え、だってロリじゃないもの (レンレン)
しおりを挟む

だってロリじゃないもの

※注意

一話毎の文量が少ないです。

それでもよろしければお付き合いください。



こんにちは、高町なのはです。

 

この度、高校を卒業しました!

 

一番古い付き合いの、すずかちゃんとアリサちゃん。

 

特別なきっかけで仲良くなったフェイトちゃん、はやてちゃん。

 

色々あったけど、みんな一緒に卒業して、私は前々から決めていた一つの道を進むことになりました。

 

それは正式に時空管理局に勤めること。

私は、私が使えるこの力で他の誰かを幸せにしたいから。

 

中学時代から既に教導隊に就いてはいて、今までは自宅から通っていたんですけど………

 

本格的に管理局で働く、ということはミッドチルダに移り住まなきゃいけないんです。

 

だから、私は『ある人』に伝えなきゃいけないことがある。

 

それは近くの家に住むお兄さん。

 

お兄さんと言っても、私と歳は4つしか違わない大学生の人なんですけど…

 

私はこの人に恋をしている。

 

PT事件のフェイトちゃんの時も、闇の書事件のはやてちゃんの時も、そっと私の背中を押してくれた大切な人。

 

ミッドに行くってことは、長い時間お兄さんにも会えなくなってしまう。

 

だから告白して、一緒に来て下さいって言うんだ。

 

普通は男の人が、女の人に言う台詞だと思うけど…まぁドラマみたいでいい、よね?

それにお兄さんの就職活動が上手くいってないって、おばさんが言ってた。

 

不景気のせいで、成績はいいのに採用してくれる会社がないんだって…

 

だから管理局内定済みの私が養ってあげるの。

 

こんな優良物件は他にないよーって言わなきゃ、うんうん。

 

 

 

そして卒業式が終わってから

 

私はお兄さんを呼び出した。

 

場所は公園。

 

私とお兄さんが初めて出会った場所。

お父さんが大きな怪我をした時のことだ。

 

あの頃はまだ魔法も知らなかった。

 

忙しい皆に迷惑がかからないように、目障りにならないようにと、ついに一人で家を出た日。

 

誰もいない公園で、夕方になっても一人でブランコに乗っていた。

外で泣いてしまったら、大人が駆け付けてくれるかもしれない。

 

でも家に連絡が行ってしまえば、きっとお母さんは困ってしまう。

 

家ではもっと泣けなかった。

誰かが気づいたら、皆が後悔してしまう。

 

そして一人でキィコ、キィコ、と音を鳴らしていたら、現れた人がいた。

 

私は、その黒いパーカーを着た少年が言ってくれた言葉を忘れることはないだろう。

そして、あの時の温もりも……

 

 

そんな事を考えていると、ザクザクと砂を踏み締める音が聞こえてきた。

 

お兄さんだ。

その姿を見るだけで胸が高鳴る。

子供の頃と同じような黒のパーカーを着ていることに気づいて、頬が熱くなった。

 

私に告白されることが分かっていて、あの時の服で来てくれたのかと勘違いしてしまいそうだ。

 

先程点いたばかりの街頭に照らされながら、私の前で止まった彼が話しかけてきた。

 

「えっと………久しぶり、だね。なのはちゃん」

 

「はい、お久しぶりです。ごめんなさい、急に呼び出してしちゃって」

 

まずは世間話から始まった。

 

今日が卒業式だったことを、おばさんから聞いたらしく、お祝いの言葉をもらった。

 

少しして、ついに話が途切れた。

 

お兄さんは困ったように目線を逸らす。

 

うん、今なら言える気がする。

 

「お兄さん…ううん、川添 怜(かわぞえ りょう)さん。あなたが好きです、付き合ってください。そして…私と……私と一緒に…………」

 

「ごめんなさい」

 

『一緒にミッドに来てください』

という次の言葉が言えずにいると、お兄さんの口から出たのは拒否だった。

 

泣きそうになる。

 

そういう可能性を考えなかった訳ではないけれど、やっぱり辛い。

 

でも断られても笑顔でいようって決めていた。

 

だって、お兄さんを困らせたくはないから。

 

そう、笑顔でいようと思っていたんだ………次の言葉を聞くまでは。

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺のストライクゾーン、13歳までなんだ」

 

 

 

 

 

「…………………………は?」

 

 

 

 

 

 

頭の中が真っ白になってしまった。

 

どうやら、私の初恋の人は変態さんだったらしい。

 

神様、こんなのってないです……

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

どうも、ロリコン(主人公)です

皆様はじめまして、川添 怜です。

 

突然なのですが、僕はロリコンです。

 

ちょっと、蔑んだ目で見るのはやめてくださいよ。

 

ん、その手はなんですか?

ようこそ紳士の集う場所へ?

やめろ、こんな癖(へき)を持ってはいるが心は清くありたいんだ。

 

 

ふう、それでですね。

 

いつ私がそれに目覚めたのかという話なんですが

 

自分がロリコンだと気付いたのは高校生の時でした……

 

 

(回想)

 

 

ある日、公園を歩いていたら女の子が目に入った。

 

茶色がかった髪の女の子で、今思えばあれはいい幼女で………げふんげふん、失礼かみまみた。

 

その時、僕の胸が高鳴ったのです

まるで、昔からそう(ロリコン)であったかの様な感覚。

 

もちろん、最初は信じられなかったですとも。

 

自分はいたって正常だと思っていたましたし、当然のことですから。

 

しかし一つだけ、はたと思い出したことがありました。

 

中学時代に女の子と付き合っていた頃のことを…

 

後輩の女の子に告白されたので、試しに交際を始めたことがあったんです。

 

その子は可愛かったし、普通なら女の子とイチャイチャ出来ることを大いに喜んで、楽しむはずだ。

 

しかし、全く楽しくなかったのを覚えている。

 

いや、楽しくないと言えば少し語弊があるかもしれないが、少なくとも「ときめき」というものを感じなかったのは事実だ。

 

結局、その子は高校受験を理由にフったんですけど…

 

 

そう、あの時にすら感じなかったトキメキを感じてしまったのだ!!

 

そこで気付いたんです、自分がロリコンなのではないかと。

 

不思議と欲情はしませんが…

 

いやぁ、懐かしい。

 

そんな私も社会人ですよ、まだ内定はもらってないですけど

 

 

ん、メール?

 

 

 

------------------------

 

日付 3月○○日

 

送信主:高町なのは

 

件名:こんにちは

 

内容

なのはです。

伝えたいことがあるので、19時に公園に来て下さい。

 

------------------------

 

 

 

高町なのは

 

近所に住む4つ下の女の子。

昔はよく僕が面倒を見てあげていた。

確か高校を今日卒業した、って母さんが言ってたっけ………

 

 

 

 

 

 

 

 

大学からの帰宅ついでに公園に来た僕は、まず世間話を繰り出した。

 

久々に会ったせいか、彼女が緊張気味だったからだ。

 

少しして、なのはちゃんが意を決したように口を開いた。

 

その内容というのは

 

「お兄さん…ううん、川添 怜さん。あなたが好きです、付き合ってください。そして…私と……私と一緒に…………」

 

というもの。 つまり告白だった。

 

正直びっくりしている。 かれこれ10年以上の付き合いになるが、全く気付かなかった。

 

だがしかし…

 

「ごめんなさい」

 

なんていうか、色んな意味で。

 

だって--

 

 

「俺のストライクゾーン、13歳までなんだ」

 

「…………………………は?」

 

 

--君が恋した人は変態さんなのだから。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ロリコンだなんて………byなのは

緊急事態

 

想定外にも程がある。

 

だって今まで憧れてきた人がロリコンだったなんて!!

 

どうしよう。

 

どうしたらいいの?

 

とりあえず、フェイトちゃんに相談することにしよう。

 

お兄さんのことでいつも相談にのってくれていたフェイトちゃんには成功しても、失敗しても報告するつもりではいたが、なんと説明したものか…

 

確かフェイトちゃんは卒業式の後しばらくして任務に向かってたから……そろそろ帰ってくるはず。

 

 

と思ってたらフェイトちゃんが来た。

あ、ヴィータちゃんも一緒だ。

同じ任務についていたんだろうか。

なんにしても、ちょうどいいかも。

 

 

「あ、なのは!」

 

「フェイトちゃん、フェイトちゃん!!このままじゃ、ヴィータちゃんにお兄さん取られちゃう!!どうしよう?!」

 

「ん、あたしがなんだって?」

 

「ど どうしたの、なのは。もしかして告白がうまくいかなかったの?」

 

ただフられただけなら、どれだけよかったか…

 

「うまくいくとか以前の問題だよ!! そうだヴィータちゃん、ロリロリになるにはどうすればいいかな!?」

 

「よーし、てめえ喧嘩売ってんな? 今なら格安で買ってやんぞ、あん?」

 

「落ち着いて、なのは。ほら深呼吸をしよう、吸ってー、吐いてー」

 

「そ そうだよね。一度落ち着かなきゃ…」

 

「おう、落ち着け落ち着けー」

 

スー、ハーとその場で手の動き付きで深呼吸をする…うん、少しだけ冷静になれたかもしれない。

 

「ふう、じゃあ改めてヴィータちゃん、ロリコンの人を射止めるにはどうしたらいいと思う?」

 

 

「うがああああああああああああ、深呼吸なんて、まるで意味ねえじゃねえか! ならそのポンコツ頭をアイゼンでぶっ叩いて直してやらあああああ」

 

 

 

どうやら私の頭の中の回路はただいま混線状態にあるらしい。

 

 

 

□■□■□■□

 

 

数分してフェイトちゃん今回のことについて教えられた。

ヴィータちゃんは今にも噛み付くような目線で睨んできたけど

というか実際に噛み付かれたけど……

 

 

「ええっと、確かに予想外というかなんというか」

 

「……まあなんだ、諦めるしかねえだろ。いくらなんでも年齢までは変えられねえ」

 

 

でも流石に不憫に思ったのか、ヴィータちゃんも相談に乗ってくれた。

 

 

「それは………でも簡単に諦められる話じゃないっていうか…」

 

「つっても、お前も来週からミッドに引っ越しだろうが。もう会えないかもしれない男に目を向けてる場合かっての」

 

 

うぅ、なんだかヴィータちゃん容赦ない…

もしかして、さっきの怒ってるのかな?

 

…今度アイスを奢ってあげよう。

 

じゃなくて……

 

ふえぇん、どうしよう!!

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

幼女を求めて(嘘)、いざ新天地へ

どうも、川添 怜です。

 

 

さて、いきなりですが………

 

「何ぁ故だああああああああ!!」

 

僕は起きたら広大な芝生の上にいた

 

どうやら気絶していたらしいのだが、見渡す限りでは少なくとも海鳴市ではなさそうだ。

 

というか、ここミッドだよね。

 

若干近未来な部分には見覚えがあるし。

 

どうしてこうなったか記憶が判然としないな。

 

体の節々が痛むことも含めて、まずは思い出そう。

 

 

ミッドチルダと言えば……そうだ、母さんの出身だ。

 

確か管理局の任務でやってきた日本で父さんに一目惚れして、猛アタックしたって言ってたな…

 

そういえば母さん、なのはちゃんの事を随分と気に入ってるんだよね。

 

 

……あー、なんだか思い出してきたわー

 

その母さんが問い詰めてきたんだったか。

 

『どうして、なのはちゃんをフったのか』って。

 

なんで知ってるんだよ……

 

(フェイトちゃんからリンディさんへ、そこから母さんに知らされた、という経緯があったのはもっと後で知ることになる)

 

当然そんな疑問に答えてくれるはずもなく、自分がロリコンなのを隠しながら言葉を濁しても追求してくる。

 

それで、いくつか見繕った理由の中に『なのはちゃんはミッドに行っちゃうし……』なんて言ったんだ。

 

そしたら急に笑顔になった母さんが、現役時代のデバイスを取り出して砲撃を……ガクガクブルブル

 

体が痛む原因はこれか……!!

 

あれ、ポケットに封筒が入ってる?

 

中に入ってるのは手紙か?

 

なになに…?

 

 

 

 

 

 

------------------------

 

 

怜へ

 

とりあえず私が住んでた家を貸してあげるから、なのはちゃんを追いかけなさい。

 

お付き合いするまで帰ってくることは禁止とします。

 

 

P.S.ミッドのお金を同封………しようと想いましたが、どこにしまったか忘れたので自分で稼いでください。

 

代わりにそのデバイスを使いなさい。

 

 

------------------------

 

 

 

 

 

ふ ざ け ん な

 

 

「ってデバイス?」

 

「(チカッチカッ)」

 

 

………………えっ?

