転生しても戦争だった ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~ 作:ガンスリンガー中年
あれ? 小野寺君って「サンクトペテルブルグ”に”海外赴任」してるんじゃ……
まあ、細かいことはいいか。
後日、サンクトペテルブルグ
「大公、只今戻りましたぜ~」
「ああ。お帰り、小野寺君。ご苦労だったな」
ああ、クルスだ。
最近、大公呼びに仇名のごとく慣れてしまったんだが、どうしよう?
いやそれはともかく今、俺は執務室で出張先のスウェーデンから帰ってきた小野寺君を迎えている。
なんでも先輩の武官に先日の件で会いに行っていたんだよ。
欧州の外交相元締めはロンドンの吉田統括なんだけど、遣欧州皇国武官のトップって意味じゃストックホルムの小野寺君の先輩、”影佐駐スウェーデン大使館付武官”らしい。
実は皇国陸軍の情報将校で、少将の地位にあるって話だ。
(ってことは”中野学校組”ね。少将じゃなくて実は”特務少将”なのかもな)
「色よい返事は貰ってきましたですZE♪ ただし、支払いは現ナマでも金塊でもプラチナでもなく”
「というと? 具体的には?」
「まず、とりあえず”チ38式半自動歩兵銃”5000丁を、同数の”AG43自動小銃”と交換で。無論、どっちもフルオプション。この交渉に応じるなら、別途小銃擲弾の購入権もつけるようですよ?」
うん?
「”二式四十粍敵弾銃”に関しては、同数の”PAG43”と。ただし、こっちはPAGの弾1発につき二式の40㎜擲弾を6発のレートで交換。まずは1000丁から。ライセンス生産に関しては、権料は金でもプラチナでも国際相場に合致してれば良いそうです。ついでに全額先払いなら割引するって言ってます」
ううん?
「それと皇国側からの提案なんですが、同じ原型から派生した”チ38式半自動狙撃銃”と性能比較したいから”SG43自動狙撃銃”と先ずは100丁くらいバーダーしないかって。無論、
俺は、数時間前に戻ってきたNSR(Nationaler Sicherheitsnachrichtendienst des Reiches:国家保安情報部)所属……なはずのヴァルタザール・シェレンベルクに、
「シェレンベルク、スコープはドイツ産だがNSR的にどうなん?」
何故かシェレンベルクには君付けしたくないんだよなぁ~。
何度もNSR、というかコイツにも
「問題ないでしょう。サンクトペテルブルグに供給しているライフルスコープは”ZF39”規格の4倍でしょ? 別に軍事機密でもないし。というか戦後は普通に余剰が出たら狩猟用にでも輸出しようかって話もあるので」
「あー、そういう感じかぁ」
「大公の言葉を借りるなら、NSR的には日本皇国から融通された武器をいくらか回して欲しい物ですな。無論、特許って言葉を理解できない
そりゃ欲しいか。
「小野寺君」
「ドイツに流れるのは織り込み済みですよ。皇国のお偉いさんははサンクトペテルブルグが”今はまだ”独立国ではなくて、ドイツの特別保護領だってことを忘れちゃっいませんって」
なんか視界の端でシェレンベルクが小さく笑ったんだが……その笑みの意味はなんだ?
「まあ、そういうことならよいか。小野寺君、先ずはその方向で話を進めてくれ。こちらの出荷用意はしておくから、なるべく早い対応を望むよ」
「了解っす」
と小野寺君、少し考えてから徐に
「ところで大公、こっちは皇国じゃなくてスウェーデンの地元企業ボフォース社から預かってきた案件なんですが」
そういえば小野寺君って駐スウェーデン武官時代、ボフォースがお得意様だったとか何とかって言ってたな。
「『”
えっ? もうカールグスタフ完成したのか? 早くね?
