菜月スバルに直死の魔眼とか色々組み込んでみた。   作:繭原杏(繭原安理)

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誤字報告ありがとうございます!
何処で言えば良いのかわからなかったので、ここに書きました。

あー、恥っずかしい……あんなミスしてたなんて……

連投一つ目です



在処の手がかりと異世界交流

 何もかもが黒く染まる世界。

 この中でなら、あんな線が見えることがなく、だからこそ微睡みというのは、俺にとって普通よりも重い意味を持つ「安らぎの時間」だった。

 

 半分夢の中にある意識が、違和感を感じる。

 後頭部に柔らかい物が当たっているのだ。

 うちの枕はこんなに良いものだったろうか?

 ふかふかで、暖かくて……

 肉質的な所は、まるで全童貞が夢見る「彼女の膝枕」を想起させる。

 心地よい。

 ただ、ベットが硬すぎる。なんだこれ? 石か?

 凝り固まった体勢を変えようと身じろぎした瞬間、上から声がかかる。

 

 「あ、目が覚めた?」

 

 その声に薄目を開ける。

 聞き覚えの無い声。誰だろう?

 

 「まだ動かないで。頭も打ってるから、安心できないの」

 

 その包み込むような優しい声に、この声の主はきっと絶世の美少女なのだろうと思った。

 横を向いて頬を擦り付けたその膝枕は、毛深く、程よい暖かさを持っている。

 ああ、この子はきっと、毛深い美少女。膝枕してくれるほどなのだから、きっと向こうも少なくない好意があるのだろう。

 誰かは知らないけど、童貞にそんなことは関係ない。是非お付き合いに――――――

 

 「って、んなわけあるかー!」

 

 「起きて良かったですわ」

 

 そんな美少女、こっちから願い下げである。

 生憎のこの昴、ケモナーであっても獣の(比喩ではない)美少女に興奮するほど性癖を拗らせて、い、いないっ!

 ここで淀みなく断言できないのは、恐らく日本人の(それもある特定の)業の深さを表しているのだろう。

 そんな昴の覚醒に、揶揄うような、いや、確実に揶揄っているであろう、裏声で下手なお嬢様言葉が返答する。

 

 完全に覚めた瞳が見つめるのは、巨大化した猫の顔が上、いや、逆さに覗き込んでいる光景。

 ちょっとしたホラーである。

 飛び起きた昴に対して、

 

 「せめて覚醒までの瞬間を幸せに過ごさせてあげようという粋な計らいだよ」

 

 件の猫が、微笑んでそう言う。

 この声は確かに奇麗だが、猫が発しているとなると薄気味悪くなる。

 

 「とりあえず、その不快な裏声はやめてくれ」

 

 何よりも先に、そのことを頼み込む。

 それから見慣れない石畳の路地や、スラム街の入り口という様相の場所で寝ているという異常事態に気付き、気絶する前の状況を思い出す。

 まあ、それはさておき。

 

 「モッフモフ……モッフモフやぁ。なんてもんを生み出してしもうたんやぁ、神よ」

 

 「いやぁ、こんなに喜ばれるとボクもわざわざ巨大化した甲斐があるよ。ね?」

 

 その腹に飛び戻り、思う存分モフる。

 ケモナーにとっては、正に「天国」と呼べるような状態。

 え? デカすぎる猫は気持ち悪い? そもそもこんな汚いところにいる時点で天国とは程遠い?

 黙らっしゃい。モフモフに貴賤は無いのです。そして偉大なるモフモフが存在するその場こそが天国なのです。いかに汚かろうと天国なのです。

 照れ始めたモフモフをさておき、その腹に突っ込んでモフり始める昴。

 視界が遮られる前に目を閉じる。勿論毛が目に入らなないようにという訳だけでは無い。

 暫く堪能してから、顔を上げる。

 

 照れた仕草で頭を掻く巨大猫。その視線の先に立つのは、路地の入口で不満げに腕を組む少女だ。

 意識を失う直前、昴の記憶と眼に鮮烈に焼きついた少女に間違いない。

 その銀髪は路地から洩れる光で輝き、まるで月のように光を纏っている。

 状況を整理しきった昴が、口を開く。

 