 

ポケットに手を入れてみる、するとタバコ大の細い機械が入っていたのを見つけた。

 

「………母さんは僕に魔法少年になれと言っているのか?」

 

ロリコン(変態)の僕でも流石にその手の癖(へき)はないぞ…

 

と、途方に暮れていると情報が浮き上がってきた。

 

「なになに……」

 

 

 完全非戦闘用ストレージデバイス。

 主に連絡や演算に用いられます。

 設定された機能に従い動きます。

 

 

 

なんだ、要は超高性能なケータイか。

 

よかった…魔法少年とかないわ。

 

っていうか、僕もう余裕で二十歳超えてるしね。

 

「とりあえず、地図と家までの道順出して」

 

 

さて……………

 

 

なのはちゃんに会わないようにしなくちゃな。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

幼い頃はみな幼女

「ここ……だよな」

 

とりあえずデバイスに出させた地図と道順通りに進んだら家に着いた。

 

割と立派なそれは一人で暮らすには大きすぎると思う。

 

いきなりミッドに飛ばされはしたものの、これはこれでアリかもしれない。

 

なんて思う僕だったが、ひとつの問題を思い出す。

 

「そういえば、鍵とかどうすればいいんだろうか?」

 

侵入する訳にもいかないし、かといって渡されたデバイスにも伝言なんかはないらしい。

 

「うーん………」

 

「あの、どうかなさいましたか?」

 

玄関の前で頭を悩ませていると声をかけられた。

 

振り返ってみると、そこには女の子がいた。

 

青がかった長い髪で、どこかの制服らしきものを着ている。

 

顔立ちから見て、僕より年下だろう

 

だが真面目そうなことがキリッとした表情から見て取れる。

 

「ああ、この家に住めと母から言われたのですが、鍵なんかは渡されていなくて……」

 

「この家に、ですか……? えっと失礼ですが、あなたは?」

 

「あぁ、紹介が遅れました、川添 怜と申します。」

 

「はじめまして、私は隣の家に住むギンガ・ナカジマと言います。 私の母がこの家の管理を任されてい

るので、よければいらっしゃいますか?」

 

不幸中の幸い、と言ったとこらだろうか

 

仕方がないので彼女の母親に話を聞きに行くことにした。

 

 

 

そうしてナカジマさんに案内されて家まで行くと、奥からエプロンを付けた人がやってきた。

 

どうやら、この人がクイント・ナカジマさんらしい。

(随分と若々しい気はするが、桃子さんやリンディさんの例があるため追求はしない。)

 

引っ越しのことを伝えると、急にテンションが上がってリビングまで案内された。

 

「うふふ、まさか先輩の子がやってくるだなんてねー。 私の年代の管理局員には伝説的な人なのよ?」

 

「は はぁ……」

 

随分とフレンドリーというか、気さくで接しやすい人だった。

 

とは言え、身内の成功談を聞かされるのは恥ずかしい。

 

どうやら母さんは昔からハチャメチャな人だったようだ。

 

なんでも気に入らない上司を口と手でボコボコにしたのが伝説の始まりらしい。

しかも上司がキレて解雇しようとしたところで不正の数々を公表。

その上司は心身共にボロボロだったとか。

 

 

任務でクイントさんとペアを組んだこともあったと彼女は言う。

違法研究所の制圧が任務だったらしいが、突入時はもぬけの殻だったとか。

そこで母さんの出番だ、『なんかこの向こうにいそう』とか言って砲撃を発射。

隠し部屋と研究者を見つけて逮捕する大金星。

 

 

 

などなど

 

引退後にも、通りすがりという理由で絶体絶命のクイントさんの命を救ったというのは意味が分からなかったが。

 

クイントさんは、そんな母さんから家の管理を頼まれたらしい。

 

今でも掃除なんかをしてくれているようだ。

 

 

 

昼過ぎにやってきた筈なのに、色々な話をしていると夕方になってしまった。

 

すると、クイントさんが口を開いた。

 

「晩御飯を食べて行かない?」

 

と。

 

最初は『迷惑はかけられない』と断っていたのだが、クイントさん曰く、俺が住む家の冷蔵庫には食材なんてないとのこと。

 

そうなると話は別だ。

 

夕食を食べるか食べないか、この二択は僕にとって酷すぎた

 

もちろん、せめてもの礼にと準備を手伝ったりはした。

 

 

 

ちょうど準備が終わった時、ドアを開く音が聞こえた。

 

足音や聞こえる声から、どうやら二人くらいのようだ。

 

「たっだいまー、ついそこで父さんに会ったから一緒に帰ってきちゃったー………って、どちら様?」

 

先に入ってきたのは妹さんらしい。

 

元気よく入ったが僕の姿に首を傾げている。

 

「ったく、スバル。 靴は脱いだら揃えろと言って………」

 

今度はお父さんらしい。

 

がっちりした体つきに渋い声をお持ちのようだが、俺の姿に固まってしまった。

 

「あー、はじめまして。 川添 怜といいます。 この度はお隣りに……」

 

「娘(ギンガ)はやらんぞ!!」

 

 

 

その瞬間、世界の全てが止まった気がした。

 

 

 

「おおおおおお父さん!? いきなり何言って…!?」

 

「ええい、お前はまだ16歳なんだぞ!まだ結婚は早い!!」

 

「ええっ、ギンねえ結婚するの!?」

 

「あらあら」

 

 

クイントさんに止められるまで、勘違いは10分以上続いた。

 

 

 

 

 

 

「いやあ、悪かったな。 てっきりギンガが彼氏でも連れて来たのかと思ってな」

 

「もう、父さんったら……」

 

ようやく誤解が解け、ゲンヤさんが苦笑いしながら謝ってくる。

ちなみに頭には大きな瘤ができている。

 

 

「じゃあ、そろそろご飯にしましょうか。」

 

「え……まだ家族の方が揃ってないんじゃ?」

 

にこやかにそう言うクイントさんに些細な疑問をぶつけてみる。

 

そんなことを聞いた理由は準備された夕食の量だった

 

皿にがっつりと盛られた料理の山……いやタワー。

 

バランスが取れているのが不思議なくらいに盛ってある。

 

これだけの量があるんだ、もっと大家族だと思ったんだが…

 

「いいえ、これで全員集合よ。 …あぁ大丈夫。 よく食べるから、うちの----」

 

うちの『旦那』かな?

 

確かにゲンヤさんって体格はいいけど一人でこれは流石に…

 

「----娘二人が♪」

 

「……………え?」

 

 




おまけ


想像を絶する勢いで食事も終わり、しばらく雑談をしてからナカジマ宅を出る。

見送りのためにギンガさんがついてきてくれた。

「今日はすみませんでした、父が失礼なことを…」

それは先程の勘違いだろうか、それとも半ば無理矢理に酒を勧めてきたことだろうか。

勿論、そのどちらもという可能性もあるが

「いえ、素敵なお父さんじゃないですか。 お二人を愛していらっしゃるのがよく分かります。 まぁ、これだけ魅力的な娘さん達なら当然かもしれませんね」

「い いえ、そんな……魅力的だなんて///」

照れてしまったのか、ギンガさんは少しだけ俯いた。

家が元々お隣りということもあり、すぐに玄関先に着いたギンガさんは俺にシンプルな鍵を手渡した。


「で では、これが鍵です。 何か分からないことがあれば、相談してくださいね。」

「ああ、何から何まですみません。 それじゃあ、おやすみなさい。」

「はい、おやすみなさい。 あの、次からは敬語じゃなくてもいいですから…そ それでは失礼します!!」





おまけのおまけ


--ギンガ side--

バタンと音をたてながら、私は慌てて自宅の玄関に駆け込む。

「はぁはぁ……顔が熱い」

この頬の熱さは走ったから?

それとも……




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

幼女は宝。偉い人にはそれが分からんのです。

はい、こんにちは皆さん。

 

あの後、どうにか替えの服やらの生活必需品を送ってもらえた怜です。

 

 

早速ですが、僕は今『陸士108部隊』で働かせていただいてます。

 

いきさつを話すには、まず数日前にまで遡ります。

 

 

新生活1日目

まずは朝から近辺の散策に向かった。

これから生活する場所のことを何一つ知らないのは問題だと思ったから。

昼になって帰宅したのはいいものの、食べるものがなく昼寝。

夜はギンガちゃんが、おすそ分けをくれた。

 

 

2日目

家の造りが地球の家に似ていたので、それだけを頼りに履歴書や筆記具などを発掘。

それだけで半日以上を費やし、それらを探すためにひっくり返した物を直して、履歴書を書いて丸一日がなくなった。

 

 

3日目

履歴書を持って様々な場所を駆けずり回る。

 

 

4日目

同じく

 

 

5日目

流石に空腹が限界を迎え始めた。

恥を忍んでナカジマ家に行こうかとも思ったが、踏み止まる。

 

 

6日目

家にギンガちゃんが様子を見に来てくれた。 さらに僕の状態に見兼ねて家から料理を持ってきてくれた。

 

事情を話すと、その日の内にゲンヤさんに相談してくれたらしく一時的に『陸士108部隊』で雑用をさせることに決定。

 

僕を雇うのは、あくまでもアルバイトという名目なので管理局に入った訳ではなく、形式的な面接などはあったが無事に入ることになった。

 

一番近く例えるなら『学校にいる清掃のおばちゃん』というところだろうか。

そこで働いてはいるけど、決して職場には関係ない、みたいな。

 

仕事の内容は様々だ。

お茶くみに始まり、場合によっては誰かの送迎までやるらしい。

 

 

という訳で、ギンガちゃんとゲンヤさんのご厚意で働き口が見つかったのだ。

入ってすぐに給料を前借りしなくちゃいけなかったのは情けないけれど…

 

 

ちなみに今は掃除中。

箒で埃を除けてからモップをかける。

窓拭きだって完璧だ、水拭きから始めたのに今は水滴の一つもない。

 

仕事を任されたからには全力で取り組むのだ。

 

 

「あ、いたいた。 怜さーん」

 

「ああ、ギンガちゃん。 あ、いや職場でこれはマズいか…ナカジマ陸曹殿、と呼んだ方がいいかな?」

 

「もうっ、分かってて聞いてますね? いつも通りでいいですよ」

 

あらら

ちょっとしたユーモアのつもりだったんだけど、ギンガちゃんは少しだけ頬を膨ませてしまった。

 

「ふふふ、ばれちゃったか。 それで、何か用かな?」

 

「あっ、そうでした。父からの伝言で休憩に入る様にと……そ それでですね。もしよければ、一緒に昼食をとりませんか?」

 

 

この場所に不慣れな僕をわざわざ誘ってくれる辺り、本当にいい子だなあ…

 

 

「ありがとう、ご一緒するよ。 これで最後だから少し待ってね」

 

「はい!! それにしても、お掃除上手なんですね。 ここに来るまでの廊下もピカピカでしたよ」

 

「実は地球では清掃のバイトとか色々としててね。 ビルの窓掃除にレストランの厨房、ああ執事喫茶なんてのもやったなあ」

 

昔母さんに言われたことを実行しているんだ。

 

もしも本当にやりたい仕事がないなら、とにかく多くの種類のバイトをしなさい。と

 

その経験が今この場で役に立っているのだから有り難い。

 

 

「後は、これで、終わり、っと。 よし、お待たせ……ってギンガちゃん?」

 

「怜さんの執事姿………はっ!? すみませんでした、行きましょう」

 

「ふふふ。かしこまりました、お嬢様」

 

「ぁぅ…聞いてたんですか」

 

 

 

□■□■□■□

 

 

 

食堂にて

 

中々に美味しい管理局の食堂で「とりあえず一番安いのを選ぼうか」なんて考えていると、救いの声がかかった。

 

「あ あの…自分の分と一緒に父と妹のを作ってたら、料理が随分と余ってしまいまして…その、怜さんのお弁当も持ってきたんですけど、いかがですか?」

 

 

他の人から嫉妬やらが込もった目で見られるが気にしない。

 

重箱的な弁当には色々なおかずが入っている。

 

卵焼き、ほうれん草のお浸し、小さめの焼き魚など色鮮やかだ。

 

しかも、ご飯の上には肉そぼろが乗っている。

 

完璧じゃないか……!!

 

 

和食系が多いのは疑問だが、俺の好物ばかりだ。

 

「い いただきます」

 

「はい、どうぞ」

 

まずは卵焼きから……

 

丁寧に作られたそれは、ほんのりと出汁の香りがして美味い。

 

「………うまい」

 

「ほんとですか!? よかったあ……」

 

「月並みな褒め言葉だけど、いいお嫁さんになれるね」

 

お浸しも焼き魚も、おかずの全てが丁度いい塩梅だ。

 

クイントさんの料理も美味しかったが、ギンガちゃんも負けてないな…

 

ふむ…

 

「じー…」

 

「あ あの怜さん? 私の顔に何か付いてますか?」

 

「じー……」

 

いつもの凛々しい顔とは違い、わたわたと慌てるギンガちゃん。

こうして見ると、年相応の幼さが見える。

 

料理も上手くて、人を気遣える優しさがある。

これでもう少し………4…いや3歳若(幼)ければドストライクだったかもしれない。

……幼いギンガちゃんか。

 

顔を少し小さくして、目はこんな感じか?となると鼻と口はバランスを考えて…………うん、大体こんな感じだな(妄想中)

 

 

「あ あの…怜さん。 そんなに見つめられると、その、恥ずかしい…///」

 

そして、赤面した顔を少し背けながら上目遣いで……

 

「くっはぁ!!」

 

 

まったく、目の前のギンガちゃんをベースに妄想してるんだから、今そんな可愛い仕草をされるとやばいんですけどー!?

 

妄想内のギンガちゃん(幼女ver)も同じ行動をしたせいで、危うく鼻血を出してしてしまうところだった…

 

 

………そうだ

 

 

「今度ギンガちゃんのアルバムを見せてください」

 

「ええっ!?」





ギンガ「お嫁さん……えへへ」




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

小さい子の独特の柔らかさは普通の人でも(ry

陸士108部隊で雑用をさせてもらってから、早1年。

 

ギンガちゃん、ゲンヤさんを含め、多くの人と仲良くなった。

 

本当にいい人ばっかりだ。

 

探りを入れてみた結果、熟女好きから女子高生命な人まで……聞いた話だと、どの部隊にも一人はいるらしいよ、そういう人達。

 

流石に同好の者はいなかったけどね…

(´・ω・`)

 

 

おっと、そんな話をしてる場合じゃない……ゲンヤさんから呼び出しがあったんだった。

 

朝一番に呼び出すだなんて、何かあったのだろうか。

 

 

「失礼します」

 

「おう、入れ」

 

どうやらデスクで資料整理をしていたらしいゲンヤさんが俺の来訪に席を立った。

 

そして今度はドカッと豪快な音をたててソファに座る。

 

どうやら向かいに座れということらしい。

 

 

「で、何か用ですか?」

 

「ああ。ま、ちょっとした使いを頼まれて欲しいんだ」

 

 

お使いの内容を言うのを待っていると、机の上に大きな封筒を取り出した。

 

 

「この書類をある部隊に届けて欲しいんだ。 そこは18の小娘が部隊長をしていたり、保有戦力が凄まじかったりと…まあ陸からもイロイロと目を付けられてる部隊なんだが……その小娘とはちょっとした知り合いでな、うちが得た情報をいくつかくれてやろうって訳だ」

 

「はあ……? しかし何故僕が?」

 

 

するとゲンヤさんが困った様に頬を掻いた。

 

 

「そこの前線フォワード部隊ってのが新人4人で構成されててな、そこにうちのスバルがいるんだよ。 昨日が初出動だったらしいんだが…あー、まあなんだ。ちょっとばかし様子を見に行ってくれねえか? こんな頼みは他のにはできねえかんな」

 

「ああ、なるほど」

 

確かに他の隊員には頼めないか。

けど親としては心配だから、俺に頼んだ訳だ。

 

「そういうことなら、お受けします。それとなく様子を見て、あわよくば初出動について聞けばいいんですね?」

 

「まあ、そういうこった。 悪いな、その資料の受け渡しが終わったら直接帰宅してくれて構わん」

 

「了解しました、すぐに出発しますね」

 

 

□■□■□■□

 

 

機動六課には昼頃に到着すると伝えてあったらしいので、とりあえず自宅にてスーツに着替えてから出発する。

 

という訳でやってきました『機動六課』

まずは出入り口のゲートにある受付をしなければ……

 

「えっと…陸士108部隊から来ました。 一応訪問申請が届いていると思いますので確認をお願いします」

 

「ナカジマ三佐の代理の方ですね。 すぐに案内の者を寄越します」

 

「ありがとうございます」

 

 

 

それにしても随分と広い敷地だな、この規模で試験運用か…

 

隊舎もデカイし、そこらの高校より立派な造りになっている。

 

そんなことを考えていると、案内の人が来た。

 

しばらく歩くと部隊長室に着いたが、ここからは特に失礼がないように身嗜みを整える。

 

ここから先、僕の失態は全てゲンヤさんへと皺寄せが行くからね。

 

 

「ふう……よし、失礼します」

 

「どうぞ」

 

 

扉を開けるとそこには……

 

 

「ようこそ機動六課へ。 部隊長の……ってなんでお兄さんがおんねん!!」

 

 

はやてちゃんがいた。

 

 

「あ〜、怜さんですぅ〜」

 

「おぉ、リィンじゃないか。 相変わらず小さいなぁ」

 

「むぅ、リィンは小さくないのです!!」

 

「そうかー小さくないのかー、よしよし…」

 

「えへへー…お久しぶりなのです、怜さん!」

 

「うん、久しぶりだねリィン。」

 

飛んで来たリィンの頭を撫でると今度は頭に乗ってきた。

 

土足だけど気にしない。

 

ちなみに、さっきの一連の流れは会う度にやっている。

 

某芸人の「麒麟です」みたいなもんだ。

え、名前を伏せる意味がない?

