

名前は『ゲンサイ』

ターサと同じく尻尾が生えている。

 

「私もお姉ちゃんになるんだね」

 

10歳になったターサが喜んでいた。

その笑顔をみたピオーネも笑顔だった。

新しい命の誕生に皆が祝福をしてくれた。

 

「んっ……」

 

体を起こして着替えを手伝う時にピオーネの背中に大きな痣が浮き出ていた。

それは痛々しいものではなく紋章のように。

今まで無かったものが急に見つかっていた。

それはまるで三又の矛を思わせる。

とりあえず誰かに相談してみよう。

そしてこれがピオーネの正体を判明させる大きな手掛かりとなるのだった。




今回で神と神まで残り3年。
次回は悟飯の結婚式だったり、まだ使えそうな悪役がないかを確認して少し戦いを描いてみようと思います。

指摘などありましたらお願いします。


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『今は無き宇宙の民』

ついにピオーネの正体が判明です。
設定としては複雑だったり分かりにくくなるかもしれません。
プロフィールでもまた記述しておきます。


ピオーネとの子育てがひと段落したころ。

あの痣について考える日が多くなっていた。

医学的には特に悪性でもない。

 

「相談してみるか」

 

そう言って界王神様やピッコロ。

知恵を持つ人との話し合いをしてみた。

 

「まず痣は今までになく今回の第二子の誕生に伴って浮き出てきた」

 

そう言って推測を立てたのはピッコロ。

思ったより速いな。

 

「超サイヤ人4のサイヤパワー、つまり強い一撃を常に体の中に打ちつけられたことによる潜在能力の開花ではないだろうか?」

 

仮にそうだとしたら今までのあの強さに合わせて上がっていくのもその前触れだったかもしれない。

それの目覚める強さに達して紋章が浮かんだのか?

 

「どんな形をしていましたか?」

 

それも重要な部分だな。

確か形は……

 

「三又の矛ですが思い当たる節は?」

 

砂に書くようにして形を表す。

形をしげしげと眺めるが界王神様は首をかしげて思い当たる事は無いと言ってきた。

この人の知識って老界王神様に比べたら少ないよな?

 

「……まさかの話じゃが」

 

少し半信半疑といったような感じだった。

いったいどういった事を思ったんだろう。

 

「お前さん、この宇宙が何個あるか知っとるか?」

 

こっちの疑問へ答えるのではなく、いきなりそのような事を言い出した。

宇宙が何個?

俺はかつてズノーから聞いたのには俺たちが第七宇宙で、その隣が第六宇宙。

その二つしか知らない。

 

「まあ、知らんのも無理はない、答えは12じゃ」

 

応えられないのを察してか。

老界王神様が答えてくれる。

だが次に補足が入る。

 

「しかし昔は18あったんじゃよ」

 

今より6つ多かった。

何故減ってしまったのだろうか。

それを感じ取ったのか、老界王神様が話を続ける。

 

「何故今、6つの宇宙がないのかというとな……」

 

ごくりと喉を鳴らしてそのことを伝えようとする。

恐れ多いという様に。

怯えよりも軽々しく口にしてはいけないと己を戒めるような感じだ。

 

「我等より上のお方、『全王』様によって消滅したからじゃ」

 

多かったこと。

そして惑星の民族のレベルが低い事。

また、危険な存在が跋扈したこと。

 

「かつての第十八宇宙ではな、破壊神が強さを望み、界王神と共に創生した星の民がおった」

 

破壊の神が強さを望み、それに応じた創造の神。

恐ろしい考えといってもいい。

どうあがいても目をつけられてしかるべき内容。

 

「破壊神が望む強さとは自分と同等、そして何が問題であったか」

 

つまり神の強さを持った人々の創造。

そんなとんでもない事をしたのか……

問題点は何があったのだろう。

 

「それは『人間レベル』が一番高かったことじゃ」

 

その人間レベルの高さを利用して最高峰の星と種族の確立を行った。

その結果、普通の宇宙のように数万年、もしくは数重、数百万年という果てしない時間。

それらを要することなく突然変異のようにとてつもない資質と力を持った人々で溢れかえった。

この創生の結果、凶暴なサイヤ人と違い、頭脳面もかなり高く老界王神様も一度若い時に見たがその高すぎるポテンシャルに身震いがしたらしい。

 

「神殺しを完遂可能と言われた種族、惑星バンヤの民」

 

つまり少なくてもズノーでかつて聞いた超サイヤ人ゴッド以上の強さになるのか。

その先祖の血が今回のそう言った行為の末に目覚めた。

つまり潜在能力というピッコロの推測はあながち間違いではなかった。

 

「それがあの女の正体じゃないかのう」

 

すなわち神の強さを将来的に要する人。

そんな存在が破壊神や全王と呼ばれる方に知れてしまったら……

 

「しかしキューブを使ったとはいえよく第七宇宙に飛ばせたな、いや……消滅前から飛ばしておったのか?」

 

老界王神様が首をかしげてうんうんと唸る。

自分がいた時でこんなことが有れば、このような真似はさせなかった。

そういいたげである。

 

「神の乗り物に乗せてまで残したい存在だったんじゃろう」

 

しかし、それから悠久の時は過ぎていく。

その過程で破壊神ビルス様たちが気づかぬような辺境の星々に移り住んだ。

元より人間としてのレベルの高さが相まってその星の文化レベルは上がっていく。

それを繰り返していく事でいろいろと特徴的な星は出てきた。

 

しかし子孫の繁栄が高すぎるがゆえに種族の種を残せず、同族同士での繁栄で純度のみが高まっていった。

まるで蟲毒のような形になってしまい徐々に減っていく。

その結果、神殺しの種族の純度が極限の値まで高くなる。

それが先祖から遠く時が過ぎ去っていき潜在能力、もしくは埋もれてしまった力となる。

その埋もれたものが今回引き出されたというわけだ。

 

「最後の一人じゃったとしてもお前さんの為に力を使っておるし」

 

ピオーネが危険ではないと知っている。

仮にかつての埋もれていない状態ならば、繁栄もなく地球やほかの星がその民に侵略されてもおかしくはなかった。

 

「そう考えると危険ではないでしょうね」

 

サラガドゥラも頷く。

そう言えばお前も一人は消滅させていたよな?

つまりおまえも神の中ではかなりえげつないんじゃ……

 

「ビルス様が起きたら相談しておかねばならん」

 

破壊の対象になるか危険性がないから見逃すか。

あのお方は気まぐれじゃからな。

それだけ言って老界王神様はお茶を飲みに戻った。

 

「わざわざ手間を取らせてすみませんでした」

 

きっとピオーネ自身も知らない事。

いつかは打ち明けないといけない事。

それをどう切り出すかを悩みながら神殿へと戻った。

 

.

.

.

 

その悩みはすぐに霧散した。

本人も出生を知っていなかったのかきょとん顔だった。

あくまで予想だから何かしらの方法で証明しない事には確約はない。

 

「これを確実に知る人はまだこっちに向かってはいないからな」

 

破壊神ビルス様。

そのお方と付き人ならばわかるらしい。

起きてもらわないとな。

それに予知の内容から考えて、何とかしてベジータに超サイヤ人ゴッドになって貰っておくか?

カカロットの奴はきっとなれても最初から本気を出さない悪癖のせいでお怒りを買う可能性まである。

 

「でも、それなら努力して伸びたり同じぐらい強くなったのも納得だね」

 

眠っていたのが徐々に起きていたというわけだからな。

もしその純度が高すぎたならば、神をも超えていく。

その為には今まで以上の鍛錬が必要なわけだが。

 

「とにかく今まで通りでいいよ」

 

いきなり立ち居振る舞い変わったり、遠慮されると困る。

向こうもいきなりこっちが下手に出たら気分が悪いだろう。

それを分かっているからか頷く。

 

「それはそうと悟飯君は最近どうなの?」

 

そう言えばあいつ、サタンの娘と交際しているらしいな。

お互いが初々しいらしい。

ちょっかい出そうとラディッツが考えたがニアに止められていた。

なんやかんやで面倒見がいい。

ただ悪い方向に行くこともしばしば。

ピッコロは見守っているようだが、恋愛自体を知らない。

腑抜けていないかどうかを確認しているだけのようだ。

 

「交際も続いているし結婚もあるんじゃないのか?」

 

そうだとしてもまだあと一年ぐらいはかかるだろう。

速くしても、誰も咎めはしないだろうに。

奥手なんだな、あいつ。

 

「そうなったら誰がスピーチするんだろうね?」

 

ピッコロだろうな。

肌の色以外は問題ないから何かしらの魔術で見た目変えてもらえばいいのに。

カカロットはあまりこういうのはできない。

もしくはベジータやクリリンあたりか?

 

「ほとんど消去法しかないのがつらい……」

 

一般的な人生を送ったりとかしていないからな。

普通なら友人ぐらいに頼めそうなものなのに。

 

「まあ、何とかなるでしょ」

 

そう言って家事に戻る。

その時に考えたらいいもんな。

 

「お父さん」

 

ターサが声をかけてきた。

どうやら修業のようだ。

俺としてはそこまで強くならなくてもいいと思うんだがな。

事実10歳で超サイヤ人3とかあの日の悟飯以上だし。

 

「じゃあ組手するか?」

 

そう言うと頷く。

岩山に飛んでいき、向かい合う。

 

「本気で来いよ」

 

遠慮するんじゃない。

そう目で訴えて構える。

その気持ちを汲み取ったのか、一気に超サイヤ人3となって向かってくる。

 

「ハアアアッ!!」

 

拳を振るう。

それをひょいひょいと避けていく。

時に手で受け止めてやる。

 

「やぁっ!!」

 

跳び後ろ回し蹴り。

交差して受けようとする。

しかし…

 

「かっ!!」

 

手から気弾を出す。

その反動でフェイントをかけてきた。

そしてムーンサルトキック。

 

「ぬっ……」

 

頭部に蹴りが当たる。

すると地上にターサが降りて指をちょいちょいとする。

地上戦がお望みか。

 

「良いだろう」

 

そう返して地上で向かい合う。

じりじりと間合いが詰まる。

お互いの必殺の間合いに。

 

「ふっ!!」

 

蹴りを放ってくる。

それを受け止めて後ろに飛び、その勢いを吸収。

勢いのまま、先に着いた足を軸にして蹴りをこちらが放つ。

 

「むむ!!」

 

頭を下げて回避していく。

だが……

 

「があっ!!」

 

途中で止めて踵落とし。

フェイントだ。

さて、どうする?

 

「『ギャリック砲』!!」

 

ベジータの技を放つ。

それを活かして逃げるのではなく、あえて懐まで入っていく。

そして片足を掴んで……

 

「うぉおおおお!!」

 

雄たけびと共に俺を上へと投げる。

そして一気に気弾を雨霰のように放ち始めた。

 

「だりゃりゃりゃ!!」

 

回避できる速度も混ぜてはいるが……

これはあの技だろう。

何度も見たらわかる。

 

「『魔空包囲弾』!!」

 

一気に寄せ集める。

その瞬間、額に指をあてて瞬間移動。

地味にピッコロとベジータの技は人気があるな。

 

「『太陽拳』!!」

 

目晦ましをしてくる。

またも、距離を取られてしまう。

 

「『アルバトロス・ブラスター』!!」

 

まさか俺の技を使ってくるとはな。

嬉しいがこっちは本家本元。

負けてやる気はさらさらないぜ。

 

「『アルバトロス・ブラスター』!!」

 

同じ技がぶつかり合う。

だがそれは実質違っていた。

大きさが違う。

練磨されてきた度合いが違う。

まるで雛鳥を食いちぎるかのように。

一方的にその一撃に打ち勝っていた。

 

「ほれ」

 

上に逸らして事なきを得る。

組み手で遠慮するなとは言った。

 

「お父さんは本気で来ているの?」

 

ターサが疑惑の目を向ける。

我が子相手に本気で殴るのは気が引ける。

だから受けに回っていた。

 

「まあ、同じ変身形態を使ったうえでも、お前に気を使っていたからな……」

 

仕方ない。

見抜かれるとは演技派ではないようだ。

まだ、若い頃は出来ていたものが今になると出来ていないとは時代を感じる。

 

「これが3でのフルパワーだ」

 

そう言って目の前から消える。

ターサは気の感知で先に目を向けるが遅い。

残像まで作り出しているのだから。

 

「はあっ!!」

 

蹴りを放つが空振りする。

残像に放ったのだから。

そして緩やかに後ろに陣取って……

 

「はい、組手はお終い」

 

首筋にトンと手刀で一撃を加える。

それで超サイヤ人3が解けて気絶をする。

それを抱えて自宅へと戻った。

 

「ターサとの組手お疲れ様」

 

抱えているのを見て笑う。

実力差があるにもかかわらず、こっちの組手でターサのレベルを引き上げてはいるからな。

そして最近は技についての研鑽が入り始めている。

明日も話し合いをするつもりだ。

 

「相手なら私がしてあげてもいいのよ?」

 

そうは言うがまだまだゲンサイの面倒を見ないとな。

頼むことはあるだろうけど。

笑ってお願いするとジェスチャーをした。

 

そんな事をしていると不意に未来がまた見えた。

そしてその未来は自分にとっては輝きに満ちた未来でもあった。

その日が来ることを心待ちにしてしまう。

そう言えるだけの素晴らしい予知だった。




予定より飛ばしにくくなっていて話数を使ってしまっています。

『超』で言っていた『18の宇宙』と現在放送中で
『第1宇宙』が『人間レベル』が最高とのことで
昔は対になっていた『第18宇宙』の破壊神と界王神によって作られた最強の民族といった設定です。

指摘などありましたらお願いします。


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『研究会』

悟飯の結婚式と感想欄の追記で貰った案を使った話となっております。
この二次創作では
『超フルパワー超サイヤ人4』 = 『超サイヤ人ブルー』となっております。
その為、ウイスがベジータ達に言っていた二人がかりならあるいは勝てるというのはガタバルとブロリーにも当てはまります。


今はブルマさんの家に集まっている。

メンバーはベジータ、ナッパ、ピッコロ、クリリン、天津飯。

それ以外には俺とターサやブロリーとロマネも来た。

トランクスは強制参加である。

 

「スパーニは?」

 

そう言うとブロリーが気まずそうな顔をしている。

何かあったのか?

まさか夫婦喧嘩じゃないだろうな?

 

「実は……」

 

どうやら第二子を妊娠したらしい。

それで安定期に入る前に今回の事があったから不参加のようだ。

それならばそれで問題ない。

サイヤ人は出来れば参加してほしかったがカカロットは界王様の所に行きやがった。

悟飯はビーデルとのデート。

次回は来ると言っていたし恋路を邪魔するほど野暮じゃない。

悟天はチチさんの勉強から逃れられなかった。

ターレスはターブルとの組み手をしているらしい。

ラディッツは今日は仕事。

 

「とにかく重要な話し合いのようだな」

 

ピッコロが口を開く。

そうだな、これからの俺達にもかかわる。

 

「ああ、実は技についての話し合いなんだ」

 

それを聞くとベジータがピクリと動く。

今の状態だと地味に技のレパートリーが少ないからな。

こっちの技をあんまりパクろうとはしないし。

 

「ベジータには悪いが、俺も俺の娘もそしてピッコロも『ファイナルフラッシュ』を使った事がある」

 

少し満更でもない顔をしている。

まあ、そりゃあ自分の技が優れていることの証明だからな。

 

「それ以外にも隙づくりのために『太陽拳』を使っているな」

 

それを言うと頷くのが何人もいる。

どうやらピッコロも最近の悟飯との組手で使っているらしい。

それを踏まえたうえで研究をして新技開発に乗り出そうというわけだ。

 

「やはり大技以外にもつなぐための技はどうだ?」

 

相手の隙をつかないと大技をそのまま当てるのは厳しい。

ピッコロの『魔空包囲弾』のように囲む技は少ない。

『気功砲』は範囲は広いが寿命を削る。

 

「基本的に俺の技は大技だからな……」

 

ベジータがそう言うと全員が頷く。

よく言えば高火力。

悪く言えば大雑把。

 

「まあ、そこいらの充実は欲しいよな」

 

クリリンも言ってくる。

気円斬とかあるからお前は良いけどな。

 

「しかしお前の参加は必要か?」

 

ナッパが俺に言ってくる。

速射性に優れた技。

隙を作る技。

とどめの大技。

牽制の技。

あらゆるジャンルの技がある。

いざとなれば相手の技も盗む。

だがそんな俺でも研鑽を惜しむような真似はしない。

 

「相手を的確に油断なく倒せないとな」

 

そう言ってトランクスやベジータを見る。

思う事があるのか顔を逸らしたのはトランクスだった。

 

「技の数は戦い方の幅につながるからな」

 

天津飯が言う。

どどん波と気功砲、太陽拳の三個しかおまえはないからな。

かめはめ波はできるようだけど。

 

「じゃあ、繋ぐにしてもどうする?、速射性か相手の動きを封じるか」

 

場を立て直すような方向にも持って行ける封じる技。

相手の技のタイミングを外せる速射性。

 

「攻撃で多少ダメージの見込みがある速射性がいいな」

 

クリリンが言ってくる。

その意見にトランクスとベジータが頷く。

攻撃的なおまえら二人はらしいな。

 

「ラディッツのような隙を作り出すのもなかなか乙なもんだぜ」

 

ナッパが言ってくる。

ピッコロは頷くが天津飯は速射性を押したいらしい。

太陽拳がすでにあるからな。

多数決で言えば速射性のようだ。

 

「じゃあ、速射性だがどれだけの速度で相手に攻撃をするかだな」

 

速すぎてもこっちの攻撃が途切れかねない場合は諸刃の剣。

かといって合間を開けてしまえば技としてはダメだ。

 

「片手でファイナルフラッシュが出せるならその技で相手をのけぞらせてからのコンビネーションがある」

 

そう言うとベジータがにやりと笑う。

俺はそれを見て、あの技を思い出す。

 

「『ビッグバン・アタック』がすでに俺様にはある」

 

片手の技でも最上級の威力。

のけぞった次の瞬間には相手を倒せる。

 

「ならばその技を編み出していくか」

 

ピッコロと俺が中心になって考え始める。

技の研究に情熱を燃やし続けるのであった。

 

.

.

 

そういった研鑽があり、ブウとの戦いから三年半も経った頃。

悟飯の結婚式が行われた。

綺麗なタキシードを着てきりっとしている。

ビーデルの方も綺麗なドレスを着ていた。

遠い所から俺たちは見ていた。

サタンやカカロット、悟天たちがサポートしていく。

 

誓いの言葉からの口づけ。

バージンロード。

見れば見るほど昨日の事のようだ。

あの日からもう12年。

できれば仮面装着時の4年間はちょっとなかったことにしてほしい。

 

「自分たちもあんな感じだったんだと思うとね……」

 

頬をポリポリとかく。

年を取ったからこその表現だろう。

初々しいと感じるのは。

自分たちの時はまだ積極さがあった気がしないでもない。

 

「あと十年したらこの子も歩くんだね……」

 

ターサの頭をなでている。

どうせならいい男と連れ合いになってほしい。

無知なる人をひっかけたりとかの悪党や暴力を振るうような野蛮な男。

あとは……女癖が悪い奴。

えっ、自分は暴力振るっているじゃないかだって?

あれは戦闘だからノーカウント。

そう言う系統ではなく日常生活やデートの中で一方的な暴力を振るう男って意味ね。

 

そんな事を考えていると前に感じた予感がさらに強まっていた。

体中の毛穴という毛穴から冷や汗が出る感覚。

背骨が氷柱に変わったような、まさに言葉の通り背筋が凍り付いてしまう感覚。

 

「老界王神様たちは気づいてはいない」

 

前の予感は近々目覚める予感だった。

だがこの予感の強さはもうそんなに遠くないことを表している。

そして未来が見えた。

 

.

.

 

「『限界を超えた先はどうやら僕の半分ほどの強さはあるみたいだね』」

 

そう言ってにやりと笑うビルス様。

俺とブロリーが組んだ形で超サイヤ人4の超フルパワーを使い、ビルス様と戦っている。

しかしそれでも余裕を崩していなかった。

ちらりと見るとピッコロは気絶しているし悟天たちも肩で息をしている。

フュージョンが切れたんだろう。

おいおい……ピオーネとブルマさんは何を……

文句を言ってはたかれる。

ピオーネは思い切りの一撃だったのか額から血を流していた。

そこで俺の未来視は終わった。

 

.

.

 

「どうしたの?」

 

未来視でぼーっとしていたか。

別に何でもないと言って拳を握り締める。

自分たちの限界を極めていても神に叶わないのだろうか?

 

「パーティーがあるから行こう」

 

そう言って俺の手を引く。

自分の力をこれ以上引き出すにはどうすればいい?

そういった考えが頭の中に渦巻く。

一人で無理なら二人。

フュージョンでいい。

だがどうしても一人だけで戦うのならば?

その時の奥の手は必要だ。

 

「はあぁ……」

 

溜息はつくもののパーティーを楽しむ。

これから先の未来を明るい形にするための手を内心で考えながら。

悟飯が写真を撮ろうと呼びかけていた。

ピッコロの奴に目を閉じないように言っておく。

あまり経験がないからそうするだろうと思ったのだ。

 

「さて……」

 

カメラを俺が構える。

ばっちり決めてやるから安心しろよ。

 

「ピッコロ真ん中にもう少しよれ、見切れてる」

 

カカロットとチチさんもサイドからもう少し詰めてくれ。

悟天は肩に乗る形でな。

よしよし。

 

「写真いくぞ!!」

 

そう言ってから一拍おいてシャッターを切る。

全員が収まっている。

誰も目をつぶってはいない。

現像は後日しておくように伝えてカメラを返す。

 

「さて……食べるの再開するか」

 

そう言ってたくさんの食事をとる。

こういった時ぐらいは食欲を抑えない。

普段はたくさん食べないように心掛けてはいる。

 

「老界王神様の限界突破でも無理と言われた手前、手詰まりかもな」

 

正直それがいけるならばまだいけるとは思うんだがな。

潜在能力を限界以上にまで引き出しているという事だ。

俺もブロリーもそこまで来た。

残されたのはゴッドだけである。

しかしどうもそれは違う気がする。

神ではなくサイヤ人としての境地に至ること。

あいにくどちらも神様の世界を見たいという願望は無い。

 

「ベジータも半信半疑で受け入れてくれなかったし」

 

溜息が止まらない。

何とかなればいいんだがな。

地球が消えたらシャレにならないし。

 

「なる様にしかならないか」

 

そう言って二次会で酒を飲み、今日一日は思い切り心配事を忘れるようにしていた。

それが少しでも明日からのこの重苦しさを減らすと信じて。

だがこの時自分は分かっていなかった。

 

その翌日……

 

「頭が凄く割れるように痛い……」

 

ガンガンと鳴り響いている。

どうやら生まれて初めて二日酔いというものにかかったようだ。

 

「はい、よく効くよ」

 

ピオーネに出された飲み物をすする。

ほっと心が落ち着く。

体につけられたものがほどけるような感覚だ。

今、この瞬間が穏やかな平和だと痛む頭の中で考えるのだった。




短いお話になってしまっております。
次回から『神と神』編に入っていけるようにしていきます。
指摘などありましたらお願いします。


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『破壊神の拝謁』

『神と神』の戦いに入っていきます。
今後の修行は悟空やベジータはブルーになる修行ですが
ガタバルはあの手この手で限界の壁をじりじりと突破していくといった感じになります。
老界王神のじっちゃんで無理なので、
原点回帰による超神水飲むとか月の光浴びまくるぐらいしか限界突破の術がないという。
技を砂にしたのは漫画版の超での『破壊』になっています。


悟飯の結婚式から半年。

それよりも遡る話ではあるが技の研究会の成果もあってみんなが新技を手に入れた。

ピッコロの魔空包囲弾は目くらまし、物理、爆散の三種類の気弾を用いた系統に。

また分身しての魔貫光殺法。

天津飯は四身の拳の練度を高めて、同じ戦闘力での四人を作り出せるようになった。

時間制限と疲労の蓄積はかなりのものだが、どどん波や気功砲の技をほぼ全方位から放てる。

ベジータは『ファイナルシャインアタック』といった片手で『ファイナルフラッシュ』以上の威力を放てるようになった。

ゴテンクスは『連続スーパードーナツ』による拘束から『繰気弾』で相手をビリヤードのようにバウンドさせ続ける。

時折アタックで地面に叩きつけに行くのを再度跳ね上げて何度も攻撃を繰り出すこともできる。

ナッパは腕型の気弾で締め上げて肉弾の一撃を。

色々と皆が各々に技を錬磨していた。

 

「予知した日が今日だろうな……」

 

ブルマさんの誕生日。

少し用事があるから先に行っておくように伝える。

カカロットを迎えにいくという事だ。

界王様にとってもいい迷惑だろう。

 

「しかし、少し前からだが寒気が止まらない」

 

風邪をひいたわけではない。

ただ、破壊神の眼覚めを確信しているからだ。

千里眼で名もない星や、そこそこの星が消え去っているのが見えた。

気を感じられないのは『神』というものが持つ気の種類だからだろう。

 

「老界王神様に先に会いに行くか……」

 

今の界王神よりも知識があるからな。

あの人ならばもう気づいているだろう。

サラガドゥラも同様だと思う。

額に指をあてて瞬間移動をする。

 

「お久しぶりです」

 

そう言うと怯えているのが見て取れる。

やはり目覚めているのを感じ取ったか。

 

「きっと我々サイヤ人が目的になるかと思われます」

 

とにかく何が目的で目覚めているのかを伝えておかないといけない。

何故、それがわかるのか首をかしげている。

それも含めて説明しないといけない。

 

「実は過去に未来視をしてしまう拳を受けまして……」

 

そう言うと僅かにカナッサ星人の事を呟いていた。

やはりご存じだったか。

それが理由だというのを理解したのだろう、頷いて次はサイヤ人にどういった用なのかを聞いてきた。

 

「ビルス様を楽しませる強敵がサイヤ人なんですよ、とは言っても『超サイヤ人ゴッド』といった特殊な存在ですが」

 

6人必要な超サイヤ人の変身。

基礎的な強さがそのまま強さに比例するのならば、俺かブロリーがなればいい。

しかし俺たちは4での臨界点を今より超える事を目的としている。

既に限界を極めてはいるだろうが、さらに強烈ですさまじい月の光を浴びていく。

もしくは常に超サイヤ人4で活動をする。

それで突破口を開く。

 

「『超サイヤ人ゴッド』はワシも知らんが、大丈夫なのか?」

 

流石に老界王神様でも知らないか。

俺は大丈夫だと頷いて示す。

これで無理だったらドラゴンボールの力を借りないといけない。

 

「知識だけなら最高峰のズノーの星で聞いておりますので問題はありません」

 

思い出すと怖気が走る。

それは老界王神様にも伝わったようで……

 

「あんな福助みたいな奴に貢物をするなんぞ身震いがしよるわ」

 

ズノーの事は知っていたか。

しかし封印前から知っているとは。

あいつも長寿の種族か?

それとも変わらない伝統で何代目かのズノーなのだろうか?

 

「次やることがあったら消しとばすか暴力で聞き出したいくらいですよ……」

 

そう言うと仕方あるまいという顔だった。

あんなことをしてまで聞き出す内容など大したものではない。

ドラゴンボールと超サイヤ人については全て聞き終えている。

 

「きっと界王様の所に来ますので行かないと……」

 

カカロットがいるんです。

そう言うと額に手を当てて困っていた。

迎えに行くというと速く行けとジェスチャーをする。

 

「そう言えば皆さんもいかがですか、ブルマさんの誕生パーティーですけど」

 

普段は質素に過ごされているでしょうし。

神の業務で息抜きもないでしょ。

そう言ったニュアンスで言うとその提案は良いなと頷く。

 

「行こうかのう」

 

そう言ってキビト界王神と一緒に地球に一足先へ向かう。

サラガドゥラは俺に同行するようだ。

万が一のことがあってはならないからな。

 

「初めましてですね」

 

界王星に行って頭を下げる。

カカロットの奴は修行をしていやがる。

 

「おうおう、お前さんはナメック星や前回のブウの時に頑張っていた奴じゃな、覚えておるぞ」

 

なんだか虫のような印象だな。

好々爺な感じもあることはあるが。

 

「おっ、ガタバルにサラガドゥラじゃねえか」

 

呑気にこっちに挨拶をしてくるカカロット。

おまえは速く地球に戻れ。

どうなっても知らんぞ。

 

「界王様、お気づきでしょうか?」

 

サラガドゥラが改めて聞く。

すると苦虫を噛み潰したような、いやな顔をしている。

やっぱりわかっているようだ。

 

「ビルス様の事じゃろ?」

 

そう言うとサラガドゥラは頷く。

こいつ自身も嫌な思い出があるから冷や汗を流している。

 

「ここに来る可能性があります」

 

そう言った瞬間、なぜという顔をする。

老界王神様にも伝えたように同じ内容を伝える。

ただ、ビルス様から『超サイヤ人ゴッド』について聞かれた場合は俺の名前を出すように言っておく。

知ったかぶりで『破壊』されたくはないでしょう?

 

そんな事を考えていると界王様の後ろから威圧感を感じる。

『気』は感じなくても分かる。

風貌が、威厳がその身から漂っている。

気づけば背筋を伸ばしていた。

戦いの姿勢を構えることは不敬である。

本能がそう告げていた。

 

「やあ、北の界王にサラガドゥラ、久しぶりだね」

 

頬をポリポリとかきながら言ってくる。

そして一瞬で目の前にやってきた。

 

「そして君はサイヤ人か、どこかで見た覚えが……君はわかるかい?」

 

こくりと頷く。

喋ろうにも喉が張り付いたような感覚だ。

これが神の世界。

離れてようやく言葉を紡げる。

 

「かつて予言魚さんが顔を見たらいい事があると言われ、顔に触れていただいたサイヤ人です」

 

そう言うと、付き人の方に振り向く。

そんな事あったかどうかを聞き返していた。

39年前の事だからな。

忘れていても無理はない。

 

「ああ、そう言えばそのような事がありましたね、ビルス様、『あの事』を聞いてみては?」

 

そう言うとまたもや接近をする。

そして口を開いた。

 

「君は僕に良い事をくれるようだけど……『超サイヤ人ゴッド』を知っているかい?」

 

その言葉に頷く。

するとニヤリと笑う。

だが機嫌を損ねかねない事なのだ。

しかし正直に言わないと。

 

「6人のサイヤ人が必要ですので今すぐに目の前に連れてくることはできません」

 

そう言うと夢で見たのは一人だったんだけどと聞いてくる。

それについてもお話いたします。

そう言って矛を収めてもらう。

 

「正しい心を持った5人のサイヤ人が1人のサイヤ人に力を注ぎこむ事で変身するのです」

 

なるほどといった顔で納得をする。

しかしここでカカロットが余計な茶々を入れる。

なんと勝負してくれといったのだ。

皆が必死にビルス様をなだめようとする。

カカロットを界王様が叱る。

しかしご厚意で戦ってあげようと言って勝負が始まった。

 

「超サイヤ人3なんて2発ありゃあお終いだ」

 

そう、サラガドゥラが言う。

結果としてはその通りとなった。

デコピン。

そして首筋への手刀。

あっさりとその戦いは終わる。

しかしそれでビルス様は終わらなかった。

 

「君も『寝起きの運動』に付き合ってもらおうかな」

 

目線で界王様とサラガドゥラにどうするか聞く。

二人とも、仕方ないといったように送り出していた。

手を合わせて、お願いしますといった。

 

「全力で来なさい」

 

指をちょいちょいとやり腰に手を当てる。

その言葉に甘えるように超フルパワーサイヤ人4になる。

暴力的な気の嵐を浴びてニヤリと笑っていた。

 

「これは『寝起きの運動』なんて甘いこと言っている場合じゃないな……」

 

破壊神が余裕の状態から構える。

これはどういうことだ?

だが、どうこう考えず戦うのみ。

 

「はあっ!!」

 

拳の一撃を体をしならせて飄々と避ける。

だがそれと同時に尻尾で足を絡めとる。

そのまま横方向に投げて体勢が崩れたところに蹴りを叩き込みにいく。

 

「くっ!!」

 

気弾で弾いて着地をしようとする。

だがその時点でこちらは技を放つ構えをとっていた。

 

「『プライド・オブ・ラクタパクシャ』!!」

 

灼熱の気弾がビルス様を包み込もうとする。

ギロリと気弾を睨み手をかざす。

 

「『破壊』」

 

そう呟いた瞬間、灼熱の気弾は砂へと変わる。

消え去っていくのではないのか。

 

「まさか、僕の半分ほどの力を持っていたとはね」

 

もしかすると超サイヤ人ゴッドがこれよりも上ならもっと楽しめそうだ。

そう言うと首をコキコキと鳴らして、『良い運動だった』と一言言って界王星を後にしようとする。

地球に向かっていくようだ。

 

「待ってください」

 

そう言うと振り向いてくる。

まだ何かあるのか?

そう言いたげな顔だ。

 

「付き人の方の速さで行くより瞬間移動ですぐに行けますよ」

 

それを速く言ってくれよ。

そう言って肩に掴まる。

サラガドゥラがカカロットを連れてあとから行くと言っていた。

額に指をあててピオーネの気を探り当てる。

シュンという音を立てて界王星を後にした。

 

「あれ、この人たちって知りあい?」

 

そう言うピオーネ。

おいしそうに食べているところを見るとパーティーは始まっているようだな。

 

「ああ、この人たちをもてなそうと思ってな」

 

そう言ってベジータの方へと向かう。

どうやら今日は修行を休みにしてブルマさんやトランクスと一緒に居るようだ。

 

「界王から話は聞かせてもらっている」

 

瞬間移動の間に伝えていたのか。

そして頭を下げる。

 

「今日は楽しんでいただきたい」

 

そう言うと色々なものを食べようとする。

指示を受けて給仕のような真似事をする。

プリンや甘いものも欠かさずに取る。

うまいうまいと言いながらすべての種類を平らげようとする。

様々な余興もあったが気を張っていた。

不機嫌になる事は無く、進んでいた。

 

「そろそろ、『超サイヤ人ゴッド』と戦おうか」

 

そう言ってきたのでベジータになって貰おうと思い、一歩踏み出す。

ちょこちょこ話していたから了承は取っている。

破壊神を楽しませる強さに興味を持ったようだ。

 

「綺麗な色をした飲み物だねぇ」

 

そう言ってグラスを掲げる。

そしてグイっと一気に飲み干す。

一息ついた次の瞬間、凄まじい圧力がカプセルコーポレーション中を取り囲んだ。

 

「ハァー!!」

 

なんて事だ。

頬の紅潮具合からして酔ってしまっている。

気を一気に噴き出して暴れようとしている。

うっかり好奇心で飲んだグレープジュースをシェフが取り違えたようだ。

 

「ご機嫌状態で酔っている分、本気に近いだろ……」

 

再度、超フルパワー超サイヤ人4で目の前に立つ。

口元を満面の笑みの形にゆがめる。

ブロリーも同じく戦うつもりだ。

 

「ハハハハ!!」

 

一瞬の間に蹴り飛ばされる俺とブロリー。

楽しそうに笑っている。

今までで一番くだらない理由かつ一番地球が危険な戦いが始まってしまった。

きっとあのシェフは首だろう。

俺は戦いに飛び込む前、一瞬その予感を感じ取っていた。




破壊神の半分以上となると『力の大会』で狙われること請け合いですね。
今のガタバルはブルー悟空を下回ってはいます。
それなりに何とか強化させれたらと思います。

以上、指摘などありましたらお願いします。


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『切欠は幾年も不変なままで』

限界限界詐欺。
悟空やベジータが超サイヤ人ブルーから伸びている時点で
サイヤ人は基礎部分の伸びしろがあり得ないほどあったり
潜在能力の限界は常に伸びてそうですよね。
最終地点は決まってませんが、ビルス様越えはありません。


この戦いは時間を稼ぐのは難しい。

ラディッツ。

ナッパ。

ターレス。

ターブル。

パラガス。

ルビコラ。

純血サイヤ人が6人。

そこにベジータがいる。

もう一人時間稼ぎに来てほしいものだが……

 

「ワハハハハハ!!」

 

高笑いをしながら蹴りを放ってくるビルス様。

さっきまでの『寝起きの運動』とは訳が違う。

腕を出して受け止めるが威力を軽減できない。

思いっきり飛ばされる。

 

「ぐっ!!」

 

気弾で上空に行く。

だが相手の方が圧倒的に速い。

背中に掌が置かれていた。

 

「フン!!」

 

地面をバウンドする。

全員が集中しようにもいつこちらに来るのかわからない。

それが集中力を削ぐ大きな要因となる。

 

「がはっ!!」

 

ブロリーも殴り飛ばされる。

全力のラッシュを飄々と避けてカウンター。

気弾も『破壊』の力で砂に変える。

 

「『太陽拳』も使えない」

 

そう言いながら同時にラッシュを放つ。

掠ることもなく頭を打ち付け合わせられる。

 

「ぐあっ!!」

 

背中に肘打ち。

ブロリーが地面に叩きつけられる。

気を取られないように構えるも目の前から消える。

 

「ハッ!!」

 

顎を蹴りあげられる。

意識が一瞬飛ぶ。

こんなにも重い蹴りは初めてだ。

 

「シッ!!」

 

脇腹の蹴りを掴んで止める。

ジワリと自分の中で立ち止まっていた限界。

その向こうを覗き見た。

神の領域に触れる事こそが俺達に今最も重要な事だったのか。

 

「ヒャー!!」

 

頭を掴まれて、地面に投げられた。

なんとか体勢を立て直すが、動きが速かったり予測があまりにも難しい。

半分酔拳のようなものだ。

 

「大丈夫か、ブロリー」

 

呼びかけるとむくりと起き上がる。

こんな短時間でボロボロになるのはブウの時以来だな。

今回の相手は小細工なしの最強だけどよ。

 

「フン!!」

 

二人がかりで再度ラッシュを放つ。

しかし時折、隙を見ては気弾攻撃に移行する。

 

「ハァ!!」

 

気合でかき消していく。

その直後に足を掴んでジャイアントスイングで投げる。

それを見てブロリーが攻撃を放つ。

 

「『ギガンティックジェノサイド』!!」

 

殴打で体勢を崩していく。

そして腹部へ一撃。

その後に俺の『ソウル・オブ・サイヤン』のように強烈な気弾を叩き込む。

 

「ハハハハ!!」

 

まるで効いていないかのように煙をあげたままブロリーを掴む。

楽しんでいる。

ブロリーも冷や汗をかいている。

 

「ソラソラソラ!!」

 

殴打を同じようにされる。

そして真っ赤な気弾を放たれてしまい、吹き飛ばされる。

 

「ぐああああああ!!」

 

ブロリーが背中をついてバウンドする。

そしてぎょろりと視線をこっちに向ける。

 

「シャー!!」

 

手四つに組み合う。

そして即座に力を抜いて蹴り上げる。

時間稼ぎとはいえ全然進んでいない。

速くしてくれ。

このままだと俺とブロリーが死んでしまう。

 

「があっ!!」

 

蹴り上げたビルス様を跳躍で追い越す。

ここからは技のオンパレードだ。

 

「『コンドル・レイン』!!」

 

気弾の雨が降り注ぐ。

それをひゅんひゅんと避けている。

だがそれは織り込み済み。

速度で攪乱する。

 

「『ファルコン・ツイン・クラッシュ』!!」

 

二発の隼型の気弾。

それを尻尾で薙いでかき消す。

だがその一瞬の隙こそがねらい目。

次こそは破壊できない。

 

「『プライド・オブ・ラクタパクシャ』!!」

 

鳥型の気弾が包み込む。

灼熱の炎が焼き尽くしていくだろう。

その為に握り拳に力を入れていく。

だが……

 

「ぬぐぐぐぐ……」

 

灼熱の炎が丸まっていこうとしない。

抵抗しているのだ。

 

「ハアアアアア!!」

 

気合一閃。

気弾をぶち破っていく。

そして俺の腕を掴むと……

 

「ふん!!」

 

ボキリと嫌な音が耳に響くように腕をへし折られた。

呻く暇も与えない。

脇腹に蹴りがめり込む。

肋骨を幾らか圧し折って横にすっ飛んでいった。

 

「やめなさい!!」

 

今、この場に居る最高戦力が圧倒的にやられている。

それを見たピオーネとスパーニ。

二人が死なせまいと同時に殴りかかっていく。

 

「ハッ!!」

 

避けた拍子にそのまま裏拳を放つ。

超サイヤ人2でスパーニも避ける。

しかしそれ以上の速度で腹に蹴りがめり込む。

蹴り上げられて吹っ飛んでいく。

 

「くっ!!」

 

どうやらデンデが回復させているようだが……

ピオーネが向かっていく。

ゆらりと避けようとするがそこを逃すほど甘くはない。

 

「ムッ!?」

 

足を踏んでそのまま顔に一撃。

追撃で腹に蹴りをいれにいく。

 

「ガッ!!」

 

腕を交差して蹴りを受け止める。

それを見て延髄蹴りに切り替えていく。

 

「はいっ!!」

 

見事に一撃が入る。

フルパワーのビルス様相手に二撃も入れている。

ただ、まだ完全に覚醒したわけではない。

 

あれから長い時間は過ぎたが今の俺と同じぐらいしかない。

鍛えてはいるのだが緩やかな上昇しか見えないのだ。

きっかけともいえる好敵手との出会いがない。

 

それは俺も同じだった。

俺が強くなればいい話だったのだが、極限に近い形まで鍛え上げているらしい。

だから同じくきっかけがないと殻を破れないと言われた。

 

「クククッ!!」

 

だからこそ尻尾で足を取られてしまう。

そして不安定な態勢から……

 

「ドリャー!!」

 

踵落としを食らい地面をバウンドする。

転がって俺の前にまで来た。

 

「うぅぅ…」

 

呻いている。

デンデがこっちへ向かってくる。

速くしてくれ。

 

こんなにも頭から血を流している……

それを見た瞬間、頭が真っ白になっていく。

体中の血が沸騰する感覚。

限界という壁が壊れていく。

決して壊れるはずがないものだと思っていた。

俺にとってのきっかけは今も昔も変わらない。

 

「……くも」

 

つむぐ言葉は小さな声だった。

しかしそれでもこの思いは強い。

 

「よくも……のピ…ーネ……」

 

許さない。

この世における絶対的な俺の中に存在する法。

 

「よくも俺のピオーネをー!!」

 

それは愛しきものを傷つけた奴には制裁を。

そしてそれはブロリーも同じだったようだ。

 

「よくもスパーニを……許さん!、許さんぞー!!」

 

二人とも自分の体にこれほどの力がまだ眠っていたのかと驚く。

しかし体からぎしぎしと音がする。

骨や筋肉が負荷に耐え切れずに軋んでいるのだ。

今の自分たちの限界を超越しているがゆえに。

 

「ヌン!!」

 

拳を振るう。

それを今までとは違い受け止める。

尻尾で足を取り転ばせる。

 

「ハッ!!」

 

着地をしたところにブロリーのラリアット。

それで飛んでいくが逃がしはしない。

その飛んでいく方向に都合よくピッコロがいる。

瞬間移動でピッコロの所へ行く。

先回りをして気弾攻撃を放つ。

 

「『アルバトロス・ブラスター』!!」

 

その一撃に呑み込まれてまたもやブロリーの所へ。

この間に気を高める。

全力の一撃を放つのみ。

この軋んだ状態で長期戦など墓穴を掘っているだけだ。

 

「『ギガンティックジェノサイド』!!」

 

崩れた体勢なので地面に叩きつける。

そのわずかなバウンドを蹴りあげる。

そして全身全霊の一撃。

その後に俺の『ソウル・オブ・サイヤン』のように強烈な気弾を叩き込む。

もはや指一本動かすような力も残っていないだろう。

髪の毛の色も戻り、体毛も引っ込んだ。

片膝をついて息を切らしていた。

 

そしてビルス様は無防備なまま、俺の技の圏内に入る。

もはや隙を作る必要もない。

このまま一撃を全力で叩き込むのみ。

体の気がカラカラになるほどの一撃。

ギシギシと軋む体の警告。

だが、それが何だというのだ?

愛しい人に酔った勢いとはいえケガを負わせた。

その報復に俺の肉体など捧げてやる。

 

「『プライド・オブ・ラクタパクシャ』!!」

 

さっきの倍以上の大きさは優にある灼熱の鳥型の気弾。

その一撃はビルス様を包み込んでいく。

そして無抵抗なままなので拳を握って収縮させてゆく。

そこに待っているのは神殺しの完遂。

灰一つも残さない徹底的な灼熱地獄。

 

「これはこれは……いけませんねぇ」

 

そう、ウイスの人が呟いて杖を振るう。

杖で灼熱の気弾を叩いていき、霧散させる。

全く……いまさら何をしにきたんだ。

そんな芸当ができるならば早く酔いを醒ましてくれ。

モシャモシャと地球の食事に舌鼓打っている場合じゃないだろうが。

 

「バトンタッチだ」

 

そう言ってベジータが前に出る。

ビルス様も灼熱による汗の噴出。

そして運動によって酔いからようやく醒めた。

 

「ようやくやれるのかい?」

 

首をコキリと鳴らして伸びをする。

だがビルス様を驚かせるのはもう一つあった。

カカロットも超サイヤ人ゴッドになっていたのだ。

いつの間にか来ていたのだろう。

 

3人の神の激戦が始まる。

だがどこかの違和感があった。

限界の壁を壊して今このように膝をついている。

限界の壁を壊す前であれば決して思わなかったこと。

それが頭によぎる。

 

「カカロットやベジータが凄いと思えない……!?」

 

神の次元に奴らはいる。

だがあの形態はサイヤ人の壁を感じない最強の状態。

きっかけがあれば何度でも不死鳥のように強く飛び立つ俺達とは違う。

際限のない錬磨と限界突破の末に……

 

「神になっていないというのに、神の領域の住人への可能性が見えてしまったか」

 

そう呟いて事の顛末を見届ける。

とは言っても最終的には時間切れでゴッドが解ける。

それでもカカロットが体に染みつかせるといった離れ業を披露。

天才という賛辞をビルス様からいただく。

それによって満足されたビルス様は、最後に酔った勢いとはいえケガを負わせたピオーネとスパーニ。

そして今回の騒動で迷惑を一番かけてしまったブルマさんへの謝罪をして星へと帰っていった。

 

今回での壁を飛び越えたきっかけに二人は苦笑いをして帰路につく。

『愛しい人』が俺たちにとって強さを求める原動力。

狂戦士であったおまえは真正面でありのままを受け止めるスパーニ。

俺は自分が求める道を照らし続けてくれた、全てを受け入れてくれたピオーネ。

あの人を守る為ならばこの体の限界などいくらでも越えよう。

枯れてしまった、全て出し尽くしたとしても。

戦闘民族として強さの源泉を何度でも湧きあがらせてみせる。

今回のような失態はしない。

貴方を守ってみせる。

だからどうか……

 

「これから先もあなたの傍に居させてください」

 

面と向かってピオーネに言う。

キョトンとした顔をした次の瞬間、大笑いをしていた。

ひとしきり笑った後、『何を今更』と言って手を握ってくるのだった。




切欠=恋人の危機。
このパターンは2の時にもありましたね。
流石にここからは示した程度で急激に伸ばす事は無いです。
『神と神』編が終わったという事は次の章からはついにあのお方の登場です。

指摘などありましたらよろしくお願い致します。


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『復活のF』編
『15年前の忘れ物』


復活のF編の開始です。
とは言っても次回ぐらいまでは時間経過を書く予定です。
強引な理由で強さを釣り合わせて申し訳ございません。


あの破壊神騒動から二ヶ月。

俺とブロリーはラエンカのビッグゲテスターに入り浸っていた。

理由はただ一つ。

超サイヤ人4での修業のため。

ちなみにブルマさんにも現在開発を頼んではいる。

その代物は『超ブルーツ波発生装置』

大きくはなるだろうが小型化をしてほしいのだ。

修行の合間にサイヤパワーの供給を常にもらえるとは思えない。

それならばもう一つの『ブルーツ波の過剰供給』を使うしかない。

 

「とにかくゴッドになっていた時のカカロット達並みにはなっただろうな」

 

組み手をしながら呟く。

互いが神の領域まで達したいという願い。

それゆえに修行をマンツーマンで行っている。

さらにその後に、ピオーネとも修行を行うためへとへとな毎日ではある。

 

「守る為に強くなるしかない」

 

そう言ってこっちに拳を振るう。

それを受け止めて投げる。

着地して肘打ちをしてくるが避ける。

 

「シッ!!」

 

蹴りを叩き込むが腕を交差して受け止める。

基礎的な動きをさらに錬磨していく。

筋肉の肥大により速度や無駄な動き。

それらを基本に立ち返って見直している。

 

「『ギガンティックジェノサイド』!!」

 

大技もその基本の動きの見直しで威力が上がっている。

インパクトの瞬間の力の込め方。

また、脱力による速度の緩急で動き自体のキレの良さ。

 

「ぐっ!!」

 

大技は隙がない相手に使うのは愚策。

しかしブロリーほどの体格にもなると回避に専念しても冷や汗ものだ。

風圧で皮膚が切れてしまう。

そして防いでも体勢を崩していく。

もしくは防御を突き抜ける。

 

「ふんっ!!」

 

しかし効いていても強引に押し込むことはやめていた。

罠の可能性。

そしてこの形態には時間制限があると言っていい。

それを考えた実戦的な発想。

 

「はあっ!!」

 

そしてその距離の取り方は正解だった。

こっちはわざと体勢を崩していた。

声でいかにも効いた感じを演出。

次に脇を閉めた拳で隙を消していても顎を的確に射抜いてカウンターをとっていた。

 

「流石に戦闘経験は高いな……」

 

そう言ってブロリーを深呼吸をする。

おまえやベジータのような天才児ではなかった。

今でこそこうだが、当時は弱いと揶揄されてきた。

生き残るためには泥臭い戦いをする。

何度も死にかける戦いが幼少時にはあったしな。

 

「危険を察知することも一流だぞ」

 

破壊神の時は察知できていた。

だが暴れ酒をするなんてのは予想できなかった。

あの未来視は『俺が干渉しなかった場合の未来』だったのだろう。

それを止めようとしたらそれより俺たちにとってひどい結果になった。

 

「しかし、あれから何にもないのは不思議ですね」

 

そう言ってブロリーが4を解いて一休みする。

確かにどんな異変もない。

破壊神が目覚めるという事は気まぐれもあるかもしれない。

しかし重大なことがあるから起きたのかもしれない。

 

「一応聞きに行くか」

 

ベジータの奴があの騒動から数日後にビルス様の星へ修行をつけてもらいに行った。

神の気は感じ取れなくてもベジータならば大丈夫だ。

カカロットは無理だろうが俺は知った気さえ察知できれば距離はほとんど関係ない。

 

「土産も持っていこう」

 

そう言ってシュークリームを買っていく。

お二人で1箱ずつ食べるだろうか?

 

「掴まっておけよ」

 

ベジータの気を察知して移動する。

すると砂時計まみれの部屋に来た。

 

「お前ら、何しに来やがった!?」

 

小声でベジータが言ってくる。

ビルス様は寝ているのか。

つまり修行と家事手伝いをこなしているようだ。

 

「話を聞こうと思ってな」

 

そう言ってシュークリームの箱を持ち上げる。

とりあえず起こさないと。

そう思って動いた瞬間……

 

「んがぁ!!」

 

寝相で蹴りが飛んでくる。

とにかくおとなしく起こすか。

蹴りを受け止めて体を揺する。

 

「うぅん……」

 

まだ起きないか。

だったら……

 

「起きろ!!」

 

大声で呼びかける。

すると寝返りを打って……

 

「やかましい!!」

 

寝言で怒りながら裏拳を放つ。

それを避けるが随分と眠りが深い。

 

「いつもこんな感じか?」

 

ブロリーがベジータに聞く。

するとこんな起こし方はしていないようだ。

だから今の光景は不敬でしかない。

 

「うぅん……起きてしまったじゃないか」

 

欠伸をして降り立つビルス様。

苛立ちこそあるがわざわざここまで訪れているのだ。

それを察して『湯浴みしてくるからシーツを片付けといてくれ』とのこと。

 

「何か気になるんだろ、僕が目覚めたわけだからね」

 

湯浴みが終わり普段の格好でソファに座るビルス様。

鼻をクンクンと動かす。

シュークリームを渡し忘れていたな。

 

「甘い匂いがするな、それを食べながら話をしよう」

 

そう言うので箱を差し出す。

飲み物も用意してむしゃむしゃとうまそうに食べる。

 

「で……何が気になっているんだい?」

 

俺は全ての悩みを打ち明ける。

破壊するべき巨悪が現れたから目覚めているのではないか?

心当たりはまるでなさそうだが、本当の所で危険がこの第七宇宙に迫っているのではないかと問いかけた。

 

「つまり僕が目覚めたから宇宙単位のとんでもない事が起こるんじゃないかって?」

 

そう言ってきたので頷くと大笑いされる。

ウイスさんもくすくすと笑っている。

そして笑いをやめてこっちの眼を見てくる。

 

「お前ら人間と一緒で寝起きしていただけだよ」

 

だから大した事は無いさ。

そう言ってシュークリームを頬張る。

そして立ち上がる。

 

「前は酔った勢いで戦ったからね、二人がかりでかかってきなさい」

 

そう言って表の森へ出る。

俺達は同時にフルパワーで向かっていく。

それを見て飄々としていた顔を引き締めて回避する。

だがこっちが後ろをとる。

まだギアを入れていないのだろう。

それならば今、一気呵成に畳みかける。

 

「だりゃりゃ!!」

 

連打をかいくぐっていく。

そこに尻尾で足をすくい上げようとする。

 

「ちっ!!」

 

それを跳躍で避ける。

だがその上に大きな影が現れる。

ブロリーが先回りしていたのだ。

 

「があっ!!」

 

地面に叩きつけていく。

しかし木に掴まってくるくると舞う様に着地した。

その瞬間に足場を爆発させる。

 

「舐めるな!!」

 

前に詰めてきてこっちに拳を振るう。

頭に血が上っているのならば……

 

「なっ!?」

 

残像拳でいなせばいい。

後ろから踵落としを決める。

 

「全くサイヤ人の成長速度には驚かされる……」

 

頭を押さえながら起き上がる。

そして首をコキリと鳴らして握り拳に力を込める。

 

「初めて会ったときは半分を少し超えている程度が今や6割にのびている」

 

寝起きの運動ですらない。

食後の運動でもない。

ここからは一歩間違えれば致命傷を負うこと必至の闘争だ。

 

「少しだけワクワクするな!!」

 

腕をとって投げようとするが背中を踏み台にして跳びあがる。

そしてそのままブロリーの眼前まで迫って気弾を放つ。

 

「ちっ!!」

 

回避行動をとるが尻尾でとらえられてしまう。

喰らってしまうがカウンターで頭突きを放つ。

それも避けるが腰を掴んでそのまま地面に突っ込む。

 

「くっ……」

 

何とか腕力で引き剥がすもその隙を逃す俺ではない。

その無防備な背中を狙って放つ。

 

「『プライド・オブ・ラクタパクシャ』!!」

 

灼熱の鳥型気弾を相手にビルス様も本気の一撃を放つ。

手を合わせて上空に手を掲げる。

真紅の巨大な元気玉のような気弾が現れた。

 

「『破壊玉』!!」

 

腕を振り下ろして技同士がぶつかる。

だがこれは二人いる戦いだ。

ブロリーが打ち合いに入り込む。

 

「『ブラスター・オメガ』!!」

 

二発の気弾がビルス様に当たる。

それによって破壊玉の勢いが僅かに落ちる。

その瞬間、一気に一撃の勢いを強めた。

 

「ぐおおおおおおー!!」

 

灼熱に包み込むのではなく呑み込む。

包み込んでも力づくで解けるのが前回の戦いで立証されたからな。

一気に一撃でダメージを負わせる。

 

「やってくれるじゃないか……」

 

煙をあげてニヤリと笑う。

そして満足げな笑顔を浮かべていた。

 

「二人がかりでこれならもう少しすれば本気で戦えるな、期待しているぞ」

 

さて……聞きたい事終わったし帰るだろう?

そう態度が示していた。

 

「精進して本気を出しても良いように頑張ります」

 

実際は個人的に聞きたい事はあるのですが……

そんな態度がばれたのかウイスさんがビルス様に耳打ちをする。

 

「ウイスが隠していないかどうかというんだが……」

 

至極、面倒くさそうにしている。

シュークリームの残りをさっさと食べたいのだろう。

 

「えっと、惑星バンヤの民についてのお話を……」

 

そう言った瞬間、机が崩壊する。

すごい勢いで迫って壁に追い詰められる。

 

「なんで君がそれを知っている?」

 

実は……

その始まりですべてを伝えた。

自分の妻との初めての出会い。

特殊な力だと感じていたもの。

最近になって背中に現れた紋章のような痣。

伝え終わった後、ビルス様は頭を抱えていた。

 

「確実に君の奥さんはバンヤの民だ、それは分かる」

 

しかし逃げ延びていたとはな……

そう呟いて再びこっちへ視線を向ける。

そして真剣な顔で警告をしてきた。

 

「何があっても全王様に伝えるな」

 

ばれる分は仕方ない。

自分から言ってもあのお方が気づいたとしてもいずれにせよ良い結果になんてならん。

自分たちの宇宙ごと消えたくなければ黙っておけ。

黙っていないと僕が君を破壊する。

そう念押しされた。

やはりとんでもないのか……

 

「これで用事は終わりだろ?」

 

頷いて、次のお土産は腹にたまるものがいい。

そう、ビルス様のリクエストを受けて地球へ戻る。

そんな時、嫌な予感が突き刺さる。

未来視ができなくても分かる巨悪の蠢き。

しかしそれを感じ取りながらもどこか微笑んでいた。

これから先強くなっていく結果の試金石になっているだろうからな。

空の向こうを睨み付けるように見つめていた。

 

.

.

 

「フリーザ様……またもや特訓でしょうか?」

 

私はフリーザ様に声をかける。

汗を流しており、あの15年前から血の滲む鍛錬を繰り返されていた。

変身に行き詰まり、基礎的なものを鍛えてはいたが、いかに天才と言えど本気で戦う相手もいない。

その為、いくら努力しても試す機会がなかった。

モチベーションが最悪なままの修行は大怪我につながり、それを治す暇もないと言ってオーバーワークを課し悪循環につながってしまう。

その結果リハビリとケガを延々と繰り返すといった状況だった。

 

さらに星の地上げをやめて他の星々に売りさばいていった。

しかもフリーザ様がやってきたものは非常に多くそれらを成し遂げるのにも時間が何年もかかった。

そしてその中で気に入った星をトレーニング用に仕立て上げていた。

 

「あまり上がる事は無かった15年間でしたからね、無駄な時間を過ごしていたものです

一体何を自分で慌てていたのか……怒りがこみ上げますよ」

 

修羅の形相だった。

我々のせいであの宇宙の帝王の妨げになっていた時期もあった。

何故ならば我々も鍛えていたのだから。

 

「しかし偵察隊のおかげですね……」

 

二ヶ月前、私が気まぐれで送った偵察隊が地球での映像を送ってきた。

その中にガタバルの形態が映っていた。

それを見たフリーザ様は一念発起して、修行に明け暮れた。

モチベーションが最高潮のままの特訓はいい結果を生んでいた。

それこそ15年間の緩やかな伸びを完璧に凌駕している。

もしこの姿がもっと前に観測できていたならばと悔やまれる。

当時のプランを徐々に速めている。

流石はフリーザ様だと驚嘆しかない。

 

「待っていなさい」

 

15年前の忘れ物を取りに行きますよ。

そう言って歩んでいく。

ガタバルよ……

おまえは火をつけるべきではない人に火をつけてしまったようだ。

地球は間違いなく今までで最大の戦場になるだろう。




フリーザ様、スぺりまくっていた模様。
正直、15年間もフリーザが真っ当に修行したら勝ち目なんて、微塵もないのでこんな形にしました。
指摘などありましたらお願いいたします。


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『帝王襲来』

日常回を飛ばして、フリーザの襲来にしました。
今回は幹部クラスの勝負を書いています。


あれから月日は過ぎて二ヶ月。

破壊神ビルス様がパーティーで大暴れして四ヶ月ほど。

カカロットもウイスさん達に修行をつけてもらっている。

俺達は強さとして7割弱までビルス様の強さに迫っていた。

むろん超フルパワー超サイヤ人4である。

ブロリーの奴がゴッドに興味を示していた。

 

「あの銀河パトロールの奴が言う様に千里眼で宇宙船が見えている」

 

ジャコという銀河パトロールが忠告をしに来た。

既に知っていると伝えたらエリートよりも情報通など信じられんと憤慨して帰っていった。

情報通ではなく超能力で知っただけだ。

神殿に今すぐ戦えそうなやつだけを集めた。

悟飯、ピッコロ、クリリン、亀仙人、天津飯、ターレスとラディッツ、ラエンカ。

そこに俺とブロリー。

 

「それがフリーザというわけだな」

 

ピッコロが言うので頷く。

クリリンは青い顔をしている。

大丈夫とはいいがたい。

ギニュー特戦隊の皆さんも存命。

ドドリアさんやザーボンさんも蘇生されている。

 

「雑魚は何とかなってもそれ以外の幹部は厄介すぎる」

 

フリーザは俺が何とかする。

そして、ブロリーが幹部クラスを相手する。

ピッコロたちも同様だろう。

 

「僕たちで何とかしないと今はベジータさん達もいませんからね」

 

悟飯が言う様に二人は修行中。

子供軍団は引っ込ませた。

それを見張るために奥さん勢が出ないというわけだ。

 

「サラガドゥラ達が来てたらいいのにな」

 

あいつは今修行中だからな。

界王神になるための修行。

老界王神様にイロハを叩き込まれているが時代的な部分の理解などが必要らしい。

 

「ガキ共が抜けだすことも考えたら十分だろ」

 

そう言って、相手が来る前に再度態勢を整える。

とは言っても俺が常に見張っておく。

そして主要都市の上空で見つからないように待ち伏せをする。

 

「簡素ではあるがこれしか今の状況で防ぐ手はない」

 

宇宙船の降り立つ場所次第では墜落させたら甚大な被害が出るだろう。

だがそんな予想は裏切られた。

徐々に近づいてはいるがどうやら岩場に安全に着陸するようだ。

 

大きな音を立てながら宇宙船が降り立つ。

徐々にハッチが開く。

それは絶望のカウントダウンにも思えた。

そしてまるでイナゴやバッタの軍勢のように何千人単位の部下が現れた。

 

「なんて数だ……」

 

クリリンは驚いている。

5000人ほどの部下。

それをわざわざ投入してきた。

そしてフリーザ軍でも新人の奴等もいる。

忠誠心が薄い奴らだ。

そいつらが街に入り込もうとしていた。

 

「気を抜くな!!」

 

ピッコロが腕を巻き付けて捕縛。

天津飯も四身の拳で雑兵たちを殴り倒す。

ラエンカはホイポイカプセルに納めていたバイクで追いかける。

相手に追い付いてからは気絶をさせていた。

 

「一纏めなら潰すまで!!」

 

ラディッツとターレスは向かってくる相手に大技を叩き込んでいく。

海に落ちたりしていくが問題ではない。

俺とブロリーは殴り倒していく。

そんな中、居場所を教えるようにあからさまなデスビームが放たれた、

 

「そこか…」

 

そう言うと雑兵たちが左右に割れる。

まるで海を割った話のような場面だ。

そして眼前にフリーザがいる。

あの機械に乗らずにすでに最終形態だ。

体から迸るパワー。

これは凄まじいものだ。

久々に本能的な血が騒ぎ始めた。

 

「そちらも10人……こちらも幹部が9人で私を含めて10人…丁度良いではありませんか」

 

こちらの人数を確認して手を叩く。

そう言って手招きをしてギニュー特戦隊の5名。

ザーボンさんとドドリアさんの2名。

そしてフリーザから直々に選ばれた2人。

 

「まず誰を出すか決めてください、こちらも打ち合わせをしますので」

 

そう言って背を向ける。

誰が出てくるかはわからない。

運の要素が際立つ。

 

「こちらからはグルドさんです」

 

そう言うと小さな体躯で複数の眼を持つ人。

超能力の使い手、グルドさんが出てきた。

搦め手相手にはこの人以上の適任はいない。

 

「亀仙人様お願いします」

 

こっちにも運が向いていた。

そして戦いの火ぶたが切って落とされる。

マックスパワーですぐに勝負をつけに行く亀仙人様。

グルドさんが時間を止めて遠くへ逃げる。

しかし、亀仙人様はそれが解けた後ニヤリと笑う。

 

「お主の弱点がわかったぞ」

 

そう言って砂を掴む。

そして再度接近をした。

 

「止ま……!?」

 

止めようとした、その刹那。

砂を顔面にぶちまけた。

それを払いのけようとしたところへ……

 

「『かめはめ波』!!」

 

マックスパワーの一撃を叩き込まれて吹っ飛ぶ。

立ち上がれない状態だった。

サングラスを外してグルドさんの敗因を言う。

 

「動作や言葉が前段階ならそれを封じればよい、そしてわしを爺じゃと思うて警戒心が薄かったのが残念じゃな」

 

初めから最大の超能力で叩き潰せば勝っておったよ。

相手へのフォローを忘れずにこっちへ戻ってくる。

老いれば老いるほどエネルギッシュというかなんというか。

ただ、最後に『修行の成果じゃわい』と小声で呟いたのが聞こえていた。

おいおいおい、まだ現役かよ。

敬意を払うと同時に、脳裏に『この爺さん、えげつねぇ……』という言葉がよぎった。

 

「戦闘経験豊富な爺さんだったようですねえ……グルドさんは再度特訓するようにいたしましょうか」

 

回収をして治療担当に渡すように部下へ言う。

そして次の相手は……

 

「『蒼き旋風』バータ様が相手だ!!」

 

ポーズをとって戦いの場へと赴く。

それに対してこちらは……

 

「私が行くわ」

 

ラエンカの出陣。

すでに超サイヤ人で戦うつもりのようだ。

 

「どちらが速いかね!!」

 

そう言ってバータさんが向かっていく。

だがラエンカが後ろをとり、肘打ちを放つ。

 

「ぐえっ!!」

 

その攻撃が当たる。

しかし……

 

「なっ!?」

 

大爆発を起こしていた。

それに巻き込まれて吹き飛ばされる。

 

「新技、『ネイビー・マリオネット』!!」

 

自分と全く同じ姿の気弾をあの一瞬で作るとは……

速度ならば超サイヤ人を凌駕している。

だが……

 

「はあっ!!!」

 

ラエンカも準備運転は終わった。

そう言うように一気に超サイヤ人3になる。

だが相手も怯みはしない。

深呼吸をしてゴキゴキと音を立てていく。

 

「これが速度特化型の変身……『ストロー・ネイビー』!!」

 

戦闘力自体はそれほど上がってはいない。

骨と皮にうっすらと筋肉がついた姿。

鞭のようにしなる腕からは真空波が放たれる。

 

「捉えられるか!」

 

風切り音を残して消える。

完全に速度ならば通常の俺では見えない。

そして……

 

「ぐっ……」

 

皮膚をカミソリで斬られたような状態にラエンカがなっていく。

回避はしても真空波。

そして拳そのものが刃物のように鋭いのだろう。

血を多く流しすぎたら負けてしまう。

 

「接近戦だぁ!!」

 

一撃を食らってそのまま近づく。

しかし相手も素早い。

ひょいひょいと避けてカウンターを延々と叩き込む。

サンドバッグ状態だ。

一撃を極めて超サイヤ人3を倒すなんて……

そんな発想をだれが考え付いたんだ?

陣営を見るとニヤリと笑っていたのはフリーザだった。

 

「このまま時間を稼ぐ!!」

 

さらに速度のギアが上がる。

徐々に超サイヤ人3のラエンカの気が萎んでいく。

ダメージと出血による意識の混濁。

そして時間を使われてしまい活動の時間のピークが過ぎていた。

 

「ぐぐ……」

 

初めから超サイヤ人3でいっておけばよかった。

そういった後悔が顔から見て取れる。

ダメージが重ければ勝負はつくのだが、相手の形態に感謝せざるを得ない。

 

「だらああ!!」

 

一撃をモロに喰らったが、その瞬間腕を掴む。

そしてそのまま腹に全力の一撃を叩き込む。

 

「肉を切らせて骨を断つか……」

 

血飛沫を舞い上げる。

バータさんはそのまま着地を決める。

ラエンカは立てていなかった。

髪の毛が黒くなり超サイヤ人は解けていた。

 

「もう少し先に目が慣れていれば勝てただろうよ……」

 

そう言って膝をついていた。

もう立ち上がれないと首を振っている。

 

「やはり圧勝なんてのは無いか……」

 

リクームさんの肩を借りて戻っていく。

フリーザが治療班を呼んでラエンカも治療するように言う。

 

「良いのか?」

 

俺がそう言うと笑いながらこっちを向く。

そして真剣な眼差しになる。

 

「敵と言えど……敬意を払うべき相手もいるでしょう?」

 

元より殺し合いならば私が暴れればいいだけですよ。

そう言って治療班に連れて行かせる。

そしてこの敗北をきっかけに勝ち星から遠ざかる。

 

クリリンがタゴマに敗北。

技で最初は優位に立ちまわっていた。

修行をあまりしていなかったからか、スタミナ切れを起こしてしまう。

そのまま、相手との体格差もあり一気に押し込まれてしまった。

 

天津飯はシチミを相手に敗北。

全部の技術を使ったものの相手もフリーザ軍の幹部級。

最初をシチミ優位の場面からも盛り返したのだがそのシーソーゲームで拮抗していた。

最終的には気功砲で相手に反撃させずに押し切っていたのはよかったが、その直後に倒れてしまう。

相手のタフさに軍配が上がり三連敗となった。

 

「折り返し地点ですね」

 

現在こちらの勝ち星は亀仙人様だけだ。

残っているのはリクームさん、ジースさん、ギニューさん、ザーボンさん、ドドリアさんだ。

互いが相手を出す。

こっちはラディッツさん。

相手はジースさんだった。

 

「こっちはウォーミングアップが済んでいるんでな……」

 

超サイヤ人3になって臨戦態勢をとる。

ジースさんは変身ではなく体の筋肉の周りが太くなっていた。

マッチョというよりはシェイプアップを繰り返して均整の取れた状態だ。

 

「『マグマスラッシャー』!!」

 

両腕に刀状の気を纏う。

そして灼熱の炎へと変える。

それを見たラディッツさんは……

 

「『ウェンズデースラッシュ』!!」

 

同じ系統の技で迎え撃つ。

技の威力ではラディッツさんが勝つ。

しかしそれで終わらないのがフリーザ軍幹部。

 

「『マグマレガース』!!」

 

蹴りに灼熱の炎を纏わせる。

それを回避せずに炎がついていない部分まで詰めて受ける。

 

「はあっ!!」

 

掌底で顎を射抜く。

体勢を崩したところにズドンと音がするような重い蹴りを叩き込んだ。

 

「がっ……」

 

蹴り飛ばさずに崩れ落ちるように蹴る。

そして頭を掴んで……

 

「フン!!」

 

頭突きを見舞う。

鼻の骨が折れた音が聞こえる。

 

「『マグマナイト』…!」

 

息も絶え絶えに技を放つ。

体中が灼熱の鎧に包まれる。

触れないので離す。

すると次は竜巻がラディッツさんを囲む。

 

「『マグマプリズン』!!」

 

竜巻が動かずに灼熱を帯びていく。

内部に居るラディッツさんの周りの気温を局所的に高める。

そうすることでラディッツさんは汗だくになっていくはずだ。

熱風を吸い込む為、喉が焼けてしまい呼吸が苦しくなる。

 

「ミイラになるがいい!!」

 

そう言って気を高めていく。

出てきた所を狙っているようだ。

しかし……

 

「…ク…ドォ!!」

 

一本の気弾で突き破る。

片手は竜巻へ。

片手は地面へ。

推進力と技の威力で脱出したのだ。

 

「ぐっ!?」

 

虚を突かれる形になったジースさんが技を放つ。

気弾を打ち破るが威力が落ちている。

十分に高めていればこうはならない。

全員、勝ちを確信できる芸を身につけてはいるが、負けている奴や引き分けの奴はいささか詰めの甘さがある。

そう考えるとバータさんの詰め具合が凄かったな。

 

「だああ!!」

 

気弾を殴り飛ばした。

そして新技を放つ。

 

「『エブリデイ・ハピネス』!!」

 

大きな星型の気弾がジースさんを呑み込んでいく。

その一撃に手応えがあったのと体力の限界が同時にきたのだろう。

ゆらりと体を揺らして盛大に倒れ込んだ。

 

「ハアハアッ、脱水症状のおかげか……」

 

土煙から一つの影が現れた。

なんと、ジースさんはぎりぎりのところで立ち上がっていた。

『相棒が勝っておれが負けるのも格好がつかないからな』と呟いていた。

そしてラディッツさんを抱える。

白目をむいているのを確認して治療室に連れて行った。

 

これで4人連続敗北。

とは言ってもラエンカは若干の油断。

ラディッツさんは炎の竜巻といった搦め手。

力不足というよりは相手がうまく立ち回ったといった所だ。

仮に殴り合いだったなら、バータさんのあの変身に喰らってからカウンターなり喰らった瞬間に掴むといった方法。

それで勝てたとは思う。

ジースさんについてはあの竜巻がなければ普通に勝っていた。

多分、いくら鍛錬していたといっても真っ向勝負であれば超サイヤ人には肉薄できても2には勝てそうにないはずだ。

それを一芸を極めさせて互角に戦わせる策を授けたフリーザ。

やはり指揮官としても超一流だわ、あいつ。

 

「後がありませんねぇ……」

 

そう言ってリクームさんを出してくる。

それを見てピッコロが動いた。

 

「ここで俺が空気を変える」

 

そう言うと力を込めて巨大化をする。

どうやらこれをすると自分と同化したナメック星人のおかげで力が上がるらしい。

的が大きくなるから好まないし、時間制限もあると言っていた。

 

「なかなか楽しめそうじゃ……」

 

始めという合図がない。

だからこそ先手必勝。

ピッコロは相手が言葉を言いきる前に殴り飛ばしていた。

 

「礼儀は大事だがなりふり構っていられないんでな」

 

そう言って踏みつけに行く。

それを腕を交差して受け止める。

 

「小癪な真似を、『爆力魔波』!!」

 

気功波で吹き飛ばす。

そのまま腕を伸ばして掴む。

そして地面に風切り音とともに叩きつけていく。

 

「ぐあああっ!!」

 

リクームさんの強靭な肉体でもダメージが凄まじい。

どうやら肉体改造を行ったり技の隙を無くして基礎的な力を高めたらしい。

しかしそれ以上にピッコロが強い。

 

「どりゃあ!!」

 

前蹴りで飛ばしたかと思うと、速度で後ろをとって空中へ蹴り上げる。

そして掌に気を集めて技を放つ。

 

「『激烈魔弾』!!」

 

背中に直撃する。そのままふらふらと落ちていく間に気弾を何発も放つ。

そしてさらなる追撃を放つ。

 

「『新・魔空包囲弾』!!」

 

爆発でダメージ。

物理的な気弾で突き上げられる。

最後、着地と同時に閃光を放つ。

 

「うっ……!?」

 

両手でベジータの技をモデルに、自分の打ちやすい形。

それでいて威力を今までの最大の技以上に高めたピッコロの新技が放たれる。

 

「『魔穿撃滅波』!!」

 

槍のような形状。

渦を巻いていて見た目はそれほどの範囲がないように見受けられる。

だが速度はすさまじい。

 

「ぐはっ……」

 

腹を貫いてリクームさんが倒れ込む。

そのまま動かず、ピッコロの勝利だった。

リクームさんは至急治療室に行くことになった。

 

「渦が開いていき相手を内部から引き裂く技なんだがな……」

 

試し打ちだと理想からは僅かに外れるものだ。

そう言ってこっちに戻ってきた。

次の相手はドドリアさんのようだ。

 

「あの時みたいに首が落ちないように気を付けろよ、ドドリア」

 

悪い空気を打ち払っての7人目。

ターレスが意地の悪い笑みでドドリアを挑発していた。

まだこの帝王との戦いの前座は終わりそうになかった。




実力的にはラエンカやラディッツの方が上ですが、
搦め手や油断しやすいサイヤ人の弱点を相手がうまく突く形で勝っております。
相手の方でもグルドが亀仙人のじっちゃんをなめた結果、負けております。

ちなみに幹部クラスは全員が超能力特化のグルドを除き超サイヤ人1並みの力は身に着けております。
変身でバータのみ速度『だけ』超サイヤ人3並みになっております。
防御とか捨て去った形態なので総合的な強さは変わっていませんが。
ザーボンやドドリアも強くはなっています。

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『敬うが故の残酷さ』

今回で幹部戦は終了です。
地味に4勝4敗1分に振るのが難しかったです。


ドドリアさんとターレスの戦い。

パワータイプのようだが……

 

「いくぞ!!」

 

超サイヤ人になって挑む。

手四つにはならずに距離をいきなりとる。

 

「『キル・ショットガン』!!」

 

指先から気弾を放つ。

それをラッセル車のように腕を交差して突き進む。

いくらなんでも強引すぎるだろう。

 

「『ニードル・アロー』!!」

 

水泳のけのびの要領でターレスに突撃をする。

それを跳躍して避けるが……

 

「『ニードル・ロケット』!!」

 

足で気弾を放って方向転換。

ターレスの脇腹に掠る。

まさかこんな技を持っていたとは。

 

「『キル・バインド』!!」

 

紐状の気弾で縛り上げる。

そしてそのまま地面へ殴りとばす。

 

「『キル・シャワー』!!」

 

棘状の気弾を放つ。

それを回避するドドリアさん。

しかしその先には……

 

「『キル・ドーム』!!」

 

網状の檻が放たれる。

それは槍状の気弾を延々と発射させるのだ。

気弾をはじくのならば突き刺してしまえばいい。

血生臭い戦いならばきっとこのメンバーの中でも最高である。

相手の状態に合わせて嫌な所をつくのは素晴らしいの一言だ。

 

「ぐっ……」

 

回避し続けるが掠ってはいる。

もし、一撃でも当たれば磔のようになる。

そこにフルパワーの『キルドライバー』を撃つつもりだ。

相手に合わせて戦わない。

油断は無い。

特殊な手を使わせる暇も与えない。

 

「『キル・ボックス』!!」

 

回避して背中をつけた瞬間、技を使う。

狭まっていき、その背中のついていた場所の前後左右がドドリアさんの体にぴったりという感じになっていた。

スタミナ切れとかではなくこういった回避の限界という即時性にも目を配っていたか。

やっぱりすごいな。

 

「グゥウウ!!」

 

力任せに振りほどこうとするが強度が結構あるのか上手くいかない。

油断もまるでないサイヤ人の恐ろしさ。

奇策も使わせない。

相手の手をことごとく潰すタイプの珍しいサイヤ人。

 

その強さは戦うものに冷や汗を垂らさせる。

どうやら終わらせるつもりのようだが…

 

「ぬぉおおおおおお!!」

 

巨大化で箱の許容量を破る。

ミシミシと音をたてて崩壊させた。

 

「ちっ!!」

 

破壊された破片を回避する。

それを見計らってラリアットを見舞う。

 

「ぬ……」

 

受け止めるも力自慢。

そのまま振りぬいて岩山にめり込ませる。

さらに追撃で風を切り裂くように回転をしていく。

空気抵抗を極限に減らしている。

 

「『ヘッジホッグ・スパイラル』!!」

 

腹部に直撃する。

アバラがへし折れる音がする。

血反吐を吐いてさらに岩山にめり込んだ。

ズズズと崩れ落ちる様を見て油断したのだろう。

頭をペタペタと触っていた。

そんな隙を逃さないのがこの男……

 

「喰らいやがれ、『キルドライバー』!!」

 

バチバチとスパークするように気が高まっているのがわかる。

そして腕を前に出す。

 

「なっ!?」

 

油断しきっていたドドリアさんはその一撃をモロに喰らう。

そのまま吹っ飛ばされていく。

持ち前の強靭さで立ち上がろうとするが足がもつれて膝をつく。

 

「くくく……」

 

笑ってはいるがターレスもボロボロだ。

岩山から抜け出すも膝をつく。

こうなれば立った者が勝ちだろう。

それを分かっているからお互いが起き上がろうとはするが……

 

「ぬぐっ……」

 

両方とも足ががくがくしている。

さらに手をついて起き上がろうとしている。

 

「うぐぐっ…」

 

お互い立ったがもう一度崩れ落ちる。

そして両膝をつき頭を下げる。

次の瞬間、限界が来ていたのだろう。

両者、血しぶきを吹く形で倒れ込む。

白目をむいているからこれでは決着のつけようがない。

 

「引き分けになったか……」

 

肉を切らせて骨を断つのも考え物だろうよ。

二人とも治療班に連れられていた。

もう既にほかのみんなは治っている。

やはり超サイヤ人を超えていたらその分速くなるんだな。

 

「……ザーボンさん、あんなやり方は美しくはないですからね?」

 

そう言ってザーボンさんを前に出す。

これはもう出すのはこっちだ。

 

「悟飯、やってこい」

 

頷いてすぐにアルティメット状態になる。

4でもいいのだが、まだ力のコントロールが難しいらしい。

恋愛したり子供の面倒を見るから無理からぬことだ。

 

「あの時の少年がこうも美男子になるとはな」

 

笑いながら言ってくる。

そして力を込め始める。

 

「いくぞ!!」

 

筋肉が肥大して半魚人のような見た目になる。

しかしまだまだ変身は終わらない。

次は膨らんでいた体が筋肉質になる。

さらに今度は背丈が伸びていき。それに比例して手足が伸びていく。

髪形まで変わってしまい顔が最初の時の美男子よりもダンディーな感じになっていた。

 

「これが私が求めた醜い変身の向こう側だ!!」

 

ドンと気があふれ出す。

元が変身型だったから一気に伸びやがった……

超サイヤ人2ほどの強さじゃないのか?

 

「ハッ!!」

 

悟飯が先に仕掛ける。

しかし小気味いい音を立てて頬を叩かれる。

ヒュンという音が聞こえる。

伸びた手を振り子のように振って、そのまま鞭のような一撃を放っている。

 

「ハアアアア!!!!」

 

ヒュンヒュンと風を切りながら悟飯に攻撃を仕掛ける。

悟飯も回避はするがリーチに差ができた。

まだ半魚人から筋肉質になった状態ならさほど差はなかった。

しかしダンディーな高身長おじさんになったら一気に差が開いた。

 

「フン!!」

 

腕を引っ張ってそのまま腹部へ拳を叩き込む。

そのままくの字に曲がったところを狙って顔面へ一撃。

相手の反撃の一撃を打ち払って腰を掴み、持ち上げる。

 

「でりゃあ!!」

 

地面へ勢いよく叩きつける。

そのバウンドした状態へ追撃の気功波を放つ。

 

「『爆力魔閃』!!」

 

その一撃をモロに喰らうがむくりと起き上がる。

どうやら耐えきったようだ。

しかしあの姿は……

 

「防御型変身だ」

 

弾力性のある皮膚にすることで地面に叩きつけられた衝撃を吸収。

そして強固な盾のような皮膚へ変えることで今の衝撃を軽減。

 

「戦闘力のみではなくバータのように様々な変化をさせることで適切な戦いができるように進化したのだ」

 

今度はこっちの番だ。

そう言う様に変身をして消える。

速度特化型変身のようだが……

 

「そこ!!」

 

悟飯にはわかる。

目で追えない速度だとしても気を感じ取ればいい。

ラエンカの場合は今の悟飯よりも実力が劣ること。

まだ、同時に攻撃があったこと。

そのせいだ。

しかしザーボンさんはただ後ろを取りに来た。

だから危険度合いが少ない。

 

「攻撃形態!!」

 

悟飯の裏拳を掴む。

その姿は筋肉が膨れ上がった状態であった。

醜いのではなくたくましい。

 

「それ!!」

 

悟飯を円盤投げの要領で放り投げる。

それを舞空術で体勢を整える。

しかし再び顔を打たれる。

 

「あの形態の一撃は重いが……避けられるだろう?」

 

速度を失ってしまっているのだろう。

悟飯の強さを分かっているからこそ即時的に切り替えて手練手管のやり口を披露している。

 

「そろそろ全力できたらどうだ?」

 

悟飯のアルティメット状態の先を知っているのか?

それとも積極的に仕掛けていないからそう取られたか?

 

「では……いきますよ!!」

 

どうやら4になれという言葉だと理解したらしい。

制御が難しいから殺しかねない。

だからあえて使わなかったのに。

そうなっても知らないぞ。

 

「すみません、お待たせしました」

 

そう言って構える。

ザーボンさんも冷や汗をかいている。

言うべきではなかったと後悔しているのだろうか?

 

「はいっ!!」

 

一瞬で間合いを詰めて攻撃を振るう。

防御形態で盾のような肌へと変化させる。

 

「がはっ……」

 

しかしその行為も虚しくひび割れてしまい衝撃が伝わる。

そしてその一撃にもんどりうってしまう。

痛みに呻いている。

さらに立ち上がる前に背中を蹴りあげられる。

 

「終わりです、『10倍かめはめ波』!!」

 

その光に呑み込まれてザーボンさんが墜落する。

ピクピクとしか動かない。

治療班がまたもや運んでいく。

今回、大忙しだな。

特別支給が出るんじゃないのか?

それはそれとして瞬く間に勝負は決まった。

 

「やはり、孫悟空の息子が相手では厳しかったですねぇ」

 

そう言って目配せをする。

それを汲み取ったのかポーズをとったギニューさんが出陣する。

 

「お任せください、フリーザ様、このギニュー特戦隊隊長……ギニューが勝利して見せましょう」

 

首をコキリと鳴らす。

そして気を噴出させる。

鍛えに鍛えたのが伝わってくる。

超サイヤ人2と3の間ぐらいはありそうだな。

 

「ふん、それはこっちのセリフだ」

 

ブロリーがすでに4になった臨戦態勢でギニューさんを見る。

うん、負ける姿が見えない。

ボディチェンジができそうにもない。

むしろこっち側だけどギニューさんを応援したくなるほどの差。

大人と子供といった方がいいのかもしれない。

 

「ハアッ!!」

 

ギニューさんが突撃して一撃を繰り出す。

腹筋で受け止めてそのまま頭を掴んで放り投げる。

そのままラリアットの一撃を放とうとするが……

 

「『ミルキーキャノン』!!」

 

激突前に舌に向けて放つことで難を逃れる。

しかし一難去ってまた一難。

ブロリーがすでに先回りをしていた。

 

「終わりだ、『ギガンティックミーティア』!!」

 

頭を掴んで急降下。

地面に叩きつけた後、巨大な気弾の一撃。

ギニューさんを中心にとてつもない陥没ができた。

 

「まだまだ……『パフェ・ストーム』!!」

 

立ち上がって渦巻型の気弾を放つ。

それを片手で受け止める。

僅か一撃で勝負の流れを作り上げた。

 

「『マーブル・シャドウ』!!」

 

一瞬の間に懐へ忍び込む。

それを迎撃したが残像。

そして……

 

「うぉおおおおお!!!」

 

首を足で絞めてそのまま回転をして地面へ叩きつける。

ギリギリと体重をかけながら絞め上げていく。

 

「くくく…この技は自分の体重が重ければ重いほど効く技!!」

 

打撃が通用しないと見るや絞め技による対抗。

確かにその方法は有効かもしれない。

俺や悟飯のようにまだ首の太さが規格外じゃなければな。

しかしこいつは……

 

「フン……」

 

規格外のサイヤ人。

首が太くなって足の絞めを押し返す。

そして徐々に外れていくと……

 

「ハアッ!!」

 

一気に首に力を込めて弾いた。

そしてその足を持ったままグイングインと振り回す。

それを上空へ投げると瞬く間にそれを追い越していく。

 

「喰らえ、『ギガンティックオメガ』!!」

 

両手でカカロットの『かめはめ波』のような技を放つ。

だが、太さと勢いは段違い。

その攻撃を見てギニューさんが不敵な笑みを浮かべる。

 

「お前が喰らうがいい、『メルティ・カレイドスコープ』!!」

 

技を跳ね返す。

それに直撃するブロリー。

確かにギニューさんが拳を何発打ち込んでもブロリーへのダメージは微々たるもの。

しかし、ブロリー自身の攻撃であったならば?

 

「がはっ……」

 

煙をあげるブロリー。

しかしただでは転ばない。

その手があるのならば零距離でもう一度ぶち込むのみ。

余計に火をつけた。

 

「フンっ!!」

 

一気に間合いを詰めて頭を掴む。

そして急降下。

気を掌に集中させる。

光を帯びるほどの集中。

全力の一撃だというのがわかる。

 

「終われ、『ギガンティックスラム』!!」

 

顔面の零距離ででかい気弾を放つ。

当然跳ね返すことなどできるわけもない。

勢いよくその一撃ごと地面へと叩きつけられる。

 

「生きているか……?」

 

そう言って胸倉をつかむ。

死んでこそはいないが重傷なことには変わりない。

決着は誰が見ても明らかだった。

 

「これで前座は終わりですね……」

 

治療班がギニューさんを連れていくのを見てフリーザが言う。

そうだな。

俺とお前しか残ってはいない。

 

「貴方にはあの日から変わらず敬意を表しているんです……」

 

そう言って気を高める。

まさかこれは……

 

「ふふふ……そちらの予想通り最強の変身をもって貴方の相手をするという事です」

 

それなら俺も出し惜しみはしない。

気力を最大限にまで高める。

超フルパワー超サイヤ人4になっていく。

宇宙そのものが震えるような気。

お互いが変身を完全に終える。

 

俺は真っ赤な体毛を持つ上半身大猿で血管が浮き出るほど気力を充実させた超サイヤ人4.

その気は見る者に尊敬を与える。

気がまるで暴風のように吹き荒れている。

 

そして目の前のフリーザは眩いほどの黄金の色。

その気は見る者に畏怖を与える。

そして背筋が凍るほどの凄まじさがある。

 

「さあ、15年前の決着をつけましょうか……」

 

互いに構えて制空圏に入る。

地球における史上最大の戦いが始まろうとしていた。




次回からゴールデンフリーザとガタバルの対決です。
相変わらず容赦のないフリーザ。
無駄にナメック星の時に興味持たれる立ち回りをした特典です。
原作主人公たちが空気ですが、そこはそれという事で……

指摘などありましたらお願いします。


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『黄金と真紅』

『復活のF』編は終わりです。
悟空達の修行とかを抜いてしまったり
乱戦から試合形式に変えた分、すっきりになってしまいました。
次回からは第6宇宙対抗戦までの日常回でいこうと思います。


「ハアッ!!」

 

互いに示し合わせたように拳を出す。

全力で放つ拳。

それは当たれば致命傷になるほど。

そんな一撃を同時に放つ。

 

「シッ!!」

 

残る片方の拳で弾いて回避する俺。

それに対してフリーザは……

 

「フッ!!」

 

上体反らしで避ける。

そしてその勢いでもう一度拳を振るう。

 

「ちっ!!」

 

首を捻って衝撃を逃がす。

それと同時に顎へアッパーを放つ。

 

「残念!!」

 

叩き落して互いに向き合う。

そして次は蹴りを放つ。

 

「甘い!!」

 

蹴り足を掴んで関節技を極めにくる。

その前にぐるりと転んで技から抜け出す。

 

「ヒャー!!」

 

尻尾を振ってくるのそれを掴んでぐるぐると回す。

そして上空へと投げる。

 

「『プライド・オブ・ラクタパクシャ』!!」

 

灼熱の鳥型の気弾が射出される。

相手を包み込むように向かっていく。

 

「『ゴールデン・デス・クラウン』!!」

 

金色の王冠型の気弾が射出される。

その一撃がぶつかり合う。

両方、威力が同程度だったため霧散するが苦い顔だ。

 

「格闘技術に大きな隔たりは無く……」

 

構えて深呼吸をする。

相手のリズムを読みながら次の動きを考える。

じりじりと間合いが詰まっていく。

 

「気弾の力もさほど変わらない……」

 

フリーザも構えている。

ここまで考えは一緒なのだ。

次に何をするかはわかる。

 

「シッ!!」

 

こっちがジャブを放つ。

一撃、二撃と小気味いい音を立ててフリーザに当たる。

フリーザも距離を詰めてジャブを放ってくる。

 

「ハッ!!」

 

こっちが腕を掴もうとすると拳を開いて掴まれる。

そのまま引っ張られて裏拳を喰らう。

 

「くっ!!」

 

そしてこっちに接近をする。

インファイトで主導権を取りにいく。

一歩も引く気は無し。

 

「望むところ……」

 

拳を放つ。

回避されてしまう。

そしてフリーザがカウンター気味に放ってくる。

 

「フンっ!!」

 

こっちも回避をする。

そしてお返しとばかりに逆の手でカウンターの一撃を放つ。

いいタイミングだ。

 

「ヒヤリとしましたよ……」

 

しかし手応えは無い。

どうやら皮一枚だったようだ。

フリーザが僅かに速く回避をしていた。

 

「今度は当てる」

 

そう言ってもう一度拳を振るう。

それを首を捻って勢いをいなす。

しかもそれと同時に拳を出していやがる。

こいつ、戦いの中で真っ当に『成長』しているのか!?

 

「くっ!!」

 

上体を反らして回避する。

よくよく考えれば当たり前だ。

こいつは同等の相手がいないからそれを振るった事がない。

今、最適な戦いをするためにその修正をしている状態。

つくづくセンスの塊だ。

 

「戦闘力が上がったわけではないからましだけどな」

 

戦闘における最適化というのは無駄を減らすこと。

つまり動きのキレの向上。

隙の減少。

技を出すタイミングの熟知。

勝負所を知る嗅覚。

 

「手が止まりましたね、次はこっちからいきますよ!!」

 

そう言って一気に飛ばしていく。

風を切る音と拳が同時に出ている。

様子見のジャブなんてものはもはや必要なし。

それを雄弁に語っている。

 

掌で受け止めてカウンターを放つ。

しかし相手も同じく掌で受け止める。

鏡合わせのような動き。

実力の拮抗は進展を見出すことがない。

 

「ハアッ!!」

 

こうなったらあまりやりたくはない事なんだが……

この一撃を食らってその隙に一撃を叩き込むしかあるまい。

そう決めて歯を食いしばった。

 

「がっ……」

 

わざと喰らうがその威力はすさまじい。

意識を持っていかれそうになる。

だがその仕返しにこちらも顔面に拳をめり込ませる。

 

「ぐはっ!!」

 

両方とも顔が跳ね上がる。

そして一気に回避やカウンターといったものが必要ではなくなった。

今まで、拳を振ってきたが俺たちの戦いはそういったものじゃない。

本来はなんでもありのはずだ。

ようやくできたお互いに取って技が当てられる瞬間。

それを逃す鈍間じゃあない。

 

「こっちも分かりますよ!!」

 

またもやクロスカウンター。

両方の拳の威力が最大限まで活かされる距離。

距離が僅かに開いた瞬間、俺は延髄蹴りを仕掛ける。

 

「ふふっ……」

 

フリーザが不敵な笑みを浮かべながらピクリと反応をする。

まず俺は飛び蹴りを放つ。

フリーザはそれを受け止めずに回避する。

だがその肩に俺が手を乗せれば……

 

「読み切れていますよ!!」

 

そう言ってフリーザが俺の腕を掴んでこっちの動きを止める。

でもこれならばどうだ?

俺はブランコのように体を振って顎を蹴りあげる。

 

「ぐっ!!」

 

顎を蹴られてフリーザがふらつく。

そして懐に入った俺は怒涛のラッシュを始める。

左前蹴り。

右肘打ち。

左鉄槌。

右下段蹴り。

左鉤突き。

右上段蹴り。

右正拳。

左中段蹴り。

右前蹴り。

左肘打ち。

回数にして十。

フリーザを容赦なく殴打する。

しかし…

 

「フフフッ……」

 

不敵な笑みを浮かべている。

フリーザは全てのラッシュにおける急所を外していたのだ。

その為、ダメージをそれほど負ってはいない。

無防備の状態にしても芯をずらすだけはできたか。

 

「流石に今のは痛かった……痛かったぞー!!」

 

急所を外してダメージも少ない。

しかし痛みは感じていた。

だからこそ逆襲が始まる。

 

「だああああああ!!」

 

防御はできているが俺よりは遥かに多い連打。

防御が崩れれば一気にこちらの体力を奪い去るほどの数。

じりじりと腕が下がっていく。

 

「だが……」

 

蹴りを出した瞬間、尻尾で絡めとって殴る。

これで再び距離ができる。

実力がやはり拮抗している。

殴り合いでもやり方が違うだけで行きつく先は同等の結果のみ。

きっと長期戦をしても埒があかない。

 

「はああああああ……」

 

気を高めて大技に移行する。

すると同様にフリーザも気を高める。

拮抗すると行きつく考えもまた一緒。

 

どのようにすれば相手よりもいい形になるかが重要になる。

距離で言えば1ミリでもいい。

時間ならばコンマ1秒。

重さなら1グラム。

そんなレベルのせめぎあいにしかならない。

そしてその積み重ねが勝敗を分ける。

 

「『アルバトロス・ブラスター』!!」

 

こっちがアホウドリの気弾を放つ。

すると向こうは人差し指を上に上げる。

おなじみの技だ。

 

「『ゴールデン・デスボール』」!!

 

またもや技がぶつかり合う。

押し返していくが相手も負けていない。

気を緩めるとお終いだ。

 

「くそー!!」

 

誰かの声が聞こえる。

光線銃で脇腹を射抜かれる。

 

「がっ……」

 

その気の緩みがフリーザの技の勢いを止められなくする。

俺は気弾に呑み込まれていく。

ダメージは甚大なものだ。

 

「ソルベさん……」

 

立ち上がってフリーザに向き合うとするがフリーザは自分の軍の兵士に視線を向けている。

それは冷徹そのもの。

手を向けてソルベという奴を浮き上がらせる。

 

「貴方は即刻……」

 

ぐぐぐと力を入れていく。

すると徐々に萎んでいく。

声を発せなくなっていた。

 

「死刑です」

 

ぐしゃりと握りつぶすように殺した。

逆鱗に触れてしまったようだ。

 

「申し訳ありません、馬鹿な部下のせいで勝負に水を差されました」

 

そう言ってこっちに向き直る。

気にしなくていい。

こうなったらこっちも躍起になる。

余計に気合が入るというものだ。

現に今、さっきの緊迫した状態より精神状態は充実している。

 

「では続きを……」

 

ギラリとした視線で睨み付ける。

言い切る前に耐え切れずに前に出る。

 

「貴方もサイヤ人ですからね、闘争本能に火が付きましたか」

 

腕を交差してこちらの一撃を受け止めるがその腕を支点に跳躍する。

そして背中に回って拳の一撃を叩き込む。

 

「ぐあっ!!」

 

首を掴んで肩に落とす。

頭を揺らしていく。

ぐらつくフリーザに前蹴りを放つ。

受け止めずに後ろに下がっている。

 

「時間を稼がさせるとでも?」

 

瞬間移動で懐に忍び込み頭突きを見舞う。

さらに顎へ肘打ちを入れる。

腹部に拳を打ち込んでいく。

 

「くっ!!」

 

反撃の拳を避ける。

避けてはみたが違和感が少しある。

なんだ、この違和感は……

 

「ふっ!!」

 

蹴りを放ってくるがそれを回避の際に膝を踏み台にする。

そのままカウンターで膝蹴りを叩き込む。

この蹴りにも違和感があった。

 

「はああっ!!」

 

インファイトで一撃を叩き込みに来る。

しかし……

 

「グフッ!!」

 

フリーザの攻撃にカウンターがピタリとはまる。

右の拳に左のカウンター。

 

「うぐぅ!!」

 

左の蹴りに右のカウンター。

これで違和感の正体がわかる。

最初の時からあのソルベが俺を撃つまで拮抗していた。

しかし今は……

 

「ピークを過ぎていやがるな?」

 

弱点があったのだ。

それはこの形態の長期的な継続ができないという事。

こっちよりも速く時間が来てしまった。

 

「そんな訳が……!!」

 

否定をして攻撃を振るうも、またこっちのカウンターを食らう。

こいつ……気のコントロールできてないのか?

