戦いの基本は格闘だ。魔法や道具に頼ってはいけない (imuka)
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登場人物、魔法紹介

本編を読んでいない方にはネタバレになるので注意して下さい。


















【イーニア・シュツベル】

 

 

 

【挿絵表示】

 

※イメージを壊す可能性がありますのでご注意を…。

 

 

本作の主人公。

アイザック・シュツベルとアリス・シュツベルの一人娘。

両親の反面教師で運動を欠かせない。あらゆる武道、武術を独学で学ぶ。

コーランド家に存在した未成年が魔法使用時に出る臭いを消す魔法を使用しどこでも魔法が使える。時々くる伯母に魔法を教わっていたが現在では独自研究を行い、無言魔法、杖なし魔法ができる。

黒髪のサイドテール、目はエメラルドグリーン。

性格は面倒見が良く、少しおせっかい。大切にすると決めた人たちはとことん大切にする。こと健康、強いては食事付いては少しうるさい。1人で生活した時間が長く、大人びたところもあるが年相応の少女である。

趣味は運動(武道や武術も含む)と読書。

ドラコとは両親の葬式からの知り合いで、ホグワーツでは違うクラスになったが言葉を交わさずとも理解できるほどお互いに信頼している。ホグワーツ入学後はハリーやハーマイオニー、ロンなど信頼できる友人が増え、前より明るくなったとドラコ談。

 

小さい頃に親しかった友人を目の前で殺され、それが心的外傷(トラウマ)となっている。

ハリーたちの協力で多少良くなったが殺害に利用された蜘蛛はいまだに大の苦手。

 

 

 

好きなもの:両親 伯母 仲間たち 甘いもの 健康

嫌いなもの:痩せる努力をしなかった両親 曲がったこと 蜘蛛

 

 

 

【オリジナル魔法】

ラテン語に変換してローマ字読みなどでそれっぽくしてます。

 

 

《スラディス》

無音魔法。外部の音を遮断する魔法

「キングス・クロス駅 9と4分の3番線」無言魔法で使用。

 

《コンフィンス》

身体強化魔法。身体を強化し、通常以上の能力を出す魔法。強化部位に青光した紋様が浮かぶ。

「授業」でネビルを助けるために使用。

 

《アッケラーティオ》

物体加速魔法。物体を加速させる魔法。

「ハロウィンの戦い」でトロールを蹴るときに使用。

 

《ウォーレ》

浮遊魔法。イーニアが箒を使わずに飛ぶために編み出した魔法。箒を使用した時と同じように速度がでる。

「ハロウィンの戦い」でトロールを飛び越えるときに使用。

 

《ラマンパトラム》

武器生成魔法。様々な武器を生成することができる。

「禁じられた森」で追いかけてきたそれ(・・)に向かって弓を生成し使用。

「賢者の石と1年の終わり」でトロールに対し槍を生成し使用。

 

《ルーモス・フォス》

照らす魔法。ルーモスより明るい。

「賢者の石と1年の終わり」で暗かった部屋を照らすために使用。

 

《プロテゴ・ウォレ》

護りの魔法。飛んでくる魔法、弓や銃弾などをすべて弾く。

「賢者の石と1年の終わり」でクィレルがトロールに付与させ使用。

 

《ケラ》

封印魔法。上位のものになるとケラ・~となる。

上位のものならば物は特別必要ないがイーニアは簡易封印として布を使用した。

簡易封印だったため数字入力だったが本来は魔法構造を解いていかなければならない。

「蜘蛛」でリドルの日記にかけてあった

 

《チャロワ》

噛ませる魔法。嫌いな食べ物を食べさせたり躾けのために使う。

「秘密の部屋と一年の終わり」でバジリスクに使用。

 

《コールイン・エクス》

空間魔法。対象の座標を入れ替える。

「私の笑顔と蜘蛛が嫌いな理由」でスリザリン生と位置を入れ替えた。

 

《クリンゴ》

硬化魔法。対象を固くする魔法。

「私の笑顔と蜘蛛が嫌いな理由」でバックビークに噛まれる際防御のために使用。

 

《トルナ》

斬撃魔法。振った角度に斬撃が飛ぶ。

「私の笑顔と蜘蛛が嫌いな理由」で夢の中に出たフードの男と蜘蛛に使用。

 

《ポンデサス》

加重魔法。重さを増やす。

「アズカバンの囚人」でイーニアに使用。

 

《スパチーム》

距離変動魔法。中心となるモノとの距離を変化、固定させる。

「ワールドカップと死喰い人」で死喰い人に使用。

 

《デクスティリスシャリング》

高位魔法。術式を展開し、強大な魔力で相手を全方位から攻撃する。高位魔法のため詠唱が必要。殺傷、非殺傷と使い分けが可能。

「第一の課題とパートナー」でドラゴンに使用。

 

《インパ―ビアス・ペルーツェ》

撥水魔法。水を弾く。

「第二の課題と迷路」で水中に潜る際使用。

 

《アフェーカルン》

熱を帯びる魔法。寒さ対策がとれ日常的にも使用。

「第二の課題と迷路」で水中に潜る際使用。

 

《ウンディラ・スプリッツ》

水中呼吸魔法。水中の酸素を取り込めるようになる。

「第二の課題と迷路」で水中に潜る際使用。

 

《カルキトラ》

水中歩行魔法。水を壁のように蹴ったりできるようになる。

「第二の課題と迷路」で水中に潜る際使用。

 

《コングリッド》

集束魔法。人を集めたり、ごみを集めたり、いろいろ応用が利く魔法。

「あの男と私の伯母」で生徒を集めるために使用。

 

《レスプル》

暗闇でも視界をよくする魔法。

完全な闇だと効果を発揮しない。

「忍び寄る影」でイーニアが夜移動のために使用。

 

《アゲントオクルス》

蛇の視界を手に入れる魔法。

熱を見ることができる。

「忍び寄る影」でイーニアが相手を見つけるために使用。

 

《フェアーム・プロテゴ》

炎を纏い身を守る魔法。

アリシスがイーニアを護るために2度使用している。イーニアのは治癒の力のない未完成版。

「忍び寄る影」でイーニアが反射的に身を護るために使用。

 

《クリャスランス》

結晶槍魔法。

太い結晶槍を相手にぶつける。重い為あまり速度はでない。

「忍び寄る影」でイーニアが影に向かって使用。

 

《ムプチットヴァランチ》

攻撃魔法。圧縮する力とそれに反発する力を利用させ爆発を起こす。

「忍び寄る影」でイーニアが影に向かって使用。

 

【道具】

 

《別のものに見える薬》

イーニアが何となく作った薬。対象物に変えたいものをイメージしながらかけるとそれに見える。ただし見えるだけで触ると効果がなくなる。

「秘密の部屋と一年の終わり」でフレッドたちに貸した。

 

《アリシス特製のイヤリング》

アリシスがイーニアにお守りとして渡したイヤリング。

魔法で砕くと、一定範囲にあるあらゆる魔法的効果を消す。効果は30秒。

対になっているイヤリングを付けていると効果を受けない。

「あの男と私の伯母」でヴォルデモートに操られていた生徒たちを解放するために使用。

 

《黒いフードコート》

イーニア自作の魔力漏れを防ぐコート。

他にも多少の防御にも使えたりする。

「忍び寄る影」でイーニアが着た。

 

 

【アリシス・コーランド】

 

イーニアの伯母。アリスの姉。

アイザックたち亡き後、イーニアの面倒を見ていた。

職業は探偵。探偵の他にもイーニアには秘密の仕事をしている。それのせいでイーニアの面倒をちゃんと見てあげられなかったことを後悔している。

文武両道で魔法、運動、なんでもこなす。ホグワーツは主席卒業。

10人中9人が振り向くほどの美人で膝裏まである長い黒髪をストレートに流している。

煙草がよく似合い、睨むとチンピラよりずっと怖い。

 

本職:王室特務第65代目隊長 リーナ・イスカルド(偽名)

アリシスの本気を見たことのある人間は口を揃えて、世界最強の魔女と呼ぶほどの実力者。

化け物と呼ばれる奴らのトップに立ち、統率している。

 

 

好きなもの:イーニア ドラコ 努力をおしまない人間 煙草

嫌いなもの:努力をしない人間 差別 イーニアを害す存在

 

 

 

【王室特務隊】

 

王室に属する人間の護衛を主な仕事としている。

基本的に防衛行動のみで主攻撃になることはない。ただし、彼らが攻撃に回った場合、相手は必ず滅ぼされる。

構成員は化け物揃いで、破れぬ誓いを簡単に破る奴らだがアリシスが絞めているので独断行動はない。

王族ではなく王室なのは、血の繋がりなので揉め事が起きたため大きな括りになった。

国の危機であっても王室の人間に被害が出ていない場合、動くことはない。

 

 

 

 

【アーガルド・ヴァニシング】

 

王室特務所属。

長身で腰くらいまである黒髪。戦闘狂。

王室特務の中でもトップクラスの実力を誇り、殺されても生きているという正真正銘の化け物。

暇つぶしで王室の人間を殺そうとしていた際に、護衛で来ていたアリシスに殺害される。10回ほど殺害されたところでアリシスが自分より強者であることを認め、アリシスの下に就くことを要求。

最初は信じてもらえなかったが1ヶ月をかけて説得。(その間100回以上殺される)今の職に就く。

戦闘以外は割と常識人で、アリシスと交わした制約をちゃんと守っている。

魔法は彼に取って手段の一つでしかなく、魔法を使って戦闘しているときは本気で戦っていない。

かなりの長生きだが、本人曰く年齢は覚えていない。

自分より強い者、努力を惜しまない人間、諦めない人間が好きでたまに稽古を付けたりもする。

 

 

【あの時の男】

 

イーニアの友人、ナイを家族もろとも殺害した張本人。イーニアの心的外傷(トラウマ)

蜘蛛を連れていること以外は名前も顔も不明。ヴォルデモートに付いているものと思われる。

 

 

 

【ナイ】

 

両親が死んだ後、塞ぎ込んでいたイーニアを連れだした少女。

イーニアより2歳年上で天然などこにでもいる普通の少女だったが家に侵入してきた男の連れた蜘蛛に殺害される。

 

 

 

 

【ハリー・ポッター】

 

原作の主人公。

優しく仲間思い。決断すると素晴らしい力を発揮する。

ダイアゴン横丁でドラコと話しているときイーニアと出会い、その優しさなどに触れる。その際ドラコの違う一面を見ることがあり、彼に対する考えを改め親しみを込めて名前で呼ぶ。

ドラコやイーニアとの出会いで魔法界の興味をもち、ハーマイオニー程ではないが教科書を暗記していたりと成績はハーマイオニーやイーニアには劣るが努力をしている。

 

 

【ドラコ・マルフォイ】

 

原作とは性格などかなり相違がある。

純血派ではあるもののマグルを差別的に扱うことはなく、導くべき相手だと考えている。

少し嫌味で現実主義。純血にはこうあるべきと、魔法界を知らない相手には魔法界についてなど教えたりする。ただ偏っている知識も存在するため、イーニアに止められる。組み分け帽子にグリフィンドールに入れたいと思わせるほど勇気を持っているが親との衝突を避けるためスリザリンに入った。

家柄で見てくる純血の人間やマルフォイ家という目で見られることにうんざりしていたドラコにとって彼個人を見てくれるイーニアやハリーには信頼を寄せている。

また成績優秀なハーマイオニーを見て純血=才能ではないと確信し、もっとマグルの人間も魔法界に関わらせるべきと考える。

 

 

【セル・カロー】

 

純血主義の男の子。

純血であることを誇りにもち、マグルを差別的に扱い、見下している。

同じ純血のドラコの純血らしからぬ行動や発言に腹を立てている。

ドラコはそれに対し特別気にもせず、箒騒動ではバランスを崩したセルを助けたりしている。

 

 

【ノーバート】

 

ノルウェー・リッジバッグ種のドラゴン。

ハグリットが賭けでもらいロンの兄、チャーリー・ウィーズリーのところに引き取られる予定だったがイーニアを離れず、ダンブルドアの機転でホグワーツで飼うことになる。とても賢く、イーニアに懐いている。

 

人間でいう成人になり、イーニアなどを背中に乗せ、飛行したりしている。

 

 

【サーベイ・ホル】

 

ドラゴンキーパーとしてホグワーツに滞在。

 

 

【ロイ・マスタ】

 

ドラゴンキーパーとしてホグワーツに滞在。

 

 




他はまた今度追記します。


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プロローグ
3人は出会う


最後に読んだのはずいぶん前なのでかなり調べながらだったり間違えたりするかもしれません。
独自解釈も存在しますがおかしなところはご指摘ください。

ではどうぞ。


 イーニア・シュツベルは今日も一人運動をしていた。

 世界に存在する武術という武術を独学で学び、11歳の女の子では考えられない運動量を行っている。

 そもそもなぜこんなにも運動しているのかというと今は亡き両親の影響である。

 

 イーニアの両親、アリス・シュツベルとアイザック・シュツベルは若き頃はスリムで美男美女のカップルであったが結婚後、幸せ太りをした。それが不幸の始まりだった。

 二人はお互いを愛しすぎていたため互いに太っていても相手のことを嫌いなることなく、その体型を認めていた。

 結果二人はさらに太り、イーニアを生んでからも太っていった。

 あまりにも太っていたため日常生活に支障をきたすと周りは心配したが二人は優秀な魔法使いだったためほとんどのことは魔法で片付いてしまっていた。

 

 そんな魔法に頼り切った生活をしていたある日、不幸が訪れる。アリスとアイザックが脳卒中で倒れたのだ。原因はもちろん太りすぎ。

 そしてそのまま二人仲良く帰らぬ人となった。小さい頃から頭の良かったイーニアは当時7歳にして両親の死因に嘆いていた。

 もちろん悲しい気持ちも強くあった。しかし日頃からあれほど痩せろと言われていたにもかかわらず、痩せることのしなかった両親がそれを原因に亡くなるというのは悲しみを忘れさせるほど嘆かわしいものだった。

 そして自分は絶対にならないと誓いその日から運動を欠かさない。

 様々な本を世界中から集め、独学ではあるが学み行った。その中で武術というものに興味を持ち、今では部屋の半分が武術書で埋まっている。

 

 稼ぎの良かった両親なので生活には困らないほどの財産はあったが7歳の子供がやっていけるわけもなく一週間に一回アリスの姉、イーニアにとって伯母にあたるアリシス・コーランドが面倒を見に来ていた。

 現在はイーニアが一人でほとんどできるほどまで成長したため月に一回様子を見に来ている。

 

 そんなイーニアが日課の運動+αを終え、最後の型を取って休憩に入ろうとするとパチパチと拍手をもらった。いつの間にかアリシスが煙草を吸いながらデッキに腰かけている。

 アリシスは長身のモデル体型でアリス同様10人中9人が振り返るほどの美人だ。魔法使いとしてもとても優秀であるがアリシスは現在探偵をやっている。

 

「いつ見てもすばらしいわ。独学とは思えないほどに。」

 

「ありがと。そしていらっしゃい。」

 

「お邪魔してるわ。本当にそういうところはアリスそっくりよね。」

 

「そうかな?」

 

「そうよ。あの子も何でもできるタイプだったわ。小さい頃から。」

 

「そのお母さんがあの堕落か…人生なにがあるかわからないね。」

 

「堕落だったかはその人次第よ。少なくともあの子は幸せに生活していたし、死に顔も苦痛ではなかったわ。アリスが満足だったなら私はなにも言わない。」

 

「お祖母ちゃんもそうだったけどそう言うからお母さん痩せなかった気がする。」

 

 プクーっと頬を膨らませ少女らしい仕草をするイーニアにアリシスは笑いながら頭を撫でてやった。

 

「そうむくれないで。子供を置いて逝ってしまったのは問題あることだけど別に貴女を蔑ろにしていたわけじゃないわよ?」

 

「それは十分わかってる。―――とシャワー浴びてくるね。」

 

 自身が汗臭いことに気が付いたイーニアは少し早足で浴室へ向かった。

 アリシスも煙草の火を消し家に入る。いつものように片付いているリビングに行きソファーに座った。

 

 家族三人で暮らしていた家に今は一人のイーニア。本人は大丈夫だと言い張るが彼女はまだ11歳。本来ならアリシスが引き取ることもできたはずだったが自身の職業が職業である以上面倒が見きれないのは明白だった。

 もちろんアリスやアイザックの友人たちも引き取っても構わないと言ってくれたが、イーニアが自らこの家に残ると言い、今に至る。

 

「もっと見てあげなきゃいけなかったはずなのにね―――。」

 

 アリシスの独り言が静かなリビングに響いた。それに答えるものはいない。憂えているとパタパタと歩いてくる音が聞こえた。

 

「ふぃぃ。スッキリ――ん?どうかした?」

 

「いいえ。なんでもないわ。」

 

 アリシスの様子をおかしく感じたイーニアは質問を投げかけるがアリシスはいつもの表情をする。

 

「そう?ならいいんだけど。――お昼食べてないよね?何食べたい?」

 

「たまには私が作るわ。イーニアは座ってていいわよ」

 

「やった!アリシスの久しぶりの手料理だね!楽しみ!」

 

 イーニアは今日一番の笑顔を見せアリシスに抱きつく。

 

「こらこら、抱きつかれちゃ料理できないわ。」

 

 そう言いつつもアリシスもイーニアをしっかりと抱きしめ返す。

 "えへへ、ごめんごめん"と舌を出し笑いながらイーニアが離れるとキッチンに向かった。

 

 アリシスが料理をしている間、読書をしようと決めたイーニアは自室からと父親が使っていた書斎から武術と魔法の本を複数持ってきてリビングで読み始める。

 するとしばらくして、家の呼び鈴が鳴りイーニアが玄関へ向う。

 

「はーい。どちらさまですか?」

 

 玄関の扉を開けるとそこには老人の姿があった。老人は微笑みながらイーニアを見る。

 

「ほっほっほ。大きくなったの。」

 

「……んー。どっかでお会いしたとは思いますがどちらさまです?」

 

 どこか覚えのある顔に脳内検索をしたが思い出せず、失礼を承知で質問した。

 

「ダンブルドア!?ダンブルドア先生!?」

 

 玄関から戻ってこないイーニアを心配し、様子を見に来たアリシスが後ろで驚きの声を上げる。

 

「アリシス、君も息災でなによりじゃ。」

 

「ダンブルドア…?―――――あ!ホグワーツの校長先生!?」

 

「うむ。ご両親の葬式以来じゃな。イーニア。」

 

 突然の登場に驚いている二人を満足そうに笑うダンブルドア。二人は動揺しながらも家に招き入れた。

 

「ご飯時に押しかけて悪いの。」

 

「いえ。大丈夫です。なんなら食べていきますか?」

 

「うれしいお誘いじゃが次の予定もあるのでな。また今度ごちそうになろう」

 

「そうですか。――ご用件は?」

 

「なに、これを渡しにきたんじゃよ」

 

 そう言ってイーニアに一つの手紙を渡す。中身を確認するとホグワーツの入学許可証だった。

 

「何かの手違いで送られていなくての。せっかくだったので用事ついでに様子を見に来たというわけじゃ。――?なんじゃ?二人とも変な顔をして。」

 

 二人は入学許可証を見るまで今年入学だということを完全に忘れていた。

 

 コーランド家には未成年が魔法使用時に出る臭いを出す魔法を消す魔法がある。もちろんそれは家の秘密とされていたが、どこでどうみつけたのかイーニアが発見してしまう。

 もちろん並の魔法使いや熟練者でもわからない内容だったが、さすがというべきか優秀な両親を持つ子供。すぐに解読してしまい使用してしまった。

 

 それ以来彼女は自分で研究をはじめた為ホグワーツのことをすっかり忘れていた。アリシスも普通に魔法を使うイーニアを見ていた為同様に失念していた。

 二人には内心冷や汗をかきながら"筋トレが楽しくてすっかり忘れていました"などと適当に言い訳をした。

 

「ならば受けるということでよろしいかな?」

 

「はい。もちろん。」

 

「そうかそうか。入学式を楽しみしておるよ。その時また会おう。」

 

 そういうとダンブルドアは立ち上がり帰っていた。

 ダンブルドアを見送った後、二人は疲れたようにソファーに寄りかかる。

 

「危なかったー。すっかり忘れてた、ホグワーツ。」

 

「そうね。学校のこと忘れるなんて二人して呆けてるわね。」

 

「明日にでもダイゴアン横丁に行かなきゃ。」

 

「明日ならまだオフだから付き合うわよ。」

 

「一人でも行けるけど……わかった。お願いね。そのあと普通の買い物もしよ?」

 

「ええもちろん。」

 

 二人はソファーから立ち上がり、お昼を食べることにした。

 

 

* * *

 

 

 ダイアゴン横丁でホグワーツで必要なモノの買い物を済ませたイーニアたちはそれ以外の買い物を楽しんでいた。

 横丁をうろうろしていると知っている顔がありイーニアはそこに近づく。

 

「久しぶりね。ドラコ。」

 

「げっ。イーニア。」

 

 イーニアの姿を見るなり嫌そうな顔をし、半歩後ろに下がる。

 

「げっ、とはずいぶんなあいさつじゃない。それが3か月ぶりに会った友人に対する言葉?」

 

「口うるさいお前が悪い。」

 

「いつまでも凝り固まった考えでいる君もどうかと思うよ?――ところでそちら様は?」

 

「ハッ…余計なお世話だ。――彼はハリー・ポッターだよ。」

 

「へぇ!君があのハリーね!――初めまして。私はイーニア・シュツベル。」

 

 イーニアが手を差し伸べるとハリーも手を差し出し握手を交わす。

 

「ハリー・ポッターです。よろしく、シュツベルさん。」

 

「イーニアでいいよ。ごめんね、ドラコうるさかったでしょ。」

 

 その質問にハリーはどう答えていいか迷っていたがイーニアは"彼のことは気にしないで、いつものことだから"と微笑みかける。

 

「失礼な!僕は魔法界に慣れていない彼に色々と教えてあげようと――。」

 

「君の凝り固まった考えを押し付けるもんじゃないよ。見たところハリーは――っとと馴れ馴れしい?」

 

「ううん。ハリーでいいよ。」

 

「そっか。よかった。ハリーは自分の考えをしっかり持っているようだし、100人いれば100個の考え方あるって前から言ってるでしょ?無理に考えを押し付けないの。君の器の小さいところだよ?」

 

「うるさい!君は僕の母親か!」

 

「同い年の子供なんて持ちたくないなー。しかしハリー、君細いね。ちゃんと食べてる?」

 

 濁したように話していたがどうやらハリーの生活はとてもいいものではないようだった。それを聞いたイーニアはホットドック屋でホットドックを3つ買ってくるとハリーとドラコに渡す。

 

「3人で食べよう。」

 

 ドラコは何も言わずにそれを受け取り食べ始める。ハリーはどうしていいかわからず困っていた。

 

「ポッター、ひとついいことを教えてやる。この女はこうなったら絶対引かないから食べろ。特に食事関しては。」

 

「魔法使いでもあってもなくても体が健康じゃなきゃ生きてけないの。だから食事はとても大切。ハリーは年齢の割に小さいから食べれるものは食べるべきね。もちろん同情とかじゃないよ?お近づきの印。おごりだから気にせず召し上がれ。」

 

「あ、ありがとう。いただきます。」

 

 ハリーが食べ始めるとイーニアは満足そうに微笑み自分の分を食べ始める。

 3人が仲良くホットドックを食べていると商品を見ていたアリシスが店から出てきて近づいてきた。

 

「あら、ドラ坊じゃないの。久しぶりね。――イーニア私の分は?」

 

「いつになったらその呼び方をやめてくれるんですか?」

 

「半分上げるから我慢して。」

 

「ドラ坊が一人前になるまでよ。――仕方ないわね。」

 

 そこまで話してようやくハリーに気が付く。

 

「…ハリー・ポッターじゃない。そっか、イーニアと同い年だったわね。」

 

「アリシスはハリーを知ってるの?」

 

「ええ。まあ、職業柄ね。――初めましてハリー。イーニアの伯母のアリシス・コーランドです。」

 

 イーニアの時と同じく手を出され、慌てたハリーは持っていたホットドックを落としそうになったが落ちそうになったホットドックをドラコがとりハリーに突き返した。

 

「相変わらず素直じゃないわねー。ドラ坊は。ごめんなさい、ハリー。この子不器用なのよ。トゲトゲしているし家自慢とかするけど邪険に扱わないであげて。」

 

 イーニアやアリシスと話すうちに、ハリーは二人で会話していた時に感じていた嫌な感じをドラコから感じなくなっていた。彼もまたどこにでもいる11歳の子供なのだ。そう考えたらドラコのことを受け入れることができた。有名な家柄的に大変なこともたくさんあるだろう。

 

「マル…いや、ドラコ。ホットドックありがとう。」

 

「…ッ!!!い、いきなり名前で呼ぶな!」

 

「駄目かな?」

 

「…!い、いや。好きにしろ。ハリー。」

 

 イーニアがそうなようにマルフォイ家の子息ではなく自分を、ドラコという存在を見ている視線を感じたドラコはそれに答えるようにハリーを名前で呼び返した。ハリーは名前で呼ばれたことを嬉しそうな顔をし、ドラコは耳を赤くしていた。

 そんな光景をみてイーニアがニヤニヤしていると一人の大男が近づいてくる。

 

「またせたな、ハリー。」

 

 アリシスが大男を見ると知った顔、ルビウス・ハグリッドがそこにいた

 

「あれ?ハグリッドじゃない。なんでここに?ついに解雇されちゃった?」

 

「おお、アリシスか!久しぶりだな。―今日はハリーの付き添いだ。」

 

 少しふざけた風に声をかけたアリシスに特に怒る素振りもせず答える。

 

「この時期暇な先生なんていないものね」

 

「ああ、皆あっち行ったりこっち行ったりだ。」

 

「相変わらず皆大変ね。――イーニアとドラ坊は初めてかしら?こちらルビウス・ハグリッド。ホグワーツの禁じられた森の番人をしているわ。」

 

 イーニアとドラコは紹介され軽く会釈をする。ガサツな感じをドラコはあまりよく思わなかったようで少し顔に出ていた。ハグリットはそれに特に気が付いた様子もなくハリーに梟を渡し、今日はこれで帰ることを告げる。

 ハリーとドラコ、イーニアは9月にまた会うことを約束し3人は別れた。

 




脳みそまで筋肉な主人公ってわけじゃありません。
魔法だって使います。ただ頼りすぎないってだけです。
程よく筋肉がついているんです。筋肉モリモリもそれはそれで面白いかもしれませんが…w



ドラコが全然違うキャラになってしまいましたが、これはこれでいいと思ってます。

誤字脱字などございましたら、遠慮なくご報告ください。
感想お待ちしています。


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賢者の石
キングス・クロス駅 9と4分の3番線


書いているキャラがどことなく似ている気がする。
つまりは私の好みがもろに出ている…。
頑張ります。


ではどうぞ。


9月1日

 

 アリシスに見送りに来れないと言われ、一人キングス・クロス駅9と4分の3番線ホームの椅子に座り読書しているイーニア。予定よりずっと早くに着いたせいでまだ汽車は来ていないがイーニアの他にも少しだけ人がチラホラいた。

 

 イーニア自身特に緊張などはしているつもりはないが早くに起きてしまったところを考えると多少なりと緊張しているのだろう。それを自覚したイーニアは日頃と同じように読書をすることを決めた。

 

 すっかりいつもの調子を取ろ戻し読みふけっているとそうそうに3冊の本が読み終わり、ちょうど汽車がきたところだった。人も多く来ている。本をしまうと立ち上がり汽車に乗り込むと最後尾のコンパートメントに入ることにした。

 入るなりイーニアは左手を振り、外の音が入ってこないよう魔法をかける。窓のカーテンを閉め、制服に早着替えするとローブを羽織りそのまま眠りに入る。

 

――――――――――――――――――

 

「ここ、いいかしら?」

 

 コンパートメントに入ってきた人物に起こされ目を覚ますイーニア。いつの間にか魔法が解け列車の動く音が聞こえる。声をかけた人物は栗色のふわふわした髪をした少女だった。

 

「どうぞ。」

 

 イーニアは目をこすりながら場所を空ける。2、3回伸びをすると"失礼"といいながらストレッチをする。体を伸ばし終わるとカーテンを開け外を見た。外の様子からして出発してからそれなりに時間が経っていることが判断できた。

 

「ここに来るまで全部のところに聞いて回ったの?」

 

「さすがに全部には行ってないわ。結構の数回りはしたけど。」

 

 少し苦笑する少女にイーニアも苦笑で返す。

 

「そう。災難だったね。私はイーニア。イーニア・シュツベル。よろしくね。」

 

「私はハーマイオニー・グレンジャー。ハーマイオニーって呼んで。」

 

 お互いに自己紹介をして1年生だと言うとハーマイオニーにはおずおずとした雰囲気を醸し出しながら聞いてきた。

 

「イーニアは前から魔法を知っているの?」

 

「魔法族の家系だから生まれたころから魔法には触れているよ。」

 

「そうなんだ…。私は両親ともマグルだから私が魔女だって知った時は驚いたわ。」

 

「原始の魔法族はマグルの間に生まれたって言われてるからどこで魔法族の人間が生まれてもおかしくはないの。だからハーマイオニーが魔女だっておかしくはないのよ。」

 

「そうなんだ。――実は私、心配なのよね。マグル出身でやっていけるのかどうかって。」

 

「大丈夫よ。そのためのホグワーツだから。」

 

 少し暗い顔をしたハーマイオニーを元気つけるように言う。

 

「マグルの勉強と一緒。頑張ればその分成果はでるよ。」

 

 その言葉にハーマイオニーは笑顔になり、イーニアも微笑む。

 それからはホグワーツについてや魔法について、車内販売のお菓子がひどい味だのと話していた。ひどい味のお菓子を食べ、二人で眉間にしわを寄せているとノックされ一人の男の子が入ってくる。

 

「ごめんね、僕のヒキガエルを見なかった?」

 

 イーニアたちは眉間にしわを寄せながら首を横に振る。男の子は"そう"とさらに落ち込んだ様子になると出て行こうとする。

 

「どんなヒキガエルなの?」

 

 イーニアは口のものをしっかりと飲みこみ、寄っていたしわを戻すと男の子に声をかける。男の子が驚いた顔をするとイーニアは"手伝うよ"と立ち上がった。ハーマイオニーもそれに続く。

 驚きながら断ろうとする男の子に"見つからないと困るでしょ?"と告げコンパートメントを出る。男の子はネビルといい、ヒキガエルはトレバ―という名前だそうだ。

 

 ネビルにいたコンパートメントの場所を聞き、イーニアはそこより前方の車両に向かって探すと告げハーマイオニーとネビルにはもう一度同じ場所を探してもらうことにした。

 イーニアが魔法を使って呼べば楽なのだが、イーニアはなんでも魔法に頼らないと決めている上に、杖を持たずしかも無言魔法ができる彼女にとって杖を振ることは面倒なことだった。"ずっと座ってたし、少しは動けていいね"などと考えてたりもしていたイーニアは少し早歩きで向かう。するとネビルの言っていた場所のコンパートメントの扉の前でヒキガエルが鳴いていた。恐らくこのカエルがトレバ―である。それを見て苦笑するとひとまずトレバ―を持ち上げ戻ることにした。

 

 戻る途中で探しているネビルたちに会い、トレバーをネビルに渡す。ネビルは何度も何度もお礼を言い、イーニアは"次は気を付けてね"というとハーマイオニーとともに自分たちがいたコンパートメントに戻る。

 戻る途中、仲良さそうに話しているハリーとドラコに遭遇した。

 

「二人とも元気?」

 

 声をかけるとハリーはパッと顔を輝かせドラコはいつもの顔をしていた。

 

「うん。元気だよ!イーニアは?」

 

「どこのコンパートメント覗いてもいなかったがどこにいたんだ?」

 

「私も元気よ。ハリー。――最後尾。ハーマイオニーが来るまでは寝てた。」

 

 二人の他に赤毛の男の子がおり少し居心地が悪そうであった。

 

「最後尾はまだ見てないからいなくて当然か。ところで彼女がハーマイオニーか?」

 

 ドラコが後ろにいたハーマイオニーを見て言う。イーニアはハーマイオニーを見て肯くと前に出させる。

 

「ハーマイオニー・グレンジャーよ。よろしく。」

 

「ドラコ・マルフォイだ。」

 

「ハリー・ポッターです。」

 

 ハリーの名を聞いた途端、ハーマイオニーは"貴方があの生き残った男の子ね!"とハリーに近づいていった。

 ドラコはその勢いに少し驚き後ろに数歩下がる。

 

「彼女はマグルか?」

 

「うん。マグルよ。――ってこらあんまり変なこと吹き込まない。」

 

「なにを言っているんだ。ここは純血の僕が彼女に魔法界のなんたるかを…」

 

「それはこれからホグワーツで学ぶでしょ。その前に色々言わないの。」

 

「くっ…。邪魔を――。」

 

「どうせ赤毛の子にも何か言ったんでしょ?」

 

「僕は純血の人間はこうあるべきだと言っただけだ。」

 

 その言葉を聞き流しイーニアは赤毛の男の子に近づく。

 

「ごめんなさい。ドラコが余計なことを言ったでしょ。気を悪くしないで?悪気があるわけじゃないのよ。私はイーニア・シュツベル。あなたは?」

 

 赤毛の男の子はいきなり謝るイーニアに驚きつつも差し伸べられた手を取り握手を交わす。

 

「ロナルド・ウィーズリー。皆ロンって呼ぶよ。」

 

「よろしくね、ロン。」

 

「ウィーズリー家は純血一族なんだ。それなにこいつときたら――。」

 

「個人の自由じゃない。」

 

 飽きれた顔でドラコに言うと目を見開いて喋りだす。

 

「こいつの父親はマグル製品不正使用取締局長をやっていてる。マグルびいきなどと言われているが魔法省で局長を務めてるんだぞ。一番上の兄はグリフィンドール寮で5年生の時監督生に選ばれ、OWL試験では12科目全てパスするという秀才ぶりを発揮し、7年生で首席になった。2番目の兄は優勝こそ逃したが伝説の“クィディッチの名キャプテン”と呼ばれるほどの腕前で、今はドラゴンキーパーとして仕事をしている。3番目の――。」

 

 ひっきりなしに喋るドラコにハリーとハーマイオニーは驚き、もはや貶したいのかのか褒めたいのかわからない内容にイーニアはため息をつき、ロンに向く。

 

「ごめんね、めんどくさくて。直訳するとお前も頑張れって言いたいみたい。」

 

「う、うん。マ、マルフォイの言いたいことはわかったよ。」

 

 その言葉を聞きドラコは喋るの止め"わかればいい"と告げるとハリーたちに"また後で会おう"というとその場を去った。

 イーニアたちも"また後で"と告げ自分たちがいたコンパートメントに戻った。

 

 




杖なしで魔法を唱えたり無言魔法できたりしますが最強にする予定はありません。あくまで強キャラの予定です。


この世界の純血派には色々あり、ドラコは純血の人間はマグルや半純血を導くべきだ、みたいなことを考えています。
もちろん原作通り差別的な態度を取る純血派の人間もいます。
ドラコの父親、ルシウス・マルフォイはそちら側のためドラコとたまに喧嘩をします。
もはやドラコという名の別キャラになっていますがこれでいいんです。私はこういうドラコが書きたいんだ!(笑)



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組み分け帽子

どこにでもある普通の組み分け回。


ではどうぞ。


 汽車がホグワーツに着き、待っていたハグリッドの誘導で城へ向かう。

 少しだけ険しい山道を登り、大きな湖を船で渡ると石段を登る。その先には城の入り口の大きな扉があった。ハグリッドが扉をノックする。すると扉が開き濃い緑色のローブを羽織った1人の魔女が出てきた。

 

「マクゴナガル先生、イッチ年生を連れてきました。」

 

「ごくろうさまです、ハグリッド。あとは私が預かりましょう。」

 

 マクゴナガルと呼ばれた魔女はそういうと生徒たちを先導し始める。ホールを横切りざわめきが聞こえる扉の前を通り過ぎると一年生たちは横の部屋に通された。

 部屋に入るとマクゴナガルは"入学おめでとう"だとか”身だしなみをしっかりする"ようになどと言い部屋を出ていく。出て行った途端に皆が喋り出す。内容はもちろん組み分けについてだ。

 

「やっぱり試験とかなのかな?」

 

「どうだろうね。」

 

 不安そうに聞いてくるハリーに対し全然知らないという態度を取るイーニア。もちろん知らないのは嘘である。ホグワーツについてはある程度アリシスに聞いているので組み分けがどのように行われているか、イーニアは知っている。

 

 しかし皆、それなりに緊張しながら待っているのでここでネタばらしはつまらないとあえて知らない風に装ったのだった。ハーマイオニーはもちろん、ハリー、ドラコやロンまでも緊張した顔をしていた。皆が緊張しながら待っているとマクゴナガルが戻り呼ばれていく。

 先ほど通り過ぎた扉に入ると中は大広間になっており蝋燭が宙に浮いていた。マクゴナガルが一年生の前に帽子を置く。すると帽子は歌いだした。

 

グリフィンドールに行くならば

勇気ある者が住まう寮

勇猛果敢な騎士道で

他とは違うグリフィンドール

 

ハッフルパフに行くならば

君は正しく忠実で

忍耐強く真実で

苦労を苦労と思わない

 

古き賢きレイブンクロー

君に意欲があるならば

機知と学びの友人を

ここで必ず得るだろう

 

スリザリンではもしかして

君はまことの友を得る

どんな手段を使っても

目標遂げる狡猾さ

 

とのことらしい。帽子が歌い終わると拍手が送られる。

 

「ABC順に名前を呼ばれたら、帽子をかぶって椅子にすわり、組み分けを受けてください。」

 

 マクゴナガルの指示に従い、帽子をかぶると帽子が組の名前叫ぶ。これが組み分けの仕組み。それを見た大半の生徒はホッとしたような顔になる。次々と帽子をかぶり組が決まっていく。

 

「グレンジャー・ハーマイオニー!」

 

 ハーマイオニーが呼ばれ"いってらっしゃい"と背中を押してあげるイーニア。少し早足で椅子に近づき座る。

 

『グリフィンドール!』

 

 笑顔で椅子から降りるハーマイオニーにイーニアは微笑み返した。

 

「マルフォイ・ドラコ!」

 

 イーニアをチラッと見ると特に何も言わずに椅子に向かい座る。イーニアはドラコはすぐに決まると思っていたが意外と長く悩んでいた。

 

『スリザリン!』

 

 悩んだ割には予想通りのところへ組み分けされ拍子抜けだった。ドラコは嬉しそうでも悲しそうでもないとても普通の顔をしていた。

 

「ポッター・ハリー!」

 

 ついにハリーの番が回ってくる。呼ばれた途端、大広間が静かになる。少し悩んだようなちょっとした間が空いたがすぐに呼ばれる。

 

『グリフィンドール!』

 

 そう言われハリーがグリフィンドールのテーブルへ向かうと大歓声で歓迎されていた。

 

「シュツベル・イーニア!」

 

 ようやくイーニアが呼ばれ、待ちくたびれた顔をしながら帽子をかぶると耳元で声が聞こえた。

 

《アイザックとアリスの子か。》

 

《お父さんとお母さんを知っているの?》

 

《もちろん。さらに言えば君の伯母や祖母、祖父も知っているよ。》

 

《長生き?なんだね。―どおりで臭うわけだ。》

 

《失礼な!今日の日のためにちゃんと洗って消臭もしたぞ!》

 

《ね、念入りなんだね。で?どうするの?》

 

《父親ならグリフィンドール。母親ならハッフルパフ。伯母ならレイブンクロー。祖母ならスリザリンだ。》

 

《え゛お祖母ちゃんスリザリンだったの?そんな感じ全然見えない。》

 

《君の祖父と出会って変わったんだろう。ちなみに祖父はグリフィンドールだ。》

 

《というか私が決めていいの?》

 

《構わないよ。君はすべての要素を持っている。》

 

《うーん。―――話変わるけどドラコはなんで悩んでたの?すぐにスリザリンになると思ってたのに。》

 

《そのことか。まあ親しい君ならいいだろう。―――本当はグリフィンドールにしようと思っていたのだ。》

 

《へ!?なんで?》

 

《彼にはもうまことの友がいる。そして勇気を持っている彼にはグリフィンドールがふさわしいと思ったんだが…。》

 

《が…?》

 

《グリフィンドールに行ったら親とケンカしなければならなくなるからスリザリンにしてくれと頼まれた。》

 

《ああ、だからあんな顔してたのね。》

 

《まことに残念だ。だが彼の意思だ。問題はないだろう。》

 

《ふーん。―――じゃ、グリフィンドールでいいや。》

 

《理由を聞いても?》

 

《他とは違うってものを手に入れるために、かな。》

 

《ではこれからの君に期待しよう。》

 

『グリフィンドール!』

 

 ハーマイオニーに手招きされ隣に座る。

 

「これからよろしく。」

 

「ええ。イーニアも一緒でうれしいわ。」

 

「7年間よろしく。」

 

「トレバ―のことは本当にありがとう。よろしくね。」

 

 イーニアが声をかけるとハーマイオニー、ハリー、ネビルが返事をする。

 

「結構時間かかっていたから心配したわ。」

 

 ハーマイオニーに言われ、帽子との話に夢中になっていたことに気が付く。少しバツの悪そうな顔をしつつ"えへへ"とごまかすように笑う。そんなことをしていると最後のロンがグリフィンドールに決まりこちらへやってくる。皆ロンにも"よろしく"と声をかける。するとマクゴナガルが教職員のテーブルにもどり、ダンブルドアが立ち上がりお祝いの言葉とズッコケるようなギャグを聞き歓迎パーティが始まる。様々な料理が並び、家庭のことやこれからのことを話ながら食べていく。

 テーブルの上にあった食べ物のほとんどがなくなるとダンブルドアが立ち上がる。諸注意をいくつか言われる。その中には"死にたくなければ四階の右側の廊下に近づいてならない"とのこと。"ここは世界一安全の場所じゃなかったっけ?"などとイーニアは思いながら監督生の後に続き寮へ向かう。

 寮へ着き、同じ部屋になったハーマイオニーたちに軽く挨拶をしたイーニアは日課である寝る前の軽い運動を行う。開脚をし、床にぺったりとくっついたイーニアを見てハーマイオニーが関心した声を上げる。

 

「すごいわ。体柔らかいのね。」

 

「運動が趣味なの。今日はあんまり体動かせてないから柔軟くらいはしっかりやらないとね。」

 

 いつもの3分の2ほどやると、皆寝る準備を始めたのでキリのいいところでやめイーニアも寝間着に着替えるとベットにもぐりこんだ。

 




ドラコをグリフィンドールに入れようかと考えていたのですが、立ち位置的にはハリーの良きライバルみたいな感じにしたいのであえて同じくクラスにせずそのままにしました。

ドラコにとってのまことの友とはハリーやイーニアのことです。
そして自分の置かれている状況に立ち向かう勇気。
今回は父親とケンカする勇気が持てずスリザリンに行ってしまいましたが、今後グリフィンドールに選ばれるような勇気を見せてくれるでしょう。




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授業

だいぶ内容がうろ覚えです(汗

ではどうぞ。


 目を覚ますと起床にはかなり早い時間で皆まだ寝ていた。

 昨日、運動し足りなかったイーニアは寝間着から動きやすい格好に着替え、ストレッチをしながら静かに部屋出る。

 外に出ると湖のせいか少し肌寒い。ストレッチを終え、ランニングを始める。敷地が広く景色に飽きない。"これはいいコースになりそう"と少しご機嫌になり、速度を速める。一頻り走ると大きな木が並んでいる森が見えてきた。

 

「大きな木…。」

 

「ここが禁じられた森じゃよ。」

 

 思わず声を上げるイーニアにダンブルドアが後ろから現れ声をかけてた。

 

「あ、ダンブルドア校長。おはようございます。」

 

「うむ。おはよう。ずいぶんと早起きなんじゃな。」

 

「いつもはこんなに早くには起きないんですけど、昨日運動が足りなかったみたいで早く起きちゃいました。」

 

 "えへへ"と頭を掻きながら少し困ったように言う。

 

「運動が趣味と言っておったか。両親の影響かね?」

 

「はい。反面教師で始めた運動ですけど、武術とか学ぶのが結構楽しくってすっかりハマっちゃったんです。」

 

「よいよい。趣味があることはいいことじゃ。」

 

 ダンブルドアは微笑み肯くと"そろそろ戻った方がいい"と言いイーニアもそれに従った。

 

 軽くかいた汗を流し制服に袖を通す。皆まだ寝ていたので暇つぶしに談話室で読書をする。しばらくしてハーマイオニーやハリー、ロンも下りてきたので一緒に大広間に向かう。大広間にはまだそんなに人はおらず疎らであったがドラコはスリザリンの列でクラスメイトと食事をしていた。

 イーニアとハリーはドラコと目が合うと挨拶かわりに軽く手を振り、ドラコも目だけでそれに返事をした。席に着き食事を始める4人。食べ始めて少したつとロンが質問を投げかけてくる。

 

「一番最初の授業は?」

 

「魔法史。」

 

「歴史かぁ。僕、ずっとマグルで生活してたから結構楽しみだよ。」

 

 短く質問に答えたイーニア、最初の授業をそれなりに楽しみにしているハリー。ロンは魔法史と聞き少しげんなりした顔をしていた。

 食事を終え、教室に移動する。教師はゴーストであるカスバート・ビンズ。読書家のイーニアは歴史書なども読んでいるのでとてもつまらない授業であったが、ハリーは初めて聞く歴史にそれなりに楽しんでいたようだった。

 その後も薬草学、呪文学、闇の魔術に対抗する防衛術、占い学などをこなしていき授業開始から3日目の最初の授業。スリザリンとの合同授業の魔法薬学がやってきた。

 

 グリフィンドールとスリザリンはきれいに分かれて座っていたのだが、ドラコの隣がいないことに気が付いたハリーは隣の席に座った。その光景に両クラス目を見開いたがそこまで騒ぎ立てなかった。その前の席にハーマイオニーとロン、イーニアはネビルと座る。

 

「おはよう、ドラコ。」

 

「ああ、おはよう。」

 

 短い挨拶だけだったがイーニアにはそれだけでドラコが少し上機嫌になったことに気が付いた。担当教師のセブルス・スネイプが入ってきて授業が始まる。出席をとり、この授業のなんたるかの演説が終わると突然ハリーを呼び、いくつかの問題を投げかける。

 ハリーは少し迷いながらも問題に的確に答えて行った。答えられると思っていなかったのかスネイプはハリーが答えるたびに眉間にしわが寄っていく。全ての問題に答えたハリーにスネイプは点数をあげた。

 

「よく勉強しているようだな。グリフィンドールに5点。―しかしこれはどうかな?先ほど問題にあった生ける屍の水薬は基本的に水のように澄んだ色をしているがまれに薄く黄色に色づくことがある。これの効果は?」

 

 これにはハリーも黙り、ハリーが悩んでいるときに勢いよく手を挙げていたハーマイオニーも手を上げない。だれも答えることができず静まり返っているとイーニアがすっと手を挙げた。スネイプは"ほう"といった顔でイーニアを指名する。

 

「効果としては寝れない程度の眠気、正確に言えば眠いけど寝れなくなるという効果です。またなぜこのような黄色い生ける屍の水薬ができるかはここ100年近くわかっていません。」

 

「よく教科書を読んでいる。グリフィンドールに10点。さて、ポッターとシュツベルが言ったことをなぜ誰もノートとらんのだ?」

 

 正しく答えたイーニアにスネイプはニヤッと笑うと点数をあげると他の生徒にノートを取るようにいう。イーニアは少しため息をつきながら着席した。

 この薄い黄色の生ける屍の水薬は教科書の背表紙、しかも背表紙があるように見えないように細工されて、そこに書かれている。そこには解明されていない薬についてや筆者が作ってみたかった薬についてなどまるで授業に役に立たないことばかり書かれてある。

 そもそも魔法界の本、特に背表紙がないように見えるものに関しては基本的に背表紙が存在し、その何かしらが書かれていることが多い。イーニアもそれらの本に小さいころから触れていたため、今回のように気が付くことができただけで本来は気が付く様なものではないのだ。恐らく上級生にもこの教科書に背表紙があることを知っているものは少ないだろう。しかも全部の教科書に何かしら書かれている。基本的には知っていてもなんの得にもならないような内容が。

 そんな問題を出してきたスネイプにため息をつくしかなかったイーニアだった。

 

 

* * *

 

 

 飛行訓練についての張り紙が出され皆楽しみにしながら校庭に集まった。教師のマダム・フーチの指示に従い、箒のそばに立つ。

 

「右手を箒の上に突き出し、『上がれ!』と言う。」

 

 その言葉に従い皆大きな声で箒を呼ぶ。イーニアだけは普通に会話する声量で"上がれ"と言う。上がってきた箒を持ちながらイーニアは"箒を使って飛ぶのめんどくさいな"などと考えていた。

 そもそも浮遊魔法が存在するのになぜ箒を使わなければならないのかと疑問に思ったイーニアは、自らの研究で箒を使わず箒と変わらぬ速度で飛ぶ術を編み出した。そんなイーニアには箒を使うこの授業は魔法史よりつまらないものだった。皆が箒も手に持つと握り方と乗り方について教わる。笛の合図で空に飛ぶように指示され、カウントを始めたがマダム・フーチが0という前にネビルが空を飛んでいく。

 

「あわあああわ。」

 

 ネビルはどんどん上昇していく。皆、わーわー騒ぎ出しマダム・フーチも焦り始める。15mくらいを越えたあたりでドラコが飛んで助けに行こうとしたのをイーニアが止めた。

 

「なんで止める!?」

 

「細いドラコが慌ててるネビルを支えられるわけないでしょ。」

 

 あくまでも冷静に答えるイーニアに思わず睨みつけるドラコだったがそんなことを言っている場合ではなかった。20mを超えたあたりでネビルが落下してきた。全員から悲鳴が上がる。

 "コンフィンス(強化せよ)" イーニアが無言呪文で唱える。服を着ているため見えないが腕や足に青光した紋様がはしる。皆落下に目をつぶる中、イーニアは飛びだしネビルの落下点に凄まじい速度で接近する。ネビルが地面にぶつかるより前に着き受け止めた。

 

「大丈夫?」

 

 イーニアが声をかけたがネビルは気絶していた。"ありゃ?"と思っているとすごい勢いでマダム・フーチがやってくる。

 

「大丈夫ですか!?」

 

「はい。きれいに受け止めましたから。ただ気絶しちゃったみたいです。」

 

「よく受け止められましたね。」

 

「鍛え方が違うんで。」

 

 イーニアはニカッと笑うとネビルをマダム・フーチに任せ、列に戻る。マダム・フーチは誰も箒触らないように告げ、ネビルを連れて行った。マダム・フーチの姿見えなくなるとイーニアは質問攻めにあった。多くの生徒に囲まれ、皆同時に喋るせいで何を聞かれているのかわからない。そんなごちゃごちゃしている中、もめている声が聞こえてくる。

 

「やめないか。そんなことをしてどうする。」

 

「貴様みたいな純血失格なやつに指図される筋合いはない!」

 

「それはネビルのだ!こっちに渡してくれ!」

 

 声の主はドラコとハリーと他の生徒の声が聞こえてくる。イーニアは他生徒に囲まれていて、どこでもめているか見えない。

 

「ほしければ取りにこい!ポッター!」

 

 そう声が聞こえたと思うと1人の生徒が箒で空に上がっていき、それに続くようにハリーも上がっていく。その光景に一部生徒が歓声を上げる。なんでも最初に上がっていった生徒、セル・カローは親がクディッチの選手らしく、今後かなり期待されている生徒らしい。

 

「箒に触っちゃいけないって言われたのに。」

 

 いつの間にか隣にいたハーマイオニーが心配そうに空を見上げる。2人はどんどん上へあがっていく。ハリーは初めて箒に乗るはずなのに安定して上昇していく。

 2人は競争を始めたがハリーに追いかけられていたセルがバランスを崩し、落ちそうになる。彼は思わず手に持っていた何かを離し、ハリーはそれを取りに駆けた。すごい速度で地面に接近していくハリーを見てイーニアは杖を出し、今度はわかるように魔法を唱える準備をした。

 しかしハリーは地面すれすれで落下していたものを取り、危な気なく着地した。安堵し、杖を下したと同時に再び歓声が上がりハリーを皆が囲む。上を見ればいつの間にか箒で上昇していたドラコがセルを支えながら下りてきていた。

 

「ハリー・ポッターァッ!!」

 

 歓声でワイワイしている中、凄まじい声をあげマクゴナガルが駆け寄ってくる。マクゴナガルは少し動揺しながらもハリーを連れていった。

 

「ハリー大丈夫かしら。」

 

「罰を与えるって感じではなかったような気がするけど。」

 

 心配しているハーマイオニーにイーニアはマクゴナガルがどこか歓喜しているような感じを取り"心配ないでしょ"と続けた。その後マダム・フーチが戻ってきて特別変わることなく授業を続けた。

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 戻ってきたハリーからシーカーになることを告げられる。その話を聞きイーニアはマクゴナガルの表情に納得がいき、ロンは大喜び、ハーマイオニーは退学にならなくなってよかったと安堵した顔をした。

 夕食を食べ終わり、ハリーは退学になっていないことを告げるためドラコのところへ向かった。ドラコと話している最中、セルが再びハリーに喧嘩を売りドラコが止めはしたものの、夜中決闘をすることになったらしい。

 ドラコやハーマイオニー、イーニアも行くべきではないと止めたが、ハリー行く気の顔だった。

 夜中、イーニアは部屋にハーマイオニーがいないことに気が付き部屋を出る。談話室に行くとちょうどハリーたちが出ていくのをハーマイオニーが止めていた。3人はイーニアに気が付く。

 

「イーニアも言ってやって!」

 

「イーニア、僕は行くよ。」

 

 ハリーとハーマイオニーが同時に喋り少し困りつつも、ハリーに聞いた。

 

「どうしてそこまでしていこうと思うの?」

 

「あいつは…あいつは僕だけじゃなくドラコまで馬鹿にしたんだ。――屑と関わっている哀れな純血だって。」

 

 ハリーは友人を馬鹿にしたことに腹を立てていた。イーニアは嬉しそうに笑う。

 

「そういうことなら乗るわ。友人を馬鹿にされて黙ってられる程、私も大人じゃないもの。」

 

「イーニア!?」

 

 止めてくれる相手だと思っていたハーマイオニーはイーニアが賛同したことに驚きを隠せなかった。

 

「ただ、ハーマイオニーが言うことももっともね。見つかったらただじゃすまない。」

 

「そうよ!だからこんなバカなことは――。」

 

「だったらみつからなきゃいいのよ。」

 

 そういった瞬間、イーニアは杖を振ると目くらまし術を唱える。みるみる保護色に染まっていくのを見て驚く3人。"これなら問題ないでしょ?"と言うイーニアにハーマイオニーは何も言えなくなっていた。

 4人は忍び足で予定していたトロフィー室へ向かうがそこにはセルはおらず、かわりにフィルチとミセス・ノリスがいた。ひとまずその場から離れ、4人は話し合う。

 

「どういうこと?」

 

「騙されたのよ。ハリーがくるのを見越して。」

 

「ま、そうでしょうね。意地でもハリーを貶めたいみたい―――と、これはドラコだ。」

 

 とても小さく丸めてある紙がイーニアの手元にふらふらと付く。そこには短く言葉が書かれていた。

"行くな。フィルチがいる。"

 それを読み苦笑いするしつつ、3人に戻ることを告げる。しかしピーブズに出くわしたので逃げるために移動したところ、ダンブルドアが言っていた例の4階の右の廊下にでて、そのまま鍵が付いていた部屋へ逃げ込んだ。

 4人が一息ついているとそこに何かがいた。そこにいたのはよだれを垂らしながらこちらを見ている3頭犬。イーニアは声が出そうなったのを手でふさぐ。しかし残りの3人はそうもいかず大きな声を出した。

 

「「「うあああああああああああああああああ!」」」

 

 部屋を飛び出した3人を追いかけ、寮へと駆け抜ける。談話室へと着くとそのまま椅子へかける。

 

「な、なんであんなのがいるんだ。」

 

「私が知るわけないでしょ。」

 

「あー、びっくりした。」

 

「なにがなんだ…疲れたわ。考えるのはまたにして今日はもう寝ましょ。」

 

 さすがのイーニアも自分より大きな犬を目の当たりにして疲労を感じていた。3人も寝ることに賛同し部屋に戻りベットへと倒れ込んだ。

 

 




背表紙や生ける屍の水薬の設定はオリジナルです。少しお茶目な部分がほしかったんです。
ネビルを助けるために使った魔法は身体強化魔法。指定した個所の身体強化。もちろん全身に使うこともできます。ドラコがイーニアに届けた紙は授業中に離れた席の相手と会話するためにイーニアが考えた手紙魔法。
皆さんは授業中に手紙で会話している人は周りにいませんでしたか?私の周りは居ましたし、一時は私もやってました。たわいもない会話を文字で書くとどこか楽しいですよね。
オリキャラのセル君ですが今度どう関わらせるは何も考えていません。今回は原作のドラコの行動になりましたができれば自由に動かしたいと思っています。



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ハロウィンの戦い

画像みて思ったけどトロールってそこまで大きくないんですね。



ではどうぞ。


『親愛なるアリシスへ

 月日が流れるのが早すぎでこれ以上歳を取ったら一日なんて一瞬なんじゃないかと悩む今日この頃ですが、早くに感じるのはそれだけ充実しているのだと願いつつ私は元気にやっています。アリシスはどうですか?