 

細かいことは気にしちゃいけない。

 

 

「あー、リィン。 まだ仕事中やろ? お兄さんの頭の上から離れや」

 

「えー、はやてちゃんのいけずー」

 

 

はやてちゃんに言われて、口を尖らせながら自分の席に戻るリィン。

 

相変わらず小さくて可愛いなあ…

 

しかも大きくなっても小さい。

 

イロイロと矛盾してるが、言葉通りの意味だ。

 

大きいモードですら、あぐらをかいた僕の膝にすっぽり嵌まるくらいだからな

 

 

「……なんや、なのはちゃんの話聞いたら急に不純なものに見えてくるわ。 前までは微笑ましかったのに(ボソッ」

 

「ん、何か言った?」

 

「んーん、なんもあらへん……やのうて、なんでお兄さんが?」

 

 

とりあえず、仕方ないので大まかな事情だけ話すことにした。

 




おまけ


なのはside

やっぱり、出動があると書類とか多くなっちゃうなあ……

とりあえず報告書は書き終えたし…ついでに別の簡単な資料整理を昼食前にしちゃおうかな。

じゃあ、とりあえず報告書の提出に行きますか!!



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ついに幼女がやってくる?

しばらく更新遅れます。

詳しくは活動報告にて。




とりあえず、はやてちゃんに事情を話すことにした。

 

母に無理矢理ミッドに放り出されたこと。

 

住むことになった家とナカジマ家が隣だったこと。

 

中々職が見つからず、飢えかけの僕を採用してくれたこと。

 

とかとかとか。

 

「まあ、なんや大変やったんやなあ……」

 

「うん……(遠い目) あ、もしよかったら部隊を見て行ってもいいかな」

 

「それくらいは構わへんけど、規則やから一人は案内を付けんとなあ。 誰か暇そうなんは…」

 

うーん、とはやてちゃんは頭を悩ませる。

 

なんか悪いな…でもスバルちゃんの様子も見なくちゃいけないし……

 

……ねえ、はやてちゃん? リィンが両手を挙げて「リィンいけますよー、大丈夫ですよー、はやてちゃーん!!」って言ってるんだから、せめて反応してあげてよ?!

 

すると、がちゃりと扉が開く音がした

 

ちなみにリィンはまだ騒いでる。

 

「失礼します。 はやてちゃん、とりあえず報告書は終わったけどー………え?」

 

入ってきたのは、なのはちゃんだった。

 

「あー………久しぶりだね、なのはちゃん」

 

「にゃ……」

 

「「「にゃ?」」」

 

おぉ、みんなの声が揃って……

 

「にゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃんで、お兄さんがここにいるのー!?」

 

うわっ、びっくりした

急に叫ぶんだもんなー、勘弁してよ

 

「(きゅぴーん)おぉ、我ながらナイスアイディア……なのはちゃーん、ちょっと六課の隊舎をお兄さんに案内したげてやー」

 

「ふぇっ、わ 私はこれから資料整理を……」

 

「んなもんはグリフィス君にでも任せればええから行き! 君に決めた!!」

 

某マサラタウン出身トレーナーの様に叫ぶはやてちゃんに二人して追い出された。

 

リィンがむくれてたし、後で差し入れでもあげるべきだろうか…?

 

「じ じゃあ案内します、ね……?」

 

「ああ、うん。 よろしくお願いします」

 

 

 

高町なのはside

 

ちょっと待って、これってどういう状況!?

 

なんでお兄さんがここにいるの!?

 

というか、どうして案内なんかしてるの私!!

 

で でもでも、ここでいいとこ見せれば……よーし

 

「まずは、ここがデスクです。フォワード陣もここで書類の作成を行ったりするんですよ」

 

「へえ……あ、もしかして窓際にあるのが、なのはちゃんの机だったりする?」

 

「え、そうですけど……どうして分かったんですか?」

 

「うーん、秘密ー」

 

「えー」

 

よし、雰囲気は悪くない。

 

お兄さんが話し方をいつも通りにしてくれているからだと思う。

 

いつもニコニコしてて、優しくて、親切でカッコイイ。

 

やっぱり、私はこの人をまだ好きなんだって思う。

 

フラれてから約1年が経つけど、この思いが治まることはない。

 

ううん、むしろ逆に…

 

「えーっと、なのはちゃん? 次の案内を……というか、そんなに見つめられると流石に恥ずかしい、かな」

 

「ご ごめんなさ………ッ!?」

 

今「恥ずかしい」って言ったよね!!

そそそそれって……

 

「あ あのっ、お兄さ…」

 

「あっ、なのはさーん」

 

もう誰っ!!せっかく今から………

 

「あ、スバルちゃんみっけ。 やっと見つけたよー」

 

「え……?」

 

やっと見つけた…?

 

どういうこと?

 

お兄さん……まさかスバルに会うためにここへ!?

 

確かに私よりは年下だけれども!!

 

「あれ、怜さんじゃないですか!お久しぶりです!!」

 

「そうだね、もう三ヶ月以上は会ってなかったかな。 隣の子は?」

 

「あ、私のパートナーのティアナです。 ティア、この人は私の実家のお隣りに越してきた川添怜さん」

 

しかもスバルの実家のお隣りに住んでるって?!?!

 

「よろしく、ティアナちゃん。」

 

「あ、はい。よろしくお願いします。」

 

「それで怜さんはここで何を?」

 

「ゲンヤさんから資料の受け渡しを頼まれてね、ついでに見学中。 スバルちゃんは? 昨日が初出動だったって聞いたけど?」

 

「そうなんですよ。その報告書をようやく纏め終わって、今から食堂へ行こうかと。 そうだ、一緒にお昼ご飯はどうですか?」

 

「んー、そうだな…なのはちゃんとティアナちゃんが了承したらね」

 

「私は構いませんけど……なのはさんは?」

 

「え、ああ。 そうだね、もういい時間だし行きましょうか」

 

 

食堂に……やっぱり待って、まだ頭の中が整理出来てないや。

 

何、お兄さんはスバルの近所に住んでる、ってこと?

 

そこはいいの、けど…

 

そんな風に頭の中がグルグルと渦巻く中、まだ私は知らなかった。

 

食堂にはラスボスがいるってことを…

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

待たせたな…

いつになったらうちのインターネットは復旧するんだい?


 

なのはside

 

 

みんなで話しながら歩いて、しばらくすると食堂に着いた。

 

やっぱりお兄さんはすごい人だ、この短い時間にもうティアナと仲良くなってしまった。

 

 

 

やっぱりお昼時ともあって、食堂は人で一杯だ。

 

(きょろきょろ………)

 

開いてる席は…あっ

 

あそこの席はダメだ、反対側に誘導を…

 

「あっ、エリオ達だ。おーい!!」

 

ちょっとスバルうううぅぅぅう!?

なんで、そういうことするかな!

さっきだって、お兄さんと二人きりの所を邪魔するし!!

 

 

せっかく私が上手くやろうとしてるのに!!

 

あそこには……あそこにはラスボス(キャロとヴィータちゃん)がいるじゃない!!

 

ヴィータちゃんもヴィータちゃんで、どうして今日に限ってそこにいるの?!

いつもフォワードの子達と一緒に食べたりしないじゃない!!

 

 

side out

 

 

 

 

怜side

 

 

なのはちゃんが何故かスバルちゃんを睨む中、案内された席には同じ年頃の男女が一組。

そして見た目の幼さだけなら二人と変わらない女の子が一人だ。

 

ふっはっはっ

ここ一年で尽きかけのロリ成分。

初対面でいきなり桃髪の女の子に迫るのはやめとこう。

 

それから吸血鬼の青年が蝸牛の女の子を強襲した時の気分はこんな感じなんだと思う。

 

 

「ロ…………………ヴィータちゃあああん!! 久しぶりだね、元気にしてた!?」

 

「今最初に余計な冠詞付けなかったか!? ってか誰だ、こんな………ってお前かよッ!!いやいや何でここにいるんだよ!!」

 

勢いに任せて抱っこしたヴィータちゃんとお話ししてたら視線がいくつか送られてきたのに気付いた。

 

一つはなのはちゃん。

 

まあ当然なんだけど、なんか後ろめたさがあるからスルーの方向で。

 

スバルちゃん、ティアナちゃん、桃髪の子はポカーン状態だ。

 

んで、もう一人。

赤髪の男の子。

はて、どこかで見たような………名前は確か…リ、リ、リオン君?

いやいや、そんな運命の物語に出てくるような名前じゃなかったはず。

 

ええと……………

 

「……エリオ君、だっけ?」

 

言った瞬間、彼の顔が明るくなる。

どうやら正解だったらしい。

というか、さっきスバルちゃんが言ってたし。これで間違えてたら最低だな、僕。

 

「はいっ! お久しぶりです、お兄さん!!」

 

「あれ、エリオは怜さんと知り合いなの?」

 

「はいっ、以前フェイトさんが施設に連れて来てくださったんです!」

 

そうだった、フェイトちゃんが孤児院とか施設とかに初めて行きだしたころだった。

 

「子供達の相手をしてほしい」って言われて連れて行かれたんだった。

5年くらい前の話だったかなぁ…?

夏くらいまでは通ったりしてたんだけど、そこから大学の受験勉強を理由に行かなくなって、そこからも大学が忙しかったんだよなぁ

 

「あぁ…そういえば、『ちゃんばらごっこ』みたいなこともしたっけ」

 

「あ あの時はすみませんでした」

 

そうそう、興奮したエリオ君が無意識に電気変換して、オモチャの剣がまるで電気警棒の様な威力で襲ってきたことがあった。

 

適当に勢いを削いでわざとオモチャに当たったら「あばばばばばば」とか言ってビクンビクンしてたのを覚えてる。

 

決して快感で痙攣してたんじゃないからね!!

 

 

とか思いを馳せてる場合じゃなかった。

 

そこの女の子に自己紹介をしなきゃ……

 

 

「…ねえ、ヴィータちゃん。 抱っこされたままでいいの?」

 

「こいつ意外に力強いから抜けれねえんだ。 っつう訳で皿取ってくれ、なのは。」

 

 

……アーアー、キコエナイヨー

 

 

「じゃあエリオ君の隣の子は?」

 

「は はい! キャロ・ル・ルシエ三等陸士であります!!」

 

なんか緊張されてる…人見知り?

それならそれで点数高いよ、うん。

 

「はじめまして、川添 怜です……僕は局員じゃないから肩の力を抜いてくれると嬉しいかな。 呼び方だって『怜さん』でもいいし、エリオ君みたいに『お兄さん』って呼んでくれてもいいよ?」

 

「は はい、分かりました……お兄さん?」

 

 

くはぁっ、ヤバいなー、可愛いなー

ご飯なんか食べずにこの子を眺めてたいなー

 

なんて言ってても仕方がない。とりあえず、ご飯を食べよう。

 





次に新しい話を入れるべきだろうか

うーむ…


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

いきなり通告されました

ちょっとだけ頑張った


 

六課訪問から数日後。

 

 

「お前、明日からここに来なくていいから」

 

「は……?」

 

 

ゲンヤさんに、この前と同じ様に呼び出された。

 

が、真っ先に出た言葉に口あんぐりだ。

 

 

「ちょっ、待ってください! 僕、何かしましたか!? 身に覚えがありません、不当解雇ですよ、不当解雇!!」

 

「ばっ、人聞きの悪いこと言うんじゃねえ!! ……はあ、この前に八神が来たのは知ってるな?」

 

「え えぇ、この隊部への協力要請がどうとかってギンガちゃんから聞きましたけど」

 

「あの時に搦手というか…早い話、脅されてな。お前の人事権をもぎ取られたたんだよ…あのタヌキめ……」

 

えぇー…

年上を脅すだなんて……強かになったなあ。 少し前までは、大人しい薄幸系美少女だったのに。

 

ということは、だ。

 

明日からは職場が変わるというのか…

 

やだよ、やだやだ

 

だってあそこには、なのはちゃんがいて、フェイトちゃんにはやてちゃんもいて……まあ、ヴィータちゃんとキャロちゃんもいるし、リィンとも仲いいけどさ。

 

………?

 

そう考えると悪い話でもない、のか?

 

い いやいや、慣れ親しんだ職場を離れるには安いというか…

 

「ま、引き抜く訳だから、うちより給料は増えるかもしれんがな」

 

よーし、六課でも頑張るぞー

 

「そういう訳だ、今までご苦労だったな。 色々と助かった。向こうでもしっかりやんな」

 

「はい、こちらこそ本当にありがとうございました。失礼します」

 

 

 

隊長室から退出し、しばらく歩くとギンガちゃんがいた。

 

僕がここで働けたのもあの子のおかげだ。

 

既にギンガちゃんも知っているかもしれないが、お世話になった身として、きちんと挨拶をしておかなければ。

 

 

という訳で

 

「おーい、ギンガちゃーん」

 

「…? あっ、怜さん!! どうかしましたか?」

 

仕事中らしく、多くの資料を持ちながら駆け寄ってくる。

そして、いつもニコニコと笑顔で接してくれる。

 

「あっ、半分持つよ」

 

 

すぐに本題に入ろうかとも思ったのだが、仕事の邪魔する訳にもいかないので、彼女が持っていた資料の2/3くらい掻っ攫っておく。

 

「あっ、ありがとうございます。」

 

「とりあえず、資料室に運べばいいかな?」

 

「はい、よろしくお願いします。」

 

「ん、じゃあ行こうか。」

 

結局、ギンガちゃんに『明日から六課に配属される』と言うことを忘れて二人で資料整理に勤しむのだった。

 

まあ、ゲンヤさんが言ってくれるよね…?