そうだとしたら納得だ。

あれだけの膨大な気を制御せず、常に垂れ流し。

消費量が凄まじい勢いである。

 

「言っとくがこれから先はお前が地獄に足を踏み入れるような羽目になるぞ」

 

今までの勝負とは全然違う。

俺がソルベの光線銃で集中力を切らし、お前の気弾をモロに喰らった。

そこで開き直ったからお前は俺に攻撃を当てられた。

しかしここからは一方的に殴られるだけ。

拮抗はしない。

 

「それはどうでしょうかね?」

 

俺が虚言を言う性質ではないというのはフリーザも分かっている。

しかし、ここでひいては率いる者のメンツが立たない。

だから俺が倒して明確にしないといけないのだ。

 

「やってみればわかるだろうよ……」

 

そう言って拳を振るう。

回避をするが速度も落ちている。

後ろをとって膝蹴りを背中にぶち込む。

 

「ぐあっ!!」

 

吹っ飛んでいくがそれを追い越して地面へ叩きつける。

フリーザは受け身も取れていない。

 

「ぬぐぐぐ……」

 

胸倉を掴んで放り投げる。

それを追いかけてタコ殴りにする。

腹部に拳を叩き込む。

くの字に曲がれば顔面に一撃。

背中に肘打ちをしたら尻尾を掴んで振り回す。

そのまま岩盤へと叩きつける。

 

「ぐはっ!!」

 

血を吐いてぐったりとする。

そこへラリアットを叩き込む。

あばら骨が折れただろう。

グロッキー状態になったフリーザに照準を合わせて攻撃を仕掛ける。

 

「『アルバトロス・ブラスター』!!」

 

岩盤に向かってアホウドリが飛翔する。

その太い嘴が、鋭い鉤爪が。

フリーザの戦意を啄み、戦える肉体を引き裂こうとする。

 

「ぬっ!!」

 

しかしフリーザが易々と技を食らう訳もない。

目を見開いて技を受け止める。

そしてフリーザは息を吸い込み……

 

「うがあああああ!!」

 

気合を吐き出し、こっちの技を相殺する。

無傷とならずに体中からブスブスと煙を立てている。

しかしもはやゴールデンの限界は近い。

次の気弾で終わらせる。

その為に気を極限にまで高めていく。

 

「勝利したいという戦いへの『熱情』、このままでは負けてしまうという『冷静』!!」

 

ボロボロの中で未だに維持をし続けている。

倒れ込んでもおかしくないほどのダメージを負っているというのにだ。

しかも纏っている気の量が徐々に変わっているのがわかる。

 

「いわばそれは『炎』と『氷』という相反するもの、それをまとめ上げるようにしてしまえば……」

 

尽きて減っているわけではない。

気が徐々に体の中に入っていく。

やはりこいつは……

 

「気の制御はできるのではないでしょうか?」

 

天才というほかあるまい。

そう言って終わろうとしていたゴールデン状態が再び眩く光る。

だが、分かっている。

それは燃え尽きる前のろうそく。

敗北という終着点に行きつく前の最後のあがき。

ならばそれに全力で応えよう。

 

「『ゴールデン・デス・クラウン』!!」

 

戦いの初めの時に放ったものよりも遥かに大きな王冠。

この一撃の後には何も残さない。

疲労によって変身は解けて倒れ込むであろう。

精根全てを捧げた一撃。

 

それに応えるように俺も捧げよう。

いつもならば掌の部分にしか灼熱は無い。

全力で放ったらどうなるのかは未知数。

なぜなら『一撃に全てを捧げる』なんてのはこれほど実力をあげてから一度もない。

ビルス様の時は激昂していたからどうなっていたかは覚えていない。

 

「『プライド・オブ・ラクタパクシャ』!!」

 

肩口まで灼熱の気が立ち昇る。

それを全て吐き出すように放つ。

いつもより遥かに大きな灼熱の鳥が羽ばたく。

王冠を包みこんでいく。

どろりと溶かしていくような錯覚さえある。

やはり気の制御ができたとはいえピークを過ぎ去っていたのは紛れもない事実。

威力に大きく差が出てしまったようだ。

 

「ぐぐぐ……」

 

王冠を食い破られてしまい受け止める形となったフリーザ。

これで呑み込めなかったら引き分けなんだけどな……。

俺もきっと動くことは叶わない。

 

「ががが……」

 

力いっぱい押し込もうとする。

じりじりとフリーザが後ずさっていく。

そして徐々に黄金の輝きを失っていく。

限界が来たのだろう。

 

「だああああ!!」

 

最終形態の見た目に戻った瞬間、力を振り絞る。

一気に灼熱に呑み込まれていく。

そのまま天に向かって羽ばたいていく灼熱の鳥。

 

フリーザは気絶していた。

それを見てギニューさんが背負って治療室に送ってゆく。

これで戦いは終わったか……

そんな事を考えているとカカロットとベジータがビルス様とウイスさんを連れてきていた。

 

「やはり僕の目に狂いはなかったようだな、今の所はお前が一番強いというわけだ」

 

そう言って頭を撫でられる。

しかしフリーザはまだ発展途上だと言う。

すると笑みを浮かべながらこう言ってきた。

 

「僕が直々に鍛えてやってもいいぞ、遊び相手にはなるだろう」

 

ウイスに稽古をつけてほしければ、本来せめて僕ぐらいないと付いてはいけないしな。

冗談か定かではない事を聞きながら安堵のため変身が解けて座り込むのだった。




弱点は原作通りまだ克服しないままの襲来となっていました。
試合の中で戦いの勘を急激に進化させたり、気の制御をマスターという化け物ぶりを披露しましたけどね。
ソルベは犠牲になったのだ、真剣勝負の犠牲にな……

指摘などありましたらお願いします。


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『第6宇宙対抗戦』編
『破壊神シャンパ来訪』


今回で対抗戦の差し掛かりです。
次回は修行をしてそのまま一回戦目をする予定です。


フリーザとの戦いから数日後。

 

「飲んでください」

 

そう言われて紅茶を飲む。

そして奇妙な果物を頬張る。

ジューシーだな。

しかしなぜまた……

 

「俺を呼び出したんだ?」

 

そう言って目の前に座る相手を見据える。

その姿は健康そのもの。

すんなりと通した時点で話程度の事だと思った。

 

「そんなの決まってるじゃありませんか……」

 

そう言って立ち上がり、映像が出てくる。

それはどうやら頑固な異星人だった。

 

「このフリーザの手伝いをしてもらうためです」

 

そう、俺は今フリーザの宇宙船に居た。

ギニューさんからいきなり言われて瞬間移動をしたのだ。

どうも捌いていく最中に条件を呑んでくれない異星人がいるのだ。

優良なのだが下げろといったパターンである。

今まで開発してきたからランクの低い星はそうそうない。

むしろ最低レベルを見せたうえで断られたのだ。

 

そこまで聞いて俺はため息をついていた。

本来ならば今頃ビルス様に稽古をつけてもらえるはずだったんだけどな……

 

ちなみにブロリーはウイスさんに自分の体格を見直してもらっている。

制御ができてもかなり筋肉が肥大をしている。

例外的に小回りはきくのだが、障害物にはぶつかるだろう。

そういった地形での戦いに対して考えたらしい。

 

細身からなぜ一気に肥大を起こすのか?

その増強のメカニズム。

それをいかに抑えるか。

戦闘力を抑えることにつながるが、ハイブリット型の形態が生まれれば半分の力で細身の状態に至るだろう。

 

話が脱線してしまった。

とにかく交渉に俺を入れて成功させろという事だろう。

分かったが、向こうの交渉は手荒かもしれないぞ?

 

「……で、そういう理屈から色々な星をご提示ができますが、文明レベル等を顧みていただいた結果なんです」

 

到着したらすぐに交渉の場に入れられた。

サイヤ人というだけで相手が怯えている。

これ……脅迫に近くないか?

 

「あの、話聞いてくださっていますか?」

 

するとびくりと体を震わせる。

ああ、俺たちがビルス様に抱くのと同じなのか。

『機嫌を損ねるべからず』

仮にやってしまったら自分たちの命が無くなってしまう。

 

「これより下となりますと流石に用意できないので、分かっていただけたならフリーザに変わります」

 

そう言ってフリーザに変わる。

フリーザが再度説明をして異星人も頷いていた。

ちらちらとこっちをうかがっていた事は見なかった事にした。

そして話が終わると宇宙船に戻る。

不服な部分があったから申し立てておくか。

 

「サイヤ人のブランドがえげつないがこれって計算のうちか?」

 

そう言うと首を振る。

サイヤ人を脅迫の道具にする気はなかった。

しかし、自分が力づくで納得させることはできない。

だから損な役回りになることを俺にやらせたというわけだ。

 

「まあ、あそこまで怯えるのは予想外でしたよ……」

 

バツの悪そうな顔を浮かべて食事を出す。

とにかくしばらくはこの手伝いか。

ちゃんと金も出すみたいだがそれだけが目的ではないだろう。

 

「さて……トレーニングルームに行きましょうか」

 

なるほどな。

宇宙船が壊れないように気弾禁止の戦闘。

こういう役得の一つがあってもいいじゃないか。

じゃあ始めよう。

 

「ハッ!!」

 

いかに短時間で相手を倒せるようになるか。

急所への攻撃。

相手の弱点を見つける観察眼。

それらを磨いていく。

 

気のコントロールなども磨いていかないといけない。

今でこそカカロットより上だが、いつまで限界の壁を越えられるのかはわからない。

それに期待して鍛えるわけにもいかない。

 

「シッ!!」

 

それを弾いてカウンター。

しかし尻尾で防がれる。

気を付けないといけないのはこの尻尾だ。

 

打撃への緩衝材になるという事。

そのまま叩きつけられるという事。

そして巻き付いて相手の行動を奪う事。

俺の尻尾はフリーザほど太く大きくない。

どちらかといえば細く長い。

緩衝材になることもなければ、叩きつけられる範囲も少ない。

巻き付かせるのが共通点だ。

 

「ハアッ!!」

 

貫手の一撃を回避して腕をとって放り投げる。

切れ味のいい刃物みたいな一撃になるからな。

 

「フッ!!」

 

回転して着地をする。

そこめがけて蹴りを放つ。

すると掌で受け止めて後ろに飛ぶ。

そしてその勢いを乗せた蹴りをこめかみに叩き込みに来る。

 

それを体を沈めて回避する。

そしてそのまま懐に潜り込んでアッパー。

蹴り足とは逆の足をわざと滑らせてそのまま床に倒れ込んで回避する。

 

「やっぱり埒があかないな」

 

打撃のやり取りで一分以上は経過している。

だというのに互いに有効打がない。

ゴールデンフリーザも俺の超フルパワー超サイヤ人4も時間制限はある。

徐々に伸びてはいるがこのままだとどちらかがガス切れを起こしたら負けという状態だ。

 

「ここまで拮抗した実力になってしまうとは……」

 

互いの実力はあれから徐々に伸びてはいる。

しかし、終着点とも言うべき進化を遂げた。

だから劇的な伸びは無い。

怒りによっての突破が俺にはあるし、フリーザにも何かしらの変身のきっかけがあれば別だろうが。

それはフリーザもよくわかっている。

 

「自分たちより強い相手なんて破壊神か天使ぐらいのものですねぇ」

 

そう言ってフリーザが構える。

まあ、あの二人と戦って勝てるとはまだ思えない。

この間にも息を整えるためにイメージでトレーニングをするが、溜息をつくほどの相手なのだ。

 

「しかし命がいくつあっても足りないので今はこうやっていくしかないけどな!!」

 

そう言って蹴りを繰り出すと最小限の動きで衝撃を逸らす。

首を捻って逃がす技術や相手の動きが素早い時の腹部や足への攻撃。

セオリーなども互いにわかりあうようになる。

とは言っても昔は憎んでいたはずなのに、こいつががらりと変わってからなんだか良いと思える。

 

曰く『同等がいない分見下していた』らしく、あのナメック星で単騎で向かい、なおかつとどめを刺せなかった強者。

そして殺意を漲らせていたが、他の野蛮なサイヤ人とは違う雰囲気。

それに興味が湧いた結果だという事。

勝利を求めるのに多くの星の統治は必要ない。

帝王の威厳よりも一つの勝利を求めていった結果、悪事してる場合ではなくなり徐々に野望が健全に昇華された。

気が付けば決着を望む自分がいた。

それが邪悪さが無くなった過程。

 

「界王神を狙っても意味がないですからねぇ」

 

フリーザが肘打ちを放ってくる。

そこに俺は蛇のように腕を絡みつかせて圧し折りにいく。

しかしそうなる前にフリーザは転がって関節技から逃れる。

 

「正直勝てる気しかしない」

 

そう言って裏拳を放つ。

するとフリーザが掌で受け止めて引っ張ってくる。

引き寄せてカウンターでこっちに向かって拳を突き出す。

 

「ちっ!!」

 

向かってくる拳に向かって頭突きを合わせる。

するとフリーザは寸止めをする。

拳が壊れることを考慮したのだろう。

その隙にアッパーを顎に当てる。

 

「ぐあっ!!」

 

僅かに体が浮いたフリーザに蹴りを入れる。

壁にぶつかって着地が狂う。

追撃をしてもいいが罠の可能性もある。

 

「ぐっ……」

 

少しダメージはあるが尻尾を波打たせている。

あのまま近づいていたら尻尾に絡めとられるか絞めつけられていただろう。

やはり追撃するにも注意が必要だ。

 

「『ピピピ……ピピピ……』」

 

電子音が鳴って重力が解かれる。

制限時間の5分が来たようだ。

超サイヤ人4でようやくまともに動けるような非常に強い重力で勝負をしていた。

そうすることで体を両者苛め抜いて少しでも先に進めると考えているからだ。

 

「今日はこれで終わりにしましょう」

 

そう言ってトレーニングルームから出る。

疲労感がどっと出る。

重力と気を抜けない戦い。

精神的、肉体的にもかなりの負荷がかかっている。

 

「明日も交渉をお願いいたしますね」

 

そう言われて溜息をつく。

サイヤ人をちらつかせればいけるわけじゃないだろ……

そう思ってその日は寝た。

しかし俺の気持ちは打ち砕かれることとなる。

 

それから数週間の間、フリーザの手伝いをしていたが交渉が難航しそうになれば俺が出る。

そして相手が怯えて了承。

そんなサイヤ人のお手本ではない。

そう言っても宇宙に知れ渡っている悪評で信じてもらえない。

 

結果、予定していたものはすべて捌けたらしい。

俺の精神的なショックはどう考えてもその利益よりでかいよ。

 

報酬をもらって地球に戻ってきた時にやつれているとピオーネに言われた。

さて、ビルス様に会いに行かないと。

お土産を持っていく。

今回はピザだ。

 

「ふう……」

 

そこそこの量のピザを用意して瞬間移動をした。

ブロリーの当初の形態についてはウイスさんが解決できたようでハイブリット形態を習得していた。

 

「ガタバルさんも練磨されてますね」

 

そう言いながらぺたぺたと触られる。

そして今なら悟空さん達より上ですよと言われた。

 

「ビルス様にお土産ですか?」

 

ブロリーがそう言うので頷く。

ピザだと聞いてウイスさんがくすくすと笑う。

 

「それはまたシャンパ様がお好きそうなものをこのタイミングで……」

 

その名前を聞いてピンとくる。

多分その人は……

 

「第6宇宙の破壊神ですね」

 

そう言うと驚いたような顔をこちらに向ける。

何故知っているのかというように。

 

「ズノーの星で聞いたことがありましてそれをずっと覚えていたんです」

 

なるほど。

そう言ってビルス様の宮殿に連れられる。

カカロットやベジータが重い服を着せられている。

何かしでかしたのか?

 

「カップラーメンよりいいものがあるじゃないか」

 

ニヤリとこっちのピザが入った袋を見るビルス様。

それを渡すと向かいの相手を見る。

見た目は太ったビルス様のようだな。

すると視線に気づいたのか、じろりと見てくる。

 

「なんか凄味無さすぎね?」

 

なんでこんな奴ここに居んの?

そう言うような感じである。

するとビルス様が……

 

「そんな事を言うとこのおまえ好みのものでなくカップラーメンにするぞ」

 

そう言ってふたを開ける。

チーズやトマトソースのいい匂いだ。

それを見て生唾をシャンパ様が飲み込む。

 

「まあまあ、ビルス様、折角の客人をもてなしましょう」

 

器を疑われますよ。

そう言うとそれもそうだなと返してずいと箱をシャンパ様の方へと出す。

 

「これ旨いな、癖はあるが実に良い!!」

 

憎まれ口で批判することもなくむしゃむしゃと食べる。

そして話は進むのだが……

 

「俺たちの宇宙に地球がないならそっちの地球を貰えばいい」

 

地球の食事が気に入ったのに自分たちの宇宙にはない。

それをビルス様が茶化した結果そんな事を言い始めた。

 

「願い玉があればできるんだよ!!」

 

神のドラゴンボールの使用か。

しかし俺はそれについてよく知っている。

 

「シャンパ様、つかぬ事をお聞きいたします」

 

手を挙げて話を止める。

一体なんだよと悪態をついてこっちを向く。

 

「第6宇宙と第7宇宙に合計7個あるとズノーから聞いておりますが、第6宇宙だけで6個とは偶然が過ぎるのでは?」

 

そう言うと汗を流す。

やはりそう言う事か。

それをウイスさんに目配せをする。

 

「つまりシャンパ様は第7宇宙に無断で何度か行き来されているという事ですね」

 

すると地団太を踏んで無茶苦茶なことを言い始める。

あと一つ見つければどうあがいても俺達は変えられるんだぞ。

それを阻止する機会を『格闘大会』として与えているんだから優しいだろう。

そんな事を言うのだ。

 

「こうなったらビルス様、快く受けた方がよろしいかと…」

 

強硬手段に出る前に何とかする。

それを暗に示すと溜息をついた。

 

「分かった、その勝負を受ける」

 

しかし、勝ったらこっちに残り全部よこせよ。

そう言って火花を散らしあう。

代表選手は7名ずつ。

 

「生半可な奴を連れてくるなよ、シャンパ」

 

そう言って背中を向ける。

残りのピザを食べるつもりのようだ。

 

「すみませんがビルス様、ブロリーさんは調整が間に合いそうにないので今回は欠場です」

 

ウイスさんがそう言うと額を抑える。

俺はいけますよと胸を叩くと詰め寄られる。

 

「お前は強制参加だぞ」

 

この馬鹿な奴らと違って最初から全開でいってやれ。

そう釘を刺された。

 

「しかし、あと四人はどうするんだ?」

 

ベジータが言ってくる。

するとビルス様は『僕が知る限り一番強い奴』を連れてくるからあと三人はそっちで決めろ。

と言ってきた。

 

「ピオーネにするか?」

 

そう言うと頭を掴まれた。

ビルス様が激怒している。

 

「あいつは今回除外しろ」

 

シャンパがうっかり口を滑らせたらどうする。

服が破けないとも限らんだろう?

そう言うのでカカロット達と意見を出し合う。

そして決まったのは……

 

「ピッコロだな」

 

悟飯は子育てに忙しい。

そのうえで戦闘力などを考えた結果、ピッコロに決まった。

それ以外は話し合いの結果、ニアとザンギャ。

サイヤ人だらけというのも気まずい。

サラガドゥラでもいい気がするが……

さて、誘いにいくか。

 

まだ見ぬ強敵との戦い。

サイヤ人の血が騒ぐ。

そして未来が僅かに見えた。

それはその光景が幻でないようにと強く願う光景だった。




こっちの7人が仮に最強メンバーで行くと
悟空、ベジータ、ガタバル、ブロリー、ピオーネ、フリーザ、サラガドゥラ。
……第6宇宙の勝ち目なさそうですね。
オリジナルっぽいですがあまり変わらずガタバル無双の予定です。
4に対抗できそうなのってケール除けば今の所ヒットぐらいですし……

指摘などありましたらお願いします。


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『対抗戦開始』

感想でいただいていた筋肉制御をすぐに使わせてもらいました。
今回から3話ほど対抗戦の予定です。
短くなってしまいますがご了承ください。


「なかなかの面子を集めたものだな」

 

ピッコロと話している。

破壊神との対抗試合。

そのメンバーを聞いていた。

俺とベジータとカカロット。

ザンギャとニア。

そしてお前とビルス様が言っていた謎の戦士であるモナカ。

 

「しかし、モナカという最強の戦士か」

 

俺はあの時の眼に違和感を感じていた。

よもや、破壊神が嘘をつくとは思えないが……

 

「戦う順番についてはそのモナカを大将固定で悟空やベジータが副将か?」

 

ピッコロが聞いてくるので俺も頷く。

女性陣に先に出てもらう。

きっと後々が厳しいからな。

 

「お前は第6宇宙に対して何か知らないのか?」

 

ピッコロが質問を重ねるので俺は再度頷く。

ただ可能性としてあるのは……

 

「対であるがゆえにサイヤ人やお前のようにナメック星人がいるかもしれない」

 

それが懸念材料だ。

俺の鏡が居るのか。

ピオーネのような存在はいない。

もしいたとしたら第1宇宙の消滅を疑わないといけない。

 

「それならば全力投球で行かねばいけないな、一人一倒だ」

 

相手を息絶えさせてしまうとダメなので言葉としては倒すが正しい。

とにかく誘った面子も修行を始めたようだ。

気が噴き出したのを感じた。

 

「俺達もビルス様の所で伝えておかないとな」

 

お土産にショートケーキを持っていく。

瞬間移動で星に行く。

どうやらブロリーは瞑想で調整しているようだ。

 

「では、当日頼んだぞ」

 

ビルス様が初めて見る存在に声をかけている。

あまり凄味を感じない見た目だ。

視界感じ取れないだけで凄い実力者かもしれん。

あれがモナカか。

 

「本当にいいんですか、ビルス様?」

 

ウイスさんがビルス様に耳打ちをする。

一体どういう事だ。

 

「良いんだよ、素人で、悟空とベジータを発奮させるんだから」

 

そんな声が聞こえた。

額を押さえているピッコロに変わって俺がビルス様の肩を叩く。

 

「誰だ!?」

 

俺の姿を見て青ざめる。

口は堅いからばらす事はしないが、こんな真似をしないと本気で戦わないと思われているとは……

あの二人のせいで重要な枠を減らしたも同然じゃないか。

 

「今の聞いたか?」

 

その問いに頷く。

あきれ返っているのが分かったのだろう。

 

「疑ってはいないんだが……」

 

そういうと肩に触れた手に力を籠める。

超サイヤ人4フルパワーで睨み付ける。

 

「心中お察しいたします」

 

背中を向けて溜息をつく。

そして振り向きざまに言い放つ。

 

「俺たちが頑張ってあいつらを発奮させますよ」

 

そうなるとあいつらの前に自分が出ることになるんですけどね。

どうにかうまくいってほしい。

 

「まあまあ、ガタバルさんもそんなに気負わずに……」

 

ウイスさんが制する。

そして箱を渡す。

今回はショートケーキだ。

 

「で……どういった用件できたんだ?」

 

そう言えばそうだったな。

メンバーが決まったので伝えに来たんだった。

メンバー表を見せて一人一人の説明をする。

どういった能力を持っているのか、どれほどの戦闘力を保持しているか事細かに伝えていく。

 

「全員が超サイヤ人並みの実力を最低でも保持しているのか……」

 

お前ら、真剣に考えていたのか。

そんな事を呟いている。

ええ、考えていたんですよ。

生半可な奴を連れていくわけにもいきませんからね。

 

「とにかく当日の順番はそちらで考えてください」

 

メンバー表を渡しておく。

さて……修行でもして仕上げておくか。

 

「しかし神が嘘をついていいのか?」

 

二人とも界王神界に居た。

ピッコロは瞑想をしている。

俺はサラガドゥラと組み手をしながらさっきまでの事を伝える。

 

「いや、いかんでしょ」

 

こっちの拳を受け止める。

そして投げてくるが着地。

 

「まあ、許してやった方がいい」

 

分かっているがなんかあの二人に戦闘に関してあまり信用されていないのがな……

それもこれもカカロットやベジータのツケがこうやって回っているだけである。

あいつらが相手に合わせるなんて真似をしなければこうはなっていない。

 

「あいつらに回す前に決着をつけてもいいかもな」

 

そうなると俺が大車輪の活躍だな。

ニアとザンギャが1人ずつ倒してくれたらそれでいい。

そんな事を考えながら修行で当日までの時間を過ごした。

 

全員がカプセルコーポレーションに集まる。

これがキューブか。

神の乗り物というに値する。

 

カカロットの家族たちも入っていくが当の本人たちがいない。

すると修行でベジータと共に『精神と時の部屋』で過ごしていたのか髭は伸び放題。

体臭がきつい状態で来やがった。

すぐに風呂に入って貰って出発。

キューブ内で食事を済ませていく。

対戦する中でも俺とピッコロは食わなかった。

ニアとザンギャ、そしてモナカも多少で済ませている。

カカロットとベジータはがつがつと食べている。

空腹で飢えるからこそ相手を仕留める野生が目覚める。

そして数分後、まさに何にもない星にたどり着く。

 

「さて……着陸するぞ」

 

そう言ってみんなが着陸する。

先についている第6宇宙の戦士たち。

よく見るとなかなかの面子だった。

クマのような奴。

フリーザによく居た奴。

さらにはメタルマン。

そしてサイヤ人の男性が一人。

女性のサイヤ人も一人。

紫の肌をした恐ろしい威圧感の男。

だが一際目を引くのはフードを被った戦士。

 

「特にあのフードの人と紫肌の人は要注意だぞ、ピッコロ」

 

肘でつついて忠告する。

それには気づいているようで冷や汗をかきながら頷く。

 

「ああ……わかるが流石にあれは大将と副将だろう」

 

そんな事を言っていると観客として選手間の家族は遠ざけられて俺達と武舞台。

武舞台の中央にはレフェリー。

そして上空にウイスさん達がいた。

 

ルールの説明が入る。

場外に出た場合は敗北。

武器などの攻撃は反則となり敗北(気で生成した槍型気弾等は例外)。

テンカウントで起き上がれないと敗北。

降参も敗北。

説明が終わったら待機場所に戻る。

 

そして順番が発表される。

ビルス様たちによって吟味された順番は……

 

「第一試合、第7宇宙:ザンギャ選手と第6宇宙:ボタモ選手、武舞台におあがりください!!」

 

ザンギャはコキコキと首を鳴らして武舞台にふわりと着地する。

相手であるボタモは勢いよく飛び出してぐるぐると回転してから着地する。

 

「試合……始め!!」

 

両者が構えると同時にレフェリーの大きな声が響く。

先に仕掛けるのはザンギャ。

拳を腹に打ち込みにいく。

本来ならば防御するはずが相手ががら空きにしている。

そしてくの字になった顔面を殴るのだろう。

しかし…

 

「なっ!?」

 

腹がゴムのように伸びていく。

衝撃を吸収しているのか?

それを見て何度も打ち込む。

ボムボムと音を立てて何度も無効化している。

 

「今度はこっちからいくぞ」

 

そう言って拳を振るうも避けていく。

気弾などの動きも見るが並のレベルだ。

あの特殊体質が要か?

 

「避けていても変わらないわね」

 

ピンときたか?

俺はあの体質なら勝ち方は場外に放り出す以外は無い。

異空間にダメージを飛ばしていた場合はどうしようもない。

限りがあの体質にあるのならば4で倒せそうだが……

 

「ハアアアア!!!」

 

ラッシュを再度かける。

またもやボムボムと音を立てて弾むボタモの腹。

だがそこに活路は見えた。

あの弾性を活かせたカウンターもしない。

そして最大の弱点は異空間に飛ばそうが無効化にしようが……

 

「『ルビー・シューティング』!!」

 

腕を上にして気弾をボタモに向かって雨霰のように降らす。

それはわざと外していた。

ある一点を崩すために。

 

「効いていないぜ?」

 

そうボタモが言った瞬間、ザンギャが三度目のラッシュをかける。

俺達には狙いがわかる。

その後ろに差し掛かればもうこの勝負は決まる。

 

「なっ!?」

 

足がガクンとなる。

そこにアッパーを放つ。

腹部から突き上げることで宙に浮く。

 

「くっ……」

 

足をバタバタさせるが全然効果がない。

そしてそのまま気を高めて……

 

「『エメラルド・ボウガン』!!」

 

そのまま場外に吹っ飛んでいく。

特殊体質にかまけすぎだ。

面白そうではあったけどな。

 

「道連れだぁ!!」

 

口から特大の気弾を出す。

しかし平然と回避をされてしまいボタモはあえなく敗北。

まずは第7宇宙が先勝。

 

「勝者、ザンギャ選手!!」

 

第7宇宙から歓声が沸き上がる。

しかし即座に次の試合へ。

 

「第2試合、ザンギャ選手と第6宇宙:フロスト選手の試合……始め!!」

 

まずは小さな状態で様子見をしようとする。

しかしあっという間にその甘さは窮地に追い込まれる。

そんな事をしても平然と勝利に貪欲だからだ。

その後に『突撃形態』というものになるが、それで圧倒していく。

速度も攻撃力の重さも駆け引きもザンギャの方が上。

最終形態になっていく。

その瞬間、きな臭さを感じた。

始まる前に言っていた良い言葉の裏にある邪悪な感覚。

 

ラッシュの途中で違和感を見つけた。

掌で受けただけのザンギャの動きが鈍り、そのまま蹴られて場外へ。

何が起こってしまったのか、ピッコロに目線を送る。

首を振っている。

カカロットやベジータも同様。

超能力でもなさそうだから種はあるだろう。

 

「一体あれは何だったんだ?」

 

ターレスが運んでくる。

ビルス様が聞くが俺を含めて首を振る。

邪悪な予感はあったが……

 

「種明かしをしてもらわないとまずいな」

 

そう言って第三試合。

こちらの代表はニア。

武舞台に立った瞬間、一気に肉体を肥大化。

変身をする。

またもやすさまじい変身を手に入れたな。

ザシュザシュと後ろ足で地面を撫でる。

 

「始め!!」

 

その言葉と同時にフロストを叩きつける。

速度に優れた動物の脚力だ。

 

「ぐっ!!」

 

尻尾の一撃を放ってくるが爪で引っ掻く。

痛々しい傷跡を残し、血が滴る。

 

「ハアッ!!」

 

首を尻尾で締め付ける。

そのまま絞め落とす気だ。

 

「くっ!!」

 

小型に戻って一瞬離脱をして、またもや最終形態に。

そしてラッシュを仕掛ける。

その瞬間、ニアが力を込めていた。

 

「ラララ!!」

 

腕を叩くなどして攻撃をさせない。

しかし尻尾で一瞬視界を遮る。

 

「ぐっ……!?」

 

後退しようとしていたニアの足を踏んでいた。

そのまま接近をして拳の一撃を放つ。

その瞬間、千里眼で奴の腕を注視する。

すると、キラリと見える尖ったもの。

毒針を仕込んでいたか。

 

「もらった……」

 

そう言ってにやりと笑うフロスト。

しかしその顔をするのはまだ早い。

ニアは既に別の動物の姿に変身をしていた。

とは言っても一瞬間に合わず掠ってしまっている。

しかしそれでもニアはけろりとした顔でフロストを睨んでいた。

 

「何故……!?」

 

フロストが驚いている。

あの変身した動物の皮膚に秘密がある。

あれは……

 

「豚はね……そのぶ厚い皮膚で毒を通さないの」

 

そう言って蹄で殴る。

場外まで吹っ飛んでいった。

しかし試合終了するとニアの体がふらつく。

 

「次の試合はダメね」

 

ふらふらとして次の試合を棄権する。

レフェリーにボディチェックをしてもらった結果、フロストの体に毒針が入っていた。

素性が明らかになった瞬間、みんなから非難を浴びる。

そしてそれを倒したニアに賞賛の嵐。

 

「次……頼んだぞ」

 

そう言ってビルス様に肩を叩かれる。

シャンパ様がニヤリと笑う。

次の瞬間、その顔は驚愕に歪むのさ。

 

「最初から全開で?」

 

様子見とかは必要なのか。

一応確認をとる。

するとニヤリと笑う。

 

「無論だ、かましてこい」

 

背中を押されて武舞台へ降り立つ。

次の相手はメタルマンのようだが……

 

「それでは第4試合、第7宇宙:ガタバル選手と第6宇宙:マゲッタ選手の試合……始め!!」

 

その瞬間、俺は一気に気を高める。

そして、星全体を震わせる。

マゲッタも驚いて近寄ろうとしない。

 

「はあああああああああ!!」

 

暴風が止んだ瞬間、シャンパ様は驚いた顔をしていた。

俺は超フルパワー超サイヤ人4になって歩を進める。

 

「シュポー!!」

 

溶岩のつばをはいてくる。

それを片手で払いのける。

徐々に近接していくにつれて当たらない。

 

「シュ……ッポー!!」

 

ならば力だというように拳を振るう。

しかしそれを受け止めて背負いに行く。

 

「無駄だ、無駄だ、メタルマンの重量はそう簡単に上がるわけはない!!」

 

シャンパ様が言ってくる。

甘いですよ。

この強さを見せてあげましょう。

腕の筋肉が唸りをあげて肥大化していく。

徐々に足が上がっていく。

 

「ええええっ!?」

 

驚愕な顔。

それを見てビルス様が満面の笑みでシャンパ様に自慢をする。

 

「どうやらうちの三番手を甘く見たな、こう見えても僕が認めるだけの戦闘力はあるんだよ!!」

 

そんな事を話しているうちに完全に投げる態勢は整った。

後はあの場所に狙いを定めて……

 

「飛んでいけぇええ!!!」

 

剛力でシャンパ様の方へ投げつける。

バリヤーを解いてマゲッタが入っていく。

シャンパ様たちも無傷なようだ。

 

「マゲッタ選手が場外に行きましたので、勝者はガタバル選手!!」

 

次の相手は誰だ?

見上げると舞空術で降りてきたのは優しい顔のサイヤ人だ。

 

「よろしくお願いします」

 

そう言ってきたので頷いて応える。

超サイヤ人になれるかもしれないから気を付けないとな。

 

「それでは第5試合、第7宇宙:ガタバル選手と第6宇宙:キャベ選手の試合……始め!!」

 

一気にラッシュを仕掛けてくる。

それを全て回避していく。

なかなかいい身のこなしである。

しかし……

 

「何故、超サイヤ人にならない?」

 

疑問をぶつける。

すると驚愕の答えが返ってきた。

 

「すみません、僕はそれに変身できません」

 

なんという事だ。

この『惑星サダラ』生まれのサイヤ人は変身はできないらしい。

なり方は怒りだし……

あまりこういう役回りは得意じゃないんだけどな。

 

「良いぜ……なり方を教えてやる」

 

そう言って蹴り上げる。

そして胸倉をつかんでずいと顔を近づける。

 

「降参したらサダラのお前の家族は消えると思え」

 

そう言って話す。

そして片手だけを出して屈辱を与える。

 

「これでお前なんて十分だ」

 

ギリギリと歯を食いしばる。

そしてぞわぞわしている状態で向かってきた。

 

「ハアッ!!」

 

さっきより速度は上がっているがまだ甘い。

腹に拳を叩き込んで蹲らせる。

頭を踏みつけて問いかける。

 

「俺が憎いか?」

 

そう言うと睨み付けてくる。

よしよし、あと一歩か。

 

「そんな目をするのなら怒れ、心のままに!!、俺を許さないと声に出して怒りを、力を爆発させてみろ!!」

 

するとキャベの頭が金色に輝く。

俺が足を退けると俺を殴ってくる。

 

「それが超サイヤ人だ」

 

キョトンとした顔になっている。

仕方ない、説明するか。

 

「超サイヤ人は怒りをきっかけにして変身する、今の俺はそれを臨界点まで鍛えた姿だ」

 

髪の毛の色を指摘されても困るからな。

なるほどといった顔である。

 

「解除して、もう一回なってみろ」

 

そう言うとすぐに実践して見せる。

センスがあるな。

まあ、もうセミナーは終わったことだし……

 

「勝たせてもらう」

 

一瞬のうちに懐に忍び込む。

そして腹部に思い切り一撃を叩き込む。

すると気絶をして勝負がついた。

 

自分のエンジンがそろそろかかってきたな。

そう思って首をコキコキと鳴らす。

 

「やるじゃねえか、おっさん」

 

もうすでに武舞台に上がっていたとはな。

感覚派なサイヤ人のようだな。

しかしおっさんか。

もうそんなふうに呼ばれる年か。

 

「私には見てて分かったが……こんな感じだろ、背中に気がぞわぞわって上るようにさ」

 

キャベの変身を見て体得しやがったか。

センスの塊、ダイヤの原石がここにまた一人。

 

「それでは第6試合、第7宇宙:ガタバル選手と第6宇宙:カリフラ選手の試合……始め!!」

 

キャベよりも速い攻撃。

それを受け止めて戦いは始まる。

 

「シャッシャッシャッ!!」

 

矢継ぎ早に攻撃を放ってくる。

それを受け止めていく。

ゴリゴリと攻めて場外に追い込むつもりのようだが…

 

「そらっ!!」

 

尻尾で足を払う。

その拍子に尻餅をつく。

まだまだ若いな……

 

「足元がお留守だぜ、お嬢ちゃん」

 

そう言ってラッシュを返す。

何とかあっちは受け止めてはいる。

だがこっちが押し込んでいる。

すると……

 

「ハッ!!」

 

気弾で足元を崩す。

そして腹部にタックルをする。

その早業に思わず尻餅をつく。

 

「足元がお留守なんじゃねぇの、おっさん?」

 

随分と生意気なガキだ。

意趣返しをしたつもりだろうが……

 

「今のはラッキーパンチだ、いや……ラッキータックルか?」

 

そう言って拳を構える。

じりじりと威圧感を出してカリフラに近づいていく。

しかし笑いながら構えている。

こんな程度じゃ怯みはしないか。

良い肝の太さを持ったサイヤ人だぜ。

 

「言っとくけどこれから先は一撃を当てるのも困難だと思えよ」

 

そう言ってぐぐぐと力を込めて放つために拳を引く。

次の瞬間、俺はためらいもなくカリフラの急所へと拳を放つのだった。




現在、超フルパワーサイヤ人4でしりもちをついてはいますがダメージはありません。
若い相手に経験値の違いをかっこつけて見せつけようとしたら、武舞台を利用してし返されるというおじちゃんの図です。
カリフラ戦は次回の中頃部分まで続きます。
そして第6宇宙側に居るフードの男は誰なのか……?

指摘などありましたらお願いいたします。


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『色褪せぬ憧れ』

カリフラ戦終了です。
第6宇宙最強レベルの隠し玉。
果たしてその正体は何者ですかね……


カリフラは急所への攻撃を回避する。

風を切る一撃。

だがここから先は……

 

「おまえに生意気な口をきかせない」

 

前蹴りを放つ。

それも回避をするが手を緩めはしない。

蹴り足を踏み込みに使い間合いを詰めてアッパー。

 

「ぐっ!」

 

首を動かして避ける。

だが避けていく間に軌道修正をする。

裏拳で顔面を捉えた。

その一撃をあえてこっちに一瞬の間突っ込むことで威力を軽減。

カウンターで正拳突きをしてくるが……

 

「ほれ!!」

 

パシンと小気味いい音と共に叩き落す。

そして膝を腹部に入れる。

片膝をついた。

 

「楽しむ気はないのかよ、おっさん……」

 

楽しむだと?

そんな実力がそちらに有ればワクワクはこみ上げるだろうな。

今はワクワクやドキドキがない。

ただ、いつも通りの全力での戦い。

気弾で自分を消耗せずに徒手空拳での真剣勝負。

 

「お前が俺を楽しませてみろ、カリフラ」

 

そう言って指をちょいちょいと動かして挑発をする。

プライドを傷つけられたのだろう。

歯をきしらせて再度突っ込んできた。

 

「むっ……」

 

少し速くなったな。

どうやらこの第6宇宙のサイヤ人は超サイヤ人になれないのが普通。

しかも大猿にもなれない。

その分、力をつけてきた。

その結果が基礎値がとてつもなく高い。

それが超サイヤ人に簡単になれた種明かしだ。

 

「だりゃりゃ!!」

 

ラッシュをかけるが甘い。

雑なものだ。

カウンターで気を付けないといけない箇所を守れていない。

 

「全然怖くないぜ」

 

一瞬交差すると膝をついているカリフラがいた。

一瞬で三度、拳の打撃をくらわせたのだ。

人中といわれる鼻の下の窪み。

顎を揺らすようにでは無く砕くように。

そして鳩尾にも叩き込んだ。

今、激痛が体中に有るはずだ。

 

「もっと真剣にこい」

 

そう言うとブレイクダンスのように筋力を使い、アクロバティックな蹴りを放ってくる。

しかしそれも難なく回避する。

向かい合っているがそんな睨んでも俺は倒せないよ。

 

「ハッ!!」

 

気弾を撃ってくる。

目くらましだろうか?

距離をとって動向を確認する。

自分から攻めてもいいが窮鼠猫を噛むという言葉がよぎる。

カウンターを取られると間違いが起こるかもしれない。

一度こっちも落ち着いて相手に機会を滑り込ませない。

 

「どりゃあ!!」

 

背中に飛びつかれそうになる。

首を絞めつけてくる予定だったのだろう。

それを頭を下げて回避をする。

仮に絞めつけられたとしても、首に力を入れて腕を弾いていただろう。

 

「なっ!?」

 

そのまま足を掴んで武舞台に叩きつける。

そして溜息をついて言う。

 

「これ以上はどうしようもない」

 

今のお前じゃ俺には勝てないぞ。

そう言うと怒りの炎を瞳に宿す。

 

「甘く見るな……」

 

そう言うと徐々にスパークしていく。

こいつ、まさか……

 

「結果出る前から勝ち負け決めて諦めるなんざ、サイヤ人のやる事じゃねえだろうが!!」

 

武舞台に風が吹きあれる。

やはり、こいつといいキャベといいセンスが良すぎる。

キャベでノーマルのベジータ並みにはあっただろう。

それと基礎値が同格でセンスが上。

この戦いの中の成長にも合点がいく。

 

「超サイヤ人2になったか」

 

そう言うとさっきより速い速度で向かってくる。

交差して防いだ腕を痺れさせる。

そして追撃でさらに拳を振るう。

ガードをするが腹部に蹴りが来る。

それも脛で受け止める。

 

「シャラララララ!!」

 

さらに速度を上げて殴りに来る。

腕を顔の前に持っていき腰を落とす。

筋肉を肥大化させる事で防御力を高める。

 

「ハアッ!!」

 

足払いをしてくるが跳躍で回避。

すると気弾の一撃が迫る。

 

「ちっ!!」

 

片手で弾くと背後に忍び寄っていたのだろう。

後頭部に来た一撃を後ろ手に受け止める。。

 

「フッ!!」

 

着地をして瞬間移動でカリフラの後ろをとる。

そして先ほどの繰り出してきたように後頭部を殴って叩きつける。

 

「がっ!!」

 

起き上がってこっちに向かってくる。

そろそろだな。

こっちとしてもエンジンをかけていた。

相手が仕掛けてからこちらから攻撃をする。

決着以外はそれが主な形だった。

しかしもうそれも終わり。

こっちから殴りに行く。

 

「なっ!?」

 

拳がすり抜けて驚く。

残像に引っかかるとはな。

 

「後ろだ」

 

ジャーマンスープレックスで放り投げる。

そして踏みつけに行く。

 

「ちっ!!」

 

相手が起き上がるがこちらはそれより速く懐にいた。

アッパーを決める。

相手が拳を出そうとした瞬間……

 

「フンッ!!」

 

スパンと小気味いい音を立て顔面に一撃のカウンター。

相手がもう一度仕掛けるが……

 

「ハアアアッ!!!」

 

全てカウンターをする。

しかも相手が拳を出してからではなく出す前に。

これは当て勘の良さなり、相手の攻撃を感じ取る勘だけで行きついている訳じゃない。

膨大な戦闘経験が相手がどの場所に繰り出そうとしているかを導き出す。

 

「くそっ……」

 

それでも立ち上がる。

もうすでに黒髪に戻っているというのに。

ダメージが段違いなのに。

 

「まだ終わってねえ!!」

 

目に光を宿して向かってくる。

仕方ない。

ここまでの奴に拳では意識を断ち切るのは難しい。

『不幸な事故』が起こる可能性まである。

ならば気弾で終わりにしてやる。

 

「『アルバトロス・ブラスター』!!」

 

アホウドリの気弾がカリフラに迫りくる。

その一撃で場外に押し出していく。

そう思っていたが……

 

「拳でやりあわねぇと面白くねえだろうが!!」

 

こいつ……受け止めやがった。

そして受け止めながら言葉を紡ぐ。

 

「そんなに強いのに途端に臆病風に吹かれたかよ、こっちが死ぬかもしれないからって!!」

 

腰を落として足をあげる。

こいつ、押し返す気か?

 

「さっきも言ったが……サイヤ人をなめるなあ!!」

 

足を踏み込み、怒りの力で押し返す。

その光景を見て仕方ないが気弾を逸らす。

 

「ここまでやられると笑いまでこみ上げる……」

 

キャベもこいつもまるで無鉄砲だった若い自分を見るようだ。

戦いの中で死ぬのならば本望だとそう思っていた節もあった。

敵を倒すために強さを求めた。

しかし家庭を持ち、守るものが増えたから悲しませないために死を恐れた。

失う恐れをかき消すために強くなっていた。

 

「だが……」

 

譲るわけにもいかない。

まだまだ現役だからな。

ここまでコケにされて、腹を立てているというのならば俺を負かせてみせな。

 

「気を全部引き出しやがったな」

 

3にはなっていないがこの底力……。

こうして敵として戦うと嫌なものだね。

才能っていうか力の引き出し方や変身を知らなかっただけ。

言えばホースをそのままやっていただけがつまむことを覚えるような感じ。

つまりは力の引き出し方を知ってしまったからぐんぐんと伸びていった。

 

「だああああ!!」

 

ラッシュにこちらも全開で相手をする。

余裕ぶらずにこいつを完膚なきまでに叩きのめす。

次の相手の事も考えない。

今はこいつを倒すことに専念しよう。

 

「ハアアアアア!!」

 

拳を打ち付けあい、蹴り足が交差しあう。

するとカリフラの拳は壊れ、蹴り足が折れている。

全開でやればこうなることは予想できた。

しかしもう奴は止まらない。

物理的に止めるのみだ。

 

「……」

 

僅か数秒のラッシュ。

しかしもたらした被害は大きかったのだろう。

不意に黒髪に戻ってしまった。

 

「いきなり変わりやがって……!!」

 

このままでは顔面にもろに喰らう。

既に戦意喪失の相手ならば拳を振るうつもりはない。

しかしこちらが繰り出した拳は止まらない。

そう思っていた次の瞬間……

 

「気絶していやがる……」

 

こちらに背中を向けて6人目のフードの男が降り立った。

そしてカリフラを抱えると……

 

「邪魔だ」

 

そう言って待機場所まで放り投げた。

そして迫っていた拳を後ろ手に掴む。

 

「良い拳じゃねえか」

 

こちらを振り向く。

瞬間、背中に電撃が走る。

未来の光景が変わらなかったことへの喜びも同時に感じる。

この威圧感を知っている。

この逞しさを知っている。

このフードから覗く眼光を知っている。

そしてあの背中を知っている。

こちらの拳を掴んだ瞬間に感じ取れた強さ。

 

「審判、勝者のコールをしな」

 

そう言って俺の勝利が告げられる。

さらにシャンパ様の方を向く。

 

「シャンパ様よ、この勝負だけは場外を無しにしてくれ」

 

そう言うとビルス様が横槍を挟む。

まあ、相手に有利だからな。

 

「いくらなんでも疲弊した相手にそれは勝手すぎるだろ!!」

 

しかし俺はビルス様に頼む。

このフードの相手との戦いに場外負けなんていらない。

 

「俺からも場外ルールの撤廃をお願いします、この人と白黒付けさせてください」

 

頭を下げる。

破壊神相手に土産を渡し、今まで従順にしてきた俺の我儘。

それには目を丸くしながらも抗議をする。

 

「そいつに勝てば4人抜きだぞ、目の前まで来ているんだぞ!!」

 

後のピッコロたちもいる。

しかしできる限り消したいのだ。

その気持ちはわかるが……

 

「この相手との戦いで燃え尽きます、その確信故に頼んでいるのです」

 

カリフラやキャベ、マゲッタの3人の時は超フルパワーと言っていながらもサイヤパワーの消費は少なかった。

しかし次の相手は一筋縄ではいかない。

ほぼ、間違いなく枯渇してしまうだろう。

それを確信している。

 

「分かった……お前がそれほど全力でやりあわないといけない相手だというのなら花を添えてやる」

 

俺の眼を見て嘘ではないと分かってもらえたのか頷く。

そう言ってシャンパ様の方を向く。

そして場外ルールの撤廃に合意するといった。

 

「選手間の同意もあるし構わないよな、シャンパ?」

 

そう言ってウイスさんに頼む。

頷いて杖を掲げる。

 

「ああ、構わないぜ」

 

向こうもそう言ってヴァドスさんに頼む。

同じように頷いて杖を掲げる。

そして二人がおろした直後、武舞台が消えていた。

それを見た瞬間……

 

「オラァ!!」

 

俺は殴りかかった。

まだ始めも言ってはいない。

しかしそれを読んでいたのか。

相手は受け止めて蹴りを放つ。

 

「シャア!!」

 

その蹴りを脛で受け止めて、こっちが返しの前蹴りを放つ。

しかし相手はそれをあえて前に出て威力を相殺。

アッパーを放ってきた。

 

「ハッ!!」

 

アッパーを叩き落として、カウンターを放つ。

それをさらにかぶせるように打ち下ろしの拳が迫る。

お互いが皮一枚を削るように、紙一重で回避をしていた。

 

「わわわ……第7試合、第7宇宙:ガタバル選手と第6宇宙:ボーゴ選手の試合……始め!!」

 

レフェリーが始めというがそんな事は知ったことじゃない。

あの場面で俺が攻撃をしていないと立場は逆だった。

しかしそんなことなど目の前に立っていない相手でないと分からない。

ブーイングが聞こえる。

シャンパ様も『反則だ』というが、ビルス様が『毒針よりかは随分とましだと思うがな』と言っていた。

正直毒針がなかったらもっと悲惨な状態になっていたんじゃないか?

 

「外野がぎゃあぎゃあとやかましいぜ、サイヤ人ならばあの程度当たり前の行動だ」

 

そう言って拳を振るってくる。

それを受け止めて背負い投げをする。

 

「まさかあの時、ラブカのクソが『飛ばし子』にしたてめぇが強くなるとはよ……長く生きてみるもんだぜ」

 

そう言って見えた白い歯。

それはサイヤ人として強者に出会えた喜びからくる獰猛な笑み。

 

「フードが邪魔だ」

 

そう言ってフードを脱ぎ捨てる。

その姿は観戦していた第7宇宙のみんなを大いに驚かせる。

何故ならばその姿は……

 

「悟空さにそっくりだべ!!」

 

チチさんが指さしている。

そしてラディッツさんが乗り出して目を擦る。

 

「……まさか親父か!?」

 

フリーザに殺されたものだと俺が吹聴していた。

だから俺の方を見る。

仕方ない。

全ての真実を話すか。

 

「フリーザの攻撃で第6宇宙に漂流してしまい今日まで居た、当時は別に宇宙があるなど与太話に感じられてしまうと思ったから言えなかった」

 

そう言うと仕方なしに納得していた。

そして向き直すがその姿は思い出に残った背中ではなく腹の方。

しかし、なぜ俺と互角に打ち合えたのかは雄弁に語られていた。

上半身が大猿で黒髪が伸びている。

つまり……

 

「バーダックさん、超サイヤ人4に貴方もなっていたとは……」

 

さらに付け加えるならば既に超フルパワーになっての全力。

そう言うとニヤリと笑って構える。

そしてこちらへ接近。

 

「シャア!!」

 

カリフラやキャベと違う、百戦錬磨の超サイヤ人4。

きっと戦闘力は俺の方が上。

だがそれでも……

 

「甘いんだよ!!」

 

経験の差でこちらの隙を見つける。

頬に掠らせてくる。

回避が間に合っていないのだ。

 

「せい!!」

 

頬に掠った瞬間、お返しに脇腹に振るう。

それも受け止められる。

そしてそのまま投げられる。

着地を決めるがやはり強い。

 

「しかし磨いていやがるな、全然大きな隙が見つからねえでやんの」

 

指をちょいちょいとしているのスタミナ勝負に持ち込みたくはないのだろう。

体力面だけで言えば確かに有利だからな。

 

「そら、爺さん待たせんじゃねえよ」

 

その言葉に触発されて拳を出す。

そこにカウンターを合わせてくるが、一気に体勢を低くして蹴りに切り替える。

カポエイラのやり方だ。

 

「ぐっ!!」

 

顔面に当てることができた。

そして脇腹へ正拳突き。

後ろに跳躍することで威力を軽減される。

だがそれは無駄なこと。

瞬間移動で後ろをとる背中に一撃を叩き込む。

 

「がっ……」

 

崩れ落ちそうになるが馬蹴りで反撃をされる。

腕で受け止めるが痺れてしまう。

 

「オラァ!!」

 

顔面に前蹴りをぶち込まれる。

相手が一気に接近してきた。

こうなりゃ……

 

「ガアアアアア!!」

 

こっちも腹を決めて接近する。

頭を押し付けあうような超至近距離の殴り合い。

 

そこからは戦う者だけでなく見る者も瞬き一つ許されない戦い。

回避、回避、回避。

目まぐるしく変わっていく主導権。

両者の攻撃は当たらない。

洗練された者同士。

僅かな隙を見つけてもその思案の方が大きな隙。

己の勘、風を切る拳の音を聞き取る聴覚。

当たるかどうかを正確に見分ける視覚。

五感という五感を総動員。

 

「ぐあっ……!?」

 

目まぐるしく攻撃の主導権が変わり続ける中、先に攻撃を当てたのはバーダックさんだった。

不敵な笑みを浮かべている。

 

「お前は確かに大きな隙は無かった、だが……」

 

ラッシュを再度仕掛けあう。

しかし今度はカウンターで腹部に爪先が当たった。

 

「がふっ!」

 

後ずさりをする。

まるで針の穴を通すような蹴りだった。

 

「塵みてぇに小さなものは有った、それをうまく選んでスレスレで当てたんだよ」

 

そう言ってこっちを逃がさないように接近。

攻撃の主導権はバーダックさんに映ってしまった。

防御をしてカウンターを放つがそれを受け止められる。

 

「シッ!!」

 

顔面に拳を当てられる。

モロにはくらっていないがやはりダメージはある。

鼻血がタラリと流れた。

 

「こっから先はこうやってお前にダメージを与える」

 

そうは言うが大振りになったらカウンターをとって仕留められる。

じわりじわりと追いつめられている。

 

「シッ!!」

 

拳を出すとそれを避けられて顎に一撃。

脳が揺れる中、蹴りを放つ。

 

「ハッ!!」

 

蹴りを受け止められて腹部へ肘打ち。

くの字に曲がった所へ膝を放たれる。

 

「ぐっ!!」

 

上体逸らしで避けようとする。

しかしその伸び切ったところを狙われて、上から叩かれて地面へ背中をつけられる。

 

「お前のやり口はあの三人との試合見てたらわかる」

 

伊達に戦いの中で生き続けたわけじゃねえぞ。

たとえ横綱相撲でもわかるもんだ。

そう目が語っている。

もう一度構える。

 

「ラアッ!!」

 

腹部へ蹴りを放つ。

それに対応した動きをする。

しかしこれはフェイント。

その防御が行き渡らない米神へ拳を放つ。

 

「慣れない事したら見え見えだ」

 

腕で受け止められていた。

そしてズドンと音が鳴るような蹴りを叩き込まれる。

胃液が逆流しそうだ。

 

「う……がぁ!!」

 

再び構えて、今度は最短距離で顎を狙う。

しかし難なく回避されてしまう。。

 

「見え見えだって言ってんだろ!!」

 

そう言われて肘打ちを背中に叩き込まれる。

再度向き直り、次の一撃を放つ。

 

「どりゃあ!!」

 

次は弓を引くように強く拳を握った一撃。

当たれば期待できるもの。

しかし……

 

「冷静を失っちまったか……」

 

そう言って攻撃を回避する。

焦りからか攻撃を空振ってしまう。

その大きな隙を逃すわけがない。

 

「喰らってな!!」

 

そう言った次の瞬間、顔面に正拳がめり込んだ。

回避もできずもろに喰らってしまった。

 

「ぐが……」

 

顔が跳ね上がり、意識が持っていかれそうになる。

しかし、ここまでは予想の範囲内。

実際は誘い出すために大振りをして隙を作った。

こんなちまちまとしたやり取りに満足するような性格の人ではないと踏んでいた。

その結果として非常に重たい一撃を食らった。

だが、それを耐えながら同時に蹴りを出す事で死角からの一撃を作る事が出来る。

 

「だりゃあああ!!」

 

肉を切らせて骨を断つ。

顔面に喰らいながら上段蹴り。

喰らった拳の方の足を出しているため、防御はできない。

 

「がっ……」

 

二人とも吹っ飛ぶ。

俺は背中を打ちつける。

バーダックさんは横に地面へ倒れ込む。

 

「度外視のカウンター……嫌いじゃねえぜ!!」

 

むくりと立ち上がるバーダックさん。

お互い向かい合ってもう一度立つ。

 

「どりゃあ!!」

「シャア!!」

 

お互いが同時に拳を出す。

さっきまでの静寂に包まれた戦いとは違い、お互いの暴力を見せつけるようなクロスカウンターで始まった。




11話の時に書かせていただいていましたが
『第6宇宙に飛んでしまったサイヤ人』はいました。
バーダックは偽名で『ボーゴ』を名乗っていたのは即バレ回避です。
そのわりにはすぐにフードを脱ぎましたけどね。
場外負け有りのルールなんてものは似合わないのでテコ入れでこの試合だけ撤廃しています。

次回も引き続きバーダック戦です。
指摘などありましたらお願いいたします。


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『限界の闘争』

今回でバーダック戦終了です。
次回は原作に近い形で終わるので、ダイジェストになりそうです。
ヒットを一目で看破できる時点で観察眼は化け物ですね。
ピッコロさんが見抜いたのは『力の大会』のディスポと同じ理由です。


「だあっ!!」

 

クロスカウンターの次はこちらが腹部へ一撃。

バーダックさんがそれを食らいながらも背中に肘打ち。

俺がダメージで頭を下げて姿勢をかがめる。

 

「シャア!!」

 

打ち下ろしの拳を放ってくる。

そこに合わせて頭を上げる際に顎への頭突き。

 

「ちっ!」

 

顔をあげてこっちを見るがそこに俺はいない。

既に背中にいる。

そのまま腰を抱えて叩きつける。

 

「ぐっ!!」

 

しかしその一撃の後にブリッジをして蹴りを叩き込まれる。

またもや接近戦である。

しかしさっきまでのちまちまとした洗練された戦いよりも、どちらが先に倒れるかの我慢比べとなる。

 

「だあ!!」

 

右の蹴りに左の蹴り。

左の拳に右の拳。

クロスカウンターで殴打しあう。

当然4同士の殴り合いともなればただの殴り合いも派手になる。

衝撃波でバリアが震える。

音が人を叩くような音ではなくなっていく。

 

「シェアアア!!」

 

拳がぶつかり合う。

距離をとるがそんなのは一瞬。

そうなれば頭を打ち付けあうような速度で詰め寄る。

 

「ヒャア!!」

 

尻尾で腕を絡めとり、足払い。

そして転がった所に拳を叩き込む。

 

「だらあっ!!」

 

喰らわせた拳が掴まれてそのまま引っ張られる。

その勢いのまま腹部に膝を叩き込まれる。

 

「ぐっ!!」

 

手を地面について飛び上がり、馬蹴りを放つ。

その両足に合わせたカウンターの蹴りで両足が薙ぎ払われた。

 

「ちっ!!」

 

起き上がってきたら至近距離からのアッパー。

それは回避をするが風圧が通りすぎる。

 

「ハアッ!!」

 

米神への蹴りが飛んでくる。

それを受け止めてこっちからの攻撃を仕掛ける。

 

「ラァ!!」

 

右の拳を放つ。

それを避けた所に踏み込みで懐へ入り込む。

肩からぶつかる一撃。

一撃で敵を鎮めるような豪快な攻撃。

 

体ごとぶつかられてはカウンターも難しい。

受け止めるも体が浮き上がっていた。

こうなれば畳みかけるのみ。

 

「ガアアアアアアア!!」

 

気合の咆哮。

そこから怒涛のラッシュを始める。

右拳を腹部へ。

左足を側頭部へ。

右踵落としでさらに頭部へ追撃。

左拳で顎を跳ね上げる。

右足で脇腹を。

右拳で鳩尾を。

左足で喉を。

左拳で脇腹を。

その数は実に八。

一撃一撃が相手を昏倒させられるもの。

 

「ぐふっ……」

 

血を吐いている。

しかしその眼には煌々と輝きがあった。

ダメージを与えて勝ったと思うのは甘い。

そう雄弁に語っている。

 

「ふんっ!!」

 

そう言って接近される。

懐へ忍び込んだようだが……

 

「そこだ!!」

 

死角に忍び込んでもすぐにばれてしまう。

だから迎撃の構えをとり、拳を振り下ろした。

 

「読んだつもりになってんじゃねえよ」

 

尻尾で片足だけを絡めとられる。

その体勢が僅かに崩れた瞬間を狙っていた。

するりと放されて僅かに宙に舞う間、腹部へ重い一撃をくらわされる。

 

「お返しだ」

 

そこから悪夢のようなラッシュが始まる。

左拳を顎に入れられて顔が跳ね上がる。

右足が脇腹にめり込む、アバラがへし折られそうだ。

右拳を人中へ、急所を射抜かれる。

左足を米神へ、頭がさらに揺れる。

さらに追撃で左足が脇腹へめり込む、胃液が逆流してくる。

右拳が腹部に当たる、内臓が揺さぶられてしまう。

右足が脛を叩き、痛みをはしらせる。

左拳が喉へめり込む、呼吸が一瞬出来なくなる。

右拳に頬を捉えられる、横へ顔が形を変えてスライドしていく。

右足からの踵落としを頭部の中心に見事に当てられる。

 

「喰らいやがれ、『レイジ・デュランダル』!!」

 

仕上げに腹部に剣型の気弾が突き刺さる。

引き抜いて体勢を整える。

数も俺より多いラッシュ。

 

「耐えるか、見事なもんだ、でも……」

 

立っている俺の背後に近づいて拳を叩き込まれる。

膝をついてしまう。

流れる血に自分の顔が映る。

ひどいもんだ。

勝てないというのが頭によぎっているのかキラリとした輝きがない。

 

「今の一撃の手応えで分かる、お前の心は圧し折れる寸前だってな」

 

そう言ってじりじりと近づいてくる。

こうなれば……

俺は腕をだらりと下げる。

足を開き腰を落とす。

俯いた顔。

 

「今更戦意喪失した所で手は緩めねぇよ!!」

 

顔面目掛けて拳を振るう。

それを食らって吹っ飛んでいく。

再度起き上がって今度はガードしていく。

しかしぬるい防御なんて見抜かれる。

 

「意識断ち切れな!!」

 

ごつんと響くような音を立てて頭部に喰らう。

そして膝が曲がりかがむような姿勢になる。

その瞬間、待ち望んだ一撃が来た。

フックでの顔面狙い。

 

その瞬間、俺の瞳に輝きを戻す。

心がへし折れそう?

確かにそうだった、そうなる手前だった。

でも脳裏によぎったのは単純なもの。

 

『まだ全部を見せていない』

 

憧れにただ一言。

ある言葉を吐いてもらう。

自分にとって次の相手なんてどうでもいい。

ただ試合前のは方便。

ここで何が何でも使い切るつもりだった。

 

「だから……」

 

ここで終わるわけにはいかない。

まだ、やれる。

拳を握って敵を見る。

最速であの場所へ届け!!

俺の拳よ!!

 

「だから俺はぁ!!」

 

顎を的確に射抜く。

するとするりと倒れ込む。

俺は見降ろすのは無く、背中を向けて呼吸を整える。

ダメージを回復させることに専念する。

しかし相手もさるものだった。

 

「ふん」

 

声が聞こえる。

それと同時に振り向いた。

手に気を宿している。

 

お互い既に骨はいかれている部分が何か所かある。

その痛みが呼び込んでいる。

心臓の鼓動を。

この興奮を。

戦いの中で芽生える事は無いと思っていた。

激戦で感じ続けたのは殺伐とした生と死の狭間のみ。

事実、青年時代のピオーネとの戦いや最近のゴールデンフリーザ、邪神アザラは気を抜けば死んでいる場面が多々あった。

だが今それと同等の激戦でありながら感じている。

高揚した心が持つもの、サイヤ人が戦いの中で第一に感じるもの。

ドキドキとワクワクがここにはある。

 

「良い面してんじゃねえか」

 

そんな声が聞こえた。

そしてこちらに向かって疾走する。

気弾を交えた戦いが始まった。

 

「『ツイン・ファルコン・クラッシュ』!!」

 

隼が駆けていく。

それは顔面に到達する前に……

 

「効かねえよ!!」

 

払いのけられてしまう。

しかしこれだけでは終わらない。

 

「『コンドル・レイン』!!」

 

雨のような気弾をかいくぐっていく。

いや、これは……

 

「下らねえ技だな……」

 

ズンズンとノーガードで突き進んでくる。

そして目の前に立ち一言。

 

「舐めてんのか……」

 

そう思われたのは心外だな。

遠距離技を使って距離をやりくりするのは普通の事だろう。

 

「ハアッ!!」

 

こっちから拳を繰り出す。

それを回避していく。

防御の上からでも当たればいい。

まずはこっちだ!!

 

「『イーグル・フラップ』!!」

 

掌で風を巻き起こす。

片手で防御をしている。

さっきの気弾とは違って砂利などは目に入ってしまう。

その上から拳を当てて技を放つ。

 

「『エクスプロード・ウッドペッカー』!!」

 

流石にこれは片手では受け止めきれない。

防御を貫通していく。

勢い良く後ろへ吹っ飛んだ。

無防備だったならば気絶させられる技なのに……

 

「ちっ……」

 

起き上がってきた所を狙う。

だが相手も当然勘づいている。

しかも何故片手だったのか?

その疑問を解消する証がそこにはあった。

 

「喰らいな、『リベリオン・グングニール』!!」

 

槍型の太く大きな気弾。

体を貫かれたら最後、死しか待っていない。

 

「『プライド・オブ・ラクタパクシャ』!!」

 

両方の技がぶつかり合う。

勢いは互角。

ギリギリと歯を軋ませて踏ん張る。

 

「ぬぐぐ……」

 

お互いが攻撃を打ち勝たせようとする。

気を抜かず力を振り絞るが……

その瞬間、にやりと笑う。

いきなり軌道を変えたのだ、

 

「全部が全部真正面からやる馬鹿はいねえよ」

 

そう言ってこっちにぶつける。

こっちは瞬間移動をして回避をする。

爆発をして煙がもうもうと立ち上がる。

 

「どこにいるんだ?」

 

瞬間移動をした時にどこかへ移動をしたのか座標がずれていた。

まさか力比べではないとは……

そんな事を考えていると煙の中から突っ込んできたバーダックさんの攻撃を受け止めようとする。

 

「『ヒート・ファランクス』!!」

 

炎を纏った一撃に防御を崩される。

そして逆の手にさらに気を集めている。

 

「『リベリオン・ファング』!!」

 

腹部の穴に拳がめり込む。

そのまま、腹部を抉られて血が噴き出した。

 

「この攻撃自体は反則じゃあねえ、そうなる前にお前は気絶する」

 

そう言って気を高める。

この技は知っている。

俺があのサイヤ人とはかくあるべきという姿を見て編み出した技。

それと酷似しているのだから。

 

「まだやれるさ……」

 

そう言って俺も同じように構える。

バチバチと互いのすべての気を底に集めた一撃が作り上げられる。

 

「同じ技とはな……奇遇なもんだぜ」

 

そう言って接近してくる。

それに応えるように頭を突き合わせる。

そして拳を突き出した。

 

「『スピリット・オブ・サイヤン』!!」

「『ソウル・オブ・サイヤン』!!」

 

片やサイヤ人の精神を。

片やサイヤ人の魂を。

クロスカウンターで食らって吹っ飛ぶ。

本来はラッシュをかけるのだが示し合わせるように技だけを使った。

 

「ぐぐぐ……」

 

お互いが起き上がれない。

レフェリーのテンカウントが耳障りだ。

先に立ち上がった方が勝ち。

それを本能で知っている。

 

「うぐぐ……」

 

向こうが膝をついて立ち上がろうとしている。

それに負けるものかと最後の力を振り絞る。

徐々に体が起き上がっていく。

 

「うがぁあああああ!!」

 

咆哮を上げて立ち上がる。

バーダックさんを見下ろす。

しかし目の前が歪み……

 

「オラアアアア!!」

 

バーダックさんが気合で立ち上がり俺を見下ろすのが見える。

そこで目の前が真っ暗になった。

そして……

 

「……うぅ」

 

何分ほどたったのだろう。

起き上がったがボロボロのピッコロがいた。

慌ててビルス様に今の状況を聞く。

 

「おまえと戦ったボーゴが次の試合を棄権して向こうの大将とピッコロが戦った」

 

そして苦々しい顔をしている。

まさか今のお前があの男に……

 

「体を動かす音を感知してカウンターを叩き込んだが地力の差があってな……」

 

しかもそれ以外にからくりがある。

俺もじっくり見てみないとな。

 

「ベジータにはブルーになった方がいいと言ったがあの仕掛けがわからないと厳しい」

 

ビルス様がジト目で見てくる。

おまえがあんな勝負をしなかったらもしかしたらピッコロが見抜いてくれたかもしれないというように。

だが功績を知っているからかすぐに視線を戻す。

疑似的にとはいえ4人抜き達成だからな。

 

「あと、お前にできるのは応援ぐらいのものだ」

 

そう言ってメガホンを取り出す。

これで応援すればいいのですね。

 

そう思いながらヒットの動きを注視していく。

違和感があったのは事実だ。

しかしこれは……

 

「まさかあいつ時間を移動しているのか?」

 

タイムマシンのように僅かな1秒にも満たない時間を飛んでいる。

目には見えていない速度なんじゃない。

ポケットに突っ込んだ腕は音を出す。

先が見えなくても違和感はない。

しかし掴めなければ気づくやつはいる。

 

「何秒か先を予測して殴らないとダメージも与えられないな」

 

見えるのは虚像。

攻撃の時だけ現れる。

しかしその技術もところどころだ。

ピッコロの言うように地力がある。

そんな事を考えているとビルス様にぐりぐりされる。

 

「ほーら、やっぱりお前が出ていればこっちはベジータの苦戦もなかったんじゃないか」

 

それを珍しい我儘で不意にしやがってと愚痴を言われる。

ウイスさんから相手の先発がバーダックさんだった場合、6対3になっていたと言われているから強く出れないのだ。

 

「でも、ベジータだって流石に気づきますよ」

 

戦闘経験や修羅場は俺の方が上。

しかしセンスや観察眼、勘はベジータの方が凄い時がある。

もしかしたらもう気づいているかもしれない。

間合いを取ってお互いが睨みあう中、俺はメガホンで頑張れと声援を送っていた。




次回で対抗戦編終わりです。
日常編で考えてはいるんですがビルス様越えが起こり得るかもしれません。
原因はカカロットです。


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『神を凌駕する激怒』

原作での悟空の超問題発言の回です。
ベジータは見逃しましたが普通に考えても、かなりの期間険悪になります。



「ベジータ、やれぇ!!」

 

ビルス様が檄を飛ばす。

からくりを知るために幾らか喰らった。

その分蓄積されたダメージがある。

 

「『ファイナルゴッドシャインアタック』!!」

 

大技を避けた瞬間、先読みで拳を繰り出す。

当てる事に成功はしているが気の消費も著しい。

これを繰り返していてもガス欠になってしまう。

 

しかし、それよりもビルス様に視線を向けるこれってすなわち……

ビルス様も頷く。

そしてカカロットに降りさせる。

 

なるほど、からくりを知ったからカカロットに伝えている。

これは団体戦。

美学云々よりも勝ちにいく事だ。

人造人間の時とは違い、破壊神の機嫌を損ねる事の被害。

それをベジータは知っている。

 

それを引き継いだカカロット。

最初に拒否しようとした瞬間、ぶんなぐってやろうかと思った。

そんな中始まった事実上の大将戦。

 

結果としてはくだらない理由でカカロットが降参。

その過程で『10倍界王拳超サイヤ人ゴッド』を見せたりヒットを相手に優勢だった。

その気持ちを組んだヒットが次の試合でわざと負けてくれたからよかったが……

こいつ…お荷物にもほどがある。

 

その後に全王様が見ていた事を知る。

ウイスさんによく似た人がいる。

全ての神が頭を下げる。

俺もそれに倣う形だったが……

 

「うーん……」

 

なんと俺の顔を覗き込んできたのだ。

確かに隠し事はあるが……

 

「君、何か隠してない?」

 

俺は素直に頷いた。

ビルス様からは『嘘はやめておけ』と視線で訴えられていた。

 

「実は全王様……」

 

俺はピオーネを呼ぶ。

そして面と向かって説明をした。

 

「かつて全王様がお消しになられた第18宇宙のバンヤの民、最後の生き残りなのです……」

 

びくびくとしながら伝える。

消滅させようとしたら止める。

全宇宙が危機にさらされても……。

 

「へえ、逃げられたんだ……キューブってすごいね」

 

じろじろとピオーネを見る。

そしていきなりこっちを見て言い放つ。

 

「君はこの人と一緒に悪事を働いたりしない?」

 

俺はその言葉に頷く。

神殺しなんてするつもりもない。

仲睦まじく日々を過ごす。

誓いのあの日のように死が二人を分かつまで俺達は一緒にいる。

 

「じゃあやめておくのね、消したら可哀想だし……」

 

そう言われて下がる。

その後、カカロットが無礼な態度をとるがそれが逆に良かったのだろう。

上機嫌で全王様が帰っていく。

俺達はその間、肝を冷やしていた。

去る時に全宇宙を交えた格闘大会を近々開くと言っていた。

破壊神よりも強い相手もいるかもしれない。

そう考えると頭が痛くなる。

 

「で……あんたは第7宇宙に戻ってくるのか?」

 

バーダックさんに言う。

すると頷いていた。

 

「あの第6宇宙には俺が残せるものは置いてきた」

 

だが恩義を忘れてはいない。

そう言ってシャンパ様の方へ振り向く。

 

「俺の力が必要になったら言ってくれ」

 

いつでも駆けつけるぜ。

その一言にシャンパ様も頬をかく。

 

「絶対だかんな」

 

そう言って皆がキューブで帰る。

ちなみにドラゴンボールの願いは『第6宇宙へ第7宇宙と同等の文化と美食を持った地球を復活させる』だった。

 

その翌日。

バーダックさんと俺は荒野に居た。

フリーザの奴に会わせると言ったのだ。

 

「昔に比べて邪悪じゃねえのか?」

 

今や地上げもしてなきゃ、虐殺もしていないからなぁ。

そう考えたら随分と薄れている。

 

「むしろ今やあのフロストの方が邪悪です」

 

自作自演で星を売りさばき、表向きは善人ぶる。

よく考えたら初めから悪の帝王だったフリーザの方がましだろう。

 

「にわかに信じられないがな」

 

そんな事を言っていると宇宙船が着陸する。

フリーザが降りてきた。

 

「呼び出されましたが……お久しぶりですね」

 

バーダックさんの方を向いて深々とお辞儀をする。

その謙虚な態度に怪訝な顔をする。

 

「なぜ今になって虐殺をしてない、俺たちサイヤ人だけがそうならないといけなかったのか」

 

悪人でないのか、またなぜ自分たちだけがそうならなければいけなかったのか。

怒りを抑えながら聞いていく。

 

「今思うと怖かったんですよ、貴方達サイヤ人がね」

 

フリーザの本心なのだろう。

その言葉にきょとんとした顔に一瞬なってから質問を続ける。

 

「どういう意味だ?」

 

何故にあの頃のフリーザがサイヤ人を恐怖したのか。

実力を見る限りでは圧倒的だったはずなのに。

 

「貴方もですが、それ以外のサイヤ人を含め死線を越えればその都度強くなる」

 

そう言ってため息をつく。

他の兵士ではできない事。

到達するのに長い期間をかける境地にまで平然と辿り着いてしまう。

 

「それが俺たちサイヤ人の特性だ」

 

誇らしげに胸を張る。

戦闘民族らしいものだろうと。

だからこそ強く有れたのだという風に。

 

「寝首を掻かれたくもないですし、伝説の超サイヤ人とやらに出会いたくなかったので」

 

自分の地位を怪しませるもの。

死への恐怖をおぼろげながらに感じる可能性。

 

「なるほどな」

 

そしてすっと構える。

それを見たフリーザはにやりと笑う。

 

「やってみますか?」

 

そう言った瞬間、バーダックさんが4になる。

そしてフリーザも気を高める。

 

「それではあの日の続きを始めましょう」

 

ゴールデンフリーザとの戦いとなる。

俺の時とは違う激戦。

 

「ハアッ!!」

 

デスボールを放ったりあの日の記憶の紐をたどる様に戦う。

俺は特等席で立ち会わせてもらっている。

拳を打ち付けあう。

俺と互角に戦える戦闘経験。

しかも俺よりは確実に修羅場の経験値が少ないフリーザ。

それは徐々に表れ始める。

 

「ぐっ……」

 

フリーザが膝をつく。

技も払いのけられている。

 

「あの日からこんな瞬間を夢見ていたぜ、てめぇを見下ろすっていう事のよ」

 

そう言ってラッシュをかける。

尻尾などで弾くなどしてカウンターも放っていた。

しかしそれでも優勢は変わらない。

隙を突かれてしまう地獄のような連撃の前にフリーザはぐったりと人形のようになる。

俺もああなっていたかもしれない。

 

「まだまだ!!」

 

フリーザが活力を振り絞って反撃を試みる。

何とか戦線を持ち直す。

しかしダメージが大きい以上、その持ち直しも徐々に崩れていく。

技の威力に僅かな差ができた。

その僅かな綻びが勝利の細い糸を遠ざけていく。

 

それから数分後、決着はついた。

バーダックさんが倒れたフリーザを見下ろす。

しかし無傷ではない。

腕は折れているし裂傷もある。

どちらが倒れてもおかしくはない。

それほどに近い戦闘力。

しかしそれ以外の要素がこのような結果を生み出した。

 

憎くてたまらない相手。

それでもとどめを刺す事は無かった。

 

「サイヤ人なら拳を通じて理解できる」

 

しかしこんなに強くなるとはな。

そう言って首をコキコキと鳴らしていた。

 

むくりと起き上がったフリーザ。

二人とも和解はできたようだ。

そしてこっちに振り向く。

 

「ドラゴンボールで皆さん復活ってできますか?」

 

俺はそれについては頷くが拒否という感情を表に出す。

嫌だ。

あの二人が甦るから嫌だ。

しかしここで思いつく。

期間を指定すればいい。

 

「カナッサ星人からバーダックさんが拳を食らった時期から惑星ベジータ崩壊までなら一気に可能ですね」

 

そう言うとここにいる三人でナメック星に行く。

初めこそフリーザのせいで警戒されていたが、邪悪な気配がないという事でナメック星のドラゴンボールを使用させてもらった。

それによって実に40年ぶりに惑星ベジータは復活。

そこに蘇生させることで解決した。

その後の願いは特になかったので帰る。

 

ちなみにバーダックさんはブルマさんの所で居候をしている。

薬剤についての知識があるから薬剤師達の研究室に入れられた。

地味にいい仕事をするし、耐久テストをベジータと共にやっているなど馴染んでいるようだ。

それ以外には初めに地球の食事を食べた時に驚いていた。

こんなうまいものがあるとはと呟いていた。

 

「ただいま」

 

家の扉を開けてピオーネを抱きしめる。

子供を高い高いしたり、いつものような日々を過ごす。

するとピオーネに不意に口づけをされる。

ターサは顔を赤くしている。

思春期には刺激が強いかな?

結婚しておおよそ13か14年。

変わらない距離感と愛情。

 

こいつらを守る為なら鬼にでも悪魔になる。

罵倒したやつには手痛い仕打ちを限りない罰を。

ひたすらにそう思う。

ちなみに家は数年の間に改築している。

子供部屋を作ったりそれ相応の広さの家なのだ。

 

「ご飯にしようか」

 

そう言って晩ご飯を食べる。

食事量は減らす事もできる。

食事はうまいからといっても休肝日のように内臓を休ませてやる事も重要。

節制である。

 

食事が終わって片づけをする。

ターサが風呂に入ってくる。

その後は俺とゲンサイ。

最後がピオーネ。

 

「ねえ……」

 

背中を撫でてくる。

こういう時は決まってサインだ。

それに対して顎を撫でる。

了承という事だ。

無理だという時はそのまま無反応。

 

風呂に入って上がる。

それと入れ違いにピオーネが入る。

風呂から上がってくる時にゲンサイを寝かしつけないといけない。

そんな最中、ピオーネが上がったのだろう。

そして数秒後、悲鳴が上がった。

 

「どうした、ピオーネ!?」

 

俺はすぐさま寝室へ入る。

するとベッドの上にはカカロットが座っていた。

ドアを開けたり窓を破った形跡がない以上瞬間移動だな。

頭に血が上るが冷静である事を努める。

 

「カカロット、お前……」

 

しかし行動には表れてしまう。

ギリギリと歯ぎしりをする。

瞬間移動を悪用しやがって……

よりによってピオーネの艶姿を……

いや、タオルを巻いていて本当に良かった。

 

「いや、オラ……」

 

頭をかいて困ったような顔をしている。

それを見て悪用したわけではないと分かる。

まさか前回のヒット戦の無理がたたったのか?

あんな無茶な芸当をやってデメリットがないわけがない。

気のコントロールが一時的に効いていないのかもしれない。

そう考えると徐々に冷静になっていく。

しかし次の瞬間、怒りは生きてきて最大を記録した。

 

「わざわざ垂れた乳、見に人の家来ねえよ」

 

その瞬間、カカロットを殴り飛ばしていた。

家の壁が壊れたが後で補修する。

主にサラガドゥラの魔術で。

瞬間移動をするが関係ない。

 

「私も行くわ……」

 

戦闘服に着替えている。

女としてのプライドをずたずたにしたカカロット。

俺たち二人なんてあまりにもやりすぎだろう。

 

「良いから俺に任せてサラガドゥラを呼んで家の補修してもらってくれ」

 

そう言って俺は捜索しに飛ぶ。

しかしあっという間に通行止めをされた。

二つの影が光と共に目の前へ現れる。

 

「邪魔をするなぁ……!!」

 

その影に殴りかかる。

回避をするが一瞬の間で背中に立って肘打ちをする。

 

「がっ……」

 

頭を掴んでぐるぐると回す。

それを木に向かって投げていく。

 

木に手を付いて勢いを止めるがその隙に懐まで瞬時に入る。

そして腹部へ一撃。

 

「『ソウル・オブ・サイヤン』!!」

 

木を何本もなぎ倒してその標的は吹っ飛ぶ。

その存在が紫色の気を噴出させている。

 

「まさか本気で相対するほどの力の一撃をよこすとはね……」

 

ビルス様だった。

普段ならばこんな真似はしない。

だが、今は邪魔なのだ。

 

「どけぇ!!」

 

突撃をするとカウンター。

それを受け止めて脇腹へ一撃。

 

「がはっ……」

 

呻いた隙を逃さない。

一気に接近。

このやり取りでまだ数秒しか経ってはいない。

 

「ハアアッ!!」

 

殴り続ける。

いつもならばカウンターを喰らってそのまま引きずるが今の俺は一味違う。

カウンターが見える。

腕で払いのけて頭突き。

足で止めて正拳突き。

米神へ上段蹴り。

 

「ぐっ……」

 

吸い込まれるように当たっていく。

防御や回避が間に合っていない。

ここで決める。

力づくだがどかすだけ。

 

「『プライド・オブ・ラクタパクシャ』!!」

 

その一撃は破壊の隙も与えずにビルス様を呑み込む。

不敬極まりないが……

 

「はっ!!」

 

危険だと察したのか。

ウイスさんが三分前に戻した。

この原因を探るために。

そして見た結果……

 

「悟空さん、デリカシーがありませんね」

 

溜息をついていた。

仮にも妻子ある身でこの言い草は無いだろうというように。

 

「全く……とんだとばっちりだよ」

 

耳をほじりながらうんざりとした感じだった。

その間にサラガドゥラも来て宥められる。

 

「しかし神をあの瞬間僅かに越えていたな」

 

ニヤリと笑う。

そして……

 

「ぼくも悪口を言えばいいのかな?」

 

首をコキコキと鳴らしてようやく最高の相手を見つけたというような笑みを浮かべる。

しかしウイスさんが釘をさす。

 

「僅かとはいえど危険な真似はくれぐれも行わぬようにしてください」

 

そう言われるとそれもそうかと納得をする。

灼熱なんて無効化できなければ火傷で恐ろしい事になるからな。

むしろ火傷で済むのが神だからという事もあるが……

 

「それに捜索しなくても祝勝会があるだろ?」

 

ビルス様が言う。

そう言えばそうだった。

今回の勝利を祝うためにブルマさんがやってくれるらしい。

どんな料理が出てくるのか楽しみで先に聞こうと思って地球に来たらしい。

それなのに、激昂した俺に殴られるというとばっちりを喰らった。

 

「頭に血が上って気づいていなかったようですね」

 

それだけ愛情が深いともいえるのでしょうがと言われる。

頬をかいてこそばゆいといった反応を返す。

 

「それでは帰りますよ、ビルス様」

 

杖を叩く。

そして目の前から消えた。

消えていく最後にデコピンをされた。

暗転する意識の中、思った。

いくら怒ってもむやみに破壊神を刺激するものじゃあないんだと。




本来は数日後に悟空の気のコントロールが利かなくなるのですが、この話の為にすぐに発症させました。
サラガドゥラが何でも屋化している件。
まあ、界王神様の技と老界王神の魔術とかいうハイブリッドですからね。
神越えしていますがあれは今後、常に出るわけではなく特別なものです。

指摘有りましたら、お願いいたします。


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『祝勝会、そして……』

今回から未来トランクス編を始める予定です。
と言ってもさわりですが……


あの個人的な騒動から一週間後。

いまだに苛立ちが収まらない。

カカロットが謝りに来なかったからだ。

 

そんな中での祝勝会。

俺は動き回って場所の設営の準備をしている。

ナッパや桃白白。

ベジータやターブルも一緒だ。

 

「…!?」

 

不穏な空気を感じる。

それは俺が怒っているからでもなく、険悪な空気が流れているわけでもない。

千里眼を宇宙を見渡す。

するとその正体はあっという間に判明した。

 

「大きな宇宙船が着陸しやがる」

 

しかも岩場ではない。

町のど真ん中。

東の都といった所だ。

 

「肌にピリピリときやがるぜ」

 

そう言ってパラソルを立てたバーダックさんが首を鳴らし、肩を回す。

あのデザインから見て相手は分かっている。

 

「サイヤ人ですね」

 

復活した惑星ベジータのサイヤ人が来る。

おおよそ侵略目的だろう。

これは俺たちの問題。

解消しなくてはいけない。

 

「行きますか?」

 

そういうと肩を掴んでくる。

瞬間移動だな。

シュンと音を立てて、パーティ会場から抜け出した。

 

「こんなど真ん中に降りられたら溜まったもんじゃねえな」

 

そう言うと上空に飛び上がる。

着陸前に軌道を変えるわけか。

トリックで済まされるからましなんだけどな。

これを長々と説明するのは面倒なことだし。

 

「とにかく宇宙空間まで出てみますか?」

 

4の力ならそこそこの時間留まれる。

ゴッドと同じレベルの戦闘力を有しているのだから。

ただ、目に見える形の力かそうでないかの違い。

 

「いや、交戦はできないから上空待機で持ち上げるようにして強引に軌道を変える」

 

出てこなければ意味もない。

それならば地球に来た時に軌道の変化をさせる。

 

「来るぞ!!」

 

そう言った瞬間、頭上に影が現れる。

大きな宇宙船が来た。

二人で4になって持ち上げる。

 

「岩場まで誘導ですね」

 

そのまま動き続ける。

操縦の人が驚いているはずだ。

そして一気に運ぶ。

名もない島のような場所につける。

 

「出てくるぞ……」

 

おろして数分後。

ガシャンという音と共にタラップが降りる。

数人の屈強な戦士が来た。

 

「悪くない星だな」

 

そう言った相手の目の前に二人で現れる。

すると驚愕に包まれる。

ちなみに普通の状態に戻っておいた。

そしてついに思った。

髪の毛を切った方がいい。

長いせいで地面に突き刺さりそうなのだ。

 

「バーダック、なぜおまえがここに!?」

 

この顔は覚えている。

パンプーキンさんだ。

しかし地獄でシェイプアップはできなかったのか。

相変わらずの肥満体である。

 

「俺はここについ最近戻ってきただけだ」

 

面倒くさそうに言う。

しかも宇宙についても話さないといけないからな。

 

「それにこのガキは?」

 

俺の方をじろりと見る。

ナメック星の時からあってないもんな。

しかも臨死体験だし。

 

「あのくそったれラブカのガキで、『落ちこぼれ』ガタバルだよ」

 

そう言うと掌を叩く。

聞いたことあるという反応。

十数年前に顔見ただろうに。

 

「女みてぇな顔してるな」

 

そう言いながら他のサイヤ人を出して構える。

悪いがそのつもりならば……

 

「居心地がいいこの星を侵略するのなら……」

「相手になるぜ」

 

二人とも普通のサイヤ人状態で構える。

すると隊長と呼ばれて男が出てきた。

この人の名前も覚えている。

 

「トーマ……」

 

ニヤリと笑ってトーマさんが殴ってくる。

それを避けてカウンターを放っていく。

腕で防御をして、互いに距離を取り合った。

 

「地獄でのんびりしてたわけじゃないぜ、バーダック!!」

 

戦闘力ならばかなりの差はある。

まだ全力では無く平然とバーダックさんは返している。

しかし相手も地獄で絶え間なく戦い続けた男。

超サイヤ人にならなくてもそんじょそこらの戦士とは格が違う。

 

「そうかよ、でも……」

 

その瞬間、風のようにするりと懐に入って腹への一撃。

息を吐き出してトーマさんが膝をつく。

 

「俺も滅茶苦茶戦ってきたぜ」

 

そして息を吸って一言。

誰にも聞こえる大きな声で。

 

「もう星の侵略をするのはやめろ!!」

 

それは今までのサイヤ人の在りかたの否定。

しかし侵略をしなくても生きてはいける。

それが共存への道。

 

「破壊神に目を付けられるし、フリーザの野郎も今やそれをしていない」

 

何故かという問いにバーダックさんではなく俺が伝える。

破壊神と聞いて同乗していたベジータ王の顔が青ざめる。

やはり、危ないのは分かっているのか。

 

「星の侵略者どもを倒す、悪を倒す悪人になりゃあいい」

 

必要悪となる道。

放置すればさらに悪化する星。

それらを侵略するものを倒したり、文化レベルを引き上げる。

そうすることで宇宙そのものの平穏、および人々の成長を促せる。

神が先立ってやるべきではない行為、それを人間が代行する。

それだけだ。

 

「これからはそうした方がいい」

 

消されたくはねえだろう?

そう言われると全員が口を閉ざす。

そして一人の女性が降りてきた。

 

「ギネ……」

 

バーダックさんの奥さん。

つまりカカロットとラディッツさんの母親。

 

「戻らないの?」

 

そう言われると頬をかく。

そして……

 

「俺、ここで住んでいるからな」

 

だから一緒には帰らねえ。

その代わりおまえも残れ。

そういって手を握る。

 

「というわけだ、今回は帰っていただきたい」

 

どうしても侵略するなら相手になるぜ。

そう目で訴える。

 

「やってやろう」

 

その目にひるまずに降りてきた。

その人はセリパ。

女性サイヤ人。

いいだろう。

実力の差を見せて撤退を決意させてやる。

 

「はっ!!」

 

拳を振るってくるが紙一重で回避する。

蹴りを腹めがけて放ってくるが後ろに飛んで回避。

そのまま蹴り足を地面につけた瞬間、飛び上がって踵落としに切り替える。

 

「ぐっ!!」

 

流れる三連撃。

踵落としを腕で受け止める。

こっちも返していくか。

 

「シッ!!」

 

ジャブを放って距離を確かめる。

それを受け止めるが一気に距離を詰める。

これで腹部に一撃を入れる。

 

「がっ!!」

 

腕を交差して受け止める。

しかし、体が浮き上がっている。

顔ががら空きだ。

 

「フン!!」

 

打ち下ろしが顔面にめり込む。

そのまま地面に叩きつけられた。

受け止めるなんて事をしなければあっけない事なんてなかったのに。

 

「うっ……あぁ……」

 

腕が震えて地面に手をつくこともできない。

足も震えている。

立ち上がれそうにない。

そのまま転がって大の字になって倒れ込んだ。

 

「これは侵略できないね……」

 

あまりにも圧倒的な結果。

この状況に苦々しい顔を浮かべて今回は帰ると言った。

今度は、普通に観光で訪れるとのことだ。

 

「さて……戻るか」

 

そう言って瞬間移動でパーティ会場へ戻る。

するとなぜかフリーザがいた。

 

「いやぁ、地球の事は偵察していますから」

 

なんで居るのか聞いたらあっけらかんと答えられた。

破壊神が入り浸っているから重要なことも今後分かりますし。

そう言って設営をみんなで頑張っていた。

俺達が抜けた分をカバーしてくれている。

 

「それに……」

 

ギネさんの方を見た。

惑星ベジータが復活しているのを確信したようだ。

頭を下げて謝罪した。

 

そんな中ラディッツさんが気づく。

カカロットはまだ来ていない。

大方、界王様の所だろうか。

 

「お袋も蘇ったのか……」

 

そう言って嬉しそうな顔を浮かべる。

そしてハツカを呼ぶ。

もう9歳ほどの女の子だ。

祖母だと伝える。

ギネさん自体も驚いていた。

 

「初めまして、僕の名前は孫悟飯です、こちらが弟の悟天です」

 

悟飯も自己紹介をする。

チチさんも頭を下げる。

カカロットはもう少ししたら来ると言っていた。

ちらちらとみると色々な奴もいるな、ジャコも来ている。

どうやら宇宙で一番人気の甘いものを取り寄せたらしい。

そんな中出てきたのはモナカ。

……非常にまずい。

 

「ビルス様……呼んだのですか?」

 

俺は恐る恐る聞く。

すると首を振ってまずいといった表情だ。

 

「いや、偶然だ……」

 

悟空が言ってきたらお前で止めておいてくれ。

そう言ってどうしたものかと思案していた。

着ぐるみとかでもいい気がするんですけどね。

 

「おっす」

 

そんな事を考えているとカカロットが来た。

その瞬間、4になって1週間前の怒りをぶつけに行く。

すると悟飯に羽交い絞めにされ、目の前にはベジータ。

こいつら……

 

「普段と違って父さんを見た瞬間、殺気が噴き出しましたからね……」

 

今にも俺の力で弾かれそうな悟飯が言ってくる。

案外バレていたか。

 

「落ち着きやがれ、祝勝会が台無しになるぞ」

 

ブルー状態になって『ファイナルゴッドシャインアタック』の構えだ。

流石に今の俺に生半可な技は通用しないと判断したのだろう。

 

「しかし、お前らしくもないな、何があった?」

 

ベジータが聞いてくるので耳元で囁く。

すると額を押さえる。

悟飯も手招きして囁いてやる。

すると今度はため息を吐いた。

 

「愛妻家であれば激怒する内容だな……」

 

カカロットが悪いと言ってブルーをやめた。

だが……

 

「祝勝会が終わってからだ」

 

ビルス様の怒りを買う可能性もあるんだからな。

そう釘を刺される。

 

「くれぐれも抑えてくださいよ……」

 

困り顔で言われる。

仕方あるまい。

 

「がっ…!?」

 

そう言われて我慢している間に、頭に激痛が走る。

未来が見える。

それは懐かしい顔があった。

だがそれはつまり……

 

「未来からのSOSか……」

 

空を見上げて何が起こっているのか。

胸騒ぎがしている。

 

.

.

 

ここは別の次元。

絶望の未来。

そこではセルとの戦いから10年が経過した。

魔人ブウの時に純粋悪の攻撃で界王神様が亡くなってしまい、破壊神がそのつながりで死亡。

人類は助かっていた。

しかし、その後に起こった未曽有の事態。

 

「トランクス……悟飯と共にタイムマシンで過去へ飛べ!!」

 

ベジータが言う。

あの後のドラゴンボールでカカロットの蘇生。

そして修行を皆が積んできていた。

しかし精神と時の部屋で現在と過去で4年分の努力をした悟飯とトランクスを超える事は出来なかった。

さらに今回の相手は格が違う。

強くなっていた俺も全開で何とかせねばいけない次元。

 

「父さんは!?」

 

時間稼ぎをするつもりだ。

その質問に答える事は無く、さっさと行けという。

その言葉でトランクスは振り向くこともなくカプセルコーポレーションへと向かう。

 

「やつらがナメック星まで消した以上もう俺の命もこれまでだ」

 

一度死んだ身ではピッコロのドラゴンボールでは不可能。

ナメック星のようにパワーアップさせておけばよかった。

しかし、後悔しても今は遅い。

 

「おまえも宇宙まで逃げろ」

 

ならば犠牲を減らすほかない。

俺はベジータを気絶させて瞬間移動をする。

怪しい予感をしたことから事前に地球人を別の宇宙まで避難させた。

あとはベジータ達だけだ。

だから気絶をさせた。

 

「おまえも俺に付き合わなくてもいいんだぜ?」

 

ゲロがニヤリと笑う。

そして相手へ指を向ける。

 

「神が相手ならば抗う者よ」

 

ブロリー達を乗せた宇宙船が飛んでいく。

ここにいる人類は百名にも満たない。

トランクスの恋人であるマイ。

そしてそれを中心にしたレジスタンス。

逃げ遅れたヤジロベー。

タイムマシンをブルマに代わって管理するゲロ。

死ぬ時は一緒だと誓いあったラズリ。

トランクスと悟飯。

そして俺。

 

「地球丸ごと大決戦といった所だ」

 

そう言って超サイヤ人4を使う。

限界突破をし続けたことでおよそ破壊神を凌駕した力。

 

「この神に追随、もしくは凌駕とはやはり人類は度し難い」

 

カカロットによく似た顔の男が言ってくる。

おまえの中身は神なのだろうな。

一体どのような真似をしたのか気にはなるが。

 

「人類が繁栄した歴史を葬ってしまえばいい、そして魔神であるドミグラが新たな歴史にお前らの功績を刻み込もう」

 

赤い髪をした顔の整った男が杖を振りかざして言ってくる。

それと同時に棘状の気弾とも杖ともいえるものを放つ。

 

「ちっ!!」

 

全てを薙ぎ払い気弾を放つ。

しかし……

その一撃を呑み込む黒い影。

 

「我が名はアザラ……この全宇宙を邪の世界に塗り替える邪神なり!!」

 

その腹には青い人間の顔がある。

あれを依り代にして顕現した邪神。

その手を車に当てて力を振り絞った瞬間……

 

「一瞬でドロドロに溶解しやがった!?」

 

ゲロが驚く。

マイナスエネルギーが包み込んでそのまま車の原型を消し飛ばした。

どれもこれも『神』を自称する存在達。

 

「我らは人類の絶滅の為に組んだ『三神同盟』、さあ懺悔せよ……」

 

現代でパーティーをしている間。

未来は今まで以上のとてつもない戦いが迫っていた。




相手は原作通りのゴクウブラックとザマスに加えて
ゼノバース1のラスボスのドミグラと本作魔人ブウ編で出てきた邪神アザラの完全版。
トランクスと悟飯は現代+未来で『精神と時の部屋』を2回使用という事で親越えをしています。
老界王神のじっちゃんは漫画版の『超』のように未来では死んでいます。

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『ゴクウブラック&ザマス』編
『未来からの再会』


今回から本格的に未来トランクス編が始まります。
トランクスたちが来る時間と未来でのガタバルの戦いは同時に動いています。



俺と悟飯さんが無我夢中でボタンを押していた。

まだ相手は来ていない。

ガタバルさんとゲロさんは時間を稼いでいる。

マイとラズリさんは万が一の最後の砦。

悟飯さんの恋人であるビーデルさんは同じようにレジスタンスで現在はここにはいない。

相手の動きを注意深く観察する偵察隊だからだ。

 

「絶対にあの時代に行くんだ!!」

 

そう言って力を入れる。

するとロケット部分から火が出る。

煙が噴出した、動く準備が整った。

 

空中に浮いていく。

そんな俺達に向かって漆黒の泥のような気弾が放たれる。

それをゲロさんが打ち消す。

太陽の光のようなものを当てたら蒸発した。

一体何だったのか……。

 

俺達はシュンという音、そして眩い光と共にこの時代から移動した。

次に戻ってくる時に戦力を整えてくることを考えて。

 

.

.

