転生しても戦争だった ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~ 作:ガンスリンガー中年
1943年7月1日
「おや? ハルトマンではないか」
「うげげっ!? ルーデル少佐っ!」
なんか「げぇっ!? 関羽っ!」みたいなノリで驚くハルトマン。
どうやら、まさかサンクトペテルブルグまで来てルーデルとエンカウントするとは思わなかったらしい。
ちなみにシュミットは如才なく国防式敬礼をしていた。
実は苦笑しているガーデルマンも込みで、スモレンスクの”KLK1(Kombiniertes Luftfahrt Kampfgruppen 1;第1統合航空戦闘団)”組だ。
ただし戦闘機隊と爆撃機隊では
強いて言うなら、士官食堂などで出会うくらいだろうか?
ぶっちゃけてしまうと、ハルトマンはちょっとルーデルが苦手だった。
戦闘機と爆撃機の兵科の違いで面識があまりないというのもあるが、
『雰囲気?がなんかおっかないし』
いや、近い将来の”黒い悪魔”が何を言ってやがるとも思うが、これには理由がある。
ルーデルが既に「空の魔王」として片鱗を見せているのに対し、ハルトマンはシュミット共々、その天才性は疑われてないが、エースと言ってもまだ「若手期待のホープ」という扱いだ。
それも無理もない話で、名前が出てきたKLK1のネームドエースだけでも隊長のメルダースを筆頭に、副長のガーランド、アフリカ帰りのマルセイユ、自由人のクルピンスキーに質実剛健バルクホルンなどなどウルトラエースが揃い踏みだ。
これじゃあそういう扱いになるのも仕方のないことだろう。
「ルーデル少佐。ああ、ハルトマン達もいたのか。ちょうどよかった」
「ラル大尉、ちょうどいいとは?」
そう、どうやらルーデルたちを探していたらしいランバ、もとい。”グスタフ・ラル”大尉だった。
ちなみにラル、現在の所属はスモレンスクを管轄する中央軍集団ではなく、第二次スモレンスク防衛線の後にムルマンスクやアルハンゲリスクなどのレンドリース北海ルート殲滅に大きく貢献した北方軍集団の航空隊に転属していたのだが……今回は奇しくもハルトマン達と同じくMc205Bの受領にサンクトペテルブルグを訪れていたようだ。
ちなみにハルトマンとラルは、以前、新型機のお披露目飛行の時に出会い面識があった。
「ああ、なんでも緊急事態発生のようだな」
☆☆☆
「ロスマン教官、お久しぶりです!」
なんか嬉しそうなハルトマンに、
「おいおい。もう私はお前の教官じゃないだろ? 若きエース殿」
そう返すのは一見するとパイロットには見えない理知的な優男。
そう、ハルトマンの訓練生時代に教官だったエドバーグ・ロスマンは、現在、
以前名前が出てきたハウサー中将なんかもそうだが、サンクトペテルブルグでは教官職が基本的に不足していて、ドイツに頼らなければならない事情があった。
確かにヴァトゥーチンのように元赤軍の人間もそれなりに居るが、後方勤務になりやすい教官職経験者がそうそう見つからはずもなく、仮に居たとしてもドイツ式を基本とするサンクトペテルブルグ市民軍とはドクトリンが違い過ぎて簡単に採用できない事情があった。
史実では確かにソ連はドイツに勝った。
だが、第二次世界大戦における戦死者は統計にも落差が激しいが、あるデータによると軍人・民間人を含めた戦死者はソ連2060万人、ドイツ690万人だそうだ。別のデータだとソ連は2700万人に達していたという資料ももある。
人口差があるとはいえ、戦死者から見たら勝敗は……とてもじゃないが、「(犠牲を気にせず)ガンガン行こうぜ)」の赤軍ドクトリンは、基本は「いのちだいじに」なサンクトペテルブルグ市民軍とはとにかく相性が悪い。
「同窓会も悪くないが、どうやら後回しにした方がよいようだな?」
そう、ここはサンクトペテルブルグ市民軍航空隊ミーティングルーム。集められたのは”
入室してきたのは航空参謀憲章を付けた将官、つまりは現在、サンクトペテルブルグに居るドイツ空軍軍人の最先任である”カールトン・コラー”少将だった。
そう、史実では騎士鉄十字章を授与されながらも、「フランスの大聖堂爆撃を拒否」、「ヒトラーによる、落下傘で脱出した敵パイロットの射殺命令を拒否」、「軍法会議や強制収容所に送られそうになった兵士や市民を救う」などヒトラーにもナチ党幹部にも尻尾を振る代わりに盛大に噛みつき、それでも優秀さゆえにナチ党も空軍も処分することができなかった”