 

 

 

 

 

おまけ

 

 

数日前、はやてが陸士108部隊部に来た時のこと……

 

「それで、調査にうちの部隊を使いたいってのは分かった。 それだけでいいな?」

 

「いえ。不躾なのは理解してますが、もう一つだけお願いが」

 

「あん?」

 

 

ようやく堅苦しい話が終わると気を抜いたゲンヤに、はやては笑いかける。

 

 

「こちらで働いている川添 怜さん。 彼に六課で働いてもらいたいんです。」

 

 

「待て待て、 どうしてヤツを…」

 

「実は、彼はうちの隊の隊長陣とは旧知の仲でして…彼も知り合いがおった方がいいかと思いまして」

 

その言葉にゲンヤの目つきが変わる。

いくらはやての顔の皮が厚かったとしても、ゲンヤに見切れないはずがない。

それは彼女との付き合いよりも、年の功による物だ。

 

「ふむ………」

 

「何か問題が?」

 

どう返答したものか、と考えるゲンヤに再びかけられる質問。

 

「アイツは優秀だからな……人柄がよく、時間はきちんと守る。 掃除をさせても、茶を汲ませても文句なしの腕前だ。 少し前から書類整理やらを任せているが、目立ったミスはないし、処理も早い。あんな逸材は中々いないし、それを渡せと言われてもなあ…」

 

 

「……どうしても、ですか?」

 

 

中々引き下がらない彼女にゲンヤは新しい手札をきる

 

 

「ああ。お前から頼まれた仕事で、うちはますます忙しくなる。 負担を上積みされたら堪らん」

 

こう言われては彼女も諦めざるを得ないはずた。そうゲンヤは考えていた。

 

……はやての顔が嫌な笑顔を浮かべるまでは。

 

「ところでナカジマ三佐。先程、川添怜さんに書類の整理を任せた、とおっしゃいましたね?」

 

「はぁ? 確かに言ったが…あっ、てめ、まさか…」

 

何の気無しに答えたゲンヤの顔が苦々しいものになるのと逆に、はやて笑顔はより濃くなる。

 

「正式な管理局員ではない彼に書類整理を任せるというのが違反であることはご存知ですね?」

 

「んなもん、どこの隊でも似たようなことやってるだろうが……!!」

 

これは事実だ。

慢性的に人員不足である管理局では、それなりに観る光景なのだから。

 

だが、それが民衆に受け入れられる訳ではない。

はやてが本局に通告すれば、重罰にならずともゲンヤには罰則が課されるだろう。

 

「…ちっ。くそ、うちの人事部には自分で連絡しやがれよ」

 

「ふふ、ありがとうございます」

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

石の上にも三年。僕の頭の上にはリィン。

段々と下がる評価平均。
化けの皮が剥がされていくぅー!!



 

さてさて、ここが新しい職場だ。

 

 

『機動六課』

 

部隊長である八神はやてを筆頭に、彼女の固有戦力であるウォルゲンリッターを副隊長に、有名な知人二人を隊長に据えるという夢のオールスターズ状態の最強部隊である。

 

前線フォワード陣には将来有望な新人を4名を

バックヤードにも有能な人材を取り揃えてある。

 

 

と、ここまでが以前にギンガちゃんから聞いた概要。

 

僕にとっては知り合いばかりの身内部隊だ。

 

いやー

 

最初はノリ気じゃなかったけど、よくよく考えると素晴らしい職場だよね。

 

リィンにヴィータちゃん、キャロちゃんもいるし。

 

楽しみになってきたなー

 

っとと、一応受付に行かなきゃね

 

どうすればいいかとか聞きたいし

 

「今日から機動六課で勤めることになりました川添怜です。 このまま入ってもよろしいでしょうか?」

 

「少々お待ちください……確認しました。 明日からはこれをお使いください、紛失しないように気をつけてくださいね」

 

そう言う受付のお姉さんが渡してきたのは社員証みたいなカード、紐が付いていて首にかけられるようになっている。

 

「それから、八神部隊長から伝言を預かっています。『まずは部隊長室に来るように』とのことです。」

「あ、はい。了解です、ありがとうございました。」

 

と言ってから数分後………早速迷ってしまった

 

そこ、前に来たんじゃないのかとか言うな。とてつもなく広いんだぞ!!

 

べ、別に方向音痴じゃないんだからね!!

 

なんてアホなこと言ってる場合か。

 

どこかに知り合いは……あっ、あの小さくてふわふわ浮いてるあの姿!!

 

「おーい、リィーン!!」

 

「んむ? 誰ですか、リィンを呼ぶのは……あっ怜さんです!!」

 

あちらも気付いてくれたらしく、リィンは文字通り飛んで来てくれた

 

「おはようございます、怜さん!!」

 

「はい、おはよう。 リィンは今なにしてたの?」

 

「書類仕事は一段落したので、部隊全体の見回りです、えっへん」

 

「へえ、リィンはえらいなあ…うりうり」

 

「あわわ、髪の毛がグシャグシャになっちゃいますぅ~」

 

そう言って髪を手櫛で直しながらリィンが僕の肩に乗る。

 

「いいこと考えたです! これからリィンが怜さんに部隊内を案内してあげます!!」

 

「うぇ? いや、はやてちゃんから部隊長室に来るよう言われてるんだけど……」

 

「はやてちゃんにはリィンから連絡しとくですー!!」

 

「あいたた……わかった、わかったから髪を引っ張らないでよー」

 

どうやら前回に僕が六課へ訪問した際にやりたかった案内をどうしてもしたいらしい。

 

とは言え、前に来た時になのはちゃんに案内してもらった訳なので見る所も少ない。

 

デスクに案内されて、『ふふーん、ここでフォワードの皆さんも書類作成を行ったりするですよー』と言うリィンに対し『うん、知ってるよ』と言ってしまったせいで、リィンが若干むくれてしまった。

 

「だったら、前回は絶対に見てないところを見せるですよ!!」

 

□■□■□■□

 

で、やってきたのは訓練所。

 

来たのはいいんだけどさ……

 

髪の毛をアケコンみたいに弄るのやめてくれないかな、リィン

 

「ガシャコーン、ガシャコーン……あっシャーリーです!!」

 

知り合いを見つけてすぐさま飛んでいくリィン。

 

うぅ……遊ぶだけ遊んで捨てられた。

 

 

「あ、リィン曹長。 おはようございます……あれ、そちらの方は?」

 

リィンと親しげに話していた女性が僕に目を向けた。

 

初めて会う訳なので、疑問は当然だけどね。

 

「ああ、はじめまして 川添怜です。 今日からここでアルバイトすることになりました。」

 

「はじめまして、六課のメカニックデザイナーやってます、シャリオ・フィニーノです。 気軽にシャーリーって読んでくださいね」

 

ニコニコと笑いかけてくるシャーリー。

 

なるほど、リィンと特別仲がいいというよりも社交性が高いみたいだ。

 

主に人懐っこいという意味で。

 

「シャーリー、今は何の訓練をしてるですかー?」

 

「今は模擬戦ですね。 フォワード陣の勝利条件は、なのはさんの攻撃から規定時間避け切るか、なのはさんに一撃を加えるかです」

 

「へぇ…」

 

なるほど、なのはちゃんが相手なのか

 

「あ、今モニターに出しますね」

 

おー、やってるやってる

 

なのはちゃん余裕そうだなぁ…

 

だって片手間でスバルちゃんの猛攻を防ぎながら他の子にも攻撃してるし。

 

「うは、なのはちゃん凄すぎ…」

 

「あれ、なのはさんとはお知り合いなんですか?」

 

「なのはちゃんだけじゃないですよー。 はやてちゃんを含め、六課の隊長、副隊長と怜さんは昔馴染みなのです。」

 

そんな戦闘の様子にポツリと零した僕の一言に耳聡くシャーリーが反応し、その疑問にはリィンがいち早く答えてくれた。

 

その返答にニヤリとしたシャーリーが手元の端末を操作する。

 

「へぇー。 なら、ちょっとだけフォワード陣にサービスしちゃおうかな……」

 

「「サービス?」」

 

リィンも同じく言ってるということは、恒例行事という訳ではないらしい。

 

 「あーあー、なのはさーん。 お知り合いがいますよー」

 

「ちょっとシャ-リー。 訓練中なんだから後で……って、お兄さん?!」

 

モニターに映るなのはちゃんが慌てだす。

わたわたと動きながら『あの、ころは訓練ででしね!!』とか画面を見ながら言ってくる。

 

なのはちゃーん噛んでる噛んでる、落ち着きなさい。

 

「なのはさんの攻撃が止まった…? よく分からないけどチャンスだわ!」

 

「にゃにゃにゃ?!」

 

その隙を見たティアナちゃんが、なのはちゃんに一斉射撃を仕掛ける。

 

なのはちゃんは心の準備が出来ていなかったのか、動揺が半端ない。

 

「でりゃああああ!!」

 

そこにスバルちゃんの渾身の右ストレートからの拳打。

 

「あぁ、もうっ!!」

 

そのスバルちゃんの動きが急に止まった。

 

スバルちゃんに纏わり付くあれは…鎖?

 

「あらら、チェーンバインドですねー。 なのはちゃんのアレを壊すのは並大抵じゃ出来ないですよー」

 

「えいっ」

 

ぽかっ

という軽い音がスバルちゃんの頭から聞こえた。 なのはちゃんがレイジングハートで直接攻撃したのだ。

 

フォワード陣の勝利条件から見れば、確かに勝者はなのはちゃんだ。けど少し大人気ないんじゃなかろうか。

 

なんて思っていたら、さっきまであったビル群がなくなった。

 

どうやら立体映像みたいなものだったらしい。

 

あ、なのはちゃん達が戻ってきた。

 

 

 





はやて「………お兄さん、遅いなぁ」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

可愛い……間違えた、可愛そう。

 

「もう、シャーリー。ひどいよ!!」

 

「わわ、ごめんなさい。 まさか、なのはさんの動揺があそこまで激しいとは思わなくって……あ、もしかして」

 

「にゃっ!?」

 

なんて隣でシャーリーとなのはちゃんが話している間にフォワード陣に近づいてみる。

 

「お疲れ様ー」

 

「「「「お お疲れ様です………」」」」

 

うはぁ、皆ぐったりしてるなぁ。

 

「えーっと、確か………(ゴソゴソ おっ、あったあった。 そんなあなたに飴ちゃんをあげよう。疲れた時には甘いものが一番だ」

 

生憎、市販のやつだけどね。

 

 

でも取り出した瞬間にスバルちゃんな目の色が変わった。

 

「やった!!」

 

「もう、スバル!」

 

「まあまあ、ティアナちゃんもお一つどうぞ?」

 

「う、あ、ありがとうございます」

 

飴に飛びついたスバルちゃんを叱ろうとティアナちゃんも立ち上がる。

 

まあ、これくらいなら構わないだろうと思うので、とりあえずティアナちゃんにも飴で懐柔する。

 

「ん~、甘くて美味しい」

 

「ん、ホントだ」

 

どうやらスバルちゃんの機嫌も直り、ティアナちゃんの表情も柔らかくなった。

 

「さて、じゃあエリオ君とキャロちゃんにも飴ちゃんを……」

 

期待していたのか、名前を呼ばれて笑顔になった二人に手を伸ばす。

 

そして「あげよう」と言葉を続けようとしたところで二人の姿がなくなった。

 

「あ あれ?」

 

「お兄さん……エリオもキャロも連れて行かせないよ!?」

 

声が聞こえた方を向くと、両脇に二人を抱えたフェイトちゃんがいた。

 

「あ あの、フェイトちゃん? 何を言ってるの……?」

 

「だって『飴ちゃんをあげる。』って言うのは誘拐犯の常套手段だって地球で習ったよ、なのは?」

 

 

何を言っているのか、この天然娘は。

今時、飴ちゃん一つで釣られる子供なんていないよ。

 

「……………フェイトちゃーん。 二人を下ろしたら、ちょっとOHANASHIしようかー」

 

「あ あの、お兄さん……もしかしなくても怒ってます?」

 

ハハハ、なのはちゃんも失礼だなー

怒ってる訳ないじゃないかー

こんな些細なことくらいで

 

「とりあえず正座ね、フェイトちゃん。」

「え、ここで? い 今は……「 せ い ざ 」……はい」

 

 

まったく、確かに僕は小さい子が好きだよ。 僕がロリコンなのも、なのはちゃんから聞いたってんなら知ってるのも頷ける。。ええ認めましょう、僕はロリコンだ。 けどいくらなんでも今のはないんじゃないかな? フェイトちゃんからすれば心配かもしれないけど、お兄さんって慕ってくれる子に手を出したりしないよ。っていうか、そもそも僕はショタコンじゃないし。 何でもかんでも悪いように見るのはダメなんじゃないかな。 怒るよ? 怒っちゃうよ??いや怒ってないけどね???

 

「ぁぅぁぅ……なのはぁ」

 

「えーっと……そうだ、みんなは先に戻ってシャワーを浴びようか。 そしたらお昼ご飯を食べよう」

 

「即座に見捨てられた?!」

 

「フェイトちゃん、まだ話は終わってないよ。 ちゃんと聞きなさい!!」

 

「って、あれ。 なんだか普通に馴染んじゃってましたけど、どうして怜さんはここに?」

 

む、スバルちゃんから質問がきた。

まだまだお説教はしたりないけど、答えなきゃ失礼だし一時中断。

 

「ほっ……」

 

「まだ終わってないからね、フェイトちゃん。 …で、なんで僕がここにいるかと言うと、ここで今日からアルバイトすることになったんだ。それで、隊長室まで行こうにも道に迷っちゃってね、そこにリィンが現れて部隊案内をしてくれるって……『あああぁぁぁぁぁあああッ』急にどしたの、リィン?」

 

「はやてちゃんに…連絡………」

 

えっ

 

「ちょちょちょ、ちょっとリィン。まさかとは思うけど、はやてちゃんに連絡するのを忘れてたとか言うんじゃないよね?」

 

「わ 忘れてたですぅ……」

 

ナ、ナンダッテー!!