 

あの祝勝会から数日後。

激痛の原因を探りながらピオーネやターサと共にカプセルコーポレーションに入り浸っていた。

ラエンカもパトロールで来ている。

カカロットがベジータと組み手をするらしいから来ている。

あれから殴る事は無く、苛立ちを胸に収めながら接している。

一向に謝る気配がないのはどうかと思う。

そんな中、バーダックさんが声をかけてくる。

 

「ちょっと未来が見えたんだがな……」

 

この人も未来視を持っている。

だからわかっていた。

次の相手が今までで群を抜いて危ないという事。

おおよそ神の次元が数人。

しかもあいつらまだ隠しているものがある。

 

「未来とか時間を航行するのは重罪じゃねえのか」

 

バーダックさんが言ってくる。

確かに運命なり決められた中での出来事を変化させる。

そうすれば未来への影響、『タイムパラドックス』が発生する。

意図的に行ったらそれは重罪だろう。

 

「見て見ぬ振りもどうかと思いますが……」

 

そんな事を言っていると光輝いている。

懐かしいタイムマシンが見えた。

ビルス様とウイスさんにはちゃんと言わないとな。

 

地面に降りてきてそのハッチが開く。

トランクスと悟飯だ。

どうやら切羽詰まった顔だが……

 

すると次元から穴が出てくる。

そこから一人の男が出てきた。

それはカカロットによく似ている。

 

「くっ!!」

 

構えるトランクスを横目にこっちはずかずかと近寄っていく。

そして……

 

「開けたら閉めろ!!」

 

穴に向かって蹴り飛ばす。

なんとか踏ん張るがこちらを見て驚く。

 

「貴様はガタバルだな」

 

俺を知っているようだが……

この気はカカロットではない。

つまり……

 

「おまえ、カカロットの体を乗っ取ったな」

 

そう言うと殴りかかってくる。

避けるが超サイヤ人でないにせよ中々の速さだ。

 

「一体何の騒ぎだ!!」

 

カカロットとベジータが駆けつける。

ビルス様たちもいる。

トランクス達も降りていた。

 

「これは不利だな……」

 

戦士が6人。

破壊神と天使。

いずれにしても脅威である。

 

「トランクス……仕留めるぞ!!」

 

悟飯とトランクスが同時に仕掛ける。

超サイヤ人2の状態で3並み、もしくはそれ以上の力とは。

しかしそれを難なく受け止める。

 

「私一人だったら大丈夫とでも思ったか?」

 

そうは言うがお前にも言える事だ。

それは……

 

「二人ならば逃げおおせると思ったか?」

 

超サイヤ人4で踵落としを当てる。

両腕が使われているから格好の機会だった。

 

「ぐはっ……」

 

地面に倒れ込む。

とどめを刺そうと思い、手をかざす。

しかし……

 

「ぐぉおおおおおお!!」

 

次元の穴に入っていった。

つまり自分の時代に戻ったのだろう。

 

「……で、説明してもらうよ?」

 

穴が閉じた時、静寂を破るようにビルス様が言う。

ここでは流石に大声で言えない。

既に集まっているメンツも会議室へ入っていく。

 

「それでは今回何故ここに未来のトランクス達がいるかというと収納しましたタイムマシンによるものです」

 

そう言うと溜息をついてこっちを見る。

そしてその後にブルマさんを見た。

 

「時間の移動は重罪なんだよね、分かってる?」

 

そう言うとウイスさんが説明をしてみんなが納得をする。

そのうえで何故今回こうやってSOSを飛ばしたのか。

それは聞けば聞くほど厄介な状態だった。

 

「全人類の滅亡を狙う奴らか……」

 

魔神ドミグラ。

邪神エコトゥーク・アザラ。

そして神を自称するゴクウブラック。

 

その強さは単体では一筋縄でいかない相手。

修行を重ねてもその抵抗できる水準に至るのが非常に少ない。

現状、未来の俺と悟飯、トランクス。

ゲロにラズリ。

その5人ではあまりにも難しい。

それで助っ人は必要だという事。

だからこそ現代に来たのだ。

 

「ふざけた奴らだが……界王神はどうなっている?」

 

ビルス様が聞く。

界王神がいるならば破壊神が出てくるはずの状態。

それにもかかわらず動かないというのは……

 

「あの……界王神様はなくなられました」

 

そう言った瞬間、机を叩く。

ギリギリと歯軋りをする。

 

「あのバカ……出しゃばりやがって!!」

 

表裏一体だからこそどちらか死ねば片方も死ぬ。

それを知っているのならばもしかしたら……

 

「もう全宇宙の界王神様は死んでいるだろうな」

 

ゴクウブラックがその仕組みを知っているならばの話だが。

そして、その言葉にピンと来たのか未来の悟飯が言ってくる。

 

「もしかして亡くなった界王神様以外のどこかの界王神様がゴクウブラックの正体では?」

 

そう言われると納得できる。

この仕組みを普通の存在が知っているはずもない。

知っているとしたら界王神かもしくは破壊神である。

 

「だとしたら見習いの可能性もあるぞ……」

 

そう言って現れたのはサラガドゥラ。

よく見ると後ろに老界王神様もいる。

 

「最悪な話、今の俺が界王神様を殺してポタラを奪えば新しい界王神になれる」

 

頭をかいて可能性を広げる。

しかしトランクスと悟飯はきょとん顔だった。

 

「ポタラとは?」

 

あっ、こいつら界王神様の耳元見てなかったのか。

そんな事を考えていると老界王神様が取り出す。

 

「色が違っていたら別の宇宙なんじゃが……」

 

俺とバーダックさんは未来視と現実。

その二つで色は焼き付いている。

確かあれは……

 

「ブラックが付けていたのは緑でした」

 

そう伝えるとビルス様が立ち上がる。

ウイスさんも同じように。

 

「神の諍いとなれば仕事はする」

 

だが戦いの決着はあくまでお前らがつけろ。

その言葉を残して去っていく。

 

「今の間にタイムマシンの燃料をどうにかしてもらおう」

 

そのうえで戦闘について行く面子を選ぶ。

トランクスたちの決断次第だが……

 

「父さん、ついてきてもらえませんか?」

 

ベジータに声をかける。

それに対して手を伸ばす。

髪を撫でるように振れる。

任せろというわけだ。

 

「僕からもお願いします」

 

悟飯がカカロットに声をかける。

それに快諾する。

うーん……カカロットが行くのかぁ。

 

「お前はいつまで引きずってんだよ」

 

嫌そうな顔をしていたのがばれたのかバーダックさんに叩かれる。

未来の自分も関係してるから行かないとダメなんですけどね。

 

「しかしミクロバンドを使って何とかしないと六人も入れないですね」

 

それもそうだった。

店員オーバーもいいところだ。

前回、未来の俺達はそれで5人帰ることに成功している。

 

「でもセルが使ったやつ再利用したらいいじゃん」

 

そう言ってブルマさんにどこに収めているかを聞く。

ホイポイカプセルの中にあるので外に出した。

コケを落とすのは手作業。

サラガドゥラも真剣になっていろいろな宇宙を回って調べるらしい。

それが終わり次第合流するとのことだ。

 

「しかし、今までで最も恐ろしい敵となると……」

 

フュージョンやポタラも視野に入れなければいけない。

相手は神の次元の為、一時間で解けない可能性がある。

 

「一対一で勝とうなんてのはやめとくべきだ」

 

サイヤ人の誇り以前の問題。

そう、バーダックさんは言う。

戦いに生きるサイヤ人。

誇りはあるがそれの重きを置く場面。

そう言う機微をはかってこそ意味がある。

 

「俺達の世界ならそれでいい、だが今回はな……」

 

他人の世界なんだ。

だから確実に平和を取り戻さないといけない。

そう言ってガラスを張り替えた。

 

「そうですね」

 

あの姿を想像する。

タイムマシンもなしでどのようにして移動できたのか。

そしてあの指輪は何だったのか。

神の事は神しかわからない。

 

それから作業をすること、数時間。

コケは落ちて新品同然になったタイムマシン。

傷が無くなって綺麗になったタイムマシン。

2つのタイムマシンがきれいな姿になった。

 

今は食事にありついて英気をみんなが養っている状況だ。

 

「あとはエネルギーを充填したらいいのか」

 

一週間もの時間稼ぎ。

そう、トランクスが漏らす。

最悪、死んでいる可能性まである。

だが……

 

「期待の方向に良くも悪くも斜め上を行くのがこの男だ」

 

ベジータがトランクスへ励ましの言葉を言う。

そして、にやりと笑ってこっちを見てきた。

それにつられるようにトランクスも微笑む。

 

「明日には激戦だ、ゆっくりと休めよ」

 

一足先に食事を終えたバーダックさんが席を外す。

俺もそれに倣って席を外す。

とにかく気が静まらない。

 

「失敗はできないからな」

 

握り拳を作って呼吸を整える。

未知数とはいえカカロットの体を乗っ取ったゴクウブラック。

まだブルーにはなれないようだが、いずれは到達する。

その為、早期決着で撃破しないといけない。

そしてアザラの完全な顕現。

邪神として目覚めているのならばビルス様の半分かもしくはそれ以上。

最後に魔神ドミグラ。

初めて聞く名前ではある。

誰かに聞けばわかりそうなのだが。

空を見上げて今一度冷静になるのだった。

 

.

.

.

 

「ハアッ……ハアッ…」

 

ドミグラとアザラが攻め込んでくる。

トランクスたちが旅立って一週間。

ゲロたちは避難をしながら俺一人で三神を相手にしていた。

つい、先ほどゴクウブラックが戻ってきやがった。

アザラの攻撃についても判明はしている。

『マイナスエネルギー』を利用しているのだ。

それは人が持つ不純な心、邪悪な思い。

『妬み』や『憎悪』、『怒り』。

それをあの像の状態で一身に受けてきた。

その貯蔵量たるや一つの惑星を呑み込む次元である。

 

「どこに逃げるんだ」

 

目の前からドミグラとアザラが現れる。

どうやら魔術師の類。

瞬間移動でこちらに休む暇を与えない。

 

「ちっ!!」

 

隠し持っていた煙幕を投げつける。

そしてそのままビルから飛び降りた。

 

「逃げれないな…」

 

一人ずつならば、まだ何とか各個撃破できる。

しかしこいつらが魔術などですぐさま合流できる環境。

それが自分から余裕を奪う。

 

「情けないぜ……戦闘民族でありながらこんなざまとはよ」

 

時間を稼ぐことになりふり構わない。

殆ど飲まず食わずで一週間。

睡眠が取れない極限状態。

 

「ならば死ぬがいい!!」

 

気の刃が迫りくる。

ゴクウブラックだ。

ここならばまだ合流まで距離がある。

 

「くっ!!」

 

脱力したまま、掌底で顎を射抜く。

フルパワーの超サイヤ人4でダメージを与える。

崩れ落ちそうなブラックを蹴りあげる。

そのまま追い越して地面へ叩きつける。

その状況に気が付いたのか、アザラ達が迫る。

そのまま一本道に逃げ込む。

上はバリケードで商店街の名残がある。

 

「愚か者が、その向こうは崩れた瓦礫で埋もれている!!」

 

3人ともが横一列に並ぶ。

その瞬間、一網打尽にできる機会が生まれる。

 

「喰らいやがれ!!、『ファースト・スロー・ダイス』!!」

 

商店街全てを包み込む気功波。

三人は今から天井を破る様に上空には飛べない。

さらにドミグラと離れてしまった。

瞬間移動すら不可能。

乾坤一擲の一撃である。

 

「ぐああっ……」

 

盾にでもされたのだろう。

ゴクウブラックやドミグラに比べて明らかな損傷がアザラにはあった。

ここで仕留めてやる。

そう思うと体が動く。

ボロボロの体に鞭を打ってアザラの首を掴む。

 

「死にやがれ……」

 

その言葉を最後に胸に腕を突き刺していた。

神と言えどこのマラソンマッチ。

ダメージを受けてしまうとこうなる事もある。

一週間、粘り続けて消耗戦に持ち込んだのは決して間違いではなかった。

 

「まずはお前だけでも……」

 

心臓を握りつぶす。

引き抜くとそこからマイナスエネルギーが噴き出ていく。

そしてそのエネルギーは徐々に勢いを緩めていく。

 

「邪神の力……我が元に」

 

そう言うとドミグラの元へマイナスエネルギーが引き寄せられていく。

そして、『マイナスエネルギー』の塊が小さな像へと変化する。

今まで見たこともないような禍々しい像だった。

ドミグラが笑みを浮かべている。

膝をつく俺をしり目に再度体勢を立て直すべく、ブラックとともに消えていく。

嫌な予感が体を駆け巡る。

 

「だが……今は喜ぶべきなのかもな」

 

ゲロたちと合流するために俺も動き始めた。

だが、この時の俺は知らなかった。

倒す順番をドミグラにするのがベストだったという事。

そして、かつて過去でボージャック一味を復活させたように『善かれ』と思った行動がさらなる激戦を巻き起こすという事を。




最後の後悔がどのようにつながるのか。
まさかの敵側のアザラが現代が来る前にリタイアです。
もっていく為の犠牲なので仕方ないと言えば仕方ありません。

指摘などありましたらお願いいたします。


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『邪神から出でた脅威』

未来編、まずは一回目の未来訪問です。
前回、アザラの脱落で未来が少し展望が明るくなったかと思います。
しかしそれはさらなる戦いの引き金でした。



次の日の朝。

俺達はタイムマシンに乗り込んでいた。

未来の悟飯、俺、バーダックさん。

未来のトランクス、カカロット、ベジータ。

仙豆は分け合って所持している。

相手が何者かの調査は難航しているのかもしれない。

まずは何とかして相手を探る。

 

一筋縄ではいかないことは明白。

だったらどのようにするか?

人数はこちらが上である以上、多数で殴るのがベスト。

 

「じゃあ、行きますよ……」

 

そう言ってボタンを押す。

徐々に空に浮かんでいく。

そして一定の高度に到達すると、シュンという音と共に西の都の景色が消えた。

 

そのまま動き続ける。

幾らか時間が過ぎた時、景色が変わった。

 

「エネルギーも機体も変わったおかげではるかに速く到着できましたね」

 

そう言う悟飯は嬉しそうな顔だ。

速くに戻ってきて、助けられる喜びからだろう。

……しかしここで意外なことに気が付いた。

 

「何故カカロット達は同時に来ない?」

 

そう言うと頭をかきながら困った顔を浮かべる。

そして口を開いた。

 

「もし、タイムマシンの中で暴れたりすると座標が狂うんです」

 

それこそ着陸だけでなく時間の差も多少は出てきますし……

苦い顔をして言う悟飯に同情をする。

大方カカロットが騒いだんだろう。

 

「だが、足を緩める理由にはならねえ」

 

そう言ってバーダックさんが降りる。

それに続いて悟飯と俺が降りた。

この状況にため息をついて伸びをして体をほぐしておく。

 

.

.

 

「じゃあ行きますよ!!」

 

悟飯さん達と同時にスイッチを押す。

そうすることで合流できるからだ。

これで常に6人で相手をすることができる。

汚いと揶揄されても平和のためには美学も捨てないといけない。

特に悟飯さんの所に乗った二人はそこを分かっている。

 

「すっげえ揺れてんぞ!!」

 

悟空さんがどたばたとする。

父さんがそれを抑えようとするが……

 

「どんな相手なんだろうなあ、ワクワクすっぞ!!」

 

聞く耳持たず。

父さんがブルーというのになってまで押さえつけた。

しかしそんな力を加えていたから……

 

「悟飯達の時間よりずれているんじゃあないのか?」

 

父さんが心配の声をかける。

確かに父さんの言う通りだった。

さらに座標もずれている。

 

「3人で1人の相手、ないし2人の可能性がありますね……」

 

そう言うと父さんが悟空さんを睨む。

真剣にやっているのに水を差す真似をしたのが許せなかったんだろう。

一人ピクニック気分なのではないかと思った。

 

「そう怒んなよ、ベジータ……」

 

悟空さんがそんな事を言うがはぐれてしまったのは問題だ。

瞬間移動ができるとは言っても……

 

「もう敵がお出ましのようだからな」

 

父さんがそう言うと、ある男を引きずってゴクウブラックが姿を現した。

未来のガタバルさんのようだが……

 

「返してやろう……」

 

ヒョイと投げられてバウンドする。

死んではいないが非常に弱っている。

 

「この八日間の不眠不休の戦いで我らが同胞を破った愚かな反逆者にせめてもの慈悲だ」

 

父さんが仙豆を食べさせる。

起き上がるがグロッキー状態なのか、膝をつく。

よくぞ、そこまでやってくれました。

感謝の念を込めてお辞儀をする。

 

「ハアッ!!」

 

目の前にいる悟空さんによく似た憎い奴をぶっ倒すために、父さんがブルーに変身をする。

奴はどうやら変身ができないようだ。

どうでもいい事だ。

できないまま父さんにやられてしまえばいい。

 

.

.

 

「意図せず二手に分かれて探す事になりましたね」

 

そう言ってタイムマシンを収納する。

あの二人がいると騒がしくなるからな。

すると一瞬、目も眩むような閃光が俺達を包み込んだ。

 

「ぐっ!?」

 

攻撃ではないが構える。

その光が晴れた時、驚くことに俺達は別の場所にいた。

さっきまでの廃墟ではない場所。

宮殿か城のような場所に俺達はいた。

 

「質感からして幻覚じゃねえ」

 

床に触ったり踏んでバーダックさんが感触を確かめる。

それにものもどうやら普通に壊れる。

石畳を殴ると罅が入った。

 

「どうやら魔術で移動させられたみたいですね」

 

優雅とも言うべき真赤な絨毯が敷き詰められている。

そして燭台から煌々と火が点り、揺れている。

内部に転移させられたのか?

そんな中、靴の音が聞こえる。

規則よく踵が当たるような音が鳴る。

 

それから数瞬、自分たちの目の前に現れたのは赤い髪の杖を持った男。

魔術師のような見た目。

口角を上げて手を広げる。

 

「これが私、魔神ドミグラの作った世界だ」

 

早々に分断して気分がいいのだろう。

だが、運が悪い奴だ。

何故なら俺達は……

 

「もう一方の奴等より甘くはないぜ」

 

その言葉に頷く。

そして杖を掲げて力を振り絞る。

かなりの気の充実。

超サイヤ人3と同格。

今の未来の悟飯といい勝負ぐらいだ。

だがバレバレである。

 

「おまえ……変身できるだろ?」

 

バーダックさんと俺が指をさして言ってやる。

それを聞いてさらに口元を笑みの形に歪めた。

 

「くくく……中々いい目をしている、ご名答だ」

 

そう言ってさらに気を膨れ上がらせる。

徐々に城が揺れている。

 

「何時ぶりか忘れたが……本気でやらせてもらうぞ!!」

 

青い化け物のような見た目になる。

しかしその実力は折り紙付き。

ゴッドといい勝負だろう。

 

「覚悟しろよ……虫けらども!!」

 

そう言って拳を振ってくる。

隙が無い。

脇が閉まっているだけではない。

回転などそう言った部分を見ても非の打ち所がない。

受け止めてカウンターを打とうにもあいつの縄張りに足を突っ込むようなものだ。

 

「ちっ!!」

 

超フルパワー超サイヤ人4で対応する。

バーダックさんもその一撃を受け止める。

そして蹴りを放つが……

 

「フンッ!!」

 

腹筋で防ぐ。

魔術だけではなくフィジカル面もきちんと鍛えている。

サラガドゥラと同じ系統だ。

しかし……

 

「はっ!!」

 

悟飯の存在を忘れるな。

頭に一撃を喰らわされる。

頭を振って避けるが僅かに掠っていたのか膝をついた。

 

「ムムム……やはり奥の手を早々に使わせてもらうか」

 

そう言うと杖を持ち魔術であるものを取り出す。

それは見覚えのあるものだった。

 

.

.

 

「だぁ!!」

 

父さんがゴクウブラックを殴りつける。

それに続いて俺も攻めに行く。

すると掴まれる。

悟空さんは俺を責めるように見ている。

 

「おめえ、一対一の勝負に水を差すんか?」

 

そうは言いますけどね……

力づくで引き剥がす。

 

「そんな綺麗ごとじゃあ平和なんて来ないんですよ……」

 

そう言ってゴクウブラックを殴る。

父さんはゴクウブラックを羽交い絞めにする。

俺はそれを見て腹に蹴りを入れる。

 

「がはっ……」

 

無防備にも近い状態で腹部に一撃が入る。

このまま終わらせてやる。

そう思って振りかぶったが……

 

「ちっ!!」

 

父さんがゴクウブラックを後方に投げつける。

なぜ、そんな事をしたのか。

その答えはすぐそこにあった。

 

「こいつ……わざと食らってサイヤ人の特性を活かすつもりだ」

 

力を抜いていやがったからな。

そう言われるとさっき、腹筋による反発が感じられなかった。

つまり自分から最大の衝撃を受けたということだ。

そう指摘すると、笑みを浮かべる。

どうやら死にかけから戻ると爆発的に強くなる。

それを利用して今の実力差を埋めようという算段だ。

 

「殺そうにも肉体強度がカカロット基準だから強靭だ」

 

消耗戦になってもカカロットは馬鹿だから仙豆を奴に渡しかねない。

そう言った瞬間、苦笑いが出てきた。

昔、セルの時もやってましたもんね。

今回……人選ミスをしたかもしれない。

少しばかり後悔をした。

 

.

.

 

「ドラゴンボールだと!?」

 

こいつらが存在を知っていたとはな。

だが呼び出し方は知らないはず。

じゃあ、何のために?

 

「ハアアアア!!!」

 

多大な魔力を込めていく。

すると徐々にドラゴンボールに罅が入っていく。

 

「そして!!」

 

邪神アザラの像を取り出す。

すると……

 

「注がれろ、マイナスエネルギーよ!!」

 

ドラゴンボールにマイナスエネルギーが注ぎこまれて黒く染まっていく。

すると限界に達したのか黒い煙が立ち昇り、城の内部を満たした。

 

「全宇宙を滅ぼす為に呼び覚ましたか……」

 

ずしんと音が響くようにこちらに向かってくる。

そいつの胸にはドラゴンボールが埋め込まれている。

そしてこの力。

 

「まずは慣らし運転からだな……」

 

ラリアットを俺に向かって放ってくる。

交差して受け止めるが飛ばされる。

 

「ぐっ……」

 

着地をするが、それと同時にバーダックさんも飛ばされた。

超フルパワー超サイヤ人4の俺達に力で勝つとは……

 

「お前は一体何なんだ?」

 

そう言うと奴は力を振り絞る。

邪悪なエネルギーが渦を巻いている。

 

「俺の名前は超一星龍、邪悪龍の頂点にして……」

 

一気に接近してきてアッパーを放ってくる。

腕を交差して威力を軽減させるが体が浮き上がった。

 

「がはっ……」

 

一瞬、息ができなくなる。

蹴りを喰らう前に後ろに飛んだ。

速度もかなりのもの。

ビルス様もすごかったがそれよりも上。

だが違和感がある。

 

「最強の存在だ、しかし初めから纏まってしまうのは予想外だったがな」

 

なるほど、それが違和感の正体。

ドラゴンボールはもとより7つ。

7つにわかれた存在が邪悪龍。

それが一星龍をベースに1つになったのか。

それならば単体ではビルス様の方が上。

しかしこれだけの相手。

神の創作物より生まれた人々の負の集合体。

神が生んだ存在ならば特殊な力があっても何の問題もないな。

 

「『ドラゴンサンダー』!!」

 

手のひらから雷が出てくる。

それを何とか避ける。

しかし……

 

「ハアッ!!」

 

ドミグラがタックルをしてくる。

悟飯も応戦はするが実力の差が響いている。

 

「くっ……」

 

このままだと俺たち全員が共倒れだ。

7人集まったような相手。

 

「『バーストアタック』!!」

 

超高温の火球が放たれる。

回避をするがまるでアイスのように壁を溶かした。

 

「『アクセル・アバランチャー』!!」

 

回避した先にドミグラが先回りをしている。

そのまま、俺とバーダックさんの頭を掴み打ち付け合わせる。

そして地面に叩きつけられる。

手のひらに気が集まっていく。

 

「うぉおお!!」

 

悟飯がドロップキックでドミグラを吹っ飛ばす。

俺達は起き上がってこれはもはや仕方ないと思えた。

 

「俺達も一人の戦士になってみますか?」

 

そう言うと頷く。

そして悟飯に無理かもしれないが頼む。

 

「時間を稼いでくれ」

 

そう言った瞬間、気を全開にする悟飯。

まだ振り絞っていられるだけはあったか。

ペース配分で相手の油断を誘おうとするとは流石の試合巧者ぶりだ。

 

「じゃあ、やるぞ!!」

 

そう言って二人とも間をあけて横並びに立つ。

気を同じ量にする。

超フルパワー超サイヤ人4でのフュージョン。

どれほどのものになるのだろうか?

 

「企みなど無駄だ!!」

 

そう言って超一星龍が俺達に向かってくる。

こいつも勝利にとことんシビアな奴だな。

悪くないぜ。

 

「目をつぶってください!!」

 

悟飯が目に立って構える。

なるほど、あの技だな。

俺達は心を乱すことなく、目を閉じたまま始める。

 

「『太陽拳』!!」

 

眩しい光が放たれる。

それによって超一星龍とドミグラは何も見えなくなる。

俺達の動きに淀みは無い。

これで十分だ。

 

「「フュー……」」

 

腕を伸ばしとことこと歩き始める。

歩幅も十分に把握できる。

当たる事もないまま十分な距離感だ

 

「「ジョン!!」」

 

腕を互いに遠ざけるように拳を握った形で横に振る。

お互いの腕の長さを考慮している。

 

「「ハッ!!」」

 

最後に人差し指同士とくっつける。

完璧な成功だ。

二人の戦闘力が混ざり合い、意識も混ざり合う。

俺たちはガタバルでもなければバーダックでもない。

 

「お前は何者だ!」

 

超一星龍が俺を見てそう言う。

それに対して口角をあげる。

不敵な笑みで応えてやる。

 

「俺の名前はガーダック、お前を消す者だ」

 

そう言って手をかざして吹き飛ばす。

後ずさりをして苦々しい顔をする。

 

「『ドラゴンサンダー』!!」

 

直撃する。

しかしそのまま殴りとばす。

手応えがあったぜ。

 

「低周波治療のつもりか?、ありがとうよ」

 

おまえ、確かに神様を超えていやがる。

でもな……

 

「7人も集まったらそうなるだろうよ」

 

「ほざけ、『バーストキャノン』!!」

 

熱に弱いって思っているようだな。

しかし、それはあくまで……

 

「直撃させるか、実力が近い時だけだ」

 

指を動かして相手へ返す。

弾いてもよかったがこっちの方がいい。

 

「ぐっ……」

 

飛んで避けるが背中に先回りする。

そのまま地面に叩き落とした。

 

「これでとどめだ!!」

 

両手に気を集中させる。

これで終わりだ。

その後はドミグラを消す。

そんな矢先だった。

 

「後ろががら空きだ!!」

 

ドミグラが羽交い絞めにする。

悟飯がかなりダメージを負っていた。

 

「ふんっ!!」

 

力づくで羽交い絞めを解く。

だが、その間に超一星龍が右肩に踵落としを叩き込んできた。

 

「ハハハッ……」

 

笑っているが何がそんなにおかしいんだ?

俺はくるりと振り向いた。

それを見て挟み撃ち状態から延々と殴り続ける。

 

「てめぇらに肩叩きや背中踏んで貰っても嬉しくはねえよ」

 

そう言って殴りとばす。

超一星龍に向かっていった。

悟飯が仙豆を食べてドミグラを止める。

 

「俺を忘れるなあ!!」

 

力で押し勝つとそのまま気を高める。

こっちも仕留めないとな。

一気に超一星龍との距離を詰める。

 

「なっ……」

 

反応すらできていない。

それならばこのまま苦痛を伴い消えていけ。

 

「『ライフ・オブ・サイヤン』!!」

 

普段のラッシュとは訳が違う。

受けた腕は折れる、足も折れた。

肋骨も当然。

内臓の損傷もあるだろう。

血反吐を吐いて既に白目をむいている。

それでも攻撃をやめない。

 

「こいつでとどめだ!!」

 

気弾で超一星龍を呑み込む。

断末魔の声を上げる間もなく消滅をする。

ドラゴンボールはどうなったのだろうか……

 

「波ー!!」

 

悟飯もドミグラに全力のかめはめ波を叩き込む。

壁に激突をして煙をあげていた。

どうやら城全体が頑丈な作りで打撃や気功波ではそれほど壊れてはいない。

よく見ると溶けていた部分も修復されている。

 

「どうだ……」

 

かめはめ波を喰らわせて相手の動向に注意を払う。

こっちの方は消滅こそしたが……

 

「くくく……」

 

煙が晴れると笑みを漏らすドミグラの足元にドラゴンボールが転がっている。

手元にある邪神像にマイナスエネルギーが戻っていく。

心なしか最初に注ぎ込まれた量よりも多い。

これはつまり……

 

「気づいたようだな、その通り」

 

結界を張って入れないようにする。

すぐに破って近づく。

 

「私さえいれば邪悪龍は何度でも甦らせる事ができる」

 

しかし指先がぎりぎり触れずドラゴンボールを呑み込んでいく。

そして消え去った。

城から脱出したが完全に見失った。

 

「振り出しとはな……」

 

溜息をつく。

先にドミグラをやるべきだった。

もしくは邪神像を消し飛ばしてマイナスエネルギーをプラスエネルギーで中和したらよかった。

 

「合流しましょう」

 

そう言って悟飯と俺は飛び立つ。

途中で分離した。

どうやら俺達の戦闘力がフュージョンの制限時間を大幅に縮めている。

それを感じ取った。

 

その後、合流はできたが全員が逃げられてしまうという結末だった。

優勢には、なれるもののドミグラが厄介である現状。

そして邪神に変わるとてつもない相手。

その情報は頭を悩ませるのは十分だった。

 

「しばらく俺はこっちに滞在してドミグラ達の監視をする」

 

フュージョンで邪悪龍に対抗する。

未来の俺がいれば二人でなんとか出来るだろう。

しかしそこは年長者のプライドが許せないのか。

はたまた自分にも責任があると思っているのか。

 

「俺だって残る」

 

バーダックさんも残ると言い出した。

それなら……

 

「悟飯かトランクスは現代に一旦戻ってくれ」

 

どちらかは操縦者として残って貰わないといけない。

ゴクウブラックはしばらく無視できる。

ドミグラの動きだけが今は厄介だ。

だから俺達が操縦方法をよくわかってさえいれば残らなくて済んだのだが…

まあ、それよりも……

 

「そうだな、じゃあ一度戻って情報にどれだけの進展があったか確認しておこう」

 

ベジータが俺の考えを汲んでタイムマシンを取り出すように言う。

それにトランクスが困惑こそするが乗り込んで現代へと向かう。

そして飛び去った後に悟飯がこっちを見る。

 

「僕達を休ませようと考えているんでしょう?」

 

分かっていたか。

今までお前らは苦労してきただろう。

それを癒してほしい。

だからこそ一度戻ることを提案したのだ。

 

「気遣い感謝します、でも……」

 

一日でも早く平和を取り戻さないと。

そう言って力を入れようとする悟飯を気絶させる。

全く……

 

「肩肘張ってばかりじゃいつ不意に集中途切れるかわからねえって」

 

その言葉にバーダックさんも頷いて抱え込む。

そう言ってレジスタンスの本拠地に行く。

未来の俺も休んでいる事だろう。

 

「お前の気持ちはわかるからさ、頑張ってやるよ」

 

聞こえない声の大きさで囁く。

気を感じ取り奴らがどこに潜んでいるのか千里眼を使う。

まだ未来の戦いは始まったばかりに過ぎないだろう。

未来を救うための戦いの激化を肌で感じ取っていた。




まさかの邪悪龍です。
しかも前置きなしの超一星龍。
普通の一星龍ならバーダックとガタバルならば倒せるという事で即最強状態にしました。
そしてナメック星編以来のフュージョン解禁です。

邪悪龍討伐が無限ループになった原因:
未来ガタバルがアザラを先に倒してしまった事。
ドミグラを先に倒しておけばこんな展開にはなっていませんでした。

指摘などありましたらお願いいたします。


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『不死身の双頭』

相手側に追加の敵です。
今回は同じ相手が何度も不死身特性なり魔術で長期戦に持ち込んできます。
こちらが実力で勝っていても面倒すぎる相手が今回の相手の特徴です。


戦いからカカロット達が一度現代に戻る。

情報の進展を願う。

こちらとしてはできればドミグラの撃破。

もしくは邪神像奪還。

これを行う。

それさえできれば邪悪龍との繰り返しも起こらない。

 

「ブラックの奴もブルーに目覚める可能性があるから無視は本来できないんだけどこればかりは難しい」

 

そうするには治療担当。

すなわち協力者があと一名は必要となる。

それこそが首謀者ともいえる。

 

「わざわざ過去からこっちに残ってくれるとはな……」

 

未来の自分が声をかけてくる。

仙豆のおかげでなんとか傷は治ったが寝ていないから熟睡したらしい。

強くはなっているが超サイヤ人4の倍率が違う系統だ。

もしかしたらビルス様も超えているんじゃないのか?

 

「流石に三人がかりだったら撃破が難しい」

 

魔術で結構厄介だったらしい。

追い詰めても逃げられる。

休息をとる事が出来ない。

挙句の果てには実力があるのだ。

 

「各個撃破しようにも特殊だから順番を考慮するべきだった」

 

ドミグラのような魔術へ力を注いだ存在。

こういう奴が居るだけでがらりと勢力の色が変わる。

何でも屋に近いからこいつを優先して潰さないとまずかった。

 

「今、優勢がとれる以上こちらから動いていくしかない」

 

相手を追い詰める。

後手後手になるとそれが難しい。

 

「千里眼で奴らの隠れている場所は把握できたが目まぐるしく動いてる」

 

こちらに絞らせないためだろう。

しかし、それならばあいては拠点に戻れない。

つまり体勢を立て直しにくい状況が比較的うまれる。

 

「ここで相手の体勢を崩しきっておけばカカロット達も安心して来れる」

 

バーダックさんが立ち上がって言う。

さて……行くか。

 

「邪悪龍は俺達のフュージョンでどうにかする」

 

だから二人でドミグラを倒してくれ。

そう話し合って向かっていく。

 

「はああああああ!!」

 

向かっていく最中。

轟音とともに現れたのは超一星龍。

しかしその見た目にはより禍々しさがあった。

白だった肉体はさらなる悪を取り入れたかのように灰色になっている。

 

「潰してやる……」

 

そんな事を言うのなら……

ジェスチャーで先に行くように指示をする。

 

「「フュー……」」

 

腕を伸ばしとことこと歩き始める。

奴は見ている。

邪魔をする気は無いようだ。

 

「「ジョン!!」」

 

腕を互いに遠ざけるように拳を握った形で横に振る。

間違いなどみじんもない。

 

「「ハッ!!」」

 

最後に人差し指同士とくっつける。

相変わらず完璧だ。

再度、二人の戦闘力と意識が混ざり合う。

ガーダックとして相対する。

 

「次は完全に消し飛ばす」

 

そう言って殴りあう。

全然効きはしない。

そう思って腹部へ蹴りを放つ。

しかし……

 

「体を凍り付かせてこっちまで凍結させてくるとは……」

 

特殊能力でかいくぐるか。

超高熱の肌と超低温の肌。

そして雷撃もある。

 

「がああああ!!」

 

風のバリアを纏って攻撃を仕掛ける。

それを力ずくで壊して顔面に叩き込む。

 

「毒は好きか?」

 

そう言うと立ち込めている紫の霧。

草や木が真っ黒に染まりあがっている。

 

「寄生能力で草木を操り、そこから毒を噴出させたのだ!!」

 

体の動きが鈍くなる。

だが……

 

「はああああああ!!」

 

気を爆発させて草木を吹き飛ばす。

そしてそのまま技を放つ。

 

「あまり効かないぜ」

 

そう言って殴る。

しかしまだまだやる気はあるようだ。

 

「『秒殺魔光弾』!!」

 

気弾を払いのける。

威力や量が多くても隔絶された世界。

容赦がなければ瞬く間に消し飛ばせる存在。

 

「お前は延々と増幅するかもしれないが……」

 

ドミグラがここにいない以上、もう二度とお前が出てくる事は無い。

これで終わらせる。

 

「フッ!!」

 

上段蹴りで角をへし折る。

背中に回り、気の刃で斬り落とし、翼をもぎ取ってやった。

この動きまで数秒の世界。

奴は気づく間もなく背中から血が噴き出た。

 

「お前の敗因は俺達という容赦のないサイヤ人と戦った事だ」

 

痛みに呻く間も無く斬首する。

そしてそのまま塵に還した。

前回と違いすべて頭に入っている。

対策も容易。

実力はまだまだ差がある。

勝てる要素は全くと言っていいほど相手にはなかった。

 

ドラゴンボールが落ちてきたので回収しようとする。

しかしいきなり目の前から消える。

転移魔術まで付与させていたのか。

その瞬間、邪悪な力が一気に膨れ上がる。

ドミグラが一緒に来ていないという事。

つまりそれが示す事は…

急いで俺は向かう事にした。

 

.

.

 

「こいつがマイナスエネルギーを操るから……」

 

殆ど邪悪龍を止めても意味がない。

邪神像に回帰するであろうマイナスエネルギーを自分に与え始める。

そして黒い鎧のような皮膚が重なる。

渦を巻いたように中心に暴虐の風が荒れ狂う。

 

「私が人類がなくとも繁栄可能な歴史の創生者となるのだ!!」

 

そう言ってこっちへ向かってくる。

ガタバルさんが食い止める。

元々破壊神を越えたといった力。

皮膚を砕きながら肩を掴んでいる。

 

「ハア!!」

 

腹部へ蹴りを入れてこちらに渡してくる。

それを受け止めるように『かめはめ波』を放つ。

 

「ぐあああああ……」

 

相手は無防備に喰らう。

そのままバウンドするが手ごたえはあった。

 

「おぉ!!」

 

顔面に拳を打ち込む。

呻く間にさらに一発。

徐々に相手を追い詰めていく。

だが相手は不敵な笑みを浮かべていた。

 

「この打撃では追い詰めてなどいない」

 

そう言って体を膨張させる。

そして力を入れる。

すると……

 

「ちっ……」

 

まるでハリセンボンのようになって鎧のような皮膚の部分がはじけ飛ぶ。

そのまま杖を振るって目の前から逃げる。

瞬間移動が使えるから数秒止めてしまえばいい。

それが奴の厄介さに拍車をかけていた。

 

「残念だぜ」

 

そんな事を言っていると過去のガタバルさんとバーダックさんが着いた。

どうやらドラゴンボールの回収はできなかったようだ。

途中で目の前から消えたのでおおよそ、魔術で転移させたのだろう。

しかし邪神像の回収をするのがよかったと言っていた。

気づいているあたりは流石だと思う。

 

「願いを叶える術が分かっていなかっただけよかった」

 

奴等がろくでもない願いをするのは分かりきっているから。

自分たちが正義であるというようにこちらを糾弾している。

彼らの主張はこちらからしてみれば横暴なものもある。

それに気づいているのだろうか?

 

「奴らが望むのは一体何なのでしょうか?」

 

死者の蘇生や混乱を巻き起こす願いで我々の心に動揺を与えるとか?

そう言うがそれを現代のガタバルさんが否定する

 

「人類の滅亡こそ奴らの望み、このまま手元におきたいのかもな」

 

願いを叶える術が知らないからよかった。

しかし、冷静になると叶える必要もあいつらにはない。

こっちの頼みの綱を奪い、あわよくば敵として利用する。

それでいい。

 

「だが、奴も追い詰められていないとは言うが厳しいのも事実」

 

決め手に欠ける。

力を蓄えてこそいるが元の差がある。

 

「もういっそ願いを叶えて石にすれば奴らの味方は生まれないのでは?」

 

逆転の発想ではある。

しかしデンデによって強化されているから3つの願いを叶えないといけない。

 

「3つなんて普通に思いつくだろ」

 

過去のガタバルさんがそう言っている。

下らない事でもいいし、奴らの杖を壊すなり邪神像を奪えばいい。

そういう使いかたがある。

その封じ方に決めた。

 

「こそこそと作戦を立てるのが好きなネズミどもだ」

 

そう言ってゴクウブラックが目の前に現れる。

実力的にはまだ未知数ではあるが…

 

「『神裂斬』!!」

 

気の刃を手に纏って切り裂きに来る。

それを回避してカウンターで殴る。

しかしその手応えに違和感を感じた。

 

「これは……!?」

 

残像のようだがまた違っている。

質量がある。

ドミグラの魔術による複製か?

 

「四身の拳か……」

 

だが種明かしは極めて速かった。

現代のガタバルさんが言ってくる。

どうやら天津飯さんの技で4人に分かれるらしい。

だがデメリットがあり4分の1になってしまう。

しかし……

 

「神が行えば脆弱な人間の技も完成するのだ、これこそ神の御業よ!!」

 

そう言ってゴクウブラックはさらなる動きを見せる。

頭数を揃えただけでは飽き足らないか。

 

「はあああ!!」

 

木を切り倒してこっちに攻撃をしてくる。

それを舞空術で避ける。

 

「まずは貴様からだ……孫悟飯!!」

 

そう言って4人ものゴクウブラックが襲い掛かる。

それを掴んだのはバーダックさんだった。

 

「退屈させちゃあいけねえなぁ!!」

 

そう言って殴りとばす。

そして現代と過去のガタバルさん達も向かい合うがその瞬間……

 

「がっ……」

 

ある存在に殴り飛ばされる。

確かに可能性としてはあった。

しかし、こんな時に限ってくるものか?

 

「魔人ブウ……」

 

胸にコアのようなものを埋め込まれている。

どうしたものか。

 

「あの魔術師、余計な事しかしねえ!!」

 

ブウを殴り飛ばして怒りの声をあげる過去のガタバルさん。

邪悪龍だったり自己強化。

挙句の果てには復活。

封印を解いただけのようだが……

 

「『プライド・オブ・ラクタパクシャ』!!」

 

ブウを包み込む灼熱の鳥。

しかしコアだけが脱出をする。

焼き切り、消滅させる前に抜け出したそれを中心に再生していった。

 

「コアの中に肉片があるのか?」

 

コアは魔術で動く。

結局はゴクウブラックよりはドミグラ。

奴が厄介な状況を作り出す。

 

「完全消滅を同時に行うしかないか……」

 

コアとそうでない肉体。

どちらかが残ると再生する。

二段構えでの再生と強化。

 

その間にもまたもやゴクウブラックも消えた。

こちらは消耗するが相手はこのように翻弄できる。

 

「不死身に近い奴ばっかりとか正直萎えるぜ……」

 

バーダックさんですら溜息をつく。

悟空さんの父親であり、本気の過去のガタバルと互角という最強候補の戦士。

そんな人でもこういうのは好きではないのだ。

 

「一回やって死んだら終りってのが普通だからな」

 

首を鳴らしてどうするかを決める。

さんざん言っているから誰を最優先にするのかは決まった。

 

「ドミグラ一択だ」

 

邪悪龍復活。

魔人ブウ操作。

邪神像の活用。

どう考えても首謀者と言いたくなるほど動いている。

 

「俺が出る、この命に代えてもコケにした仕返しはする」

 

そう言って過去のガタバルさんがドミグラを追いかける。

邪悪龍には太刀打ちできないはずなのに……。

 

「いい加減固まる方が面倒だ、この身と引き換えにあの桃色野郎を消し飛ばす」

 

バーダックさんは魔人ブウを追いかけた。

二人ともコケにされて怒り心頭なのだろう。

もしくは俺たちの負担を考えたり、いいところを見せようとしている。

 

「俺達はゴクウブラックをやるぞ」

 

そう言われて俺達も動き出す。

三者三様。

この時代の人たちでもないのに一人一殺道連れ。

それを決断している二人に背筋が寒くなる。

 

「速くベジータさん達が来ないととんでもない事になってしまう……」

 

あの二人の暴走を止めないと取り返しがつかないことが起こる。

倒せても最高の結果とはいえない事になる。

向かいながら別の意味での焦りが出てきていた。




邪悪龍は未来悟飯達を狙わないと多少強くなっても惨劇の的になるだけというオチです。
フュージョンでの4ゴジータは油断して消滅できなかったですが、この二人には油断が皆無ですのでこの有様です。
今回、ドミグラが魔術でブウを起こしてさらに強化です。
こいつがいなくなったらブウと超一星龍が無くなるのでこいつが一番厄介という。

何かご指摘などありましたらお願いいたします。


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『命燃やす者』

今回は未来編で出せる相手を出しました。
原作に沿っていますが相違点。
ブラックの強さが上がっています。
それ以外には
復活パワー(キビトが原作で使った力)をザマスが使用可能(漫画版の『超』)
あとは漫画版から多少設定は持ってきています。


「だらぁ!!」

 

追いついた俺は魔人ブウと勝負を繰り広げる。

腹部を殴ればカウンターで肘打ち。

魔術で強くはなっているが今の所4を超えているとはいいがたい。

不死身の肉体を武器にして消耗戦に持ち込める。

 

それ以外にも吸収能力とかはありそうだ。

あのチビの状態から体の伸縮はできる。

でも、体格差を埋めるために自分と同格か、もしくは強い奴を吸収することで姿を変える事もできるはず。

そうしたら伸ばしたり縮めたりの時間差が無くなり、さらに矢継ぎ早に攻撃が仕掛けられるようになる。

 

「ヒヒッ!!」

 

地面に蹴りを打ち込んで地中から放つ。

それをバック転でかわす。

すると足をこっち方向へ縮める事で距離を詰める。

しかしその詰めた瞬間、体をかがめて腹部に頭突きをする。

 

「ゴッ……」

 

戦闘経験がない分、身体能力だけで動いている。

獣のような勘がある。

身のこなしも少しずつ修正されてるあたり天才的ですらある。

しかし……

 

「それで負かせるほど俺は甘ちゃんじゃねえ」

 

吸収しようと蠢かせているものをバリアーで防ぎ、消し飛ばす。

再生した瞬間、コアを射抜く。

もごもごと再生をしていくのを見てやはりと確信をする。

 

「あの魔術師の遠隔操作がある以上、完全同時破壊は不可能か」

 

速くなんとかしやがれ。

爺に無駄なことさせてんじゃねえ。

長引いたら腰が痛くなってくんだろうが。

それに息も上がってくる。

こちとら60越えてんだよ。

 

「寄る年波にはさすがにな……」

 

昔だったらこんな奴と何日戦ってもへこたれなかったもんだ。

しかし体力が全盛期より衰えつつある現実。

肩が時折頭より上まで上がらない。

ビキリと音を立てて腰を押さえる羽目になる。

時々遠くのものがぼやけてしまう。

 

「戦士としては引退の時期が来てるのかもな」

 

現役を続行したければ病院行って療養。

もしくは短期決戦限定。

現実味を帯びる未来設計にため息が出る。

 

「まだまだ恩返しをしねえでそれは嫌なもんだ」

 

指先をちょいちょいとやって相手を挑発する。

あっという間に乗ってきて突撃をしてくる。

 

「甘いな」

 

それに合わせて『リベリオン・グングニール』で突きさす。

コアを突き刺してからの爆散。

包み込んでいないから再生はできる。

しかしそれでもこいつの足は止まる。

 

「速くあの魔術師との決着をつけやがれ」

 

愚痴を言う様にあいつに向けて呟く。

あの赤髪に負けはしないが魔術は厄介だな。

そんな事を考えていると……

 

「馬鹿垂れが……」

 

手が伸びて魔人ブウという奴のコアを抜き取る。

その影はどこかで見たことがある。

確かこいつは……

 

「この俺の最期の魔術……見せてやる」

 

体が薄く風景に溶け込もうとしている。

これは死を予感させるものだった。

 

「ハアアッ!!」

 

コアを消失させる。

そしてその足取りのままある所に向かおうとしていた。

 

「お前は何者だ?」

 

その言葉に振り向く男。

目に生気はある。

しかし死期を悟った哀しい目をしていた。

 

「俺の名はサラガドゥラ……消えゆくさだめの魔術師」

 

そう言って瞬間移動をする。

最後に呟くように俺がこの時代の住人でないことを言っていた。

このような事態になったことへの償いなのだろうか。

 

「コアが無くなったらこっちのものだ」

 

もう一度向き直して完全消滅を狙うのだった。

相手の力もしぼんでいる。

あれに強化の要素もあったんだろう。

勝負ありだ。

 

.

.

 

「この時代の人では無い者よ、感謝する」

 

女顔の男の前に瞬間移動をする。

この男はかなり厳しい戦いを強いられていた。

時間稼ぎに精いっぱいで汗まみれ。

ところどころ傷ついている。

それに比べて相手は涼しげな顔でほとんど傷もない。

どうやらドラゴンボールを乱用した時の化身のようだ。

 

「だが……」

 

ドラゴンボールをそこから摘出すればよい。

魔術でこちらに真ん中の奴以外の移動をさせる。

そして邪悪なエネルギーの出所を探る。

 

「アザラの像か……」

 

魔術で引き寄せる。

ドラゴンボールを邪悪龍が取り戻しに来るが……

 

「失せろ」

 

バリアで弾き返す。

それを女顔の男が蹴り飛ばす。

 

「一つだけの龍ならばお前はこの男に及ばん」

 

そう言っていると邪神像の持ち主。

この俺を霞のような状態にさせた男が目の前に現れる。

 

「クロノア様……またの名を時の界王神様に楯突いた男よ」

 

今でもはっきりと覚えている。

俺とお師匠様、そしてクロノア様の三人で戦った男。

当時はすさまじい力ではあったが俺も獅子奮迅の活躍で『時の狭間』に閉じ込めた。

しかし長い時の中で脱出できたようだ。

もしくは時の操作が多く行われてしまったか。

 

「お前が界王神様が死ぬ前に暗黒魔界より邪神像とそれを満たすほどの魔力を奪った」

 

破壊神が亡き後、俺は封印が解けてピエロマスクから戻った。

しかし魔界からは誰の生も感じられない状態。

つまり滅亡させられた。

 

「自前の魔力でもお前に勝てるだろうが死ぬ」

 

そんな中、生命力をつぎ込んでこの現世に来た。

もはやどんな価値も今の世界に見いだせないのならば、そのように仕立て上げた元凶を消すしかあるまい。

 

「お前も俺もとうに時代に取り残された化石、今を生きて戦う者たちに横槍を入れるべきではない」

 

そう言って奴の杖に魔術を飛ばす。

それに気づき杖を振るって無効化する。

 

「はっ!!」

 

その隙に一人の相手をしていた男が顔面に蹴りを見舞う。

実力の高さからしてそれはできる事。

お前の魔術によって強かった者も引き剥がした。

今は俺の手の中で転がっているぜ、いい気味だ。

 

「ぐっ……」

 

そして手から杖を取り落とした時。

最期の魔術を使う。

 

「『フィアー・パンデミック』!!」

 

カラスの羽根を模した気弾が杖を包んでいく。

力を込めると徐々に縮こまる。

そして握り拳を作り、徐々に指を開きながら掌を見せる。

 

「お前の魔術の源は消え去った……」

 

杖がこの世全て、過去や未来どういった世界からも消えた。

お前はもうただ徒手空拳しか頼れない。

 

「くそ……」

 

ドミグラが邪神像を投げる。

するとまるで吸い寄せられるように誰かの手に収まった。

 

「邪神像は誰かに渡ったか……」

 

追いかけたいが足が消えている。

だが自分にできる最低限の事はした。

杖が破壊されたことで奴は魔術を使えない。

邪悪龍も出現させられなくなった。

あとはこの男に託すのみだ。

 

「ククク……お前の負けだな、サラガドゥラ」

 

笑っているがいい。

お前の得意の魔術は無い。

徒手空拳でこの男に勝てるのか?

それは冥府魔道で見れること。

一足先に待っている。

 

「それでも最後に自分の道を貫いた」

 

その言葉を最後に風に混ざる様に俺は飛散した。

 

.

.

 

「ふん!!」

 

未来のサラガドゥラのおかげで超一星龍が戦力を落とした。

この状態ならば戦える。

実際、優勢になってしまい相手はボロボロになっていた。

 

「くっ……」

 

優勢に立たれてしまい困惑している。

何故、邪魔をしに来たのか?

関係ないはずの人間を助けたのか?

それが頭の中を駆け巡っているはずだ。

 

「お前らが下らんことをして怒りを買ったのさ」

 

魔界を閉じたり、界王神様がいなくなってきたら攻め込んだり。

今を生きる人間を消し飛ばすと言われて黙っていられない。

だから立ち上がった。

そんな必死な奴らが助けを求めたら……

 

「義を見てせざるは勇無きなりってわけだ」

 

胸を貫いて最後の一星球を抜き取る。

断末魔をあげることもなく塵へと帰っていった。

そしてドミグラを睨み付ける。

 

「これで復活地獄もなくなった……」

 

次はお前だ。

そう言うように突撃をする。

 

「舐めるなよ!!」

 

あの化け物の形態に変身して肩からぶつかり合う。

衝撃波だけで町のビルが倒壊した。

 

「いくらやっても無駄だ」

 

この戦いで確信できる。

こいつらは神と名乗るが今の俺よりも弱い。

邪神像がなければゴッドになった当初のカカロットに劣っている。

超一星龍が規格外だという事。

魔術による攪乱。

この二つで補強していたにすぎない。

 

「お前が消えて残りはブラックだけになる」

 

それにどうやら……

遠い空にタイムマシンを見つける。

カカロット達も到着だ。

 

「ククク……」

 

何がおかしい?

もうお前が死ぬと分かって気でも触れたか?

 

「まさかお前は、我々にはもう味方が居ないとでも思ったのか?」

 

どういう意味だ?

お前は魔術も使えない。

ブウも倒された。

アザラの復活があっても俺が倒せる。

 

「いずれ分かる事だ……」

 

そうかよ。

だったらこの目で確かめるのみ。

 

「消えてゆけ」

 

『』を喰らわせる。

灼熱に包まれて塵一つ残さず消える。

だがその中から小さな球が浮遊する。

それを目の前で奪っていく相手。

 

「お前は何者だ?」

 

黄緑色の男。

どうやらドミグラが言っていた援軍のようだが……。

 

「無礼な物言いをするな、人間如きが」

 

有無を言わさず気弾を放ってくる。

この物言い、界王神か?

しかし第何宇宙の界王神だろう。

それさえわかれば破壊神にも話が通る。

 

「喰らわないぞ」

 

気弾を弾き返して腹を貫く。

力を込めて殺意を漲らせた結果。

しかしその俺の腕を掴む。

まるで痛みすら感じてないような所作。

無表情が恐ろしさを感じさせる。

 

「神に触れる不敬を償え」

 

そう言ってくるから俺は腕を引っこ抜き、地面に叩きつけようとする。

そうしようとしたら目の前で消え去った。

瞬間移動を持っている奴なのかまた術なのか、今回の奴らは面倒だな。

それと同時に悟飯と未来の俺、バーダックさんが来る。

 

「父さんたちがブラックと今やっています」

 

どうやら四身の拳や攪乱戦法のせいでとどめを刺せず、時間だけが過ぎていた。

時間の感覚を奪うような空の色。

気を抜けない状態。

そのせいで一度戻ってどれだけの時間が過ぎていたのだろうかもわかっていない。

 

「助っ人のおかげでブウとドミグラは無くなった」

 

しかし邪神の力の源は残っている。

それをブラックかあの黄緑の奴が持っている。

 

「実は……」

 

邪神像を持っている敵の援軍について言う。

するとカカロット達の声が聞こえた。

どうやらあの黄緑の肌のやつの名前はザマス。

 

「奴は不死身だ」

 

さっきのわずかなやり取りでの確信。

ブウとは違う。

細胞が塵に変える事もない。

俺の灼熱もバーダックさんの技も。

きっと俺たちの時代のサラガドゥラの魔術も。

 

「対抗策はありますか?」

 

無いとは言えない。

だが一度現代に戻らないといけない。

ただこれで唯一分かったことがある。

その宇宙の破壊神は消えてはいないという事。

その破壊神に助力を願う。

第七宇宙という自分たちの宇宙ではないところで暴れている。

それを見過ごす事は無いだろう。

 

「しかし不死身の奴と生死の境から復活するたびに強くなっていくサイヤ人のコンビ……」

 

邪神像の力をザマスとやらが完全に吸収したのだろう。

邪神像を踏み砕きさらなる力を上昇させる。

さらに付け加えるように覚醒した超サイヤ人ロゼというブラックの新形態。

そしてそれと同格とも言うべき不死身。

 

「時間稼ぎはまた俺の役目か」

 

そう言って歩き出す。

今回戻るのはバーダックさん、ベジータ、カカロット。

残るのは俺と悟飯、トランクス、未来の俺。

 

「いい加減お前らのくだらない事に巻き込むんじゃねえ」

 

ザマスという界王神を殴る。

ブラックは蹴り飛ばす。

 

「何故、界王神ともいう輩が俺達人間に危害を加える?」

 

するとトランクスと悟飯、未来の俺を見る。

どうやらそう言った事が関係するのか。

 

「過去を変えてきたこいつらの罪の重さがわかるか?」

 

俺はそれを耳をほじって聞き流す。

だって質問に対して質問で返しているんだもの。

 

「でもやむを得ない事情なんだとしたらそれを寛容に受け流すのも神の在り方だ」

 

こいつらがそれを言い出したらここで死ぬべきではないという人間の不慮の事故すら受け止めないといけない。

悪でもない、落ち度のない人間の理不尽な死。

時間を変えてまで裁きともいうものを覆したいと願う。

それがいけない事なのだろうか。

それに……

 

「お前らもこっちの時代に飛んできたりしているからな」

 

ゴクウブラックも不手際とはいえ俺たちの時代に飛んできた。

すると薄笑いを浮かべる。

 

「神の行為は肯定される、そして貴様ら人間が行う事は罪だ」

 

そう断じて俺に攻撃を仕掛ける。

なんという自分勝手な暴論だ。

 

「じゃあ、この世で最も恐ろしい罪に手を染めようじゃねえか」

 

超フルパワー超サイヤ人4になる。

サイヤパワーを受ける事で戦いはできる。

限界は突破してはいない。

だが問題もない。

 

「俺も良識がある神が相手ならばこんなこと思わないぜ……」

 

そう言いながらザマスたちを指さす。

そして本来なら決して口にしない大それた言葉を発する。

 

「神様をこの手で殺してしまおうなんてよ!!」

 

ゴクウブラックを殴り飛ばす。

そして振り向くこともないままザマスへ裏拳。

 

「うぐっ……」

 

ゴクウブラックを掴んでザマスへ放り投げる。

そして二人ごと貫くように照準を合わせる。

 

「『魔貫光殺法』!!」

 

貫通性のある技。

避けてしまえばザマスが。

避けないと二人が。

どうやってかいくぐる?

 

「甘く見るなよ!!」

 

片手で受け止めるブラック。

だがそれこそ狙い目。

ザマスの頭部へ剣のように見立てた腕を突き刺す。

 

「頭からやられては流石のお前もどうしようもない!!」

 

ぐぐぐと頭に深々と刺さっていく。

しかし……

 

「どうかしたか?」

 

グイっと腕を掴み引き抜く。

無傷になっている。

ここまで不死身となると……

 

「これならどうだ!!」

 

逆の腕で首を切り落とす。

だがそれも……

 

「無駄な真似をするとはな、哀しい人類よ」

 

頭の方が喋り、そのままくっつけると治っていく。

まるで粘土みたいだな。

千切れてもくっつければいいなんてよ。

 

「フンッ!!」

 

後ろから襲い掛かろうとしていたブラックにローリングソバットで一撃を加える。

その一撃は効いたのかくの字に曲がる。

 

「隙が無いとはな……」

 

腹を押さえるブラック。

綺麗に懐へ潜り込むのは流石だけどな。

 

「言ったはずだぜ、お前らを殺すつもりで戦うってな」

 

理解なんてしあえない相手。

ならばこの拳でどちらが正しいか決めるしかない。

たとえその結果や過程がどんなに苦しく悲しい事でも。

守るべき存在の正しさの為に。

前を向かねばならない。

 

「ハァァアアアア……」

 

だからこそ気を引き締めてザマスとブラックを睨む。

その雰囲気に呑まれでもしたのか、じりと後ろに一歩引く。

歯をガチリと鳴らす。

そして筋肉の隆起でミチミチと服が音を立てる。

次の瞬間……

 

「ぬおっ!?」

「ぐっ!!」

 

ザマスとブラックを地面に拳で叩きつけていた。

最高に力を引き出せている。

その確信と共に……

 

「ウォオオオオオオオ!!」

 

普段では決して行わない。

相手に向かって吠え猛っていた。




未来サラガドゥラはもはや死ぬ寸前での復讐劇です。
その結果、ドミグラ撃破に貢献+ブウ撃破に貢献+超一星龍の再生不可能と目覚ましい結果を残しました。
次回以降はザマスとブラックと戦います。

何か指摘などありましたらお願いします。


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『壊れず、折れず、諦めず』

「だあ!!」

 

ザマスの肋骨を蹴りでへし折る。

そのまま頭突きをして鼻を砕き、足を持ってジャイアントスイング。

そんな中、味方の増援は来ない。

なぜならば未来の俺もサイヤパワーを送り込んだことで疲労困憊のトランクス達を守っている。

こいつらの恋人たちは今、カカロット達の為に警戒している。

ドクターゲロは管理人だから離れられない。

 

「一人で神を二人相手にしようなど思いあがるな!!」

 

ブラックが来るが瞬間移動で後ろをとって肘打ち。

逃げる気がないお前らならやりようはある。

 

「消耗戦になれば貴様の命が尽きるのを速めるだけだ」

 

体力が無尽蔵に近い二人だからな。

時間が長引けばその分、相手が有利。

カカロット達が戻ってくる前に全滅もあり得る。

 

「これは厳しいな」

 

仙豆はあっても4の力は戻らない。

月の光を浴びない限りはどうしようもない。

サイヤパワー自体がほぼ全員枯渇気味。

 

「フュージョンももたないだろうし……」

 

体力も起因する。

今やっても5分ともたずにやられてしまう。

なんとか上手くやりくりをしていくしかない。

 

「いずれにしても全力ですべての行動を行わないとな」

 

そう思い、ブラックの方へと向かう。

その邪魔をザマスがするが腕を掴み放り投げる。

そのまま一撃をブラックへ放つ。

 

「愚かな……」

 

手を前に差し出すがフェイント。

腹部へのアッパーでまずはくの字に曲げる。

そのまま電光石火の早業で顔面を叩く。

 

「がふっ……」

 

呻いている間にザマスへ気弾を放つ。

それを弾いている間に後ろをとる。

そのまま首を絞めあげた。

 

「このまま殺すつもりか?」

 

無駄なことだ。

そう言いたいからか抵抗しない。

だがそれではないのさ。

 

「ふんっ……!!」

 

絞め落とす。

そうする事で不死身の肉体が関係なく気絶をする。

 

「ハア!!」

 

ブラックが邪魔をするから離脱。

そのまま再度向き合う。

拳を振るってくるのを避ける。

 

「ちっ!!」

 

舌打ちをして蹴りを放ってくる。

それを受け止めて距離を詰める。

そのまま顎に肘打ち。

頭を揺れたところに膝蹴りを叩き込む。

 

「まだまだ!!」

 

ぐちゃっと音を立てていく。

指先にぬるりとした感覚。

こういう技を使うのは本当に嫌いなのだが……

 

「もうお前の左の眼は光を映さない」

 

ゴクウブラックが顔を押さえる。

憤怒の形相でこっちを見ている。

 

「痴れ者が……よくも神の眼を……」

 

そう言っている間に関節蹴りを放ち足を壊す。

さらに肩口に踵落としで肩の骨を砕いてやる。

 

「カカロットの体の構造だというのならば……」

 

蹴りで金的をする。

神とてここは鍛えられない。

 

「あがが…」

 

蹲りもはや悶えるのみ。

普段ならば決して使わないがお前らなら遠慮なく使える。

 

「塵になれ!!」

 

『プライド・オブ・ラクタパクシャ』を放つ。

それを庇うようにザマスが立ちはだかる。

 

「この私の肉体があればこの程度!!」

 

焼け焦げていく肉体。

そのまま不死身の肉体から朽ち果てろと思う。

しかし……

 

「ハアッ…ハアッ……」

 

息を荒げながらも徐々に皮膚が治っていく。

そのまま首をコキリと鳴らして綺麗な肉体のまま立っている。

 

「『復活パワー』だ、同志」

 

触れていくと怪我が治っていく。

そして光をもう一度映すように左目が開いていた。

 

「振り出しってわけかよ」

 

溜息をついてしまう。

だが、それでも……

 

「同じことをやり直したらいいだけさ」

 

棘状の気弾を二人の体中に着弾させる。

引っこ抜く間も与えず爆発させる。

致死の損傷がないからブラックはあまり強化できていない。

 

「神である我らを無様な姿に……」

 

憤怒の形相を浮かべて眼前に来る。

しかし全く恐ろしくもない。

独善的な神でしかない。

それは俺達人間とあまりにも変わらない。

 

「お前らは神の姿、器があってもふさわしくはない」

 

きっとこいつらは神の任務をまじめに全うしようとして狂った。

肩肘張りすぎても良い事は無い、うちの時代の老界王神様を見習え。

そう思い、蹴り飛ばす。

 

「孫悟飯とトランクスが孫悟空を助けなければ……こんなことにもならなかっただろうに」

 

負け惜しみのようだ。

ついに責任転嫁を始めた。

あまりにも見苦しい。

 

「私が孫悟空を知らなければ未来にこのような災難が降りかかる事もなかった、全てはあの二人が元凶だ!!」

 

そんな泣き言を聞くつもりはない。

そう思ってとどめを刺そうとした時。

 

「俺達にやらせてください」

 

悟飯とトランクスが俺に背中を見せる形で前に立つ。

自分たちの責務だったと言い出す。

そして決意を新たに力を振り絞る。

すると俺の眼には青いオーラを纏う二人が見えた。

神の世界に心だけで至るとはな。

 

「速く決めろよ」

 

だがそれは長くは持たないだろう。

急にそこに入っても肉体が悲鳴を上げる。

俺は二人が倒れても大丈夫なように構えていた。

 

そこからは怒涛のラッシュを見せる。

剣で切り裂いても戻るザマスの胴体を蹴り飛ばす。

そしてブラックを悟飯が担当。

ロゼという形態相手にも拮抗した戦いを進める。

 

「ぐぐぐ……」

 

不死身の肉体が邪魔をしているのかトランクスも押し込まれそうになっている。

仕方あるまい。

 

「バトンタッチだ」

 

そう言ってザマスを蹴り飛ばす。

こうなったら剣で切り裂いたりは甘い。

 

「おまえをバラバラにしてやるぜ」

 

そう言って殴ってやる。

そのまま腹に穴ぼこを開けるような気弾を撃つ。

そして再生する間に体に気弾を忍び込ませ……

 

「ドカーン!!」

 

中心で爆発をする。

これならばこたえたはずだ。

 

「げはぁ……!!」

 

なんという事にあれでも再生をしていく。

魔人ブウと同じだ。

バラバラでもそれほどのタイムラグがない。

 

「塵一つ残さずこの私をこの世から消す事はできない」

 

そう声高々に叫ぶが奴にも弱点はあるはずだ。

そして俺の背中にぶつかる感覚。

悟飯とトランクスがブラックにやられていた。

 

「「ぐぐ……」」

 

二人そろって同じ呻き声。

どうやら時間切れのようだ。

だがブラックもかなりの苦戦をしたのかボロボロの状態。

 

「『復活パワー』も使えない……」

 

そう言ってブラックとザマスが去っていく。

奴らも枯渇してしまった。

 

「俺達も休むぞ……」

 

疲労困憊というよりもここしばらくは時間を稼げなくなっていた。

一週間の粘りは相手の精神的な余裕や見せしめのなぶり殺しという名目があっただろう。

しかし今や自分たちだけ。

そうなれば全力で叩いてくる。

ましてや食事もまともに全員が取れていない。

仙豆の回復ぐらいだ。

ここで気骨を振り絞ってもたかが知れている。

 

「ザマスをやる術はあるんですか?」

 

一度食事で戻ってから悟飯が聞いてくる。

確かにない事は無い。

だが……

 

「封印するかもしくは」

 

俺は術を知ってはいない。

未来視で一度見たがどうもな。

あと一つは……

 

「破壊神を殺す以外にない」

 

それだけは逃れえない不文律。

不死身であろうとこの世から消え去ってしまう。

神の掟を破ることは今のザマスにはできない。

 

「ポタラでやっても奴の要素が無くなってしまうだろう」

 

そうなれば不死身ではないブラックのみ。

そうなったらこっちのものだ。

 

「ですが破壊神の強さは……」

 

そりゃそうだ。

相手がこっちにわざと殺されるような存在でない限り厳しい。

それだけじゃない。

 

「この宇宙まで来ない限りは無理なことだ」

 

相手も移動してこないといけない。

こっちからキューブを手に入れる方法は今の現状では無い。

きっと占いババ様も宇宙に行っているだろうから。

 

「無理な話かもしれませんね」

 

溜息をつく悟飯。

そうだな。

やはり前者の封印が一番理想的だ。

 

「奴らの生命線はやはり……」

 

ザマスだろう。

『復活パワー』がある以上、ブラックを絶命近くまで追い詰めてもすぐに回復。

そして自らの体を盾にした戦い方。

不死身にかまけているおかげで隙が結構あるのが救い。

 

「分断してブラックを仕留めると残りはザマスだけ……」

 

しかし、今の自分たちが仙豆で回復できても戦力になるのは悟飯とトランクスだ。

4で戦いすぎたせいでサイヤパワーの枯渇。

 

「俺も未来の俺も3で戦うのが精いっぱいだ」

 

カカロットとベジータが戻ってこないと無理な状態というような体たらくである。

時間稼ぎにしかならない。

 

「お前らがとどめを刺せ」

 

そう言って肩をほぐす。

すると驚いたように悟飯たちが声をあげる

 

「ここにきて俺達が主力ですか!?」

 

実力で決めたらそうはならないのだが俺達はこの時代の人間ではない。

それに未来の俺もあてにはできない。

だからこそお前らなんだ。

 

「封印方法は分かれば俺達で何とかする」

 

最大限はサポートをさせてもらう。

だから時間とか隙がない相手だとかは綺麗さっぱり忘れてふるまえ。

 

「分かりました……自分たちで道を開いて見せます」

 

それもいいがカカロットやベジータも頼れ。

そう耳打ちをしてビルの奥の方へ入っていく。

ゴロンと寝転がっても十分なスペースだ。

 

「休息をとらせてもらう」

 

奴らも今は休んでいる。

だからこちらも休んで英気を養う。

そう言って全員に休息を勧めた。

 

さて……少し仮眠でも取るか。

そう思って欠伸をする。

すると次の瞬間、驚く出来事が起こる。

 

「なっ!?」

 

目の前が霧に包まれる。

ブラックたちの襲撃ではない。

 

「トランクス!!、悟飯!!」

 

大きな声で呼びかけるが返答がない。

どうやらこれは魔術。

かけた相手の場所へたどり着くように迷い込まされたようだ。

 

「速く抜け出してやらないと……」

 

そう思って進むと花の香りがする。

心が安らいでいく。

傷の痛みも感じない。

 

「ようこそ、私の宮殿へ……」

 

そう言われて辿り着いたのは花の都。

桃源郷ともいう世界。

そんな中に佇む影。

 

「ザマスと対をなす破壊神だな……」

 

顔を見たいがあいにく後ろ姿しか現状分かってはいない。

だがそれでも感じ取れる途方もない力。

 

 

「左様でございます」

 

そう言うと手を叩く。

使いの天使が出てくる。

茶を盆で運びに来たのだ。

 

「しばらくは話をしましょう」

 

そう言って振り向く。

姿は魔術か何かを使っているのか全く分からない。

声色さえも変えている。

きっとまだまだあの愚かな神は治っていない。

だからこそ、この休息の時を味わうように告げられる。

逆らったら消すというように手から破壊のエネルギーを出していた。




界王神であるザマスが生きている以上、破壊神も存命。
神自身の掟は破れないのではないかという事です。


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『残酷な問い』

ザマス編ももう少しで終わりの予定です。
第12宇宙のタイムマシンなど漫画版の超の設定も入り乱れています。



俺はあれから話をしている。

顔も分からない相手とだ。

声だって魔術で変えている、まったく見当がつかない。

 

こうしている間にも戦いは続いている。

気が気ではない。

そわそわしながらお茶を口に運ぶ。

 

「気にしなくてもすぐには動けない」

 

目の前の相手がそう言ってくる。

いわく、あいつらも気が枯渇しているという事。

回復しようにも神の存在やそれに近ければ回復の時間は掛かるからすぐに危機に陥るような事は無い。

 

「それで時間としては……」

 

俺はその時間が気になる。

カカロットとベジータが来るぐらいだろうか?

 

「貴方の仲間の二人が来るぐらいまでは十分よ」

 

それならば十分こちらも体を休めよう。

ここは不思議な空間。

月の光が差し込むわけではないがサイヤパワーが戻ってきている。

 

「あいつらには怒りを覚えている……」

 

どうやら第10宇宙の界王神見習いであったこちらのザマス。

それを俺たちの世界から来たゴクウブラック、もといザマスがそそのかす。

その時にゴワス様という界王神をゴクウブラックが殺害。

その殺害により第10宇宙の破壊神であるラムーシ様の死。

その間際に第10宇宙の破壊神見習いであった自分にその座が移動した。

そういった因縁からゴクウブラックをどうするかを考えていた。

 

しかし、気づいたころには第7宇宙に行ってしまっていた。

キューブを使われた以上、移動手段がなかったらしい。

ではどうやって……

 

「そこは秘密」

 

そう言って立ち上がった。

ザマスたちの動向を調べていた。

そして天使に何かしら耳打ちをする。

 

「ちょっと面倒なことが起こったわ」

 

そう言うと俺の肩に手を置く。

そして力を込める。

魔術で花の都から出る。

 

それには時間がかかっていたのだろう。

どうやらカカロットとベジータも到着している。

ゴクウブラックをベジータが圧倒している。

ザマスがトランクス達に向かっている。

 

そこからは怒涛の展開だった。

カカロット達への怒りからブラックがさらに力を増幅。

次元を切り裂いて分身を呼び寄せた。

そんな中、トランクスが『魔封波』をザマスに当てる。

そのままカカロットが持参してきたツボ。

とは言っても悟飯が修復したボロボロのものに封印。

しかし、問題が発生した。

カカロットが札を忘れたことでザマスが自力で脱出。

ついにポタラ合体を解禁。

一人の存在へと変わった。

 

「これは俺が一人でやる……」

 

瞬間移動でカカロットとベジータの後ろに現れて頭を掴み、悟飯達の方へ投げる。

未来の俺も疲労困憊で倒れていた。

 

「愚かな男よ、消えろ!!」

 

雷を放ってくるが問題がない。

こっちも気弾で対抗する。

 

「そんなもん怖くはないぜ」

 

光輪から放たれるものがそんなちっぽけなものなのか?

触れられないような障壁。

神の威光とは言うが……

 

「シャア!!」

 

関係ないんだよ。

穿つように一撃を放ち、超速度で二撃目を放つ。

それで穴ができた障壁を砕く。

 

「がっ……」

 

ザマスの脇腹に俺の拳がめり込んでいる。

悶絶をしている。

そこに違和感を感じた。

 

「小賢しいサイヤ人が!!」

 

奴が拳を振るう。

それを受け止めるが地力の差で地面に叩きつけられる。

 

「ちっ……」

 

すぐに起き上がる。

相手がさらに攻撃を仕掛けてくる。

 

「『裁きの刃』!!」

 

赤い棘のような気弾を放つ。

それを避けてはいるがこれで終わりではない。

案の定、着弾地点から大きく爆破をする。

こんな煙幕を上げる技なんて不用意な奴だ。

強さゆえの傲慢と言ってもいい。

 

「ハァ!!」

 

瞬間移動で目の前に現れてやる。

そして尻尾で目を打つ。

 

「むぅ……」

 

反射的な動きで顔を押さえる。

その隙に腹へラッシュを仕掛けて蹴り飛ばした。

むくりと起き上がるがその顔はけろりとした顔ではなかった。

 

「やっぱりさっきもそうだが……痛いのか?」

 

どうやらいくら強くなっていてもブラックとザマス。

人と神のポタラだけではない。

不死身とそうでない肉体。

不自然な節理が体を崩れさせていく。

だから不死身では感じていなかったものが今現れているのだ。

 

「『絶対のいかずち』!!」

 

鳥のような気の塊のオブジェが雷撃を放つ。

それを避ける。

 

「ハアッ!!」

 

気弾を撃つがすり抜けるわけでもなく当たっただけ。

だがこれで分かる。

気で形づくっているが界王神の技か何かで核を仕込んだ。

それを壊せばいい。

 

「撃ち落とされろ、羽虫が!!」

 

ザマスが手を振り、雷を放つ。

俺の瞬間移動をなめてかかっているのか?

 

「うぉおおおお!!」

 

オブジェの後ろに陣取って気を開放。

体を回転させて弾丸のように突っ込んでいく。

そしてオブジェの中身へめり込んでいく。

 

「ガアアアアア!!」

 

叫んで気を爆発させることで核を壊す事に成功。

雷撃を放つ鳥のような奴を霧散させる。

ザマスは驚愕の顔を浮かべるがすぐに攻撃を放つ。

 

「愚かなサイヤ人め、『聖なる逆鱗』!!」

 

太陽を思わせる気弾。

だがそれで歩みが止まるわけではない。

気弾相手にあの技を試みるとは思わなかったが……

 

「『ソウル・オブ・サイヤン』!!」

 

気でコーティングした拳と足。

それに筋肉を肥大させて殴りつける。

 

「ハアアアッ!!」

 

気弾が徐々に縮小する。

巨大な気弾を相手に受け止めることができない力の差。

苛立ちこそあるがそれはそれ。

 

「こいつで終わりだ!!」

 

拳から全力で気弾を放つ。

縮小していた気弾を貫き、ザマスへと向かっていく。

 

「ぐっ……」

 

手を出してザマスが防ぐ。

そのまま光が包んでいくのを見届ける。

 

「ハアッ……」

 

想像以上に気を使う。

神の一撃とは凄まじいものだ。

体の動きが大量の気の消費で鈍る。

 

「この痴れ者が……!!」

 

それが原因で思うように体が動かない。

そんな中、手から煙をあげてザマスが現れる。

余裕綽々の顔ではなく、憤怒の形相で一撃を加えられる。

防いだり受け止められず、地面へまたもや叩きつけられる。

 

「死ね……!!」

 

そう言って俺にとどめを刺そうと向かってくるザマス。

しかし、そのザマスを蹴り飛ばす1つの影。

その正体は魔人ブウとの戦い以来となるカカロットとベジータの合体戦士であるベジットであった。

ベジットブルーとなってザマスに対抗する。

 

その一部始終をどこで見ていたのか破壊神が再び俺の肩に触れる。

 

「あれでは時間が足りなくなってじり貧だわ……」

 

そう言って再び花の都に俺を逃がす。

このまま俺一人だけおめおめと逃げる訳にはいかない。

そう思って立ち上がると次は腕を掴まれた。

 

「私をあなたが殺すしかない」

 

確かにそれしかないだろう。

神の戦闘力が掛け算方式で強くなってしまってはもうどうする術もない。

トランクス達も殺されてしまう。

あんたがそれで良いというのならば……

構えて殺すための一撃を放つ準備をする。

 

「今こそその正体を明かしましょう」

 

そう言うと魔術が解ける。

霧のようになっていたベールが取れていく。

そして隠れていた顔や髪の色が露わになっていく中、その姿に息を呑む。

俺は今からこの手で……

 

「私の名前は第10宇宙破壊神……」

 

殺さねばならないのか。

平和のためとはいえど。

この広い宇宙において、この俺にとって誰よりも……

 

「ピオーネ」

 

愛しいお前を。

歯が砕けるほど強く噛みしめる。

 

「速くしなさい」

 

俺の腕が動かない。

分かっている、分かってはいる。

これしかないほどの窮地だと。

だが……

 

「この世界だけの話ではないのよ」

 

そう言うとなぜ第七宇宙に来れたのかの種明かしを始めた。

俺達の時代のピオーネが未来のピオーネに伝えたのだ。

 

俺達の時代のピオーネは何か助けになる事は無いかと考えた。

その結果、占いババ様から教えてもらい自分の先祖が送られた時のキューブを探し当てる。

それを使用していたピオーネはさらに俺達の時代の第12宇宙でタイムマシンを発見。

ホイポイカプセルにしまい込んで第7宇宙へ戻る。

 

バーダックさん達が帰ってきたタイムマシンから時代を特定して飛んできた。

到着後、この時代でキューブを使用した。

そして未来の破壊神であるピオーネにその旨をすべて伝える。

その結果、その方法を使うべきだとなったらしい。

 

「ザマスたちもこの時代でタイムマシンを見つけた、貴方達の時代が壊される」

 

さっきの耳打ちの正体はそれだったのか。

しかし……

 

「躊躇ってはいけない、自分の時代の私を殺す決断になってしまうわ」

 

俺が攻撃をしないのがいら立ちを募らせるのだろう。

こうなってしまったのならば幾ら葛藤をしても結果は変わらない。

 

「……」

 

叫ぶこともなく己の心を殺して何も思わずに心臓を貫く。

躊躇ってしまったり、何かを思案すると手心が入る。

それはこれほどの決意をしたピオーネへの侮辱。

死よりも悍ましい地獄に誘い込む結果になってしまうことだってある。

手に残る感触があまりにも鮮明だ。

なぜこんな事になってしまうのだろう。

ただ未来のトランクス達は平和の為だったのに。

 

「そう、それでいいの」

 

頬に触れられる。

その手は暖かい。

苦しみながら答えを出した。

さようなら、この世界でも決して思いは変わらない愛しい人。

 

「ごめんね……」

 

そう言うと手が下がる。

冷たい骸へと変わっていった。

俺はその骸を背負う。

花の都は消え去っていく。

 

だが俺にとってはどうでもいい。

雨が降っている。

涙雨なのだろう。

世界を救うために命をなげうったピオーネの。

 

そう思うと不意にこみあげてくる。

割り切って歩を進めようとしていても。

泣かないと決めていたはずなのに。

 

「ハアッハアッ……」

 

荒い息をついたゴクウブラックが蹲っていた。

ザマスが死んでしまった事でポタラの効果もなくなったのだろう。

トランクスと悟飯がとどめの為に動こうとする中割り込む。

 

「お前ら、邪神、魔神、界王神は自己満足のためにただ人の世を消すという決断をしたのか?」

 

俺はしわがれ声で問う。

大きな声ももはや出ない。

血が目から溢れている。

 

「自己満足だと……もとは時間を超えて摂理を乱したりして貴様らが地球を穢すからだ、それがどうかしたか!」

 

その言葉をきっかけに殴り飛ばす。

吹っ飛んでいく相手を追い越して蹴りを加える。

言葉も何もない。

只管に拳を打ちつけていた。

顔面にめり込む。

拳の皮膚が裂ける。

だが関係ない。

拳が砕ける。

しかし関係ない。

 

「うぁあああ……」

 

ゴクウブラックが恐怖している。

だからどうした?

懐に蹴りを叩き込む。

 

壁に叩きつけられる。

そこから落ちていく間。

拳を打ち付けた時のように蹴りを放つ。

アバラがへし折れていくだろう。

もちろんそれだけでは済まさない。

内臓の破裂だって伴う。

それに折れた骨が刺さっていくだろう。

ザマスだけでなく俺の足の骨も蹴りの威力に耐えられず圧し折れている。

それでも何度も力一杯顔面を踏みつける。

 

「……」

 

もはやゴクウブラックの反応は無くなっていた。

死んでしまったのだろうか。

しかしそんな事なんてどうでもよかった。

 

ピオーネの骸を埋めてやろう。

今思うのはそれだけだ。

そして現代に帰ろう。

トランクスや悟飯の事はおろか、今はもう何も考えたくはなかった。




次回はフィナーレに近づけて現在アニメでも行っている『力の大会』の開催に近づけます。
単純に漫画版の設定で考えても人、間レベル2位の宇宙の奴と同じものを作成できるブルマってすごい。

指摘などありましたらお願いします。


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『事態には特例ありき』

ドラゴンボールがあるからあの決断も半減なのですが、復活を現代ガタバルはやめました。
ピオーネから釘を刺されているからです。
これでなんにもピオーネが言ってなければ復活させていたでしょう。
まあ、今後管理する奴らが復活させないとも限りませんが。


「仙豆だ」

 

長い戦いは終わった。

ベジータに仙豆を渡されて食べる。

ザマスたちにつけられた怪我は治っていく。

しかし俺の心の傷までは治らない。

 

ザマスは消えた。

ゴクウブラックも死んだ。

アザラの像も消滅。

ドミグラも塵に帰っていった。

 

いつもなら喜べる。

だがそんな要素は今回は無い。

たとえ時代が違っていてもピオーネをこの手にかけた。

それは偽りのない事実。

それが暗い影を落としている。

 

「ドラゴンボールで甦らせれたら……」

 

ベジータが気の毒に思ったのか言ってくる。

確かにその手はある。

しかし問題なのは神の次元に至っているという事。

復活させた場合、ザマスの復活もあり得る。

それに本人にその気がないのにやっては俺の自己満足でしかない。

 

「ゴワス様から復活させれば問題ないでしょう」

 

界王神様が言ってくる。

俺達の時代のゴワス様が頷く。

俺の自己満足にすぎない。

でもこのままもやもやとした気持ちのままでは終われない。

 

するとテレパシーが飛んでくる。

死んでいてもそのような真似ができるとは……。

 

「『あれが最善だったからそこまで気に病む事は無いのよ』」

 

俺の心の重さを取り払うために言ってくれている。

それに復活なんて考えなくてもいいということだろう。

神の類が簡単に蘇生してしまっては威厳が無い。

人の力での復興は神に頼らずともやっていける。

 

「『今、ザマスは地獄の中でさらに悪夢を見ているわ、ゴクウブラックもこっちに来て青ざめている』」

 

計22名の界王神と破壊神に追いかけられている。

自業自得だろう。

だが……

 

「たとえ、二度と会えなかったとしても元気でいてくれよ」

 

きっとビルス様もタイムマシンの使用を許可しない。

まあ、地獄に居て元気も何もあるとは思えないのだが。

そして宇宙船を未来の俺が呼び戻す。

 

「これからの復興に誰もいないのも問題だからな」

 

平和になっているのに呼び戻さないのもな。

とりあえずドラゴンボールはお前に預けておくよ。

 

「『本当に蘇生なんてやらなくてもいいのよ、その地球のために使ってね』」

 

そんな中、ザマスの悲鳴が混じっていた。

『やめろ、ピオーネ』と叫んでいるところを聞くとどうやらピオーネもザマスを痛めつけるつもりらしい。

過去の自分の伴侶へ嫌な思いをさせた不届きものには罰を与えるとのことだ。

その為、まだまだ地獄から戻るのは速いと言っていた。

頬をかいて仕方なく未来の俺に譲る。

 

「元気でな……」

 

そう言ってトランクス達にも頭を下げる。

もう二度と会えなくなるだろうが元気で居ろよ。

そう思っていたが……

 

「『今回の事は許してあげるのね』」

 

未来の全王様が姿を現す。

そして大神官に耳打ちをする。

 

「『こちらの有事の際、こちらからの時間航行は特例として認めるのね』」

 

今回の神々の戦い。

界王神の集中狙いによる破壊神の機能崩壊。

時を越える事は重罪ではある。

だが、今回のような緊急事態であればそれを考えない。

それによって増えた時の指輪は、後日全王様の手で消滅させる。

 

「『それに協力してくれた人たちにもお礼言わないとダメでしょ』」

 

同行するという事で全王様はカカロットや悟飯と一緒に。

ブルマさんはベジータとゲロ。

驚くことにゲロがタイムマシンを秘密裏に作っていたのでそれにトランクスが乗り込む。

マイやビーデルも入り込む。

俺は迎えを待っていた。

光を発して空から現れる。

それは近未来式のタイムマシンだった。

 

「来たよ」

 

降りてきたのは俺の時代のピオーネ。

未来の俺が『ミクロバンド』で縮小。

そこにラズリさんと俺とピオーネが乗り込んで現代へと戻る。

時間にして数分後。

ビルス様や現代の悟飯が待っていた。

ようやく久々に自分の時代に戻ってきたという感覚だ。

 

「ぜっ、全王様!!」

 

ビルス様が頭を下げる。

今回の事の流れをすべて伝えてくる。

そして……

 

「『こっちで同じようなことにならないようにした破壊、感謝するのね』」

 

ビルス様に感謝の意を述べる。

時の指輪を消滅させると言ってとことこと歩く。

いつの間にか戻っていた界王神に向かってとんとんとつつく。

 

「第10宇宙の宮殿まで行きたいのね」

 

そう言われて断ることもなく第10宇宙に赴く。

数分後、ゴワス様を連れて時の指輪の消滅に立ち会った。

 

「悟空、スイッチで連れて行ってほしいのね」

 

それに今回の騒動のメンバー全員がついて行く。

そこにウイスさんとビルス様もついて行く。

ビルス様はいきたくなさそうだったが、全王様に来てと言われた手前断れなかった。

 

ついて早々、現代の全王様と意気投合。

今回の騒動で時間航行の特例を締結。

とは言ってもこれ以上とんでもない事態は起こりそうにもないだろう。

やはり二度と会う事はできないと考えてもいい。

 

「僕は自分の場所に帰るのね」

 

そう言って界王神に連れていかれる。

気になっていたが……

 

「ウイスさん……」

 

俺が呼びかけると振り返る。

全王様の宮殿だけあって普段とは違う雰囲気だ。

 

「なんでしょうか?」

 

小声で聞き返してくる。

こちらも小声で質問しないとな。

 

「仮に未来の全王様がこちらに来られた時『時の指輪』ってどうなりますか?」

 

ビルス様の破壊で『破壊されていない未来』も生まれた。

つまり全王様が行き来をしてもそのたびに『時の指輪』が増えてしまうのでは?

 

「全王様ならば界王神たちのようなことにならず、パラレルワールドの心配もないまま時間軸に来れるかもしれませんよ」

 

やはり規格外か。

つまりあのお方だけは好き勝手に時間の行き来をしても問題ない。

そして……

 

「あのお方が『有事』と言えば特例の適用が可能なのですからね」

 

つまりどんな些事でも理由をつけてこちらに来れる。

恐ろしすぎる。

胃が痛くなるようなことがどれだけ増えるのか。

 

「悟空、友達連れてきてありがとうなのね」

 

全王様が感謝をする。

それで今回は不問となった。

今回の締結により『特例』ならばやむを得ないという事を大神官様からもいただいた。

まあ、界王神ばかりを狙ったとはいえ、第10宇宙を除くすべての宇宙が機能不全に陥ったのだからそう言った事態は仕方ないということだろう。

そして、一度皆で帰る。

 

「心臓に悪いですね……」

 

トランクスも事の重大さを噛みしめているのか。

冷や汗を拭っている。

 

「本来なら消されても仕方なかったぞ」

 

珍しくビルス様も大きなため息をつく。

普段の態度と全然違うのだ。

俺もきっと同じだっただろう。

 

「結局、最後になりそうだな」

 

『特例』の適用外でのタイムマシンは使用不可。

今後、第1宇宙から第12宇宙も作成するように言われるだろう。

 

「えぇ……皆さんにお礼を言って帰ります」

 

悟飯がそう言うとカカロットが背中を叩く。

お前に会いたい奴らもいるだろう。

 

「パーティーをするがどうするんだ?」

 

ベジータが気を利かせて聞いてくる。

正直、今の俺はな……

そんな顔をしているとデコピンをされる。

 

「ぐわっ!?」

 

頭を押さえて後退する。

ピオーネだった。

 

「今の私を見てよ」

 

そう言って、手を引かれる。

そしてお仕置きだというようにバックドロップを決められる。

 

「元気出た?」

 

元気どころか呻き声が先に出そうです。

もしくは流血だろう。

あとは未来の俺達が後始末するからいいって言いたいのだろう。

でも…同じことがあったら俺以上に引きずるくせに。

 

「なんか、磨きがかかっていますね」

 

ラズリさんが言ってくる。

未来の俺も笑っていた。

 

「ドンマイだ」

 

肩を叩いてゲロがにこやかに笑う。

お前は10年前に負けているから、強さは知っているもんな。

 

「さっさと用意をしろ」

 

ベジータが機材をもって運ぶ。

それを見てトランクスと悟飯が手伝おうとすると……

 

「お前らはピッコロとこの時代の悟飯を呼んで来い」

 

ベジータが主導でパーティの準備が進められる。

夕方ごろには全員が揃って用意されていた。

全員が満腹になる様に食事をする。

俺も後の事を未来の自分に任せていこうという気になった。

宴もたけなわとなり一度全員が家に戻る。

 

「ふわぁあああ…」

 

酒が入っていたからぐっすりと寝てしまう。

眠い中、せめてもの土産を用意する。

食べ物だ。

腐りにくいものを作ってやる。

街中はドラゴンボールで復興はできる。

でもこの食器がまぎれもなく俺達をつなげる証になる。

 

「さて、行こうか」

 

瞬間移動でカプセルコーポレーションに着く。

悟飯がタイムマシンの設備をしていた。

1つはこっちに置いていくようだ。

思い出の品のようなものだ。

何年もたたないと重要なものも発見されないようだからな。

 

「これ、向こうに着いたら食えよ」

 

そう言って渡してやる。

感謝をするが、こっちを見てニヤリと笑っている。

こっちの戦いの思いを感じ取ったか。

 

「最後に渡せる土産なんてこんなものだろう?」

 

そう言って構える。

トランクスとベジータが同時にこっちへ来た。

 

「2対2でちょうどいいな」

 

そう言って悟飯と向き合う。

普段なら絶対こんな事は無い。

カカロットが適任だろうが遅いようだしな。

 

「いくぞ!!」

 

そう言って超フルパワー超サイヤ人4で戦う。

全員本気のとんでもない戦いだ。

 

「はあ!!」

 

悟飯が猛ラッシュを仕掛ける。

ラッシュも足払いを組み込んでいたり、目打ちなど実戦的なもの。

勝利することを念頭に置いた攻撃。

平和を勝ち取ろうと血の滲む努力をやってきた男の戦闘。

 

「くっ!!」

 

その腕をとってそのまま放り投げる。

それを……

 

「『激烈光弾』!!」

 

片手で放ちそれを推進力に変えて俺に肘打ちを放つ。

腕を交差して受け止めるが痺れるように重い。

 

「二人ともこいつでやられやがれ、『ガンマバーストフラッシュ』!!」

 

『ファイナルフラッシュ』と逆の手の構えで光線を放つ。

一本はトランクス、もう一本は悟飯。

どう対処する?

 

「『かめはめ波』!!」

「『ギャリック砲』!!」

 

悟飯は『かめはめ波』。

トランクスは『ギャリック砲』で相殺する。

だが共通してその対処に間違いがある。

 

「隙だらけだぜ、悟飯!!」

 

直線状の技だから跳躍の回避でよかった。

こんな回避では一人が相手ならいいが、二人相手なら片方に大きな隙を晒す事になる。

腹部から突き上げる一撃。

そしてそのままラッシュを仕掛ける。

 

「うぐぐ……」

 

腕を交差する以外にも足を上げてカットしてくる。

目は死んでいない。

こっちに隙があればそのまま大技で逆転。

もしくは投げなどを組み合わせてじわじわと主導権を取りに来る。

 

「フンッ!!」

 

しかしそんな隙は与えない、

足からの気功波で悟飯の足場を崩す。

そしてその隙が生じた中で大技を放つ。

短期決戦に行ってしまえばいい。

お前たちも歴戦の戦士だが俺もまたその一人だぜ。

 

 

「『プライド・オブ・ラクタパクシャ』!!」

 

灼熱の鳥が迫っていく。

だがそれに対して眼差しは諦めていない。

そして手に気を一点集中させる。

 

「『スピリット・オブ・サイヤン』!!」

 

ラッシュをやめた一撃。

その巨大な一撃は俺の技の真ん中を破り、悟飯はその穴に飛び込む形で回避した。

 

「流石です、最後にいい思い出が出来ました」

 

俺が構えを解いたのを見て同じく構えを解く。

丁度トランクスも終わった。

全員が集まっている。

荷物持ちは未来の俺の役目のようだ。

 

「達者でな」

 

最後にその一言を残して、手を振る。

仮に、いつか危ない事があればまた来いよ。

いつだって助けになってやるからな。

最後まで手を振って未来の平和を願うのだった。




ご都合主義で今回のザマス編のように『重要な問題』がある時は
時間の航行は未来側からのみ可能という設定を加えました。
いくら罪になるとは言っても全宇宙がかかっているのでそこはそれといった感じです。
ちなみに全王様がその気になれば職権乱用で時間航行できるってはあると思います。
他人から見たらちっぽけでも全王様が重大だと言ったら重大な事ですから。

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『スポーツマンシップ』

野球回を事細かにやってみました。
超の時のようにヤムチャがおいしい所を持っていくように調整しました。


俺達は今9人ずつで向かい合っている。

事の発端はシャンパ様からのスポーツの対決。

それで両宇宙合わせて18名。

急遽、面子をそろえたのだ。

ヒットとフロストは無理でも、シャンパ様が出るらしい。

 

メンバーはこっちが……

孫悟飯、ピッコロ、ヤムチャ、クリリン、スパーニ、カカロット、トランクス、ピオーネ、そこに俺が入る。

あちらが……

キャベ、ベジータ、カリフラ、ボタモ、マゲッタ、悟天、ブロリー、バーダックさん、シャンパ様。

 

「ちなみに野球のルールを知っている奴は?」

 

ヤムチャが聞いてくる。

俺達は世間の為に、テレビとか見てたから知っている。

ラディッツさんや、ブロリーも同様。

そして簡易な説明をして散らばる。

投手は俺。

捕手がピオーネだ。

一塁手、カカロット。

二塁手、悟飯。

遊撃手、ピッコロ。

三塁手、スパーニ。

中堅手、クリリン。

右翼手、トランクス。

左翼手、ヤムチャ。

 

「プレイボール!!」

 

体を極限まで捻って……

竜巻のように唸りをあげる。

そのエネルギーを足先から投げる球の指先に伝達。

瞬く間にミットに吸い込まれていかにも重い音を立てていた。

超サイヤ人抜きの真っ向勝負。

 

「だりゃあ!!」

 

ボタモ。

キャベ。

マゲッタ。

三人とも三球三振でチェンジ。

 

シャンパ様が地団太踏んでいる。

悪いが勝負となったら負ける気はないぜ。

 

「クリリン……お前は三振に仕留めてやる」

 

向こうのピッチャーはブロリーだ。

捕手がキャベ。

一塁手、悟天。

二塁手、カリフラ。

遊撃手、ボタモ。

三塁手、バーダックさん。

中堅手、ベジータ。

右翼手、シャンパ様。

左翼手、マゲッタ。

 

まさかの予告三振。

すると振りかぶって、一気に足を天に向ける。

そしてその足を振り下ろし、その勢いのままボールを投げる。

まるでマサカリを思わせる投げ方だ。

こちらも重そうな音を立てる。

 

そのまま投球は続き……

クリリン。

トランクス。

スパーニ。

あちらも三人を三球三振で仕留める。

嫁相手でも容赦がない。

 

変わって相手の攻撃。

バーダックさんが相手になる。

 

「フッ!!」

 

再度、体を極限に捻って球を投じる。

唸りをあげるその球を見て力強くスイングをしてきた。

 

「どりゃあ!!」

 

気合一閃といった感じだ。

いきなり内野のファール部分まで飛ばしている。

こうなったら……

 

「ハアッ!!」

 

投げる際に腕自体に捻りを加える。

こうすることで……

 

「ちっ!!」

 

相手の体の内側、もしくは外側へ変化していく。

対応こそされたがボテボテのピッチャーゴロ。

それをカカロットに送ってアウト。

 

「真っ向勝負で来やがれ!!」

 

ベジータが打席に立って挑発してくる。

じゃあ、お望み通り……

 

「直球だ」

 

握りを見せて放り投げる。

打ってみろと逆に挑発しながら。

 

「ぐっ!?」

 

バットを粉々にしてやった。

打球の方向はトランクスの場所へふらふらと上がっている。

トランクスの目の前で落ちる。

ベジータはアウトかどうかの判断だったため、一塁でストップ。

次の相手はカリフラ。

こいつにも真っ向勝負だ。

 

「シャッ!!」

 

直球を弾き返すがショートのピッコロの目の前。

だがそこで回転があったのかイレギュラーバウンドが起こってしまう。

 

「フンッ!!」

 

体勢は悪くなるが超反応で止める。

そしてセカンドの方向も見ずにバックトスをする。

 

「ピッコロさん、良い送球です」

 

悟飯が受け取ってアウト。

そのままカカロットへ渡してダブルプレー。

 

「くっ……」

 

カリフラが苦い顔をする。

ここから俺達の攻撃。

 

「来てくれよ!!」

 

カカロットが構える。

その言葉を意にも介さずマサカリのようなフォームで投じてくる。

それを見切っていたのか、カカロットは当てる。

 

「ぐっ!?」

 

カカロットが顔を歪めてしまう。

バットが粉々になって目の前にボールがボテボテと転がっている。

それを悟天に送りアウト。

 

「ウォオオオオオ!!」

 

次の打者は俺。

俺が打席に立った途端、雄たけびを上げて投げてくる。

青髪の状態で雄たけびを上げると新鮮だな。

 

「ぐっ!?」

 

芯で当てて打球を飛ばす。

投手の横だ。

すると……

 

「こんなもの!!」

 

ブロリーが手を伸ばして取る。

痺れてもいない。

ニヤリと笑ってこっちを見る。

見事な捕球でアウトになった。

 

次のピオーネは頭を越すかと思われる打球を打つ。

浅く握りこんで落ちたにもかかわらず対応していた。

しかし……

 

「甘い!!」

 

ジャンプしてキャッチをする。

これでヒット0本とはな。

気合を入れていくか。

 

相手の打者はブロリー。

力勝負でねじ伏せる。

 

「ハッ!!」

 

投げた瞬間、目を疑う光景があった。

足を投球の時と同じように上げ切って、打つときに振り下ろしその勢いのままひっぱたく。

 

「残念!!」

 

打球はスパーニのグローブに見事に収まってアウト。

悔しそうな顔ですごすごとベンチに戻る。

悟天は三振。

そしてシャンパ様が打席に立つ。

あの腹ならば……

 

「ドリャ!!」

 

内側に来たものは対応できない。

そう思っていたが……

 

「俺には止まって見えるぜ!!」

 

ギリギリのところまで一瞬のうちに体をスライドさせて打つ。

外側の対応は難しくなるが内側には効果覿面だ。

大きく打球は上がる。

 

「流石は破壊神様だな……」

 

外野までぐんぐんと伸びている。

それをヤムチャが追いかける。

 

「だが、俺の所に来たのが運の尽きだぜ!!」

 

フェンスを登って飛びつきボールを捕球した。

ホームランをもぎ取る形となる。

 

「チックショー!!」

 

バットを叩きつけて悔しがる。

これでなんとか全員の一回目の攻撃を抑えきった。

このピリピリとした感覚。

戦闘とは違うが神経を集中させたことを考えるとなかなかの刺激だ。

 

「この地球のハイスクールの奴らは凄いんだな」

 

皆がこんな戦いを繰り広げて、夏に真紅、春に紫紺の優勝旗を目指す。

自分たちは戦闘が好きだが、彼らのように戦うことはできない。

現にこの攻撃を終えるまでに息を切らしてしまいそうだった。

 

ブロリーも投げ続ける。

こちらの打者は悟飯。

 

「むっ……」

 

腕の振りこそ同じ。

しかし緩やかな球。

ブロリーが投げたのは何なのか。

悟飯は当てるもののカリフラの前に転がってアウト。

ピッコロは直球を外野に運ぶも、ベジータが思いもよらぬダイビングキャッチ。

トランクスも拍手をする美技でアウトにする。

そしてこちらの9人目の打者はヤムチャ。

 

「野球のイロハを叩き込んでやるぜ!!」

 

武道家兼野球選手。

その肩書きに恥じず完璧にとらえる。

バットがへし折れてすらいない。

 

「さっきのお返しだ!!」

 

大きくとんだ打球を腹を揺らしながら追いかけるシャンパ様。

フェンスによじ登る。

 

「てい!!」

 

跳躍をして球をグローブに納める。

そして着地を決めてヴァドスさんとウイスさんに見せるように掲げる。

 

「破壊神は伊達じゃねえし」

 

アウトの宣告。

塁に出る事すらできない。

ヤムチャ以外は素人でありながら身のこなしにものを言わせた美技合戦。

 

ダブルプレーにした飛びつきからのバックトスというコンビプレーをやったピッコロと悟飯。

シャンパ様のフェンスをよじ登った今のスパイダーキャッチ。

ブロリーはジャンピングキャッチとベアハンドキャッチ。

ベジータのダイビングキャッチ。

 

しかしここから動く。

皆、目が慣れたのかいい打球は飛ぶ。

見極めも上手くなっていく。

ホームランは出ない、点は相変わらず取れない。

それでもほとんどがフルスイング。

バットに当たれば全力疾走。

怪我も辞さないヘッドスライディング。

当然、体力は削られていった。

 

「ふぅ……」

 

汗をぬぐいながら球を投げる。

ランナーは居る。

打たれたら得点だ。

 

「シャア!!」

 

雄たけびを上げて腕を一振り。

バットを砕いてミットに球が収まる。

三振でこのピンチを切り抜けた。

 

「後は頼んだぞ……」

 

ピッコロ。

ヤムチャ。

クリリン。

 

投手の交代もなく俺とブロリーはやりあった。

これで無理ならきっと引き分けぐらいしか道はない。

打てても飛ぶところすべてで美技の連発。

打撃で貢献出来た奴と出来ていないやつの明暗ははっきりとしていた。

 

「フンッ!!」

 

ショートのボタモの前へボテボテのゴロを転がすピッコロ。

腕を伸ばし、ヘッドスライディング。

しかし間一髪でアウト。

ブロリーも感謝の言葉を贈る。

清々しいほどのスポーツマンの姿があった。

 

「負けるものか!!」

 

気骨に影響なし。

まだやれると全力で投げ込む。

だがその気合をかき消すようにヤムチャがバットを振っていく。

 

「俺の方がお前よりも優れたプレイヤーなんだよ!!」

 

そう言って思い切りのいいフルスイングでボールを打つ。

打球は高々と舞い上がる。

 

「くっ!?」

「シュポ!?」

 

取ろうとするも互いにどちらが取るのかを考えてしまい、反応が遅れる。

その理由は丁度、マゲッタとベジータの中間を割る打球だったからだ。

あえて一塁との距離が近い打席に入ったこと。

そして果敢にも打った瞬間に捕球の可否を問わず走っていったこと。

それによってベジータが捕球して振りかぶるころにはすでに三塁まで到達していた。

 

「行け、ヤムチャ!!」

 

先ほどアウトになったピッコロが腕を回して突っ込めと合図をする。

それに対してヤムチャは不敵な笑みを浮かべながら……

 

「元からそのつもりだぜ!!」

 

最短のルートを渡ってホームベースへ向かう。

だが易々と許すつもりはない。

 

「行かせるかぁ!!」

 

ベジータから大砲のような送球が送られる。

殆どベジータの送球が到達する時間とホームベースに到達に差は無いだろう。

 

「負けませんよ!!」

 

予想通り、キャベのタッチとほぼ同時のタイミング、ヤムチャはホームベースを抱き枕にするように滑り込んだ。

全員がウイスさんの判定を心待ちにする。

どちらが速かったのか。

流石にシャンパ様が破壊神でも疲れできわどいタイミングの判定は難しい。

 

「……セーフ!!」

 

腕を横に広げる。

この瞬間、勝利が確定した。

9回裏、ヤムチャによるランニングホームラン。

カカロットとクリリンにもみくちゃにされる。

キャベも手を差し出していた。

シャンパ様も清々しい顔で敗北を認めていた。

 

「すまねえな、ブロリー」

 

バーダックさんがブロリーに謝る。

打ててたら勝てたのに……と呟いて。

ベジータも悔しそうな顔をしている。

そんなベジータにトランクスがタオルを渡す。

 

「パパ、お疲れ、凄くかっこよかったよ」

 

まんざらでもない様子で頭を撫でていた。

束の間の休息。

第六宇宙との親睦会は楽しい結末で終わった。




経験則は武術でもスポーツでも重要という事ですね。
ちなみにブロリーはマサカリ投法、ガタバルはトルネード投法で投げております。

次回はバトル回の予定です。
とにかくどういう風に『力の大会』の導入部を仕上げるか思案しております。

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『抹殺指令』

今回はヒットとの戦いを描いています。
次回あたりからご都合主義で原作と違う目的で「力の大会」編に入っていく予定です


最近、ピオーネがそわそわとしている。

結婚記念日には速い。

俺の誕生日でもない。

そしてピオーネの誕生日でもない。

ゲンサイやターサの誕生日もまだまだ。

 

「何かあったのか?」

 

とりあえず聞いてみる。

すると溜息のようにつぶやく。

 

「最近、誰かに尾行されている気がするわ」

 

その気配が消えているからその場所に行ってみても見失ってしまう。

かと思えば監視されているような視線。

足音もないがそれでもぴったりと付かれているらしい。

 

「ここ、最近そう言った行動は……?」

 

整理をすると思い浮かぶことはある。

しかし、それは解決したはずの内容。

それに普通ならば決してあり得ない。

 

「お仕事についてきてくれる?」

 

時折、こういったモデル業のようなこともするようになった。

若々しい見た目とスタイルがその道の人たちから注目されている。

今日はどうやら……

 

「何年振りかしら……」

 

懐かしむような、うっとりとした顔を浮かべる。

10数年ぶりに俺も見て息を呑む。

相変わらず似合っている。

 

「お母さん、綺麗!!」

 

ゲンサイが手を叩いてほめる。

ターサも見とれている。

 

「花嫁衣装を着ないといけない仕事でして……」

 

カメラマンが言ってくる。

どうやら結婚式会場のパンフレット。

その為に着てもらいたかったらしい。

 

「それではいきますよ」

 

そう言って数十枚、撮影をする。

ポーズは一定。

角度などの工夫だ。

 

「ありがとうございました」

 

写真を撮り始めて2時間ほど経った。

どうやら、最高の一枚の撮影ができたのでこれにて中での撮影は終了。

 

「今度は式場の外での撮影となります」

 

そう言って案内で外へ出る。

快晴とはいいがたく、中の撮影の間に天気が変わっていたのか曇り空になっていた。

そして、ピオーネの言っていた気配を俺も感じる。

 

「それではいきますよ……」

 

そう言ってカメラマンがカメラを構えた瞬間、空気が凍った。

そして崩れ落ちるようにカメラマンが倒れる。

 

「……ターサ、ゲンサイを連れて早く家に帰るんだ」

 

この気配。

そして瞬く間にカメラマンを気絶させる手腕。

ピオーネに一撃を掠らせるだけの力。

 

「殺し屋が遠路はるばるここまで来るのね」

 

花嫁衣裳のまま構えるピオーネ。

どう考えてもハンデだ。

着替えた方がいいだろうに。

 

「誰が依頼人だ」

 

黙って見過ごすわけもない。

俺もすでに全力の状態でヒットを睨む。

 

「それを言ってしまうと商売が成り立たん」

 

そう返してくると不思議なことが起こる。

風景すら変わっていた。

そして感じるのはまるで時が止まったような錯覚。

心臓に一撃を喰らう。

 

「がっ……」

 

後ずさりをして何とか一命をとりとめる。

ふらつきそうになるがこれは先日の挌闘大会のものとはまた違う。

人を殺せる技だ。

 

「これがお前の本当の力か……」

 

息を吐き出して再度構える。

じりじりと近づくがいつもとは全く違う。

まるで自分からヒットの制空圏に入っているような感じだ。

間合いがその分広いということだろう。

 

「今の一撃で決まったかと思ったがな」

 

見たところ、お前と俺は互角。

バーダックさんがほんの僅か抜きんでている。

そしてその後ろをカカロット達がついているような状態。

破壊神の7割強が今の俺達。

怒りで爆発したら同格かもしくは超えてしまう事もある。

 

そして、いまだにあれ以降戦闘していないが、ピオーネがやはり未知数。

どれほどの強さなのか、そのベールが解かれる。

 

「こっちが相手でしょ?」

 

花嫁衣裳のまま、飛び蹴りを放つ。

着替える時間すらもったいないのか?