 正直な話、電話がないのはとても不便です。手紙なんてほとんど書いたことがないので何を書いていいかさっぱり。最初は”私は元気。珍しい本があったら送って。”とすごく短い文を書いたのだけれどもさすがにそれはまずいと思い、こうして書き直しています。

 さて本題ですが、先も書いた通り本を送ってほしいです。持ち込んだ本のほとんどを読み切ってしまった上に図書館にある本のほとんどが魔法の本だし、3分の1は自宅にあるものだから全部読み切るのにそう時間はかからなそう。なので魔法の本に限らず面白そうな本があったら送ってほしいです。マグルの本でも全然OK。

 寒くなってきてるのでアリシスも体調には気を付けてね。

 あなたの姪 イーニア・シュツベルより』

 

 ペンを置き、伸びをすると手紙を包む。イーニアの梟、スノウにそれを渡し部屋をでた。

 ホグワーツもすっかりハロウィン色に染まりあちらこちらで飾り付けがされている。休日のため皆、仮装したり楽しんでいる。イーニアはというと自分の作った魔法のテストと武術の技の練習などに没頭していた。

 

「うーん、技をかける相手がほしいなー。」

 

 イーニアのストレッチやジョギングに付き合う相手は居たが武術の技の相手は居なかった。無理な注文だとイーニアは考えを止めると別の型に入り、練習していく。

 気が付くと夕方になっており夕食の時間が近づいていた。寮に戻りシャワーを浴びて、大広間へ行こうとするとハリーから手紙が飛んでくる。内容はロンとハーマイオニーが喧嘩をし、ハーマイオニーが怒ってどこかへ行ってしまったらしい。ハリーはロンを宥めているのでイーニアにハーマイオニーを見てきてほしいとの内容だった。

 "喧嘩するほど仲がいいとは言うけど…ちょっと揉め過ぎじゃない?"などと考えつつもイーニアはハーマイオニーを探すことにした。クラスメイトに話を聞くと、トイレいたという話を聞く。イーニアは大広間にあったパンを3つほど持つとトイレに向かった。

トイレに着くとハーマイオニーが個室で泣いていた。ノックをし、声をかける。

 

「ハーマイオニー?」

 

「イーニア?ごめんなさい。今は1人に――。」

 

「パン持ってきたから食べよ?トイレだけど。」

 

「え?」

 

「私は喧嘩の内容は知らないし、ハーマイオニーの痛みが分かってあげられるわけじゃないけど、でも1人は余計に悲しくなるし、お腹が空くともっとつらくなるんだよ。

――私は痛みや悲しみを取ってあげられるわけじゃないけどこれ以上増やすことを防ぐお手伝いはできるんじゃないかな?」

 

 そこまで言うと目を真っ赤に泣き腫らしたハーマイオニーが個室から出てくる。

 

「私、調子に乗ってたのよ。学年トップだからって。だからつい口を出して、きつく当たって、押し付けて、教えるつもりが相手のことなんてこれぽっちも考えてなかった。」

 

イーニアは何も言わずただ聞いている。

 

「嫌われて当然よ。自分勝手な私なんて―。」

 

 その言葉を遮るようにイーニアはハーマイオニーを抱きしめた。

 

「私はハーマイオニーのこと嫌いじゃないよ?むしろ好き。でも少し教えるときは気を付けたほうがいいかもしれないね。――大丈夫、自分で気が付いたもの。相手のことを考えて教えることができるはずだよ。」

 

 ハーマイオニーの抱きしめ返す力が強くなったのを感じイーニアは頭を撫でる。10分ほどイーニアの胸で泣き続けたハーマイオニーはイーニアから離れると落ち着いたいつもの顔をしていた。

 

「私、ロンに謝るわ。」

 

「うん。でも女の子を泣かせたんだ。いかなる理由でもロンには反省してもらわないと。」

 

 少し悪そうな顔をしたイーニアを見てハーマイオニーは笑う。笑っているとお腹の音がなった。顔を真っ赤にするハーマイオニー。

 

「泣いて体力使ったから余計にお腹すいたんだね。夕食、食べにいこ。」

 

 イーニアがくすくす笑いながらハーマイオニーの手を取る。2人でトイレから出ようとすると棍棒を持った大男が入ってきた。思わず2人は息をのむ。

 

「トロール!?」

 

 ハーマイオニーが叫んだのと同時に棍棒が振られる。

 イーニアは"コンフィンス!(強化せよ)" と叫び全身を強化するとハーマイオニーを抱え棍棒を避ける。トイレの個室が壊れ破片が散らばる。イーニアから降ろされたハーマイオニーはイーニアの身体に青光している紋様に驚く。

 

「イーニア!?それは!?」

 

「話は後!今はコイツをどうにかしなきゃ!」

 

 跳躍し、顔に蹴りを入れる。しかしトロールはびくともしない。

 "ウエイト差がありすぎる!"イーニアは舌打ちをしつつ、着地を狙って振られた棍棒をすれすれで避ける。後ろにステップし、間合いの外へ出る。今度はハーマイオニーを狙ってきたので抱え回避する。中途半端なサイズをしているため、これを抜けてトイレから脱出もできない。

 

「ハーマイオニー!一番後ろまで下がって!」

 

 出入り口からあまり動こうとしないトロールに対し2人はトイレの後ろまで下がる。イーニアが助走をつけて蹴り行こうとすると出入り口から声がする。

 

「2人とも無事!?」

 

「生きてる!?」

 

 ハリーとロンの声が聞こえた。トロールもそちらを向く。

 イーニアはその隙を見逃さなかった。"アッケラーティオ!(加速せよ)" と唱え、数歩しかない助走だったがイーニアはさらに加速した速度でトロールを蹴った。蹴りを受けたトロールはよろける。攻撃を受け、再びイーニアたちの方へ向く。今度は出入り口から動き、どんどん近づいてくる。近づいてきたトロールにハーマイオニーは悲鳴を上げるがイーニアは勝ちを確信する。

 棍棒を振りかぶった瞬間にハーマイオニーを抱え"ウォーレ!(飛べ) と唱えると、トロールの上を綺麗に飛び越した。ハリーたちの前に着地し、出入り口から廊下へ出るとトロールの方へ振り向く。

 

「何してんだ!?逃げるぞ!」

 

「イーニア!」

 

「早く!」

 

「大丈夫だよ。」

 

 ロン、ハリー、ハーマイオニーの言葉を無視し、手をトロールに振る。

コンフリンゴ!(爆発せよ)

 イーニアが唱えた瞬間凄まじい爆音とともにトロールが爆発した。廊下にいたハリーたちにも衝撃がいき、こけてしまう。

 

「やっぱり攻撃魔法は杖がないと加減ができないね。」

 

イーニアは手首をくるくると回しながらハリーたちに手を伸ばし起き上がらせる。

 

「い、今のは…。」

 

 あまりのことに言葉もでない3人だったがハリーがようやく言葉を発する。イーニアがどう説明しようかと悩んでいるとマクゴナガル、スネイプ、クィレルが駆けてきた。

 

「これはいったいどういうことです?」

 

 4人を見回し、とても怒っている様子のマクゴナガル。スネイプはトロールの残骸のところへ足を運び、クィレルもそれに続いたがトイレの中の様子を見てへなへなと座り込んでしまっていた。

 

「ハーマイオニーとトイレにいたらトロールが来たので撃退しました。ハリーとロンはそれを知らせに来てくれたんです。食事前にトイレに行くことは伝えてありましたから。」

 

 ハーマイオニー、ハリー、ロンが返事をする前にイーニアが喋り出す。

 

「撃退ってなにを使ったんです?」

 

「コンフリンゴで爆破しました。」

 

「「「ッ!」」」

 

 3人の顔が固くなる。

 

「トイレを壊してすみません。ここで撃退しないと大広間に連れて行くだけなので。」

 

 イーニアがぺこりと頭を下げる。スネイプは中の状態からして間違いないと告げる。マクゴナガルは悩んだ末、イーニアに聞いた。

 

「Ms.シュツベル。なぜコンフリンゴを?」

 

「?」

 

 その質問に首をかしげるイーニア。

 

「爆破魔法が唱えられるなら失神魔法なども唱えられるのでは?」

 

 少し考えたのち"あ!そっか!"と大声を出す。イーニアは倒すことばかり考えていたため完全に失念していた。イーニアは再び"ごめんなさい!"と頭を下げる。

 

「まったく…まあいいでしょう。その勇気と知恵に免じて1人5点ずつあげましょう。怪我がないのなら、寮に戻りなさい。生徒達がパーティーの続きを談話室でやっています。帰ってよろしい。――とMs.シュツベルは校長室に来なさい。」

 

 マクゴナガルは少し呆れつつも生徒の無事に安堵した顔をしていた。

 

「イーニア、談話室で待ってる。」

 

「わかった。大丈夫だと思うけどロンとハーマイオニーお願いね。」

 

「わかったよ。――そうそう、イーニアもう少し考えて動いた方がいいよ?」

 

「どういうこと?」

 

「いや、あの…えーと、そのスカートだからさ。飛んだ時とかに、そのー下着が…。」

 

 そこまで言われイーニアはスカートを押さえると顔を真っ赤にし俯く。沈黙が続き耐え切れなくなったのかイーニアは"校長室!先に行ってます!"叫びと走り出してしまった。

 

「イーニアもあんな反応するんだ。」

 

 ロンが少し唖然としているとマクゴナガルがやれやれといった感じでため息をつく。

 

「彼女も普通の女の子なんですよ。それなのにまったく。」

 

 ぶつぶつ言いながらマクゴナガルはイーニアを追いかけた。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 イーニアは顔を赤くしながら校長室の前で立っていた。後ろからマクゴナガルがやってくる。

 

「Ms.シュツベル。恥ずかしいからと言って廊下を走るのはよろしくないですね。」

 

「ううー…。すみません。」

 

「今回は大目に見ましょう。さ、中へ。」

 

 中ではダンブルドアが椅子に座ってポテチをつまんでいた。

 

「どうかしのかの?ミネルバ。」

 

 マクゴナガルが事情を説明する。

 

「ふむ、コンフリンゴが唱えれることに別段不思議はないがの。

――なぜ杖なしで唱えられる?」

 

「家で練習していた、としかお答えできません。――どうしても知りたければアリシスに聞いてください。私の判断では何も言えません。」

 

 イーニアは少し困りつつもそう返事をした。ダンブルドアはその言葉に"ふむ"と肯くとイーニアをそのまま帰した。

 その後、談話室でハーマイオニーとロンは和解した。もちろんハーマイオニーを泣かしたとしてロンはイーニアに説教を受け、それを見ていた2人はイーニアを怒らしては行けないと心に誓った。

 




アッケラーティオ《加速せよ》物体を加速させる魔法。
ウォーレ《飛べ》イーニアが箒で飛ぶ代わりに編み出した飛行魔法。
オリジナル魔法は一覧でキャラ設定のところへ載せる予定です。



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感想お待ちしています。


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クィディッチとクリスマス

勢いに乗るとどんどんかけるんですよ。

ではどうぞ。


 クィディッチシーズン開幕の日。最初の試合はグリフィンドール対スリザリン。ハリーの初試合でもある。そのハリーというと緊張でガチガチになっていた。

 

「大丈夫か?ほら、深呼吸しろ?」

 

「ヒッヒッフー、ヒッヒッフー。」

 

「それ、ラマーズ法ね。」

 

 フレッドにジョージがジョークを言うがそんなのは今のハリーにはどうしよもないだろうと思い、イーニアが突っ込みを入れる。緊張で食欲がないと言い張るハリーに"少しでいいから食べないさい"と説教し、胃に入れさせる。

 その後、温かい飲み物を飲まし、ゆっくりと呼吸をさせた。多少は緊張がほぐれたようだったがまだ動きがぎこちなかった。イーニアが"どうしたもんか"と悩んでいると少し周りが騒がしくなる。見るとドラコがこちらに歩いてくる。

 

「ずいぶんと緊張してるみたいだな。僕はスリザリンの生徒としてスリザリンを応援するからグリフィンドールは応援できない。けどハリー、君個人は応援している。全力を出して頑張ってくれ。」

 

 そういうとドラコはハリーの返事を待たずにスリザリンの方へと戻っていった。ハリーは少し呆けた顔をしていたが少したつと目に力が入り、緊張も取れていたようだった。それに安心したイーニアたちは応援席に移動した。

 選手たちが入場し、会場のボルテージが最高潮へと上がる。審判の号令で、選手たちは全員箒に乗り、空中高く舞い上がった。ホイッスルが鳴り試合開始となる。

 試合中、イーニアやロン、ハーマイオニーは夢中になって応援し続けた。ハイタッチを交わしたり抱き合ったり、箒で飛ぶなんてめんどくさいなどと考えているイーニアも気が付けば試合から目を離せなくなっていた。よほど夢中になっていたのか気が付けばいつの間にかハグリッドが隣に座っている。

 

「あれ?ハグリッドいつの間に?」

 

「結構前からいるぞ。ずいぶん夢中になっていたようだな。」

 

 試合に視線を戻すとハリーが箒から振り落とされそうになっていた。会場がハリーを指さしざわめきだす。異変に気が付いたフレッドとジョージが助けに近づくがさらに動きを激しくし、近づくことができない。

 

「故障…?いや、でもハリーの使ってるのってニンバス2000だよね?しかもマクゴナガル先生がくれた。」

 

「そうね。故障は考えづらいわ。」

 

「しかし魔法で邪魔するにも、強力な闇の魔術でもなけりゃ、箒にあんな悪さはできん。」

 

 ハグリッドがそう告げた途端イーニアはハグリッドの使っていた双眼鏡を借り観客席を見て回す。2人、ざわめいている会場の中で、2人だけおかしな動きをしている。スネイプとクィレルだ。

 

「どっちかが邪魔をしてるかな…?」

 

 イーニアはそうつぶやくと双眼鏡をハーマイオニーに渡し、杖を出す。ハリーを見ると箒がさらに激しい動きをしている。どちらかを選ぶ時間はないと判断したイーニアは集中し、2人同時に狙う。

 

オブスキュロ(目隠し)

 

 2人は突然視界を奪われ、その拍子に転ぶ。ハリーを見ると持ち直している。安堵したイーニアは呪文を終わらせる。その後持ち直したハリーがスニッチを取り試合終了となった。

 

 

 試合後、ハグリッドの小屋へお邪魔した。

 

「スネイプがやっていたんだよ!」

 

 ハーマイオニーに渡した後、ロンに双眼鏡が渡り丁度イーニアが魔法をかけたタイミングでスネイプを見たようだった。

 

「なんとも言えないよ。私は2人同時に魔法をかけたし、何より証拠がなさすぎる。」

 

「ぼくらが見たじゃないか!?」

 

「それじゃ他人に対して説得力がないって言ってるの。」

 

 ハーマイオニーもどちらとも言えないと言う。

 

「今回の犯人が誰であれ、スネイプは何か隠してるとは思うんだよね。」

 

「その根拠は?」

 

 ハリーはトロール襲撃の時にスネイプが足を怪我していたことを話した。

 

「なるほど。私たちが知ってる先生でも怪我しそうな場所っていうと3頭犬のところ?」

 

「ちょっと待て、なんでフラッフィーを知っとる?」

 

 それまで黙っていたハグリッドが口をはさむ。4人は"フラッフィー?"と声をそろえて聞き返す。

 

「あいつの名前だ。去年パブで会ったギリシャ人から買ったんだ。ダンブルドアに貸した。守るために。」

 

「なにを?」

 

「もう、これ以上聞かんでくれ。重大秘密なんだ、これは。」

 

「そこまで喋って聞くなって言われると余計に聞きたくなるけど。」

 

「ハリーが殺されてたかもしれないのよ!?」

 

 冷静なイーニアと少し興奮気味のハーマイオニーが突っ込むがハグリッドは首を振る。

 

「お前さんたちは関係のないことに、危険なことに首をつっこんどる。あれはダンブルドアとニコラス・フラメルの―――」

 

「ニコラス・フラメル?」

 

 ハリーが聞き返すとハグリッドはしまったという顔で自分の頭に拳骨を当てた。その後、4人を追い出すように帰した。

 

 

* * *

 

 

 明日からクリスマス休暇ということで皆、実家に帰る準備をしている。イーニアはアリシスが仕事で海外に出ていると連絡をもらいホグワーツで過ごすことを決め、図書館で調べ物をしていた。

 "うーん。錬金術師、賢者の石。私の知っていること以上のことは出てこないなー。"

あの時ハグリッドが喋ってしまったニコラス・フラメルについて調査したが自分が持っている知識以上のものは出てこず、ひとまずあそこに賢者の石があるのだろうと仮定することにした。確定ではないが結論を出したイーニアは寮に戻る。談話室に着くとハリーが1人暖炉の前で読書をしている。

 

「もしかしてもう皆行っちゃった?」

 

「うん。つい15分くらいまで待ってたんだけどね。汽車の時間があるから。」

 

「あらら。――ま、すぐ会えるからいっか。」

 

 そういうとハリーの隣に座るイーニア。ハリーは本を閉じるとイーニアの方へ向く。

 

「グリフィンドールの寮にいるの僕たちだけだって。マクゴナガル先生が。」

 

「そうなの?なら帰らなくて正解ね。ハリーを1人にしちゃうから。」

 

 ハリーは少し顔を赤くし、照れたように頭を掻いた。

 

「ああ、そうそう。ニコラス・フラメルなんだけど、賢者の石の創造に成功した唯一の者って言われてる人だね。賢者の石っていうのは金を作ったり、永遠の命が手に入ったりするって言われるもの。」

 

「つまりそれをスネイプは狙ってる?」

 

「可能性としてはクィレルも容疑者だね。」

 

「ただクィレルにそんな度胸あるのかな?」

 

「うーん、難しそうではあるけど二面性の持ち主かもしれないよ?」

 

「結局今はなにもわからないってことだね。」

 

「確証を持てるこれだってものが何もないからね。こればっかりはどうしよもないよ。ただ――。」

 

「ただ?」

 

「2人とも私の魔法を受けたのに犯人探しもしないってことは何かしら追求されると困ることがあるんじゃないかな。」

 

 教師を攻撃したともなればそれなりに問題になるはず。にも関わらずなにも音沙汰なしというのはどこか不自然だった。"それでも何かあるとしか言えないけどね"とイーニアは笑う。

 

――――――――――――――――――

 

 次の日、12月25日。イーニアが目を覚ますとプレゼントが置かれていた。アリシスをはじめとする親戚の人たち、両親の友人たちから大量の本が届いていた。中身を確認するとすべて持っていないもので、しかも一つもかぶりがない。"これは皆で合わせたな"と苦笑い。アリシスからは本の他にレポートのような紙束が手紙とともにあった。

 

『親愛なるイーニアへ

 本がほしいとのことだったので今年のプレゼントは皆で本を買ってあげることにしました。アイザックの書斎を調べて一つもかぶりが無いようにしたので楽しめると思います。

 また紙束は私が研究した魔法について記載してあります。貴女好みの魔法もたくさんあるので頑張って解読してください。

 帰れる時に休みとれなくてごめんなさい。この埋め合わせはどこかでするわ。

 あなたの伯母 アリシス・コーランドより』

 

 手紙を読んだイーニアはプレゼントをくれた親戚、両親の友人に電話…はないのでお礼の手紙を書くことにした。手紙を書き終わり談話室へ行くとハリーが待っていた。

 

「イーニアこれを見てくれ!」

 

 ハリーが大きめのマントを見せる。"これは?"とイーニアが聞くとハリーはマントを被る。するとハリーの姿が消えた。しかし触るとそこにいる。

 

「目くらまし術が使われてるマント?…いやもっと高位の魔法がかかってるのかな。」

 

 マントを夢中になって触っているイーニアに苦笑しているハリーが目に入り、慌てて謝る。

 

「ごめん。夢中になっちゃって。――でもいいものが送られてきたね。誰から?」

 

「それが何も書いてなかったんだ…。」

 

 イーニアは顎に手を当てると少し考え、可能性があるのはダンブルドアかなとあたりをつける。

 

「害があるようなものじゃないしありがたくもらいましょ。」

 

 ハリーもその言葉に肯いた。その後2人で宿題をやったり、イーニアが独自に編み出した魔法について話していると夕食の時間になった。するとマクゴナガルがカートを引っ張りながら談話室に入ってくる。

 

「先生?どうかしたんですか?」

 

「いえ、今日残っている生徒は貴方たちだけでした。大広間で2人食事というのは寂しいと思ってここに食事を持ってきたんですよ。」

 

「「え!?」」

 

 2人が驚いているとダンブルドア、ハグリッドも談話室に入ってくる。

 

「せっかくのクリスマスじゃ、1人でも多いほうがいいじゃろ。――セブルスを誘ったんじゃが1人で食事をしたいと譲らなくての。」

 

「彼はそういう人ですので仕方ありませんよ。――どうしました?2人とも。」

 

 固まってるイーニアとハリーにマクゴナガルは不思議そうに聞く。

 

「むむむ、それともお邪魔だったかの?」

 

「い、いえ!そんなことありません!」

 

「そ、そうです!急にだったので驚いてるだけです!」

 

 イーニアとハリーは慌てて返事をする。

 

「そうか。それならよかった。ほれ、2人ともクリスマスプレゼントじゃ。」

 

 そういうとダンブルドア、マクゴナガル、ハグリッドが2人にプレゼントを渡してくる。

 

「他の生徒には秘密じゃぞ?プレゼント欲しさに残る輩が出ては困るからの。」

 

 少し悪戯したような顔でいうダンブルドアに2人は笑う。ダンブルドアからのプレゼントは30㎝ほどの鎖だった。

 

「それはグレイプニルという。」

 

「決して切れないっていう!?」

 

「そうじゃ。それはほとんどの魔法を受け付けないが縮ませることと伸ばすことはできる。」

 

 マクゴナガルからはイーニアは本を、ハリーは箒の整備道具をもらった。

 

「Ms.シュツベルは読書が好きということを聞いたので私が一番面白いと思った魔法書を。Mr.ポッターには今後もクィディッチで活躍できるよう整備道具を。」

 

 ハグリッドからはイーニアは木のダンベル、ハリーには木の置物だった。

 

「俺は大したもんはわたせねぇ。すまねぇな。」

 

「ううん。ありがとう、ハグリッド。」

 

「ダンベルって…うれしいけど私、女の子だからね。」

 

 笑顔を向けるハリーに対しイーニアは苦笑いだった。

 その後、授業や魔法について話しながら5人で夕食を楽しんだ。




トロールを爆破してしまったイーニアは少し反省したのでスネイプたちには目隠し魔法を駈けました。2人を爆破したら原作崩壊もいいところなのでw



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みぞの鏡とノルウェー・リッジバッグ種

原作とは相違があります。


ではどうぞ。


 クリスマスパーティーを満喫したイーニアは1人のんびりと校内を歩いていた。廊下は暖房が利いていなく寒く息が白い。適当に歩いていると知らない場所に出る。そこには姿鏡が一つだけ置かれていた。

 

「なんでこんなところに鏡が…?」

 

 イーニアは疑問に感じつつ鏡に近づく。すると鏡に自分と、写真でしか見たことのない痩せている両親が写った。

 

「これは…。」

 

 鏡に写ったものに少し驚きつつも鏡を触りどういうものか確認する。ふと後ろから気配を感じたイーニアが振り向くとそこにはダンブルドアとハリーが歩いてきた。

 

「ダンブルドア校長、ハリー。」

 

「こんなところにおったのか。」

 

「イーニア、それは?」

 

「よくわかんない。」

 

「それは"みぞの鏡"と言うものじゃ。」

 

「みぞの鏡?」

 

「ハリー近づいてごらん。なにが見える?」

 

「両親と…僕が見えます。」

 

「鏡が見せてくれるのは、心の一番底にある一番つよい"のぞみ"じゃ。それ以上でもそれ以下でもない。君は家族を知らないから、家族に囲まれた自分を見る。イーニアは恐らく痩せていた両親を見たのではないかな。

しかしこの鏡は知識や真実を示してくれるものではない。鏡が映すものが現実のものか、はたして可能なものなのかさえ判断できず、みんな鏡の前でヘトヘトになったり、鏡に映る姿に魅入られてしまったり、発狂したりするんじゃよ。

夢にふけったり、生きることを忘れてしまうのはよくない。それをよく覚えておきなさい。」

 

 その言葉に2人はしっかりと肯き返事をした。

 

「でもなんでそんなものがこんなところに?」

 

「少し置く場所に困っていての。明日には違う場所に移すつもりじゃったんだが、その前にイーニアが見つけてしまったということじゃ。」

 

 困った顔で見るダンブルドアをイーニアは笑ってごまかした。

 

 

* * *

 

 

 年が明け休みも終わり、優勝がかかったハッフルパフ戦。グリフィンドールではスネイプが審判をするという話でもちきりだった。ロンなどは理不尽に減点されるのではないかと話していたがイーニアは審判をやる人間がそれは駄目だろうと思いつつも、そういう行動にでそうに見られているスネイプの日頃の行いにも問題はあるのではと考えていた。

 しかしそれも杞憂に終わり、ハリーが前代未聞の速さでスニッチを掴み、即試合終了。減点されることもなくグリフィンドールは優勝を飾った。だがハリーは試合後、スネイプとクィレルが揉めているのを目撃し、恐らくあるであろう賢者の石が危ないのではと考えた。

 4人はスネイプたちの動きをできるだけ見ていたが、その後2人に特に目立った動きはなかった。

 

 月日が流れ、学年末試験が近づいてきたのでスネイプたちを見ていることができず勉強の方へ力を入れなければならなくなる。イーニアとハーマイオニーは日頃から勉強しているので、2人はハリーとロンの苦手科目を教えることした。

 勉強結果が実り、ハリーもロンも苦手科目の対策がとれるようになったころ。勉強の休憩していた4人にハグリッドが声をかけ小屋へ来るように言う。

 小屋に入ると中は真夏ように暑く暖房がすごい勢いで燃え、前に訪れたときになかった卵がゆでられている。イーニアがフラッフィーのところはどうなったかと聞くとあそこにはやはり賢者の石が存在し、何人もの先生方の罠が仕掛けられ、フラッフィーに関してはダンブルドアとハグリッドしかあやし方は知らないという。

 

「でもさ。疑うわけじゃないんだけど、ハグリッド本当に誰にもしゃべってない?」

 

「話すわけがなかろう。」

 

「うーん。ま、今はいいか。誰が協力してるかわかっただけでも十分収穫はあったよ。―――ところでハグリッド、なんでこんなにここ暑くしてるの?」

 

 イーニアが聞くのをやめたので3人もこれ以上ハグリッドを問い詰めるのをやめた。そして普通の話題として小屋が暑い理由を聞くとハグリッドは卵の方を見る。

 

「それのせい?なんの卵なの?」

 

「賭けに勝ったんだ。知らん奴とトランプでな。そいつは厄介払いができたと喜んでおった。」

 

「食べるわけじゃないんだよね?鍋で茹でてて大丈夫なの?」

 

「さっき図書館で本を借りたんだ。『趣味と実益を兼ねたドラゴンの育て方』っちゅー本だがな、なかなか面白いぞ、こいつぁ。」

 

「「「「ドラゴン!?」」」」

 

「まって!!ドラゴンって法律で禁止されてるよね!?アズカバンに入りたいの!?ハグリッド!!」

 

 すごい形相でハグリッドに詰め寄るイーニア。その勢いにさすがのハグリッドも体を後ろにやる。ハリーが"そんなにまずいこと?"と聞いてくるとハーマイオニーが説明する。

 

「ワーロック法っていって1709年に作られた法律があるのよ。一般人のドラゴンの飼育を禁じるって内容の。許可を得るのもかなり難しいって聞いたことがあるわ。」

 

「賭けで渡してきた奴も相当危ない奴かもしれない…。うーん…。どうしよ。」

 

 イーニアは立ち上がり小屋をうろうろしながら考える。4人はその様子を見ていたが卵から割れるような音が聞こえ、全員が見る。

 

「おおっ、そろそろ孵るぞ!」

 

 ハグリッドが卵を鍋からだしテーブルの上のタオルの上に置く。卵に亀裂がどんどん入っていき爆散した。

 

「ノルウェー・リッジバッグ種だ。すっげー…。」

 

 ロンの感嘆した感想にイーニアは余計に頭を抱えた。ノルウェー・リッジバッグ種。ドラゴンの中でも桁外れに攻撃的なドラゴンでとても貴重な種である。事態が余計に悪化したことに嘆くイーニアに対し割と能天気な元凶と男たち。

 

「ダンブルドア校長のところへ行こう。ハグリッドすべてをそこで話して。」

 

「だ、だがこいつは――。」

 

「ホグワーツの人間がこんなもの飼ってたなんて話になったらダンブルドアの立場も悪くなるよ。それはハグリッドだって望んでないでしょ?問題はこの子をどうするかだけど――。」

 

「それなら僕の兄貴がドラゴンキーパーとしてドラゴンの研究をしているからそこに預けれないかな?」

 

「それはいいアイディア。それで行きましょう。この子は私と――。」

 

「僕も見てるよ!ドラゴンの子供なんてそうそう見れるもんじゃないからね!」

 

「じゃあハリーとハーマイオニーはハグリッドと一緒に校長室へお願い。」

 

 2人はイーニアの指示に肯き、ハグリッドを連れて小屋を出た。3人が出ていくの見送ると深く椅子に腰かけるイーニア。ふとドラゴンの方を見るとロンが触ろうとしていた。

 

「ロン!駄目!!」

 

 イーニアの制止は虚しくも間に合わず、ロンはドラゴンに噛まれてしまう。

 

「いったああああああ!!!」

 

「馬鹿!種類知ってるなら攻撃的だってわかってるはずでしょ!?」

 

 血が出ている部分にハンカチを当て止血すると治療呪文を唱え応急処置をする。

 

「いたたた、ありがとう。イーニア。」

 

「どういたしまして。でもマダム・ポンフリーに診てもらわなきゃだめね。」

 

「どうして?痛み結構ひいたけど。」

 

「ノルウェー・リッジバッグ種は牙には毒があるの。それの治療は私じゃできない。」

 

「ええ!?毒!?大丈夫だよね!?僕死なないよね!?」

 

「大丈夫だよ。死にはしないから。ただ死ぬほど痛いかもね。」

 

 イーニアはロンにいじわるを言い、ニヤっと笑う。ロンを脅し、反省させるとイーニアは噛まれないように気を付けながら生まれたばかりのせいでぬるぬるしているドラゴンの体を拭いていた。ドラゴンの体を拭き終わり、何故か膝の上で大人しくしているドラゴンに疑問を抱いていると3人がダンブルドアを連れて戻ってきた。

 

「ほっほ。ずいぶんと立派なドラゴンじゃの。」

 

「こんにちは、ダンブルドア校長。――ああ、そうだ。ロンの兄への手紙を出してもらっていいですか?ロンさっきこの子に噛まれちゃって。」

 

 膝の上で大人しくしているドラゴンの喉をカリカリ掻いてやりながらダンブルドアに言う。

 

「ロンの手、明日にはパンパンに張れちゃうと思うんです。――それに校長からなら面倒事も減りそうですし。」

 

「よかろう。ウィーズリーは今すぐ医務室に行きなさい。」

 

「じゃあ私が連れて行きます。」

 

 ハーマイオニーに連れられ小屋を後にするロン。その後、少しドラゴンの相手をしたイーニアとハリーは夕食の時間が近づいたので大広間へと向かった。大広間に着くとハーマイオニーが1人で食事をしており聞くとロンは入院することになったとか。

 

 数日後、ドラゴンのノーバートを受け渡すことになりロン以外の3人はそれに立ち会うことにした。イーニアはドラゴンに何故か懐かれていたので毎日ハグリッドの小屋を訪れ世話を手伝っていた。それも今日で終わりである。

 

「数日とはいえ世話をしてると愛着が湧いちゃうもんだね。」

 

 ノーバートに餌をあげながらしみじみ言うイーニア。

 

「世話してわかったことだけどドラゴンって頭いいわよね。私たちの言葉をしっかり理解するし。」

 

ハーマイオニーもノーバートを見ながら言う。

 

「でも読んだ本じゃ結構気性が激しくて大変って書いてあったからノーバードが賢いんじゃない?」

 

 ハリーは読んだ本を見せながら言う。

 ノーバートを引き取るチャーリーの同僚、サーベイが訪れノーバートを引き渡す。ハグリッドは大泣きしている。

 

「ノーバートをお願いします。賢くていい子なんです。――ノーバートいい子にね?機会があったら会いに行くね。」

 

 イーニアがサーベイに渡そうとするとノーバートはイーニアに引っ付いて離れようとしなかった。強化魔法をかけ、力任せに離そうとしてもすごい力で掴んで来る。

 

「いたたた。ノーバート、言うこと聞いて?」

 

 生まれて数日しかたっていないがノーバートはイーニアの言うことを聞かなかったことはなかったゆえにイーニアは完全に困った顔をした。ダンブルドアがそれを見てサーベイに話しかける。

 

「ここに君たちの仲間を駐在させることは可能かね?」

 

「費用さえあれば可能ですが…お恥ずかしい話我々の研究もあまり進んではいません。正直ギリギリなんです。」

 

 サーベイが申し訳なさそうにいうとダンブルドアは何かを決断する。

 

「費用はこちらで持とう。幸い餌になる動物や育てる土地はある。――イーニア、君はドラゴン研究会としてノーバートを育てなさい。」

 

「えええええええ!!?!」

 

「ノーバートが離れん以上仕方ないじゃろ。無理に剥がせば君の身体かノーバートの体が千切れる。魔法省へは儂から話しておこう。」

 

「我々としては願ってもない申し出ですが本当によろしいのですか?」

 

「なに、ホグワーツには様々なモノがおる。ドラゴンが居ても問題なじゃろ。」

 

 サーベイが少し戸惑い気味に聞くとダンブルドアは笑いながら答え"さっそく交渉してくるかの"とその場を去って行った。あまりにも衝撃が大きくイーニアは呆然としていたがハリーとハーマイオニーはハグリッドに"お別れじゃなくてよかったね"と慰めていた。

 

 その後、ダンブルドアは魔法省から飼育許可を持ったものを2人以上置くことでホグワーツで飼うこと許可することを承諾させ、しばらくはハグリットの小屋で、大きくなったらグレイプニルの鎖を使い飼うことが決まった。その話は瞬く間にホグワーツ中を駆け巡り、イーニアはしばらくの間、質問攻めに合うはめになった。

 

 

* * *

 

 

 ドラゴン騒動も沈静化し、学年末試験間近。イーニアは勉強の休憩にハグリッドの小屋を訪れ、ノーバートの世話をいていた。

 

「君に懐きすぎているもので、俺たちがノーバートにすることがほとんどないんだ。これじゃ給料泥棒だよ。」

 

 駐在しているドラゴンキーパーのサーベイとロイは大笑いしながら言う。もちろん冗談でイーニアの手伝いのおかげでドラゴン研究はかなり進んでいるらしい。

 

「そういえばハリーたちはどうした?」

 

「もう少しやってから来るって言ってたからそろそろ――ほら来た。」

 

 ノックが聞こえハグリッドがドアを開けるとハリーたちが入ってくる。

 

「こんにちは、サーベイ、ロイ。」

 

「ああ、こんにちは、3人とも。」

 

 2人に挨拶するとハリーたちはノーバートに近づき遊ぶ。遊びとしては特殊な切れない布を引っ張りあったり、物を投げて取りにいかせたり、とまるで犬だった。ただドラゴンキーパーの2人によると引っ張り合いは顎と腕の筋肉を使うのでいい運動になるし、物投げはノーバートが飛んで取りに行くので飛行訓練にも適していると話していた。しかしここまで人の言うことを聞くドラゴンは初めて見るらしい。

 

「そうだハグリッド。禁じられた森ってやっぱり入るのまずい?」

 

「そりゃそうだが…。なんでだ?」

 

「いや、ノーバートもそろそろここの風景に飽きてきてるんじゃないかなって思って。基本サーベイとロイ、私が踏み入れる場所しか連れてってないから。」

 

「うーむ、どうしても連れて行きたいなら夜ここにこい。俺も少し確認したいことがあるからあそこに入るしな。」

 

「わかった。こっそりと抜け出してくるね。3人も来る?」

 

 その言葉にハリーたちは即答した。

 

 




ドラゴン関係を変更しました。
ノーバートはちょくちょく出しストーリーに関わらせようと思います。

次回はドラコが出ます!お楽しみに!


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禁じられた森

たくさん魔法が出ます!

ではどうぞ。


 夜、ハグリッドの小屋へ着くと何故かドラコがいた。

 

「へ?ドラコ。なんで?」

 

 イーニアは素っ頓狂な声を出したがハリーは勉強尽くしで全然話せていなかったので喜んでいた。

 

「なに、最近話せてなかったからな。ぼくも休憩がてらここに来たら夜に森に入るって聞いたもんでね。せっかくだらご一緒させていただこうかと。」

 

「ずいぶん大胆なことするね。てかそんなキャラだった?」

 

 今までとったこともない奇行にイーニアは思わずドラコのおでこを触る。

 

「やめろ!熱なんかない!ぼくは導く純血として君たちを――。」

 

「話し長くなりそうだからその辺でいいよ。」

 

 どうでもよく話を切ったイーニアだったが呆れた顔ではなく笑顔だった。

 

「なんだ、その顔は。」

 

「私もハリーと同じ気持ちなだけだよ。久しくドラコと話してなかったからこうして話せるのがうれしいだけ。」

 

 それを聞いてドラコは"確かにこのやりとりも久しぶりだな"と笑っていた。

 

 禁じられた森に入る6人とドラゴン1匹と犬1匹。サーベイとロイは"イーニアがいるなら問題ない"といい、付いては来なかった。

 

「俺達が今日やろうとしていることは危険なんだ。軽はずみなことをしないでくれ。」

 

 注意として言ったハグリッドに対し"あれ?そういう話だっけ"と5人の頭を過ぎった誰も突っ込みはしなかった。

 

「見ろ、銀色の血……ユニコーンの血だ。何者かにひどく傷つけられたユニコーンが、この森の中にいる。」

 

「ずいぶん酷い奴がいるね。」

 

 ハリーが苦い顔をしているとイーニアが目的を聞く。

 

「そのユニコーンを見つけたらどうすればいいの?」

 

「俺に知らせてくれ。あと治療できそうであれば治療を。」

 

「光を空に打ち上げればいいね?」

 

「ああ、それでいい。――じゃあ2組に分けるぞ。」

 

 イーニア、ハリー、ドラコとノーバート、ファングの3人と2匹。ハーマイオニー、ロン、ハグリッドの3人の2組に別れユニコーンを探す。

 

「ノーバートの散歩のつもりで来たんだけどなー。」

 

 ハグリッドたちと別れ、のんびりと森を歩くイーニアは苦笑しながら言う。

 

「ハグリッドも悪気があるわけじゃないから。」

 

 ハリーも苦笑しながらそう返す。

 

「慎重に行く必要はあるだろう。ユニコーンを襲った奴が僕たちを襲わないとは決まったわけじゃないからな。」

 

「むしろ襲ってくる可能性のほうが高いよね。」

 

 真面目な顔でいうドラコにうんざりという顔でハリーはため息をついた。さらに奥に進み少し、開けた場所に出るとそこに一頭のユニコーンが倒れていた。イーニアは光を空に打ち上げ、ユニコーンに近づく。

 しかしユニコーンはすでに事切れており息はなかった。

 

「残念だけど遅かったみたい。」

 

 イーニアの言葉に、少し悔しそうな顔をする2人。イーニアも俯いていると先ほどまで頭上を飛んでいたノーバートが近くに降りてきて、何かに警戒しているように見て取れた。

 

「ノーバート?どうしたの?」

 

 イーニアはノーバートの向いている方を見てハリーとドラコもそれに続く。するとそこには生き物とは思えないおぞましいものがいた。フードをかぶり人型のように見えるが動きがまるで生き物に見えずまるで化け物だった。

 3人は少しの間、固まった。それ(・・)が動きを見せた途端、ハッとなりイーニアが叫ぶ。

 

「逃げよう!」

 

 ハリーとドラコもそれに反応し走り出す。しかしそれ(・・)は見た目以上に早く動き走っているイーニアたちに徐々に近づいてくる。イーニアは覚悟を決め振り向くと呪文を唱える。

 

「「イーニア!?」」

 

インカーセラス!(縛れ)

 

 それは当たることがなく、見えない壁に当たり弾けた。

 

「盾の呪文!?」

 

 相手は追いかけるのをやめ、止まってた。ハリーとドラコも杖をもち横に立つ。ファングはすでおらずノーバートはイーニアの横で今にも噛みつこうと言わんばかりである。

 

「ノーバート。近づいちゃだめだよ。なにがあるかわからないから。」

 

「どうする?僕はそんなに攻撃魔法唱えられないぞ。それにさっきのは盾の呪文だろう?」

 

 少し震える手を相手に向けながらイーニアに聞くドラコ。

 

「できる魔法を片っ端からやるしかないでしょ。向こうは絶対普通じゃないみたいだし。」

 

 イーニアがハリーを見るとわかったとハリーは肯く。

 

レダクト!(粉々)

ウィンガーディアム・レビオーサ!(浮遊せよ)

インセンディオ!(燃えよ)

 

 イーニアが粉々になる呪文を、ハリーが近くに倒れていた大木を浮かせぶつけようと、ドラコが燃やそうと唱えるがすべて弾かれてしまう。

 

インペディメンタ!(妨害せよ)

エクスパルソ!(爆破)

エクスペリアームス(武器よ去れ)

グリセオ!(滑れ)

ステューピファイ!(麻痺せよ)

ディセンド!(落ちろ)

ディフィンド!(裂けよ)

 

 3人は思いつく限りの魔法を唱え続けたがどれも弾いてしまう。

 

「奴は本当に化け物か!?」

 

 ドラコが悲鳴に近い声を上げる。

 

「もうへばったの?ドラ坊!」

 

「あの人と同じ呼び方をするな!」

 

「でもあれはまずいよ!?」

 

 ハリーの言うとおりまずい状況だった。相手がそれほど動いていないので現在は集中砲火していられるが動かれると、どうなるかわからない。状況を打開すべくイーニアは最近覚えた一つの呪文を唱える。

 

ラマンパトラム!(武器を生成)

 

 弓矢がイーニアの前に現れる。驚く2人をそのままにコンフィンス(強化せよ)を唱え体を強化し、構える。イーニアが矢を放つと、その矢にアッケラーティオ(加速せよ)をかける。次々と矢を放ち加速させ、見えない壁に当たっていく。10本射った時、壁に当たる音以外にバキィッ!と何かヒビが入ったかのような音が聞こえた。

 "いけるッ!"イーニアがそう判断し次の矢を射ろうとした瞬間、動いていなかったそれは突然動きだしイーニア目がけて突っ込んできた。

 

「うッ!」

 

 突進してきた相手に防御がとれず、イーニアは転ぶ。さらにそれ(・・)は、勢いよく転びまだ顔を上げてすらいないイーニアに覆い被ろうとしてくる。

 

「「うあああああああああ!!」」

 

 ハリーとドラコ、ノーバートがそれ(・・)に突進をし、後ろに下がらせた。

 

「「大丈夫!?」か!?」

 

 2人と1匹はイーニアに駆けより怪我の具合を見る。

 

「大丈夫。強化魔法使ってたから軽く擦り剥いたくらい。」

 

 イーニアが顔を上げたのを見て安堵する2人。

 

「ァアア…ァァ…。」

 

 それ(・・)は声なのか何かわからない音を出していた。ゆっくりと近づいてい来るそれ(・・)に後ずさりする。なにも確認せず下がり大木に背中を当てた瞬間だった。先ほどよりさらに速い速度で3人目がけて突っ込んでくる。

 しかしそれは1人の男によって遮られた。

 

「うおらああああああああああ!!」

 

 横からそれ(・・)より速く動いてきたハグリッドがそれ(・・)に殴り吹き飛ばす。

 

「「「ハグリッド!!」」」

 

 3人の喜びとも言える声に特に反応せず、ハグリッドは拳をもろに受けたにもかかわらず動いているそれ(・・)に追撃を駆けようとする。近くの大木の枝を引き抜き、棍棒のように持つとそれを振り回した。

 しかしそれ(・・)は俊敏に動き回避すると森の奥へと行ってしまった。ハグリッドは追いかけることをせず、枝を地面に置くと3人に近づいた。

 

「3人共無事か!?」

 

「グットタイミングだよ、ハグリッド。」

 

 イーニアは右手の親指を立てるとヘナヘナと地面に座り込んでしまった。

 

「ははっ。情けない緊張解けたら足が震えてきちゃった。」

 

 座り込んでしまった自分を自虐しつつ笑うイーニア。

 

「イーニアはあいつに襲われたんだ。仕方ないよ。」

 

「えへへ…。2人ともさっきはありがとね。」

 

「気にするな。当然のことをしただけだ。」

 

 ファングがハーマイオニーとロンを連れてきて2人にも経緯を話す。

 

「災難だったわね。イーニア。――怪我診るわ。皆は少しあっち向いてて。」

 

「そんな…大丈夫よ。」

 

「ぼくの透明マントを被って診れば良いよ。」

 

「ありがと。借りるわ。―ほらイーニア。」

 

 イーニアとハーマイオニーはマントを被る。

 

「2人は怪我はないのかい?」

 

 2人が透明になったところでロンはハリーたちに聞く。

 

「ああ、どこも怪我はしていない。」

 

「ぼくも無傷だよ。」

 

「ファングが物凄い勢いで俺たちのところへ来たもんで、大急ぎて駈けつけてみりゃ得体のしれないもんがいた。ありゃなんだ?あんなの森で一度も見たことねぇぞ。」

 

 ハグリッドの質問に2人はわからないと首を振ると"あっ!"というハーマイオニーの驚きの声が聞こえた。

 

「どうかしたの?ハーマイオニー?」

 

 ハリーが一応そこにいるであろう場所に声をかける。

 

「……イーニア、出血してるのよ。―もう全然大丈夫じゃないじゃない。」

 

 イーニアの誤魔化すかのような笑い声が聞こえる。

 

「大丈夫なの?」

 

「そこまで深くないと思うから大丈夫だと思うけど…マダム・ポンフリーに診てもらったら?」

 

「大丈夫よ。これくらい、治療ありがと。」

 

 そういうと透明マントからイーニアが出てくる。

 

「色々あったけど今日はもう戻ろう?」

 

 その言葉に皆肯き、一度ハグリッドの小屋に寄った後、ばれない様に寮の部屋へと戻っていった。

 

 

―――――――――――――

 

 

 禁じられた森の件が過ぎ、数日後。すべての試験が終わり、皆開放的な気分になり4人はハグリッドの小屋でのんびりとしていた。

 

「結局、あの時のあれはなんだったんだろうね。」

 

 思い出したかのようにハリーが言う。

 

「ユニコーンの血を飲むと死にかけた命が蘇る、なんて言われてるから死にかけていた奴なのは確かなんじゃない?すごい動きだったし。」

 

「可能性はあるわね。」

 

「なんか、賢者の石と似てない?」

 

「確かに、あれは永遠の命を手に入れるって言われてるし似てると言えば似てるかも。」

 

 イーニアが顎に手を当てているとロンが効いてくる。

 

「スネイプとクィレルは?」

 

「2人ともピンピンしてるね。」

 

「誰かを助ける?もしくは復活させようと、とか?」

 

「2人ともそういう善人に見えないね。」

 

 苦笑いしつつ返すハリー。そういえばとイーニアはハグリッドに聞いた。

 

「賢者の石の件ってなんか変化あった?」

 

「いんや、なんもないぞ?」

 

「まあ、ダンブルドア校長がいる限り何も起きはしないか。」

 

「ダンブルドア校長なら今日から魔法省へ行くと言っていたぞ?」

 

 4人は"え"と驚いた顔をした。

 

「2日ほどホグワーツを離れるっとおっしゃっていた。」

 

「大丈夫なの?」

 

 不安そうな顔をするハリーをガシガシとハグリッドが頭を撫でる。

 

「おまえさんたちが心配するようなことはねぇ。」

 

 4人はその時はそれに肯いたがイーニアは"夜、一応見に行くか"などと考えていた。

 

 

 

 

 




武器生成魔法、ラマンパトラム。
水とか火とかが何もないとこから出るなら武器が作れても問題ないよね!という理屈の元に考えた魔法です。
ただしこれは武器を作るだけなのでそれ自体に魔法的効力は一切ありません。

イーニアが怪我をしましたが強化魔法していなかったらもっと大けがでした。体は大事です。
ようやくタイトルらしい格闘戦をハグリットがかましてくれました。
もっと!!もっとだ!!

次回は賢者の石ラストの予定です。

誤字脱字などございましたら、遠慮なくご報告ください。
感想お待ちしています。


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賢者の石と1年の終わり

賢者の石終わりです。

ではどうぞ。


 夜、イーニアはこそこそと部屋を出ると談話室を抜けて例の部屋へと向かう。すると談話室でハリーとロンが待ち構えていた。

 

「2人ともこんな時間にどうしたの?」

 

「それはこっちの台詞だよ、イーニア。こんな時間にどこに行くつもりだい?」

 

「えーっと、散歩?」

 

「イーニアは嘘が下手だね。あの部屋を見に行くんだろ?」

 

 イーニアが困った顔をしているとハーマイオニーも降りて来る。

 

「ハーマイオニー。寝てたんじゃないの?」

 

「狸寝入り得意なの。」

 

 クスッと笑うハーマイオニー。

 

「心配しないで。別にイーニアを止めに来たわけじゃないの。私も一緒にいくわ。」

 

「もちろん、ぼくたちも。」

 

 イーニアは困った顔から驚いた顔になる。

 

「あら?そんなに意外だった?」

 

「ハーマイオニーには止められると思った。」

 

「事情を知ってるのに止めるはずないでしょ。」

 

 4人が談話室から出ようとしたとき、ネビルがやってくる。

 

「どこへ行くの?」

 

「ネビル。」

 

「せっかくグリフィンドールがトップなのに、見つかったりしたら大変なことになる!」

 

「これは大事なことなの――って事情のわからないネビルにいっても仕方ないよね。止めたければ力ずくでも止めて。私たちは力ずくでも行く。」

 

 イーニアの気迫に少し気圧されたネビルだったが怖気づくことなく構えを取った。

 

「この1年でだいぶ変わったね。ネビルは。」

 

 初めて会った時のおどおどした感じはどこにもない、しっかりとした彼の態度にイーニアたちは喜びを感じた。

 しかし今は引き下がっていい時ではない。イーニアは杖を取り出すと素早くネビルに失神呪文をかけた。失神したネビルをハリーとロンにベットに運んでもらい談話室を後にした。

 

 部屋に着くとフラフィーが眠っていた。

 

「誰かが侵入している可能性が十分に出てきたね。」

 

「行こう。」

 

 ハリーの言葉に3人は肯くとそのまま地下へと歩を進めた。下に降りると何か柔らかいモノの上に足をつける。暗がりであまり見えなかったのでイーニアは明かりを灯した。

 

ルーモス・フォス(強い光よ)――ん?」

 

 部屋全体を照らす明かりを灯すと足に近づこうとしていた植物が離れて行った。

 

「これ『悪魔の罠』ね。イーニアが明かりを点けたから逃げたんだわ。」

 

「これだけ暗ければ誰でも明かりを点けると思うけど…。罠としてどうなのよ、これ。」

 

 イーニアのそのセリフに思わず3人も苦笑いした。

 次の部屋に着くと鍵が空を飛んでいた。先の部屋への扉には鍵がかかっている。

 

「扉自体にも魔法が掛かってて鍵使わないと開かない感じかな?」

 

 鍵開けの魔法を唱えてみたが反応がないことにイーニアは"壊すことできないかな"などと物騒なことを考えたが箒もあったのでハリーに頼むことにした。

 

「ハリー。その箒で片っ端から鍵取ってもらえる?」

 

「わかったよ。」

 

 ハリーは肯くと颯爽と箒に跨り上へあがる。イーニアも浮遊魔法を唱え、手に持てるだけ鍵を取りロンに渡して一つ一つ確かめる。飛んでいる鍵の半部くらいを試したあたりでロンが"開いた!"と声を上げたのでハリーとイーニアは下り、次の部屋へと進んだ。

 

 そこには駒が人間サイズのチェスが置かれていた。

 

「大きなチェス盤。まさかこれで勝てってことかな?」

 

「そのまさかみたいだね。――3人ともここはぼくに任せてくれる?」

 

 ロンが張り切った声で言ったので3人は反論せず従った。このチェスは本物の戦場さながら駒を取ると攻撃し壊す仕組みになっていた。それでもロンは順調に駒を進め、4対3と優勢に持ち込んだ。

 

「これであえてナイトがやられれば勝ちだ。」

 

「え!?それだとロンが!」

 

「そうよ!」

 

「進むにはこれしかないんだ!」

 

 ロンはそう言い押し切ると自身であるナイトを取らせる。イーニアはナイトを取りに来たクイーンがナイトに攻撃をしようとした瞬間、ロンの身体を少し浮かせ怪我をしないように守る。ハリーがビショップを取りチェックメイトするとロンに駆け寄る。幸い怪我はなく気絶しているだけの様だった。ロンは部屋の隅で横にさせると3人はそのまま次の部屋へと向かった。

 部屋に入ると3体のトロールが待ち構えていた。

 

「げ。」

 

 思わず声を上げるイーニア。ハリーとハーマイオニーも後ずさりする。

 

「私が引きつけるから2人は先へ!」

 

「でも!」

 

「私は大丈夫だから!!」

 

 イーニアは強化魔法をかけトロールの気を引くため3体の周りを素早く動く。ハリーとハーマイオニーは少し悩んだがトロールたちがイーニアに興味を持ち始めると扉の方へと駆けて行った。

 

「棍棒持ってないからリーチが短くて――とと、危ない。」

 

 掴もうとする手を躱し距離を取り、杖を構えニコッと笑うイーニア。

 

「1体ずつ確実に沈めてあげる。」

 

 その笑顔の意味を察したのかトロールたちは少し怯える。がすぐに2体がイーニアに襲い掛かった。浮遊魔法をかけトロールの頭を飛び越えると後ろから失神呪文を2体にかける。

 

ステューピファイ!(麻痺せよ)

 

 魔法を受けた2体のトロールは倒れ動かなくなった。

 

「1体ずつって言ったのに2体同時にやっちゃった。ま、どうでもいっか。――さて、最後だ。」

 

 イーニアは振り向き最後のトロールと向き合う。トロールは先ほどの2体とは比べものにならないくらい俊敏な動きでイーニアを襲った。

 

「ッ!特別ってこと!?」

 

 攻撃をスレスレで避けたイーニアは失神呪文をかけた。しかし赤い閃光はトロールにあたると弾けて消えた。

 

「え?――と、危ない危ない。」

 

 弾かれたことに驚き一瞬固まってしまったがすぐに立て直す。再び失神呪文をかけても弾かれる。それどころか他の魔法も弾かれてしまった。

 

「えー!!護りの魔法でもかかってるの!?」

 

 一つも魔法が通らないことに慌てつつもしっかりと攻撃を避けるイーニア。武器生成魔法で槍を作り投げる。しかしそれも弾かれ足を掴まれてしまう。

 

「やばい!!」

 

 捕まえられたイーニアは振り回されるが何とか手にしがみつく。壁や床にあたるのを何とか避け、先ほど生成した槍を拾いトロールの手に刺す。するとトロールは痛がりイーニアを放した。

 

「効いた!?――痛ッ!」

 

 急に離されたイーニアは床にお尻を打つ。結構痛かったがすぐに距離をとり考える。

 

「飛んでくるものに対して護りが働いているのかな?」

 

 考えを確かめるため接近し足に槍を刺す。攻撃を受けたトロールは再び痛がった。

 

「やっぱり!――でもこれじゃジリ貧だなー。」

 

 痛がりはするもののほとんど傷を負っていないトロール。このままでは体力が尽きたら負けである。

 

「どう考えても向こうの方が体力あるよね。」

 

 思わず口に出しながら苦笑いしながらも攻撃を避ける。ふと、あることを思いついたイーニアは少し太めの棍棒を生成した。浮遊魔法、そして物体加速魔法を自分にかけるとトロール目がけて突っ込む。狙いは顎。

 

「脳が揺れれば気絶するでしょ!」

 

ゴキッ!

 トロールの顎に棍棒が当たると、すごい音がした。続けて対角線上に2撃目を打つ。2撃目が当たると同時にトロールの右腕がイーニアを捉え自分サイズのビンタを受ける。しかしイーニアは冷静に受け身を取り着地した。

 

「いててて…。こないだからどうも運がないな。」

 

 骨は折れてはいないが強い打撃を受けたので痣にはなるだろう。イーニアがトロールを見ると頭をくらくらさせながら仰向けに倒れたところだった。少し休憩しようと思ったがハリーたちが心配になり休まず先に進むことにした。

 先に進むとハーマイオニーが先に向かったハリーを追いかけてほしいと瓶を渡してくる。どうやら先に進むには専用の魔法薬を飲む必要があるらしい。

 

「わかった。ハーマイオニーは一旦戻ってロンのところへ。一応、失神呪文で寝てるけどトロールが起きたところにロンが入っちゃったら大変だから。」

 

 ハーマイオニーは戻るための薬を飲むと部屋を出て行った。イーニアも薬を飲み先に進む。

 

 部屋に入るとクィレルが蹲っているハリーに魔法をかけようとしているところだった。とっさに物体加速魔法をかけ、クィレルの腹に蹴りを入れる。蹴りを受けたクィレルはゴロゴロと転がっていく。

 

「ハリー!!大丈夫!?」

 

「イー…ニア…。ありがとう。助かったよ。」

 

 少し咳き込みながら立ち上がるハリーに手を貸す。

 

「げほっ!げほっ!…ごほっ!」

 

「嘘ー、もう立ち上がれるの?結構強く蹴ったはずなんだけど。」

 

「……受ける瞬間に護りの魔法をかけたからな。」

 

 立ち上がったクィレルに驚くイーニア。しかし杖を構え戦う準備をする。

 

『いつまで時間をかけているのだ。』

 

 突然声が聞こえさらに警戒するイーニア。するとハリーが叫んだ。

 

「ヴォルデモートだ!クィレルの頭にヴォルデモートがいるんだ!」

 

 クィレルをよく見るといつもしていたターバンをしておらず頭が露出している。

 

『俺様が話す。』

 

 クィレルは体を後ろに向け後頭部を見せる。するとそこには顔があった。

 

「気持ち悪ッ!!!」

 

 それを見た瞬間思わず大声で叫ぶイーニア。

 

「あ、ぼくは思ってたの言わなかったのに。」

 

「いや、あれは叫んで言っちゃうよ!?」

 

 突然緊張感のない会話を始める2人にクィレルはヒステリックに叫ぶ。

 

「御主人様を気持ち悪いなどいうな!!」

 

『いや、今の俺様は気持ち悪い…。』

 

 少し落ち込んだ風に言うヴォルデモートに少し笑いそうになるイーニア。しかし笑うことはせず、杖を構えたまま真面目な顔をし、ヴォルデモートに問う。

 

「ところでヴォルデモートっていうけど本当にそうなの?私には名前を言ってはいけないあの人とか言われてるだけで写真とかも何も見たことないから、そうだと言えばそうなるし、違うと言えば違うよね?」

 

「御主人様は本物だ!!」

 

「そう思いたいだけじゃない?確かにそんな状態になっても生きていることは感服するけどね。」

 

『確かに一理あるな。』

 

「御主人様!?」

 

『やはりあの時といい、小娘。貴様は度胸がある。』

 

「これでもかなり緊張してはいるよ。――あの時、とは?初対面なはず…ああ、禁じられた森でユニコーンを襲ったのは貴方ね。」

 

『いかにも。逃げから転じて反撃に出る。――普通ならできない行動だ。』

 

「グリフィンドールの名に恥じないようにしてるだけよ。」

 

『くっくっ。ま、いい。お喋りはここまでだ。――やれ。』

 

 クィレルが杖を構え仕掛けようとした瞬間、イーニアは一気に接近しクィレルを投げた。

 

「がはぁ!!?」

 

 イーニアはそのまま掴んだ手を捻り関節を決める。杖を手から放させ遠くへ投げる。さらに立ち上がらせると2撃、掌底を食らわせ気絶させた。

 

「すごい。」

 

「ハリーも鍛えればできるようになるよ。――あ、やっぱり逃げられた。」

 

 クィレルの後頭部を確認するとそこにはすでにヴォルデモートの顔はなく普通の頭になっていた。

 イーニアは気絶しているクィレルを縛ると振り向き声をかけた。

 

「ダンブルドア校長、出てきていいですよ?」

 

「ほっほっほ、いつから気づいておったんじゃ?」

 

「ついさっきです。結構前から見ていたんじゃないですか?」

 

「もしもに備えて最初から見させてもらっておったよ。」

 

「食えない人ですね。」

 

 イーニアが眉間にしわを寄せているとハリーはダンブルドアに近づきポケットから赤い石を出し渡した。

 

「ああ、これかの。欲しければあげよう。」

 

「「え?」」

 

「これは賢者の石なんかではないよ。本物はほれ、儂のポケットに入っとる。」

 

 ダンブルドアはポケットに手を入れるとハリーが持っているものよりも赤く美しい石を取り出した。

 

「つまりここ自体が釣り餌だったわけですね。」

 

 イーニアはため息を吐くと床に座り込んだ。

 

「もう…。トロールとかかなりギリギリだったのに…。」

 

「あれはまずかったの。手を出すところじゃった。」

 

「笑って言わないでください。」

 

「すまんすまん。――さて、戻ろうか。話は明日、校長室に来るといい。」

 

 部屋を出た3人は目を覚ましたロンとそこにいたハーマイオニーを連れて寮に戻りそのままベットへダイブした。

 

 次の日、4人は校長室を訪れ話を聞いた。

 まず、手を出さなかったのはなぜかと聞くとイーニアたちの成長を見るためと返答された。確かにあそこはトロール以外はちゃんと勉強していれば攻略できるものばかりで罠の割には優しかった。

 次にトロールにかかっていた魔法、あれは護りの魔法、プロテゴ・ウォレ(飛ぶものから護れ)という飛んでくるものをすべて弾く魔法というもの。対象物の前に盾を作るのではなく対象物自体に弾く性質を持たせる。トロールという力の強い種族が得るのにもってこいの魔法だった。

 賢者の石とクィレルの所在を聞くと賢者の石は破壊、クィレルはアズカバンに連れて行かれた。イーニアは賢者の石を触ってみて少しでいいから研究したかったというとダンブルドアに苦笑いされた。

 

* * *

 

 そしてさらに月日が流れ、学年度末パーティーの日。

 

「また1年が過ぎた!ご馳走にかぶりつく前に、老いぼれのたわごとをお聞き願おう。まずは、寮対抗杯の表彰じゃ。4位 ハッフルパフ 352点 3位 レイブンクロー 426点 2位 スリザリン 543点 そして…1位 グリフィンドール 569点。おめでとう!グリフィンドールの諸君!よくやった!」

 

 グリフィンドールのテーブルで歓声が上がる。イーニアもガッツポーズをとり、ハリーやロン、ハーマイオニーたちと抱き合ったりしていた。さらに試験の結果が発表され、ハーマイオニーがぶっちぎりの1位。イーニアは5位、ハリーは12位でロンが14位、ちなみにドラコは8位だった。

 

 パーティの熱気も醒めはじめ、イーニアたちも寮に戻ろうとするとドラコが話しかけてきた。

 

「寮対抗杯、1位おめでとう。グレンジャー、学年1位おめでとう。」

 

「ありがとう。――前から思ってたけどハーマイオニーでいいわよ?それなら私もドラコって呼ぶわ。」

 

「ならぼくもロンでいいさ。ウィーズリーはたくさんいるからね。」

 

 突然の提案に少し取り乱しそうになったドラコだったが"わかった"としっかり返事をした。そんなどこか微笑ましい光景をニヤニヤとしながらイーニアとハリーは見ていた。

 

「ぼくの時もこんな感じだったのかな?」

 

「そうだね。あの時もこんな感じだったよ。」

 

 ひそひそと話す2人に首を傾げる3人。

 

「何を話しているんだ?―――イーニア、今回は負けたが来年は寮対抗杯も試験も勝たせてもらうぞ。」

 

「寮対抗杯はわからないけど試験は負ける気ないから。」

 

 その言葉にドラコはフッと笑うとイーニアとは拳を重ね、ハリーとロンにはハグ、ハーマイオニーとは握手を交わし寮へと戻っていった。ドラコが去った後、イーニアはドラコがハグするとき照れてたっと笑っていた。

 

 帰省の日が訪れ、皆はホグワーツ特急にのりこんだ。やがてキングズ・クロスに到着。

 

「ハリー、ハーマイオニー、ロン。またね。」

 

 同じコンパートメントにいた3人に挨拶を済まし、帰るため歩く。途中ドラコが見えたので軽く手を振り、返されたの確認すると目の前にアリシスがいた。いないはずの人物がおり驚くイーニア。

 

「え?迎えに来れないんじゃなかったっけ?」

 

「埋め合わせはちゃんとするって言ったでしょ?」

 

 イーニアはその言葉に満面の笑顔を見せ、アリシスに抱きついた。

 

「ただいま!」

 

「おかえりなさい。」

 

 こうしてイーニアの1年は幕を閉じた。




ひとまず第1章である賢者の石が終わりました。
どうだったでしょうか?最後の最後でイーニアがまともに格闘させられてよかったと思います。


照らす魔法、ルーモス・フォス。
ルーモスより明るいってだけです。
護りの魔法、プロテゴ・ウォレ。
内容は本文の通りです。トロールとかドラゴンとかに付与させると、とても面倒になります。
原作とは異なりクィレルは死亡せず、生存しました。またどこかで登場すると思います。


誤字脱字などございましたら、遠慮なくご報告ください。
感想お待ちしています。


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秘密の部屋
休みから学校が始まるまで


なぜか次の話がすぐに完成しました。


ではどうぞ。


 夏休みの宿題を終わらせ魔法の研究と新しい武術の研究に勤しんでたイーニアに一通の手紙が届く。

 

『イーニアへ

 元気にしているかい?ぼくらは元気にしている。

 さっそく本題に入るんだけど、残りの夏休み、ウチの【隠れ穴】で過ごさないか?ハリーやハーマイオニーも誘ってる。

 いい返事を待ってるよ。

 ロナルド・ビリウス・ウィーズリーより』

 

 手紙を読み、ひとまずアリシアへ連絡を取る。許可をもらいロンへの返事を書こうとペンを取るとインターホンが鳴った。玄関へ行き扉を開ける。

 

「はーい。どちらさ…ま…。」

 

 そこにはフレッドとジョージ、ロンがいた。

 

「「「これからハリーを奪いに行こうぜ☆」」」

 

「いいよ。うん、うん……とりあえずそこに正座して?」

 

 思考が停止しそうになったが何とか動かし、笑顔を向ける。ロンはその笑顔に凍りついたが双子はどこ吹く風だった。

 説教を終え、荷物をまとめたイーニアはアリシアに早く行くことになったことを伝え、車に乗る。

 

「まったく、なんで手紙が届いて数分も立たずに来るかな。」

 

「その話はさっきもしたじゃないか。」

 

 ぶつぶつ文句を言うイーニアに申し訳ない顔をしているロン。

 

「そういえばこの車大丈夫なの?」

 

「…?――普通に問題ない奴だが?」

 

「そうじゃないよ。勝手に使って大丈夫かってこと。魔法かかってるんでしょ?これ。」

 

「……まー、そのなんだ。」

 

「見つかる前に片付ければ問題ないさ。」

 

「私、擁護しないからね。」

 

「ひどい!!」

 

「冷たい!!」

 

「年上の男2人が私に泣きつくな!!」

 

 そんな話をしながらハリーが住む家に着く。

 

「ハリーに連絡してあるんでしょ?」

 

「いや、たぶんハリーは何も知らない。」

 

「なんで?」

 

「途中まで連絡できてたんだけど途中から返事が来なくなった。だからハリーを攫いに来たんだ。」

 

「攫いにって…ま、いいよ。私が普通に呼びに行く。」

 

「「なに!?」」

 

「え?何か問題あるの?」

 

 双子の突然のオーバーリアクションに思わず引くイーニア。

 

「ハリーの部屋は2階らしい。」

 

「うん。」

 

「2階の窓の横に車をつけて。」

 

「はい。」

 

「「お姫様っぽく救出!!」」

 

「ハリーは男だしここはマグルが住む場所なんだからそんな非常識なことしないで?」

 

「「もちろん車は見えない!!」」

 

「そういう問題じゃない!!」

 

 はーっとため息を吐くとロンに肩をポンッと叩かれ、さらにため息が出る。1年の中頃、ジョージとフレッドの行為につい突っ込みを入れたら2人はそれが楽しかったらしく、ちょくちょく漫才をさせられる羽目になっていた。

 双子との漫才をやめ、車を降りると家のインターホンを鳴らす。すると大柄の男が出てきた。

 

「誰だ?お前は。」

 

「ハリーの友達のイーニアです。初めまして。ハリーいますか?」

 

 魔法に関するすべてが嫌いとハリーから聞いていたので、できる限り常識的に話をしていく。

 

「小僧ならいるが…会ってどうする。」

 

「残りの夏休み、友達の家で泊まり込みしようって話になってるんです。」

 

「残りの夏休み…?」

 

 バーノンはその期間にピクッと反応した。

 

「なら連れて行って構わん。だだし来年まで返すなよ。小僧は上の一番左だ。」

 

 そういうとバーノンはどかどかと奥へ行ってしまった。

 

「お邪魔します。」

 

 イーニアは階段を上り、一番左の部屋の扉の前に着く。扉は板で打ちつけられ出られないようになっていた。

 

「酷いことをする…。」

 

 怒りつつもここで事を起こしては元も子もないのでイーニアは怒りを収める。板を外し中に入るとハリーがかなりやつれた状態で部屋にいた。ハリーは突然のイーニアの登場に驚いている。

 

「イーニア…?どうして…ここに…。」

 

「説明は後でする。とりあえず荷物まとめて。ここを出るよ。」

 

 まともに食事をしていないのか動きが鈍いハリーの代わりにイーニアはどんどん荷物をまとめ、部屋を出た。玄関を出る際、バーノンたちがいたが軽く頭を下げ"お邪魔しました"というとハリーの手を取り、家を出た。イーニアはあそこに居たくなかった。なによりハリーを居させたくなかった。

 

「ハリーをなんだと思ってるのよ。」

 

 小声だったが強く怒りの籠った声だった。

 少し離れた場所に車を止めていたロンたちはイーニアとハリーの姿を確認すると車から降り荷物を受け取る。荷物を車に乗せ、隠れ穴へ向かった。

 

「ひどいやつれ様だな。大丈夫か?」

 

「あんま食事をしてなくってね。――そうだ。ヘドウィックに何か食べさせたいんだ。なにかない?」

 

「バナナならあるよ。ハリーも食べて。」

 

「うん。ありがとう。」

 

 その後バナナを食べ終わったハリーは手紙を返せなかった原因はドビーと言う屋敷しもべ妖精が邪魔をしていたと話した。その屋敷しもべ妖精はハリーをホグワーツに行かせたくないらしい。なんでも罠があるとか。変な話ではあったが隠れ穴に着いたのでその場は話が終了した。

 着くと玄関でロンたちの母親モリー・ウィーズリーが腕を組み待っていた。

 

「「「げ。」」」

 

「もう一度言うけど私、擁護しないから。」

 

 イーニアは車から降りながらそういうと荷物を下す。ハリーの分をロンたちに持たせ玄関に向かう。

 

「こうして話すのは初めてですね。初めまして。イーニア・シュツベルです。」

 

「いらっしゃい、イーニア。モリー・ウィーズリーよ。ウチの馬鹿どもがごめんなさいね。」

 

「ええ、手紙とほぼ同時に来られたのは驚きました。」

 

「ま!!なんてことを!!3人は後で説教!!――ハリーもいらっしゃい。」

 

「お世話になります。モリーおばさん。」

 

 モリーの熱い抱擁を受けたハリーとイーニア。ハリーは離れるとヘドウィックを籠から出し空へ放った。

 

「モリーおばさん、すいません。ハリーに柔らかい食べ物用意してもらえますか?まともに食事してないみたいで。」

 

「わかったわ。馬鹿3人を説教したら用意するからそれまで休んでいて。」

 

 家に入るとハーマイオニーが出迎えてくれた。

 

「イーニア!!ハリー!!」

 

 飛び込んできたハーマイオニーを受け止めきれず倒れそうになるハリーを支えるイーニア。

 

「ハーマイオニー、嬉しいのはわかるけどハリー疲れてるから無茶しないで上げて。」

 

「ああ、ごめんなさい。私ったらつい。」

 

「いいんだ。ハーマイオニー、ぼくも会えて嬉しいよ。」

 

 3人は抱き合うとハーマイオニーの指示で荷物を運び、ハリーは食事ができるまで休むことにした。

 

 

* * *

 

 

 数日後、ダイアゴン横丁にて教科書を買うために各自並ぶ。教科書を買い終わり集合場所の書店の前に来るとすごい数の人がいた。

 

「これはなんの集まり?」

 

「サイン会だってさ。ギルデロイ・ロックハートの。」

 

「ああ、あの人の。」

 

「知ってるの?」

 

「本を読んだことがある。私の肌には合わない書き方だったけど。」

 

 つまらなそうに言うイーニアの態度にハリーとロンはそれ以上ロックハートに対し興味を持たなかったが3人がよく見るとサイン会の列にハーマイオニーが混ざっていることに気が付いた。

 

「ハーマイオニー、彼のファンなんだ。」

 

「趣味は人それぞれだからいいんじゃない?」

 

「そうだね。ぼくたちが何か言うことじゃないね。」

 

 3人はハーマイオニーがこちらに戻ってきてもそれには触れず、これからの授業について話していた。

 サイン会が終わりロックハートが店から出てくるとハリーを見つけ駆け寄ってくる。

 

「もしやハリー・ポッターでは!?」

 

 あまりの勢いに少し引き気味になったハリーはなんとか肯く。そしてハリーを抱きしめ高らかに言う。

 

「今日は記念日ですよ!私とハリー・ポッターが出会った日なのですから!