 

 

 

 

 

□■□■□■□

 

食堂

 

 

「「ごめんなさい……」」

 

「まったく、ずっと隊長室で待っとったわ…」

 

すぐにはやてちゃんに連絡をとると、食堂に来るように言われた。

 

「いやいや、リィンは悪くないんだ。迷っていた僕を見兼ねて案内してくれたんだから」

 

「違うです、リィンが怜さんを無理に連れ回したんですぅ!!」

 

まあ、本当は全く以ってその通りなんだけどね

 

「リィン!!」

「怜さん!!」

「いや、そういうのいらんから」

 

ガシッとリィンと抱き合う。

とは言え、リィンは小さいままなのでリィンが抱き着いてくる形だが。

 

「まったく……怜さんがリィンに甘いんも、リィンが怜さんにべったりなんも知ってるけどな、次からちゃんと気をつけるように。 特にリィン」

 

「はいですぅ……」

 

あぁっ、リィンが落ち込んでる!

可愛いッ……間違えた、可愛そう!!

 

うー、リィンをよしよししたい。けど怒られたばかりだし、自重しなきゃ…くッ

 

「ああもう、いつまでしょぼくれてんだよ、リィン。 こっち来い」

 

お、ヴィータちゃんがフォローに入った。

ちゃんとお姉ちゃんしてるんだなぁ。

 

リィン オン ザ ヴィータちゃん。

 

可愛い……

 

 

「まあええわ、 とりあえずお兄さんの仕事を言い渡します」

 

「はーい」

 

本当は食堂でやるこっちゃないが、こうなったのも俺達のせいだし。

 

という訳で、仕事内容を書いてある書類を手に入れた。

 

ふむ………あれ?

 

「何この仕事量、ハンパないんだけど?」

 

「当然。 みっちり働いてもらいます」

 

 

どっひゃー

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ってなんでやねん!(迫真)


毎度毎度、前書きか後書きで書ける面白いことを考えるんだけど、今回はちょっと無理でした。

(ヾノ・∀・`)ムリムリ


 

なんだかんだ言って、普段の仕事量はそんなに多くなかった。

 

前に渡された紙に書いてあった仕事の種類が多かっただけで、実際にやってる事は陸士108部隊部の時と大差はない。

 

まあ考え方によっては大変だけど。

 

場合によっては夜食も作るよう言われているし…

 

そんな時間まで残業なんてしたくないよ……はやてちゃん

 

そうそう、一番訳が分からないのがコレ。

『フォワード陣の訓練終わりには必ず皆を迎えに行くこと』

 

これに何の意味があるのやら…

 

仕方がないので、いつもお昼休憩の時なんかに行っている。

 

まあ毎日キャロちゃんやらヴィータちゃんやらに会えるのは嬉しいから構わないけど。

 

 

 

てれれれってってってー

 

怜は清掃のおばちゃんから用務員さんにランクアップした!

 

なんちゃって。

 

『ぴんぽんぱんぽーん。 川添怜さん、至急屋上まで来てくださーい。 ぴんぽんぱんぽーん』

 

はやてちゃん………部隊長がそんな気の抜ける感じでいいの? ねえいいの?

 

口でベル音を鳴らす人って初めてなんだけど?

 

というか、なんで屋上?

……ハッ、まさかイジメられる!?

体育館裏的な感じで。

 

 

「……いや、冗談抜きで何かしたっけ?」

 

とりあえず屋上に向かおう。

 

 

□■□■□■□

 

 

「これが今回の任務の概要、なんだけど……」

 

そう言って、なのはちゃんが僕を見る。

なるほどなるほど。

 

現在向かっている『ホテル・アグスタ』

 

そこでは古代美術品などのオークションを主に行われている。

そこにレリックは無いが、中には取引許可をもらってるロストロギアもあり、それをレリックと誤認したガジェットが出てくる可能性がある。

 

そのため、機動六課が護衛に行くと。

ふむふむ……

 

「って、なんでやねんッ!!」

 

「ちゃうで、お兄さん。 もっと勢いと角度を付けてやなー……」

 

いつから見ていたのか、モニターに映し出された関西人(はやてちゃん)から指導がはいる。

 

「いや、そういうのいいから。というか、その任務にどうして僕が駆り出されるのさ。ヘリコプターなんて初めて乗ったよ」

 

そう、ただいま機動六課出撃用のヘリの中。

あの後、屋上に行ったらシグナムさんに『とりあえず乗れ、説明は後である。 早く乗らねば……』って睨まれた。

 

あの人怖いんだよね

 

実は僕、こう見えても格闘技やってたんだ。空手に柔道、ボクシング、等々

あっ、よくある物語の主人公みたいに強くはないよ? 習い事の範疇だったし

不良に囲まれたら逃げることを第一に考えるしね、僕。

その中には高町家の剣術もあるんだけど、それを昔なのはちゃんがシグナムさんにうっかりバラしちゃってさ…

 

あとはもう……分かるよね?

 

ガクガクブルブル

 

 

…閑話休題

 

 

「その辺りの答えはシャマルに聞けば分かるよ」

 

「それって、シャマル先生が持ってる箱のことですか? ずっと気になってたんですけど、それって一体……」

 

「うふふ。これはねぇ、隊長達と怜君のお仕事着よ♪」

 

キャロちゃんの問いにシャマルさんが答える。

 

楽しそうですね、シャマルさん…

 

 

 

--怜お着替え中(ポロリはないよ)--

 

 

 

「「「「おぉー!!」」」」

 

「………いや、なんでスーツ?」

 

スーツなんて久しぶりに着たよ。

就活以来かな。

 

「すっごい似合ってますよ! ね、ティア!!」

 

「あ、はい、ビックリしました」

 

「カッコイイです、お兄さん!」

 

「なんだか大人って感じです!!」

 

「そこまで言われると照れるんだけど……」

 

フォワード陣の皆から賞賛の声が上がり、柄にもなく照れてしまった。

 

 

「怜君には隊長達と一緒に、これから行われるオークションに行ってもらいます。 あ、危険なことはないから安心してね」

 

「は はぁ……」

 

「それじゃ、頑張ってね♪」

 

やっぱり楽しそうですね、シャマルさん……

 

 

□■□■□■□

 

 

「という訳で、これからアグスタには2ペアに分かれて潜入します。 ペアは私とフェイトちゃん、なのはちゃんとお兄さんや」

 

「にゃっ!?」

 

「はーい。 せんせー質問です」

 

「はい、なんですかお兄さん」

 

あ、ノッてくれないのね

 

「どうしてペアに分かれる必要があるんですかー、これなら女子3人でもよかったんじゃないですかー?」

 

「ええ質問やねー。 今回の任務はあくまでも潜入、組織としてはリスクの分散っちゅうんが必要なんや。 一塊で行動して、もしも身分がバレてしもうたら意味ないやろ?」

 

とりあえず、なのはちゃんと二人きりは勘弁してほしい……

とか言う暇もなく、はやてちゃんの目が光った。 あ、タヌキの耳と尻尾が見える。

 

嫌な予感しかしないんだけど

 

「と、いう訳で。 なのはちゃんとお兄さんの二人には夫婦役をしてもらいます」

 

…………

 

「「えぇぇえええええ!!!」」

 

 

 

 

~10分後~

 

「ドレス姿も綺麗だね。 惚れ直してしまいそうだよ、ハハハハニー」

 

「アナタのスーツ姿も素敵よ、ダダダダーリン」

 

「ぷっ」

 

「「そこっ、笑うな!!」」

 

もちろん笑ったのはチビタヌキ

誰のせいでこうなったと思ってるんだ……

 

実際なのはちゃんのドレス姿は惚れ惚れする程に似合っているが、そんなことを言ってる余裕はない。

 

だって夫婦役だよ?

訳が分からないよ……

 

「ヒーッヒーッ、じ じゃあこのまま二人には会場に向かってもらいますか」

 

おい、流石に笑いすぎだろ

大御所お笑い芸人みたいな引き笑いしてるし

 

「タヌキ狩りなら後でも出来ますし、行きましょうか、お兄さん」(冷えた目)

 

「そうだね、なのはちゃん」(冷えた目)

 

「ちょっ、二人ともごめんやって!! もう笑わへんから、そんな目で見んといてーッ?!」

 

 

………ふーん

 

 

「…ハニー(ボソッ」

「…ダーリン(ボソッ」

「ぶふーッ、ふ 不意打ちはあかんって…っていうか二人して息合いすぎて……くくくっ……あ あれ?」

「はやて、もう二人とも怒って行っちゃったよ?」

 

 

□■□■□■□

 

 

 

何事もなかったかのように歩く僕達だが、もう何て言うか頭の中はいっぱいいっぱいだった。

 

考えてもみてよ

何度も言うようだけど、僕は「ロ リ コ ン」だ。

 

昔馴染みの女の子と言えど、相手は花も恥じらう19歳(しかも一度告白されてる)

 

そんな子と夫婦役?

 

訳が分からない…

 

さっきから下卑た笑顔で近寄ってくる男共(多分なのはちゃん狙い)もウザいし……なんかイライラしてきた

 

隣にいる嫁役(なのはちゃん)も殺気立ってきてるし……

 

その辺りで僕は考えるのをやめた……

 

 

 

ホントに早く終わらないかなぁ!!

 

 

side out--

 

 

--side 高町なのは

 

うわわわわー

本当にどうしよう!!

 

よくよく考えたら恥ずかしくなってきちゃった

 

だって小さい頃から夢にまで見たお兄さんのお嫁さんだよ?

 

…ち ちょっとくらいなら大胆なことしてもいいかな

 

例えば手を繋いでみるとか、腕を組んでみるとか

 

ほら、一般の人達への偽装の意味も含めて。

 

それくらいしないと疑われちゃうかもしれないよね、だって今の私達って夫婦なんだし……

 

えへへ…

 

むむむ、なんだかお兄さんの方に向かって来る女の人が……ふしゃーっ!!

 





誤字脱字がありましたら報告お願いします。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

白衣のおっさん

アニメでCパートがあるように、後書きでおまけ書いてもいいよね……

本編中に書けやヴォケが!!という方はご連絡ください(笑)


 

という訳で、あの魔の一日から数日。

 

何事もなく僕は業務に勤しんでいた…

 

…え、何か特筆すべきことがあったんじゃないかって?

 

ないよ、というか思い出したくないよ。

 

む、いいから何か思い出せ?

 

仕方ないなあ

んー……あっ、そうそうユーノ君がいたよ。

 

なんかオークションに出品される品々の評価に来たとか。

ほら、あの子って一応は考古学者としての顔もあるからね……けどなあ、昔から僕のことよく睨むんだよね。

 

なんで………あぁー、今更ながらに納得

深く考えたことなかったけど、たしか彼、なのはちゃんのこと好きだった気がする…………うん大丈夫、僕はそんなユーノ君を応援してる。

 

それからガジェットとやらが来てました、はい。

そうだ、それでティアナちゃんがミスショットしちゃったらしくて、なのはちゃんが心配してたな……

 

 

まあ、そんな感じで閑話休題(それは置いといて)

 

 

現実逃避はここまでにしようか

 

今日は珍しく休日。

僕の隣にはようj…女の子。

さらにその隣にはorz状態で平伏す白衣の男

うん、どうしてこうなった……?

 

 

 

--side out--

 

数分前

 

「ふぇぇええええんっ!!」

 

「あー、いい加減に泣き止みたまえ……困ったな」

 

そこには白衣を着た長身の男と、その白衣を引っ張りながら泣き続ける少女がいた。

男の名はジェイル・スカリエッティ。

 

ドクターの異名を持ち、最近巷を騒がせているガジェットドローンの製作者である。

たった今、彼はその天才的頭脳を悩ませていた。

 

当然、その悩みの種は自分の白衣の裾を引っ張る少女だ。先程から泣いてばかりで、理由も教えてくれない。

 

とある管理外世界にある童謡を彼が知っていたのなら、登場する犬の気持ちが分かったことだろう。

 

 

「よ よし、とりあえずアメでも…「なぁあに女の子泣かせとんじゃあぁぁああっ」 ぐぼぁ?!」

 

自分の頭の中でも数少ない『子供が対象の』知識を絞りだし、とりあえず『あやす』ことにしたスカリエッティだったが横から来た蹴りに奇声を上げながら吹っ飛んだ。

飛び出して来た青年の名を川添怜。

すぐさま少女と目線が合うように屈んでみせる。

 

「こんにちはお嬢さん、どうして泣いているのか教えてくれるかな?」

 

その顔には『そこのオッサンが原因なら容赦なく通報する』とありありと書かれている。

 

「グス…お母さん、いないの……

 

「え、お母さん?」

 

 

□■□■□

 

 

「さて…それじゃあ、この子のお母さんを探しに行きますか」

 

先程、スカリエッティを蹴り飛ばしたことは完全に無かったことにした怜(我らが主人公)

 

まあ白衣の人も割とピンピンしてるし……とは本人の談である。

 

「…では私はこの辺で帰らせてもらって」

 

「いやいや、この子も貴方を気に入ってるみたいですし。 一緒に探してあげてくださいよ」

 

さりげなく帰ろうとするスカリエッティの襟元を引っ張って引き止める。

 

何度目かのやり取りであるが、生憎とそれを数える人はいない。

 

「おじさん、いてくれないの……?」

 

「ほら、この子もこう言ってますし」

 

「む……」

 

いつもならば断っていたであろうスカリエッティも、今回は逡巡してしまう。

 

目の前にいる青年は、なんの得もないはずなのに見ず知らずの少女を助けようとしている。

 

そこに少し興味が湧いた。

 

更に、ここ最近で多くのガジェットを消費たために機動六課にちょっかいもかけられないのを思い出す。

 

家に帰っても、ガジェット製造機を眺めるくらいしかやることはない。

 

 

 

まあ有り体に言ってしまえば暇だった。

 

 

 

「……まあいいだろう」

 

「よかったね?」

 

「うんっ!!」

 

 

 

 

それから数十分が経ち

 

 

「そっかぁ、ミアちゃんは4歳なのかー」

 

「うん! ミアねー、もうすぐ学校にいくんだよー」

 

 

先程から続けられている会話。

好き勝手に子供が喋り、青年が相槌を打つ。

 

そんな単純なことが繰り返されているのを見たスカリエッティは思った。

 

やっぱり帰っとけばよかった、と

 

ちょっとした興味で青年について来たものの、暇なのに変わりはない。

 

いっそガジェットを出動させて親を探してやろうか、などとぶっ飛んだ考えまで芽生え始めていた。

 

「あっ、ママー!!」

 

「ミア! よかった、探したのよ……」

 

と思った矢先に母親らしき人物が見つかった。

 

やっと見つかったか……とは流石の彼も言わない

 

黙っていた方が早くすむに違いないことを分かっているからだ。

 

 

さて、ここで再び興味の対象に視線を戻すスカリエッティ。

 

ここまで付き合ったのだ、一つ二つ質問をしたって構わないだろう。

 