それを頭を下げて回避するヒット。

 

「フンッ!」

 

ヒットが一撃を放つ。

それをピオーネは……

 

「ほいっ!!」

 

掴んでいた。

時飛ばしでもないが最大の速度を持っている一撃。

そしてそのまま一本背負い。

 

「普通にやっては意味が無いようだな」

 

そう言って時飛ばしから一撃を放つ。

俺が無防備に喰らった一撃。

その一撃に対してピオーネは対応しようとする。

 

「そこっ!!」

 

腕を交差して受け止める。

そして合点がいったように頷く。

 

「少なくても死角あたりは気を付けておけばいいわね」

 

首筋だったからだろう。

だがヒットの攻撃が一撃で終わるわけもない。

 

「ぐっ!?」

 

速射砲のように連続している。

ため込むのではなく小出しにして徐々にタイミングをずらす。

受け止めきれずに後ずさり。

対応が速く、相手に合わせないのはこの宇宙のサイヤ人にも見習ってほしい。

特にカカロットには。

 

「死角が無理ならば正面突破も可能だ」

 

まだ時間を飛ばす事が出来る。

そう言って力を込めている間。

もう一つの気配。

この雰囲気はよく知っている。

なるほど……

 

「破壊神が依頼主とは」

 

半魚人のような見た目の破壊神。

不敵な笑みを浮かべている。

 

「わが宇宙の英知を返却したとはいえ、一度盗んだのだ」

 

その償いである。

そう言ってじろりと見る。

そして口を開く。

 

「それでなくとも、たとえ全王様が許しても、バンヤの民なんぞ百害あって一利なし」

 

お互いの戦いが伯仲しつつある。

時飛ばしへの完全な対応はまだだが徐々に対応する速度、身のこなしの向上。

やはり俺よりも強い運命にある。

 

「このジーンが破壊神の威光をもって壊す!!」

 

手をかざして『破壊』をもくろむ。

しかし……

 

「させるかぁ!!」

 

前蹴りで蹴り飛ばす。

行動を中断する。

こっちを睨んでくるが問答無用。

 

「自分の大事な人をむざむざとやらせるほど愚かじゃない」

 

全力で向かっていく。

最近は神の類との勝負ばかり。

いい加減飽き飽きしていたところ。

 

「だが、こうなったら話は別だ!!」

 

蹴りを放つ。

それを波が凪ぐように受け流す。

そこにカウンターで人中へ拳を放ってくる。

その一撃に合わせて頭突き。

危険性に気づいたのか拳を止めて距離をとる。

急所を狙う合理性。

相手の攻撃を利用する打算的な思考。

破壊神の中でも素晴らしい存在ではある。

 

「一つ質問だがあんたはビルス様より強いのか?」

 

だが、どうも気になる。

ビルス様と同格ならば俺の攻撃なんて効かないと誇示できる。

そうすれば精神的に追い詰めて『破壊』をやることもできたのに。

 

「破壊神の中でも最強があいつだ、それと同格が双子故にシャンパ、つく天使は強さに直結はしないがな」

 

苦々しいというか悔しさがにじみ出ている。

やはりすごい人だったんだな。

 

「そうかい……」

 

腹に一撃を加える。

緩やかに急加速もなく。

殺気すら滲ませない明鏡止水の一撃。

 

「がっ……」

 

相手に合わせたカウンターもこうなると難しい。

究静極技の世界。

静かさを追い求め、技を極限に研ぎ澄ませた。

受け止めるより早くただ吸い込まれるように。

 

「今の俺でもまだやりあえるってわけだ」

 

ビルス様の9割が普通の破壊神のレベルだとしたら肉薄できる。

依頼を取りやめてもらう。

そして……

 

「『破壊』をさせない」

 

手四つとなって指を砕きに行く。

力勝負でも負けていない。

 

「ムムム……これほどの使い手がビルスが担当する宇宙にいたとは」

 

そうは言うが力を抜いてこっちに押し込ませる。

そしてブリッジの状態から俺を蹴りあげていく。

 

「直情的な動きだな、嫌いではないがやりやすいものだ」

 

そう言って一気に飛び上がって上に陣取る。

しかしそれでは意味がない。

 

「はっ!!」

 

瞬間移動で消える。

どこに出ると思う?

 

「そこだ!!」

 

後ろに向かって蹴りを放つ。

だがそこには居ない。

何故ならば……

 

「フンッ!!」

 

顔面に一撃を加える。

相手はなぜ喰らったのか。

それを一瞬で理解して笑っていた。

 

「まさか、消えた後に同じ場所へ移動していたとはな……」

 

結局は疑心暗鬼となって後ろに蹴りを出した分、無防備となった。

これで破壊神を相手に二発もの攻撃を当てている。

そしてピオーネの方にも進展があったのか、ヒットが地上で片膝をついていた。

 

.

.

 

かなりの手練れなのは分かっていた。

こっちの死角に潜り込んでの一撃は実力に違わずすさまじいものだった。

こうして向かい合えばわかるが、彼の拳は剃刀のように鋭くなったり、岩のように重くなったり。

技術や力の入れ方で変幻自在になっている。

 

「今のあの子と互角ぐらいと思えばいいのかしら?」

 

実力としてはあの対抗戦でも随一。

それに10倍界王拳を使ったブルーの悟空君でも勝てなかったものね。

まあ、自分から降参したからだけど。

 

「それは買いかぶりすぎだ、あれから成長はしているがあいつの練度には劣る」

 

とは言っても隔絶された次元ではないはず。

だからあの攻撃を今の私では完全に対応できない。

死角と予想して最初の『時飛ばし』は掴んだ。

あの練度ならばどこに打ち込んでもダメージになる。

あまり初めのやり取りは参考にならない。

 

「はっ!!」

 

時が止まったように自分が回避することのできない一撃を放つ。

それを受け止めて即座にその場所へ蹴りを放つ。

しかし……

 

「なっ!?」

 

すり抜けていく。

まさか今見ている姿は幻影なのかしら。

 

「残念だったな」

 

その言葉と同時に心臓に一撃を叩き込まれる。

後ろに飛びのいたことで威力の軽減をした。

それでも死神が命を奪う影が見えた。

あまりにも恐ろしい攻撃。

一撃必殺。

殺し屋の名は伊達じゃない。

 

「なるほど……きわめて短い時間を移動することで生じた空間」

 

位ながらも状況整理を行う。

0.1秒の単位で時の流れを移動する。

それによって生まれたいわばパラレルワールド。

さらにそれを積み重ねることで長い時間、その空間に身を置く。

今攻撃をした時に映っていた姿は、移動前の存在。

 

「実体はその『時飛ばし』の中にいる」

 

残像ではないが実体でもない。

気を付けるのは初動から次に移行する瞬間。

 

「飛んだあとの姿を捉えない限り、そちらには攻撃も当てられない」

 

それが悟空君がやった先読みのようだけど……。

こんなだだっ広い場所。

間合いの事。

それを踏まえると参考にならない。

 

「つまりお前は俺の攻撃を防ぐ事で精いっぱいだ」

 

そう言って攻撃を仕掛けてくる。

頭を下げて回避をするも、次の瞬間には踵落としが襲って首筋を狙う。

 

「ぐっ!!」

 

前転をして回避をするが片膝をつく。

それを好機と見たか連続で攻撃を仕掛けてくる。

瞬間移動で距離をとる。

 

「はっ!!」

 

『時飛ばし』で狙ってくるのは心臓だけではない。

ありとあらゆる急所。

死に至らしめる事の出来る場所がねらい目。

 

「むっ……」

 

回避をしたけれど目を突いてきた。

貫通すれば脳まで達する。

危ないわ。

 

「フンッ!!」

 

放った瞬間はどうしても実体が浮かび上がっている。

それに対して裏拳を放つ。

 

「無理だ」

 

『時飛ばし』で回避される。

絶対防御にも等しい、攻防一体の技能。

でも手ごたえはある。

あと、コンマ数秒速くすれば当たるわ。

 

「仕事をさせてもらう」

 

そう言って拳を振るう。

速度自体は問題ない。

それを受け止めて殴る瞬間……

 

「罠だ」

 

『時飛ばし』でまたもや避けられる。

気配は後ろ。

次に狙う急所は……

 

「フンッ!!」

 

ぞわりと寒気がした。

即座に振り向いて腕を掴みにいく。

 

「腎臓狙いなんて怖い怖い」

 

掴むことはできなかったけれど軌道を逸らした。

相手への攻撃を放つが手応えがあった。

今は掠っただけ。

次は間違いなく当てる。

 

「こいつ……」

 

そう言って攻撃を仕掛けてくる。

これで何度目になるだろうか。

しかし反応ができるようにはなっている。

風景が変わっていた。

そして実体が来る気配、空気の震え。

それは雄弁に攻撃のタイミングを教えていた。

 

「そこっ!!」

 

私はそれらの情報から攻撃の軌道を完璧に読み取る。

そしてついに……

 

「貴方が強いお陰で……」

 

『時飛ばし』の攻撃を掴む。

そして腹に蹴りを入れる。

 

「ぐ……」

 

再度『時飛ばし』で攻撃を仕掛ける。

でももはや……

 

「私はさらなる高みに至ったわ」

 

『時飛ばし』への完璧な対応。

反応して攻撃を受け止める。

そして前蹴りでまた腹に一撃を加えた。

 

「これが…破壊神が出し渋った隠し玉か」

 

出自が全宇宙の存亡にかかわるから隠しただけなんですけどね。

そう言って片膝をつく。

私が『時飛ばし』に対応したこと。

さらに追撃で一撃を喰らってしまったヒットさん。

閃きはあるようだけれども、今この場で許すほど弱くはない。

 

しかしそんな中、一つの影がヒットさんの前に立った。

 

.

.

 

「あれは……シャンパ様!!」

 

俺は影をよく見る。

ジーン様を睨んでいる。

まあ、他宇宙の破壊神が自分の宇宙の人間に依頼しているんだからな。

 

「悪いが依頼は破棄してもらうぜ、ジーン」

 

そう言っていざという時に備えて構える。

ヴァドスさんも降りている。

 

「しかしその女は……」

 

そう反論しようとするともう一つの気配。

これは分かる。

ビルス様が俺の前に割り込むようにして手を伸ばしている。

 

「全王様がいいとおっしゃったんだ、お前、全王様に逆らうつもりか?」

 

そう、ビルス様が言うと苦々しい顔をするジーン様。

するとくるりとこちらに背を向ける。

 

「依頼の破棄はしておこう」

 

諦めたように言って後ろを向く。

去り際に俺を見ていた。

一言、ぽつりとつぶやく。

 

「第七宇宙のガタバルか、覚えておく」

 

何が覚えておこうだろうか。

結局あの後は縋りつくような勝負にしかなっていなかった。

気弾以外の技を全て切り返されてしまう。

そしてそのまま芸術的なカウンターの餌食。

カウンターをさらにカウンターで返したりもしたが、相手がうまくいなしたりして効果的な一撃にはなりえなかった。

ただ、一つだけ確信があった。

 

「自分でも言ってましたけどビルス様よりは弱かったですよ」

 

そう言うと、口元を笑みの形に浮かべてこっちを見る。

自分は凄い破壊神なんだぞと胸をはっている。

 

「そりゃ、そうだ」

 

こうなれば直々に稽古をつけてもらわないといけない。

今すぐにでもだ。

そう思い、頭を下げていた。

 

「自分に稽古をつけてください……お願いします!!」

 

その姿を見て頭に手を置かれる。

顔をあげるとそこには穏やかな顔があった。

 

「任せろ、僕が全力でお前を強くしてやる」

 

その言葉が自分にとって次の戦いにおいて重要だと確信できた。

そして見える未来。

それはあまりにも恐ろしい戦い。

何が何でも止めなければならないもの。

震えを鎮めながら深呼吸で落ち着くのだった。




ガタバル、破壊神の愛弟子になる。
ちなみに消滅した宇宙のキューブの残り5つも考えてはいます。
ジレンみたいに破壊神を超える逸材なんて普通は見つからないものですよね。
本作の第七宇宙の最強メンバー考えると平均値が非常に高そう。

指摘などありましたらお願いします。


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『力の大会』編
『全覧試合』


ご都合主義ではありますが『力の大会』編始めます。
メンバーとしては最強戦力をぶつけに行くといったコンセプトです。
亀仙人のじっちゃんはアニメ通りに普通に戦力になります。



カカロットが全王様の所に行くと言い出したのだ。

ヒットとの戦いから、俺はビルス様とマンツーマンで修業をつけてもらっていた。

ピオーネは自宅にいる。

またもや伸びた力に対して瞑想で制御をできるようにしている。

今までは制御できていたのだが、もはや天井知らず。

未知数の伸びしろのため、おさまりが効かない可能性もあった。

 

「ガタバル、お前も行け」

 

ビルス様がカカロット一人ではやらかしかねない。

そう言って俺を向かわせる。

 

「おめえが来なくてもオラだって礼儀ぐれぇなんとか出来っぞ」

 

信用できないからこうなっているんだよ。

そう言ったことが分かっていないから頭を抱える状態になるんだ。

 

「とにかく、無礼なことは言わねえでくれよ」

 

お前が言うな。

お互いが道着の時点でいかがなものかと言われそうだが。

 

入ると大神官様が迎えてくださった。

 

「お久しぶりです」

 

頭を下げて挨拶をする。

全王様の所まで案内してくださった。

すると唸りながら惑星のチェスをしていた。

相手は未来から来た全王様だったのだ。

送っていたのはトランクスのようだ。

こっちに気づくが、全王様の手前、喜ぶ訳にもいかない。

 

「こっちの宇宙多いね」

 

面倒くさそうにつぶやいている。

何か恐ろしい前触れのような気がしてならない。

未来のあの風景の原因になっているのではないだろうか?

 

「こっちは前の事から全ての破壊神と界王神を僕の宮殿で一緒に集めて管理しているよ」

 

未来の方ではザマスの凶行によりすべての宇宙の破壊神と界王神に被害が及んだ。

それの余波で全宇宙の破壊神と界王神たちで会議をして破壊の対象を決めたり、生み出す生命の存在の話し合いなど、治安にさらに力を入れている。

 

「うーん、面倒だし……消しちゃおうかな」

 

俺にははっきりと聞こえた。

ぽつりとつぶやく程度ではない。

近くにいたトランクスにも聞こえていたのか青ざめる。

 

「あっ、悟空!!」

 

全王様がカカロットに気づいて声をかける。

トテトテと音が出る歩き方だ。

凄いお方なのに、子供のような印象だ。

 

「そう言えば、全ちゃん……前に言ってた挌闘大会なんだけどさ」

 

お前、軽いなぁ。

全宇宙で最強の戦士を決める戦いか。

全開の対抗戦の時にも言っていたな。

 

「うん、楽しそうだからやってみるのね」

 

負けず劣らず軽いお方だな。

そう言って笑っていた。

カカロットは分かってすらいない。

この笑みがとんでもない事を引き起こす意味がある事を知っているのか?

 

「あんがとな、全ちゃん」

 

そう言ってカカロットの奴が去っていく。

あいつ、俺を置いていく気か?

お前が提案する前に何を呟いていたか。

何を考えていたか聞かなかったのか?

 

「全王様、すみませんが今おっしゃったことは全て真実でしょうか?」

 

カカロットの奴が気づく前に俺は全王様に質問をする。

聞き間違いであってほしいと願った。

 

「うん、今回参加する予定の8つの宇宙で、勝った宇宙と天使を除いて消えてもらうのね」

 

純粋な目でこっちに返答をする。

本気でただ宇宙が多いだけでこのお方は消滅させるつもりだ。

俺はそれではまずいと全王様に提案をする。

 

「消滅ではなく、今の破壊神と界王神を業務の補佐にしてしまえばいかがでしょうか?」

 

自分でも恐れ多い事をしているのは分かる。

しかしそんな多いという理由だけで消すのならば負担が減ればいい話。

これならば別にさほど問題は無いはずだろう。

 

「後継者はその破壊神、界王神双方の推薦のものとして昇格ということですね」

 

大神官様の言葉に頷く。

すると全王様にそれでいかがですかと進言をする。

 

「今回で楽しい戦いが見れたとしても次は見ることができないですよ」

 

そこに俺が言葉をかぶせる。

そう言うと全王様が唸る。

そして……

 

「確かにそれなら僕も負担軽いし管理できるのね、じゃあその昇格を商品にするのね、MVPにはえっと……超ドラゴンボールにするのね」

 

今までの12から大幅に減る。

優勝宇宙から4位までの宇宙の破壊神と界王神に任せる。

人間レベルの上昇はその担当する上位神との話の結果で変わっていくだろう。

だがそれで納得したのは嬉しいのだが……。

 

「でも、そうなったら12の宇宙が参加するし多すぎたら困るから篩にかけるのね」

 

今の上位4つの宇宙は除外してそれ以外の宇宙は80名のバトルロワイヤル。

上位の者たちは特別扱いするということだ。

本来ならば消滅させる意味もない宇宙。

だからこその処置だろう。

その後にもう一度楽しめる催しを行う。

ただし……

 

「名目上は本気を出させるために『消滅』を掲げるのね」

 

やる気はない。

だが本気になってくれないと楽しくない。

だからこそなのだろう。

ただ……

 

「貴方は口が堅いですか?」

 

俺には完全に知られてしまっている。

これで軽い場合は消滅すら辞さないということだろう。

 

「はい、それについては秘密を漏らすような真似はしません」

 

そう言うと微笑まれた。

そして帰るために全王様の宮殿から出ると……

 

「悟空さん、帰ってしまいましたね」

 

トランクスに言われる。

全王様の宮殿から出てきたらあいつの影は無かった。

 

「仕方ありませんね……」

 

大神官様が手を取る。

トランクスも帰るようだ。

 

界王神界に戻るとビルス様にカカロットが怒られていた。

置いてくるとは何事だ。

 

「今、戻りました」

 

大神官様に深々と頭を下げる。

よろしいのですと一言。

そして今回の事について話し始める。

 

「まずは本来の戦いの前に全宇宙の破壊神、界王神、天使の前での試合、『全覧試合』を行います」

 

全宇宙から1名ずつ選手を選出。

第1と12、第5と8は別トーナメント。

残った八人で別トーナメント。

上位4宇宙代表と下位8宇宙代表の決勝戦という形にする。

 

「最強レベルを出すもよし、その後の戦いのために温存するもよしです」

 

そしてその後に今回の戦いの概要を伝えるらしい。

恐ろしいペナルティがある事をにおわせて帰っていった。

 

「おい、ガタバル……」

 

ビルス様が見てくる。

恨めしげな眼を向けてくる。

黙っておかないといけない。

 

「全王様がそうおっしゃったものを覆す事が出来ますか?」

 

申し訳ない顔を向ける。

ビルス様は唸っている。

破壊神の自分でもできない事を言う事なんて不毛極まりないからだ。

 

「こうなった以上、最強の面子を集めるしかないですよ」

 

そう言ってメンバー探しに着手しようとする。

だがビルス様からメンバーに当確させておく面子を言う。

人数の通達がないが真剣そのものである。

 

「10人と仮定して……おまえとピオーネ、悟空にベジータ、そしてブロリーとサラガドゥラは必要だ」

 

そこに俺は亀仙人様を加えておく。

戦闘の経験値の豊富さは俺達の比ではない。

そして絶対に欲しいのは……

 

「残りは4名、カカロット、お前が悟飯とピッコロ、亀仙人様を説得してこい」

 

そう言って俺は10人目の選手を探しにいく。

当てはあるがきっとあの人は断る。

第6宇宙への恩義があるからだ。

だったら……

 

「お邪魔します」

 

宇宙を放浪しているので界王様の力を借りて捕捉した。

フリーザの宇宙船の門に居た。

宇宙空間はしんどいのできちんと中には入っている。

 

「どうしたんだ?」

 

前回の襲来で来なかったボージャックじゃないか。

おまえ、大丈夫なのか?

 

「フリーザに重要な話がある」

 

そう言うとスイスイと通される。

Vip待遇のようなものだ。

しばらくしてフリーザが現れた。

 

「どうしたのですか?」

 

急いできた理由にワクワクしている。

面白い事があると分かっているのだろう。

だが、今回に限ってはそんな余裕もなくなるぞ。

 

「実はな……」

 

今回の戦いについて説明をする。

代表選手は定かではない。

しかし準備はしておいてほしい。

『消滅』についての説明。

そしてフリーザの興味を引いたのは……

 

「最も優秀だった戦士には『超ドラゴンボール』ですか……」

 

どんな願いでも本当の意味で叶えられる存在。

宇宙の復活すらも可能だろう。

 

「ただ使い道が思いつきませんけどね」

 

そう言ってほほ笑む。

そしてこちらに向き直って一言言ってきた。

 

「ほかならぬあなたの頼み、聞いてあげますよ」

 

それでは、概要が決まればまた教えてください。

そう言われて宇宙船から界王神界へ瞬間移動をする。

 

「とにかく悟飯達には話しといたぞ」

 

カカロットが言ってくる。

ちなみにサラガドゥラはじかに聞いていたからすぐに参戦を希望した。

師匠が消えるかもしれないのに参加しないなんてありえないといったらしい。

 

「あとはベジータとピオーネとブロリーか……」

 

しかし問題はここではない。

まずは『全覧試合』に出るのを決める。

俺が出ようとしたら……

 

「折角、力上げてきたのにばらす必要はない」

 

ビルス様に止められた。

そうなると……

 

「ブロリーかピッコロがいいですよ」

 

あの二人の実力でも決して悪いわけではない。

悟飯は仕事の都合上、この二人が候補だ。

そう思っていたら手を挙げてサラガドゥラが言う。

 

「久々に俺に出させてくれ」

 

ブウとの戦いからずっとお前戦っていないけど大丈夫なのかよ。

そう思っていると気を噴き出させる。

それはブルー状態のカカロットとほとんど同じぐらいだった。

 

「あれから鍛錬を怠る俺とでも思ったか?」

 

ニヤリと笑う。

その一言で全員がサラガドゥラで行くということになった。

そして大神官様の通達より一週間がたって、『全覧試合』が始まる。

 

そして第7宇宙の席には天使であるウイスさん、界王神、老界王神様、界王神候補のサラガドゥラ。

破壊神であるビルス様、破壊神候補である俺、そしてピオーネとカカロット。

大所帯であるがゆえに他の宇宙に注目されている。

 

ちなみに『力の大会』については全員に伝えておいた。

するとその時、ベジータが苦い顔をしていた。

事情は聞いていないが、ブルマさん関係だろう。

 

「しかしさすがに前哨戦で最強クラスを出すのは無いか……」

 

俺はざっと見渡すがシャンパ様の宇宙では今回はキャベを投入。

第2宇宙ではヤードラット星人か、懐かしい顔だ。

第3宇宙ではポラポラと言っているいかにも機械というような人。

第4宇宙では帽子をかぶった青年。

第9宇宙では蒼い狼の男。

第10宇宙では相撲取りの男。

第11宇宙はビルス様によく似た奴が代表選手。

大きな男が破壊神候補だろう。

シード組は統一したのかナンバー2クラスだろう。

しかし強さが少なくともブルーのカカロット並みは用意している。

それ以上となるとまさかとは思うが……

 

「流石は上位4宇宙……破壊神以上の者がいてもおかしくありませんねぇ」

 

ウイスさんも言う。

そしてぽつりとつぶやく。

消滅宇宙のキューブは何処に行ったのかということだ。

つまりピオーネほどではないが凄まじい相手がどこかの宇宙に潜んでいる。

 

「破壊神や界王神でもわからない辺境の星であればこの場に連れてこれなくても仕方ないですから」

 

そう言って抽選が始まる。

気になったのだがウイスさんに聞いておくことがある。

 

「ちなみに、人間レベル5位はどの宇宙ですか?」

 

ウイスさんが言おうとした瞬間に今、サラガドゥラが引いた2番と11宇宙の奴が引いた1番で試合が決まる。

それを見て笑う。

つまり……

 

「いきなり、下部宇宙最強とぶつかりますねぇ」

 

その後も抽選が進み、カードが決まる。

そして試合が始まる。

サラガドゥラと11宇宙の選手が向き合う。

大神官様が手を上げる。

 

「第1試合……始め!!」

 

その言葉で『全覧試合』が始まった。




ちなみにトーナメント参加選手。
第1宇宙:ケブルー 第12宇宙:ケージン
第2宇宙:ジーミズ 第11宇宙:ディスポ
第3宇宙:ポラレータ 第10宇宙:ナパパ
第4宇宙:ガノス 第9宇宙:ベルガモ
第5宇宙:アレキサ 第8宇宙:デンド
第6宇宙:キャベ 第7宇宙:サラガドゥラ

消滅宇宙の奴らはピオーネ程ではないですがどれも手練れ揃いです。
破壊神の強さにも序列があるのが漫画版で分かりましたから、一概に破壊神以上と言っても別宇宙の破壊神に勝てるのかという話につながりますね。

指摘などありましたらお願いします。

※2018年1月28日:
第5宇宙の破壊神のアラクと第8宇宙の破壊神のリキールが逆になっていましたので修正しました。
あと第1宇宙のケブルーをケルブーから変更しました。


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『出陣のサラガドゥラ』

『全覧試合』はこの1話でまとめました。
正直、負けの図があまり思い浮かばないやつの上位ですね。
魔術が異常な汎用性、界王神従事による『復活パワー』、地力がブルー並み。
勝てるのはヒットとか各宇宙の中でもトップかと思います。


「風にでもなったか……」

 

目の前から消えたウサギ星人、ディスポ。

彼の動きを目で追うのは無駄なことだ。

その視線を動かした死角から攻撃をしてくるだろう。

 

「……!!」

 

背中からか。

ならば地面に伏せる。

 

「むっ!!」

 

そのまま通りすぎていく。

速い事は速い。

しかしあの動きから弱点を見つけた。

だが教えてやる気はない。

 

「随分と速いな、音を置き去りに光さえも置き去りか?」

 

伏せた状態から立ち上がってディスポを見る。

問いに応えずに笑みを浮かべる。

ならば……

 

「次はこっちだ」

 

こちらも斜め前へ向かって姿を消す。

追い抜かれているか後ろに回っている。

場外負けのルールがある以上、こちらも自制している。

 

「フッ!!」

 

急ブレーキをかける。

すると目の前に現れる。

やはり追い抜かれていたか。

 

「どこに行く気だ?」

 

こちらの問いに答えないのにこたえる義理は無し。

そう、視線を向けてまたもや姿を消す。

今度は左側へだ。

 

「無駄だ!!」

 

そう言って追い越すディスポ。

ある程度に行けば急ブレーキをかける。

 

「そら!!」

 

それに合わせるように蹴りを放つ。

腕を上げて受け止める。

 

「ふん!!」

 

三度目の消失。

初めの場所へ斜め下に向かう。

流石に痺れを切らしたか。

だがこれは作戦。

ワシの強さを見せてくれる。

一人称も老人になってしまってため息が出るわ。

 

「そこだ!!」

 

腹部を殴られる。

その一撃に蹲る。

その姿を見下ろすが大して効いてはいない。

作戦でしかないのだ。

 

「逃げ回るだけの雑魚が、『プライド・トルーパーズ』の切り込み隊長である俺に叶うと思ったか!!」

 

思っているさ。

小童の鈍感さには溜息しか出ない。

直線的な動きしかできない方が雑魚だ。

 

「場外に落ちるがいい!!」

 

足を振り上げた時。

ワシは指を鳴らす。

『3回』動いたのだ。

そして、その動きは何か?

『逆三角形』の結界を作ったのだ。

 

「ぐわぁああああ!!」

 

ディスポが深紅色の三角錐の柱に呑まれる。

気弾の一種だがどうだろうか。

 

「ぐっ!!」

 

超速で抜け出すがもはや終わりだ。

何故ならば……

 

「今の間に領域を増やしておいた」

 

向かい側に三角形を作っておいた。

そして再度呑み込む。

 

「うあああああああっ!!」

 

またもや超速で逃れようとする。

しかしもうすべてが手遅れ。

 

「逃れる場所はもうとうにないのだ」

 

四方全てを三角形で埋め尽くした。

自分が立つ所以外は全てが領域。

 

「なんだと……」

 

体から煙をあげるディスポ。

しかし、目はまだこちらを睨み付ける。

ならば、心を圧し折ってやろう。

 

「ハアッ!!」

 

目の前から消える。

だがそれに応じてこちらも動く。

 

「なっ!?」

 

ディスポが驚きの声を上げる。

無理もないだろう。

何故ならば……

 

「捉えたぞ」

 

そう言って後ろから抱え込む。

ボディスラムの要領だ。

ダメージからもがいてもほどけない。

体勢は整った。

喰らうがいい。

飛び上がってディスポの頭を足の間に挟み込む。

両膝を曲げて落下していく。

 

「『墓石式脳天杭打ち』!!」

 

またの名を『ツームストン・パイルドライバー』という。

着地と同時に固い武舞台の上に頭を打ちつけさせる。

凄まじい音を立てていた。

 

「グヘラッ!!」

 

ディスポが血を吐く。

白目をむいて戦える状態ではない。

 

「まずは年長者への礼儀からやり直せ」

 

そういってディスポを場外に投げる。

そのままゆっくりと落ちていき勝利を収めた。

 

そして、一回戦の全ての戦いが終わる。

第4宇宙のガノス。

第6宇宙のキャベ。

第9宇宙のベルガモ。

彼奴らが勝利を収めた。

 

ガノスは第3宇宙のポラレータに対して電流を流し込み、自壊させての勝利。

普通に戦っても勝てただろうな。

身のこなしといいいあのやり方。

変身型の宇宙人とみていい。

 

キャベは第10宇宙のナパパと対戦。

ナパパは場外狙いのつもりが、速度を活かして懐に入り込まれる。

そしてそのままキャベが自らの体を引いて自分と相手の体をぶつけ、その衝撃で浮いたナパパの体を超サイヤ人で持ち上げて投げる。

見事な勝ち方で勝利をした。

 

ベルガモは第2宇宙のジーミズとの対戦。

瞬間移動を巧みに使い、攻撃を加えるジーミズ。

序盤から優勢かと思われていた。

しかしベルガモの力を知り、驚きを隠せなかった。

ダメージを負うたび、攻撃を受けるたびに巨大化していく。

そして、上へ瞬間移動したジーミズを叩き落とし、場外まで飛ばした。

その一撃でのジーミズの命に別状はなかった。

相手の能力をいかに封じるか。

それを考えていた。

 

「それでは第7宇宙代表:サラガドゥラと第9宇宙代表:ベルガモ、前へ」

 

大神官様に呼ばれる。

体が標準のサイズに戻っている。

一試合ごとにリセットしないとだめなのか。

 

「第5試合……始め!!」

 

その言葉と同時にベルガモの頭を掴む。

まず、狙いは瞬間の決着。

 

「飛んでいけ!!」

 

場外どころか第9宇宙の奴らが座っている場所へ投げ込む。

しかし、そうはいかない。

気弾を口から放って武舞台に戻る。

まあ、それでも……

 

「『フィアー・パンデミック』!!」

 

カラスの羽根の気弾が体に纏わりついていく。

消滅はさせないが落下が緩やかになっていく。

徐々に力が抜けているのだろう。

 

「ぐっ……」

 

ベルガモが着地をしようとした瞬間。

その箇所へと気弾を放つ。

奴がダメージで巨大化するのならば答えは簡単。

速攻で大きくなる前に倒す事。

そして場外負けがあるのならば……

 

「足元を崩せばいい」

 

足場を大きな気弾で吹き飛ばす。

奴にも余波はいっているだろう。

 

「ぐぉおお!!」

 

なんとか着地をする。

しかし奴は無防備なまま、ワシの一撃を喰らうのだ。

バック転をしているのだ。

気弾を足場にして高さを稼いだ。

本来ならば仰向けになった相手の腹部に見舞うものだが……

 

「喰らえ!!」

 

月面に弧を描くように鮮やかに。

ベルガモの背中に攻撃が当たる。

背中から骨の砕ける音が聞こえる。

 

「ぐはぁ!!」

 

ダメージを転化する前に重要な肉体部分における損傷。

それは治す事が出来なかったのだろう。

白目をむいてピクピクとしていた。

決まり手は『ムーンサルト・プレス』。

ブロック代表の決定戦に駒を進めた。

 

そして、ワシの相手が決まる。

第6宇宙のキャベだ。

しかし探りあいというのがよくわかった。

ガノスは変身していない。

そしてキャベもまだ壁を越えられる。

 

「前哨戦とはいえ少々やりすぎたか?」

 

まだまだ頭脳プレーのおかげでそれほどの攻撃を喰らっていない。

もしくは相手に油断があり、それを利用しての勝利。

殴りあったり苦戦の状況がない。

仮にディスポが方向転換が出来ていたなら、こっちに対して油断していなければ結界なんて使えなかった。

直線的な動きという欠点と傲慢さがあったから勝てた。

ベルガモが試合前にリセットされない、もしくは自傷行為で事前準備をしていたら苦戦していた。

流石は宇宙の選りすぐりの戦士だ。

少しでも油断があったり、楽しもうとしたら足元をすくわれるだろう。

 

「それでは第6宇宙代表:キャベと第7宇宙代表:サラガドゥラ、前へ」

 

ワシも相手も見合う。

超サイヤ人になっていないようだが……

まあ、いずれにせよ勝って探るのみ。

前哨戦とはいえど勝っておけば警戒する。

されてはまずいだろうが、どうせ原因を知られて恨まれているのだし今更だが。

 

「代表決定戦、始め!!」

 

その言葉と同時に超サイヤ人となって攻撃を仕掛けてくる。

ラッシュも何もかも今までの相手とは違う。

今までの相手には油断があった。

しかし、彼は誠実な戦士。

相手が全力であればそれに相対し、相手が余力を残すのならば自分も残す。

だが、あえて言うのならば……

 

「常に全力で挑んでもらいたい」

 

相手に合わせてしまうとそこで成長速度を緩めてしまう。

相手をいたぶりたくない気持ちは優しさだろう。

だがある種の失礼に当たる。

ラッシュの腕をとって投げる。

それを難なく着地をする。

 

「はっ!!」

 

それに合わせてこちらも動く。

ラッシュを返していく。

軽やかに避けてはいる。

だがまだまだ荒い。

伸びしろはあるが……

 

「フッ!!」

 

息を吐き出し攻撃を避ける。

だがその避け方は次の軌道を読んではいない。

 

「拙いー!!」

 

ハイキックをこめかみに叩き込む。

よろめいている。

腹部へ連続の蹴りを放つ。

 

「ぐっ……」

 

反応をしている。

だがフェイントかどうかを見分けていない。

これはフェイントだ。

本命は顎へのアッパー。

 

「遅いー!!」

 

ピクリと防御する方向を変えるも当たる。

空中に舞い上がる。

それを跳躍で追い越し、殴って武舞台へうつ伏せになるように打ちつける。

 

「ぐっ……」

 

相手が立ち上がろうとするが次の瞬間のしかかる。

息を吐き出すが、ここで攻撃の手を緩めはしない。

とどめとなる技を放つ。

 

「終りだ、『駱駝固め』!!」

 

またの名をキャメルクラッチ。

ミシミシと音を立てていく。

背骨が軋む音。

 

「ぐああああ……」

 

抵抗をしても跳ね上げられない。

超サイヤ人になっても無意味だ。

確かに実力のすべてを尽くせているのかと聞かれれば疑問符はつく。

だが、技術も力も全力なのは嘘偽りがない。

言いたくはないが相手がこちらを測ろうとしたり、油断しているから肉薄しないのだ。

そういった純度を濁らせていて勝利への貪欲さが見えない。

本番ではないからか?

馬鹿げている。

何時も如何なる時も勝利に喰らいつけ。

それが俺のかつての宿主の思想。

それに共感を覚えるが故に……

 

「勝利に邁進しておるのだ!!」

 

絞めあげるのをさらに強くする。

このままいけば死ぬだろう。

背骨が折れてしまう。

 

「解けないのならば試合を放棄しろ、死ぬぞ」

 

もしくは痛みのショックによって意識を失う。

キャベはそれでも跳ね上げて己の手で打開しようとする。

だが……

 

「ならば……死ぬしかないな、キャベ!!」

 

そう言って一気に力を強めようとする。

しかし、その瞬間、大神官様に止められる。

 

「殺すのはいけませんよ、キャベさんの負けです」

 

白目をむいて気絶している。

いかんいかん、熱くなっていたか。

しかし、地力の問題すらあるんじゃないのかね。

 

そして8宇宙の代表がワシに決まる。

上位4宇宙の代表は第5宇宙のデンド。

身のこなしも素晴らしいというほかない。

 

「これは気概も十分……楽しみだ」

 

全力でやっていたがもやもやとしたものが残る。

それを晴らしてくれるだろう。

相手もこちらの視線に気が付いたか、指を動かして今すぐやろうと誘ってくる。

 

「良いぞ、その心意気は滾る……」

 

両者、武舞台に立って睨みあう。

怒りではなく喜び。

どれほどかを互いに目で測る。

 

「それでは『全覧試合』決勝戦……始め!!」

 

その言葉を聞いて互いにロックアップの体勢になる。

ギリギリと音を立てていく。

力の大きさが判明していく。

判定は下った。

 

「ぬぐぐぐ……」

 

ワシが押されてしまった。

それが意味するのは一つ。

デンドの方が強い。

ズイズイと押し込まれたわけではない。

互角ぐらいから僅かに寄っているような差だ。

 

「中々の手練れですね、だが負けない!!」

 

そう言ってロックアップを切られ、蹴りを放たれる。

膝をつけさせるほど、押し込めないならばというわけだ。

 

「ぐっ!!」

 

掌で受け止めて後ろに飛ぶ。

そしてそのまま勢いを利用して延髄切りを見舞う。

 

「むん!!」

 

前に突っ込んで威力が低い場所で受ける。

懐に飛び込まれないように気弾を放って距離をとった。

自分としては笑みをこぼさずにはいられない。

 

「そう来なくては……やっと歯ごたえのある奴が来てくれた」

 

あの一撃が今までの奴ならば喰らっている。

場合によっては試合が決まっていただろう。

目の輝きも戦いに向ける熱量も段違い。

こういう相手を待っていたのだ。

前哨戦とか関係なく戦える戦士を。

 

「こっちも最後の相手があなたで良かった」

 

そう言って消える。

後ろをとるための動きではない。

ただ、単純に速い。

 

「ハアッ!」

 

懐に忍び込んで攻撃を仕掛けてくる。

それを受け止めて腕を掴む。

 

「フッ!!」

 

腕を引っ張り、その勢いで頭突き。

額から血が出ている。

こちらもタラリと垂れているのがわかる。

腕を離して腹部に重々しい前蹴りを入れてやった。

 

「あっ……」

 

相手が膝をつく。

足の震えからして結構なダメージだろう。

だが次の瞬間……

 

「あれっ?」

 

こちらの視界も傾く。

次の瞬間、倒れ込んでいた。

 

足に蟻が這い上ってくる感覚。

それも十や百ではない。

千や万の単位の蟻だ。

 

前蹴りを入れた瞬間だったのだろう。

まるで狙撃手のように、ワシの顎を打ち抜いた。

芸術的な一撃は痛み分けを呼んだ。

 

「今の攻撃は効いた……」

 

そう言ってデンドが見下ろす。

若い奴は礼儀が未熟よな。

仕方ない。

 

「錆びついていなければいいが……」

 

地面に手を突き、飛び上がって再度向き合う。

相手の方が向かってくる。

足がもつれている今が好機と受け取ったか。

 

「『スコーピオン・パイル』!!」

 

地面からサソリの尻尾の杭が出てくる。

それを跳躍で避ける。

だがそれで避けきれないほどの連続攻撃。

 

「『サジタリウス・アロー』!!」

 

百発百中ともいえる矢の嵐。

腕を交差してデンドは耐えきる。

でもまだ終わらない。

 

「『ライブラ・ロック』!!」

 

天秤に乗せられたデンド。

ワシが乗り、均等でない強さに罰が入る。

それは重力場を作りからだの動きを鈍らせること。

なんとか重力から逃れようと動く。

しかし、それさえも打ち砕くように次の攻撃をする。

 

「『ジェミニ・ゲヘナ』!!」

 

二人へ分身したワシの一撃を喰らう。

アッパーで空を舞いあがらせて上空にいるワシに渡す。

 

「『バルゴ・プロミネンス』!!」

 

ワシは捕まえたまま、錐揉み回転をしながら炎を纏って武舞台へ叩きつける。

別れている状態は解除している。

今回に限っては、動揺を誘うための見せ技でしかないのでな。

 

「『カプリコーン・スタンプ』!!」

 

肉弾技の一つ。

目にも止まらないストンピングだ。

背中を向けて耐えきろうとする。

 

「『ビスケス・ファントム』!!」

 

頭を掴み、催眠術。

この技は相手への衝撃を呼び覚ます。

呼び覚ますものはさっきの『バルゴ・プロミネンス』の熱。

肉体を焼かれる恐怖。

それは背中で受ける事をやめさせるには十分だった。

 

「『レオ・ストローク』!!」

 

左脇腹から右肩まで気で強化した爪で引き裂きにいく。

それを何とかデンドが避ける。

熱さを克服しているが積み重ねられたダメージは大きい。

魔術をこうも使う相手なんて経験数が段違いだろうからな。

 

「こんな相手だったとは……」

 

息も荒くデンドが言ってくる。

こっちも錆びついていた技を出させられたんだ。

それにほとんどすべての技を使っている。

それでそのダメージ。

時代の流れを感じずにはいられない。

 

「『フレグランス・キャノン』!!」

 

気弾で反撃。

ならば見せてやるか、防御の技を。

手を前に出して気を込める。

 

「『アリエス・ケープ』!!」

 

ふわりと風のバリアで受け止める。

すると目の前から消えた。

 

「終りだ!!」

 

抱え上げられてその場を回っていく。

そして上空へ投げられる。

ワシを追い越して足の裏に足を乗せて加速させていく。

 

「『花瓶落とし』!!」

 

武舞台に頭から叩きつけられる。

しかしここでデンドの手は緩まない。

 

「『四肢剣山』!!」

 

大きな針状の気弾を足と腕に刺さる。

縫いつけられている。

抜こうとするが、それより速くデンドが落下をする。

 

「『フラワー・コンプリート』!!」

 

足に棘型の気弾を纏っている。

背中に刺さりに来るだろう。

間に合いそうにもないが……

 

「さっきの技をもう忘れたのか、『ジェミニ・ゲヘナ』!!」

 

もう一人の自分がデンドを蹴り飛ばす。

背中に突き刺さる一撃は軌道を変えて、大きく脇腹を抉られる。

勝敗を決める一撃ではあったがどうにか致命傷は逃れた。

しかし、勝負の終わりは近い。

両手足の針を力ずくで抜いたから血が溢れている。

 

「終りだ、サラガドゥラ」

 

そう言って花を刈るようなハサミ型の気を腕に纏う。

奇遇だな。

ワシの技もそれと同じだ。

 

「『彩鋏一閃』!!」

「『キャンサー・シザー』!!」

 

そしてワシもデンドも駆けていき、攻撃を放ちで両者背を向けあう状態となる。

切り裂いた実感はある。

どちらが深く相手にダメージを与えたのか。

それが決着の明暗だ。

 

「がは…」

 

ワシは十字型に切り裂かれている。

振り向いて向き合おうとする。

 

「ぐふっ……」

 

デンドも振り向いて睨みあう形となる。

デンドは大きくバッテンに切り裂かれている。

そしてワシもデンドもゆっくりと倒れ込んでいく。

 

「両者ノックアウト……テンカウント以内に立ち上がれなかった場合は引き分けですね、同時優勝です」

 

大神官様が全王様に説明をしている。

そしてカウントが入り始める。

血が流れていようと立てばいい。

まだ終われない。

 

「年の功をなめるなぁ!!」

 

力を振り絞り立ち上がる。

それによって前哨戦において優勝を決めた。

紙一重の勝利であった。

 

仮に勝因を上げるのであれば戦闘経験や積み上げた魔術などといった技巧、精神面の差。

十字型に切り裂くのはデンドのわずかな失策。

抉られた脇腹を切り裂かれていたらこっちが負けていた。

非情さがないのか、焦りなどで揺らいでしまうほどの若輩者か。

いずれにせよ、自分だから勝てたかもしれない。

一癖も二癖もある奴らが居る本戦。

真っすぐな孫悟空たちは大丈夫かと薄れていく視界の中、思っていた。




油断しないブルー悟空+戦闘系魔術の多彩さ=強い。
明確な強さはブルー悟空並ですが+αの要素が強すぎるという事で一つ。
指摘などありましたらお願いいたします。


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『サイヤの教え』

別宇宙強化イベントです。
第6宇宙にはスピネルとピリカといったナメック星人のメンバーが原作で居たのですが、
この作品ではバーダックともう一人オリジナルで出すので居ません。



「どうでしたか、全王様?」

 

そう大神官様が言うと、興奮気味に喜んでいた。

それどころか、いつの間に来ていたのだろう、未来の全王様まで隣にいらっしゃった。

 

「最高だったよ、もっと見たい!!」

 

そう言うとみんながほっとする。

サラガドゥラとデンドはすぐに大神官様からの復活パワーで直された。

そして戻ってきた時に祝福されていた。

 

「おまえ、よくやった!!」

 

ビルス様が背中を叩く。

老界王神様も頭を撫でていた。

 

俺が出て、悠々と無傷で代表決定戦まで行けただろうか?

そう考えるときっと難しい。

一度やって戦法を知っているキャベとの対決はまだしも……

ディスポの速度を捕まえるまでの時間。

ベルガモを落とすための作戦。

それを踏まえたら確実にダメージはあった。

デンドという男も正統派に近い戦法。

やりあえば最後の鋏の一撃でダメージを負っていた。

勝てても無事にとは言い難い。

 

「ガタバルさん、どうしました?」

 

ウイスさんに声をかけられる。

それに気づき、顔を上げていた。

 

「今の自分なら、無傷で勝てたかを考えてました」

 

それを言うと考えこむようにして少し間を置く。

そして一言。

 

「無傷は難しいでしょうねぇ」

 

11宇宙のディスポさんの速度に目が慣れないといけませんし、第9宇宙のベルガモさんだってダメージを与えずに勝つしか巨大化は止められないですから。

ただ、正統派の第6宇宙のキャベさんや第5宇宙のデンドさんならいつも通りで悠々と勝てるかと。

そう言った感想だった。

 

「『力の大会』にはこれ以上の相手がずらりと並ぶのですから早い段階で戦力を知れてよかったのでは?」

 

あれ以上の戦士。

破壊神を凌駕する存在。

それは心躍るものなはずだ。

しかし俺はそうは思っていない。

全てを知ったうえで『消滅』は無いと分かっている。

それでも心が沈んでいる。

破壊神に勝つ術など今の自分にはない。

ピオーネ頼りになってしまうのが目に見えている。

 

「自分にできる事を探さないとまずいですね」

 

そう言って勝利の余韻に浸る事もなく大神官様の説明が始まる。

人数、場所、開催日時。

そういった概要を耳に入れる。

 

そしてすぐに第7宇宙に戻っていく。

すぐにカカロットに悟飯とピッコロ、亀仙人様に日時を伝えるように言う。

俺もブロリーとピオーネに伝える。

サラガドゥラも最後の調整に入ると言ってこっちに来る。

俺は最後の一人に会いに行っていた。

 

「フリーザ……決まったんで来てくれ」

 

宇宙船で向き合う。

ようやくか。

目がそう語っていた。

首を鳴らしながらにやりと笑うと肩に手を置く。

地球に戻ってこれで残り1名。

ベジータがどうも説得ができないらしい。

ブルマさんの出産から離れるわけにはいかないというわけだ。

 

「一度決めたら頑固だから生まれない限りは参加しないだろうな」

 

そう言うとウイスさんがため息をつく。

そして天使の力で出産させたのだ。

遡るとかのタイムパラドックスを生み出す要因にはならないからいいのだろうか。

 

「これで10名揃いましたね」

 

ウイスさんは言うがまだ時間に余裕はある。

そんな中、バーダックさんが第6宇宙に行くためにウイスさんに頼む。

すると……

 

「お前らもついてこい」

 

有無を言わさぬ威圧感。

ベジータとブロリー。

そしてこの俺。

3人追加で第6宇宙に赴く羽目になった。

 

「余計なことしかしなさそうだ……」

 

ビルス様が言う言葉にため息をついてしまう。

俺達がおとなしくして帰ってきそうにもない。

絶対に第6宇宙の奴らが強くなる。

そういう顔付きだったのだ。

 

「ここが第6宇宙の惑星サダラか」

 

ウイスさんのおかげで第6宇宙に到着した。

シャンパ様たちもサダラに来ていた。

理由はキャベ以外のサイヤ人の発掘だろう。

 

「お前ら、偵察かぁ?」

 

シャンパ様に言われる。

偵察する必要性があるのだろうか?

既に7人は顔が割れているというのに。

 

「いや、俺が第6宇宙のメンバーとして参加するから連れてきてもらったのさ」

 

バーダックさんが言うと嬉しそうな顔をしている。

第6宇宙最強の戦士。

それがバーダックさんなのだ。

殺し屋ヒットとは違い、表の世界における伝説。

 

「ガタバルさんは先ほどぶりでしょうか?」

 

キャベが来ていた。

とりあえず頭を下げておかないとな。

するとベジータがキャベの前に立つ。

 

「俺と勝負をしろ」

 

いきなりすぎる提案に全員が驚く。

防衛隊エースのキャベを知っているからベジータの挑戦を無謀という者もいる。

 

「自分によく似たスタイルの相手……きっと役に立てるだろうぜ、お前が強くなりたいなら受けた方がいい」

 

その言葉がどれだけ魅力的に聞こえるか。

俺がキャベの立場ならば飛びつきたくなる。

抗いがたい誘惑とさえいえる。

 

「おっさん……久しぶりだな」

 

カリフラがリンゴをかじっている。

となりにいる女の子もサイヤ人か。

 

「私も参加すんのさ、実戦稽古付けてくれよ」

 

そう言って構える。

仕方のない奴だ。

ウイスさんに待っていてもらうように告げる。

 

「荒野で戦うぞ」

 

そう言って飛び立つとカリフラ達も追いかける。

惑星サダラでも荒廃した場所へたどり着く。

降り立っては見たが強さはあの対抗戦以降変わっていない。

まあ、どちらでもいい。

 

「来い!!」

 

そう言うと超サイヤ人2で向かってくる。

速度もあれから変わっていない。

強者と戦い続けないと開花しないのか。

 

「はっ!!」

 

車輪のような蹴りを放ってくる。

それを受け止めて足払い。

まずは対応力を確認する。

 

「フンッ!!」

 

前に飛び込んでアッパーを打ってくる。

それを軽々と避ける。

 

自分があの修羅場を越えたこと。

そしてビルス様とのマンツーマン修行。

その成果が出ている。

カリフラの動きが遅く感じているのだ。

 

「ちっ!!」

 

あまり動かない腹部などに攻撃を集中させる。

大仰に動く必要なんてない。

ひらりひらりと舞う様に回避をする。

考えず、体に全てを委ねる。

本能が、肉体が回避行動をとる。

 

「全然当たらない……」

 

無駄打ちや空振りは焦りの原因。

じわじわと蝕んでいく。

それが隙となり、ガードが空いている。

無論それを逃す事なんてない。

 

「フッ!!」

 

前蹴りを放つ。

それは吸い込まれるように体にめり込んだ。

あの対抗戦の時と同じように殴っただけ。

しかし破壊神自らの教えによって、チューンアップされた強さ。

それはただの一撃にさえ必殺の意味を持たせるものだった。

 

「ぐあああ!!」

 

岩盤を砕き、カリフラはずるずると落ちていく。

それを見ていた妹分が駆け寄り、体を揺する。

しかし気絶しているから起きる気配がない。

 

「よくも……よくも…姐さんを!」

 

その状況を認識した女の子。

怒りでわなわなと体を震わせる。

 

「許さない……許せない!!」

 

気が徐々膨れ上がっていく。

それに合わせて女の子の周りの空気が渦巻く。

髪が逆立ちバチバチと火花を散らす。

 

「ガタバル……ガタバル!!!」

 

髪の毛が金色に染まり、あの気弱な姿からは想像できない禍々しさが立ち昇る。

徐々に筋肉が盛り上がる。

白目をむいている。

見慣れた姿になっていく。

 

「お前を血祭りにあげてやる!!!!」

 

完全に覚醒した。

『伝説の超サイヤ人』だったとは。

自分の大事な人を傷つける者への激怒。

奪う者への嫉妬。

それが引き金か。

 

「想いの強さ……見せてみろ!!」

 

巨岩のごとく拳。

それを避けるが風圧で体が流れる。

後ずさりをさせられた。

あれから強くはなっているがやはりこの形態は段違いだ。

元々のポテンシャルが高い第6宇宙のサイヤ人なのだから。

 

「うぉおおおおお!!」

 

暴走状態にある。

ブロリーも見ている。

だが余裕の笑みを崩していない。

あいつがやったら勝てるからだろうな。

 

「落ち着け!!」

 

タックルを止めて技を使う。

腕をとり足を絡める。

 

「ぐあああっ!!」

 

『リバース・ロメロ・スペシャル』を繰り出す。

それを力づくで外しに来る。

ギリギリと音を立てる。

 

「うがああああ!!」

 

足に力を込めて筋肉が肥大する。

掴んでいた腕の拘束が緩む。

 

「ぐっ……」

 

技だけではこいつは倒せない。

力で拘束を外していっている。

 

「ハアッ!!」

 

手のひらと足が弾かれる。

完全に拘束を解かれた。

無力化はさほど効果がない。

 

「おおっ!!」

 

雄たけびとともに頭突き。

頭が割れて血が流れる。

揺れてしまう。

景色がドロドロとしている。

 

「があっ!!」

 

ラリアットを放ってくる。

リンボーダンスの要領で回避。

体に委ねていた状態が解除された。

 

「とにかく止めるか……」

 

攻撃を受け止めて一本背負いで背中から叩きつける。

すぐに起き上がってくる。

無傷だったり効いていないというわけではなさそうだが、あまりダメージになっていないのか?

もしそうであれば強靭さだけならばこちらの手探り程度では無傷になる。

カカロットならばブルーを全開にしないとダメージを効果的には与えられない。

 

「うあああああああ!!」

 

気弾を乱れ撃っている。

体から徐々に煙が上がっている。

回避しながら、制御出来ていないのだと確信した。

 

「制御方法も教えておいてやるか……」

 

大振りの拳を回避。

腹部に手を当ててゼロ距離で一撃を放つ。

 

「『エクスプロード・ウッドペッカー』!!」

 

腹部に入った一撃は吹っ飛ばすことに成功する。

初めてブロリーとやりあった時はこんな事なんてできなかった。

成長しているぜ。

 

「うがあああああ!!!!」

 

突っ込んでくる。

その勢いが重要なんだ。

振りかぶって力瘤が浮き出る。

そのまま打ち下ろしてくる一撃に対して……

 

「舞え……」

 

脇下に潜り込む。

勢いを利用して投げる。

さっきの一本背負いより速いし威力も上がっている。

だが叩きつけはしない。

投げて宙を舞う間に手を離し背中合わせになる。

そして首に手をかける。

 

「がっ……」

 

相手はその勢いで首を吊る形状の技にかかり気絶をする。

やりあって勝てる確信はある。

だが、この手は気絶が最適解だ。

 

「流石ですね」

 

ブロリーが笑ってこっちに来る。

お前は見てるだけかよと思う。

まあ、見ててどうだった?

そう質問する。

 

「制御できてないですし、伸び率が高すぎて消費量より気が遥かに体内に留まりやすい」

 

ですから大技を連打しないと今の制御できない状態は危険です。

ただ……

 

「制御に重要な部分はすでにできているので教えてやれば問題ないかと」

 

と答えてきた。

やっぱりそう思うか。

これだけしてやればもう十分だろう。

 

「ううん……」

 

女の子が起き上がる。

カリフラもこっちにきたから座学に入るか。

3になろうにもデメリットを言っておかないと意味がない。

 

「まずはあの状態を説明すると……」

 

制御できるようにしないと、大事な人間を傷つける事。

伸び率が高いから実力が徐々に伸びていく。

気が高まって溢れるが制御ができていないと暴発を起こす。

そうならない方法は長い修行。

しかし土台が例外的にできているから応急処置で制御できるようにはなる。

 

「ケールに教えてやってくれよ」

 

そう、カリフラが言うから話し合うためにケールと距離をとってもらう。

相変わらずオドオドしているな。

まあ、ブロリーも寡黙で物静かだから似てると言えば似ているのか。

 

「大事な人を守るって心で覚醒していけばいい」

 

戦う気構えで居るときっと暴走してしまう。

だから前提として守る為に戦う強さだと認識させる。

防衛の結果として相手を倒す。

そう伝えて、『力の戦い』における第6宇宙のリスクを減らす。

 

「姐さんを私が守るってことですか?」

 

その通りだ。

俺は頷いて肯定をする。

難しいかもしれないが、その心構えがあれば一気に進んでいける。

 

「そうだ、まずはカリフラがやられているとして、それを救える場所に自分は居ると想像しろ」

 

想像させてみる。

すると髪の毛が逆立ち禍々しさまで出てくる。

しかしここで、切り替えさせるために言葉をさらに投げかける。

 

「庇われていたとして……どんな気分だ?」

 

弱い自分が嫌だと呟いている。

いい兆候だ。

じゃあどう思って力を振り絞るんだ?

そう問いかける。

 

「守る為に……強くなりたい!!」

 

禍々しさが無くなる。

一気に気が膨れ上がった。

そのまま力を振り絞るように促す。

 

「どうだ?」

 

風が巻き起こる。

自分としては成功の手応えがある。

顔をあげると白目をむかず筋肉の肥大もない。

自分の手を見てキョロキョロとしている。

 

「で……出来ましたぁ!!」

 

姐さんに教えてもらってもできなかったのに……という声が聞こえてくる。

感覚派は人に教えるのが苦手な所があるからな。

仕上げをしていくか。

 

「じゃあ、その意識や気持ちを保ったまま力を振り絞れ」

 

すると白目をむいて筋肉が膨張をする。

禍々しさは無い。

それどころか普通にこっちに近づいて手を握ってくる。

 

「これで姐さんの助けになれます、ありがとうございます」

 

そうは言うが気が萎んでいる。

すぐに普通の状態に戻るように言う。

 

「あれ……?」

 

普通の状態に戻って膝をつく。

やはりまだまだ慣れていないか。

 

「今の感覚のまま、慣れていけ」

 

そう言って力が出ないケールを担ぎ上げる。

ブロリーがカリフラを相手に戦っていた。

気が上がっていくがどうやらまだまだ3にいくには感覚が同調しないようだ。

あいつも4ではなく同じ形態の3で相手をして肌で感じさせようとしている。

 

「そろそろお時間ですよ」

 

ウイスさんがベジータを連れてきた。

満足げな様子を見るとキャベに伝授でもできたのだろう。

俺もブロリーを呼んで帰る準備をする。

 

「待ってくれよ、まだ3になってないんだぜ!!」

 

カリフラがそう言うがブロリーは突っぱねる。

冷たいと言われても仕方ないのだろうが。

 

「俺達は手取り足取りではなく、修行をして互いに切磋琢磨の末に身につけたんだ」

 

だから君は恵まれていると。

戦いの中で目覚めて見せろ。

努力で手に入れろ。

 

「『力の大会』で待っている」

 

そう言って後ろを向いて歩き、ウイスさんの肩を掴んでいた。

俺もケールの肩を叩いて忠告をする。

 

「力に呑まれないように守る為の強さであることを肝に銘じて慣れておけ」

 

守る為の向上心の尊さを説く。

もし、相手を倒す事を主にした強さを求めると潜在能力の高さから次のステップにいくのは可能になるだろう。

しかし、なり立ての興奮などで暴走のリスクがある。

まだ自分の中にある確固とした信念を支えにして戦いの成長を行った方がベストだ。

 

「『力の戦い』で会おう」

 

そう言って地球に戻る。

ビルス様から一緒に『精神と時の部屋』に入り、最後の総仕上げをするように言われる。

残りの時間で詰めていけば可能性は高まる。

 

「お前には十分に戦ってもらう」

 

互いに全力で殴りあう。

破壊神に迫る力。

自分はもう限界突破以外、方法は無いのではないかと思っていた。

しかし、破壊神直々の組手などは俺の力をさらなる高みに引きずり込んでいった。

 

「お前の嫁とも少し手合わせをしておいた」

 

念には念を。

破壊神の力を持つものを二人用意する。

さらにピオーネの力をさらに呼び覚まさせる呼び水になったという。

切欠があればいいけどな。

そう呟いていた。

 

「お前らが悟空やベジータ程に油断がないからこそ教えて損は無い」

 

どうやら俺がカリフラ戦でやったように『体が勝手に動く』。

頭で考えずに体の動きを勝手な形で委ねる。

頭で考えるよりもはるかに速い世界。

 

「第7宇宙の消滅はお前らにかかっているんだからな」

 

そう言って拳を打ち付けられる。

真実を知る身として心苦しい。

しかし、ここで悟られてはいけない。

毅然とした態度でさらに激しさを増す修行に臨むのであった。




強化内容:
キャベ:超サイヤ人2
カリフラ:超サイヤ人2から超サイヤ人3の成り方を口頭で教わる。
ケール:『伝説』制御可能。

カリフラが感覚派なので見せて、言葉で説明しても伝わりそうにないですね。
ケールがもはや覚醒済み。
ちなみに抜けるメンバーはスピネルとピリカ。
ドクターロタでもいいのですが、どちらか片方残すのも微妙なので。

指摘などありましたらお願いします。


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『開催、力の大会』

今回から力の大会です。
原作とは違って色々と展開が変わるかもしれません。
落ちる宇宙の順番も変わります。


全員が仕上げを終えてカプセルコーポレーションに居た。

ウイスさんのおかげでキューブに入る。

老界王神様と界王神。

ビルス様とウイスさん。

それ以外に代表選手の10名。

俺、ピオーネ、カカロット、ベジータ。

悟飯、ピッコロ、亀仙人様。

サラガドゥラ、ブロリー、フリーザ。

経験則と強さのバランスをとった。

間違いなく第7宇宙が誇る最強の10名。

 

「それでは行きますよ」

 

そう言って大会会場である『無の界』まで向かう。

一体どういった場所なのか。

ルールの詳細確認も必要だ。

 

「相手の消滅宇宙から来た戦士も要チェックだ」

 

雰囲気がきっとまるで違うだろう。

古代からの存在。

それが何かしらの因果によって脈々と受け継がれたもの。

その強さは言葉通り、通常とは次元が違う。

 

「とは言っても突然変異に毛が生えたもので特殊能力の特化型の可能性もありますがねぇ……」

 

フリーザがこっちの呟きを聞いていたのか、言葉を返す。

今回のルールではそちらの方が厄介なのだが。

 

「まあ、我々が負けない方法は……」

 

親指で悟飯を指す。

それに気づいて不穏だと感じたのか、顔つきを変える。

 

「あの孫悟空の息子と、知恵者であるナメック星人」

 

聞こえていたのかピッコロもこっちを見ている。

話し合っている事にどこか警戒心がある。

悪人であることは変わらないからだろう。

 

「彼らの作戦を信じ、戦い抜くことです」

 

こちらは戦っていく際、無策になっても十分だろう。

しかし長時間のバトルロイヤルなのだ。

温存だったり、効率だったりは作戦が出来ていないと効果がない。

 

「全力で相対する分には問題は無いですが、搦め手を喰らわない方法はそう言った警戒心のある知恵者が必須」

 

頭に血を上らせたりしやすいものや、猪武者では勝ち進むのに問題がある。

そう伝えたいのだろう。

確かに相手の作戦にはまってしまうと実力差を跳ね返しかねない。

 

「それに関してはベジータさんや孫悟空には不向きです」

 

それには概ね同意だ。

あいつらは相手の策だったりを考えはしない。

喰らってから考える。

そう言った意味では狂戦士であるブロリーの方がましじゃないかと思う節がある。

 

「仮に相手に目をつけられたりして指名されても滅多なことがない限りは跳ねのけて、できる限り私か貴方は陣営にいた方がいいでしょう」

 

最悪2対1で目をつけられる。

しかしチームの瓦解を防ぐには何とかそのうちの一人を落とせば状況は悪い方へは転がらない。

 

「ただ、感情で動くこともあるがそれは計算に入れておいてくれ」

 

冷静ではいられない事もある。

そうなった時は申し訳ないと断りを入れておく。

 

「当然、入れておきますよ」

 

貴方は激情にかられやすいですから。

そう言われると苦笑いしかない。

 

「そろそろ着きますよ」

 

そう言われて『無の界』へ入る。

どうやらこの到着を待っていた破壊神、界王神が見ている。

遅刻ではないが、できれば一番乗りがよかったな。

既に第3宇宙、第10宇宙、そして第9宇宙が来ていた。

 

「しかし……」

 

肌で感じ取れる強者の匂い。

第9宇宙の中に混じっている女性。

第10宇宙でこちらを射殺さんばかりの眼光を放つものが一人。

 

「貴方に会えて嬉しいわ」

 

そう言われて握手をしてくる。

ミシミシと音を立てる。

見た目は人間だが握力がまるで動物のそれ。

 

「第6宇宙の対抗戦での戦いで貴方を知って私の血が騒めいた」

 

あれを見ていたのか。

そして手を離して下がる。

だがその速度も異様なもの。

 

「私の名前はモギ、消滅宇宙である第13宇宙からキューブでここに移動した、古代獣人型星人の子孫」

 

消滅宇宙の一つから来た存在。

ビルス様とやりあっていたせいで感覚が麻痺しているのかもしれない。

ベルガモを遥かに凌駕したエース。

だが、ピオーネと同じ消滅宇宙の存在でありながら底知れぬ恐怖を感じる事は無い。

ピオーネだけが例外的なのかもしれないと再認識した。

 

「貴方と心行くまで戦いたいわ」

 

そう言って下がっていく。

手に汗を握るような眼。

獣が標的をロックオンしたときに見せるものだ。

 

第10宇宙の青年。

その青年はこちらを睨んでいた。

呟きが聞こえる。

 

「たとえこの魂が濯がれようと俺はお前を許さない」

 

あの痛苦をお前にも味あわせてやる。

俺の全てで貴様の魂を壊してくれる。

手から禍々しい力を噴き出させる。

 

「まだ、勝負前だぞ」

 

そう言われて気を収める。

邪悪な眼差し。

殺意に満ち溢れた気の流れ。

 

「地球人とは思えないぞ」

 

サイヤ人でもない。

異星人にしては人型として整っている。

地球人という認識でいいのだろう。

 

「貴様をこの手で終わらせる……」

 

俺を殺す気満々の殺意。

それをぶつけてくる。

それで俺はピンとくるものがあった。

なるほど、お前の正体は……

 

「どうやら、到着か」

 

そう言うとほかの宇宙もぞろぞろとやってくる。

シャンパ様たちの第6宇宙。

バーダックさんは紫色の肌を持たみょうちくりんな見た目の青年と並び立っていた。

そしてカリフラやキャベたちがこちらに歩いてくる。

 

キャベはベジータに懐くように話しかける。

満更でもなさそうだ。

こっちでは無くカリフラとケールはブロリーに話しかけていた。

秘密兵器があるのが聞こえたが一体なんだ?

 

そんな中第11宇宙が降りてきた。

ディスポとトッポ。

流石の存在感だと思う。

しかし次の瞬間、息を呑んだ。

 

「……」

 

無言ながら威圧感がある。

灰色の男こそが今ここにいる他宇宙の戦士でも最強ではないのか?

俺はその男に向かっていく。

 

「むっ…」

 

流石に無礼と受け取られたか、トッポが前に出る。

こちらとしては知りたいだけ。

興味をそそられたのだ。

 

「わが宇宙最強のジレンに向かうのはやめてもらう」

 

そうは言うがどうしても気になる。

俺は体を沈めて……

 

「手間は取らせない」

 

脇からすり抜ける。

トッポもその速度に反応が遅れる。

すると次はディスポが立ちはだかる。

 

「お前みたいな雑魚がジレンに近づこうなんて身の程知らずもいい所だぜ」

 

むっ……

そう言われたら腹が立つな。

少し力づくでいいから通らせてもらうか。

そう思っているとディスポを退ける。

ジレンが俺の前に立った。

 

「どうやらお前は……この俺が出なければならん戦士だな」

 

その言葉に『プライド・トルーパーズ』が驚愕の表情を浮かべる。

そして俺の手を握る。

今は外に出さずに閉じ込めているのだろう。

底知れぬ熱さを感じる。

 

「この大会……一筋縄ではいかないようだ」

 

そう言って輪の中へ戻っていく。

手が痺れていた。

あいつ……隔絶された世界にいる。

ナンバー2のトッポとの差がとてつもない。

あいつ1人残っていれば第11宇宙は勝ち残れる。

そういった確信があるのだろう。

皆が自信ありげに胸を張るわけだ。

 

全員が集まり、大神官様から話を聞く。

ルールについての詳細は以下の通り。

 

『術以外での道具の使用を禁止』

 

つまりポタラでも『合体』というものが『術』であれば容認。

『魔封波』の瓶も『術』のための道具なので問題は無い。

 

『いかに瀕死でも回復する道具の使用を禁止』

 

それは仕方ない。

それを有りにするとつまらない勝負になる。

現に不死身の奴らの戦いは気骨が萎えていた場面もあった。

 

『殺害禁止』

 

これを有りにするとそのまま武舞台ごと消し飛ばすといった傍若無人な行為も許される。

もしくは技の当てる場所や威力の考えをしなくていい。

血生臭い叩きになること請け合いだ。

 

『飛行系の術の禁止、羽根を持つ人は例外』

 

場外ルールである以上、これは重要だ。

これを禁止しないと気絶だったりさせないといけないので必要以上に痛めつけられる。

殺害の危険性も上がるのだ。

羽を持つ人は自分の母星と同じ重力がかかるらしい。

 

『リングアウト以外は敗北ではなく、瀕死でも最後の一人に残っていれば勝者となる』

 

死んだふりも有効になるのか。

まあ、そんな事に騙されないでポイポイと場外に落とせばいいだけだ。

相手がそこから力を発揮するタイプなら面倒だがな。

 

「それでは未来と現代の両全王様よりお言葉があります」

 

トランクスが付き人の状態で向こうにいる。

そして全王様たちは楽しみだから盛り上げてほしい。

ただそれだけを告げる。

そして全員が固まった状態となって……

 

「100タックの一本勝負、『力の大会』を始めます!!」

 

その言葉と同時にあわただしくなる。

第11宇宙、第6宇宙、第9宇宙の3つの宇宙の動きはさほど無い。

それ以外の宇宙が動いている。

第3宇宙のナリラーマが回っているのを第9宇宙のバジルとヒットで止める。

こっちはカカロットとベジータが離脱。

ピオーネと俺、サラガドゥラ、ブロリー、フリーザは動かない。

初めは危機を全員で分担する。

そう思っていた、しかし……。

 

「『神裂斬』!!」

 

刀の気が降り注ぐ。

対戦宇宙の奴らも回避をしていく。

だがこれは……

 

「狙いは貴様だけだ、ガタバル!!」

 

俺の名前を知っている人間。

そしてこの技……

 

「悪い、あいつと戦ってくる」

 

そう言って離脱をする。

フリーザやブロリー、ピオーネも仕方ないといった感じだ。

申し訳ない。

 

「こっちへ来い」

 

皆から離れたところで相対をする。

俺は正体をズバリと言い当てる。

 

「何故、魂が漂白されずに転生できた……『ザマス』!!」

 

あの技だけでは無い。

殺意が漲った眼。

どうやっても因縁がなければああはならない。

あの殴打によって死ぬ前に自分たちの時間軸に逃げる事は出来なかったはず。

何が起こった?

 

「未来で死んだのは事実、地獄で待って、ある老婆を脅して一日だけ戻った」

 

占いババ様の事だ。

そしてその後死んだ肉体はボロボロだが朽ちていなかった。

そのまま『時の指輪』を使い、時代へ戻って界王神のポタラによって第10宇宙の天才児の肉体を奪った。

そのせいでこの時代でもない死者というイレギュラーで生まれることができた。

 

「殺すのはルール違反だ、だが私はお前を殺す」

 

お前を殺してしまえばそれだけで十分だ。

そう言って駆けてきた。

 

「じゃあ心置きなく……」

 

フルパワー超サイヤ人4で相対する。

ペース配分が重要。

しかし早くみんなの場所に戻らないといけない。

 

「はっ!!」

 

手を前に出してザマスを吹き飛ばす。

それを片手をつき、難なく着地。

さらに気弾で勢いをつけて肘打ちを放つ。

 

「……『我が身に勝手に委ねる』」

 

肘打ちの肘に腕を絡みつかせる。

そのままクラッチして叩きつける。

呻く声がある。

 

「ぐっ!!」

 

前転をして逃れる。

ローリング・ソバットを放ってくる。

それを手のひらで受け止めて後ろに跳躍。

その勢いを逆用して延髄切りを入れる。

 

「なぜこれほどの差が……」

 

そう言って片膝をつく。

悪いが…

 

「あの時の俺とは一味違うんだよ」

 

そう言うとムキになって蹴りを打ってくる。

それを回避してアッパー。

 

「ぐっ……『聖なる逆鱗』!!」

 

光球を投げてくる。

それを両手で受け止める。

仲間が来ていないのはなぜなんだ?

 

「落とす機会だというのにな!!」

 

ザマスへ投げ返す。

それを跳躍でかわしてくる。

 

「はあ!!」

 

フライング・ニールキックで頭に一撃を喰らわされる。

そして抱え込もうとタックルをしてくる。

 

「フンッ!!」

 

タックルを切って逆に抱え込む。

そして跳躍してカチカッチン鋼の床に頭から激突させる。

 

「ぐわあああああ!!」

 

頭が割れて血が出てくる。

さらに追撃で抱え込んだ背中からボディスラムで叩きつける。

 

「うぐぅうう!!」

 

ゴロゴロと転がる。

もう終わりだ。

子供とポタラをしたという事は肉体や気の量のアンバランスさなどを考慮しなかった。

戦闘力が上がったようだが、そう言った部分が原因で総合力は同等なのだ。

 

「終りだ」

 

もう少し合体相手を選んでおけばこんな無様な状態にはならなかっただろう。

復讐鬼になったお前はきっとビルス様に鍛えてもらう前、あの頃の俺でもゆうに勝てただろう。

 

「私は何処で……間違えた?」

 

そう言って俺の一撃を喰らいザマスは落ちていく。

そして全王様の裁きで特別な例だが消滅させられた。

 

「随分と楽しんでいるじゃない」

 

そう言って俺の周りには女性戦士が4名。

四面楚歌の状態となっていた。

 

「私たちは愛の戦士!!」

 

そう言って思い思いのポーズをとる。

気を上げている。

戦闘態勢に入ったか。

 

「貴方…落とさせてもらうわ、『愛の突進』!!」

 

グルグルと回って突撃してくる。

それを跳躍で避ける。

 

「ヤッチャイナー拳!!」

 

切れのある一撃と気弾。

受けていけばいくほどに威力の上がる奇妙な系統の拳法だ。

すると後ろからも気配がする。

 

「ハアアッ!!」

 

ラッシュをしかけてくるから『委ねて』掻い潜る。

掠る事は無いがこうも間髪を入れずに来られるとはな……

 

「まだまだぁ!!」

 

気弾で跳躍した自分を捉えてくる。

下に降りていくときに回転していく。

相手との距離をわずかに開ける。

流石に4連続攻撃は動きっぱなしになってしまう。

 

「集団でタコ殴りにすることが愛というのかい?」

 

少しばかり憎々しげに言ってやる。

すると何気なしに笑いながら屁理屈を述べ始める。

こいつらの言う愛の形とは何を意味しているのか?

 

「『愛の鞭』という言葉があるでしょう、だから……受ければいいのよ!!」

 

そう言って攻撃を放って来る。

回避をするが縦横無尽に苛烈な攻めを繰り広げる。

ザマスでほぐれたし……

 

「こっちに喧嘩売ってただで済むと思うなよ?」

 

超フルパワー超サイヤ人4で敵を見ながら構える。

お前らの言う愛とは何なのか。

その答えを見せてくれ。




前回のラスボスが弱体化という様式美発動。
今回のゴクウブラックの方のザマスがそのままポタラもなしに復活できたら強かったのですが、生にしがみつきすぎた結果です。
ロゼにもなれないブラックなんて問題しかない。

作戦が崩れてしまっていますが、原作と違いあそこに今はピオーネとブロリー、フリーザ、サラガドゥラがいるので安心しかありません。

指摘などありましたらお願いします。

名前の由来

第9宇宙:『モギ』:ヨモギ(通称:ハーブの女王)
第1宇宙:『ケルブー』:PC機器『ケーブル』
第5宇宙:『デンド』:石楠花の学名『ロードデンドロン』
第8宇宙:『アレキサ』:宝石『アレキサンドライト』
第12宇宙:『ケージン』:鮭の珍しい存在『鮭児』


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『言葉の薄さ、年月の厚さ』

いきなり原作とは違う流れにもっていっています。
原作みたいに第9宇宙の即消滅もありません。
考えた結果、第6宇宙の2人のサイヤ人のポタラは無しにしました。


「行くわよ、カクンサ!!」

 

そう言って攻撃を仕掛けてくる。

一文字違いだが苛立つな。

野獣の状態になり攻撃を仕掛けてくる。

 

「くっ!!」

 

回避をするが肉体に委ねても四方八方は面倒。

まだ完全な習得ではない。

この戦いの中での目覚めがカギを握る。

 

「はあ!!」

 

突き攻撃をしてくるもう一人の女。

そしてもう一人の太めの女が弓矢を放つ。

遠距離と近距離の攻撃が見事に噛み合っている。

 

「フンッ!!」

 

跳躍をして回避をする。

しかし次の瞬間組みつかれて上昇していた。

翼を持つ相手だったとはな。

 

「『愛の螺旋』!!」

 

解く間もなく高速落下。

錐揉み回転で叩きつけられる。

さっきザマスにやったように威力が高い。

超フルパワー超サイヤ人4の耐久力で防ぐ。

しかし、片膝をついてしまう。

 

「やるじゃあねえか」

 

少なくともダメージはある。

4人がかりとなるとどうしたものか。

勝てるとは思うが……

 

「無傷は都合のいい発想だな」

 

現に一撃喰らっているし。

四方に囲まれた場合は各個撃破。

じりじりと間合いを詰めていく。

 

「ハアッ!!」

 

後ろからカクンサが仕掛ける。

攻撃をひょいひょいと避けていく。

この次のアッパーで腹部にカウンター。

 

「カクンサだけじゃないわよ、『愛の突進』!!」

 

そのプランを崩そうと攻撃を仕掛けてくる。

まさかこいつら……

 

「自分たちだけしか協力しないとでも思ってたのか?」

 

そう言ってしゃがむ。

その次の瞬間、突進していた相手が蹴り飛ばされる。

バウンドをしてこっちに向かってくるから避ける。

 

「なんで!、方向も見ないでこっちに集中していたはずなのに!?」

 

全く……こいつらだけの専売特許じゃあない。

それも分からないのか。

まあ、こそばゆいからお互い言葉にはあまりしない。

 

「見なくても分かる」

 

来るというのがわかっていた。

千里眼でもない。

危機だから来るだろうなどという甘えからではない。

ただ純粋に信じている。

 

「リブリアン!!」

 

蹴り飛ばされた奴を助けに行くヤッチャイナー拳の使い手。

そいつの腕を掴み放り投げる。

当然方向は決まっている。

 

「『エレクトリック・パレード』!!」

 

電撃の奔流に呑まれていく。

死にはしないが落ちようとしていた。

 

「ロージィ!!」

 

翼を持った奴が助ける。

こいつを最優先か?

 

「また、見もしないで……」

 

見もしないで攻撃がつながったりすることがそんなに不思議だろうか。

お前らは合図なしではできないのか?

 

「あの子の考えること、危機なんてわかるわ」

 

風が運ぶように。

虫の知らせのように電流が走る様に俺にもわかる。

何故か?

それは互いが深くまで理解してきたから。

言葉を交わさない阿吽の呼吸。

 

「言っていなさい!!」

 

後ろから掴んで俺達を鉢合わせをさせるように投げる。

それを見てニヤリとするが甘い。

 

互いに目を見合わせる事もない。

だが腕を絡ませあう。

そしてそのまま互いにくるりと回ってドロップキックを放つ。

 

「キャッ!!」

 

相手は二人とも吹っ飛ぶ。

ピクリと予感がする。

ピオーネに目配せをする。

するとこちらを察して頷く。

次の瞬間、高く跳躍をする。

 

「えっ!?」

 

相手が向かっていたのだ。

その攻撃も回避してフライング・ボディアタックで迎撃。

言葉を一言も交わさず。

俺達は目で会話をする。

その攻撃や防御の際に出る呼吸で会話をする。

これは年月が生んだ一つの技。

この俺達の技を形成した日々こそがお互いを思いあい、手を取り合ってきた『愛』の証明。

それに比べればお前らの言う『愛』なんてもの…

 

「ちっぽけであまりにも薄っぺらい」

 

そう言ってポケットから指輪を取り出す。

薬指につけて見せつける。

それを見たピオーネはにやりと笑ってつけていた。

しかしルール違反にならないようにすぐにポケットに入れなおす。

 

「さあ、言葉がなくても連携できて当たり前」

 

そう言ってピオーネの肩に手を置く。

それを肯定するように手を握る。

 

「今からさらに妙技を見せてあげるわ……」

 

そう言ってカクンサに向かうピオーネ。

ロージィと俺が戦う。

リブリアンとビカルという奴は適宜対応だ。

 

言葉もなく攻撃をやり取りする。

ヤッチャイナー拳というがそれより重い攻撃で拳を砕く。

蹴りも距離を詰めて威力を半減。

 

「きゃあ!!」

 

腕をとり振るように投げる。

ピオーネが同様の動きをしていたので鉢合わせとなる。

相手が呻いている間に足を掴み、上空へ放り投げる。

それに呼応するようにピオーネも飛んでいた。

術ではない跳躍なので問題は特にない。

相手を『アルゼンチンバックブリーカー』の状態に担ぎ上げる。

すると相手の体勢を地面に下敷きになるようにしたのだ。、

結果としてはカチカッチン鋼の地面に思い切り叩きつけられたロージィは気絶。

そのまま放り投げられて場外により脱落。

 

「ロージィ!!」

 

心配しているカクンサを掴んで上空へ跳躍。

『キャメルクラッチ』の体勢のまま、落下時に縦回転を加える。

背骨を折るのではなくノックアウトさせるために。

 

「う…あ…」

 

地面に勢いよく叩きつけられてカクンサも気絶。

そのまま場外に投げる。

これで二人目。

エンジン全開。

体が武者震いで絶好調だ。

 

「『愛の突進』!!」

 

その一撃に対して顔面を蹴る。

さらにピオーネから追撃のエルボー。

返す刀でビカルをバックドロップで投げる。

しかし跳躍した瞬間、察知をして体を滑り込ませてピオーネの腰に腕を回す。

二人分の体重を抱えるが勢いをさらに強めるように、俺の投げを加える。

 

「あ……あ……」

 

背中をしたたかに打ち付けてもはや勝ち目無しと悟ったのだろう。

さっきまでキラキラしていた眼は暗くなっている。

自分たちの敗因でも探っていたのか、こっちに顔を向ける。

 

「愛とは何?、恋とは何?」

 

息も絶え絶えにリブリアンとビカルが聞いてくる。

愛や恋の違いも知らずに騒ぎ立てていたのか?

答えとしては千変万化なんだがな。

俺とピオーネにとっての愛とは……

 

「寄り添うものであり長く歩むという夢を見るもの」

 

その言葉にピオーネが頷く。

そしてリブリアンたちのもう一つの問い。

これはよくわかるはずだ

 

「「恋とは……」」

 

リブリアンへ近づいていく。

ピオーネも同じようにビカルに近づいていく。

 

「恋とは?」

 

そんなに早く問いの答えを聞きたいのか、意欲があるのか。

ズイズイというように近づいてきた次の瞬間……

 

「えっ?」

 

リブリアンが素っ頓狂な声を上げる。

蹴り飛ばしていたからだ。

リブリアンが場外に弾き出される。

隣にいたビカルも飛ぶことができないように気絶させるような蹴りをやられていた。

 

「「落ちるもの」」

 

同時にその言葉を言っていた。

その言葉を最後に第2宇宙の精鋭が合計4人。

俺とピオーネの手で落ちていた。

 

.

.

 

「どうした、ジレン?」

 

トッポが俺が動くのを見て声をかける。

なんてことはない。

あの男との戦いが必ずあるだろう。

瞑想だけでなく体を熱くさせておく必要がある。

 

「少し落としてくる」

 

そう言って俺はまずは気の赴くままに向かっていく。

誰かを狙う必要はない。

 

「むっ……」

 

水を差しかねない危険な香りを感じ取った。

これは残しておいては危ない。

 

「ホホホ……犬さんも大したことないんですねえ」

 

薄い黄土色の獣人を一方的に嬲っている。

落とせばいいものを。

 

「ぐぐぐ……」

 

立とうとした所を尻尾で締め上げる。

そして手を背中に突き刺す。

 

「ぐあああ!!」

 

呻いて抵抗を試みるも無残に攻撃を受ける。

奴は放置しては良くない。

 

「ほらほら、抵抗してごらんなさい!!」

 

そう言って振りかぶった手を握る。

相手が振り向く時に顔に拳を叩き込んだ。

 

「ぐあっ!!」

 

吹っ飛んだ相手を無視して獣人の方を落としてやる。

これ以上の試合の続行は不可能。

よしんば続けても死んでしまう。

この判断が最適だろう。

 

「私の獲物をよくも……」

 

どうやら怒っているようだな。

嬲る存在だったはずだが?

俺のみ間違いだったか。

 

「抵抗できないものを獲物と呼ぶか?」

 

ただ、聞かないと分からない。

こちらの問いに答える気も無いようだ。

邪魔をされたからか、体が震えている。

 

「このフロスト様の楽しみを奪った分はお前で補填させて貰うぞ!!」

 

名前は分かった。

覚えておこう。

相手の攻撃に対して構える。

 

「ぐはっ!!」

 

相手が勝手に弾かれる。

しまった、集中をして気を張り巡らせていたからバリアが出来ていたようだ。

 

「まあ、いいだろう」

 

体を動かすのにこれでは本末転倒だ。

少し肩を回してフロストの攻撃を待つ。

振るってくる拳を見て少し落胆した。

実力の差だろう。

止まって見えるのだ。

 

「遅い……」

 

拳を掴んで引っ張る。

その引っ張りでこっちの間合いに来た相手に裏拳を放つ。

 

「ぐえええっ!!」

 

何度もバウンドをして吹っ飛んでいく。

場外ギリギリで踏みとどまる。

 

「毎回、それほど派手に吹き飛ばれても困るんだが」

 

攻撃がつながらない。

これでは体を温めようと思っても存分に温まらない。

 

「貴方が強すぎるだけの事でしょうが!!」

 

蹴りを受け止める。

こいつにとって俺は強すぎるのか。

だが、俺はまだ……

 

「半分も出していないぞ」

 

その言葉にフロストが青ざめる。

もう、俺はこの男には期待はしない。

もう少し探さないといけない。

 

「フンッ!!」

 

足を掴んだまま振り回す。

そしてしばらく回してから放り投げて場外へと落とした。

 

「次の相手はお前か……?」

 

不定形な存在。

水の肉体を持つ相手。

 

「俺の名前はマジ・カーヨ、第3宇宙の戦士」

 

そう言って水の腕をハンマー状にして殴ってくる。

腕を交差して受け止める。

 

「無駄だ!!」

 

水の体積を増やし重量を上げていく。

このままでは地面に体がめり込む可能性がある。

 

「むざむざと放置しないがな」

 

体積が増えていない脇下に手を差し込んで持ち上げる。

どうやら攻撃の無効はあちらが攻撃に転じている際はできないのだろう。

 

「フッ!!」

 

脇からもち上げて転がす。

地面には叩きつけられずに二度転がるのみ。

だが十分だった。

 

「吹き飛べ」

 

立ち上がった瞬間。

その時に風を起こすように拳を振るった。

相手に逃れる隙も与えない無慈悲な動き。

 

「なっ!?」

 

驚愕した顔をしり目に一陣の風が吹く。

しかし数瞬後、まだ武舞台から落ちていない相手の姿があった。

 

「形を変えて、拳圧に吹き飛ばされないようにしたか」

 

地面に食い込むように棘を下に出していた。

それでこっちの拳の風を耐えきったのだ。

しかしその顔には恐怖が染みついていた。

 

「やはりお前も俺が強いと感じているのか?」

 

その言葉に無言になる。

肯定と受け取る。

つまり一握りの相手しか、俺の体は温まらない。

 

「分かっていたがな」

 

棘が食い込んでいようと関係は無い。

奴が風で吹き飛ぶようにとてつもない速度であれば形を整えるよりも速く叩き込める。

 

「フンッ!!」

 

腹にめり込み棘ごと引っこ抜かれて吹き飛んでいく。

驚愕の顔のまま落下していく。

これで二人目。

未だに体に熱を感じない。

 

「残念だ」

 

争いの中、相手を見定めて俺に熱を持たせる相手を探すか。

そう決意をして、ゆっくりと戦場の中心部へと歩を進めていくのであった。




第2宇宙が消滅危機のトップに躍り出た模様。
そしてジレンが原作と違い、自分から動いてウォーミングアップするという恐怖の行進。

前回と今回の脱落()内は落とした人間

第2宇宙:
リブリアン(ガタバル)、ロージィ(ピオーネ)
カクンサ(ガタバル)、ビカル(ピオーネ)
第3宇宙:マジ・カーヨ(ジレン)
第6宇宙:フロスト(ジレン)
第9宇宙:ラベンダー(ジレン)
第10宇宙:ザマス(ガタバル)

残り人数:72名

指摘がありましたらお願いします。


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『ドクターたる所以』

今回はジレンの強さを示す回でもあります。
あとは原作ではいいとこなしだった人の活躍。
そして第6宇宙のナメック星人の片割れの代わりになった戦士の登場です。


「俺に喧嘩を売る奴はお前か、赤い犬」

 

俺様は戦う相手を探していた。

ようやく見つけた相手は不意打ち気味に攻撃を仕掛けてきた。

まあ、問題はない。

一番首はガタバルが取っていったがそこはこだわらない。

 

「一人でも多く落としておかないとな」

 

そう言ってブルーになって戦いを始める。

速いがそれでもあくまで超サイヤ人などで考えていればの話。

ブルーの俺ならば悠々と対応できる。

 

「『シャイニング・ブラスター』!!」

 

蹴りから赤い気弾を放つ。

だがその程度……

 

「ハアアアッ!!」

 

腕一本で弾き飛ばせる。

『ブラスター』の名を冠していても、あいつとじゃあ天地の差がある。

 

「ぐっ……」

 

遠距離では分が悪いと読んだのか。

距離を詰めて近接から蹴りを放つ。

連射砲のように継ぎ目がない。

休まず放つことでこちらの回避の穴、もしくは防御の穴をつく算段だ。

間違ってはいないが、それはあくまで拮抗していた場合の仮定。

 

「ふん!!」

 

足を掴んでジャイアントスイング。

そのまま上空へ放り投げて照準を合わせる。

 

「『ファイナルフラッシュ』!!」

 

光の奔流が敵を呑み込み場外へ突き落す。

ブルーだからこその瞬く間の打倒。

次の相手は……

 

「むっ!!」

 

歩こうとした瞬間に狙撃をされる。

回避はしたが頬をかすめていた。

どこに居やがる?

 

「遠ければ見渡せる場所にいくしかない」

 

そう言いながら進むが相手の影が見当たらない。

球体が浮いているのが見て取れる。

これが直接狙撃に関係していやがるな。

 

「これがスコープ代わりか?」

 

放り投げて砕いておく。

それ以外にも感知する手立てはありそうだが。

 

「あいつらのような千里眼があればな」

 

気の察知も難しい。

よく知った第7宇宙の奴らならいいが知らない宇宙の奴らなんてあてずっぽうもいい所だ。

 

「ちっ!!」

 

縦横無尽ではある。

だが気弾で相殺をしながら進むと見当違いの場所へ着弾している。

これで分かった。

熱とスコープの二段構えで感知をしている。

 

「動く的に当てるのは至難の業だ」

 

ましてやブルーの速度を当てるなんて砂漠で砂金を探すようなもの。

非常に難しい。

追尾型の気弾ならば可能だろうがな。

 

「あれは……」

 

一撃を避けるとちらりと影が見える。

反射してはいたがかなり近いところまで来ていたか。

 

「見つけたぜ」

 

俺は見失わないように相手の速度と己の速度を比較する。

そして距離との計算で導いた答えは……。

 

「この程度であれば問題ない」

 

悠々と追いつけるという事。

こそこそとしやがって気に食わないやつだ。

捕まえて場外に叩き落してやる。

足に力を込めて駆けだした。

 

.

.