――そうですね。せっかくなのでここで発表させていただきます。私はホグワーツ魔法魔術学校にて、9月から【闇の魔術に対する防衛術】担当教授職をお引き受けすることになりました!!」

 

歓声が沸く中、イーニアはロックハートの腕の中にいるハリーがつらそうな顔をしていたのでひとまず助け舟を出す。

 

「ロックハート先生(・・)、腕の中の生徒が苦しんでいます。」

 

「おお!これは失礼。大丈夫かね?ハリー。」

 

 頭をくらくらさせたハリーを受け止めジド目でロックハートを見るイーニア。

 

「私の魅力に酔ってしまったようだね!はっはっは!!」

 

 "男が男の魅力に酔うか"と心の中で思いつつ、ハリーを連れてロンたちとひとまずその場を離れた。人だかりから少し離れた店の前で休憩しているとロンの父親アーサー・ウィーズリーがやってくる。

 

「すごい人だな。これなら集合場所を変えておくべきだったか。」

 

 他の皆も集まり出し、そろそろ帰ろうとしているとドラコの父親、ルシウス・マルフォイがやってきた。

 

「これは、これは、これは。Mr.ウィーズリー。相も変わらず魔法族の面汚しな顔をしている。」

 

「魔法族の面汚しな顔ってどんな顔だよ。」

 

 イーニアの突っ込みも無視し、喧嘩を始める大人2人。隣を見るとドラコが来ており、ため息を吐いていた。

 

「みっともない。なぜMr.ウィーズリーを前にすると冷静でいられないのか。」

 

「それを言ったらウチのパパもそうだよ。いつもならあんな風に言われても気にしたりしないのに。」

 

 息子2人は盛大にため息を吐くと"お互い気苦労が絶えないな"と慰め合っていた。

 

「喧嘩するほど仲がいいっていうけど?」

 

「「良くない!!」」

 

 すごい形相で言われて驚いたイーニアは少し怒りながら"仲いいじゃない"とつぶやいた。

 

 

* * *

 

 

 翌日、忘れ物が続出する中なんとか遅刻せずキングズ・クロス駅に着いた一向は汽車に乗りホグワーツへと向かった。ホグワーツに着くと馬車に乗り城へと向かう。

 

「これは…セストラル…だっけ?」

 

「イーニアはこれが見えるの?」

 

「私は両親の死を見てるからね。セストラルは死を見た事のある人間にしか見えないから。」

 

「ハリーが見えないのは?」

 

「幼すぎて死を認識できなかったんじゃないかな?」

 

 その言葉に3人は肯くと馬車は城に着き大広間へと入る。

 去年の自分たちと同じように組み分けが行われ、食事後いくつか注意事項をダンブルドアから告げられる。

 話が終わると寮へと戻り荷物の整理を行うとその日は寝ることにした。

 




コメディ回でした。
ロンとドラコの関係を近づけるためどうしようもない父親を持つ子という視点で意気投合させました。少しずつドラコの活躍の場を増やしていこうと思います。
フレッドとジョージのキャラは好きなのでイーニアとどう絡ませるか悩んでいたのですが漫才をさせる形で絡ませることにしました。和みます。




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秘密の部屋とブラッジャー

UA1万突破ありがとうございます。

ではどうぞ。


 朝食前、いつものように朝の運動をしながらハグリッドの小屋を訪れたイーニア。少し迷惑かなと思いつつもノックをすると起きていたらしく快く迎えてくれた。

 

「おはよう。ハグリッド。朝早くにごめんね?」

 

「いんやかまわんよ。俺はこの時間にはいつも起きとるで。それにノーバートがお前さんに会いたくて仕方なかった感じだ。」

 

 イーニアの姿を確認するなり飛びついてくるノーバート。少し見ない間にまた大きくなったノーバードに驚きつつも頭を撫でてやる。

 

「ドラゴンの成長は早いね。そろそろ抱えるのは難しいかな?」

 

 今はまだ抱えてやることはできるがこのペースで成長を続ければ直に抱えられなくるだろう。

 "ノーバートに乗る日が来るのかな"などと笑いながらいうと"可能性は十分あるだろう"とハグリッドも笑っていた。30分ほどノーバートと遊んだイーニアは朝食を食べるために一度寮へ戻り着替えると大広間へと向かった。

 

 2年生初の授業はハッフルパフとの薬草学。内容はマンドレイクの植え替え。

 

「手本を見せます。耳栓をして!」

 

 ポモーナ・スプラウトが指示すると皆、耳栓をした。それを確認すると一気にマンドレイクを引き抜く。とても嫌な鳴き声が教室を響いた。前にいたネビルがふらふらっとした後、倒れそうになり思わず支える。

 

「ネビルが気絶しました。」

 

「ロングボトムは耳栓をしてないのですか?」

 

「いえ、してます。」

 

「なるほど、たまにいるんです。そのまま寝かしておきなさい。」

 

 イーニアはネビルを邪魔にならないよう端に寝かせておく。

 

「今度は自分たちで植え替えてもらいますが先ほどより近くで声がします。ロングボトムのようにならないように。」

 

 ポモーナ・スプラウトの掛け声で一斉にマンドレイクを抜くと先ほどと比べものにならない鳴き声が聞こえてくる。あまりにもうるさかったのでイーニアは無音魔法を植え替えるまでかけていた。

 

 次の授業の魔法薬学は去年同様スリザリンとの合同。今年もまた背表紙の内容を問題に出したりしていたがハリーたちにはイーニアが背表紙があることを教えていたので何とか答えることができた。

 またスネイプも去年とは違い、ちゃんと勉強していることを素直に褒めていた。あのニヘラっと笑った顔は誰もが忘れないとはずだ。

 

 そしてある意味話題となっていたロックハートの授業。入ってくるなりいきなり小テストを始めるというのでイーニアはホッとしたが内容を読んで愕然とした。

 

1【ギルデロイ・ロックハートの好きな色は?】

2【ギルデロイ・ロックハートの密かな大望は?】

3【現時点までのギルデロイ・ロックハートの業績の中で、あなたは何が1番偉大だと思うか?】

 

「よし、吹き飛ばそう。」

 

 イーニアは小声で言ったつもりだったが隣に座っていたロンには聞こえたらしく全力で止められる。仕方なく小テストに取り組んだがイーニアは3問で嫌気が差し、それ以上は解かなかった。テスト用紙を回収され、ハーマイオニーが満点だった。点数を追加されたがさすがに皆、喜んではいない。

 

「さて!魔法界でもっとも穢れた生き物と戦う術を授けるのが、私の使命です!」

 

 そう言ってロックハートは覆いのかかった籠を教卓に置くと、茶番にうんざりしていたイーニアは"ようやく授業か"と真面目に聞き出す。ロックハートが覆いを取るとそこには20センチくらいの青色をしたピクシー妖精が詰まっていた。生徒の一部が笑う。

 

「笑っていられませんよ?連中は厄介な小悪魔です。では君たちがどう扱うか、お手並み拝見!」

 

 ロックハートが籠の戸を開けた。途端に教室が大混乱になる。ピクシーはロケットのように四方八方を飛び回り、インク瓶を投げつけ、本を引き裂く。イーニアは自分のものが壊されてはたまらないと盾の呪文を唱える。大混乱は落ち着くことはなく悪化していく。ネビルが吊るされそうになっていたので持ち上げているピクシーを失神呪文で撃ち、助けた。

 

「あ、ありがと。イーニア。」

 

「ネビルってどうも上に上がっていくね。」

 

 去年の箒騒動を思い出し、少し笑いながら手を出し起き上がらせる。

 

「捕まえなさい、たかがピクシーでしょう。」

 

 見かねたロックハートが杖を出し唱えるが何も起きない。それどころか杖を奪われてしまっていた。丁度終業のベルが鳴り、皆我先と出て行こうとする。ネビルを起き上がらせたイーニアもハリーたちに声をかけ教室を出ようとするがロックハートがピクシーを片付けておくよう言い出したので仕方なくやることにする。1匹ピクシーを捕まえると強く握り、悲鳴を上げさせる。すると暴れていたピクシーたちが全員止まった。

 

「こうなりたくなかったら散らかしたものを片付けて今すぐ檻に戻りなさい。」

 

 イーニアの低めの声にハリーたちも少し身震いした。ピクシーたちは大急ぎで散らかしたものを片付け檻に入っていく。

 

「いい子たちね。」

 

 全員入ったところで檻の鍵を閉める。しかし片付けたといってもピクシーができることは些細なことだったので残りは自分たちで片付けた。あまりにもひどい授業だったためイーニアはぶつぶつと文句を言い続け、ハーマイオニーは誰でも失敗はあるとロックハートを擁護していた。

 

 

* * *

 

 

 競技場にクィディッチの練習を見に訪れたイーニアたち。ウッドの熱を入れて何かを演説している。

 

「新しい作戦か何かかもしれないけど朝早くからやってるせいか皆船漕いでるね。」

 

 ハーマイオニーとロンも肯いたのでひとまず近づき一旦休憩を取ることを提案した。休憩を取り、さっそく新戦術を試そうと空へ上がろうとするとスリザリンのチームがやってきた。

 

「あれ?ドラコじゃない。クィディッチの格好してどうしたの?」

 

「ぼくがスリザリンのシーカーになったからな。」

 

「へぇ!それはおめでとう!」

 

 その言葉にハリーも反応し、和気藹々とした光景が繰り広げられる。ウィーズリー兄弟以外のグリフィンドール生とスリザリン生はその光景にあまりいい感じを示さなかったがシーカーである2人の闘争心に火が付いたことは喜ばしいことだった。

 

「ドラコ。試合中は手加減しないから。」

 

「もちろんだハリー。君を真っ向から叩き潰してやろう。」

 

 拳をガンッ!!とぶつけ、やる気を見せる2人。そこに1人生徒がやってくる。

 

「なぜだ!!なんで哀れな純血がシーカーなんだ!!僕じゃなく!!」

 

 叫んだのはセル。スリザリンのキャプテンが負けたのはお前だと言い放つ。

 

「そんなやつを入れればスリザリンのチームとしての品格を問われるぞ!!」

 

 するとドラコはセルに近づき言い放つ。

 

「お前はどんな手段を用いてもぼくに勝てなかったんだ。いい加減それを認めろ。それに品格が問われると言うがその品格が問われるような奴に負ける人間をシーカーにするほうが、よほどどうかと思うね。」

 

 ドラコの久しぶりの嫌味にイーニアは"言うね~"と面白がっていた。それが効いたのかセルは言い返させくなる。どうやらドラコはセルを完膚無きまで叩きのめしたようだった。

 

「生まれ損ないの【穢れた血】に関わっているやつが…。」

 

 セルのその一言が空気にヒビを入れた。グリフィンドール生から非難が吹き荒れる。ドラコに同調しているスリザリンの生徒も言い過ぎだと反感を買ったがセルは取り消すつもりはなかった。殴り合いになりそうな勢いだったので怒ってはいたがイーニアは手を叩き音を出すと皆を落ち着かせる。

 

「皆、ヒートアップしすぎだよ。――セルも言って良いことと悪いことがあることを知った方がいいよ。」

 

「黙れ!!指図するな!!両親共々屑一族が!!」

 

「今、何言った。」

 

 イーニアの顔が完全に固まるとその場が凍りつき、睨まれたセルは座り込んでしまう。誰も言葉を発しない空気でイーニアはゆっくりとセルに近づいていく。恐怖でガタガタ言い出したセルを見かねたドラコがイーニアを止めた。

 

「イーニア!!」

 

 呼ばれたイーニアはピタっと止まると眉間にしわを寄せ、機嫌悪そうに振り向いた。

 

「なに?」

 

「もういいだろ。セルにはぼくから言っておくから今日のところは勘弁してくれ。」

 

「――――ドラコに感謝するんだね。ドラコ、練習頑張ってね。」

 

 怒った口調だったがドラコにそういうとイーニアは競技場を出ていく。ハリーたちもドラコに軽く応援を送るとイーニアに続いた。

 

 

* * *

 

 

 ハロウィンが訪れ、去年楽しめなかったパーティーを大広間で楽しんだ4人は寮へと戻ろうとする。

 

「――?何か聞こえなかった?」

 

「何かって?」

 

「また聞こえた。こっちだ!!」

 

「お、おい。待てよ、ハリー!!」

 

 駈け出したハリーについていくと、そこには吊るされているミセス・ノリスがいた。さらに壁に血文字が書かれている。

 

 

《秘密の部屋は開かれたり 継承者の敵よ、気を付けよ》

 

 

「秘密の部屋…?」

 

 どこか聞き覚えのある単語に首をかしげているとフィルチがミセス・ノリスを見て騒ぎ出す。騒ぎを聞きつけた先生や生徒たちが集まり、ダンブルドアがやってくるまでその騒ぎは続いた。ダンブルドアは固まったミセス・ノリスを見る。

 

「生きておる。」

 

 フィルチがすごい勢いでダンブルドアに近づき問い詰める。

 

「生きておるよ。この猫は石になっているだけじゃ。」

 

 それを聞いたフィルチは喜び、石化はマンドレイクで治せるのでその場は解散となった。

 

―――――――――――――――

 

「うーん。秘密の部屋、秘密の部屋…。」

 

 談話室に戻ってきたイーニアはずっと引っかかっている単語を脳内検索していた。

 

「そんなに気になるの?」

 

「どこかで聞いたか見た単語なんだけど――あ!」

 

 イーニアは一度部屋へ戻り、数冊の本を持って談話室へ帰ってくる。

 

「これ!これだよ!!ホグワーツの歴史!!この本に載ってたの!!」

 

「イーニア、君そんなの読んだことあるの?」

 

「え?一回は読まない?図書館にあったのは結構読まれている形跡あったけど。ついでにこれ、1943年6月に秘密の部屋が開かれて、女子生徒が一人亡くなったっていう記事。」

 

「よくこんなのあったわね。」

 

 呆れ顔で言うハーマイオニーに少し苦笑いしながらイーニアはいう。

 

「お父さんの趣味で新聞とか書籍が家にたくさんあるの。一部持ってきてたのは正解だったみたい。」

 

 新聞が役に立つ日が来るとはイーニア自身まったく想像していなかったが。

 

「で、内容は?」

 

「記事の方はかなり誇張して書かれてるから参考にはならない、そもそも秘密の部屋が何たるかだけど…。」

 

 イーニアが説明を始めると談話室にいた全員が話を聞いていた。

 

「ホグワーツの創設者、ゴドリック・グリフィンドール、ヘルガ・ハッフルパフ、ロウェナ・レイブンクロー、サラザール・スリザリンは皆知ってるよね?

――うん、ならよかった。最初、4人は仲良くやっていたのだけれどもスリザリンは根っからの純血主義で、純血以外はこの学校で学ばせるべきではないと考えたの。

――ああ、長い歴史を重ねていくうちに色々な考えができたりしたけどそこは置いておくね。で、その考えの相違からグリフィンドールと決闘を行うことになったんだけどスリザリンは敗れて学校を去ることになったの。

――問題はここから。スリザリンは去る前に他の創設者に知られない、隠された部屋を作ったっていう伝説があるの。

それによればスリザリンは部屋を密封、学校に真の継承者があらわれるまで、何人たりともあけられなくした。継承者のみが秘密の部屋の封印を解いてその中の【恐怖】を解き放ち、それを用いてホグワーツで学ぶに相応しくない者を追放するって」

 

「恐怖とは…?」

 

「今回ミセス・ノリスが石化していたことと、スリザリンのマークからしてバジリスクとかかな?」

 

「バジリスクって?」

 

「え?バジリスクも知らないの?」

 

 ロンの質問に驚き皆に聞くと肯く。

 

「皆もう少し読書したほうがいいんじゃない?

――バジリスクは別名【毒蛇の王】って言われてる緑色の大蛇のこと。牙には猛毒が含まれ、その毒はフェニックスの涙でしか中和することができず、眼を直視した者は即死、間接的に目を見た者は石化するらしいよ。」

 

 イーニアは一緒に持ってきていた本を一冊取るとぱらぱらと捲る。

 

「あったあった。記録に残る最初のバジリスクは――ギリシャの闇の魔法使いでパーセルマウスの【腐ったハーポ】が実験を重ねた結果、ヒキガエルの下で孵化した鶏の卵から、異常なまでに強力な力を持つ巨大な蛇が生まれる事を発見した。これだね。

――バジリスクを創り出すことは中世には禁じられたが、バジリスクは非常に長命であり、創り出すことが禁じられた後も長くこの世に存在し続けていたと思われる。記録上最古のバジリスクとされる【腐ったハーポ】のバジリスクは900年生きたとされている。また、バジリスクは400年間イギリス国内で目撃された記録は無い、だってさ。」

 

 イーニアが喋り終わると皆暗い顔をしていた。

 

「いるとわかったわけじゃないんだからそんな暗くならないでよ。」

 

 余りにも暗い状態に慌てるイーニアにロンは俯いたまま言う。

 

「でも君の説明、結構辻褄が合うよ?」

 

 その言葉にイーニアは困り果てていた。

 

* * *

 

 イーニアが話した内容があっという間に学校中を駆け巡り、余計な恐怖感を与えてしまったと少し罪悪感を覚えつつも今日はグリフィンドール対スリザリンのクィディッチ戦。色々気になることはあったが応援に集中しようとイーニアは切り替える。試合開始前、ハリーとドラコは握手をしてお互いの健闘を祈っていた。そんな燃える展開にイーニアの応援にも気合いが入る。

 試合開始のホイッスルが鳴り上空に上がっていく選手たち。数分後、去年とは比べものにならないくらいの連携を見せるスリザリンに90対30とグリフィンドールはかなり押し負けていた。しかも突如ブラッジャーに狙われ始めるハリー。その状況下スニッチを見つけ取りに行くハリーとドラコ。ブラッジャーから逃げながらの激しいドックファイトになる。

 

「明らかに様子がおかしいんだけど…2人とも戦いに熱入りすぎじゃないかな。」

 

 ブラッジャーに追いかけられるという異常事態にも関わらずスニッチを追いかける2人に思わず苦笑いするイーニア。2人に怪我なければと考えた瞬間、ブラッジャーがドラコの箒に当たりドラコが箒から落ちる。しかしうまく受け身を取りすぐに立ち上がったドラコを見てホッとするイーニア。

 視線をハリーへと戻すとスニッチを掴むために伸ばしていた右腕をブラッジャーが直撃した。思わず飛び出しそうになるイーニア。しかしハリーはそのまま飛び続け左手でスニッチを掴むと箒から落ちた。それを見て飛び出すイーニアたち。痛みで蹲っているハリーにブラッジャーが再び襲おうとしていたのでハーマイオニーが粉々に砕いた。

 

「大丈夫!?ハリー!?」

 

「痛っ…取れたよ。スニッチ。」

 

「うん。試合終了のホイッスルなったよ。――ってそうじゃない。このクィディッチ馬鹿!!」

 

 笑うハリーに少し安堵した表情を見せるイーニアたち。腕を触ると骨が折れていることがわかる。イーニアが応急処置の魔法を唱えようとするとロックハートがやってきて治療をしようとする。

 

「これは!私にお任せください!なに、ちょちょいのちょいで――。」

 

「専門の人がいるので先生は手を出さないでください。――エピスキー(癒えよ)。」

 

 イーニアが唱え終わるとマダム・ポンフリーがやってきてハリーを担架で運んで行った。医務室に着くとハリーの腕は3秒で治り、幻痛がするハリーのために一晩入院が決定した。

 翌朝退院してきたハリーにブラッジャーにいたずらしたのはドビーだという話を聞いていると、コリン・クリービーが石化した状態で発見されたと言う話が舞い込んできた。

 

 

 




注意したのに2度暴言を吐くとはいい度胸だ、セル。さあ、貴様の罪を数えろ。
という感じで暴言を吐くセルに切れるイーニアでした。
ピクシーがあんな感じで言うことを聞くかどうかは知りません。オリジナルです。



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決闘クラブとリドルの日記

ロックハートをうざく感じていただけたら幸いです。

ではどうぞ。


 いつもカメラを持ち歩いていたコリン・クリービーはレンズ越しにバジリスクを見たのではないか、という話が広がりイーニアの話が余計に信憑性を増したせいで皆レンズになりそうなものや手鏡などを持ち歩くようになったころ。

 ロックハートが決闘クラブを行うと言い出し、様子見程度にイーニアたちもその場に訪れた。行くといつものようにロックハートがうんざりとした自慢話をし、皆の顔が嫌になってくると決闘クラブを始めた。

 

「では、助手のスネイプ先生をご紹介しましょう!模範演技のために、勇敢にもお手伝いいただけるとのことです!ご心配めさるな、私と手合せしたあとでもみなさんの魔法薬の先生はちゃんと存在します!!」

 

 スネイプを見るとすごく眉間にしわが寄っていた。

 

「グリフィンドール生でもあんな顔させないよ。」

 

 イーニアが少し笑いながら言うとハリーたちも笑った。

 そして模範演技が始まる。杖を構え、3つ数えたら術をかける、というロックハートの説明ののち、模範演技を行う。2人が振り向くとスネイプの武装解除が当たり、ロックハートが吹き飛んだ。ロックハートはふらふらと立ち上がりながら声を張り上げる。

 

「あれは武装解除です。スネイプ先生、確かにあの術を生徒に見せておくのは素晴らしい考えですが、しかし遠慮なく申し上げれば、あの術を防ぐのは簡単でした。あまりにも見え透いていましたからね。」

 

 いかにも見栄を張る様なセリフにスネイプの顔に青筋が浮かび上がる。それにはさすがのロックハートも怯え少し震えた声で言う。

 

「で、ではこれから皆さんを2人組にします。ス、スネイプ先生、お手伝い願えますか。」

 

 2組ずつに別れイーニアはセルと組むことになる。セルはイーニアを倒してやると、とても意気込んでいた。舞台に上がる前にスネイプが近づいてくる。

 

「間違えてカローを爆破するなよ。」

 

 その言葉にイーニアは少し苦笑いしつつも"しませんよ"と返した。杖を構える2人。数を数えるとすぐさまセルは武装解除をした。

 

エクスペリアームス(武器よ去れ)!!」

 

 イーニアはそれを避ける素振りも見せなかった。そして魔法がイーニアにあたるが何も起きない。皆何が起きたのかわからず首をかしげていたがイーニアだけは納得したようにうなずいていた。セルは再び武装解除を放つがやはりイーニアには届かない。ゆっくりと歩き、セルに近づく。

 

「武器を奪うだけですよね?」

 

セルの放つ魔法を弾きながらのんびりとした口調でスネイプに聞くイーニア。

 

「ああ、だが魔法で奪う方が好ましい。」

 

「今、使ってますがそれでもだめですか?」

 

「近づいたら力で奪うだろう。それは駄目だ。」

 

 しょうがないと言った感じで視線をセルの方に戻すと、少し錯乱状態に入ったセルが片っ端から魔法を唱えていた。サーペンソーティア(蛇よ出よ)を唱えるとハリーたちの近くに蛇が出る。皆、蛇に驚き後ろに下がったがハリーだけはどこか冷めたような雰囲気を出しシューシューと音を出しながら蛇と会話しているように見えた。異様な光景に皆が怯えているのを感じとったイーニアは蛇を消そうとするがその前にスネイプに蛇を消される。

 

「決闘クラブは終わりだ。解散とする。」

 

 スネイプはそう言うと強制的に解散させた。

 談話室に戻り、ハリーが行った行動に質問しようと話しかけると先に質問されてしまう。

 

「ハリー、君は――。」

 

「イーニア!!どうやってカローの魔法防いでいたの?」

 

「あれは前にダンブルドア校長が言っていたプロテゴ・ウォレ(飛ぶものから護れ)。いい機会だから試そうと思って。」

 

 その言葉に「おお!!」と歓声が上がる。見るとフレッドやジョージ、ネビルなど結構集まって話を聞いていた。イーニアは皆の前で話すのよくないかと考えたが隠し事にするほうが怪しいと思いハリーに質問をする。

 

「そういえばハリー、蛇語使い(パーセルマウス)だったんだ?」

 

蛇語使い(パーセルマウス)?」

 

「うん。君、蛇と会話していたでしょ?」

 

「う、うん。でも動物の会話するなんて珍しいことじゃないでしょ?」

 

 ハリーが蛇語使い(パーセルマウス)と聞き、皆驚いた顔をする。ハリーはその驚き様に少し怯えながら疑問を浮かべていた。疑問にイーニアが答える。

 

蛇語使い(パーセルマウス)は闇の魔法使いの印だって言われていてね。しかも非常に稀な能力で通常遺伝するらしいわ。さらに言えば知られているパーセルマウスのほとんどサラザール・スリザリンの子孫なの。」

 

「ッ!!」

 

 その言葉に動揺を隠せないハリー。周りもハリーを避けるように2歩ほど下がる。それに対し何か言おうとしたイーニアを遮るようにフレッドとジョージが喋り出した。

 

「「じゃあ、ハリーはスリザリンの真の継承者なのか?」」

 

 その言葉にハリーはビクッとなったが2人が本気で言っていないことが見て取れたイーニアはため息を吐いてた。

 

「そんなことあるわけないでしょ。ミセス・ノリスが石にされたときは私たちと居たし、コリン・クリービーが石化したときはベットの上。そもそもハリーがそうなら真っ先に一番近いハーマイオニーとかが狙われてるでしょ。」

 

 その言葉に皆ホッとした顔をする。双子がわざとイーニアに説明させたことに気が付いた者はいなかったがイーニアは意趣返しのつもりで双子をからかう。

 

「まったく…【血を裏切る者】なんて言われてる2人が襲われるんじゃない?――そうだ、ハリー。あんなこと言った2人に蛇つかって襲わせよう。」

 

「おお、怖い怖い。」

 

「ご勘弁を、ハリー・ポッター。」

 

 どこか反省していない感じだったが頭を下げる2人にハリーは笑っていた。

 

「大して反省してないし、もう本当に襲われれば?」

 

「さすがにひどくないか?」

 

「多少はそれで反省するでしょ。」

 

「もちろんイーニアが助けてくれるんだよな?」

 

「年下に助けを求めるなって言ってるでしょ。知るか。」

 

「非道!!」

 

「極悪!!」

 

「助けないって言っただけでそこまで言う!?」

 

 漫才を始めると談話室は笑いに包まれた。

 

――――――――――――――――

 

 翌日、どっか漏れたのかなんなのかハリーがスリザリンの継承者だという話がそこらかしこで上がっていた。そのせいか一部生徒が怯えハリーを避けるように動いていた。グリフィンドール生はもちろん、イーニアと関わりがある他クラスの生徒はいつも通りにしている。

 

「仮にハリーがスリザリンの継承者なら避けたりして機嫌を悪くしたら本末転倒だと思うんだけどナー。」

 

 イーニアのつぶやきはグリフィンドール生に笑いを起こさせた。

 授業終了後通りかかったトイレが水であふれていた。蛇口をひねり水を止めると嘆きのマートルがいつもの個室に本があるので持って行けと言う。びしょびしょになった本など持ち帰りたくなかったが仕方なく持ち帰る。

 暖炉で本を乾かし中身を見る。中は白紙で何も書いていなかった。裏にトム・マールヴォロ・リドルと書かれている。

 

「日記かな?でもなんで白紙?」

 

 イーニアはペンを取り、文字を書いていく。すると染み込んでいき文字が消えた。ピンっときたイーニアは質問を本に書く。

 

『貴方がトム・マールヴォロ・リドル?』

 

―――はい。

 

『これは何?』

 

―――僕の16歳までの記憶を留めてあるものです。

 

『いつの人なの?』

 

―――西暦で1943年です。

 

 記憶にある年号、それは秘密の部屋が開かれた年だった。あまりにも出来過ぎていることに不信感を抱きつつ質問を書いた。

 

『秘密の部屋について知っていることはある?』

 

―――知っています。知りたいですか?

 

『はい。』

 

 すると本がバラバラと捲れだし光を放つとイーニアを本の中へと入れた。イーニアが目を開けるとすべてがセピア色の世界だった。場所は恐らくホグワーツ。

 

「ここが1943年…?」

 

 そうつぶやくイーニアの近くには男子生徒が1人立っていた。上の階から女子生徒の遺体と思われるモノが運び込まれ男子生徒はそれをじっと見ていた。上の階には今とあまり変わらないダンブルドアがいる。

 

――リドルかね。こちらに来なさい。

 

 ダンブルドアは男子生徒、リドルと一言二言話すとリドルはその場を去った。イーニアはそれを追いかける。リドルについていくと地下室へと着いた。杖を構え扉を開ける。

 

――ハグリッド。

 

 そこには何かを箱に隠した青年のハグリッドがいた。

 

――君を突き出すよ。そいつは誰も殺す気はなかったかもしれないが――。

 

――コイツじゃねえ!!コイツは何もしてねえ!!

 

――さぁ、ハグリッド。そいつを出すんだ。怪物はペットにはなれないんだ。

 

――嫌だ。

 

 2人の口論は続く。やがてリドルが無理やり箱を開ける。すると中からとてつもなく大きな蜘蛛が出てきた。蜘蛛はそのまま部屋へと逃げる。蜘蛛が嫌いなイーニアは驚き、顔を真っ青にしつつ避けた。

 

――アラーニア・エグズメイ(蜘蛛よ去れ)!!

 

 リドルの杖から閃光が飛ぶが、蜘蛛は辛うじてそれを避け、そのまま何処かへと去っていった。ハグリッドは追いかけようとしたがリドルに杖を向けられ、止まる。そしてリドルはハグリッドを今回の犯人と断定し、そのまま連れて行くことを告げた。

 気がつけばイーニアは、自分の座っていた椅子にまた座っていた。日記は閉じられている。

 

「なんで蜘蛛なんて出てくるのよ。」

 

 ハグリッドがスリザリンの継承者だとかそんなことよりも、とても大きな蜘蛛が出てきた方がイーニアはショックだった。深呼吸をし、落ち着きを取り戻すと日記で見た内容を思い出す。

 

「うーん。ハグリッドが犯人っていうのはどう考えてもおかしいと思うんだけどなぁ。」

 

 当時の記事には生徒の1人が秘密の部屋を開けたと書かれていたのでハグリッドが犯人とは知らなかったが、こうして事実を見せ去られても、どこか腑に落ちなかったが夜も深けていたのでその日は寝ることにした。

 

 

 

 

 




蜘蛛が嫌いなイーニア。彼女の身に起きた出来事とは!?次回!!続出する被害者と蜘蛛!お楽しみに!
そんなわけで蜘蛛嫌いなイーニアにはつらいイベントがやってきます。さあどうなるかな。
ちなみに私も蜘蛛は苦手です。ムカデとかは見てられるんだけど…



誤字脱字などございましたら、遠慮なくご報告ください。
感想お待ちしています。


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蜘蛛

皆様が私の書くドラコを好きになっているようでうれしいです。
主人公のイーニアもよろしくお願いします。



ではどうぞ。


 何日か経ち、今日はクィディッチ。イーニアとロンはいつものようにハリーを控え室で応援し遅れてくるハーマイオニーと合流しようと観客席に行こうとするとマクゴナガルに呼び止められる。これから試合の選手たちも止められると試合は中断と言う話しになる。

 

「緊急事態です。試合は中止、寮へ戻りなさい。Mr.ポッターにMr.ウィーズリー、それにMs.シュツベルも来なさい。」

 

 マクゴナガルに連れられ医務室にへ行くとそこには石化したハーマイオニーが寝かされていた。その光景に思わず固まる3人。

 

「図書館の近くで見つかりました。手にはこれを。」

 

 そういうと手鏡を見せる。それを見たイーニアたちの顔が強張る。

 

「何か心当たりはありますか?」

 

 そう聞いてくるマクゴナガルに真面目な顔をしながらイーニアは聞いた。

 

「先生は今、生徒の間で噂になっている話は知っていますか?」

 

「バジリスクのことですか?」

 

「はい。ハーマイオニーは恐らく何か危険を察し、話通りに鏡越しにバジリスクを見たんじゃないでしょうか?」

 

「ではバジリスクがいる…と?」

 

「これ可能性論でしかありません。ですが1匹と2人目の犠牲者です。ホグワーツ的にも何かしなければいけないはず、でしたら話しておいた方がいいかと思いまして。」

 

 マクゴナガルは肯くと3人にひとまず寮に戻るように告げる。

 寮に戻ると机の上に置いてあったリドルの日記がなくなっている。しかもイーニアがかけた封印まで解かれていた。無いことを確認すると間違いなくあの日記は黒だと判断し、ハリーたちに日記のことと内容を伝える。

 

「私が封印、封印って言っても鍵をかけた簡易なものなんだけど、それが壊されてる。」

 

「それはどんな封印だったの?」

 

「一枚の布で巻いてあって開かないようにしといたの。開けるには42桁の英数字を入れなきゃいけない。」

 

「42桁…。」

 

 ロンがげぇと言った顔をした。

 

「本当はもっとわかってから話すつもりだったんだけど、ハーマイオニーが襲われたし、疑いをかけられたハリーは他人事じゃないから。」

 

 少し申し訳なさそうに話すイーニアにハリーたちは水臭いこと言うなと言わんばかりの顔をした。その後マクゴナガルがやってきて対応を話す。生徒の1人での行動、クラブ活動の禁止を告げる。イーニア達にとってはデメリットはあるもののチャンスではあった。

 

* * *

 

 イーニアたちは目くらまし術と透明マントを使いハグリッドの小屋へ訪れると扉をノックする。ハグリッドは少し驚きつつも迎えてくれた。

 

「お前さんたち!?寮から出るのは禁じられていたはずだ。」

 

「うん。わかってる。でもどうしてもハグリッドに聞きたいことがあってきたの。」

 

「俺にか?まあいい。中に入れ。」

 

「お邪魔します。」

 

 ハグリッドの小屋に入りマフラーを取ると大きめな椅子に座る。

 

「で、俺に聞きてぇってのは?」

 

「1943年に開いた秘密の部屋について知っていることをすべて話してほしいの。」

 

 イーニアの言葉にビクッとなると少し困った顔で見る。

 

「なんでそれを俺に聞く?」

 

「ある本でそれを知ったの。」

 

 イーニアは日記で見たこと聞いたことを隠さず話した。ハグリッドは少し考えると肯き答える。

 

「お前さんの話した内容は事実だ。――だが俺は秘密の部屋は開けてねぇしアラゴグも何もしてねぇ。」

 

「別にハグリッドを疑ってなんかいないよ。――それに蜘蛛、アラゴグだっけ?―に襲われた人間が五体満足の遺体として見つかることもないと思ってる。」

 

 イーニアは一呼吸置くと続ける。

 

「タイミングが良すぎるの。本が見つかったタイミングが。現在、秘密の部屋が開けられて、しかも過去に開かれたときの日記が見つかり剰え、当時犯人とされる人間がわかる内容なんて怪しすぎるよ。しかもそのあとにハーマイオニーが襲われて本もなくなってた。」

 

 そこまで話すと小屋の扉がノックされる。ハグリッドは3人に隠れるように無言で指示し3人で透明マントに入りさらに目くらまし術を使った。ハグリッドが扉を開けるとダンブルドアと40~50歳くらいの男性が入ってきた。

 

「コーネリウス・ファッジ魔法大臣…。」

 

 イーニアが2人にしか聞こえない声で言うとロンが魔法省のトップだと補足する。ファッジが話し始める。

 

「状況はあの時と同じだ。」

 

「ッ!!」

 

「ついてはハグリッド。君を重要参考人として連れて行かなければならない。暫定的な処置だ、情けない事だがね。」

 

 世間には知らされていないが人の口に戸は立てられぬとはよく言ったもので、ハグリッドが犯人だということが当時いた人間の間で噂が独り歩きしているのだろう。

 

「お、俺はアズカバンに行くんですかい?」

 

 顔を蒼白に染めたハグリッドが聞く。するとルシウス・マルフォイが入ってきた。

 

「なんであの人がここに…?」

 

 ルシウスは巻紙をひとつ取り出すとダンブルドアへ渡す。

 

「解任命令です。委員会の全ての合意によって決定されましたぞ、校長殿。」

 

「「「ッ!?」」」

 

 声が出そうになったがなんとかお互いの口を塞ぎ声を抑える3人。ハグリッドは解任命令を見て叫ぶ。

 

「ダンブルドア校長がいなくなっちまったら、誰がホグワーツを守るってぇんだ!!」

 

「いらんでしょう、被害を防げない校長など。」

 

 その言葉にハグリッドがルシウスに掴みかかろうとしたがダンブルドアがそれを止めた。

 

「よいのじゃ、ハグリッド。委員会がそう決めたなら、わしはそれに従おう。じゃが一つだけ覚えておくが良い。ホグワーツでは助けを求めた者にのみ、それが与えられる。」

 

 ダンブルドアはそう言い、こちらを見るとニコッと笑うとルシウスと共に出口へと向かう。ファッジもハグリッドに声をかけると出口へ向かう。

 

「ファングの餌を上げるやつがいないのは困るんですがね、あと蜘蛛も。ま、謎は追えばわかりますか。」

 

 突然よくわからないことを言うハグリッドにファッジは疑問を抱いたが、ハグリッドに続き小屋を後にした。4人が確実にいなくなったことを確認すると透明マントから出る。

 

「やっぱり蜘蛛追わなきゃいけないのね。」

 

 絶望した風に言うイーニア。

 

「ダンブルドア校長、こっち見て笑ったね。」

 

「ばれてたよ。間違いなく。」

 

 ハリーとロンは落ち込んでいるイーニアの肩を叩きながらそんな会話をしているとノーバートを連れたサーベイがやってきた。

 

「君たちどうしてここに!?寮を出ちゃいけないんじゃないのかい!?」

 

「サーベイこそどうしてここに?」

 

「ハグリッドが留守にするってことでファングを預かることになったんだ。――イーニアに会えなくなるとノーバートは拗ねるから君のところへ預けようかと。」

 

「そっか…。おいでノーバート。」

 

 サーベイの腕に乗っていたノーバートがイーニアの腕に飛び移る。

 

「サーベイ、僕たちがここにいたことは秘密でお願い!!」

 

 ハリーとロンが頭を下げると少し困惑しながらも承諾してくれた。3人はサーベイに寮へと戻ると嘘を吐きハグリッドの小屋から続いている蜘蛛の行列を辿り始める。

 

「あ、あのね。2人にお願いがあるの。」

 

 顔を引き攣らせながら言うイーニアに2人は心配しながら聞く。

 

「手を……握ってて…ほしい。」

 

 突然の提案に2人は少し顔を赤くする。

 

「…蜘蛛…嫌い…なの。」

 

 ハリーとロンはそれを聞いて少し笑ったがイーニアの女の子らしい一面に微笑むとイーニアを真ん中に両方から手を握った。

 禁じられた森を進み奥へ行けば行くほど蜘蛛が増えていく状況に半分泣き目になりながら何とかこらえているイーニア。穴を抜け開けたところへ出ると蜘蛛たちが途切れた。ノーバートが警戒している。

 

――誰だ?

 

 とても大きな、イーニアたちの2倍はあるサイズの蜘蛛が姿を現す。あまりの衝撃に強く手を握るイーニアに痛みを感じながらもハリーが話しかける。

 

「……君が、アラゴグかい?」

 

――いかにも。お前たちは誰だ。

 

「ハグリッドの友達のハリー。彼が危機なんだ。助力がほしい。」

 

――ハグリッドの…それを証明するものは?

 

「あ、あなたの名前を知っています。」

 

――お前は?

 

「イ、イーニア。こっちがロン。」

 

 半泣き状態だが震える声で答えるイーニア。ハリーが続けて質問をする。

 

「ハグリッドが濡れ衣をを着せられようとしているんだ。無実を証明するために、秘密の部屋の情報を集めています。何でも良いです。知っていることはありませんか?」

 

――わしらはその話を決してしない。ひとつわかるのはそこに潜むあれは筒を使って移動している。

 

「そう。ありがとう。僕らはその情報をもとにハグリッドの無実を証明する。」

 

――帰すと思っているのかね。

 

「ッ!!」

 

――久方ぶりの新鮮な肉だ。むざむざ我らが食卓に飛び込んで来おった夕食を、逃す手はなかろう。

 

 気が付くとハリーたちの周りにたくさんの蜘蛛がいた。自分たちの腰くらいのサイズの蜘蛛もいる。

 

――さらばだ。ハグリッドの友達。

 

 大きめの蜘蛛が飛びかかってくると手を放したイーニアが蹴り飛ばした。いつの間にか身体強化の魔法をかけている。

 

「「イーニア!?」」

 

 蜘蛛が嫌いと言い手を握ることを要求したイーニアが自ら手を放し蜘蛛を蹴った、それに疑問を持ったハリーとロンは顔を覗く。するとイーニアは目の焦点が定まっておらず顔面蒼白だった。

 

「そう。   襲ってきてる。 だから仕方ないの…。   ハグリッド   友達。  襲ってきてるから。だから   だから…。」

 

 ぶつぶつと呟き続けるイーニアは杖を構えた。次の瞬間、周りを囲んでいた蜘蛛たちが切り裂かれていく。

 

――何をした!?

 

 アラゴグの言葉に返事をせず、ただ歯をガタガタいわせ真っ青な顔をし震える手で杖を構えるイーニア。しかし蜘蛛たちが一定以上近づけはそのたびに切り裂かれ死んでいく。

 

――お前たちやめろ。――小僧たち、その小娘を連れていけ。

 

 切り裂くだけではなく森に火を点けそうな勢いのイーニアを見てアラゴグは蜘蛛たちを止めた。ハリーとロンはアラゴグに言われた通りイーニアを連れて行こうとする。

 

「イーニア。行こう。」

 

「このままじゃ   私 襲われ  嫌  こいつら 殺さなきゃ。」

 

「イーニア!!」

 

 杖を構えて動かないイーニアをハリーが強く呼ぶとイーニアはハリーと目を合わせると意識を失った。

 

――二度とその小娘をここに来させてくれるな。

 

 そう聞こえたがハリーたちはイーニアを抱えるとそれに返事をせず立ち去った。

 

 

 

 イーニアが目を覚ますとハグリッドの小屋の近くだった。ノーバートが額を舐めている。

 

「イーニア!よかった目が覚めたんだね!!」

 

 ハリーが顔を覗き込み声を上げる。それに反応し少し離れた場所にいたロンも近くに寄ってくる。

 

「良かった。このまま朝まで起きないかと思ったよ。」

 

「私…。」

 

「怖かっただろ?あそこまで怯えるならぼくたち2人で行けばよかった。」

 

「うん。ごめん。イーニア。」

 

 体を起こし、まだ回らない頭を回すとどうして自分が意識を失ったかを思い出した。

 

「う、ううん。日記のこととか私が知ってたから、私も行かなきゃ。――私こそごめんね。パニック起こして。」

 

「かなりやばい顔してたけど、覚えてるのかい?」

 

「蜘蛛が飛びかかってくるところまでは…あとは断片的に。」

 

 まだ恐怖が残っているのか青い顔をするイーニアにノーバートが頬擦りする。

 

「わわわっ…もう大丈夫だよ。心配してくれてありがと、ノーバート。」

 

 ハリーの手を取りイーニアは起き上がると寮へと戻ることにした。

 

 




簡易封印魔法
布でクルっと本を巻き結び目にかける。布自体も強化されて切れたり破けたりしなくなる。もちろん布でなくてもできます。入れるっと表現しましたが本の前で杖を振るイメージです。

蜘蛛を切り裂いたのはディフィンド(裂けよ)です。
ロンが蜘蛛に対してビビらないのは蜘蛛が苦手じゃない設定にしました。


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秘密の部屋と1年の終わり

長くなってしまいましたが分割せずこのまま投稿。


ではどうぞ。


 翌日、朝食を取った後に緊急ということで皆、談話室で待機させられるとロンたちウィーズリー兄弟がマクゴナガルに呼ばれてついて行った。

 ロンたちが戻ると真っ青の顔をしていた。話を聞くとロンの妹ジニーが攫われた。壁にはこう書かれていたらしい。

 

【彼女の白骨は永遠に秘密の部屋に横たわるであろう】

 

「どうしよう。ハリー!イーニア!」

 

「先生方はなんて?」

 

「ロックハートにやらせるって言ってたけどたぶん皆、期待はしてないと思う。」

 

「そっか。――――― 一応、秘密の部屋のアタリはついてるよ。」

 

「ほんと!?」

 

「でもそのためにはここを抜け出さなきゃ。マクゴナガル先生が寮から出るなって言ってる。それでもいく?」

 

 2人はしっかりと肯いたのを確認するとイーニアはジョージとフレッドの方へと行く。

 

「2人とも話があるの。少しいい?」

 

 暗い顔の2人を連れて部屋の隅へと行く。

 

「ジニーを助けに行くわ。」

 

「「ッ!?」」

 

 その言葉に俯いていた2人は顔を上げる。

 

「そのためにはハリーの協力が必要だから私とハリー、ロンで行く。」

 

「ならおれたちも!」

 

「ああ!!そうだ!!」

 

「2人には別のことをお願いしたいの。私たちがいない間、どうにかいないことを悟られないように誤魔化してほしい。」

 

「それは別にかまわないが…。」

 

「ああ、なぜ先生や他の奴らに言わないんだ?」

 

「1つは先生方が動いて生徒の護りが薄くなることでさらに被害が出る可能性がある。たぶん先生たちが動かないのはこれが一番の要因だと思う。

――勘違いしないでほしいのはジニーのことをあきらめているわけじゃないの。先生には先生の立場があるから。

 もう1つは言えば間違いなく私たちは外に出れなくなる。そうすればジニー救出は必然的に遅くなる。それは絶対に避けたい。」

 

 理由を述べると2人は納得したように肯き了承してくれた。

 

「でも、なんで俺たちなんだ?」

 

「誤魔化すのがここで一番上手そうだからだよ。――あとこれ。使えるかどうかわからないけど。」

 

「これは?」

 

「あるモノを違うモノに見せる薬。変えるモノに変えたいモノをイメージしてかければ効果が発揮するけど、人に見えるかは試したことないから気を付けて。」

 

「わかった。助かるぜ。」

 

「ノーバートをよろしく。――2人の言うことを聞くんだよ?」

 

 ノーバートをジョージの腕に移し、イーニアはハリーたちを連れるとこっそり寮から抜け出した。

 途中、こそこそと歩いているロックハートを見つける。

 

「先生、どこへ行くんですか?そんな大荷物を持って。」

 

「ッ!!――ポッターにウィーズリー、シュツベルか。」

 

「やっぱり逃げるんですね。」

 

 ロックハートから返事はない。

 

「では逃げる前に少し役に立ってください。」

 

 イーニアは身体強化の魔法をかけると素早くロックハートから杖を奪い、関節を極める。

 

「いだだだだ――ギブギブ!!」

 

「貴方がどんな魔法使いであっても今はまだ、ここの教師。その立場は多少は役に立つ。これ以上痛くされたくなかったらついてきてください。」

 

 ロックハートを連れ、嘆きのマートルがいるトイレに着き、マートルに話を聞く。

 

「マートル、一つだけ聞かせて。貴女が死んだのは1943年の6月ね?」

 

 マートルは不愉快そうな顔をしたがそうだと肯いた。

 

「嫌なことを聞いてごめんなさい。」

 

 イーニアは謝るとトイレを調べ始める。説明をされていないハリーたちは何をしているかさっぱりだった。

 

「なにをしているの?イーニア。」

 

「秘密の部屋の入口を探してるの。」

 

「へ?なんで?」

 

「うーん。話す時間がもったいないから掻い摘んで話すけどマートルは前に秘密の部屋が開いたときの犠牲者。蜘蛛が―アラゴグが奴らは筒を使って移動しているって言ってたから配管かなと、トイレなら配管あるしトイレにいるゴーストが怪しいかなと思って。」

 

 イーニアは一呼吸置くと何かを見つけたようで皆に集まるようにいう。

 

「あった。ここに来て。――で、マートルが亡くなったのが事件の日。ならここに入り口があるのは間違いないはず。ハリー、ここに蛇語で開けって言ってみて。」

 

 蛇口の横に小さく蛇のレリーフが彫られてあり、そこを指さすイーニア。ハリーがシューシューと音を出すと洗い場が沈み大きな穴ができた。

 

「当たりだね。よかった。」

 

「で、では私はこの辺でぇええ!!」

 

 逃げようとしたロックハートの足を踏み逃がさないイーニア。

 

「最後まで付き合うんですよ。ほら―。」

 

 ロックハートを立たせるとなんの前触れもなく穴に落とした。さすがにその行為にはハリーたちも驚く。

 

「えええ!?いきなり落とす!?」

 

「そうだよ!?ロックハート死んじゃったかもよ!?」

 

「大丈夫だよ。……たぶん。………きっと。」

 

 穴に落としてから反応の無いロックハートに少しずつ自信をなくし穴を覗くイーニア。すると声が聞こえてくる。

 

「最高の心地だ、ここは。」

 

 返事が聞こえ、あははと笑いながらイーニアも飛び込みハリーたちも続く。かなりの距離を滑り下りると骨が大量にある洞窟の様ば場所へ着地した。

 

「最低の心地だね、ここは。」

 

 ロックハートと真逆のことを言うとため息を吐く。ふとポケットを確認するとロックハートの杖がなかった。ロックハートを見ると杖を握ってこちらに構えている。どうやら着地した時にポケットから落ちたようだった。

 

「私たちに杖を構えてどうするつもりですか?」

 

「君たちの記憶を消させてもらう。」

 

「消した後は?」

 

「消した後?」

 

「ええ、バジリスクのテリトリーに居て、帰り道もわからずどうするおつもりですか?」

 

「バジリスク!?なんでそんなものが!?」

 

「知ってて逃げようとしていたわけじゃないんですか?」

 

「ああ、きっと私はここで死ぬのですね。」

 

「そう思うなら杖を下げて手伝ってください。」

 

「いや、騙されませんよ!出口を知っているはずです!!教えなさい!!記憶を消されたくなければ!!」

 

「仮に知っていても消したら教えることもできませんが。」

 

「ええい!!うるさい!!オブリビエイト(忘れよ)!!」

 

 半ば錯乱状態のロックハートはイーニアに向けて忘却術を使うが盾の呪文で弾かれてしまう。

 

「なッ!2年生の盾の呪文で防げるわけが――ガっ!!」

 

 驚くロックハートに接近し顎に掌底を当てるイーニア。それはうまくきまりロックハートは気絶する。

 

「こう騒がれちゃもう駄目ね。インカーセラス(縛れ)。」

 

 ロックハートから杖を奪うと起きてもいいように縛る。このまま縛って置いて行くのは危ないかもしれないと考えていると天井がぱらぱらと崩れるような気配がしてくる。ハッとなったイーニアは近くにいたハリーを突き飛ばしながら天井から崩れ落ちた岩を避けた。どうやらロックハートを倒した衝撃だけで崩れたようだ。

 ハリーを見ると崩落からは逃れ怪我もない。しかし岩が重なり戻れなくなっていた。

 

「ロン!!無事!?」

 

「ああ!!大丈夫!2人は!?」

 

「こっちも大丈夫!!ロックハートは!?」

 

「まだ寝てるよ!!」

 

「じゃあロンは見張りと岩退かしておいて!私とハリーでジニー助けてくる!」

 

「わかった!!無事に戻れよ!!」

 

 隙間から見えるロンは親指を立てサムズアップした。ハリーとイーニアもそれを返す。

 

 2人が進むと蛇が描かれた扉がありハリーが蛇語で開けと言うと扉が開いた。扉を抜けるといくつも蛇の像が飾られた大広間に出る。そこには巨大な顔の像もあり、それは恐らくサラザール・スリザリンだ。そして部屋の中央にジニーが寝かされている。駆け出し近寄る2人。

 

「ジニー!」

 

「大丈夫!?」

 

 声をかけるが反応がない。それどころか体全体が色白くまるで死体の様だった。脈を取ると少しゆっくりだがある。

 

「無駄だよ。いくら声をかけたところで覚ましやしない。」

 

「ッ!なんで実体化してるの!?」

 

 そこにいたのはリドルだった。日記で見た人間がそのままの姿で存在していることに驚くイーニア。横には2体のバジリスクがいた。目を合わないようにリドルを見る2人。

 

「日記が原因だと思ってたけどまさか実体化するなんて。」

 

「僕は今、日記を介して彼女の力をもらっている。直に彼女は死に、僕は復活する。」

 

ステューピファイ(麻痺せよ)!」

 

イーニアの放った失神呪文はリドルをすり抜ける。

 

「そう急くものではないよ。残念ながら僕はまだ復活していない。だから魔法も当たらない。」

 

「ッ!!――――――――さすがはヴォルデモートってこと?」

 

 魔法が通らないことに驚きつつも、動揺を見せず質問を投げかける。その言葉を聞き、驚いた顔でイーニアを見るハリー。リドルは愉快そうに笑った。

 

「よく気が付いたね。」

 

「今日の朝食、名前に何かヒントがないかと思って順番を変えていたら気が付いた。

TOM MARVOLO RIDDLE(トム マールヴォロ リドル)――――I AM LORD VOLDEMORT(私はヴォルデモート卿だ)

あんまり信じたくなかったけどね。」

 

「知りつつもここまで来るとはさすがグリフィンドールの生徒。勇敢じゃないか。」

 

「復活が目的ならなぜ、最初から生徒をさらわなかったの?――ッ!!?」

 

 そうイーニアが聞いた瞬間、横にいた1匹のバジリスクが尻尾を使い吹き飛ばした。吹き飛び、床に体を打ちつけたイーニアは動かない。

 

「イーニア!?」

 

「あーあー。君は堪え性がないね。――あれは死んじゃったかな?彼女。」

 

 動いたバジリスクに対し話しかけるリドルはどうでもよさそうに言うとちゃんと待てとバジリスクに言いつける。

 

「ま、僕の目的は復活の他にハリー・ポッター、君にあるからいいよ。」

 

「ぼくに?」

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

 どれくらい意識を失っていたかわからない。イーニアが意識を取り戻すと体中に凄まじい痛みが走った。水たまりの上にいるせいで体が冷たい。腕や額から血が流れているのがわかる。相当強く打ちつけられたが幸い骨は折れていないようだった。ローブを千切り止血をして応急魔法を唱える。

 

 応急処置を終え、音のする方を見ると2匹のバジリスクに追われているハリーが目に入った。リドルはその光景を夢中になって見ている。その隙を着くべく、ゆっくりとばれない様に近づくイーニア。視線をハリーに戻すと、どこから出したのかハリーは一本の剣を出すとバジリスクに口の中から刺し、バジリスクを1匹倒した。

 

「やってくれたな!!ポッター!!――はっ!?」

 

 激昂し、意識が完全に後ろに来ない瞬間をイーニアは逃さなかった。

 リドルの後ろに行き、手を掴む(・・・・)

 

「杖と日記を持ってるってことはそこは実体化してるんだよね!!」

 

 ハリーの近くにいたもう1匹のバジリスクが寄ってくる。右手を掴むと杖を奪い、渾身の力を込めて大口を開けたバジリスクの口へリドルを投げた。

 

