転生しても戦争だった  ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~   作:ガンスリンガー中年

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皆様、耳もしくは頭や正気を疑う準備はよろしいでしょうか?




第311話 残念臭漂う開戦理由もしくは会戦口上。そして、どこかで聞いたことのあるような情報将校とシン燕のデビュー戦

 

 

 

 1943年5月12日、史実では”アッツ島の戦い”があった日。この世界線のこの日のアリューシャン列島アッツ島は……

 

「……暇だな」

 

「ああ」

 

 日本が何の興味を示さず、従って米領のままいたって平和であった。

 しかし、アッツ島から遠く離れた英領ジブラルタル南岸の港湾都市ララシュでは、壮絶(?)な戦いの火蓋が切って落とされようとしていた……

 

 

 

 いや、予兆はずっとはるか後方の高高度から”見られて”いた。

 M1917/155mmカノン砲&GPF155mmカノン砲の射程は19,500m

 M1918/155mm榴弾砲&シュナイダーM1917C/155mm榴弾砲の射程は11,300m

 いや、ララシュの砲兵陣地からその位置と距離にせっせと吞気に砲兵陣地を作られればそりゃあ、ね?

 

 ド・ゴールの判断で37㎜対戦車砲と75㎜野砲は砲兵の守護部隊として占領用の現地人部隊と留め置かれた。

 いや、純粋歩兵は機甲部隊への追従は不可能だ。

 

 ド・ゴールは当然、前線には来ていない。

 というかラバトに設けられた自由フランス軍独立司令部に居た。

 彼には信頼できる歴戦の部下が多くいるらしい。

 いや、実際に第一次世界大戦を経験した猛者が相当数いるのだが。

 

 そして、ララシュ南方郊外、防衛線より10㎞ほど下ったポイントにて、

 

「そこの所属不明の装甲部隊に告ぐ! 私は大英帝国陸軍ジェームズ・パウンド少佐だっ! ここより先は大英帝国領土だっ! これ以上進むなら領土侵犯になるがよろしいかっ!?」

 

 そうこの時代の軍用車両にしてはスタイリッシュな”モーリスC8FAT”野戦四輪車に取り付けたスピーカーで呼びかけてきたのは、やけにハンサムな英軍将校だった。もちろんフランス語でだ。情報将校のパウンドは仏語、独語、日本語、露語は当然として欧州を中心に26か国語が話せるらしい。

 対してM4のキューポラから上半身を出していたド・ゴールリスペクト髭のケベック・フレンチは、

 

「私は自由フランス軍騎兵大佐、ジャン・ロランであるっ! ジブラルタル南岸はスペイン人に奪われる前はモロッコ王国の領土なりっ!! 我らモロッコ王国の宗主国である自由フランスは、モロッコ王国の代行として領土奪還を正統な権利として主張するっ!!」

 

 そうハンドマイクで返してきた。

 

「What!!?」

 

 そこそこ軍歴のある情報将校パウンド少佐だが、流石に酷すぎる領土侵犯理由に耳を疑ってしまう。

 

「故に英国人には直ちにジブラルタル南岸よりの無条件退去を要求するっ!!」

 

 それに従わなければ武力行使ということなのだろうが……

 

「確認したいのだが……」

 

 パウンド少佐は努めて冷静さを取り戻し、

 

「先ずは地球上に”自由フランス”なる国家は存在しない」

 

「なんだとっ!?」

 

「そして、その名称はれっきとした我が国の領土であるブリティッシュ・ノースアメリカのケベック州を不法占拠してる非合法武装集団の名と同じなのだが、諸君らはその一味と考えてよろしいか?」

 

 事実を並べてるだけなのに、煽りにしかなってない不思議である。

 

「この無礼者っ!!」

 

 ロラン大佐は砲塔上に据え付けられたM2機関銃の銃口を向け、発砲!