 

さっきから当たらない場所に光線を打つ影があった。

きっと狙撃をするためにツーマンセルで動いている。

仮に一人ならば岩場などすべてをすり抜けた物理法則の無視が生まれる。

 

「フロストさんも落ちたし、僕が一人でも多く落とさないと」

 

そう言いながら岩場を駆けていく。

戦闘力は大したことない。

それは自分でもよく知っている。

でもこの大事な戦の一員になった以上、情けない事は言わない。

 

「あの人が折角シャンパ様に推薦してくれたんだから」

 

恩師であり何時までも心の中にいる英雄。

バーダックさんが強くなりたいといった僕に時折修行をつけてくれていた。

実力の上昇は僅かずつだった。

処世術で自分の非力さを補うものを手に入れて徐々に自分を磨いていた。

 

「それに報いて見せる」

 

次の光線の射出。

これで場所を割り出した。

岩場を駆け回ってあと少し。

 

「あの青髪の男、回避していやがる!!」

 

近くに行くと声を荒げていた。

その相手に不意打ちとも言うべきハイキックを決めていた。

 

「ぐあっ!!」

 

不意打ちだから回避もできずに地面へ叩きつけられる。

岩場だったから全身を打ち付けているだろう。

 

「お前……何者だ?」

 

痛みに歪んだ顔をしながらこちらを見てくる。

聞かれたら答えるのが常識だ。

 

「僕の名前はベリー、惑星プラントの男だ」

 

そう言って構える。

とは言っても自分から積極的にはいかずに様子を見る。

 

「ハアッ!!」

 

光線を撃ってくる。

近接距離が苦手なのか。

はたまた遠距離でこちらのペースに引きずり込まれないようにしているのか。

 

「体重が軽いからこその利点、速度で貴方を翻弄する」

 

光線を当てられずに焦る相手。

顎に一撃を加えて意識を刈り取りに行く。

 

「ぐっ……」

 

重くない拳は意識を刈り取るがダメージが残るわけではない。

ヘビーパンチャーならこの一撃で足をもつれさせることもできる。

 

「当たれぇ!!!!」

 

乱れ打ちだ。

そんなやけになって光線をいくら撃っても結果は同じ。

ひょいひょいと避けていく。

そしてがら空きになった腹部へ蹴りを叩き込み、顎を拳で跳ね上げる。

 

「ぬぐ……!!」

 

くらいながらも組みついている。

足を払っていく。

それで背中をつけさせて顔面を殴打するつもりなのだろう。

しかしこんな荒い動きだったら……

 

「甘い!!」

 

相手が払おうとした勢いを利用して足払い。

そのまま相手は自分の技と足払いによって加速した勢いのままに投げられていく。

頭を打ちつけさせるように体重をかけて叩きつける。

 

「ハア!!!!」

 

相手の体重と自分の体重。

そして投げの速度。

相手の頭の形状を意識して気絶させる威力を割り出す。

そして威力に関しては、相手の一撃を利用すれば巨竜も倒せる。

理詰めの戦法で貢献する。

 

「まずは一人目」

 

気絶した相手を見て勝利を確信。

場外へ投げる。

そして次の相手を探しにいくのだった。

 

.

.

 

「おい、ハーミラ!、どうしたんだ、ハーミラ!?」

 

そんな大きな声を出してはいけない。

既にバレてはいるが、仮にも狙撃手のパートナーならば慌てて居場所を分からせるなど愚の骨頂。

 

「こそこそとネズミのようにしやがって、虫唾が走るぜ」

 

ブルーの状態で気を高める。

一気に仕留めてやるぜ。

 

「このプランを馬鹿にするな!!」

 

そう言って相手が攻撃をしてくる。

しかし攻撃が相方任せ。

そして気弾反射という特殊能力のせいで肉弾戦が弱い。

拳を掴んでそのまま上空へ投げる。

特殊な力にかまけず努力をしないと伸びないぜ。

 

「うおっ!!」

 

相手の背中に肘打ちをして岩に叩きつける。

その一撃だけであっけなく決まった。

遠距離で戦う奴はやはりこのシチュエーションになると弱い。

 

「対して強くもなかったな」

 

プランという奴を場外へ吹っ飛ばして岩から降りる。

その瞬間、息が詰まる威圧感があった。

その出所は前方の灰色の肌を持った男。

 

後方からくるのは紫色の肌を持つ壮年の男性。

方向から考えて奴が狙撃手を倒していたのか。

 

「…」

 

構えてはいない。

だが来る。

その目をしていやがる。

 

「来やがれ!!」

 

その言葉と同時に空気が爆ぜる。

速度が空気を摩擦した。

こいつ……強い!!

 

「ぐっ!!」

 

ブルーになった状態のままで良かった。

解除したままだったらこの一撃で決着がついていた。

後ずさりするが異常な力だ。

破壊神の次元じゃあないのか?

もしくは……

 

「面白い……!!」

 

勝てば全宇宙はこの俺様だ。

そうと決まれば俄然やる気が出る。

 

「ハアアッ!!」

 

向かって行って拳を突き出すがバリアか何かで防がれる。

なるほど、超能力じゃあない。

気を高めて集中した結果か。

こんなのは初めてだぜ。

 

「フンッ!!」

 

一撃で罅を入れる。

そしてハイキックを寸分たがわず放って割ってやる。

こんなものも破れないと思ったか。

 

「少しはできるようだな…」

 

相手の気も高まる。

まだ全力ではない。

カカロットのように舐めているのではない。

どうやらエンジンがまだかかっていないだけだ。

 

「全力を出すまで待ってやるほど今日の俺は甘くない!!」

 

宇宙の消滅という重大な内容。

美学などいらない。

勝利という結果のため、誇りを捨てる。

 

「だあっ!!」

 

反応できていない。

エンジンがかかる前に殴り倒す。

 

「ぐっ……」

 

脇腹に一撃。

筋肉に阻まれたがまだ止めない。

 

「オラァ!!」

 

左アッパー。

右上段蹴り。

右フック。

左下段蹴り。

右正拳突き。

左前蹴り。

頭突き。

左後ろ回し蹴り。

 

数えること八度。

その怒涛の連撃に反撃すらさせない。

蹴りを喰らって横に流れる体を掴み、頭を地面へ叩きつける。

 

「ぬっ…」

 

さっきまでの連撃の手応え。

そして今の一撃で確信を得た。

この相手は想像以上に頑丈だ。

今の叩きつけでのダメージは裂傷も僅かで血も滲む程度。

随分と石頭のようだ。

 

「どうやら俺の7割と同格ぐらいのようだな」

 

追撃で放った俺の拳を受け止める。

そしてそのまま膝蹴りを放つ。

 

「がはっ……!!」

 

胃の内容物が逆流する。

とてつもない威力の蹴りだ。

さっきが半分ほどだったとしても伸び率がおかしい。

 

「このっ!!」

 

拳を振りかぶった瞬間、肘打ちを喰らう。

軌道が見えなかった。

これではうまく防御もできやしない。

 

「こいつ……」

 

ブルー状態の俺も見抜けない速度。

このレベルだと7割でもえげつない。

やはり予想通りの実力だ。

 

「ふっ!!」

 

顔へ繰り出す上段蹴りを避けて掴む。

そのままジャイアントスイングをするが……

 

「投げられはしない」

 

地面に手をつきその膂力のみで回転を止める。

そして足で挟み投げられて上空を舞う。

その勢いは身動きを取らせない。

脚力も全てが規格外だとこのわずかな探り合いで俺に示したのだ。

 

「終りだ」

 

手のひらの気弾を放とうとしている。

身動きが取れないせいで避けられない。

まさか、この俺がカカロットと戦う前に終わってしまうとは……

脱落する覚悟を決める。

するとひとつの影が灰色野郎を蹴り飛ばす。

 

「むっ……」

 

照準がずれて俺の方に気弾は来なかった。

しかし僅か横へ向かって行く一撃は背筋が寒くなるほどのものだった。

 

「どうやらあなた、バリアと攻撃は同時にできないようですね」

 

紫肌の男だ。

気を感じ取るがその実力だと殺されるぞ。

さらに後ろから猪のような奴が来ていた。

 

「ベリー君、気を付けたまえよ」

 

どうやら支援するタイプのようだが、どういった能力だ?

そして紫肌の男、ベリーとの戦いが始まる。

 

「フッ」

 

巨岩のごとく拳。

最短距離で届くようにストレートで放たれる。

実際のサイズはともかく威圧感が凄い。

しかしその一撃をベリーというやつは……

 

「はっ!!」

 

受け流して前蹴りを叩き込む。

その威力はあの男の拳の勢いを利用したのだろう。

体格に見合わない弩級のものだった。

 

「フッ!!」

 

ハイキックを受け止めて後ろに飛び、その勢いのまま延髄蹴り。

ぐらりと揺れて片膝をつく。

相手の攻撃力がそのまま突き刺さる。

そうなると片膝をつくのも納得だ。

 

「少々それができないようにするか」

 

そう言って再度拳を突き出すジレン。

それを見てベリーがカウンターを放つ。

しかしジレンがそれを回避してさらにカウンター。

 

「なんの!!」

 

それをひらりと避けてさらにカウンター。

ギリギリのように取れるが……

 

「こちらの番だ」

 

頭を下げてカウンターでアッパーを放つ。

勢いが徐々に互いの威力を利用しているから強くなっていく。

 

カウンター返しの応酬。

ジレンが攻撃の速度で徐々にベリーの反応速度を引き離して一撃を見舞う。

その一撃は前蹴り。

即座に判断したベリーは後ろへ飛んで威力を軽減するが…

 

「ぐえっ……」

 

片膝をつく。

やはり戦闘力の基礎において差が大きすぎる。

カウンターなど技術面でどうにか詰めてはいるものの、いかんともしがたい差が出来ている。

ましてや相手もその技術を使い始めたらそれはさらに顕著だ。

そして片膝をついたという事は…

 

「終りだ」

 

それは敗北を決定づける宣告。

気絶はこのルールでは敗北に当たらない。

しかし負けかと言われれば負けだろう。

 

「お前は弱くとも俺を熱くさせる稀有な男だった」

 

手を組んだ鉄槌がベリーの頭に振り下ろされる。

死ぬ事はルールとして相手もしない。

だから生死の問題については安心できる。

しかし見るからに思いその一撃はベリーの体をワンバウンドさせた。

意識を断ち切るには十分すぎるほどの威力だった。

 

「ぐあっ……」

 

流石のカウンターの名手も沈む。

そして顔を上げてこちらを見てジレンが言ってくる。

 

「お前たち二人にはなかなかに熱さを感じた、感謝する」

 

そう言って落とす事もなく俺達の前から去ろうとしていた。

コケにされた気分だと苛立ちを感じる。

しかし次の瞬間……

 

「ぐおっ……」

 

ベリーが後ろからガムシャラに突進をしたのだ。

後ろから予想外の渾身の一撃を喰らって体がよろめいている。

たたらを踏んで足が不安定な状態。

流石に強い奴でも隙ができる一瞬だったのだろう。

倒した後の余韻。

その時間は1秒にも満たないもの。

 

「うぉおおお!!」

 

しかしこの男はその隙を逃しはしない。

追撃のショルダータックルで武舞台から落として羽交い絞めをしていく。

その一連の行動には勢いがあった。

自分たちとは違う弱者の気迫と意地があった。

相手もあそこからここまでやられるとは想像していなかっただろう。

 

そしてその姿を見ていたもう一人の男がついに動く。

 

「この私がなぜドクターロタと呼ばれているか教えてやろう、それはな……」

 

首を鳴らして深呼吸をする。

ベリーの方をしっかりと見ていやがる。

まさかこいつ……

 

「肉体的や精神的といった原因のありとあらゆる病を治してきた、そしてそれは!!」

 

やはり場所から届くか判断していやがったか。

そう言って武舞台から飛び出す。

その手からの発光はなんだ?

 

「命の『危機』、心の『危機』というように『危機』から救ってきたということなのだよ!!」

 

紫肌の奴に触れると場外の『危機』から救うという事か。

自分がさっきまで居た箇所の武舞台に戻し、自分が羽交い絞めをして身代わりになりやがった。

だがそんな中でもジレンは気を高めていやがる。

まさかあいつ……

 

「俺は落ちん!!」

 

感情を初めて露わにした大きな声。

ドクターの羽交い絞めを解いて踏み台にして跳躍。

指一本だけ武舞台に掛かってから刹那。

武舞台に戻っていやがった。

 

「流石に心が揺れぬ俺でも今のは久方ぶりに驚愕を覚えた」

 

首を鳴らし羽交い絞めにされた体をほぐす。

素子と手のひらを開閉させて問題がないという事を示していた。

 

「実力が全てではないという事を教えてもらい体に強烈な熱が灯った、お陰で……」

 

無の界を包み込むような気が出てきた。

それは即座に引っ込んだが俺とベリーに冷や汗をかかせるには十分だった。

これがこのジレンの……

 

「全力を出す事が出来そうだ」

 

そう言って去っていく。

第6宇宙の奴らのおかげで命を拾う事が出来た。

何かあれば助けないとな。

ベリーという奴もいつの間にかここから消えていた。

どうやら別の所へ向かったのだろう。

俺も敵を探さないとな。

追いかける事もなく、次の敵を求めて歩を進めた。




第6宇宙の戦士に『エピソードオブバーダック』からベリーが参戦しています。
バーダックが直々に鍛えてくれた戦士なのですが、元々戦闘系種族ではないので、強さは大した事はありません。
しかし、てこの原理など理詰めの戦いやカウンターの名手で相手の力を利用できる巧者です。
ジレンの規格外の攻撃力を逆用してみたり、余韻に至る一瞬の隙をついての道連れ狙いなど泥臭く戦う、絶対に宇宙代表に一人は欲しいという枠の存在です。

ジレンがエンジン掛かる前に仕留めにいくなりふり構わないベジータは原作ブレイク感あって申し訳ありません。

あとはドクターロタの『ドクターと呼ばれる理由』はオリ設定です。
ちょっと見せ場が原作でなかったので作ってみました。

指摘などありましたらお願いします。


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『犬・亀・蛞蝓』

タイトルは今回の出てくるキャラをそのまま当てはめています。
脱落者をこの調子で少しずつ増やしていきます。


「どうした、第3宇宙の戦士よ!!」

 

俺は一人、気を吐き戦っていた。

二人の弟はすでに脱落。

最終的に落とした灰色の戦士と青髪の戦士。

奴らの強さはかなりのもの。

俺が頑張らねばならん。

未知数のモギは除外だ。

他の奴らも何かしらの力はあれど、俺ほどではない。

 

「貴様の攻撃など俺には届かん!!」

 

叩いてくるが俺のエネルギーとなる。

肉体が大きく強靭になっていく。

 

「ビア!?」

 

その大きくなった肉体で一撃を放つ。

僅かに浮いた体を抱えて放り投げる。

相手より大きな体になれば優位性がある。

相手はそのまま場外へと真っ逆さまとなった。

 

「次の相手は……」

 

そう言ってくるりと振り向いて探そうとした瞬間。

相手がこっちに向かっていた。

その見た目は灰色の戦士。

ラベンダーをボコボコにした戦士を落とし、その後ラベンダーを落とした男。

 

「貴様……」

 

無言のまま、こっちを見据えて進んでくる。

来るぞ。

勘が叫ぶ。

 

「……」

 

間合いとしては蹴りが届くかどうかという形であった。

しかし次の瞬間。

 

「がっ……」

 

まるで滑るように。

気配すらなくなったと錯覚するほどの自然体で腹に一撃を喰らわされていた。

強靭な肉体の中が爆発するような一撃。

大きくなるためのダメージ。

それを凌駕している。

 

「的が大きいだけでは勝てん」

 

そう言って見えない速度の攻撃を喰らう。

体が大きくなって反撃をする。

倍の力ではあるが……

 

「フンッ!!」

 

さらにそれにカウンターを合わせてくる。

巨大化が飛躍的に早まる。

 

「場外に押し出されるだけだな」

 

このままでは重量が耐えられなくなる。

解除をすればたちまち飛ばされる。

ならば……

 

「ガアアッ!!」

 

フライング・ボディプレスで射程に捉える。

それを避けようと動いた瞬間…

 

「ハアッ!!」

 

気弾を放って軌道を変える。

さらに体を縮小させて巨体から一気に質量を減らす事で勢いを強める。

 

「だあああ!!」

 

その勢いのまま、顔面に一撃を入れてよろめかせる。

これはいい機会だ

次の一撃を入れようと飛びかかる。

 

「今の一撃は効いた」

 

踏みとどまって相手が言葉を発する。

その言葉を言った次の瞬間、腕の先が消える。

体が爆発したような衝撃がはしる。

見えない速度で何発もの攻撃を当てられていた。

意識を持っていかれてしまい、最後に腹に爪先がめり込む。

 

「終りだ」

 

相手は蹴りを振りぬいた。

それを最後に俺は落ちていった。

 

.

.

 

「お前さんがいくら色仕掛けをしようとも」

 

今回の為にわしは今までを思い返し修行をした。

その成果が実っている。

わしは気を体に巡らせていた。

漲って、膨張する筋肉。

たくましく変貌するその姿に娘は驚き逃げていく。

逃げた先は場外。

 

「ありゃりゃ、戦わずに一人落としたわい」

 

その後にうろついていたら第4宇宙の女戦士に目をつけられた。

影縫いなど多彩な技。

搦め手を存分に使う相手。

こういう相手の対処はわしの担当じゃ。

『魔封波』を使って小瓶に入れて場外へ。

これで二人目。

 

その結果でもめていたが使用は良しとする結論が出た。

さて……次の相手はそこの岩場にいる青年かの?

そう持っているといきなり跳躍でわしの目の前に来た相手。

 

さっきベジータが苦い顔で通達の為に一度戻ってきたがその原因はこ奴のようじゃな。

灰色の肌という特徴。

そして感情が希薄な眼。

 

「標的はわしか?」

 

僅かに頷き、臨戦態勢となる。

全開で相手をする。

空気が爆ぜた。

しかし軌道は正直なものじゃな。

 

腕に掌を添えてかわし、そのまま勢いをつけて顔を蹴りあげる。

頑丈な体だと手応えで分かる。

 

「じゃがこの間合いであれば……」

 

ひらりひらりと木の葉のように避けて拳と蹴りを当てていく。

とは言ってもさす程度にしか感じておらんじゃろう。

 

実力の差がわかる。

さっきまで見ていた青年も去っている。

それが正解だ。

こ奴とやっても実力の差を見せつけられるのみ。

 

「お主、強いの……」

 

こりゃあ、悟空達よりも……

そう思ったわしは着地と同時に小瓶を置く。

よいこ眠眠拳も萬国吃驚掌も使えん。

 

「お前さん相手にはこれしかあるまい!!」

 

 

.

.

 

 

老人が手を前に出す。

すると波動が目の前に現れる。

体がとらわれると即座に回転の中に引っ張り込まれていく。

 

「ぐうううううう……」

 

まさかこんな技を持っていたとは。

あの小瓶の中に封じて場外へと投げるつもりだ。

あいつらでは勝てない脅威がまだ居る。

ここで落ちるわけにはいかない。

 

「うがぁ!!」

全力での気の解放。

『無の界』を包み込むほどの気で力任せに技を破る。

少し危機感からか一筋の汗が伝う。

ベリーというものの時と同じ感覚だ。

 

「老いた者よ、お前も俺の心を震わせた」

 

息も荒く膝をついている。

どうやら体力を著しく消費するのだろう。

俺の顔に一撃を当てて、柳のようにすり抜けた。

そこで実力差を知ったのだろう。

封印の技を使ってきた。

火が点っていなければ、あの小瓶に入っていたかもしれない。

 

「いたぶる趣味はない」

 

そう言って腕を掴み、場外へと放り投げる。

次はあの二人を標的とするか。

 

.

.

 

俺達はボタモとマゲッタの相手をしていた。

少し前に見ていた俺はボタモの倒し方を悟飯に伝えていた。

それによりアルティメット状態でまずは倒す。

俺は睨みながらマゲッタの周りを回っていた。

耳をふさいでさえいたら弱点は隠されている。

だからそれを確かめている。

 

「ビンゴだ!!」

 

耳をふさいでいやがる。

だったらこれでいい。

 

「はあああ!!」

 

マゲッタの体に気弾を当てていく。

本人はまるで気が付いてはいない。

 

「『魔空包囲弾』!!」

 

当てる間に同時に放って漂わせていた気弾を一気に纏めて当てに行く。

当然ダメージそのものは期待していない。

本来の狙いはその耳をふさいでいる岩だ。

 

「ボシュー!!」

 

効いていないとアピールをしている。

確かにお前にダメージはない。

しかし落とすための準備は整った。

 

「随分余裕のようだな、ポンコツ野郎!!」

 

そう言った瞬間、相手の力が抜けていく。

そして蹲った相手の足場を崩して転落をさせた。

これで俺と悟飯が揃って一人ずつを落とした。

 

「次の相手は誰ですかね?」

 

悟飯も周りを見回す。

落とせる相手を選ばないとな。

勝つのが一番の重要な要件だ。

 

そう思っているといきなり自分たちに重力がかかったような張り詰めた雰囲気になる。

その出所は分かっている。

前から来ている灰色の男だ。

俺は冷や汗が伝い、呼吸が苦しくなるような圧迫感を感じた。

 

「あの人がベジータさんの言ってた……」

 

悟飯もあの男の恐ろしさを感じたようだ。

どうやら視線からして悟飯と俺が標的のようだ。

一歩一歩近づくごとに増していく威圧感はすさまじいの一言に尽きる。

 

「悟飯、お前は逃げろ」

 

俺がこいつと戦って勝てるわけはない。

このまま悟飯もまとめて落とされるくらいならば、俺が捨て石になる。

構えて、相手の間合いを測る。

 

「なっ!?」

 

しかし次の瞬間、驚愕の行動があった。

スライディングで滑るように接近。

間合いが関係ない一撃を放ってくる。

 

「ちっ!!」

 

防御は間に合うがあんな一撃の重さを持っていたとは……

パワーも速度もベジータ以上だ。

 

「こんな奴が紛れ込んでいたとは」

 

対応できる戦士がどれだけいる?

孫の奴がいくら頑張っても今の実力ではこいつの全力には及ばない。

 

「はっ!!」

 

拳を振るってくる。

その拳に腕を伸ばして、そのまま相手の腕全体に巻き付け縛り上げる。

そしてその腕の手のひらから気弾を撃つ。

 

「むっ……」

 

相手は顔色一つ変えやがらない。

かなりの威力を想定して撃ったんだがな。

 

「ぬっ!!」

 

腕を引っ張って俺を宙に舞い上がらせる。

そしてそれを追い越そうとするが……

 

「これは……」

 

相手が自分の周りを見回す。

俺は分身を作り、相手の攻撃を何とか回避するようにする。

 

「この手ならば……」

 

気を放出してなぎ倒す。

当然それは予想済みだ。

その射程から外れている残りの分身で攻撃を仕掛ける。

 

「『魔穿撃滅波』!!」

 

全方位の最大奥義。

『魔貫光殺法』を超えたこの一撃で仕留められれば……

 

「頑丈な俺でも痛みを感じる一撃とはな、あの青髪の男とベリーという男からは始まり、戦った5名、皆が俺の心を震わせる」

 

体中から煙をあげていて大したダメージではないと伺わせていた

腕を交差しながらもさらに熱量が増えたかのような眼。

この男の奥底に秘められた願い。

そしてこの男の持つ熱い心がどれほどなのか。

 

「があ!!」

 

殴られるが踏みとどまり拳を振るう。

しかし相手に叩き落されて、またもや一撃。

 

「ぐあっ…」

 

こんな事があるのか。

仕方あるまい。

奥の手を使う。

対して効果はないかもしれないがな。

 

「ハアアッ……」

 

体を大きくさせる。

それはたちまち相手を見下ろす形となった。

 

「巨大化とは……」

 

ただでかくなったんじゃない。

あのスラッグという男との同化のおかげでこの状態は強くなるんだ。

的が大きいからこの戦闘では使わなくてもよかったんだがな。

 

「はっ!!」

 

口から気功波を放つ。

それを跳躍で回避するが目から怪光線を撃つ。

 

「むっ!!」

 

腕を交差して防ぐ。

回避できなかったのだろう。

 

「フンッ!!」

 

巨岩のごとく一撃を見舞う。

回避不能の状態でどう動く?

 

「ぬおっ!!」

 

腕を交差して防ぐが片膝をつく。

このまま巨大化で押しつぶしていく。

 

「うぉおお!!」

 

腕の力を全開にして弾き飛ばされる。

そして、その次の瞬間、膝の裏に回り込んでいた。

 

「フッ!!」

 

膝裏を叩かれて、体勢を崩される。

そしてその指を掴み場外へ投げる。

 

「まだまだ!!」

 

手をついて留まるが相手もそれを読んでいたのか

勢いをつけた飛び膝蹴りが顔にめり込んだ。

 

「飛ぶがいい」

 

その一言のまま場外へ蹴り出された。

だが只で転ぶつもりはない。

俺にもまだやれることがある。

 

「お前も道連れにしてやる!!」

 

腕を伸ばして掴みにいく。

しかし到達するかと思われた次の瞬間。

 

「なっ!?」

 

大きな気弾で体を押し上げられる。

あの一瞬でこちらのあがきを見抜いていたか。

もはや抵抗できない。

 

「終りだ」

 

握り拳をつくった瞬間気弾が爆散して俺に衝撃を与える。

無念。

ただそれだけが心に残り、落ちていった。




ジレン無双という話です。
こうしていく事でジレンの強さがより際立つかと思いました。

現在までの脱落者:
()内は落とした人間

第2宇宙:
リブリアン(ガタバル)、ロージィ(ピオーネ)、カクンサ(ガタバル)、ビカル(ピオーネ)
プラン(ベジータ)、ハーミラ(ベリー)
第3宇宙:マジ・カーヨ(ジレン)、ビアラ(ベルガモ)
第4宇宙:ダーコリ(亀仙人)、キャウェイ(亀仙人)
第6宇宙:フロスト(ジレン)、ドクターロタ(ジレン)、マゲッタ(ピッコロ)、ボタモ(悟飯)
第7宇宙:亀仙人(ジレン)、ピッコロ(ジレン)
第9宇宙:バジル(ベジータ)、ベルガモ(ジレン)、ラベンダー(ジレン)
第10宇宙:ザマス(ガタバル)

現時点:20名脱落
残り60名

撃墜数 ()内は落とした選手の数
ジレン(7)
ガタバル(3)
ピオーネ(2),ベジータ(2),亀仙人(2)
悟飯(1),ピッコロ(1),ベリー(1),ベルガモ(1)

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『最後の仕事』

第6宇宙メイン回です。
一気に選手が減っています。
少しずつ巻きながら、あとの勝負のメンバーを厳選しています。


「下らねえ奴らばかりで飽きちまうぜ」

 

見回すが今までの奴らに手応えがない。

第3宇宙のボラレータ。

第4宇宙のガノス、マジョラ。

第9宇宙のオレガノ。

第11宇宙のクンシー。

既に5人も落としてやった。

 

ヒットも第3宇宙の奴を一人。

キャベも第4宇宙の奴を一人。

 

俺に憧れていたあいつの姿もちらちらと見える。

第2宇宙の奴を一人。

第3宇宙の奴を一人。

第9宇宙の奴を一人。

第10宇宙の奴を一人。

 

合計で7人は落としていやがる。

 

「もう3分の1は落ちただろ」

 

60名だったがこの攻防で11名落ちているのが確認できる。

残りは49名。

 

「ふん……」

 

視線を感じる。

遠いがわかってしまう。

あいつは俺と戦いたいんだろう。

だがそれはできない。

 

「あいつが先客だろうからな」

 

弩級の戦いになるだろう。

徐々に近づいている。

どちらかは落ちかねない。

 

.

.

 

「最強が不在で殴り込みとは舐められたもんだな」

 

団体で来ていた。

気の大きさとしてはどこかにある気の方が大きい。

私たちを狙うためだろう。

おおよそ標的を見つけたから同時に気を発揮した。

きっとキャベかベリーだろう。

 

「どうも奇妙な格好だな」

 

私たちの格好を見て言ってくる。

惑星サダラの戦闘服。

そして腹部が僅かに盛り上がっている。

この盛り上がりと、伸縮自在な服が秘密兵器に必要なものだ。

 

「格好で強さが決まるのかよ?」

 

そう言うと笑って散開しやがる。

5人だろうが10人だろうが引くつもりはねぇぜ。

 

「いくぜ、ケール!!」

「はい、姐さん!!」

 

超サイヤ人2になる。

ケールも変身をする。

前に出てきた二人が私たちの相手をする。

 

「ハアッ!!」

 

後ろにいる奴が変な力で閉じ込めやがった。

どうとでもしやがれ。

そんなちゃちなことしなくても逃げねえし、助けなんか呼ばねえよ。

 

「『ジャスティス・ウィップ』!!」

 

ケールの奴に気でできた縄を投げて縛り付ける。

しかしそんな強くは思えねえな。

 

「このまま落とされれば傷つかなくて済むぞ!!」

 

そう言ってギリギリと強めていく。

しかしサイヤ人にとって傷つかなくて済むなど馬鹿な事を言うもんだぜ。

 

「うぉおお!!」

 

ケールは力を入れて縄を引きちぎる。

そしてその相手を殴り飛ばした。

 

「『ジャスティス・ツイスター』!!」

 

小さい奴が勢いよく回って竜巻になる。

私に向かって迫ってくるがつまらない技だと思う。

今の私たちを…

 

「竜巻なんかでどうにかできるかよ!!」

 

恐れる事もなく竜巻に手を突っ込む。

角を持って地面に思い切り叩きつける。

バウンドした相手は息が荒い状態で恐怖の顔になっていた。

 

「くっ……こうなったら6人で同時に打つぞ!!」

 

2人がダメージを負わされている。

一人ずつじゃ無理と思ったんだろう。

 

「終わるがいい!!」

 

6人が一斉に力を合わせて放ってくる。

統率が取れているんだろう。

でもな……

 

「6人がかりでも私とケールの絆に比べたら大したことねえんだよ!!」

 

私とケールの全力の一撃は赤と緑の太い波動。

6人がかりの気弾を呑み込んでいく。

相手もまさかここまでお相手とは思っていなかったんだろう。

私らをなめすぎだっての。

 

「まさか……こんなはずでは!?」

 

全力の気の一撃で吹き飛んでいく。

場外まで真っ逆さまだ。

こうも綺麗にできたら爽快なもんだぜ。

 

「閉じ込めたり、小細工なんて私らにゃあ意味ねえのさ!!」

 

それを最後に言ってやってケールとハイタッチをする。

一気に6人も落ちていった。

思ったんだけどこういった場合は誰が落としたことになるんだ?

まあ、いずれにしてもこれで一気に私たちが有利になったぜ。

 

.

.

 

「来るがいい」

 

そう言う相手に超サイヤ人2で相手をする。

しかし相手はそれを悠々と待ち構えている。

随分と余裕があるようだが……

 

「はあああ!!」

 

攻撃を繰り出す。

右足の蹴り。

ヒョイと避ける仕草をしてきたのでフェイント。

 

「そら!!」

 

左に切り替えて上段前蹴り。

それを片手で受け止められる。

 

「『ジャスティス・ブーツ』!!」

 

自分よりも強烈な前蹴りを喰らい吹っ飛ばされる。

起き上がろうとしたところを……

 

「『ジャスティス・ラリアット』!!」

 

さらに強烈な一撃。

意識を持っていかれそうになる。

 

「うぉおお!!」

 

しかしなんとか踏みとどまる。

相手が向かってきている中、気を高める。

全身全霊の一撃を放つ。

 

「『スタート・スパーク』!!」

 

相手に直撃する。

十分な手応えがあった。

しかし次の瞬間……

 

「お前が全身全霊の一撃を放っても私を倒すには足りていない!!」

 

そう言われて後ろから組みつかれる。

あれを煙をあげた程度のダメージで抑えるなんて、とても頑丈な相手だ。

それに、肉体の大きさに見合わないとてつもない速さ。

相手の実力を感じ取る。

 

「『ジャスティス裸締め』!!」

 

締め付けられていく。

徐々に力を加えられる。

 

「このまま気絶をさせて放り投げてやる!!」

 

意識が遠のく。

力を入れて抵抗をしてもまるで動かない。

 

「だったら……」

 

掌だけでも相手に向ける。

そして……

 

「うおお!!」

 

相手に連続で打つ。

相手の体と自分の隙間が空いていく。

 

「ぬがぁ!!」

 

その合間から、何とか抜け出す。

しかし代償は大きなものだった。

 

「はあはあ……」

 

息を切らせている自分を見て相手が勝負をつけに来る。

一気に爆発的な速度で接近される。

回避行動すらおぼつかない。

 

「私を倒すにはお前は未熟なのだ!!」

 

腕を交差して耐えられていたのだ。

そして反撃が始まる。

 

「『ジャスティス・ジャッジメント』!!」

 

両肩を砕く鉄槌の一撃。

その痛みに呻く暇もなく、腹部へ掌底を叩き込まれて、無防備に吹っ飛んでいく。

実力差をまざまざと見せつけられる結果となった。

.

.

 

 

「ぐあっ!!」

 

受け流せず、速度に反応できていない。

本来ならばできることがなぜできないのか。

それはすぐに荒い息とがくがくとした体で悟った。

あの。最強の相手との戦いで食らった体のダメージが深刻だ。

 

「二人の秘密兵器のために最後の仕事を……しなくては」

 

二人は何とか閉鎖空間から出てきて五人も落とした。

それに続いてこの人を落とす。

 

「ジレンにボロボロにされた体でこのディスポには勝てない!!」

 

速度だけではどうしようもない

そんなもので勝てるわけがない。

だがそれは疲弊していないときの話だ。

直線的な動き。

それを見抜いてカウンターを叩き込んではいるがそれ以上にダメージの楔が大きい。

 

「ぐっ……」

 

膝をついてしまう。

相手がその状態を見て速度を上げる。

 

「くっ!!」

 

足を引っかける。

それで相手がこけそうになったところへ膝蹴りを叩き込む。

 

「この……雑魚が!!」

 

殴られて場外近くまで飛ばされる。

そこへ追撃の一撃を放とうとしてくる。

 

「フンッ!!」

 

受け流して体勢を入れ替える。

これで相手が追いつめられた形。

今、この機会が秘密兵器のための準備。

手に気の球を作り出す。

これは通常のものと違って特殊な力を持った気の球である。

 

「はっ!!」

 

それを上空に向かって放り投げていく。

その一撃は当てる事は前提にしていない。

 

「遅い!!」

 

笑いながら余裕綽々でかわしていく。

それは攻撃の気弾ではない。

 

「…て…れ……」

 

息も絶え絶えに言葉を言う。

何故ならばあの気の球を作るには体力をかなり使う。

 

「なんて言っているんだ?」

 

相手は聞き返している。

いつでも落とせるから腕まで組んでいる始末だ。

 

「弾けて混ざれぇええ!!」

 

その態度もすぐに吹き飛ばされるだろう。

これで終わりというわけではない。

 

「あと……」

 

突撃をして相手に組みつく。

そしてそのまま落下していく。

目指すのは場外。

成功させれば残りは第11宇宙は2名。

時間切れも考えたらもはや風前の灯火だ。

 

「貴方ごと落ちるのが僕の役目だぁあああああ!!」

 

油断を最後までしてくれて本当に良かった。

力いっぱいに締め上げて脱出をさせないようにする。

さっきのような失敗はするわけにはいかない。

骨すら圧し折ろうと力を込め続ける。

 

「超速の動きで……!?」

 

相手が超速で外そうとした瞬間。

僕は容赦なく首を絞めていた。

こうなってしまうと……

 

「首を絞めたままやっても、少しでも失敗したら重力とかの兼ね合いで首が折れて死ぬ、

それを始めるより早く指に力を籠めれば折れる……消されてもあの人の為なら殺しも厭わない!!」

 

ルールを破ってでも第6宇宙を勝たせる。

それが信じてくださったシャンパ様への恩返し。

そしてバーダックさんへの恩返し。

 

「ちくしょう……ちっくしょー!!」

 

無抵抗のまま、僕とディスポが落ちていく。

そしてベンチに戻ってきたとき11宇宙の方にディスポがいるのを確認して、安堵の息を吐き出した。




短めで申し訳ありません。
ベリーの行動が秘密兵器に大きく関与します。
器具使っていないからルールの疑惑もない第6宇宙強化です。

現在までの脱落者:
()内は落とした人間

第2宇宙:
リブリアン(ガタバル)、ロージィ(ピオーネ)、カクンサ(ガタバル)、ビカル(ピオーネ)
プラン(ベジータ)、ハーミラ(ベリー)、ラパンラ(ガタバル)

第3宇宙:マジ・カーヨ(ジレン)、ビアラ(ベルガモ)、ボラレータ(バーダック)
ナリラーマ(ヒット)、ザ・プリーチョ(ガタバル)

第4宇宙:ダーコリ(亀仙人)、キャウェイ(亀仙人)、ガノス(バーダック)
マジョラ(バーダック)、モンナ(キャベ)

第6宇宙:フロスト(ジレン)、ドクターロタ(ジレン)、マゲッタ(ピッコロ)、ボタモ(悟飯)
ベリー(ディスポ)、キャベ(トッポ)

第7宇宙:亀仙人(ジレン)、ピッコロ(ジレン)

第9宇宙:バジル(ベジータ)、ベルガモ(ジレン)、ラベンダー(ジレン)
オレガノ(バーダック)、チャッピル(ガタバル)

第10宇宙:ザマス(ガタバル)、ナパパ(ガタバル)

第11宇宙:クンシー(バーダック)、ディスポ(ベリー)、カーセラル(カリフラ)
タッパー(ケール)、ゾイレー(カリフラ)、ブーオン(ケール)、ケットル(カリフラ)
ココット(ケール) 

現時点:40名脱落
残り40名

撃墜数 ()内は落とした選手の数
ジレン(7),ガタバル(7)
バーダック(5)
ケール(3),カリフラ(3)
ピオーネ(2),ベジータ(2),亀仙人(2),ベリー(2)
悟飯(1),ピッコロ(1),トッポ(1),ベルガモ(1),ディスポ(1),キャベ(1),ヒット(1)

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『両雄激突』

今回から戦いが始まります。
30人を切ろうとしている中の激戦です。



オラも戦っているけれど全然落とせねぇ。

人数が減ってきているからだ。

第2宇宙の奴を1人。

第3宇宙の奴を2人。

 

「じっちゃんとピッコロは落ちちまっているけんど……」

 

そんな事を言っていると欠伸をしているフリーザがいた。

なんだか物足りないといった感じだ。

 

「どうしたんだ、おめえ?」

 

こっちに気づいたフリーザはもう一度欠伸をする。

やる気のないこいつを見るのは初めてだぞ。

 

「どうしたんだも、何も……相手のレベルが見合っていないから退屈なんですよ」

 

親指で倒れてしまっている奴らを示す。

第9宇宙と第10宇宙の奴が2人ずつ。

そしてそれを場外に投げる。

 

「実力者が揃っているはずなのに、不完全燃焼もいい所です」

 

残りはおよそ30名。

その中でも自分と拮抗できるほどの実力者は少ない。

 

「貴方もゆっくりと探しておいた方がいいのでは?」

 

そう言って去っていくフリーザ。

そんな中、遠くで爆音が聞こえる。

この音の出所は分かる。

ブロリーだ。

あいつも戦っているみてぇだし言う通り探しに行ってみっか。

 

.

.

 

「どうした、こんなものか!」

 

全力で3人を同時に相手をしていた。

第10宇宙の戦士の3人。

なかなかの力ではあるが全然こっちからすればまだまだといった所。

羽があろうとも……

 

「ハアッ!!」

 

跳躍一つで追い越して地面に向かって殴ってやる。

相手は地面に叩きつけられる前に飛翔しようとするが甘い。

 

「滞空時間が長い跳躍というのもあるのだ」

 

そう言って腹部を蹴りぬこうとした瞬間……

相手の綺麗な声が聞こえる。

 

「喰らえ『ローズ・ニードル』!!」

 

きざな男ではあるが正確無比。

目を狙ってバラを模した気弾を放つ。

しかし……

 

「ふん!!」

 

歯で受け止めて砕く。

厄介な奴だな。

よし、俺は決めたぞ。

 

「美男子、まずは貴様から落としてやる!!」

 

着地と同時に『ブラスター・オメガ』を放つ。

それを軽やかに避けている。

しかしそんな回避ではまだまだ追撃できる。

 

「『ギガンティックコメット』!!」

 

気弾の雨を降らす。

その一撃一撃を回避しているが徐々に狭まっている。

 

「くっ!!」

 

冷や汗を垂らしてそのまま大仰に避けてしまう。

ここが攻撃を加える機会だ。

一気に駆けだして首筋に狙いを定める。

 

「『ギガンティックハンマー』!!」

 

ラリアットを放つ。

相手は木の葉のように舞い上がって地面に叩きつけられる。

そしてここで攻撃を終わらせはしない。

 

「『ギガンティックミーティア』!!」

 

美男子の顔が床にめり込んでいく。

顔は問題はないが気絶していた。

放り投げて場外へ。

 

「まず一人!!」

 

そう言って次の相手を見る。

相手の眼には怯えがあった。

しかしそんな事で攻撃の手を緩める俺ではない。

 

「抵抗しないと無様に落ちるだけだぞ?」

 

手をひらひらと降って相手へ向かって行く。

こちらが相手に対して一歩踏み出して近づいていくごとに青ざめていく。

 

「うぉおお!!」

 

恐怖心を振り払って攻撃を仕掛けてくる。

限界を超えてしまっているのか。

こちらの想像を超える速度、威力の攻撃を放っている。

その証拠に風を切り裂く拳が耐えられずに皮膚が切れている。

 

「ちっ!!」

 

顔面に一発入る。

腕を交差してズシンズシンと音を立てるように進んでいく。

相手は延々と打つが俺の骨の太さと頑丈さのせいでダメージが通らない。

 

「止めてやらないとな」

 

俺をその拳に腕を絡みつかせる。そして足払い。

相手を転ばせてそのまま顔に一撃。

そしてもう一発。

気絶させる程度にしておいた。

 

「二人目……」

 

放り投げて場外へ。

相手は女性だが……

 

「落としてやる」

 

ここまで来ては見逃さない。

相手が怯えて逃げようとするが……

 

「遅いぞ」

 

あっという間に追いつく。

あとは跳躍をして叩き落す。

 

「はっ!!」

 

高さは十分。

跳躍をして追い越した相手に頭突き。

自分の体の大きさを活かす。

相手が受け止めても押し込めるという算段だ。

 

「うわぁ!?」

 

華奢な体では受け止める事も不可能。

ましてや飛ぼうにもその瞬間、力を入れる。

それを逃すわけがない。

そうしたら腕を伸ばして気弾を撃ち込む。

間合いがまるでない密着でやられてしまうと死ぬかもしれない。

そんなもの、決断することはできないのだ。

 

「落としてやる!!」

 

そのまま頭突きの状態でめり込む。

頭を抜いて相手を掴み場外へと投げていく。

白目をむいていては飛ぶことは不可能。

少し物足りなさを感じてしまう。

 

こちらが勝利を感じて首をコキリと鳴らす。

すると、目の前からさらなる激戦を予感させるように、立ち昇る大きな気を持った女が現れた。

 

「次は私が相手です!」

 

そう言って近づいてくるのは第6宇宙のケール。

しかし見た目が超サイヤ人4に変わっていた。

何故かと思い、空を見上げると煌々と輝く気弾。

あれは『パワーボール』。

この短時間で尻尾を生やし、月の代替品の用意。

さらには大博打をする度胸。

とてつもない秘策を第6宇宙も用意したものだぜ。

 

「まさか、同じ形態の相手と相まみえるとはな……」

 

3人を落として温まった体。

そんな中間違いなく、己の全力を注いでも問題ない相手が目の前にいた。

相手に向かって全力で駆けだす。

 

「ハアアッ!!」

 

お互いがロックアップで相手の実力を測りあう。

俺が感じている相手の腕力……そして潜在能力。

いずれをとっても厄介だ。

このまま野放しにすると第6宇宙が優勝する。

それほどの可能性が彼女には秘められている。

 

「簡単に負けてはやらないぞ!!」

 

全力を尽くせる喜びを感じると同時に力を振り絞ってねじ伏せにいった。

相手も抵抗をする。

ブリッジの体勢でこらえて腹部へ蹴りを繰り出してきた。

 

「うおっ!?」

 

俺はその衝撃によろめいて相手との組み合いを解く。

じゃあ、仕切り直しだ。

そう思って構えなおした瞬間、遠い所の気配を感じる。

背中につららを突っ込まれたような恐ろしい感覚が走り抜けていった。

 

.

.

 

ジレンと俺との間合いがじりじりと詰まっている。

間合いと言うには語弊がある距離だ。

目視は出来ているが蹴りや拳を出しても到底届かない。

しかし自分とあの男が向かい合っている今、どの瞬間に攻撃を放つか。

それを決めてしまえば距離感は消失する。

そんな確信にも似た予感がある。

 

「……来た!!」

 

空気が爆ぜるように迫りくる。

その拳を逸らすと既に普通に腕を出せば届く場所にいた。

 

「流石だな」

 

ジレンがそう言って拳を突き出してくる。

俺はそれを最小の動きで避けて中段回し蹴りを繰り出す。

 

「むっ……」

 

ジレンは腕で受けるが、俺は一撃で終わらせない。

ダブルで上段へ蹴りを繰り出してこめかみを狙う。

そのままよろめいてくれれば御の字だが……

 

「甘い」

 

ジレンが蹴り足を掴みに来ると察知した瞬間、俺は足を止める。

更に姿勢をかがめて地面に手をついて掴んできた手を避ける。

地面についていた手を離し、カポエイラのように勢いをつけて脇腹に蹴りを放つ。

 

「ふんっ!!」

 

ジレンはそれに気づいて挟んで蹴り足を殺しに来る。

俺はそれも止めて距離をとる。

すると相手が攻めてきた。

 

「はっ!!」

 

ジレンはジャブを左右に二発繰り出してくる。

ジャブとは言えど練度が段違いだ。

そのまま急所に当てられたら相手を倒す事が出来る威力を見せてくる。

俺はひょいひょいとそれを避ける。

 

「ふっ!!」

 

ジレンは俺の回避先を読んで強烈な前蹴りを放ってくる。

俺は後ろに下がりながら勢いを殺してその足を掴む。

 

「しっ!!」

 

俺が足を掴んだ瞬間にジレンが肘打ちを放つ。

こっちは足を掴んだままそれに合わせて動く。

 

「はっ!!」

 

肘打ちをかわしながらも倒れ込むように掴んだ足を回転させてテイクダウンをしていく。

アンクルホールドが極まるかと思ったがそうは問屋が卸さない。

 

「ふんっ!!」

 

ジレンが足の筋肉をバンプアップさせる事で足を掴んでいた俺の腕を弾き飛ばす。

そのまま距離を取って互いに睨み合う。

 

「やるな」

 

その眼には初めに見た時の無機質さがなかった。

燃え滾る炎が宿っている。

ただそれを表情に上手くできていない。

きっと悔しげな顔を浮かべていただろう。

 

「お前も俺もまだ全力で今の動きはしていない」

 

互いの探り合い。

それの軍配がこちらに上がった。

ジレンが足の筋肉を膨れ上がらせるのが一瞬でも遅ければ、今頃俺に破壊されていたかあるいは足の機能が著しく落ちていただろう。

 

「ここからはもう手の探り合いもない」

 

そう言ってこっちが気を放出する。

ジレンもそれに呼応するように気を放出する。

するとジレンの気が『無の界』一帯を包み込もうとする。

そのまま包み込むような気の一点を俺の気の柱で破る。

 

「うおおおお!!」

 

接近して拳を突き出す。

それを腕を交差して止めるジレン。

地面に手をつき足払いをする。

 

「ふっ!!」

 

バックステップで回避をするかと思ったが跳躍で回避。

そして手を空にかざして……

 

「はっ!!」

 

気弾の推進力で接近して殴りに来る。

その一撃を避けられずに喰らう。

 

「ぐおっ……」

 

重い一撃だ。

しかし踏みとどまって腹部に一撃を繰り出す。

 

「ぬうっ……」

 

防御が間に合わずに俺の攻撃を受ける。

鉄のような腹筋を突き破って深々と刺さる。

 

「うおっ!!」

 

効いたそぶりは見せない。

前蹴りで距離を突き放される。

しかし次の瞬間には攻撃で射程に捉える。

飛び後ろ回し蹴り。

 

「ぬんっ!!」

 

足を掴まれるが延髄切りに切り替える。

離して回避するが着地をしてそのまま突撃。

 

「かあっ!!」

 

それに対応するように互いが頭突きとなる。

ごつんなどという生易しい音というよりは耳をふさぐような轟音が鳴り響く。

 

「固い頭だな」

「……お互い様だ」

 

俺が言うとジレンもぶっきらぼうに答える。

二人とも相手を見る。

しかし次の瞬間、目の前からジレンが消える。

 

「こいつ……」

 

こっちから動いていた方が多いから、こいつ自体は動きを見せてなかった。

跳躍など縦の動きは見ても前後左右の移動やそれに基づく速度は見えていなかった。

 

「そこだ!!」

 

攻撃をわずかに避けるが掠ってしまう。

そしてそのまま目の前から消えていく。

 

「……!!」

 

次の一撃が見える。

しかし……

 

「ぐう……」

 

またもや掠る。

さっきよりも打撃面積が広がっている。

 

「だが!!」

 

三回目の消失。

面積が広がっていようとも……

 

「……!!」

 

ジレンの攻撃が放たれる。

その瞬間に力だけを抜く。

 

「うぐっ!!」

 

腹部に一撃を当てられる。

そしてその瞬間に腕を浮かんでしまえばいい。

 

「無駄だ」

 

掴んでいた腕を一気に引き剥がしに来た。

肉をここまで切らせたのだ。

骨を断たないとな。

 

「どりゃあ!!」

 

膝蹴りがジレンの顎に掠る。

後ろに下がる形で避けられていたのだ。

折角喰らってでも相手の動きを止めたのに。

あまりにも割に合わないダメージだな。

 

「だが……」

 

手応えが全くないわけではない。

しかし、あの状態で戦わないとまずい相手だ。

俺の全力はあの状態になっている事を含めてだ。

そうでない状態ならば、今のこの有様も納得である。

 

どこまで神の領域に踏み込んだ相手なのか知りたかったが確信した。

こいつは破壊神を超えている。

とは言えど最強の破壊神はビルス様だ。

11宇宙の破壊神を超えているとはいえ隔絶されてはいないはず。

 

「『この身に勝手に委ねる』」

 

そしてジレンと向かい合う。

さらなる激戦を予感させる第2ラウンドが始まった。




ようやくジレンとの激突です。
第7宇宙も人数を減らしていく時期になりました。
速く第4宇宙の2人が明らかになってほしいです。


現在までの脱落者:
()内は落とした人間

第2宇宙:8名脱落
リブリアン(ガタバル),カクンサ(ガタバル),ラパンラ(ガタバル)
ビカル(ピオーネ),ロージィ(ピオーネ)
ハーミラ(ベリー),ザーブト(悟空),プラン(ベジータ)

第3宇宙:7名脱落
コイツカイ(悟空),ニグリッシ(悟空)
ボラレータ(バーダック),ナリラーマ(ヒット),ザ・プリーチョ(ガタバル)
ビアラ(ベルガモ),マジ・カーヨ(ジレン)

第4宇宙:5名脱落
ガノス(バーダック),マジョラ(バーダック)
ダーコリ(亀仙人),キャウェイ(亀仙人)
モンナ(キャベ)

第6宇宙:6名脱落
フロスト(ジレン),ドクターロタ(ジレン)
ボタモ(悟飯),マゲッタ(ピッコロ)
ベリー(ディスポ),キャベ(トッポ)

第7宇宙:2名脱落
亀仙人(ジレン),ピッコロ(ジレン)

第9宇宙:7名脱落
ホップ(フリーザ),コンフリー(フリーザ)
ベルガモ(ジレン),ラベンダー(ジレン)
オレガノ(バーダック),チャッピル(ガタバル),バジル(ベジータ)


第10宇宙:7名脱落
ジラセン(ブロリー),リリベウ(ブロリー),ジルコル(ブロリー)
ザマス(ガタバル),ナパパ(ガタバル)
ムリサーム(フリーザ),ジウム(フリーザ)

第11宇宙:8名脱落
カーセラル(カリフラ),ゾイレー(カリフラ),ケットル(カリフラ)
タッパー(ケール),ブーオン(ケール),ココット(ケール)
クンシー(バーダック),ディスポ(ベリー)

現時点:50名脱落
残り30名
撃墜数
7人:ガタバル,ジレン 5人:バーダック 4人:フリーザ
3人:カリフラ,ケール,悟空,ブロリー
2人:ベリー,亀仙人,ピオーネ,ベジータ
1人:キャベ,ヒット,悟飯,ピッコロ,ベルガモ,ディスポ,トッポ

指摘などありましたらお願いします。


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『心の揺らぎ』

ジレンが技を見せていないのでオリジナルの技をやっています。
あのでかい気弾の名前は何なのでしょうかね?
キャラ崩壊してるかもしれなくて済みません。


ゆらりと動く。

相手の動きも見える。

 

「纏う空気が変質したか」

 

そう言って攻撃をしてくる。

それを首を動かして最小限の動きで避ける。

 

「しっ!!」

 

体は己が本能のままに動く。

しかし言葉や視覚はしっかりと認識できている。

突き出す拳も相手を倒すための最善の一撃。

 

「ふっ!!」

 

それをヘッドスリップでかわす。

その次は下半身に蹴りを叩き込む。

 

「むっ!!」

 

脛でカットをする。

しかしその瞬間を逃しはしない。

 

「むんっ!!」

 

片足状態になったジレンを抱え上げて跳躍。

そのまま、体勢を整えさせずに床に叩きつける。

 

「ぐうっ……」

 

流石に効いたのだろう。

立ち上がる時に唸っていた。

 

「ハアッ!!」

 

その体勢を立て直す前にフライングボディプレス。

しかし目に力を込めた瞬間。

 

「ぐおっ!!」

 

僅かに弾かれる。

だがこの程度の小細工で……

 

「止まるかぁ!!」

 

ショルダータックルで突っ込む。

しかしジレンも同様の体勢で迎撃をする。

 

「ふんっ!!」

 

互いの衝突は『無の界』全体を揺らしている。

不意に視線が突き刺さる。

この数から察するに誰も戦っていない。

全員がこの戦いに見入っている。

 

「力では分があるか」

 

そう言ってジレンが動く。

ジャブ二発からのローキック。

 

「はっ!!」

 

ジャブを捌いて、その足をとる低空タックルを放つ。

しかし次の瞬間、もう一つの影があった。

 

「二度も同じ手を喰らいはしない」

 

そう言ってこめかみに一撃を叩き込まれる。

そして延髄切り。

 

「ぐあっ!!」

 

最善を超える一手を放つ。

こいつもやはり理性で判断しているが同じような動きができる。

 

「俺の技を見せよう」

 

そう言うと掌に雪のごとく気が集まる。

その一撃が掠ると……

 

「『夢散虚雪』」

 

凍傷を思わせる状態。

気を放出して熱と変え、治す。

 

「『月果哀雷』」

 

雷がうねって槍を形成して放たれる。

こいつ、気のコントロールも無茶苦茶上手だ。

空気中から気を使って生成。

サラガドゥラとは違う手法で自然現象を引き起こしている。

 

「『ファイナルフラッシュ』!!」

 

ベジータの技で相殺。

とは言えど挌闘だけでなく気弾の威力もほとんど互角となると……

 

「塵一つでも失敗をすればその差が響く」

 

構えるが相手から花弁が舞っている。

それは気で出来たカッター。

 

「『華彩舞映』」

 

それは全て俺に向かってくる。

だがそれを迎え撃つ技はある。

 

「『渦巻十枝』!!」

 

指から放って巧みに花弁に当てていく。

それを全て爆発させる事で相殺。

 

「やはりこの技たちもあまり通用しないか」

 

そう言ってこっちを見ている。

しかしこいつ……

 

「随分と細かい技の連打だな」

 

一撃で決めるという内容の技ではない。

あくまで牽制や攻撃のつなぎ。

本命は肉弾戦か?

 

「大技を打って優位に進めるにはまだ足りない」

 

隙も無い相手へ打ち込むなど愚の骨頂。

そう言うように構える。

 

「それについては同感だ」

 

そう言って蹴りを繰り出す。

その蹴りを回避しようとする瞬間に跳躍。

ジレンが避けた方向とは逆の方向へ気功波を放つ。

 

「うおお!!」

 

さらに勢いを活かして体勢を変える。

胴回し蹴りを奇抜な方法で放っていく。

 

「ぐっ!!」

 

ジレンの脇腹に当たり横なぎに飛んでいく。

そして着地。

 

「まだまだやれるだろ?」

 

こっちが構えて睨む。

互いにダメージはある。

しかし決定打は叩き込めてはいない。

 

「無論だ」

 

そう言って逆襲の低空タックル。

回避行動の隙さえ与えられず倒される。

 

「ふんっ!!」

 

無慈悲な鉄槌が顔にめり込む。

だが二度も三度も喰らわない。

即座に脇腹へ指を捻じ込む。

 

「…!!」

 

激痛が僅かに押さえつける力を弱めさせる。

その瞬間、体を跳ね飛ばして回避。

 

「この程度で倒せはしない」

 

ジレンのショルダータックルをいなしていく。

だが流石にこちらも頭が揺れている。

並の一撃がこの大会の中堅レベルの必殺技と同じ威力だ。

 

「『コンドル・レイン』!!」

 

雨霰の気弾。

それを平然と掻い潜っていく。

掠らせる事もない。

こっちは無論当てていくつもりで放っている。

 

「『涸不時雨』」

 

こっちに返すと言わんばかりの気弾の放出。

空を覆う様な量を俺一人に放ってきた。

 

「しかしお前にできたことならば!!」

 

俺も同様にかわし続ける。

だが……

 

「くっ!!」

 

僅かに二発。

尖った気弾が頬と腕に掠る。

 

「『双捉蛇牙』」

 

かわそうとしてもついてくる蛇の気弾。

牙をむき出しにしてくる。

こちらにも二つの気弾であれば技はある。

 

「『ツイン・ファルコン・クラッシュ』!!」

 

二匹の隼とぶつかり合って相殺。

その瞬間、裏拳が飛んでくる。

それを受け止めて前蹴りを放つ。

 

「むんっ!!」

 

ジレンも易々と喰らいはしない。

前蹴りを掴まれて、肘を叩き込まれる。

その激痛を押し殺して延髄切りをジレンに叩き込む。

 

「無駄だ」

 

逆の腕で防がれる。

だったらこれは?

 

「ハアッ!!」

 

ジレンの目の前から消える。

瞬間移動をして後ろから肘打ちを叩き込む。

 

「ぐっ……」

 

不意打ちに流石に体勢を崩す。

ここで逆襲をしていく。

 

「『エクスプロード・ウッドペッカー』!!」

 

背中に一撃。

爆ぜるような衝撃をジレンに与える。

 

「くっ」

 

こっちを向きながら攻撃に備えている。

だがその一瞬が十分な隙だ。

 

「『アルバトロス・ブラスター』!!」

 

ジレンが腕を交差して受け止める。

回避するための時間も考えていた分、対応が遅れた。

 

「まだまだ!!」

 

足を掴んで振り回す。

地面に叩きつける。

起き上がる瞬間に背中からぶつかる。

 

「もう一撃!!」

 

踏み込んで腕を突き出す。

それに対応するようにジレンも全力の一撃。

 

「ぐはっ!!」

 

俺は吹っ飛んだ。

しかしジレンは片膝をついただけ。

一撃の重さの優劣があった。

 

「ハハッ……」

 

俺の一撃にわずかに押し勝った時。

ジレンの顔に確かな変化があった。

笑顔になっていたのだ。

 

「良い顔してるじゃないか」

 

そして拳がぶつかり合う。

顔がお互いに跳ね上がる。

 

「くっ!!」

 

今度はジレンが吹き飛ぶ。

立ち上がる時に組み合う。

 

「お前、変わったな」

 

さっきまで無機質だった。

瞳には宿してはいたけれど。

それが今は全然違う。

 

「何が言いたい?」

 

俺の言葉に反応をするがギリギリと力を強めている。

負けてやる気は全くないぞ。

 

「なんだ、気づいていないのか」

 

そう言って力をさらなる力でねじ伏せる。

お前相手だから限界を越えようともがく。

 

「お前、笑っているぜ」

 

そう言って力比べで体勢を崩したジレンに膝蹴りを叩き込んで蹴り飛ばした。

そのことを自覚したのか頬をなぞる。

 

「ああ……そうか」

 

それを自覚した瞬間、気が徐々に熱を帯びていく。

まるで今まで閉じ込めていた心が噴き出すように。

 

「ベルモッド様の時にはなかったこの感覚……幼いころから久しく忘れていた」

 

破壊神相手の時は無礼と感じる心からその余裕がなかったのだろう。

だが今はそれがない。

宇宙の為ではあるが、己の思うが儘に心をさらけ出しても咎めはない。

 

「これが『楽しい』ということだったな……」

 

そう言って仕返しと言わんばかりに蹴りを叩き込んでくる。

それを防ぐがさっきまでとは違う。

感情のこもってない一撃ではない。

溢れんばかりの感情、表現しようのない沢山の思いを乗せている。

 

「もっとだ、もっといくぞ!!」

 

そんな攻撃を受けて、応えない戦士は居ない。

こちらは拳を突き出す。

互いが体重の乗る、最大威力の拳を放てる間合い。

 

「ハアッ!!」

 

こちらから先に拳を突き出す。

唸りを上げて顔へ向かって行く。

 

「ふんっ!!」

 

それをひらりと避けるジレン。

さらにそこにカウンターを放ってくる。

 

「なんの!!」

 

それをヘッドスリップでかわしてアッパー。

顎を狙いに行く。

 

「喰らうものか!!」

 

それを腕を交差して止めてハイキック。

風を切り裂く一撃を首を下げて避ける。

そして逃さないように掴んで投げる。

 

「ここでお前を仕留める!!」

 

ジレンの前を瞬間移動でとる。

そしてそのまま大技へ入っていく。

 

「『プライド・オブ・ラクタパクシャ』!!」

 

灼熱の鳥がジレンを呑み込もうと迫っていく。

この一撃は今までの技とは別次元の威力を誇る。

これを避けるか?

はたまた受け止めるか?

どういった決断をするのだろうか。

 

「ぐっ……」

 

避ける事はしてはいけない。

そう言った決意を目に宿している、めらめらと燃え盛る炎が体中から立ち昇っているような錯覚さえ覚える。

勢いよく手を前に出して受け止める。

しかしその手を焼き付かせる。

そう簡単に受け止められる代物ではないのだ。

 

「この一撃こそが俺の熱量だ、ジレン!!」

 

力を込めてさらにジレンへ圧力をかける。

徐々にジレンは呑み込まれていく。

その勢いを緩めることなく、腕を下げた。

 

「うぉおお!!!」

 

地面に叩きつけられていく。

『無の界』全体に熱風が巻き起こる。

砂煙はまるでない。

その代わり、高熱にさらされた『カチカッチン鋼』が蒸発して煙を出す。

 

「地面にめり込むだけで済むとはつくづく頑丈な奴だ」

 

本来ならば床を突き抜けて落としても違和感のない一撃。

それを持ち前の肉体で墜落をしないようにとどめていた。

 

「この戦いは俺にとって紛れもなく大事な意義がある、易々と負けるわけにはいかないな……」

 

もうもうと立ち込める煙から現れる影。

それはジレンだった。

流石に無傷とはいかずダメージはあったようだ。

体を震わせて手をつきながら立ち上がっている。

あの一撃を耐えきったのだ。

 

「驚いたな、今の一撃を耐えるとは」

 

そう言いながらも構える。

まだ熱量を全て吐き出してはいない。

あの技が残っている。

全てを尽くしてお前を倒そう。

 

「先に技を出して奥の手を見せてしまったな」

 

そう言って力を込めて体勢を立て直す。

ダメージを抜ききる事はできない。

しかし俺の頭の中にはある言葉が思い浮かぶ。

 

『手負いになってからが本番である』

 

傷ついた時こそ相手の本領が見える。

相手の技量を認め、その上で叩き潰しに来る。

さっきまでのジレンとはまた違った力。

感情による作用。

眠れる獅子を呼び覚ました愚かしさと言われるだろう。

 

「それを失敗と思うような軟な心はない」

 

まだ奥の手がある。

それに愚かしいと思うのはその対象に恐怖をして心が屈服している存在が言うもの。

ジレンのそんな状態を知らない自分からしたら望むところ。

それすらも凌駕して叩き潰してやる。

 

何度目になるかわからないお互いの衝突。

戦いの決着が確かに訪れようとしていた。




ジレンの感情が徐々に露わになっていくように書いています。
書いていて、大技叩き込んでも勝てそう感がまるでない。
篩い落としだから、一定数まで残ればいいんで逃げ回っておくのがべストなアンサーですね。
まあ、あとでバーダックさんに悪口言われそうですが。

今回は脱落者等に変動がないので書いていません。
指摘有りましたらお願いします。

ジレンの技の読み

『夢散虚雪(むさんきょせつ)』
『月果哀雷(げっかあいらい)』
『華彩舞映(かさいぶえい)』
『涸不時雨(かれずしぐれ)』


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『頂上決戦、決着』

今回でジレン戦は終了です。
そして徐々に第7宇宙も落とされていく可能性が……
ちなみに全員脱落の宇宙は考えています。


「があっ!!」

 

頭突きでさらに追撃をする。

手を緩めはしない。

このまま連打連打で確実にジレンを追い詰める。

無傷なわけではない。

 

「エイ!!」

 

上段蹴りが捉える。

そして連続で脇腹。

よろめいていくジレン。

しかし違和感があった。

 

「まるで俺がサイヤパワーを取り込んでいる時のような……」

 

ジレンの肉体の傷が徐々に治っていく。

火傷の皮膚がきれいに戻っていく。

 

「だぁああ!!」

 

亀のように防御を固めるジレン。

低空タックルで足を抱え上げて地面へ叩きつける。

 

「ぐぅ!!」

 

痛みに呻くがぐるりと大仰に体を回転させて追撃をさせまいとする。

だがそれでも……

 

「火傷の場所ががら空きだー!!」

 

爪先を捻じ込んでいく。

痛みを与えるだけが目的ではない。

その傷を広げるのが本来のやるべきこと。

 

「お前の回復速度を凌駕して痛みを与え続ければ……」

 

確実にお前を倒せる。

俺は肘打ちを放つ。

 

「ぐっ!!」

 

防いできて、返しの刀で腹部へアッパーを放ってくる。

それを後ろに下がって回避しようとする。

 

「ふんっ!!」

 

しかし、その勢いのまま飛び後ろ回し蹴り。

顔面に喰らって吹っ飛ぶ。

腕を伸ばしてきて、胸倉を掴まれて、地面に叩きつけられる。

 

「ふんぬっ!!」

 

叩きつけられて起き上がる時に顎へ頭突き。

揺らした頭を掴んで膝を叩き込む。

 

「だあ!!」

 

互いに近接距離。

頬を風圧で切り裂きあいながら、一撃を叩き込む隙を伺う。

 

「せいっ!!」

 

リバーブローを叩き込まれる。

胃袋から物が逆流してくる。

 

「があっ!!」

 

首を蹴って一気に体をぐらつかせる。

そこで出来た隙をさらに大きくさせる。

 

「『100倍太陽拳』!!」

 

気を爆発させて放つ、今までの光をさらに眩くした太陽拳。

気の感知もできなくなるこの場面ではうってつけの技だ。

仕掛けて勝負を決めるならばここしかない、

俺は最強の技をぶつける。

 

「『競影鏡己』」

 

曼荼羅模様の煌きがジレンの後ろに現れる。

俺の一撃がジレンに放たれる。

しかし次の瞬間……

 

「ハアッ!!」

 

全く俺と同じフォームでの一撃でこちらに攻撃を放つ。

お互いの拳がめり込みすっ飛んでいく。

だがすぐに立ち上がり、俺は睨み付ける。

 

「小細工ではあるがお前だから使う、お前の最大の熱量と同じ熱量をぶつける為に」

 

互いにダメージはある。

俺が技を止めればいいがこの好機を逃すわけにもいかない。

そう言った事情からもう動き始めた技を今更止められない。

 

「いくぞ……」

 

そう言ってこちらより速く俺の構えをする。

あいつの性格からしてこちらをコケにしているわけではないが、いら立ちが募る。

踏み込んできたジレンに対して引き上げられた熱量を噴き出させる。

 

「舐めるなよ……」

 

ジレンよりもさらに深く踏み込んで一撃で体を浮かす。

一撃のダメージが浅いと感覚ではわかる。

よく凌いだもんだという感心さえある。

だが賞賛以上に怒りが徐々にこみあげている。

 

「その構えには負けられないんだよ」

 

自分が、ずっとやってきた構えで負けましたは格好がつかない。

このまま続けても、お前は俺の一撃を真似ている間は、ダメージを与えるのは困難だ。

しかし、そうは思っていないのかもう一度同じ構えをとる。

 

「懲りない野郎だ……!!」

 

俺はゴキゴキと指を鳴らして明確に怒りを表す。

そしてジレンよりも速く深く踏み込む。

反応する事も許さない。

ここで引いては己の否定、縋りつくものの消滅。

突き動かすのは自身の中にあるプライドだ。

 

「だあっ!!」

 

肩からぶつかり体を浮かせる。

ジレンの防御が間に合っていない。

 

「シャー!!」

 

首筋に手刀の一撃。

前のめりになって体勢を崩した。

 

「ツァー!!」

 

そして迫撃砲のような前蹴り。

腹部にめり込んで飛んでいく。

目にもとまらぬ三連撃。

ジレンがバウンドする形で背中をつけていた。

その時に曼荼羅模様は消えていた。

 

「まだ終わらせる気はないんだぜ」

 

むくりと起き上がる。

ダメージはあった。

とどめを刺そうとするが構えを変える。

 

「この技で終わる……この熱戦、そしてお前の運命も!!」

 

俺は全ての気を手のひらに集中させる。

これ以上ない速度。

この戦いの中でのすべてを捧げる。

決まれば終わる最強の技、『ソウル・オブ・サイヤン』

サイヤ人の魂を見せつける一撃。

 

「感謝する」

 

そう言って腰を落とし迎撃の構えをとる。

ただ事ではない構えだ。

だがこのまま打ち込むのみ。

 

「お前との戦いは……」

 

ジレンもこの一撃に対して対策を打つ。

一気に気を腕に集中させていく。

歯を食いしばって膝から力を抜いている。

 

「これ以上ない高揚感に包まれた」

 

腹部に迫っていく俺の拳を見定める。

それを腕を前に出して……

 

「この技をお前への手向けにしよう」

 

防ぐのではない。

反らしてかちあげる事で上空へと放り投げられる。

自分の攻撃の勢いを見事に利用される形となった。

その俺を追い越し、体勢を固める。

 

「『世塵神灰』!!」

 

足を交差させられた状態。

胴に腕を回して海老反りにされる。

猛烈な風圧の中、抵抗を試みる事も許さない一撃。

ジレンの全身全霊の一撃が牙をむく。

まさにこの技を受ける者の世を塵とし、神に放てば灰にせしめんとする最強奥義。

 

「はあっ!!」

 

地面に叩きつけられる。

本来ならば『無の界』全体を壊す一撃。

その膨大なエネルギーを発する一撃を一点集中の要領でぶつけられた自分。

そうなれば結果は必然だった。

 

.

.

 

地面に埋もれて指一本も動かないガタバル。

その姿を見れば勝敗は分かる。

 

「終わったか……」

 

そう言うが倒れ込みそうになる。

放ったこちらも満身創痍だ。

絞りつくした戦い。

 

「落とすか……」

 

そういって奴が埋没した場所へ向かう。

手を伸ばそうとした瞬間……

 

「残念ですが渡せませんねえ」

 

黄金色に輝く敵がいた。

今の自分では叶わない。

仕方なくその場を退こうとする。

しかし……

 

「もらったー!!」

 

そう言って第2宇宙と第4宇宙の戦士、第9宇宙の戦士がガタバルを掴みに行った。

こいつらの行為は蛇足に他ならない……

そう思い、足に力を込めるが……

 

「くっ……」

 

足がもつれそうになる。

すると肩を支えてくれる影があった。

 

「トッポ……」

 

トッポが支えてくれている。

ガタバルを掴もうとした奴らは弾き飛ばされている。

 

「よく見ろ」

 

バリアを張っている一人の男がいた。

奴がディスポが言っていた魔術師か。

 

「奴を落とす機会はもう逸してしまったな」

 

少しばかり詰めの甘さにため息が出る。

とは言ってもあのまま強行していたならば、この今の肉体の状態では落とせない。

 

「構わない、まだ機会は探ればある」

 

そう言われて支えられたまま、俺は体力の回復に勤しむため、瞑想が可能な場所へと向かっていた。

 

.

.

 

「さて……うちの切り札を軽率に狙ったってことはやられたりする覚悟があるという認識で良いか?」

 

フリーザとワシで3人を睨む。

あの女傑も敵討ちとしてあの者を狙うようだが……

 

「宇宙の消滅があるな」

 

ゆるりと構える。

相手は血気盛ん。

ゆえに実力差については目が曇って見えてはおらん。

 

「哀しいものよ」

 

そう言って地面に手を置く。

そして……

 

「『スコーピオン・パイル』!!」

 

地面から出てきたサソリの尻尾の形をした杭。

それを相手も回避していくが……

 

「『ジェミニ・ゲヘナ』」

 

二人となった自分が一人を後ろからとらえる。

そいつをこっちに投げる。

 

「飛べ!!、『タウルス・ブレイク』!!」

 

二本の腕を使った波状攻撃のラリアットで場外まで飛ばす。

そして次の相手には組みついて放り投げる。

 

「『バルゴ・プロミネンス』!!」

 

飛び上がって捕まえた後、炎を纏った錐揉み回転からの落下による一撃。

相手の体は焼かれて落ちた。

死んではいない。

 

「『ヘイトフル・シャイニング』!!」

 

一人の相手に対して二人で技をかける。

無茶な体勢や猛烈な風圧、関節への負荷。

人体構造上、あり得ない形に関節が曲がっていく。

 

「ぐへぇ……」

 

凄まじい着地音を立てとぁざが決まる。

死んではいないがズタズタの肉体。

それを掴んで無造作に放り投げた。

 

時間にすれば一分も経ってはいない。

超サイヤ人級はごろごろいるが自分とフリーザ、そしてあの女傑にとっては物足りない。

 

「流石の手腕ですねえ」

 

瞬く間に3人を落としたこちらを見て微笑む。

こちらに向かってきていたからよかったが、一瞬無防備じゃなかったか?

それともわざと向かってくるように相手に隙を見せていたのだろうか?

結果としては相手がこっちに全員向かってきたから無駄だったけど。

 

 

「大方、もう落ちる計算をしているのでは?」

 

流石はかつての宇宙の帝王。

洞察力もそれ相応。

こちらの考えを看破してきたか。

 

「3人も落としたから戦果としてみれば十分だし、自分にしかできない事だからな……」

 

そう言って首を鳴らして、未だに伸びた状態のガタバルを拾い上げた。

 

.

.

 

「流石にあんな戦いを見てしまうと滾るな」

 

そう言って相手を探す。

すると丁度、良い相手がいた。

第3宇宙の奴と第10宇宙の奴が落ちていく。

 

「俺の6人目の標的はお前だ……」

 

そう言って急接近をして相手を殴る。

相手は受け止めるがそれでもまだまだ。

 

「甘いんだよ!!」

 

蹴りを受け止めた後に延髄切り。

蹲りそうになったところに膝を叩き込む。

 

「ぐっ……」

 

相手も起き上がって反撃をしてくる。

まだまだ攻撃に迫力がない。

強いのは分かるけどな。

 

「最強のサイヤパワーを見せてやるぜ」

 

そう言ってこちらから苛烈な攻撃を始める。

回避しても裏拳を、蹴りを避けようとすれば跳躍して捉える。

 

「がっ……」

 

相手が受けに回っていく。

こっちとしてはもっと攻撃してもらわないと困るんだがな。

 

「ハアアッ!!」

 

全開で向かってくるようだ。

いいぞ、迫力も増した。

だがな…

 

「ふんっ!!」

 

拳を受け止めて相手を転がす。

跳躍して腹部へ肘の一撃を叩き込む。

 

「まだお前からは本当の全力が見えてねえ!!」

 

頭を掴んで引っ張り起こす。

そして顔面に一撃を加えて相手が倒れるのを見る。

 

「本気で来やがれ…孫悟飯!!」

 

まだそんなものじゃない。

その確信がある俺は戦っている相手に向かって叫んでいた。

 

「はいっ!!」

 

その呼びかけに対して超サイヤ人4で向かってくる。

良いぜ、それこそが求めていた力だ。

 

「でも……」

 

負けてやるつもりなんざ微塵もない。

悟飯の一撃を受け止めて腹部に蹴りを叩き込む。

 

「がふっ!!」

 

くの字に曲がった体に対して腰から抱え上げる。

そして地面に頭から叩きつけた。

 

「ぐああっ!!」

 

転がる悟飯を踏みつける。

落ちてもらっては困るぜ。

 

「『魔閃光』!!」

 

起き上がって気功波を放ってくる。

それを腕で払いのけようとする。

 

「はっ!!」

 

上に曲げてフェイントをかけてくる。

だが……

 

「こうして防げばいいだけだ」

 

腕を交差して防ぐ。

しかし、悟飯のやつはその落とす瞬間に気功波のコントロールをやめる。

 

「ふっ!!」

 

腹部に拳がめり込む。

こっちの防御態勢を見てから選びやがったか。

 

「動きが格段に良くなってきたじゃねえか」

 

そう言って構える。

それを見て一気に攻めてくる。

 

「ふんっ!!」

 

回避をしようとすると足を搦めて機動力を奪ってくる。

厄介な真似を。

 

「はっ!!」

 

尻尾で目を打ってきてこっちの隙を作って蹴りをこめかみに打ってくる。

それを防ぐと次は気功波。

流れを作っていやがる。

 

「だが!!」

 

尻尾で足を払って仕返しをする。

この程度の真似は普通にできるぞ。

 

「はっ!!」

 

 

 

地面に打ち込んで、俺の体を僅かに浮かせられる。

それを好機と読んだか、大技を仕掛けてきた。

 

「かめはめ波!!」

 

実際、身動きをとりにくい場面での一撃だから間違いではない。

だが易々と喰らってやる俺でもない。

 

「ふんっ!!」

 

手のひらで受け止める。

そのまま押し込もうとしてくる。

 

「ぬおおおお!!」

 

力を振り絞る悟飯。

俺はそれを押し返して、場外に押し出そうとする。

しかしそんな押し合いの最中に一発の気功波が向かってきていた。

 

「なっ!?」

 

頭を下げて回避をした。

その方向をちらりと見る。

なんという事に気功波を放った相手はベジータ王子だった。

あのプライドの塊のような人がサポートに回るなんて。

 

「今だ!!」

 

一気に気を爆発させる。

こっちの集中力が途切れた直後とはな。

見事にしてやられたようだ。

 

「ぬぐううう!!」

 

しかしそう簡単に負けてやる気などはさらさらない。

俺はその一撃に呑み込まれていく。

しかし、まだ終わってはいない。

ここから耐えきれば済む話だ。

 

「ハアハアッ……」

 

呑み込まれたのを見て、悟飯の奴が腕を下げている。

相手の状態が分かっていないならば無防備な状態を晒すのはよくない。

 

「まだまだ威力が足りていないぜ」

 

そう言ってもうもうと立ち込める煙から出てきた。

技が悪いわけではなかったし、いいタイミングだったぞ。

しかし、超フルパワー超サイヤ人4を倒すにはまだ今の一撃では倒せない。

全開の一撃を放つべきだった。

長期戦という事も割って、ペースに意識が行き過ぎてしまったようだな。

 

「そっ……そんな!?」

 

あの一撃を受け止めてやった。

驚愕の顔で一瞬動きを止める。

そう言った所が甘い。

 

「『リベリオン・トリガー』!!」

 

その一撃で悟飯を吹き飛ばす。

最高の技を叩き込んだから、勝ちなどと短絡的に決めつけてはいけない。

相手の強靭さなども想像しておくべきだったな。

 

「俺の勝ちだな、我が孫よ」

 

『リベリオン・トリガー』で気絶した悟飯を場外へと投げる。

これで第7宇宙の頭数も減った。

次は誰を標的にするか……

そう思い、獣のような眼光で敵を見渡していた。




原作では先週と言い、今週といい第2宇宙が執拗なまでに多かった印象
クリリンを馬鹿にするのが本作だと、ガタバルかピオーネを罵倒するような形になるところでした。
今回で悟飯が落ちました。
悟飯のレベルじゃあまだまだ遠い背中だと思いましたのであのような結果に。
現在までの脱落者:
()内は落とした人間

第2宇宙:9名脱落
リブリアン(ガタバル),カクンサ(ガタバル),ラパンラ(ガタバル)
ビカル(ピオーネ),ロージィ(ピオーネ)
ハーミラ(ベリー),ザーブト(悟空),ザーロイン(サラガドゥラ),プラン(ベジータ)

第3宇宙:8名脱落
コイツカイ(悟空),ニグリッシ(悟空)
ボラレータ(バーダック),ナリラーマ(ヒット),ザ・プリーチョ(ガタバル)
ビアラ(ベルガモ),マジ・カーヨ(ジレン),パンチア(悟飯)

第4宇宙:6名脱落
ガノス(バーダック),マジョラ(バーダック)
ダーコリ(亀仙人),キャウェイ(亀仙人)
モンナ(キャベ),ニンク(サラガドゥラ)

第6宇宙:6名脱落
フロスト(ジレン),ドクターロタ(ジレン)
ボタモ(悟飯),マゲッタ(ピッコロ)
ベリー(ディスポ),キャベ(トッポ)

第7宇宙:3名脱落
亀仙人(ジレン),ピッコロ(ジレン)
悟飯(バーダック)

第9宇宙:8名脱落
ホップ(フリーザ),コンフリー(フリーザ)
ベルガモ(ジレン),ラベンダー(ジレン)
オレガノ(バーダック),チャッピル(ガタバル),バジル(ベジータ)
ローゼル(サラガドゥラ)


第10宇宙:8名脱落
ジラセン(ブロリー),リリベウ(ブロリー),ジルコル(ブロリー)
ザマス(ガタバル),ナパパ(ガタバル)
ムリサーム(フリーザ),ジウム(フリーザ)
メチオープ(悟飯)

第11宇宙:8名脱落
カーセラル(カリフラ),ゾイレー(カリフラ),ケットル(カリフラ)
タッパー(ケール),ブーオン(ケール),ココット(ケール)
クンシー(バーダック),ディスポ(ベリー)

現時点:56名脱落
残り24名
撃墜数
7人:ガタバル,ジレン 6人:バーダック 4人:フリーザ
3人:カリフラ,ケール,悟空,ブロリー,サラガドゥラ,悟飯
2人:ベリー,亀仙人,ピオーネ,ベジータ
1人:キャベ,ヒット,ピッコロ,ベルガモ,ディスポ,トッポ

指摘などありましたらお願いします。

ちなみにジレンの技『世塵神灰(せいじんしんかい)』は
ゆでたまご先生の作品『キン肉マン』の『ザ・マン』という超人が使う技
『零式奥義 千兵殲滅落とし』がモデルです。


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『絶望の宇宙』

今週であっさりと第4宇宙が消えました。
破壊神越えの2人目の期待がなくなってしまい辛いです。
敗者復活枠というご都合を考えて落としまくろうかなと思いました。


「無駄だ、俺には勝てぬ!!」

 

ケールの拳を受け止めてカウンター。

それを首を動かして避ける。

だがそう易々とは逃さない。

肘を曲げて後頭部を掴んで引き寄せる。

 

「まだまだ!!」

 

掴んでいた腕を力任せに引き剥がす。

そして前蹴りを打ってくる。

それを腕を交差して受けとめる。

 

「なかなかやるが……」

 

受け止めた足を掴んで地面へ叩きつける。

逆の方に振り上げる。

 

「ぬおお!!」

 

振り上げられた瞬間に力づくで抜け出すとくるりと回る。

そのまま蹴りを繰り出してきた。

 

「ぐあっ!!」

 

後頭部を蹴られてよろめく。

一撃を大事にしないと、連続攻撃が必ずいいってわけでもない。

 

「まあ、勝たせてもらうがな」

 

淡々とした運び方をすればいい。

隙を見せずに、相手の隙が生まれた時にだけ苛烈に。

 

「冷静に戦うのがいい」

 

相手の攻撃を受けながら、隙を見つけに行く。

実戦経験の差もある。

ましてや慣れない状態の超サイヤ人4。

そう長い時間、居られるわけはない。

 

「血気盛んとは言い難い戦い方だ」

 

フェイントを多数交えながら相手の様子を見ている。

普段の性格から相手に合わせに行くことを狙っている。

動いた方向の死角やあまり動いていない当てられる場所を狙っている

 

「あえて動かなければ……」

 

フェイントの意味を成さずに正面突破。

もしくは後ろをとるために旋回、跳躍。

 

「はっ!!」

 

気弾で勢いをつけて殴りに来る。

その拳を掴んで締め上げていく。

 

「ぬぐぐ……」

 

力づくで剥がそうとするが甘い。

このまま腕を折ってやる。

そう思って力を込めた。

 

「がっ!?」

 

だが、次の瞬間、後ろから衝撃を与えられる。

無防備な所からの一撃ほど効果的なものはない。

 

「悪いな、おっさん」

 

掴んでいた拳を離して膝をついてしまう。

不意打ちとはいえどこうも簡単に体勢を崩すとは……

 

「流石に超サイヤ人4が二人は無理だろう?」

 

確かにその通り。

割かし同じ系統であったせいで、実力が勝っていても強靭な肉体。

気の消耗や疲れは並の超サイヤ人4に比べれば格段に違う。

 

「だが、素直に落とされる俺だと思うか?」

 

そう言って二人ごと抱えて『アルゼンチンバックブリーカー』の体勢に整えるとそのまま地面へ叩きつける。

ダイナミックに二人まとめて倒してやる。

 

「立て、これが宣戦布告ってものだ」

 

起き上がってこない相手にエルボードロップを叩き込むというのもいいが、それではつまらない。

それに隙だらけになってしまう。

 

「ぐぐぐ……」

 

カリフラが先に立つ。

そしてこっちに突っ込んできた。

 

「シャアアア!!」

 

速度はある。

しかし力強さではケールの方が上。

一長一短のコンビだな。

 

「そら!!」

 

腕を掴んで上空へ放り投げる。

それを跳躍で追い越すと……

 

「『オメガ・ブラスター』!!」

 

気弾をモロに喰らわせる。

その一撃は腕を交差して耐えるが落ちていく。

途中でまだ技を放つために、気弾を推進力に変えてカリフラよりも地面に近づく。

 

「どりゃああ!!」

 

頭突きで突き上げていく。

呻いて落下するカリフラ。

その落下に対して照準を合わせ……

 

「『ギガンティックツイスター』!!」

 

弩級の一撃でまたもや空に舞い上がり、落下する。

地面に叩きつけられて動いていない。

俺もそれを追って地面に着地する。

ケールが立ち上がろうとする中、とどめを刺しにいく。

 

「いくぜ、『ギガンティックミーティア』!!」

 

頭を掴んで気弾を使い、さらに叩きつける。

その一撃はカリフラを超サイヤ人4から戻すほどのダメージ。

死んではいないから掴んで場外へ放り投げようとする。

 

「させないんだから!!」

 

しかし、ケールから繰り出されたショルダータックルを喰らって、カリフラを取り落とした。

ケールがこっちへ敵意をむき出しにして向かってくる。

 

「姐さんの分も戦う!!」

 

そう言って力が増した一撃。

誰かを思う事で殻を破っている。

 

「俺も第7宇宙の脱落したやつの分、参加していないやつらの分も背負って、戦っているのだ!!」

 

そう言って近接距離からで互いが見合う。

こちらが先に動いて蹴りを繰り出す。

それを跳躍でかわし、踏み台にして膝蹴りを顎に放ってくる。

 

「なんの!」

 

両腕で挟む形で食い止める。

しかしそれを見越しての延髄切り。

 

それを回避しようと頭を下げる。

かわし切ったが相手も脱出をしていた。

 

「やるな」

 

素直な賞賛を述べる。

ケールが構えてこっちを見てくる。

 

「かっ!!」

 

爆発的な速度で距離を詰めて技を繰り出す。

さっきのように相手に合わせる事以外にも、積極的な心に目覚めている。

 

「『ガルガンチュア・マシンガン』!!」

 

一つ一つの威力は落ちるが連射してくる蹴り。

とはいえど普通の戦士の必殺技の威力程はある。

 

「ぬんっ!!」

 

だが俺には通用しない。

持ち前の頑丈さを活かし腹筋で食い止める。

そのまま前進で威力が乗る前の蹴りにして受けきってやる。

 

「『ガルガンチュア・ブレード』!!」

 

踵落としを放ってきた。

こちらの意識を前方に向けておきながらの上からの一撃。

見事なタイミングだ。

 

「あぐっ……」

 

こっちが受けた拍子に少し足がよろめく。

すぐに体勢を立て直すがあえて、もたつくようなそぶりを見せた。

するとそれを見たケールが力を込める。

 

「スゥウウウ……」

 

深呼吸をして大きく振りかぶっていく。

今、この状態が誘われているとはつゆほども思っていない。

実戦経験の浅さからか、まだまだそう言った部分が甘い。

 

「『ガルガンチュア・ハンマー』!!」

 

振りおろしの一撃。

ケールがどう来るか予測していた。

このような一撃を待っていた。

 

「ハアッ!!」

 

カウンター一閃。

拳を繰り出した死角から顎を射抜く一撃。

熱くなりすぎたが故に相手も分からなかった。

 

「う……あ…」

 

顎に喰らったケールが膝から崩れる。

そして一気にフィニッシュへ持っていく。

 

「はあ!!」

 

膝から崩れそうになったケールをアッパーで起こす。

そして蹴りをこめかみに。

左肩と右肩に拳。

ラッシュを放って徐々に相手の身動きできる範囲を奪う。

 

「落ちろ、『ギガンティックジェノサイド』!!」

 

手のひらを腹に当てる。

最大の技でケールに攻撃を放つ。

 

「うああああ!!」

 

気弾がケールに襲い掛かる。

頑強な肉体と言えども俺の最大奥義。

そう簡単に耐えきれはしない。

あれだけのラッシュで体の動きが鈍くなっていれば、どうしようもないだろう。

 

「ケール!!」

 

起き上がったカリフラが体を動かすが無情にも届かない。

ケールが場外へ落ちていく。

それを見てカリフラの様子が変わっていく。

 

「うぉおお!!」

 

仲間を落とされた怒りからかとてつもない爆発力で気が吹き上がる。

失敗したな、同時に落とすのが正解だったか。

 

「だりゃあ!!」

 

迫ってくる拳を避ける。

しかし風圧か、衝撃波か。

僅かに体勢を崩される。

 

「絶対に落としてやる!!」

 

速度が上がっていく。

防御をすり抜けていき、腹部へ一撃を喰らう。

 

「がっ……」

 

内容物が押し上げられていく。

そしてこめかみに衝撃がはしる。

 

「ぐおっ……」

 

体勢が崩れていく。

だが踏ん張って構える。

だが視界がおかしい。

 

「オラァ!!」

 

声が聞こえる方向へ体を動かして防ぐ。

こめかみから流れる血が瞼から垂れていたのだろう。

赤い視界と眼が血で塞がって死角を作り出していた。

 

「ハアアッ!!」

 

死角から集中攻撃を浴びせてくる。

戦い方としては理にかなっている。

 

「だらぁ!!」

 

反応がどうしても遅れる。

そんな中、逆の瞼も切れてしまう。

こうなったら……

 

「もうお前を目で追いはしない」

 

拭う暇も与えないだろう。

だったらこの状態で打開する。

 

「そこだ!!」

 

目を瞑って研ぎ澄ませた感覚。

それに身を任せてみた。

あの人のような境地ではない、ただ言えるのは野生の勘に近いもの。

 

「なっ!!」

 

声も変わっていない。

つまり間違えてはいない。

腕を掴んで捕まえる。

 

「離さんぜ、『ギガンティック・カタストロフィー』!!」

 

自爆覚悟。

これ以上の戦いはこのコンディションではできない。

絶対にこいつだけは落とす。

腕を掴んで無防備になっていたカリフラに喰らわせるのは気弾の中でも最大の威力を誇るもの。

この零距離ならば、かなりのダメージになっただろう。

気の爆風が血を拭い、視界が良好となる。

しかし体は疲労感があった。

 

「があああ!!」

 

その中を意地で突っ切ってきた。

白目をむいているのを見ると、半分意識が持っていかれているだろう。

喰らわせたはずだがしがみついてくる。

 

「ぬぉおおおお!!」

 

そして抱え上げられた。

相手の息の荒さから考えて無理をしてでも倒すつもりか。

 

「喰らいやがれ、全身全霊の一撃をー!!」

 

振りほどけないほどの力。

その一撃は計り知れるもの。

自分も大技を使って疲労も溜まっていた。

もはやこれまでという確信さえあった。

 

「だりゃああ!!!」

 

計算のわずかな綻び、そして昔の俺のようなぎらぎらとした闘争心がカリフラに有った事。

その二つの主な理由が俺を敗北に導いた。

地面に叩きつけられるとその箇所が崩落する。

力を使い切った俺は体勢を立て直せずに、徐々に落ちていく。

跳躍しても掴むところがないだろう。

 

「ケールのおかげだ、これは2人で勝ち取ったもんだ!!」

 

そう言ってカリフラがガッツポーズをとる。

そんな隙だらけの今ならば……

 

「ハアアアッ!!」

 

特大の気弾を放つ。

それをカリフラが避けてニヤリと笑う。

 

「……こっちができる事は全部やった」

 

それは負け惜しみでも何でもない。

ケールを落とした時にこの状況を察することができなかったのは軽率だった。

しかしケールを落としたことで無駄な脱落ではない。

それにあの気弾がどういった意味があるのか、理解できていないようだ。

まあ、苦肉の策でしかない。

伸るか反るかの大博打を打っただけの話だ。

 

.

.

 

「私は今、気が立っているのよ」

 

第2宇宙の戦士、第3宇宙の戦士、第4宇宙の戦士が一人ずつ。

囲むようにしている。

 

「今なら見なかったことにしてあげる、去りなさい」

 

しかしそう言って消えるような相手ではない。

一気に三人とも、向かってくる。

だったら相手をしてあげるわ。

凄惨な末路になるけれどね。

 

「貴方達に技なんて不要!!」

 

相手の姿が全く見えていない。

どうやら透明人間のようだけど……

 

「空気を割く音に頼ればどこに居るのか一目瞭然!!」

 

拳を出してきた相手の腕をとってそのままへし折る。

呻いている間に足をへし折って身動きをとれないようにしておく。

芋虫のように這っている状態、痛みで痙攣を起こす。

相手が姿を現したがもはや無駄だ。

 

「まずは一人…」

 

投げて落とす。

そして次の相手には首を絞める。

チョークスリーパー。

相手はもがくこともできずに三秒足らずで失神した。

 

「二人……」

 

投げてまたもや落とす。

瞬間移動の使い手が残っているのね。

少しは楽しめそう。

 

「自分の愛する宇宙にサヨナラでも言いなさい」

 

そう言って後ろをとる。

それを見た相手も瞬間移動をする。

だが……

 

「そこ!!」

 

裏拳を掠らせる。

相手は瞬間移動で回避をする。

しかし……

 

「……右」

 

そう言って振り向いて蹴りを放つ。

それは浅い形だが相手に当たっていた。

 

「くっ……」

 

またもや消える。

よく格闘技で弱い奴が強い奴の周りを回っていくって言葉があるけれど。

今の相手はそれに当てはまっているわね。

 

「……上」

 

死角に入り込むのが使い方としてポピュラー。

そして効果が高い。

しかしそれはつまり……

 

「対策はもう存在しているのよ」

 

死角だと思われる場所に先回りをする。

そうすれば相手がどこから来るかの予想など簡単なものである。

 

「落ちなさい」

 

そう言って叩き落す。

その勢いでバウンドをしていくが死んではいない。

 

「がはっ……」

 

こちらも降りて相手を見る。

相手は焦燥感がにじみ出ている。

無理もないだろう。

自分の技が通用しないし、実力差は歴然。

どうあがいても勝ち目はない。

 

「さ……落ちてもらうわよ」

 

そう言って蹴り落とそうとする。

振りかぶって足を振りぬいていく。

間違いなく落ちるはずだ。

だけれども……

 

「……あれ?」

 

蹴りがすり抜けている。

目の前にもいない。

すなわちこれは……

 

「落ちろ!!」

 

瞬間移動で避けてその体勢からの硬直で落とすつもりだったようね。

確かにいい方法だわ。

でも一つ誤算があった。

それは何かというと……

 

「残念だけど、私もできるのよ」

 

相手にはできないという思い込みだ。

飛びついたはずの姿が目の前から消える。

そして後ろから声がする。

そう感じた相手が振り向きざまに驚愕の視線をこちらに向ける。

しかし体は宙を舞っていた。

 

「『瞬間移動』」

 

その顔を浮かべるよりも前に貴方を蹴り落としたからよ。

これでお終いね。

 

.

.

 

「ついに全員脱落の宇宙が出てきてしまいましたか」

 

それでは全王様にお願いしましょう。

私は息を吸い込んで言葉を放つ。

 

「第2宇宙、選手10名が全員脱落いたしました」

 

芝居を打つのは大好きですがね。

出来れば全宇宙から1名は出てほしかったです。

 

「よって、第2宇宙……消滅です!!」

 

全王様が手を掲げる。

そして、光に包まれて第2宇宙は消えた。

しかし天使には宇宙を見るとその虚偽がわかる。

その為、杖での透視などもできないように細工をしておいた。

 

「皆様、引き続き戦いに勤しんでください」

 

そう言って頭を下げて私はこの戦いに再び視線を戻すのであった。




第2宇宙:10名脱落
リブリアン(ガタバル),カクンサ(ガタバル),ラパンラ(ガタバル)
ビカル(ピオーネ),ロージィ(ピオーネ),ジーミズ(ピオーネ)
ハーミラ(ベリー),ザーブト(悟空),ザーロイン(サラガドゥラ),プラン(ベジータ)

第3宇宙:9名脱落
コイツカイ(悟空),ニグリッシ(悟空)
ボラレータ(バーダック),ナリラーマ(ヒット),
ザ・プリーチョ(ガタバル),パンチア(悟飯),パパロニ(ピオーネ)
ビアラ(ベルガモ),マジ・カーヨ(ジレン)

第4宇宙:7名脱落
ガノス(バーダック),マジョラ(バーダック)
ダーコリ(亀仙人),キャウェイ(亀仙人)
モンナ(キャベ),ニンク(サラガドゥラ),ガミサラス(ピオーネ)

第6宇宙:7名脱落
フロスト(ジレン),ドクターロタ(ジレン)
ボタモ(悟飯),マゲッタ(ピッコロ),ケール(ブロリー)
ベリー(ディスポ),キャベ(トッポ)

第7宇宙:4名脱落
亀仙人(ジレン),ピッコロ(ジレン)
ブロリー(カリフラ),悟飯(バーダック)

第9宇宙:8名脱落
ホップ(フリーザ),コンフリー(フリーザ)
ベルガモ(ジレン),ラベンダー(ジレン)
オレガノ(バーダック),チャッピル(ガタバル),バジル(ベジータ)
ローゼル(サラガドゥラ)


第10宇宙:8名脱落
ジラセン(ブロリー),リリベウ(ブロリー),ジルコル(ブロリー)
ザマス(ガタバル),ナパパ(ガタバル)
ムリサーム(フリーザ),ジウム(フリーザ)
メチオープ(悟飯)

第11宇宙:8名脱落
カーセラル(カリフラ),ゾイレー(カリフラ),ケットル(カリフラ)
タッパー(ケール),ブーオン(ケール),ココット(ケール)
クンシー(バーダック),ディスポ(ベリー)

現時点:61名脱落
残り19名
撃墜数
7人:ガタバル,ジレン 6人:バーダック 5人:ピオーネ
4人:カリフラ,フリーザ,ブロリー
3人:ケール,悟空,サラガドゥラ,悟飯
2人:ベリー,亀仙人,ベジータ
1人:キャベ,ヒット,ピッコロ,ベルガモ,ディスポ,トッポ

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『加速する脱落』

一部のキャラが原作よりパワーアップしています。
敗者復活戦とかやめて篩い落としで8名まで絞ります。



第2宇宙が消えた中。

次の消滅に既に王手がかかっている第3宇宙。

その最後の戦士の名はカトスペラ。

今、彼が相対しようしているのは……

 

「ようやく私の目の前に挑みに来る相手が来たのね」

 

第9宇宙最強にして消滅宇宙の民が一人『モギ』であった。

 

.

.