相手は率先して人探しなどするような人物だ、どうせ暇に決まっているのだし

 

 

「いくつか君に聞きたいことがあるんだが、いいかね?」

 

「え、僕にですか? ……まあ、いいですけど」

 

「では一つ目を。さっきの少女、君にとっては赤の他人だろう? 何故わざわざ親を探したんだね?」

 

「え゙……」

 

そこがスカリエッティにとって一番の疑問だった。

 

 

しかし対する怜は言葉に詰まる。

 

ロリコン(異常性癖)です☆ミ

 

なんて言えない。

 

皆さん割と忘れているかもしれないが彼にも世間体という概念が存在するのだ。

 

「………そうだ!! あなたにはお子さんがいますか? もしくは近所の子供とか」

 

まさか質問に質問で返されるとは思っていなかったスカリエッティだが思考の中でナンバーズとルーテシアが思い浮かぶ。

 

「ああ娘が(12人)いる」

 

「おお、では想像してみてください。 疲れて帰ってきたあなたに、その娘さんが言うんです『おかえりなさい、パパ』って」

 

「……ふむ」

 

「しかも何かしてあげた時に小さい娘に笑顔で『ありがとう』と言われた時にゃ………(中略)………ハッ」

 

時間も忘れて熱弁するあまり自分の顔にロリコンが映し出されるのを感じて正気に戻る怜。

 

途中からは幼い子に対することしか話していなかった。

 

 

「ええっと、えっと……それに感情っていうのは、ですね。 善意も悪意も、振り撒いた分だけ返ってくるんですよ。 ほら、因果応報とか情けは人のためならず、とか言いますし…」

 

しどろもどろになる怜。

彼にしては珍しい慌て様で明らかに後半は後付けである。

 

「…………」プルプル

 

「(やば、ロリコンってばれたか!? 肩を震わせて怒ってらっしゃる!!)」

 

「……らしい」

 

「はい?」

 

「素晴らしい!!」 

 

「………」

 

 

えー、んなアホな………おっと失礼。

とりあえず、いきなり興奮しだしたスカリエッティは怜の肩を掴み、目を輝かせた

 

 

「実に素晴らしい考え方だ!! 」

 

「は はぁ……ありがとうございます?」

 

「これならば私を作った者共に対して私が持つ感情にも説明がつく!!」

 

「(私を作った………? あ、親に対する反抗心とかかな)」

 

「たった今わかったよ……私は愛が、正義が欲しかったのだ。 そして子供達の笑顔が!!」

 

「えっと……よかったですね」

 

「となると、だ。 あの計画も大幅な変更が……」ブツブツ

 

「なんか納得してるし…まあいっか」

 

 

この出会い、そして怜の発言が未来における大事件に関わることを彼が知ることはない。

 

 

 

 






おまけ

スカリエッティside--


うむ、今日はいい出会いがあった。

心を入れ替えると我が家(ラボラトリー)もひと味違って見えるな!!(物々しい機材や生体ポッドしかないため、ただの思い込みである)

あの後、もう一つ彼の青年に質問したのだ。

今まで悪意しか振り撒かなかった私が最初に何をするべきか、と。

そこで彼はこう言った、『他人に笑顔で接すればよいのでは』と。

「おかえりなさい、ドクター」

「おお、ウーノではないか。 ちょうどよかった……ゴホン、ただいまウーノ」

「……ドクター、何かありましたか?」

「ふふん、分かるかね。 私は生まれ変わったのだよ!! おっと、ルーテシアを呼ばねば。 母親を治してやろう……ついでにゼストも回復させてやろうではないか!!」

私は笑顔のままに自室へ歩いて行く。

今の自分がどんな顔なのか、そしてウーノが固まってしまった理由がその『笑顔』のせいであることを知らないまま。

一つだけ言えることは笑顔の練習が必要だということ。



洗面台の鏡に映る自分を見て倒れそうになったのは秘密だ。

  


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

お説教、始めました。


思いついた設定の小説をさわり部分だけ書くのが前から割と好き。




 

夜遅く、僕は機動六課内を徘徊していた。

予想以上に仕事が長引いてしまった。

 

というか、最近はやてちゃんが何かにつけて僕に仕事を回してくるんだけど

 

 

「あれって……スバルちゃんとティアナ、ちゃん?」

 

 

ふ、とバルコニーから外を見ると人影が見える。

 

目を凝らしてみるとスバルちゃんらであることに気づいた。

 

いつも訓練に使っている服を着て、自主トレをしているようだ。

 

あ、スバルちゃんが転んだ。

 

「何やってんです、旦那。 覗きっスか?」

 

「ああ、ヴァイス君か。 アレだよ」

 

後ろから声をかけてきたのは、六課の一員のヴァイス・グランセニック君。

 

自分が見ていた光景を彼にも見せる。

 

「どれどれ、っと。 あー、またやってんのか。 しかもスバルまで加わって…あいつもパートナーなら止めろよな」

 

「あれ、ヴァイス君は知ってたんだ。 あれって大丈夫なの? なのはちゃんの教導的な意味で」

 

「どうなんですかねぇ…本気で不味いトコまで行くようなら止めるべきなんでしょうが……」

 

それにしても、彼女がああまで訓練するのには何か理由があるんだろうか?

 

何度か彼女達の訓練風景を見たことがあるが、ティアナちゃんは的確な指示を出していたし、リーダー的存在として活躍していたはずだ。

 

「前にね、言ってやったんですよ。『無理に詰め込んでも意味ねえぞ』って」

 

「……そしたら?」

 

「『それでも、詰め込んでやらないと上手くならないんです。凡人なもので』って言われちまいました」

 

「凡人って……あれで?」

 

「やっぱ、そう思いますよねぇ…」

 

けど少し納得できた、周りにいる子達の才能が目立ちすぎているのが原因の一つかもしれない。

 

キャロちゃんには竜召喚があり、エリオ君は幼いながらに自分と同じ陸戦B。

 

パートナーのスバルちゃんは、厳しい訓練の甲斐あってか初めよりも実力を上げている。

そこに一人だけ取り残されている様に感じているのか。

 

確かに、これだけの条件が揃うとなれば劣等感に駆られる気持ちも分からなくもない。

 

 

が、それとこれでは話が別だ

 

 

いくら悩んでいても度を超えた無茶をして体を壊してしまうと意味がない。

 

 

!!

 

 

言ってる傍から……

 

「ヴァイス君、ちょっとなのはちゃんとシャマルさん呼んで来て。 君が言ってた本気で不味いトコまで行っちゃったかも」

 

「うぇっ………あ、はい!!」

 

 

□■□■□ 

 

 

隊舎裏

 

 

「ゲホッゲホッ」

 

「ね ねえティア、大丈夫?」

 

 

そこには、うずくまるティアナと駆け寄るスバル。

 

ティアナの足元には先程吐き出された吐瀉物が溜まっていた。

 

連日連夜まともに癒されず、蓄積し続けた疲労に体が悲鳴をあげた結果だった。

 

「はぁ、はぁ……大丈夫だって言ってるでしょうが、いいから、クロスシフトCを、完成させるわよ。 次の模擬戦までに形にしなきゃ……」

 

「けど、さっきも落ちちゃったし……少しは休まなきゃ」

 

「大丈夫だってば!!」

 

 

叫び声をあげ、ティアナはスバルを睨みつける。

 

視線を向けられたスバルの瞳が揺れる。

 

訓練を続けるか否か。

 

この選択がティアナの何を救うのか分からなくなっていた。

 

少なくとも、心と体の両方を救える選択肢はなかった。

 

 

「そこまでだよ」

 

 

そうしてスバルが自分で出した答を口にする前に一つの声が遮った。

 

二人の視線が声の方へと向く。

 

そこには肩で息をする怜の姿があった。

 

 

「はぁっはぁっ、ああ、もう歳かな……」

 

「怜さん!?」

 

「あ、ちょっと待って。 息、整える、から…ゲホッゲホッ………ふう」

 

あ゙あ゙あ゙……とオッサンのような声を出して喉の調子を整えた怜にティアナが冷たい視線を送る。

 

「……なんの用ですか。 私達、まだ訓練中なんですけど」

 

暗に邪魔するな、と言うティアナに怜も顔を引き締めて答える。

 

「いやいや、ダメでしょ。 無茶な自主訓練で体を壊しちゃ意味ないって」

 

「……スバル、続きやるわよ」

 

「え……でも」

 

怜から視線を外し、スバルに声をかけるティアナ。

 

その態度にも怯まず、あえて怜もスバルに言葉をかける。

 

「スバルちゃんもさ、分かってるよね、このままじゃティアナちゃんの体がどうにかなるってさ」

 

「私なら大丈夫だから、早く」

 

「なら今すぐにでもやめさせるべきでしょ、パートナーだったら」

 

「スバル!!」

 

 

「う、あ………」

 

 

「ほうら、本当は分かってる」

 

スバルは言葉に詰まり、動揺が隠しきれずにいる。

 

そんなスバルの姿を見て、自分の思い通りにいかないことにティアナが怜を再び睨んだ。

 

「なんなんですか、さっきから………」

 

「君こそなんなんだろうな、何がしたいんだ」

 

「何も知らない素人が口出ししないでくださいッ!!」

 

「その素人にも分かることが、どうして君には理解できないんだッ!!」

 

 

怜の怒声にスバルの肩が揺れ、二人が睨み合った。

 

まさに一触即発。

 

「待って!!」

 

後少し遅ければ、ティアナが銃口を怜に向けていたかもしれない。

 

そんな極限状態の中で、なのはが声をあげた。

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

お話

 

「……なのはさん」

 

ふ、と先程まで呆然としていたスバルが呟く。

 

同時に怜は安堵の表情を浮かべ、ティアナはばつの悪そうな顔をする。

 

「まずティアナはシャマルさんに診てもらおうか、その後で少しだけお話させてくれると嬉しいな」

 

「…はい」

 

 

 

□■□■□■□

 

 

 

スバルの体調をシャマルに診てもらう間に、なのはとティアナは歩き始めた。

二人ともが何も言わずにいると、いつの間にか訓練時に使う広場まで来ていた。

 

「謝らないんだ?」

 

そう呟かれた言葉にもティアナの表情は暗いままだ。

 

「あ、別に謝ってほしくて言った訳じゃないから気にしないでね」

 

「なのはさんこそ、怒らないんですね」

 

少しだけ吐き出されたティアナの気持ちに、なのはの顔が引き締まる。

 

「怒ってるよ、でもそれ以上に自分の不甲斐なさが悔しいだけ。 ティアナはさ、私の教導に不満とかあったかな?」

 

「そんなんじゃないです、ただ強くなりたいだけなんです」

 

「今までで強くなったとは感じなかった?」

 

「確かに体力とか基礎的な運動能力は上がったとは思います。 でもそれは皆も同じですから、もっと別の部分で補わなきゃダメじゃないですか」

 

「どうして?」

 

「どうしてって……! 他の皆は強くなってるじゃないですか!! 私だけ取り残される訳にはいかない!!」

 

叱るでもなく、質問ばかりのなのはに思わず怒声をあげるティアナ。

逆になのはは驚くでもなく、怒るでもない。

ただティアナを見つめていた。

 

「そっか、ティアナにはそう見えちゃってるのか」

 

「…そう見えるも何も、事実だと思ってますから」

 

「ティアナが言う強さって何? スバルみたいな腕力でもないし、キャロみたいなレアスキルでもないよね。」

 

「そ、れは……ッ!?」

 

答えを出す前に視界の端から魔力弾が接近するのに気づいた。

咄嗟に回避、迎撃を行う。

 

「そう、それ。 あらゆる状況に対して、適切な行動が出来る判断力と応用力」

 

『それに…』と前置きを付け、なのはが続ける。

 

「ティアナがやってた自主トレの内容をお兄さんから聞いたよ、自分に足りない『近接戦闘』の部分を補おうとしたんだよね? やり方は問題だったかもしれないけど、着眼点は悪くないよ」

 

「………」

 

「ティアナの志望を考えると、将来的にも必要になると思う。 だから…クロスミラージュ、リミッターリリース」

 

 

先程ティアナが取り出したデバイスを借りて、ワードを呟く。

 

するとクロスミラージュの銃口から刃が生成される。

 

ティアナ自身が作り上げた術式よりも強固な造りになっているのは人目で分かった。

 

 

「よし、ちゃんと機能してくれてる……ティアナ?」

 

「…どうして」

 

「えっと…」

 

「どうして、そこまでしてくれるんですか……普通、教導ってこんな事までしてくれないですよね? ねえ、どうしてですか!! なのはさんが教えてくれたことを無視して、スバルまで巻き込んで……一人で空回りして、これじゃバカみたいじゃないですか」

 

ティアナが唇を噛み締め、涙を流しながら問い詰める。

 

「どうして、かぁ……ティアナはさ、私が撃墜されたことがあるって話知ってる? 結構前のことなんだけど」

 

「え……」

 

ティアナが知る由もないだろう。

当時、既に管理局期待の新人として名を馳せていた彼女が撃墜されたことを管理局は必死に隠していたのだ。

 

「任務帰りに襲撃にあったんだけどね? その頃ずっと無茶してたのが祟っちゃたんだよ。 きっと私にしか出来ないことがあって、それは誰かのためになるって信じてた私は休憩なんて殆どせずに訓練と任務にあけくれてたから」

 

「………」

 

「お医者さんに『二度と飛べないかもしれない』って言われたのがショックでぼーっとしてたらね、お兄さんが来たんだ。 その時どうしたと思う?」

 

「えっと……」

 

「色んなチューブに繋がれてる私の頬をぶったんだよ? でもその後こう言ったの『なんでこんな無茶したんだ! どれだけの人が心配して、悲しんだと思ってる!』って。 痛かったなぁ…勿論体も痛かったけど、何より心が痛かった。 一番大事にしてるつもりだったのに、一番蔑ろにしてたことに気付かされて…」

 

ふと、なのはが「しまった」と声に出す。

話の内容がズレ始めたことに気付いたのだろう。

 

「それで思ったんだ。 こんな思いを誰にもしてほしくないなって。 だから私は例え単なる教導でも生徒のためになるように全力全開で応えるって決めてるんだ」

 

「ごめん、なさい。 私、わたし…っ」

 

「ううん、私の方こそ。 ちゃんと言葉にしなきゃいけないこともあるって分かってたのに、みんななら大丈夫だろうって勝手に甘えてた。 ホントにごめんね」

 

 

その後、しばらくの間ティアナの泣き声が辺りに響いた。

 

 

 




これにてストックはお終い。
頑張りますが…リアルで色々ありすぎてもーうダメだぁ


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

休暇ですよ、休暇!!