 「ということは、お前はさっきのミニマムサイズ猫?」

 

 「ふふふ、大きさ自由で持ち運びに便利。さらにユーモアあふれるトークで退屈な日常を彩ったりしちゃう。ひとりに一匹! 生活のお共に。詳しくは精霊議会に問い合わせてみてね」

 

 精霊議会とはなんぞや。

 それは兎も角、どうやら落ち着くまで待ってくれていたらしい少女には重ね重ねの感謝の意を申し上げなければいけないだろう。

 

 「悪いな……なんか、結局目が覚めるまでいて貰って……」

 

 「勘違いしないで。聞きたいことがあるから仕方なく残ったの。それがなかったらあなたのことなんて置き去りにしたわ。そう、してたの。だから勘違いしないこと」

 

 かぁーわいい!

 勘違いなんてしてないよ。うんしてませんよー。

 それは兎も角。

 

 「ああ、『徽章』、とかいうやつか」

 

 「そうよ、それを探してるの。心当たりはない?」

 

 目覚める前に手に入れた情報を思い返して、昴が言う。

 少女はそれに対して情報を求める。

 

 「心当たり、か。無くはないけど……」

 

 「ほんと!? 教えて!」

 

 勢い良く近づいてくる少女に、昴はいろんな意味でドキドキする。

 

 あれ? 俺ってこんなに他人意識してたっけ?

 

 心の中で首を捻りながら答える。

 

 「気絶する前、ゴロツキに絡まれてた時なんだが……あんたの前に一人の少女がここを走り去って」

 

 「それよ! で、その子はどこに?」

 

 「いや、だいぶ前だろうからどこにいるのかは……この路地の奥の方に行ったっていうのは分かるけど……」

 

 「そう……じゃあ、行かないと。バイバイ」

 

 「わあああ! ちょっと待ってくれ! もう少し手伝わせてくれ!」

 

 「といっても……これ以上情報あるの?」

 

 「いや、ない」

 

 「そう、じゃ」

 

 「いやいやいやいや! そう即決せずに!」

 

 「じゃあ、なんなの!? 本当にあれがないと困るから早く探しに行きたいんだけど!」

 

 何度も引き留められて流石に怒り気味の少女。

 そんな少女に、昴はこう言い放つ。

 

 「その『徽章』ってやつは盗品で、此処はスラム街。ここは確かに無法地帯で、盗みなんざ日常茶飯時だろうが……盗品を売り捌くのは簡単じゃねぇ。ならそれを担当する所があるはずだ」

 

 「その場所を、知ってるの?」

 

 「いいや? だから聞きこむのさ」

 

 そう言って昴は自分の持ってたコンビニ袋を少女に預け、此処で待つように言った。

 その一方で、心の中では自分のセリフに自己陶酔していた。

 

 

 

 

 

 

 「さて、ただいまっと」

 

 「あ、お帰りなさい」

 

 スラム街の奥の方に行って、ホームレス相手に聞き込みしていた昴。

 その身なり故か、自分らの同類と思われた昴は難なく目的の情報を入手できた。

 その代わり、だいぶ臭くなってしまったが。

 

 「さて、まず手に入れた情報なんだが」

 

 「あの、少し悪いと思うけど……なんでそんなに臭いの?」

 

 「そりゃ、スラムが臭かったからなぁ……そこはごめんな?」

 

 「ううん! 私の為に頑張ってくれたんだもの、どれだけ臭くても我慢するわ!」

 

 「ははっ、臭いことは否定しないのね……まぁ、それもそうだけど。それじゃあいくぞ?まずは――――――」

 

 

 

 

 

 

 「成程、その『盗品蔵』って所に私の探し物があるのね?」

 

 「おそらく、ね」

 

 「じゃあ行ってくるわ! ありがとう! あ、この袋は……」

 

 「いや、俺もついてくよ」

 

 「え? そこまでしてもらうわけには……」

 

 「いやぁ~、ぶっちゃけ、今俺無一文なんだよね! ここらで恩売って、せめて食べる物とかもらえたらうれしいなぁって!」

 

 「そ、それなら……」

 