チャロワ(噛め)。」

 

「や、やめろ!!プロテゴ(護れ)!!」

 

 盾の呪文を唱えるがバジリスクはそれすらも破り、口の中に入ったリドルは日記と一緒に噛まれた。

 

「あ、ああああああああああああああああああああああ!!」

 

 バジリスクの口の中で悲鳴を上げながら崩れ去るリドル。

 

「偉大な魔法使いが赤子を躾けるための魔法にやられるなんてね。」

 

 一息つこうと思ったイーニアだったがまだバジリスクが残っている。杖を構え近づいてきたハリーに声をかける。

 

「お互いボロボロだね。」

 

「あはは。そうだね。」

 

 体中に傷を作り満身創痍な2人。限界が近かったがここであきらめるわけにはいかなかった。ジニーが目を覚まし悲鳴を上げる。

 

「ジニー!!そこの道をまっすぐ進むんだ!!そこにロンがいる!!僕たちもすぐに行くから先に逃げて!!」

 

 自分だけ逃げることに戸惑ったジニーだったが叫ぶハリーに気圧されて走り出した。姿が見えなくなると杖を構えたまま、バジリスクに目を合わなせないようにしつつイーニアはハリーに話しかけた。バジリスクは動かずこちらを見ている。

 

「さて、どうしよっか。」

 

「こいつ魔法がほとんど効かないよ。失神呪文とか弾かれた。」

 

「さっき噛ませることができたのはこいつに噛む気が合ってそれを増長させただけかもしれないってことね。」

 

「老朽化が進んでるから爆発系の魔法は危ないかも。」

 

「そうなるとその剣が頼りかな?」

 

 ハリーが杖とは反対に持っている剣を指すイーニア。

 "それは?"と聞くとダンブルドアの鳥が届けてくれたと教えてくれた。イーニアがハリーから剣を受け取ると噛みつこうとしてくるバジリスク。2人は左右に分かれそれを避ける。

 イーニアは剣をはめられる形のクロスボウを生成すると剣をはめ、バジリスクの顔を目がけて発射する。しかし飛んだ剣はバジリスクの尻尾によって弾かれる。

 遠くへ飛んだ剣を拾いに行こうとするとその道をバジリスクが阻んだ。

 

「あれが自分に効くって知ってるんだ。」

 

 忌々しそうに言うハリー。イーニアは剣をたくさん生成すると浮かせ射出した。

 

ラマンパトラム(武器を生成)!―――――ウィンガーディアム・レビオーサ(浮遊せよ)――――アッケラーティオ(加速せよ)!!」

 

 たくさんの剣がバジリスクを襲うがバジリスクは避ける素振りも見せず、すべて受けた。しかし一本もバジリスクを傷つけることはできず、すべて床に落ちる。

 "やっぱりあの剣なんか特殊なものかかってる!!" 手に持った時にどこか違和感を覚えていたイーニアはそれが確信に変わる。あの剣でないと駄目だと。

 

アクシオ(来い)!!」

 

 ハリーが剣を呼ぶがバジリスクが叩き落し手元に来ない。

 

「ッ!!」

 

 尻尾が2人を襲う。イーニアはうまく躱したがハリーが掠め、飛ばされる。

 

「ハリー!!」

 

 壁に背中を打ちつけたハリーに近づき応急処置を施す。バジリスクに向き直るとすぐそこまで来ていて追いつめられていた。

 

ウォーレ(飛べ)!!」

 

 イーニアはハリーとともに宙に浮いてバジリスクを飛び越えようとしたがバジリスクも同じ高さまで体を上げ飛び越えさせないようにしてくる。上がった時、ロンが視界の端に見えた。すかさず消音魔法をかけ、ロンの足元の床に文字を書く。

 

『剣をもってきて』

 

 生成した剣はすでに消したので一本しかない。音を消していればバジリスクも気づくことなくロンが接近できるはず。そのことをハリーに伝えるとできるだけ注意を引きながら避けることに専念した。

 だが狭い空間での回避は難しく攻撃を避けきれない2人。特に尻尾を使う範囲の広い攻撃が問題だった。3分も経たないうちにさらに追い詰められる。

 2人とも膝を付いていて呼吸も激しかった。バジリスクが体を下げ、大口を開けるとゆっくりと2人を食べようと接近してくる。

 

「……はっ…はぁ…。」

 

 言葉も発せられないほど余裕のない2人。ロンの姿は見えない。バジリスクが激しく暴れたので近づけないのかもしれない。しかし諦めてはいない。最後の一撃。噛まれる直前に口の中で攻撃魔法を当てる、それにかけていた。

 目の前に口が来る。2人がすべての力を振り絞ろうとした時だった。

 

「うおおおおおおおおあああああああ!!!!!!」

 

 ロンが上から剣を構えて落ちてきてバジリスクの頭に刺した。限界だったはずの2人から彼の名前が出る。

 

「「ロン!!」」

 

 刺されたバジリスクは数回、頭を振るとロンと剣を放り投げ倒れた。ふらふらながらも駆け寄る2人。

 

「無事か!?ロン!!」

 

「ロン!!」

 

「へへへ。やったぜ。」

 

 ロンは頭を摩りながら起き上がり親指を立てる。その様子に安心した2人は座り込んだ。

 

「疲れたーー。もう動きたくない。」

 

「イーニアがそんなこというなんて珍しいね。――僕も同じ気持ちだよ。」

 

「出口は鳥が教えてくれたよ。上に戻って休も…―――。」

 

 ロンの言葉が途切れたので振り返るとバジリスクが起き上がっていた。ロンの手元に剣はない。イーニアは全力の盾の呪文を唱える。しかしそれは砕かれ牙がイーニアたちを襲う。だが牙がイーニアたちに届くことはなかった。

 

「私の活躍を見ろおおおおおおおお!!!!」

 

 横からやってきたロックハートが剣を持ちバジリスクを刺したのだ。ロックハートに刺されたバジリスクは今度こそ動きを止め、死んだ。

 

「はっはっは!!これでもうペテン師だなんて言わせませんよ!!どうだ!!見たか!!こん畜生!!」

 

 動かなくなったバジリスクを蹴るロックハート。大声を上げているロックハートの身体はすごく震えていた。

 

「ロックハート先生。」

 

「はっはっは…――なんです?」

 

「ありがとう。」

 

 イーニアにお礼を言われたロックハートは少し照れくさそうにした。

 

「ま、まあ?生徒を護るのは教師として当然のことです!!」

 

「あまり調子に乗らないでくださいね。」

 

 釘を刺されるとロックハートはビクッとなった。

 その後、イーニアたちは肩を貸し合いながら地上に戻った。

 

 

* * *

 

 

 戻ると3人がいないことがばれており、マクゴナガルがイーニアたちを見るなり激怒する。

 しかし説教は長くなることなくすぐに医務室に連れていかれ治療。ハリーは全治3日、イーニアは全治5日と骨が折れたのすらすぐ治せるマダム・ポンフリーが治療する怪我としてはかなりの重傷だった。2人が入院中にハーマイオニーの石化が解かれ、お見舞いに来てもらい再会を喜んだ。

 

 完治後、ルシウス・マルフォイの画策で解雇命令が出ていたダンブルドアが戻ると、お礼を言われ【ホグワーツ特別功労賞】をもらうことになった。イーニアはそんなものはいらないので学期末試験パスできませんかと、とんでもないことを言い出したがダンブルドアに笑顔で怒られた。

 その後、ハリーの機転でマルフォイ家に仕えていたドビーは自由になった。

 ダンブルドアたちを貶めようとしていたルシウスの画策が公になり、理事会を辞めることとなる。それを聞いたドラコはとても複雑そうな顔をしていた。

 詐欺などを行ったことが公になり、ロックハートは罪に問われたが、秘密の部屋解決に協力したことが認められ、アズカバンにいる期間が短くなり1年服役することとなった。ダンブルドアからはその勇気を持ちづけるならホグワーツに戻ってきてもいいと言われたが、あんな冒険は一生に一度でいいと断り、ホグワーツに戻ってくることはなかった。

 

 学期末試験を終え、寮対抗杯はイーニアたちの功績でグリフィンドールが2年連続1位。学期末試験は去年同様、ハーマイオニーが1位、ハリーは前回より下がって18位、ロンは30位だった。イーニアは9位でドラコが7位。

 

「だから学期末試験やりたくなかった…。」

 

 ドラコに負けて落ち込むイーニア。そこにドラコが近づいてきた。

 

「落ち込むことはないだろうイーニア。君やハリー、ロンは学校のために頑張っていただろう?それなら今回の勝負は来年に持ち越しだ。

―――それよりも数日、しかも試験前に石にされていたハーマイオニーが1位を取っていることにぼくはとても驚いているよ。」

 

「日頃から勉強してますから。」

 

 当然と言った顔で言うハーマイオニーに君には敵わないと言った顔で眉を下げるドラコ。パーティも楽しんでいると冤罪で連れて行かれていたハグリッドが顔を出す。

 

「「「「おかえり!ハグリッド。」」」」

 

「あ、ああ。お前さんたち本当にありがとな。」

 

 無実の罪を晴らしてくれたハリーたちにお礼を言うハグリッド。そんなハグリッドを見てハリーは言う。

 

「友達なんだから当然だよ。」

 

 ハリーが笑顔でそういうとハグリッドもつられて笑い、イーニアたちも笑った。

 

 

 そして汽車で帰る日。

 4人は夏休み会うことを約束し、別れを告げる。

 汽車から出るとドラコが目に入り、何か真面目に考えていたようだったので悩みがあるなら相談に乗ることを告げるとその場を去った。

 

 

 こうしてイーニアの2年生としての1年目は幕を閉じた。

 

 

 




ロンが活躍!!そしてまさかのロックハートの活躍!!この展開は誰も予想できなかったはず!!

手が実体化してる、というのは映画を見直してハリーの杖をとってるところから思いつきました。ちなみにリドルがもっていたのはジニーの杖です。


最後駆け足になってしまいましたが、これにて秘密の部屋編は終了です。

誤字脱字などございましたら、遠慮なくご報告ください。
感想お待ちしています。


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アズカバンの囚人
吸魂鬼と学校の始まり


前回長く書いたのですごく短く感じます。


ではどうぞ。


 イーニアが秘密の部屋での戦いで感じたことは体力不足や反射神経がまだ遅いこと。それに有効となる魔法の知識が足りないことだった。不意打ちとは言え正面からの尻尾攻撃は避けれたはず。

 これらを痛感したイーニアは宿題を1日で終わらせ、残りの時間をトレーニングと魔法研究に熱を注いだ。今回の休みはアリシスが多くいてくれたので組手、魔法研究の手伝いをしてもらっていた。

 

 

 守護霊の呪文を攻撃に使えないかと研究していたある日。アリシスが家に訪れ、ハリーが魔法を使ったことを伝えらえる。

 

「ヤンチャするわね、彼。伯母さんを風船にしたそうよ。」

 

 どこから入手してきたのか写真を取り出しクスクスと笑うアリシス。イーニアも写真を見たが十分笑えるものだった。

 

「ま、お咎めは無しらしいわ。調べたらそりゃ怒ってもしょうがない内容だったそうよ。」

 

「へー。――で、本題はそれじゃないんでしょ?」

 

「ああ、ごめんごめん。新しい仕事が入ってね。イーニアの休み中に戻れなさそうなの。」

 

「それで、ハリーのいる漏れ鍋に行って来たらどうかってこと?」

 

「ええ。もちろん家に居ても構わないけど、1人でいるくらいなら友達と一緒にいたほうがいいでしょう?」

 

「そうだね。休みもあと一週間だし、行こうかな。」

 

 その言葉にアリシス満足そうに肯く。

 

「ああ、漏れ鍋に行くのは姿現わし使ってもいいわよ。私が許す!」

 

と去り際に残してアリシスは仕事へ向かった。

 この夏休み、空間系の魔法を重点的に研究していたイーニアにとって姿現わしは朝飯前の魔法だ。保護者の許可も下りたので荷造りを始めるイーニア。

 

 その日の夜。漏れ鍋がまだ営業している時間に荷造りを終えたイーニアは姿現わしを使い、漏れ鍋近くへ飛んだ。

 

「うん。問題なし。」

 

 無事飛べたことを確認すると漏れ鍋に入っていく。開いている部屋があるかどうかを聞くとちょうど一部屋開いており、そこの部屋を借りることにする。

 カウンターにいた50代くらいの魔女にハリーの所在を聞くと、2階の階段前の部屋に泊まっていることを教えてくれた。荷物を部屋に置いたイーニアは少し遅めの時間であったが、ハリーがいるはずの部屋の扉をノックする。

 

「どちらさまですか?」

 

「私だよ。ハリー。」

 

「イーニア!?」

 

 ドタドタっと音立てて扉を開けるハリー。

 

「こんばんわ。ハリー。」

 

「どうしてここに!?」

 

「色々話を聞いてね。入ってもいい?」

 

「う、うん。」

 

 ハリーに部屋に入れてもらい、椅子を出されるとそこに座る。

 

「伯母さんを風船にしたんだって?よくそんなこと思いついたね。」

 

「え”なんで知ってるの?」

 

 午前中の出来事をその日に情報を仕入れ、訪れたイーニアに驚くハリー。イーニアはそんな驚いた顔を見てクスクスと笑う。

 

「アリシスが教えてくれたの。どこから情報を持ってきてるかは知らないけどね。」

 

「君の伯母さんって何者?」

 

 驚きで口が閉じないハリーにイーニアは笑いながら"職業は探偵"と、だけ返した。

 

「ハリーは残りの夏休み、ここにいるんだよね?」

 

「うん、そのつもり。イーニアも?」

 

「せっかくだしね。準備も万端。いつでもホグワーツに行けます。」

 

 胸を張り、わざとらしく自慢げに言うとハリーはそれを見て笑い、つられてイーニアも笑った。

 

 それから2人は魔法の勉強や外へ買い物に出かけたりと残りの夏休みを満喫していた。

 休み最後の日にハーマイオニーが漏れ鍋にやってきて合流、夕方にはウィーズリー一家も来るとのことで明日は濡れ鍋からキングズ・クロス駅に行くことなっている。

 

 

* * *

 

 

 次の日、珍しく体調の良くなかったイーニアはキングズ・クロス駅に向かう最中もできる限り休みを取り、汽車に乗った後も毛布に包まり3人に休むことを告げ眠りについた。

 

 汽車の止まる音が聞こえ、目を覚ますと明かりが消えていた。気温も下がってきて息が白い。3人を見るととても不安そうな顔をしていた。汽車が揺れる。

 

「何かが乗り込んだ?」

 

 イーニアが目を覚ましたことに気が付いていなかった3人は少し驚きながらイーニアを見た。ハーマイオニーはイーニアに何か喋ろうとしたが、廊下になにかいることを察知したイーニアが口を塞ぐ。

 黒いマントとローブを身に着けたナニカが自分たちのいるコンパートメントの入り口の前で止まった。細い指を出し、開ける仕草をすると触れてもいない扉が開く。何かを吸われるような感覚、冷気、そして実体がないような存在。そこまで思考が行くとようやく目の前にいるのが吸魂鬼だということにイーニアは気が付いた。

 

エクスペクト・パトローナム(守護霊よ来たれ)。」

 

 イーニアが守護霊の呪文を唱えると狼が現れ、吸魂鬼に噛みついた。吸魂鬼は身を翻し、外へと出ていく。

 

「あれ1匹だけじゃないはず。全部追い払って。」

 

 イーニアが守護霊に告げると、狼は廊下を駆けていく。ロンやハーマイオニーは問題はなさそうだったが、ハリーは吸魂鬼の影響を受けたらしく、顔色が悪かった。

 明かりが戻り、狼がイーニアの元へと戻ると、それに続き1人の男性が入ってくる。

 

「この守護霊は君が出したのか。」

 

「貴方は?」

 

 男はリーマス・ルーピンと名乗り、今年度から闇の魔術に対する防衛術の教授を受け持つことを告げた。ルーピンは名乗ると、顔色の悪いハリーが視線に入ったらしくチョコレートを渡してくる。

 

「これを食べるといい。少し楽になる。」

 

 そういうと他の生徒も見てこなければと言い残し去って行った。ハリーがもらったチョコレートを食べると見てわかるくらい顔色が良くなっていた。

 汽車が動きだし、駅に着くと去年同様、セストラルのひく馬車で城へ向かう。

 大広間に着き、珍しく食事前にダンブルドアが話を始めた。

 

「御馳走を前に一つだけ話しておこう。

――ホグワーツ特急での一件で、皆もわかっていると思うが、今年度、ホグワーツは魔法省の要請でアズカバンの看守である吸魂鬼を受け入れることになった。もちろん、奴らに君たちとの接触は禁じた。

しかし奴らは入り口という入り口を塞いでおる。奴らの目を欺くことはできぬ。生半端な魔法も効かぬし、言い訳が通じる相手でもない。不審なことを行い、あの者たちが皆を襲う口実を与えるでないぞ。誰一人、吸魂鬼といざこざを起こすことのないよう気をつけるのじゃ。」

 

 ダンブルドアはそこのことを話し終えると空気を入れ替えるように口調を変え、新任の先生を紹介した。

 汽車であったリーマス・ルーピン。言っていた通り空席だった闇の魔術に対する防衛術の担当。そしてもう1人、シルバヌス・ケトルバーンの後任としてハグリッドが魔法生物飼育学の担当となった。イーニアたちは盛大な拍手をハグリッドに送る。そんなハグリッドは照れくさそうであったが、とても嬉しそうだった。食事後、直接ハグリッドにお祝いの言葉を送り、授業を楽しみにしていることを告げ、寮へと向かう。

 

 体調が万全でないイーニアはトレーニングやハーマイオニーたちとの会話もそこそこにベットに潜り込み眠りについた。

 

 

 




探偵って職業はなんでもわかるんだ。すごーい(棒読み
アリシスは今後、ちょくちょく関わらせるつもりです。具体的にはヴォなんとかさんが出てくるときとかに。

イーニアが体調が悪かったのは伏線でもなんでもなく、女の子だからです。
そんなときもあります。


そういえば新刊出ましたね。これを機に全巻買おうかと考えてたりします。


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私の笑顔と蜘蛛が嫌いな理由

長文になりました。あと結構おかしいかもしれません。ご指摘ください。


ではどうぞ。


「あ、そっち川だ―――。」

 

「きゃーー!!」

 

「だから言ったのに!!」

 

「えへへ。びしょびしょになっちゃった。」

 

「相変わらず不注意なんだから。」

 

「ごめんごめん。――でも家に1人でいるより楽しいでしょ?」

 

「――うん。――ぁりがと。」

 

「ふふ。いい笑顔。――どういたしまして。」

 

 イーニアは少女に照れくさそうにお礼を言った。

 

 

―――――――――――

 

 

 

 朝、いつも通り早めに起きたイーニアは昨日より体調が良かったので運動するため外に出る。空を見上げると、はるか上空に黒い点が見えた。恐らく吸魂鬼だ。そもそもなぜ、吸魂鬼がホグワーツにいるのか。

 ダンブルドアはあえてその話題に触れなかったが原因は一つ。

 アズカバンの要塞監獄の囚人中、最も凶悪といわれるシリウス・ブラックがアズカバンを脱走した。そしてハリーを狙っているらしい。吸魂鬼の配置はハリーを守るため、と言うわけなのだがこれでは安全なホグワーツとは言えないだろう。

 今回の対応に少し不満を覚えつつ、イーニアはノーバートに会いに向かった。ハグリッドの話だと、ここ数か月でさらに成長したので外に小屋を作ってそこにいるとの話だった。

 ハグリッドの小屋に着くと夏休み前にはなかった小屋ができており、ノーバートが顔を出していた。

 

「ノーバート!」

 

 イーニアが声をかけるとノーバートは起き上がり飛びついてきた。

 ノーバートは前あった時の、大きめの小型犬サイズから大きめの大型犬サイズに成長していたのでイーニアは思わず避けた。抱き留めてもらえると思っていたのか地面に墜落するノーバート。

 

「ごめんね。もう飛びついて来られたら受け止めきれないや。」

 

 少し落ち込んだような顔をするノーバートを撫でるイーニア。身体強化魔法を使えば受け止められるかもしれないが、並ぶとイーニアより大きくなっている。

 イーニアは女性らしい個所は成長したが身長はあまり伸びなかった。少し負けた気持ちになるイーニア。眉間にしわを寄せ、不貞腐れつつもノーバートと遊び、寮へと戻った。

 

 

―――――――――――

 

 

「ノーバート、私より大きくなってるの。」

 

 朝食をハリーたちと食べているイーニアが突然言う。ハリーたちは突然の話題に思考が止まったが、いち早く思考を戻したロンは背中に乗れるのもすぐだな、と喜んでいたり、ハリーも早くに会いに行きたいと楽しみにしていた。イーニアは、ノーバートが自分より成長していることを愚痴として言いたかったのだが見事に話題が逸れてしまい、頬を膨らませハーマイオニーがそれを慰めていた。

 

 授業が始まると古代ルーン文字学に行ったはずのハーマイオニーが占い学にいた。イーニアが時間割を覗いたら全科目を取ろうとしていることに気が付く。話を聞くと逆転時計という道具をマクゴナガルから渡されたらしい。なんでも全科目取りたい人のために貸し出していて時間を巻き戻すことができるらしい。過去に戻るというかなり大規模な魔法に少し疑問を抱いたイーニアだったがハーマイオニーに無理しないようにと告げるとハリーたちには秘密にするように言われた。

 占い学でハリーがグリムに取り付いてるなどと言われたりイーニアは困難が待ち受けてると言われたりしていると、占い学は曖昧なもので馬鹿馬鹿しいとハーマイオニーは怒っていた。

 

 次の授業はスリザリンと合同の魔法生物飼育学。ハグリッドがどのような授業を行うのかとても気になっていたイーニア。小屋の前に行くとせっかくだからノーバートも連れてくることを進められ、連れて森に入っていく。

 皆、一度はノーバートを見ているが頻繁に会いに来ているわけではないので大きくなっていることに驚いていた。ノーバートも皆に触られることを嫌がらなかったのでイーニアはそのままにしていた。そして奥に進むとノーバートより大きなペガサスとは違う羽のついた馬のような生物がハグリッドの隣にいた。

 

「こいつはヒッポグリフちゅー生き物だ。名前はバックビーク。どうだ、美しかろう?

――先に注意しておくが、こいつらはとても誇り高く怒りっぽい。決して侮辱しちゃいかんぞ。」

 

 ハグリッドがそう説明すると触ってみたいかと聞いてきた。皆、後ろに下がったがノーバートとじゃれていたイーニアは皆が下がったことに気が付かず、1人取り残される。ハグリッドはイーニアを指名し、前にでた。

 

「バックビークはノーバートより大きいけど、ドラゴンのほうが危険なはずなのになんで皆嫌がるかなぁ。」

 

 イーニアがため息をつきながらそんなことを言うとハグリッドは苦笑いしていた。

 

「そこくらいでいい。お辞儀を―――。」

 

 近づいたイーニアに止まるように言った後、お辞儀をするように指示するとイーニアがお辞儀をする前にのバックビークがお辞儀をした。思わずハグリッドを見る。

 

「これ、どういうこと?」

 

「ノーバートの時といい、お前さんには動物に何か思わせるものがあるみてぇだな。興奮しているわけじゃないから近づいてもいいぞ。」

 

 ハグリッドが不思議なこともあるもんだと肯いているのを横目にイーニアはバックビークに近づき、触る。撫でられるとバックビークは気持ちよさそうに目を細め、擦り寄ってくる。その後、背中に乗せてもらい大空を飛んだ。

 戻ってくるとノーバートが少し拗ねている感じだったので"もう少し大きくなったら乗せね"と言うと機嫌を戻した。イーニアがすんなりと物事を進めたので皆のバックビークへの距離が近づく。順番にお辞儀をし、触ったり乗せてもらったりする。

 気が緩み、皆楽しそうな顔をしている。それが気に食わなかったのかスリザリン生の数人がどかどかとバックビークに近づいた。イーニアの耳に誰かの制止する声が届く。振り返るとバックビークが前足を上げ、襲い掛かろうとしていた。

 

コールイン・エクス(座標交換)!!」

 

 イーニアは咄嗟に自分とスリザリンの生徒たちの位置が入れ替え、バックビークの前に出る。振り上げられた前足を躱し、落ち着くようにバックビークに近づくと興奮が収まっていなく腕を噛まれるイーニア。直前に身体強化と硬化魔法をかけたので深く入ってはいないが鈍い痛みが襲う。

 

「うぐぅ…――。」

 

 痛みを我慢しつつ噛まれている右腕を見たイーニアは一瞬、別の光景が写った。もっと深く食われている…そこまで思考がいったとこで、ノーバートがバックビークに体当たりして、思考が止まる。

 体当たりされたバックビークは怯み、落ち着きを取り戻したようだった。それを確認するとノーバートはイーニアに近づく。ハグリッドたちも近づき怪我の心配をした。腕からは血が垂れていた。

 

「イーニア!!大丈夫!!?」

 

 いち早く近づいたハーマイオニーが怪我を見る。

 

「―――――あ、うん。見た目よりはひどくないと思うよ。ちゃんと防御したし。」

 

「大丈夫って…貴女、顔真っ青よ。」

 

 皆に心配されつつも、いつもより反応が薄いイーニア。"医務室行くね"と告げるとハグリッドが授業をやめ、一緒に向かった。

 

 

「すまねぇ。バックビークが…。」

 

「――ハグリッドのせいじゃないよ。彼らがいけないの。事前に注意はしてあったし、他の皆はそれを守ってたんだから。」

 

 そう言いつつも表情の薄いイーニアに少しハグリッドは困っていた。治療してもらい、ほぼ傷が塞がったので、そのまま次の授業へイーニアは向かった。

 

 

 選択授業を一つ挟み、闇の魔術に対する防衛術の授業。さっきとは違い、いつも通りの顔をしているイーニアにハリーたちは安堵した。

 

「みんな、教科書をしまってくれ。杖があればいい。」

 

 教室に入ったそうそうそんなことを言うルーピン。机を端に寄せ洋服タンスを一つ持ってくる。中には何か入っているらしくガタガタと揺れていた。

 

「みんな、初めまして。リーマス・ルーピンだ。今年度から闇の魔術に対する防衛術を担当させてもらう。

――今日はいきなりだが実習をすることにしよう。この中にはまね妖怪、ボガートがいる。特徴を言える人は?」

 

 ハーマイオニーが素早く手を上げ指名される。

 

「形態模写妖怪です。私たちが一番怖いと思うものに姿を変えることが出来ます。」

 

「すばらしい。

――だから、この中にいるボガートはまだ何の姿にもなっていない。しかしここから出せば、たちまち近くにいる人間の恐怖とするものへ姿を変える。

ボガートの対処法は二つ。一つは多人数でいること。これは誰の恐怖を読み取っていいかわからず、ぐちゃぐちゃになってしまう。そしてもう一つがボガートを退散させる呪文、リディクラス、ばかばかしい、だ。笑いの力で退散できる。では、言ってみよう。――リディクラス(ばかばかしい)!!」

 

「「「「「リディクラス(ばかばかしい)!!」」」」」

 

「いいね。でもそれだけじゃ駄目なんだ。恐怖を笑いに変えられるようにしなければいけない。――ネビルおいで。」

 

 ルーピンはネビルを呼ぶと一番怖いものは何かと聞く。するとネビルはスネイプ先生と答え、教室が笑いに包まれる。

 

「スネイプ先生か。――ネビル、君はおばあさんと一緒に暮らしていたね。」

 

「え、はい。でもおばあちゃんに変身されるのも嫌です。」

 

「そういう意味じゃないよ、ネビル。」

 

 ルーピンは微笑むとネビルに耳打ちをすると洋服タンスの前まで送り出した。タンスの扉が開き、セブルス・スネイプが登場する。低くねっとりとした声を出しながら歩いてくるスネイプにネビルは杖を振った。

 

リ、リディクラス(ばかばかしい)!」

 

 するとスネイプは緑色のドレスにハゲタカのついた帽子、手には大きな赤いハンドバッグをもった格好になった。教室中が爆笑の渦に飲まれる。

 

「はははは!!―――いいね!最高だ!!――よーし!一列に並んで!!」

 

 ルーピンはレコードで音楽を流し始める。一列に並ぶと皆、次々と面白いものに変えていく。

 そしてイーニアの番。イーニアは恐らく蜘蛛が出てくるのだろうと覚悟していた。

しかし蜘蛛に変化せず、大きなローブを着た顔の見えない男に変わった。吸魂鬼ではない。男はバスケットボールサイズの繭を懐から出す。

 

 繭が割れ、そこから蜘蛛がたくさん出てくる。イーニアは杖を左から右に思いっきり振った。

 

トルナ(断ち切れ)!!」

 

 男や蜘蛛は霧散し消えていく。震える手を下し、後ろを振り向くとハリーたちが動かない。イーニアが疑問思った瞬間、後ろでべっちゃという音が聞こえる。振り向くとルーピンが胴から切れて落ちていた。顔を戻すとハリーたちも次々と崩れ落ちていく。そして中から蜘蛛が出てき、イーニアに一直線で向かってくる。追い詰められ、イーニアは教室の壁に背中を当てるとそのまま座り込んでしまう。

 

「い、いや。こないで…。」

 

 それに対し蜘蛛たちは反応するわけもなくどんどんと近寄ってくる。魔法を使って追い払おうとするが魔法が出ず、手が空振る。気が付くと右腕に自分の手のひらと同じサイズの蜘蛛が乗っており噛みついてきた。さらにパニックを起こす。次々と蜘蛛が群がりイーニアのあちこちを食べ始める。

 

「ごめんな  。食べ、な、いで!!い、や!!やめ、て!!い あああああああああ――――――――――。」

 

 蜘蛛の顔の部分には覚えのある人の顔があった。

 

 

 

 

 イーニアが気が付くと医務室のベットに寝かされていた。右腕や体のあちこちを触るが異常はない。"夢――?"と考えているとルーピンがカーテンを開け、顔を覗かせた。

 

「ああ、よかった目が覚めたんだね。」

 

「先生、私どうなったんですか?」

 

「倒れたんだ、君は。ボガートがフードの被った男に変わった直後にね。」

 

「………そう…ですか。」

 

「本当にすまない。君みたいに心的外傷(トラウマ)を抱えている子のことを考えていなかった。」

 

 頭を下げるルーピンに少し目を細めながら聞く。

 

「先生は、私の、…事件のことを知ってるんですか?」

 

「事件のことは知ってる。――ただそれは世間で知っているレベルの話であって君が被害者だということも知らなかった。」

 

「………なら先生に非はありません。知らなかったなら仕方ないです。次からは気をつけてもらえれば。」

 

 知っていると言われ、少し体が動いたイーニアだったが表情は変えずにそう告げた。

 

 次の日、普通に授業に出たイーニアは授業中に魔法が使えないことに気が付く。どんなに簡単なものでも唱えることができず、マクゴナガルに相談すると倒れた後で精神的に疲れて使えないのでは、と言っていた。一時的なものなので先生方には話をしておくのでゆっくり休むように言われた。皆、魔法が使えないイーニアを心配したが、大丈夫、と笑顔で返した。

 

 

* * *

 

 

 そのまま、イーニアが魔法を使えるようになることはなく、ハロウィンの日。

 アリシスからホグズミード村に行く許可貰っていたが体調が悪いので参加しないことをマクゴナガルに告げた。実際、体調は悪くはない。むしろ健康そのもの。少し食事の量は減っているが、運動はいつも通り行ってるし睡眠もちゃんと取っている。ただ、魔法が使えない。いくら今まで通りに取り繕っても、今まで通りにできてないのはイーニアはよくわかっていた。寮には戻らず、ノーバートに会いに行き、そのまま連れて散歩する。湖近くまで来るとベンチに座り足を抱えると、膝に顔を埋める。

 

 足音が聞こえ、顔を上げるとそこにはドラコを先頭にハリー、ロン、ハーマイオニーがいた。驚いたイーニアは声が裏返る。

 

「み、皆どうしたの?ホグズミードは?」

 

「ぼくも含め、君が心配で来たんだ。」

 

 真面目な顔で言うドラコに一生懸命笑顔を作り答えるイーニア。

 

「し、心配って大丈夫って言ってるじゃない。」

 

「作り笑いしてるやつが大丈夫なもんか。」

 

「ッ!!!」

 

 指摘され顔を再び膝に埋める。ハーマイオニーが近づき隣に座ると抱きしめながら囁いてくる。

 

「ねぇ、イーニア。1年生の時、トイレで泣いてた私に貴女はこう言ってくれたわ。

痛みが分かってあげられるわけじゃないけど、でも1人は余計に悲しくなるし、お腹が空くともっとつらくなるんだよ。

――私は痛みや悲しみを取ってあげられるわけじゃないけどこれ以上増やすことを防ぐお手伝いはできるんじゃないかな?って

私じゃその手伝いはできないかしら?」

 

 ハーマイオニーが抱きしめていたイーニアの体が震える。

 

「私じゃだめなら他の人でもいいわ。ハリーもドラコもロンも、皆、貴女を心配している。」

 

「そうだよ。フレッドとジョージなんて悪いことしたんじゃないかって心配でうろうろしてた。」

 

「ドラコもこっちチラチラ見てたよね。」

 

「ハリー!ぼくのことはどうでも――。」

 

 ロンが少し笑った風に言うとハリーもそれに続き、自分の内容だったドラコが慌てる。

 

「――悲しみや痛みを増やさない手伝いはできない?」

 

 ハーマイオニーがもう一度言うとイーニアは顔を埋めたまま、首を横に振った。

 ハリーはハーマイオニーの反対側に座り、ロンとドラコはノーバートと共に地面に座った。何も言わずただイーニアのそばにいる。ぽつぽつとイーニアは語りだした。

 

「両親を亡くして、大人たちには大丈夫っていったけれど、両親の死から時間が経つにつれて私は塞ぎ込む時間が多くなってた。アリシスは多く居ても一週間に3、4日。いないときは1日しかいなかったから余計に増えた。そのせいか近所にいた友達とも疎遠になっちゃってね。運動以外では外に出てない日々が続いてた。

 そんなのが1ヶ月続いてたある日に、3歳年上のお姉さんが私を外に連れ出したの。名前はナイ。ずっと家に居たらカビが生えるって言って。もちろんその人とは遊んだことはあったけど、そこまで親しかったかって言われるとわからない。なんで私を連れだしたのかわからないけど塞ぎ込んでた私を外に出してくれた。

天然で足元がいつもお留守で、年上なのに私より頭が悪くて。でも私に笑顔をくれた、笑い方を思い出させてくれた大切な人。」

 

 一呼吸置くイーニア。ハリーたちは何も言わない。

 

「マグルの人だったんだけど、私の面倒を見てくれて、泊りにも行かせてもらった。笑顔が増えたって、アリシスも言ってくれて、私も塞ぎ込む時間が減った。

 でも、そう長くは続かなかった。3か月した頃、その日もナイの家に泊りに行ってた。目が覚めると蜘蛛の糸で体が縛られていて、いつも見ていた家は蜘蛛の糸だらけになっていて見る影もなかった。蜘蛛がそこらじゅうにいて私を監視してた。隣にはナイが居て大丈夫、大丈夫ってずっと励ましてくれてた。

 男が部屋に入ってきたのは目が覚めて、そう時間が経たないうちだった。フードをかぶって顔が見えない男は大中小様々なサイズの蜘蛛を連れていた。後ろには蜘蛛たちが何かを食べているようで何かが動いていた。

 私たちはこんなことをする理由と解放してほしいことを訴えたけど反応は何もなかった。男は何もしないでじっと私たちを見てた。目的はわからないけど今すぐ何かをしてくるって気配じゃなかったから私たちに少し余裕ができた。私はその時から魔法を使えたから魔法で糸切って逃げようって考えてた。

 でも……でも、ナイが両親はどうしているかって、無事かって聞いたら………男は…蜘蛛に何か言う…と蜘蛛がナイの両親を運んできたの。もう…人間としての…形もなくて…頭を見れは何とかわかる…状態まで食われてた。」

 

 イーニアは呼吸が荒くなり汗を大量にかきはじめる。顔面蒼白で異常な状態だったがハリーやハーマイオニーが手を握ると握り返した。

 

「ナイも私もパニック、を起こして、騒ぎ出…したんだけど男はそれに対して何もしなかった。

 でもナイの両親の身体が食べつくされるとナイを縛っていた蜘蛛の糸を切って、部屋の真ん中、に倒した。そ…こか…らは、一瞬だ…った。そこ…いた蜘蛛が、ナイの身体を、たべ、つくし、て、ナイ…叫び声が、響いて、私…何もできなくて。」

 

 そこまで語るとイーニアは顔を埋めてしまった。ハーマイオニーが再び抱きしめる。抱きしめ返すようにイーニアもハーマイオニーの背中に手を回す。そしてそのまま続きを語り始めた。

 

「ナイの身体が、食べつくされて、…次は私の番って、蜘蛛の糸を、切られて…―――右手を食べられた。全部じゃ、ないけど。治せる、だったけど、体が食べられたあの時の、感じ…が。」

 

 忘れていない、そう言うつもりだったのだろう。想像を絶する内容に皆、唾を呑み込んだ。

 

「でも、イーニアは逃げ切ったんだよね?」

 

「…食べられたときに頭が真っ白、になって覚えてない、けど、たぶん魔法を使ったんだと思う。わかってるのは火に包まれつつも火傷もしてない、私が見つかったってこと。」

 

 イーニアが顔を上げる。あまり顔色は良くない。

 

「あの時の、恐怖で、今私は魔法が使えない。使おうとすると、使えなかったあの時を思い出して手が震える。使わなきゃあの時助からなかったのに、今の私は何もできない。」

 

 別の何かにも怯えているようなそんな顔をするイーニアにハーマイオニーは顔を近づけて言った。

 

「…イーニア。私は別に貴女がすごい魔女だから友達やってるわけじゃないのよ?――私はイーニア・シュツベルって人間が好きだから友達なの。」

 

 その言葉にハリーたちも肯く。

 

「確かに貴女はすばらしい魔女よ。学年1位の私が保証するわ。

――でもね。頑張らなくてもいいの。イーニアが馬鹿になったって魔法使えなくたって友達よ?もちろん間違ったところは正すけどね。」

 

ボロボロっと涙を零しはじめた。

 

「事件のこと、とてもつらいわ。今でもそれに苦しんで、悩んでる。きっとイーニアは自分のせいで、助けられなかった自分を恨んでるって思ってるのね。

 でもそんなことないと私は思う。貴女から語られるナイはとても温かい感じがしたしイーニアの笑顔をくれたのはナイなのでしょう?そんな温かい人間は恨むなんてことをしないわよ。むしろ心配してるんじゃないかしら。今のイーニアが心から笑ってないって。」

 

 強く強くハーマイオニーを抱きしめる。ハーマイオニーにそれに返し、ハリーやロン、ドラコも抱きつき、お団子状態になってしまったが強く強く抱きしめた。

 

「イーニアの笑顔、すごく好きだよ。見ると心があったかくなるんだ。――強くなくたって大丈夫。何かあったら僕らが守るよ。イーニアがそうしてくれたように。」

 

「そうだよ。ぼくらだっていつまでも女の子に守られているようじゃ不甲斐無いからね!」

 

「イーニア、もっと頼れ。」

 

 ぐちゃぐちゃだが手だけはしっかり5人で握った。ドラコがハーマイオニーに"照れないでしっかり握って!"などと言われたりしながら、イーニアは少し前に進めた気がした。

 

 

 

 




長文お疲れ様です。

今回はイーニアの蜘蛛嫌いの理由を書きました。
襲われた蜘蛛は怖いし嫌いだけど、それ以上に友人を失ったのがつらい。
そんなイーニアを描写したつもりです。


今回、恐怖で魔法が使えなくなったのに、アラゴグの時にはなぜ魔法が使えたか、ですが、蜘蛛はトラウマを刺激するキーの一つでしかなく、本当に恐れているのはその時の記憶だからです。そのためボガートも記憶を再現するため男に変身しました。


ちなみにイーニアはまだ魔法は使えません。


コールイン・エクス
空間魔法。モノや人の場所を入れ替えることができる。

クリンゴ
硬化魔法。対象を固くする魔法。

トルナ
斬撃を飛ばす魔法。縦や横に杖を振った形で斬撃が飛ぶ。




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【外伝】 ある男の苦労

イーニアもハリーも出てきません。


短いですがどうぞ。


 

 ドラコが廊下を歩いているとクラスメイトたちの話声がする。

 

「だ  ルシウス   ば。」

 

「こ  で、あいつも    」

 

 自分の父親の名前がクラスメイトの会話から聞こえたのでドラコは会話に入っていった。

 

「父上がどうかしたか?」

 

「ッ!!――マルフォイ。そうだ、君からも君のお父上に言ってくれよ。」

 

「何を?」

 

「あのウドの木がやったことさ!!危険な生物を使い!!生徒を怪我させたとね!!」

 

「ハグリッドの授業のことか?」

 

「ああ。あんな奴、教師であっちゃいけない。追放するために話をしてくれ。」

 

「怪我をしたのはイーニアだが、それを君たちが言うのか。」

 

「そうだ。誰も言わないから代わりに僕たちが言うんだ。問題だということを。」

 

 ドラコは口元に手を当て考える。

 

「そうか。――伝えても構わないがどう問題だったか教えてくれ。」

 

「は?」

 

 男子生徒は何を言っているか理解できていないようだった。

 

「彼の授業のどこに問題があったかを聞いているんだ。

――ハグリッドはバックビークを連れてきた際に事前にやってはいけないことを伝えた。皆、それを守ってバックビークに触れたりしていたわけだが。

――お前たちはそれを守らず、バックビークを刺激した。ハグリッドの落ち度はどこだ?」

 

「そもそも危険な生物を授業に連れて来ること自体が――。」

 

「そんなことを言ったらスネイプ先生の魔法薬学の授業も十分危険なものだが?あれは調合を間違えれば人が死ぬぞ。」

 

「それはそんな馬鹿なことをした奴が問題――。」

 

「ならばハグリッドの件も事前に注意されていたことを守らなかったお前たちが問題じゃないのか?それともホグワーツの授業のほとんどを否定するつもりか?」

 

「うぐッ…」

 

 反論できなくなり黙る男子生徒たち。ドラコは軽くため息を吐くとその場を去った。

 ドラコはあのように粗捜しのようなことが行われているのは知っていた。そしてそれが父親の耳に入ることも。去年のことといい、ずいぶんと無茶をする。そこまでしてダンブルドアやその周りにいる人間を排除したいようだった。

 また、ため息が出る。自分を介さずクラスメイトを使役している。これがどういう意味か分からないドラコではない。父親、ルシウスの考えに同調する純血は大人子供問わず多い。小数派である自分の考えはいつかは潰されてしまうかもしれない。

 幸い、自分に同調してくれる仲間はクラスにもいるが、今後を考えると彼らも事も踏まえて考えておくべきだろう。

 

「最悪の可能性を考えておかないとな…。」

 

 思わず口からでたその呟きは誰にも聞かれることなく消えていった。

 

 

 

 




今後の自分と仲間のことを考えるドラコでした。




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私の想いと笑顔

短めですが区切りがよかったので。


では、どうぞ。


 

 

 泣きつかれたイーニアは、そのままハーマイオニーに寄りかかって寝てしまい、起きたのは日が暮れはじめてからだった。起きるとドラコは居らずイーニアが寝てから寮に戻ったという。

 

「ごめん。ハーマイオニー。寄りかかったまま寝ちゃって。」

 

「大丈夫よ。つらい体勢じゃなかったわ。」

 

 イーニアが謝るとハーマイオニーは笑顔でそう返した。

 ノーバートを小屋に戻すと大広間でパーティーに参加し、寮へと戻ろうと階段を上っていくと太った婦人の前で人だかりができていた。

 

「どうしたの?」

 

 前にいたクラスメイトに事情を聞くと太った婦人の絵はめった切りにされ、婦人がいないらしい。それを聞き驚いていると後ろからダンブルドアがやってくる。ダンブルドアは夫人を探すように言う。すると婦人は5階の風景画にいた。ダンブルドアに犯人を聞くとシリウス・ブラックがやったと言う。その名前を聞いたイーニアはその存在を思い出した。

 

「周り見えてなかったな…。」

 

 ぼそっと呟いたイーニアの言葉は生徒たちの騒ぎ声でかき消された。その日は全校生徒、大広間で寝ることになった。眠くなかったイーニアは生徒たちを守るために座っていたマクゴナガルと今日あったことを話しつつ、まだ魔法を使うことができないことを報告すると寝れるかわからないが横になった。

 その日、総力を挙げてシリウス・ブラックを探したが見つかることはなかった。

 

 

 シリウス・ブラック侵入騒動が少し落ち着いた頃、ルーピンの授業にスネイプが現れた。

 

「ルーピン先生は体調を崩されたので、吾輩が授業をする。――286ページを開きたまえ。」

 

 その後、スネイプは人狼について授業を行った。

 

「人狼はその姿となると理性はなく見るものすべてを襲う。魔法が効きづらく失神呪文などまず効くことはない。奴らを殺すには人から狼になる瞬間が適している。満月を見ても変わるのに時間がかかる。その隙を狙い心臓を打ち抜くのだ。狼となったらまず、殺すのは難しいだろう。奴らは人の何倍もの力を持つ。もう一度言う。奴らに理性はない。狼になる前に殺すのだ。」

 

 人狼の特性、危険性、対処法、まるで人狼が嫌いと言わんばかりの言い方で、殺し方を説明されたときは、皆引いた。

 

 

* * *

 

 

 月日が流れ、豪雨の中のハッフルパフとのクィディッチ。雨風だけではなく、雷もすごいというのに試合を行うという。イーニアは皆頭がおかしいんじゃないかと思ったりしていた。それでもイーニアはハーマイオニーたちと一生懸命声援を送る。ハリーたちはスニッチを見つけたらしく、上空へ上がっていき雲の中へと入っていった。どうなっているかは見えない。

 

 突然、汽車の時に感じた寒気が襲ってきた。吸魂鬼が来た、そう直感でわかった。上空を見上げるとハリーが落下してきている。それを追うように吸魂鬼が何十体も降りてきた。会場の声援が悲鳴に変わる。イーニアは守護霊の呪文を唱えようと杖を取り出したが、魔法がまだ使えないことを思い出す。

 落下するハリーがゆっくりに見える。落下しているハリーを助け、吸魂鬼を追い払わなければいけない。しかし手が震える。記憶が頭を占める。

 

――それでも――。

 

「――後悔したくないから!!――失いたくないから!!…だから!!だから!!力を貸して!!――ナイ!!」

 

 大切な友人を助けるため、亡き友人の名前を叫ぶイーニア。

 

エクスペクト・パトローナム(守護霊よ来たれ)!!!!!!」

 

 イーニアの杖が強く輝き、狼が現れた。狼は落下するハリーを背中にうまく乗せ、地上に下ろすと次々と吸魂鬼を撃退していく。最終的に100体以上いた吸魂鬼は1体残らず撃退された。吸魂鬼がいないのを確認すると狼が消え、イーニアはペタンと座り込んでしまう。

 手も足も何もかも震えている。泣きそうな顔をしつつ、隣にいるロンとハーマイオニーを見る。

 

「よかった……できた。できたよ。……魔法ちゃんと使えた。」

 

 体が震えで動かないイーニアを抱きしめるハーマイオニー。イーニアの体の震えが止まるとハーマイオニーの手を借りて立ち上がりハリーの様子を見に向かった。

 

 

 ハリーを見に行くと付き添っていたマクゴナガルに"魔法、使えるようになりましたね"と笑顔で言われた後、頭を撫でられた。ハリーは命に別状はないらしい。気絶して寝ているハリーに近づく3人。手を握ると握り返してきた。

 

「ハリー?」

 

「……見てたよ、君が魔法、使うところ。」

 

「うん。できたよ。」

 

 微笑むハリーはそのまま起き上がる。

 

「大丈夫?」

 

「うん、問題ないよ。」

 

 ハーマイオニーがハリーに聞くとしっかりと返事をするハリー。そこにフレッドとジョージがやってきた。

 

「お、起きたかハリー。気分はどうだ?」

 

「サイコ―だよ。」

 

「最高なところ悪いが残念な話がある。」

 

「君の箒だが…。」

 

「「暴れ柳に当たって壊れた。」」

 

 声を揃えて言い、折れた箒を見せる。ハリーはそれを受け取り、触ると少し悲しそうな顔をしたが、仕方ないか、という顔に変わった。

 

「あまり落ち込まないんだな。」

 

「うん。確かに残念だし、ウッドには申し訳ないけど、今はそれよりうれしいことがあったから。」

 

 ハリーはそういうとイーニアを見る。皆の視線が集まり少し困るイーニア。

 

「そういえばそうだな。」

 

「ああ、我らの姫の完全復活だ!」

 

「ちょっとまって。私を姫なんて呼んでるの?」

 

「今考えた。」

 

「それとも大将の方がいいか?」

 

「もっと嫌。」

 

 医務室に笑いが起きる。イーニアもつられて笑う。

 

「やっと、ちゃんと笑ったね。」

 

 ハリーの言葉に首を傾げるイーニア。

 

「話を聞いた日から作り笑いはやめてたけど、やっぱりちゃんと笑えてなかったから。」

 

「そうだな、突っ込みのキレもいまいちだった。」

 

「そうそう。心ここ在らずって感じだったし。」

 

「そう…かな?でも――そうだったなら皆のおかげだよ。魔法が使えたのも、笑顔になれたのも皆が居てくれたから。皆が居るから勇気が持てるの。」

 

 イーニアはそういうとハリーたちが初めて見る最大の笑顔で笑った。

 その笑顔に男女問わず見とれ、そして笑い合う。マダム・ポンフリーに怒られるまで皆で笑う。そんな笑い声の中

 

 

――いい笑顔。

 

 

 イーニアの耳には、確かにそう聞こえていた。

 

 

 

 

 




イーニア、完全復活!!

事が起きた次の話で魔法が使えるようになるのはちょっと展開早いかなっと思いましたが物語的には結構時間が経っているのでよしとしました。


やっとシリウスの話が出たと思ったらまた、存在が消えそうです(汗


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忍び地図とクィディッチ

ほのぼのとした感じ。


ではどうぞ。


 

 

 イーニアが魔法を使えるようになったことはクラスメイトだけではなく多くの人が祝ってくれた。イーニアはそれだけ周りに心配されていたことを再認識する。夕食はちょっとしたパーティーになって皆で楽しく食事をした。

 それを見ていたセルが蜘蛛をイーニアの前に出した。もちろん本物ではないが、アラゴグサイズの大きなものだった。

 

「ひゃぃ!!」

 

 イーニアがそれを見て怯み、椅子から落ちたのを見てセルは大笑いしていたが、それを見たハリーやロン、他、多くの生徒が席から立ち上がる。学年クラス問わずにセルを取り囲み、マクゴナガルが止めに入るまで縛りあげていた。ハーマイオニーは魔法で変身した蜘蛛を排除し、イーニアに手を貸す。

 

「大丈夫?――まったく、どうしてあんなことするのかしら。」

 

「う、うん。びっくりしただけだから。椅子から落ちた後に本物じゃないってわかったし。」

 

 手を借りて起き上がったイーニアは付いた埃を払う。縛り上げから戻ってきたハリーたちが席に座る。何故かやられた本人より怒っていた。

 

「ハリー、ロンも。私、大丈夫だから。そんなに怒らないで。」

 

 怒りすぎてイーニアが宥める始末だった。

 

 

 

―――――――――

 

 

 

「「イーニア!!」」

 

「どうかした?」

 

 授業が終わり、珍しく1人で寮へと戻っていると後ろからフレッドとジョージが話しかけてきた。

 

「なんだなんだ。」

 

「用がなければ話しかけちゃいけないのか?」

 

「そんなことはないけど…基本的に何かあるときじゃない。声かけるの。」

 

 教科書を胸に抱えたイーニアは少し意地の悪い返しに、ため息を吐いて返す。フレッドが"用事はあるんだけどな"と付け加えるとやっぱりと言う顔でイーニアは2人を見た。

 

「「これを君にあげよう!!」」

 

 2人は羊皮紙をイーニアに渡す。受け取り捲ると何も書かれていない。

 

「これは?」

 

「いいものさ!!」

 

「そう、とてもいいものだ!!」

 

 首を傾げるイーニア。フレッドが杖を構え羊皮紙に当てる。

 

「われ、ここに誓う。われ、よからぬことをたくらむ者なり。」

 

 すると羊皮紙に地図が浮かび上がって来る。しかも人の名前が書いてあり、それに連動するように足跡が動いている。

 

「なに、これ。」

 

 思わず言葉を失うイーニア。

 

「俺たちが1年の時にフィルチの部屋からくすねてきた【忍びの地図】だ。」

 

「こいつを使えばどこに誰がいるか一目瞭然、隠し通路もわかる。」

 

「なんで私に?」

 

「復活祝いさ。」

 

「それに俺たちには必要ない。」

 

 そういうと二つ、羊皮紙を取り出した。

 

「複製したの?」

 

「おう。こいつを解析するのに3年、複製に2年もかかったけどな。」

 

「もう一つはハリーに渡そうと思ってる。」

 

「そっか。…くれるなら貰っておくよ。何かに使えるかもしれないし。」

 

「おう、うまく使ってくれ。」

 

「ちなみに閉じる方法は いたずら完了! だ。」

 

 地図が消えてただの羊皮紙に戻っていく。皆には秘密にしとけよ、と告げると2人は去って行った。

 

 

 

* * *

 

 

 クリスマス休暇をアリシスと過ごしたイーニア。

学校であったことを話すとルーピンをヤリに行くと言い出したり、抱きついて放してくれなかったり。ちょっとだけに前に進めたことを話すとアリシスも思っていたことを話してくれた。

 事件後、アリシスを心配させないように頑張って取り繕ったのは知っており、アリシス自身その状態を放っておいたことを後悔していたこと。あれから何年もたち笑顔が戻り、ハリーたちの出会いでさらに笑うようになったこと。

 

「ごめんなさい。貴女のことをもっと見てあげなきゃいけないのに…結局私はイーニアに甘えてるわね。」

 

「大丈夫だよ?確かに辛かったけど、今は皆のおかげで勇気が持てるもん。あんまり自分を責めないで?」

 

 謝るアリシスに大丈夫だと告げるイーニア。

 イーニアはアリシスがどうしても外せない仕事があることを知っている。それはとても大切なことだと言うことも。だからイーニアはアリシスを責めるようなことはしない。むしろ、そんな忙しい中、暇を見つけてイーニアのことを見てくれている。それは間違いなくイーニアの支えであった。

 

 

――――――――

 

 

 クリスマス休暇が終わり、学校の箒を借りて試合に出ていたハリーにのもとにファイアボルトが送られてきた。差出人は不明。ハリーやロンはそれを見て浮かれたが、あまりにも不自然だったのでマクゴナガルのもとへ持っていき、調べてもらうことにした。

 

「調べてもらってからでも遅くないでしょ。ほら、行く。」

 

 少しでいいから飛びたいと主張するハリーの背中を押し、マクゴナガルのもとへ連れて行く。調査の結果、細工は一切されておらず、使っても問題ないと許可が下りた。許可が下りるとハリーは練習に向かった。

 

 その後、ハリーは手に入れた箒で次々と試合に勝っていった。しかしスリザリンも負けておらず勝ち点は同じに並ぶ。そして最終試合。優勝を賭けた試合でイーニアは何故か実況席にいた。

 

『さあ、試合が開始されました!!本日のゲストはこの人!!狼の守護霊を出す!!我らが姫!!イーニア・シュツベルだぁ!!』

 

『姫って愛称流行らせるつもりなの?普通にイーニアって呼んでほしい。』

 

『おっと!!いきなり激しいぶつかり合い!!いいぞ!!もっと攻めろ!!』

 

『実況なんだから応援はしないほうがいいんじゃない?』

 

『ポッター選手はファイアボルトに乗っています!!これで勝ちを取ってきたと言っても過言ではない!!』

 

『箒が全てではないのがクィディッチだけどね。』

 

『おお!入れた!先制しました。グリフィンドール!!10対0!!』

 

『やっと実況らしくなってきた…。』

 

『ちっくそ!!防ぎやがった!!』

 

『暴言も吐かないほうがいいよ?』

 

『スリザリンも負けてはいない!!腹が立つが良い連携をする!!』

 

『ウッドも相当クィディッチ馬鹿だけど、リーもだよね。』

 

『負けるな!!行け!!そこだ!!ああー!!くそ!!点が入ってしまった!!』

 

『マクゴナガル先生がすごい顔でこっち見てるよ?』

 

『実況します!!』

 

『今のはいいパスだね。今年は両チームとも最高だと言えるんじゃないかな。』

 

『お互い10点ずつ取り激しい攻防が続く!!これほどの接戦は今まで見たことがない!!』

 

『こうなるとシーカーが大きなカギになるね。』

 

『ポッター選手もマルフォイ選手もまだスニッチを見つけられていないようです!!』

 

 そんなお互い点を取らない状態が長く続いたがドラコがスニッチを見つけ加速を始める。2人は並びドッグファイトを始める。ぶつかり合いロールしたりと凄まじい。スニッチも加速していく。

 

『まるで戦闘機みたい…。』

 

 どこか美しく競い合う2人の動きを見てイーニアは呟く。上空を飛んでいた2人が一気に地面に向かって加速を始める。スニッチが下へと向かったようだった。

 

『これはお互いの度胸が試される!!一直線に落ちていく!!』

 

 減速せず地面に向かう2人。一応怪我をしないように隣で杖を構えているマクゴナガル。2人とも手を伸ばしスニッチまであと少し。地面まではもう10mもない。少し減速したドラコに対し、ハリーはそのままの速度で向かった。

 

「なっ!?」

 

「この勝負はもらうよ!!ドラコ!!」

 

 減速しないハリーに驚き、加速しなおしたドラコだったがすでに遅く、体一つ分前に出たハリーが地面スレスレでスニッチを掴むと、地面にぶつかることはなく上空に上がった。

 

『やりました!!スニッチを掴みました!!グリフィンドールの勝利です!!』

 

 歓声が会場を包む。グリフィンドール選手は抱き合い喜びを分かち合っている。特にウッドがすごく、雄たけびをあげていた。ドラコは仰向けで腕を目元にやり悔しそうにしている。そんなドラコのところにチームメイトが来て一言、二言、言うと起き上がらせた。

 

 選手全員が箒から下り、握手をする。両チームのキャプテンは暴言を吐きながら抱き合っていた。

 宿敵同士だがクィディッチと言うスポーツを通してお互いを讃え合っている。

 リーは横で号泣しながら"お前ら最高だーー!!"と叫んでいた。イーニアはさっきまでの暴言はどこにいったのだという突っ込みは野暮だったので言わなかった。

 

 

 

 

 




愛されイーニア。
リーのキャラがまったく思い出せず妄想等々で補いました(笑)

イーニアも忍びの地図をもらいましたがシナリオに影響させるかは何も考えてません。
また描写はありませんでしたがハリーはルーピンに守護霊の呪文を教わったり、忍びの地図を没収されたりしてます。

クィディッチをすごいかっこよく描写したかったのですが私には無理でした orz


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アズカバンの囚人

お気に入り数、UA数、評価数とも増えまして、ありがとうございます。
急に増えてビビってます。



ではどうぞ。


 クィディッチ優勝と言う喜びの熱が冷めないうちに学年末試験がやって来る。すべての授業を取っているハーマイオニーは必然的に忙しくなったので今回はイーニア1人でハリーたちに勉強を教えている。

 とはいっても選択科目がすべて一緒のわけではないので教えらえるものは限られている。必須科目を重点的に教え、イーニア自身も今回は大丈夫だと思えるほどにはなり、試験に挑んだ。

 

 

 

 

 

「終わったわー。」

 

 珍しくハーマイオニーが脱力している。全教科のテストを行ったのだから当然と言えば当然だ。

 

「お疲れ様。」

 

 動く気力も無さそうなハーマイオニーに紅茶を出す。ハリーとロンにもいるかと聞くとほしいと言われたのでコップに注いで渡す。イーニアも自分の分を入れて椅子に座った。

 

「今年も色々騒がしい1年だったけど無事終わりを迎えられそうね。」

 

 一口紅茶を飲んだハーマイオニーがしみじみ言うと3人もそれに肯いた。

 

「試験終わったしノーバートのところ行こうかな。3人は来る?」

 

 紅茶を飲みほしたイーニアは立ち上がり聞くと3人とも行くと返事をした。バックビークより大きくなったノーバートに会いに行くと、ハグリッドが外に居り、ロンに話しかけてきた。

 

「ロン、この鼠はお前さんのじゃねぇか?」

 

「スキャバーズ!!」

 

 話によるとちょくちょく脱走し、行方を暗ましていたロンのペットはハグリッドが禁じられた森に入った時に見つけたらしい。

 

「こいつ、俺のところにいたときもそわそわして、どこかへ行こうとしてたからな。気を付けるんだぞ。」

 

 そういうとハグリッドは小屋へと戻っていった。

 ノーバートと遊んでいると日が暮れ夕食の時間が近くなる。城に戻ろうとするとスキャバーズがロンの手を噛み逃げ出した。ロンはそれを追いかける。イーニアたちもロンを追いかけた。スキャバーズは遠くまで逃げ、暴れ柳の近くでロンは捕まえることができた。

 

「ロン!!暴れ柳!!早くこっちに――。」

 

 ハリーが声を上げたがその瞬間、後ろから黒い大型犬がイーニアたちの間を抜け、ロンに向かって駈け出した。突然のことに思考が追い付かなかった3人だったがロンの足が噛まれ、木の根元の洞へと連れて行こうとするのを見て3人も駆けだした。犬はロンをあっという間に引きずり持って行ってしまう。イーニアたちも追いかけるために洞に入ろうとしたが暴れ柳が襲い掛かってくる。

 

「邪…魔…!!」

 

 イーニアは振られた枝を上手く避けたがハリーとハーマイオニーが当たってしまう。吹き飛び後ろに飛ばされる2人。

 

「大丈夫!?」

 

「いたた…大丈夫!!」

 

 暴れ柳は全体を使ってイーニアに襲い掛かってくる。転がりながらそれを避けると杖を構えた。

 

イモービラス(不動せよ)!」

 