 ただ、それはモーリス野戦車に当たることはなく、あくまで威嚇射撃だったが……

 

「ふん。逃げていきおったか。臆病者の若造め」

 

 第一次世界大戦の生き残りであるロランはそう吐き捨て装甲部隊の前進を命じた。

 ド・ゴールの目算はシンプルである。

 

『まずは”ララシュを押さえて既成事実化(・・・・・)”してしまえば良い』

 

 そうすれば、米国は必ずこの戦争に”乗って”くると。

 ド・ゴールは決してバカという訳ではない。

 傲慢で自己中心的なだけだ。

 故にアメリカ人の大統領が、ジブラルタルを越えて地中海に介入したがっている事を見抜いていたのだ。

 そう、ド・ゴールは自分が敗北する姿を想像から外していた。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「録画と録音できたか?」

 

「ばっちりと」

 

 走り出す車内に戻ったパウンドは、部下にそう確認する。

 モーリスC8FATは、四輪駆動の軍用トラックでありキャパシティーには余力がある。

 そして、小銃弾が防げる程度の軽装甲が施されたパウンドの愛車は特別仕様、スピーカーだけでなく録音機材や車載用にしては強力な通信機搭載だ。

 無論、Standard-8(8㎜フィルム)カメラなどの簡易録画機材もだ。

 そして、録音した音声を情報将校に割り当てられた秘匿周波数で発信する。

 あの短い会話で、以下の事が判明した。

 

 ・不明武装集団が、モロッコ王国と宗主国の名を騙ったこと。

 ・不明武装集団が、ケベック州を不法占拠してるテロリストと同一組織であること

 ・その集団が、ララシュの武装占拠を宣言しているということ

 

 英国は、「自由フランスを名乗るテロ組織が、ケベックに続いて英国領土の武装占拠を狙っている」と非常事態宣言が出るのであった。

 そう、ド・ゴールも前線装甲将校のロランも「自分達が米ソではなく世界的に、特に日英からどう思われているのか?」を本質的に理解していなかったのだ。

 何というか……とてもゴーリズムである。

 

 勿論、英国人が用意した目や耳はパウンドだけではない。

 そこかしこに隠蔽壕が設置され、「れっきとした英国領に不法侵入するテロリスト」の様子がつぶさにムービーカメラで録画されていた。

 銃砲を撃つ、爆弾を落とすだけが戦争ではない。情報戦もまた立派な戦争であった。

 

 ジェームズ・パウンドは海軍でもMI6でもなく確かに英国王立陸軍士官ではある。

 しかし、その所属は”王立陸軍情報部(・・・)”。それもスターリング少佐の提言で生まれたデルタフォースも参考にしたと言われる英陸軍の最精鋭、特殊空挺部隊”Special Air Service(SAS)”で訓練を受けたという、鉄火場ドンと来いの強者である。

 ついでに言えば、射撃より格闘戦が得意で柔道や柔術ではなくフェアバーン直参弟子で”ディフェンドゥー”の名手でもある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*************************

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ようやくお仕事ってなっ!」

 

(いきなり”デフコン1”とは偽フレンチ共もやってくれんぜ)

 

 数日前より英領ジブラルタル全域にデフコン換算で”デフコン3”、「通常より高度な防衛準備状態」が発令されていたが……

 

(野砲陣地が完成するなり襲ってくるとはな)

 

 そう愛機の”飛燕改”のコックピットに乗り込むのは、その日、スクランブル要員として待機していた今年三十路を迎えるパイロットとしての円熟味を増してきた、そろそろ”地中海のリヒトホーフェン”と呼ばれ始めてる皇国のトップエースの1人、篠原博道だ。

 

「ペラを回せっ!!」

 

 そして、スロットルを開き一気に南岸を目指してジブラルタルの空を駆けるっ!!

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「ミィ~ツケタァ~ッ!」

 

 水-メタノール噴射装置まで用いてフルスロットルでララシュ上空を僚機と共に目指し、辿り着いたときはラバトの野戦飛行場から飛んできた自由フランス軍機の先陣が、ちょうど重砲陣地への爆撃ポジションに入ろうとしていたタイミングだった。

 ララシュのレーダー警戒網が敵機を探知してからアラートが出てから飛び立ったのに、ジブラルタル南岸の上空警戒(パトロール)に上がっていた友軍機より早く現場上空についているのだから何気に凄い。

 ラバトからララシュまで140㎞。自由フランス軍爆撃隊が経済巡航無視で飛んだら、爆装してても400㎞/h以上は出るだろうから20分前後で飛来する。

 対してジブラルタル北岸の港町アルヘンシラス近郊にある皇国空軍基地からララシュまで120㎞ほど、リアクション・タイムから考えて10分とかからず飛んできたので……平均速度で720㎞/h以上。篠原は飛燕改のほぼ最高速でかっ飛んできたようだ。○ムチャしやがって。

 いや、ある意味丁度いい限界テストが出来たので、結果オーライなのか?

