転生しても戦争だった ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~ 作:ガンスリンガー中年
「久しぶりだな? ”ルーデル”大尉。いや、今は少佐だったな?」
気分的には口角が上がるのか、苦笑すればいいんか微妙なところだな。
んで、その原因たる本日の来客はと言うと……
「おおっ! これは大公殿下自らお出ましいただけるとは、実に光栄ですなっ!」
「仰々しいぞ? 前と同じように接してくれると助かる」
ドイツの誇る”空の魔王”ことハンニバル・ルーデル、日本皇国産の”サンクトペテルブルグの魔王(小野寺談)”ことフォン・クルス……二人の魔王の久しぶりの邂逅であった。
そうこの2人、面識があるどころか知己でもある。
「ガーデルマン大尉も久しぶりだな?」
無論、ルーデルの相方、いやそれとも”(ウォーモンガー治療が専門の)主治医”か? ”フライング・ドクター”ことエルドリッヒ・ガーデルマンもだ。
☆☆☆
ああ、クルスだ。趣味で大公をやっている。ついでにサンクトペテルブルグ正教の枢機卿もだ。
いや、冗談だぞ? 趣味で大公やら枢機卿やるほど流石に酔狂じゃない。
総督位? ああ、奴はサンクトペテルブルグとノブゴロドを含むその周辺が大公領となった事でなんか大公に吸収されたっぽいな。
大公は本来、名誉称号みたいなもんの筈だが……一体、法的根拠はどうなってるんだか。
さて、今回魔王と相方がわざわざスモレンスクからサンクトペテルブルグまで
「これが”Ju187”かっ! 素晴らしい……ドイツのクラフトマンシップを具現化したようではないかっ!!」
何やらルーデル閣下は興奮しているようではあるが……いや、ホント相変わらずの見事なまでのガト○っぷり。変わらないようで何よりだ。
(なんか、リアクションがまんまノイエ・ジ○ル見た時のガ○ーなんだが……)
そこは気にしちゃいかんとこなのだろう。きっと。
ガーデルマンはなんか呆れてる気もするが。
さて、ガ○ー……じゃなかったルーデルとガーデルマンと合流したのは、サンクトペテルブルグ郊外のとある格納庫。
納められていたのは当然、
「こいつが前に約束したJu187”カノンフォーゲル”。37㎜機関砲をモーターカノンとして搭載した、文字通りの”大砲鳥”さ」
そう、ユンカースの技術者たちとウォッカの飲み比べした甲斐があり完成したのだ。
いや、まだ厳密には先行量産だけどな。
まあ、サンクトペテルブルグでイタリアの戦闘機顔発チームと、メッサーシュミット・スキャンダルのあおりで仕事にあぶれた元メッサーシュミットの戦闘機開発チームを受け入れたあたりで、たしかユンカースの選抜チームも合流したんだっけか?
多分、初めてロンメルと会った時にはもう連中は居たはずだ。
ちょうどその頃、戦闘機やそのエンジンやら戦車やらのアイデア絞りだしてた時だから、気がついたら合流してたって感覚だな。
まあ、サンクトペテルブルグは航空機に必須のアルミ合金も、アルミの精錬に必須な電気も余力があったし。
あの時期、ドイツの航空機開発は半ば飽和してたから、開発環境のブルーオ-シャン的な意味でサンクトペテルブルグは都合が良かったのかもしれない。
そして、既に旧式化が明らかになっていたJu87の後継機開発で迷走し始めていたユンカース社の面々から相談を受けたのは、そんな時だった。
あ~。あのな、史実のJu187ってリアルの空を飛ぶこともできなかった機体なんだよ。
それというのも、「尾翼が付け根からくるりと回り反転する」ってビックリドッキリ機構を仕込んだ機体だったからだ。
垂直尾翼が180度回って下を向くってことなんだが……それも飛行中にだぜ?
まさに可変翼なんて目じゃないびっくりメカだろ?
いや、普通に考えて飛行中に尾翼が回転なんかしたら、空力特性が滅茶苦茶になって墜落必須だと思うんだが……
しかも理由が、『後部座席の旋回機銃の射界を確保するため』……バカなの?