 暴れ柳は動きを止める。

 

「急ごう!!」

 

 イーニアは2人の手を取り洞の中を進む。洞の中は整備がされており人が歩くには十分だった。ある程度進むと階段が現れ、上る。すると建物中に繋がっていた。

 

「方角的に……叫びの屋敷?」

 

 ハーマイオニーが呟いたがそれの回答は誰も持っておらず沈黙が流れる。上の階からロンの声が聞こえ駆けあがる。

 

「ロン!!」

 

 2階の階段からすぐの部屋にロンは居た。3人は駆け寄って様子を見る。

 

「3人とも駄目だ!!奴は!!ブラックは動物もどき(アニメーガス)だ!!」

 

 ロンが自分たちの後ろを指を指して言う。振り向くと1人の男が立っていた。ハーマイオニーがハリーを庇うように前に出て、イーニアは一気にブラックに接近した。

 杖を持っているのを確認したイーニアは身体強化をかけ、腹に一撃食らわせる。痛みで腹を抱えた瞬間、後ろに回り首を締め上げる。

 

「このまま気絶してもら―――。」

 

 扉の方から気配がし、咄嗟に盾の呪文を唱えようとするイーニア。

 

ステューピファイ(麻痺せよ)。」

 

「う…ぐぅ……ッ!!」

 

 失神呪文が当たり、盾の呪文で防ぎきれなかったイーニアはブラックを放してしまった。しかし力任せにブラックの服を掴み入ってきた男に投げた。倒れ込むようにハリーたちの前に行く。

 

「うぉお!?――気絶しないとは、驚いた。」

 

 ブラックを受け止め、入ってきた男はルーピンだった。

 

「ごほッ!!はっ…はぁ…はぁ…。リーマス…。」

 

「無事か?シリウス。」

 

「先生!?なんで!!信じてたのに!!裏切ったのね!!」

 

 ハーマイオニーが悲痛な声を上げる。

 

「それは違う。12年間、僕は彼が悪だとずっと思っていた。彼を裏切っていた。だが今は大切な友人だ。」

 

「もういいだろ!!我慢できん!!早く殺させろ!!」

 

「シリウス!!彼らには説明する必要がある!!」

 

 怒りを爆発させたブラックを宥めるルーピン。ブラックの狂気に緊張が走る。

 

「もう我慢はたくさんだ!!12年も!!アズカバンで!!ずっと!!」

 

「もう少し待ってくれ!!」

 

「2人が仲間であってもなくても、関係ないです。――――お前たち(・・・・)がやると言うならー。」

 

 その言葉の続きは発しなかった。イーニアは右腕を振り切り、斬撃魔法を唱える。

 

トルナ(断ち切れ)。」

 

 ルーピンはブラックの前に出ると盾の呪文を唱えて防ぐ。家具のあちらこちらが切り崩れる。

 

「イーニア!!話を聞いてくれ!!僕らは君たちの敵ではない!!本当の敵は――。」

 

「だったら杖を置いて。」

 

 ルーピンに接近し拳を振るう。しかし痺れからか踏ん張れず、軽くいなされてしまう。イーニアはルーピンから離れ武器を生成し、投擲する。

 

プロテゴ(護れ)!」

 

 投擲された槍を盾の呪文で防ぐルーピン。イーニアは立つのがつらく、ハーマイオニーに肩を借りている。

 

「限界だろう。もうやめるんだ。」

 

「杖を置くまではやめれません。」

 

 構えを取り続けるイーニアに、少しため息を吐きながらルーピンは再び失神呪文を唱えようとした瞬間だった。

 

ステュー(麻痺せ)エクスペリアームス(武器よ去れ)。」」

 

 スネイプが突然登場し、ルーピンの杖を取り上げるとイーニアたちの前に立った。

 

「ルーピン、何をしているのかね?生徒に向かって失神呪文を唱えるとは。」

 

「セルブスッ!?」

 

「ブラックもいるとは…。なるほど、そういうことでしたか。」

 

「まってくれ!!話を聞いてくれ!!」

 

「生徒に手を出すような輩の話など聞きたくありませんな。――シュツベル、ポッター、グレンジャー、ウィーズリー、無事かね?」

 

 チラッとハリーたちを見ながら聞いてくるスネイプに少し困惑しつつも4人は肯いた。

 

「先生…なんで…?」

 

 つい口に出してしまったイーニアに不機嫌そうな顔をしつつ、スネイプは答える。

 

「……グリフィンドールの生徒は嫌いだ。ましてやポッターは更に嫌いだ。だがお前たちはホグワーツの生徒だ。吾輩には護る義務がある。」

 

 護るように立つスネイプに4人は安心感を得た。

 

「ルーピン、ブラック。2人は吸魂鬼の前にでも突き出すとしよう。」

 

「ま、まってくれ!!シリウスは無実なんだ!!」

 

「なら、なぜシュツベルと戦っていた?最初からその話とやらをすればよかろう?」

 

「それは彼女が攻撃を――。」

 

「お前が杖を置けばそのようなことにはならなかったのではないのかね?」

 

「――っ!!」

 

「反論はないようだ。2人とも先頭を歩きたまえ。妙なマネをしたら――。」

 

「ピーター・ペティグリューが生きているんだ!!」

 

 その言葉にハリーが反応する。

 

「いい加減に――。」

 

「待ってください。先生。――話だけでも聞かせてください。」

 

「ポッター、自分を襲うような相手の話を聞くのかね?」

 

「……はい。吸魂鬼に突き出すのは話を聞いてからでも遅くないと思います。」

 

 スネイプは顔を歪めたが"面白い言い訳と見苦しい命乞いを聞いてやろう"といい、ブラックの杖を奪うと杖を構えたまま後ろに下がる。

 

「話して。2人が知っているすべてを。」

 

「口で言うより見せたほうが早いだろう。――セルブス、ロンのスキャバーズにスペシアリスをかけてくれ。」

 

「それに何の意味が……なるほど。ウィーズリー、渡したまえ。」

 

 何かに気が付いたスネイプはロンからスキャバーズを受け取ると空中に放り投げ、魔法をかけた。するとスキャバーズは小太りの人間になった。イーニアたちは息を飲む。

 

「これがこいつの正体さ。ピーター・ペティグリュー。――僕はハリーから没収した地図でお前の名前を見つけた。死んだはずの!!お前の名前を!!」

 

「おお、シ、シリウス……それにリーマスも。」

 

 まるで今気が付いたかのような言い方をするペティグリュー。

 それに怒りを露わにしてペティグリューに問答を始めるブラックとルーピン。イーニアはそれを聞きながらスネイプの方を見る。眉間にしわがよりとても不機嫌そうだった。問答が終わると命乞いをするペティグリュー。2人はそれ許すことなく今にも殺しそうな勢いだった。スネイプは殺るなら早く殺れと言わんばかりの顔をしていたが、ハリーがそれを止めた。

 

「甘いな。」

 

 スネイプはその行動を見てボソッと呟く。そしてペティグリューを連れて城へ行くことになる。ハリーとブラックでロンを担ぎ、ハーマイオニーとルーピンでペティグリューを連行。座り込んだイーニアを見てスネイプが失神呪文をうけたなら少し休ませる必要があるといい、休憩後、向かうことになった。

 

「お前たちが犯罪者でないことは理解しましたが、ブラック。お前はホグワーツに侵入し、備品を壊した。ルーピン、君は生徒に失神呪文を使った。その事は言わせてもらいますぞ。――グレンジャー、妙な動きをしたら3人とも容赦はしなくてよろしい。」

 

 部屋を出ていくルーピンたちに釘を刺すスネイプ。ルーピンは苦笑いしつつも、仕方ないと言う顔もしていた。残され静かになる2人だったがスネイプが口を開く。

 

「毎度毎度、お前たちは何故、面倒事の中心にいるのか。」

 

 呆れた顔でため息を吐くスネイプは何処か面倒見のいい父親のように見えイーニアはくすくすと笑いだした。

 

「なにがおかしい。」

 

「いえ何でもないです。――それよりスネイプ先生は何故ここに来れたのですか?」

 

「それは――。」

 

 答えようとし、何かを思い出したような顔をしたスネイプ。口を再度開こうとすると遠吠えが聞こえてくる。それを聞きスネイプは立ち上がる。

 

「シュツベル、ルーピンは人狼だ。吾輩はそれを抑える薬を奴に渡すために奴を探していた。奴は今夜薬を飲んでいない。お前は後から来い。」

 

 要点だけ伝えるとスネイプはすごい速さで駆けて行った。ルーピンが人狼。そうなるといくらスネイプでも大変だろうと判断したイーニアは痺れる体に鞭を打ちながらスネイプの後を追った。

 

 暴れ柳の洞から出るとスネイプが狼になったルーピンに吹き飛ばされていた。ルーピンはそのままハリーたちを襲おうとする。イーニアは物体加速魔法を自分にかけるとそのまま人狼に体当たりをした。ルーピンは怯み、後ろに下がる。スネイプを見ると頭から出血をし、気絶していた。

 

「ハーマイオニー!!スネイプ先生の治療を!!」

 

 出血量が多いと判断したイーニアはすぐに治療するようにハーマイオニーに指示する。再び接近するルーピン。イーニアは剣を生成すると、爪をそれで受け止めた。しかし押し倒される。

 

「い…ッ…んッ……!!」

 

 顔がすぐそこにあり今にも噛まれそうになるイーニア。ハリーが横から失神呪文をかけるがイーニアの上から退いただけだった。

 

「はっ……はっ…ハリー、ありがとう。」

 

 限界が近いイーニアだったがルーピンの後ろから、黒犬になったブラックが噛みつきルーピンがブラックを退かそうとする。ブラックはふり払われ、その隙を狙い懐に潜り込むとを拳に当てた。

 

 中国武術に発勁と言う技術が存在する。「発生させた運動量を的確に伝える」というもので、火事場の底力ではなく、自分の意志で打ち込む全力の一撃。しかし成長途中のイーニアでは運動量を正しく伝えることができてもそもそもの運動量が少ない。そこで身体強化魔法と物体加速魔法、加重魔法、ポンデサス(重量増加)を使い、運動量を増やす。

 

 体が痺れ、踏ん張り切れないイーニアだったが渾身の力を込めて打ち込んだ。

 バンッ!!と大きな音が鳴りルーピンが大きく仰け反った。しかし倒れるどころか膝を付く事すら無く、体勢を元に戻す。

 最後の一撃に力を出し切り、膝をついてしまったイーニアにルーピンが襲おうとすると、遠くから遠吠えが聞こえてきた。それにルーピンは反応し、森へ駆けて行く。ブラックもそれを追う。イーニアが制止する暇もなく、ハリーもそれを追いかけて行ってしまった。膝をついてしまっているイーニアにハリーを追いかける体力はない。それどころか立ち上がるのも辛かった。

 

 

―――――――――

 

 

 その後、ハーマイオニーが他の教師を呼び、スネイプとロンを運んだ。ルーピンは森を散歩していたノーバートに挑んだらしく、押さえつけられているところをサーベイとロイに見つけられ、満身創痍だったので簡単に捕まった。

 捕まえた後、大きな光が見え、吸魂鬼が逃げた始めたので光の方へと行くとハリーとブラックが倒れていたので、人を呼び、ハリーは医務室、ブラックは塔のてっぺんに幽閉され、ちょうど訪れていたファッジが連行していくこととなった。

 ハリーが目を覚まし、ブラックの無実を訴えたが誰も信じてくれなく、大人の2人は話ができる状態ではない。

 

「ペティグリューを逃がした今、あの人の無実を証明する方法は0に近い…。」

 

 ロンが寝かされているベットに腰を掛けているイーニアが言う。ハリーが悔しそうに、悲しそうに言う。

 

「ブラックは……、シリウスは、ぼくに名前を付けてくれた人なんだ。……ぼくの……家族なんだ。」

 

 重い空気が医務室に立ち込める。今は何もできない。それは4人がよくわかっていた。4人が何もできないことに絶望していると、医務室の扉が開きダンブルドアが入ってきた。

 

「今しがた、ブラックと話してきた。君たちと同じようなことを言っておったよ。――じゃがそれを証明するものがない。ルーピン先生やスネイプ先生が起きれば、それについて何か語ってくれるかもしれんがそこまで待ってくれはしないじゃろう。――つまり必要なのは時間じゃ。」

 

 ハーマイオニーが息を飲むのがわかった。

 

「規則はわかっておるな?見られてはならんぞ。――ああ、扉には鍵をかけておく。1回、まわすんじゃよ。」

 

 ハーマイオニー以外はダンブルドアの意味の分からない言葉に頭を捻らせていた。

 

「幸運を。」

 

 ダンブルドアがウインクをすると扉を閉めた。

 

「足を怪我してるからロンは置いていくわ。」

 

 ハーマイオニーがそういうと胸元からネックレスを取り出し、自分とハリー、イーニアの首にかける。

 

「逆転時計?」

 

 話しに聞いていたイーニアがハーマイオニー問うと肯く。逆転時計を設定し動かし始めると風景が巻き戻っていった。そして安定するとハーマイオニーはハリーたちの首から鎖を外す。

 

「1回まわしたから1時間前ね。――1時間前はどこにいたかしら?」

 

「叫びの屋敷から出てくるところじゃない?」

 

「急ぎましょう!」

 

「ちょっと、どういうこと!?」

 

 混乱したように言うハリーの手を取り2人は駈け出す。

 

「時間がないから移動しながら話すわ。」

 

 逆転時計の説明をしながら暴れ柳の近くに着くと、イーニアがルーピンに一撃を当て、しかし効果はなく襲われそうになっているところだった。咄嗟にハーマイオニーが狼の遠吠えのマネをする。するとルーピンはそれに反応し、こちらへ向かってきた。

 

「こっちきちゃったよ!?」

 

「これしかイーニアを助ける方法が浮かばなかったのよ!」

 

「とにかく逃げよう!!」

 

 3人は森の奥へ逃げだす。木の陰に隠れ息を潜める。近くにいるのを確認しつつ、ゆっくりと裏に回り逃げようとした瞬間、ハリーが枝を踏み音を立ててしまった。すごい勢いでこちらにやってくるルーピン。イーニアは出会い頭にルーピンの顎に棍棒を当てた。軽く目を回したルーピンに1時間前の自分がやったようにもう一度、拳を胸に当てる。

 

「今度は痺れとかもない、ちゃんとした技。1日に2回も受けるなんて災難だね。ルーピン先生。」

 

 ドンッ!!と大きな音が鳴りルーピンの身体が宙に浮いた。そしてそのまま受け身も取らず地面に倒れたがイーニアがハリーたちの元へ戻ろうとすると再度起き上がる。

 

「っ!!…ならもう一撃…――。」

 

 イーニアが再び接近し、攻撃しようとした瞬間、上からノーバートがすごい勢いで来た。

 

「ノーバート!?」

 

 ノーバートはルーピンを踏みつぶし、そのまま頭を食べようとする。

 

「駄目!!駄目だよ!!ノーバート!!」

 

 イーニアがそれを止めるとルーピンを押さえつけたままイーニアの方を見た。ルーピンは踏みつぶされ、気を失っている。

 

「危なかった…。これは食べちゃ駄目よ。ノーバート。」

 

 イーニアに撫でられ嬉しそうなノーバート。撫でていると少し遠くからサーベイとロイの声が聞こえてきた。

 

「ノーバート、そのまま押さえつけてて。ロイたちが来たらロイたちの指示に従ってね。」

 

 ノーバートにそう告げるとイーニアはハリーたちと駈け出した。

 

「ルーピン先生、今日は厄日ね。」

 

 同情したように言うハーマイオニーの言葉に2人は少し笑った。湖の近く着くと吸魂鬼からブラックを守ろうとしているハリーが見えた。ハリーは自分を助けてくれるモノが今に来ると言っていたがいつまでも訪れず、ハッとなり飛び出した。イーニアもそれに続く。ハリーは杖を構えるとイーニアと同時に守護霊の呪文を唱えた。

 

「「エクスペクト・パトローナム(守護霊よ来たれ)!!」」

 

 ハリーの杖からは牡鹿が現れ吸魂鬼を蹴散らしていく。そこに居た吸魂鬼を牡鹿と狼で蹴散らすと光を見たロイ達がやってきたので姿を隠す。ロイ達はノーバートにルーピンを連れて他の人を連れてくるように指示し、ノーバートはそれに従いルーピンを足で掴み空へと飛んで行った。恐らくハグリッドの元へ行ったのだろう。イーニアたちも人が集まる前にその場を後にした。

 ブラックが連れていかれ、塔に幽閉された。あらかじめ塔に潜んでいたイーニアたちはダンブルドアがいなくなったことを確認するとブラックを檻から出す。

 

「ハリー?!どうやってここに!?」

 

「話は後、今は逃げよう。」

 

 驚くブラックにヒソヒソと話すハリー。イーニアは全員に浮遊魔法をかけると速すぎない速度でホグワーツの外れまでブラックを送る。

 

「今は貴方の無実を証明する方法がありません。ルーピン先生やスネイプ先生が意識を取り戻してもそれは変わらないでしょう。ですから今は逃げてください。」

 

「君たちはいったい…。」

 

「もう時間がないわ。ハリー。挨拶は短くね。」

 

 イーニアとハーマイオニーはそういうと少し離れ、周りに人がいないか警戒する。ハリーがブラックとの別れを済ませると駆け足で医務室に戻った。医務室へ行くとちょうどダンブルドアが扉を閉めたところだった。おどけた顔で何も知らんと言うダンブルドアに中に入るように言われ、医務室へ入る3人。

 

「ダンブルドア校長。明日お時間いただけますか?」

 

「よかろう。明日の午後、わしのところへ来るといい。」

 

 イーニアはどうしても聞きたいことができた為、ダンブルドアと約束を取り付ける。ロンに近づくと消えた3人が突然外から入ってきて完全に混乱していた。そんなロンに3人は笑いながら後で説明してあげると言った。

 

 

―――――――――――

 

 

 次の日の午後。指定された時間に逆転時計を持ったイーニアが校長室にいた。

 

「して要件は何かの?」

 

「逆転時計をお返しします、とハーマイオニーから。」

 

「うむ、確かに受け取ったぞ。」

 

「後は私の要件です。―――いったいそれ(逆転時計)はなんですか?」

 

「なに、とはどういう意味かね?」

 

「過去に戻れる、と聞くだけでは簡単ですがとても簡単なことではないはずです。……過去に戻っている私たちが起こしたと思われる事象にその時の私たちはあっている。つまり――。」

 

「……そうじゃ。過去は変えられるものではない。」

 

「しかし過去に戻ることができる。そんな代物、彼ら(・・)が黙っていないと思うんですが。」

 

「…………過去を変えることはできぬ。それは絶対じゃ。――しかしこれには可能性を、未来を変える力がある。」

 

「今回の、ブラックの件ですね?」

 

「いかにも。彼は死んでもおらんし、彼があの後、アズカバンに戻るなり逃げるなりは可能性の中の一つでしかない。」

 

「……捕まっていた(・・・・・・)ブラックを私たちは逃がした。」

 

「うむ。起きたことは変えることはできぬ。しかしこれから起きるであろうことに干渉はできる。それはもちろん、コレを使わずとも同じことじゃ。」

 

「……これは、逆転時計はどうするつもりなんです?」

 

「壊そうかと考えておる。これもあまり良いものでない。」

 

「そうですか。―――今日はお時間いただきありがとうございました。」

 

 イーニアは出された紅茶を飲みほし席を立った。ダンブルドアはそれを笑顔で見送る。

 その後、イーニアは学年末パーティーに参加し、ルーピンが退職することを聞いた。意識を取り戻したスネイプが真っ先に失神呪文のことをいったらしい。もちろん、直接の原因はそれではない。人狼となった自分が他人を襲ってしまったことをひどく後悔し、辞職を申し出たとハリーが話していた。

 スネイプはその後、ペティグリューのことを話し、ペティグリューは指名手配と言うことで名があげられることとなった。しかし現時点ではブラックの無実を証明できないのでブラックも変わらず指名手配犯である。

 

 

 学年末パーティーが終わり、家に帰る日。

 一件落着とまではいかなかったが、波乱万丈な1年の終わりを感じつつ汽車に乗ったイーニア。来期は少しでも慌ただしくないように願いつつ家に帰ると、イーニアの3年生としての1年に幕を閉じた。

 

 

 

 




フラグを立てるハーマイオニー。そしてフラグ回収。

スネイプが4人を守る姿、映画で狼と化したルーピンから全力でハリーたちを隠そうとしているスネイプを見て思いつきました。こういうのもありかなと。

発勁は完全に妄想。詳しくはありません。よくわかりません。

今回、逆転時計をどう扱うか、これにとても悩みましたが勝手な解釈で無理やり収めました。結構矛盾しているかもしれません。




結局シリウスがあまり登場できませんでしたが、これにてアズカバンの囚人編は終了です。

誤字脱字などございましたら、遠慮なくご報告ください。
感想お待ちしています。




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炎のゴブレット
大掃除と昔話


大事なポイント。


ではどうぞ。


 

 

 

「汚い…。これは住めたもんじゃないね。」

 

「ああ、だから手伝ってほしい…。」

 

「さすがに12年もほっとけばこうもなるか。むしろよく家が潰されなかったな。」

 

 イーニアが玄関で呟くと絶望したように返すシリウス。リーマスも家の状態にため息が出た。

 

 夏休みの初め、ハリーがシリウスの家の片付けを手伝いに行けないという知らせを受け、代わりに手伝いに来たイーニア。もちろん世間では犯罪者であるシリウスの家に行くことはアリシスにどう伝えるか悩んでいたイーニアだったが、素直にあったこと、知っていることを言うと"裏は取れてるから行っていいわよ"と簡単に承諾を得た。

 

 シリウスの家に着くと外はボロボロ、中もボロボロと立て直したほうがいいのではないかと考えるほどだった。ある程度は魔法でどうにかなるようだったが一部は人の手でやらなければならなかった。建物の補強をシリウスたちが行い、中の掃除をイーニアが行う。いつもなら自分の手で掃除するイーニアだが今回ばかりは汚い個所が多すぎた為、魔法を使い次々と掃除していく。

 

「シリウスー、家具とかはどうする?結構、木腐ってるよ。」

 

「直せそうにないものは捨ててくれ。」

 

 訪れた当初はブラックさんにルーピンさんだったが2人とも名前で呼ぶことを要求し、敬語もいらないと言われたのでフランクに話すイーニア。

 夕方頃には1階の片付け終わり、唯一使えそうな椅子に座りると一息つく。魔法を使用してこれほど時間がかかるとはどれだけ汚かったのだろう。シリウスたちは建物の補強をある程度で切り上げ家具を買いに出かけた。

 

「あー、疲れた。」

 

 綺麗になった床や天井を見て達成感を感じるイーニア。掃除中に蜘蛛が出たりと大変だったが何とか人が居られる状態になった。机や椅子などはイーニアが座っているもの以外は腐ってしまって全滅。食器などもほとんど使えモノにならずゴミが大量に出た。

 椅子に座りながらボーっとしていると部屋の空いたスペースに歪みが見えたのでイーニアは部屋の端へ移動する。ボンッ!と音が鳴るとそこにシリウスたちが家具とともに現れた。

 

「久しぶりにやったからうまくできるか不安だったがなんとかなったな。」

 

「ああ、大荷物だったからな。」

 

「おかえりなさい。」

 

「あ、ああ。た、ただいま。」

 

 椅子から立ち上がったイーニアが声をかけるとシリウスは少し戸惑ったように返す。リーマスはそれを見て少し笑う。

 

「12年ぶりに【おかえりなさい】って言われた気分はどうだ?」

 

「悪くない、が緊張するな。」

 

「12年もアズカバンに居れば日常挨拶でも嬉しいんじゃないかなっと思って。悪くないならよかった。」

 

「14歳の美少女にそういう風に言われるなんて役得だな。」

 

「美少女なんて、おだてても何も出ないよ?」

 

 リーマスが少しふざけて言うとイーニアは真面目な顔をして言う。その言葉に少し固まる2人。

 

「いや、イーニア。君は十分美少女だろ?」

 

「そうかな?ハーマイオニーの方が可愛いと思う。――それに伯母―アリシスは年齢に合ってないくらい美人だし…。」

 

「アリシス?――アリシス・コーランドか?」

 

「知ってるの?アリシス・コーランドは私の伯母だよ。」

 

「「イーニアはあの人(・・・)の姪なのか!!」」

 

「私を呼んだかしら?悪戯仕掛け人(可愛い後輩たち)?」

 

 シリウスとリーマスが声を揃えて言うとその後ろに姿現しで現れたアリシス。2人はカクカクしながら振り向く。

 

「ど、どうも。ご、ご機嫌麗しゅう。コーランドさん。」

 

「あら。コーランドさん、なんて他人行儀にならなくていいわよ?昔みたいに呼び捨てやアリシス先輩で構わないわ。」

 

「で、ではアリシス先輩。いったいどのようなご用件で?」

 

「姪を1人で大人の男2人の所へ行かせて様子を見に来ないわけいかないでしょう。」

 

「そ、それもそうですね。」

 

 少しびくびくしている2人に首を傾げるイーニア。それを見てアリシスが説明をする。

 

「2人は私の後輩なのよ。組は違ったけどね。よく悪戯をしては監督生を困らせてたわ。―――それでグリフィンドールの監督生が一度泣きついたことがあってね。抑えきれないって、あまりにもどうしようもなかったから代わりに私が叱りに行ったのよ。それが縁でちょくちょく叱ることがあって。」

 

「あの説教はかなり恐ろしかった。というか躊躇なく攻撃魔法を使ってくるのが一番恐ろしいかった。」

 

「1回は警告したわよ?逃げる貴方たちがいけないんじゃない。――あれ、ジェームズは愉しそうだったわね。」

 

 リーマスが少し、恐怖を思い出したように震えると笑顔で返すアリシス。普通の笑顔だったためホッとしていたリーマスだったが、その笑顔が恐怖に変わる。

 

「そうそう。イーニアから話を聞いたわ。――少しお話しましょうか?リーマス。」

 

「え、えっと?いったい何の話を――?」

 

「ボガートのことや杖を向けたこと。」

 

 固まったリーマスをずるずると運び隣の部屋へと連行する。シリウスは両手を揃えて合掌していた。イーニアはアリシスに叱られて事はなかったのでそんなに恐ろしモノなのかと首を傾げていた。

 

 少し時間が経ち、ひたすらイーニアに謝るリーマスが出来上がると夕食を取ることになった。

 

「すまない。本当にすまない。イーニア。」

 

「いいってば。もーアリシス、これじゃご飯にならないよ。」

 

「はー。もういいわよ、リーマス。」

 

 困ったイーニアに仕方ないと言わんばかりに返すアリシス。するとようやくリーマスも食事を始める。食事が終わると明日の予定を話し始める。

 

「明日も同じ時間に迎えに行っても問題ないか?」

 

「うん。構わないよ。明日は2階の掃除だね。」

 

「ああ。イーニアのおかげでかなり片付いた。助かる。―――そういえばアリシスはどうやってここを知ったんだ?イーニアは私たちが迎えに行ったのに。」

 

「んー、秘密。―――シリウスが犯罪者でないことの裏が取れてたからイーニアに行く許可を出したって言えば場所くらい知っていてもおかしくないでしょ?」

 

「昔からそうだがいったい情報をどこから仕入れてくるんだ…。」

 

「だから秘密よ。女の秘密をあんまり詮索するものじゃないわ。」

 

「わかりましたよ。先輩。」

 

 シリウスがやれやれといった感じで返すとアリシスは微笑む。

 

「まあ、でも残念ながらそんな私でも貴方の無実を証明することはできないわ。裏が取れている私でも、ね。―――仲の良かった後輩たちの間に溝が生まれたことは悲しいことだけど…――シリウスはピーターが捕まるまで大人しくしていることね。たとえジェームズの仇でも。」

 

「――――アリシスは……どこまで知っているんだ?」

 

「色々知ったのは貴方が捕まってからよ、シリウス。今でこそすぐに耳に入るけど、あの時は私もアリスとずっとイーニアの事見てたから。知ったのは全部終わった後。」

 

「そうか…。」

 

「シリウスが裏切ったって言うのは何処か腑に落ちないところだったけれどね。」

 

「何故だ?」

 

「ジェームズの仇を取るのに半狂乱になってたってイーニアから聞いたわ。まるで狂人だったって。―――貴方はそういう男よ。兄弟同然の存在にそこまでなる奴。」

 

 部屋に沈黙が訪れる。

 暗い空気が漂っていたが、ふと、イーニアは疑問が頭に浮かびアリシスに聞く。

 

「そういえばハリーにあった時、職業柄知っているって言ってたけど、事件前からハリーを知ってたの?」

 

「そうね。会ったことはなかったけれど生まれたっていう知らせはもらってたから。彼の姿を見たのはここ数年の話よ。」

 

「なるほど。――あれ?でもそれだと2人はなんで私のこと知らないの?」

 

「アリシスの妹、アリスとはそこまで関わりがなくてね。姪が生まれたってことぐらいで名前を聞いてなかったんだ。」

 

「アリスは俺たちの1つ年下だったしな。アリシスに説教されてからはすっかり下級生に悪戯せずに上級生対象にしてた。」

 

「セブルスに対してはやめなかったのに……どう考えてもやりすぎでしょ。あの子、今ホグワーツで教鞭執ってるんだっけ?リーマス、どんな様子だった?」

 

「変わらず…かな。」

 

「そ。まあ、あんまり捻くれてなければそれでいいわ。――ああ、そうそう。ホグワーツで思い出したわ。今年、ホグワーツで三大魔法学校対抗試合が行われるわ。イーニアも頑張ってね。」

 

「それは出ろってこと?」

 

「選ばれなければ関係ないし、やりたくなかったら出なくても構わないわ。――でも、たぶん、もしかしたら、可能性的に、ハリーが選ばれるかもしれない。そしてそれはきっと大嵐になる。」

 

 その言葉にシリウスが反応した。

 

「ハリーが選ばれるかもしれない、というのはどういうことだ。」

 

「あの子は物語の主人公なのよ。ハリーが動けばその分何かが起きる。もちろん、主人公っていうのは比喩よ?―――ただこの3年間、何もない年があった?」

 

 アリシスに聞かれ首を振るイーニア。

 

「そ、だから今年のイベント、三大魔法学校対抗試合も何かが起こるわ。その可能性は高い。」

 

「今年も騒がしくなるんだね。」

 

 少しげんなりした風に言うイーニアに笑いながら"刺激がないよりはいいと思うわよ"とアリシスが言う。

 

「あくまでも私の予想ってだけだからそこまで気にしなくていいわよ。あ、三大魔法学校対抗試合は本当にあるからね?」

 

 ハリーの危機に駆けつけれるように、などと言っているシリウスを放っておいてイーニアたちはリーマスに別れを告げ帰宅する。

 自宅に着くとアリシスがイーニアに十字に小さいライオンがかかれてたイヤリングを渡してきた。

 

「お守りみたいなものよ。仮に選手に選ばれて試合に出ることになったら試合の時は着けてること。いいわね?」

 

「わかったわ。ありがと。」

 

 イーニアはイヤリングを受け取ると仕事に出かけるアリシスを見送り、シャワーを浴び眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 




メタメタ、アリシス。ですが主人公はイーニアです。


アリシスはシリウスたちの2つ年上です。
シリウスたちはアリシスにとって手のかかる後輩たちってところでしょうか。


誤字脱字などございましたら、遠慮なくご報告ください。
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ワールドカップと死喰い人

今回は魔法の仕組みについて。独自解釈です。


ではどうぞ。






 シリウスの家の片付けが終わり数日後。

 ロンから、正確に言えばウィーズリー家の招待でクィディッチのワールドカップ、決勝戦。ブルガリア対アイルランドに行くことになったイーニア。アリシスも仕事の関係で行くらしく現地までは一緒に行くことになった。

 隠れ穴へ姿現しをし、扉をノックする。するとモリーが出迎えてくれた。

 

「いらっしゃい、イーニア。――そちらが話していた人?」

 

「お久しぶりです。モリーおばさん。――伯母のアリシス・コーランドです。」

 

 モリ―と抱きしめ合ったイーニアはアリシスを紹介する。

 

「イーニアの伯母のアリシスです。いつも姪がお世話になってます。」

 

「いえいえ。こちらこそ息子たちが迷惑かけてるようで、ごめんなさいね。――とりあえず中に入って。皆まだ準備してるから。」

 

「お邪魔します。」

 

 家に入ると皆が朝食を取っていた。ハリーやハーマイオニーもいる。

 

「皆、久しぶり。元気にしてた?」

 

「久しぶり。シリウスの件はありがとう。」

 

「ええ、元気にしてたわよ。」

 

「そこそこ元気にやってたよ。」

 

 ハリー、ハーマイオニー、ロンから返事を受け取り、食事のしていないハーマイオニーの隣に座る。

 

「ハーマイオニーは朝ごはん食べたの?」

 

「ええ、私もさっき着いたばっかりで、来る前に食べてきたわ。」

 

 モリ―に出されたお茶を飲みつつ、ハーマイオニーと談笑をする。

 のんびりと話をしているとハリーたちの準備が終わり出発することになる。

 

移動(ポート)キー使うんですよね?」

 

 アリシスがアーサーに聞くと肯く。

 

「ああ、大人数だしな。――あと2人も追加で来る。」

 

 先頭でアーサーと談笑しているアリシスを見て、ジョージとフレッドがイーニアに話しかけてくる。

 

「イーニアの伯母さん、すっげぇー美人だな。」

 

「ああ、あれは親父も鼻の下伸ばしてるぜ。」

 

「うん。とても美人だよ。でも、今年で――歳なんだよ………?――歳……。私たちの―――。………。」

 

「???」

 

「いったいどうした?」

 

 肝心な部分が喋れないイーニアに首を傾げるジョージとフレッド。しかも紙に書こうと思ったが書くこともできず、何かに気が付いたイーニアはアリシスに向かって叫ぶ。

 

「アリシス!!年齢喋れないように魔法かけたでしょ!!」

 

「あ、気が付いた?女性の年齢は言うもんじゃないわよー、たとえ親戚でも。」

 

「しかも細かく複雑に組んで、かけたことに気が付かないようになってる。えーと、……どこが起点になっているかを調べて…構成と……――。」

 

「頑張って解いてね~。」

 

 アリシスが笑いながらイーニアを応援する。しかし、すでにイーニアの耳には届いておらずぶつぶつと呟いていた。

 

「イーニアが構成がどうだの言ってますけど、どういう意味なんですか?」

 

 ハーマイオニーがイーニアの呟いている言葉について質問を投げる。

 

「西洋だと知られてないけど魔法って本来、構築式とか術式とかを使って組み立てるモノなのよ。でも西洋の魔女や魔法使いは優秀だからそれを無意識に組み立てて魔法を使ってる。そして、それができる人間をここでは魔女、魔法使いって呼んでるの。

ハーマイオニーはマグル出身だったわよね?マグルに、不思議な力を持った人ってテレビで出てたりしなかった?」

 

「はい。超能力とかそういう。」

 

「彼らはマグルの中でも私たちに近い存在。ただ彼らは無意識的に術式を組むことができないから理解するのに結構努力していると思うわ。

 近年わかったことなのだけれど、魔法はだれでも使えるものらしいの。それを認識、理解できるかできないか、才能に偏りはあるけれどね。――東洋では魔法…向こうでは魔術って言うみたいだけど、全部術式を組んで魔法を使うわ。その方が理解できるんですって。だから、あちらはこっちよりずっと多くの魔術師、魔法使いがいる。

純血が優秀って言われたりするのは遺伝子的に認識する力が備わるからよ。もちろん、必ずってわけじゃないわ。原始の魔法族のようにマグルの中で魔法使いが生まれることもあるし、純血でも魔法が使えない子がいてもおかしくわないわ。

 話を元に戻すわね。で、私がイーニアにかけた魔法は東洋寄りの、意識的に組んだ魔法で構成とか理解しないと解けないタイプ。呪文終了魔法は魔法の構成を破壊して解けさせるんだけど、私がかけたのはそれを弾くようになってるから一から解析してみなきゃならないのよ。イーニアは今それをやってる。」

 

「同じ魔法でも中身が違うってことですか?」

 

「ええ、そうよ。それだけで解くのがとても複雑になるの。」

 

 説明が終わり、皆が納得しているとアーサーがアリシスに聞く。

 

「私は魔法が誰でも使えるという話しは聞いたことないがそれは事実なのか?」

 

「ここ数年に知られた話です。魔法界でも、特に一部純血派には大きく影響を与えるので情報漏洩しないようにかなり規制をかけたと聞いてます。最近、マグルの受け入れをしてる純血が出始めたのはそれの情報が漏洩して立ち上げた人間がいる、と。」

 

「なるほどな。だがそんな情報を私たちが知ってしまっていいのかい?」

 

「それは大丈夫ですよ。東洋ではかなり知れ渡っている話ですし、一部の純血が認めたくないってだけで法に触れるようなことではないですから。」

 

 その言葉を聞き、アーサーがホッとしていると前からセドリック・ディゴリーとその父親、エイモス・ディゴリーがやってきた。挨拶をすませると丘の上にある移動(ポート)キーの所へ移動する。移動(ポート)キーはボロボロの靴で捨てられたように置かれていた。

 

「皆、しっかりと靴を掴むんだぞ。」

 

 エイモスの指示に従い、皆が靴を掴むと、くるくる回りだし、風景が加速していく。あっという間に周りの風景がわからなくなるとエイモスが手を放すように言う。ハリーたちは次々に手を放し、続くようにイーニアも手を放した。

 

「わ、っととと――、よっと。」

 

 回転しながら外に引っ張っていた力が急に下に変わり地面に叩きつけられそうになったところをイーニアは持ち前の運動能力で綺麗に着地する。周りを見ると皆倒れていた。

 

移動(ポート)キーは初めてだったのにちゃんと着地したのね。」

 

 イーニアがハリーたちに手を貸してるとアリシスたちが少し遅れてやってくる。皆が立ち上がり、少し歩くといくつもテントが並んでいた。アリシス、セドリックたちと別れ、ウィーズリー家のテントへと向かう。テントに着き、中で寛いでいると男性が1人顔を覗かせた。

 

「アーサーは居るかい?」

 

「ルード!!」

 

 ルドヴィック・バグマン。魔法省、魔法ゲーム・スポーツ部の部長で今回、ワールドカップのチケットをくれた人である。2人は抱き合うと、アーサーが子供たちを紹介する。紹介が終わるとバグマンはアーサーに賭けを持ちかけてきた。

 

「アーサー、賭けをしないか?」

 

 アーサーは運営側の人間が率先的に賭けを行う行為に渋い顔になる。

 

「んー、あー、じゃあ、ブルガリアに3ガリオンだ。それ以上は賭けん。」

 

「なんだ、それだけか。他には?」

 

 バグマンが子供たちを見る。アーサーはそれを止めようとしたがフレッドとジョージが賭けに乗った。

 

「僕らでアイルランドに37ガリオン6クヌート出す。」

 

「お、いいね。他にはいるかい?」

 

「2人がやるなら私もアイルランドに28ガリオン5シックル。」

 

「え!?イーニアもやるの!?」

 

 イーニアがそれに乗ったを見て驚くハリーたち。フレッドとジョージはノリノリでハイタッチしている。

 

「2人は賭け事強いよ?私はそこに便乗するだけ。―――ああ、もう。喜ぶのは勝ってからでしょ。」

 

 ハイタッチを求めてくる2人に少し呆れつつもちゃんと交わすイーニア。賭け事をやることにアーサーはいい顔をしなかったが、何も言わなかった。

 

 試合時間が近づき、会場に入る。中には既にすごい数の人が居り、大賑わいだった。イーニアたちは自分たちの席に着くと丁度司会が喋り出した。

 

「大変お待たせいたしました!!これより!!第431回!!クィディッチワールドカップ決勝戦を開催します!!」

 

 司会の言葉に会場中が歓声を上げ、揺れる。

 

「今回、30年ぶりにイギリスで行われるこの大会に魔法大臣のコーネリウス・ファッジ大臣はもちろんのこと、さらに素晴らしい来賓に来ていただいてます。

――――イギリス王室からジョー殿下にお越しいただいてます!!」

 

 会場のもっとも目立つ場所、高さ、横ともに中央の位置に客のいない空間があり、そこで1人の男性が手を振っていた。会場が歓声で湧く中、イーニアは殿下周辺にいるボディーガードや防御魔法に目がいった。明らかにわかるように配置されている。まるで暗殺できるものならやってみろと言わんばかりの布陣だ。

 

「あれが王室特務…。」

 

「何か言ったか?」

 

 隣に居たジョージが声をかけたがイーニアは何でもないとはぐらかす。

 試合が開始され、イーニアはホグワーツで行われるクィディッチとはまるで迫力が違いに先ほど気になったことなど忘れて試合を楽しんだ。結果は150対190でアイルランドの勝利。イーニアたちの賭けも大勝利を飾ることとなった。

 

 試合の熱が冷めず、どこのテントもお祭り状態で、もちろんハリーたちも興奮が収まらない様子だった。イーニアはアリシスにかけられた魔法を解くために、1人落ち着きながら賭け金を分け始めたとき。

 魔法の穴を見つけ解くことに成功したイーニアだったがそれよりも重大なことに気が付きフレッドとジョージのもとへ賭け金を持って近づいた。

 

「フレッド!!ジョージ!!これレプラ―――。」

 

「全員いるな!!?」

 

 入ってきたアーサーにイーニアの声はかき消される。中に居た全員が駆けこんできたアーサーを見た。

 

「どうしたのさ。そんなに慌てて。」

 

「避難するぞ!!荷物は持つな!!行け!!」

 

 突然のことに皆、戸惑いつつも外に出ると、あちらこちらで火の手が上がっていた。

 

「森に逃げるんだ!!私は魔法省に加勢に行く!!」

 

 アーサーはそういうと杖を持ち駈け出した。アーサーの指示に従い、駈け出すイーニアたち。森に向かっていると途中でこの騒ぎの原因が視界に入る。

 

「死喰い人…ッ!!」

 

 イーニアの言葉に全員が息を飲む。それでも足を止めることなく進んでいたイーニアたちだったが、女の子が1人座り込んでおり泣いているのが見えた。さらに死喰い人が女の子に近づいている。イーニアは強化魔法と浮遊魔法を自分にかけると人の波を飛び越え、女の子の元へと着く。

 

「大丈夫?立てる?」

 

 女の子は泣きじゃくりながら肯き、そのままイーニアに抱きついてきた。イーニアも女の子を抱きかかえ、立ち上がると死喰い人が愉快そうな声を上げながら近づいてきた。

 

「おーおー。ガキを襲おうと思ったらずいぶん良いのが釣れたぜ。」

 

 イーニアは特にそれに受け答えせず女の子を抱えたまま逃げる。しかし数歩動いたときに違和感を覚え振り返った。死喰い人との距離が離れていない。気が付けば動いたはずなのにさっきと同じ場所に立っていた。イーニアが死喰い人を睨みつけると笑い声をあげる。

 

「はっはっは……。なんでって顔だな。

――いいぜぇ。俺は気前のいい男だから教えてやる。何、簡単な話だ。俺を中心としてお前との距離を固定しただけのことだ。だからお前が走っても俺との距離が離れなかったんだ。」

 

 死喰い人はそこまで言い、言葉を区切ると杖を振った。イーニアがそれに警戒し構えた瞬間、男が真後ろに現れ、イーニアの腰と尻を触った。

 

「ひゃぅっ!?」

 

「良いケツしてんなぁ――――うおぉ!?あぶね!!」

 

 触られたイーニアは女の子を抱えている逆の手に刀を生成し、思いっきり振った。刀は死喰い人の仮面を切り裂き、さらに頬を切った。

 

「ちっ!!顔を切った。――あぶねぇことしやがる。」

 

 男は顔を隠すために深くフードを被る。イーニアは顔を少し赤くしながら男を強く睨みつけた。

 

「ま、強気の女の方がヤリがいがあるってもんだ。」

 

 男はもう一度杖を振る。

 瞬間、男は体が飛ばされる感覚に陥った。あっという間に違う場所に飛んで行った男にイーニアの声が聞こえる。

 

『案外、わかりやすい、簡単な魔法だったよ。変態。唱えた瞬間に私を中心に唱え直して距離を離れられるだけ離させてもらった。2度と――。』

 

 途中で声が途切れ、男はどこだかわからない場所に落ちた。

 

 イーニアは一息吐くと刀を消し、触られた場所を埃を落とすように掃う。

 

「もう、最悪。」

 

 そう呟き、その場から離れようとしたとき、緑色の光を放つ巨大な髑髏が夜空に放たれた。そして死喰い人が次々と姿現くらましでどこかへ飛んでいく。

 

「闇の印……。」

 

 

――――――――――――――――

 

 

 その後、逸れていたハリーたちと合流すると、魔法省の闇払いの魔法使いたちが訪れ、闇の印を作った犯人と疑わられたり、バーテミウス・クラウチの屋敷しもべ妖精のウィンキーが闇の印を作ったとされ、解雇されていたりと慌ただしかった。

 

 

 

 夏休みは終わり、イーニアたちの4年目が始まる。

 

 

 

 

 

 

 




魔法の構成、術式に関しては今回の話では鍵となるものなので、このタイミングで説明を入れました。


痴漢にあうイーニア。
前回、シリウスが言った通りイーニアは美少女の分類に入る上に女性としても成長しているので死喰い人さんもつい襲いたく……ry


年齢を言うのを防止する魔法
読んで字のごとく。紙に書くのも遠回しに言うことも不可。

距離変動魔法、スパチーム
中心となるモノとの距離を変化、固定させる。
死喰い人はこれでイーニアとの距離をとても遠くにされ、どこかへ行ってしまいました。



誤字脱字などございましたら、遠慮なくご報告ください。
感想お待ちしています。



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ゴブレットと4人目

いつもより長い!!


ではどうぞ。




 

 ホグワーツに向かう日、イーニアは珍しくハリーたちとではなくフレッドたちと汽車に乗っていた。

 

「全部、レプラコーンの金貨とは……。」

 

 忌々しく言うイーニアは金貨が入っていた袋を横目にため息を吐く。

 騒ぎの前にレプラコーンの金貨が混じっていることに気が付いたイーニアはフレッドとジョージに話をし、すぐにでも抗議しに行こうと思っていた。しかし騒ぎのせいでそれどころではなくなり、結果、バグマンを逃がしてしまった。3人は魔法省に乗り込もうと考えたがアーサーに止められ、仕方なく手紙を出したが返事は無く機嫌だけが悪くなっていった。

 

「やっぱり乗り込みに行けばよかったな。」

 

「そうだな。少なくとも元金くらいは返してもらわんと腹の虫が治まらない。」

 

「手紙も返さないとか…もう人としてどうなの。」

 

 あまりにも不機嫌な3人に、今、ここにちょっかい出す奴が居たらきっと星になれるな、とリーは思いつつも苦笑いをして黙っていた。

 

 

―――――――――――――――――

 

 

 去年同様、組み分けが行われ、食事を食べた後。ダンブルドアがいつも通りの注意事項を述べた。そして

 

「今年は寮対抗クィディッチ試合を中止とする。」

 

 フレッドやジョージ、所謂、クィディッチ狂の人間が固まり顔面が真っ白になっていた。ハリーもショックで固まっている。ショックのあまり魂が抜けそうな勢いの生徒たちに説明をしようと再びダンブルドアが口を開こうとしたところ、大広間の扉が開き1人の男が入ってくる。男は顔中に傷跡が残り、左目がブルーの義眼だった。男はダンブルドアと一言二言交わすと席に着き、ダンブルドアが紹介をする。

 男はアラスター・ムーディ。かつて魔法省で闇払いをしていて、数多くの闇の魔法使いを逮捕した実績があるらしい。また空席になっていた闇の魔術に対する防衛術の教師に着くらしい。

 

「毎年あそこの席にいる人って何かあるけど今年は大丈夫なのかな…。」

 

 イーニアがそうつぶやくとロンとハーマイオニーは"その冗談は笑えない"と苦笑いをした。

 

「さて、先ほども言いかけたことじゃが、今年は数か月に渡ってイベントを行う。その為のクィディッチ中止じゃ。―――――ホグワーツにて三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)を行うことが決定した!!」

 

「「御冗談でしょう!!??」」

 

 フレッドとジョージが立ち上がりながら叫ぶ。その拍子に食べ物が飛んだのでイーニアは2人を叩いて座らせた。

 

「Mr.ウィーズリーズ、わしは決して冗談など言っておらんよ。」

 

 少し楽しそうに笑うダンブルドアはそのまま大会の説明を始めた。

 

「――と、ここまでは良いかの?よし、よし。最後に一つ、この競技はかなりの危険が伴う。よって17歳未満の生徒は技術的に参加は認めないと魔法省との取り決めじゃ。よいかの?」

 

 年齢が達していない生徒たちから残念がる声が上がる中、イーニアは"質問よろしいですか"と1人、手を上げた。

 

「そのお話は裏を返せば、技術的に問題なければ参加してもよいと言う風にとっても問題ないでしょうか?」

 

「うむ。じゃが参加資格を持たぬ者が参加できぬようにわし自らが目を光らせるが?」

 

「つまりは校長を納得させれば参加できる、と。」

 

 その言葉に生徒たちが騒がしくなる。できっこないという者や、やる気に満ちていく者、冷やかす者。様々な考えが飛び交う中、ダンブルドアは一つ、咳払いをすると生徒たちを黙らせる。

 

「よい、よい。やる気があることはとても良いことじゃ。じゃが、この大会は過去に死者が出ておる。参加資格がある者もない者もそれを肝に銘じておいてほしい。」

 

 ハロウィンの日に各学校から生徒たちが訪れ開催される。イーニアは大会よりもダンブルドアと競える可能性を楽しみにしていた。

 

「イーニア、三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)に参加するつもりなのか?」

 

 話が終わり各自、寮に戻る途中、ドラコがイーニアに話しかけてきた。

 

「うん。そのつもりだよ?――どうかしたの?」

 

 どこか不安そうな顔をしているドラコにイーニアは疑問に思いながら返事をする。

 

「……確証ない話をあまりしたくないんだが……あちらこちらでキナ臭い話が上がっている。今回の三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)も……。」

 

 負目を感じているようなそんな印象を受けたイーニアはドラコのおでこをぺちっと叩いた。

 

「痛ッ!!イーニア!なにを――。」

 

「顔が気に食わない。」

 

「んなッ!?」

 

「ルシウスさんから何かを聞いたんでしょ?」

 

「ッ!!――たまたま話しているのを聞いた。集まる、と。―それから色々伝手使って調べたんだがどうも……。」

 

「怪しい感じがする、と。でもドラコが負目を感じるようなことでもないでしょ?気負いしすぎだよ。」

 

「だがッ!!」

 

 ヒートアップしてきたドラコにため息を吐くとイーニアをドラコの手を引っ張り抱きしめた。黙ったのを確認すると離す。

 

「落ち着いた?」

 

「……驚かすな。」

 

 抱きつかれて顔を赤くしているドラコを見て笑うイーニア。

 

「笑い事じゃない。もう少し女性として意識を持って――。」

 

「こんなこと信用してる相手にしかやらないに決まってるでしょ。」

 

 イーニアがなにを言っているんだと言わんばかりな顔をすると、ドラコは"君たちはスキンシップが激しすぎるんだ"とハリーたちも含め、ため息で返した。

 

「可能性の話だけなんだからそこまで深く考えないの。」

 

「………わかった。だが…くれぐれも無理はするなよ。」

 

「わかってる。…ドラコもだよ?」

 

「ああ、わかった。」

 

 渋々、と言った感じだったがドラコは納得したように肯き、2人はその場を後にした。

 

 

―――――――――――――――――

 

 

 皆、三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)が気になっているせいか授業に集中しておらず、各寮の点数が上がったり下がったりしていた。

 そんな中、イーニアはいつもより魔法の研究に力を入れ、ダンブルドアを納得させる方法も模索していた。しかし、それに集中していたせいか、ハーマイオニーが知らぬ間に【屋敷しもべ妖精福祉振興協会】なるものを立ち上げ、屋敷しもべ妖精の権利獲得のために右往左往していた。

 しかもそれを話題にまたロンと一悶着あったらしく、ハリーの苦労が絶えない様子に愚痴をイーニアが聞くことにしていた。

 

 今年もどんな授業をするのか色々な意味で注目されているハグリッドの魔法生物飼育学の授業。

 ハグリッドは尻尾爆発スクリュートと言う殻を剥かれた奇形のロブスターの様な姿した奇妙な生き物を出してきた。去年の授業より悪化しているような気がして、そのまま頭を抱えるイーニアたち。ハグリッドはこれを育てるプロジェクトを行うようだったがスリザリン生からこれを飼う意味を問われ、ハグリッドは黙ってしまった。イーニアたちもこればかりはフォローのしようがない。

 ハグリッドは誤魔化しながら無理やり授業を進め、ひとまず危険な生き物ではないことがわかったので渋々ながらも皆、飼育についての話を聞いた。

 

 

 そしてこれまた去年同様、注目の闇の魔術に対する防衛術の授業。フレッドとジョージの話によると、とてもクールでそしてクレイジーだと話していた。

 少しざわつきながらも待っていると教室に入るなりムーディは教科書を仕舞う様に指示する。

 

「アラスター・ムーディだ。元闇払いであり、魔法省に勤めていた。

――魔法省によればわしが教えるのは闇の魔法に対する反対呪文ということだが、それだけでは駄目だ。唱えるべき闇の魔法とは何か。それをお前達は知る必要がある。」

 

 ムーディの義眼がぐるぐると動き、見回す。そして闇の魔法で禁じられている魔法について聞いてくる。数人の生徒が手を上げ、3つ、上げていく。磔の呪文、服従の呪文、そして死の呪文。

 

「そうだ。これらは許されざる呪文と呼ばれていて、人に対して使用すればアズカバンでの終身刑を受けるほどの罪になる。」

 

 そこまで言うと小瓶から蜘蛛出し、肥大化させていく。イーニアは思わず椅子を後ろにやり目を背ける。ムーディに操られ、目の前に来た蜘蛛を見て少しパニックを起こしそうになったが、隣に座っていたハーマイオニーの手をしっかりと握り何とか落ち着きを取り戻す。

 その後も磔の呪文や死の呪文などを使用して見せ、皆、精神的に疲れたようだったが、蜘蛛が自分の目の前に来たことで頭がいっぱいになっていたイーニアはムーディの話を半分も聞いておらず、磔の呪文や死の呪文を見てはいたものの頭にまったく入っていなかった。

 

 

* * *

 

 

 

 皆が待ちに待ったハロウィン。

 城の前で出迎えのため待っていると天馬が馬車を引いて飛んでくる。天馬が降り立つと中からハグリッドより少し高い女性が出てくるとダンブルドアが挨拶を一言二言挨拶をすると、ダンブルドアから紹介が入る。

 オリンペ・マクシーム、ボーバトンの校長でフランス人。本人曰く、巨人族の血は流れていないらしい。

 紹介が終わると生徒たちが次々と馬車から下りてくる。制服らしい格好をしているのだが防寒着を着ていなく寒そうだった。

 寒いので中に入ろうかと会話していると突然湖から船が上昇してくる。錨を下すと中から防寒着をしっかりと着た生徒と思われる男たちとそれを先導する男がやってくる。そしてダンブルドアと挨拶を交わすと先ほどと同じようにダンブルドアから紹介が入る。

 イゴール・カルカロフ、ダームストラング専門学校の校長で元死喰い人。魔法省と司法取引して釈放されたとか。

 

 校長同士の積もる話があったがボーバトン生が寒そうにしていたので城の中に入り、大広間でパーティーを開くこととした。食事はクィディッチ選手であるビクトール・クラムを見てテンションが最高潮まで上がったロンを宥めつつも他校との交流もあり楽しいものとなった。

 そして食事も終わるとダンブルドアが立ち上がる。

 

「時は来た。三大魔法学校対抗試合はまさに始まろうとしておる。【箱】を持ってこさせる前に、一言二言説明と、まだこちらのお二人を知らない者のためにご紹介しよう。」

 

 ダンブルドアから来賓としてバグマンとクラウチが紹介される。バグマンの姿を見た瞬間、イーニアはフレッドたちと目配せをしてニヤリと笑う。

 試合はバグマンたちと校長3人を入れて5人で審査を行うらしい。そして選手の審査となる【箱】のお披露目。

 

「知っての通り、試合を競うのは3人の代表選手じゃ。参加3校から各一人ずつ。課題は三つあり、代表選手は様々なことを試され、一番ふさわしい者が優勝杯を獲得する。そして

―――代表選手を選ぶのは、公正なる選者、【炎のゴブレット】じゃ。」

 

 ダンブルドアが【箱】を杖で叩くと木のゴブレットが姿を現し、同時に青白い炎が燃え盛った。

 

「代表選手に名乗りを上げる者は、羊皮紙に名前と所属校名をはっきりと記載し、このゴブレットの中に入れなければならぬ。明日のこの時間までにじゃ。明日、ゴブレットは各校を代表するに最もふさわしいと判断した3人の名前を出す。

このゴブレットは玄関ホールに置かれる。17歳に満たない生徒が入れないよう、その周囲にはわしが年齢線を引くことにする。

―――じゃが、先日ホグワーツの生徒から質問があり、わしの魔法を抜けることができれば技術的問題ないと判断し、年齢関係なく参加を認めることが決定した。抜けることができれば、じゃがな。」

 

 実力次第では17歳でも参加が可能の内容を聞き、大広間はやる気に満ちていた。

 

 

* * *

 

 

 翌日、休みと言うこともあり朝から生徒がゴブレットが置かれている玄関ホールに集まっていた。抜けることができれば参加可能という言葉に多くの17歳に満たない生徒たちが挑戦しているが、まだ誰も成功していない。

 一番早くにホールに着き、朝食のパンを片手に構築式を解析しているイーニア。空中に次々と文字や絵を描いていき、時折杖で地面に線を引いている。その光景をホグワーツの生徒以外も興味も持ち、見ている。

 ハリーやハーマイオニー、ロンも近くでイーニアの様子を見ていたが話しかけてもあんまり反応がなく、集中しているようだったので、ハーマイオニーはイーニアの隣で読書をし、ハリーとロンも適当に過ごしていた。

 そして昼過ぎ、フレッドとジョージがノリノリでホールに入ってくるとホグワーツ生は拍手で迎える。2人はイーニアに近づくとハーマイオニーに少し退いてもらい、集中しているイーニアの両サイドに座る。2人は同時にイーニアの肩を叩き声をかけた。

 

「「イーニア!!できたぞ!!」」

 

 声をかけられたイーニアはビクッとなると左右を見て、現状を理解した。

 

「意外と速かったね。――じゃ、2人のお手並み拝見といこうかな。」

 

 その言葉と同時に2人は立ち上がり、ホグワーツ生から歓声が上がる。2人は腕を交差させながら小瓶の中身を飲んでいく。飲み終わり、同時に年齢線を飛び越える。すると2人は弾かれることなく中に入ることに成功した。さらに歓声が上がる。そしてそのままゴブレットの中に名前が書かれた紙を入れようとしたとき、イーニアが何かに気が付いて近くにいた生徒たちに声をかけた。

 

「あーー、危ないから離れたほうがいいよ。」

 

 イーニアの指示で生徒が下がった瞬間、2人は紙を入れた。何も起きず、達成したと誰もが思ったその時、ゴブレットから炎が飛びだし、フレッドとジョージを襲った。炎を受け、転げまわった2人を見ると白髪に白髭を生やしたおじいさんになっていた。皆から笑いが起きる。

 イーニアは笑いながら、お互いのせいにしながら取っ組み合いしている2人に近づいて、【老け薬】の反対の【若返り薬】を渡した。

 

「あはははは………。あー、面白い。はい、これ飲んで。」

 

 差し出された小瓶を見て、きょとんとなる2人。

 

「何?その顔?―こうなること予測してたに決まってるでしょ。私が出した案なんだから。」

 

「女神!!」

 

「天使!!」

 

「じじいが抱きつくな!!」

 

 元に戻る薬を用意していたイーニアに2人は喜び抱きつこうとしたのでイーニアは胴体を蹴った。転がった2人を見て、笑いが起きるのと同時に見事な蹴りに歓声が上がった。イーニアはやれやれといった感じに、ため息を吐くと元の場所へと戻っていく。戻ると丁度、クラムがゴブレットに紙を入れていた。

 イーニアはそれを横目に再び解析に戻る。ハーマイオニーもイーニアの隣に戻り、読書を続けようと本を開いたがイーニアが集中する前に声をかけた。

 

「イーニア、もうあんまり時間ないけどできるの?」

 

「え?私はもう入れたよ?」

 

「「「「「は?」」」」」

 

イーニアがしれっとした顔で答えると皆、固まった顔をした。

 

「入れたよ?午前中に。」

 

「え?じゃあイーニアは今、何を調べているの?」

 

「ゴブレットの仕組み。年齢線よりこっちの方が興味があって、しかも結構複雑だから楽しくてね~。」

 

 イーニアはそういうとひょいっと線の中に入り、ちょうど入れようとしていたセドリックの紙を預かるとゴブレットに入れる。それを見て皆、唖然とする。数十秒、誰もが固まっていたが途端に歓声が上がり、皆近寄ろうとしたが近づいた生徒が全員17歳未満だったので弾かれる。

 

「ごめんごめん。線から出るね。」

 

 弾かれた生徒たちを見て笑いつつもイーニアは線から外に出た。出た途端、囲まれぐちゃぐちゃにされる。フレッドとジョージはさっきのお返しと言わんばかりに頭をべしべしと叩いてきた。

 

 

 

 そんな騒ぎがありつつ、夕食後。ダンブルドアが立ち上がり喋り出す。

 

「さて、ゴブレットは誰が試練に挑むべきかほぼ決定したようじゃな。代表選手に選ばれた者は大広間の前まで来た後に、隣の部屋へと向かいなさい。そこで最初の指示が与えられることじゃろう。」

 

 ダンブルドアはそういうと杖を振り、大広間の明かりを一部消した。次の瞬間、ゴブレットが赤く燃え上がり焦げた羊皮紙を1枚出す。落ちてきた羊皮紙をダンブルドアが掴むと読み上げる。

 

「ダームストラングの代表選手は――ビクトール・クラム!!」

 