現在、彼はサンクトペテルブルグに滞在するドイツ空軍の総責任者という立場だったのだが……
「諸君らには、いささか申し訳ない命令を出さねばならなくなった」
そう切り出したコラーの言葉を要約すると、”ソ連が大規模な勢力でノブゴロド侵攻を企てている”だった。
ここ数日、KLK1が配属されているスモレンスクを始め、いくつかの「拠点となっている都市」が大々的な圧迫を受けている事はハルトマン達も承知していた。
心配は心配だったが、街を包囲するとしても規模が中途半端で、いつまで経ってもまともに攻撃してこない。
むしろ消耗を押さえつつ遠巻きに見てるという感じだ。
どうも情報を精査すると、大規模な攻撃というよりは何か別の意図があるような気はしていたが……
「Ju86の高高度偵察で、敵軍の”主力”と思える最大規模の軍勢をボロゴエ近辺に集結させつつあることが判明した」
そう、前話でチラッとクルスが言及していた珍しい航空機用ターボ・ディーゼルを搭載した高度15,000mを飛行可能な超高高度偵察機だ。
コラーの言葉で、何となく全員が状況を理解した。
おそらく、スモレンスクなどの他の都市を攻撃し、目を向けられている最中に準備を完遂させようとしたのだろうが……随分とナメられたものだと思った。
「他の都市に張りつけてる軍勢は陽動だろう。なぜならボロゴエに集結している兵力は、推定で200万以上」
”ざわっ!”
その規模にドイツの飛行機乗りはざわめくがコラーは冷静に、
「静まれ。標的はほぼ確定”ノブゴロド”。様子から判断して、数日以内に押し寄せる」
そう断言するのだった。
☆☆☆
「そしてここからが諸君らにとって重要なのだが……サンクトペテルブルグ
誰よりもミリシャ航空隊の現状を知るロスマンが頷いた。
それにしてもロスマンも随分と出世している。
下士官の最上位は普通はドイツ空軍でも曹長だが、能力や戦績、経験などでレアケースだが上級曹長に任命される。
この時点で、「下士官の身分だけど上級士官扱い」が確定され、階級的には少尉と同等かそれ以上の「叩き上げ」という認識だ。
そして更にめったにない評価で様々な理由から”特務”とつけば、更に2階級上と慣例的にみなされる。
つまり今のロスマンは、正規の上級士官過程は受けていないが「実質、中尉以上で大尉ぐらいの立ち位置」ということになる。
教官、いや派遣教導隊自体を実質的に取りまとめる立場の為に必要な処置だったのだろうが、中々に稀有だ。
「まあ、そんな事情でな。サンクトペテルブルグ大公領はドイツの特別保護領である以上、この状況を捨て置くわけはいかんと
どうやら微かな、でも嫌味の無い笑みを見る限りこの世界線のコラーは
ヒトラーはヒトラーで割と愉快な性格をしているので、存外に波長が合うのかもしれない。
「そこで緊急措置として、現在ノブゴロドの
コラーはニヤリと笑い、
「喜べ。戦いの空をこよなく愛する”
何を言わんとするか察したパイロット達は徐々に口角が上がってゆく……
「この先に訪れるだろう戦場なら、どこに何を撃っても獲物に当たるぞ? 武器の準備と整備は十分か? 肝心な時に飛べませんじゃせっかくの”狩り”が台無しだぞ? 各自、最大限に準備に勤しめ」
そしてコラーは笑みの種類をより獰猛な物に変えた。
それにしてもこの男、煽りよる。
「さあ、諸君! 楽しい楽しい戦争の時間だっ!!」
という訳で、知る人ぞ知る曲者”コラー少将”が華麗に登場です。
モデルは”カール・コラー”って軍人さんなんですが……いや~、この人Wikiとかで調べるとホントすげぇーわ。
何しろヒトラーやナチに逆らいまくって普通に出世して将軍になってるし、ゲーリングに毛嫌いされてたけど最後は空軍参謀総長ですぜ?
ついでに第一次世界大戦の末期に志願して上等兵で参戦して、最終階級は大将というモノホンの『現場を知ってる叩き上げ』です。
そしてこの世界線のヒトラーとは確実に相性が良いでしょうw
まだ階級が低い(まだ45歳だし普通?)ですが、何やら今回で大躍進の気配が……
それはともかくランバ……いえ、グスタフ・ラル大尉とハルトマンが再会。
やっぱりこの2人因果が繋がってるんですかね?
そしてまだ若いハルトマン、ちょっぴりルーデルが怖いらしいというw
この世界線のハルトマン、なんか”気の良い兄ちゃん”っぽいですが……なんか数奇な運命を辿りそうな気配が……
さて、次回は臨時編成の部隊の話でも。
次回もどうかよろしくお願いいたします。