いや、急降下爆撃機がついてるだけマシな防御火器を最優先してどうすんだよっ!?
それを考えた技術者と開発にGOサインを出した奴を小一時間ほど問い詰めたくなるだろ?
マジにドイツ人が英国面出してどうすんだよ……いや、そういえばドイツ人も結構、技術的なやらかしは十八番だったな。
そんで今生でも「そうなる気配」はあったんだよなぁ~。
それで俺は少々オハナシすることにしたって訳。
使用予定のコンポーネント自体は真面目だったから、機体コンセプトの練り直しだな。
参考にしたのは、前世で”知っている”感覚があった。
”Il-10”重襲撃機、”Il-2”シュトゥルモヴィークの正常発展型だ。
幸い、Il-2の現物はサンクトペテルブルグのあちこちに転がってたんで、サンプルには事欠かなかったのが幸いした。
方向性が決まれば後はユンカースの技術屋達がブラッシュアップするだけだった。
面白尾翼回転メカは当然オミットされ、エンジンは計画通りJumoシリーズの最新型Jumo213。
何気にユンカース社の凄いところって、機体もエンジンもどっちも作ってるってことだ。
機体は単発に双発に三発、爆撃機だけでなく輸送機やら旅客機やら。
エンジンはガソリンレシプロにディーゼル、Jumo004なんかのジェットエンジンまでなんでもござれだ。
それならエンジンと機体のトータルデザインで、凄い物が出来そうだが……まあ、いつもいつもは上手くいかないようだ。
特に24気筒のJumo222は今生でも開発が難航、早期に開発を投了してJumo211の正常進化型で倒立液冷12気筒の最新型Jumo213シリーズと軸流圧縮式ターボジェットのJumo004にエンジン開発リソースを全部傾注しているようだ。
なので、今生ではJumo222搭載を前提としたJu288は早々に開発破棄になっていた。ヒトラー総統直々に。
そのあおりで388の開発も中止になっていた。
(ホント、そういうところは判断が早くていいな)
いや、その早期中止になった爆撃機開発リソースを”Ju390”なんて6発の化物に注げてるんだから結果オーライだろうけど。
(そういえば、Ju390の開発協力も言われてたっけか……)
ちょっとユンカース、俺を頼り過ぎじゃね?と思わなくはないが……まあ、自分のとこの技術者と揉めないなら良いけど(※作者注:むしろそのユンカースの技術者が行き詰まると『困ったときの来栖大明神詣』をしていたりする)
ついでにJumo207航空機用ディーゼル・エンジンは、今は再設計されてVI号戦車のエンジンになるらしいな?
いや、『せっかく戦車生産メッカのサンクトペテルブルグ居るんだし、航空用ディーゼル基にして戦車用や魚雷艇用のエンジン、作ってみたら?』って言ったのは俺だけどさ。
いや、これは俺も助平根性があったからだぜ?