 盛大な歓声と拍手が起きる。クラムは立ち上がるとダンブルドアの方に歩いていき、隣の部屋へと入っていく。すると大広間は再び静かになり、ゴブレットが燃え上がる。

 

「ボーバトンの代表選手は――フラー・デラクール!!」

 

 再び歓声が起き、銀髪の少女は立ち上がると優雅に隣の部屋へと向かっていった。またゴブレットが燃え上がるとダンブルドアが羊皮紙を掴む。中身を見て、少し考えたようだったがしっかりとした声で読み上げた。

 

「ホグワーツの代表選手は――イーニア・シュツベル!!」

 

 イーニアは呼ばれたことにガッツポーズをするとハリーたちグリフィンドール生とハイタッチをしつつ歓声の中、前へ進み隣の部屋へと入っていく。

入るとクラムとデラクールは暖炉の周りにいた。イーニアもそこに近づいていく。

 

「君がホグワーツの代表選手ですね。よろしくお願いします。」

 

 少し言い難そうなクラムの英語にクスッと笑うとイーニアはブルガリア語で返してあげた。

 

『よろしく、クラム。喋りづらかったらこっちで話してもらってもわかるよ。』

 

『君はブルガリア語がわかるのか?』

 

『読書が好きで海外の本も読むから、ついでに勉強したの。』

 

 クラムと会話しているとデラクールが困った顔をしつつ英語で話しかけてくる。

 

「なにを、はなしてーるのです?」

 

『よろしくって話してるの。――デラクールもよろしく。』

 

『あら、フランス語が話せるの?ということはさっきのはブルガリア語?』

 

『うん。他の言語もいくつか喋れるよ。』

 

『嬉しいわ。わからないことがあったら貴女に聞くことにしようかしら。』

 

『答えられる範囲なら。』「名乗っていなかったね。ホグワーツ代表、イーニア・シュツベル。よろしく、2人とも。」

 

 フランス語から英語に切り替えて名乗りを上げるとイーニアは2人に握手を求めた。3人が握手を交わしているとハリーがとても不安そうな顔をして入ってきた。イーニアはハリーを見た瞬間、眉間にしわが寄る。見事、アリシスの予感的中、ということなのだろう。伝言を頼まれたという可能性もまだあるので一応、どうしたのか聞いておく。

 

「どうしたの?ハリー?」

 

 ハリーが答える前にダンブルドアを筆頭に次々と人が部屋に入ってくる。

 

「すごい!いや、まったくすごい!信じがたいかもしれんが、4人目の代表選手だ!!」

 

 バグマンがハリーの肩を掴みつつ、高らかに言う。

 

『あれ、あの人のジョーク?』

 

『先生方も大急ぎで来たところ見ると違うんじゃない?』

 

 デラクールがイーニアに話しかけるとイーニアは苦笑いしつつ答える。その後ダンブルドアはハリーを問い詰める。

 

「ハリーが嘘をついていると思うなら【真実薬】でも飲ませればいいんじゃないですか?」

 

 イーニアは最初から疑ってかかっている全員の態度が気に食わなく、ぶっきらぼうに言う。

 

「だいたい、年齢線を抜ければ認めるって話でしたし、仮にハリーがいれていたとしてもゴブレットから出てきたのはハリーの問題ではなく、そちら側でしょう?」

 

 イライラを隠さず言うイーニア。

 

「少なくとも、私が朝からいた分にはハリーは入れてません。入れた人間の顔は全員見てます。」

 

「イーニア、君はどうやって年齢線を越えたのかね?」

 

「17歳以上のところに私の名前を加えただけです。特に複雑に組まれていませんでしたから。」

 

「「「ッ!!」」」

 

 大人たちが息を飲むがわかる。言うのは簡単だが、そう簡単にできることではない。イーニアはため息を吐くと言葉を続ける。

 

「だいだい、あれほどの高度な魔法であるゴブレットをどうにかするにはかなりの腕が必要なはず。一生徒がどうにかできる代物じゃないはずです。」

 

「まさか…解析が終わったのか…!?」

 

 ムーディがかなり驚いたように叫んだ。

 

「終わってませんよ。言ったじゃないですか、一生徒がどうにかなるもんじゃないって。構築式からの解析はやろうと思ったら、今の私じゃ1ヶ月はかかります。

――4つ目を出したってことはゴブレットが4校目があると判断し、そこに入れられていたハリーを出した、と考えるのが普通じゃないですか?」

 

 イーニアの言葉に静まり返る校長含む教師たち。

 

「異例の事態が起きたからって取り乱しすぎです。先生方が落ち着いて対処しないでどうするんです。」

 

 イーニアの言葉にダンブルドアは一息吐くと肯く。

 

「そうじゃな。確かにその通りじゃ。――出てしまったものは仕方がない。ゴブレットの炎も消えてしまった。」

 

「彼を参加させるのですか?」

 

「それ以外方法はないじゃろう、ミネルバや。ゴブレットは、はるか昔に作られた魔法契約を結ぶ器じゃ。無理やり解除すればどうなるか……。」

 

 それを理解しているのか校長たちは何も言わず下を向いている。重い空気になっていたがクラムはあえて空気を読まずにハリーに話しかけた。

 

「なん人、いてもヴぉくは構わない。勝つのはヴぉく、だからね。全力を出し合おう。ハリー・ポッター?」

 

 ハリーは戸惑いながらも差し出された手を掴み握手を交わす。

 

「そーですねー、クラムの言うとおり。でも勝つのはわたしです。」

 

 デラクールもクラムの言うことに賛同し、ハリーに握手を求めてくる。ハリーはデラクールとも握手をすると、クラムたちが参加に否定的でないおかげか顔色が良くなっていた。それを見て少し安心したイーニアもハリーに近づき握手をする。

 

「今年も色々ありそうだけど、お互い頑張ろう。」

 

 苦笑いしつつ言うイーニアにハリーも苦笑い。

 その後、クラウチたちも含め協議されたが魔法契約を解除することはできない為、ハリーを4人目の参加者として認めることとなった。

 

 

 

 

 




思ったんですけどハリーが選ばれたとき教師たち、慌て過ぎな気がするんですよね。そんなに想定外だったのか…。

原作と違いセドリックが三大魔法学校対抗試合でれなくなりました。
安心するんだセドリック、まだ出番はあるぞ。

未成年が魔法使用時に出る臭いの魔法を解除しているイーニアに年齢類魔法の年齢線は敵ではない!!と言った感じで年齢線を簡単に越えさせました。



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感想お待ちしています。


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杖とドラゴン


暗くなく、明るく。


ではどうぞ。





 

 

 

 イーニアとハリーがグリフィンドールの談話室に行くと大騒ぎだった。

「我らがポッターがやったぞ!!」とか、「さすが我らの姫!!」とか。お祭り騒ぎだった。あまりにも大騒ぎだったのでイーニアは面倒事になる前に部屋へ戻ろうとしたがハリーが見つかり、その流れでイーニアも捕まる。

 

「おっと、逃がさないぜ。主役がどっか行っちゃダメだろ。」

 

「そうだぜ。―――主役席へご案内ー!!」

 

「はーなーせ!!こういうときだけ力を発揮するな!!」

 

 フレッドとジョージに両腕を掴まれ、足を浮かしながら連行される。2人はイーニアを椅子に座らせると椅子を使って持ち上げようとしたので思わず叫ぶ。

 

「ちょっと!?スカートだから持ち上げないで!!」

 

「む、それなら仕方ない。――ひとまず、インタビューでもするから目立つ位置に!!」

 

「よしよし。ちゅうもーく!!」

 

 イーニアはため息を吐きつつも、ハリーと違い自分で参加することにした手前、見世物にされるのは仕方ないと腹を括り、部屋の中央へと行く。イーニアとハリーが中央へ集まると部屋は静かになる。

 

「さーて、2人とも。今の気持ちは?」

 

「かなり戸惑ってる。」

 

「うんうん。ハリーは仕方ない。―では次、イーニア。」

 

「ここまでお祭り騒ぎの皆に動揺してる。」

 

「「大会への気持ちを表せよ!!」」

 

 2人の突っ込みに笑いが起きる。

 

「イーニアが年齢線を越えたのはここに居るほとんどが見てるから問わないとして…、ハリーの名前が出てきたのはなんでだと思います?イーニア先生?」

 

「存在しない4校目としてハリーの名前が入れられた、て言う可能性かな。」

 

「なるほどなるほど。そんなことできるのかは置いといて…――。」

 

 ジョージがそこまで言うと視線をハリーに移し、皆もハリーを見る。

 

「な、なに?」

 

「こうやって過去を踏まえてハリーを見ると、本当に不幸だな。」

 

 ジョージが言い、フレッドがハリーの肩にポンッと手を置くと皆が肯く。ハリーは皆が肯くのを見てショックを受けたような顔をした。

 

「皆して肯くのは酷くない!?」

 

「まあまあ、優勝すれば賞金手に入ることだし、戸惑ってるかもしれないがこの逆境を乗り越えるんだぞ!!生き残った男の子よ!!」

 

 笑いながらフレッドがバシッバシッとハリーの肩を叩く。ハリーは少し不満そうな顔をしたが、グリフィンドール生の誰もがハリーが不正をしたと思っていないことにハリーは安堵を覚えた。

 

「インタビューを続けよう!!――2人は優勝する気は?」

 

「よくわからず選ばれたけど、やるからには全力で挑むよ。」

 

「おお!ハリーから強気の発言が出た!!これは期待できる!!」

 

「私は元々優勝する気でゴブレットに入れてる。」

 

「イーニアからは優勝宣言だ!!」

 

 それからマクゴナガルが訪れるまで大騒ぎだった。

 

 

――――――

 

 

「凄い騒ぎだったね。」

 

 マクゴナガルに怒られ、解散となった談話室。散らかった部屋を片付けながらイーニアは少し疲れた顔していた。

 

「本当、皆、お祭りが好きよね。」

 

「経緯はどうあれ、2人も代表に選ばれたんだ。そりゃ大騒ぎさ。」

 

 ハーマイオニーは呆れたように言うとロンが少し苦笑いしながら言う。

 

「ハリーの名前が出てきたのは本当にびっくりしたわ。私たち、ずっとゴブレットの前には居たけどイーニアの付き添いしてただけで何もしてないのに。」

 

「でも、皆それをわかってたからハリーを疑わなかったんだろ?」

 

「僕は…少し心配だったよ。不正したんだろって責められるんじゃないのかって。」

 

「不正を疑わられるならあれだけ構築式を書いてた私だと思うけどね。」

 

 少し暗い表情で言ったハリーにイーニアは少し笑いながら答えると3人も確かに、と笑った。

 

「あんまり周りを気にするなよ、ハリー。――隣の芝生は青く見えるっていうから。」

 

「ロンもそう見えてるのかい?」

 

「ジョーダン。賢者の石の時やバジリスクの時、去年は手助けできなかったけど、ずっと君を見てきたんだぜ?君の苦労は理解しているつもりだよ。」

 

「…ありがとう。」

 

 2人は笑い合い、手を握り、そして抱き合った。そんな光景を微笑ましく見ているイーニアは椅子を元の位置に戻し一息吐く。

 

「よし。これくらいかな。――お互い頑張ろうね。ハリー。」

 

 片付けを終わらせ寝ることにしたイーニアはハリーに声をかけるとハーマイオニーと共に部屋へと向かった。

 

 

 ハロウィンから数日が経ち、他の寮生からのハリーの印象はいいものではなかったが、それでもグリフィンドール生はハリーのことを疑っていなかったのでハリーはそこまで落ち込むことなく、日常を送っていた。

 イーニアは優秀な4年生としてどこに行ってもチヤホヤされていたので逆にうんざりしていた。

 

 

* * *

 

 

 過去の資料を探した結果、第一の課題は魔法生物から生き残るものが多いとわかったある日の闇の魔術に対する防衛術の授業。ムーディが服従の呪文をかけると言い出し、ハーマイオニーが反論したがダンブルドアから許可をもらっていると言われ黙る。

 1人ずつ並び、ムーディが服従の呪文をかける。ダンスを踊らされたり、スクワットしたり、動物のマネをさせられていく中、ハリーの番が回って来た。ハリーはかけられた後、抵抗するようにもがいていたが、膝をついたので皆、ハリーでも無理だったかと諦めかけていた。しかし膝をついたまま動かず固まっていると突然叫ぶ。

 

「嫌だ!!」

 

するとハリーは立ち上がる。ムーディはそれを見て褒め称えた。

 

「よくやった!!ポッター!!お前たちも見たか?ポッターが服従の呪文を破ったぞ!!」

 

 褒められながら後ろに戻るとクラスメイト達に揉まれていた。楽しそうな光景を見つつ、イーニアの番が回ってくる。ムーディがイーニアに服従の呪文をかけるとイーニアは笑みを零したまま、特に動く気配はない。

 

「どうしました?」

 

 ニコニコと笑いながらイーニアはムーディに話しかける。ムーディはいくらやっても服従の呪文が効かないイーニアに聞く。

 

「シュツベル、お前何をした?」

 

「どういう意味です?」

 

「服従の呪文は少なくとも抵抗してるのはこちらにもわかる。それなのにお前は抵抗もなく、しかし従うこともない。」

 

 イーニアはその言葉を聞くと、どこか妖艶に笑った。

 

「自分に服従の呪文をかけました。」

 

「ッ!!?――――お前は今何に幸福感を感じているのだ。」

 

「自身の身体が思う様に動くこと、そして先生にそんな顔をさせたことですかね。」

 

 頬を紅く染めとても楽しそうに笑うイーニアを見て男子生徒たちは思わずドキッとなる。ムーディは対応したことを認め、次の生徒を呼ぶ。イーニアは笑いながら後ろに行きつつも、ハリーたちの元に戻るころにはいつもの顔に戻っていた。

 

「よくあんなことやるわね。」

 

「幸福感を感じるって言ってたから自分でかけたらどうなるか気になるじゃない。――ぶっつけ本番ではあったっけどね。」

 

 いつもの様子のイーニアに安堵するハリーたち。

 

「特に問題なさそうでよかった。――――でもあの顔は……。」

 

「ああ、あれは人前で見せていい顔じゃないな。」

 

「え?そんな変な顔してた?」

 

 ハリーとロンは顔を見合わせると一度ハーマイオニーの方を見る。ハーマイオニーが知らないと言った顔でそっぽを向いてしまったのでロンが仕方なく口を開く。

 

「なんていうか……その………エロかった……。」

 

「エロッ!?」

 

 思わず大きな声が出そうになり自分で口を塞ぐイーニア。ハーマイオニーはため息を吐き、次からは気を付けるのね、と言って再びそっぽを向いた。

 

 

* * *

 

 

 代表選手の杖を調べるとかで、イーニアとハリーは集合する部屋へと向かった。

部屋に入るとすでにクラムとデラクールは到着しており、他にもバグマンや新聞記者と思われる魔女が居た。全員が集まったところでバグマンが話を始める。

 

「競技に出るにあたり、君たちの杖が万全であるかを確かめる。専門家がダンブルドアと話をしているが直に来るだろう。来るまでの間、ちょっと写真を撮る。ああ、こちらはリータ・スキータさんだ。」

 

 スキータは軽く頭を下げるとイーニアとハリーを凝視している。写真を撮ったが、まだ専門家がまだ来ないようだったのでスキータがイーニアたちに話しかけてきた。

 

「2人は最年少の2人でしたわね。んんう、素敵ざんす。」

 

 言葉のどこか気色悪い感触を覚えたイーニアは後ろに下がる。ハリーも嫌な顔をしていた。視界の端に映ったクラムとデラクールが同情したような顔をしていたところを見ると2人もこれの猛襲を受けたようだった。

 イーニアとハリーはスキータのねっちょりとした取材にうんざりしたころ、杖の専門家、オリバンダーが訪れ杖を見せることになる。

 

「これは……この杖はわしが売った記憶は無いが知っておる。」

 

 イーニアが杖を渡すと感激したように杖を持った。

 

「それは私が…シュツベル家に代々受け継いでいるもので、父が亡くなるときに受け継ぎました。」

 

「やはりか!青龍の牙を芯にセッコク……。うむうむ、よく手入れされている。」

 

 オリバンダ―はそういうと杖を軽く振る。すると龍が飛びだしイーニアの周りを回ると消えた。

 

「この杖は君のことを完全に主人だと認識しておる。――生きている間に、この杖を見ることができてよかった。代々、いい主人にめぐり合えている。」

 

 満足そうな顔をしたオリバンダ―はイーニアに杖を返した。

 杖点検が終わり、イーニアはバグマンを捕まえようとすると、すでに姿はなく逃げられていた。内心舌打ちをしつつもスキータにまた捕まるのも面倒なのでイーニアはハリーを連れて部屋を足早に出た。

 

 

―――――――

 

 

 第一の課題が後、2週間後と迫ったある日。イーニアは気分転換にノーバートの背に乗り空を飛んでいた。2人くらい乗せても大丈夫な大きさまで成長したノーバートはロイたちの話だと人間でいう成人らしい。

 そんなロイたちは何処か忙しそうに働いているとハグリッドから話を聞いている。ノーバートもここ数日、どこか落ち着きがなかった。その状況からイーニアは第一の課題はほぼドラゴンであるとあたりをつけていた。ドラゴンの生態については熟知しているイーニアは確認を含みつつ、気分転換にノーバートと空の散歩を楽しんでいる

 

「ねぇ、貴方の仲間が近くにいるみたいだけど会いに行きたい?」

 

 ノーバートはイーニアが行ってはいけないと言った場所には飛んはいかない。勝手に何処かへ行くこともないので、繋いでる鎖はグレイプニルではなく、ただの鎖である。約束事をしっかりと守っているノーバートにイーニアは聞いたがノーバートは特に反応はしなかった。

 

「貴方も淡泊ね。―――向こう側行ってみよ。」

 

 少し呆れつつ、いつもとは違うルートを指示して飛ぶ。

10分くらい飛んだところでノーバートが速度を落とし、地上に意識がいっていることに気が付いた。

 

「なにかいた?」

 

 ノーバートにつられイーニアは地上の様子を覗き込む。良く目を凝らすと森の中に人の集団があり、ドラゴンが目に入った。ロイやサーベイもいる。どうやらドラゴンは火を噴いてご乱心の様だった。

 

「なるほどね。――どうする?」

 

 イーニアがノーバートに聞くとノーバートは森の木のギリギリの高さまで降り飛ぶ速度を上げた。

 風の切る音がイーニアの耳に届く。ノーバートはドラゴンの居た場所へと近づいていくと、そのまま凄まじい速度でノーバートはドラゴンのいた上空を振り返ることなく飛んで行った。

 

 いつものルートに戻ってきて速度もいつも通りになる。

 

「あんなのでよかったの?」

 

 ノーバートのした行動にイマイチ理解ができなかったイーニアは聞く。ノーバートはガゥッと短く返事をすると小屋へと戻っていった。

 

 

 

 その日の夜。談話室でのんびり読書をしていたイーニアは時間外にも関わらず外から戻ってきたハリーに話しかけられる。

 

「おかえり。何か用事あったの?」

 

「うん、まぁね。――そうだ、イーニア。第一の課題だけど――ド「ドラゴン?」――なんで知ってるの!?」

 

「ノーバートが少し落ち着きがなかったし、ロイたちが忙しそうにしてたからね。――それに今日ノーバートと飛んでたら見たわ。」

 

「あー、そっか。―――第一の課題はイーニアの圧勝になりそうだね。」

 

「必ずしもノーバートみたいに言うこと訊いてくれると限らないからわからないよ?」

 

「どうだろ、バックビークの件とかあるからなぁ。」

 

 ハリーがイーニアをジト目で見るとイーニアは困ったように頭に手を置いた。2人はその後も少しドラゴンについて話すと寝るために部屋に戻った。

 

 

 

 

 




ようやくイーニアの杖の話題が出ました。

服従の呪文を自分にかけるというのはオリジナルです。実際は知りません(笑

次回から三大魔法学校対抗試合。
そして始まるイーニア無双!!←


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第一の課題とパートナー

訳について調べてはいけません。いいですね?



ではどうぞ。





 

 第一の課題の日、当日。

 イーニアはいつもの時間に目覚め、いつもように運動をすませると朝食を取り、部屋に戻るとアリシスからもらった服を着る。

 グリフィンドールを連想させる赤をベースに黄色や緑のラインが入ったフード付きのコート、パンツ、ソックス、重厚感あるブーツ、グローブを着ていく。髪を結びイヤリングを耳に付けるとイーニアは部屋を出た。

 

 

 テントへ入るとハリー以外がそろっており、それぞれ不安そうな顔で椅子に座っていた。イーニアも自分の席に座り、待機する。それなりに緊張はしているがガチガチになるほどではない。ドラゴン対しては他の選手よりは熟知しているので対処できるであろう、そう考えていた。

 そんなことを考えていると欠伸が出そうになり、口を開けていると、ハリーが少し慌ただしくテントに入ってきた。

 

「おはよう、ハリー。」

 

「おはよう、イーニア。」

 

「寝坊したの?」

 

「あー、うん。今日のこと考えてたら寝るの遅くなっちゃって。――ロンに叩き起こされた。」

 

 そんなハリーに思わずクスっと笑う。顔色や調子を見る限り、他の選手よりずっとコンディションは良さそうだった。

 

「緊張してなさそうだね。」

 

「そうだね。クィディッチの初戦よりはしてないかな。ちゃんと自分で朝食食べたし。」

 

 その言葉を聞き笑いが起きる。クラムやデラクールはなぜ笑っていられるのかと言わんばかりの顔でこちらを見ていた。そんな会話をしているとバグマンがテントに入って来る。

 

「もう全員集合したな。では、いよいよ第一の課題について聞かせる時がきた!!」

 

 バグマンはそういうと紫の袋を出す。

 

「この袋には諸君が立ち向かうものの模型が入っている。模型の種類は様々だ。諸君はそれのいずれかを選び、そして―――選び取った模型のものを出し抜いて金の卵を取る。それが第一の課題だ!!」

 

 デラクールから安堵の声が聞こえた気がしたがバグマンが呼んだのでイーニアが選ぶために袋に手を入れる。

 

「後でお話しがあるので逃げないでくださいね。」

 

 イーニアが笑顔でそういうとバグマンは引き攣った顔をした。イーニアが中で動くモノを掴み手を上げるとスウェーデン・ショート‐スナウト種が手に収まっていた。

 

「スウェーデン・ショート‐スナウト種、4番か。」

 

 その後、フラー、クラム、ハリーの順番で引いていき、クラム、デラクール、ハリー、イーニアの順番で競技を行うこととなる。バグマンは必要事項を伝えるとテントの外へ出ていく。

 

 バグマンとリーの司会が聞こえてくると会場が盛り上がっているのもわかる。

 ホイッスルが鳴り、クラムが出て行った。

 歓声や悲鳴、実況が聞こえる中、イーニアは最終チェックに入る。ハリーも落ち着くように深呼吸をし、集中しているようだった。そう時間が経たないうちに次のホイッスルが鳴り、デラクールがテント出ていく。

 

「ずいぶんと盛り上がってるね。」

 

「みたいだね。――緊張してきたよ。」

 

「嘘。余裕そうな顔してるよ?」

 

「あはは、イーニアほどではないけどドラゴンはずっと触れてきたからかな。」

 

 余裕のある笑いをしたハリー。そしてハリーの番が回ってくる。

 

「頑張って。」

 

「うん、イーニアも。」

 

 ハリーはしっかりとした足取りでテントを出て行った。

 実況がイーニアの耳に届く。少し苦戦しているようだったがハリーは持ち前の箒を手に入れ、ドラゴンを上手く出し抜いたようだった。

 そして再びホイッスルが鳴り、ついにイーニアの番が回って来る。

 

 

 イーニアが競技場へと出ると簡単な岩場ができていた。

 

『ホグワーツ生お待ちかね!!イーニア・シュツベルの登場だぁ!!――おっと!服装がグリフィンドールカラーだ!!この日のために用意したものなのかぁ!?』

 

 リーの実況が聞こえ、とりあえずホグワーツ生が居る方に手を振っておく。正面を見るとすでにドラゴンがこちらを見ていた。イーニアはいつもの足取りでドラゴンの足元にある卵への元へと歩く。イーニアの歩く音だけが聞こえ、歓声もなにも上がらない静かな会場。

 ホグワーツ生は皆、今回の競技内容を聞いた時に他の選手に同情した。ドラゴンとの対峙。どう考えてもドラゴンを飼っているイーニアが有利なのは明白だった。生徒のほとんどがイーニアは襲われることもなく、ただ卵を取るだけで終わると思っていた。

 しかし、ドラゴンは会場の予想を裏切り、イーニアに襲い掛かってきた。あらかじめ身体強化をかけていたイーニアはバックステップでドラゴンの攻撃を避ける。途端に驚きの声が会場中を響かせた。

 

「やっぱうまくはいかないかぁ。」

 

 イーニア自身も動かないドラゴンを見て、このまま取れるかな、などと思っていたがそう簡単にはいかず思わずため息が出る。

 

「ま、仕方ないよね。」

 

 爪を躱し、接近する。しかし口から火を噴かれ、懐に潜り込むことはできなかった。できれば傷つけずに卵を取りたかったイーニアだったがこう元気では近づけないので斬撃魔法を飛ばす。しかし傷一つつけることができず眉を顰める。

 

「ああ、もう。―魔法いくつかかかってるのか。」

 

 ドラゴンと距離を取るといくつも解析魔法を投げる。

 

「うわぁ、かけ過ぎでしょう、魔法。」

 

 手元の解析結果を見てうんざりするイーニア。魔法の内容がイーニア対策で用意されたものであることが明白だった。興奮魔法、錯乱魔法、盾魔法、硬化魔法、身体強化魔法と、ここまでかけたらもはやドラゴンが相手である必要はどこにもないだろう。

 

「大方、錯乱魔法で全然違う姿に見えてるんだろうなー。」

 

 突っ込んできたドラゴンの頭の上を飛び越え呟くイーニア。色々と固められすぎて何も効かない気がしたが一応試すために剣を生成するとドラゴンの目に向けて投擲する。しかし瞳に直撃したはずの剣は弾かれ地面に落ちた。

 

「目は生物の弱点でしょ。――どうしろって――わっととと。」

 

 尻尾が頬を掠め驚く。イーニアは跳躍するとそのまま空を飛ぶ。ドラゴンは追いかけてくる様子はなく、卵からあまり離れようとしない。思わず舌打ちをする。卵を早く取らなければいけないこの競技で卵から離れないという行動は時間がかかってしまうことを意味している。

 飛んだまま、こちらに来ないドラゴンを見つつ考えるイーニア。魔法はかなり複雑にかけられ、解くのには時間がかかってしまう。しかしこのまま正面から挑んでも打ち破るのは難しいだろう。

 

「こんなところで手の内を見せたくなかったんだけどなぁ。」

 

 イーニアもドラゴンも動かず、静まり返った会場にイーニアの独り言が聞こえる。イーニアは杖を持った右手を自身の顔の前で構えるといくつも術式を展開し始め、唱える。

 

Combustio cordis in pectore leonis(胸に燃えるは獅子の心)

      Disposuit in maxilla Fang gladii(顎に並ぶは剣の牙)

           Fieri spe ventus(西風の希望となり)

              Obviam corde in affectio(慈しみにて心満たす)!!」

 

 術式は次々と展開されていきイーニアの周りを覆い尽くしていく。それは美しく、誰もが見とれるものだった。詠唱が終わると展開された術式が杖に集まる。

 

「デクスティリスシャリング!!」

 

 杖をドラゴンに向けたと思うとドラゴンの四方と頭上に魔法陣が出現する。

 

「吹き飛べ。」

 

 イーニアの言葉に反応し、魔方陣がバチバチと音を立てたと思うと、魔法陣から光の柱が出現し、ビームのようにドラゴンを襲った。ドラゴンの叫び声と大きな爆発音と光に皆、俯き耳を塞ぐ。

 

 音と光が止み、土煙が晴れるのを待つ会場。イーニアは土煙の中ドラゴンに近づき、気絶していることを確認すると卵を取る。風を起こし土煙を晴らすと卵を上に掲げ取ったことを示した。

 

『やりました!!!早い!!これは最速だ!!』

 

 リーの実況と共に大歓声に包まれる会場。歓声を余所にイーニアは再びドラゴンに近づき様子を見る。盾魔法を壊したとき他の魔法も壊れたらしく何もかかっていなかった。活力の呪文をかけるとドラゴンは目を覚ます。

 

『おー!!??ドラゴンが起きたぁ!!??』

 

 リーの言葉で会場がざわめいたがドラゴンはイーニアを襲うことはなく、顔をイーニアに近づける。

 

「こら、くすぐったいよ。――あいたた。毛が刺さる。」

 

「やっぱりイーニアはすごいな。」

 

「ああ、こいつの相手は俺たちでも手を焼くのに。」

 

 顔を擦られているイーニアにロイとサーベイが近づいてくる。イーニアはドラゴンの頭を撫でてやるとロイたちの方を向く。

 

「誰なの?この子にあんなに魔法をかけたのは?」

 

「イゴール・カルカロフ。」

 

 サーベイが答えたと同時に審査員席に座っているカルカロフを睨むイーニア。

 

「でも助かったよ。こいつは元々気性が激しいから、あいつが魔法を解かなかったらどうしようかと思ってたんだ。」

 

「――――元死喰い人だけあって実力は本物みたいだからね。」

 

 少し忌々しく言うとイーニアはドラゴンの顔を触り、サーベイ達についていくように言うと採点が出るのを待つ。

 

クラウチ…    8点。

ダンブルドア… 10点。

マクシーム…   8点。

バグマン…    9点。

カルカロフ…   5点。

 

 ハリー、クラムに並び1位。カルカロフの点数のつけ方に会場は不満の声が上がったがカルカロフは特に反応はしなかった。イーニアは多少不満を持ちつつも、公平な審査はされないと思ってはいたので特に口は出さなかった。

 

 選手たちがバグマンに呼ばれ、テントの中へ戻っていく。

 

「さすがは代表に選ばれた選手たちだ。

――さて、では手短に話してしまおうか。第二の課題まで君達には十分な休みが与えられる。第二の課題が行われるのは2月24日の午前9時だ。そして、第二の課題のヒントは君達が獲得した金の卵だ。それが第二の課題が何であるか、必要な準備は何かを教えてくれる!質問はないな?では、解散!」

 

 解散と同時にバグマンを捕まえようとしたイーニアだったがバグマンはすごい速さでその場から去り逃げられてしまった。

 

「チッ!!また逃げた!!」

 

 いつもより荒い口調で言うイーニアにハリーが宥めながら2人は談話室へと向かった。

2人が談話室へと入るとやかましいくらいの歓迎を受ける。よく見ると他寮の人間もいた。賞賛の言葉を受けたり、質問されたり、親しい友人たちには叩かれたり、と前回よりさらに大騒ぎだった。またマクゴナガル先生に怒られるんじゃ、などとイーニアが考えていると生徒の1人が卵の中を見てみたいと言い出し、ハリーとイーニアは同時に開けることにした。

 開けた瞬間、ガラスを引っ掻いたような音を何倍にもした音が談話室に響く。イーニアは反射的に消音魔法をかけ、閉じた。

 

「な、なんだ今のは。」

 

 不快音が部屋に響き、テンションが下がりつつもジョージが聞く。しかしそれの答えを持っているものは居らず、その場は解散となった。

 

 

* * *

 

 

 第二の課題の日が近づいている中、イーニアは卵について何も進んでいなかった。消音魔法をかけ、中身を見てもいまいち理解できず、魔法について解析しても何もわからず、そうなると音に意味があると思い、聞いてみたが、やはり理解できず、手詰まりだった。ハリーも同じらしく卵の前でうーん、と唸っている。

 

 そんなまったく進展しない日々が続く中、マクゴナガルから12月25日、クリスマスの夜に魔法学校対抗試合伝統のダンスパーティーを開くことを聞く。しかも代表選手はパーティーの最初に踊るらしくパートナーを必ず見つけるように、と念を押された。

 ダンスについてそれなりに心得があるイーニアは、それなりに心得があるであろうドラコを誘おうと声をかけようと思い、ドラコの元へと向かったらドラコは多くの女子に囲まれ、パートナーになってほしいと言い寄られていた。

 

「なるほど、あれがモテ期か。」

 

 なんて口に出しつつイーニアは少し困り顔のドラコに声をかけず、そのままその場を後にした。そんな風にモテ期の友人を祝福していたら見事にパートナーを見つけそこね、パーティー前日になってしまう。

 

「困ったなー。代表選手同士で組めればハリーをパートナーに選ぶのに…。」

 

 卵を指先でくるくる回しながら中庭でため息を吐くイーニア。卵をジーッと見ながら呆けていると後ろから声をかけられる。

 

「よう、イーニア。――悩み事か?」

 

 指先の卵を手にキャッチしながら声の方へと振り向く。

 

「フレッド。――1人なんて珍しいね。」

 

「ん、というかよく俺だってわかったな。」

 

「顔を見ればわかるよ。」

 

 フレッドは口笛を吹きながらイーニアの隣に座った。

 

「で、どうしたよ?」

 

「卵の謎が解けない、あとダンスパーティーの相手がいない。」

 

「お、じゃあ俺と踊るか?」

 

「本当?たすか―――え?本当?というかフレッドも相手いないの?」

 

 驚いて勢いよくフレッドの方を見るイーニア。フレッドはそのイーニアの顔を見て、笑う。

 

「ははは、なんだその顔。そんなに意外だったか?」

 

「だって2人とも割と人気あるじゃん。てっきりもう相手いるのかと…。」

 

「違うことに呆けてたら残り物になっちまってな。」

 

 笑いながら言うフレッドにつられて笑う。イーニアは立ち上がるとフレッドの前に立ち右手を出す。

 

「一緒に踊ってくださる?」

 

「ええ、喜んで。」

 

 フレッドはイーニアの前で膝を付き手を取るとそこにキスした。2人は一連の動作が終わると笑いながら寮へと戻っていった。

 

 

 

 

 




課題の内容を悩みに悩み、ドラゴンと戦わせ、尚且つ高位魔法で撃退という形に収まりました。
詠唱はあるゲームのオマージュです。

【デクスティリスシャリング】は殺傷、非殺傷に変えることができる高位魔法です。高位魔法のため詠唱が必要です。
イメージ的にはス○ーライ○ブレイカーやコス○ノ○ァみたいな感じ。
今回は非殺傷で撃ったのでドラゴンが気絶しただけで済みました。


ドラコをパートナーにしようと思ったけど何故か女子に囲まれている姿が想像できたので断念し、フレッドを相手に選びました。
ロン?彼は別にいますよ(たぶん


今回のイーニアの格好のイメージを描いたはいいけれども下手過ぎて挿絵を入れるのをやめました。誰か書いてください←



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ダンスパーティーとお風呂

あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。


ではどうぞ。


 

 

 黒のドレスを着て、支度を済ませると談話室へ降りる。早い時間であったため談話室にはまったく人がいなかったが優雅に椅子に座っているフレッドがいる。いつもと格好が違うせいなのか様になっている。

 

「フレッド。」

 

 イーニアは暖炉の方を向いているフレッドに声をかけ、隣に座った。

 

「結構似合ってるね。」

 

「そいつはどうも。――というか早いな。もっと時間がかかるもんだと思ってたんだが。」

 

「私は皆と比べると化粧とかもあんまりしなくていいからね。というか肌に合わない。」

 

「なるほど。すっぴん?」

 

「流石にすっぴんではないよ。いつも通りかな。―――遅くなると思ってたのにこんな早くから待ってたの?」

 

「女を待たせることなかれ、女を待つ時間こそが至高って読んだ本に書いてあったから実践したところ。」

 

「で、どうだった?」

 

「いまいちわからん。」

 

 その言葉にイーニアはクスクスと笑う。その笑う姿を見ていたフレッドだったが何かを思い出したかのように立ち上がりイーニアを見る。

 

「ああ、言うのが遅れた。綺麗だぜ、イーニア。」

 

「ありがと。」

 

 その言葉に微笑みながら差し伸べられた手を取り立ち上がる。

 

「しかしあれだな。イーニアが微笑んでるからそう感じないが、これで妖艶に笑ったなら完全に悪い女だな。」

 

「やっぱりそう思う?黒髪に黒いドレスなんてそういうイメージ持つよね。」

 

 そんな話をしつつ、2人は腕を組み笑いながら談話室を出ていく。

 

―――――――――――

 

 大広間の扉の前に着くとマクゴナガルが扉の前で立っていた。

 

「おや、2人とも。時間はまだ先ですよ。」

 

「一番乗りってもの悪くないと思いまして。」

 

「先生も、こんな早くからずっと立ってるんですか?」

 

「ええ、まあ、一応。貴方達のように早く来る生徒もいますから。」

 

「へー、で、どうするよ。イーニア。」

 

「フレッド、ダンス経験は?」

 

「多少?」

 

「私も多少。――時間までかなりあるし先生に見てもらいながら少し練習しよっか。」

 

「うげ、マジかよ。」

 

「マジ。ジッとしてても寒いだけだしね。―――それとも談話室で踊る?」

 

「それは流石に嫌だな。――てか踊ること前提なのかよ。」

 

「だいたい座ってた私に手を差し伸べて連れ出したのフレッドじゃない。」

 

「うっ――。わかったよ。」

 

「マクゴナガル先生、音楽流してもいいですか?」

 

「大きな音でなければいいですよ。」

 

 イーニアは杖を取り出し、振ると杖が音楽を奏で始めた。

 

「オーケストラみたいな音楽は流せないけど今はこれでいいでしょ。」

 

「そもそも音楽に詳しくないから違いがあまりわからないけどな。」

 

 そんなことを言いながら踊り始める2人。最初は息が合わずギクシャクしていたが、10分も立たないうちに息ぴったりに踊って見せた。2人ともダンス経験は多少と言ったがマクゴナガルの目には長年付き添った相手のように踊っているように見えた。

 杖から流れていた音楽が止まり、2人もダンスをやめる。するといつの間にか来ていた数組の生徒とマクゴナガルから拍手をもらう。

 

「なんか恥ずかしいな。」

 

「何言ってるの、代表選手は一番最初に踊るからもっと大勢の前で踊るんだよ?」

 

「え?」

 

「知らずに私を誘ったの?――まったく、事前に練習やって正解じゃない。」

 

 呆れた顔をするイーニアにフレッドは困ったように頭を掻いた。

 

 

 そんなこともありつつも、実際に踊った2人は周りを魅了するような踊りを見せつけた。

 

「練習より短い時間だったのに、練習より疲れた…。」

 

 少し息を切らしているフレッドは背中を壁に付けた。そんなフレッドに飲み物を持ってくるイーニア。

 

「はい、フレッド。」

 

「サンキュー。…んくっ…はっー。生き返るー。」

 

「ごめん。少しハードだった?」

 

「いや、クィディッチの試合よりはずっと楽だ。日頃使ってない筋肉が悲鳴を上げてるだけで。」

 

 そんなことを聞きつつも少し申し訳なさそうな顔をするイーニア。そんなイーニアを見てフレッドは気にするなと言うと、疑問を投げかけた。

 

「なんで見せつけるようにやったんだ?」

 

「んー、なんとなく他校生が不満そうじゃない?うちから2人も出たもんだから。」

 

「それは多少はあると思うが、仕方なくないか?」

 

「うん。だからこそ、こう、試合もそうだったけど見せつけたかったの。実力があるぞーって。」

 

「贔屓じゃないって?――ダンスはあんまり関係ないだろ…。」

 

「あるよ。品とかそういうのもでるから。――少なくとも半分以上の生徒の目は集められたと思う。」

 

「そんなもんか?」

 

「そんなもん。」

 

 2人はその後のんびりと食事をしつつ、ハリーやロン、ハーマイオニーとも合流し、食事を楽しんだ。

 

―――――――――――

 

 パーティーが終わり大浴場の湯船に浸かっているイーニア。今日は多くの生徒がここを利用し、イーニアもその1人である。課題である卵片手にぶくぶくとやっているとハーマイオニーが横に入ってくる。

 

「今日くらい考えるの止めればよかったんじゃないの?」

 

「そう思ったんだけど気になっちゃって。――ハリーとのダンスはどうだった?」

 

「初めてって言ってたけど上手だったわ。貴方達のせいで誰も見てないでしょうけど。」

 

「あははは…は。」

 

 少し嫌味を言われ思わず苦笑いするイーニア。

 

「だいたい、化粧もいつも通りってどういうことよ!!それでいて十分可愛いし、私よりスタイル良いし!!」

 

「ひゃぃ!?―ちょっと胸揉まないで――ちょっ!?そこはっ!」

 

 ハーマイオニーがイーニアの身体を弄りだし手に持っていた卵を浴槽の中へ落とす。しかしハーマイオニーは止めることなく5分ほどイーニアの身体を堪能していた。

 

「はー、はー、はー、もう。ハーマイオニーだって、綺麗じゃない。貴女を目で、追ってた生徒、結構居た、わよ。」

 

 イーニアは息を切らせながら胸を押さえつつハーマイオニーにそう告げたが納得はしていないようだった。呼吸が落ち着くと卵を探す。卵に触れると開いていることに気が付いた。

 

「え?」

 

「どうかしたの?イーニア。」

 

「卵開いてる。」

 

イーニアとハーマイオニーは顔を合わせると浴槽の中へと潜った。

 

 

探しにおいで 声を頼りに

地上じゃ歌は 歌えない

探しながらも 考えよう

我らが捕らえし 大切なもの

探す時間は 一時間

取り返すべし 大切なもの

一時間のその後は もはや望みはありえない

遅すぎたなら そのものは もはや二度とは戻らない

 

 

 

 歌が終わると卵を閉じ浴槽から顔を出した。

 

「なるほど、マーミッシュ言語だったんだ。」

 

「地上で聞くと聞き取れないわけね。」

 

「第二の課題は水の中かー。2月だっていうのに、寒いじゃない。」

 

 イーニアがため息を吐くとハーマイオニーは苦笑いしつつも、頑張ってね、と応援し、2人は大浴場を出た。

 

 

 

 





平凡回でした。



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第二の課題と迷路

ゴブレット編は長くなりますね。



ではどうぞ。





 第二の課題の日が訪れ、皆、湖にできた会場に集まっていた。

 イーニアを除く3人は水着姿で、イーニアは第一の課題の時に着ていた格好をしている。違うところは少し大きめのゴーグルを首にかけていることだ。

 

「イーニア、それで水の中入るの?」

 

「流石にコートは脱ぐよ。」

 

 ハリーはとても泳ぐ格好とは思えないイーニアに怪訝な顔をして聞いたがイーニアはケロっとした顔で答える。

 会話はそれ以上はなく、それぞれに体を伸ばしながら開始の合図を待つ。

 

「それではそろそろ第二の課題を始めたいと思います!!」

 

 今回の競技説明をしていたバグマンがホイッスルを手に持ちカウントダウンを始める。カウントダウンが0になる瞬間バグマンがホイッスルを鳴らし競技が始まった。

 イーニアはコートを脱ぐとゴーグルを付け、衣服と体に魔法をかける。

 

インパ―ビアス・ペルーツェ(水を弾け)!――アフェーカルン(熱を帯びろ)!」

 

 魔法をかけるとそのまま水の中に入っていく。水の中に入るとハリーたちはすでに泳ぎ始めていた。イーニアは杖を仕舞い、首に指先を当てると次の呪文を唱える。

 

ウンディラ・スプリッツ(水中呼吸)。」

 

 水中の酸素を取り入れることができるようになったイーニアは次に明かりを点ける。

 

ルーモス・フォス(強い光よ)。――ディプリス(分散)。」

 

 作り出した光を分散させ、上下前後左右に展開させる。明るくなり視界がクリアになると、早くに泳ぐための呪文を唱えた。

 

カルキトラ(水中歩行)。」

 

 魔法をかけるとイーニアは水を蹴るように泳ぎだす。湖の中はあまりきれいとは言えず明かりを灯していても見えるのはせいぜい5m先。視界の悪さに少し苛立ちを覚えつつも加速しつつ泳いでいく。

 

 しばらく泳ぐと岩や水中植物の無い、開けた場所に出た。微かにだが歌が聞こえてくる。

 しかし歌とは別に大きな生き物が動く音に気が付いたイーニアは音の方を見た。

 音の方を見るとデラクールが何かに襲われている。

 襲っていたモノの正体は、ワニのような口、大きな鰭を四足のように持つ、およそ全長11mの巨体。中生代ジュラ紀中期カロビアンからジュラ紀後期のヨーロッパに生息していたと言われる首長竜、リオプレウロドン。

 その姿を確認したイーニアは水中に居ながらも舌打ちをする。

"邪魔をするにしても何も食物連鎖の頂点に居たとされる奴を呼ばなくても"

 イーニアが助けるかどうか悩んでいるとデラクールは失神呪文で1匹倒す。しかし後ろからやってきたもう1匹に噛まれた、ように見えた。

 噛まれたと思われたデラクールは口が閉じる瞬間に、姿を消した。イーニアは噛まれそうになった瞬間、思わず息を飲んだが、恐らく失格で退場されられたものだと判断する。

 リオプレウロドンはデラクールが居なくなったことを認識するとイーニアの方へ勢いよく突っ込んでくる。

 まっすぐに向かってくるリオプレウロドンをステップするかのように避けるとイーニアは透かさず解析魔法をかけた。

 解析結果はすぐに出て、アレは魔法で生成されているものだということが分かる。

 

「なら、遠慮はいらない…ね!!」

 

 自分の身の丈ほどの大剣を生成すると向かってきたリオプレウロドンの口に突き刺した。刺されたリオプレウロドンは泡のようになって消えていく。

 だがリオプレウロドンが次々と出てきたので、イーニアは相手にするのを止め、盾の呪文を唱えながら歌の聞こえる方へと泳ぎだす。

 水中植物に紛れながら少し泳ぐとリオプレウロドンは追って来なくなった。活動水域が決まっているようだ。

 

 歌がよく聞こえる場所に到着するとそこに4人の人間が植物で結ばれていた。

 ハーマイオニー、フレッド、あと女の子2人。

"ダンスパーティーの相手ってことか。"

 あの時の内容に納得したイーニアは時間を見る。まだ半分ほど時間がある。誰も来ていないことはそれほど不思議ではなく、仮に時間が過ぎてもこのまま死ぬとは思わなかったが一応、4人の足についていた植物を切っておく。

 更にフレッド以外に魔法でマーキングするとフレッドの脇を抱えて浮上する。

 

「げほっ…冷た!?」

 

「人質お疲れ様。もう少しジッとしてて。」

 

 バグマンとリーの実況を適当に聞きながらイーニアは会場に上がり、フレッドを引っ張る。ずぶ濡れのフレッドに乾燥呪文をかけ、水を弾切れなかった自身にもかける。

 

「お、サンキュー。―――1位か、さすがイーニア。」

 

 実況と周りに他の選手がいないことでイーニアが1位であることに気が付くフレッド。イーニアはフレッドの賞賛の言葉に微笑み返すと湖の方をジッと見た。

 イーニアがフレッドを助けた10分ほど後、マーキングした1人が浮上してくるのを感じるとクラムが湖から顔を出した。

 

「ハリーこねぇな。」

 

 タオルに身を包んだフレッドがイーニアの隣でそうつぶやく。

 会場が再び静寂に包まれる。それからさらに5分が立ち、制限時間が近付いてくる。

 

「私より早くに泳いでいたから水中の移動に関しては問題ないはずなんだけど…。」

 

 そうつぶやいた瞬間、2つのマーキングに動きがあった。どうやらハリーは2人を上にあげようとしているようだ。

 すぐにハーマイオニーともう1人の女の子が浮上したが肝心のハリーが上がってこない。

 イーニアはハーマイオニーたちに手を貸し、水から上げる。2人にタオルで包むとハリーがすごい勢いで水から飛び出した。こちらに落ちると判断したイーニアは身体強化魔法をかけハリーを受け止める。

 

「よっと…、お疲れ様、ハリー。」

 

「げほっげほ…ごほ――ありがとう、イーニア。」

 

 フレッドが持ってきたタオルでハリーを包む。そんなハリーの元へデラクールが来て抱きついた。話を聞くと人質になっていたのは妹らしい。うまく英語がしゃべれないながらも妹を助けてくれた礼をハリーに言う。

 

「審査結果が出ました!まず1位でゴールしたイーニア・シュツベル!!制限時間以内1位通過なので、50点満点です!!」

 

 バグマンの発表にホグワーツ生から歓声が上がりイーニアは手を振る。フレッドが肩を組んで来たりハリーやハーマイオニーからも賞賛の言葉をもらう。

 次にクラム、デラクールと点数が発表される。クラムは2位通過のためイーニアとは5点差の45点。デラクールは失格だがリオプレウロドンを倒したことが評価され20点。

 そしてハリー。3位通過だったがデラクールの妹を助けたことを評価され47点だった。

 

「やったぜ!!ハリー!!」

 

 ロンが抱きつきハーマイオニーもハリーを讃える。イーニアもハリーに抱きつき、そこにフレッドやジョージなども来て揉みくちゃになる。

 ハリーは少し疲れたような顔をしつつも嬉しそうに笑っていた。

 

 寮へと戻ると第一の課題の時より大騒ぎだった。大騒ぎをして、またマクゴナガルに叱られた。さらには減点。しかしそれでもテンションが下がることなく、騒がしい日々が3日も続いた。

 

 

* * *

 

 

 第三の課題は6月24日に行われ、事前情報は何もなし。代表選手は試験を免除されてはいるが、何もしないわけにはいかず、つまりは当日までは修練あるのみである。

 イーニアは皆が試験勉強に費やしている時間を魔法の練習に当てるため、ハグリッドを隣に森で高位魔法の練習を行っていた。

 

「おめぇさんの魔法はすげぇな。」

 

 一息ついたイーニアにハグリッドが話しかける。

 

「ハグリッドも構造とか理解すればできるようになるよ?」

 

「いやぁ、俺は難しいことはわかんねぇ。」

 

 できると言われたハグリッドは困ったように頭をかく。

 そんなハグリッドとは今年から武道の相手をしてもらっている。2年生の時は断られたが、4年生になりイーニアが成長したことを告げると半ば渋々だったが承諾してくれた。

 魔法の練習が終わるとハグリッドと数回手合わせをし、学校へと戻る。

 

 そんな日常を送っていた第三の課題、1ヶ月前のある日。バグマンに呼ばれクィディッチの競技場へと足を運ぶとそこには見慣れた競技場はなく、生垣が複雑に組まれ迷路のようなものができていた。

 ハリーはその光景を見て、口が開いたままになっている。

 

「代表選手諸君。どうかね?」

 

 バグマンが高らかに言う。

 

「生垣は後、1ヶ月もすれば6m以上に育つ。ああ、安心してくれ。終わった後はいつもの競技場に戻しておく。――我々がこの生垣で何を作っているかはわかるかな?」

 

「迷路?」

 

 イーニアは一番最初に思ったことをそのまま口にした。バグマンはそれの言葉にその通りと肯き、第三の課題の説明を始めた。

 内容としては簡単。迷路を潜り抜け、優勝杯を手に入れたものが優勝。

 しかしそれには様々な困難を乗り越え、進まなければならない。迷路には同時に進めるのではなく、今までの順位が上の順に入っていく。イーニア、ハリー、クラム、デラクールの順番だ。

 

「今までの点数で負けているミス・デラクールにもチャンスはあるので諦めず挑んでほしい。――質問がなければ解散だ。1ヶ月後、楽しみにしている。」

 

 そういうとバグマンはあっという間に姿を消した。第一、第二の課題の時もそうだったが、やはりイーニアを避けているようだ。

"第三の課題後が最後のチャンスになりそうね。フレッドとジョージに話しておかなきゃ"

 イーニアは考えをまとめると競技場の変わり果てた姿に、まだ脳が理解していないハリーを連れて寮へと戻っていった。

 

 

 




恐竜登場、魔法がたくさん回でした。
水の中、というせいなのか台詞がかなり無い回となってしまいました。


次回はついに炎のゴブレット最終回。意外なあの人が再登場!!


水を弾く魔法、インパ―ビアス・ペルーツェ
完全防水ではなく撥水なので多少濡れます。

熱も帯、寒さ対策の魔法、アフェーカルン
日常的にも使える魔法。

水中呼吸の魔法、ウンディラ・スプリッツ
水中の酸素を取り込めるようにする。

水中歩行の魔法、カルキトラ
水を壁のように蹴ったりできるようになる。


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第三の課題と闇の帝王

長くなったので分割、分割。


ではどうぞ。





 第三の課題の日、当日。

 競技は夕方から始まり、代表選手の家族が観戦に来る。午前中は家族との顔合わせだがイーニアは事前にアリシスが仕事で来れないことを聞いていたので正直行く気はしなかったがそれはハリーも同じことのはずなので仕方なく向かうことにした。

 

 呼ばれていた小部屋に入るとクラムやデラクールは両親と楽しそうに話していた。

 イーニアとハリーがどうしようと顔を見合わせているとモリーが居ることに気が付く。

 

「ハリー!!それにイーニア!!」

 

 2人はモリーの熱い抱擁を受け、驚く。どうやら家族が来れない2人のためにマクゴナガルが気を利かせたようだった。モリーの他にもウィーズリー家、長男のビルも居る。2人から激励の言葉をもらい、この後どうするか話していると、イーニアは後ろにアリシスの気配を感じ勢いよく振り向く。しかしそこにはアリシスは居なかったが手紙が床に刺さっていた。

 中を見ると短く、"頑張ってくるように。あと必要なら助けを呼ぶこと"とだけ書かれていた。イーニアが読み終わると手紙は霧散する。

 イーニアはアリシスからの手紙は嬉しくはあったが、あえて魔法で手紙を寄こしたことが気になった。特に最後の一文が不穏な感じを物語っている。

 ため息が出たが気持ちを切り替えるとイーニアはハリーたちと共にホグワーツを回ることにした。

 

 

―――――――――

 

 

 夕食を食べ、いつもと同じ服装に着替えると競技場へと向かう。

 競技場に着くと、見事な迷路が作られていた。それを見てイーニアは"大きくなるものね"などとのんびりと見ながら思っていた。

 そんな風にのんびりとしていると代表選手が全員集まり、マクゴナガルが数人の教師を連れて入場する。

 

「私たちが迷路の外側を巡回します。何か巻き込まれて助けを求めたいときは、空中に赤い火花を打ち上げなさい。私たちのうち誰かが救出します。」

 

 皆が肯くとマクゴナガル達はそれぞれ違う方向へ歩いていく。

 バグマンの解説が入り、会場が盛り上がるとついにスタートの時間となる。イーニアは現在総合1位なので一番最初に入ることになる。

 深呼吸をして、心を落ち着かせるとハーマイオニーやロン、ジョージ、フレッド、ネビルたちの居る方を見て軽く手を振り、最後にハリーに振り向き微笑む。

 準備が万端と読み取ったのかバグマンがホイッスルを鳴らした。

 

ルーモス(光よ)。――コンフィンス(強化せよ)!!」

 

 ホイッスルと同時に明かりを灯し、身体強化で一気に駆けていった。

 

 長い一本道を走りきると四方に道が分かれていた。イーニアは特に何も考えず右から2番目の道へ入っていく。

 恐らくここでは方角も距離感覚も通じない、一本道を凄い速さで駆けたイーニアにはそう感じていた。いくらクィディッチの競技場でもあれほどの長さの一本道だった場合半分は進んだことになってしまう。そう結論付けたイーニアは直感を頼りに加速し続けることに決めていた。

 曲がり角をいくつも曲がったその先に、5~6mはありそうな尻尾爆発スクリュートが居た。それを見てイーニアは思わず苦笑い。

 

「ごめんね。――ラマンパトラム(武器を生成)

 

 一言だけ告げると丸太を大量に生成し、物体加速魔法で射出した。大量の丸太に当たった尻尾爆発スクリュートが動けなくなったのを確認すると飛び越え、先に進む。

 

 

 

 

「全然着く気配がないんだけど…どんだけ広いのよ。」

 

 あれから蛇やグリフォン、トロール、まだ成長途中のドラゴンなどを相手にしたり、落とし穴や粘着する地面などを潜り抜けたイーニアだったが、まったくゴールが見えず、思わず独り言をつぶやいてしまった。

 軽くため息を吐いていると十字路が見え、左の方からハリーが来た。

 

「え”。もう追いつかれたの。」

 

「あ、イーニア。そっちはどう?僕はずっと真っ直ぐで逆に不安だったんだけど。」

 

 ハリーのずっと真っ直ぐと言う言葉を聞き、自分が外れの道を引いた事に気が付き、額に手を置く。

 

「私はくねくねしたり、色々と妨害があったよ。――私のは外れの道かぁ。」

 

「そうなの?こっちは何もなかったよ?」

 

「羨ましい――と、のんびり話している場合じゃないね。どっちに行く?」

 

 イーニアは自分の手前と右側の道を指して聞く。するとハリーは真っ直ぐに進むことを選択し、イーニアも真っ直ぐに進むことにした。

 

 ハリーに追いつかれたとなるとのんびりはしてもいられない為、さっきより早く走る。

 曲がり角の先はきれいに一本道になっており、その先が開けているのがわかった。しかしその道の真ん中に1人、人間が立っている。

 

「クラム?」

 

 イーニアはその姿を確認すると思わず呼んだ。

"なんであそこで止まってる?"と疑問に思った瞬間、クラムがイーニア目がけて魔法をかけてきた。

 

クルーシオ(苦しめ)!!」

 

プロテゴ・ホリビリス(恐ろしきものから守れ)!!」

 

 反射的に盾の呪文を唱え、身を守る。

 異常事態、そう判断したイーニアは花火を上げるとクラムを止めるために立ち向かう。

 許されざる呪文以外にも攻撃呪文を唱えてくるクラムだったがイーニアはプロテゴ・ウォレでそれを防ぎ、棒を生成すると、上に投げる。投げた棒はクラムを飛び越え、ちょうど真後ろに落ちた。

 イーニアの読めない行動に表情は変わらないクラムだったが、どこか警戒するように杖を構え止まる。

 

コールイン・エクス(座標交換)!!」

 

 次の瞬間、イーニアはクラムの後ろに現れ、クラムを背負い投げする。倒れ、仰向けになったクラムに横三角絞めを極め、落とした。

 

「ふぅ…。インカーセラス(縛れ)。」

 

 気絶させたクラムから杖を奪い、ロープで動けない様に縛る。

 

「優勝杯も何かあると見るべきね。――急ごう。」

 

 今日一番の速さで一本道を駆ける。すると開けた場所に優勝杯があり、ハリーがそれに触れようとしていた。

 

「ハリー!!だめ!!」

 

「え?」

 

 ハリーを掴み制止するがイーニアの言葉は間に合わず、ハリーは優勝杯に触れる。

その瞬間、2人は飛ばされた。

 

 

 

 

 

「「痛っ!!」」

 

 飛ばされた2人は尻餅を付き着地する。

 そこは墓場だった。もう何年も人が訪れていない。古びた墓場だった。

 

「な、なんでこんなところに?」

 

「やっぱり、優勝杯にも仕掛けがあった。――ハリー杖を構えて。なにがあるかわからない。」

 

 少し混乱しているハリーだったがイーニアに従い、杖を構える。

 イーニアはポートキーになっているはずの優勝杯を呼び寄せようとしたが、後ろに気配を感じたイーニアは振り向きながら失神呪文を唱えた。

 

「ステュー「エクスペリアームス(武器よ去れ)!」」

 

 しかし、後ろに居た人物に杖を払われる。

 その姿を確認すると、あの時逃がした、ペティグリューがそこに居た。ハリーが額の傷を抑え苦しみ始めたのを横目に見つつも、イーニアはペティグリュー目がけて拳を振るう。

 身体強化をかけた加減のない拳はペティグリューに当たることなく横からやってきた男に阻まれた。

 

「久しぶりだな!!イーニア・シュツベル!!」

 

 そこにはアズカバンに居るはずのクィレルが居た。

 

「クィレル!?」

 

「そうだ!私だ!!私はお前に復讐するために!!そのためにここに来た!!」

 

 受け止められた手を振り払い、距離を取る。クィレルは1年の時の姿は見る影もなく、かなりガタイが良くなっていた。

 

「くくくっ……私はあの日の屈辱を忘れたことは一度もない。そして、ついに、夢にも視た、お前への復讐をする日が来た!!」

 

 凄まじい狂気に思わずイーニアはたじろぐ。その隙を逃さなかったペティグリューがハリーを石像に縛り付ける。

 

「ハリー!」

 

「おっと、よそ見とは余裕だな。シュツベル。」

 

 ハリーの方へと顔を向けたイーニアにクィレルの蹴りが飛んでくる。イーニアはしっかりと防御したが重くもない体は宙へと浮いた。

 

「くぅ…!」

 

受け身を取り、2歩下がる。

 

「これから闇の帝王が復活する。――が今の私には興味がない。私を今突き動かしているのはお前への復讐のみだ!!あいつらは勝手にやっていればいい。」

 

 クィレルはそこまで言うとイーニアに接近する。クィレルの体にはイーニアと同じ身体強化の紋様が浮かんでいる。この3年で鍛えた体と身体強化でイーニアを倒すつもりらしい。

 突っ込んで来たクィレルを躱し、再び距離を取るイーニア。

"急がないと……。でも、さすがに正面からは厳しいかな…。"

 ペティグリューが復活の準備をしているのが視界に入ると同時に、クィレルが飛ばしてきた失神呪文を弾きクィレルに向き合った。

 

「時間がない。すぐに終わらせる。」

 

「できるものならなぁ!!」

 

 クィレルが斬撃魔法を飛ばし、イーニアはそれを姿勢を低くして避ける。すぐに迫ってきた拳を流し、肝臓を狙って殴る。

 

「無駄だぁ!!」

 

 イーニアの拳は届いたが、クィレルは硬化魔法で防ぎ、そのまま頭突きをしてくる。イーニアはナイフを生成し、突き出してきた顔に向ける。

 しかしナイフはクィレルの顔に当たると折れ、そのままの勢いの頭突きが肩に当たる。

 

「いっ…つ…!」

 

 イーニアも硬化魔法を使うが防ぎきれず痛みを感じる。

 怯んだイーニアにクィレルは回し蹴りをするが体を仰け反らせ、躱した。そのままイーニアは距離を取る。

 

「くくくっ…、どうした?お前の得意な接近戦だぞ?」

 

 クィレルは愉快そうに笑い、今度はゆっくりと近づく。そんなクィレルを睨みながらイーニアは深呼吸すると槍を1本生成する。

 

「武器は通じないぞ?」

 

 クィレルの言葉にイーニアは特に反応せず、接近し顔を集中的に狙いつつ槍を振う。クィレルはステップを効かせて槍を避けると一回転しながら裏拳でイーニアの後頭部を狙う。イーニアはその拳をしゃがんで避け、顎目がけて槍を刺す。

 だがナイフと同じように槍も砕ける。物ともしなかったクィレルはしゃがんでいるイーニアに蹴りを出す。それをしっかりと防御するとまた距離を取った。

 

「それを繰り返すつもりか?」

 

「………これで終わりよ。」

 

 イーニアはそう告げると着ていたコートを投げクィレルの視界を塞ぐ。

 

「それで――!?」

 

フィニート(終われ)。」

 

 イーニアが呪文を唱えるとクィレルにかかっていた身体強化、硬化魔法が解ける。

 

「ば、馬鹿な。そう簡単に解けるわけが!?」

 

 動揺したクィレルはそのままイーニアのコートを被ってしまう。

 そのクィレルの顔に胴回し回転蹴りをする。

 

「ぐ…か……!?」

 

 胴回し回転蹴りをモロに顎に受けたクィレルはよろけ頭を下げる。イーニアは下がった頭に向けて踵落としをお見舞いした。

 クィレルは勢いよく倒れ、そのまま動かなくなる。

 

「簡単に解けなかったから時間を稼いでたんじゃない。――あと筋肉だけ付けても肝心な時に反応できなきゃ意味ないよ。――アクシオ(来い)。」

 

 イーニアは返事のできない相手にそういうと杖を呼び、コートを着るとクィレルを近くの岩に縛り付けた。

 

―――――――

 

 縛り終わり少し離れたハリーの元へと向くと、ペティグリューが復活のための最後の呪文を唱えようとしていた。

 

「させるかぁあぁぁああ!!」

 

 イーニアはペティグリューの近くにある鍋を爆破しようとした。

 

「そうはさせん。」

 

 しかし横から突撃してくる男と2人と失神呪文が襲って来た為、盾の呪文で防ぐことになる。

 そして向かってきた男、魔法を使ってきた男の姿を確認し、イーニアは息を飲んだ。

 

「セドリック…!?クラム…――ムーディ先生!?な…んで!?」

 

 ムーディはセドリックたち以外にも生徒を数名引き連れ、そこに立っていた。

 

「俺はムーディなどではない!!」

 

 ムーディはそういうと自身に杖を向けた。すると若い男へと姿を変える。

 

「俺の名はバーテミウス・クラウチ・ジュニア!!あのお方復活のためにムーディに成り代わりホグワーツに潜入していんだよ!!―――さあ!あのお方が復活したぞ!!」

 

 そういわれイーニアは正面を向いた。

 そこには鼻の無い、のっぺりとした蛇のような顔の男が居た。

 男から、クィレルの頭に居たころとは全く別の異様さ、そして狂気を感じたイーニアは斬撃魔法を飛ばそうと腕を振る。

 

トルナ(断ち切れ)――くっ!?」

 

 しかし、クラウチ・ジュニアの近くに居た、生徒たちが壁になり無理やり軌道を変える。

 ヴォルデモートは体を障りながらハリー、ペティグリュー、クラウチ・ジュニア、そしてイーニアを見ると少し笑った。

 

「あの時の小娘か………ローブを着せろ。」

 

 闇の帝王、ヴォルデモートが復活した。

 

 

 

 




巻き込まれたセドリック、クラム、そして、その他の生徒たち。
ヴォルデモートまで復活し、彼らに勝機はあるのか!?