 

「行くわよ」

 

私は牙を光らせて相手の方へと動く。

羽毛のような軽やかな動き。

相手も体のマークを赤の色に変えて対応してきた。

 

「スピードフォーム!!」

 

一気に距離を詰めてアッパーを打ってくる。

それをノーガードで受けて前進する。

私はライオンの獣人。

女王そのもの。

引いて戦うなどプライドが許さない。

 

「狩りをするときに一番重要な事」

 

蹴りを放ってくるがそれも受ける。

気弾の連射も受けて立つ。

頑丈な体が取りえというわけではない。

 

「それは……」

 

相手の心をへし折る事。

体の色を変えて重い一撃を見舞ってきた。

しかしその攻撃も悠々と受けて、相手の肩を掴む。

ギリギリと音を立てて爪を食い込ませる。

 

「手応えがあったはずだが…?」

 

困惑の顔を浮かべる相手を膂力で上空へ放り投げる。

さらに相手の体の色が変わっていく。

 

「こんなイチかバチかなどしたくはなかったが……」

 

赤と青色が混ざり合う。

その色は紫色。

 

「気弾と速度の両立型フォーム、『バイオレット』!!」

 

そう言って気弾を放ち、こっちの放り投げに対応。

即座に着地をして攻撃をしてくる。

 

「はあああああっ!!」

 

気弾を雨霰のように放っている。

一撃一撃は重くはない。

 

「女王の行進の前には無力!!」

 

放たれている真っただ中に突っ込んでいく。

無論ノーガードで。

 

「まさかここまで強靭な女だったとは……」

 

そう言って別の色に変わっていく。

次は赤と黄色が混ざって橙色になった。

 

「速度と攻撃の両立型フォーム、『オレンジ』!!」

 

腹部へ一撃を喰らう。

重くても悶絶することは許さない。

 

「すべて受けきって勝つ」

 

回避してもいい。

しかし、それをすることは自分を曲げる事。

プライドがあるから立ち向かえる。

 

「しっ!!」

 

こちらも反撃を始める。

ただ上に放り投げるだけの行動しかしていないんだから。

 

「ぐっ!!」

 

ガードをするがさっきの投げを見ても、明らかなように私の膂力は並大抵のものではない。

相手もそれには気づき驚きの声を上げていた。

 

「なっ……!?」

 

強い状態へ覚醒したはずなのに、それをものともせずに浮かされていく。

アッパーで浮いた相手に照準を合わせる。

その相手に飛び後ろ回し蹴り。

鮮やかな連撃で相手の攻撃に対して応えた。

 

「こうなったら……うおおおお!!」

 

吹っ飛んだ相手が立ち上がり、今までよりも強く発光していく。

限界を超えていくように。

全てを絞り出していくように。

 

「全ての長所をつかさどる最強のフォーム、『ブラウン』!!」

 

全ての色が混ざり合った状態は今までとは威圧感が違う。

そう言って攻撃を仕掛けてくる。

速くて重い。

しかしそれすらも受ける。

どんな攻撃や策が来ようと関係ない。

我が道を貫き、相手の全てを受けて屈服させてみせる。

それこそが女王の在り方。

 

「ハアッ!!」

 

相手の攻撃を額で受けて拳を壊す。

砕けた拳で痛みに呻くがその隙も与えない。

 

「フッ!!」

 

こめかみを蹴りぬいてさらによろめかせる。

首を掴んで膝蹴りを叩き込む。

ヘルメットが砕ける。

 

「うえぇ……」

 

腕がだらりと下がってしまい、意識が飛びかけている。

このまま決着をつけよう。

 

「『ツインアーム・スパイラル』!!」

 

両腕を抱え込む形でグルグルと旋回していく。

その勢いで相手の体勢は徐々に直立するようなものへと変わっていく。

 

「そぉれ!!」

 

もう一度、上空へと放り投げていく。

さっきとは違い、ダメージがあるため相手は解くこともできない。

 

「お前は何者なんだ……」

 

それを追いかけて、掴んで体を固める。

頭を地面に向かわせた状態で、腕を交差させて自分の足を、相手の足の外側から内側に向かって差し込む。

 

「ただの女王よ」

 

問いかけに答えて落下していく。

強烈なGと風圧でブラックアウトしているかもしれない。

 

「『クイーン・クレイドル』!!」

 

勢いのまま叩きつけられる相手。

手応えは十分だった。

 

「ぐはっ!!」

 

相手は血を吐くようにして呻きながら落下していく。

この結果をもって第3宇宙が消滅。

そして私は首をコキリと鳴らしていた。

 

.

.

 

「次の相手はお前か、第4宇宙」

 

そう言って俺は相手に向かって行く。

相手に何もさせない。

アッパーで浮かせて延髄切り。

流れる連撃で相手はバウンドする。

 

「フヒャ!!」

 

そのバウンドを活かして攻撃に転ずるが遅い。

それより速くブリッジでかわして蹴り上げる。

 

「オラァ!!」

 

跳躍で追い越して地面に叩きつける。

立ち上がって霧を吹いてくる。

 

「目くらましのつもりか?」

 

気を感じ取ればそんなものはこけおどし。

時間稼ぎにもなりはしない。

 

「ぐっ……」

 

低空タックルを仕掛けてくるが、それを切って逆に抱え上げる。

力を込めて叩きつける。

 

「うおっ!!」

 

受け身をとって転がり、相手は距離をとっていく。

それを見て、しばらく経つと構えている状態でじりじりと近づいてくる。

それは相手の中の格付けが済んだって事。

そして回るという事は自分の実力に迷いが生じていやがるというわけだ。

 

「下であると自分で認めたら勝てるものも勝てねえよ」

 

そう言うと顔を真っ赤にして飛び込んでくる。

勝つために様子見で回っていたのだろうが、プライドを刺激されて黙っていられなくなった。

速度もさっきよりは上がっている。

しかし……

 

「それでも俺に比べりゃまだまだだな」

 

腕をとって放り投げる。

それを受け身をとって立ち上がろうとする。

しかしそれを許す俺ではない。

 

「うあっ……」

 

接近をして沈み込んで水面蹴りを放つ。

足をすくう形で尻餅をつかせる。

その顔面目掛けて蹴りを繰り出した。

 

「ヒィ!?」

 

こっちの蹴りの連打を地面を転がって回避していく。

しかし転がったからと言って逃れられるわけでもない。

 

「モグラ叩くのと同じようなもんだ!!」

 

蹴りをやめて拳で相手を埋め込めばいい。

そう判断した俺は、相手の頭を叩いて地面へ埋め込もうとする。

それを見て相手の眼がギラリと光る。

 

「ここだー!!」

 

俺の腕に飛びついて関節技を極めてくる。

どうやらこの一瞬を狙っていたのか、三角締めで俺の腕を壊しに来た。

自分からどうもできないのなら、相手の攻撃を待ってカウンター。

それは悪い判断じゃねえが……

 

「壊せるだけ拮抗してないと意味ねえよ」

 

腕を振り上げて相手ごと地面に叩きつける。

壊せると思って油断してやがった相手にはいい薬だろう。

 

「ぐえ……」

 

相手が苦しそうに呻くがもう一発叩きつける。

離すまで何度だって叩きつけてやるよ。

 

「かっ……」

 

痛みが限界に来たのだろう。

ずるずると崩れ落ちるように腕から離れていった。

そしてこいつでお終いだ。

 

「オラッ!!」

 

相手を突き上げるようにアッパーを打って起こす。

相手が苦しそうな顔をしながら体が浮く。

 

「俺の一撃を受けてみな」

 

俺はそう言って気を高めていく。

浮き上がっている相手の腹部へ狙いを定める。

 

「『ライオット・ジャベリン』!!」

 

そして武舞台の端まで飛ばされていく。

相手はピクリとも動かない。

 

「死んだか……」

 

まさか違反してしまうとはな。

そう思って蹴り上げようとした瞬間、ピクリと動く。

 

「ヒャア!!」

 

この野郎と内心のいら立ちを隠して動く。

組みつこうとしてきたやつの頭を掴んで締め上げる。

溜息が出ちまいそうだぜ。

 

「死んだふりなんざくだらない真似してんじゃねえ!!」

 

そう言って蹴り飛ばす。

そして、同じタイミングで第4宇宙の奴を落としたんだろう。

第4宇宙も残りは一人。

その落とした相手を見る。

その瞬間、笑みがこぼれた。

この相手は次の獲物に相応しいと。

 

.

.

 

「面倒な奴に絡まれちまった」

 

見た目は何かおかしな奴というわけでもない。

むしろ第4宇宙のマスコットのような相手。

しかし備わっていたものが強い。

幻影を用意してきたのだ。

俺一人に的を絞って能力の効きを強くしているのかもしれない。

 

「今更、俺が倒してきたやつの幻影でどうにかなるとでも思ったか!!」

 

人海戦術で黒い靄のように生まれる幻影。

そいつらの攻撃は生前と変わらない。

それであれば俺に勝てない道理がない。

何故ならば一度勝った相手なのだから。

 

「これは……ゴクウブラックの幻影か!?」

 

どうやら催眠の結界でもあるようだ。

俺の記憶から最近の強い奴を呼び出してきた。

 

「下等なサイヤ人よ、滅ぼしてやる!!」

 

そう言って攻撃を仕掛けてくる。

だが……

 

「あの頃の俺と同じなわけがないだろう」

 

腕を掴み圧し折る。

そしてそのまま蹴りを喰らわせる。

 

「ククク……」

 

再生をするから問題は無いようだが……

実力差がついたのも判断できないのか?

幻影に判断力を求めるのも酷な話ではあるんだけどな。

 

「『神裂斬』!!」

 

黒い刃のような気の攻撃。

回避すると地面に突き刺さっていく。

 

「まだまだぁ!!」

 

鎌の一撃。

それを避けると突き刺さった部分を掘り起こして塊として投げてくる。

 

「爆発しろ!!」

 

爆発を起こして気の刃とカチカッチン鋼が襲い掛かってくる。

だが、そんな事で俺が怯えるとでも?

 

「はああああああ!!」

 

それを気を開放して弾き飛ばす。

それを見越して『聖なる逆鱗』を放つ。

合体の時に出した技がなぜ出せるのか。

きっと催眠の奴が技も俺の記憶から盗んだのだろう。

 

「二人だから絶大な威力があったんだ!!」

 

片手で弾き飛ばして接近を図る。

それを見てゴクウブラックは気弾で距離をとる。

 

「ならこれでどうだ!!」

 

ロゼの状態になってカカロットの『かめはめ波』の構えをとる。

いいだろう。

それごとねじ伏せて俺が勝つ。

 

「『ブラックかめはめ波』!!」

 

迫りくる中、落ち着かせる。

気を高めて、それを迎え撃つ構えをとる。

 

「『ファイナルゴッドシャインアタック』!!」

 

あのころとは全く練度が変わった大技。

その一撃がぶつかった瞬間、勝負は決した。

ロゼ状態の気功波を呑み込んで、そのままブラックまで光に包まれる。

 

「ぐあああああ……」

 

断末魔のような声を上げて、ゴクウブラックも霧散した。

最近の俺にとっての最強ともなればビルスかウイスで十分。

だが相手にも上限があってそれは無理なのだろう。

力比べをさせるならカカロットでも良かっただろうと思うが……

 

「えっと、こっち!!」

 

ゴクウブラックを倒した俺の前に現れる幻影。

どんな強い奴でも問題はない。

そう思っていたが次の幻影は驚かせるには十分だった。

 

「トランクスにブルマだと!?」

 

俺にとってどうしようもない相手。

確かにそういう意味では間違いではない。

 

「いっくよー!!」

 

超サイヤ人の状態で殴りかかってくるトランクス。

ブルーの状態ではあるから一安心だ。

 

「だりゃりゃ!!」

 

だが場外ルールがある以上、吹っ飛んでは意味がない。

その為にも無防備のまま、食らうつもりはない。

 

「まずはしっかりと固めておかないとな……」

 

防御をするために体勢を変えようと動く。

しかし次の瞬間、驚愕の光景があった。

 

「やめなさい、ベジータ!!」

 

なんとブルマがトランクスの前に立って盾になる。

攻撃の為ではなくが防御の為でも動かれると、こっちは迂闊に行動できない。

 

「ぐっ!!」

 

それにブルマを殴るというのは、さすがの俺でも無理がある。

昔の悪人の俺ならば躊躇わずにできたのだろうが。

 

「パパ!!、パパ!!」

 

超サイヤ人のトランクスの攻撃を受け続けてしまう。

反撃をしないから徐々に追い詰められていく。

このままでは場外に落ちてしまう。

 

「くっ……」

 

これは幻影だ。

そう断じる。

現実のブルマやトランクス、ブラ。

家族が消える事を考えれば、鬼になるしかない。

歯を食いしばり、戦うことを決めた。

 

「幻影とはいえ……許せ!!」

 

ブルマの幻影を『ファイナルフラッシュ』でかき消す。

罪悪感と胸を満たす苦しみ。

 

「お前もだ!!」

 

トランクスの幻影を『ビッグバンアタック』でかき消す。

狂おしいほどの悲しみが幻影と言えどこみ上げる。

出来る事ならば片膝をついて蹲る。

幻影と言えど叫びたい。

 

「あいつが未来でどれだけの苦しみを味わったのか……今ならばわかるぜ」

 

この苦しみを怒りに変えてこの元凶を落とす。

相手はもう一度何かを呼び出そうとする。

俺の記憶において最も強敵だと思える相手を出すつもりか。

だがもうその手品はさせない。

 

「お前は俺の怒りの臨界点を越えさせた!!」

 

俺は全開の速度で結界の主に接近する。

風を切り裂いて音を置き去りに。

手が動く暇さえ与えない。

 

「ひっ!!」

 

驚いて恐怖するがそれで止まると思うな。

俺の記憶から幻影を生んだことを後悔するがいい。

 

「飛んでいけ!!」

 

回避すら許さない一撃。

相手はそのまま場外へと飛んでいった。

 

「そんなに見なくても分かっているぜ……」

 

結界が解けた後に視線に気づく。

視線の先には途轍もない闘気を漲らせた男がいる。

それは相対することが答えであると悟っていた。

 

.

.

 

全く無粋な奴が居たもんだ。

『復活パワー』を注ぎ込んでいるというのに攻めてきた。

しかも……

 

「どうやら小さい奴のようだな」

 

気配はある。

そして目線で動きを追うとちらちらと横切っている。

つまり、透明でもない。

だったらこれが思い当たる。

 

「一つ思うが羽はあるのか?」

 

相手の攻撃を防ぎながら軌道を読む。

縦横無尽ではあるが、なにか法則性があるかもしれない。

羽があれば不規則になるから参考にはならないのだが、その有無は重要な判断要素だ。

 

「毎回地面についてからの跳躍……」

 

もしかしたら空を飛ぶのは奥の手かもしれない。

もしくは単純に飛べない種族。

ならば、地面に着いたところを狙って殴りに行く。

 

「そこだ!!」

 

地面に罅が走って地響きが起こる。

すると相手の正体が見えた。

小さすぎる。

 

「虫人間とはな……」

 

羽の無い虫、跳躍力から考えてノミのような奴か?

ワシは姿を見て笑みを浮かべていた。

虫という特性上、勝ちを確信したのだから。

 

「無様な散り方をしたくなければ落ちていけ」

 

構えて忠告をする。

それに対して戦闘意欲バリバリで飛びかかってくる。

 

「俺が最後の一人、消滅すると分かって放棄するか!!」

 

仕方ない奴だ。

勝てないという事を教えてやったのに。

 

「『スコーピオン・パイル』!!」

 

サソリの尻尾を模した杭が出る。

それをかわしていくがつまむような動きで捕らえにいく。

まずは種をまく。

指に炎を纏わせてこの相手の大きさに合わせる。

 

「『バルゴ・プロミネンス』!!」

 

指だけが回転して相手に掠ったかどうかを確かめていた。

何故ならそれが最重要なものだから。

 

「相手はうまく逃れたが毛先が燃えたのか、そう言った臭いがした」

 

これで準備は完了。

次の一手で勝負が決まる。

攻撃を当てられない以上は、相手に寄ってもらえばいい。

 

「ワシのマジックショーの前に散るがいい」

 

そう言って炎を出して形作っていく。

それは闘牛士が使うマントのよう。

そしてそれを目に入れてしまった瞬間相手の動きが変わる。

 

「そっ、そんな何故……」

 

徐々に足が動き始める。

炎のマントが目の前にあるというのに。

危険だというのは承知の上なのに。

 

「習性よ、さあ……燃えろ!!」

 

そう言って手拍子を打つと、抵抗の為に踏み出そうとしない。

そのせいで足を引きずりながらもマントへ近づいていく。

三回目の手拍子で抵抗虚しく習性のままに炎のマントに飛び込んでいく。

 

「嫌だぁああああああ!!!」

 

最後の抵抗の言葉が切実だった。

むしろその跳躍の時にマントを近づけてやったほどだ。

 

「うぎゃあああああ!!!」

 

そして入った瞬間、絶叫が響き渡る。

それを意に介さず、マントを地面に叩きつける。

これでダメージをさらに与える事が出来た。

 

「ぐるじぃよお!!、いだいよぉお!!」

 

悶えながら転がり続ける。

しかし、体に着いた火は消えない。

その姿を見てこうも見事にはまるものかと感心する。

 

種を明かせば先ほどの『バルゴ・プロミネンス』が掠っていた事。

それを利用して『ビスケス・ファントム』で体が燃えた時の痛みや苦しみを催眠術で呼び戻した。

炎に飛び込んだが人肌程度の熱で直接的な害はない。

 

「苦しかろう、『レイジ・アクエリアス』!!」

 

魔術で水に変えた気功波を放つ。

水流は炎を消し去りながら虫人間を押し流した。

これで第4宇宙も消滅か。

 

そんな中、自分がさっきまで居た場所からピクリと動くのを感じた。

もうここから先は奴の生命力にかけるのみ。

 

次の相手を見据えて歩を進める。

自分の最後の相手に相応しい奴の場所へ。




第2宇宙:10名脱落
リブリアン(ガタバル),カクンサ(ガタバル),ラパンラ(ガタバル)
ビカル(ピオーネ),ロージィ(ピオーネ),ジーミズ(ピオーネ)
ハーミラ(ベリー),ザーブト(悟空),ザーロイン(サラガドゥラ),プラン(ベジータ)

第3宇宙:10名脱落
コイツカイ(悟空),ニグリッシ(悟空)
ボラレータ(バーダック),ナリラーマ(ヒット),
ザ・プリーチョ(ガタバル),パンチア(悟飯),パパロニ(ピオーネ)
ビアラ(ベルガモ),カトスペラ(モギ),マジ・カーヨ(ジレン)

第4宇宙:10名脱落
ガノス(バーダック),マジョラ(バーダック),ショウサ(バーダック)
ダーコリ(亀仙人),キャウェイ(亀仙人),ニンク(サラガドゥラ),ダモン(サラガドゥラ)
モンナ(キャベ),ガミサラス(ピオーネ),シャンツァ(ベジータ)

第6宇宙:7名脱落
フロスト(ジレン),ドクターロタ(ジレン)
ボタモ(悟飯),マゲッタ(ピッコロ),ケール(ブロリー)
ベリー(ディスポ),キャベ(トッポ)

第7宇宙:4名脱落
亀仙人(ジレン),ピッコロ(ジレン)
ブロリー(カリフラ),悟飯(バーダック)

第9宇宙:8名脱落
ホップ(フリーザ),コンフリー(フリーザ)
ベルガモ(ジレン),ラベンダー(ジレン)
オレガノ(バーダック),チャッピル(ガタバル),バジル(ベジータ)
ローゼル(サラガドゥラ)


第10宇宙:8名脱落
ジラセン(ブロリー),リリベウ(ブロリー),ジルコル(ブロリー)
ザマス(ガタバル),ナパパ(ガタバル)
ムリサーム(フリーザ),ジウム(フリーザ)
メチオープ(悟飯)

第11宇宙:8名脱落
カーセラル(カリフラ),ゾイレー(カリフラ),ケットル(カリフラ)
タッパー(ケール),ブーオン(ケール),ココット(ケール)
クンシー(バーダック),ディスポ(ベリー)

現時点:65名脱落
残り15名
撃墜数
7人:ガタバル,ジレン,バーダック 5人:ピオーネ
4人:カリフラ,フリーザ,ブロリー,サラガドゥラ
3人:ケール,悟空,悟飯,ベジータ
2人:ベリー,亀仙人
1人:キャベ,ヒット,ピッコロ,ベルガモ,ディスポ,トッポ,モギ

指摘などありましたらお願いします。

ちなみにモギの技『クイーン・クレイドル』は
ゆでたまご先生の作品『キン肉マン』の『サイコマン』という超人が使う技
『拾式奥義 輪廻転生落とし(グリム・リインカーネーション)』がモデルです。


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『サイヤと奇術師』

主人公は再始動させますが、まだ少々お待ちください。
第7宇宙は誰を落とそうか最後まで迷いました。


視線の先の戦士に向かう。

相手は構えて呼吸を整えて待っている。

だが向かい合ったら合図となる。

決して油断も何も許されない。

それがサイヤ人の在り方。

 

「ハアッ!!」

 

着地と同時に飛び膝蹴り。

それを相手がバックステップでかわしていく。

 

「ふんっ!!」

 

アッパーを放ってきて顎を狙う。

その動きからこちらは首を動かして最小限で避ける。

 

「しっ!!」

 

右フックでカウンターを狙う。

相手に合わせて放つなんて冷静な方法。

それが超サイヤ人ブルーの恩恵。

これが普通の超サイヤ人ならできない芸当だろう。

 

「けっ」

 

ヘッドスリップで衝撃を逃がされる。

そして即座に地面に手をついて蹴りを放ってきた。

カウンターにカウンターを悠々と合わせてくる。

 

「ぐっ!!」

 

こめかみに来た一撃を防いで互いに距離を取り合う。

その一撃の攻防で相手は笑っていた。

 

「なんだ、こんなもんかよ、ベジータ王子」

 

バーダックが言ってのける。

その言葉には嘲りというよりは余裕があった。

 

「俺は第6宇宙で自分を磨いた」

 

そう言って拳を繰り出す。

それに合わせて打ち付けあう。

または防ぎあう。

一進一退に思える中……

 

「あんた以上に成長した自負があるぜ」

 

腹部に一撃を喰らってしまって後ずさりをする。

隙を作った覚えはないが、さすがは歴戦の戦士。

俺のような若造の無駄な動きなんぞ手に取るようにわかっているんだろう。

 

「さて……もっと遠慮なくいかせてもらうぜ」

 

そういって手刀に気を宿す。

この系統の技はよく見る。

これを受け止めて反撃をしてやる。

 

「『レイジ・デュランダル』!!」

 

黒色の気の剣が俺を切り裂こうとする。

それを白刃止めで受けて、脇腹に蹴りを打つ。

 

「ぐっ!!」

 

一撃を喰らって飛んでいく。

しかし飛ぶ最中に体勢を入れ替えて……

 

「ハアッ!!」

 

気弾を放ってその推進力でこっちに向かってきた。

手の形を変えて相手も技を繰り出す。

 

「『リベリオン・ファング』!!」

 

肩口を抉られる。

徐々に血が出ていく。

量も増えていくほどだ。

 

「おいおい、まだこっちは血を流すほどの攻撃を受けてはいないんだぜ」

 

肩をすくめて笑ってくるバーダック。

悔しいが事実は事実。

 

「すぐにその余裕の面を変えてやる」

 

ブルーの全力で向かってはいる。

冷静さもある。

相手が成長で俺を越えた可能性。

 

「それを踏まえても足りないのは」

 

冷静さゆえの攻め気。

相手の動きを観察しようとしてしまう。

それが後手に回って今の状況を作り出す要因となる。

 

「それが超サイヤ人4との違い」

 

攻撃的なサイヤ人の本能のすべてをさらけ出した姿。

防御など一切いらない。

どこまでも暴力的な力でねじ伏せようとする心。

先手必勝、そして野生の力。

 

「はっ!!」

 

先に動いていく。

相手の攻撃を待つのもいい。

だがそれでは今の状況は変わらない。

 

「ハアアッ!!」

 

ラッシュを仕掛ける。

相手の防御からの隙を見抜く。

 

「そこだ!!」

 

隙間を縫ってアッパーを放つ。

顎への手応えがある。

 

「しっ!!」

 

ローキックで体勢を崩す。

腹部への掌底。

流れる連打でダメージを与える。

 

「ははっ!!」

 

しかし深刻なものではない。

けろりとしている。

それどころか気弾で浮き上がり、股に俺の顔を挟み込む。

そして力の限り投げられた。

 

「『フランケンシュタイナー』っていう技だ」

 

地面に叩きつけられる前に気弾で体勢を整える。

深追いはできない。

隙があちらにはない。

 

「ならば……!!」

 

一気に接近して顔を掴みに行く。

それを首を動かして避ける。

だがそこで終わらない。

肩を掴み、片方の腕は脇の下に差し込んで投げようとする。

 

「があっ!!」

 

それを踏ん張って止まるバーダック。

だがその一瞬で顔を掴む。

 

「ぬぐぐ!!」

 

渾身の力を込めた握力で引き剥がせない状態を作る。

そのまま持ち上げて旋回をする。

 

「『アンガー・トルネード』!!」

 

飛び上がって勢いよく後頭部を叩きつける。

しかしバーダックは……

 

「舐めるなよ!!」

 

足の力だけで立ち上がり、俺は首を絞められて持ち上げられる。

苦しいが気弾で抜ける。

 

「どんな体勢でも反撃できるのか……」

 

くの字に曲がった状態からの『フランケンシュタイナー』

逆立ちからの『ネックハンギングツリー』

真っ向勝負でも切り返されてしまう。

 

「流石は伝説の戦士」

 

第6宇宙でのサイヤ人伝説。

それ以外にもこちらの宇宙でも伝説的な存在とはなっていた。

下級でありながら王族に比肩しうる戦闘能力を持っていた男。

だからこそ勝ちたいと願う。

 

「ふんっ!!」

 

拳を突き出していくと、相手がピクリと動く。

それにフェイントを織り交ぜる。

脇腹への一撃から顔面へ。

 

「はっ!!」

 

叩き落しにきた瞬間、後ろに体重をかける。

そして跳躍。

 

「かああっ!!」

 

飛び後ろ回し蹴り。

防御を弾き飛ばして後退させる。

ここで大技を仕掛ける。

 

「『ガンマ・バースト・フラッシュ』!!」

 

片手で『ファイナルフラッシュ』を2発撃つ技。

強烈な技である。

 

「『リベリオン・トリガー』!!」

 

その一撃が迫る中、相手も技を放つ。

互いの一撃が衝突した。

しかし両者の一撃は一緒の威力。

 

「ちっ!!」

 

俺はもう一発の光弾を出す。

それは直撃はするが無傷のまま。

相手から反撃が始まる。

 

「『ヒートファランクス』!!」

 

手に火を宿した一撃。

それを喰らわないように後ろへ下がる

 

「まだまだ、『ライオット・ジャベリン』!!」

 

一撃を片手で弾き飛ばす。

これでは、人の技を借りてでも隙を作るしかない。

天津飯の野郎の技を借りるか。

上手くいってくれよ……

 

「『太陽拳』!!」

 

相手の技の硬直を狙って放つ。

そこで出来た隙次第で俺の動きは決まる。

ここで目を隠していたら……

 

「ちくしょう……小細工を!!」

 

そう言って怒りのままの一撃が放たれる。

俺はそれを回避。

技を出すための多大な隙を作り出した。

 

「『ファイナルゴッドシャインアタック』!!」

 

俺の最大の技を放つ。

その完璧なタイミングは、バーダックを無防備なまま呑み込んでいった。

 

「うがああああ!!」

 

しかしそれは勝利を確定させるものではなかった。

呑み込まれていても、その力は衰えず。

ボロボロになりながらも俺の懐まで入ってきた。

 

「『スピリット・オブ・サイヤン』!!」

 

腹部へ一撃を喰らう。

すると最高速度、最高の攻撃力。

その二つを両立させたラッシュが始まる。

 

「オラオラオラ!!」

 

内臓が揺さぶられてこみ上げる。

肋骨が折れて痛みがはしる。

脳を揺らされて思案すら許されない。

 

「終りだあああ!!」

 

再度、腹部へ喰らった一撃。

そしてそこから気弾を出して吹っ飛ばされていく。

 

「完敗だぜ」

 

体がろくに動かない。

完全な敗北だった。

時の流れとともに『強さ』という名前の木に年輪を刻み、太く雄々しくなっていった。

それが若い自分を倒せるだけの力を生み出していた。

そう思うと自然に笑みさえ浮かべていた。

それだけ清々しい敗北だった。

 

.

.

 

「ベジータが落ちたか」

 

そう言ってワシは動く。

相手が瞑想で完全に回復しきる前に落とす。

その相手を探すと、平然とそこにいた。

 

「会えて嬉しいぞ、ジレン……」

 

そう言うと目を開く。

そしてじりじりと動いてくる。

 

「ようやくディスポの仇が取れるわけか」

 

そう言ってこちらへ近づいてくる。

その言葉と同時にこっちは魔術の用意をした。

 

「『タウルス・ブレイク』!!」

 

先に動いたのは自分。

一気呵成に攻めて今の体力を奪いきる。

両腕のラリアットを放つ。

 

「むん!!」

 

目力のバリアーで防ぐ。

だったら次はこうだ。

バリアーに今触れたのだからな。

 

「『スコーピオン・パイル』!!」

 

バリアーの内側から杭を出す。

それを見たジレンは……

 

「遅い!!」

 

拳の一撃で杭を壊しきった。

その次の蹴りを受け止めて、抱え上げる。

 

「ぬう……」

 

地面に向かって投げる。

それも難なく着地をして肘打ちを放ってきた。

 

「ぐおっ!!」

 

後ずさりをしてしまいそうになるが胸倉を掴まれる。

そして引き寄せられて……

 

「ふんっ!!」

 

勢いのついた頭突きを喰らう。

さらに腹部への強烈なアッパー。

体がくの字に曲がるし、胃からは内容物が出てきそうになった。

 

「『ジェミニ・ゲヘナ』」

 

無防備なジレンの後頭部へ膝蹴りを入れる分身。

しかしその分身の練度も疲れとダメージから落ちていた。

 

「甘い!!」

 

片手で防いでいく。

その瞬間の緩みで脱出をする。

こいつには催眠術も通用しそうにない。

 

「フッ!!」

 

拳を突き出していく。

近接距離での戦いになっていく。

 

「ぬっ!!」

 

こちらの拳を掴むが前蹴りを同時にこちらが放っている。

相手の腹部へと迫っていく。

 

「かあっ!!」

 

こちらの前蹴りの足を蹴りで弾く。

そして体勢を崩したところにタックルを打ってくる。

 

「ぐっ!!」

 

馬乗りに近い状態になる。

ジレンが鉄槌のように拳を振り下ろしてくる。

 

「『アリエス・ケープ』!!」

 

ほんの僅かではあるが拳を逸らす。

事なきを得た。

ブリッジで弾き飛ばしてお互いが向き合う。

 

「確かにディスポではそっちには勝てないな」

 

分析までしていたか。

単純な身体能力のみで練度が落ちたとはいえ、魔術がろくに通用していない。

こちらとしては由々しき事態だ。

 

「こいつを倒せる奴はあの二人しかいない」

 

孫悟空もまだ足りない。

片や復活の予兆はあっても時間が間に合うか。

片や最終兵器であるが故に出るのか。

拮抗だけならばフリーザが可能だろう。

 

「しかし、奴も別の標的が見つかっているから期待できない」

 

全員がジレンを狙うわけではない。

むしろ遠巻きに眺める事もある。

 

「後を託すなんて不確かなものだが……」

 

致し方なし。

己の全力を賭して奴との戦いを長引かせる。

 

「『レオ・ストローク』!!」

 

腕を振り、奴の脇腹を裂きに行く。

この技に対してジレンの行動次第で技は変わる。

 

「ヌン!!」

 

攻撃を受け止めた。

しかし掴んでいないのであれば……

 

「『キャンサー・シザー』!!」

 

居合のように技を繰り出す。

しかしそれも……

 

「まだまだ!!」

 

両手で掴まれて防がれる。

だがそれならば!!

 

「『カプリコーン・スタンプ』!!」

 

地面を蹴って飛び上がり、蹴りの連打を繰り出す。

狙うは顎や顔面の周囲。

 

「遅いぞ!!」

 

爪先がぐちゃりと潰れるような音。

頭突きでこっちの蹴りを止めたのだ。

 

「だが……『フィアー・パンデミック』!!」

 

腕を掴み返して気弾を放つ。

烏の羽根がまとわりついて行く。

 

「流石のお前でも脱力させられてはどうなる!?」

 

握り拳を作って圧縮させていく。

行きつく先の消滅。

だが打ち破る事は不可能ではない。

 

「ギギギ……」

 

全力の技に全力で抵抗する。

ギリギリと音を立てて軋む羽根の球。

 

「うおおおお!!」

 

両手で握り潰す様に力を込め続ける。

徐々にエネルギーが衰退している。

だが、こっちの消耗もある。

 

「このまま……」

 

抵抗を続けている間に復活するだろう。

そこでようやくワシが十分な仕事ができたということになる。

 

「があああああ!!!」

 

しかしそんな思いを抱いた刹那。

ジレンが張り裂けんばかりの絶叫で技を打ち破る。

やはり想像以上に規格外だったか。

こちらの技としては正攻法の手はもう尽きた。

こうなれば、もはや……

 

「『ルナティック・ギルティ』!!」

 

月光が照り返し、ブルーツ波を集める。

光のエネルギーを体中に纏わせる。

 

「そして……」

 

このエネルギーをそのまま特攻して爆発させる。

自爆技での道連れ。

情けないが、『復活パワー』でかなりの力を使っている。

目が開いていたらこれで代用できたのだが。

 

「いくぞ!!」

 

自分の体格差を活かして戦車のごとく突っ込む。

ジレンが手を触れた瞬間、光のエネルギーのすべてを爆散させた。

自分の肉体がズタズタになる衝撃。

しかしそのエネルギーをぶつけたのだ。

ジレンもただで済んではいない。

 

「うおおおお!!」

 

現に叫びながら自分の力で威力を減らし、場外へ行くのをこらえようとしている。

爆風が幾らかジレンを運んではいく。

しかし、しばらくその音が続いた後、唐突にピタリと音が止む。

それが何を意味するのか、ワシにはよくわかる。

ギリギリまで追い詰めることもできない自分に歯噛みする。

もはやこうなれば潔く敗北を選ぶほかない。

 

「最後の輝き、やはり皆が俺の心を震わせる強者には変わりない」

 

そう言ってジレンがワシの脇下に自分の腕を差し込む。

そしてワシの腕が背中側を向くように固める。

 

「強く勇ましくそして多彩な技をお前は持っていた」

 

力を込めてワシを回し始める。

勢いをつけられていく中、抵抗も許されない。

 

「賞賛の意を込めてこの技でお前を落とそう!!」

 

そう言うとジレンが投げの体勢へと入り、ワシの体が浮く。

ダブルアームスープレックスで場外に投げられる。

豪快な投げにより宙に長く舞い続け、ベンチへと移動した。




ベジータとバーダックの対決にしました。
サラガドゥラもベジータも強いですが相手の方が一枚上。
ジレンとバーダックがそしてついに撃墜数トップになりました。

第2宇宙:10名脱落
リブリアン(ガタバル),カクンサ(ガタバル),ラパンラ(ガタバル)
ビカル(ピオーネ),ロージィ(ピオーネ),ジーミズ(ピオーネ)
ハーミラ(ベリー),ザーブト(悟空),ザーロイン(サラガドゥラ),プラン(ベジータ)

第3宇宙:10名脱落
コイツカイ(悟空),ニグリッシ(悟空)
ボラレータ(バーダック),ナリラーマ(ヒット),
ザ・プリーチョ(ガタバル),パンチア(悟飯),パパロニ(ピオーネ)
ビアラ(ベルガモ),カトスペラ(モギ),マジ・カーヨ(ジレン)

第4宇宙:10名脱落
ガノス(バーダック),マジョラ(バーダック),ショウサ(バーダック)
ダーコリ(亀仙人),キャウェイ(亀仙人),ニンク(サラガドゥラ),ダモン(サラガドゥラ)
モンナ(キャベ),ガミサラス(ピオーネ),シャンツァ(ベジータ)

第6宇宙:7名脱落
フロスト(ジレン),ドクターロタ(ジレン)
ボタモ(悟飯),マゲッタ(ピッコロ),ケール(ブロリー)
ベリー(ディスポ),キャベ(トッポ)

第7宇宙:6名脱落
亀仙人(ジレン),ピッコロ(ジレン),サラガドゥラ(ジレン)
悟飯(バーダック),ベジータ(バーダック)
ブロリー(カリフラ)

第9宇宙:8名脱落
ホップ(フリーザ),コンフリー(フリーザ)
ベルガモ(ジレン),ラベンダー(ジレン)
オレガノ(バーダック),チャッピル(ガタバル),バジル(ベジータ)
ローゼル(サラガドゥラ)


第10宇宙:8名脱落
ジラセン(ブロリー),リリベウ(ブロリー),ジルコル(ブロリー)
ザマス(ガタバル),ナパパ(ガタバル)
ムリサーム(フリーザ),ジウム(フリーザ)
メチオープ(悟飯)

第11宇宙:8名脱落
カーセラル(カリフラ),ゾイレー(カリフラ),ケットル(カリフラ)
タッパー(ケール),ブーオン(ケール),ココット(ケール)
クンシー(バーダック),ディスポ(ベリー)

現時点:67名脱落
残り13名
撃墜数
8人:ジレン,バーダック 7人:ガタバル 5人:ピオーネ
4人:カリフラ,フリーザ,ブロリー,サラガドゥラ
3人:ケール,悟空,悟飯,ベジータ
2人:ベリー,亀仙人
1人:キャベ,ヒット,ピッコロ,ベルガモ,ディスポ,トッポ,モギ

指摘などありましたらお願いします。


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『目覚めた戦士』

今回でついに残りの人間が10人になります。
絞りに絞っています。
悟空が下種っぽくなってしまっていますがキャラ崩壊すみません。


俺は目覚めた。

喧騒はほとんどない。

と言っても瓦礫が音を多少かき消している。

埋もれるように誰かが隠してくれていた。

髪の毛が落ちていないところを見るとフリーザだろう。

体に溢れている力。

サイヤパワーと体力。

それの出所も分かっている。

 

「見捨てずにいてくれたんだな……」

 

そう思うと目頭が熱くなる。

それに報いようと力を噴き出させる。

 

「さて……誰がいる?」

 

見渡すと第10宇宙の戦士が一人。

よし、奴を狙おう。

そう思って足に力を込めて走り出す。

ジレンと戦う前より体が軽い。

体力とサイヤパワーの充実だけではない。

きっと復活した時にまたわずかに増えたのか、もしくは単純に流した汗や燃焼したエネルギーで体重が落ちたのだろう。

 

「お前の名前を聞かせてくれ」

 

目の前に瞬間移動の様に現れて、名前を聞く。

それだけで怪しさはにじみ出ているだろう。

相手が構えるよりも前にこちらが臨戦態勢をとる。

当然のごとく超サイヤ人4だ。

 

「私の名前はオブニ」

 

そう言って体が揺らめく。

緩やかながら間合いの詰め方は巧者のそれ。

老練の戦士。

これは目覚め直後には最高の相手だ。

 

「フッ!!」

 

拳を突き出す。

それを回避すると同時に蹴りを繰り出してくる。

 

「はっ!!」

 

それを受け止める。

間合いを取られるので詰めていく。

 

「しゃああ!!」

 

詰める瞬間を狙って拳を出してくる。

それを首を動かして避ける。

しかし……

 

「なっ!?」

 

顔面に一撃を喰らっている。

体の動きに合わせていたはずだが何が起こっている?

 

「超サイヤ人4になってるが……」

 

速度ではない。

目で捕らえられない速度であったなら、わざわざフェイントは必要がないからだ。

技でそれを成し遂げている。

 

「いくぞ!!」

 

そう言って拳を出してくる。

それを受け止めて種明かしをしようとする。

だが……

 

「ぬぐっ!?」

 

今度はこめかみを蹴られる。

まるで動きと感じ取っている気が連動していないような……

 

「違和感がないほどに洗練された技巧か」

 

だが確信を得る要素さえあればこちらもやりやすくはなる。

相手の攻撃を待つ。

 

「かあっ!!」

 

蹴りを放ってくる。

相手の動きのずれへの対応。

それは気を感知しようとする。

もしくは目で追って行こうとする今までの経験。

それを捨てる事。

 

「空気を裂く音に耳を傾けて……」

 

目を閉じ相手の軌道を読むこともやめた。

右後ろから音がする。

 

「そこ!!」

 

手刀の一撃を受け止める。

これで相手の動きに対応できるようになった。

 

「しかしこれだけでは無理がある」

 

反撃ができない。

それに音に頼っている状態だ。

あまりにも浅はかな一手である。

 

「これで意味はなくなる!!」

 

予想通りの気弾の雨。

音をかき消す事でこちらに探られないようにする。

それに対してこちらは目を開き防御を固める。

 

「ムムム……」

 

ダメージがないとはいえ相手のペースに呑まれている。

こうなれば『身勝手の極意』を……

そう思い、首を振る。

それ頼りの戦い方はしてはいけない。

あくまで超サイヤ人4で倒せるようにしておく。

奥の手でしかないのだから。

 

「これならば…」

 

両腕をだらんと垂らしてあえてのノーガード。

そのまま相手の攻撃を待つ。

相手の腕や足を見るからいけない。

ならばどこを見るのか?

それは攻撃で標的を定めるためのもの。

 

「つまりは目を見れば攻撃の軌道が読める!!」

 

そう言って相手の攻撃に備えるが……

相手もそれを大声でこちらが言わなくても、自覚していたのだろう。

当てる寸前に視線を変えて軌道の予想を外させる。

 

「無駄だ、変えてもあからさまには今更変更できない!!」

 

顔面から下半身はなおさら。

まず当たる直前で変えられる範囲は限られている。

 

「腹部からなら顔面は不可能、軌道変更しやすく、なおかつ急所となれば……」

 

相手の動きを縛り付けて、自分の手のひらを動かしていく。

そして予想した場所へ吸い込まれていくようにオブニの拳は収まった。

 

「やはり脇腹か!!」

 

腕を掴んだまま、前蹴りを腹に喰らわせる。

相手の内臓が揺れるような一撃だ。

 

「がっ……」

 

くの字に曲がりそうなところを肘打ちで地面に膝をつかせる。

そして顔面へ膝蹴りを入れた。

 

「ぐふっ!!」

 

相手が背中から地面につく。

そこに跳躍して、腹部へ『キングコング・ニードロップ』を放つ。

相手の腹に深々と突き刺さった膝の一撃。

 

「おげぇええ!!」

 

胃へのダメージなどのもろもろが含まれたこと、血と吐瀉物が混ざる。

なんとかそれでも立ち上がって戦いの続行を望んでいる。

 

「さて……ダメージがあればあの芸当も不可能だろう?」

 

一撃だけで良かった。

相手が気を練ったりしても満足に動けない状態。

それを作り出せばこちらの優位が確実なものになる。

 

「かあ!!」

 

気合で行おうとするがやはり影響は顕著だった。

速度は完全に落ちてしまい、拳にも威力がない。

こちらがそれを回避すると追撃の衝撃は来ない。

 

「終わらせようか」

 

技を使えずにこちらに希望の無い拳を放ってくる。

それはあまりにも切ない。

 

「フンッ!!」

 

拳を受け止めて上空へと投げる。

そしてそのまま跳躍をして追い抜き、腹部に両手のひらを乗せる。

 

「『アルバトロス・ブラスター』!!」

 

オブニは無抵抗のまま落ちていく。

そして地面を三度ほど跳ねて場外へと落ちていった。

 

「ウォーミングアップは終わったのか?」

 

着陸した俺に声をかけてくる。

その方向に向かって顔を向けると、熱を噴き出しているジレンがいた。

 

「決着をつけようって事か?」

 

俺が構える。

しかし次の瞬間、俺の肩を掴んで、ジレンから遠ざける別の影。

それはカカロットだった。

 

「オラと勝負してくれよ」

 

そう言ってジレンを前に構えるカカロット。

仕方ないというように構えていた。

残り10タック。

およそ5分もない時間。

最後の死角となったのがカカロットである。

 

「いっておくが容赦はしない」

 

すぐに倒してやろう。

そう言っているのだ。

ブルーになって早く試合をした方がいい。

 

「がはっ!!」

 

カカロットが超サイヤ人で攻撃を仕掛けるが平然とカウンターで顔面を叩かれる。

それから2になるが膝蹴り、3になったら肘打ち。

僅か3回の攻撃で体がふらついている。

破壊神を凌駕しているから一撃で倒せそうなものだがな。

 

「喰らう瞬間に脱力をして何とか耐えているようだな」

 

だが、次はない

逃がす事も出来ず、脱力することも許さないようにすればいい。

そう言ってカカロットのブルー界王拳と対峙する。

 

「はっ!!」

 

高速タックルでカカロットを倒そうとする。

しかしそこに蹴りを入れてカウンターになる。

 

「無駄だ!!」

 

カウンターをものともせずにカカロットを抱え込んで地面へ叩きつける。

ただのボディスラムもジレンがやれば必殺技だ。

 

「ぐおっ……」

 

地面を跳ねるが、ジレンが馬乗りになってそれを止める。

そして鉄槌をカカロットに浴びせていく。

 

「どうした、お終いか?」

 

そう言うジレンに対してカカロットはさらに界王拳の倍率を引き上げる。

だがそれでもジレンには届かない。

その確証が俺にはあった。

 

「ぬぐうう!!」

 

カカロットが何とか馬乗りになっていたジレンを引き剥がして、体勢を整える。

そして高い所に行って上空に手を掲げている。

 

「『元気玉』か」

 

溜息をつく。

自分も助けてもらってはいるが、こういった戦いの際に集団の体力を使わせるそれはどうなのだろうか。

相手に効かない場合はどうするのか。

そう言った事も考えずにカカロットは選んだのだろう。

 

「皆が送っていくようだし……」

 

少しは協力しておくか。

手を掲げて気を渡す。

そして落とせる可能性の向上のために、横槍を入れようとじりじりとジレンに近づく。

 

「ガタバル、やめろよ、オラがジレンとやってんだ!!」

 

怒りを露わに俺に言ってくるカカロット。

馬鹿野郎が。

効かなかったら責任をとれるのか?

既に皆に元気玉で協力してもらって言える言葉ではないだろうに。

 

「邪魔すんならオラはおめえを巻き添えに打つぞ」

 

そうか。

下らん事にこだわって仲間ごとやろうとするんですか。

じゃあ、好きにしろ。

俺は一切手を貸さんからな。

 

「復帰早々冷たい言葉をかけられるものかね?」

 

そう呟いて離れて見ていた。

ジレンに元気玉が通用していない。

ブウの時と同じぐらいの威力の一撃を押し返している。

しかも片手でだ。

 

「下らないプライドで優先順位を霞ませるからそんな事になる」

 

ベジータが伝えに戻るほどの相手を甘く見すぎだ。

そして徐々にカカロットの方へ元気玉が押し返されていく。

 

「ぐわああああ!!」

 

絶叫するカカロット。

どうやら無様に押し負けたようだ。

本来ならそれ程悪しざまには言わないが、前後の言動でイラついているので不可抗力である。

そのまま呑み込まれていく。

 

「勝てる機会を逃す奴には当然の結果だ」

 

重力場を生んでそのままカカロットは居なくなる。

死んだとしても自爆。

ルールに抵触無しである。

 

「これで終わるたまでもないだろうがな」

 

そう言うと気が立ち昇る。

ジレンもその方向を見る。

その姿は俺の『身勝手の極意』と同じだった。

死の淵で掴むのかと内心苛立っていた。

努力して手に入れたものが一足飛びで追いつかれたのだから。

 

「まあ、どうなっても問題ではない」

 

殴り合いが始まる。

防御が間に合わずに、ジレンの顔にめり込む。

それを返す刀でカカロットにも一撃。

しかしジレンには余裕が見て取れた。

 

「お前の熱量では俺を倒せない」

 

そう言って腕を取り、振り回す。

地面に背中から叩きつけていく。

すぐさまカカロットが、肘打ちで反撃を試みる。

しかし……

 

「遅い」

 

肘打ちをかわしてアッパーを叩き込む。

膝をついているカカロットへの追撃はしない。

 

「青髪の男の様に、紫の肌の青年の様に、卑怯な悪党の様に、水のような戦士の様に……」

 

戦った相手の事を指しているのだろう。

ベジータと第6宇宙のベリーとフロスト第3宇宙のマジ・カーヨの3人

 

「蒼き狼の戦士の様に、あの緑の肌の男の様に、あの老人の様に、あの奇術師の様に……」

 

第9宇宙のベルガモ、ピッコロ、亀仙人様、そしてサラガドゥラ。

戦わずに落とした奴や身代わりの奴もいるから数は合わないようだが。

 

「そしてあの男の様な」

 

巨大な火球のような気弾をカカロットに当てる。

それに抵抗もできずに押し出されるカカロット。

 

「高揚をお前から感じ取れなかった」

 

それはきっと『元気玉』と振る舞いが悪いんだと思う。

それが戦士としての純度を曇らせた。

戦士なら勝つべき時に勝つこと、そして望まぬ展開を受け入れる度量がなくてはいけない。

 

「頭を冷やしておくんだな」

 

そう言って気弾が爆散する。

カカロットが宙に舞う。

俺は助ける気は全くと言っていいほどない。

あれだけ俺に対して悪く言ったんだ。

負ければこういった態度を取られる。

それを考えなかったあいつが悪い。

 

「それ!!」

 

気弾を当てられてカカロットは武舞台に戻された。

そんな事をできるのは一人しかいない。

 

「ピオーネが助けてくれたか」

 

残り数分、第7宇宙の残りは4名。

この行為は勝利に近づく一手だ。

最終局面。

カカロットの独りよがりな戦いは終わった。

そしてそんな中、戦いが別の場所で行われていた。

 

.

.

 

「貴方達が私の相手?」

 

第9宇宙の戦士と第10宇宙の戦士。

彼らは速度を上げてこっちに近づいてくる。

 

「しっ!!」

 

相手の攻撃を避ける。

ボクシングスタイルのようね。

でもこの速度なら……

 

「それ!!」

 

通りすぎた腕を関節技にもっていく。

鮮やかな『アームロック』を極めていた。

 

「あがあああああ!!」

 

相手が呻き声をあげるのを確認すると離す。

別に腕をへし折るのを常にしているわけではないわ。

二人で倒そうと向かってくる。

 

「二人同時に来たってね……」

 

相手の腰回りを抱え込んで跳躍。

垂直落下式の技で脳天を打ちつけさせる。

 

「負けるような軟な女じゃあないのよ」

 

そう言って跳躍をして気弾の技を放つ。

それも飛び切りの大技を。

 

「『グラトニー・オブ・ホエール』!!」

 

超がつくほどの巨大な気弾。

鯨を模したその一撃の威力は……

 

「うぐわああああ!!」

 

場外ギリギリで踏みとどまったがボロボロになっている。

もはや決着はついたも同然。

相手のレベルと自分のレベルがあってはいない。

これでは蹂躙。

闘争とは決して言えないものである。

 

「最後の戦士であるこのルバルトが引くわけにはいかん!!」

 

そう言って向かってくる。

拳のキレが上がっている。

ボクシングの形はあくまでカモフラージュ。

軍人だったなら軍正規の武術もある。

それこそが本命。

 

「はあああ!!」

 

顎や正中線を居抜く拳の連打。

躊躇の無い急所攻撃。

それらを捌きながら、相手の倒し方を模索する。

 

「あの技で終わりにしてあげましょう」

 

相手の蹴りを受ける。

そのまま片足を脇に挟んでバランスを崩させる。

そしてもう片足も同様に抱え込んでジャイアントスイングで投げる。

上空に向かって高く舞い上がった相手をロメロスペシャルの形に固める。

あれから改良を重ねた技の一撃、受けて見なさい。

 

「『リインカーネーション・オブ・ブレイク』!!」

 

固めた状態で回転しながら地面へと叩きつける。

相手は肺に有った空気を全て吐き出す。

そして技を解いた時にゆらりと体が動いてそのまま場外へと落下。

 

「第10宇宙は終わりね」

 

あとは貴方よ。

そう、視線で送る。

第9宇宙の戦士がびくりと体を震わせている。

 

「我らが女王の為に!!」

 

しかし、そんな気持ちを押さえてこっちを見る。

そう言って向かってくるウサギのような獣人戦士。

身軽な動きが特徴の様だ。

こっちの攻撃をひょいとかわしていく。

 

「はいっ!!」

 

ムーンサルトキックを放ってくる。

空中殺法が持ち味なのね。

 

「『スカイ・ドロップ』!!」

 

こっちが回避した瞬間に気弾で再度空中に上がり、追撃してくる。

それを腕を交差して受け止める。

 

「まだまだ!!」

 

落下途中に私の腕を掴むと逆上がりの要領で蹴りを打ってくる。

顎に当たると次はブランコの様に体を振って踵落としを頭に打ってきた。

 

「むむっ!!」

 

頭を下げて事なきを得る。

もう残り時間も少ないし、良い頃合ね。

 

「貴方に面白いものを見せてあげる」

 

そう言ってあの子を親指で指す。

その方向を見るから説明してあげる。

 

「あの子は私の旦那なの、であの子の凄い状態をあなたは見たかしら?」

 

その言葉に目を丸くする。

そして一拍置いて頷く。

まさか既婚者がこんな大事な場面に来るなんて思わなかったのね。

甘いわよ、お嬢ちゃん。

消える時は私たちは一緒。

それが誓いなのよ。

 

「あれはね……」

 

そう言って体の思うが儘に動かそうとする。

銀色のオーラとなり心が静かになっていく。

そして相手の眼を見て微笑む。

 

「私もできるの」

 

そう言って相手に向かう。

相手の攻撃が止まっているかのよう。

体が動き、手のひらで止める。

首を捻って衝撃を逃がす。

全てに対する最適解の動きが出せる。

 

「終りにするわ」

 

血気盛んな相手の攻撃を受け止めて、その勢いを利用して技に移行する。

相手の股の内側に自分の足を差し込む。

腕をチキンウイングの形にする。

技の掛け手が前後である以上この技をこう呼ぶ。

 

「『リバース・パロ・スペシャル』!!」

 

徐々にクラッチを強くしていく。

もがけばもがくほど深く極まる蟻地獄の技。

 

「負けたと言えば外してあげるわ」

 

そういって相手に敗北宣言を促す。

こっちも戦意を無くした相手をいたぶる趣味はないんだから。

 

「私は自分から敗北は言わない!!」

 

ギリギリと骨が軋む。

もはやここから抜け出す手はない。

 

「ならば壊れるしかないわね!!」

 

そう言って力を込める。

すると、ボキボキという音ともに意識を相手は失う。

両腕があらぬ方向に曲がっていた。

 

「忠誠心と言えど、強者相手に向かえる心の強さは素晴らしかった」

 

相手への称賛を忘れず、私は息を吐く。

そんな私の目の前に現れた三人目の戦士。

 

「勝負しようぜ、おばさん」

 

お姉さんは、少しだけイラついたわよ。

礼儀がないのかしら?

 

「どうしたんだよ、構えろよ、おばさん」

 

2回目ね。

少し青筋がピクピクしてきたわ。

あの子に見せられない顔になってしまいそう。

 

「来なさい」

 

構えた瞬間、迫ってくる相手。

その攻撃を苛立ちで心に波風があったせいか。

『身勝手の極意』が解けていたので紙一重で避ける。

 

「随分と動きが遅いんじゃねえのか、おばさん」

 

……決めたわ。

たとえその綺麗な顔が涙と鼻水でぐちゃぐちゃになったって。

どれだけ謝ったって……

 

「ぜーったいに許してあげないんだからぁ!!!!」

 

普段は見えないように体の中にとどめていた気を噴出させる。

それは『無の界』をあのジレンと言う人の様に包み込んで振るわせる。

体が少し軽いわね。

怒髪天を衝いてるから顔つきも変わってしまっているわね。

あの子が見たらどんな顔って言うのかしら。

 

「ふふふふふ……」

 

私は相手に向かってゆらりと怒気を含んだ足取りで近づいて行くのだった。




第2宇宙:10名脱落
リブリアン(ガタバル),カクンサ(ガタバル),ラパンラ(ガタバル)
ビカル(ピオーネ),ロージィ(ピオーネ),ジーミズ(ピオーネ)
ハーミラ(ベリー),ザーブト(悟空),ザーロイン(サラガドゥラ),プラン(ベジータ)

第3宇宙:10名脱落
コイツカイ(悟空),ニグリッシ(悟空)
ボラレータ(バーダック),ナリラーマ(ヒット),
ザ・プリーチョ(ガタバル),パンチア(悟飯),パパロニ(ピオーネ)
ビアラ(ベルガモ),カトスペラ(モギ),マジ・カーヨ(ジレン)

第4宇宙:10名脱落
ガノス(バーダック),マジョラ(バーダック),ショウサ(バーダック)
ダーコリ(亀仙人),キャウェイ(亀仙人),ニンク(サラガドゥラ),ダモン(サラガドゥラ)
モンナ(キャベ),ガミサラス(ピオーネ),シャンツァ(ベジータ)

第6宇宙:7名脱落
フロスト(ジレン),ドクターロタ(ジレン)
ボタモ(悟飯),マゲッタ(ピッコロ),ケール(ブロリー)
ベリー(ディスポ),キャベ(トッポ)

第7宇宙:6名脱落
亀仙人(ジレン),ピッコロ(ジレン),サラガドゥラ(ジレン)
悟飯(バーダック),ベジータ(バーダック)
ブロリー(カリフラ)

第9宇宙:9名脱落
ホップ(フリーザ),コンフリー(フリーザ)
ベルガモ(ジレン),ラベンダー(ジレン)
オレガノ(バーダック),チャッピル(ガタバル),ローゼル(サラガドゥラ)
ソレル(ピオーネ),バジル(ベジータ)



第10宇宙:10名脱落
ジラセン(ブロリー),リリベウ(ブロリー),ジルコル(ブロリー)
ザマス(ガタバル),ナパパ(ガタバル),オブニ(ガタバル)
ムリサーム(フリーザ),ジウム(フリーザ)
メチオープ(悟飯),ルベルト(ピオーネ)

第11宇宙:8名脱落
カーセラル(カリフラ),ゾイレー(カリフラ),ケットル(カリフラ)
タッパー(ケール),ブーオン(ケール),ココット(ケール)
クンシー(バーダック),ディスポ(ベリー)

現時点:70名脱落
残り10名
撃墜数
8人:ジレン,バーダック,ガタバル 7人:ピオーネ
4人:カリフラ,フリーザ,ブロリー,サラガドゥラ
3人:ケール,悟空,悟飯,ベジータ
2人:ベリー,亀仙人
1人:キャベ,ヒット,ピッコロ,ベルガモ,ディスポ,トッポ,モギ

指摘などありましたらお願いします。

ちなみに『リバース・パロ・スペシャル』はゆでたまご先生の作品
『キン肉マン』の『ウォーズマン』という超人が使う技
『パロ・スペシャル』がモデルです。


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『淑女の逆鱗』

ピオーネとカリフラの対決です。
今年も一年、皆様が見ていただいたことで100話を超えるまでの執筆が出来ました。
感謝の言葉として『ありがとうございます』と書かせていただきます。
来年はさらに精進して皆様に楽しんでいただける内容を執筆できるようにいたします。
来年もよろしくお願いします。


「死になさい」

 

怒りが最高潮に達した私は相手へ向かって動き出す。

いつものゆらりとした感じではない。

いきなりの最高速だ。

 

「ハアッ!!」

 

瞬く間に懐に入り込むと足を動かす。

目的地は首筋。

急所へ躊躇いなく風を切る音と共に放たれる。

 

「ぐっ!!」

 

相手は目で追えなかったみたいで、大げさに後ろへ飛ぶ。

確かに回避は出来ているけれど、反撃の機会を失うことになる。

まだまだ試合運びに関しては未熟ね。

 

「それに私から逃げられはしない」

 

瞬間移動で後ろに立つ。

そして首に向かって腕を伸ばす。

捉えた瞬間、まるで蛇のように巻きつかせる。

 

「ふんっ!!」

 

腕に力を込めて首を絞める。

さらに、持ち上げていく事で足を地面から離させる。

つり下がったような状態になって苦しくなっているだろう。

 

「ぐぐぐ……」

 

相手が腕に力を込めて剥がしにかかる。

しかし吊り下げられた不十分な態勢では力が出ない。

剥がすには不十分な力の込め具合だ。

このまま絞め落としてもいい、不慮の事故で死ぬことがあろうとも

 

「離しやがれ!!」

 

大きな声を出した瞬間、腕の力が強くなる。

さらに力の込め具合で僅かに首が太くなって拘束が緩む。

それを見てさらにこちらを掴む力を強める。

 

「がああっ!!」

 

叫び声をあげて力づくで引き剥がしてくる。

なるほど、これがこの子の超サイヤ人4の腕力という訳ね。

あの子よりは劣るし、形態もまだなって間もないみたい。

 

「私に勝てると思っているのかしら?」

 

超フルパワー超サイヤ人4のあの子と戦ってきたのよ。

そして『身勝手の極意』の状態のあの子とも。

貴方じゃあ絶対に勝てないわ。

 

「剥がした直後に留まっていたら隙だらけよ」

 

振り向く隙も与えない。

その背中に迫撃砲の様な蹴りを放つ。

相手を飛ばして自分の体勢を整える。

 

「ぐっ!!」

 

こちらを向くけど遅い。

相手の速度を考慮してバックステップ気味に振り向くべきだ。

その振り向く合間に、私はすでに懐に入っている。

 

「ちっ!」

 

気づいて防ぎにいくが、穴だらけ。

隙間を縫って当てればいい。

そしてそう言うのは得意なものだ。

 

「はっ!!」

 

掌底で顎に一撃。

頭を揺らしている間に心臓めがけて蹴りを放つ。

これでうまくいけば気絶となり、勝ちが転がり込んでくる。

無論、場所が場所なだけに不慮の事故も起こりかねない一撃だが。

 

「があっ!!」

 

揺れる頭の中、爆風の様に声を発する。

そこでブレーキをかけて、すぐにバックステップ。

足がもたつく中、蹴りを避けた。

しかしそのもたつきのタイムラグは非常に大きなもの。

 

「だから何?」

 

それよりも速く動けば何の意味もない。

頭の上に陣取って膝蹴りで地面へ叩きつける。

これで速く動いているつもりなのかしら?

私にしてみれば遅くて遅くて……

 

「欠伸が出ちゃいそう」

 

眠気すら感じているわ。

私のそんな仕草を見て、相手は怒りを露わにする。

元は貴方が悪口を言うから、その仕返しのつもりなんだけれどね。

それでも、相手にしてみれば戦闘民族として相手に戦意を持たれていない。

その事実は今までのプライドをずたずたにされているわけだ。

 

「悔しかったら速く来なさい、小娘」

 

さっきの悪口を返す。

酸いも甘いも噛み分けていないくせに。

そんな舐めた口をきいていい人間、聞いてはいけない人間を教わらなかったの?

もし教わっていないのなら、覚えておきなさい。

 

「やってやんぜ!!」

 

蹴りを放ってくる。

これはまた随分と大味な蹴りね。

積み重ねて当てる気がないから避けやすい。

 

「素人の動きよ」

 

蹴りを最小限の動きでかわす。

相手の隙をつくためには自分の動きにも気を付ける。

それが経験によって導き出されるもの。

ただ感覚だけでやっていては伸びてはいかない。

やはり経験値という下地がなければ。

隙だらけの頭部へトマホークチョップ。

 

「ぐっ!!」

 

相手が僅かにのけぞった瞬間にさらに追撃。

ビッグブーツで相手を蹴り飛ばす。

そして瞬間移動で無防備な背中に陣取る。

 

「曲線を描く!!」

 

そして腰を抱えて、バックドロップ。

流れるような連撃でダメージを与える。

相手はしたたかに体を打ちつける。

 

「なんでこんな差があるんだよ!!」

 

タフさだけはやはり超サイヤ人4なだけある。

すぐに立ち上がる。

転がって距離を取り体力の回復、ダメージを抜くことに専念すればいいのに。

そこもまだまだね。

こっちを睨みつけて、憤慨するように声を張り上げる。

 

「だって超サイヤ人4の相手なんてもう何百回以上もしているもの」

 

その状態より強い形態のあの子と何度も組み手をしてきた。

貴方より強い超サイヤ人4と長い間錬磨してきた。

その経験で超サイヤ人4に慣れている。

そして同じ強さの地点に至った。

『身勝手の極意』無しでもあの子と積み上げてきたこの強さは折り紙付きよ。

 

「それ以外にも差をつけている理由は有るわ」

 

そう言って相手に近づいていく。

相手は理解できていないのか。

はたまた、近づいてくる私をどう倒すか算段を立てているのか。

 

「その内容は『年齢の差と守りたい人と切磋琢磨しあえる存在』」

 

単純に挙げてもこの3つ。

年齢の差というのは言葉通り。

目の前にいる貴方より私の方が年齢は上。

それは生まれてきてから肉体や技術を鍛えたりする時間が多いという事。

その分、戦う機会も多いから経験の差は年齢の分、単純に広がっていく。

 

次に守りたい人。

これはあの子を含んだ、私の家族。

それ以外の人たちは失礼な話だけれど優先度は落ちる。

あの子達のためになら、悪魔にも鬼にでもなれる。

破壊神だって、大神官だって、全王だって敵に回してもかまわない。

 

そして切磋琢磨しあえる存在。

あの子が私に追い付こう、そして追い越そうとしてくれた。

その気持ちに応えるように私もあの子には負けたくなかった。

あの子にとって高い壁であり続けたい。

だから私は自分の限界を超えるためにどこまでも錬磨する。

 

あの子がいてくれたから愛を知り、競い合う事を知った。

私はでもあの子の前ではそんな事は言わない。

それはきっと言葉にしなくてもいいから。

 

「それだけで戦士は化けるのよ」

 

私は不敵な笑みで相手を見る。

それがないから貴方はまだその地点にいる。

恋をしろとは言わない。

ただ切磋琢磨をしあえるいい仲間を見つけてたら別の結果になっていたわ。

 

「若さが強みになるとしても実力が伴っている時だけよ」

 

体力の差や腕力に差は出るけれど、それを補う何かを持っているものよ。

動きのキレ、無駄の無さ。

経験による洞察力。

私のように超能力とかもその類ね。

 

「退屈させないでね、お嬢ちゃん」

 

指をちょいちょいとして挑発する。

それを見た瞬間、一気に気を膨れ上がらせる。

感情に左右される系統なのね。

 

「舐めてんじゃねえ!!」

 

足に力を入れたのがわかる、バレバレね。

一気に懐に飛び込んで攻撃を仕掛けようとしている。

力みから足が解き放たれた瞬間、地面がはじけ飛ぶ。

 

「おらあああ!!!」

 

叫んで飛び込みと同時にアッパーカットを放つ。

随分と熱が籠っているのね。

でも、その程度の怒りなんて……

 

「あの暴言を言われた私に比べたらかわいいものよ」

 

バックステップをする必要もない。

拳骨気味の一撃で飛び込みを迎撃する。

頬にめり込み首が跳ね上がる。

 

「ぐはっ……!!」

 

相手が倒れ込みそうになる。

しかし無意識の間に体勢を整えてあったのだろう。

踏みとどまって何とか耐えきった。

しかし、それでもダメージは大きいようで相手は膝をがくがくとさせながらこっちを見ている。

 

「私みたいに変身してるわけでもねえのに…」

 

変身は確かに強くなるわ。

しかし、それがなくても強い種族もいる。

それが私でもある。

あとは自分だけが怒りを出していると思っている。

確かに始まった時に比べて収まっているように見えるかもしれない。

でもその内面では……

 

「マグマの噴火の様にとめどなく溢れているわ」

 

それが私に力を与える。

人の体に眠る感情の爆発力。

それすらも理解していないのね。

 

「もっと……もっと力だあああ!!」

 

力を振り絞るけれど、これ以上は相手の動きに付き合う気もない。

こっちの逆鱗に触れた分の制裁もまだ終わっていない。

このまま決めさせてもらうわ。

 

「おらあああ!!」

 

相手の力を漲らせた拳が迫ってくる。

脇も閉まっていない、大雑把な形。

当てれば倒せるという風情。

技術も何もあったものではない。

 

「当たるわけがないじゃない」

 

その攻撃をかわして側面に回る。

伸ばしきった腕、閉まっていない脇。

こんな隙だらけな状態なんてあの子がやったら即決着の次元の失態。

 

「甘いのよ」

 

脇下に腕を差し込み、膝裏を蹴りあげてバランスを崩させる。

さらに側面からもう一つの腕を伸ばし頭を掴む。

そして崩した勢いのまま、地面に叩きつける。

 

「ぐおっ!!」

 

強靭な体だからか、それとも浅くなっていたのか、思ったよりもダメージは少ない。

むくりと起き上がってきて、そのまま跳躍。

飛び後ろ回し蹴りを放ってくる。

 

「んっ……?」

 

それを受けるが若干の違和感を感じる。

腕に感じる攻撃の重さ。

それがさっきより変わっているのでないかと思う、

 

「でも……」

 

だからと言ってこっちの攻撃の手は緩めない。

着地と同時に相手の蹴りが放たれる。

その内側を鋭く蹴ってバランスを崩させる。

 

「なっ……!?」

 

驚愕の顔でこちらを見る。

細い足からの想像を超えた一撃を感じているはず。

見た目通りの筋肉の量と思ったら大間違い。

マッチョな男性ほどではないが、それなりの足の太さはある。

 

「はっ!!」

 

腹部に拳を叩き込む。

これも鍛え上げられた腕から放たれる一撃。

その威力は普通の超サイヤ人4では耐えきれる代物ではない。

くの字に曲げさせて片膝をつけさせた。

 

「ぐううう!!」

 

起き上がって蹴りを放ってくる。

回避するが違和感の正体に気づく。

その風圧がさっきより強くなっているのを感じる。

殻を破ってきつつはあるのね。

 

「まあ、このまま決めるから意味はないんだけどね」

 

そう言って次の攻撃に備える。

こちらから行ってもいいけど、カウンター気味にした場合、相手の隙をつける。

回避行動を次にとりにくいなど、もろもろを考えたうえで相手の動きを待っている。

 

「だりゃああ!!」

 

顔面に拳を放ってくる。

脇が閉まってはいるがまだまだ無駄な動きがある。

こんな拳なんて何発打っても私は倒せないし当てられない。

 

「終わらせてあげる」

 

迫りくる拳を掴んで上空へ投げる。

上空へ舞い上がった相手は体勢を整えることもできない。

まな板の上の鯉と同じだ。

 

「ぐっ……嫌な感じがしやがる!!」

 

そう言いながら体を動かす。

私の視界の範囲からは逃げられない。

そしてその姿に対して照準を合わせる。

 

「『エレクトリック・パレード』!!」

 

気弾が相手を呑み込む。

手応えはあるが視線は外さない。

煙が晴れた時、睨み付ける眼光。

 

「まだ……やれるぜ!!」

 

気のバリアーで耐えたのね。

でもそれにも限界はある。

こうなったら仕方ないわね。

 

「貴方、幸せ者よ」

 

落ち着いてきた心。

あの子相手でしか出さない本気。

それをぶつけてあげるんだから。

 

「ほざけ!!」

 

ギリリと噛みしめて、悔しさを押し出すように突撃の体勢を取る。

手負いになって開き直ったのか。

不要な力みがまるでない。

 

「でも……無駄よ」

 

相手が踏み出して加速しようとした瞬間に止める。

これぞ技術の粋を集めた妙技。

相手の攻撃の先読みという洞察力や経験による算出。

それを極めたらこんな芸当ができる。

当然、動きを止めるための速度も兼ね備えた上の話だが。

 

「なっ!?」

 

動けない自分に驚愕する相手。

そんな相手に対して悠々とヘッドシザースを喰らわせる。

脚力を最大限に活かして高々と舞い上がらせる。

それを追いかけるように、上空へと跳躍する。

 

「そして……」

 

相手と背中合わせになって技の動きへ移行する。

相手の両足に自分の足を外側から差し込む。

両腕をこちらの両腕で制する。

鳥の羽のように肩を上げさせて痛めつける。

徐々に反らしていって猛烈な圧力をかけて落下。

 

「『ラヴァー・ハーベスト』!!」

 

その一撃は跳躍する脚力も。

拳を振るう膂力も。

そして闘志すら根こそぎ奪う悪夢のような技。

 

「この一撃は強靭なあの子でもノックアウトできる想定の威力よ」

 

組手と戦いは違う。

両者が死ぬ寸前までやりあわないようにしていた。

しかし、技は磨いていく。

その中でも最高傑作の技を初めて振るった。

 

「さて……意識もないようだし」

 

胸倉をつかんで放り投げる。

それは放物線を描き、ベンチへと戻っていった。

終わってみれば圧倒的に勝っている。

しかも相手のクリーンヒットは無し。

 

「本当に退屈だわ」

 

本気になればこんなもの。

もう時間もないから、次の戦いが最後になりそうね。

私は一息ついて、戦いが始まる方向へ視線を向けていた。





第2宇宙:10名脱落
リブリアン(ガタバル),カクンサ(ガタバル),ラパンラ(ガタバル)
ビカル(ピオーネ),ロージィ(ピオーネ),ジーミズ(ピオーネ)
ハーミラ(ベリー),ザーブト(悟空),ザーロイン(サラガドゥラ),プラン(ベジータ)

第3宇宙:10名脱落
コイツカイ(悟空),ニグリッシ(悟空)
ボラレータ(バーダック),ナリラーマ(ヒット),
ザ・プリーチョ(ガタバル),パンチア(悟飯),パパロニ(ピオーネ)
ビアラ(ベルガモ),カトスペラ(モギ),マジ・カーヨ(ジレン)

第4宇宙:10名脱落
ガノス(バーダック),マジョラ(バーダック),ショウサ(バーダック)
ダーコリ(亀仙人),キャウェイ(亀仙人),ニンク(サラガドゥラ),ダモン(サラガドゥラ)
モンナ(キャベ),ガミサラス(ピオーネ),シャンツァ(ベジータ)

第6宇宙:8名脱落
フロスト(ジレン),ドクターロタ(ジレン)
ボタモ(悟飯),カリフラ(ピオーネ),マゲッタ(ピッコロ),ケール(ブロリー)
ベリー(ディスポ),キャベ(トッポ)

第7宇宙:6名脱落
亀仙人(ジレン),ピッコロ(ジレン),サラガドゥラ(ジレン)
悟飯(バーダック),ベジータ(バーダック)
ブロリー(カリフラ)

第9宇宙:9名脱落
ホップ(フリーザ),コンフリー(フリーザ)
ベルガモ(ジレン),ラベンダー(ジレン)
オレガノ(バーダック),チャッピル(ガタバル),ローゼル(サラガドゥラ)
ソレル(ピオーネ),バジル(ベジータ)



第10宇宙:10名脱落
ジラセン(ブロリー),リリベウ(ブロリー),ジルコル(ブロリー)
ザマス(ガタバル),ナパパ(ガタバル),オブニ(ガタバル)
ムリサーム(フリーザ),ジウム(フリーザ)
メチオープ(悟飯),ルベルト(ピオーネ)

第11宇宙:8名脱落
カーセラル(カリフラ),ゾイレー(カリフラ),ケットル(カリフラ)
タッパー(ケール),ブーオン(ケール),ココット(ケール)
クンシー(バーダック),ディスポ(ベリー)

現時点:71名脱落
残り9名
撃墜数
8人:ジレン,バーダック,ガタバル,ピオーネ
4人:カリフラ,フリーザ,ブロリー,サラガドゥラ
3人:ケール,悟空,悟飯,ベジータ
2人:ベリー,亀仙人
1人:キャベ,ヒット,ピッコロ,ベルガモ,ディスポ,トッポ,モギ

指摘などありましたらお願いします。
新年早々の戦いは最後のふるい落としの予定です。


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『紫金相まみえる』

新年、あけましておめでとうございます。
今年も本作をよろしくお願い致します。
新年、最初の話は最後の篩落としです。
文字数が平均より少なくなってしまいました、申し訳ありません。


どうやら残りの人数が一桁。

こうなればもはや強者しか残っていない。

そして残り時間は10タック、つまり地球時間で言えば4分48秒を切ったころでしょう。

しかしここに残る戦士が全員、それだけの時間があれば誰かを落とすには十分すぎるだろう。

 

「そして、落とす候補ですが消去法としても困りものですね」

 

まず考えたのは第9宇宙。

しかし、距離を確認すると第9宇宙のモギとはそこそこ開いた状態にある。

倒そうと思い、追いかけっこなどしていては、最悪時間を稼がれて落とせずじまいになる。

そうなっては本末転倒だ。

 

そして考えていた第11宇宙も却下。

残り2人のうちの一人、トッポという戦士ならば勝てる確信は十分にある。

しかしその傍にいるジレンという戦士はどうだろうか?

自分と同格か凌駕している男を退けている。

そしてその戦いにおける疲労をものともしない強靭さ。

 

「戦う事は良いのですが、負けて流れが止まると孫悟空さんまで落とされますからね」

 

そうなってしまうと人数で3つの宇宙が並んでしまう。

出来れば人数さで確固たる差をつけておきたい。

消去法の結論としては、第6宇宙しかないだろう。

バーダックさんが悟飯さんとベジータさんを落として疲労が残っているはず。

ですから落とすならばバーダックさんがやりやすい、それにリベンジマッチになりますからね。

そう思った瞬間、鋭い殺気の視線が体中に突き刺さる。

 

「久々ですよ……その感覚!!」

 

こちらも殺気の視線を相手へ返す。

しかし相手は風が通り過ぎるように平然とする。

そしてその相手がこちらへ近づいてきた。

 

「ヒットさんですね」

 

第6宇宙最強の殺し屋。

今回のルールで本当のスタイルを隠している。

しかし実力は封じられていながら折り紙付き。

相手はコートに手を入れたままこちらを見ていた。

 

「お前をこの最後に落として終りにする」

 

こちらこそそのおつもりですよ。

今まで皆さんが忙しくて貴方を落とせなかった。

野放しにするのがいけないと分かっていながらね。

でもそれもこれで終わり。

ここで落としましょうか。

 

「言っておきますが私は簡単に落とせませんよ?」

 

ゴールデン状態で相手と戦う。

この相手を落として時間終了。

そして第7宇宙の勝利。

それがベストな形でしょう。

 

「それは百も承知、だが……」

 

非常に速い速度の拳の連打。

それらを軽やかに舞うように避けていく。

コートの中に手を入れるのは悟られないためですか。

 

「俺もそう簡単に落ちる気はないぞ」

 

そう言うとさらにギアを上げてくる。

こちらの回避速度から当てられるように考えていますね。

厄介なものです。

初めから全開で居てくれたならこちらもやりやすいというもの。

引き出しを小出しにされるというのは面倒だ。

 

「落とすといった以上、倒すための算段なんでしょうがね」

 

すると時間がいきなり進んだような錯覚。

胸に相手の拳がめり込む。

一瞬、心臓が止まりかけたが何とかとどめる。

 

「スー……ハー……」

 

深呼吸で鼓動を落ち着かせて見回す。

急所をためらいなく打ってきた。

凄まじい威力と技だ。

元々の能力が高いのが嫌でもわかる。

 

「今の一撃……空恐ろしい真似をやっていますね」

 

あの一撃の為に0.1秒ほどでしょうか?

時間を操作したのでしょう。

ただ罪を多く背負っている私が言うのもなんですが、あのような技は銀河法に触れるのでは?

 

「まあ、見て見ぬふりでいいでしょうけど」

 

銀河パトロールの気持ちは理解できます。

捕まえようにも無理でしょうからね。

かつての私だって、彼らにしてみれば捕まえようと思って捕まえられる相手ではないですし。

 

「『時飛ばし』といった所でしょうか?」

 

止めたわけではないですし。

まるで時間が進んでしまった。

それを飛ばしたと形容した結果、そう言った呼び方にしておきましょうか。

 

「当たりだ」

 

そしてもう一度攻撃が放たれる。

超能力で自分の聴覚を高めてみた。

どういった原理か確かめないとお話にならない。

 

「音が……」

 

動こうとする筋肉の音。

そしてその力み具合。

つまり『時飛ばし』と普段では動きが違う。

……とは言っても聴力が人並み以上で視覚も素晴らしくないと看破できませんね。

さらにそこへ対応力が必要になってきますし。

 

「まだまだいくぞ」

 

抑揚のない声。

冷徹な心を反映した冷たさを感じる。

仕事を成し遂げようとするプロフェッショナルの眼差し。

 

「しかし……」

 

こちらも急所狙いだと分かれば対処可能。

その部分を防御していく。

そして一瞬でも途切れたら相手の懐へ飛び込む。

 

「甘い」

 

そう言って振り払うようにアッパーを放ってくる。

連続して発動させることもできるんですね。

しかし甘い考えですよ。

 

「ハアッ!!」

 

気を開放してゴールデン状態でさらなる進化の前兆を見せつける。

顔にマスクが出てくる。

さながら兄のクウラのように。

 

「なっ!?」

 

マスクに拳を打ち付けるヒット。

防御をしたことで隙ができた腹部へ蹴りを叩き込む。

胸への一撃を返しましたよ。

 

「防御専用にしかまだ使えないのが難点ですがね」

 

ガタバルさんに勝てるであろう可能性。

もしかしたら破壊神を超える力かと思った状態。

しかし当然マスターはそうそう簡単に行くわけもなく、現状の有様だった。

 

「流石にやるな……」

 

そう言って腕が動く。

ガードをしようと動くが……

違和感を持ったまま、こめかみに一撃を叩き込まれる。

 

「貴方、時飛ばしの同じ筋肉の動きでフェイントをかけましたね……」

 

確かにそれならば違和感を感じて当然。

だがこれで一気に見抜けなくなった。

しかし、嘆いても仕方ない。

 

「帝王と言われた私にとってこのような逆境…」

 

ヒットからの攻撃。

急所でも飛び切り危険な心臓を庇いながら、それをあえて受ける。

腹部でも内容物がせりあがるので、まったくダメージがないわけではない。

しかし、最悪の事態は免れる。

 

「恐れる事もない!!」

 

肉を切らせて骨を断つ。

その言葉のまま腹部に一撃を叩き込む。

相手もくの字に曲がった瞬間、こめかみにハイキック。

ヒットも片膝をつく。

 

「まだまだ、やれますよねぇ」

 

そう言うと立ち上がるのではなく跳躍。

胴回し回転蹴りを放ってくる。

いきなりの大技。

そんなものを喰らう訳もない。

 

「甘いぞ……」

 

『時飛ばし』を使われる。

一瞬の間に接近をされている。

それを見てからのバックステップ。

だがさらなる驚愕の景色がそこにはあった。

 

「いつから……」

 

何故眼前にもう迫っている?

それが今、脳裏によぎる言葉。

防御型変身には間に合わない。

しかし……

 

「かあっ!!」

 

自分に向かって気弾を撃って吹き飛ぶ。

それで回避することはできた。

相手の攻撃を回避して感じたこと。

 

「俺の時飛ばしが0.1秒『程度』だと錯覚していた?」

 

やはり本当の時間はそれより多かったのですね。

おおよそ5倍ほどと仮定した場合……

隙だらけの私に攻撃を叩き込みたい放題。

こちらもこうなれば……

 

「残りの時間はもう5分もないほどでしょうか?」

 

この短い間だけであれば……

あの形態で戦ってもいいのではないか?

後で倒れようとも問題はない。

彼ならばきっとそうしたに違いありません。

それに……

 

「追いつきたいならば茨の道を通ってこそ!!」

 

体から金色の光を噴き出させる。

そして今の自分の限界を超えていく。

それは危険な賭け。

だがその価値はある。

 

「はあああっ!!」

 

ボディアーマーの様に新しく頑強な皮膚が生まれ、私を形作る。

そして発光が止んだ時、私の力は『無の界』へと充満していた。

体の軋む音に耳を貸してはいけない。

そう己に言い聞かせて相手を見据える。

 

「お待たせいたしました……」

 

そう言ってじりじりと近づく。

警戒心をそのままに。

しかし相手に与える威圧感は強く。

相手の動きを見て動く事にする。

 

「はっ!!」

 

『時飛ばし』の一撃。

それを感知することが出来る。

今まではできなかったが、この形態になって強くなったからできるのだろう。

 

「そこ!!」

 

受け止めて、カウンターを放つ。

しかし奇妙な感覚に再度とらわれる。

なんと攻撃が体をすり抜けたのだ。

それを見て一つの結論を導き出す。

 

「『時飛ばし』とは言いますがその飛んだ時間の軸……つまりパラレルワールドに居ますね?」

 

だからこそその空間を打ち破る。

もしくは彼の貯蔵した時間を使いきらせる。

そうする事で真っ向勝負に持ち込める。

 

「素晴らしい洞察力だ」

 

そう言って再度攻撃を仕掛けてくる。

もはや軌道を読むことをやめてヒットの周りを己の気で包むようにする。

そこで異変のある箇所まで超速度で移動。

その攻撃を受け止めてカウンターを放つ。

 

「くっ!?」

 

攻撃は当たる。

現れる瞬間、消える瞬間の察知。

さらに相手と自分の一帯を包むといった方法。

気の浪費が非常に大きなやり方。

力技というものだが仕方ない、勝ちの形式にこだわっている場合でもない。

 

「まだまだ終わりませんよ!!」

 

そう言って徐々にペースは自分のものになっていく。

変身が解けないのが救いだ。

攻撃を放ってくる。

 

「フッ!!」

 

尻尾で防いで肘打ちを放つ。

その一撃をバックステップでかわそうとするが尻尾で足を巻きとる。

それでも体勢を不用意に崩さない。

肩でこちらの攻撃を受けきる。

 

「ハアッ!!」

 

『0.5秒』の時飛ばし。

それを使われても察知ができる。

反撃は気の浪費上、厳しい。

 

「フッ!!」

 

さらに『0.5秒』の時飛ばし。

それでスライディングキックを放ってくる。

跳躍をして回避する。

 

「捉えたぞ!!」

 

三度目の『0.5秒』の時飛ばし。

跳躍した自分の上に現れて踵落としで地面に真っ逆さまに落とされる。

幸い変身のおかげでダメージそのものは無かった。

 

「カアッ!!」

 

またもや時飛ばしでこちらへの追撃を仕掛ける。

しかしこの時飛ばしはさっきまでのものとは違っていた。

私はすぐに構えて対処に当たる。

 

「いきなり心変わりですか?」

 

連続しようとしていた『0.5秒』の時飛ばしをやめた。

もしかして彼も負担があったのかもしれない。

しかしこれならば捉えられる。

 

「ハアッ!!」

 

攻撃を受け止めて後ろへ跳躍。

その一撃の勢いを活かして、そのまま蹴りを相手の側頭部に叩き込む。

強烈なカウンターの一撃で蹴り飛ばしてから、次の相手から攻撃に備えて構える。

深追いしすぎは禁物。

そう言う高次元な相手だ。

ここに至った相手が見せる隙や動きは罠と思って掛からねばならない。

 

「ふふふ…」

 

こちらに対して彼は不敵な笑みで微笑む。

そして立ち上がると同時に首を鳴らす。

深呼吸をした後、コートに手をかけてこう言ってきた。

 

「悪いが少し待ってくれ」

 

構いませんよ。

こちらも変身の時に待ってもらいましたからね。

しかしそのコート、脱ぐ必要があるんですか?

 

「このコートは伊達や酔狂で着ていたものではない」

 

こちらの心を見透かしたのだろう。

そう言いながら徐々にコートの下の素肌が晒されていく。

そして脱いでいくうちにこちらにも伝わってくるプレッシャー。

まるであのコートがそう言う系統のものであったというように。

 

「挙動へのカモフラージュもあったが本当の意味合いは……」

 

脱ぎきったコートを場外へと投げ捨てる。

それはひらりと舞っていき、ベンチへと戻っていく。

そして次の瞬間……

 

「きゃあっ!?」

 

ケールというサイヤ人が悲鳴を上げる。

なんと彼女の隣に落ちたコートはけたたましい音を立てて沈んでいったのだから。

強さを抑える重りの意味合いもありましたか……

 

「本来の速度や強さを抑えるためのものだ」

 

そう言って気を噴き出させる。

それは私の気と同じように『無の界』へ充満する。

拳を晒しても、問題なしという事。

今、本当の戦いが始まろうとしていた。




ゴルフリの進化系を書きました。
見た目はクウラのようなマスクがついて、薄い軽めの鎧を着こんだような肉体になっています。
実力は『身勝手』ガタバル並みに伸びるが現状は長期運用不可といった感じです。
そしてコートを脱いだヒットの強さの上昇。
実力は伸びていますが基本はバーダックと同格のままです。
常時本気のバーダックがいるので強さを隠せていたといった感じです。

今回は脱落者がないので記述していません。

矛盾した点や誤字脱字などがありましたら、指摘宜しくお願いします。


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『エイト・パーソン・スタンディング』

『力の大会』の篩い落としが完了です。
ヒットVSゴールデンフリーザ、どちらが勝つのか。
8人の残ったメンバー考えるのは正直悩みました。


音が消えた。

単純な速度が音速を越えたのか?

はたまたこちらの聴覚を壊したか?

……いずれにせよ答えはすぐに現れた。

 

「ぐっ……」

 

腹部とこめかみへの痛み。

鎧のこの状態を超えて痛みを感じさせる拳。

そして挙動を悟ることもできない速度。

全く持って素晴らしい。

 

「しかし、そうだからと言って何もしないと思われては困ります」

 

相手の速度を考慮したうえで、さらに『時飛ばし』に警戒してこちらも動く。

尻尾で足元をすくい上げていく。

当然向こうもそれを許すはずもない。

 

「ふんっ」

 

跳躍で回避。

しかしそれを狙っていた私は指先を向ける。

気を高めて黄金の光を指先に宿す。

 

「さて、気弾も使わせていただきましょう」

 

一筋の光が相手へと迫る。

その一撃は速く相手を捉えに行く。

それを気弾で向こうも回避をするが逃がしはしない。

相手の背中に回って組みつく。

 

「とうりゃ!!」

 

相手を上空に放り投げる。そして頭を掴んで大きな気功波を放つ。

相手を倒せる一撃は多くなった。

この形態になった以上はそれが確信めいている。

 

「『ゴールデン・ウォーターフォール』!!」

 

黄金色の気功波で相手を叩きつける。

抵抗を許さないように猛烈の気の奔流で押し流す。

相手の強さ的にこれほどの真似をしないとまずいのは本能で理解している。

 

「やってくれるな」

 

むくりと起き上がって動き始める。

風を置き去りにこちらの後ろにすぐさま張り付く。

それを察知して尻尾で薙ぎ払おうとする。

 

「無駄だ」

 

それよりも速くに尻尾を掴まれてジャイアントスイング。

岩盤に向かって放り投げられる。

それから跳ね返っての反撃は良くない。

自ら場外に飛び込む危険を背負う。

 

「それに……」

 

投げる速度を超えてヒットが後ろを取ってくる。

肘打ちで頭を揺らされた。

そして不可解な構えから攻撃を放つ。

 

「『カイロスの短針』」

 

腕を槍のようにして放つ突き。

それは肩に掠るとなんという事に腕が動かなくなったのだ。

時飛ばしによって積み重ねた時間。

それで動きを止めている。

 

「0.1秒動かなければがら空きの場所が生まれる」

 

そう言われて脇腹に蹴りを喰らう。

0.5秒止めないのは理由がある。

おおよそ重要な場面で使うためだ。

 

「これほどの相手…全力以外の選択肢は用意していませんよ!!」

 

相手の蹴りで飛んだ距離を瞬く間に詰めて拳を振るう。

それを『時飛ばし』で回避をする。

しかしそれでも回避先は予測ができる

瞬間移動のように死角にいく、もしくはカウンターを叩き込める場所。

 

「そこです!!」

 

裏拳に切り替えて何もない空間に一撃を放つ。

それを受け止められる。

しかしそう来ることもすでに読んでいた。

前蹴りをさらに追撃で放っていく。

 

「ぬぐ……」

 

相手も表情を変えてこちらの一撃を喰らっている。

パラレルワールドに入れなくても打ち破る術がある。

 

実力差が拮抗している以上ずっとできるものでもない。

相手がフェイントをかけてきたら外れるような程度。

だが、それでも十分な成果と言える。

 

「もうあなたの『時飛ばし』にも慣れてきましたよ」

 

そう言って蹴りを放つ。

しかしあくまで虚勢。

『0.5秒』はまだ慣れていない。

 

「お前のその状態を見てからその確信はあった」

 

そう言ってこちらに接近をする。

あまりにも余裕が見て取れる。

拮抗の有無ではなく、お互いがわかっている。

 

「お前ひとり始末するのには十分だ」

 

私もそれについては同感です。

つまり両者にとっては慌てるような場面ではない。

だから余裕な態度を保てるというわけですね。

 

「無論、こちらも同じ感覚ですよ」

 

そう言って相手の接近に対して攻撃を仕掛ける。

跳躍をして気弾を放つ。

大技でも何でもなりふりかまっている場合じゃない。

 

「『ゴールデン・デス・クラウン』!!」

 

それを『時飛ばし』で回避する。

どこまでも時間の貯蔵に費やすつもりのようだ。

遠距離戦は彼の思うつぼになりますね。

爆風に紛れる形で接近をする。

 

「ハアッ!!」

 

尻尾での一撃を狙う。

すると察知していたのか防御する。

しかしここで終わらせない。

体に巻き付けて、遠心力で上空へと投げる。

 

「もらった!!」

 

跳躍で追い越してそのまま一撃を叩き込みに行く。

すると体からすり抜ける。

『時飛ばし』での回避。

また読み切って一撃を喰らわせてあげますよ。

 

「そこ!!」

 

しかしその攻撃を受け止めるヒット。

それならばと蹴りを放つが、またもやすり抜ける。

捉えられないように連続して使っている。

 

「しかし!!」

 

それでも無駄ですよ。

そのような真似をしても私からは逃れられない。

気を網状に張り巡らせて結界にしている。

しかもそれは私の手に連結している。

 

「ですから……」

 

貴方がどこに動いても腕が震える。

そしてその結界を巻き上げてしまえば、貴方を射程に捉えられる。

そんな事を考えていたら腕が震える。

 

「そこですか!!」

 

振り向くが触れていたのは手のひらだけだったのだ。

空中で倒立の体勢を取るヒット。

そして手の力で勢いよく体を弾きだして攻撃を放つ。

 

「『クロノスの長針』!!」

 

足を揃えた非常に鋭いドロップキック。

空気抵抗も減らし尽くしたフォルムから放たれる一撃。

その一撃に対する回避は間に合わない。

 

「はあっ!!」

 

腕を交差して気を全開にして防御に回す。

しかし空間が真っ白いものへと一瞬変わる。

そして、次の瞬間には一撃が腹部に突き刺さっていた。

 

「ごふっ……」

 

地面に勢いよく叩きつけられる。

立ち上がるが、相手もそれに追い付いて追撃の一打を放ってくる。

それを受け止めて僅かに距離を取る。

 

「あれに耐えるとはな」

 

こちらに向かって言ってくる。

耐えれたのも場外の蹴り出しではなく、地面へ叩きつけられたから。

痛みが己を覚醒させて何とか耐えたように見えているだけ。

 

「お返ししないといけませんね」

 

やられてばかりは性に合わない。

自分も手痛い仕返しをしなくては。

構えて相手を見る。

 

「『ゴールデン・デス・イクスパンション』!!」

 

小さな気弾を放つ。

それを回避すると同時にこちらが追いつめる様に動く。

徐々に膨張する気弾にヒットを誘い込む。

 

「それそれそれ!!」

 

ラッシュをかけていく。

緻密な計算を積み重ねて放つもの。

回避をしてもそれを『0.1秒』の時飛ばしであれば完全にとらえている。

相手が強ければ強いほど眠っていたものが呼び覚まされる。

相手もそうなのでしょう。

 

「くっ!?」

 

跳躍をして気弾の膨張から逃れる。

しかし私がそれを掴んで投げる。

おいそれと簡単には逃がしませんよ。

 

「なにっ!?」

 

まさか一度使った気弾を投げるとは予想外だったのか。

無防備な状態で炸裂する。

ダメージを受けているのか、煙をあげる。

 

「ここを逃す手はありませんね!!」

 

相手の懐に入り込んで、指先だけのラッシュ。

空気の弾丸のように相手の体へ一撃を絶え間なく叩き込む。

そして尻尾でギリギリと締め上げる。

 

「絞め落とせないぞ……」

 

そう言うと親指を突き刺す。

鉄指功とは……

想像以上の芸達者ですね。

 

「固くても意味はない」

 

『時飛ばし』で尻尾の力を封じて抜け出す。

そして距離を取っていく。

互いに向き合うのも回数としては少なくない。

 

「いい加減終わらせるぞ……」

 

こちらを見て言ってくるヒット。

まあ、もう残り時間も少ない。

次の攻防の一連の流れが最後でしょう。

 

「こちらも相対するのみです」

 

じりじりと間合いを詰める。

そして、互いの攻撃が当たる危険地帯に入る。

その瞬間、先に動いたのはヒットだった。

 

「ふんっ!!」

 

放ってきた『0.1秒』の時飛ばしの攻撃を捌く。

『0.5秒』の方を使えば、十分な余裕を持って私に当てられるものを。

なぜそこまで頑なに使おうとしないのか。

 

「はっ!!」

 

再度攻撃を仕掛けてくる。

このままカウンターでこちらが勝利する。

もはや同じ速度の攻撃なんて目を瞑っても……

同じ速度……!?

 

「しまった!!」

 

今までの動きが全て罠だったなんて。

まさか想像だにしなかった。

これが戦いの年季で生まれる壮大な先までの構築か。

 

「お前のリズムは掴ませてもらった!!」

 

その通りなのだ。

同じ速度だから同じように防御、同じように攻撃。

それを刻み込まれたことで、危機感もなく同じ対応をしてしまった。

 

「喰らうがいい!!」

 

そう言って拳を突き出す。

『時飛ばし』抜きで無防備な状態を作り出していた。

その一撃を回避することはできない。

 

「くっ!!」

 

喰らう瞬間にバックステップで逃れようと試みる。

しかし完全に軽減することは叶わず打撃を胸に受けた。

手応えや耐えた感覚からはまだ全然問題なく動ける。

しかし踏み出して反撃に転じようとした次の瞬間、驚愕の事態が我が身に起こっていた。

 

「なっ!?」

 

先ほどとは違い、体が全て動かない。

そして手をかざしながらヒットが見ている。

どうやら最後の大技の為にこれを発動しましたか。

 

「流石のお前も『時の牢獄』からこの技を受けきる事はできない」

 

渦を巻いて唸りを上げる気弾。

私もこのまま受けるつもりは全くない。

指をじりじりと上げて気弾を作っていく。

 

「大きな気弾だな……」

 

『ゴールデン・デス・ボール』を作っていく。

そして相手を見据えて指を高々と上げていた。

もう時間も残り少ない。

この一撃に全てをかけましょう。

 

「この一撃で変わる……第6宇宙の運命…この俺の運命…同胞たちの運命…そしてお前の運命も!!」

 

その言葉に妙な聞き覚えがある。

ああ、バーダックさんが最後に攻撃を放つ時に言った言葉ですね。

それではこの技以上にふさわしいものはない。

 

「貴方のその心意気すらもこの『無の界』を彩る花火になるのです!!」

 

指をくいと下げてこちらも射出する。

それは徐々に近づいていく。

その接近を見て、振りかぶりその気弾を投げてくる。

 

「『アイオーンの慟哭』!!」

 

こちらの気弾とぶつかる。

『無の界』を揺らしていく。

打ち勝った方がこの戦いの勝者。

 

「ぐぐぐ……」

 

互いに全精力を注ぎこみ打ち勝とうとする。

しかしこの拮抗にも唐突に終りが来る。

『時飛ばし』を解除して奇策とも言うべきものを取る。

それは気弾にその力を宿させるというもの。

まさかそんな運用方法があったとは。

 

「ハアアッ!!」

 

気合を込めてヒットが力を振り絞る。

すると止まっていたこちらの気弾を突き抜けていく。

あの日と同じようにはいかない。

それこそが相手の強さを認める結果に他ならなかった。

 

「無念ですね…」

 

そう言って私は場外へと吹き飛ばされる。

私が落ちていくのと最後の段が音を立てて落ちていくのは同時だった。

ほんの僅かともいえるような時間。

濃密で凄まじい戦いができた。

敗北は悔しい事である。

しかし、それ以上の充足感が心を満たしていた。

 

.

.