 

なのはとティアナによる話し合いが終わってから約一ヶ月後のこと

 

「ええっと…いいんですか、休暇なんて?」

 

「うん、ここ最近はガジェットによる被害もビタッと止まっててな。 フォワードのみんなも頑張ってるし、たまには休まなあかんと思うんよ」

 

フォワードの面々には休みを与えられていた。

 

しかし本来なら休む暇もなく訓練ばかりの彼女ら、喜ぶと同時に心配をしてしまった。

 

「ガジェットの被害が止まった?」

 

「うん。 今までは数日に一回くらいは色んな世界で確認されてたんやけど、ここ最近はなんもなしや」

 

そう、はやてが言うようにガジェット出現の報告がなくなってから、およそ三週間が経とうとしていた。

「それで、なのはちゃんや他の隊長達と話し合った結果、今日一日は休みや。 体を休めるもよし、出かけるもよし」

 

その言葉にフォワードの面々から声があがる。

 

各々、何をしようかと考えているようだ。

 

 

□■□■□■□

 

 

 

一方そのころスカリエッティの研究所

 

「では、聖王の完成体がこちらに向かっていると?」

 

「うむ。 いやあ、楽しみだなぁ!!」

 

「でもドクター、なんでその聖王にご執心なんッスか?送られてきた写真ばっか見てますけど それって所謂『レプリカ』ッスよね」

 

「あーらウェンディちゃん、分かってないわねえ。 その『レプリカ』がゆりかごに必要だからに決まってるじゃな~い。それを使って世界中を混乱に……」

 

クアットロが自信満々に自説を唱える。

かねてより計画されていたことが自信を裏付けることになっている。

 

「違うな、間違っているぞクアットロ。 この写真を見たまえ。そして自分達と比べるのだ。もちろん我が娘ながら、お前達は可愛い。だがこの聖王の器とは決定とに違うところがある!! それは肉体的な幼さ、そして何より羞恥心が足りない!!

そう私は!無垢な!子供に!おかえりと言ってほしいのだ!!」

 

その場にいた娘……ナンバーズから冷ややかな視線が突き刺さる。

 

 

「ドクター……あの、何を言ってるのかわかりかねますが」

 

「ふむ。 ではウーノ、想像してみるのだ。 研究で疲れているところに、危うげな足取りで近づいてきた彼女がこう言うのだ『お母さん、大丈夫?』と」

前にどこかで聞いたような演説を始めるスカリエッティ。

 

その意見はウーノの価値観を変えるには十分だったようで、口元に手をあてて衝撃を受けた表情に変わる。

 

やはり『この親にして、この子あり』ということなのだろうか。

 

「…これより、子供服を買って参ります」

 

「うむ、着替えてから行くといい。 子供に見られても恥ずかしくないようにな」

 

「はい!!」

 

 

 

□■□■□

 

 

 

「ねえねえ、はやてちゃん。 僕に休暇は?」

 

「何を言うてんねんな、お兄さんは週休二日あげてるやんか」

 

「こっちに来てから、何回休日出勤させられたと思ってるのさ!!」

 

「つーん」

 

顔を背けて知らんぷりをする部隊長殿、子供か!!

 

「まあ、そこまで休暇が欲しい言うんなら、なのはちゃん辺りと一緒に…」

 

「やったー、今日も仕事を頑張るぞー」

 

なんだこの脅し文句。

効果抜群にも程がある。

 

「そこまで嫌がらなくてもいいじゃないですか……」

 

そして後ろで明らかに落ち込んでいる彼女の声がする。

 

あれ、選択肢ミスった?

 

 

 

□■□■□

 

 

 

「怜さんはお休みじゃないのかー。ね、ティア」

「ふぇっ?! な なんで私に振るのよ!!」

 

「えぇっ、隣にいたからだけど…なんで怒ってるの?」

 

「……怒ってないわよ、これっぽっちも、全然」

 

「ふーん、変なティア」

 

「そう、何もないのよ。 怜さんを見たらちょっとドキッとするとかない。 ないったらない」

 

「ティアー?」

 

「なんでもないったら!」

 

「えぇー……」

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

レッツゴスロリ


話がシリアスになる→皆の感想が止まる。
話が日常に戻る→感想復活。

まったく……皆さん分かってらっしゃるわぁww



っつか今回の話クソ短くてすみません。


 

「ちなみにエリオくんとキャロちゃんはどこに行く予定なの?」

 

ふと思い付いたように怜は二人に話しかける。

 

「えっと、シャーリーさんから予定表を作ってもらったんですけど…」

 

「ちょっと拝見っと…なになに、映画館に行き、ウィンドウショッピングを楽しみ、色々あって、最終的には夜景の綺麗なレストランっと。 これ没収ね」

 

「ええっ、じゃあどうすれば…」

 

まともな休日の過ごし方を知らない二人にとって、唯一の手がかりが怜の手によって奪われる。

 

「行きたいとこに行けばいいんだよ、遊園地とかさ。 それが嫌なら……あ、フェイトちゃんにプレゼントを買ってあげるとかはどうかな? そういう目的を作って街を見て回るっていうのはいいと思うよ」

 

そう言われて、二人の顔が綻びる。

それと同時に相談を始めだした。

 

きっとプレゼントについてのことだろう、と考える怜の顔にも笑みが浮かぶ。

 

やはり自分は本質的に子供が好きなのか、と頭のどこかで自己分析をしながら二人を眺める怜は幸せそうに見えた。

 

 

□■□■□

 

 

ミッドチルダのとある公道にて

 

ティアナとスバルの二人はバイクで出かけていた。

 

久々の休日にショッピングでも行こうと計画しているようだ。

 

「ねえティアー!」

 

「何ー!!」

 

「最近さあー! 模擬戦で調子いいよねー!!」

 

 

「あの日ー、なのはさんとか怜さんと話してからだよねー!!」

 

「……」

 

「ティアー? ちょっと速すぎないかな、これ以上は私的にも怖いっていうかああああ!!」

 

スピード違反?

何それ美味しいの?

 

 

□■□■□

 

 

とある研究所のとある親子達

 

 

「待ちたまえ、ノーヴェ!!」

 

「やだっつってんだろ、アホドクター!!」

 

「おお、これが反抗期というやつか。 だが私は負けんぞ、反抗期の子供には根気よく付き合うべしと本に書いてあったしな!」

 

 

「誰が子供かー!!」

 

とある親子、スカリエッティとノーヴェは追いかけっこをしていた。

 

いや、というよりも嫌がる娘を追いかける父の姿がそこにはあった。

 

 

「いやぁ、平和ッスねー」

 

「ドクター、楽しそう」

 

「あらあら、ルーテシアお嬢様。 お久しぶりですぅ、ちなみに今回こちらにいらした理由は?」

 

それを眺めるウェンディの横にルーテシアが現れ、クアットロが話しかける。

 

「お母さんが目を覚ましたの。 ゼストが状況の説明をしてるから、私はドクターに報告に来たの」

 

「あらー、それはよかったですねぇ。 あっ、そうだ、ドクターからお嬢様にしてほしいことがあるって頼まれてたんでしたぁ。 ちょっーと来ていただいても?」

 

「でもドクターに伝えなきゃ…」

 

「あっ、なら私がドクターに伝えとくッスよー」

 

渋るルーテシアにウェンディが提案する。

それに納得したのか、彼女はクアットロに着いて行った。

 

「あれ、そういえばドクターってクアットロに何か頼んだりしてたっけ。んー………あっ、とうとうドクターが殴られた」

 

 

 

「ええい、何故そうも普通の服を着るのを嫌がるノーヴェ!!」

 

「誰がそんなフリフリの服なんか着るか!! チンク姉にでも着てもらえばいいだろうが!!!」

 

「ふふん、既に実行済みさぁ!! ほらほら、君も一緒にレッツゴスロリ!!」

 

「おらぁっ!! って何ぃっ、受け止めただと?!」

 

「ふふふ、捕まえたぞノーヴェ。 さあ、いざ更衣室へ!! チンクも待っているさ」

 

「やめっ、やめろ。 嫌あああああぁぁぁぁっ」

 

「いやぁ、やっぱ平和ッス」

 

 

□■□■□

 

 

そしてこちらは子供服売り場

 

「この服もいい、あぁでもあっちの服もきっと似合うわ……やはりドクターに連絡して指示を仰ぐべきかしら?」

 

母性に目覚めたウーノが服を物色していた。

 

これから迎えに行く聖王の器に似合う服を探しているのだ。

 

あれもいい、これも捨て難いと何度も繰り返している。

 

「ハッ!! あっちの店に展示してあるフリフリの服。 きっとチンクに似合うわ」

 

 

かれこれ二時間は繰り返した行動を一旦終えて別の店を見て回ることにしたらしい。

 

「………案外ノーヴェに着せたりしてもいいんじゃないかしら」

 

頑張れノーヴェ、負けるなノーヴェ!

魔の手はすぐそこに迫っているぞ!!

 




数の子の容姿と口調が一部分からないのがいる。
ので困った時のウェンディたん。
ありがたやありがたやッス。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

電柱|・ω・`)

遅くなりまして申し訳ありません。
時間がかかりましたが、分量はいつもと変わらないという…



スカリエッティとノーヴェの激闘から数時間後のこと

 

ノーヴェ(の服装)を魔改造し終わった彼は、ウーノからの緊急連絡を受けていた。

 

「ドクター大変です! 聖王がいなくなりました、搬送中の事故から自力で逃げ出したようです!」

 

「ナ、ナンダッテー! って待ちたまえウーノ、君にその任務を任せたのは一体何時間前だと思っているんだね」

 

実に5時間である、朝方に外出していたはずだが既に昼を過ぎてしまっている。

 

「聖王や妹達に似合いそうな服を見ていたら時間を忘れてしまいました」(キリッ)

 

「そうか、なら仕方ないな」

 

「ええ、仕方ありません。 しかしこうなった以上、妹達も動員するべきかと」

 

「うむ、やむを得まい……では、スカリエッティ姉妹(シスターズ)、出動だ!」

 

ビシッという効果音が見えそうな動きのスカリエッティ。

某裁判ゲームのロゴのような格好だが、周りにいた幾人の娘達からの白けた目が向けられている。

 

「…何してるんですかぁ、ドクター?」

 

その中でもクアットロは空気に堪えられなかったようで、すぐさま質問していた。

 

「うむ、最近地球という世界の特撮というジャンルの物を見たんで、少しやってみたかったんだ」

 

「…ええっと、出動するのはセインちゃんに私に、一応トーレ姉様に控えてもらっておくとして。 ちょうどいますしルーお嬢様にも行ってもらいましょうか。 ドクター、ガジェットも借りますねー」

 

 

「………ああ、分かった」

 

ボケに反応がないということが辛いことなのだと、身に沁みたスカリエッティであった。

 

 

□■□■□

 

 

とある街道でのこと。

 

1日休暇をもらったフォワード陣、その中のライトニング隊に属するエリオとキャロは1つの買い物を済ませた後だった。

 

「うーん、本当にコレでよかったのかなぁ…」

 

「でもでも、服や装飾品だとフェイトさんに合うサイズなんて分からないし」

 

手にはプレゼント用に包装された物が見える、出発前に怜に言われたようにフェイトへの贈り物として買われた物のようだ。

 

「他の皆さんにも何か買えたらいいよね、なのはさんやスターズのお二人だけじゃなくて」

 

「うん! ならそれはお菓子とかがいいんじゃないかな、一人ずつに配っていって「いつもありがとうございます」って言うの」

 

「じゃあ、そうしようか…ってあれ? あの人、何か探してるのかな」

 

「まだまだ時間もあるし、話を聞いてみようか」

 

この判断が後に少しのサプライズに繋がることを、二人は知らない。

 

 

□■□■□

 

 

同時刻、同じ街中でのこと

 

自分のうっかりで聖王の器の確保を逃してしまったウーノは内心焦っていた。

 

先程のスカリエッティとの会話では何でもない様な振る舞いではあったが、やはり姉妹達の中で年長者としても責任を感じていたのだろう。

 

「ああ、このままじゃ折角のフリフリドレスが着せられないわ!」

 

…恐らく

 

とはいえ、本気で探しているのは事実である。 ほとんど虱潰し状態ではあるが裏道から何から探し回っている。

 

それだけで自分の任務を忘れている訳ではないことは伺えると言えるだろう。

 

「一緒に護送されてるはずのレリックだってあるのに…いいえ、いっそそんな物はどうでもいいのよ!」

 

…多分

 

正直いろいろとブレブレな彼女であるが、そこに声がかかった。

 

「あの、どうかしましたか?」

 

振り返ると自分より低い位置に2つの頭があった。

 

「(…可愛い) あら坊や達、何か用かしら」

 

「あ、いえ、何かお探しだったみたいだったので、何かあったのかなと」

 

「(あら、そういえばどこかで見たことがあるような…)ああ、何と言えばいいのかしら。 知り合いの子供がいなくなってしまったらしいのよ」

 

「大変じゃないですか! 僕らも手伝いますよ、特徴なんかを教えてくだされば…」

 

「(ハッ!? この子たち…管理局の!しかも赤髪の子はプロジェクトFの…!)あああの、でも大丈夫です。 この辺りをうろついてたら見つかるはずですし…」

 

「そうですか…? じゃあ何かあったら声をかけてください、これでも私たちは管理局員なんです。 しばらくこの辺りにいるつもりですので…」

 

「え えぇ、どうもありがとう。 あら、どうやらドクター…じゃなくて、その知り合いから通信…でもなくて連絡が入ったので、一旦失礼しますね。 おほほ」

 

「はぁ、そうですか。 じゃあ僕らはこれで」

 

そう言ってエリオとキャロがお辞儀をしてから離れて行く。

 

そんな二人の微笑ましい行動にウーノも手を振って答えながら、同時にスカリエッティとの回線を開くことも忘れない。

 

「………ドクターですか? こちらでは、まだ聖王は見つかっておりません。 何か分かりましたか?」

 

「うむ、こちらで推定位置を割り出した、さっき君がいた通りを横に曲がった先にある裏道辺りだ。 クアットロと行動している子達にも連絡を入れるので一旦切るぞ」

 

「はっ、すぐに確認をしてまいります。 さて……あ゛ さっきの子達がその場所へ」

 

どうしよう、自分は戦闘向きではないのだが……そう途方に暮れるウーノであった。

 

 

□■□■□

 

 

捜索に駆り出されたシスターズとルーテシア。

 

彼女達は海上からのルートで街に向かっているようだ

 

「ねえ、クアットロ。 私が探すのはどっち? マテリアル、それともレリック?」

 

「うーん、そうですねー。 じゃあルーお嬢様にはレリックをお願いしてもよろしいですかぁ?」

 

「……分かった、じゃあ先に行くね」

 

クアットロの指示にルーテシアは静かに頷いて転移する。

 

 

ルーテシアが自分達の目の前から消え、シスターズの一人であるディエチが口を開いた

 

「よかったのクア姉、ドクターはマテリアルにご執心なんでしょ? だったらお嬢様にも……」

 

「あらぁ、ディエチちゃんはー、姉の言うことを疑うのかしらぁ? 確かに最近のドクターは器にばかり目を向けるけど、本来アレは『ゆりかご』を動かすためだけの動力。 マテリアルとレリックの重要性は変わらないのよぉ」

 

「ふーん、まあドクターのためならいいんだ。 けどクアットロ、最近なんか企んでない?」

 

「だ・か・ら、そういうのも全てドクターのためなのよ。 何にせよ、ウーノ姉さまがマテリアルを回収してくれてるかもしれませんしぃ、これだけ姉妹達がいればどうとでもなるってものよ」

 

 

その頃のウーノは

 

|電柱|・ω・`)<どうしよう、このままじゃ妹達に顔向けできないわ…

 

葛藤していた。

 

 




さて次話はどういう始まり方にしたものか…
毎度キンクリしてたら呆れられそうだし、かといってこの作品で戦闘描写を入れてもなぁ…


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

きゅうしょ に あたった!!