クィレルは3年間アズカバンで筋トレを続けた結果、脳筋になりました(笑



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あの男と私の伯母

この回で炎のゴブレット編を終わらせるつもりでしたが長かったため分割しました。


ではどうぞ。








 

 

「あの時の小娘か………ローブを着せろ。」

 

 ペティグリューにそう命令し、ローブを着る。そして杖を受け取るとペティグリューの腕に闇の印をつけていく。

 

「これで全員が気づいたはずだ。それを知り、戻るものが何人いるか。そして、離れようとする愚か者が何人いるのか。」

 

 ヴォルデモートは顔を上げるとクラウチ・ジュニアの方を向いた。

 

「全員が揃う前に、クラウチ、危険を顧みず俺様のためによくやってくれた。あとで褒美をやろう。」

 

「はっ!!ありがたき幸せ!!」

 

 ヴォルデモートの言葉にクラウチ・ジュニアは頭を下げる。

 

「あの時の小娘が居たりと予定とは多少違うが……――来たようだな。」

 

 そういった瞬間、ヴォルデモートの後ろに黒いローブを被った集団が姿現しをして来る。

 

「よく来た。よくぞ戻ってきた、死喰い人たちよ。――そしてよく顔を出せたものだ。この13年間、貴様らは何をしていたのだ? ん? 答えて見ろ。」

 

 ヴォルデモートの言葉に死喰い人たちは下を向くようにする。

 

「――まぁ、それは後でゆっくりと聞くとしよう。今はそれよりも――。」

 

ステューピ・トルニス(麻痺の稲妻)!!」

 

 イーニアが杖を上に構え唱えると立っていた人間に雷が落ちる。死喰い人たちの半数はそれを防ぐなり躱すなりしたがクラウチ・ジュニアが連れてきた生徒たちは当たり倒れる。

 そしてイーニアは高く飛びあがると大剣を生成し、ヴォルデモートに迫る。

 

「やれやれ、俺様の言葉を遮るとは…。お前はこいつらと遊んでいろ。」

 

 ヴォルデモートは生徒たちを無理やり立たせるとイーニアを阻む。

 生徒を壁にされたイーニアは大剣を消すと変わりに棍棒を出し、1人の生徒を吹き飛ばす。が、その生徒はすぐに立ち上がる。

 

「俺様ほどになると意識があるなし関係なく多人数を操ることができる。――そいつらはお前を殺すように言ってある。死ぬまで動くぞ?お前が死ぬか、お前がそいつらを殺すか、結果を楽しみにしておこう。」

 

 ヴォルデモートはそういうとハリーの方へと向いた。

一斉に意識の無い生徒たちがイーニアを襲う。棍棒で殴り、魔法で弾き、躱す。

 

「く…そぉ!!」

 

 彼らは自分の意志で戦っているわけではないのでイーニアが本気で戦うわけにはいかない。しかし飛ばしても飛ばしても何度でも向かってくる生徒たちにイーニアの体力はどんどん消耗してだけだった。

 

 

 

 

「はぁ…はぁ……はぁ……。」

 

 汗を垂らしながら囲まれたままのイーニア。その先ではハリーとヴォルデモートが戦っている。

 お互いの杖の先から光が放たれぶつかりあっている。

イーニアも助けに行ける状態ではないが徐々に押されているのがわかる。どうにか状況を打開しなければならない、そう考えているとセドリックとクラムが仕掛けてくる。

"これ以上殴ったりするのは…っ"

 腕を掴み投げ技をかけようとしたその時。

 

「……イーニア?」

 

 目を開いたセドリックがイーニアを呼び、イーニアは動きを一瞬止めてしまう。

 その一瞬は大きかった。セドリックの後ろにいたクラムが、いつの間にか持っていた槍をセドリックの腹ごとイーニアのわき腹に刺した。

 

「あ、が!?…ぐぅ…。」

 

 意識が戻ったのかセドリックは大きく目を見開き、引き抜かれ穴の開いた腹を押さえながら倒れる。イーニアも痛みに歯を食いしばりながらクラムを魔法で飛ばすと膝をついた。

 

「……っは……はっ……!」

 

 人体を一瞬で貫くほどの速さ、そしてその強さは硬化魔法すら貫くものだった。

 イーニアは自分に応急処置を施すとセドリックの傷を見る。完全に貫通しており、出血が激しい。

 コートを脱ぎセドリックの腹に巻く。

 

「イー…ニア…後ろ…。」

 

 セドリックの言葉にハッとなり、背後にいた生徒の攻撃を防ぐことに成功する。周りを見れば生徒たちがゆっくりだが接近して来ている。

 イーニアはじりじりと迫ってきている生徒たちを見ながらセドリックに話しかける。

 

「セドリック、意識をしっかり持って!!すぐにホグワーツに!」

 

 そういうとセドリックは弱弱しく笑う。

 イーニアは痛みを我慢しつつも覚悟を決めると右耳に着けているイヤリングを上空に投げ、魔法で打ち抜いた。

 その瞬間、打ち抜かれたイヤリングはイーニアと生徒たちを光で包む。

 イヤリングはアリシスがイーニアにお守りとしてプレゼントしたもの。これには魔法で施しがされており、イヤリングを壊し、そこから出る光を浴びると、対となるイヤリングを付けているもの以外のあらゆる魔法的効果を破壊する。

"光が出ているのは30秒!!それまでに…"

 

アクシオ(来い)!!」

 

 優勝杯を呼ぶ。光の中に入ったためポートキーとしての機能はなくなったが、情報はいくつか残っているので座標を読み取る。

 

コングリッド(集まれ)!!」

 

 疎らな生徒たちを集めると、優勝杯を地面に置き、一定領域ごとポートキーとして設定する。

 光が力を失い、イヤリングだけが落ちる。

 

「上手くいってよ…っ!アクシオ(来い)!!ハリー・ポッター!!」

 

 ヴォルデモートと衝突しているハリーを無理やり呼び、ポートキーを作動させる。

しかしハリーは、光に警戒し周りに集まっていた死喰い人たちに阻まれた。イーニアはそれを見て飛び出し、手を伸ばす。

 ハリーの手を取り、引っ張ろうとした瞬間、ポートキーは動きだし、領域に入っていたイーニアの右足の膝から下だけ(・・・・・・・・・)を持って飛んだ。

 

「ア"ァ"ァァアァアーーーーーーーー!?!?!!」

 

「イーニア!!?」

 

 右足を切断された激痛で叫ぶ。

 ハリーはイーニアの状態に青ざめつつも上着を脱ぎ、応急処置を施す。ヴォルデモートが近づいてくると庇うように立つ。

 

「はっはっは!焦るからそうなるのだ。――もっともあのタイミングを逃したら飛ぶことは2度とできなかっただろうが。」

 

 激しい痛みに耐えながらイーニアにヴォルデモートを睨む。

 戻る場所が確立しているので、距離の事など多少のリスクはあるものの、姿現しで帰ることができるが、イーニアは痛みで【どこへ】【どうしても】【どういう意図で】の3Dを上手く意識できずにいた。

 

「さて、どうしてやろうか。このまま嬲り殺しても構わないが――おっと?」

 

 ヴォルデモートが突然振り向き誰もいない方を見た。するとそこに1人の男が姿現ししてくる。

 イーニアは男の姿に見覚えがあった。

 フードを深く被った男(・・・・・・・・・)蜘蛛(・・)を引き連れヴォルデモートの元へと近づく。

 

「ずいぶんと遅い登場じゃないか。えぇ?」

 

 顔を少し歪めたヴォルデモートに対し、何も言わずただ見ている。

 

「それが我が君に対する態度か!!」

 

「構わん。こいつは昔からこうだ。」

 

 何も喋らない男に対し、死喰い人の1人が怒るがヴォルデモートはどうでもいいように言う。

 イーニアはそんな会話を聞きながら理解してしまった。この男があの時の男(・・・・・)であると。

 理解した瞬間、わき腹や足の痛みを忘れる位の吐き気がこみ上げ、イーニアは胃の中のものを外にぶちまけた。

 

「うヴぇ……っうぇろご…っ…ヴぇ…っ!!」

 

 その光景にヴォルデモート含め、死喰い人は思わず退く。

 

「なんだ…?」

 

 死喰い人の1人がそうつぶやくと蜘蛛を連れた男はハリーをすり抜けるように通り過ぎ、イーニアの頭を掴む。

 イーニアは焦点が合わないながらも男を睨みつける。この至近距離にも関わらず男の顔は見えない。

 

「イーニアから離れろ!!ステューピファイ(麻痺せよ)!!」

 

 ハリーが男に向けて失神呪文を唱えるがまたすり抜けるようにハリーの後ろに立ち、そのままヴォルデモートの元へ歩いていく。

 男はヴォルデモートの横に並ぶと、何かを喋るようにヴォルデモートの耳元に顔を近づけ、ヴォルデモートはそれに肯く。その後、ヴォルデモートが首を横に振ると、死喰い人が下がった。

 その瞬間、大量の蜘蛛がイーニアたち目がけて動き出す。

 ハリーは驚きつつもイーニアを抱きしめ、蜘蛛を撃退するために魔法を使う。

 

「イーニア!魔法使える!?」

 

「げほっ…。トルナ(断ち切れ)!――ぐぅー!?」

 

 肉体的苦痛や精神的苦痛に顔を歪めながらもイーニアは力を振り絞り、魔法を使う。

 しかし物量が多すぎるため対処できず、2人の目前まで蜘蛛が迫り襲い掛かってくる。

 飛びかかってきた蜘蛛に思わず目を瞑ったその瞬間

 

 

 

 2人を護るように炎が包み込む。炎に包まれた途端、イーニアは痛みが和らいでいく。

 痛みが和らいだことに驚いていると、上から光の柱が降り注ぎ蜘蛛たちを焼き払った。その光は数人の死喰い人にも当たり、その存在を消滅させる。

 突然の攻撃に死喰い人たちに動揺が走る中、2人の男女がイーニアたちの前に立つ。

 

「残り活動許可時間は?」

 

「3分。―――ずいぶんと無茶をしたわね。イーニア。」

 

 膝裏まである長い髪を揺らし、登場したのはイーニアの伯母である、アリシス・コーランド、その人だった。

 隣には赤いコートに赤い帽子をかぶった長身で腰くらいまである黒髪の男が立っている。

 

「アリ…シ…ス…?」

 

「そうよ、貴女の伯母のアリシスよ。」

 

 少し振り向き、イーニアたちに笑いかけるアリシス。辺りが光の柱で焼け落ちている中、ヴォルデモートが叫んだ。

 

「お前たちは何者だぁ!!」

 

「俺たちが何者かなんてどうでもいいだろう。」

 

 アリシスの隣の男はそういうと、凄まじい殺気と共に突然、手に拳銃と呼ぶにはふさわしくない大きさの、しかし拳銃の形をしたものを出現させた。

 

「アーガルド、そろそろ残り活動時間2分切るけどやるの?」

 

 アーガルドと呼ばれた男はアリシスに指摘されると殺気を引っ込めた。

 

「残念だ。実に残念だ。」

 

「撤収ね。」

 

「そのまま行かすと思うのか!!アバダ・ケダブラ!!」

 

 ヴォルデモートがアリシスに死の呪いを放つと、放った緑色の閃光が途中で消失した。

 

「なっ!?」

 

 これにはヴォルデモートも動揺を見せる。

 アリシスはそれまでヴォルデモートなど視界に入っていない風に見せていたが、突然、イーニアが見たこともない殺意の籠った雰囲気を纏ながらヴォルデモートを睨んだ。

 そんなアリシスを見て、アーガルドはとても愉しそうに笑う。

 

「ヴォルデモート、いや、トム・リドル。また会えることを俺は愉しみにしている。ぜひ、噛みついてきてくれ。」

 

 アリシスが手を軽く振ると4人はその場から姿を消した。

 

 

 

 

 





あの時の男が登場。
そしてアリシスが救出に。

アリシスたちはヴォルデモートやダンブルドアよりずっと強いです。
彼らについては次回語られます。


集束魔法、コングリッド
人を集めたり、ごみを集めたり、いろいろ応用が利く魔法。



誤字脱字などございましたら、遠慮なくご報告ください。
感想お待ちしています。




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王室特務と備える者たち

炎のゴブレット編はこれにて終了です。


ではどうぞ。





 

 ホグワーツは大騒ぎとなっていた。

 突然生徒たちが飛ばされてきて、怪我人や、片足だけあったりすれば、当然の騒ぎではある。

 

「大騒ぎね。」

 

 アリシスがため息を吐くと、イーニアたちを包んでいた炎を解く。ダンブルドアは4人の姿を確認するとすごい勢いで駆け寄ってくる。

 

「いったい――」

 

「お久しぶりです。ダンブルドア先生。イーニアの足ありません?」

 

 ダンブルドアの言葉を遮り、足の所在を聞く。ダンブルドアはマダム・ポンフリーに声をかけ足を持ってこさせる。

 アリシスは足を受け取るとイーニアに近寄る。

 

「綺麗に切れていてよかったわね。痛みは?」

 

「炎に包まれてから…治まってきてる。」

 

「あれは治癒と麻酔の効果あるから。――足を治すわ。激痛が走るから我慢してね。」

 

 イーニアは痛みが減った理由に納得しながら抱きしめ合ったままのハリーにそのまま体を委ね、目を瞑る。

 

「いくわよ。」

 

 止血に使っていたハリーの上着を取り、切断面を合わせる。すると青緑の光を放った。

 

「っーーー!」

 

 イーニアは声にならない悲鳴をあげ、握っていたハリーの手を強く握る。

やがて青緑の光が消え、アリシスが一息ついた。

 

「くっ付いたわよ。」

 

「まだ…痛い…。」

 

「そりゃそうよ。切れていた神経繋げたんだから。数日は絶対安静、一週間はリハビリね。――疲れたでしょう、肉体的にも、精神的にも。今は休みなさい。」

 

「う……ん…。」

 

 アリシスはイーニアの頭撫でるとそのまま眠りにつかせた。

 

 

* * *

 

 

 イーニアが目覚めたのはそれから2日後だった。

 お見舞いに来たハーマイオニーは大泣きで、他の皆も本当に無事でよかったと安堵の顔をしていた。

 

「そういえばセドリックたちは?!」

 

 イーニアが気になっていたことを口にするとロンが安心させるような口調で喋り出す。

 

「皆、あっちこっち怪我してたけど無事。一番重症だったのはセドリックだけど、そのセドリックは隣のベットに居る。」

 

カーテンを捲りるとクラスメイトたちと話しているセドリックが見えた。セドリックがイーニアの視線に気が付くと声をかけてきた。

 

「イーニア!!もう大丈夫なのかい?」

 

「うん。だいぶいいよ?セドリックは?」

 

「イーニアの応急手当のおかげで命拾いしたよ。一週間以上はベットの上だけどね。」

 

 笑いながら言うセドリックにイーニアはホッとしつつも、2日前の出来事を思い出し気分が悪くなる。

 顔色が悪くなったことに気が付いたハーマイオニーが皆に退出を促そうとした時、医務室の扉が開き、ダンブルドア、アリシス、アーガルドの3人が入ってくる。

 

「イーニア、調子はどう?」

 

「まずまずだよ、アリシス。」

 

「あら、貴女にしては珍しい返事ね。―――さて、話があるんだけど…。」

 

 アリシスが周りを見ながら言うと、退出しろと察したハリーたちが立ち上がる。

 

「待って。――アリシス、人払いしなきゃいけない話?」

 

「んー、まぁ、私は別にどちらでもいいと思うけど?」

 

 イーニアがハリーたちを止め、アリシスに聞くと、どちらもいいと返事をしつつ、ダンブルドアを見る。

 

「構わんじゃろう。」

 

「なら、できれば皆には居てほしい。」

 

 ダンブルドアがハリーたちが居ることを承諾するとイーニアは残ってくれるようお願いする。ハリーたちは顔を見合わせると立ち上がる前と同じように、イーニアの周りに座る。

 

「じゃ、まずは傷の話ね。――わき腹はほとんど治っているわ。足はちゃんと結合してるけど、後3日は動かしちゃ駄目よ。」

 

 イーニアは傷を撫でるように触りながら聞く。

 

「で、次に――先に彼を紹介するわね。アーガルド。」

 

「アーガルド・ヴァニシングだ。」

 

「もう少し、何かないの?―――彼は私の部下で――。」

 

「王室特務所属…でしょ?」

 

「…っ!」

 

 笑顔だったアリシスの顔が崩れる。困惑の顔をしながらアリシスはイーニアを見た。

 

「知って…たの?」

 

「知ってるよ。王室特務隊、第65代目隊長、リーナ・イスカルド―――本名、アリシス・コーランド。」

 

「…………いつから?」

 

「結構前から……かな。確証はなかったけど。」

 

 表情を曇らせたアリシスにイーニアは困りつつも励ます。

 

「そんな顔しないで、アリシスが忙しいのも、王室特務の特異性もわかってる。――それでも私のために、たくさん時間作ってくれてるの知ってるから。」

 

 イーニアがそういったもののアリシスの表情は暗いままだった。

 

「………アリシス、こっち来て。」

 

 イーニアは手招きをすると、もっと近づくように告げる。

 

「私のこと嫌い?」

 

「そんなわけないでしょう!!貴女のことが大好きよ!!」

 

 少し拗ねた表情をしながら言うとアリシスはすごい形相で否定した。そんなアリシスを見てイーニアは笑顔を向けるとアリシスに抱きつく。

 

「私もアリシスの事、大好きだよ。だからそんな顔しないで?お母さんとお父さんがそうだったように、アリシスが私を蔑にしていないのはよくわかってる。」

 

「でも私は貴女のために戦うことはないのよ?次、いつ、貴女が危険な目にあったときに護れる保証はない。」

 

「私に戦い方を、身の守り方を教えてくれるじゃない。たくさんの魔法と知恵を授けてくれてる。私の為を思ってでしょ?―――それに今回も、そして7年前のあの時(・・・・・・)も、私を護ってくれた。あの炎はアリシスだよね。」

 

「…っ!」

 

「いつもありがとう、アリシス。」

 

 イーニアがそう言うとアリシスはイーニアを少し強く抱きしめ、目元と肩に隠した。イーニアもそれに答えるように抱きしめ返し、ハリーたちはそれを微笑ましく見ていた。

 

 

 

 

 

「話の腰を折るようだけど、王室特務って何なんだ?」

 

 2人が離れた後、少し遠慮気味にジョージは手をあげ、イーニアたちに質問をする。

 

「王室直属部隊の事だよ。基本的には護衛で就いてて――。」

 

「私の許可なしでは部下たちは戦闘はできないし、王室の許可がなければ私も戦闘できない。ましてやこちらから攻撃することは絶対にない。」

 

 イーニアの言葉にアリシスが繋ぎ補足する。

 

「破れぬ誓いで王室の敵、もしくは自身の命の危険がない限りはかなり魔法の使用に制限がかけられているわ。」

 

「どうしてです?」

 

「部隊の人間のほとんどが化け物だからさ。」

 

 ハーマイオニーの質問にアーガルドが帽子を取り、愉しそうに言った。

 

「俺たちは常識では考えられないような奴らの集まりだ。強大な力を持ち、敵を滅ぼす化け物。」

 

「アーガルドみたいに血の気が多い奴らばかりでね。制約をかけないと、とんでもないことなるのよ。」

 

 愉しそうに笑っているアーガルドを横目に苦笑いするアリシスを見て、皆、少し同情する。

 

「話がだいぶずれたわね。――イーニア、私たちはまだ(・・)、今回の件には手を出すことができないわ。」

 

「うん。わかってる。」

 

 少し暗い表情で言うアリシスの言葉にイーニアは肯いたが、ハリーたちは驚いていた。

 

「どうして!?あいつが、ヴォルデモートが復活したんですよ!?イーニアだって…――!」

 

「さっき説明しただろう。小僧。

―――俺たちは存在は知られても、表舞台に立つことはない。ましてや、ただ(・・)の犯罪者に王室特務(俺たち)が動くことはない。俺たちが動くときは奴らが王室に攻めてきた時だけだ。」

 

 声を荒げたハリーにアリシスが答えに迷っているとアーガルドが横から口を挟む。しかしハリーは納得がいかずアーガルドに喰いつく。

 

「今回助けてくれたじゃないですか!!」

 

「今回はかなりの特例だ。2日前のためにアリシスがどれだけ準備していたと思っている。――事前準備をしていても俺の許可された行動時間は5分。アリシスは攻撃は禁止。そういう組織なんだ、王室特務(俺たち)は。」

 

「でも――。」

 

 まだ納得がいかず喰いつこうとしていたハリーをイーニアが腕を掴み、首を振る。

 

「いいの。――私の代わりに怒ってくれてありがとうね、ハリー。」

 

 イーニアがそういうとハリーは渋々引き下がった。それを見てアリシスが説明を続ける。

 

「まだ、とは言ったけど関われるかは正直わからないわ。――それに私たちはヴォルデモートが復活したことは証言できない。」

 

「いなかったことになってる?」

 

 アリシスが肯くと、そっかと短く返事をして納得する。そして引き継ぐようにダンブルドアが喋り出す。

 

「ハリーたちにはもう話したんじゃがヴォルデモート対抗すべく、昔の仲間、不死鳥の騎士団を再結成しようと思っておる。―――残念ながらファッジ…魔法省はヴォルデモートの復活を認めたくないようじゃ。」

 

 少し悲しそうな顔をするダンブルドアだったがすぐに表情を切り替えた。

 

「させないつもりじゃが、もしもの時は力を借りるねばならんかもしれん。その時は力を借してくれるかの?」

 

 イーニアは周りに居る1人1人の顔をしっかり見ていき、そして最後にダンブルドアに向き合った。

 

「もちろんです。」

 

 その返事にダンブルドアは満足そうに肯くと医務室を出て行った。

 

「イーニア・シュツベル。」

 

「なんですか、アーガルド・ヴァニシングさん?」

 

あの男(・・・)は恐らく生きている。十分に気を付けるんだな。」

 

 アーガルドはそういうと姿くらましをしてどこかへ行った。

 ホグワーツではできないとされる姿くらましを使った光景に皆驚いていたが、イーニアは少し表情を暗くしていた。

 

「イーニア、駄目なときはちゃんと逃げなさい。立ち向かうことも大切だけど、逃げることも大切よ。」

 

「……うん。」

 

 アリシスはイーニアの頬にキスをすると"行くわね"と告げ、アーガルドと同じように姿くらましでホグワーツから去った。

 

 

* * *

 

 

 学年度末、帰り支度をしていたイーニアにワールドカップの時の勝ち分より多めのお金が届いた。

 中にはバグマンからの手紙が入っており、謝罪とそして賭けに勝ったのでお金を渡す、と書いてあった。

"結局賭け事してるのね"

 ちゃんとお金を渡し、謝罪してきたことに少しは好感が持てたが、懲りずに賭け事をやっていることに呆れた。

 一応返事の手紙を書き、談話室へと降りるとお金が届いたことに喜んでいる双子と優勝金を分けていたハリーが居た。

 三大魔法学校対抗試合の結果は有耶無耶に終わり、優勝杯を触った2人で決めてくれ、とずいぶんと投げやりなことを言われたので同点優勝ということにした。

 ゆえに優勝金も半分なのだが、なぜか自分たちで半分にすることになり、ハリーがそれを請け負ってくれていた。

 

「はい、イーニア。半分に分けたよ。」

 

「ありがと。ごめんね、任せっきりで。」

 

「これくらいどうってことないよ。」

 

 イーニアは半分に分けられた優勝金の袋を受け取るとフレッドとジョージに近寄り渡す。

 

「はい、投資。」

 

「「「え?」」」

 

「え?」

 

 フレッドとジョージ、ハリーまでもが声を揃えて言ったのでイーニアも困惑気味に返す。

 

「ハリーと同じことするんだな。」

 

「ハリーも?」

 

 ジョージが受け取るのを確認しつつ、ハリーを見ると肯いていた。

 

「ま、じゃあ要件はハリーと大方同じだろう。承りましたよ。」

 

「面白いこと期待してる。――あ、一応何を作ったか報告頂戴ね。投資者だから。」

 

「「りょーかい。」」

 

 2人の返事に笑顔を返しながら、リハビリついでにクラムたちに顔を出すためハリーと共に談話室を後にした。

 クラムに会いに行くと深く謝罪され、操られていたのだから気にしなくていいと言ったが納得せず、クィディッチの試合に招待する、ということで落ち着かせた。

 その後、デラクールや他クラスの知り合いにも顔を出し、最後にドラコを探す。

 何故か入院中、顔を出さなかったドラコ。クラスメイトに聞いても見ていないという。

 疑問に思いつつも、ハグリッド、そしてノーバートに会いに行くとノーバートの隣にドラコが立っていた。

 

「あ、いたいた、ドラコ。」

 

「やっと来たか。」

 

「やっと?ドラコなんでお見舞いに――!?」

 

 突然、ドラコの姿が薄くなり目を見開く2人。

 

「時間がないから手短に話すぞ。

僕は今、ホグワーツを離れている。ダンブルドアには課外授業として許可は頂いた。ただ、父上のこともあって目立って行動はできない。

だから闇の帝王の復活を目の当たりにした君たちに直接会いに行くのはリスクがあると思って見舞いに行かなかった。代わりに伝言として、東洋で言う式神みたいなのをノーバートを触媒にして置き、今こうして説明をしてる。

――半年くらいを目途にホグワーツに戻るつもりだ。それまでは奴らの動向を探りつつ同士を集める。」

 

「「…………。」」

 

「そんな顔をしないでくれ。無理はしないし、ホグワーツに、皆が居る所へ帰る。そもそも課外授業の名目で外に出るからな、課外授業がある中、どこまでやれるかもわからん。」

 

「声も映像も届いてるんだ…。」

 

「ああ。だが、そうしたせいでそろそろ維持できなくなってきてるが…。」

 

「………ちゃんと―――ちゃんと帰ってくるんだよ?」

 

 イーニアが力を込めて言うとドラコは少し微笑みながら答えた。

 

「もちろんだ。イーニアにもハリーにも負けっぱなしだからな。戻ってきたら、ぎゃふんと言わせてやる。」

 

「……うん。」

 

「楽しみにしてる。」

 

「出発しているが、一応………――行ってきます。」

 

「「いってらっしゃい!」」

 

 2人が言うとドラコの姿が消える。

 寂しそうな、心配そうな顔をするイーニアにノーバートは頬摩りをする。ハリーも手を握り、ドラコなら大丈夫さ、と告げる。

 イーニアは顔を引き締めると。そうだね、と返事をするとノーバートとハグリッドに別れを告げると寮に戻り、荷物を持って汽車に乗った。

 

 

 

 

 

「私、屋敷しもべ妖精福祉振興協会を辞めたわ。」

 

 汽車が動きだし、呆然と外を見ているとハーマイオニーがそう告げた。

 ロンは知っていたらしく、特別反応しなかったがイーニアとハリーは少し驚いたように目を開いていた。

 驚いた顔をしているとロンがフレッドとジョージが説得にひと役買ってくれたことを教えてくれた。

 

「ところでハーマイオニー、それは?」

 

 ハリーが小瓶に入ったコガネムシを指さして言う。

 

「これ?――今回の私の成果ってところかしら。」

 

「「「???」」」

 

 3人はハーマイオニーの言葉がさっぱりだったが、フレッドとジョージが遊びに来たのでそれ以上は言及しなかった。

 その後、駅に着くまで楽しい時間を過ごしたイーニアたちは家へと帰宅し、4年生としての1年に幕を閉じた。

 

 

 

 




最初は死ぬ予定だったセドリックやクラムですが今回は生き残らせることにしました。
2人は今後もチラっと登場させようと思っています。


新キャラ、アーガルド・ヴァニシング
詳しい設定は【登場人物、魔法紹介】に記載しますが
身なりのイメージはH○LLS○NGの○ーカードを想像していただければいいと思います。
彼は今後、時々出たりすると思いますが戦闘はしません。アリシス含み、かなりのバランスブレイカ―なので(笑


ドラコの旅立ち!!
ヴォルデモート復活に当たり、彼の立場はいくつか候補があり
嫌々ながらもヴォルデモートに従う
全力で反抗
無理やり連れてかれる(人質
など色々あったのですが秘密裏に行動、という形にしました。
課外授業の有無に関してはオリジナルです。
彼の戦いは今後【外伝】というサブタイトルで合間に書く予定です。

アリシスの偽名、リーナ・イスカルドは名前をローマ字で書いたのを組み直したモノです。
ARISISU KO-RANDO

RI-NA ISUKARUDO


他の章と比べると長々と書いてしまいましたが炎のゴブレット編は終了です。
今までお付き合いいただきありがとうございます。
よろしければ次の章もお付き合いください。

誤字脱字などございましたら、遠慮なくご報告ください。
感想お待ちしています。



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不死鳥の騎士団
騎士団と密談 おまけ付き


回を重ねるごとに長くなっている気がします。


ではどうぞ。


 

 

 

 

 夏休みの1週間が過ぎ、イーニアは傷跡の無い右足の調子を確かめながら体を動かしていた。

 少し感じていたズレの様なモノは無くなり、完全復帰したと言える。お昼の時間が近くなり、運動を終えるとシャワーを浴び、献立を考えながらリビングに向かうとソファーにアーガルドが座っていた。

 

「よう、嬢ちゃん。」

 

「………なんで居るんです?……というか不法侵入ですよ。」

 

「細かいことは気にするな、老けるぞ。――今日は休暇なんだが、いつも空いている奴が仕事だからな。アリシスに許可を取り、暇つぶしに来たというわけさ。」

 

「……なんで許可するかな…。」

 

 イーニアが盛大にため息を吐くと、アーガルドはクククっ…とだけ笑う。

 

「ここに来ても暇つぶしができるとは思えませんけどね。」

 

 エプロンを付け、お昼の準備をしようとキッチンへと足を運ぶとアーガルドもソファーから立ち上がりついてくる。

 

「そうでもないさ。――ああ、俺の分も頼む。」

 

「は?…………何が出ても残さず食べてくださいね。」

 

 イーニアは呆れた顔をしつつ調理を始める。アーガルドはイーニアが調理をしている間、後ろから様子を見ながら"手際がいいな"とか"もう少し濃い味の方が好みだ"とか口を出していた。

 そんなことをしつつも料理が完成し、テーブルに並べ食事を始める。イーニアもアーガルドも特に会話は無く食事をしたが、食べ終わったアーガルドが"美味しかった、ごちそうさま"と呟くと、イーニアも"お粗末さま"とだけ返し食器を片づけた。

 

 

「で、どうするつもりなんです?」

 

 食休みを終え、ひと段落ついたイーニアがアーガルドに話しかける。

 

「ん?特に考えてはいないが……そうだな。――稽古でもつけてやろう。」

 

「稽古って言ってもどうするんです?制限がかかっているでしょう?」

 

「俺は何もしないさ。ただ受けるだけだ。それについて感想や意見を言うから改善しろ。たしかアリシスが新しい魔法書を渡していたはずだ。」

 

「魔法書っていうか原稿用紙に走り書きで書かれたあれ、ね。」

 

「1冊や2冊に収まらないくらいの内容が書いてあったはずだ。――全部読んだか?」

 

「一応。まだ全然試してないですけど。」

 

「それで構わん。では、やるとしよう。」

 

「やるって言ってもちゃんと準備してからじゃないと――きゃっ!?」

 

 イーニアはアーガルドに手を引かれ、突然できた穴に連れて行かれた。

 中は白い、何もない空間だった。

 

「これが俺の、許可なしに使える唯一の魔法だ。この空間でなら好きなだけ暴れても問題ない。」

 

 少し呆れつつも足元をぺたぺたしながらイーニアは体を伸ばす。

 

「はぁー…。魔法以外も使いますけどいいですよね?」

 

「もちろんだ。――殺す気で来い!!」

 

イーニアは右手で印を結び、空へ掲げると呪文を唱えた。

 

 

* * *

 

 

 アーガルドが訪れてから1週間が経ち、イーニアは3日前を振り返っていた。

 1日しか居ないと思っていたアーガルドは4日も滞在し、最終日には戻ることを拒否。結果、知らせを受けたアリシスとその部下たちが無理やり連れて帰るという大騒ぎだった。

 

「変な人たちだったなぁ…。」

 

 アーガルドは化け物、と称したがイーニアは変態の集まりのようにも見えた。恐らく部隊の中でまともな人間を選んだのだろう。

 しかし彼らの実力はただ横から見ていたイーニアにもよくわかるものだった。次元が違う。化け物と呼ばれても何らおかしくはない実力の持ち主たち。彼らがアーガルドを連れて帰るためにアーガルドと小競合いをしたときは、彼らのその圧に当てられて気を失いかけた。

 

 自信の未熟さを痛感しながら、魔法の練習に取り組んでいるとイーニアの元に一通の手紙が届いた。

 手紙はダンブルドアからで、アリシスに連絡を取りこちらに来てほしい、と言う内容だった。イーニアは手紙を読み終わると展開していた術式を閉じ、リビングに置いてある電話機に近付く。

 アリシスに電話をかけようと受話器を上げようとした時、電話機が音が鳴り始めた。

 

「もしもし。」

 

「手紙届いた?」

 

「今さっき、それでかけようとしてたところ。」

 

「えーっとね。ダンブルドア先生から連絡があって、イーニアを騎士団に入れたいって。

――私はイーニアの判断に任せるって返したわ。あとは貴女が決めなさい。入る気があるならシリウスの家へ。」

 

「わかった。今日明日くらい?」

 

「そうね。今日明日中に。」

 

「はい。」

 

「イーニア。私は騎士団に入っても問題ないと思っているわ。実力も含めてね。

――独自に動かれるより知っている大人たちと行動してもらった方が私としても少し気が楽だしね。」

 

「うん。」

 

「…………イーニアの才能は両親を超えるものよ。それに直接ではないにしろ私が教えている。自信をもっていいわ。貴女は素晴らしい魔女よ。」

 

 電話越しではあるもののアリシスに褒められ、少し照れるイーニア。

 

「今回はよく喋るね?」

 

「寂しいこというじゃない。」

 

 照れ隠しでイーニアが言うとアリシスは少し落ち込んだ口調で返した。

 

「心配してくれるのは嬉しいけど、あんまり持ち上げられると、少し、恥ずかしい。」

 

 そんなことを言うと電話先でクスっと笑う声が聞こえる。

 

「イーニア。身内贔屓もあるけど思っていることは本当よ。だから自信を持ちなさい。」

 

「はい。」

 

「そして、強い意志を持って事に当たりなさい。感情に溺れれば判断が鈍るといことを忘れては駄目よ。」

 

 

 

 電話を切るとイーニアは準備を始める。

 シャワーを浴び、着替えや教科書、アリシスからもらった魔法書などを片手持ちのトランクに次々と入れていき、今回は戦いがあること前提なので魔法道具など下準備をしっかりとしていく。

 一通りの準備を終え"これぐらいでいいだろう"そう結論付けた時にはもう遅い時間だった。イーニアは遅い時間に行くのは少し気が引けたが、できる限り早く来るようにとのことだったのでトランクを左手に、右手に杖を構えシリウスの家へ向かうことにした。

 

 

 イーニアの記憶にある、家具などが置かれないであろうはずの部屋の隅に姿現しをすると、部屋では会議が行われていた。

 

「イーニア、よく来てくれた。」

 

 部屋に居たほとんどの大人たちが1人で姿現しをしてきたことに驚いている中、ダンブルドアがイーニアの姿を確認すると微笑みながら近づいてくる。

 

「遅い時間にすみません。」

 

「よいよい。――では、イーニアも入れて話の続きをしようかの。」

 

「ダンブルドア!!本当にこの子も騎士団に入れるのですか!?まだ未成年なんですよ!?」

 

 モリーが立ち上がり、興奮しながら言う。

 

「結成の時にも話したと思うが、彼女は並の魔女ではない。実力は先ほどの単独で姿現ししたことを踏まえれば明白じゃ。仮に参加させなくとも知らなくていいことを知られてしまうじゃろう。」

 

「そうだ。なぜ君は未成年にも関わらず普通に魔法を使っている?」

 

「えーっと…。」

 

「彼女の研究の成果じゃよ。」

 

 シリウスの質問にイーニアは少し困った顔をしているとダンブルドアが助け舟を出し、内心ホッとするイーニア。研究成果というのはあながち間違いではないのだが。

 

「――そして何より、彼女ほどの実力者を野放しにしておけるほど我々に余裕はない。」

 

 ダンブルドアのその一言で皆、下を向く。状況が厳しいことは皆、重々わかっていたがモリーを含め、まだ納得していないメンバーがいた。

 

「そうじゃの…――。セルブス、イーニアに開心術をかけてみてくれるかの。」

 

「わかりました。」

 

 ダンブルドアの言葉に皆が驚く中、それまで黙っていたスネイプが立ち上がり、イーニアの前まで行く。

 

「覚悟はいいか、シュツベル。」

 

「いつでも。」

 

レジリメンス(開心)!!」

 

 イーニアは軽く深呼吸すると目を瞑る。そしてすぐに目を開く。

 

フィニート(終われ)。」

 

 バチンッ!と大きな音が鳴り、スネイプの呪文が強制的に終わる。

 

「なるほど、そうするか。」

 

スネイプは呪文を消されたこと少し驚いたが何をしたかを理解すると納得したように薄く笑った。

 

「セルブス、いったい何が…。」

 

リーマスがスネイプに説明を求めると、スネイプは何も言わずイーニアを見たので、イーニアは内心ため息を吐きながら説明を始めた。

 

「開心術は使えば何でも簡単に見える、という簡単な呪文ではありません。魔法の使えない人間でも拒む強い意志があればその侵入を拒むことができます。言ってしまえば心の隙を突く術です。

 閉心術は意志とは別に隙をなくす術。様は補強です。しかし、長時間にわたって開心術をかけられれば疲労が、閉心術の力や拒む力にも影響します。

 ですから私は最初から意図的に隙を作り、それを突いた瞬間に弾きました。」

 

「つまり?」

 

「攻めてくる場所と時間、そして状態がわかっていれば対処はできる。――そういうことです。」

 

レジリメンス(開心)。」

 

「―っ!?」

 

「……………………。いきなりのことにも対処できようだな。」

 

 話の途中で開心術を使われ、驚いたもののイーニアはしっかりと閉心術を使い、スネイプの開心術を防いだ。スネイプがその事を告げると、その場に居た大人たちは納得せざるを得なく、静かに席に着く。

 

「内容を話す前にイーニア。わしは君に謝ねればならん。」

 

「謝る?何をです?」

 

イーニアは椅子に手をかけながらダンブルドアに聞いた。

 

「夏休み前に話した内容は覚えているかの?」

 

「はい、騎士団を再結成するとか何とか。」

 

「うむ。その時にできる限り、君を含む未成年の魔法使いには関わらせない、とも。

――しかし先も言った通り、わしらには余裕はない。」

 

「なんだ、そんなことですか。――保護者(アリシス)が許可出してるんですから問題ないです。私もあいつらには用があります。こうして関わらなければ独自に動いていたかもしれません。」

 

「申し訳ない。」

 

 ダンブルドアが頭を下げると他の大人たちも頭を下げる。その光景にイーニアは焦りながら皆の頭を上げさせた。

 

「では、ハリーの護送について、引き続き話そう。」

 

 皆が頭を上げたところでダンブルドアが中断していた話を始めた。イーニアもムーディの隣の席に座る。

 

「会うのは初めてですよね?ムーディ先生?」

 

「ああ、先生ではないがな。」

 

「お元気そうで何よりです。だいぶ衰弱していたって聞いていたので。」

 

 クラウチ・ジュニアが成りすましていたムーディ本人は教授の部屋のトランクの中に監禁されていたのをダンブルドアが見つけた。イーニアは2日間、目を覚まさなかったので本人に会うのは初めてである。

 しかしハリーから衰弱した状態で見つかったと話を聞いていたので心配していたが問題は無いようだった。

 

「移動手段は箒と思っておるんじゃが、何かあるかの?」

 

「なぜ箒なんです?」

 

「煙突飛行ネットワークは現在、魔法省に監視されておる。姿現しなどは魔法の痕跡を辿られてしまう。ゆえに箒じゃ。」

 

「………箒を使うのは構わないんですが、騎士団メンバーでどれくらい箒を使わずに飛べますか?」

 

「わしとセルブス、あとはシリウスも飛べかの?」

 

「一応。もう長い間飛んでないからカンを取り戻す必要はある。」

 

「正直言って、それでは箒での護送は危ないと思います。飛べないとなるとやられなくても道具を壊されたら護衛として意味をなさなくなります。ましてや皆、ハリーみたいな動きできますか?」

 

「だが、そうなるとどうやって迎えに行く?」

 

「………召喚呪文を使います。」

 

「「「召喚呪文?」」」

 

 ダンブルドアとムーディ以外の大人たちは皆、首を傾げた。

 

「なるほど。あれなら手間はかかるが姿現しと違い呼ばれる側には魔法の痕跡は残らないな。」

 

「念には念を入れて2つ程、経由すればいいと思います。1つは我が家を使ってもらって構わないです。」

 

「となると、もう1つは適当な家にするかの。」

 

「ちょ、ちょっとまってくれ!3人だけ理解して話を進めないでくれ!!」

 

 他の人間を置いて話を進める3人に、思わずシリウスが止める。

 

「なんだ、お前たち。召喚呪文も知らないのか?」

 

「あれはもう使われない古い呪文です。知らなくて当然でしょう。」

 

「最年少のお前が知ってるじゃないか。」

 

 ムーディの言葉に少し苦笑いしながら、イーニアはシリウスたちに説明を始める。

 

「召喚呪文っていうのは、そのまんま召喚する呪文です。昔はそれで悪魔とかを召喚しようとしてたみたいですけど成功したっていう記述は世界中探してもどこにもありません。近年じゃ使われませんが200年くらい前には罪人を呼び出すのに使ってたみたいです。

 これ、召喚された側には魔法の痕跡が残らないんですが――今じゃ使われない構築式とか書かなきゃいけないから手間がかかるんです。」

 

 イーニアの説明に大人たちが納得する。

 

「それを使ってここにハリーを来させると?」

 

「うん。――ダンブルドア校長、ダーズリー家、適当な家の2か所からハリー護送という名目で囮をしましょう。移動方法は箒で。」

 

「いいじゃろう。他に意見はあるかの?――無いようならその手筈でいこう。イーニアは召喚呪文の準備はお願いしてもよいかの?」

 

「はい。もちろんです。」

 

「召喚呪文を使うのは…適当な家でアラスター、イーニアの家でわしが、そしてここでイーニアがで良いかの?」

 

「私は自宅でいいです。家にも魔法かかってますから、何かあっても対処できます。それに私が自宅に居ることは不自然なことは何もないです。」

 

「君の家に誰も置かなくてもいいかの?」

 

「そしたら不自然になるじゃないですか。それに家に施されている魔法の事を考えると居られると迷惑です。」

 

「わかった……。」

 

 会議はそれを最後に終了した。

 イーニアはハーマイオニーたちが寝ている部屋に案内され、荷物を置くと寝間着に着替え早々と寝た。

 

 

 翌日、誰よりも早く起きたイーニアは準備のために自宅に戻ると置き手紙を残し、自宅に戻った。戻るとすぐにチョークを引っ張り出し、床に構築式を書いていく。

 大人2人は入れるサイズの大きな円を描き、その中に必要な式を書いていく。式そのものは1時間足らずで書き上げ、一度シリウス宅に戻る。

 戻るとリビングでコーヒーを飲んでいたリーマスを捕まえる。

 

「召喚呪文のテストを行いたいから手伝ってほしいんだけど、今いい?」

 

「もう作ってきたのかい?――もちろんいいよ。僕はなにをすればいい?」

 

「ここに居てくれて大丈夫だよ。ただ突然飛ぶから気を付けてね。」

 

 イーニアはそういうとリーマスの手を一度取り、マーキングを付ける。そうして再び自宅へと戻ると、魔方陣の前で杖を構えた。

 

インウォカーティオー(召喚)!!」

 

 イーニアが唱えると魔方陣が光を放ち始める。ぎゅるん!と音が鳴るとそこにはコーヒーをもったままのリーマスが現れた。

 

「よし!―リーマス、どこも具合悪くない?」

 

「ああ、問題ないが、これはこれで変な感じのするものだな。」

 

「魔法ってかなり物理法則を無視するものだからね。それはばっかりはどうしようもないよ。」

 

 イーニアはそういうとリーマスの手を取りシリウス宅に飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

―――本編にはまったく関係ない茶番―――

 

 駄々を捏ねるあーがるど

 

 

 

 

「帰るわよ、アーガルド。」

 

「断る。」

 

「何を言って…っ!」

 

「お愉しみはこれからだというのになぜ帰なればならない?」

 

「お前は私の姪になにをするつもり?」

 

「稽古をつけているだけだ。――この4日で素晴らしい成長を遂げたぞ。俺にはそれを見届ける義務が…――。」

 

「そんなもんあるかっ!!お前らアーガルドを…――っ!」

 

「イーニアちゃんって言うんだ。お姉さんとイケナイことしない?」

 

「イケナイこと?」

 

「いや、それより俺とイイことをしよう」

 

「あの人の姪ってだけあって並の15歳ではないな。」

 

「スタイルいいし、若い!!私のところ来ない?」

 

「何をやってるんだ!!お前たちは!!」

 

「「誘惑。」」「観察。」

 

「いいからアーガルドを…っ!」

 

「まぁ落ち着け、アリシス。考えて見ろ、嬢ちゃんが実力を付けて、ウチに就職させれば一緒に居られるぞ?そのために俺が修業を…。」

 

「な…ン…だ…――。」

 

「隊長、誘惑に負けかけてますよ。」

 

「――――っ!!…………私です。はい、はい。許可をいただきたく……。はい。――――喜びなさい、お前たち。アーガルドを捕獲するのに限り、攻撃許可が下りたわ。捕まえろ。」

 

「っ!?なぜ許可が下りた!?アリシス!!」

 

「許可が下りたなら仕方ない。全力で捕まえに行きますよ。」

 

「覚悟を、アーガルド。」

 

「捕まえた後、私の好きにしていぃ?」

 

「拘束術式解除。」

 

「くっ……―――。いいだろう、ひよっこ共。素手のみで相手してやる。」

 

 

 

 

 





魔法についてはいつも通り独自解釈でございます。




誤字脱字などございましたら、遠慮なくご報告ください。
感想お待ちしています。


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忍び寄る影

投稿スピードがどんどん遅くなっていますが失踪はしないので今後とも宜しくお願いします。



ではどうぞ。


 

 

イーニアがリーマスを連れてシリウスの家に戻るとモリーが朝食の準備をしていた。

 

「おはようございます。モリーおばさん。――手伝いますね。」

 

「おはよう。イーニア。――それなら直に朝食ができるから皆を起こしてきてくれる?」

 

 モリーの言葉にイーニアは肯くと男性陣をリーマスに任せ、ハーマイオニーたちを起こしに部屋へと向かった。

 部屋に着くとハーマイオニーとジニーはすでに起きており、再会を喜び抱きついてくる。

 

「イーニア!荷物が増えていたからいるんだろうと思っていたけど――いつ着いたの?」

 

「昨日の夜中。2人はもう寝てたけどね。――朝食ができるって、下に行こう。」

 

 2人と共にリビングへと向かうと眠そうに顔をこすっているロン、そしてフレッドとジョージ、シリウス、アーサー、ムーディ、そして昨日であったキングズリー、トンクスがすでに席に着いていた。

 

「皆、おはよう。」

 

 イーニアが声をかけると皆、返事をして食事を始める。ロンやフレッド、ジョージにハーマイオニーから聞かれたことと同じようなことを聞かれたり、宿題はちゃんとやっているかなど他愛もない会話をしつつ食事を取った。

 食事を終えるとイーニアは他にばれない様にムーディに声をかけ、召喚呪文の精度が問題ないことを告げた。するとムーディ満足そうに肯き、空き家が見つかり次第にでも行うことを打診すると家を後にした。

 部屋に戻ると2人でヒソヒソと話している所を見られたのか、騎士団に参加していない未成年組が待ち構えていた。

 

「イーニアは騎士団に参加しているの?」

 

 険しい顔をしているハーマイオニーに少し驚きつつも隠さずその言葉を肯定する。

 

「ダンブルドアは未成年の魔法使いには参加させないってッ…!!」

 

「それはイーニアに実力があるからよ。」

 

 肯定した瞬間、皆が立ち上がり抗議に向かおうとしたが部屋の扉が開きトンクスが入ってくる。

 

「貴方達がハリーのためを思って、そして自分たちの状況を知りたがるのもわからなくもないわ。でも、もしもの時、貴方達は自分の身を守ることができる?」

 

「それは……。」

 

「ましてや開心術を使われて貴方達は秘密を守っていられる?――イーニアはそれを証明したわ。」

 

 トンクスの言葉に皆、下を向き言葉を失う。

 

「わかったらイーニアを問い詰めるのはやめなさい。」

 

 誰もが理解はしているが納得はしてないような顔をしたその時、リーマスが部屋に駆け込んで来た。慌てた様子に少し驚きつつもイーニアとトンクスはリーマスに連れられ部屋を出る。

 

「ハリーが吸魂鬼に襲われた。」

 

「「ッ!」」

 

 リーマスの言葉に緊張が走る。

 

「だが問題はそこじゃない。吸魂鬼自体はハリーが自分で撃退した。問題なのは魔法省がそれをパフォーマンスとして判断し、ホグワーツを退学及び杖を破壊すると言い出したことだ。」

 

「は?いったい何をわけのわからないことを…。」

 

 トンクスは思わず舌打ちをする。イーニアはそこまで魔法省が危ない状況になっていることに頭を抱える。

 

「子供たちには私から話しておこう。イーニアとトンクスは一応迎えに行ける準備をしてくれ。」

 

 2人は肯くとイーニアはリーマスと一緒に部屋に戻り、出かける準備を始める。トランクから全身が隠れるほどの大きな黒いフードコートと大きめのゴーグルを取り出す。

 コートを手に持つと説明を終えたリーマスと共に部屋を出てリビングに向かった。

 

「吸魂鬼の出自がわからん以上は早くにこちらに連れてきたほうが良いだろう。」

 

「ああ。幸い、今回は目撃人が居るから大事にはならないはずだ。」

 

「ハリーには家に居るように手紙を出しておいた。」

 

 リビングではいつの間にか戻ってきたムーディ、アーサー、シリウスが慌ただしく会話をしている。そんな中、イーニアとリーマスに気が付いたムーディが声をかけた。

 

「イーニア。今日の夕方、少し予定が変わるが召喚呪文でハリーを連れてくる。空き家がないから経由がひとつ減るが今は考慮できん。ダドリー家からお前の家に飛ばすことになる。」

 

「わかりました。――向こうに着いたらハリーにこれを付けてください。」

 

「召喚用のマーキングか。ダンブルドアには俺から伝えておこう。向こうで準備ができたら連絡をする。――急な事だ。メンバーはこちらに固まってしまうが構わないな?」

 

「はい。自宅に居る分はある程度私の安全は保障されてますから場合によってはそのまま自宅に残ります。」

 

 その言葉にムーディが肯いたのを確認すると、こちらに呼ぶための構築式を書くためにチョークを取り出し、家具を退け始める。アーサーがそれを手伝いながら声をかけてきた。

 

「最年少の君に多くの負担をかけてしまうことになって申し訳ない。」

 

「これくらい大丈夫ですよ。――アーサーおじさんは囮の方ですよね?気を付けて行ってください。」

 

 イーニアのそう言い微笑むとアーサーは思わずイーニアを抱きしめた。自分の子供にように心配してくれることに感謝しつつ、イーニアも抱きしめ返す。軽い抱擁が終わり、家具が退け終わるとアーサーたちダドリー家に行く準備をするためにリビングを出て行った。

 

 構築式が書いたり、いなくなった大人たちの代わりに昼食を作ったり、と色々準備している間に予定の時間が近づきイーニアは自宅へと向おうと杖を構えた。しかし飛ぼうと意識を集中したと同時にダンブルドアがリビングに入ってくる。

 

「イーニア、準備は万全かの?」

 

 声をかけられたイーニアは杖を下し、ダンブルドアに返事をする。

 

「はい。問題ありません。――ハリーに付けるマーキングはこのようなものです。」

 

「うむ。聞いておる。」

 

「召喚呪文について特に話しておく必要はないですよね?こちらが完了したら……そういえばムーディ、どうやって連絡するつもりなんだろ?」

 

「電話すると言っておった。君の家の電話番号も聞いて行った。」

 

「電話使えるんだ、ムーディ。――シリウス、ここにも電話繋がってるよね?」

 

「ああ、言われた通りにマグルの家にあるものは一通り揃えた。」

 

「ん、わかった。――ハリーの召喚が終わり次第、電話します。」

 

「うむ。その手筈で頼む。」

 

「では、行ってきます。」

 

 椅子に掛けてあったコートを手に取り、イーニアは杖を構えるとそのまま自宅へと飛んだ。

 自宅に着き、リビングの明かりを点けカーテンを閉めて、電話が来るのを待つ。すぐ連絡が来るとは思っていないイーニアは電話機の前に椅子を置き、本を1冊取り出して読み始める。

 10分、15分ほどした時、電話機が鳴りイーニアは本を閉じるとすぐにでる。

 

「イーニアだな?こちらは予定通り着いた。マーキングを付けたが、外がどうも騒がしい。お前も十分気を付けろ。」

 

 ムーディは早口でそう告げると返事も聞かず、電話を切った。一言も喋っていないイーニアは返事のない受話器を見ながら苦笑いする。受話器を置くと、構築式の前に行き召喚呪文を唱え始める。

 

インウォカーティオー!(召喚)

 

 朝、リーマスを呼んだときと同じように荷物を持ったハリーが召喚される。

 

「ハリー、久しぶり。」

 

 少し戸惑った顔をしているハリーに抱きつき再会を喜ぶイーニア。

 

「大丈夫?どこも怪我とかない?」

 

「う、うん。大丈夫だよ。えっと…。」

 

 抱きつかれたことや状況を上手く理解していないのかハリーは戸惑いながら返事をする。

 

「今度はダンブルドア校長が召喚呪文を使うわ。向こうに着いたらシリウスもいる。色々聞きたいかもしれないけど向こうについてからね。」

 

 ハリーから離れると少し早口でそう告げ、電話をかける。電話に出たのはシリウスだった。

 

「こっちはOKだよ。」

 

「了解した。」

 

 電話を切るとハリーを見る。

 

「向こうで会おう。」

 

 ハリーは何処の事を指しているのかわからなかったがしっかりと肯き、その瞬間消えた。ハリーの姿が消えたことを確認するとゴーグルを首にかけ、コートを着るとフードを被る。

 

「さて、私も行かなきゃ。」

 

 イーニアは家から出ると鍵を閉め、辺りを見渡す。

 

「誰もいない、ね。」

 

 ゆっくりと空へと上がり、暗闇でもよく見えるように目に魔法をかける。月が隠れていて視界は暗いが密かに空を飛ぶのには適している。

 イーニアは深呼吸をすると勢いよく加速し、空を飛んだ。

 

 

 自宅を出て15分ほど経ち、残り半分といったところで誰にもばれない様に慎重に飛んでいたイーニアのすぐ近くに失神呪文が飛んできた。

 

「っ!?」

 

 思わず息を飲む。暗闇で全身を黒いコートで覆っているイーニアは魔法を使うまでもなく見えない。魔力に関してもコートが隠しているため、飛行に使っている魔法の魔力漏れもない。

 イーニアは辺りを見渡すが相手の姿は確認できない。失神呪文が飛んだ経路に魔力の痕跡が残っているがそこには誰もいない。

 さらに上空に移動しつつ、蛇の目に切り替える。熱が見えるようになったイーニアが当たりを見渡すと5m真下に人間の熱を見つける。次の瞬間、魔力の増大を感じ、イーニアは横へ避けたが斬撃魔法が肩を掠めた。

 それに驚き逃げるようにどんどん上空へと上がっていくイーニア。少し振り返れば相手も追いかけてくるのがわかった。

 イーニアは目を元に戻し、ゴーグルを付けると雲の中へと飛び込んだ。

 雲の中の天気は悪く、雷が鳴り、視界が悪い。それもでも、位置を把握しているかのような魔法の攻撃にイーニアは困惑していた。

 当たるほど的確でないにしろ相手は自分の位置を把握している。その相手は自分には見えていないという事実がイーニアを焦らせる。

 速度をさらに上げ、何度も曲がり相手をかく乱する。

 

 加速するあまり、雲の上へと飛び出したイーニアは攻撃が飛んでこない事とあたりに人がいないことを確認しすると、慌てていた頭を落ち着かせるために深呼吸した。

 

「今のはなんなの…?」

 

 思わず呟き冷静になると寒いことに気が付く。

 

「さすがにこの高さまで来ると寒いわ。」

 

 苦笑いしつつ、自分に寒さ対策の魔法を唱えると、このまま雲の上で移動してシリウスの家に向かうことを決めたその時、イーニアは闇に包まれたような感覚に襲われ反射的に炎を纏った。

 

フェアーム・プロテゴ(炎よ護れ)!!」

 

 イーニアの炎に何かが当たり、生き物の焼ける匂いと断末魔が聞こえる。焼けたのは鳥のような何かでそのまま雲の中へと落ちていく。

 鳥肌が立った左腕を押さえながら、辺りを見渡すが何も見えない。何かに追われている以上はシリウスの家へと向かうわけにはいかない為イーニアはじっとその場で次の動きを待った。

 だが10分、20分と時間が経っても何も動きはなかった。イーニアはひとまず地上へと下りようと雲の中へと戻ろうとしたその時。

 雲に映った自分の影から大量の手が出てきたと思うと一斉にイーニアの身体を掴んだ。イーニアはもう一度炎を纏い、手を焼こうとしたが手は焼けることなくイーニアを掴み、そしてそのまま影の中へと引きずり込もうとする。

 

「このっ…!?」

 

 手が焼けないことに驚きつつも飛行魔法に力を入れ、引きずり込まれない様に対抗する。しかし手は放すどころかさらに握る力を入れイーニアは苦痛に顔を歪める。

 身体強化、硬化魔法をかけていても痛みを感じるほどの強い力にイーニアの体力はどんどん消耗していく。

 

「はっ…はぁ…くぅ…。」

 

 酸素が薄く呼吸もうまくできない中、イーニアは擦れた声で魔法を唱える。

 

クリャス…ランス(結晶槍)。」

 

 影に向けて結晶でできた太槍が射出された。

 

「アアあああゝアァアァァアアあああああ―――。」

 

 槍が中に入ると男か女かわからない悲鳴が聞こえ、イーニアを掴んでいた手が消える。拘束から解放され、ふらふらながらも後ろに下がるとまだそこにある影に向けて追撃をかける。

 

「ムプチットヴァランチ!!」

 

 影を中心に周りに魔方陣ができると次第に圧縮していき、爆発を起こした。

 爆発の煙が晴れ、影が完全になくなったことを確認するとイーニアは守護霊の呪文を唱え、狼の背中に乗るとそのまま意識を手放した。

 

 

 

 

 

 





手が触手のように絡まって……はッ!?私は何を想像して…(笑)
でもそんなことを想像しながら書きました(笑)


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休息と裁判

お久しぶりです。

あんまりお話が進みませんが、書いてたら長くなったので分割です。

ではどうぞ。


 

 イーニアが目を覚ますと見慣れてはいないが見覚えのある天井が目に入った。それを見てイーニアは無事シリウスの家へ戻ってきたことを確認する。外は暗くどれくらい寝ていたかはわからなかったが、体のだるさから丸一日は寝ていたことがわかった。

 体を起こすと、あの時手に掴まれた場所に包帯が巻かれている。イーニアは痛みが無いので包帯を取ったが、少し手の跡が残っていたので再び包帯を巻くことにした。

 包帯が巻き終わると騒がしい声が聞こえてくる。この声はハリーだ。ベッドから降りるとイーニアは声のする部屋へと足を運ぶことにした。

 

 

 

「―――だけど、何が起こってるかなんてどうせ僕に知らせる必要ないよな!?誰もわざわざ僕に教える必要なんてないものな!?」

 

 部屋に居たハリーは自分の大きな声でイーニアが部屋に入ってきたことに気が付かなかった。

 そんな声を荒げている姿を見てイーニアはハリーがダンブルドアたちから満足のいく答えをもらうことができなかったことを察した。しかしそれは当然であり、ハーマイオニーたちにも該当することでもある。

 ひとまずイーニアは何も知らないハーマイオニーたちに当たり散らすのはどうかと思い、ハリーの背後に立つと低い声でハリーを呼んだ。

 

「ハリー、そこまで。」

 

「イー…ニア…。」

 

 少し威圧した意味があったのかハリーは顔を強張らせながら振り向いた。ハーマイオニーやロンたちも緊張した顔でイーニアを見る。

 

「怪我はもういいの?」

 

「大した怪我じゃないから大丈夫。心配してくれてありがと、ハーマイオニー。――――ハリー、ハーマイオニーたちは何も知らないからこれ以上問い詰めても答えは得られないわ。」

 

「じゃあ、イーニアは何か知ってるのかよ。」

 

「知ってる。私は騎士団員だから。」

 

 不満そうに聞いてきたハリーにイーニアは隠さず告げるとハリーは掴みかからんと言わんばかりの勢いで接近したので手を顔の前に置き、制止させる。

 

「ハリー、落ち着いて。感情に任せてちゃ話もできないよ――まぁ何の連絡もしなかったこっち(騎士団)こっち(騎士団)で悪いんだけどさ。」

 

 イーニアはそこまで言うと、立っていたハリーたちに一度座り落ち着くように促した。全員が座ったことを確認するとイーニアも近くの椅子に腰を掛ける。

 

「ハリー、君が聞きたいことは私が答える。答えられないものあるけどね。」

 

 椅子に座ったハリーはある程度落ち着きを取り戻したのかゆっくりと肯いた。

 

「何が聞きたい?」

 

「アイツ、ヴォルデモートはどうしてる。」

 

「現在調査中。」

 

「騎士団は?」

 

「言って大したことはしてないわ。皆、仕事があるから。今は仲間集めってところ。」

 

「何もしてないの?」

 

「仕方ないわ。魔法省が頑なにヴォルデモートの復活を認めないから、大ぴらに動けないの。」

 

「……………どうして僕をあの家に居させたの?」

 

「あそこに君の血縁者がいるからって私は聞いてる。」

 

「どういうこと?」

 

「ここからは私の推測なんだけど、―――ハリーはハリーのお母さんが命を賭した護りでヴォルデモートから生き延びたわ。たぶん、それは今も続いている。

 そしてそれを強く発揮するのがハリーと血の繋がりがあるあそこの家。」

 

 ハリーは渋い顔をしながらその話を聞いていた。イーニア自身も、理屈はわかるがあそこの家に滞在させるのはハリーのためになるとは思っていない。

 

「今日はこれくらいにしましょう。」

 

 イーニアは立ち上がるとハリーたちの様子も確認せず下の部屋へと下りて行った。リビングではリーマスとシリウスが話しており、イーニアが部屋に入ってきたのを確認すると立ち上がり駆け寄ってくる。

 

「イーニア!体はもういいのかい?」

 

「うん。もう大丈夫。すこし痕がまだ残ってるけど。」

 

「そうか。――さっきまで上が騒がしかったようだが…?」

 

「ダンブルドアや皆がちゃんと説明しないからハリーが怒ってたのよ。当事者なのにって。」

 

「それで、…説明したのか?」

 

「もちろん言っても問題ない範囲で、だよ。だいたい私だってこっちに来たばっかりだから全容把握してるわけじゃないし。」

 

 イーニアが椅子に腰かけるとリーマスが”何か食べるかい?”と聞き、イーニアは”軽く”とだけ答えた。リーマスの持ってきたパンとスープを受け取り、ゆっくりと食べ始める。

 

「そうだ、君が起きたら状況を聞けとダンブルドアが。」

 

 リーマスの言葉にイーニアは食事を取りながら移動中にあったことを話し始めた。

 

 

「――なるほど。影か…。」

 

「考えていたよりも死喰い人たちが力を付けてる。」

 

「わかった。そのことは私からダンブルドアに報告しておこう。」

 

「ん、お願い。――ごちそうさまでした。」

 

 イーニアはそういうと立ち上がり”今日はもう休むね”といい、寝室へと戻っていった。

 

 

* * *

 

 

 数日後、ハリーの裁判になぜか立ち会うことになったイーニアは時間の変更やファッジの錯乱っぷりに大きな溜息ついたり、隣にいたドローレス・ジェーン・アンブリッジ上級次官というガマガエルのような女性に嫌悪感を抱いたりと、とても嫌な印象を受ける魔法省訪問となった。

 良かった点といえばハリーが無事、無罪放免となったこと。当然の結果ではあったがファッジは意地でもハリーを犯罪者に仕立て上げたいようでわけのわからない理屈をずっと言っていた。

 

「疲れた。色んな意味で。」

 

 ハリーより先に退室したイーニアは、入り口の正面の椅子に座っていたアーサーの隣に腰かける。

 

「お疲れ、イーニア。」

 

「アーサーおじさん。こんなので魔法省は大丈夫なんですか?」

 

 イーニアはあまりにもひどいこの裁判でついストレートに聞いてしまったがアーサーは苦笑いをするだけでそれには答えず、違う話を振ってくる。

 

「ハリーは?」

 

「もうすぐ出てくると思いますよ。無罪放免でしたから。」

 

 その言葉と同時にハリーとダンブルドアが出てくる。

 

「お疲れ様、ハリー。―――ダンブルドア、私なんで立ち会うことになってたんですか?」

 

「役に立つと思っての。」

 

 どこか含みのある笑いにイーニアは少し眉を顰めたが”ハリーを頼む”と告げると足早にその場を去った。

 

「ダンブルドア、忙しそうだね。」

 

 急いでその場を去ったダンブルドアにハリーの呟くと2人は肯き、無罪となったことを喜びつつ、魔法省を後にした。

 

 

 




亀更新に拍車がかかっている私ですが実は最終話までの構成は決まってたりします。
良い言葉が浮かばないんです。
PUPGが楽しいんです←こら

ぜひとも早く書け、と感想でもなんでもいいので急かしてください。(他人任せ




誤字脱字などございましたら、遠慮なくご報告ください。
感想お待ちしています。


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新学期と新教師

完成しているのを貯めていても仕方ないかな、と思い投稿。



ではどうぞ。


 

 

9月1日。ドタバタと準備をしている皆を横目にイーニアは荷物の最終確認をすると紅茶を飲み干し、ムーディに先に行くことを告げて1人シリウスの家を出た。

 時間には余裕があるのでゆっくりと歩くイーニア。キングズ・クロス駅まで遠くはないが用心に越したことはないので辺りを見渡しながら歩く。

 ふと、イーニアは課外授業に出ているドラコの事を思い出し、足を止めた。

 

「なんの連絡もないけど大丈夫かなぁ。」

 

 どこにいるかもわからないドラコを想い空を見上げていると、後ろからイーニアを呼ぶ声が聞こえ振り返る。そこにはハリーたちが走って追いかけてきてる姿が目に入りイーニアは薄く笑った。

 

”心配してても仕方ない、か。―――大丈夫、そうだよね?”