ユンカースって世にも珍しいディーゼル・エンジン搭載の超高高度偵察機”Ju86R(高度15,000mを飛行可能)”ってのを作ってるんだが、この第二次世界大戦版のU-2偵察機みたいな機体自体にちょっと用事があったのと、エンジンに搭載されていた”ディーゼル・エンジン用
ぶっちゃけ、次期サンクトペテルブルグ主力戦車”仮称KSP-44/44(44年式44t戦車)”のエンジンに、KSP-34/42の”SPDV12(サンクトペテルブルグ・ディーゼル・V型12気筒の略)”にターボチャージャーと空冷式インタークーラーを装着したタイプにしようと考えてたから、「0から作るよりは開発期間短縮できるだろう」って思ったんだよ。
ちなみにディーゼルってガソリン・エンジンより排気温度が低いから、排気タービンの製造ハードルが低いんだよ。
(それにしても何が幸いするか分かったもんじゃないな)
Ju188以降が潰れたから、He111の後継はDo217になってるし、Ju88の後継がDo317A(DB603A搭載の方な?)に決定した。要するにドイツの爆撃機体系? 開発ツリー?がシンプルになったって事だ。
驚くべきは、この世界線のDB603Aは2300馬力、MW50ブーストで2700馬力を発生するデカさ(DB605の730kgに対してDB603は930kg)も馬力も中々にモンスター級V12で、これを搭載した試作型のDo317Aは、MW50使用時史実のDo317B並みの性能を叩き出したらしい。
とりあえず、現状はドイツの本社が社運を賭けた戦略爆撃機Ju390の開発に全力を傾注してるから、サンクトペテルブルグでJu187の開発をやろうってことなのかもしれん。
まあ、今生ではハインケル同様にユンカースもナチ党、というかヒトラーとの折り合いが悪くないのが救いかねぇ~。
さて、話をJu187に戻すけど、エンジンのJumo213Eは、今生のDB605&603が強度・出力アップと引き換えに諦めたプロペラ軸のモーターカノンを搭載できるようになっている。
最初はMk103/30㎜機関砲をそこに装備予定だったけど、アメリカ人のレンドリース品(P-39戦闘機)から拝借した先進的なリンクレス給弾機構を持つ37㎜機関砲を参考にほぼ完コピした37㎜機関砲を制作、これをモーターカノンとして搭載している。
発射速度は毎分150発、弾倉装填数は30発と原形と同じだが、カートリッジはサイズは同じだが装薬(発射薬)を変更し、やや強装弾化(とはいえ拳銃弾に例えると無印から+Pになった程度)している。
というのも米国産の榴弾ではなく、新開発の元々は対戦車砲に由来するAPCBC-HE(高性能徹甲榴弾)を使うためで、これに合わせて薬室の構造強化や銃身のクロームメッキ処理などの小改良が施され、銃本体重量は原型より5kgほど重くなったが「500mで30㎜以上の垂直装甲板を貫通可能(オリジナルの徹甲弾は500ヤードで厚さ1インチの垂直装甲板を貫通可能)」。つまりソ連戦車の上面装甲なら容易く貫通し内部爆発を起こす、より有効な対軽装甲兵装となったってとこだ。
37㎜モーターカノンが”カノンフォーゲル”がペットネームの由来……ってことになっちゃあいるが、実際は「ルーデル乗っけるなら、やっぱ37㎜砲搭載の大砲鳥だよな~」ってのが大きい。
多分、小野寺君にはネタバレしてると思う。
他にも、奇抜なシステム入れずにIl-10に範をとったJu187は、自画自賛だが中々に良い機体に仕上がってると思う。
エンジンは前述のJumo213シリーズ初の大規模量産型213E。
まあ、DB605と違って、こっちは前世と大差ないと思いきや、今生のDB605と同じ空冷中間冷却器付二段
まあ、まとめるとだな……
・エンジン:Jumo213E(倒立液冷V型12気筒SOHC36バルブ、二段流体継手式無段変速遠心圧縮過給機+MW50水-メタノール噴射出力増強装置付空冷中間冷却器)
・出力:離陸1950馬力、MW50使用時2300馬力(低空重視のハイトルクセッティング)
・最高速度:585㎞/h(戦闘重量、水-メタノール噴射使用時。未使用の場合は555㎞/h)
・限界降下速度:850㎞/h
・航続距離:1500㎞以上(機内燃料のみ/機外装備無しのフェリー巡行時)
・実用上昇限界:高度8000m以上
・外装ペイロード:1800kg(最大。胴体下、両翼懸架合計。例:胴体下500kg増槽、主翼:500kg爆弾×2+R4Mないしパンツァーブリッツロケット弾ロケット弾)
・武装:37㎜モーターカノン×1門(30発)
Mk108/30㎜機関砲×2(主翼×2丁、1丁あたり150発)
MG131Z/13㎜
・乗員:2名
・装備:引込脚、ジャイロ・コンピューティング式射爆照準器、Revi16B空対空照準器、防弾キャノピー、バスタブ型コックピット周辺装甲+重要箇所に防弾・防爆処置、旋回後部座席、後方警戒レーダー、セルフシーリングライナー付インテグラルタンク(胴体、主翼)、自動/手動消火装置、電波高度計連動簡易式慣性航法装置、電波誘導装置、自動燃料切替装置(増槽が装備されていた場合、自動で増槽の燃料を先に使用する)、スロテッド・ファウラーフラップ&前縁スラット(ダイブブレーキ兼用)
うん。普通に空で会いたくないな……特に魔王様とその主治医が乗ってる時は。というか、もうMk108って大量生産されるんだなぁ。
まあ、悪い機関砲ではないぜ? ただ、初速が遅い(540m/s)せいで弾道低伸性が悪いのがな。要するによく史実の大日本帝国初期型20㎜機関砲の表現に出てくる”ションベン弾道”になるって感じだ。
まあ、俺の前世で見た奴より重心が若干長く(75㎝くらいか?)になっているので、少しは初速は速くなって弾道特性は改善されてると思うが……
ただ、同じ様な弾道特性を37㎜砲を持っている(弾道が垂れ下がることはアメリカンパイロットにとって不慣れで、それが理由で米陸軍航空隊からは嫌われレンドリース向けにされたという逸話がある)ので、存外相性が良いのか?