 

「『力の大会』を終了いたします」

 

そういう大神官様。

全王様に視線を向ける。

そしてボタンを押した。

すると消滅していたと皆が思っていた第2宇宙、第3宇宙、第4宇宙、第10宇宙が現れる。

 

「この度は皆さんを騙す結果になりましたが、これは名目上『消滅』を掲げた挌闘試合」

 

その言葉に全ての破壊神と界王神が驚く。

なおも大神官様は言葉を続ける。

 

「そしてこれは『本戦出場』をかけたふるい落としでした」

 

本戦と聞いてさらに驚きの声が上がる。

まさかこの戦いまでが前座だったなど思いもよらなかったのだろう。

 

「この戦いは消滅をかけていないと知っているのはたった一人、出場選手に居ました」

 

その言葉に騒めく。

キテラ様はビルス様に疑いをかける。

するとビルス様が今度はベルモッド様の方に疑いをかける。

明らかに落としまくっている第7宇宙が怪しい。

そう言われた時には確かに間違いではない指摘だった。

 

「今言いますので、疑いあうのはおやめください」

 

そして俺を指さしてきた。

少し呼吸を整えて発表をする。

 

「第7宇宙のガタバルさんだけが今回の消滅の有無についてご存じでした」

 

何故言わなかったのかとビルス様から怒号が飛び出る。

キテラ様もここぞとばかりにビルス様を責め立てる。

こっちも言えないわけがあったんだけどな。

 

「言わなかったのは、言えなかったのですよ」

 

そう言うと聞こうという雰囲気になる。

そして俺にそのバトンが渡される。

俺は頭を下げて話をする。

 

「実は約束がありまして……」

 

口が堅くなければとんでもない事が起こるといったニュアンスで話をしていた。

だからこそ誰にも言えずに隠してきた。

しかし、それでも理解はされない。

少しばかり虚しさがよぎる。

 

「言ったらこの試合を待つことなく8宇宙消滅するように全王様に進言するつもりでしたので」

 

そう大神官様が言うと一気に空気が変わる。

むしろ口外しなくてよかったと。

消滅の危機は双肩にかかっていたという訳なのだ。

それに戦いを楽しませる事が出来なければ、その時点で消滅。

二重で消滅の危機を背負っていた。

 

「では、本戦のトーナメントについて説明いたします」

 

今回の勝者、8人全員は全王様の宮殿の特設リングで免除宇宙の8人を加えた16人での試合を行う事。

そしてその日時は明日。

優勝賞品については……

 

「破壊神と界王神、天使の地位の向上です」

 

全王様の業務補佐になるという事。

それを聞き、喜ぶ者も居れば頭を抱える者もいる。

ビルス様も頭を抱える一人だ。

 

「そして優秀選手には……」

 

超ドラゴンボールを見せてくる。

皆が興奮の眼差しで見ている。

さらに大神官様は言葉をつづける。

 

「さらに敢闘賞には……」

 

第7宇宙のナメック星のドラゴンボールを見せる。

確かに十分な商品だろう。

しかし皆は超ドラゴンボールに見入っている。

 

「皆さん、全王様に善き戦いと思われる激戦を期待しております」

 

そう言って大神官様は全王様の玉座に戻り、ひとまず『力の大会』予選は終了したのだった。




全力合戦の結果はヒットに軍配。
コートを脱いだ本気は『身勝手』に劣るが、『時飛ばし』という強力無比な一芸を持ってるためほぼ同格といった感じです。
バーダックも『身勝手』には劣りますが、『経験値』とか『洞察力』など目に見えない部分で補って、ほぼ同格にしています。
ジレンの最強は揺るぎませんが原作以上に肉薄する戦士達が揃った形になっています。
原作みたいな瞑想なんてできないでしょう。
次回からは1VS1のトーナメント方式です。

残った八人:
第6宇宙:バーダック,ヒット 第7宇宙:ガタバル,孫悟空,ピオーネ
第9宇宙:モギ 第11宇宙:ジレン,トッポ

脱落者は

第2宇宙:10名脱落
リブリアン,カクンサ,ラパンラ,ビカル,ロージィ,ジーミズ,ハーミラ,ザーブト,
ザーロイン,プラン

第3宇宙:10名脱落
コイツカイ,ニグリッシ,ボラレータ,ナリラーマ,ザ・プリーチョ,パンチア,パパロニ
ビアラ,カトスペラ,マジ・カーヨ

第4宇宙:10名脱落
ガノス,マジョラ,ショウサ,ダーコリ,キャウェイ,ニンク,ダモン,モンナ,
ガミサラス,シャンツァ

第6宇宙:8名脱落
フロスト,ドクターロタ,ボタモ,カリフラ,マゲッタ,ケール,ベリー,キャベ

第7宇宙:7名脱落
亀仙人,ピッコロ,サラガドゥラ,悟飯,ベジータ,ブロリー,フリーザ

第9宇宙:9名脱落
ホップ,コンフリー,ベルガモ,ラベンダー,オレガノ,チャッピル,ローゼル,ソレル,バジル

第10宇宙:10名脱落
ジラセン,リリベウ,ジルコル,ザマス,ナパパ,オブニ,ムリサーム,ジウム
メチオープ,ルベルト

第11宇宙:8名脱落
カーセラル,ゾイレー,ケットル,タッパー,ブーオン,ココット.クンシー,ディスポ

撃墜数
8人:ジレン,バーダック,ガタバル,ピオーネ
4人:カリフラ,フリーザ,ブロリー,サラガドゥラ
3人:ケール,悟空,悟飯,ベジータ
2人:ヒット,ベリー,亀仙人
1人:キャベ,ピッコロ,ベルガモ,ディスポ,トッポ,モギ

宇宙別:
第2宇宙:0 第3宇宙:0 第4宇宙:0 第6宇宙:20
第7宇宙:40 第9宇宙:2 第10宇宙:0 第11宇宙:10



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『勝者の休息,上位の備え』

次回からトーナメント方式の本戦の予定です
今回は各々の宇宙の最強戦士の予定です。
そして消滅宇宙の民については今回で明かしております。


大神官様の言葉で終了する大会。

皆に黙ってきた罪悪感を抱えていると第11宇宙が近づいてきた。

ジレンが俺の顔を覗き込む。

 

「お前が余裕を持って戦って、軽んじていたかなど、この身に刻まれた拳と蹴りと気弾が物語っている」

 

そう言って頭に手を置く。

それはまるで父が子供相手に優しく諭すように。

この男が持つ優しさが伝わってきていた。

 

「次は白黒つける形での闘争だ」

 

ジレンがそう言って背を向けて歩いていく。

皆が自分の宇宙に戻り療養する。

ヒットとバーダックさんも来た。

 

「お前は不器用な男だからな、言わずに我慢しているだけで苦痛だっただろう」

 

そう言って拳を突き出してくる。

それに合わせると口角をさりげなく上げる。

そして俺を射抜くような視線で宣言をしてきた。

 

「お前を討ち果たして優勝の仕事を完遂しよう」

 

そう言うと脱いでいたコートを翻してキューブへ戻っていく。

すると次はバーダックさんがため息をつきながら俺を見る。

 

「俺達のような奴も真剣にならないと思われたのは癪だがな」

 

そう言って拳を突き出してくる。

それを避けてカウンターの蹴りを放つ。

飛び回し蹴りでさらにカウンターをしてくる。

 

「本戦だったらこれ以上で叩き潰してやるよ」

 

そう言って獰猛な笑みのまま、第6宇宙の方へと戻っていった。

すると今度は第9宇宙のモギが声をかけてくる。

彼女は不満げな表情も何もない。

 

「口が堅くて良かったね、勝負前に消えてたらこんなに楽しくなかったし」

 

そう言って笑みを浮かべている。

そして指差して言ってきた。

 

「きっと君が全王様に交渉をしてこうなったんでしょ、消さなくて済むようにさ」

 

それについてはもうすべてが明かされたので頷く。

その仕草を見て満足げな笑みを浮かべていた。

そして胸を張ってこちらに言葉を発する。

 

「君のおかげで消えずに済んだんだし、ありがとうの言葉しかないね」

 

そう言うと第9宇宙のベンチへと戻っていく。

最後に振り向いて笑みを浮かべながら他の3人と同じく宣言をしてきた。

 

「本戦ではロックオンしてあげる」

 

恨まれてはいない。

しかし注目を浴びてしまった。

ジレンだけではなくまさか自分の宇宙の人間以外とは驚きである。

 

「ドンマイ」

 

そう言って背中を叩くのはピオーネ。

お前は怒っていないのか?

秘密をお前に対して作ったのに。

 

「気づいていたわ、何か隠していることぐらい」

 

やっぱりお前には隠せないか。

本当ならいう事でみんなが和気あいあいと戦えたらよかったんだが。

それをして消滅の可能性がある以上、軽々とはできない。

 

「僕にまで黙っていないといけなかったんだな」

 

ビルス様が言ってくる。

もし言ったら言いふらしてしまうでしょう。

あと、気づかれないように徹底的にしていたのだろう。

ウイスさん達の杖に映らないように大神官様が映像視認の部分をいじくっていたらしい。

 

「交渉自体は成功していたんですが……」

 

よくやってくれた。

それだけつぶやいて頭に手を置かれる。

フリーザやブロリー達も肩をすくめるなり責める事はしなかった。

しかし本戦に残った相手の強さを見ると、こちらを気遣うような視線を渡してきた。

 

「全宇宙で数えても五指に入るであろうメンバーが揃い踏みですね」

 

ジレン、ピオーネ、バーダックさん、ヒット、自分。

この面子がぶつかるのだ。

金だってとれるであろうカード。

恐ろしいものである。

 

「私が残ってしまっても全王様の機嫌を損ねる形になりますので」

 

そう言ってカカロットを見る。

あの時、別にピオーネが助ける必要もなかった。

しかし大人の事情というもの。

機微を読んでカカロットを残したのだ。

 

「あいつもまた目覚めてはいるが、正直どうでもいい」

 

あの態度がしこりとして残っている。

仲間だと思っていたがそうではなかった。

戦うためならば駒のような扱い、邪魔者扱い。

そんな真似をしようとしたあいつに協力する気もない。

別に本戦にまでは出たし、全王様には義理立てした形だ。

前提条件として、一人だけの戦いで援助なんてできないし。

そんな事を考えているとベジータが肩を叩く。

 

「俺様はお前のあの状態を観察して高みに上ってやる」

 

その為にも一戦でも多く見せる様にしろ。

そう言ってキューブへと向かう。

頑張れと一言言うのも少し恥ずかしいのだろう。

だからこそ少し曲げて言ってきた。

 

「応援していますから頑張ってください」

 

そう言ってブロリーもキューブへ入っていく。

ダメージがあるとは思ったが、もう普段と同じ動きをしている。

相変わらずの頑丈さだ。

 

「お前の交渉で全宇宙は救われたというわけだ」

 

ピッコロがほっとした顔つきで言ってくる。

目の前で消えられて困る宇宙もあったからな。

俺も無礼を承知でやってみて良かったと今なら思えるよ。

まあ、気が気じゃなかったけど。

 

「僕は応援に行けないかもしれませんが、がんばってください」

 

そう言ってキューブに乗り込む悟飯。

そう言えば今回もスケジュールがあったから来れただけで、本来は分からないもんな。

超ドラゴンボールが貰えるようにはしてみるか。

 

「今回の秘密…てm『全覧試合』から始まっていただろ」

 

サラガドゥラがそう言ってくるので頷く。

額に手を置いてガックシというような動きだ。

見抜けなかったのが悔しいのだろう。

 

「お前さんには面倒ばかりかけるのう」

 

亀仙人様が言ってくる。

放っておけばいいのにカカロットがやるからフォローしないと。

もしあれで行かなかったら本当に消滅をかけた地獄絵図でした。

 

「今度はオラの勝負を、邪魔しねえでくれよ」

 

腰に手を当てて、いかにも不満げな感じでカカロットが言ってくる。

まったく、こいつは……

お前はピオーネが庇わなければ落ちていたんだぞ。

それに次は横槍も何もお前ひとりで戦うしかない。

そして断言してやるよ。

 

「今のお前は下から数えた方が速い程度だってな」

 

最低でも超サイヤ人ブルーのレベルがごろごろと居る魔境の16名。

そんな中、まだ偶発的に発動した『身勝手の極意』だけでは勝てない。

運がよくないといきなり俺と当たっても悲惨なだけだ。

 

「まあ、帰るか」

 

明日の本戦までにできる事。

それは休息を取り、次の戦いに思いを馳せる事だ。

ジレンだけじゃあない。

免除宇宙がどの次元を連れてくるのか。

それだけが気がかりだった。

 

.

.

 

「帰るか……」

 

俺は立ち上がる。

猫が獅子に化けたように、ガタバルの成長に目を見張った。

破壊神を凌駕する実力者相手に一歩も引かぬ胆力。

そして互角に戦えるだけの実力の上昇。

それは一つの決意をさせるには十分だった。

 

「おい、マティーヌ」

 

俺が呼ぶと天使が近づく。

俺の顔を見てただ事ではないことを悟る。

無理もない、本来なら出す気がなかった戦士を出すつもりなのだから。

 

「『エルク』を呼べ」

 

古代種(エンシェント)』のカナッサ星人。

『消滅宇宙』の戦士の一人だ。

ケージン以上の実力を持つ我が宇宙最強の戦士。

 

「構わないのですね?」

 

マティーヌが確認をするので俺が頷く。

無論、構わない。

ケージンとは比べ物にならん強さ。

ナンバー2から五指に入る実力者、全てでようやく。

もしくはこの破壊神である俺が出ないと止められぬ。

 

「それでもあの男に勝てるのかがわからない」

 

第11宇宙のジレン。

奴は規格外にもほどがある。

まあ……

 

「回復を認めないトーナメントであれば機会などいくらでもあるさ」

 

そう言って俺達は去っていく。

最強のメンバーを引き連れて全王様の宮殿に赴こうじゃないか。

 

.

.

 

「困ったな……」

 

あれだけの激戦。

わが宇宙の戦力。

計算するとなかなかすんなりとはいかせてくれない。

 

「『イエラ』と『エキ・ロズクォ』の二人を呼べ」

 

『消滅宇宙』の中にあった『ブルームの民』

その存在がいた惑星は非常に美しかった。

第5宇宙でも再興をし、全宇宙最高の花畑と庭園を誇る。

 

「デンドは今回呼ばなくてよいのですか?」

 

私はその言葉に頷く。

奴も強いが『ブルームの民』の中では新鋭。

それ以上の力を有する女王陛下と護衛騎士団長。

出せるだけの実力は惜しまない。

 

「彼らに片手間で勝てるなどは夢幻と言っても差し支えはない」

 

だから全力で叩き潰すのみ。

おごる事もない。

決して油断もしない。

これ以上とない機会は逃したくなどないのだから。

 

「頼むぞ、イル、コルン」

 

私たちの昇格という計画の遂行のために一丸となる。

一枚岩となり成し遂げて見せよう。

その思いを胸に帰還していくのであった。

 

.

.

 

「あれほどの脅威、久々に冷や汗をかいた」

 

自分の宇宙の戦士であったなら……

そう考えたら悪い結果のみが頭に浮かぶ。

ジレンとガタバル。

あの激戦に胸躍るものを感じると同時に恐怖を抱いた。

人でしかないはずの彼らが神を越えようとする。

無限の可能性を秘めている。

 

「だが、引いていては何も始まらないか」

 

溜息をつく。

ガタバルが恐れ多くも全王様との交渉により実現した昇格の機会。

本来ならば礼を我々は言わねばならなかった。

しかし、疲労困憊だと感じたが故に踏みとどまった。

 

「『ダイヤ』の力が必要になる」

 

古代種(エンシェント)』のメタルマン。

元は精神的な強靭さより生まれた呼称。

そして皮膚の硬度が高い者たち。

それが惑星の移動によって外的環境に耐えるために皮膚と体中の器官が徐々に変わる。

何千、何万という途方もない時の中での進化の結果、体中が金属となり、肉体的な強靭さでの呼称に変貌した。

 

「彼ならば不可能を可能にしてくれるでしょう」

 

そう言う言葉に頷く。

我が宇宙最強の防御力。

そしてそれゆえの攻撃力。

いずれにしても手札を全て吐き出すのみ。

 

「勝ちのイメージも浮かぶし、規則次第でやりようはあるはずだ」

 

そうとなれば善は急げ。

自分の宇宙への帰還の用意をする。

彼らを呼んで、脅威を伝えて用心させる。

明日の夜明けが燦燦と輝くものであり、それが自分の未来を照らすと信じながら。

 

.

.

 

「せかせかと帰っていきますね」

 

その界王神の言葉にわしは頷く。

我々は一番の宇宙である。

それ故に王者の貫禄が必要になる。

 

「こちらも最大戦力を?」

 

その言葉に頷く。

無論そのつもりだ。

出し惜しみの理由など微塵も有らず。

 

「『ルタ』をメンバーに入れてほしい」

 

古代種(エンシェント)』のナメック星人。

その名を呟いた瞬間、界王神の表情が凍る。

実力ならばよく彼も知っているからだ。

 

「彼を出すという意味を理解されたうえで?」

 

分かっている。

彼を出すという事の恐ろしさを。

彼は第1宇宙の中でも一番強い。

それも途方もないほど。

あの『全覧試合』に彼を出していたら優勝確実だっただろう。

 

「彼もまた進化を遂げた我が宇宙の戦士なのだ」

 

転生とも言うべき進化を遂げた戦士。

その過程を有体に言えば……

祖先が自らの力を全て注ぎ『人型』の『魔族』を作った。

それは人における生殖可能な要素を増やし、積み重ねてきた魔族の戦闘力を捨て去った。

 

そして生命の営みを繰り返して子を成していく。

死期が迫れば若い者と同化をして二人のナメック星人となる。

そのサイクルによって生み出された。

 

使えるであろう魔術を研鑽するよりも戦闘力への研鑽に勤しみ力へと変えた、人の外見をした純粋なまでの戦士型ナメック星人。

それが彼なのだ。

 

「わしらが至高の宇宙であることを再度奴らに認識させてやろうではないか」

 

そう言って帰還をする。

願わくば尊敬と畏怖を我が宇宙に。

昇格などではなくわしらはわしらの力を見せつけてしまえばいい。

そうすれば結果は自然と付いてくる。

控えめにガッツポーズをして気合を入れるのであった。




消滅宇宙の行き先
第13宇宙:古代種(エンシェント)ナメック星人 ⇒ 第1宇宙
第14宇宙:古代種(エンシェント)カナッサ星人 ⇒ 第12宇宙
第15宇宙:ブルームの民 ⇒ 第8宇宙
第16宇宙:古代種(エンシェント)メタルマン ⇒ 第5宇宙
第17宇宙:ルティの民 ⇒ 第9宇宙
第18宇宙:バンヤの民 ⇒ 第7宇宙

由来:
ブルームの民:英語で一般名詞で花を意味する『ブルーム』
ホルティーの民:ラテン語で庭園を表す『ホルティー』
バンヤの民:『野蛮』のアナグラム

名前の由来:
『ルタ』:PC機器のルーター 『ケブルー』:PC機器のケーブルのアナグラム
『エルク』:魚類のクエ 『ケージン』:魚類の鮭児(けいじ)
『イエラ』:花の夜来香(イエランシャン)
『エキ・ロズクォ』:花のエキウム・ローズクォーツ
『アレキサ』:宝石のアレキサンドライト『ダイヤ』:宝石のダイヤモンド

古代種はこれから『エンシェント』とルビを振るようにしました。
2位の宇宙の最強と1位の宇宙の最強はかなり意図して強い戦士にしています。
トーナメント表を考えてはいますが散らすところに悩みますね。

指摘などありましたらお願いします。


第1宇宙のルタが魔術使えないみたいな書き方をしてましたが変更いたしました。
使えるけどうまくないといった感じのイメージでお願いします


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『本戦トーナメント』

今回から16人の本戦が始まります。
一試合で何話か書ければいいのですが、グダリもあっけなくもない塩梅で進めていきます。



翌日、みんなが体を回復させて気力を充実させた状態で全王様の宮殿へと向かう。

界王神ならば可能という事で関係者をみんな観客席に送り届ける。

そしてその後に参加選手だった俺達10人を送る。

 

「一番乗りかな?」

 

そう言うと気配を感じる。

もうすでに誰かがいる。

そう思って入っていくと、第1宇宙のイワン様がいた。

 

「強き戦士よ、一番は我々のものだ、そしてルタが勝者となる」

 

そう言って近づいてくる。

ケブルーの隣にいる2メートルを超える筋骨隆々とした男。

それを見た瞬間、ピッコロが俺の前に出る。

 

「あんた、ナメック星人だな」

 

その言葉を聞いて頭を下げる。

見た目こそ人間そのものだが……

同族だから分かる何かがあったのだろうか?

 

「消滅した宇宙にも同族がいたとは思わなかった」

 

ピッコロがそう言うといきなりピッコロの手を取る。

少し友好な感じにしては嫌な予感がする

そしてこともなげに……

 

「むっ……」

 

ピッコロの腕がちぎれた。

意図したわけではないが軽く揺らしただけである。

再生したのを見てさらに驚いていた。

 

「どうやったらそれができる?」

 

ピッコロはきょとんとしていた。

自分の腕を平然と引きちぎるほどの実力者が再生能力を使いこなせないという現実。

とは言っても悪意なく普通にやってちぎれているので嫌悪感もなかった。

しかしその実力の片鱗を見せられているような気がする。

 

「教えてあげた方がいいと思うか?」

 

俺に聞いてくる。

出来れば教えなくてもいいとは思う。

しかし、ここは教えておくべきだ。

相手がその気になれば口を割らせるための武力行使もあり得る。

下手な刺激ほど危なっかしい事はない。

 

「良いのかね?」

 

ピッコロとルタが去った後にイワン様が俺に言う。

良いも悪いもしなければ貴方がピッコロを破壊する可能性もあったので。

そう言うと少し怒気を孕んだ目で俺を見る。

 

「それほど器が小さいとでも?」

 

そう言う気は別にない。

しかしそれをできるだけの能力はある。

そしてこの度のお祭り騒ぎ、普段とは違う心が鎌首をもたげる可能性はある。

そう伝えると……

 

「確かに浮足立っているのは認めよう、それに事を荒立てる可能性は消しておきたいものだ」

 

こっちの言葉に納得をしたのか第1宇宙は用意された部屋に入っていく。

本戦出場選手には一人一人の部屋まである。

流石にこれには優越感を感じてしまう。

 

「とにかく大神官様たちに到着を伝えよう」

 

ビルス様が俺達を含めた3名を連れて全王様の部屋を訪れる。

全王様が見てくる。

そしてトテトテとこっちに近づいてくる。

 

「ありがとうなのね、楽しかったのね」

 

消さなくてよかった。

だからもっとワクワクさせてほしい、ドキドキさせてほしい。

そう言って全王様は玉座へ戻る。

 

「皆さん、もうすでに関係者の部屋に入られているようですね」

 

到着は2番目です。

そう言われて少しばかり安心をする。

皆さん、呼ばれるまでは自室で待機しておいてください。

その通達の後、俺達は部屋に分かれる。

 

「ルタという戦士……最強に恥じないだけのものが見えた」

 

あのピッコロとのやり取りの時にルタが持っている気に一瞬包み込まれた。

しかし一瞬でそれは消えた。

気のせいとは思えない。

 

「とにかくウォーミングアップでもして……」

 

そう言った瞬間、扉が開く。

そこにはベジータがいた。

わざわざ俺の所に来るなんて何かあったのか?

 

「お前のウォーミングアップにこの俺様が付き合ってやるという訳だ」

 

ピオーネやカカロットのウォーミングアップには誰が付き合うんだ?

俺一人がアドバンテージを持ってしまうと……

しかしそんな俺の気持ちを汲んだのかベジータが言ってくる

 

「カカロットに関しては悟飯が来れたから問題ない」

 

さらにピオーネにはサラガドゥラが付く。

実力的にはブロリーで十分なのだが、傷つける可能性を減らす為らしい。

それなら気兼ねなく俺も取り掛かれる。

 

「本気で来い!!」

 

ウォーミングアップとは言えど生ぬるい真似は許さない。

それを表すように超サイヤ人ブルーになって攻撃を仕掛けてくる。

こちらも超フルパワー超サイヤ人4で相対する。

 

「ハアアッ!!」

 

速度があるラッシュ。

キレまであって生半可な回避では皮膚を切り裂く。

顎に当たれば意識を刈り取るカミソリのような切れ味鋭いパンチ。

 

「フッ!!」

 

こちらも息を吐き出してその攻撃を回避する。

受け止めるとさらに押し込むために回転をあげるだろう。

回避をしつつも腕を捕まえに行く。

 

「甘い!!」

 

それを蛇のようにすり抜けさせる。

速度が有り、急ブレーキをかけるフェイント。

卓越した技のたまものだ。

 

「易々とはくらわん!!」

 

すり抜けてきた一撃を叩き落していく。

そして懐まで詰める。

ベジータがバックステップついでにジャブを放つ。

 

「ちっ!!」

 

ジャブを喰らってしまう。

しかし次の攻撃を喰らわないように構える。

そして集中していく。

 

「『我が身に委ねる』」

 

本気で来いといったなら。

これこそが全力の証。

さて、第2ラウンドだ。

 

「そうだ、その状態を見せろ」

 

そう言うベジータに接近。

攻撃を最小限の動きで回避をしながら懐へ入り込む。

隙の無い動きでこちらを牽制してはいるが……

 

「はっ!!」

 

尻尾で足元を絡めとる。

気づいたベジータが跳躍。

それを狙ってのアッパー。

 

「ばっ!!」

 

爆風のような息で落下を止めて蹴りを放つ。

それを掴んで放り投げる。

いつもなら喰らいかねない動きもこの状態ならば回避できる。

 

「くそっ!!」

 

ベジータが悪態をつきながら着地をする。

その隙を逃すまいと再度懐に体を押し込む。

額を胸にこすりつける様に固い頭でぐりぐりと。

 

「くっ!!」

 

こうなると俺の頭部がつっかえとなりベジータの動きが限られる。

腕力で引き剥がしにかかる。

それこそが罠。

俺はすぐに頭部を離し、腕を動かしたことによってがら空きの心臓へ一撃を放つ。

 

「がっ……」

 

ハートブレイクショット。

一瞬、時が止まったように回避不可能の状態となる。

ハートブレイクショットの一撃はベジータの隙を狙った己の本能が導いた最適解である。

そして返しの刀はどうあがいても回避不可能な一撃。

 

「終りだ!!」

 

硬直が解けるがもはや無理だ。

しかしその予想を覆してくるのがベジータ。

肘を拳の軌道に合わせていく。

固い肘に当たれば拳は玉砕。

したたかにこちらの自爆を狙っていた。

だがそんな一撃を掴む一つの影が現れた。

 

「貴様……ジレン!!」

 

ベジータが激昂する。

いつの間に部屋に入っていたのか、ジレンが前に立っていた。

俺は『身勝手の極意』を解く。

 

「ジレン、お前も到着したのか」

 

すると後ろからトッポ達も出てきた。

ベルモッド様がニヤリと笑っている。

まるで貸し一つだというように。

 

「お前との戦いのせいで昨日は眠れなかった」

 

そう言うと力があふれ出す。

触れては火傷では済まされない灼熱のような闘気。

息が詰まる威圧感さえも昨日のまま。

臨戦態勢なのだ。

 

「この熱い炎を全てお前にぶつける、それだけだ」

 

そう言うと去っていく。

それを追ってカーセラル達も向う。

トッポとディスポがいるがトッポもこちらに拳を突き出してきた。

良い戦いをいようという意思表示なのだろう。

 

「ジレンから狙われるとはな、全宇宙で最も不幸な野郎だぜ」

 

頬をかきながらディスポが言う。

それは普通の戦士の発想だ。

俺たちサイヤ人からすれば強者に認められたという事。

それが嬉しいのだ。

それに言うのもなんだが……

 

「残り8人となっていたあの時点で誰も一筋縄でいくはずがないと思っているし、覚悟があるのさ」

 

ましてや回復アイテム無しでのトーナメントマッチならばどうなる?

全員が満身創痍のままの戦いにしかならない。

その時点でこの戦いにおける相手の選り好みなど大したものではない。

 

「カッコつけやがって、どうなっても知らねえぜ」

 

そう言って去っていく。

するとその姿を見ていたのか笑っている人がいた。

それはバーダックさんだった。

 

「ベリーに負けちまう程度の奴が何言ってんだ」

 

そう言ってこっちを見る。

こっちの体勢を見て口角をあげる。

獰猛な笑みの形へと変わっていく。

 

「やる気があって嬉しいぜ」

 

どいつもこいつもぶっ倒すだけだ。

そう言って指をゴキゴキと鳴らして去っていく。

相変わらずのその姿に苦笑いを浮かべていた。

 

「気持ちはわかるが抑えるのも度量だがな……」

 

ヒットがコートなしの状態で居た。

既に臨戦態勢である。

その後ろにはケールやキャベがいた。

こっちに頭を下げて挨拶をする。

 

「随分と集まってきたようね」

 

第9宇宙のモギも紛れてそこに居た。

綺麗なケープを纏っている。

まさに女王といった衣装で今回は戦うようだ。

 

「貴方をこの歯と爪で仕留めてあげる」

 

笑顔と手のひら。

その二つにはあからさまに武器と言えるものが見え隠れする。

俺にとって練磨し続けた拳や脚の様に。

あれもまた彼女の在り方なのだ。

 

そしてしばらくすると大神官様からお呼びがかかる。

どうやら全宇宙が集合したようだ。

くじの抽選を始めるという事。

俺が行くと15名がその場にはいた。

それを見ているのは破壊神や観客。

 

ジレンとトッポ、ピオーネとカカロット。

バーダックさんとヒット、そしてモギ。

勝者宇宙の8名。

そして免除宇宙の8名。

第1宇宙のルタとケブルー。

第5宇宙のアレキサと輝かしい光沢を放つもう一人の戦士。

第8宇宙は両方とも知らない女性、気品のある姿からまさかとは思うが王族ではないだろうな。

第12宇宙はケージンと、痩身の男性。

 

「それではくじを引いていきます」

 

誰と誰が当たるかわかると面白みに欠けるので私にしかわからないようにしております。

そう言って用意をした。

まずは誰が引くのか。

 

「落とした数が少ない方の五十音順と免除宇宙の選手と交互に引いていきます」

 

つまり最初はモギか。

モギが引いて大神官様に見せる。

それだけで終わる。

まさに誰が相手かわからない。

しかしだからこそ楽しいものもある。

次々に皆が引いていく。

 

「ガタバルさん、どうぞ」

 

8人落としたメンバーを並べてしまうと……

自分、バーダックさん、ピオーネ、ヒットの順になる。

間違ってはいないが中ごろに引くという事。

本来見えていれば対戦カードが決まっているというような順番だ。

 

「んっ……」

 

手を突っ込んで引っ張りだす。

番号こそ見えてはいない。

だが今掴んだものに違和感を感じている。

 

「一体何が……」

 

観客席のどこかからキキキという笑い声が聞こえたような気がした。

そして皆が引き終える。

一度控室に戻って舞台を再度整えて審判を用意する。

どうやらラムーシ様が務めるようだ。

脱落した宇宙の中では一番適任な気がする。

 

「それでは対戦カード:第1試合の発表を行います」

 

対戦カードの発表。

皆が緊張の最中。

その隠されていた部分が明らかとなる。

そして現れたカードは……

 

「第7宇宙代表:孫悟空選手!!」

 

いきなりカカロットの戦いか。

対戦相手は誰なのだろうか?

生き残った奴らの中でもトッポかモギでないと一回戦に終わってしまうだろう。

 

「悟空頑張れよー!!」

 

クリリンたちが応援をしてカカロットが武舞台へ上がる。

そして首をコキコキと鳴らして、体をほぐす。

 

「そして向かう相手は第6宇宙代表:バーダック選手!!」

 

その瞬間、第6宇宙の人たちの熱気あふれる応援。

そして第7宇宙にいるバーダックチームたちからも声援が上がる。

ギネさんとラディッツさんは非常に困った表情で二人を見ていた。

 

開幕戦はまさかの親子対決となった。

それは同時にカカロットの敗北を意味する。

片ややる気満々のカカロット。

どこか冷めた目のバーダックさん。

あまりにも対照的な二人。

『力の大会 本戦トーナメント』が始まろうとしていた。




とにかくお灸を据えるのはこの人以上に適任なしだと思いました。
まさかのジレン、興奮して眠れなかった勢。
そしてベジータからウォーミングアップ相手の申し出という。

指摘などありましたらお願いします。


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『躾の時間』

今回はバーダックVS悟空です。
一戦を2話ほどで終わらせれればいいなという感じで分けています。
文字数が少ないと思いますがよろしくお願いします。


まさか一回戦から自分のガキが相手になるとはな。

まあ、そんな対戦相手が誰かなんてどうでもいい。

戦闘民族であるサイヤ人が相手を選ぶなんざ馬鹿馬鹿しいぜ。

それに、きっと俺を注目選手として意識している奴らは上のステージに行くだろう。

だから俺がこんなところでつまずく事は許されない。

 

「ハアッ!!」

 

そうと決まればやる事は一つだけ。

全力で相手を完膚なきまでにねじ伏せる、叩き潰す。

たとえそれが肉親であれ例外じゃない。

それこそが俺の戦いでありやり方だ。

最初から全開の状態で相手をする。

様子見して負けましたなんざ敗北という恥にさらに上塗りするだけでしかない。

超フルパワー超サイヤ人4となって、相手を威圧するように睨みつける。

 

「始め!!」

 

普通の状態のままのカカロットに向かって直進する。

様子見をできるような立場じゃねえだろうに、何を勘違いしてやがるんだ。

俺は当然のように仕掛ける際も最大速度で接近する。

フェイントなんてなく相手に考える隙を与えない。

戦う心に決して一分の隙も無いし、相手に対して容赦だって微塵もしない。

 

「くっ!!」

 

直進した一瞬の間の時間。

変身だってできるはずの時間の余裕はあったはずだ。

しかしそれをカカロットはしなかった。

相手の変身に対して全く動こうともしなかった。

危機感や対応力がまるでねえ。

様子見できるだけの差が自分にあると勘違いでもしているのか、馬鹿馬鹿しい野郎だな。

 

「うおっ!?」

 

素っ頓狂な声を出してから、防御の構えを取るが遅い。

もうこっちはすでにお前の懐に入りきっている。

俺は手のひらを拳の形へ変えていく、筋肉がはちきれんばかりに盛り上がっていた。

 

「オラァ!!」

 

そのままアッパーで攻撃をする。

風を切り裂いて防御態勢を崩すような一撃だ。

とは言っても、もはや防御が間に合わないから崩すも何もあったものではないが。

 

「ゲホッ!!」

 

カカロットを腹部から押し上げるようにして浮かせる。

さっきのガードは間に合ったようではあるが、それをぶち抜いて腹にまでめり込んでいる。

腕が折れたり肋骨がやられていないだけ運がいいみたいだな。

 

「もう一丁!!」

 

相手が落ちてきた所に照準を合わせる。

そしてタイミングを見計らって足に力を込めていく。

徐々に足を上げて相手の落下位置と一致するまで待っていく。

 

「……今だ!!」

 

丁度自分の蹴りの高さと一致した瞬間、前蹴りを繰り出す。

蹴りが直撃した箇所からおよそ人を蹴った音ではない音が鳴り響く。

そのままカカロットは場外へ吹っ飛んでいき、壁へとめり込んでいった。

 

「ぐあっ!!」

 

めり込んでいた壁から抜け落ちていく。

今回は場外に落ちた場合の即時的な負けはない。

場外20カウントで敗北と優しくなっている。

 

「うおおっ!!」

 

超サイヤ人ブルーになって向かってくる。

なかなかの気の量だ。

確かに本戦に出るだけのものは有るだろう。

 

「でもな……」

 

しかしそれでも俺には届かない。

俺は手と足を目に止まらぬ速度で繰り出す。

それを見たカカロットは……

 

「なっ……」

 

俺に向かう途中で地面に這いつくばる。

その種明かしは簡単だ。

向かってくる以上の速度で攻撃を多数叩き込んだ。

顎、腹部、背中、両肩、両足。

7発の急所攻撃は奴の突撃を殺すには十分だった。

 

「どうした、この程度かよ」

 

こっちのフルパワーに遠く及ばねえ。

そんな奴があの時に、仲間に偉そうにふんぞり返ったのか?

お前は何様のつもりなんだよ。

そう思って顔面を踏みつける。

 

「おい、反撃してみろよ」

 

サッカーボールキックで顔面を蹴り飛ばす。

鼻が折れたか。

髪の毛を掴んで立たせて腹部を殴る。

 

「大した実力もねえくせに舐めた口ほざいてんじゃねえ」

 

ぐったりしているカカロットを抱え上げてボディスラムで叩きつける。

反応はしていやがるが闘志が折れているのか、立ち上がろうとしない。

舌打ちをして気を手のひらに集めて攻撃を放つ。

 

「うあああっ!!」

 

意識を取り戻したのか気弾の一撃を絶叫したまま受ける。、

もう一度場外へ追いやられていく。

溜息が出るほどの差。

我が子だと認めていたのに。

強者との戦いを求めて心と目を濁らせやがって。

 

「持ち味を全部殺してやがるぜ」

 

そうは言うが次の状態を見るための発破でもある。

強い奴と戦いたかった。

その欲求が満たされれば多少は今の歪みも消えるだろう。

躾をして元の自分を取り戻させないとな。

 

「ぐうぅ……『20倍界王拳』のブルーだぁ!!」

 

起き上がってカウントアウト前に武舞台に戻ってくるカカロット。

体中なら赤い気と青い気を同時に出していやがる。

さて……それがお前の本当の本気なのか、もしくは火事場の馬鹿力なのか。

まあ、そんな事を考えていても意味なんてこれっぽちもない。

お前の全力を叩き潰して歪みをきっちり今までのお前の型に嵌めて矯正してやる。

 

「らあああっ!!」

 

ラッシュをしてくるカカロット。

単調な手足の攻撃。

リズムが一定な部分もあって悠々と避ける事が出来る。

力で押したりもしていたが、劣勢に立つと脆さがあるな。

 

「甘い!!」

 

尻尾で絡めとって体勢を崩させたところへ肘打ち。

それで吹っ飛んだ瞬間背中に回り込んで腰を掴んでバックドロップ。

あおむけに倒れ込んだところへ『キングコング・ニードロップ』。

三連撃で一気にカカロットへダメージを与える。

 

「生半可な攻撃だったら何倍返しにもされるぜ」

 

そう言った俺に立ち上がり、飛び後ろ回し蹴り。

隙が大きなそんな技を使うなんてつくづく……

 

「自分のペースで戦いなんざ出来ねえぞ」

 

掌底で金的を叩き込む。

落下して悶絶をするが当たり前だ。

あんな隙だらけの攻撃をしたら的にしかならねえよ。

 

「寝ころんでんじゃねえ」

 

腹部へ強烈な蹴りでまたもや場外へ。

何度立ち上がってもボコボコにする。

上には上がいて自分のいる地点をはっきりさせてやる。

 

「親父面すんのもしんどいぜ……」

 

わざわざ、歪んだ自分のガキを殴って矯正なんざあほらしい。

ただ放置したらどっちにしても面倒だからやっているだけ。

それに個人的にもイラつくからな。

強くもないのに粋がっている馬鹿って言うのはよ。

 

「来いよ、まだ終わらないだろ」

 

手をクイクイとして招いてやる。

それを見てカカロットがまたもや『20倍界王拳』とやらの超サイヤ人ブルーとなって動く。

さっきとは違い慎重になっている。

しかし、そんな付け焼刃をしても……

 

「こっちが動いたらどうするんだ?」

 

一気に懐に忍び込んで頭部を掴む。

そして勢いのまま叩きつけてやる。

そして持ち上げて上空へ投げ飛ばしてやる。

 

「『リベリオン・ファング』!!」

 

気弾の攻撃も使って徹底的に倒しにかかる。

もう、十分こっちの動きはしてやった。

あいつが今、全力でも手も足も出ないのは本能で分かっているだろう。

 

「うあああああっ!!」

 

地面から落ちてバウンドする。

それを追撃するようにそのバウンドした体を捕まえて『パイルドライバー』の一撃。

頭蓋よ砕けろと言わんばかりの強烈な衝撃だ。

 

「全然かなわねえ……」

 

そう言うと息を切らしながら立ち上がる。

闘争心そのものは萎えていないようだな。

三度、『20倍界王拳』の超サイヤ人ブルーになって攻撃をしてくる。

 

「でもワクワクが止まらねえぞ!!」

 

徐々に体の動きにキレが出てきた。

だがそれでも俺には届かねえぞ。

両腕を掴んで腹部に膝蹴りを叩き込む。

 

「がっ……」

 

吐きそうになっているがこっちの攻撃は止まらない。

背中に祈りの形をした手を振り下ろす。

鉄槌のような感じがして手応えがいいんだよな。

カカロットの背中にめり込む。

 

「このっ!!」

 

手をついて水面蹴りを放ってくる。

それをバックステップをして避ける。

しかし次の瞬間、後ろに気配を感じた。

 

「ハアッ!!」

 

その拳を受けとめて裏拳をカウンターで放つ。

それを頭を下げて回避。

その腕を取って一本背負いで投げようとする。

 

「ふんっ!!」

 

投げようとしたカカロットの背中を踏み台にして軽やかに抜ける。

そしてそのままがら空きになった顎を狙う。

一気に足を振りかぶってギリリと歯を噛みしめる。

 

「どりゃあああ!!」

 

場外にカカロットの体がくっきりとめり込む。

そして俺は近づいてとどめを刺すために近づく。

当然殺さない程度にはしておく。

 

「ぐぐ……」

 

抜け出そうとしているカカロットを引っ張り出す。

そのまま上空へ投げていく。

それを跳躍で追い越して顔面を掴む。

そして武舞台にめがけて叩きつけるように技を射出する。

 

「『リベリオントリガー』!!」

 

その一撃でカカロットは呑み込まれ一直線に武舞台へ。

バウンドすることもなく、滝のような気功波が止んだ時大きく陥没した武舞台が残っていた。

相手の反応は無い、それどころか死んでいるのではないかと疑うほど。

殺してしまった可能性を考えて反則負けなのか、それとも正常な勝利による事故なのか。

俺はその状態に対しても

 

「まだ、足りないぜ……」

 

肩を回して武舞台に降りていく。

そして相手には不用意に近づかず見の体勢になる。

どんな場面でも足元をすくわれないように相手への警戒心は常に最大にしておく。

ただし、これじゃあ不完全燃焼もいい所だ。

次の試合まで、この戦闘の衝動が収まればいいが……

 

そんな事を考えていると、気配を感じる。

陥没した部分からぐぐぐと力を込めて立ち上がってくる。

ブルーにはなっておらず、こちらを見ている。

 

「……」

 

ガタバルと同じ銀色の気を立ち昇らせている。

雰囲気や目の色も変わった。

あまりにも静かな清流のような風体。

 

「それが『身勝手の極意』って奴か」

 

気の質を観察して俺は軽く頷く。

神に非常に近い形で感知するのが少し難しい。

確かに、人の身でありながらこの領域に到達する事ができたのなら大したもんだな。

この状態でのカカロットの強さを感じたことで、少し沈んでいたというか残念な気持ちで一杯になっていた心が上向く。

少し物足りなさを感じていた俺の戦闘意欲を高めさせる。

本当に良かったぜ、一方的過ぎて退屈していたからよ。

 

「来いよ、それも潰して躾の終わりにしてやる」

 

ゆらりと陽炎のように近づいてくるカカロット。

それを迎撃しようと腰を落として待ち構える。

どうやら、本当の意味での本気のようだ。

決着の第3ラウンドが始まろうとしていた。




バーダックの強さを際立たせられていたら幸いです。
強さ的には確実に今の悟空を超えているバーダック。
慢心とか遊びの無いサイヤ人の恐怖。
書いてて思ったのですが『身勝手の極意』を使っているのに、悟空の勝てそう感が0な感じになってしまいました。

指摘などありましたらお願いします。


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『第一試合決着』

今回で第1試合が終わりました。
対戦カードを偏らせないように、もしくはトーナメント表が意味を無くす展開で
勝者同士の組み合わせを毎試合抽選式にしようと思います。


無言で迫ってくるカカロット。

威圧感はない。

しかし包み込んでくる感じ。

不用意な攻撃はカウンターの餌食になる。

 

「つまり、用心深く今までの攻撃を放てばいいだけだ」

 

俺は接近をする。

体を押し付けるようにまともに動かさせない。

それを見抜くでもなく、カカロットが動く。

 

「何だと!?」

 

上体反らしで胸に押し付けられることを防ぐ。

さらに手を地面につけて体を振り子状に振る。

その勢いのまま、膝を腹部に放ってくる。

 

「ちっ!!」

 

気弾を撃ってその勢いで攻撃を避ける。

すると目の前からカカロットが消えていく。

そして、次の瞬間に気配を感じたのは後ろ。

 

「ヤードラットの瞬間移動かよ」

 

手刀の一撃を避けて馬蹴りを放つ。

それを掴んでジャイアントスイングをされる。

体が勝手に反応していやがるのか。

 

「でも、それは完全じゃない」

 

まだガタバルの方が洗練された印象だ。

鍛錬の末に自分の意識で切り替えられる状態がやはり良い。

あいつの場合もまだ伸びしろがあるみたいだがな。

 

「絶対に穴はある」

 

俺は左右から残像を残すように攻撃を仕掛ける。

すると片手ずつで受け止める。

じゃあ前後は?

 

「……」

 

手を前後に出して対応する。

なるほど、なるほど。

ならば次は……

 

「上下だ!!」

 

アッパーと踵落とし。

それも難なくと受け止める。

だがこちらも手は考えた。

 

「360度の網を作ればいいって事だ」

 

そう言って超高速のラッシュを繰り出す。

残像が複数個現れていく。

カカロットの受け止める範囲。

其れでの対応の限界を見つける。

 

「……」

 

攻撃を弾いていく。

回避する術がないからだ。

反らしていきたいがそれも最適解にはならない。

何故ならぶつかり合って跳弾の様に処理が面倒なことになるからだ。

 

「だが……」

 

蹴りをさらに回転数を上げて繰り出す。

水面蹴りや地面を這う一撃への対応はおろそかになっていないか?

 

「……」

 

それも無駄だというように跳躍をして気弾を放ち、包囲網から逃れる。

しかし俺にはその動きの中で今のカカロットの弱点を見抜いた。

 

「見つけたぜ!!」

 

最適な行動はあるが事前の動作を向こうが隠せているわけではない。

綻びが一瞬でも見えたならば問題ない。

未熟なもので俺を倒せると思うなよ。

 

「ハアッ!!」

 

瞬く間に接近をして再度ラッシュを仕掛ける。

そしてその攻撃をカカロットが受け止めていくうちに、腕でしか捌いていないことに気が付いた。

それならば360度を囲んで隙を作らせる、弱所を見抜く。

そう考えて今まで動いてきたことで見つけた以上に致命的な欠陥がある。

 

「ハアッ!!」

 

こちらの拳を手のひらで弾いてくる。

これが隙を作らせる最大の機会。

腕でしか捌かないのであれば腕を掴めばいい。

足で今度ラッシュの捌きをやろうとすればバランスを崩してしまう。

 

「お前にまだまだ負けるつもりはねえんでな」

 

腕を掴んで膝蹴りを叩き込む。

受け止めたり、捌いたりすることはできる。

カウンターを叩き込めてない時点で、こっちの雨霰の攻撃に手をこまねいた事実。

神を超えるには『心技体』が必要。

まだまだ未熟なんだよ、『技』も『心』も。

 

「変化なんてモンは真新しいし、最初は度肝抜けるだろうよ」

 

でも勝利につながるわけではない。

それをつなげたければやはり……

 

「お前が歪まずにたゆまぬ努力を続けておくべきなんだ」

 

俺はじりじりと近づいてくるカカロットを見る。

きっと学習しているからさっきの掴んでの蹴りはもう通用しないだろう。

まあ、あんな当て方が何度も通用してたら『極意』を冠する次元ではない。

 

「攻撃がまともにお前も当てられないんじゃあ勝負は根競べにしかならねえ」

 

カウンターをするのが一番あの状態における答え。

相手の攻撃の軌道や技の動き。

その全てに最適解を出す。

 

「しかし相手が攻撃速度より動くのが速ければその限りじゃねえ」

 

距離を取られれば跳躍などで追いかけないといけない。

それがカウンター狙いのやり方に綻びを作る。

そして大きな隙になることは十分にある。

その部分はカカロットならば瞬間移動を使ってカバーはできる。

しかし、果たしてあの不安定な状態で何回も上手くいくか?

 

「速く自分から動かないと勝利なんてもんは掴めないぜ」

 

後ろに回ったカカロットの攻撃を裏拳で迎撃をする。

それを受け止めて投げようとするが甘い。

指先を動かして胸倉を掴む。

そしてそのまま腕の力だけで投げに行く。

 

「……!!」

 

危機感を感じたのか、距離を取る。

それを追いかけて蹴りを放つ。

腕を交差して受け止めるカカロット。

 

「『身勝手の極意』にも不完全って条件は付くが弱点が見えてくるもんだ」

 

カウンターは自分の速度に依存する。

だから相手が自分より速く動くと折角の技能も不発。

受け止める分や回避する分には問題ない。

そして慣れていないと普段の動きと同じように手を使う事を重視する。

足も使えば対応力だって増すというのに。

未熟ゆえに足での対応はまだできないのだろう、もしくは全方位の対応に綻びが出来てしまうからできない。

その為、折角の力も腕を封じられると意味をなさなくなる。

 

「急ごしらえじゃあ俺に勝つには届かねえ」

 

お前と違い、呆れるほどに戦ってきた。

そんな俺の経験則がお前の弱みを見つける。

お前の実力も何もかもを見ていけばおのずとその答えは出る。

 

「どうするんだ、もう手の内はひとつしかねえだろう」

 

解除をすれば一方的にやられる。

防御を破って攻撃を当てられていく。

攻撃をしていくしかないのだ。

それこそ今のカウンター主体の動作を捨てること。

 

「始めの時みたいに動いて攻撃をして来い、ジレンとの勝負でもできたことができないとは言わせねえぞ」

 

そう言って構えて相手を見る。

言葉を理解したのか、こっちに向かってくる。

そして拳を振るってくる。

 

「まあ、それをやった所で……」

 

かわして延髄切りを叩き込む。

地面に叩きつけられるカカロット。

頭を掴んで振り回して上空へ投げる。

 

「俺に与えられる敗北からは逃れられないけどな」

 

その落下に合わせて攻撃を放つ腹積もりだ。

あのジレンとの戦いの時と同じだけの時間が経ったわけではない。

しかしダメージを何度か負わせておいた。

 

「解けるのはもう時間の問題だ」

 

手のひらに気を集めて槍型に成型する。

ジャベリンよりもはるかに猛々しい見た目。

三又の矛になって敵に深々と刺さるように。

 

「『ライオット・トライデント』!!」

 

その一撃を瞬間移動で避けるが、それで終わるほどの甘い攻撃ではない。

手を叩いて分散させる。

気弾が降り注いでカカロットに襲い掛かる。

掴むか弾くのがベストだったな。

 

「……!!」

 

転がって後ろにバク転をする。

降り注ぐ攻撃から回避できても、こっちが既に懐に入っている。

どこにも逃げ場なんてないんだよ。

 

「はっ!!」

 

体が思うままに回避行動や受けの姿勢になる。

フェイントにもかなりの幅で対応はできる。

だが打開策はもう見せてきた。

 

「お前の元の速度より速ければいうほど脅威になりえない」

 

動く本人よりも速い相手ならヒットアンドアウェイをされると当てられない。

もしくは全方位を囲む乱打。

これは防御力が凄まじかったり、バリアを張れれば無駄な試みだけどな。

さて……仕上げに入るとするか。

 

「『ヒート・ファランクス』!!」

 

手に火を纏ってラッシュを仕掛ける。

どれかを選んでカウンターを放つのが良い。

全弾カウンターでも問題はないだろうが、そう簡単に許しはしない。

 

「はっ!!」

 

カカロットが拳を突き出す。

しかしそれすらもねじ伏せる。

カウンターにはさらなるカウンター。

顎を揺らすようにアッパーを放つ。

 

「ふんっ!!」

 

手のひらで受け止める。

しかしそれをした場合、俺のもう一つの技が火を噴く。

これを回避する術はもはやない。

 

「『リベリオン・トリガー』!!」

 

後ろに下がれず、瞬間移動もできない。

受け止めるのではなく後ろに下がっても無駄。

上空まで跳躍するしかなかった。

 

「これで手前もお終いだ!!」

 

気功波の奔流がカカロットを呑み込む。

武舞台から出て場外の壁まで強く叩きつける。

手応えは十分だ。

それにそろそろ……

 

「があああ!!」

 

壁から出てきてこっちに気を噴出させて迫ってくるカカロット。

拳に全力を込めた一撃。

それによる逆転狙いのようだが……

 

「やめろ、その一撃は俺に当たらねえ」

 

そう言うが聞かないカカロット。

回避することもなく俺は突っ立っていた。

俺の勘が告げているからだ、当たるわけがないと。

 

「がっ……」

 

カカロットの突撃が勢いを無くしていく。

ダメージの蓄積や気の消費。

それらが原因となった。

 

「時間切れってもんだ」

 

気の質が変わり脱力をするカカロット。

抵抗する力もなくなったのだから、これ以上は意味がない。

頭を掴んで振り回してそのまま第7宇宙の観客席にまで投げ飛ばした。

 

「場外カウントする必要もねえ」

 

ピクリとも動かないカカロット。

死んではいない。

だがすべての力を使い果たしたため、動けない。

歪みも直ったし、十分すぎるほどの成果だ。

 

「それまで!!、勝者……バーダック選手!!」

 

大神官が勝ち名乗りを上げて俺は武舞台から降りていった。

初陣で第6宇宙の強さを見せる事は出来た。

見ていろよ、お前らの前に立って驚かせてやる。

 

.

.

 

「あの男への評価を改めるべきだな……」

 

いつの間にか隣で観戦していたジレンがポツリと漏らす。

確かに先ほどの戦いでのあいつとは違っていたからな。

戦いたいという欲求やあの戦いの場の熱に浮かされていたと言っても差し支えない。

 

「しかしそれでも俺には勝てん」

 

そう断じるジレンの言葉。

それには己に対する自信。

そして確実にそう思えるだけのものを我々に見せつけてきた。

 

「あの男と戦うにはいつ呼ばれるかで変わる」

 

バーダックさんを見ながら言ってくる。

次に呼ばれたら2回戦。

その次に呼ばれたら3回戦。

それ以降になると終盤だ。

 

「俺はお前と戦うまで負ける気はない」

 

そう言って去っていく。

背中に炎を思わせるオーラを纏わせながら。

 

.

.

 

「うーん、あれ?」

 

オラが起きたところはベッドだった。

チチと悟飯がほっとした顔をしていた。

ビルス様が見ている。

 

「負けたな、悟空」

 

腕組みをして残念そうな顔をしていた。

勝ってほしかったんだろう。

悪いことしちまったな。

 

「負けた理由とかは考えて今は体を休めておけ」

 

次の試合も始まるから、連れて行ってもらって観戦でもするんだな。

そう言って去っていった。

 

「サイヤ人として欲求を満たそうと考えすぎた結果、本来のお前の動き方は出きていなかった」

 

相手の技量からの逆算による全力の解放。

それをしないのはいつもの悪癖。

その後はブルーになるはずのお前が様子見をしつこくやろうとしていた。

まるで勝てる相手なんだと思いこんでいるかのように。

 

「頭を冷やしてさらに精神面を錬磨するんだな」

 

ベジータもそう言うと去っていく。

次の試合は誰と誰なんだ?

 

.

.

 

「第2試合のカードは……」

 

そう言ってトーナメント表の一箇所が光る。

残っている選手は……

第1宇宙のルタとケブルー

第5宇宙のダイヤとアレキサ

第6宇宙のヒット

第7宇宙の俺とピオーネ

第8宇宙のイエラとエキ・ロズクォ

第9宇宙のモギ

第11宇宙のジレンとトッポ

第12宇宙のエルクとケージン

 

「第5宇宙代表:アレキサ選手と第8宇宙代表:イエラ選手」

 

対の宇宙同士の対決か。

どれほどの実力なのだろうか。

これで残ったメンバーは……

 

第1宇宙のルタとケブルー

第5宇宙のダイヤ

第6宇宙のヒット

第7宇宙の俺とピオーネ

第8宇宙のエキ・ロズクォ

第9宇宙のモギ

第11宇宙のジレンとトッポ

第12宇宙のエルクとケージン

 

「それでは第2試合の用意を始めましょうか」

 

そう言ってほほ笑む大神官様。

まもなく、戦いの宴の第二戦が始まろうとしていた。




第1試合が思ったより長引かせられなかったですね。
次の試合もたぶん、主人公側や予選で戦った宇宙じゃないのでするっと終わらせていく事になりそうです。
残らせる相手も考えています。


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『女王の言葉』

第5宇宙と第8宇宙の戦いです。
2話ほど行こうと思いましたが1話にまとめました。
次回は原作の破壊神トッポを出す予定です。
そう言えば、今週のジレンが饒舌でしたね。


ふわりと軽い足取りで武舞台に上がるイエラ。

その姿は第9宇宙の女王で野性味あふれるモギとは違った女王の姿。

相手はその所作に小さなため息をついていた。

見とれているような系統の溜息だった。

 

「貴方、速く来なさい……」

 

見とれている視線をものともせず言葉を発するイエラ。

すると相手は言う事を聞いているかのように歩み寄る。

まるで催眠術にかかっているように目は宙をさまよっている。

 

「催眠術ではない……」

 

全員が効いているわけでもない。

おおよそ心を無防備に晒してしまったが故。

俺達は無防備に晒してはいない。

しかしそれでも途轍もない体の緩みがあった。

 

「あの秘密は何かを知らない限り相手は勝てない」

 

そう言っている間に戦いが始まる。

メタルマン特有の体の丈夫さをそのままに。

速度と精神の強靭さ。

それに対するは華奢な女性戦士。

戦いは図らずもカウンター型と攻撃型の様相を見せ始めていた。

 

.

.

 

「フッ!!」

 

拳を突き出すが軽やかなステップで避けられる。

そしてそのステップで付いた勢いのまま回転蹴り。

攻防一体の動作でこちらにペースを握らせない。

 

「ヌン!!」

 

蹴りを防いで懐に潜り込む。

しかし低く沈み込んでいたのか。

胸が付くほど、地を這うように体を伏せていた。

そして腕力で跳ね上がってくる。

 

「グオッ!!」

 

顎に頭突きをモロに喰らう。

たたらを踏んで後退するこちらに追撃の飛び蹴りが来る。

防ぐ術はなく、そのまま顔面にめり込んでいく。

 

「グフゥ!!」

 

こちらの攻撃を回避してからの反撃が異様に速い。

一撃を当てようとすればその先の攻防で二撃喰らう。

しかも回避されたうえでの話。

差し引きしても相手に得がある。

 

「今の攻撃を受けてもまだ戦えますか?」

 

そう言って俺を見下ろすイエラという女。

一体誰に向かって言っている。

俺は挫けぬ男だ。

お前がその細腕で、俺の顔を何度打ち据えても俺は立ち上がる。

 

「当然やれるさ」

 

そう言って構える。

しかし次の瞬間、イエラがあの言葉を紡ぐ。

その言葉を聞くまいと耳を塞ぐ事もできない。

何故ならば無防備な所を曝け出すからだ。

 

「『来なさい』」

 

その言葉を聞くと足を進めて間合いを詰めようとする。

心で念じて抗うが、その間に相手の間合いに既に入り込んでいる。

厳密に言うと両者接近のため詰めて、詰められているということなのだが。

 

「くっ!!」

 

ガードを固めていく。

想像以上の勢いがある攻撃。

カウンターに頼らずとも強い。

そして次の神託にも似た言葉が耳を打った。

 

「『解きなさい』」

 

ガードが下がっていく。

力が入らない。

意志を強く持って舌を噛む。

しかしそれでも力が入らない。

摩訶不思議な状態が続いていた。

 

.

.

 

「最初に聞こえた時の感覚……あれが『安らぎ』ならば種が割れた」

 

言葉にそう言った力が宿っている事がある。

それを第7宇宙では言霊と呼ぶ。

だが、もう一つ安らぎを与えるのであれば、ある一つの言葉がある。

 

「『Fぶんの1ゆらぎ』ね……」

 

ピオーネがそう言ってきたので俺は頷く。

ヒーリング・ミュージックの効能としての総称。

蛍の光や小川のせせらぎの音に現れるもの。

人の声にもその力がある場合が存在する。

それを途轍もなく強力にしたもの。

 

聞くだけで安らぎを与えて力が入らなくなる。

そしてそのリラックス状態から従いたくなる女王としてのカリスマ性を持った言葉がかけられる。

その結果、イエラの言う事を聞くようにふらふらと動いてしまう。

さながら誘蛾灯に群がろうとする蛾のように。

蜜が溢れる花に吸い付く蜂のように。

 

「百戦錬磨であろう相手の精神でさえ抵抗が難しいとは……」

 

実力差が関係するのかもしれない。

そうだとしたらあまり差がない事も原因の一つ。

ジレンや俺ならばまだ抵抗可能なのかもしれない。

 

「これじゃあイエラの勝ちは決まったも同然……」

 

場外の20カウントは抵抗なりして難しいだろう。

しかしそれならば無理にこだわらず気絶させればいい。

その為に相手を無抵抗で殴って蹴り続ければ問題はない。

 

「こんなどうしようもない能力の持ち主だったとは……」

 

声の質によるとてつもない力。

そんなものを持ち合わせているが故の女王。

カリスマと安らぎ。

民にとってはこれ以上ない象徴。

 

「申し訳ないがアレキサはここで落ちる」

 

勝てるような要素が見えない。

精神的な抵抗に割けば体の対応が遅れる。

防御に引き続き専念してもあの言葉にやられる。

 

「八方塞がり……」

 

そう言って俺は次の試合のカードを思い浮かべていた。

願わくば早く自分の出番が来ることを。

強者の気に当てられて心が高ぶってくる。

 

「この程度か……」

 

去っていく間に落胆したジレンの言葉が聞こえる。

そこには僅かに苛立ちさえ感じさせる。

自分の出番はなく、本気を出せるほどの相手が出てこないという不安。

 

「次の試合も見る価値があればいいけどな」

 

俺よりも速く戻っていった。

俺もまた、ストレッチをするために控室へと戻る。

去っていく途中で歓声もあったが聞く耳持たず入っていった。

 

.

.

 

「くぅ!!」

 

ガードを下げさせられる。

強制力が凄まじい。

どうしてもこの言葉には無力な己を見せられる。

 

「こうなれば……」

 

ガードが下がるのならば皮膚を硬化させる。

そうすれば問題なくこの攻撃を凌げる。

息を吸い込み、硬度を引き上げる。

 

「その手は無駄な真似です」

 

その囁きとともに俺の首に足を巻きつかせる。

そして絞めあげてきた。

頸動脈を的確に絞められていく。

 

「硬度を上げて絞めつけられても大丈夫なようですが……」

 

声を遮る手段はもうありませんよ。

そう言ってこっちに攻撃を仕掛けてきた。

首を絞めた状態から投げられる。

 

「む……」

 

ぎしりと音を立てて絞めつけが強くなる。

そして言葉が紡がれる。

外そうと両手を使えば無防備に受ける。

耳をふさいで防いでいく。

 

「まさか貴方……」

 

自分にばかり使うと思って?

そう言うと首の宝石の肌が砕けそうになる。

先ほどまでとは違うその力強さ。

 

「安らぎによるリラックスで一時的に緩めた後にインパクトによる圧力強化」

 

緩んで戻った所にさらに力を上乗せされたのか。

耳を塞いだことで対応が僅かに遅れてしまう。

千載一遇の機会が逃れてしまった。

その逸した機会は俺にとっての打開の扉に対するノック。

そして二回目のノックはない。

 

「このまま私の足の中で眠りなさい」

 

そう言って徐々に砕けそうだった宝石の肌が普段に戻っていく。

こうなればもはや賭けるしかあるまい。

どうとでもするがいい。

最後に笑うのはこの俺だ。

 

.

.

 

「さて……聞き分けが良いのは助かります」

 

徐々に素肌へと戻っていく。

そして力を抜いている。

このまま絞め落としてしまえば勝ち。

 

「声だけが全てじゃないのよ」

 

少なくても初めの時にはカウンターを使っていた。

ラッシュも放っていたのは実力。

あくまで必中の一撃に仕立て上げる魔法。

それが私の声『芳香の囀り(パフューム・サラウンド)

 

「貴方が絞め落とされてから、最後の仕上げをしてあげましょう」

 

勝者の言葉を受けるまでは油断は致しません。。

絞め落とされた後でも追撃は止める気はさらさらないという事です。

今、現在も全く力を緩める気はありません。

蛇のように絡みつかせてそのまま外しませんから。

 

「……」

 

数十秒も経った時。

相手の反応は無くなっていて技を解く。

後ろを向いて大神官様に呼び掛けようとした次の瞬間……

 

「ウェエアアッ!!」

 

アレキサが攻撃を仕掛けてきた。

どうやら気絶した後に、本能のままに戦ってこっちの声を封じようと考えたわけですわね。

しかし、それには大きな誤算があります。

それは……

 

「『傅きなさい』」

 

突っ込んできていたアレキサが前のめりとなりこけそうな形となる。

しかし態勢を整えて私の前に座る。

片膝を立てて、まるで騎士がお姫様の手を取るように。

 

「この状態の方が遥かに声が聞かせられるわよ」

 

理性があって抗えたのに。

それを失ってしまったからこそ、全ての言葉が無条件で効いてしまう。

それこそ『自分から死を選べ』といった悍ましい言葉でも。

 

「こんな状態で戦っても面白くはありません、まるで人形遊びですので」

 

そのままその頭に向かって踏みつけるように武舞台へ叩きつける。

鼻骨や他の骨が砕ける音が聞こえる。

きっとその拍子に血も流れたかしら?

 

「獣を従わせるなんて……」

 

児戯にも等しい事。

きっと本能だけならば聞いていないから効かないと思ったのでしょう。

浅はかな判断だというほかない。

もっと抵抗してくれた方がこちらとしても、貴方を見る事が出来たのに。

 

「……」

 

完全に動きが止まったアレキサ。

それを見た大神官様が私を勝者として勝ち名乗りをあげる。

その瞬間、向こうから射抜くような視線が来ていた。

睨み殺すようなほどの強烈なもの。

 

「貴方との戦いはこちらも楽しみですわ」

 

指で銃の形を作り、引き金を引く。

その仕草を見ていたのでしょう。

バーダック選手が笑みを浮かべていた。

 

.

.

 

「それでは第3試合のカードの発表をいたします」

 

そう言って大神官様が表を見せる。

そして灯ってまず一人目の選手の名前が浮かび上がる。

その名前は……

 

「まずは一人目は第11宇宙代表:トッポさん」

 

トッポが呼ばれる。

あいつも並々ならぬ決意で臨むつもりだな。

俺も今呼ばれないだろうか。

速く戦いたいんだけどな。

 

「そして二人目は……」

 

灯り始める。

そしてその浮かび上がる名前。

それは一瞬でこちらにトッポの不運を伝えるには十分だった。

 

「第1宇宙代表:ルタさん」

 

のそりと動く。

そしてそのままトッポの方を向いて握手をしようとする。

しかしトッポは……

 

「そんな紳士的な心なんぞ捨てろ!!」

 

弾いて応じなかった。

そのまま手のひらを見つめるルタ。

そしてその次の瞬間……

 

「ふふふ……」

 

体を凍り付かせるような重圧。

恐怖心が煽られていく。

余計に自分の立場をトッポは悪くしてしまった。

 

「ただ、トッポの奴……」

 

雰囲気が変わっている。

昨日までは正義を謳っていた男。

しかしあの戦いで心変わりをしたのだろう。

振る舞いから180度変わっている。

 

「良い方向に流れればいいがな」

 

武舞台へ先に入っていたトッポの背中を見ながら俺は呟くのだった。




イエラの奴が特殊能力みたいですが、そこは実力とかその相手の集中力などで、効きにくくなります。
耳を防げば回避可能とありますが、もっと単純にイエラ以上の大声でかき消すとかあります。
次回は超サイヤ人3並みのピッコロさんの腕を無造作に千切ったルタと破壊神候補トッポの対決です。

何かご指摘有りましたらお願いします。


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『破壊の化身』

ルタVSトッポです。
その後に対戦を始めています。

日曜日の超でジレンの過去が明かされましたね。
願いはまだ出てこないですが。


互いに向き合っている。

ルタは陽炎のように揺らめいている。

気で己を包むようにしているから実現できているものだ。

 

「覚悟は決めたのだ」

 

おもむろに服を破り捨ててルタを睨むトッポ。

肌は紫がかっていく。

筋肉が隆起して、本当に昨日までと同じ人物かと疑う。

 

「誰にも負けぬ強さ、栄光のため、欺いた者へ購わせるために!!」

 

こちらを睨んでくる。

内心、はらわた煮えくり返っていたのか。

しかし、ジレンと張り合っていたあの戦い。

あれを見て、今の自分で勝てぬと決断したのだろう。

 

「全てを捨てると!!」

 

そう言ってルタに突っ込む。

それと同時に大神官様から試合開始を告げられる。

岩のようなトッポの拳。

威力も速度も上がっている。

それをルタは手を前に差し出して……

 

.

.

 

 

「そい!!」

 

俺は掌底で顎を叩く。

最小限の動きで相手の出鼻を挫く。

そして脇下に腕を差し込むと『ダブルアーム・スープレックス』の体勢を取っていく。

 

「まずはこっちの攻撃だ!!」

 

そのまま大木を引っこ抜くような勢いでトッポを投げる。

それに対してトッポは空中で体を反転させる。

だがこちらの追撃はやまない。

 

「まだまだ!!」

 

『キッチンシンク』を叩き込む。

空中で体勢を入れ替えた相手でも、こっちから全て読める。

さらに容赦なく頭を掴むと一気に引き寄せる。

 

「頭蓋を砕いてやる!!」

 

『ココナッツクラッシュ』でトッポの頭に自分の膝を叩き込む。

その一撃に意識が飛んだのか背中をつけてダウンする。

あの何の変哲もない技の連打で今のトッポからダウンを奪った。

 

「まだやれるなら早く立ってくれないと困る」

 

そう言うと跳ねあがる様にトッポは起きる。

そしてローリングソバットを放つがそれを受け止める。

威力は強いが腕が痺れるような感じもない。

 

「破壊神になったのにその程度なのか?」

 

力が上がったようだが、それほど脅威に感じない。。

少しばかり、自分が思い描くような神の強さかと思っていたのだが。

やはりなりたてのものに対してそれは高望みか。

 

「今、真骨頂を見せてやる……」

 

手のひらをこちらに向けると紫の気弾の様なエネルギーが射出される。

そのような技が真骨頂か?

少し拍子抜けだぞ。

 

「『破壊』!!」

 

その言葉が響く。

回避してはいたが直撃した壁が砂のようになる。

なるほど、イワン様のものと同じか。

神々しさがなく禍々しさがある。

きっと他人を己の為に破壊しようとしているからなのだろう。

 

「それが奥の手ならば……」

 

下らない。

その感情を押し殺して相手に歩みよる。

己の肉体が微塵も干渉しない。

ただただ、楽な力。

ゆえに破壊神も有事や己の使命以外の使用は軽々しく行わない。

 

「使命でもなく勝つためだけに使うお前は見苦しい」

 

そう言って構える。

トッポを倒すために本当の強さを見せてやる。

全力で相対してお前の目を覚ましてやろう。

 

「はああああああ……」

 

この会場中にある熱が冷めるように。

ただひたすらに吹きすさぶ風。

雪が徐々にちらつき始めて肌につく。

気が風となり雪をかき集めていく。

その風貌、吹雪を纏うがごとく。

 

「はー!!」

 

解放した瞬間、周囲に氷柱が出来上がる。

極寒の北風のような暴威を振るおう。

覚悟を決めて全てを捨てた男よ、次は敗北の覚悟を固めるがいい。

 

「フッ!!」

 

懐に瞬く間に忍び込む。

破壊をする間もなかったようだ。

こちらの気の量に呑まれたか?

 

「容赦はしない」

 

アッパーの一撃を放つ。

相手はピクリを体を動かして防御をする。

防御が何の意味もない事を教えてやる。

 

「カアッ!!」

 

腕の骨が軋むような重い一撃で防御を弾き飛ばす。

頑丈になっていなければ腕の骨に罅が入っていただろう。

それぐらいの手応えがあった。

がら空きな脇腹へ蹴りを見舞っていく。

 

「『破壊』!!」

 

こっちの攻撃に合わせて足を狙ったか。

無駄な真似が好きなようだな。

そんな回避方法では……

 

「お前の腕が逆に破壊されるだけだ!!」

 

手のひらで受け止める事ができない、途轍もない威力の蹴りをトッポは喰らう。

『気』を『破壊』の力を超える量で纏えば防げる。

幸い、気は莫大にあるから今のトッポぐらいの破壊には耐えきれる。

 

「ぐああああっ……!!」

 

うめき声をあげるトッポ。

その理由は明確だった。

腕は完全に折れてしまった。

さらに肘の開放性骨折。

 

「うめき声をあげる暇はないだろう」

 

一気に脇腹に狙いを定める。

もう勝負を決める。

『破壊』に頼った愚か者に、神の力を甘い覚悟で持とうとした奴に。

 

「絶望的なまでの制裁を」

 

片腕で俺の拳を防ごうとする。

わざわざ防げる場所を狙う奴が居るのか?

がら空きの場所だけ狙う。

最後に何もできない状態になるように。

 

「だああ!!」

 

防御を間に合わせずに脇腹を蹴りぬく。

アバラを数本圧し折って横薙ぎに飛ばす。

それを超える速度で追いつくと頭を掴んで武舞台へ叩きつける。

 

「ぐはっ!?」

 

頭を掴んで起こすと、そのまま無造作に上空へ投げる。

そしてそのままこっちが跳躍して追い越す。

アバラと片腕が折れても攻撃の手は緩めない。

 

「次は……」

 

蹴って武舞台へ叩きつける。

仰向けで大の字の状態となったトッポ。

それを見てこっちは落下速度をあげる。

膝を立てて足めがけて徐々に落ちていく。

 

「ちょろちょろと動き回れないように足だ!!」

 

ボキッという音を立てて足が折れてあらぬ方向に曲がる。

しかしこれでもまだ終わらない。

まだ片足と片腕が残っている。

全て奴の体が戦いの機能を無くすまで。

 

「神の領域に踏み入れるまでは許そう」

 

俺とてその次元に至っているのだから。

だがそうであっても許されないもの。

それは破壊神となったのであれば…

 

「御業を軽々しく使い、品位を下げたことがお前の罪」

 

神に相応しい心と振る舞い。

それを知らずに技を使うのは憚れるもの。

その償いの裁きを俺は与えているのだ。

 

「お前の言い分を聞いてやってもいい」

 

歯を食いしばり、痛みを紛らわそうとしている。

これでは話すこともできないな。

すぐにその意識を断ち切ってやろう。

 

「もう一本!!」

 

片足に腕を絡みつかせる。

そして力任せに圧し折っていく。

軋む音なんてほんの数秒。

あっという間にボキッと音が響く。

 

これで残ったのは片腕のみ。

『破壊』ももはや使えない。

むしろ段々と力を失っている。

 

「無様に朽ちろ」

 

そう言って最後の仕上げに入ろうとする。

しかしまだ闘志を失ってはいなかった。

歯を食いしばってこちらを睨む。

 

「ぬがあああ!!!」

 

気弾を推進力にしてこちらへ突撃してくる。

そして拳を握り締めて気を集中させていく。

これで一発逆転でも考えているのか?

 

「私の全力をこの一撃にかける!!」

 

そのボロボロの肉体では全てをかけても俺には手傷を負わせられはしない。

万全ならば受け止める構えを見せていた。

しかしこれならばもはやこれで十分。

 

「私の全力が手のひらで……」

 

手のひらで易々と受け止める事で奴の希望を根こそぎ砕く。

その事実で目から光を無くすトッポ。

そして最後の綱であった腕を圧し折るために絡みつかせる。

これで十分な勝利になる。

だがまだ容赦はしない。

 

「まだアバラを折るのも残っているんだからな」

 

そう言って横に陣取って体が浮き上がるほどの蹴りを脇腹へと放つ。

またもやバキバキという音を立てて骨が折れていく。

内臓に骨が刺さっていないあたり、運がいいようだな。

 

「この一撃で終わりにしてやる」

 

神になったつもりでいた者の償いの完遂。

それは敗北と痛みを持って初めて成立がされる。

そのまま場外負けとさせるために前蹴りで壁にめり込ませようと振りかぶる。

するとこの光景に何か感じ居るものがあったのか。

一つの影がとてつもない速度で迫っていた。

 

「いい加減にしやがれ!!」

 

ウサギ型星人がトッポを抱えてこっちの攻撃の距離から離れる。

溜息をついて蹴りを止める。

お前のやったことがどれほどのことが認識しているのか?

 

「水を差してただで済むと思っていないよな」

 

大神官様と全王様が見ている前でやらかしているのだぞ。

消滅する可能性もある。

お前らの友情とか仲間思いが今回は身を滅ぼす結果につながるのだ。

それに規律上、殺す気はない。

 

「いえ、彼は最早戦闘続行の状態でなかったので、不問といたします」

 

全王様は凄い凄いと言っていたから許された。

これで勝者は俺になるはずだ。

俺はその確認を取った。

 

「ええ、第三者介入によりトッポさんは脱落となりますのでルタさんが勝者です」

 

それならばよし。

再試合ならばもう容赦せずノックアウトさせるつもりだった。

十分力の差を見せつけることもできた。

神の力を軽々と使う不届きものに制裁を与えた。

 

「研鑽して神の振る舞いをまず身につけろ」

 

そう言って去っていく途中。

第7宇宙のガタバルとやらが睨んでくる。

今の動きに何か思う事があったのか?

 

.

.

 

「あそこまでする必要はあったのか?」

 

両足を砕き、アバラを全て圧し折っている。

明らかに相手を倒すには超過したダメージ。

過剰なまでの攻撃だ。

すると悪びれた様子もなく肩をすくめる。

 

「俺はいつも通りに蹴りを放って、いつも通りに拳を打っただけだ」

 

意図した部分は足を膝で折りにいった時と絡ませて折った時。

アバラと片腕に関しては自分が普段の全力で相手をしただけの話。

それを耐えられないトッポにも問題はあると言ってきた。

 

「お前の一撃を耐えられる相手なんてそうそういないだろうがな」

 

そう言ってこちらもため息をつく。

こいつの攻撃を見る限りはジレンに近いものを感じる。

特別な力などおおよそ使った事がない。

ただ、その己が持つ力を研鑽によって果てなく積み上げた存在。

 

「あの男の神の御業を使えば勝てるなどという思い上がりを潰した」

 

『破壊』にばかり頼ろうとしていたトッポの事を言っているのだろう。

あいつは確かに破壊神としての力を身につけた後、『破壊』しか使っていなかった。

鍛え上げた肉体が泣くような真似をしていた。

 

「それについては制裁としてやったことも認める、しかし俺はあの振る舞いを悪いとは思わない」

 

その言葉には強固な思いがあった。

神の威厳を守るのも役目。

力を手に入れたとはいえど神は神。

敬われる模範的な振る舞いを本来するべきだというように。

 

「破壊神になれれば勝てるなど簡単にこの戦いを考えていたのではないか?」

 

その言葉に少しばかり思うところがある。

破壊神の力や能力は地力のアドバンテージとなっていく。

それならば勝てる可能性が飛躍的に上がる。

ましてやトッポは第11宇宙のナンバー2。

 

「きっとあいつは自分の強さを考えたうえで、リスクを背負わないなどと計算づくだったんじゃないのか」

 

その言葉に俺はこくりと頷く。

全員が代表宇宙で一番、もしくは二番の相手。

そんな浅はかな考えで勝てる軟な相手なんかじゃない。

まだ、負けても己を貫いた方がましだろう。

 

「あれではただトッポは無様な結果を生んだだけ」

 

俺の言葉にルタが頷く。

神の技を安売りして敗北。

それはその宇宙の神の強さに疑問を抱かせる。

 

「お前らがあのような軽率な真似をしない事を心から願っている」

 

神の御業。

それを使うから痛めつけるような真似をしたわけではない。

神の力は人のため、世のための存在に他ならない。

それを己の勝利だけに目を向けた理由で使う事に腹を立てた。

故にあれだけの攻撃を加えた。

 

「こっちは神の力を軽く扱うような精神は持ち合わせてもいない」

 

その言葉に虚偽はない。

それを感じ取ったのか柔和な顔になる。

そしてこちらの肩に手を置く。

 

「そういえば気づいているのか?」

 

神妙な面持ちでこっちを見てくる。

何を気づくことがあった?

俺は何が何かわからずに首をかしげる。

 

「そちらの対戦相手はきっと不正されている」

 

なんだ、そんな事か。

確かに引く時には違和感はあった。

だがそんな不正なんてものは気にしていない。

何故ならば……

 

「誰が来ようとやる事なんて変わらないからな」

 

そう言って次の試合の為に集まる場所へ向かう。

そして大神官様がとんでもない事を言い始めた。

トーナメント表の決まった相手ではつまらないし、もっと楽しい試合が見たいという全王様の要望。

 

「つまりベスト8が出そろった時点で再度抽選を行います」

 

それは望む相手との対戦を決勝まで待たなくていいという事。

その提案に全員が微笑む。

そして第4試合のカードが明かされる。

明かされる瞬間、運命のように互いを見ていた。

 

「第7宇宙代表:ガタバル選手、そして……」

 

皆まで言うなと手で制す。

そして対戦相手の方に視線を向ける。

無言で武舞台へと向かっていく。

 

「……」

 

背中を向ける。

対戦相手なんて聞く必要もない。

そして相手が武舞台に来た次の瞬間……

 

「シェアアア!!」

 

飛び後ろ回し蹴りを放っていた。

すでに超フルパワー超サイヤ人4と『身勝手の極意』を使用している。

出し惜しみは全くない。

 

「ハアアッ!!」

 

それに合わせた前蹴りで相殺をしてくる。

互いが顔を見てニヤリとしながら着地する。

それを見ていた大神官様が手を下げて試合の初めを告げようとしている。

 

「それでは第4試合、第7宇宙代表:ガタバル選手と第7宇宙代表:ピオーネ選手の試合……始め!!」

 

その言葉と同時に駆けだす。

互いに『身勝手の極意』を使っている。

これで都合4回目の戦いとなる。

今日こそは貴方を超える。

その一念で今、向かい合っていた。




イカサマはキテラがやったが、結局関係なく引き当ててました。
対戦カードシャッフルは試合カードに自由度を持たせようと思ったからです。

何かご指摘の点がありましたらよろしくお願いします。


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『貴きせめぎ合い』

ガタバルとピオーネの戦いです。
長く書ければと思います。
技もいろいろなキャラの奴がこの戦いでは出せればと思います。


掌底を放つ。

様子見は微塵もない。

気を引き締めてかかっている。

 

「フッ!!」

 

こちらの腕に絡みつかせてくる。

それはまるで蛇のように。

俺はそれに対抗する一手を打つ。

 

「甘いぞ!!」

 

その動きをかいくぐらずに手のひらを曲げて気弾を撃つ。

標的は当然絡みついてくる腕だ。

それに対する反応はどうするのか?

 

「カッ!!」

 

カウンターではなく自分の状態を危険な状態から脱出させる一手を打つ。

絡みつかせようした腕を自分の体の方へと戻す。

距離を取り直してこちらを待っている。

こっちは息つく暇を与えないためにも攻撃を仕掛ける。

 

「しっ!!」

 

前蹴りを放つ。

その一撃を手のひらで受け止めて後ろに飛ぶ。

さらに勢いを利用して延髄切り。

 

「シャッ!!」

 

頭を下げて片足を掬い上げる。

そして手を取り、背中から地面につけさせに行く。

抵抗を許さない速さ、そして振りほどけない力。

ピオーネはなすすべなく馬乗りとなる。

両者が『身勝手の極意』だからこそ、先に動いて相手を崩すという選択肢が生まれる。

こちらだけなら相手を待って焦れた所を狙うのが効果的なのだが。

 

「だあっ!!」

 

細かい拳を当てる。

マウントは絶対ではない。

だからこそ掴んだ機会を逃さず叩き込む。

 

「甘いわ」

 

そう言って腕を伸ばし俺の右頬を掠める。

しかしそれで脱出は止まらない。

その腕をそのまま横にスライドさせる。

ジレンやバーダックさんといった膂力に自信がある相手がやる手法だ。

 

「なっ!?」

 

ごろりと転がされて体勢が逆になる。

だがこっちも抜ける方法は幾らかある。

まずは……

 

「があっ!!」

 

噛みつき攻撃。

それを試みるが悠々と頭を掴まれる。

まあ、正直これぐらいは読まれているものだ。

 

「私は食べ物じゃないのよ」

 

そう言って後頭部を地面に叩きつける。

痛みがはしるが脱出は諦めない。

ここで抜けないと延々と叩かれてしまうだけだ。

 

「くっ!!」

 

耳を狙う。

耳に指を入れてその痛みで悶絶している隙に抜ける。

しかしそれも首を動かし、回避。

やはりやりにくいな、こちらの手の内が見透かされている。

 

「だが……」

 

脇腹の方に手を添えていた。

親指だけで抜けることができる。

アバラの間に指を入れていく。

そして捻るだけ。

 

「うっ……」

 

痛みに呻いた隙に抜け出して向き合う。

互いに気弾や気功波抜きの徒手空拳でのつばぜり合い。

今からは解禁していくだろう。

お互いが同じ実力にまで登っている。

ただ、言えるのはジレンとの戦いの復活でわずかに力が伸びているのならば……

 

「その差を埋める前に畳みかける」

 

そう言って一気に体勢を低くして飛び込む。

そのまま腹に頭突きを当てて投げ技への移行を狙う。

その一撃で背中をしたたかに打ち付けさせるなどやり方をしていけば優勢への糸を手繰る事が出来る。

 

「『キャット・パレード』!!」

 

猫型の気弾でこちらの出鼻を挫きに来る。

しかしそれを許すわけもない。

それより速い速度が有る。

 

「『ツイン・ファルコン・アタック』!!」

 

隼型の気弾を片手ずつ放ってその推進力を活かしてさらに早く接近をする。

しかしそれを見越していたのか額に指をあてていた。

確かにそれが一番ではあるが……

 

「こっちも負けてられないな」

 

同様に瞬間移動で姿を消す。

後にやった分、これでこっちが有利になった。

後ろを取って絞めつけに行く。

だがそう思って、手を伸ばした瞬間……

 

「残像……」

 

そして上から襲い掛かってくる。

こっちの動きの一歩先か。

しかし……

 

「えっ?」

 

ピオーネの攻撃が空を切る。

素っ頓狂な声を上げてしまっていた。

答えは単純なこと。

 

「裏をかいたのさ!!」

 

ハイキックが側頭部に当たり、ピオーネが揺れる。

意識が刈り取れているかはわからない。

だがこの一瞬は『身勝手の極意』は使えない。

 

「喰らえ、『アルバトロス・ブラスター』!!」

 

大技の一撃。

焦っているのではなく刹那の隙があれば放たねばならない。

それを感じ取るために鋭敏に研ぎ澄ませた五感。

五感が俺に、極意が俺に今が攻める時と教えていた。

 

「くっ……!!」

 

意識が戻れば即座に腕を交差。

そして足に力を入れて踏ん張りを利かせる。

こちらの一撃に耐えきってもそれで終わらせる気は毛頭ないぞ。

 

「正面ばかり見てもそこには居ないよ」

 

瞬間移動で後ろを取る。

手に力を込めて六角形の形を作る。

全ての技を使って勝たせてもらう。

 

「『気功砲』!!」

 

超フルパワー超サイヤ人4での計り知れぬ破壊力。

それをさらに増幅させたような一撃。

この一撃ならばどうだ。

 

「ふううう……」

 

煙が晴れたところで見えたのは眼光。

ずっと俺を捉えている。

逃がすまいと、避けられない攻撃を仕掛けるぞと。

あの状態は強さの変動はない。

しかし分かるのは身が竦むほどの気迫。

精神的な気合が一段階変わったということだ。

 

「本当の地獄はここから……げぼぉっ!?」

 

言い切る前に腹部に拳がめり込む。

頭を掴んできて振り回される。

そして…

 

「お返しの時間よ」

 

そう言って武舞台に叩きつけられる。

武舞台に叩きつけられたところを中心に、クレーターができる。

頭がちかちかとするような衝撃。

さらにそのままめり込んだ俺めがけて技を放つ。

 

「『グラトニー・オブ・ホエール』!!」

 

鯨が迫ってくる。

こんな超巨大な代物を平然と出してくる。

つまり、出し惜しみの無い全力と言うのがうかがえる。

それに対して答えは一つ。

 

「ハアアアアッ!!」

 

めり込んだところから抜け出して気を高める。

そしてその高めた気を天に向かって放出する。

正確に言えば鯨に向かってだ。

 

「ぬぐっ…」

 

大質量故に食い止められる。

さらに徐々にこっちにのしかかるように降りてきている。

じりじりと相手がこちらを押す中、歯を食いしばっていく。

自分の使う気力をさらに高めていく。

 

「……こんな簡単に負けるかよ!!」

 

このまま押しつぶされて終わりにしてたまるか。

そう思うと気力がさらに増していく。

光の柱で天を衝くように鯨を貫く。

そのままピオーネへ俺の気の柱が向かっている。

 

「ハアッハアッ……」

 

気の消費と受け止めた際のダメージは体に残っている。

普通に考えれば放つ方も、息切れを起こすほどの超巨大なエネルギー弾。

ピオーネは降り立って苦々しい顔を浮かべていた。

受け止めていたのだろう、両手から煙を出している。

 

「今のは痛かったわ……」

 

じりじりと接近としてくる。

威圧感で息が詰まりそうになる。

だがそれに対抗するように俺も威圧をする。

 

「こっちのお返しの番よ」

 

こちらの威圧感に僅かに足が止まったがそれでも向かってくる。

こちらも迎え撃つために構える。

目の前から消えていく、これは瞬間移動ではない。

 

「下だ!!」

 

視線から急激に潜り込むことで起こる錯覚。

それを察知して後ろへ下がって視野を変えて捉える。

だがそれで逃すような甘さは微塵もない。

 

「しっ!!」

 

床に手をつきアクロバティックな蹴りを顔面に放ってくる。

それを喰らってたたらを踏む。

すぐさま追撃のアッパー。

 

「ヌン!!」

 

額で受けて威力を相殺。

拳が砕けていないのが凄まじいことの表れだ。

互いに有効打を連続では叩き込めない。

何気ない攻撃にも牽制がまじりあっている。

 

.

.

 

「とんだ道化だな、キキキ」

 

そうキテラが言っているのが僕の耳に届く。

あの二人を罵倒するような物言い。

戦いに対して感嘆の意を示してはいない。

何故、あのような言葉が飛び出すのか。

 

「いい気味だな、ビルス」

 

そう言って僕を見る。

これで確信を得た。

こいつが試合の組み合わせを限定的に操作したことを。

 

「おまえ……自分がどれだけの事をしたのかわかっているのか!!」

 

僕はキテラを殴っていた。

それを見たシャンパが僕を押さえる。

こいつ、かなりの腕力だな、また太った分だけ上がったな。

 

「気持ちがわかるが落ちつけ、兄弟」

 

そう言って僕を落ち着かせようとする。

その言葉が聞こえていたのかピッコロとベジータ。

そして、ジレンまでもがキテラの前にいた。

 

「あの二人の戦いを仕組んだのは重大なルール違反だ」

 

指を鳴らして、ベジータが脅すがどこ吹く風。

ピッコロも重いフードを脱ぎ去っているし、小さな瓶を取り出していた。

ジレンも憤怒の顔を浮かべていた。

 

「証拠は何処にある?」

 

そう言われると弱い。

我々は奴がやったことの証明をすることはできない。

それに参加していないやつにペナルティを背負わせても……

 

「強き者には従うほかないのか?」

 

だがそんな中、サラガドゥラがキテラの手を掴む。

そしてぐっと力を入れてしばらくすると笑みを浮かべる。

この不敵な笑みはすなわち……

 

「魔術の残滓が残っている…黒だな」

 

その言葉を言った瞬間、分かりやすいほどにキテラが青ざめる。

何故ならばイワンやリキール、アラクとジーンの4名の破壊神が睨んでいる。

場合によっては消滅する可能性もあるからだ。

 

「キテラ様に対してはノーペナルティです」

 

大神官様の言葉を聞いて、我が意を得たりと顔色を戻す。

だが次の瞬間、どん底に突き落とすような言葉を聞く。

それは……

 

「全王様にお伝え済みですので」

 

なるほど、それならば我々が口を出す余地はないな。

どうやら、キテラのイカサマは大神官様が打ち消したらしい。

つまりあいつらはイカサマ無しで自分たちを引きあった。

打ち消したことが違和感となったのかもしれない。

 

「この試合が楽しければ不問とするように伝えておりますので、そうなる様にお祈りください」

 

そう言って去っていくのであった。

キテラが喉が張り裂けるかのような大声で応援を始めた。

イワン達も怒りはあれど、仕方なしというように自分たちの席へと戻っていった。

そんな中試合はさらに、激化していっていた。

 

.

.

 

「てりゃあ!!」

 

尻尾で目を打ち、その怯んだ隙に足払い。

足をしっかりと掴んでジャイアントスイング。

流れるように攻撃を仕掛ける。

途切れてはそのわずかな時間の間に立て直しかねない。

 

「くっ!!」

 

投げられても即座に体勢を整えてくる。

それでもこちらは技の照準は外さない。

相手を視界にとらえて倒す事に力を注ぐ。

 

「『コンドル・レイン』!!」

 

雨霰の気弾。

それを片手で弾いていく。

その間に瞬間移動で後ろへ陣取る。

背中から貫くような一撃を見舞う。

 

「『エクスプロード・ウッドペッカー』!!」

 

空いている片手で受け止めるが背中まで衝撃が響いていたのだろう。

体がよろめいて息を吐き出す。

そして腰を抱えてバックドロップを放つ。

 

「ぬぐぐ……」

 

粘り切って地面に足をつけて投げられないようにする。

こらえ切ったという事は残っているのは逆襲。

反発力で振りほどかれる。

 

「こっちの番よ」

 

そう言って懐かしい技を見せてくる。

こっちの腕を取って上空へと投げる。

瞬間移動で距離を取ろうとする。

 

「無駄よ」

 

こちらが額に指を置くより速く背後に回り込んでいた。

投げると同時に既に跳躍をしていたのか。

瞬間移動の予備動作を上回ってくるとは……

 

「いくわよ」

 

サーフボードのように俺に乗り自らの足を俺に絡ませる。

腕を取って後ろに回すとその勢いのまま後方へと回転する。

徐々に回転して勢いが増していく。

 

「ぐぐぐ……」

 

力づくで外す事もできない。

強烈な風圧がもがく事も許さない。

回転の勢いで武舞台が近くなっていく。

 

「『リインカーネーション・オブ・ブレイク』!!」

 

受け身を取る事が出来ない技。

轟音が響き、武舞台にさらに罅が入る。

体中に痛みが走って、技が解かれた後に仰向けに転がる。

 

「ぐうぅ…」

 

弩級の一撃。

喰らって立ち上がる際に呻き声が出る。

しかしすぐさま笑みが浮かぶ。

この人と全力で戦えることの喜び。

こんな最高の時間がまだ続く。

そう思うと不思議と力が湧き出るのだった。




キテラ様、暗躍したけど自分の首を絞めただけの件。
ビルス様と仲が悪いから第7宇宙負けさせて恥かかせようとした結果です。
しかし、バレていたので無効化したけど普通に引かれるという。

この戦いは次回、もしくは次々回まで続くかもしれません。

指摘などありましたらお願いいたします。


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『たった一つの思い』

今回で対戦2話目です。
次回決着をめどに書いていこうと思います。


立ち上がって相手を見る。

息切れを少し起こしている。

大技を隙あらば撃っているわけだから消耗は互いにある。

相手にいいようにやられているというわけでもない。

 

「まだまだ!!」

 

拘束を解いたピオーネに飛びかかる。

バックステップをしていくが逃がさない。

手を後ろの地面に向ける。

 

「はっ!!」

 

気弾の推進力で後ろに下がるよりも距離を詰める。

そしてそのまま頭突き。

腹部に大きく衝撃を与える事が出来た。

 

「くっ!!」

 

起き上がってくるピオーネに膝蹴りを叩き込んでいく。

それを受け止めると同時に体を捻転させての延髄切り。

それを防ぐが距離を取り技を放つ。

 

「『ファイナル・フラッシュ』!!」

 

光の一撃がピオーネを呑み込む。

それに安堵することなく瞬間移動。

後ろに回っていく。

 

「甘いわよ」

 

後ろ手に俺を捉えようと手を伸ばす。

だがそれは空を切る。

姿勢を屈めて手を避けていた。

 

「それは、こっちのセリフさ!!!」

 

そのまま手を掴んで振り回す。

グイングインと音を立てていく。

そのままハンマー投げのように放り投げていく。

上空を斜めに舞うピオーネへ照準をつける。

 

「『デスビーム』!!」

 

フリーザの技を使う。

今までの技は全て出させてもらう。

出し切らねば勝てない。

 

「『どどん波』!!」

 

同じ系統の技。

威力も同程度になっている。

追尾性能がある俺の技。

回避していれば、技を出す余裕がないほど追いかけるから、相殺などもなかったのだが。

 

「これならばどうだ、『新狼牙風風拳』!!」

 

超速度の連打。

ちなみに、足元に油断はない。

たとえ、誘いのものでも潰してくる。

足がお留守なら手痛い一撃、騙しを考えても手痛い一撃。

そうなれば真っ向から打って、相手の綻びを見つけて叩き込まないといけない。

 

「『鶴翼の舞』!!」

 

桃白白の技で相手も対応する。

肘の一撃を当てれば相手も肘を当ててくる。

鏡合わせのように、同じ攻撃で互いを打ち付けあう。

フェイントでもクロスカウンターになっていく。

 

「カアッ!!」

 

弾き合って再度距離を置く。

肉弾戦でも徐々に差が詰まっていく。

互角のはずなのになぜ相手が優勢なのか?

それは経験の差。

ピオーネは俺より年上。

かつての女王の君臨した期間。

勝負勘がその分研がれている。

あとは自分への自信、それが技の完成度につながる。

 

「まだまだいくぜ!!」

 

そう言って指先を全て相手へ向ける。

相手の技を見て己のものにするのはいつもいいものだ。

それが使いやすいものならば尚更な。

 

「『ジャスティスフラッシュ』!!」

 

紅色の気弾を放つ。

この物量に対しての対策をピオーネが打つ。

忌々しい存在の技だったが、それを持ち込まない。

 

「『神裂斬』!!」

 

桜色の刃が振られて切り裂かれる。

そして接近してこっちの腕を切り裂いてくる。

それを見極めて……

 

「りゃあ!!」

 

真剣白羽どりで止める。

そして腹部へ強烈な蹴り。

距離を開かせる前に技を使って逃がさない。

 

「『ディスリリース・ドーナッツ』!!」

 

『ギャラクティカ・ドーナツ』に鎖型の気弾をつけた気弾。

捉えたまま膂力を活かし引き寄せていく。

そして片腕を高々と掲げて頭を掴む。

 

「うぉおおおお!!」

 

雄たけびとともに頭を武舞台へ叩きつける。

ここが好機。

大技を使わせてもらう。

 

「『ギガンティック・ミーティア』!!」

 

巨大な気弾で追撃。

この一撃はグロッキーに追い込む。

ピオーネは起き上がるがさっきの俺と同じほどのダメージを負っている。

 

「強靭さは流石だよ」

 

基本的に考えても今までの技は相手を倒すには十分だ。

それを複数個、お互いが使っているのだからな。

こっちを視界にとらえたまま、ゆらりと動く。

気がピオーネを包み込んで、まるで陽炎のような状態となる。

 

「行くわよ!!」

 

一瞬で目の前から消える。

トップスピードが変わったのか。

それを見たディスポが大きな声で驚く。

 

「俺の『超高速モード』だと!?」

 

最速の男の技能さえ盗む。

これはまずすぎる。

直線的な動きしかできないやつとは違う。

本当の使い方を見せてくれる。

 

「立体的に……」

 

身勝手の極意で感知できる速度を凌駕した。

回避不可能の拳足の嵐が吹き荒れる。

皮膚を刻むように、肉を打つように

圧倒的な手数が襲い掛かる。

 

「こうなったら……」

 

額に手をかざす。

瞬間移動でもこの速度で先回りしかねない。

ならばこれだ。

 

「『太陽拳』!!」

 

目くらましで難を逃れる。

転がりまわって嵐をかいくぐる。

だが次の瞬間……

 

「『跪きなさい』」

 

膝立ちになっていた。

イエラの技能まで使うくらいなりふり構わないのか。

同格であれば通用してしまう。

振り切って体勢を整えるが遅い。

 

「がはっ!!」

 

膝蹴りを入れられて吹っ飛ばされる。

そして見覚えのある構えで技を放つ。

そっちがそう来るのならばこっちはこの技だ。

 

「『かめはめ波』!!」

 

こちらに向かってくる技に対してこの技で相対する。

同じ系統同士でぶつけるのが最善手だ。

打ちかてばさらに言う事なし。

 

「『ギャリック砲』!!」

 

ぶつかり合う気功波。

相殺された瞬間に次の一手が飛んでくる。

それは接近戦。

 

「喰らいなさい!!」

 

『アルゼンチン・バックブリーカー』に捉えられる。

力づくで外しにかかるが本来の目的は違っていた。

そのままぐるぐると旋回をして、その遠心力で上空へ放り投げる。

 

「ぐっ!!」

 

体勢を整えようとするが上手くいかない。

遠心力によってそれをできないようにしているのだろう。

さらに跳躍でこちらに追い付く。

 

「さあ、仕上げと行くわよ!!」

 

俺と背中合わせになって技の動きへ移行する。

こちらの両足に対してピオーネが外側から両足を差し込む。

さらにこちらの両腕をピオーネが掴む事で、両腕の反撃も封じられた。

付け加えるように鳥の羽のようにこちらの肩を上げさせて痛めつけてくる。

徐々に体勢を反らしていって猛烈な圧力をかけて落下。

 

「心が折れる音を聞かせてもらうわ、『ラヴァー・ハーベスト』!!」

 

受け身を取らせない無慈悲な一撃は轟音とともに完成する。

またもや肉弾戦の強烈な一撃。

意識が飛ばない丈夫さ。

しかし肉体の悲鳴が聞こえる。

 

「まだ……付き合ってくれ」

 

起き上がって構える。

一歩も引きたくないんだ。

もうこれで技へのつなぎを失った。

残った己のフェイバリットが一つしかないピオーネ。

 

「俺にはあと2つあるんだ」

 

だからその駆け引きを間違えなければまだまだ勝機はある。

それまで心が折れる事は無い。

勝利を掴み取る。

気をまだ噴き出させてじりじりと距離を詰めていくのだった。

 

.

.