 

 心の中でそうつぶやくと、追いついてきたハリーたちと並びキングズ・クロス駅へと向かった。

 

 

 汽車に乗り、監督生となったハーマイオニーとロンと別れるとイーニアはハリーとジニーを連れて座れる席を探した。しかしどこも開いておらず最後尾まで来たところでネビルと会う。

 

「こんにちは、ネビル。――ネビルも座れるところ探してるの?」

 

「イーニア、ハリー。――どこも一杯だ。」

 

 困った顔のネビルの近くのコンパートメントを覗くと、そこには1人の少女が座っていた。

 

「ここ空いてる。入れてもらおう。」

 

 イーニアを先頭に入ると中に居た少女の姿を確認したジニーが声をかけた。

 

「ルーナじゃない。――ルーナ相席いい?」

 

 ルーナと呼ばれた少女は”どうぞ”といって場所を空けてくれた。ルーナの隣にジニーが座りその隣にイーニアが座る。対面にハリーとネビルが座るとルーナが話しかけてきた。

 

「あなた、ハリー・ポッターだ。」

 

 突然呼ばれどう反応していいかわからなかったハリーは”うん”とだけ返事をした。

 

「で、イーニア・シュツベル。―――あなたがわからない。」

 

 ルーナがネビルに指を指しつつ聞くとネビルは戸惑った顔をし、オロオロする。

 

「ルーナ、まず自分から名乗るのが礼儀。」

 

「あ、ごめんなさい。私ルーナ・ラブグッド。」

 

「ネビル・ロングボトム。」

 

 イーニアはジニーとルーナのやり取りを聞きながら”変わった子”という印象をルーナに抱いた。ルーナは特にこちらを気にすることなく話しかけてくるので最初は黙っていたハリーやネビルも会話に加わり、談笑する。

 

「――誕生日に貴重なものをもらったんだ。」

 

「貴重なもの?」

 

 ネビルはそういうと灰色のサボテンを出した。

 

「ミンビュラス・ミンブルトニア!!」

 

 イーニアはとても貴重な植物を前に思わず感動の声を上げる。

 ミンビュラス・ミンブルトニアは非常に貴重な植物でアッシリア原産の植物。灰色のサボテンのような見た目をしているが針ではなく【おでき】の様なもので表面を覆っており僅かに脈を打っている。

 また、この植物は防衛機構を持ち、表面をつつくと【おでき】からドロリとした暗緑色の液体を周りに噴出する。【臭液】と呼ばれるこの液体は、毒性はないが腐った堆肥のような臭いがある。

 

「イーニアはやっぱり知ってるんだ。」

 

「これを誕生日に?――ホグワーツの温室にもないよ、これ。」

 

「うん。だからスプラウト先生に見せてあげたくて。――あと繁殖できないかやってみたいんだ。」

 

「図鑑とかでは見たことあるけど実物見れるなんて――成長してから触ると小声で歌うような奇妙な声を出すっていうからぜひ聞かせてね。」

 

 ネビルは”もちろん!”と返事をするとイーニアと、どう繁殖させるかの話で大いに盛り上がった。

 

 

 

 学校に着くと例年通りに組み分け帽子の歌を聞き、とはいかなかった。組み分け帽子は今までと違う内容の歌を歌い、それはどこか警告しているかの内容だった。

 皆、食事中の会話はそれで持ちきりとなった。ハリーやハーマイオニーの考察を聞きつつ、食事をしているといつものタイミングでダンブルドアが立ち上がり、皆もそれに注目する。

 いつもの注意事項、連絡事項、”別の仕事”でいないハグリッドに変わり前任のプランク先生が魔法生物飼育学の授業をすること、闇の魔術に対する防衛術はハリーの裁判の時に居たアンブリッジが担当することが告げられた。

 そしてクィディッチの話をダンブルドアが始めたとき”エヘン、エヘン”とアンブリッジが声を出し、遮った。ダンブルドアはゆっくりと席に着く。その光景に多くの生徒が唖然とする。

 

「校長先生、歓迎の言葉感謝いたします。」

 

 イーニアが裁判所でも聞いた、もはや耳障りのレベルの声が生徒たちの耳に入り皆、顔を顰める。

 

「さて、ホグワーツに戻ってこられて、本当に嬉しいですわ!そして、皆さんの幸せそうな可愛い顔がわたくしを見上げているのは素敵ですわ!」

 

 アンブリッジの演説はとてもためになるものではなく皆どうでもよさそうに聞いていた。

 

 

* * *

 

 

「この授業は呪われてる。」

 

 アンブリッジの授業を終え、イーニアが一番最初に抱いた感想だった。

 

「リーマスは仕方なかったにしてもこの授業を受け持つ教師はまともな人間がいないよ。なんだあれ。」

 

 授業の内容は幼稚なレベルで15歳の人間に対するものではなかった。返事の仕方を強要し、読む本はとても役に立つものではなく、挙句に杖を使わずに進む。

 完全に馬鹿にしてるとイーニアは感じ取り、アンブリッジに魔法を唱えようとした。もちろん左右に座っていたロンとハーマイオニーに止められたが。

 

「まさかこの歳であんな風に返事すら強要されるとは思わなかったわ。」

 

「ロンもハーマイオニーもなんで止めたのよ。ああいうのは一発痛い目にあわせないと――。」

 

「「あわせるわけないでしょ!」だろ!」

 

「イーニアが怒るのはもっともだけどあれでも教師よ。手を上げちゃダメ。――でもこのままは良くないわね。」

 

「ばれない様にヤルワヨ。―――ホグワーツ生のほとんどがアレ(・・)の復活を信じてるからね。」

 

 授業中、皆襲われる可能性があるから実技も必要だと肯き、そして襲われる原因はヴォルデモートにあるとハリーが言った途端、癇癪を起こした様にアンブリッジがわめき散らしたのでイーニアはあえてヴォルデモートをアレと称した。

 

「だろうな。完全に団結はできないにしても僕たちが入学した時よりはずっと各寮の溝は埋まってきてる。おかげでハリーやイーニア、セドリックの言葉を疑ってない。」

 

「いい傾向だと思う。帽子も団結しろって言ってたし。」

 

 新学期のはじまりに組み分け帽子が言っていた言葉を思い出す。

 

 

  ああ、願わくば聞きたまえ

  歴史の示す警告を

  ホグワーツ校は危機なるぞ

  外なる敵は恐ろしや

  我らが内にて固めねば

  崩れ落ちなん、内部より

  すでに告げたり警告を

  私は告げたり警告を・・・

 

 

「でもこのままじゃいけないわ。はっきり言って今期の闇の魔術に対する防衛術の授業は役に立たないわ。――こうなったら自分たちで学ばないと。」

 

「どうやって?」

 

 ロンがハーマイオニーに聞くとイーニアとハリーに視線を集める。

 

「先生は飛びっきり良い2人が居るじゃない。」

 

「いいけど……そんなことしたらそれこそアンブリッジの反感を買う気がするけど。」

 

 ハリーが少し戸惑ったように言うとハーマイオニーは”少し考えてみるわ”といい考え込むように顎に手を当てる。ハーマイオニーが考え始めたので3人は違う話題を持ち出そうとした時、後ろからやってきたネビルにアンブリッジが夕食前にイーニアを呼んでいることを伝えられ、イーニアはとても嫌がった顔をした。

 

 

* * *

 

 

 全ての授業が終わり、アンブリッジとの約束の時間。イーニアは眉間に皺を寄せながらアンブリッジが居る部屋の前に立っていた。

 

”一応、色々対策は取ったけど…。まさかイキナリ仕掛けてくるほどじゃないよね…?”

 

 イーニアは深呼吸をし、決意をすると扉をノックする。すると中から入るように促され、それに従った。

 

「座って。――紅茶をどうぞ。」

 

 やけに丁寧に喋ろうとしているアンブリッジにイーニアは違和感を覚えつつも椅子に座り、出された紅茶に口を付けた。紅茶が体内に入った瞬間、衝撃が走る。

 

”!?!?!?――紅茶に薬を入れたわね!!”

 

 味は紅茶だったがイーニアが身体の中に仕込んだ魔法が魔法薬が混ざっていることを知らせた。そしてすぐに魔法薬に対し、解析、分解が始まる。

 真実薬ではないがそれに近しい薬だと判断したイーニアは大急ぎで分解を進める。アンブリッジはどこかニヤニヤしたような顔を浮かべながらゆっくりと自分の紅茶を飲み、イーニアを見た。

 

「味はどうかしら?」

 

「…お、いしいですね。高いモノなんですか?」

 

「そうね。一般で飲むモノよりは高価なものかしら。」

 

 意識を分解に持って行ってるので少し口調が固くなってしまったがアンブリッジは特に気にした様子ではなかった。

 

「さて、本題に入りましょうか。」

 

 アンブリッジはニヤニヤ顔を一層強めるとイーニアに質問を投げかけてきた。

 

「ダンブルドアは何を企んでるのか教えなさい。」

 

「し、つもん、の意味がわかりませんが?」

 

 完全に分解が終わっていないため、少しでも気を抜くと喋ってしまいそうになり、イーニアは焦る。

 

「あら?そう?――ああ、紅茶のおかわりはいる?」

 

 アンブリッジは少しだけ目を見開くとイーニアの返事も聞かず紅茶のおかわり注いだ。

 それと同時にイーニアの分解が終わり、一息ついでに紅茶を飲み干す。

 一度分解が終了している薬なので再度飲んだところですぐに分解され、ただの紅茶と化す。しかしアンブリッジはイーニアが飲み干したのを見て、まるで勝ちを確信したような顔をした。

 

「もう一度質問するわ。ダンブルドアは何を企んでいるの?」

 

「もう一度言いますが、質問の意味がわかりません。」

 

 今度ははっきりと告げアンブリッジの顔を見る。イーニアの様子にアンブリッジは眉を顰めると空になったカップに再びお茶を注ぎ、質問してくる。

 

「じゃあ質問を変えるわ。ダンブルドアについて知っていることを教えてちょうだい。」

 

「んー、長年ここで教師をやっていて、結構もうおじいちゃんで、意外と変な食べ物が好きで――。」

 

 イーニアは何処かわざとらしく指を折りながら誰でも知っているようなことを喋っていく。最初は聞いていたアンブリッジだったが、目的の内容を話さないことにイライラし始め”もういいわ!”と少し強めの声でイーニアの言葉を遮った。

 

「質問が悪かったわ。――シュツベルさん、貴女だけが知ってる秘密とかってあるかしら?」

 

「私だけが知ってる秘密ですか?――――実はスネイプ先生はハリーの事が嫌いじゃない、とか?」

 

「え?」

 

「後は――実はスネイプ先生はあの髪型を結構気に入ってる、とか?」

 

「え?え?え?」

 

 イーニアがあまりにも斜め上の回答をしたのでアンブリッジは完全に混乱した顔をした。

 その後も嘘のような本当のような内容を繰り返し、混乱したアンブリッジはイーニアを帰した。

 




アンブリッジはもっとねっちゃりとした感じで書ければな、と思いますがどうでしょう?



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報告と会合


毎回お久しぶりです、と書いている気がしますが
お久しぶりです。約五ヶ月ぶりです。



ではどうぞ。


 

 

 

 

 アンブリッジの罰則を受けに行ったハリーをイーニアは談話室で読書をしながら1人待っていると手に血を滴らせながらハリーが戻ってきた。

 イーニアは思わず駆け寄りハリーの手を取る。そこには『僕は嘘をついてはいけない』と手の甲に刻まれていた。

 

「何をされたの?」

 

 少し強い口調で聞きつつイーニアはハリーの治療を始める。ハリーは黙っていたがアンブリッジがやったのは明白だった。

 イーニアは傷跡が残らないように綺麗に治すと”一応、マクゴナガル先生には話しておくわ”とハリーに告げ、談話室を後にした。

 

 

 イーニアはマクゴナガルの研究室の前に着くと扉をノックする。すると中からマクゴナガルが扉を開けて出てくる。

 

「Ms.シュツベル。こんな時間にどうしました?」

 

「すみません、先生。話しておきたいことがありまして。」

 

「―――中に入りなさい。」

 

 イーニアの口調に何かを感じ取ったマクゴナガルはイーニアを部屋に入れた。

 中に入りイーニアは部屋を少し見渡した後、マクゴナガルに話しかけた。

 

「ここって2階の割には景色がいいですね。」

 

 イーニアが入って突然そう告げたことにマクゴナガルは少し首を傾げたがすぐに理解した。窓の外にとても小さいが使い魔がおり、恐らく盗聴をしているのだろう。

 

「ええ、ここからでも生徒たちの様子が見えるためにそういう間取りにしたんです。」

 

 マクゴナガルも外の存在に気がついたのでイーニアは肯くとマクゴナガルに指された椅子に座った。

 

「それで話とは?」

 

「アンブリッジセンセイについてです。―――今日の夕食前、センセイに呼ばれて部屋に向かったのですがそこで変な質問をされました。校長が何を企んでいるのか、とか私だけの秘密はないか、とかです。」

 

 イーニアはそう言いつつ外から死角となる場所に魔法で字を書いていく。

 

『アンブリッジに薬を盛られました。真実薬に近いものです。』

 

 イーニアが書いた文字に驚きつつもマクゴナガルは平静を装いつつ返事を返す。

 

「それで、何と答えたのです?」

 

「質問の意味がわからなかったので、質問の意味がわかりません、と。

――校長がどうかは置いといて何か探られるような言葉はいい気がしませんのでマクゴナガル先生に話した次第です。」

 

『薬の分解が体内で行えたので何も喋ってはいません。』

 

「そうですか。―――他に何かありますか?」

 

「あと、ハリーが寮の入り口の扉に手を挟んで怪我をしてました。」

 

『ハリーはアンブリッジに罰則を受けていたのですが、どうやら罰則として呪いのようなものをかけられたみたいです。』

 

「…っ!!――それはいけませんね。ポッターの怪我は?」

 

 思わず息を飲んだマクゴナガルだったがそれでも冷静に返事を返す。

 

「対して酷くもなかったので私が治療しました。」

 

『手の甲に深く、”僕は嘘はついてはいけない”と刻まれていました。恐らくヴォルデモード復活の話をハリーがしたせいだと思います。傷は治しました。』

 

「――――ポッターには今後、気を付けるように伝えてください。」

 

「はい。わかりました。」

 

 マクゴナガルの言葉に肯くとイーニアは外に居る使い魔をチラッと見ると部屋を後にした。

 

 

* * *

 

 

 朝、食事を終えたイーニアが日刊予言者新聞を読んでいると『ドローレス・アンブリッジ 初代高等尋問官』と言う記事を見つけ、内容に眉間に皺を寄せた。

 それを見たハリーやロン、ハーマイオニーも横から覗き込み驚いた表情をする。

 

「これってつまりはアンブリッジが先生たちを見張る、いや監視か?ってことでしょ。」

 

「そうね。一部の先生方は大丈夫かしら…。」

 

「同僚の教育者、つまりは先生方を査察する権利を持ち、教師たちが然るべき基準を満たしているかどうかを確認する。あいつ自身が基準に満たしているとは思えないんだけど。」

 

 ハリーたちの言葉を軽く聞きつつイーニアは顎に手を当て、考えていた。

 

”ずいぶんと動きが急な気がする。何をそんなに焦っているんだろう。話だと騎士団はまだまともに動いていないはずだし………。”

 

 考え事をしていたイーニアだったがハリーに授業の時間が近いと言われ慌てて席を立った。

 その日からアンブリッジは授業の視察に来ては色々口出しをしていたが、生徒の間では”お前の授業を先に直せよ”という共通認識であった。

 

 

 

 

 

 そんな日々が続き、ホグズミード村行きのある日。以前話に出ていた防衛術について、数名の生徒がハーマイオニーに呼ばれホッグズ・ヘッドに集まっていた。

 

「ずいぶんと声をかけたんだね。」

 

「スリザリンの一部の生徒を除いてほとんどがアンブリッジに不満を抱いているわ。賛同してくれる生徒は多いのよ。」

 

 イーニアは部屋に居る人間の顔を見ると数人知らない顔があるがほとんどが知り合いだった。ネビル、フレッドやジョージ、ジニー、リーにルーナ、シェーマス、セドリックなどなど。クィディッチの選手が多く集まっていた。

 声をかけたメンバーが全員集まるとハーマイオニーがワザとらしく咳払いをし、注目を集める。

 

「皆、今日は集まってくれてありがとう。――詳細は説明する必要もないと思うから省くけど、今ここに居るメンバーは今のままじゃいけないと思ってここにいると思うの。

 だから私たちは自ら技術を磨き協力していかなければならないわ。」

 

「具体的にはどうするつもりなんだ?」

 

「私たちには最高の教師がここにいるわ。」

 

 フレッドの質問にハーマイオニーは隣に座っていたイーニアを見る。イーニアは注目されたのでわざとらしく隣に更に座っていたハリーを見た。

 それにより視線を集められたハリーは少し困ったような顔をしつつ否定するように軽く手を振った。

 

「「イーニアってことには俺たちはまったく依存はないぜ。」」

 

「うん。去年、凄かったもんね。」

 

 イーニアが教師をやることに反論は一つも出ず、皆肯く。

 

「イーニア一人では見きれないからハリーや…セドリック、手伝ってもらえる?」

 

「もちろん。できる限りのことをさせてもらうよ。」

 

 セドリックが返事を返したところでハーマイオニーが再度イーニアを見る。

 

「場所はいい場所があるわ。8階に「「必要の部屋だな!!」」――うん。それ。」

 

 フレッドとジョージがイーニアの言葉に被せ、声を上げる。

 

「授業はそこで行う。日時が決まったらこれで知らせるわ。」

 

 イーニアがそう言うとハーマイオニーが金貨を出す。

 

「ここに日付と時間が浮かび上がるからそれを確認してね。―――ああ、来れない場合はコレつかって【遊ぶ予定だったけどいけない】とでも書いて送って。」

 

 金貨を指した後、紙を一枚出すと手紙魔法でフレッドに飛ばした。

 

「具体的には次の集まりで教えるね。」

 

「参加する人は金貨を持っていてください。」

 

 ハーマイオニーがそう締めるとそこに居た全員が金貨を持っていき、解散となった。

 皆が部屋を後にしたのを確認すると残っていたフレッドがイーニアに質問をしてくる。

 

「このことを他に喋らないように何かしなくてよかったのか?」

 

「ん?ああ、そうね。それならこの金貨に細工がしてあるわ。」

 

 そう言われるとフレッドは金貨にイーニアから習った解析魔法をかける。

 

「―――?何にもかかってないんじゃないのか?」

 

「条件満たさないと発動しない魔法だから解析魔法だけじゃわからないよ。」

 

 首を傾げたフレッドを笑いながらイーニアは扉を開け、ホグワーツに戻るように促す。金貨も持ちながら一生懸命悩んでいるフレッドたちを横目に今後について考えているとある張り紙が目に入った。

 

 

『告示 ホグワーツ高等尋問官令

 

学生による組織、団体、チーム、グループ、クラブなどは、ここにすべて解散される。

組織、団体、チーム、グループ、クラブとは、定例的に三人以上の生徒が集まるものと、ここに定義する。

再結成の許可は、高等尋問官(アンブリッジ教授)に願い出ることができる。

学生による組織、団体、チーム、グループ、クラブは、高等尋問官への届出と承認なしに存在してはならない。

組織、団体、チーム、グループ、クラブで、高等尋問官の承認なきものを結成し、またはそれに属することが判明した生徒は退校処分とする。

 

以上は、教育令第二十四号に則ったものである。

 

高等尋問官 ドローレス・ジェーン・アンブリッジ』

 

 

 イーニアは2度読み直して深く眉間に皺を寄せた。

 

「お、おい。これってクィディッチも含まれるんじゃ…。」

 

 ジョージが文を読んで動揺したように言うとハーマイオニーも読み終わり肯く。

 

「そうね。―――まずいわね、誰かが喋った?」

 

「だとしても対応が早すぎるし、そもそも喋ったら魔法が作動するからそれはないと思う。」

 

「盗み聞きとかは?」

 

「ない。完全に遮断しといたから。」

 

 イーニアとハーマイオニーの問答をハリーたちは半ば呆然と聞いていた。

 

「ま、私たちのモノはともかくクィディッチは申請に行かないといけないね。――これから集まるんじゃない?」

 

「そ、そうだな。おいハリー行こうぜ!!」

 

 クィディッチチームのメンバーは各自に集まる為、走って各寮へと向かった。

 

「こっちからアレに会いには行きたくないけど――しょうがない。」

 

「アンブリッジに会いに行くの!?」

 

「うん、今回のことについて聞いておかなきゃいけないから。」

 

 イーニアはため息を吐くと、ハーマイオニーに先に戻るように告げアンブリッジの研究室へと足を運んだ。

 

 

 

 

 研究室の扉をノックすると返事があり扉が開く。

 

「あら、Ms.シュツベル。どうかしたのかしら?」

 

「センセの出した告知についてお話がしたいんです。」

 

「さっそく読んでくれたのね。いいわ、中に入って。」

 

 アンブリッジに促され、中に入ると前回と同じ場所の椅子に座る。

 

「で、何を話したいのかしら?」

 

「今、私たちは週に一回くらい勉強会として集まってるんです。もちろんメンバーはその時都合が合う人間になりますが。―――それが今回の告知に当たると思いまして。」

 

「そうね。確かに当たるわ。」

 

 しっかりと内容を確認してくることに好感を持ったのかアンブリッジは作った笑顔から本当の笑顔に変わる。

 

「はい。ですが先ほど言った通りメンバーの人数は不規則で、場所もその時開いている場所を使っています。今回の申請に不確定な場所、人数で行っているのは問題があるのか知りたいんです。」

 

 イーニアが少し残念そうに喋るとアンブリッジは落ち込ませないように間髪入れずに答える。

 

「会を行う前にどこで行うか通知してくれば問題ないわよ?」

 

「本当ですか!?なら今許可をいただけますか?――ああ、もちろん一度参加したことのあるメンバーの名前は全員書きます。」

 

 イーニアは喜ぶように少し声を上げ、そのまま許可をもらおうとする。

 

「ええ、いいわよ。この紙にメンバーと目的と団体名を書いて?」

 

「はい!ありがとうございます!!」

 

 イーニアは紙を受け受け取るとアンブリッジに気づかれないようにこの活動において文句を言えない契約書に魔法で変え、さっき集まったメンバーの名前を全員分書き、団体名に【勉強会】と記載し、笑顔で紙を返した。

 

「あら、上級生の人もいるのね。」

 

「はい、自分たちの復習にもなると、色々教えてくれます。」

 

 アンブリッジがメンバーを見ながら、ペンを取り許可と自分の名前をサインするとイーニアに渡した。

 

「これが許可証にもなるから無くさないようにね。」

 

 受け取ったイーニアは契約書としての拘束力が発揮されているのを確認すると、深く頭を下げ、研究室を出た。

 研究室を出たイーニアはそのまま校長室へと足を運び、扉をノックした。アンブリッジの機嫌が良く、そろそろクィディッチチームが訪れる事を踏まえれば、ダンブルドアと接触できるのはこのタイミングだけだった。

 中から入るように声がするとイーニアは扉を開け、校長室の中へと足を運ぶ。

 

「どうかしたかの?イーニア。」

 

「はい、ここ数日の件についてお聞きしたくて。」

 

「よいよい、ここでならしっかり喋っても問題ない。」

 

 イーニアがあえて肝心の部分を歯抜けにして言うとダンブルドアは微笑みながら返し、椅子に座るように促した。

 

「アンブリッジの動きが性急過ぎます。外で何か起きてるんですか?」

 

「いや、困ったことに何も起きてはおらん。――イーニアが知っての通り団員もあまり活動していない。」

 

「じゃあいったい何が目的で…。」

 

「手当たり次第にやっているだけかもしれん。」

 

「とりあえず全部叩いてみて埃が出ればってことですか?」

 

「うむ。――ここは事を荒げず静観している方がいいかもしれん。」

 

 ダンブルドアのその言葉を聞き、イーニアは少し困った顔をした。ついさっき行動を起こしてしまったばかりだ。

 

「何かまずいことでもあるのかね?」

 

 イーニアは苦笑いしながら防衛術、そして勉強会という形で許可を取ったこと、そして契約書として許可証に魔法をかけたことを話した。

 

「許可がもらえたのなら問題はないじゃろう。ただし慎重に行うのじゃぞ。――どうしても危ない状況になった場合は儂の名前を出して構わん。」

 

「分かりました。――すいません。」

 

「よいよい。形はどうあれ勉学に励むことは悪いことではない。」

 

 ダンブルドアはそう言い笑顔になるとそろそろ戻るようにイーニアに促す。イーニアはそれに従い、校長室を後にした。

 

 

 

 





許可証をさらっと契約書に変え、保険を取っておくイーニア。
慎重に、かつ確実に事を成すべくイーニアはあの手この手と色々していきます。


次回は外伝、ドラコ編となるかもしれません。


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【外伝】人として当たり前な事

あけましておめでとうございます(超遅



ではどうぞ。








 

 ドラコは走っていた足をゆっくりと緩めた。息を吐きながら深く被っていたフードを取り、黒いコートからスリザリンのマークの付いたコートへと変える。

 コートを変えた所で足を止め、もう一度息を吐く。そしてそのままわき腹を押さえながら壁にもたれかかった。

 

”想像以上に厳しかったな。――だが十分な情報は得た。”

 

 わき腹を押さえつつ空を見上げる。

 

”ひとまず治療を――”

 

 ドラコがそう考え自分の傷を確認しようと思ったとき、人が歩いてこちらに来る音が聞こえてきた。

 本来ならそこまで警戒する必要はないが、事のあった後ともなると警戒を怠るわけにはいかない。ドラコは胸ポケットに入っている杖を手に持ちながら歩いてくる人物を見ていた。

 

「ここに居たのか、マルフォイ。」

 

「セル…か…。」

 

 あまり会いたくない人物の登場にドラコは思わず渋い顔をする。

 

”カロー家は死喰い人だ…。恐らくセルもッ…。”

 

「そう警戒するな。別に俺はお前に害は加えない。」

 

「…本当か…?」

 

「信用がないな。――まぁ、日頃の行いからすればそうかもしれんが。」

 

 セルはそういうとポケットから杖を出しドラコの足元に転がした。

 

「これで少しは信用してくれるか?」

 

「どういうつもりだ。」

 

 セルの行動にドラコは目を見開き驚く。

 

「俺を死喰い人(人殺し)と同じにしないでくれ。俺はただ、マグルを魔法界に関わらせるべきじゃないと思ってるだけだ。殺せばいいなんて思ってない。

――いや、つい最近まではそう考えてたよ。だがな、俺は見たんだ。従兄弟たちがマグルを殺す様を。俺はその時気が付いたよ。狂ってるのはこいつ等なんじゃないかって。

人を殺すのが愉しいなんておかしい、そんな人として当たり前なことに今まで気が付かなかった。」

 

 セルの告白をドラコは黙って聞いていた。

 

「魔法族もマグルも関係ない。人間としてあいつらは狂ってる。

――俺はそうは成りたくないし、何より人間としての俺の心がアレは間違ってると叫んでる。だから俺はあいつらの仲間になんてならない。」

 

「だが僕の考えには賛同できないんだろう?」

 

「そうだな。アイツ等とは違っても俺はマグルは関わらせるべきではないと思ってるからな。――でも、考えが違うから敵対するなんて、アイツ等と同じじゃないか?俺はただ怪我をしているクラスメイトを助ける、それだけだ。」

 

 セルが少し笑ったように言うとドラコもつられて笑い”違いない”と呟いた。

 

「悪いが治療を手伝ってくれるか?」

 

「もちろんだ。」

 

 ドラコに助力をお願いされ、肯き治療をする。

 そのセルの横顔は今までにないくらいに憑き物が無く、清々しい顔だった。

 

 

 

 

 

 





セル君が仲間になりました。

相も変わらず亀更新ですみません。



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勉強会とハグリッド

ほんとにお久しぶりですッ!!!!!!!!

なんとか一年立つ前に更新ができましたッ!!!!





ではどうぞ。


 

 勉強会初日。イーニアは1人早くに必要の部屋に入り自身に高位魔法を唱えていた。自身にかけるタイプの高位魔法は危険が伴うため、アリシスからは細心の注意を払う様に言われている。

 今回挑戦しているのは一部の高位魔法を自身の内に入れ、詠唱を無しで魔法を使うというもの。また使わずとも自身の中で貯めた魔法エネルギーを運動エネルギーに変えることで自身の体術の威力を向上させる。

 イーニアは通常魔法の取込み、変換、発動はできることがわかっていたので可能であると踏んでいたが、高位魔法を取り込み、維持するには疲労が激しく、とても使えモノにならない状態に頭を悩ませていた。

 

「くぅーっ…はぁ…はぁ…はぁ…。」

 

 高位魔法を取り込んだイーニアは膝に手を付き、荒く呼吸をする。

 

「この…っ…方法も…だめか。」

 

 イーニアは片手をかざすと魔法を使う。外に放出された魔法は壁に当たり消滅。それを確認したイーニアは大の字にで床に転がった。

 思いつく限りの方法を試しきり頭を悩ませていると部屋の扉が開き、ハリーたちが中へと入ってきた。

 

「イーニア、皆を連れてきた――よ?ってなんで横になってるの?」

 

「少し疲れたから休憩してたの。―――結構の人数が集まったね。」

 

 立ち上がるとハリーたちが隣に立ち、入ってくる生徒の顔を見ながらイーニアがそう呟く。

 皆が部屋に入り並ぶと、ハーマイオニーが手を叩きイーニアに始めるように促した。

 

「――皆、今日は良く集まってくれたね。皆にはこれから本来の授業でやることにちょっとだけ増した分のことを覚えて行ってもらおうと思ってる。もちろん、さらに先のステップに踏んでもらっても構わないし、達成できなくても問題はない。

 ただ一つだけ覚えておいてほしいのは本気にならなければ自分の身を護ることはできない、ということ。

 前置きはこれくらいにして始めよう。――ああ、そうそう。アンブリッジとダンブルドアの許可を取ったから。表向きは勉強会って名前になってるけどダンブルドアの名前使っていいってことだったから裏の名としてDA、ダンブルドア軍団とでも名乗ろうか。」

 

 許可証をぴらぴらと見せると全員が目を見開いて驚き、思考が止まっている。

 

「――?どうかした?」

 

「許可取ったの!?」

 

「え?うん、勉強会って名目だけど。」

 

 いち早く思考を取り戻したハーマイオニーがイーニアを問い詰める。

 

「アンブリッジから!!?」

 

「うん。」

 

「――!!なんていうか…イーニアの行動力には驚かされるわ。」

 

「そう…?――ま、いいわ。始めよう!!皆、2人1組になって。」

 

 皆が組み終わるとイーニアは再び口を開く。

 

「まずは初級編。武装解除と――ハリー、私に武装解除を。」

 

「全力で?」

 

「もちろん。」

 

エクスペリアームス(武器よ去れ)!!」

 

 イーニアはハリーの武装解除魔法をステップで避ける。

 

「避けることを覚えてもらう。盾呪文に頼りすぎるのは良くないからね。1人は武装解除を、1人は防御役ね。盾呪文使っても構わないけどできるだけ使わないように、ね。――それじゃ、始め!!」

 

 イーニアの掛け声で皆が始めると、イーニアは一組一組見ながら指摘をしていく。

 クィディッチをやっている人は日頃から体を動かしているため、呪文を避けるのは上手い。が、避ける動作が激しいためか持久力がないと、イーニアは判断した。

 一度、手を叩き攻守交代を行い、更にそれぞれの個性を見定めていく。

 ローテーションを3回したところで誰もが立っていられず、床に座り込んでいた。

 

「皆いい感じになってきたね。――色々指摘はあるけど……そうだね、一つだけ。

 皆動作が激しい。激しい動きはその分体力を使うわ。動きは最小限に。――最小限の動きは最適な動きになるときもあるからね。

 お手本を見せましょう。まだ動ける人いる?」

 

 イーニアが質問を投げるとハリーやハーマイオニー、ロンを含む8人が立ち上がった。

 

「8人か…――全員でかかってきていいわよ。」

 

「さすがにそれは、僕たちのこと舐めてない?」

 

 人数を数えたイーニアが余裕綽々と言わんばかりに言うとロンが眉を吊り上げた。

 

「そう?今の皆と私とではそれ位実力に差があると思うよ。」

 

 いいからかかってこいと言わんばかりに手をちょいちょいとやるイーニアを見て、一番最初にロンが、続くようにハリーたちがイーニアに武装解除の呪文をかけてくる。

 イーニアはそれをゆったりとした動きで躱していく。高さも調整されたほぼ全方位からの攻撃を避けられたハリーたちは気合いを入れ直し、間髪入れずにイーニア目がけて攻撃を仕掛けた。

 避ける隙間すらないように見える魔法の中をイーニアは小さい動きだけで避けていく。

 

「なんで当たらないんだ!?」

 

 激しい攻撃を何食わぬ顔で避けるイーニアにセドリックは思わず叫んだ。

 

「前のアレ(戦い)で見えないところからの攻撃に対処する必要があるのを再認識したから、ね!!」

 

 言葉と同時にイーニアは高く跳ねた。

 

「空間認識の魔法の見直しをしたんだ。人の動き、魔法の動き、飛び先なんかをね。」

 

 空中で身体を捻らせながら飛んでくる魔法を避け、華麗に着地する。

 

「この距離なら指の動きまで私は認識できるよ。――後は認識した動きに対する私の身体能力次第。ちなみに今は身体強化は使ってないわ。」

 

 イーニアの言葉にフレッドはゲッとした顔をし、皆もそれに賛同するように顔を顰める。ただハリーだけはそうではなかった。

 

コンフィンス(身体強化)!!」

 

 身体強化でイーニアに一気に近づくと杖をイーニアに当てた。構えた杖にはいつもの何倍もの魔力が籠っている。

 

エクストラリアームズ(吹き飛べ)!!」

 

「え?」

 

 想定外の魔力量に驚いたイーニアは避けることを不可能と感じ、放たれた魔法と同時に後ろに下がり、右手でハリーの放った魔法を吸収した。

 

「危ない危ない。取り込む魔法の練習してなかったら危なかったわ。―――すごいね、ハリーいつの間にこんな高位な魔法を?」

 

 イーニアはハリーの魔法にとても感激していた。独自で高位魔法に唱えられるようになることは並大抵の事ではない上に、イーニアも勉強会前に取り込む魔法を練習していなかったら対処できなかったからだ。

 

「イーニアが使うところは何度も見ているからね。見よう見まねでやったんだけど…――やっぱり防がれちゃった。」

 

 ハリーは少し落胆したように言ったがイーニアはその言葉に焦りを感じていた。

”本来見よう見まねでできる様なものじゃないんだけど…ハリーは才能あるなぁ。”

 ハリーの言葉に半分苦笑いをしつつ練習量増やそうと、内心決めると周りに向き直る。

 

「攻撃面の話だけど今のハリーみたいに接近するっていうのも一つの手段だよ。現に私は意表を突かれたしね。――さあ、続けよう。休んでる皆は引き続き私の動きとか攻撃側の動きをよく見ていてね。」

 

 そう言うとイーニアは身体強化魔法をかけ、ハリーたちと向き合う。

”ロンの言うとおり少し舐め過ぎてたのかも。鍛錬してるのは何も私だけじゃないもんね。”

 イーニアが顔を引き締めると攻撃側にも緊張が走る。

 先ほどのハリーのような接近を息ぴったりでジョージとフレッドが行うとそれを合図に2回目の攻防が始まった。

 

 

 1時間後、イーニアは肩で息をしつつも座り込んでいる皆の中央で一人立っていた。

 2回目の攻防が始まり、体力が回復した人も交代で参加したが、1時間かけてイーニアに盾の呪文を唱えさせたのはわずか6回。

 6回当たったことに少し悔しい思いをしつつも、イーニアは満足そうに笑い呼吸を整える。ふと、ジョージがあることに気が付き、イーニアに投げかけた。

 

「そういえば今更だが、イーニア。君、スカートなんだから飛んだり跳ねたりするなよ。」

 

 ジョージがぼやきにイーニアは胸を張り自信有り気に腕を組んだ。

 

「残念でした。スカートに魔法かかっているからいくら激しい動きをしても下着は見えませーん。」

 

 そんなことを言いながらイーニアはくるくる回ったりジャンプして見せたりする。皆、イーニアに当てることに夢中になっていた為、さっきまで気が付かなかったが、イーニアの動きに本来は風で靡くはずのスカートは全く動きを見せなかった。

 

「1年の時に僕が指摘したこと気にしてたんだ…?」

 

「あれで思いついた魔法ではあるよ。」

 

 ハリーが少し苦笑いしながらそう聞いてくるのをイーニアは笑顔で返した。

 

「授業で習う魔法が全てじゃないわ。意外と創作魔法も難しくはないから人の数だけあるって言えると思う。―――さて、結構時間たったし今日はここまでにしようか。次回も来週のこの時間でいい?」

 

「いいんじゃない?クィディッチがある人もいるし。」

 

 ハーマイオニーの応答を聞き、周りを見渡し反論もなかったので解散することとなった。

 

* * *

 

 それから週に2回。DAは集まると、1回目は実技、2回目は筆記を行い、アンブリッチには2回目の勉強風景を見せることで不正なことをしていない、と疑いの目を向けさせないように仕向けるように決めた。

 もちろん、アンブリッジの前の防衛術の勉強をしていると五月蠅いのでアンブリッジがいる間は個別に他の苦手科目の勉強をしている。

 しかしクィディッチの試合が近づき、参加人数が減ると一旦、休止としそれぞれに鍛錬を積むように周知した。そんなクィディッチはというとスリザリンのクィディッチメンバーの多くが野外授業ということもあり、スリザリンは現在全敗という波乱の戦いとなっている中でグリフィンドール戦。

 イーニアは応援に行こうと思っていたがハグリッドが帰ってきたことを聞き、1人小屋を訪れていた。

 

「おかえり、ハグリッド。」

 

「おお。久しぶりだな、イーニア。小屋の掃除とファングの世話ありがとな。」

 

「気にしないで。ファングの世話はノーバートと一緒だったし、ロイたちも交代で世話してくれてたし、ね。」

 

 ハグリッドの代わりに紅茶を入れてきたロイとサーベイに視線を移すとハグリッドはロイ達にも頭を下げる。

 

「頭を上げてくれハグリッド、犬の世話なんてドラゴンに比べたら1億倍くらい楽だ。イーニアのおかげで本業の仕事(ノーバートの世話)は楽しているしな。むしろ仕事があって嬉しいくらいだ。なぁロイ。」

 

「ああ、勝手に小屋を使わせてもらってるしな。」

 

 そんなことを話す2人だが、2人も騎士団メンバーである。騎士団再結成の際、2人の実力と素性を確認したダンブルドアはすぐに2人をスカウトした。

 2人もまた、遠目からこのホグワーツで起きている事件を見てきたため、すぐにダンブルドアの話を飲み、騎士団へと入った。

 

「で、首尾はどうだった。その感じだとだいぶ手こずったようだが…。」

 

 ロイが紅茶を配り、ハグリッドに今回不在にしていた件について聞く。

 

「色々と邪魔は入ったが、ひとまず話をすることはしてきた。耳を傾けた奴もいる。多少はええかと思う。」

 

「なるほどな。できれば彼ら(巨人族)の手助けは欲しいところだが…。」

 

「すでに彼奴等の手が入っていると見た方がいいか。」

 

「聞いてくれた人は居たんでしょう?なら今は悲観することはないと思うよ。―――っち、アンブリッジがこっちに来る。」

 

 イーニアは探知魔法に引っかかったことを告げると人差し指を口の前に持っていく。

 

「今の話は…?」

 

「ここはノーマークだったから大丈夫。」

 

「アンブリッジってのは誰だ?」

 

 サーベイの質問にイーニアは首を振り、ハグリッドの質問に答えようとした時、小屋の扉がノックされた。ハグリッドは少し早足で扉を開ける。

 

「貴方がハグリッド?」

 

「そうだが――あー、失礼だとは思うが――いったいお前さんは誰ですかい?」

 

「私はドローレス・アンブリッジです。――と、Ms.シュツベル貴女なんでここに?」

 

 アンブリッジはグイッとするように中へ入ってきて、イーニアの存在に気が付いた。

 

「私がドラゴン研究会でドラゴンの飼育をしているのは知っていますよね。ハグリッドは場所やノーバートの御飯を用意してくれたりしてますから。帰ってきた知らせを受けて会いに来たんです。」

 

「「右に同じく。」、というか生徒でも教師でもなく、魔法省の承認を受けている私たちが行動について色々言われる覚えはありませんが、ね。」

 

 ロイは嫌味っぽく目を細め、睨むとアンブリッジは少し臆し、ワザとらしく咳をする。

 

「まぁ貴方達には用がないのでいいですゥ。――改めて、ドローレス・アンブリッジです。今は闇の魔術に対する防衛術の教師です。」

 

「たしか魔法省の人だと思ったが―――てぇしたもんだ。今じゃあの職に就く人はいねぇで。」

 

 ハグリッドが関心したように言うと少し自慢げにアンブリッジは続けた。

 

「さらにホグワーツの高等尋問官です。」

 

「そりゃ何ですかい?」

 

 ハグリッドは聞きなれない役職に顔を顰める。

 

「高等尋問官は同僚の先生方を査察する、という仕事をしています。魔法省は教師として不適切な者を取り除く覚悟います。貴方の授業も視させていただきますよ。」

 

 ハグリッドは驚きの声を上げた。

 

「お前さんが俺たちを査察?」

 

「ええ。ですので戻ってきたばかりではありますが挨拶を、と。ご承知おきくださいませ。」

 

 アンブリッジは要件だけ伝えるとそそくさと小屋を後にした。

 

「いってぇどうなってんだ…。」

 

「ダンブルドア先生の話だと手当たり次第ってことらしいよ。」

 

 唖然としたハグリッドの呟きに少し呆れたようにイーニアが言う。

 

「ただ――これまでのハグリッドの授業のやり方じゃ不味いかなー。ロイ、サーベイ。悪いんだけどハグリッドの手伝いしてもらえない?」

 

「授業のか?」

 

「うん。2人はドラゴン以外にも多少は生物学明るいよね?」

 

「まぁ人並み以上は詳しいが…。――いいのか?」

 

「実際に授業には出ないでアイディアとかならアンブリッジにはわからないでしょ。けど次の授業までには時間が無いから――ハグリッド一回目の授業はドラゴンなんてどう?」

 

 ロイとサーベイが肯いたのを確認するとイーニアはハグリッドに問いかける。

 

「ノーバートをか?」

 

「うん。成体になったノーバートは皆見てないし、ノーバートは私の言うこと絶対に聞くから安全でしょ。」

 

「おー、そうだな。イーニアがいいならそうさせてもらえるか。」

 

「じゃ決定。ノーバートには私から言っておくよ。――その次からの授業はロイとサーベイに相談してね?」

 

 あー、とか、うー、とか少し歯切れの悪いハグリッドに笑顔(ロンのトラウマ)を向け、肯かせるとイーニアはノーバートへの元へ向かうため小屋を後にした。

 

 

 

 




ハリー高位魔法を覚える
ハグリッドの授業へのフォロー会
でした。

超遅更新ですみません。多少はペース上げれるよう頑張ります(汗


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ヤドリギの下で


ハーメルンよ!!私は帰ってきたァァァ!!
厚くなったネタ帳を漸く話になりました…。



ではどうぞ。



 

 ハグリッドが戻ってきた日から一週間が経ち、今年初めてのハグリッドの生物学の授業。

 イーニアは一足先に森の中に居るノーバートの元へ向かい授業について話していた。

 

「言わなくてもいいことではあるけど確認の為に言うよ?気に入らない相手だかって絶対に威嚇しちゃダメ。あとハグリッドの言うことも聞くこと。いいね?」

 

 ノーバートはわかったという様に顔をイーニアに寄せる。寄せてきたノーバートの顔の鼻の上を少し掻いてやると少し気持ちよさそうに唸る。

 そんなことをしているとハグリッドが皆を連れてきた。もちろん最後尾にはアンブリッジの姿もある。

 

「すまねぇな、戻ってきたばかりで授業の準備時間が足りねぇもんで、今日は久しぶりにドラゴンの授業をしようと思う。成体のドラゴンを見ることはそうそうできることでもねぇしな。」

 

「ドラゴン研究会として、私も授業の補佐します。」

 

 皆、ハグリッドに対しアンブリッジの査察が入ることで半ば”もう駄目だな”という空気であったがイーニアが補佐に入る、と聞き”こいつ助かったな”と空気が変わる。イーニアとノーバートの信頼関係は言わずもがな。少なくとも今回の授業は穏便に終わるだろう、と。

 そんな空気を察することなくハグリッドはイーニアに軽く頭を下げた。

 

「わりな、イーニア。―――さて、知っちょるとは思うがこれがドラゴンだ。誰か特徴の言える奴はいるか?」

 

 ハグリッドの質問に多くの生徒が手を上げ、1人当てられる。

 

「鱗に覆われた爬虫類を思わせる体、鋭い爪と牙を具え、口から炎、種類によっては毒の息を吐きます。成体になると鱗は鋼より硬く、魔法当てることは困難です。ちなみにこの子はノルウェー・リッジバッグ種です。」

 

「おうおう、上出来だ。1年の時のことをしっかりと覚えているようで何よりだ。グリフィンドールに5点。」

 

 ハグリッドの拍手に答えた女生徒はホッと息を吐いた。

 

「ドラゴンは本来、大変危険で飼うことはできないがノーバートは魔法省から特別な許可をもらいこーしてホグワーツにおる。

 他の場所じゃこんな経験はできん、成体に近づくのは初めてのやつが多いだろう。近づいて触れてみるといい。」

 

 ドラゴンに近づき、触れる。そんな言葉にアンブリッジは目が飛び出る来るくらいに見開いた。

 本来でアンブリッジの反応は当然で、ハグリッドのセリフはそれに値するものではあるが、こと1年の時からイーニアと共にドラゴンに触れてきた多くの同期生たちは特に臆することなく、イーニアとノーバートの元へと近づいて行く。

 

「ちょ、ちょ、あ、貴方たち?ド、ドラゴンですよ?そんな散歩に行くように近づくなんて。」

 

「心配はありませんよ、アンブリッジセンセイ。この子はすごく賢くて良い子ですから。襲われる心配なんかありません。」

 

 イーニアが微笑で答えるが、ハリー達同期生はノーバートが特別なのではなくイーニアが特別なのだと確信を持って思っていたが誰も口には出さなかった。

 そんなことを知らないアンブリッジは口元をヒクヒクさせながら恐る恐る近づく。全員がノーバートに近づくとノーバートも触れやすいように体を伏せる。

 

「全員近くにいるな。――これが噂のドラゴンの鱗だ。鋼より硬く、魔法すら通さない。「美しいでしょう?」だろう?」

 

 イーニアとハグリッドの言葉が綺麗に重なり、笑いが起きる。危険生物を目の前に和ましい雰囲気が繰り広げられる現状にアンブリッジは完全についていくことができず、ついには授業中に言葉を発することはなかった。

 

 

 

「アンブリッジの顔を見たかよ。サイコーだったな!」

 

「初めてじゃない?授業に口ださなかったの。」

 

「出せなかった、が正しいでしょ。まあ僕たちみたいにドラゴンに慣れてないと普通はそうなんだろけど。」

 

 ロン、ハーマイオニー、ハリーの言葉にイーニアは捕捉するように言葉を繋いだ。

 

「あえて魔法省の名前を出して、ドラゴンがいること含めて突っ込みづらくしたからね。魔法省認可の生物なんだからその生物の生態について授業することはおかしなことではない。

 それをアンブリッジも理解してたから尚、言葉がでなかったんでしょう。」

 

 イーニアは出し抜いたことを楽しそうに笑い、ハリーたちも釣られるように笑った。

 

「でも次からの授業大丈夫かしら?いくら何でも2度もドラゴンの授業はまずいでしょう?」

 

「それは大丈夫。ロイたちに頼んでアイディアを出してもらう予定だから。去年みたいな無茶苦茶なことはならないと思うよ。」

 

「さっすがイーニア!手が打つのが早いぜ。」

 

 

* * *

 

 

「え?それはマジですか?」

 

 クリスマス休暇前の最後のDA。その集会前にイーニアはダンブルドアに呼ばれ校長室を訪れていた。

 

「うむ。大マジじゃ。ここで離れるのは生徒たちには不安になるかもしれんがタイミングを逃すと困るでの。」

 

「んー、一部生徒を除いて現在ホグワーツは過去にないくらいに団結しますから大丈夫だとは思いますが…。」

 

「それにホグワーツには君を含め騎士団員は多くいる。儂一人いなくとも問題はないじゃろう。儂がホグワーツを離れるのにこれほどの良い理由はない。」

 

 魔法省調査へと赴くためダンブルドアから告げられたDAの密告によるダンブルドアのホグワーツ追放。イーニアは内容が内容なだけに悩みこそしたがダンブルドアの名前を借りている対価として当然と判断した。

 

「―――了解しました。言うタイミングはまた連絡してください。」

 

「うむ。なに今すぐ、というわけではない。少なくともクリスマス休暇後にはなるじゃろう。」

 

 イーニアがダンブルドアの言葉に肯き校長室を出ようとすると、ダンブルドアは思い題したかのようにイーニアを引き留めた。

 

「一つ忘れておった。課外授業に出ていた者たちが今日の夕方には帰ってくる予定じゃ。久しぶりの友人に顔を出してはいかがかな?」

 

 イーニアは嬉しそうに肯くとドラコが帰ってくることを集まっているハリーたちへと伝えへに駆けた。

 

 

* * *

 

 

 イーニアがハリー達にドラコたちが今日帰ってくることを伝えるとDAもそこそこに解散することとなった。

 

「よし。今日はここまで!皆、最初の頃と比べたら良い動きになってきてる。休み明けは新しい呪文とかに挑戦してみようか。」

 

 新しい呪文、という単語に男子は喜びの声を上げる。やはり新しいモノは好きらしい。

 

「ただし、休み中に今までの動きを忘れてきた人は思い出すまで新しい呪文はお預けだからね。」

 

 イーニアの忠告に少しギクッとした人も居たが、皆しっかりと肯き、帰ってくる友人を迎えるため次々に必要の部屋を出た。

 全員が順番に部屋を後にし、最後にイーニアが必要の部屋から出るとそこにはフレッドが待っていた。

 

「フレッド?どうしたの?忘れ物?」

 

「んにゃ。イーニアを待ってたんだよ。」

 

「私?」

 

「そ。ま、ここじゃなんだし、少し歩くか。」

 

 イーニアはジョージが居ないことやフレッドの様子がいつもと違うのを感じつつもフレッドの後をついていく。

 クリスマスの飾りつけがされている廊下を歩き、珍しく無言のままのフレッドの横顔をチラチラと見ていると中庭に出た。

 中庭にもクリスマスの飾りつけがされており、クリスマス一色だ。

 

「あ、雪。今年もホワイトクリスマスになりそうだね。」

 

 雪を見たイーニアは楽しそうに笑い、そして少し寒そうに息を手に当てた。

 

「悪い。外に出るような恰好してなかったな。」

 

 フレッドはそういうと自分の付けていたマフラーをイーニアへ巻く。

 

「ううん。――ありがと。あ、フレッドこっち。」

 

 イーニアは何かに気が付くと巻いていた手をひっぱり、物陰へと隠れた。

 

「イ、イーニア?」

 

 突然のことに流石のフレッドも動揺したように聞くがイーニアは人差し指を口の前に運びシーッとポーズを取りつつ中庭の端の方を指さした。

 イーニアが指さした方向にはハリーとハーマイオニーが楽しそうに談笑している姿がある。

 

「去年のダンスパーティーからだけど、最近さらに2人の距離は縮まったのかな。」

 

 自分のことのように嬉しそうに笑うイーニアに釣られ、フレッドも笑うがすぐに引き締まった真面目な顔をイーニアへ向けた。

 

「イーニアはどうなんだ?」

 

「え?」

 

「イーニアはそういう相手、欲しいとか居たりするのか?」

 

「私?いないかなぁ。ま、私みたいな運動馬鹿を好きになる物好きが居るとは思わないしねー。」

 

 イーニアは本心で、しかし自虐的に笑い、少し羨ましそうにハリー達を見る。そんなイーニアをフレッドは熱の籠った視線で見た。

 

「俺が――――俺はイーニアが好きだ。」

 

 フレッドの言葉に反応するように廊下の飾りつけがヤドリギ変わり、白い花を咲かせ雪と相まって幻想的な景色となる。イーニアは少しの間、フレッドの言葉を理解できず、コテンと首を傾げていたが暫くしてフレッドの告白に気が付くと顔を真っ赤にしながら口をパクパクとしていた。

 

「イーニア、好きだ、愛している。俺と、恋人になってくれないか?」

 

 

 

 





お久しぶりです。いつもの言っていますがお久しぶりです。
生きとったんかワレ!!と思われる方ばかりかと思います。生きてます!!なんならハーメルンは毎日覗いてます!!(続き書けよ
すいません!!続き頑張って書きます!!(笑)


今回の話になりますが
ネタばれしますとこの物語はハリハーです。正直好物です!!誰かハリハーの話をもっと書いてくれ!!
話が逸れました(笑)
一応、告白に対する答え(イーニアの想いとか)決まってはいるのですが
この告白イベントに対する想い(感想)があれば是非ともお書きいただければ、と。
(おいおいドラコはどうした、みたいな)
単純に感想が欲しいだけです!!すいません!!


コロナ騒ぎで大変な方もいらっしゃるかと思います。
私は良くも悪くも影響なく生活してます。(リモートワークしたい)
皆さま、ご自愛ください。


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