(そういえば、空対空型のR4Mも似通った弾道だったらしいいな……故にRevi16Bが機関砲とロケット弾の兼用で使えたとかなんとか……)
それと後部機銃が微妙に凝ってるあたり、何やらオリジナルJu187の面影を感じる。
まあ、これも元々は計画中止になったJu388の自衛武装で開発してたものを流用したって話だな。
ま、まあとりあえずルーデルなら気に入ってくれるだろう。
「空飛ぶ戦車」というか「レシプロ版A-10」みたいな機体だし。ああ、ちなみにルーデルと手下どもが乗ってきた
そりゃあマンネルハイムの爺様も少しでも空爆戦力補強したいだろうからなぁ~。
だが、俺はこの時、思いもしなかったんだよ。
タンクバスターはデフォだとしても、まさか本当に37㎜カノンの火力活かしてルーデルが撃墜って意味でもエースの仲間入りするなんてさ……
という訳で、ユンカースがメッサーシュミットの二の舞になるのではなく……
×→大公殿下がユンカースと癒着する
○→大公殿下がユンカース社に癒着されるw
が正解でした。
粘着と書かないのは武士の情けですw
まあ、癒着されても仕方なしというか……そりゃあクルス、あまりにもあちこちで脳焼いてるしw
Ju187の開発助言(?)に加えて、戦車エンジンなんて新規事業立ち上げのアドバイザーやって研究の場まで与えてるし。
それに以前、Ju390開発でユンカースがある問題で悩んでいた時に、本人無自覚に最適解出してたりするんですよね~。
その話はいずれ、Ju390にスポットが当たる時にでも。
そして、ルーデルとガーデルマン、ようやくの再登場です♪
ルーデル閣下、相変わらずのガト〇っぷりw
そしてガーデルマンは主治医兼ツッコミ役だけど、たまにツッコミを放棄するスルースキルを身につけた模様。
まあ、魔王様はノンフィクションでもツッコミどころしかないし(某アンサイクロに嘘を書かせなかった男
主治医:「ツッコミにも装弾数とか、残弾って概念があるんです」
主にステータス”精神力”に依存するやつだろうか?
でもこの人くらいしか相方は務まらないというか……
取り敢えず、「ドイツ版強化型Il-10」あるいは「第二次世界大戦版のA-10」みたいな機体宛がわれてルーデル閣下 with ゆかいな仲間たちが幸せそうで何よりです。
ちなみに後方警戒レーダーは後部機銃手が居るとはいえ地味に役に立ちそう。
後部座席は、通信/航法手も兼任で後方警戒レーダーが警告音鳴らしたら即座にクルリと座席を回してパワーアシストが付いたMG131Zを発砲なんて使い方が……ガーデルマン、いきなり使いこなしそうな予感ガガガ……
次回はパイロット同士の再会劇でも書こうかな~と。
次回もどうかよろしくお願いいたします。