 「じゃあ、お嬢ちゃん? これから、少しの間だけど一緒に行動するんだから名前教えてくれない? あ、別にナンパとかじゃなくて……」

 

 「なんぱ? ええと、私の名前は――――――」

 

 ――――――サテラっていうの。

 

 知らない人間に名乗る事への躊躇いだろうか、少々の溜めを挟んで告げられた名前に、スバルはこう言う。

 

 「サテラ、か。サテラ、サテラ……うん、良い名前だな!」

 

 取り合えず名前は褒めておくべきだ。それも相手が女性ならば。

 少なくともそれが、こんな得体のしれない人物に名前を明かしてくれたことに対する、礼儀というものだろう。

 

 「趣味が悪すぎるよ……」

 

 そう呟く精霊の声に終ぞ気付かないまま、スバルは言葉を返す。

 

 「俺の名前は菜月昴! 右も左もわからない上に天衣無縫の無一文! ヨロシク!」

 

 「無一文って……スバルって、思ったよりダメ人間?」

 

 「いやいやいやいや! これには少し事情があって……! 決してダメ人間じゃないんだぞ!?」

 

 そう必死に身振りを加えて言う。

 クスクスと笑われ、ようやく揶揄われたのだと気づいた。

 

 「よ、よし! じゃあ行くか! よろしく、サテラ」

 

 そう言って、近づきながら手を差し出す。

 

 「えっ、あ、う、うん。よろしく、スバル」

 

 何故か少し戸惑った様子で、握り返してくる。

 赤く染まった頬は近くで見るとますます可愛らしい。

 それと同時に差し出した手を、柔らかい感触が襲う。

 

 ――――――うをっ、やべっ。女の子の手ってこんなに柔らかいのか……

 

 ドキドキしながら、握手の為に視線を下げたサテラの顔を見る。凝視する。

 俯き気味なこの角度も、元からある儚さと合わさって、まるで硝子細工のように美しい。

 思わず下を向かないよう、ただ只管にその顔を見つめる。

 

 「ス、スバル?そ んなに見つめられてると……恥ずかしいの」

 

 「あ、あ、ごめん。見惚れてたぜ! いやぁ! 美人は罪だなぁ~! はっはっは!」

 

 そう言って、恥ずかしさを誤魔化す。

 赤くなった顔を見られないよう踵を返し、「盗品蔵」までの先導を行う。

 

 「所で、そのモフモフの名前は何て言うんだ?」

 

 「もふも……?」

 

 「ああ、その猫?みたいなー、精霊?って奴の事」

 

 「この子はパック。私の契約精霊なの」

 

 「どうも、パックだ。うちの娘に手を出したら、ただじゃ置かないよ?」

 

 パックか、そういや気を失う直前にそんなこと言ってた気も……

 パックの目がマジな目だということを振り返って確認した昴は、慌てて弁明する。

 

 「出さない出さない! にしても、契約精霊?なんだそりゃ?」

 

 「ああ、契約精霊っていうのはね?――――――」

 

 こうして昴は、自身の中途半端な魔術知識を埋めるために、全く関係のない異世界の『魔法』について知識を深めていく。

 

 「へー、なんか『魔術』みたいだなぁ」

 

 「『魔術』? 何それ」

 

 「ああ、『魔術』ってのは――――――」

 

 魔術師の事について話してドン引かれたり、こっちの「魔法使い」とやらに真面な倫理があることに驚いたり、そもそも「神秘の秘匿」が成されていないことを知った時点で、昴はしみじみと「異世界だなぁ~」と心の底から実感した。

 物語の中の「異世界」ではなく、実際の文化の違い、民族性の隔たりを感じての「異世界」を実感したのは、昴にとって初めての経験だった。

 

 




人物設定

菜月昴
 ■■の家系に生まれたが、出来損ないと蔑まれていた。
 幼い頃に菜月家に引き取られて以来、魔術関連の事には余り関わらないように心がけている。
 「正義の味方」に憧れている。
 尊敬している人物は親と■■■■。
 実家に居た頃のトラウマか、あまり争いを好まない。
 「死ぬこと」を、「■■■■」を恐れている。
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