どうも生きてました。

何度も加筆して修正して、三度程加筆分を消してしまったこともあったが、久々に相当な文量を書いた気がしていた。

だが蓋を開けてみると、ページが少なかったんだぜ。

何を言ってるのか分(ry

いや、マジでどうしてこうなった。


という訳でお待たせいたしました。





前回

 

壁に隠れながらも管理局員を見守っていたウーノ、あれから少し時間が経ち…

 

「お待たせ、キャロ、エリオ!」

 

「レリックの処理は?」

 

「キャロが封印してくれました」

 

「ただ…この子、レリックの入ったケースを引きずってきたみたいなんですけど」

 

 

(増えちゃった! タイミングを見計らっていたら、局員が増えてしまったわ!)

 

 

オロオロしていた。

 

(だ 大丈夫よ。 所詮あの子達は新人、突入してもマテリアルを浚うくらいなら…)

 

「もうすぐ隊長達も到着するようです」

 

「よし、なら到着まで警戒は緩めないようにしましょう」

 

(い 行くわよ……)

 

と決意し、今にも突入しようと身構え

 

 

 

 

 

 

迷っている間に隊長達が到着した。

 

(なんてダメな子なの、私は! きっと私の名前のⅠは一番ダメな子のⅠなんだわ……)

 

その後、とぼとぼと帰るウーノであった。

 

 

□■□■□

 

 

さて、みなさん久しぶりです

 

川添 怜です。

 

あの後なんだかんだで「あれ、結構備品足りなくない?」となって町に出てきました。

 

 

なのはちゃん? 一緒な訳ないじゃない。

 

いや、別に嫌いって訳じゃないよ? 決して

 

でも何故だろうね、はやてちゃんが事ある毎に「僕となのはちゃん」をセットにしようとするんだ。

 

おっと閑話休題。

 

ただいま買い出しの真っ最中。

 

って言っても、僕一人でも事足りる訳だから、すぐに戻らなきゃいけないんだけどね

 

「さて、と。 後は何がいるんだっけ……」

 

ほとんど買い物は終わったけど、と続けてから辺りを見渡す。

 

すると紫髪の女の子が裏路地に入っていくのが見えた。

 

あんな場所に何か用があるとは思えないけどなあ……

 

身なりもきちんとしていたし、あそこに住んでいるという訳でもなさそうだ。

 

「ちょっとだけ覗いてみようかな、うん。 心配だし」

 

そう、心配だからね。

 

ぱっと見が可愛かったとかじゃなくて、純粋に心配だからね。

 

 

……

 

………

 

本当だからね!!

 

 

 

明らかに普段から使われている様子ではない裏路地は薄暗く、空き缶等のゴミが散乱している。

 

表通りの栄え具合とは真逆の在り方で、人もいない。

 

しかしスラム街という訳ではないらしい、数メートル先には出口の光が見えるので裏道や近道と言う方が正しいかもしれない。

 

「もしかしたら、地元の子かもしれないなぁ。 最初から危なくないって分かってたから通ったとか」

 

そう言って踵を返そうとして、靴に何かがぶつかった。

 

決して軽くはない何かは円形で、隣には穴………

 

「って!! マンホールの蓋ぁっ!?」

 

危ないんじゃないだろうか。

 

というか危なすぎる。

 

誰かが落ちたりしたら…ん?

 

「さっき子、落ちてないよね……」

 

うーん、下りてみるかな。

 

ひょっとしたら、ということも有り得るし。

 

本当に落ちてたら大変だもんね。

 

 

 

 

 

□■□■□

 

 

 

さて、下りて来たのはいいとして。

 

案の定、この場所も薄暗い。

 

とりあえず母さんから貰ったデバイスに指示して明かりをつけさせる。

 

それから左右に首を振って、先程の女の子がいるかを確認した。

 

「んー、やっぱり考えすぎかな? わざわざ女の子が来る様な場所でもないし……ん、あれは?」

 

ライトを消して地上に戻ろうと振り返る直前に、光る何かが見えた。

 

「これは、ヘアピンか」

 

何故こんな所に?

 

答なんて一つしか見つからなかった。

 

「……行くか」

 

 

 

□■□■□■□

 

 

 

髪飾りが落ちていた方向へ進んでから十数分。

 

誰かが通ったような痕跡がちらほらと見当たることに安堵しつつ、足元にだけは注意して歩く。

 

そして、ふと先を見ると道が二手に別れていた。

 

しばらく一本道だったので忘れていたが、ここは地下水路なのだ。

 

曲がりくねっていて当然だ、何故その可能性に思い当たらなかったのだろう…

 

「うーん。 あの子も見つからなかったし、帰るかな」

 

仕方ないよね。

 

というか買い出しの真っ最中だった。

 

こんな寄り道がバレたら部隊長殿から何を言われるか…

 

この髪飾りは交番にでも届けよう、うん。

 

「逃げよう、というか買い出し中だっタブァッ!?」

 

「動かないでください。 貴方には聞きたいことが………って、怜さん!?」

 

「ギ ギンガちゃん? 久しぶり……痛い」

 

まさか再開がこんな場所、しかも下から見上げる形になろうとは。

 

 

 

 

 

「つ つまり、怜さんは髪飾りを落としたと思われる女の子を追いかけて来たと?」

 

「そして僕を不審者と勘違いしたギンガちゃんはバインドを使ったと」

 

「ご ごめんなさい……」

 

いや、まあ考えてみれば怪しさ満点だよね。

 

逃げるとか口走ってたし。

 

「いやあ、こちらこそごめんね。 すぐに帰るから、この事ははやてちゃんには内緒に……ゴフゥッ!?」

 

「え、あ、スバル?」

 

「あーっ、やっとギン姉見つけた。 さっき小型だけどガジェットを見つけたんだ、早くギン姉も一緒に……え、何、足元を見ろって……って何で怜さんが!?」

 

くるりと体を反転させて、再び戻ろうと試みた。

 

が、またしても止められてしまう。

 

曲がり角から現れたスバルちゃんによって、さっきよりも乱暴に、且つ大胆に

 

 

轢かれた、体当たりされた、または突撃された。

 

きゅうしょ に あたった!!

 

 

「あっ、えっと、ガジェットが出たということは、何処に危険があるかも分かりませんし、怜さんも一緒に……」

 

「………えっ」

 





まあマジレスすると、就活だなんだと色々あって一時は文を書く気にもならなかった訳だが。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

もうやだ帰る!

待たせたな……(蛇)

今年の初めには投稿するつもりがいつの間にかクリスマスも正月も誕生日もバレンタインもホワイトデーもエイプリルフールも終わってたんだ!
そしてまさかの半年放置とかこんなの俺じゃねえ!
まあぶっちゃけた理由は活動報告で。



 

暗い地下道の中

 

「でりゃぁあああっ!!」

 

そこに響く大きな声と

 

更に大きな爆発音。

 

「ナイス、スバル!」

 

そしてそれを何事もなかった様に讃えあう年下の女の子達

 

「もうやだ帰る!」

 

そしてギンガちゃんの後ろで震える僕。

 

「ここまで来ておいて今更…一緒にいた方が安全ですよ?」

 

「あああ安全じゃないよスバルちゃん!! 君達はバリアジャケットとかで平気かもしれないけど、爆風だって僕には危ないんだからね!?」

 

そう、先程から怖い思いばかりしていた。

 

曲がり角で大きな機械兵器(ガジェットと言うらしい)に頭をぶつけ、攻撃こそされなかったが頼もしいフォワードの皆が戦闘を始めるのを間近で見てしまったのだ。

 

 

「うん、やっぱり帰ろう」

 

「だ だからダメですってば?! どこ行くんですか怜さん!!」

 

くるりと体を反転させて、先程ガジェットと遭遇した曲がり角に差し掛かる。

 

後ろからギンガちゃんが追いかけてくるのも無視してそのまま進もうとすると『ナニカ』にまたしてもぶつかった。

 

またガジェットですか!?と体を強張らせてはみたものの、衝撃が明らかに少ないことに違和感を感じた。

ついでに当たった感触も鉄の様な硬さではない。

 

視線を左右に巡らせても何もない、次に下へと顔を動かすと女の子がいた。

 

(小っさ、そして可愛い)

 

「…………?」

 

紫の長い髪、黒っぽい服

 

どこかで……?

 

急に見つめられて首を傾げる女の子と、何かが記憶にひっかかり同じように首を傾ける僕。

 

数秒の間うーんと唸っていると僕に追いついて横にいるギンガちゃんを見て、彼女と出会った理由を思い出す。

 

「あぁっ! 君さ、このヘアピン落とさなかった?」

 

「……!」

 

僕がポケットから取り出した髪飾りを見て、目の前の女の子は慌てる様に頷いた。

 

やはり彼女の物だったと安堵しながら、僕の掌に小さな手が迫り来る。

 

しかしその手がヘアピンを掴む前に、横からそれを取り上げる人物がいた。

 

 

「ちょっと、ギンガちゃん」

 

「すみません怜さん、この子にいくつか聞きたい事がありますので」

 

 

そう言ったギンガちゃんが改めて目の前の女の子に向き直る。

 

 

「あなたの名前は?」

 

「ルーテシア・アルピーノ」

 

 

「年は?」

 

「9歳」

 

 

「ここに来た理由は?」

 

「…ヘアピンを探して」

 

 

その答を聞いたギンガちゃんが、今度はもう一度僕を見る。

 

 

「そのヘアピン、落ちてたのはマンホールから下りて直ぐの場所。 そうでしたよね、怜さん」

 

「…そ、そうだけど」

 

 

急にギンガちゃんから話が飛んできて驚いてしまったが、とりあえず素直に返答しておく。

 

 

「なら何故あなたはこんな奥深くまで来たの? 本当にヘアピンを探していたなら、そんな必要はなかったんじゃないかしら」

 

 

「そうですね。 普通の女の子なら、ヘアピン一つでこんな薄暗い地面の下なんかに来ませんし」

 

 

ギンガちゃんの質問を後ろで聞いていたフォワード陣の中からいち早くティアナちゃんが同調する。

 

確かに二人の言ってることも分かる、が目の前で小さな女の子が尋問されているのは流石に見ていられない…

 

 

「このヘアピンは…初めてお母さんがくれた物、だから」

 

「答えになっていません、あなたがこんな所まで…」

 

「ねえ、ギンガちゃん。 僕らも早く進まなきゃいけないし、とりあえず連れて行けばいいんじゃないかな? 目の届く所に置いておけば、この子だって何も出来ないだろうし……ね?」

 

「あの、僕も今はレリックの捜索を優先した方がいいんじゃないかと思います。 お兄さんの言う通り、その子には一緒に付いてきてもらうという形で……君もそれでいいかな?」

 

「…うん」

 

エリオ君の援護射撃でギンガちゃんも納得してくれた様でティアナちゃんと隊列についての相談を始めだした。

 

余計な事言っちゃったかな……僕なんて隊員でもないのに。

 

後で謝ろう、うん。

 

そんな風に決意していると二人が戻ってきた。

 

前衛にギンガちゃんとスバルちゃん。

 

後衛にはエリオ君とティアナちゃん。

 

その間に僕とキャロちゃん、そしてルーテシアちゃんが一塊で挟まれるという形で進むことになった。

 

前衛二人が正面のガジェットを破壊し、後ろの3人で援護。

 

後ろから襲われたとしても、すぐに対応できるような立ち位置になっていた。

 

が、そこから先は何故かガジェットに出くわすこともなく、安全に進むことができでいる。

 

その影響か、ほんの少しだけ場の緊張が緩くなった気がする。

 

そこでふと自分の隣にいる女の子に目を向けてみるが相変わらず無表情のままだ。

 

年の近いライトニングの二人がよく話しかけているのだが、ちゃんと反応しているので特に機嫌が悪いという訳ではなさそうだ。

 

「えっと…その髪飾りってアルピーノさんのお母さんがくれたんだよね? お母さんはどんな人?」

 

「綺麗で、明るい人。 昔からそうだったってゼストが言ってた……あなたのお母さんは?」

 

キャロちゃんの質問に心なしか嬉しそうに話してくれたルーテシアちゃん。

 

彼女の中で母親という存在は大きいらしく、相槌や返答だけだった先ほどまでとは違い、今度は同じ質問をキャロちゃんに投げかけていた。

 

「私は……うん、私達のお母さんは凄く優しくて、私達のことをすごく大事にしてくれてるの」

 

少しだけ迷う様な素振りを見せてからキャロちゃんが微笑みながら答える、彼女が言った「お母さん」とはフェイトちゃんのことだろう。

 

これをあの子が聞いたら飛び跳ねて喜んだに違いない。

 

ね?とキャロちゃんはエリオ君に微笑みかけている。

 

「そうだね、キャロ……… ッ! 皆さん止まってください! そこの曲がり角の向こうから足音が!」

 

そんな平穏な空気から一転し、エリオ君の言葉と共に臨戦態勢に入るフォワード達。

 

僕には聞こえなかったのだが、彼には感じ取ることが出来たらしい。

 

少ししてから耳を澄ませてみると、確かに水の音に以外にも何かの音が一定のリズムで聞こえる気がしなくもない。

 

「来ます!」

 

緊張感は徐々に高まり、エリオ君の一声で全員が身構えた。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。