 

「ルックダウン……」

 

 とにかく僚機の位置を確認しながら、太陽を背に急降下!

 高度7000mからの時速800㎞/h以上で逆落としをかけ、英国開発で史実のように米国に流れることのないジャイロ・コンピューティング式照準器(ガンサイト)いっぱいに広がる敵機に、

 

「シュート!!」

 

 12.7㎜機銃×6の一斉射撃を浴びせる。

 ほんの短い一射で叩きこまれた徹甲榴弾はその役割を果たし、頑丈なはずの米国製の航空機を爆散させたっ!

 ララシュに備えられたレーダーステーションの航空管制官は、流石にレーダーの生まれ故郷の国の軍人らしく、実に良い仕事をしてくれた。

 

 何しろ周辺警戒(エアカバー)に入っていた非爆装の敵機に気づかれることなく、篠原は”出会い頭の一撃”を入れられたのだ。

 そして、篠原が次の獲物を落とす前に駆けつけてきた英国のスピットファイアNk.IX隊。

 いや、一機だけラウンデルを描いた飛燕改が混じってるところを見ると、たまたまジャック・ヘンリー・レイシーもスクランブル待機だったらしい。

 

 スクランブル配置は日本8機、英国12機体制。

 日英側の上空警戒に上がってる機体は機上電探搭載の大型機が多いため、用心の為に後方に下がってここからは見えないが……おそらく敵機が飛び立って間もなく電探追尾していたために、こうも上手く駆けつけられたことを篠原は理解していた。

 勿論、スクランブル隊だけでなく元々エア・ディフェンスや哨戒で飛んでいた戦闘機隊も続々と駆けつけており、特に身軽な者達はエアカバー機を追いかけ回しているようだ。

 あっという間に総勢30機以上となったララシュ上空の日英の戦闘機隊に、自由フランス航空隊は結局、まともな投弾もできぬまま壊滅したのだった。

 こうして、後に”ララシュ直上防空戦”と呼ばれた空戦は、数的に劣勢なはずの日英側の撃墜44、被撃墜0(というか損傷機さえ0)という圧倒的なスコアで終わった。

 ちなみに空戦撃墜スコアが自由フランス軍保有全機の50でないのは、電探統制の高射砲や対空機銃で撃墜されたり、あるいはそもそもエンジン不調で作戦未参加の機体があったからだったりする。

 

 こうして、モロッコの自由フランス空軍は、全力を傾注した故にただ一度の戦いで壊滅の憂き目を見たのであった。

 

「相手もヘタクソって訳じゃなかったがな。そりゃあ大半が爆弾抱えた旧式戦闘機相手なら、こうも一方的にはなるわな」

 

 この日、運よく撃墜スコアを二つ伸ばした篠原は、そうコメントを残したという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




という訳で、ついにララシュ、そしてジブラルタル南岸とモロッコを巡る戦いの火蓋が切って落とされました。
そして……初撃で自由フランス軍航空部隊が全滅しましたw
篠原サン、全力全開し過ぎでしょうw
いや、飛燕改の実戦限界性能テストにはなったとは思いますが。

まあ、「まずララシュを落とせば、なし崩しで米国が参戦する」って目論見もどうかと思いますが……
それでも、

「(宗主国である自由フランスが)モロッコ(つき)に代わって(ジブラルタル南岸)奪還(オシオキ)よ!」

というのは果たしていかがなものかと。
そしてしっかりきっちり”証拠”をゲットする、どこかで聞いたことのあるような英国王立陸軍の情報将校です。
元ネタは勿論、「世界一有名な忍んでないスパイ」のあのお方です。
きっと愛銃はPPKで、好物はドライマティーニなのでしょうw

さて、ロラン大佐はどこまで踏ん張れるのか?

次回もどうかよろしくお願いします。





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