そりゃあ前世でも40年代から開発してたってのは聞いたことあるが、
(こりゃあ絶対、転生者絡んでるだろ……)
「影佐先輩によれば出来は上々。皇国軍も試験導入して自国開発の”九糎無反動砲(ほぼ史実のM67/90㎜無反動砲の完コピ)”と性能評価するみたいですよ」
「購入で。カールグスタフは使い勝手良いし、将来的な発展性も在る」
なんせあのファミリーは21世紀でも現役だったし。
「当面は輸入だけど、将来的なライセンス生産も前提に話を進めてくれ。ああ、小野寺君」
これは言っておかないと、
「一括なのかインセンティブなのかは知らんが、君の
まあ、その分は輸入価格に上乗せになるんだろうが。
「……よろしいので?」
「財務やら会計やら監査やらが文句をつけてこないレベルなら問題ないさ。金はあって困るもんじゃないだろ?」
「Понятно, Ваше Высочество Великий Герцог(承知いたしました。大公殿下)」
いや、そういうのやめれって。
☆☆☆
後年、『サンクトペテルブルグ大公国と日本皇国の正式な商取引第一号』(実際、バーダー取引だけでなく金やプラチナでの支払いもあったので間違ってはいない)とされたこの一連の取引により、数字的には小さいが、明らかにサンクトペテルブルグの”国防力”が強化されたのは事実だった。
以後、日本とサンクトペテルブルグの商取引は、終戦を待たずに少しづつ活性化してゆくことになる。
後の世の歴史家にはこの一連の動きはこう評されることになるらしい。
『来栖任三郎という元外交官の元日本人が最も大きく外交的な役割を果たしたのは、皮肉なことに日本人や外交官で無くなった後、サンクトペテルブルグ大公ニンゼブラウ・フォン・クルスとなってからの事だった』
『では、それ以前のフォン・クルスとは何者なのか? どういう存在だったのか? 彼の死後に機密指定が外れた資料を読み解くに、最初から来栖任三郎は外交官ではなく”軍師”だったと記すべきだ。そして、フォンを賜った後は控えめに見ても軍政家だろう。バルト三国の住民に慕われ、行き場を失った”
『当時のドイツの意向があったとはいえ、弾圧された信仰をかの地で復活させサンクトペテルブルグ正教を興し、国を興したのだ。どう贔屓目に見ても外交官の仕事ではない。外交官の職務を逸脱しているのではなく、ドイツに着いて程なくから徹頭徹尾外交官の仕事では無かったのだ』
『フォン・クルス大公に歴史上、最も近い人物を挙げよというのなら、これも皮肉に聞こえるかもしれないが私は”ナポレオン・ボナパルト”を推そうと思う。人類史上屈指の”成り上がり”だ。ただ、ナポレオンI世とフォン・クルス大公の大きな違いは、ナポレオンが皇帝からセントヘレナへの幽閉という高度差のある転落人生だったのに対し、フォン・クルスは皇帝にこそならなかったが国主に就任以降30年以上生きたその長い生涯、天に召されるその最後のひと時まで、終生、大公で在り続けたことだ』
『端的に言ってしまえば、ナポレオンは敗者でありフォン・クルスは勝者ということになるが、そう簡単な物でもないだろう。生きた時代は違うし世界情勢も違うが、突き詰めればナポレオンは周辺国がこぞって”敵として排除”しようとしていたの対し、フォン・クルスは”周辺国から必要とされた”というのが最大の相違なのではないだろうか?』
『戦時中の困難な時代は勿論、大公国樹立後の難しい舵取りが迫られた時代も、「フォン・クルスが睨みを利かせていたからこそ、バルト海の平穏は保たれた」と評する人間、特に当時のバルト海周辺国の指導者階層に多かったそうだ』
『正式な建国前、終戦時において大公領(ドイツ特別保護領)時代末期の同地の人口は約1000万に達したとする説もあり、戦後も共産主義に馴染めなかった北の大地の住人の受け皿として機能し続け、20世紀後半には3000万国家となった。だが、それでも大国と呼ぶには少々心持たない数字だろう。普通ならば、そのような国に対して過大すぎる評価とも思えるかもしれない』
『だが、当時を生きてきた人間、特にサンクトペテルブルグ大公国の国民やバルト三国を筆頭とするその周辺国の住人は過大評価とは考えず、むしろ「正統な歴史評価」と考えている』
『興味深いのは、その評価者の筆頭が旧宗旨国であった欧州の盟主ドイツなのだ。これは特異であると同時にどうしようもない歴史的必然でもあった』
『フォン・クルスの死去からそろそろ半世紀が経つ。それでもかの大公が残した影響は、バルト海周辺を中心に欧州各地に今なお見受けられる』
『ある高名な政治学者と対談したとき、機密指定解除がされた資料を見せながら彼はこう言った』
”バルト海100年の平穏と安寧の礎を築いたのは、かの大公かもしれませんなあ”
2025年発刊”サンクトペテルブルグ大公ニンゼブラウ・フォン・クルスの横顔”より抜粋、一部改変
さて、上記の文章は現時点から少なくとも80年以上相対未来に書かれた物である。
そして、後にこのような記述が成されるような大きな戦いが1943年にあった。
そう……後の終戦への流れの結びつく、”第二次世界大戦”と呼ばれる大きな歴史のうねりの中にあって、なお戦史に名を刻むような。
サンクトペテルブルグに試練の
なお、フォン・クルス大公はこんなコメントを残していた。
「ミリ飯の缶詰輸入より先に兵器の輸出入が先になったのは、大変遺憾である」
という訳で、実はお偉いさんで出来る男だった”影佐パイセン”、名前だけですがまさかの再登場ですw
この世界線ではやけに日本が兵器購入関係で繋がり深いスウェーデンを拠点にしてるあたり、如何にも”らしい”ですが……少なくても終戦まで影佐パイセンが帰国できないに100ルーブルw
そして、そのスウェーデンもやらかしてますw
そりゃあ今をときめくサンクトペテルブルグ大公国(予定)からの使者、それも知己の小野寺君がスウェーデン輸出産業の花形”兵器”の輸入交渉で来訪というなら放置できるわけ無いです。
上手く繋がり作っておけば、将来的にも良い商取引相手になりそうなので……早速、売り込み開始!
しかも商材のチョイスが……この世界線のスウェーデン、かなり抜け目がない印象です。
同じくカールグスタフを試験導入した皇国は皇国で、『金は良いから、そっちの武器よこせ』という感じ。
もちろん、数から考えて採用を前提とした本格的な武器取引ってより研究って側面が強いんでしょうが、なんか”AG43自動小銃”とかは海軍陸戦隊に試しに導入してみて、イタリアで実戦テストを行いそうな予感w
どっかの不死身モドキさんが喜びそうだw
さて次回は、そろそろ”赤い人々(本家)”の様子でも描いてみようかな~と。
次回もどうかよろしくお願いします。