 

「まずいな……」

 

僕はあの二人の戦いを見て素直にそう言葉にした。

ガタバルの方が実力なら若干上かもしれない。

それでも、ピオーネの方が勝てている。

きっと、深層心理ではピオーネに対する苦手意識が刷り込まれているのだ。

ピオーネには逆にガタバルに対して得意な意識が刷り込まれているだろう。

 

「『身勝手の極意』がまた互いに極められていない戦いだがこれほどの次元になるなんてね」

 

顎を撫でて見応えがある戦いを反芻する。

ガタバルの一つ上を行く経験の差。

戦いの中でどこまでも練磨しあう二人。

戦いが一つの芸術として成り立っていた。

 

「極めていただければと思いますがねえ……」

 

ウイスは言うが僕はため息をついた。

一度真剣にあの技能と僕は向き合った。

そして一つの結論が出てしまった。

出てはいけない結論。

それは単純に僕が認めた愛弟子の限界を知らせるものだった。

 

「奴は極められないんだ、ウイス……」

 

『身勝手』と付くが故に。

『身体』が『勝手』に動くだけではなく、もう一つの『身勝手』。

すなわち悟空のような心がなくてはいけない。

純粋であり、戦いを楽しむ余裕。

それは己を満たす要因。

 

そういったものがガタバルからは著しいまでに欠如している。

良い形で言ってしまえば『人の為』に力を使い続ける心の優しさを持つもの。

悪く言うと『大人すぎた』が故に他者に捧ぐ事でしか見いだせなかった。

 

「ではピオーネさんは?」

 

あいつも同様だ。

ガタバルよりは可能性があるがあの二人は似た者同士。

別に金が欲しいからチャンピオンになったわけでもなく走った結果がそれ。

まあ、あいつにも言えるが、自分の強さがどれほどか知りたい。

その気持ちを『身勝手』ととらえるかはグレーゾーンだな。

 

「自分たちが心底戦いの中で自分のために何かを思わない限りは目覚めない」

 

僕はそう言って武舞台を見つめていた。

 

.

.

 

「だあっ!!」

 

抱え上げて放り投げていく。

逆襲の時間だ。

くるりと半回転して着地をするが甘い。

 

「ハアッ!!」

 

ローリングソバットで腹部を蹴りぬく。

ガードが間に合わないでピオーネが飛んでいく。

無尽蔵に近いスタミナは結構消耗されている。

大技を立て続けに出しまくっているからだ。

 

「よく耐えられたと感心するぜ」

 

そう言った俺の腕を掴むと一本背負いを放つ。

だがその力の強さは振り切れるほど。

背中を踏み台にして逃れようとする。

 

「フフッ!!」

 

不敵な笑みで足を取りドラゴンスクリュー。

それも振りほどくが、今度はクリンチのように密着。

こっちの距離に行かせないとする執念。

 

「体力回復ならそのまま離れ続けていればいいのに……」

 

無理に距離つぶしをやる必要もない。

こちらが瞬間移動を使うほど、焦らして迎撃すれば済む話。

それをしないのはひとえに……

 

「逃げているということを認めざるを得ない」

 

プライドが奮い立たせる。

相手に寄ってはちっぽけに見えてもおかしくないだろう。

しかし俺はそう思わない。

それがあるから戦えるものも少なからずいるからだ。

 

「てりゃあ!!」

 

裏投げでこっちに攻撃を仕掛ける。

それをするりと抜け出して肘打ち。

その攻撃を読んでいたというように頭をわずかに動かして回避。

すかさず逆襲の前蹴りが迫る。

それを捌くも高速タックルを仕掛けられる。

 

「ぬおっ!!」

 

電光石火の一撃。

それに合わせるように膝蹴りを打つ。

その瞬間、タックルの構えを変えて膝に手をつき、跳躍する。

 

「ハアッ!!」

 

ムーンサルト・プレスに切り替えてきたのだ。

体重に勢いを加えた重い衝撃が体中に広がる。

ピオーネにとって乾坤一擲の一撃だったのだろう。

ニヤリと笑って余裕を取り戻していた。

 

「流石と言いたいが……」

 

こっちも仕返しさせてもらうぜ。

余裕を浮かべた顔に向かってジャブを出す。

それをひょいひょいと避ける。

その瞬間に合わせて下段蹴りで足に一撃。

 

「むっ」

 

脛で受けるが僅かによろめいた。

その隙を逃すつもりはつゆほどもない。

顎へ頭突きを繰り出す。

 

「くあっ!!」

 

手を出して止めようとするが弾かれていた。

衝撃が顎に伝わっているだろう。

それを好機とみて足を掴み、ジャイアントスイング。

 

「ぐうっ!!!」

 

手をつき、旋回を止めてくる。

そしてばね仕掛けのように体を動かして逃れる。

そして逆襲が始まる。

 

「『ゴールデン・デス・ボール』!!」

 

フリーザの技を放つ。

両手を差し出して受け止める。

その一撃を受け止める間に気配を感じる。

 

「『四身の拳』!!」

 

とは言っても二人に分身した状態。

押し返そうとする俺に横槍の一撃を放つ。

 

「『魔穿撃滅波』!!」

 

その一撃が押し返す力が僅かに弱まる。

そのまま一気に飲み込まれていく。

自分を中心に武舞台がさらに崩壊する。

 

「グギギ……」

 

体から煙が上がった状態だ。

痛みが判断を鈍くさせてくる。

それは懐に入っても気づかない愚かな場面を作り出していた。

 

「『アルバトロス・ブラスター』!!」

 

懐に入り込んでいたピオーネが大技を放ってくる。

俺のお株を奪う場外行き一直線の一撃を喰らってしまう。

その勢いはすさまじく第6宇宙の観客席にまで吹っ飛ばされた。

 

「ぐっ…」

 

崩れた席からガラガラと音を立てて起き上がる。

カリフラやケールたちは驚いた顔をしている。

バーダックさんとヒットは当然だという顔だ。

 

「おまえ……大丈夫なのか?」

 

シャンパ様ですらちょっと気を使うほどのようだ。

大丈夫ですと手を振り、飛び降りる。

 

確かに大技喰らったりピオーネ優勢な場面が続いていた。

こちらの上を行くように戦う。

しかしあっちにもダメージはある、見た目ではなく中身を見ると先に仕掛けてこちらにペースを掴ませまいとしている状態。

そこを耐えきると少しずつ差は縮まる。

まあ、今のような土壇場で出される底力は恐ろしいけれど。

 

武舞台へ向かう足が止まらない。

それもそのはずだ。

目の前にいるのならば俺は戦う。

何故なら……

 

「勝ちたい……」

 

幾度となく思う心。

きっと叶うと信じてやまない願い。

それに向かうための努力もやってきた。

 

「誰かの為でもなく……世界の為でもない」

 

ただ一人だけにしかこんな思いを抱くこともないだろう。

全てはそう……

 

「貴方との戦いだけはどんな時も自分の為に……!!」

 

体からまたもや力があふれ出す。

暴れるように、出口を探し求めている。

それは全体を包み込んでいく。

その光に呑まれる中、俺はピオーネを見据えていた。

 

.

.

 

「唯一、確かにそうだったな」

 

ベジータが頷く。

一体何がわかっているんだ?

するとベジータだけではなく悟飯も言ってくる。

 

「もし、自分のために戦う人がいるのならピオーネさんだけ」

 

まだ若い頃から、一度も勝てていない相手。

憧れた人には認めてほしいというものがあった。

しかし、そうではなくただ純粋な勝利への欲望。

それをむき出しにして戦いたがるとなれば、この世にたった一人。

 

「つまり身勝手の極意の完全体を見ること、戦う事が出来るのは」

 

珍しく、冷や汗をかいているピオーネ。

お前の為に目覚めた力。

どれほどのものか、味わってみればいい。

 

「そして僕に身勝手の極意のすべてを見せてくれ」

 

僕は自分の予想をいい意味で裏切られたことに笑みをこぼしていた。




完成させないと思っていましたが、限定解放という形で完成させました。
ピオーネの対戦以外は完成バージョンになれないです。
次回で終わりになった後はジレンの対戦やほかの面子の部分は、1話か1.5ほどの内容で完結の試合にする予定です。



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『抑えられず、堪えきれず』

あっさりとした形の決着にしました。
次回はジレンの戦いを描いていこうと思います。
正直バーダックとガタバル以外にも、ヒットとジレンなんて相手が気の毒なカードです。


「私が初めて見る世界……」

 

銀色に輝く髪。

オーラが神のそれを凌駕している。

あの強さに自分はなれるだろうか?

そう思った次の瞬間、否定する。

 

「あの子に勝っていなければ……」

 

自分があの状態になっていた。

つまり、自分があの子に勝っていった歴史が生んだ奇跡。

だったらその思いのたけ、全てをぶつける眼差しに向かうだけ。

 

「はっ!!」

 

拳を振るがその前に掴まれる。

さらにそれを引き寄せて膝を叩き込まれる。

受けると体が浮き上がる。

先ほどに比べて重さが段違いだ。

その一撃だけで並の相手ならばうち倒せる。

 

「……」

 

無言でこちらを抱え上げる。

そしてボディスラムで叩きつける。

しかし、そう簡単に許しはしない。

 

「ぬっ!!」

 

武舞台に手をついて着地。

相手の方を向く。

だが相手はすでに視界から消えている。

真後ろから肘を背中に叩き込まれた。

 

「うあっ……」

 

動きも変わっている。

こちらの死角への侵入。

それがあまりにも滑らかでまるで目で追いきれない軌道を描く。

 

「くっ!!」

 

手刀の一撃を逸らされる。

そしてそのまま投げられる。

カウンター合戦になるのだから不用意な攻撃は厳禁。

分かってはいたけれど仕掛けてしまった。

 

「うっ……」

 

腹部への一撃。

内臓を揺さぶられるような衝撃。

そしてその追撃の蹴りを喰らう。

体の中心部で爆発したようなそんな重い一撃だった。

 

武舞台から飛び出てしまう。

息を整えるけれど、手にじわりと汗をかいている。

この状況、どうしたものかしら……

 

.

.

 

「ああも一方的になるだなんて……」

 

僕は驚いていた。

破壊神様たちも全員が立ってみている。

ベジータさんも目を皿のようにしてじっくりと見ていた。

 

「あれが極められたものか……俺様でもおいそれとはいかん次元だな」

 

今の心を持ったまま、強く己を通すプライドではないもの。

不純物ととらえて一度心から取り払い、ただ一つ己の思いを芯にする。

それが今の自分にはとても難しい事のように思えた。

それらすべてを抱えたうえで、その次元に至れないか?

奴は抱え込んであの次元に居たり、今覚醒を果たした。

おおよそ『兆』ともいえる部分までは今のままでも至れる。

もしくは別の道。

それはブルーを極める事、そして奴が見せる超サイヤ人4への分岐。

今の力で原点回帰をすれば神の力にさらに大猿の時の力が備わるのではないだろうか?

 

「まあ、今はよく観察するか…」

 

そう言って思案をやめて、再び武舞台に視線を移した。

僕もあの状態になれるのか、少しの疑問を抱きながらこの戦いの決着を見届ける。

 

「だが、ピオーネにはあの特殊な力があるはずだ……」

 

天津飯さんがそう言うと、クリリンさんやヤムチャさんも驚いている。

不用意にその力を使っても再逆転を許すのではないかと。

だがそんな疑問はビルス様が断ち切ってくださった。

 

「できはしない事だ」

 

どうやら今のピオーネさんの特殊な力でも『身勝手の極意』は学習できない。

強さがその次元に至ってもできない。

それだけではなくもう一つの理由。

 

「少なくとも奴を創造した破壊神の強さを超えているからな」

 

ついに底を見せたピオーネさんの強さ。

と言っても破壊神の次元まで上げて行けたなんて、あの人もやはり規格外の存在だ。

ビルス様の説明としては、そいつも僕より若干上か同等。

それは裏を返せば僕より強くなってしまったということだ。

そう伝えてくださったけれども、それはガタバルさんが神を凌駕したことの証明。

凄い事をやってのけているのだ。

 

「そんな事が……」

 

そしてガタバルさんの方を見て笑みを浮かべていく。

自分が手塩にかけて育てた弟子ともいえる存在が今の自分を凌駕する事実に、喜びを隠しきれてはいない。

 

「全くなんて奴だ……」

 

普段から使えたら最高の獲物になったのに。

残念以外の言葉が見つからないよ。

そう言ってため息をついていた。

 

.

.

 

「はあはあっ……」

 

息が切れていく。

攻撃は全て紙一重でかわされる。

さらに大振りだったら強烈なカウンター。

 

攻撃が当たらないことがこれほど、心にのしかかるとは。

瞬間移動でも範囲外に出られない。

それを先読みして回り込まれる。

 

「シャッ!!」

 

フェイントを交えてもまるで効果なし。

真実が見えているというように腕を掴まれて蹴り上げられる。

上空に舞い上がってしまったという事はあの技が出てくる。

 

「……」

 

灼熱の鳥が迫りくる。

その嘴の中に手を突っ込み、渾身の力で引き裂く。

手が焼けるがこの一撃をかき消す。

 

「ここで決めて見せる……」

 

 

技の後のこの隙を逃してはいけない。

私も最大の技をお見舞いする。

これが通用しなければ……

 

「『エレクトリック・パレード』!!」

 

雷撃が包み込む。

バチバチと音を立てて、雷が焦がそうと襲い掛かる。

けたたましい音を立てていく。

この技は通用したのかと一瞬考える。

しかし次の瞬間……

 

「なんてこと…」

 

まるでそれを逆に呑み込みきったかのように体から雷を漂わせていた。

喰らってはいたけれど全てを奪われてしまってはもう成す術はない。

ああ……

 

「私の負けなのね」

 

最後のお願いとも言うべき一撃。

それすらも通用しないのならば納得する。

初めて芽生える想い。

 

「もっと強くなりたい」

 

今までは自分の内側にある枷が外れて強くなっていた感覚。

努力も当然あったうえでの話。

でも、そこに目標となるものがなかった。

あの子を超えることを目標にして次の一歩を踏み出そう。

 

「……」

 

無言のラッシュ。

しかしこの技を私は知っている。

一撃一撃に魂を込める技。

腹部に一撃。

顔面に一撃。

回避しているのに、吸い込まれるように攻撃を当てられる。

不完全な『身勝手の極意』では完成形には叶わない。

それを端的に表している。

 

「悔しいってこんな気持ちだったのね」

 

腹部に気弾の一撃を喰らって場外に吹き飛ばされる。

最早戦闘するための体力もない。

完全に削られた。

倒れていた方がよかった。

しかしこの足で武舞台まで戻らないといけない。

解除した後にあの言葉を言ってあげないと……

 

「……」

 

構えずにただ私の接近を許す。

きっと私の状態を見て追撃の必要はないとなっているのね

 

「強くなったわ……」

 

そう言って頭に手を置く。

その言葉がトリガーのように『身勝手の極意』が解ける。

私を見て引き締めるような顔に変わる。

ただ、必死にこらえている。

 

「よくここまで……本当に貴方は強くなった」

 

祝福するように抱きしめる。

そして私は緩やかに倒れ込んでいった。

 

.

.

 

俺は『身勝手の極意』が解けた時、今まで最も聞きたかった言葉が聞こえた。

ようやくそれを言わせられたのだと深い感動に包まれる。

こみ上げるものを必死に止めていた。

 

「うっうう……」

 

どんな時もそうしないと決めていた。

戦いの途中で雄たけびや感情の爆発があっても。

戦いの後でそう言った真似はしないようにと思ってきた。

相手の心に深い傷を与えてしまう。

慮る心から決めていた。

 

そんな俺を優しく抱き留める腕。

温もりが。

そして再び聞こえる賞賛の声が。

それが染み渡った時、もはや堪えきれなかった。

 

「おぉぉぉ……」

 

嗚咽が漏れる。

そしてダムが決壊した。

決して……そう、決して……

 

「うおおああああ……!!」

 

泣かないと決めていた。

でも止められなかった。

人目をはばかる事をしないでただひたすら武舞台の真ん中で泣いていた。

 

.

.

 

「あんなにも泣くような事なのか」

 

キテラがそんな事を言う。

やかましい、全王様に消してもらうぞ。

そう思った瞬間、シャンパがキテラを諫める。

お前、なんだかんだであいつに若干甘くないか?

ま、感動系の話とかそう言うのにもともと弱い節あったけど。

 

「あいつはビルスとの対抗戦で見てきたが、涙など微塵も見せはしないような男だ」

 

まあ、僕もあいつが泣いたところなんて今回と未来から帰ってきた時ぐらいか?

あの時は血涙とも言うべき状態だったが。

あいつにとってはきっと僕に勝つことより、憧れた男に勝つことより、ジレンに勝つことよりも。

 

「喜ばしい事だろう」

 

だから泣いたのだ。

およそ数年単位ではない、数十年の単位で叶った願い。

己が手でつかみ取ったもの。

今はその余韻に浸らせてやろう。

 

「余は見ていて美しいと思う」

 

へレスもその姿に嫌悪感を抱かない。

むしろ手を叩き賞賛している。

そしてジーンもにやりと笑っていた。

 

「あの時からよくぞここまで……」

 

残念ではあるがと言っていた。

おまえも伸びしろを感じていたからな。

ただ、今まで通りに頑張っていたからこそ、この奇跡があった。

 

「第7宇宙の切り札……噂に違わない」

 

リキールも顎に手を当てて考え込んでいる。

お前の宇宙代表でもかなうかどうか危ういだろう。

声でどうこうできるタマじゃないぞ。

 

「あの腕力を常に発揮されればメタルマンの皮膚など紙細工に等しいだろうな」

 

絶望的な表情を浮かべるアラク。

限定的にしか使えないというのをあいつらは知らない。

せいぜい驚いて慄くがいい。

 

「ルタを呼んで正解であったか」

 

イワンも己の判断に間違いはなかったと合点がいく。

生半可な相手を用意せずに警戒心むき出しで居てくれるのは、自分の発掘力を褒められている感じがして気分がいい。

 

「僕がやったことと言えば少し触れたぐらいだがな」

 

しかも予言魚の言葉に従う形で。

その後に出会ってから、奴は常に僕の願いを聞いたり界王神の所に行って話を聞いて危機に備えている。

どこまでも優秀だった。

ただ、サイヤ人のくせに凶暴性がない事が少し不安というより気がかりでもある。

 

「今はしかしそれはどうでもいい」

 

次の試合のため、あいつが立ち上がり愛しいものに肩を貸して去っていく。

全員が拍手でその姿を見送る。

ちなみにキテラの処分は不問となり、あいつにしては珍しく大きく安堵の息を吐いていた。




短くなりましたが決着回です。
ついに数十年にわたる悲願達成。
しかし満身創痍で次の試合とかいう、実質第7宇宙がギリギリになりました。
キテラ様の邪魔がめっちゃ効いてます。

指摘などありましたらお願いします。


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『正義の頂点』

一回戦終了です。
ダイジェスト気味にしておきました。


俺は今観客席にいる。

激戦を終えて、天使による武舞台の復旧。

そしてついに優勝候補筆頭が出てくる。

対戦相手は第5宇宙のダイヤ。

これでアラク様の宇宙は敗退確定だ。

気の毒である。

 

「強靭な皮膚などあいつにとってみれば……」

 

紙くず同然でしかない。

それほどの世界の住人。

見せてもらうぞ、お前の戦いを。

 

体中から灼熱を噴き出すように武舞台へと昇っていくジレン。

その姿は太陽が人になったよう。

俺たちの戦いに触発されたのだろう。

宮殿が地鳴りを起こすほどの気だ。

 

「ふぅううう……」

 

呼吸を整えるだけでもびりびりと威圧感が伝わる。

相手はこれを受け止め続けなくてはいけない。

さて……始まるぞ。

 

「始め!!」

 

大神官様の言葉とともにジレンがダイヤへと向かっていく。

体中から噴き出す灼熱の闘気が敵を苦しめる。

空気が燃えるように熱気を帯びていく。

サウナの中で呼吸をすることが苦しいように、徐々にその気温に耐えられなくなる。

気で己を防御して新鮮な空気を吸える状態に常にしておくべきだ。

 

「中からやってしまうなど、機転も抜群だな」

 

体の表面ではなく内面からダメージを与えられる。

奴は呼吸を止めながらの戦いになる。

さて、どうやるのか楽しみだな。

 

.

.

 

「かあっ!!」

 

腕を振るう。

音を裂くように。

相手の動向を意に介さず己の高みへ目を向ける。

足をすくわれるなどという事もない。

 

相手は腕を交差して受け止める。

金剛石のごとく硬さ。

確かに最強の防御力と言っても差し支えの無いものだ。

 

「しかし……」

 

一度傷つけばもろいもの。

その弱点を知っているがゆえに打ち付け方を変える。

鉄槌のように当てる。

 

「がっ……」

 

相手が呻いているがお構いなし。

回避することも許さない。

脛を蹴り、機動力も奪う。

どこまでも攻撃の手は緩めない。

 

「速くなろうと関係ない」

 

手に灼熱の気弾を作る。

その一撃で決着になるかもしれない。

 

「終わるか……」

 

相手の突撃に合わせてカウンター。

そして相手が吹き飛んでいく。

気弾に対しては宝石の肌が健在の為、あまりダメージにはならない。

少しだけ感嘆する。

 

「ならば打撃で燃やし尽くすまで」

 

そしてラッシュを仕掛ける。

こちらの拳が砕けるのか。

奴の皮膚がはじけるのか。

それは分からない。

しかし一つだけ確信はある。

 

「ここで負けては意味がないと言う事」

 

奴が勝った以上、俺も勝つ。

俺の全力に相対できる戦士。

今は傷ついているから淡い願いにしかならない。

お前との再戦の切符を手に入れるために。

 

「だあっ!!」

 

脇腹に一撃。

くの字に曲がったところを頭突き。

その追撃で足を掴み、布のようにばさりと降る。

背中をしたたかに打ち付けさせる。

 

「グオッ!!」

 

相手の呻く隙に毒針エルボー。

腹部にめり込んだのを確認すると馬乗りになる。

一方的な体勢だ。

 

「宝石の肌でも延々と振り下ろされればひとたまりもあるまい?」

 

ごんと鈍い音を立てる。

それを繰り返す。

相手の顔が跳ねるがお構いなく。

噛みつきに来るも頭を掴み、阻止。

 

「その程度で緩めるわけないだろ」

 

そうは言ったが相手の皮膚が輝きを放って、目をくらませる。

それを隙とみて、抜けていった。

力を込めればそんな事もできるのか。

 

「だがもう一度通じる事はない」

 

抜けていった先に速度で回り込む。

奴の速度との差がなす状況。

苦し紛れに逃れても無駄だ。

 

腕を取りそのまま背負い投げ。

それを着地して逃れるが腹部がお留守。

 

「だぁ!!」

 

前蹴りをめり込ませる。

威力も速度も申し分なし。

相手は後ろに下がる事も出来ていなかった。

 

「ぐっ…」

 

宝石の肌と言えど衝撃が貫通したか、相手は体勢を崩す。

この場面が好機だ。

ここで仕留めさせてもらう。

 

「終りだ!!」

 

零距離で太陽のように熱量を持った巨大な気弾をぶつける。

気弾により宝石の肌に罅が入る。

 

「がはぁっ!!」

 

武舞台から吹き飛んで壁に激突。

相手は空気を全て吐き出して倒れ込んだ。

相手はピクリとも動かない。

 

「勝者、ジレン選手!!」

 

その言葉を聞き届けて武舞台から降りる。

わずか数分の戦い。

最高の硬さを持つ相手。

それ故に、自分の拳を心配したが杞憂だった。

頑丈さは確かにあの男よりもあったかもしれない。

だが、それでも総合的に見れば物足りないものだ。

 

「待ち遠しいな……」

 

胸の高鳴りが自分に笑みを浮かべさせる。

強さの正しさの証明ができる。

そんな思いでもあったが、自分にも幼子のような単純な楽しみたいという心もあったらしい。

 

.

.

 

「やっぱり次元が違う」

 

神を超えた存在。

そう言って差し支えの無い男。

イワン様たちへの障害に今後なるともいえる。

 

「俺が止めねばならぬ」

 

神の威厳を保つため。

あまりにも奴は危険だ。

人として不信仰の極みであり、名誉ともとれるもの。

しかし神の失墜を表す結果。

 

「神殺しの完遂はさせない」

 

実際に殺すわけではないのだが。

誰もが神を軽視するようになればそれは死と大差ない。

ここで俺が奴を倒して、上がいることを知らせよう。

 

そう言って去っていく中、殺意の匂いを感じさせるものが通り過ぎる。

なるほど、奴が次の試合に出るのか。

相手は第12宇宙のケージン。

しかし、この男の方が強い。

 

「気の毒な事だ」

 

これで残った強者は……

まずは俺。

第6宇宙のバーダック。

第7宇宙のガタバル。

第8宇宙のイエラ。

第11宇宙のジレン。

そしてこの男。

残りはおおよそ決まっているだろう。

 

「見させてもらおうか」

 

そう言って観客席に戻る。

相手の強さを観察をするも楽しめそうにない。

闘争とは同じ次元の者同士でないと実現されない。

 

「相手との差が乖離しすぎている」

 

どうやら特殊な技能もあるようだが、それすら見受けられない。

ただ高速で相手を打ち続ける。

逃がさないように、網の目のような攻撃。

全弾急所攻撃という内容を付け加えると恐ろしさがさらに際立つ。

 

「つまらないものだな」

 

そう言うともう一人の相手が糸の切れた人形のように倒れる。

これで勝者が決まった。

時間にしても一分にも満たない。

上位宇宙と言えどもこんなものか。

軒並み奴らと変えてもらった方がいい薬になるのではないか?

 

その後の試合は見応えはあった。

我が同胞であるケブルーが負けた、純粋に彼への失望と相手への驚きがある。

戦闘経験。

体格。

気の量。

いずれをとってもケブルーがかなう相手ではなかった。

あれがリキール様の宇宙のナンバー2。

ぶっちぎりだからと言ってかまけていてはいつ抜かれるか……

自分がいれば問題ないという傲慢もよくはない。

気を入れなおさないといけない。

次の相手に期待をしながら次の試合を見つめていた。

 

「最後の試合は第12宇宙と第9宇宙」

 

獣の女王と12宇宙最強の戦士。

勝敗は決まっている。

人間レベル最下位相手に2位の最強が負けたら真剣に危ない。

 

「だが無傷というのも有り得はしない」

 

戦闘レベルは上位宇宙と遜色なし。

見せてもらう事にしよう。

 

.

.

 

「始め!!」

 

ラムーシ様がそう言って戦いが始まっていく。

最大の脚力と爪で先制攻撃を放つ。

相手がどの方向に避けても捕捉ができる最高の環境。

 

「ぐっ!!」

 

エルクが右に避ける。

それを追って次は尻尾の一撃を振るう。

目を狙う。

 

それを掴んでこっちに引き寄せる。

膂力はかなり高い。

しかし……

 

「気弾で抜ければいい」

 

掴んでいる腕に気弾を放って着地。

その脇を蹴りが通り過ぎる。

それを掴んでジャイアントスイング。

ミスミスと音を立てて、相手の体がこの私に宿る桁外れの膂力で上に向いていく。

 

「ハアッ!!」

 

上空に放り投げてそのままフィニッシュへ持っていく。

即座に決着を急ぐのはこれが一戦だけではないから。

くじ運次第ではあまり休養も取れずに戦う事になるからだ。

 

「この技を受けて見なさい」

 

空中で掴んで体を固める。

頭を地面に向かわせた状態で、腕を交差させて自分の足を、相手の足の外側から内側に向かって差し込む。

振りほどけないほどの膂力を振り絞る。

 

「『クイーン・クレイドル』!!」

 

頭部から叩きつけて武舞台を揺らす。

相手が肺の中の空気を押し出すような声を上げると、技を解いて臨戦態勢のまま相手を見る。

 

「ぐうう……」

 

呻き声をあげながら相手は立ち上がる。

頑丈ではあるが頭にあれだけの襲撃。

きっと平衡感覚が狂っている。

ここで追撃をかけねばなるまい。

 

「『レオ・バレット』!!」

 

爪先蹴りを顔面に叩き込む。

そしてそのまま体の柔らかさを活かして両足で首を挟み込む。

 

「『サバンナ・ダイバー』!!」

 

回転して再度武舞台へ体を叩きつける。

連続で三連撃。

相手の意識はどうなっている?

 

「舐めるなよ!!」

 

こっちが振り向こうとした瞬間、首を掴んでくる。

そのまま持ち上げられて首から音が鳴る。

そして仕返しとばかりに武舞台へ叩きつけられる。

 

「ぐっ……」

 

そして跳躍で膝を腹部に、

回避をするも武舞台に穴が開く。

なんという一撃だ。

こればかりは感嘆する。

自分の頑丈さを打ち破る武器はまだ残っていたんだと。

 

「やってくれるわね!!」

 

そういって手四つの形へ持ち込む。

力比べで勝ってそのまま押しつぶす。

みしりと音を立てて、相手が片膝をつこうとする。

 

「ハアッ!!」

 

一気に力を込めて仕上げに押しつぶそうとする。

だが相手も抗う。

今まで以上の力を振り絞って体勢を五分に持ち込む。

 

「この女め……」

 

こちらに蹴りを放つ。

重々しい蹴りが掠る。

体がよろめいた隙に足を掴まれる。

 

「ふんっ!!」

 

片手で吊り上げるとそのまま上空へ放り投げる。

気弾の追撃が迫る。

 

「はっ!!」

 

それを片手で弾いて着地。

相手の気弾の威力に僅かに手を痺れさせる。

 

「徐々に上げていっている」

 

ギアの音が聞こえるような錯覚。

はまっているのが見て取れる。

あそこで仕留めなければ敗北は必至。

あれほどの大技も意味をなさない。

万策尽きたも同然だ。

 

「これが上位宇宙の強者」

 

総合力が高いのだと知る。

しかしここで痛手を負うようでは……

 

「私も捨てたものではないわね」

 

とはいうものの相手の起き上がるのに応じて、私も己の限界を感じる。

全ての大技を使い、それでもなお揺るがぬ山。

この戦いが終わればキューブを借りて別の宇宙で修業でもしようかしら。

 

「参りました」

 

そう言って降参をする。

全部の技を使っている事も承知の大神官様が了承をしてすぐに2回戦が始まろうとする。

頑張ってね、勝った下位宇宙のみんな。

自分の力不足に歯噛みと内心の悔しさをたたえたまま武舞台から退場した。

 




結構合間があいたので短めの話で第一回戦を終わらせて態勢を整える方向へ。

残っている選手
第1宇宙:ルタ
第6宇宙:ヒット,バーダック
第7宇宙:ガタバル
第8宇宙:エキ・ロズクォ,イエラ
第11宇宙:ジレン
第12宇宙:エルク

オリキャラもかなり残りましたが八人も入れると当然ですね。
次回の対戦相手のカードがかなり悩ましいです。
指摘などありましたらお願いいたします。


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『邪悪爆誕』

ジレンへの勝ち筋を見せる回です。
とは言っても今回限りのやり方です。



第2回戦。

全王様ルール適用による再シャッフル。

今回は紐が複雑に絡み合ったものになっている。

両端をもって引っ張るとほどけていき、その端を持っている者同士での戦い。

 

「運命のように引き寄せられたか……」

 

余りにも力強い。

そして端が僅かに燃えている。

それだけで十分だった。

 

「ジレン……」

 

ピオーネの相手で満身創痍ともいえる。

そんな中の戦いなど自殺行為に等しい。

 

「因縁がある意味深い野郎だ……」

 

バーダックさんがエルク。

バチバチと火花を散らしあう。

 

「破壊の化身が相手とはな…面白い」

 

ヒットがルタ。

嵐の前触れのような静けさを感じる。

 

そして第8宇宙同士の潰しあい。

良い見方をすれば確実に生き残れるというわけだ。

 

.

.

 

武舞台の修繕。

それが終わると互いに向き合う。

お互いの戦意をむきだしに。

炎のように燃え盛る気が互いを包んでいる。

 

「始め!!」

 

その言葉と同時に『身勝手の極意:兆』の状態となって拳を突き出す。

それと同時で示し合わせたようにジレンも拳を突き出す。

どちらからともなく。

互いの顔に打ち付けあうと次は跳躍。

後ろ回し蹴り。

互いの足が交錯して着地。

高速タックルをこちらが放つ。

それを力づくで切った瞬間を見抜き、首を両手で持ち上げようとする。

しかしそれをバックステップで回避。

またも、互いが睨みあう展開となった。

 

「流石だな」

 

ジレンがそう言ってまたもや駆け出す。

速射砲のごとく蹴り。

それを後ろへ跳躍して威力をそのままカウンターの形で胸元へ叩きこむ。

ジレン自身の威力となれば話は別物。

たたらを踏む形で後退。

その隙を逃すまいと瞬間移動で後ろを取る。

それを読み切り裏拳を放ってきたのか、鼻先をかすめる。

 

「喰らいやがれ、『プライド・オブ・ラクタパクシャ』!!」

 

本来ならば終盤に放つような大技。

しかしこいつ相手には惜しまない。

こんな隙のある状態なんてそうそうないのだから。

鳥が啄むようにジレンを呑み込んでいく。

敗北という臓腑まで嚥下しろと力を込めていく。

 

「焦りすぎだな…」

 

抵抗の為に力を込めているジレン。

指摘は間違ってはいない。

しかし死闘を繰り広げた以上、自分の限界は近い。

ならばいつもより急いだ試合展開は当然だ。

 

「珠玉の技にも弱所があるようでは……」

 

腕を突っ込んでそこから引き裂くように。

ダメージこそあるものの、それでは倒せはしないと誇示をする。

 

「半分にも満たない威力だ」

 

完全に真っ二つにして着地をする。

太陽を思わせる熱気を発しながら怒っている。

 

「そんな早々に終わらせようなどつれない真似はやめろ」

 

じりじりと大気を焼くように接近してくる。

観客も息を呑んで見るジレンの全力。

 

「もっと戦おうじゃあないか」

 

頬を吊り上げて笑みの形を作る。

昨日とはまるで別人のような表情。

好敵手を見つけたが故の笑みなのだろう。

 

「いくぞ!!」

 

空気が爆ぜる。

さらに蹴りを放ってくる。

腕を交差して受け止めるが振り抜かれて強引に宙を舞わせられる。

 

「ぐっ!!」

 

さらに後ろに気配を感じる。

後ろに向かって気弾を放ち、地上に近づく。

しかし……

 

「甘いぞ!!」

 

首を掴まれ一気に降下。

こちらよりも先に読んでいた。

武舞台に叩きつけられて跳ねる。

それを追いかけてくるがこちらも黙ってはいない。

 

「フンッ!!」

 

拳を合気道の要領で受ける。

そしてその威力のまま場外の壁へとジレンは叩きつけられた。

己の一撃の重さがそのまま返っていく。

これは流石のジレンも効くだろう。

 

「むむっ……」

 

起き上がるジレンへ頭突き。

後ずさった所に延髄切り。

追撃の顎アッパー。

頭部中心の三連撃。

だが……

 

「どうした、ぬるいぞ!!」

 

カウンターの一撃で殴り飛ばされる。

やはり疲労の蓄積が顕著だ。

昨日ならばダメージになった攻撃が弱くなっている。

 

「シャッ!!」

 

着地をして瞬間移動。

死角に潜り込むのではない。

中間の距離を取る。

こちらからは回避できない。

しかし相手も回避は厳しい。

最大威力の拳をぶつけあう。

 

「面白い……!!」

 

ジレンがその挑発に乗る。

間合いに入った瞬間、空気がまたもや爆ぜる。

こちらが腹部に打ち込めば、顔面を打ち据える。

意識が飛びそうな一撃。

歯を食いしばり、膝の力を抜いて耐えきる。

 

「オラァ!!」

 

相手を突き上げていく。

ジレンの顎が跳ね上がると、こちらの首がもげる威力の一撃が飛んでくる。

我慢比べというにはあまりにもきつい打ちあいだ。

 

「ぐっ……!!」

 

そんな中で繰りだされた、擦るような拳。

それが瞼をわずかに切り裂く。

距離を取って血を拭おうとする。

その致命的な隙を逃すような男ではなかった。

 

「こちらとしても不運な怪我に付け入るのは不本意だが……」

 

あの技のセットアップに入る。

脇下に腕を差し込んで『ダブルアーム・スープレックス』の形を作る。

そこから渦を巻くように旋回。

そして膂力のままに上空へ向かってスープレックスの投げを放つ。

 

「ぬうう……」

 

体が風圧の為に動かせない。

そんな状態からジレンが背中合わせとなる。

腰を抱えて海老ぞりに。

そして抵抗できないように急降下。

風圧がブラックアウトに近い現象を引き起こす。

徐々に力が抜けていく。

そして武舞台へ無抵抗のまま……

 

「『世塵神灰』!!」

 

武舞台へと頭から叩きつけられた。

意識が徐々に遠のいていく。

まるで誰かが呼ぶ声がする。

よく聞く声が……

 

.

.

 

「やはり無理があったか……」

 

僕はため息をついていた。

あの女との死闘で全てを使い果たしたであろう。

そんなあいつがジレンを倒せる可能性など皆無。

それでも向かっていくのはサイヤ人の性だろうか?

 

顔を横に向けるかベジータが冷や汗をかいている。

ジレンの強さに対してではない。

まるでもう一波乱あるかのような……

 

「なんでそんな顔をしている?」

 

そう聞くと重々しくベジータが口を開いた。

恐れているかのように。

 

「ガタバルの頭部に受けた衝撃がどれほどか想像つきますか」

 

そう言われてもな……

ちゃちな星なら崩壊するようなレベルじゃないのか?

それを2回だ。

 

「実はカカロットの今は頭に強い衝撃を受けて産まれたものなんです」

 

赤子のころは手も付けられぬ乱暴者だった悟空。

それが崖から落ちた際に頭を打ったことで完全に180度変わってしまった。

つまりベジータが言いたいのは……

 

「サイヤ人そのものの本能に立ちもどってしまうという訳か……!?」

 

そうなるとぞっとする。

あいつが仮に180度変わってしまった場合……

思慮深さを捨てた悪魔。

むき出しの戦闘民族の残虐性。

そして何より胸糞の悪い傲慢さ。

 

「来るぞ……!!」

 

邪神さながらの邪悪な気。

ジレンが真赤な太陽ならばガタバルはどす黒い太陽。

全てを燃やし尽くすような存在。

 

「止める準備をしておけよ、ウィス……」

 

僕は足に力を込めて動向を見ていた。

息を吸い込む。

そして……

 

「アァアアアアアアアアアア~!!!!!」

 

星を震わせる叫び声。

ケダモノになったのかと錯覚した。

一気にジレンへ近寄って間合いが詰まる。

第2ラウンドが始まろうとしていた。

 

.

.

 

「感謝しているぜ、ジレンよ……」

 

あの頭への衝撃で優しいあいつとは違う、凶暴な潜在意識であるオレが目覚めた。

とは言っても前日の一撃でとっかかりが生まれたおかげだ。

もう一度眠らされたら生半可なことでは出てこない。

オレはようやく重苦しい檻から出た爽快感を噛みしめながら話す。

戦いは凄惨でなくてはいけない。

尊厳を踏みにじらなければいけない。

華々しさはそこにいらない。

敵の苦痛が我が力。

敵の恐怖が我が力。

残るものは友情という名の種もまかれず、芽吹くことの無い不毛の大地。

敵を慮らない圧倒的な力こそが存在意義。

 

「強きものを喰らい、頂点へ立ってみせる!!」

 

そう言って駆けだす。

ジレンが攻撃を放つが体が勝手に反応する。

ああ……自分の体に委ねているこの快感。

願わくば眠らないで済めばいいのに。

今まで解き放たれなかった事からの解放。

 

「オレはオレの為に今戦うのだ……」

 

そう言うと体中からさらに力が溢れる。

それを見て驚愕から笑みへと相手も表情を変える。

まるでそれを待っていたかのように。

 

「ハアアッ!!」

 

気弾を放ってくるが指先で方向を変える。

全然こんなじゃあ足りないぞ。

この力を持ってから感じる全能感。

どんな相手にも勝てるという確信がある。

 

「楽しませてくれよ!!」

 

気弾とともに接近して肘打ち。

それを喰らって吹っ飛ぶジレン。

そのコースに先回りをしていく。

 

「ハアッ!!」

 

上空から蹴って武舞台へ叩きつける。

しかし相手もさるもの。

その勢いを利用して跳躍。

 

「シッ!!」

 

裏拳を放ってくるがそれを瞬間移動で回避。

そして懐に現れる。

一気にガードをぶち破るようにアッパーを食い込ませた。

 

「うぐっ……」

 

ジレンが呻く。

その隙に腰を抱え込む。

そして持ち上げていき……

 

「でりゃあ!!」

 

単純に武舞台へ投げ捨てる。

それだけでも威力はすさまじい。

相手の足を掴んでぐるぐると旋回する。

 

「ヒャアッ!!」

 

上空へと舞い上がらせる。

それを追いかけるように跳躍を行う。

右のニードロップを首筋にあてがう。

さらに上乗せをするように左足を乗せる。

それでは足りないというように肘を左膝に当てて威力を一点集中。

 

「いくぜ、『敗断勝招』!!」

 

名前はそのままの意味を持つ。

この一撃で敵を打つ。

故に己の敗北の道は断たれ、勝利をを招き入れる。

武舞台の全てが砕け散る。

ジレンの意識は残っているか?

 

「凄まじいほどに容赦がないな…」

 

僅かに微笑んで起き上がる。

だがこちらの眼を見ると怒りを噴出させる。

まるで背後にある何かを見るように。

こちらが口角を上げて相手を見るとさらにそのプレッシャーが跳ね上がった。

 

「止めねばならん……」

 

そう言うと顔を掴み叩きつけてきた。

この野郎……

 

「易々と触るんじゃねえよ……」

 

隙をついたつもりだろうが甘いんだよ。

全くイライラする。

 

「お前の潜在的な邪悪さが徐々に出てきているからこそ、お前をそちらに行かせるわけにはいかない……」

 

そう言ってこちらを空中へ投げる。

この程度で……

 

「どうにかできるとでも思ってんのかい!!」

 

くるりと反転して睨む。

ジレンは真正面に既に立って拳を放つ構えをしていた。

 

「思っていないさ」

 

そう言うと連続して空気の避ける音がする。

回避をすれば皮膚を切り裂く。

喰らえば昏倒か。

だが、この攻撃すら……

 

「百八の拳を瞬時に叩き込んだが……」

 

効いてはいない。

黒い気が俺の周りを取り囲んでいる。

 

「お前如きがオレに触れることはもはやできんのだ」

 

そう言ってじりじりと近づいていく。

ああ、黒い力が漲るたびに奴らが矮小に見えてくる。

塵芥風情が俺に触れようとする。

痴れ者よ。

 

「勝てるはずもないのにあがくな……」

 

最強と言えど優しさの無いオレにかかればこの程度だ。

眼前に掌をかざして嘲り笑うように呟いた。




頭への衝撃で人格反転という原作設定を掘り起こしました。
最初はましでしたが時間経過とともに徐々にあの二人に近づいていくという。
『利己的』故に身勝手の極意を任意発動可能という凄さはあります。

指摘などありましたらお願いします。


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『正義の呼びかけ』

邪悪タイム終了
そして決着です。


「そんな平然と突き出すなど……」

 

そう言って払ってきた腕を掴む。

圧し折るために捻っていく。

ジレンが力づくで外そうとするが抵抗すら許さない。

 

「ハアッ!!」

 

逆に風車のように回って回転の反発力でこちらの腕から逃れる。

そして背中を取ると上空へと打ち上げる。

サーフボードのようにオレの上へと乗る。

 

「『山龍牙』!!」

 

地面にめり込ませてくる。

そこから抜け出す。

体がぐらりと揺れた。

 

「オレを目覚めさせるだけはあ……!?」

 

頭の中で声が響く。

すぐさまあの衝撃から戻ってくるとは。

彼方に居ればいいものを。

 

「あの男を完全に追いやるなど無理なのだ」

 

そう言って抱え込まれる。

地面に叩きつけられる。

そして上空へとジレンが飛び上がる。

 

「俺の責任ではある……」

 

そう言いながら技を放とうとする。

その構えは、見覚えがあるものだった。

両手で放つ技でこの気の高まりは……

 

「お前を連れ戻すには関わり合ってきた人間の技で打ち倒すのが最適だ……」

 

.

.

 

「あの野郎、俺の技を……」

 

だがそれはどうでもいい。

あんな状態のあいつを見たくない。

いつもの優しいあいつに戻ってほしい。

皆がきっとそう思っている。

 

「『ファイナルフラッシュ』!!」

 

俺より断然太い真紅の光線がガタバルへ直撃する。

それでもあまり効いていないようでむくりと起き上がる。

だがジレンの猛攻は終わらない。

 

「『ゴールデン・デス・クラウン』!!」

 

フリーザの技で呑み込まれていく。

地面へ埋もれていき、気の余波がこちらまで押し寄せる。、

そして、あいつは這い出てジレンを睨み付けた。

 

「『魔穿撃滅波』!!」

 

ピッコロの技が放たれるが両手で受け止める。

その技だけでは終わらせない。

一瞬、時が止まったような錯覚……

 

「『時飛ばし』……」

 

吹っ飛んでいく。

まさか正義の象徴が、一人を戻したいために罪になるような技を使うなど……

お前はそれだけの心を受け止めても何も響かないのか!!

いつまで寝ていやがる!!

 

「がはっ……」

 

頭を押さえながら立ち上がる。

その隙を逃しはしない。

腹に手を当てて追撃をする。

 

「『リベリオントリガー』!!」

 

吹き飛ばされて観客席の壁にぶつかる。

崩れ落ちずに足をつけてジレンへ向かっていく。

 

「やはり邪悪なものに機微などないか……」

 

悲しみに満ちた眼差しでガタバルを見ていた。

弱くなってしまった好敵手に。

己の軽率さがこの戦いへ傷をつけたのだと。

 

「『爆力魔閃』!!」

 

悟飯の技でカウンター気味に吹き飛ばす。

それを追いかけるように頭を掴んで叩きつける。

掌に気が集まっていく。

 

「『ギガンティックミーティア』!!」

 

ブロリーの技でとどめとなる。

最大級の威力の技を立て続けに放ったジレン。

肩で息をするほどとはな。

まあ、無理もない。

 

都合、七度の大技。

最後にとてつもない大きさの気弾を頭部へ直撃させた。

地面全体が陥没してしまう一撃。

 

それが終わるとジレンは背中を向けて歩いていく。

再びガタバルが起き上がる事を確信している。

中心までジレンが行った所で俺の耳にもあの声が聞こえた。

 

「ぬぐぐ……」

 

片手をついてよろめくように起き上がる。

気の質が変わっている。

どす黒さは無くなり太陽のような錯覚もない。

本来のあるべき姿に戻っている。

 

「すまない……」

 

立ち上がってジレンを見る。

『身勝手の極意:兆』の状態となっている。

やはりピオーネ以外には極めた姿を出せないのか。

 

「いや、ウォーミングアップをしただけだ、気にするな」

 

そう言ってさらに気を噴出させるジレン。

こいつ……底なしか。

いや、きっとガタバルが戻った時の為にまだ温存しておいたのかもしれない。

第3ラウンドが始まろうとしていた。

 

.

.

 

頭部への一撃を喰らってから遠い彼方に居た。

そこから技をくらい、光が見えてきた。

その光へと進んでいき、何とか自分の意識を取り戻す事が出来た。

戻る間に吹っ飛んでいくもう一つの意識があった。

どこかわからない、俺よりも遥か彼方。

もう二度と目覚めることの無いような場所にまで追いやられているだろう。

 

「待たせてすまなかった」

 

必死に向かっていたがそれでもこれだけかかってしまった。

これまでやって絞り切らずに戦うことこそ、敗北こそお前への侮辱。

今出せる全てで、疲弊したお前と相対しよう。

 

「ハアッ!!」

 

前蹴りを放つ。

それを回避するが瞬間移動。

頭上に出て『フランケンシュタイナー』で投げる。

くるりと反転させて着地を決めるが追撃も用意してある。

 

「背中にいるんだぜ!!」

 

『チョークスリーパー』で絞め落としにいく。

首の筋力で弾きだそうとするが無駄だ。

このまま決め……

 

「うおおおお!!」

 

ジレンが雄たけびを上げて走り出す。

その先には観戦席の壁。

すぐに察した俺は離れようとする。

しかし間に合わずにジレンの思惑通りの一撃を喰らった。

 

「ぐはっ!!」

 

腕を離してしまい壁からずり落ちるところをジレンは逃さない。

体をこちらに向けて拳を構える。

そして弓を引くように勢いをつけて……

 

「ふんっ!!」

 

腹部へもろに一撃が入る。

一気に攻撃を加えてきた。

一撃の重さも速度も変わらず絶え間なく打ち続けられる拳。

腹筋を総動員して軽減するが……

 

「ぐふっ!!」

 

血反吐が出る。

内臓へのダメージがかなりあるということだ。

それを延々と打ち続けられる。

僅かな隙を見つけてこの流れを止めないと……

 

「ふっ……」

 

呼吸というよりも力を込める瞬間。

この間に両腕を脇に挟んで逃れようとする。

正直『身勝手の極意』でもここから抜け出すような動きなどあるはずもない。

瞬間移動の集中すら不可能なのだから。

 

「甘い……!!」

 

グイっとこちらの脇から腕を引き抜く。

そして体勢を変えて足に力がこもっていく。

体重をかけて放とうとしている。

 

「終りだ!!」

 

その言葉とともに空気が爆ぜる。

気づくころに足が腹部にめり込む。

これは好機だ。

ここを凌ぎきる。

壁を突き破る。

 

「終わったか……」

 

腹部にめり込んでいる足を引き寄せていく。

最後に掴もうとした抵抗。

顔を俯かせて気まで消した。

最後の技を叩き込むために。

 

「ハァア……」

 

口から漏れ出るのは気合。

執念にも似た瘴気。

勝利を手繰り寄せるための芝居。

その成就が目の前に迫る。

 

「ぐっ!!」

 

危機感からジレンがすぐに振り払おうとする。

しかしもはや手遅れ。

お前の懐に既に入った。

魂を捧げる一撃を、お前に。

 

「『ソウル・オブ・サイヤン』!!」

 

腹部に完全に入る。

毛先一本分も残らない一撃を。

全てを捧げる。

ジレンも回避できず喰らっていく。

 

「がああああ!!」

 

振り抜いてそのままその場を一回転。

ジレンは吹っ飛んでいきそのまま逆方向の壁を突き破っていく。

俺はそのまま背を抜けている。

俺の全力をかけた一撃。

その一撃は決まったのだ。

それで仕留められていないなどとは思わない。

今まで苦楽を共にした肉体の全てをかけているのだ。

その信頼は微塵も揺るぎはしない。

 

「……参った」

 

耳に聞こえた言葉。

それはジレンの降参だった。

何事かと思って皆が視線を向ける。

俺もその言葉を聞き視線を向けた。

 

「指一本も動かせん……」

 

這いずってこちらに向かってくる。

全力の一撃が自由を奪って立つことさえ許さない。

このまま踏みつけるなりして気絶させればこちらの勝ち。

それを分かっているからこそ、降参を選んだのだろう。

だが言える事は……

 

「お前が俺を連れ戻さなければ勝っていただろう」

 

俺という存在のために戦ったが故の敗北。

放っておけばジレンの勝利だっただろう。

ビルス様や全王様の出番になっていたかもしれない。

 

「有難う」

 

その言葉を言ってジレンを抱え込む。

勝利を譲ってもらったような形だ。

もう力なんて欠片程度も残っていない。

だがこれだけしてもらって棄権なんて言えない。

戦うだけは戦って散ってしまおう。

俺は第11宇宙の人たちが集まっている場所にまで運んでいった。

 

.

.

 

「ジレンの正義の琴線に触れるほどの邪悪な力……」

 

俺達は戦いの生末を見届けていた。

一度勝った相手だから優勢に進められる。

ジレンの強さへの信用も有り、そう信じていた。

だが相手の心の反転。

あれは傍から見ても恐ろしいものだった。

利己的故に一回戦のあの状態を任意で引き出す。

 

きっと俺があの場に居ても同じ決断だっただろう。

もしくは殺してでも……

しかしジレンは力で引き戻した。

 

「すまない……」

 

座り込みながら謝罪をするジレン。

今までならば決して俺達にこのような事を言わなかった。

どこかあの男と触れて柔らかくなったような気がする。

俺達がいえる事はこれだけだ。

 

「謝るな、お前は十分にやってくれた」

 

俺が残っていればお前が気負う事もなかった。

俺達のふがいなさがお前に背負わせすぎた。

本来であればこちらが謝ってしかるべきなのだ。

 

「あの男と続けていれば勝てていたか?」

 

無論、邪悪な方という意味だ。

引き戻すような真似をしなければどうだったのか。

其れゆえに勝利を手放したのかどうかが知りたい。

 

「いや、負けていた」

 

その答えに驚愕する。

どうやらジレンは徐々に力を上げているという事に気づいたらしい。

つまりはあのままならばジレンの強さを超えて負けていた。

サイヤ人の特性が一気に溢れてしまったのか。

恐ろしい事だ。

 

「だからもし負けるとしても納得のいく形を作った」

 

邪悪なあいつに負けるのであれば、せめて清廉なあいつでと。

結果としては紙一重になってしまった。

そう呟いた瞬間、なんとなくわかった気がする。

負けてもあの優しい目の男ならば納得できてしまう。

 

「お前らしい形で良かった」

 

ベルモッド様がジレンに言う。

その声には悲しみもなくただ楽しんだというような喜びの声だった。

 

「邪悪を許容して勝利するお前など見たくないからな」

 

助けずに絞め落として一時的に止めることもできた。

それをしないからこそ、お前という存在がある。

 

「こっちは別に今より上を望んではいない」

 

消滅があると思っていたから必死であって、そんな地位に執着はしていない。

そう言って肩をすくめていた。

 

「今日で五分ならば次こそ決着をつければいい」

 

その時まで錬磨をしよう。

そう言うとジレンは頷いて疲労からか眠りにつくのだった。




ジレンが目を覚まさせるために最大奥義のオンパレードとかいう主人公みたいなことしていました。
なお、今回ジレンが使用した全ての技は今回限りです。
邪悪バージョンは今回ぐらいですね。
頭部ダメージによる覚醒は絶対使う予定でしたので消化できて何よりです。

指摘などありましたらお願いいたします。


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『殺意と破壊』

ヒットとルタの対決です。
一話でまとまりそうな戦いの場合は一話にします。


第1試合が終わって天使たちの復旧が終わる。

俺の戦いが迫っていた。

心は高鳴っている。

神を超えるものと戦えるなどそうない機会。

己の技術の粋をつぎ込めると思うと力が入る。

 

「勝って第6宇宙の弾みとなればいいがな」

 

そう言って相手が立つ武舞台へ向かっていく。

巨躯が佇んでいる。

氷点下に咲く雪の華を思わせる。

 

「強き人よ、お前を挫いて頂の道を拓こう」

 

そう言って気を全開にする。

それは天に昇り、また空気が凝固していく。

やがてそれは雪となって降り注ぐ。

 

「俺はそう簡単に倒せんぞ」

 

そう言って一本拳の構えをする。

相手は猛獣が狩りをするように四つん這いのような形で低い体勢を取る。

始めといった瞬間、トップスピードで突っ込んできた。

 

「なんという愚直さ……」

 

『時飛ばし』で回避をする。

そしてそのままカウンターを放つように動く。

だが驚愕の動きを見せる。

 

「それは読んでいた!!」

 

こちらのカウンターに合わせてカウンターを放つ。

まるで獣じみた嗅覚。

まさか、基本スペックの速度だけで『時飛ばし』の領域に来るつもりか?

 

「読んでいても……」

 

そのカウンターを合気の要領で利用する。

すると面白いように吹っ飛んで壁にぶつかる。

追いかけずに相手の出方を観察する。

 

「ミステリアスアーツをマスターしているとはな……恐れ入ったぜ」

 

第1宇宙の呼び方か?

とにかくこれがある以上、ある程度の相手の攻撃は無効化できる。

あのジレンという相手にも有効だっただろう。

 

「俺だってそれなりに勝利への渇望も持ち合わせているからな、有効な手は作っている」

 

そう言ってにやりと口角をあげる。

俺とて人間なのだ、冷たいだけではない。

勝利への熱を他より感じさせないだけ。

若い奴らが多いから年長者としておおっぴらにしなかったのだ。

じりじりと近寄って相手の急所を見定めていた。

 

「だが……克服してくるんだろう?」

 

そう言うとさっきよりも速い速度で接近してくる。

こちらが手を添えようとした瞬間、変化してきた。

足に体重がかかっている。

歯を食いしばって跳躍をする。

 

「速いな……」

 

反応するがそれを上回る速度で動いてくる。

着地と同時に再度跳躍。

その軌道はこちらへの突撃。

 

「ハアッ!!」

 

確かイルカとかいう奴らを模した名前の動き。

……思い出した、『ドルフィンキック』だ。

千年も生きていると知識だけが蓄積される。

そんな動きで俺の背中に頭突きをしようとしていた。

 

「甘い……」

 

それを避けるがさらに恐ろしい動きを披露する。

肘打ちを誰もいない場所へと放つ。

なんも変哲の無いものではある。

だが極められたもの。

それは空気を裂いて軌道修正すら平然と可能にする。

 

「ぐっ!!」

 

ガードをしていたが重い一撃を喰らう。

相手の動きが予測できない。

全てがリングだ。

空中であれほどの動き、舞空術も抜きで出来るとは。

 

「これが全宇宙最高峰と言われる第1宇宙最強戦士か……」

 

特別な力はそこになく。

正統派を極めた怪物。

極めたがゆえに法則が普通にふるまっても捻じ曲げられるという恐ろしいもの。

 

「面白い」

 

殺意を漲らせる。

おおよそ、どんな技を使っても死なないという確信。

それが大胆にも俺にそれを決意させる。

 

「お前のはく製でも作ってみるか……」

 

それは全ての殺人技の解放。

不慮の事故とは言い難いが、それくらいしないと勝てるとも思えん。

 

「受け止めろ」

 

そう言って指一本を突き出す。

狙うは目。

明かりを断つ。

 

「ふんっ!!」

 

掴もうとするがそれも予測済み。

より悲惨な結果になるように残りの指を広げて動きを変える。

指を相手の指の間に差し込み、鋏の形へ指を広げる。

そして切り裂いていく。

相手の掌は血が滴ってパックリと割れてしまった。

 

脇腹に指を捻じ込む。

貫く痛みにも表情を変えないのは素晴らしい。

だが手を緩めはしない。

 

「恥骨でも割るか……」

 

あるとあらゆる急所に効く技を放つ。

一撃で息絶えてきたが故に試す事すらできなかった。

それがこの時だけ叶う。

至福とも言うべき時間が流れている。

 

「『時飛ばし』」

 

0.5秒の中で相手の懐に入る。

そして躊躇わずに股間近くにある骨を狙って蹴りを繰り出す。

痛みに呻いて崩れ落ちる。

だがその眼には闘志が宿っている。

面白い、まだまだ技を使っていいのだな。

 

「があああ……」

 

相手が力を込めるとピキピキという音と裂けていた箇所が戻っていく。

脇腹の傷も塞がっていく。

まさか再生能力持ちだったとはな。

皮膚も僅かに厚くなっている。

骨も硬さを増しただろう。

 

「だが……」

 

骨が治ろうと、砕きやすい『点』がある以上は何度やっても同じ。

こちらの技の餌食になるだけだ。

次が息を止める技。

 

「はっ!!」

 

口から怪光線を出してくる。

腕と足の動き以外にも組み込んできたか。

それを避けてしまえば無防備に曝け出している。

その口に拳を捻じ込んでやる。

 

「ふっ!!」

 

深く捻じ込まれた拳は気道を圧迫。

そのまま、酸素の供給を行わず意識を手放させる結果になる。

しかし相手もそれを逃すわけもない。

 

「……!!」

 

気絶をする前に自分の喉に穴をあけて空気を確保する。

そして捕まえたというように腹部にアッパーが叩き込まれた。

舞い上がる事も出来ずに浮かされる。

 

「がっ……」

 

腕を引き抜いて二撃目を避ける。

その腕を掴んで『時飛ばし』。

瞬く間に体勢を崩して、その勢いでへし折る。

 

「ぐおっ……」

 

相手が片手を地面に着いた瞬間に頭部を蹴りあげる。

さらに背に肘打ち。

足のアキレス腱を固める。

相手を痛めつける動きだ。

 

「殺す技単体ではそこまで意味がないと分かったのでな」

 

痛めつけて抵抗するのが難しい状態になったら放つ。

後頭部やこめかみ。

腎臓などの内臓。

それらもまだできていない。

 

「まだ楽しめる」

 

そう言って一本拳を喉に入れる。

呼吸が苦しくなった瞬間、首に足を絡めて四の字を作る。

そしてのまま体重をかける。

 

「ぐぐぐっ!!」

 

力を入れていくと驚くべきことが起きる。

首が想像したものを超え、徐々に太くなっていく。

それに苦笑いを浮かべて技を解く。

 

「フッ!!」

 

降りて顎に頭突き。

ぐらりと揺れたところに捻じ込むように腎臓へと思い切り放つ。

めり込んで嫌な感触が拳に伝わる。

 

「ぐえぇえ……」

 

血反吐を吐く相手にさらに後頭部へ一撃。

相手がよろめいている隙にこちらは気弾の構えをする。

気の高まりを知ってもどうもできない。

 

「『アイオーンの慟哭』」

 

渦を巻いた気弾が相手を呑み込む。

其れの煙が晴れるよりも速く相手の懐へと入る。

隙を一つも見せぬように努める。

 

「砕けろ……」

 

前蹴りが腹部に突き刺さる。

肋骨が砕ける音がする。

それも胸骨もまとめて数本。

どう考えても大ダメージだ。

しかし相手は予測を凌駕してくる。

 

「捕まえたぁ!!」

 

痛みによる脂汗をかきながら言ってくる。

こちらの前蹴りで破壊されているにも関わらず掴んでくる。

そこまで本気か。

 

「ぬあああああ!!」

 

足を持たれてそのまま武舞台に叩きつけられる。

受け身を取らせぬ一撃に肺の空気が絞り出される。

そして上空に投げ飛ばされる。

 

「ふんっ!!」

 

肘打ちで肩の骨が折れる。

僅か一撃で戦況を変える男。

再生能力がないからこそ気をつけなければいけなかった。

少しばかりの高揚感と頑丈さに酔いしれてしまった。

 

「馬鹿な真似をしたものだ」

 

呼吸で痛みを逃がし腕の先だけでも使えることを確認する。

これならばやれる。

その確信をもって一気に接近。

 

「『時飛ばし』」

 

最速のステップで相手の姿が見える。

やはりこの世界へ侵入をするか。

しかしそれをしても……

 

「『カイロスの短針』」

 

カウンターでケガをしていた腕を突き出す。

虚を突かれた相手の顔面へと入る。

そこに追撃でこめかみへ痛烈なハイキックを入れる。

 

「お前を倒すまでは終わらんさ」

 

ダウンした相手の頭に踵落としをする。

それによって跳ね上がる。

首を掴んで上空に放り投げる。

その軌道に向かって自らの足を針としてドロップキックを相手へと放つ。

 

「『クロノスの長針』」

 

腹部に突き刺さり、相手が落ちていく。

着地を決めて相手を見る。

 

「どこを見ている?」

 

いつの間にか後ろにいた。

落ちて行ってその次に俺が落ちていく。

そしてこちらの着地に合わせて跳躍をして後ろに回ったのか。

 

「ぐはっ……」

 

もう片方の腕を防御ごと圧し折る拳。

肘が解放性の骨折になる。

受けられない拳というのは厄介だ。

 

「お前の負けだ」

 

そう言って蹴りを繰り出してくる。

回避をするがさらにその速度を超えてくる。

後ろにいると感じて即座に側転。

 

「どこに行く気だ?」

 

すでに先回りをしている。

頭を掴まれる。

武舞台に叩きつけられてガリガリと引きずられる。

 

「終わらせてやる」

 

足を壊される事は無くジャイアントスイングで上に投げられる。

そして跳躍で追い越すと片足を持って落下。

流星のごとく速度。

受け身を取ることもできない。

密着状態の『時飛ばし』はできる。

しかしそれ以上の速さで足が圧し折られるだろう。

 

「まずは一本!!」

 

バキリと嫌な音がこだまする。

これで両腕と片足が壊れた。

立ち上がるのもままならない。

 

「…と思っているだろう」

 

俺の年を考えろ。

この場面から動くための知識はある。

まさかそれを実践させられる機会に恵まれるとは思ってなかった。

 

「はあああっ……」

 

深呼吸で痛みを消して立ち上がる。

この最後の足に己の力を注ぐ。

片手には『時の牢獄』を携える。

 

「回避以外にこの技から逃れることはできない」

 

『時飛ばし』を使う。

0.5秒を連続使用。

パラレルワールドに身を置かず時間を貯める。

 

「くっ!!」

 

気が付いた時には懐に既にいる。

反応をしてももはや遅い。

掠っただけで準備は整う。

 

「くあああっ!!」

 

肩の関節を外す。

肘の関節も外す。

さらには人差し指を立てて捻りを入れる。

大股のストライドで距離まで詰めた。

全てこの一撃のため。

一ミリでも長く奴がかわせない様に。

 

「長っ……!?」

 

射程距離が想像以上に増えた姿に戸惑いを覚えたようだ。

かわしきれずに人差し指が刺さる。

これで準備は完全に整った。

一気に『時の牢獄』へ閉じ込める。

躊躇いも何もありはしない。

 

「ぐううう……」

 

力づくで動かそうとしてくる。

それほど時間をかけてもいられないという事か。

ならばなるべく早くこの一撃を叩き込むことだ。

 

「完全に閉じ込められてはいかなる手も通じない」

 

そう言って全力の一撃を放つ。

狙うは左胸。

人が逃れられない急所である心臓。

 

「『ヴェルダンディの涙』!!」

 

寸分たがわず狙った場所へ着弾する。

買い手していたことで深く捻じ込まれていた。

 

「……ぁ……がっ…」

 

相手は息も絶え絶えながら踏ん張ってこちらを睨み付けていた。

何故なのだ?

こちらとしては完璧の一撃。

なのに、なぜこいつは立っていてこちらを見ている?

 

「痛みが僅かに浅くしたようだな」

 

その言葉に歯軋りをする。

そう言って相手も脂汗と冷や汗でびっしょりと顔を濡らしていた。

気絶どころではなかった。

確実に殺す一撃を放っていたのだから。

 

「ぐはっ……」

 

左胸に拳がめり込む。

心臓に着弾した一撃は迷走神経反射を起こす。

目の前が急激に暗くなる。

足の感覚が無くなって地面が近づいてきていた。

 

「壊しきる前に気絶するなら仕方ない」

 

最後にそんな言葉を聞いて武舞台に倒れ込む。

腹部にめり込んでついた後が目に入る。

それを見て微笑む。

最強の相手にこれほどの痕跡を残したのだと。

あとはバーダックに任せるのだった。




ヒットの殺人技、もしくは重篤な後遺症を残す技の連打をイメージしました。
次回はバーダック戦の予定です。
リキールの宇宙同士の試合は飛ばして準決勝の予定です。
殆どダイジェストになるかと思います。


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『最後の抽選』

かなり巻いています。
次回でこの大会編は終わらせる予定です。


「ヒットの野郎が負けたか」

 

あいつは強い。

フリーザにも勝ちやがって、今乗りに乗った状態だっただろう。

それを倒した奴が凄いってだけだ。

 

「あいつと戦ってみたいな」

 

そう言って首を鳴らして、肩を回す。

カカロットの戦いで十分にほぐれた。

あとは全力で敵を叩きつぶせばいい。

 

「どんな因縁かは知らねえがカナッサ星人かよ」

 

まさか別宇宙にもいやがったとは。

しかも古代種という怪物みたいな奴らだろ。

 

「ワクワクしてくるじゃねえか」

 

強い奴と戦える。

それだけで胸が熱くなる。

鼓動が高鳴る。

サイヤ人の本能って奴だ。

 

「ぶっ倒してやる」

 

そう言って武舞台へと向かう。

相手を睨み付けて超フルパワー超サイヤ人4になる。

常在戦場の心。

張り詰めた空気で相手を包む。

 

「始め!!」

 

その言葉と同時にローキック。

機動力を奪いに行く。

じりじりと相手を痛めつける。

 

「派手な技なんて本当は最低限しかいらねえのさ」

 

そう言ってジャブを放つ。

顔にガードをあげるとその空いた脇腹へ鉤突き。

相手の顔に悶絶の色が浮かぶ。

ポーカーフェイスができないのか。

次は旋回して逆の脇腹へ一撃。

 

「うぐっ……」

 

たまらずくの字になる相手。

それを狙って頭部に膝を叩き込む。

相手はくの字になるどころかダウンした。

 

「甘いな」

 

ダウンカウント前に頭を掴んで引き上げさせる。

そして腹部に拳を叩き込む。

僅かに浮いた肉体に向かって一撃を放つ。

 

「『リベリオン・トリガー』!!」

 

吹っ飛んでいく相手。

それをさらに追撃。

跳び膝蹴りを放つ。

 

「ぐああっ!!」

 

壁に叩きつけられる相手。

体勢を整えようとしたところに強烈な一撃。

効くだろう。

 

「終わらせるぞ、『レイジ・デュランダル』」

 

手刀の一撃で切り裂く。

さらにもう一方の手刀でも浅いながら切り裂く。

そして腰を抱えてバックドロップ。

 

「あいつらの戦い見て昂ってんだが、全然相手にならねえな」

 

相手への失望を口にする。

人間レベル2位の最強。

どう考えても拮抗すると思っていたのにこの程度か。

全然面白くない。

 

「くっ……」

 

傷に触れて血を見る。

そして何を思ったのか足の裏に塗りたくる。

すると相手の気が上がったのを感じた。

 

「なるほどな」

 

水があればその分強くなる。

考えればわかる事だった。

血でも代用できるというのは面倒だな。

 

「ふっ!!」

 

格段に上がった速度。

しかし俺にはその程度の揺さぶりは通用しない。

翻弄しようとする前に掴んで振り回す。

 

「まだ遅いんだよ」

 

武舞台に背中から叩きつける。

さらに腹部へ肘を落とす。

 

「ゲボッ!!」

 

相手が苦しんでいるが関係ない。

まだこっちの攻撃は終わってなんていない。

 

「オラァ!!」

 

背中から掬い上げるように蹴りあげる。

上空へ舞った相手に照準を合わせる。

 

「『ライオット・トライデント』!!」

 

三つ矛の気弾が相手に直撃する。

落ちてきた相手から距離を取る。

起き上がった瞬間、こちらに向かってくる。

 

「速いが目で追えてしまうからぬるいんだよ」

 

背中に回って技を放つ。

この戦いに終止符を打つ。

 

「『リベリオン・ファング』」

 

気弾が腹部を貫く。

血が流れていようと関係ない。

戦いの上で起こる不慮の事故。

手を抜くなどサイヤ人の選択肢にはない。

 

「とことんやるから、この程度普通の事でしかねえんだよ」

 

相手がグロッキーになっていようと降参もしねえなら叩き潰す。

この一撃で終わりだ。

顎にアッパーを決めるとそのままラッシュを仕掛ける。

 

「ぐえっ……」

 

相手はラッシュで宙に浮いた状態。

無抵抗な状態を晒す。

もう何もできはしない。

内心拍子抜けだ。

きっと戦闘力の高さで順位付けをしているわけでもない。

 

「俺としては少々がっかりだぜ」

 

拳を握り締めて最後の一撃を放つ。

唸りを上げて相手の肋骨を圧し折る。

血反吐を吐いているが関係ない。

 

「『スピリット・オブ・サイヤン』!!」

 

一撃を振り抜く。

相手はその時点で白目をむいていた。

壁に叩きつけられてずるずると落ちる。

勝者は決まった。

ここからの逆転はない。

大神官様がこちらに手を伸ばし……

 

「勝者、バーダック選手」

 

勝者のコールをする。

次の試合はおおよそ女王様が勝つ。

その予想は当たるだろう。

 

「紅一点になんざ興味はねえ」

 

あいつかヒットを倒した奴。

それ以外は眼中にない。

早く決着をつけやがれと思いながら去っていた。

 

.

.

 

「やはりこうなるか」

 

結果を見て頷く。

あの人がこんなところで足踏みをするはずがない。

ルタとぶつかるまではきっと。

 

「今の俺じゃ戦えない」

 

体の中にある力を探るがあまりにも少ない。

時間経過で多少は動けるが試合でやれるほどのものではない。

考えられる策は一つだけ。

 

「それも通用するかどうか……」

 

無駄になる可能性もある。

そうなると負けだろう。

 

「成功しても結局戦えないけどな」

 

だから願わくば相手はあの男。

そうなればバーダックさんが決勝に行く。

強い者同士の戦いが成り立つだろう。

 

「さて……女同士の戦いでも観戦させてもらおうか」

 

そう言って武舞台へ視線を向ける。

予想ではイエラの勝利だろう。

 

「まあ、どっちが勝ってもリキール様にとっては意味のある事だ」

 

戦いを見ていく。

まるで二人は舞のように軽やかに戦う。

相手を昏倒させるのも剃刀のような切れた一撃。

顎に当たればすぐさま昏倒する。

 

「速く終わる事は無い」

 

きっと千日手となる。

そう目を見張っていた。

瞬く間に動き回る2名。

首を左右に振って全王様も見ていた。

 

「……やっぱりこうなるか」

 

右の拳を打ち付けあう。

左の蹴りをぶつけあう。

頭突きすらも衝突する。

全ての攻撃が鏡合わせのようになる。

 

「クロスカウンターならいいんだけど……」

 

これではダメージが互いにない。

我慢比べにしかならない。

見ていても楽しくはない。

自分の控室に戻って呼吸を整える。

 

「一刻でも早く、少しでも回復をする」

 

血が体中に廻る様に。

腕や脚を伸ばして筋肉が断裂してないかを確認。

骨が折れているかどうかを確認。

 

「無理な動きは控えないといけない」

 

短期決戦用でしかない。

長期になればなるほど重大なことにつながる。

 

「運が悪いのかいいのかわからない」

 

一回戦は全宇宙最強の女。

二回戦は正義の頂点。

これで憧れとか…もう正直に言おう。

 

「一日がかりで戦うメンツじゃないよ……」

 

一人と戦って勝って奇跡的な勝利ってだけ。

サイヤ人でも萎えるほどのきつさである。

ワクワクなんかできない。

 

「せめてインターバル置いて、互いがベストコンディションとかの方が見ごたえある気がする」

 

そう言っているとベジータが入ってくる。

こっちの顔を見て察したのか肩を叩く。

そして一言。

 

「棄権はするな」

 

戦って負けろ。

それだけはしなければならない。

サイヤ人が敵前逃亡などしてはいけない。

 

「敗北したからと言って誰もお前を責めはしない」

 

戦った相手を見ればそうなって当然なのだから。

むしろ勝てれば奇跡でしかない。

二回戦を勝てた時点で奇跡なのだから。

そう言って去っていく。

それと同時に決着がついた。

 

そして大神官様に呼ばれて準決勝の抽選を行う。

残っているメンバーはルタ、自分、バーダックさん、イエラ。

殆ど予想通りの形となった。

殆どと言ったのは自分ではなくジレンの可能性があったからだ。

 

「それでは綱を引っ張ってください」

 

そう言って引っ張り合う。

手応えがある。

強者の手応えである。

普段ならばいい事だと思いながら引く。

しかしこの場面ではまたかという気持ちが強い。

 

「知っていた……お前だってことぐらい」

 

綱がほどけて互いに見合う。

その視線に居たのはルタ。

流石に枯れ果てている俺では楽しみがないのか溜息をつく。

仕方がないだろう。

ここで引いてしまうお前の運を呪え。

 

「それでは試合を始めます」

 

そう言われて無慈悲にも俺とルタの戦いがセッティングされる。

天使による復旧が終わり、互いに向き合う。

極寒の北風のような気を出している。

 

「すぐに終わらせてやる」

 

偉くせっかちな奴だ。

しかし奇遇だな……。

 

「同じ事を考えていたよ」

 

そう言って全部の気を引き出す。

回復したばかりの分だ。

全く持って余力がジレンとの戦いでなくなっていた。

 

「始め!!」

 

その言葉と同時に額に手を当てる。

そして気を高めて……

 

「『太陽拳』!!」

 

ルタの眼を潰す。

一気に接近して『ベアハッグ』の形で抱き着くようにする。

これで準備は整った。

 

「何のつもりだ!?」

 

引き剥がそうとしてくるがそうはさせない。

この距離ならば確実にダメージは出る。

俺は気をさらに高めていく。

そう、『限界』を超えて。

これこそが最後の手段。

命そのものさえ火薬にする最大奥義。

 

「くっ……お前!!」

 

うろたえるような表情になる。

もう遅い。

このまま俺とともに弾けようぜ。

 

「『ファイナル・エクスプロージョン』!!」

 

全力で放った一撃。

この言葉を最後に俺は意識を失ったのであった。




ベジータの自爆技を使うしか、手立て無し。
というか回復抜きでジレンに勝てたのが運みたいなものなのでここが限界です。
次回で力の大会編は終わりです。

指摘などありましたらお願いいたします、


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『大会最終戦』

ルタの名前の由来を書いているうちに思いついたので後付けでやってみました。
次回で大会は終了させて、ここからはフィナーレの最終決戦に向けて執筆する予定です。



自分が目覚めたのはイエラとの戦いが終わった時であった。

戦いが終わった以上、治療は可能。

その為、即座に月の光を浴びせてポッドに入れてくれた。

みるみるうちに治っていき、五分も経たない間に治った。

 

「決勝には間に合ったか」

 

結果としては最後の爆発で互いにダメージはあった。

しかし、意識があったルタが決勝へ進出。

そしてバーダックさんとの決勝戦が始まる。

 

神を凌駕する男。

片や伝説。

実力だけならばあいつが上。

しかしそれを覆すのがあの人。

 

「瞬きすらも許されない」

 

俺はそう言って乗り出すように見始めるのだった。

 

.

.

.

 

「ラアッ!!」

 

俺はショルダータックルを放つ。

相手がそれを受け止めてくる。

肩口に食い込ませた指の力。

食い止めた膂力。

この野郎のパワーはそれだけのやり取りでよくわかった。

 

「お前の力はおおよそあのジレンという奴以上だ」

 

それならば速度はどれほどのものなのか?

俺が縦横無尽に動きながら攻撃を放つ。

四方八方からの雨霰の打撃。

 

「はあああっ!!」

 

手の動きだけで払い落しやがった。

反応速度もすごいようだ。

だが……

 

「その腕は貰ったぜ」

 

腕を掴んでへし折っていこうとする。

ミシミシと音を立てながら徐々に曲がっていく。

こいつはナメック星人の為、引きちぎっても再生可能。

だから再生させても歪になる形で残す。

 

「ぬがあああ!!」

 

超サイヤ人4フルパワーの俺に対して、まさか腕の力だけで振り払っていくとはな。

こいつは基礎的な身体能力が高すぎる。

これは厄介極まりない。

特殊な相手なら知識や経験則から幾らか対策を立てられる。

 

「だが正統派となると話はまるで別物」

 

単純な話だがそうなると道は究極的には一つ。

それは相手より強くなるという事だ。

 

「こういう奴の方が好みだ」

 

口角を上げて笑みを形作る。

足に力を込めて相手の顔を見る。

 

「ぜりゃあああ!!」

 

飛び蹴りを顔面に向かって放つ。

それに対して相手が反応をする。

動体視力や反射神経もすさまじいのか。

だがそれゆえの弱点を知らない。

 

「かあっ!!」

 

気弾で軌道を変更。

その動きに対してついていけてない。

理由はとても単純。

 

「優れたが故に反応を速くしてしまう、その後のフェイントへの対応を考慮しないままにな」

 

そのままこめかみに膝蹴りを叩き込む。

その一撃で揺らめく。

無敵の相手と言えどこの隙ならばもろに喰らう。

 

「『ライオットトライデント』!!」

 

三つ矛の気弾が相手の体へ刺さる。

さらに追撃で後ろに回って腰を抱える。

徐々に足が地面から浮いていくと、その拍子に俺が跳躍する。

 

「喰らいな!!」

 

バックドロップで頭から叩きつけに行く。

それに対して相手は腕を伸ばす。

さらに歯を食いしばって力を込めていく。

 

「こんな簡単に……」

 

ブリッジの体勢でこらえられる。

体を回転させてクラッチがきられた。

背中を相手に向ける形となってしまった。

 

「ちっ!!」

 

振り向こうとすると顔を掴んできやがった。

そして力のままに上に放り投げられる。

舞空術をしながら下に射殺すような視線を向ける。

だが、後ろから声が聞こえてきた。

 

「どこを見ている?」

 

背中に肘打ちを受けて地面へ叩きつけられる。

そのままバウンドした時に蹴りを叩き込まれて観客席に飛び込んでいった。

胃の中のもの逆流してくる威力だ。

 

「まあ、サイヤ人相手に強さを誇示するなんざ無駄だけどな」

 

そう言って降り立つ。

じりじりと間合いを詰めていく。

向こうからは来ない。

 

「随分とどっしりとしてやがるな」

 

自分から急いて仕掛けない。

相手が仕掛けてきた時に叩き潰す。

なぜなら、それで勝てるから。

 

「お望み通り、こっちからやってやるよ」

 

一気に懐に飛び込む。

それを見切って膝を合わせてくる。

 

「だぁ!!」

 

頭突きで弾き返す。

頭が割れそうな一撃だが、問題ない。

地面に手をつき倒立するように体制を整えて、蹴りを入れる。

 

「ぐっ!!」

 

僅かに後ろへ下がる。

好機を探り出すのはやめだ。

一気呵成に畳みかける。

 

「『リベリオントリガー』!!」

 

両手で受け止めていく。

それを見て、水面蹴りを放つ。

跳躍でかわした所を低空タックル。

両足を刈ってそのまま体勢を崩させる。

背中を向けた状態ならばこの技が通る。

 

「『ヒートファランクス』!!」

 

ようやく有効な一撃を叩き込む。

背中にさらに肘の一撃を喰らわせる。

 

「ふっ!!」

 

それがどうしたのだ?

そう問いかけるようなキレキレの回し蹴り。

それが顎を打って俺を後退させる。

 

「そう来ねえとつまらねえ…」

 

ぞわぞわと駆け上がる快感。

自分の全力を受け止める相手。

存分に使えると知れば本能が蠢く。

底まで掻き出したはずの力。

湧き出ることの無い泉。

それが再び嵩を増すように、潤いをもたらすように。

 

「まだまだいけるよな!!」

 

拳を互いに打ち付けあう。

砕けそうな衝撃が突き抜けるがお構いなしに頭突きを放つ。

相手はそれを避けて後ろへステップを踏む。

 

「逃がすかよ」

 

頭突きの時に足を踏んでおいた。

このような小技も強くなるのに必要。

自らの土俵に誘い込む立派な策。

 

「ぐっ……」

 

力づくで外そうとするがそれより俺の方が速い。

瞬く間に距離を詰めて腹へ一撃。

腕を交差して防ぐ。

ならば足元がお留守になっているだろう。

 

「オラア!!」

 

ローキックで体勢を崩す。

追撃に頭部へ踵落とし。

顔を横に動かして避けていく。

その頭を両手で掴む。

 

「喰らいな!!」

 

膝蹴りを顔面にめり込ませる。

鼻血を噴き出した相手。

当然、この一撃で終らせはしない。

もう一撃叩き込んで飛ばしていく。

 

「まさか……」

 

相手が呟いている。

ここまで押されるのが予測できなかったか。

これがサイヤ人だ。

お前の戦闘を三度見た。

そうすればその強さを学習して作戦を組める。

 

「戦闘民族サイヤ人をなめるなよ……」

 

そう言ってとどめを刺すために近づいていく。

しかし相手の気が変わっていく。

こちらが踏み出せば踏み出すほどに。

武舞台に罠を仕組んではいないのは把握済み。

では、本気を出そうとしているのか?

 

「悪いが、俺は待ってやるほど甘ちゃんじゃねえ」

 

最初から本気で来い。

相手が常に待ってくれるお人よしじゃねえんだ。

そう思って俺は手刀を振り下ろす。

 

「まさか……名前の『本当の由来』を知らすことになろうとは!!」

 

そう言って噴き出した気が、なんと俺を吹き飛ばす。

宮殿の全てを包み込む膨大な量。

これはあまりにも規格外な強さを感じさせる。

 

.

.

 

「ルタの名前は確かに『ルーター』を由来にさせた」

 

儂は視線をルタに向ける。

かつて、初めて出会った時を思い出す。

純粋な眼で神を見つめていた少年。

 

「思えばあの日に声をかけたのが始まりであった」

 

天使も儂に同調して話していく。

すると出所が全王様が消滅させた宇宙であった。

これは何かの思し召しだと思った。

 

「お前を最強の戦士で信仰者に育てていくと決めた」

 

みるみるうちに強くなっていくお前に儂は喜びを覚えた。

いずれは自分の後を継ぐ存在になってくれる。

しかしその要求を遥かに凌ぐような成長に息を呑んだ。

『青は藍より出でて藍より青し』という言葉が脳裏によぎった。

破壊神である自分に鍛えられながら、自分を超えてゆく存在。

大それた夢をお前の中に見てしまったのだ。

その時の気持ちがどれだけのものだったか。

胸は高鳴り続けていた。

 

それから幾何の時が過ぎた今。

ありとあらゆる強者を圧倒するお前の姿。

あの日抱いた夢は確信へと変わった。

 

「行け、お前は誰よりも強い……」

 

手を前に差し出してルタに声をかける。

それに気づいたルタは手を上げる。

腕を上げた風圧で綿毛にような儂は吹き飛んでいきそうになる。

 

「本来は代替者を冠する『オルタナ』を由来とする、次代の天使よ!!」

 

そして終末を知らしめるように一歩ずつ踏み出していく。

だが解せないのは相手の顔であった。

なぜそのようにしていられる?

実力の差は歴然だ、それは誰にでもわかっている。

そして目の前で退治しているお主はもっと鮮明に感じているはず。

なのになぜ……

 

「そんな満面の笑みを浮かべられるのだ?」

 

そう言って見届けるために試合場にさらなる神経を研ぎ澄ませるのであった。




ルタは破壊神を明確に超えた化け物です。
ジレンじゃないと渡り合えそうにない。
もしくはブロリーのような成長する特性がある伝説サイヤ人やピオーネですね。
『作った神を超える』強さの成長は能力としてはないと言いましたが、自分の素の鍛錬の伸びしろは残ってしまっているという罠。
つまり、あの一戦だけしか今後白星がつかない可能性も十二分にある主人公……

指摘などありましたらお願いします。


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『戦士の血潮』

決勝戦、決着回です。
もっと長引かせようと思ったのですが、グダグダになりそうだったのと、キリよくまとまったのも手伝って今回で終わらせました。



面白い相手だと思った。

神を凌駕する強さが目の前にいる。

俺の全てを使っても勝てる可能性は低い。

万に一つすら生ぬるいだろう。

 

「でも諦めなんざねえ」

 

構えた相手に向かっていく。

それを見ている相手は手を横薙ぎに振るう。

その動きだけで腹に極太の鞭が当たったような衝撃を覚える。

 

「ぺっ……」

 

どうやら全ての攻撃が規格外になったようだ。

あの仕草だけで腹に衝撃波を当ててきた。

それ以外にも蹴りを放ってくる。

 

「けっ!!」

 

腕を交差して受け止めようとする。

しかし、そんな俺を嘲笑うように蹴りの一撃は両腕を弾き飛ばした。

挙句の果てに痺れている。

 

「『ブレッシング・スピア』」

 

手を槍の様に突き出してくる。

風を裂きながら迫るその鋭さに目を見張るが回避に専念。

側転をして距離を取る。

しかし……

 

「遅いぞ」

 

頭を掴んで持ち上げてくる。

先回りできる速度とはな。

威圧感を爆発的に上げた瞬間から本性を徐々に表してきた。

 

「『エンジェル・ア・プランク』」

 

上空へ放り投げて背中に乗ってくる。

まるで『サーフィン』の板の様に扱う。。

だが腕を伸ばして首を掴んできたり、外せないように工夫をする。

そのまま顔面を地面に叩きつけられると轟音が鳴り響く。

 

「ぐあっ…」

 

頑丈な俺とはいえど意識が持っていかれそうだ。

背中からどいて手応えがあったのか距離を取る。

 

「舐めるなよ」

 

その瞬間を逃しはしない。

足を掴んで引き倒して馬乗りになっていく。

防御しているが細かく大きくを織り交ぜて叩いていく。

 

「どちらがだ?」

 

噛みつきをしてくる。

甘い奴だ。

それはとうの昔に対策を立てている。

 

「ふんっ!!」

 

口の中に拳を突っ込む。

危険ではあるが成功すれば相手の気道を塞いで、意識を落とさせる事が出来る。

 

「さて……続けるぜ」

 

意識状態が一時的に朦朧としている今が好機。

大きく振った拳が幾度となく顔を叩く。

鼻も折れるし、顔は腫れあがる。

視界も悪く、鼻血で脳への酸素供給が普段より悪くなり考えがまとまらなくなる。

 

「うおおっ!!」

 

地面に手を付けて相手は気弾を放つ。

その勢いで馬乗りの状態から逃れる。

互いのダメージは五分になった。

先はきっと長くはない。

 

「一撃で削られる体力が半端じゃねえ」

 

防御不可能の一撃の連続。

限界以上に振り絞った超サイヤ人4を超えている重さ。

厄介極まりない。

 

「来いよ」

 

誘いこんでいく。

相手の足をよく見る。

先手を取るにはありとあらゆる感覚を総動員させないといけねえ。

 

「無論だ」

 

ぴくりと動いた瞬間、一気に踏み込む。

体を低くして頭から突っ込む形。

それを見て相手も反応をする。

しかし……

 

「俺の方が一手速い!!」

 

後ろに気弾を放って推進力にする。

下がる事の出来ない相手は踏ん張り、歯を食いしばる。

耐え抜こうと思っているようだな。

 

「こっちも負けるつもりは微塵もない!!」

 

受け止められることなく、相手に俺の人間砲弾が炸裂する。

ガリガリと武舞台が地面を立てて削れていく。

そして場外にまでそれは及ぶ。

 

「耐えたぞ、バーダック!!」

 

血反吐を吐きながら笑みの形で相手は俺を見る。

そして、逆襲と言わんばかりに腰と腕ごと抱え込んで俺を持ち上げていく。

抵抗しようとするが力が込められすぎている。

無理に外せない。

外すと腕のつっかえが無くなって背骨がやられてしまう。

 

「喰らえ、『スリープ・スティング』!!」

 

頭から落とされる。

脳震盪でドロドロとした風景が広がっている。

だが闘志は萎えない。

笑みを浮かべて眼を光らせる。

 

「むっ、確実に決まったはずだが……」

 

そう言いながら蹴りを放ってくる。

上段の一撃を腕で受け止める。

すると矢継ぎ早に二発目の中段の蹴りが襲い掛かる。

 

「くそが!!」

 

自分から当たりにいって勢いを殺す。

それでも痺れてくる。

手を休めず絶え間ない連打。

空気を裂いて迫りくる。

 

「お前をここで終わらせてやる」

 

左の上段突き。

右の上段蹴り。

左の下段蹴り。

右の中段突き。

右の肘打ち。

左の前蹴り。

右の下段突き。

 

瞬く間に七回の攻撃。

それら全てが相手に大きなダメージを残せる代物。

なんとか威力を最小限にして受け流していく。

集中力を完全に高めていき、薄皮一枚剥がれるようなギリギリでかわす。

相手はそれを追いかけていく。

 

「ふっ!!」

 

膝蹴りを放ってくる。

俺はそれを待っていた。

跳躍をして相手の膝蹴りを回避する。

そしてここからが真骨頂。

相手の足が体の近くに戻る刹那、相手の膝に乗ってそれを土台にする。

 

「その顎よこせ!!」

 

膝が顎にめり込んでいく。

良い手応えがあった。

相手は仰向けに倒れていく。

 

「何故だ……」

 

そんな事を言ってくる。

きっと俺の強さではお前に勝てないと思ったんだろう。

その見立ては間違えてない。

だが戦闘民族の血だ。

相手の強さが俺に限界以上の出力と脳への指令を促している。

既に一杯一杯。

体が軋んで骨が砕けそうになっている。

あくまで細い糸を手繰っているにすぎねえ。

 

「だがこの迷いは後で分析しよう」

 

今はお前を倒すのが先だ。

そう言って体を起こす。

追撃ができないほどの疲弊。

こいつが醸し出す威圧感が体力を奪っていく。

 

突っ込んでくる動きを見てから跳躍。

相手はそれに倣い、追いかけてくる。

それに対して気弾を撃って先に落下する。

 

「これで先回りだ」

 

終わりにしてやる。

相手に照準を合わせていく。

動きを止めるための技はこれだ。

 

「『太陽拳』!!」

 

目を眩ませる。

そして体勢が崩れたのを見逃さない。

力を込めてこの戦いにおける最後の一撃を繰り出す。

 

「『スピリット・オブ・サイヤン』!!」

 

腹部にめり込む全身全霊の一撃。

腕が砕け、踏み込んだ足も折れた。

全てを振りしぼった一撃。

相手が場外まで飛んでいく。

 

これで終わらなければ敗北は必至。

なぜならば戦えはしない。

闘志が萎えずとも足と腕が片方ずつ。

この男の戦いでは五体満足。

それが必ず付きまとう条件。

 

「これが戦闘民族の一撃か」

 

胸に拳の跡が痛々しく残っている。

足を引きずりながら武舞台へ戻ってくる。

こっちの微笑みを察して技のセットアップに入る。

 

「自爆技をする気力も残っちゃいねぇ……一思いにやれ」

 

強い相手と戦った。

完膚なきまで打ちのめされた。

だが勝って見せる。

俺も強くなってやる、お前の高みまで。

老体に鞭うつ目標が出来ちまったぜ。

 

「その心、受け取った」

 

そう言って腕を取り『ダブルアームスピン』で俺を振り回して上空に放り投げる。

そして俺を追いかけて、足首で俺の頭を挟む。

いわゆる『ヘッドシザース』の形だ。

 

「『リーパー・カルネヴァーレ』!!」

 

さらにそこから摩訶不思議な形で空中を舞う。

その速度と風圧で皮膚が裂けたり体の骨が歪に折れ曲がっていく。

そして首を狩り落とすように最後は叩きつけられる。

俺が覚えているのはここまで。

痛みが信号となって脳が意識を落とす事を選択したのだった。

 

.

.

 

『力の大会』、全試合の決着はついた。

優勝は人間レベル1位の第1宇宙最強の男、ルタ。

順当と言えば順当だがその正体に恐ろしさを感じる。

まさか破壊神を越えた中でも天使級はジレン以上だ。

あの人が生粋のサイヤ人と言えども無理はない。

 

願いは全宇宙の復活。

それは18宇宙の始まりに戻るという事。

そしてその願いの大きさは竜神ザラマの力でも数分かかる。

 

そんな時に、頭痛が奔る。

その未来は驚愕の連続ともいえる。

星喰いと言われる奴。

天使見習いやバーダックさんの因縁。

極め付けは破壊神や天使との大決戦。

このお祭りを凌駕する事件が始まる事は冷や汗をかかせて、余韻を吹き飛ばすには十分だった。




次回を最終回としてこの作品を畳みます。
GTの相手とかウーブがまだ出ていないのですが、本遍終了後の未来の話として番外編で書ければと思います。

指摘などありましたらご指摘をお願いいたします。

※今回のルタの『リーパー・カルネヴァーレ』の技の元ネタはキン肉マンの技『アステカセメタリ―』です。


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最終話『戦士たちに安息の時間はなし』

今回で最終回となります。
放置しすぎて大変申し訳なかったです。
今回で知ったのは、長編を書くにもある程度の分ける範囲や登場人物をあらかじめ絞れる状態にしておくべきだと感じたのが反省点です。
ごちゃごちゃさせすぎたり、日常部分を書いてましたがもっと削ったりもできたと思います。


あの大会から思いがけないことの連続だった。

俺は第11宇宙の破壊神であるベルモット様とジレンから、「星喰い」と呼ばれるかつてのジレンの仇がこちらの宇宙に来てることを聞く。

そこで俺とジレンがコンビとなって戦いに挑んだ。

最後はこの地球の膨大なエネルギーがそいつを飲み込んで崩壊させていった。

自滅ではあったが強さは本物だった。

まだまだ邪悪な奴らは俺たちの想像を遥かに超えてくるだろう。

そう、再認識する事柄だった。

 

その次はグラノラという若者が、ボタンの掛け違いで生まれた因縁をこちらに持ちかけて来た。

戦いになり、お互いに血を流したが駆けつけて来たバーダックさんのお陰で解決した。

しかし、後で聞いたが彼の最終目標が成就しなくて良かったと心から思う。

全ての宇宙においての最強を超ドラゴンボールで実現させられたら、全王様しかどうもできない。

 

そして極め付けは今目の前で起きている光景だった。

時の界王神様が飼っている鳥によく似た黒い奴。

それが肩に止まったやつは災いを起こす。

予言魚がそう言って俺の肩に止まってしまった。

しかもその規模は全宇宙。

その意味するところは破壊神や天使が総動員されるという事だ。

 

「非常に残念だよ」

 

ビルス様が囁いて手を前に出す。

破壊の波動を回避するが、後ろからキテラ様に羽交い絞めにされる。

だが小柄な為、そのまま倒れ込んで地面へ叩きつけにいく。

 

「ちっ!!」

 

キテラ様がぶつかる寸前に転がって回避する。

そのまま距離を取るとビルス様たちの後ろから天使と破壊神が現れる。

きっと前回の大会で復活した消滅宇宙の方々だろう。

 

それを見た瞬間俺の方に止まっていた鳥が飛び立っていった。

災いをもたらすとは言われたがそれは俺個人の行いではないのかもしれない。

破壊神たちの方に止まった瞬間、鳥が鳴いた。

大気が震えるほどの大きな声。

それと同時に目を疑うような光景が広がる。

第1宇宙から第6宇宙の破壊神と天使が縛り付けられたのだ。

更に、天使の杖の力でその対象の宇宙から誰も別宇宙に行けない状態に帰られた。

 

「どういうつもりだ、お前たち!!」

 

ビルス様が叫ぶと破壊神たちが口角をあげる。

一拍置いて哄笑が響く。

まるで何を言っているんだと言わんばかりに。

 

「お前らを恨まない理由が0だと本当に思っていたのか」

 

そう言って相手が指を鳴らす。

その瞬間、強者のオーラを纏った戦士が複数名出てきた。

 

「このまま全宇宙を侵略してお前らを同じ目に遭わせてやるさ」

 

随分な物言いだ。

まさか勝てるとでも思っているのか。

 

「合わせて19になる宇宙は機能不全だ」

 

つまり第7宇宙から第12宇宙までしか使えない。

だが人員としては十分だ。

 

「あと、ピオーネは使えないぞ」

 

そう、破壊神に言われて振り返ったら破壊神や天使と同じように縛られているピオーネがいた。

元々は消滅宇宙の一員だったからな。

そうなると古代種族の面々も無理か。

 

「それで怯むとでも思ったのか」

 

見下したような声色でビルス様が言う。

元々この面々を含めて最強の破壊神だからな。

そりゃ堂々とするのも頷ける。

 

「お前らが舌を巻くような精鋭が居るんだ」

 

そう言って俺やジレン達が前に踏み出す。

相手の威圧感もなんのその。

堂々とした振る舞いで前に立つと相手から感嘆の声が漏れる。

 

「では互いの存亡をかけた大決戦を始めようか」

 

そう言って、相手が腕を振りかざした瞬間、闘技場があらわれた。

6階建ての見た目という事はそういう事だろう。

 

「そちらの代表共が入ってくるがいい」

 

その言葉と同時に駆けだしていく。

並び立つものが五人。

みな思い思いの顔を浮かべている。

 

「結局騒動は終わる事はないか」

 

そう俺の呟きに反応したように俺の頭の上に手を置いて笑うバーダックさん。

うずうずしているのが見て取れる。

 

「それを愉しんでこそサイヤ人だろうが」

 

そう言って速度を上げるバーダックさん。

それを追い越すようにベジータ王子が駆けている。

 

「速くしないと俺様が一番首を貰っていくぞ!!」

 

サムズアップをしながらニヒルに笑う。

それに追従するようにカカロットがこちらに微笑みを向ける。

 

「オラ、ワクワクしてしょうがねえぞ」

 

そのまま勢いを上げていく。

宇宙の存亡掛かった事態でワクワクも何もない。

勝つ事が義務付けられているのだから。

相変わらずそう言った判断に乏しいなと苦笑いを浮かべる。

 

「全員がおサルさん達だと不安でしょうが私もいるので安心して任せなさい」

 

フリーザがこちらの意を汲んだように声をかけてくる。

お前がほぼ唯一のストッパーって人選ミスとしか言いようがないだろうな。

本当に味方になってくれてからは頼りにしかならない奴だ。

 

「お前とあの男と俺がいて敗北はあり得んだろう」

 

ジレンの言葉には負けるはずがないと確信を抱いたものが含まれている。

この自信こそがこの男の強さであり、またそれと同列に語られるのは、一つ誇りに思うものがあった。

 

「それもそうだな……」

 

俺は頭を掻いて顔を引き締める。

勝利のイメージを崩さずに。

戦いの中でまた宇宙同士で分かり合える結果の為に。

何時までも変わる事の無い熱戦の大渦の中心に向かって行くのであった。

 

これで俺の物語は終わりとなる。

どんなに恐ろしい敵も仲間がいれば、鍛えれば。勝てるのだと自分に言い聞かせて。

ここまで俺の物語を見続けてくれた全てに感謝を込めて己を奮い立たせるのであった。




これにて今作は完結とさせていただきます。
皆様長い間見て頂いたり多くの感想、誠に感謝しております。

出来ればもっときれいにまとめられたらとも思いますが、これが自身の現状精いっぱいでした。
今後も何かしら書いていくとは思いますが短く要点をまとめた形でお送りできればと感じています。
見る側にも負担をかけない為にも精進していきます。

皆様今一度最後に一言。
今作を見て下さり、ありがとうございました。


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